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国務大臣(
坂田道太君) ただいま
安永先生御指摘の、
定通に通います
生徒の意識というものを伺いまして非常に堅実だという感じを持ったわけでございます。私も実は
定通の
生徒に会ったり、あるいは視察をしたり、あるいは
通信教育の卒業式に行ったりしまして感じますことは、足が地についているといいますか、
生活実態の中に入っているがゆえに観念的な理論のから回りというようなものがあんまり見られない。私は
教育というのはこういうようになけりゃならないんじゃないかというふうに実は思ったわけでございます。たとえば、これはNHKのラジオで卒業した人を前にして感じたことでございますけれ
ども、結局入りましてからいろいろ苦労して約二〇%が卒業でございますね。ところが、簡単にラジオを聞いて勉強する、あるいはスクーリングを受けるとは申すものの、それを根気を持って続けて卒業まで持ってくるというのは、よほどこれは本人に学ぶ意欲というものがなければできないことだというふうに思ったわけでございます。そういうことが非常に私は大事だと思っておるわけでございますが、先般来の
大学紛争等を見ておりますと、何だか人が
大学に行くからおれも行かなければならないとか、あるいはおかあさんが行けと言ったから行ってやるとかというような甘っちょろい考え方を持っておる。私は、
人間というものはやはりその環境それぞれに応じまして、
家庭の収入その他もあって働きながら学ぶ人もございましょうし、あるいはそうでなくて
大学に行ける人もございましょうが、とにもかくにも世の中に出て、そして自分の働きによって生計を得る、あるいは親子を養う、こういうことはだれしも持つものだと思います。また持たなきゃならないものだと思うんです。そのために、単に
普通高校に行くというような人だけが何か非常にえらい、あるいはいいというように思いがちでございますけれ
ども、決してそうではないんで、やはり
高等学校の段階だろうが、いつも申しますように農業あるいは工業、商業、そういった
職業教育につくこともまたいいことなんで、単に
社会の
要請、
企業の
要請があるから云々ということじゃないと私は考えるわけです。ところが風潮といたしますと、先生方自身が何か
職業教育の
高等学校に奉職をしておられる人は
普通高校から左遷されたような何かインフェリオリティコンプレックスを持っておられる。むしろ大部分の人はそうでないと思いますけれ
ども、そういうような傾向もないわけじゃない。そうするとその傾向がやはり
子供たちに移っていくということもあろうかと思います。あるいは現場に私は再三行ってみますると、
中学校における進学
指導等において先生自身が、おまえはもう頭が悪いから、
普通高校に行けないからおまえはこの程度で農業に行けとか商業に行けとかというふうなことをやられるという、こういうようなことはまさに私は間違っておると、かように考えておるわけです。そういうことと同じような意味合いにおきまして、この
定通教育におきましてもそういった傾向がないわけではない、しかしまた
文部省といたしまして、われわれも努力はしてきましたものの、まああれは
昭和二十八年でございますか、
昭和二十八年が一番——五十六万七千人の最盛期であったと思いますが、その後だんだん減ってまいりまして、四十五年度におきましては三十七万人と、
高等学校全体に対しましてかって二二・三%であったものが八・四%、こういうふうに減ってきておる。これはまた
一つには全
日制に行ける
子供たちがだんだんふえてきたということ、あるいはまた
通信制等が非常に、まあNHKその他ラジオによるものも含めまして漸増をしてきたということ、あるいは
各種学校が充実をしてきた、いろいろの原因がございましょうが、しかし、同時に、私たち
政府として考えなきゃならないのは、だからといって一体現在の
定時制のやり方というものがこのままでいいかというとそうじゃない、ちょうどターニングポイントにきているのじゃないか、このあたりでもう一ぺん
定時制というものを新たに見直してみる必要があるのじゃないか、もう少し魅力のある
学校として育てていかなければならないじゃないか、それには一体どうするかというものがただいま提示されておる問題だというふうに思うわけでございまして、先生おっしゃいますこの
意識調査というのは私
どももそのように大体考えておりますし、かなりこう的確にあらわれておるように思うんでございます。