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1971-03-10 第65回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十日(水曜日)    午後一時二十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐田 一郎君     理 事                 小枝 一雄君                 山下 春江君                 佐野 芳雄君     委 員                 上原 正吉君                 鈴木 省吾君                 高田 浩運君                 林田悠紀夫君                 田中寿美子君                 阿部 憲一君                 中沢伊登子君                 渡辺  武君    国務大臣        国 務 大 臣  佐藤 一郎君    政府委員        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        食糧庁次長    内村 良英君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君        常任委員会専門        員        菊地  拓君     —————————————  本日の会議に付した案件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (物価対策基本方針に関する件)     —————————————
  2. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査中、物価対策基本方針に関する件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  3. 阿部憲一

    阿部憲一君 経企庁長官にお尋ねいたしますが、昭和四十五年一年間消費者物価は、前年よりも七・七%上昇しておる。残念ながら、昭和二十六年から始まりましての最も高い上昇率を記録したことになるわけですけれども、このような記録的な物価上昇問題点はどこにあるかということでございますが、長官は、さきの経済演説で、「経済成長を従来の著しく高い成長から、物価安定と成長が両立し得るような、安定成長路線に移行することであり、」云々と、こう言われておりますけれども、四十六年度の予算の規模あるいはその伸び率を見ましても、また、先般行なわれました公定歩合の再引き下げなどを見ましても、いままでとってこられた高度成長政策延長としか受け取れないわけでございますが、長官は、その成長スピードだけが問題でなくて、成長そのもの軌道修正が必要である、このようにも述べておりますが、その点について私も同感でありますけれども現実には高度経済成長政策延長としかとられませんが、その辺のところをお伺いしたいと思います。  政府の考えている安定成長というのは、実質一〇%程度成長率を確保するということでありますが、昨年はその程度になっておりながら、一方、物価上昇は七%をこすというような高騰を続けておるわけでございます。したがって、安定成長、それも国民生活優先安定成長、つまり、物価安定を根本にした安定成長路線を確立するためには、これまでの経済政策軌道修正を行なわなければ不可能じゃないか、こう考えられますのですが、もし現状踏襲で可能であるとおっしゃるならば、その裏づけをお伺いしたいと思うものでございます。
  4. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 御指摘がありましたように、私、前々から、現在の物価高にはいろんな原因がありますと思います。これだけ一つとれば、すべてがそれによって解明できるというたぐいのものではないと思っておりますが、しかし、今日の物価高のよって来たるところ、これはやはり、何といいましても、高度成長、これが基本的な背景になっておるというふうに考えております。三十年代も非常な物価高がございました。まあ、暦年でとりますと、たまたま昨年七・七になりますが、これも数字のいたずらでございますが、これはまた年度で三、四カ月ずらして見ますると、必ずしも最高ということにならないのですが、要するに、三十年代の後半も、ほぼ最近と同じような上がり方でありましたが、まあ四十年度のあとで、ちょっと落ちついた時期がありましたけれども、ある意味においては、私は、これはずっと継続していると思います。つまり、日本物価が、一方において卸売し物価がわりあいに安定しているのに対して、消費者物価が非常に上昇しておる。そういう意味で、両者の乖離が目立っておりまして、これが諸外国ひとしく同じ物価高に悩んでおるその中にあっても、日本は特殊な姿である、こういうふうに指摘されておりますが、その卸売り物価消費者物価乖離、そして消費者物価相当高位に上昇を続けておる、まあ結局、これはやはり、ちょうど三十五年ごろから始まりましたところの日本高度成長、この超高度成長とも言うべき非常なスピードの速い成長、これがやっぱりバックになっておるということは、どうしても打ち消すことはできない事実です。一般の学者も、この成長物価の問題についてのトレードオフの大体の関係を認めておると見ていいと思いますが、そういう点もございますので、まあ私たちは、やはり、特に四十二年、三年、四年というような、実質で二二%、名目で一八%前後というような高い経済成長、こういうものが続いておったんでは、幾ら口物価安定と言っても、これは基本的にむずかしい、こういう考え方を持っております。  そういう意味において、やはり基本的には、この大きな高いスピード経済成長というものを落としていこう。問題は落とし方でございます。一三%の経済成長の落とし方を、一〇%がいいか、あるいは七%がいいか、いろいろあろうと思います。ただ、やはり、これだけの超高度成長がよって来たる基本には、やはり日本の現在置かれておる経済構造というものが一つ影響しておるわけでありまして、そうした中にあって、無理にただ成長率引き下げればそれで済むかというと、今度は、なかなかそうもまいらない。そういうことで、とにかく諸般の事情を勘案した上で、新経済社会発展計画なんかでも、大体一〇%前後のところをにらんで、一応安定成長ラインとして見定めたわけであります。  御存じのように、四十五年度におきましても、前半は非常に高うございました。むしろ、後半になって急激に成長が落ちてまいったわけでありますが、本年一〇・一%という政府見通し、これが大体そんなところにいくんじゃないかと私ども考えておるのですが、しかし、後半においては一〇%を割ったと思います。しかし、それでも、御存じのように、経済界においては一種不況が到来したというような感覚を非常に受けて、現に、種別によっても違いますが、ある相当の数の産業部門においては相当不況色がただよってきておることも現実の事実でございます。  そういうことで考えてみますると、計画で一三%のラインを一〇%にするということ自体が、やはり現実経済では相当のショックを与えておるわけでございます。そういう意味においても、この軌道修正のしかたというものも、やはりわれわれは同時に考えていかなければならない。あまり深刻な不況、非常な景気落ち込みのひどい事態を招いたり、あるいはまた経済不安というような混乱というものをかもし出すようなことは、軌道修正とは言いながら、これはまたそれでとるべき筋じゃないわけでございます。