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1971-02-18 第65回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十八日(木曜日)委員長の指名 で、次の通り分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費、国会、裁判所、内閣、総  理府(防衛庁及び経済企画庁を除く)、法務省  及び文部省所管並びに他の分科会所管以外の  事項)    主査 田中 龍夫君       伊藤宗一郎君    奥野 誠亮君       坪川 信三君    灘尾 弘吉君       福田  一君    辻原 弘市君       鈴切 康雄君    岡沢 完治君  第二分科会(会計検査院、防衛庁外務省及び  大蔵省所管)    主査 大坪 保雄君       賀屋 興宣君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    田中 正巳君       野田 卯一君   三ツ林弥太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       矢野 絢也君    今澄  勇君       松本 善明君  第三分科会経済企画庁厚生省及び自治省所  管)   主査 登坂重次郎君       相川 勝六君    赤澤 正道君       中野 四郎君    西村 直己君       松野 幸泰君    大原  亨君       西宮  弘君    渡部 一郎君       谷口善太郎君  第四分科会農林省通商産業省及び労働省所  管)    主査 森田重次郎君       足立 篤郎君    小平 久雄君       笹山茂太郎君    松浦周太郎君       渡辺 栄一君    阪上安太郎君       原   茂君    相沢 武彦君       竹本 孫一君  第五分科会運輸省、郵政省及び建設省所管)    主査 大野 市郎君       大村 襄治君    上林山榮吉君       藤田 義光君    細田 吉藏君       松野 頼三君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    坂井 弘一君 ————————————————————— 昭和四十六年二月十八日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 細田 吉藏君    理事 大原  亨君 理事 田中 武夫君    理事 鈴切 康雄君 理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君   稻村左四郎君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    田中 龍夫君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    野田 卯一君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森田重次郎君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    山口 鶴男君       横道 孝弘君    相沢 武彦君       沖本 泰幸君    桑名 義治君       坂井 弘一君    岡沢 完治君       竹本 孫一君    谷口善太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         警察庁刑事局保         安部長     長谷川俊之君         警察庁警備局長 山口 廣司君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         国税庁長官   吉國 二郎君         文部省管理局長 岩間英太郎君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省農地局長 岩本 道夫君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業省企業         局長      両角 良彦君         通商産業省公害         保安局長    莊   清君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         運輸省航空局長 内村 信行君         建設省計画局宅         地部長     朝日 邦夫君         建設省住宅局長 多治見高雄君         自治大臣官房長 岸   昌君         自治省行政局公         務員部長    山本  明君         自治省財政局長 長野 士郎君         消防庁次長   皆川 迪夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   阪上安太郎君     横路 孝弘君   辻原 弘市君     山口 鶴男君   西宮  弘君     井上 普方君   中川 嘉美君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     伊藤宗一郎君   江崎 真澄君     松野 幸泰君   小川 半次君     渡辺 栄一君   二階堂 進君    三ツ林弥太郎君   井上 普方君     西宮  弘君   山口 鶴男君     辻原 弘市君   横路 孝弘君     阪上安太郎君   沖本 泰幸君     渡部 一郎君   桑名 義治君     矢野 絢也君   和田 春生君     竹本 孫一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算  昭和四十六年度特別会計予算  昭和四十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を続行いたします。桑名義治君。
  3. 桑名義治

    桑名委員 最初に、公安委員長にお尋ねしたいのですが、十七日の未明に栃木県の真岡市、薬局兼銃砲店に三人組が押し入り、銃が十一丁、実弾五百発を奪ったというショッキングな事件が起こったわけでございますが、報道によりますと、これらの犯人と思われる者は京浜安保共闘行動であった、こういうふうに報道されておりますが、この事件概要についてつまびらかにしていただきたいと思います。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答えいたします。  御指摘のとおりの事件が起こりましたことはまことに遺憾でありますが、目下捜査中でございます。政府委員からお答え申し上げます。
  5. 高松敬治

    高松政府委員 二月の十七日午前二時二十二分ごろでございますが、栃木県の真岡市田町の塚田銃砲火薬店に強盗が押し入りました。被害散弾銃が十丁、空気銃が一丁、それから十二番の散弾が約五百発、これだけのものを強奪されております。  ちょうどこの二時二十分ごろに家族——夫婦子供二人でございますが、それがやすんでおりましたところが、被害者の家の勝手口の戸をたたきまして、電報電報という声がした。そこで起きて、どこからの電報かということを尋ねたところが、山形ですという話だった。たまたま被害者塚田さんには山形に親戚がございまして、それでかぎをはずして戸をあけたところが、いきなり犯人の一人が出刃ぼうちょうを突きつけまして、それとともに共犯者、三名ないし四名と思われますが、それがやにわに屋内に入ってきた。そして茶の間において麻なわようのもので両手両足を縛り、さらに隣の部屋に寝ておりました被害者の細君、子供二人も同様に縛り上げまして、これに梱包用のセロテープを口に張りつけました。そしてふとんの中に入れた。それから物色を始めまして、先ほど申し上げました散弾銃十丁、空気銃一丁、弾薬約五百発というものを窃取して逃走した。  なお、同人宅の電話は切断されておりました。事件発生後約一時間たちまして、午前三時二十二分ごろにようく被害者塚田さんがなわを解きまして、隣のうちから警察に一一〇番で被害届けの届け出がございました。  直ちに栃木県警をはじめ各府県で緊急配備を行なって、厳重に警戒をいたしておりましたところ、今度は午前四時四十分ごろに東京都の北区の新荒川大橋の西側の大詰めで犯人らしき者が二名逮捕されたというのが事件概要でございます。
  6. 桑名義治

    桑名委員 事件概要は大体のところわかったわけでございますが、問題は、この事件に介入しているところの京浜安保共闘、この非常に過激な団体がこの行動を起こしたというところに私は問題があると思うわけでございますが、この京浜安保共闘概要について、あるいはいままで調べた内容の中で、こういう団体であるというようなその内容がわかりましたら、その点を明確にしてもらいたいと思います。
  7. 山口廣司

    山口(廣)政府委員 お答えいたします。  今回の事件京浜安保共闘に結びつくものであるかどうかということは、まだ一〇〇%はっきりいたしておりませんので、その点はまただんだん捜査が進むに従って明らかになると思います。  いまお尋ねの京浜安保共闘でございますが、これは正しくは日共革命左派神奈川委員会と申しておりまして、これは四十四年の四月に日共左派神奈川委員会から分離いたしました、非常に過激な集団でございます。  構成員は大体百三十名くらいと私どもは見ておりますが、この集団公然面と非公然面と二つ持っておるわけでございますが、公然面では、いまお話しの京浜安保共闘というような旗じるしでたびたびデモなどにも参加をいたしております。この京浜安保共闘の下に京浜労働者反戦団とか、あるいは学生戦闘団とか婦人解放同盟とか、そういうような団体が属しておるわけでございます。これは公然面でございます。しかしこれも最近私ども追及がだんだんきびしくなってきておりますので、だんだんと非公然的な性格を強めてきております。それから非公然面では、これが今回のこういう事件などにもし関係ありとすればつながりがあるわけでございますが、日本青年共産同盟、それから軍事委員会というのがございまして、その下に人民解放遊撃隊というのをつくっております。これが大体三十名ぐらいということでございます。この団体は四十四年でございましたか、九月三日、米ソ大使館火炎びんを投げ込んだり、あるいは翌四日に愛知外相が訪米されるときに私ども警備の盲点をついたと申しますか、海上から羽田の飛行場のほうへ上がってまいりまして滑走路火炎びんを投げた、あるいはその年の十月、十一月には岐阜県の採石場からダイナマイトを百十七本とか、あるいは雷管を百八十本とか、そういうものを盗みまして、その後いろいろなところでそれを使っておるわけでございまして、まだ今日でも数十本残っておると私どもは見ております。それから御承知のとおり昨年の十二月の十八日に警視庁志村警察署管内赤塚の交番を三人で襲撃いたしまして、一名は警察官に射殺されたわけでございますが、これも明らかに警察官の持っておる拳銃を奪取しようということで襲ったと思うのでありまして、たいへんな過激な団体である。彼らは日共にかわる新しい革命党武力闘争によってつくろう、そしてそういうことによって彼らの意図する共産主義社会を実現していこうという団体でございまして、その理論的基礎とするところはマルクス・レーニン主義であり、あるいは毛沢東理論である、こういうことになっております。私どもとしてはこういうような過激な集団の動きにつきましてはずっと全力をあげて追及をしてまいっておるわけでございますが、何ぶんにも非公然面というものが相当かとうございまして、私どもの把握しておるところは必ずしも十分ではない。特に非公然活動それから非公然アジトというようなものについてはさらにさらに私ども情報体制を固めて追及をいたしてまいらなければならない、こういうように存じておるところでございます。
  8. 桑名義治

    桑名委員 いま答弁がありましたように京浜安保共闘というものは非常に過激な集団でございまして、いまお話がございました昭和四十四年の米ソ大使館襲撃した事件を含めまして、昨年の十二月の十八日の板橋の上赤塚派出所襲撃事件、これまでの間に約六件の事件発生をしておるわけでございます。そういったことを踏まえて考えますに、この京浜安保共闘のこういった行動が大きく国民に不安を与えておることは事実でございます。いまの御答弁の中では、ただ非常に捜査が困難でございまして、強力に対処しておりますというただ単なる通り一ぺんの答弁でございましたが、この京浜安保共闘に対するいままでの処置について御答弁を願いたいと思います。
  9. 山口廣司

    山口(廣)政府委員 お答え申し上げます。  この京浜安保共闘先ほどもちょっと触れましたように、警視庁管内とか、あるいは神奈川県に相当勢力を持っておるわけでございますが、さらに最近では北九州とか、あるいは名古屋あたりにもだんだん勢力を伸ばしておりますので、関係警察が協力をいたしまして、その非公然面追及いたしております。特に警視庁では特別な捜査班をつくりまして、この非公然面追及、特に武器関係を重点につきまして捜査を進めてまいっております。いまだ必ずしも情報体制が十分でございませんので、さらにそれを強化いたしまして、いろいろなこれから起こり得る不穏な行動に対して未然にこれを防止するということで努力をいたしておるところでございます。
  10. 桑名義治

    桑名委員 過日ハイジャックのときにいろいろと御質問申し上げた。そのときに赤軍派に対してはマンツーマンシステムでこのあとを追っておる、こういうようなお話もあったわけでございますが、いろいろと報道関係情報によりますといわゆるこの赤軍派との共闘体制もできている、こういうような報道がなされておるわけでございますが、そういったことを考えますと、この問題は非常に憂慮すべき問題である、このように思うわけでございます。そこで、赤軍派に対する取り締まりがマンツーマンシステムでやった、それと同様な処置を今後とっていくのかどうか、この点について再度伺っておきたいと思います。
  11. 山口廣司

    山口(廣)政府委員 いま赤軍派についてのマンツーマン方式についてお話がございましたが、赤軍派と申しましても現在大体三百五十人ございます。ですからこの三百五十人全部に対してマンツーマン方式を必ずしもとる必要はないということで、そのうちの特に危験な数十人に対してそういう方式をとっております。今回の京浜安保共闘関係につきましても、先ほど申し上げましたように非公然面で大体三十名ぐらいが活動しておるというふうに推定されます。これにつきまして私どもは遺憾ながらいまだ一〇〇%これを把握しておるわけではございませんので、そのうちの把握しておる、大体八〇%くらいでございましょうか、そういう者に対して、おっしゃるようなマンツーマン方式で対処いたしておりますけれども、把握していない面がございますので、それをさらに先ほど申し上げましたように情報体制を強化いたしまして努力をいたしてまいりたい、そういうふうに存じております。
  12. 桑名義治

    桑名委員 報道によりますと、次にいわゆるPBM作戦というものを計画しているのではないか、こういうふうなうわさがあるわけです。次に行なう予定は要人あるいは武器の収集あるいはマネーだ。そういうことを考えますと要人の誘拐やあるいは金融機関襲撃というものも一応考えられるわけでございます。そしてまた四月武装蜂起ということが盛んにうわさをされているわけでございますが、これが単なるうわさであればこれは非常にいいわけでございますが、ハイジャックのように事件が起こったときに、公安委員長がしてやられたと思わず口に出されたというお話も聞いておりますが、そういうことがあってはならないと私は思うわけでございます。ちょっとしたすきが大事件を巻き起こしていくおそれが起こってくるわけでございますが、先ほどから今後の対策をいろいろとお尋ねしているわけですが、ただ強力なとか、そういうふうな御答弁しかいただいていないわけです。それだけでは今回の事件を契機にして国民の不安というものはどうしてもぬぐい去ることができない。そこで具体的なこういう方式で今後も進んでいきたい一もちろん捜査上の問題もありまして、これはなかなか御答弁願えない面もあるかとも思いますけれども、しかし国民がなるほどこれならば、こう納得するような御答弁をお願いをしておきたいと思います。
  13. 山口廣司

    山口(廣)政府委員 お答え申し上げます。  いま国民が納得するようなということをおっしゃいましたけれども、私どもとしては限られた警察力でもちましてできる限りのことをいたしておるわけでございます。こういうような非公然団体に対する私ども対策とかいうことを、あまり具体的に申し上げることはやはり差し控えなければならないと思いますので、とにかく全力をあげてやっておる、こう申し上げる以外にないわけでございます。先ほどからいろいろPBM作戦というようなお話もございましたが、私どもはこういう非公然の、言うなればまぼろしみたいなそういう敵に対して、いま何だか受け身みたいな形で、そういう政財界の重要な方々とかあるいは外国公館とかいろいろなものに対して、一生懸命で日夜警戒警護に当たっておるわけでございますけれども、こうした受け身の形でいつまでもやっておるわけにはいかない。どうしても、攻撃こそ最上の防御でございますから、こういうような集団に対してやはり攻撃的な積極的な態勢をとらなければいかぬということで、そういうことにつきましては、私どもとしていろいろ努力いたしておりますので、国民皆さま方にこういうことをやっておるから御安心願いたいとあまり具体的に申し上げられませんけれども、最善の努力をいたしておるということをお答え申し上げたいと思います。
  14. 桑名義治

    桑名委員 この件につきまして、最後に公安委員長から決意のほどを伺っておきたいと思います。
  15. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申します。  いろいろと過激派学生を中心として国民に御心配をかけておるわけでありますが、まことに遺憾であります。警備隊も昨年からおととしにかけての最高時のゲバ騒ぎ態勢をくずさずに、未然に防止するということを念頭に置きまして営々として訓練にいそしんでおるところであります。一言にしていえば万全の備えを細心の注意をもってはかりまして、万遺憾なきを期したいと思っておる次第であります。
  16. 桑名義治

    桑名委員 次に、本日の某新聞によりますと、「中曽根飛行場の話もあった」こういうような非常にわれわれは納得できないような、むしろ義憤を感ずるような報道がなされております。それといいますのは、中曽根防衛庁長官が今回群馬県に飛行場をつくる。しかもこの際マイ・プレーンとそれから自衛隊共同使用のできる本格的な飛行場防衛庁予算で建設できないか、あるいはまた完成したら、現在宇都宮市内海上自衛隊教育航空集団司令部に同居している陸上自衛隊の十二師団をそちらのほうに移転をさせてはどうか、そういう陳情を受けまして、そして防衛庁事務当局に指令をした、こういうようなお話が載っておるわけでございますが、この問題について中曽根防衛庁長官の御意見を伺っておきたいと思います。
  17. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その新聞記事は私も読みましたが、その記事師団飛行場に対する理解不足からきている記事であって、私は正しい記事とは思いません。なぜなれば、師団飛行場というのは師団司令部連絡用飛行場でありまして、師団司令部そばになければ役に立たないのであります。ところが群馬県の相馬ケ原にあります第十二師団そばにはそういう飛行場がないわけです。そこで宇都宮海上自衛隊と同居して師団司令部連絡飛行場にしているわけです。その飛行場にあるものはセスナとかMU2とかあるいはヘリコプターとか小型の連絡機があるだけです。したがって、そういう配置自体防衛上不合理な体制になっておるのです。たまたま新町におきまして群馬飛行連盟がいろいろ運動して、町長も協力して町営の飛行場滑走路約七百メートルでできたわけです。そこで町のほうから陳情がありましたから、それがもし師団飛行場に、司令部飛行場に転用、共用できるならばそれは両方にいいではないか、それができるかどうか検討してみよう、そういうことを私は命じた。そのときの話では滑走距離が短いから無理ではないかと思います、そう言いましたから、無理はしないでよろしい、合理的なものでこれは取り扱わなければいかぬ、そう言いました。その後報告を聞いてみますと、そばに鉄橋があるということ、それから烏川の合流点そばにあって滑走距離を延ばすことがむずかしいということ、というようないろいろな理由によりまして合理性がないということがわかりましたから、それはやめよ、そういうことを私は言ったのです。したがいまして、つくったということでもなければ非合理的な話でもありません。元来師団司令部飛行場というものは、師団司令部そばにあるべきものが本筋なのであって、榛名山のふもとにある師団司令部飛行場宇都宮にあって、栃木県にあるということ自体防衛上不合理な話なのであります。そういう意味において、私はその記事理解不足記事であると思います。
  18. 桑名義治

    桑名委員 この新聞によりますと、事務当局がどういうふうに言っているかといいますと、河川敷である以上、当然増水やはんらんがある以上、使えないということが予想されて安心できない。あるいは建設省が河川敷について許可をするということは考えられないとか、あるいはいま答弁がありましたように、藤岡線の鉄橋が隣接して延長がむずかしいとか、こういういろいろなことがありまして、ヘリコプターの着陸場があるなどの理由をあげて簡単にはできない。そして思いとどまっていただくよう説得していきたい。それでも長官がやれというならば、従わざるを得ない。こういうふうに事務当局答弁をしている。こういうふうに報道されているわけでございます。  いずれにしましても、中曽根長官は、国鉄の吾妻線に中曽根駅をつくって、国会の場で陳謝をしているというような事態も起こっているわけでございます。しかもこういった問題を考えてみますと、実際に防衛庁予算でもってそしていわゆるマイ・プレーンの飛行場をつくるということは、非常にこれは納得しがたい問題でございます。この点について、この政治姿勢が問題ではないか、私はこのように思うわけでございますが、長官の意見を伺っておきたいと思います。
  19. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は河川敷であろうとあるいは普通の陸地であろうと、活用すべきものは活用すべきだと思います。しかしその場所はさっき申し上げましたように鉄橋があったり合流点が近くにあって距離が短いので不適当である、そういうことで活用できない。したがって、河川敷であろうが建設省が許可すれば私は活用したほうがいいと思っております。  それから師団飛行場というものの性格自体が、師団司令部そばにあって幕僚やその他の連絡用に使うべきものなので、それが相馬ケ原師団司令部に対して宇都宮にあるということ自体が間違いなんです。それを是正しようという考えで、土地はないかと思って、たまたまそれが活用できれば経費も節約できるし両方もいいからいいんではないか、そう思って検討を命じたのでありまして、それが不適当であるとわかったので、私はこれを撤回しておるわけです。したがいまして問題はないと思います。
  20. 桑名義治

    桑名委員 長官はこの問題については撤回を命じた、こういうふうに言われておりますが、この新聞報道によりますと、指示を受けて検討している、同当局は撤回についてあずかり知らない、こういうふうに言って、お互いのことばの中に食い違いができておるわけですが、これはどちらが事実なんですか。
  21. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はその新聞記事が調査不足の記事であると思います。
  22. 桑名義治

    桑名委員 いずれにしましても、このように国民から非難を受け、あるいはまた大臣であられる長官がこのような、いわゆるその姿勢に対して疑問を持たれる、そういった姿が私は問題だと思います。今後こういうことがないように十二分に注意をしていただきたい。これを要望しまして終わりたいと思います。  次に、人口急増の問題に入っていきたいと思います。最近は大都市周辺に急激に人口がふえまして、そして大都市の中には過密の中の過疎、こういうふうにいわれるような状況になっております。ところがこのような人口の急増に対して義務教育の施設が非常な不足を来たしていることはもうすでに御存じのとおりでございます。各市町村は異常な財政需要を余儀なくされまして、財政的にも大きな曲がり角にきているといっても決して過言ではない、私はこのように思うわけでございます。その中でも学校建設というものは一日も放置することができない、といっても財政がそれについていけない、そこで応急的な措置をとっているのが実情であります。調査によりますと、プレハブ校舎は、急増地についてのみですが三千四百五十七、特別教室の転用が一千七百七十三、間仕切りが三千二百二十三、こうなっているのが実情でございます。こういった実情は、ごく変則的な教育が行なわれていることになるわけでございますが、こういったいわゆる変則的な教育を是正をするために、どのように文部大臣はお考えになっておられるか。所信を伺っておきたいと思います。
  23. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 人口急増市町村におきます義務教育施設が、プレハブ等を建てまして、十分でないということは全く御指摘のとおりでございます。したがいまして、われわれといたしましては、本年度の予算におきましては、特に公立文教施設整備に対しまして、人口急増地域における施設整備というものを重大に考え、そして大蔵当局と折衝をいたしたわけでございますが、特に私たち文部省だけでなく、自治省と一緒になって相談をいたしました結果、初めて実は土地に対する補助金を獲得することができたわけでございます。これによりまして、総合的な対策が立てられるものだというふうに考えておるわけでございます。  ちょっと数字を申し上げますと、全体の小学校、中学校の伸び率は、小学校校舎が三五%、中学校校舎が二二%増でございます。しかしながら、そういう補助事業量の大幅拡大と、それからもう一つは構造比率を九六%から九七%に上げたということ、それから単価アップでございますが、これは小中学校校舎の場合でございますが、鉄筋につきましては九・七%アップ、それから鉄骨につきましては九・六%アップ、木造につきましては八・四%アップ、それからいわゆる人口急増市町村というところにおきましては、昭和四十六年度に校地取得を行なう小中学校の増設学級数を約四千二百学級と見込みまして、そのうちこれらの市町村が全国の市町村の平均的な負担をこえて増設しなければならない部分が四割強である、つまり、千八百学級程度になるものと推定をいたしまして、これを補助対象とすることといたしました。そして、一学級あたりの平均事業費を千万円といたしまして、その総額が百八十億円、その三分の一にあたる六十億円を補助額といたしたのでございますが、昭和四十六年度の事業費におきましては、昭和四十六年度六十億円の国庫債務負担行為と、それから三年度分割交付の初年度分二十億円分を計上いたしておるわけでございまして、ようやく人口急増地域における義務教育施設整備に対して、総合的な対策がやれるようになったと思います。もちろん、自治大臣からもお話があると思いますが、このほかに十億の利子補給あるいは起債等につきましても格段の増額が行なわれております。これは自治大臣からお答えがあると思います。
  24. 桑名義治

    桑名委員 いま文部大臣から答弁がございましたが、今回の予算処置につきましては、文部省関係が単年度で約二十億、三年度で六十億、それから自治省関係におきましては、いわゆる利子補給として認められたものが十億、こういった姿を見てみますと、一応いわゆる一歩前進のように思われるわけでございます。しかしながら、このような処置ではたして先ほど申し上げましたような変則的な教育が解消できるか。このことを考えますと、非常に疑問がわくわけでございます。これは、何となればここに数字があるわけでございますが、昭和四十六年度の人口急増地域に対する学校の用地費として四百二十億円が、これは文部省、自治省両方で、おたくのほうで積算をされて  いるわけです。しかも、この急増地におきましては、昭和四十四年度の債務負担行為すら五百八十三億円の多額になっているのが、これが実情でございます。こういった実情を考えたときに、はたして先ほどの単年度の二十億、三年計画で六十億、あるいは自治省におけるところの利子補給の十億円というこのようなお金で処置ができるかどうか、これを考えますと、私たちは非常に不安になるわけでございます。こういった処置については焼け石に水だ、当然こういうようにいわざるを得ないと思うわけでございますが、この点についての御答弁を、自治、文部両大臣にお願いをしたいと思います。
  25. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 人口急増市町村の義務教育所要経費につきましては、自治省といたしましても文部省と相談を申し上げまして、少し差し出がましいぐらいでございましたが、私のほうからもいろいろ具体案を御提案をし、相ともにこれが実現をはかってまいったわけであります。  そこで、いまお尋ねの四十六年度の児童、生徒急増市町村の用地費でございますが、御承知のとおり四百二十億を所要額として計上いたしております。それを埋める方法として国庫補助金二十億円、つなぎ融資四十億円、地方債は百八十一億円を計上いたしております。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 また水田債もございまして、これを八十億これに充当いたします。そうしますと一般財源としてあと九十九億を必要とする。この九十九億は地方交付税の算定の中に計上をいたしまして処置をいたす処存で、いま交付税を計算いたさしておるわけであります。  そこで、この地方債の百八十一億につきましては、七五%に相当する百三十六億円を政府資金、残りの二五%に当たる四十五億円は縁故資金をもって充てるようにいたしまして、四十六年度はほぼ所用の資金をまかなうに十分な手当てをいたしたつもりでございます。御了承をいただきたいと思います。
  26. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、私どもといたしましては初めて土地購入に対しまして補助金を獲得できたということでございますが、そして、そのことそれ自体は画期的なことであると思います。しかし、これで十分であるかどうかということにつきましては、今後なお一そう努力をしなければならない課題であるというふうに思って、さらに努力を重ねてまいりたいというふうにに思います。
  27. 桑名義治

    桑名委員 いまの答弁でもはっきりわかりますように、今回の処置だけでは当然現在の各急増市町村を救済することができない、あるいはまた正常な教育に戻すことができない大きなギャップがあると私は思うわけでございます。  そこで、このような具体的な問題につきましてはまたあとで論ずることにいたしまして、現在学校がどのような状況になっているか、この問題にまず触れてみたいと思います。  船橋市の高根台第一小学校、これは船橋市にあるわけでございますが、ここの学校は全部で五十九教室ございます。その中で二十九の教室がプレハブ校舎である。しかも船橋市の中で、町の中にその学校の分教場ができているというような状況なのでございます。もちろんその分教場は全部プレハブ校舎でであきがっている、こういう姿があるわけでございます。そして、プレハブ校舎を建てますと、どうしても運動場に食い込んでいかなければならない。運動場は非常に狭くなりまして、一年間で、一ぺんで運動会ができずに、各学年別、要するに年間六回に分けて運動会を開いたというような、非常にかわいそうな事実があがってきているわけでございます。このプレハブ校舎につきましては、また冬はストーブを二つたいて寒さをしのいでいるとか、また父兄からの苦情が非常に多い。校長先生のお話を聞きますと、毎日校長室から外をながめている、父兄が、学校に毎日何人かの人が来られる、今度はどういう苦情だろうか、こういうことで心を痛めております、こういう話でございました。さらに大阪府の市長会の調べによりますと、プレハブ校舎は冬は寒くて火災の危険度が非常に高い。また夏は暑くてすだれで日よけをしている。あるいは雨ふり、あるいは曇りの日には暗くて黒板の字がよく読めない。あるいはトイレ、洗面所がないために、雨ふりはかさをさしてトイレに行くとか、またプレハブ校舎は何回か建てかえをやりますが、もう三回以上になると古くてどうしようもない、こういうような苦情がきているわけでございます。これがいわゆる急増市町村の一例なのであります。はたして児童の教育を、このような状況のもとに置いていていいかどうか、この点は私は大いに問題がある、このように思うわけでございます。  まず第一に、プレハブの校舎の問題でございますが、いま申し上げましたような例が実情でございます。急増市町村に行きましては、こういった例が、三千四百五十七のプレハブ校舎があるということが実情でございますが、こういった教育を受けなければならないという、この責任はどこにあるとお考えでございますか、文部大臣は。
  28. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 やはり義務教育の施設の直接の責任というのは市町村でございますけれども、しかしながら、それに対するいろいろの配慮をいたしますのは、最終的には文部省でございまして、われわれにあるわけでございます。一日も早くこういう仮校舎といいますか、仮の教室というものを解消して、本建築による教育環境を整備しなければならないということで、ただいま申し上げましたような措置をとるに至ったわけでございます。と申しますのも、実はなぜプレハブというような校舎ができたかというところには、まず土地取得に対する非常な困難性あるいは政府としての起債その他について十分の措置がとれなかった背景があって、現場の市町村が非常に困った。これに対して先ほど申しましたような措置をわれわれがとることによって、プレハブ解消ということが総合的にこれから計画されることができるというふうに思います。しかしながら、一日も早くそういうプレハブに学んでおる教育条件の悪い環境を直す責任はわれわれにあるわけでございますから、今後努力を重ねてまいりたいと思っております。
  29. 桑名義治

    桑名委員 じゃ、また観点を変えますが、文部省はプレハブ教室を正規の教室と認めておりますか、認めておりませんか。
  30. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 正規の教室だとは思っておりません。
  31. 桑名義治

    桑名委員 そうしますと、文部省は、正規の教室と認めていないところで行なわれています教育を認めていることになるわけですね。こういう不当な処置がとられていることを一応認めているということですね。
  32. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま正規の教室と認めておらないと申し上げましたのは、本建築をいたします場合には、やはり補助対象になるというふうな意味で申し上げたわけでございまして、プレハブは補助金の対象としては正規のものとは認めておらないということでございます。
  33. 桑名義治

