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1971-02-22 第65回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十二日(月曜日)     午前十時一分開議  出席分科員    主査 大坪 保雄君       賀屋 興宣君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    田中 正巳君      三ツ林弥太郎君    井上 普方君       久保 三郎君    田中 武夫君       楢崎弥之助君    芳賀  貢君       平林  剛君    伊藤惣助丸君       大橋 敏雄君    近江巳記夫君       北側 義一君    小林 政子君    兼務 大原  亨君 兼務 小林  進君    兼務 中村 重光君 兼務 細谷 治嘉君    兼務 安井 吉典君 兼務 岡沢 完治君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      林  信一君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房会         計課長     金子知太郎君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       大塚 俊二君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         大蔵省主計局次         長       竹内 道雄君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         大蔵省理財局次         長       小口 芳彦君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         国税庁長官   吉國 二郎君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         農林省農地局長 岩本 道夫君         通商産業省企業         局参事官    増田  実君         運輸大臣官房審         議官      見坊 力男君  分科員外出席者         経済企画庁総合         計画局参事官  赤津  学君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵省主計局主         計官      後藤  正君         大蔵省主計局主         計官      相原 三郎君         大蔵省印刷局長 青山 保光君         国税庁税部長 江口 健司君         建設省住宅局住         宅計画課長   丸山 良仁君         日本専売公社理         事       稲川  徹君         日本専売公社臨         時塩業近代化本         部副本部長   堺  嘉之君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   田中 武夫君     井上 普方君   楢崎弥之助君     久保 三郎君   矢野 絢也君     近江巳記夫君   松本 善明君     青柳 盛雄君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     田中 武夫君   久保 三郎君     平林  剛君   近江巳記夫君     北側 義一君   青柳 盛雄君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   平林  剛君     芳賀  貢君   北側 義一君     大橋 敏雄君   小林 政子君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   芳賀  貢君     楢崎弥之助君   大橋 敏雄君     伊藤惣助丸君 同日  辞任         補欠選任   伊藤惣助丸君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   田中 昭二君     和田 一郎君 同日  辞任         補欠選任   和田 一郎君     矢野 絢也君 同日  第一分科員小林進君、岡沢完治君、第三分科員  大原亨君、中村重光君、第五分科員細谷治嘉君  及び安井吉典君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算大蔵省所管  昭和四十六年度特別会計予算大蔵省所管  昭和四十六年度政府関係機関予算大蔵省所管      ――――◇―――――
  2. 大坪保雄

  3. 中川一郎

    中川政府委員 昭和四十六年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算につきまして、去る一月二十二日内閣から提出した予算書に基づいて御説明いたします。  まず、一般会計歳入予算額は、九兆四千百四十三億一千五百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと一兆四千六百四十五億五千百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうちおもな事項について、その概要を御説明いたします。  第一に、租税及び印紙収入は、八兆二千九百六十二億五千八百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと一兆三千五百七十八億四千百万円の増加となっております。  この予算額は、昭和四十六年度政府経済見通し等基礎として見積もった租税及び印紙収入見込み額八兆四千三百四十九億六千六百万円に、今次の税制改正による減収見込み額一千八百六十六億六千七百万円及び増収見込み額四百七十九億五千九百万円を加減したものであります。  第二に、専売納付金は、二千九百四億五千八百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと二百九十五億七千百万円の増加となっております。  これは、日本専売公社納付金が二百九十三億二千万円、アルコール専売事業特別会計納付金が二億五千万円増加することによるものであります。  第三に、公債金は、四千三百億円で、前年度予算額と同額となっております。  この公債金は、公共事業費出資金及び貸し付け金財源に充てるため発行する公債収入を見込んだものであります。  最後に、前年度剰余金受け入れにおきましては、昭和四十四年度の決算による同年度新規剰余金九百五十七億九千九百万円を計上いたした次第であります。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、七千九百八十六億四千万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと六百八十五億一千四百万円の増加となっております。これは、国債費において二百八十四億四千二百万円、政府出資において六十九億五千万円、公務員宿舎施設費において八億九千三百万円、経済協力費において四十五億四千万円、予備費において三百億円増加いたしましたが、他方、特殊対外債務等処理費において二十二億六千万円、産業投資特別会計繰り入れにおいて百三十三億円減少いたしましたこと等によるものであります。  以下、この歳出予算額のうちおもな事項についてその概要を御説明いたします。  まず、国債費につきましては、三千百九十三億三千九百万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債の償還、国債の利子及び大蔵省証券発行割引料の支払い並びにこれらの事務の取り扱いに必要な経費国債整理基金特別会計繰り入れるためのものであります。  公務員宿舎施設費につきましては、百十七億三千二百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国家公務員に貸与する宿舎の建設に必要なものであります。  政府出資につきましては、中小企業信用保険公庫等機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として五百四十四億五千万円を計上いたしておりますが、その内訳は、中小企業信用保険公庫百十億円、海外経済協力基金三百三十億円、新東京国際空港公団百億円、預金保険機構一億五千万円、水資源開発公団一億円、本州四国連絡橋公団二億円であります。  産業投資特別会計繰り入れにつきましては、八百三億円を計上いたしておりますが、この経費は、産業投資特別会計において行なう産業投資支出財源の一部に充てるため、一般会計から同特別会計繰り入れるものであります。  予備費につきましては、予見しがたい予算の不足に充てるため一千四百億円を計上いたしております。  次に、当省所管特別会計といたしましては、造幣局特別会計をはじめ、十の特別会計がありますが、そのうちおもな会計につきましてはその概要を御説明いたします。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも百五億二千万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、いずれも二十億二千六百万円の増加となっております。これは、補助貨幣等製造経費増加によるものであります。  印刷局特別会計におきましては、歳入二百三十五億一千四百万円、歳出二百十一億九千二百万円、差し引き二十三億二千二百万円の歳入超過でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、歳入は、二十七億六千二百万円、歳出は、二十八億八千八百万円の増加となっております。これは、日本銀行券等製造数量増加によるものであります。  以上、申し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金、貴金属、外国為替資金産業投資賠償等特殊債務処理、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計につきましては、お手元予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府機関収入支出予算につきまして、簡単に御説明いたします。  まず、日本専売公社におきましては、収入九千四百十五億八千百万円、支出六千八百七億六千四百万円、差し引き二千六百八億一千六百万円の収入超過でありまして、専売納付金は、二千八百八十億五千二百万円を見込んでおります。このうち、支出につきましては、塩事業において、塩業整理交付金百三十九億九千五百万円を計上いたしております。  なお、日本専売公社事業のうち、たばこ事業につきましては、昭和四十六年度製造たばこ国内販売数量を、対前年度百四十一億本増の二千三百五十一億本と見込んでおります。  次に、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫、環境衛生金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各機関収入支出予算につきましては、お手元予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  これをもちまして、大蔵省関係予算概要について説明を終わります。  なお、時間の関係もございますので、委員各位のお許しを得まして、説明を省略させていただきたいと思います。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  4. 大坪保雄

    大坪主査 おはかりいたします。  大蔵省関係予算の詳細なる説明につきましては、お手元に配付されております印刷物を会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大坪保雄

    大坪主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
  6. 大坪保雄

    大坪主査 以上をもって大蔵省所管予算説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 大坪保雄

    大坪主査 この際、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は要領よく簡潔に行なうよう御注意を申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
  8. 久保三郎

    久保分科員 新しく設けられます自動車重量税、私はこの問題を中心にお伺いしたいと思います。  まず、新しい自動車重量税は新しい交通政策のための特定財源である、こう理解してよろしいのかどうか、いかがですか。
  9. 福田赳夫

    福田国務大臣 さように理解してよろしゅうございます。
  10. 久保三郎

    久保分科員 これは中身として、発想の点ではいろいろあったようでありますが、結論としていま出てきているものは、一つには第六次の道路整備五カ年計画、こういうものが昨年、予算編成時でも財源のめどがつかないものが三千五百億ぐらいたしかあったと思います。そういうものを中心にしてこの税金を取っていこう、財源としていこう、こういうことのようでありますが、そうしますと、これは先ほどお答えがあったように、一つ特定財源として考えていくべき性格のものであるのかどうか。しかもその配分の形を見てまいりますと、約四百億、そのうちの半分二百億が道路に回る、初年度ですね。あとも大体そういう基準でいくのかどうか。そういうものを見ますと、特定財源として大体大ワクをかけておいてその中でも特別に道路財源を確保するんだというふうにとってよろしいのか、いかがですか。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 久保さんがいま御指摘のように、この税は、道路財源が不足する、つまり四十五年度から発足しました新五カ年計画、これが総事業費十兆三千五百億なんです。その財源一般財源において約三千億余り足りない。これは五カ年間の話です。そこで私は前の国会で、これは四十六年度予算のときにその財源を明らかにします、こう申し上げたのです。そこでこの問題が起こってきたわけなんです。しかしいま、道路ばかりじゃない、鉄道関係地下鉄関係、いろいろ総合交通体制を整える必要があるわけです。そういう事情を考えまして、とにかく交通対策のために金が要る。そこで新税を設定する。一方において、道路財源は充足するが、なお他の財源にもこれを使わなければならぬ。そういうような考え方一般財源としてこれを繰り入れる、こういうふうにしたわけでございます。そしてこの一年ぐらいをかけまして総合交通体系というものをつくりまして、またこの税の見直しもしなければならぬか、かように考えております。
  12. 久保三郎

    久保分科員 いまのお話だと、大体道路整備五カ年計画中心で、それ以外には総合交通体系というかそういうものを考えていくための財源であるというお話のようであります。それじゃ新しい税金の伸びの予想といいますか、第六次五カ年計画は四十九年まででありますが、切りよく五十年としまして、五十年までにどのくらいの税金を考えておられるか、いかがでしょう。
  13. 細見卓

    細見政府委員 四十六年から四十九年までの税収見込みを約五千億というふうに考えております。
  14. 久保三郎

    久保分科員 そうしますと、これは四十六年度四百億であるようでありますから、かなり大幅な税金になると思うのです。もちろん基礎になる数字自動車保有高ですね。保有車両は四十九年現在で何台ぐらいに見ているのですか。
  15. 細見卓

    細見政府委員 おおむね五十年度末で三千万台を予定いたしておりますし、税収が伸びますのは、御承知のように四十六年度は十二月施行でわずか四カ月分であり、四百億をもし平年度化すれば千二百五十億くらいの税収になる規模のものでございます。
  16. 久保三郎

    久保分科員 五十年で自動車三千万台、いまは何台くらいあるのですか。
  17. 細見卓

    細見政府委員 自動車台数は四十四年現在で軽自動車を除いて千五百八十三万五千台となっておりますが、その後引き続き増加いたしておりますので、推計をいたせば現在もうすでに千六百万台近くなっておる、かように考えていいのじゃないかと思います。
  18. 久保三郎

    久保分科員 いずれにしても現況の大体倍を予想しておられるのですが、これだけの金をつぎ込めば大体いまの倍くらいの車がいまよりも改善されて走れるようになるのですか。
  19. 細見卓

    細見政府委員 これは判断にわたることでありますのでいろいろ御議論もございましょうが、第六次道路整備五カ年計画も着々実施されてまいりましょうし、特に市町村府県道等整備されてまいればかなり車はふえてくるのではないか、かように考えております。
  20. 久保三郎

    久保分科員 ふえてくるということはあなたのお話を是認して、三千万台という話ですからそうかと思う。それじゃ五十年になって三千万台になったらば、これだけの税金を入れて第六次五カ年計画を完成すれば、いまよりはもっと道路事情はよくなるのか、あるいはいまのような状態で走れるのかどうか、こういうことを聞いているのです。もっとも専門でないからこういうことをお尋ねするのはたいへん失礼かと思うのですが、しかし、大蔵省かなり専門的なことを、他省所管の中でも非常に緻密に立ち入って検討されて、予算をつけたり税金を考えておられるのでありますから、大体いまのようなのは常識的に考えてもおわかりの点じゃなかろうかと思うのですが、どうでしょう。
  21. 細見卓

    細見政府委員 この約三千万台というのは、メーカーなど、あるいはメーカーを主管する通産省の見込みによりますと大きい数字になるわけでありますが、私どもは道路事情その他も考え、あるいはその間の五カ年間の道路整備実績予想等をも加味しまして三千万台というものを出しておるわけでございます。  道路事情は、先ほども申し上げましたように、幹線道路が一方で整備される半面、今回の道路整備計画では市町村道等かなり重点を置いて行なわれますので、少なくとも日常生活における自動車の使用というのはかなりよくなるのではないかと思います。ただ幹線交通というような問題になりますと、これは先ほど大臣からもお答えいたしましたように、総合交通体系あり方というものを考えて、総合的に検討すべき問題が残ろうか、かように思っております。
  22. 久保三郎

    久保分科員 市町村道というか地方道路、これは財源かなり窮屈であります。現状も非常に劣悪でありますから、これに対して来年度四百億のうちの大体四分の一、百億を回すということはあなたのおっしゃるとおりでいいと思うのです。しかし二百億大体道路に回すわけですね、それ以外の道路幹線道路に。二百億ならず、四十七年度以降はもっとたくさんお回しになるのでしょうね。大体六百億か七百億回すということでしょう。おそらくこの計画はそうでしょうね。そう思っていいですか、ちょっと返事してください。
  23. 細見卓

    細見政府委員 これは先ほど大臣からお答えいたしましたように、一般会計財源にいたしておるわけでありますので、明年度予算編成の過程におきまして必要なほうに必要な額だけ回るということで、おそらくかなり増加されると考えていいのではないかと思います。
  24. 久保三郎

    久保分科員 そこで、三千万台の車が地方道路ばかり通っているなら、これは整備されるからうまくいきましょうね。しかし、いまの道路交通の実態からいうと、残念ながらそういうふうにいかないのが現況じゃないでしょうか。  ここでちょっと大蔵省にも御意見を聞いておいたほうがいいと思うのですが、この新しい税金大半道路へかけていく。もちろんその土台を税金ばかりというのじゃおかしい。財源をとやかく言うばかりじゃなくて、新しい道路整備五カ年計画というものがどだいこれでいいのかという問題ですね。  私は、いま道路交通問題点解決するのに何を考えたらいいかということをちょっと考えてみたいと思うのです。いま提案されているように、五カ年計画整備していく、そうして道路交通の面をもう少し円滑にやっていこうという考え方もあります。しかし、現実にいま道路交通の問題というのは何かというと、いわゆる交通事故であり、交通公害であり、あるいは渋滞でありということですね。これは考えてみれば、たとえば東京都にも何本かの高速道路がありますが、いまは低速道路になっている。道路をつくればつくるほど自動車の数がふえてくるというかっこうですよ。だからいまの予想でいくと、大体少な目に見ても四十九年で三千万台だと思いますね。その大半都市に集中するわけです。そういうものに対して道路をつくるために自動車から税金を取って、そして道路をつくる。そうすると自動車が多くなっていって、そしてふん詰まりになって、また税金を取ってまた道路をつくってと、こういう悪循環はもはやこの辺で一ぺん遮断する以外に方法はないんじゃないかと私は思っている。いま道路交通の面でのモータリゼーション、これをどう規制していくかという問題、それと同時に、公共輸送機関をどう確保するかという問題、国民の公的な足の確保をどうするかという二面から攻めていかなければ、問題の解決がない。もはや道路を構築して、改良して、そして交通を円滑にするという、そういう仕組みはここで用をなさないんじゃないかと私は思う。もちろん全然道路が必要ないという意味ではありません。先ほどお話がありました地方道路整備、あるいは交通安全のための施設、それからもつど大事な面は人間のための道路をどうするかという問題がありますから、これには相当の財源を振り向けるべきだと私は思っています。  大蔵大臣、どうでしょうか。こういうやり方でいいのかどうか。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 久保さんの御指摘の点、確かにあるのです。つまり道をよくすれば幾らでも自動車がふえてくる。また、その道が非常にふくそうしたり、事故を起こしたりする。そこで一つ道路にばかり依存するという考え方、これを修正する必要があると思うのです。つまり交通を総合的に考えていく。一つ鉄道です、一つは航空機です、一つはフェリーボート、そういうものを総合的に考えていかなければならぬ。こういうふうに考えると同時に、道路自体につきましても今日のこの状態でいいか、こういうとそうはいかぬ。  そういうことを考えますときに、これはもう道路近代化を進めなければならぬ、舗装かなり重点を置いておるわけです。今度の五カ年計画、これは着実に行なわれる、こういうふうに見ておりますが、これができ上がる、そうすると国道は九四%が舗装が完了するわけであります。まあほとんど全部といっていいと思います。それから都道府県道、これは六七%というふうにいっておりますが舗装が完了する、地方道整備も進む、こういうことになるわけですが、しかし、ただいま申し上げました他の交通部門との調整、これをどうするかということが非常に問題になってくる。ことに都市交通ということを考えますときには、これは地下鉄をどうするか、こういう問題が起こってくる。そういう問題を総合的に考えていく時期に来ておる。そして、この税法の改正を、新鋭の創設を、これを今国会に御提案をしたわけでありまするが、それにはその前提として、実は総合交通体制というものがほしかったのです。ところが、それが間に合わない。そこでなお一年間をかけてその総合交通政策を立てよう、こういうことにいたしましたのは、とにかく前国会において、四十六年度予算の際には道路財源だけは充足をするということを明らかにしなければならぬという政府の立場があります。そういうふうなことで総合計画を待たずして新鋭を創設するというやむを得ざる手段をとったわけであります。  そういう段階でありますので、この税は限定した目的財源としない、一般財源としてこれを受け入れてそして中間的な配分を行なう、こういう仕組みをとったわけなんであります。
  26. 久保三郎

    久保分科員 いまのお話では、総合交通体系というかそういうものをことしじゅうにつくって、まあ来年から軌道に乗せて配分していく、こういうお話、理屈としては最も筋道の通ったお話であります。それじゃ運輸省のほうにお聞きしたほうがいいと思うのですが、総合交通体系というのははたしてうまくできるのでしょうかね、どうですか。
  27. 見坊力男

    ○見坊政府委員 運輸省におきましても総合的に交通体系を考えていくというその重要性につきましては、昨年、運輸大臣諮問機関でございます運輸政策審議会総合交通体系基本的あり方及びその実現の方策について諮問いたしまして、十二月下旬に一志中間的な報告が出されております。そこにおきましては、総合交通体系確立の基本的な考え方及びその解決のための基本的な方向というものが示されております。問題は非常にむずかしいわけでありますが、総合交通体系は可能である。と申しますのは、それぞれの交通機関の持つ特性を発揮しながら、総合的に最も効率的な体系を考えるという必要性を指摘しておりますが、運輸政策審議会におきましてもさらに具体的に問題を詰めていくという段階になっております。さらに政府全体としましては、企画庁が中心になられまして、関係方面とも十分調整をとりながらその検討を進めていく、われわれもその体系の検討は可能である、またそれをぜひ実現しなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  28. 久保三郎

    久保分科員 見坊審議官の決意のほどは承りましたが、これは私はひやかすわけじゃありませんが、なかなかそう簡単なものじゃないと思うし、要は、これは大蔵大臣総合交通体系などといっても、それはやはりそれぞれの交通機関にはそれぞれの特性もございますから、それを有効に使っていくということに尽きると思うのです。それの組み合わせなどはいまの情報下においては当然なされなければいけませんけれども、そういうことに尽きるとすれば、結局はどの交通機関をどこまでどういうふうに整備していくか、その金をどうするかという問題になると思うのです。それが総合交通体系の結論だと思うのですよ。何か夢のようなことを考えておって、そんなものはやはり青い鳥にしかすぎないのではなかろうかと私は思っているのです。  そこで、交通整備の社会資本としてのいわゆる財源をどう取っていくかという問題だと思うのです。しかし、お話しのこの新税は一般財源へいま振り込んでおくが、言うならば特定財源だというふうにおっしゃられなかったが、大体そういうふうに将来はなるのですかね。これは特定財源としてこういうものを取り入れるのですか、それとも総合交通体系がおっしゃるようにできまして、そうしたならば、それにのっとっていわゆる各交通機関財源配分するわけですね。そういう配分をするなら、その財源そのもののもとは、言うならば特定財源として一般に最近いわれております特会ですね、特別会計で処理していくということになるのでしょうか、どうでしょうか。
  29. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺をこの一年間かけて検討することにしております。もちろん、道路交通政策の基本の問題、これもありますが、同時に、その財源をどうするか、また財源が額としては調達可能であったという場合に、たとえば特別会計方式なんというのが提唱されておりますが、そういう方向をとるのかとらないのかというようなこと、その一事も、これはなかなかむずかしい問題でありまして、さあそれじゃ地方税として道路目的税があります。そういうものをどういうふうに処置するか、こういうような問題もありまして、この財源をどういうふうに配分するか、その機構の問題一つを取り上げましても、これは容易ならざる問題でありますが、鋭意努力いたしまして、ひとつ総合交通体系を立てる、こういう決意をいたしておるわけです。  ただ、この総合交通体系というのは運輸省ばかりじゃ片づかないのです。運輸省は大株主でありますけれども、これは建設省もあります。それから自動車産業を主管する通産省もある。それから財源大蔵省もある。そういうようなことで運輸省だけでは片づきませんので、企画庁を中心として、その立案に当たってみたい、かように考えておるわけであります。
  30. 久保三郎

    久保分科員 私は、おっしゃるような総合交通体系ができて、それでそれぞれの投資も考えていくという場合の財源は、いまのようなたとえば自動車新税を取るか取らぬか別にしまして、たとえば取るにしてもこれを特定財源として固定すべきじゃないと思っているのです。というのは、何か甲から乙へ、同じ交通機関の中でこんなことをやること自体がはたしていいのかどうかというと、たいへん疑問があると思うのです。最近はやりのイコールフッティングという問題がありますが、これは学者の論文として聞きますが、現実にそういうものが計算の中に入れられるものかどうか。それからもう一つは、イコールフッティングの発想の終着駅は言うなら公正競争ですから、これは自由競争になりますね。競争というのは、競争条件が大体そろって――そろえることがこれはたいへんむずかしいですね。そろえられても、これから出発していって、自由競争では総合交通体系の行く先というものはちゃんとある程度は一つのビジョンなり何かできるのでしょうから、そういう方向へ行くようにするのには、単なる自由競争というか公正競争を原則にしたやり方だけではうまくいかないと私は思っております。また、そうすることは結局社会資本のロスが出てくるというふうにも考えますので、そういうものをいろいろな観点から考えれば、やはり特定財源として持っていくのじゃなくて、一般財源として税金税金で取っていくということで、交通資本はどうするかということを別途考えていくのが私は筋だと思うのですが、どうでしょう。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 大蔵省の立場は特定財源を非常にきらうのです。つまり、これは財政が硬直化するという一つの面になってくるわけであります。そこで、新税を特定財源だといって固定してしまうという考え方には一種の抵抗感を感ずるのですが、これはしかし、かりに特別会計方式をとるという際には、その特別会計から、あるいは道路にあるいは地下鉄にあるいは新幹線にと、こういう支出面の配分が広く行なわれるということになるので、そういう広い意味の交通体系への割り当て財源だというような考え方は、あるいはこれは採用しなければならぬかな、そういうふうにも考えております。
  32. 久保三郎

    久保分科員 私がそれを言う理由は、道路自動車に関する税金関係ですね、これはもう使命が終わったと思っているのです。こういうやり方にはたいへん問題があると思うのですよ。だから、やはり特定財源として形を整えていくのがいいのかというと、これはたいへん疑問があると思う。そのかわり一般財源として振り込めばやはり大蔵省は、一般財源として入れても、これは自動車から取ったのだから交通へ、そういうふうになるだろうと思うのです。おまえのところは、大体こういうのは税金でこれだけ上がった。たとえば空港整備にしても着陸料にどれくらいだ、いままでは幾つか出したから、これに見合ってつけて出そうか、こういうやり方では意味がないのでありまして、それならむしろ特定財源のほうがきき目があると思うのです。いずれにしても、交通整備についての財源の取り方については、総合交通体系ができたからその上に乗っかってというのでなくて、やはりいまから財源財源として考えていく必要があろうかと私は思うのですが、この点はどうですか。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう考えで取り組みたいと思っております。
  34. 久保三郎

    久保分科員 それから来年度予算の中で、この新税の配分というか、そういうものが大体できているようでありますが、こういうのはやはり道路重点で、道路には地方道を入れて三百億、あとの百億というのが総合交通体系というか、らしきものとして、新幹線に三十億とか、あるいは青函トンネルに二十億とか、それから国鉄の在来線の増強に二十億とかというようなことになっているようでありますが、これはどういう、基準か何かあったのですか。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは直接には自動車新税とは結びつかないのです。九兆四千億という大きな歳入、その中から新幹線には幾ら、また既設線の改良には幾ら、これは国鉄の話ですね。それから道路には幾らとか、あるいは交通安全対策には幾らという、九兆四千億という大きな額から配分したのです。しかし、配分するときの頭はどこにあったかというと、自動車新税はこれは交通関係のものだ、こういうことが頭にあったわけです。これはもうもちろんそのとおりでありますけれども、非常に理論的に申し上げますと、三百億円を道路に幾らというふうな配分はしておらないわけなんです。
  36. 久保三郎

    久保分科員 お話としてはお話のとおりだと思うのです。しかし、実際はそういうことじゃなくて、三百億の中身を分けよう、分けるのは大体この辺だというので、各省、それからいろいろな関係がありまして、それにつけたと思うのです。これは、言うならば配分の基準というのはなかったということですね。話し合いの妥協の産物としてここへ出てきたのだということでありまして、ちっとも科学的でも何でもない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 高度に科学的、技術的であるか、こう問われますと、そう高度の科学性も持っていないかもしれません。しかし、気持ちはやはり道路財源も充実しなければならぬというのが一つあったのです。それを、一般財源だけではなかなか足らぬ、そこで新税を起こして、そのうちの何がしかを充てるという、そういう事実上の頭のからまり方、これはあるわけなんです。しかし、どこまでも九兆四千億円の全体の財源、これが三百億円という新税が加わったために九兆四千億になったのだ。そういうことで、もしこの三百億円というものがなかりせば、あるいは九兆四千億という数字にならない。したがって、道路費への繰り入れ、あるいは新幹線への充当、あるいは旧国鉄路線の改良というほうへの回りがあるいは少なかったかもしらぬ、こういうことにはなろうかと思います。
  38. 久保三郎

    久保分科員 時間もありませんからなんですが、お話しのようだと、幸いこういう新税ができたので、道路以外にも回していくことができたのだ。回してやったとは言いませんが、回すことができた、こういうことなのでありますが、もちろんこういう考えで今後総合交通体系の中で新しい財源をどうするかという問題をお考えではないだろうと思うのですね。そういうことじゃないかと思うのでありますが、こういう形では、残念ながら総合交通体系は、どうできてもうまくいくわけにはいかぬだろう、こういうふうに一つは思うのであります。  それからもう一つは、総合交通体系ができて、財源の問題を考えるときに、この際こそやはり自動車鉄道、航空、船、こういうそれぞれのものがそれぞれ税金をしょっております、地方税を含めて。国鉄にすれば納付金の問題もあります。自動車はたくさんな税金をずっとやっているのですね。これは、いい悪いは別にして、もう少し税金としてわかりやすく、また体系が非常に混乱しておりますから、これは一ぺん洗うべきだと思うのです。いわゆる単なる社会資本としての投資の配分だけを、鉄道に幾ら、新幹線に幾ら、こういうことも必要でありますが、それと同時に、これらがしょっている税金の体系というものはやはり洗い直して、根底からやり直す必要があると私は思うのですがどうですか。  それと同時に、ことし百二億でしたか、自動車以外に、道路以外にやった中で、落ちていてまた大事なところは、地方交通をどう確保するかという問題がいま一番問題になっているのですね。たとえばお互いの選挙区などにもたくさんございます。それでバスの運転休止あるいは鉄道線路の撤去、そういう場合に地方公共団体がどうしたらいいかと迷っている。なるほど運輸省関係で多少の助成はあります。あるいは自治省関係でも多少のものはありますけれども、これはとうてい地方交通を住民の足として確保するにはほど遠いものがあります。こういうものにどうしてさしあたりの財源としてもこれが与えられなかったかということに私は疑問を持っているのです。時間もありませんから、簡単にお答えいただいて終わりにします。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは地方のことも考えておるわけなんです。つまり今度の自動車新税は年額にいたしますと千二百億円なんです。そのうち四分の一、三百億円に相当する額を地方に譲与する。これはまさに地方交通体系ということを考えておるわけでありますが、お話しのように、地方道路一つとってみましてもまだ非常に立ちおくれております。ですから、何としても地方自治団体にそういう整備をしてもらわなければなりませんけれども、幸いに地方団体もずいぶん強化されてまいりましたので、新税なんかを合わせますとかなり施設ができるのじゃあるまいか、さように考えております。
  40. 大坪保雄

  41. 細谷治嘉

    細谷分科員 大蔵大臣にお尋ねしたいのですけれども、地方自治はよく三割自治といわれております。せんだっての本会議大蔵大臣は、地方自治は豊かになってきた、こういうおことばも出たわけであります。一体三割自治というのは、大蔵大臣はどういう根拠でお考えになっておるか、お尋ねします。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 三割自治なんということは、私は言ったことも、考えたこともございません。これは皆さんのほうで三割自治、三割自治と言うておるのであります。逆にお尋ねをしたいほうなんですが、想像しますのに、自治機能が三割しか動いておらぬ、まあ中央統制という部面が自治全体の七割に及んでいるということをさしてそういうふうに言っておるのかもしらぬ。あるいは財政の状態を見まして、ほんとうの意味の自主財源が幾らで、三割しかないじゃないか、七割はみな国に依存しているようなかっこうじゃないか、それじゃ自治ができない、そういう状態をさしまして三割自治と言っておる人がおるのかなとも思っております。まあ昭和三十年ごろは、財政の状態地方では一体どういうふうになっておっただろうか、一般財源が五二%であります。そういう意味からいえば、そのころは財政面からすると五割自治だ、こういうふうになるのかとも思います。今日は一般財源かなり充足をされてまいりまして、先ほど国会説明されました地方財政計画によりますと、六四・二%というふうになっておるわけであります。そういうふうに自主財源が非常に充実されつつある。これは自治という自治体本来の姿からいいますと非常な改善を来たしておる、こういうふうに見るわけです。  それから国と地方との財政のスケールを見てみますと、国は九兆四千億という膨大な予算ではありますけれども、そのうちの二三%は地方交付税であります。また補助金とこれを合わせますと九兆四千億というけれども、地方に回す金が約その半分になっている。ですから、いま地方財政総体の財政の姿を見ますると、国より少し大きうございます。大ざっぱにいうと国ととんとんだというふうに言ってもいいかもしれませんけれども、地方のほうは九兆七千億円の規模になっておる。国のほうは九兆四千の半分だというのですから、まさに二対一の実力を持つ姿になっておる。こういうことを考え合わせましても、これもまた地方財政というものは実に強い姿になってきておる。それから中身を見ましても、ずいぶん自主単独事業、こういうものも進み得るようになってきておる。  そういうような状態でありまして、私は地方財政というものは、これはなかなか十分と言うことはまあどこの世界でもむずかしいことではございますから、十分とは申しませんけれども、しかし、逐年よくなってきておる、こういうふうに見ております。
  43. 細谷治嘉

    細谷分科員 三割自治なんということばを言ったことはない、確かに言っておりませんけれども、しかし、地方財政は出世したということについては、いま大臣はそうお考えになっておるようであります。大臣地方税というのが毎年地方財政計画で組まれておりますけれども、大体昭和三十年、三十一年くらいの地方財政計画の中で占める地方税の割合は、およそ四割なんです。低いときでも三八か九、多いときで、ことしあたりが四〇をちょっとこして四一・七、ことしはそういう状態なんですね。ですから、地方税の地方財政計画に占める比率というのは、ここ十五年は三八から四一くらいなんですよ。ですから一体どこが出世したのか。確かにおっしゃるように地方交付税を自主財源と見ますと、最近は二二、三になっておりますから、四一、二に二二、三を加えますと、さっき言ったように六四、五になって、地方交付税も含めた地方財政は確かに自主性を増した、こういうことが表面上は言えるでしょう。しかし、実際上は地方税の占める比率というものは三八から四一でここずっと変わっていないわけです。しかも地方交付税の配り方というのは、最近はやはり投資的経費重点的に配られるようになりましたから、言ってみますと補助金的な性格を加えてまいったわけでありますから、私は大臣が言うように地方財政は豊かになった、地方財政は自主性を増したということばは大蔵大臣らしくない皮相的な見方ではないか、こう思っております。  大臣は、去年あたりまでは国の財政と地方財政とは車の両輪なんだ、国のほうがフィスカルポリシーをやる以上は地方財政も当然その中に組み入れられなければならない、こう言っておりましたが、せんだっての本会議では、大蔵大臣地方財政というものはフィスカルポリシーにはもともとなじまないのだという、こういう去年あたり大蔵と自治省がけんかをしたようなことで大蔵大臣の考えが変わったような、もともとなじまないのだという自治省が去年まで言っておったようなことを言われたわけですね。ですから大蔵大臣の考えはずいぶん変わったなあと、私はせんだっての本会議で受け取ったわけであります。それだけではあまり皮相的ではないか、こう思うのです。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 この間本会議で確かに、フィスカルポリシーを地方財政にも取り入れる必要があるのじゃないかというような御趣旨の御質問がありましたので、それに対しまして、フィスカルポリシーというものはそもそも地方財政にはなじまない性格のものだ、しかし、これは地方財政の規模等から考えまして、これは景気にも非常に重要な影響があるので、政府のとる景気政策、これには御協力を願わなければならないのだ、こういうふうに申し上げたのでありまして、これはもうフィスカルポリシーに全然関係がないなどとは申し上げないのです。なじみにくいものだけれども、御協力を願わなければならぬのだ、こういうことを申し上げておるわけなのであります。  決してそういう実力を持った地方財政全体が景気調整にそう無縁のものだ、そういう考えはいたしておりません。これはどうしても御協力を願わなければならぬ。しかし、どこまでも地方自治なんです。国でこうするのだから地方もこうしなければならぬというようなことは、これは自治を尊重するたてまえから申し上げられません。まあ期待をする、こういうようにとってもらいたい。そういうような意味を込めましてこの間の答弁をいたしたわけであります。
  45. 細谷治嘉

    細谷分科員 そこで、これはとくと大蔵大臣、頭に置いていただきたいのでありますけれども、地方財政計画というのは都道府県と市町村を込みにして計画がつくられておるわけですね。先ほども申し上げましたように、その地方財政計画の中で地方税というのは四一・二%しかない。これは変わらない。その四一・二%というのを分けてみますと、四一・二%のうちの五五%というのは都道府県の税なんです。四五%というものは市町村の税なんですよ。でありますから、国税と地方税との比率が七対三だから三割自治、こういうことがいわれているのかもしれませんけれども、その三割のほうは大体五五と四五に都道府県と市町村が分かれているわけですから、もともと税の面から見ますと都道府県も市町村も一割五分自治、こういう財政構造をなしておると私は思うのです。  そこで、このフィスカルポリシーになじまないという根本的な原因は、そういうようにすぐ地方交付税を入れますけれども、地方交付税は二二・三%の比率を財政計画では占めておりますが、この分け方というのは六割は都道府県ですよ。四割は市町村に行くわけでありますから、地方自治の一番完全な形態をなしておるという市町村の自主性というのは、財政上から見ますときわめて低い、こういうことが言えるわけですね。  フィスカルポリシーになじまないという根本的な構造は、国、都道府県、市町村との間の税財源の再配分ということが私は根本的な原因だと思うのでありますけれども、いかがですか。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 地方自治団体がフィスカルポリシーになじまないというのは税の面、そういうお話でございますが、私は必ずしも都道府県税と市町村税との配分がフィスカルポリシーになみじない、そういう原因になっておるとは思わない。しかし、都道府県税と市町村税との間には私は検討すべき多くの問題を含んでおる、こういう認識を持っておるわけです。その地方自治団体間、つまり都道府県それから市町村の税の配分、これについては何らかの是正を必要とするのじゃないかと考えまして、検討方を関係方面に御依頼をいたしておるわけなんであります。地方自治団体がフィスカルポリシーになじまないというのは、一番問題は何といっても地方自治にあると思うのです。国の政策がこうなったから、さあ地方もこうだ、こういうふうに期待はできますよ。しかし、これは強制というか指示、そういうことはできないわけなんです。そこが問題だというふうに申し上げておるわけであります。
  47. 細谷治嘉