そういう意味で、大体一〇%ぐらいがいいんではなかろうか、特に、経済成長があまり落ち込みますと、御存じのように、スタグフレーションを招きやすい。これはわれわれの経験をいたしておるところでございます。いわゆる不況下における物価高、こういうことにもなるわけでございますから、そういうことも勘案しまして、まあ私は一〇%前後のところに持っていく。結局、そうした点の修正がありませんと、まあ私たちもいろいろと閣僚協議会なんかで物価対策を打ち出しておりますけれども、なかなかそれが効果的にまいらない面が多いのでございます。そういう意味で何よりも基本的に軌道修正をする。  そこで、いま御指摘もありましたけれども、四十五年は大体一〇%ぐらいになっておるのに消費者物価は一向下がらぬじゃないか、こういう御指摘でございまして、これには、いま申し上げましたように、一つ前半が非常にやはり高かったということであります。落ちてまいりましたのは後半でございます。そういうことで、少し消費者物価というものがだんだんこれから落ちついてくることを私も期待しておるのでありますが、いずれにしましても、後半から経済というものが急速に鎮静化してまいる。そして、御存じのように、今日におきましては総需要抑制ということの物価への効果というものについて、いろいろの条件が付されております。よく、引き締め政策卸売り物価対策としてはきくけれども消費者物価にはきかないんだというような意見さえあるような始末でございますが、決してきかないわけではないんでありまして、ただ、これには一定タイムラグがどうしても出てくるというのが今日の定説になっておるわけであります。もちろん、卸売り物価のように鮮明な影響のしかたでなくなっていると言われております。コストプッシュ的な様相も一面に出てきております。ただ、引き締めをやったからそれで済むんだというような昔のようなわけにはまいりませんけれども、それでも、それはそれなりに一定タイムラグというものを置いて必ず効果が出てくる、こういうふうに私どもは考えております。  そういう意味におきまして、まあ一方において、この総需要抑制という大きな目標を持って軌道修正を行ないながら、しかし同時に、先ほど申し上げたように、あまり景気が落ち込むこと自体が非常な問題を、またこれはこれで、物価問題としてもスタグフレーションその他の問題が起こってまいる。昭和四十年のときにも不況下物価高ということを私たち経験したのでございますけれども、特に海の向こうのアメリカなどでは、それが一番問題になって指摘されている際でもございます。そういう際でもございますから、同時に、あまり景気が鋭く落ち込んでいくことは避けなければならぬ。そういう意味において、引き締め解除というものをわれわれが行ないまして、まあ公定歩合引き下げを二度にわたってやりましたが、これは一つ一体のことでありまして、いわば一連の動作として一種引き締め解除を行なった、こういうふうに見ていいと思います。そして、あまり鋭く落ち込むことを防ぐ。でありますから、決してこれは、私たちとしましては、いわゆる物価対策に矛盾し、逆行すると、こういう気持ちは持っておりません。  まあ、そういうことで、一面において、できるだけ安定成長ラインに定着さしていく。そしてまた、安定成長ラインに定着さしていく意味においても、あまり落ち込みが一挙にひど過ぎるということも、いろんな意味において問題が起こってくる、こういうことであろうと思います。ただ、タイムラグという問題はなかなかむずかしゅうございまして、私たちも、その点が非常に今日の物価対策一つの悩みになっておりますけれども、今日の経済構造、体質から見ますと、どうしても一定タイムラグを置いて初めてその効果が出てまいる。こういうことはある程度やむを得ないことである、こういうふうに考えるわけであります。
  5. 阿部憲一

    阿部憲一君 本年もその五・五%の線で押えようというような政策をとっておられるようですけれども現実に、いままで私らが受けた印象では、物価が非常に、安定させよう、安定させようと政府努力しているにもかかわらず、一向この数年来安定しないということの裏には、やはり経済成長、ことに急速な経済成長があるから物価も必然的に上がるわけで、要するに、経済成長するから物価は上がるんだ、騰貴するんだ、このような、まあ説明といいましょうか、が多かった。ところが、現実経済成長がこれだけダウンしてきだとすると、いまの物価がもっと安定しなければならぬという結論が出てくるはずなんですけれども、それにもかかわらず、現実においては、先ほど申し上げましたように、また、いま長官からお話がありましたように、まあこれは急に成長がダウンしても、その抑制と申しましょうか、それは物価高騰というものがまだまだ続いているのだというようなお話がありましたけれども、事実そうかもしれませんけれども現実において、いま私どもが本年度物価が、一〇%前後の経済成長であるにもかかわらず、その目標とする五・五%を達成することは非常にむずかしいという印象を受けているわけでございますが、この五・五%を実現するためには私はむしろ相当努力が必要じゃないかと。物価安定のために、いままでやった経済成長さえ押えれば物価は安定するのじゃないかというような一つの期待があったわけですけれども、それにもかかわらず、物価がどんどん上がる、ことに最近の、御承知のように、野菜にしろ、ことに生鮮食料品においても著しい物価高騰を見ましたね。また、依料等相当値上がりをしているということは長官の御指摘のとおりでございますけれども、そのようなことで、結局は、いままでのような物価の安定の対策というものを、ただじんぜんと、それを継続していっただけでは、私は物価は五・五%の実現というのは非常にむずかしいと思いますけれども、この辺について、長官からひとつ、具体的な対策といいましょうか、こういうふうにするのだというような、これからの意気込みといいましょうか、決意、それを伺いたいと思います。
  6. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) この物価については、もちろん、ある意味においては経済上の法則といいますか、経済動き方について、やはりある程度必然的な動向傾向というものを一方において把握しながら、一方において政策努力というものによって、それに対して一つ変更を与えていく。この両方が私は大事であろうと思っています。  そこで、私たち一つ非常に困りましたのは、いま御指摘がございました経済成長というものを従来の軌道修正していくという場合に、変更を行なう際に、どうしても起こってくる一つの現象であります。その前に、もう一つ阿部先生おっしゃいました点で、安定的に経済成長軌道修正さえすれば物価は下がるんだというふうに言われてきたがという話がその前にありましたが、もちろん、さっき申し上げましたように、何といっても基本的な背景になっておるのであるから、まず、これをやはりある程度修正しなければ困るということが第一点でございますが、しかし、成長修正すると言いましても、実は一〇%というのは相当高い成長でございます、国際的には。ですから、一〇%でもなお高度成長じゃないかという議論がございます。まあ、私たちは、しかし、日本の今日の経済構造を一挙になかなか変えていくわけにもいかない。そういう意味において、やはり、あり得べき姿、今日のいわゆる潜在成長力と申しますか、そういうことも頭に入れながら、まあここいらのところがバランスのとれた発展をやっていくのに必要にして十分であるというふうなことから、国際的には高いことを承知の上で一〇%前後の成長というものを考えておりますが、そうした国際的にはなお高いと思われる一〇%の成長を実現しながら、なお、消費者物価をできるだけ低位安定の方向に持っていかなきゃならぬ。