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1971-02-24 第65回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十四日(水曜日)     午前十時四分開議  出席分科員    主査 田中 龍夫君       伊藤宗一郎君    奧野 誠亮君       坪川 信三君    井野 正揮君       上原 康助君    島本 虎三君       辻原 弘市君    畑   和君       堀  昌雄君    沖本 泰幸君       瀬野栄次郎君    岡沢 完治君    兼務 田中 武夫君 兼務 中谷 鉄也君    兼務 相沢 武彦君 兼務 田畑 金光君    兼務 和田 春生君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         内閣総理大臣官         房会計課長   川田 陽吉君         内閣総理大臣官         房審議室長   青鹿 明司君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      須藤 博忠君         内閣総理大臣官         房管理室長   吉岡 邦夫君         警察庁長官官房         長       富田 朝彦君         警察庁長官官房         会計課長    丸山  昂君         警察庁交通局長 片岡  誠君         行政管理庁長官         官房会計課長  増淵 亮夫君         北海道開発庁総         務監理官    新保 實生君         科学技術庁長官         官房長     矢島 嗣郎君         科学技術庁長官         官房会計課長  野崎 博之君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         法務省民事局長 川島 一郎君         文部省体育局長 木田  宏君         厚生大臣官房国         立公園部長   首尾木 一君         通商産業省公害         保安局長    荘   清君  分科員外出席者         内閣官房首席内         閣参事官    翁 久次郎君         運輸省船員局労         政課長     増岡 広行君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         長       佐々木正賢君     ————————————— 分科員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     井野 正揮君   鈴切 康雄君     沖本 泰幸君   岡沢 完治君     栗山 礼行君 同日  辞任         補欠選任   井野 正揮君     上原 康助君   沖本 泰幸君     瀬野栄次郎君   栗山 礼行君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     島本 虎三君   瀬野栄次郎君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     堀  昌雄君 同日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     畑   和君 同日  辞任         補欠選任   畑   和君     辻原 弘市君   新井 彬之君     鈴切 康雄君   塚本 三郎君     岡沢 完治君 同日  第二分科員田中武夫君、和田春生君、第三分科  員中谷鉄也君、第四分科員相沢武彦君及び田畑  金光君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算内閣及び総理府  (防衛庁及び経済企画庁を除く)所管      ————◇—————
  2. 田中龍夫

    田中主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算中、内閣防衛庁及び経済企画庁を除く総理府所管を議題とし、政府から説明を求めます。山中総理府総務長官
  3. 山中貞則

    山中国務大臣 昭和四十六年度歳出予算要求額について御説明を申し上げます。  昭和四十六年度における内閣及び総理府所管歳出予算について、その概要を御説明いたします。  内閣所管昭和四十六年度における歳出予算要求額は三十六億五千九百七十八万一千円でありまして、これを前年度歳出予算額三十二億七千三百十四万五千円に比較いたしますと三億八千六百六十三万六千円の増額となっております。  内閣所管歳出予算要求額に計上いたしましたものは、内閣官房内閣法制局人事院及び国防会議事務の執行に必要な経費であります。  次に、総理府所管昭和四十六年度における歳出予算要求額は一兆四千二百十五億七千三百九十一万八千円でありまして、これを前年度歳出予算額一兆二千二百七億三千二百四十九万六千円に比較いたしますと二千八億四千百四十二万二千円の増額となっております。  総理府所管歳出予算要求額に計上いたしましたものは、総理本府内部部局付属機関及び青少年対策本部日本学術会議中央公害審査委員会近畿圏整備本部中部圏開発整備本部機関のほかに、公正取引委員会国家公安委員会土地調整委員会首都圏整備委員会、宮内庁、行政管理庁北海道開発庁防衛庁経済企画庁科学技術庁沖繩北方対策庁及び環境庁の外局に関するものであります。このうち防衛庁に関する歳出予算要求額六千七百八億五千七十三万二千円、経済企画庁に関する歳出予算要求額五百二十一億八千四百六十三万五千円については、他の分科会において御審議願っておりますので、それ以外のおもなる経費について、以下予定経費要求書の順に従って事項別に申し上げます。  総理本府に必要な経費三千百八十一億四千八十万一千円、青少年対策本部に必要な経費十億五千七百八十三万一千円、警察庁に必要な経費五百億一千二百十四万三千円、行政管理庁に必要な経費六十一億五千百四十五万五千円、北海道開発庁に必要な経費二千六十億五百二十一万二千円、科学技術庁に必要な経費七百九億二十三万五千円、沖繩北方対策庁に必要な経費四百二十四億一千百八万四千円、環境庁に必要な経費一億八百三十六万九千円等であります。  なお、総理本府に必要な経費は、総理本一般行政等に必要な経費八十九億五千百八万五千円、恩給支給に必要な経費三千九十一億八千九百七十一万六千円であります。  次に、その概要を御説明いたします。  総理本一般行政等に必要な経費は、行政施策に関する広報活動積極的推進、栄典の授与、交通安全対策国立公文書館運営公害紛争処理及び各種統計調査等のための経費でありまして、昭和四十五年国勢調査に必要な経費は、当該年度限りの経費でありますので、前年度に比較して三十九億一千八百九十万七千円の減額となっております。  恩給支給に必要な経費は、恩給法等に基づいて、文官、旧軍人及びその遺族等に対して恩給支給し、また国会議員互助年金法に基づいて、退職した国会議員及びその遺族に対して互助年金等支給するための経費でありまして、昭和四十六年度においては、新規裁定による増加、失権に伴う減少並びに昭和四十五年度に実施した恩給金額改定の平年度化のほか、恩給金額改定等昭和四十六年度恩給改善措置に要する経費を計上しており、前年度に比較して三百四十九億一千六百二十四万五千円の増額となっております。  青少年対策本部に必要な経費は、青少年対策本部一般事務青少年健全育成及び国民健康体力増強等のための経費でありまして、前年度に比較して八千七百五十四万三千円の増額となっております。  警察庁に必要な経費は、警察庁及びその付属機関並びに地方機関経費及び都道府県警察補助のための経費でありまして、前年度に比較して五十五億六千二百七十一万六千円の増額となっております。  行政管理庁に必要な経費は、行政管理庁及びその付属機関並びに地方機関経費都道府県に配置されている統計専任職員費国連アジア統計研修実施に対する協力及び行政情報処理調査研究のための経費でありまして、前年度に比較して七億八千四百三十八万一千円の増額となっております。  北海道開発庁に必要な経費は、北海道における土地改良農用地開発、漁港、住宅、林道、造林等事業経費と、治山、治水、道路整備港湾整備等事業経費に充てるための財源の各特別会計への繰り入れ金等経費でありまして、前年度に比較して二百六十四億三千四百五十六万二千円の増額となっております。  科学技術庁に必要な経費は、原子力平和利用促進宇宙開発推進海洋開発技術推進重要総合研究推進試験研究機関整備充実等のための経費でありまして、前年度に比較して百七億六千三百七十四万六千円の増額となっております。  沖繩北方対策庁に必要な経費は、琉球政府行政運営費に対する財政措置沖繩における社会福祉医療対策整備充実学校施設整備等教育水準の向上、道路港湾等産業基盤整備産業経済振興開発復帰記念沖繩特別国民体育大会関連道路整備等のための財政措置に要する経費並びに南方同胞援護会及び北方領土問題対策協会に対する補助等のために必要な経費であります。昭和四十七年における沖繩復帰に関する施策を一段と推進するとともに経済社会画期的開発、発展をはかることとし、前年度に比較して百五十六億五千四百四十五万五千円の増額となっております。  環境庁に必要な経費は、公害防止自然環境の保護及び整備その他の環境保全をはかるとともに、環境保全に関する行政を総合的に推進することを主たる任務とする環境庁設置に必要な経費であります。  また以上のほかに、国庫債務負担行為として総理本府においては、外国人恩給ついて二十七万五千円、警察庁においては、警察施設整備について十一億三千七十一万円、北海道開発庁においては、北海道公営住宅建設事業費補助及び国営かんがい排水事業について七億一千九百九万三千円、科学技術庁においては、動力炉・核燃料開発事業団出資宇宙開発事業団出資日本原子力研究所出資放射線医学研究施設整備及び航空宇宙研究施設整備等について三百三十七億二千二百四十三万七千円を計上いたしております。  以上をもちまして、昭和四十六年度内閣及び総理府所管歳出予算要求額概要説明を終わります。よろしく御審議くださるようお願いします。     —————————————
  4. 田中龍夫

  5. 西田信一

    西田国務大臣 昭和四十六年度における科学技術庁予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十六年度総理府所管一般会計予算要求額のうち、科学技術庁予算要求額歳出予算額七百九億二十三万五千円、国庫債務負担行為額三百三十七億二千二百四十三万七千円でありまして、これを前年度の歳出予算額六百一億三千六百四十八万九千円、国庫債務負担行為額二百六十五億五千六百二十八万八千円に比較いたしますと、それぞれ歳出予算額で百七億六千三百七十四万六千円、国庫債務負担行為額で七十一億六千六百十四万九千円の増額となっております。  次に、予算要求額のうちおもな経費につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、科学技術振興基盤強化といたしまして、歳出予算額九億四千九百三万七千円、国庫債務負担行為額二億二千百万円を計上いたしました。  これは、科学技術振興のための国の基本計画の策定に必要な調査科学技術普及啓発活動推進並びに研究学園都市建設の一環としての無機材質研究所研究本館及び国立防災科学技術センター大型降雨実験施設建設に必要な経費のほか、優秀な人材の養成確保をはかるための内外への留学研究等に必要な経費であります。  第二に、原子力開発利用推進といたしまして歳出予算額四百七十二億七千五百十七万八千円、国庫債務負担行為額二百四十八億一千四百三十四万七千円を計上いたしました。  まず、動力炉開発として、高速増殖炉実験炉建設を進めるとともに、原型炉のための研究開発を本格化するほか、前年度に引き続き新型転換炉原型炉建設を行なうための経費と、昭和四十七年度に原子力第一船「むつ」を完成することを目標に、原子炉の艤装、付帯陸上施設整備及び乗り組み員の養成訓練を行なうための経費、また、日本原子力研究所における材料試験炉等各種原子炉の運転及び整備ウラン濃縮核融合食品照射研究開発等を行なうための経費のほか、放射線医学総合研究所における医療用サイクロトロン建設を行なうための経費国立研究機関及び民間企業等が行なう原子力関係試験研究に必要な研究費及び委託費保障措置関連施策強化等行政費などであります。  第三に、宇宙開発推進につきましては、昨年改定いたしました宇宙開発計画に基づき、ロケット及び人工衛星開発を進めることとし、これに必要な経費といたしまして歳出予算額百十六億四千三百三十五万円、国庫債務負担行為額八十一億八千百六十九万円を計上いたしました。  これは、宇宙開発事業団におけるNロケット及び試験用ロケット並びに技術試験衛星開発とこれに関連する各種試験施設整備などを行なうための経費のほか、航空宇宙技術研究所におけるロケットの基礎的、先行的研究を行なうための経費及び宇宙開発委員会運営等に必要な経費であります。  第四に、海洋開発推進といたしまして歳出予算額六億七千九百四万五千円、国庫債務負担行為額八千五百五十万円を計上いたしました。  これは、潜水調査船「しんかい」による大陸棚の調査潜水シミュレーターの建造、海中作業基地海中実験等を行なうため必要な経費のほか、新たに海洋科学技術に関する総合的試験研究大型共用試験研究施設設置及び運用、研修等を行なう機関として海洋科学技術センター(仮称)を設置するため必要な経費であります。  第五に、情報関連施策拡充強化といたしまして歳出予算額十億五千一万七千円を計上いたしました。  これは、科学技術会議の答申に示されました科学技術情報全国的流通システム構想についての調査及び日本科学技術情報センターにおける内外科学技術情報提供業務充実をはかるため必要な経費等であります。  第六に、重要総合研究推進につきましては防災科学技術交通事故防止技術基礎電子技術海洋科学技術及び環境保全のための環境科学技術等総合研究実施いたしますほか、不測の事態に対処し緊急に行なうべき研究の円滑な実施をはかりますため特別研究促進調整費八億円を計上いたしております。  最後に、研究開発一般推進といたしまして歳出予算額七十四億三百二十万一千円、国庫債務負担行為額四億一千九百九十万円を計上いたしました。  これは、民間自主技術開発力強化を目的とする新技術開発事業団業務拡充国際交流促進及び資源の総合的利用方策推進に必要な経費のほか、試験研究機関整備充実といたしまして、金属材料技術研究所金属材料疲れ試験設備整備無機材質研究所研究グループの増設及び研究用機器整備航空宇宙技術研究所突風風胴整備国立防災科学技術センター地震予知に関する研究実施等科学技術庁附属研究機関整備運営等に必要な経費並びに特殊法人理化学研究所事業運営に必要な経費であります。  以上簡単でありますが、昭和四十六年度予算要求額のうち、重要項目についてその大略を御説明申し上げました。よろしく御審議のほど、お願いいたします。
  6. 田中龍夫

    田中主査 以上で説明を終わりました。     —————————————
  7. 田中龍夫

    田中主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行協力お願いいたします。  なお、政府当局におかれましても、答弁はでき得る限り簡潔明瞭にお願いをいたします。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井野正揮君
  8. 井野正揮

    井野分科員 長官お尋ねをするわけでありますが、いま委員長からお話しのように、たいへん時間に制約されておりますので、昨日の農林委員会の経過をすでにお聞きだとは思いますけれども、質問前提として御理解を願っておきたいと思うわけであります。  私は、いま御提案になっております北海道開発費の中で、特に北遠の農業、いま農業政策転換がはかられて、北海道酪農中心ということでありますので、この酪農の問題についてお尋ねする前に、その前提条件があるものですからいろいろお尋ねしておる次第でありますが、そこできょうは、長官には綱紀の問題にしぼってお尋ねをしようと思っておりましたが、ぜひ、それと関係がございますので一言きのうのことを申し上げたいと思います。  具体的にするためには具体的地区をささないとやれませんので、長官の最も関心の深いであろう標茶のオソベツ川流域、希望土地改良地区計画、四十四年、四十五年にわたって一千万の国費を投じて調査をした結果、いま開発庁が私に資料としてお出しになったこの資料に基づいて、まず資料要求を一つしたいと思います。  これは完成後に戸当たり農家粗収入は二百二十六万、牛三十七頭となっておりまして、この計画は、基盤である開畑関連をする道路明渠あるいは暗渠等の費用として、二戸当たり二十四万円の年次当たり回収をはかるものだというふうに私は説明を受けたわけでありますが、実はここで、この計画がきわめて実態に即してない、ずさんなものだということを感じました。  その第一は、基盤の畑をつくるだけであって、今日の農家現状分析が、特に負債の解消の問題について考慮が払われていない。これはお調べによって、戸当たり三百七十万円の負債額があり、今日七十四万円の延滞金があることが、開発庁資料によって明らかになっております。さらに、十四・五頭の牛を三十七頭にする場合には少なくも二十頭分の牛舎が必要でありますから、これは一頭当たり二・五坪と考えてみましても、五十坪以上の牛舎を必要といたしますし、年間飼料に必要とするサイレージがようようされることになっておりますので、当然サイロ——ばんがにしろ縦サイロにしろ、必要だと思います。これに加えて、尿だめ、あるいは堆肥場、さらには、この土地は混層耕をやらなければならない泥炭地でありますから、炭カルその他の問題が加わってまいりますし、草生の非常にむずかしいところでございますから、これは種子、肥料、その他においても、一般条件のいい土地よりはさらに多くのものが要ります。  そうなってきますと、昨日は一千万円程度と考えましたけれども、よく考えてみますと一千二、三百万かかると思います。この農家が最終的に一戸当たりにかかった経費というものは、現在の負債を含めますと、二千五百万円程度の総投資額になってくるわけでありまして、国の助成補助、その他のものを差し引いて、利息を換算していきますと、少なくもこの農家年間五百五十万円以上の粗収入をあげないと、実は経営ができぬという問題になってくるわけであります。また牛の増加については、年間一一%の自然増をもくろんで、牛は特に配慮しないということでありますから、おおむね十一年かかりますし、そうしてこの十年目に搾乳できる牛の数は、一番いい条件統計をとってみても二十七頭程度、また年間搾乳量を二十二石に計算いたしましても、この収入は四百万程度にしかなりません。加えて、自然増を見るのでありますから……。個体販売というものはないわけでありますから……。  こういうふうになってきますと、この開発庁が一千万かけてつくられた開発計画というものは、全く北海道の実情に合ってない。北海道から初めて開発長官が出た、そうしたら全く北海道の事情に合わぬ計画を立てて、これが開発庁計画でございますといってわれわれの審議に出されておることは、まことに納得がいきません。きょうこの議論はしようと思いませんから、この点はひとつ、この委員会の終わるまでに、資料で、あらためて、何年据え置けばいいのか、何年利息を取らないで何年目から利息を払えるようになるのか、延滞にいつ手をかけられるのか。この農家がこれだけの十億の投資をした後に、ほんとうに国費むだ使いにならないのかなるのか。私は、きちっとした資料をいただかなければ、この予算にすら賛成することはできないと思うのであります。この点をまず前もって資料の提出をお願いをいたします。  さて、質問に入りたいと思いますが、昨日、倉石農林大臣は、堂垣内君が行なったような、国家公務員農地の取得をした場合に、農政の骨幹がくずれてしまうから、農林省の役人がした場合に、厳重に調査をして、公務員法の懲戒の対象になると答弁されました。これが第一点であります。  第二点は、この希望開発事業土地改良事業の中には、相対売買によって今日非農家の人あるいは不在の人、こういう人によって占められている地籍が、私の推計で、確実なものは数十町歩、想定されるものを加えますと八百三十一ヘクタールのうち一〇%以上になるという私の見通しについては、大体肯定されたようであります。そして、この地域を、もし不適地であって、不用地であって、農業に適さないとするならば、計画から除外をしなければなりませんし、必要なものであれば買収をしなければならないし、こういう問題が出てまいります。この処理については、地籍十分調査の上で、農地法の適用をして接収するなりもしくは買収をする、その場合の価格は時価であるとお述べになりました。これもまた重要なことだと私は思います。このことをまず長官に御認識を願っておくということを前提として御説明を申し上げておきます。  さて、私のお尋ねをしようとします点は、長官の私に対する過般八日の答弁を読みまして、ぜひ確認をしておかなければならぬことがたくさんございます。  私が長官お尋ねをする前に確認をしたいと思います資料は、標茶開拓農協から堂垣内尚弘君としてまた香千枝さんに訂正をしたこの地目登記申請書写しであります。これは法務省標茶出張所謄写でありますから、私が改ざんしたものでもありませんし、捏造したものでもない。これは長官もお持ちだろうと思いますが、まずこれを確認をしていただきたい。  そして、同時に、この登記に使われた標茶開拓農業委員会現地目証明書、さらにはこの登記謄本、そして昭和三十七年の標茶開拓農協のこの土地が地目変更申請したときに却下した議事録、さらには堂垣内香千枝君に渡すためにこの土地を非農地とした速記録、またあわせて三十七年の標茶開拓農協役員引き継ぎ書写し、これはいずれも私は北海道庁、北海道議会、また開発庁、あるいは農林省、そして開拓農協から受け取ってまいったものでありますし、この役員引き継ぎ書については、釧路開建技術長、根岸さんでしたね、それから標茶町助役、また標茶町町会議員三名、さらに農業委員会事務局長小場さん、さらには松本組合長、この人々の合意の上の証言で、あらためてこの謄写をしたものをいただいたわけでありますから、これも私が捏造したものでもございません。  以上の資料については、これが公正なものであり、今日までの事実を記録したものであり、この事実は私も長官も否定することはできないと思うのでありますが、この点御確認いただけますか。
  9. 西田信一

    西田国務大臣 いま井野先生がお取り上げになりました幾つかの書類、それと同じものだと思いますが、私もその写しを拝見したものもありますし、まだ目を通しておらないものもございます。おそらくは井野先生のおっしゃるとおりだろうと思いますが、その書類は、目を通しているものについては確認できますけれども、それ以外のものにつきましては、ちょっとここでお答えできない……。
  10. 井野正揮

    井野分科員 おととい、開発局の、ここに来ている大江事務官が、私の質問について聞きにこられたときに、私は全部資料は提示いたしました。このことを確認しないと議論はむだになるから、ぜひ長官にお伝えをしてもらいたいということを言ってきたのでありますが、ついでだから、そのとき私が激怒したことを一つ言います。  いろいろ話しているうちに、公務員が農地を取得することがそんなに悪いことなんでしょうか、私どもとしてはふしぎでたまりません、なぜそんなにいきり立たれるのかふしぎに思うのです、こういうお話がありました。  長官総理府の高級公務員はそこまで腐っているのですか。農林大臣は、農地所管をする農林省の公務員がこういう手段で農地を取得するようなことでは、国民に安定した食糧供給をする農政の骨幹は瓦解をしてしまうと思うがどうですか、そのとおりです。しこうして、こういう問題が起こった場合に、私は厳格な調査をして公務員法に照らして厳重な処断をするという答弁は、ここで出たのであります。私は大臣がこの資料について御承知ないということは、あなたの開発庁の中の綱紀は——大江さんは私用で私のところに来られたのではないと思いますよ。職務として来られたのだと思いますが、どうなんですか。
  11. 西田信一

    西田国務大臣 私がここに持っておりますものがたぶん先生の御指摘の資料だと思いますが、これは確かに私も目を通しました。ただし内容におきましては、その後いろいろ調査いたしましたが、たとえばその資料が何を意味しているか、何を結論づけているかということにつきましては、若干先生と私の調べたところに違う点もあるようでございますから、内容につきまして私いま全部そのとおりであるということを申し上げられないものもある、こういう意味で申し上げたのであります。
  12. 井野正揮

    井野分科員 私はまだ内容に言及いたしておりません。この資料の出どころを申し上げている。おたくからもらった資料もあるのですよ。農林省からもらった資料もあるのです。たとえばこの申請書のごときは、これは農林省からいただきました。農林省農地局からいただきました。私はこれからお尋ねしようとするものは、資料の認識が違っておりますと議論が食い違いますから、総理の言われるとおりきわめて重大な問題であります。こういうことが公然と行なわれるような政府であったり行政庁であったりすると、国民はこれを信頼いたしません。総理堂垣内君の名誉にも関することであり重大であるから、調査をした上でお答えをします。私はただいま無能力者で西田君の発言を信ずる以外にないとこの速記録で述べられております。きょうは総理にお手をわずらわすまでもなく長官と私の間で詰めていかなければならぬ、こう思っておるのです。  まず最初にお尋ねをしたいと思いますが、私は過般堂垣内君が技術長の近藤君を通じて役場、農業委員会そして開拓農協との折衝をしたものと思うということを言ったら、それは公用ではなくて、私は堂垣内に会ったけれどもそういうことはしないと言っている、こうお答えになっておりますことは速記録にあるとおりであります。そこで具体的にお尋ねをしたいと思うのです。  まず、この標茶町法務局に行なった登記申請書の中の、これは添付書類があります。一つは申請書副本、委任状とあります。そしてこの委任状のところには司法書士、これは代理人、上田なんとかと書いてございます。上田某ですね。片方は売り人の標茶開拓農協組合長代表理事川村英一君ですから、これはそのとおりでいいと思いますが、長官、財産の売り渡しですから、こちらの代理人とは言うまでもなく堂垣内尚弘君のこれは委任を受けた人なんです。そこでこの委任状一通と、こうなっておるわけです。長官、お調べになったのですから、この委任状は堂垣内君が出されたものだと思いますが、いかがですか。
  13. 西田信一

    西田国務大臣 具体的に調査をさせましたので、係官から説明させます。
  14. 井野正揮

    井野分科員 質問どおり答えてください、質問どおり。
  15. 新保實生

    ○新保政府委員 先生がいま……
  16. 井野正揮

    井野分科員 委任のところだけでいいんです。よけいなこと言わぬでください、時間がないんだから。
  17. 新保實生

    ○新保政府委員 私どもが堂垣内氏からいただきました書類の写しによりますと、先生がおっしゃいましたように、代理人、これは上田でなくて土田だと思いますが、土田七郎さんを削除しまして、それから(井野分科員「川村英一君」と呼ぶ)川村英一さんと書いてございます。
  18. 井野正揮

    井野分科員 この委任状一通というのは、堂垣内さんがお出しになった委任状ですか。こちらは当事者ですから、委任状要らないのですから、相対売買ですから、売り人と買い人の委任状もしくは本人の署名が必要なんです。
  19. 新保實生

    ○新保政府委員 おそらく堂垣内氏が出した委任状だと考えます。
  20. 井野正揮

    井野分科員 こういう答弁では事実の究明ができませんよ。私は一月の十六日以降開発局にこの問題を持ち込んで、双方とも一生懸命調査してきたのですから。長官、ほんとうにまじめに総理の負託にこたえて真実を明らかにしようとなさっているのですか。  では、その次お尋ねします。  標茶と札幌の距離は、私が言わなくてもわかると思うのです。手紙で往復しておったのでは今日の郵便事情ではいきませんから、一体この売買の話し合いは堂垣内氏といつどこで行なわれたのですか。もう一つお尋ねします。この金は何月何日だれがだれに支払ったのですか。そしてこの登記事務は、委任をしなかったとするとだれがやったのですか。この三つをお答えください。
  21. 西田信一

    西田国務大臣 調査いたしました事務当局から御答弁申し上げます。
  22. 新保實生

    ○新保政府委員 私どもが調査しましたところによりますと、三十九年の春、堂垣内氏が当時の釧路開建技術長に対しまして、この付近の適当な湿地を買ってみたいものだという話をしたわけでございます。その話を受けました近藤技術長が当時の標茶町の水口氏にその話をいたしまして、水口氏からさらに溝井氏に話がいったようでございます。その後その売買の具体的な話は開拓農協あるいは町の間で行なわれまして、その話の結果を水口氏が近藤技術長から聞きまして、近藤技術長が三十九年の十一月ごろその結果を札幌へ出張の途次報告した。で、堂垣内氏はその土地を確めもせずに万事まかしましたということで、その後の手続につきましては、堂垣内氏は関知しておらないようでございます。  代金をいつだれが払ったかという事実につきましては、私ども詳細をつまびらかにいたしておりませんが、四十年の三月十二日に代金を支払ったという領収証は確認いたしております。  以上でございます。
  23. 井野正揮

    井野分科員 領収証はだれが出したのですか。
  24. 新保實生

    ○新保政府委員 ちょっとお待ちくださいませ。
  25. 井野正揮

    井野分科員 長官、あなたの答弁とこの事実と違うじゃないですか。近藤君は札幌へ公用出張した途中といいますけれども、近藤君は自宅へ行って話したのですか、それとも開発局の中で話したのですか、どっちなんです。
  26. 新保實生

    ○新保政府委員 近藤氏は開発局において堂垣内氏に報告をしたと聞いております。
  27. 井野正揮

    井野分科員 政府委員の説明によれば、報告ということばを使われておるのです。個人に報告ということばがありますか。職務の関係じゃないですか。長官お答えください。
  28. 西田信一

    西田国務大臣 個人的なことでありますから、その返事をしたという意味で報告ということばを使っております。返事だと思います。
  29. 井野正揮

    井野分科員 これはたいへん奇怪なことを聞くと思うのです。役所の中で、私用ですよ。公用によって技術長標茶町の担当係に話をした。ぴたり合うじゃないですか。標茶町はこの話を受けて開拓農協に話をして、この開発計画の可能性を期待をして、そうしてこれを公用取得というのだから技術長に返事をして、技術長は公用だと思って開発局の中で堂垣内局長に報告しておるじゃありませんか。あなたは事実と違うということで、これは建設部長時代にやったことで局長時代じゃありませんと言ったけれども、そうじゃないですよ。だいぶ時間がかかっておる。三十九年の夏話をして、秋に可能性が出てきて四十年に登記をやって金を払って、農業委員会を通したのは四月二十八日、このとき局長じゃないですか。どこ、事実が違いますか。私はでたらめ言っておりはせぬです。経過的に見ると、あるときは建設部長、あるときは局長、あるときは事務次官なんです。あなた、調べもしないで適当な答弁をここでしているんじゃないですか。いかがですか。
  30. 西田信一

    西田国務大臣 売買契約を結んだのは三十九年と聞いておりますから、その当時は建設部長であったという答弁を申し上げたのでございます。
  31. 井野正揮

    井野分科員 私は全体の話をして質問をしておるのです。何月何日に局長——速記録を見ますと、私は局長ということばを使っておる。この当時の局長は上戸さんです。私は堂垣内ということばを使っておりません。このよこしまな考えを起こしたのは建設部長堂垣内尚弘君ですよ。この当時の局長は上戸さん。しかし、本人がこれを正式に公的に取得の方法を切り開いたのは四月二十八日です。これはおわかりですね。このことについて、これは公用なのか私用なのか。もし公用だとすれば、部下に命じた行為があるではないか。官庁名を使って標茶町や釧路支庁にまで相談をさしているではないか、こういうことをお尋ねしたら、あなたは公用ではないということですから、そうしますと、公的の機関、場所、執務時間中において、堂垣内君が綱紀を乱して行なった私用だ、こういうふうに私は理解をしてもよろしいですか。それとも開発庁の中では、総理府の中では、執務中といえども、特に局長とか次官のような人は私用をやってもよろしいという服務規律でもありますか。
  32. 西田信一

    西田国務大臣 頼んだのは個人的なことで頼み、また頼まれた人も個人的な依頼をたまたま開発局に出た際に、もちろんそのためにわざわざ出てきたのではないと思いますが、ついでにこういう土地がございますということを申したのだと思います。その意味では、私は私用である。  それから、この間はまた公用電話を使ったのじゃないかというお尋ねがございましたから、それも調べましたが、そういう記録もございませんし、そういうこともない。電話で話したこともないということを調べの結果報告がございましたから、そういうふうに申し上げたのでございます。
  33. 井野正揮

    井野分科員 このことに関して無能力であることは、総理もあなたも同じようです。  それでは次に問題を進めますが、いまあなたがどのように強弁されようとも、状況の証拠の中で、具体的な物証の中で、あなたがいかにふまじめな無責任な答弁をされているかということが実証されていきますから、それでよろしいと思います。  次に、倉石農林大臣は、この八百三十一ヘクタールの中の開発計画の必要な用地については時価をもって買い戻す、あるいは農地法の適用によって接収するという、そういう意味の御答弁がありました。この時価とは幾らだと考えておられますか。
  34. 新保實生

    ○新保政府委員 お尋ねでございますけれども、農地法関係の価格、売買価格をどの程度にするかという問題につきましては、ちょっと所管外でございますし、後ほど答えさせていただきたいと思います。
  35. 井野正揮

    井野分科員 大臣を補佐される事務当局の皆さんは、この資料を詳細に御検討になりましたか。これを一字一字みな読まれましたかと聞いておる。
  36. 新保實生

    ○新保政府委員 一昨日でございますか、先生からいただきましたコピーは詳細に拝見いたしております。それ以外のものにつきましても、私どもも収集できる範囲の調査はいたしたつもりでございます。
  37. 井野正揮

    井野分科員 大臣、今度はよく聞いておってくださいよ。この堂垣内香千枝君が、堂垣内さんの奥さんですね、非農家です、農業に携わる意思もないし標茶に行って住む意思もないわけです。この人が取得をした十町歩、三万坪、十万平米の土地は、昭和三十八年の二月十二日に札幌にございます株式会社北洋相互銀行に抵当権として三百万円設定されております。私の捏造じゃないのですよ、このとおりなんですから。そして四十年の三月六日に解除されておる。この当時この抵当した標茶開拓農協負債総額、欠損額は四千三百万円ありました。そのうちの一部の融通資金として三百万円の抵当にこれが入って、堂垣内君に譲るためにこれは金を返して抵当を解除いたした事実がございます。御承知のように抵当権は日本不動産かどこかの鑑定を得て、そして評価額の六割しか融資されないものでありますから、この三百万円が六割に該当する価格というのは四百八十万円になります。その時価は三十八年で四百八十万円、今日、北海道における二番目に大きな銀行、北海道資本として二番目に大きな銀行がやったものでありますから、不正も不法も不当もないと思います。この価格をお認めになりますか。
  38. 新保實生

    ○新保政府委員 ただいま先生が御指摘なさった部分については、ちょっと私見ておりませんので、おそれいりますが……
  39. 井野正揮

    井野分科員 それを読んでおってください。次に行きますから。  大臣、この土地堂垣内君は幾らで買ったと思いますか。
  40. 西田信一

    西田国務大臣 正確に記憶しておりませんが、五万何がしかと記憶しております。
  41. 井野正揮

    井野分科員 領収書を私も見ておりませんからわかりませんが、五万二千五百円だそうであります。坪当たり一円六十八銭です。これは妥当な額だと思いますか。
  42. 西田信一

    西田国務大臣 当時おそらく両者が、売るほうも買うほうも合意できまった値段と存じますが、この売りました土地は、開拓農協が国から払い受けました土地のごく一部であります。九百五十町歩を国が一万何がしで払い下げております、そのうちの十町歩でございますから、おそらくはその当時は妥当な価格であったものであろうと考えます。
  43. 井野正揮

    井野分科員 西田さん、あなた国務大臣ですよ。国が開拓農協に払い下げたのは、ものの価値によって払い下げておるのではありません。北海道開発し入植をさせた人々の営農を確立をし、あとう限りの援助をするために、かつて日本帝国時代に軍馬補充部の用地として国が保有した財産を払い下げに必要な経費をもって対価として払い下げたというのが、私は国の政策方針であったと思うのであります。これを第三者の農業以外の人の財産として、しかも、国家公務員、何も開発庁設置法を読むまでもなく、局長の職務権限、人事権、北海道民に対する信頼、権限、私は北海道知事よりもまさるものを持っていると思うのであります。この人が冗談を言えば、総理府の人間はそれを真に受けて違法、不法を合法化するために、農業委員会にはでたらめな議決をさせ、町にはオソベツ川の開発をやるからといって甘言をもって誘い、多額の負債と営農に苦しんでいる農家に対して、こういう希望を与えさして、国からやった金で国によこすのがあたりまえではないかとやった結果がこうじゃないですか。大臣、抗弁の余地がありますか。
  44. 西田信一

