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1971-02-16 第65回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十六日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤田 義光君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君   稻村左近四郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大村 襄治君    奧野 誠亮君       小坂善太郎君    田中 龍夫君       登坂重次郎君    野田 卯一君       葉梨 信行君    別川悠紀夫君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    山崎平八郎君       阪上安太郎君    田邊  誠君       辻原 弘市君    西宮  弘君       長谷部七郎君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       相沢 武彦君    北側 義一君       坂井 弘一君    多田 時子君       岡沢 完治君    吉田 賢一君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 秋田 大助君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣審議官   城戸 謙次君         総理府人事局長 宮崎 清文君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         行政管理庁行政         監察局長    岡内  豊君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         大蔵省理財局次         長       小口 芳彦君         国税庁長官   吉國 二郎君         文部省体育局長 木田  宏君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省農地局長 岩本 道夫君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         学働省職業安定         局審議官    中原  晁君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省住宅局長 多治見高雄君  委員外出席者         会計検査院長  山崎  高君         会計検査院事務         総局次長    小熊 孝次君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   笹山茂太郎君     山崎平八郎君   灘尾 弘吉君     別川悠紀夫君   福田  一君     葉梨 信行君   阪上安太郎君     長谷部七郎君   楢崎弥之助君     田邊  誠君   瀬野栄次郎君     多田 時子君   松尾 信人君     北側 義一君   河村  勝君     吉田 賢一君   土橋 一吉君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   葉梨 信行君     福田  一君   別川悠紀夫君     灘尾 弘吉君   山崎平八郎君     笹山茂太郎君   田邊  誠君     楢崎弥之助君   長谷部七郎君     阪上安太郎君   吉田 賢一君     和田 春生君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算  昭和四十六年度特別会計予算  昭和四十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、一般質疑を続行いたします。多田時子君。
  3. 多田時子

    多田委員 私の質問の次第に入ります前に、ひとつお伺いをいたしたいと思います。  厚生大臣にお願いしたいわけでございますけれども、きょうは二月の十六日でございまして、かねて厚生大臣がこの予算委員会でお約束をくださいました健康保険法の問題につきまして、若干お尋ねしたいと思うわけでございます。  かねて社会保険審議会社会保障制度審議会、両審議会にこの改正案の問題を諮問されまして、そしてきょうそれが提出されるということでございましたが、きょうの段階におきましてまだ出ていないというようなことで、この問題についてひとつ厚生大臣からお願いしたいと思います。
  4. 内田常雄

    内田国務大臣 健康保険法改正をお願いいたしたい所存でございまして、その法律案をなるべく早く提案されるように御要望を受けております。そこで、見切り発車というようなことはすべきでないという皆さんからの御意見もございましたので、現在まで両審議会に慎重に御審議をいただいてまいっております。そこで私の考えでは十六日には提案をいたしたいということで、先般もあの御答弁をいたしておりますので、昨晩来両審議会ともだんだん審議が詰まってまいりまして、きょうじゅうには両審議会の御答申がいただけることを期待をいたしておりますので、それを受けまして、きょうじゅうに法律案国会提出いたす、こういう所存でおります。
  5. 多田時子

    多田委員 この問題は国民もたいへん注目をいたしております。また内容を見ましても、きわめて重要でございます。いわゆる保険財政あるいは政管健保の赤字対策内容とか、こういう問題ですから、ただ単に収支のバランスがとれればいいというようなことではございませんし、委員の方方には十分審議をし尽くしていただかなければならないわけでございます。それにいたしましても、この両審議会に対する諮問がいつごろなされましたかをお尋ねしたいと思います。
  6. 内田常雄

    内田国務大臣 今回の健康保険法改正は、私ども考え方では一時しのぎの赤字対策というような考え方、従来何回か繰り返してまいりました特例法的の考え方ではなしに、いまお話もございました抜本改正につながる改正にしたいということで案を練ってまいりました。この抜本改正につきましては、御承知のように、一昨年来社会保険審議会並びに社会保障制度審議会の両審議会諮問をいたしておるわけでございますが、これが広範多岐であるために、両審議会ともまだ結論は出せないということでございますが、しかし四十六年度の予算編成期を迎えまして、そのままじんぜんこの問題に手を触れないわけにもまいりませんし、また去る昭和四十四年に、昭和四十六年度からは抜本改正の方向で着手したいというようなことも政府といたしましては申し上げておりますので、そこで昨年末予算編成をいたします際に、両審議会に対して私どもから、昭和四十六年度におきましては抜本改正の一環として、それへの第一歩としてこういう内容考え方を進め、それに応ずる予算を組みたいということで両審議会に御説明を申し上げております。それに対しまして両審議会から、答申という形ではございませんが、それに対する意見というような形で御意向もいただきまして、それに応じまして予算編成もいたしておるわけでございます。しかし私はさらに、やはり念には念を入れて、両審議会から意見はいただいて予算編成はいたしましたが、やはり法律案要綱というような形で御諮問を申し上げ、答申をもらうほうが筋だろうと考えまして、中身は昨年予算編成の際に申し上げたことと同じでございますけれども諮問案という形で予算案編成直後に両審議会提出をいたしまして、その答申を今日じゅうにいただく、こういうようなことで進めておる次第ございます。
  7. 多田時子

    多田委員 私きょうおもに厚生大臣お尋ねをすることが多いわけなんでございますが、時間も限られておりますので、お答えは簡単にひとつお願いしたいと思います。  これはいまもお話がございましたように、一月四日ということでございまして、期間といたしましてはまだ四十日そこそこでございまして、こうした大事な問題を四十日そこそこ結論を出そうというほうがどだい無理なのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  いま、さっそくに出したいということでございましたけれども大臣がこの場で御発言なさったことでございますから、大臣の御発言がほごになるということではこれは大問題だと思うわけでございますし、またそうすることは国会軽視にもなりますし、さらにまた短期間で審議を尽くせということならば、審議会に対してもこれは審議会軽視ではないか、こういうふうにもいわれることになるわけでございます。またかりに、いまお話がありましたけれども答申が出されたといたしましても、賛否両論いろいろございましょうし、今回の場合は特に反対意見のほうが絶対多数ではないか、このように考えられるわけでございまして、審議会意見を尊重するということならば、その反対意見ども十分しんしゃくをされて検討をなさることかと思いますけれども結論といたしまして、法案提出を見合わせるかあるいは延ばすか、こういうことを最後に御結論をいただきまして、私の主題に入りたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
  8. 内田常雄

    内田国務大臣 これはかねてのお約束でもございますので、法案提出を見合わせるつもりはございません。また先ほどもやや長くなりましたが申し上げましたように、昨年予算編成段階から、今回の改正案のことにつきましては両審議会考えも申し述べまして、その意見もいただいているわけでございますので、にわかに持ち込んでにわかに無理の御答申をいただくということではございません。また審議会の方々もみなりっぱないい方でございまして、国会審議を無視するようなそういうやり方ではない、国会でしっかり審議をしてほしい、こういうことだろうと思いますので、私はそのことを期待をいたしております。
  9. 多田時子

    多田委員 一番最初厚生大臣、きょうじゅうに出すというようなお話でございましたけれども、どういう方法でおやりになるのか。持ち回り閣議でおやりになるのか、そういう一番最初の御答弁に戻りましてお願いいたします。
  10. 内田常雄

    内田国務大臣 私はまあ今日中に両審議会答申がいただけるものと確信をいたしておりますので、閣議の持ち出し方といたしましては、未調整件名外ということで持ち出すしかたもあるわけでございます。がしかし、私はそういう方法を避けまして、(「そんな重要問題なのに」と呼ぶ者あり)重要問題でございますので避けまして、けさ私は閣議で特に発言も求めまして、件名外決定にしないで、審議会答申をいただいたと同時に、あらためて閣議の御決定を得たい。もっともこの内容は、先般当委員会にも提出をいたしましたように、この要綱案閣議にも説明をいたしてございますので、そういうような取り計らいにいたしたわけでございます。
  11. 多田時子

    多田委員 きょうじゅうにお出しになることをもう一度確認をいたしたいと思いますけれども……。
  12. 内田常雄

    内田国務大臣 審議会の皆さまも非常に良識的でおられまして、私が見切り発車をしない、定時発車で行くということをよく申し上げてございますので、きょうじゅうに間に合うような答申をいただける、こういうことを確信をいたしております。
  13. 多田時子

    多田委員 この問題につきましては次の委員の方が続いておやりになることでございますので、私は主題の問題に入りたいと思います。  厚生大臣に伺うわけでございますけれども、過日テレビを見ておりましたところが、ことし成人式を迎えたばかりの二十になる青年男女を百名ずつ集めまして、そしていろいろな設問をしておりました。そのときにフリーセックスという問題になりまして、これを賛否を問うたわけでございますけれども、その結果、男子は五一%、女子はぐっと少なく一二%、それから婚前交渉という問題に対しましては男子はぐっと多く七三%、女子は四二%、ほんの一部分ですけれども、こういう結論が出ておりました。私はこれを見ておりまして、まあフリーセックスなどということは道義的によくない、どうかと思う、こういうような世間の風評をよそにいたしまして、そして若い人々の生活の中に比較的何の抵抗もなく定着をしている、定着しつつあるということを感じたわけでございます。男性の場合はかなり積極的な前向きな結論でしたし、また女性の場合は消極的でありましたし、どちらかというと回避的な面さえうかがえたわけなんでございますけれども、こうした問題は性の解放という問題が高まれば高まるほど——私は女性立場から申し上げるわけなんですが、いつも被害者立場に立たされるのは女性の側なんで、いつもそういうことを感じておりましたところが、ちょうどテレビでそういうことをやっておりました。そこにまつわるいろいろな悲劇、問題というようなことを考えさせられたわけなんですけれども、この性の解放という問題は御承知のように本場といいますか、スウェーデンの場合などがその代表のように思われておりますけれども、このスウェーデンの場合は社会的な環境がたいへん整っておりまして、そういう社会的な環境が、いわゆる女性を何らかの形で保護するあるいは優遇する、そういう形の上に一つの性の解放というものが成り立っている、こういうふうに考えますと、それと引き比べまして日本の場合などは全くそういう点が無防備そのものでございまして、その無防備な中にそういう性の解放などというものだけが、いわゆる享楽的な面を持ちながら日本国民生活に定着しつつある、こういうことをたいへん悲しい思いをするわけなんですけれども、そこに当然起こってくるであろうと思います病気性病という問題について私はきょう若干質問を申し上げたいと思うわけなんです。  スウェーデンの場合などは、小学校教育でも完ぺきにそういう問題が教育されておりますし、また女性保護という立場に対しましては、保健省の中の児童福祉委員会が指定された児童監督官という方がおりまして、これががっちりと母子を守るという立場に立っているわけなんです。どういうことかといいますと、母子保護及びその利益を保障する、この問題は婚姻法そして家族法という法律によってしっかり守られているわけなんですが、その母子ということばの中にいわゆる未婚の母、それからいわゆる私生児、こうした未婚の母と私生児の権利をも保護する、こういうことになっておりまして、その児童監督官未婚の母と子供に対しては、その父親に当たる人に対して財政援助をさせる、あるいはもし父親がその財政的な援助がなされないという場合には、政府がその未婚の母と子供をしっかりと財政的に援助をする、こういうふうに、社会環境女性人権を守るということと保護するということにきちっと確立されておるわけなんです。  そういう問題から考えますと、もしこの性の解放が無防備なままどこまでも高まっていくということになりますと、日本の場合はたいへん心配なことがたんさんございます。そういうところから起こり得る一つ性病の問題について厚生大臣、前厚生大臣もいろいろと参議院の予算委員会等でお述べになっていらっしゃるわけなんですが、私もきょうはここで女性人権女性保護するという立場から、その問題について若干お尋ねをしたいと思うわけでございます。  日本状態心配しておりましたところ、ちょうどそのころの、一月の末ですか、新聞に、世界保健機構、WHOの報告が出ておりまして、それによりますと、最近の性病の蔓延にはたいへんはなはだしいものがある。特にアメリカとかイギリスとかデンマークとか、また特にイギリスなどはティーンエージャーの人たちがたいへん多くて、その報告によりますと、あまり患者が多いので治療ができない状態だ、そんなふうに報道されております。こうした問題は決してアメリカデンマーク等ばかりではございませんで、日本にもそうした問題が蔓延しつつあるという現実をまたそのあたりの新聞で見ました。それによりますと、昨年ある地方におきまして高校生交通事故を起こした。その交通事故を起こしましたときに大量出血したものですから、高校生に献血を求めたところが、十九名の人たちが申し出た。その十九名の中から、血液検査をしたところが、九名の人が不適格という結論になりまして、そのうち七名の方がいわゆる梅毒のスピロヘータの血を持っていたという事実が確認されたようでございます。これはたいへんショッキングな話でございますし、子供のことと、こういうふうになりますと、母親の立場は気も動転しそうなばかりに悩むわけでございまして、そういう立場から、そうした問題がどの程度日本の国に蔓延し、そしてまた問題化されているか、またそれに対する予防対策あるいは予防教育、そういったものに対しまして厚生大臣どのようにお考えかを最初に伺いたいと思います。
  14. 内田常雄

    内田国務大臣 私は年齢年齢ですから、おまえは旧弊だといわれるかもしれませんが、最近のフリーセックスというような風潮に対しましてはまことに批判的な立場に立たざるを得ません。私にも御承知のとおり年ごろの娘たちもおりますが、いつもそのことは家内とも、また子供たちとも話し合っておりまして、世の中を清くするための一つの因子にもなればというような気持ちを自分子供たちにも——あまり自慢のできる子供ではございませんけれども、植えつけておるようなわけでございます。  私はここに持ってまいりましたが、また厚生省といたしましても、十分行き渡っているとは私は決して申せませんけれども、「これからの結婚を迎える人たちに」というような、あとでこういうパンフレットを差し上げますが、ことに、これはこの間の成人式にも全国的に配っていただくような簡単なものをつくってございまして、性病のおそろしさでありますとか、あるいはまたこの性病防止のための国の制度の簡単なことでありますとか、あるいは治療の問題でありますとか、また性病というものが単に自分たち二人だけの間の問題でなしに、その感染の問題、横への感染ばかりでなしに、子孫にも大きな影響を及ぼすものであるから、お互いにそのことは責任をもって気をつけたいというような意味の、こういうようなものもつくっておるわけでございます。  ところで性病は、私も実は日本ではもう何人に一人というくらいに若い人たちの間に蔓延しているのではないかというような一つ恐怖心を持っておりまして、厚生省の中で調べてもらいましたところが昭和二十三年ごろ、終戦直後、ちょうど従来の花柳病予防法性病予防法に切りかえたころ、当時の花柳病予防法というのは売淫者中心とした対策であったと思いますが、昭和二十三年に、これは占領下行政影響がありますが、売淫者中心とするものではなしに、国民一般性病予防対象とするということで性病予防法が制定されました。その境目くらいの間、ここに表がございますが、そのころのこの新しくできました法律にによりまする医師花柳病罹病者届け出の数というものは、実に多かった。四十七万三千人でございましたが、この法律制定後だんだん減ってはおるようでございまして、昭和四十四年の届け出数、これは届け出でございますから私は隠れた者もたくさんあると思いますが、それは一万七千六百四十一人、これはもちろん延べ数ではございませんで、患者の絶対数でございますが、減ってはおるようでございます。しかし、これが昔と違いまして、この病気が、私は一般の若い青年たちや、また家庭の中に沈潜をしているのではないかということを一番憂えるものでございますので、そういうことにも十分心をいたしまして、いまの性病予防法の規定をされております事項の一そうの理解、普及というようなこともつとめてまいりたいと思います。しかし、この中に、私ちょっと読んでみますると、たとえば性病予防検査員というような制度がございます。法律には、その検査員はどういう患者にも接触し、どういう家庭にも入っていって性病についての質問をしたり、また注意や勧告をすることでできるたてまえになっておりますけれども、しかしこの病気性質上、性病予防検査員という制度がございましても、家庭に入り込んで、そしてこの問題をそこの家族の人あるいは子供さん方に申し入れ調査対象にするということができない、そういう性質の面もございますので、この性病予防法がなかなか完全に十分に効果を発揮しているようにも思えない点がございます。しかしこれはまあ多田さんがお取り上げになられたことは、今日私は民族の将来の問題として、また社会風教の点からも一番大切な問題であると思いますので、ぜひいろいろな御注意をしていただきまして、法律の欠陥もあればそれが実施できるような、実施可能な方面に直していくような努力を進めてまいりたいと思います。
  15. 多田時子

    多田委員 いま現実の問題として減っているというようなお話でございましたけれども厚生大臣によく知っていただきたいと思いますけれども、事実はそうではありませんので、それで私も心配をするわけなんです。いまもお話がございましたように、いわゆるその患者一人の問題ではなくして子孫影響するということを考えますときに、日本の将来を案ずるわけでございます。前の鈴木厚生大臣がこれを社労委員会で取り上げられた、昭和四十一年の性病予防法一部改正のときの審議内容でございますけれども、そのときにはっきりと、三つの柱を立ててこの改善策努力をするというふうにおっしゃっておられるわけなんです。それは一つは、性病に対する正しい認識、性病のおそろしさ、病気の実態、こういうものを国民各階層に、特に若い世代の人たちに十分周知徹底せしめる、そのためにPRをする。もう一は患者把握をしっかりする。医師届け出の徹つ底を期する。あるいは接触者調査感染源把握をする。また、あらゆる機会をとらえて梅毒血清反応検査を行なって予防措置をとる。このようにはっきり三点立てられまして、予防対策あるいは予防治療に対して行政を行なっていくというふうに答弁されていらっしゃるわけなんです。そのときからちょうど五年たっておりますので、この五年間の実績というようなことについて、具体的にお話しをいただきたいと思います。
  16. 内田常雄