そういう意味で、よけいそういう意味において政策的なむずかしさはもちろん伴うことは覚悟いたしております。  それで、さっき申し上げました、いわゆる軌道修正をする際に問題がどうしても起こると申し上げましたのは、ちょうど昭和四十一、二年あたり消費者物価上昇率が安定いたしまして——これはやはりこれから成長に向かおうというときには、どうしても物価が安定する傾向を持っております。ところが、その逆に、引き締めその他によりまして成長にブレーキをかけていこうということになりますと、タイムラグお話を先ほど申し上げましたが、必然的に、ある時期に、どうしても一方において景気が落ちていくのに、一方において物価が高くなっていく、こういう傾向もまた否定できません。そこで、今日、経済成長経済成長と何でも言うというお話でありましたが、結局、経済成長背景になって物価高というものはやはり起こってきましたけれども、今日においては、いわゆる成長だけ手直しすればいいという問題では、したがって、なくなってきておるということであります。結局、その経済成長もとにして、御存じのように、賃金の上昇も行なわれておる。土地の価格の上昇も行なわれておる。いろいろとそうした問題がございまして、そして、それらがいわゆるコストプッシュ的な原因を形づくってまいっておる。このコストプッシュ的なものが、要素がだんだん強まってまいりますと、どうしても総需要抑制によるところの物価修正というものに抵抗がある。ある程度阻害要因になってまいります。でありますから、昔のように簡単に、需要を押えればそれで済むというわけに、なかなかいかなくなる。もちろん、それに一定タイムラグをかしますれば、しばらくすると、その効果が出てくる、こういうことであろうと思います。でありますから、よく言われる不況下における物価高というものも、特に引き締めの直後、ずっと成長が落ちていく段階において、ある程度われわれが味わわなければならない点がございます。で、私たちは、そのことも十分頭に入れながら、できるだけ消費者物価上昇というものを政策的努力によって押えていかなければならない。一方において、需要抑制効果というものも十分に計算に入れてよいと、こういうふうに考えているわけであります。  そこで、まあ五・五%というのでありますが、大体、いま私たち御存じのように、昭和四十五年度年度で申しますと、三月までの物価上昇率は、大体七・三ぐらいの、いわゆる御存じの見直ししました改定見通しぐらいの、前後のところにいくんじゃないだろうかというふうに、最近の物価情勢から見て判断いたしております。これは、先ほどの暦年でいう七・七よりも少し落ちついてまいりますが、年度で見た七・三%というものを分析いたしてみますると、その間、四十五年度におけるところの純粋の上昇率は、七・三のうちの三・三でございます。でありますから、まあ大体過去の傾向を見ましても、年間上昇率というものが三%ぐらいの幅をもって十分考えられると思うのであります。そういうことになりますと、まあ五・五%のうちの年間上昇率を大体三%ぐらいと考えますと、二・五%だけは、四十五年から四十六年度への経過として、いわゆる、よく「げた」などと言われておりますが、げたが大体二・五%ちょっとぐらいのところでありますれば、まあ五・五%という見通しは、異常な事態がなければ、いくんじゃないだろうかというふうに実は考えております。で、まあ昨年一年、率直に言いまして、私たちも、野菜中心とする季節商品値上がりにたいへん悩まされました。まあこの季節商品、名前のように非常に季節的なものでありますし、従来から一定サイクルがございました。このサイクルというものが最近変わってまいりまして、われわれもずいぶんその点でもって見込み違いをさせられたのでありますけれども、まあ中心になっている野菜、そしてこれが非常に昨年いっぱいの物価高に大きな影響を投げましたが、こうしたものがある程度安定していくであろう。これについては、農林当局等においても、できるだけ対策をして、そのほうの需要供給の安定をはかってきておるわけでありますから、ある程度十分期待できると思うのであります。そういうことを頭において、そして季節商品以外の一般的な物資、これについては、御存じのように、簡単でありません。コストプッシュ的な要素がだんだん濃くなってきている際ですから、じりじりと上がってきていることも事実ございますけれども、これについても、やはり全体としての需要というものの動向がやはりある程度影響するというふうにも考えております。  そういうような全般としてのことを考えますと、ああいう昨年のような野菜が引き起こした特殊な、とっぴ高といいますか、異常な、高い状況というものをできるだけ押えてまいりますれば、まあ五・五%、年間の純上昇率を三%前後ぐらいのところに十分予想して差しつかえないであろう。こういうようなことから五・五%という上昇率を掲げたわけでありまして、むしろわれわれのほうから言いますれば、これでさえ実は高いのでございます。しかし、今日、先ほど申し上げましたように、相当高い成長から漸次安定的な成長へと移行する際でありますからして、どうしてもその間におけるところの余波というものを、影響というものを、やはり頭に入れますると、五・五%——残念でありますけれども、五・五%ぐらいのところをまず見込むという、そうしてまた、さらに先を考える、こういうことになろうかと思うんでございます。
  7. 阿部憲一

    阿部憲一君 長官お話の中で、対策としては野菜を安定させるということも入っておりましたが、この野菜の問題は、いま非常に新聞に載って、にぎわしておる問題でございます。また、最近におきましては、野菜が今度はホウレンソウなどもだいぶ値下がりしたということでありますが、これは結局、政府対策が、何といいますか、実って野菜が下がったというんじゃなくて、むしろ、季節的に下がったと見るほうが正しいんじゃないかと思いますけれども、この野菜の問題につきましても、いつも繰り返されているのは、季節的に非常に年末上がって、そうして春になってだんだん下がってくる。ことに、昨年などは非常にひどい高騰ぶりを見せたんでありますけれども、こういった問題に対して農林当局いろいろ手を打っておられるようでありますけれども現実にその効果というものはあらわれていない。むしろ、私は年々激しくなるんじゃないかと思っておりますけれども、したがいまして、長官野菜対策云々と言われましたけれども、私ども、すなおに安心するような気持ちになれないわけでありますけれども、この季節的野菜の問題について一言農林当局から対策を伺いたいと思います。
  8. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 農林当局からお答えすべきだと思いますが、確かに季節性というものがあるわけでございます。ただ、昨年の一月、二月、三月は、御存じのように、四割、五割という高さでございました。まあ三月なんか、当然下がっていいときに非常に高かったわけでございます。やっぱり、そういう昨年のあれは特殊な事情があったと私は思います。農林当局は、干ばつとか、そういう天候的な理由を中心にしておりました。もっと基本的な原因もありまして、その基本的な原因を改正していくのは、なかなかちょっと時間がかかります。たとえば、非常な都市化、集中のために栽培人口が急激に減っていくとか、その他いろいろと基本的な情勢というものも影響していたと私は見ておりますが、結局、長い間のそうした野菜問題についての一種の無関心というか、無策というものが突発したというふうにも言えるわけであります。そういう点から言いますれば、農林当局も、今回は一面に天候的ないろいろな困難もありましたけれども、できるだけやはり野菜に対する政策を重点的にやってきた。