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1971-03-09 第65回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月九日(火曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  三月九日     辞任         補欠選任      後藤 義隆君     塩見 俊二君      山崎 竜男君     植木 光教君      江藤  智君     星野 重次君      達田 龍彦君     永岡 光治君      萩原幽香子君     中沢伊登子君      田渕 哲也君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         古池 信三君     理 事                 岩動 道行君                 小林 国司君                 白井  勇君                 林田悠紀夫君                 森 八三一君                 山崎 五郎君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 三木 忠雄君      委 員                 梶原 茂嘉君                 金丸 冨夫君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 斎藤  昇君                 塩見 俊二君                 鈴木 省吾君                 高田 浩運君                 平島 敏夫君                 星野 重次君                 堀本 宜実君                 三木與吉郎君                 山本 利壽君                 吉武 恵市君                 上田  哲君                 小柳  勇君                 杉原 一雄君                 鈴木  力君                 永岡 光治君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松本 賢一君                 阿部 憲一君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中沢伊登子君                 向井 長年君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  植木庚子郎君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        郵 政 大 臣  井出一太郎君        労 働 大 臣  野原 正勝君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  西田 信一君        国 務 大 臣  保利  茂君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        内閣総理大臣官        房広報室長    松本 芳晴君        防衛庁参事官   高瀬 忠雄君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十六年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、  以上三案を一括議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  この際、鈴木力君の質疑を行ないます。鈴木力君。
  3. 鈴木力

    鈴木力君 前の御質問で、防衛庁長官から、第四次防衛計画案の庁内の検討しておる段階の資料を出すという御答弁をちょうだいいたしましたけれども、ちょうだいいたしましたものは、前に新聞に出ておる要項程度のもので、具体的なものがどうしてもありませんので、私はこの御質問は、後刻にわが同僚に譲りますけれども、ただここで大蔵大臣に一言お伺いしておきますのは、たぶん今月の三日の私の質問に対して、大蔵大臣の御答弁の中に、将来の防衛予算については社会保障費の半分を目途にしていきたいと、そういう旨の答弁があったはずでありますけれども、これはひとつ今後の原則として確認してよろしいか、お伺いしたいと思います。
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先般、四十六年度の予算がどうも軍事色豊かじゃないか、こういう御質問であります。私は、ことしの防衛費社会保障費の半分だと、かっこうはいい、こういうことを申し上げたんです。しかし、こんな形が将来ともかっこうがいいと、かようには考えております。
  5. 鈴木力

    鈴木力君 大蔵大臣の御答弁は、米軍が撤退してみずから防衛をする、そういう体制をつくる中で社会保障費の半分でいきたい、そういう御答弁だったと思いますが、ことしだけに限って、将来は知らないという御答弁だったんですか。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 将来のことに触れたわけじゃないんです。これは速記録をよくごらんくだされば明らかでございますが、ことしの予算軍事力に非常に重点が置かれておるじゃないかというのに対して、社会保障費の半分である、かっこうがいい。しかし、なお補足して申し上げますと、将来ともこういうような形はまあいい姿であると、かように考えております。
  7. 鈴木力

    鈴木力君 将来ともいい姿であるということをお伺いいたしまして、あとまあこの程度にしておきます。  このあと、この前の続きでFM放送経過についてお伺いいたしたいのでありますが、まず郵政大臣にお伺いしておくのは、この事件というのは、国会で問題になったのは今度が初めてじゃないわけです。もう衆議院でも、いろいろな委員会でも問題になっておる。なのに、何となしに郵政省国会の場でも事実を隠蔽しようとするような態度が非常に強くて、みずからこれを解明をして国民の信頼を回復するという態度が見えないと思うのですが、郵政大臣は、この処理についてどうお考えですか。
  8. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) この前の鈴木さんの御質問に対しましては、御要求資料等をもそれぞれ取りそろえて差し上げたわけでございますし、決してここで問題を避けて通る、そういうふうな気持ちはございません。したがいまして、御質問によって十分にお答えしたい、かように心得ます。
  9. 鈴木力

    鈴木力君 有志会について資料も御要求申し上げたのですけれども、ほとんどその全貌がわかるような資料がございません。  そこでお伺いいたしますが、四十四年の三月の十二日の世話人会から、この有志会は何べん会合を開いて、そうしてその会合のつど主たる議題は何であったかをお伺いしたいと思います。
  10. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 会合の回数は、およそ五回というふうに承知をいたしておるわけであります。そこで三月十二日の会合と申しますのは、まあ大体一本化という方向のもとに最初のお集まりをいただきまして、従来の経過等を御報告を申し上げた、こういうことであります。それから引き続きまして六月の三十日、これに第二回の会合が持たれておるわけでありますが、これはそのときのお世話役を願いました足立さんから、発起人役員等について御一任を得る、こういう要請をされたようであります。その次に、十一月の十二日でございますが、これは免許の促進というようなことが主たる話題に相なっております。それから十二月の三日に第四回の会合がございまして、そこで代表取締役の人選というふうなことが議論に相なっておりますし、またその際、この前御質問のありました総理大臣郵政大臣要請をする、これはいま申し上げましたように、教育放送あるいは音楽放送の波の割り当てを受け、それを促進したい、こういうことが話題に相なっております。それから十二月の九日に第五回の会合が開かれまして、発起人会準備会議、こういうことで株式、あるいは発起人発起人総代役員予定者、その他認可事務問題等について議論が行なわれておるようであります。
  11. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんので、一回ごとのことを申し上げるわけにはまいりませんけれども、私は、いま大臣が御答弁くださいました有志会のずっとの流れで、ここで一番苦労しておるのは役員人事に苦労しておると思うのですね。  そこで、私はまず、郵政大臣にお伺いいたしますのは、あれほど急ぐ急ぐといっておるこの問題の処理に、三月十二日にまず一本化の方向の打ち合わせをしながら、六月、その次の十一月十二日まで、この間におよそもう四カ月ないしは五カ月に近いくらいで、この間の会合を開いていなかった、これには何か事情があったのではないかと思うけれども、いかがですか。
  12. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあその間何もなされておらぬという仰せでありますが、御承知のように、非常にたくさんの申請者でございましょうから、そういう点、表面の会合は持たれなくとも、おそらく調整ということに努力を払われておったであろうと、こういうふうに推測をいたしておるわけであります。
  13. 鈴木力

    鈴木力君 推測とおっしゃいますけれども、毎回郵政省からだれかが出ておるはずでありますが、その各回に出ておる方の御氏名を言ってくだい。
  14. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 郵政省からは毎回出てはおらないようでございまして、最初の三月の十二日の会合でありますが、これは一本化のお願いをいたしました関係もこれあり、従来の経過の御説明と、こういったこともございまして、これは郵政省のほうがその席を設ける準備どもいたしておるようでございます。そのときに出ておりますのは浅野事務次官、それから石川電波監理局長、それに業務課長が随行をいたしております。  それからもう一度は、六月の三十日に開かれました会合浅野事務次官、太原放送部長及び業務課長、これがオブザーバーといいましょうか、そういう意味出席をしております。あとは三回の会合には役所出席をしておりません。
  15. 鈴木力

    鈴木力君 まあその出席しているいない、それを追及してもしようがないんですけれども、この十一月の十二日の有志会集まりの中の、この前、テープを出すか出さないかといった問題なんです。これをずっと読んでみますと、一々は申し上げるつもりはありませんけれども、私が読んだ限りにおいては、おくれた理由が二つある。その一つは、一本化していくという作業のことも確かにあった。もう一つは、この有志会の主要なるメンバー方々が予定しておった役員の問題が別の線から入ってきて、そこでもうストップしてしまった、こういう筋にとれるんですけれども、その辺は郵政大臣は聞いていませんか。
  16. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) どうもその辺はさだかでございませんが、何にいたしましてもこれだけ数多くの方々調整をするということでございましょうから、役員の問題についてもたいへん苦心をされたであろう、こういう察しはつくわけであります。
  17. 鈴木力

    鈴木力君 まあ総理は関知していないと、この前にお答えになりましたから総理は関知しないと、そういう前提で言いますと、私は非常に深刻だと思いますのは、総理を利用している者がいる。総理名前をかたって、そうしてこれらの問題がこう延びておって、そうして何となしに政治行政とそれからこれらの事業とが結びついている。そういう印象を与えておったことは間違いなかろうと思うのです。こういう点については、たとえば私が一つ申し上げますと、御承知のように、六十数社からの認可申請が出ており、片一方では、これは言いたくないけれども言いますけれども林屋さんの問題がからんでおるということで、このまま放置しておくと云々と、こういうことが一つ出ておるのですね。これがからんできたいきさつが、このFM東京の一番大きな国民からも批判をされているいきさつなのです。郵政大臣はこれを調べてみようとする意思はありませんか。
  18. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあその点は、林屋さんの名義をもってその前年に認可申請が出ておるわけでございまして、特に最終時点において林屋さんが割り込んできたというものではないようでございます。
  19. 鈴木力

    鈴木力君 割り込んだとか割り込まないとかということではなしに、ただ単に一本化の過程でだれをとすんなりとくるなら、それはたいしたことではないと思うのですよ。この会合でもはっきりと言われておりますように、ある人がほぼ自分の金まで出して準備をしておった。そこへ、総理の御指名だと言って、おれは社長をもらったと言ってがんばったのがこの人なんです。そこでみんなどっちに行こうか弱ってしまっているわけです。総理が言ったのか言わないのかは別としても、関知しないとはっきり言われておるから、そうすれば、総理名前を使ってやった人が、総理名前を使って、おれが社長だと最後までがんばる。そこでどうにもしょうがなくてほぼ五カ月間ぐらい、ただこのまんまストップをした、こういうことなのです。いかがですか。
  20. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあその間の消息は、足立さんその他におまかせをしてあるものですから、しかも役所としましては、最初の二回の会合においておおよその荒筋を申し上げてお願いをいたしたということでございますから、私どものほうとしては、その消息というものはつまびらかにしておらぬわけでございます。
  21. 鈴木力

    鈴木力君 私は、これは郵政大臣に申し上げておきますよ。いままでのものはつまびらかにしていないと、明らかでないと、それはそう言いたいような気持ちはわからぬわけでもない。しかし、総理までからんでいるという名前が出てきて、これをそのときの内閣がそれを解明しないで、ふたをして進もうという政治姿勢に私は疑問があると思う。積極的に調べてみて、そして事実がどうであったのか、これを解明しようとする意図がないかということを聞いている。いかがですか。
  22. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあその間の事情というものは、足立さんその他に御一任をしたということに相なっておりますので、私どもとしましては、現在においては手がかりと言いましょうか、そういうものも乏しいのでございまして、それだけのメンバーによって十分に検討せられました結論が現在の役員人事と相なったと、こういうことであり、まあ現状において運営も円滑に行っておるということでございますから、まあ当面はそれで事が足りておるわけでございます。しかしまあおっしゃるように、それでは責任が済まぬではないかというお気持ちでございましょうが、まあ現在のところは、私どもとしては、合法有効に決定されたものと、こう心得ております。
  23. 鈴木力

    鈴木力君 適法適法でないかということは、これは法律的につじつまを合わせれば適法になることは幾らもありますよ。私が言っているのは、そういう法律的につじつまが合っているかどうかというような、そんな問題を言っているのじゃないのです。問題は、その適法にするためにもどういう手段があったかということがあるでしょう。その背景が何かということがいろいろとやかく言われておるときに、このまんまにしてふたをしていこうという姿勢がよくない、こう言っているのですよ。だから積極的に郵政大臣がこれを資料も求めて解明をしようと、そういう御意図、があるなら、われわれも手に入れてある資料等もお見せもしたりお貸しもしたり、手伝ってもいいのですよ、はっきりするというなら。いかがです。
  24. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあ現状の問題としましては、先ほどお答えしたとおりでございますが、まあ今後電波行政をやってまいる上において、そういった既往の問題についてこれをやっぱりよく承知をしておる必要はあろうか、こういう意味においては、なお私どものほうはそれを振り返ってよく調査をしてみるつもりはございます。
  25. 鈴木力

    鈴木力君 これはぜひそうやってもらいたい。そうしてこれは解明をしてほしいのです。私どもが調査した限りにおいては、時間がないからあまり多く申しませんが、少なくともこの有志会から出ているたとえば決議書なんか、これは資料がないといって出さないけれども、われわれの手にあるのでそれを調べてみますと、郵政省の御指導によりと、わざわざちゃんと文句にも書いてある。郵政省が、そういう形になっておる。それを私がこの前に御質問申し上げましたときには、知らぬ存ぜぬのほうがむしろ多かった。このことがむしろ疑惑を深めていると私は言いたい。それからその有志会につきましては、足立さんに確かに依頼をした。しかし、事実上は足立さんは出ていらっしゃらない。そうして別の方がこれを運営をしておる。ここらあたりの別の方が運営している事情も、足立さんに依頼したからあとは知りませんと、こういう形で郵政省は言っておるけれども、これもあたりまえの話ではない。しかも、さっき申し上げたように、ここでやられておることは、役員をどうしようかというときに、最初に予定しておったこの方々が考えておったのに、横から、さっき、とうとう言ってしまったから、林屋さんを言いますけれども林屋さんが入ってきたので困ったのだということでストップをしておる。この中の議事録を、私はいまここにありますが、それを読んでみますと、まず頼んだその人たち意思に反するようなことが郵政省を通じて入ってきておる。あるいは佐藤総理名前を使って入ってきておる、意思は別としてもですよ。このことが政治がこれに少し出過ぎているということになると、こういうことを言っているのです。それを調べてみて解明をしないといけないということを言っているのです。どうですか。
  26. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあなかなか微妙な問題でございまして、政治行政とがどういう接触点で噛み合うかというふうな点を御指摘になろうとされていらっしゃると思いますが、それは先ほど申し上げましたように、一ぺん私どももよく過去を振り返ってみるつもりでございます。少なくとも行政的にこれが非常に違法であるとか何かいうようなことではないわけでありまして、それにしましても免許の問題というのは、これは国民電波でございますから、これをいやしくもみだりに扱っては相ならぬ、この心がまえはここで堅持をしてまいらなければならぬと、こう考えております。
  27. 鈴木力

    鈴木力君 もう時間がないのですが、そういう形の、不明朗な形の中からいろいろな手続が出てきている。これを郵政省が、先ほど適法という話が出てきたけれども適法に持っていくにはということで、たとえばちょうだいした資料によりましても、あんなに八件か九件もある案件報告を含めて、電波審議会は一時間と何分かでこれをやり通している。これがほんとうに事実を解明した手続を経たのか。適法ではあるかもしれないが、これが行政的に適当であったかどうかは別なんです。あるいはまた特に、降ってわいたように、十二月の十七日から十九日までの予備免許を与えるこの郵政省の動きというのは、異常なんです。夕方引き受けてきて、スタンプをつくり直して、前の日に受け取ったことにして、事実は受け取っているかどうかはわかりません。そうしてばたばたとやって、こうして十九日にやっている。いつでも免許を出すときにこれほどサービスがいいのかどうか、これも疑わしい。これらはすべて、有志会という不明朗なところから出てきているものを適法化しようとする郵政省の、一方をかついだ行動にすぎないとしか見られない。私は先ほど大臣解明意図があるとおっしゃいましたから、先ほど申し上げましたような問題点を、わが党の同僚なり、あるいは別の委員会なりに移して、質問をさらに続けたいと思います。率直に誠意をもって解明郵政省努力をしていただきたい。これだけを申し上げまして、きょうの質問を終わらしていただきたいと思います。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 郵政大臣から答えるところでしょうが、行政の本来の本筋の問題のように聞き取れますので、その点について申し上げます。  行政は、違法な処分、これはもちろん許されません。それは適法でなきゃなりませんが、適法であるが上にもやはり筋を通すことが最も大事なことであります。行政が筋を通す、そこに国民納得もいく、こういうものだと思います。したがって、行政の衝に当たる者はどこまでも筋を通すということにやはり重きを置いて、法律を守ることは当然ですが、その点を十分心がけていくべきだと思っております。また、FM放送の例でもわかりますように、この種の問題につきましては、ずいぶん競願というような問題があるだろうと思います。そういうようなものの扱い方について、今後もこれはたいへんいい勉強になることだと、かように思いますし、大臣経緯等をもっと自分納得がいくように調べてみたい、かように申しておりますから、郵政当局も十分、今後の競願事項等についても筋を通していく、そういう本来の姿に最も重点を置いて処理することだと、私はかように思います。またそのことが、私の政治家としての各大臣に対する願いでもありますので、十分その点については注意してまいるつもりであります。
  29. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連。この前の資料要求について郵政大臣に申し上げます。私が資料を求めましたものの中には、ただいま鈴木委員が問題にいたしております有志会議事録であります。これを資料として求めましたけれども、まだ提出されておりません。この関係をすみやかに提出していただく。  それからもう一つは、三日の予算委員会における郵政省答弁は、特にこれは電波監理局長答弁ですが、役員中、二十三名中郵政省出身が八名だと、こう指摘をいたしたのに、四名よりおりません、こういう答弁でありますが、これは明らかに八名であるから、この点は一体どうかということを確認をいたしておきたいと思います。  それから私が指摘をいたしました問題として、きょうも郵政大臣は依然として、郵政省の諸君はオブザーバーとして参加をした、関係ありません、という意味の答えです。しかし、それであるならば、三月の十二日、ホテルオークラで開いたこの会議——資料等を見ますと明らかになっている——郵政省が招いてやった。だからこそ、皆さん方のほうでそのかかった経費も支払っているわけでしょう。領収書、ここにございますよ。そのことは、郵政省電波監理局長といえども、あるいは現職の次官といえども、否定はできない。大臣官房の秘書課の名前がちゃんと載っていますから。あえてこういう場所ですから名前は申し上げませんよ。こういうことをひた隠しにしているところに、疑惑を招く根源が出るのです。この問題、はっきりさせていただきたい。払っているのですから、二万九千なにがし。これは払っているかいないかということを明らかに答えてください。これが一つ。  それからもう一つは、これからの問題でありますけれども電波局長電波法ですね、これはあなたのほうの商売でございますが、二十六条、これはお読みになっていただきたいと思いますが、二十六条によって、つまり関係の書類等々は閲覧に供するということになっているのです。そういうことをやっていたかどうか。やってないでしょう。あなたがうなずいておるように、やってないじゃないですか、これは。ですから、こういう関係等、幾つかまだまだ問題がありますから、鈴木委員がおっしゃるように、これを一般質問あるいは分科会等々、なおかつ専門の委員会は逓信委員会ですから、等々でこの問題点を伺いながら、ただいま総理大臣が答えられたような方向に問題の処理を私どもはしなければならぬと、こう考えておりますから、ぜひ皆さんのほうは隠すことなく——あるのですから、たくさんその証拠は——そういうものまで隠すことなく、すなおに資料は提示するものは提示する。一体、この問題の問題点は何なのか、どこにあるか、こういうことを掘り下げて究明して、問題を解決しなければ私はならないと思う。  このことを要望しながら、先ほどの二つの資料のことと、それから、なぜあなたのほうは関係がないのか。関係しているから皆さんのほうで、しかも公の金として支払っているわけじゃないですか。それ以外にも会合はありますよ。これは、これから幾つか私は聞いてまいりたいと思いますが、この二つを答えていただきたいと思う。
  30. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほども申し上げましたように、最初会合は、足立さんにお願いをいたしたというたてまえ上、省のほうで場所等を選定いたしました。したがってその費用をお払いをした、こういうことに相なっておるようであります。  それから資料その他の関係は、いま電波局長のほうからお答えをさせますが、先ほど申し上げましたように、決して問題を避けて通るつもりはございません。どうか、引き続いての御質問の機会等がおありでしょうから、そこで私どものほうももっときめこまかくお答えいたしたい、こう考えます。
  31. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 三月十二日のホテルオークラの支払いはどうなっているか。
  32. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) それはさっき申しましたように、役所が、最初会合でございますし、お願いをした立場でありますから、役所の負担で出しております。
  33. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  役員の点でございますが、これはこの前お答え申し上げましたように、四名でございます。  なお、電波法の二十六条は、「周波数の公開」ということでございまして、これは割り当てられた周波数というものを公開しなければならぬことになっておりまして、これは現在、周波数リストというものを実は郵政省には備えてありまして、どなたにもお見せするというかっこうになっております。  なお、このFM放送のいわゆるチャンネルプランというものは、これは法律に基づいたものではございませんで、そのつど発表していると、そういう性質のものでございます。
  34. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 もう一つ衆議院の本会議がありますから、他の質問者がありますから、じゃましていけませんから、もう一つだけお伺しておきたい。  いまの局長答弁ですが、これはでたらめです。このでたらめであるかどうかということは、あと委員会で明らかにします。私どもはテープを持っているんですから。すべて、大臣知っておるでしょう。こういう役人の形式的なごまかしの答弁は私は承知しませんよ。  そこで、足立さんにお願いをした。これはお願いする場合はあるでしょう。いいですか、そこまではいいでございますがね。一本化のために他社の申請の取り下げというものを、届け出をいろいろ工作をいたしましたね、これ。これは足立さんがやったわけじゃない。郵政省の厳然たる現職の役人がやった、役人が。私はあえて名前を申し上げませんけれども、申し上げません。現職の役人ですよ。ですから、この免許事業について、どうも、現職の当時の次官、当時の局長、当時の関係者、現職の郵政省の諸君は、お手伝いにしてはあまりにも出過ぎたお手伝いのしかたをしておるということなんだな。それぞれの法規、慣例に示された本来のいわゆる使命をはるかにこえた仕事をしておる。こういうところに問題があるんです。問題がある。そういう点があるかないかということを答えてみなさい。私はあえて名前を言ってないのだ、ここでは。つまり、一本化のために取り下げの届け出書をつくっていこう、各戸の個別訪問だね、言ってみれば。このことをやった役人がおって、ちゃんと上司の命令によって。あえて私は名前を言わぬけれども、どうですか、郵政大臣、これは否定できますか。
  35. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 行政指導ということをよく申しますが、こういう場合、行政がどこまでタッチし得るのか、そのまあ限界というようなものは、なかなかむずかしいと思います。ただ、このケースを見ましたときに、お手伝いと、これ、私らのお願いしましたもののあるいは手足はないということでもございましょうから、そういう意味において、いま御指摘のようなお手伝いを若干やったということはあるようでございます。まあ、これらは、私のほうもさらに十分取り調べてみようと、こう思っております。
  36. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって鈴木君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  37. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、上田哲君の質疑を行ないます。上田哲君。
  38. 上田哲

