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1971-02-23 第65回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十三日(火曜日)     午前十時三分開議  出席分科員    主査 大坪 保雄君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       田中 正巳君   三ツ林弥太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       松本 善明君    兼務 岡田 利春君 兼務 小林  進君    兼務 渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外部省条約局長 井川 克一君         外務省情報文化         局長      藤山 楢一君         水産庁長官   大和田啓気君  分科員外出席者         外務省情報文化         局文化事業部文         化第二課長   山野 勝由君         大蔵省主計局主         計官      徳田 博美君     ————————————— 分科員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     近江巳記夫君   松本 善明君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   近江巳記夫君     矢野 絢也君   津川 武一君     松本 善明君 同日  第一分科員小林進君、第三分科員渡部一郎君及  び第四分科員岡田利春君が本分科兼務となっ  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算外務省所管を議題とし、説明を求めます。愛知外務大臣
  3. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外務省所管昭和四十六年度予算について大要を御説明いたします。  予算総額は五百二十九億一千四百四十二万八千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、科学技術振興費一億九千二百三万七千円、貿易振興及び経済協力費百六十四億三千四百四十万三千円、その他の事項経費三百六十二億八千七百九十八万八千円であります。また組織別に大別いたしますと、外務本省三百二十二億五千六百十五万二千円、在外公館二百六億五千八百二十七万六千円であります。  その内容について御説明いたします。  第一、外務本省一般行政に必要な経費四十九億四千二百七十三万八千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関である外務省研修所外務省大阪連絡事務所において所掌する一般事務処理するため必要な職員千四百八十五名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費七億二千三百十万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三、アジア諸国に関する外交政策樹立に必要な経費九千百十七万八千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費であります。  第四、米州諸国に関する外交政策樹立に必要な経費一億一千四百十万八千円は、米州諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人ラテンアメリカ協会補助金三千四百四十一万八千円、ニューヨーク日米協会新館建設費補助金六千九百四十万円であります。  第五、欧州大洋諸国に関する外交政策樹立に必要な経費二千七百六十一万三千円は、欧州大洋諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人北方領土復帰期成同盟補助金八百二十万円であります。  第六、中近東アフリカ諸国に関する外交政策樹立に必要な経費一千三百六十三万八千円は、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人アフリカ協会補助金四百八十三万六千円及び財団法人中東調査会補助金二百二十三万二千円であります。  第七、条約締結及び条約集編集等に必要な経費二千九百九十九万四千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第八、国際協力に必要な経費四億五千八百七十万七千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議わが国代表派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会補助金二千百五万三千円、社団法人日本エカフェ協会補助金一千二十八万三千円及び財団法人日本ユニセフ協会補助金四百三十八万七千円であります。  第九、情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費十八億四千八百七万五千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情啓発及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに財団法人国際学友会補助金二億百十三万四千円、財団法人国際文化振興会補助金二億六千五百六十二万九千円、財団法人国際教育情報センター補助金二千百七十五万円、社団法人日本新聞協会補助金一千四百六十八万一千円及び啓発宣伝事業等委託費四億二千六百五十二万五千円であります。  第十、海外渡航関係事務処理に必要な経費六億五千五百六十一万九千円は、旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費三億四千六百七万八千円であります。  第十一、国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費六千二百五十四万七千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  第十二、経済技術協力に必要な経費九十三億六千三百八十七万六千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに賠償等実施の円滑かつ統一的な処理をはかるため必要な経費コロンボ計画等に基づく技術者の受け入れ、派遣日本青年海外協力隊派遣各種技術訓練センター設置並びに医療農業及び一次産品開発のための技術協力実施に必要な委託費七十八億五千八百九十七万五千円、経済開発計画実施設計等委託費一億六千七百十九万八千円、国際医療団補助金三百万円、海外農業開発財団補助金三百万円と海外技術協力事業団交付金十二億二千四百四十三万三千円等であります。前年度に比し十六億三千三百六十七万二千円の増加は、主として海外技術協力実施委託費及び海外技術協力事業団交付金増加によるものであります。  第十三、経済開発特別援助に必要な経費十四億三千万円は、南ベトナムチョウライ病院改築等のために行なう援助に必要な経費であります。  第十四、海外技術協力事業団出資に必要な経費四億一千七百万円は、海外技術協力事業団三崎研修センター建設等に要する資金として同事業団に対し出資するため必要な経費であります。  第十五、国際原子力機関分担金等支払いに必要な経費一億九千二百三万七千円は、わが国が加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十六、貿易振興及び経済協力にかかる国際分担金等支払いに必要な経費四十七億四千八百四十五万六千円は、わが国が加盟している貿易振興及び経済協力にかかる各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十七、国際分担金等支払いに必要な経費四十六億九千百六十九万一千円は、わが国が加盟している国際連合その他各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十八、移住振興に必要な経費二十二億四千五百七十七万五千円は、移住政策企画立案及び中南米諸国に移住する者七百名を送出するため必要な事務費並び移住者渡航費等交付金一億三千四百十五万円及び海外移住事業団交付金十九億七千七十四万六千円等であります。  第十九、海外移住事業団出資に必要な経費二億円は、海外移住事業団の行なう事業に要する資金に充てるための同事業団に対し出資するため必要な経費であります。  組織在外公館。  第一、在外公館事務運営等に必要な経費百六十億五千四百五十五万二千円は、既設公館百三十三館、四代表部、一代表事務所千二百十九名と、四十六年度中に新設予定の在ガボン大使館ミュンヘン総領事館設置のため新たに必要となった職員八名並びに既設公館職員増加四十四名、計千二百七十一名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費十六億九千十万円は、諸外国との外交交渉わが国に有利な展開を期するため、在外公館において必要な工作費であります。  第三、輸入制限対策等に必要な経費四億一千二百五十二万四千円は、諸外国におけるわが国商品輸入制限運動等に対処して啓蒙怒号仏運動実施する等のため必要な経費であります。  第四、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費五億七千四百八十六万九千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国政治経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流を行なうため必要な経費であります。  第五、在外公館営繕等に必要な経費十九億二千六百二十三万一千円は、在フィリピン大使公邸ほか五カ所の継続工事及び在ブラジル大使公邸ほか五カ所の建設費ほか七カ所の公邸事務所用土地建物購入費並びに一カ所の公務員宿舎建設費その他関連経費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和四十六年度予算大要であります。慎重御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 大坪保雄

    大坪主査 以上をもちまして、外務省所管予算説明は終わりました。     —————————————
  5. 大坪保雄

    大坪主査 この際、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は要領よく簡潔に行なうよう御注意を申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎秀二君。
  6. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 まず第一に、数日来、天皇、皇后両陛下の御訪欧ということが逐次新聞紙上発表されております。本日は政府から正式発表があるように聞いておりますけれども、これが事実かどうか。事実とすれば、たいへんけっこうなことでありまして、終戦後すでに二十五年、四分の一世紀を経過し、また陛下には東宮時代イギリスに行かれた思い出があるそうでありますし、最近も多くの方々に接見をされる際に、なつかしい昔の思い出を物語っておられるということを伺いまして、いつか陛下にも訪欧あるいは訪米、さらには最も近い東南アジア、しまいにはやはり中国に行かれるのがいいように思うのですね。けれども、とりあえず政情の安定しているヨーロッパへ行かれるということは非常にけっこうなことだと思っております。その際外務大臣はお供をされるというようなことも伺っておるのでありますが、これらの件について外務大臣からまずお伺いしたいと思います。
  7. 愛知揆一