    桑名委員 そこで、そういうものの考え方が問題だと思うのですよ。いわゆる本建築のときには補助をつける、それでそれまではプレハブは一応暫定的な処置であるので、これは正規の教室と認めていない、こういうふうなものの考え方が問題だと思うのです。  そこで、また観点を変えますと、このプレハブの校舎に入っている児童がどういうような気持ちでこの教室で学んでいるか。これは埼玉県の新座市立八石小学校の五年生の作文です。この中にどういうふうに書いてあるかといいますと、ちょっと読み上げますと、「ことしになって、ぼくたちは、プレハブの教室になった。プレハブの教室は、四年生の一学期にもはいりました。四年生のときは、夏はあつくて、冬はさむくなりました。五年生でもおなじでしょうが、がんばりたいと思います。」あるいはもう一人の人は「校庭のすみに小さなプレハブ校舎。その中の一つの小さい教室。それがぼくたちの教室である。中に入るとさっぷうけいでせまい。みんなろうやに入れられたような感じで勉強している。ぼくは、その中の一員だ。この組でこれからいろいろ勉強や、運動にはげむ。水道口もなにもなく、このせまくるしい教室で勉強をするのだ。いくらくるしくても、はいあがって勉強をしたい。いや、しなければならないのだ。そういうぼくは、目ひょうを持った。」非常にけなげな気持ちで勉強しているわけです。  じゃ、皆さん方のお子さんが、こういう教室で学んだらどうなるか。私も小学校に行く子供を持っておりますが、教育委員会に行きまして、二年生のときにプレハブ校舎に入った。非常に暑い。教育委員会に話しましたら、一時間の授業が終わるたびごとに、夏ですが、ホースで屋根の上に水をまくわけです。そして暑さをしのいだというような事例が幾らもあるのです。そして皆さん方は、いま言われたように、正規の教室と認めていないので、いわゆる補助対象にしていない、こう言われております。  じゃ、これが各市町村にとって安上がりになっているかどうかという問題なのです、今度は財政面からいいますと、プレハブというのは決して安くない。たとえばプレハブ校舎を一校舎借りた場合、これは一月に十五万円の借用料を払っておりますよ。プレハブ校舎を建てた場合は、一教室二百万かかりますよ。そして本校舎を建てるときに、またさらに市町村は負担しなければならない、こういう状況にあるわけです。教育の効果から申し上げても、こういうように子供は非常にプレハブに対しては不満を持っている。だけれども、純心な子供は、そういう悪い環境であろうとも、私たちは一生懸命にはい上がって勉強したいと、このように言っているわけです。教育というのは、川の流れと同じようにとどまるところがありません。小学校の一年生、二年生というのは、二度と来ないわけです。そういう貴重ないわゆる期間なんです、教育というのは。私がここでお話しするのは、釈迦に説法みたいなものでございましょうけれども、しかしそういうことを踏まえて教育行政に携わっていかなければならないということを私は申し上げているわけでございます。  そこで、さらに考えていかなければならない問題は、急増地につきましては、継ぎ足し継ぎ足しの本校舎を建てるために、悪くいけば小学校の一年生から中学校の三年生を卒業するまで全部工事現場の中で教育が最終的に終わるということもあるのです。しかもプレハブだけではなくて、体育館を間仕切りしたり、あるいは特別教室が普通教室に転用される、そうすると正規の学校に行っている子供さんたちは、化学実験やいろいろな実験もできるけれども、そういういわゆる急増地のはなはだしい学校に行っている場合には、そういった実験もせずに、ただ紙の上の教育を受けたにとどまるというような結果になるわけでございます。そういった問題を考えてみると、いわゆる憲法二十六条、教育基本法第三条でいうところの教育の機会均等、こういった精神が無視されている、こういうふうに考えざるを得ないわけでございますが、文部大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  34. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点、確かに教育環境がほかのところより悪いということは、御指摘のとおりでございまして、何としてでもプレハブ校舎を一日も早く本建築にかえるという努力をいたさなければならないというふうにわれわれは考えます。私も実は神奈川の急増団地のところに参りまして、プレハブに学んでいる学校の生徒を見ました。ちょうど暑いときでございましたが、それはほんとうにもう普通の学校よりも暑くて暑くてしょうがないという非常に気の毒な状況にございます。ただその場合はすでに本建築が行なわれつつありましたから、子供たちは一日も早くあの校舎に移りたい、その完成を願っているということでございました。私どもといたしましては、やはり教育の機会均等をあらゆる人たちに考えていくということに最大の努力を払わなければならない、またその責任があるというふうに思っております。
  35. 桑名義治

    桑名委員 そこで、この解消の一つの手だてとして考えられますことは、五月一日に各市町村におきましては指定統計を提出しております。その中で義務教育諸学校施設費国庫負担法施行規則第三条第二項による基準、この中で皆さん方文部省でいわゆる基準を示している、その基準が小学校の場合は一世帯に対して〇・四五、こういうふうに基準をきめているわけです。ところが急増市町村の実例をあげますと、一世帯に対して〇・九九、そして中学校の場合は一世帯に対して〇・二二、ところが実情は〇・五四、こういういわゆる施行規則そのものがすでに各急増市町村の場にあってはそぐわない実態になっているというのが実情でございます。  これは私は、各急増市町村、町田やあるいは船橋、そういった周辺を全部行ってまいりました。そしてあるいはまた急増市町村の協議会がございますが、そういったところからいろいろな資料を集めてみますと、やはりこの数値は出てくるわけでございます。そうなりますと、来年度の計画を立てるとき、そのときもうすでにプレハブ校舎やあるいは変則的な校舎が建つということを当然の事実のように皆さん方の中では黙認をしている、こういうふうに考えますと、この施行規則をもうすでに変える時期がきているのじゃないか、あるいは暫定的な処置を法の中に、規則の中に織り込むときがきているのじゃないか、このように思うわけですが、文部大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  36. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 先生のただいまおあげになりました数字は、だいぶ時間がたちますとそういう数字が出てまいるということはこれは事実でございます。しかし私どもがいろいろなところで調査いたしました結果を見ますと、初めのうちは年齢構成を見ますと、三十から三十五の方が大体三〇%ぐらい、それから四歳未満の方が二〇%ぐらいということで、小学校の該当年齢の方は案外低いわけでございまして、千葉県の調べでも大体八%ぐらいというふうなことでございます。したがいまして、学校を建てましてから数年間は、ただいまの私どもが採用している〇・四五あるいは〇・二二という数字でこれは十分間に合うわけでございまして、私どもが一応将来の計画を推定します場合には、一年半先を見込んでおりますから、数年先を見込んだ数字を使っておりますので、その点は支障がないと考えております。しかし十年以上もたちますと、ただいま先生が御指摘になりましたような数字になるわけでございます。これから先、こういう問題についてはどういうふうに考えるかというのは非常にむずかしいわけでございます。特に団地の場合は人口の移動が非常に激しいということが見込まれるわけでございます。他の調査によりますと、大体定住をしたいと思っております者が二〇%にすぎません。そういう意味でどんどん若い夫婦、それから小さな子供を持った若い夫婦が入れかわり立ちかわりその団地に入ってくるということも予想されるわけでありまして、将来の児童生徒の予測につきましてはそういうふうなむずかしい問題がございますが、ただいま先生の御指摘を十分考えまして、これからも検討してまいりたいというふうに考えております。現状におきましては私どもはこれで一応足りておるのじゃないかというふうな考えでございます。
  37. 桑名義治

    桑名委員 現状においてはこの施行規則の中の一世帯〇・四五と〇・二二が適当である、こういうふうなお話でありますが、私が先ほど船橋市の高根台第一小学校の一つの例をあげました。この例は実情にそぐわないという一つの例なんです。あるいはまたいまあなたがおっしゃったように、面地はどんどん新しい人がかわっておる、新しい人がかわっておるがために児童数が多いということなんです。せっかく卒業をするような時期になった場合にはもうある一定の年齢になっていらっしゃる。そこでそういう団地から出ていく、そうするとまた新しい人が入ってくる、こういう循環を繰り返しておるのが実情なんですよ。そうなってくると、今後いわゆる〇・四五、〇・二二のこの基準ではどうしようもないのだ、こういうことを私は申し上げておる。若い人が多いから小学校の児童数やあるいは中学校の生徒さんが多いということなんです。そんなに一年おったからすぱっとかわっていくというような実情はございません。実際に私はいまここに町田市の団地白書も持ってきております。現実に私は現地を回ってみました。その中の結論として、この統計上の問題と実際の問題とをつき合わせてあなたに申し上げておる。文部大臣、この問題についてはどうお考えになりますか。
  38. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 一応管理局長から御答弁申し上げたとおりではございますけれども、しかしまた実際問題としまして、先生の調査等もよく十分検討させていただきまして、実情に沿うように前向きに考えなければならないというふうに思っております。
  39. 桑名義治

    桑名委員 そうしますと、施行規則のこの基準の数については、今後検討をして改正もあり得るということですか。
  40. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ここで改正するということは明言できませんけれども、十分検討いたしまして実情に沿うようにいたしたいというふうに考えております。
  41. 桑名義治

    桑名委員 先ほどから申し上げておりますように、こういった問題が解決しないと、憲法二十六条でうたっておるあるいは教育基本法の第三条でうたっておる教育の機会均等という精神が急増市町村においては失われている、こういうふうに私は思うわけでございますが、再度、この機会均等の精神が無視されておる、この点についての文部大臣の所見を伺っておきたいと思うのです。
  42. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 教育の機会均等を整備しなければならぬ責任のあるわれわれといたしましては、それが十分でないということに対しては今後努力をして穴埋めをしなければならぬというふうに考えております。
  43. 桑名義治

    桑名委員 次に、先ほどからお話がありますように、プレハブ校舎は、教室として認められておらないわけでございます。したがって補助の対象から除外をされている、これは確認をされた事実でございます。ところがすべて現場の市町村にその負担が全部荷重になっている、これもまた事実でございます。そこで先ほど申し上げたようにプレハブは決して安くない。一教室が、借りれば月十五万、そうして建設をした場合には二百万かかるという、こういう事実を考えますと、財政需要が非常にかさんでいる市町村に対しては大きな負担になるわけですが、どうしてプレハブが補助の対象にならないのですか。もちろんプレハブが校舎の一つの基準に当てはまらないから出さないというのではなくて、こういう実態が出ている以上はプレハブを建てなければならないわけですから、そういう問題に対しては暫定的にもこれは補助の対象にすべきだと私は思う。その点についての文部大臣の所見を伺っておきたいと思う。
  44. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 先生御指摘のように現在プレハブが非常に多くあるということは現象面としては事実でございまして、ただその原因をさぐりますと、これは先ほど来大臣からお答え申し上げておりますように、人口急増市町村の教育費全般に対する対策というものが総合的な施策が欠けておったという点にあるわけでございまして、四十六年以降はその根本になります原因を解消しようということで、予算も要求しておるような次第でございます。そういうわけでプレハブの問題につきましては、関係市町村からも要望が若干ございましたけれども、結局はそのもとを正すことが大事だということで、関係市町村の御了解を得まして、その根本的な土地の問題、建物の事業量の問題それから起債の問題、それから利子補給の問題、そういう一連の問題につきまして四十六年度は対策を講ずるということにいたしましたわけでございます。
  45. 桑名義治

    桑名委員 総合的な対策のもとにこの問題を解消したい、これは、ことばとしては非常にけっこうなことだと思う。しかしながら、現在のいわゆる超過負担の問題に、そこまでいけば、また入っていかなければならぬし、先ほど申し上げましたように、補助金問題もありましょう、起債の問題もありましょう。起債だって、またいろいろの問題が起こってくるわけですが、しかし、実情というのは、そんな簡単なことで解決ができる実情ではないということを冒頭に申し上げた。そのことを踏まえまして、現実にこうやって起こっているプレハブ校舎も、一応教室の対象の中に入れたらどうだ。それが総合対策の中の一環としての考え方じゃないのですか。プレハブは、これは教室に使っているのですよ、現実に。建てなければならないわけですよ。だったら、当然これに対する補助は考えるべきじゃないですか、総合対策の一環として。これに財政的な措置が全然とられていないのですから。あなたたちがいま言っている、考えていらっしゃるような総合的な措置をとったって、これは当然プレハブの問題は解決しませんよ。第一、先ほど提起いたしました指定統計上の問題この算定の基礎でさえも、これを解決しなければやはり解決しないと同じように、あなたたちは、一つ一つの問題に今度は話を向けていきますと、その解決策は何も出てこない。それで、しかもこの問題は、補助の対象にもならない、起債の対象にもならないでしょう。だから、このプレハブに対しては、何らかの救済措置をとっていかなければならぬ。だから、どうしても、市町村の財政事情もこういう事情で、本校舎を建てることができませんのでプレハブを建てるといい、それが財政需要の中に見込まれていき、あるいは補助の対象として申請があった場合には、当然補助の対象とすべきじゃないですか。これはどうですか。暫定措置としてもとれないですか。技術的な問題は別にしまして、これは文部大臣に、その意向だけ伺っておきたいと思います。
  46. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私どもとしましては、やはり、プレハブがなぜ起きているのか、その基本に立ち返りまして、そして、ことばだけではなく、総合施策ということについて、初めて今年この土地に対する補助金というものもできたわけでございます。それから、自治省御当局とわれわれと一体となりまして、このプレハブ解消ということに取り組んでおるわけでございますから、やはり既定のそういう方針のほうがいいのではないかというふうに、ただいまは考えておるわけでございます。
  47. 桑名義治

    桑名委員 そうすると、文部大臣は、プレハブに対しては、補助の対象の中にはどうしても入れられない、こういうことですね。そうすると、この問題については、市町村がどんなに困っても、これはやむを得ない、そういうことですか。
  48. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは非常に大きい問題、大事な問題でございますので、今後自治省ともよく相談もいたしまして、前向きに検討してみたいと思います。
  49. 桑名義治

    桑名委員 前向きに今後検討していきたいというお話でございますが、これは、単なる人口急増地に指定された百九十六団体のみにとどまらず、各所にある問題でございますので、これは鋭意取り組んでいただきたい、このように思うわけでございます。  そこで、次の問題といたまして、人口急増市町村における学校用地の確保、これに対して財政負担が非常に大きな問題になっているわけでございます。たとえば、一市平均の、一学校を建てる場合の用地費を大体積算をしてみますと、低く見積もりましても、一万六千平米必要でございますが、これに対して、一平米一万五千四百円、こういうふうに見積もっても二億四千六百九十万円になるわけでございます。こういった用地取得に対して、補助制度を設ける必要があると思うわけでございますが、この点についてどのようにお考えになっているか、聞かせ願いたいと思います。
  50. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 この問題につきましては、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、来年度から、土地を含みます建設費につきまして新たに補助の制度を設けるということで、ただいま予算の審議をお願いしているような次第でございます。
  51. 桑名義治

    桑名委員 そうすると、文部省の言っているのは、二十億の三年の六十億というこの予算措置でございますか。
  52. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 さようでございます。
  53. 桑名義治

    桑名委員 では、この措置は三年間で打ち切りということでございますか。
  54. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ほかの制度にならいまして、一応五年間の暫定措置ということにいたしております。
  55. 桑名義治

    桑名委員 そうしますと、結局ここにまた問題ができるわけでございます。最初に申し上げましたように、人口急増地の昭和四十六年度の学校用地費として四百二十億というものが、文部あるいは自治両省によって積算をされているわけですよ。それに対して年間二十億というのはどういうことなんですか。これは焼け石に水じゃないですか。だから、私はこの問題だけを問題にしているのじゃない。債務負担行為がすでに五百八十三億の多額にのぼっている。そうすると、この債務負担行為がさらに大きく広がっていって、最終的にはこれは市町村はパンクしなければならない。ただ二十億ぐらいでお茶を濁すようなことでは、これは抜本的な対策にはなりませんよ。ただそういうふうに需要が増大してきた、どうしようもないのでそういう補助をつけるという姿勢だけをまず示そうということだけでは、これは救済措置にはなりませんよ。だから、抜本的に、この学校用地の取得については法制化してしまう、こういう姿勢が大事だと思う。そのことを私は申し上げている。ただ単に、二十億つけて三年間で六十億つけたからだいじょうぶだなんて言ったって、学校の用地が幾つ買えますか。これは重大な問題だと思うんですよ。だから、その点について文部大臣と大蔵大臣に御答弁を願いたいと思います。
  56. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、実際これをやってみまして、実情に沿わないところ、あるいはもう少し十分やらなければならないぬところがおそらくでてくるだろうと私は思うわけでござ一まして、その意味合いにおきましては、実情に沿うように最善の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。いまは一応これで出発をしたということでございます。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 文部省の予算は、御承知のように非常にこまかい事項が多いのです。ですから、私も、その零細なものについて一々見ておりませんけれども、急増問題だけは、これはもうたいへん重大な問題だ、こういうふうに考えまして、みずから、その急増対策が大きく前進するようにというので、陣頭指揮をしたわけなんですが、結果は、先ほどから文部大臣や自治大臣から御披露申し上げているとおり、また御審議を願っている予算案のとおり、こうなっております。なっておりますが、これに対する評価をどういうふうにしておるか、大蔵省とすると、これはかなり思い切った措置をとった、もともと市町村が責任を持つこの義務教育施設に対しまして、これはもう国のほんとうに思い切った措置である、こういうふうに考えております。また、私どもが受けておる印象といたしましては、文部省、自治省両省におきましても、よくやってくれた、こういうふうに考えておられるのではあるまいかというふうに見ておるわけでございますが、何しろ、これはなかなか社会環境の変化激しい際でありますから、いろいろな問題が出てくると思います。そういうものの推移を見て、とにかく大事な子弟の教育の問題でありまするから、今後も、万遺憾なきを期していかなければならぬ、かように考えております。
  58. 桑名義治

    桑名委員 大蔵大臣の御答弁をお聞きしたわけでございますが、よくお話を聞いているとあまり中身がないわけです。要するに私は、そういうようないわゆる急増の処置として用地取得に対する補助制度をつくる意思があるかないか、またそういう方向で考えられないものか、このことをお尋ねしているわけでございます。来年度は二十億の措置では非常に少ないんだ。一番最初に申し上げましたように、来年度のいわゆる急増地域の学校取得費だけを見ましても、文部、自治両省によって四百二十億円を一応積算がなされている。それに対して二十億ですから、これじゃほんとうに根本的な解決にならない。学校用地というものは、急増地のみならず、あらゆる市町村の重要な問題になっているわけですから、だからこういうふうにいわゆる補助制度を設けることができないものかどうか、そのことをお尋ねしているわけです。その点についてもう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 急増対策は、これは市町村がまず第一に責任を持ってやる、こういうことでございますから、市町村財政の問題です。また現に財源等につきましては、急増地帯だけに、現時点は格別として、少し長い先を展望すると、相当の増収が期待される地域だと思います。しかし急増という現実当面する事態には、これが打開につとめなければならぬという重い負担を現時点ではになわされている、そういう地域かと考えるわけなんです。先は明るいが、しかしいまは非常に苦しいというような地域かと思うのです。そういう地域に対してどういう措置をするか。市町村が第一次責任をとる、それからとにかく市町村というか、自治体全体の共同の財政の仕組みである交付税の配分をどうするか、こういう問題が次に起こってくる。それから、それで足らぬという場合におきまして、地方債起債に対して政府がどういう便益を与えるかという問題が起こってくる。最後に起こってくるのが国の助成、こういう問題じゃないか、こういうふうに考えておるのですが、そのすべての面にわたりまして総合的にこの問題は考えていかなければならぬ問題である。その一つの問題として国の助成の問題、これにつきましては、先ほど申し上げておるとおり、大蔵省としてはかなり思い切った考え方のもとに御審議を願っておる、御提案をしておると、こういうふうに申し上げておるのでございます。しかし今後とも事情の推移を見まして、この問題は義務教育という大切な問題でありますので、遺憾なきを期していかなければならぬ、さように考えております。
  60. 桑名義治

    桑名委員 交付税の問題いろいろな問題は、その一つ一つをいまここで論ずる時間もございませんが、その中で特に気になるのは、大蔵大臣はそういう人口急増地については財政が将来は非常に豊かになる、こういうように言われているわけですが、いわゆる工業団地としての、産業都市として大きく伸びていっている場合、そういうところはある程度財政は伸びていくと思います。しかしながら、特に急増市町村として問題になるのはそうじゃなくて、いわゆるベッドタウン的な性格で大きく伸びているところに私は問題があるんじゃないかと思う。これは町田、船橋もいい例になるわけであります。あるいは小さくいえば東京都下の多摩町、こういったところがベッドタウンとして大きく伸びている土地ですが、そういったところで積算をしました積算表がここにあるわけでございますが、大型団地ができた。そこから上がってくる税収入と、それからそこに行政サービス費あるいは投資的経費というものをつぎ込んで、実際にその行政サービス費あるいは投資的経費を収入から差っ引くと、そうすると赤字が当然出てくるわけです。その穴を埋めるには何年かかるかという、ここに積算したものがございますが、これは一つの団地の場合三十七年かかる。そのうちに今度はだんだんと中の入れかえがございますので、収入もまたダウンしてくる。そうすると、返済はなお一そうおくれてくる。こういうような結果がここに出ております。これを読み上げていろいろお話し申し上げてもいいのですが、もう時間がだいぶ来ましたので、これはやめますが、そういうような実情になっているということをよく大蔵大臣は把握されました上で、ひとつこの補助制度については強力に対処していただきたい、このことを要望しておきます。  次に、市町村の用地取得の九〇%がいわゆる条件の不利な公募資金や交付公債に依存しているというのが実情でございます。しかも義務教育施設費の約三分の一が用地費になっているわけです。また該当年度の財政措置ができないために、開発公社等に肩がわりをさせて用地の確保をはかっているのが実情でございます。先ほど申し上げましたように、四十四年度現在の債務負担行為が三百六十二億になっておる、こういうふうになっておるわけです。これをどういうふうに解消するか、この点について伺っておきたいと思います。
  61. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 私からお答えするのが適当かどうかわかりませんが、ただいままで用地債につきましては政府資金が非常に少なくて、縁故債が多かったというふうな事情は、御指摘のとおりでございます。しかし先ほど自治大臣からもお答え申し上げましたように、来年度につきましてはその額を、従来八十億の政府資金、これを百八十一億に増額をいたしましてそのうちの七五%を政府資金で充当する、さらにいままでの既往の債務につきましては、十億の金をもちまして利子補給を行なうというふうな施策を講ずることにしたわけでございます。そういう意味で、今後人口急増市町村の債務の問題は、借金をどういうふうにして充当していくかというふうな地方財政全般の問題になるわけでございますが、この点につきましても、自治省等に御連絡しながら、その解決につきましては私ども努力してまいりたいというふうに考えております。
  62. 桑名義治

    桑名委員 そこでお尋ねしたいわけですが、来年度の急増地域の用地取得が五百八十八億、こういうふうにまた積算されるわけですが、いままでの債務負担行為の未返済額三百六十二億、さらに来年度の見込み額と一般会計の起債と返済を見込むと、ばく大な負担になるわけです。そこでそういうことを踏まえまして、再度これは自治大臣と文部大臣にお答えを願いたいと思うのです。
  63. 長野士郎

    ○長野政府委員 先ほどお話のございました債務負担行為につきましては、既往の問題でございますけれども、これは今回の措置の中で、いわば借りかえ債を考えまして、正規の起債として振りかえまして、そしてこれについて措置をしていきたい。それからもう一つは、非常に高い金利のもとに起債を起こしているのがございますが、これについても利子補給をいたしまして、そして解消するようにしていきたいということでございます。  それから将来の問題というものを含めてのいろいろお話がございましたが、文部省の積算の四百二十億という問題がどこでどう措置をされるのかというお話もございますが、これにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、国庫補助金と地方債の措置を考えております。地方債につきましては、百八十一億円の地方債と、それからすでに水田債等で四十五年に校地のために必要なものもある程度確保しているのもございます。そういうものを入れまして、地方債の措置が二百六十億円くらいになっております。それをすべて差し引いてみますと、大体九十億円くらいの措置をさらにしなければならないという問題が出てまいりますから、これにつきましては一般財源的な措置を必要といたしますので、交付税等におきますところの所要の算入措置を講じまして対処してまいりたい。しかし、御指摘のございましたように、過去の問題、将来の問題、なおいろいろ改善につとめなければならない問題がございます。これは今後とも前向きで、国の助成等も充実をさしていただくという方向とともに、地方の問題としての問題でもありますので、地方財政において受け持つところは受け持っていく、こういうことで、文部省、大蔵省、御一緒に内容の充実につとめてまいりたい、こう思っております。
  64. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま自治省からお答えになりましたように、直接には自治省の問題かと思いますが、私どもも義務教育の問題でございますから、十分連絡を密にいたしまして、万遺憾なきを期したいと思っております。
  65. 桑名義治

    桑名委員 先ほどから財政問題にちょっと触れたわけでございますが、この超過負担という事柄は、たびたび論議の的になっておるわけでございますが、急増地域におきましても、この超過負担金というものが非常に大きな致命傷になっている、こういうように言っても過言ではないと思うわけでございます。  そこで補助の問題でございますが、校舎については、小学校三分の一、中学校二分の一、土地についてはいままではゼロ、しかしながら今回は二十億ついた、こういうことになっているわけでございますが、補助率についてのアップは全然考えられませんか。この点について伺っておきます。
  66. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨年もことしもこのアップにつきまして最大の努力をいたしましたけれども、今年はむしろ土地に対する補助金ということで、それを了承いたしたわけでございます。しかし、私どもといたしましてはまだその考え方を捨てておりませんので、来年も強く要望をいたしたいと思っております。
  67. 桑名義治

    桑名委員 時間がありませんので急ぎますが、急増市町村は団地関連施設に市民の税金をつぎ込んでしまい、本来の旧市民のために行なわなければならない仕事を実際には省いている、こういうのが実情でございます。きょうは学校問題を中心に質問を申し上げているわけでございますので、ここで学校の例を取り上げますと、町田市の堺中学校、ここにおきましては、旧兵舎をいまだに学校の主体の教室に使っているという事実がございます。この町田市の堺中学校は昭和二十四年に兵舎を転用したわけでございます。そこで校長先生にいろいろと尋ねてみますと、非常に採光が不良である、したがって、最近は近視の度がどんどん進んでいる。それから騒音で授業の妨げになる。この騒音といいますのは、学校の教室として、校舎として最低の条件は、中廊下をとっているということでございます。したがいまして、廊下の前でやっている授業の声がどんどん聞こえる。自習の時間になると、それに合わして音楽の時間を自習の時間に切りかえなければならない。そういうような校舎がいまだに残っているということなんです。しかも老朽校舎のために、生徒が掃除をするととげが手に刺さる、こういうようなことも言っておりますし、あるいはかぜをひく生徒が他校に比べて非常に顕著である。これはすき間風が多いからだそうです。そういうように、いわゆる旧来の市民に対して当然行なっていかなければならない仕事が実際には行なわれてはいない、省かれている。こういうような実例までもあるわけでございます。  ところが考えてみますと、一面見ますと、東京の小学校の児童数は、ところによっては年々減っております。一小学校につきましては、全校で百六十六人の子供しかいない。一学年が大体平均三十人弱ですね。そういうような学校が城東にもありますし、あるいは中央にも、中央には二つございます。まだたくさんこういう学校はあるわけでございますが、その反面、急増地につきましてはプレハブを建てていかなければ追いつかない、しかもそのために旧来の市民に対して行なわれなければならない仕事が残されていく、こういうようないわゆるひずみが起こっているわけでありますが、こういった団地造成という特殊事情を考慮して財政の特別措置を講じない限りは、当該市町村はますます苦しくなるのは当然なことだと思います。  そこで考えられますことは、この急増という事柄は、各市町村の責任でできた事柄ではない、都市計画の一つのひずみがそういうふうな形になってあらわれた、こういわざるを得ない。そうなると、この大きな責任の所在はどこにあるか。これは国にある。こういうふうな考え方に立たなければいけないのではないか、このように思うわけです。真正面切って国の施策に乗った、計画に乗った地方については、特別措置がとられる。たとえば新国際空港周辺整備法のように、国の施策によるものは特別措置を講じております。そうすると、このいわゆる整備法にのっとって、人口急増市町村にも、国の住宅政策にあるいは経済政策のひずみですから、このような立法化した措置をとるべきではないか、このように私思うわけでございますが、この点について自治大臣と大蔵大臣にお伺いしておきたいと思います。
  68. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたが、人口急増都市の義務教育施設の財政援助につきまして、いろいろ自治省の案を立てまして、文部省とも相協力をいたし、関係方面ともいろいろ折衝をいたしましたが、いまだ十分予期のとおりではない点がありまして、これらの諸点につきましては、関係官庁、さらに打ち合わせをいたしまして、実施状況等を勘案をいたしまして改良を加えたいということを申し上げておるわけでありまして、自治省におきましても、その点さらに検討を続けてまいりたいと思います。しかし万やむを得ないような場合には、いろいろ事情に応じまして特交等において処置をしなければならぬ場合も出ようかと思いますが、しかしながら、それは本筋ではございません。本筋はあくまでもひとつ改良を加えまして、プレハブ教室の解消ということにさらに検討を続けてまいりたいと思っております。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 桑名さん御指摘のように、急増、市町村の当面する諸問題、これは社会環境の変化、そういうものから影響されるところが大きいと思うのです。ですから、急増市町村自体の責任だ、こういうふうにも言い切れない。私は先ほど、学校につきましては、そういう個々のことをとって申し上げますと、これは自治体の責任ということになっておるというふうに申し上げましたが、これは急増市町村全体の問題といたしますと、やはり社会全体の推移の影響を大きく受けておる、こういうふうに思わざるを得ないのです。ですから、急増市町村問題これの解決は総合的な解決を必要とする、そういうふうに考えます。ただ単に補助金をどうするかというようなことでは決解できませんし、補助金をどうするかという問題になりますと、またこれがもとにさかのぼりまして、国と地方との責任の分担をどうするか、こういうふうな問題になもってくるわけでございます。この問題は、とにかく急増市町村問題の最も黒点と申しますか、一番の大きな問題であろう。土地の問題につきまして政府は今度新しい施策を打ち出したわけでありますが、なおこれが推移を見まして、とにかく大事な教育問題につきましては、これはあやまちがあっては相ならぬ、そういう考えのもとに対処していきたい、かように考えます。
  70. 桑名義治