    西田国務大臣 私は、当時の価格が妥当であるかどうかということの正確な計算をして申し上げたのではありませんけれども、まあ国が払い下げたものは九百五十町歩で一万円余、そしてその後何年かたっておりますけれども、それが十町歩で五万幾らといえば、両者が協議の結果まとまった価格であるとすれば、おそらく妥当な価格できめたものであろうというふうに考えます、こう申し上げておるのであります。
  45. 田中龍夫

    田中主査 井野君に申し上げますが、あなたの持ち時間が参りましたので、できるだけすみやかに結論をお急ぎいただきたい。
  46. 井野正揮

    井野分科員 すみやかに終えろと言ったって、こういう答弁で国民は納得しますか、あまりにも機械的に扱わないでもらいたいと思うのです。  大臣、一円六十八銭で払い下げた土地が、今度は十億の金をつぎ込んで農用地として買収するときに、時価でやるときに、私は先ほど具体的な例をあげました。国が用地買収する等の場合には、時価とは何か。最近における近傍の取引であるとか、あるいはその辺の抵当権の設定等、交渉をもって行なわれる価格を基準として、各般の事情を考慮して払った価格が公正な価格だということは、しばしば各省庁において財産取得売買等のときに行なわれる説明用語ではないですか。大臣、どうです。あなたは町長もおやりになったし、北海道議会議員もおやりになったし、監査委員もおやりになったんだから、その点よく御承知でしょう。
  47. 西田信一

    西田国務大臣 農林当局が答弁いたしましたのは、一般原則を申したと思いますが、本件に関して、もしこれがその土地を買い上げるとか、あるいはまた譲渡するというような場合に、私は堂垣内さんはこの土地の取得については利得とか、あるいはまた将来自分は農業をやるというような考えで買ったものではないというふうに考えております。  そこで、これが農業的に全然役に立たない土地であるということで、農業委員会でも、堂垣内君が買います前に原野ということに地目を変えておるようでございます。しかし、これがこの間も申し上げましたように、いま調査中でございますから、調査の結果、これが農地として使えるというようなことがはっきりしてまいりますれば、私は適当な措置をとりますということをこの間申し上げました。私が申し上げたのはそういう気持ちでございますが、その後聞きますところによりますと、堂垣内さんはすでに十二月ごろに、もうその土地は、もし農業に役立つならば、自分は決してそれを持っていることに固執しないで、いつでも適当な措置を講じますということを言明しておるようでございますし、ごく最近に至りまして、町農業会から譲渡してもらいたいという申し出が文書であったので、自分はいつでもそれに応諾いたします、万事条件も一切おまかせしますということを返事を出したということを報告を受けております。したがいまして、そのときの農地として使います場合の買い上げ価格というようなものは、おそらくは堂垣内君としましては無償ということも考えての譲渡というような気持ちでおるように私は考えるのでございます。したがいまして、いま先生のお尋ねの大きな農地買い上げの近傍類地の価格云々という問題は、この問題に限って私は問題にならない、かように考えております。
  48. 井野正揮

    井野分科員 だから、あなた国務大臣として答えているのかと聞いているのは、堂垣内さんの土地だけではないということはさっきから説明しておるじゃないですか。堂垣内さんは寄付すればいい、篤志行為になる。前には官位を利用して、職員を使って農地を取得しておいて、天下国家で問題になれば返せば済む、それなら犯罪なんてないことになりますよ。そういう調子でやるんだったら、なるほど大江君の言うとおり、何でこの土地を取ったのが悪いのでしょうか、一言言わしてもらいたいくらいだ、こう言っているのですよ。それくらい総理府事務官腐っているのですか。公務員法九十六条、九十九条、あの宣誓は一体何のためにするのですか。もっとだれにも適用する答弁をしてもらいたいのです。そのほかに釧路支庁の経済部長、これは農地法の監視人ですね。拓殖課長、これを扱った溝井君、いずれも土地取得しておるじゃありませんか。ばれたら、全部戻せば済むという結果になることになりますが、私は国のたてまえとしてそういうことにはないと思います。今日の税法は、どろぼうした金でも、横領した金でも、所得になったら所得税かかるのですよ。そのときはあなたは盗んだものを返すんだから税金を取らないということにはならないのです。あくまでも前の事情は事情として相対売買をした現法律下における土地所有者堂垣内香千枝君の土地は、この開発計画に沿って必要である場合は買い戻します、その価格は時価ですと、農林大臣は言っておるのです。そこで私はこの堂垣内君、いや、奥さんが取得する前に、すでに札幌の北洋相互銀行に三百万円の抵当で入れていた、この事実は認めるでしょう。うなずくだけでいいですよ、これも認めませんか。
  49. 新保實生

    ○新保政府委員 ちょっと調査させていただきたいのですが、三百万円というのは面積がいかほどでございましたでしょうか、その辺をもう少し調査させていただきたいと思っております。
  50. 井野正揮

    井野分科員 これだけ問題になって、いまなおそれを調べていないというのはおかしいですよ。私は知っておりますよ。しかし、いずれにしても、大臣、これがたとえば六百町歩が三百万円で入っておったにしても、この土地の値段は五万二千五百円ではないですよ、少なくも三倍ないし五倍、あるいは十倍、不当に安い価格であることだけは間違いない。半値で買ったらもうけものだ、昔から安いものの表現に古もの半値ということばがある、半値だったら大安いということになるのですね。十万で買ったとしても大もうけだということになるのですよ。一円六十八銭ですから、笑い話。しかも、大臣こう思いませんか、堂垣内氏が冗談に言ったことが実現をした、名誉棄損もはなはだしい、告訴も辞さないと読売新聞に言っております。私は告訴されることになるわけです。私がただしているのは、このことを不問に付して、あなた北海道開発行政やれますか。  もう一つ聞きたいのです。開発局の中で開発局長が釧路開建技術長に頼んだといっても、本人は報告だとしておるのは、公務だと思っておる。またこの標茶開拓農協議事録、湿地帯の試験として使いたいけれども、開発局では取得の手続がめんどうなので——ここは堂垣内、入っていませんよ、局長個人の名前で取得をしたい、当時の人たちは上戸さんだと思っておったのですよ、局長、上戸さんなんですから。ところが局長ではなくて、建設部長の奥さんだった。この議事録にこういう提案をせしめたものは、町の拓殖係長であることは間違いありません、これは私は確かめておりますから。そして小場事務局長はこれを信じて提案をしたわけであります。この提案とこの議事録は公文書でございます。この真実性を長官は否定をされますか。
  51. 西田信一

    西田国務大臣 詳細は調査当たりました者に御答弁をさせたいと思いますけれども、私が受けました報告によりますと、その当時農業委員会議事録に載っております小場君ですか、またその後昨年の十二月ですか、役場で何かこの問題を討議される場合があったらしいのでありますが、その場合におきまして、必ずしも明確にそう申しておらないようでございます。  それから先ほどいろいろお話ございましたが、当時は、先ほど何人かお述べになりました人たちが土地を買っておるのは、堂垣内君より先三十八年、三十九年ですね、先に買って、堂垣内君はむしろあとのようでございます。  それから当時、開拓農協は非常に財政的に苦境にありまして、それで土地をなるべく売りたいというような希望を持っておったことも事実のようでございます。したがいまして、だまして買ったとか、うそを言って買ったとかいうことは全くないと私は信じております。
  52. 井野正揮

    井野分科員 私は質問を打ち切りたいと思って急いでいるんですよ。ところが、長官はなぜ聞かないことを答えるんですか。私がいまお尋ねしたのは、この標茶農業委員会議事録、提案をせしめた理由——開発局が取得したい、こういう申し入れがあった。局ではうまくないので局長の個人の名前でやりたい、このときの局長は上戸さんですから、本来であれば上戸さんの名前になっておればこのとおりなんです。ところが、建設部長の堂垣内さんになっている。ここにも事実と違うものがあり、作為があるわけです。これはだれが見たってそう思わざるを得ない。あなたはこの文書が公のものであり、証拠たるものだということを認めますか認めませんかと聞いているんですよ。この書類ですよ。私の説明ではなしに、この書類です。
  53. 西田信一

    西田国務大臣 この議事録は確かにそのとおり書いてございますが、その一年前にすでに原野になっておって、前地籍が原野になっておる議事録もございます。
  54. 田中龍夫

    田中主査 井野君に申し上げます。お約束の時間が経過いたしました。
  55. 井野正揮

    井野分科員 長官農地法を知らないんですよ。原野は規制を受けるんですよ。国務大臣がそういうことでどうするんですか。原野であれば農業委員会にかかるんですよ。だから、原野であるものを雑用地に変えたんですよ。非農地にしたんですよ。違いはしません、私農業委員ですから。地目変更というのは、そういうものなんですよ。  私は最後に申し上げます。きょうの御答弁は一つも納得できません。総理は、このことに対しては無能力者だと言われましたけれども、長官もまた無能力者です。開発局は熱心にこの問題の真相を究明する意図はなくして、堂垣内君の行なった行為を正当化することに一生懸命です。このことは将来の国政にたいへんに重要な問題を残します。したがって、十分なる調査をして、私はこれらの資料を公式に提出をいたしますから、委員長、これらに基づいて、あるいは司直の手をもかりて、開発局が調べるものではなしに政府自身がこれを調べていただいて、そうして総理からあらためて御答弁をいただきたいと思います。この内容については主査の報告にとどめていただいて、不問に付することのないように、明朗な国会の運営お願いしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  56. 田中龍夫

    田中主査 次は、相沢武彦君。
  57. 相沢武彦

    相沢分科員 西田冬季札幌オリンピック担当大臣としてお尋ねいたします。  明年の札幌オリンピック冬季大会まではあと残すところ三百数十日となりまして、アジアにおいては初めてこの冬季大会がわが国で開催されるということもありまして、内外ともに非常な関心を持たれるところでありますし、また期待も持たれるところであります。特に開催地であります札幌の場合は、昭和十五年に一度開催予定をされながら戦争のために中止になるという経緯もありまして、来年の開催にあたっての喜びもひとしおであろうと思うわけであります。本年は二月の七日から八日間にわたりまして、来年のリハーサルともいうべき札幌国際冬季スポーツ大会が行なわれて、まあまあの成果をおさめたということでございますが、同時に施設や運営面に対して非常に検討の余地が残されているということが新聞にも報道されております。  そこで、来年の本番のときには、今回の冬季国際プレオリンピックの反省を土台にしまして万全の対策を立てるとは思いますが、この際、冬季大会の担当大臣として、簡単でけっこうですから、その御所信をまず承りたいと思います。
  58. 西田信一

    西田国務大臣 競技場の設備、関連施設ともども鋭意努力をしてやっておりまして、競技用の施設は一部を除きましてほとんど完成をいたしまして、プレオリンピックの実施に間に合ったわけでございます。  このプレオリンピックはいろいろな意味を持っておりますが、競技場のテストあるいはまた運営の予行あるいは選手強化、いろいろな意味がございますが、特に競技場並びに関連施設が欠陥がないかというようなことを確認したいということがわれわれとしては大きな目標の一つでございます。そういう意味におきましては、いろいろこのたびのプレオリンピックで改善を要すべき点とかその他教訓を得ましたので、十分検討いたしまして、そして明年は万全のオリンピック大会を実施したいと考えておる次第でございます。
  59. 相沢武彦

    相沢分科員 ただいまも長官おっしゃいましたように、かなりの施設の面にも再検討を要する面があるわけでございまして、組織委で総点検したところ、六競技場で二十四項目の問題点があがっております。きょうは時間も限られておりますので、おもな点だけ、その後の対策をどう進めるのかお尋ねしてまいりたいと思うのですが、大倉山、それから宮の森ジャンプ競技場、ここの問題としまして非常に心配されている点は、立見席が四十度の傾斜地に約七千人ほど収容するようにできている。ところが、手すりが低いために前へ観客が転落するという危険性がある。この点をどういうふうにされるのか。  また、この設計をされた伊黒正次氏も言っておりますが、当日一番心配なことは、この観衆が場外に吐き出されるとき、相当急斜面の下り道路を観客が歩く、集中する、そうしますと、大人数で歩きますから、雪は歩いているうちだんだん氷みたいにつるつるすべるようになってくる。これまでわが国でも非常に群衆が歩行するときに、どうも日本人の群衆心理としてなかなか団体行動がとれないという欠点がございますので、あの二重橋事件とか、あるいは弥彦神社事件等で、いま痛ましい犠牲が先例として出ております。この二の舞いを踏まないために、相当慎重な考慮を払っての施設の改善等をはからなければならないと思うのですが、この点についてはどのような対策を考えられておりますか。
  60. 木田宏

    ○木田政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘のございました大倉山ジャンプ競技場のこの山地の部分の立見席のことでございますが、御指摘のような斜面になっております関係上、この幅を二メートル前後にとりまして、しかも前の、何と申しますか土どめの工事を当初一メートル二十で予定しておりましたけれども、それをさらに一メートルほど高めまして、かなり強度の強い構築物にいたしました。ことしのプレオリンピックの実情を見ましても、あの部分そのものの危険性というものはまずないものというふうに考えております。  次に、御指摘のございましたその傾斜地のところに七千五百人分の観客席がございます。大倉山競技場は全体として五万人を入れることになっておりますけれども、斜面に七千五百人入るわけでございます。しかも、そのうち三段階に分かれておりまして、一番上部の部分に通じます道路が御指摘のように若干急である。また、幅員が二メートル程度しかないということで、これはプレの開催前に西田長官からの総点検の御指摘がありました際に、関係者で少し協議をしたことでございまして、本年度は観客が五万人入っておりませんのでその問題はございませんでしたが、来年本番のときには、必要部分の拡幅を少ししなければならぬというふうに考えています。傾斜地でございまして、全部の取りつけ道路の拡幅をするわけにはまいりませんけれども、曲がりかどになりますこの部分は少し広げまして、いま御指摘のありました御心配のないようにつとめたいと思っております。  また、競技が終わりまして、全部の観客が下へおりてまいりますときのさばき方に問題がございますので、これは、市道の大倉山線を、行きどまりになっておりますが、駐車場から先のほうへもおりられるように道路を新たにつけまして、競技が終わったあとの観客のさばき方ということにつきましては、万全を期したいというふうに考えておるところでございます。
  61. 相沢武彦

    相沢分科員 いろいろと対策を考えられておるようでございますが、オリンピックでどんなにすばらしい記録ができても、また選手同士が友好を深めても、市民やまたそれに非常に期待を寄せて来られる観客に、一人でもこういった事故が起きた場合には非常に汚点を残しますので、十分な対策を考えるとは思いますが、さらにいろいろと想定をして万全の対策を行なっていただきたいと思います。  次に、これは前からも指摘されていたが、やはり事故者を出してしまった真駒内のスケート場の屋根の雪の問題でございますが、これは伝えられるところによりますと、設計の段階でもうすでに危険が指摘されていた。ところが、この打ち合わせのときに、開発局のほうで、設計の段階でわかっていたのに、予算関係というようなこともあって、ゴリ押しで建設が進められてしまったというような発言等があって、思わぬ内側騒動ということで、会議も非公開に切りかえて相談されたそうでございますが、その辺のいきさつは、大臣には報告があったのでしょうか。この設計の途上ですね、問題点があるんじゃないかというような指摘、あるいは心配して大臣のところへ申告をするというようなことはなかったですか。
  62. 西田信一

    西田国務大臣 工事施工中の段階におきましては私は特に報告は受けておりませんが、でき上がりましてから総点検を命じまして、いろいろな問題点を取り上げました際に、落雪防護について問題がありまして、そして防護さくを設けるというようなことで、その安全を期するということになった事実はございます。
  63. 木田宏

    ○木田政府委員 御案内のように、直径百三メートルの競技施設を柱なしでささえるということでございまして、設計の段階から積雪をどうさばくかということは、関係者の最大の関心事でございました。むしろ、ある程度雪がじょうずに落ちるようにということを考えませんと、屋根の構造がもたないということでございますので、設計段階から関係者の間でかなりいろいろな議論があったわけでございます。ですから、落とし方につきまして、それぞれの御意見のものがあったということは、私も聞いております。ただ、最終的な設計者の仕上がりの段階で、どうしても屋根から自然に雪が散って落ちるということを想定せざるを得ないというところから、四カ所の出入り口につきましては、八・五メートルの長さのひさしを一応つけたわけでございます。しかし、屋根が二段になっておりまして、一番上部から、今回のようにまっすぐすうっと遠くへ飛んで落ちるという想定をちょっといたしかねたものでございますから、先ほど長官から御指摘がございましたように、プレの前になりまして、落雪の防護さくを張ります場合に目測を誤ったということが確かにございます。
  64. 相沢武彦

    相沢分科員 いまお話しのように、一応落雪を予想して、幅八・五メートルのひさしを張り出して、九メートル離れたところに二百メートルにわたって防護さくを張りめぐらしたけれども、実際には防護さくを乗り越えて七メートルも外側に雪が飛び出した。そのために三人の方が負傷されたということですが、やはり現地の状況をよくおわかりの方——その方が政府の役人としても、関係者としても、地位の低いといいますか、実際に当たっていらっしゃる方の進言なり何なりを、もっと上部の方が真剣に受けとめて、それを取り入れていくというようなことが大事じゃないかと思うわけです。大臣も北海道にお住まいですけれども、どうも苫小牧の雪の少ないところのようで、あんまり雪のこわさというか、その辺はまだ感じ方が薄いのじゃないかと思うのですが、その点に対する対策をもう少し真剣にやっていただきたいと思うのです。  組織委等関係者の間の緊急打ち合わせ会議のときに、屋根をルーフヒーティングにする、あるいは落雪の個所に観客が絶対に入れない防護さくを設ける、地下道を新設して会場入口と結ぶ、こういった意見が出されて検討をするということになりましたが、プレオリンピック当時にやらなかった新しい対策として、別にどういうことを考えておられますか。
  65. 木田宏

    ○木田政府委員 その点は、プレのときのあの事故も貴重な教訓でございましたし、これからの雪解け期のこともございますので、プレの終了直後にもいま御指摘がございましたような関係者の会議が持たれましたが、実際にどうすることがいいかということは、敷地のすぐ外を取り囲んでおります道の森林公園のあり方との関連もございますので、十分これから討議を重ねたいと思っております。  具体的な措置をどうするかということにつきましてはまだ検討中でございまして、いま話題に出ておりますものをどう取りつけるというようなところまでは、まだ至っておりません。十分にこれは支障のないように検討さしていただきたいと思っております。
  66. 相沢武彦

    相沢分科員 十分な検討はけっこうなんですが、本番までに——施設の整備の工事が間に合うような段階までに検討して、実施をしなければ手おくれになると思うわけです。今年度冬季大会競技施設整備補助金が五億六千七百万ですか出ておりますけれども、やはりこれも計画を早く立てて、どこへどういう施設の整備をするかということ、プランをきめませんと手おくれになりますので、その辺のところはひとつ手抜かりなくやっていただきたいと思います。  次に、スケート競技場のリンクの公害禍ということで、これも新聞に出ていたことですが、せっかく規模的には、一級競技場、世界でも指折りの優秀な競技場という名目だったんですが、実際に今度選手が走ってみましたところ、どうも氷のすべりが悪い、記録が伸びない。せっかく五万人も収容する楕円形の大スタンド、またトラックには冷凍パイプをコンクリートの中に埋め込んだパイピングリンクというんですか、世界でも例を見ない一級の折り紙がつけられておるようですが、やはり競技場なんですから、記録が出ないほど氷の質が悪いということでは、せっかくの競技が興味も半減してしまうし、また意義もなくなると思うわけですね。まあオリンピックは参加することに意義があるといいますが、やはり選手の人たちは、この大会で、オリンピックで世界最高記録を目ざして血の流れるような練習を繰り返してそして参加するわけでありますから、その点に対する原因の究明、また対策ということを緊急にやらなければならないと思います。  原因は、どうやら札幌市内の上空にあるスモッグが吹きつけられて、ばい煙が氷につくのではないか、こういうことでありますが、もしかこの黒い氷の正体がスモッグによるものであれば、いまのところ防止対策がゼロであるという関係者の一部の声も聞かれますが、その後この対策について新しいくふうが生まれたのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  67. 西田信一

    西田国務大臣 御指摘のとおり、屋内、屋外のスピード競技場について、氷に若干問題があることは御指摘のとおりであります。  屋内のスケート競技場の氷の問題は、技術的に解決が可能でございますから、そのようにいたしたいと思います。中に入っておる銅板か何かを取り除いてやればだいじょうぶだと思います。  それから、屋外スケート場がどうもすべりが悪いとこういうわけでありますが、悪いと言う人もありますし、なかなかよくりっぱないい氷だと言って、外国の選手でほめておる人もありました。しかし、悪いという人があるのでありますから、記録も十分出なかったといえば若干問題があると思いますので、いろいろ技術的に検討します。原因はいろいろ検討してみますが、いままで考えられますことは、非常に、プレオリンピックに間に合わすために工事を急ぎまして、氷を張るのも竣工と同時にやるというようなことでございましたために、下に塗ったペンキがまだすっかり乾燥しないうちに、こう少し浮いてきたという問題とか、あるいはその工事から出たじんあいが若干まじっておるのではないかとかいう問題もあるようでありますし、あるいは水質の問題なんかもどうだろうかということで、これも検討してみますが、水質には問題はなさそうでありますけれども、いま北海道大学の低温研究所がサンプルをとりまして、いろいろ分析して研究しております。そういうようなあらゆる面から検討し、それからまた外部、外がわにつくりました器材の材質から若干何か浸透しておるというようなことも、工事竣工早々でありましたために、そういう問題もあるようでありますが、あらゆる面から科学的に検討いたしまして、そしてりっぱな氷をつくって選手に提供したい、かように考えております。氷づくりの名人を連れてきておりますし、あとは技術的に解決できるのじゃないか、かように考えて鋭意検討中であります。
  68. 相沢武彦

    相沢分科員 張った氷を取りかえることは、本番まで日にちがありますから、これは何回でも取りかえられると思うのですが、それだけの原因ですべる、すべらないということならば問題ないと思いますが、実際にすべった選手は、競技が終わってスケートぐつをぬいでみると、エッジにべっとりと黒いすすのようなものが付着している、こう言っております。そうすると、水質とかその他施設に問題がなくて、いわゆる空から飛んでくるばい煙が原因だということになると、いまの大臣の御答弁だけの対策では、やはり本番になったときにあわてなきゃならない。公認競技場の条件としては、氷の質は入ってないそうでございますから、必ずしもオリンピックの記録が公認競技場として認められないなんというような大騒ぎにはならないとしても、やはり選手としては、また興味を持つ国民大衆、あるいは世界のスポーツの愛好者にしても、札幌冬季オリンピック大会というものは、スケート競技というものが非常につまらないものになってしまうということになりますので、安易な考え方に終わらずに、もしもばい煙によって影響があるならば、そのときはどうしなければならないかということは、やはりもう一回関係者の間で相談さるべきではないか、特に、いま大臣のおっしゃった氷づくりの名人も、ばい煙になった場合はどうしようもないと嘆いておるわけでございますし、その点はやはり、もう一回検討されて対策を講じる必要があると思います。それだけ申し上げておきます。
  69. 西田信一

    西田国務大臣 確かに大都市につくっておるリンクでありますから、ばい煙の心配はあるのでありますが、しかしながら、ばい煙も全くこれは処置がないかと申しますと、私は必ずしもそうは言い切れないと思うのでありまして、ばい煙に対する対策もあわせて検討いたしまして、ひとつりっぱな氷を完成したいと、こういうふうに思っております。
  70. 相沢武彦

    相沢分科員 それから運営面について一つ、二つお尋ねをしますが、まあ、当地で迎える大会にしては非常に規模が大きいということで、ふなれな点はずいぶんあったと思いますが、その中で、特にこれも前もって準備しなければならない問題の一つなんですが、いわゆる通訳の問題ですね。今回は特にイタリア語、北欧語の通訳が非常に足りなかった。組織委ではそろえていなかったようなことも報道されておりますけれども、その点の確保については今後どういうふうなことを考えておりますか。
  71. 西田信一

    西田国務大臣 確かに通訳は、今回は十分とはいえなかったと思います。ことに英語は別といたしまして、その他のフランス語、あるいはイタリア語、ドイツ語、こういう面に不足があったと思います。しかし、これに対しましては、組織委員会が本番に備えまして、十分全国的に優秀な通訳を集めるという計画ができておりますので、その面は心配はなかろうかと思います。しかしながら、一般の方も、できるだけ外国人に接するためには、少しでも片言でも英語を使えるようにということも、この組織委員会、市等でいろいろ検討しておりまして、対策を練っておるようでございます。十分気をつけてまいりたいと思います。
  72. 相沢武彦

    相沢分科員 人員の確保ができたとしても、今回問題になりましたのは、通訳の方たちが、選手やあるいは組織委の役人について一緒に会場を歩いても、競技種目の知識がほとんどないために、さっぱり話が通じないということが相当あったようでございます。  そこで、やはりこれは無理も伴うことでありますが、早目に人員を確保し、また集めて、競技に対する知識を勉強させるということは大事だと思いますが、その点についての計画はどうなっておりますか。
  73. 木田宏

    ○木田政府委員 本年度はプレでございまして、要員を道内でということで用意をしたわけでございますが、この経験にかんがみまして、組織委員会のほうでは、まあ本番の際には、幅広く通訳の要員を確保し、事前に、御指摘のような競技種目についての知識なくしては、ほんとの通訳はできないわけでございますから、それらのことは十分織り込んで、ことしの五十五億の組織委員会としての事業計画を立てておるところでございまして、だいじょうぶだと思っております。
  74. 相沢武彦

    相沢分科員 次に、選手強化についてお尋ねをしたいんですが、先ほどもお話ししましたように、参加することに当然意義もございますけれども、やはり、やる以上はどうしても金メダルをというのは当然の意気込みだと思うわけでございます。今回のプレオリンピックでは、日本選手、そう本番を迎えるにあたって大喜びをするほどの成果は出なかったと思うわけでありますが、オリンピックに対して、選手の強化対策というものについて、これまでの計画以上に変更して新たに加えた、そういう対策がありましたらお尋ねをしておきたいと思います。
  75. 木田宏

    ○木田政府委員 本年度選手強化対策費としては、総額で、これは日本オリンピック委員会のほうでございますが、一億八千万ほどだったかと思っております。国費で七千二百万ほど補助をいたしまして、例年選手強化を繰り返してまいりましたが、最終段階に入りましたので、強化要員を百六十五名だったかと思いますけれどもしぼりまして、重点的に行なうということにいたしております。何ぶんいま御心配もございましたように、従来、過去の冬季オリンピックにおきまして、三位以内に入ったのは一人しかおりません。今度のプレでは、私ども予期以上の成果を得たと思っておりますけれども、これも世界の水準から比べますとまだまだ気になる点が一ぱいございますので、日本オリンピック委員会のほうも相当決心をして強化につとめておるところでございますので、この経験を生かして、何とか期待にこたえるように関係者相つとめたいと思っておるところでございます。
  76. 相沢武彦

    相沢分科員 時間がございませんので、最後に一点、オリンピック後の競技施設の問題、これは本番が来年というのに、すでにもうオリンピック後の施設の問題についてお話しするのはまだ早いかと思いますけれども、これもやはり早く基本方針をきめて、また国との折衝、また関係者との相談、いろいろとありますので、やはり早いほうがいいんじゃないかと思いまして御質問するわけですが、恵庭岳の滑降コース、あるいは手稲山のボブスレー競技場、あるいは真駒内のバイアスロン競技場と、今回相当大規模の競技施設でありますが、数億円かけて、これが終了後はこわしてしまうというような話もあるわけでありますが、これは最終的にはどこで決定をされる問題なのか。  それから、もしこれをこのまま置くとすれば、多額な施設維持費等、その他むずかしい問題もあろうと思いますが、これだけの国際級の競技施設というものは日本でただ一カ所になりますし、また、今後日本で開かれないにしても、世界の各地へまた日本の選手が参加するわけでありますから、その選手強化育成のためにも、また冬季スポーツ振興のためにも、残して活用することのほうが大きな意味での国益になるのではないか、こう考えますが、その点について大臣はいかがお考えになりますか。
  77. 西田信一

    西田国務大臣 それぞれ各競技場につきまして、用地等につきまして終了後条件がついたものも現在確かにございます。したがいまして、一応は、施設によりましては終了後は撤去するというような考え方でスタートはしておるのでありまするけれども、いま先生がお述べになりましたように、オリンピックというものは、これは国際的な行事でございますし、要するに、日本のウインタースポーツの殿堂ということで世界に喧伝されたわけでありますから、その意味から申しましても、できる限りあとに残すくふうをすべきである、かように思います。また、日本の冬季の青少年の体育の育成というような面におきましても、できる限り私どもはこれを残すべきであるというふうに思います。しかしながら、お話にございましたように、あとの運営の問題等につきましていろいろ検討を要すべき問題がございます。そういう面もございまするので、十分に検討をいたしまして、それぞれの建設の主体がそれぞれ分担になっておりますから、全体的にもちろんわれわれが関与いたしまして相談をしなきゃならぬと思いまするが、まず、それぞれの建設を担当いたしました組織委員会あるいは国あるいは町村、市というふうに分かれておりますので、それぞれが主体、中心になりまして検討し、さらに総合的な検討を加えまして、できる限り、ひとつこれを残すという方向で検討したい。しかも、これもオリンピック終了後の問題でございまするが、仰せのとおり、やはり早くひとつ考え方をまとめることが適当と存じますので、そのような考え方で努力したいと考えております。
  78. 相沢武彦

    相沢分科員 わかりました。オリンピックの成功を祈るとともに、最高責任者であるオリンピック担当大臣の一そうの御奮闘をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  79. 田中龍夫

    田中主査 次は、沖本泰幸君。
  80. 沖本泰幸

    沖本分科員 では、総理府総務長官が見えましたので、私は、同和対策の問題につきましてお伺いしたいと思います。  代々の総務長官の中で、山中総務長官がこの問題に一番熱心に取り組んでいらっしゃるんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、総務長官は、昨年の六月の解放同盟の大会に御出席になりまして、いろいろ部落解放の問題につきまして御発言になっていらっしゃるわけでございます。その前に、この法律が四十四年の七月に制定されて足かけ約三年、こういう経過をたどっておるわけですけれども、一番窓口として総務長官でございますから、まあ率直に申し上げますと、私たちが心配いたしますのは、明治四年の八月に太政官布告で解放令が出されたときにちょうちん行列をしたと、それくらいに差別がなくなるということで喜んだわけです。で、今度の特別措置法につきましては、同対審の答申の具体化、これを完全実施してもらいたいという要望があったけれども、まずまずそれには特別措置法の踏み台を踏んでそこへ持っていきたい、こういうことから、この法律ができたということに対して非常に喜んで受けとめておった、こういうことになるわけですけれども、その後だんだんと、政府は法律をつくって、法律だけつくっておけばいいんじゃないかというような内容でしかない。さらに、こういう問題の法律を受けた地方自治体は、だんだんと出費がかさんできて、一般会計の中までどんどん食い込んできだした。そのために、昨年の暮れ、こういうときに至っては、十二月に大会を解放同盟がやりましたけれども、そのときには、大会に出席する全国の市長の数はうんとふえてきている。内容はなぜかというと、結局は地方自治体の中に来るしわ寄せというものが非常に高くなってきた、そのために、今度は逆に差別が起きつつある、どういうわけで同和の関係ばかり金を使うんだと、こういうことが地方の自治体の内外ともに起きてきだした。これはもう重大な問題であるということがいえるわけです。そういうために、結局だんだんとこの法律ができてかえってまずいことになっていったんじゃないか、こう考えるわけです。  そういうものについて、総務長官は去年の六月には、特別措置法具体化の予算といえない現在までの予算だから、総理府の責任で各省を督励して、法の具体化にふさわしい予算になるように努力したい、こういうことで、結果的には予算が昨年の三倍になったということになるわけですけれども、ところが、この建設省の予算を含めても二百八十億、ところが、大阪府と市——一番、例にとるわけですけれども、府と市が出している同和対策の予算というものが二百五十億、これと比べると、結局その中身そのものをとらえてみると、一地方自治体の予算にも満たない、こういうことになるので、これが十年の時限立法で完全実施していただく、完全に具体化していただくということになれば、ほど遠い目標である。まあがんばったんだからこの辺でというおことばもあるんじゃないかと思いますけれども、このままでいって、はたして特別措置法にのっとった完全な差別の解決がどの程度できるんだろうか、こういう点に非常に危惧を持つわけです。その点について、まず大臣からお考えを承りたいと思います。
  81. 山中貞則