    内田国務大臣 詳しいことは担当の政府委員から申し述べさせていただきますが、お話しのように昭和四十一年に性病予防法改正いたしまして、届け出制度の改善、また婚姻時の健康診断の強化を行なう、こういうようなことを取り入れたところでございます。しかし婚姻時にお互いにワッセルマン氏反応の血液検査をして、それを持ち寄って、そして正しい健康な結婚を進めるというようなことにいたしたいということがこの改正一つの柱でもあったと思いますが、この婚姻時の検査の実施も年々増加をいたしておるそうでございます。必ずしも私などが心配をいたしておったような状態よりも、やはり法律改正の効果もあらわれておるようでございます。ここにちょうどその数字がございましたので簡単に申しますと、婚姻時にワッセルマン氏反応の血清検査を実施した人は、昭和四十一年には十三万六千人、端数は省略します。四十二年には十七万二千人、四十三年には二十一万三千人、四十四年には二十万四千人、一年間に御承知のとおり約百万組くらいの結婚がございますので二百万人の青年男女が結婚をするわけでございますが、昭和四十四年にはそのうち二十万四千人が血液検査をしてお互いにそれを交換した。でありますから、毎年結婚する男女の大体一割くらいの人がこの性病予防法による検査をみずから進んで受けておるということでございます。  それから、妊産婦にも同様な趣旨の検査をやっていただくように進めておるわけでございますが、この数字も年々上昇いたしております。昭和四十一年には三十四万六千人の妊婦、それが四十二年には六十万九千人、四十三年には六十二万九千人、四十四年には七十二万七千人の妊婦の方々が性病検査を受けておられるということでございますから、効果も全然上がってないということではないように思われます。
  17. 多田時子

    多田委員 いま性病予防法の第八条、第九条にあるわけなんですが、その問題はまた後ほどにいたしまして、厚生省として確実に把握しております数について、数だけでけっこうですからお願いしたい。
  18. 内田常雄

    内田国務大臣 性病には四つの種類があるそうでございます。梅毒が七千七百六十七名、これは昭和四十四年の数字でございます。淋病が九千六百四十五名、軟性下疳が二百二十六名、それからそけいりんぱ肉芽しゅ症、むずかしい名前ですが三名、合計をいたしますと一万七千六百四十一名の患者が保健所等を通じて届けられておる。同じ数字は昭和二十三年には、先ほども申し述べましたように四十七万人の多きに及んでおった、こういうことでございます。
  19. 多田時子

    多田委員 御承知だと思いますけれども、千葉大の教授などは昭和三十八年ごろに五百万人というふうにいっておりました。現在もその説を捨てておりません。こういう問題は表面にあらわれた数が少ないということで過小評価をしては、むしろ事態を悪化させるのではないかというふうに思います。責任ある学者の言ですから、そうした五百万人説というようなことも考慮に入れて考えなければならないのではないかと思いますが、私、最近この問題に関心を持って調査をいたしました結果なんですが、ある医師会でやりました結果、あるいは日赤センターあるいは大病院あるいは人間ドックを行なった場合等々の数が出ましたのでちょっと申し上げたいと思いますけれども医師会センターでは五万九千百八十四名のうち陽性の結果が六千百九、ですからこれは陽性率一〇・三%なんです。それから血液検査協会では三万七千八百三十五、陽性数三千三百七十五で約九%出ております。日赤センターでは十六万六千八百九十六人のうち千五百二名で約一%出ております。大きな病院なんですが、これで三カ所集めまして一万一千四百七十三名のうち五百三十一名で、これも約五%出ております。  こういうふうに考えますと、これはある地域ですから、これが日本全体とはいえませんけれども、こうした数字を見てみますと、厚生省の、いま大臣がお述べになりました数はほんとうのどこか一握りの人たち検査した結果ではないか、このように思われるわけなんです。そういう実態と、それから学者の説と、そうした問題をくるめまして、この問題をどういうふうにお考えになりますか、お願いしたいと思います。
  20. 内田常雄

    内田国務大臣 私も多田さんのおっしゃるとおりではないかというような気がいたします。いま一万七千何百名と申しましたのは、あれは性病予防法によりまして都道府県知事は性病のための治療等の病院、診療所を指定することになっているはずでございまして、そういうところへ行って血液検査等をやりますと、これは無料でやってもらえるということで、そこに行って検査をやってもらった人の数字を保健所が集め、それから都道府県を経て厚生省報告がある数字でございますので、したがって先ほども申しましたように、それはごく表向きの一部の数字ではないかというような気が私はいたします。淋病、梅毒等を含めて日本じゅうで患者の数が一万七千というようなことはあるはずがないと私は思うのでありますが、しかしその辺のことにつきましては私が申し述べますよりも医学博士で、担当いたしております公衆衛生局長にちょっと話を聞いていただきとうございます。
  21. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいま先生から五百万の説が出ましたが、実は淋病につきましては、治療中というものを把握することは可能でございますが、血液の中にその病毒を残して血液検査によって発見できますところの梅毒については、ある程度国民に対してどの程度の淫浸率があるかということを議論することはできると思います。おそらく五百万説は、私は淋病も含めた総数的な性病全体を把握された数字ではなかろうかと考えます。梅毒の場合、参考までに申し上げますと、婚姻のときの検査が、四十四年で二十万実施いたしまして〇・九%梅毒血清反応が陽性でございます。それから妊婦の場合は、七十二万人実施しまして一%陽性でございます。それから法に基づきまして売淫の常習容疑者に対する検査が、四十三年でございますが五千七百人実施いたしておりまして、この陽性率が一三・九%でございます。こういう特殊な容疑者でございますので非常に高率に出ております。そのほか一般保護施設、婦人の保護施設などで八千人を実施しました陽性率が七・五でございます。それから学生、生徒、児童、これは年齢が多少広がりますけれども、四万人の四十四年実施のデータで〇・二%、そのようなわけでございますので、これを全体の一億の国民に直したときにどういう見方をするかということは、一%とすれば百万ということに相なります。  もう一つ、大阪府が大阪府内の病院、診療所に来ます患者を昨年十月、十一月の二カ月にわたりまして実態調査しました数字と、大阪府が厚生省に保健所を通じて届けております数字とを比較いたしますと、大阪府の実態調査が約二倍出ておりますので、私はやはり梅毒は二百万ないしは二百五十万ということが実態に近い数字ではなかろうかという考え方を持っております。  淋病その他については、いま申し上げました理由で実態の把握というものは非常に困難でございます。
  22. 多田時子

    多田委員 いまお話もございましたように、これは的確な数を掌握するということはたいへん困難だということは私もよくわかるわけでございます。したがって一〇〇%完全掌握というようなことは考えられないわけなんですが、しかし少なくともそういうあらゆるデータをもとにしまして、あるいは学者の意見等も聞いたりいたしまして、最大限コンピュータを使ったりいろいろして、なるべく現実に近い数をつかまえて、そしてそれを国民に発表するということが必要じゃないかと思うのです。そうじゃございませんと、こうした問題はできるだけ触れないで通ろうというのが人間の常でございますので、そうした問題に対する危機感というようなものも何も浮かんでまいりません。しかし現実はそうした問題で悩んだり苦しんだりしている人がたくさんいるわけですから、前厚生大臣の仰せになりましたように国民の前にこれを明らかにする、こういうことが大事ではないかと思うのですが、その点厚生大臣いかがでございますか。
  23. 内田常雄

    内田国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。私どももこれは隠すことなく、おそるべきことをできるだけの機会に若い人たちにも伝えて、それと同時にまた厚生省といたしましても、保健所その他の関係機関とさらに一そうこの問題を前向きで取り上げるような、そういう態度をとっていくべきではないかと私は考えます。
  24. 多田時子

    多田委員 昨年東京都では厚生省の依頼によってということで、性病に対する国民の意識調査というのを行なっております。これ、たいへんいいデータなんですけれども、これは最初を見ますと、厚生省の依頼によってやったのだから厚生省がこれを発表するということになっているそうなんですが、これ、いまだ発表されていないようですが、いかがでございますか。
  25. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほど答弁の事例に引きました大阪府の実態調査とあわせて検討しております関係上、まだ公表いたしておりませんけれども、できるだけすみやかに処置いたしたいと考えております。
  26. 多田時子

    多田委員 もう一度重ねてお尋ねしますけれども、いつごろこれ公表されますでしょうか。
  27. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 データはそろっておりますので、なるべく早く実施いたしたいと思いますが、少なくとも今年度中は無理と思いますが、新年度早々には公表いたしたいと考えております。
  28. 多田時子

    多田委員 この内容をちょっと御紹介いたしますと、意識調査でございますから、そういう内容なんですが、かかったら一番いやだと思う病気の順位が示されております。かかったらいやだという病気の第一は、やはり何といってもガンです。その次に性病が出ていまして、その次に精神病、こういうふうになっています。  また、ある年齢に達したら国民総検血をすべきであるという、そういう意見に対してはどうかといいますと、それは必要であるという答えが全体の八四・五%を占めております。性病のおそろしさを、もっと国民に教えるべきだという考えも約半分あります。こうした調査がもうすでに出ていることですから、その意識調査の結果に対して厚生省としてはどう対処をされるのか、その点について厚生大臣に伺いたいと思います。
  29. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、まだ発表されてはいないわけでございますので、その資料も十分承知はいたしておりませんけれども、先ほど来申し述べますとおり、この問題は一つの恥ずかしい病気であるということのために、あるいは家庭などにも影響があるということのために、押えて隠しておけばいいということだけでは済まされる問題ではないと思いますので、意識調査などの結果によりまして、可能なればそれは私は一億総検血、血液検査というような仕組みができるものならば、そういうことも検討いたしてみたいと思いますし、また、このごろ公衆衛生の第一線は保健所でございまして、何でもかんでも保健所ということで、保健所の任務もたいへんではあろうと思いますけれども、やはり保健所等にその方面の職員等も充実をいたしまして、そして結婚時、妊娠時だけでなしに、その他の場合におけるやはり性病対策というようなものも前向きに進めるようにいたしたいと思います。
  30. 多田時子

    多田委員 先ほどもお話に出ておりましたけれども性病予防法の一部を改正されました昭和四十一年のときに、妊娠時と結婚時ということで、チェックの機会を拡大いたしました。これによって確かにそれは一歩前進であったというふうに認めたいと思います。ところが四十五年の出生件数、先ほども発表されておりましたけれども、約百九十万から二百万件。これを国の予算で見ますと——これは当然一つは勧奨義務でしょうし、片方は義務だろうと思います。ところが予算を見ますと、二千六百五十九万一千円という予算がついておりまして、それを出生数と比例してみますと、ちょうど六十万四千件分の予算であるわけなんです。結局二百万件ありますと、百四十万件というのは、これはどういうことになってしまうのだろうか、こういうふうに思いますし、また結婚のほうは百万組で、それに対して国の行政範囲は二十八万二千件、結局七十万件は不足をするわけでして、また性病予防対策費という全体のものも、昭和四十五年度から四十六年度で一千万近くダウンをしております。こういうことから考えますと、国はいろいろおっしゃられたとしても、ほんとうにこういう問題について真剣に心配をされていらっしゃるのだろうか、考えてはおられないのではないか、こんなふうに考えるわけでございますけれども、この点は厚生大臣と大蔵大臣にもひとつよろしくお願いしたいと思います。
  31. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、わりあい数字をよく覚えるほうでございますが、先般も、一体性病対策は全体でどのくらい金を使っているのかと聞きましたところが、たしか私の記憶に間違いなければ、七千万円ぐらいだ、こういうことを当局が言っておりました。これは間違いであれば訂正させていただきますが、七千万円で一体何ができるかと言いましたところが、いまお話がありましたように、結婚時とかあるいは妊娠時の検診についての公費料がおもだというふうなこと、あるいはいま差し上げましたようなパンフレットなどの費用もあるかと思いますが、これを前向きにやってまいりますためには、これは民族にとってもたいへん大きな問題であると思いますので、七千万円ではやれるはずもないと思いますので、これは多田さんなんかからいい問題を提起されましたので、国民的関心もわくことと思いますので、これは金を惜むべき問題ではない。ただ金だけ用意いたしましても、皆さんが検診に来てくれなければどうにもなりませんので、その辺相まちまして、必要なお金は惜しまないように、大蔵大臣とも交渉してまいりたいと思います。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま厚生大臣から七千万円というお話でありましたが、九千万円のようです。  この問題は、私もあまし詳しくないんです。きょうは、いろいろ私どものためになるお話を伺いまして、ほんとうに今後の私ども予算編成上、執行上たいへん参考になると思いますから、厚生大臣とよく相談をいたしまして、善処いたしたいと存じます。
  33. 多田時子

    多田委員 四十五年度は九千九百万で、四十六年度が九千万に下がったわけでございます。いま前向きな御答弁でございましたけれども、一億以下の予算でございますので、ほんとうに大蔵大臣の目の中に入らなかったのではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、どうか大きな目をあけていただきまして、この問題について、四十七年度はどうか前向きで予算を組んで万全を期していただきたいと思うわけでございます。  そこで、少なくとも予防法の第八条、第九条、そこで定められていることでございますので、私はその予算のワクは、せいぜい六〇%までは広げていくべきではないか、このように思います。いま大蔵大臣からそういう御答弁でございましたので、あわせて六〇%まで引き上げていただけるものかどうか。もしそうしたことが前向きに行なわれないということならば、せっかく法律で定めましても何にもなりませんで、結局政府みずからが条文を破っている、いわゆるざる法であるということを証明している、こういうふうにもなりかねないと思うわけでございますが、この辺、厚生、大蔵、両大臣お尋ねをいたしたいと思います。
  34. 内田常雄

    内田国務大臣 それは、私は法律できめられたことは必ずやってもらわなければならないと思いますので、お金のことは、私は二千万円ほど間違いましたけれども、間違った分くらいは来年は上に乗っけるつもりでがんばりたいと思います。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 厚生大臣と十分相談をいたします。
  36. 多田時子

    多田委員 この問題は、できるだけ潜在している患者を正確に、しかも早く掌握して早期発見、早期治療に全力をあげなければならないと思うわけなんでございますけれども昭和四十一年の法改正による妊娠時と結婚時ということを考えますと、それは時すでにおそいように思います。   〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕  なぜかならば、婚姻時ということでありますと、もしその病気があるということがわかりますれば、結婚は当然破談になるというおそれもあります。また妊娠時ということになりますと、もし妊娠にそういう状態であれば、これは胎内にいる子供にも影響することでございまして、一応一歩前進ではあったけれども、まだまだその辺潜在患者把握するには弱い、こういうふうに思います。私、特に妊娠の場合は、胎内に宿った新しい生命にその血が受け継がれますと、その血はよけいに働きまして、活動力を増すというふうに聞いております。こうなりますと、たいへん子孫への影響は甚大だ、こういうふうに言わなければならないと思うわけなんです。  そこで、これは一つ提唱をしたいわけなんで、もう一歩この血液検査のワクを拡大いたしまして、結核予防法の第四条にならって、労働基準法による健康診断の対象者に血液検査を行なうことを義務づける、こういうふうにワクを広げますと、もう一歩前の階段であまり無理なくそれができるように思われます。法改正まで持っていきまして、その点の万全を期するお考えはないものかどうかをお尋ねしたいと思います。
  37. 内田常雄

    内田国務大臣 私は先ほど、できたら一億総検血ぐらいのことをやったほうがいいという意味のことを申しましたが、これは、なかなか病気病気でありまして、感染経路等の問題がございますので、人格といいますか人柄といいますか、そういうことにも影響がございますので、一億全部にやれるということも実際はむずかしいと思います。いま多田さんの御提案の一つ方法がございましたが、そういうことも私は一つの機会であろうと思いますので、結婚時、妊娠時ということだけに限定しないで、可能な機会をとらえてやはり血液検査をやっていくというようなふうに、私はこれは前向きで検討すべきことだと考えております。ひとつ十分研究をさせていただきたい思います。
  38. 多田時子

    多田委員 私、いま具体的に申し上げたのですが、その点の御返答はいただけなかったようでございます。法改正までして、もう一つワクを広げるということなんですが、その点もう少し明確にお願いしたいと思います。
  39. 内田常雄

    内田国務大臣 一つのいい提案だと思いますが、労働大臣の関係もございますので、協議をしたり、また政府部内におきましても検討いたしまして、いい問題だと私は思います、やらねばならぬ問題だと思いますので、ほんとうに前向きで研究をいたしたいと思います。
  40. 多田時子

    多田委員 政府のほうでお考えくださらなければ、私のほうでこの法案の提出をしたいと思います。さっそく手をつけたいと思っておりますが、結核予防法ができまして、この問題は国の総力をあげてやりましたものですから、いま結核をおそれる人もおりませんし、また結核による死亡率も、また罹患率もぐんと減っております。やはり国をあげてやったときには、こうした問題の心配はぐんぐん解消されていわわけなんで、性病の問題に対しましても、国をあげてやる必要があるのではないか、このように思います。最近アメリカのそうした問題を視察してこられた医学博士の話によりますと、アメリカでは相当前向きにやっておるつもりだけれども、最近の蔓延ぶりはおびただしいものがあるようでございます。そうしたことからアメリカの当事者は、もっと真剣にこれに取と組むべきであった、いま後悔をしておるということでございましたけれども、そうした事態に至らない前に、日本の国でもさっそく手をつけて、予防対策に万全を期する必要があると思うわけでございます。  次に、文部大臣に伺いたいわけなんですが、兵庫県立神戸商大では、学生の中からフリーセックスや避妊による不安から、ぜひ性病教育を講義してほしいという声がたいへん強いようでございます。ある学校なんかでは講義も始めているようでございます。また関西の私立大学では、学生が性病にかかったので、ぜひ医者を紹介してほしい、こういう学生さんもたいへん多い。保健体育課長は、そういう相談がたいへん多いというふうに語っておられました。また、これはある地方の調査によるものですけれども、千四百三十九人の性病患者の中で、十五歳から十九歳までの少年が六十六人も含まれていた。こういうふうにいわれます。また、そういう事実を重視しまして、ある教師が五つの中学校でアンケート調査を行ないました結果、性病に関する知識を持っている人はほとんどいない。それもそのはずでして、私も中学や高校でどの程度の教育がされているかと思いまして調べてみましたところ、ほんとうに一ページの半分ないしは三分の一ぐらいをさきまして、そして性病という問題を軽いタッチで触れておるという程度でございます。これでは、教師によってはその辺をさらりとやってしまう方もいましょうし、または全然触れずに通過してしまう場合もなきにしもあらず、そうしたことから、むしろそういうことが若年層の方々、青少年の方々の性病蔓延の因をつくっているのではないか。おそろしさというようなものをそうした機関でもう少し親切に、丁寧に教える必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、保健教科書を改定して、もう少し時代に相応した教科書にもっていくべきではないか、このように思うわけでございますけれども、文部大臣いかがでございましょうか。
  41. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 性病のおそろしさ、あるいは性病予防ということにつきましては、やはり学校教育の中で取り上げていくということは非常に大事なことだと思います。したがいまして、御指摘になりましたように、指導要領等におきましても、たとえば小学校の五年、六年の保健体育で、あるいはまた中学校になりますともう一年、二年、三年、それぞれ取り上げておりますし、また高等学校になりますといろいろな面で取り上げておるわけでございます。指導要領そのものは、分量としては御指摘のとおりでございますけれども、しかしこの取り上げ方というものは、やはり心身の発展段階に応じて取り上げなければならない。性病そのものということをいう前に、一体性とは何なのか、あるいは性というものの前に生命というものがどうして生まれてくるのだ、あるいは生殖ということで、その点につきましてはかなり配慮がなされておると思います。たえば小学校でございますと、まず一年、二年、三年、四年というような段階では、植物がどうしてできてくるかということ、あるいは動物ということにだんだん入っていく、あるいは女の場合でございますと、からだの変化と男女の差というような取り上げ方をしていく、そういう心身の発展階段に応じた教育ということは非常に大事だと思いますが、もう少し指導上、先生おっしゃいますように強化したならばどうか、あるいはまた指導要領等において、もう少しウエートを置くべきではないかということにつきまして、検討させていただきたいと思います。ただ、これは学校教育だけでこれが完全に絶滅したり、あるいは予防が達成されるものでないことは、先生御指摘のとおりでございまして、やはり私は家庭教育の中においてしっかり、特におかあさん方の子供に対する教育が徹底しなくちゃならない。それからまた社会教育という面においてもこれをとらえていかなければならないということで、たしか昭和三十年に純潔教育に関する建議がございまして、文部省といたしましては純潔教育を社会教育の中で特にメンションいたしましてやっております。しかし、その効果が一体どれだけあるかということについては問題があろうかと思いますけれども、これは時間をかけ、ねばり強くやっていかなければならないのじゃないかと思います。先生もごらんになったと思いますけれども、BBCのメリーゴーランドのテレビ映画なんかは、これは非常にいい映画じゃないかと思います。また、日本におきましても、「ザ・ビギニング・オブ・ライフ」、「生命」、これは「哺乳動物の発生の記録」という題名で映画化されておりますけれども、こういうようなことも非常に大事で、これをもう少し発展させまして、先生御指摘の性病予防あるいは絶滅、そういうものに対する教育を徹底させていかなければならぬというふうに考えております。
  42. 多田時子