    桑名委員 時間がいよいよ参りましたので結論を申し上げておきたいと思いますが、先日船橋市の金杉団地で入居の拒否がございました。それは約四千戸の団地ができましたが、三カ月にわたって船橋市が入居拒否をした、こういうことでございますが、しかしながら要求の中でわずか五億五千万円は一応公団が出す、負担をするということで解決がなされたわけでございますが、今後人口急増地につきましては、こういうような問題が惹起してくるんじゃないか、続出するんじゃないか、こういうふうに思われるわけでございます。そこで、政府は五省協定でその対策をとっておられるかもしれませんが、こうした問題は今後とも十分起こる可能性を蔵しておるわけでございますので、こうした関連公共施設に対してどのように対処していくおつもりなのか、この点について自治大臣と建設大臣に伺っておきたいと思います。
  71. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 船橋の事件は一応解決しましたが、今後これに類似する事件の起こる可能性があることは、御指摘のとおりです。そこで御承知のように住宅公団法におきましては、公団住宅をつくるにあたりましては、あらかじめ地方自治体の長に対して打ち合わせの上、その了解を得て着工することにいたしております。ただそのときにあたりまして、学校の用地その他については立てかえ金を出すことにしておりましたが、これの率が十分じゃないというので、今回改定いたしまして、二年据え置きの十年償還を三年据え置き二十年にいたしました。それからもう一つは、団地の中にいろいろの売店その他をつくっておりましたけれども、そうしますと、どうも団地と隣接地が隔離された形になりまして、住民感情も必ずしもよくない。そこでできるだけ団地の中だけに限らずに、保育所とかそういうようなもの等は、公団のほうも金を出しまして周辺の方々も利用できる、というような指導をいたしております。  なお今後問題になりまするのは、公団で全部これを負担するということになると、今度は入居者にはね返ってくるということで、これは先ほどお話がありましたように、学校の敷地について従来認めてなかった補助金を出すとか、あるいはまたわれわれのほうではその関連の道路を整備してやる、あるいは下水道を整備するというふうに、多元的なやり方でやっていくつもりでございまして、幸い国会の御承認を得まして都市再開発法もできましたし、都市計画法もできておりますのでこれらを活用して、でき得るだけ従来の市町村と団地が対立なく、しかも負担の不公平のないように指導してまいりたいと思っている次第でございます。
  72. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 ただいま建設大臣からお話しのありましたとおりでございますが、近来ややもしますと、公団お断わりというような風潮も地方公共団体の中にある実情でございます。したがいまして、五省協定の内容とその種類、規模等改善を加えまして、ひとつ快適なそして住みよい地域社会ができまするように、この間の改善をはかってまいりたいと考えております。
  73. 桑名義治

    桑名委員 以上で終わります。
  74. 坪川信三

    坪川委員長代理 これにて桑名君の質疑は終了いたしました。次に山口鶴男君。
  75. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 通告いたしました質問をいたします前に、若干お尋ねをいたしたいと思います。  当予算委員会におきましては、健康保険法の改正は予算関係法案であるから当然すみやかに出すべきだ、また提出の手続につきましては両審議会の答申を得て出すべきである、ということで論議が集中をいたしました。  さて、そこでお尋ねをいたしたいと思うのですが、共済組合は健康保険とたいへん関係が深うございます。当然秋田自治大臣はこのことについては御関心をお持ちだろうと思うのでありますが、社会保障制度審議会の答申というのはどういう内容であったか、当然御存じだと思いますが、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  76. 坪川信三

    坪川委員長代理 山口君、要求大臣は。いまの答弁……。
  77. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 秋田自治大臣は共済組合、特に地方公務員の共済組合を主管している大臣で、健康保険法の改正は非常に関係が深いわけですね。したがって社会保障制度審議会の答申がどうあったかということは、当然関心があるべきだと思うのですが、御存じないですか。どうも御存じないようであります。  そこで私は官房長官にお尋ねしたいと思うのですが、社会保障制度審議会の答申は昨日の午後一時二十五分に出たそうですね。そして健康保険法の改正は昨日の午後一時四十五分に国会に提出をされたそうです。その間の時間はたった二十分間です。二十分間で一体閣議を開くひまがあったんですか。閣議を開かなかったわけでしょう。だから秋田自治大臣だって知らぬわけだ、この社会保障制度審議会の答申がどういう内容だったかということは。一体その閣議はどうしたのですか。これは手続的な重要な問題だと思うんですね。
  78. 保利茂

    ○保利国務大臣 先日来主管大臣から申し上げておりますように、手直しをしなければならないようであれば時間をかけなければなりませんが、手直しを、主管大臣が考えられているところに手直しがなければ、そのまま閣議を請議いたしますということでございまして、閣議の請議がありまして直ちに持ち回り閣議で閣議手続を終わったわけでございます。
  79. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 持ち回り閣議でやられたというのです。しかも内容が変わらなかった、こう言うのですが、しかし社会保障制度審議会の答申は、諮問はまことに遺憾である、抜本改正の具体的な対策を示していないではないか、政府の再考を求めると、こういう答申なんですよね。そういった答申があったにかかわらず、あえて政府はあのような健保法改正をお出しになった。当然これは、答申と法案の内容とが違うわけですから、閣議においてきちっときめるというのが私はあたりまえだと思う。しかるに自治大臣は、地方公務員の共済を所管している大臣です。これは当然短期給付からいけば、健康保険法改正はずばりこれは問題になるのですから、そういった主管大臣すら答申の内容を全く知らぬ。そういう中で何が何やらわからぬままに、持ち回り閣議で国会に出た。答申と国会提出の間はわずか二十分。こんなことは私は全く遺憾だと思うのですね。これで一体手続をとったものというふうにいえるんですか。私はそんなことは全くめちゃくちゃだと思うんですよ。
  80. 保利茂

    ○保利国務大臣 早ければ早いでおしかりを受けるわけでございますけれども、午前の閣議で主管大臣からこの案件についての御説明があり、そして答申を得ましたならば直ちに閣議請議をいたしますから、というお話が出ておりました。そして、そのままの形で閣議請議がございましたので、手続をとり進めたわけでございます。
  81. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 労働大臣は、当然この問題には御関心深いと思うんですね。答申の内容は御存じなんですか。
  82. 野原正勝

    ○野原国務大臣 先ほど官房長官がおっしゃったとおりでありまして、一応前の閣議のときに厚生大臣から説明を聞いております。したがって、この問題に対しては、閣内は一致して決定したわけでございます。
  83. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いや、答申の内容は知っているんですか。
  84. 野原正勝

    ○野原国務大臣 答申の内容は、詳しいことはわかりません。
  85. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どういうんですか、これは。健康保険法改正に一番重要な関係のある労働大臣、地方公務員の共済短期給付でずばり関係のある自治大臣、内容をお二人とも知らぬ。ただ要するにところてんのように、まさに小林発言のことばをいえば、閣議ところてんのようなかっこうで国会に出した、こう言っても差しつかえないじゃありませんか。小林さんは、国会はところてんだと、こう言われましたが、まさにこういう状態では、これは閣議がところてんだったと言われたってしょうがないじゃないですか。どうなんです、そんなことで。
  86. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほども申しますように、きのうの午前の閣議で主管大臣から概要お話がございました。それでよかろう、しかしまた、答申次第によってはそれはどうなるかわかりませんけれども、答申を得られた結果、同様の御請議がありましたので、そのまま手続をとり進めたわけでございますが、私はしかしなんだと思います、いろいろ内容的には御審議をいただかなければならぬわけでございます。何といいましても、国権の最高機関である国会で十分の御審議をいただくということが一番大切だろうと考えております。
  87. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど労働大臣は、閣内不統一ではない、こう言いましたけれども、答申の内容を、関係ある大臣が全く知らないで、そうして、いわばめくら判を押して国会に出した、こういうことを認めたわけですね。ですから、そういうことは私はたいへん問題だと、こう言っておるわけなんです。ですからこれは、閣議でも一致した、閣内が不統一でなかったとかあったとかいう問題以前のことじゃありませんか。ですから、そういうことでこのような重要な法案を国会に出したということについては、まことにこれは遺憾だと思います。これほど本予算委員会の中でこの問題をめぐって白熱した議論があって、何回も審議中断になった、いわば政府としては最も重視をしなければならぬ問題でしょう。そういうことについて、まさに答申の内容を知らないままに閣議決定した、これはまさに社会保障制度審議会の答申を全く無視した、ずばり無視した、こう言って差しつかえないじゃありませんか。どうなんですか。閣議は全く社会保障制度審議会の答申を無視した、知らぬままにめくら判を押した、こういうことでいいんですか、一体。無視もはなはだしいじゃありませんか。どうなんですか。
  88. 保利茂

    ○保利国務大臣 主管大臣から閣議の御請議がありまして、もちろん両審議会の答申を得られておりますから、したがって内容がそれを無視したか尊重したか、十分御審議をいただきたいと思う次第であります。
  89. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この問題は、まさに社会保障制度審議会の答申を閣議が無視したという事態が明らかになった、重要な問題だと思います。時間をとるのもどうかと思いますから、ひとつこれは理事会で、こういった答申を無視したということでは遺憾でありますから、これは御相談をいただきたい。委員長によろしくお取り計らいをお願いいたしまして、先に進みたいと思います。
  90. 坪川信三

    坪川委員長代理 いまの問題につきましては、また理事会におきまして御相談いたしたい、こう思っております。
  91. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 次に、最近世間で問題になっておりますガードマンの問題について幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  先日、茨城県の那珂湊市におきまして二十名の臨時職員を採用した。これらの人たちはいずれもガードマンであって、特別防衛保障、飯島勇という方が社長をいたしている会社だそうでありますが、そこに所属するガードマンが臨時職員として採用をされた。黒い背広、黒いめがねで市役所の中を彷徨いたしまして、市長室等においてから手の練習等をしておったということが大きく報道され、世間の話題となりました。ガードマンの問題につきましては、こればかりではありません。昨年以来、たとえば報知新聞の争議に対してガードマンがこれに介入して、そうして労働争議を弾圧をする、さらには、最近におきましては時事通信社あるいは宮崎放送、こういったマスコミ関係の会社の争議に際しまして、必ずガードマンがこれに介入をしておる、こういうことが報道をされております。しかも、これら介入をいたしましたガードマンが暴行を働いて、そして宮崎放送においては一名、時事通信におきましては四名の方が、暴行の結果大きく負傷しておる、こういう事実もあるわけであります。これらガードマンは、万博あるいはその他の際にも活躍をされたようでありますが、この警備中に犯罪を働いたというようなことも問題になっております。これらガードマン会社というものに対しては、一体どのような官庁がこれを所管し、どのような規制を現在行なっているのでありますか。この点、まずお尋ねをいたしたいと思います。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  警備保障会社は、民間の営利企業ではありますが、その業務内容が人身や財産の保護を目的としているという点で警察業務と類似していることとかんがみまして、その健全育成をはかるという観点から、ガードマンの教育訓練、ガードマンによる犯罪やトラブルの防止、ガードマンの服装についての警察官との明確な識別、警察との連絡体制の確立、業界の自主的な連合組織の結成等、当面必要と思われる事項について行政指導を行なっております。
  93. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 各種の行政指導をやっておられるというお話であります。現在、私の調べたところによりますと、ガードマン会社は三百をこえる数に達しております。ガードマンの総数は二万六千をこえるという膨大な人員になっておるようであります。ただ、そこでいろいろ内容を調べますと、経営者の中に、暴力団にかつて関係をした人、現に暴力団の構成員であるという人、こういう方もおられるようであります。また凶悪犯として逮捕されたという前歴をお持ちの方その他も相当数にのぼっておると聞いているのであります。しかも問題は、那珂湊市のあのような争議に介入をする、あるいは先ほど私が述べたような各種報道関係の会社の争議に介入をする、こういうことをやっておるわけでありまして、労働大臣もおられるからお尋ねしたいと思うのですが、かつて社会労働委員会でこのガードマンの労働争議介入が問題になり、善処すると労働大臣はお答えになったそうであります。いわば労働法はあるが、労働法に違反をすることを商売にしておる会社があるということは、私は問題だと思うのですね。その後一体労働大臣はどのような善処をされました。
  94. 野原正勝

    ○野原国務大臣 お答えいたします。  労使の関係は、すべてお互いが話し合いによって円満に解決をするということがたてまえでございまして、ガードマン等がいたずらに介入すべき案件ではない。ただ、会社側が建物の維持とか管理という点であるいはそういうものを使う場合もあろうと思いますけれども、それは労働問題に直接介入することは絶対に避けるべきであるというふうに考えております。
  95. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 労働大臣としては、ガードマン会社が労働争議に介入をすべきことは絶対に避けるべきものだ、こういう御見解であります。とりあえずガードマン会社を所管しているのは警察庁ですね。ガードマン会社の中に、たとえば日経新聞に広告を出して、そして、わが警備保障会社は労働争議にあたって効果大である、こういう宣伝をやっている会社もあるのですよ。現に介入をして暴行行為を働いておる者もおるわけですね。この主管をしている警察庁、国家公安委員長といたしましては一体どうお考えですか。労働争議に効果大というような宣伝をすることに対して一体どうお考えですか。暴行を働いているということについてどうお考えですか。
  96. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答えいたします。  暴行を働いているという事実がありせば、そのことそれ自身けしからぬことであります。労働争議に効果ありということはどういうことか存じませんけれども、ガードマン会社が掲ぐべき題目ではないではなかろうか、かように思います。
  97. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういうことがあることは望ましくないという御見解ですが、現にそういう事実が行なわれている。外国もこのガードマン会社というのはどんどんふえているわけですね。日本もこれから私はガードマンの活躍の舞台というのはふえると思います。個人の企業がみずからを防衛するということに対して、一々税金を払って国が設置をいたしております警察官が私企業のためにのみ働くということは問題ですから、ガードマンというものを雇ってこの警備をするということは、当然行なわれてしかるべきだと私は思います。それだけに、いまのように法的規制も何にもなくて、単に行政指導だけで野放しにしていくということは問題ではありませんか。現に、わが党の議員が那珂湊市に現地調査に参りました。帰ってまいりましたら、暴力団から脅迫状が現に来ているわけであります。先ほど言いましたように、暴力団の構成員であった者、現に構成員である者がこの警備保障会社の経営者の中にある程度の数がおられる。そういう事実もあるわけでございまして、私はこの警備保障会社というものに対して、やはり外国と同じようにきちっとした法的規制をやるということがいまや必要になっているのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  98. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答えいたします。  当面は警察の行政指導と、業界自体の連合体組織化による自主的規制の推進によって営業の健全化を確保していきたいと考えておりますが、その業務内容が人身や財産の警備という特殊性、公共性の強い業種であるので、営業の健全育成という見地から、将来必要最少限度の法的規制を行なう必要があるとも考え、関係資料の収集、規制方法の検討を行なっております。
  99. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 通産大臣はまだ見えませんね。この警備保障会社と同種のものに興信所があります。興信所は通産省が所管しているそうでありますから通産大臣が参りましてからお尋ねしたいと思いますが、少なくともアメリカでは六州において州法として規制を行なっている。カナダも同様です。ドイツも州法によって規制をやっている。イタリア、スウェーデン、オーストラリア、スイス、フィンランド各国が免許制、それから営業の取り消し、停止、損害賠償の義務、秘密保持、服装に関する規制、それから犯罪前歴者は警備員として採用してはならぬというような警備員に関する規制、行政監督権限、こういうものについてそれぞれ規定をいたしているようであります。いまの日本の状態はあまりにも野放し過ぎるのじゃありませんか。三百余の会社があり、二万数千の警備員がおり、しかも服務中に犯罪を引き起こす。それも、単に労働争議に介入して暴行を働いたということ以外に、いろいろな形のトラブルを起こし、事犯を起こしている例があるようであります。先ほど申し上げましたように、労働争議に介入することはけしからぬという労働大臣の言明があるにもかかわらず、労働争議に効果が大だというような宣伝を堂々やっているということでは、あまりにもひど過ぎるじゃありませんか。将来法的規制をお考えになるという国家公安委員長のお考えでありますが、現在のこの状況について、行政指導をやっておられるそうでありますが、この点について国民のためにより規制を強める、どういう点を重視をして行政指導をやるというお考えは、当然あってしかるべきだと思うのです。重ねて公安委員長の御意見を承りたいと思います。
  100. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  仰せのとおりの事柄も重点として行政指導を行ないたいと思います。  なお興信所についての話がございましたが、いわゆる興信所、探偵社というのは企業調査、資産、信用調査、結婚調査、身上調査等をその業務内容としておりまして、警備保障会社と異なって必ずしも警察類似の業務とも思われませんので、興信所による個々の犯罪の防止及び事件の検挙を行なうことは別といたしまして、警察が興信所の業務全般に対し規制するというようなことについては一考を要するかと存じます。
  101. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 通産大臣がお見えでありますからお尋ねしたいと思いますが、興信所は通産省の所管だそうですね。興信所につきましても、法外な料金を吹っかけるとか、あるいは調査の結果握った個人的ないわばプライバシーの問題というのを種にいたしまして恐喝をするとか、そういう遺憾なケースがあるそうです。東京都内におきまして興信所が約三百社あるといわれております。これにつきましても一体どのような指導を通産省としてはやっておられるのですか、現状野放しですか、承りたいと思います。
  102. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 興信所は一種のサービス業だと思いますから、たとえば外資導入など許認可案件の場合には、通産省の所管としてやはり考えるべきものだと思っておりますけれども、それ自身がむろん許可事業でも何でもございませんので、これに対して別に規制というものをいたしておりません。
  103. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 やはり秘密保持の義務とか、それから遺憾な事例によっては営業の取り消し、停止とか、こういった措置は当然興信所の場合、国民の。プライバシーを守るということから必要ではないのですか、そういうことは一切かまわぬ、野放しのままでよろしいということなんですか。
  104. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのたてまえといたしましては、脅迫であるとか詐欺であるとか、いわゆる犯罪にわたりますことは、その系統の法律によって措置せらるべきものだという考えでございますので、営業一般におきまして、私ども規制を何らいたしておりません。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 国家公安委員長どうですか、警備保障会社につきましては今後法的規制を考えたい、こう言われました。秘密保持の問題とか、あるいは損害賠償義務の規定とか、そういうものだろうと思います。あるいは免許の取り消し、停止というものも含むだろうと思いますが、とすれば興信所に対しても同じような規制というものは考えられてしかるべきじゃありませんか、公安委員長としてはいかがですか。
  106. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答えいたします。  興信所につきましては、さっきも申し上げたように企業そのものが、興信所そのものの機能が警察になじまない業種でございまして、もっとも身上調査その他をめぐりまして、暴力行為その他刑法事犯その他不法行為等がありますれば、それはケース・バイ・ケースで、その事案それ自体として対象とはなりますけれども、企業そのものを規制するということはちょっと適切じゃないと存じます。
  107. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点は時間もございませんからこれ以上申し上げませんが、とにかくガードマン会社、警備保障会社につきましては将来法的規制をするという答弁がありましたから、その点は了承いたします。特に労働争議に介入し、目に余る行為も見られるわけでございまして、この点につきましては、現に行なわれつつある犯罪等につきましては、厳にひとつきびしく対処をいただくように強く要請をいたしたいと思います。  また、警備保障会社が関係いたした那珂湊にわが党の議員が調査に行った。そうしますと、われわれは三島精神あるいは飯守精神を堅持し、あなたのようなゲバ代議士は断固抹殺をするというような遺憾な脅迫状をよこすということは、これは警備保障会社と右翼団体とのつながりを示唆するものだと思うのです。こういうことがあっては問題であると思います。したがいまして、かかる遺憾な事態もあるということを指摘をいたしまして、警察庁長官の十分な措置を強く要請をいたしておきたいと思います。  次に、カドミウム公害の問題が当予算委員会あるいは参議院の予算委員会等で問題になりましたが、若干違った角度から幾つかの問題を御指摘をし、お尋ねをいたしたいと思っております。  まず、過般の予算委員会につきまして、東邦亜鉛に働いておられました中村登子さんが自殺をされ、その遺体よりきわめて大量のカドミウムが検出をされたということが問題になりました。じん臓からアッシュウエートで二万二千四百PPM、肝臓から四千九百四十PPMというきわめて多量のカドミウムが検出をされたようであります。現に東邦亜鉛が扱っております亜鉛精鉱の中に含まれるカドミウムは〇・三%でございます。そういたしますと、じん臓の中のカドミウム、アッシュウエートにおきまして二万二千四百PPMということは二・二%のカドミウムを含んでいる。肝臓では〇・四九%のカドミウムということになるわけでありますから、まさにじん臓におきましてはアッシュウエートで亜鉛精鉱の実に七倍ものカドミウムを含んでおるし、肝臓におきましては亜鉛精鉱よりも五割ほど高いカドミウムを含んでおった、こういうことがいえるかと思います。そのこと自体きわめてショッキングな問題だと私は思いますが、この点につきましては厚生省の見解も聞きたいと思いますが、まだ厚生大臣がおりませんから、その点はあと回しにいたしたいと思います。     〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 問題は、この中村さんが東邦亜鉛に働いておったわけでありますから、これは労働に従事をしております際にカドミウムを大量に体内に吸収した、それによって起きた災害でありますから、明らかに労働災害ということになると存じます。  私は昨年の七月、前橋の労働基準局へ参りまして、安中の東邦亜鉛に対して労働省としては一体どのような点検をし、労働衛生上の規制措置を講じておるのかということを尋ねました。いろいろなことをやっておるという話でありますけれども、現実にまだ昭和二十二年に制定された労働安全衛生規則というものがその後改定をされず、いまなおカドミウムというものがその項目に入っていないという点を指摘をし、八月十一日の産業公害特別委員会でその点を強く指摘をいたしました。当時労働省の安全衛生部長が参りまして、すみやかにこの規則改正を行ないたい、こう言ったのでありますが、今日まで、いまなおこの改正が行なわれていません。あまりにも怠慢ではありませんか。しかも昭和四十三年の五月にはイタイイタイ病に対する厚生省見解がすでに出ておるわけでございまして、厚生省見解が出てから、いまなおカドミウムに対して労働安全衛生規則の中に挿入をしていないということは怠慢だと思うのです。カドミウム中毒ということが問題になったのは一体どういうケースからかということは、労働大臣、御存じでございますか。
  108. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働省としましては、カドミウムの問題、非常に慎重に検討しておるわけでございまして、特に最近の中村さんの問題以来、真剣に対応しております。そこで、ただいま安全衛生規則のお話でございますが、技術革新や新原材料の導入等、職場の変化に対応しまして、常に安全衛生規則の整備を行なうべきでありまして、最近の職業病発生の傾向等のもとで労働者の健康を保持するためには、有害物質に関する規制を強化することが必要でございます。規制の対象とする物質であるとか、規制すべき排出処理施設の技術基準等、技術的事項につきまして、専門家会議をつくりまして検討を依頼しております。現在のところ、その報告のもとに改正案の要綱を作成中でございます。中央労働基準審議会に諮問をいたしておるところでございますが、同審議会から答申があり次第、急速に労働安全衛生規則の改定をはかる考えでございます。  ところで、この問題につきましては、すでに安中問題もございますので、東邦亜鉛の製錬所に対する調査団を編成しまして、今月の十八日から二十日までの間にいろいろな学者その他を動員しまして、実地に調査をさせるというところまでいっておりまして、これは四月中には安全衛生規則の改正案ができ上がると考えております。
  109. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私の聞きましたことのお答えが一つ足りませんでしたが、まあいいでしょう。  一番最初にカドミウムの急性中毒が問題になりましたのは、第二次世界大戦中、フランスにおけるカドミウム電池の工場に働く婦人労働者が、多量のカドミウムを吸収いたしまして、そして中毒症状を呈したというのが、これが一番最初だそうです。それに着目した萩野博士が、イタイイタイ病の原因はカドミウムではないかという指摘をされた。その根拠は、ただいま私が申し上げた事例だといわれているわけです。  ですから、カドミウム中毒というのは、神通川のように水あるいは米に含まれるカドミウムを食べ、飲み、そして体内にこれが蓄積をしてイタイイタイ病の症状を呈するということもありましょう。しかし、同時に、このカドミウムの蒸気を大量に吸い込んで、そうして中毒症状を呈する、これがやはりカドミウム中毒としては最も典型的なケースなんです。それがむしろ原点と、こう言って差しつかえないと思うのです。現に日本でも昭和三十九年福岡の帆柱工業、八名の中毒患者を出しておる。四十五年十月同じく福岡の新日本プラント建設、ここで三名の急性中毒者を出し、うち一名が死亡している。こういうケースもあるわけですね。当然これは労災適用になったはずでありますが、そういうケースがすでにあったわけでありますから、このカドミウム箔をつくる作業——御案内のようにカドミウムは融点も低いし、沸点も低いわけです。沸点も七百七十度、気化しやすいわけでありますから、大量にカドミウムを吸収するというおそれがあるわけです。それに対して、今日まで労働省としては規則改正もやらない。私が国会で指摘をいたしましたころ、昨年の八月になって行政通達をお出しになって、やっとぼつぼつ規制を始めた。こういうことは私はあまりにも怠慢だと思うのです。そればかりではありません。安中でカドミウムを使っている、当然労働衛生上問題になるのではないかと私は指摘をいたしました。前橋の労働基準局では、確かにそうです。いま日本では規則がないから、やむを得ずアメリカの産業衛生専門家会議の基準を使って、それより高いか低いかというのを見ておるのだけれども、現に安中はそれより高い。では、高いと言うけれども、安中の工場の中におけるカドミウムの量というのは一体あなた調べたのですかと言ったら、いや、それは会社からもらったデータです、こういう始末です。いま労働省に、この工場内のカドミムの量が一体どのくらいかというのを測定し得る器具というのはあるのですか。
  110. 野原正勝

    ○野原国務大臣 お答えいたします。  労働衛生研究所にあるそうでございます。今度の調査団はそうした器具等を持ってまいりまして、厳重に調査をしておるということでございます。
  111. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 昨年の九月、産業公害で私は指摘をいたしましたあと、全企業に対して労働省は点検をいたしましたね。約一カ月にわたって点検をいたしました。このときは、安中あるいは黒部、日鉱の三日市製錬所、あるいは磐梯町の製錬所、あるいは最近問題になりました三池の三井金属の製錬所、こういうものに対しては器具を持っていって、その職場環境のカドミウムの量というのは労働省でお調べになったのですか、どうですか。
  112. 野原正勝

    ○野原国務大臣 お答えいたします。  昨年の九月一斉点検をやりまして、一万三千六百ほどの事業場を検査いたしました。ところが、そのころは遺憾ながらそれを測定すべき十分な器具等がなかった。やむを得ず会社の資料等を一応参考にして点検をした、こういうことでございます。
  113. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 第二次世界大戦中にカドミウム中毒というものはすでに問題になり、わが国におきましても、先ほど申し上げましたように、昭和三十九年におきましてカドミウムの急性中毒患者が企業内において発生したという事例を持ち、そういう中で規則改正は行なわないで、やっと昭和四十五年の八月五日に行政通達を出して、カドミウムの職場における特殊健康診断というものを実施するように指示した。そして九月ないし十月に全国の全企業に対して労働省は一斉点検をやった。しかし、その時点では、その職場内のカドミウムが一体どういう量であるかということは、一切器具もなくて、会社のデータを借りて、ただそのまま、そうですかと、会社のデータだけでもって判断をするということをやっておった、こういうことですね、現実に。あまりにもおそ過ぎるんじゃありませんか。どうですか、公害担当大臣、いまのような状況をお聞きになって、こういう有害物質を扱う企業、そこに働く労働者の労働衛生を守るということについて、あまりにも労働省の姿勢というものはおくれ過ぎておった。器具一つなかった。最近買って、あわてて問題になった安中へ持っていったようでありますけれども、それ以前は器具すらなかった。すべて会社側のデータをとっておっただけだ。これでは全く労働省も企業癒着そのものじゃありませんか。全く企業に寄り合って、そこに働く労働者の健康というものは全く無視しておった、こう言っても差しつかえないと思うんです。御感想を承りたいと思います。
  114. 山中貞則