    山中国務大臣 ことしの予算は、いままでのように、各省がそれぞれ要求しまして、それで予算が各省のそれぞれの予算の中で重点とか、そうでないものとか振り分けられたあとに、結局最終的に幾らであったかを私の手元で集計していたにすぎなかったというきらいがあった。これは認めざるを得ないわけであります。そこで、ことしは、単に解放同盟大会のお約束のみならず、いろんな人たちとお会いをいたしましたし、ことにただいまお話しになりましたように、地方自治体の担当者の方々の御意見というものをどうしても私が直接聞いて、意見交換の必要があると思いましたので、同和関係の仕事を担当しておられる各府県の責任者の方々、こういう方々と私と会合を持ちまして、問題点がどこにあるのか、あるいはそれをどう打開しようとして考えておられるのか等について意見交換をしました。非常に有益でありました。  そこで、今回の予算要求については、各省がそれぞれ一応要求いたします予定のものを私の手元で何日間かかかりまして、各省の責任者をそれぞれ呼びまして、詳しく予算要求の内容そのものを聞いたわけであります。単に聞いたばかりではありませんで、たとえば、去年の国会で議論がされました中で、同和地区の土地改良について混益率五〇%以上でなければ特別のめんどうは見ないという制度につき議論がありました。これは社会党の足鹿君でありましたけれども、その隣の四九%以下は対象にならないというのはおかしいではないか、しかし、一%とか一〇%とかいうところまでいっているわけではないんだが、そのようなやり方は少し考え直したらどうだという御質問があったわけです。そのような御意見というものは私ももっともだと思いましたので、例年どおりそういう手段を踏襲しようとする農林省の原案に対して、私の手元で対大蔵折衝には自分が責任を持つから、つくりかえろということにしまして、混益三〇%以上の地域を対象にする、本体は五〇%以上でございますから、そこの本体と合わせて計四〇%以上の混益であったならば、それについては対象とするということにいたしたわけです。ですから、三〇%以上の地区を対象にして計算をして、四〇%以上、根っこの五〇%と計算をした場合に比率が達するという場合には対象にしましょうというようなこと等も——これは内容の手直しでございますが、私の手元で手直しをして予算要求をさせました。  その結果、まとまりました金額は、ただいまお話しになりましたように、一応の私としては今日までの足取りから考えると相当な前進だと思っております。しかしながら、各省庁がはたして予算要求をいたしまする姿勢が、昨年までと全く異なっていたかどうか、非常に画期的な姿勢と、その前進にふさわしい予算要求の姿勢であったかどうかについては、これはことし一年だけではまだ評価するのに足らない点があるだろうと私も思っております。したがって、来年度予算編成については、いま少しく事前に各省の考え方というものを私のほうで調整統一して、ただいまの言われました十カ年計画の最終目標を達成するための予算上の措置について、調整ないしは指導する必要があろうと考えておるわけであります。しかしながら、予算要求と別個の形で処理すべきもの、たとえば公営住宅等の土地の取得に対する起債等につきましては、特別に起債の元利償還を五〇%交付税で見ますというようなことも昨年中に前進をいたしました。  なお、住宅そのものが残っておりますが、これは若干の収入を伴いますので、そこらの点が大蔵との間には話がつかないまま、自治省としてもそれを割り切れないままで今日に至っておりますけれども、そのような行政上の配慮というものも前進を見ておる次第でございます。
  82. 田中龍夫

    田中主査 分科会は時間が非常に短いので、御答弁は簡潔に願います。
  83. 沖本泰幸

    沖本分科員 いま長官のお話でございますが、各省の考え方をいろいろ指導もする、こういうことなんですが、現在まで各分科会を回ってきまして、私主としてこの同和の関係ばっかり質問してきたわけですけれども、大体各省とも、具体的な内容については、紙面に書かれたものをお読みになる。大臣もそのとおりであるし、担当の局長さん方においても大体そのとおりである。こちらの質問に対して準備をなさった、こういうことになるわけですね。ですから、このような心とやはり物と二通りに分けた考え方でその差別をなくしていく。これはたいへんな問題ということになるわけですけれども、質問もこう長くなっちゃいけないわけですけれども、やはりおとなの中にいろいろな差別感がある。  結局、どこでも言ったわけですけれども、一番例にとりやすいのは、太閤秀吉が朝鮮征伐をしたときのころの末裔じゃないかというようなのが、そういう同和地帯を持っていらっしゃる地域の方方、あるいはそういう方に触れられる人々の心の中にあるんですね。そういうものがもう潜在的な内容になっておって、それが子供に伝わっている。それが学校なんかで、不用意に子供がちらっとそのまま思って言ってしまう、おとなもそういうことで差別を起こしている、こういうふうな内容が非常に多いわけです。また、その同和地域の人たちも、生まれ落ちてから別に戸籍上の何もあるわけでもないし、人種的な何もあるわけはないんですけれども、もうそこに生まれたということだけで宿命的なものを背負わなきゃならない、こういうふうな問題を解決するということになると相当はっきりした考え方のもとにやっていただかなければならない、こういうことになるわけです。総務長官の御意見と大体似たことになるんですけれども、まずこの法律を扱う方々の心から変えていただかなきゃならない、そうしなければこれは解決しない、いたずらに具体的なお金を手盛りしてみて、それでやってみたところで、心のこもらないものは何をやったって通じるわけはない、私はそういうふうに考えるわけです。そういう点については、さらに長官もその点を十分認識してこの問題に対処していただきたい、こういうふうにお願いしたいわけです。  先日、自治省のほうへ御質問したときに、自治大臣は、これをやるについては十分内容的なものをもっと把握しなければ具体的なことができないし、また把握した上で予算要求という形をとっていかなければならない、こういうことを、まあ自治大臣自体が、この法律をつくるときに自民党のほうの中心になられた方で、一番詳しいので質問したわけですけれども、その中に、総理府のほうの実態調査、長期計画を立てるための予算をことしつくられておやりになるわけですけれども、この実態調査を受けて、十分その中身というものをつかんでから今度その補助対象事業を取り上げてみなければならないし、いろんなものも取り上げなきゃならない、そうでなければはっきりしたものは出てこない、こういうふうなお考えをおっしゃっておりましたし、具体的な方針とか、具体的な計画というものは、その後のことになってくる、こういうお答えであったわけです。  そこで、いまことし実施される長期計画そのものが、はたして総理府のほうでどのへんでまとめられて、どのへんで具体的にはっきりしたものが出てくるか、これが一番キーポイントになってくる、こういうふうに考えられるわけです。しかし、それが今年じゅうにすぐできたとしても、それを受けた各省は、来年に向かって内容をつくっていくということになると、十年の時限立法が、もう約五年はそれで経過してしまう、あとの五年でどれほどのことができるか、こういうふうなことになってくるわけですけれども、そういう問題について、あと五年で、まあすぐにできるというものでもありませんけれども、やっぱり時限立法として、十年というものを定めた以上は、十年以内に最大の効果をあげなければならないというはっきりしたものがあるわけですから、そういうものを中心にして考えるときに、総理府としては、長期計画からその後に向かってどういう御計画でいらっしゃるか、まず長官のお考えを伺いたいと思います。
  84. 山中貞則

    山中国務大臣 四十二年の調査というのは、まだ特別措置法も年次計画もなかった時代でしたので、やはり一体国が、こんなことを報告しても何かしてくれるのかいという中腰の自治体もだいぶあったと思うんです。そこで、来年度予算では、御承知のような調査費を計上しましたので、これを全国悉皆調査をいたします。そしてあらゆる今後の特別措置法の目的を達するために、必要なデータというものをことごとく集めたいと思っております。おそらく今回は補助率にしても、対象条件にしても、起債にしても、いろいろと国が重点的にめんどうを見るんだということが、全国都道府県、市町村わかっておりますので、相当な、自発的な協力が得られるという私は確信を持っております。したがって、ことしの調査というものは、大体六月一日をめどにやりたいと思っておりますが、その調査の結果は、非常に貴重な資料が集まるのではないか。そこで、それを踏まえて、各省庁の予算要求については、先ほどおっしゃいました基本的な心がまえの問題に立った、各省庁の行政上やらなければならないという問題を総ざらいにして、私の手元で集計して予算要求の形をとりたい。したがって、結論としては年次計画の目標をどうしても達成したいということを考えておる次第でございます。
  85. 沖本泰幸

    沖本分科員 質問が前後するようになるわけでございますが、よく問題にされるところなんですが、これは具体的な内容についてですけれども、土地の先行取得と農業整備事業の問題も、受益者負担分の問題とあわせて同和対策事業に適用させるように考えたい、こういうような内容を、長官は解放同盟の方々とのお話し合いの中でしていらっしゃるわけですけれども、この土地の先行取得と農業整備事業の受益者負担分の問題、あわせて同和対策事業に適用させるようにというのは、内容的にどういうふうな内容をお考えでございますか。その点についてお答えいただきたいと思います。
  86. 山中貞則

    山中国務大臣 これはまだ具体的にどのようにするかという手段まで到達しておりませんが、たくさんの問題点を指摘されまして、その中で私もなるほどと思い、もっともだと思うものもありますので、これらは私の手元で、逆に今度は各省庁にこういう考えで進んでもらいたいという指示をするつもりでおります。
  87. 沖本泰幸

    沖本分科員 さらに、お話し合いの中にありました、同和事業の起債ワクを別に設ける問題については、自治大臣と話し合いをしたい、こういうふうにおっしゃっておられるわけですけれども、先般自治大臣に、起債ワクについての点を御質問してみたわけですが、こまかいことはお答えにならないで、とにかく総理府の実態がはっきり出ないと何とも言えないというようなお答えが主体だったわけでございます。その点について非常に疑問を持ったわけなんですけれども、そうなってきて、この法律をおつくりになるとき一番お詳しかった自治大臣がそういうようなことをおっしゃらない。はたしてどうなるかという危惧を私は非常に持ったのですけれども、そういう点について、むしろ総務長官のほうが何でもあからさまに言っていただけますから、そっちのほうで一ぺんこの問題を起こしてみようと、こういうわけなんですが、お答えを願いたいと思います。
  88. 山中貞則

    山中国務大臣 これはもう御承知ではありますが、自治大臣はお詳しいと思うのですけれども、同和債は別ワクの特別債として百二十億計上されておりますから、今年度に比べますと、五十億の増加ということになるわけでございます。——事務当局のほうが間違っている。私の言ったとおりでいいんです。
  89. 沖本泰幸

    沖本分科員 まあこれは一単位としてお伺いしただけでございまして、この法律が制定されるときに私も御質問した一人でございますが、十二項目にわたる確認事項、法律に載らない内容についてどうしていただけるかという点について、内閣委員会でこれを詰めたわけです。その結果、十分やっていただけるだろうというふうな内容の各大臣の御答弁もありましたし、佐藤総理からも、この問題は長年の懸案であったんだ、だからこれの解決にあたっては、全力をあげて努力したいという締めくくりの御答弁もありましてこれは衆議院を通ったといういきさつもあるわけでございます。そういう点で一番大事なのは、いま予算面でも全然お話にならないという点を、やっと三倍にまでまとめていただいたという点はあるわけですけれども、それをもってしても、まだスズメの涙じゃないか、こう考えられるようなことになりますし、十二項目のこまかい内容について一つ一つ当てはめていきますと、たいへんな問題ということになってまいります。そういうところから推していきますと、政府は法律をつくってあとは知らない顔では、まるっきり、全く明治四年の太政官布告と何ら変わらないような事態が起きるのじゃないか、こういうことで、これから先の問題につき、現在の問題について、この対象になるところの同和の人たちが一番心配していらっしゃる、こういうことであるわけですから、その点を十分おくみ取りいただいて、この問題が一つ一つ具体的に解決されていかなければならない。これには総務長官が一番大きな推進力になっていただかなければならないわけです。そういう点を十分お考えいただいて、この特別措置法が十分その成果をあげ得られるようにやっていただかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。  つきましては先ほど申し上げましたとおり、心の問題でですね、この心の問題を扱う法務省とか、あるいは文部省のほうへお伺いをしてみましたけれども、先ほど申し上げましたとおり、ただ書いてきた答弁をすすっとお読みになる、こういうふうな調子で、全く内容的にはこれじゃたいへんだという考えを持たざるを得ない、こういうふうなことでございますから、そこのところにやっぱり差別の起因があると言わざるを得ないわけです。  ですから、政府をもってしても、まだ差別があると、こう言わざるを得ないわけですから、その点どうぞひとつ総務長官のほうで十分了解いただき、またそれを含んで各省大臣にもお話し合いをしていただきながら、この問題の解決に向かってやっていただきたいことをお願いいたしまして、時間は少し余りましたが、質問を終わらしていただきます。
  90. 山中貞則

    山中国務大臣 私はこう思っています。私たちの近代国家日本が、敗戦によって縮小した領土の中に住むようになりましたけれども、幸いにして単一の国家、同一の民族、同一の言語、このきずなによって日本人の敗戦国家再建のバイタリティーというのが生まれていると思うのです。しかしながら、日本がりっぱに成長すればするほど、私たち日本人のあり方はこれでよろしいのかという、いわゆる単一国家、単一民族として、ほんとうに自信が持てるのかという問題に、ここに問いかけられている問題が同和問題であると私は認識しております。でありますので、この問題をかかえているうちは、日本は大きな顔はできないということを政治家として考えておりますので、その問題の解決に全力をあげていく決意を表明させていただきます。
  91. 沖本泰幸

    沖本分科員 どうもありがとうございました。
  92. 田中龍夫

  93. 田畑金光

    田畑分科員 総務長官お尋ねいたしますが、総務長官御承知のように、南方同胞援護会というのがございます。昭和三十二年の九月から南方同胞援護会法に基づいて発足いたしておりますが、特殊法人でございます。この運営は御承知のように、政府の補助金なり寄付金によってまかなわれておりまして、そうして法律の第一条と二十条において援護会の目的が明らかになっておるわけであります。この援護会は、長い間異国の統治のもとにあって、不自由な生活を強要され、またいろいろ差別的な取り扱いをなされてきた沖繩の同胞に対し、日本政府が直接手の及ばない沖繩住民の福祉の向上、こういう面でそれなりの役割りを果たしてきておるわけであります。特に南方同胞援護会が、今日まで沖繩についての調査研究あるいは啓蒙宣伝、こういう面においてはすばらしい私は成果をあげてきた、このように見ておるわけです。同時にまた、この間、沖繩の政権返還についても、幾たびか同胞援護会からアメリカに使節を派遣するなど、政治的な分野においてもその機能を大きく遂行してまいったものと私は見ておるわけでありますが、総務長官としては、この南方同胞援護会についての機能なり、役割りなり、今日までの果たしてまいりました実績に対し、どのように評価しておられるか。これを初めに承りたいと思います。
  94. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩にアメリカとの一応の了解を取りつけるという前提があるにしましても、予算面等を通じても、最近、日本政府が指導権を持って、行政その他にまで御加勢できるようになったわけでありまして、それまでの長い期間というものは、日本政府が直接の面で予算その他について口出しをすることが非常に制約を受けておりました。その意味では、ただいまお話しになりましたように、南方同胞援護会という形において、政府ではない、しかしながら、公的な性格を持ちつつ、沖繩の人たちの軍政下といっていい施政権下の中のあらゆる不足分に対して、ことに社会保障関係の分野等について、ことに顕著な貢献をしてもらっておるわけでありますが、数多くの貢献を残されたことを深く感謝しておるものであります。  さらに、最近は、いろいろの専門家等を動員されまして、私どもの手ではとかくおくれがちな水系の調査であるとか、具体的な設計であるとか、私どもがたいへん参考にさしていただくようなものが、現実に同胞援護会の手を経て私どもに提供されておるわけでありまして、心から大浜先生はじめ感謝をいたしておる次第でございます。
  95. 田畑金光

    田畑分科員 沖繩が、七二年にすべての政権が日本に返還されて、沖繩の取り扱いも本土と同じような地位になってまいるわけであります。したがいまして、今後政府といたしましては、当然、経済の復興の面、あるいは社会保障の充実の面、あるいは教育や文化面における格差の是正、こういう面に最大の努力を払われるものと確信しておりますが、ただ、最近の事情というのは、長官御承知のように、復帰の不安という問題あるいはまた長い歴史的ないきさつからして、沖繩の人方が本土に対する非常な不信を持っておることも事実であるわけであります。いま同和対策の問題で、心の問題が取り上げられておりましたが、私は、沖繩返還というものは、いわゆる立法、司法、行政の政権の返還と同時に、百万沖繩県民が、本土の人方と同じ心情的な、感情的な気持ちになることが真の返還であろうと考えておるわけでありまするが、そういう点から見ますると、私は、今日まで、本土と沖繩、あるいは本土政府沖繩住民との間の、いわば調整役なり、そういう役割りを果たしてきたのが南方同胞援護会であったと申し上げても過言でなかろうかと考えておるわけであります。  ことに、南方同胞援護会が、いろいろ援護施設をやってきた実績等見ますると、非常に多くの分野にわたっておるわけであります。たとえば、各種の医療施設であるとか、精神薄弱児、盲ろうあ者に対する援護施設であるとか、あるいはまた本土との文化交流、青少年の交換、あるいは図書の寄贈、育英事業等々、言うならばほんとうに住民の生活につながる、住民の気持ちにつながるこういう面において、りっぱな役割りを果たしてまいったわけでありまするが、私は、先ほど申し上げましたように、今後沖繩の返還に伴って起きてくる問題は、物の問題とともに、心の問題である、こういうことを考えてみますと、南方同胞援護会の機能なり、役割りというものは、これをますます尊重していく必要があると私は見ておるわけでありまするが、この点について長官のお考えを承っておきたいと思います。
  96. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩の心、本土の心ということから考えますと、残念ながら純粋に日本人としての気持ち、心を持ち続けてきたのが沖繩であって、むしろわれわれ本土のほうは、今日の経済的な繁栄、そして自分自身の幸福があれば、社会なり民族なり国家なりというものはたいして考えないという、ましてやその繁栄の陰に、沖繩の苦労がなお続いていて、その犠牲の上にわれわれは乗っかっているんだという自覚、こういうもの等においては、はるかに本土のほうが、同じ日本人の一県であり、県民である百万の人たちの上に思いをはせ続けていたかどうか、これを考えるときに、むしろ日本人の心を、私たちは沖繩に対して学ぶべきである、沖繩に対して足らざることを恥じなければならない問題であるというふうに、私は、かねがね大臣になりまする前から、そういうつもりで沖繩の人たちのために御援助もしてきたつもりでありますが、いつもそう思っているわけです。そういう気持ちでおりましても、なおかつ沖繩の人々と本土の心との間に、ほんとうに触れ合ってみても、どうしても食い違いが起こっておりますることをたいへん遺憾に思います。これは全力をあげて解消につとめなければならないところでありますが、本土の国民も、すべてそういう沖繩の心を自分たちがもう一ぺん振り返って、自分たちの問題として考えてもらうということを私は国民にも訴えたいのであります。  そこで、そのこととは別にいたしまして、南方同胞援護会復帰後はどうするかというお話であったかと思いますが、やはり復帰の時点になりますと、沖繩県の県政の自主性というものをとうとばなければならないと考えます。同胞援護会の果たしてまいりました役割り、あるいはそのために同胞援護会の所有等に帰しております社会福祉医療施設等については、ほとんどこれをやはり琉球政府が行なっていかれるような形態にすべきが至当であると考えますので、原則としては、復帰までのお役割りを果たしていただいたのが同胞援護会である。したがって、復帰いたしました時点においては、原則としては解散をしていただいて、そしてその同胞援護会の果たしてまいりました役割りが、少なくとも、解散したことによって、どこかに、行政の上に、あるいは配慮の上に漏れる点があるようなことのないように、十分まだ期間もあることでございますから、同胞援護会ともお話を詰めてまいらなければならない問題があるかと存じますが、原則論的には、復帰までの間のたいへん御苦労願った団体であるということで、やはり復帰後は正常な行政ルートに乗せて、沖繩県の県政の自主性というものの中で、同胞援護会の行なわれた、あるいはそれ以上の仕事を琉球政府のほうにやっていただいて、そして差しつかえのないような、われわれは本土側からの財政的な行政的な応援をしなければならないのではなかろうかと、まだ決定はいたしておりませんが、そのような心組みでおるわけでございます。
  97. 田畑金光

    田畑分科員 長官も御承知のように、南方同胞援護会予算を見ますると、これは国の補助金並びに寄付金によってまかなわれておるわけです。昭和四十五年度の予算は、補助金が一億二千万、寄付金がちょうど倍の二億四千六百万にのぼっております。四十六年度の予算は四億一千百万でございまするが、国庫補助が一億三千五百万、それから非補助、いわゆる寄付金が二億七千五百万、こういうことになっておるわけであります。この寄付金を見ますならば、指定寄付金と称されるお年玉年賀はがき寄付金あるいは日本自転車振興会補助金、地方競馬全国協会補助金と、それから一般寄付から、こうなっておるわけであります。ただいま、たとえばコザ市に建設中の沖繩の子供の国、これなど財源はもちろん補助金もありまするが、大部分は寄付金に依存をしておるわけであります。したがいまして、沖繩が日本に返還された暁においては、自転車振興会等の補助金は本土の各府県並みに割り当てるということになってきますると、いま南方同胞援護会を通じて受けておる寄付金の何分の一、こういうようなことに減らされてくるわけであります。したがいまして、そういう面から見ましても、やはり南方同胞援護会を通じて、今日までこのような本土の善意を積み上げて沖繩の現地にいろんな福祉施設をやってきたということ、また運営の面においても、施設の面においても、内部充実の面においても、長い間の経験をもってこれをやってきたということ、そのことはまた同時に沖繩の県民が非常な親しみと愛着を持ってきておるということ、こういうことを考えてみますると、南方同胞援護会については、復帰後においても当然経過措置として、この機能とこの役割りと、今日までいろいろ施設をしてまいりましたそういう面のめんどうを見さしていくということが、私はほんとに生きた行政であろう、こう考えるわけです。いま長官のお話のように、なるほど復帰後になりますならば、これらの施設については、琉球政府行政事項として、当然それは取り上げられていくことになろうと見るわけでありますが、しかし、先ほど来指摘申し上げておりますように、返還後直ちにそれが琉球政府によって運営されたほうがほんとうにかゆいところまで手が届くかどうか、私はそういうところに問題が残ると見ておるわけであります。したがいまして、過去十数年の間非常な実績と経験と、またそれだけのスタッフをかかえておる南方同胞援護会については、やはり復帰の時点においても、経過措置として、当然これの従来の機能をあるいは経験を尊重するということが、私は沖繩の住民の意思、気持ちにも沿うんじゃなかろうか、こういう感じを持っておるわけでありまするが、この点について、私はやはり長官としても十分配慮されてしかるべきじゃなかろうかと考えるわけで、その点いま一度ひとつ考え方を承りたいと思います。
  98. 山中貞則

    山中国務大臣 あなたの考えられる考え方も一つの考え方でございます。ただしかしながら、復帰いたしますと、やっぱり沖繩県の自主性、当然行財政その他全般にわたっての県政の自主性ということをとうとばなければなりません。そのためには、やはり沖繩県あるいは県民の方々という方方がそれを欲しておられる、南方同胞援護会を残してくれという御要求であるとするならば、これは検討しなければならない事柄の一つであると思います。あるいはまた琉球政府復帰後の沖繩県にそのまま渡してみても、例にあげられました子供の国等は、なかなか県政で直接運営するのにはややなじまない点もありましょうから、それらのものは、現在の琉球政府の観光事業団なり、あるいは別の経営法人等をおつくりになればできぬことはないだろう。あるいはまた、自転車振興会とか地方競馬全国協会等の補助金等、あるいはお年玉年賀はがきその他の善意のプレゼントというものが本土各県並みになって少なくなってしまう、この点は、これは沖繩についてわれわれは二十五年あるいは復帰まで二十七年、ほとんど何もしてあげられなかった、むしろ本土政府沖繩をサンフランシスコ条約において、本土政府の意思も消極的ですけれども加わって、切り離さざるを得なかったということから反省をするならば、それらの各種善意の寄付金については、沖繩側について当分少なくならないような配慮を講ずることは可能であると思います。また、それにまさる何倍かの政府のほうのその方面に対する援助ということも当然しなければならない義務であると思いますので、機構としての問題を私論じておりますから、あるいは少し冷酷な言い方をしているように聞こえるかもしれませんが、問題はもっぱら、復帰後県になりました沖繩県が、自分たちにとってそれが二重行政とか、あるいは横からある団体が行政の分野の一部にくちばしをいれてくるのは困るとかいうことがあってはならないだろう、だから、あくまでも国と県という正常な姿にしたいということを申し上げたわけでありまして、沖繩側からの何らかの形におけるそのような団体の存在と、そのような団体の手による運営の必要というものが要求されますならば、これは十分に検討したいと考えるわけでございます。
  99. 田畑金光

    田畑分科員 私はいまの長官答弁でけっこうだと思いますが、確かに南方同胞援護会が今日まで建設し、また運営を手助けしてきたいろんな施設というものは、社会保障、社会保険施設であり、社会保障の分野でこれから琉球政府は一番力を入れねばならぬ問題だと見ておりまするし、あるいはまた教育施設である場合も出ておるわけでありまするから、そういう面において、復帰後の沖繩行政と日本政府との関係ということになってまいりますが、ただ私の重ねて申し上げたいことは、長い間本土から離された沖繩が戻ってまいりましても、また日本政府が、今日までのこの償いという意味で、思い切った財政援助その他を講ずるにいたしましても、なかなか一挙にすべての問題が解決されて、沖繩県民の気持ちを確保するまでには容易でないと考えておるわけで、そういうことを考えてみまするならば、やはり長い間沖繩住民、県民と深いつながりを持ってきました南方同胞援護会のような機関については、十分それを尊重するように、また沖繩県当局等の意思を聞いて、これに対しては十分配慮するように、特に私は希望しておきたいと思っております。  次に、私は問題を変えまして、引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律、この法律は御承知のように昨年の国会で一年延長されて、この三月末でこの法律は失効するわけでありますが、この法律に基づいて特別交付金の支給状況がどういう姿になっておるのか、これをひとつ御説明いただきたいと思うんです。
  100. 吉岡邦夫

    ○吉岡政府委員 お答えいたします。  引き揚げ者の特別交付金につきましては、当初三百四十九万七千人を予定していたわけでございますが、本年の一月末現在で三百二十万三千人が申請を出しております。  それから交付する国債の額といたしましては、千九百二十五億を予定していたわけでございますが、本年の一月末現在で交付いたしました額は千五百六十三億でございます。本年の三月三十一日で申請期限が切れますので、その間あと約四十日ほどございますが、失権防止と申請の促進ということで全力をあげているところでございます。
  101. 田畑金光

    田畑分科員 政府は、当初この法律に基づく引き揚げ者の総数を約三百五十万と予定したわけでありますが、現在は三百二十万の申請である、受け付けた件数は三百二十万である、そして一月末の国債の交付が千五百六十三億ということでありますが、あと二月、三月と二カ月ございますが、三月までに申請して、これに対して国債交付をするとすれば、どの程度の額にのぼる予測であるのか、この点お聞かせをいただきたい。
  102. 吉岡邦夫

    ○吉岡政府委員 先ほど申しましたように、一月末現在で受け付けましたものが三百二十万でございます。それから、発行されました国債の額が千五百六十三億でございますが、三百二十万全体に交付いたすとすれば、千七百億をこえるのではなかろうかと思います。  なお、三百二十万という数字は、当初予定の三百四十九万に対しまして約九二%に当たるわけでございます。これを今後三月三十一日までの間に全力をあげて交付をいたしまして、あるいは都道府県、市町村を通じて申請促進をいたしますれば、事務当局といたしましては一〇〇%まで持っていきたい、かように考えております。何%そのときに達するかどうかという点については考えておりませんで、できれば一〇〇%に達したい、かように考えているわけでございます。
  103. 田畑金光

    田畑分科員 この法律のできた経緯などは申し上げませんけれども、とにかく引き揚げ者の在外財産補償問題というものが戦後の重要な課題となって、そうして引揚者給付金等支給法が昭和三十二年に制定されて、それに基づいて五百億の国債を交付する、こういうことで第一段階は処理されたわけです。しかし、この問題はこれでなお解決せず、その後政府においても、総理府に三十九年在外財産問題審議会を設けて、その年の十二月内閣総理大臣から諮問が出て、そうして昭和四十一年の十一月に答申が出て、そうして今回のこの法律ということになってまいったわけであります。  そこで、この現行の法律については、昭和三十二年の特別支給法に比べると、いろいろ内容の点において不備な点があるわけです。同時にまた申し上げたいことは、政府が引き揚げ者の総数の把握において、あるいは想定において相当に開きが出ておるということは、いまの答弁でも明らかであるわけです。三百五十万と想定されたものが三百二十万になっておるということです。ことに前回の法律においては、在外居住については半年以上、こうなっておるが、この新しい現行の法律によれば一年以上ということで、一年未満のものが排除されておるわけです。一年未満のものを幾らぐらいと想定してこの千九百二十五億の交付公債を配分したかというと、約十二万名は一年未満の引き揚げ者であるとしてこれを排除して、そうしてその結果が現行の法律で、いまお話しのような申請によって見ると三百二十万、そうして三月一ぱいの申請者に対して交付しても千七百億であろう、こういうことになってくるわけです。結局千九百二十五億からマイナス千七百億の二百二十五億というものが不要になってくる、こういうわけでありまするが、私は、せめて現行のこの法律が昭和三十二年の法律と同じ内容をかりに整えていても、千九百二十五億からやっぱり相当額の余裕が出ていたであろう、こう考えるわけです。私は、この点については事務当局あるいは政府の重大な見通しの誤りである、このように考えますが、この点はどうですか。
  104. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、中身の問題は、今回は在外財産の問題でございますから、一年以上という条件で一応妥結したわけでありますけれども、そこらの議論はさておきまして、これはやはり推定数でございますから、実際上申請してくる人あるいは知っていても申請しない人、よほどPRにつとめておりますけれども、そのために議員立法で一年延長もされまして、それを受けて私たちは、なぜ延長されたのかということを踏まえて、よく周知徹底をはかっておりますが、なおかつそれでも徹底していない点もあるいはあるかもしれません。したがって、予定はあくまでも見通しの数字でございましたので、あるいは上回ることもあり得たでありましょうし、下回ることもあり得たというのが一応の推計でございますので、これがぴったりと人数も金額も予定どおりというわけにはなかなかまいらない性格のものであるというふうに考えておるところでございます。
  105. 田畑金光

    田畑分科員 端的に私はお尋ねしますが、三十二年の法律の内容と同じものにしたにしても、おそらくふえるのは百億前後だと思うんです。だから私は、せっかくあれまで、当時を振り返ってみますると、二十年の間多くの引き揚げ者の人々が在外財産の補償問題で訴えて、そうしていろんな配慮から昭和四十二年にこの法律ができたわけでありまするが、あのようないきさつを振り返ってみますならば、私は、やっぱりこの際三十二年の法律の内容ぐらいに改正して、そうしてこの問題にピリオドを打つのがあたたかい政治であり行政である、こう考えておるわけでありまするが、問題は、その法律の改正をやるのについては、政府が出すか、国会が出すか、こういうようなことになるわけでありますけれども、時期も時期であるし、三月でもうこの法律は失効する、こういうことになってまいりますると、このまま終わってしまうということはまことに遺憾なことだと私は考えておるわけです。一にも二にも、こういう問題を取り扱う場合は、常に低きに見積もりを置いて法律の内容を規定したり、あるいはまた国債の配分を想定するので、こういう結果になってくる、こう思うんです。前回の場合もそうでした。昭和三十二年の法律の場合もそうでした。今回の法律も、結局同じような結果になってくるわけです。いま長官のお話のように、それは承知の上で請求しない人もありましょうし、また中には、金額が少ないから手続がめんどうだといって請求しない者もありましょうが、私の言いたいのは、そういう人がたではなくして、ほんとうにこの問題に真剣に取り組んで、またこの法律やこの公国債に非常な注目あるいは期待を寄せてきたそういう善意の引き揚げ者の人がたに対する答えとしては、私が先ほど申し上げたような方法しかないわけでありまするが、この点について長官の考え方を承って、私はこの問題の質問を終わりたいと思うんです。
  106. 山中貞則

    山中国務大臣 個人的に申しますと、私も台湾引き揚げ者でございまして、終戦以来よく引き揚げ者の方々といろいろな問題を話し合ってまいった一人でありますが、しかし、三十二年のときの立法の趣旨というものと全く同じものであるならば、今回の国債交付ということは不可能であったわけでありまして、やはり三十二年の際とは考えを異にして、資産というものの補償をある程度念頭に置いての新しい考え方として、今回もう終わるわけでありますが、措置をされておるわけでありますので、ここで、またあらためてその立法の最初の趣旨から戻って改正をして、あるいはまた延長ということになりましょうが、そういうことをやってまいりますと、これはもう基本的に、今回とられました措置というものがどうであったかという問題を再び蒸し返すことになりまして、私どもとしては、一〇〇%の人がこの対象になっていただくような手続をしてほしいと念願はしておりますが、かといって、これを基準を変えたりなどして法律をまたさらに延ばしていくということはちょっといかがであろうかという気持ちで、いまのところその意思は残念ながらないと申し上げざるを得ないわけでございます。
  107. 田中龍夫

    田中主査 次は、中谷鉄也君。
  108. 中谷鉄也

    中谷分科員 公害型産業といわれている中の製鉄企業、その中で特定の工場を選んで、そうしてその比較を試みたいというのが私の質問の趣旨であります。  そういう質問の理由は、今月の二十七日、和歌山県、和歌山市と住友金属工業和歌山製鉄所の間に公害防止協定が締結をされるということが伝えられております。そういうふうなことを前提にして、製鉄所の公害防止対策、特に住友との間に結ばれる公害防止協定の評価をしてみたい、こういうことであります。     〔主査退席、伊藤(宗)主査代理着席〕  大気、水質の汚濁防止、それぞれにわたっていきますので、本分科会質問し切れなかった問題は第四分科会において質問いたしたい。  まず、工場は、和歌山県にある住友金属製鉄所、神奈川県にある日本鋼管の京浜製鉄所、千葉県の川崎製鉄所、新日鉄関係では、大阪府の堺にある新日鉄製鉄所の工場、同じく愛知県東海市にあるところの製鉄工場、これらを中心にしてお尋ねをいたしたい。  硫黄酸化物のうち、使用される重油の硫黄含有率については、これらの稼働している工場についてどのように評価されますか、実数をあげて御説明いただきたい。
  109. 莊清