    細谷分科員 少し具体的に入りまして、先ほど自動車新税の問題をめぐっての質問があったわけでありますけれども、第六次の道路整備計画、この一例をとりましても、今度は突如として新税が生まれてまいったわけでありますが、その四分の一というのが地方に譲与税として配られる、こういうことです。十兆三千五百億という膨大な道路整備計画財源を洗ってみますと、国のほうは事業費に対して特定財源が七九・七%あるわけですね。都道府県のほうは、六九・八%、七〇%あるわけですね。市町村は一六・五%しかないわけですね。今度百億といいますから、一七%くらいになるでしょう。それにいたしましても、その道路整備の六次の計画というのは、日本の九十五万キロの道路のうち八十五万キロを占めておる市町村道、圧倒的な延長を持っているわけですね。それにある程度の重点を置いていこう、指向していこうというのが第六次の計画ですね。にもかかわらず、特定財源というのは、国が八〇%持っておる、二割一般財源を出せばいい。都道府県は七〇%を持っておる、三割一般財源を出せばいい。市町村のほうは一六・五%しかない。こういう点から一例をとっていいましても、ずいぶん不公平である。これではとてもじゃないが、第六次の道路整備計画はやれないのじゃないか。現に大臣地方財政計画は、ずっとここ十五年ばかりの推移をながめてみますと、さっき言いましたように、地方税は大体四〇%プラスマイナス二%、地方交付税というのは二〇%プラスマイナス二、この範囲である。何が一番顕著な変わりをしているかといいますと、昭和三十年の初めくらいには、給与関係費というのが地方財政計画の中でおおよそ四〇%あったのです。それがいまはどうかといいますと、地方財政計画の中の給与関係費というのは三四くらいです。六%くらい給与関係費は落ちてきております。それはどこへいったかというと、投資的経費にいっているわけです。毎年毎年の財政計画の決算をながめてみますと、どんどん国の補助金がつく公共事業一般財源がひもつきで投入されていきますから、何のことはない維持修繕費とか、地方団体の完全に自由になる事業計画のみんな一〇〇%以内、こういう事態になっておるわけです。ここに問題がある。ですから、やはりひとしからざるを憂えるということばがありますけれども、これではあまりに問題があるのではないか、こういうように私は思うのです。  もう一つ例をあげていいますと、時間がありませんから簡単にしますが、都市の財政構造というものを見てみますと、たとえば大阪市、これは昭和四十三年度の実績でありますけれども、所得収益関係税金というのは、国税が七七%ですよ、府税が一七%、市税は六%しかないのです。消費流通関係税金は国税が六九%、府税が二〇%、市税は、大阪市に入ってくるのは一一%しかないわけですね。法人所得税を例にとりますと、国に六六%入る、府県に二九%入る、そして市にはわずかに五%しか入らない、こういう状態になっておるわけですね。  今日、いろいろ都市問題等が問題になっておりますけれども、いろいろな税を取っても、こういう都市では、国に大体七四・五入っていく、そうして市にはどのくらい入っていくかというと、大阪あたりでありますと大体一一%ぐらいしか入っていってない。残りは全部府税、こういう状態になっておりますから、先ほど大臣いみじくも国と都道府県と市町村との間の税財源の再配分ということは非常に重要な問題になってきていると思うと、こうおっしゃいましたけれども、これでは地方自治というけれども、とてもじゃないが自治を推進することはできないのじゃないか。ですから一番大きな問題は、何といっても財政構造であります。自主財源の問題だと私は思うのであります。こういう不公平は早急に是正しなければならぬと思うのでありますが、いかがですか。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 国と地方団体全体との間は、私はまあいいところへきておる、こういうふうに思うのです。問題は都道府県と市町村との間の配分、こういうことにつきましては私は検討の余地が出てきておる、こういうふうに思うのでありまして、これは細谷君なんかの知恵を出してもらって、ひとつこれから検討すべきは検討し、是正すべきは是正する、こういうことをしなければならぬかな、こういうふうに考えておるわけであります。全く考え方としては私は一緒でございます。
  49. 細谷治嘉

    細谷分科員 大臣、国と地方団体との間の税財源配分というのはおおむね妥当だ、しかし、都道府県と市町村との間の配分というのは検討しなければならぬ、こうおつしゃいましたけれども、これは少し片手落ちだと思う。さっきも言いましたように、大体七割から七割二、三分というものが国税に入ってきている、まあ全国全体を平均しますと、私はいまは国税というのは六八、九になっているのじゃないかと思います。そうして三二、三というのが地方税になっていると思う。その三二のうち都道府県に一八、九、残る二、四というのが市町村にいっているというのが大体の割合じゃないかと思うのであります。ところが、都市にまいりますとそうじゃありませんで、国のほうに大体七五ぐらい税金が入っていき、残りの二五のうちおおむね一五ぐらいが府に入って、そして市には一〇そこそこしか入ってない、こういう状態なんであります。私は、国、府県、市町村三者の間の税財源の再配分をしなければだめだ、これは府県と市町村をけんかさして、国は高見の見物ということは、大臣、おかしいと思うのですよ。これはやるのならどうしても国税と地方税の七対三という不合理が検討の出発点である、こういうふうに考えるのでありますが、いかがですか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま細谷さんの御指摘になられる三者、国と都道府県と市町村、この間の調整問題、そういうことがあるかもしれぬ、あるかもしれぬが、これは二の次の問題だ。まず第一義的に問題にすべき問題は、私は都道府県と市町村の問題だ、こういうことを申し上げておるわけなんです。とにかく先ほどからも申し上げておりますとおり、財政の規模全体を見てみますと、これは地方を実力を二とすれば、国は実力一である、そういうような状態でありますから、国がこれ以上地方財源をさくという考え方はいま私は持っておりません。
  51. 細谷治嘉

    細谷分科員 いま大臣は府県と市町村の問題だ、おれのところは知らぬ、こういうことでありますが、これは私はおかしいと思う。しかし、ここで幾らやっても進みませんから……。  そこで、今日都市問題というのが非常に問題なんですけれども、私は、金額の面からの比率ばかりではなく、やはり経済の動きにある程度即応する今日的な税目の検討というのが必要ではないか。しばしばいわれますように、国税の弾性値というのが一番高い、都道府県の弾性値というのが一・四ぐらい、国税は丁六、七、こういうふうにしばしばいわれております。  むろん景気で変動しますけれども、市町村の場合は大体一・一くらいですね。ここに私は税目の、税財源の再配分という、金額の問題じゃなく、景気に即応するように、いわゆる大蔵大臣が言うフィスカルポリシーというものに地方が協力しようとするならは――不景気のときは公共事業をぐんぐん進めなければいかぬ、こうおっしゃるならば、やはりそういう弾力性を持った、弾性値においても国も都道府県も市町村も同じようなレベルに大体合わせることが必要ではないか。試みに昭和三十年を一〇〇といたしまして、四十三年度の決算をさぐってみますと、たとえば都市の人口は一三四にふえているわけです。都道府県は大体二四です。税金はどうかといいますと、一人当たりに直しますと、国は五〇〇、府県は八四四、都市は四〇九という実態になっておるわけですね。こういうことでありますから、金額の問題ばかりじゃなしに、やはり税目の検討も必要とするのではないか、こう私は思うのであります。でありますから、これは府県と市町村で適当にやれなんてことじゃなくて、やはり国自体の問題として、国、都道府県、市町村を通じての税財源の再配分が必然的に行なわれなければならぬと思うのでありますが、もう一度お答えいただきたい。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 細谷さんのお話は、再配分ということを言われますが、どうもお話を承っておりますと、再配分じゃなくて、税の仕組みをどうするかという、こういうことのように伺ったのです。そうですか。
  53. 細谷治嘉

    細谷分科員 そういうことです。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう意味だとすると、これは今後、いろいろそういう問題も含めながら検討していかなければならぬ、かように考えます。
  55. 細谷治嘉

    細谷分科員 税の仕組みというところまで来ちゃって、時間がないわけですけれども、その前に一言ちょっとお尋ねしておきたいのでありますけれども、四十二年、四十三年に大蔵省と自治省が調べまして、超過負担問題というのは年次を追うて計画的にやってまいりました。今年度地方財政計画の中では百九十億程度超過負担を解消しよう、こういうことになったわけでありますけれども、実は大蔵大臣、解消したはずでありますけれども、依然としてこの超過負担というのは解消されておりません。たとえば六大市を例にとりましても、四十五年度でも六大市だけでこの超過負担というのが百五十億をこすだろうという見込みであります。特にこの超過負担の多いのは、小中学校の施設、公営住宅あるいは問題の保健所、これは二十八年から二十九年くらいに十五万を境にして保健所の政令指定市をつくったわけです。その後は政令指定市はできていない。いま四十万以上になっても十万を単位にして保健所を置くというのですけれども、四十万以上になったところでも、依然として保健所は政令指定市にならないで都道府県の保健所でやっております。片や、当時十五万をこしておったけれどもその後人口が減っていっておる、そういうところは政令指定市になっておる、こういうものがあります。これは厚生省の問題でありますけれども、保健所については一体どうするのか。私は、十五万なら十五万を境にして、あるいは十万に一カ所であればやはり既定方針どおり、保健所というのは一番住民の健康に関係する問題でありますから、一番近い能力のある――十万以上になったら、やはり政令指定市にしていく、こういうことが大原則であろうと思います。それにはやはり超過負担問題というのを解消するということが前提になってくると思うのであります。これについては、一向超過負担の問題というのは解決しておりませんので、こういう問題について一体どうするのか。  それからもう一つ。今度の公害問題、だいぶ予算をふやしたぞと大蔵大臣自画自賛しているのでありますけれども、その圧倒的なウェートというのは下水道なんですよ。下水道はいま補助率が四〇%であります。四〇%の下水道の補助率では、これからの公害防止事業をやっていくに対しても、これはとてもじゃないが地方団体は負担ができない、こう思うのであります。しかも喫緊の問題であります。でありますから、この下水道の補助率十分の四というのは、思い切って重点的にやはり補助率を上げていかなければならぬ。いまの下水道はどうかといいますと、四十五年度を例にしますと、四割の補助でありますけれども、実効補助率というのは全国平均二二%なんです。大都市の場合、特に公害問題で追われている大都市の場合は、実効補助率は二八%にすぎないのであります。四〇%は表看板であります。四〇%の補助がつくのは下水道事業費のうちの六、これだけなんです。ですから、四、六、二十四でありますから、実効補助率は二二%、大都市の場合はもっと補助率のつかない事業をやらなければなりませんから、実効は一六%しかなってない。これはひとつもっと補助対象額と対象事業範囲を拡大する、補助率を引き上げる、こういうことを講じなければだめだと思うのでありますが、この二点についてひとつ大臣の御見解を承りたい。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず超過負担問題でありますが、これは自治省と協定をいたしまして、逐次解消をしてまいりまして、おおむね解消済みである、こういうふうに見ております。ただ、細谷さんがおっしゃられることは私はわからないわけでもない。おそらく、個々具体的な自治団体をとらえてみますると、あるいは超過負担というような問題が起こっておるかもしれない。それはなぜかというと、たとえば学校をつくります。そういう際には、学校はこういう規模のものですよ、そして坪当たり単価はどういうものですよ、その坪当たり単価に対しまして何割の補助をいたしますよ、こういうふうになっておるわけでありまするが、自治団体によりましては、その文部省や大蔵省や自治省、相談してきめたその単価よりも高い値段で建てたがるというところもかなりあるわけであります。しかし、それを、その高いものに応じた補助をいたすということになりますると、みな、いいほうがいいから、そっちのほうへ引きずられていってしまう、こういうことになる。一定の単価と、それを具体的に個々の市町村について当てはめた場合の単価、これが現実的に埀離がある、そういうことが目につくので、いまのようなお話があろうかと思いますが、これはもう全国三千の自治団体があるわけです。そこで思い思いの学校を建てる、思い思いのかかった金に対しまして一定率の補助をするというわけにいかない。これはどこまでも一定率、一定の基準単価というものを設けまして、この基準単価に対して何割という仕組みをとるほかはない。これは御了解を願えるのではないか、そういうふうに思います。  第二は、下水の問題。これは補助一般といたしますると、私どもは補助率はむしろ引き下げられなければならぬという問題がかなりあるように見受けるのです。現に十割補助というようなことをやっている。それをだんだんと是正するというので、今度の四十六年度におきましても是正を御審議願うわけでございます。しかし、いま公害の問題、こういうことが非常に重大であり、しかも公害といえば水と大気です。その水の問題の処置、これはやはり下水道対策が中心になるという観点のもとに、下水道につきましては補助率につきまして是正をするという考え方に立っておるのであります。この国会にそのための法律案の御審議を仰ぐ、こういうようなことにいたしております。
  57. 細谷治嘉

    細谷分科員 基準の問題は、単価というよりも、問題はやはり補助対象、こういう問題が一番大きな問題になっておりまして、それはお答えいただけませんでしたが、これが下水道の場合でも、あるいは住宅等の場合でも、非常に重要な超過負担の要素になっているわけで、御検討いただきたい。  税の仕組みの問題について私は、予想される、大蔵大臣考えている付加価値税等の関連において、一体税の仕組みというのは国なり都道府県、市町村を通じてどういうふうに展開していくべきか、こういうことについてやや突っ込んだ御質問をしたいと思ったのでありますけれども、時間がありませんから、次の機会に譲りまして、終わります。
  58. 大坪保雄

  59. 近江巳記夫

    ○近江分科員 私は、きょうは時間の関係もございますので、万国博覧会の問題にしぼってお尋ねしたいと思います。  いままで通産大臣が担当されてこられましたわが国の万国博覧会も、国民の皆さんの一致した力強い盛り上がりのもとにみごとな成功であった、このように思います。歴代の通産大臣も非常によくがんばってこられたわけでございますが、今回いよいよあと地等の問題も含めまして大蔵大臣が主体となってやられる、まことに力強い感じがするわけでございます。  そこで、まず初めに大蔵大臣にお聞きしたいのですが、跡地利用懇談会が答申を出しておりますが、これにつきましてはわが党の参議院議員の田代さんが本会議で総理にも質問をしたわけでございますが、直接担当なさる大蔵大臣として、この答申についてどのように受けとめ、今後実行なさっていくか、その基本的なことをひとつお聞きしたいと思います。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま近江さんは万国博覧会跡地利用懇談会の答申というお話ですが、まだ本格的な答申が出ておりません。中間答申ということでございますが、この中間答申において、この懇談会は、あのあと地を緑に包まれた文化公園というような性格のものにしたいということを申し述べておるわけであります。私どもも全く同感に存じますので、この線に沿って具体化してまいりたい、かように考えております。
  61. 近江巳記夫

    ○近江分科員 内容については一括利用とかいろいろなこともここでずっと述べられておりますし、総理もそれについてお答えになったわけでございますが、いずれにしましても、このあと地の管理法人につきまして、これを早くスタートさせないと、いろいろと実際上の行動に支障があるんじゃないか、このように思います。そこで、今国会でこの管理法人についての法案を出されるかどうか、またそうであれば、その中身について大体どういうような構想をお持ちであるか、ひとつ簡単にお聞きしたいと思います。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま申し上げましたような方針であのあと地を一括して緑に包まれた文化公園にする、その文化公園にした場合にそれの維持管理に当たる主体ですね、これを設定しなければならぬというふうに考えております。その維持管理の主体はいわゆる認可法人という制度をとることが適当である、こういうふうに考えまして、そのために必要な立法措置を今国会で御審議願いたい、かように考えております。
  63. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それで、中身をもう少し具体的に述べていただきたい。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ中身は固まっておらないのでありますが、少し欲をかきまして、認可法人ということでありますれば、その維持管理というだけの管理法人ということであれば事は非常に簡単なんです。ところが、万博協会が、いま万博の黒字残高というもの、百七、八十億くらいになるんじゃないかというふうにいわれておりますが、それをかかえておるわけです。それをこの維持管理のためにも活用すべきではないか、こういうふうに考え、ただいま万博協会当局の石坂会長と、そういうふうにいたしたいがいかがなものでありましょうかということを相談をしておるのです。つまり、私どもの考え方といたしますと、百七、八十億にのぼる協会の黒字残高、これを新たに設置する認可法人に引き継ぎまして、そしてその果実といいますか資金の利息収入、これを維持管理費の一部に充当する、こういうふうにしたらどうかなどと考えておるわけですが、まだ協会側との話がまとまっておりませんので、これがまとまり次第法案を提案する、こういうことになろうかと思います。
  65. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それで、認可法人の法案が通り、実際にスタートする、それまでまだ残された問題が非常にたくさんあると思うのですが、現在の万博協会が非常にいま縮小の方向にずっときておるわけです。当初のあれでありますと大体三月一ぱいぐらいで解散じゃないかというような話もちょっと聞いたように思うのですが、その点、法人ができるまでは、当然万博協会も最小の機能をもって維持管理に引き継ぐまでやるべきじゃないか、このように思うのですが……。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 万博協会は協会自身で結末をきめる問題でありますが、私どもがこういうふうにするであろうと想像いたしておりますのは、その残余財産を新しくできる認可法人に引き継ぐ、引き継いだときに解散する、そういうことを考えておるのじゃないか、またそれが常識である、こういう見解でございます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江分科員 先ほどの答申については決定的でないというようなお話もあったのですが、しかし、内容を見ますと、かなりよく検討されておられるように思うわけです。しかし、これはあくまで基本的な、言うならば考え方でありまして、実際にそれをやっていくためには、マスタープランをつくるとか、あるいはまたそのマスタープランに基づいたプログラムを設定してやっていかなければならぬわけです。ところが、こういう懇談会にいらっしゃる人は各界の会社の会長とかそういうような人ばかりでありまして、実際の具体的なマスタープランを立て得るかというと、これはおそらく無理じゃないかと思われるわけです。そこで、この法人がスタートしてからそういう点は考えればいいじゃないかというような考え方もあるわけですけれど、私は、この万博の計画をたとえば丹下さんなどのああいうグループ、実際の実施グループが進めていったわけですが、ああいうようなマスタープランを練り上げていくグループといいますか、それを早いとこ発足させる必要があるのじゃないか、このように思うのですが、大臣としてどのように考えておられますか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 懇談会のほうでまだ話をどんどん進めるわけにいかない。そして懇談会でこんなふうにしたらどうだろうという意見がお聞かせ願えるときが来ると思います。それがやっぱり懇談会を設けました以上主軸になってくる、こういうふうに思いますが、御指摘のいろんな専門家等衆知を集めましてそういう基本に基づいたマスタープランの作成、そういう段階もいずれは来るであろう、そのときにはそうする、かように考えております。
  69. 近江巳記夫

    ○近江分科員 万博の土地は百万坪、このようにいわれておりますが、阪大の十万坪、道路部分の十万坪を引きまして大体八十万坪。私は地元におりますけれども、あの辺は大体御承知のように坪十万円以上しております。そうしますと、八十万坪を実際に考えてみますと、十万としても価格にしますと八百億になりますね。そうすると、たとえばこれを定期預金等で考えた場合、七分としても五十六億円という利益が浮いてくるわけです。ですから、何も金の面だけでせけということじゃないのですけれども、じっくりと慎重に考えるのはわかるわけですけれども、やはりそこは土地の有効利用といいますか、万博公園を一日も早く国民に利用していただける、それも完成する必要があるのではないか、このように思うわけです。そういう点で一貫して政府のその姿勢を見ておりますと、慎重に、そうあわてぬでいいのではないか、土地は逃げやせぬよという考え方が一貫しておるように思います。その辺もう少し拍車をかげながら、実際に動かしながらよく検討していく、そういう態度が必要じゃないかと思うのです。これについてはどうでしょう。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 それにはいろいろ懇談会でも意見がありまして、そう急ぐ必要はないのじゃないか、こういうことを言う人が多うございます。しかし、お話しのような観点の意見も、これは傾聴しなければならぬというふうに考えますので、慎重の上にもやはり急がなければならぬ、さように考えます。
  71. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それから、残存施設で確定しておるのと未確定のものとがあると思うのです。きょうは通産省の方も来ていらっしゃると思うのですが、大蔵大臣御承知なら、大臣からお答えいただいてもけっこうですが……。
  72. 増田実

    ○増田(実)政府委員 残存施設として残すことが確定しているものを申し上げますと、まず日本館、それから日本庭園、それから鉄鋼館、日本民芸館、これは参加施設でございますが、これは残すということに一応確定いたしております。それから協会の施設といたしましては万国博ホール、万国博の美術館、迎賓館、それから協会の本部ビルの建物、これを残すということでございます。以上は私どものほうが残すことを一応確定的と考えているものでございます。次に、暫定的に装置しまして、いまのマスタープランができましたあと残すか撤去するかをきめようというものが、プレスセンター、それから協会の本部ビルの別館でございます。それから協会の倉庫を考えています。それから、私どものほうで残すか残さないかは検討の対象外といたしまして、むしろ跡地利用懇談会のほうの御決定に従うということで、検討対象以外のものがいわゆるお祭り広場とエキスポランド、こういうことになっています。
  73. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この中で、これからの検討事項としてエキスポランド――お祭り広場は非常に年間の維持費とかいろいろな問題がありますし、それは慎重に考えていただければいいと思うのですが、エキスポランドは非常に子供たちにも人気がありまして、いろいろな意見が出た中で、青少年のそういう子供の国といいますか、そういうものにやってもらいたいという意見も非常に強かったわけです。しかし、緑に包まれた文化施設を含んだ森林公園という構想に大体なっているわけですが、そういう点から、エキスポランドは子供たちのためにもぜひとも残してあげるべきではないか、このように思うのです。なるほど決定はいろいろと今後時間をかけなければならぬと思いますけれども、大臣としては、子供たちのためにぜひともその方向でいきたい、こういうお考えでいらっしゃるかどうか、子供はそう考えなくてもいいじゃないかというお考えか、その点をひとつお聞きしたいと思います。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も一応そういう近江さんの構想と同じような考え方をしておるのです。しかし、いずれにいたしましても、このエキスポランドの利用方法につきましては、懇談会の小委員会のほうでどういうふうに利用するか検討してくださるというものですから、その検討の結果を待って最終的な結論を得る、さようにしたいと思っております。
  75. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それから実際にこの認可法人ができてマスタープラン、そしてまたプログラムに基づいてやっていくということになりますと、相当時間もかかると思うわけです。そうした場合に、全部完成してからそれでは開放するのかということになりますと、これは非常に時間もかかってくるし、むだなように思うわけです。実際、いまお聞きしましたら、こういう日本庭園をはじめとして民芸館なりあるいは日本館あるいは美術館、鉄鋼館、万博ホール等は残されるわけですから、たとえば日本庭園なんか別にそのまま開放してもいけるわけですよ。ですから早期に、こういう使える施設等については、工事に支障がない限りは有効にどんどんとそれを活用していくべきだ、私はそれをひとつお聞きしたいのですが、またそのお考えがございますれば、いつごろそれを開放していくか、時期的な点まで、おわかりでしたらひとつお聞きしたいと思います。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 まことに常識的な御見解と思います。懇談会にそういう方向でおはかりをするというふうにしたいと思います。
  77. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それで、大臣としては時期的な点まではお答えしにくいと思うのですけれども、事務当局としていままでやってこられた通産省あたりはどういうぐあいに、いつごろ、たとえば日本庭園などは開放すればいいじゃないかとお考えになっていらっしゃいますか。
  78. 岩瀬義郎

    ○岩瀬説明員 日本庭園でございますが、これは直ちにいまからでも実際上は使えるかと思います。しかし、早く法律をつくりまして管理主体をきめませんと、維持管理、経営、経理とかあるいはいろいろな安全上の問題もございますので、こういう点を考慮いたしまして、まず管理主体を早くつくってからということで、現在のところはなるべく秋ごろまでには間に合わせたいと考えております。
  79. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この万博は当初通産省の予想は三千万、ところが見直しをやりまして五千万、実際来たのは六千四百二十二万、ちょっと切れますけれども、それだけの人が入りまして大成功であった、このように思うわけです。それで私ども向こうの、大阪におりますものですから、できるだけこの機会に世界を勉強さしてもらいたいということで、私も五、六回は行ったと思うのですけれども、なかなか全部を見れなかったわけです。そういう点で非常にまだ心残りがするわけですが、大蔵大臣は何回ぐらい行かれて、どのくらいパビリオンをごらんになりましたか。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 二回参りまして、三分の一くらい見たかと思います。
  81. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大蔵大臣は二回行かれて三分の一、非常に精力的に回られた、このように思います。  そこで、この六千四百万といいますけれども、私も通産省の人にいろいろお聞きしてやっておりますが、大体一人三回くらい行っているというのです。特に地方なんかから来た場合に、ちょっとくらい見て帰ってくるのはもったいないからというので三回になったかもしれないけれども、その数学はまだはっきりしていないと思いますが、三回とした場合、六千四百万で、ざっと二千万から二千五百万くらいが実際の数じゃないか。そうしますと、人口一億のわが国からしますと、大体五人に一人か四人に一人行った。延べじゃないですよ、実際に行った数からいきますと。そうしますと、大多数の国民がまだ見てないということです。私も昨年沖繩へ行ってきましたけれども、沖繩の人なんか全然見ていませんよ。よほど恵まれた人だけが、あるいは用事でこっちへ来たついでに見た。北海道にしたってそうです。九州にしたってそうです。東京あたりの子供たちでも、行きたいけれども行けない、そういうかわいそうな子供がたくさんおったわけです。そうして夏休みが終わって集まったときに、万博へ行ってきたか、行ってない。行ってない子供がさびしそうにしておったのです。そういう子供たちがおる。それであの一ぱいの人たちを見て、お年寄りは、これで行ったらまた病気になるかわからぬということで、まあいいわということで、行ってないわけですね。  そうしますと、次の万博は今度はフィラデルフィアですね、七六年ですか。万博条約においても今後十年ぐらいにしようじゃないかという話もありますし、今世紀中にはもうないわけですよ。そういう点で非常に心残りの人があまりにも多過ぎるわけです。ぜひともそういう人たちに何とか見せてあげたいと思ったけれども、もう万博はない。ところが、協会本部のほうで映画を、記録を残しておった。それで四月三日から六日大日系と松竹系で封切りされるそうでございますが、平等に機会を与えていく上において非常にいい企画じゃないか、私はこのように思うわけです。しかし、御承知のように現在封切り館というのは料金は大体五百五十円です。そこで団体割引をやろうといったところでそう引かぬわけです。そうした点、心情からいうならば、関連施設もいろいろ入れますと一兆からつぎ込んだあれだけの国家的な行事です。そうであるなら国民のすべてがひとしくそれを見る権利があるのじゃないか、私はこのように思うのです。あるいは幼い子供たちが行きたいけれども、おとうさんやおかあさんに無理を言えないという子供がたくさんおったわけです。お年寄りもそうです。そういう点からいって、少なくとも義務教育の小学校、中学校の子供たち、あるいは七十歳以上のお年寄り等については、この際無料で何とか見せてあげる、そういう配慮ができないものか、あるいは勤労青少年等に格段のそういう配慮ができないものか、あるいはまた一般の五百五十円の入場料金も、こういう二つの映画系統に配給するわけですから、交渉して二分の一、三分の一、ぐっと大幅に下げて、そうして見る機会を与える。行った人でも大蔵大臣のように三分の一しか見ておられないわけです。行った人でもほかも見たかったなと思う人があるわけです。そういう点で私は唯一の残された機会だと思いますし、この辺について大臣としてどのようにお考えか、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 幸いに映画が残っているわけです。ですから、国民の中の空気がどういうふうなものであろうか、そういうものをつぶさに見きわめまして適切な処置をとりたい、こう思います。
  83. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それで、大臣も事は大きな立場から今後考えていこう、適切に考えていただけると思いますが、事務当局としてさらに具体的にいま検討なさっておられることがありましたらひとつお聞きしたいと思うわけです。
  84. 増田実

    ○増田(実)政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたような、万博に行きたくても行けなかった人に広く映画を見せたい、特に小中高校生に広く見せたいということでございまして、それにつきましては現在万博協会と配給をやっております会社と、できるだけ学生と申しますかいま申し上げました小中高校生につきましては割引料金、これは学生の団体割引という形になると思いますが、現在のところは一応一人百円ぐらいということでやっておりますが、それよりさらに安くできないかということで、会社とそれから協会のほうで検討中でございます。
  85. 近江巳記夫

    ○近江分科員 先ほどのお年寄りの点ですけれども、お年寄りで行っている人はほんとうにわずかなんです。しかも老人手当もいま少ないわけですし、そういうことで小づかいも不自由している、そんな高いお金を出せぬわけですよ。言うならばお年寄りで収入のない人は子供と同じなんです。ですから、お年寄りも特別に交渉してもらって、子供たちと同じ扱いにしてもらいたいと思うのですが、その点についてひとつお聞きしたいと思うわけです。
  86. 増田実

    ○増田(実)政府委員 ただいまのような、先生のお話しありましたことを協会のほうに伝えまして、検討させるようにいたします。
  87. 近江巳記夫

    ○近江分科員 十分その点検討していただいて、ひとつこの機会に心残りの人たちに全部見せてあげる、こういうあたたかい配慮を政府のほうで格段に御努力いただきたい、特に要望しておきます。  それから、先ほどちょっとフィラデルフィア博のことを申し上げたのですが、これは七六年といいうことをお聞きしているのですが、わが国の万博のときもカナダがまっ先に申し込みをしましたし、あれだけの力を得てやったわけですが、これに対してわが国として遠いまだ先の話ですけれども、どういう姿勢でフィラデル博に臨まれるわけですか。
  88. 増田実

    ○増田(実)政府委員 フィラデルフィア博につきましては、先ほどおっしゃられましたように、一九七六年、相当先でございますが、この博覧会はすでに一月に登録になりまして近く各国に対して招請状が発せられる、こういう予定になっております。私どものほうもこのフィラデルフィア博の準備委員会と一応接触いたしまして、招請状が各国に発せられましたときには、この前日本の万国博に前回やりましたカナダが第一番目に手を上げまして参加国になっておるのと同じように、私どものほうもこのフィラデルフィア博につきましては、日本が第一番に手を上げて第一番の参加国になるということを行なおうということで、現在検討しまた準備をしております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう時間もありませんので、そこであと一つお聞きしたいのですが、協会のほうも存続するということははっきりしたのですが、非常に縮小をしていっておる。親元から出向してきた人がたくさんおりまして、親元に帰っておる。ところが、親元に帰れない人がおるわけです。ですから協会にお聞きしますと、現在百二十九名ほどおるらしいのですが、そのうち四分の一は何とか見込みはあるけれども四分の三は全然見込みがない、そのように聞いております。何といってもあれだけの国家的な行事でその人たちがささえとなってがんばってくれたわけですから、やはりその点は十分今後のことも考えてあげなければいけないのではないか、このように思いますが、そういう配慮をしていただいておりますか。
  90. 増田実

    ○増田(実)政府委員 ただいまおっしゃられましたように、現在万博協会の人数は二百六十六人で、そのうち百二十九人が出向者でない方々です。その百二十九人のうち、女子が六十名おりますが、この若い女子につきましてはいろいろの方面から求人申し込みがありますから問題ありませんし、また若い男子約十名ばかりおりますが、これにつきましても就職が簡単にきまると思いますが、問題がございますのは、先ほど先生もおっしゃられましたように、五十五歳以上の高齢の男子が約六十名おります。これにつきましては出向者でないということと、年を取っておるということで、非常に万博の間には一生懸命働いて御苦労願った方々ですが、なかなかこの就職がむずかしいということでございますが、万博協会とまた私どものほうもできるだけ努力をして、それらの方々の就職あっせんをしてみたい、こういうふうに思っております。
  91. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もうあと一問で終わります。  そこで、今回補正予算大蔵省も残った土地の半分を約八十三億の金を出して買われた。非常によかったと思いますが、しかし、土地だけ買ってもこれからのことがあるわけです。何といってもこれからほんとうに国民的なそういう文化施設また公園にしていかなければならぬわけですが、これから大臣としても腹をくくっていただいて世界にも誇れるようなことをしていただかなければならぬわけです。そういう点で最後大蔵大臣に、今後の万博に対するそういう姿勢といいますか、その辺のところを含めてお聞きして終わりたいと思います。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 万博は一九七〇年という年に初めてアジアで開かれた、それがわが大阪であったということでございます。民族として記念すべきものだったと思うのです。これをそのとおり記念していく、これは非常に大事なことだ、こういうふうに考えますので、維持管理、そういう問題については万遺憾なきを期していきたいし、またその間世紀の祭典を国民がしのび、また今後日本国家を繁栄させるよすがとするという方向に役立たせたい、誠心誠意やっていきたいと思っております。
  93. 近江巳記夫

    ○近江分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  94. 大坪保雄

    大坪主査 平林剛君。
  95. 平林剛

    平林分科員 私はきょうは通貨インフレと物価との問題につきまして、大臣はじめ関係者の考え方をお尋ねしたいと思うのであります。  物価が高くて困る、何とか物価の安定をはかる対策はないか、そういう意味でこの国会でも、物価対策特別委員会を中心に連合審査をやってまいりました。その中には、管理価格にメスを入れるいわゆる監視制度の問題もございましたし、野菜や肉、魚などの生鮮食料品の対策も議論されました。地価高騰に関する問題も取り上げられまして、結局強力な具体的な施策を総合して実行することが、当面の政治的課題であるという認識は強まったと思うのであります。しかし、私がここで取り上げますのは、物価と通貨との関係であります。私は、物価問題の基本的な課題は、金融政策あるいは財政というものにむしろ重要な関連があるという認識を実はいたしておるわけであります。今日まで取り上げられたのは、その結果起きてくる一つの流通機構の問題であるとか、あるいは魚、肉、野菜になる。そこでこの根本の問題につきまして、きょうは少しじっくり御意見を聞かしてもらいたいと思っておるわけであります。  この二、三年、日本銀行券の増加率が高過ぎるというのが私の指摘であります。大蔵省の日銀券の増発額調査によりましてもわかるように、昭和四十四年度は対前年比一九%になっておる。四十年の不況のときには、対前年比は一二・八%程度になっておりましたが、四十四年に至るや一九%という高さを示すようになっております。四十四年の年度末の残は、四兆三千二百五十八億円に達しておる。十二月のときは実に五兆五千五百六十億円も通貨が増発されておるわけであります。昭和四十五年度に入りましてからも、毎月のように対前年の同月比の伸び率は一九%から二〇%、高いときは二〇%も、異常な高さであります。大蔵大臣はこの傾向をどういうふうにごらんになっておられますか。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、四十三年までは日銀券の発行状態はたいへん落ちつきを示しておったわけでありますが、四十四年になりましてから、これがお話しのような状態になってまいり、四十五年になりますと、二〇%をこえるというときもある。大体一九%台で推移するというようなことになってきたわけでありますが、四十六年になりましてから落ちつきを示してまいりまして、今日では大体一五、六%増という線にきておるのでありまして、かなりの鎮静化を見ておる、こういうふうに思っております。それで、四十四年にたいへんな通貨の増発になっておりますが、この四十四年という年はそういう傾向でありますものですから、秋に公定歩合政策また金融の量的規制というようなものをとりまして、そして景気の鎮静化につとめたわけであります。その鎮静化がその後一年間さほどの影響もなかったのでありますが、昨年の秋ごろ実体経済面にも浸透してまいりまして、その反映が通貨増発の鈍化、これにあらわれてきておる、こういうふうに見ておるのであります。たいへんけっこうな傾向になってきておると喜んでおる次第であります。
  97. 平林剛

    平林分科員 大臣は、四十六年一月に一五・七%に落ちて鎮静化しておると言われましたが、それは月なかの残高の数字であります。前年の同月比になりますと一七・一%なんです。私があげたのは四十五年一月からずっと一九%、二〇%の水準である。それは一月に一七・一%になったのにすぎないのでありまして、大臣のあげられた数字は、月なかの平均なんです。依然として高いのです。特に一月というのは、十二月に比較いたしますとずっと下がるのですから、それをあげて安心しておるという筋合いのものじゃないと私は思う。経済学上、通貨の量と国民所得の間には一定の比率があるといわれておることは御承知のとおりであります。この比率は英国の有名な経済学者のマーシャルという名をとって、マーシャルのKと呼ばれているのだそうでありますけれども、経済の成長率のテンポを大きく上回って通貨量がふえるという場合にはインフレの危険があると考えられておるわけであります。私は、今日国民総生産の伸び率と、それから日銀券の発行平均残高で一応検討してみますと、名目的には権衡を保っておるように見えますけれども、実質的な成長率に対しましてははるかに上回っておるわけであります。  数字を申し上げますと、たとえば四十四年は、国民総生産の伸び率が名目で一八・三%で、日銀券の平均残高は対前年度伸び率に対して一八・六でありますから、やや権衡しているという言い方は当たっておるかもしれません。四十五年度は、名目成長率一七・三に対して、対前年度の伸び率は平均で一六・五%でありますから、そういう意味では権衡しているように見える。しかし、これを実質成長率という点から見ますと、四十四年は一二・六の成長に対し一八・六、つまり六%もこえている。四十五年は一〇・八%に対して一六・五%と六%もふえている。つまりこのように国民総生産と比較いたしましても、実質成長率をはるかにオーバーする通貨の供給ということはインフレに通ずる、こう考えるのでありますけれども、管理通貨政策といたしまして、インフレを助長する結果となっていないとお考えでしょうか、重大な関連があるとお考えになっておるのでしょうか。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 日銀券の発行ですね、これは経済状態の反映である、そのまま経済状態が日銀券の発行量に反映してくる、こういう見方をいたしております。つまり経済状態が、名目的な意味において申し上げておりますが、水準の異動がある。それにある関連性を持ちながら通貨がふえていく、こういうふうに見るわけですが、ただそれが引き締め政策をとっておる、あるいは緩和政策をとっておるというときにおいて多少の波を打つ関係を持つ、こういうふうに考えておるわけです。  それからもう一点、景気との関連いかん、こういう問題でありまするが、確かに日銀券の発行高をふやすということによって通貨供給をふやすということになると、これは経済の動きを刺激するという作用を持つと思うのです。持つと思いますが、しかし根本は、問題はもっと底の深いところにある。つまり市中銀行その他金融機関の貸し出しがふえるかふえないか、そこに問題があるだろうと思うのです。それのしわ寄せというか、しりというか、そういう結果が日銀券の発行になってあらわれてくる、こういうふうに思います。  そういうふうに見てまいりますと、日銀券の増発ということは、見方によっては景気を刺激するということにならないとも限りませんけれども、それよりはむしろ経済の実体の動きを逆に反映しておる。そのしりが日銀券にきておる、こういうふうな見方のほうがむしろ強く指摘されなければならぬじゃないか、そういうふうに思います。
  99. 平林剛