    ○山中国務大臣 政府の公害に対する姿勢というものは、各種の行政の末端の部面等において、個個の事例をあげて今国会において御指摘がありましたような過去の弊害があったことを、私たちは率直に反省し、認めております。したがって、新しくできまする環境庁に、そのようなことのないような諸権限を与えまして、労働省のそのような企業内の労働者の安全についても、企業内に万全を尽くすことは当然のことでありまして、おそ過ぎてもやらなければならないことでありますが、へいの外の一般の地域住民に対しても、企業内の労働者の単なる安全を守るばかりでなくて、そのような操業についての部外への影響はどのようになっているのか、それらも企業内から、労働基準監督官等の研修等によってぜひチェックしていってもらいたいというふうに考えておるわけでございます。
  115. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 結局、ただいま私が指摘いたしましたような労働省の企業寄りの姿勢というものが、あるいは有害物質を扱う企業に働く労働者の健康を無視している労働省の態度というものが、福岡において一名の急性カドミウム中毒患者が死亡するという事故を起こし、また今回、安中東邦亜鉛におきまして中村登子さんの残念な事故を引き起こしたということが一つ、労働省は、真剣にこの反省をいただきたいと思う次第でございます。  次に、私は、農林大臣がおられますので、この安中東邦亜鉛をめぐります農地法の問題につきまして二、三お尋ねをいたしたいと思います。  農地法第五条によりまして、一定規模以下の農地転用につきましては、当該都道府県知事の認可が必要だということになっております。また、農地法五条に違反をいたしました場合は、当然罰則というものもあるわけでございます。安中の東邦亜鉛は、戦後急激に膨張をいたしました。工場敷地もそれに従って逐次拡大をしていったのであります。したがいまして、この間、農地を買収し、転用許可を受け、そして敷地を拡大するということだったわけでありますけれども、その中に、農地転用の目的と相反した目的外の使用というケースが非常に目立っておるのであります。十年間の転用許可件数が十八件、ところが、このうち、転用の目的に反する件数が約半分、半分は転用目的外に使用している、こういう事実がございます。農林省、東邦亜鉛の農地転用の状況についてはお調べいただいておると思うんですが、ただいまの私の指摘は間違っておりますかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  116. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 私どもの調べましたところによりますと、転用許可目的外に使用されておるものは四件でございます。
  117. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 目的外に使用いたしました場合は、一体どのような指導を現在いたしておりますか。聞くところによりますと、転用いたしまして、若干の期間をおいて、他に転用した場合は、判例はないけれども、農地法違反とは扱わぬ、こういう農林省の見解があるそうであります。しかし、その中に、この東邦亜鉛の農地法第五条違反の中に、しばらく期間がたって他の目的外に使用したのではなくて、転用を受けるやいなや、直ちに違った目的に使用したというケースがあるはずでありますが、それに対しては、農林省はどのような見解をお持ちですか。
  118. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 具体的な事案はいろいろでございますが、転用許可目的外に使用されておるものに対しましては、農林省としましては、事業計画の変更等を出させまして、それを審査いたしまして、計画変更等所要の手続を踏みまして、農地法違反の状態をできるだけ是正するといったような指導いたしております。
  119. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 指導しているというお話なんですが、たとえば東邦亜鉛は、昭和四十一年三月——あとからいろいろ問題にいたしたいと思いますが、東邦亜鉛が逐次生産を拡大しつつあった時期であります。本来、この東邦亜鉛は六万ボルトの送電線で受電をいたしておりました。これを、飛躍的に生産を拡大するために、二十七万五千ボルトの超高圧の送電線を設置し、それに必要な変電所を設置したいということで、農地を買収しようと思いましたが、当時すでに公害に悩む農民諸君は、団結をいたしまして、この送電線設置には反対だ、東邦亜鉛が工場を拡張するための農地の買収には応じない、こういう態度をとりました。やむを得ず、昭和四十一年三月でありますが、高崎信用金庫という東邦亜鉛とは別個な企業が、運動場用地として一万三千平方メートルを買収し、当日転用の許可を受けました。運動場用地としての転用であります。そして昭和四十二年の十一月、東邦亜鉛は、その隣に、今度は変電所敷地として一万五千平方メートルを買収し、転用許可を受けました。ところが、即刻、高崎信用金庫運動場用地に変電所を建設し、その工事を行なったのであります。これはまさに、時間をおいて転用したというのではなくて、運動場のところに変電所をつくり、変電所で転用を受けた土地に運動場をつくったわけですから、これはまさに期間をおかないわけですね。これはずばり農地法五条違反じゃありませんか。どうですか。当然これは罰則がかかると思うのですが、それについて農林省は、この転用の事務を扱っている、機関委任をされた群馬県知事に対してどのような指導をされましたか。
  120. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話のございました東邦亜鉛株式会社が、昭和四十二年十一月、群馬県知事より変電所用地として農地転用許可を受けました土地に変電所を建設しないで、この土地を高崎信用金庫に運動場として使用させまして、高崎信用金庫が昭和四十一年三月、群馬県知事より運動場用地として農地転用許可を受けて運動場として使用しておりましたところに変電所を建設しておりました。東邦亜鉛株式会社が許可目的以外の目的に転用農地を使用させていることは、まことに遺憾千万でございます。このような交換使用をいたすことになりましたのは、高崎信用金庫の運動場が、従来、工場とその周辺地との遮断地帯としての効果を果たしておりましたので、この運動場の外側に東邦亜鉛株式会社の変電所の建設が行なわれることは好ましくないという意見が地元にあったためだと聞いております。この交換使用は許可条件に違反いたしておりますので、まことに遺憾でありますが、本件につきましてのこれまでの経緯それから本件土地周辺の事情及び交換利用の現況等を十分検討いたしました上で、慎重に処理いたしますよう群馬県知事を指導してまいりたいと考えております。
  121. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 指導するようにしたいということなんですが、とにかくこれはこの目的外に使用したわけですから、明らかに農地法五条違反である。これは罰則がありますね。三年以下の懲役または十万円以下の罰金ではありませんか。東邦亜鉛は、かつて鉱山保安法八条、九条違反として通産省東京鉱山保安監督部長から告訴され、前橋地検が正式にこれを起訴いたしまして、そして前橋地裁において有罪判決を受けている、こういう経歴を持っているわけであります。東京鉱山保安監督部が保安法違反として告訴するならば、当然私は、同じ企業が農地法違反、しかもその理由は、地域住民が公害を出すことは反対だということで東邦亜鉛の工場敷地として売ることを拒否した、そういうことから、やむを得ず便宜的な措置としてこういうおかしなことを東邦亜鉛はやったわけです。すべてこれは公害に関係ある事案です。当然その際に私は農地法違反としてのこの罰則のある事案についても私は告訴をするということがしかるべきだったのではないのか。そういうことについて、農林省も厳格な公害防止ということを考えるならば、断固たる行政指導を農林省から機関委任を受けている群馬県知事に対して行なうべきではなかったかと私は思うのですけれども、その点明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  122. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ごもっともなことであると存じまして、先ほども私が申し上げましたような考え方でやっておるわけでありますが、図面を見て説明を聞きますというと、よく御存じのように、変電所と工場敷地の間にグラウンドが入ってしまいますので、さっきもちょっと申し上げましたように、市民は、周囲の人々はこのグラウンドが外へ出て変電所が中へ入ることのほうが好ましいんだといったような、そういう地元の意向もあったやに聞いておりますが、いずれにいたしましても許可目的を無断で変更されるということは困ったことでございます。したがって、私ども、御存じのように、こういう案件は知事に委任をいたしておるのでありますから、先ほど申し上げましたように、私どもの考えておりますことも、お説のようなことを厳重にやるべきであるという考えでございますので、十分その趣旨を体して群馬県知事を指導してまいりたい、このように思っております。
  123. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 問題は、飛び越えた運動場用地につくるのが問題ではないかという地元の意向があったと言いますけれども、要は公害をこれ以上ふやしては困るという農民が——初めは隣の土地をほしがったわけですね、ところが売らなかった。やむを得ず高崎信用金庫という他の団体をしてその土地を他の目的で買わせて、そしてそこへ農地法違反を顧みずつくったというところに問題があるということをよく認識をいただきたいと思うのです。  そこで、通産大臣にお尋ねいたしますが、変電所の工事をする、変電所の新設をする場合は、当然電気事業法によりまして通産省の許可が要るはずだと思いますが、いかがですか。  調べてみましたら、東邦亜鉛は昭和四十三年三月十九日、この変電所の新設について申請をいたしました。通産省が許可いたしましたのが昭和四十三年四月十一日です。ところが、東邦亜鉛は、先ほど申し上げましたように、昭和四十二年十一月二十七日運動場として農地転用許可を受け、直ちに隣の高崎信用金庫の運動用地一万三千平方メートルの土地に変電所をつくったわけです。工事を開始したわけです。これは明らかに電気事業法七十条違反じゃありませんか。あとから申請をして、あとから許可を受けて、工事は先にやっているという事態はどうですか、これは。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 変電所の設置につきましては、当然電気事業法の許可を要するものと考えます。現実に工事の日時等々ただいま突然のお尋ねではっきりいたしませんので、その点は調査して申し上げますが、許可なくして変電所を設置することはできない、これは明らかだと思います。
  125. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 農地法にも違反し、電気事業法七十条にも違反している。事実を私は申し上げましたから、調査をしてあとでお答えをいただきたいと思います。  次に、さらにお尋ねをいたしたいと思うのですが、安中東邦亜鉛は、鉱山保安法第八条、九条違反として、昭和四十四年七月二十八日東京鉱山保安監督部長名で前橋地検に告訴され、昭和四十四年十二月一日前橋地検が正式に起訴を行ない、昭和四十五年五月十四日前橋地裁が有罪の判決を下しています。私はこの地域の住民諸君とともに昭和四十五年の六月二十八日、通産省の当時の橋本鉱山保安局長に会いました。そうして安中の東邦亜鉛が現に一万四千五百トンの操業をやっているけれども、これは許可がなされておるのかという点をお尋ねいたしましたところが、これは無認可であるということが明らかになり、七月九日の産業公害特別委員会でこの点を指摘いたしました。この結果、通産省は、先ほど申し上げたように、七月二十八日に告訴に踏み切ったわけでありますけれども、その際通産省のお話では、悪いのは東京鉱山保安監督部なんだ、東京鉱山保安監督部がいわば企業となれ合いで、保安法八条、九条違反を見のがしておったんだということを盛んに弁解をいたしたのであります。しかもそういう中で八月十四日には鶴田鉱山保安監督部長は自殺をしておなくなりになりました。そういう遺憾な事実もございました。  そこで、私はお尋ねをいたしたいと思うのですが、当時東邦亜鉛が一万四千五百トン、許可になっておりましたのは月産一万一千五百トンでありますが、この施設に対して無許可で工場を増設し、一万四千五百トンの操業を昭和四十三年の四月からやったのでありますけれども、問題は工事は一体いつから開始をされたのかという問題であります。これは東邦亜鉛の業務日報その他が当時前橋地検に押収されまして明らかになっております。昭和四十二年の十月からこの工事は始められたのです。昭和四十二年の十月といいますと、どういう時期だったかと申しますと、銅、亜鉛の自由化のために国内の金属鉱業がたいへんではないかということで、金属鉱業等安定臨時措置法が動いておった時期ですね。通産大臣、そうじゃありませんか。その点をまず明らかにお答えをいただきたいと思います。
  126. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、自由化に対処いたしますために金属鉱業等安定臨時措置法を昭和三十八年から四十二年度を目標年度として施行をいたしておりました。  なお、この法律は四十二年度限りで廃止になっております。
  127. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この法律の第十一条によりますと、「通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、金属鉱業等を営む者又は鉱産物の需要者に対し、その業務に関し報告をさせることができる。」こうなっています。政令では、この対象の金属は銅、亜鉛、鉛であるということになっていますね。亜鉛は対象になっています。そしてどのような報告をさせるかという事項につきましては、鉱産物の生産費及び生産数量、鉱産物の生産設備の状況、金属鉱業等に従事する労働者の数、鉱産物の在庫数量、こういうことが報告させる事項として政令で規定をされております。としますと、昭和四十二年、この法律は動いておったわけですから、昭和四十二年に東邦亜鉛が生産設備を拡張しようとすれば、また現に拡張工事を始めたわけですが、当然報告がなされておったと思うのです。どうですか。東邦亜鉛がこの法律にのっとって一体どのような報告を通産省に出していましたか。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、この法律をまちますまでもなく、そもそも鉱山保安法によりまして工場の増設計画は認可を受けなければならないわけでございまして、これは判決にございますとおり、そのような認可を受けておりませんので、明らかな法律違反を犯しておりました。
  129. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、どういうのですか。東邦亜鉛は、この法律の第十一条に違反をして、鉱産物の生産設備を昭和四十二年の十月に拡張する、言いかえるならば、昭和四十二年度中に、当時認可を受けておったのは一万一千五百トンですから、一万一千五百トンよりも生産設備を増強するという報告はしていなかったということなんですか。どうなんですか。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのとおりでございます。しておりませんで、この法律によりますところの関係では、生産設備については昭和四十二年十二月に一万八百トンに増設をするという報告をいたしております。したがいまして、鉱山保安法により報告をしなかったということと同様な意味で報告を怠っておった。その点が有罪になりましたわけでございます。
  131. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その具体的な、東邦亜鉛がこの十一条に基づきまして通産省に報告をしていました、政令で規定しております事項の数値については、ひとつ資料として提出をいただきたいと思います。  そこで、お尋ねをしたいと思うのですが、いまの大臣のお話では、当時は東邦亜鉛は一万四百トンの生産、こういうことですね、生産設備は。
  132. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの報告につきましての資料は後刻提出をいたします。  報告によりますと、一万八百トンに増設する云々となっております。もう少し詳しく申し上げますと、昭和四十一年四月の報告によりますと、四十一年度当初の亜鉛生産能力は月産八千三百トンとなっており、四十二年十二月に一万八百トンに増設をする、こういう報告になっております。  なお、法律の関係では、設備についての許認可の問題はございませんで、これは報告でございますので、許認可の関係は御承知のように鉱山保安法の関係でございます。
  133. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 東邦亜鉛は、昭和四十二年におきましては鉱山保安法の許認可では一万一千五百トンの生産設備を認可されているわけです。鉱山保安法による認可とそれからこの法律により提出をいたしました設備の報告の数値とではすでに違っております。それからまた昭和四十二年の十月に着工したことは、東邦亜鉛の業務日報で明らかです。また前橋地裁の判決の主文でも、これは明らかです。昭和四十二年十月ごろから工事に着工したということは明らかになっております。そうしますと、結局東邦亜鉛が前橋地裁でもって有罪判決を受けたのは、鉱山保安法八条、九条についてだけですね。これはもう大臣御存じのとおり。  ところが、このような告訴に通産省の東京鉱山保安監督部が踏み切った以上は、当然それならば金属鉱業等安定臨時措置法の関係の報告はどうなっておったんだということを明確にする必要があるんじゃありませんか。とすれば、これは罰則があって「三万円以下の罰金に処する。」とありますよ。当然通産省は鉱山保安法九条、八条並びにこの金属鉱業等安定臨時措置法第十一条違反として、同じ通産省がやるならば、告訴をしてしかるべきだったと私は思うのです。同じ通産省の屋根の下じゃありませんか。鉱山保安局だって、鉱山石炭局だって、そうでしょう。なぜそれほどまで通産省は違反の事実がわかっていながら企業をかばうのですか。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 鉱山保安法によりまして、実は告発をいたしたのではありませんで、鉱山保安法におきましては、保安監督官は司法警察の職務を行なうことになっておりますので、告発ではありませんで、司法警察官の資格において取り調べをいたしまして、送致をしたわけでございます。普通の告発とは違うわけでございます。  それからただいまの安定法の関係は四十一年、二年当初においてどれだけの計画を持っておったかという報告を徴したわけでございまして、その後に計画量を生産がオーバーしたという点は、それ自身は別に虚偽ということではない、こういうふうに解釈をしておるようでございます。
  135. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 生産設備については、昭和四十一年四月の報告によれば、昭和四十一年度当初の亜鉛生産能力は月産八千三百トンとなっており、昭和四十二年十二月に一万八百トン月産に増設することになっていた、報告はこうでしょう。報告はこうですが、現に工事のほうは四十二年の十月一万四千五百トンの工事を始めておったじゃありませんか。そうでしょう。とすると、この東邦亜鉛から出てきた報告というものは、明らかに虚偽の報告——当然この安定法の第十二条罰則「前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者」、一虚偽の報告じゃありませんか。四十二年の十二月に一万八百トンの設備だという報告をしながら、四十二年十月にすでに一万四千五百トンの工事に着工しておった、これはもうはっきりしておる。虚偽の報告じゃありませんか。どうですか、これは。
  136. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはそうではないと思います。と申しますのは、この措置法によります昭和四十一年、四十二年の報告は、通産大臣が報告を求めたのに対して報告をしてきたわでありまして、四十一年四月の報告によりますと、先ほど申し上げたとおりであります。  そこで、四十二年以降は、この法律がもう四十二年度で失効いたしますから、その後の状況については報告を求めておりません。そういう意味で、報告がなかった、求めておりませんから、なかったので、措置法による報告の必要が、措置法が失効いたしましたので、なくなったということでございます。もちろんそれによりまして、無届けで増設をした、無許可で増設をしたという点、この点の有罪関係は消えるものではございません。
  137. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 おかしいじゃありませんか。この法律は昭和四十三年三月三十一日までに廃止する。現実に廃止告示は五月になっていますね。とにかく四十二年度はこの法律が生きておるわけでしょう。そうして四十二年度の報告はしなければいかぬわけだ。そして東邦亜鉛から通産省に対して報告したのは、昭和四十二年の十二月に一万八百トンに増設するという報告があるじゃありませんか。四十二年ですよ、三年じゃないんだ。四十二年の十二月に一万八百トン、そして現実に工場は四十二年の十月に一万四千五百トンの増設工事に入っているのです。ですから、それが無許可でやったから鉱山保安法八条違反、これはあるでしょう。同時にこの安定法の十一条、十二条違反ではないか、そうじゃありませんか。それを私は聞いておるわけです。
  138. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはそうではございませんで、報告をしなければならないということにはなっておらないのであります。すなわち臨時措置法によりますと、「政令で定めるところにより、」「業務に関し報告をさせることができる。」ということになっておりまして、通産省は昭和四十一年四月に報告を求めておりますけれども、その後にはこの法律の関係では報告を求めておりません。したがいまして、報告をする義務はありませんでしたし、虚偽の報告もしていない。(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)これは怠慢ではございませんで、行政目的上それ以後の報告は必要がなかった、こういうことでございます。
  139. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、四十二年の十二月に一万八百トンの増設をするという報告は、通産省にあったわけですね、さっき大臣はお答えになったんだから。行政目的云々というようなことを言っておりますけれども、どうして企業の都合のいいように解釈をされるのですか。先ほど私は、鉱山保安法八条、九条違反は、これは住民とそれから私ども国会の追及、この二つによって通産省、特に東京鉱山保安監督部の企業寄りの姿勢というものを告発してきました。これについては前橋地裁で一応の判決が下った。しかし、そればかりではなくて、東邦亜鉛は、農林大臣も認めたように、農地法第五条違反の事実もやっている。それからまた電気事業法七十条違反の問題もやっている。そうしてこの安定法によって、少なくとも四十二年度はこの法律は生きているわけなんですから、それに対して東邦亜鉛が報告した教量というものと現実に東邦亜鉛が着工した工事の状況というものは違う。とにかくこれは何ですか、法律違反のし通しじゃありませんか。これほど法律違反をあえてして恥じない会社というのは珍しいと私は思いますけれども、それに対して結局ずばり住民と国会とが告発をいたしましたこの鉱山保安法八条、九条違反については送致をしたというお話でありますけれども、他の法律違反については目をつぶっておる、これが現状ではないかと思うのです。  とにかく通産省は一万八百トンの増設という報告は受けておったのですから、そしてこの報告が現実に違っている。しかも問題は、この鉱山保安法八条、九条違反の事実が摘発されたときに、一体安定法の上からいったらどうか、電気事業法の上からいったらどうなのかという点検ぐらい通産省がしてしかるべきだと私は思うのです。電気事業法の七十条は一体どうなんですか。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまの措置法の問題は別といたしまして、これは申し上げましたように、報告を徴しておりませんから、それは別といたしまして、電気事業法の関係、たとえば変電所について許可を受けておったかどうかというようなことは、これは確かにチェックしなければならない部分であると思います。御承知のように、鉱山保安法というものは非常に強い法律でございまして、独立に司法警察の権限を行使いたしますから、その部分と通産省内における原局、たとえば公益事業局等々との連携関係、これが悪いではないかと言われますと、私はそういう御批判は受けなければならないと思いますが、実際問題といたしましては、鉱山保安法の罰則が一番重うございますし、また検察としてもそれに従って処断をしたものと考えます。  しかし、一般にこのような際に、電力のほうの許可は受けておったかどうかというようなことは、行政としては実際は完全に相互に連絡をし合ってやるべきものであろうと思いますから、その点は私は御指摘はごもっともだと思います。
  141. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 鉱山保安法は非常に強い法律だ。それならば、昭和四十二年の十月から増設工事に無認可で着工し、四十三年の四月から実に一年三カ月にわたって堂々違法操業をやっておったということを住民と私とが昭和四十四年六月二十八日に問題にするまで、なぜそれだけ強い権限を持っておった鉱山保安法違反を通産省は見のがしておったかということを、私は問わなければならぬと思うのです、大臣がそう言うならば。どうですか、この点は。
  142. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それにつきましては、このような事実がございます。昭和四十四年四月十九日から二十二日に一斉検査を実はいたしたわけでありますが、その一斉検査の端緒は、それより前四十三年の十月に排水関係の検査をしておりましたときに、煙突の位置がどうも従来と違っておるということを発見した者がおりまして、それで一斉検査をいたしたわけでございます。ところが、判決によりますとこの一斉検査の際に会社側は操業を休んで、あたかもまだ操業を開始していないという状態をつくり出して検査を欺いたという、こういう判決でございます。まあ欺かれるほうもしかし間抜けではないかという感触は実はぬぐえないのでありますけれども、この工場は、工場だけでも三万坪余り、建物だけでそれほどございますから、しかもかなり複雑な地形で、その建物の中の施設のことでございますから、あるいはそれをどうしてわからなかったかという点は、何とも判断のいたしかねる点でございますが、ともかくそのための一斉検査でこれを発見できなかったということは、私としては批判の余地があるというふうに考えておりますが、実はそのような事情がありまして、さらに重ねてその年の七月にもう一ぺん一斉検査をいたしましたときに全貌が判明をしてまいったわけでございます。
  143. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 言いわけをされておられますが、しかし、この間絶えず東京鉱山保安監督部の監督官は当該企業に立ち入り検査をやっておったはずでありますから、それが一年三カ月にわたってわからなかったというまことに間抜けた事態というのは、私はあり得ぬ、これはもう明らかに当該監督官と企業とのなれ合いということであったことは明らかだと思うのです。そうじゃありませんか、しかもわが党の書記長である石橋委員が当委員会において石原産業の問題を取り上げました。国会で追及をするか、安中の東邦亜鉛のように、地域住民が立ち上がって告発をするか、あるいはまた国会で私が取り上げるか、そういうことをしなければ、違反の事実があっても、政府としては何ら手を打たない。これが今日までの通産省の、政府の公害に対する姿勢だったということだと私は思うのです。国会で問題になる、住民が告発をする、それ以前にやったというケースが、一体通産省、あるんですか。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは記録を正確にする意味で、事実関係だけを申し上げますが、東邦亜鉛の関係でこれは最終判決が出ておるわけでございますけれども、会社側と鉱山保安監督部側とのいわばなれ合いがあったというような事実は、判決は認めておりません。それから、御指摘の石原産業の問題につきましては、先だって、私どもの限られた調査の範囲では、両者になれ合いということはないように見受けられますと御報告いたしておりますが、これはただいま司直の手で調査が行なわれておる次第でございます。
  145. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ですから、結局住民や国会の告発がない限り、通産省は動かなかったということをお認めになったことだと思います。そういうところにやはり問題があるということを強く私は指摘をしておきたいと思います。  時間がありませんので、厚生大臣に一言だけ聞いて終わりにいたしたと思いますが、指曲がり病が問題になっております。安中ばかりではありません、磐梯町あるいは黒部、こういう地域で指曲がり病が問題になっております。現に厚生省は調査を進めつつあるわけでありますけれども、しかし、その調査が問題ではありませんか。安中の場合は、対象地区というのを後閑という地区をとっておるわけですね。岩井、野殿というようないわば被害のひどい地域、その地域に指曲がり病があるか、また、対象地区として後閑にそういう事例があるかということでお調べになっております。ところが、問題のこの安中地区の対象地域、後閑というのは、本年の産米の調査によって、玄米中にカドミウムが〇・八八PPM、〇・六二PPM、こういった異常に高い汚染米が発見をされています。もちろん一PPM以下ではありますけれども、〇・四PPMをこえる、しかも〇・八八ですから一PPMにきわめて近い、こういう汚染米が発見をされています。こういうところを対象地区にとって、幾ら調査したってだめじゃありませんか。対象地区に指曲がり病もある、だから岩井や野殿地区というような激甚地域に指曲がり病患者があっても、対象地区にもあるからこれはカドミウムのせいではないというような見解を出したって、こんなものはナンセンスですよ。なぜ対象地区にこのような汚染米が出るようなところをとったのですか。こういう調査では、私は、地域住民は決してこの厚生省の調査というものを信用しないということをはっきり申し上げたいと思うのです。対象地区が汚染されているじゃありませんか。この点はどうなんですか。
  146. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いわゆる指曲がり病が問題になりましたのは、まず安中のほかの福島県の御承知の磐梯地区でございました。磐梯地区の指曲がり病ではないかと疑われました方々につきましては、福島県立の医科大学に委託して調査をいたしました結果を、ことしの一月、厚生省のカドミウム中毒等鑑別診断研究班で検討をいたしました結果、御承知のように、この福島県の場合には、それらはいずれも、指曲がり病ではなしに、慢性関節リューマチあるいは変形性関節症というようなことに診断をされました。  このほうは一応それなんですが、いま群馬県の安中を中心とする指曲がり病につきましては、厚生省から群馬県のほうに委託をいたしまして、群馬県が、昨年の八月から十一月にかけまして八百七名の方を対象として診査をいたしておるわけでありまして、その検査データを現在取りまとめております。取りまとめた結果どうするか、ちょっとあとから申しますが、その地域は、いわゆる要観察地域のほかに、あの後閑地区というのを、いまおっしゃるように加えているだけですが、しかし、後閑地区だけでは足りない、こういうことでもございましょうから、いまも担当者と打ち合わせました結果、とにかく要観察地域並びに後閑地区の患者と疑われる八百七名についての診査をして、それが三月中旬までに資料の取りまとめが行なわれ、その結果をまた、先ほども申しました鑑別診断研究班会議にかけて、個別的にその判定をするということになっておりますから、その結果はもうすぐに出ますので、その結果をも待ちまして、必要によって、その御指定のような地域からも、その検査、診査の対象にする人を選んでもよろしい、こういうことに申しておりますので、そうさせていただきたいと思います。
  147. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時間が参りましたから、私はこれでやめますが、大臣のおっしゃることは違っておるのです。指曲がり病が一番最切に発見されたのは群馬県安中です。それで、その指摘がありましてから、何人かの学者が、黒部あるいは磐梯町等を調べて、同様な症状があるということを問題にされたんです。指曲がり病が指摘をされた一番最初は群馬県の安中だという事実は、これは明らかでありますから、この点はひとつ御訂正をいただきたいと思うのです。  そうしてその第一号の調査をやっております安中について、対象地区が汚染地域をとっておるなんていうことではナンセンスではないのか。そういう調査では私は納得をしない。全く汚染のおそれのない別な地域を対象地区として選ぶ、後閑地区は対象地区からはずす、こういうことをしなければ、地域住民は決して納得をしない、こういうことを申し上げ、見解を承っておきたいと思います。  そのほか、地方行政その他についてお尋ねをしたいと思いましたが、時間がありませんので、その辺は割愛をさせていただきます。
  148. 内田常雄

    ○内田国務大臣 指曲がり病の発生につきまして、群馬県が先でありましたか、福島県が先でありましたかということにつきましては、これはもう山口さんのほうが正しい認識を持っておられると思いますので、私が訂正させていただきます。  なお、地区につきましては、後閑地区が不適当であるとするならば、その他の対象地区を加えるのみならず、そういう地区を要観察地域の中に入れることについても厚生省は考えておる、こういうことごでざいますので、御了承ください。
  149. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  午後は、本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後三時十七分開議
  150. 坪川信三

    坪川委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。谷口善太郎君。
  151. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私は、日本共産党を代表して、一、二の問題、御質問申し上げようと思います。  最初に、農林大臣に伺いますが、今回旧地主に売り渡すことになりました国有地、国有農地、これは昭和二十二年の農地解放のときに、国が地主から買い上げた小作地のうち、何かの事情で小作人に売り渡せなかったので国が保有しているという農地だと思うのですが、それはどうでしょうか。
  152. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この前の農地制度の改革のときに、法律の目的に従って政府が買い上げました。そのうち大体二千五百ヘクタールあまり売却してありますが、いろいろな意味で農地に該当しないものとか、あるいは旧所有者が不明確であったり、いろいろな事情のありましたものが現在まで残っておった、こういうことであります。
  153. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、農地解放という問題が根本にあるわけでありますが、この昭和二十二年に行なわれました農地解放の歴史的意義ですね、これについて、これは官房長官、あなたに総理の代理として出てきていただいたつもりなんですが、政府の御見解を伺いたいと思います。農地解放の歴史的意義についてです。
  154. 保利茂

    ○保利国務大臣 おそらく何人も評価しておると思いますけれども、私も、農地改革が行なわれたのは、物納の高い小作料、そういったような実態の中で、旧地主から農地を解放していただいて、実際に耕作される方々がその耕作田を所有して、あの今日から顧みましてもわかりますような、日本の社会の安定と申しますか、経済の安定のために果たした役割りというものは非常に高く評価せらるべきであろう、そういうふうな意義を私は感じております。
  155. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そのおことばで官房長官は帰っていただいてけっこうです。  いま総理の代理としての官房長官、政府代表と私は認めているのですが、どなたも閣僚の方はそういう立場だと思いますけれども、特に官房長官に伺ったわけですが、農地解放の意義ですね。これは私どもも、官房長官のことばはちょっとあいまいでありますけれども、非常に重大な歴史的な意義を持っているというふうに考えているわけであります。つまり、日本の地主的土地所有制度、これに対して変革を加えたもの、地主的土地所有制度と申しますと、つまり社会の進歩に重大な障害の一つになっておった問題、地主が耕地の大部分を専有して小作人に耕作させて高い小作料を収奪する、このことが日本農業の進歩に大きな障害をなしておった。これを一掃するという、いわば半封建的な地主制度の一掃、これが農地解放の意義であった。したがって、日本の民主的な発展の上で重大な歴史的な事件であったと私どもは理解しておりまして、現行憲法の二十九条にいう一般的な財産権とかあるいは私権とかという範疇以上の社会の変革であった。私どもの立場をいいますと非常に不徹底でありまして、いろいろ批判すべきところはありますが、しかし、そういう意味を持っておったというように考えるのであります。この点は農林大臣お認めになりますか。
  156. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまおっしゃいました全部に私はにわかに賛意を表するかどうかむずかしい問題だと思いますが、農地制度の改革をいたしましたその趣旨、これはただいま官房長官が申し上げましたとおり、いろいろ社会政策的にもまた農業政策的にも非常な有意義なものであった、このように存じております。
  157. 谷口善太郎

    ○谷口委員 こういう歴史的意義を持っているといたしますと、あの改革で地主から買い上げました耕地というものは、さっき農林大臣がおっしゃったように、何か事情があって、小作人に渡すということになっておったけれども渡せずに残った農地がいまの国有地でありますから、したがって、こういう国有地を地主に返すということはあり得ない。これは事柄の本質からいってそういうことはあり得ないということが一番眼目にたければならない。だから今度農地を返すという、買い戻させるという問題で世間が大きな騒ぎをしておりますが、私は非常にいい問題を政府御自身提起されたと思うのです。農地解放の問題、これにさかのぼって日本の民主化の発展をさせる、その基礎を切り開いたという問題、この問題をもう一ぺん振り返ることを今度の事件国民にもたらしたと思うのです。そういう点で、その立場から問題にしなければならぬと思いますが、私どもは、あの趣旨からいって政府が買い上げた農地をもとの地主に返すことは農地解放の趣旨に反し、もとの半封建的な地主勢力を温存することになるあるいは復活させることになるというそういう意義を持っていると考えまして、返すべきでないというように考えておりますが、この点いかがでしょう。
  158. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 谷口さん、今度の最高裁の判決をお読みになっていらっしゃると思いますけれども、これはいまあなたが御説明になりましたような趣旨をもって判示いたしておるとは私どもは理解いたしておりません。つまりこの改正は、自作農創設特別措置法等によりまして国が買収した農地のうち、買収目的である自作農創設等の用に供しないことを相当とするもの、いわゆる不用地といっておりますが、この認定をすることができる土地の範囲を、従来は御承知のように法第八十条に基づく政令によりまして、公用、公共用または国民生活の安定上喫緊の必要がある農地等に限定したのに対して、これらの農地等のほか、市街化区域にある農地、災害を受けた農地で原状回復が困難なもの、その他自作農の創設または土地の農業上の利用の増進の目的に供しないことが相当である農地等については、これを不用地として認定することを定めた。つまり当初政府が法に基づいて買い上げましたものも、その農地制度の目的に沿わないということになりました土地はすみやかに旧所有者に返還すべきである。そこでこの最高裁の判決の中にも、いま申しました政令第十六条四号の場合に限ることとして、それ以外の前記のような場合につき法八十条の認定をすることができないとしたことは、法の委任の範囲を越えた無効のものというのほかはない。つまり憲法二十九条の所有権に対してこういう判断を下しておるわけでございまして、したがって、この法意に反すると断定されましたような政令を政府は持っておるわけにはいきませんので、したがって、この最高裁の判決の法の精神を尊重して政令を変えざるを得なかった。これは憲法を尊重するわれわれの立場としては当然なことではないか、このように理解をいたしまして、手続をいたしたわけであります。
  159. 谷口善太郎