    ○莊政府委員 おあげになりました五工場の現状の重油S分について御報告申し上げます。  まず、日本鋼管扇島工場でございますが、現状は〇・七%でございます。川鉄の千葉製鉄所が一・七%でございます。それから住友金属の和歌山工場は〇・八%、新日鉄に参りまして、堺でございますが、現状は一・一五%、同じく名古屋製鉄所が一・〇%でございます。
  110. 中谷鉄也

    中谷分科員 これは準備をいただいていないかもしれませんが、和歌山共同火力の使用する重油の硫黄含有率は、四十六年三月において一・九%にするということに相なっておりますね。そういたしますと、和歌山共同火力の使用する重油量と和歌山製鉄所の使用する重油量とを足した場合の硫黄含有率はどういうことになるでしょうか。
  111. 莊清

    ○莊政府委員 両方を加重平均いたしまして、現状で一・四%と見ております。
  112. 中谷鉄也

    中谷分科員 そういたしますると、おのずから評価は重油における硫黄含有率が少ないのがいい、そういう前提をとると、結局この中で硫黄含有率の一番少ない工場というのは新日鉄東海製鉄所ということになる。以下そういうようなかっこうで質問していきますが、そういうことになるでしょうか。
  113. 莊清

    ○莊政府委員 現状においては仰せのとおりでございます。
  114. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、次に、コークス炉のガスについての硫黄分含有率についての各社それぞれの比較を出していただきたい。
  115. 莊清

    ○莊政府委員 手元に資料がございませんので、本日中にお届けいたします。
  116. 中谷鉄也

    中谷分科員 それでは次に、焼結原料についてはどういうことになっているでしょうか。
  117. 莊清

    ○莊政府委員 焼結原料につきましては、現在のところ数字は、Cガス同様ございませんけれども、これもさっそく調査いたしますが、将来の数字につきまして問題かと思いますので、その点を申し上げたいと思いますが、日本鋼管の扇島が〇・一五、それから川鉄の千葉が〇・〇八七、それから住友金属和歌山が〇・一五五でございます。
  118. 中谷鉄也

    中谷分科員 それでは次に、もう一度質問をもとへ戻しますが、硫黄分含有率のうち重油について、それぞれ、協定のあるところは、あるいは協定が結ばれるところは、達成年度においてどのようなことに相なるでしょうか。それをまず言っていただいて、そうして特に和歌山については、和歌山共同火力との関係において加重平均をした場合にはどういうことになるか、これをひとつお答えいただければけっこうです。
  119. 莊清

    ○莊政府委員 現在協定のございます日本鋼管におきましては、目標年次におきまして〇・七%、LNGを導入しました場合には〇・六一%まで下げる……
  120. 中谷鉄也

    中谷分科員 わかっていますけれども、あなたから目標年次を言ってください。
  121. 莊清

    ○莊政府委員 これは目標は五十三年度でございます。  それから川崎製鉄千葉でございますが、四十九年度におきまして一%にするということになっております。それから住友金属の和歌山でございますが、これは五十年度でございますけれども、火力関係が一・三%に下げる、それからその他関係が〇・五%に下げる、こういうことに相なっております。
  122. 中谷鉄也

    中谷分科員 協定のない新日鉄堺、新日鉄東海、これは五十年度においてはどういうふうな計画をお持ちでしょうか。それと、もしわかれば、先ほど私がお尋ねいたしました和歌山共同火力との関係において五十年三月どういうことになるか、これをひとつお答えできればしてください。
  123. 莊清

    ○莊政府委員 協定のない新日鉄の堺でございますけれども、これにつきましては、重油が現在一・一五%でございますけれども、ブルースカイ計画というのがございます。それから、通産省の総合事前調査に基づきます府と一体になりました指導で、目標年次現在、四十七年度になっておりますが、目標年次で一・一五から〇・六に下げると、こういうことに相なっております。  それから同じく新日鉄の名古屋でございますけれども、目標年次は、これはだいぶんあとでございまして、五十三年度、現状が一・〇%のものを約半分の〇・五二%まで下げるということが現在の総合事前調査に基づく指導目標になっております。
  124. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、大気汚染防止対策に伴うところの協定の中で、住友金属和歌山製鉄所との協定の中で最大の問題点になったのは、複合着地濃度の問題であります。そこで、日本鋼管の扇島については、最大着地濃度を〇・〇一五PPMを〇・〇一二PPM以下にする。千葉県川鉄においては、着地最大濃度を煙突の高集合化を行ない、〇・〇一九PPMを、その後排脱技術の実用化を行ない、〇・〇一五PPM、それから液化天然ガスを利用したときには〇・〇一二PPMにする、こういうことでございますね。なお、新日鉄の二つの堺、東海とも最大着地濃度四十七年度において〇・〇三七PPM、五十三年度において〇・〇三四PPMということにこれは相なっていることはもう通産省御存じのとおり。  そこで、住友金属和歌山工場に限って年平均値ということでこれを協定をしている。いわゆる年平均値という考え方と最大着地濃度という考え方、これは、だから年平均値にいうところのたとえば四十六年三月において〇・〇三〇PPMというのは、最大着地濃度として見た場合にはどの程度のものになるだろうか、というのが一つのわれわれの疑問であり、地元の不安であります。この点についてはどのようにお考えになりますか。
  125. 莊清

    ○莊政府委員 政府が四十二年に定めております亜硫酸ガスの環境基準の閣議決定がございますが、その中で年平均値とそれから最高濃度というものを——ほかの要素もございますけれども、この二つをきめておることは明瞭な事実でございます。十分な環境基準を明確にするという見地からは、平均も押えればアッパーリミットも押えるということがやはり妥当な方式であるというふうに一般に考えられていると思います。政府のきめました環境基準自体におきまして、平均が〇・〇五PPM、それから最高が、時間数で九九%以上のものが〇・二でなければいかぬということで、そこに四倍のアローアンスが見てあるということでございます。したがいまして、その論理を適用いたしました場合には、住金の和歌山の場合には協定値の約四倍というものの最高値が論理的に推定されてくる、こういうことが言えるかと存じます。
  126. 中谷鉄也

    中谷分科員 論理的に四倍ということですが、実態としてはどの程度になりそうでしょうか。その二つの関係を……。
  127. 莊清

    ○莊政府委員 実は和歌山の場合には扇島、千葉と変わった事情がございます。あとの二者につきましては、製鉄所の将来の姿を描きまして、風洞実験を厳密に行ないまして、綿密な理論計算を行なって、その値を解析して最大値を求めております。その最大値に持っていくためにいろいろ設備面を動かしてみて風洞にかけるという結果、数字が押えられておる。和歌山の場合には、実はまだ通産省でも総合事前調査の風洞実験を行なっておりません。行なっておりませんので、私は理論的推定ということを政府の閣議決定をベースに申し上げる以外に申し上げようがないというのが現状でございます。
  128. 中谷鉄也

    中谷分科員 では、この機会にお尋ねいたしておきますけれども、風洞実験、総合事前調査というのは、住友の和歌山製鉄所においてはいつごろ行なわれるというふうな計画はありますか。
  129. 莊清

    ○莊政府委員 毎年八カ所ばかり取り上げて緊急なものからやっておりますが、四十六年度も予算がとれておりますが、まだ場所は未定でございますけれども、いずれの地域を取り上げるにしましても、従来の運用で県御当局に相当御協力もいただかなくちゃいけない、まあ予算面の協力をしていただいている面もございまして、そういうことで県のほうとよくお打ち合わせをした上でやるというのがルールでございますので、和歌山の場合にも、そういう方向で、これから県とよく御相談いたしてやりたいと思います。いずれにしても、和歌山についても当然風洞実験はいずれの時点かで、やはり重要地点ですから、やらなくちゃいかぬと私どもも思っております。
  130. 中谷鉄也

    中谷分科員 ちょっといまの点は、非常に協定そのものがかなり評価されるという前提から立ちますと、はたしてそういう評価をしていいのかどうか疑問になってくる点であります。  そうすると、重ねてお尋ねをいたしますけれども、一時間値の年平均値というものをとった場合に、和歌山製鉄所においては〇・〇三〇PPM、五十年三月の目標年次において〇・〇一二PPMということは、最大着地濃度ということにおいては、それに四倍をかけるということになれば、最大着地濃度において四十六年三月時点において〇・〇一二PPM、それから五十年三月目標年次において〇・〇四八PPMになり得るということになるわけですか。
  131. 莊清

    ○莊政府委員 お説のとおりだと思います。
  132. 中谷鉄也

    中谷分科員 そういたしますと、この機会にお尋ねをいたしますけれども、複合着地濃度については、とにかく大手上位四社ということで二十を上回る製鉄所の中から特に五つの工場を選んでみたという中で、複合着地濃度についての規制協定においては、とにかく住友金属工業和歌山製鉄所というのは他の工場に比べてどういうことに相なるでしょうか。
  133. 莊清

    ○莊政府委員 〇・〇四八PPMというものは閣議決定の〇・〇五の範囲内ではございますけれども、他との比較におきましては、先生御指摘のように数値として高いということが、これはやはり明らかでないかと思います。
  134. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで次に、大気汚染のうち粉じんについてはどういうことにこの五つの工場は相なっているか、資料があれば御答弁をいただきたいと思います。
  135. 莊清

    ○莊政府委員 現在協定のある三つの工場について申し上げたいと存じます。  扇島と千葉でございますけれども、施設別の排出の濃度をきめておりまして、扇島の場合が立米当たり〇・一グラムを目標、それから千葉の場合には〇・〇八グラムパー立米で、ほぼ同じような水準を目標といたしております。和歌山の場合には粉じんの排出総量ベースできめておりまして、数値としては五百三十キログラムパーアワーというふうな数値が入っておるようでございます。数値をきめておりますベースが違いますので、直接的な比較はできませんが、片方千葉製鉄所の場合には、パーアワーで見ますと、二百三十五キログラムというふうな数字もあるようでございますので、それとの比較におきますと若干多い、こういうことが言えると存じます。
  136. 中谷鉄也

    中谷分科員 大気汚染のうち硫黄酸化物、硫黄含有率、それから複合着地濃度だけをお聞きしても、一時間か二時間かかるようでございますので、あとはあすまたあらためて大気汚染防止対策のこまかい問題点と水質汚濁の防止対策、その他騒音、振動、悪臭防止等、全部お聞きすることにいたしまして、では二つだけお聞きしておきます。  私のほうから申し上げますが、日本鋼管の扇島と川崎製鉄の千葉、この二つの工場についての資料を入手いたしました。住友金属工業和歌山製鉄所は、昭和四十五年から昭和四十九年までの間、設備投資額が千三百億円、公害防止のための投資額が百十億円。日本鋼管については、設備投資額が二千五百億円、公害防止投資額が二百五十億円。川崎製鉄千葉工場については、設備投資額二千億円、それはただし昭和四十九年まで、日本鋼管については五十三年までということで、年度だけは明確に申し上げておきます。公害防止投資額が二百三十億円ということになっておりますけれども、住友金属工業和歌山製鉄所については、この百十億という公害防止投資額によって、この公害防止協定等による達成年次における公害防止の実現というものは期し得るというふうに通産省のほうでも試算あるいは観測、あるいはそういうふうに認定というか、そういうふうにしておられるかどうか、この点いかがでございましょうか。
  137. 莊清

    ○莊政府委員 百十億円でございますけれども、これは先生いまお触れになりましたように、現在の協定できめられておるものだけを実現するために、会社のほうで設備投資計画を考えて県のほうに御説明したというものの金額だと私たちは理解しております。で、ちょっとほかの二社に比べて年次の早いおそいはあるにしても、若干少ないんじゃないかというふうに一見見えるかと思いますが、実はこれは、先ほどるる御指摘のございました着地濃度の問題とも非常に関係ございますけれども、住金和歌山の場合には、実は協定の中で脱硫装置の建設につきまして努力をするという一般的な規定がございますけれども、他の二社のようにある程度数値で見込んでおるという点がございません。こういう特殊事情がございます。そういうことも実は先ほどの着地濃度の点にかなり反映しているかと存じますが、和歌山の場合に、今後毎年協定を見直していくようでございますから、技術開発の進展と見合いまして、将来そういうものが取り入れられる時期がくれば当然取り入れるであろう、また取り入れなければならぬ。そうなりますと、設備投資額が百十億の上にオンされて、二百億とか三百億とか、こういうことに当然相なろうか、かように評価しております。
  138. 中谷鉄也

    中谷分科員 時間のようですから、質問をまとめていたします。少し御答弁のほうでオーバーするかもしれませんが。  そこで、新日鉄の関係については二つの工場だけを私は例にあげましたけれども、今後の製鉄工場の全投資額に占める公害防止投資の割合というのは要するに一〇%を下らないというのが大体常識になっておりますけれども、そういうことだろうと思います。だからこのことについてまず御答弁をいただきたい。  なお、そういたしますと、いわゆる現在排煙脱硫装置というものについての見通し、そうしてそれの技術開発の可能性、実用化のめど、こういうものが問題になってまいります。その点についてまずお答えをいただいて、和歌山製鉄所において排煙脱硫装置が実用化された、それで公害防止投資のものとしてそれが装置をされたということになれば、百十億にどの程度プラスされることになるでしょうか。
  139. 莊清

    ○莊政府委員 三つお尋ねでございましたが、鉄鋼業の設備投資中の公害投資でございますが、四十五年度われわれの行ないました調査では、約五%程度になっております。これは、全体の設備投資が現在非常に巨大ではございますが、公害投資の絶対額では三百億をこえておりまして、全産業中でこれは圧倒的に多額でございます。将来、鉄鋼需要の伸びとの関連もございましょうが、総投資の中で公害投資のシェアが当然に五%から一〇%に向かって近づくことは必然である、(中谷分科員「一〇%を上回ることはどうなんだろう」と呼ぶ)これも会社によりましてあり得ると思います。そういうふうに見ております。これは全体の投資の伸びと相関関係がございますから。  その次にお尋ねがございました排煙脱硫装置の技術開発の目途でございますが、従来通産省も補助金等を出しまして、京浜製鉄所の中で小さな実験を日本鋼管に行なわせておったことはお聞き及びと思いますが、ことしの四月から、高炉メーカーが共同で、十数億円でかなり大きな実験装置をつくって一年ばかり研究する、これははっきりと実用化するんだという気がまえでやる本格的研究でございます。四十八年一ぱいぐらい研究に費やすようでございますが、五十年以降になれば、当然これが成功すれば実用化されてくるであろう。まあ四十九年中に実用化できるかもしれませんが、五十年ごろから実用にぜひ持っていきたいものだ、かように考えておるわけでございます。  それから、最後のお尋ねでございました和歌山の場合の排煙脱硫の問題がございますけれども、協定では、これは努力するというだけになっておりますけれども、これは県御当局も相当協定の面では御努力いただき、会社も努力したのじゃないかと思いますが、かりに、日本鋼管の場合に、組み入れられております焼結工場の脱硫が行なわれないものとして、住金の場合と比較してみますと、亜硫酸ガスの排出総量というものは、それほど大きな差はないのじゃないかというふうにも見られます。したがって、逆に申しますと、住金の場合にも、排煙脱硫が将来実用化されて投入されてまいりますれば、かなり改善の余地がある、こういうことが今後業者間で御尽力いただくような一つの大きな問題じゃなかろうか、こういうふうに見ておるわけでございます。
  140. 中谷鉄也

    中谷分科員 排煙脱硫装置の問題は全国的な問題でございますから、最後にお尋ねしておきますが、五十年までには、四十九年かもしれない、しかし五十年までには実現のめどがある、これは公害防止行政公害防止対策にとっては非常に重大なことだと思いますが、五十年までには実現のめどが立っている、立てたい、立つだろう、こういうことでございますね。
  141. 莊清

    ○莊政府委員 ことばづかいで非常に不正確だったかと思いますけれども、四十八年一ぱいぐらいは、大型の研究施設で高炉メーカーが共同の研究をどんどんやる。その成果を得まして、さらに実用に供するには、そのベースの五倍ぐらいのスケールアップをしたものが実際の焼結工場につくわけでございます。しかもオートメーション化もしなくちゃいけない、効率もよくしなくちゃいけない、ストップせずに完全連続運転、二十四時間運転に当然耐えなくちゃいかぬ、こういうメカニカルな面の設計だとか、これは重機械メーカーのほうの努力になると思いますが、そういう努力をもう一つオンして、それで発注して、設備投資をして、据えつけて運転ということになりますので、それは早ければ早いほどよろしゅうございますけれども、四十九年中というのは、そうは期待できないかもしれません。しかし五十年に入れば、なるべく早い時期にこれを実用化するくらいの気持ちで、通産省としても、業界のこういう研究を大いに助成したい……
  142. 中谷鉄也

    中谷分科員 五十年をめどにして、という意味ですか。
  143. 莊清

    ○莊政府委員 五十年代に入ったら実用化……
  144. 中谷鉄也

    中谷分科員 代といったらこんなにあるでしょう。
  145. 莊清

    ○莊政府委員 いや、代のうんと初めでございます。五十年中にもできれば実用化に持っていきたい……
  146. 中谷鉄也

    中谷分科員 五十年度中にですか。
  147. 莊清

    ○莊政府委員 ぐらいにですね、実用第一号ができるぐらいの目標で研究も助成し、促進し……
  148. 中谷鉄也

    中谷分科員 五十年度中ですね。
  149. 莊清

    ○莊政府委員 ぐらいの目標で、ぐらいと申しておきます。これは将来のことでございまして、しろうとがあまりかってなことは申しかねますが、それくらいの意欲でやるべきテーマだ、こういうふうに通産省でもまじめに考えておる、こういうことでございます。
  150. 中谷鉄也

    中谷分科員 では、またあす質問いたします。
  151. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)主査代理 上原康助君。
  152. 上原康助

    上原分科員 これまでもたびたび対策庁並びに総理府に、沖繩問題についていろいろお伺いをいたしましたが、きょうは、特に四十六年度予算の件と、いま総理府でお進めになっている第二次復帰対策要綱の問題等について、政府の御見解をお伺いしたいと思います。  まず最初に対策庁長官お尋ねをいたしますが、昭和四十六年度の沖繩復帰対策費に関する要旨説明が、去る十六日の沖特委でなされております。その中で、復帰対策を円滑に推進していくために、琉球政府や市町村に対する交付税の措置の増額、さらに社会保障制度、沖繩経済開発と産業基盤整備復帰記念事業事業費の計上その他公共投資の大幅な拡大をはかった、締めて六百億あまりの予算になっております、その結果、一般会計においては六四%の増になるし、財政投融資計画においても一〇〇%と前年度に比べて大幅に増額されておる、これに本土産供与米の売り渡し代金の積み立て金の運用額を加えると、実質的には七一%程度の伸びになっている、したがって復帰対策は着実に遂行されるものと考えておる、という対策庁長官の所信表明がなされております。確かに大臣や長官の御努力によって、年々沖繩に対する政府の財政支出、特に七二年の復帰を迎えての復帰対策ということでの四十六年度予算が大幅に増額をされつつある、その誠意については、私も理解をいたします。また、その御努力に対して敬意を表することもやぶさかではございません。ただここで、この所信表明を見る限り、あるいは予算説明書を一般的に読む限りにおいては、六百億の予算沖繩復帰準備というものが非常にバラ色に実現をしていくかのような印象を与えないとも限らない、そう受け取られる面もあるわけなんです。現実問題として、四十六年度予算の六百億という範囲で、長官がおっしゃっておられるように、復帰対策は着実に推進していくことがめどづけされているとお考えなのか、その点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  153. 山中貞則

    山中国務大臣 予算の中身については、たびたびでありますから申し上げませんが、沖繩の県政について十分の地力と申しますか、力をつけることに重点を置いて予算を組んだつもりであります。でありますから、まあ、金額を申し上げることになりますが、国政事務までやっていただいておると見られる点については、大体全部肩がわりすることにして五十三億、あるいは県政自体の費用としての自主財源として二億円余り、そして起債として三十八億県政にも見ておりますので、確かに本土の四十五年度予算まではいわゆる対応費とかいう、こちらのほうでは地元負担ということになりますが、そういうもので、過去の累積赤字も持っておりましたし、だいぶ運営に苦しい点があったように私も見ておりました。しかし四十六年度予算琉球政府の一九七二年度予算においては、今回はそのようなことが大幅に軽減されるのではなかろうかというふうに私は考えておりますが、なお目の届かない点があるのかもしれません。それらの点は十分配慮をしてまいります。
  154. 上原康助

    上原分科員 先ほども冒頭申し上げましたように、総額において増額をされている、あるいは従来なかった面が予算に計上されたということ、国政機関運営費、国政事業関係費というものが四十六年度予算で計上されたということは評価をいたします。で、問題は、総額も、いろいろこまかい点についてはまだ沖特委でもさらに意見なり見解をお伺いしたいわけですが、総ワクにおいてかなりの増額を見せたという反面、琉球政府の財政状況というものが依然としてきびしい。おそらく七一年七月一日から始まる新年度予算の計上においても、昨年の財政硬直化ということがもっときびしく出る可能性さえあるといわれております。なぜそのような財政状況になるかといいますと、予算の支出の内容において問題があるのじゃないか。国政運営費ということで計上されたにしても、使途面においてきびしいひもがつけられている面、琉球政府独自の判断で予算支出というものが非常にむずかしいというようなこと、そういう面がこの予算の中身において多分に出てきていると思います。したがって、対応費、特に復帰準備を進めていく場合のいろいろな作業なり事務というものは職員がやるわけですから、従来の琉球政府行政事務以上に復帰の準備の中で人件費というものが大幅に負担過重になっております。そういう面に対する御配慮というものがまだまだなされていない点が多分にあると思いますが、その点いかがでしょう。
  155. 山中貞則

    山中国務大臣 誤解があるといけませんが、先ほど私が申し述べました五十三億あるいは三億四百万、あるいは起債の三十八億というのは、起債の中には若干、起債は目的がなければ起こせないこともありますから、おっしゃるような点があるにしても、五十四億と二億四百万については、一応国政事務費というようなことではしてありますけれども、琉球政府が何にお使いになろうとかまわない、いわゆる自主財源であるというつもりでありますので、昨年とは大幅に情勢を異にしておる。ただ、その他の一般事業費については、これはやはりどこの何市の何事業をどういう規模で何カ年で行なうか、そして当該年度予算が幾らであるか、そして補助率は、沖繩については、本土のあらゆる各地域立法その他に比べて一番高い補助率を適用しておりますから、その残りが若干ある。この点はひもつきであり、対応費が残るといわれてもやむを得ないと思いますが、これは極論しますと、六百億二千万円を全部何にもひもをつけないで琉球政府にどうぞというふうに差し上げるわけにはなかなか——予算というものは組み立てるものでありますから、琉球政府の要請に沿って仕分けをするものでありますので、これは琉球政府自体の予算でも、市町村との関係では同じようなことが言えるわけであります。それらの点では五十四億と二億四百万は自由にお使いになれる琉球政府一般財源である。意を、大幅に昨年より改善されておるというふうにお受け取り願いたいと思います。
  156. 上原康助

    上原分科員 もちろん私も財政面は専門じゃございませんが、予算の使途についてはきびしい監視を受ける、あるいはまたいろいろ財政法に基づいて支出をしなければいけないということは理解をいたします。  ただ、私がここで強く申し上げておきたいことは、現在復帰準備ということで、いろいろの政府機関からの調査団なりあるいは職員の交流その他いろいろな面がなされております。そのようなことに要する財政需要、そういう面についても琉球政府からいろいろ要望が出されていると思いますし、もっといかに人件費がかさんでいるかということ、あるいは復帰準備に向けての対応費が机上で計算する以上にどれだけかさんでいるかということについてもぜひ御配慮をいただきたいし、新年度予算の編成にあたってあらためて政府からもいろいろ要望が出されると思います。そういう面でも琉球政府の財政のあり方、それと本土政府が四十六年度予算で計上された予算の中身との調整、意見反映というものが十分なされるように御努力をいただきたいと思います。  そこでいま一点、予算問題でこの調整費の問題ですが、これは執行済みにおいて調整なされる、支出がされるという面で、使途面で非常にワクがはめられているということがいわれております。これなどもむしろ一般予算に組み入れる、あるいは国家運営費に充てるとか、そういう面で使途というものをもっと琉球政府独自の判断でなされるようにお考えになってはいかがかと思いますが、その点どうでしょう。
  157. 山中貞則

    山中国務大臣 これは実は国政運営費の五十三億に足して六十三億にしてできないことはないのですが、しかしこれはやはり予算を組んだときに予測できないものの支出に充てるということで、本土の一般会計予備費というような性格のものにしておるわけでございます。でありませんと、国政運営費ということで幾ら積み上げてみましても限度がございますので、十億をそのまま乗っけるというふうにはなかなかまいりませんので、これはやはり弾力性があり、かつまた予算編成で予期し得なかった支出に備えるために準備しておくといういまの姿勢で引き続き十億を計上しておるということのほうがよろしいのではないかと思うわけでありますが、なるほどこれをかってに琉球政府が私のほうで必要になったから取りくずすということは一方的にはできない、御相談をするということになっておりますことは御指摘のとおりでありますが、これは本土における一般会計予備費と同じものであるからでございます。
  158. 上原康助

    上原分科員 かってに使わしていただきたいとは申し上げませんが、この調整費の流用といいますか、支出の面においては、確かに予備費の必要性というものも認めます。必要に応じて琉球政府からそういう要望なり要求が出された場合は直ちに執行できる、そういう配慮は私は必要じゃないかということです。以上の予算問題については、さらに沖特委で詳しい面についてお伺いをしていきたいと思います。  次に、沖繩復帰対策要綱の第二次案の作成は、政府の作業もかなり大詰めにきている感がいたします。伝えられるところによりますと、総理府においても、復帰対策要綱第二次分の主要部門を占めると思われる、これは内政面でのことですが、国家の出先機関の件あるいは沖繩開発庁——仮称ですか——の創設、さらに沖繩開発金融公庫の創設等に関する構想をおまとめになったということを聞いております。これらについて国の出先機関をどういう構想で設置をおやりになるおつもりなのか、さらに開発庁というものはどういう構想なのか、開発金融公庫の面を含めてひとつ御説明を賜わりたいと思います。
  159. 山中貞則

    山中国務大臣 まだきめておりません。これは復帰後の沖繩に対する本土のほうと申しますか、沖繩県になりました場合の国側の受け入れ窓口と申しますか、あるいはまた援助、御加勢申し上げる窓口と申しますか、こういうものを一本にしたほうがよろしいのか、それともほかの県のように、建設、農林、運輸、厚生というふうに各省ばらばらにそれぞれつながっておやりになったほうがよろしいのか、これはやはり琉球政府の御意向、あるいは沖繩官民を含めての県民会議等ができたようでありますから、そういうもの等の御意向に沿いたいと思っております。  ただ、私自身の考え方としては、最終的には総理に相談をしてきめるべき、政府全体できめるべき行政機構でありますから、そう簡単にきめることはできませんが、沖繩県になられました第一歩から、窓口がばらばらであって、各省庁に全部足を運ばなければならない、たとえば沖繩の四十七年度予算あるいは四十八年度予算というものは、どこかの役所、あっちの役所、こっちの役所から集めてみて、集計した結果幾らになっておるというようなことでなければ全貌がつかめないというようなことでは、かえって新生沖繩県の第一歩に御迷惑をかけるのではなかろうかと私は思っております。しかし、これは仮称沖繩開発庁というようなところで、いままでのように、来年の沖繩県の予算は幾らであるというふうに、はっきりと出るような形のほうがよろしいのではないかと思っておりますけれども、これは沖繩県側の県政の自主性という立場から、そういうものは要らない、本土各県並みでいいのだ、いわゆる行政機構としてそういう御意向があれば、それに沿わなければならないだろうと思っております。しかしながら、開発金融公庫については、沖繩について特別の条件、低利、長期あるいは本土にはない融資分野等について格別の配慮をした金融公庫を持たなければ、ちょっと沖繩経済復興なり県民生活の安定向上にきめ手を欠く、本土の各金融機関をそのまま沖繩にばらばらに当てはめたのでは、いたずらに複雑多岐の上に、特例措置というものがとりにくいということを考えますので、これは現在の民政府の開金等の資金をそのままファンドに転用する等も含めながら、沖繩県民のためにのみ利用されるべき金融機関というものはぜひ必要であろう、こう考えておる次第であります。  さらに、復帰後の国の出先機関、これも私どもとしてはできるだけ一カ所に、県民の方々が行かれれば国政事務に関してはそのビルの中で済む、機構としても非常に有機的な機構の中で行政が現地で処理できるものは全部済んでしまうというふうに、住民サービス面を重点に考えなければならぬと思いますが、しかし、これとても沖繩が県になりました場合に、沖繩県にとってこれが屋上屋であるというような非難を受けるようなものでありますれば、これはまたあらためて考え直さなければならない。あくまでも沖繩側の立場に立って機構も考えていかなければならぬと考えておりますので、つくるにしても、沖繩側との間に、私どものほうの責任者も感触を承りに参りますので、感触が合ったら二次要綱に入れるものも出てまいりますし、感触が一致しない、もう少し検討したい、あるいは両者意見が食い違うというものは二次要綱からはずして、さらに意見の交換を重ねていくということで、一方的押しつけは絶対にしないという立場でおります。
  160. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、国の出先機関設置をどういう形態でおやりになるか、あるいは開発庁というものをどういう形で設置をなさるのかという点については、政府の統一した構想そのものがまだ煮詰まっていない、現地側の意向も聞いた上でおきめになっていくというふうに受けてよろしいですか。
  161. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりです。しかし、話し合いをするのに、何もなくて白紙の状態での話し合いでは時間がかかりますから、こういうものならばどうお考えですかとか、こういう機構ならば賛成ですか、反対ですかとかいうような、ある意味のたたき台的なものを持っていくと思いますが、それであっても、その中には開発庁というものはちょっといま持っていけない。ただし、開発庁というようなものをつくるべきであると思いますか、思いませんかというような意味の話し合いは、今回、大体予定は田辺調整部長を最終的に責任者として派遣するつもりでおりまが、まず琉球政府側の御意向を十分聞いてからというつもりで準備しておるわけでございます。
  162. 上原康助

    上原分科員 琉球政府もまだ案の段階だと思うのですが、二十日に、第二次の復帰要綱に向けての要請書をまとめていらっしゃいます。それについては非公式あるいは公式に何らかの政府からの資料の送付とか意見というものが出されておるかどうか、お聞きしたいと思います。
  163. 山中貞則

    山中国務大臣 まだ私の手元には正式な公文書として琉球政府から届いておりませんが、しかし、すでに新聞で上中下に分けて報道されておりますし、またそのコピーというものは一応私の手元に、ただいまも持っております。したがって、およそのところは聞いておるわけでありますが、いずれこれは琉球政府を代表する——前の場合は知念副主席に来てもらったわけでありますが、現在琉球政府が代表されると思われる人をこちらのほうに御派遣になって、自分たちの県民会議やあるいは準備のための会合でつくった案というものを御説明になるということになるのではなかろうかと思っておりますが、その前にも、内容については十分に尊重できるような検討をしてみたいと思っております。
  164. 上原康助

    上原分科員 いま、国の出先機関の問題について特に御回答があったわけですが、新聞報道で受ける印象としては、総理府の考え方というのはかなり私は固まっているのじゃないかという気がいたします。復帰後の国家行政の総合出先機関という形で設けたいということがいわれております。確かに出先機関をどういうふうに設置をしていくかということは、きわめて重要なことだと思います。今後の復帰準備の面との関連、あるいは復帰後の県政との関係、特に自主性の問題等々、非常にむずかしい問題であるということは理解をいたしますが、さらに沖繩が地理的に離れているということ、九州ブロック、いわゆる九州管区ということでは、国家行政業務の面で非常に支障を来たす、いろいろな問題があるとは思いますが、少なくとも中央直結という形で県の自主性というものが著しくそこなわれるというような出先機関のあり方というのは、県民の望むところではないし、また、おそらく沖繩を理解する長官もそういう立場でおられると思いますが、そういう面について政府側の、琉球政府の意向というものも十分聞かなければいけないということ、しかしあまり日時をかけていくということになると、復帰全般の準備の進め方においても相当支障を来たしてくると思います。この面について、政府の各省庁との意見調整もいろいろあると思いますが、いつごろまでにまとまった構想というものが出るのか。さらに開発庁方式という場合、もしおとりになるとすると、北海道開発庁方式というようなことも参考にするおつもりがあるのかどうか、これもきわめて重要な問題だと思います。開発庁設置する場合の国の出先機関との関係、各省庁との指揮系統の問題等、もう少し、個人のお考えでもいいし、総理府で検討を進められている点について説明をいただきたいと思います。
  165. 山中貞則

    山中国務大臣 上原君は沖繩を代表する衆議院議員の一人ですから、沖繩の県民代表として、いま私が胸中にある全貌を話してもいいと思うのです。しかしながら、ここで話をしたことは公的なことでありますから、本土政府はこういう構想を持っておるということが既定事実になりまして、そのことに対する賛否両論ということに飛躍しますので、その意味で、私が慎重を期していきたいというのは、かりに構想を持っているにしても、それは沖繩側で反対される構想であるならば実現させてはならないことである、沖繩側がこういう構想にしてほしいということで、受け入れられるものがあるならば、それを取り入れた構想にすべきである、こう思っているわけです。国の出先機関といいましても、国が独自でやらなければならない機関で、県に委任できない仕事等がございます。たとえば海上保安庁業務とか、あるいは裁判の業務とか、いろいろあります。こういうもの等は当然行くわけですけれども、反面においてまたサービス行政的なものもあると思うのです。その、国のサービス行政というものは、これはほとんどが県政事務になるわけですけれども、しかし、国自身がやるべき事務の中の住民サービス業務は、なるべく、先ほどもお話がありましたように、距離も遠い沖繩のことでありますから、国のほうで現地でまとめて処理できるような機構というものが、できれば必要であろうと私は思っているわけですけれども、それが琉球、沖繩県政の自主性をそこなうようなものになってはならない、これはもう大前提でありますから、そこらの打ち合わせが必要であろうと思っております。  それから、なるほど一例として北海道開発庁というものがございます。しかし、これは公共事業というものを中心にしたものでありますけれども、ならうとすれば、大臣を長とする開発庁というものでなければいけないだろうと思っております。現在の沖繩北方対策庁は次官クラスの役人の長官をもって責任者とする機構でありますから、やはり復帰後は、北海道開発庁北海道開発庁長官というふうに、もし置かれるとすれば沖繩開発庁長官というものがおるべきであろう。それはただし専任ではなくて、これは大臣にも定員がありますので、初めから環境庁長官みたいに専任というてきめておるのはまた別でありますけれども、そのためには一名増ということになりますので、やはり兼任ではあっても責任のある大臣が置かれるということになるだろうと思っておりますが、これはあくまでも沖繩側との話し合いの結果に待つということでありまして、これは最終的には政府全体できめることでありますから、私の一存ではきめかねる問題でもございます。
  166. 上原康助