    平林分科員 日銀券の増発傾向は金融機関の貸し出し態度にあるということは、私は原則的に理解できます。したがって、こういう状態になったとき、銀行の貸し出し態度につきましては、通貨価値の維持という点から、かなり行政指導が行なわれなければならないと思うのであります。しかし、いま大臣がおっしゃったように、通貨の増発傾向というのは経済のしりがくるのだという考え方でいっていいのかどうか、私はそこに問題があると思うのです。つまり経済が活況であるから、したがって日銀貸し出しもふえるし、結局日銀券の増発が必要だというものの考え方でこれからの経済を律していいのか、私はそこに問題があると思う。だからしりである、結果であるという観念を逆に、私は、この通貨発行量については政府が管理できるものでありますから、日銀が管理できるものでありますから、そういう意味で真剣に通貨とインフレの問題を考えなければならぬと思うのです。  そこで、いろいろな資料を調べてみますと、通貨量というのは、これは何もいま言った貸し出しのいわゆる現金通貨だけじゃないのですね。現金通貨だけではなくて、最近は特に一般国民も利用するようになりました当座預金、これも通貨のうちに考える。私はかねがね国債の発行もある意味では、一定の期間をおいて日銀引き受けになっておるわけでありますから、これも通貨の増発傾向に波を高くさせるものであるということで、国債発行政策に批判をしてきたわけでありますけれども、大臣は、いま言いました経済の動きとそれから通貨の供給という意味、総合的に考えてみて、バランスがとれているというふうに資料的に見て御検討なさったことがございますか。つまり現金通貨だけではなくて、当座預金、国債、それから信用膨張というようなものを総トータルしてみて、いまの通貨量は適正であるかないかということを検討なさったことがありますかということです。
  100. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま御指摘の点は、私どもといたしましても常に関心を持っておる点でございまして、大体現金通貨の動き、預金通貨の動き、それらの状況を見ながら金融調整政策というものを進めてまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。最近の情勢は、全般といたしまして対前年度増加額、やや落ちぎみという感じでございます。
  101. 平林剛

    平林分科員 答弁になっていないわけです。私は時間もありませんから銀行局に二つの資料を要求しておきたいと思います。  一つは、ただいま申し上げましたように、現在の日銀券の発行と国民総生産のバランスは名目成長率では合っています。しかし、実質成長率と比較しますとはるかに供給量がふえている。これはもう大蔵省の資料ではっきりしている。大蔵省から私の手元に届いているのはこれだけです。しかし同時に、当座預金あるいは国債、それから信用膨張の傾向から見て、現在の供給量というものは適切になっているかどうかということを確かめることができる資料を要求したいと思うのです。  それから日本銀行法の三十二条によりますと、「日本銀行ハ銀行券発行高ニ対シ同額ノ保証ヲ保有スルコトヲ要ス」と書いてある。保証はたとえば商業手形、銀行引受手形その他の手形、国債、外国為替、地金銀、これがこの日銀法に適合してバランスがとれているかどうかということを確かめて、資料として御提出をいただきたいと思うのですが、お答えをいただきたいと思います。
  102. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいまの御要求の資料、後刻提出させていただきます。
  103. 平林剛

    平林分科員 それは資料の提出を待って引き続き私は議論をしたいと思います。  次に、日本銀行券の発行残高と物価との関連がどういう形になっておるかということを調べてみました。私は今日までの傾向を見るところ、昭和三十五年、池田内閣が所得倍増政策をとった当時の日銀券の増発というのを見ますと、昭和三十五年、日銀券の発行残高は対前年比が二二・八%と上回っているのです。昭和三十六年も二〇・二%で、これは昭和三十四年の四・七%と比較するとべらぼうな増発になっているのですね。昭和三十四年までは四・七%程度の増発であったのが、三十五年になると一ぺんに二二・八%になる。その次も二〇・二%という高さ、そこから物価が上がっているわけですね。消費者物価はそのときからウナギ登りにのぼり始めました。所得がふえているのだから物価が上がってもいい、消費者物価が上がってもいいと言いながらも、結局は物価上昇の原因というものが日銀券発行と重大な関連がある。急激な膨張が消費者物価の上昇につながっておるという従来の一つの経験則といいますか傾向値というものを私はそこに見ることができる。過去の経験から見ましても日銀券増加と物価は深いつながりがあるというのが私の認識なんです。  そこで、大臣にお尋ねをしますが、日本銀行券の発行限度額は、いま四十五年十一月四兆九千億円になっておるわけでありますが、私はこの四兆九千億円に昨年十一月変えた理由はどこにあるのか、根拠はどこにあるのかという点をお聞きしたいと思うのです。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは昨年の暮れのことばかりではないのです。いつの場合におきましても、事態の見通し得る時期において、異常な事態また異常な時期、それ以外は制限変えにならぬで、現実の発行額が動いてきておる、そういうことを基準にいたしましてきめたわけでございます。
  105. 平林剛

    平林分科員 実際は四十四年十二月五兆五千億円になった、そこで昨年の十一月四兆九千億円に引き上げたというような感じを結果的に見て私は感じておるわけです。それまではもっと低い四兆一千億円でしたか。  そこで私は、大臣先ほどのお考えというのがどうもあと追いである。しりを追って、日銀券がふえそうだから限度額を上げておかなければ問題になるというような態度では、通貨からくるところのインフレ、通貨からくる物価高ということを押えることはできないんじゃないか。だから主導性を発揮して、そうして日銀券の発行限度額についても一ある年は二年間くらいとめていたどきもあるのですね。最近は一年ごとに変えているのです。その点をひとつ主導的立場で、通貨からくるところのインフレを押えていく、通貨からくるところの物価高を押えていくという見地から、しばらくこの発行限度額を固定させるというきつい態度をとる必要があるんじゃないか。それをしっかり心に入れて、そしてこの管理通貨政策をとっていくということがインフレの不安、危険を押えていく一つのとめになるんじゃないだろうか、こう思うのですけれども、その点についてのお考えを聞かしていただきたい。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 日銀券の発行高は、人間のからだでいえば、これは熱であり、脈拍である。ですから、どうも通貨の発行が多い、こういうとどこかに異常があるのです。異常があるというのは何かといえば、経済の成長が高過ぎるとか、またそれと関連して物価が高いとか、あるいは消費ムードというようなことで札をふところに入れ込んで歩くというような人が多くなってくるとか、そういうことだろうと思うのです。つまりこれは一つの信号でありますから、この信号を目安といたしまして、よって来たる原因をつく、これがかなめであろう、こういうふうに考えるのです。しりを押えるということ、これは非常にいろんなぎしぎしした状態を現出しまして好ましくないのです。やはり根源をつくという、そのための指標として最も重要な一つの指標である、こういうふうに考えております。
  107. 平林剛

    平林分科員 ですから、私はただ経済の動きに追随をして日銀券の発行限度をやるというのではなくて、そこの点をしっかり踏まえておいて通貨管理の政策というものを検討すべきでないか、そのためにはしばらくこの点について限度額というものを、軽々に一年ごとにきめるとかなんとかということをしないで、据え置くような態度をとってはいかがですかということを申し上げているわけです。
  108. 福田赳夫

    福田国務大臣 かりに物価をとってみると、物価が上がりますと通貨量がふえるのです。そういう際に、ふえるべき通貨量をふやさぬでおくということになるといろんな不自然な状態が出てくるのです。ちょうど胃腸の患者のおしりにせんをしたというようなかっこうになろうかと思います。そうじゃなくて、日銀券の発行状態に異常な状態があらわれてきた、これはどこかに原因があるんだ、それをつくということですね。その異常な事態として出てきた日銀券の発行の増勢、これを押えてしまうといろんな副作用が出てくる。むしろそうじゃなくて、その根源をつくというところに機敏な措置をとるということが大事だと思います。そういうことを申し上げておるわけです。
  109. 平林剛

    平林分科員 私はこれが根源だと思っているのですよ。これは確かに鎮静化の傾向が見られると言うけれども、いまの経済を病人にたとえれば、去年までは四十度の熱を出していた、いまは三十九度五分になったにすぎないという依然として危険な状態であるということを考えますと、その根源はやはり金融財政、そういうところにあるわけですから――もちろん消費その他の動きも無視できませんから、そういうことを考えることも必要でしょうけれども、私は財政金融の面ではこの点を検討すべきじゃないか。どうも最近は大蔵省と日本銀行当局とがあまりに息がぴったり合い過ぎている。去年の公定歩合の引き下げの問題についても、どうもインフレ、多少の物価は上がるというのはしようがないということで放置して、当面のことに追われているような形が感じられてならぬ。  そこで、私はこの際、いま発行限度の問題を真剣に考えるということと、一つ追加していえば、日銀法の改正なりということを考えるべきだと思うのですが、それはどうですか。
  110. 福田赳夫

    福田国務大臣 いろいろこの問題は考えてみたのですが、御承知のように、立ち消えということになってきております。しかし、いずれの日にかはこれは改正しなければならぬとは思っておりますが、それ以外に当面するいろいろな問題が山積しておるものですから、その山積した諸問題の処理に追われておる。日銀法の改正、これは非常に基本的な問題になりますものですから、しかもその改正を意図するところは実行上やれる問題が多うございますものですから、あと回し、あと回しとなっておりますが、いずれの日か、少し余裕が出たその際にはやらなければならぬ問題だ、こういうふうに考えます。
  111. 平林剛

    平林分科員 この問題は私はなお議論しなければならぬのですが、予定したものが残っておりますから、次に進みます。  四十六年一月末の日本銀行券発行高は、先ほど申し上げましたように、四兆七千九百六十七億円であります。お札というのは、大体一万円札、五千円札、千円札、五百円札、百円札、こうなっておる。そのほかに硬貨はございますけれども。この構成比はどういうことになっておりますか、簡単に結論だけひとつお答えをいただきたい。
  112. 相澤英之

    ○相澤政府委員 二月十日現在における日銀券の流通高の券種別の構成比について申し上げます。金額で申し上げますと、一万円券が六七・三%、五千円券が七・〇%千円券が二一・八%、五百円券が二・五%、百円券が一・三%でございます。
  113. 平林剛

    平林分科員 印刷局おいでですね。-四十六年度の印刷局の特別会計を調べてみますと、一万円札の受注は三億六千六百万枚、こうなっておりますけれども、これは四十七年、四十八年、大体どんなふうな計画で受注計画をお立てになっておりますか。
  114. 青山保光

    ○青山説明員 将来の受注の見通しというお話でございますが、先生御承知のとおりに、私どものやっております銀行券の印刷は、政府から命令を受けて、それで製造するというぐあいになっておるわけでございます。その命令につきましては、毎年翌年度の分を政府から命令を受けるということになっておるわけであります。したがいまして、ある程度の予測等は別といたしまして、私どもといたしましては、正式に四十七年度以降の計画というものは持っておらない段階でございます。
  115. 平林剛

    平林分科員 大体その日暮らしの印刷局では困るのですね。いま一万円札のお札の中の構成比は、先ほどお話がありましたように、いまや六九%をこえ、四十七年になるとあるいは四十八年になると私は八五%くらいになるんじゃないかという見通しを持っている。その見通しをある程度持たないで作業計画を立てられますか。もう一度答えてください。
  116. 青山保光

    ○青山説明員 私どもといたしましても、ある程度のプライベートな見通しはもちろん立てております。しかし、これは政府といたしまして決定した数字でございませんし、私ども作業いたします場合に、たとえば製造能力をふやすということになりますと、機械の増設、御承知のとおりに相当の金額と年数が、日数がかかるわけでございますので、前広に将来を予測いたしまして準備しなければならぬということでございますが、現在の段階で一万円札が四十七年あるいは四十八年にどうなるかという数字自体につきましては、ちょっとまだそれほどの固まった数字は持ち合わせていないということでございます。
  117. 平林剛

    平林分科員 大臣、お聞きのとおり数字は持たないけれども、ある程度の予測は成り立つのです。ことし一月で大体お札の発行の様式から見ると一万円札が六九%、四十七年になればおそらく七〇%台になるでしょう。それから四十八年になれば八〇%をこえるでしょう、私はそういうふうに推定しています。大体今日の経済のテンポから見て、そのくらいの計画を立てながらものを考えなければだめですよ。そうすれば四十八年はもうすでに一万円札が全通貨量の八〇%をこえる。そうなったときは、日本の通貨政策というものは流通に混乱が起きるわけですよ。一万円札ばかりになるということになる。ちょうどいまから十三年前、日本には千円、五百円、百円の紙幣しかなかったときに、五千円札と一万円札の発行を考えるべきだと言ったときがちょうど昭和三十一年のときです。私は当時参議院議員でありまして、この問題を議論したことがございます。そのときの千円札の割合は通貨の、お札の構成の中の八六%を占めておった。これはどうにもならぬというので五千円札、一万円札の発行に踏み切った、いわゆる高額紙幣が登場したのであります。いまの状態から考えますと、四十六年、七年、もうすでに一定量を越えてくる、こういうことになった場合、町の中でもあるいは一部でも五万円札の発行を考えるべきだというようなことを言うておるのです。この点は大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  118. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま五万円札の発行は考えておりませんです。印刷局の製造能力をふやしまして一万円札をもって対処していきたい、こういうふうな方針でおります。
  119. 平林剛

    平林分科員 考えておらないというけれども、いま私が指摘したのは、六年、七年になって考えていないでは済まないような時代が来はしないか、そのときどうするかということをお尋ねしておるのです。
  120. 相澤英之

    ○相澤政府委員 通貨の発行総額に占める一万円券の割合でございますが、これは先生御指摘のとおり、毎年上がっております。ただし、その上昇のテンポは四十一年度以降見てまいりますと、大体年率三%程度でございます。四十一から二が三・一、二から三が二・九、三から四が三・四、四十四年から四十五年の十二月末が二・四、大体三%平均でございますから、四十五年の十二月末が六六・四であったのでこれが八〇%に達するとしましても、先生おっしゃるように一、二年ではなくてもう少し、数年を要するのじゃないかというふうに考えております。
  121. 平林剛

    平林分科員 もう時間もございませんから結びに入ります。  私は、結局物価の急騰と日銀券の高い増発傾向について問題を実は提起をしたわけであります。景気がよくてみんなのふところがあたたかければいいという一つの楽観論もありましょうけれども、現実の国民生活は生活の格差が増大している傾向が見られるわけであります。それにこう物価が高いのじゃかなわない、通貨の増発傾向はインフレのきざしか、あるいは楽観論からいえば好況のしるしだということになりますが、私はそれは間違っておると思う。私は、いまや通貨インフレの危機が来ているのだ、高額紙幣も発行せざるを得ないような状態が二年後でなくても三年後には来るかもしれぬ、こういうような状態にありますので、将来を展望いたしまして、国民生活の安定につながるためには、高額紙幣発行でその経済を切り抜けるようなことをやってはならぬ。五千円札、一万円札を発行したときと同じように、安易に高額紙幣に飛びつくような姿勢だけでは通貨からくるインフレを押えることはできない。ですから、そういう意味で私は管理通貨についても政府は積極的な姿勢をとるべきである。国民の気持ちは百円札で十分な買いものができる経済を求めているわけです。五万円札や十万円札、それで通貨の体制がとれるという時代ではない。そういうことを考えますと、お金の値打ちをこれ以上下落をさせない経済を望んでおると思うのであります。  政府は、こうし九通貨インフレに対しまして、あるいはインフレということばが適当でなければこういう傾向に対して、いろいろの角度から検討して対策を考えてもらいたいと思うのですが、大臣からそのことに対するお考えをお聞かせをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 きょうは、あまり物価問題との関連として論ぜられなかった通貨と物価の問題、このお話を伺いましてたいへん私も参考になりました。そこで私どもは通貨の発行状況、日銀券の発行ですね、これについては非常に神経をとがらしてまいりたい、かように考えます。ただしかし、日銀券の発行というものは経済の動きをそのまま反映して行なわれるものでありますから、この反映された日銀券の動き、これがどういうことを示すのか、その根源を常につきまして敏活にまた果敢に対処していきたい、かように考えます。どうもたいへんありがとうございます。
  123. 平林剛

    平林分科員 これで終わります。ありがとうございました。
  124. 大坪保雄

  125. 北側義一

    北側分科員 時間が三十分に限定されておりますので、簡略に御答弁をいただきたいと思います。  まず物価にしましても、住宅建設にしましても、また公共事業の推進にしましても、その隘路となっておるのは地価問題なのです。そこでまず国税庁などの国税関係当局が相続税また贈与税、これをきめるための、課税されるための課税標準としての路線価格があるわけでありますが、この路線価格を決定するための標準となるのはどういうものでやられたか、それをお聞きしたいと思います。
  126. 江口健司

    ○江口説明員 御説明いたします。  路線価は、毎年その年の暮れあるいはその年の初めに翌年分を発表することにしてございますが、いまのところのシステムをまず申し上げますと、各県の県庁所在地の最高路線価、これは国税庁で決定をいたしまして発表いたしてございます。四十六年度につきましては本年の一月六日に公表いたしてございます。それ以外の地域につきましては、国税局が担当いたしまして公表をいたしてございます。  作業のしかたでございますが、原則として時価によるということになっておりますが、相続税あるいは贈与税の特殊事情から、時価そのものということはなかなかきつ過ぎるという考え方もございましょうし、具体的に当該物件についての取引が行なわれていないというような事情、あるいはそれが具体的に行なわれた場合には譲渡、贈与あるいは相続をしていかなければいかぬような事情、あるいはそのタイミングというようなものでいろいろ価格が違う可能性がございます。したがって、いわゆる時価によるということになっておりましても、現実に時価というものはその場合にないわけでございますので、これをややかために評価するという作業をいたしてございます。その場合にはもちろんその付近の時価というものを参考にすると同時に、五人、地方によりましては三人の精通者を選びまして、あるいは公示価格というものも参考にいたしまして、それらを総合勘案して路線価というものをきめておるわけでございます。大ざっぱに申しますと、大体時価に対しまして仲値をとりまして、この仲値を目標に評価をするというのが作業の姿勢でございます。現在のところは、まだ御質問にはないのかもしれませんが、これも御参考に申し上げますと、現在の路線価というものが時価に比較いたしまして必ずしも近寄っていないというような傾向がございますので、四十六年度以降三年にわたりまして、できるだけ見込み時価に近づけるような努力をしたいということで、その第一年度目のものを先般の一月六日に公表したわけであります。
  127. 北側義一

    北側分科員 三人の精通者、それから建設省できめた公示価格、これらを一応参考として、それを割って平均して出しておられるようですが、そこで先般発表されました路線価格、これを見ますと、四十五年に比べて全国の都道府県庁の所在地、ここで大体平均二八%上がっていますね。そうしますと、たしか昨年の全国平均の宅地価格は二二・六%の上昇になっているわけです。いまあなたはこれから三年で上げていけるように、このような時価に合わしていかれる、こういう御返答ですが、そうしますとこの上がっていく率が全国宅地価格の平均価格よりもこの路線価格が高いのですね、たとえば四十六年の先般発表された分にしましても。こういうことになりますと、やはり土地取引をする場合に、路線価格というのは一つの目安になっておるのです、業者にとっては。そうしますと実売買価格までに路線価格を上げますことによって、いままで一般常識としては路線価格というのは実売買価格の六掛けないし七掛けである、このようにいわれているわけです。一般常識でそういわれているわけです。そうしますと、路線価格が上がるということはすなわち実売買価格も上がっていくのです。そういう傾向が最近出てきているのです。それに対してどう対処されるつもりですか。
  128. 江口健司

    ○江口説明員 私どもの作業いたしておりますのは、先ほど申し上げましたように時価、俗に呼び値と申しておりますが、これに対しまして仲値――土地のことでございますので、有価証券その他の可処分資産と比較いたしますと処分しにくいという事情等も考慮いたしまして、おおむね仲値というものを一、二割程度低いものとして見込んでおりまして、これに対しまして大体七掛け程度、いま先生が御指摘のとおり、一般に時価の七掛け程度というものがいま申し上げたような内容のものであろうと思いますが、それを時価に近づけることにつきまして、税制調査会から四十三年七月に、相続税の評価額につきましては時価とあまりにもかけ離れておるというような御指摘もございましたし、それから昨年の地価公示価格の問題につきましても、国会で相続税の評価額等についてもう少し手直しをするようにというような附帯決議もありました関係上、私どもが調べておりますいわゆるその付近の実際の取引になるべく近づけるという努力をしなければならないわけでございますが、われわれがそうした評価についての訂正をした努力によって、逆にまた時価がつり上がるというようなことについては実は予定をしていないわけでございます。現在のところ、時価と評価額との乖離がひどいというものについてなるべく時価に近づけるという作業をしておる段階でございますので、もし先生の御指摘のような内容のものがあれば、われわれの評価の姿勢というものも検討し直さなければいかぬかと思いますが、いまのところはあまりその乖離が大き過ぎるというような観点がございますので、やはり見込み時価に近づけるという努力がしばらくの間は必要ではなかろうか、かように判断をいたしておるわけでございます。
  129. 北側義一

    北側分科員 たとえば一例をあげますと、これは上がり方がすごいのですよ。これは私が住んでおりますところの大阪市の東住吉区平野本町四丁目というところですが、ここで昭和四十三年の路線価格が十五万円、四十四年が二十四万三千円、四十五年が三十三万六千六百円、二年間で倍になっておるのです。まだなおかつこれから近づけていかれるわけですね。先ほど申し上げましたとおり、あなたはあまり違いが出ていないような言い方をされておりますが、この路線価格というのは一つの大きな土地売買の目安になっておるわけです。もう一般常識では六掛けか七掛け、これもこういう土地を扱う業者というものはほとんどが知っております。そうしますと、路線価格が上がることによって地価が上がってくるような情勢がずいぶん方々で見られておるわけです。もちろん、この路線価格というのは税政策上決定する地価であって実売買の地価とは違う、このような考えに立っておられるかもしれませんが、これが上がることによって他の地価が上がることを私は心配しておるわけです。それに対していま何らきめ手がないのです。そこいらに非常に問題があるんじゃないか、このように思うのですがね、大臣
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 路線価格が実際の売買よりも著しく高い……。
  131. 北側義一

    北側分科員 いや、高いとは言うておりませんよ。路線価格のほうが六掛けないし七掛けで安い。それが上がることによって実売買価格が上がってしまうのです。
  132. 細見卓

    細見政府委員 この問題は、課税にあたりまして適正な財産価額、私どもの国税の場合でございますと、相続税あるいは贈与税の場合に、その相続によって受け継いだ財産あるいは贈与によって人に上げた財産の価額が適正な価格で評価されて、払うべき相続税あるいは払うべき贈与税を適正な額で払っていただきたいというのが基本でありまして、国税庁が御説明申し上げましたように、ここ数年、かつては時価の七掛けであるとかあるいは六掛けであるとかいわれておりましたものを時価に引きつけるための引き上げの作業を行なっておりますが、先生御承知のように、一方では建設省が公示価格制度をとりまして、これは明らかに時価と申しますか、適正な地価がこの価格であるというのを公示価格でやっておるわけであります。それとの違いを見れば――私は不動産業者のような専門家は、このものがどういう価格であるかというのは公示価格との関係で御判断願えばいいので、相続税あるいは固定資産税におきましては本来時価にすべきものでございますが、負担の激変を緩和するような意味で段階的に近づけておるんだ、かように御理解願いたいと思います。
  133. 北側義一

    北側分科員 建設省の地価公示価格をあなたはおっしゃいますが、実際問題として九百六十地点しかない。その九百六十の地価公示をやった建設省の地点では目安にならないのです。やはりいま路線価格のほうが目安になっておるのです。これは事実なんです。たとえば建設省の地価公示が全国の市街地区域に全部行き渡った場合にはこれは大きな一つの目安になると思うのですが、実際問題としては、いま路線価格のほうを重く見ております。というのは路線価格は全部かかっているのですよ。そこらで私、先ほど何べんも申しますとおり、そのように上がってくる心配がない、このようなお答えですが、事実上はそのようにこれを非常に目安とされている路線価格が上がるということについては、他のいわゆる実売買価格も上がってくる、こういう心配が出てきておるのですよ。また、この話もここでやりとりやってもしかたがありませんが、路線価格については実売買価格に近づけていくという、何らかのいわゆるPRなりをもっとしなければいけないのじゃないかと私は思うのです。そうしなければ路線価格が上がった、実売買価格が上がったではたまったものではないですよ、これは。そういう点をひとつ考慮に入れてもらいたいと思うのです。地価公示価格だって九百六十地点じやどうにもならないです。ことしでやっと千二百地点くらいでしょう。やはり路線価格は全路線にあるのですから、その点を考慮してもらいたいと思うのです。  それともう一つ、私思いましたことは、たとえば譲渡所得税を払うために自分の持っている貸家、土地、こういうものを物納するわけです。そうした物納をしますと、物納されたものの中に入っておったいわゆる賃貸契約を結んでおる借家人、こういう人々は家賃を家主に払わないで、今度は大蔵省の管財局のほうへ払うわけですね。そうしますと、そこで問題になってくるのは、その仲介にそれを扱うのが――大蔵省管財局がじかにこれをやるわけにいかぬでしょうが、不動産業者が入っておるわけです。そうしてそれを推進するわけです、いまの間は安いから買いなさいと。不動産業者としては、売買契約が成立しますと、当然そこに利潤が生まれてくるわけですから、早く売らなければならない、早く契約を結ばなければならないということで、いろいろな問題が出てくるわけです。たとえば一例をあげますと、先日、私のところにお見えになった人が、物納された物件ですが、この家を買ったらいいでしょうか、不動産業者が来て買ったほうが得だというが、実際どうでしょうかと言うのです。そこは大阪の生野区というところですが、非常に狭い密集地帯に小さな家が並んでいるのです。一番広いところでもそこの平米はわずか四十七・五六平米、小さいところになりますと三十七・一二平米、このような小さいいわゆる長屋なんです。しかもそれは戦前に建った家です。そうしますと、その前にある道路は二メートルしかない。路地のほうの家は傾いているから建てかえなければならない。建てかえる場合には建築基準法で四メートルの幅員がなければいけないのです。二メートル削ってしまったら家は建たない。そういうことを何ら言わずに契約を結んでおるわけですね。私のところへ来たのでたまたまそれがわかったわけです。あなた、これは家を建て直すのでしょう。そうです。建て直すためには四メートルの幅員が要りますよ。これはどうなんですか。それでは家は建たないです、このように申し上げたのですがね。そのような売買にしても、不動産業者が入る場合は利潤がそこに伴ってくるわけですから、当然もっと親切に、買った場合はこうなりますよ、建て直す場合はこうなりますよと、そこまでの話がなければ私はいけないと思うのですよ。町の不動産業者はそれくらい言いますよ、売買する場合には。あとに非常に問題が残ってくる。金はもうすでに払っている。私にたまたま聞きに来た方はそういうことを言ったから、これを買っておりません。こういう問題が一つ出てきておるのです。  それともう一つは、そういう物納された物件に入ってから一年以上になるのに家賃を取られていない、そういう場所がずいぶん出てきておる。もし家賃がずっと一年もたまってくると大きな幅になるのです。こまかい問題ですが、そういう住民には大事な問題が非常におろそかにされているのじゃないか、このように思うのですが、その点どうですか、実情は。
  134. 相澤英之

    ○相澤政府委員 物納財産の処理につきましては件数が非常に多いものですから、その処理は通常の普通財産としまして、本来は財務局なり財務部が直接契約その他の仕事をすることになっておりますけれども、しかし、それでは人手の関係もございましてかえって一般の国民に御迷惑をかけるということで、不動産業者を仲介に使っておるわけでございます。かつて不動産業者を使うということにつきまして事件があったこともございましたので、その後業者の選定その他に配意いたしまして、相当厳重に監督してやっているつもりでありますけれども、中にはいまお話しのような処理を急ぐ、もうけを早く手にするというようなことで、そういうような親切さが足りない処理をすることもないではないと存じます。そういった点につきましては、今後なお厳重に各財務局、財務部を通じまして適切な指導をしたいと考えております。  それからもう一点、家賃の点でありますが、これは当然引き続いて国が契約をいたしまして、家賃を納めてもらうということになっておるわけでありまして、その処理は急いでおりますけれども、最近物納財産が相当多いということもございまして、処理がおくれている例もあろうかと存じます。できるだけそういうことのないように今後また督促をしたいというふうに存じております。
  135. 北側義一

    北側分科員 その点早く手を打ってもらいたい。そういうことは一ぱいありますよ。大阪市の城東区のほうではずいぶん私どもに相談に見えております。そこで先ほどの、路線価格に戻るのですが、路線価格をきめる方法として、固定資産税の課税標準価格、こういうものがありますね。それとあなたのほうでやっておられるところの相続税の課税標準価格、それから実売買価格、これらを足して三で割って価格を出しておられるのじゃないかと思うのです。たとえば物納された物件についても、それを売買する場合にいつも修正率というのをかけるのです。たとえば相続税の課税標準価格にしますと大体修正率何ぼ、このようにあなたのほうでかけておられますね。非常に小さな問題で答弁むずかしいかわかりませんが、この修正率なんというのはどのようにしてきめられるのですか。もう少し言いましょう。たとえばその修正率ですが、固定資産税の標準価格は実売買価格より安い。相続税の標準価格も実売買価格より安いのです。それと実売買価格を足したものを三で割って修正率をかけて、あなたのほうでは物納された物件について売り渡すわけですよ。この修正率というものは実はあったことなんです。私が先ほど申し上げました東住吉の物件は、それでこの路線価格が非常に上がっておるということがわかったのですが、修正率はかけ方によって値段がうんと変わってくるので、修正率をかける目安をどこに置いてかけてあるのか、非常に問題なんです。あまりにもひどい修正率がかけてあった。あなたのほうの計算したものが実売買価格より高くなっておる。だからおかしいじゃないかといったら、次に変わって、今度は修正率を低くしてきた。そうすると、そういう物納された物件を買われる人は、その修正率によって価格が百万も二百万も三百万も変わってくるようでは、これはたいへんだと思うのです。その修正率はどこに根拠を置いておるかということです。
  136. 相澤英之

    ○相澤政府委員 普通財産の売り払いの価格につきましては、原則としまして固定資産税と相続税とを基準としまして算定いたしております。それから売買実例、その三者を平均して出しましたいわば大蔵省としての基準価格、これに民間の不動産鑑定士というような精通者によって算定した価格、それを平均して出すというようなたてまえになっております。その場合に問題は、固定資産税あるいは相続税の価格から時価を推定するその修正率でございますが、それはすでに売買の取引実例のあるところ等から時価を出しまして、その地点における固定資産税の評価額あるいは相続税の評価額、その間における係数、これを普通修正率として使っております。御指摘のように、どういう地点をとるか、どういう売買実例をとるか等についてなかなかむずかしい問題がありますけれども、できるだけ例を多くとって適正な修正率を出したいというふうに心がけております。
  137. 北側義一

    北側分科員 あなたの答弁のとおり、これは非常にむずかしい問題だと思うのです。やはりそういう問題であるならば、中に入る不動産業者というものはよほど親切でなければいけないと思うのです。そうしなければ、その言いなりに買う人と、これはおかしいじゃないか、こう言っていく人と、値段に差がある、これはたいへんなことですよ。しかも先ほど言ったとおり、坪六十万円もするというようなところで、その修正率によって百万、二百万すぐ変わってくるのです。これはそこの基準がきちんとなっていないのです。それとあわして、先ほど言いましたとおり、これは要望いたしておきますが、路線価格を三年間で上げられるとか答弁されましたけれども、それにつれて地価が上がらないような方策を、時価に近づけなくてもけっこうですが、近づけるならば近づけて、いつまでもその間で、路線価格が上がったら実売買価格が上がるといったらこれは話にならぬです。マイホームを求める人が土地を買えない、いまでも高くて買えないのですから。  この問題はこのくらいにしまして、次に時間がありませんので前に進みますが、今回の第二期住宅五カ年計画、これによりますと九百五十万戸の計画です。非常に大幅にふえて喜んでいるのですが、しかし、第一期と同じように民間自力建設が五百七十万戸あるわけです。第一期のときは四百万戸です。今度は五百七十万戸、百七十万戸ふえておるわけです。民間自力に依存しておるわけです。  それで、住宅ローンの問題なんですが、やはり一般庶民としては住宅ローンにたよらざるを得ない、こういう実情なんです。ところが、この住宅ローンの利用がそのように非常に高まっておりますが、金融引き締め等先般ありまして、貸し出しが少し鈍ったように私聞いておるわけです。聞いてみますと、貸し出し銀行筋としても住宅ローンについては非常に手間がかかる、また資金効率が悪い、このような考えを持っておるわけです。また担保物件に問題がある、またローンに回せる資金に限度がある、このほか限界融資で金融引き締めの圧迫を大いに受けておる、このようなことで貸し出し側としてはあまり好んでおらない、このように聞いております。借りるほうにしましても、一件当たりの貸し出し金額というのは年収の二倍程度見ておるわけですね。また金利が九分、非常に高い、また手続が非常に複雑である、このようなことで双方とも、民間自力建設の一つの柱である住宅ローンがうまくいっていないような実情じゃないかと思うのです。  そういう点を考えますと、これからこの民間自力五百七十万戸を建設するためにはやはりその住宅金融政策というものをここらで考えなければいけないんじゃないか、そうしなければこの五百七十万戸民間自力建設はむずかしいんじゃないか、こう考えておるわけなんです。それに対しての対応策なりお考えをお伺いしたいと思うのです。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 住宅ローンは、これは金融政策に非常に影響を受けるのです。引き締め政策というようなときになりますとどうしても金融機関事業金融、こっちのほうをとにかく優先的にやる、そういうようなことで住宅金融が阻害される傾向があるのです。北側さんの御指摘のように、去年の秋口までのような金融引き締め時ではかなり金融ローンが窮屈になってきた、こういうふうな傾向があったと思いますが、今度金融緩和政策を打ち出したわけです。そういう際にまた今度は住宅ローンがぐっと伸びてくる、こういう影響が出てくるんじゃあるまいか、そういうふうに考えておるわけです。住宅ローンは近代的要請というかそういうので総体的にはずっと大幅に伸びておるわけでありますが、非常に重要な国策でありますので、できる限り民間ベースの住宅が建設されるということ、これを期待しなければならぬ、こういうふうに考えまして、今度の税制改正におきましても住宅貯蓄、この減税制度を拡大する、あるいは御承知のような勤労者の財産形成、そういうような政策をとることにいたしておりますが、これも主としてねらっておるところは住宅政策を進める、こういうことであります。今後ともこの住宅問題、これが私どもは九百五十万戸ということを目途としておりますが、民間においてもその重要な部分を分担してくださるように政策的にも考えていきたい、かように考えております。
  139. 北側義一

    北側分科員 いまお答えがありましたが、私思うのは、住宅ローンはこれは実際の問題として生産力的な効果はないわけですね。また設備投資的なものでもないと思うのです。そういう点で、たとえばこの住宅ローンが金融市場を乱すかというと私は乱さないんじゃないかと思うんです。そこで、日銀の貸し出し規制が先般あったわけですが、そういう別ワクにこれはすべきじゃないか、こういう考えを持っておるわけなんです。これからいろいろ税制問題で大臣が答弁されたとおりやっていかれるということですが、これは別ワクにして何らかの形のものをここでやっていかなければ、おそらくこの五百七十万戸の建設は非常にむずかしいんじゃないか、こう思っておるわけであります。最近建て売り住宅がだんだん購入者が少なくなってきた、こういう実情です。そういう点も考慮されてこれをひとつやっていただきたい、このようにお願いします。  時間が参りましたので、まだあとだいぶ問題があるのですが、これは次の機会に譲りますが、どうかいま申し上げたことは非常に地価対策上も必要な事柄ですし、住宅対策は非常に重要な問題ですので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。経済企画庁の方、建設省の方お見えのようですが、時間がありませんので、来ていただいてまことに申しわけないと思っております。  以上で終わらせていただきます。
  140. 大坪保雄

