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国務大臣(
根本龍太郎君)
法律を見ていただければおのずからわかるのですが、せっかくの御指名でございますから申し上げますと、何と申しましても
日本の
道路は従来非常におくれておるんです。これば
欧米に比べますれば、普通よく四、五十年といいますけれども、ぼくは数百年おくれておったと見るのです。というのは、先般も私は
予算委員会で申し上げましたように、
日本で
道路政策らしい
道路政策をやったのは
王朝時代にほんのちょっとと、それから秀吉、
信長時代、これは軍事的な
国内制覇のためにやりました。ところが、徳川になりますと逆行しまして、むしろ
道路整備を意識的にこれはやらずに、橋なんかもできるだけつくらずに渡しでやっておる。それからところどころに、要
所要所に親藩と外様と置いて、そして
交通を不便にしたということは、結局江戸に対する進攻を防止すると、ところが、
欧米ではそのときにはすでに国家の対立が激しくなって、軍事上の
目的からずうっと進んでいった。明治維新になっていわゆる国道の
制度、その他の
制度をやりましたが、
日清、
日露以降今度は外地に、国防に
重点がいっちゃって、逆に
日本の
国内の
交通関係は鉄道という新しい魅力ある
交通機関に移動した。当時はまだ
日本は
モータリゼーションがなかったものだから、結局
道路というものは馬と
人間が通ればよろしいと、こういう
状況になって、それが今度は戦後の急激な
経済成長ということとあわせまして
モータリゼーションが急激に進んできたために、
道路がいわゆる近代的な
整備をされていない、そこに車がどこにでも今度出てきたために、本来人馬を
中心としてつくった
道路が車によって全部排除されてしまった。そこにもう
一つはいわゆる
オーナードライバー、それからまた一般の
運転者が
ドライバーマナーというものを全然持っていない。こういうことが重なり合いまして、
交通戦争といわれるように、一年に二万人近くの
人間が死んでしまう、百万人以上が
交通事故で
傷害を受けるという、世界でもまれに見るいわゆる
交通戦争なるものが出てきた。これに対応するためにいまの単に
道路をつくるというだけでなく、いままでややもすれば
道路延長だけに
重点を入れたわけじゃないけれども、そういう結果になっているのを反省いたしまして、とにかく
道路についてはまず
歩行者はもとよりのこと、
自動車を運転する
人たち同士も安全でなければならない、こういうことから今度の
交通安全対策の
計画をつくり上げました。これは
道路管理者である
建設省、それから
交通規制等をやっている警察、それから自治体、こういうものが全部一致して
道路の
条件をよくすると同時に、いまの
歩行者、それからいまの
ドライバーも安全に運転できるような
条件をつくる、こう申し上げるわけでございまして、したがってどこに
重点を置くかというと、まずやはり近代的な
道路にして、第一に
人間の
人命尊重、それから
ドライバー同士の
安全確認ができ、善良なる
ドライバーであるならば、
交通事故による
交通傷害がなくなるようにするということが、この
法律案の
目的でございますと申し上げていいのではないかと存じます。