    上原分科員 時間があと少ししかございませんので、最後に、結びとして申し上げたいわけですが、四十六年度予算増額問題なり、あるいは政府がいろいろ復帰準備というものを進めておられる、そういう点は、先ほど申し上げましたように、理解もいたしますし、評価をするわけですが、しかし沖繩現地の実情というのは、復帰が近づけば近づくほど、いろいろな問題というものが深刻になお浮き彫りにされてきております。そういう意味で、私は、そういう県民の不安というものが那辺にあるかということをいろいろ考えました場合に、七二年の復帰というものが一応きまっているわけです。しかし何月何日に復帰をするのか、四月一日と言ってみたり、七月一日になるだろうというようなこと、あるいは沖繩国会も七月だというような話が出たかと思うと、九月、最近になっては十月中旬から十一月だというふうに、めどを立てて、それに向けてみんなが誠心誠意努力をし、政府のおやりになるべきこと、あるいは個々人、団体でやるべきようなことが、具体的にスケジュールを立てていけない面に、なお県民の不安、あせりというものが出てきていると思うのです。  そこで、率直にお聞きしたいわけですが、沖繩国会というのは七月の段階になるのか、九月になるのか、十月以降あるいは十一月になるのか、もうその点は政府としてはここなんだということを、そしてここまでの期間で復帰対策準備というものを具体的にやる、返還協定はどの時点で調印をし、国会の承認を求めるということを、明確に打ち出すべき段階に来ていると私は判断いたしますが、その点について御見解を賜わっておきたいと思います。
  167. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、私だけで沖繩臨時国会をいつ開くという明言はいたしかねる問題でもございます。しかし、返還協定は、七月にかりに参議院選挙後の臨時国会が行なわれても、間に合うであろうと私は思っております。しかし、私どものほうの数百の法律を骨格とする国内の内政上の作業というものは、物理的に八月一ぱいかかります。でありますので、両陛下御外遊等の日程が新しく登場いたしましたから、最終的にどうなるかは、私まだ相談もいたしておりませんが、総理の最終決断に待つといたしましても、われわれの作業は八月一ぱいかかるということだけは間違いありませんので、したがって、開くにしても九月以降であるということは言えると思いますが、まさか返還協定を七月にかけて、国内法整備その他の先ほど言われました機構とか、金融機関とか、各種税法とか、県民の日常生活に密接な関係のあるものは何カ月かおくらすということは、私は得策でないと思いますので、やはり一緒にかけるべきだと思っておりますが、そこらのことも含めて、私どもの作業は精一ぱいやっても八月一ぱいかかりますということは、明言できると思います。
  168. 上原康助

    上原分科員 早急にそこいらの点を明らかにしていただいて、現地のいろいろな復帰に向けての不安、問題の善処、解決に一そう御努力をしていただきたいことを申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
  169. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)主査代理 島本虎三君。
  170. 島本虎三

    島本分科員 まず、順次お尋ねいたしますが、総理府総務長官、公害の問題について。  これは臨時国会で成立した十四の関係法律、その政令、省令委任事項並びに地方自治体の権限委譲の件等について、それぞれ準備は指導的に進められていることだと思います。それで、かねて問題になっております無過失賠償責任、この問題についても以前から検討中であります。水俣病等の公害病患者に補償解決を容易にするためにも、すでに何回も議論されておりますとおりに、原子力の賠償法、鉱業法それから自動車損害賠償保障法、こういうようなものは、もうすでに無過失賠償責任を取り入れて行政の円滑なる運営をしております。こういうような状態の中で、京都市でも条例でこれを盛るというような意向さえ漏れてくるのであります。公害に関しては先取りでなければならないというようなのが長官の言明なのでありまして、私もそれを強く心から期待し支持してまいりました。この無過失賠償責任についても、そういうように情勢が動き周囲が熟してきた以上、これは検討の段階からもうすでに結論の段階でなければならないと思います。被害者救済に最も必要な本件について、百尺竿頭一歩を進めるべきであると思いますが、ひとつこの点についての御見解を承り、できたらいつにやるという明言も得たならば国民のためにしあわせだと思います。
  171. 山中貞則

    山中国務大臣 すでに答弁はいたしておるのですが、当席において、たしか自民党の松野委員の質問だったと思うのです。これは今国会に提案をいたしたいと思って準備をしております。しかしながら予算関係法案ではありませんが、三月十六日という一般法案の締め切り日がございます、それに間に合わせるべき努力をいたしております。その三月十六日もし間に合わなかったという場合においては、ぜひ国会の与野党の御相談によって、無過失賠償を私どもが法律化いたしました場合は、それを受け取ってほしいというお願いも実はしておるわけでありますから、その前提は本国会に提案をする用意ありということでございます。
  172. 島本虎三

    島本分科員 その前提になる挙証責任の転換についても、その法制化、これについても同様に受け取ってもよろしゅうございますか。
  173. 山中貞則

    山中国務大臣 これは挙証責任の転換が可能であれば、無過失賠償ということに一歩前進しても大体もう似たり寄ったりのことになりますので、表現はどうなりますか、無過失賠償の特例になりますか、あるいは挙証責任の転換になりますか、そこらのところは検討しておりますが、野党各党の共同提案にかかるものについて非常な興味を持って拝見しておる次第でございます。
  174. 島本虎三

    島本分科員 野党三党の提案によりますものは、自民党がこれを見ても了解し、ともに提案者になってもらえる、こういうような意図を持ってこれは提案してございます。したがって、前回若干の無理もありましたが、今回の場合は、その無理も十分に取捨選択して、これならやっていける、こういうような点で出しておるわけであります。これに賛同し、ともにこの問題を解決してもらえれば、これに越したことはないのでありまして、ことに財産関係等においては野党三党のやつはとっておるのであります。そして食品衛生や薬事法、現在問題のサリドマイドのこういうような奇形児を産むような問題等もありますから、現代の動きにマッチするような、きわめて妥当な無過失賠償責任に関する法律も出しているのでありますから、政府においてもこの点十分考えて、ひとつこれと同調し、これより少なくとも退歩したものではないものを出してもらいたい。この点強く要請し、この問題についてもひとつ決意を伺っておきたいと思います。
  175. 山中貞則

    山中国務大臣 野党提案で、今回はどうせ島本君中心でつくられたのでしょうが、まさに私どもに歩み寄ると申しますか、過去質疑応答を通じてきた問題点は、一応今回はおくものはおいて、少なくともさしあたりという問題を取り上げられておることについて、先ほど言ったとおり非常な興味を持っており、尊敬の意も持っております。  ただし、この法律を見ますと、公害という概念の中に食品あるいは薬物というものを取り入れていっていいのかどうか、それはわれわれがいままで論議してまいりました公害対策基本法というものの概念から出る公害の範囲の中に含めるべきものであるかどうかという議論が一つあろうと思うのです。しかし、国民の健康や生命というものに対して及ぼす被害というものについて、さしあたりこの問題はほうっておけないじゃないかというならば、法律そのものは食品、薬物等を取り入れて公害という名を冠していいのかどうか、そこらの点は少し問題があろうかと思いますが、これは人の生命、健康等に関する問題で、公害等、定義がございますから、食品、薬物等も含めてのそういうものとして立法したのであると踏み切れば、これはできぬことはないと私も思っております。その場合には総理府と厚生省との共管提出ということにならざるを得ないかと思いますが、一番の問題点は、第二条の特定物質の設定、例示がございますね。この例示について、これは与野党一致でいけるなら、もう少し議論をしなければならない点があると思うのです。たとえばアルキル水銀というようなものはあまり議論のないほうだと思うのですね。ところが、議論をしていくとすれば、硫化水素というのは、大体これは悪臭防止法の対象というような感じでいまとらえておる物質でありますし、塩素等についても、事故時に大量に人の生命、健康に影響を及ぼすような出し方をすれば問題でありますが、それでない正常の公害という概念から見た場合の物質としての問題提起はどうであろうか。硫黄酸化物はボーダーラインであって、これは取り入れるべきであるという考え方と、取り入れた場合に、発生源が不特定多数で、混合して被害を及ぼす場合が多い。ぜんそく、気管支炎、あるいはひどくなれば肺気腫というような問題でありましょうが、それらの場合、今度は賠償責任は無過失でやるとしても、一体それらの因果関係というようなものの断定と申しますか、そういうものが非常にむずかしいところがあるのではなかろうか。犯人であるときめつけて、その犯人はだれとだれとだれだというのがなかなか言いにくい問題になるのではなかろうか。そうすると、無過失賠償を公害に関してとるとすれば、硫黄酸化物はどこまでいけるか議論のあるところだが、確かに問題点の一つではある。したがって、今後政令等で、逐次解明がされていって、つかまえられるというものは広げていく余裕を残しながら、ここに特掲して物質を幾つか掲げて、等ということばで政令にあとゆだねる場合には、相当しぼりをかけなければならないのではないかという意味で、ここに並べられております硫黄酸化物、硫化水素、塩素、カドミウム、これも鉱業法に関する問題は無過失賠償の中にすでに入っているわけですから、その他の工場となると、メッキ工場に象徴されるような零細企業みたいなところがこの法律をまともにかぶるような現象にもなるでしょうし、かといってカドミウムをはずすのはなかなかだろうというような議論のあるところでありますし、アルキル水銀については、これは実態から見て、あまり議論のないところではなかろうかと思いますが、専門家はそうなかなか簡単に首を振ってくれない。これらのところの私どもの検討しているところが、ほぼ野党側の鋭い探知機によって、法文化されているようであるという感触を持っておりますので、できれば話し合って、お互いが了解した上でできるような法律をつくり上げたいものだという気持ちでいま作業をいたしております。
  176. 島本虎三

    島本分科員 なかなか困難な情勢であり、地域指定も困難である。一つ一つ産業別にやる点においても、これはなかなか長年月を要する。したがって、それより原因物質を先に列記して、その他政令にかかわるものというふうにしておいたほうが対象としては選定しやすい、これならばやっていけるといった線がこれなんでありまして、今後の議論の中でこれを取り入れて、ひとつ大方の国民の期待にこたえたい、こう思いますので、この点十分に推進方を要望いたしたいと思います。  それとあわせて被害者救済関係法、これはもうすでに古くなっております。この被害者救済関係法の改正について、政府公害の実態から法改正の必要あることはもう十分御存じのとおりだと思うのです。四日市をはじめとして学童に対するあの公害の保健関係の改正、これとてももうすでに準備が進められているようであります。被害者を各方面にわたって生活、医療の面から救済する必要が目下喫緊の問題点であろうと思いますので、この点いかように考えているかひとつ明らかにしてもらいたいと思います。——法改正だし、公害関係はだれがいなくてもあなたが責任を持っている中心省である、こういうようなことであなたの意見を聞きたいわけです。
  177. 山中貞則

    山中国務大臣 お望みに応じます。これは厚生大臣から今四十六年度予算の内容についてはたびたび説明のあったところであります。しかしそれは、現在の制度の中における各種手当の金額の手直し、あるいは対象とすべき基準等の緩和にとどまっておりますから、確かにいま問題を提起された生活費の問題、あるいはまた提起されてはおりませんが、川崎で一例がありましたように、不幸にしてなくなられた場合の葬祭料等の支給等も規定してありませんし、これらの問題は一方において無過失賠償責任の立法あるいは裁判の迅速化というようなこと等をはかりつつ、他面において、これらの公害病に不幸おかされた人たちに対するその間の処理について、これが唯一の頼みの綱でありますから、これについては、やはり新しい実態というものに対して、広く、そしてまたそれらが適確に対象として取り入れられるように、そしてその中身についても時代の求める中身に改正する努力は重ねていかなければならないと私も考えているところでございます。
  178. 島本虎三

    島本分科員 まだありますけれども、開発庁質問を終わってからそれに移りますが、最後に長官沖繩の医療についてちょっと伺います。これは現在のところ日本本土では医療は厚生省関係というようになっておりますが、特に長官沖繩関係では最高の責任者でございますので、この点で伺っておきたいと思います。  先ほど上原君から血のにじむようないろいろな激励を込めた質問もございました。しかし医療行政を見ると、肺病、精神病、ハンセン氏病が意外に多い。また肺病の場合は全額国庫でこれは見ておられるようであります。それにしても健康保険制度、これが本土のものと沖繩のものとは違うのであります。ことに健康保険組合や共済組合の制度がないわけです。全部がいわゆる被用者保険といわれるこのような政府管掌健康保険一本にしぼられておるわけであります。片や沖繩では総報酬制であります。こちらのほうでは総報酬制は取り入れておりません。原則としてそれに踏み切らないという態度であります。三分の一だけは、臨時に財政措置としても、今回の改正に見られるようなこういう提案があるようでありますが、本土復帰後別々な状態でこれを運営するということは許されないのであります。当然これに対してはもう準備しなければならないはずでありますが、どのようにお考えでしょうか。
  179. 山中貞則

    山中国務大臣 これは仰せのとおり、復帰したときには直ちに本土の各種保険の中にそれぞれ入れるように準備をいたしております。ただそれまでも、保険制度の問題ですから、やはりまず国民健康保険制度というものが、国民皆保険の名にふさわしい、全県民をおおうというかぶり方をしませんと、やはりいまのような状態ではたいへん気の毒でありますし、ことに仕組みが、まずさいふに相談してから医者のところをたずねなければならないという仕組みでありますから、本土並みにしてあげることはどうしても必要なことであります。国民健康保険の出発に、おそらく去年の立法院で通過するだろう、法律が通るだろうと思って予定しておりました一億七百万というものが、執行不能になった、すなわち法律が継続審査になって、支出の根拠を失ったわけであります。したがって、来年度予算でも、十二カ月分組むことは無理ではないかという意見もありましたけれども、約九億円弱の十二カ月一ぱいの国の負担分に関する予算は計上してございまして、主席にも議会のほうにも、ぜひ四月一日から国民健康保険というものが皆保険としての施行ができまするように、そして、医介輔等を十分に活用しながら、それぞれの国民健康保険の医師の配置に近いものにしていただくように、あるいは、町村財政や無医村等がありまする場合には、一部事務組合等の指導をなされて、なるべく全県民がことしの四月一日から保険のありがたさというものに浴することができるようにということを極力お願いをしておるところでございます。
  180. 島本虎三

    島本分科員 その点等においては、あとからもう一度この問題でひとつ議論してみたいと思います。  開発庁長官が見えておりますので、ひとつ開発庁長官にこの機会に、あまり時間ありませんが、端的にこれは伺ってまいりたいと思います。要件は、北海道に現在起きつつあるいろいろな公害、この公害は、新たに発生する部門が多いですから、北海道開発行政の中で、公害行政に活を入れるような指導をしてもらいたいということであります。これはもう今後の北海道のためにも、長官に課せられた重要な任務である、こういうふうに思うわけであります。  例をとってみますと、十勝川、あれはサケさえ遡上して、その遡上したサケの卵、それをふ化させて、国際的な一つの日本側の義務を果たしているのであります。しかし、その水質基準、これはもういつでも上回っておりまして、十月以降はなかなかこれは守れない、こういうような情勢にあることはまことに遺憾であります。それと同時に、苫小牧、本州からきらわれまして苫小牧へ参りましたといううわさもありますが、日軽金の赤泥、これは完全に産業廃棄物であります。東京では、昭和電工あたりでは、これを埋め立てに使っておったのだそうであります。しかし、あとになって東京湾へ捨てた。これも一つの問題になりましたが、北海道計画は、もう初めから海上投棄を計画されておるということを聞いておるのであります。これでは、すでに漁民の反対は目に見えるようであります。それだけではございません。私どものほうでは、国立公園である洞爺湖、この洞爺湖が、道の工業試験場の調査によっても、鉱山排水が湖に流れ始めてから、これで三十年間、だんだん悪くなってきている。四十一年に湖水のPHをはかりましたところが、これはもうほとんど中性に近い六・六から六・八、四十二年になって六・三に下がり、四十五年になって六に下がり、年を追うごとにだんだん酸化してまいっておるようであります。これは鉱山の流出水のせいである、こういうような報告のようでありますけれども、長い間のこの湖水に含まれているアルカリ性のものが、流入する鉱山の排水の酸を中和する働きがだんだんなくなってきた。そして、最近は、中和能力がほとんどない状態になったということを指摘されておるのであります。このままでは、酸が高まって魚が住めないような国立公園ができ上がる。国立公園の場合は、まさにこれは特定の基準を受けて、どのようなことがあっても汚してはならないという、こういうような一つの基準をいまつくりかけているのであります。その責任担当大臣もそれぞれおるのでありますけれども、この際、北海道がだんだんこういうような状態になってくるということは、これは捨てておかれません。これは一体どういうことなのか。水に関係するから経済企画庁経済企画庁のほうへ聞くと、これは道庁だというのです。道の権限だというのです。国立公園の水の汚染が全部道にまかされている。今後は、権限移譲によってそうなるでしょうけれども、いままでまかされていたということは聞かない。これは私はわからない。これは国立公園部長がおりますか。——そういうようなことなら、これははっきりさしてもらいたい。  それと同時に、大臣、こういうふうにしてだんだん北海道公害に対して本州並みになりつつあるのであります。日本の公害列島の最端の北海道もその例に漏れず、また同じような状態にならんとしておるのであります。今後北海道開発のために、この点は重大なポイントでありますから、ここにはっきりした措置をとらないとだめだと思います。このままにしておかれないと思いますが、大臣、決意を伺います。あわせて、措置もついでに伺っておきたいと思います。
  181. 西田信一

    西田国務大臣 島本先生御承知のとおり、北海道は全国的に公害のきわめて少ない地域でございまするけれども、しかしながら、いまのお話のとおり、一部ではすでに公害が出ております。都市の冬季暖房からのばい煙によるところの、あるいはまた、自動車の排気ガス等によるところの大気汚染、あるいは、いま御指摘のような川あるいは湖水におけるところの水の汚染等があげられまするし、また、工業地域では、工場ばい煙によりますところの産業公害の発生の懸念もございます。  主として水がよごれておりますのは、パルプとかビートあるいはでん粉等の工場排水によるものが多いようでありまするし、洞爺湖などは全然この下水道施設がなかったということが、相当この影響があるようでございます。  そこで、私、北海道は少なくともこれから国土再編成という立場で大いに利用されるべき土地であると存じまするけれども、北海道は、開発することによって、本州と同じような二の舞いをするというようなことがあってはならない。つまり、産業と生活とが完全に調和するという北海道開発をやらなければならぬということがわれわれの信念であります。したがいまして、第三計画におきましても、特にそういう問題を重視いたしまして、計画をつくっておるわけでございます。  そこで、さしあたりの対策として二、三申し上げますと、この洞爺湖の水の汚染に対しましては、ことし下水道施設をやることにいたしまして、千二百五十万円ぐらいの予算を計上しておるわけでございますが、これによりまして、この汚染の防止はある程度効果があがる、かように考えております。  それから、苫小牧に新しい工場地帯ができておりまして、現在はさほどの公害は起きておりませんけれども、将来そういう心配があるということでございます。日軽金の赤泥の問題につきましても御指摘がございましたが、これは企業側は、世界的にいずれのところでもこれは海上投棄をしておるのであるから、その懸念はないと申しておるのでありまするけれども、なお十分な科学調査をやりまして、そうしてそれを確認の上で、海上投棄をするとかというようなこと、また、これには水産業界の同意ということも必要でございましょう。こういう点につきましては、企業側に対しましても、十分な注意を喚起しておるところでございまして、結論をしっかりつかんだ上でその処置をきめるということになろうかと思います。  それからまた、苫小牧地区は、これからも新しい工業地帯も予定されておるわけでございますが、現在の工業地帯につきましても、通産省あるいは北海道におきまして、いろいろ公害の予備調査をやる、あるいは風洞実験をやるということがすでに実行されておりまして、その結論も近く出ると思います。それからまた、新しく計画中の苫小牧東部の大規模地帯につきましては、これは十分、その公害のない適正な工場配置ができるような計画をする。また、排煙、排水等の規制も十分いたしまして、そうして住宅の配置等にいたしましても十分留意をいたしまして、住宅と工場との混淆がないように、また、その被害等が起きないように十分考えてまいりたいということで、現在も通産省及び北海道におきまして、いろいろな気象調査、大規模な調査等も行なっておるわけでございます。このような計画の策定にあたりましても、関係各省と十分な連絡をとりまして、基本計画の策定の段階からそういうことのないような配慮をしていきたい、かように考えておりまして、私ども、北海道開発の最も重要な心がまえといたしまして、将来公害を起こさない、そういう北海道開発をやりたいという決意を持っておる次第でございます。
  182. 島本虎三

    島本分科員 法律ができても公害が減らないのが最近の傾向なんです。それに、救済も急がなければならないし、法の整備があとからおくれてくるのであります。したがって、北海道が新たな計画を策定して、公害防除のために、これはもう完全によしとして策定された計画であっても、そのまま実施すると必ずしもそうならない。一つの例として赤どろ。もう一つは、大臣も御承知のとおり、発電所が今度操業をしたとたんに、その近所の小魚がゆで上がったようになって、一面にそれが浮き上がってしまった。排水のせいである、温水のせいである、こういうようなことで、すぐ手直しに入るというようなことを聞いておるのであります。こういうふうにしてみますと、このものについては、試験過程から十分開発庁も指導的にメスを入れておかなければならない。企業体にそのまままかせておくと、こういうようなことはあとを断たない。ましてあそこには、大昭和製紙も今度また操業を拡大して展開中でありまして、また、いろいろな意味で、北海道が強力にする点は、食糧基地であり、同時にレジャー基地であるはずなのに、今度はまた汚染されて、本州並みにどうにもならない北海道にすることは、とうてい大臣としても忍びないと思う。ただ、官僚がつくったこういうような計画を見て、そのまま実施させてはだめであります。一つ一つ監視体制が必要なんです。これを私は大臣に強く望みたい。それと同時に、現在起こっているこういうような情勢に対しては、的確に措置してもらわなければならないと思います。すなわち、もうすでに起こっているいろいろな公害がございますが、こういうような公害に対しては、もうすでに迷惑をしている人たちが多いわけであります。それは企業の責任である、行政の怠慢である。指摘していくならば、たくさんございます。しかし、農民の側にしたならば、農業に対する公害の完全防止指導を実施してもらいたい、こういう血の叫びがあるのであります。これは、長官にも、今後十分北海道のためにも考えて実施してもらわなければならないし、そうでなければ、おそらく今後の北海道のために、千載の悔いを残すことになるのではないか、こういうふうに思うわけであります。農業に対する公害の完全防止指導、この実施について格段の配慮をしてもらいたい、これが一つであります。  それともう一つは、カドミウムの該当地帯なんか本州にもありますが、ついに北海道にも出ました。二、三カ所あるようであります。それに対しては早期の、営農の可能なような指導をすべきかどうか。この指導の完ぺきを期してもらいたい。法によると、玄米の場合一PPM以上のものでないと、そのものを指定し、それに対する対処をしない。しかしながら、それまでの間のものも政令、省令の中に入れて、行政指導の全きを期する必要があろうと思います。長官においてこの点も十分に考えて、該当地域の早期の調査とともに、営農指導も可能なようにしてやるべきじゃないか。それと同時に、農業に対する公害の完全防止指導の実施、こういうのもあわせて、あらたな公害を発生させないように、今後あなたの責任において、完全にこの歯どめをしてかからなければならないと思います。まことに心配の数々がございますので、あえて実例をあげながら、その対策を求める次第であります。
  183. 西田信一

    西田国務大臣 公害防止につきましては、先生が御心配なさっておることはごもっともでありまして、私どもも、その心がまえでこれから対処してまいりたいと考えております。ことに農業におきまして、御指摘の、一部にカドミウム汚染の状況が見られることは非常に残念でございますが、これは現実の問題として認めざるを得ないのであります。これに対しましては、すでに北海道が中心となりまして、当面の応急対策、汚染米の処理あるいはその他をやっておりますが、御指摘のとおり、ただ応急対策だけではなくて、さらに恒久対策も講じなければなりません。まず、恒久対策といたしましては、汚染地の精密な調査実施いたしたいと考えておりまして、すでに実行いたしておるところであります。水質あるいは土壌また玄米、汚染土壌の浄化の実効薬等もあるようでありますから、これらに対する対策も充実したいと考えております。また農業対策、これが大事でございまして、営農、土地利用の転換等、除害対策もあわせて検討して、われわれも決して道にまかせるということでなくて、われわれの立場におきましても、御指摘のとおり、農業全般につきまして、起きたところだけではなくて、そういう懸念のある地域全体に対しましても、そういうような農業指導対策を確立する、こういうことにつきましても、責任ある体制をとってまいりたいと考えております。
  184. 島本虎三

    島本分科員 次に、総理府総務長官にまたお願いしておきたいと思いますが、環境庁の構想があるようであります。私どもは、かねてこの環境庁設置、これを省にして、この設置を望んでおったのでありますが、名前ももうすでに現実のものとなってそれが準備され、提案されようとしております。この中で、私どもが常に心配しておったような点、これに欠けるものがあってはならないと思います。すなわち、総合調整の最も強力な一つの手段である予算編成、この強力な企画調整機能、こういうようなものがなくては何にもならないということがいわれておりますけれども、各省の公害関係予算を一括計上するとともに、北海道開発庁が現在やっているように、調整費の予算もつけて、ここに大きく、環境庁自身の権限も、今後の機能の点においても完ぺきを期する必要があるのじゃないか、こういうふうに思っているわけであります。そうして、あらゆる公害についても規制、防止のための基準の設定、承認、これに関する権限を、環境庁が完全に一元化して持つべきである。そうしてそれらの計画や、それらを実施する前に、公害に関するものであるならば、必ずこの環境庁が発言できる、また、その要請もいれなければならない、こういうような強力なものにしなければならないと思っておるのですが、構想はそういう強力なものでしょうか。
  185. 山中貞則

    山中国務大臣 大体そのとおりで、各種公害の規制基準、環境基準その他すべての公害について、各省の大臣に、環境庁長官資料の提出、報告、あるいは勧告までできる、それでなおかつうまくいかない場合は、内閣法第六条の、総理大臣の、閣議で決定された方針に基づいて指揮する権限である、総理大臣の権限行使の意見具申をすることができるというふうにしてありますから、その点はだいじょうぶだと思うのです。  予算の面は、研究予算については、四十七年度予算から、環境庁長官が一括予算要求、計上をして、それを各省庁に配分していくような内容になっておりますが、普通の環境保護、公害防止関係行政予算については、各省庁に対する強力な調整等を行なっていくわけでありまして、予算を一括計上して配分するというところには、事業費等の関係がありますので、その点は含まれていない。しかしながら、強力な調整、配分その他に対する意見を、環境庁が中心になって、直接大蔵省あるいは関係各省と行なっていく点については変わりはありません。
  186. 島本虎三

    島本分科員 これは、他日上程された場合には、ひとつこれに集中して議論をする機会を得たいと思います。  これが最後であります。最後のおりに、洞爺湖の水質の場合に、国の場合は道にまかした、こういうようなことでありますが、はたしてそうなのかどうか、これだけはっきりさせておいてもらいたい、こういうふうに思います。  それともう一つ、総務長官、これは、以前公害犯罪処罰法ができる際に、原則として関係行政法令の定める排出基準をこえる有害物質を排出し、人の健康に危険を生じる状態になったとすれば、処罰の対象になっている。どのような方法でこの状態を察知し、捜査当局に同法の発動を求めるか、これについて具体策として、いまおりませんが、当時の小林法務大臣も公害監視官を置く、こういうふうなことを答弁し、それが現実なものになったようであります。現実のものは、保健所のほうにおいてこれを実施させる、そして地域を巡回さして、排出基準を越えて危険な状態になった場合には捜査当局へ報告する、こういうようなことのようであります。権能はそれだけなのか。それから、もっと以上の権限を、いわゆるこの公害監視官、監視員じゃなく監視官というような強い権限もあわせて認めているのか、普通の保健所員として、ただ単に、その防止のために、指導行政だけに当たるものなのか、この辺、当時の状態からするとまことにあいまいになっているわけであります。この際ですから、ひとつ最後にこの点を伺っておきたい。この二つをお伺いいたします。
  187. 山中貞則

    山中国務大臣 これはたしか法務委員会で、その当時の小林法務大臣が、公害監視官というものを考えたいという話をされて、それが閣議の議題に報告がありました。しかしながら、公害監視官で全国をカバーするのはなかなかむずかしいという意見もありまして、現在地方に、その当時三千名をこえる各種立ち入り権限を持った職員もいる。さらにこれに都市型保健所を中心に、現在厚生省で進められておる制度が予算上ございましたので、これを公害監視員という各種立ち入り権限を持った強力な、場合によっては、公害罪法でいうならば、告発権も持つ。当然告発していいわけでありますから、そういうようなものを持ったものとして国が予算措置をしよう、それについて四十六年度五十七名、さらに四十七年度五十七名、四十八年度において五十八名、陣容を整えて、公害の常時規制、監視等の必要な場所においては、それらの責任職員がほぼ配置されるようという配慮のもとに、計画を設定して予算化した次第であります。  最後に、一つ数字の訂正をいたしておきますが、先ほど沖繩の四十五年度予算で計上した額が不要になると言いました一億七百万、これは一億七千万ということでございましたので訂正さしていただきます。
  188. 新保實生

    ○新保政府委員 洞爺湖の水質汚濁防止のための国の積極的な助成策でございますが、これは先ほどお話にも出ましたように、開発庁の一括計上の予算の中に、公共下水道の補助金というのがございまして、これを地元の町に対して出しまして、公共下水道を整備することになっております。四十六年度におきましては、事業費は千二百五十万でございまして、全体の事業費はまだ確定いたしておりませんが、おそらく数億になると思いますが、そういう形で、積極的に推進してまいりたいと思っております。
  189. 島本虎三

    島本分科員 これで終わりますが、いま両長官、国はもう数億を費やしてやっているというのですが、だんだん悪くなってきております。こういうようなことはちょっと認められません。どこの責任なんですか。水の関係だから経済企画庁だ、経済企画庁北海道だといって逃げているのです。きのうの話です。ですから、北海道開発庁長官に聞いてみたら、いま国のほうがどんどん出しておるからこれでよくなるはずだ、よくなっていないじゃないか。だんだん悪くなってきているじゃありませんか。ただ金を出せばよくなる、こういう開発だったらとんでもない話です。現に国立公園ですよ。こういうばかな答弁では了解できません。
  190. 西田信一

    西田国務大臣 答弁が不十分だと思いますが、四十六年度から予算をつけまして、数年間整備いたしまして、その汚染を防止したい、こういうことを申したのであります。
  191. 島本虎三

    島本分科員 終わります。いままでかまわなかったのは残念であります。
  192. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)主査代理 瀬野栄次郎君。
  193. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 沖繩の諸問題について、山中総務長官お尋ねをいたします。  沖繩の祖国復帰を前に、四分の一世紀という長い間異民族の支配下にありまして、きょうあることを沖繩県民は望んでおったわけであります。私も昨年の十月と十一月に、二回にわたり沖繩に約二週間余りつまびらかに調査に参りまして、地元の方からいろいろと問題点を聞いてまいりました。このことについて、十一月の九日に、十八項目にわたって山中総務長官のほうへ申し入れをいたしたわけでございます。これは、いずれも現地の強い要望でございました。  御承知のように、沖繩には外交、内政問題たくさん山積しておりますが、私は角度を変えまして、復帰を前に地元の皆さんがまず身近な問題で悩んでいる問題を、きょうは限られた時間にお尋ねをして、その後の検討がどのようになったか、また対策をどういうふうにされたか、順次お伺いをしていきたい、かように思うわけでございます。  まず最初に、何といっても沖繩で一番私の感じましたことは農業問題でございます。あのようにサトウキビ畑におおわれた沖繩を見ましたときに、米に匹敵するところの沖繩の農産物で、全畑作の五八%に及ぶ作付をいたしております。また沖繩全島を見ましても、ほとんどが基盤整備ができてない、こういう状態でございまして、他の委員会でもこのことはいろいろ論議もされておるわけであります。私は沖繩に参りまして、玉城村というところに愛地という部落がございます。ここは最も農業が盛んで、しかも熱心である。土地改良も進んでいるということで、一番最初にここを見に行きましたが、どうして愛地という名前をつけたのかと聞きましたら、終戦後土地を愛するということで愛地という名前がついた。言われますように、特に土地に対する愛情と、農業に対する熱心さがうかがわれるところでございました。ところが、土地改良計画されてほとんど実施の段階になりまして、部落座談会の話し合いになってきたときに、ついにその話がつぶれまして、いまだに計画が遂行されないということになった、こういうことを聞きまして実に残念に思ったわけであります。いろいろあちこち回っているうちに、私たちがおる九州よりも、先祖の土地を守るという強い強い執着というのが、沖繩はさらに強いように思います。こういった意味で、農業基盤であるところの圃場整備等を今後やっていく、こういった基盤整備をやることについては、今後たいへんな努力が要ると思いますが、まずこのことについて、総務長官から今後の方針なり対策なりをお伺いしたい、かように思うわけでございます。     〔伊藤(宗)主査代理退席、主査着席〕
  194. 山中貞則