    ○谷口委員 問題の所在が非常にはっきりいたしました。農林大臣からいろいろ御説明をいただきましたけれども、一口でいえば、農地法八十条にそういう条件の土地はちゃんと返すことになっているということで、最高裁がその条件を、八十条を条件づけておった政令は正しくないという御判決だと思うのです。私はこの限りにおいて最高裁の判決は正しいと思うのです。しかし同時に最高裁は——ここで最高裁の批判をするのはまずいけれども、根本的にやはり妥当でないあるいは本質をついてない、そういう判決だと思うのです。法によれば確かにそうです。八十条にはそう書いてある。農地として使うために地主から買い上げたものが農地として使わなくなったものはもとへ返す、そう書いてある。従来の政令ではそれを公共用に使えとかなんとかといういろいろ条件をつけておった、そういうのが正しくない、こういうのが判決だと思う。その限りにおいてそうだと思う。しかし、あの八十条それ自体にやはり根本問題があると私どもは思うのです。  あの八十条は、当時の農地法を審議しました国会におきまして、やはり倫理的な意味を持っているという点が一点ございます。何しろ二、三年の間に相当の反別、二百七十万町歩ですか、それくらいのものを解放したのでありますから、そこには新しい自作農創設という問題から開懇地なども加えておりますから、不当といわないにしても不適当であったものを買い上げるということもあり得た。これは早く返す必要があるだろうということで、農地法の改正の国会では当時の農林省平川農地局長はそう言っています。農地法は二十七年にできたのでありますが、そのときに、ことしと来年との間にそういう返さなければならないものを約五万町歩ぐらいは至急に返す予定だということを言っております。同時に、あの八十条は御案内のとおり雑則の中でありまして、附則のようなものなのです。そういう意味からいいまして私どもはそういう錯誤からきているもの、これを早く是正するためのものであっただろう、そういうふうに考えますから、二十年も三十年もあんなものが残るとはだれも思っていない、こういう意味があったと思うのです。  もう一つは、さっき農林大臣はおまえさんの言うことには、全部にわたって賛成できないとおっしゃったが、そこにあなたと私の意見の相違がある。ここは詳しくやっている時間がありませんから言いませんけれども、つまり農地解放というものの歴史的な意義に対して、これを阻止しようとする当時の日本の支配層があって、そして地主層と妥協している。つまり、農地解放を不徹底にしているというその法的根拠を残したのが八十条だということです。当時から私どもこれを指摘しました。これは地主層、旧地主と日本の支配層との妥協だ。あるいは民主化のために発展する日本の前途をこの条文によってはばむことになるだろうということを私どもは言ったのです。  そういう二つの意味が私はあの八十条にあると思うのです。最高裁が、いまの法からいえば、当然なことをなさったと私が言ったのは、この法律を、法律としてある以上はこれを守るのは当然でありますから、ああいう御判決は当然だと思う。しかし、農地解放という歴史的な問題ですね、これは農地法にも書いてございますとおり、不在地主は小作地を持っちゃならぬというのですね。在村地主でも一定限の面積以上は持つちゃならぬというのです。私権の制限なんです。こういう非常な歴史的な改革をやったのでありますから、この立場からいいますと、いわば半封建的な制度への挑戦でありますから、これを否定するのでありますから、だから一般的に憲法二十九条ですか、これの財産権とか私権とかという問題を越えているということを私が言ったのはそこにあるのです。このことを最高裁の先生方ちっとも考えないから、だからああいう判決をしたと思うのです。私が最高裁の裁判長ならあんな判決はしませんぜ。これは農地解放のたてまえからいって、農地法八十条は間違いだ、これをやめてしまえという判決をしただろうと思うのです。ここに私は問題があると思うのです。  そこで、残ったのは、問題は、この八十条を制定することによって農地解放を不徹底なものにしようという意図があった。また、この意図に基づいて、地主層も普通の財産権を主張して、その後に解放された自分の農地に対して、いろんなことで財産権を主張してきている。これは御案内のとおりです。特に自民党政府の、佐藤政府になりましたら、その地主層に応じて不当なことをやっている。この妥協の産物から生まれたこの条文に基づいて不当なことをやっている。いままでにも国有地を解放したでしょう、売ったでしょう、二円五十銭で。同時に、あれは四十二年から四年にかかっておりますが、例の報償金の問題あんなものを払う必要は少しもないのです。いまから見れば、当時坪二円五十銭といいますと、これはいまの金にすればたばこ一本ですよ。だけれども、当時の二円五十銭は反七百五十円です。これは当時の金にしましては正当な時価だった。これは地主の私権を制限するという点では革命的な——まあ革命的というか革新的なことをやったのだから、地主さんだいぶ痛い目にあったと思う。しかし、地主の勢力をなくすることが目的だったのです。しかし財産的な言い方をすれば、ちょうどその当時の時価に相当するものを払っているのですから、何もそういう意味では私権の制限でもあるいは不当な介入でもないと思うのです。ところが、この革命的なあるいは革新的な意義を前面に出しませんし、踏まえませんから、何か地主さんの財産権とか私権というものに制限を加えたように見て、それが強調されてきて、そしていろんな運動が起こってきている。政府はそれに応じて、国有地を払い下げてやったり、あるいはいま申しましたように報償金を出す。あれは千三百二十億ですか、ばく大な金ですね。それを出してやった。あれは出す必要がないものです。そういうことをやってこの地主勢力を温存してきている。だから私は比喩的に言ったのですが、私が最高裁の裁判長なら八十条を撤廃せよという判決をしただろうと言ったのは冗談ではないのでありまして、そこに私は問題があると思うのです。  だから政府としてとるべき態度は、いまのようなことをやらないで、この八十条を早い時期に、もはやそういう条件がなくなったという時期に、これを改正するという提起を国会にすべきであったというのが私どもの考え方です。そして、いま幸いこのことは問題になりましたから、この際に国が農地解放でやむを得ず保有することになっている現在の国有地は、これは当然地方自治体なら地方自治体に渡して、そうして公共用の、たとえば学校を建てるとか、保育所を建てるとか、緑地にするとかという、そういうものに使うというふうに八十条を改正すべきだと私どもは思っております。それでこそ初めてこの問題が解決する。そうでないと、おそらくこれからも旧地主さんたち、文句を言いますよ。小作人が使っている土地が農地として使うだろうと思って文句を言わぬでおったら、見てみると、これを高く売って、昔の小作人が成金になっているじゃないか、これはわれわれの権利に対して侵害であるから、これを取り返すというような運動が今後も起こってきますよ。これは農地解放のたてまえからいって、根本的な国を危うくする問題だと思うのです。そういう禍根を残さぬために、この際にこそ八十条を撤廃して、これに対するやはり適正な改正をやる、これが私どもは必要だと思うのでありますが、いかがですか。
  160. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのお話は、農政全体に対する基本的な大きな問題でありますので、いまにわかにそういうようなことを御返事申し上げることは不可能であります。
  161. 谷口善太郎

    ○谷口委員 まあそういうふうにおっしゃるだろうと思うのだ。世間の批評によりますと、こういうふうにして旧地主に二円六十銭で国有地を渡して、そうして選挙をやっているのだということを言っていますから、私どもはそうは思いませんけれどもな、しかし、そういうことでありますから、あなた方は法の八十条を改正して、これは国に持っておって公共的なことに使うのだということはようやらぬだろうと思う。  そこで、私はこれは特に委員諸君に提案したいと思いますが、国会は最高機関でありますから、これはどんな法律でもできます。日本の進歩のためにやりました農業改革でありますから、これを確保して民主主義を発展させるという意味で、この八十条を改廃することを今度の国会で議員立法でするという、そういうことを私は提起したいと思うのです。これを申しまして、私は次の問題に入ります。農林大臣、これでけっこうです。  私は、第二点として物価の問題を取り上げたいと思うのです。  佐藤内閣が成立した当初に、佐藤総理は、政府の物価対策としてこういう意味のことを言っていられます。農業、中小企業、サービス業などの生産性の低い部門の近代化、それから流通機構の合理化、それから公正な価格形成のための競争条件の整備、それから公共料金の値上げをなるべく抑制したい、こういうことを最初組閣されたときのあとの臨時国会で言っていられます。あれから六年たちます。国会があるごとに佐藤総理の物価対策といったら、こういうことの繰り返しだ。今度の国会でも同じ趣旨のことを申されました。つまり六年間一貫した佐藤内閣の物価対策であるということはいえると思いますが、ところが、物価は下がるどころじゃありません。毎年毎年上がってきている。上がる一方なんです。つまり、これは政府の物価対策が全く功を奏さなかったということの歴然たる事実だと思う。これについて政府はどうお考えになるか、これは企画庁長官、お答えいただきます。
  162. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いまいろいろと政府のいわゆる提唱しています物価対策お話でありますが、確かにこの物価問題につきましては、もちろん非常に困難な問題でございます。そういう意味におきまして、いま御指摘になりましたような競争案件の整備の問題にしましても、低い生産部門におけるところの生産性の上昇にしましても、いずれもこれには相当の時間を要することは確かであります。  それからまた、同時にそうした政府の努力を打ち消すところの新たな障害、こうしたものも起こってまいっております。そういうようなことで、特に最近では御存じのように生鮮食料品等を中心とするところの急激なる価格上昇、これがやはり何といいましても最近におけるところの物価上昇の大きな契機になった、こういうことが確かに言えると思うのであります。これにつきましては、御指摘のようにこのおくれた部門におけるところの未解決の問題が多々あるわけでございます。われわれはこれに対してやはり取り組んでいかなければならない。  それで、いま御指摘がありましたけれども、いまの六年の間にはそれぞれ波がございまして、四十年の直後あたりには一時相当鎮静化していた時期もあるわけでございます。でありますから、そういう意味において価格対策というものが全然効がなかったというのではなくして、やはり新たな困難が次から次に起こってきておる、われわれはそれと根強く取り組んでいかなければならない、そういうふうに考えておるわけであります。
  163. 谷口善太郎

    ○谷口委員 さっぱりわかりません。対策をしてきたから下がったという答えができるならわかりますよ。対策をしてきたけれども下がらなかったのでしょう。これからは物価対策は違うのですか、何をやるのですか。
  164. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 現在の物価問題は、御存じのように完全雇用下の物価高の問題であります。したがいまして、いわゆる引き下がるというよりも、いかにして上昇率を最小限度にとどめるかということに物価対策の中心が向けられております。そういう意味においては、たとえば四十年度の始まりの時期にはずいぶん上昇率の鎮静化が見られた時期もあるわけです。やはり全体としての景気の動向とも関連することでございますから、今日に至ってこの長い四年間にわたるところの超高度成長、超好景気ともいうべきこの超過需要の経済、こうしたことがやはり契機となり、それに国際的な影響等も加わって、そしてこの物価高というものは起こってきたわけでありますから、そういう意味においては四十四年以後の最近の物価問題というものはまた新しい角度でわれわれは取り組まなければならない、こういうふうに考えております。もちろん、その対策は基本的には変わるものではございませんが、さらに新しい決意を持ってその問題に取り組んでいこう、そういうことを申し上げておるわけであります。
  165. 谷口善太郎

    ○谷口委員 企画庁長官、決意だけでは何にもならぬのですよ。決意だけで物価が下がるのだったらこれは簡単ですけれども、しかし、政府の決意で下がらぬことでもないのです。決意のしかたが違うのです。われわれは今日の物価上昇の最大の原因はやはり大企業の高度成長をささえておる独占価格、つまり大企業製品の不当な価格のつり上げ、これが一つと、それから政府のインフレーション政策、それから政府による公共料金の意識的な引き上げですね。上げない上げないと言いながら上げてきているのです。この公共料金の引き続く値上げ、ここに具体的な問題があると思うのです。インフレの問題、公共料金の問題は別の機会でやります。きょうは私はだから独占物価の問題、独占価格の問題を中心にして政府の所見を聞こうと思うのであります。  政府はすでに知っておりますとおりに、昨年からカラーテレビ問題で住民闘争が発展しました。この住民闘争の中で結論的に国民が要求しておりますのは、大メーカーの製造原価を明らかにして、あるいは蔵出し価格を引き下げろ、これが必要だということを言っております。これはテレビ問題だけじゃありません。ビールの問題でも、あるいは薬や化粧品の再販価格制度の問題にしても同じ趣旨だと思うのであります。このことは、大企業製品の不当に高い価格の引き下げこそ物価問題解決の重要な一つの手段だということを国民全体が認めておる、要求しているということの証拠だと思うのであります。政府が真に物価問題の解決に熱意があるなら、まずこの大企業製品の独占価格の引き下げのために立ち向かうべきだと私どもは考えております。具体的に聞きますから、これはいかがでしょうか。
  166. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 現在の価格問題の中におきまして独占価格という問題が占める位置というものは、必ずしも今日まだ明白にされておらないと思います。最近における物価上昇というものは、むしろ農林水産物あるいは中小企業の製品あるいはサービスの分野、こういうような分野において非常な値上がりを示しております。そういうことでこの独占価格の問題がわれわれとしても今後十分に究明を要する点である、こういうことは確かでありますけれども、これが今日の価格の主たる原因であるというわけのものではございません。しかし私どもは、ある部面においてそういう事態が発生し得ることも十分考えられるわけでありますから、これについてはその価格のメカニズムも御存じのように相当複雑でございます。そういう点をよく究明いたしまして、それに応じて適切な対策を講じていかなければならない、こういうふうに考えています。
  167. 谷口善太郎

    ○谷口委員 いろいろ物価値上がりの原因がありますことは、いま私が申したとおりです。その中で独占物価についての政府の態度を伺ったのですが、究明を要することは認める。これは明らかにしていきたいということは認める、こういうことですか。
  168. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 御存じのように、現在もう公取委員会等でもってある程度調査を進めておりますが、はたしてどういう実態になっておるか、そういう点をまず究明しなければならない、こういうことを申し上げたわけです。
  169. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、私どもの言う大企業の独占価格というものの正体がわからぬというふうに聞こえます。それで、その点では若干の事実を私は聞いてみます。  まずカラーテレビを例にとります。これは、公正取引委員会の谷村さんおいでですか。——公取の四十一年の家電メーカー六社に対する審決案、これをここに持ってきておりますが、これで認めておりますとおり、この六社はいろいろなうまいやり方で協定して、そして松下など家電メーカー六社は現金正価なるものを設定して、たとえば十九インチ、コンソール型のカラーテレビは現金正価十九万円というように価格をつり上げる、そういうやり方でやってきた。最近消費者運動が大きな戦いになりまして、この半期になって、家電メーカーの彼らは新型から値下げするというふうに発表した。これは公取もしくは通産省あたりからの行政指導もあったようであります。そういうように発表しましたけれども、この間本院の物価特別委員会、私も委員の一人ですが、この委員会が秋葉原に調査に行きました。調査に行ってみますと、値下げどころじゃないですね。確かに新型、十七型十二万五千円というようにいわゆる現金正価なるもの、これは今度はそういうことばを使わないようです。標準価格とか希望価格というような正札がついておりましたが、そうなっておる。ところが同じ型、型は十七、そして中身は同じ、りっぱに映る。これが古いものは、実は安いのは七万円からあるのです。実勢価格、小売り価格です。高くても十万円前後なんです。そして単にかっこうだけ変えて、これが新型と称して十二万五千円で、これは一厘もまけてはならぬというメーカーの指導があって、小売り商は金縛りなんです。十九型十九万円あるいは十七型十六万円とか七万円といっておったのは、実際の小売り価格、ここではうんと安くなっておった。これをそういう状況のもとで、今度は新しい機種をつくったといって、実は現に売られているテレビよりもはるかに高い値段で、今度は一厘もまけぬというやり方を出してきておる。これは流通過程まで支配しております大家電メーカーの独占的な支配の中でこういうことをやってきておるので、事実上の値上げをやっておる。しかもこの旧価格の場合でも、つまり安く小売りで売られておった時代でも、新しい型で十二万五千円、一厘もまけぬという時期でも、メーカーが外へ持ち出しをする蔵出し価格、メーカーの価格には一厘も触れてないんだ。つまり大資本がふところへ入れる価格、これには一厘も触れてない。独占価格に一厘も触れてないのです。そういうやり方になっています。それならテレビは高いのかといいますと、私ども調査しましたが、十九型でカラーテレビの原価は大体四万以下ですな。こういう状態になっている。このことは世間周知であります。私たった一つのテレビの問題で言ったのですが、大企業の製造しております製品の独占価格によって、こういうふうに国民が苦しめられているということでありますが、政府はこれを認めませんか。これは企画庁長官に聞きます。
  170. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 御存じのように今日の価格形成、これはもちろん個々の原価を積み上げて、そうしてそれによって価格ができておるわけではありません。もちろん価格の重要な要素ではありましょう。しかし、それならばかかったものは全部積み上げて高く売れるかというと必ずしもそうでもない。これはやはり一方においてコストがありますけれども、一方において需要と供給がある。そういうようなことで、いわゆる自由主義経済体制のもとにおける価格形成というものが行なわれているわけでございます。そういう意味において、凡百の企業の原価というものにわれわれが一々直接介入するという手法は、今日の体制のもとでのみならずおそらく不可能でありましょう。そういう意味において、今日の経済体制のもとでは、一々原価を政府が調査しているわけではございません。何か特別他の目的でもあれば別でありますが、原則としてそういうことになっておる。でありますから、いろいろな原価と称する数字がいわれておるようであります。しかし、実際どこまでが真をうがったものであるかということは、これは保証ができないと私は思います。一応の目安というような議論ができるかもしれません。いずれにしましても、そういうたてまえの上に立ってできるだけ競争条件を整備し、そうして自由な価格形成が行なわれる環境をいかにしてつくっていくかということが、むしろわれわれの課題であるわけであります。そういう点からいいまして、いま御指摘の点については、最近の消費者運動の成果とかいろいろなこともあったと思います。そういうことで、一面それに基づいて政府機関の行政指導も行なわれて、そして一応の目安が立ったわけでございます。ですから、そうした指導の結果がどういうふうに出てくるか、なおこれはやはり十分にトレースをすべき問題であろう、こういうふうに考えます。
  171. 谷口善太郎

    ○谷口委員 行政指導で安くなったとおっしゃるが、安くなってないのですよ。実勢価格で高くなっているんです。これは事実なんです。小売り商がそう言っているんです。私どもは見てきたのです。安くなってない。行政指導で高くした。これは事実です。これははっきりしておく必要があります。特に自由なのは大企業の生産財の独占価格ですね。たとえば鉄です。この問題につきましては企画庁長官も何回かおっしゃっておられますが、卸売り物価指数は横ばいで、鉄などはむしろ最近は下がりぎみだということをいっておりますけれども、しかし生産性が急速に上昇しましてどえらい生産性を持つに至ったにもかかわらず、鉄はたとえばコークス比方式など非常に生産性が高まっているし、また生産が安くなっている、つまりコストが安くなっている。これは昭和三十五年から四十四年までに三・二五倍の生産性の上昇というように私どもの資料——これは主として政府の資料ですが、そういうように見られますから、コストダウンになっていることは明らかです。そういうふうになっているにもかかわらず、高い生産性を持ち、コストダウンになっておるにもかかわらず、高い値段で横ばいになっている。これはここに資料を持ってきておりますが、あなたは私の資料を信用できないなどと言いましたが、これはみんな政府が出しているのです。資料を持ってきていますから言ってもいいのですが、つまり高い値段で横ばいになっておる。高い生産性になっているのにつり上げた価格で横ばいになっている。それで下がらぬからだいじょうぶだというような言い方は——鉄大資本の大きな利潤、大きな蓄積、それによってばく大な生産施設を発展さしているという問題、その中で鉄は下がらないという状況であります。特に新日鉄ができましてから、不況になると生産調整を簡単にやるようになった。そして中には値下げした品目もある。特に中小企業向けの鉄は高くしている。これもちょっと引いてきたから言います。たとえば中小企業向けの冷延鋼板、これは昭和四十四年九月ごろには大企業向けには四万三千円、中小企業には五万円、零細企業には五万三千円、下へいくほど高くなっている。鉄は全産業の基礎なんで、原料の鉄が高くなれば、中小企業の製品が高くなるのはあたりまえですよ。だからこういう独占的な大企業に対し介入を加えなければだめだというのが私どもの主張であります。  また、昭和四十五年にあんパンあるいは干しうどんなどが値上げしましたが、これは大企業製品である小麦粉が五・二%この期間に値上がりしている。マグロかん詰めも、これも値上がりしましたけれども、これも大漁業会社がとってくるマグロがこの期間に一六・四%の値上げなんです。非常に明らかなんです。ほんの一、二の例を申しましても、中小企業製品の上昇は、その原料である大企業の商品の値上がりによるということは言えると思うのです。大企業製品に口ばしを入れなければ物価対策にならぬというんです。そればかりじゃございません。今日では一応生活の必需品ですね。子供の嗜好品、そういうものまで大企業が生産しているのが特徴なんですが、私はきょう持ってきませんでしたけれども、森永のミルクキャラメルなんか、これはえらいことをやっていますよ。同じ箱で中身を変えるんです。値段が同じ二十円で、前は大きな箱で十二入っておった。値段をつり上げることはできませんので、こいつを二十円のままであって小さくしているんです。あなたは小さいお子さんおりますか。一ぺん買うてきてごらんなさい。私は孫がおりましてな。ひどいんだ、グリコなんか中身が減るんですよ。広げてみると紙がどっさり入っているんですよ。そういう値上げをやっている。このような大企業製品の価格を、政府の強力な介入をやるべきだというのが物価対策のきめ手だと私どもは考えているんです。介入の問題につきましてはあとで論駁してもよろしい。介入してはならぬとか自由経済の基本だとかいっているのはおかしいと思うんです。これはどうですか。大企業製品に直接政府は介入して引き下げさせるという、そういう政策が物価対策の重要なきめ手の一つになるというのが私の主張ですが、政府のお考えを重ねて聞きます。
  172. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 御存じのようにいま卸売り物価が非常に落ちてまいっております。鉄鋼はその代表的なものでございます。昨年の二月ごろに六万円をこえておったものがいま三万円と、棒鋼の例をとるとそういうことになりますが、そういうように需要供給あるいは全体の景気に応じて非常に上がり下がりの激しい状態をあらわしております。いわば需要と供給に対して比較的敏感に反応をするという点を示したと私たちは見ております。大体卸売り物価がこういうふうに鎮静化しておりますが、卸売り物価を形成しておる品物の大部分が大企業の製品でございます。そういう意味におきまして、消費者物価が高騰を続けておる、これはどっちかというと大企業製品が少ないのでありますが、そうしたことも考えて合わせてみまして、確かに今後の問題として、いま御指摘のような問題が十分起こってくるかもしれない。それに対してわれわれとしてもその複雑なメカニズムをよく究明しておく必要を認めますけれども、物価対策の中心が、大企業の価格形成に一々直接介入をすることが物価対策の中心でなければならないという、そうしたいまの御主張に対しては、私は賛成するわけにはいかないわけであります。
  173. 谷口善太郎

    ○谷口委員 自由経済で政府の介入、特に価格の問題に介入するのはまずい、経済に介入するのはまずいということ、これはもう盛んに皆さん口をそろえておっしゃる。私はふしぎでかなわぬのですよ、皆さんがそういうことを言うのは。政府ほど日本経済に介入している組織はありません。国民が助かるような物価対策で介入せいというと、ああだこうだと言うのだ。だけど、大資本を助けるためには、国家予算を使って、いや租税特別措置法だとか、いや援助金だとか、いや何とかかんとかで、おそろしく大企業に対して政府は口ばしをいれている。自由競争もくそもないですよ。これほど大資本に対して政府の保護政策をとっているところがありますか。大企業の利益になるためには政府は大手を振って入っていくのだけれども——そのかわり見返りもあるようですわな、政治資金というやつがあるようですが——物価を引き下げるために、国民のために介入せいというと、あなた方はつべこべ言うのです。あなた、経済企画庁長官ですけれども、名前を変えたらいい、経済拡張長官。そういう立場はまずいですよ。政府は税金であるいは財政でどれくらい大企業を助けているか。つまり、私どもの言う、カッコをつけますが、介入ですよ、政府の。それを資料を持ってきましたが、時間がありませんから言いません。あなたが知っているとおり。だから、自由経済もくそもないですよ。それほど政府は大企業を助けている。物価を引き下げるとか国民生活のためになるようなやり方をやれというと、いや、自由経済だから介入してはいかぬ。そんなことを国民は承知しないですよ。  そこで、私は別な角度からもう一ぺん聞いてみます。独占価格の実態をかりに政府が明らかにする気があってやるとしますと、この場合、やはり原価を調査し、ここへ立ち入って、はっきりぼろもうけしているかどうかを明らかにすべきだと思うのです。現在の政府機関に、たとえば、通産大臣見えていますか——見えておりますね、通産省にその権限がありますか。原価を調査しにいくという権限がありますか。通産大臣は参議院の本会議答弁の中で、管理価格の監視体制をとると、こう言っておる。そういう御答弁をなさっております。そうすると、原価を調査するという意図を持っていらっしゃるように思うのですが、その意図はほんとうにあるのですか、それとも権限があるのですか、そこらどうでしょう。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ原価というお話が出ておりますけれども、まず、その原価云々というものの考え方の中には、そうすれば、価格というのは原価プラス適正利潤ならばいいのかという裏側の意味がありそうに思いますけれども、私どもは、自由経済とはそういうものだと思わないので、適正利潤なんというものは競争によってけし飛んでしまうかもしれないような、そういう自由な競争がある、そういう経済をやっていきたいわけでございます。  第二に、原価というものがほんとうに役人が調べてわかるということでございますけれども、私は、それはかくかくのものを原価というとかりにきめるのならともかく、ほんとうの原価なんというものはわかりっこない、わからないのが普通だと思います。一体どういうものをどれだけ価格に割り掛けるかなんということについてのはっきりした定義はないわけでございますから、これはわからないのが当然であって、現にわが国が終戦後に原価というものを一生懸命さがし出して、補助金で企業をやってまいりましたが、この補助金をなくせば企業はつぶれてしまうという話でありました。昭和二十四年に補助金をやめましたが、ちっともそういうことは起こらなかったので、私どもは、原価だといって聞かされているもの、これがほんとのいわゆる原価であるかどうかというようなことについては、非常に問題が多いだろうと思いますので、両様の意味から、その原価というお話に私はあまり信頼を置かない立場であります。  なお、通産省がこういうことをやっておるか云々というお話でございましたが、これは確かに長年見ておりまして、価格が、いわゆる下方硬直をしておる商品が三十やそこらございますので、それについて物資別の懇談会を設けまして、メーカーと消費者と流通機構にある者と私どもで、どうして価格が動かないのかということを常時監視をし、問題があればみんなで議論をしよう。これは、御指摘のように、ともすると、メーカーの数の少ないいわゆる寡占状態になりやすい商品について、もう少し下がるのがあたりまえではないかと思われるようなものが確かにございますから、そういうものについては常時、そういう体制をとっていくということを実は昨年からやっておるわけでございます。
  175. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大蔵大臣にお聞きしますが、大蔵省はお酒、ビールでございますね、これは、いわゆる酒団法ですか、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律ですか、これによって、ビールや酒などの価格に介入する、そういう権限を持っていられるようですな。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 酒、ビール、ウイスキーなどの価格は、昭和三十九年以来、完全な自由価格になりまして、介入権は持っておりませんです。
  177. 谷口善太郎

    ○谷口委員 おかしいですね、この法律によりますと、ちゃんと大蔵大臣は、お酒の原価、ビールなんかの原価及び適正な利潤を基礎にして、販売価格の基準額を定めることができると書いてあるのですな。これは違いますか。
  178. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 酒団法の規定におきましては、二つの価格が定めることができることにされております。一つは、基準価格でございまして、これはしかし、それによって価格を拘束するものではなく、酒類の適正な流通をはかるために標準となるべき価格を示すことができるという制度でございまして、拘束力はございません。それからもう一つは、制限販売価格というものでございまして、これは級別の定めのある酒につきまして、その級別維持の必要がある場合には、下位の級別の酒について最高価格を定めることができる。これは御承知のように、従量税の酒税を課しておりますので、価格をむやみに引き上げますと、非常に高い価格でありながら税率が低いという酒類が出現いたしますので、それを防ぐ意味で、制限販売価格というものを設けることができるということになっておりますが、この基準価格につきましては、ただいま大臣が申しましたように、昭和三十九年に廃止をいたしました。この基準価格というのは、本来、統制価格を廃止いたしました際に、酒類業界が、統制価格がなくなったために非常に混乱を来たすということで、暫定的な意味で、いわば標準を示し、酒類の統制価格になれた流通を自由化に持っていくための過渡的な手段として設けられたものでございますので、できるだけ早い機会にこれは制定をやめるということで進んでまいりました。昭和三十九年以後、基準価格というものは廃止をいたしました。また、たとえ基準価格をきめたといたしましても、この法的拘束力は全然ない、これがたてまえでございます。
  179. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大蔵大臣のところにもないということらしいです。  これは谷村さん、公取はどうでしょう。独禁法の番人ですから、大企業製品の原価には立ち入って調査する権限を持っておりますか。
  180. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私ども公正取引委員会が独占禁止法の執行に当たっております立場は、御承知のように、自由かつ公正な競争条件を維持するというたてまえでありまして、それが先ほど各大臣が申されましたように、価格メカニズムを通じて物価の問題にあらわれてくるということはございますが、私どもの立場から直接にある価格、いわば物価統制的な意味における、あるいは原価を査定したり、その価格引き下げについて介入するというような立場における権限は私どもは持っておりません。しかしながら独占禁止法の運営にあたって必要がある場合にはたとえば何らかの形でのカルテルといったような問題がありましたときには、事件として調査することは可能でございますし、またそこまで事件という形にならない場合でも、独占禁止政策の上から見て必要な場合にはある程度の調査権というもの、あるいは報告徴収権といったようなものは持っております。しかし、これは一般的に何でもやれる、そういう性質のものとして考えるわけにはいかないと思います。
  181. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この問題ではたびたび参議院でも衆議院でも、与野党の議員たちの間に御論議がございまして、谷村公取委員長のおっしゃることは私ども幾らか承知しておるつもりなのです。しかし私どもは、これはこの前企画庁長官ともちょっとやり合ったことがあるのですが、現在の独禁法で、公取がその気がありさえすれば、やる気があれば、独占価格を抑制するためにはきめ手になる原価等にまで踏み込んで調査する権限がある。またそういうことはできるふうに法を運用すべきだという意見を持っているのです。たとえば四十条あるいは四十六条、おっしゃるとおり事件——事件というのは四十六条ですか何かで国民のほうから提訴みたいなあれがあって問題が起こったので、どうもありそうだということの場合には事件としていろいろな機関か何かを置いてやられる。しかし、これはおっしゃった競争条件に対する不当な制限行為があるとか、あるいは不公正な取引をやっているとか、あるいはそういうトリックを用いているとかというようなことについて警告するとか、審決案を出して、それがもし決定すれば審決として出すということだと思うのです。だからいままでのあなたのお考えでは、価格にまで踏み込んで入るとなると──あなたのおことばでは、行為は規制するけれども、きまった価格にはどうもそこまでいかぬのだ、そういうようにあなたは説明されているようでありますが、そうでなくて実際は入っていける権限を持っていいし、また現在の法律をそこまで解釈して踏み込んでいいのだ、そういうのを持っていらっしゃると私どもは思うのですが、要するにさっきの話じゃないけれども、やるかやらぬかという決意の問題だと思うのですが、この点はちょっとあなたに御意見があるようですから聞かしていただきたい。
  182. 谷村裕