    愛知国務大臣 天皇陛下の御外遊につきましては、かねがね政府といたしましても慎重に準備に当たっておりまして、実は今日じゅうには相当の程度はっきりした御予定をつくりまして公表できる運びに相なっております。  大体その考え方といたしましては、ヨーロッパ元首日本を比較的最近公式に訪問せられた方に対する御答礼、あるいは近く訪日せられるやに仄聞しておりますところに対する御訪問というような形で、ヨーロッパに御外遊になると思っておりますが、十分慎重な準備をはかっていきたいと思います。  これは政府として非常に大きな責任のあることでございますから、しかるべき随行を考えるべきであると思っておりますが、本日の状況におきましては、だれがどういう資格でお供するかは未定でございます。
  8. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 元首訪問をされた、これはベルギーの国王、それからハイネマン西ドイツ大統領ということであろうと思うのですが、イギリスへ行かれるのは、王室からアレキサンドリア王女あるいはマーガレット王女、さらにチャールズ王子等が陸続と来られた御返礼でもあり、日英皇室の昔からの関係ということもあずかって力あるものだと思います。  けさ一部の新聞には出ておりましたし、私もきょうの質問でそういうことを慫慂しようと思っておりましたそれは、ぜひエリザベス女王にも一度日本へ来ていただいて、日本イギリスとの関係きずなの深さをさらに強めていただきたい。今日の日英関係は、昔の日英関係のようなことではございませんが、しかしながら、世界良識国としてのイギリスの向背は、今後世界政治にも大きな影響を与えていくものだと思うのであります。後刻中国承認問題に触れますが、私は、本年六、七月ごろに行なわれるであろう英連邦首相会議の結論は、本年の国連総会の中国代表権問題にさらに決定的な打撃を与えるだろうと見ておるものである。これは本席で申し上げるのが初めてである。そういう意味でもイギリスとの関係を深めておくことは非常に大事であります。エリザベス女王は優雅で気品あふるる典型的な英国婦人のかがみでもあるし、ぜひ来ていただきたい。  それからいま日本国民の中で率直大胆な表現をすれば、エリザベス女王が来ていただくことは、日英両国関係きずなを深めるばかりでなく、ヨーロッパ中心国たるイギリスとの関係を通じての日本の地位の高まりということを感じておるのです。まあ人気があるというなら周恩来首相が来るのが一番人気がある。しかし、これは今日の問題ではない。私はそう思っておる。エリザベス女王の来日は外務省としてもぜひ御慫慂を願いたいと思いますが、この点はいかがでしょう。
  9. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともでこざいまして、政府といたしましても、イギリス女王さまが適当な機会にぜひ来日していただきたいと考えておりますし、できるだけの御助力をいたしたいと思っております。
  10. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 その他は政治問題であります。  日本では外交問題といえば、いまからの大問題としての中国問題に集中されているようですが、アメリカにしてみれば、中国問題はいまの問題ではなく、この次に来たる問題である。いまはベトナム問題の処理で手をやいているわけです。アメリカの政界へ参りましても、アメリカ財界の関心も、ことごとくベトナム戦争収束いかんということであります。  しかるに、最近におけるアメリカ政府の打っておる手、これはおそらくペンタゴン影響力が強くて、ニクソン大統領はやむを得ずああいう作戦をしておるのかもしれませんが、過ぐるラオス侵入作戦については、あまり現在国会で、社会党の方で一、三論ぜられたけれども、ほとんど論及がない、はなはだ遺憾だと思うのです。やはり当面のベトナム戦争の火を消すということに全世界が一生懸命にならなければならぬ。それを中国問題だけにしぼるということは、将来の展望であっても、現在の当面の処置ではないわけです。  このラオス情勢というものの展開にあたって政府がいち早く支持した、この間、佐藤総理大臣がどなたかの議員質問に答えた、予算委員会総括質問の最後のほうだと思うのですが、ラオス情勢については米国方針支持すると簡単に言われたけれども、あの作戦は実は相当近隣を刺激しておる。  一体アメリカベトナム戦争を終結しようとしておるのか。場合によっては、相手の出方によってはもう一度居直って拡大するのではないか。形勢はとうとうとして、アメリカ予算の裏づけにしても世界情勢にしても、ベトナムから撤退をしようという方向に向いていることは事実ですけれども、しかし、勢いというものはある。昔、関東軍は一ペん戦いをやめようと思って、越境してまたやり直した。こういう勢いはいまの現地のアメリカ軍司令官あるいはペンタゴンの一部には相当に強いのであって、ほんとうアメリカ戦いをやめるつもりで今日のラオス作戦をやったものか。  マンスフィールド議員などのごときは、民主党院内筆頭総務の重責にありながら、こういうラオス侵入という情報がフランスや日本新聞から流れてきて、われわれはあとで知るなんということはべらぼうな話じゃないかと怒っている。ニクソンというのは現実的な大統領だと思ったが、これではいかぬということを思い出してきて、アメリカ議会内部情勢も、いま、国会休会中ですから、開かれると相当激しいものがあるように感ぜられてきておるのであります。  そういう意味では、政府が何で早いところアメリカ側のやっていることが当然だというふうに支持をされたか。私はベトナム戦争が収拾しようという方向にきてまた逆転するというようなことになったらたいへんだと思うので、この質問をしているわけであります。
  11. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府といたしましては、いまお話しになりましたような考え方は、やはり基本的にはインドシナの平静状態が一日もすみやかに回復されること。それからいままでの経緯はいろいろありましょうが、とにかくアメリカ軍隊撤退する、それからその原因になったといわれているような北のほうも撤退をするということが、基本的に一番望ましいという角度に立って、行動いたしておるつもりでございます。  したがいまして、ラオスの問題が起こりましてからは、政府としてはいち早く、ラオスとは特に日本としても親善関係にある国であり、また政治的なステータスも北のほうからも承認され、支持されてきている経過もございますから、ラオス政府の声明を中心にして、その態度支持していきたい。そして御承知のように、ラオス中立維持外国軍隊即時撤退ということを中心にして、まず米ソ共同議長国が動き出すことをすみやかにしてくれ、それから国際監視団活動を活発にしてもらいたいということを趣旨といたしました申し入れを関係国にもいたし、またことにジャカルタ会議からの縁もございますので、マレーシア、インドネシア等日本パラレルに、日本考え方行動に賛意を表して、自分たち日本パラレルに同様の行動をとるという、かような行動を開始していることは御承知のとおりと存ずる次第でございます。
  12. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 いまの後段のことは非常にいいことだと思っているのです。しかし、それには、アメリカももう撤退準備をしているならば、いまさら世界を驚倒させるような、他国に侵入するというようなことをしないで、それはラオス軍隊にまかせる、あるいは南ベトナムもいろいろな行きがかりがあるでしょうから、南ベトナム政府軍にまかせるということで、まあやむを得ずアメリカあと押しをしたというならいいが、アメリカも一緒になって越境する。これは困る。あのやり方を見ておると、行きがけのだちんみたいで、とにかくおれは強いのだ、強いのだけれども、まあ世界の世論もあるから引き揚げる、引き揚げぎわに腕力を一ぺん見せてやろうという、ヨタモノがやっていることとしか私には感ぜられないので、そういうことをアメリカにこの際やらせることが日本政府のやるべきことではないので、日本も北側に忠告するならばその前にやはりアメリカに忠告する。  この前、私は三木外務大臣のときにも、あなたが大臣のときにも申し上げたけれども、双方に警告を発して、そしていまのような案を出せば、それはいろいろなきっかけにはなるでしょうけれども、アメリカ方針佐藤総理大臣は、私はあれは撤退のための作戦だと思っておりまするから是認しますと言った。どうですか。
  13. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府態度は、双方を否認したり、それからこれ以上対決的なムードが出るということを極力避けていくべきである、そして一切の外国軍隊撤退するということがまさに望ましいことである。たとえばこれは予算委員会総会でも申し上げましたように、ラオス政府自身が第一義的に北が入ってきたことが困ることだということを指摘しておるけれども、しかし、そうだからといって、さりとてそのほかの軍隊が入っていることを正当化することはできない、こう言っておりますし、政府といたしましては、そのラオス態度というものがまことによく理解できる、そのとおりである、これを守り、支持をしたいということを基本にしているわけでございまして、これは北がどうやったことは非難すべきであるとか、あるいは米国がこうこうしたことはこういう点で支持ができるとかできないというよりも、これからの措置について関係国ほんとうに真剣になってもらいたいということを披瀝していくのが、日本としての態度ではないかと考えております。
  14. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 いや、簡単に聞きますが、いま起こっておる事態についての善悪というものを越えて、ただラオス政府支持をしておれば、アメリカは反省するものだとあなたは思うのですか。
  15. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは同時にわれわれのとっている態度については、われわれはこれが正しい行き方であると信ずることを、アメリカ政府に対しても十分私としては話をいたしておるわけでございます。そのことは、私は、甘いかもしれませんけれども、相当考える資料にはなるのではないかと期待しております。
  16. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それはお話しになるといって、昼間アメリカ大使に会ってその話をしても、これは表に出しませんからと言えば、それっきりですから、やはりああいうことがあった場合には、友邦といえども、いまやっていることはまずいじゃないか、少なくともラオス政府の言っておる筋、北ベトナムが初めに侵入してきたことが原因であるけれども、しかし、それかといって他の軍隊がまた大規模に越境するということもまずいのだから、そういう意味で、アメリカに非難ができなければ、助言でもよければ勧告でもよい。そういうものを今後出したらどうですか。そうすると、日本の立場というものに対してもアメリカは非常に評価する。ただ昼めしに会って、おまえさんのところ少しぐあいが悪いんじゃないですかということを言ってみたって……。私はそう思うのですが、どうですか。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 同時に、ただいま申しましたように、公に内外に対しまして日本政府態度を公表し、かつこれはそれまでもいろいろ外交ルートを通してやっておりましたけれども、十九日に特に公式の発表をいたしまして、これこれの措置をいたしました、アピールをしましたということを内外に宣明をしておるわけでございます。こういうことは表に堂々と出しているわけですから、日本政府のこうした態度というものは、必ず何らかの効果を生むであろうと期待をいたしておるわけでございます。
  18. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 もう少し大局的に見て、ベトナム戦争というものを七二年中には終結せしめるということがニクソン大統領方針のようにわれわれは聞いているのです。聞いているじゃない、天下に声明しておるわけです。ベトナム戦争がエスカレートする前に、故ケネディ大統領がサイゴンにあるアメリカ軍司令部を増強して不測の事態に備えた。これはアメリカ軍ベトナムに昔、七、八年前です、参戦をするに至った最初のきっかけであるが、そのとき兵力は軍事参謀を入れて一万一千だったですね。この程度にまでアメリカ軍は来年中になるものでしょうか、どうでしょうか、ベトナム戦争をやめると、撤兵すると。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アメリカとして具体的に公表しているのは、この五月までにさらに六万の撤退をするわけでございますね。合わせて十五万人になりますか。そうすると、その五月末の時点では二十八万ですか、こういうことになる。まず、少なくともすでに具体的に公表した撤兵計画が確実に実行される。そしてさらにその後の撤退計画というものが十分に計画され、実行されることを望みたいと思います。いまはとにかく公表したことを適確に少なくとも実行することを期待したい。そうして日本がこういうふうな態度であるということも、そういうことに対しての刺激剤になるのではないかと私は思っております。
  20. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そういう意味で、アメリカとの接触についても十分されるとともに、ときどき日本政府の良識のある態度を表明していただきたい。その良識のある態度というものは、やはりき然たる態度でなければならぬので、ただこうなさったらどうですかぐらいのところではいかぬと私は思うのです。  現在ラオスで行なわれておる作戦、それへ参加しておるカンボジアの兵隊のやっておること、これが近ごろ西独の特派員なんかがとってきた写真を見ると、これはまあアメリカ側も大っぴらでいい点もあるのでしょうけれども、カンボジアの兵隊が北ベトナムの兵隊のなま首を幾つもぶら下げて万歳している写真なんか見ておると、あれは全くニクソンはアジア人の血をもってアジア人の血を吸っておるというようにいわれてもしかたのない今日の場面です。私は別に人相見じゃないですけれども、ニクソンのあのまゆ毛と目が非常に接近しているのが気にかかる。あれはいままで戦争を起した人物はみんなまゆと目がひっついて、きつい顔つきなんで、なるべく来年の大統領選挙までに大きな戦争はなくて、次期大統領は民主党ということになりそうな形勢でもあるけれども、平和論者が勝利をおさめるようになってもらいたいと、アメリカ人でないにかかわらず、全世界のために祈っておるのが私の今日の考え方であります。まあしかし元首でありますから、そうひどい批評はいたさない。ニクソン氏も非常に考えて今日対処されておるのではなかろうかと思いますけれども、あれはずいぶん気にかかるのです。  さてそこで、これに関連しての最後の一問は、北ベトナム代表は、おとといでありますか、さきおとといであるか、パリの和平交渉会議で、いままでは中国のことを口にしなかったのです。しかし、ラオスにおける今日のアメリカ軍の侵入のやり方を見ると、中国も黙ってはいないだろうということを言うておるのは、北ベトナムから派兵してくれといわれた場合は中国は出るということを、周恩来首相は三年前かの中国の参戦の一つのケースとしてあげておる。非常に危険な状態。これはおどかしで済めばいい。今日では出ないだろうとアメリカ側も見ておる。そんなことで米中対立ということになれば、これは救いがたい問題になります。  現在、日中覚書貿易交渉、この中で中国側が一番指摘をしておるのは、インドシナ作戦の非常な拡大ということなんです。そこをひとつお考えをいただいて、日本側はやはりアメリカ側に助言をする。また私がいま言っておる中国参戦の問題について、その可能性について愛知外務大臣は十分分析をされておるのかどうか。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府としても、この状態、成り行きについては大きな関心を持って、情報の分析につとめております。そしてこれは申し上げるまでもないことでございますけれども、中国がこの戦争状態に積極的に介入するというようなことがないようにするのにはどうしたらいいか。これは先ほど来申し上げておりますように、今日の事態をすみやかに改善しなければならない。このことが絶対に必要だ、そういう認識に立って努力を続けてまいりたいと思います。
  22. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 ラオス並びに北ベトナム情勢、これらの問題につきまして相当長く伺いましたが、中国問題は、この間の予算委員会の一般質問でももう申し上げましたので、そう深くは申しませんが、あのときに言い忘れたことばもありまするし、けさの新聞を見ますると、郭沫若氏は来ない。これはやはり佐藤内閣が持っておる中国政策の間は政府間の接触はしないし、また要人も出さない。日本との交流は今後深めて、次の内閣までの間に中国と日本との関係が円滑にいくようにしようという非常な向こう側の気持ちもあるわけです、配慮もあるわけですね。交流は大いにやる。けれども、要人が行くことは面目上困るということになってきたことから考えますと、もう佐藤内閣ではにっちもさっちもいかないような今日の中国問題ではないだろうか。私はそう思うのです。どうでしょう。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この間もこの点については私もいろいろと政府態度を申し上げましたけれども、日中の折触について、政府からいえば、こちらはこちらに阻害要因はない、こういうふうに政府は考えておるわけでございまするけれども、やはり長い間のこういうふうな正常ならざる関係でございましたから、相互の誤解が解けて話し合いの場ができるようになることについては、今後といえども佐藤内閣におきましては、そういう姿勢は持ち続けてまいりたい。これは、何としても長いこれからの関係を考えますと、佐藤内閣といたしましても、非常に真剣に常に検討を続けていかなければならない問題であると思います。
  24. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 実際、いつまでこの内閣をやるのか、これが心配になってくる。この内閣では中国政策は動かない。この間は、勘定してみたらこういうことなんだ。岸さんが内閣をとった間が三年八カ月。いまの総理大臣が今月で六年四カ月十年ちょうど。この数字はどういうことになるか。支那事変から大東亜戦争がきれいさっぱりと終わるまで八年一カ月、二人で十年。支那事変から始まって大東亜戦争が終わるよりも長く内閣をやっておる。これはこれだけでは何でもない。その間、中国政策は全部ストップ。戦争をやっておるより長いじゃないか。満州事変が始まったのが昭和六年ですから、これは十五年。しかし、来年の六月ごろまで行かれた日には三分の二、たいへんな数字ですよ。この間、私は調べて寝られなくなった。ほんとですよ。これは容易じゃないことだ。岸さんの素姓と言っちゃ悪いけれども、生い立ちからすれば、中国を承認することはできないでしょう。  それは、この間ルーマニアに行ったらこういう話を聞きました。これはぜひ覚えていただきたい。ルーマニアのチャウシェスクという青年大統領の補佐で、副大統領格のボドナラシュという人がいます。それが私といろいろなお話をされましたときに、これは七十二、三歳の方ですから、古い日中関係の歴史を知っておられる。それが言うのには、日本が戦争中大陸でいろんなことをやった。略奪、暴行、だけれども戦争というものはしかたがないものだ。もちろん日本側に大きな失点がある。これは日本人がみんな意識しておる。けれども、一つ忘れていることに、満州国をつくったということについての順罪感というものが日本にはないような気がする。このボドナラシュ氏が昨年松村訪中団のあと、五月の四日から十日ぐらいの間にルーマニア代表団を率いて訪中された。毛沢東に二回、周恩来にはほとんど毎日会った。友好国だと毎日会える。まだ藤山さん周恩来に会えないくらいですが……。ボドナラシュ氏がだれから聞いたとは私は申し上げないが、これらの中国の要人のうちで、満州国をつくったということに対する恨みは永久に消えない。人の国へ来て戦争をしただけではない。別の国をつくって別の行政組織をつくって、それを違う国にしようとした日本人というやつは、世界じゅうの一番悪いやつだということを考えている。それは日本代表者に言ったことはないそうです。  なるほどわれわれは満州国が一番悪いということは聞いたことはない。そういうものの清算も日中関係ではしなければならぬ。それと関係がある人はだれですか。満州国をつくった人はだれですか。軍部であり、その次はだれですか。その人はしかたがない。たとえ兄貴であろうが何であろうがしかたがないが、佐藤さんはそれとは違うと思うのです。そういう意味で、この次の内閣がやるにしても、次の内閣は日中関係を打開するにしやすい道くらいはできる限りはつけてやらなければならぬが、これがまた南漢宸事件その他があって、いろいろなことが重なって不信になっている。向こう側からこっちに対する不信になっておる。  そこで、去年の佐藤——ニクソン声明に対して、台湾問題に言及したということでいろいろ誤解が生じてきた。これは誤解も相当あると思うのですね、軍国主義台頭ということで……。今度はあまり軍国主義の台頭ということは言うておらぬです。しかし、日本経済とそれから防衛方針が一体となって台湾に進出しておるということは、そういう意味での注視も強力にし出しておるわけですから、われわれはそういうような歴史的な観点を見ていくと、さっき数字をあげて冗談みたいに言ったけれども、これはえらい数字ですよ、ほんとうに。日中妨害十年、この点どうです。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日中問題についてかねがね非常な御健闘と御経験を積んでこられた川崎さんの御意見に対しまして、私も謙虚に敬意をもって拝聴をいたしたいと思います。  それから、ただいまも数字をあげてお話しのように、是非の判断その他は人によって違うこともあるでしょうけれども、とにかく長い間の問題ですから、これらの場面におきましても、相当私は時間がかかると思うのです、いろいろ正常化してまいりますためには。そして一内閣の問題でないことは御指摘のとおりでございますけれども、やはりわれわれとしては常にどうやったら正常化できるかということについて十分真剣に考えていかなければならない。これはほんとうにわれわれの責任であり、つとめである、かように考えます。
  26. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そういうことで積極的な改善ができないなら、せめて台湾への深入りをやめろというのが、いま国論になってきているわけです。台湾人に対する思いやりというものと台湾政府に対する考え方というものは、やはり区別してこれから考えなければならぬと思うのです。  きょうの産経新聞を見ると、昨日は永野商工会議所会頭、これはあまり政治的な意図はなかったかもしれないけれども、その他五、六人首相官邸へ行きまして、そして約二時間も要談されておる。ある者が言うのには、来たる六月には張群氏が再び来日する。これは将来の日華協力の深さについてさらにこれを深めようということで来日をされる。ああいうことがどんどん出ていけば、さらに日中関係というものは少なくとも佐藤内閣に対して悪化がエスカレートしていくという関係に立つのですが、この事実はまだ御承知にならぬですか。きょうの産経新聞に載っておる。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 申しわけございませんが、その事実はまだ私承知しておりません。
  28. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 この日中覚書交渉もだんだん今週が山になってまいりまして、たぶん来月早々には締結されることと思うのであります。この間一つの純金融的な立場からの収拾としまして、大蔵大臣は元建て、元決済といいますか、’それに賛成をしておる。そういうふうに幅を広げてみよう、日中関係をよくするためにはそれが一番いいことではないかということで、前向きの御答弁があったわけですが、外務省としてはあれでよろしゅうございますか。
  29. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先般大蔵大臣が申しましたことは、私も異議ございません。
  30. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それでは、これは愛知外務大臣が去られてからとも思っておりましたのですが、現在の予算書を見ますと、外務省ではかなり活発に近ごろは経済開発の援助をやられたり、あるいは文化交流のための補助金を相当に出しておられますね。情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費十八億四千八百七万五千円。先ほど読み上げられていきましたので、われわれも気がついたわけでございます。私ども関係しておりますのに文部省の関係の財団法人世界青少年交流協会というのがありまして、これは各国の青少年の代表団体あるいは総合団体との交流ということで、試験をして選抜をした青少年を海外へ送っておる。この事業が実を結んでまいりまして、そうしていまでは主要国十数カ国と交流しておる。滞在費をお互いに持ち合っていますから、またチャーター機を利用したりしまして、市価の四分の一あるいは五分の一の費用で海外へ行ける。そのかわり選抜青少年である。ところが、受け入れの費用ですね。出すほうは自分が幾らか負担して政府も負担するのですが、日本政府は出すほうは相当出してくれるのですけれども、どうも受け入れには費用は三分の一ぐらいしか持ってくれない。日本とドイツとの青少年交換は非常に歴史も深くなりまして、十八年目です。連続十八年やっていますから、受け入れも半分出してくれている。しかし、そのあとの半額というものは調達するのに非常に骨が折れるわけです。こういうようなものに対しては、文部省に助言をもっと強力にしていただきたい。  現にヨーロッパ各国を歩きますと、日本からごまんと青年代表が来るというのです。個人で来るものは金を持っているからしかたがない、これは当然なんです。かってなことだ。グループで来てもそうだ。代表で来て方々見せてもらうが、今度日本へ青年代表が行くと、だれも引き受け手がない。幸いにして世界青少年交流協会というものがあって、それがやってくれるので、相互交換方式というのは外務省の係としても非常に助かる。これはフランスに萩原大使がおられたときに非常にそのことを力説をされまして、佐藤官房長も現実にそれを見て知っておられる。  そんなことでだんだん外務省の世話もありまして、われわれ感謝しておるけれども、調整のときにもう少し強く発言をしてもらうか、それでなければ、たとえばこれらの連中が来ましていろいろなミーティングもします。国際会議みたいなものを小規模でだんだんやっておる。そういう国際会議には外務省の費用を出してもらったらどうか。これをいま見て、専門家ですからわかりますが、財団法人国際教育情報センター補助金二千万円があります。たいへんいいことです。だれがやっているかも知っておる。しかし、理事長は財界の大物だからやらなければいかぬ。二千万円でもいい。われわれの団体よりは少ないけれども、こういうものが出ておるわけですから、そういうような仕組みはどうかということについて、青少年の国際交流とか、留学生の交換については外務省がやはり一番見識もあるわけですから、実際の事業は文部省がやったりあるいは調整役を総理府がやったりしている。ところが、総理府の連中の中で、それをあまり知らぬ者がやっておるのです。やはり外務省が一番よく知っているのですから、そういう意味でひとつ御助言をいただきたい。  それからこれは少しこまかいことになりますが、それに付随しての問題は、係官がおられたら、先ほど要求しておきましたから、お答えいただきたい。原則だけ大臣からお答えいただきたい。
  31. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは私のほうが非常に感謝しておるのですけれども、青少年交流協会をかねがねあれだけなものに育て上げていただいて、またその中には日独交流などは確かに二十年近く、非常な成果をあげていただいていることに、私は個人的にも非常な敬意を表しております。したがいまして、現に足りないところを御指摘いただきましたら、私自身といたしましても、十分御協力を申し上げたいと思っております。  経費の点その他こまかい点、私でわからないところもあろうかと思いますが、精神というか、気持ちといたしましては、私もかねがねのことを多少存じておりますから、できるだけの御協力をいたしたいと思います。
  32. 山野勝由

    ○山野説明員 ただいまの御指摘にありました青少年の招聘につきましては、昭和四十五年度より太平洋アジア地域につきまして十名、二週間の招聘をやっております。この事業は明年度も継続する予定でございます。明年度は人数は二十名招聘したいと思います。  これは四十五年度実施しました経緯から見ますると、非常に好評を得ておりますので、今後もこういった種類の機構につきまして努力していこうと思っております。
  33. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そんなことを聞いているのじゃない。それも私は全部知っているのです。ことに青年の船というのは非常にいい構想で、われわれも死んだユースホステルの会長の中山氏と一緒で、国会では私が一番最初に火ぶたを切ったわけですから、青年の船はいいわけですけれども、毎年毎年行って、向こうからちっとも来ない。何か利用したらどうだというので、いまのようなお話が出てきたのです。いま私が言っておるのは、ヨーロッパアメリカやその他アジアの各地域におきまして、こっちへ来る代表団として、政府の裏づけがあって来るのがあるのです。ところが、こちらへ来ると、こまかい話が、泊まりに一日一人四千三百円くらいかかるわけだ。運輸費全部入れると五千円かかるのです。そうすると、十人来れば五万円。ドイツなんか百五十七人来るのですから、四週間いると千四百七十万円かかる。文部省は八百万円出してくれているのですが、それほどの力はないというので、よその国には出さない。それをみんな調達しなければならぬ。とてもたいへんなことなので、外国政府がバックアップしておるものを、お互い滞在費は持ち合いなんだから、その場合には文部省がもう少し出すようにということをあなたのほうから言ってくれというのが、私のきょうの要旨であるわけなんだ。それをやっている団体は世界青少年交流協会よりないわけだから、どうぞそういう意味での協力を外務省がやってもらいたいというのが発言の趣旨であります。  それからもう一つあれですが、外国からいろいろ来まして、日本の工場を見る、いろいろな産業の実態を知りたい、歴史も知りたい、いろいろ意欲はあるが、歌舞伎というものに対する非常な、何といいますか関心があるのだが、夏場は歌舞伎座はやっておらぬ。国立劇場を見たいというが、なかなか何というか便宜が十分でないというようなこともありまして、これから外務省はやはり国立劇場というものに対する関心を深めていただくこと。  さらに、これはすぐ御答弁できると思いますが、第二国立劇場というものを藤原義江さんあるいはバレー界の人などがつくろうとしている。あれは昔、私、やろうと思っておったのだが、なかなかいま国立劇場ができたところで、せりの問題、天井の問題なんかで、一ぺんに両方できなかった。あれは佐藤総理大臣非常に熱心なことはけっこうです。やっていただきたいと思いまするし、超党派の芸術議員連盟等の文教部会も非常に熱心なんで、必ずできると思いますが、あれができれば、あれはまたあれで国際的なものでございますから……。  そういう意味で、外務省がこういう芸術分野にも深い理解を持ち、ことに青年代表などがそういうものを見たいというときの利便のことも十分御勘案をいただきたい。  こういうことを列挙しまして、愛知外務大臣は頭がいいからみんな覚えていると思うのです。それらをひっくるめて御答弁いただいて、私の質問を終わるわけであります。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず先ほどの問題ですが、確かに答弁が食い違って申しわけございませんでしたが、私は御指摘になった点をこういうふうに理解しておるのです。必ずしもこれは外務省所管予算だけの問題ではございませんが、外務省として事の意義の大きくあることを認識して、文部省なり大蔵省なりにもつと積極的にやれ、こういう御趣旨と思います。中には外務省自体としてもやるべきこともあろうかと思いますが、ひっくるめてひとつ善処いたしたいと考えております。  それから歌舞伎の問題をおあげになりましたが、これもまた私も同感でございまして、実は御承知のように、文化事業として歌舞伎をヨーロッパその他へも出しましても、非常に好評を博するのですね。これは意想外のことなんです。ですから、それだけに訪日する外国の青少年も興味を持っておるであろうし、さらに一そう興味を持ってもらいたいと思います。  第二国立劇場のお話、これも若干川崎さんの驥尾に付して、前々から御相談を受けることもございますから、こういうことをあわせて、大いにひとつ——気持ちを持つことがまず第一で、そういう気持ちを持てば、ちょっと当たってみてもできそうもないことが、案外切り開いていけるのではないかと思います。現状におきましてもいろいろのくふうがあるかと思います。十分ひとつ御趣旨に沿うようにしたいと思います。
  35. 大坪保雄