  141. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 総理も福祉なくして成長なしと言われておりますし、一九七〇年代はいよいよ内政充実の時代に入ったといっても過言ではないと私は思うのであります。そこで私は、社会保障関係予算のその一部について、具体的な問題を取り上げまして大臣の理解を深め、認識を深めるとともに、どうしても大蔵大臣に前向きの答弁というよりも決定的な答弁をいただきたいという気持ちでここに立った次第でございますので、その点よろしくお願いいたします。  時間もずいぶん延びましてお食事なさる時間もなくなってきたようなお話を聞いておりますので、私も結論から申し上げますと、児童福祉の中に特別児童扶養手当制度があります。これは重度の身体障害児あるいは精薄児に対してその父母または養育者に支給されている制度でございますけれども、この特別児童扶養手当制度の中に心臓病もその対象内に含めてそして直ちに増額予算の措置をとられたい。そういたしますという答弁があれば私は一言でもうこれで終わってもいいのです。しかしそうもいかないでしょうから、まず順々となぜそれを入れなければならないかということを御説明申し上げてみたいと思います。  まず最初に、私から言うまでもなく大蔵大臣も福祉行政について格段の御配慮をなさっていると思いますけれども、特に老人だとかあるいは身体障害者、このような方々に対しては思い切ったあたたかい手を差し伸べることこそが真の福祉行政ではないかと私は思うのであります。障害者自身の苦悩はもちろんのことでございますけれども、その障害者を持つ家族の辛苦というものはこれまた想像以上のものがあります。私はそういう関係者からくる訴えを聞き、いま胸迫る思いで大蔵大臣にお願いするような気持ちで質問しているわけでございます。  まず、精神あるいは身体障害者のその苦悩の陰には、必ずといっていいほど経済的、金銭的な問題が同居をしているわけでございます。御承知のとおり六十三国会で心身障害者対策基本法というものが成立いたしました。これは僣越ながらわが党がその重要性を各党に呼びかけまして、各党の御協力を得てやっと成立した議員立法の法律でございます。御承知のとおりと思いますけれども、私がここでまず大臣にお尋ねしたいことは、往々にして議員立法というのは政府の法律よりも軽視されがちである、軽く見られがちであるというようなことを聞くのですけれども、まさか大蔵大臣にそんな気持ちはないと思いますが、念のため、この点一言でけっこうです、お答え願いたいと思います。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 議員立法も政府提案立法も、政府としてはその執行につきましては同じ態度で臨みたいと思っております。
  143. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 安心いたしました。はっきりそのことばを聞いて、その上からまた質問を続けるわけでございますが、その議員立法の基本法の中に第二条に定義がございますが、その中にいろいろと心身障害者の事柄が述べられておりますが、新しく心臓機能障害というのが明確にそこに入ったわけであります。ですから心臓病の方は心身障害児あるいは者である、こう見ていかなければならぬと思うわけでございますが、これも御理解願えますね。
  144. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうことに考えております。
  145. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは、実は今度の予算内容を見てまいりますと、先ほど言いました特別児童扶養手当の中に心臓病の対象者が入っていないわけですね。これは確かに特別児童扶養手当法の第一条の中に「この法律は、国が、精神又は身体に重度の障害を有する児童について、特別児童扶養手当を支給することにより、」云々とあります。そこで法律の中にそうした心臓病のことをうたってないので入れられなかったのかもしれませんけれども、先ほど申しました基本法の精神からまいりますと、当然これは入るべきだと思うわけであります。その点について大臣はどうお考えでしょうか。
  146. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは心臓につきましては、公費負担で施術を行なう制度、育成医療というのがあるんです。四十六年度でもその経費として四億八千万円を組んでおるわけでありますが、これを充実してまいりたい、そういう見解に立っておるわけです。ただ、いま御指摘のような問題もあります。ありますから、この育成医療の制度がどういうふうに動いているか、十分に機能するかどうか、そういうような点を見きわめた上なお考えてみたい、さように考えておるところでございます。
  147. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 育成医療のことは私もよく知っておるのですが、きょう児童家庭局長さんいらしているので、ちょっお伺いしますが、たしか育成医療は先天性の心臓病の子供を対象にされていると考えているのですけれども、それはどうでしょうか。先天性ないしは通院といいますか、入院したその子供、それから通院でなおりそうな短期的なものですね、これを対象として支給されているものだと思いますが、その点はどうですか。
  148. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 心臓疾患児のうちに先天性と後天性があるわけでありますが、現在の児童福祉法に基づきます育成医療の制度の対象になっておりますのは、いま仰せのように、先天性の心臓疾患児を対象にいたしているわけでございます。
  149. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 大臣、いまの大臣の答弁では、育成医療を云々とおっしゃいましたけれども、確かにそれを大幅に改善なさればけっこうでございますけれども、この育成医療になると、ずいぶんと中身が違ってまいります。いま私が言わんとしているのは特別児童扶養手当でございまして、これはいわば介護料的なものなんですね。育成医療の範囲に入れていただければこれに越したことはございませんけれども、いま児童家庭局長が答弁しましたように、先天性が対象でありまして、もうここにすでに、同じ心臓病でありながら、いわゆる差別といいますか、そういう格差がついているわけですね。だからおそらく厚生省としては、当然後天性心臓病あるいは在宅心臓病患者に対してはその対象にすべきである、そのほかに精神障害やあるいは重度の合併障害児もあわせて特別児童扶養手当の対象内にせよという考えで進んでいると私は思っているわけでございます。確認のために厚生省の局長さん、いま私が申し上げました在宅あるいは後天性の心臓病患者、それと精神障害、いわゆる分裂症とかてんかんですね、そしてまた重度の合併障害児、これは最終的には特別児童扶養手当の対象にすべきであると私も思うのですけれども、厚生省もその気で進んでいらっしゃると私は思うのですが、その点はどうでしょうか。
  150. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 特別児童扶養手当法というものは、御案内のように重度の精薄児というものからスタートしまして、その後重度の身体障害児というものを対象にいたして今日に至っているわけでございます。そこで、いま仰せのように、いわゆる外部的なそういう障害だけを現行法は対象にいたしているわけでございますが、結核なりあるいは心臓なり等のいわゆる内部的な障害とか、あるいは精神薄弱以外の精神障害あるいは精薄と身体障害とが併合しまして重度の障害を持っているというような、そういう対象者につきましては、現行法の対象にいたしておりません。したがいまして、この点につきましては、確かに他の制度とのバランス問題も一つございます。たとえば児童扶養手当法とか、あるいは国民年金法に基づきます障害福祉年金というような、そういう制度とのバランス問題もございますが、ただこの問題は従来からいわゆる衆参両院の社会労働委員会におきまして、附帯決議をいただいている問題でもございますので、厚生省としましては、従来からこの問題については前向きに検討を進めていきたい、こういうような方針で参ってきておるわけであります。
  151. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 大臣、いま聞かれておわかりのように、心臓病の子供の問題を取り上げても、もうすでに差別といいますか、格差があるわけですね。もう一つ問題は、二十をこしますと特別児童扶養手当あるいは育成医療の対象になりませんので、たしか四十一年の七月だったと思いますが、法律が改正されまして、障害福祉年金で二十以上の心臓病者は救われていく、あるいはその恩恵を受けていっているわけですね。だからおとなは受けている。それから先天性の者は多少なりとも恩典を受けている。しかし、いま言ったそれ以外の心臓病児は何もない。現実問題は老人あるいは扶養者はそれによって非常に悩んでいるわけですね。お金もかかるし、また心臓病の手術というのはある一定の年にならないと、小学生くらいにならないと手術もできませんが、そのまま放置しているわけにもいかぬわけですよ。それで何かかにかと出費がかさむわけですね。そういう意味で介護料的な気持ちの上からも、この特別児童扶養手当制度の対象内にぜひとも入れてもらいたいわけですね。どうでしょうか。
  152. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もきょう初めてそういう谷間があるというお話を伺いますので、よく厚生省と相談して……。
  153. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 厚生省の方に聞きますけれども、おそらく今回も概算要求なさったと思うのですね。いろいろな事柄でこれがのけられたということですけれども、私はやはり大蔵大臣自身がこまかいところまで御承知でなかったのじゃないかと思います。ここまで知られれば、対象者の数というものは全体で六千数百名、潜在患者まで入れるともっと多くなるかもしれませんけれども、いずれにしても、先ほど言ったように三つの病気を含めても六千何ぼくらいにしかならぬわけですね。金額にしても一億七、八千万じゃないでしょうか。その程度のものですから、それこそ大蔵大臣がうんやろう、そういう人に対して救ってあげようと、ちょっと決意してくださればできる問題なんですね。いま十分これを考えるということでございますので、これは強く要望しておきますけれども、厚生省としては当然この次の概算要求はなさるでしょうね。どうでしょうか、これは。
  154. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先ほども申し上げましたような方針で厚生省は参っておりますので、今後とも積極的に努力していきたい、かように思っております。
  155. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 くどいようでございますけれども、いま厚生省は今回のみならず前々からこの方針で大蔵省にかけ合ってきた。いろいろなことでそれが却下されてきているわけです。いろいろな事情があっただろうと思いますけれども、いま言ったように、これは何としても入れなければならぬ問題であります。これは入れる必要ないとはおそらくおっしゃらぬだろうと思います。ただ時期の問題ですね。私は今度の組みかえのときには増額予算してでもやってもらいたいところではありますけれども、少なくとも来年度からは実現いたしましょうと、このような力強い答弁をいただければ、それこそ質問はやめてけっこうです。
  156. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま予算の査定に当たりました主計官が、申し上げたいことがあるとこう言うので、それをまずお聞き取り願った上で私の答弁をいたします。
  157. 相原三郎

    ○相原説明員 この問題はことしの予算査定に際しましても、私非常に気にしていた問題でございまして、どうしたらいいものか、ずいぶん考えたのでございますが、財源としても考えておりますし、まずやはり育成医療のほうを拡充しまして何とかして手術をしてなおる方を先にしてやるべきじゃないかというぐあいに考えたわけでございます。それでだいぶ件数もふやしましてその方々を救う。そこで扶養手当につきましては、年金額の引き上げもございますし、所得制限の大幅緩和をいたしたときでございますので、育成医療の今後の推移を見ましてまた十分検討したいというぐあいに考えております。
  158. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 あなたはもう、私が言うまでもない、十分御承知なのですから。ただ育成医療はいま言ったようにほとんど入院が対象、しかも先天性、こういうことになっているわけですね。そういうことから私がいま言わんとするのは、それにはずれた心臓病児、これに対して介護料的な気持ちからでも差し上げるべきではないか、これは関係団体の父母やあるいは扶養者の偽らざる、ほんとうに心からの叫びですよ。訴えですよ。何としてもこれは実現していただきたいわけです。だからその育成医療のことを検討して云々じゃなくて、もうわかっておるわけですから、それは大臣、おやりになったほうがいいですよ、そうなさるべきじゃないですか、とこう言うべきじゃないですか。あなたどうですか。
  159. 相原三郎

    ○相原説明員 こういう席上で個人的なことを申すのはどうかと思われますけれども、私も実は最初の子供は先天性の心臓病児で、そういう点で非常に関心があったわけですが、いまお話ししたような事情で査定したわけでありますから、御了承いただきたいと思います。
  160. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 非常に言いにくいことらしいですけれども、これはほんとうははっきりしているのです。やるべきです。もう聡明な大蔵大臣でございますので、私のいま言わんとするところは十分おくみ取りいただけたものと考えるわけでありまして、この問題はこの辺で終わりたいと思います。  そこで、時間もたっておりますので、もう一言お願いしたいのですが、これは全然話は変わるのですけれども、今度児童手当が、中身は不満足ながらでも実現するのではないかと思っております。これに対してけちつけるわけじゃないのですよ。けちつけるわけじゃございませんが、児童手当の所得制限は二百万円になっておりますね。ところが、この特別児童扶養手当の所得制限は百三十五万七千七百円から、今度ようやく百八十万まで緩和しようというところまできています。これはわかるのですけれども、やはり児童手当で二百万までの緩和をはかられたのですから、こちらもそこまで引き上げるべきじゃないですか。これが均衡論じゃないでしょうか。その点はどうですかね。
  161. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 今回提案申し上げております児童手当法案における所得制限でございますが、いま仰せのように、扶養親族五人の場合は前年収入二百万ということを基準にいたしております。ところが一方、いま御指摘のように、国民年金の福祉年金等につきましては、明年度予算ベースにおきまして百八十万ということになっているわけでございますが、この間の格差ということを同一にすべきじゃないかというせっかくの御意見のようでございますが、私どもといたしましては、福祉年金等の対象者と、それから今回提案いたしております児童手当法の対象者というものの実態というものは、やはりそこにある程度違いがあっていいのじゃないか。したがいまして、福祉年金の所得制限のラインを児童扶養手当なり特別児童手当はそのまま引き継いでいるわけでありますが、そういうような福祉年金の所得制限ラインよりも、児童手当法案のほうの所得制限のラインというものはやはり高くしてあったほうがむしろ現実に合うのじゃないか、こういう気持ちで今回も所得に差を設けたわけでございます。
  162. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 これは将来さらに検討していくべき内容であろうと思います。  そこで結論として、先ほど申しましたように、心身障害者対策基本法は議員立法だけれども、これは決して軽視するものではない。その中に心臓病患者は身体障害者である、こう決定づけられたわけでございます。そして特別児童扶養手当の中には、先天性の子供は育成医療の対象で扱われているけれども、そのほかの在宅、あるいは先天でも在宅の場合は対象からはずれているという、その格差があったということ、それからおとなのほうの心臓病には障害福祉年金が支給されていて二重の格差があるということ、そういうことで何としても陰に隠れた心臓病児に対する対策として特別児童扶養手当を支給する、その方向に積極的に前向きに今後検討されていく、少なくとも来年度に実現の方向だ、このように見ていっていいというくらいに私はきょうの御答弁から感じた次第でございます。最後に一言そのことについて大臣から答弁いただいて、終わりたいと思います。
  163. 福田赳夫

    福田国務大臣 大橋さんのおっしゃられる、しかも実に熱心に主張される趣はよくわかりました。十分厚生省当局と相談いたします。
  164. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 じゃ終わりましょう。
  165. 大坪保雄

    大坪主査 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十分休憩      ――――◇―――――    午後二時五分開議
  166. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について質疑を続行いたします。大原亨君。
  167. 大原亨

    大原分科員 日本で使っている塩ですが、食料用あるいは工業用に使っているわけですが、塩の総量は一体幾らですか。そして、その内訳は幾らですか。
  168. 堺嘉之

    ○堺説明員 現在、日本で使っておりますのは、昭和四十五年で七百万トンでございます。そのうち九十万トンは国内塩でございます。残りの六百万トンは輸入塩でございます。
  169. 大原亨

    大原分科員 食料用と工業用では……。
  170. 堺嘉之

    ○堺説明員 食料用は、現在のソーダ用に輸入している分のほか、公社が直接売っている分がございまして、公社が直接売っている分は百五十万トンでございまして、そのうち約五十万トンは輸入塩でございます。   〔三ツ林主査代理退席、主査着席〕
  171. 大原亨

    大原分科員 この塩の専売の会計ですけれども、会計特別会計だと思うのですが、専売ですから。その専売制度についていままで塩業審議会の答弁が、中間報告とそれから今回、一月二十六日に答申が出ておるわけですが、これは塩の専売制度をやめるということについて、勧告、答申をしているのですか。あるいはこれに対して大蔵省はどういう態度をとっておりますか。
  172. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 これまでも塩業審議会、これは公社総裁の諮問機関でございますが、たびたび塩専売制度の廃止という方向を答申いたしております。塩の専売制度を廃止いたしますにつきましては二つ問題があるわけであります。一つは、国内塩業、国内の製塩業が専売制度を廃止いたしましても自立できるかどうかという問題。それからもう一つは、塩の需給の安定と申しますか、供給が安定的に行なわれること。この二つの要件が専売制度を廃止いたしますにつきましては問題であろうかと思います。  それで国内製塩業の自立の問題につきましては、今回の答申にもございますように、非常にコスト高な塩田製塩をイオン交換膜製法による製塩に転換させまして、これで輸入塩と対抗できるという措置を考えておるわけでございますが、これにつきましては国会に別途塩業の整備及び近代化の促進に関する法律案というものの御審議をお願いしておるわけであります。その面では生産者のほうはそういった近代化が達成されることになろうかと思いますが、供給の安定化という面につきましては、さらに流通の問題がございます。流通の問題もあわせまして、今後専売制度を廃止いたしましても、国民に安定して安い塩が供給できるという体制を逐次つくってまいりまして、そういう生産面、流通面の近代化が達成されれば、専売制度を廃止いたしましても国民に迷惑をかけることがないという状況が出てまいろうかと思います。そういう暁には専売制度を廃止する方向になろう、かように考えております。
  173. 大原亨

    大原分科員 その塩の新しく国内の生産技術として採用されておるイオン交換膜製法によりますと、コストは、トン当り七千円というのは、これは生産コストで、メーカーが出す小売り値段じゃありませんね。七千円を目標にして近代化するという、そういう計画は、これは間違いなく確立されるわけですか。
  174. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 トン当たり七千円と申しております価格は、現在公社が塩の製造業者から収納いたしております価格で、現在のところ並み塩と申します標準的な塩で一万二千五百円でございますが、これが大体七千円という価格になる。これは生産者価格と申しますか、生産者に適正な利潤を込めましての価格でございます。それでイオン交換膜製塩法によりまして、技術的にはこの価格が十分実現できるという見通しがございますが、ただ工場の規模と申しますか、生産規模と申しますか、これが年産十五万トン程度の規模でございませんと、これだけの価格のダウンがむずかしいという面がございまして、七千円という価格の達成が現在見込まれております時点は、昭和五十年というふうに考えております。
  175. 大原亨

    大原分科員 食料用あるいは工業用の塩の輸入価格と、それから日本における末端小売り価格、これはどういう関係ですか。
  176. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 現在の輸入塩はいわゆる原塩でございまして、これが大体十ドルから十二、三ドル、フレートの時期的な差がございますために、多少の値の違いがございますが、その程度で現在原塩が入ってまいるわけです。原塩ではまだ国民の食料になりませんので、これを再製加工いたしまして、食料に見合う塩に加工しておるということでございますが、これに加工費を加えますと、現在の末端小売り価格は全部国内統一価格でやっておりますが、国内製塩は現在一万八千円であります。
  177. 大原亨

    大原分科員 そうすると、輸入の塩とそれから末端価格との差ですよ、加工賃を引いて。それはやはり塩の特別会計収入になるわけですね。それは幾らなんですか。
  178. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 これは公社の塩会計収入になります。
  179. 大原亨

    大原分科員 幾らですか。加工賃を除いて、輸入価格と末端価格との差は予算上幾らになりますか。――それはあとでわかったら調べてください。  そこで末端価格一万八千円で大体統一をしておるわけでしょう。そうすると、もし専売制をやめた場合に、蔵出しが七千円になり、それから末端価格は現状以上にならぬ、こういう保証はありますか。そういうことになりますか。
  180. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 現在塩田製塩で製塩されておりますものを、一万二千五百円で公社が買い受けまして、それで公社の経費その他流通経費を加えまして、一万八千円で出ておるわけでございます。この一万二千五百円が将来七千円に下がってまいりますれば、一万八千円を上げるとかあるいはさらに上がるということは考えておりません。むしろ将来は一万八千円が引き下がる可能性があるというふうに考えております。
  181. 大原亨

    大原分科員 それでそういうイオン交換膜方式を採用して七千円に近づけていく、こういうことの可能性については議論があるところだと思うんですね。このことについては中間答申のそういう根拠というものはかなり問題があると思うんですね。しかし、いずれにいたしましても、大体見当といたしましては一万五、六千円くらいの塩を末端価格で保証するということだろうと思うのです。しかし実際に専売制度をやめてしまうと、そういうふうなことで一万五、六千円を目途にして末端価格が安定できるのかというと、私はそういう保証はないのじゃないかと思うのです。なぜかといえば、塩というものは量はともかくといたしまして、食料といたしましては生活上不可欠のものであるしあるいは加工用といたしましてもかなりガラスやソーダ、その他化学原料としては大きいわけですね。そういたしますと、これは野菜の話ではないけれども、必需物資ですから、国内産業にどれだけ依存するかという目標が一つあるだろう、あるいは輸入の海外市場の問題があるでしょう。そういう問題等考えてみた場合には、野菜類とかあるいは石油の問題とかそういう問題等を考えてみましたら、やはりかなり思惑やその他によって動く問題があるのじゃないか。そうすれば武田信玄と上杉謙信の話じゃないが、塩というのはかなり国民の生活必需物資でもあるし、そしてある程度の自給度は確保しながら、やはり日本のそういう生活設計や産業設計を立てていくことが必要ではないか。そういう点からいうと、一がいに専売制度というもの、この問題だけにこだわるわけにいかぬが、専売制度というものはそう簡単にはずすべき問題じゃないのではないか。私はよく国会で議論する中で、薬品などは自由化していいように見えるけれども、ばく大な利潤、薬九層倍といわれておるわけです。これはむしろ一方では、医療についてはものと技術を分離する面から考えて、供給公団をつくったり医薬品の供給を社会化しなければだめじゃないか。スエーデンなんかでもそう言っている。言うならば専売制にしたらどうだ。メーカーはおっても、供給のほうは専売にしたら、こういう議論がある。ですからそういう必需物資については専売制を簡単にはずすというふうな考え方は、行管その他から出ておりますが、これは私はあらゆる問題を検討して慎重に考慮すべきではないか、こう思うのですが、専売公社関係の責任者の答弁と、大蔵大臣考え方を聞きたいと思います。
  182. 堺嘉之

    ○堺説明員 ただいまの専売制度自身の問題につきましては、塩業審議会におきましても、ただいま大原先生の申されたような点につきましていろいろ検討をされまして、なかなかその辺の見通しを持ち得ないというような点もございます。そういうような点を含めまして、現在生産のほうはきわめてはっきり近代化なり合理化なりというものができまして、それで七千円価格の達成は現在の技術段階では十分見通しができるわけでございます。それに対応いたしまして、流通問題というものも、新しいそういう体制にどうしっくり合っていくか、あるいは合わせていくか、また合わせていく過程におきまして、いろいろな点にどういう調整を加えなければならぬかという点は今後にいろいろ残されている問題であるということで、その問題はこれからいろいろ検討しながら詰めていくという段階、そこでそういうものを全部含めました段階においてはじめて近代化が達成するわけでございます。その段階におきましては、これはやはり政府のほうでいろいろその間の事情をお調べになりまして、そして御判断をいただくというふうなことに相なっております。
  183. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは塩業審議会からのことしの一月二十六日の答申でも、「近代化が達成された暁において、塩専売制度は廃止されるべきものと考えられるが、塩の需給調整、価格安定等のため必要な措置を含めて、この問題の取扱い方については、政府において慎重に検討すべきものであると考える。」こういうふうになっております。一応廃止論を出しております。しかしいろいろその環境につきましては慎重に検討せい、こういう答申かと思うのでありまするが、大蔵省といたしましても、この問題は国民の生活にも広く影響する問題でありますので、慎重に検討する、かように考えております。
  184. 大原亨

    大原分科員 これは塩と砂糖の問題で、砂糖では税金を取るということが目的であるが、塩はあんまり税金をかけていない。量からいっても税金の対象にならないから、大体野放しにしてあるのだろうと思います。しかし、これは野放しにすると非常に大きな問題になるのでこれは慎重にやってもらいたい、それが一つ。  それから第二の問題は、それに伴うていうなれば、専売公社の中に二つの試験場が、小田原と防府にあるわけですが、防府は、私の承知するところでは製造工程についての研究試験場であると思いますが、イオン交換膜法を完成いたしますと大体必要なくなったんだ、こういう議論ですが、つまりイオン交換膜方式というのは、製塩技術としては終着駅なんですか。これはまた別の観点での問題は別の議論といたしまして、もうこれは終着駅なんですか。
  185. 稲川徹

    ○稲川説明員 技術の発展というのは次々に起こりますので、いまの段階で終着駅だということははっきり申し上げられませんが、現段階では相当飛躍的に進んだ技術であると思います。従来のものに比べて全く化学工業的なプロセスに変わりますし、そういう点では非常な飛躍であろうかと思います。ただ当初に申し上げましたとおり、技術の発展というのは際限がございませんので、終着駅とは申し上げられないと思います。
  186. 大原亨

    大原分科員 外国から入ってくる塩というものは、岩塩があるでしょうけれども、その他ではどういうところから安いのが入ってきているのですか。
  187. 堺嘉之

    ○堺説明員 ただいま日本に対する塩の供給源といたしましては、メキシコとオーストラリアの二つでございまして、両方とも天日塩田でございます。それでオーストラリアは最近盛んに天日塩田の拡張が進められておりまして、これは全部日本に供給するという目的でもって開発をいたしております。
  188. 大原亨

    大原分科員 それは熱帯地方ですね。熱帯地方なら、日本の雨量からいいましても雨量が少ない地帯で、そういう点でそういう天然方式を採用してもコストは安いと思うのですね。ですから、日本と競争いたしますと、日本は太刀打ちできない。そこで科学的な製塩法をやった。しかしお答えのように、これからの技術の開発については、たとえば原子力の利用等の問題もあるでしょうが、いろいろ問題がある。技術の進歩については限界を設けるわけにはいかぬ、こういう御答弁でありますね。  そこで、日本は海に囲まれているし、そういう問題についてやはり一定のコストが保持できる以上は、ある程度は日本の国内の場所で生産をするようなそういう政策を、全くべらぼうな話であれば別ですけれども、常識的に考えて妥当な場合にはとるべきだ。そういう政策を、保護政策とはいわないけれども、そういう政策をとるべきだ。そのためには専売制度のワクを簡単にはずすべきではない。専売制度のワクをはずしますと、輸入業者や流通過程においていろいろな思惑が市場との関係で出てまいりまして、これは値段が非常に動揺することも当然ですから、そういうことも含めてやはり一定度の自給度は確保すべきである、こういうふうに思うわけですね。そういう面において、私はそういう製塩技術の開発についての試験場その他については、簡単に速断すべきではないのではないか。防府のそういう試験場についてはどういう考えをもって処置されるのですか。
  189. 稲川徹

    ○稲川説明員 防府の製塩試験場と申しますのは、非常に歴史が古うございまして、従来日本の製塩業が塩田製塩をもってやっておりましたので、それらの塩田業者の技術開発力を代行しながら技術援助をしてまいった試験場でございます。防府の試験場をこれからどういうふうに取り扱うかにつきましては、慎重に検討いたしておりますが、先ほどお話がありますように、塩業審議会の答申の内容を拝見いたしますと、今後の日本の塩業をになう企業としては、イオン交換膜法という新しい技術を内容とした近代企業であるべきであるということで、答申の内容にも、みずから開発力を持ったような近代企業であるべきである、こううたっております。そういたしますと、従来塩田業であった製塩業者に対して私どもが技術的な援助をしておりました分野がほとんどなくなるということも、大体そのようになろうかと思います。そういう意味で、防府の試験場の使命が大体終わったのではないかということは確かであろうかと思います。そういうことを踏まえまして、今後どのように試験場を取り扱うか、今後慎重に検討いたしたいと思います。
  190. 大原亨

    大原分科員 八十名ぐらい技術者や職員の諸君がおられるそうですが、これは塩の研究ということになれば海水の研究もあると思うのですね。だから、日本は海水の資源をどういうふうに活用するかということになると、これはいまの官庁機構ではセクト的だからなかなかむずかしいと思うのですが、たとえば海水の総合利用という観点で製塩業を考えていく、あるいは原子力の排熱を利用する際にその総合的なものの一環として製塩業を考えていく、こういう広い観点での技術が開発される中において製塩業というものも位置づけられるものではないか。あるいは海水から塩をとって真水にして使うという問題は、これは工業用水から考えてみても、いろいろな観点から考えてみて、日本としては非常に大きな課題ではないかと思うわけですね。そういう海水に関する研究の蓄積、その中における塩の研究、こういうものをもう少し高い観点で研究開発するような機能を発揮させるように、そういう観点での研究施設としての存続ということを考えることはできないか。いかがですか。
  191. 稲川徹

    ○稲川説明員 おっしゃいますとおり、今後の塩をにないます近代企業は、単に塩だけを単純に生産するということでなしに、おっしゃったような原子力発電との関連であるとか、海水の総合利用の一環としての塩生産業であるとか、そういう観点で近代企業をして自立をしなさいということが答申にも書いてございます。なおそこまで含めて、そういった技術開発力までも持った近代企業であるべきであるということも答申に載っております。したがいまして、先生のおっしゃるとおり、確かにそういう面の開発は全体として行なわれなければなりませんが、私どもの専売公社としてそれをどの程度やるかという点につきましては、審議会の答申を拝見いたしましても若干問題があろうかと考えております。
  192. 大原亨

    大原分科員 海水を対象として製塩についていろいろ研究してきたわけですが、塩田方式その他からイオン交換膜方式までずっと発達してきたわけですが、これが限界でないということは、やはり科学的にはいえるわけですし、それから海水を総合的にどのように利用するかということは、公害問題を含めてこれは総合的な研究が必要ではないかと思うわけです。  そこで大蔵大臣にお伺いするわけですが、そういう観点でいきますと、たとえば研究施設というもののいままでの歴史というものを考えながら、研究の成果の蓄積ということを考えながら、海水を総合的にどう生かしていくかということで、塩の問題も念頭に置きながら一これは塩の問題については独立採算ということでしょうから、大体いわゆる輸入と国内の生産を含めてプール計算をしておると思いますね。その中で研究をやっておるのだと思うのです。私は財政の措置はよくわからない。皆さんのほうで予算上の分析ができぬくらいだから、よくわからぬ。それにいたしましても、日本の海水を真水にしてもう一回使い直すという方法についても、工業用水その他を含めてあるわけですから、この海水を総合的にどういうふうにやるかということになれば、そういう施設もありスタッフも一部はおるということになれば、新しいスタッフをつけるあるいは国家的な助成もしていく、そういう観点で、海水をどのように生かして使うかという問題の一つとして、国家的な見地から、私は研究施設を生かす方法をひとつ検討してもらいたい、考えてもらいたい。これは専売公社だけの問題ではないと思うわけです。ないと思うわけですが、そういう点ではそういう研究部門を、同じ研究所にいたしましても、セクト的に専売公社だけがやる必要もないわけです。共同の試験場ができてもいい、研究施設ができてもいいわけです。土地を購入する、施設を建てるということになれば、なかなかたいへんなことであります。八十人ものスタッフがいるということは、これもまた新しくやろうと思えばたいへんなことであります。それだけの訓練や教育、研究にいたしましてもたいへんであります。ですから私はそういう点で、塩の非常に大切であるという点を頭に置きながら、そして総合的に海水をどう利用するかということについて、総合的な立場に立って、国家的な見地に立って研究開発を進める、そういうことの措置が前向きで検討されてしかるべきである、こういうふうに私は思いますが、これに対しまして大蔵大臣の御回答をいただきたいと思います。
  193. 福田赳夫

    福田国務大臣 御承知のように、塩の問題は一時期を画する、こういうところまで来ております。従来塩田用として重要な使命を果たしてきた防府試験場がそういう段階においてどういう役割りを演ずべきか、再検討されなければならぬ時期に来ておるのでありますが、お話しのように、海水を真水にして使う、これはもう非常に大事な問題になってきておると思うのです。企業によってはその技術を開発したところがあるというふうに聞いております。ただ値段がまだ非常に高い、実用化に適しない、こういうところが難点になっておる、こういうふうにも聞いておりますが、塩田の試験場であった防府試験場がそういう新しい方向、海水を真水化するという研究にどういう役割りができるか、そういうような点、よく調べてみましょう。まあもしそういうことが可能であればけっこうなことでありますから、ひとつよく検討いたしまして結論を出すことにいたしたいと思います。
  194. 大原亨

    大原分科員 塩はガラスとか石けんとかパルプとか火薬とか漂白とか冷凍とか消火剤、アミノ酸、飼料、染料、油脂、ソーダ工業――塩は工業原料としてもずいぶん大きいわけですね。そこで塩をつくるというのは、いま塩田方式を研究しておる中で、イオン交換膜方式が出てきたわけですから、その研究の過程の中で自分の研究所も消滅するということになっておるわけです、話からいきますと。しかし私どもが常識的に考えると、海水から塩を抜くのが塩をつくる方法でしょう、塩田でやるか、イオン交換膜方式でやるかは別として。海水から塩を持ってきて、その残った真水を使うのが工業用水を使う道でしょう。だから問題は海水をどう処理するかということだと思います。そういう総合的な研究があり得るし、そしてその資源を日本で使い得るとするならば、これは一つの大きな日本の資源ではないか。そういう点では専売公社だけにまかしておくというのでなしに、そういう研究の蓄積、経験、資材というものを生かす方法を総合的に考えてもらいたい。これは大蔵大臣のほうで前向きに検討するという御答弁ですから、その点を重ねて要望いたしておきまして、私の質問は終わります。
  195. 大坪保雄

    大坪主査 芳賀貢君。
  196. 芳賀貢

    芳賀分科員 時間が限定されているから卒直にお伺いいたします。  第一に、食管特別会計に関する点ですが、食管会計予算概要については、すでに大蔵大臣から本会議並びに予算委員会等においても説明があったわけです。その中で四十六年度に生産される米の買い入れ、これは政府の方針としては四十六年度産米については昨年同様の米価水準に据え置く方針で実施するということがはっきり言われたわけですね。同じ食管で買い上げておる国内産麦については前年の買い入れ価格を計上したという説明があるわけです。従来食管会計予算における買い入れ米価、あるいは国内麦の買い入れ価格は、いわゆる前年度主義といって前年度の米価買い入れ価格というものを新年度の食管の予算には採用するという方式がずっと続いてきたわけです。ただことしの場合では国内麦の買い上げについては、これは食管法の規定の中でパリティ方式できめるということが詳しくうたってあるわけだから、政令の改正等によって麦価をいじるということはできないわけですね。だからその点は昨年度の買い入れ価格を予算として計上して、適当な時期に米価審議会等に諮問をして、適切な買い入れ価格をきめるということにこれは当然なると思うのです。ただ米の場合はもう前年同様据え置く方針をきめたということを言っておるわけですから、あくまで方針としてことしで三年連続の据え置きを強行するというふうにわれわれは受け取らざるを得ないわけです。この点が食管特別会計の制度の上から見ても、どうも釈然としない点でありますので、お尋ねしたいと思います。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府は米価水準を据え置く、こういう考え方を四十六年度においても適用する、こういうのであります。これはどういう法律上の意味を持つかというと、米価は米価審議会の意見を聞いてきめます。最終的にはそういうことです。しかし米価審議会で、政府は一体適正な米価はどう考えるかと意見を聞かれます。その際には米価水準は据え置きだ、こう答えるつもりだ、こういう意味でございます。
  198. 芳賀貢

    芳賀分科員 それでは答弁にならぬでしょう。前年同様に据え置く方針であるということになれば、たとえば米審の意見が何だろうと、これは政府の既定方針として実行するという意味じゃないですか。
  199. 福田赳夫

    福田国務大臣 米価水準は据え置きが正しいのだ、これ以外に価格のきめようがないのだということで、熱心に米価審議会の委員の御理解を賜わるようにすれば、必ずこれに賛同してくれるであろう、かように確信をいたしておるわけであります。
  200. 芳賀貢

    芳賀分科員 米審の場合は農林大臣が任命するわけだから、いわゆる気に入った委員だけを任命するわけでして、最近は御用米審といっているわけですから、政府の気に入った委員を選定した審議会の場合には、これは説得して政府の諮問を支持させることが、できると思うが、しかし大事な基本をなす食管法の、たとえば第三条の規定を無視したようなことで、米審だけを納得させても、これは正しい行政の行為とはいえぬでしょう。私の聞いておるのは、どうしていまからもう四十六年度の買い入れ米価が去年と同様の水準になるということがわかっておるわけですか。
  201. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは予算を組むのですから、政府予算米価をどう考えるかという方針をきめておかなければならぬ。最終的には米価審議会の意見を聞いてきめますけれども、とにかく予算を編成するときに、米の価格がわからぬ、こういうことでは予算は組めませんから、そこでどういう単価を考えているかというと、四十六年度においては、四十五年度同様米価水準は据え置きだ、こういうことで予算は組む、またこの方針を米価審議会に御理解を願いたい、かように考えております。
  202. 芳賀貢

    芳賀分科員 それでは、国内産の麦価の買い入れ方針と同じように、予算編成上昨年の産米の買い入れ価格並びに麦の買い入れ価格を予算として計上した、そういう意味なんですね。それ以外に意味はないわけですね。
  203. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは米価審議会の意見を聞いて、それから現実、具体的な米価をきめるのです。しかし米価審議会を昨年の暮れ段階で開く、こういうわけにもいかない。これはなぜかというと、米価を決定するに必要な経済諸指標というものが整っておらない。そういうことで、米価審議会を暮れに開くということは間に合わないから、米価審議会を開かないままに、予算のほうだけ先行させなければならぬ、こういう必要があったわけであります。そこで先行する予算の単価はどういうふうに見るかというと、諸般の事情を考えて、四十五年度価格と水準において同じだ、そういうことといたしまして、予算を編成する。この予算の編成に使った単価、これはどういうふうに具体的に決定するかという問題は、いつ開くかきめておりませんが、米価審議会の議を経てきめる、こういうふうになるので、その米価審議会が開かれるその際におきましては、四十六年度もまた据え置きだ、こういうことについては、政府としてはつとめて委員各位に御理解を賜わるという姿勢を打ち出しておる、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  204. 芳賀貢