率直に言うと、いままでは主食中心農林行政であったと言っていいと思います。ここに来て、やはり野菜についても相当の力を入れてきておる。ただ、御指摘のように、私もこの農林当局考え方というものが定着してくれなければ困るわけでして、これが一体どの程度定着するかということについては、私自身もまだ必ずしも安心はいたしておりません。そういう意味において、ちょっと野菜が出回って落ちてきたから、それでもう安心して、いままでの考え方にまた戻ってしまう、手を抜いてしまうというようなことでは、もとのもくあみになるわけですから、これは農林大臣にも、お会いするたびに、この点の注意を実は喚起をしております。どうして野菜の生産、供給を安定的に持っていくかということは非常にむずかしい問題を含んでおりまして、いままでのままで、ただほうっといてできることでは私はないと思っております。しかし、率直に言いまして、いままで野菜についてあまりに無政策であった、無関心であったものが、とにかく一歩前進をしてきましたから、私はそれを定着させるような努力をさらに怠らないようにしてもらって、そして安定供給の線を定着させたいと、こういう気持ちを実は強く持っております。  いま、農林当局が具体的な御説明を申し上げると思いますが、一言申し上げておきます。
  9. 阿部憲一

    阿部憲一君 野菜関係の農林省の方がおられたら、もう少しその問題を伺いたいと思いましたが、お見えにならないようですので、この辺にしておきます。  また次に長官に伺いますが、五・五%以内に押え、具体的な施策に輸入政策の活用、それから競争条件の整備などを積極的に進めると、こういうふうにこの間のあいさつにもありましたんですけど、しかし、これを施行するにあたって、これは先ほど触れました野菜の問題も同様でございますけれども、きめのこまかい対策が欠けていますと、結局、物価の安定に長官の期待されるような結果を生むことができない。言うならば、物価安定にほとんど寄与していないと、こういうふうな事実が実はあるんで申し上げますが、たとえば、昨年からことしにかけまして、タマネギがオーストラリアやアメリカからだいぶ輸入されておりますけれども、これが中央卸売市場にはわずかしか姿を見せない。タマネギの値段には、だから全然影響がなかったというふうな現状だったことは御承知のとおりだと思いますが、また、例のスコッチウイスキーですね、あれなども、高級ブランデーとともに自由化された。しかしながら、御承知のように、ジョニーウォーカーは相変わらず黒いのが一万円だという定価を、どこへ行っても一斉につけているというのが実情で、全然それが自由化される以前と変わっていないというのが実情でございます。ですから、自由化したからそれで事足りるとすることでは物価の安定対策にならない。これをどういうふうに対処して安定に役立たせるかということだと思いますけれども長官、その辺について、直接の御担当じゃないと思いますけれども……。
  10. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 私たちも、実は輸入の自由化については非常に関心を持っております。これは、物価対策をやる以上、当然のことでありますし、特にわが国は、昨年まで百二十のいわゆる輸入制限品目を持っておったわけですから、何とかこれの自由化をはかりたいということで、たまたま同時に、経済企画庁において輸入自由化の協議会の幹事役等もしておる関係もありますし、閣議でもしばしばこの点については要請もいたし、そしてその自由化の閣僚協議会において、逐次これの自由化をはかってまいったことは御存じのとおりであります。それで、百二十品目になっておりました自由化の品目が、大体本年の一月で八十品目になり、そして四月で六十品目、この九月には四十品目に大体なるわけでございます。ただ、これにはいろいろと問題がございます。私は、実は四十品目というのは大体西ドイツ並みであるということで、形の上から言うと、まあやや国際的な水準にまで自由化したと、こういうことになっておるわけでございますけれども、率直に言いますと、その中身が問題であります。そういう点から言いますと、決して四十品目になったからそれでいいというものではございませんので、さらに四十品目の中身を洗って、ひとつ自由化を進めていくべきであると、こういうふうに実は考えております。そういう意味において、自由化の問題は、まだまだわれわれにとって、四十しか残らないからといって、満足できないという点がまず基本にあります。  それから、自由化をされました場合に、これについていろんな問題がありまして、一つは流通機構の問題であります。先ほどのタマネギの問題がございまして、実はこれは農林省自身がまだ解明し切っておらないものですから、御存じのように、いま調査団をつくって調査をしておるところでありますが、タマネギは、同じ野菜の中でも、これは昔から貯蔵性があるものですから、特にスペキュレーションの対象になっておった品物でございます。そういう意味におきまして、全体としての野菜需要が非常に不足しておる。特にタマネギのようなものは、そういう意味でもってスペキュレーションの対象になって、一体それがどこへ飛んでいってしまったかわからない。何といっても野菜全体の供給があまりにも不足し過ぎておって、すべての野菜を通じて高かったという背景もとにおいて、やはり理解しなきゃならぬ問題であろうと思うんであります。でありますから、一方において、今日のこの複雑な流通機構の問題を、これ、なかなか簡単でないようでありますが、解明をして、そして直すべきものを直す、これは農林省がいま調査中で、結論が出ておらないのは残念なんであります。そうした点が一つやはり残っております。しかし、全体の野菜供給がふえてきますと、私はなかなか、そう、いままでのようにはならない。実は、余談ですけれども、私は、昨年の物価高に万国博の影響というものは非常にばかにできなかったと思うんでありますが、新聞なんかにも、万国博とタマネギの話が一時出ておりましたけれども、ともかく昨年一年その影響が続きました。ことしになって初めて、全国の物価指数よりも大体東京が高くなった。従来は、ずっと東京のほうが大体全国の物価指数より高かったのであります。それが昨年は東京のほうが低かった。逆に言うと、大阪が高かったということであります。それが、やっとこの正月でノーマルな姿にだんだんなってきつつあるように思うんですが、そうした点も頭に置いて考えると、タマネギは何か特殊な事情があるように思われます。まだ結果が出てないんですから、私からかれこれ言うことは差し控えますけれども、確かに流通機構があまりにも複雑であり、奇怪である、そういう点は否定できません。いま農林省は、卸売市場法を提案しておりまして、これをうまく使えば何とかなるという、その気持ちでおるようであります。もちろん、これが出て、そして適切な運用が行なわれるという前提になりますれば、ある程度効果があると思いますが、むずかしい問題であるだけに、これについては、なお十分究明をして、対策を十分講じなければ、なかなかいい結果が出ないんじゃないかと私も心配しておりまして、これは卸売市場法案が通過して、その運営要領が出ました際に、企画庁としても十分参画して、御指摘のような点のないようにしていかなきゃならぬと、こういうふうに考えています。  もう一つ、たとえばスコッチウイスキーのような問題は、御存じのように、これ、自由化されたのが一月一日です。ですから、一月一日ということで、ごく最近なものですから、そういう意味においては多少猶予期間が許されるかもしれません。まだ十分自由化の効果が出てこないかもしれません。ただ、これについては、御存じのように、私もこれ、詳しくないのですが、国際資本の関係がありまして、何か一手販売機関というんですか、向こうのほうの資本の一手販売機関というふうな、何か国際的な独占的なものがあるようにも聞いています。