    多田委員 いま、いろいろな面からお話がございましたけれども、確かに家庭教育、社会教育、すべての面で必要だと思います。大臣のお答えを伺っておりますと、たいへん前向きでございますけれども、実際はやはりどうしても社会にはおくれがちだというふうに思います。もっと社会の先手を打っていく、社会の進歩にあとからついていく教育ではなくして、一歩先んずる教育でなければならないというふうに考えますので、この点は十分審議していかなければならない問題ですけれども、長期間かけて審議をするのではなくて、こうした問題の、時代の進展に相応した教育体制というものを、あらゆる面から確立していただきたいというふうに要望したいと思います。  さらに厚生大臣に伺いたいのですが、アメリカの、アラバマの追跡というのを御存じだろうと思いますけれども、一九六二年、昭和三十七年にアメリカの故ケネディ大統領が性病問題というのを国の重点施策の一つとして取り上げておりまして、積極的な対策に取り組んだということですが、アラバマ地区で十六歳の女子高校生中心に、多数の者が性病にかかっているということを聞いた大統領が、さっそく関係当局に徹底的に事実を調査するよう、またそれを報告するように言明したということなんです。その結果、一人の十六歳の少女から百四十一人の友だちがリストアップされまして、その中に三十六名の性病患者がいた、しかも驚くことには、この平均年齢が十九歳であった、こういうことが事実としてあるわけなんです。そういう点から、性病撲滅のための十年計画というものを認めるように議会に要請をした、そういうことで、私は、このあらわれた問題ばかりではなくて、いわゆる濃厚感染源、そうしたものまで追及をしていくということが大事ではなかろうか、そういう問題に対してどんなふうにお考えかをお尋ねしたいと思います。
  43. 内田常雄

    内田国務大臣 正直のところ、私は的確なお答えはできませんが、しかし先ほどもお話がありましたように、日本人は結核をこれだけ撲滅し追放をしてきた非常にりっぱな経験を持っておりますので、性病について同じことがやれないはずはないと私は思います。先般も私は、厚生省の中で、ほんとうに性病問題というものを前向きで厚生省がやる気があるのかないのかということをどなり上げたことが実はあるのでございまして、結核撲滅について私どもがあげました——方面は違うにいたしましても、そういう高い経験を、アメリカのケネディ大統領のいまのアラバマの話をとるまでもなく、やってみたいと私は考えますので、よろしく今後とも御激励をいただきたいと思います。
  44. 多田時子

    多田委員 いま前向きな御答弁でございましたけれども、これは第七条に問題があるように思います。性病予防法の第六条において、医師届け出という制度を、氏名、住所等を簡略化したという意味で第六条の改正が四十一年になされたわけです。第七条においては、その濃厚感染源を追及して、そして保健所に報告するようになっております。ところが、これを強力に進めますと、お医者さんと患者との間がなかなうまくいかない。たまには患者さんからどなられるようなこともある。大体患者さんが減ってしまう。いろいろな点でたいへんな労力、時間といい、精神的といい、たいへんな労力があるようでございます。そうした点で、やはり医師届け出という制度に対しては、やはり何らかのこまかい配慮がなければならないんじゃないか。ただ、こういうふうにしていろいろと書面を書いて保健所のほうに提出をせよというだけでは、これはただお医者さんの負担になるだけでして、この辺に大きな問題があるように思うわけでございます。大企業の専属の病院などは、やはり企業の秘密保持というような点、また個人においても、もちろんプライバシーという問題もありますし、そういう点から医者としてはなかなか掌握がしにくい。そういう点で、どうしてもこれはお医者さんの協力がなければできない問題なんですね。だから、お医者さんにもう少し、それをやったらこうなるという張り合いといいますか、何らかの手が打たれなければならないのじゃないか。もう一つは、これを報告いたしましても、あと厚生省が、そういう吸い上がってきた問題に対して、積極的に手を打つというようなことがないものですから、やったとしても張り合いがない。ただ届けるだけ。これではお医者さんもやる気がなくなってしまうであろう。こんなふうに考えるわけなんです。そこで第七条の改正ということも考えられるわけですけれども医師に対する配慮、そういうものを一歩深めていかなければならないと思うわけでございます。  さらに、こうした問題は、一般国民が、これはこういう病気にかかったら何となく罪悪感を感ずるとか、うしろめたさがあるとか、あるいは血液検査をすること自体に何となくおくれをとる感じがする、めんどうだから自分治療をしちゃう、こうなりますと、かえって病気をこじらせてしまう。こういうことから、一般国民と、そして医師と、そして保健所と、そして政府と、この四者が一体になって全体の国民病といわれる病気を撲滅していかなければならない。政府としては、いま一番掌握する機関となっている医師に対して、まずはどういう手が打たれていくか、ここに問題があるように思うわけでございます。第七条に関連するわけでございますけれども医師届け出制についてどういうふうにお考えかをお尋ねしたいと思います。
  45. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいまの七条の御指摘は、医師届け出るほかに、治療中、中断した患者についても御報告願うような仕組みで、仕組みとしては確かに一応の形は整っておると思いますけれども医師届け出が、患者との関係でしにくいという問題につきましては、これは諸外国の例に照らしましても、なかなか具体的な名案がございませんので、われわれといたしましては、専門の病院が全国、これは県立で設置すべきかわりに公私立の病院を性病指定病院にいたしておりますが、その数は約二千五百ございまして、そのほかに保健所が八百三十二ございますので、接触する医療機関としては一応形は整っておると思うのでございますが、そういう専門医療機関に行くメリットというものをもう少し研究いたしまして、その専門医療機関の場合には、医師が届けることに対して、一般医療機関よりは届けやすいような仕組みというものを研究してまいりたいというのが、いまの着眼でございます。
  46. 多田時子

    多田委員 次の質問もしたいと思いますので、この辺でとどめたいと思いますが、最後に二つばかり提案をさせていただきたいと思います。  一つは、いまも申し上げましたように、性病といいますと、何となくかかったほうも罪悪感を感ずるとか、あるいは血液検査を受けるときにも何となくおくれをとるというふうな国民感情それ自体を、国民の意識変革をしなければならないのではないか、こういうふうに思います。むしろ結核の検診のときと同じように、受けないほうがおかしいのであって、いまの感情と何らかの措置、PR、そうしたものをしていく。また法改正などをして積極的な姿勢に立てば、当然国民も理解をし、さらにそういう問題に対してはお互いに共感を持ち、あるいはそうした政治に対して支持をする、そういう行政に対して支持をするというところまで持っていけば、これは絶滅を期することができるのではないか。これに対する方法。  もう一つは、そういう問題は黙ってという、プライバシーの問題がありますので、ないしょでということになります。そこで、そういう問題を安心して、プライバシーを守ってくれるし、何を相談しても心配ない、こういうことで相談員というような立場を置きまして、そうして、そうした人たちに何でも相談をしなさい、あるいはそれが保健所の方でもいいし、医師でもよろしいですし、看護婦さんでもよろしいと思いますが、そういう立場の人が町にいれば、安心して相談できる、あるいは保健所の中にでもいいと思います。こうした立場をとって、そうした安心して相談できる機関をひとつ設けたらどうか、このように思います。  国民感情を変革していく一つのPRの方法、また相談員という立場を設けて絶滅を期していく、この二点について厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  47. 内田常雄

    内田国務大臣 前段のほうの御提案につきましては、十分ではないかもしれませんが、これまでもやってまいってきておるわけでございますけれども、さらにそういうものの予防週間、予防月間等の運動を徹底させるとかあるいはPRの資料を配るとか、あるいはまた結核なんかにつきましては、結核予防協会というようなものも、非常に強力な有力な団体などもございますが、性病の問題などにつきましても、そういう支援団体を育ててまいるとか、さらにそれはつとめてまいることがよいと思いますので、そのまま提案をお受けいたします。  それから二番目の御提案、相談員、これもまことにもっともなことだと思います。現在性病予防法検査員という制度がありますが、あれは、いかに検査員に権限を与えるようなことが書いてありましても、それだけでやり得るものではない面が性病にはございますので、検査員制度もさることながら、いまおっしゃるような相談員というような制度法律上、あるいは法律でなくとも実際の運営上取り入れてまいるというような御提案、まことにごもっともだと思いますので、前向きで検討いたしたいと思います。
  48. 多田時子

    多田委員 長時間をかけましたけれども、この問題いま御答弁にありましたように、前向きに絶滅を期すべく努力をしていただきたいと思います。  次に老人問題を伺いたいわけなんでございますけれども最初は大蔵大臣に伺うわけでございますが、老人問題はいろいろといわれておりますけれども、私は三つの観点から老人問題を考えるわけでございます。それは、ちょうど大蔵大臣また厚生大臣も、その御年配でいらっしゃるわけで、この間、西田委員質問に対しまして、総理が、私も老人だというふうにおっしゃっていらっしゃいましたけれども、ちょうどいまの六十五歳以上という方々は、いつもいわれておりますように、ちょうど満州事変から始まった戦争のさなかに半生を送りまして、そして今日がある。今日のGNP世界第二位の土台もその方々が築いてきた、こういうふうに言っても過言ではないと思います。したがって、そういう立場であるがゆえに、この国家の繁栄の中で谷間に残された、あるいは疎外されたというような立場にしておいてははなはだ申しわけない、こういうふうに一つ考えられます。老人自身の立場からどうしてもこれは守っていかなければならない、それが政治ではないか、このように考えます。  もう一つは、疎外されるといいましても、年老いた両親を持つ子供さんたちでも、やはり何とか親を守っていきたい、できるだけめんどう見ていきたい、こういう気持ちはあるだろうと思います。しかし現実として、住宅問題あるいは物価高あるいは安いサラリー、またお子さんがいれば養育費にかかる、こういったことで、現実としてほんとうに心ゆくまでの親孝行はできない、こういうことになりますと、老人問題というのは、老人自身ではなくて若い人たちのためにもこれはどうしてもやらなければならない。  簡単に申し上げますけれども、第三点は、最近警察庁の調べによりますと、少年犯罪が、少年人口が全体としては減っておりますのに、犯罪の人口は逆にふえているという状態で、先日夜の新宿などに行ってみたわけでございますけれども、その担当官の話を聞いておりますと、この報告によりますと、中流家庭のお子さんがそういう非行に走る方がたいへん多いということなんですが、やはり現実はかぎっ子とか、そうした家庭のすさんだところの子のほうが多いそうでございます。そのかぎっ子はそれじゃどうして生まれるか、こういうふうに思いますと、家庭の主婦が家をあけるから結局かぎっ子が生まれる。その主婦はどういう考えで働くか。経済的に困難な場合もありましょうし、あるいはレジャーをもてあまして働く方もいましょうし、いろいろあるかと思います。その一つのポイントとして考えられますのは、やはり老後に対する不安から、いま少々困らなくても働こうという人もたくさんいると思います。  こうして考えてみますと、そうした老人問題という問題は、老人層ばかりではなくて、そういう老人を親に持つ家庭にも、また子を持つ家庭、少年問題にも、そうした問題というのが波及していて、私はこの老人問題は、ひとり老人に対するばかりではなく、全社会の問題としてとらえていかなければならないんじゃないか、このように考えるわけでございます。ですから、いまのいろいろな社会問題の解決の一つは老人問題がかぎを握っているのではないか、こんなふうにも考えるわけでございます。  それで、いままでいろいろと論議を尽くされてまいりましたし、前向きな御答弁もいろいろあるわけでございますけれども現実はもう自殺者が多い。特に老婦人、おばあちゃんの自殺者がたいへん多い。世界一である。こんなふうにもいわれております。自殺者が出るなんということは、個人の病気等もありましょうけれども、これは国家としては恥ずかしいことだし、その点から考えまして、さらに積極的な老人問題に対する施策のほどをお願いしたいわけでございます。  最初に所得保障、何といっても、老人問題といえば所得の問題になるわけで、大蔵大臣にお伺いするわけでございますけれども、老後の所得保障という問題、この所得保障のかなめは、やはり何といっても年金であろうと思います。ことしの四月から十年年金の支給が開始されるわけでございまして、これの支給される範囲は二十万人ぐらい、こういうふうになっております。十年年金は昭和三十六年の四月に発足をいたしまして、当時五十歳から五十五歳未満の人々に任意加入が認められたわけで、その対象者が三百万人おりまして、そのうち百万人が任意加入したわけですから、ここで二百万人は残っているわけでございます。また昨年、昭和四十五年から始まった五年年金、これには七十四万人の方が加入されておりますけれども、差し引きますと、やはり百二十六万人は残ります。さらにまた重要なことは、三十六年当時、すでにもうその任意加入のワクからはずれておりました、つまり五十五歳から六十歳未満の間の人、これが約二百五十万人おります。この二百五十万人の人たちと百二十六万人の人たちとは、国民皆年金と、こういわれておりますけれども、大きく穴があいておりまして、対象から漏れているわけなんでございますね。したがって、この三百七十六万人ですか、こうした人たちが取り残されておりまので、これは日本の年金制度がおくれておりまして未成熟というふうにいわれておりますけれども、こういう手を打つけれども、さらに漏れているという方々が四百万人近くもいるわけでして、この人たちの日常をどうするか、これが重大な現時点での問題であろうと思われますので、この辺の谷間に埋没した方々に対する処置をどうなさるかというふうにお伺いしたいわけなんであります。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 老人問題はこれからの社会問題の中の最大の問題の一つである。これはひとり老人という階層を対象としての施策、そういう考え方でなくて、社会全体の問題としてこれをとらえるというお考え、これは一つのりっぱな御見識だ、私はかように存じます。何といっても、お話しのように年金、老後の保障、こういうことが大事だろう、こういうふうに思うわけでございますが、この老後の保障となる年金につきましては、いろいろな制度があることは御承知のとおりであります。いろいろな年金制度によって包摂し切れないというものに対しまして国民年金という考え方が打ち出されておる。国民年金というものをだんだんと充実していかなければならぬ、こういう考え方になるわけでありまして、そういう努力が続いておるわけであります。夫婦二万円年金、これは厚生年金に一年おくれというふうにはなりましたけれども、とにかく夫婦二万円年金が打ち出される、こういうふうになってきた、私はたいへんこれはよかったと思いますが、そういうふうに、これを一挙にということもまた財政上の事情なんかもあってなかなかむずかしいし、また財政ばかりじゃない、これは年金でありまするから、その給付が上がったその財源措置を、つまり負担をだれがするか、こういう問題もむずかしい問題であります。そういうようなことで、一挙にということになるとなかなかむずかしいですが、着実にそういう国民皆年金という思想を進めていく。その間においてこの老人問題も大きく前進をする、こういう考え方をとらなければならぬのじゃないか。厚生省、そういうような考え方を持っておりますので、私もできる限りの御協力をいたしていきたい、かように考えておるわけであります。
  50. 多田時子

    多田委員 いまの御説明にもございましたけれども、さらに通算老齢年金とかあるいは二級障害者の年金引き下げとか、いろいろ御苦労をしていただいているようでございますけれども、もう一つ、そうした残された方々に対して、通算老齢年金でも一万五千人でございますし、あるいは二級障害者の年金も二万九千人でございますし、やはり依然として何百万人という大台はくずれないわけでございます。  そこで重ねてお尋ねしたいわけなんですが、この年金の制度外に置かれた方々に対して、老齢福祉年金の支給開始年齢を現在の七十歳から六十五歳に、五つ引き下げるわけにはいかないものかどうか。ちょうどこの期間の人たちがいま問題になっているわけでして、これは提案を兼ねましてひとつ六十五歳からにお願いしたいのと、この二百五十万人の人たちに対して、もう一度重ねてお尋ねしたいと思います。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 年金制度を改善するという際には、常に負担を一体どうするかというむずかしい問題があるので、なかなか一挙にいかないのです。しかし漸進的にというふうに先ほど申し上げておるわけでありまして、そこでいまお話の給付年齢の問題、七十歳から六十五歳というお話でございますが、これは特殊なものについて、たとえば身体障害者というようなものにつきまして六十五歳という考え方をとることにいたしておりますが、さあ、一般的に全部六十五歳にするということになりますとどうでしょうか。その負担関係のむずかしさもあるし、私自身としますと、いま福田さんなんかは老齢年金年齢に達したというようなお話でございますが、多少抵抗を感じます。これからは平均年齢が七十歳だというのですから、七十歳くらいまでの人はうんと働いてもらう、そういうふうな考え方もひとつこれから取り入れていく必要のある問題じゃあるまいかというふうにも考えるわけであります。なおとにかく十分検討はいたしまするけれども、特に必要な身体障害者なんかにつきましては、そういう考えをとっているということだけを申し添えます。
  52. 多田時子