    芳賀分科員 つまり食管法第三条二項の規定はさておいて、政府の政治的な方針として、ことしも三年連続の米価据え置きをする、そういう方針のもとに、算定にあたっても据え置きになるような答えを出して、米審に対しては諮問の中で、政府の方針としては据え置きが妥当であるというふうに考える、それを裏づけする算定の内容はこのとおりであって、数字の結果は据え置きになっていますということを極力説明して、御用委員会の賛成を得て、答申を得て、米審は政府の原案を可としたからこのとおりになりましたという一連の政治的な配慮、方針を貫くということで、特に米価については前年同様価格水準を据え置くということを方針として実施する、これは本会議でも予算委員会でもあなたは言っているわけです。大体そういうふうに考えていいですか。
  205. 福田赳夫

    福田国務大臣 少し違うのです。こういうことですよ。米価審議会に行きますと、政府は一体どう考えるのだ、こういうふうに聞かれるのです。これは当然聞かれると思うのです。この政府考え方は妥当なものであるからひとつ御理解願いたい、政府はこう考えます、これでひとつ御了承願いたいのだ、こういう態度で米価審議会には臨む、こういうことを申し上げておるわけです。
  206. 芳賀貢

    芳賀分科員 昨年私どもは米価審議会の審議と並行して、衆議院の農林水産委員会において、農林省当局に対して、米価算定の方針を毎年変えることによって連続据え置きをやっておるではないか、そこで、四十四年産米価、四十五年産米価がいずれも前年同様据え置きになっておるが、たとえば四十三年度まで採用した米価の算定方式を用いた場合に四十五年産の米価は幾らになるかということをただしました際、農林省のこれは政治性を加味しない具体的な説明によると、それは六十キロ一俵当たりで一万三十三円になる。ですからこれは四十四年の六十キロ当たり八千二百五十六円から見ると、六十キロ当たり約二千円値上がりになるわけです。四十三年に行なった算定方式、いわゆる標準偏差一シグマを用いた算定方式によるとそれになる。それでは、四十四年産米価を算定する場合には算定方式を変えてこの標準偏差を〇・五四シグマにすることを中心にして計算したわけだが、その方式を採用した場合には、四十五年の米価が幾らになるかという点については、六十キロ当たり九千二百五十円になります。ちょうど政府の決定米価と一俵当たり一千円違うわけですね。こういうことを毎年やっておりますからして、この据え置きの数字が出るわけです。ことしもおそらく勘案すべき製造工業の労賃の値上がりあるいは生産資材の上昇、そうした相対的な生産費の上昇というものから、農林省の統計によりますと四十四年の米の生産費の調査結果は前年度に対して十アール、一反歩当たり一六%値上がりしておる、それから百五十キロ当たりにすると、ちょうど前年度に対して一三%の生産費の上昇という結果が、これは農林省から正式に報告されておるわけです。これらの持続的に物財費も上がっておる、労賃も上がっておる、いわゆる米価算定の諸要素というものは全部上昇ということになる中において、三年目また据え置くということになれば、異常な算定方式を用いなければ据え置き米価というものは出てこないと思うのですよ。そういうものは、純粋な立場に立った食管法の規定に基づいた米価の算定ということにはならぬわけです。ただ政府の恣意的な、政治的な配慮、それを実現するための政治米価で、三年間据え置きになりましたというような結果をつくろうとする考えが、ことしの予算大蔵大臣説明の中にこれは明らかになっておるわけですね。だから、それでは麦の価格に対する予算措置と違うのではないかということを、これは私だけじゃないですよ、これは国会に席を置く者としても、また国民としても、そういうことは感じておるわけですからして、この点を率直に聞いておきたいと思うわけです。これはもう議論する気はないですよ。あなたはそういう考えでおるのじゃないですかということを聞いておるのですから、そうであればそうですということを言ってくれればいいわけです。
  207. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは芳賀さんが非常によく知っておるわけで、食管法第三条には、生産費も考えますが、しかし同時に、経済事情を参酌せい、こういうふうにうたわれておる。そこですよ。経済事情とは何だといえば、これは需給という問題がおもだろうと思う。その需給が今日非常な米の供給過剰である。いま一年何カ月分の古米をかかえております。そういう状態においては、その米の需給の状態というものを価格に反映させる必要がある、こういう考え方なんです。何も政治米価でも何でもない。もう食管法の命ずるとおりの考え方をしておるということです。
  208. 芳賀貢

    芳賀分科員 次に、四十六年度産米の置い入れ予定を五百八十万トンというふうに限定しておるわけです。御案内のようにこれは従来と非常に違うのです。これは予算上一応五百八十万トンにしておるが、それ以上売り渡し申し込みがあれば当然食糧管理法の規定に基づいて――変な政令に基づくわけじゃないですよ、食糧管理法の定めるところに従って予定は五百八十万トンであるが、それ以上政府に直接売り渡しをしたいという生産者からの申し出があった場合には、所定の手続に基づいて、当然制限をしないで買い入れるということは間違いないですね。
  209. 福田赳夫

    福田国務大臣 食糧管理法のどこにも全量を買い上げなければならぬとは書いてありません。
  210. 芳賀貢

    芳賀分科員 書いてなくても買うことになっておるわけです、制度の本質というものが。だから私が聞いておるのは、食管法の法理論だけやる気はないのですよ、五百八十万トンというのは予算上の数量でしょう。それ以上買わなければならぬような事態になった場合には当然買うということには変わりはないのじゃないですか。この予算に計上した数量の五百八十万トンをこえたものは何が何でも買わない、そういうことじゃないのでしょう。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうことです。
  212. 芳賀貢

    芳賀分科員 そういうことになるとこれはおかしいじゃないですか。五百八十万トンというのは何を根拠にするのですか。まだことしの米作が開始されていないでしょう。開始されておらないのに五百八十万トンしか買わないということが先にきまるというのはおかしいじゃないですか。予算上の措置としてはいいですよ。しかし現実にことし収穫されて、幸いに豊作であって、そして政府に売り渡しの申し出が殺到した場合に買わぬというわけにはいかぬでしょう。だからこの五百八十万トンというのは何を根拠にしてきめたのかということを聞いておるのです。
  213. 福田赳夫

    福田国務大臣 配給ということばが悪いかもしれませんが、政府が買い入れて食生活安定上国民に売り渡す、その最小限度必要な所要量、それを五百八十万トン、こう認定した、こういうことであります。
  214. 芳賀貢

    芳賀分科員 それじゃあくまでも五百八十万トンしか買わぬですか。
  215. 福田赳夫

    福田国務大臣 買いません。
  216. 芳賀貢

    芳賀分科員 あなたの在任中は……。
  217. 福田赳夫

    福田国務大臣 いや、私がかわりましても買いません。
  218. 芳賀貢

    芳賀分科員 それじゃお伺いしますが、今回われわれは、これは認めておるわけではありませんが、政府から七百六十万トンの昭和四十六年に生産されるであろう米穀についての事前売り渡しの限度数量の指示、つまり割り当てがなされておるのですね。これは五百八十万トンじゃないですよ。七百六十万の数字を全国に配分して、おそらく現時点においては全国の都道府県知事にはこれは行っておる。都道府県知事からおそらく当該地域の市町村長には大半おりているでしょう。その数字は七百六十万トンですから、事前売り渡し申し込み制度によるところの、いわゆる食管法第三条第一項の規定に基づいた米穀の政府に対する売り渡し命令に基づいて政令改正を二月五日にしたわけです。その七百六十万トンというものを限度として、この範囲内において政府に対する売り渡しの申し出をしなさいということは、下に流しておるじゃないですか。そこで大蔵大臣が絶対買わないと言っておる五百八十万トンと政府が限度数量として割り当てをした七百六十万トンというのはどういう関係になるのですか。
  219. 福田赳夫

    福田国務大臣 百八十万トンを自主流通米として運用したい、こういうふうに考えているのですが、合計が七百六十万トン。七百六十万トンというのは限度なんです。これ一ぱい政府が買いますという意味ではないので、政府のほうはそのうち自主流通米百八十万トンを差し引いた残額である五百八十万トンをお買い申し上げます、こういう考え方であります。
  220. 芳賀貢

    芳賀分科員 少し具体的になりますが、あなたも昔農林大臣をやった経験があるからしろうとじゃないですね。いいですか、百八十万トンの自主流通米というのは、一昨年から政府が行なっているのでしょう、食管の負担をしないで。食管が負担する経費については消費者に負担をさせるということをたてまえにして、自主流通米制度というものができて、もう二年行なっておるわけです。これは政府の言明からいっても食管のワク内でありますということを言っておるわけです。それから事前売り渡し制度からいうと、まず政府に売り渡す契約を行なって、たとえば芳賀貢は三百俵事前売り、渡しをしますという契約を集荷団体である当該農協と行なって、その後そのワク内で百俵の米を自主流通米として集荷業者に委託をしたい、こういう手続をして、これも承認を求めるということになるわけです。その場合生産者によっては一俵も自主流通米の申し出をしなくてもいいわけです。また全量を自主流通米にしてくれといって申し出をすることもいいわけなんです。しかしそれはあくまでも食管法の米穀売り渡し令に基づいた事前売り渡し契約の範囲内において、自由意思に基づいて全部政府に売り渡すか、そのうちの一部を自主流通米として委託するかということになるわけです。委託をしても途中でまた意思の変更が行なわれて、いや、そうではあったけれども、これは政府買い入れのほうへ回してもらいたいということもできるということになっておるわけです。今回の改正の場合においても、過去二年間継続した自主流通米に対する制度上の取り扱いはいささかも変わっていないわけです。だから七百六十万トンの限度数量の割り当てをした。それに基づいて、それに応諾しなければならぬというものは、限度内の申し出をするほうです。しかしその場合、もう絶対に百八十万トンは自主流通米の申し出があるということは断定できないでしょう。あるいは一俵も自主流通米の申し出がない場合もあるわけですよ。ない場合には限度数量として指示した七百六十万トン全量買わなければならぬということになるのですよ。――いや、なるんですよ。あなたは何回も首を振っているけれども、今度の改正政令を見ても、絶対これは明らかになったわけだから。だから内訳を付さないで七百六十万トンの買い入れ限度数量だけの割り当てをしたわけでしょう。あなたの言うような論法でいくとすれば、五百八十万トンは直接買い入れの分ですよ。あとの百八十万トンは政府は買わない、しかしこれは食管のかさのもとに入る自主流通米ですよという区分をして、末端に割り当てをしなければならぬということになるが、そういうことはしていないのです。一国の大蔵大臣がそのくらいのことをわからないで五百八十万トン以上は絶対買わない、こういう暴論を吐くというのはおかしいじゃないですか。
  221. 福田赳夫

    福田国務大臣 暴論じゃないのです。五百八十万トンしか買わない、こういうたてまえなんです。百八十万トンは自主流通米である、これは必ず農協がやってくれる、こういう確信をいたしている数字であります。
  222. 芳賀貢

    芳賀分科員 それはあなたの希望的観測であって、昭和四十六年の米穀売り渡し令改正政令においてもそういうことにはなっていないのですよ。それはたいへんだ、それも直せばよかったということは許されないのですからね。その点をよく御注意申し上げておきます。  それからこの限度数量とした七百六十万トンの米をこえて生産されて出てくるものがあるわけですね。先般の予算委員会においても、わが党の同僚の長谷部七郎委員の質問にあなたが答えて、農林大臣も同様のことを言っておりましたが、あのときは買い入れ制限というのは福田大蔵大臣の発想ではないか、それから物統令を廃止するというのは田中幹事長の発想に基づくものだというような話が出て、あなたは首を振っておりましたが、とにかく限度数量をこえて出てくる米があるということは明らかですね。それに対して大蔵大臣も農林大臣も二百三十万トンの生産調整を生産者の諸君が全国的に協力してくれれば、限度数量をこえるというような米は出ない、あるはずがないということを盛んに言っておられたが、二百三十万トンが達成できるかどうかはわかりませんが、かりに二百三十万トンの調整が農民の協力によって行なわれたとしても、その調整の結果七百六十万トンをこえる販売向けの米が出る場合には、これはすなおに買い入れるということになると思うのですがどうですか。
  223. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは米が四十六年度にはおおよそ千三百九十万トン、それだけできる。しかしそれじゃでき過ぎなんです。そこで二割減反してまいりたい。二百三十万トン減らすわけです。そして農家が自分で食べるものがあります。そういうものを差し引きいたしますと、これがちょうど七百六十万トン、こういうふうになるのです。ですから、普通のときでありますれば生産調整が行なわれれば余りは出ないのです。ですから、余りが出たらどうするんだというような御質問ですから、そこでそういう事態は考えておりません、こういうことを申し上げたわけですが、天気がばかにいい、そういうようなことで千三百九十何万トンマイナス二百三十万トン、それよりもっとできるというような事態がありますれば、そのときはひとつ、生産調整を阻害しないという大前提のもとに、そのときの問題として考えましょうや、こう申し上げておるわけです。
  224. 芳賀貢

    芳賀分科員 私は、七百六十万トンをこえるものが出た場合はどうするかということを聞いているのじゃないのですよ。大蔵大臣も農林大臣も、二百三十万トンの生産調整に生産者の皆さんが協力してくれれば、七百六十万トンをこえる米の売り渡しという現象は起きないということを繰り返し強調しておられるわけなんですよ。われわれはそういうことではないんじゃないか、一つの問題を取り上げれば、たとえば農家の自家用米として四百五万トン保有させることになっておるでしょう。自家用の保有というのは、食管法から見ても生産者の再生産を確保させる意味において必要な食用米あるいはモミ等を確保しなさいということを優先的にいってあるが、一体四百五万トン、全国の毎年毎年激減しておる米生産農家の自家用保有として現実に必要かどうかということも、こういうきびしい買い入れ制限をやる場合には真剣に研究しなければならぬと思うのですよ。農家の場合も再生産を妨げない範囲において自家用米を保有して、あとは販売目的に生産しておるわけですから、そういうものは全部政府に対して売り渡しするということになると思うのですよ。それらの一つの問題を取り上げた場合においても生産調整に協力してくれれば七百六十万トンをこえた販売申し込みの米は出てこないというような一方的な断定をすることには問題があると思うのですよ。だからその米は当然政府としては買うということに間違いないのでしょう。
  225. 福田赳夫

    福田国務大臣 とにかくいまは千百六十万トンですが、千百六十万トンのできばえであろう、こう見ておるのです。生産調整が行なわれて千百六十万トンになるのですが、それ以上できるのは異常に天気がいい、こういうような際だろうと思うのです。そういうようなことでありまして、もし万一この天気が異常によくて千百六十万トンを生産が上回る、そういう場合に余りが出てくるのです。その余りについては生産調整がちゃんと行なわれておる。生産調整が行なわれないということになれば、幾らでも余ってくることになります。生産調整が行なわれて、しかも天候等の関係で余りが出てきた、こういう際には、またひとつそのときのこととして御相談に応じましょう、こういうことを言っておるわけであります。
  226. 芳賀貢

    芳賀分科員 今回の政令改正によっても、その余った米をどこへでも売れということにはなってないでしょう。政府に売り渡すか、あるいは農林大臣の指定した者に売り渡すか、あるいは特別集荷業者に売り渡せということになって、それ以外、限度数量以外は、どこにでも売りなさいということはうたっていないでしょう。どうですか、うたってないでしょう。うたってないということは、閣議決定でいかように政令の改正だけをやっても、結局食糧管理法というものが厳存しておる限り、直接買ってもあるいは自主流通にこれを乗せても、とにかく国内において生産された米穀全体に対して国家が管理するという制度は、これは政府の行政権限だけではくずすことはできないから、余った米はどこへでも売りなさいというような政令改正はできないのですよ。それはあなたもよくわきまえておるわけでしょう。その点はどうですか。余ったものは買わぬからどこへでもかってに売れというような意味でおるのかどうか。
  227. 福田赳夫

    福田国務大臣 もし万一余りが出たという際には農協に管理をしてもらう、こういう考えなんです。農協で管理したその米は持ち越すわけですね。持ち越したその米の処分につきましては将来の問題として、そのときの時点で、生産調整がよく行なわれてしかも余りができたのかというようなところをきちんと吟味した上、よく相談に応じましょう、こういうようなことです。
  228. 芳賀貢

    芳賀分科員 最後に一問だけしますが、これは実例として、最近非常に取り上げられておる国有農地の売り戻しの問題にしても、先般、旧地主の訴訟によって、最高裁が農地法施行令の第十六条は、これは農地法八十条の規定に基づいた法律の委任の範囲を越える無効の政令であるという、そういう最高裁の判決が出たわけでしょう。これは最高裁の判決だから尊重しなければならぬということは、われわれの判断では、それをまたすなおにやらないでとかくの議論をすると、今度の食管法の政令改正についても、これはもう明らかにだれがどう詭弁を弄しようとも、食管法第三条の一項あるいは第九条一項の委任命令の範囲を越える政令の改正を今度あなた方はやったわけだから、当然問題は起きるのですよ。何でもかんでも内閣が委任されて政令をつくればいいというようなもんじゃないですからね。法律に違背した、委任を越えた政令をつくって、そうしてこれを行政権限で知事、市町村長に行政の協力を求めあるいは代行さして生産者を強圧するとしても、これは二十七年も八年も続いた、昭和十七年から続いておる食管法そのものが厳存しておるわけだから、あなた方は空洞化に努力しておるけれども、法律は厳存しておるわけですからね。何でもかんでも政府がやれるのだというような安易な考え、増長した考えの上に立って一方的に農民を無視してやるということになれば、当然これは農地の売り戻し問題以上の問題というものが起きるということを、これは予告しておきますよ。予告というよりも、必ずそうなる。ですからそういう点はやはり十分反省して、五百八十万トンしか買わぬとか生産者米価は三年据え置きになるんだというようなことでは、国政を担当する者としては、いささかわれわれとしては信用できないということになるわけです。これは大蔵大臣の所信として、ポスト佐藤をねらう福田大蔵大臣として、一体こういう問題をどう考えておるか、ひとつお答え願いたいと思います。
  229. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府は法律を忠実に実行しなければならない。これはもう現内閣のみならず引き続いて一貫した態度であります。食管法の運用につきましても法の範囲内において、また法を十分に活用いたしまして、これが円滑に運営されるようにこの上とも最善の努力をいたします。
  230. 大坪保雄

  231. 中村重光

    中村(重)分科員 どうもわずかな時間ですが、日本のいまの政治を動かしている重要な存在である福田大蔵大臣に対して基本的な点で見解を伺ってみたいと思うのです。  予算編成の時期となりますと、大臣御承知のとおり各都道府県、市町村その他諸団体がわんさわんさと陳情に上京をしてくるわけですね。そして大臣にも、それから編成のまっただ中にある各部局の方々に対しても、応接にいとまがないといったようなことで、たいへんな苦労であろうし、また仕事にも支障があるのじゃないか。何とかしてこれをやめさせられないものか。陳情のために使う費用というものは、人によっては三十億だとか五十億だとか、百億くらい使われているのじゃないかとか、いろいろいわれている。なかなかこれは統計はむずかしいだろうと思うのです。大臣は政治家ですから、大臣がいろいろな諸団体と会われるということは、これは私はやむを得ないと思う。大蔵省は原則としていろんな陳情団体とは会わない。すべて折衝は各省との間にやっていくというような、そういうことでもおやりにならなければいけないのではなかろうか。私は原則として陳情政治というものはやめていかなければいけない。これは上京してくる市町村、それにも行政事務の停滞がありましょうし、また団体等も同じだろうと私は思うのです。まあ与党としましてはいまの陳情政治が都合がいいことはわかっています。ところが私は、長い目で見ると、これは政治不信という形につながっていくのではないか。国の予算の中の対象となっておるすべての国民が上京してくるわけじゃないのです。いわゆる圧力団体というようなものを中心として来るわけでございますから、そこらあたりに反発も出てくるんじゃないか。弊害ですから、この幣を何とか直していくということをお考えにならなければならないのではないか。この間、小林さんが予算編成のときは野党はこたつの中で居眠りでもしているのだろうといわれた。大臣御承知のとおり、私は暮れは三十日ぐらいまでおりました。大臣ともお会いし、また大蔵省の皆さんともお会いをいたしました。さんざん党の申し入れをいたしますと同時に、私が担当いたします部会の問題についても申し入れもし、いろいろと折衝いたしておるわけでございますが、私は決して、これが好ましいものであろうかどうか。それはやっぱり党という立場の上に立って、あるいは国会議員という立場の上に立って当然これは要求もし、またその実現をはかっていくことは、これはやらなければならぬことであるとは思うのでございますけれども、実はあまりにもむだがある。これを何とかして除去するという方策について、大臣は何かお考えになっておられないのかどうか、ここらあたりいかがでございましょう。
  232. 福田赳夫

    福田国務大臣 予算の編成のあり方については、私も予算編成のシーズンになりますと非常に考えさせられるのです。陳情政治といいますが、これは一がいに私は悪いというふうには考えておりません。かわいそうなおじいさん、おばあさん、あるいは小さな子供さんの問題、私はそういうような人々にはつとめて会うようにしております。それから、らい病の患者まで、私は会うようにいたしておるわけでありますが、そうでなくていわゆる威力をもって予算の獲得というような気勢を示すそういう陳情、これもあるわけなんです。そういうのが私は好ましくない、そういうふうに考えるのですが、これは陳情者側の良識、こういうものに待つほかはないのだろうと思いますが、私のほうでも気をつけなければならぬ。そういう者にはなるべく会わないようにという受け方をしなければならぬというふうに思いますが、もう一つはやはり世論というものがきびしくそういう行き過ぎた行動についてはこれを批判していく、こういうこと、これも大事なことだろうと思います。必要な陳情というか、そういうようなものには、つとめて会いますけれども、威力をもって押しつけようとする、そういう動きに対しては、今後といえども私はき然たる態度をもって臨んでいきたい、かように考えております。
  233. 中村重光

    中村(重)分科員 民意を十分尊重していくという考え方、私はそれはもちろん否定するものではないし、私はそれは当然だろうと思うのです。請願なんかにつきましても、国民には請願権があります。それを押えることはできない。けれども、ともかく圧力団体というようなものを中心とするような、いま大臣がおっしゃった威力をもって予算獲得ということ、そうして大臣がいわれたほんとうに気の毒な人たち、そういう人たちというものは陳情するすべもないということになってまいりますと、そのことが私は政治不信にもつながるし、予算そのものがゆがめられてくるという結果になるであろうということを実は憂えるわけです。また大蔵省としてもたいへんこれは予算編成のときに忙しい時間なんです。しかし求められれば会わなければならぬということがいかに大きなロスを来たしておるものであろうかというようなことをどう考えるか。だから私としては、いろいろな方法があると思う。たとえば私は商工委員会に所属をいたしておりますが、個々の法律案等が出るとき、附帯決議をつけるのですね。与野党一致なのです。ですから、たとえば中小企業問題についてはどうあるべきかということについては、与野党やはり同じような考え方の上に立った要求というものをすることだってできるであろう。しかし最終的には、政府、与党というものは独自の立場に立って一つの案をつくり上げていくということを否定するものではない。国会においてはまた野党はこれに対する修正というような権利を行使していくというような、当然そういう好ましい姿、あるべき方向というものは、これはあくまで尊重し、これを推進していくものでなければならぬ。弊害をともかく除去するということに私は全力を傾けなければならないんだというふうに思います。  それからまた、政府の施策、それがいろいろな面から資金が流れているということ、これも私は弊害であるというふうに感じているのです。一般会計から財投、それはあることは当然です。ですけれども、たとえばギャンブル関係の資金、そういうものが同じ事業というものに対してこれからも金が出る。それでやることもできる。しかしこれは公益事業であるからして、当然国が二分の一なら二分の一を負担する。それから県が四分の一なら四分の一を負担して、そうして設置者なら設置者がその四分の一を負担していく、そういう方法もある。ところが、今度はギャンブル収入等によってもこれをやることができるというように、一つ事業の選択といったようなことがなされていくいまの分裂した行き方というものは、財政、いわゆる予算編成あり方、行政執行のあり方としていかがなものであろうという点は、きょうはお答えをいただけばけっこうでございますが、研究課題であるというふうに感じます。同時に、ギャンブルなんかにいたしましても、たとえばモーターボートの競走会は財団法人になっている。ところが、自転車振興会とかそれからオートとかいうものはこれは特殊法人になっている。そういう形のものでよろしいのであろうか。どこが違うのであろうか。そういったようなもの等も真剣に検討し、そうしてまたそれの追及、どのようにその金が使われているかというような、それぞれの資金の分配ということは私は承知いたしておりますが、時間の関係がありますからそれは申し上げませんし、そのことについてのこまかいことについてのお答えはいただきません。必要ありませんけれども、基本的な考え方としていかがなものであろうか、その点についての考え方をお聞かせ願ったらと思います。
  234. 福田赳夫

    福田国務大臣 もともとギャンブルの金なんというものをあまり当てにするという考え方は好ましくない、こういうふうに考えておりますが、現実の問題として、ギャンブルをすぐ廃止するわけにはいかぬ。そこで、ギャンブルに伴う収入というものが出てくる。ギャンブルを主催する団体がその利益を受け入れる、こういうふうになっておる。しかしその利益を、これは公共のために還元する必要があるということから、そのギャンブルの主体ごとに社会福祉とかそういういろいろな施設にこれを使用するということをいまやっておりますが、御説のとおり制度論とするといろいろ問題がある、こういうふうに考えます。なおよく検討いたします。
  235. 中村重光

    中村(重)分科員 実は、私は、きょうはいわゆる歩積み両建て、拘束預金の問題と、それから信用補完の問題を中心にしてお尋ねをしたかったわけでありますが、時間の関係がありますから、拘束預金は商工委員会においていたしたいと思います。銀行局長さん、そのとき御出席いただけましょうか。なかなか局長さん、お忙しいということで御出席いただけないのですが、できれば大臣に、重要な問題ですから出てきていただきたいのですが、大臣どうしても差しつかえの場合、銀行局長にぜひひとつ御出席願いたい。そのことをお約束願っておきたいと思います。よろしいですね。  この信用補完の問題の前に、社会福祉の問題について、老人対策とそれから保育所の問題と寡婦控除の問題で、要点だけ、大蔵に特に関係のある分だけをお尋ねをしたいと思うのです。  老人の悲願であると申しましょうか、権利の主張であるこの福祉年金の引き上げというようなものが、今回、従来毎年二百円だったのが三百円という形に上がりましたが、それにしても二千三百円、これはもっと大幅に増額をなぜにできなかったのであろうかという点が一点であります。  それからもう一つは併給。これも老人は、福祉年金は老人の権利なのに、なぜにこれを併給しないのだろうか。ただ戦争関係の公務、これだけはたしか十月ぐらいから全額併給をするんだそうであります。そのとおりであるかどうか。それから、戦争関係の公務の年金の併給を行なわれるのならば、なぜに普通恩給とか扶助料は、この物価高の中においてたいへん困っているのでございますから、その併給ができないのであろうか、その点の解明。  それから所得制限。これも老人は、所得制限だけはしてもらいたくない、これが願いなんです。ところが、今回、若干緩和はいたしましたが、所得制限を撤廃するということをされなかったわけであります。これはなぜであろうか。  それからまとめてお尋ねいたしますが、保育所の関係は、実はいま私立の保育所は措置費の中に給与が入っているわけです。一緒になっている。俗にいうどんぶり計算なのです。ところがいま、公立の公務員との給与の格差をなくしようという考え方で三カ年計画で進めて、ことし、四十六年が終わりになる。ところがどんぶり計算になってまいりますと――保育所で長い間つとめている人は、どうしても給料が高くなるわけですよ。そうなってまいりますと、措置費はそういうことを区別はいたさないわけですね。したがってどうしても給料の高い者はやめさして、経験の浅い、給料の安い者にこれを雇いがえをしなければならぬという結果が生まれてくるわけです。そのような矛盾というものはどうしてもなくしなければならぬ。したがって、給与の格差をなくしようとするならば、いま私が指摘いたしましたようなものも合理的に解決をしていかなければならないのではなかろうかという点であります。  それから次は保育所の設置。実は、いま、保育所に入りたくて入れない人たち、いわゆる保育浪人というものが、零歳児が一番多いのでありますが、統計のとり方によって違うのでしょうが、六十三万人くらいいるといわれているわけです。だから、この保育所の設置についてどのようにお考えになるかという点が一点であります。  もう一つ、無認可保育所、これは詳細お答えいただく方がいなければ、大臣の基本的なお答えだけでもけっこうですが、無認可保育所というもの、これは規模が非常に小さいのだから、条件に合わないのだからというような形で無認可になっている面もありますけれども、公立保育所であるとかあるいは認可保育所では、長時間であるから、あるいは零歳児であるからというので預かってくれない。だからどうしてもそういった零歳児を預かる、あるいは長時間の保育をするということでこれを預かるようなことから、この無認可保育所というようなものがあるという事実は否定できないわけです。したがいまして、私は夜間保育所というものを当然考えられなければならないということです。長時間保育ということも考えていかなければならないであろう。ホステスなんかの例、これは、ホステスはいいじゃないか……、私は、あまりお酒も好きじゃありませんから、ああいうところへあまり行きませんけれども、これは夜働かなければどうにもできない人です。このような人たちには夜間保育というものを当然考えなければならない。しかし夜十二時ごろ子供を起こすことは、児童福祉法の問題、あるいは基準法との関係もありましょうから、それらの問題は別途検討するといたしましても、こういった無認可保育所という問題、夜間保育所という問題については真剣に考えていかなければならないであろうというように思います。この点に対してどう考えるか。  それから設備改善に対する補助あるいは融資について国が基準をきめている。ところが単価が安い。そのために持ち出しというものが非常に多くなっている。  それから老朽の保育所というもの、老朽の園舎というものがあるのでございますが、減価償却というものがほとんど行なわれない。また融資も基準が非常に低くてどうにもならないということで、老朽は老朽のままという形でむしろ危険な状態にあるということ、こういうことも解決をしていかなければならないのではないか。これらの社会福祉関係の老人対策あるいは保育所の問題。  それから寡婦控除の問題を私は申し上げますが、実は寡婦控除は十万円の控除ということに四十六年からなるわけです。第一子が十三万円、第二子以降が十二万円の控除ということになるわけでありますが、ところが寡婦は、女手一つで子供を育てて、それだけ苦労しているのです。この寡婦控除というものは、扶養控除よりもこれを引き上げていく、高くするという必要があるのではないか。だがしかし寡婦控除というものは、これはむしろそれだけ多く見てやっているのだ、営業をやるという場合、それぞれの控除あるいは勤労控除という、そういう基礎控除というものに、寡婦控除というものは特にこれはプラスアルファであるから、というような議論にもなろうと思いますけれども、寡婦の心情、女手一つで子供を育ててきたその苦労というものを考えてみると、この寡婦控除というものは、扶養控除よりも、私は、多くしてやるということが、その心情にも沿うことではないか、私は理論的には必ずしも矛盾しないのではなかろうかと思います。  以上時間の関係があって、私はまとめてお尋ねをいたしましたが、これらの点についてお答えをいただきたいと思います。
  236. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず老人対策でありますが、老人対策は四十六年度予算ではかなりきめこまかく措置したというつもりなのです。老人対策上特に問題になりますのは、老人の医療の問題かと思うのですが、これはかつて老人医療問題を医療保険の中に組み入れるべしという意見がありましたのですが、その財源を一体どうするかという問題で保留ということになって今日に至っておりますが、そういうことができないものですから経過的にかなりきめのこまかいいろいろな措置をしておる。  それから併給問題、特に老齢者に対する年金の併給問題かと思いますが、この併給の問題につきましてはそれぞれの年金ですね。年金の支給される根拠というか、それによって併給されるものもあり、併給されないものもあるという状況であります。これはケース・バイ・ケースで御説明すると御納得いくと思うのでありますが、現在の年金制度としては一部はこれを認め、一部はさような見地からこれを認めないことにしておりますが、なお検討問題にいたします。  それから所得制限の問題でありますが、これはそう制限を広げていくという考え方はいかがか、こういうふうに思います。つまり、たいへんな所得が他にあるという方に対しましては、政府が一般の国民の税まで使って補助しようという、そういう年金などの場合を考えますると、所得制限を広くこれを拡張しよう、こういう御意見はそうすなおには受け取れないのです。  それから保育所、これにつきましては措置費の問題、また無認可保育所の問題、特に夜間保育の問題、設備改善の問題、いろいろ御指摘がありましたが、これも婦人労働という問題がこれからの課題になっていく、そういうようなことを考えますと、保育所も改善をする、拡大をする、こういうことは非常に大事な問題と思いますので、いろいろ御意見を拝聴いたしましたが、なおこれは検討さしていただきます。  それから最後になりましたが、寡婦控除の問題、これは大体現在のところでバランスがとれておるのじゃないかと一応考えておるのですが、これは毎年毎年税制改正というものがありますから、その際にまた検討の対象にしてみる、かように考えております。
  237. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣の直接の答弁で検討ということばですが、特に否定的におっしゃったのは所得制限の問題だけでございましたが、検討するということは、前向きでこれを進めていこうという考え方でというふうに理解してよろしゅうございますか。
  238. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあおおむねそれでいいと思いますが、たとえば無認可保育所の問題です。これなんかはいろいろ御議論があろうと思います。完全に中村さんの御意向どおりというわけにいかぬ問題もあるかもしれませんが、とにかく全体としては保育所という問題の重要性を踏んまえまして検討する、こういう意味で御理解願いたいと思います。
  239. 中村重光

    中村(重)分科員 ともかく普通の保育所で保育料約五千円ですね。無認可の場合二万円も、つまり二万円、三万円なんというのがあるのです。これは零歳児を預かる。零歳児というのはわずか千七百名くらいしかいま保育されていないのです。千分の一なのです。それはもう預からないからです。だからどうしても無認可保育所、それから長い時間預からないからどうしても無認可保育所というものがその役割りを果たすということになるわけです。ですから無認可保育所というような問題は適当でないというようなことを、これは否定的な立場に立つ前に、現在の保育のあり方がどうなのかということを私は検討される必要があるであろう。その点は大臣も、社会保障というものが非常に重要な政治課題であるということだけは同感でございましょうから、それらの問題について実情に即するようにやってもらいたい。夜間保育の問題でも、実は別府と京都にあります。京都は市が夜間分だけは年間七十万の補助をしておる。そういう事実もあるわけでありますから、その点もお考え願っておきたい。無認可保育というものが単に規模が小さいというようなことでやりましても、それは補助もなければ融資もないということから、勢い保育料を高くしなければどうにもならぬという実態にあるわけですから、その点は、子供に変わりはないのです、真剣にお考えをいただかなければなりません。  それから所得制限の緩和の問題、それは大臣のおっしゃることもわかります。しかしずっと緩和をいたしまして、今回百八十万円でございますか、それになりますとはずれるのはわずかです。ですからそれは大臣おっしゃったのは非常に多額の所得、全く問題にしてない、そういう人は所得制限のあるとかないとかいうことを問題にしているのじゃないんですよ。その額の問題よりも、老人が、老人年金というものはやはり老人の権利なのだ、国は法律でまで老人のお祝いの日をつくった、だからそういう形式的なこともさることながら、中身を老人は求めているのだ、そういう老人の悲願であり、老人の権利であるこのことをいかに生かしていくかという考え方の上に立って問題と取り組んでいただかなければならないのではないか、私はそういうふうに考えるわけです。  それから寡婦控除の問題も、バランスの問題からいえば私は大臣のおっしゃることを否定いたしません。むしろ私が申し上げることは心情論でありあるいは政治論であるかもしれません。これは受け取り方によりましてはプラスアルファ的なものとも考えられるわけであります。しかし何といっても特に片親で、しかも男の場合は控除しないのだが、女親、いわゆる寡婦の場合にこれを控除しておるというこの事実は、やはりそれだけ苦労して子供を育ててきた、女手一つで、そのことに思いをしているわけでありますし、また働く能力というようなものも非常に弱いし、働く職場というものも狭いわけです。したがいましてこの寡婦控除というものは、私は扶養控除よりもこれを引き上げていくというようなことになさることは、必ずしもバランスがくずれることにはならないのだ、十万円をかりに十五万円にすることでバランスがくずれるという形にはならないのではないかというような感じがいたします。  次に信用補完の問題で、もう時間がわずかでございますから、これも商工委員会に譲らなければならないかもしれない、非常に残念でございますが、実は大臣、信用補完が今年は昨年よりも五億減――信用補完の重要性は非常に強まってまいりました。実は御承知のとおり倒産は戦後二番目を記録をいたしました。そうして今度は公害あるいは特恵、そういうような保険というようなものが新たに追加されたのであります。付保険限度というものもふえてきたのであります。にもかかわらず昨年度よりも五億減額をいたしまして百十億になりました。ただ共同証券分が九十五億というものが新たに今回その融資基金として使われることになったのでありますから、それを計算に入れますと、その限りにおいては私は大幅にふえたということはいえると思います。だからこの共同証券出資金が途中で引き揚げられることがないかどうかという点が一点であります。  それから融資基金だけではだめなのです、倒産等を考えてみると。今度特恵等々によっていろいろな面で代弁という形がふえてくるだろう。代弁がふえてくるということになってまいりますと、どうしてもその支払い能力というものが必要になってまいりますから、準備基金というものをふやしてまいらなければならない。準備基金が据え置きになっておるということは、私は何としてもこれは矛盾であると考えるわけであります。したがいまして、この共同証券を途中で引き揚げることがないかどうか。それから融資基金というものを増額の方向で進めていき、なお準備基金を大幅にふやしていく考え方を持っておられるかどうかということをまずお尋ねしておきたいと思います。
  240. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま御指摘のございました九十五億円につきましては、今後理事者において確定した数字を出すことになっておりますし、それからまた共同証券財団自身の自主的な考え方によって左右される問題でございますので、行く行くあるいは増額されるというような事態もあろうかと思いますが、ただいまのところは大体九十五億という考え方でいっておるわけでございます。
  241. 中村重光