もしそういうことになると、なかなか国内の流通だけの問題では片づかない問題があるかもしれませんが、しかし、いずれにしても、バナナやいろんなものの輸入の際にも、流通機構が問題になっているわけですから、輸入の自由化によって輸入がどんどんできてくる。しかし、それにしても、それを受け取る流通機構がしっかりしていなければならない。そういう意味において、これはなおわれわれとして追跡調査をいたすつもりでおります。バナナの場合には、まだ自由化になっていないというので、組合ができて、ああいうことになっておりますが、ほんとうに自由化が進めば、これは当然効果が出てくる。問題は、やはり一面においてわれわれが輸入の自由化をしたり、あるいは輸入額の拡大をしても何ら効果が目に見えてこないのは、一つ需要の強さでございます。結局、少しぐらい入ってきても、それの効果を打ち消してしまうような今日の所得インフレ的な需要の強さというものがどうしてもございまして、まあ少しぐらい高くても買ってしまう。特に奢侈品的なものにそういう傾向があるわけでありますから、そういう意味で、やはり総需要抑制ということは一面において十分考えなければならないし、その効果をわれわれも十分注目しながら、その圧力のもとにおいて、やはり初めて流通機構というものの改革が効果が出るわけですから、そういう意味において流通機構の問題をやりたいと思っております。——失礼いたしました。バナナは自由化されているのですが、台湾が独占的であるために、組合をつくってやむを得ず対抗しておると、こういう意味において非常に自由化の効果を阻害していると、こういう意味ですから、訂正申し上げます。  まあ特にいま問題になっているものを四、五品目、いま関係各省ともトレースいたしまして、そして御指摘のような、せっかく輸入の自由化をしたけれども、どうもそれが国内の流通機構の関係で十分に効果があらわれていないと思われているものを拾いまして、そして個別的にそれをどういうふうに処置していくか、検討をしております。まあ決してわずかな品目に限られたものではありませんが、やはり何かそうしたものから手をつけてまいり、やはり御指摘の流通機構の問題をできるだけ合理的に持っていかなきゃならぬ、そういうふうに考えております。これには、関係各省がやはり主体となって、その気になってやってもらう必要がありますので、私どもとしましても、問題を提起すると同時に、一緒になってトレースをしていく、こういう考え方に立っておるわけであります。
  11. 阿部憲一

    阿部憲一君 結局、わが国が無理をして自由化を、品目を四十までにしぼっていくということにしても、これがいまのような状況では、物価の安定という面に寄与しない、せっかく輸入しても効果がないというふうな事態でございますので、この点については特に今後ひとつ改善をはかっていただきたいと思いますが、同じようなことですけれども、タマネギも台湾産のタマネギですが、これが割り当てのときには、実績がないとか、あるいは外貨による貿易決済を自分でやれる体制がない、能力がないということで、消費者団体には認めないというような不公平なやり方をやっておりますけれども、やはり私どもその輸入の扱いの商社とかなんとかいう、そういうものの選定も相当公平にやるようにしなければならぬのではないかと思っておりますが、例の緊急輸入でもって、昨年、濃縮したオレンジジュース、こういうような例があるのですけれども、これはオレンジジュースの値段を下げるというのが目的で緊急輸入になったと思いますけれども現実には効果がないわけです。その理由は何かと調べてみますと、そういうふうな不明朗な輸入の経過をたどっておるのではないかと、こういうふうに言われております。そのジュースの輸入割り当てを受けた、ある——日進通商ですか、新聞に出ておりましたが、通産省に申請したときにはまだ法人になっていない、登記もしていない、こういったところが輸入に当たる。そんなことで、非常に、何と言いましょうか、いまの、基本的実績がないとか、あるいは能力がないという一方においては姿勢を持ちながら、他方においては、こういった非常に不可解なと言いましょうか、不明朗なことをやっている。そんなことが、結局、いま長官の言われたような流通——輸入してそれからまた市場に出すというような過程において、やはり、よく言えばふなれ、悪く言えばいろいろ問題があるような、そんなような印象があるわけでございます。ですから、私どもは、やはりいまのタマネギの問題のときには、輸入の場合には非常にきびしく、資格がないとか実績がないとか言って、輸入の業をやりたいというような商社を押えてしまう。一方においては、全然名前がないような企業が、また、何といいますか、法人にもなっていないようなところがそれに当たるというようなことがあるわけでございます。これは一例としてあげたわけですけれども、やはり、こんなことをやっていたのでは、せっかくの長官の言われるような、輸入によって、あるいはまた緊急輸入によって、あるいは自由化によって物価の安定をはかるというようなことも、目的が達成されないのじゃないか、こうも思いますので、今後、この点については、通産当局あるいはまた農林当局が当たられることと思いますけれども、ひとつ、もっと物価の安定に寄与するような輸入政策というものをとり、また、その輸入というものが事実実を結ぶような措置をとっていただきたい、こう思うわけでございます。  それから物価の問題について、いま一応大きな論議を呼んでおりますし、また、消費者が非常に大きな問題として取り上げております問題で、消費者米価の問題があります。これは、物統令の適用を廃止して、そうして消費者米価を自由にするわけですけれども、これについて、一体物価との関連で、どのように長官はお考えになりますか。まあ、物価といいましょうか、直接は米価、この自由化、自由販売してからの米価、そうしてまた、同じそれが一般の物価に、はたして影響があるということになるのかならないのか、長官の御見解をお伺いしたいと思います。
  12. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 実は、物統令から米価をはずすかどうかにつきましては、われわれも前から検討をいたしておりました。まあ、そこで、一方においては、御存じのように、今日の米価問題全体の観点から見て、できるだけ早くこれをはずしたほうがいい、そうしてまた、物価統制令自身が、御存じのように、ほとんど対象品目がなくなっておる際でもありますし、はずしたほうがいいという議論が一方にございまして、ただ、はずすと、いまよく皆さんが御指摘になっておられるように、上がるのじゃないかという心配、両方ございまして、われわれとしましても、ずいぶんこの点についてはいろいろ検討もしましたし、悩みもしたわけであります。ただ、今日においては、政府の売り渡し価格、この基準がしっかりしておりますれば、まあ急に物統令をはずしたから今日の実際の価格よりもそんなに上がるという、そういう心配はまずない。そういう基本のワクがはまっておるわけでございますから。そういうことを前提にいたしまして、まあやはり物統令というものからできるだけはずしていくのが大きな方向であろう、こういう観点から、まあ今度の措置にも賛成をしたわけでありますが、形式的に言いますと、はずれた場合、いわゆる卸・小売りの連中が、マージンがたださえ足らないと言っているのだから、上がるのじゃないかという心配がどうしても出てきますから、これについては政府としてもあらゆる対策を講じて、これがそうしたことのないように、少なくとも物統令がはずれたために米価が末端で上がったというようなそしりを受けないで済むように、政府としても、いまいろいろ対策を考えているわけであります。  まあ、農林当局にもいろいろ研究してもらっているわけでございまして、御存じのように、業者の数をできるだけ新規にふやしてまいる、条件を緩和してまいる、こういうことも一つでございましょう。それから、これだけ一方において、背景において、米の需給がゆるんでおるんでございまして、そういう際でありますから、適当な放出も、これはいざというときには考えてもらわなければならぬじゃないか、こういうふうに考えております。物統令を、いずれ、はずさなきゃならぬ、はずすとしたら、おそらく今後は米の需給がだんだん引き締まってくるんでありまして、いまあたり一番需要供給が多いときでありますから、でありますから、そのときにやはりはずすのが、タイミングとしては一番時期じゃないか、こういうようなことも頭に置きまして、この際踏み切った、こういうようなことでございます。できるだけ今後の対策によりまして御心配のないように運営していかなければならぬ、こういうふうに考えています。