    ○上田哲君 外交、防衛問題について質問をいたしたいと思いますが、その前に、阪大の不正入試問題がまた大きく広がってまいったようであります。この点について、文部大臣からその後の御報告をいただきたいと思います。
  39. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 昨日も大阪の大学の入試不正事件につきまして御質問を受けたわけでございますが、その後、捜査当局の調べによりまして、   〔委員長退席、理事森八三一君着席〕 箕面の教育委員長がこれに関係をしておるということが判明をいたしたわけであります。まことに遺憾なことでございまして、教育の行政に当たっておる人がこういうようなことに関係をしておるということは、まことに困った遺憾なことだと考えております。ただ、教育行政あるいは教育委員長として云々ということではないようでございますけれども、また、他の新聞によりますと、大阪府下の学校長もまたこれに関連しておるかの記事がございます。この点につきましては、まだ現地からの報告を受けておりません。いずれ捜査が進むにつれまして事実が判明するかと思いますが、それによりまして私も十分調査をし、また、それに対するわれわれの態度をきめたいというふうに思います。大学のほうは、すでに本院においても申し上げましたとおり、もし不正の入学ということの事実が明らかになり、その氏名が判明した場合におきましては、大阪大学においては入学資格を取り消すという処分等を考慮しておるということを伝えてまいったわけで、私たちも、当然そうなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  40. 上田哲

    ○上田哲君 不正が明らかになった場合には処分をするということですが、伝えられるところでは、阪大では一割に達する。しかも本年度だけではない、さかのぼってそこまで広げて処置をするというお考えですか。
  41. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 不正のことで入学をしたということの事実が判明いたしました以上は、その者が当然入学しなかったことにつながっていくというふうに思います。まあ、その処分は除籍にするのか退学処分にするのか、その点につきましては、やはりその事情がございましょうから、一応当該大学において判断をされるべきことだと思いますが、いずれ、そういう事情がくわしくわかりました上で私としては慎重に判断をいたしたい、かように考えております。
  42. 上田哲

    ○上田哲君 総理に伺いますが、この問題が、いまや漏洩問題ではなくて、買い取り問題になってまいりました。教育界の基本の問題に触れるだろうと思います。それから医師養成制度自身の問題として検討する点が出てくるだろうと思います。ある意味では、形を変えた世襲制度の買い取りという部分もあろうかと思います。問題は、そうした責任の追及ということもありますけれども、これはやはり教育の場の問題でありますから慎重な面が特に要請されると思います。その責任の追及の問題、それからすでに終了した入試の処理、それから箕面の教育委員長までその中にあったということになると、これは具体的な個人、当事者の問題だけではなくて、教育委員会の任命制度にまでさかのぼらなければならない問題もあろうかと思います。そうした立場から、総理の御見解を承りたいと思います。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまのお尋ねは、教育の持つ意義、それをたいへん重く見れば見るほど、この種の事柄は厳正に扱わなければならない、かように私は思います。おそらく、上田君のお尋ねもそういう意味から発想しておるんじゃないかと思っております。したがいまして、先ほど文部大臣がお答えいたしましたように、最近、入学問題について、どうも不正が行なわれておるとか、さらにまた、その範囲が教育委員長まで巻き込まれておると、こういうような事態になりますと、これはなまやさしい問題ではない。害毒がそこまで及んでいるかと、こういうことを考えて、われわれはりつ然たらざるを得ない。事教育の問題でございますから、もとを正す、こういう考え方でこの問題と対処しなければならないと思います。しかし、先ほどの文部大臣の答えの中にもあったと思いますが、いたずらに問題を大きくして、さかのぼらすということも本来の目的ではないだろうと思いますし、教育の姿勢を正すこと、それに役立つような範囲におきましてこの問題と取り組むのが正しい姿勢ではないだろうかと、私はかように考えます。いままでのできた不正をそのまま許せと、かような意味ではございません。ございませんが、数年にさかのぼらす、もうすでに学校を卒業している人たちもいるのじゃないか、かようなことまで疑わざるを得ないような事態でございますから、そういう場合にどういうような処置をとることが納得のいく方法なのか、これらの点もあわせて考うべきことだ。しかし、いずれにいたしましても、教育の基本、これに対して国民からの信頼を失うと、こういうようなことがあってはならないと、かように思いますので、そのもとを正す、こういう態度でこの問題と取り組むべきだと、かように私は思います。ただいまのお尋ねも、さような意味だろうと私理解いたしまして、お答えをするような次第でございます。
  44. 上田哲

    ○上田哲君 もう一つ、全購連の佐藤造機への融資の実情について御説明をいただきたいと思います。
  45. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 新聞で見ました佐藤造機、これは昨日事務当局のほうから簡単に報告がございまして、ただいま農政局のほうで詳細に調べておるところでありまして、内容はまだわかりませんです。
  46. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 関連。  農林大臣のほうでは内容が十分わからないとおっしゃっておるわけですが、少なくとも、私たちが新聞というものを手がかりにして見ただけでも、かなり詳細に報道されております。佐藤総理じゃないのですが、佐藤造機ですけれども佐藤造機の倒産というのは、しばらく前に報道をされておりまして、そのときから、私は、この問題でかなり、農政を考えているものとしては憂うべき現象が出た、そのように実は考えております。でありますから、まず、佐藤造機が倒産したというところに農政上の大きな問題はないだろうか。たとえば、今日の農政は、先般総理からも答弁をいただいたのですが、農基法農政、それでは、選択的拡大、農民の所得が他産業に比べて劣っているから格差を縮めていこうじゃないか、そのためには生産性の拡大、こういったことについて十年前から努力された。しかし、その努力は具体的に現場の農業ではどういう姿に出てきているか。やはり手労働から機械化、生産性の向上ということで農民が取り組んできた事実はぼくも見ております。そのことと、農民の需要にこたえて、佐藤造機その他農機工業が発達をしてきたものだと考えます。ところが、ときたまたま米が余るということが大きな課題となり、農政上の問題となって、私は、総合農政に転換、いわゆる旗じるしを変えられた政府のその最大の動機は、米が余ったということだと思うのです。名前はどんなにりっぱであっても、現実はそうなんです。  そういうことから総合農政に変わった時点で、進められてきた生産性向上の問題等が新しい形を持たざるを得ない。そうして、それが一番極端にいったら、転作休耕、いわゆる減反の問題となってきて、結果的には、いままで新しいくふうと努力によって生産性向上に努力してきた農家、農民、それとタイアップして農機械工業が発展してきた、こういう関係が、そこにズレと申しますか、ストップが起こってきたのじゃないか。農工一体、最近、きれいなことばで、よく政府答弁からお聞きしますが、それは、この間も言ったように、土地、人を求めて農工が一体化するという方向で、きれいごとばでうたわれる部分がかなり多いのじゃないか。私は、新全総、経済社会発展計画、いろいろ政府が、そのつど計画が変わっていきますが、その変わっていく段階において農業の場に起こるズレあるいは混乱、工業の場におけるズレないし混乱、こういうものが常について回ると思います。だから、政府当局が総合というきれいな名前をお使いになるならば、それこそ農林大臣の守備範囲を越えた工業の、通産の行政の問題ともからんでくるわけですから、今度の問題は、いま積み上げようとする新しい農政の大きなひずみだと、もっと極端に言ったら、犠牲ではないだろうか、このように私は思います。  ただ、問題は、具体的に上田委員質問しているところは、全購連のこの問題に対処する三十億のこげつきの問題であります。しかも、全購連から企画室長を役員として送り込み、この再建計画の中で、それこそどろまみれになって努力したのだろうと思いますけれども、結果的には見通しの誤り等もあったりして、こういう結果になったので、会長がやめるとかやめないとか、こういう問題は私たちの論ずる問題ではない。次元が違う。問題は、いま進めようとする農政と、そうして佐藤造機の倒産と、加えて、全購連の問題との関係において——私は裁判官じゃございませんが、これには明らかな因果関係がある。その因果関係を解いていただきたい。同時に、また、その因果関係を解くと同時に、その因果関係をどう今後解明しながら解決をしていくか、このことを詳細にお伺いする時間はないと思いますが、大筋でいいが、やはり農林大臣として、所管の大きな問題でございますので、明確な御答弁をいただきたいと思います。
  47. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまお話のございました、それから新聞にも出ております全購連、これは全購連がかなり肩入れをしておる会社のようであります。しかし、専門的に農機具関係をつくっておりますメーカーはたくさんございますが、佐藤造機というのはわりあいに小型な機械をつくっておるほうのメーカーであります。そこで、全購連その他農業団体関係の金融機関等、いろいろいままで取引が多いようでありますが、あのようになりましたことがどこに原因かあるのか、それから会社更生法の適用を受けるような手続をいたしておるというふうに新聞に見えておりますが、それらのことにつきまして、ただいま私のほうで詳細にその事実の把握のできるように、関係者当局を呼んで調べておる最中であります。
  48. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 関連。  お聞きになったと思いますが、ぼくは抽象的なことを言ったと思いますが、かなり今後農政を進める場合に、大きな問題を投げかけております。   〔理事森八三一君退席、委員長着席〕 たとえば、私たちが公害問題を追及する、このことによって、ある会社がつぶれました。しかし、それは単純に資本の論理とか弱肉強食で済まされない大きな政治的な関連性を持っておると私は思います。いまの場合も、小型農機だ、いろいろ過去もそういうこともあったんだろうと思うがなどということでなしに、だからここの時点で農政に  一つ大きな、活ということは私の場合ではありますけれども、検討していただく何ものかはないだろうか。このことを大臣にいま要求しておったわけです。真相は、私、この新聞で十分だと思うんです。きょうの新聞報道で十分だと思う。これ以上、ぼくたちは事件屋でございませんから、中身に入ろうと思わない。この新聞に書いた、この事実の中から、いま皆さん、政府が進めようとする農政からくる大きな問題がひそんでいる。いわゆる協同組合法がどうだこうだということをきょうは論じません。それよりも、もっと大きな問題がひそんでいると思うのです。その点を大臣から所信をお聞きしたいというわけなんです。
  49. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私は、責任のある立場でございますので、事が明らかになりませんと、こういうところでいろいろ申し上げることは困難でございますので、農政当局に命じまして、しさいにただいま検討されておりますが、御存じのように、いま農業全体がいろいろな角度で、非常にこう、流動的であると同じように、農業団体も、御存じのように、将来進むべき道についてそれぞれ検討していらっしゃいます。で、そういう意味で、全購連と全販連は、将来の農政、農業のあり方について種々検討いたした結果、全中その他があっせんをいたしまして合併の機運に向かっております。これが合併されますならば、伝えられるところによれば、その取引高においては日本で第三番目の大商社になると言われております。いま、農協ですら、御存じのように、観光会社を経営して全世界に観光客を送っておるような状態でありまして、これらの農業団体の経営それ自体にいろいろな新しい動きが出てきておりますが、全購連が肩入れをいたしておるということは、もうすでに新聞にも出ておりますけれども、私どもといたしましては、こういうふうに佐藤造機がなってまいりました動機が一体どういうところに原因しておるのであるか、同時にまた、農業者自体がつくっております生産者団体が一番関係の深い全購連が肩入れをしておる、また同時に、農業団体の有力なる金融機関が、新聞によれば、かなりの金融をいたしております。前々から、国会においても、こういう農業関係の金融機関等がいまのような状態でいいかということは、この前の国会等でもなかり御論議がありまして、私どももそういうことについていろいろ検討を進めておったわけでありますが、たまたま佐藤造機の問題で、全購連に今度のようなことが明るみに出てまいりましたので、ただいま、いま杉原さんの御指摘になりましたようなことを含めて、詳細に検討中でございますので、まだ、きのうあらわれましたきょうのことでありますので、実態を把握するに至っておりませんが、十分に調査をいたしてみたいと思っております。
  50. 上田哲

    ○上田哲君 可及的すみやかに調査をして責任を明らかにしていただきたいと思います。  もう一つ、日本繊維産業連盟の輸出自主規制宣言が出されました。この問題の評価と、今後の見通しについて御意見を承りたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨日、日本繊維産業連盟の代表者の方々が見えまして、自主規制の宣言をしたこと、並びにそれについて今後の問題に関して政府に要望する事項を持って来られたわけであります。で、繊維産業としては非常な困難を乗り越え、犠牲を払って、世界の自由貿易増進のために、並びに日米友好関係を保持するために、こういう決心をしたという経緯を聞いたわけでありますが、同時に、それに伴いまして、国内でもいろいろの犠牲を生ずることであるので、救済措置について政府も考えてほしい、こういうことであったわけでございます。  で、この評価でございますが、私どもといたしましては、日本の繊維産業が犠牲を払ってそういう決心をしたということはなみなみならぬことであるということを、世界各国、特に米国には十分了解をしてもらいたい、そして、その目的でありますところの日米間の友好の増進並びに世界の自由貿易のために米国政府としても努力を払ってもらいたい、こういうことを当然政府としては考えるわけでありまして、その旨は、すでに昨晩から今朝までの間に外交ルートを通じまして、米国政府にも伝わったものと考えております。同様の趣旨のことは、ガット並びに主要国にも伝えたいというふうに考えております。  なお、これに伴いまして、これは本来ならば外務大臣からお答えいただくべきことかと存じますが、政府間で行なわれました日米交渉はその客体が解消をいたしましたから、終止符を打つということになるかと考えております。で昨年、米国を中心にして、長い間の自由貿易の流れというものが逆行するような動きが相当顕著でございました。しかも、それがこの繊維輸出ということに端を発しておるというふうに考えられましたから、わが国の業界がこのような決心をしたことによって、再び自由貿易の大きな流れというものが世界の主流になる、主潮になるということを私どもは期待をいたしておりますし、また、各国にそれを要望をしておるようなわけでございます。  なお、これからの問題でございますけれども、主要輸出国についても、これと類似の宣言なり、あるいは措置なりがとられますならば、米国としても、この二年来ございました問題について、まず問題は解決をした、こう考えるものではなかろうかと、こういうふうに考え、見ておるわけでございます。
  52. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 昨晩、繊維業界の代表の方々が私のところもおたずねになりまして、このような宣言をいたしましたというお話を承りました。御承知のように、政府側といたしましても、本件の日米間の話し合いをまとめるために非常に努力を続けてまいったわけでございますけれども、ひっきょうするに、本件は日本側の業界の納得によるところの自主的な規制という方法によらざるを得ない性格の問題でありますことは、もう御承知のとおりでございますが、この日本の繊維業界が大所高所からいろいろと考えられてこの道を選ばれましたことは、政府としても歓迎するところであります。また、この一方的な自主規制によりまして、米国側もこれまでの苦心を払いましたこの日本側の態度につては、私は正当に評価してくれるものと思います。率直に申しまして、外交ルートを通して米政府側ともさっそく連絡をいたしておりますけれども、問題が問題でございますから、一〇〇%に満足というようなことは言えない性格の問題だと思いますけれども、まあまあよかったというような感じを、アメリカの政府あるいはアメリカの関係者も持ってくれているように思います。  同時に、政府といたしましては、ただいま通産大臣報告のとおりでありまして、問題となっておりました客体がかようにして解けてまいりましたわけですから、政府間の交渉、これは続ける必要がなくなったと判断いたしております。この点は、昨晩おそく、内閣として官房長官談話で政府の態度を明らかにいたしましたが、その中に触れているとおりでございます。  こういうふうな考え方でございますから、外交当局といたしましても、この日本側繊維関係業界の多くの関係者の方々の誠意というものが十分国際的にも実りますように、アメリカに対してはもちろんでございますが、その他の関係の国々に対しましても、十分その気持ちが通ずるように、また、これが将来の日本として最も望む自由貿易の胎動に有効にこれが反映していくようにできるだけの努力をいたしたいと思っております。輸出国の大手の国々に対しても、あるいはまたガットの方面に対しましても、何ぶんにも、昨晩はっきりした態度がきまりましたその直後でございますが、私どもとしては、夜を徹してさような措置にすでに入っておる次第でございます。
  53. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 関連。  この問題は業界の自主規制宣言ということによって行なわれたと。政府の通産貿易に対する外交交渉の大きな責任を業界に転嫁をしている。こういうことで、政府自体の外交交渉が失敗であった、こういうふうに思いますが、この点はどうですか。  それから第二点は、米国の業者のほうでは、この自主規制宣言に満足しないで、さらに政府間の交渉を強く要望しているようでありますけれども、現在の外交ルートの折衝によって今後そういうようなことはないのかどうなのか。先ほども、政府は、客体がなくなったから交渉は打ち切る、こういう態度を表明しておりますけれども、そういうことがあるのかないのか。  第三点は、この問題は、ただ日本だけの問題ではなしに、類似の主要輸出国との同時実施ということがなければならないと思いますけれども、韓国、台湾あるいは香港、こういうところを見ますと、だいぶ大きな反発をしておりますが、これらの諸国の態度は一体どうなのか。  その三点についてお答えいただきたいと思います。
  54. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 今回のこういう決着は外交の失敗であると、こういう御説でございますけれども、問題の性質が、先ほども申し上げましたような性質の問題で、日米間におきまして、大所高所から考えて、自由主義貿易を守るための一つの方法として、また、日米関係の非常に大きな貿易の今後の伸展ということから考えてまいりまして、どうしても双互譲り合って、とにかく決着をつけたいというのが、もう偽らざる関係者の間の気持ちであったと思うのでありまして、これが相当の時がかかりました。いろいろの道程を経ましたけれども、ともかくも、こういう姿で決着いたしたということは、私はけっこうなことであったと思うのでございまして、そのことによって、外交が失敗であったという御批判があれば甘受いたします。私は、結果が双方のためによかったと了解いたしておる次第でございます。  それから、これからいろいろと、たとえば第三国同時実施というようなことがあるではないか、これはお話のとおりで、これらの点につきましては、やはり日米双方の関係者が協力いたしまして、こうした第三国の協力を得たいものと、できるだけの努力をわれわれとしても惜しまないつもりでおる次第でございます。  それから、第二は、何とおっしゃいましたか、恐縮ですが……。
  55. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 第二点は米国……。
  56. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 第二点は、米国側は、すでに外電で伝わっておりますように、そしてまた、先ほど私もちょっと触れましたように、一〇〇%に満足ということではなかろうと思います。これはもう、当然私どもも予想されるところでございますが、これは現にただいまも来ておりますけれども、ミルズ・アメリカ下院歳入委員長が、本件についてのコメントを出しておりますけれども、こうしたことによって、日本側のこうした自主的の規制によって、繊維についての輸入割り当て法案というものは、もうこれは考える必要がなくなったという趣旨のことを、かなりはっきり言っておるようでもございますし、また、先ほど申しましたように、アメリカの政府側の反響も決して悪くないように見とれますので、アメリカ側として、さらにこれに追い打ちをするというようなことは、私は考えられないと思います。また、そういうところの見通しに立って繊維関係方々も昨日のような宣言をなされたものであろう、かように考えております。その点の御心配は、まずないのではないかと見ております。
  57. 上田哲