    山中国務大臣 御意見にはほとんど私も同感であります。沖繩の問題が、ともすれば基地の問題あるいは毒ガス、B52などという時の問題でクローズアップされがちでありますだけに、私も沖繩の基幹産業としてのキビ並びにパイン、それを育てている農村、ことに本島北部、南部以外は、ほとんど離島でありますから、それらの島々になるべくくまなく行って、現地の実情を拝見し、そしてやらなければならないことは何か、何が隘路となっているかについて、努力を惜しまないつもりで今日までやってまいりました。  概括的に申しますと、沖繩においては、圃場整備も農道の整備も、あるいはまた土地改良あるいは場合によっては宮古島等のごとく、かつて水がなかった島、干ばつを何よりおそれた島、この島も、やりようによっては完全に畑かんができるというような見通し等もすでに立った今日において、それらの島々にふさわしい農業上の基本的な基盤整備というものが、それぞれの島、それぞれの村において要望が違いますし、実態も違います。それらの人々にすべて、作物としてのキビとパインというものに適する基盤整備をつくり上げていく、そしてそれに、一貫して有機的に、畜産というものを将来の成長的な農家の新しい換金手段としてのあり方に組み入れていくという問題を、至るところで話し合ってまいっておるわけでありますが、予算の面においても、逐次それらの面について配慮をしてまいっておるところでございます。  なお、こまかい御質問がいろいろとあると思いますが、沖繩は、復帰した後も、やはり数多くの離島を中心とした農業のうち、ことにキビ、パイン、それにつながる前提農業基盤整備というものが、本土に対して著しくおくれておる、これをすみやかに本土並みに近づけて、一日も早く、亜熱帯性の条件のもとでのみ、本土よりも有利な営農形態が打ち立てられて、沖繩だったから豊かになれたという農村をつくって差しあげるべき責任があるというふうに考えておりますので、まず総括的な私の考え方から申し述べさせていただいております。
  195. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 総務長官から前向きの決意をいただきましたが、ぜひそのように、今後沖繩の県民のために、ひとつ対策を立てて努力していただくように重ねてお願いをいたしておきます。  農業問題の第二の問題で、詳細については申し入れの際にいろいろと申し上げてありますので、時間の関係から省略いたしますが、沖繩には製糖会社がいろんな事情から乱立しておりまして、いろいろと搬入その他にもUターン現象等がございまして問題になっております。また、パイン工場もたくさんございまして、東海岸と西海岸に整備をすべきだというようなことで、いろいろ現地では取りざたされております。こういった製糖工場及びパイン工場の合理化という問題、さらにはインドネシアとの技術提携の問題等も話が出ておりますし、移民の問題等もあっておりますが、これらを含めまして、これらの合理化について、あらためてここではっきりとひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  196. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩におけるキビ並びに砂糖会社の整理統合、近代化、合理化、これはどうしてもやってもらわなければならぬ問題であります。これは、沖繩の農民の立場から考えても、やっていただかなければならない問題でございましょう。ただし、これを本土政府が、どこの工場はどこと合併しろという指図をすることは、たいへん差し出がましいことでありますので、本土政府としては、四十五年度の米の援助資金である現地積み立ての二十億並びに四十六年度の積み立ての三十三億、これらを十分に、それらの企業統合、合併に必要な資金としてお使いくださいということで、融資の対象として、それを前提として、主として通産局、農林局において、いまこまかな計画が練られておるようであります。中間として伝えられておるところでは、本島に何社、離島に、先島に何社と、いろいろ案があるようでありますが、まだ最終的にこれでまとまりましたということを言ってまいっておりません。農協の系統は残すべきだとか、あるいは本土の商社資本なり金融資本がいろいろからまってむずかしいとか、背景があるようでありますので、なるべくすみやかにそれらの資金が有効に使われて、そして結局は、企業もでありますが、農民の方々がプラスになられる、プラスになるということに私どもも応援していきたいと思います。  さらに、先ほどちょっと表現は違ったかと思いますが、たとえばキビやパインの季節外国人労務者の問題ではないかと思うのですが、そうでしょうか。
  197. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 はい。
  198. 山中貞則

    山中国務大臣 それについては復帰後においても、これは季節労務者でございますので、主として台湾、ほとんど台湾といってよろしいのですが、台湾からの季節労務者の日本に対する特例による入国というものは認めていくという方針で、近く決定の復帰大綱の中には、それを盛り込んでいくつもりでございます。
  199. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 インドネシアの……。
  200. 山中貞則

    山中国務大臣 インドネシアの糖業プラントの問題につきましては、これは政府はタッチいたしておりません。相談は受けました。それはたいへんけっこうなことではないか、ということは、整理統合いたしましたときには、当然小さい工場等はスクラップしなければなりません。そのプラントをインドネシア側に持っていきますと、インドネシアは四十数年前の機械を使っておるそうでありまして、沖繩において現在使われておって、今回の整理統合で不必要になる機械を現地に持っていって据えつけてあげますと、非常に能率の高い、いい工場ができるそうであります。もちろん要らなくなったものを持っていくというだけでなくて、やはり沖繩の人々の長年習得された新しい近代的な砂糖の経営能力、栽培能力というようなものを、現地において技術指導等もやられるわけでありましょう。でありますから、インドネシアも、沖繩の糖業界の代表が一再ならず参っておりますが、たいへんな期待と歓迎とを寄せておるようでありまして、これはインドネシア側には聞えないように申しますが、私としては一石二鳥であるということで大いにすすめておりますが、別段、資金的な援助その他については、沖繩側の糖業関係者からも援助してほしいという話はいまのところございませんし、インドネシア側からも、それらについての援助をしてほしいという話はございませんので、いま経済ベースで進んでおるのではないかと見ておるところでございます。
  201. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 農業問題でもう一点。  沖繩に参りまして、総務長官もおそらくお話をお聞きになったと思いますが、サトウキビに対して害虫が全琉至るところ発生している。私も行きまして実際に驚きましたけれども、生育盛りの新芽または葉柄、葉のくきのところに和名で申しますとカンジャコバネナガカメムシという長い名前の虫であります。現地ではガイダー、こういうふうに略して呼んでおりますが、この虫がほとんど一〇〇%サトウキビについております。このために農家の収入もかなり減収するわけです。これが、いままでいろいろ農薬を使っても、免疫になってなかなか駆除ができない。米に匹敵する沖繩のサトウキビ栽培に対して、これはたいへんな問題だ、こういうふうに私感じております。農薬の使用がきびしくなっておる今日、これに対する何らかの手を打ってあげなければ、あのようにきびしい中で、しかも所得の少ない沖繩県民の皆さん方に、虫による害によって莫大な減収が出る、こういうことになりますので、これに対して長官はどのように処置されるか、また対策等を検討しておられるか。またぜひこれに対する対策を慎重に進めてもらいたい、こういうように思うのですが、御見解を承りたいと思うのです。私も写真を現地でたくさんとってまいっておりますが、実物見てなければ、あとで見ていただければけっこうだと思います。御見解をお願いしたいと思います。
  202. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩のキビの問題点は、矮化病といまの病害虫の問題であります。その病害虫の問題については、来年度予算でも大型防除機五台を予算計上しまして、発生した害虫というものをなるべく押えるという手段もとりますが、根本的には、病害虫に強く、そして台風等に対して強い品種の開発というものがどうしても必要であります。そこで来年度予算において、沖繩におけるキビの原々種農場を設置するための調査費を計上いたしました。すみやかに立地を定めまして、調査の結果、沖繩に新しい品種の、病害虫にも強く、そして沖繩特有の台風にも倒伏、切損等を免れるような、新品種の原々種を育てる農場をつくりたいということで、抜本的な姿勢をもって取り組んでおるわけでございます。
  203. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間の関係もございますので、では次の問題に移らしていただきます。  沖繩の北部の本部町に所属するところの瀬底島という島がございます。一九六九年十二月一日現在の資料を私現地でいただいたのですが、人口が千二百十三人、総戸数が二百八十二戸ある島です。昔は三千人くらいいたというのですが、だんだん過疎化が進んでまいりまして、最近ではまたかなり減っているのじゃないかといわれております。この瀬底島は災害が一たび起こりますと、いわゆる孤立化しまして、四日も一週間も本島との連絡が絶える。病人が出た場合は医者に間に合わずに何人かもうなくなられた、また死体の火葬等がなかなかできないというようにたいへん苦労されておられるところです。現在、この島との距離が四百五十メートル、干潮時で四百メートル、水深約十四、五メートルというように現地では言っておられますが、航送船の小さいのが一隻ありまして、自動車を一台積んで渡るくらいのものですが、一日何回か通っております。この島の皆さん方は長年、橋をかけていただきたいということで熱望しておられます。また本部町のほうでも、このことは強い要望をいたしておられまして、熊本の天草五橋のパールラインの例から、橋も当然かけられるじゃないか、こういうことでございますが、人命尊重、あるいは過疎対策、あるいはこの瀬底島は熱帯魚、あるいはいそ釣りの有名なところでもありますし、また観光からも得がたい島でございます。こういったことを考えて、早急には参らぬにしても、ひとつ早い機会に調査検討をして、瀬底島に大橋をかけるということで、ぜひ沖繩県民のためにお考えいただきたい、かように思うわけですが、長官の御所見を承りたいと思うのであります。
  204. 山中貞則

    山中国務大臣 瀬底島に橋をかけてほしいという要望が実は琉球政府からも、本部町からも、私のところに届いておりません。これは事務的にも届いていないわけであります。これは届いていないから知らぬ顔をするという意味ではありませんで、いろいろと離島を回ってみますと、そこの離島の住民の人たちは長年待望し続けているのに、その声がどこでか途中で消えてしまっておるという例に私自身も会いました。たとえば沖繩列島の一番北部の伊是名島でありますが、ここも同じような条件下で、ここはまたひどく浅いところで野甫島というのにつながっておるわけですけれども、そこの野甫島と伊是名島に橋をかけてくれという陳情を、実は戦前からやっていたのであるということを現地に私が参りまして、初めて訴えを聞いたわけでございます。それまでは全然文書でも、耳でも聞いたことがありませんでした。私も現地で、専門ではありませんが、大よそどのくらいの金でできるなあというめどがつきましたので、よろしゅうございます。それは昭和四十七年度予算で架橋いたしましょうという約束をして帰ってきた例もございます。おそらくその瀬底島もそのように途中でどこかに声が埋没してしまっていた地域であると思いますので、私どものほうからその可能性も含めて調査をいたしてみたいと考える次第でございます。
  205. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 長官からその可能性も含めて調査をしてみたいということでございますので、ぜひよろしくお願いをしたい。地元の方々も復帰を前にたいへん喜ぶことだと思うわけでございます。  次に、辺戸岬灯台の改修についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  このことについても、昨年、長官のほうへ申し入れをいたしたわけでございますが、沖繩本島の国頭村の一番北端になるわけです。ここに灯台がございますが、日本でも一番か二番の古い灯台だといわれまして、太陽光線による灯台です。私も二回ほど現地へ参りましたが、なるほど霧の深い日、または雨が何日か降ったあとなんかは、ガスがかかったり、あるいは太陽光線が当たらなかった関係で光の吸収量が少なかったという関係ではないかと思いますが、光が鈍い。そのために、商船あるいは漁船が航行する際に光が見えないので、沖永良部島、あるいは与論島の光と間違えて行ってみたり、あるいは北部の海岸線の自動車のヘッドライトと間違って、サンゴ礁に座礁しかけたという例があったりして、人命尊重の面からも、たいへんこれは問題とされ、事故が起きたならば、たいへんな問題だということで、いろいろと現地の漁民の方、あるいは船を扱っている方やら、または漁業組合の方たちも、たいへんに心配をしておられます。なるほど灯台を見てみますと、灯台の上には八角か十角くらいのガラスの角ができておりまして、三つだけ肝心なところが盗難にあってとられております。どういう人がとったかというのも、うすうす現地では言っておるようですが、真偽のほどはわかりません。そういった関係もあって、なおさら光の反射が悪いということで、もし事故でも起きたら、たいへんな問題である。これは復帰を待たずして早急に灯台の改修、あるいは新しく建設すべきではないか、かように思うわけです。これについて長官のお考えを承りたい。昨年来、申し入れもいたしておりましたので、その後の対策等もあわせてお伺いしたいと思うのです。
  206. 山中貞則

    山中国務大臣 これはさっそく八百九十万円の予算をかけまして、昨年の十一月一日に着工いたしました。ことしの六月末には完成をして、地区民待望と申しますか、関係漁民待望の灯台が、大体ふさわしいものとして新しくでき上がります。御安心願いたいと思います。
  207. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 次に、東部海岸の久志村の大浦湾に面したところの安倍というところでございますけれども、ここにまたダムがございます。これは戦後の水害にたびたびおかされまして、このダムが決壊して、一度は修理をいたしたのでありますが、その後幾ら雨が降っても、水がたまらない。現在も、そのダムの底に少し水がたまっている。そのために二十町歩近い水田が埋没して現在水田の用をなさないということで、農家の方たちもたいへん心配しておられます。もし、これが決壊したならば、たいへんである。それにもかかわらず、地元では負担金を出して、ずっとダム建設時代やってきたのですが、去年あたりから負担金は出さなくなった。ところが、負担金の催促が強くありまして、そこにいろいろとトラブルが起きております。ダムが使用できれは負担金も——負担金といいますか、償還金を払うが、ダムが不完全で、その用をなさないのであるから、償還金は返さない、こういうことになっています。もっともなことだと思うのですが、いずれにしても、もし大水害でもあってダムが決壊すると、たいへんなことになります。私、現地に参りまして、つぶさに農協その他と一緒に調査をいたしましたが、おそらくそのダムの中ほどから漏水しておるのではないか、こういうふうに判断できます。このダムについて早急なる対策を立てていただき、改修するなり、または復旧するということをしなければ、たいへんな問題になるのではないかと思いますが、復帰を前に、これもぜひ急ぐ問題であります。昨年申し入れをいたしておきましたが、これについても御見解を承っておきたいのであります。
  208. 山中貞則

    山中国務大臣 これも、どうも先ほどの瀬底島と似たようなケースで、琉球政府の言い分は、三年前に補修はいたしましたということで、補修をしたということは、ダムの能力をちゃんと維持していることだと私ども思っておるのですけれども、しかし現地に行かれたあなたが、水がちょびっとたまっているだけで、だから払うべき金も払わぬ、ダムの機能をなしていないという御意見が直接あったというのですから、これは信憑性はどうやらあなたのほうにあるのではないかと、いま私聞きながら考えたのですけれども琉球政府は三年前に補修をしましたと言う、そういうことのどこかに行き違いがあるように思いますので、これまた事実関係を少し調査させていただきたいと思います。もちろん事実は、いまおっしゃるようなことで非常に危険である。しかもダムは本来水をためるものであって、それがためられないというなら、はっきり原因がつかめるわけでありますから、ダムの本来の機能が果たせるような措置を考えたいと思っています。
  209. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ここに現地の写真を持ってきておりますが、あとで見ていただきたいと思います。  ただいま長官に写真を見せていただきましたが、ぜひひとつこれは早急にまた対策を立てていただいて、地元の不安をなくしていただきたい、かように思います。  次に、北部一周道路の問題は、長官も回られてもうよく御承知だと思いますが、南部また中部に対して北部の一周道路はおくれております。もっとも西部のほうは、いま本部町から計画的にできておりますが、東海岸がずっとおくれておりまして、特にこの国頭村の奥から楚洲、この間は大体六キロ余りあると私は思いますが、また、楚洲から安田といいますか、ここが八キロで、この間は、雨が降ればほとんど交通がとまってはんらんをする、自動車も人も通れないという個所であります。  それともう一つは、国頭村の安波というところから高江、この間が約六キロで、これも現在不通であります。米軍のほうで、この道路の開通補修をされておりましたけれども、最近はもうこれがとまりまして、現在米軍も琉球政府も放任状態で、全く開通できずに通行どめになっております。  いずれにしても、北部一周道路がずいぶんおくれておりまして、これらの全面改修舗装と、いま申し上げた二カ所については特にひどい道路になっておりますので、これらについては、ぜひひとつ中部、南部あるいは西部海岸におくれをとることなく、あたたかい対策を立てていただきたい、かように思うのですが、御見解を承りたいと思うのです。
  210. 山中貞則

    山中国務大臣 復帰記念事業としての五島循環道路のうち、北部循環道路が一番金も食うわけでありますが、ことしも三十四億の予算をつけまして突貫工事というものをやっておるつもりであります。これは三年計画で完成させるつもりでありますので、完成の暁は、これを沖繩本島における国道として全島循環線というものを取り込んでいって、りっぱに維持補修をしたいと考えております。  また、北部住民の方々の多年の要望——あるときには鉄道を敷いてもらいたいという戦前からの要望もあったようでありますが、今日の時勢から考えて、やはり道路公団の弾丸道路のほうがよかろうと建設省とも相談をいたしまして、四十六年度予算では北部の縦貫高速自動車道の調査費というものもつけておりますので、北部が道路面から脚光を浴びて、いままでの忘れられた北部という形から急速に浮かび上がってくる日が近いと考えておる次第でございます。
  211. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 次に、漁港整備のことですが、時間も迫ってまいりましたので、塩屋、糸満、大浦とか、たくさん漁港を整備するところがございますが、特にこの漁港整備についての対策をひとつお伺いしておきたいと思います。
  212. 山中貞則

    山中国務大臣 私も各地を回りまして、沖繩は、漁場に近いということでなくて漁場の中に島があるという感じのところでございます。しかるに、その六〇%の漁船はほとんどがくり舟でありますし、大型カツオ・マグロ等も非常に数が少のうございますし、近海漁業等についても船がないということで、まずはりっぱな船をつくるように、先ほど申しました米の援助資金をくり舟の近代化、大型化というものに重点的に指向するようにいたしておるわけでありますが、漁港についても、それぞれの島、それぞれの場所においてやはり何とかしてあげなければ——くり舟ならばかつぎ上げておけばいいわけでありますが、船を近代化、大型化して港がない場合においては、それは係留しておく場所がないということでたいへん問題になりますので、それらについては、来年度予算において、緊急を要する島々にそれぞれ漁港整備予算をつけた次第でございます。これらは予算の中に出ておりますので詳しく説明いたしませんが、今後、やはり沖繩の漁業というものは、本土から参ります魚に物品税をかけて保護しなければならない状態に置くべき場所ではない、漁業王国沖繩という姿に仕立て上げることは決して困難な情勢ではないと思いますので、農業のパイン、キビと同じく、沖繩を最も有利な条件として漁業で働いてもらうためには、漁港の整備と漁船の大型化、近代化ということにしぼって重点を置いて推進してまいりたいと考えます。
  213. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 漁港整備については沖繩もたいへん要望が強いので、長官のおっしゃったようにひとつ計画を進めていただくように重ねてお願いします。  これにつけ加えまして、復帰を前に、また復帰を契機に、ぜひ解決をしていただきたい問題が大浦湾に一つ起きていることを提起しておきたいと思うのです。それは久志村と宜野座村の漁業協同組合との間に、大浦湾の漁業権をめぐって紛争が続いております。これは琉球政府も、またあらゆる機会に各関係者からこの妥結について話があったやにも聞いておりますが、その問題はいまだ一触即発の姿で、一たび事が起きれば血の雨が降るような緊迫した状況下にございます。大浦湾は沖繩の中でも魚族の多い、また豊富なところでありますが、自分の地域でありながら他の村の漁区にこれが統括されておりまして、この間に相当ないざこざが起こっております。私の考えでは、これはおそらく、復帰を境に白紙に戻して、あらためて漁区の設定をするなり対策を考えるということをしなければ、もうチャンスがなくなるのではないか、こういうふうに思っておりますので、このことについて詳しく言うと時間がかかりますが、ぜひひとつ長官のお耳にとどめておいていただいて、これも復帰を前に、地元の県民の人たちが安心して復帰ができるように対策をお考え願いたいと思います。  最後に、簡単に二点お伺いしまして、私の質問を終わります。  実は、北部の国頭村の中にありますところの与名川ですが、この与名川は沖繩でも二番目ぐらいに大きい川といわれております。過去数回にわたる水害によって十八町歩に及ぶ水田が埋没し、沖繩でも有数の羽地の米と与名川の米というように、戦前も有名な羽地米と比敵する米がとれておったのでありますが、この与名川のはんらんによって十八町歩の水田が埋没してそのままになっておる。もちろん一部にはサトウキビが植えてありますが、これらの改修もやらなければますます災害によってはんらんするという心配があるので、これもぜひ対策を立てていただきたい。  それからもう一点は、糸満に国立の保養センター、老人福祉センター等をつくるという声がありますが、中部、南部は相当いろいろと施設があり、道路整備されておりますので、景色のいい、しかも地価の安い、気候も比較的よい環境に恵まれた北部にぜひ国立の保養センターをつくっていただきたい、そうして復帰記念にしていただきたいという声が強いわけでございます。  こういったことで、ひとつぜひ地元の方のために御尽力をいただきたい、こう思うわけですが、この二点について最後に御答弁いただいて質問を終わります。
  214. 山中貞則

    山中国務大臣 与名川の災害復旧でございますが、農道については四十四年度の予備費ですでに復旧を終わりまして、堤塘、排土等については九百万円余りをもって四十五年度予算実施いたしておりますので、そのような災害復旧についての作業は順調に進んでおると考えます。糸満の施設のそのような要望というのを私の手元でちょっといまつまびらかに聞いておりませんので、これらについては、要望そのものについても少し詳しく承った上、検討したい、琉球政府のほうと相談をいたしてみたいと思います。(瀬野分科員「北部のほうにつくってくれという声があるのです」と呼ぶ)わかりました。沖繩本島でも北部、中部、南部、いろいろと町村会も別になっておりますし、ひとつ銀行も中部につくってくれという要望等もありますので、そこらは、本島内のいろいろなバランスの問題もあるようでありますから、要望等の中で、今後出てまいります問題で、バランスも十分念頭に置いて考えてまいりたいと思います。
  215. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 これで終わります。
  216. 田中龍夫

  217. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は、きょうは新しい提案を含めて、公害関係立法についてお伺いいたしたい、こう思っております。実は総括のつもりで用意をいたしておりまして、相当資料を持っておりますが、分科会で時間もございませんし、一を言わば十を察するであろう山中長官でありますから、きわめて簡単に申し上げていきたいと思います。  まず第一点は、公害関係法、この法と政省令との関係であります。  せっかく臨時国会で公害法、これは法改正、新法を含めてできましたが、それを実施するための政省令がまだほとんどできておりません。そこで、六カ月後に実施する、こういうことになっておるので、のんびりとかまえておると思うのですが、あの附則の、公布の日より六カ月以内ということは、限度六カ月ということであって、六カ月を待たねばならないものではないと思うのです。実は、他の分科会でもそのことを申し上げたのですが、一日も早く、しかも事は急を要する公害の問題であります。したがって、四月一日なんて言わずに、用意ができれば、いつからでも実施するように考えてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  218. 山中貞則

    山中国務大臣 六カ月以内であるから、六カ月一ぱいたつまで政省令をおくらすということはいたしません。少なくとも新年度の始まる四月、おくれても五月ごろには全部そろうように、ものによっては四月一日から法も施行したいと思っておるものもありますから、そういうもの等には合わせるように急ぎます。
  219. 田中武夫

    田中(武)分科員 実はそのことで、海洋汚染の関係資料を要求したのです。運輸省は何にもできていない。まだ六カ月ありますからということで、のんびり考えておるようでありますが、これは運輸大臣にも分科会で申し上げました。したがって、四月一日からといいますか、新年度からは一斉に実施できるように考えてもらいたい、このように思っております。  次に、重要なのは、法律はできたけれども、それを動かすところの基準、たとえば排出の基準だとか、あるいは適用の地域だとか、こういったような重要な部門が政省令に委任せられております。私は常に言っておるのですが、法律だけを見てすぐにわからないような政省令であってはいけない、したがって、そのようなことについても、それは小さなことまで法に定める必要もない、そうすればまた窮屈な点もあるから。政省令を否定するものではありませんが、少なくとも法律を見れば、これはどの程度のことをしてはいけないのか事がわかる。少なくとも法に根拠を置く範囲を広めて、政省令にゆだねることを少なくすべきじゃないか。これも異見はないと思いますが、いかがですか。
  220. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりでありますし、租税法定主義という一方の概念は、やはり各種一般行政法についても、なるべくつまびらかに、国会で国民に知らすべき基本事項を定めてもらうという思想が貫かれておるものと思います。しかしながら、やはり技術的に科学的にこまかく基準を定めておかなければ、あとでそう簡単に直してはいけない問題、あるいは追加追加で変更してはいけない問題等もありますから、ある程度は残ると思いますが、本来は、すべて法律を読めばおおむねわかるというものでなければならないことにおいては同感であります。
  221. 田中武夫

    田中(武)分科員 次に、一連の法整備は一応できた、いろいろ問題はありますができた、こういうことになっておりますけれども、その法と法とのすき間があいておる。あるいはまた、その法律の中にわざとカムフラージュをしたのか、気がつかなかったのか、そういう点もたくさんございます。それは、今後詰めていかねばならないと思います。また、重要な点がそのままになっているという、いわば法のすき間風とでも申しますか、そういう点が、個々に当たりましたならばだいぶあります。私は、いまここでどの法律のどの条文ということは一々申し上げませんが、たとえば、火力発電所の規制措置についての問題でも、その大部分がまだ通産省に残されておって、地方委譲がなされておらない。あるいは法と政令との関係において、法の上に政令を上積みすることができるような規定になっているが、亜硫酸ガスが抜けているとか、いろいろ問題があるようです。こういう問題について一つ一つ当たりたいのですが、それはやめますけれども、山中長官もごらんになって、法と法とのすき間風、あるいは法自体にすき間があいている、そういうことであるならば、ざる法のそしりを免れないと思います。したがって、少なくとも、いつまで公害担当大臣をやっておられるかわかりませんが、あなたのときでないと思い切ったことができないのではないかと思うのです。何なら個人的に相談をして、こことここということを申し上げてもいいのですが、どうでしょう。そういうすき間風は通らないように直ちに十分検討してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  222. 山中貞則

    山中国務大臣 私のほうも感じていることがあります。たとえば電気ガス事業法というものが、低硫黄重油の加工とかあるいは広域供給の義務とかいうことで、やはりそれぞれの法律にゆだねざるを得ないだろうとはいっても、しかし、騒音防止法まではたして適用除外にしなければならないのかどうか、そこらは大いに疑問のあったところですけれども、これは拙速と言われればやむを得ませんが、通産省と議論をしておりますうちに、法律そのものが間に合わないという事態等もございまして、騒音発生の施設、その個所だけを地方でやらせるとか、別にやらせるとかいうことは、その施設だけを別につくるわけではないので、騒音発生装置もその一環であるというならば、しいて認められぬこともないというわけで、妥協したいきさつ等もございます。これなどはすき間風といいますか、こう薬ばりというか、やはりどこかもう少し厳正な態度でいくべきものであったという点を、私自身も反省で持っております。そうすると、私自身もそれを手直しするのにやぶさかではありませんが、今国会においては、やはり三月中旬には全部法律を出さなければなりませんので、環境庁長官が新しく出発いたしますと、そればかりにかかりきりの大臣でありますから、法律は全部整備してもらったわ、予算も大体において——権限その他は地方その他に細分化してもらって、補助率の特例等もつくってもらったわでは、ずいぶんひまな大臣にうっかりするとなる可能性もあります。しかし、公害という環境を責任を持ってやる大臣が、断じてひまであろうはずはないのでありますから、そこらのところは私のほうで、あなたの知恵も借りるかもしれませんが、考えておったこと、あるいは私自身が気づいている、言われるすき間風等については、十分に引き継ぎをしておいて、それを作業してほしいと思っているところであります。
  223. 田中武夫

    田中(武)分科員 ぜひひとつ、できれば今国会にでもやってもらいたい、こう思う次第であります。  次に、せっかく法律ができたが財源がない、こういうことでございますが、このことを参議院で言えば、何か総理はおこったそうですが、下水の予算までどうとかこうとかいうようなこともあったようですが、いずれにいたしましても、世界に冠たる法と総理はおっしゃっておりますが、私はそうでもない、同時にもっと思い切った財源を必要とするのではなかろうかと思う。  そこで、この法とかあるいは予算の成立において制度等を異にしますが、私ここに持ってきておりますが、これも一々申しませんが、外国の立法例を見てみますと、その法律によって財源を確保している。御承知と思いますが、たくさんございます。一例をあげますと、一九六七年のアメリカ合衆国の大気性質法、これは俗に清浄大気法、こういうことになっておりますが、それの三百九条には「資金」という条文があって、毎年度ごとにこれこれと三年間にわたって法律条文で支出の金額をきめております。あるいはまた、一九七〇年の水質改善法及び環境性質改善法、これでは、たとえば二百五条で権能付与という規定がある。さらに、たとえば十一条、二十条等で、一々申しませんが、これには、本条の諸規定を遂行するために何百万ドルを支出する、こういうような規定になっておるわけです。また、西ドイツの法律を見ますと、これは率をきめておるのがある。  そこで、最初申しましたように、法律の成立あるいは予算等、これは予算を法律として扱っておるところもありますし、いろいろその国において制度等の違いはあるとしても、今後、ことに公害のようなこういうのは、もう法律自体で支出の権限を具体的に定める、こういうような法律を研究しても、あるいは立法を研究してもいいのではないか、こう私は思うのですが、いかがでしょうかね。
  224. 山中貞則

    山中国務大臣 ドイツの法令は確かにわが国でも参考になるのではないかと思っております。いま研究させております。アメリカのは、私も読んでみたのですが、これは、どうやら議会のほうの法律の中にはそういうものが立法府として盛り込まれておるのですけれども、何だか限度額みたいな感じで、歳出権そのものでもない、あるいは債務負担行為も起こせないという感じで、これは大気清浄法の法律をあげられました。あるいは水質のほうでも、議会のほうでは八億八千万ドル以上のものを一応用意してと申しますか、法律に書いたのに、ニクソン大統領が一九七〇年に実際上支出勧告をしたときには二億一千万ドルであったので問題を起こした。まあ開きが大きかったせいもありましょうが、少しくなじまないような制度でもあるような気がします。  わが国でそういうことをやりますと、やはりその年の歳入と歳出の問題もありますから、そうすると法律に書いてある予算をなぜ守らぬと言ってまた論議が起こるでしょうが、そういう外国の例もこれから広く、やはり環境保護というような国際的視野にたえなければなりませんので、勉強もしていきます、いいところはとりたいと思います。  日本の場合においては、下水道予算の五カ年計画はセットされたといっても、これが地方に対する補助率のかさ上げ等の特例が、全国的なものもありますが、まず重点的には公害防止計画を立てた地域から始まりますので、そうすると昨年の三カ所は別として、東京、大阪、神奈川の大もの等が入ってきますと、限られた予算のワク内で重点配分をした上に、補助率もその地域だけかさ上げしていくことは、いわゆる地方の小都市に至るまでできるだけめんどうを見てやりたい建設行政としての立場からは、若干異論のあったところでありますけれども、これらはやはり新しい補助体制その他も整っていきますので、事業量を縮小するということも問題がありますから、五カ年計画等については定まったばかりで批判するところではありませんけれども、今後新しい事態を踏まえて、日本における下水道予算のあり方について議論する日は遠からず来るというふうに私は考えております。
  225. 田中武夫

    田中(武)分科員 議論は避けまして、前向きの答弁がありましたので、次へ参ります。  次は、訴訟関係ですが、公害の被害者、この場合に、民事訴訟では原告になりますけれども、大体集団が多いと思うのです。また、被告が加害者側でもやはり集団というか、複数の場合が多いだろうと思うのです。ところが、現在の民事訴訟法は、もちろん複数の当事者を予定はしておりますが、こういった集団における訴訟ということを考えていない。そうでなくても十年訴訟といわれておる。集団のものを現在の民事訴訟にのっとって一々やっておれば、被害者のほうは疲れてしまう、私はこういう感じがするのです。私も具体的な提案というものはまだ用意はいたしておりませんが、そうでなくても十年訴訟といわれておる。集団の場合に、一々刑事訴訟法の証人調べとか、やれ何とかとやっておると、ますます長くなる。大体被害者のほうは資力に乏しい、そこで疲れ切ってしまう。一方加害者のほうは、まあ大企業が多い。したがって、何人かの有力な顧問弁護士もある。わざと引き延ばそうと思えば何ぼでも引き延ばせる。そういうところで無過失賠償責任制度の云々ということも出てくるだろうと思います。  きょうは私は、この問題は論議しようと思っておりませんが、いずれにいたしましても、何らかの方法を考える。たとえば民事訴訟法の特例とでもいうか、何かこういうことに対することを考える必要があるのじゃないか。そうでないと、疲れてしまうのを待つ、疲れ切ったところで和解を持ち出すんですね。サリドマイドが一つそういうケースだろうと思うのです。この公害訴訟というのは、私は大体民事訴訟においても人権訴訟だと思うのです。ところが、和解してしまうと、結局はそれでことは済んだということで、ほんとうに論議しなくてはならない、あるいはほんとうに究明しなくてはならない問題がぼかされる。サリドマイドの問題にいたしましても、国や会社は和解ということを言っておるそうですが、これなんかにいたしましても、結局は、人権という大きな上に立っての究明すべき問題が隠されてしまっておる、あるいはそれが残されたまま事態は安易に解決するということになるだろうと思うのです。  そこで、いかがでしょうかね。これはひとつ政治的というか、感じとしての御答弁山中長官から、それから法務省の民事局長からは技術的な面というか、これは直ちにどうしろということではないのですけれども、検討する必要があると思うのですが、いかがでしょうか。その点を双方にお伺いいたします。
  226. 山中貞則