  13. 阿部憲一

    阿部憲一君 この問題ですけれども現実にも相当大きな問題として取り上げられているわけです。ことに物価の問題として重要な問題だと思いますが、いま、ただ、消費者米価がきまっていて、最高を押えている。これは決して値下がりを押えるための消費者米価じゃないと思うのです。むしろ、上がらぬことを防いで現在価格がきまっているわけでございますね。じゃ、現在のところはどうかといいますると、決してそれがあるからむしろ上がらないというような状況じゃないと私は思います。といいまするのは、現実に、手数料の問題にしても、米屋さんが、小売り店が七%ぐらいの手数料を取っている。この七%ぐらいの手数料としては、小売り商として考えた場合には、べらぼうに安い、ほかの品物に比べまして。これはプラスしてあげたいという……。要するに、これは米価にも響く問題になってくると思いますし、またもう一つ要素としても、現在、配給は一キロ百五十三円ですか、家計調査によりますと内地米の配給ば一キロ百五十三円ですけれども、非配給米は百七十円になっている。非配給米と配給米とがあまり値段が違わないということになりますると、現実に、非配給米の値段というものが、どっちかというと自然な値段でありまして、そう心配ばないわけでございますけれども現実に自由にして、非配給米として、やみ米のほうが高いというようなことから考えまして、私はやはり相当、米を物統令からはずした場合、上がるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。したがって、長官のいまのお話では、どうせ米の統制は解かなければいかぬから、それならいまの非常に供給過剰の時代に解くのが一番いいということでございます。確かに、現在の時点において物統令からはずすということがいい時期だという一つ考え方がありますけれども、もう一つ、それじゃ、はたして値段はどうかという問題を見たときに、いまこれは非常に上がるんじゃないかという危険を持っているわけですけれども、この点、あれでしょう、長官は、いま、あまりたいして心配ないような、いろいろ手を打つからいいというようなことをおっしゃったけれども現実に手を打つといっても、現在扱っている小売り店の立場、それからやみ米なんかの流通状況を見ますと、そういったことでなく、やはり上がるというふうに判断するのが正しいじゃないか、こう思うわけですけれども、その辺、いかがでしょう。
  14. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) まあ、実を言うと、お米の値段が上がるかどうかということの判断は、御存じのように、非常にむずかしゅうございます。どうしても質とからんでくる問題でございますからして、いわゆる形式的に、ただ上がる上がらないという問題以上に、いい米だと、どうしても高くなるというようなことがそこにからんでまいりますと、一体上がったか上がらないかの判断自身、非常にむずかしい。率直に言いますと、今日の米価自身が、統制令というワクがあったんですけれども、それはあってなきがごとき事態でもあって、実質上の価格というものは別に存在していたというような事態である。一体どこに水準を求めて議論すべきか、私は非常にむずかしいと思います。ですから、形式的に多少の変動というものは起こるかもしれませんが、まず一番大事なのは、基本的に配給米を受けているような方々のいわゆる支出というものがふえないような方法をどうやって講ずるかということであります。農林省では、いまいろいろなことを考えているようでして、たとえば、そういう方々——全体の中ではウエートが減ってきておりますが、特殊な標準的な価格でもつくって、そうして特別の措置を講ずるようなことになるかどうか。ここにも食糧庁から見えておりますから、あとでお話があるかと思いますが、まだ考えが必ずしもまとまっておるわけじゃないと思いますが、とにかく、いろいろとそういう具体的な対策を考えてまいる。そうして、全体として米の質の上がる分が上がるというようなことは、これは今日相当部分の消費者においては実験されておるわけでありますから、この質とからんで多少問題が起こりますが、全体としての水準はとにかく上げないように持っていきたい。こういう気持ちで実はおるわけであります。  まあ一番問題になるのは、今日の配給米を受けておる立場の方々に対してどういう対処のしかたをしていくか。物統令をはずしておいて、またそういう特別措置をとるのは矛盾じゃないかという議論がいろいろ出ておりますが、これは、現実事態に対処するためには、応急の対策としてはやむを得ないかと思っておりますが、そういう具体的な対策を食糧庁を中心に十分に練っておるわけでありますから、私は、これによって消費者米価の引き上げということになってはたいへんでありますし、私どもの立場としても、これは絶対に避けなければならないのでありますから、いろいろとひとつくふうをして、何とかそうした事態にならないようにやってまいらなければならない、こういうふうに考えております。
  15. 阿部憲一

    阿部憲一君 いまいろいろな対策農林当局で講ずるということでありますが、先ほどちょっと触れましたように、現在の卸売業や小売り業をやっている人たちが非常に、何といいますか、うまみがないといいますか、そういう結果かどうか、あるいはそういった農林省の方針でもって業者を減らしているのかどうか、それはわかりませんけれども現実に卸売り業者も小売り業者も減っているわけです。よく伝えられるように、販売店をもっとふやすのだ、自由に販売できるような機構にするのだと、こういうようなことが、一つの米価を上げないような対策として言われておりますけれども現実には、卸売り業者が四十四年四月一日現在で三百八十四あったのが、一年後には、それが三百六十に減ってしまいましたし、小売り業者も、同時点で五万六千八百七十軒あったのが五万六千三百軒に減ってしまっている。こういう状況があるのです。いまの米の取り扱いに対する妙味というか、利益が、これがかりに自由化されるとなりますと、利益というものがあって、妙味が出てくれば、米屋を開こう、そういうことになると思う。その辺、いま農林当局の考えているところと少し違うのじゃないか。ということは、米をどんどん扱うことによって、小売りとか卸をすることによって、そういう利益がふえるならば、そういった恩典があるというならば、競争状態が出てくると思いますが、いまのようなことによって利益がなくなるならば、店はどんどん減ってくる。自由化した場合には利益があるような状況にしておかなければ、新しい販売業者、小売り店なり卸ができない、こういった一つ大きな矛盾があると思うのですけれども、その辺について、農林当局、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  16. 内村良英