    ○上田哲君 それでは、外交、防衛問題の……。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 次に移るなら、一点だけ、関連して。  いまの繊維問題はそれでよろしいのですが——よろしいというか、同僚議員のそれで尽きておりますが、極端なものの言い方をする人は、日米貿易戦争などということばを使っておるのですが、繊維問題はこれで一応片づいたとしても、その他の問題については、一体これで日米間の貿易上の懸案はほとんど、政府間にしろ、あるいは業者間にしろ、たいして問題は起こらないのか。これですべて一段落したのか、あるいはこれが契機となって、また他の品目についても何らかの問題が、自主規制なり何なりが起こるのか。その辺の見通しはどうか。この一点をお伺いしたい。
  59. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) すでに、この国会の冒頭にも私どもお話しいたしておりますように、日米間の経済関係がますます大きく深くなってきております。たとえば、昨年の輸出、輸入、それぞれ五十九億ドルあるいは五十五億ドルというふうな非常なふえ方をしておりますので、繊維の問題は、幸いにして、おそらく、これで一応片づくであろうと考えますけれども、このほかにもいろいろの問題は現にございますし、また、将来も予想されると思いますが、今回の繊維問題についても、双方ともにいろいろと得がたい教訓を得たような感じがいたすわけでございまして、ますますもって両国の、これはもう政府間はもちろんでございますけれども、業界同士あるいは政界同士、大いに交わりを深め、相互の理解を固めることが、こういう場合において最も必要なことであろうと、かように考えるわけでございまして、したがって、予想される問題は今後もございますけれども、やはり相互の理解によりまして、十分私は解決をしていくことができる、かように見通しておる次第であります。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) こういうふうに感じておるのでございます。昨年かなりアメリカで保護主義者の声が高くなりましたが、結局立法は最後の瞬間に成立いたさなかったわけであります。この点は、保護主義の声が強くなるとともに、自由貿易主義を信じている人たちの反論もだんだん高まりましたが、おそらくわが国ばかりでなく、世界各国がかなり真剣に強く反撥したということが、アメリカの保護貿易主義者たちの予想を越えるものであったのではなかっただろうか、そういう意味では、この人たちも、ことしもう一度同じ道を安易に歩けるとは実は考えずに今年を迎えたのではなかったかと思います。そういう状況でございましたから、そこへわが国の業界がいわばおとなの態度を示したということで、自然に起こっておった反省というものが、やはりかなり強く保護貿易主義者といえども考えざるを得ないというような情勢になりつつあるのではないかというふうに考えております。これはアメリカ側の事情についての考察でございますけれども、他方わが国の側について申しますと、貿易量、ことに対米輸出が非常にふえつつございますので、やはりわが国もこれだけの経済になりますと、秩序ある輸出ということは、品物ごとに考えていかなければならない。一つの種類のものがアメリカに向かって急増をするというようなことは、とかく紛議の種になりやすい、そういう反省がわが国の側にも生まれておる。また生まれることが私はよろしいと思うのでありますが、そういう両方の事情から、基調的にはもう一度自由貿易への流れというものを取り戻せるのではないか、そういうふうに努力をしなければならないというふうに考えております。
  61. 上田哲

    ○上田哲君 外交、防衛について伺いたいと思います。  伺う前に、当局に抗議をいたします。先般の鈴木委員質問に対して、防衛庁側は「新防衛力整備計画案」の概要を資料として提出をするということでありました。実際に提出された資料はこれであります。実にこの内容は、ずさん、粗悪はなはだしいものでありまして、一体これが新防衛力整備計画あるいは四次防の概要として五兆八千億の内容に値するものかどうか。しかも、今月中には完全に防衛庁案ができ上がり、おそくも夏までには政府案が成立をするという、そういう作業のプロセスからいっても、はなはだ理解に苦しみます。しかも、はなはだ許しがたいことは、この内容は、ここにこういうものがありますけれども総理府が出している「時の動き」、これはもう一般の政府刊行物でありまして、定価四十円、この中に「新防衛力整備計画案のあらまし」と書いてある。寸分違わないものであります。四十円出せばだれでも買えるべき政府刊行物と同じものを、十分な議論の中で、それでは出しましょうということで出したということでは、これははなはだ不見識であり、不誠意であると思います。御見解を承りたい。
  62. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは党並びに衆議院並びに社会党にもお出ししたものでありまして、それをこれからの補足説明において少し具体的に申し上げようと思っていたところでございます。新防衛力整備計画は、目下策定中で、まだ確定しているわけではございません。それから大蔵省や関係各省にもその案を示してあるわけではございません。したがいまして、まだ非常に流動的な要素もあるわけでございますから、確固とした案をまだお示しする段階ではないわけです。そこで、文書として権威を持ってお出しするのは、やはりその程度以上出ないのでありまして、私の本日のこれからの御説明においてある程度詳細に御説明申し上げる考えでおるところであります。
  63. 上田哲

    ○上田哲君 先般の討議の中で、四次防の財政配分、それから戦略解析、兵器体系並びにその性能は、十分この場の討議にたえるものであるということの御答弁がありました。そういう上に立ってこれが出てきたものであります。紙では出さないけれども、説明がきょうの討議の中でいろいろ出るということでありますから、何はともあれ、新防衛力整備計画を本日のテーマとして進めていきたいと思いますが、当面防衛庁長官のほうから説明を前もってしておくべき事項があれば承っておきます。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 特に先に申し上げることはございませんから、どうぞ御質問お願いいたします。
  65. 上田哲

    ○上田哲君 それじゃひとつ何でも明らかにしていただけるということで御質問をいたします。とりあえずわかりやすいものからいきます。  ナパーム弾。ナパーム弾は六千発アメリカからもらって四千発返した。あと二千発ある。今日までの説明ないし漏れ聞いているところでは、八戸なり、松島なり、築城なり、三カ所の基地にあるということでありますけれども、私どもの調査でも、少なくともその倍の数の基地にあると知られております。一体二千発はどの基地に何発ずつあるのか、御説明をいただきたいと思います。
  66. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 現在二千発分と申しておりますけれども、こまかく申しますと、千七百一六十発分が高蔵寺という補給処にございます。それから各部隊には、第二航空団に六十発分、第四航空団に八十二発分、第五航空団に二十四発分、第六航空団に一発分、第八航空団に九十発分、八十一航空隊に十六発分がございます。
  67. 上田哲

    ○上田哲君 だいぶあっちこっちにあることが明らかになりましたが、この際、F86FBの空対地攻撃訓練の項目を説明していただきたいと思います。
  68. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 支援戦闘機の航空爆撃訓練の項目は、一つは跳飛爆撃、スキップボンビングと申しておりますが、三十度の角度で降りてまいりまして、約五十フィートのところで水平飛行に移りまして、その間に爆弾を落とすというやり方であります。これは爆弾もナパームも同じやり方をやります。それから急降下爆撃、四十ないし六十度の角度で降りてまいりまして、千メートルないし千五百メートルのところで爆弾を落とします。敵の被弾を避けるために急降下及び千メートル程度の高度を保つということであります。したがいまして、航空自衛隊でやっておりますのは、この二つのやり方であります。
  69. 上田哲

    ○上田哲君 トスという種類のものはありませんか。
  70. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) トスボンビングと申しますのは、降下してまいりまして反転をして上昇する途中で爆弾を落とすということであります。この場合には。パイロットは攻撃目標を視認しておりません。したがいまして、そういう特殊な装置、つまり上昇するときに、上昇している途中で落とすわけでありますから、特殊な装置をつけて爆弾を落とす、こういうことであります。
  71. 上田哲

    ○上田哲君 スキップボミソグはナパーム弾を使用する訓練だと思いますが、間違いありませんか。
  72. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) スキップボンビングは水平飛行の途中で落とすわけでありますから、ナパーム及び爆弾両方とも使います。
  73. 上田哲

    ○上田哲君 ナパームを使うための訓練がF86FBにで行なわれている。千七百六十発がこういうふうに各基地に置かれている。私は当然ナパームの訓練が実弾をもって行なわれていると思いますますが、いかがですか。
  74. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは前に長官も御説明になりましたように、四十一年と二年でありましたか、五十発については実弾で行なっております。なお、模擬弾で一度やったことが過去にあるようであります。
  75. 上田哲

    ○上田哲君 これまでの説明では天ケ森でということでありましたけれども、それ以外の場所では行なわれておりませんか。
  76. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私どもで調査したところでは天ケ森以外では実弾訓練をやっておりません。
  77. 上田哲

    ○上田哲君 芦屋の場合はどうですか。
  78. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 芦屋では爆弾もナパームも実弾の訓練をやってはいけないことになっているようであります。これは米軍の射場でありますので、レギュレーションでそうなっているようであります。したがいまして、航空自衛隊——築域の部隊——が訓練をする場合に、二十センチ、ばかりの模擬弾を投下するということでありますが、その模擬弾はナパームであれ、爆弾であれ、とにかく特定のものを意図しているわけではなくて、一つの模擬弾、両方に使えるわけでありましょうが、そういうものをスキップボンビングの場合に使っているようであります。したがって、実弾としての訓練は芦屋では行ないませんし、行なっておりません。
  79. 上田哲

    ○上田哲君 ナパーム弾をどういうところに使う訓練をしているのですか。
  80. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 一般論で申し上げますと、対人攻撃に対しては、これは部隊の頭の上から落とすということではありませんで、横穴に入っているような場合、あるいはざんごうに入っているような場合、そういうものに対してこれは焼夷効果と、それから燃える場合に酸素がなくなりますので、そういった面での効果が相当に非常に期待されるということであります。それから物資関係では、物資の集積所、特に燃料関係、それから航空機、タンクの集積所あるいは待機所、それから艦船、そういったものについて爆弾より効果のある場合があるということで、爆弾が効果のある場合もあるし、ナパームが効果のある場合もあるということであります。
  81. 上田哲

    ○上田哲君 ナパームの材料を自衛隊が合成をしているというのでありますが、どういう成分を使ってどのように合成するのですか。
  82. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 合成という意味は、現在のナパーム弾は弾殻部と充てん剤と信管部が別々になっておりまして、弾殻部がしかも三つに分かれているという姿で格納しております。それを合わせることがまず一点で、構成と申しますが、いまの先生の御指摘の合成は、薬剤でございますけれども、現在の持っておりますものはアルミニウム石鹸というかっこうの——石鹸と同じものでございますけれども、そういう姿で、ちょうど洗剤と同じかっこうでできたものでございます。使う場合には約一〇〇の一般ガスに対しまして六程度の割合でまぜて弾体を組み合わせて中につぎ込むというかっこうでございまして、一応三つの弾体を合わせまして、それに、頭のほうに風をよけるものをつけまして、信管部をつけまして、いま言ったような薬剤を、できております薬剤、かんに入っておるものをガソリンとまぜてつぎ込んで、それで弾体として完成するというものでございます。
  83. 上田哲

    ○上田哲君 かなり自分の手でできるという状態のようですし、それから千七百六十発という少なからざる数が相当たくさんの場所に分散されている、しかも訓練が行なわれている、一体どういうふうにいままで使ってきたのか、これまでの六千発以来の、二千発になり千七百六十発になってくる、その間の経過を説明していただきたいと思います。
  84. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいまの御説明にありましたように千七百発というのはいわゆる補給処にあるわけです、その材料分が。残りの二百何十発というのがいま言った分散してある、そういうことでございます。  それから当初六千発分が無償援助で入りまして四千発分を向こうからの要望もあって返しまして、そして信管が残っているのは四百発分しかありません。そして四十二年に至るまで六回、全部で五十発でございましたが展示演習で使ったわけです。一回五発から八発くらいやってみまして、天ケ森の演習場を使いましたのは、あそこは海から入ってきて、もし万一の場合でもまわりに被害がないように海から、海に近いところから低空で入ってきて、そこで落としてみせて、陸上自衛隊の自衛官、あるいは航空自衛隊の。パイロット、そのほかの者に見せまして、ナパーム弾というものはこういうものである、もし万一やられたときにはこういう防護措置が必要であるという意味の展示に使ったのでございます。
  85. 上田哲

    ○上田哲君 これから先はどういうふうな訓練計画ですか。また、何発を使う計画ですか。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ナパーム弾をいま持っている以上にふやす計画はございません。やはり教育訓練のために、展示演習は将来あり得ると思います。  それから万一、日本が侵略されて橋頭堡がつくられたというような場合には総理大臣の命令によって使う場合も、それは万一の際には留保してあります。
  87. 上田哲

    ○上田哲君 六千発のうち返した四千発はベトナムで使われたわけですか。
  88. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 三十二年から三十四年までに無償援助で供与を受けましたけれども、四十一年になりまして、向こう側から一部返還してほしいという要請ございまして、検討した結果、八月に四千発分を返還しております。その返還されたものがどういうふうに使用されているかについては、われわれとしてはわかりません。
  89. 上田哲

    ○上田哲君 これがベトナムで使われたと私たちは信じているわけですけれども、それと同じものが日本に備蓄されている、そして具体的に演習が行なわれている、今後も演習は継続をする、使わないことを目的とする演習というものはないわけですから、私どもはこの兵器、ナパーム弾というものの性質から言っても、さきに総理がこれは使いたくないということを宣明された立場でですね、はなはだやはりおもしろくないものだと思います。総理が使いたくないと言われますけれども、実際にこういう状態になっています。総理意思とは、これは反する形に向く可能性もある、実態もあると思います。総理いかがでしょうか。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろの兵器、武器、弾薬等があることは御承知のとおりであります。その中で毒ガスは、これはもう日本も禁止の、そのほうに入っておりますから国際条約も持っていく、こういうことですし、ナパームにつきましては、私はもうこの種のものは使いたくないということははっきり申しております。しかし、やっぱり自衛隊そのものとしては、どういうものかというくらいのことは知っていないとこれは困るのじゃないかと、かようにも思いますので、いまの状態で不都合だとは私は思っておりません。しかし、とにかくこれを使うということ、その場合においては、私の命令がない限りかってには使えないはずですから、さような意味で、いわゆる緊急の際にどういう事態になるのか、そういうようなことも考えて、初めて見るようなものだというのも困りますから、これは平素の状態において、訓練用のものは、これはやっぱりやっておったからって不都合だとは言えない、かように私は思います。
  91. 上田哲

    ○上田哲君 使いたくないということであれば、ナパームじゃなくても、鉄砲だま一つでも使いたくはないわけですから、特にナパームという兵器の性質からいって特に使いたくない。防衛庁長官は、侵入する者があれば断固撃攘するのだと言われているわけですが、総理が特に使いたくないということであれば、長官の言われる、総理の命を受けなければという部分、総理はそのことについて、特別にナパームについては、具体的な手順を追うて許可命令する、そうした段取りをお考えになりますか。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまも上田君自身がおっしゃるように、たまは撃ちたくない、そういうものでございます。私どもはみずから戦争するという、しかけるというような考え方は毛頭ございません。したがって、しばしば申し上げますように、専守防衛、それに徹する、そういう立場でございますから、その範囲においてわれわれが必要なる武器弾薬は使う、そういうことでございます。ただいま言われるようにナパーム、これについては特別な処置をするかという、ただいまそういう点についても私別に考えたことはございませんが、ただいま防衛庁自身が、皆さんからもいろいろお話がございますから、今後の扱い方についても、これは一そう慎重になるだろう、かように期待しております。
  93. 上田哲

    ○上田哲君 一般通常弾丸とは違った扱いをするという検討を約されたと理解をしております。  次に、基本的な防衛計画そのものについて伺いたいと思うのですが、大蔵大臣、三次防は九七%の達成率、四次防は金に心配ないとおっしゃった。単に一次防から二次防、三次防、四次防へと倍々になってきたというようなペースとは違って、四次防は絶対額においても意味が違うと思います。しかし、三次防が政府案として決定されるときに比べると、たいへん今回はスムースであるということ一つを見ても、その方向づけを見ても、四次防については一般財政論上非常に、特に優先順位というウエートを置いておられるのかどうか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 防衛費を別に優先順位の優のほうに置いておるということではございません。防衛費はあくまでも国政全体の中のバランス、これを考えて、他の諸政策と均衡のとれたものにする、こういう考え方であります。
  95. 上田哲

    ○上田哲君 三次防と四次防が質的に違うというお考えはお持ちになりませんか。
  96. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 格別変わったところがありそうに考えておりませんです。
  97. 上田哲

    ○上田哲君 過去五年間の一般会計の伸びが一六・八%、四次防はこのままいくと一八%、少なくとも算術的に言ってその分は民生部分を圧迫するという懸念がありますが、いかがでしょうか。
  98. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四次防につきましては、まだ具体的に話を受けておりません。そこで、話を受けました上は、これを国政全体の中のバランスという中で慎重に検討しなければならぬ、こういうふうに考えておるんです。まだ四次防の論はどうも話を受けてないので、仮定の問題なんで、まことにお答えがしにくいのでございますが、これは国政全体の中のバランス、それから内外の情勢、そういうものをよく見きわめてその位置づけをしなければならぬだろう、かように考えます。
  99. 上田哲

    ○上田哲君 激しく不満であります。先ほど四次防の概要というのが議論ができるのかできないのかということを一わたりやったわけであります。その点については、非常に不十分な材料だけれども、政府からはっきりした概要が出たわけです。それを材料にしているわけです。そして足りない部分は話で補うと言われているし、そして、大蔵大臣自身が先般の予算委員会で、金のほうは心配ないということも言われているわけであります。しかも仮定の問題というほど遠い話ではなくて、一六・八尾と一八%という数字がここにあるわけですから、その一八%というものと一六・八%とのつながりにおいてどう考えるかということは、一般財政論としても話ができないはずはないと思います。これはまだ聞いてないからという言い方では非常に不満です。
  100. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ実際問題として五兆八千億になるのかどうか、その数字的なことは一切まだ聞いていないんです。そういう段階ですから、まだそれが妥当なものであるかどうか、そういうことについてはお答えがしにくいんです。ただ一般論といたしまして、私は前にも申し上げましたが、これだけの経済力がついてきた。そういう中において、まだわが国の防衛米軍に依存をしておるという形は解消すべきものである。そうして米軍の基地、いろいろ問題を起こしますが、こういうものはなるべく早い時期にこれを整理しなければならぬ、こういうふうに考えておるんです。  まあ、四次防がどういう防衛庁のほうで出方をいたしてまいりますか、そういうことも考えますが、しかし、同時に、そういう気持ちの中におきまして、国政全体の中でのバランスはどうだろうかということも慎重に検討いたしまして、大事なことでありまするから、慎重の上にも慎重を期して意見を申し述べたい、かように考えております。
  101. 上田哲