    山中国務大臣 私の立場から司法権の批判はいたしませんが、しかし、かりに無過失賠償制度をつくってみましても、現在の公害四大訴訟といわれておる典型的な中で、工業法の無過失賠償の前提に立って争われておるものが、すでに三年有半の月日を経過しておる。このことはやはり問題があるのではなかろうか。心情的に言うならば、サリドマイドの裁判等は、まさに私たちは、どうしてあの子たちの写真を写すのだろうと思うぐらい胸のつぶれる思いのするできごとであります。これは心情的な問題であります。したがって、これらの問題について司法権の中でどのように対処すべきが真に国民のための裁判制度の運用であるかということについて、十分御検討願いたいものであるという希望を私は切に持っておる次第でございます。
  227. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 法務省の民事局長でございます。  公害関係の訴訟におきまして、原告が非常に多数の場合が多いわけでございまして、いわゆる集団訴訟という形で、訴訟が非常に長引いておるということは御指摘のとおりでございます。この長引く原因というものをごく、平板に考えてみますと、これは第一には……(田中(武)分科員「そんなことじゃない、そういう集団民事訴訟というものを考えられるかどうか、こういうことなんです。これだけでいい、長い答弁は要らない」と呼ぶ)はあ。これは運用の面とそれから制度の面と、両方あると思います。運用の面も非常に考えなければならぬ問題が多いと思いますし、それから制度的には、これは現在共同訴訟という制度がありまして、しかも、みな同一の弁護団が証拠共通の原則のもとに行なっておるというので、一応現在考えられる形としては整っておるというふうに思われるわけでございますけれども、いろいろ新しい型の訴訟でございますので、なお裁判所のほうとも協議いたしまして、研究をしてみたいと思っております。
  228. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは私はほんとうに真剣に一ぺん検討してもらう必要があると思うのです。それと同時に、これは論議はいたしませんが、無過失賠償責任制を取り入れる、そして裁定までやれるような機関を置く——無過失賠償責任制度と、そういった仲裁までやれる権限を持つ行政機関というか準行政機関、司法機関、こういうものが私やはり裏表にならなければいかぬと思うのですが、こういう点もあわせて検討の要があるとぼくは思うのですが、どうでしょうか。
  229. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、行政府として検討の範囲内でございます。中央公害審査委員会を、今回閣議決定の要綱段階では環境庁に付属させることにいたしていたのでありますが、しかしながら、法制局もあるいは行政管理庁も、あるいは中央公害対策審議会も、すべて、これは分離して独立さしておくべきである、第三者機関のほうがいい、こういう意見でありましたので、法案の段階では総理府に残すことにいたしましたが、しかし、将来やはり公害関係が一本にまとまるという意味からいえば、どうしても付属してもだいじょうぶだという姿勢を整えてやらなければならない。それは、まず機関の権威を三条機関として、そしてただいまお話しのありました裁定権を与えて、そして環境庁に付属させなければならぬだろうということで、その問題は現在では相当進んだ状況で検討を開始しておるところでございます。
  230. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間の関係で、まとめて御質問いたしますが、一つは環境庁の問題です。この設置法は、国会にまだ出ていませんね。いつごろお出しになるのか。現在、設立準備委員会でやっておられるようですが、いわゆる各省庁のなわ張り争い、たとえば公害行政の本家だとみずから思っておる厚生省、あるいは下水で多くの予算を取った建設省、あるいは企業指導の立場にある通産省、いろいろ入りまじって、簡単にいえば各省庁のなわ張り争いというか、そういうものがじゃましておるのじゃないか、こういう感じもします。  さらに、もう一つは、公害対策本部ですか、総理が本部長になって、あなたが——これは、環境庁ができたときに一体吸収せられるのかどうか。もしそうであるとするならば、総理が頭にあったのが、今度は国務大臣というと失礼ですが、国務大臣が頭になるというようなところで一体どうなるのかという問題。  さらに、名前にはこだわりませんが、たとえばアメリカでは環境保護局、まあ名前は局ですが保護局、英国では環境保護省ですか、スウェーデンでは環境保護庁というような名前になっておるわけですよ。これは、名前がそうだからということではないが、どうも環境庁というと弱い感じがする。そういう点を含めてひとつ一括して御答弁願いたい。  それからもう一つは、日米閣僚公害会議ですか、これはアメリカ側のほうから提案があったと聞いていますが、これはいつ、どこで、だれが出席をして開かれる予定なのか。さらに、その場合にどういうことをまず議論したらよいとお考えになっておるのか、いろいろありますが、そういう点を一括してお伺いします。
  231. 山中貞則

    山中国務大臣 盛りだくさんの質問でありますが、第一点の環境庁設置は、これはすでに法律は国会に提案をしまして、二十五日の本会議で提案理由説明ということになっておるわけであります。  その過程において若干の各省のセクショナリズムによるトラブルがありましたことは、確かに私も認めざるを得ませんが、しかしながら、強力にこれを調整して、少なくとも名前の問題とも関係をしますが、単なる公害省ではない。すなわちその中心に自然保護、鳥獣保護まで加えた国立公園行政等は、実務まで取り入れて大きな柱を立てたいという願いは達したつもりであります。  環境庁については、イギリスでは環境省、スウェーデンでは環境保護庁、アメリカでは環境保護局、フランスでは自然保護及び環境保護省ということで、与党の四十二歳の幹事長プジャード氏が就任したということで、どこの国も一応やる気を見せておるわけであります。  そこで、私どものところの今回予定しておりまする環境庁については、いろいろと議論がありました。笑い話を披露すれば、保護庁といえば何か鳥みたいじゃないかというような話までまじえていろいろな、これは名前の問題ですが、かってな議論も出たのですが、やはり幅広く将来環境問題全体、すなわち世界の趨勢である環境保全というものに立ち向かう役所であるということからいくならば、公害防止というのは当面の急務であるけれども、永続的には国際的な地球的な観点から見して、そういう問題を中心にしていく役所になるであろうという意味で環境庁がよかろうということで、省にしなかったのは、総理府の外局とするということことにおいて庁ということにいたしたのみで、専任大臣が置かれて執行することは全然変わりはありません。  そこで、現在の公害対策本部は総理が本部長であるために、本部の機構そのもの、権限そのものが、本部長としての内閣総理大臣の、各省庁の長たる大臣を指揮できるという強力なる権限を持っておるということで、私の微力でも何とかやってきたということになるわけでありますが、その点を私も心配をいたしましたので、環境庁をつくりまする際に、これを各省の長あるいは大臣と同じような権限にしないで、環境保護に関してはあらゆる問題について、各省庁の行なう行政についても、勧告もあるいは報告も調査もすることができるようにいたしてありますし、それでうまくいかないと見た場合には、現在の本部と同じように、内閣法第六条によって、閣議で決定された方針に基づいて内閣総理大臣は各省の長を指揮するという、その指揮権を発動してもらうような意見の具申を行なうということを書き込んであるわけでございます。その権限を付与されておるわけでありますが、しかし現在の対策本部そのものが総理大臣を長としておるために、同時に各省庁の長よりか一歩進んで指揮する立場にあるということは若干そこにクッションを一つ置いた形になります。その点は今後行政のあり方でどうしてもうまくいかないということが起こりますれば、この点は考えていかなければならないかと思いますが、独立の庁といたしますと、どうしても限度はそこに落ちつかざるを得ないということで、一まつの不安を抱いておる点は率直に認めます。
  232. 田中武夫

    田中(武)分科員 それから公害会議……。
  233. 山中貞則

    山中国務大臣 日米公害閣僚会議でありますが、これは私どものほうが提案をする番でございました。昨年はアメリカが日本に参りまして、私どもがそれを受けたという形でありますので、その際の取りきめによって今度はアメリカで行なうということで、何月ごろにしたいということで、それぞれ両者に意見の食い違いがございました。いま最終的に六月の上旬ならば両者何とか折り合いがつくのではなかろうか。ただし、私が参議院選挙の最中に日本を離れてよろしいという総理の了解がとられればの話でありますが、野党は歓迎されるかもしれませんけれども。そういう意味で、そういう前提がありますが、両者そこらのところで合意できればその時期において持つことになるかもしれません、これは最終的にきまっておりませんが。場所はワシントンでございます。先方の責任者は大統領の環境問題諮問委員会委員長のラッセル・トレイン氏以下その構成スタッフ、並びに実務官庁としての発足いたしましたばかりの環境保護局長以下のスタッフの諸君になろうと思います。私どものほうは、それまでは、私が公害担当大臣でございますし、昨年第一回の日米会議の当方のメンバーでございますから、私を長とする各省並びに対策本部の諸君を連れての、うちのほうはそう大がかりではないと思いますが、協議になるかと思います。その主たる議題は、その後起こりましたわが国における臨時国会、公害国会において定められた法律その他について、アメリカ側のほうがずいぶん聞くだろうと思います。すでに問い合わせも参っておりますが、その後に起こった両国の——向こうは環境保護局が出発したあとのいろいろな行政の実態とその反省、そういうもの等について、率直に意見を交換し合いたいと思いますが、なかんずく、自動車業界のためとばかりいえない、マスキー法案等の扱い等について、日米両国大問題でありますから、こういう問題とか、あるいは日米共通の公海である太平洋汚染に対して日本がすでにとった海洋汚染防止法の措置、すでに今国会で条約批准もしようとしておるわけでありますし、さらに一九七二年に予定されておりまするスウェーデンのストックホルムの国連の環境汚染に対する特別の会合において、日本とアメリカがどのような役割りを果たし得るか、共通の目的の探求というようなことになるかと考えておる次第であります。
  234. 田中武夫

    田中(武)分科員 もう時間がありませんから、最後の一問だけお伺いします。  その前に、いまの日米公害閣僚会議ですが、実のあるものにしてもらいたい。いまたまたま海上汚染防止法ということを言われたが、あれなんかも問題なんですね。相異なる目的を持っておる二つの国際条約を一つの法律にまとめようとしたところに無理がある、そういうように私どもは見ておるわけなんですが、それはそれとして、ひとつ、お祭り騒ぎといえば失礼ですが、形式的に流れないように、実のあるものにしていただくように御提案しておきます。  最後に、これはお葬式なんです。省庁葬ですか、省や庁の葬儀、これは前に通産省の官房長の川原さんがなくなったときに、通産省葬をやったために国会で問題になったこともあります。私はいまここでなくなられた方の名誉を傷つけるようなことは毛頭考えておりませんが、最近警察庁のほうで、予算獲得競争というか戦争の中の犠牲者となられました藤森さんですかの警察庁葬がございました。川原さんのときに問題になってから基準をきめておられるようです。しかしながら、どういつでもこれはやはりそのなくなった人の顔といいますか地位、いす、ポジションですね、さらになくなり方等が、いろいろと基準があっても変わっておると思うのです、左右すると思う。こういうことが巷間よく話題になりますので、こういうことについて、これは総理府だろうと思うのですが、それのどこか知りませんが、基準は一応あるけれども、もう一度はっきりとしたほうがいいんじゃないか、そういう気がするのであえてお伺いするわけなんですが、いかがでしょうか。
  235. 翁久次郎

    ○翁説明員 内閣の翁でございます。ただいまの各省庁のお葬式に関する基準につきましては、四十一年の三月に次官会議の申し合わせという形で各省庁葬の基準について申し合わせをしております。その内容は、殉職またはこれに準ずる形でなくなられた方、それからその業務が省庁全体について功績の著しい方である、そういう方について省庁の長がお葬式を執行するという形で申し合わせをしております。
  236. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、実は殉職あるいはこれに準ずるというその判定がむずかしいと思うのですね。  それから費用の点なんかも、はでな省とじみな省とでは違うだろうと思う。もっとずばり言うならば、関係業界あたりに顔のきく省とそうでない省庁とでは違うだろうし、それらの点をもっと私は検討する必要があるんじゃないか、そういうことを申し上げておきます。  お葬式で、これで終わります。
  237. 翁久次郎

    ○翁説明員 さらに細部にわたっての検討ということにつきましては、なお私どものほうで検討いたしたいと思っておりますけれども、一応現在のところでは大体適正に行なわれているのではないかと考えております。
  238. 田中龍夫

    田中主査 堀君。
  239. 堀昌雄

    ○堀分科員 本日は交通安全対策の問題について、総理府総務長官と警察庁に少しお伺いをいたしたいと思います。  交通安全対策というものがいま非常に重要な課題になっておりますけれども、どうも私はこの取り組みが少し部分的に過ぎるのではないのか。といいますのは、確かにいろいろなこまかい対策が非常に重要でありますけれども、基本的にはどうも日本の自動車の増加数と道路整備状況といいますか、これのアンバランスが一番ベースになる重要な問題ではないか。いろいろと問題がありますけれども、この問題を解決しないで、周辺の問題だけを処理しておっても、どうしてもなかなか避けられない問題がある、私はこういうふうな感じがしてならないのですが、総務長官のそれについての御見解を伺いたいと思います。
  240. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私どもの率直に反省しなければならないところでありまして、国全体としてやはり道路というものはどんどんつくって、そして改良舗装をやって快適な道路にすれば便利なものであるということで、いままでつくってきたわけです。ところが、後ほど詳しいお話もあるのでしょうが、道路がどんどん舗装が延長されて進んでいくに従って、もちろん自動車の台数等の相関関係もありますね、こういうもので交通事故死というものが非常にふえていく。さらにまた、その事故の形態も、いままで日本では歩行者あるいは自転車というような弱い立場のものが走る凶器に死傷させられていたという状態が、だんだんアメリカ型に、走る棺おけ型にパーセンテージが移行しつつある。これは重大な問題であると思っておるのです。  そこで、来年度の予算から始まります道路計画の中で、安全施設の五カ年計画を、一年おくれになりましたけれども、そのかわり、道路五カ年計画でいえば終了の年次の翌年まで含めた五カ年を、道路の開設、延長、そういうものに付随して必ず安全設備というものをつくっていく。後ほど建設省も詳しく答弁いたしましょうが、指定道路の市街地の一〇〇%に少なくとも歩道をつける。歩道をつけたら、理論上は、飛び込んでくるサーカスみたいな自動車でもない限りは死傷者ゼロになるはずなんですね。そういうようなこと等で新しい立場から取り組むことにいたしましたし、これに対応して警察庁も、道路行政と無関係の取り締まり予算というものを、緊急三カ年計画ではやっておりましたけれども、永続してセットしておりませんので、これはやはり警察庁でも五カ年計画を立てる。同じく踏切事故というのが無視できないケースでありますので、運輸省の踏切道の改良五カ年計画というのも同じく五カ年に合わせて、三本の柱をドッキングさせることによって、この自動車の走る棺おけ型も、あるいはもちろん走る凶器型の排除は当然でありますが、何とかして事故を減らしていきたい。ことに死者、この平和な日本における戦争という名を冠せられるほどの死者というものを出しているわけでありますから、死者を減らしたいし、なかんずく歩行者、自転車乗りの、弱い立場の人たちの生命を守ることに全力を傾けたい。そのためには、政策目標でありますけれども、政治として昭和五十年に、昨年の歩行者事故の死者を半減させたいという悲願を立てておる次第でございます。
  241. 堀昌雄

    ○堀分科員 いま、今後はかなり総合的にやっていきたいというお話、私たいへんけっこうだと思うのですが、この中で、私はやはり行政上の問題として非常に問題が残っておる点が一つあると思うのです。それは、いま日本の道路は、高速道路でも時速百キロまでというのが実は道路交通法ですか、要するに法律の定めになっておるわけですね。ちょっと一ぺんそこを答えておいてください。
  242. 片岡誠

    ○片岡政府委員 仰せのとおりでございます。
  243. 堀昌雄

    ○堀分科員 ところが、自動車は、販売しておる広告を見ますと、百九十キロとか百八十キロとか、最高速度がすべてがそうなっているわけですね。一体、国が法律で百キロ以上の走行を禁止しておりながら、これをこえた場合には罰金なり行政処分なり各種のことを法律で定めておいて、片方でそういう違法が行なわれることを黙認しておるというのは、これは制度上非常に問題があるのじゃないか。もし百キロ以上の走行をさせることが適切でないということのためにそういう処置をしておるならば、多少のエンジンその他が古くなったりいろいろする関係もありましょうが、せめて最高は百二十キロ以上には走らないという自動車をつくれば、それで百キロ、ある程度アローアンスは、これはやはり機械ですから、要るでしょうが、少なくともいまのようにスピードは野放しの車をつくらせて、そうして百キロにする。こうなれば、見ていないところでは、だれも見ていないかなんかならば、人間飛ばしたくなるというのは人情で、おまけに百九十キロ出るなら一ぺん百九十キロ飛ばしたらどうなるかというようなことで、これが私はやはりいま長官が言われたようなアメリカ型の事故を起こす最大の理由の一つだと考えておるのです。この点は、私はやはりいま総務長官とお話していますのも、あなたのところが交通安全対策の元締めでありますから、やはりこの生産に対する規制といいますか、その不必要な、国内で走れないようなスピードの車を国内用には販売をしない。外国はもちろんもっと高い水準であれば輸出は問題ありませんけれども、それについて何らかの処置をしないのは、私はどうも法律的に見て非常におかしい構成になっておる、こういう感じがするのですが、総務長官いかがでしょうか。
  244. 山中貞則

    山中国務大臣 確かにそのとおりおかしいものですから、私もたとえば百キロなら百キロ以上は踏み込めないアクセルですね、アクセルに輪をはめて、げたをはかしたらどうだというような提案もしろうとながらしたことがあるのです。ところが、やはりエンジンというのは、どうしても輸出用、国内用と分けて生産するのは、企業としては非常なロスらしいのです。やはり外国に出す場合は、どうしてもこれは最低百五十のメーターがないとちょっと売れないでしょうし、そういう意味でそれはできません。そこで、同一のエンジンであってその可能性を持つエンジンであっても、アクセルがそれ以上踏み込めなければいいではないかという提案に対しては、それは警察庁もそれに対して異論を、現在の局長ではありませんが、前任局長を中心として、それは一見アイデアのようであるが非常に危険である、ということは全部の自動車が八十は出せるし、全部の自動車が八十以上は出せないという状態を想像したときに、まあ四車線、六車線いろいろ差はありますけれども、追い越しなんかの場合に、追い越すときに同じスピードで並ばれた場合に、追い越しもできないし、追い抜かせもしないという状態があった場合に不測の事故が続発するおそれがありますということで、私もしろうとですから、さっそくその案は、いやただの思いつきであったといって引き下げたのですけれども、これらは単なる笑いごとでなくて、やはりそれ以上に、あなたの議論をかりるならば、法律違反的なスピードまでメーターにつけて、ことに若者あたりはかっこよく一ちょう飛ばしてみるかという、そういう気持ちにかり立てるような車体の構造、表示、それに追っかけてコマーシャルというようなこと等は、これはよほど何とか考えなければならない事態であることは私は十分自覚しておりますが、いまここで的確なきめ手を答弁できないという段階であります。
  245. 堀昌雄

    ○堀分科員 これは技術的な問題でありますから、私もいまこうしたらいいということではありませんけれども、しかし私はいまアメリカが公害規制の問題で何か問題を出せば、やはり法律に基づいて産業はそれに従うというのがいまのアメリカの情勢ですね。日本の場合は、そういう意味では、産業に法律が従ったのでは私は困ると思うのです。ここまで重要な課題になっておるときに、いま私が申し上げたように、確かに追い抜き等のこともありましょうから、百キロの最高制限なら百二十キロまでというならわかると思うのですよ。百九十キロまで出るスピードを必要とするということについては、私はどうしても納得ができないわけです。必要にして十分なスピードがあればいいのであって、いまや百九十キロの、百八十キロのというのは、必要にして十分ではなしに、過度のスピード、要するに現在の日本の交通諸事情から見て過度のスピードを認めたことになるので、ここらはひとつ十分検討を進めていただいて、総務長官の思いつきというよりも、機械工学的に一体キャブレーターの能力をどのくらいにすれば、シリンダーがこれでもどのくらいのスピードのところで落ちるとか、そこはおのずから私は機械工学の処理をすればそんなにむずかしい問題ではないんじゃないか、こう思いますので、ひとつこれはぜひ取り上げて検討を進めていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  246. 山中貞則

    山中国務大臣 承知いたしました。検討はいままでもしておりますが、さらに検討しますし、現在交通規制の面からですと、一定の電波を出して、その電波の届く範囲内の、届くと申しますか、その一定の必要な範囲内においてはどんな車も一定のスピード以上は出ないというのが、すでに研究から実地の使用段階にまで警察の努力で入ってきておりますので、そういうこと等も関連しながら考えていきたいと思います。
  247. 堀昌雄

    ○堀分科員 その次に、私はさっき道路と車のアンバランスに触れたわけですが、やはり私は、現在の車のふえ方は適当な形に抑制されてしかるべきではないか、こう実は考えております。ところが、幸いにして、現在これを確実に実行してもらえればかなり抑制的に働く法律が実はあるわけです。それをちょっと読み上げますと、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」と、こうありまして、その第一条の目的に、「この法律は、自動車の保有者等に自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づけるとともに、自動車の駐車に関する規制を強化することにより、道路使用の適正化及び道路交通の円滑化を図ることを目的とする。」こういう第一条を持った法律が実はあるわけです。  ところが、現在おそらく皆さんもそういうことを十分見ておられると思うのですが、私は尼崎市という阪神間の市に住んでおるのですけれども、夜間における道路上の駐車というものは目に余るものが実は率直にいうとあるわけです。東京都でも地域によって、夜、私はオーナードライバーですから自分で運転して歩いておりますが、まさにそこは駐車場かと思うような道路があるわけです。これが一体なぜこういう形になっておるのか。本来、この法律がもしきちんと整備がされて施行されておれば、私はこの問題はだいぶ解決をするんじゃないかと思うのです。  その問題点として、この法律は実は登録時の保管場所の証明というか、これだけを義務づけておる、こうなっておるようですね。警察庁、答えてください。
  248. 片岡誠

    ○片岡政府委員 仰せのとおりでございます。
  249. 堀昌雄

    ○堀分科員 しかし実際は、この法律の第一条からいきますと、そういうことにはなっていなくて、「この法律は、自動車の保有者等に自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づける」ということが趣旨になっているわけですね。そうすると、この法律の趣旨をはっきりやりますと、このとおりであっていいということになりますから、登録要件ではなくて、自動車を所有しておる者の義務として当然この法律の第一条は読まれるべきだと私は思うのです。それならばひとつそのような法律の第一条の目的に沿ったような法律に改正する必要が第一点あると私は思います。  第二点は、これを義務づけておりますのは別表の定めるところによるという施行令に基づいて、まあ伺うところによると人口十万以上の都市というようなことになっておるようであります。今日、自動車というのはとまって動かないものなら、私は人口十万の都市ということは意味があると思うんですが、十万の都市の隣に二万の、三万の都市があって、また十万の都市があるとこうなりますと、両わきで幾ら保管場所を規制しても、まん中へみんな逃げてしまうわけですね。これはだめなんです。  そこで、私は一つ提案をしたいのは、この法律のとおりにやってもらいたいということが第一点。全国全部やってもらいたい。そうすると、いなかまでそんなことをする必要ないじゃないか、こうなると思うのですが、これはちゃんとこう書いてあるんですね。この法律は、いまの第一条は「自動車の保有者等に自動車の保管場所を確保し、」とこうあるわけです。道路に置いちゃいかぬとこうなっておる。いなかに行けば土地が一ぱいありまして、都会のように家がぎっしり詰まっていて坪何十万円ということになっていなくても、まあ二円五十三銭の土地はそうないかもしれないけれども、けっこう安い土地だから、農家は庭先に自動車の一台や二台を置くぐらいのことは実は何でもないわけです。庭先に置けないような土地にくれば、もうこれは規制をしなければいかぬところなんです、本来的には。ですから、いまのような十万都市というような発想を取りやめて、すべてにひとつ規制をしてもらいたい。そうしてそのことは、要するに保管場所ですから、車庫である必要はないですよ。道路に置かせないというのがこれの目的ですから。その家にあき地があれば、これだけあき地があるといって届ければそれで認めたらいいと思う。こういう考え方にひとつこれを改めたらどうか、こう思うのですが、警察庁どうでしょうか。
  250. 片岡誠

    ○片岡政府委員 御指摘のように、現在百三十都市が適用地域になっております。これは昭和四十二年からそのままでございます。私どもとしましては、この適用地域を広げるということで現在各府県に指示をいたしまして、調査をいたしております。  考え方としては、先生おっしゃるように、全国に適用するというのも一つの考え方だろう、それから、市制施行地はすべて適用するというのも一つの考え方だろうと思います。あるいはさらにしぼれば、先生のおっしゃった問題の、周辺の影響を受けておる都市と五万以上の都市というような考え方もあると思います。いずれがいいか、その第一線のほうにも現在照会中でございます。  それで、この法律は四省庁共管の法律でございまして、警察、それから総理府交通安全対策室、建設、運輸、それで私どもが実態としては一番存じているわけでございますので、案をつくりまして、山中長官のところで整理をしていただいて、ぜひ適用地域を拡大していきたい、そのように考えております。
  251. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまの改正点については、今後相談していきます。  それよりも、いまのその法律をもう少ししっかり守ってほしいということを、私はかねがね言っているのです。ということは、それは何のためにその法律がいま使われているかというと、自動車を買う場合に、その車庫証明というものが、その法律によって、添付されなければ買えないからということで、車庫証明を添付すると、それが友だちのうちの車庫であろうと、どっか遠くの有料駐車場であろうと、そのときに印鑑がもらえた場所のみでもって、あとは全然一回も登録した場所に持っていかないというつもりで、初めから車を買うためにその法律を利用しているといっては何ですが、くぐっているというきらいがあるのです。  そこで、私は、警察庁のほうに、追跡調査をする必要があることをたびたび言っております。ちょっと思いつきですけれども、たとえば大雪の朝、雪を乗っけて走っているのは全部路上駐車していた証拠だから、一回きりしかそのかわり成功せんよと、全部びしびしひっつかまえて、その登録を取り消しなさい、車を持つことの資格を欠如しているのだから。それをやっただけでもだいぶきくよということを言っているのですが、それらに類する行為、たとえば路上駐車の制限は一定の場所に一定時間以上永続しておった場合とかなんとかというようなことで、それならば、一定の時間がたちそうなときには場所を移せばそれでいいのかというような反論を、当然法律をくぐろうとするものは読み分けるわけですから、いまある法律を完全に守らせるという体制をとることによって、相当に不法駐車というものは除けるものであると私は考えていますので、まず、法改正の対象地域の拡大も当然必要でありますが、いまの法律を完全に守らせる、追跡をさせる、確認するということも必要だと私は思っておるわけです。
  252. 堀昌雄

    ○堀分科員 長官、頭がさっさか働くので、私がその次にやろうと思うやつをいま言っちゃったわけですけれども、それはいいんですが、要するに、これは登録時要件になっていますから、いまのように、あとでやるやつにこれは実は有効でないのですよ。  そこで、これは登録時要件でなくて、車両を保有する要件に書き直さなきゃいかぬと思うのですね。車両保有要件に書き直して、そうして今度はそこの場所を点検して、ここへ行ってもいない、またもう一ぺん行って見る、いない。もう三回ぐらいいなければ、これはもうそこに置いていないということですから、これは出頭を命じて、一体いつもどこへ置いているのだということで、これは保有を取り消したらいいと思うのです。ですから、まずこの登録要件に書かれておることを——もう登録のときだけなら、有料駐車場にひとまず一カ月契約をしておいてそうしてやる。あと一カ月過ぎたら、登録できちゃったら、あとはもう涼しい顔で路上に置く、こうなっておるわけですから、これをやはり法律をひとつ規制をして、追跡調査を可能ならしめる改正をやっておかないと、現行法ではちょっとこれは不備なようでありますので、この点が私は実は非常に重要だと思うのです。ともかく何にしても、そのいまの私の考え方は、これは法律の一条は、保管場所をちゃんとしろ、道路に置くなと書いているんですから、これを人口五万とか三万とかという発想はこの際私はやめるべきだと思うのですよ。要するに、すべての車を道路上には保管としては置きませんよ、それはまさに一時的な駐車、停車の範囲であって、保管のために置いてはならぬとこう書いてあるわけですから、これをきちっと守らせるということにやれば、私は、自動車の増加がややちょっと変わってくるんではないか。同時に、そのことは、道路上にそういうものがないということで、ここに書いてあるように、道路運行に支障を来たさないことになるわけでありますので、この点はひとつどうしてもそういう法律の体系を変えて、その法律の第一条にぴしっと合うような法律にしなければならぬ、こう考えるわけです。
  253. 山中貞則

    山中国務大臣 これはその法律ができたとき、そのときに、いわゆる路上不法駐車をそういう法律でやれば追放できるだろうという目的でつくった法律なんですね。ところが、いまや完全にそれを抜け穴をつくられてしまったというんならば、私、ただいまの提案は非常に具体的な提案でありますから、法の不備と対象地域の拡大、ともに含めて検討いたします。
  254. 堀昌雄

    ○堀分科員 このいまのやり方でどれだけ減るかどうか別でありますけれども、少なくとも安易な車両の保有ということがブレーキのかかることは間違いありません。どうかひとつそういう意味で、まずその面から問題を少し検討していただいて、それが多少でも道路整備と車の伸び率との関係に役に立つならば、あらゆる面で私は総合的な効果をもたらすことになるのではないか、こう考えますので、ぜひこの点をきょうは御提案を申し上げて、できればひとつこれらの法改正については、この次の通常国会に間に合うようなスケジュールでやっていただきたい。私は大体、何かものを言うときには、時間を制限するというのが私の主義でございますので、ひとつこの点を総務長官にお答えいただいて、質問を終わりたいと思います。
  255. 山中貞則

    山中国務大臣 あなたは、そういう時間の制限をするのと、さらに、それを確認をその次の機会にするのと、二つの好もしき癖がありますから、私が在任いたしておりますればそういうことに約束をしてもよろしい。できるかできないかも含めてですよ、検討いたします。
  256. 堀昌雄