    大坪主査 小林進君。   〔主査退席、三ツ林主査代理着席〕
  36. 小林進

    小林(進)分科員 限られた時間でありますので、第一問は要望程度にいたしまして、主として中国問題についてお尋ねいたしたいと思います。  第一点の要望は、きのう大蔵大臣にお願いをいたしましたが、それは在外公館の問題でございまして、百四十ある在外公館の中で、私どもがいつも見て、まず貧弱である。第一級の国の在外公館らしくなく貧弱である。第二番目は、どうも借家が多い、借地が多いということでございまして、こういうことをひとつ改めてもらいたいということに対しては、大蔵大臣も全面的な賛意を表されまして、今年度の予算の中には、去年の十六億に比較して十九億何ぼの予算を組んで、二六%以上そういう整備にかかっておるがというお話でございました。私も心強く思ったのでありますが、これを受けて外務省はひとつ在外公館の整備計画というものをつくっていただいて、できれば五カ年くらいにそういう借地とか借家というものをやめて、全面的に国有財産に切りかえる。しかもりっぱな公館、公地をつくるという、そういう具体的な計画書を、せっかく大蔵大臣もお答えになっておるのでありますから、つくって、ひとつ具体的に大蔵省と折衝を進めるようにしていただきたい。これに対する外務大臣の考えを聞きたい。  第二番目は、私も数回外国を回っておりますが、国会議員としての公用出張でありますので、出かける前には必ず外務省あるいは衆議院の渉外部等を通じて、これこれの用事で行くのだから、あるいは必要な資料を整えておいてもらいたい、便宜をはかってもらいたいと必ずやっております。ところが、一月なり二十五日なりの期間をもって参りますと、確かに連絡どおり非常に懇切に資料を整えたり、あるいは便宜をはかったり、われわれの調査に協力をしてくれる公館もあるが、中には非常にどうも形式的で協力を惜しんでいる公館もある。私も昨年の十二月の二十七日、年末国会終了後直ちに出た。国会の物価問題等に関する特別委員長として、特に私はインフレ問題の調査をしたいからということで、外務省にもお願いして回りました。非常に協力してくれた公館もあるが、たとえて言えば、何ら資料も整えない。形式的にどこか外国資料をよそから持ってきて、そのまま、この資料、これでございますからといって、赤線引いて——大体私がそんなドイツ語やイタリア語や英語が自由に読めるなら、君たちに資料提供を要求しない。何でそんなもの日本語に訳して、そして便宜をはかってくれるような、そういう作業ができないのかと、私自身言ってきたこともありますが、非常に格差があります。もしここで言えといえば具体的に申しますが、時間がないからやめますが、そういうことのないように、やはり国民代表として私ども真剣な気持ちで貴重な時間をさいて海外調査に行っているのですから、ちゃんとひとつわれわれの要望に応ずるように、特にわれわれはいわば野党だから、むしろ野党の先生なんかどうでもいい、勘ぐって言えば、そういうような態度なきにしもあらずと言いたくなるぐらい冷淡なところもあります。もし外務大臣聞きたいとおっしゃれば、ここにその考課表をお見せしてもよろしいが、あくまで公開の席上ですから、若干相手の人格も尊重して言いませんが、そういうところは厳重に指揮をしておいていただきたいと思います。ちょっと冒頭に二つの問題。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第二番目におあげになりました問題につきましては、実は私も非常に心配しておるわけでございまして、国会の委員の方々が海外で御調査になるということについては、もうできるだけの御協力をすべきものであると考えて、かねがね配慮しておるのでありますけれども、ただいま御指摘のように、相当よくやっているところもあるようですが、しかし、非常に御不満を買うところがかなりあろう。これはわれわれ大いに責任を痛感しているところでございます。今後たとえば公館長会議等その他を通じまして、公館の首脳者、責任者にその気持ちにならせることがまず第一だと思いますから、私としてはそういう立場から、また必要な経費その他が必要な場合におきましては、そういうところにも配慮いたしまして、十分お手伝いできるようにいたしたいと思います。  それから第一の点は、全くこれも御指摘のとおりでございますが、外務省としては、できれば在外の公邸、事務所等は全部国有化したいのです。そのほうが国家財政、ひいてタックスペイヤーに対しても申し開きができることだと思いますので、相当具体的、計画的に計画も持っております。そして御承知のように、ある程度不満ながら数年前に比べればかなり前進してまいりました。この勢いに乗じまして、今後の新規五カ年なり十カ年計画をやってまいりたいと思います。たとえば場合によりましては、土地、建物ぐるみ購入するとか、あるいは土地を購入して新築をする、こういう点に特に配慮していきたいと思います。幸いに財政当局も協力的でございますから、ぜひ進めてまいりたいと思います。
  38. 小林進

    小林(進)分科員 次に、私の本論である中国問題についてお尋ねしたいのですが、中国との国交回復が世界的な世論になっている中で、どうも一番身近なわが日本の対中国——中国というのは中華人民共和国でありまして、北京政府であります。これに対して、日本政府がどうも歩み方が一番頑迷ではないかということを国民は考えているわけでありまして、御承知のとおり、国会の中でも日中国交回復議員連盟というものができ上がって、衆参両院議員合わせて三百七十九名、いまは三百八十名を超過いたしているはずであります。衆参とも多数を占めて、日本と大陸政府との国交を回復すべきであるというその中に、ひとり政府だけが頑迷にこれを拒否しておいでになる。その拒否しておいでになる政府態度の中に、いよいよ追い詰められていけば、二つの中国を認めていこうという考え、これがまず第一の大きな間違い。いま一つは、どうも日華条約というものに対して、国民はあれは虚構だ。これは日中議員連盟でも、私どもは総会を開いて、あの条約は虚構に基づいた条約であるという考え方を明らかにしているのでありまするけれども、政府はこれに対して、どうしてもそれをお認めにならない。第三番目には、大陸——いま大陸というのは人民共和国でありますが、かりに大陸政府と言いましょうか、北風政府と言いましょう。その政府との戦争状態が法律上まだ継続しているというわれわれの考え方、これもどうしても政府はお認めにならない。お認めにならないのみならず、どうも政府関係者のお話しになることをしばしば外部で聞いていると、日本はまだ中国に対する戦勝国であるかのようなことを思わせる発言があったり、あるいは中国大陸とは一切の戦争の関係は終結して、さも対等の国同士の話し合いができるような、そういう形でおしゃべりになっているような感じを受けるのでありまして、ここで、私は政府考え方に基本的な誤りがあるのではないか、かように思うのでございまして、私はこの点について、政府にいま一度この点を確かめてみたいと思うのであります。  いまの北京政府、毛沢東政権と言ってもよろしゅうございましょう、でき上がったのは、御承知のとおり一九四九年の十月の一日です。日本でいえば昭和二十四年の十月の一日に、蒋介石政権は中国大陸から追い出されている。壇の浦の平家のようなもので、追い出されて、アメリカの第七艦隊に守られてようやく台湾島へ逃げていった。そして昭和二十四年の十月の一日を期して、いまのいわゆる人民共和国が北京で正式に、中国大陸を支配する政権であるという宣言を世界に向かってしたわけであります。  ところが、その昭和二十四年の十月に蒋介石が台湾に追っ払われて三年も過ぎて——三年もたたないけれども、正確にいえば一九五一年でありまするから、昭和二十六年です。昭和二十六年の九月の八日に吉田さんがサンフランシスコへ行って、いわゆる平和条約に調印をされて、その効力の発生する日が一九五二年、昭和二十七年の四月二十八日です。いいですか。蒋介石が中国大陸を追われて三年もたった、正確にいえば二年半でありますけれども、二年半たった昭和二十七年四月二十八日に日華平和条約というものを調印されている。その平和条約の効力が発生した日に蒋介石と調印をされているのですよ。  その調印をされている日華平和条約の第一条に、「日本国と中華民国との間の戦争状態は、この条約が効力を生ずる日に終了する。」とある。これがその戦争状態は終了したという日華条約の第一条だが、その中には交換公文書がございますね。交換公文書の中で、日本と中華民国との間の条約の効力は、「中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」といっている。俗なことばでいえば、この日華条約は、現に台湾政府が支配している、あるいは将来支配するかもしれないその地域だけにしか効力は及ばないのだ、こういうことが明記されておりまするから、この日華条約と交換文書に基づけば、もし日華条約を認めるとしても、大陸に対しては何ら効力がないわけでありますから、いま、北京政府とはわれわれは依然として法律上は戦争状態にあると見なければならない、こういうことが一つ言えると思います。これはいいと思いますが、どうでしょう。効力は及ばないのですから。われわれはいまの大陸で八億の人口を支配している大陸の北京政府とは何らの交渉がない。戦争をして引き揚げてきた以外に何らの交渉がない。ないのみならず、日華条約も効力が及ばないということをちゃんと交換文書に明記している。蒋介石政権も効力が及ばないことを認めているのですから、それならば、われわれは大陸とそのまま戦争状態にある、法律上戦争状態にあるということは明々白々じゃありませんか。そうじゃありませんか。この点、ひとつ外務大臣にお聞きしたいと思います。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろ歴史的な事実、推移等をお話しになりましたが、結局するところ、日華平和条約というものを政府がどう見ているのかということに決着するかと思いますから、その点を御説明をいたしまして、足らざるところをまた補わさしていただきたいと思います。  そもそも日華平和条約を結んだときは、一九四五年に要するに降伏文書に署名をいたしましたね。そのときの戦勝国はいまの中華民国政府——これを国民政府と申しましょう。これとの間に降伏文書の調印をした。そして当時以降におきまして、中華民国政府は国連の一員でもあって今日に至っておるわけでございます。政府としては、日華平和条約を結びましたときは、そうした関係から国民政府を条約の対象として条約を結んだ。そこで、そもそも条約というものは、国際法の原則から申しましても、主体は国でございますね。その国を代表する機関が政府である。その機関である政府として、国民政府との間に日本政府日本国の機関として条約を締結いたしましたから、これは国家間の合意であるということが言える。  そこで、いま御指摘の問題の点でございますが、戦争状態、これは第一条でございますね。それから、たとえば具体的な例を言えば第四条、戦争前の条約の効力はないことになりました。こういうものは、国家間の合意として、その機関として結んだ政府同士の合意というものは、国と国との関係を拘束する。したがって、これは適用地域の問題とは別である。しかしながら、第七条ですか、通商関係、その他第八条もそうかもしれませんが、そういうふうな問題は、これは適用範囲の問題が出てくるわけでございます。したがって、交換公文等においていわれているところの適用範囲の問題は、国と国との間の合意である。戦争状態の終結とか条約の廃棄とかいうものとは、これは関係がないというのがこの条約の意味するところでございます。したがって、国としての中華民国と日本国との関係においては、法的には戦争状態が終結した、これが政府の一貫した立場でございます。  しかし、同時に、中華人民共和国政府は、日華平和条約も認めておりませんし、したがって、また、法的に日本との間に戦争状態が終結したものではなくて、これが続いているのであるという態度をとっておることも、日本政府としてはよく承知いたしております。そして、こういう関係は、将来において、日中関係のいろいろの状態が改善されていく中において是正されていくことがしかるべきであるとすれば、その中で自然に解消していくものであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  40. 小林進

    小林(進)分科員 ぼくは、いまの一九四五年、すなわち、昭和二十年の負けたときは、確かに蒋介石政権というものは中国大陸を事実上支配いたしておりましたから、この代表政権と降伏文書の調印をしたということはわかりますけれども、その後の客観的情勢の変化というものを政府は一つもお認めにならぬ、ここに私は無理があると思う。ちょうど、壇の浦に逃げた平家が、依然として源氏になりかわって政権を握っているという、そういう虚構をおつくりになっている。その虚構をなぜおつくりになっているかといえば、ダレスに脅迫された吉田さんがやむを得ずやらざるを得なかったということは、国民周知の事実です。事実だけれども、あまり牽強付会な議論を弄していれば、だんだん世界の大勢におくれていくのじゃないか、のっぴきならないどたんばに政府が追い込まれていくというのが私どもの見方なんであります。  そこで、いま一つ申したいことは、台湾に逃げた蒋介石というのは一体何だ、一体彼らが支配をしている台湾というものは何だ。私どもは、言いますけれども、台湾はいま人口一千二百万おるか三百万おるかわかりませんけれども、あの中で、実際にわれわれと戦争をして被害を受けた国民は、蒋介石と一緒に大陸を追われて、アメリカの第七艦隊に守られながら行った大陸の兵隊とその一族です。せいぜい二百万です。あとの一千万以上は何かといえば、あれは旧の日本人ですよ。日本国の台湾だから、われわれは台湾と戦争しません。あるいはわれわれと一緒に中国大陸に対して戦争をしてくれた旧の日本人なんです。何にも戦争の被害を受けていない。これは別な意味における賠償をするといえば、われわれは賠償責任はあるけれども、台湾は旧の日本人で、われわれと同じ同胞なんです。そういえば、人民の上から考えれば、八億おります中国人が、われわれが荒らしまくってあらゆる悪いことをしてきて、侵略戦争をやって被害を受けているのです。蒋介石が逃亡のときに連れていったたった二百万あるいは百五十万程度のものとしかわれわれはやっておりません。その人たちが中国を代表する政権だという形で、それと講和条約を結んだ、日華条約を結んだ、それで戦争は終結したのだという言い方は、何としても、それはいかにあなたがことばを弄せられても、牽強付会の弁としかわれわれは聞き取れない。そんなものだったら、講和条約を結んだというなら、それは虚構の条約とわれわれはいわざるを得ない。せめて千二百万の台湾島でもわれわれが侵略しておったら、その台湾島にも被害を与えたのだから、その人たちに贖罪の意味で平和条約を結ぼうというなら、それもわかりますけれども、全然ないんだから。旧の日本人なんです。  そういうことを考えた場合においては、こういう問題をいま少しすなおに政府はこの際解釈をせられて、そして私は、やはりこの北京政府、大陸政府に対して、まだ法律上の戦争状態は継続しているんだから、戦争終結のそういう話し合いぐらいお進めになっていくのが、私はすなおなやり方じゃないかと思う。ちょうど鳩山さんが、どうですか、あなた、ソ連へ行かれて、ソ連と戦争終結の宣言をおやりになった。実際いまの中国とは、あの戦争終結をおやりになる前のソ連と日本と同じです。やはり戦争状態にあった。あったが、鳩山さんが行かれて、戦争の終結宣言をやられたから、講和条約はでき上がっておりませんが一対ソ連との関係は、領土問題等いろいろあって、まだ平和条約はでき上がらぬ、講和条約はでき上がらぬが、外交はちゃんと樹立して、平常の状態になっている。こういう日ソの関係の状態が、私は、北京政府と当然行なわれてしかるべきだと思う。どうですか、外務大臣。鳩山さんの轍を踏んで、あなたは北京へ乗り込んでいかれる気持ちはありませんか。そうして敗戦国の外務大臣として、いま少しすなおに、謙譲な気持ちで大陸の政府に折衝されたらいかがですか。大陸政府は侵略的だの、帝国主義だの、膨脹主義者だの、一体日本に対して大陸政府はどんな膨脹政策をいたしましたか、どんな侵略的な意図を明らかにしましたか。北京政府日本に対して領土の一部分も取っておりません。日本の上空を飛行機を飛ばせるようなことはしておりません。それをどうもいたずらに他国を非難するような形で、戦勝国のように思い上がって、大陸政府を非難攻撃するようなことは、私はおやめになるべきだと思う。それは敗戦国の日本として、法律上の戦争状態にある日本として、私は言うならば、謙虚な、すなおな姿だと思いますが、どうですか、外務大臣、御所見を承りたいと思います。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまも申し上げました法律的な戦争状態というものについては、日華平和条約の政府のとっている見解はいま申し上げたとおりであります。ただ、中華人民共和国政府がその態度を承認していないということもよく日本政府としては承知をいたしております。それから、同時に、四分の一世紀にわたって中国大陸を中華人民共和国政府が支配しておる。これはもう世界的に客観的な事実でございますから、そことの関係を、現在まことに正常ならざる状態ですから、より正常化したいということで、いろいろの方々がいろいろの努力をされております。これに対しまして政府も敬意を表し、かつ、政府自身といたしましても、政府間の接触を持ちたい、こういうふうに提唱をいたしておることも御承知のとおりだと思います。  それから、日本政府としては、これはまあ見方がいろいろございましょうけれども、政府として中華人民共和国政府あるいはその支配下にある人民を敵視するというようなことは、全くやっておらないつもりでございまして、これに反して先方は、いろいろのことを言っておられることも事実である。こういったようなことは、いわゆるプレコンディションといいますか、最初に条件などをきめないで、政府間でも相互に話し合いの機会が持てましたら、こちらも十分言いたいことを言いたい、誤解も正したい。そうしてそういう話し合いが進む間に、だんだんと正常な状態が解決をされてくる。私は、先ほど川崎さんにも申しましたが、これはやはり相当時間がかかると思うのです。しかし、時間がかかっても何でも、謙虚に正常化ということに努力を続ける。これは先ほどお話にもございましたが、何も一内閣の問題ではなくて、国家百年の大計として、そうして隣邦とイデオロギーが違っても十分親善関係を回復していきたい、これを基本にもって対処してまいりたい、これが政府の気持ちでございます。
  42. 小林進