    多田委員 いまの年齢のことでございます。七十歳が八十歳でも元気で働かれる方もおられるわけで、そうした方々に対してはやはり就労対策ということも必要であろうと思われますけれども、もう大蔵大臣たいへんお元気でいらっしゃいますけれども、六十五歳といいますと病気を持つ方もたいへん多いわけですし、そこで独居老人とかあるいは寝たきり老人とか、孤老の身を毎日送っている方々もたくさんいるわけでございまして、そういう方々に対しての特別な配慮をと申し上げたわけでございます。  もう一つ老齢福祉年金でございますけれども、福祉年金は昭和三十四年月額千円でスタートをいたしました。これは当時の拠出制の老齢年金のちょうど二分の一の額でございます。また生活保護の四級地における老人の一人当たりの生活扶助費の二分の一の額である。こうした出発をしたわけでございますけれども、その後十一年たちまして、今日では拠出制の老齢年金は、一人分の標準金額が二千円から八千円に上がっております。また十年年金のほうは、八百円から五千円に上がっております。それから老人一人当たりの生活保護のほうは、千九百九十二円から九千百二円に大幅に上がっております。そうしますと、老齢福祉年金の支給額から見ますと、これらの年金額は二倍、三倍とこう上がっている。これは当然スライド式に物価上昇等もありまして上がってきたわけでございますけれども、またさらに加えますと、拠出制年金の免除制度というのがございますが、それに考え合わせましても、全体的に見て老齢福祉年金という場合は均衡を失しているのではないか、こういう議論にもなるわけでございます。せめてこの拠出制年金の半分、せめて四千円くらいが老齢福祉年金の金額として妥当な線ではないか。この間も二千三百円ではという話がありましたけれども、せめて拠出制の年金の半分の額くらいまでは上げても当然ではないか、こういうふうに思うわけなんでございますが、この点は厚生大臣もどんなふうにお考えになりますか。また大蔵大臣にもお願いしたいと思います。
  53. 内田常雄

    内田国務大臣 福祉年金のほうは、御承知のとおり拠出制でない、掛け金がないというような状態のもとに、なかなか財源の関係がある点もございまして、上げにくくて厚生省も非常に悩んでおります。毎年わずかずつ上げているようでございまして、私は、ことしから拠出制の年金が五千円で始まるわけでございますから、それとの権衡におきましてもできるだけそれに近い、また理屈のつくような金額に上げたいということで、大蔵大臣と折衝も重ねました結果、従来毎年の例といたしておりまする月百円ないし二百円上げというのを、いささか上回る三百円上げということで二千三百円ということでいたしたわけでございますが、これは今後の生活水準、物価等の問題もございますので、決してこれが据え置きではないと考えます。年々さらに金額の増加につきましても努力をいたしたいと思います。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も厚生大臣と同じ気持ちでこの問題の処理に当たっていきたい、かように考えます。
  55. 多田時子

    多田委員 今回厚生年金が一〇%年金引き上げになるということでございますけれども国民年金についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。同じ厚生省の管轄の問題でございますので、厚生年金との均衡の問題で国民年金をどう対処されるか、お伺いしたいと思います。
  56. 内田常雄

    内田国務大臣 当然考えらるべきことであると思います。厚生年金のほうは、いまの二万円年金ということにいたしましたのが一昨年でございましたが、国民年金のほうは、同じ趣旨の改正が昨年でございましたので、一年ずれておるわけでございます。そこで四十六年度から厚生年金をまず引き上げまして、続いて四十七年度には国民年金を、これは財政再計算期ということでなしに、私は諸般の物価、生活水準その他の考えから引き上げるように大蔵省ともお話し合いを進めてまいりたいと考えておるものでございます。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 厚生大臣からお話があったとおりの考え方で、なおよく相談をいたします。
  58. 多田時子

    多田委員 これもぜひとも検討を続けていただきたいと思います。そうして前向きな結論が出ますように要望をしたいわけでございます。  もう一つは、国民年金については妻の年金額というものがございます。ところが、厚生年金についてはこの妻の加算というのは千円しかないわけで、この辺も均衡を欠くといえば欠くという問題じゃないかと思います。平均余命からいたしましても圧倒的に妻の立場のほうが長いわけで、老後のウエートは重いわけでございます。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 ですのに、妻のほうは厚生年金の場合は千円しかないということで、この辺厚生年金における妻の年金額、また年金権というものを確立する必要があるのではないか、老人問題として考えられる問題ではないか、このように思いますけれども、その妻の年金権という問題についていかがでございますか。
  59. 内田常雄

    内田国務大臣 多田さん御承知のように、国民年金と厚生年金とは少したてまえが違いまして、国民年金のほうでは夫も妻もそれぞれ独立した国民、また被保険者として考えまして、それぞれ同額の保険料を納めていただきますので、年齢に達しますと夫婦とも同じ金額の年金を受けられる。夫婦で足して、それに所得比例の分も入れますと二万円余りということになります。ところが厚生年金のほうは、これは勤労者年金の形をとっておりますために、妻に対しましては子供さんに対すると同じように家族加給といいますか、そういうような形で千円が出されておる、こういうわけでございます。しかしこれはまた、したがって御主人がかりに年金を受けておる途中でなくなられますと、遺族年金として、全額ではございませんけれども、妻のほうには夫の年金受給権がそのまま引き継がれる、こういう仕組みになっております。そこのところの仕組みが違いますが、おおむねその辺は考慮をいたしました結果が、制度の違いを組み入れて妻の立場女性立場というものも考えていることになっておりますが、しかし全然別の見地から各種の年金、ほかに恩給等もございますし、年金について総合的に一本立ての方法考えるべきであるという議論もございまして、総理府の山中さんのところを中心に各種年金の総合計画もやっておりますので、御提案の問題は私が御答弁を申し上げたことでおしまいということではなしに、今後の課題として私は研究すべきものもあると思うものでございます。
  60. 多田時子

    多田委員 もう一つお尋ねしたいのですが、老齢年金における課税対象です。現在遺族年金とか障害年金というのは課税の対象にはなっていない、はずされているわけでございますけれども、老齢年金には課税をされているということで、この老齢年金というものの性質から考えても、これに対する課税というのは少し酷ではないか、このように考えるわけでございますけれども、その点いかがでございますか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 老齢年金を受ける老人、また老齢年金制度がねらっておるそういう困った老人、そういうような方は大体所得が少ない方でありまして、いま課税最低限がずいぶん上がってきたこの今日の税制下において、所得税の対象になるというようなことは、まあほとんどないのじゃないか、そういうふうに思います。ただ、老齢年金を受ける方が、他にあるいは資産所得でありますとか、そういう所得がある、合算するとかなり高額になる、こういうような方に対して、年金なるがゆえに、その所得税を免除する、これも国民全体の立場から見まして、公平を一体欠くことになるのかならないのか、その辺ちょっとむずかしい問題じゃあるまいか、そんな感じがいたします。いずれにいたしましても、ただいまの法制といたしましては、他に所得があって、課税最低限以上になるという際には、ひとつ所得税を納めていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  62. 多田時子

    多田委員 これは、年金、恩給の支払い金額が二千百八十四億円の中で、税金として引かれるのは五十九億円で、全体としてはたいへんわずかなわけでございますので、これはいわゆる老齢年金という内容から考えて、たいした額ではないので、はずされてもいいのではないか、こんなふうに考えわけでございます。これをさらに検討をお願いしたいと思います。  時間がないようでございますので、たいへん残念なのですが、一つだけ医療費の問題をお伺いしておきたいと思います。  今度改正案、いろいろ審議がなされておるようでございますけれども家族の療養費の給付割合を現行の五割から七割に引き上げることにして検討されているようでございますけれども、この三割の自己負担分は、これは公費負担にするべきではないか、こういう議論が沸騰しておりますけれども、この点についてどうかということと、もう一つは、この年齢を六十歳に引き下げるというふうになれば、さらに老人対策としては最高ではないかというふうに考えるわけなのですが、この点の医療費の問題についてはいかがでございますか。
  63. 内田常雄

    内田国務大臣 老齢者は病気をしがちであると同時に、同じ保険に加入をいたしましても、保険料納付能力というものが、つまり稼働能力というものが乏しくなってきておりますところに、私は老齢者に対する医療について特別の考え方をすべきだということを、かねて考えておるものの一人でございます。  そこで、お説のように、何とかして老人の医療費におきましては、できるだけ多く保険でカバーするか、あるいはまた病気性質によりましては、いまもお話がございましたように、公費医療というような面も取り入れたいというのが厚生省としての私どもの念願でございます。さような考え方のもとに、今回も勤労者保険における従来の家族は、年寄りも若い人も一様に保険では五割給付でございますのを、七十歳以上の方については七割給付まで引き上げるということを、ぜひやらせていただきたいということで御提案申し上げるわけでございます。その上のお話の三割につきましては、これは私は病気の種類によりましては、公費医療の面もだんだんふやしていきたい。たとえば、白内障の手術でございますとか、寝たきり老人に対するお医者を連れての家庭の健康診断でありますとか、あるいはまた脳卒中が非常に多うございまして、脳卒中の、病気治療までは保険でカバーされる面もありますけれども、その後のリハビリテーションになりますと、その限界が非常にはっきりしない面もございますので、リハビリテーションの一部を公費医療にいたしますとか、年々そういう面を取り上げておりますけれども、なおこれらにつきましても、私は今後公費医療の面を広くいたすように努力をいたしますとともに、さらに、それでカバーをされない一般の自己負担分につきましては、その三割につきましては、最近県や市町村でもその分をカバーをされるところが非常に多くなってまいりましたので、そういう風潮を全国的に広げて、そうして最後には政府がその県や市町村がめんどうを見るものの一部を国費でめんどうを見ていただけるような方法も案出して、ぜひひとつ大蔵省とも交渉を重ねたい、これは年寄りの分だけでございます。そういうようなことで努力を続けてまいりたいと思うものでございます。
  64. 多田時子

    多田委員 いまもお話がありましたように、八都府県百七十四市町村ではもうすでに実施をされているわけでして、児童手当と同じく、国の政策が待てない、そこで、各地方自治体は、自治体によってはどんどんと進めているところもあるわけでして、全体として国として当然これは行なうべきではないか、このように考えるわけでございます。  時間もありませんので、まん中を抜きまして最後に一つだけ伺いたいのですが、老人問題はこれからますます問題が大きくなってまいります。昭和七十年になりますと二千三百万近くの老人人口になるといわれております。はしりだといいますものの、人口的に見ますとアメリカの次の国になってきたわけであります。たいへんな問題をかかえているわけでございますが、老人問題は老人だけではなくて、やはりいろいろな各省庁にまたがった問題でございますので、ちょうど公害が各省庁にふえんしていきましたように、そうしてその結果環境庁というようなものができまして、できましてもなかなか仕事は進まないのが現状でございます。そういうわけで、老人問題もここに老人問題の審議会というような権威のあるものをつくりまして、老人問題全般にわたって研究をし、また着実に手を打っていく、老人が喜んで、安心して老後を生きていける、そういう社会にする、そのための権威ある審議会等をつくって、老人問題を前向きに検討するという御意思はないかどうかを最後に伺いたいと思います。
  65. 内田常雄

    内田国務大臣 ごもっともな御提案と思いますが、幸い今日私どものほうに中央社会福祉審議会というのがございまして、その中に老齢者対策部会というのをつくってございます。これは各方面の権威者がおられますし、また幸い各官庁を代表する方々もお入りになっておられまして、私どもは、私などのような若い者だけの知恵では足りませんので、それらの方々の実は御検討もいただきまして、先般も老齢者対策についての総合的な答申をいただきましたものを、今回の予算にも反映をいたしておるような次第でございますので、その機能を十分生かしてまいりたいと考えております。また昨年九月に、審議会というような範囲にとらわれずに、老後を豊かにする国民会議というようなものを開きまして、若い方々や婦人の方々にもお入りをいただきまして、老人対策を広く取り上げましたこともお耳に入っていると思います。  いずれにいたしましても、老人問題は、今後私どもに課せられた一番大切な社会福祉の対象でございますので、いろいろの面から力を入れてまいりたいと考えるものでございます。
  66. 多田時子

    多田委員 以上で終わりますが、老人問題国民会議等もございました。国民会議に対しては、私いまここに手紙を持っていたのですが、国民会議の様子を知りまして、その後何をやってくれただろうかというような、そういう手紙が参っております。そういうこともありますし、問題は深刻でございますので、前向きにひとつ検討をいただいて、善政をしいていただきたい、このように思うわけでございます。どうもありがとうございました。
  67. 中野四郎

    中野委員長 これにて多田君の質疑は終了いたしました。  次に、田邊誠君。
  68. 田邊誠

    田邊委員 近年わが国の医療は、国民皆保険下におきまして、たいへんな進歩を遂げてきたといわれております。しかし国民は、この医療に対して多くの不満あるいはまた多くの危惧を持っておるのであります。特に、最近政府管掌の健康保険の財政が赤字であるということを盛んに強調してまいりました。しかし私は、ただ単に政管健保の財政がきわめて悪化しているという、こういう観点だけでものをとらえることなく、一体、現在日本に各種の保険が実在いたしておりまするけれども、これらを包括をして見た場合においても、各種の保険財政というのはきわめて悪化の一路をたどっているというのが現状ではないかと思うのであります。政管健保の赤字の中には、政管健保自身が持つ特異な性格もございます。中小企業に働く労働者、中高年齢者が多いという実情、あるいは災害が多いというような現状、いろいろな要素が含まれおりまするけれども、しかし、その前提となるものが他に存在をしていると私は思うわけであります。四十五年度末において一千九百億、このまま放置すれば四十六年度末においては三千億といわれておるのであります。しかしその政管健保だけでなくて、たとえば組合健保においても、近年引き続いて保険料の値上げをいたしておるわけであります。三十九年に約二百十三組合というものが値上げをいたしましたのに端を発しまして、それ以降毎年かなりの組合が料率の引き上げを行なっておるのであります。日雇健保の赤字の状態はすでに御案内のとおりでありまして、これは当然のことながら給付費の四分の三に及ぶものが不足をしているという現状であります。あるいは船員保険は一人当たりの給付費が非常に高いということもございます。各種の共済組合はかなり財政がよいといわれておったのでありまするけれども、これまた保険料率の引き上げを近年行なっておりまするし、あるいは付加給付を実施をすることができないという実情にも立っておるわけであります。国民健康保険についてはすでに御案内のとおり、総体四割五分の国庫負担を行なっておりまするけれども、それでもなおかつ不足をいたしておりまして、地方自治体が一般会計から補てんをするという状態、そうしてまた保険税を引き上げるという状態、これが相続いておるというのは御案内のとおりであります。こういう各種の健康保険の組合財政というものが非常に悪化をしているという、この現状に照らしてみて、この赤字の原因は一体どこにあるのかということを究明することなしに赤字対策を論ずることは、私は、これはナンセンスじゃないかと思うのでありまして、政府はややもすれば、赤字が出たから、これに対して何らかの措置をしなければならぬということをしばしば言っておるのでありますけれども、しからば一体この赤字はどこから出たのかということに対して、私はきょうは大臣に二、三お伺いをしながら論議を進めていきたいというふうに思っておりますので、まずひとつ、基本的に赤字の原因は何であるとお考えでございますか。
  69. 内田常雄

    内田国務大臣 端的に申し上げますと、やはり何といいましても、医療費がふえておることが片方の原因。それはやはり、国民の医療需要が上昇をいたしたり、また医学、医術が進歩をいたしたり、また保険で使う薬などにつきましても、ガンの薬その他、従来の保険では使わせなかったものを最近ではどんどん保険で使える薬として薬価基準の中に取り入れているというようなこともございまして、御承知のように片一方では医療費支払いがふえております。他方におきましては、これに見合う収入でございますが、結局保険料収入あるいは保険料を計算する対象になりまする標準報酬等が、たとえば政管健保について申しましても、ここ五年ほど据え置きになったままでございまして、それが給与の実態に合っておらないというような点もございまして、また、もちろん政府の国庫負担というようなものもここ数年定額のままで据え置かれているというようなこともございまして、差し引きいたしますと、患者一人当たりにつきましての医療支出に対しまして収入が少ないということのために赤字が出ておる、つまり、両面からの赤字が生じているということで、私どもは、やはりこの両面に対策の手を入れなければこの問題は解決しないものと、こういう認識に立っておるものでございます。
  70. 田邊誠

    田邊委員 いま、大臣いろいろな要素を言われましたけれども、私は、国民経済が伸びておるわけでありまするから、そういった点から見て、国民の所得は当然に伸長を来たしておるわけであります。国民の所得が伸長いたしまするならば、医療費の割合というのは、これは比較的な面から見まするならば、幾らか軽減をして当然だろうと思うのであります。ところが、国民所得に対して国民の総医療費の割合というのは、ここ数年間ほとんど変わっておらないという実情であります。すなわち、国民所得が伸びるにつれて、また国民の総医療費も同じ比率でもって伸びておる、こういうことでありまして、これは私は、必ずしも喜ぶべき現象ではないというように思っているわけですが、いかがです。
  71. 内田常雄

    内田国務大臣 仰せのとおり、その辺には私は議論のあるところであると存じます。しかし一方、国民の平均寿命の延びなどにもあらわれておりますように、国民の健康水準というものは、医療保険がこれほどプリベールしない前に比べますと、非常に改善をされております。それは、他の面から申しますと、やはり国民の医療需要が上昇しておることからもわかりますように、国民がやはり自分の健康並びに疾病に対する医療の道を選ぶ選び方も、GNPの増加と申しますか、ただいま田邊さんがおっしゃいましたような経済の伸びとともに、そういう面の健康意識というものも伸びてきていることがやはり医療費の増高にも反映しているとも言えるのではないかと思います。
  72. 田邊誠