    ○上田哲君 総理に伺いますが、しきりにGNPとの比率で議論をされるんですが、GNPで見る限り、この数年間、ミリタリー・バランスによる各国の防衛費のGNP比率は、たとえば上から順番に言って、一番のアメリカ、五番のフランス、六番のイギリス、七番のイタリア、十番カナダ、十一番チェコ、そこで日本は十二番になるんですが、この国々は全部比率は下がっております。わずかなことではあるかもしれませんが、傾向としてはその傾向を追うているときに、われわれの国の防衛費は、このランキングでいうと十二位から一挙に七位にいく、こういう形をどういうふうにお考えでしょうか。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 主たる問題は、先ほど大蔵大臣がお答えいたしましたように、やはり自主防衛、みずからの力でこの国を守るという、そういう点がいままでは不十分だったと。気持ちはあります、もちろん。しかしながら、どうも手段、方法として万全ではなかった。言いかえるならば、日米安保条約にたよっている部分が非常に多い。そういうのがわが国の防衛の実態ではなかったろうかと思います。そういう点を、だんだん変わってきて、そうして自主的な状態に切りかえていく。これが今日、国力、国情に応じてそういう姿で整備されつつあると思います。わが国を取り巻く国際情勢が非常に変化したと、かようには私は見ておりません。ただ、いま申し上げますような日米の関係、米国のニクソン・ドクトリン、とにかく自分たちはもうすでに自立できるんじゃないのか、そういう意味で国防もみずからの力でやるべきじゃないか、こういう形が強くこれから打ち出される、かように思いますので、そういう方向で考えていくべきじゃないか、かように思います。しかし、それにしても防衛力を格段にふやすというような方向は、これは好ましいことではございません。国際情勢に変化がない限りわれわれはかような方法は歩もうとは思いません。したがって、先ほど大蔵大臣から答えているように、国内の各施策とのバランスもとりながら、防衛力を順次自主的に整備していく、そういう形の方向へ進むと、かように私考えております。
  103. 上田哲

    ○上田哲君 総理から「自主防衛」ということばが出まして、この自主防衛ということば、たいへん一般論ではなくて、具体的な意味を持っておりました。で、自主防衛構想ということからすると、これは中曽根長官は具体的に、たとえば総理はいま「自主防衛」ということばと「国力、国情」ということばを使われましたけれども、自主防衛論という構想の中では国力・国情論というのはほかのことばに変えていくべきではないか、こういう議論があったと思います。そこは長官いかがでしょうか。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 「国力、国情」ということばが出ますのにはいろいろいきさつがあったようです。あの昭和三十二年に国防基本方針をきめるときにはいろいろな手続議論がございまして、その中で、「国力」という場合にはわりあいに経済的な面が見られたと、「国情」という場合には、憲法であるとか政治情勢であるとか社会情勢であるとか、あるいは社会保障、教育との均衡とか、そういう意味で「国情」ということが表現されたということであります。私は、そういう配慮をもってそのことばが使われているとするならばこれも妥当なことばである。そのことばと「自主防衛」と矛盾するものではない、そのように思います。
  105. 上田哲

    ○上田哲君 「国力、国情」でいくと天井知らずになるという議論があり、他費目との調整ということがことばとして採用さるべきではないかということであったと思うんですが、これは後退ではありませんか。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、正直に申して、当初そう思いました。そして「国力」ということばが非常に目についたので、国力ということを強調すると、GNPが伸びればそれに比例して国防費も伸びていく、このことは適当でないと、そういうふうに感じて、このことばがいいかどうかしさいにその当時の会議録等を点検してみました。その結果、いまのように、「国力」という部分と「国情」という部分がいまのようなニュアンスをもって表現されているということを私見まして、そうして、ああそういう意味であるならば社会保障や教育の考慮も入っておるし、憲法自体も「国情」ということばの中に入っておるという意味において、まあ妥当な表現であると感じたわけです。
  107. 上田哲

    ○上田哲君 総理自身がただいま関係費目との調整、バランスということを「バランス」ということばで言われたわけですけれども、この「バランス」ということばを「国力、国情」ということばに振りかえようとした、しかし、それが「国力、国情」ということばに戻った、そのままになっているということになりますと、私はこれまで五年間のとさっき申し上げた一六・八%と防衛費の伸びの一八%とのズレがそのバランスを変えてしまうのではないか。つまり、「国力、国情」ということばの表現は「関係費目間の調整をはかる」ということばとは具体的に違うのではないか、こういう懸念をなお持つわけです。ここは総理いかがでしょうか。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 上田君に申しますが、個々のものが、あるいはばらばらにお考えになるかわかりませんが、わが国の場合は基本的にはちゃんと憲法というものがございます。これはもうわが国が国民とともに約束した事柄であり、政府だけの考え方じゃございません。この憲法のワク内でわれわれがやっていく、しかも、憲法のワク内でわれわれはいままでもいわゆる日米安保体制、そのもとでわが国の安全を確保してきていると、こういう状態でございます。そういう状態のもとにおける、また、戦後の復興の途上等から見まして、みずからの力で自分の国を守りたい、かように思いましても、なかなか守るだけの手段、方法は尽くせない、こういうものもあったと思います。そこら辺、やはり「国力」というものがあるだろうと思います。また、「国情」はいろいろの見方ができると思いますが、やっぱり限度、それぞれが制限するものがあると、かように私思いますので、これはもう自由自在に伸ばせるものではない、国力、GNPがどんどん伸びるから天井がどこまでいくかわからない、こういうものでもないわけですね。これはもう私は上田君に申し上げるまでもなく、われわれ憲法の範囲内でやることですから、そういうような状態になってくればたいへんけっこうでございますけれども——けっこうというのは、外国の、他国の力をかりなくて済むということですよ、誤解されないように願いますが、そういう状態になることがいわゆる自国は自分たちの力で守る、こういうことが達成されるゆえんでもあろうと思います。しかし、現在まではできません。また、わが国の憲法から申しまして、わが国が持つ兵器、それにもやはり限度がございます。したがって、われわれが非核三原則のもとにおいてこの国の安全を確保するためには、やはり日米安保条約、その戦争抑止力、やはりそこにもたよらざるを得ない、かように思います。しかし、アメリカの力をたよるにいたしましても、みずからの力をやっぱりまず第一に考えていくのが当然のことでございます。そういう意味でやはり国力、国情に応じての整備はしていかなければならない、かように思っております。いろいろことばをとってその一部だけで全体を批判なさいますと、ただいまのような疑問が出てきますけれども、明敏なる上田君のことですから、憲法のワクがある、その中でただいまのような自衛力の整備をする、こういうことでございますから、御心配は要らないように思っております。
  109. 上田哲

    ○上田哲君 おほめにあずかって恐縮でありますが、それではもう一つ疑念を解いていただきます。  私どもの感覚では、「国防の基本方針」と自主防衛構想というものがどうしても相対立——とまでは言いませんけれども調整不可能な部分が文言上もあるだろう、こういうふうに理解していた時期があります。そうして、そのために自主防衛構想をとるためには「国防の基本方針」が文言上変えられるであろうというふうに思っていたわけですが、いま総理のお話を承ると、「国防の基本方針」はもう変えないで、そうして自主防衛という方向でいくんだ、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  110. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおり、ということは、「わが国をめぐる国際情勢に変化がない限り」ということばが、先ほども一言触れましたが、やはりそういうものが問題であろうと思います。これはやはりわれわれが平和を心から望み、しかもわが国の安全を確保したいと、こういう観点に立った場合に、そのことを考えないで、かってな考え方はできない、かように思いますから、ここも先ほど申したとおりでございます。
  111. 上田哲

    ○上田哲君 「国防の基本方針」は当分変更ないということでありますね。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 「国防の基本方針」は、わが国の憲法によって変わらない、その憲法のもとでわれわれは「国防の基本方針」を立てておる、それには変わりはございません。
  113. 上田哲

    ○上田哲君 もう一ぺん恐れ入りますが確認をいたしますが、「国防の基本方針」というのは例のはっきりした文章ででき上がっておる「国防の基本方針」、これが四次防の策定以前あるいは防衛白書と伴って若干の変更があるならばその時期ではないかと見られていたことがありました。そういうことはもはやない、四次防に向かって、新防衛力整備計画に向かって「国防の基本方針」の改定はしないということでありますね。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 「国防の基本方針」につきましては、目下政府において慎重に検討中です。それで、去年私国会でも申し上げましたが、次の新防衛力整備計画を正式に決定する前後に、もし必要あれば改定したい、そういうことを申し述べました。私個人の意見でありまして、まだ政府としてきまったわけでもなし、また、国防会議でもそういう話をしたわけではございませんけれども、私は改定したほうがいいと思っておるんです、個人の意見ですけれども。と申しますのは、いまの国防基本方針ができましたのは昭和三十二年で、まだ米軍が大部隊ここに存在して情勢も著しくいまとは変わっていた時代であります。そうしてその後、昨年は安全保障条約の自動継続という大きな変化があり、またことしにかけては米軍の相当な部隊が移動するという事実もあり、また国際環境も若干変化しており、さらに次の新防衛力整備計画をつくろうとしているときで、外国筋からも軍国主義云々という話もありますし、またこの際こういう防衛力整備計画をやることについて国民のコンセンサスをつくる方向にやはりもう一歩進んだほうが私いいと思うんです。決して軍国主義になるんではない、こういう原則でやるんだということを宣明する必要はあるんではないか、新防衛力整備計画を運用するについてのやはり新しい配慮が必要ではないか、そう私は考えるわけです。いまの国防の基本方針を読んでみましても、たとえば憲法を守ってやるとか、文民統制を行なうということばは書いてないんです。おそらくあのころはそういう意識があったにせよ、書く必要がなかったのかもしれません。しかし、やはりこの段階になると次の防衛力整備計画は国際的にも影響を持ちますから、総理がさっきおっしゃいましたように、日本の国防は憲法を守って、文民統制のもとに行なうと、こういうことをやっぱりはっきり書いたほうがいいんじゃないか。あるいは自主防衛の問題にしても、いまの文章を読んでみると、外敵の侵入に対しては日米安全保障体制を基調として対処すると、そう書いてある。何か日米安全保障条約に全部おぶさってしまうというような印象を与えておる。日米安全保障条約は日米安全保障条約で、日本の防衛とそれから極東の平和及び安全維持に寄与する二つの大きな機能があるわけです。日本の防衛にはやはりできるだけ日本の努力でやっていくという部面が私はほしいと思うんであります、米軍もこういうふうに撤退していく情勢でもありますし。しかしやはりそういうものは日本の自主的な努力で、平和的な意図のもとに行なわれるということを国民にもよく理解してもらい、国際的にもよく理解してもらうという、そういう措置をこの新防衛力整備計画の前後にかけて行なうことが適当ではないかと、私は防衛担当者としてそう感じているわけです。そういう意味で慎重に検討しておるのでありまして、私といたしましては、これは関係各省その他で必要ありと認めてもらって、そういう方向でひとつ、ぜひ認めてもらって改定したいと念願しておるわけであります。正直に申し上げます。
  115. 上田哲

    ○上田哲君 国防の基本方針が改定されるのであるならば、それは新防衛力整備計画が策定される、決定される少なくとも前でなければ、これは国民に対して不誠実であります。また防衛庁防衛庁原案を策定するについて、その改定案をはっきり政府部内で意思統一をするのが筋だと私は思います。そういう意味で、今日国防の基本方針の改定ということが具体的な日程にのぼっていないということになれば、もはや改定の時期を失したのではないかという考えを持ちますが、長官いかがですか。
  116. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事務当局でいまいろいろそういう検討している最中で、あきらめたわけじゃございません。われわれのほうとしては、いま国会のほうが非常に忙しいですから、そういういろいろな会議を持ったり、やるひまがないわけであります。しかし、新防衛力整備計画が正式に決定される前後に、私はそういう意味の改定が行なわれることが望ましいのではないかと、前後でいいと私は思います。
  117. 上田哲

    ○上田哲君 新防衛力整備計画のあとでも改定はあり得るという考えですか。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやはり国民世論あるいは国会皆さん方の御意見、あらゆる方面を勘案してきめることですから、必ずしも前とこだわる必要もないわけです。まあ前後というぐらいの表現でできたらいいのではないか、そう思っておるわけです。
  119. 上田哲

    ○上田哲君 総理、国防の基本方針は憲法と同じぐらい大事だと、さっき言われたわけでありますが、防衛庁長官が個人的な見解で強い改定の意図を持っておられるようですが、総理はいかがですか。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだはっきり私中曽根君と相談したわけでもございませんが、しかし中曽根君が先ほどここで答えている限りにおいては、私の主張とあまり違わないようです。もっとはっきり書いたらどうかと、憲法また自主、そういうようなものももっとはっきり書いたらどうですかと、こういうようなことですし、これは私先ほど来お答えしたとおりであります。  まず私いま非常に問題なのは、おそらくそれが御心配だろうと思いますが、自主防衛と申しましても、わが国は一体どのくらい予算を向け得るか、さき得るか、そういうことが一つの問題、具体的な問題だろうと思います。基本的な方針は先ほど来言っておるような自主防衛、みずからの力でやると、かように申しておりますし、その方向でいままでの不足分を補っていこうと、こういうのでございます。しかし専守防衛が変わっていくわけじゃございませんから、そういう意味では納得いくんじゃないだろうか、かように思っております。ただ、いままでの表現では少し足らないようだから、これ直していきたい、こういうことですから、どうも聞く限りにおいて、あまり変えるといって特に銘打たなきゃならないのか、あまり変えなくてもよさそうじゃないのか、誤解をかえって受けるんじゃないかなというような程度にも感じますし、まだもう少しよく相談してみる必要があるように思っております。
  121. 上田哲

    ○上田哲君 非常に重要な問題でありますから、新防衛力整備計画の政府案が決定する前に一応の方向を出されますか。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、こういう発言をしたあとでございますから、大事なことで、国民の皆さんとしてもいろいろ御心配だろうと、これで日本が軍国主義化の方向へいくんだと、こういう心配がいまあるのですから、しかし先ほどの中曽根長官の話では軍国主義にいかないと、それをはっきりさす、国民にもわかるようにはっきり書くことだと、これを言っておりますので、そういうことは大事なことですし、だから、したがって第四次防衛計画を立てる際、その前にやっぱり必要があれば修正すべきものだと、あるいは補足すべきものだと、かように私も考えます。
  123. 上田哲

    ○上田哲君 かなりはっきりした見解が出たことは歓迎いたします。ひとつ混乱のないようになるべく早く結論、方向を示していただいて国民の中に議論を起こしていただきたい。  そこで防衛白書の長官談話に「日本固有の防衛体系の確立」ということばがあります。総理も自主防衛ということを非常に強調されたわけですが、日本固有の防衛体系の確立とは何ですか。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはしばしば申し上げましたように、日本は独特の憲法を持っております。こういう憲法を持っている国は世界にございません。したがって、こういう憲法下における防衛はやはり日本独特の防衛体系であるだろうと思うんです。それで国の安全感というものと、それから国民生活の調和、それから外国に対して脅威、誤解を与えない、そういう諸元をどういうふうに調和してやっていくかということは、アメリカにもなければ、ソ連にもなければ、中共にもない、イギリスにもない、ほかの国にもない、日本独特のやり方であるべきなんです。そういう諸点を一つの日本の防衛体系として持って、そして憲法下にこういう形の防衛で行なうのだということを国民の皆さま方に明らかにし、また国際的にも明らかにするということは経済大国になりつつある日本にとって非常に重要な要素になっていると思うんです。したがいまして、いわゆる憲法上の諸制約、それからいま佐藤内閣がとっている非核三原則以下の政治的諸原則、それから日米安保体制下における日本側の機能、こういうものを調和させて日本だけに存在しているような防衛戦略体系をつくっていきたい。そう思って私も勉強しておりますし、主として防衛研修所におきましてもいろいろ研究さしておるところです。まだそういうまとまったものはございませんけれども、そういう意図をもって勉強しているということを申し上げたいのでございます。
  125. 上田哲

    ○上田哲君 固有の防衛体系というんですから、やはり戦略体系なり兵器体系なり、その基礎の考え方をもう一歩踏み込んで説明していただきたいと思います。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たとえばヨーロッパの場合と日本の場合を考えてみますと、ヨーロッパではもう同盟関係でぴしっと両側の陣営が対峙しているわけです。ワルシャワ条約体系とNATO体系というもが。NATO体系においては連合総司令部をつくって、そうして戦術核兵器までもが演習の想定に入っている、ワルシャワ条約体系も同様です。なぜなれば陸地で接しているから、入ってくれば直ちに侵略されるという危険性がございます。ドイツのような場合を見ますと、五十キロ入ってこられるというと、人口の約三〇%、工業生産力の二五%が占領されてしまう。わずか国境から五十キロ以内で。そういうところですから、やはりドイツはドイツなりの戦術核というものまで考えた防衛体系を持っております。しかし、その場合でもアメリカは非常に慎重ですから、核のかぎは大統領が握って離さない。その中でドイツは非常に苦労しながらドイツの防衛を考えておるわけです。しかし、日本の場合は幸いにこれだけの海が回りにございます。この海というものは日本にとっては非常に大きな恩恵であって、日本を占領しようという場合には、空挺隊でくるとかあるいは船団を組んでくるということの以外にはできない。時間的余裕がかなりあります、日本の場合には。したがいまして、何もドイツやヨーロッパのまねをする必要はない。われわれはそういう意味で日本列島の守備隊としての防衛というものを考えればよろしい。そうなりますと、日本国内における機動力、集中力というようなものが非常に重要になってくるわけであり、かつまた日本の周辺においてその防衛を全うするという考えだけでも十分でもあり、また、それに必要なものだけ整えればいいという考えが成立するわけであります。そういうような考えに立って陸海空を整備しつつ、かつまた運用方針もいろいろなオペレーションやORやゲームをやりまして、検討を重ねていきながら、そういう体系をつくっていく、こういう考え方であります。
  127. 上田哲

    ○上田哲君 まだ非常に抽象的であって、日本固有の防衛体系ということは具体的にはできていない、こういうことですか。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 未熟にしてまだできておらぬのです。ですから、防衛白書にもそういうものが必要であって、皆さんの協力をもってこういうものをつくり上げていきたい、ぜひ教えてください、そう書いてあるわけであります。
  129. 上田哲

    ○上田哲君 必要かどうかという議論はまた根本的にあるわけですが、その自主防衛という問題ですが、自主防衛ということばが日米間にしっくり同じ理解になっているのかどうか、ここにやはり問題が一つあるように思います。自主防衛ということばの英訳は有権的なもので二つあるようですが。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカ側は、私が接した限りにおきましては、日本の国情をよく知っております。それから憲法下にある日本の政治あるいは国民の世論の動向、それから日本人の心理分析、政党勢力の分野等も非常によく知っております。したがいまして、アメリカが過去におかしたような自分のドクトリンを押しつけるというようなことはありません。私はアメリカに行ったときにそういう圧力がましいことを印象づけられたことは一回もありません。むしろ最近のアメリカは、やはりその国その国の固有の事情を尊重し合いながら、そうしてセルフエードと申しますか、そういう形でやっていってもらって、そうして足りない部分だけは、アメリカは主として海空軍で同盟や保障条約を結んでいる国には応援もいたしましょう、そういう形に変わって、むしろ兵力を引きたいという考えに立っておるのです。こういう考え方はわが佐藤内閣の考え方と一致しているわけです。大蔵大臣も申されましたように、やはり日本列島は日本人が守るべきで、外国の基地は不必要なものは整理統合すべきである、こうおっしゃっている、われわれもそういう考えに立脚しているわけです。完全に一致していると思うのです。そういう考えに立って日米安保協議委員会も開かれ、安全保障条約も運用されつつあるので、私はこういう関係は非常にいい関係であり、今後とも円滑にやっていくべきであると思います。
  131. 上田哲

    ○上田哲君 英訳を教えてもらいたい、自主防衛の。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはいろいろなことばがありまして、セルフディフェンスだとか、オートノマスディフェンスだとか、各人各人がいろいろなことを言っておりますけれども、ほんとうのいい訳はないようです。私は一番いい訳と申しますか、近い訳はやはりナショナルディフェンスというのが一番いいことばじゃないかと思います。それは国防ですが。大体セルフディフェンスなんというのは妙なことばですよ、これは。世界の辞書にもありませんし、どこにもないことばであります。そういう変態的なことばが生まれるように、日本の何といいますか、防衛に関するコンセンサスがなかったのでありますね。だからこれをつくり上げていくということが政治としての大きな責任なんで、外人にセルフディフェンスと言っても何のことかよくわからぬと思いますよ。自衛隊の人のことをセルフディフェンスフォーシズと言っても向こうの人たちは何のことかよくわからぬだろうと思う。日本人にはよくわかっておる。しかしそれは日本人の独得の国情からきていることばであると思うのです。だから国際的に通用するすなおなことばというものはナショナルディフェンスじゃないかと、私はそう思いますけれども、私は英語の力が弱いものですから、外務省にでもどうぞお聞きくださるようにお願いいたします。
  133. 上田哲