    ○堀分科員 終わります。
  257. 田中龍夫

    田中主査 次は、畑和君。
  258. 畑和

    ○畑分科員 私は、かねて、公害国会のときにも問題となりました公害に関する無過失賠償責任の立法の問題について、それを中心として、公害担当大臣の山中さんと、それから法務省の民事局長にお尋ねいたしたいのであります。  公害国会のときに私も、山中さんとも、また、当時の法務大臣の小林さんともいろいろ議論をいたしました。われわれは、公害対策の一環として、当然、当時世論となり出しました公害に関する無過失賠償責任の法案を政府で用意されると思っておったのでありますが、残念ながら、いろいろの事情があって、政府としては提案にならなかった。そこで、われわれのほうで、三党で、未熟ではありましたけれども、一応の案を出して批判を願ったのでありますけれども、こまかい点についていろいろ議論をさらにすることができずに、そのまま終わってしまいました。そこで、私たちも、あらためてさらに検討を加えて、三党で共同で新たにこれに関する法律案を昨日提案をいたしました。その法案につきましては、山中大臣のほうにも、また、法務省のほうにも参考に出してありますが、それらを中心にして意見をかわしていきたいと思うのであります。  そもそも無過失責任が叫ばれるようになったいきさつは、御承知のように最近典型公害をはじめとして、あるいは俗にいう食品公害あるいは医薬品公害、こういった公害が非常に多くなって、それに関する紛争等が非常に多発してまいりました。裁判所でいま継続している事件でも、おそらく相当の件数にのぼっておるというふうに考えるのでありますけれども、それについて、あくまで民事につきましては、問題は故意過失でありますけれども、この故意過失については御承知のように民法の七百九条の大原則があるわけです。この民法の大原則の、故意または過失があった場合にはそれをやったものは「損害ヲ賠償スル責ニ任ス」、したがって、故意過失がなければ賠償を命ずるわけにはまいらぬ。このことは刑事関係のほうとも歩調を合わしてできておる構成なんでございますが、罪刑法定主義と符節を合わしたような形で、あくまでそうした故意過失がなければ賠償しないでもよろしいというようなことになって、そのことによっていままでいろいろ産業が発達をしてきた。この経過は、確かにその意味では大いに効果があったわけでありますけれども、最近はむしろその原則が障害になりつつあるというのが現状だ。特に公害問題においてはしかりだ。故意過失を立証することが、被害者が零細であり、かつまた力が弱いというようなことで、技術的にもなかなか困難であるというようなことから、被害者保護という立場、被害者救済という民事の立場からして、こうした関係については、たとえ過失がなくとも損害の賠償を企業側に負わせるというような考え方であります。このことにつきましては、われわれこの前いろいろ議論をしまして、われわれの七百九条というものの例外規定、これを設けるにはなかなかたいへんなことである、いろいろ及ぼす影響が大きいということで、特に法務省などは非常に慎重です。その点、山中担当大臣はなかなか前向きな考え方を当時からされておったと私は伺っております。直接無過失責任というものをきめる前にも挙証責任の転換とかそういう形でひとつやっていきたいという考え方も述べられたことがあるし、また、無過失責任についても検討するというような大体態度だったと思いましたし、さらにまた、今度の国会でも、どなただったかからの質問に対してそういった答弁をされておったように聞いております。その点は大いに敬意を表し、これからも大いに担当大臣として推進力になってもらいたい、かように思うのです。  そこで、実はわれわれ考えたわけであります。この前のわれわれの提案は、御承知のように「工場又は事業場における事業活動に伴って公害を生じる物質を排出し、よって他人の生命若しくは身体又は」ということで、公害を生ずる物質を排出している、非常に物質もその意味で抽象的だったということはわれわれもいろいろ考えてみたわけでございます。さらにまた、生命身体だけでなくて、この前にはまたわれわれは、人間が食用に供する動植物の生産にかかわる他人の権利、漁業権あるいは農業権とでもいうか、そういったものの財産権の侵害までもその範囲に加えた。ところがこれはひとつ今度の場合は、そのものずばりで人の生命あるいは健康を害するものだけにしぼろうじゃないかということで実はそれを捨てたわけであります。そして、もっぱら生命身体に影響する物質だけにしぼろう、しかもその物質については、この前さんざん議論をしまして、横割りだ縦割りだ、こういうようなことで、われわれとしては横割りだ、とにかく七百九条の例外ではあるけれども公害に関する一つの一般法ではあるからというか、例外法ではあるけれども公害全般に通ずるという立場から横割り。ところが、政府のほうでは、やはり個々の場合に個々の物質に限って次々と規定していこう、その条文に無過失責任を載せて規定してやっていこう、こういう考えで、そこでかみ合わなかったと私は思うのです。そこで、われわれは今度は典型公害の場合にはそうした点を考えて、政府あるいは自民党の方々の考え方とかみ合うような案を考えてみようということで、われわれの筋も通すし、また政府のほうでもそういう点が了解できる、あるいは自民党でも了解できるというような線で考えてみようということで、お手元に出したような典型公害の場合、あれをつくったわけです。  これによりますると、この前と違いまして、公害を及ぼす物質という抽象的なものでなくて、書いてありますように「いおう酸化物、硫化水素、塩素、カドミウム、アルキル水銀」というような典型的なものをまず載せまして、それ以外のものは「他の物質で政令で定めるものを排出し、」というようなふうに規定しよう、こういうことなんでありまして、この点で、ある意味では前よりも具体化して現実的な考え方をいたしました。ある意味では、したがって政府答弁にありましたような縦割りともかみ合う案をつくってみたのでありますが、この点について、まず典型公害の点について担当大臣としてはどういうお考えを持っておられるか。実はこの前総括質問の際に私この点をやはり質問しようと思っておりまして、急に久保君のあの小林発言の問題で時間が食いましたので、答弁を求めずやめたわけですが、きょう分科会であらためて担当大臣の御意見を伺ってみたい、こういうことで実はきょうお伺いしたわけです。この点をまずお答えいただきたいと思います。
  259. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまの御質問でありますが、さきの臨時国会で、民法の特別法としての立法はやらない、困難であるという法務省の立場は私の干渉できない範囲でございましたので、公害担当大臣としては、それならばそれ以外のものとしてただいま御議論になりましたようなものに取り組む必要性が社会的にいまあるし、それは政治としてなさなければならないことであるという意味のことを申し上げておりましたし、今国会においてもその姿勢は変わりません。そして今国会においては具体的にそれを提案いたすつもりでおるわけでございます。  そこで、野党三派共同でおつくりになりました案を拝見をいたしまして、率直に言って王手飛車をかまされたという感じでございます。たとえば財産被害等にかりに書き込んでございますとまたここで議論が分かれるところが多いわけですが、人の健康にかかる被害とぴしっと限定してございます。ここらのはやはり公害にかかる無過失賠償なりあるいは挙証責任転換の形になりますか、法律をつくります場合においてはそう異論のないところの範囲、最小限しぼられた範囲のものであると受け取らざるを得ませんし、私どもは全体を拝見しまして、非常に敬意を払っておる立場をとっております。  ただし、ただいまの皆さま方のおつくりになりました法律案の第二条に掲げられました物質についてでございますが、さして異論がないでおさまるのではなかろうかと思われるものは、あとで追加しておられた感じのアルキル水銀というようなものが、逆にあまり異論がないのではなかろうか。カドミウム等は、工業法にかかるものは、これは御承知のような無過失賠償のもとにあるわけでございますから、その他の問題であるとすれば、メッキ工場等に象徴されるような零細企業が非常に多い。しかしそれは人の健康や生命というものにはかえられない問題だからというならば、これも比較的議論しやすいものではなかろうか。ただ、等その他政令で定めるというようなことにどうせしなければならぬと思いますが、その際に、法律そのものに、根拠法にはっきりと書かれます物質に書いたら問題があると考えられるものとしては、まずボーダーラインとしては硫黄酸化物の問題があろうかと思います。これは明らかに気管支炎とか、あるいはまたひどいのは肺気腫とかぜんそくその他の症状で問題になっているわけでありますから、ほっとくわけにはいかない。しかし、無過失賠償の物質としてこれを法律に書きますと、はたしてそれはおおよその場合において発生源が不特定多数でございましょうし、今後汚染公害の結果が特定の人にあらわれてくるわけでありましょうし、その人の肉体的な条件その他の反応の問題もありましょうから、因果関係というものの立証というものにおいて、法律に掲げた場合に、はたして確証の持てる物質であるかどうかということにおいて、これは議論がもう少しなされなければならないところであろうかと思います。硫化水素、塩素等については、これは硫化水素のほうは悪臭防止法で規制していくべき物質だと思いますし、塩素は大気汚染防止法で排出規制の対象に今回入りますので、それを越えてなおかつ人の健康というところまでまいりますと、事故時か何かでなければそういう異常な排出はなされない。その前の状態で常時規制されている、あるいは悪臭防止法の規制をかぶるということになる物質であれば、無過失損害賠償責任としての法律に掲げておく物質として初めから不動のものであるとするには、もう少し議論を専門的にする必要があるのではなかろうか。したがって、このような、どうせ法律の形態をとることになりましょうが、書く場合においても、まずアルキル水銀、カドミウム、そして硫黄酸化物をどのように書けるか、あるいは等政令で、具体的に確信が持てたときに予定するものの第一番に硫黄酸化物を持ってくるかという感触ではなかろうか。その意味では非常に慎重に今回はおつくりになっております法律でございますだけに、あえて私のほうは批判もけちもつけるつもりもありませんが、いよいよ法律をつくるとなりますと、これは私どもは活字をもてあそんでおるわけではありませんので、法律は一人歩きをいたしますので、やはりできれば与野党意見が一致できるような話し合いを十分に持ってほしいものである。政府政府として当然の一義的な責任として、今国会に立法すべく努力を続けてまいります上において、非常に参考にさせていただきたい、参考になりますということを申し上げたいと思います。     〔主査退席、岡沢主査代理着席〕
  260. 畑和

    ○畑分科員 われわれの考えておる考え方、これには大体御賛同の模様であります。ただ、ここでも法律に書く物質等についていろいろまだ相当研究の余地があろう、こういうようなお話でございますが、われわれも一応の調べはしたものの、まだまだその点確信は必ずしも持っているものではない。いろいろ御批判を得てさらにいいものにしたいという気持ちは政府の側と変わっておりません。したがって、政府のほうでもおそらくお考えになって、あるいは今国会に提案する運びになるというようなことでもありますれば、われわれの案と対比して、さらにお互いに検討して、それでできるだけいい案をものにするという点につきましては、われわれもやぶさかではないのでございまして、要するに多数の人がいろいろこういった挙証問題で困難をいたしておりますので、被害者救済という立場から、われわれもこの案を考えたわけです。その点担当大臣のお考えにはわれわれも共鳴するわけです。今後ともひとつそういう立場でわれわれも協力したいというふうに考えております。  ただ、いろいろ因果関係の問題その他もございまするが、このわれわれの提案は過失の点だけの問題であります。したがって、因果関係の問題はまたいずれ別の問題になります。同時にまた、因果関係の問題につきましても、挙証責任の転換というような実際の裁判上における裁判官の取り計らいというか、そういったことによっても解決する余地がある、こうも思うのでありますが、この点につきましても、今後ともわれわれも前向きにやっていきたいと思っております。  それから次の第三条、食品の関係であります。これも実はこの前の案には入ってなかったわけでありますが、これをわれわれは今度入れまして、「製造の過程において」「人の健康に有害な物質が含まれ、これによって他人の生命又は身体を害したときは、」云々と、そういうことの規定にいたしました。これによってカネミの問題だとか、あるいは森永ミルクの問題だとか、いろいろそういう点の解決が楽になろうというふうに思っております。  それから第四条で、医薬品までもわれわれ加えました。医薬品の中で特に薬事法の医薬品、あるいは医薬部外品、あるいは化粧品まで実は広げて、少し欲をかき過ぎたかとも思いますが、「公衆の使用に供するものの製造業を営む者の当該製造の過程において当該医薬品等に含まれた物質の作用によって、他人の生命又は身体を害したとき」ということで、食品と医薬品とを新たにこの前の案と違って入れました。典型公害ではないけれども、特に医薬品の場合なども、サリドマイド事件等もございまするし、ああいう例もある。したがって、そのものすばりで輸入してしまうものはこれは規制のしようもないわけでございますが、そこまでも広げるのはどうかと思いまして、製造ということだけにしぼって、医薬品も化粧品までを入れて規定してみたわけです。この点についてはどういうふうにお考えになっておられるか、これもあわせて承りたい。
  261. 山中貞則

    山中国務大臣 これは法律の名前がやはり事業者等ということで、必ずしも公害と書いてございませんので、新しい発想だろうと私も受け取って、すなおに拝見しております。しかし、いままで私どもが議論してまいりましたのは、公害にかかる紛争を何とかしなければいかぬ。そこでせめて挙証責任の転換もしくは無過失賠償の責任というもののあり方を明確にするということを議論してまいりましたために、現実の問題としては食品、薬品というものは確かに問題があります。そのような事件もおあげになりましたとおり起こっておりますし、サリドマイド児等をテレビのブラウン管から流れてくるのを見ますと、たまらない気持ちでございます。それらの事態を私たちは無視できない環境にあると思いますが、ここで公害に限定をして立法するのか、あるいは人の生命健康というものはこれは今回の法律で無過失損害賠償責任ということの中に取り入れていくのだという概念でありますと、食品、薬品ということだけで済むものであるかどうか問題があると思っておりますし、薬品の中でも医薬部外品、化粧品等についてまで無過失賠償に入るべきものであるかどうか。また、その場合においては、医薬品においては国のほうで免許を業者に対していたすわけでありますから、それのまた薬についても国の検査業務の後に発売許可というふうな過程もありますし、国も責任を負う立場にあるわけであります。どのような形でこれを書き分けていきますか、それらの問題点があるといたしましても、考え方を皆さまのお考えになった発想をすなおに受けとめるとすれば、この第三条の食品公害と第四条の医薬品公害、これは当然医薬品は人の健康のためによかれかしと思って発売されるものであり、食品は少なくとも食べることによって人に害を与えてはならないという常識のものが食品でございますから、これによって人の生命や健康に被害を及ぼした場合は、当然無過失損害賠償を問われるぞというて書くことは、これはなじまないものではないというふうに私も思うわけです。しかし、これを一本の法律で取り入れていっていいのか、取り入れていくとすれば、これは厚生省と私どもと両方で共管法みたいな形で出すことにしなければならぬと思いますが、この考え方の問題さえ整理がつけば、内容については化粧品等の、若干お認めになっているような、やや範囲の広い部門等についての論議を詰めさえすれば、これまた国民大衆の立場から見れば、私はこの二本の柱が立っても差しつかえがないのではないかと思っておりますが、私も法律の専門家ではございませんので、そういう感触によってこれから私どもも参考にさしていただきながら作業をしてみたいと考えております。
  262. 畑和

    ○畑分科員 前向きの答弁をいただきましたが、これからまたさらに政府のほうでもひとつ案をつくられるようですから、さらに突き合わしてみて、われわれもそういうわれわれの立場で協力したい、かように思っています。  ついては、法務省が来ていますが、法務省として、いまの案をわれわれ法務省にもお示ししたのですが、あなたのほうの立場で、最終的には法務省で提案をされるということにはなりましょう。そういう点で、全般についていろいろ責任があるわけで、どうしても法務省が、いつも慎重になるのは普通でありますけれども、この辺、いまの担当大臣の答弁もございますし、非常に前向きだと敬意を表しているのですが、法務省もひとつ大いに、法の許す限り、解釈の、運用のあれの許す限り、ひとつ前向きでやってもらいたいと思います。このことについて、全体についてどういう考え方か、ひとつ意見を聞かしてもらいたい。
  263. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 お答えいたします。  私もこの案を拝見いたしまして、ただいま山中長官がお述べになりましたように、非常に慎重な配慮が加えられておりまして、この案をおつくりになりました御尽力ということをあらためて感じたわけでございます。その内容につきましては、山中長官がお答えになりましたこととほとんど大差はございません。細部の点で一、二つけ加えさしていただきますと、第二条の政令で定める物質というものがございます。この点が、これは相当重要な事柄でございますので、政令できめるのが適当かどうか、きめるとすれば、何か厳重なワクをはめるか、そういったことを考える必要があるのではなかろうかという感じがいたすわけでございます。  それから、一般公害についてでございますが、複合公害というのがございます。この場合には公害の発生に寄与する度合いの大きい企業とごく軽微なものといろいろございます。その関係について何らかの処置を必要とするかどうか、その点私ももう少し考えてみたいという感じを持っております。特にそれ以外には申し上げることはございません。
  264. 畑和

    ○畑分科員 以上で終わります。
  265. 岡沢完治

    岡沢主査代理 和田春生君。
  266. 和田春生

    和田(春)分科員 きょうの質問は、沖繩省大臣といわれる山中長官に主としてお伺いいたしまして、なお専門的なことは外務省、運輸省からも呼んでおりますので、それぞれお答えを願ったらいいと思います。  まず最初にお伺いしたいのですけれども、去る一月二十一日、地中海におきましてユニバース・パトリオット号という米国タンカー、約八万三千トンの船でありますけれども、爆発事故を起こしまして、犠牲者を出しておりますが、それに二十三名の沖繩の船員が乗っておった、こういう事件がございました。大臣御存じでございますね。この船員につきまして、どういう経路でこの乗り組み員が乗っていったのか。おそらく復帰に備えましていろいろな面で影響があるのでお調べになっていると思いますけれども、その点、日本政府でつかまえている点があればまず最初にお伺いをしたい、こう思います。
  267. 山中貞則

    山中国務大臣 この問題については、琉球政府から経過、その後とった処置等について実は御連絡をいただいておりません。私も現地よりの報告もしくは新聞等によって、主として現地新聞が詳細に報道いたしておりますが、そういうことで承知いたしておるわけであります。  その後この沈没いたしました船に、沖繩で雇用いたしました雇用者と申しますか、職業あっせんした者は、沖繩で定められた、内地法に準ずる職業紹介法等にも違反しておるし、また船員法等のあるべき待遇等についても守っていないということを琉球政府も指摘したようであります。それによって雇用いたしましたほうも不当であったことを認めて、今後このようなことの起こらないように、起こった事故については、法の定める基準に従って措置をいたしますということで済んだようでありますが、少なくとも事件が起こってしまったあとこういう問題が提起されましたことは、これは琉球政府行政の全般の責任を私どもが負う立場にありませんけれども、たいへん遺憾に存ずるわけであります。  現在沖繩の求人には、本土も含めていろいろな面から求人が殺到しておりますので、船員のみならず、各種の法律に違反するような求人等の例が指摘されております。今回の事件を二度と起こさないように、まことに遺憾なできごととして琉政との間に、労働省、運輸省等も十分相談してくれておりますので、二度とこのようなことの起こらないように、ことに復帰間近でございますから、万全の措置を講ずるつもりでございます。
  268. 和田春生

    和田(春)分科員 大臣のお気持ちはわかるのですけれども、事故が二度と起こらないようにということなら話がわかるのですが、現に相当多数の沖繩船員が乗り組んでいるわけです。その事態は、私が今日こうやって質問している現在の時点においても改善をされていない。私どもの調査によりますとそういうふうになっているわけです。もちろん日本政府が全面的に責任を負うものではなくて、琉球政府というものがあるわけですけれども、復帰を間近に控えまして、日本の国内法規と、また復帰した場合にそういう状態が存在しているとすると、それをどう処理すべきかというような点で、かなりこれはめんどうな問題を含んでいるように考えるわけです。  そこで、いまだに琉球政府のほうから日本政府にその詳細について報告がないという大臣のお話でございましたけれども、催促をされてもいないのか、あるいは日本政府としてはそういう資料その他を催促をせずにやりっぱなしておったのか、その点をお伺いしたいと思います。
  269. 山中貞則

    山中国務大臣 私どものほうは沖繩事務局がございますので、その経緯、落着、そして今後そういうことの二度と起こらないようにと申しましたのは、現地の法律に違反したような求人ないし就職のあっせん等が行なわれないようにというようなこと等が大体確認されたようでありますので、それ以上に詳細にこちらから報告を求めてはおりません。
  270. 和田春生

    和田(春)分科員 現在日本政府としてつかんでおられるのは、このユニバース・パトリオット号と同じようなケースで乗り組んでいる沖繩船員の数、隻数、概数でもけっこうですから、どういう数字をつかんでおられますか。
  271. 増岡広行

    ○増岡説明員 お答えいたします。  私のほうでつかんでおります数字によりますと、六六年度以後の紹介をいたしました数字がございますが、六六年度に三百七十五件、六七年度に五百三十二件、六八年度に五百二十七件、六九年度に六百八十件、七〇年度六百六十三件でございます。ただし、そのうち外国に紹介したというものは六六年度が百八十九件、六七年度が二百九十二件、六八年度が三百七十八件、六九年度が三百八十件、七〇年度が百五十五件という数字になっております。
  272. 和田春生

    和田(春)分科員 何件扱ったかというのではなくて、現在何隻の船に何人乗り組んでるかという現状をつかんでるかということをお聞きしておるわけです。
  273. 増岡広行

    ○増岡説明員 お答えいたします。  現在何人乗っておるかという数字はつかんでおりません。
  274. 和田春生

    和田(春)分科員 この点につきまして、たいへん重要な問題で、しかも、一つ間違うと人命にも関係する問題ですから、私のほうでも極力調べまして、また、私のつながりを持っている組織は国際的にも組織の関連がありますので、いろんな方法を通じて調べました。ところが、なかなか的確なものが調べられません。しかし、いま乗り組んでるのは二十三隻、四百五十二人、大体現状において沖繩船員が外国船舶に乗り組んでるという点がいままでにわかったわけでございますけれども、これらを職業紹介をするのに、一体沖繩ではどういう機関ないしは組織が介在をして、どういう方法で職業紹介をやったかということについて調べておられますか。おられるとしたら、わかっている範囲をお伺いしたいと思います。
  275. 山中貞則

    山中国務大臣 これも無資格と申しますか、そういう許可を受けないものが、そうして法律の許可を得ないで、違法な募集をして乗り組ましていったというふうに承知しております。
  276. 和田春生

    和田(春)分科員 そのとおりでございまして、まだ一部不明のところがありますけれども、こちらのほうで調べた範囲におきますと、主としてこれはC・F・シャープ社の沖繩代理店が扱っておりまして、ここの扱いで現在乗り組んでるのが二十二隻四百四十人ということです。ところがそのC・F・シャープ社についてリストを出せといってみましても、私のところにタイプで打ったりストがあるのですけれども、まことにおそるべきことに、船の名前は書いてあるのですが、乗り組みのメンバーについてはアプロクシメートリー・サーティ・リューキューヤン・シーメン、こういうような書き方で、全部アプロクシメートリーというのがついてるわけなんです。約なんであります。三十、二十五、二十、三十という形で、扱っている会社自体で的確に一体何人乗ってるのかわからないという、まことにお粗末な状況になってるわけなんです。しかも、この会社はアメリカの会社でありますが、米軍占領下におきまして船員を集める。おっしゃるように沖繩にも日本の職業安定法とほぼ内容的に同じな職業安定法が施行されてるのですけれども、それによる職業紹介の資格はないわけですね。これは船主か、船主団体あるいは船員の団体、両者の共同、そして営利を目的にせずにやるという場合に職業紹介は認められるわけですけれども、これは船員職業の正規の手続を経ていない。そうして外貨申請の許可証の中に旅行あっせんという一項目がありまして、旅行あっせんという形にひっかけて沖繩から船員を集めましてアメリカに送っているわけです。それも正確にパスポートを持って行っている者が何人おるかわからない。どうも調べたところでは、大かたが身分証明証という形で、アメリカの施政権下にあるものですから、米本土にはわりあい簡単に行けるわけですね。そういう形で向こうへ行っておって、そしてやみの機関の手で船に乗せられている。これはほぼ確実であろうというところまで調べがついたわけですが、そういう状況につきまして、政府としては、沖繩事務所あるいは運輸省筆で、あるいはまた外務省等で、ある程度調査がいっているかどうかをお伺いしたいと思います。
  277. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまのような実態については、遺憾ながら私どもの手にも詳細はわかっておりませんし、琉球政府自体が第一確認していないんだろうと思います。今回の起こりました事件を契機に、琉球政府も事の重大性に気がついていただいたようでありまして、沖繩の現在の法律を、少なくともこういう事態については完全に適用するように、そして適用を抜けて乗り組む、あるいは危険な船路に出るようなことのないようにという配慮を、これは私どものほうもそういうふうに出先を通じてやっておりますし、琉球政府のほうも、自分のことでありますから、現在は真剣にやっておるということはいえると思います。
  278. 和田春生

    和田(春)分科員 おっしゃるように、現地から日本の海員組合の支部その他も厳重に抗議を申し込んでおりますし、世論も高まりまして、琉球政府としてはいろいろ努力をしておるようでございますけれども、何ぶんにもアメリカの施政権とそのもとに特殊な地位を持っているアメリカの商社といいますか、会社というような壁がありまして、もう一歩突っ込んだというところがなかなかわからない。こういう状況で、厳重に、二度とこういうことをやらぬように言っておりましても、現に沖繩の外に出てしまって、船に乗っている者についてはなかなか手がつけられないというのが実情だと思う。  しかも、ここに調査の結果、さらにまたわれわれの常識では考えられないような事態が起きてきたのですけれども、合法的なていさいを整えて、労働条件はちゃんとしているという形で労働協約を結んでいるわけであります。この労働協約のコピーを手に入れたわけです。どこと結んでいるかということでございますけれども、そういう労働協約を結んで一応形を整えている、そういう事実。また、それがどことそういう労働協約を結んでいるかということを、日本の、これは主として運輸省の所管のほうになってくるのではないかと思いますが、運輸省のほうでは御存じですか。
  279. 増岡広行

    ○増岡説明員 お答えいたします。  ちょっといま失念しておりましたのですが、グローバル船員組合というものと考えております。
  280. 和田春生

    和田(春)分科員 そのとおり。グローバル・シーメンス・ユニオンというのと契約を結んでおりますけれども、この組合はどこにあるか御存じですか。
  281. 増岡広行

    ○増岡説明員 お答えいたします。  これは英領西インド諸島のグランドカイマン島というところに本部を持っておるということであります。
  282. 和田春生

    和田(春)分科員 グランドカイマン島というのはパナマのちょっと北側にある、普通の人ならわからぬようなケシ粒みたいな島なんですけれども、そのジョージタウンというところに本部があるそうであります。このグランドカイマン島というのは、海運業に関係を持ち、あるいは船といっても、もちろん小さなカヌーのような船もボートもあるわけですけれども、一般のそういうオーシャン・ゴーイングの何万トンという船が立ち寄るようなところかどうかということは御存じですか。
  283. 増岡広行

    ○増岡説明員 お答えいたします。存じません。
  284. 和田春生

    和田(春)分科員 やはり日本政府としても膨大な海外機関を持っているのですから、われわれ民間の者が調べてもわかるぐらいのことは、ちゃんと調べておいてもらわなければ、事件を重視しているという山中大臣のことばに私は反すると思うのですけれども、これは全く船員ないしは船乗り、常識的な海運関係者においてはまことに知られていないといいますか、未知のところでございます。もちろん海図を見ればあるわけです。グローバル・シーメンス・ユニオンというのはどんな組合かということをアメリカの労働組合にも照会をし、ITF、国際運輸労連という国際組織にも照会をして調べてみましたけれども、全然正体不明である。はたしてそういう組合が実在するかどうかもわからない。また、それが有効な組合として機能しているということは全然信じられない。まずそれはいわば幽霊組合ではないかというのが、私どもが調べた結果出てきたわけであります。  そこで、このミステリーを追及していきますと、アメリカのC・F・シャープという会社が、米軍施政権下をいいことにいたしまして、旅行あっせんというような形で人を集める。外国の船に乗ればいい賃金だぞというような形で、身分証明書か何かもらってアメリカに送り出す。そして、英領なんですけれどもグランドカイマン島のグローバル・シーメンス・ユニオンというわけのわからぬ組合に入ったという形にして、そしてその組合との間に協約を結んだという形にして、向こうの船に乗せている。したがって、そこに書かれている契約の内容が正確に守られているのかどうか、災害補償がどうかというようなことについても、皆目わかりませんし、先般起こりましたユニバース・パトリオット号におきましても、災害補償等においてかなり問題があるようなんです。  ところが、そういう人々もなかなか口を割りたがらない。というのは、現在沖繩の置かれている事情等におきましておびえているというのか、そういう形で、なかなかほんとうのことを話したがらないというような問題があるわけであります。  そこで、そういうことを前提にいたしまして本題に入っていこうと思うのですが、沖繩の本土復帰の作業が進められているわけであります。間もなく、そう遠い将来ではないのですけれども、こちらに復帰してくるというときに、この状態が解消せずに残っておったとした場合に、復帰の時点においてこれらの船員もまぎれもなく日本国籍の日本国民になるわけですけれども、一体日本政府としてはどういうふうに処置されるおつもりですか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  285. 山中貞則

    山中国務大臣 事実関係をつまびらかにいたしておりませんが、ケースとしてはよく判断できますので、それらのケースは復帰前に琉球政府、私どもの沖繩事務局と相談をして、実態を把握しておきまして、そして、これは日本国政府の立場においてそれらの人々を日本国民として正確に船員法あるいは船員保険法というものの適用下において守られるように、かりに導入されたときには不当な職安行為、雇用行為で雇われたとしても、復帰の時点においてはそのような不安定な身分でなお引き続き雇用関係が続けられることのないように準備をして、手落ちのないようにしたいと考えます。
  286. 和田春生

    和田(春)分科員 これは山中大臣、善意でお間違いになったと思うのですけれども、船員法とか船員保険法は適用されません。というのは、外国船主の船舶に乗り組むわけであります。現在本土でやっている場合には、これは外務省、運輸省、あるいは日本の海員組合等が十分話し合いまして、そういう日本人船員を乗せる外国船主との間にちゃんとした労働協約を結びまして、その履行、監視をいたしております。そして、そういう契約がきちっとできたということを出しますと、外務省から旅券が発給されます。そして向こうの船に乗っているわけでありますから、日本の国内法規である船員法や船員保険法は適用されないわけでありまして、災害補償等においても、それはそれと均衡をとりましたいわゆる保険契約をちゃんと結んで、保険料を払わして補償をするということをとっておるわけであります。そこで、どこか船に事故が起きるとか、あるいは外国で、船はそのままでも人間が何か事故を起こしたというような場合には、本土の場合には、どこのだれがどの船に乗っておって、いつどうした、その人の家族は何で、賃金は幾らで、災害補償はどうだということは、たちどころにわかるようになっておるわけでありまして、そういう点において、日本の外務省もいいかげんだと責任が持てないものですから、海員組合との間のちゃんとした労働協約、あるいはちゃんとしたコントラクトというものを持ってこなければ旅券を発給しない。もぐりの変な者が来ますとお互いに通知をし合って、そこでチェックをしていくという形でございますから、あいまいなものが全然ないわけです。  しかし、この状態は琉球政府が幾ら努力いたしましても、アメリカの施政権の壁にさえぎられまして、依然そういう者が乗ったまま日本に復帰する、そして日本国籍を持つというようになったときに、これは外務省にお伺いしたいのですけれども、日本の国民がそういう形で外国へ出て、そして外国船に乗っているということについての旅券の扱いは、一体どういうふうにされるおつもりですか。外務省の旅券関係の方にお伺いしたいと思います。
  287. 佐々木正賢

    ○佐々木説明員 御説明いたします。  現在でも旅券に関する特例法がございまして、沖繩で旅券を発給しております。それで、先ほど御指摘であった沖繩から船員となって行く人についても旅券は出し得るたてまえになっております。それで、わがほうの旅券を出しているケースは、調べましたところ、年間約十件内外あるそうでございます。この分につきましては、琉球政府のほうの海員労務課といいますか、ここの証明書を持ってきた分について出しているのが実情でございます。  それで、今度は復帰云々ということでございますが、いまでも旅券は沖繩におけるにしろ、あるいは海外におけるにしろ、申請があれば出し得るたてまえになっております。それで、契約書を添えて旅券を申請してもらえれば旅券は出し得ると考えております。
  288. 和田春生

    和田(春)分科員 たてまえを聞いているんじゃないのですよ。  旅券が出ているんだったら、事故が起きたときに沖繩にすぐわかるでしょう。ところが、琉球政府さえわからぬというのですよ。それを私が先ほど説明したような経緯で、まことにインチキな手段を通じて、言うなればアメリカの会社がかってなことをやって、沖繩におる日本人を連れ出して、わけのわからぬ船に乗せてやっておるということなんですね。  復帰の時点でそういう状態があったら、申請しさえすれば旅券を出しますとおっしゃいますけれども、だれが一体申請するのですか。どうやってやれるのですか。
  289. 佐々木正賢

    ○佐々木説明員 それは船に乗っている個々の船員から申請がなければ出しません。
  290. 和田春生

    和田(春)分科員 当の船員から出そうと思ったって、こういう状態がずっと続いておりましたら、どうにもならぬわけでしょう。どこに行っているかよくわからぬのですから。本土の場合にはもちろん旅券をちゃんと出しているのですから、どこのたれ兵衛がどの船に乗って、どこを走っているということはちゃんとわかっているわけですよ。ところが、それを職業あっせんをしたような、もぐりのあっせんをした会社に聞いてさえも、船舶の乗り組み員がアプロクシメートリーだ、約だということなんですからね。まことに人間がお粗末に扱われているわけなんですね。  そうすると、復帰をした時点において、そこで何だか知らぬけれども、外国に行くえ不明になっておって、日本の政府としても責任を持てないような船員が残るという形になる。もちろんそうなればアメリカも責任を持たない。数はそう何千人といないかもしらないけれども、少なくともそういう者が百人とか二百人とか三百人とか残り得る可能性があるわけですね。現在においてもまだこういう状態で、よく実態がつかめないという形一で、改善されていないわけです。そういう点についての対策をお考えになっているかということをお聞きしているわけです。考えていなければ考えていないということでけっこうなんです。
  291. 佐々木正賢

    ○佐々木説明員 いまのところ、御指摘にあったような分については考えておりません。
  292. 山中貞則

    山中国務大臣 これは非常に具体的なケースですから、あなたのほうの調べられたものも、もとにして、そして外務省の正式ルートを最後には借りることになると思いますが、私どもと沖繩政府とよく相談をしまして、そして現在乗り組んでおる者が、正常な独立国の国民としての船員たるべき身分の保証というものが受けられるような契約内容に変えて、働けるように努力をしてみたいと思いますから、御協力を願いたいと思います。
  293. 和田春生

    和田(春)分科員 もちろん私どもは、こういう点について協力するにやぶさかではございませんけれども、私どものほうで調べる段階でも困っている。琉球政府もなかなか実態がわからない。いろいろ国際的に手を伸ばしたりして資料を集めているという状況なんです。  そこで、この問題については、筋は賢明な大臣ですからもうおわかりいただけたと思うのですけれども、なかなか一筋なわではいかないと思うのです。というのは、向こうは、アメリカのそういう会社がもぐりで、アメリカの施政権というものの、いわゆるたての中でやっているわけですから、琉球政府ではなかなか手が届かない。こういう状態になっているわけですから、復帰のときまで持ち越すのではなくて、早急に琉球政府を督励し、日本の政府もアメリカの民政府当たり、そういうものの全貌を明らかにさして、そして、まずいものは全部直さして、復帰の時点においては、日本国籍を持つちゃんとした日本国民として、船に乗っているのなら乗っているのでけっこうですから、きちんとしたパスポートが支給され、海外で不幸にして何か事故が起きた場合において、それに対する対策が手違いにならないような措置をぜひとっていただきたい。そうでないと、復帰の大きな政治問題の陰に隠れてこういう問題が取り残されますと、いつ何どきどういうことが起きるかわからない。そういう点で、たいへん不幸な立場に置かれてしまう海上労働者ができるという危険性があるわけでございまして、その点ひとつこの席上で、復帰の時点までに解決するということについて、日本政府も全力を尽くしてやるということをお約束願いたいと思います。
  294. 山中貞則

    山中国務大臣 私が先ほど答弁いたしましたのは、そういうつもりで、直ちにその努力を開始したい。そのためには御協力を願いたいこともあるだろう、頼むということを申し上げたわけです。  ただ、その会社は米系の会社でありましても、これは施政権とは何の関係もありません。これは沖繩で現在あります琉球政府法のもとにおいて、日本国民である現在の琉球、沖繩県民というものとの雇用関係でありますから、これは施政権には何の心配も要らない、関係のないことであると思いますので、これは遠慮なく処理するために作業を進めたいと考えております。
  295. 和田春生

    和田(春)分科員 たてまえとしてはそのとおりですけれども、山中大臣御存じのように、沖繩に行くと、そのたてまえどおりにいかない状況がたくさんあるわけですね。私が言っているのは、施政権と何の関係もないという形で、言うなればそういうたての陰に隠れてそういうことが行なわれている。琉球政府の力ではなかなかそれが力及ばない、はっきり追及ができないというような面がある。そこで、やはり日本政府が強力にバックアップをしてやってもらわないと、たてまえ論だけでは問題が残る可能性があるわけでありますから、その点抜かりがないように重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。
  296. 山中貞則

    山中国務大臣 承知いたしました。
  297. 和田春生

    和田(春)分科員 それでは質問を終わります。
  298. 岡沢完治

    岡沢主査代理 本日はこの程度にとどめ、次回は明二十五日午前十時から開会し、裁判所、内閣防衛庁及び経済企画庁を除く総理府所管を審査することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十五分散会