    田邊委員 したがって、経済が伸び、国民生活が向上すれば、言うなれば、健康状態がさらに増進をしなければならぬのでありますけれども、しかし現在は非常に疾病が多い、あるいはまた医者にかかる率が多いということをあなたは言っておるんだろうと思うのですけれども、私は、そこで問題になるのは、この医療費のたいへんな増大の中で、国民の負担は一体どうなっておるのか。現在いわゆる保険主義をとっておりますから、国民負担も当然あるわけでありまするけれども、しかしその中で、特に医療保険の中に占める保険料負担並びに患者負担、すなわち国民が直接的に受けるところの負担、この割合は逐年どうなっておりますか。軽減をしておりますか。あるいはまた増大をしておりますか。いかがです。
  73. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほど私が申し述べましたそれは、国民の健康状態は最近改善し、寿命も延びている、その反面、国民が医者にかかったりするような健康管理についての意識も非常に高まっていることが医療費増高の一つの面でもあろうということを実は申し述べたわけであります。それから、それに相対応する保険料の負担が国民所得に対する割合でありますけれども、これももちろん収入を被乗数にいたしまして、それに対して保険料率を掛けてまいっておりますので、また、ある場合には、お話がございましたように保険料率も健康保険組合などでも上げたものがございますので、保険料支出もふえておると思いますけれども国民所得の増加に対する保険料支出の増加割合というものは鋏差状になっているということではない、こういうふうに私は考えております。
  74. 田邊誠

    田邊委員 政府委員から、近年の大体の保険料と患者負担の増加の割合を示してもらいたいと思うのです。
  75. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 総医療費に対する保険者負担分、それから患者負担分等の比率を四十三年度について申し上げますと、四十三年度の総医療費は一兆八千四百億ほどになっておりますが、その負担区分を見ますと、公費負担分が一一・六%、保険者等負担分が六八・二%、患者負担分は二〇・二%となっております。  それで、この保険者等負担分というのは、事業主、被保険者両方の負担分でございまして、この数年間の伸びを見ますと、わずか一%足らずふえております。しかし、これは労災等の事業主負担分の増も含まれておるわけでございます。患者負担分は、二〇・二%は前年に比べて〇・一%ほど落ちております。
  76. 田邊誠

    田邊委員 したがって、ここ五年ぐらいを比べた場合に、全体の総医療費の中で公費負担は、三十八年度一二・九から四十三年度一一・三というように減少いたしておる。それに比べて保険者負担、すなわちこれはもちろん使用者と労働者との折半でありますから、折半の限りにおいてはやはり漸増を示しておる、こういうふうに見なければなりませんし、三十八年の六〇・五%に比べて四十三年は六六・七%、こういうふうに国民の医療に対するところの負担は決して軽減をされていない。むしろ増加の傾向にある、こういうことを私は指摘をできると思うのであります。  さらにお伺いしたい点は、保険料の総額は増加をいたしておりますけれども国民が納める保険料あるいは保険者負担、こういったものに比べて、受けるところの給付は一体どうなっています。給付は、保険料に比べて一体どのくらいの給付を受けていますか。
  77. 内田常雄

    内田国務大臣 総医療費がふえていることを反映をいたしまして、私は保険の給付も当然にふえておるものと考えるものでございます。
  78. 田邊誠

    田邊委員 保険料に比べて被保険者一人当たりの医療給付というのは、いわば下回っておるのであります。政管健保の場合、政府資料によれば、一人当たりの保険料は三万四千八百七円、給付費は三万三千六百三十八円、組合健保についても、一人当たりの保険料四万二千六十九円に比べて、給付費は三万一千八百二十四円、日雇い健保に限って保険料に比べて給付費が高い、こういう状態でありまして、それ以外の各種の保険はすべて保険料よりも給付費は下回っておる。すなわち保険料のほうがこれは上回っておるという実情を私どもは看過することはできないと思う。したがって、私の言いたいのは、いわゆる全体の医療費が伸びておる。したがって、保険料も伸びておるんだというけれども国民の負担に比較をして、いわばかかっている医療費というのは決してそれほどたいへんなものじゃない、こういうことをあなた方に指摘をいたしたかったのでありますけれども、いずれにいたしましても、そういう保険料の増大の状態、これは私ども国民の負担が増大をしておる限りにおいて決して見のがすわけにはいかないというように思っておるのであります。  大臣よくおわかりのとおり、この医療費の増加というものが日本の社会保障の中においてどのくらいの大きなウエートを占めておるか。これを逆にいえば、日本の医療費が非常に大きいために、日本の社会保障の他の部門、先ほどいろいろと御質問があったようでありますけれども、いわゆる所得保障の部面、年金部門、これの立ちおくれを来たしておる一つの原因になっておるのじゃないかと私は思うのでありますけれども、その点に対してはそのとおりですね。
  79. 内田常雄

    内田国務大臣 わが国の社会保障給付費の中で医療給付の割合が非常に大きい点は御指摘のとおりであり、それがまたわが国の社会保障給付における特殊構造のような形をなしております。これは医療給付が不必要に大きいということでは必ずしもないので、ほかの年金などが成熟いたしておらない、また社会福祉がほんとうの意味の社会福祉にならないで、家族制度等がまだ完全に崩壊をいたしておりませんために、家庭福祉というような面でカバーされているところが大きいというような点もございますので、今後数年あるいは十数年の間には年金などが成熟いたしてまいりますので、御指摘の関係はかなり変わってまいると私は考えます。  それから前段のほうの御発言の、医療給付費は保険料支出の伸び方に対してパラレルではない、むしろ伸び方は少ないというお話は、保険における現金給付、分娩費でございますとか休業補償費と申しますか、そういうものを入れて御計算いただければ、また趣が違ってまいるかと思います。
  80. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣が指摘をされた中で、いわゆる医療にかかるところの費用というのが日本の場合非常に多い。諸外国特に西欧諸国の場合は、社会保障の全体の給付費の中でもって、医療の占める割合というのは大体二〇%前後である。日本の場合には五〇%以上を占めておるという状態でありまして、これは年金部門が立ちおくれておることも原因でしょう。また年金部門の充実を来たす上に立って一つの障害になっておるということも事実だろうと思うのです。これは大蔵大臣、そのとおりですね。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 田邊さんの御見解は、私も大体筋はそうだと思います。
  82. 田邊誠

    田邊委員 そういう状態というものをこれからどうやって克服をし改善をしていくかということが、私は政治に課せられた重大な任務であろうと思うのです。したがって、医療費の増大というものに対して、私どもはどうやってその増大を食いとめるか。医療費が逐年上がるけれども、それにはそれなりの要素があります。あとで申し上げますけれども、診療報酬についても、物価の面や人件費の増大や経営の面や、それなりのいろいろな要素がありましょうけれども、しかしなおかつ、この医療費の増大というものが国民生活に与えるところの影響あるいはまた国民経済に与える影響日本の社会保障の今後の充実の面におけるところのいわばネックになっておるという問題これらを考えたときに、医療費の増加というものに対してわれわれは十分な意を払わなければならない。こういうことは当然の成り行きだろうと思うのです。そこで医療費の増加の主要な原因は一体何でありましょうか。
  83. 内田常雄

    内田国務大臣 これは冒頭に申し上げましたように、一般的に申しますと医療需要の増加ということ、あるいは医学、医術の進歩ということもございましょうが、数字で見ます限りにおきましては、やはり薬剤費というようなものが伸びておる、こういうことも申し上げざるを得ないと私は思います。
  84. 田邊誠

    田邊委員 あなたは大ざっぱにそういうふうにに言われましたから、そういう結論になるだろうと思うのですが、私はこの際、やはり正確にものをとらえる必要があると思うのです。何か医療費の増大の中には、国民が好きこのんで医者にかかるのではないか、国民が行かなくてもいいような病気でも医者にかかって医療費がたくさんかさむのじゃないか、いわば保険主義だから保険料を払っている。何か医者にかからなければ損をするではないか、こういう国民の気分があって医者によけいかかるから医療費はふえるんじゃないか、そういうようなことがまことしやかにいわれているのでありますが、それは事実と全く反するということを私は明らかにしなければならぬと思うのであります。  政府の統計によりまして明らかなとおり、政管健保に例をとりましても、一人当たりの受診率、これは四十二年が〇・〇一六八二に比べて四十五年は〇・〇一五九二と、いわば受診率は減っておるのであります。これは入院の場合であります。入院外の場合においても、被保険者本人について見ますならば、四十二年は〇・四〇九二六、四十五年は〇・三九四八六、こういうふうに減っておるのであります。さらに一件当たり一体どのくらい医者にかかっておるのかということを見た場合に、同じく被保険者の入院の場合は一件当たり十九・二一〇日、これは四十二年でありますけれども、四十五年はそれに比べて十九・四一九日ということで、ほとんど同様な状態であります。入院外についても同じく被保険者本人について見れば、四・一四二日が四十二年、四十五年は四・一三四日ということで幾らか減っておる、こういう状態であります。とするならば、いわゆるこの医者にかかる受診率、そしてまた医者にかかった場合におけるところの日数、こういったものの平均はここ四年ばかりの間をとってみても決してふえていない、いなむしろ相対的には減っておるという状態であります。したがって国民がより以上医者にかかる、そして長く医者にかかっている、こういうことではなくて、他に原因があるということが明らかになるだろうと思いますけれども、この点はそのとおりですね。
  85. 内田常雄

    内田国務大臣 お読み上げになりました数字は厚生省の統計だと思いますので、それは間違いないと思います。  ただ人口の全体増加というようなことも考えなければなりませんし、私が申し述べましたのは、国民全体が自分の健康を管理するために、また健康保険が非常に普及をいたしまして、国民皆保険になってまいりましてので、国民全体の医療需要というもの、医療マインドというものは上がっておる、こういうつもりで申し述べたものでございます。またその中身において何がふえているかというと、さっき申したようなこともある、こういうことに御理解をいただければ幸いです。
  86. 田邊誠

    田邊委員 そこで、大臣は先に答弁がありましたけれども、受診率は決して上がっていないということになれば、医療費が非常に増大を来たしておる他の主要な原因というのは、これは医者にかかった場合における診療費の増大ということになるだろうと思うのであります。診療費の増大がやはり医療費の全体の増大を来たしておる主要な原因であるということは、すでに御案内のとおりだろうと思うのであります。これも政府の統計によって明らかなとおり、国民が医者にかかった場合におけるところの診療費、これは非常に大きな増大を来たしておるのであります。被保険者が入院をした場合におけるところの一日当たりの金額は、四十二年において千六百五十二円でありますけれども、四十五年は二千五百六十円という状態であります。入院外の場合においては、四十二年が六百十円、四十五年が九百三十円、ここ四年間に約五〇%の増加を来たしておる、こういうことを私どもは認めなければならない、こういうように思っておるのであります。したがって、国民が医者にかかっておる場合におけるところのこの診療費、これが大きな伸びを来たしているいとうことに医療費の増大の主要な原因があることをあなたは認められますね。
  87. 内田常雄

    内田国務大臣 厚生省の統計のとおりでございます。
  88. 田邊誠

    田邊委員 したがって、ここ十年間に約五倍に及ぶところの診療費の伸びを来たしている、こういう状態が見受けられたのであります。  そこで、この診療費というものがいまの保険の体系の中ではどうなっているかといいますならば、御案内のとおり診療報酬という形で病院や診療所すなわち医師に支払いをされる、こういうことになっておるわけでございますけれども、この診療報酬が昭和三十六年から四十五年までの間に一体どのくらいの引き上げを来たしたか、御説明をいただきたいと思います。
  89. 内田常雄

    内田国務大臣 最近では昨年の二月の適正化と申しますか、引き上げもありました。それから四十二年の暮れごろでございましたか引き上げがございましたが、詳しいことは政府委員から答弁せしめます。
  90. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 最近における診療報酬の改定の経緯を申し上げますと、三十六年七月一日に一二・五%、それから同じく三十六年十二月一日に二・三%、三十八年九月一日に三・七%、四十年一月一日に九・五%、同じく十一月一日に三%、それから四十二年十二月一日に七・六八%、四十五年二月一日に八・七七%、同じく七月一日に〇・九七%さらに加わりまして九・七四%となっております。これは医科だけのものでございます。同時に薬価調査の結果、薬価基準の改定によるダウンというものが行なわれているのが最近の実情でございます。
  91. 田邊誠

    田邊委員 したがって三十六年の引き上げから緊急是正、地域差撤廃等も含めて八回にわたるところの診療費の引き上げがなされておるわけであります。三十六年を一〇〇といたしますならば四十五年一七三・八一%という状態になっておるのであります。したがってこの診療報酬というものに対してやはり何らかのくふう、何らかの合理化が必要であるということを私ども考えていかなければならないと思うわけであります。  私がそのことを言う前に、一体診療報酬というのがほんとうに厳格に支払われておるものでありましょうか。国民は医者にかかりますけれども、一体どうしてこれだけの費用が要ったのか、一部負担はどうしてこれだけの支払いをしなければならぬのかということがわからないのであります。とすればもうただ単なる信用関係であります。商業行為の仲でもって、いわば自分が払った対価に対してどれだけの見返りがあったかということに対するものがわからぬというのは、私は医療の面だけではないかと思うのであります。たとえば私はここに自分の被保険者証を持っておるのでありますけれども、この被保険者証には療養給付記録というのがあります。開始の時期を書いているのもあります。しかし終了年月日が書いてある医者は一人もない。一部負担金が幾らか書いてある医者もない。これは私の秘書のものでありますけれども、全く記載がない。こういう状態であります。そうなってまいりますならば、一体国民は医者にかかるけれども、ほんとうに払っている費用というのは正しいものか、正当なものかどうかというところの判断ができないのが現在の保険の仕組みであり、支払い方式でございます。そうなってまいりまするならば、たよるのは、政府がこれに対して、厳格な監査をいたしているかどうかということが、ただ一つのたよりだろうと私は思うのであります。診療報酬は厳格に支払われているのかどうかということに対する手だてを講ずるとすれば、政府がこれに対して厳正な監査を行なっているということ以外にはないだろうと思うのでありますけれども、これに対して一体どういうふうな監査をやられてきたのか、これに対するところのお答えをひとついただきたいと思うのであります。
  92. 内田常雄

    内田国務大臣 社会保険でございますので、御承知のとおり診療報酬の一定の組み立て、リストがございます。それに基づきまして診療担当機関は計算をいたしまして、毎月それを社会保険診療報酬支払基金、あるいはまた国民保険の場合には国民健康保険連合会のほうに支払い請求を一定の方式、レセプトという方式があるようでございますが、それによって出しますと、それらの基金ないし連合会はそれを審査いたしまして、適正であるという判断のもとに診療担当機関に支払われた金額を送金する、不審のあります場合には再調査もいたす、こういう仕組みでございます。しかし、それだけではございませんので、間違いなどもあり得ないように、支払い機関の調査、審査のほか、政府関係におきましても支払い請求につきましての指導とか、あるいはまた、指導の状況によりましては、実地の監査というようなものもやるたてまえになっておりまして、まあ端的に申しますと、毎年監査の結果、不適正な請求が行なわれたというような、一部にまことに好ましからざる事態も生じておりますことは御承知のとおりでございます。したがって、ただいま田邊さんから御質問がございますようなことがないように、私どもも診療担当機関を十分に指導し、また支払基金も指導をいたしまして、万全を期すべきものであると考えております。
  93. 田邊誠

    田邊委員 それで私は二、三提言をいたしたいのであります。  一つは、先ほど私が申し上げたとおり、国民患者自分のかかった費用の内容を知ることができない。これは現在の自由競争、自由経済のもとでは私はとらざるところじゃないかと思うのです。そこで、社会保障制度審議会は、昨年の十二月十九日に、政府に対して医療保険制度に対する意見を述べておりまするけれども、その中で、国民のそういった疑念に対して、支払基金の請求明細書か、あるいは患者に対するところの領収書の官給を考えたらどうかという提案をいたしたのであります。これに対しては日本医師会からたいへんな批判がございます。この官給明細書によって医師を罪人扱いにするんじゃないか、こんなことを建議するところの社会保障制度審議会はなくなったほうがよろしいという、そういう実は批判がございます。しかし私は、国民の側からいえば、何も医師を罪人扱いするものでもないし、そしてまた医師の倫理を私どもは決してゆがめて見ようとするものじゃないと思うのです。当然に私は国民の要求ではないかと思うのでありまして、現在あるところの国民の疑念、国民の不安、こういったものを解消する一つの手だてとして、私はこの明細書なり領収書なりというものを発行すること、何ら差しつかえないじゃないかというふうに思いまするけれども、こういう措置をとるところの御用意はございませんか。
  94. 内田常雄

    内田国務大臣 田邊さんの御指摘のことは、最近私どもも他の方面からしばしば耳にするところでございます。また仰せのとおり昨年十二月十九日、今回の法案提出に関連をいたしまして、社会保障制度審議会意見を求めました際の意見書にも、仰せのようなことについての考え方の示唆もございますので、私どもは、これはいま起こった問題ではございません、従来から取り上げられてきておる問題でもありますので、長年の懸案でもあると考えまして、前向きに処理をいたしてまいる所存でございます。
  95. 田邊誠

    田邊委員 もう一つの私の提案は、やはり水増し請求なり濃厚診療なりというものが行なわれておるのじゃないかという国民の不安を除去する必要があると思うのです。私は医師の大部分はもちろん良心的に仕事をやられておると思うのであります。したがって、大部分の良心的な医師から見れば、こういった不正請求をしたり水増し請求をするところの医師があることはたいへんな迷惑ではないかと思っておるのであります。そういう意味合いからいっても、この不正請求等に対しては厳正な監査が必要である、しかも徹底した監査が必要である、こういうふうに思っておるのでありまするけれども、遺憾ながら厚生省は現在まで、日本医師会等のいろいろな話し合いもありまして、厳正な監査を行なうことができませんでした。三十五年の医師会との話し合いによって、事前の指導をすることがその主目的であるということがいわれてまいったのであります。しかしそれだけではたしてこのことが十分足れりとするかといえば、私は決してそうでないと思っておるのでありまして、この際こういった不正を徹底的になくす、そして医師の倫理感をほんとうに国民の前に明らかにする、こういう立場からいって、この不正請求に対するところの徹底した監査をする必要がある、こういうふうに私は考えるのであります。  この二月八日厚生省は保険局長通達でもって、従前の不正請求に対する指導及び監査を改めて、今後は厳重な監査を行なうという通達を出しておるのでありまするが、私はこのことを聞きまして、一見、厚生省よくやったりと実は思ったのであります。しかしこの通達の中身を拝見をいたしまして、これはいわば羊頭を掲げて狗肉を売るの策ではないかと思わざるを得なかったのであります。この新しい通達を見ましても、いままでの指導及び監査と実質的には何らの変更がない。「関係団体と十分連絡のうえ、その協力を得て円滑に実施されたい。」そして「本件に関しては、さきに日本医師会及び日本歯科医師会に対してこの方針を連絡し、両団体においてもその趣旨にそって積極的に会員の指導にあたることとしているので申し添える。」ということが書いてございまするが、不当の事実があった場合には、一定期間継続して指導する。そしてなおかつ改善されないときには監査を行なう。不正の事実があった場合には、必要があると認められるときには監査を行なう。こういうふうになっておるのであります。そして医療課長のこれに付随するところの通達を見ますると、この不当の事実ということに対しては、著しく平均点数が高くて、一般スクリーングを越えた検査を繰り返して行なっているものもあるので、こういった不当なものに対しては、積極的な指導をやっても改善をされない場合に、いわば抜き打ち監査等を行なうのだということが実はいわれておるのであります。  したがって、いままでの監査方針と実質的に変わっておらない、これはいわばざる的な通達である、こういうふうに考えざるを得ないのでありまして、そういったざるで水をすくうような監査の方法でなくて、ほんとうに国民が納得をする不正を正すという、そういう監査をぜひとも実行する必要がある、このように思っておるのであります。一月の十五日に厚生省が発表したところでは、指導をいたしました六千百八十五件のうち九十三件、一億三千八百九十二万円、これだけの不正が発見できた、こういうのでありまして、ざるで水をすくってもこれだけのものがかかるのでありまするから、ほんとうに不正を正すという決意と具体的な監査が励行されまするならば、私はさらにこの事実は国民の前に大きく明らかになるのではないかというように思っておるわけでありますけれども、そういう厳正な監査を行なうところの決意と具体的な方法がございますか。
  96. 内田常雄