    中村(重)分科員 途中で引き揚げることはないかどうか。
  242. 近藤道生

    ○近藤政府委員 引き上げる可能性もないとは申せませんが――失礼いたしました。金額を引き上げるというふうに承ったものですから……。取り上げるということは全くないと存じます。  それからもう一つは、保険準備基金につきましては、これはもう先生非常によく御承知のように赤字救済というような意味もございまして、ここ三、四年間続けてまいったわけでございますが、これまた御承知のようにだいぶん赤字も減少してまいりました。ただ、信用補完活動というものをできるだけ拡充強化するという趣旨から、前年度及び前々年度と全く同額の拠出が行なわれたわけでございます。その意味におきましては、むしろ赤字の現状から見ればことしは非常に勉強いたしたという感じに考えております。
  243. 中村重光

    中村(重)分科員 これで終わりますが、実はいまお答えのとおり代弁が非常にふえまして、準備基金がふえたことは事実なんです。ところが今度は据え置く、こういう形になっております。ところがいま代弁が頭打ちになっているという印象があるのです。ということは、平年度平均が代弁の比率が二・〇七なんです。単年度で二・三五なんです。代弁の平均ですよ。ところがこの平均を上回っている保証協会というのが相当多いわけです。私は長崎ですが、炭鉱その他の閉鎖等に伴ってはるかにこれを上回っているのです。ところが大蔵省がこの全国平均の代弁を押えるわけなんです。したがって、この保険公庫が全国平均を上回っておるところの協会には、代弁がありましても金を渡さない。したがって、保証協会は銀行にその代弁を支払うことができない。実は半年も一年も待たしておるという実態がある。そうなってくると、銀行は代弁を支払ってくれないから、したがって保証を拒むわけです。どういうものが拒まれるか。最も金融に苦しんでおる零細企業が――これはもう零細企業は信用補完の対象になるわけでありますが、その中でも最も力の弱いものが結局保証から締め出されるという結果が生じておる。ですから少なくとも保険公庫は保険をつけた以上は全国平均を上回ろうとも上回るまいとも、代弁というものはやらなければいけない。これを押えるということはあくまでも不法であり、不当であると考えております。したがいまして、そのような矛盾をなくして――大蔵省がそれに干渉する、直接大蔵省が保証協会を、全国平均を上回ったものを呼びつけることだってあるわけです。そういうことをやることは正しくない。あくまで保険をつけたならば、この代弁が生じたならば、その代弁は直ちにこれを支払っていく、そういうことをおやりにならなければならない。この後はそういうように実行されるかどうか。これは大臣からひとつはっきりお答えいただきたい。最後にひとつ、大臣局長の御答弁のあとでお答えいただきたい。
  244. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま御指摘のような点が赤字健全化という段階におきましてはある程度行なわれたかとも思いますが、だいぶん赤字も解消いたしてまいりましたので、本来そういう直接保証協会を呼び出して云々ということは、私どもといたしましてはする気は毛頭ございませんし、それから自主的な調整措置というものも最近の客観的情勢に応じて非常に緩和されてきておるように思います。その面からもそのような直接的な指導を従来ほどやかましくワク等についてやるというつもりはございません。
  245. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま銀行局長から実情を御説明申し上げましたが、なお円滑にいってないという面がありますれば、十分気をつけることにいたします。
  246. 中村重光

    中村(重)分科員 銀行局長は机の上で書類を見ておられるからそういうことになる。実は押えているから、保証しないから、いかにも解消したように見えるのですよ。全国平均を上回らせないように押えておるのです。ですから保証をどうしても押えるということになるのです。それから上回ったものが、実は私は数字をある程度押えていますが、まだまだ当然払わなければならないものがどのくらいの数字になっておるとお思いでしょう。ものすごく多い数字なんだ。だから準備基金を今度ふやしてそれの解消をはからなければならない。ふやさないから、共同証券で融資基金は九十五億というようにふえたけれども、準備基金をふやさなければ結局その問題は解決しない。だから銀行局長は私に、心にもないうそを言っておるとは思いません、ごまかしてあなたが答弁をしておるとは思いませんが、あなたが御存じない実態があるわけです。私どもは、失礼ですけれども、ある程度直接そういう零細企業と接触をいたしております。ですから実情を承知いたしております。ですから私どもが申し上げることはそのままひとつお受け取りになって実情を十分把握し、そのような矛盾がないようにただいま大臣がお答えになりましたようなことをこの後は実行していく、こういうことにやっていただきたい。そのことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  247. 大坪保雄

    大坪主査 伊藤惣助丸君。
  248. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 私は米軍基地グラントハイツの返還に伴うその計画と返還をめぐる国有地の扱い、さらに造幣局東京支局の移転問題について質問いたします。  初めに、御存じのように米軍基地グラントハイツが四年間という一つの期間を区切りまして返還されることは大臣御承知のとおりであります。今年は昨年に次ぐ二年度でありまして、七十三億円計上されております。まずその辺から伺いたいのですが、本年度の実施計画はどのようなものか、まず伺いたいと思います。
  249. 小口芳彦

    ○小口政府委員 グラントハイツの計画につきましてはこれに武蔵野住宅の計画がからまってまいりますが、全体の計画としましては、グラントハイツのほうでは住宅一千四百八十六一尺これを移しまして新しく取得する、この予定が約二百五十一億円でございます。それから武蔵野住宅のほうにつきましては六百九十九戸、これを移すために新しく取得いたしまして、価格が合計で約九十八億円ということになっております。合計いたしまして二千百八十五戸、これを取得しまして三百五十億円という予定であります。処分のほうにつきましては今後の問題でございますので、これは実情に即しながら考えていくということで、未定でございます。
  250. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 このグラントハイツの返還についてはいろいろ経緯があるわけでありますが、それは別といたしまして、大蔵省にとって一般会計じゃなく特別会計で扱ったその理由というのはよくわからないのですけれども、その点はいかがでございましょう。
  251. 小口芳彦

    ○小口政府委員 そもそもこのグラントハイツとグリーンパークでございますが、これは現在ございます米軍関係に提供している施設をどこかへ移転してくれるならば、この地域については開放しましょうという米軍側の意図がございまして、そういう意図に基づきましてこの計画の具体化が考えられている、そういう状況でございます。したがいまして、いわば現在ございますただいま申し上げました二千百八十五一尺これをどこかに移設するというようなことが前提とされまして、この地区が初めて開放される、そういう状況になっておりまして、それでありますならば、それを最も機能的に解決するためには、いわゆる特特会計というのがございまして、これで代替施設を取得し、そして現在地を売り払うということによりまして、一番機能的にその問題が解決することができるではないか、そういう考えに基づいてやっております。
  252. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 問題は大蔵省及び防衛庁の御説明を伺いますと、大蔵省には金がないから、このグラントハイツを適当に処分して、そしてそこに米軍の施設がありますけれども、それを各方面の基地に分散収容して、その金さえ出れば、東京都及び地元の要望である公園であるとか、または公共施設であるとかというものに提供したい、こういうふうに伺っていたわけであります。だんだんと計画の内容を聞いてまいります中で、いまお話がありましたように、グリーンパークの分まで入っておる。グリーンパークの約七百世帯ですか、いま説明を初めて伺いましたが、九十八億円という分までもグラントハイツの中に入っておる、こういうことなんです。ところが私はグリーンパークの件については、グリーンパークのいわゆる処分によって移転費用を出すのが当然ではないかと思うのです。その辺はいかがでございましょうか。
  253. 小口芳彦

    ○小口政府委員 おっしゃいますようなことを考えるというようなことも、そういうようなお考えもあるというふうに考えられますけれども、現実のこの事案は、米軍のほうが、これは防衛施設庁が折衝しているわけでございますが、ぜひ一緒にやりたいのだということになっておりまして、そこは私どもが防衛施設庁の話を聞きますと、向こう側ではそこは固執してなかなか譲らない、そういう話でございまして、向こうの要求の基本的な態度が、ぜひ一緒にやりたいのだということになっているわけでございます。
  254. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 そこはますます疑惑を深める一つの原因があるわけなんです。武蔵野住宅ですね、いわゆるグリーンパーク、この問題はどうなっているかといいますと、詳しくはまた聞きたいのですが、国と日本文化住宅協会というところで払い下げをめぐって裁判を起こした。そうして最初は国が勝った。二番目には国が負けた。そうして最高裁に行く前に、どういう理由かわかりませんけれども、話し合いがついて、そうして日本文化住宅協会にあの国有地の払い下げがきまった、そういうことを伺っているわけであります。その内容についてまだ公式に伺っておりませんので、そのグリーンパークをめぐる裁判の概要と、それからただいま申し上げました点について簡単に説明を願いたいと思います。
  255. 小口芳彦

    ○小口政府委員 これはたいへん長い経過がございまして、ここでうまく要約してお話しできるかどうか、非常に経過が長いわけでございますけれども、そもそも国が文化住宅協会に対しまして、現在のグリーンパークの土地、建物を売却いたしまして、そうしてその代金が長い間未納であったわけでございます。それでそういう期間が非常に長く続きましたために、国のほうでは代金が納まっていないということを理由にその売却を取り消すという措置に出たわけでございますけれども、   〔主査退席、三ツ林主査代理着席〕 それが向こうの訴えるところとなりまして、それでいま御質問にあったような経過をたどったのでございますけれども、結局最高裁では国側の敗訴になりまして、それで国のほうは、約七千万円でございますけれども、その売買代金を文化住宅協会が納めるというのを条件に所有権の移転の手続をせよという判決でございました。その後文化住宅協会のほうからは、最終的には代金の納付がございまして、それで所有権の移転登記も済んでいるわけでございます。ただしその間におきまして、国のほうは文化住宅協会の施設を米軍に提供しておるわけでございまして、その提供するにつきましては、いままでありました荒廃した文化住宅協会の建物に対しまして相当補修をしなければならない、そういうことで約二十三億円でありますけれども、それだけの予算支出をいたしまして施設を補修して、そうして大改修でございますけれども、大改修をやりまして、それで米軍に提供しているということであります。国のほうとしましては、それは文化住宅協会の、現在では所有権が移りましたけれども、その資産の価値の増加に充てたものであるから、それは国が投じた有益費として償還せよということを文化住宅協会に言っております。かたわら国のほうは、所有権の移転登記はしたわけでございますけれども、その二十三億円の有益費につきまして、文化住宅協会のほうで応じないという状況でありますために、文化住宅協会の持ちものになりましたグリーンパークにつきまして、留置権を行使しているという状態でございます。しかし現実に米軍に提供しておるわけでございますから、国のほうといたしましては、やはり現在の時点では、できるだけ早く文化住宅協会と話し合いをして、そうして賃貸借契約を結んで賃借料をきめて、そうしてはっきりした賃貸借契約に入ろうというふうな申し出をしておるわけでございますけれども、その賃貸借の価格とかそういう点につきまして、まだ折り合いがついていないという状況でございまして、かたわら文化住宅協会のほうは、所有権は文化住宅協会にあるにもかかわらず、それを結局賃貸借契約しに国が米軍に提供していた。それの損失の補償を国が文化住宅協会にすべきであるという主張をしておりまして、これがその損失補償ないし損害賠償の向う側の要求ということになって、こちら側にそれを要求してきておる、そういう状況でございます。
  256. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 確かにこれは古い問題でありますけれども、大事なことがたくさんある。まずこの文化住宅協会の役員は、どういう方がタッチされておるのか、もとの役職を含めて、簡単にお名前をちょっと伺いたいと思います。
  257. 小口芳彦

    ○小口政府委員 現在の役員につきまして申し上げますと、理事長が――名前を以下読み上げます。理事長益谷秀次、理事松前重義、笹川良一、相川久雄、専務理事林文璽、常務理事山沢直龍、常務理事益谷充、常務理事秋葉好雄、常務理事宮本愛三郎、常務理事小田拓三、常務理事山内勝、理事上村健太郎、理事山本三郎、理事細川勇五郎、理事原平助、理事笹川陽平、理事小鍛冶芳三、理事高橋政知、理事中川千代治、監事は二名でございまして、柴沼直、笹川堯。以上でございます。
  258. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 もと及び現在の役職はわかりますか。
  259. 小口芳彦

    ○小口政府委員 実は全部調べてございませんので、全部につきまして申し上げるわけにはちょっとまいりません。
  260. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 これは、昭和二十五年当時の役員の名前と前役職を資料として要求しておきたいのですが、いかがでしょうか。
  261. 小口芳彦

    ○小口政府委員 こちらで、内部で調べたのでございますけれども、いろいろわからない点がございまして、それで、文化住宅協会につきましては、監督官庁が建設省ということになっておりますので、建設省に連絡をいたしまして、御要望に沿いたいと思います。
  262. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 いまいろいろ伺いました。大臣、これは国民の立場からいいますと、私は、法律に違反して云々なんということは言いたくはない。ただ、いろいろ調査してまいりますと、納得いかないところがたくさんあるわけであります。  一つは、簡単に言いますと、これは国が昭和二十五年十一月八日に土地七百六十六万五千三百八十八平米、坪数にして約二百三十一万八千七百八十坪、それから建物が若干を七千九百六十八万三千百四十三円で協会に払い下げた、こういうことがあるわけです。これは一平米十円くらい、一坪三十円くらいですね。これが、そういうふうに、協会に一応払い下げることになっておったのですが、協会が売り上げ代金を払っていないために契約を解除された、これが昭和二十六年の十二月二十五日です。ところが協会は二十九年の五月十八日に国の契約解除を不服として、東京地方裁判所に契約解除無効の訴えを提起したわけです。ところが昭和三十一年六月六日、東京地方裁判所において契約は無効であるということで国が勝ったわけです。ところが昭和三十三年の十一月二十六日に、今度は東京高等裁判所において逆に国が負けております。その後昭和三十三年の十二月十六日に、最高裁判所に一応上告をしたわけでありますけれども、それがどういう理由かわかりませんけれども、破棄になり、敗訴ということが確定したわけです。そこでこういう例については、専門家の弁護士にも聞きましたけれども、ふに落ちないところがたくさんある。裁判所できめた判決について私は言及することは、もちろんわれわれの権限を越えておりますので、云々はしませんけれども、実際問題として、昭和四十五年の三月三十一日に土地、それから四十五年の五月十四日に建物をそれぞれ所有権の移転登記を文化住宅協会といたしましては完了しておるわけです。また未払い代金については、四十四年の十二月十八日に供託しておるわけです。こういう一つの経過があるわけです。  それで、こういう経過の中で問題になりますのは、先ほど言いましたように、現在坪二十万から三十万しているグリーンパークの地帯ですね、土地なんです。ところが先ほど申し上げましたように、一平米十円そこそこ、坪にして三十円で、それが二万三千坪も払い下げられておる一つの実態があるわけです。ですから、グリーンパークの中に住む米軍約七百世帯の移転というものをしなければならぬというならば、所有権がまた文化住宅協会にあるというならば、その協会が負担するか――先ほどお話によりますと、何か二十三億円も金をかけて、ことしは国が補修しておる。しかもグリーンパークの内部の部分を含めてグラントハイツのほうに移転をする。要するにグラントハイツのほうは、都やまたはその地域住民の間でいろいろなことが、たとえば旧地主が戦時中に飛行場のために強制的に安い値段で売らされたのだから、本来ならば旧地主に返してほしい、こういう意見も強いのです。東京都においても、東京でもいまは土地がなくて非常に困っておる、特に災害のときには、緊急避難場所がない、そこで練馬には、このグラントハイツがあるのだから、緊急時における避難場所に適当である、本来ならば、これを全部公園にして返してほしい、こういう要望もしておるわけです。これは大臣、御存じと思いますけれども、グラントハイツのあと地について練馬区民五十二万人のうち十八万人の人たちが署名をして、大蔵大臣あてに、公園にしてほしい、または体育施設をつくってほしいという請願をしている。大臣、ごらんになったと思うのです。ところが、先ほどのこういう問題も含めまして考えてみますと、大蔵省では三百五十億を捻出しなければグラントハイツは返還にならぬ。私は一番最初に聞いたときは、グラントハイツにある建物をよそに移すだけの費用だ、それにしては三百五十億は多いじゃないかと申しましたが、いややはり向こうの言うことを聞くには、それぞれの、横田とかジョンソン基地だとか、いろいろなところに建物を建ててあげなくちゃいけない、しかも約千世帯しかいないグラントハイツの米軍の家族をそこに移すためにはそのくらいかかるのだ。それにしても三千五百万円というのは多いじゃないか。だんだん聞いておるうちに、グリーンパークのほうも入っておるのだ、幾ら入っておるのかといったら、約三分の一に当たる七百世帯ぐらいがかぶっておるのですね。そのために、東京都がいう大公園、災害時における避難場所も、あるいはその金を捻出するためには危いかもしれない。しかも地元においては、その三分の一はどんなことがあっても確保してほしい。二十万坪ぐらいは最低分ほしい、こういう要望があるわけであります。そういう一つのことを考えてみますと、私は、いままでの米軍基地の返還については、常に地方自治体の考えを中心としてそれに防衛庁の考えを入れていままで扱ってきている、こういうふうに聞いているわけでありますが、その点は非常にあいまいであるわけであります。したがって、私は、これをグリーンパークの分についてはグリーンパークの中でこの財産問題あるいはまた移転問題、移転費用というものを検討すべきだ。先ほど聞きましたけれども、答弁がありませんけれども、特別会計で扱わなければならない理由はないわけですね。少なくとも一般会計のほうからも支出して、本来の、グラントハイツを東京都が要望するようなそういう大公園をつくることに、また大公園として災害時における緊急避難場所をつくるために開放すべきじゃないか、私はこう思うのですが、大臣、いかがですか。
  263. 福田赳夫

    福田国務大臣 グラントハイツにつきまして、地元の方から、あれは公園みたいな用途に使ってほしい、こういう要望があることはお話しのとおりなんです。ただ、米軍宿舎の移転問題というものがあります。これにはかなりの金がかかるらしいのです。それとの見合いをどういうふうにするかというような問題が残されておる。しかし市民感情、これを全然無視するというわけにもいくまい。その辺を妥当な調整をしなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  264. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 それで、時間がないのが残念なんですが、先ほど要望がありましたね。日本文化住宅協会、この中の理事長さんは益谷秀次さんとおっしゃいます。この人は、昭和二十五年当時、昭和二十三年の十月十九日から二十五年の五月六日まで建設大臣をやっておったわけです。それからこの中に幾人かの人が、大蔵省及び建設省の元官僚なんかもずいぶんいるわけです。ですから、この裁判についても、長くはかかっておりますけれども、結局はそういう政界あるいはまた関係の元官僚の方々がたくさんいらっしゃる。合法的であるといえばそれまでかもしれませんけれども、そういう一つのグリーンパークの移転にまで、私はこういうやり方は、疑惑をますます深めるだけだ、こう思うのですが、その点いかがですか。
  265. 福田赳夫

    福田国務大臣 グリーンパークの処置、これは巨額な財産に関する問題でありますが、一応最高裁の判決が出た。そこで一つの限界はあります。ありますが、先ほど小口次長から申し上げましたように、国の建設費というか、投じました有益費、これなんかについて、国としては主張をすべきじゃないか、そういうような考え方を持っております。いずれにいたしましても、公明正大な処置をいたしたい、かように存じております。
  266. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 大臣から、公明正大な、しかも扱い方についてはしかるべく善処するということだろうと思うのですが、なおその計画については、予算は出ますけれども、いつも不明確なんですよ、何をどうするかということが。それをやはり地元民や少なくとも当該議員ぐらいには明示して協力を求めるようなやり方をすべきじゃないかと思います。しかし、東京都が何も言わぬから、あるいはまたいま言うとたいへんだからというようなことで、非公式にはわかりますけれども、常にその内容というものはわからない。これが現状なんです。今後はそういうことのないようにしていただきたい、こう、私要望します。  さらに、グラントハイツの処分の値段についてはどのくらいで検討しておるのか。要するに、グラントハイツ周辺は、グラントハイツが返還になるということで、一番奥の一番へんぴなところでさえも坪八万から急に十七万ぐらいに上がっておるわけです。もちろんいい場所は二十万、三十万、四十万するでしょうけれども、少なくともこの返還にあたって、土地の見積もりがまた疑惑を招くような非常に安い払い下げであっては、さらに国民の不信を招くだろうと思うのです。大体どの程度のめどで払い下げを検討しておるのか、その点も伺っておきたいと思います。
  267. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは米軍の移転先の施設が完成する、そういうことを待って初めてあすこがああくわけなんです。まだあのあと地全体をどういうふうに処分するか、そういう計画は全然きまっていないのです。まだいまきめる必要もないくらいに考えておるのですよ。   〔三ツ林主査代理退席、主査着席〕 ただ先ほどお話がありましたように、市民感情というようなお話もありますので、そういうようなことも取り入れながらプランを立てなければならぬ。立てた上どこは住宅として処分するのだということになると、その値段の問題に入ってくるわけですが、そういうことでいまはまだ値段どころの話ではないのでございます。
  268. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 大臣、そうおっしゃいますが、事実はだいぶ進んでおるようなんですよ。それは大臣知らないのか、また私が知り過ぎておるのかその辺は問題でありますが、いずれにしましても、何を調べましても、これはどうなんだろうという疑惑がある。疑惑があっても、別に合法的だからしようがないといえばそれまででありますが、もう少し前向きに、その辺東京都なりあるいは関係の人たちに明確にしていただきたいということを御希望申し上げます。特に大蔵省が主体になって、まず――防衛施設庁が管理しておりますけれども、国に入るわけです。国に入った場合に、国が中心になっていまいろいろな行き方について検討しておる、こういう段階です。ですから、施設庁に聞いても、それは大蔵省でやっておる、こう言うのです。きょうは施設部長も要求しておりましたが、来ておりません。そういうわけでまた次の機会に聞きたいと思っておりますけれども、私は、原則論として、やはり基地の問題については一つのパターンをつくる必要がある、これが先ほど言ったように、他の基地の分までも含めて移転費用を捻出するためにその基地が使われるということになれば、これが表面化すればまたたいへんな問題になるだろうと思うのです。ですから、大蔵大臣から非常に安い土地をある団体に提供したわけですから、それについては、別にどうしろということは申し上げませんけれども、そういった団体があれば、そういった団体にも移転費用くらい出さして当然じゃないか。グラントハイツならグラントハイツ、あるいはグリーンパークについてはグリーンパーク、またそれ以外のところから出すのならば一般会計からも捻出して、そして東京都及び地域住民の要望にこたえるべきじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  269. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺をいま考えておるので、これは非常にむずかしい問題なんですが、御意見はよくわかりました。できる限り市民感情というものとの調整には遺憾なきを期していきたい、かように存じます。
  270. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 それから東京にある造幣局東京支局ですが、この移転問題ですが、昨年もこの分科会において大臣は、当分は見込みないかもしれぬけれども、将来は考えるというふうに言われておったわけでありますけれども、昨年の国会で、巣鴨のあと地については新都市開発センターが超高層ビルを建てて都市計画のもとに豊島区の副都心の再開発をするというふうになった。要するに、法務省の設置法が通ったわけです。したがいまして、本格的にこの秋から工事が始まるわけです。ところが造幣局の東京支局はその隣にあるわけですね。現在は巣鴨拘置所、いわゆる東京拘置所としてありましたけれども、これがなくなって六十階か、あるいは百階かわかりませんけれども、非常に大きなビルができる計画があるわけです。その足元に勲章だとかいわゆるお金をつくる造幣局があるということは非常に犯罪とか――そういうことは好ましくないというふうに私は思っておるわけでありますが、それぞれ都市計画も、巣鴨の移転がきまったことによって、おそらく現在の造幣局のあと地についても、工場地帯ではなくなる計画がいま検討されているわけでありますが、そうなった場合、大臣はその東京支局の移転についてどう考えて対処されるか、伺いたいのです。
  271. 福田赳夫

    福田国務大臣 造幣局の敷地ですね、あれは私もちょっと見た感じで、これはどこか移転したらどうかなという感じもしたことがあるのです。いろいろ相談をしてみたのですが、これは日本銀行とかなり密接な連絡があるわけなんであります。そういうようなこと、それからもうすでにあそこへかなり大事な施設をしておるのです。それから職員が百何名おりますが、その宿舎があの近傍にずっとあるわけでありまして、さて移転となるとこれは大仕事になるわけでございまするし、また日銀との連絡も場所によっては悪くなる、こういうようなことで巣鴨の拘置所移転問題がありますが、この際は造幣局は移転をしない、こういう結論にいたしたわけです。将来あそこの辺が市街化するとかそういうようなことになって、どうも都市計画上思わしくないというような時期になればまたこれは別でありますが、ただいまのところは移転問題は考えない、こういうことでいきたいと思っております。
  272. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)分科員 では終わります。
  273. 大坪保雄

  274. 安井吉典

    安井分科員 きょうは時間もありませんので、主として税金の問題でお尋ねしたいと思います。福田大蔵大臣に伺いますが、昭和四十六年分の所得税の基礎控除は今度幾らになりますか。
  275. 細見卓

    細見政府委員 これはもうお読みになればわかることですから、私が事務的にお答えいたしますが、十八万が十九万になります。
  276. 安井吉典

    安井分科員 大蔵大臣昭和四十六年分の基礎控除はそれでいいのですか。
  277. 細見卓

    細見政府委員 おっしゃる意味がもし初年度であるからという意味であれば、四分の三になっておるわけでございまして、税制としては十八万が十九万になる、そういう意味でございます。
  278. 安井吉典

    安井分科員 ちょっと意地の悪い言い方かもしれませんけれども、法律では、附則の読み替えでは昭和四十六年分とこう書いてありますね。本文規定では基礎控除額十九万円、そのほかみなずっと書いてあるのです。附則にいってただし、昭和四十六年分については十八万七千五百円と読み替えるとこういっているのです。私はいま一番初めお聞きしたのは、昭和四十六年分は幾らですか、こう聞いたわけです。ですから四十六年分がもし十九万円なら主税局長、これは三百億円違うのですね。こういうことになります。三百億円税収が減ることになるところだったわけでありますが、私は初めにそういう所得税のややこしいきめ方に一つ問題がありはしないかということをちょっと申し上げてみたいわけです。つまり所得税そのものは一月から十二月までの暦年で徴収されるのに対して、法律の本文改正は常に四月一日からの各種課税最低限のきめ方になっているわけです。そこでそういうそごが起きているわけであります。いままでずっと調べてみたわけですが、いわゆる課税最低限、もっと具体的には基礎控除だとか、配偶者控除だとか扶養控除だとか、そういう各種控除が、法律に書いてある平年分で徴収されたことがありますか。
  279. 細見卓

    細見政府委員 昭和三十六年にございます。
  280. 安井吉典

    安井分科員 それ一回だけなんですね。あとずっと毎年いわゆる減税措置が講ぜられてきているものですから、一応当年分とそれから平年分とこう書きながらも、平年分というのは一つのフィクションみたいになって、ずっと推移してきているということがいままでの姿ではないかと思います。どうもその点、税の専門家なら何とかわかるわけなんですけれども、一般国民はよくわからない。いまの専門家の局長でさえ、ひょっとしたことばの言い違いで誤ってしまうくらいであります。いろいろな例で私それを調べてみたのですが、たとえば衆議院の本会議場で、この間も大蔵大臣の趣旨説明がありまして質問がありましたけれども、あの概要説明したプリントが本会議で配られます。あれを見ましても十八万七千五百円という数字は全然出てこないわけです。みんな十九万円と書いてあります。ですから閣議の決定のようなものは、これは注つきで十九万円は四月一日からですと、こういう書き方になっておりますけれども、ごく大ざっぱないろいろな文章を見ますと、そういうふうな詳しい書き方になっていません。だから一般の国民の人は、来年の所得税からは基礎控除は、あるいは配偶者控除は十九万円控除してくれるものだというふうに考えているのではないかと思います。そういう問題があるので、私は、これはいま物価問題で、この間うちから衆議院でも委員会をやりましたけれども、どうも二重価格制みたいなものじゃないかと思います。つまり十九万円というアドバルーンを上げておいて、実際のところは十八万七千五百円しか引いてくれないわけです。あるいは再販価格制みたいなもののように受け取られるわけであります。これは実際の税の取り方が暦年で計算されているのなら、本文規定ではっきりと、四月一日から実施じゃなしに、一月一日からというふうに控除規定を置いたほうが、国民にもわかりやすいのじゃないか、そういう考え方を持ちますが、いかがでしょうか。
  281. 細見卓

    細見政府委員 それは結局減税額をどの程度の規模のものにするかということと、それから減税を計算いたしますときに、その減税の幅を端数のある、つまり制度として平年度化したときに端数のあるものにするのか、制度として平年度化したときにきりのいいものにして、実施の初年度において、いわばほんとうは四月一日から適用する、税制としては四分の三の控除ですとは言っておりますが、実際は四月一日から適用するということでありまして、その辺はどちらが見いいかというだけのことであり、またどれだけの減税をするかという判断の問題ではないか、かように思っております。
  282. 安井吉典

    安井分科員 もうめんどうくさいからはっきりことし一月一日から十九万円にしませんか。そうすると私はこれはもうミニ減税などといわれずに、だいぶ国民も喜ぶのじゃないかと思うのですね。この間小林法務大臣の問題があって、選挙演説はまあおもしろおかしくやったほうがいいんだというふうなことばでありますけれども、これは福田大蔵大臣も選挙演説をやるかどうかわかりませんが、ことしの応援演説に行って、ことし、昭和四十六年から基礎控除はあるいは配偶者控除は十九万円になりましたよとこう言うんじゃないですかね。十八万七千五百円になりましたというふうな端数はあまりおつけにならぬのじゃないかと思うのですよ。そういう意味で、どうもこれは宣伝用につくられた二重価格制だ、こういう言い方でいささかちょっと悪口を言ったわけでありますけれども、いま局長が言われるように、もともとはちゃんと一万円ゼロゼロでいったほうがいいんでしょうけれども、やはり減税額を少しけちって四分の三というふうなことで押えたのが始まりで、そのままずっとはんぱの数字がついたまま今日まで来ているというのが実態ではないかと思うのです。ことし十八万七千五百円というはんぱはやめて十九万円にしろと言っても、あるいは大蔵大臣、三百億円違うわけですから無理かもしれませんが、もう少し国民にわかりやすいようなそういうやり方を考えてみる必要はないでしょうか。
  283. 福田赳夫

    福田国務大臣 税制が国民のためにわかりやすいということは非常に大事なことだと思います。私もいまの日本の所得税法、法人税法、そういうものを見てみましてかなり難解に感ずるのです。簡素にしたらどうかな、こう思うのですが、いろいろ公平の原則なんというのを入れていくものですから、どうしてもきめがこまかくならざるを得ないというのが実情なんです。しかし簡素な税制であって国民にわかりがいい、こういうことは非常に大事なことだと思いますので、今後といえどもそういうことにつきましては気をつけてまいりたいと存じます。
  284. 安井吉典

    安井分科員 これはやはり一応申し上げておかぬと、選挙演説で十九万円だけでぶたれたら困るわけですからね。正確な理解をしておいてもらわなければいけないから申し上げておくわけでありますけれども、ほんとうなら予算委員会のあの総括質問で、ずっと閣僚に一人ずつあなた幾らだと思いますかと聞いていったほうがいいかもしれませんけれども、おそらくあまり御存じないままにずっとこれまで過ごしてきている問題ではないかと思います。だから、ことしどうしようというわけにはいかないかもしれませんが、暦年控除というほうをむしろ原則として考えていく、そういうような方法をもっと考えていただきたい、このことだけ私はひとつ申し上げておきたいわけです。  自動車重量税の問題でありますが、高福祉高負担というスローガンのもとに誕生したものではないかというふうに考えます。しかし伝えられるところによりますと、税調もろくな審議もせず、最終段階に突如答申に載ってきた、こういうふうな経過があって、新聞などもハプニングという表現さえとっています。あるいはまた自動車の重量だけを基礎にして計算するというようなことで、逆進性の疑いもありますし、さらにまた自動車関係税金は物品税、揮発油税、石油ガス税、地方道路税、自動車税、自動車取得税と、国税、地方税を通してたくさんあって、さらにそれの上に新税ができて混乱をさせるものではないか。あるいはまた財源ができてから一体これは何に使おうかというふうなことで総合交通体系審議会を設けて審議をする、これなども金を見つけてそれからあと山分けの相談をする山賊の集まりみたいなもので、どうもいただけないではないか、こういうふうな批判がございます。一体この新しい税の性格はどういうものなのか、将来これはどうするおつもりか、その点をお伺いいたします。
  285. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは自動車が社会諸施設に及ぼす負担を考慮して応分の負担を自動車の使用者に対して求める、こういう性格の税であります。そのやり方は重量に従ってこれをやる、そういう性格ですが、これをどういうふうに使うかということにつきましては、四十六年度においては一般財源としてこれを受け入れる。そして一般財源ですから九兆四千億の一つの部分になって、九兆四千億円の中において、九兆四千億予算財源として使用される、こういうことになりますが、四十七年度以降につきましてはいまお話もありましたが、総合交通体系というものを立てまして、そしてその中において総合対策諸施設財源としての位置づけを与えたい、かように考えております。
  286. 安井吉典

    安井分科員 いままでずいぶん税法の改正はありましたけれども、税が一たんできてから、総合審議会で一体これを何に使おうかというような相談をした例はあまりなかったのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  287. 福田赳夫

    福田国務大臣 そうでもないですよ。それは目的税にすればそれで使途は非常にはっきりしますが、一般財源にした場合には一体それをどういうふうに使うということはきまってないわけです。四十六年度予算においては九兆四千億円の中に吸収されてしまうわけですから。大体特定財源だ、そういうような性格の税でない場合におきましては、その使途につきましては立法の瞬間においては明らかになっておらぬわけであります。
  288. 安井吉典

    安井分科員 いまの大臣お話からいいますと、前段では四十六年度分については一応一般財源としてきめたのだ、四十七年度以降についてこの審議会で相談するのだということなんですね。後段のお話からいいますと、一般財源特定財源とのつながりがちょっとおかしいように思うんですよ。つまり審議会をつくったのは、一般財源なら要らないのだが、特定財源に持っていくから必要なんだ、こういうふうに聞こえるのですが、四十七年度以降どうですか。
  289. 福田赳夫

    福田国務大臣 たとえば一つ考え方として総合交通体系というものを基本にしまして、そしてそれにどういう施設をするか、それで支出がきまってくるわけですね。それを対象にして、今度はどういう財源を充てるかということになってくるわけです。そういう支出財源との見合いの問題が起こってくるものですから、あるいはこれを特別会計にしたらどうだ、こういうような議論も起こってきかねないわけなんです。その辺の財政運営上の仕組みをどうするか、これは総合交通体系というものが整った、その上に立って考えてみたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  290. 安井吉典

    安井分科員 総合交通体系なるものは、これはもう財源があろうとなかろうと、本来、日本政府としてはっきり初めから持っていなければいけない問題だと思います。新全国総合開発計画をはじめ経済社会発展計画、いろいろな計画がありますが、その中でやはり交通の問題が非常に大事なんですから、国鉄をどうするか、地方鉄道都市交通をどうするか、都市における自動車交通をどうするかといったものは、初めから持っていなければいかぬのです。それがさっぱりなくて、自動車重量税なるものをきめてから大急ぎで、さあ総合交通計画だというのでは、私はどうもおかしいように思うわけであります。そこでいまの大臣お話からいたしますと、四十六年度はまあこの予算のお出しになったとおりでありますが、四十七年度からは特別会計への移行もあり得るというふうなお話でありますが、現在すでに揮発油税を財源とする道路整備特別会計があるわけであります。それとの関係はどうなんですか。
  291. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう既存の特別会計との関係も出てきます。また地方税との関連も、場合によっては出てくる。これは検討の結果きめるのですから、それはいまどういう関連が出てくるかということは申し上げられませんけれども、かりに特別会計というようなことが考えられるということになると、中央地方を通じた自動車関連の税制、これは広範な波及があるだろう、こんな感じもするのですが、いままだ特別会計だということをきめておらない。場合によれば、ことしのように一般財源としてこれを受け入れる、金だけがことしの三百億円が千二百億円にふえる、これにとどまることもあるかもしれません。
  292. 安井吉典