    小林(進)分科員 残された時間は五分でございますので私もきめのこまかい質問はいたしませんけれども、それではいまの中国政府が、ともかく戦争の被害は、一千万の人間を殺戮され五百億米ドルの物的損害もこうむっておる、この賠償の請求を、もしかりに日本に突きつけたら、日本政府としてはどういう態度でお臨みになりますか。蒋介石は賠償は取らないと言った。しかし北京政府のほうでは、あんなものは大陸に影響ないのだからわれわれは関係ない、また蒋介石が取らなくても、台湾に亡命してしまった者が何をほざこうとそんなものは効力があるものではない、関係はないと言っている。これに対してほんとうに賠償の請求をされたときに日本政府はどういう態度で応じられるのか。  時間もありませんから私の結論を急ぎますけれども、幸か不幸か中国政府の要人等は、賠償は取らない、中国は他国の賠償等によって自分の国を再建しようなんという気持ちはない。それからまた、巨大な賠償をかけることはベルサイユ条約でも結果は見えている。そのためにドイツが奮起してああいう第二次大戦の原因をつくった。巨大な賠償を取ることは世界の平和のためには決して好ましいことではない。三番目には、中国が賠償を取ることは戦争に関係のない、敗戦国の若い次の世代にも苦痛を与えることだからそういうことはやりたくない。こういう非常にもののわかったことを言っております。しかし日本とはまだ戦争状態だからその賠償の権利は留保している、決して放棄はしない、ということを言っておるのでありますから、日本政府の出方によってはあるいはそういう問題なきにしもあらずです。こういうことに対して一体どういうふうにお考えになっておるのか。  それからいま一つは、いまもおっしゃるように要するに時間が必要である。そのためには政府も接点を求めておる。たとえばパリ等において大使級の会談でもやりたいということをお考えになっておるようでありますけれども、御承知のとおりそれに対しても北京政府のほうでは、とてもそんなものは受け付けない、佐藤内閣がある限り、いまの政府がかわらぬ限りはそんな大使の会談等にも応ずるわけにはいかない、という非公式の返事がはね返ってきておるわけです。私もそう思います。どうもそういう政府の申し入れの中には高い姿勢があります。思い上がった姿勢があります。敗戦国の国民としての謙虚さがない。私はむしろほんとうに国家百年の大計をお考えになるなら、外務大臣みずから中国へ乗り込んでほんとうに向こうと胸襟を開いてくるくらいの——これは川崎さんがしばしばあなたに言われたことですから、私も同じことを繰り返すのはなんでありますけれども、それくらいの、火中にクリを拾うくらいの大外交官、大政治家の矜持があっていいのじゃないかと思うのであります。  以上の問題についてお考えをお伺いいたしたいと思います。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず賠償の問題でありますが、私は先ほど来申しておりますように、まず、こうであろうかああであろうかということを想像するよりも、政府間の対話というものが持てたらそこで、それこそ長い間にわたっての双方の言いたいこともございましょう、その中でいろいろと話し合っていくべきものである。いま政府間の対話というものもまだ持てないときに、日本態度はこりであるとかあるいは先方の態度がこうであろうから、それに対して話し合いの始まる前にこういり条件を持っていくとかいうことではなくて、長い間不正常在間であっただけに、まあたとえて申せば、ざっくばらんにまず話し合いを始めるということがいま一番望ましいことではないかと私は思います。そういう気持ちで表すべきことがあるならば、いろいろの御提案等に対しまして私も謙虚に考えてまいりたい。また繰り返すようでありますが、私どもは中華人民共和国政府に決して敵意などを持っていないのみならず、何とかして交わりを厚くしたい、正常化したいという気持ちは真剣に持っておるということは、ここではっきり申し上げておきたいところであります。
  44. 小林進

    小林(進)分科員 まだ質問もたくさん残っておりまするけれども、時間が来ましたので、これは後日また外務委員会でお話をさせていただきたいと思います。どうも失礼しました。
  45. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 岡田利春君。
  46. 岡田利春

    岡田分科員 私は、過般来交渉が行なわれております北方水域の安全操業の問題について御質問をしたいと思います。  去る一月十一日から十五日まで日ソ間で北方の水域の安全操業に関して交渉が行なわれたわけですが、その後の報道関係の報ずるところでは、ソ連政府筋のいろいろな情報が流れておりますけれども、公式的にこの交渉について政府発表されたことはないように私は受けとめておるわけです。  そこで政府にお尋ねいたしたいのは、この交渉に臨むにあたって、日本愛知提案というものがいわれておるわけですが、どういう具体的な内容をもってこの交渉に臨んだのか。それと同時に、この交渉を通じてソ連側からどういう提案が行なわれたか、この際承っておきたいと思うわけです。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 安全操業の問題につきましては岡田委員もよく御承知のように、政府といたしましてもこれまでずいぶん努力をいたしてまいりまして、ようやく今年に入りましてからモスクワで会議が開かれることになりましたことは、それなりに私もほっとしているようなわけでございます。  この内容の問題でございますが、ソ連側は、ただいまもお触れいただきましたいわゆる愛知提案というものはよく承知いたしております。これは御承知のように歯舞、色丹だけでなく国後、択捉の沿海三海里ないし十二海里、これを安全水域の対象にしてほしいということが中心の提案でございます。これに対しまして、一月に行なわれましたこの会談で、ソ連側はこの提案の水域等についてまだずいぶん隔たりのある考え方を持っております。まだ交渉が始まったばかりでございますから、一々の点について申し上げる段階にまだなかなか来ておりませんですけれども、か在り双方の見解の隔たりがある。それからソ連側の、これで行こうというような具体的な提案は実はまだ出ておりませんで、こちらとして想像を交えているというか、たとえば第一回の会談でイシコフ漁業大臣が開会のあいさつみたいな形で申しましたことに先方の意図するところは想像がつくわけでございまして、それから約一週間ですか、双方代表間で話し合いをいたしまして、双方ともにだいぶ隔たりがある、ひとつそれぞれ本国政府関係者と相談をして二回目をさらに開こうということになっております。御承知のように現在日本側としては大使が交代いたしまして、新関大使が近く赴任いたします。東京におきまして水産庁その他関係の方面と十分打ち合わせてまいりまして、まあ日本側としてはできるだけ早く、継続中の第一回会談の引き継ぎといたしまして第二回会談をやってまいるわけですが、政府といたしましても、新関大使の赴任いたしますまでには、政府考え方を十分固めて出したいと思っておりますけれども、まだこちらの最終的な態度を固めるまでには至っておりません。
  48. 岡田利春

    岡田分科員 情報の伝えるところによりますと、ソ連側は歯舞、色丹の三海里ないし十二海里の間のみを安全操業の対象漁場とする。しかし、それもまた別表政府筋の情報によれば、そうではなくして、歯舞、色丹のごく限られた若干の水域、この場合、水域としていえば大体どちらのほうが正しいのかという点が一点。それからソ連側としては、特に小零細漁民の立場を考えて、操業でき得る漁船は五十トン未満にしたいという気持ちのようだ。あるいはまた日本側で説明した、この海域に出漁している出漁隻数は、二千六百隻は多過ぎる、こういうような態度の表明があったということが伝えられておるわけですが、前段については大体どちらの態度の受けとめ方が正しいのか、後段二点については大体そういうものなのかどうか。つけ加えて、この安全操業の対応措置については、水産加工機械、漁業資材の無償供与等の希望をにおわせたような感じがする。前段についてはどちらのほうの受けとめ方が正しいか、後段については、こういう受けとめ方でほぼ理解としては正しいのかどうか承っておきたいと思います。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段の水域につきましては、ソ連のほうが望ましいと思っておるのは、私の判断では、歯舞、色丹の沿岸の限られた水域というふうに向こうは希望しているように思われますから、こちらの考え方とはずいぶん開きが多いと思います。  それから五十トン未満ということは、この会談の上には全然出ておりません。したがいまして、これはまだソ連側が、具体的にどういう考えで最終的に妥結する用意を持っているか、ここのところはちょっと見当がつかない点でございます。  それから漁業協力その他の条件でございますが、これについては、率直に申しますと、こちらとしては水域に一番重点があるわけでございまして、たとえば御承知のように、拿捕抑留の案件が国後、歯舞沿海で五割以上になりますものですから、こちらの漁民の方々の立場から申しましても、これは相当重大なところでございまして、これとのかね合いで、安全水域がある程度広範囲に認められることができるならば、自余の条件についてはある程度考慮してもいいのではないかということは、ソ連側におきましても日本側の意図はある程度わかっているはずであると思いますが、そこをかね合いにしておりますから、まだ具体的に向こうも切り出しませんし、こちらも切り出しておりません。微妙な段階にある、こう申してよろしいと思います。
  50. 岡田利春

    岡田分科員 本交渉に臨む政府としては、領土問題とは切り離して、人道問題としてこの問題の解決をはかりたいという考え方が、しばしば国会でも説明されて、この交渉にも臨んでおると思うわけです。  しかし、政府の統一見解を見ますと、歯舞、色丹、国後、択捉はわが国の固有の領土であるという基本的な立場はくずしていないわけです。したがって、政府の統一見解を領土問題と関連いたしますと、愛知提案、政府提案というものの考え方は、領土問題とは切り離して、人道問題として安全操業については解決をしたいが、その希望水域は、政府の領土に対する統一見解と全く同じ水域であるという点が、ソ連側の領土問題と関連して、非常に警戒心がきびしいのではないか。こういう受けとめ方が素直な受けとめ方ではないかと思うのですが、交渉にあたってそういう点は特に強く考えられた点ではなかろうかと思うのですが、いかがですか。   〔三ツ林主査代理退席、主査着席〕
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 領土問題は日本側としてのおろすべからざる基本的な姿勢でございますから、それはそれとして安全操業の問題に入ったわけでございます。しかし、お話のように、先方としてはその点がなかなか微妙に反映しているのではないかと想像いたされます。しかし同時に、この漁業の立場から申しましても、ただいま申しましたように、先方も人道主義ということであるから話に乗るんだというところまではきております。それならば、五割あまりのところが未解決に残ることは、やはり人道主義の立場からいいましても、向こうが人道主義ということを言うならば、安全操業については、もう少し水域を広げてくれてもいいのではないかというのをこちらの姿勢として臨んでしかるべきかと私は考えております。
  52. 岡田利春

    岡田分科員 いま大臣も言われておるように、特に拿捕事件の発生地点というのは国後、歯舞が非常に多いわけです。時間がありませんから、私の調査の結果を申し上げますけれども、佐藤内閣が成立して以来、昭和四十年から四十五年の実績で見ますと、歯舞諸島の関係で拿捕された隻数は六十九隻でございます。国後島関係では七十三隻です。択捉島では二十二隻です。色丹島では十八隻、その他三角水域という地点で二隻、合計百八十四隻が四十年から四十五年十二月末までに拿捕された隻数であります。  それから対ソ連関係の拿捕隻数で見ますと、カムチャッカが六隻、北千島が二隻、樺太は十九隻、沿岸州では八隻、合計三十五隻。これは四十年から四十五年も入っておりますが、三十五隻が拿捕されておるわけです。  それから特に五十トン以上で見ますと、百八十四隻のうち五十トン以上は三十二隻であります。二十トン未満で特に多いのは歯舞の三十三隻、国後島関係の五十八隻。  こういう数字が実は明確に過去五年間の実績で出ておるわけです。ですから、択捉の場合には二十二隻で、四十四年までとりますと、これは十九隻で、樺太関係の十九隻と全く同じです。樺太周辺で拿捕された隻数と択捉島周辺で拿捕された隻数は、四十年から四十四年で見れば、全く同じなわけです。ですから、安全操業というのは、どこの水域で操業できれば安全操業の目的が達せられるのかといえば、歯舞、色丹島周辺及び国後島周辺で一応安全操業ができれば安全操業の目的は達せられる、択捉を除いても、こう言えるのではないかと思うのです。  特に私は日本とソ連の関係で、人道問題で墓参の問題がございまして、ここ数年墓参でそれぞれの島に行っているわけです。しかし、国後については墓参団を認めておらない、ソ連の場合は。択捉島の場合は、ずいぶん希望がありましたけれども、一度も認めておらないわけです。こういう人道問題の、一つの日ソ間の墓参の問題に関しては経過がある。  こういう点をずっと考えてまいりますと、人道問題として、特に五十トン未満の小零細漁民の立場をソ連側としても考えたいということで交渉に臨んだと思いますし、そしてその拿捕実績を過去六年間で見ますと、いま私があげた数字になるわけです。ですから、領土問題と関連することは非常に警戒しておるというこの安全操業、しかも地元ではできるだけ早く解決してほしいということから勘案しますと、私のあげた数字からいえば、特に国後島は、標津から羅臼、知床にかけての側は、三海里までは事実安全操業をやっているわけです。三海里に入らなければ拿捕されていないわけです。これは長い実績を持っているわけですから、結局歯舞、色丹側の国後島の側の三海里から十二海里の間、あと歯舞、色丹が、あの三海里から十二海里までの間の安全操業ができれば、先ほどあげたように、まあほかのところでも拿捕はあるわけですから、安全操業の目的は達成できるのではないか。しかも中小零細漁民の立場を一志考えるという立場で、人道問題としてソ連側がこの交渉に臨んできているとするならば、安全操業の解決の視点というものはこういう実績の中に求められるのではないか、私はこういう一応の分析を行なっておるわけです。もちろんこれは交渉に移せば相手側のあることでありますけれども、一応のいままでの日ソ間の流れ、あるいはまたそういう実績の分析等を判断し、さらにまた二十トン未満の漁船が拿捕されておるのは国後島と歯舞が非常に多い、先ほどあげた数字であるという点からいっても、その安全操業をわが国として早期に解決をする視点はそこにあるのではないか。  若干提案のようなかっこうでありますけれども、私のこういう見解について外務大臣考え方を聞いておきたいと思います。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまおあげに在りました数字は、大体政府側の持っております数字と同様であると思いますが、もう少し長い期間をとってみましても、先ほどもちょっと申し上げましたが、北方水域の拿捕されている件数が全体の拿捕件数の八四%になっております。それから今度は北方水域だけを一〇〇として、それを四島の周囲に分析してみますと、国後島の周辺が四六%で、歯舞群島の周辺が三三%、これを合計いたしますと約八割でございますから、確かに御指摘のとおりに、歯舞と国後が、拿捕の状況から申しますれば、一番焦点でございます。これはもう確かにお話のとおりであると思います。  同時に、政府のこれまでの見解としては、色丹も択捉も、拿捕の状況からいえば、合わせて二〇%でございますけれども、やはり重要な漁場であることにはかわりがないわけでございますので、先ほども御言及いただきましたような、私の提案としては、四島の周辺水域ということでいまがんばっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、いろいろの角度から、また御提案もございましたように、すみやかに解決してほしいという地元の方々の切なる御希望も十分体していかなければならないと思っておりますが、ただいまお話しのありましたような点在ども十分考慮いたしまして、先ほど申し上げましたように、第二回の会議に臨む日本側としての十分の案とそれから対処方針というものを早急にまとめて、第二回の会談に臨むようにいたしたい、かように存じます。
  54. 岡田利春

    岡田分科員 伝えられるところによりますと、去る二月四日、中川駐ソ大使はイシコフ漁業相をたずねて、本件についてソ連側の考え方を打診した、こう伝えられておるのですが、この会談では、別にその後の変化はないのですか。同席上、大使が離任までの間にもう一度イシコフ漁業相は会談をしたいということも伝えられておるのですが、すでに後任大使が発令されておるのですけれども、いずれにしてもその後の変化というものはないのかどうか。  と同時に、日ソ間の問題では、この三月、四月にかけて、カニ及びサケ、マスの漁業交渉がずっと展開されるわけです。大体通年の例でいえば、サケ、マスの場合には、ほぼ四月一ぱいくらいかかるというのがいままでの慣行のように私は思います。したがって安全操業の交渉は、この日ソのサケ、マスの交渉の場合にも、できれば並行的にこの点も弾力的に交渉する考え方なのか。これは全然切り離すということに在れば、この安全操業の交渉は五月以降に持ち越さざるを得ない、こう判断をされるわけでありますが、この二点について見解を承っておきたいと存じます。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、新関大使が着任いたしましたら、早々にできるだけこの安全操業問題は会談を進めたいと思っております。したがって、カニ、マス、サケの問題とはこれは切り離してというか、並行的に協議をいたしたい、かように存じております。
  56. 岡田利春

    岡田分科員 大臣がもう十二時で行かれるそうですから、時間がありませんから一点承っておきたいと思うのですが、日ソ間の交渉、あるいは条約、あるいは三木外務大臣時代の中間措置とか、いろいろあるわけですが、いずれにしても歯舞、色丹の帰趨は、日ソ共同宣言で、平和条約を結んだら返還するということが定められているわけです。そのことにこだわらず、日ソ間の交渉によって歯舞、色丹が返還された場合、わが国としてはこの地域をいわゆる軍事力を置かない中立地帯として政府は受け入れるような考え方があるのかどうか、そういうことは検討されたことがあるかどうか。何か非常に関係のないぷつっとした話で恐縮でございますけれども、この機会にもしお考えがあれば、承っておきたいわけです。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府が従来から、また今日といえども考えておりますのは、これは固有の領土という主張でございますから、固有の領土として返還ができました場合は、それこそ本土並みと考えるのが筋である、こういうような考え方で来ておるわけでございます。現状における立場はさような立場であるというわけでございます。
  58. 岡田利春