    内田国務大臣 いま田邊さんから御指摘がありましたような点を改善いたしますために、私はこの際断固として二月八日の通達を関係方面に出したわけでございます。これは私が断固としてこの通達を出したばかりじゃなしに、言うまでもなく、世間の批判もかなりきびしいものもございますし、また医療担当機関の団体でも、このことについては非常な考慮をせられているところがございまして、場合によれば、そういう医師があった場合には、医師会からも除名をするというような強い意思表明もなされておるところでございます。このことは、私ども厚生省だけでやろうと思っても、なかなかでき得ないところを、世論の支持に支えられ、またその対象となる医療担当機関の団体も前向きでそういう姿勢を示されてまいってきておりますので、私は、かなり田邊さんの御期待あるいは国民期待にも沿い得るような行動が今後できるものと思います。ただこの監査はだれがするかと申しますと、結局やはり医師の経歴を持つ人でなければできません。したがって、今日診療機関というようなものが、病院を含めますと、九万近い、数万の医療機関があるわけでありますが、それらに対しまして、たとえば国税庁がやっておりますような査察というような制度をとることはできませんし、また私は、そういうような方法をとることがいまの事態で決して適当であるとも思いませんので、その辺をも十分考えまして、田邊さんからの御批判や御鞭撻にもこたえるような措置をとってまいるつもりでございます。
  97. 田邊誠

    田邊委員 一体この監査をする医療専門官は幾人おいでですか。四十六年度幾人要求しておりますか。
  98. 内田常雄

    内田国務大臣 定員は百人あまりだと記憶いたしておりますけれども、何しろ実際なり手がない、こういう状況でございます。これは医師の専門官でなければならない。そこでかなりの欠員があるようでございますので、現員が九十人前後しかいないように私は記憶をいたしております。これは状況によってはふやすような努力もいたすつもりでおります。
  99. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 現員は七十八名でございます。
  100. 田邊誠

    田邊委員 こんな八十人足らずの医療専門官でもって、何万とあるところの医療機関に対するところの監査がはたして徹底して行なわれることができますか。あなたは十分御趣旨に沿ってやるようなことをおっしゃったけれども現実にはできないじゃありませんか。こんな通達を出しても、一体来年度の予算でもって——人が足らぬ、それは待遇の面や身分の面、いろいろな面を考慮すれば、これはまた方法があるはずであります。そういった具体的な、いわばあなたの決意を実行に移すような方法をとっておいでですか。とっていないじゃありませんか。どうですか。
  101. 内田常雄

    内田国務大臣 人をふやす問題は、御指摘のように、なかなかむずかしい問題でございますが、しかしやる気がなければ人もふやせないと思いますので、私は、やる気をもちまして人もふやす、そういう努力もいたしたい。またそこにおられる方の身分の問題などもございまして、それらの面につきましても、それらの職にある方が十分前向きでやれるような、そういう身分や処遇などにつきましても、頭数のほかにもいろいろ実は考えておるものがございます。
  102. 田邊誠

    田邊委員 大蔵大臣、お聞きのとおりでありまして、いまの状態ではいかに力んでも、実際には監査が厳正に、しかも徹底して行なわれるという状態にない。したがって、これは私はやはり医療の向上を妨げる一つの原因ではないかと思うのです。私は、やはり医療担当者がこういった一部の不正者に対するところの大きな怒りを持っておると思うわけでありますから、日本の医療を向上させる一つの手だてとしてせっかくそういう措置をとろうとするならば、これに対する具体的な裏づけを大蔵省としても十分配慮してもらいたいというように思いますが、どうですか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 十分厚生大臣と相談いたします。
  104. 田邊誠

    田邊委員 時間もございませんから次に進みます。  大蔵大臣、ついでですけれども、脱税をあなたのほうでもっていろいろ調べていらっしゃるのだが、医師の脱税は非常に多いのですね、非常に残念なことに。この間私、地元の新聞を見ましたら、あなたの出身の高崎でもって脱税をしている人の中のトップがお医者さんである、こういう実は新聞も出ておるわけであります。そういった点から見ても、私は医師の所得は外国に比べて決して高いと思いません。まだまだいろいろと待遇の面で考えなければならぬ点があります。いまの神風診療あるいは深夜診療、いろいろと肉体的労働についても考えなければならぬ点があります。しかし、それだからといって税を納めなくていい、脱税してよろしいということはないわけでありますから、この不正請求によるところの一部の医師のそういう倫理感の低下とあわせて、この脱税行為に対してもやはり同じような立場で、医療の向上に資するためにひとつ徹底した査察をしてもらわなければならぬ、こういうように思っていますが、いかがです。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 医師に対しましては、御承知のように七二%の必要経費控除があるのです。それにもかかわらず申告の記載漏れがある、ずいぶん新聞等をにぎわす、私はまことに残念に存じます。これは医師の皆さんに良識を持っていただく、これが最大の問題だと思いますけれども、税務当局といたしましても、この上とも厳重に調査いたしていきたい、かように考えます。
  106. 田邊誠

    田邊委員 診療費の中でもって、いま言った診療報酬の面においてわれわれはいろいろとくふうをしなければならぬということを申し上げたのでありますけれども、特にさきに大臣からの答弁がありましたとおり、保険医療費の中において薬剤の占める割合というものが年々増加していることは御案内のとおりであります。これはたびたび取り上げられている問題ですから、私は多くをこの際言うことを避けたいと思います。しかし、この医薬品の急増というのは、私は政府のこれに対するところのいわば無方針というものが今日これを招いた主要な原因であることを指摘しなければならぬと思います。実際に病院や診療所で消費しているところの薬剤というものは、これは私は特殊なものを除けば千ぐらいではないかと実は思うのでありますけれども、いわば必要のないもの、あるいは効果がないもの、有害なもの、こういったものに対して、これを整理する段階に来ていると私は思うのであります。アメリカのFDAが三百六十九を整理した、こういう発表がつい最近あったことは御案内のとおりでございますけれども、このアメリカの有害でありあるいは効果のないものに対するところの措置をとったことに関連をいたしまして、政府はこの際これらのいわば有効でないもの、有害なものに対して整理をするということが必要ではないかと思いますけれども、そういう御用意はございますか。
  107. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、薬の問題につきましては田邊さんと同じ感じを持つものでございます。これは私はかりでなしに、きょうはここに総理大臣おられませんが、薬の問題を同じような意味で総理大臣も常に厚生大臣の私に御指示がございますので、私は薬全体につきましても、また医家向け薬価基準に載っておりまする何千種かの薬につきましても、やはり前向きで再検討いたしまして、それで安全性、効能はもちろん再評価をすると同時に、ないほうがいい薬、なくても済む薬というようなものは整理をして、そして国民に安心してもらうことがいい、かように考えるものでございます。
  108. 田邊誠

    田邊委員 すでにアメリカのFDAの発表は十一月の末にあったわけでありまして、その直後に私はこの再検討を厚生省に依頼をしたという質問をいたしておったのでありますけれども、その後一向に進まないのでありまして、やはりこういったできることを早くやることが、この医療問題に対するところの政府の姿勢を国民に示すことになるだろう、私はこういうふうに思っておるわけでありますから、そういったことについては早急な措置をしてもらわなければならぬと思います。  それから薬価の問題については、しばしば当委員会においても取り上げられたと思うのでありますけれども、これに対する明確なお答えがございませんね。過大宣伝、不当広告に対する取り締まりはやっている。しかし医師向け以外の大衆保健薬についても、いまだに不当広告は横行していると見なければならないわけであります。これの取り締まりは政府考え方によってはさらに一歩を進めることができるだろうというふうに私は思っておるのであります。しかし保険医療に対するところのこの薬の広告は一応禁止をされた。これによって原価は幾らか下がりますね。下がるはずであります。  それからその次に現品の添付を、これも政府みずからやったようなことを言いまするけれども、実際には中医協の意見があって薬価基準からは除外しようじゃないか、こういう昨年十二月十四日の意見があったことに端を発して政府はようやく重い腰を上げたということは御案内のとおりであります。この現品の添付を禁止することによって原価が下がるはずでございますね。一〇〇%の現品添付が禁止になったから半分に下がるなどと、私は簡単に言いません。種別についても、あるいは業種についても、いろいろ中身はあるわけですから、単純な計算はできませんけれども、しかし薬の現状を洗い直すならば、これに対するところの原価は下げられるはずであります。  もう一つ、昨年の社労委員会でも私は質問をいたしましたけれども、リベートがたくさん行なわれておるのですね。これによって起こるところの贈収賄事件が発覚をいたしましたね。セールスが交際費と称して持っている手持ち金の中でもって、公立病院、診療所に対しての、あるいは事務長なり薬剤の長なりに対しリベートをやっておる。これを一体どうやっていますか。これに対してあなた方はさっき申し上げたようにいわば、ざるの監査をやっておるからこれがなかなか摘発できない、こういう現状ではないかと私は思うのです。  以上、私が申し上げた三つばかりの、過大宣伝をやめること、現品添付をやめたこと、そしてこれらのリベートに対して取り締まり当局を含めて徹底的な措置をすること、そういう中でもって薬の原価は下がるはずであります。したがって、この二月以降において中医協等でもって検討いたしますところの薬価基準の引き下げについては、従前のような、ただ単に薬の生産の合理化によるところの三%程度の引き下げではなくて、以上私が申し上げた三つばかりの要素を含めた大幅な薬価基準の引き下げが当然あってしかるべきものである、こういうふうに私は考えておりますけれども、あなたのほうではそういう考え方がおありですか。
  109. 内田常雄

    内田国務大臣 薬の過大広告等につきましては、これもたいへん御批判があることでございますので、もう昨年、特に五月でございましたか、法律にもこれを抑制する規定があることはもちろん御承知でございましょうが、それを基礎として、一そう自粛、取締まりの通達をいたしました。また業者自身も過大広告自制綱領のようなものをつくられまして自制をいたしたようでありますが、厚生省一つの資料——その通達を出します以前、五月ごろの製薬企業の新聞広告の状況と、それから九月ごろの広告とを比べましたところが、新聞広告のスペースもまた費用も三分の一ぐらいになった、こういう資料もございますので、それはかなり進んでおると思います。このごろ私も注意をいたして見ておりますけれども、かなり広告も自制されておるとは思いますが、なお必要なる規制は指導いたしてまいりたいと思います。  それから現品添付をやめさせたことにつきましては、当然それは値下げに影響があるものと私は考えますので、今度二月、三月に始めます薬価調査には、その結論が当然反映されるものと、私は考えております。また現に製薬会社等が値下げの率等も公表したものもかなりあることは御承知のとおりでございます。  それから、リベートにつきましては、当該医療機関の保険勘定に入ってくるリベートもあるのかもしれませんが、御指摘になりましたのは保険に入ってくるリベートではなしに、私立病院でございましたか、そういうところの職員の個人的なポケットに入るようなリベートを受け取ったというような事件でございまして、保険勘定には直接影響がないかもしれませんけれども、しかしそういうこともいろいろな批判の種になりますので、それらも防ぐような指導も私どもは十分やってまいらなければならないと思います。
  110. 田邊誠

    田邊委員 したがって薬価基準は相当な引き下げができる、こういう認識の上に立っていいですね。あわせて大衆保健薬についても、二重価格が行なわれておる現状の中でもって、これが引き下げについて政府が当然業界を指導する、こういう責任があると思いまするけれども、いかがです。
  111. 内田常雄

    内田国務大臣 薬価基準は二月、三月に調査をやるはずでございますから、その結論が出るのを待っております。当然私は下がってまいることと思います。また大衆薬等につきましては、二重価格等の問題につきましては再販維持契約にかかる問題が多うございまして、これは公正取引委員会でも手をつけておりますので、その方面とも協力をして適正な結果を得たいと思っております。
  112. 田邊誠

    田邊委員 再販制度の改善の問題については、いろいろ意見がありますけれども、この際は省きますが、当然これに対する改善の考え方をとるべきであるというように私は考えますし、相当価格の引き下げができると思いますけれども公正取引委員会はこれを検討する用意がございますか。
  113. 谷村裕

    ○谷村政府委員 ただいま厚生大臣が御答弁になりましたとおりでありまして、私ども立場からは、再販契約が消費者の利益をそこなってはならないという形で考えておりますので、たとえば医家向けにおいて相当の経費節減の結果薬価が下がるというふうなことがあった場合に、大衆薬あるいは家庭向けの同じようなものがそのままに放置されるというようなことがあってはならないことだ、私どもとしてはかように考えております。
  114. 田邊誠

    田邊委員 いろいろと申し上げたい点がございますが、先に進みますので御了承いただきたいのですが、私が簡単にいま申し上げたとおり、医療費はかなり上がっておる、しかもその医療費の中で値上げの主要な原因はいわゆる診療費が上がっていることであります。特にその中で考慮しなければならぬことは、診療報酬の体系についていろいろ考えなければならぬ、もう一つは薬価の基準を相当程度引き下げるところの必要がある。それぞれ政府からこれに対するところの対処のしかたについての御答弁がありました。したがって私はそういったものを含めて今後検討することがまず前提でなければならぬと思います。特に診療報酬体系の支払い方式、これについても私は当然手をつけなければならない段階に来たのではないかと思います。点数単価の問題、一点単価によるいわゆる点数制の問題についても再検討しなければならぬ時期が来ておるのじゃないかと思うのであります。あるいは当然それに見合って技術料の再評価、こういうことも言わなければならぬと思います。現在の、いわば施術の難易よりも物の大きさによって点数が高くなってくる、こういう外形的な要素によって左右される現在の診療報酬体系というものを、われわれは当然今後改善をはかっていかなければならない段階に来ているのじゃないかと思うのでありまして、これらの医療費の現状、そして診療報酬体系の現状の改善、こういったものがまず手をつけられることが至当でありまするし、それを手をつけた過程において、当然その支払い方式の検討と、医薬分業へのワンステップを踏むという必要性が出てくるのではないかと思うのであります。私はこれらの論議をきょうはできないことを残念に思いまするけれども、そういうことについて政府はいま社会保障制度審議会なり社会保険審議会抜本改正一つの中身として審議をわずらわしているのが現状ではないかと思いまするけれども、私はいままでの論議を通じて、当然これが国民に対して政府がなすべき前提的な条件である、こういうふうに思っておるのであります。それがなし得まするならば、それと並行して病院診療所の適正配置の問題、機能分離の問題、あるいは医学教育の問題看護婦不足をどうするかという問題、専門医制度の問題等、医療の将来に向けるところの展望がその時点から開けてくる、こういうふうに私は認識をいたしまするけれども、その認識は誤りがございますかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  115. 内田常雄

    内田国務大臣 おっしゃるとおりであると思います。私どもは今度の国会に健康保険制度改正案を提案をいたしますが、それはあくまでも車の一輪でありまして、もう一つの輪はおっしゃられるとおり診療報酬の適正化の問題でありますとか、さらにそれの外にありまする国民健康管理についての諸制度、そういうような問題も、これをやはり適正化、合理化してこそ初めて私は医療保険の改正というものも生きてまいるものだと思います。しかし幸いこれにつきましては関係の審議会でも御意見がいろいろ出されておりますし、また中医協などにおきましても、診療報酬の合理化のために、これは私は薬だけ締め上げればいいというものではなしに、いま田邊さんがおっしゃるように、やはり技術料の適正評価というようなものは、私は当然大きく取り上げられてしかるべきものだと思うのでございますので、そういう検討項目を持ち寄っておりますので、それらにつきましても、私は微力ではありますけれども、できる限り努力を尽くしてまいる所存でございます。
  116. 田邊誠

    田邊委員 したがって、いま私との質疑応答の中で明らかなとおり、この医療保険制度、それを含めた医療制度の抜本的な改正に向かって政府は勇断をもってやるべきである、これは政府の責任であることは御案内のとおりであります。社会保障制度審議会は、抜本改正に対する政府諮問を受けて鋭意検討いたしておりまするけれども、十二月の十九日にそれに対するところの中間的な意見を申し述べていることは御案内のとおりであります。この制度審議会意見を述べている中には、「根本的に改正すべきことを繰り返し提言してきた。しかし、これに対する成果に何ら見るべきものはなく、政管健保に生ずる毎年度の赤字の穴埋めをどうするかというその場しのぎの処理の継続に終始して今日の状態を招いてしまった」こういうふうに指摘をいたしておるのであります。そうなってまいりますならば、当然この制度審議会がいっておるように、この根本的な問題の処理、そういったものなしに財政対策に目を奪われていることは、これはきわめて誤りである、こういう指摘に対してあなた方は十分こたえるだけの政治責任があると私は思うのでありますけれども、この制度審議会の中間的な意見に対してあなたのほうはこの線に沿って具体的な作業を進める、こういうふうに認識をしてよろしゅうございますか。
  117. 内田常雄

    内田国務大臣 十二月十九日の制度審議会からの意見書は、私は常に持っておりまして、もう赤筋を実は一ぱい引いてございます。ぜひこれは、私はまともに、正面に受けて、そうしてこれの実現に向かって努力をいす所存でございます。
  118. 田邊誠