    安井分科員 道路財源だけではなしに、鉄道地下鉄や、そういったような道路以外の財源にも将来とも向けられる可能性はあるとお考えですか。
  293. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十六年度はこれは九兆四千億円、こういう大きな財源の中に薄められておるわけです。しかし気持ちといたしましては、これは道路財源に主として充てる、そういう気持ちであります。つまりこの税の発想されたそもそもの原因はどこにあったかというと、四十五年度に発足した道路五カ年計画、この財源が五カ年間を通じてみると、三千数百億足らないのです。そこで皆さんもお話これあり、さきの国会におきまして私から、この足らない財源の補てん対策は、四十六年度予算の編成の際にこれを明らかにします、こう申し上げているのです。だからどうしても財源対策をとらなければならぬ。五年間にわたる三千数百億円の欠陥を埋める提案を国会に対してしなければならぬという立場になる。そこで、あれやこれやと考えてこの自動車新税になったわけでありますからして、とにかく気持ちとすると、道路財源に主として充てるという気持ちでありましたが、同時にいまは道路だけを取り上げて考えるわけにいかないのです。あるいは国鉄のことも考えなければならぬ。あるいは都市交通としては地下鉄のことも考えなければならぬ。あるいは国鉄にいたしましても、新幹線もあれば既設線もある。あるいは海上輸送、フェリーがどんどんこれから使われていくだろう。あるいは飛行機の輸送というものが、旅客につきましても貨物につきましてもウエートを高めていくだろう。そういうものをいろいろ考えていかなければならぬ時期に来ておりますので、そこで総合交通体系ということを申し上げておるのですが、それが整った際に、どういう支出をその輸送各手段に充当していくかということがきまってくる。その場合の財源をどうするかという際に、もちろん私はこの自動車新税というものが充てられるというふうに思いますが、その他の税収ももちろん加えられる。そういう際に特別会計というようなことを考えるか考えないか、これは一つの問題だろうと思いますが、とにかく気持ちは、そういうところでこの税が発足しておりまするものですから、これは道路と無縁のものじゃないということは言えると思います。
  294. 安井吉典

    安井分科員 主として道路で、道路以外のものも考えられるということのようでありますが、さっき私がいろいろあげました、現在自動車に関連しての税金が一ぱいあるわけですが、それとこの税金とを次の段階で調整をとるとか、そういうお考えはありませんか。
  295. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度の自動車新税は自動車重量税という呼称にいたしましたが、これは自動車の重量に応じて自動車の使用者に課することになっております。いままでの税の費目にはそういう性質のものはないのです。ですから、これが矛盾しておるとか重視しておるとか、そういうことにはならぬと思うのですが、こうながめてみると、自動車あるいは自動車に使うガソリン、そういうものに対する課税というものはずいぶんバラエティーが多過ぎる、そういう感じがするのです。これはいつの日にか整理統合する必要があるのじゃないかという感じがいたしまするけれども、統合したそのトータルが一体どうだということになると、みなそれぞれ違った立場で、賦課されておる。そういうことで、これを合計してみますると、自動車に対し、あるいはガソリンに対し、その負担というものは国際社会の水準からいうとそう高いものではないのです。ですから、税を統合して軽減するというような方向のことはなかなかむずかしいのじゃないかと思いますが、整理するということは、これは私は何かの機会には考えなければならぬじゃないか、こんな感じがしておるのであります。
  296. 安井吉典

    安井分科員 これはまたいろいろ議論をする機会があると思うのですが、この自動車の新しい税金は、次の段階で付加価値税への橋渡しになるであろうという見方があるわけです。この委員会でも付加価値税についていろいろ議論されたことがあるのかもしれませんが、かつて事業税のかわり財源のような形で、昭和二十五年だったと思いますけれども、地方税法改正の中に付加価値税は登場したことがあるわけですね。それによってもうちゃんと国会は議決をいたしました。ところが反対がたくさんあって、結局昭和二十七年の一月から実施ということがきまりながらも、二十九年廃止という運命になったことがあります。地方税法の中にはっきり登場して日の目を見ずに終わった、そういう宿命的なもので、おそらく付加価値税が世界の税制の歴史の上にあらわれたものとしては、シャウプの勧告を受けてずっと早かったものじゃなかったかと思います。それもヨーロッパではEECの国々やEFTAの国々もどんどん採用するという仕組みになって、新しい課題としていま見直されているような段階ではないかと思うのでありますけれども、これは当初地方税で登場した、特に事業税がずいぶん問題の多い税金なものですから、それへのかわりという形であらわれた、そういう経過があるわけです。しかし、いま大蔵省でどのようにこの問題について御検討になっているのか、それをきょうの段階でのお話でけっこうですから伺いたいと思います。
  297. 細見卓

    細見政府委員 シャウプが勧告いたしました事業税は、いわゆる加算式と申す事業税でございまして、その企業企業の生産あるいは販売の段階で付加された価値、つまり具体的には労賃でありますとか利潤でありますとか、あるいは支払われた利子といったようなものを各段階ごとに加算して、その各段階での、つまりその付加価値に応じてその何%かを税として徴収する。したがって事業税が、御承知のように日本の事業税は事業活動に対して税を課するのだということになっておりながら、その課税標準が所得金額になっておる結果、赤字企業は何らの負担をしない。かつての、戦前にございました営業税でありますと、これは売り上げ金額の一定割合、たとえば三%とか六%ということでありますので、むしろそのほうが地方税としての事業税あるいは事業活動に対して税負担を求めるという税としてはよかったのではないかというような議論もからみまして、いまおっしゃったような事業税にかわる付加価値税というのが検討されたわけでありますが、この税をごらんになってすぐおわかり願えますように、赤字企業も負担しなければならない。利潤がなくても支払い労賃が大きいとか、あるいは支払い利子が大きい。つまり企業にとってはむしろ負担力を軽減する形のものに対して、それが大きければ大きいほど税負担が大きくなるというような問題がありまして、当時まだ今日のような経済力のない時代でありましたので、やはり弱小あるいは劣弱企業に負担の多きを求め過ぎるのではないかということで反対になったわけでありますが、目下私どものほうでいろいろ勉強しており、あるいは現在付加価値税として世界で行なわれておりますものはそういうものでなくて、付加価値税を、つまり一種の売り上げ税あるいは消費税の形態として考えまして、その売り上げ税ということにいたしますと、その生産から消費に至ります段階が多いときにはよけい税がかかる。段階のふえるのに応じて税がかかり過ぎるというような問題を、そういう段階と関係なく一定の消費物資に対して一定割合の税が課せられる。したがって段階が多くても少なくても前の段階で課せられた税はそれぞれ控除されることによりまして、最終製品に課せられる税はいかなる場合にも、たとえば税率が一〇%であれば一〇%になる。いわばそういうような消費税でございますので、同じ付加価値税という名前をとりましても、いま消費税型の付加価値税というのと、加算型の、いわゆる事業税にかかわる付加価値税というのは、税負担が企業あるいはそのほかのものに及ぼす影響というものはかなり違ったものであろうかと思います。
  298. 安井吉典

    安井(吉)分科員 もう時間ですからこれで終わりますけれども、大臣の付加価値税の問題についてのお考え方、特にこれは消費者物価にはね返りが非常に大きい問題もございますので、それも含めてちょっと伺っておきます。
  299. 福田赳夫

    福田国務大臣 一言でいいますと、今日この段階において私は非常に慎重であります。つまりいまお話しのようにEEC諸国の大多数、それからEFTA諸国の一部、こういうところで採用され、しかも英米においてもこれを積極的前向きに検討を始めておる。こういうことで、わが国においても検討には着手したほうがいいんだろう、こういうふうに思います。自民党では去年政務調査会長がじきじきヨーロッパへ行っていろいろと視察してきたわけであります。やはり国民のよほどの理解が届くということが前提の一つ。それからもう一つは物価です。これはどうしても消費税ですから物価に転嫁をする傾向を持つだろうと思います。物価問題というのが今日のような状態でありますれば、これはとても考える余地はない、こういうふうに思いますが、まあ物価の落ちつきぐあい、これを見なければならない。これはとにかく最小限の二大前提がある。こういうふうに思いますが、とにかく世界の趨勢がそういうふうに向かっておりますので、まあ検討もし国民の理解を深める。物価対策とも十分取り組んでそういう前提条件が整えば、まあ前向きに考える、こういう性格のものじゃないか。いまは慎重なかまえでこれに対処したいと思います。
  300. 大坪保雄

  301. 岡沢完治

    岡沢分科員 時間の制約がありますので、いま問題になっております国有農地の売り戻し問題にしぼってお尋ねをしたいと思います。  国有財産を管理される大蔵省のお立場から、また大臣の立場から、世論の強い要請でありますこの売り戻し農地を時価相当額あるいは時価で売り戻すことができないのかどうか、それは法律的に不可能なのか。もしできないとするとどこに隘路があるのか、お尋ねします。
  302. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はこの問題に対する基本的な考え方をまず明らかにしますと、これは最高裁の判決が出た、これを従来の法制の解釈に従ってすらっと適用するということになると、この間政府が閣議できめた方針ということになるだろう、こういうふうに思っております。ところがそういう措置をとりますと、マスコミなんかの中にあらわれる反響、そういうものを見てみましても、国民の中の社会公平感、そういうものとかなり乖離したものが出てくる、こういう結果になるのです。これを見のがすわけにはいかぬ。そこで何とか方法を講じて、この乖離の調整ができないものか、そういうことを考えておるわけであります。  第一に考えられるのは、農地を返さないで済むかどうかということですが……。
  303. 岡沢完治

    岡沢委員 私の質問は、時価で売り戻すことができないのか、違法なのか、その点だけ答えてください。
  304. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはいままでの法解釈からいいますと、できない。やはりもとの収用したときの価格で返さなければならぬ、こういうことになるようであります。
  305. 岡沢完治

    岡沢委員 大蔵大臣の御答弁の御趣旨は、最高裁の判決を根拠にし一般的な法の解釈論から来るのだと思いますけれども、私が二月十六日法務委員会で最高裁の瀬戸行政局長に、問題の一月二十日の最高裁大法廷判決の判示内容を聞きました。あの判決で、判示ではっきり示しておるのは、政令十六条が法の委任の範囲を越えたものだというのが趣旨であって、対価といいますか、売り渡し価格については全く触れてない、判示の中身でないという明瞭な答弁がありました。最高裁の判決を根拠にして政令を改正されるということは、私はよくわかりますし、これは正しいと思う。しかし時価で売れないという解釈は私はどうしても出てこない。大蔵大臣でなくてもけっこうですが、おそらく法制局がこの政府の決定には関与しておられると思いますので、法制局の解釈でもけっこうです。なぜ法律的に時価で売れないのか、あるいは時価で売ることがなぜ違法になるのか、妥当性を欠くのか、教えていただきたい。
  306. 福田赳夫

    福田国務大臣 法制当局の見解は、最高裁の判決は所有権が一応農地改革によって政府に移った、移ったが、あれはほんとうに移ったんじゃないんだ。これは私が非常に翻訳しまして俗わかりするように言っておるのですけれども、今度返すのは、所有権が政府に移ったそのものを返すのじゃなくて、もともと返すべきものをお返しするんだ、こういうような考え方を示しているものだ。よってもともと収用したときのその価格、これが今回の売り渡し、形式的には売り渡しでありますが、その形式的な売り渡しの対価となるべきものである、そういう見解であります。
  307. 岡沢完治

    岡沢分科員 その大蔵大臣の解釈も私非常に疑問があると思います。あの判決内容、大臣もこれだけ自信をもってお答えになるんだからお読みになったと思いますが、決して買収が無効とはいってない。しかもまたその判決の中には「私有財産の収用が正当な補償のもとに行なわれた場合にお、いてその後にいたり収用目的が消滅したとしても、法律上当然に、これを被収用者に返還しなければならないものではない。」――いまおっしゃったいわゆる旧所有権の確認か、新しく新所有権を旧地主に与えるのかどうかというのは、課税の場合に非常に大きな問題点になると思いますので、私から自分の解釈を申し上げてみたいと思います。判決の中にもあるいはまた問題の農地法八十条の中にも売り戻しということばを使っているわけです。旧所有権を確認するとか、あるいは当然旧所有権があったのが間違って国の所有になったという解釈ではないわけです。売り戻すというのは、はっきりいえば譲渡ということになると思います。私は登記簿上の所有権の移転であって、おそらく無効あるいは間違った登記、錯誤による旧所有権の復活ではなしに、国から旧所有者に対する譲渡になるだろうと思うのです。法文の規定あるいは判決内容から見まして、売り戻しということばを使っているわけですから、旧所有権の復活ということばを使ってないわけですね。そうしますと、基本的に、大臣のこの判決の解釈自体が誤ってきている。そこから私は、二円六十銭平均でしか売れないという間違った政府の解釈が出てきているのではないかと思うわけでございますが、重ねて見解を伺います。
  308. 林信一

    ○林政府委員 最初から分析してお答え申し上げたいと思いますが、立法措置、特にお尋ねの価格を増額できないか、こういうお尋ねでございます。そこで立法措置は機械的にはいまの「買収の対価に相当する額」ということを改めればいいわけでございますが、さてこの適用関係でございます。改正後の法律をどういう対象に適用するか。内容を分析いたしますと、まずその改正法が施行になりましてから農地買収をした、強制買収をした、こういう土地につきましては、これは若干疑問があるかもしれませんが、まず問題が起きないであろう。  次に改正法施行後に、最高裁判決、私たちが理解するところに従いまして最高裁の判決によって売り払い請求権が出てくるもの、これにつきましては実はまだ法律上は権利になっておらない。そういうものに増額後の規定を適用できるかという点は、いわゆる均衡論、その改正前のものと改正後のものとの均衡論が残るということでございます。  第三に、改正法施行の当時すでに権利が発生している者、この者のこの権利の乱用がまた問題になっておりますが、私どもの理解では、この権利は、最高裁の判決によれば自作農創設等の目的に供する必要がなくなったという客観的な事実が生じたときに権利が発生する。そういたしまして、その権利が発生する法律上の根拠は何かといえば、これは農地法の八十条、ここに求めざるを得ない。八十条二項はたびたび申し上げますように、買収価格に相当する額ということになっておりますので、これを事後の立法で変更いたしますことは明らかに権利の侵害になるのではないか、その点に問題がある、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  309. 岡沢完治

    岡沢分科員 「買収の対価に相当する額」が買収の対価そのものであるかどうかという点にも問題があると思いますが、いま林第二部長が御答弁になりましたいわゆる法律不遡及の原則、既得権を侵害しないか、あるいはすでに売り戻しをした者に対する価格とのつり合いをおっしゃいますけれども、私は法務委員会でも林部長と論争をいたしました。法律不遡及の原則というのは、刑事の場合は絶対であります。憲法三十九条もあります。しかし民事の場合は決して絶対ではない。既得権を侵害しないことが一つのたてまえではありますが、また不遡及の原則というのも一応の慣習あるいは確立された原則として、私は認めます。しかし絶対のものでないことは、農地法自体があの法律によって過去の地主の権利を侵害した、既得権を侵害したという解釈もできるかもしれません。あるいはまた民法、戦後の新しい法律によって、たとえば長男の単独相続権、みごとに侵害されました。しかしこれは特定の人の既得権を侵害したかもしれないけれども、国民全体の立場、公共の福祉の立場、あるいは正しい社会主義の立場からは許される。今度の旧地主に対する払い下げ価格を、いわゆる買収の対価に相当しない額にした場合に、既得権の侵害になるかどうかも問題です。それはこの対価がその旧地主の努力によってこれだけ暴騰したのであれば、これは既得権の侵害かもしれません。しかしこの地価暴騰というのはむしろ政府の政策の失敗によって、経済合理性を越えたむちゃな値上がりをしている。そのために一般の国民はたいへんな苦労、迷惑をこうむっている。ところが一方で、一部の地主だけはこの不当な値上げによってぼろもうけをする。これが社会正義に合致するかどうか。彼らの既得権といえるかどうか。不労所得を正当に戻すのに、何が既得権の侵害でしょうか。そういうことを考えました場合に、私は、法律不遡及の原則をことさらに持ち出して、これがあるからさかのぼれないという解釈のほうがおかしいのではないか。われわれは法律の手続に従えば、憲法でも改正できるのです。まして農地法八十条の改正が不可能なわけはないのです。もちろん国会の手続が要ります。またわれわれは国権の最高機関として、唯一の立法機関としての責任もあるだろうと思うのです。大蔵大臣がおっしゃったように、国民感情が許さない。この国民感情と法の不備とのギャップを埋めるのが、私は法律の改正であるべきだ。文字どおりの解釈からすれば、それはなるほど従来の解釈どおりからすれば、買収のときの対価というものを二円六十銭で判断することも、間違いではないかもしれません。しかしこれが唯一絶対の解釈ではない。最高裁もその分までは判示していないということを、はっきりと最高裁の行政局長自身が国会で責任をもって答弁しておられるわけですね。そうすると、いわゆる八十条二項後段の「買収の対価に相当する額」というのは、当時の買収価格だというふうに判断するのは一つの解釈にすぎないので、絶対のものでも何でもない。最高裁の判決に逆行するものでも何でもない。私自身最高裁の裁判官にも個人的にも二、三聞いてみましたけれども、むしろ最高裁の判決を価格の点まで持ち出されることは迷惑だということを、非公式でございますけれどもおっしゃっておられました。私はそれがほんとうの偽らない気持ちであろうと思うのです。われわれとしては当然社会正義、国民常識に合うように法改正をすべきであるし、その法改正によって、場合によったらすでに権利が発生していると最高裁が判断している人に対する売り戻しの場合だって、時価で譲渡する。決して法の精神にも社会正義にも反しない、公平の理念にむしろ合する、国民感情に合すると私は思うわけでございますけれども、内閣法制局部長の再度の見解を聞きます。
  310. 林信一

    ○林政府委員 最高裁の判決が価格の点に触れていない、これは私たちもそのとおり考えます。あの事件では価格が別に争点になったわけではございません。ただ、私たちは、あの判決がいっておりますところのいわゆる売り払い請求権がこういう条件のもとに生ずるのであるというその判示に従いまして論理を推し進めていった場合に、私たちが考えているような結果になるであろう、そういうことを申し上げたわけであります。
  311. 岡沢完治

    岡沢分科員 最高裁の判決は、現在の憲法と現在の農地法を前提にして、令の十六条の無効をいっているだけなんです。農地法を改正すれば当然に私は国民感情に合するような、社会常識に合するような行政が行なわれる基礎ができる。最高裁の裁判官といえども別に行政を指導したりあるいは政治に関与することはない。憲法と良心に従って独立して職権を行なっている。法律が変われば当然政令も変わってくるし、また解釈も変わり得るわけです。ことに農地法八十条二項後段の規定の場合、私は解釈として、いわゆる相当の価格を即、対価と見ることについての絶対的な要請がないという解釈も十分できると思います。その当時の相当の価格に相当するものをいま貨幣価値で換算すればどうなるかということも、解釈論としては十分成り立つ。当時は農地として買収した。いま売り戻しのその対象の農地はもはや農地でないから、宅地として当時の近郊価格を基準にして相当の価格を割り出すことも可能でしょう。ことに土地収用法百六条の類推解釈からいたしまして当然この場合、事情変更の原則、これを確立されてもいい。民法上の、司法上の大原則です。法律が予想しなかったような社会、経済上の変化があったわけですね。それに適応するように、法律に従った解釈のほうがかえって社会正義に反するという場合には、当然事情変更の原則が適用されて、正しい法解釈、社会正義が許すような、求めるような法解釈が私は正しいあり方だと思うわけでございますけれども、重ねて見解を聞きます。
  312. 林信一

    ○林政府委員 別の委員会でも同じ趣旨を申し上げたのでございますが、まず解釈論として非常にむずかしかろうということでございます。したがって、では立法すればいいじゃないか、こうなるわけでございますが、その立法につきましては最初申し上げましたような疑問をちょっとぬぐい切れないということでございます。
  313. 岡沢完治

    岡沢分科員 農林省農地局長、お見えですね。農林省のほうも法改正に非常に消極的あるいはできない、あるいはする意図がないということを農林大臣予算委員会等で述べておられます。どういう理由から法改正ができないのか、あるいは時価で売り戻すことができないのか、お尋ねいたします。
  314. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 先ほど先生は判決の中の「収用目的が消滅したとしても、法律上当然に、これを被収用者に返還しなければならないものではない。」ここを引用されましたが、私はその次のパラグラフを引用したいと思います。「しかし、収用が行なわれた後当該収用物件につきその収用目的となった公共の用に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、なお、国にこれを保有させ、その処置を原則として国の裁量にまかせるべきであるとする合理的理由はない。したがって、このような場合には、被収用者にこれを回復する権利を保障する措置をとることが立法政策上当を得たものというべく、法八十条の買収農地売払制度も右の趣旨で設けられたものと解すべきである。」ここの趣旨をどう解するかという問題でございますが、それは必ずしも返さなければならぬということではないけれども、しかしいま引用したところで言っておりますけれども、「国にこれを保有させ、その処置を原則として国の裁量」、要するに自由裁量にまかせるべきであるということは合理的でないということを言っております。なお、さらにこのような場合には被収用者にこれを回復する権利を保障するのが立法政策上妥当であって、法人十条の買収農地売り払い制度、この買収農地売り払い制度というのは八十条第一項、二項からなっておりまして、二項に旧所有者に売り戻す場合には買収価格に相当する額、こういうふうに規定されておりまして、この法八十条の買収農地売り払い制度は、一項、二項を踏まえた制度をいっておるわけでございますが、それは引用の趣旨で妥当である、こういう判示を受けておるわけでございます。したがって売り戻す場合には「買収の対価に相当する額」という以外の解釈はこれから出てこないと思います。なるほど先生のおっしゃいますように、この判決は価格について何も触れておりません。つまり価格と対価という字は出てこないわけでございますが、それは法制局の林部長が答弁されたように、対価そのものが訴訟の対象になっておりませんので、そういう字は出てこないのでございますが、いま私が読み上げましたところを解釈をいたしますと、当然いま申し上げましたような解釈が出てくるわけでございます。
  315. 岡沢完治

    岡沢分科員 いまのあなたがお読みになった判示があることも認めます。しかしこれは主たる判示の内容でないことは、最高裁の行政局長自身が、判示の主たるものは令十六条の無効ということに断言しておられますね。いまあなたがおっしゃったような「立法政策上当を得たものというべく」と、最高裁が国会に対して立法政策上のことまで制限する権限はない。最高裁の判断は憲法と法、この場合は憲法と農地法を中心とした解釈が出てきておるわけなんです。私はいまお読み上げになったところを主たる判示として解釈すれば、これは最高裁の一裁判官、名前は言いませんけれども、裁判所が迷惑しておるという憤りを裁判所自身がおっしゃると思うのですよ。私は、なるほどいまおっしゃった文言があることは認めますけれども、むしろ判示の中心でないことは明らかな判例解釈だと私は思うのです。そういうことを考えました場合、国会はその独特の権利、権威に基づいて国権の最高機関としてもっと国民が納得するような立法政策上の措置をとる、法改正をする。いま国民が一番望んでおるのは、やはり社会資本としての公共用地の不足あるいは住宅の不足なんです。地価問題が諸悪の根源といわれ、私はこの問題が大きくクローズアップされた背景にも、法の不備もありますけれども、むしろ地価の暴騰が一番大きな原因だ。そうすれば、むしろ政策の失敗だ。これは私は何も自民党政府だけを責める気持ちはありません。国会議員の一人としても、立法機関の一員としても、国民が納得できるような、まじめに働く者が自分の土地と家を持てるような政治を、政策を実現できる立法措置を講ずる、これは当然の責務だと思うのです。ところが一方国民の大きな願望を踏みにじる土地政策、一方で全くその偶然の幸運から特定の人に不当、過保護的な結果をもたらす今度の法解釈、あるいは立法政策、あるいは法改正に対するほおかぶり、これは私は許せない。大蔵大臣、目をつぶらぬと、私の意見についてこの際国有財産の管理者として、私はこの場合の国有農地が財政法九条のそのままの適用があるとは思いませんけれども、しかし、国有の普通財産であることは明らかであって、原則として適正な対価でこれを譲渡すべきなんです。そういうことを考えた場合、国民感情に全く背馳するただ同然の値段で売り戻す、これが唯一絶対の解釈だと最高裁は決して説明してないわけなんだ。にもかかわらず政治的にそれをなさろうとすることはどうしても納得できないし、この際、いまおそらく大蔵大臣は、少しでも安く国民のために必要な公園や道路用地やあるいはその他の公共用地がほしいことには変わりないと思うのです。そうすれば、いまわざわざその土地を民間にただ同然で払い下げて、いずれまた何らかの方法で公共用に供してもらうように指導するんだとおっしゃっておりますけれども、そういう手間を省いて、現に国有地としてあるこの国有財産を国民のために活用すべき道を見出すべきである、それが政治家ではないかと思いますが、見解を聞きます。
  316. 福田赳夫

    福田国務大臣 冒頭申し上げたとおり、法解釈の問題とそれから国民感情との乖離をどういうふうに調整するか、その方法いかんということで鋭意検討いたしております。しばらくお待ち願います。
  317. 岡沢完治

    岡沢分科員 それではここで法制局もおられるし、先ほど大蔵大臣も持ち出された、今度の旧地主に対して農地を払い下げる、売り戻す、これは旧地主に対して新しい所有権を取得させることになるのか。それとも旧地主が当然持っておった旧所有権の確認になるのか。私は、法改正の意図がもしない場合に、せめて税制上の、こういう不労所得、不労利得を許さないというたてまえからも、大きな判断の基礎になると思います。どういう判断をされるか聞きます。
  318. 相澤英之

    ○相澤政府委員 前段の御質問に対して私から答弁申し上げます。  農地法第八十条の第二項は、これは意訳でございますが、それが強制買収にかかる農地であるときは「政令で定める場合を除き、その土地、立木、工作物又は権利を、その買収前の所有者又はその一般承継人に売り払わなければならない。」というふうになっております。したがいまして、農地が買収され、かっここで売り渡されるわけでございまして、所有権は旧所有者から国に移り、かつ国から旧所有者に移転するわけであります。したがいまして、所有権としては形式的には移転しているわけです。ただ、先ほど大臣が申されましたのは、その所有権の原所有者への移転が、俗に申しますと、感覚としては、最高裁の判示にもございますとおり、これを回復する権利を保障する、こういうような考え方からそういう制度が設けられているという、そういう意味で大臣は答弁されたのだと思うのです。  税の点につきましては主税局長から。
  319. 細見卓

    細見政府委員 相澤理財局長からお答えしたことに尽きるわけでございますが、買い取り請求権の実現という形で売買といいますか譲渡が行なわれる、そこに解釈上いろいろな考えを差しはさむ余裕があろうかと思いますが、税制上これをどう扱うかということは、か在り制度にわたる問題ではないかと思います。
  320. 岡沢完治

    岡沢分科員 相澤理財局長の御答弁の点、大蔵大臣をかばう意味もあったと思いますが、背景と実際の法解釈はやはり厳密に分けるべきだと思うのです。そうすると、先ほど私が指摘いたしましたように、農地法の八十条にも売り払いということばを使っておる、あるいはこの判示自体に売り払いとか買い受けとかいうことばを使っておる。私は、やはり理財局長が前段でおっしゃったとおり、農地法九条による買収のときにすでに所有権が移って、今度新しく売り戻しのときに旧地主に所有権がまた移るという解釈のほうが正しいと思います。ただ、背景は確かに大蔵大臣がおっしゃったような背景があるということは否定しません。そうしますと、ここで私はいわゆる譲渡所得の課税について国民の納得する方法が考えられるのではないか。主税局長も検討中ということで、お立場上はよくわかりますけれども、やはり国民から税金をむしり取るのが目的ではありませけれども、不当な利得を許さない国民感情、法的な観点から、私はこの際思い切った、一部の不労所得者に対する態度としては、鬼になってもらう必要があるのじゃないかと思うわけであります。  時間があと二、三分しかございません。先ほど大蔵大臣が聞いておられましたように、法制局の解釈あるいは農地局長の解釈、私は高級官僚としての解釈としてはわからぬことはありませんが、最高級の政治家でおられる大蔵大臣、やはりこの際は政治的な見識のある処置、国民の納得する政策をお出しになることが政治家の責任でもあるし、またむしろ内閣の使命ではないかと私は思うわけでございますが、この点についての見解、特に私は農地法の精神というものはもうすでに率直にいって失われておるし、また自作農創設措置法の必要性というものは、現時点では、米の問題を持ち出すまでもなく、なくなっておると一般的には解釈していいかと思うわけでございます。私は、大蔵大臣が私の予算委員会における質問に対しても、土地は所有のためよりも利用のためにあるという発想の転換をすべき時期に来ているという御答弁をいただきました。水や空気と同じように、土地は、特に日本のように小さい土地の面積にたくさんの国民がおるというような場合を考えました場合、やはり公のものだという前提に立って、もちろん憲法二十九条その他の精神をまっこうから否認するわけにはまいりませんけれども、公共の福祉により高度に利用する。特に現時点におきましては、農地買収の目的に優先するか、あるいはそれに相当するくらいの公共性のある場合に、当然この農地といいますか国有地を活用する方法を政治的に見出すあるいは立法的に見出すという時期ではないかと思いますが、見解を聞いて質問を終わります。
  321. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは法律のぎりぎりの線までひとつ考えてもらって、それと真正面から抵触するというのでは困りますが、何とか許容し得る限度というものを突きとめまして、そしていま御趣旨がありましたよう方向で善処していきたい。特に税につきましてもそういう方向でいま考えております。
  322. 岡沢完治

    岡沢分科員 どうも先輩の政治家であるまた尊敬する大蔵大臣先ほど失礼なことを言いましたが、長い予算委員会の御審議でお疲れであることは十分わかっておりますが、ぜひ国民の納得するよう処置をいまの言明どおり実行していただきたいということを希望いたしまして、質問を終わります。
  323. 大坪保雄

    大坪主査 井上普方君。
  324. 井上普方

    井上分科員 大蔵大臣、いま法理論のちょうちょうはっしのあとでございますが、まことに通俗的ことばでございますが、ひとつあなたの御解釈、主税局長、あなたのお話も承りたいのであります。  書だな、それと本箱というのはどのように違うとお考えになります。
  325. 細見卓

    細見政府委員 書だと申しますのは、前にふたのない、文字どおり本を入れていけばいいもので、書箱と申しますのは、ふたがあって、本を入れれば文字どおりふたができるというものでございます。
  326. 井上普方

    井上分科員 大臣、この解釈は違うのですよ。主税局長、これは物品税の関係がありますのでわざと聞いたのです。といいますのは、観音開きになっているのが本箱なんです。そして引き戸のあるものでもこれは本箱になるのです。ところが、観音開きでも、片方だけの開きの場合は本箱にはならないのです。それじゃ本を同じだけ入れる容積を持っておるものがあるとしますか。本箱と書だとどちらが高いとお考えになります。大臣どうです。
  327. 細見卓

    細見政府委員 ふたがありますから書箱のほうが高いと思います。
  328. 井上普方

    井上分科員 そのとおりなんです。ところが、物品税によりますと、本箱は非課税品になっている。そして書だのほうは課税品になっている。先ほど大臣安井さんの質問に対して、税はよくわからなければらない、こうおっしゃられましたが、こういう不合理があることに対してどうお考えになります。
  329. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが大蔵官僚は非常に有能であります。十分調査した上区分をしておると思いますから、その区分の理由につきまして政府委員のほうから御説明申し上げます。
  330. 井上普方

    井上分科員 いいです。この物品税がつくられたのはあなたが大蔵省の主計官をやられておった当時、昭和十六、七年ごろなのです。それが現在まだずっと生きてきているわけです。したがいまして、特に家具の物品税におきましては非常に矛盾あるいはまた税法上わからぬところが多くて、先ほど申しましたように、本箱であるとか書だなであるということによってもう国税庁の役人の解釈が違うのです。本箱であるならばこれは非課税品、書だなでありましたらば、これは課税対象品となる。これは非常に不合理です。ここらの洗い直しをやれと言いましても、まだやっておりません。それから物品税は、私も直接税から間接税へ移行していくということは全面的に否定するものではありません。しかしながら、非合理的なといいますか、実際問題としては合わないものがたくさんあります。それをひとつ申し上げて御勘案願いたい。一つの例で申しますと、たんすがあります。和だんすは製造元から卸に売り渡す場合に、四万円以下は特例によって税金はかかりません。ところが四万一千円で卸に売り渡しますと、一千円取られる。四万五千円でありますと、税金として五千円取られる。四万八千円のたんすでありましたならば、八千円の税金を取られる。そういたしますと、これは業者としましては、四万円から四万八千円までの品物をつくってよそに出したといたしましても、四万円以上はそれだけ全部取られてしまうのですから、どうしても四万円の品物ばかりしかつくれいということになります。おわかりになりますね。ところが、小売りに出します場合、四万円台あるいは五万円くらいまでの範囲の和だんすにおきましては、二倍から二倍半くらいになります。そうすると、いま勤労青少年が結婚する場合に使うのはこれが一番多いのです。実はきょうも大丸に総キリのたんすは一体幾らするのだと聞きました。総キリでありますと、一本で大体三十万円から五十万円します。ところが、これは非課税品なんです。これは由来を申し上げますと、昭和三十八年、当時の大蔵大臣田中角榮さんでございました。総キリのたんすが一番たくさんつくられるのが新潟県なんです。それかどうか知りませんよ。総キリのたんすは、技術の保存のために、これはのけなければならぬといって、物品税の対象から除いておるのです。あるいは三方ウルシの和だんす、これは一体どれくらいするか、きょうも聞きました。これは一本二十五万円します。ところが、これも物品税がかからないのです。なぜだと言いますと、ウルシの技術を保存するのだそうです。一番たくさんできるのは静岡県であります。静岡県の国会議員は、御承知のとおり前法務大臣小林さんも静岡県ですけれども、西村直己さんがおられます。そういうように三十八年に変えているのです。しかし、一般大衆が使う八万円、十万円の和だんす、これにつきましては税金がこのようにかかっています。どうお考えになりますか、大蔵大臣の御所見を承りたいのです。
  331. 福田赳夫

    福田国務大臣 物品税は、おっしゃられるようないろいろなむずかしい問題を含んでおるようです。私は、実はこれを見直しをしたいと思ったのです。ところが、さてやってみようと思いますと、二つ問題がある。一つはそういう御指摘のような問題を直そうとすると、一波万波を呼びまして、全部についての論争が起こってくる、収拾がつくかつかないかというような問題。それからもう一つの問題は、先ほども御論議がありましたが、付加価値税、こういう議論が起きておるわけなんです。その付加価値税を一体どうするか、こういう問題がありまして、この問題の見通し、そういうものともひっからみが出てくる、そういうことで本年度は見送りをせざるを得なかったわけなんですが、いろいろ問題のあることは私も承知しておるのであります。しかしまたこれで物品税の再検討はしないというわけじゃない、この上ともやってみたい、かように考えております。
  332. 井上普方

    井上分科員 物品税そのものにつきましては、これは私はなかなか手数の要る問題だろうと思います。しかしこの税法だけじゃなしに、施行令もしくは規則あるいは通達でこの物品税をくくっておるところが非常に多いのであります。現に先ほど申しました特例税率というので、幾らまでですか、四万円から四万八千円までは、上がるだけ全部さらっていくのは特例税率という形でやっております。これはおそらく通達だろうと思います。ここらあたりは法ではないでしょう。
  333. 細見卓

    細見政府委員 法律です。
  334. 井上普方

    井上分科員 法の何条でございますか。
  335. 細見卓

    細見政府委員 十六条の三項でございます。
  336. 井上普方

    井上分科員 特例でやられておる。しかし、特例にしましても、四万円以下は規制対象外ということを何でやっていますか。
  337. 細見卓

    細見政府委員 それは施行令で行なっておるわけであります。この施行令によります免税点、これが高い低いというのは、いろいろそれぞれの御議論もあろうかと思いますが、概して申しまして、免税点と税率とはそれなりに各方面の御検討を願って政令につきましても御承知のように大蔵委員会の理事会で御検討願っておるわけであります。その物品税の施行令によって免税点などは定めておるわけでございます。
  338. 井上普方

    井上分科員 大蔵委員会の理事会にかけるなんておっしゃいますけれども、理事会なんて正式のものじゃないのですよ。それは理屈をつけなければいかぬからおっしゃるのだろうけれども、ほとんどおたくの原案どおり大体通っているのじゃございませんか。しかし、このように不合理があることはお認めになりますか、どうです。家具物品税に関する限り……。
  339. 細見卓

    細見政府委員 免税点というものの性質でございまして、そういう意味では免税点のない物品税を行なえば、おっしゃるような議論はないわけでありますが、一方ではある程度大衆的なものについては課税しないほうがいいという議論がありまして、免税点というものを置きます限り、免税点のところである程度価格の断層が生ずるというのは、これは免税点制度のやむを得ない付随現象だと思います。
  340. 井上普方

    井上分科員 そこで、それであれば四万円から四万八千円までの四万円の免税点、これ自体を変えるお考えは当然生じてくるべきだと思うのです。あるいはまた、四万円というのを基礎控除的な考え方にしてそのことを考えていくならば、これは非常にスムーズな税金の取り方に相なると思うのでございますが、どうでございますか。
  341. 細見卓