    岡田分科員 そういたしますと、これは法律論的にいえば、返還されればわが国の領土でございますから、国内法の適用あるいは日米安保条約の適用を受けるということは、きわめて法律論的に当然であるわけです。ただ、いま大臣がそういうすらっとした答弁をされたわけですが、しかし、なかなか領土問題は解決が、国際的に見ても、長年の時間がかかるし、困難であることは御承知のとおりであります。そういう意味では、わが国政治論的な立場に立って、この北方領土の問題を考えるという場合については、あながち国内法なり法律論のみに終始をしなければならないということもないのではないか。そういう意味では、むしろ国際間の今日の現状等から考える場合に、あるいはまたこれらの北方の島々が第二次世界大戦時代に果した役割り等を考える場合に、やはり問題解決の場合には、そう四角四面に外交上の問題を法律論のみに終始をする必要もないのではないか。結局、これらの地域における安全と平和に関する問題、そのことが共存共栄の方向につながるという方向で、高い次元でそのことを考えるということも、場合によっては必要ではないかという意味でお尋ねをしたわけですが、重ねて見解を承っておきたいと思います。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私といたしましては、とにかくいまソ連のほうは領土問題はもう処理済みであるということで、返還問題に対して全然とびらを締めて姿をあらわさないわけでございます。いま最大の努力をしておりますのは、返還問題について話し合いの場をまず友好親善関係の中で持ちたい、そしていろいろ相談をしたいということでございますから、ただいまの政府の立場としては、法律論的という御批評を受けましたけれども、日本政府としての立場は固有の領土という主張であるのだ、その立場でとにかく話し合いを始めよう、テーブルに着いてくれということで、いまいろいろの努力をしておるわけでございますから、それ以上のことをいま申し上げることもちょっと早計かと思います。そういう状況にありますことを御了承いただきたいと思います。
  60. 岡田利春

    岡田分科員 大臣は宮中へ行かれるそうですから、欧亜局長にお尋ねしておきますが、サンフランシスコ平和条約では、旧樺太、サハリンは放棄しておるわけです。法律論的にはまだその帰属はきまっていない。しかし、最近の日ソ間の経済交流から見ますと、オハ−サハリン−苫小牧のガスパイプラインの問題についてもずいぶん焦点が詰まってきておるわけです。そういう状況等も勘案する場合に、特に最も旧樺太と隣接地帯である北海道とサハリン間に、たとえば今度交渉が成立しようとしている新潟とハバロフスク間の航空協定に準ずるように、必要があれば定期の航空路の開設あるいはまた船舶による定期航路の開設ということによって、経済の交流をより一そう発展をさしていくということは、現在の経済協力の動きから見れば、そのことが経済的な価値があり、そういう双方の意見が一致できるならば望ましいことではないか、そのことはわが国としてちゅうちょすべき何ものもない情勢になってきておるのではないか、こう私は判断をするのですが、外務省の見解を承っておきたいと思います。
  61. 有田圭輔

    ○有田政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおりに、日ソ間の交流関係は発展しておりますし、それから地域的な交流というものもだんだん進んでおります。飛行機の面につきましては、ハバロフスク−新潟路線というものが正式に設定せられ、適当な機会にそれが実現する。また従来から行なわれている貿易関係においても、各県と沿海州との交易というものも相当に広がってきておりますし、現在モスクワで交渉しております際にも、この点について留意しております。  御指摘の樺太と北海道につきましても、協力問題につきましては、御承知の懸案の北サハリンの天然ガスの輸入問題がありまして、これはおそらく本年の四月下旬に行なわれます日ソ間の経済委員会の場においても重要な問題の一つとして具体化について話し合われると存じます。したがいまして、御指摘のそれ以外の、たとえば定期航路の開設というような問題、これももちろんその間十分な需要というものがあれば、また採算ベースに乗れば、そういうものも将来の問題としては考え得ることかと存じますが、現在のところでは、そういった具体的な話は私どものところまではまだ来ておりませんので、何ともまだいまの段階では検討いたしておりません。
  62. 岡田利春

    岡田分科員 これらの動きは、いわばサンフランシスコ平和条約において放棄をした旧樺太ですね、あるいはまた政府の統一見解から少なくともはずれるウルップ以北シュムシュに至る十八島、いわゆるクーリール・アイランズですか、これらについては、わが国の外交上からいえば、これはソ連の領土であるという事実認識の上に立って、こういうパイプラインの経済協力交渉も進んでおるんだと思うわけです。いろいろ法律上、国際法上言う人もありますけれども、わが国の立場としては、事実上これは少なくともソ連の領土である。でなければ、オハからサハリンを結び苫小牧に至る天然ガスの供給のガスパイプラインを引くということにはならぬのだと思うわけです。そういう理解でよろしゅうございますか。
  63. 有田圭輔

    ○有田政府委員 その法律問題につきましては、先生御指摘のサンフランシスコ平和条約において、わがほうはウルップ以北の千島とそれから樺太というものを放棄しております。ただし、平和条約においてはいずれに対して放棄するかということは明記しておりませんから、純法理論的に申しますれば、連合国間において決定されるべき問題として残されているわけです。一方事実関係におきましては、ソ連が引き続きそこを支配しているという状況が今日の状況でございます。したがいまして、その帰属について日本側は発言権を放棄しておるという状態であります。  一方現実の問題につきましては、樺太には日本人もまだ一部残っておりますし、逐次日本側に帰ってくるというようなこともありますし、それから御承知のように、政府の墓参団も過去において三つ四つの都市を訪問しておりますし、それから、社会党のほうで昨年ソ連側と直接お話しになって、墓参団を派遣したというようなこともございますので、事実関係としてソ連側といろいろのコンタクトはございます。しかし、だからといって日本側の条約上のあるいは法律上の立場が変更されたというふうにはわれわれは考えておりません。  また、サハリンと北海道との間のパイプラインの布設の問題につきましては、これは先ほど申し上げたように、日ソの民間レベルの委員会において目下検討が行なわれているということでございまして、それに対して法律的な問題が将来生ずるか生じないかという点については、ただいまお答え申し上げる段階ではございません。
  64. 岡田利春

    岡田分科員 時間がありませんから、最後に一点だけお聞きしておきたいと思うのですが、外交官の取り扱いの相互主義ということが国際間の慣例でございますけれども、日ソ間において領事館の交換といいますか、これが決定をされて、札幌にソ連総領事館というものが設置されておるわけです。今度は大阪にも設置をされるようでありますが、私も実はこれは知らなかったのでありますけれども、この領事館の外交官が北海道から東京に来る場合、普通飛行機で来るわけです。しかし、相互主義という立場で、千歳の空港及び丘珠の空港、二つの空港がありますけれども、この使用は認められていないようです。したがって、札幌から特急に乗っても五時間かかる函館まで来て、しかもYS11に乗って東京に来る、そういうことになっておるわけです。これはどういう相互主義なのか私はわかりませんけれども、わが国の領事館があるナホトカの場合には、だいぶ離れていますけれども、ウラジオストックがある。これはソ連の場合には飛行場もございますけれども、民間人であろうとここの立ち入りは認めていないわけですが、そういう関連で、相互主義という立場でこの航空機の利用については認められていないんじゃないかという推測がされるのでありますけれども、しかし、千歳及び丘珠の場合、これは自衛隊の管理の飛行場でありますが、普通のほかから来る高官、交流の方々は全部この飛行場を使っているわけです。この点について、そうかたくなになる必要はあるだろうか、いわゆる外交官の取り扱いとして、相互主義上、どうしてもこれは認められないというものがあるのだろうか、私は非常に疑問に思いますし、われわれ国民常識において、非常にその点については理解に苦しむわけです。特にわれわれも丘珠を使ったりあるいは千歳を使ったりしておりますし、またここにはだれかが来る場合には、出迎えにも外交官が行っていますし、そこまでかたくなになる必要があるのだろうか。最近の日ソ間の友好関係の進展から見ればどうか。しかもわれわれ北海道道民なり国民常識から見てもどうかという感じがするのですが、この点についてもう少し弾力的に扱っていいのではないか。どちらの飛行場の使用を認めるか別にしても、二つもあるわけなんですから、この点については、この飛行場に行って航空機利用については認めてもいいのではないか、大体国民感情からいっても別に問題がないのではないかと思うのですが、これは有田さんの所管事項であろうかと思うのですけれども、この際見解を承っておきたいと思います。
  65. 有田圭輔

    ○有田政府委員 きわめて感じ方としては、いま先生がおっしゃったようなところがございますかと存じます。しかし、先生もナホトカにいらっしゃったことがあるかと存じますけれども、ナホトカの生活条件というものは非常にきびしいわけです。しかも飛行機に乗るためには、ハバロフスクまで外国人の特別列車に乗っても十七時間、普通列車に乗れば二十四時間、しかも普通列車に乗ることについてはソ連側が一々文句をつけることがあって、特別の許可を得ないと毎日出る特別列車には乗れない。それでハバロフスクから飛行機に乗ってモスクワへ行く。これでなければ連絡がつかないという状態でございます。したがってわれわれのほうはアルチョム飛行場——これはナホトカから約百五十キロ、ウラジオストックの近郊にございます。これは民間に開放されておりまして、何ら禁止区域ではないわけです。しかも社会主義国の者には利用されておりますし、それからソ連側が、たまたまわがほうの旅行者で乗りおくれたとかその他の者はこのアルチョム飛行場経由でナホトカに送っているという事例が過去に二、三例ございます。したがいまして、わがほうの外交官に対してそれだけの便宜供与をするのに何らの支障はないとわれわれは考えるのです。それを開設の当初からソ連側は拒否しております。したがいましてわれわれはそれの対応措置といたしまして、千歳の飛行場の使用というものを遺憾ながらソ連側の外交官だけに限り、ソ連大使官あるいは札幌総領事館だけに限って認めないという立場をとっておるわけであります。その後アルチョム飛行場の使用につきましては、緊急の用件で総領事がモスクワに行く場合にたびたび使用の許可を要請しておりますし、最近におきましても数度ソ連側に要請しておりますが、常に拒否されております。  一方わがほうは、千歳の飛行場は原則的にはそのように使用禁止はしておりますけれども、たとえばバングーラ現総領事が着任いたしましたときに、自分の孫を連れていくには長途の汽車旅行は困るから飛行機に乗せてくれということについては人道上の見地から特別許可をしておりますし、あるいは社会党の中央委員会の招待で来ました向こうの者に対しては、そういうことであるならばということで出迎えを許可しております。  そのように人道上の問題、あるいは日本政府とかそれに準ずるものの招待で参った者の出迎え等については、きわめて例外的措置としてこの飛行場行きを許可し、また使用を許可しておりますが、わがほうは一切例外的措置を許可されておらない。これはソ連側が著しく広い区域を外国人に対して禁止し、またその他のファシリティーの使用を拒否しているという状態から生じておりますもので、わがほうとしてはきわめて遺憾である。したがいまして、ソ連側でそういう点を考慮して改めていただいて多少の緩和をしていただければ、わがほうとしてもこのような、率直にいっておかしな措置というものは取りやめることができるかと思いますが、そのような実情をひとつ先生のほうでもよく御理解をいただいて、ソ連側にそのように態度を改めていただくということに御協力いただきたいと思います。
  66. 岡田利春

    岡田分科員 そうすると、そういう意味では千歳はジェット機ですわね。丘珠−東京の間が二時間半ぐらいかかって、これはYS11で国内航空ですわね。もちろん相互主義の立場でありますけれども、そういう点で、説明があったようにそういう措置もとっているという面からいえば、来るルートが二つあるわけですから、そういう点についてはもう少し考慮をし、さらにソ連側に対しても強く要請するという面があっていいのではないか。そういう意味では千歳も丘珠も全く同一だという認識ですか。
  67. 有田圭輔

    ○有田政府委員 その点については、われわれのほうでは特に区別して考えておりません。まあこれは内輪話ですけれども、ナホトカにソ連の外交代表部もいますけれども、正直いって、ソ連側はこれはソ連側の問題だ——ソ連の総領事がナホトカに来たときの内輪話に、飛行場を使えないという話をしたら、これはソ連側の問題で、こちらの実情はもっとあれなんだから、これはあなたが中央政府に言ってソ連側の態度を改めさすことが最も近道なんだということを言っておりますので、ソ連側が自分のほうの立場を多少緩和すべきだというふうに考えておるんじゃないかと思うので、そのような態度をすみやかにソ連側にとっていただきたいというのがわれわれの気持ちで、引き続きソ連側にはその点を申し入れていきたいと存じます。
  68. 岡田利春

    岡田分科員 終わります。
  69. 大坪保雄

    大坪主査 午後四時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後四時一分開議
  70. 大坪保雄

    大坪主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  71. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、外務省の今回提出されました予算案の中で、海外広報関係及び文化事業関係、すなわち情報文化局関係予算につきまして御質問をしたいと存じます。  海外広報費及び文化事業費におきましては、昭和四十五年度よりも一段と大きくなり、その広報及び文化事業の内容については一段の躍進が見えるように思うのでありますけれども、今回その事業費及び事業費の前年度に対する割合及びそれによって意図するところの内容につきまして簡単な御説明をまずちょうだいしたい、こう思います。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 昭和四十五年度海外広報関係予算は、御承知のとおり、八億余万円、それから文化事業関係が六億余万円で合計約十四億三千百万円でありましたが、四十六年度におきましては、海外広報関係で九億二千五百万円、この点では前年度比一二%増になっております。それから文化事業開係では四十六年度八億円ちょっとでございまして、前年度に比べますと、約三割近くの増加になっております。両者合わせますと、十七億二千七百万円ばかりになります。  その内容でございますが、詳しくは政府委員から御説明いたさせたいと思いますけれども、広報刊行物関係、これは本省関係と在外関係がございます。それから広報映画製作、プリント購入の予算、それから広報文化センター関係といったようなものが昭和四十五年度においては中心でございましたが、四十六年度におきましては、それぞれ広報刊行物関係でもまた広報映画製作、プリント購入あるいは広報文化センター関係、いずれも相当額を増加いたしておるわけでございます。特に新しい計画というものはあまりないかと思いますけれども、総体的に各分野におきまして予算の増額をはかり、またこれまでの経験に徴して足らざるところを補っていくという考え方に立っている次第でございます。
  73. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 ただいま御説明の内容についてでありますが、私がきょう申し上げようとしておりますのは、外務省の文化事業関係海外広報費は大ワクにおいて全く少ないのではないかという問題提起をしたいと考えております。  それはまず諸外国と比較いたしまして、荒っぽい比較をしたいと存ずるわけでありますが、米国、英国、ドイツ、フランスの海外広報関係予算及び人員につき外務省海外広報課よりいただいた資料によりますならば、米国の国務省の教育、文化関係を行なうところの予算は、一九七〇年度百三十一億四千万円であり、人員は二百八十三名であります。また米国広報庁の海外広報宣伝を担当されているところは、一九七〇年度予算六百五十一億六千万円であります。これには職員給与も含んでいるそうでありますが、その費用は巨額のものでありまして、人員は本庁関係三千百七十五名、在外一千三百七十三名であります。  英国におきましては、外務省海外広報関係予算七十九億一千万円、人員は本省関係二十名、在外公館百四十一名、現地採用一千百三十二名。英国文化振興会、予算一九七〇年から一九七一年が七十三億七千万円、人員は国内一千六百五十一名、在外二千三百四十九名。ざっと百五十億見当を使っていることになるわけであります。  またドイツの外務省海外広報及び文化活動は、予算が三百一億五千万円、人員が一九六五年度百十八名。インターナチオーネス、海外広報事業団は一九七〇年度五億三千万円、人員二百名。またゲーテ・インスティチュートというドイツ語及びドイツ文化の海外普及をする場所があるそうでございますが、これは海外事務所百十二カ所、準海外事務所七十カ所、国内事務所二十三カ所を持っております。  またフランス外務省海外広報を担当されているところは、予算十七億四千万円、人員が本省のみ三十四名。外務省の文化交流を担当されているところは予算二百十三億一千万円、人員は十六名。こういうふうになっているそうでありまして、御承知のとおりであります。  時間が短いので私はこれをどんどん読み上げてしまいましたが、このような人員規模から見ますと、ただいま外務大臣がおっしゃいました十七億二千七百万円というものは、おそらくは諸外国の十分の一ないしアメリカあたりから比べますと極端な開きがあるのでありますが、イギリスあたりと比べましても約十分の一、ドイツあたりと比べましても二十分の一、フランスあたりから比べましてもこれまた十五分の一程度の低いものであろう。これはもちろん予算案の組み方それ自体に、諸外国と一律に比較することは不可能でありましても、とんでもない低い金額ではなかろうか、こう考えるわけであります。  したがって私が心配しておりますことは、先日オーストラリア等に委員派遣として参りました際、諸外国における日本の評判はきわめて悪く、その評価をくつがえすために異常な努力が必要とされております。まさに素手で玉をとるような状況でございまして、たとえて申しますと、ある大使とお会いしましたところ、イギリスにおきまして、日本の国内で犬を撲殺したという妙な報道が行なわれたことがありましたけれども、大使館あげてこの問題と取り組まなければならない。そうして大使が御自分で新聞の投書欄にまで登場するようなやり方で、かろうじてこれをくつがえすような苦心惨たんをなさっているのを私は拝見したわけでありまして、このような金額の少なさというものはもはや論外であろうかと私は考えるわけであります。  また一方的に申しましてなんでありますけれども、もう少し聞いていただきますと、私がさらに先日、これはまた妙な表でありますけれども、ソニーと本田が一体広告宣伝にどれぐらい使っているか簡単に聞いてみましたのですが、有価証券報告書によりますと、ソニーの売り上げは四十四年度で九百四十三億でありますが、そのうち国内だけで宣伝費が十一億六千万かかっておるのであります。諸外国のを入れますと約五十億と推定されるわけであります。また本田という二輪車の会社がございますが、この宣伝費は六十億で、そうして国内のために二十二億、海外のために三十八億というお金がかかっていることが推定されております。  このような三十八億とか五十億とかのランクで企業が一つの二輪車を売るために努力をされているのに対しますると、われわれが売りかつ啓発し、評価をしてもらわなければならないこの日本の国というものに対しまする宣伝費、広報費というものは、あまりにも少な過ぎるのではなかろうか。今期の予算案編成における御努力を決して認めないわけではないのでありますけれども、あまりにもこれはひどいものではなかったかと私は痛感するのでありまして、それがひいては日本の外交上において、外交行動の大きなブレーキになるのではないかと私は遺憾に存ずるしかないのでありまして、この点におきまして大臣及び局長の御見解を承りたい、こう思うわけであります。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 全くこれは私どもとしては仰せのとおりと考えておるわけでありまして、外国海外広報宣伝費は、予算の立て方とかその他多少の違いもありますから、必ずしも資料等で実質の比較にならない点もございますけれども、それは差が少ない場合に言えることでございまして、こんなにけた違いであるということは確かに御指摘のとおりでございます。この点はまことに遺憾に思っております。  先ほどもちょっと触れましたように、中には三割近く、二九・七%でございましたが、昨年度よりふやしてもらったというのは、まあ日本予算制度の上からいえば、相当の伸びでございますから、こういう点についてはある程度政府部内でも関心を持ってくれた一つのあらわれかとは思っておりますけれども、まだまだ足りない点でございますから、今後まずこのやり方についてもいろいろくふうをこらし、また予算の効率的な活用ということを、あわせて考えてまいらなければならないと思っております。  実はお尋ねの範囲を逸脱するわけですけれども、私、どうか関心と理解を深めていただきたいと思っておりますのは、たとえば昭和十四、五年ごろと比べてみても、現在の外務省のその人員自体が、実員でむしろ減っております。それから外交再開のときに比べても、戦後の昭和二十七年ころよりもいわゆる外交官の実員がまだそこまでも及んでいないというようなこともございまして、外務省全体の予算も御承知のような人員でございますから、海外広報宣伝費だけではなくて、いわゆる平和外交で、武力なき外交でございますから、こういう面に外交工作費と申しますか、こういう点に一段も二段も各方面の御協力を得まして、充実拡大をしたいと考えているような次第でございます。
  75. 藤山楢一

