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国務大臣(
橋本登美三郎君)
踏切事故と限らないわけでありますが、要するに
交通上における、その
交通機関の中におけるお客さんが、いわゆる
死傷を起こした場合、こういうことだろうと思います。これは、
飛行機の場合は
航空会社が一括して
一つの、どういう形か知りませんが、
団体保険に入っているわけですね、その中で支払われると。
鉄道、
電車等についてはその
制度がないということで、
事故の起きました
原因によって、たとえば
自動車等のものによって起きた
原因があれば自
賠法の
範囲内で従来はやっておる。しかし、相手が支払う
能力があれば、それにいわゆる
民事的な
補償を加えて、先ほどのように
最高一千万円というものがあり得るわけです。ただ、現在のところは、先ほど
局長が説明した以外にあまり出ないと思いますが、しかしこれは、
局長の説明しておるのは
一つの法律論の解釈であります。したがって、まあ
鉄道会社あるいは
国鉄から見れば、そのけがをした人が第三者ではなくて自分のお客さんである、こういうことなんですね。ですから、
東武鉄道がそういうような措置をとったのは、自分のお客さんに対してできるだけのことをしたい、こういうことのあらわれだろうと思うんです。それはまあ形式上は相手との間に契約を結んで弁済するという、超過分については弁済する、こういうやり方をとりましたろうが、その精神は、やはり自分の大事なお客さんでありますから、したがって、自
賠法限度外、そして形式上はもちろん自分の
責任じゃありませんから、したがって、
トラックの
会社が出すという、
負担するという形式で、そこで話し合いをする、
範囲内で
——これはきめたわけでありますから。で、これは
民事訴訟ということになれば、当然これは相手が現実には、現在は
支払い能力があるとないとを問わず、
民事訴訟法で争えば、その人は将来ともに、いわゆる
賠償の
責任を負うわけです。現実にはもちろんそれはまあ
支払い能力がないかもしれないが、その人が一生貧乏でおるわけではありませんから、将来に、いわゆる
負担を持つ。
民事訴訟法で決定すれば、その人がいつか払わなくちゃならぬ。しかし、それは実際上の問題として
解決がつかないということからして、まあいろいろ社会的
——あるいはまあ話し合いといいますか、
示談という形式で、
東武鉄道はそういう形式をとったろうと思います。ですから、
富士急の場合においても自
賠法の
範囲内できめるかどうか。私は、そうはいくまいと思うんですね、実際上からいえば。やはり自分のお客さんですから、
富士急にしてもできるだけのことをするだろうと。この問題は、これは私も、相手の問題でありますから、こうせよ、ああせよということは強く申し上げることはできませんけれども、やっぱり自分のお客さんは大事にすると思う。であるから、万が一、そういうことがあってはいけないけれども、あっても、自分のお客さんに対してはできるだけのことはするんだと、こういう姿勢が、これは民営であろうと国営であろうとなくちゃいかぬと思うんです。しかし、これもなかなか将来ともに大きな
負担になりますから、それだけで片づけていくというわけにはまいりますまい。そこで、
飛行機会社がとっておるような
制度が、
私鉄なり
国鉄なりでとれるかとれないか。たとえば
原因が自
賠法で支払われるという
原因であれば、まあ一部はそこで支払われますけれども、たとえば、がけ下を列車が通っておって、上から大きな石が自然に崩壊して倒れてきた、これは
原因は
国鉄にあるわけでもない、あるいは
私鉄にあるわけでもないが、とにかく
一つの、他の第三者といいますか、ものの
原因によってその列車がひっくり返って、そうしてけが人を出した、それはだれが負うのだ、こうなりますというと、自分の運転もしくは
会社、
国鉄自身のあやまちによって起きたものでありませんから、したがって、非常に
責任の
所在が明確でない場合が起きてきます。その場合に、だからといって、いま
瀬谷さんがおっしゃったように、死んだことあるいはけがをしたことの事実は変わりはない。しかも、それは列車なり
私鉄の
会社の車に乗っておる人がけがをした。でありますからして、そういうものに対しては、やはりこれは考えざるを得ないわけです。まあ
国鉄、大手
私鉄というようなものになりますというと、相当力がありますから、実際それをある
程度処理し得る