    細見政府委員 物品税と基礎控除という考え方はなじまない考え方でありまして、物品税と申しますか、間接税は、いわば一般的に税を課するというところに特色があるわけでありますので、むしろおっしゃるような意味におきましては、税率を適正なものにするというのが間接税のあり方としては筋が通っておると思います。
  342. 井上普方

    井上分科員 大蔵大臣、どうでございますか。いまのお話を聞き、先ほどの不合理な面をおわかりになっただろうと思います。ここで税率を変えるのがまことに至当だろう、こうおっしゃいます。私もそのとおりだと思います。見てみますというと、物品税として四〇%取っておるものもあります。ありますけれども、それはモーターボートでありますとかあるいは高級、普通乗用車であります。二〇%取っておるのは貴金属、宝石ですね。宝石の場合あるいは真珠の製品の場合貴金属でしょう。べっこうであるとか毛皮であるとか、こういうものは取っておりますけれども、香水であるとか、こういうようなものについては五%であるとか一〇%であるとか、ずっと低いのです。しかしたんすであるとかあるいは高級品は全然税金がかからないのです。総ギリのたんすにしてもウルシにしても全部のけちゃっているのです。それから鏡台にしましても、これまた三十八年に除外しております。いままで物品税がかかっておったのをやめました。しかし六本木あたりへ行ってごらんなさい。六本木の店を私もふらりと見ましたところが、等身大の鏡で三十万、五十万という鏡がずらっと並んでいるのです。それらには物品税がかかっていませんよ。ところが大衆品である四万円、五万円のたんす、店頭に出されるならば八万円から十万円の品物、それらには税金がかかる。しかもそれが四万五千円のものでございましたならば、これは製造業者にかけますので、どういたしましても、それが二倍になりましたならば九万円で売らなければならぬ。一衆大衆は結局税金の倍だけ取られておるのです。そういう結果にも相なっておるのです。したがって、ここの不合理を是正する必要があるのではなかろうか。税率はいかにも法できまっております。また免税点もきまっておりますが、しかしその免税点は昭和三十九年にきめたままです。そうしますと、実はその後の物価の値上がりを見てみますと、和だんす一本について、ラワンでございましたならば四八%の値上がりをしておる。あるいは材料におきましてはすべて五〇%から六〇%の値上がりをしておる。人件費にいたしましても、これまた値上がりをしております。四十一年からですか、免税点は四万円で据え置きになっております。したがいまして、どうしましても製品が悪くならざるを得ないということになっております。大衆は税金はかぶせられるわ、まあこれは当然でございますけれども、品物がそれだけ悪くならざるを得ないという現況に追い込まれておるのでございますから、免税点を引き上げるようなお考え方は出てこないものでございましょうか、どうでございますか。
  343. 細見卓

    細見政府委員 免税点の問題はおっしゃるように、生産価格か上がったといま原料のほうをおっしゃったわけでありますが、同様のことは人件費についてもあるわけでありまして、そういう意味ではおよそ免税点のある物品についてはすべて免税点を引き上げなければならないという要望が出てくるわけであります。また御承知のようにたとえば石油あるいはガスストーブなどにつきましては安全基準というようなものができまして、ある程度の期間をかけて新しい製品をつくらなければならないというようなものも出てくるわけでありまして、そういうことを全部取り入れてみますと、現在の物品税がかかっておりますもので免税点の引き上げあるいは税率の引き上げというようなことが要望されなかった品物は自動車だけであったというような現状であります。そういうことを考えれば、これは大蔵大臣がたびたび申しておりますように、直接税あるいは所得税が重過ぎるというような負担感を与えておるその現象を排除する意味においても、何らかの間接税を考えてみたいという考え方からいたしますれば、消費に対して最も直接的にかかる物品税を大幅に軽減しなければならないということで、全体の考え方としての税制の考え方に真正面からぶつかるということから今回は見直しをしないということにしたわけであります。  なお税率につきましていろいろ御議論がございましたが、おっしゃっておった製造品でございますと、二割なら二割という税は先ほどお話でおわかり願っておりますように、小売り価格にいたしますと大体その倍になるというようなわけで、その税率は事実上半減されるという形になるわけでございます。それはダイヤモンドのように小売り課税のものとは違っておるわけでございます。
  344. 井上普方

    井上分科員 先ほどもこの税金になじまないというようなお話がありましたが、私は家具に関する限りは物品税になじまないのじゃないか、このような気がいたすのであります。あなたがなじまないということをおっしゃったので私も申します。といいますのは、従業員五十人以下でやっておるのがほとんど九五%を占めておるのです。言いかえますならば小企業、零細企業がほとんどであります。したがいまして、この徴収にあたりましても、いろいろとトラブルが起こっておることは国税庁長官も御存じのとおりだと思う。電機製品にいたしましても、テレビジョンにいたしましても、自動車にいたしましても、時計にいたしましてもあるいは写真機にいたしましても、大手メーカーである。ところがこの家具に関する限りは従業員五十人以下というのが九五%を占めておる。こういう事業所にかけられておるのです。したがって、家具自体が物品税に非常になじまないといえるのではないか、このように思うのですが、大臣考え方はどうでございますか。
  345. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも私もよく判断できませんが、よく検討してみます。
  346. 井上普方

    井上分科員 先ほど岡沢さんの話によると、大臣も最高の政治家で御検討していただけるというお話でございますので、早急に検討されることを期待いたしたいと思います。  そこで、もう一つこの物品税がなぜなじまないかということを税金を取るほうからひとつ申してみましょう。  セット売りというのがありますね。このごろはこれがほとんど売られております。お嫁さんにというので、和だんす、洋服だんす、整理だんす、げた箱、それに整理だんすの上に置く上置きというので大体セットになっておるのであります。あなた御承知だろうと思いますが、これを十一万五千円で売ろうとする場合には――これは私どもの徳島県におきましては、税務署がと申してもいいと思うのです、業界との話し合いは先日私が入りまして初めて行なわれたような状況でありましたので。和だんすを四万八百二十五円にしております。どうしてやるのかといいますと、セット売りの場合には三五・五%が和だんすだといって徳島税務署はきめております。ところが広島税務署におきましては三三%ときめておる。そうすると税金がかかるかかからぬかの境目ですな。県によって、あるいはまた税務署によって税金のかかるところが違うのです。これは非常に業者は商売上不利益をこうむるのです。こういうことになっておる。こういうことは御存じですか。
  347. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま御指摘になりましたセット売りというものの場合は、御承知のとおり、そのうちで課税物件になっているものが一つか二つでございます。そこで、業界としてはセットにすることによって、個々の課税物件が課税価格で幾らであるかということをわからぬようにしてしまうという傾向もあるわけですね、合計で出しておりますから。そういたしますと、そのうちのたんすだけは課税物件である場合に、そのたんすの価格がわからなければ課税ができないという結果になります。そこで、それについて一々価格をつけている場合もありますが、つけていない場合には連鎖品でありますので、原価を案分いたしまして、一応課税価格を算定せざるを得ないという問題になります。そうなりますと、そのたんすの種類によりましては、どうしても税務署ごとに違う原価になり得ることがある。極端に申せば、同じ店でも違う原価になることがあり得るわけです。しかしそれについては、一応それと同じような種類のものをつくっている場合は、そのものについては一応一定の割合をきめて、それで査定をせざるを得ないという問題になるので、各税務署がかってにつくるというよりは、各税務署の管内においてつくられるセットのあり方によって率が違うというのは、これはやむを得ないと思うのでございますが、それにいたしましてもその計算を十分正確にやることが必要である、これは当然でございます。
  348. 井上普方

    井上分科員 国税庁長官、違うのですよ。東京では、静岡のと徳島のと広島のと同じように大丸に並ぶのです。いいですか、大丸の商品に、あるいは三越に並ぶのです。それに和だんすの場合は、徳島県の場合はこれはセット売りの総額のうちの三五・五%ときめております。製造原価ですね。それから、広島県の場合は三三%ときめられておる。静岡県の場合は三四%ときめる。こうなっているのですね。そうすると、この三五・五%の場合は、セット売りで原価が十三万五千円の場合は、和だんすは四万七千九百二十三円とおたくのほうできめてしまう。三五・五%ということを税務署できめておるから。そうしますと税金は七千九百円ぽこりといってしまう、こういうことになるのです。これが全国共通でありましたならば――全国、そう変わらぬですよ、こういうものは。ところが、税務署によって三三%から三八%まで大幅にこうある。このために非常に業者の方々は迷惑する。そして、おたくのほうとも、税務署とも要らざるトラブルを起こしておる、これが実態であります。ここらあたりをあなた方、単に静岡のものと広島のものと徳島のものと違うというようなことじゃなくて、やはりお考えになるべき必要があるんじゃございませんか。あなたのおっしゃることは、よくわかります。しろうとが考えればそのとおりなんです。調べてみたらそうじゃない。あなただって家具物品税について、国税庁長官になられたけれども、一生懸命このことについて御勉強になったとは思えない。せめて三日でも四日でもお調べになったとは、私は思えない。しかし、一応のルールにのっとってあなたはこういうことをおっしゃっておるんだろうと思いますが、どうでございますか、そこらあたり。どうお考えになりますか。
  349. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ほんとうのところから申しますれば、おそらく各業者がセット売りとは申しながら、各価格を明らかにして課税標準の申告をすべきものだと思います。それができていないために税務署が認定せざるを得ないということになるわけで、その場合にはおっしゃるように確かに最後の価格は十一万五千円で同じかもしれませんが、組み合わせ方が違うということもあると思います。たんすが非常によくつくられておる場合に、書だながよくつくられておる場合に、それによってやはりたんすの価格が、原価が違いますから、それによってどうしても査定価格が違うということは起きると思います。それをもし五つのものについて何が何%であると一括してきめたとすれば、これは法律と同じように抽象的に価格をきめたことになりますから、これはまた不適当のそしりを免れない。やはり具体的に各セットについて問題を解決しなければならないというのが理屈ではないかと思います。
  350. 井上普方

    井上分科員 そのとおりなんです。あなたのおっしゃるとおりなんです。ところが税務署はセット売りの場合、これは和だんすを悪くして洋服だんすをよくするということは、あなたはあり得るとおっしゃるでしょう、そうやりましても、セット売りの場合税務署はそれを認めないのですよ。あなた笑っておるけれども、第一線は認めないのだ。認めずに三五・五%はこれは和だんすであるといってきめつけておるのです、徳島の場合は。あるいはげた箱をよくしました、げた箱は玄関に飾るものだから、人にいつも見られるので、これほど高くしました、と言いましても、セット売りの場合、十三万五千円でありましたら、げた箱は一万八百円である、これ以上のやつは認められぬ。こういうことになっておるのです。これがあなた第一線の税金の取り方なんです。だから全国にトラブルが起きる。あなたがおっしゃるとおりなんです。それが業者の言い分なんです。ところが税務署はあなたの言い分どおりいかぬですよ。そこに問題があるのです。したがって、こういうような点から考えましても、徴収技術の点からいたしましても、この家具物品税はともかく物品税になじまない。先ほど税金になじまないものがあると主税局長はおっしゃいましたので、これはなじまないものではないかと私は申し上げるのです。大臣、こういう点もひとつお考えを再検討していただけますか、どうでございますか。
  351. 福田赳夫

    福田国務大臣 よく検討いたします。
  352. 井上普方

    井上分科員 私はもうこの程度に終えたいと思いますが、物品税というものは高級品にかけるのが原則じゃございませんか、大臣。しかし先ほど申しましたように、いいものが全部免税なんです。大衆製品だけが課税対象になっておる。この実態をあなたがお考えになるならば、すでに徴収技術の上においても家具物品税というのは物品税になじまないし、かつまた免税点の上におきましてもなじまないというようなことをお考えになって、早急に処置されんことをお願い申し上げまして質問を終わります。
  353. 大坪保雄

  354. 小林政子

    小林(政)分科員 私は政府の経済援助について、特にインドシナ半島諸国に対する援助のあり方についてお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、インドシナ援助の問題に入ります前に大臣にお伺いをいたしたいと思いますけれども、ここのところ政府は、国連の総会などでも総理大臣が、あるいはまた東南アジアの開発閣僚会議などでも外務大臣の発言あるいは福田大蔵大臣もIMFの総会で、今後わが国は七五年までにGNPの一%を経済援助に振り向けるような努力を続ける、こういうことをお約束されてきたわけでございます。六〇年代をずっと調べてみますと、政府の開発援助あるいは政府資金、あるいはまた民間の資金等含めて、六〇年代はわが国の海外経済協力費というものは著しい大きな伸びを示しておりますけれども、七五年にいわゆるGNPの一%を目標どおりに達成しようといたしますと、七五年のGNPの予想が約四千億ドルというふうにいわれておりますので、これは百四十一兆九千九百万円、それの一%ということになりますので、したがって一兆四千億円という額に達するわけでございます。しかもこのことは、機械的に日本の人口にこれを割り当ててみますと、それこそお年寄りから赤ちゃんに至るまで一人一万三千円、こういうような大きな負担をかけるというような結果にもなるわけでございますし、まして短い五、六年というこの期間に一九六九年の三倍以上に当たるといわれるような膨大な援助規模を行なおうとするというようなことについて、私は財政負担というものが非常にふくれ上がり、膨大なものであるだけに重大な問題であろう、このように考えております。  少なくとも私はこのような財政支出、膨大な支出を伴う問題については、国民合意というようなものを得る必要があるのではないだろうか。国民の合意というようなものなくして、総理大臣なりあるいは大蔵大臣が国際会議でこのようなことを約束されてくるということにつきましては、非常に私は不当ではないか、このように考えますけれども、大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  355. 福田赳夫

    福田国務大臣 一九七五年、このころ四千億ドルにはとてもなりません。これはいわゆる超高度成長という政策をとればそういうふうになりますが、国会において私がしばしば申し上げているとおり、そういうことはよくないんだ、こういうことで安定成長、そういう切りかえをするわけですから、とても四千億ドルにはなりませんけれども、とにかくかなりの額にはなるだろう、こういうふうに思います。  そこで、大体その一%を海外経済協力、低開発国への協力に充てる、こういうことは総理も外務大臣も私も通産大臣も言っております。これについて国民の合意を得るべきじゃないかというお話でありますが、そういうふうに努力をいたしております。つまりいま国内でも公害の問題だ、住宅の問題だ、いろいろあります。そういう際に海外にそういうふうに援助するのはいかがであろうか、こういう国民の感触もあろうかと思います。しかし、世界の繁栄あっての日本の経済である。そういうようなことを考えまするときに、わが国は世界とともに繁栄するという基本的な姿勢をとらなければならぬ。世界が不景気だ、ことに後進国においてどうも経済が不安というような状態でありますれば、わが国の発展も制約をされる、こういうことになりますので、国際社会における経済の力のついた日本の国の責任として、おくれた国への協力、これはしていかなければならぬ。そういう姿勢でないと、国際社会において非常に大きな批判、反撃を受け、日本は孤立するようなことにもなりかねない。そういうことについて盛んにPRをしておるわけなんです。国民合意を得るために最大限のいま努力をしておる、かように御承知を願います。  また同時に、いま何か国民の負担が非常にふえるというお話でございます。それはまあ事実なんですが、それは小林さんのお考えになっているのとは少し違うのです。つまり海外経済協力といいますか、低開発国への援助、これは政府資金のほうはその中でごくわずかなんでありまして、大体GNPの一%というふうに申し上げましたが、この援助総額の三割ぐらいが政府援助であります。あとは民間の援助なんですから、その辺もひとつ御理解いただきたいと思います。
  356. 小林政子

    小林(政)分科員 いま大臣からのお話で、一応七五年のいわゆるGNPというものがそれほど行かないだろうというふうに見通しとしておっしゃられたわけですけれども、私がこれを引用したのは経済社会発展の五カ年計画、この内容から数字を見たのでございまして、今後の見通しはともかくといたしましても、少なくとも七五年の国民の生産力に対する一%ということになりますれば、いずれにしろこれは膨大な額になることは明らかでございます。そういう中で国民の合意というものを得ないで、国際会議でそういうことを約束することは不見識ではないか、不当ではないか、こういうことを私は申し上げたのでございます。私は、世界的に日本が約束をする前に、まず国民の合意というようなものを得る、あるいはそれを得ないでそのようなことをすべきではないんではないだろうか、このような考え方を申し述べたわけでございます。  また政府資金三割というお話でございますけれども、確かにわが国の経済援助の内容を見てみますと、どちらかと申しますと、民間の直接投資だとかあるいは輸出信用などで占める割合高というものがきわめて高いわけでございますけれども、そういう中でむしろ東南アジア諸国からも純粋な経済援助、開発途上国などからもいろいろといわれておりますけれども、一般の資本の輸出だとかあるいは経済進出というようなことがとかく世界的にもいわれているのは、一つにはこの辺に大きな原因があるんではないだろうか。このように考えますけれども、大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  357. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはそういう直接の結びつきもなかろうと思います。が、国際社会では日本がその総援助額の三割しか政府援助でないということについて、もう少しふやすべきだということを言っております。そういう方向で努力はいたしたい、かように存じておりますが、何しろこれは財政の運営とも直接つながる問題でありますので、そうてきぱきとその比率を改善するというわけにはいかないので、だんだんと財政力の状況に応じて改善をいたしていきたい、こういうふうに考えております。  どうも経済侵略だというような話は、これはむしろ貿易面、そういうようなところにあるんじゃないかと思う。日本の輸出、これはある商品がちょっと売れそうだというと、どさっといく。そうすると、その輸入国におきましては、それらに関連をして商売が非常な影響を受ける、こういうようなことで、非難を受けることがあるのであります。つまり輸出秩序、これについては気をつけなくちゃならぬと思いますが、援助が民間の援助であるにいたしましても、それが直接批判の対象一になる。経済侵略と結びつくのだ、こういうような印象は与えていないのじゃないか、私はそんな感じがします。
  358. 小林政子

    小林(政)分科員 とかく日本は経済大国ということで、今後世界からも日本の発言や行動については非常に関心が高まり、特に発展途上国と申しますか、こういった国などではさまざまなことが言われていることは大臣も御承知だろうと思います。その問題はともかくとして、そういう観点からも、また、一つには国民の合意も得ないで国際会議で一方的に発言をされるということについては、やはり今後の態度としては改めていただきたい、私はこのように考えるものでございます。  国民の中にも、高度経済成長政策というようなもので、政府は産業には相当力を入れてきたけれども、しかし、そのひずみというものが現在ひどい状態になって国民生活を圧迫している。これは御承知のとおり、公害の問題もそうでございますし、住宅の問題あるいはまた今日の都市機能がこのような麻痺状態におちいっているというようなことも、一つにはやはり国民生活を大きく圧迫をしている問題でございますし、国民が緊急の課題としてこの問題を、もうほっておけない、早く解決をしなければならないという強い要望を持っていることも事実でございます。このような中で、七五年にGNPの一%を開発途上国に対して援助をする、これを実施すれば、経済援助大国としての日本の役割りというものがアメリカに次いで第二位というようなことがいわれております。私は、このような経済大国論を国民は望んでいるのではなくて、緊急の課題をもっと早い機会に解決をしてほしいということを望んでいるのだろう、このことを強く申し上げまして、本題に入りたいと思います。  私は、海外経済援助の中でも、特にインドシナ半島諸国に対する援助のあり方について伺いたいと思います。  政府は昨年、カンボジアに対して四百万ドルの援助を二回に分けて行ないましたが、カンボジアへの第一次援助は昨年の六月、そして第二次援助は昨年の十一月、二百万ドルずつ援助を行なったわけでございますけれども、そのやり方は、伝えられるところによりますと、日赤を通じて、赤十字間を通して援助が行なわれたというふうにいわれておりますけれども、具体的にその援助がどのような形でやられたのか、そしてその四百万ドルの財源はどこから支出をされたものなのか、この点についてまず外務省の方にお伺いしたいと思います。
  359. 沢木正男

    ○沢木政府委員 カンボジアに対していたしました二百万の緊急援助につきましては、国際赤十字委員会並びに赤十字社連盟を通じましてカンボジア赤十字社が日本赤十字社に対して援助を要請してまいりました。そして日本赤十字社から政府の援助を求めてまいりましたので、その内容を見ましたところ、人道的な見地において適当な要請であるということを認めまして、予備費より支出をお願いしまして、赤十字社に対して補助金を出して、そして日本赤十字社がカンボジア赤十字社との間に品目の細目を取りきめまして、向こうに物資を輸送したものでございます。
  360. 小林政子

    小林(政)分科員 予備費支出されたということでございますけれども、四百万ドルといえば、日本の円にかえてみれば十四億四千万円という相当額の大きいものでございます。少なくとも何か緊急のやむを得ない措置とかあるいは額のごく少額のものであって、しかもそれはだれしもが認められる緊急のものだ、こういったような場合等については、国内でも予備費の流用ということが当然行なわれるであろうと考えられますけれども、十四億四千万という相当の額をなぜ予備費から支出したのか。私はこの問題等についていつ閣議決定が行なわれ、そして予備費は、それは議会にはからなくても差しつかえないものでございますけれども、このようなことが一方的に議会にも報告されることなくやられることが妥当であろうかどうか。まずその点について、一点だけお伺いをしておきたいと思います。
  361. 沢木正男

    ○沢木政府委員 閣議決定がいつ行なわれましたか、さだかな日は現在手元に資料を持っておりませんので、覚えておりませんが、閣議決定はもちろん経まして実施したわけでございます。  第一回目の援助につきましては、カンボジアにおきまして戦火が発生しまして以来、戦火をのがれまして都市に流入しました難民が百万人をこすというような状況でございまして、この難民の救助に加えまして、病院だとか医療、衛生施設が破壊されましたり、あるいは水道、井戸等の水利施設が破壊または汚染されまして、雨季の到来とともに伝染病が非常に多発蔓延するという状況に対しまして、緊急に現在伝染病の蔓延を防ぐために援助が必要であるという要請がなされましたので、その状況を認めてこれを緊急支出してほしいということを外務省から大蔵省にもお願いしまして、出されたものでございます。
  362. 小林政子

    小林(政)分科員 第二次の援助につきましては、民生安定という立場からトラックなどを援助したということがいわれておりますけれども、私は、いまあの交戦を続けているというような事態の中で、一方の当事国に軍事輸送等の手段にすぐに切りかえることのできるようなこれらの物資を送るということについては、大きな疑問があると思いますけれども、この点について明確な御答弁を願ってから質問したいと思います。
  363. 沢木正男

    ○沢木政府委員 第二次緊急援助で与えました車両につきましては、日本赤十字社からカンボジア赤十字社に引き渡しまして、カンボジア赤十字社がその管理運用に当たり、軍事目的に転用しないという万全の措置をとる旨を日本赤十字社に対して保証しております。またカンボジア政府も同様の保証を行なっております。したがいまして、日本赤十字社としても車両には赤十字のマークを入れまして、またその適正な運用は、人を派遣しまして、それが軍事目的に転用されないように万全の措置をとった上供与したものでございます。
  364. 小林政子

    小林(政)分科員 一応赤十字の保証ということがいわれておりますけれども、いずれも正常な状態というよりも、紛争といいますか、戦争のまさにさなかのできごとでございまして、赤十字が保証したからといって、軍事輸送の手段にはそれが絶対使われないという保証というものは、私はないと思います。いやしくも交戦国の一方の当事国に対しては、一歩間違えばこのような軍事物資と早変わりするような問題については、私は援助を行なうということは間違いではないか、このように考えます。  次に、ベトナムの問題につきましても、昨年の八月万国博が開かれましたときに来日されましたキエム首相と佐藤首相との話し合いがきまって、南ベトナムのディーゼル発電設備計画等を援助することに話がきまったといわれております。日本輸出入銀行から十六億二千万円、約四百五十万ドルの円借款を供与する契約がことしの一月に調印されたというふうに報道されております。さらにまた昨年の十月には、政府ベースのインドシナに対する、あるいは東南アジアに対する調査団の派遣が行なわれ、ポストベトナムの経済開発協力のあり方についていろいろと調査もされておるというふうなことがいわれておりますけれども、インドシナ援助の政府がいま考えているあり方、いろいろ論議されておりますけれども、今後のインドシナ援助についての基本的な政府の方針と見解について、まずお伺いをいたしたいと思います。
  365. 福田赳夫

    福田国務大臣 インドシナはただいま南北戦争状態であります。そういう状態でありますから、援助をするにあたりまして細心の注意を払わなければいかぬ、こういうふうに考えております。したがって民生安定、そういうものに限定いたしましてこれを行なうという基本方針でやっております。
  366. 小林政子

    小林(政)分科員 カンボジアあるいはまた南ベトナムなど、インドシナ地域の援助計画というふうなことがいろいろと調査団の方々の調査の対象にもなっておりますし、また新聞報道等でもいろいろと伝えられているところでございますけれども、特にサイゴンのカント火力発電所の建設の問題であるとか、あるいはまたサイゴンの電話施設あるいはまたダナン港の改修工事計画だとか、あるいはまたカンボジアへの長期借款、こういったようなことも政府ではいろいろと検討をされておるやに聞いておりますけれども、これらの経済援助に対して政府はどのように対処されようとしておるのか、この点について明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  367. 沢木正男

    ○沢木政府委員 インドシナ半島に対します援助につきましては、ただいま大蔵大臣から御答弁がございましたとおり、インドシナ地域の住民の民生の安定と向上のために、事情が許す限りできるだけの援助を行なうというのが政府の方針であるようにわれわれ承知して、そのためにいろいろ調査もし、かつ先方の要請が、そういうふうな日本側の希望する条件に合うかどうかという点を、調査団を送りまして調査した次第でございます。
  368. 小林政子

    小林(政)分科員 御承知のとおりカンボジアでは昨年の三月十八日に政変が起こり、アメリカ軍のラオス進攻などでインドシナ全域が戦火を拡大していることは御承知のとおりでございます。私は、その交戦国の一方の当事国に今回政府が十六億二千万、四百五十万ドルを輸出入銀行の契約によって発電設備の契約を実施したというこの事実は、これが民生安定というふうにお取りになっておやりになったことなのかどうなのか、この点について伺っておきたいと思います。
  369. 沢木正男

    ○沢木政府委員 先般ベトナムに対しまして出しましたディーゼル発電機につきましては、サイゴンに難民の流入が非常に多く、かつダニム発電所からの送電が現在とだえておるという状況から、電力が非常に不足しておるという事態に緊急対処するために出したものでございまして、これはサイゴン地区住民全般の電気の需要に合うという意味におきまして、民生上役に立つという解釈で出されたものでございます。
  370. 小林政子

    小林(政)分科員 私は少なくとも交戦国に対するいままでの政府の態度というものは、一応当事国の一方に誤解を招くような、そういう物資というものは送らない、一応人道主義というようなものに基づいて医療援助だとか食糧援助だとかその他のものに限っている、いままではこういったような見解を持っているというふうに聞いておりましたけれども、そうしますと、ただいまのディーゼル発電設備などは、このような政府が従来主張しておりましたワクというものを越えて今回の援助が行なわれたというふうに解釈せざるを得ませんけれども、その点についてお答えを願いたいと思います。
  371. 沢木正男

    ○沢木政府委員 われわれ政府の解釈としましては、従来の方針とは背馳していない、従来の方針のワク内における援助であるというふう解釈いたしております。
  372. 小林政子

    小林(政)分科員 従来政府は、ただいま私が申し上げましたとおり、交戦国に対しての一方の当事国に対しては、難民の救済だとか医療だとか、そういったようなものに限定してということで臨んでいたことは事実ですし、その中で今回このような発電設備というものが、いままでと全く援助の質を変えるものではない、変質しているものではない、このようなことはちょっと理由にならないんじゃないだろうか、私はこのように考えられます。私ども、特に交戦国に対する当事者の一方に対する援助は、たとえ食糧であっても、物資であっても、これはやはり交戦国を経済的に何らかの形でささえていく、こういうような誤解を受けることは当然だろうというふうに考えますし、もしほんとうに純粋な立場での人道的な援助ということであるならば、交戦国の難民やあるいは被害を受けた人たち両国の双方に対して平等に行なわなければ、ほんとうの人道主義という立場には立たないんじゃないだろうか。たとえ食糧であっても、あるいはまた難民救済という名目を使っても、一方にこのような援助を行なうということは、いままで政府は人道上の援助と言っていたけれども、私はそういうことにはならないというふうに考えますし、まして今回のは政府のいままでとっていたそのワクを一歩越えて、そして長期の経済開発の方向というものをこの時点で打ち出したものではないかというふうな疑問を強くいたすものでございます。この点についてもう一度御答弁を願いたいと思います。
  373. 沢木正男

    ○沢木政府委員 先ほど申し上げましたとおり、民生の安定と福祉の向上のための援助というワク内に入るというのが、われわれの解釈でございまして、そういうふうにディーゼル発電機の供与でもって政府が援助方針を変更するんだというような考え方はいたしておりません。
  374. 小林政子

    小林(政)分科員 民生の安定とは、どこまでをさされて限界とされているのか、その点について明確に承っておきたいと思います。
  375. 沢木正男

    ○沢木政府委員 住民の生活が幾らかでも高度、高級になるということでございます。
  376. 小林政子

    小林(政)分科員 非常に抽象的でわかりませんけれども、そうしますと、長期の経済開発すべてが含まれるというふうに解されるわけでございますけれども、民生の安定のためという名のもとに、それがすべて含まれると解釈してよろしゅうございますか。この点を確認して私の質問を終わりたいと思います。
  377. 沢木正男

    ○沢木政府委員 これはやはり、プロジェクトごとにその性質が違うのでございまして、あらゆる経済基盤の育成、その他すべてのものが民生に入るかどうかということは、各プロジェクトの大きさあるいはその内容によって、そのときどきに判断すべき事柄ではないかというふうにわれわれ解釈いたしております。
  378. 大坪保雄

    大坪主査 小林進君。
  379. 小林進

    小林(進)分科員 私は在外公館のことについて一問だけ御質問いたしたいと思うのでございますが、現在わが日本の在外公館は幾つございましょうか。外務省何か会計課長がお見えになっておるそうですが……。
  380. 橋口收

    ○橋口政府委員 小林委員からお尋ねがございました現在の日本政府の在外公館の総数は、領事館等も含めまして百四十でございます。
  381. 小林進

    小林(進)分科員 在外公館というのは、俗に言う公邸といわゆるオフィス、事務所、どこの外国へ行きましても、大使館等に行くと、大使の公邸とそれから大使館の事務所等がありますが、それを全部含めて百四十でございますか。
  382. 橋口收

    ○橋口政府委員 これは在外公館の数でございますから、いわゆる在外公館のオフィスをさしておるわけでございます。ただ百四十カ所に在外公館があるということでございますから、先生のおっしゃいました事務所その他公館等になりますと、さらに数はふえてまいるということでございます。
  383. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、それは複数になりますか。
  384. 橋口收

    ○橋口政府委員 そういうことでございます。まるまる複数ではありませんけれども、数はふえます。
  385. 小林進

    小林(進)分科員 まるまる複数にはなりませんか。大体しかしオフィスと公邸は一国に二つ、一国というわけにいきませんな、領事館もありますから。大体複数になるだろう。  そこで時間もありませんから、私は質問をいたすのでありまするけれども、大体数回外国旅行をいたしておるのでありますが、そのつど日本の在外公館を訪れたりお話を聞いたりして痛切に感ずることがあります。それは仲間同士にもその話をすると、これは政党関係じゃない、与野党ともに私に同調の意見を述べる者が多いのであります。どういう点かというと、限られた時間でありますから、これは私が書きました、洛陽の紙価を高めたという名著がある。その中に、私が中南米を旅行したときの所感の一端を書いた文章がありますが、これは私の気持ちをそのままあらわしておるのでありますから読み上げて質問にかえておきます。  これはまあいつですか、発行したのは四十三年ごろかもしれませんが、これはこういうことです。「本夕の招待を深く感謝し、わたくしは四つの点について、お約束をして行きたいとおもう」、これはアルゼンチンで大使の招宴か何かで述べたときのあいさつの一端ですが、その四つの点の中の二つとして、「日本の公館に関する問題である。中南米におけるほとんどの大使館は、借地借家である。永久に常置すべき国の機関を、毎年毎年賃借料を支払いながら借りておくが如きは、純財政的な見地から見ても大きな損失である。特に、最近の中南米は物凄いインフレであり、土地家屋の上昇も天井知らずの有様である今日、早急に手を打つべきものと考える。しかも戦後の日本は、昔日の日本ではないにも拘らず、外国の旅をして常に感ずることは、日本の公館が他の一級国に比較していかにも貧弱である、ということである。この際、大国日本の出先機関として日本の面目に恥じざる広大な土地と公館を入手するために、特別の配慮をすべきことを、政府にむかって、強く働きかけることをお約束する。」、これであります。私が大蔵大臣に御質問いたしたいのはこれなんでございます。これは外国の旅をするわれわれの常に抱く感です。いかにも、まあ第一に公館、公邸が貧弱過ぎる。国会へ来ます場合に向こうから来るとアメリカ大使館を見てくるし、向こうから来るとイギリス大使館を見てくる。アメリカ大使館を朝夕見ている、イギリス大使館を朝夕見ているわれわれとしては、外国へ行けば日本の大使館はこれくらいの広さくらいあるだろう、こういう感じで出ていくわけでありますが、さて行ってみると実に貧弱であります。長い外国の旅の中で日本の公館らしいりっぱだなという感じを持ったのは一つ。それはいま廃墟と化しているドイツにおける、まだ菊の御紋章だけ残っているが、あれだけは実に日本の大使館らしいりっぱな堂々たるものでありますけれども、これもどうしてドイツだけりっぱかと聞いたら、これはヒトラーのおかげで、ヒトラーさんの援助でつくった、こういうお話を承ったのでございますが、それ以外はどうも貧弱過ぎる。これが一つであります。やはり国は、いかに内容は別といたしましても、外国へ出ればわが日本というものを象徴するのが大使館であり、特に大使公邸でありますから、私はここら辺はあまり惜しみなくひとつ金を出して、ぴかっとその国を威圧をするくらいの大きな公館をつくってもらってもいいのじゃないかという感じがまず一つであります。  それから第二番目が、いま申し上げました、ほとんど借家住まいだということでございまして、私も外務省から資料等をもらってみましたら、大体在外公館が百四十あるそうでございますが、その中で国有数はわずか三十館、あとは借用が百二館。これはきっと公邸でございまして、オフィスのほうは入らぬかと思いますけれども、公邸において百何ぼも借家住まいをしている。そしてインフレの中で毎年毎年高い家賃を払っている。私は、この私の文章によらず純経済的に考えても、これは決してりこうな理財家のやる仕事ではないと思います。この点を、大蔵大臣、特にひとつ御所見をお伺いいたしたいと思うわけであります。
  386. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も外国を旅行することがありますが、小林さんのような感じを持つことがしばしばあります。それで私も逐次お話のような方向に進めたいと思っておりますが、これはたとえば国有化しよう、こういうことを考える。金ができたらすぐ適当な国有化ができるかというとそうじゃないのです。たとえばパリで今度ずいぶんりっぱになりましたあれなんかも、何年も前からいろいろ地主なんかと交渉いたしまして、そしてやっと話がきまって、さてあれだけのりっぱなものが国有にできる、こういうような次第でございますが、これは着実に進めております。話がととのって、これは有利な契約だということになりますれば、それをそのつど実現をするというふうにしておりますので、まあそう遠からないうちに、どこへ参りましてもりっぱな公館だなという感じが持っていただけるのじゃないか、さように考えております。
  387. 小林進

    小林(進)分科員 大体まあ大臣の御答弁でいいようなものでございますが、この際数字だけちょっと承っておきますが、四十五年度と四十六年度の、この公館のいわゆる借り入れ料あるいは新設料に要する予算の比較をお聞かせいただきたいと思います。
  388. 橋口收

    ○橋口政府委員 在外公館の営繕費でございますが、昭和四十五年度予算額が十五億一千七百万円でございます。四十六年度は十九億二千六百万円、増加率が二六・九%でございます。  それから在外公館の借料でございますが、四十五年度が十一億二千五百万円、四十六年度が十二億八百万円、増加率は七・三%でございます。
  389. 小林進

    小林(進)分科員 四十五年度が十五億一千万円とおっしゃるのですが、その中に借り賃が十一億二千万円入っておるのでございますか。それはまた借り賃は別でございますか。
  390. 橋口收

    ○橋口政府委員 別でございます。
  391. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると四十五年度は十五億という金は、土地建物の購入代金かあるいは新築費ということになりますか。
  392. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほどお答えいたしましたように、在外公館の営繕費でございますから、おっしゃるように建物の購入あるいは土地の購入、国有化等に充てられる経費でございます。
  393. 小林進

    小林(進)分科員 四十五年度が十五億円、四十六年度が二六・九%の値上げになって十九億円ということでございますが、まあたいへんちゃちなお金でございますけれども、ひとつ大蔵大臣、われわれが大きな顔で海外旅行ができまするようにひとつ大いに奮発をしていただきたいと思います。この点をお願いいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  394. 大坪保雄

    大坪主査 明日は、午前十時から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十一分散会