    ○藤山政府委員 ただいまの御質問につきましては、まさに大臣がおっしゃいましたとおりの私どもの感じでありまして、いろいろな面で内容としましては大体やれることはやっておると思うのでございますが、何ぶんにも数ということで不足しておることは多分にそのとおりでございますので、今後ともできる限り努力いたしまして、これを強化するようにいたしたい、かように考えております。
  76. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それでは外務大臣とも意見がこれは一致いたしましたようでありますから、私は内容の問題につきまして、詳しく申し上げるのは控えたいと存じます。しかし、いま藤山局長が仰せになりましたように、内容としては十分な仕事をやっておるとおっしゃるのは、ちょっと間違いではなかろうかと私は思う節がございます。それはなぜかと申しますと、実はこちらにいただいております資料によりますと、現在外務省が出しておられますところの広報資料は、今期予算によりまして三百四十五万部ということになっておるわけであります。三百四十五万部のパンフレットあるいはリーフレット、こういったものといいますと、どれくらいの規模かと申しますと、実はこの間私たちは京都において府知事選挙、社共対自民公という組み合わせでいたしました際、公けにいわれているパンフレット類だけでも、相互でまいたものが六百万枚となっております。したがいまして、あの分のちょうど半分ぐらいにしか当たらない。これでは京都の人にPRするのでも不足じゃなかろうか。ほんとうにもうこれではちょっとお話にならぬのじゃなかろうかと私は思っているわけであります。  また、先ほど映画フィルムが中心になっているとお話しになりましたが、ついでに申し上げますと、十六ミリの映画のフィルムを二百本今度は購入できるそうでございまして、非常によろしいと思うのでありますけれども、この十六ミリのフィルム二百本というのはどのくらいかと申しますと、キャラメルの会社が新しいキャラメルを売り出しますときにフィルムを何本ぐらい使うかということになりますと、もう一けた上で、二千本ぐらい使うそうであります。したがいまして、二百本の映画フィルムなんというのは、意味がないといっては語弊がありますけれども、これはだめなんであります。  それからまた、私は露骨に、次から次へ申し上げて恐縮でありますが、広報文化センターが二十一カ所海外にあるそうでありまして、そのうち一部はのぞかしていただきましたけれども、広報文化センターで実際あるものは何かというと、日本ほんとうに簡単な紹介や一部の絵でありまして、ここをのぞいて帰って日本に好意を持つかというと、ないのとほぼ似ている。私は電通の方とこの質問をする前に会って、この問題でお会いしたのではないのでありますけれども、実は私たちの党の宣伝のために一体テレビスポットをどのくらいやれば効果があがるのかと聞いてまいりました。そうしましたら、三千万円から下の広告スポットでございますと、これはまずナンセンス、効果がゼロというランクになってしまう。だから、ある程度以下のパンフレットとか、そういったちらしとかは、ある数量から下でありますと効果が全くないという、費用対効果という問題を考えますと、こういうことが出てくるわけであります。そうすると、ここに書いてあります広報資料というものを世界じゆうに三百四十五万ばらまきますと、その効果がどういうことになるか、それこそ雲の上から目薬というような程度に、これは申しわけないけれどもなるのじゃなかろうか。そうすると、これは一体この事業の内容は何があるのか、量がある程度より低過ぎますと、質としてその意味はゼロになってしまう。一枚ずつがどんなりっぱなものであってもだめになってしまう。これは私はあえて申し上げますが、ほんとうのことじゃないかと思うわけであります。  また私が遺憾に存じておりますのは留学生の問題でありまして、当外務省予算ではありませんけれども、留学生を招聘するために文部省関係予算として七億二千万円、文部省、総理府関係で青少年交流のために今期組まれている予算が二億五千万、当外務省外国人の私費留学生に対する援助金として一億、こうあがっております。ところが実際にやってみまして、この数はよく了解さしていただきましたのですが、今期は前年度よりも相当一人一人の留学生に対する費用というのは上がっております。しかし現在、率直なことをいいまして、日本に留学されている方が東南アジアに帰られますと、意外に反日運動の中心者になっている方がたくさんあるわけでありまして、費用をある程度以上しぶりますと、実際問題からいいますと、日本のためになるとかならぬとかいう段階の前に、日本に対する深い憎悪というのを抱いて帰るようなことになってしまう。ドイツの話で、確かめてはおりませんけれども、ドイツ政府においては、留学される学生に対しては徹底的なドイツ語教育をまずやり、パスしてから引き取る、そうしてその当人たちが自国に帰りますと、あとそれに対する資料の供給、いろいろな新しいニュースの供給が連続して行なわれているようでありまして、こういうことであってこそ、その学生というものはその地域において光るのではないか、こう思われるわけであります。したがいまして私はこのような留学生制度自体もこの価格ランクというもの、それから数量ランクが少し違い過ぎないかという感じがやはり同じようにするわけであります。それから、時間がありませんので全部一括して言わしていただきますけれども、日本語の普及がいま非常におくれている。その痛烈におくれていますのは、先日ライシャワー博士たちが御指摘になりましたように、日本と一番緊密な関係を持っておりまするアメリカにおいて、日本語を理解する人が少ない。そのために日本の事情というものは向こうにわかっていない。日本政府側はかなり英語が普及しておって、アメリカ考え方を相当程度理解ができておるけれども、アメリカ国内というものは日本の沖繩問題でさえもろくろく新聞記事にもならないような段階においては、日本というものへの関心が低い段階では、日本語教育というものは、が然だめである。そういう観点から私は日本語の普及事業がどのようになっているか資料をいただいて見てみましたところが、日本語普及事業というものに関しては全くもって予算的に弱いわけでありまして、昭和四十五年度三千四百万円程度でありまして、日本語教師を派遣するとかそれからまた四十五年度日本研究講座の寄贈とか日本研究講師の派遣が九千百万円、その辺の程度でこの事業が行なわれているわけであります。そうしますと、私の数字が読み違いだったら教えていただきたいのでありますけれども、この辺のクラスの仕事ぶりで日本語を諸外国の中に根をはやして植え込んで、そうして留学生事業とも関連をつけて、そうして日本文化に対する大きな波動さえも巻き起こし、外交の裏幕にするほどの大きなものにするということはとうていできないのではなかろうかと私は考えておるわけでありまして、局長のことばじりをつかまえまして恐縮でありますけれども、こういった面では少し基本的なお金の取り方自体に御苦労があり過ぎるんではなかろうかと私は考えるわけであります。したがって、もう率直な話、この間から軍国主義の問題も出ておりますし、それから日本に対するエコノミック何とかとか、最近はエコノミック・ウジ虫とかいうずいぶん失敬なことがいわれておりますし、私はそういう背景になりますのは経済進出が第一になっておって、そうしてその裏から文化的な日本のアプローチというものがおくれているところにも、つまり心を先にしないで物を先にしたところがあるんではなかろうかと私は考えるわけであります。したがってこの問題については、おそらく先ほどの外務大臣の御答弁のとおり、私の見解とほとんど同じであろうかと思いますので、私は率直に申し上げるんでありますけれども、したがってこれは予算を少し多くするというような問題ではなくて、予算をもうこれからは組み直すぐらいの勢いでやり直さなければならない。それからまた文化事業に対しては、ドイツにおいて行なわれておりますように、外務省外局または外務省の中のこういうような専門の財団あるいは専門の公共機関のごときものを設立いたしまして、こういった問題のある部分については、ジェトロが貿易問題について果たした役割りを果たす海外広報宣伝事業団のごときものを計画をなさって、抜本的にこれはひとつこの問題の解明に当たられたらどうか、あえて御提案する次第でございますが、この辺ひとつ御見解を承りたい、こう存ずる次第であります。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話伺っておりますと、もう私も全くそのとおりだと存じます。いろいろ具体的なお話がございましたが、まず第一に広報宣伝の費用としては、資料としてもあるいはごらんいただいておるかもしれませんけれども、たとえば作成しておる資料の配付も約三百五十万部、そのとおりなんですけれども、それは数種類をただ算術的に足し合わせたのがそうでございますから、その中にはいろいろの種類があって、たとえば「グラフ・ジャパン」だとか「今日の日本」だとか等々ございますし、それからそれを十数カ国でつくっているわけですから、その一つのシリーズというか一つのパンフレットの、あることばの版だけでいえば全くわずかな数にしかならないわけでございます。そういう点が、先ほど局長が申しましたが、やっていることの中身についてはだいぶ苦労しているわけですけれども、一つはやはり数量的な、結局お金の問題になるわけですが、こういう点についてはほんとうに思い切ってふやしていただけるようにわれわれも大いに努力していかなければならないと思います。  それからその次は留学生の問題ですが、これは御承知と思いますけれども、昭和二十九年からたとえば国費留学生を実施しておりますが、いまもお話があったように学部と大学院レベルの研究留学生の二種類があるわけですが、四十三年度では双方とも月三万三千円でしかなかったわけです。四十五年度にはこれは学部の留学生と研究留学生に分けて、それぞれ増額いたしましたが、四十六年度には学部留学生が四万七千円、研究留学生のほうが六万六千円に引き上げることにいたしておりますので、この点はやはり個々の内容とすればこれはほぼ先進国並みにようやくなってきた感があるわけでございます。これもやはり数の問題は大いに御指摘のとおりだと思います。  それから、実はけさのこの分科会におきましても川崎秀二君からも御指摘がありましたが、青少年の交流等についても文部省中心でいろいろやっておりますけれども、必ずしも外務省所管予算になっておりませんけれども、ひとつ外務省側からも文部省その他の関係の筋にもっと強力に働きかけるべきであるという御意見があって、私もそのとおりであるし今後とも努力を新たにしたいと言っておったわけでありまして、そういう方面にも従来の配慮が足りなかったことを反省しつつ、今後に備えていきたいと思っております。  それから日本語の問題でございますけれども、実は海外でも私どもが見ているところでは日本語に対する熱は一般的に相当上がってきているようでございますが、この熱が高まってきているのに乗じて文化交流上の重点事項として推進する必要があるということで、海外に現にあります施設に対しましては日本語の講師の派遣、それから現地における日本語講師への謝金の支給、待遇の改善、あるいはまた日本語教科書の無償配付というようなことにくふうをこらしておるわけでございますが、これらについてもまだまだこんな程度では十分ではないと思っております。  それから外郭団体のお話がございましたが、文化一般ということになりますと、海外文化振興会その他現にあるものもございますから、そういうところの活動をさらに一そう推進することも必要でございましょうし、これは四十六年度の問題としてはなかなか実現もむずかしいと思いますけれども、ひとつ積極的な建設的な御意見に対して、政府としてもひとつ十分今後の拡充策として検討させていただきたいと存じております。
  78. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それでは時間がまいりましたので、ただいま大臣の積極的な姿勢を了といたしまして、今後におきましてこの問題については全面的な取り組みをお願いしたいし、また私がただいま申し上げておるような金額は、全部ふやしましたといたしましてもおそらくは駆逐艦一隻の代金か、そういうことを言うとまたどこかでおこられる方もあるだろうとは思いますけれども、まさにいやになるくらい少ない。戦争が始まるような日本が悪意に包まれてしまったら、駆逐艦の一隻や二隻では済まないのであって、日本ほんとうの将来を考えるときには、このような金額でごまかしていて、戦争になったら必死になってお金を出すような外交的姿勢ではならないし、私はもっと科学的にすべきじゃないかと思います。また広告会社なんかに聞いてみますとこう言うのです。ほんとうに一つ一つずつその国の世論を買い切って、日本とともに平和の道を歩く国にし切るんだ、一つ一つの国に対する広報計画、要するに文化攻勢というものがほんとうに考えられなければならないし、そういうものの上にこそ日本政府が文化国家日本としての経済外交あるいはほんとうの友好親善の外交ができ得るものだと理解するわけであります。  最後にそれだけ申し述べまして私の質問を終わらせていただきます。
  79. 大坪保雄

  80. 松本善明

    松本(善)分科員 外務大臣に沖繩返還協定の問題その他について伺いたいと思います。  最初にB52が沖繩に最近やってきた。十七日の午後に嘉手納基地へ一機飛来をして、約二十分で飛び去ったということであります。このことは、かつて米軍からは再配備をする可能性があることがいわれておりましたけれども、この撤去が発表された当時、臨時外相代理でありました保利官房長官は、再び沖繩に戻ることはないと確信をしている、それを裏づける十分な証拠があるというような趣旨のことを言われたわけでありますが、その期待は裏切られ、また来たわけであります。このB52の沖繩への再配備の可能性ということについて外務大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 B52の問題は、B52が撤去するという通報を受けたときの政府態度と現在の態度、見方、何ら変更しておりません。  それから、ただいま飛来したというお話がございましたけれども、沖繩にやってきて着陸したという事実は政府としては確認いたしておりません。そういう事実はなかったと承知しております。
  82. 松本善明

    松本(善)分科員 ついでにお聞きしておきますが、これは写真入りで報道されておるものでありますけれども、そのことはいまさておいて、沖繩返還後B52の配備というものは絶対にあり得ないというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは何でございますね、絶対ないという、私どもはそういうことはないと思っております。それは先ほども御引用になりました従来からの政府態度に何ら変更がございません。
  84. 松本善明

    松本(善)分科員 それでは返還協定の問題を伺いたいと思います。予算委員会総括質問外務大臣とはこの問題でかなりの問答をかわしたわけでございますが、この中でさらに外務大臣の御意見を十分伺っておきたいと思うわけであります。外務大臣は私に対する答弁でも、その後の参議院の予算委員会での答弁でも、日米共同声明の六、七、八項というのは共同声明の主柱であり眼目であるので、この趣旨を十分に盛り込みたいというふうに言われたわけであります。そして、ことばは、まだ文言は固まっていないが、ということも言われましたが、この六、七、八項の趣旨を盛り込むということは、この文章を——六、七、八項というのは相当いろいろなことが含まれておるわけであります。この趣旨を盛り込むというのはどういう意味でどういうふうに考えておられるのですか。もう一度伺いたいと思います。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一言で言えば、これはこういうことなんです。安保条約並びにその関連取りきめということを一つの大きな例として申し上げれば、これが本土並みに変更なしに適用されるということが条約上できちっと押えられているということが大切なことである、一言で言えばそういうことである、かように御理解をいただきたいと思います。
  86. 松本善明

    松本(善)分科員 これは共同声明でいえば七項に当たるかと思いますけれども、第七項は一方では「日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げ」とならないということも、返還はそういうふうでなくちゃいかぬという趣旨もうたっております。こういう趣旨は盛り込まれるでありましょうか。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは条約で申せば、安保条約はその前文や第一条で、安保条約の目的というものがはっきりうたわれているわけでございますね。その安保条約の性格、その本体が何らの変更なしに沖繩に適用されるということが明らかになるということが眼目である、私はかようなつもりで言っておるわけでございます。
  88. 松本善明

    松本(善)分科員 そういたしますと、このアメリカの負っておる国際義務の効果的遂行というようなことは入らない、そういう趣旨を盛り込むというつもりではないというふうに伺ってよろしゅうございましょうか。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはその条約、約定といたしましては、安保条約が完全に適用される、その関連取りきめが変更なしに適用されるということが、この返還の話の一番の中心である、こういうふうに御理解いただいて間違いないと思います。
  90. 松本善明

    松本(善)分科員 私は確かめておきたいわけでございますが、いまのことは安保条約と関連取りきめが適用されるということだけを、この七項に関しては盛り込む、ほかの点については盛り込むという趣旨ではないんだ、こういうことであるかどうかということを伺いたいわけでございます。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから私は中核とか主柱とか精神とか趣旨とかいうことばを申し上げておるのでありまして、文言がどうなるかということはまだ煮詰まっておりませんということを申し上げておるのであります。大切なことは、返還協定というような条約的なものとしては、法理的に条約的に日米安保条約というものが何らの変更なしに適用されるということがかっちりしておれば、それで返還協定というものの、日米共同声明の沖繩返還に関するこの中核というものは、私は十分に規定される、確保できる、かように存じております。
  92. 松本善明