    ○谷村政府委員 ただいまの民主主義的な法治国家におきまして法律の執行をいたしますときには、その法律がその法益として、目的としているところに従って厳正にこれをを執行しなければならないと思います。御指摘のように、私どもも現在ある程度の調査権を持っております。報告徴収権も持っておりますけれども、その報告徴収権あるいは調査権を、しかも罰則によって担保しておるような、そういう規定の執行にあたりましては、他の法律にもやはりそういう規定がいろいろございますけれども、罰則によって担保されるような調査権限の行使というものについては相当に法目的から考えて慎重に執行しなければならないと思います。でありますから、谷口議員は、おまえその気になりさえすればやれるじゃないかとおっしゃいますが、私は独占禁止法の施行についての責任を持っておりますけれども、もちろん必要があれば、その気になるときがあればその気になっていたしますけれども、一般的にいままで伺っておりましたような意味における原価の調査とか、あるいはその価格について何かというふうな意味において、私はそういうことはできないであろう、かように思っております。
  183. 谷口善太郎

    ○谷口委員 要するにいろいろ聞いていますと、もっと詰めて聞いてもいいと思いますが、しかしこれでわかりました。いまの日本の政府のいろいろな関係省にも、現在の日本というような言い方でもいいと思いますが、現在の日本には、国民がこれほど物価の上昇に苦しんでおるにもかかわらず、その最大の元凶の一つである独占価格の原価、これについての調査や、それの引き下げを任務とする権威ある公的機関が実際上ないということ、事実上ないということが非常に明らかになりました。また、法の運営をやって、どうも介入したりなんかするのは法律の場合にはまずいというようなことで、政府にまたそういうことをやる気もないということも明らかになったと思います。  ところで、いま一問題があります。高い不当な独占価格を引き下げさせる措置の問題。高いぞ、下げろ、こういうことをする権限を持った機関が政府にあるかどうか、あるいは政府自身そういう権限を持ってておるかどうかということです。この点もひとつ現状をはっきりしておきたいと思います。  昨年ハム、ソーセージの価格引き上げ協定について、これは業者が協定をつくった。これは公取がちゃんとそういう不当な協定を取り消せという取り消しの勧告をされた。そういう不当な協定で価格を引き上げたということ、その不当な協定はまずいから取り消せという勧告をされたけれども、その結果あらわれた値上げの問題には、これはそのままほうっておいたという事実がありまして、本院でも問題になった。この独禁法では、その不当なやり方で価格を引き上げたそのこと自体、引き下げろという勧告権も何もないのですか、あるいは命令する権限はないのですか、いまの独禁法では。
  184. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どもの独占禁止の目的とするところは、自由かつ公正な競争条件の維持でありますので、そういう状態を阻害し、あるいは人為的につくり出すような悪い状態をつくり出すようなことを排除するというのが独占禁止法のたえまえでございます。したがって、直接にそういうたとえば価格引き上げのようなことを内容とした協定があれば、その協定を破棄させて再び自由な姿に戻して、そこで各企業がそれぞれの責任において処理するという問題として考えておりますので、具体的にある価格の問題についてそれを下げろというふうに、その価格そのものをつかまえて申し上げる権限というものは私どもにはいまはない、かように考えております。
  185. 谷口善太郎

    ○谷口委員 非常にはっきりしました。不当な協定をやって価格をつり上げた。そういう協定はまずいぞ、やめろ、こういって価格は野放し。価格は自由競争のたてまえで、自由に競争して適正に持っていけ。大メーカーが集まって、協定値段でそうして価格を引き上げた。協定したのは悪いといって、これは取り消させるけれども、きめた値段はそのまま出す。あとは自由にやれ、こういうわけです。これは、この点いつか私谷村さんに言ったことがあります。現在の独禁法の問題について重大な時代錯誤があるから、一ぺんその点お話合いしましょうということを言ったことがありますが、問題は企業の独占時代、独占集中時代に、もちろんこれを全体的にそうだと言いませんけれども、一部は違うという、そういう事情もあると思いますが、独占的な時代に大企業が競争するということはないのですよ。あったにしても、競争する側面よりも協定をして独占格をつり上げるというところにこの独占時代の本質がある。あなた方は競争競争といいますけれども、競争にほうり出されるのは、独占的な大メーカーが蔵出し価格で高いものを出した。しかも現金正価とか再販価格とかあるいは協定の値段だとかいうものを出しておいて、この間の小売り商の流通過程における競争を皆さんは望んでおる。大企業の独占的な価格に一指も解れないで、それを国民の中に持ってくる流通過程で働いていらっしゃる小さな小売り商たちの競争にまわしておく。だから犠牲を負うのは、これは国民と中小企業の一員である小売り商、こういうところなんです。大資本間に競争という側面は全くないと私も言いませんけれども、それよりも独占支配、その側面のほうが強いということ、そういう点からいまの独禁法は非常に不備だと私どもは思いますが、これもきょうはお預けにします。  つまり独占禁止法には限界があります。しかし、これは経企庁長官にお聞きしますが、さっき谷村さんは、現行法はそうだから、それはいかぬとおっしゃったけれども、昨年、経企庁の国民生活局長がこの問題に対しましてこういうふうに国会で答弁しています。独禁法の運用で、原価に立ち入るとか、独占価格に対して規制するとかということを考えたい、そういう趣旨の答弁をしております。これは長官もよく御承知だと思いますから、その後具体的にこの独禁法の運用で考えたいということについてどういうふうに検討されたか、どういう結論になったかをここで聞かしていただきたい。
  186. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 独禁法の運用によるという意味、どういうふうに解釈すべきか、ちょっと私もはっきりしない点もありますが、おそらく先ほどから申し上げておりますように、現在における自由主義の体制のもとで価格の形成自体は自由に形成される、しかし、その環境をやはり自由なものにできるだけつくらなければならぬ、そういう意味においてまた独禁法というものがあるわけでございます。そういうことで必然的にこの価格とおのずから関連するところがあることも当然であります。そういう意味において、独禁法をできるだけ活用する。これは独禁法自体の目的の限定はございますけれども、そこでもって調査をするとか、そういうようなことも十分できる、こういうような意味でもって言ったのであろう、答弁したのであろうと私は推測します。  そういう意味において、現在きわめて制約されたもとで不十分ながら価格との関連でもっておのずから関連のある問題について調査をしたり、運用を行っていく。これは結果的な話でありますが、そういうことができるであろう、こういうふうに解釈せざるを得ないと思います。
  187. 谷口善太郎

    ○谷口委員 具体的には何もないということですね。そういうふうになるであろう、そういうふうにしたいということでありまして、まだそういう独禁法の運用でそういうことはできるように考えたいということの考えがあるだけで、何もそれについてはやっておらぬ、こういうことですね。わかりました。  結局、いろいろ聞きましても、結論的に申しますと、こういうことだと思うのです。つまり物価を引き下げる上で最大のきめ手である独占価格の規制ですね、これに関してわが国には事実上原価を調査する権威ある公的機関もなければ、法律も不備だし、また政府もそれをやる気は全くないということがはっきりいたしました。だから、大企業のばく大な利潤が野放しになって、国民はそれが原因となる物価高の中で苦しんでいる。政府の言うのは何年も同じことを言って、そしてあれよあれよと物価を上げていっている、こういうことであります。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 これは実は考えてみますと、自民党政府が高度成長営済政策を取り始めました池田さんの時代からいまの佐藤さんの時代にかけて、ときどきによって名前を変えたりいろいろやっていますけれども、そういう基本的な経済財政政策が大資本奉仕の政策になっているということ、これは私どもは常に指摘している。そこにあることははっきりしました、その結果だと思います。したがって、政府にやってくれと言ってもなかなかやれそうにもないです。  そこで、わが党は、御承知のとおり、大企業の製造原価をはじめ、独占価格調査の権限を持った調査機関を、それも大企業の立場に立つ政府の部内でなくて、国会に設置してはどうかということを言っておるのであります。この問題につきましては、共産党もそういうふうに言っておりますし、実は社会党さんもそういうふうに言っているわけです。そうしてこの国会の調査機関の調査に基づいて政府が企業に、価格を引き下げなければならぬ事態があるなら価格を引き下げるという勧告を行なう。がえんじない企業に対しては、先ほど申しましたように、国はいろいろな助成措置をやっておる、そういう助成措置を停止するというような、そういうことなども含む効果的な行政指導を行なって、独占物価を引き下げることをやるべきだというのが私どもの考え方なのです。これは国民の声だと私ども思っております。  ところが、佐藤総理は、この案を提案しましたわが党の不破書記局長の質問に対して、こう答えています。自由経済のたてまえからいって、企業への介入は慎重を要する、これは先ほど企画庁長官もおっしゃったことであります。またこれは、たぶん社会党の委員長成田さんへの御答弁であったと思うけれども、わが国はたとえばアメリカと違って、独占的な段階、そういうところではないのだから、だからそういうものを置く気はないというようなお答えがあったように私は聞きました。しかし、こういう言い方、介入してはならぬという言い方は、先ほど私が論駁したとおり、政府は、カッコつきでありますが、大いに介入しておる、資本を助けるために。だから、介入するとか自由経済とかなんとかいうことは、ただ単に政府が言っているにすぎないので、やはりはっきりと介入することに立場をとるかとらぬかという問題だと思うのであります。だから、総理が、私どもが提案しました、国会に調査権を持ったそういう機関を置く、これに基づいて政府が権限を持って大企業に対して介入するということには反対だ、こうおっしゃったのでありますから、これほど露骨な、国民の苦しんでおりますこの事態において、国民の立場に立たない、大資本の立場に立つ立場はないと思うのです。  私どもはここに、新たに国会にこういう機関を置くことに政府が賛成するかどうかを、あらためて政府に再考を求めたいと思いますが、この点はどうでしょう。これは経企庁長官でけっこうです。
  188. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 最初にお答えしておきたいと思いますが、私は、何か谷口さんは非常な前提を持って議論されているような気がするのです。なるほど産業政策といたしまして、明治以来今日までいろいろな政府が企業に対する助成を行なうとか、そういうようなことはありましたし、また今日においても、必要に応じて産業政策的な見地からある種々の配慮がなされる、こういうことはあると思います。しかし、価格の形成という問題は、そうした助成の問題とは別であります。私たちはこの価格の形成について、何も大企業を擁護しようとか、そういうような角度でもってこれを扱っているのではないのです。それは性格がおのずから違うわけであります。  原価原価とおっしゃいますけれども、しからば原価を積み上げてどんなにかかったものでも、その高い価格の形成を認め、それを保障すべきかというと、そうはまいらないのであります。一方において原価が安くてそして利潤を生むことも当然ありますし、またコストが高いために企業として成立しなくなる、こういうこともあるわけであります。そうした自由主義的な手法によって価格の形成というものが行なわれておる。個々の企業に一人一人役人がついて、そうしてこれを調査しているということになれば、おそらくこれはたいへんな時代でしょう。人間が幾らあっても私は足らぬと思います。  先ほど原価の話がありましたけれども、実際は見方によっていろいろな見方が出る非常にむずかしい問題であろうと思うのであります。さればこそ、いわば最も経済的な手法というか、金のかからない手法というか、一種の自由なる価格形成、これを前提にして今日のものができておる。このもとにおいて初めて激しい競争なりあるいは技術革新、そうしたものが行なわれ、そうして全体としての価格形成がだんだんと、いわゆる技術革新に助けられてコストが下がっていく、こういうようなことで今日までやってきておるわけであります。  今日の物価上昇が非常に激しゅうございますけれども、それはあなたが御指摘になられましたように、いわゆる独占価格が支配的で、そのために小売り価格が上がるのだ、こういう御認識のようでありましたから、私どもは実はそうは考えておらない、まだまだ重要な原因がたくさんある。そういう意味において価格政策全般という立場から見ますると、いま御指摘のような点、それだけを中心で考えるということについて私は異論を持っておるわけであります。もちろん部門によりましてそうした弊害が出てくることも今後十分考えなければなりません。でございますから、そういう意味において、われわれとしても十分実態の究明を行ない、そうしてもし必要であるならば、それに対応するところの政策も今後考えていかなければならない、そういう点を検討する、こういうことになっておるわけであります。  われわれといたしましては、そういう見地から、できるだけいわゆるオーソドックスな価格対策というものを、なかなか時間もかかることでありますし、御指摘のように、なかなか効果についてもむずかしい問題でございます。しかし、たとえば輸入の自由化にいたしましても、あるいは競争条件の整備、環境の整備につきましても、あるいはまた何といっても基本的に高度成長、一〇%という成長経済においては、なかなか独占価格というような問題の比重というものは高くなりません。これだけの高い成長を実現していく過程においては、どうしても——そこが諸外国とずいぶん違うと私は思っておりますが、そういう点においていろいろと従来いわれてきましたいわゆる価格対策というものをできるだけ総合的にやってまいる。また、言われておりますけれども、やり残しておる問題もまだあります。そうしたことを逐次実現をしてまいるというふうに考えておるわけであります。
  189. 谷口善太郎

    ○谷口委員 長官私が伺ったのは、国会にそういう調査機関をつくることについて総理は反対だと言われたけれども、いま調べてみますと、いま土の政府の中にはそういう機能もなければ機関もなければ権限もなければ、法律も非常に不備だ。だから、国会につくるというわれわれの提案を政府は再考してみる気はないかどうかと聞いたのです。これはどうです。
  190. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま独占禁止懇談会その他で、また私のほうの物価安定政策会議におきましても、実はこのいわゆる管理価格と称せられる問題を検討してもらっております。そういう意味において、事態が非常に複雑であるだけに、われわれとしても十分これは検討しなければならぬとは思っております。しかし、いますぐしからば監視機関を設ける、ましてこれは国会にというお話でございますけれども、おそらくそうした行政機能を国会に置くということ自体の適否の問題もあろうと思いますが、いずれにしましても、そうした問題は、われわれとしても今後そういう事態が必要であるとするならばどうしたらいいのか、そうしたこともよくそういう事態に適応したものを考えなければならないわけでありまして、そういう点も含めて検討をしておる、こういうことであります。
  191. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、どうもあなたの御答弁はどこをつかんだらいいかわからぬが、そういうことも検討するということですか。そういうことも必要かもしれぬから、国会にそういう機関を置くということも必要かもしれぬから、事態をいろいろ検討していくということですか。
  192. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 国会に置くとかいう点になると、それは私は疑問を持っております。そういう具体的なものを国会に置くのがいいのかどうか、そういうごく具体的な行政機能というものを国会に持たせるのがいいのかどうか、これはほかにまた判断をする立場の方がおると思います。  しかし、いずれにしても、まず監視機能というか調査機能というか、とにかくそうしたものを調べる必要があるときに、調べなければならぬかどうか、そうしたことも含めて、とにかく何といっても一口に独占価格とか管理価格とか言っておりますけれども、非常に複雑なものであり、実際は水かけ論になっておるのがたとえばアメリカの例を見ても多いのであります。そういう意味において、私どもとしても、今日の日本経済において一体どの程度のウエートを占めるものか、どうした価格の形成が行なわれるか、そういうことも含めて十分究明をした上で、たとえば調査をする必要があるということであるならば、現在の、たとえば独占禁止法に規定しておりますけれども、そうしたもので不十分であるということになれば、またそれはそれで十分検討していい問題である、私はそう思っております。
  193. 谷口善太郎

    ○谷口委員 われわれの提案に対して非常にあいまいな御答弁しかなさいませんが、これはよその国ではもうやっているのですね。よその国の、たとえばアメリカの国会なんかやっている。大企業の非常に不当な経済支配でもって独占的な価格でばく大な利益を得ている、こういう調査をするということは国会がやっているのですね。だから、国会でやるのも、それは一口に管理価格とか独占価格とかいっても、なかなかいろいろ複雑でむずかしいとおっしゃる。それはそのとおりですよ。そう簡単なものじゃないと思う。それはそうだと思う。それはそうだと思うけれども、それに対してメスを入れるということが物価対策上公正な価格を設定していくという上での重要な一つの手段であって、政府にそういう機能もないしやる気もなければ、国会で持つということの積極的な意味を私どもは主張しているわけなのです。外国でやってないから、外国と事情が違うというようなことを総理はおっしゃたけれども、外国でもこれはやっている。これは御承知のとおりだし、社会党の委員長成田さんは、アメリカのこういう委員会の名前まであげておっしゃった。だから何も珍しいことじゃないのです。立法機関でやることはちっともふしぎじゃない。立法機関がこういうことをやって、そして行政機関にちゃんとやれという資料を与える、そういうことをやる必要があるのではないかということを私どもは言っている。あなたの話を聞いていると、そういうことが必要のように思っていられるようにも理解できるような答弁もあれば、そうでないというような、何かのらりくらりでわかりませんが、結局そういうことをやる気はない、大資本の独占的な製品の独占価格、これに踏み込んでいって調査して不当でないようにしていくというような、そういうことの仕事をやるという気がないというしかやっぱり理解のしょうがないような御答弁ですな。  それなら、私は最後にもう一つ提案をして政府のお考えをお尋ねしたいと思います。それは、去る一月二十六日のこれも本院本会議で公取委員会の機能の強化についてわが党の不破書記局長が提案いたしました。このことに一言したいと思うのです。と申しますのは、これに対して本会議場では総理は御答弁がなかった。どんなことを提案したかといいますと、結論的な言い方をしますが、公取に物価裁判所的な機能と権限を与えてはどうかということであります。  公取委員長は二月十日の記者会見で、物価問題は独占禁止政策と関係があるが、価格そのものは独禁法を越えた問題だと答えていられます。先ほど答弁いただきましたその御答弁もこういう趣旨だと私は理解している。ところが、この公取委員会に物価裁判所的な性格を与えるべきだ、あるいはそうすべきではないかというこの問題ですね、この問題について私どもはこのあなたの御答弁を非常に重視しているわけなのです。つまり、物価問題は独占禁止政策と関係があるけれども、価格そのものは現在の独禁法ではどうにもできないのだ。そんなら現在の独禁法で物価問題にまで、価格問題にまで入り込めるような権限を与えること、これが一つの重要な問題になっているというそういう御提言もこのことばの趣旨にはある、私どもはこう考えざるを得ないのです。ここで私どもは、先ほども結論的に申しましたとおりに、現在の悪どい独占価格に対して介入できるような物価裁判所的な機能と権限を公取委員会に持たしてみてはどうか、こういう提案なのであります。つまり、消費者が提訴する、あるいは公取独自で独占価格あるいは製品原価を調査するもっと積極的な権限、その他の立ち入り検査もやる。また審議会のようなものをつくってここではっきり審議して、そして不当につり上げた価格に対する引き下げ命令権も持つ、そういう意味の内容を持った独占価格引き下げに必要な権限を付与した、そういう独禁法の改正をする必要があるのではないかというように考えているわけであります。先ほど申しましたように、私どものこの提案に対する不破質問に対して総理のお答えがなかったので、これは企画庁長官でもどなたでもよろしいが、ひとつ政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  194. 谷村裕

    ○谷村政府委員 谷口議員がよくおわかりのようなことでございまして、ただいまの独占禁止法の考え方というものは、自由かつ公正な競争の条件を維持するというところにあるとおりでございます。そして、たとえば政府の一つの機構の中にそういったものを設けることがいいかどうかという問題は、これはまた別にそういう問題として、先ほど企画庁長官も御答弁になりましたように、いろいろな前提なりあるいはどういうやり方をするかというふうなことまで踏まえて、いろいろの立場からお考えになっていらっしゃることだと思いますので、私の立場からいまそういうことを申し上げることはないのでありますが、一つの例として申し上げますと、イギリスにおきましては独占委員会というのが商務省に付属する機関としてございました。それから同じように、やはり価格問題等に参画いたします物価・所得委員会というのが雇用生産省に付属する機関としてございました。この二つの機関が、それぞれの立場からある意味で、独占委員会のほうは独占禁止政策の立場から、それから物価委員会のほうはどちらかというと価格とかあるいは賃金とか利潤とか、そういう立場から、それぞれ企業の行動を見、必要に応じて勧告をしておったという例がイギリスでは、これももう御高承のことかと思いますがございます。そしてこれは、あるときに国会に提案されて、内閣交代のために廃案になり、現在はそういう考え方になっておりませんが、去年の何月ごろでありましたか、その独占委員会と物価・所得委員会とを一体にして運用しようかという考え方がイギリスで提案されたことがございました。物価の問題とかあるいは価格の問題とか、あるいは大企業と一口にいろいろおっしゃいますけれども、すべてそういった広い意味での分配政策とかあるいは賃金問題とか、そういうものまで含めて一体どうするかというふうな問題にまで展開いたしますので、先ほどから公正取引委員会というようにお名ざしでございますけれども、現在の私どもがしております公正取引委員会の仕事を越えた問題である、私はかように記者会見の際には申したような次第でございます。
  195. 谷口善太郎

    ○谷口委員 もう時間ですから結論に入りますが、公取委員長、現在の公取の法律できめられております機能、これはいろいろありますよ。それはおっしゃるとおりです。その中にいま申しましたように物価裁判所的な機能を持たして、物価問題に公取が政府機関として新たに物価問題に立ち向かうような、そういうものにしてはどうかということを私どもは言っているわけなんです。国会に独自の調査機関を置くということは私どもの基本的な要求でありますし、それはぜひひとつ各党とも賛成してもらいたいと思っておりますけれども、しかし同時に政府部内である、政府の一機関である公取にも、公正取引の権限としてそういうものを持たす、つまり公取の現在の権限を拡張して物価対策的なととができるような、物価裁判所的な性格を持たすべではないかということを提案しているわけなんです。もちろん複雑な問題でありますから、この問題だけを切り取って、そうしてこの問題だけで解決できると私どもは言っているのではないのでありまして、ただこういう場所ですから、これを中心に据えて話をしている。いろいろな諸関係の中でこれは解決をしなければならないことは、それは明らかです。しかし、そういう新たな機能を公取に持たしてみることも一つのあれではないかということを提案しているので、これは総理の答弁がなかったので、ひとつ政府のお考えを聞いたのです。あなたにいまお話を聞きますと、現在の法律はそれはないから、だからできないんだとか、やる気がないんだというふうに聞き取れるような御答弁でありますけれども、ないからやるべきではないか、こう言っているのであります。  以上をもちまして私の質問を終わります。
  196. 中野四郎

    中野委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、横路孝弘君。
  197. 横路孝弘

    横路委員 農林大臣が何か農林水産委員会のほうに出ているということでございますので、最初に運輸省のほうの関係でお聞きいたしたいと思いますけれども、最初に、成田の新東京国際空港建設予定地の強制収用の代執行についてお尋ねしたいと思います。  現地の状況というのは、新聞にも報道されておるように非常に緊迫をしておるわけでありまして、ざんごうを掘って農民のほうは抵抗する、こういう姿勢をくずしていないわけです。こういう非常に危険な状況の中で、なおかつ政府はこの二十二日からこの代執行を強行されるお考えを変えていないのかどうか、その点を最初に運輸大臣から御答弁を願います。
  198. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 お答え申し上げます。  お話しのように、現地におきましては緊張した空気が強いことはよく承知しております。その点につきましてはまことに残念ではありますけれども、実はこの問題、代執行に至るまでには、御承知のように、空港を決定して以来、関係方面に説得してまいったのは満六年に及んでおります。したがって、きのうきょうにおいて代執行ということを決定したのではありませんで、最善の努力を尽くしてまいりましたが、なかなかどうしてもこれの話し合いが最終的な決定に至らない。そこでいまお話がありましたように、代執行をすることは血を見ることが目的ではありませんので、いわゆる工事を進捗したいという一つの目的でありますから、したがって、実は成田空港は御承知のように国内空港が非常に窮屈な状態になっておりますので、四十六年度中には供用開始にもっていきたい、その点はこれは最後の一つの線でありますので、その間において友納知事にもお願いをしまして、現地の緊張した空気については、できるだけひとつ知嘉及び空港公団等の当局によってもほぐしてもらいたい。しかしながら代執行ということをどういうぐあいにやっていくかは、これは県知事におまかせいたしますが、もちろん短期間ではむずかしいと思いますので、できるだけの期間を置いて、その間においても説得を続けてもらいたい、理解を求めてもらいたい、かようにお願いをしておる次第であります。なかなか話し合いが十分に進んでおるようではありませんけれども、決して政府は血を見ることを目的としておらない、できるだけ話し合いを進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  199. 横路孝弘

    横路委員 四十六年度開港ということを前提にしてお考えになっているからいまのような状況になっているわけですね。いままでこの問題がこじれてきた経過には、最後には強制収用でできるのだ、代執行でもやれるのだという考え方が、やはり現在までこの問題がこじれてきた最大の原因になっていると思うのです。そこで、公安委員会のほうに現地の状況についてお尋ねをしたいと思うのですけれども、すでにこの問題については、警察のほうに県あるいは公団のほうから何か要請が来ているわけですか、いまの段階で。
  200. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  201. 山口廣司

    山口(廣)政府委員 お答え申し上げます。  格別公団から要請は来ておりませんが、私どもとしては今回の警備につきましては双方にけが人とか、万一死者でも出るということになればたいへんでございますので、十分慎重に、そして根気比べと申しますか、要するに慎重に、気長にひとつ警備をやってまいりたいという心組みでおります。
  202. 横路孝弘

    横路委員 御質問したのは、もう警察に対していろいろな要請が来ているのですかということなんです。来ているのですか。
  203. 山口廣司

    山口(廣)政府委員 まだ格別来ておりません。
  204. 横路孝弘

    横路委員 では現地の状況について、とりわけ農民側の状況について、警察のほうではいまの段階では状況をどういうぐあいに把握されているのか、いま何か慎重に、気長にやっていきたいというお話でしたけれども、現在の現地の状況がどういう段階に来ているのかということをお話しいただきたいと思います。
  205. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申します。  千葉県成田市の新東京国際空港建設用地に対する強制代執行は、来たる二月二十二日から三月十四日までの間に行なわれる予定でありますが、これに対してかねてから空港建設に反対してきた地元の反対同盟、三里塚・芝山連合空港反対同盟や、現地に常駐している極左暴力学生らは、代執行予定地に縦穴や横穴を掘ったり、見張り小屋四棟を建てたりして、代執行時にはこれらを拠点に抵抗するかまえを示しております。また当日は小中学生を同盟休校させ、家族ぐるみでからだを張っても抵抗すると主張しております。一方反対同盟を支援極左暴力集団も、代執行時をいわゆる三里塚決戦と見て、関東地方を中心に各地から学生や反戦労働者らを多数動員するようであります。反対派は縦穴や横穴に五百人は収容できると言っておりますが、比較的地盤の軟弱な土地に掘られているために、この中に反対派が立てこもって凶器等をもって抵抗した場合には相当の混乱が予想されます。以上のような情勢でありますが、警察としては、人命尊重の立場から、反対同盟や支援学生らの壕掘りは落盤の危険性もあり、いつ不測の人身事故が発生するやもはかりしれないことを憂慮して、壕内への立ち入りを中止するよう説得しております。代執行に際して、これを妨害する者があり、不法事案の発生が予想される場合は、警察は独自の判断に基づき、警察本来の責務を果たすために出動警戒に当たり、また妨害行為等によって状況険悪となれば、それぞれの事態に応じて適時適切な警告、避難、制止等、法に基づく所要の措置を講じることになりますが、このような場合においても、警察は彼我、双方及び第三者にけが人を出さないことを警備の基本方針として、慎重かつ適切な態度で対処してまいる所存であります。
  206. 横路孝弘

    横路委員 そこでちょっとお尋ねしておきたいのは、代執行なんですれども、一日からその所有権は一応公団側に移っている。この代執行の完成ということですね。つまりいま占有は妨害されているわけで、それを排除するので代執行だろうと思うわけですけれども、そうすると今回の代執行というのは、代執行が完成するというのはどういう事態をもって完成するというようにお考えになっておられるのか、このことはあとのいろいろな問題が、できるだけけが人が出たり、死者が出ないようにするために、どうしてもその辺のところをどういうぐあいにお考えになっているのかということを、この際明らかにしておいていただきたいと思う。いかがですか。
  207. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御質問の点は法律問題でもありますので、政府委員のほうから答弁させたいと思います。
  208. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 代執行でどういうふうな状態が成立することを期待するかということでございますけれども、先般の土地収用における裁決におきましては、明け渡しの期限までに起業者、つまり公団でございますが、起業者に土地を引き渡すということ、それから物権を移転する義務を負わせるということになるわけでございます。したがいまして、代執行の対象は、まず物権を移転するということがその対象だと思います。
  209. 横路孝弘