    ○上田哲君 先月出たニクソンの外交教書の中にはセルフディフェンスになっておるじゃありませんか。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外交教書の英文を私まだ読んでおりませんので、知りませんが、たぶん日本の自衛隊に敬意を表したのだろうと思います。
  135. 上田哲

    ○上田哲君 長官はセルフディフェンスというのはわかっていないことばだと言われていたが、ニクソンの外交教書にわかっていないことばが使われているのですか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 言語学的な意味をお聞きになりましたから、私は正確にはよくわからぬ、国際的に通用するか疑問だ、しかし日本においてはそういう訳で自衛隊というものを表現して実行しておる。そういう意味なので、日本がそういうことを言っておるからアメリカもそれに敬意を表してそういうことばを使ったのだろうと私は思います。
  137. 上田哲

    ○上田哲君 ことばのことを言うつもりはありませんが、長官が残念だと言われるほうのことばを使った外交教書の中で、「日本は実質的にはあらゆる通常戦力をみずからの力で整備することができるような自主防衛努力」というのですか、セルフディフェンスの「努力の改善策を公表している」と書いてあるわけです。この辺がやはりどうも理解がことばの上でもいっているかいないか、不安を持つのですが、これは何をさすのでしょう。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはわれわれが目下国民の協力を得て努力しておりますいわゆる自主防衛という点を彼らが認めて、そういう印象を持って表現したのだろうと思います。
  139. 上田哲

    ○上田哲君 中曽根長官が去年の九月、レアード国防長官とお会いになったときに、レアードさんは、日本防衛のためあらゆるタイプの兵器を使う、こういうことを約束された。あらゆる兵器とは何ですか。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカが持っておるあらゆる兵器であると思います。したがって私は核兵器も含むと思っております。
  141. 上田哲

    ○上田哲君 核兵器をアメリカが日本の防衛のために使うということはどういうことになりますか。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もし万一相手が使って日本が危殆に瀕するといる場合には、アメリカは安全保障上の義務を履行する、その場合には核兵器も辞さない、そういう決意が明らかにされていて初めて戦争の抑止力が生まれる。戦争抑止力を生むためにも言っておるのではないかと私は思います。
  143. 上田哲

    ○上田哲君 非核三原則を言われる総理に伺いますが、日本を守るためということでアメリカが核を使う、こういうことはどうなんでしょうか。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっとわかりにくかったのですが、アメリカが日本を防衛するために核を使う、こういうことがあるかという……。
  145. 上田哲

    ○上田哲君 言明しておるわけでしょう、それを。あるということは長官も言われたわけであります。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは防衛のために必要な手段として日本を守る責任というか義務というか、それがアメリカに課せられておりますから、日米安保条約の義務は忠実に果たす、その中にはただいま言われるようなことも含んでおると、かように考えます。しかし日本は、みずからはつくらず持たず、持ち込みも許さない、かような状態をはっきりいたしてございますから、他の場所から日本防衛の核兵器を使うこと、これがアメリカにあるのじゃないかと思います。だから私どもの関知するところじゃございません。
  147. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカが日本防衛のために核を使うという状態まで予想されることになると、その通常兵器に優先する核戦略のもとで、自衛隊の指揮管理権はどうなりますか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いかなる場合におきましても、日本の防衛に関しては日本国総理大臣が最高指揮権者で、われわれが彼らの系列には入らない。米国側は米国側の指揮系列があり、日本側は日本側の指揮系列があって、その間を協力し合って行なうと、こういう体系であります。
  149. 上田哲

    ○上田哲君 念のために先般のヘイトフルネスを例にとって伺いたいんですが、あのときはアメリカ側ではどういうような連絡通信体系があるんですか。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何の場合ですか、ちょっと聞こえなかった。
  151. 上田哲

    ○上田哲君 誤報がありましたね。
  152. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの場合は、アメリカのほうはNORADを中心に民間に知らせる部分もありましょうし、それから軍隊に知らせる部分もあると思うんです。その民間に知らせる部分のほうが間違って十州ばかりにそれが伝達されたと、そこでああいう騒ぎが起きたということだと思うんです。あれはあれでアメリカのことで、われわれがあの報道を聞いた直後、ここにおる米軍に調べてみましたところ、米軍のほうは何ら反応もなければ動きもない、そういうことでありました。沖縄も同様であるということでありました。米国側は米国側でそういう軍の体系と民防衛の体系と、そういうふうに統括して民防衛局というのがございますから、軍と連絡してやっているのだろうと思います。それはそれで米国のことです。日本側は日本で情勢を判断をして、閣議やあるいは国防会議やそのほかの所定の法的機関のもとに日本独自の判断でやるべきものであると、対処すべきものであると思います。
  153. 上田哲

    ○上田哲君 日本の頭の上で、アメリカが日本を守るために核が爆発しているときに、日本の自衛隊にはどういう連絡があるかと言うんです。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはどういう場合でありますか。一体それはどことどこの国が戦争してどういう状態であるかという具体的なことでないと、われわれの判断はつきません。抽象的に言われても、ともかくわれわれのほうは憲法のもとにいままで申し上げたような国土防衛に徹すると、そして平和と自由を守ると、そういう考えに立ってすべて処理すべきものであると思うわけであります。
  155. 上田哲

    ○上田哲君 あなたはレアード国防長官にお会いになって、日本防衛のためにはあらゆるタイプの兵器を使うというように話をされたような場合にです。
  156. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本に侵略行為があって、そして日米安保条約が発動されて、米国が日本側とも相談をして、もし万一核でも使わなきゃならぬと、そういう不幸な事態は私ないと思います。ないと思いますけれども、そういう可能性と保障は安保条約の中に入っているわけですから、そういう点を確認しておくということは、戦争を予防するために、抑止力を厳存させておくために非常に大事であると、そう考えてそのことを私はレアードさんと話し、レアードさんがそういう回答をしたのであります。これが現実化するということは私はないと思っております。
  157. 上田哲

    ○上田哲君 戦略体系、通信体系のことを聞いているのですから、全然ないことならば、話をする必要もないと言うべきです。だから、そういう場合が万一あった場合には、自衛隊にはどういう連絡体系があるのかということを聞いている。ないんですか。
  158. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは安全保障条約を発動して、その場合には日米安保協議委員会もございますし、それからその下部機構の基地関係あるいは次官レベルのいろいろな会議もございます。またわれわれのほうの制服は日本におるおのおのの米軍とも連絡を持っております。それでやはり最高首脳部の内閣のレベルにおいて、アメリカとそういうものは話をし、連絡をして、その打ち合わせのもとに、すべてが安保条約が適用されていくと思います。その窓口は外務大臣でございましょう。そういう通信連絡体系については、もちろんそれはいろんなチャネルを通じて持っておりますけれども政治判断というものは総理大臣や外務大臣が主力になってやるべきものでありましょう。そのように思います。
  159. 上田哲

    ○上田哲君 政治判断を聞いているんじゃないんです。チャネルを聞いているんです。
  160. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカのBMEWSを中心にするレーダー網あるいは偵察衛星などで、お話のような事態をキャッチいたしますと、米国のNORAD——先ほどお話にありました北米防空軍司令部でありますが、そこにあります戦闘作——戦司令所lCOCでありますが、そこにまず伝えられまして、そこから国防省、大統領あるいは戦略空軍司令部に伝えられます。そうしておそらく国防省の統合参謀本部から、これはホットラインでまっすぐ府中の米軍の司令部に参ろうかと思います。それから府中から同地にいる日本側の代表者に伝えられる。そうしてこれは警報であります。どういうアクションをとるかということは、太平洋地域の場合には、ハワイにある太平洋軍司令官からやはり在日米軍司令官に伝達される。それがわれわれのほうに連絡を受ける。それで、その後にどういうアクションをとるかということは、防衛庁長官総理大臣の決するところであろうと思います。これは法令その他の手続によって行なわれるだろうと思います。
  161. 上田哲

    ○上田哲君 長官政治判断をつけるのに十五分しかありません。
  162. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どういう意味の御質問でありますか、もう一度。
  163. 上田哲

    ○上田哲君 飛んでくるのに、十五分しかないでしょう。
  164. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その連絡時間ですか。
  165. 上田哲

    ○上田哲君 いや、飛んでくるでしょう。それですよ。
  166. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは何が飛んでくるのですか。
  167. 上田哲

    ○上田哲君 ミサイルです。
  168. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ミサイルですか。そういうことはないと思いますので、あまりそういうことを話をすると、国民の皆さんが心配しますから、あまり刺激しないほうがいいと思うのです。どうぞこの辺でごかんべん願います。
  169. 上田哲

    ○上田哲君 刺激しないようにしますから。それじゃ十五分間で政治判断はできるわけですね。
  170. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そう事態はこつ然と旧して起こるのではないので、おそらく二年とか三年とか、いろんな問題がだんだんだんだん成熟発展してきて、そういう不幸な事態にだんだんいくのでありまして、そういう期間においてはもちろん随時協議もあり、いろんな協議もあるわけです。そうして、おのおのが戦争を起こさないように、いろいろ対応措置を講じていくべきものであるだろうと思うのです。だから、ある朝突然目がさめたら、十五分間に飛んできたというような性格のものではない。核というようなこういう人類的刺激をもたらす兵器について、世界じゅう、どの国も、そう無責任なことをする段階ではいまや地球はなくなっている。世界じゅうの政治家がこの問題の処理には心を痛めておる。それは自由世界であろうと共産圏であろうと同じであると私は思うのです。ですから、そういう二年、三年そのほかを経た煮詰まりの期間というのもあるのであって、その間に外交その他を通じてあらゆる努力がなされ、また防衛の問題についてもいろいろな努力がなされ、そのあげくのはてに、ついに究極の場合に、そういうことが万一にもあるいはないとは言えないという程度のものなのでありまして、そういう段階的な想定をすれば、十五分で突然というようなことはあり得ないと私は思うわけです。
  171. 上田哲

    ○上田哲君 そんなことはあたりまえですよ。あなたがいま最後に言われたように、その万一のことのために防衛力があるんでしょう。だから、そのシステムを聞いているんだ。
  172. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのときは、おそらく臨時閣議が招集されましたり、あるいはおそらく防衛出動とか、待機とか、そういうものがおそらく下令されるでしょう。おそらくその前にも下令されているかもしれません。いまのようにものが熟してきて、そういう段階に至るということでありましょうから、そのときはやっぱりわれわれは、われわれの死を決して国を守る覚悟をしなきゃならぬと、そう思います。
  173. 上田哲

    ○上田哲君 死を決したって、十五分じゃどうしようもないんです。そういう体系じゃない、いまの戦略体系は。私の言いたいのは、あなたが全体として言われているところの判断は、たぶんそうだと思うのですよ。問題は、なぜそういうことをレアード国防長官に言ってこなかったのか。核を使う場合もけっこうでありますというようなことでは困るじゃないですか。ある朝目がさめたら、そういうことになるのだということはないんだ。そういうことをしっかり言ってきてくれることが大事であり、国会でそういう報告をしてくれることが大事だと思うのです。
  174. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま世界は平和な状態に大体あるのでありまして、日本に対する侵略の危険性というものは顕在的にはないわけです。そういうときに、そういうクライマックスの悲劇的な話をすること自体が、私は適当でないと思うのです。国民は平和を欲して、そして日本のために一生懸命働いてくれているのでありますから、何も不必要な刺激を与える必要はない。むしろそういうことをすることは私は不見識じゃないか、政治家としてそう思います。
  175. 上田哲

    ○上田哲君 その不見識なことを、アメリカと日本の防衛庁長官が二人で、どういう情勢判断でなさったのですか。
  176. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約の責任について話し合うことは当然であり、アメリカがアメリカの責任を果たすということは、これも当然のことであり、日本も日本の条約上の義務を果たすことも当然である。それが国際信義というものでしょう。だから一般的、抽象的にそういう友好関係を確認するということは政治家として行なうべきことでありますけれども、その局面の場合のいろいろな具体的な手続や何かはまだ話すべき段階ではないと私は政治判断しておるのであります。
  177. 上田哲

    ○上田哲君 一つだけ伺います。この間の誤報の場合は、そういう体系がアメリカにはあったようでありますが、日本は、もちろん万一の場合ですが、その場合の民間周知体制というのですか、マスコミとの関係はどうなっていますか。
  178. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁設置法や自衛隊法には、そういう場合は、切迫した場合の知事さんとの協力とか、あるいは運輸業者、通信業者に対する協力とか、そういう要請の条文ができております。しかし、そういう時期がまだ切迫もしていないときに、そういう体系をつくったり、そういうシステムをつくることは、先ほど申し上げましたように、不必要な摩擦を国民に与える危険性もある。そういう意味で、そういう防衛庁設置法、自衛隊法にかかる条文の施行細則あるいは施行法律というものは、ほんとういえば要るわけです。要るわけだけれども、しかし、まだその事態ではないから、そういうものをつくる必要はないと、そう言って私たちは押えておるわけであります。
  179. 上田哲

    ○上田哲君 ないわけですね。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ありません。  当面非常に重要なのは、災害の場合の警察や消防や、あるいは知事さんや、あるいは防衛庁の連絡体系であると思います。これは総理府のほうでいろいろ統制をして、いま中央防災会議におきましてその案をつくっておられるところであります。
  181. 上田哲

    ○上田哲君 伺いたいのは、万一の場合などいろいろ出してみたのもそのことなんですが、あらゆる場合を想定して、いまや自主防衛を唱える日本の自衛隊は主体性を持ち、指揮権、管理権というものは全く侵されることはない、そういう自衛力というのですか、防衛力というのですか、軍事力を持っている、こういうことですね。
  182. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりであります。
  183. 上田哲

    ○上田哲君 防衛白書で裁判所に合憲性を求めたいという趣旨の表現がありますが、その真意は何ですか。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは自衛隊は合憲であると、そのように確信しております。また砂川判決におきましても、国の自衛権を認めておりますし、また自衛権を保障するに必要な措置まで認めております。しかし、野党の中には違憲訴訟を出しておる政党もありますし、また長沼裁判その他の問題も現在起こっております。われわれはそのように自衛隊を合憲であると確信してやっておりますけれども、そういう混乱もあるので、一部にはありますから、裁判所がいままでこういうふうにいろいろ問題を係属し処理してきているこの段階において、最高裁判所において、砂川判決まで、あすこまできているのだから、もう一歩進んで判決を下されたほうが国の調和のためにいいのではないか、私はそのように考えまして、そういうことを書いたわけであります。
  185. 上田哲

    ○上田哲君 これは私はたいへん重大なことだと思うのです。いま砂川判決ということを言われましたが、砂川判決が自衛隊の合憲性を認めたものでないということは、六七年三月三十日の参議院予算委員会で当時の増田防衛庁長官が認められ、総理も統一見解を出されております。いわゆる伊達判決を差し戻した最高裁の判決の中ではこういうことを言っているじゃありませんか。したがって、同条二項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として、同条項がその保持を禁止した戦力とはわが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力を言うのであると、私はさっき確認をしたところですが、わが国の自衛隊は主体性を持って指揮権、管理権を持っておる軍事力である、これをお認めになった。いわゆる伊達判決を破棄した最高裁の判決は、まさにそのことばどおり、・同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となって、これに指揮権、管理権を行使し得る戦力を言うんだ、これを持っちゃいかぬと書いてある。最高裁の判例に対してそれは違反するじゃありませんか。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは安保条約下日本にきている米軍の戦力とか、あるいは米軍一般の戦力についてそういう定義を考えたんだろうと思います。日本の自衛隊が持っている防衛力は、それとは関係のないものであります。裁判所の判決についてはどうぞ法制局長官にお聞きを願いたいと思います。
  187. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 砂川判決と伊達判決がいま問題になっておりますが、伊達判決も実は砂川判決の最高裁の判断をそのまま受けているものであると思います。いま御指摘の憲法九条二項による戦力が問題になるのは、わが国がこれについて管理権、指揮権を持っておるものについて問題になるんだ、したがってその管理権、指揮権をわが国が持っていないものについては、憲法九条二項が別段直接に問題にはならない。つまり、アメリカの駐留部隊については、言いかえれば、さらに安保条約については憲法九条二項の問題は直接には出てまいらないという意味で、砂川判決も伊達判決も同じであろうと思います。しかし、あなたが御指摘のように、わが国が持つ戦力については、憲法九条二項が問題にしているんだということをそのままおとりになって、つまり、自衛隊は違憲であるというふうな論旨を、もしもその中からおとりになるとすれば、それは論理として不十分だと思います。もしさらにこまかい御質疑があればお答えを申し上げます。
  188. 上田哲

    ○上田哲君 私は不十分だと思うのは政府のほうでありまして、むしろ防衛白書にこういうこの部分をどういうわけか抜いて、たいへん合憲解釈というものが前に出ておるようなところだけを抜き出しておられる。私はそのほうがふしぎだと思うんです、これはどういうわけでしょうか、長官
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは防衛白書を出すに際しての長官談の中にそういうことを書いておいたわけです。あの砂川判決等を読んでみますと、われわれの解釈では、自衛隊は合憲であると言いたそうなというふうにみられております、あなた方の解釈では別かもしれません。何しろ自衛権は認めております。それから自衛権を保障するに必要な措置も必要であるというところまで認めておる。しかし、自衛権を保障するに必要な措置が、自衛隊であるかどうかという点については触れていないわけです。そういう状態で小西三曹の事件もあり、長沼裁判もあってきておる段階ですから、私は、国民も注視しているわけですから、そういう問題について最高司法当局の考えが出ることが、国のコンセンサスを生むのに役立つのではないか、そういう考えに立ってそれを書いたわけです。
  190. 上田哲

    ○上田哲君 たいへんその辺は食い違っているので、私は納得しませんけれども、少なくとも六七年の三月三十日なり、あるいはその翌日の三十一日に佐藤総理自身が政府の統一見解として、少なくとも最高裁判決は自衛隊の合憲、非合憲については、これを否定も肯定もしていないということを出しておられるわけです。これが変わっていないにもかかわらず、いま合憲の判断を出していると考えると、これを政府刊行物なり談話なりというところで強調されるというところは問題ではないか。
  191. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 砂川判決は中曽根長官からもお話がありましたように、わが国に自衛権があることを肯定し、そして自衛のための措置をとることもまたこれも肯定しております。ただ、憲法九条二項の戦力、先ほど御指摘になりましたように、わが国が管理権、指揮権を持つところの戦力になるかどうか、それは必ずしも結論を出しておりません。したがって、自衛隊自身が争点であったわけでもございませんので、砂川判決は自衛隊の合憲を肯定しているというのは言い過ぎかと思います。ただ、その前提にあるこの自衛権を肯定し、自衛のための措置を肯定しといっているところは、あるところまで政府の見解とひとしくなっておる、まあそういうことから言いまして、ここに新しい何かの判断を求めたいという気持ちが生ずるのも、これはまあ人の気持ちとしてあんまりおかしいとも思えない。それがあるからけしからんというふうにおっしゃることもないんではないかと、まあ率直に私はそう思います。
  192. 上田哲

    ○上田哲君 法律の専門家の法制局長官のことばの中で、言い過ぎであるということばが出ましたから、私はそこはとります。しかし、法律の専門家が人の気持ちとしてわからんじゃないかというのは出番が違うわけであります。私はやはり六十七年三月三十一日の政府見解というものは今日変わっていないということを確認さるべきだと思う。そこは佐藤総理どうですか。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これまた変わっておりません。別に変わったら何か表現をいたしますけれども、その表現がない限り変わっていないとおとりになっていいです。
  194. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、言い過ぎであったという部分をしっかりした解釈で訂正をしておいていただきたいと思います。合憲判断が出ているというやつですね。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊は自衛隊法あるいは防衛庁設置法によりまして、国会で正当に成立した法律に基づいておる国家機関であり、しかももう長い間ずっとこれが実行されてきておるものであり、政府並びに自民党はこれを合憲であると解釈していままでやってきておるものであります。あなた方のお考えはあるいは反対かもしれませんけれども、法律で正式に成立した国家機関としての権威を持っておるものでありまして、われわれはもちろんこれを合憲であると考え、これを執行しておるものであります。だから、政府が自衛隊を合憲でないなんと言ったことは一回もありませんし、私たちは、いま申し上げたような確信に基づいてやっておる。ただ、裁判行為というものは別個の領域であります。行政関係の領域、それから法律、立法関係の領域においては、多数党が少数党といろいろ話しをして、そしていろいろ法律をつくったり何かしておりますけれども、裁判行為というものは第三者機関で、その立法やあるいは行政を批判する機関であります。で、われわれは行政並びに立法の分野においては、われわれはこれは合憲であると確信して仕事を進めておるわけでありますが、裁判所の判決というものについては、憲法上裁判所独自の考えがありますから、それに従わなければならない、そういう三権分立の関係をよく認識して私たちはやっておるわけであります。
  196. 上田哲