    政府委員(内村良英君) お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、米屋の規模が非常に零細である。しかも数が減っているということの御指摘がございましたが、そのとおりでございます。ただ、米屋と申しましても、非常にバラエティがございまして、たとえば、農村の雑貨屋さんの一部で米屋をやっておるというような米屋さんもあるわけでございます。若干数字を申しますと、年間の扱う数量が十トン以下のお米屋さんが四千軒もございます。そういうものを全部平均しました数字でございまして、米屋の規模が零細だといっても、年間二百四十一俵以上扱うのが、また逆に四千五百軒もあるというような状況でございます。そこで、標準的なお米屋さんについて今後どういうことをやっていこうかということでございますが、私どもといたしましては、やっぱり経営規模が大都市等においても零細だということは事実だと思います。そこで、今後は、協業を促進する、同時に、現在東京、大阪等におきましては小売り屋さんが自分で搗精をやっております。しかし、これも将来は大型集中精米を普及いたしまして、そうした面の合理化をやりたいということで、協業と、そうした流通形態を変えていくということによって合理化をはかりたい。それから、運送その他の面におきましてもいろいろ問題ございます。そういった問題も合理化をはかりて、極力現在の米屋さんの合理化をはかりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  17. 阿部憲一

    阿部憲一君 先ほどもちょっと触れましたけれども、いわゆる高いお米と申しましょうか、やみのお米、これが非常に、何といいましょうか、行き渡っておるのですね。むしろ、配給米自体がやみのほうに流れている。これはもう常識じゃないかと思います。現実に、総理府の家計調査によりましても、昨年の九月の調査の結果ですけれども、各世帯の平均としますと、一世帯で一カ月に支出されたいわゆる配給米の消費量というのが十・七キログラム、全体の五二%、それから自主流通米が一・四キログラムで七%、それから非配給米が、いわゆるやみ米が八・四キログラムで四一%、こういうような平均になって報告されておりますけれども、こういうのを見ますと、配給米が総量が六百三十万トンですか、これは全体の五二%ということになりますと、自主流通米は、これから計算しますと、主食用として二十七万トン出ている。そうすると、これを加えて、さらにこの非配給米、いわゆるやみ米が全体の四一%ということになりますと、量は五百万トン、そうすると合計すると実に主食用として千百五十七万トンが消費されたということになりますが、現実においてはこのような数字ではなくて、これはむしろ総生産量になります。ということは、じゃ、この数字がどうして出たかということになりますと、現実は、配給米が非配給米に化けて市場に動いている。そんなことからして、この矛盾した統計が出ているんじゃないかと私は思います。ですから、このように、むしろこれだけ配給米さえもやみ米のほうに回ってしまう、結局利益になるから。それは、お米屋さんが利益をむさぼっているのかどうかしりませんけれども、そういうような実情なんですね。ですから、くどいようですけれども、お米を自由に、いわゆる物統令をはずした場合には、もう現状においても、相当、少なくともやみ米と同じような値段になるということは常識的に判断できる、こう思うわけです。  したがって、何といいましょうか、よく弁解に使われるような、八百万トンも米が残っているんだ、古米があるんだ、だから解いても値段にはあまり影響がないというようなことは、要するに、先ほど長官が触れましたように、物統令を解くためのいい時期が来たから解くのだというようなことから言えば、むしろ、そういうような時期に来たということの判断にはなるかもしれませんが、価格という点から言えば、価格が相当暴騰するという実情にあるのじゃないかと思います。ましてや、このいまの古米の八百万トンというのは、減反等の措置によって、二年あるいは三年後になった場合には、このバランスがくずれてきます。そうすれば、何といいましょうか、ほかの食料品等、あるいは野菜等も含めまして、値段というものが下がっていく、いわゆる安定するということじゃなくて、むしろ、米自体がまた物価を押し上げていく大きな要素になりはしないか。野菜は、極端に言えば、毎日なくても、あるいは野菜を一日か二日食べなくても生きていけますが、お米は食べなければ生きていけないという人がたくさんあると思います。大部分じゃないかと思います。そんなことで、非常にほかの商品と重要性が違う。そういうことでありますと、それが値段が上がるということになると、もっと物価——米価自体物価の中に占める率というのは非常に高いわけで、ですから国民生活に与える影響は非常に甚大なものだと思います。ですから、私ども、やはり農林省あるいは政府が、もう少し真剣に、この米の物統令をはずす、いわゆる自由化するということに対しては、取り組むべきじゃないか。何か、いい時期が来た、米が余っているから、この際、かねがね願っていた、配給制度といいましょうか、小売り、配給米制度をやめてしまうというような、要するに安易な考え方で対処すべきじゃないと、こう思うわけです。  しかも、いま、かねがね米の販売を、小売り、卸に限らず、販売をしたいというような、個人業者で相当ある。ところが、非常な厳重な規制をして、それをなかなか許さないというような状況です。こういうことでいったならば、必ず私は米価は上がる、こう思うわけです。したがって、いままだ御決定かどうかしりませんが、たとえば、消費者団体とか、あるいはまたスーパーとか、あるいはデパート等々に、あるいは消費者等々にも米の販売を扱わせるということに対して、どのようなことをいま御検討中でございますか、ちょっと伺わしていただきたいと思います。
  18. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 米価の物統令適用廃止は、ただいまのところでは、大体新米の出回るころから実施する方針でございます。したがいまして、ことしの秋ということになります。そこで、先ほども企画庁長官からも御答弁ございましたが、現在、食糧庁が中心となりまして、物統令適用廃止後の対策をどうするかということについて検討しております。そこで、ただいま御指摘がございましたように、自由米価格は非常に高い、自主流通米も高い、したがって物統令を撤廃すれば値段が上がるのじゃないかという消費者団体の御心配もあることは承知しています。  そこで、この際申し上げておきたいと思いますことは、現在、七百六十万トンぐらいの米が消費者のため必要なわけです。そのうち百八十万トンはいわゆる自主流通米で、五百八十万トンは政府がこれを操作するということで、流通する米の大宗は政府がこれを操作するわけでございます。そうすると、いまの全量操作——自主流通米制度ができましてから多少様子が変わっておりますが、そのような操作をしておりながら、自由米より値段が上がっているじゃないかということになるわけでございます。その点につきまして、私どもも遺憾ながら自由米があることは否定いたしません。配給用の米の中からそっちへ流れてしまっているような面があるようなことも聞いております。これにつきましては、卸、小売りの監査をやりまして、そういったことのないような指導をいたしておりますが、遺憾ながら、そういうようなことも現実に起こっておるということも承知しております。