    横路委員 ですから、そういうことになると、結局ざんごうに入っている人たちも排除する、すべてを排除する、物権の移転も含めてやらなければならぬということになれば、いまの状態のままで強行することは、これは必ず血が流れる。まずくすると死者まで出るという事態になると思うのです。ですからここで最後にお尋ねをしたいわけでありますけれども、どうしても四十六年度開港という前提をお考えにならないで、いま厚木の飛行場も今度は使用できるようになるということになれば、ジェット機は別にしてプロペラは全部あそこから飛ばすようにすれば、いま何もこういう事態まであえて招きながらこの問題を強行する私は理由というのはないと思うのです。羽田が混雑していることは私も十分承知をしている。しかし厚木が返ってきてあそこの飛行場を使えるということになれば、YS11そのほかのプロペラ機は全部あそこを使えばいいのですよ。どうですか。
  210. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 厚木の飛行場もできるだけ民間空港として使いたいということで、外務省にも申し入れをいたしております。しかし国際空港ということの面におきましても、目下は非常に窮屈でありますことは御承知のとおりであります。過密ダイヤを組んでおる。こういう意味においてはぜひひとつ成田空港も完成をさせたい。これは御承知のように、実は最初は四十六年四月から供用開始の予定で進めてまいったわけであります。しかしただいまのような問題がありまして、約一年近くも延びることになっておった。ということは、その間においてできるだけ円満に解決をしたいというので、友納知事に対しましても、最善の努力をしてもらいたい。また政府としてやるべきことは、あるいは経済的な問題その他につきましては、できるだけの措置をいたします、こういうことで、その後数回にわたっての申し入れに対しましても、運輸省といたしましては、ほとんど全部を了承して、そうして話し合いを進めてまいりましたが、残念ながら解決に至らない。それは、御承知のとおり、なぜ解決に至らないかといえば、この土地を離れたくないのだ、祖先伝来の土地であるからして、これからどうしても離れることはいやなんだ、こういうことでありますから、かなり交渉の問題点が違うわけであります。しかしながら、いま御承知のように、国内の開発の状況から見ましても、もちろんこれは開発の上においてはプラスもあります。個人的に言うならば、またマイナスもある。しかしながら国の全体的な調和ある発展をするためには、やはりこれは個人もがまんをしてもらわなければならぬ。またもちろんその住民の各位の土地に対する愛着心がわからぬわけではありません。心からその点については、われわれは理解と同情は持っております。しかしながら、今日まで仕事を進めてまいり、六年間にわたって話し合いを続けてまいったのでありますけれども、どうしても最終的には解決がつきにくいということからして、そうして代執行に踏み切ったのでありますけれども、もちろんいま申しますように、軟弱地盤の中に住んで、立てこもるということは好ましくありません。これは工事をする、しない、代執行をする、しないばかりではなく、あるいは最近地震が多いですからして、あるいはまた雨がたくさん降って、あるいは穴がふさがるようなことがあれば、これもたいへんなことになるのでありまして、できれば皆さん方においても人命尊重の上から別な方法で抵抗する道もあるでありましょうかな、ぜひ私としてはそういう方面でもひとつ御理解を願いたい、かように考えております。
  211. 横路孝弘

    横路委員 いままでそういう姿勢で話し合いをなされてきたならば問題は解決しているのですよ。いつも強制収用だ、最後はこれがあるんだという姿勢で現地の農民側と交渉してきた、そういう行政がいまの混乱を招いていると私は思うのです。ともかく二十二日を前にしているわけですから、やはりできるだけそういう話し合いで解決をするように前提を立ててお考えになって——四十六年度開発港だ、そういう前提を立てて話し合いをしたって、それはなかなか農民のほうも理解はしないだろうと思うのです。そういうことで、これは警察のほうにもお願いがありますけれども、こういう最悪の事態を招かないようにぜひ配慮をしていただきたいということをお願いいたしまして、次の質問に移りたいと思います。  運輸大臣に、これから運輸行政のあり方について、少しお尋ねをしたいわけでありますけれども、この運輸行政の中でも、とりわけ陸運行政ですね、最近はタクシーの値上げの問題とか、あるいは個人タクシーの許認可がおくれているとか、あるいは過疎地帯における赤字路線の廃止の問題だとかいうようないろいろな問題で、多くの国民  の批判を招いているのが現状だろうと思うのです。この陸運行政というのは、とりわけ国民の生活の中でも国民の足と非常に密着をした問題だけに、行政需要が変化した、あるいは増大したという、そういう状況に応じた政策というものは、私  は必要だろうと思うのです。ところが、たとえば現在の行政機構であるところの陸運局とか陸運事務所の機能というのを見ますと、それが非常に脆弱なまま放置されている。たとえば定員の問題一つとっても、戦後十八年間——昭和二十五年からその後の十八年間に業務量が二十八倍にもなりながら、定員のほうはほとんど変わっていないというような、そういう現実に直面をしているわけです。そういうことから手抜き行政だとかあるいは場当り行政だという批判を、私は招いているだろうと思うのです。そこでこういう現在の陸運局なり陸運事務所の体制のあり方について、非常に抽象的ではありますけれども、基本的に大臣としてどのようにお考えになっているのかという点からお尋ねをしていきたいと思います。
  212. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 お話しのとおりに、陸運行政というものがいわゆる事務の増大に比例して、それに追いついてないということは、私も御指摘のとおりこれを認めるにやぶさかではありません。それほどにいわゆる自動車関係といいますか、交通、特に自動車関係の交通量は激増を重ねてまいったのでありまして、その意味において、行政が直ちに順応し得る体制がなかったということは、これはまことに運輸行政の責任者としては相済まないと思っております。ただ御承知のように、新しい行政——この自動車関係については新しい行政でありますので、それが行政化していく上においてのいろいろな問題が伴ってまいります。ことに最近においては、御承知のように、自動車の排気ガスを中心とするいわゆる規制の問題、あるいはまた型式認定に伴うところの自動車の安全の問題等、次々と新しい問題が出てまいりまするために、残念ながら官庁機構というものは、なかなか右から左というように命令が行き届かないといいますか、行政改善ができ得ない、こういう点については、おっしゃるような指摘される点が多々あります。これにつきましては、もちろん私といたしましては、何とか追いつく最善の道を講じたい、かように考えておりまするが、御指摘のとおり、今後この点については積極的に処置しなければならぬように考えております。
  213. 横路孝弘

    横路委員 本年の一月、行政管理庁のほうから「旅客自動車運送事案に関する行政監察結果に基づく勧告」というのがなされているわけであります。その中でタクシーについての許認可事務の状況についていろいろ指摘があるわけですね。特に東京特別区の場合の個人タクシーの場合の認可事務というものは非常におくれておるという具体的な指摘があるわけでありまして、昭和四十年度末に四千五百九件、昭和四十四年度末が五千三百十六件、四十五年度は六千四十一件も滞留をしていて、四十年度以降、そういう処分というものがなされていないような現状にある、こういう事態というのは、実はほかの陸運事務所においても同じ事態にいまあるわけですね。そこでこの原因というのはどこにあるというように大臣のほうでお考えになっていますか。
  214. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 お話しのように、タクシーの許可事項につきましては、三年も四年もかかっても、なおかついずれもきまらないという問題が残っておることは遺憾であります。実は、私、昨年の一月に運輸大臣に就任いたしまして、直後に御承知のようなタクシーの料金改定の問題がありました。それに関して許認可事項をタクシーの上からはずすことはできないだろうかということをまず考えたのであります。御承知のように、昔は全然許認可事項はなかった。ところが最近においてこの点がある程度やかましくなってまいりましたのは、一つは、いわゆる自賠法の関係があります。一つは、あまり過当競争になることによって、かえって交通上の危険が増すという問題もあります。こういうことから許認可がなかなかはずし得ないということでありましたので、そこで何とかしてあの書類をつくるためには、法人タクシーにしましても、個人タクシーにしましても、三万円とか五万円の金がかかるわけであります。こういうばかな、むだなことをしておってはいかぬ。できれば、一定の最も簡便な方式でこれを想定化して、そうしてその書類審査でまず原則が処理できるような方法を考えろこういうことで検討をさせまして、でき上がったのが昨年の十一月なんです。半年もかかる。まことに困ったものでありまするが、半年かかって、最終的に書式によって一応これを振り落とすという方針ができ上がりましたので、今後はこの問題についてはさような迷惑はかけないし、かつまた代書人を通じて申請書類をつくらなくても済むような簡便な道を開きましたのは一歩前進であると御理解を願いたいのであります。
  215. 横路孝弘

    横路委員 確かにその定員の問題が一つあるだろうと思うのですね。それと同時に、個人タクシーの免許がおくれていることについて世間ではいわゆるハイヤー業界からの圧力ということも云々されているわけです。陸運行政というものは、許認可という手段を通して運輸事業者というものを規制をしていくのだ。そういう、いわば規制手段を用いて監督していくということに本来のあり方というものがあるだろうと思うのです。そうすると、行政の基本として、監督する者と監督される者というものの関係は、やはり疑惑というものを招かない、きちんとした姿勢というものが必要だろうと思うのです、一般的に。これはどうですか。
  216. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 そのとおりであります。したがって、書式を改めて決定いたしまして、この書式によって申請をしてもらいたい。その書式によってまず第一次選定を行なって、あとは、個人的にも面接は必要であります。もし精神分裂症が運転手になったのじゃ困りますからして、その他のいろいろ関係もありますから、個人面接も必要でありまするが、できるだけこれは書類審査で済むように、しかも三カ月もしくは四カ月以内に可否を決定せよ、こういう指示をいたして、今後やってまいりますので、従来のような不手ぎわはだんだんとなくなる、かように考えておる次第であります。
  217. 横路孝弘

    横路委員 橋本運輸大臣は、二月の十六日の日の参議院の運輸委員会で、軽自動車の問題に触れて、軽自動車の車検を早めて四十七年度中にも実施をするという旨の御答弁をなさったわけですね。ではそれに対応するだけの、陸運行政の中で行政機構的にそういうものをいま現実にやれるだけの態勢にありますか。どうですか、その点は。
  218. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御承知のように、昨年の臨時国会においては、公害問題が非常にやかましくなってまいっております。もちろん軽自動車といえども排気ガスを出すのでありますからして、そこで実は審議会においては四十八年度から実施をしよう、こういう計画を立てております。しかし私はこういう世論から考えまして、そこで四十七年度に実施できるようなふうに、行政内容といいますか、検査官等の充実をはかっていきたい。ことに四十六年度から、御承知のように自動車トン税といいますか、新しい収入の道も開かれたのでありますからして、大蔵省もその面については少しは理解をしてくれるであろうと思いますから、そういう意味での定員増ということについても、十分に私たちはやっていけるのではないか、かように考えて、その意味からも一年ぐらい早めることは可能であろう、またそういうような組織を急いで立て直してまいる、かように考えておるわけであります。
  219. 横路孝弘

    横路委員 いま軽自動車というのは、自動車の半数、五百万台ぐらいあるだろうということがいわれているわけですね。現実に陸軍事務所の中で、軽自動車の関係の仕事、たとえば名義の変更にしても、これは届け出制度になっているわけでありますが、そういう仕事を陸運事務所の登録課がやっているわけですね。これは実際だれがやっていると思いますか、大臣。
  220. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 行政事務の上から言うなれば、やはり運輸省の職員がやらなければならいなし、またやっておることが原則であります。しかし私が最近聞きました点につきましては、横路さん等からも御指摘があったのでありましょうけれども、一部において、いわゆる業者が代行というわけではありませんが、一部の人がさようなことに携わっておる事実がないでもありませんので、その点に対しましては、行政上の姿勢の問題でありますから、これははっきりと具体的に措置してまいる、急速に改めるという方針をとりたいと考えております。
  221. 横路孝弘

    横路委員 一つずつその点はお伺いしていきたいと思うのですけれども、実際に軽自動車の関係で陸運事務所の中のいわゆる公務員、陸運事務所の職員がやっているところは、東京を除いて全国の陸運事務所にないわけですね。どういう人がやっているかというと、これは軽自動車協会から人を出して、そしてそういう本来陸運事務所の職員がやるべき仕事を全部一切やっているわけですよ、陸運事務所の中で。そういう人たちは全国に何名おりますか。
  222. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 現在の調査では大体二十五名ぐらいと承知いたしております。
  223. 横路孝弘

    横路委員 二十五名というのはそれは別なんですよ。運輸省の本省の中に、調査員と称して全日空とか日本航空から出向している社員が二十五名いるのです。これはこれでまた別の問題ですけれども、これは私のほうの調査によると、昭和四十四年度末で大体三百名、いま現在少し減ったとはいえ、やはり二百八十名以上の者が全国の陸運事務所にいる、そういう状況になっているのです。これは何も軽自動車の関係ばかりじゃないのです。たとえば具体的に、北海道で例をあげてみますと、北海道の室蘭の場合を考えてみますと、室蘭地区の自動車協会から一名、この人たちは登録にいて、中間登録の原簿の記入やなんかのいろいろな仕事をやっておる。さらに室蘭地方の自動車整備振興会、これもみんな、いわゆる陸運行政の中でいえば、監督する者と監督される者の立場にあるそういう業界の集まりです。ここから二名来ているわけですね。これは空蘭です。さらに釧路を調べてみますと、自動車整備振興会からやはり一名、それから自動車協会から一名、軽自動車販売店協会から一名、これは大臣、ちょっと写真があるわけですけれども、この職員といったって、ほんとうに国から給料を払っている職員というのはいないのです。写っているのは六名写っていますけれども、そのうちの三名まではみなよそから来た人によって、いまの陸運行政というのはまかなわれているのです。そういう団体がどれだけあるかということを調べてみると、たとえば自動車販売店協会、これはディーラーの団体ですね。自動車会議所、この会議所の中にはトラック協会からバス協会、乗用車協会、こういったいろいろな業界の集まり、これが加入している。さらに軽自動車協会あるいは自動車整備振興会あるいは自家用自動車協会あるいは陸運協会、つまり、本来あなた方が許認可事務を通して、許認可という一つの方法を通して監督をすべき、そういう監督する者とされる者という関係にある業界から人を出してもらう。三百名で年間たとえば人件費が五十万とすると、これは年間一億五千万、要するに国がもうけていることになる。業界からそれだけのお金を出してもらっていることと同じです。しかもこれが戦後ずっと行なわれているのです。行政制度なり行政機構なりあるいは公務員制度から見ても、やはり非常に大きな問題だと私は思うのです。こんなことがあるからタクシー値上げの問題をめぐっていろいろ言われたり、個人タクの申請があったって、どうせそんなことを運輸省がやるはずがない。ハイヤー業界の圧力に屈するのだ。ギブ・アンド・テークです。そういうことになりませんか。
  224. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 お話のような数字は、運輸省自動車局でもって調べたのとは数字が違うようでありますが、それは数字が多い少ないの問題ではありません。おそらく横路さんのおっしゃるのは、大ぜいだからいかぬ、少ないからいいということじゃなくて、少なくともたとえ少人数であっても国家公務員がやるべきものをいわゆるディーラー側といいますか、民間がやるべきではないじゃないか。もし万が一公文書等の紛失その他のことがありますればだれが責任を負うのだという、重要な問題であります。私はその点を、最近において事実が明らかになりましたので、当然国家事務としてやるべきものは一切、陸運局もしくは陸運事務所からそれらの人に退去してもらって、そして当然人の問題が起きましょうが、これはいきなり四十六年度からは十分に補充はできないとは思いますけれども、御承知のように自動車トン税等によっての配置もありますからして、全体的な人の緩和をいたしますれば、もちろん労働過重にはならぬようにいたしますが、なお必要であれば四十七年度においては、これは大蔵大臣に了承してもらわなければならぬ。少なくとも国家公務員がやるべきものをいわゆる民間によって行なうということは、性質上これは好ましくない。たとえ五人、十人であっても好ましくない。すなわち国家公務員の服務規定に反することがあった場合、責任の所在が明らかになりません。そういう意味において、私は陸運局内もしくは陸運事務所内でかような仕事に従事している者はできるだけ早く、あしたにも処理せよ、かような厳命を下しているわけであります。
  225. 横路孝弘

    横路委員 これが二十年間続いてきた。二十年間そういう形でもって陸運行政がやられてきた。その中で私、一つ運輸省に同情しておるのは、定員削減だ、定員削減だといって、何でもかんでも、ともかく現場の人たちのところに労働条件なり労働密度を濃くし、首切りをやって人をふやさない、仕事の量に見合って人をふやさない、そういう政策がこういうことになってあらわれてきているのです。これは全国で三百名いるのです。これは大蔵大臣もおられますから、大蔵大臣と行政管理庁長官にぜひお尋ねしたいと思うのですけれども、この分は抜けたら現場の人たちは困るのです。政府のいままでの姿勢の中でこういうような形になってきているわけであります。このこと自体は業界との癒着そのものだと思う。しかもその抜けた分を一いま運輸大臣の答弁だと、あすにでも出てもらう。それで問題は解決しないのですよ。これはやはり大蔵大臣にきちんとここでその分の定員化というものを約束してもらわなければ困ると思う。
  226. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題の処理には許認可の整理、そういう問題がつきまとうのではないかと思うのです。私どもは少数精鋭主義ということ、こういうことで官庁事務をやっていきたい、こういうふうに思うのですがやはり許認可事務の整理、これにずいぶん問題があるわけでありまして、そういう方面も手がけなければなりませんから、ここでお尋ねがありましたから定員をふやしますという言質は与えかねますが、しかし運輸大臣が申し上げておるこの考え方、これは私は妥当な考え方だと思います。そういうやみといったらどうも言い過ぎかもしれませんけれども、業界の人が直接公務員が行なわなければならぬような仕事を執行する状態、これは是正しなければならぬ、かように考えます。
  227. 横路孝弘

    横路委員 確かにそれは許認可の整理というのも、行政需要が変わっている分野があるのですから、それに応じては必要でしょう。しかしいまのこの公務員の定員削減ということでもって行なっていることは、たとえば車検の問題でも民間に移譲する。しかしこれは行政として、それをやはり監督しなければならぬわけですね、民間に移譲した以上それが実際にほんとうに行なわれているかどうかということは。ところがその分野も十分に行なわれないほど、陸運の関係では定員というものはふえていないのですよ。業務量は十八年間にこれは二十八倍ですよ。これは運輸省のほうからも大蔵なり行管のほうに言っていると思うのです。だから一方では、それは確かに許認可を整理しなければならぬでしょう。ならぬけれども、しかし陸運事務所全体で二千二百名の定員ですよ。これに三百名が上積みされて、そして仕事をやっているのです。そこからいま一ぺんに三百名すっと抜けてしまったら、あと残された働く人たち、これは一体どうなりますか。だからそのことも私は、やはり大蔵大臣にこれは十分お考えをいただかなければ困る。だから私は何も別にここで全部定員化するということを言えと言っているのじゃ一李のです。それは許認事務は整理しなければならぬという問題ももちろんあるけれども、そこのところも十分考慮をして、ひとつやはり定員も、必要なところ、とりわけ国民の生命、安全ということを担当をしている運輸省行政、そこの分野の行政がきちんと行なわれるために必要な人はやはりつけるという、そういう姿勢というものは、私は行政全体の中になければいかぬと思うのです。その辺のところをもう一度お答えいただきたい。
  228. 福田赳夫

    福田国務大臣 姿勢論といたしますと、まさにお話しのとおりかと思います。つまり国家公務員にあらざる者が官庁へやってきて、国家公務員のなすべき仕事をやっておる、これは妥当な行き方ではない。これが是正について私どもは真剣に考えたいと存じます。
  229. 横路孝弘

    横路委員 これは大蔵省だって、銀行から出向してきているのがたくさんいるでしょう。同じですよ、それは。通産省の中にもいるのです。通産省の中にもこれは銀行からどんどん来ている。運輸省の中には日本通運とか日本航空とか全日空ですね。来て何をやっているかというと、航空行政の今後の方針についてなんということを、公務員の人たちと一緒になってやっているじゃないですか。この問題もやはり、むしろこの問題のほうが、ほんとうは企業との癒着という面からいうと、それは非常に大きな問題だろうと思うのです。いま私が御質問したのは、そちらのほうの問題はもうちょっとあとにこれから御質問しますから、いまの陸運事務所のこの三百名、確かにこれは行政の姿勢として、あるいは行政機構全体として考えてもおかしなこと。だからそれはまあ減らすなら減らすでけっこう。そうしてもらわなければ困る。しかし、それをいまやるといっても、やったあと知らぬよということでは現場の人たちは困るから、その人に対する対策というのも、これはお考えいただきたい、ということを私は御質問しているのです。
  230. 福田赳夫

    福田国務大臣 姿勢を直すという点につきましては全く同感ですから、その是正には努力いたしたいと存じます。
  231. 横路孝弘

    横路委員 ですから、その姿勢のほうはもう運輸大臣の答弁でわかったわけですよ。そうではなくて、その定員のほう、人間のほうをどうするかという問題を私は聞いている。
  232. 福田赳夫

    福田国務大臣 定員につきましては、行政事務の簡素化とか、あるいは権限の委譲でありますとか、そういう事務の整理の問題と関連いたしますので、そういうものと間連をとりながら姿勢を正したい、かように申し上げておるわけです。
  233. 横路孝弘

    横路委員 ぜひ陸運事務所のこの問題については、やはり人もふやすという方向で——それだけじゃなくて、もちろんそれは許認可の、あるいは行政事務の繁雑なものを簡素化するとか、あるいは民間に委託すべきものはするということも、これは一つの方法でしょう。しかしそれだけでもって全部やれるということではないわけだから、そのところは大蔵大臣もおわかりでしょうから、ひとつ十分検討を加えてほしいと思うのです。  行管のほうも、この問題についての見解をひとつ。こういう事情になっておることはおたくのほうもおわかりだったと思うのですね。ただなかなかそれが定員化されないということで、行管のほうも苦労されていたのではないかと私は推察をするわけでありまして、ぜひその点も——行管としても、これは単に首切りをすることが行政管理庁の仕事ではないわけですから、やはりそういう必要なところにはきちんと人を配置をする。これは佐藤総理大臣も、おととしですか、定員法の審議の中で、五%削減といっても国民の生命、安全に関係のある行政分野については、やはりこれは必要なものは人を配置をしていくのだということは、国会でも答弁されているわけですから、そういう方向でひとつ検討を願いたいと思うのですけれども、いかがですか。
  234. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  およそ基本的には総定員法の運営の問題に関連するかと思いますが、運用上は少数精鋭主義でやる。行政需要の消長に応じて、適時、緩慢なところを減らして緊急なところに配置する、配置転換を活用るすという趣旨で運営をいたしております。その中でも現業または現業的な事務については、定員削減等も削減率をうんと減らしまして対処いたしております。その辺は十分考慮して、運輸大臣とも相談しながら運営をいたしております。
  235. 横路孝弘

    横路委員 そこで橋本運輸大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、その三百名、すぐに追い出すのだ、これはそういう行政をきちんと姿勢を正すという意味では必要なことだろうと思うのです。しかしまたそれに対する対応策をとらなければ、それで行政事務がますます混乱するということは、先ほど行管から指摘があったように、いまでさえ個人タクシーの免許の問題をとってみても、あれだけ滞留している現実にあるわけですから、やはりその辺のところも考えて、ものを言ってもらわぬと困ると思うのです。どうですか、その点を最後に。
  236. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 これは必要なる行政は、国家行政でやるべきものはこれは当然やらなければなりませんので、この点は行管及び大蔵省に対しても、毎年の予算要求の場合におきましても、人員についても相談をいたしてまいっております。しかし御承知のように運輸行政は近代的な行政でありますので、非常に仕事量がふえてまいっておることも事実でありますから、これに伴っておらない点もややあるとは考えます。しかし、これは私の個人的な意見ではありますが、その中でも将来車検は七〇%ほど民間車検にしてまいりたい。同様に登録専務のごときいわゆる国家事務ではありますけれども、これなどは考えようにによっては他の方法も考える余地があるのではなかろうか。この点も検討を進めてまいっておるわけでありまして、できるだけ行政の簡素化、そうして許認可事項の整理、こういう面からもあわせて考えてまいりたい、かように考えております。
  237. 横路孝弘

    横路委員 そのほか先ほどちょっと発言しました公務員の中におる調査査員というものですね。運輸省の場合は全部で二十五名ですね。国鉄、日本航空、全日空、日本通運。そして一般公務員と同じ行政事務に携わって、政策の立案、分析に参加をしている。これは本省の中のそういういわゆる企画立案部門に参加しているだけに、これはやはり企業との癒着という問題が出てくると私は思うのです。通産省の場合も全体で二十一名ですね。民間企業からの調査員という形でもって出てきている。これは全部金融機関です。大蔵省は私、調べていないけれども、大蔵省もこれは銀行から相当たくさん来ているというふうに私は聞いている。この問題については、実は昨年も議論をしたところでありますけれども、運輸大臣、これはどのようにお考えになっているわけですか。検討されるということだったはずです。
  238. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 前回もお話がありまして、検討を続けてまいっておるのでありまするが、ただ運輸省の場合は一般行政事務に関係しておるのとは多少事情が違います。御承知のように一般の運輸行政といたしましては、かなり長期計画を立てていかなければならぬと同様に、外部の知識をかりる必要がある、そういう意味におきまして、特に関係のあるたとえば国鉄とか、いま申したように日本航空とかいうようなところから最小限度の人に出向してもらっておりまするが、これはいわゆる一般行政事務とは関係が違うのでありますから、その仕事自体はこれは性質が違っておりますけれども、それにいたしましても国家行政事務であることには間違いはない。したがって、この問題の上から言うなれば、いわゆる公務員の服務規定というものが適用されないという面においては問題点はあります。そういうことからして、どういう形で——必要な知識はこれは借りなくちゃならぬ、単なる委員会だけでは間に合わないということから、どうしても活用していきたいのであります。ただ、これを公務員の服務規定という点でどうかみ合わせるかということを検討を続けてまいっておりまするが、あるいは必要があるなれば法改正まで行かなければならぬ点があるのではなかろうか、かように考えておるわけでありまするが、残念ながらまだ最終的決定に至っておりませんことは申しわけないと思っております。
  239. 横路孝弘

    横路委員 これは荒木行管長官も、たしかあのときの議論に参加をされておって、検討されるということだったわけですけれども、しかしこの問題でいろいろ調べてみたら、各省のほうからそういう調査員なんというのはおりませんとか、隠して外に出さぬわけですね。これは確かに公務員法上非常に問題があるわけですね。それぞれの企業の就業規則に従っている人間が、給料もそこからもらっている人間が、ともかく官庁の中で、たとえば運輸行政の中の航空行政をとってみても、いま航空運賃値上げをする、いろいろなことをいわれている、航空再編成だ何だ……、そういう基本的な航空行政の今後の五年、十年という方向を検討しているスタッフの中に日本航空や全日空の社員がいてそれに参加するということになれば、やはりこれは、航空行政といっても安全ということもあるわけですね、経済だけじゃなくて安全という問題もある。それをほんとうにそういう将来的な政策立案の中で、そういう安全の観点からものを言えるか。これはこの間も通産省の例の石原産業事件なんかからでも出てきたように、明らかになっているわけです。だからそんな点で私はやはり姿勢として、あれはたしか去年の四月の二日に議論をした。いままでほぼ一年くらいになっているわけです。検討しても結局何もやっておられなかった。この間から行管のほうに聞いても総理府の人事局のほうに聞いても、要するに一年間何にもやってなかったわけです。国会で約束したことを一年間もほうっておくなんということ自身が私はけしからぬ話だと思いますけれども、ともかく各省の中に全部そういう形でもって、そういう調査員という人たちが存在をしている。これはいま国家行政組織法の改正だなんだといって、皆さん方法案を提出されるようでありますけれども、そういう中でこういう大事な問題というのはきちんとまず正してもらわなければならないと私は思う。これは行管長官、いかがですか。
  240. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答えいたします。  理論的にはまさしく御指摘のとおりだと思います。ただ、この問題は私の所管外の問題でございますので、かれこれ申し上げにくいのですが、昨年の内閣委員会でも一部の委員から御指摘がありました関係上、とりあえずその際各省庁に問い合わせた結果によりますと、若干の省庁においては、主として研修等の目的のために、地方公共団体その他から職員を受け入れている事例がありますが、いずれも機密の保持等の面では問題が生じている事例はなかったと承知しております。いずれにしても職権をもっての調査機能が及ばないわけですから、以上のお答えをもってごかんべん願いたいと思います。
  241. 横路孝弘

    横路委員 そういうことを言って、どこも私のところは知らないと言って逃げておるのですよ。これはいずれ人事院を呼んで話をしなければならぬと思うのですが、あのときは、おたくのほうが担当ですということで、荒木さんがお答えになった。総理府の人事局とも相談をしてやりますとお答えになっておりながら、いまになって権限外でありますということは、非常に心外な話でありますけれども、そういう問題の事例は起きていないというようにおっしゃったわけですけれども、起きてからではこれは困るのです。そういうことが明るみに出てからでは困るのです。そういう体制の中にそういう危険性があるということを私は指摘をしたいわけでありまして、いずれこれは人事院のほうにお話を申し上げようと思っておりますけれども、検討もまたしていただきたい。各省の中でこれはそれぞれ検討していただきたい。これは大蔵省にだってそういう人がおるでしょう。調査員という資格で銀行あたりから来ておられる方がたくさんおるはずです。ですから、その辺のところをぜひ御検討いただきたいと思います。  時間もありませんので、次に農林行政のほうに移りますから、運輸大臣、荒木さん、その他よろしいですから……。  いま運輸行政の中で行政機構、つまり制度の問題として、企業なり業界との癒着があるという問題を御質問していたわけでありますけれども、これから過剰米の処理についてお尋ねをしたいと思うのです。  この問題は国民がひとしく大きく関心を持っている問題でありまして、御承知のように汗水流して働いて米をつくってきた農村の人にとっても、それからまた都会の消費者の人にとっても、一体この米がどこへ行くのかという、その行くえに非常に重大な関心を持っておるのです。この過剰米の問題について処理をするという必要性については、これはだれもが認めるところです。しかし、その方法についてはやはり全部の国民が納得されるような形で、しかも合理的にそしてなおかつ国の財政負担が少なくなるような、そうした方向でこれは検討されなければならない問題だと思う。昨年来のこの過剰米の処理の問題をめぐって、食糧庁の役人による横流しの問題、こうした汚職事件発生しているわけでありますけれども、これから相当大量な古米、古古米を処理するにあたっての政府としての基本的な姿勢をまずお伺いしたいと思います。
  242. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 現時点で、四十六年三月末現在の過剰米の数量は約七百万トンに近いものと想定されますが、ただいまの計画では、これを年間約二百万トンずつ昭和四十六年度以降おおむね四年間で計画的に処理することを予定いたしておるわけでありますが、四十六年度におきましては飼料用百四十万トン、一般原材料用二十万トン、輸出用四十万トン、計二百万トンの処理を予定いたしておるわけであります。
  243. 横路孝弘