    ○上田哲君 そこまで認識していないのですよ。あなたがどんなに合憲を確信されようとそれはいいんです。それはいいんですが、砂川判決というものが合憲を主張したものであるという解釈をとることは、政府見解を乱すものだと、だから、これは法制局長官も訂正すべきだと言っているわけですね。そうですね。
  197. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 先ほど申し上げたことと変わりませんが、砂川判決は、御承知のとおりに、自衛隊の合憲、違憲そのものを中心にした事件ではございませんでした。安保条約、ひいては安保条約に基づく駐留米軍の存在を違憲とするのが争点であったはずであります。で、そこの争点がそういうことでありますから、自衛隊が合憲であるとか、違憲であるとかいうような点には、あの判決は触れておらないわけです。これは前にもそういうことを申し上げたと思います。その点は変わっていない。これは事実でありますから、全く変わりようがありません。  しかし、重ねることになりますが、その中における憲法九条の解釈の規定——まあ人によって規定と見るかどうかはわかりませんけれども、私どもはやはり憲法九条の解釈の一つの礎石といいますか、そういうものについて触れた点があることは御承知であろうと思います。で、ただいまも中曽根長官が言われましたように、われわれは国会が制定をしました自衛隊法に基づく自衛隊の存在というものをむろん合憲であり、合法であるということはいささかも疑いを持たない。それはいままでの政府の見解しばしば出ておりますが、しかし、それはそうなんでありますが、砂川判決が自衛隊の合憲をあそこできめたかといわれれば、それはそうではないというのが、これは当然であります。ただ、繰り返して申しますが、憲法九条についての解釈の一つの基準を示したということだけは明らかなことでございます。
  198. 上田哲

    ○上田哲君 そういう見解が正しいわけですけれども、しかもなお六七年段階と七一年段階とで、少なくとも、また四次防が発足しようという、大きい自衛力が出てくると、やはりこの問題というのはなおざりにできないという感覚がこういう談話にもなったんだろうと思うんです。そこはやはり私は、裁判所の見解を曲げて解釈するとか、あるいはその主張を盛り込むとかいうようなことではなくて、つまり最高裁での結論、法廷での結論を前に求めるものではない。国民的合意のあり方というものをもっと基本的に考える努力が先行すべきであるということを言いたかったわけです。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは同感でありまして、われわれは政治家として国民的合意をさらに拡大するために、今後とも努力してまいりたいと思います。
  200. 上田哲

    ○上田哲君 自衛権をいかにもわれわれが認めてないかのごとき言い方ですが、法理論として自衛権というものを固有権としてわれわれは否定したことはありません。自衛権というのは当然なことだ。そして、いま合意の存在するところは、自衛権と九条の保持とそして中立と、あたりだろうと私たちは考えています。自衛権の確認ということがすなわち武力行使であるとか、武力保持であるとかいうことにならぬというところに争点があるわけなんです。ですから、その辺のところを強弁されることはいけないと思います。民意の存在するところ九条、自衛権中立志向、ここらあたりと私は考え、そこをねばり強く努力すべき対象だと考えますが、いかがですか。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはかねてからお聞きしている上田構想でございますが、私たちとは見解が異なるのを残念に思います。
  202. 上田哲

    ○上田哲君 いろいろな見解が食い違いますけれども、一言伺います。  二月二十四日の参議院本会議での質問に対して、佐藤総理は、非核中級国家というのは存ぜぬというお答えがありました。どういう意味でありましょうか。
  203. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 存ぜぬというとおりでございます。存ぜぬ。
  204. 上田哲

    ○上田哲君 総理は国防会議の議長であり、非核中級国家というのは、防衛白書——閣議を通っておることばの前段の中に出ていること。中曽根長官が外人クラブなどにもそれをもってつくったのが防衛白書であると言われています。閣議了解の指標の一つ総理大臣、しかも国防会議議長が存ぜぬということは、どういうことでありますか。
  205. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも知らないことはございます。
  206. 上田哲

    ○上田哲君 知らないということは理解できないんですが、知らないでいいんですか。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 知らないこともございますから、ただ正直にそのとおりを申し上げておるのであります。
  208. 上田哲

    ○上田哲君 防衛白書をお読みになったのですか。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 防衛白書は一応中曽根君が閣議で報告したと思います。その程度でございまして、一々読んでおらないということでございますから、その点は御了承いただきます。
  210. 上田哲

    ○上田哲君 それはちょっと答弁にならぬな。(「中心的なことだよ」「今後の日本の戦略構想じゃないか、重大なことだ、それを知らないとはもってのほかだ」「閣議にかかっているのだ、白書に書いてある」「閣議の最高責任者は総理だ」と呼ぶ者あり)
  211. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核中級国家ということは私は談話の中にも使ってあります。それは、核を持たない、そして日本は経済大国にはかりになっても軍事大国にはならない、したがって核を持たない、そして中級クラスの防衛力を持っている国としていく、その戦略構想をまた開発していきたい、そういう意味で、総理が国連でも演説なさいました、日本はかりに経済大国にはなっても軍事大国にはならない、新しい国家を追求していくと、そういうことを簡単なことばで述べたものであります。
  212. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 事実関係だけを申し上げます。  ただいま防衛庁長官からお話がございましたような趣意を総理大臣にお話をされ、総理大臣はちょうど国連出席のために出られまして、私が留守をあずかりました、臨時代理をいたしました。総理が御出発になったあとの閣議で防衛白書は中曽根長官から報告されて、決定をされたものでございます。
  213. 上田哲

    ○上田哲君 事実経過はわかりましたけれども、いまわれわれは新防衛力整備計画を中心にする防衛構想を議論しております。そして私は非核中級国家という概念は政府の出された中心の概念の一つだと思います。事実関係はわかりましたから、間に合わなかった分もあると思いますが、これについて十分な政府の統一見解が出なければ質問を続行できませんので、しかるべくお取り計らいをお願いいたします。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核中級国家ということばは、たしか白書の中には入れてないはずです。それで、防衛庁長官談話の中にあったので、この談話は閣議にはかかっていないのです。白書だけが閣議の了解を得ているものであります。したがいましてこれは防衛庁限りの私の構想と御理解願いたいと思います。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この防衛白書、これ、一体出すか出さないか、これは私が渡米する前に、防衛白書は出してよろしいということで、それじゃ留守中出してよろしいですかと、差しつかえないと、こういうことで出かけたのでございます。それがいまの問題になっておる防衛白書の中級国家——非核中級国家と、こういうことばでございますが、私は、中曽根君からその話を聞いていることは事実でございます。そして、防衛白書を出して差しつかえないというその許可を与えてアメリカへ行ったと、それを留任中にその点がきまったと、こういうことでございます。いまあらためて思い起こしますとそういう経過でございます。失礼いたしました。
  216. 上田哲

    ○上田哲君 中曽根長官のことしの年頭のことば、印刷されている年頭のことばの中に、閣議了解を得て発表し、この白書は非核中級国家としての防衛構想を発表したものでありますというのがありますが、この位置づけからいっても、非核中級国家というのは防衛白書の中心をなす考え方だと私たちは理解をいたします。いかがですか。——いや、総理に聞きたい。総理に聞きたいのですよ。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほども申し上げましたように、佐藤内閣は非核三原則を持っております。したがいましてそれを非核ということばで表現し、それから経済大国にはなっても軍事大国にならない、つまり大国にならない。そういう意味で中級国家、そういう表現で簡単に表明したのが真意でございます。どうぞ御了解願います。
  218. 上田哲

    ○上田哲君 いま読み上げたように、非核中級国家という概念が防衛白書の中の中心概念であるということでいいですか。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本の自衛隊、自衛力、これはいわゆる一般の軍事国家とは違いますから、軍事小国であろうとやっぱり軍事力、そういう兵制を持っている国とは違うと、日本の場合はどこまでも自衛隊、国防、これはもう専守防衛というか、それにもう固まっているんですから、その意味におきまして、なかなか説明がしにくい。これはもう特殊な憲法のもとでございますから、その範囲はどんなにしても出ない。だからこそ、私は国連の二十五周年記念総会に出かけまして、日本は経済大国になっても、軍事国にはならないと、こういうことをはっきり申し上げたのでございます。それをいまの表現が、あるいは非核中級国家と、こういうような表現ですから、必ずしもそれが非核という、核は持たないという、そこは当たっておると思います。その他の中級はどういうことかと思いますが、とにかくいま言われるような状態でございます。
  220. 上田哲

    ○上田哲君 私は中心の概念だと思うんですよ。位置づけられているわけですよ。そこのところが、国防会議議長であられる総理からもう少しきちっとした政府統一答弁をいただかないと、これから先の防衛構想議論ができないわけですよ。時間をとるなり何なりして、ひとつその辺の見解をまとめてください。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核中級国家ということばで、もし誤解があるといけませんから申し上げたいと思いますが、要するに日本は軍事国家にはならないのだと。そのことはその談話の前段でも申し述べてございます。日本はやはり憲法の命ずるところに従って平和を愛好する、そして国民の民生、文化力、そういうものを最も尊重する国家としていくと。ただし、必要最小限の防衛力だけは保持しておく。そういう意味で核を持たないということと、それから防御力にいたしましても、いわゆる攻撃的な性格のものを持たない。航空母艦とか、爆撃機とか、そういうものは持たない。そういう軍事的部面においても節制のある分野をわれわれは守っていく。そういう意味で私は用いておるのでございます。
  222. 古池信三

    委員長(古池信三君) 総理、よろしゅうございますか。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまお答えしたとおりでございます。
  224. 上田哲

    ○上田哲君 私は納得できないのは、非核中級国家という概念が防衛白書の中心概念であり、日本の防衛構想の基本になるのかと、まずそこから聞いているんです。
  225. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が申し上げた内容、つまり日本は軍事大国にならない。そしていま申し上げたような憲法の理想を追求する国である。が、しかし必要最小限の防衛力は保持する。そして国民の民生や、あるいは文化力とか、そういうものをわれわれの価値として追求していく、そういう考え方に立った防衛体系であると、こういうふうに御認識いただきたいと思います。
  226. 上田哲

    ○上田哲君 だから、防衛白書なり防衛構想の中に、どういう位置づけがあるかということを全然明らかにされないんじゃないですか。やっぱり国防会議議長からきちっと見解を明らかにしていただきたいのです。
  227. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。  問題は一つ。こういうことを私、承りたいんですが、非核中級——非核はわかります。中級という場合に、それが大級や小級じゃないわけですね、中級ですから。それは攻撃的兵器は持つが、大、中国家よりも少ないということですね、中級ということは。一般的にはそういうことです。だから先ほど来、もし言われるような、日本は核はもちろん持たないし、それから攻撃的兵器を持たないというなら、それは特殊な立場に置かれているわけです。だからそういうことをあらわす表現でなければ私はまずいと思うんです。
  228. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 羽生先生のおっしゃったような考え方です。核は持たない。核を持たない国の中では、しかし爆撃機を持っておったり、あるいは他国に攻撃性を持つ兵器を持っている国はございます、核は持たなくても。しかし日本はそういうジャンルにも入らない。攻撃性のある兵器は持たない、そういう意味で中級ということばを御理解願いたいと思います。
  229. 上田哲

    ○上田哲君 どうして答えてくれないのか、一点ですよ。それは不勉強もはなはだしいじゃないですか。一言言っておることは、中曽根さん自身が、もう一ぺん言いますけれども、閣議了解を得て非核中級国家としての防衛構想を発表したものであると書いてある。そう言っているわけですよ、ことしの一月一日の年頭のことばに。そういう形で、閣議の中はうかがい知るべくもありませんけれども、事務的には手続的にいろいろあったかもしれませんが、御不在であったかもしれないが、それを受けて、とにかくいまわれわれの前に明らかにされている政府見解じゃありませんか。そういうものをわれわれは中心にして議論するのに、一体防衛構想の中に、これが中心の位置づけになるのかならぬのか、そのことがどうして答えていただけないんですか。これは私は、それを答えられない限り——あなたじゃありませんよ、あなたは国防会議議長じゃないんだから。あなたの言ってるのは概念なんだ。
  230. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま申し上げましたような意味において防衛体系の中心概念になっている。それはいま申し上げました意味においてそうである。またその前後の文章をお読みいただけば、民生との関係とかそれから外交優先とかいろんなことが書いてあるのでおわかりいただけると思います。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも質問されないと困りますからね、進めていただきたいんですが、いま言われるように、日本はりっぱな平和憲法を持っております。これは何と表現しようが、この憲法のもとでわれわれの自衛力を整備しておるのであります。この中には非核、それはもう——(「それはわかったよ、それはわかったよ」と呼ぶ者あり)わかったという不規則発言もあるとおり、そのとおりおわかりだろうと思います。  そこで、自衛力を整備するというか、攻撃的な兵器、武器は持たない。これはもう日本の自衛力のあり方だ、自衛隊のあり方だ、かように私は思っております。その意味のものが中級という表現では、ことばが足らないように私は思っております。だから中級国家というよりも、やはり自衛力という、そういう感じで、自衛隊という感じでもっと表現されないと誤解を招きやすいんじゃないか。先ほど中曽根君からもその点に触れての発言がありました。また羽生君からの関連質問もあり、その点ではある意味で明確になってきた、かように私は感じております。この点が最も大事なことだと、かように思います。
  232. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この談話の前後をちょっと申し上げますと、「私はこの考えに立って、「非核中級国家」としての防衛構想を提唱した。」と、私が個人的に提唱したということを談話で言っているわけです。「今までの西欧的な考えによれば、経済大国は必ず軍事大国になるという既成概念があったが、われわれはこの考え方に挑戦し、軍事大国にならない経済大国、世界平和のための文化性と新しい時代の精神秩序を開拓しようとしている偉大な国民に日本人は進んで行くと訴えた。だが、「非核中級国家」としての防衛構想はまだ未熟なものであり発想の域に止っている。わが国の学者や実務家が更にこれを開拓し、教示されるよう念願する。」、こう書いてあるのであります。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 非核中級国家——非核はわかるが、中級国家ということにいろいろ誤解があるようでございます。その点では私十分理解していなかったから、本会議においての私のような答弁になりました。しかしその答弁がいかにも不親切きわまる、こういうことでおしかりを受けておるようですが、この点はお許しを得たいとして、それじゃ中級国家としていまスタートしようとする四次防、これは一体どういうことになるのか、この点は四次防ができ上がりましても、どのくらいの規模ででき上がるか、これはまあこれからの問題ですが、中級国家というような表現だと性格が何か変わるように思えますから、そういう点は性格が変わるものではないということ、これだけははっきり政府として言えることでございます。この四次防がどういうように進みましても、いままでの自衛体制、これは変わらない。いわゆる自衛力整備の考え方でございますから、いわゆる中級国家という、非核中級国家というところで何か性格が変わるように思いますが、さような表現は不適当だと、私かように考えますので、中曽根君からもそれらの点については重ねて説明があるだろうと思います。
  234. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、総理は、結論的には、この非核中級国家という概念を防衛白書、四次防を通じての防衛構想の基本としてとられるのですか、とられないのですか。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どのくらいの規模になりますか、これからいろいろ折衝してみるということでございます。それが中級国家というような形になるのかどうか、その性格でございますから、私は申し上げますが、この防衛力を整備いたしましても、それは整備であって、国力、国情に応じてという、しばしば申し上げるような表現、しかも憲法のもとにおける表現でございますから、中級国家もやっぱりその表現下において適当な表現であるならば差しつかえない。この中級国家ということで性格が変わるような印象が一部残るというようなことがあってはならないと、かように思っております。
  236. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官は未熟な概念だと言われたし、未熟であってもそれはそれでいい、それを目ざしていくということばとして指標を立てられることはあり得るということだと思います。ただ個人的考えだと言われた。私は、概念の説明を聞いているのではなくて、今後ともわれわれが四次防を考えていき、防衛構想を考えていくときに、政府の見解として、政府の用語として、非核中級国家ということばを今後お使いになるのかならないのか、どちらかをしっかりしていただきたいのです。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府としては使わないと御了承いただきます。
  238. 上田哲

    ○上田哲君 いろんな考え方をいろいろ出されることは私は議論のためにけっこうだと思うのですが、こういうテーマが出ましたから、幾つかの問題一緒に出しておきます。  もう一つは、同じときでありますけれども衆議院予算委員会防衛庁長官が——これも個人的にという前ぶれはありましたけれども、十年後の防衛力の姿というものを数字で出されました。参議院の本会議質問に対して、総理は、これは個人的な見解だからということで濁されております。どうも防衛庁長官総理の間にそういう形で意思の疎通が欠けているなり、解釈が統一をされていないということは、非常に論議をあいまいにさせます。その辺を明確にしていただきたいと思います。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 衆議院予算委員会におきましては、楢崎委員から執拗に聞かれまして、五年計画の基礎には十年ぐらいの見通しがなければならぬはずだと、そういう非常にきつい質問がありまして、国民の目の前に明らかにすべきであると、非常に責め立てられました。私は、そういうものは防衛庁にはまだ正式にはないわけです。しかし自分の頭に置いている、大体の目算だけでもいいというような話も前にありましたから、それでは申し上げましょうと言って、大体自分が考えている見当を申し上げて、そう膨大なものでないということを議会を通じて国民にお示ししたい、そういう意味で出したのでありまして、そのときお断りいたしましたけれども、それは政府に何らオーソライズされたものでもありません、私の頭にある印象的な発言としておとりください、そうちゃんと断って申し上げてあるのであります。したがいまして、総理大臣にもそのことを申し上げたこともなければ、事前に打ち合わせてやったこともないということで、御了承願いたいと思うのであります。
  240. 上田哲

    ○上田哲君 総理は、これをいま個人的にとおっしゃいましたけれども、責任ある防衛庁長官の将来のイメージ、これはどうお考えになりますか。
  241. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とにかく責任の地位にあるその立場から申しますと、やはり言えることと言えないことがある、かように思いますので、やはり責め立てられたという、非常に正直な発言でございましたが、私はあまり正直過ぎたのじゃないだろうか、そういうことは答えることができない筋のものだと、かように思います。
  242. 上田哲

    ○上田哲君 同様の問題を一緒に出していきます。沖縄の返還後の米軍基地の総点検問題、これについて前向きの発言があったというふうに理解をしているのでありますが、この時期、方法をどのようにお考えになっていますか。
  243. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は、沖縄返還後ということでまず申し上げてあります。それで、たとえばナイキの基地は自衛隊が引き継ぎますから、沖縄返還後、連絡員を派遣するとかあるいはその後要員を派遣する等、いろいろ技術的にも調査をしてみて、また米軍の合意の上にそういうことをやってみたい。沖縄は本土と違いまして、ともかく過去に核があったといわれておる。また毒ガスもあったことも事実でもあります。そういう特殊の地帯でありますから、われわれは、さらに沖縄の皆さん方気持ちも考えて、人一倍の周到な配慮を政治家としてする必要がある。おそらくなかなか技術的にむずかしい点もあると思うけれども、沖縄返還に際して、かつては核抜き本土並みというようなことは非常にむずかしいといわれておったのを、佐藤内閣は、しかし政治的決断でやったものです。私は、そういうことをやるのが政治家の職務であると思いまして、自分はそういうことの努力をしたいと思い、また山中総務長官あるいは外務大臣等とも相談をして、緊密な連絡をとりながら実はやってみたいと心がけておるのであります。
  244. 上田哲