    松本(善)分科員 それでは共同声明の八項についてお聞きしますが、八項の趣旨が盛り込まれる。これはいわゆる核抜きというふうにいわれて外務大臣説明をされておるわけでありますが、この趣旨が盛り込まれるということは、核抜きということを明記する、こういうことでございますか。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから私はそこを申し上げておるので、文言を言っておるわけではございませんで、つまり本土並みに核抜きになるということが堅持されるように安保条約、関連取りきめが沖繩に何らの変更なしに適用できる、こういうふうにいたしたいと考えておるわけでございます。
  94. 松本善明

    松本(善)分科員 そうすると六、七、八項の文言が入るということではなくて、安保条約とその関連取りきめが適用されるという趣旨が入るんだ、こういうことでございますか。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 文言はまだ申し上げるところまでいっておりません。これは十分いままでの論議でおわかりいただけると思うのですが、これはいずれ条文ができてからでないとこれ以上申し上げても、何かことさらに論議のために論議をかわしているような感じがいたしますので、私は文言はいずれ煮詰まりましたならば十分御審議をいただきたいとかねがね申しておるわけでございます。核抜き本土並みということが沖繩返還の一番の眼目でありますから、そのことが返還協定においてもこういうふうにして確保されるのですということが明白になればそれで必要にして十分ではないか、かように存じます。
  96. 松本善明

    松本(善)分科員 別に議論のための議論ではなくて、外務大臣がこの六、七、八項の趣旨を盛り込む、これはしっかり盛り込まなくちゃいけないということを盛んに強調されますから、それはどういう形であるか、これは盛り込み方によっては重大な影響日本の国民に及ぼすわけなんです。だからお聞きをしておるわけでありますが、外務大臣はこれ以上この問題についてはどうもお答えになるお気持ちがないようであります。たいへん遺憾でありますが、別のことを伺いたいと思います。  外務大臣はこの間総括質問で、若干誤解をされたかどうかわかりませんが、日米共同声明の全文が条約になるかのごとき御理解で御答弁されたように議事録を見ますと感じられるわけであります。私は日米共同声明に基づいてというような文章が入るのじゃないだろうか。入るとこの点がかなり大きな問題になるということを指摘してお聞きをしたわけであります。日米共同声明に基づいてというような文章は入らないのかどうか。この日米共同声明との関連はやはり書き込まれるのだろうと思うのですが、その点を伺いたいわけでございます。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 くどいようですが、実はいろいろ伝えられておりますけれども、返還協定がどういうふうな文言になるかということについては、実はまだこういうふうになりそうでございますというところまでいっていないわけでございますから、前々から申し上げておりますように、いろいろの点を御論議いただくことは政府としても大いに歓迎でございますけれども、どういう文章か、これが入るか入らないか、こういうふうなお尋ねに対しては何とも申し上げかねるわけでございますから、御意見としてかようにせよ、かようにしてはいかぬぞというふうなことがございますれば、私としては謙虚に伺ってまいりたいと思います。
  98. 松本善明

    松本(善)分科員 私は予算委員会総括質問で、日米共同声明が法的拘束力を持つようなことにならないように、そういうことがあってはならないと思うが、その点は約束できるかということをお聞きいたしました。ところが、そういうことはとうてい約束できないということを言われました。固まっていないというよりは、その点については確固として外務大臣がお答えになったわけであります。そうだとすれば、これは日米共同声明、その中のどこかの部分に何らかの法的拘束力を持たすということを外務大臣はお考えになっておるのではないかという疑いがきわめて濃厚であります。それはどういうことなのかということを伺いたいのであります。この点はいかがでございましょうか。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 総括質問のときにもお答えいたしましたように、たとえば観念的な問題ではあるが、日米共同声明をそのまま条約にするのか、こういう趣旨のお尋ねであり、そうであるのかないのかということを明らかにせよ、こういう御趣旨でございましたから、そうであるとかないとかいうようなことを、まだ両方の話し合いが詰まってない段階でお約束することはできません、こう申し上げたわけでございまして、私ここにも自分の答弁を持っておりますけれども、前後の文脈からその点を御了解いただきたいと思います。
  100. 松本善明

    松本(善)分科員 あらためてお聞きいたしますが、日米共同声明に書いてあることに法的拘束力を持たすというようなことはないということは、お約束されるでありましょうか、私は予算委員会でそういうふうにお聞きしているわけです。総理大臣にお聞きしましたら、速記録があるようでございますが、外務大臣はそういうような約束はとうていできないということを、はっきりと言われたわけです。いまのお話では何かそういう趣旨ではなかったかのようなことを言われておりますけれども、この点はあらためてお聞きしたいと思います。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどからお話がございますように、核抜き本土並みになるというようなことは、共同声明の中の沖繩返還についての、私のことばは練れないかもしれませんが、中心の主柱でございます。そういうことは先ほど積極的な御意見がありましたように、これは返還協定の中でどういうふうな形で取り上げるのかということ、これは政府といたしましてもこの点は非常に大事な点であろうと考えておるわけでございます。松本さんの御趣旨はその点については返還に御反対であるのかもしれませんけれども、核抜き本土並みという考え方には私は御反対じゃないと思うのです。  ところでそのほかの文言、共同声明のほかの文章を大切だからといって返還協定にどういうふうに表現をするのか、それを全部協定の中に書き入れるのか、極端にいえばこういう御質問だと私は思いますから、そういう点については私は何ともいえない、返還についてこの核抜き本土並みということがきちんとされることが一番大事である、そうしてそれが、またことばは練れませんけれども、必要にして十分ではないでしょうかと私は考えますけれども、そういう考え方で協定の文言というものを今後鋭意米側との間で練ってまいりたいと思っておるわけでございます。
  102. 松本善明

    松本(善)分科員 沖繩が返還されることに反対の日本人は一人もいないと思います。問題は、その返還を利用して日本の国民が危険な方向に持っていかれる、あるいは返還のやり方がほんとうに沖繩県民の希望するものでないというようなことについて問題にしておるわけです。だからこそいま協定が締結される前に問題にしておるわけです。外務大臣は、日米共同声明の全文が条約化されるのだという趣旨に聞いておるということを言われましたが、そういうことじゃないのです。日米共同声明の内容がどういう形で国民を拘束することになっていくのだろうか、そういう心配は全くないのかどうかということをお聞きしておるのでありますが、私は法制局に法的な見解を聞いてから、もう一度外務大臣の御意見を伺いたいというふうに思います。  法制局に伺いたいのは、やはり予算委員会総括質問で高辻法制局長官は「前文の中に佐藤ニクソン共同声明を引用したからといって、その中身が法的拘束力を持つというふうに即断するのは少しいかがかと思います。」こういう趣旨の答弁をいたしておられる。これは前文に日米共同声明が引用された場合に、その中身は全部法的拘束力を持つということになるのは問題だということです。じゃ何らかの拘束力を持つということになる、こういう趣旨が含まれておるように思います。前文に入った場合に、日米共同声明に基づいてというような文章が入った場合にどういう効力が生ずるのか、その点についての法制局の見解をお聞きしたいと思います。
  103. 真田秀夫

    ○真田政府委員 松本君にお答えいたします。  ただいま御指摘のような答弁が予算委員会総括質問で行なわれたことは、私も承知しております。そのときの長官の答弁の趣旨を実は確かめたわけでございますけれども、一般に国際条約におきましては、国際間の権利義務にかかわるような事項は本文で書く、それからその条約を締結するに至った歴史的な背景とか経緯とか動機というようなものを前文に書く、というのが一般のならわしのようであります。そういうことを頭に置きまして、前文にたまたまある共同声明が引用されたからといって直ちにそこから国際間の権利義務が設定されるというようなものではないという趣旨を述べたものでございまして、引用があったから直ちに何らかの法的拘束力が、従来の共同声明の性格を変えて法的拘束力を持って、当事国を縛るような内容のものに直ちになるものではないということを言ったわけでございます。
  104. 松本善明

    松本(善)分科員 法制局に確かめますが、前文に日米共同声明に基づいてというような文章、そういう引用が入るか入らないかは条約の効力には何の影響もない、入ろうと入るまいとそんなことは全く関係がない、そういう見解だということでございますか。
  105. 真田秀夫

    ○真田政府委員 どうも現在の段階では、私のほうで、いま問題になっております沖繩返還協定の文言については全くタッチしておりませんので、何とも申し上げられないわけでございまして、先ほど来外務大臣が仰せられますように、どういう文句をつくるかというのはこれからの作業であるとおっしゃっておりますし、いまお話しの、基づいてというような文句を入れるか入れないか、どういう法的な効果が出るかということも、そういう文句を入れるかどうかのとき及び入れてから後の問題に実はなるわけでございまして、いま、どういう趣旨でお入れになるかというようなことをわからないまま、法制局がこういう効果が出るということを申し上げる立場ではないというふうに考えます。
  106. 松本善明

    松本(善)分科員 それは外務大臣が言うことで、入った場合にどういう効力を持つかこいうことは、高辻法制局長官も言ったのですよ。前文に入ったからといって日米共同声明が全部効力を持つわけじゃないということをはっきり言ったじゃないですか。法律見解を聞いているのですよ。入った場合にどうなるのか。それに基づいて、外務大臣に一体こういうことはいいのかどうかということを聞こうと思っている。何もあなたは外務大臣の立場になって答えることはないわけです。あなたは前文に入った場合と入らない場合と何の変わりもないのかどうかということについての法律見解を答えてもらえばいいのです。
  107. 真田秀夫

    ○真田政府委員 どうも仮定の問題でございますので、はっきり御答弁申し上げるわけにまいらないわけでございますが、問題は、国際条約でございますので、両当事国間の合意の中身がそこに文句としてあらわれるのだろうと思います。だからどういう合意がそこにでき上がるかが実は問題なのであって、片々たることばだけですべてを、効果をここではっきり申し上げるということはできないだろうという趣旨でございます。
  108. 松本善明

    松本(善)分科員 私は法制局が答弁を避けているというふうにしか思いませんけれども、外務大臣に戻ってお聞きしたいと思います。  いまの問答でお聞きになりますように、私どもが問題にしておることはおわかりと思います。前文に何らかの形で共同声明が引用されるというような場合に一体どうなるのだろうか。その法的な効果はどうなるのだろうかということを問題にしておるわけであります。また、そういうことになる可能性があるのかないのかということを問題にしておるわけです。この点についての外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来、また先般来お答えしておるとおりでございますから、別に新しいことを申し上げるわけではございませんから、その点は御了解いただきたいと思います。要するに、まだ条文の文言というところまでいっておりませんから、この点は御了解いただきたいと思います。  それで、一般論ということになりますと、条約というものの普通の例は、その条約の締結に至りました背景とか、それから条約締結に至る交渉の経緯というようなものが触れられることが多いですね。しかし、そういったことが条約の前文に記述されましても、両国間を法的、条約的に拘束するのは各本条であるというのが条約の国際的通説である。条約というものを担当しております外務大臣といたしましては、その国際的通則を一般論として正しい意見であると、かように承知しております。  ただお断わりいたしますが、沖繩返還協定はいかようなスタイルになりますか、その文言はまだ検討中というか折衝中であって、その内容を申し上げる段階にまでは、私のポケットの中にもまだございませんものですから、出すべき何ものもまだない状態でございます。
  110. 松本善明

    松本(善)分科員 別のことを伺いましょう。  日米共同声明が道義的、政治的な効力を持っておるということは、これは外務大臣アメリカでの日米共同声明の説明で言われたことであります。日米共同声明がこの道義的、政治的効力を持っているというのは一体どういう意味でありましょうか。日本としては何らかの約束をアメリカに対してしたということになろうかと思います。具体的にお聞きしますならば、安保条約の運用やその他にもやはり影響するものではないかと思います。この政治的、道義的効力というものについて外務大臣はどういうふうに考えておられるか、お答えいただきたいと思います。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは両国政府首脳がいろいろの問題について話し合って、そしてその合意されたところを文章にいたしたものであって、内外発表したものでありますから、両国政府首脳としての合意したこと、あるいはまた表現のしかたの違ったところもございますし、たとえば一方がこう言い一方がこう言ったというところもございますことは御承知のとおりでございます。それをありのままの姿でそこに表現をはたしたわけでございます。  それから同時にこの中に、いつも申し上げますように双方の立法府の支持を得て効果を発生するものであるというのは、これは条約として両国を法的に拘束する場合のことをいっておるわけでございまして、共同声明自体は法的には両国を拘束するものではない、法的に拘束するものは沖繩返還についてはこれからできるべきところの返還協定それ自体である、そしてそれがそれぞれの国内の立法府の支持日本でいえば国会の御承認があった場合に日本としては法的拘束力を発生する、アメリカにおいてはどういう姿になるかわかりませんが、とにかく国内の議会の支持を得て承認という一これはいろいろの形がありますからまたことばじりが問題になるかもしれませんが、そうして向こうも効力発生の措置をとって、両国でこれが完了した場合に法的にその協定について拘束力が生ずる、こういうかっこうになるわけでございます。
  112. 松本善明

    松本(善)分科員 安保条約は御存じのように六条で「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」ということで基地の提供をしておる。この日本国の安全あるいは極東における国際の平和と安全の維持ということに関係していいますならば、この日米共同声明で両国の首脳の考え方の一致点というものは、この点に触れたものが非常にたくさんあるわけであります。これは六、七、八項にとどまらず三、四、五項も安保に関係をしている、あるいは極東の平和と安全ということに関する考え方を示しております。そういう意味では、この共同声明によって安保条約の運用あるいは事前協議の運用というものについて政治的、道義的な拘束を両国の政府は持ったのではないか、こう思うわけでありますが、この点について外務大臣はどうお考えになりますか。
  113. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのときの私の説明にも明らかかでありますように、事前協議等についてそれは事前協議の予約というようなことをしている意味ではございませんということを何べんも申し上げておりますが、そのとおりに御理解をいただきたいと思います。共同声明の場合はたとえば世界情勢の分析であるとか、あるいはそれらに対する願望であるとか、こういう意図の表明もあるわけでございますから、共同声明というものはおのずからまた条約とは違った趣のあるものである。それから安保条約の運用等について事前協議の予約をしたというふうなものではありません。これは非常にはっきりしておると思います。
  114. 松本善明

    松本(善)分科員 直接事前協議と関係ないとか、あるいは事前協議の予約をしたものではないというような答弁は、伺って知っておるわけでありますが、この極東の平和と安全というようなことに関する情勢認識あるいは考え方、こういう点ははっきりと日米共同声明に出てきておるわけであります。そのものの見方といいますかあるいは情勢の認識のしかた、そういう問題については、両国政府の首脳の一致点を明らかにしたわけでしょう。これが政治的、道義的な拘束力を持っておるというふうに言っておられる点ではないか。そういう意味で安保の運用やそれから事前協議に関係しておるのではないか、こういうふうにお聞きしておるわけであります。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この共同声明には説明的なものもあるし、それから情勢判断において一致しているところもあるし、あるいは先ほど言いましたように、両首脳の願望も表明されておるわけですね。そしてこれも御存じのように、一九六九年の共同声明と一九六七年の共同声明とをお比べいただきますと、やはり国際情勢やものの考え方にも多少変わっているところがある。たとえば中国の脅威というような点について、一例として申しますれば、六七年の場合には、もう少し緊張ということについて見方が強かったような感じが私はするのではないかと思いますが、六九年の共同声明では、そういうことは現実の事態として予想されないけれども、起こり得る可能性の危険といいますか緊張に対して未然にそういうことが起こらないようにするというようなことが大事な点だ、ということが指摘されてあるというふうに、そういう点の見方あるいは情勢の分析とかあるいは願望ということについては、共同声明におきましては、これは条約等と違って両方の最高首脳の認識として、そこに掲げてある点はおのずからまた読みようがあるのではないか、私は率直に言って、こういうふうに感ずる次第でございます。
  116. 松本善明