    横路委員 私がお尋ねをしたのは、そういう処理にあたっての基本的な姿勢はどうですかということをお伺いしたわけです。つまり一つには、これはともかく国の財政負担というものは少なくなるようにやはりしていかなければならない、これが一つの大きな原則だろう。それからもう一つは、つくった農村の人、農民にとってみても、あるいは都会の消費者にとってみても、やはり納得されるような方法でなければならぬ。そういう処理するにあたっての基本的な方針というものは政府として何ですか、これを聞いておるわけです。
  244. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 まず第一に、私どもはできるだけ国損を少なくするように努力いたさなければなりません。これがたてまえであります。しかしながら、いま申しましたように輸出をするにいたしましても、これもやはり買い入れ価格から見れば半額以下のいままでの輸出の実績であります。そこでいま申し上げましたように、一番大きな相手として考えられております飼料等があります。こういうものはやはり輸入品に対抗することになるのでありますから、まずもってこういうことには努力すべきでありますが、ただ、私どもとして一番心痛いたしておりますのは、とにかく飼料として売ります場合には、まあ外国から輸入いたしておるものに匹敵するような価格であるトン当たり二万五千ないし二万四千円、そういうことになります。そういたしますと、一トン扱えば十数万円の国損が生ずるわけでありますけれども、これも一番大きな相手である。ところが間違ってこれが横流しでも行なわれるというふうなことになりますと、違う意味でこれはたいへんな問題でございますので、どのようにして飼料用に回すかというふうなことについて、当初六万トンについて研究的にやってみました。たとえば現物のままでなくて、これを砕き米にいたしまして普通の食糧用には供されないように、これは普通からいえば、経済的に考えれば非常にむだなようでありますけれども、やはりそういう手を加えませんと、間違いが生じてはならないというようなことで、そういうようなことをしながら、目的の払い下げができますように心を砕いてやらしておる、こういうことであります。
  245. 横路孝弘

    横路委員 そこでちょっとこまかいことをお尋ねしますので、これは事務当局の方でけっこうでございます。  四十五米穀年度の原材料用の米穀の売却実績についてお尋ねするわけでありますけれども、この四十五米穀年度において国内産の水稲のウルチ、これは清酒について二万五千六百トン、菓子について六百トン売却されているわけですけれども、その価格がトン当たり幾らかということが第一点。それからもう一つは、陸稲のウルチについて菓子の関係で一万四千二百トン売却されていますけれども、これはトン当たり幾らで売却したのか、この二つをお答え願いたいと思います。
  246. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  247. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  水稲ウルチにつきましてはトン当たり十四万五千九百六十七円、陸稲のウルチにつきましては八万三千二百三十三円でございます。
  248. 横路孝弘

    横路委員 そこで、これは確認をするだけでけっこうですけれども、四十三年以前産米、いわゆる古古米について、昭和四十六年の一月以降、みそ業界に払い下げをしたわけであります。こうじみそ製造用として月七百トン、ビタミン強化米五百トン、玄米茶製造用三百トン、みその関係はこのみその七百トンということでありますけれども、この価格について一等米と五等米だけでけっこうですから、値段は幾らなのか、ちょっとそれをお答え願いたい。
  249. 亀長友義

    亀長政府委員 本年の一月にこうじみそ、玄米茶等特定の用途に限り丸米の四十二年産米、四十三年産米、いわゆる古古米及び古古古米を売却することを決定いたしました。これは従来そういう用途に使われておりました準内地米の価格と見合う価格ということで決定をいたしたわけでございます。  等級の一等と五等ということでございますが、玄米トン当たり一等で陸稲は七万三千円、水稲は七万九千円、五等で陸稲は六万二千円、水稲は六万八千円でございまして、陸稲の価格が従来使用いたしておりました輸入米の準内地米の価格と見合う価格と相なっております。
  250. 横路孝弘

    横路委員 そこでその値段をきめたのは、これはいつ決定したのですか。この四十六年の一月以降のやつですね。
  251. 亀長友義

    亀長政府委員 一月二十五日でございます。
  252. 横路孝弘

    横路委員 しかもこれは丸米ですね、全部。いわゆる破砕米についてはみそ業者にどのくらい払い下げをする予定になっていますか。
  253. 亀長友義

    亀長政府委員 先ほど申し上げましたのは丸米でございます。これは丸米でなければ商品にならないという用途に限られております。それから破砕精米につきましては、内地米も、これも古古古米、古古米等を砕いて、横流れしないようにいたすということで、昨年十月からみそ、せんべい等の一般工業用に売却をいたしておりますが、これはみそには大体年間六万トンというふうに考えております。
  254. 横路孝弘

    横路委員 価格も一緒に……。
  255. 亀長友義

    亀長政府委員 価格につきましては、これも従来ブロークンライス等を使用したり、あるいは準内地米等も使用いたしておりまして、私どもで昨年八月から九月にかけて開催をいたしました過剰米処理検討会でいろいろ御検討の結果、従来使用しておった輸入米との価格均衡を考慮して、古米の工業売却にあたっては考慮すべきであるという報告の御趣旨に沿いまして、外国から輸入されておるブロークンライスの政府売り渡し価格と同等といたしたわけでございまして、四十三年四月に輸入ブロークンの買い付け価格に政府管理経費を加えたコスト価格というもので政府がブロークンライスを売っておった価格が六万八千二百円でございまして、この破砕精米もこれと同じトン当たり六万八千二百円といたしておるわけでございます。
  256. 横路孝弘

    横路委員 そこで過剰米の処理に関する検討の報告というのが昨年の十月七日に出されました一ね。その中で、この過剰米処理のための加工処理に関する検討の小委員会報告がその中に含まれておりまして、これは四十五年の八月十三日に出されたものでありますけれども、この中には、横流れを防止するために米を変形加工した上で売却する方法が必要であるということをこの報告の中では指摘をしているわけです。ところが今回の措置は、そういうことをしないで、丸米のままこれは売り渡すということになったわけですね。この間の経過というものはどういことになっておりますか。一体何があったのですか。
  257. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまもちょっとお答え申し上げました中にあったと思いますが、昭和四十六年一月から、みそ用のうち、こうじみそ、それから玄米茶の原料、ビタミン強化米製造用等に限定して、四十三年以前産米を丸米のままで売却しておりますが、これらの用途は、御存じのように、丸米でなければ商品として市場性がなく、破砕米からでは製品化が著しく困難であると認められるもので、この分だけ丸米を許可いたした、こういう事情でございます。
  258. 横路孝弘

    横路委員 そこでもう一つ、これは先ほどの話に戻るわけでありますけれども、いま決定したのは一月二十五日だというお話でしたね。その決定したのは値段の点あるいは丸米にするという点、いろいろあったと思うのですけれども、そういう点含めて一月二十五日の日に決定したこういうことでございますね。
  259. 亀長友義

    亀長政府委員 ただいま過剰米処理委員会の報告についてお話がございましたが、……。
  260. 横路孝弘

    横路委員 それはいいのです。
  261. 亀長友義

    亀長政府委員 私ども従来丸米でなければならないものが存在するということは認識をしておったわけでございます。ただ外国産のものがどんどん残りまして、昨年の十月ころに外国産のものは大体私どもの手持ちが五千トンを割る状態になってまいりましたので、広く一般用のみそあるいはせんべいというようなものに、これは月一万トン以上も要るわけでございまして、そういうものに出しておった日には急になくなるということでございましたので、一般用には破砕精米を売る、手持ちの外国産米を売らないということにいたしまして、当時持っておりました五千トンは丸米でなければ困るものだけに限定をして食い延ばしをしてきたわけでございます。しかしながら、この五千トンも一月に入りますと、まるっきりなくなったわけでございまして、丸米でなければ困るものには丸米の売却の道を開かなければならぬということで、一月二十五日に価格及びその売却の条件というのを決定したわけでございます。
  262. 横路孝弘

    横路委員 その問題についてはこれはもちろん全国味噌工業協同組合連合会と話し合いをなされて、その上できめられたわけですね。
  263. 亀長友義

    亀長政府委員 丸米のほしいのはみその中の一割くらいになりますけれども、こうじみそ用それからビタミン米の原料あるいは玄米茶というようなことでございまして、それぞれの団体からは、暮れにかかって先行き自分たちの原料がなくなっていく、それに対して政府がはっきりしないから、早くきめてくれという御要望もございましたが、私ども予算その他で非常に忙しく、まあ少しでもあるうちはということで伸び伸びになっておりまして、一月二十五日に決定したということでございます。もちろん価格の決定は、これは農林大臣の決定でございます。
  264. 横路孝弘

    横路委員 そこでこの払い下げについて非常に大きな疑問がたくさんあるのです。それをこれから一つ、二つ聞いていきたいと思うのです。全国味噌工業協会というのは、これは事務所は中央区越前堀三丁目三番地、全国味噌工業協同組合連合会の中にあって、理事長はやはり藤森伝衛さん、これが連合会の責任者になっております。ここが昭和四十六年の一月三十日に、全国味噌工業協同組合あてに、ここに写しがあるわけでありますけれども、四十六全味協第一号としてこういう通達を出している。ちょっとこれは聞いていただきたいと思います。「原料米の特別賦課金について 原料米の申請、買受け並びに賦課金の送金等については、毎々格別の御配慮を賜わり厚くお礼を申し上げます。陳者去る二十日役員会及びブロック会長会議に於いて種々御協議賜わり、破砕精米及び昭和四十三年以前産丸米割り当分について、下記基準により特別賦課金をお願い致すことに相成りましたので、何卒御了承の程、お願い申し上げたく、御連絡申し上げる次第です。」こうして、特別賦課金として破砕精米昭和四十六年の二月分から五月分についてトン当たり百円、昭和四十三年以前産米について昭和四十六年の一月分から四月分について五等米については精米トン当たり二千円、一等米から四等米についてはトン当たり一千円の金を出す。こういう指示が各味噌工業協同組合に出されているのです。これは全国的に出されています。いろいろ議論をしていく前に、ひとついまの質問の中から出てきたのですけれども、皆さんのほうでは一月二十五日の日にきめられたという。これはいま答弁された。この通達の中では、二十日の日にもうすでに四十三年以前産の丸米について配当があるという前提になった文章になっている。皆さん方が決定される前にこれは決定されていたということですか。そのことについては正式に価格なり割り当てなりについてきめる前に、この文章からいうと、これはもう業界のほうに流れていたということになるじゃありませんか。どうですか、それは。
  265. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話のございましたことは、農林省はこの件について何も承知いたしておりません。ただ私、きょう新聞報道をずっと委員会の合い間に見ましたので、さっそく全国味噌工業協同組合連合会につき事情聴取を行なわせました。そこで先方の申しますには、一月二十日の役員会の際、みそ全般の消費宣伝を強化するため、特別の賦課金を課してはどうかということが議題になり、その実施の方法については会長、副会長に一任されました。その結果、会長、副会長相談の上、丸米については五等二千円、一ないし四等一千円、破砕精米についてはトン当たり百円を賦課することとしたが、最近このことが一部会員に誤り伝えられていることが判明いたしましたので、二月九日、会長から全会員に対し、この特別賦課金の賦課はとりやめると通達をいたしたと述べております。そこで新聞で一月二十五日の……(横路委員「二十五日にきめられたものが二十日にあれするというのはおかしいじゃありませんか」と呼ぶ)いま、私がふしぎに思いまして、きょう部下の者にこれは一体どういうことであるかと取り調べさせました結果、ただいまのような御報告がありましたということを申し上げる次第でございます。
  266. 横路孝弘

    横路委員 いまの報告ですと、二十日の日にきめたというのでしょう。食糧庁のほうで値段なり丸米について払い下げをするということをきめたのは二十五日というのはおかしいじゃありませんか。二十五日にきめたものが、何で二十日の日に業界でもって特別賦課金を割り当てするなんということがきまるのですか。おかしいじゃないか、それは。
  267. 亀長友義

    亀長政府委員 一月二十日にみその組合の役員会があったのであります。当時から私どもはこの価格について財政当局といろいろ折衝いたしておりまして、一月二十日ごろには大体両者の了解点に達しておりまして、その役員会に状況説明を求められて、私のほうの担当部長が三十分間出席をして、大体価格決定はこういうことになる見込みである、正式通達は二十五日ごろであろうという説明をいたしたのであります。その結果、私どもとしてはいまのようなお話になったわけでありまして、役所の正式文書は最終的に二十五日に通達をいたしております。  なお、特別賦課金の件に関しましては、私どもは関知いたしておりません。
  268. 横路孝弘

    横路委員 ともかく業界に米を払い下げする、そこが、買った各個人の業者に対して特別賦課金を課している。いまそういうお金を取っておられないという報告でしたね。いいですか、その特別賦課金の……(「商売じゃないか」と呼ぶ者あり)商売だとおっしゃいますけれども、そこが問題なんだ。いいですか、いま大臣のほうは、私の質問よりも非常に先にお答えになりましたけれども、こういう事実があるのです。もうこれは証拠隠滅をはかっている証拠だと思うのですけれども理事会並びに役員会の会議録、これは徳島県の味噌工業協同組合、これが四十六年の一月二十五日午後一時から開かれ、代表理事田中という人、理事が魚井さんという人のほか六名、監事が山本さんという人のほか二名出席をして、事務局から一名参加、理事は二名欠席。その議事録の中身を見ると、コピーを見ると、こういうことになっている。「今般、国会議員九州出身の大久保武雄先生等の御努力により、内地産丸米が割り当てせられることに決定したが、」正式決定したのは二十五日、これは同じように、徳島県で役員会をやっているのは二十五日です。「実績により配分しようということになった全国で数量枠は約七百トンくらいである。横流し防止のために連帯保証金として一トン当たり七千五百円納めなければならない。」これは議事録ですよ。また「議員さんたちへの献金、あるいは国民協会へ寄付するものが約五百万円くらい必要なので、内地産丸米に対して五等米は二千円、一等米から四等米は一千円の割り、破砕精米についてはトン当たり百円を全味へ納付することとなります。丸米については、一、二、三、四と四カ月間、破砕米については二、三、四、五と四カ月間の期間」こういうことになる。いいですか。そうすると幾らのお金がこの全国の連合会のほうに入るかということになりますと、五等米として計算すれば、一カ月間七百トンですから、七百トン全部五等米とすれば百四十万円、さらに先ほど破砕精米については年間大体六万トン、そうすると月大体五千トンですね。五千トンについて百円ですから五十万円、こういうことになるわけです。そうすると、大体月二百万円くらいのお金が、これは連合会のほうに入ることになる。この特別に課したこのお金、特別賦課金というのは、その使途が何であるかということをまず別に除いて考えてみても、各個人業者に国が払い下げしたものを、これは完全にマージンを取っていることになる、リベートを取っていることになるじゃありませんか。どうですか。しかもここはいろんな文書の通達というのを使い分けをしている。政治的な特別職課金のほうは全国味噌工業協会、いろいろな割り当てそのほかについては工業協同組合連合会、使い分けをしながら、あて先はしかし工業協同組合の名前でもってみんないっているのです。協同組合になると、これは中小企業等協同組合法の規制を受けますから、いろいろ問題が出てくる。だからこういうような政治団体をつくってやっているのです。こういう事実があるじゃありませんか。実際にどうですか、調べてみたら。これは私はきちんと調査をして——いまのような回答じゃ、とってもそれは満足できるものじゃないです。どうですか、こういう事実。
  269. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういう事実は私ども聞いてもおりませんし、それから農林省としてはそういう指示もいたしておりませんし、全然関知いたさないところであります。
  270. 横路孝弘

    横路委員 しかし、二十日の役員会に食糧庁のお役人が出ているじゃありませんか。これはそこできめたことですよ。
  271. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話しの徳島県でしょうか、それもそういうお話がございましたので、農林省の役人が、そういう御相談があったかどうか知りませんが、その御相談の中へ参加をいたしておると新聞には書いてあるそうであります。そのことも先ほど確かめてみましたところが、説明のために三十分ほど初めのうち参加いたしておりましたが、即座に帰ってきております。−どうも失礼いたしました。私より長官からじかに申し上げさせたほうが……。
  272. 亀長友義

    亀長政府委員 徳島の会合につきましては、新聞等でいろいろ二県ほど二十五日に会合が開かれておるようでございまして、県の会合とございましたので、さっそく調査をいたしましたところ、北海道と徳島において県の団体の会合が開かれていることが判明をいたしました。この二県とも食糧庁の職員は全然出席をいたしておりません。  それから一月二十日の全国団体の会合に食糧庁の業務部長が三十分間出席をいたしております。しかし、これは食糧庁の今後の丸米売却に対する方針並びに価格の決定の見込み等について業務部長が説明を行なったのでありまして、三十分間その説明を行なっただけで、残余の会議には参加をいたしておりません。
  273. 横路孝弘

    横路委員 そんなことを言ったって、そのときの議題になっているのですから、知らないはずはないですよ。黙認しているのですよ。それは間違いない。しかもいま一月二十五日に徳島県でこの会議が開かれたということをお認めになったわけですよ。ですから、この内容はもう間違いないのですよ。そこでそういう発言がされている。二十日の全国会議できめられたからといってそういう報告をして、みんなに了解をさせて、そしてこの特別賦課金についてもこういう通達を出しているのです。徳島県の味噌工業協同組合が四十六年の二月二日に組合員あてにいろいろ書類を送っている。その添付書類の一つは、全国味噌工業協同組合連合会がこれは各県の味噌工業協同組合にあてた四十六年一月二十七日付のそういう通達を出している。これを添付している。もう一つは、先ほどお話をしたその特別賦課金を出しなさいというやつを添付をして、そしてこういうぐあいに書かれているのです。「特別賦課金として別紙四十六全味協第一号のとおり一月分より四月分まで一等米から四等米については、一トン当たり千円、五等米については一トン当たり二千円賦課されることになっておりますので、これらの賦課金は配分価格に含めてちょうだいしたいと思います。なお破砕精米については全味において今後とも運動を続行中の故、上記特別賦課金についても二月分より五月分まで一トン当たり百円賦課されますようお願い申し上げます。」運動のために使う金だということをこの通達でも明確にしている。  これは徳島県の味噌工業協同組合の組合員あての通達。さらにいまお話しいたしました味噌工業協会のこの通達、さらにこの議事録と考えてみれば、いいですか、ともかく何らかのそういう政治運動のために連合会のほうで金を集めたというのは明確じゃありませんか。この問題についていろいろな働きかけがあったということは私も聞いておる。いいですか。だからいま調査されたと言うけれども、徳島県のほうや何か調査されていないわけでしょう、農林省のほうで。きちんとやはりその辺のところは全部調査をされて、この議事録はありますから、国会に提出してくださいよ。どうです。
  274. 亀長友義

    亀長政府委員 二十五日の県の会合に農林省の役人が出席をしておるという新聞報道を読んだものでありますから、二十五日に県の会合があったかどうかを聞きましたところ、北海道と徳島においてあった。それに食糧庁の役人が出席をしておるかどうかを食糧事務所長に確かめたところ、そのような会合は案内も受けておらず、出席をしていないということだけを申し上げた次第でございます。
  275. 横路孝弘

    横路委員 その徳島県の二十五日の会議に食糧庁の役人が出席しているかどうかなんということは聞いてないのです。一体この議事の内容は何なのかということなのです。この議事録に明確に出ているじゃありませんか。二十日の日の全国の会合でもって、これは完全にこういう議員さんたちへの献金のためだといって特別賦課金を課して、その趣旨をここでもって説明をして金を集めている。いまそのお金は払い込みになっていないと言いますけれども、徳島県については少なくとも一月分は二月の九日に賦課金を含めて納金になっていますよ。十日の日に買い付けになっているのです。いいですか、いま食糧庁は関係ないというようなお話ですけれども、そうじゃないのです。この古米の処理は、先ほど言ったように国の財政負担というものをできるだけ軽くする方向でやらなければならぬということです。そうすると、先ほどのこの報告書にもあったように、まだまだ「これはほんとうは、ここで二千円も取っているのですから、高く売れるじゃありませんか。だからいま全国の消費者団体なり主婦連なりはそういうお米について安く払い下げをしてくれというようなことを発言しているじゃありませんか。みその業界に、これは安いですよ、これは六万何がしでしょう、七万九千円でしょう。これは一般の消費者は幾らかといったら十四万八千三百三十三円ですよ、先ほど話があったように。去年払い下げをしたときだってトン当りこの価格でもって払い下げをしている。消費者からもそういう声がどんどんあがっているじゃありませんか。そういうときにこれだけ安くして、連合会のほうでリベートを取って、この金が何に使われているか明確じゃない。少なくともこの議事録からいえば、いろいろこれは政治的に使われているということになれば、あなた方はこれは監督官庁として知らないでは済まされない問題なんです。どうなんですか、これはいいことですか、こういうことは。黙認されるおつもりですか。
  276. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもが承知いたしておりますのは、先ほど私が申し上げました一月二十日の役員会の際の報告は会長から当省に参っておりますので、これを信用いたす以外にありません。したがって、よそでどういうことがありましたかというふうなことにつきましては、農林省としては関知せざるところであります。  最後のところでおっしゃいました、こういう保有米のストックの米をなるべくいい値ではきたいというのは私どもの考え方でありますが、いままでタイあたりから買っておりました破砕米等、そういうものについてみそだとかせんべいのほうの材料にいたしておったのでありますが、いまわが国は七百万トン近くもストックのあるときでありますし、特にそういうものの外米を輸入することはいけませんので、そこで、外米であるならばこの程度の価格であったというのに見合うような価格で用途をきめて払い下げをいたしておるということで、その他この工業会でどういうふうなことをやっておりますかというふうなことについて、私どもは関知しないところでございます。
  277. 横路孝弘

    横路委員 先ほど農林大臣のほうから調査した結果というのが報告になったわけです。その中に何か下のほうでは誤解をしておるので、二月九日にあらためてこれは教宣費用だということで下部のほうへおろしました、そういう答えがあったという先ほどのお答えがありました。いいですか。二月八日の日に予算委員会の補正予算の総括質問で、わが党の田中代議士から、この払い下げをめぐってみそ業界に非常に大きな問題があるという指摘をした。そしていま二月九日の日に、ともかくそういう措置をとったというわけでしょう。下部に混乱がある。混乱があるからそれを是正をして、特別賦課金の性質はいろいろと宣伝をするための費用ですということで、もう一度九日の日に下部におろしましたという先ほどの報告でしたね。それは何かというと、二十日の日に間違いなくそういうことを流したから、これは訂正をしたのですよ、二月の九日の日に。誤解を受けるような行為をこの一月二十日の役員会で何にもやっていなければ、何で二月九日の日に訂正をしなければならないのですか。ですから、私はいま御質問をしているのは、農林大臣が調査されたと称するその報告書の中身を伺って、ますますこれは疑問が大きくなった。各県全部、おたくのほうでいろいろ値段をきめて、しかも丸米をつぶさないでそのまま払い下げているのですから。しかもその差が食管の赤字でもって、国民が税金でもって負担しなければならぬ問題だ。だからこの値段というものを私たちは無視できない。これはやはり農林省がきちんと監督する責任がある。  ですから、いまの倉石農林大臣の御答弁、調査の結果と称するものを聞いて、ともかく九日、そういう特別の賦課金の性質についてはこうですという是正の通達を出したのですからなおさらこれは疑惑が大きくなったので、これは各県すべてについてその各議事録なり、二十日に一体何をやったのか、この賦課金の性質というのはどういうものなのか。何に使おうと、賦課金を取ること自体問題なんですよ、払い下げのところで協同組合がマージンを取っておるのですから。ところが、その問題は別にしても、そのことをやはりきちんと全国的に御調査をしていただいて国会に答弁をしてもらわなければならぬと私は思う。委員長、どうですか、これは私はもう一度調査をやってもらいたい。
  278. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど私が申し上げましたように、本日の新聞報道を私が見ましたので、下僚に命じて、これは一体何のことだといって問い合わせさせましたところが、こういう返事がまいりましたということをそのまま御報告いたしたのでありまして、その中に二月九日、会長から全会員に対して、この特別賦課金の賦課は取りやめると通達をいたしましたという報告がありましたということを申しておるだけであって、私は工業会の報告をそのままお伝えいたしただけであって、私どもは何らこういうことについて関知せざるところであることは先ほど申し上げたとおりです。  それから、政府の売却の価格のことについていまお話がありました。なるべく高く買ってもらいたいことはやまやまでありますけれども、たとえば飼料にやるといたしましても、一番大口が百四十万トン、これをやりたいにいたしましても、トン当たりおよそ十三万円ぐらいの国損を覚悟しなければできないことであります。なぜそうであるかというと、輸入濃厚飼料原料に見合うだけにやらなければ、全購連、その他は困るわけでありますので、したがってわが国の農業、畜産のためにそういうことをせざるを得ない、涙をのんでやらざるを得ないのであります。ですから、一ぺんに処理もできませんで、今回はこれを長期にわたって弁済するような特別な法的措置もお願いをいたしておるような次第です。  したがって、先ほど申し上げました、みそだけではありません、ほかにもありますが、いままで外来、破砕米等でいろいろな材料をつくっておりました業界にも、若干高くなるかもしれないが、外米を輸入することは許しませんよ、ですから内地米をできるだけ使ってもらいたい。それには商売でありますので、一般大衆の消費者に対する物価の関係もありますので、やはりいままでこれらの業界の人々が買っておりました外米とおよそのつり合いのとれる程度に値下げをしてやらなければペイしないのでありますから、物価対策その他でそういうことを考慮してやっているわけであります。その他私どもといたしましては、御承知のようにこういうみそ工業会とかしょうゆというのは中小企業でございますので、いまそれぞれの業界がやり方は違っておりますけれども、みんなが相当扱い高に応じてお金を持ち寄りまして、そして政府の補助も加えながら近代化に非常な努力をさせてコストダウンに協力をさしておる、そういうことでありまして、それ以外のことにつきましては、農林省としては何ら関知せざるところでございます。
  279. 中野四郎

    中野委員長 田中君より関連質問の申し出があります。横路君の時間の範囲内においてこれを許します。田中君。
  280. 田中武夫

    田中(武)委員 二月八日に私が補正の総括質問の中で、余剰米を安く払い下げておる、それを原料としてつくった製品が安くなっていない、こういう点を私は申し上げたわけです。そうするとあなたのほうから——私はみそ、しょうゆとは一言も言っていないのだ。それに対してあなたのほうが、みそ、しょうゆということをお答えになった。そういうことをおっしゃるからいろいろのうわさがありますよと、この程度なんです。そうしたあくる日の九日に是正の通達か何かが出た。こういうことははなはだもっておかしいと思うのです。  したがいまして、もう時間も余すところあまりないと思いますので、委員長、この問題は理事会において実態を調査する、そのようにしていただく、農林省のほうも実態を調査して報告をしていただく、このことを申し上げておきたいと思いますが、どうでしょう。
  281. 中野四郎

    中野委員長 田中君に申し上げますが、先ほど来……。
  282. 田中武夫

    田中(武)委員 二月八日に私が質問したあくる日にそういう是正をやっておるじゃありませんか。しかも私はみそ、しょうゆ云々とは言っていないのですよ。余剰米の払い下げをめぐっておかしな問題もあり、それが製品の小売り価格に反映していないと言っただけなんです。それがこういうことをやっておるのはますますおかしいじゃありませんか。
  283. 中野四郎

    中野委員長 田中君に申し上げますが、理事会云々というお話がありますけれども先ほど横路君の御質疑の内容をここでつぶさに記載もしておりますし、伺っております。ただ書面の上からいうと、組合の通達であって食糧庁の書類上には関係が考えられませんが、ただ推定とかいろいろな問題がありますけれども、これは理事会において調査するという性格のものではないので、農林省においてさらに明確にひとつ御答弁をいただき、いろいろと調査をしていただいた結果を、農林大臣御報告になってはどうですか。それ以上ないんでしょう。理事会で調査するという性質のものではないように思うのです。
  284. 田中武夫

    田中(武)委員 農林省はこの事態を調査して、この予算委員会が審議を終了するまでに明らかにしない限り、国民は大きな疑惑を持って見ております。したがいまして、これは農林省としても明らかにすべき義務があると思います。いかがですか。そうでなくてはますます食管に赤字が出るのはあたりまえじゃないですか。
  285. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 とにかく米は農林省所管でございますし、それからまたみそ、その他それを受けておる業界もやはり食品でありますので、私どもが一応物資については所管をいたしておりますところで、いまのようなお話がございまして、初めてきょうここで承るわけでありますので、十分事情を調査いたしてみたいと思います。
  286. 横路孝弘

    横路委員 じゃこれで終わりにしたいと思いますけれども、実はこの問題をめぐって、菓子の関係にも古米というのは払い下げになっている。いろいろやはりこういう同じような問題があるのです。!みそだけの問題じゃないのです。ですから私は、いま調査をされるということですし、時間も来ましたのでこれで終わりにしたいと思いますけれども、いずれにしてもこの問題は、農民にしても消費者にしても、非常に大きな関心を持っている問題ですので、ぜひ間違いのないように行政監督をしていただきたいと思います。  終わりにいたします。
  287. 中野四郎

    中野委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  288. 中野四郎

    中野委員長 この際、御報告申し上げます。  去る十三日、分科員の配置及び主査の選任につきましては、委員長に御一任を願っておりましたが、各分科の主査を次のとおり指名いたしました。御報告をいたします。  第一分科会主査 田中 龍夫君  第二分科会主査 大坪 保雄君  第三分科会主査 登坂重次郎君  第四分科会主査 森田重次郎君  第五分科会主査 大野 市郎君 以上でございます。  なお、分科員の配置につきましては公報をもって御承知を願います。  次に、おはかりをいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  明十九日より昭和四十六年度総予算について分科会の審査に入ることといたします。  本日は、これにて散会をいたします。     午後六時二十一分散会