能力があると思います、そうめったにあることじゃありませんから。しかし、それだけでは実は安心ができないということも
一つの事実でありますから、したがって、何かまあどういう形でやりますか、これはいろいろこういう公開の席上で申し上げるほどのものは固まっておりませんけれども、たとえば
私鉄なら
私鉄、
国鉄も含め
鉄道業者といいますか、そういうものが
一つの保証
会社といいますか、再
保険会社といいますか、そんなものも
一つの方法だろうと思うのです。そうすると、小さな
私鉄もみんな入ります、あるいはバス
会社も一部の、局部のバス
会社だけでなく、全体の
——まあバス
会社は、一応自
賠法の
適用を受けておりますけれども、これもしかし、それだけでは追っつかない。しかも、最近のように地方のバス
会社が経営が苦しくなってくれば、なかなか自
賠法以上に
会社が
負担をすることもむずかしくなってくる。そういう場合に、全国的な組織の中で、そういう
補償といいますか、まあ、形式が
補償になるか、
弔慰金になるか別でありますが、
内容的にはしっかりした
金額をそうしたなくなられた
方々あるいはけがをされた人に、いわゆる
補償をするといいますか、そういう形を、これは研究する必要があるのじゃないか。ということは、きょう
踏切道の五カ年延長の問題を御審議願っておりますが、しかしながら、あとで御質問があろうと思いますが、五カ年間で
踏切が完全にできるのかと言いますと、これはなかなかもちろんむずかしいし、ことに、最近においては、御承知のように、市街地において連続立体交差を計画されております。こうなりますというと、これは膨大な予算を必要とします。したがって、五カ年やあるいは十カ年でもむずかしいだろうと思う。相当の金を使っても、これはなかなか連続立体交差というのは、そう簡単には完成はしていかない。しかし、これはやらざるを得ない。ことに、市街地においては、これからの
一つの方向は、連続立体交差が最大の
一つの緊急の必要であると思う。であるからして、こういう問題考えますというと、いわゆる
交通事故に対する
弔慰金といいますか、
補償金というものに対して、従来の考え方から一歩前進した考え方を持つ必要があろうというのが
——先ほどまあ
山口局長の、ばく然と、おずおずしながら話しましたことは、もちろんまだはっきりと方針がきまっておりませんから、おずおずの態度で言わざるを得なかった。私もそう明確には申し上げられませんが、これはひとつ緊急にそういうような新しい
制度というものを考えていく必要があろう。そうすることによって、あるところでは命が
幾らである、あるところでは命の値段が高い、こういう不公平もなくなると思う。従来算定しておるように、その人の身分あるいは年齢等によって将来の点がありますから、もちろん人によっては差がありますけれども、同じような条件でありながら、あるところでなくなられた人は
幾ら、あるところで死んだ人は高い金が出る、こういうことはなくなるだろうと思う。そういうような基本的な問題もこれからは積極的に考えていく。また、
踏切事故にいたしましても、これだけの五カ年の延長をしていただきましても、私は、
踏切事故が絶滅にはなかなかならぬということは、いま、いわゆる国土開発といいますか、国土開発というものは、従来は大都市中心に行なわれてまいりましたが、今後の国土開発計画からいえば、全国的にこれは広がっていくということは、至るところに危険が包蔵されておるということであります。最近の
事故が、いわゆる公害といいますか、相当三十キロ圏内のところで大きな
交通事故が起きるというゆえんのものは、そういうぐあいに開発計画が中心外、中心からだんだんと外に広がってきておる。そこに
ダンプカーなり、重
トラックの走る率が多くなってきた、こういうことが今後ともふえてまいると思います。したがって、できるだけわれわれは
踏切交通事故を減少さすべく努力はしておりまするが、その志とは必ずしも
——いわゆる
事故件数というものは、将来ともに減っていくかといえば、いま申したような国土総合開発は分散をしていく、こういう傾向から見ると、なかなか容易ではないであろう。しかしながら、当然これは
踏切の立体交差は進めなくちゃなりませんので、できるだけ短期間内にといいましても、五カ年で全部できるかといえば、先ほど申したような連続立体交差の問題もありますから、それじゃ完全にはできませんけれども、少なくともできるだけ早い機会にそうしたいわゆる立体交差ができるような措置を講じていく、こういうことがやはり最も根本的な措置であろう、こう考えておるわけでございます。