    松本(善)分科員 十年前のときといろいろ変わっているということをお認めになったことは、まことに率直でけっこうだと思いますが、私どもはやはり日米共同声明によって、かなり六〇年代の安保と七〇年代の安保条約というものは、その機能のしかたが変わっておるのではないかというふうに思うわけです。それは私どもが言うだけではなくて、たくさんの人が言います。その例として幾つかお聞きしたいと思うのでありますが、まず日本におります米軍の性格であります。このサイミントン委員会におけるジョンソン国務次官の証言によりますれば、「現在日本の直接の通常防衛の責任は全く日本に属します。われわれは日本の通常防衛に直接関連する兵力は、地上軍も空軍も置いていません。」——六〇年の当時には米軍は日本の安全を守るためにいるというふうにいわれていました。ところがジョンソン国務次官ははっきりと、日本を守るための地上軍も空軍もいないんだ、こういうふうに言っておるわけです。日本の直接の防衛は日本の責任だ、こう言っています。そうすると、日本におります米軍の性格というのは、この日米共同声明の時点で全く変わった。日本防衛というためではなくて、これは極東の、日本防衛に直接関係をするということではないそういう軍隊としているというふうに変わったといわざるを得ないと思います。また、在日米軍司令官であり、第五空軍司令官であるマッギー氏も「日本に駐留する米軍は主として日本本土の直接の防衛のためではなくて、日本の安全に関係してくるこの地域の他の条約上の公約を遂行するためのものだということは明らかだと思います。」こうやはりサイミントン委員会で言っておるわけです。アメリカ国際的な義務の遂行のための軍隊だということを言っておるわけです。これは六〇年代安保条約のもとでの米軍の性格とは、少なくも政府説明とは違ったものであります。こういう変化が生まれてきておると思いますが、この点について外務大臣はいかがお考えでありましょうか。
  117. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の申しましたことについて、お取り上げ方が私の意見とだいぶ違うようでございます。  まず第一に申し上げたいのは、安保条約というものの本質は沖繩返還によって絶対に変質されるものではない。それから六〇年に改定されたその以後今日に至るまで、また今後、政府としてはこの条約が必要であると現在考えておりますけれども、その継続する間において、その安保条約というものの性格は全然変わるものではない、私はかように存じます。そしてそのことは、いまさら申し上げると時間をとりますけれども、この安保条約の第一条にはっきりこの目的、性格が示されておる、かように私は考えるわけでございます。同時に、日本の安全とそれから日本を含む極東の安全と、そしてこれはあまりことばじりをおとらえにならないでひとつ中身を、たいへん失礼なお願いですが、すなおにおとりいただきたいと思うのですけれども、私の常識的な考えをそのまま私のことばで申しますと、この安保条約の中には第五条の系統と第六条の系統があるわけだと思います。そしていわゆる日本の専守防衛ということが第五条の系統に属するものではないかと思いますが、過去においてはその専守防衛という力においても十分でない場合においては、これも米軍の力に依存するという部面も多かったのではないかと考えられます。それから専守防衛ということに徹していきます限り、第六条の系統はいまの日本の自衛隊ではそこまで行ききれないものである、こういう性格であると思います。安保条約全体は変質してない、一つの変わらざるワク組みがあって、その中で情勢の変化といいますか、日本の専守防衛の体制がりっぱになったとすれば、その占める位置が第五条の範囲内において拡充されるが、しかし第六条の系統にはいかない。しかし安保条約の性格としては、日本の専守防衛だけでは日本の安全保障ということに十分でないということで、こちらの系統の米軍に依存しなければならないことがあるから、日本は施設、区域を提供する、こういうことであろうかと思います。それから今度は世間の、日米以外のところのいわゆる脅威というのは何の脅威かということがまたいろいろ問題になりましょうが、政府として、その脅威がだんだん薄らいでくれば、この全体のワク組みの中でのまた体制というものも、それだけ常識的にいえば全体が縮小していっても差しつかえないのではないか。  それからもう一大事なことは、何べんも申しておりますように、アメリカは韓国や中華民国とコミットメントを条約上やっておりますことは事実上明らかなことでありますが、そうだからといって、それが自動的にこの安保条約の運用について何らの制約なしに日本の提供した施設、区域を自由に使えるということになるのではない。日本日本の自主的な立場において、日本とそれから日本の安全を含む極東の安全ということにどういう関係があるかということを主体的、自主的に判断して、日本態度を決するのであるというのが一貫した考え方であり、これがきわめて明確にされている点であると思います。  こういうわけでございますから、あなたの仰せになるところの御意見は御意見として承りますけれども、本質的に安保条約に対する政府考え方はそういうところにあるということを、何とかひとつ御理解を進めていただきたい、私はかように考える次第でございます。
  118. 松本善明

    松本(善)分科員 日米共同声明が安保条約のワク内であるという御答弁は、何度も伺っておりますので、わかっておるのでありますけれども、問題は、日米共同声明が発表される前とあとと何の変わりもないというふうにはこれは見られない。木村副長官自身もこれは変わってきているのだということを言われております。政府部内でもそういわれております。その意味するところはどこなのかということを国民の前に明らかにしたいというのが私どもの考えなんです。いま私は、ジョンソン国務次官とマッギー在日米軍司令官の表現を引用してお聞きいたしました。在日米軍というのは日本を直接守るというものじゃないのだということをはっきり二人は言っておるのです。この点を外務大臣はどうお考えになるのか。そうだ、そのとおりだというふうにお考えになるのかどうか。この点を伺いたいのであります。
  119. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、いま私のことばでなるべく御理解を進めていただくよすがにと思って御説明いたしましたが、私は安保条約というワク組み、性格は何も変わっておらないということを力説したいのです。そしてまたそれが明白な事態だと思うのです。そしてさっき申しましたように、このワク組みの中で専守防衛というものの力が充実してくれば、直接日本だけを守るための、つまり第五条の系統の役割りというものがだんだん減少してくる。そして第六条の系統の「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は」云々というのが、これが米軍に依頼しているところである。また第六条に規定しているようなこの点は、私は専守防衛という自衛隊の役割りからいえば、これは及び得ないところである。私は常識的にそう考えます。その点は安保条約を必要とする政府考え方からいたしますれば、米軍が駐留しているということが脅威を起こさない、未然の抑止力なのである、かように観念していることは、もう一つも変わっていないことでございます。私は問題を分けて申し上げましたように、国際情勢も、望むらくは緊張緩和の方向に行くでありましょう。またぜひそういうふうにいろいろやっていかなければならないと思います。そうすれば、このワク組み全体の在日米軍の量とか施設というのも少なくなっていくのではなかろうか。そういう考え方が、一九六〇年の安保改定後における日米安保協議会において多くの施設、区域も、一々数はあげませんけれども、これが漸次返還もしくは共同使用もしくはその他で、だんだんに整理されてきて、十年前と比べれば十分の一に減っているというようなことは、これはやはり内外情勢の変化によって適切に運用されている証拠であると私は思うのであります。これが安保条約のほんとうの姿だ、私はかように考えているわけでございます。
  120. 松本善明

    松本(善)分科員 私の直接お聞きいたしました在日米軍の性格については、直接のお答えがないわけであります。その点についての御理解を伺わせていただきたいと思います。直接日本を守るための米軍はいまいないのだということを言っている。もう一回読みましょうか。ジョンソン国務次官は「日本の通常防衛に直接関連する兵力は、地上軍も空軍も置いていません。」と言っておられる。マッギー在日米軍司令官は「条約上の公約を遂行するためのものだということは、明らかだと思います。」と言っておられる。こういう性格を在日米軍は持つようになってきたとアメリカ側の当局者が言っておるわけですね。これは外務大臣の認識はそのとおりかということをお聞きしているのです。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 在日米軍は、先ほど来申しておりますように、二つの使命を本来持っているわけでございます。第五条と第六条と一緒に考えれば、条約全体として二つの性格を持っている。そして一つの五条系統の性格なり役割りは、漸次これを縮小していくというのが本来の姿であろうかと思います。そういう点を強調すれば、そこに言っていることも、それなりに私も是認できると思います。同時に第六条においては、そのコミットメントという、もう私は本来——これは余談に入りますけれども、先般予算総括質問のときも申しましたように、昨年の一月に、サイミントン委員会で証言を行なわれたその当のジョンソン氏そのほかが、この安保に関するというか、沖繩返還に関する日米共同声明について「日本外務大臣としてあなたが当時ワシントンで表明されたことは全くそのとおりでございます。」こういうことをさらに確言をいたしております。その点から踏まえて申しましても、そこにいわゆるコミットメントという点は、これは日本に対して、安保条約で第六条をコミットしているということも当然含まれるわけで、これが先ほど申しましたように、この性格によるところの米軍の存在、プレゼンスということは、これが抑止力の大きな効果を持っているものである、かように私は存じております。
  122. 松本善明

    松本(善)分科員 木村官房副長官のお話をたびたび引用いたしますが、正確に申しますとこういうふうに言っております。「沖繩という太平洋におけるアメリカの極東戦略のかなめ石が、本土の中に吸収される。したがって、日米安保を一つの条約機構とみれば……その条約機構に非常に大きな変化、ある意味では構造的な変化が起きる。沖繩が本土にはいるのですから、そこに一つの構造的な変化が起こることは、私は当然だと思います。」ということを、六九年十二月三日、国民政治研究会月曜会での講演「日米首脳会談を終えて」というところで言われた。この中で、いわゆるホンが上がるとか、オクターブが一ないし二オクターブ上がるというようなことを言われておる。この木村副長官の見解は間違っておるというように外務大臣はお考えになりますか。
  123. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは非公式の会議で言われたことでありましょうし、私も直接意見を交換したことはその点についてはございませんからあえてコメントいたしませんが、私の意見は先ほど来ずっと言っているところのとおりでございます。これは何べんあれしても、同じことをお前は言っているなと言われるが、それが私どもの確信であり信念ですから、同じ人間が違うことを言うわけにもまいりません。
  124. 松本善明

    松本(善)分科員 別のことをお聞きいたします。外務大臣のお話からすれば当然かもしれませんが、事前協議に対する政府態度は、現行安保条約が締結された当時の政府の答弁と何ら変わりありませんか。
  125. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも何べんもお答えいたしましたが、一々日時と名前を申し上げることは省略させていただきますけれども、要するに事前協議というのは、協議であるからにはイエスもあればノーもあるというのが一般論としても当然である。そしてそのことは、当時の岸総理、あるいは藤山、三木両氏はじめ、私の前任者等も、これはしばしば国会の議事録の上に明確に御答弁申し上げておりますし、きょうもそれを引用しつつ、政府としては一貫してさような態度をとっておるのでございまして、私が就任いたしましてから変わったわけでもないし、また沖繩返還に際して変わったわけでもございません。
  126. 松本善明

    松本(善)分科員 では私は具体的に一つ一つ伺おうと思います。  三十四年三月四日に藤山外務大臣が、極東の平和と日本の安全の関係のことについて答弁されている。その内容によりますと、「安保条約改定の精神というものは、日本が他国から侵略されることを守るということが真意である、そうして同時に、日本が侵略を受けないということは、当然極東の平和と安全に寄与するということはむろんであります。」ということは、日本を守るというそのことが極東の平和と安全になるんだということを言っておられる。また同じことを、「日本の国が外国から侵略を受けることを守り、そうしてそのこと自体は、極東の平和と安全の維持に寄与をするということだ、こういう考え方を貫いて参ります。」日本を守るということが中心なんですね。先ほど来の外務大臣の御答弁によれば、日本を守るということと別に、極東の平和と安全という五条と六条の御説明で、いろいろされました。しかし当時は極東の平和と安全というのは、日本を守ることそのものなんだ、結果的に極東の平和と安全を守ることになるんだ、こういう立場であったわけなんです。外務大臣が先ほど来盛んに御説明になったこととは違ってきておるように私は思いますが、いかがでしょうか。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはとんでもないことでございまして、安保条約、まず一々読むのも貴重な時間を費やしておしかりを受けるでございましょうけれども、先ほど来申しておりますように、第六条で「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」これが安保条約の一つの中心考え方であって、これを先ほどの私の常識的なことばでいえば、日本の安全それから日本を含む極東の安全、つまり日本としては日本自体の安全を守りますために日本を含む極東の安全ということに寄与する態勢がなければいけないということは、これはもう私は正確に御答弁しようと思えば条約文を読む以外に方法がございません。この条約は一九六〇年に日米双方締結して国会の御承認を経ているわけでございまして、この条約に何らの変更がないのですから、これ以上は何とも私は申し上げかねます。
  128. 松本善明

    松本(善)分科員 ことばで、とんでもないと言われましても、事態が変わっているかどうかということは客観的に多くの国民が判断をすると思います。私は具体的にもう少しお聞きしようと思います。  三十四年三月四日、参議院の予算委員会でやはり藤山外務大臣は、事前協議について「協議の場合には、多くノーということが考えられると思いますけれども、かりに合意に達するという場合に、もしイエスという場合があり得るとすれば、それは日本が直接攻撃を受けるという段階に迫っておるような場合が考えられないことはないと思います。」日本が直接攻撃を受けるような場合を言っておるわけであります。これは一貫をしております。ところが、日米協同声明発表後のナショナルプレスクラブでの総理大臣の演説でいうならば、韓国の安全と台湾の安全というのは日本の安全と同視するという立場が表明をされた。日本が直接攻撃された場合だけイエスというという立場からするならば、これは非常に変わってきているというふうに思います。この点はどうお考えになりますか。
  129. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは、ですから日本の安全が脅かされるという場合の判断はどういう判断であるかということにかかってくる問題でございますけれども、たとえば日本の周辺において大戦争が起こるということは、日本の安全と関連なくしては考えられません。対岸の火災視ができないようなことが起こった場合にはどうしなければならぬかということの考え方については、いま御引用になった藤山元外務大臣の見解も何ら変わっているところはないと私は思います。これは三十五年二月二十六日岸総理大臣、三十五年四月二十七日藤山外務大臣、四十三年四月二日三木外務大臣、これらの当時の人たちが言っておりますことと私の言っていることとは何ら違いがございません。
  130. 松本善明

    松本(善)分科員 違いがないと言われましても、実際に変わってきておる。というのは、どんなにことばで否定をされましても、これは国民が比較をすることができる。私はもう幾つか申し上げてみようと思います。  朝鮮戦争のことを例にとって、やはり現行安保条約が問題になったときに論議がされております。そのときに藤山外務大臣は、日本の基地から朝鮮に行くような事態に対してはどうするかということで、「それが日本を守る以外に特に使われるというような場合には、ノーといえる場合があるわけであります。」朝鮮戦争のような場合でも、日本を守る以外に使われているような場合にはノーと言えるのだ。こういうような立場が表明をされている。これと同じですか。朝鮮や韓国、日米共同声明の説明について総理大臣が演説をされた「万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設、区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きに、かつすみやかに態度を決定する方針であります。」これは全く同じでありますか。
  131. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはなるほど人によってことばづかいも違いますからなんですが、いまの藤山氏の答弁の中にも、朝鮮云々の場合にもノーという場合もあり得るのであって、裏からいえばイエスという場合もあり得るので、これはことばづかいあるいはそのときのコンテキストと申しますか、全体の文脈等から理解をされなければいけないことであると思います。
  132. 松本善明

    松本(善)分科員 もう一つお聞きしておきましよう。  米台条約の発動に関してでありますが、これは三十五年五月十二日、岸総理大臣「米韓、米台等の条約によりまして、米国が、これらの台湾や韓国において事変が起こって、これを防衛する条約上の義務を持って、その義務を果たす……その場合に、日本に基地を持っておる米軍が出動するかどうかという問題に関しましては……日本の平和と安全に直接関係のないような事態によって、在日米軍が日本の基地を使って作戦行動をするということに対しましては、その事前協議に際して、われわれとしては拒否する」こういうことを言っております。これはそうですか。
  133. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはやはり安保条約の基本の点で同じことだと思うのです。ということは、やっぱり日本の安全、そうして日本の安全を含む極東の安全に寄与するということが安保条約なんでございますから、そして私が先ほど申しましたように、日本の主体的の判断によってやるのですから、日本の安全との関連の度合いということを見て考えるべきことであって、対岸の火災視し得ないかどうかという、そういう個々の状態においておのずから判断すべき問題である、こういうふうに考えます。
  134. 松本善明

    松本(善)分科員 外務大臣のお話を伺っておりますと、日米共同声明をつくるまでの間に、長い間事務当局がいろいろ交渉をし、いろんな打ち合わせをし、そうして日米共同声明がっくり上げられた。これをつくった前とあととは何の関係も変わりもない、六〇年安保のときと同じなんだということならば、何のためにこういうものをつくったのか、まことに疑問、外務省は一体何をしていたのだろうか、私はそういう疑問を国民が持つのは当然だろうと思います。この点については外務大臣にさらに質問をしようとは思いません。  一つだけ最後に伺っておきたいのは、沖繩にありますボイス・オブ・アメリカ、VOAでありますが、これは外務大臣すでに御存じと思いますが、軍の施設ではない国務省系のものであるということを言われました。電波法によりまして、外国政府外国法人については無線局の免許を与えないということになっております。このVOAは、沖繩返還の当時には撤去をされるのでありますか。
  135. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一は先ほども御質問があって答弁を求められなかったわけですけれども、しかし戦後二十数年かかりましたけれども沖繩の返還を話し合いでやるということがいかにむずかしい仕事であるかということは、松本さんもお認めになるだろうと私は思います。それについては、私みずからほんとうに粉骨砕身して努力したつもりでございまして、根回しをし積み上げて、そうして沖繩返還についてはこの共同声明の六、七、八項、要するに何らの変更なしに本土並み、核抜きでもって沖繩を平和的に、他の条件なしに返還を求め、かつ、これがいよいよ間もなく国会の御審議も今年中には願えるような段取りになったということについては、一日や二日の話し合いでできるものともし御理解があったとすれば、私はその御質問は返上いたしたいと思います。  それから、ボイス・オブ・アメリカは、先般も、私は松本さんに御答弁いたしたように、これは軍の施設ではないようです。ですから、これは施設、区域というようなものとは別個の問題であって、私はこれも常識的に申し上げたわけですが、アメリカの制度、組織をもっと的確に政府委員からでも御説明いたさせますけれども、私はあのときに国務省系と申しましたが、常識的にはそれでいいと思います。それから、これは日本国内においては電波法がございますから、外国の放送施設には電波は許可しないというのが現在の状況である、これも御指摘のとおりでございます。この処理をいかがするかということについては、ただいま慎重に検討をいたしておる状況でございます。
  136. 松本善明

    松本(善)分科員 政府委員の答弁を……。
  137. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ボイス・オブ・アメリカの所属機関は、われわれの知っている限りでは、アメリカのUSIAだと思いますが、USIAは、長官は国務長官でございまして、国務省系と思われます。
  138. 松本善明

    松本(善)分科員 これは、このボイス・オブ・アメリカは、当然に撤去されなければならないものであるというふうに私は思います。三千五年五月に岸総理大臣は、国際緊張を緩和する方向に努力すべきときに、神経戦というような名のもとにいろいろな緊張を強める事柄はすべきではないということを、海外放送に関して言っております。そういう精神から言うならば、当然にこのボイス・オブ・アメリカというものは許されないものであろうと思います。  それから、いま外務大臣の言われました沖繩返還協定について、なるほど長い期間をかけられた。それならそれなりに、前とあととは違っておるのではないか、それなりの意味をもってやられたのであるならば、変わっておるのじゃないか、それをきょうの答弁では、何の変わりもないということを言われるから、それならば、そういう疑問は当然生じますということを申し上げておる。私は、外務大臣が、すなおにということを先ほど言われましたけれども、私のほうからも、外務大臣に、すなおに事態を国民に説明をしていただきたい、こういうふうに思っておるということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  139. 愛知揆一

    愛知国務大臣 核抜き本土並みということで返還の話がきまりました。その点においては、前とあととはたいへんな違いでございます。
  140. 大坪保雄

    大坪主査 明日は午前十一時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十四分散会