現在のところ、一応物統令で値段がきまっておりますので、私どもとしては、一応調査的な面で小売り価格は調べておりますけれども、いわゆる政府の操作と結びつけて価格問題を考えておりません。と申しますのは、一本価格ということになっておりますので、いかにして統制価格を順守するかということでやっております。  ところが、はずれました場合におきましては、ただいま申し上げましたように、政府が流通する米の大宗を依然として持っておるものでございますから、政府の売却操作というものが、これが今後の米価の安定に非常な役割りを演じてくるわけであります。したがいまして、現在、われわれは品質に応じた価格形成が適正に行なわれるような売却をやりたい。同時に、食糧事務所という、われわれ出先機関を持っておりますから、そういうところで常時小売り価格の動向あるいは卸売り価格の動向というものを把握いたしまして、なるべくそうした動向を見ながら、政府米の売却操作によって安定した施策をとりたいということによって、いろいろ検討しています。まだ細目について申し上げるところまで作業を詰まっておりませんが、そういうことで問題を考えております。  と同時に、と申しましても、現実にお米を扱うのは卸屋さんであり、小売り屋さんでございます。したがって、その人たちが、独占とまではいかなくても、ある程度の価格操作をやるということになると、これは非常にいけませんから、そこで新規参入ということを考えております。それじゃ、新規参入はどういうことになるかということになるわけでございますが、米の場合には、いわゆる自由流通という形に、だれでも米屋になれるというところまで持っていくことは私たちも考えておりません。したがって、一定の規制のもとで新規参入をやっていきたいということで、現在鋭意検討中でございます。
  19. 阿部憲一

    阿部憲一君 だいぶ時間がたちますから、このお米の問題はまた次の機会にさらにお伺いしたいと思います。ただ、消費者に販売を扱わせるとか、このお尋ねしたようなことについては、全然まだ検討の段階に入っておらないわけでございますか。ちょっとそれを……。
  20. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま申し上げましたように、米の卸、小売りにつきましては、やはり、だれでもいい、自由営業だというところまでは、現在配給制度ということで、とてもそこまではいけないということで、それでは、現在の卸屋さん、小売り屋さんを中心にして新規参入をはかって競争原則を導入したい、そうするとどの程度の新規参入をさせたらいいのか、これは地域によって非常に違うわけでございます。たとえば、東京を例にとりましても、ある区のごときは米屋の小売り一店当たりの扱い高は非常に小さい。ある区は非常に人口がふえていて扱いが多い。そういった現実の姿というものを十分考えながら、現実的な具体案というものをつくらなければならぬと思いまして、現在鋭意検討中でございます。
  21. 阿部憲一

    阿部憲一君 最後に長官にお伺いしますけれども、いまの、米を物統令からはずす問題自由化する問題について少しばかり当局にお伺いしたわけですけれども、私はなぜこういうようなことを特に心配しなければならないかということは、先ほど来触れておりますように、せっかく政府なりあるいは関係者が相当努力して、物価を下げよう、安定させようという努力をしているにもかかわらず、それが目的を達しない。佐藤長官も、御就任以来二年ですか、非常に物価安定のために二年間健闘されていることはよく存じておりますけれども、それにもかかわらず、現実において、物価は、特に消費者物価については、遺憾ながらいい結果が出ていない。その大きな原因は何かというと、私はやはり流通機構において大きな問題があると思う。ですから、たとえば、先ほど触れましたように、野菜が幾らもあって、ときによっては腐っている。しかしながら、一方、野菜のないところでは非常な高値で、あえいでいる、そういうような実情、それからまた、かりにいまの緊急輸入するとか、あるいは自由化するということによって外国の製品がどんどん入ってくる。これなんか、本来ならば実質的に物価の安定に寄与するはずなんですが、それが現実においてはほとんど影響がない。しかも、品物によっては内地の生産者を苦しめるような事態さえも出ておるわけでございます。ですから、いま問題にいたしましたお米の問題でも、結局、問題は、私、流通機構の問題だと思います。いま内村次長は、それは極力検討してというお話でありますし、農林当局の御趣旨を期待しておるわけでございますけれども、やはりこれはうまくいきませんと、一方においては、お米は腐っている、腐りかけている、しかし片っ方、お米がなくて困る、非常に値が上がって、なかなか手に入らないといいましょうか、要するに高いお金を出さなければ買えないというようなこと、これはもう私は、たとえば山間僻地の米のとれないところ、漁村等においては起こるだろうし、また、都市においても、非常な下層の方々にとっては、そういう問題も起きはしないかというような危惧を持っているわけでございます。ですから、先ほどもちょっと触れましたように、もっと自由に一般の消費者が手に入るような機構にする、それが一つの重要なことだと思いますし、それから、何らかの方法によって——いま、お米につきましては政府がこれ握っておるわけだから、価格操作はできると、確かにそうだと思いますけれども、しかしそれにもかかわらず、やはり末端の配給機構に行きますと——味のよい米、まずい米というような議論も、またいずれ、したいと思いますけれども現実には、いまの消費者は味がいいか悪いかということで注文をして、そうしてお米を買っているというところは非常に少ないと思います。むしろ、米屋にまかせて持ってこさせる、だからやみ米を高く売りつけられても気がつかない、こういうような実情でございます。したがって、私どもも、お米の問題につきましても、流通機構の整備と申しましょうか、ほんとうに米価を上げないような、他の一般物価影響を与えないような、お米の安定した値段というものを実現するためには、やはり、最終の消費者までに行き渡るその流通機構、お米の配給機構の整備、それで私は初めて実現できると思うわけでございます。したがって、承るところによると、いま、だれにでもやらせるという意思はないというお話ですけれども、それはもちろん、だれでも希望すれば米屋になれるということは、やはりいろいろな弊害があります。非常に零細な企業が出現することになって、それはセーブしなければいかぬと思いますけれども、しかし、それだからといって、ちょうどお酒の販売店をチェックしているようなやり方というようなことがありますると、これはやはりそこにいろいろな弊害が起きて、それでまた、予想しなかった米価の高騰というものも起こるのじゃないかと、こう思われるのでございます。したがいまして、流通機構の整備ということは大事でございますが、特にお米につきましては、それを留意して万全を期していただきたいと思います。  今日はこれで私は終わります。
  22. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) いま阿部さんの御指摘の点、私たちも全く同感でありまして、そういう意味において食糧庁にも鋭意御検討を願っているようなわけでございますし、流通機構の問題にはいろいろと抵抗もあるのでありますけれども、しかし、ある程度そうした点を頭に入れて、しかもなお実効の上がるような流通機構、これをぜひひとつ考えてもらいたいと私どもも思っております。できるだけ今後も農林省とも折衝していきたい、こう思っております。
  23. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十分散会