    ○上田哲君 メースB、ナイキというようなことがこの前に例になりましたけれども、むずかしいことはあるだろうがと言われますが、核爆雷やサブロック、アスロック、航空機用の核爆弾あるいは毒ガス、あるいは陸軍第七新作戦部隊、海兵隊第一緊急派遣部隊等々の点検ということが含まれるべきだと思いますが……。
  245. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まず第一に、核のいわゆる点検問題ということについては、ただいま防衛庁長官が説明をいたしましたような気持ちが非常に私も大切なことであると思います。沖縄の人たちの心情を理解して最善の努力をしていきたいということは、この間も申し上げたとおりでございます。  それから、この返還問題にいまのお尋ねは関連するわけですけれども、考え方として、返還後の沖縄というのは、安保条約が本土並みに適用になるということから申しましても、提供される施設、区域というものはその目的に沿うように提供されることになるわけであります。それから、その施設、区域内での活動というものも当然そういう目的に沿うようなものでなければならない。こういう点から考えますと、たとえば純粋の第三国人をも入れての訓練学校というようなものは、これは私はそういう趣旨に沿わないのではないかと思われます。具体的に、これは先ほどの核の点検などとはもっと違った、現実の返還までの準備の交渉の中にも入る問題なのでありますけれども、そういう点につきまして、いま申しましたような趣旨に沿うような部隊の配置あるいは施設、区域の適用ということにしたい、こういう基本的な考え方で折衝、話し合いをしておるわけでございます。
  246. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官、さっき私が言った項目は入るのですか。
  247. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやってみないとわかりません。どういう部隊がどういうふうにいま展開しているか、施政権は先方にあるわけでありますから、実際問題まだわかりません。
  248. 上田哲

    ○上田哲君 やってみようということですか。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 返還後は日本の領土であり、かつ日本の憲法が通用する場所でありますから、本土並みにわれわれは実行してみたいと、そういう気持ちであります。
  250. 上田哲

    ○上田哲君 外務大臣に伺うのですが、マクマホン法との関係というのがよくわからないのです。どういうふうな関係になるのか、御説明いただきます。
  251. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) マクマホン法というのは、一口で言えば、アメリカの国内法でございますから、アメリカの国内法に日本側が拘束を受けるということは何らの意味においてございません。そこで、いつもこの問題がしばしば提起されるわけでありますけれども、一番日本側として大切なことを特に強調しておきたいと思いますが、すでにこの安保条約の締結によりまして、交換公文によって、第六条における重要な装備の変更ということが事前協議の対象になっておって、そしてその対象となる事項については、はっきり核の持ち込みということが両国政府の間で合意されております。これは、これもしばしば話題に提供されるサイミントン委員会議事録にあらわれている質疑応答でも明らかなように、これはもう明白な例として、核の持ち込みは事前協議の対象になるということが両国間において合意をされている。もし、そういったような合意がマクマホン法によってできないのだとすれば、こういう関係はあり得ないはずでございます。ですから、マクマホン法というものがございましても、アメリカがかりに核について事前協議を、まあこれは観念的な問題ですが、欲する場合においては、当然日本政府に事前協議をしてくる。そしてその結果をアメリカ政府として公表をするかしないかということは、これはまた別個の観点からアメリカ政府が自主的に考えることでございましょうが、日本政府としては、協議があって、そしてそれに対してノーということであるならば、政府は協議を受けたがノーと言いました。したがって、そういうことはございませんでしたということを、日本政府としてはっきり言うことを、何らこの法律によって拘束されるものではございません。さように御理解をいただきたいと思います。
  252. 上田哲

    ○上田哲君 核兵器の配置、使用などが大統領の専管事項なのだというふうに理解をされているというのですが、その直接条文がよくわからぬのです。どこが該当するのですか。
  253. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、こう申すとたいへん恐縮なんですが、マクマホン法の全条文を通じての正確な解説書というようなものが実は日本には見当たらないように思います。したがいまして、きわめて常識的にある部分だけをつかまえて、こういうことがあるから日本に対しては協議ができないはずだとか、かりに協議があっても、それは秘密にしなければならない大統領の専管事項だとか、きわめて常識的に理解されたり、報道されているうらみがあるように思いますが、さようなことではございませんで、そもそもこのマクマホン法というのは、技術情報としての原子力の扱い方をきわめて厳重に制限をしておるというのがこの趣旨のようでございますので、先ほど来申しておりますような、日本に対する核の持ち込み問題、この事前協議の問題、あるいはその他これに関連するところの日本との間においてマクマホン法によって不当に日本が拘束を受けたり——いや、不当にというのは取り消します。日本が拘束を受けたり、あるいは不測の心配を国民に与えるようなことをマクマホン法あるがゆえにおそれる必要は全然ございません。こう申し上げて間違いないと思います。
  254. 上田哲

    ○上田哲君 日本がマクマホン法に拘束されないということが問題ではなくて、日本がマクマホン法の中に入っていけないということが問題なのではないですか。
  255. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ちょっと正確にその御趣旨がとりかねるのでありますけれども、要するに、無関係と言えばよろしいのじゃないでしょうか。日本が入り込むとか、あるいはアメリカが日本を取り込むのですか、どう言うのでしょうか、全然、要するに、この法律体系としては全然別個の問題である。それからその内容的に申しましても、技術情報というようなものを非常に厳格な取り扱いの対象にしておる、こうこうものであると、こういうふうに御理解いただきたいと思いますが、なお条文等によって詳しい御説明御必要ならば政府委員からいたさせます。
  256. 上田哲

    ○上田哲君 基地内の核があるかないかを点検する場合に、マクマホン法がどういう関係になるのかということを御説明いただきます。
  257. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、現在は内地には——内地というか、本土にはございませんし、また沖縄は、先ほど来お話があるように、特殊の地帯、特に核の問題についてはほんとうにこれは県民の御心配を十分体して処理しなければならぬことでありますが、現在はやつ。はりアメリカの施政権下にありますから、マクマホン法の適用下にあるわけでございますね。そこで、アメリカの軍人、軍属やあるいはその他の米国の人たちも当然これに従わなければならないというところに違いがあると思います。で、しかし、返還後になりますと、日本の本土並みになります。そうして日本が日米合意によりまして必要とする施設、区域を提供いたします。その施設、区域の中には、先ほど防衛庁長官からもお話がありましたように、たとえば自衛隊が引き継いで使用するものもございましょう。その中にはナイキの拠点であったところを引き継ぐということもございましょうが、こういう場合には、もう完全に点検といいますか、完全にその状況がわかるわけでございますね。そうして、こちらが提供する施設内のこと、あるいはこれをこちらが引き継ぐものであったらなおさらのことでありますが、その状況がわかると、わかった状況を沖縄の方にお知らせをする、こういうことは私は返還後においては可能なことであると思うのです。そういう点について、まだ詳細にわたってどういうことを方法諭として考えられるかということは、十分御説明できるまでの段階に至っておりませんけれども、あらゆる可能な方法によりまして、県民の方々に御安心を願うような措置をとることに関係省庁の間で協力をしてやってまいりたいと、こういうことに考えておるわけであります。
  258. 上田哲

    ○上田哲君 つまり、返還後は米軍基地内の核があるないを調べることができるわけですね。
  259. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 米国人が扱っております核については、米人は米国の国法に従わざるを得ないと思いますが、しかし、返還後においては核がないのです。核抜き返還なんですから、その点におきましては問題はまた基本から別になってまいります。したがって、いろいろの角度から考えましても、ないものをないということを立証するぐらいまた別に言えばむずかしいことはございますまいけれども、ないということを現認して、ないということを日本側としてお話をできるということは、私は可能なことだと思いますから、そういう意味で、マクマホン法とはかかわりはございませんと、この角度からも私は言えると思います。
  260. 上田哲

    ○上田哲君 長官、いまのお話を受けてですが、先ほど私があげたそれぞれの兵器その他を点検なさる計画をお立てになりますね。
  261. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どういうものがあるかまだよくわかりませんが、いずれ接収に関するいろいろな話し合いもあるでしょうから、その辺もよく気をつけて話し合いを進めて、先方との合意の上で確認していきたいと思っております。
  262. 上田哲

    ○上田哲君 ソードフィッシュというのがありました。あの場合、放射能が問題になったんですが、結局は、われわれは中を調べることができませんでした。そのときの経緯と今回との関連を説明していただきたいと思います。
  263. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまちょっと聞こえなかったんですが、ソードフィッシュですか。
  264. 上田哲

    ○上田哲君 ええ。放射能の、第一次冷却水ですね、あのとき、中を問題にしたでしょう。
  265. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖縄の那覇港かどっかですか。
  266. 上田哲

    ○上田哲君 いえいえ、だいぶ前です、佐世保です。
  267. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の話ですか。
  268. 上田哲

    ○上田哲君 ええ、そうです、沖縄の話じゃなくて。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの原潜が入ってきて、そのときに放射能が異常に高くなったと。
  270. 上田哲

    ○上田哲君 そうです。第一次冷却水が出たと、その中へ調べに入りたかったんだが入れてくれなかったですね。そのときの経過がよくわからぬ。
  271. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのお話は急にいまその話を受けまして、御答弁の用意がございませんが、もし科学技術庁で関係者がいましたら、あれはたしか科学技術庁で放射能の点検をやっておりましたから、お答えをいたしたいと思います。
  272. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ソードフィッシュの件については、科学技術庁が担当しておられますから、正確な答弁は後刻されると思いますけれども、ただ私、念のために申し上げておきたいのは、一般的に国際公法の原則といたまして、それぞれの国の軍艦、軍機、こういうものについては、これに立ち入検査というようなものはしないのがたてまえでございますことは御承知のとおりでございます。そういう点から申しましても、軍艦あるいは軍の施設の中に立ち入って検査をするというようなことはできないというのが、友好国間の一般的な法則であることは御承知のとおりであると思います。
  273. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) ただいまのお尋ねの件につきましては、質疑の御通告もちょうだいしておりませんでしたので、いま直ちにお答えできかねますが、後ほどまた調べまして、適当な機会にお答え申し上げます。
  274. 上田哲

    ○上田哲君 それはそうですよ、質疑の通告してませんから、それはけっこうです。  で、外務大臣のおっしゃることで私はけっこうだと思うんですよ。外国の軍艦に立ち入ることはできないってのは常識だとおっしゃるわけです。そういうことであれば、やるやるとおっしゃるけれども、実際にはこれはできぬじゃないですか。
  275. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) そこがですね、上田委員もよく御承知のとおり、何と申しましょうか、これは安保条約下だけの問題ではございませんで、友好国相互間で、たとえば軍艦が入港するということは通常あることですね、寄港する、そこへ日本の官憲が立ち入って、どういうものを搭載してるかどうかということを検査ができないということは、これはもう相互の国際公法であり、慣例であると思います。しかし、友好国の間で、そして特に、ああ見てください、ごらんください——たとえば先般の沖縄の毒ガスの移送につきましても、日本側としては沖縄の方々に安心をしていただきたいから、本土政府の派遣する専門家をその中へ入り込ませて、そして毒ガスの倉庫の中にまで入って点検をするといいますか、そういうことに立ち会わせてくれと、向こうがそれに対してオーケーと言って、そして十分よく見せてくれたと。まあこれなどは、原則としては、権利として当方が認めさせられるものではございません。事実上のしかし話し合いでは、これは可能なこともございます。そういうことも含めまして、私としては、外交的には最善の努力をしてみましょうと、防衛庁長官の発想でございますが、ごもっともですから御協力をいたしましょう、こう申しておるのでございまして、これはいま言ったような条約とか法律とかの問題を離れた、友好関係の中における話し合いや協力によって可能な分も私はあり得ると思っておるわけでございます。
  276. 上田哲

    ○上田哲君 私は非常にこれはあり得ないだろう、いままでもそういう例はちょっと考えられない、これは外務大臣言われたとおりであります。そこで、防衛庁長官の発想であると言われたけれども防衛庁長官も、この前の発想のときには相手方も雅量があるだろうと言われた、私は雅量の問題だというように提起されたと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えでしょう。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 寄港するものについては、これは一時的な、何と申しますか寄留でございますから、これはやっぱり横須賀や佐世保に入るのと同じように扱わなければいかぬだろうと思います。しかし、陸の内部にストックしてあるというようなものがかりにあるとすれば、これはちゃんと総理大臣と大統領の約束で、ないという約束をしておるわけですから、やっぱり県民に不安があるといけないから、そういう意味で、そういうものは自衛隊の引き継ぎその他の機会をとらえて相手と話し合って確認したいと、こういうことを申し上げて私きたんであります。そういう形によって両方の友好関係を維持しながらやっていくことが両国のためになるのじゃないかと思います。アメリカといたしましても、沖縄県民の協力なくしてあそこに基地を長く置いておくことはできますまい。われわれのほうも日米安全保障条約を必要としているという現状でもございますから、両方で、私は、友好的に話し合いがつく可能性なしとしないのであります。政治的、大局的判断に立ってこれはやるべきことで、事務当局にやれったってなかなかできるものではないと思います。そういう意味で私たちは政治家として努力をしてみたいと思うわけでございます。
  278. 上田哲

    ○上田哲君 たとえば、そのためにどんなことをなさいますか。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的な問題は非常に技術的な問題にもなりますから、防衛庁でも検討させます。また、各省ともいろいろ御相談を申し上げて、そういう考え方をまとめていきたいと思っています、具体的な方法につきましては。
  280. 上田哲

    ○上田哲君 いや、政治レベルとしてどうなさるかと言うんです。
  281. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治レベルといたしましては、三省会議あるいは総務長官とのいろいろ話し合いもいたしまして、この問題をどういうふうに解決していくか、まず方法論からも研究をし、また、おのおのが分担をしまして、それぞれのアメリカ当局に対して話し合いを持ちかけるということもありましょうし、また、最終的には安保協議委員会もあることですから、そういう場に持ち出すことも考えてもいい問題であるかもしれません。さまざまなあらゆる可能性について探求していきたいと思います。
  282. 上田哲

    ○上田哲君 この問題について総理は、最初、必要ないと言われて、それから努力しようと、これは意見がいろいろ変わりました。私は、非常にむずかしいからそれもそうだと思うのですけれども、どうでしょう。はなはだ私はむずかしい高度に政治レベルの問題だと思うのですが、どのようにお考えになりますか。
  283. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはどうもいろいろむずかしい点がございまして、先ほど外務大臣から詳しいことを説明しておりますけれども、法律、制度が違っておる、そういうところでなかなかむずかしい点があると思います。しかしながら、こちらに返ってくるその立場から、県民の不安を起こさないように、不安を生じないように努力するのは、これはもう政府の責任でございます。そういう意味で不安のないように、私どもはあらゆる方法を講じてみたいと、これが努力の目標でございます。それがどこまで不安を解消することができるか、これは実際にやってみなければわからないのですが、あらゆる努力をする決意でございます。
  284. 上田哲

    ○上田哲君 これは沖縄返還の前にいろいろな問題があります。こういう問題はできるかできないか、非常にむずかしい問題なので、防衛庁長官意図は壮としますけれども、そのままやりたいやりたいということでできなくなるということになれば、単なる人気取りになる。非常に重大な問題ですから、これはひとつ明確に、ここでやってみたいとおっしゃることを、後に責任を持っていただくように留保しておきます。  同じ沖縄の問題についてお尋ねをしておきますが、返還後アメリカにいる基地労働者はどれくらいの数になるでしょうか。
  285. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私のうろ覚えでありますが、たしか四万人ぐらいの基地労務者がいたと記憶しております。
  286. 上田哲

    ○上田哲君 返還後は、施設庁が雇用主となって労務を米側に提供する、労務費は米側が支払う形になるわけですね。
  287. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 返還後は内地並みになりますから、防衛施設庁が県と連絡をとって、責任を持ってやるという形になります。
  288. 上田哲

    ○上田哲君 本土と沖縄の基地労働者の賃金の格差は、いまどうなっていましょうか。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前に御質問の通告がなかったので手元に用意してございませんが、かなりの格差があります。私の記憶では、本土の六割ぐらいじゃないかと、六割から七割ぐらいではないかと、そういう記憶が残っております。
  290. 上田哲

    ○上田哲君 大体そんなところだと思います。問題は、これを本土並みにしますか。
  291. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは一つの研究課題であります。この問題は、総務長官あるいは外務大臣、その他とも相談をいたしまして、なるたけ沖縄の方々も優遇するように、私たちは措置を講じたいと念願しております。
  292. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ただいま防衛庁長官のそういう答弁がございましたが、これは計算方式の違いだけでございますので、計算方式の違いは本土並みにいたさなければならないと考えておりますから、その点の基本的な差異は解消するものと考えます。
  293. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、アメリカ側がこれは払うわけですから、アメリカ側が返還によって高い労賃を払うということになる。これはアメリカ側がノーと言った場合はどうなるのでしょう。
  294. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはアメリカ側が払うたてまえでありますし、財源がどこであろうと、軍労務者の方々が本土全駐労の方と同じ計算方式の給与、並びに、それによって最悪の事態の退職金というものの計算がなされることは当然のことであります。
  295. 上田哲

    ○上田哲君 本土並みに引き上げたい、その格差が出た場合には、日本政府がこれを補償するということは全く考えませんか。
  296. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そこらのところは、本土においてはアメリカが支払っているわけでありますから、本来アメリカの支払うべきものでありますが、外交交渉の場において、これらの問題を含めて、どのようにするかについて検討されておると思いますが、しかしそれについては、軍労務者を復帰後も本土全駐労と違った待遇下に置くという話にはならないわけであります。また、財源についても、そのような確たる議論をしているわけではなくて、本土が引き継ぐ、本土並みになるということを前提にして、それに対する対処のしかたについて、外務、防衛施設庁等において相談の上、外交ルートでただいま検討中であるということであります。
  297. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカ側がノーと言った場合には、日本政府がこれを補てんするということも、気持ちとしてはあり得るわけでしょうね。
  298. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) アメリカ側がノーと言った場合という、仮定の問題でありますから、これはあり得ないことだと思いますけれども、あるいは大蔵大臣あるいは外務大臣等で感触があれば別でありますが、いまのところ、私の承知しておる範囲では、そのような議論はなされていないと思います。
  299. 上田哲

    ○上田哲君 返還協定では、資産評価が一括して表示されることになるのですが、ナイキ、ホークもこの中に含まれますか。
  300. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 含まれません。
  301. 上田哲

    ○上田哲君 ナイキ、ホークは、いまどれくらいの値段の話になっていますか。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ、そういう話し合いはしておりません。
  303. 上田哲

    ○上田哲君 話し合いはしてないということは絶対ないですけれども。幾らなら引き合うのですか、ナイキJとの関係で。
  304. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ話し合いもしてない状況ですから、こちらが幾らなら買うとか、どうするとかという、そういう報告も、また当方の考え方も私聞いておりません。これから性能を調べたり聞いたり、それからわがほうが持っている国産のものとの対比を考えたり、あるいは費用効果等も考えたり、操作訓練上の異同その他もよく調べたり、そういうことをした上でなければ、あの問題をどう処理するかというところには入りにくい問題でございます。
  305. 上田哲

    ○上田哲君 買い取り交渉がまとまる時期はいつですか。
  306. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 買い取るかどうかもまだきめてない状態でございますから、まだ未定でございます。
  307. 上田哲

    ○上田哲君 その労務費を肩がわりすることがあるとすれば、これは地位協定を改定しなければならぬことになると思うのですが、いかがでしょうか。
  308. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 地位協定の改定は考えておりません。
  309. 上田哲

    ○上田哲君 地位協定二十四条の改定がなければ、これは肩がわりができなくなる。元来、一切の関連法規を含めて、安保をそのままで返還という方針が出ているわけですから、そうすると、改定をしないということは、沖縄の米軍基地の日本人労務者の肩がわりあるいは引き上げの、日本政府でこれを補てんする方法はないということですか。
  310. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その点は、先ほど来るる御説明がありましたように、これは本土並みの間接雇用で待遇を保証したい、それが本筋でございます。したがって、その方法論としては、現在、対米話し合いの最中のものもございますし、要は待遇をよく保証するということにあるわけでございますから、それを中心に考えてまいりたい。それから同時に、一方においては、地位協定というものは非常に大事なところで、何らの変更なしに本土並みに適用するということが眼目でございますから、地位協定の改正ということは考えておりません。
  311. 上田哲