    田邊委員 あなたはそういうふうに言うけれども、具体的な実行がなくちゃいけません。薬価基準の問題にしても、あるいは不正請求の監査の厳正化にいたしましても、取り上げられる具体的な一つ一つの問題があるのです。私はさらに先のほうまでやれというのじゃありません。当面やれるところの、手をつけられる問題を手をつけなさいといっておるのです。そういうことについては何ら手をつけないで、何ら具体的な方策はなしに、いわゆる財政対策だけに目を奪われて、その具体的な提案をしようというところに、政府の姿勢の誤りを私は国民の名において指摘をせざるを得ないと思うのであります。  きょうは十六日であります。さきの予算委員会において、大原委員質問に対して厚生大臣は、十六日までには両審議会答申を得て、政府考えているところの具体的な法案を提案をする、こういうことになっておるのでありますけれども、残念なことに、今日ただいまの時点において、答申を得て政府が法案を提出するところの段階に来ておらない、こういうふうに私は認識をいたしておりますけれども、あなたの言うところのいわゆる定時発車はできなかった、こういうふうに私は認識をせざるを得ません。そのとおりですね。
  119. 内田常雄

    内田国務大臣 まず前段の御意見でございますが、審査、監査を厳重にいたすことにつきましても、御批判はございましたけれども、先般ああいう通達も出し、関係方面とも打ち合わせを進めておりますことも事実でございます。また、中医協の場で持ち出されたことでございますけれども、薬についての現品添付というようなものもやめさせまして、それを値引きに反映させることもやっております。  それから、きょうは十六日でございまして、きょうじゅうには審議会の御答申をいただいて法律案国会提出をする、こう申し上げましたことは、その線で努力をいたしておるわけでございまして、私は見切り発車もいたしませんで、ほんとうに審議会に誠意を尽くして御意見を承り、きょうじゅうには御答申もいただけると期待をいたしておりますので、国会に直ちにその答申を受けて提案をいたす所存でございますので、私ども立場もぜひひとつ御理解をいただきとうございます。
  120. 田邊誠

    田邊委員 これが一週間前、十日前の話であれば、きょう答申を得て法案を提出することを期待するというあなたの答弁も、一応うなづけるかもしれない。しかし十六日の時点で、すでに両審議会答申が得られるかどうかという判断はできるでしょう。できますか。十六日に両審議会答申が得られますか、どうですか。
  121. 内田常雄

    内田国務大臣 両審議会とも政府の関係機関でございまして、政府である私から、この法律案国会に提案をして国会でいろいろ御審議をいただきたいものであるから、また国会とのお約束もあることを申し述べまして、そうして十六日じゅうの答申をお願いをいたしておりますので、先ほども申しましたように、皆さんたいへんもののわかった委員の方々でおられますので、私はきょうじゅうには御答申もいただけるものと期待をいたしておりまして、そのとおりその努力をいたしております。
  122. 田邊誠

    田邊委員 これは、両審議会答申を出し得ない理由がありますね、出し得ない理由がありましょう。なぜかといえば、先ほど私が申し上げたとおり、制度審議会抜本改正に対するところの政府考え方に対し痛烈な批判をしておる。したがって中間的な意見を昨年の十二月に吐いている。この結論を両方の審議会が得るというそういう作業の経過の中でもって、審議会意見と全く違う、当面を糊塗するところのいわゆる財政対策赤字対策のみに限った諮問をしているから、これは審議が長引くのは当然のことでしょう。そのことをあなたのほうでは予測をしないで、十六日には、大みえを切って、定時発車ができるといった、そういったいわば見通しのなさ、あなたの無責任な態度、これは私は許されるべきではない、こういうように思っているのでありますが、現実には社会保険審議会はこの夕方から開かれる。社会保障制度審議会はそれを受けて、それでもってまた開かれる。こういう事実の上に立って見れば、今日中に両審議会答申を得て法案を提出することは事実上不可能でしょう。いまあなたがそういう強弁をしても、できますか。あなたの見通しはどうですか。
  123. 内田常雄

    内田国務大臣 たびたび御指摘があります十二月十九日の意見書というものは、私どもが今回国会に提案をいたそうといたしておりまする健康保険法改正内容として、そして御意見をその当時、すでに昨年のうちから承っております。それに対しまして、その考え方についての御批判でございますので、これは形式的には答申ではございませんけれども、この審議会からはこういう御意見をいただいておるわけでございますので、おそらくはこの御意見に沿った答申を私はきょうじゅうにいただけるものと考える、こういうわけでございます。しこうしてこの意見書の中には、御指摘になりましたような御批判もございますけれども政府考え方もいたし方ないというようなふうにお述べになっておるところもございますので、私はここにありますように、こんなにいろいろ書いてある、筋も引いてあるわけでありますが、この線で答申というような形になりますか、昨晩も審議会は詰めをやっていただきましたので、きょうじゅうには私は最後の大詰めということで答申をいただけるものと考えておりますし、また、きょうこれからでも私は大いに努力をいたしまして、定時発車ということにいたしたい、こういうふうに努力をいたします。
  124. 中野四郎

    中野委員長 この際、大原君より関連の発言を求められておりまするので、田邊君の時間内にてこれを許します。大原君。
  125. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣、官房長官、大蔵大臣、私はくどくどと繰り返しませんけれども、今日までの経過で、これまで押し詰まって、しかも重要な予算関係法律案が出ていないというのは、これは総合対策について政府の方針がきまっていないからです。しかも健康保険法案は田邊委員が指摘をいたしておりまするように、患者の一部負担が入院、通院においてふえるだけではないのです。弾力条項という千分の七十からあるいは千分の八十、言うなれば私どもからいえば歯どめのないような、白紙委任状をこの保険庁長官、保険料負担にまかしておるわけだ、そういうことはいままでの特例法の経過からいって絶対に了承できない、そういうことで議論になっておるのであって、私どもは事をかまえて反対しているのではない。そういう点に対する認識が足らぬのではないか。したがって私はいまの田邊委員質問に対しまして、厚生大臣、十六日の現在の段階で出ていない、これから出る見通しは私はないと思う。こういう重要問題についていまのような政府の態度では——そういう問題について多田委員質問に対しては、両審議会答申を得て、こういうことでいっているけれども社会保障制度審議会の日程等はそういうふうにはなっていないということを私ども新聞等で承知しておる。そういうことで、一時的なその場のがれのことばをもってこの場をしのいで、そして審議を何とか進めていこうというようなことは、いままでの経過から考えて、法律の精神やあるいは国会立場から、了承できない。したがって、私はひとつ聞いてみるけれども厚生大臣、あなたはもし出なかったら腹切りますか。責任とりますか。国会に対して責任とりますか。いかがですか。
  126. 内田常雄

    内田国務大臣 先般も申し述べましたように、この審議会の御意向は、田邊さんが御引用なさいました十二月十九日の意見書にいろいろ述べてございますので、わかっておるわけでありますから、私が悪い人間でございますと、見切り発車ということにして国会に法案を提出するかもしれませんが、私はこの前大原さんからも、見切り発車はすべからず、こういう御注意がございましたので、これまでほんとうにがまんをして、そうして十分説明を尽くして見切り発車をしないでまいりました。しかり、しこうして国会にお約束をしましたのは、本日の十六日までに何とかひとつ提出をする、こう申し上げておりますので、委曲を尽くしまして定時発車ということで委員の皆さま方にもお話を申し上げております。本来は健康保険法改正でございまして、いま大原さん、田邊さんお二人から御批判もありましたようにいろいろな見方からすればいろいろな批判の点も私は含んでおると思いますので、当然国会委員会でいろいろな御審議や御批判をいただかなければならないことを覚悟もいたしておりますので、審議会のほうではそういう事情も御承知くださっておりますので、この辺で国会送りということで、あとは国会でいろいろな面から批判をしていただくということで御理解がいただけて、きょうじゅうには答申もいただける。私も微力でありますけれども、そういう努力も、これから夜にかりにかかりましても尽くしてまいる、こういう次第でございますので、ぜひその辺で御了承いただきとうございます。
  127. 大原亨

    ○大原委員 この四日の総括質問の際に、あなたは見切り発車はしない、これは議事録でここにありますが、これはこの提出いたしました法律案の中身について議論するひまがないが、弾力条項その他重要な法律案から関係いたしましても、社会保険審議会制度審議会は、これは無視できないような仕組みになっているわけです。これは税金と同じですから。そういうことですから、こういうことに関係をいたしまして見切り発車をしないというふうにあなたは言明されたことは賢明であると思う。それと、それを受けて理事会におきまして抜本改正についての責任ある法律についての構想を出せ、こういう要求に対しましては、政府はここへ出しておるのですか。これは全く抜本改正にも何にもなってない、この法律案は。それと一緒に木村官房副長官は政府を代表いたしまして理事会において本委員会報告になりましたが、社会保険審議会等の答申結論を得て、そして法律案を十六日に出します、こういうことを言っておる。私どもはけさの御答弁からいいましても両審議会、当然社会保障制度審議会を含めて専門審議会社会保険審議会制度審議会、そういうものの手続を経て十分議論を尽くして、コンセンサスを得てやるということであると、私ども思っておる。しかし一部伝えるところによれば、労働者側だけとか一方だけ、事業主も反対しておった。社会保障制度審議会は昨年十二月に抜本改正についての意見を出しておる。政府案に対しての意見を出しておる。ですからすべて審議会における意見国会における議論はかなり煮詰まっておるわけであります。尽きておるわけです。いまの段階になって、きょう晩までに出す出すというようなことだけの言明をもって、私どもはじんぜんと予算審議を進めていくわけにいかぬじゃないですか。あなたが腹をかけて、責任をもって出す、こういうことについてもう少し具体的な裏づけのある御答弁をいただかなければ、私はこの問題については、この予算審議を円滑に進めるわけにいかない。私どもは事をかまえてどうこうするんじゃない。こういう機会に議論を尽くして政府の責任ある見解を求める。そういうことなしに予算審議を進めるわけにはいかぬし、政策をほんとうにきちっとするわけにいかぬ、いままでの経過から。昭和四十年以来何回政府答弁した。総理大臣答弁したんだ。抜本改正の必要性を強調し、そしてそれをやりますということを何十回約束したんだ。それであるのになおかつぬけぬけとこういうをやっているから私どもは信用できない。ですから、こういう段階において、いまのこの段階において、これらの問題を踏まえて審議会もさることながら国会国会独自の権威において、政府はいままでの経過の上から、政府は責任あるこれに対処する統一見解というか方針をきちっとすることが、私はこの事態を建設的に解決する不可欠の条件であると思う。決してごねていうことじゃない。私どもは事をかまえてやっているんじゃない。正論を尽くしておるんだ。そういう点において私はいままでの厚生大臣答弁では納得できない。したがってこの問題を踏まえて、いままでの議論を踏まえて、私どもが納得できるような政府の見解を求めたいと思います。この点につきましてはいま質疑応答を繰り返すだけではだめでありますから、十分理事会において議論をされて、それで政府のきちっとした見解を私どもが了承できるようなそういう態勢で前に進めていきたい、こういうことですから、私どもは議事進行上の意見と動議を提出いたしたいと思います。
  128. 中野四郎

    中野委員長 これが取り扱いにつきましては、直ちに理事懇談会を開き御協議をいたしたいと存じます。  午後は本会議散会後再開することとして、この際、暫時休憩をいたします。    午後一時一分休憩      ————◇—————    午後三時四十五分開議
  129. 坪川信三

    ○坪川委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。田邊誠君。
  130. 田邊誠

    田邊委員 先ほども質問いたしましたとおり、今回の健保改正案については、抜本改正に向ける両審議会審議中に、単なる赤字対策としてこれが諮問をいたしましたという関係から、当然審議会がその審議について十分な時間をほしいというのは理の当然であります。  したがって、今日ただいままで両審議会答申を得ることができない、こういう形であります。さきの予算委員会における内田厚生大臣答弁は、そういった事態を全く予測することなく、安易に十六日には定時発車をするというような、そういうその場限りのいわば答弁であったことが裏書きをされたと思うのであります。  したがって、今日この事態の中で、政府としては、この改正案についてはあくまでも両審議会の正確な答申を得て国会に本日中に提案をする、こういうふうに認識をしていいかどうか、内田厚生大臣から答弁を求めたいと思います。
  131. 内田常雄

    内田国務大臣 両審議会に対しましては、十分審議を尽くしていただいておりますので、時間をとっておるわけでございますが、先般も申しましたように、これまで見切り発車もせずに私も十分誠意を尽くしておりますので、きょうじゅには御答申もいただけ、したがってまた、法律案の準備もできることと私は考えておるものでございます。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 田邊誠

    田邊委員 したがって、両審議会答申というのは、特に私は、社会保険審議会、三者構成でありまするけれども、その中におけるところの多数意見、少数意見というような併記をした形で、明確な一つ結論がなしになされるものは、これは正しい意味における答申とは解しがたいと思うのであります。  なぜ私はここでもってそのことを強調するかといいますならば、伝えられるところの政府考え方といえば、今回いままで法律事項でありましたところの保険料率を保険庁長官のいわゆる告示によってこれが上げ下げできるというような、そういう弾力条項が盛り込まれておるのであります。これは私は財政法三条違反ではないかと思いまするけれども、しかし、いずれにしても社会保険審議会なりに、その告示の前には、内容についてかけるという、こういう道筋があると思うのであります。今回のようにもし結論が明確に出ないままに多数意見、少数意見が盛られたようなそういう報告が出た場合に、これすらも社会保険審議会答申なりとするならば、いわゆる弾力条項の、今後のいわば告示の際におけるところの審議会意見を聞くという際においても、同様のことが行なわれるおそれがあると思うのであります。そういった意味合いからいって、言うなればこれは見切り発車であります。告示の際における見切り発車にもなりかねないというふうに思って、私は将来をあやぶむがゆえに、やはり今回におけるところの両審議会答申というものは、りっぱな一つ結論が導き出されて、それを大臣に対して答申をした、こういういわば認識の上に立たなければならないと私は思うわけでありまして、その点に対してひとつお答えをいただきたいと思います。
  133. 内田常雄

    内田国務大臣 先般来お答えを申し上げておりますように、私も十分審議会を尊重する意味から、これまで見切り発車もいたさないで今日までまいりました私の誠意はぜひ御理解をいただきたいと思います。  また、審議会から御答申がどういう形で出るか、いま私は予測はいたしておりませんけれども、その御答申の中身につきましては、十分私も思いを傾け、また国会に出ました後におきましては、国会からのいろいろな御意見は尊重してまいることは当然でございます。
  134. 田邊誠

    田邊委員 そこで、政府を代表して官房長官がお見えでありまするから、引き続きお伺いをしたいのでありまするけれども、いま大臣から答弁がありましたとおり、今回の改正案国民に与える影響は非常に大きいという形から、当然社会保険審議会社会保障制度審議会のまとまった結論を盛った答申が出ることが望ましいと言われておるのでありまして、それを待って政府案を提案をするということでありますから、私の認識では当然両審議会における結論なり答申を十分尊重し、その意に従った政府案を提案をする、このように解してよろしゅうございますね。
  135. 内田常雄

    内田国務大臣 まず私から申し述べましたように、審議会からどういう御答申になるか、それは私はいまここで予断ができませんが、いずれにいたしましても、答申の中身には十分私は耳を傾けて進む、かようなつもりで処置、方針をきめております。
  136. 田邊誠

    田邊委員 耳を傾けたり、何かその答申の中身についていろいろと線を引いたりしただけではだめなんでありまして、実際に答申の中身というものが十分生かされる形で法律案を出してこなければ、私は審議会というものを十分尊重したことにならぬ、無視をしたことになる、こういうふうに認識をするわけでありまして、その点に対してあなたの考え方を承ってまいったのであります。よろしゅうございますな。
  137. 内田常雄

    内田国務大臣 答申のあり方にも関係あるわけでございまして、答申が一本の答申でありますかあるいは並列答申でありますか、その辺のこともいま私がここで予断をできませんが、いずれにいたしましても、この審議会が御承知のとおりいろいろの立場の違う方々をもって構成しておる委員会でございますが、私はそれらの意見には十分耳を傾けて所管大臣として進みたい、かように思うものでございます。
  138. 田邊誠

    田邊委員 そこで、この健保改正案はいわゆるいわくつきの法律案としてしばしば国会でもって激しい論議になったものであることは、官房長官も御案内のとおりであります。そして四十二年の特例法の際には、必ず二年後には抜本改正をいたしますということを佐藤総理はしばしば実は国会国民の前に約束をされておったのであります。それが四十四年にできなかった。できなかったために、四十四年の五月八日、この健保法が本会議に上程をされたに先立ちまして佐藤総理は、異例のことでありまするけれども、特に発言を求めて本会議において、二年間の時限立法として制定をされたこの健保特例法が、いまだに抜本改正ができないことに対しては、この法律の制定経緯から見てまことに遺憾に存じます。したがって、早急に——この早急ということはすなわち、当時提案をいたしましたのは二年の時限立法でありましたから、これを二年間延長するということでございますから、したがって、四十六年までにはぜがひでも抜本改正を手がけたい、実行いたしますということを、いわゆる総理大臣が陳謝をしながら言明をしておるわけであります。これはあなたも御案内のとおりであります。そして今年は四十六年であります。政府はこの予算委員会を通じて抜本改正に対するところの何か一応の考え方というものを出したようでありますけれども、中身を拝見いたしますと、抜本改正にならないまことにちゃちなものであります。  したがって、佐藤内閣の政治責任からいいましても、佐藤さんのいままで言明してまいりましたところの公約からいいましても、この四十六年においてはいずれにいたしましても抜本改正に向けるところの政府のいわゆる具体的な政策、具体的な実施というものがなければ、国民に対する公約を守り得たとは言い得ないと思うわけでありまして、抜本改正に対するところの政府の具体的な対策の樹立、そして具体的な実行、これをひとつお約束をいただきたい、こういうふうに考えておりますけれども、官房長官の明確なお答えをいただきたいと思います。
  139. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは田邊さん方のほうが詳しいので、いかに抜本改正政府が取り組んできておるか、特に先般来主管大臣からお答えいたしておりますように、抜本改正への努力というものを全然なおざりにいたしているわけじゃございませんで、今度考えられている改正案抜本改正への一環といいましょうか、第一歩といいましょうか、そういうこととして、私が厚生大臣から承っているところではそういう構想のもとに考えられているということは……(「それは間違いだ」と呼ぶ者あり」)まあ間違いだとおっしゃいますけれども、私はそう思っていない。それはいささか見解が違ってくるところかと思いますけれども、そういう点で十分ひとつ——どうせいま主管大臣が言われますように、この健保改正案を御審議をいただきたいと思いますから、その際に十分ひとつ御審議をいただくことに願いたい。政府としては、抜本改正の必要を政府ほど強く感じているものはないということは、もう健保の実情からいたしましてこれは御推察がいただけると思います。そういうことで御了承をいただきたいと思います。
  140. 田邊誠