    ○上田哲君 一括評価は、後ほど中身を報告していただけるでしょうか。
  312. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは大蔵大臣からお答えいただいたほうが的確なんですけれども、十分——先般来当委員会においてもお話が出ましたが、将来長く沖縄の県民の方々のためのパブリックユーティリティーとして活用されるようなものについては、まあただで置いていけというのもあまりどうも日本らしくないではないかという考え方を大蔵大臣も持ってくれておりますので、適正と思われる何らかの支払いが必要だと思っております。しかし、これは買い取りという観念では全然ございません。で、どういう基準でこういうふうな支払いをするかというようなことについては、いずれ、いわゆる批准国会等におきまして、できるだけ詳細に御説明するようにいたしたいと思っております。
  313. 上田哲

    ○上田哲君 なかなかこの交渉が——四回目の話し合いがワシントンで行なわれたそうですけれども、実際には一億八千万ドル、そこへ五千万ドルの上積みの要求があるとか、あるいは四億ドルという話があるとか伝えられております。非常にその辺が難航しているように思うのですが、つかみ金というようなことはたいへんことばはよくないけれども、何かそういう政治値が出てくる場合に、このナイキ、ホークの問題とか、あるいはこの労務費というような問題がその中に含まれてくるようなことはありませんか。
  314. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いわゆる資産引き継ぎですね、これと労務費の問題、またナイキ、ホーク、これは関連を持たせないという方針でいま話をしております。
  315. 上田哲

    ○上田哲君 時間の関係がありますので、一般質問に譲る分を整理しながら、きわめて簡単にひとつ数字だけ説明をしておいていただきたいことが先にあります。  米ソの核弾頭及び核爆弾の保有状況を、これから先どのように推定していくか、御説明ください。
  316. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 現在いわれておりまするのは、七〇年中ごろでソ連のICBMが千三百発、それからミサイル潜水艦が持っておりまするミサイルが二百八十発。それに対しましてアメリカ側でICBMが千五十四発、それからミサイル潜水艦におけるミサイルが六百五十六発ということであります。そこで、数の上からはアメリカは一応現在で停とんをしておる。ここ数年ずっと同じ数字でありますが、ソ連の場合には数年間で非常な増加を示しております。したがって、アメリカの一部ではたいへん問題にしておりますけれども、今後この情勢がどこまで伸びていくかということは、一応米側、米の首脳部としても懸念を持っておるわけでありますが、SALTの成否いかんによってその動向が変わるであろうという見方を持っております。ソ連のほうでもやはり財源その他の関係もありましょうから、いままでのペースで伸びるかどうかについては必ずしも同じであるというふうな見方はされておりません。
  317. 上田哲

    ○上田哲君 飛び飛びになって恐縮なんですけれども、外務大臣、いや、先に防衛庁長官に伺いますが、フリーダム・ボールトで、帰り飛行機がどういう状況で立ち寄ったか説明してください。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大部分は韓国からアメリカに直行して帰りましたが、三機だけがたしか横田へ着陸しまして、それからアメリカへ帰ったと聞いております。もっともその三機はからの飛行機でございます。
  319. 上田哲

    ○上田哲君 行きは嘉手納を通った。帰りは本土を通った。前のフォーカス・レチナではそういうことがなかったわけですが、これはアメリカの方針が戦略的に変わったのかどうか。
  320. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に戦略が変わったというほどのことではないだろうと思います。横田は元来そういう中継基地としての機能を持っておるわけでございますから、たまたま寄ったんではないかと思います。
  321. 上田哲

    ○上田哲君 こういう形で立ち寄られることになると、日本の戦略的位置づけということが、これから先異常に米韓関係としても重要になってくるわけですけれども、これが実際に行なわれるような場合、これは事前協議の対象になりますか。
  322. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) フォーカス・レチナ演習のときにもほぼ同様なことがあったのではなかったかと思います。それから本土への立ち寄り、あるいは立ち返りというようなことは、ただいまお尋ねのとおり、本拠として一つの部隊が常駐するわけでございませんし、演習でございますから、かかる場合は事前協議の対象ではございませんが、戦闘作戦行動として、日本の提供した施設区域から戦闘作戦行動として発進する場合は事前協議の対象になります。
  323. 上田哲

    ○上田哲君 その場合はノーでしょうか。
  324. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これはもうしばしばお答えいたしておりますように、そのときの状況、国益の上に立って判断すべきものでございますから、一がいに何とも申し上げるべき筋合いではないと思います。
  325. 上田哲

    ○上田哲君 このような規模の場合は国会報告されますか。
  326. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私はそういう場合は、今度も演習であり、そしてそれがやはり抑止力のメリットになる考え方であると思いますから、実際上そういうことが起こるとは考えられません。したがって、かりにそういうことが起こった場合にどうするかということを早計にお答えすべきではないと思いますし、したがって、そういう場合に国会にどうこうということまで先回りをして態度を表明するのもいささか先ほどの防衛庁長官答弁ではございませんが、安らかに生活しております国民の生活にかえって御迷惑やおじゃまをかけることではないかと思いますので、まずこの程度のお答えで御満足いただきたいと思います。
  327. 上田哲

    ○上田哲君 オペレーションズリサーチの各年の予算だけ、まず説明してください。
  328. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) OR経費が四十三年度で一億七千万、四十四年度で一億八千万、四十五年度で一億九千万であります。
  329. 上田哲

    ○上田哲君 代表的なリサーチの概要、この場合39Lを選んで御説明をいただきたいと思います。
  330. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 39Lと申しますのは、三十九年度に航空自衛隊において防空の総合的な能力評価をやるために行ないましたORでありますが、対象は第三次防計画の終了しました時限において、防衛力の航空自衛隊のナイキ、それから戦闘機及び陸上自衛隊のホーク、そういうものを、若干、末に持つであろう兵力から一、二ずらせながら、いろんな組み合わせをやって、それの総合的な攻撃機に対する撃墜率がどうであるか、継戦能力はどうであるかということを判断したものであります。
  331. 上田哲

    ○上田哲君 42Mを御説明ください。
  332. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 42Mは、四十二年度から三年度にわたりまして四次防に保有するであろう兵力、これも上下若干のズレを持たせながら、しかもストライクプランと申しますが、相手方からの攻撃方法をいろいろ変えていろんな組み合わせをやってみて、やはり同じような総合的な撃墜率あるいは継戦効果といったようなものを判定したORであります。
  333. 上田哲

    ○上田哲君 同じようなことが陸幕、海幕でもあると思うのですが、概要説明してください。
  334. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 陸と海の場合には総合的に評価することが部隊の構成上たいへんむずかしくて、個々の機能についてやっております。将来はそういう陸も海も総合的な評価ができればよろしいわけでありますが、一応簡単に、たとえば海の例について申してみますると、潜水艦を発見するための一つの艦隊と申しますか、艦艇のグループの構成比はどういうものがよろしいかということをやります。この場合に、目標潜水艦の速力でありますとか、それからこちら側の護衛艦の能力、あるいはその隻数、そういうものを可変にいたしまして、それの総合的な奏効率というものをとってみます。そうしますると、一つの効果といたしまして、一つのグループが八隻ぐらいまではこの奏効率というものが順調に伸びてまいりますが、八隻をこえて特に十隻前後からは非常に鈍化をしてくるということで、対潜掃討の場合の一つのグループの艦艇の隻数は八隻ぐらいがちょうど投費効果が非常によろしいというような結果が出てまいります。同様に、似たケースでありますが、対戦車火器のグループを考えてみますると、一個中隊なら一個中隊の正面に相手方のタンク、戦車がどれぐらい来るか。こちらも、戦車をわずか持ち、そのほかにいろんな対戦車火器がありまするが、それの能力、それから数量を可変にいたしまして、それぞれの兵器については撃破率というものが一応出ておりますので、それぞれを計算してみると、どういう組み合わせがよろしいかという数字が出てまいります。そういった数字をもとにして、普通科連隊の場合にはこういう火器はこの程度持ったほうがよろしい、あるいは対戦車火器隊についてはこういうものをこれぐらい持ったほうがよろしいというような判断を下して、それぞれが防衛力整備計画の一応の参考になるというようなことであります。
  335. 上田哲

    ○上田哲君 42Mは四次防の積算根拠になったと、こういうことですね。
  336. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 積算根拠と言いますと少し強過ぎますけれども、それを参考にしながら、経費ワクでありまするとか人員養成、その他いろんな条件を加味して四次防ができつつあるということであります。
  337. 上田哲

    ○上田哲君 どれぐらいの飛行機が飛んでくるか、どれぐらいの戦車が来るか、どれぐらいの艦艇が来るかということを想定をして、コンピューターを使って積算をして、これで四次防ができる、防衛力が積算をされていくということです。これは、私は、そういう計算はきっとあるんだろうと思います。しかし、問題は、インプットがどうかということであります。一体どれぐらいの飛行機が来るのか、どれぐらいの艦艇が来るのか、というふうに見ているのか。あるいはストライクプランをどうしているのかということでありますが、そのあたりはどこまで説明してもらえますか。
  338. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 39Lのときには、たしか三百数十機程度であったと思います。それから42Mの場合が六百数十機。これは五年ぐらいの違いで、だいぶ違っておりまするけれども、理由は、39Lをやりましたころの外国の飛行機が、どの程度新しいものが出てくるかということについての見通しが必ずしも正確でなかった。そこで、新しい飛行機が出てまいりますると、特に戦闘機の足が伸びてまいります。ですから、相手方の航空機の総数が同じでありましても、日本に指向できる航空機の数がふえてくるということで、三百数十から六百数十にふえているということで、もともと三百数十は少し過小に見積もっておったという点が今日では考えられます。
  339. 上田哲

    ○上田哲君 空爆の場合で言いますと、撃墜率というのが問題になると思います。それらの数字はありますけれども、そういう数字は説明され得ますか。
  340. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ORでありますから、具体的な数字が出てまいるわけでありまするけれども、一応作戦解析でもありまするので、あまり具体的な数字を申し上げるのは適当でないと思いまするけれども、これは戦史から申されるわけでありますけれども、常識的に申せば、毎回来る攻撃機のほぼ三割を撃墜できれば、相手方は続いては攻撃が継続できないというふうに従来いわれております。私どもの数字では、もう少しそれが上回るであろうという感じであります。
  341. 上田哲

    ○上田哲君 その辺の数字は、たぶんこの前の委員会長官が取り出してこられた部分に重なると思うから、私はもう少し話し合いをしてみたいと思いますが、一つだけぜひ伺っておきたい。  私どものほうで調べたところでは、その場合の相手の機種、飛行機が、グラインダーと呼ばれる超音速の中型爆撃機、戦闘機ミグ21、ミグ23というようなものをパターンとしてやっておられるということでしょうか。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いかなる機種をもってやっているか私知りませんが、やはり性能のいいものを対象にしてORはやっているものだと思います。
  343. 上田哲

    ○上田哲君 グラインダー、ミグ21、ミグ23ということになると、これは具体的な飛行機の名前でありまして、国籍がある飛行機の名前なんです。この辺はどういうことになるでしょうか。
  344. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 作戦解析でありますから、あまり適当なことばではございませんが、ウォー・ゲーミングといたしますると、いろいろな機種を想定いたしますのでありまして、一つの試みの計算でありますから、われわれが考え得る飛行機を想定いたします。したがって、ここで具体的にどこの国のどういう飛行機というのは、必ずしもわれわれの解析の上では、何と申しますか、バイタルなものではないというふうに考えられます。
  345. 上田哲

    ○上田哲君 いろいろな計算をおやりになることは、それはそれでいいと思うのですけれども、私は、このゲーミングに基本的な問題があると思います。これはAとBを対象にするものでしか成り立たないということ、それから繰り返しが要求されるということ、こういう計算を根拠にして四次防が成り立っているということ、たいへん私は不安定な根拠にもなるのではないか。防衛庁長官、どれぐらいの信頼性をここにかけられますか。
  346. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは戦術的な一つの部面を固めるためのORでありまして、そのほかに全般の運用体系、それから三自衛隊の調整連絡、全力機能の発揮、そういう問題もあるわけで、むしろそっちのほうが大事である。その上に高度の政治判断が出てくるわけであります。いまのOR、39Lにしても、42Mにいたしましても、それは非常に部分的な戦術的解析であると、そういうようにお考え願いたいと思います。
  347. 上田哲

    ○上田哲君 問題は、やはりインプットのところに非常に大きなウエートがかかるわけですし、それがどれぐらい防衛計画の策定にウェートをかけるかということになってきます。その辺のところを、特にインプットに関しては、こまかく公開して説明を受けることができますか。
  348. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) インプットにつきましては、従来、米側ともいろいろ情報交換をやりながら数字を固めたりしている関係もありまするし、かたがた、かりにA機が幾らB機が幾らといってみても始まらないといたしますると、特定の国の飛行機をあげるとなりますると、これまた、あまり適当な議論でもないように考えられますので、個々に御説明する場合は別としまして、こういうところではちょっと適当ではないのじゃないかと、かように考えます。
  349. 上田哲

    ○上田哲君 時間がありませんから、私は、こうした問題を後の質疑に留保しておきます。  最後の項目は、民間防衛の問題があると思います。質疑通告をしておりますので、防衛庁長官から、四次防の概要とさっきおっしゃいましたが、その部分を含めて——別のほうがいいですか、説明をしていただければと思います。
  350. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国の防衛は自衛隊だけでできるものでなくして、やはり、いざ侵略があったという場合には、全国民の御協力で国は守るべきものであると思います。したがって、終局的には、いわゆる民防という考え方も必要であると思いますけれども、現在、さしあたって、民防を編成するとか、そういう予算をとるとか、そういう考えはございません。むしろ、今日の事態から見ますと、災害救助のほうが急を要する問題で、東京都にしても、大阪やその他の地域にいたしましても、あるいは豪雪にいたしましても、とにかく災害救助という面についてわれわれはいつでもできる体制を整えております。自衛隊法やあるいは防衛庁設置法によりますと、そういう関係の規定がございます、きのうも申し上げましたけれども。しかし、まだそういう時期も到来しないのにいたずらに民衆を刺激する必要もないというので、差し控えておる状態であります。
  351. 上田哲

    ○上田哲君 ロサンゼルスの地震以来地震対策がいろいろ問題になり、先般の閣議でその合同演習というのが提起されたと。私の伺っているところでは、ことしじゅうに大規模な災害対策合同訓練ですか、行なわれると聞いていますが、その概要はどういうものですか。
  352. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 防衛庁としてもそのような模擬訓練の必要性のあることを提唱いたしておりまするし、またその用意もあるようであります。一方、消防審議会の答申を受けた消防関係関係各省も、中央防災会議の部会等で相談をいたしまして、先般のロサンゼルスにおける地震の視察団報告等を受けまして、消防関係も一体となって、やはり全体のそれに対する、自衛隊も加勢する形としての想定演習的なものが早急に行なわれることが必要であろうと考えておりますが、はたしてことしじゅうに行なえるかどうかについて明一言するところまでまだ詰まっておりません。
  353. 上田哲

    ○上田哲君 消防団を使って民防——まあ民間防衛という問題は、特に奨励しようというわけじゃありませんが、アメリカでシェルターの問題などで非常にかまびすしく言われています。その辺を防衛計画構想の中にどのように位置づけておられるのかということは、やっぱりひとつ聞いておかなければならぬと思います。
  354. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、民防についてはまだ政策を持っておりませんので、もちろん消防団を編成するとかなんとかという考えは、目下のところ持っておりません。
  355. 上田哲

    ○上田哲君 二十五分に終わるという話ですから若干の時間を残しますが、質問を幾つか留保しながらひとつ意見を述べてみたいのは、冒頭に同僚議員に提出された新防衛力整備計画案のあらましという資料がたいへん空疎浮薄であったように、政府側の不誠意もさることながら、非常に国民の関心を集めている防衛問題について、私たちはなかなか手さぐり以上に進めることができません。国政調査権なり世論を背に負うてここで大いに問題を明らかにしていかなければならぬのですけれども、たとえばORならORを議論していく、一体GNPの何%ならよかろうとかほかの関係費目とのバランスがどれぐらいつけばいいだろうぐらいの大ざっぱな形で、一人頭二万三千円の、一世帯、そういう負担がぐんぐん上がっていく、世界の七位になる、あるいは六位になるというような軍備計画というものが進められていくということは、どう考えたってそれは政府の側からいっても民意を掌握することができないはずであります。そういう意味からいえば、それが中側からどのような積算根拠を持ち、積み上げられていくのかというようなことを、少なくともこれに賛成、反対の立場は別にしても、大いに議論をする場とデータを提供されなければならないと思います。で、常日ごろ政府側は、防衛委員会などという名称の主張をされておるわけでありますけれども、われわれとしては、防衛委員会というようなニュアンス、あるいはそこに盛り込まれているような考え方というものは、特にそのままうのみにするようなことができない幾つかの原則があります。しかし、とにもかくにもわれわれ自身の意見を明らかにし、データを構築していくためにも、政府側にもっと積極的なデータの提起、議論の場の提供ということが求めらるべきであると思います。で私どもは、その点に関して十分な保証や一定の前提のもとで国会内にそうした議論の場とデータの提供の場を設けるべきだということを主張し続けています。先般もそうした発言があったわれでありますが、国会内でという答弁総理から出ております。ここまで来た防衛力整備計画の現状において、あるいは六〇年代から七〇年代へ大きく切れ目に、分かれ目に立っている防衛構想の点検のためにも、私どもはひとつ政府側が大いに胸を開いてわれわれにデータを開陳し、また討議の場を十分に保証するということを考えるべきだと思います。また、われわれのそうした理解を前提としないで、一方的に、目がさめてみたら巨大な軍備が先行していたというような形にならないために、この時点で一定の立ちどまりを何らかの形で行ないながら広く民意に問うてみるということをそうした討議の場からきっかけを求めるべきではないかというふうに思います。この考え方について、防衛庁長官そして総理からお答えをいただくこととして、予定の約束の時間でありますから、若干の時間を残しながら私の質問を終わりたいと思います。
  356. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず第一点の防衛に関する委員会は歓迎いたします。私も防衛問題は国の政策の中の非常に大きな重要な問題の一つであると思いますから、できるだけこの国会の場を通じて国民の皆さま方に知っていただくことは必要であると思い、当方も誠意を尽くして資料を出せる部分を出す必要があると思います。そういう意味におきまして、御提案にかかる防衛問題の、あるいは防衛委員会にせよあるいは安全保障委員会にせよ、名前国会で適当におきめくださることでしょうが、そういう委員会をおつくりいただいて審議してくださることをわれわれは大いに喜ぶものであります。ただその場合に、法案審議もその委員会でしていただくことを希望いたします。  第二点の防衛問題に関して野党や国民各位とよく懇談し合う、お互いがお互いの胸襟を開いて話し合うということも非常に重要なことであると思います。国会を通じて行なうことはもちろん、国会以外の場所におきましてもそのような機会をつくりまして、国民や議員の皆さま方に防衛問題に対してもっとよく理解と御協力をいただくように努力してまいりたいと思います。
  357. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま防衛庁長官から詳細にわたってお答えをいたしました。私も上田君の御提案並びにお気持ち、これはもう完全に私一致しております。政府ももちろん皆さん方の十分の御批判をいただくと、そういう意味においてできるだけの資料を提供すると、ただいま特に日本の場合におきましてはいわゆる秘密事項というものはございませんから、そういう意味でお話もできる、またできやすい立場にある、ことに専門の委員会等を設けていただくならばたいへん秘密会等も開催しやすいと、そういう立場でございまするから、国防なぞ論ずるのに適当な場合ではないかと、かように私は思います。問題は国民の理解をより深める、そうしてまた国民の支持を得る、また国民とともに防衛力を整備する、こういう形でなければこれは私どもの目的も達せられないし、また、国民意図に反して防衛計画なぞあろうはずはないのでございますから、そういう意味におきましても国会の場においてさようなことが堂々と扱われるような、そういう仕組みが望ましいと、かように私は思います。
  358. 上田哲

    ○上田哲君 いまのお話を理解をいたしますが、念のために申し上げておきたいことは、法案審査ということが入るかどうかというようなことは私どもにはまだなじみません。それから秘密会云々ということばも大いにひとつ、まだまだ熟さないことばだと思っています。こうしたわれわれの考え方はわれわれの側の討議を経て意見を述べたのではありますけれども、これを手がかりにひとつ議論をいたしたいと思います。  一分を残して終わります。
  359. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって上田君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十九分散会