    田邊委員 官房長官、先ほど来私が論議をいたしまして、抜本改正に対してやらなければならないこと、やれることについて何もやってないじゃないかということに対して、厚生大臣も実はみずから認めておったのでありまして、したがって、われわれはそういう政府の怠慢を正して正しい意味におけるところの抜本改正に向けてひとつ具体的なスケジュールを持ってもらいたい、日程をひとつつくってもらいたい、こういうことを実は私は特にお願いをしておるわけであります。したがって、きょうの質問を通じて、いままで大臣約束をし政府が言明してまいりました十六日には法律案を出すというそういうことが現在の時点においてでき得ない、こういう約束違反が行なわれていることを私どもはきわめて遺憾に思いまするけれども、これに対するところの具体的な協議については当委員会理事会におまかせをし、その成り行きの中でもってわれわれは対処していくということを最後につけ加えまして、私の質問を終わります。
  141. 中野四郎

    中野委員長 これにて田邊君の質疑は終了いたしました。  次に長谷部七郎君。
  142. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私は、この際、いま問題になっております米の問題、さらには出かせぎ対策の問題、不用地の国有農地の払い下げの問題等におきまして関係大臣お尋ねをいたしたい、かように存ずるものでございます。  まず第一点でございますが、政府は、四十六年産米の生産調整の歯どめ措置として予約限度数量七百六十万トンの割り当てをやりました。これはつまり買い入れ制限措置でございます。また、消費者米価を物統令の適用から除外をすることを決定いたしました。そうしていよいよことしの秋からスタートするわけでございますが、これは私考えまするに、食管制度の根幹である集荷あるいは配給の両面からなしくずすものでございます。間接統制に一歩踏み込んだものと理解せざるを得ないわけでございますけれども、この際、政府のいう食管の根幹とは一体何なのか、明らかにしていただきたい。
  143. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、米の管理の制度は法が示しておりますように、農家経済、国民消費生活等、国民経済の各分野にきわめて大きな関係を持っておりますし、また、国民食糧を確保いたしまして国民経済の安定をはかることはきわめて重要でございますので、このために必要な管理を行ない、米の需給及び価格の安定をはかってまいるという考えに変わりはないわけであります。しかしながら、米の管理につきましては、米の需給事情の変化によりまして、各般の面にわたりまして問題が生じておることは御存じの事実でありますので、このような事態の変化に即応いたしまして、その管理の適正を期するということによりまして、その制度運営の改善につきまして検討する必要がありますと、そういうふうに私ども考えておるわけでございます。  なお、ただいまお話しのございましたように、今般の政府買い入れに関する措置はいま申し上げました需給の実態に即応いたしまして、生産調整の実行を確保いたしますとともに、政府の買入いれの適正を期するために行なうものであって、国民食糧の確保という目的達成のため、政府が買い入れて管理する必要のあります数量については、政府が売り渡し義務を課して買い入れるのでございますから、食管法のワク内の措置であると考えておるわけであります。
  144. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 政府は再々、この食管の根幹は維持するんだ、こういうことを公約しておるわけでありますが、一方におきましては、過般来の国会における答弁、さらには、最近の全国都道府県の農政主管部長会議等におきまして、これからは食管制度並びに運用の改善をやるのだということを示唆しておるわけであります。これらを考えますると、根幹を守るという政府の基本姿勢がどうも変わってきたのではないか、かように受けとめざるを得ないわけでありますが、重ねてこの点につきましてお尋ねをいたしたいと思うわけであります。
  145. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この席で、ほかの方のお尋ねにもお答えをいたしておるような次第でありますが、食営の根幹というおことばをお使いになります方々によって、御存知のように、それぞれ若干ずつニュアンスが違っておるようでございまして、たいへん広く解釈なさる方もあるようでありますが、要は、やはり私が先ほど申しましたように、国民食糧を確保し、国民経済の安定のために、政府が必要とする米の需給及び価格の調整をやって、そして配給を政府が責任をもっていたしますと、こういうたてまえでありますが、これはもう申し上げるまでもなくおわかりのとおりに、ただいまの米の需給事情がごらんのとおりの状況でございますので、この事情に照らして、この後どのようにこの制度を運営いたしてまいるかということを研究しなければならないのは、喫緊の要務であると存じます。そういう意味で、私どもは、慎重にこの検討はしていかなければならない、これは前々から申し上げておることでありまして、いま申し上げておりますのは、そういう趣旨で言っているわけであります。
  146. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 七百六十万トンの予約限度数量の割り当てということは、私は明らかにこれは買い入れを制限をすることだ、こういうぐあいに受けとめるわけであります。今日の食管法のたてまえは、御承知のとおり、全量買い入れ制、これが根幹になっておるわけであります。したがって、この買い入れを制限するということは食管法の精神を否定するものである、私はかように考えるのであります。この本法の精神に全く逆な方向に食管を持っていこうとすることですから、当然私は国会に対して、食管法の改正案提出をして論議をする、あるいは特別立法を用意をして国会にはかる、こういうことがぜひ必要なのではないかというぐあいに考えます。本法をそのままにしておいて政府が一方的な解釈をする、自分の都合のいいように解釈をして、そうして単なる政令改正でこれをやっていこうということは、どう考えましても私は納得できないのであります。  最近、単にこの食管法の問題ばかりじゃなくて、国有農地の払い下げ問題等につきましても、私はあとで触れるわけでありまするけれども、これにいたしましても、政令事項で済ませようとしておる。今回のこの食管の買い入れ制限等も、本法はそのままにしておいて、そうして政令で片づけようとしておる。こういった国会軽視の態度について国民は多くの疑問を持っておると思うのであります。三百三の議席を持てばどんなことでもできると考えましたら、私はとんでもない間違いだと思うのであります。ですから、この点をひとつ明確にしていただきたい。これは本法改正を当然国会提出すべきものだと考えまするけれども、この点に対する農林大臣の見解を重ねて承っておきたい。
  147. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管法のことにつきましては、もうふだんお話し合いをいたしておる仲ですから、これ以上よけいなことは申し上げません。先ほど申し上げましたような趣旨でございます。  そこで、この需給及び価格の調整、それからいま申しました配給の統制をするというこのたてまえで食管法を運営いたしておるわけでありますが、したがって、政府の買い入れは、この法の命ずるように、この目的を達成いたしますために、つまり国民食糧確保という目的を達成するために、政府が買い入れて管理する必要のある数量を買い入れればよいと、こういうことでございます。この必要な数量の買い入れを確保いたしますため、食糧管理法第三条の規定に基づいて、生産者には売り渡し義務を課して一定量の米穀を買い入れることといたしておるのでありますが、同条は、国民食糧の確保及び国民経済の安定をいう食管法の目的を達成するために、政府が買い入れて管理する必要のある数量の買い入れを確保するものであると、このように示しておるわけであります。したがって、私どもといたしましては、その政府が買い入れて管理する必要のある米につきまして、ただいまのような状況でございますので、その買い入れ数量をつまり割り当てて予約をしてもらう、こういうことは政令にまかされておる事柄でありますので、政令を改正いたしまして、そしてこのたびそういう措置をいたしたと、こういう事柄でございます。
  148. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 食管法の第三条は、これは御承知のとおり、農民が売り渡す米については政府が全量買わなければならない、こういうことを規定しておるわけであります。いわば農民は、政府以外には売ってはならない、こういうことになっています。  ところで、その農民が売り渡す米は政府は全量買わなければならないというこの本法の精神ですから、これを五百八十万トンの政府買い入れに制限を加えるということは、これはやはり法の趣旨に反するものである、こういうぐあいに思います。したがって、私はいまの御答弁ではちょっと了解がいきませんので、重ねて真意をひとつただしたいと、こう思うわけであります。
  149. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 従来は食管法三条の運用といたしまして、御存知のように、予約制をとりまして、生産者は、政府への売り渡しを希望する数量につきまして、予約の申し込みをいたしました。それが義務数量となる仕組みでございましたことは御存じのとおり。それが無制限買い入れに近い運用が行なわれておったわけでございます。それとともに、いまお話の法三条に基づいて政府が買い入れない米につきましても、施行令第五条の五で、生産者は原則として政府以外に売ってはならないと規定いたしておりますために、その反射として、政府に売ってくれば全部買う、こういうことにいたしておったことも御存じのとおりであります。  このような現在までの運用は、米が足りない時期に極力多くの数量を政府は確保するためのものでございまして、食管法が当然に無制限買い入れであるというものではないと存じます。したがって、米が過剰となりました現在のような状況においては、国民食糧の確保のため、政府が買い入れてこれを管理する必要のある米穀、これを買うというふうに運営を改めることは可能である。以上申し上げました理由によりまして、私どもは今回のように政令をそのように改めたわけであります。
  150. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 今回の米の生産調整の期間を五年間と定めた根拠は、一体どこにあるのか承りたい。
  151. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもといたしましては、いやしくも今日まで長い間の歴史を顧みますというと、農業が国民経済、社会生活に貢献した度合いというものはきわめて大きいものであると存じますし、また私どもは、ふだん扱っております農業の中では、御存知のように、米が一番大宗を占めておったわけでございます。しかるに、今日のような状況になってまいりましたの、昭和四十五年にまずもって百万トン以上の生産調整をお願いいたして、非常な御協力を願いましたが、さらにこれを継続していかなければならない。昨年、四十五年度はまず単年度で一応やりましたけれども、将来の農業政策というもの全般を考えてみましたときに、やはりこれは継続的にその農業の方向の若干ずつの転換を考えていくというときには、やはり他作目への転作が定着してまいるように指導していかなければなりません。そのためには土地改良、土地基盤整備、構造改善等、それに向くように四十六年度予算にもいろいろ計上いたしてあることは御承知のとおりであります。  そういうことを実施いたしてまいりますために、つまり農業の方向が大きな部分転換されますようにいたしますためには、一応五年間という期間が必要ではないか。その間にできるだけ他作目への転換を定着させるように全力をあげてまいりたい。こういうので、転作の奨励金は五年とし、一応生産調整も五年という計画でやってみたい、こういうような次第でございます。
  152. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 要するに、稲作から他作目への転換を定着させる、こういうための五年だ、こういう御答弁でございますから、それは了承いたしますが、いま全国の生産農民の間には、この五年と定めたのは、単なる転作作目の定着のためだけじゃなく、この五年の間にいわゆる間接統制への移行の諸準備を整えて、五年後の暁にはいよいよ自由販売に踏み切るのではないか、こういう疑問が非常に強まっておるわけであります。この際、私も考えてみますると、間接統制へ移行するためには、たとえば逆ざやの解消であるとか、あるいは自由流通米の増大であるとか、あるいは食糧証券にかわる流通資金の調達であるとか、その他幾多の準備が必要だと思うのであります。こういった間接統制移行への諸準備を整えて、生産調整実施期間が経過した後は、ひとつ食管制度というものを間接統制に持っていくのではないか、こういう懸念というものが非常に強まっておるわけであります。  もしそうでないとするならば、五年後の食管制度というものは一体どのように具体的に維持されていくのか、ひとつこの際明確にしていただきたい、かように思うのであります。
  153. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話のございましたような、いわゆる間接統制ということばがございましたけれども、間接統制も、おっしゃる方によりまして、いろいろ頭の中にそれぞれなお考えを持ちながらいらっしゃる方があるのじゃないかと思っておりますが、私どもといたしましては、ただいまそういうようなことについてはまだまだ結論的なことを申し上げるような段階ではないわけであります。本日ただいまも行なっておると思いますが、全国の知事会であるとか農業団体であるとかという二十数個のほとんどの関係者が集まりまして、農業生産対策中央協議会というので、先ほど来お話のございましたような、これからの農政について一生懸命で御相談を願っておるような最中であります。したがって、ことし皆さま方の御協力のもとに生産対策を打ち立てられて、そして調整もその間に進んでまいりますので、そういう経過等を見なが、将来どのように方向づけていくべきであるかということは、なるべく早くそういうことの方針をきめて、そうして農村の方々にも御安心を願って進めていただくように最善の努力をしなければならない、こう考えております。
  154. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いま生産調整に触れられたお話がございましたので、話を進めてまいりますけれども、御承知のとおり、昨年の暮れのぎりぎりの段階で、全国の農業団体、特に農協でございますが、あるいは農民団体、こういう方々の反対にもかかわらず、二百三十万トンという生産調整を見切り発車させたわけであります。しかもすでにこの生産調整の目標は、予約限度数量と並んで府県割り当てを完了し、現在各県では市町村、それから二月の末ごろまでには個別農家への割り当てが進められていく段階にあるわけであります。  御承知のとおり、生産調整は根拠になる法律がございません。したがいまして、これを達成するためには、いわゆる全国の農民の理解と協力を得る以外にないわけであります。私も生産県の出身でございますけれども、ことしの生産調整に対する農民側の反応というものは非常にまちまちでございます。その代表的なものを申し上げますると、二百三十万トンという数字は、昨年の当初計画に比べて実に二・三倍である、量的にもきわめて過酷なものである、これが農家の経済に及ぼす影響、これは耐えがたいものである、こういう意見の方々、あるいはまた、昨年を下回る休耕転作の奨励金、これではとても協力することは困難である、さらにはまた、転作転作と盛んに言っておるけれども、その転作の条件というものは何一つ整備されておらない、したがって、転作を要請されても踏み切ることができない、こういう意見。その中で最も大きな不満は、昨年は、御承知のとおり、食管制度を守るためにはということで、これがにしきの御旗でございました。本来生産調整は不本意だけれども、食管を守るためにはやむを得ないという立場から、やむを得ず協力をしたというのが実態であろうと私は思います。ところが、ことしになってまいりますると、食管堅持はどこかへ吹っ飛んじゃった、どこかへ行ってしまいました。こういう政府の農政に対する公約不履行、これが大きな農民の不信になっておることは御承知のとおりであります。  したがって、私は、これらの反応等を考慮いたしますると、生産調整は非常に達成することがむずかしいのではないか、こういうぐあいに考えます。特に憂慮にたえないことは、農協は御承知のとおり、二百三十万トンの生産調整には非協力の態度を示しております。自主調整の態度で臨んでおるわけであります。また二月の十日には、米どころ山形県の全県の市町村会におきまして、ことしの生産調整の割り当ては受けるわけにはいかないということで態度がきめられておる。さらに私の出身地である秋田県におきましても、二月の十二日の全県の農協組合長会議におきまして、ことしの生産調整に対する態度決定はきめることができなかった。その他新潟、京都等を考え合わせますると、ことしの生産調整は、スタート間もなくしてもう暗礁に乗り上げておるというのが実態でございます。  農林大臣は、現時点でも、この二百三十万トンという過酷な生産調整を達成できると判断されておられるのか、まず、この辺の見解をひとつ承っておきたいのであります。
  155. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私も実は、昨年全部で百五十万トンの生産調整を、先ほど申しました各団体に集まっていただいてお願いをいたしましたときに、はたしてそれだけ成功し得るであろうかということについては、いろいろ心配もございました。しかしながら、農村で米をつくっておられる農家の方々それ自体が、今日の状況を非常によく知っておられます。農林省でときどき、また近くもいたしますけれども、全地方の後継者の若者たちに集まっていただいて、講習会のようなことをいたしたりしておりますときの報告などを聞きまして、非常に意欲的に農業にいそしんでおられる全国の若者たちの様子を見て、これはたいへんな勢いだなと実は内心思っておりましたら、御存じのように、一〇〇%お願いしたのが一四〇%の成果をあげました。  私は、日本の農村の人々の英知に御信頼を申し上げておりますので、政府が希望いたしておる二百三十万トンは優にいけるものであると確信を持って、いまお願いをいたしておるところでございます。
  156. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 去年は休耕転作は、これは農民の協力によりまして一四〇%も達成をした。ところが、政府の責任で行なわんとした水田の転用十一万八千ヘクタールは、わずかに三万五千ヘクタールの実績しかあがっておりません。今日の政府のやり方を見ておりますると自分たちの責任で処理すべきことはやらない、そのしわ寄せを農民諸君にのみ押しつけるやり方でございます。こういう態度に対して、多くの農民は不信感を持っておることは、先ほど申し上げたとおりであります。  そこで、私、お尋ねしたいことは、きわめて強気な楽観的な、二百三十万トンはだいじょうぶ達成できるなどということを言明しておられるけれども、私どもの見方では、これは、なかなかもって容易ならざるものである、一〇〇%達成はきわめて困難なものである、かような理解を持っておるわけであります。  そこで、念を押しておきたいことは、もし農林大臣の目当てがはずれて、結果的にことしの秋に目標量の達成ができなかった、こういう場合には、その責任を農民には押しつけない、生産農民には責任を転嫁しない、いかなる形にせよ、農民諸君に対しては不利益をかけないということを、ここでひとつ言明をしていただきたい。
  157. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ちょっとおっしゃる御趣旨がよくわからないのでありますが、私どもは、いま申し上げましたように、本日各団体に集まっていただいて、生産対策について御熱心に御討議を願っておる最中でありますし、また先ほども御指摘がありましたように、各地方に向かってそれぞれの割り当て数をすでに示しておるところでございます。もちろん農業団体にも御協力を願って、これが達成について全力をあげておるところでございますので、私どもの目的が達成されるということを確信し、同時に、できますように全力をあげてこちらもお手伝いをいたそうとしておるわけでありますから、報復とかなんとか、そんなことを毛頭いま考えてはおりませんで、必ずやっていただけることを確信いたしておるわけであります。
  158. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いま一つお尋ねをしておきたいことは、予約限度数量を超過した米の取り扱いの問題でございます。この問題につきましては、今日まで予算委員会等におきまして、いろいろと取り上げられた問題でございますけれども、われわれといたしましては、もちろん了承するところまでまいりませんし、いわんや全国の農民が、いま生産調整に入ろうとする段階で一番大きな疑問を持っているのはこの点であろう、かように私は考えます。  したがって、二、三お尋ねをいたしたいわけでありますが、この間の御答弁によりますると、食糧庁では現在生産調整の段階であるから、余り米が出るなどということは想定したくない、あるいはまたわが党の西宮議員の質問に対する農林大臣の御答弁でございますが、もし超過する米が出た場合は、その時点に立って考える、こういう御答弁をなされておられるわけでございます。私どもが地方を歩いてまいりまして農民の声を聞いておるわけでありますが、いま農民の皆さんが一番聞きたい点は、この余り米が出た場合の処分をどうしてくれるんだ、こういうことでございます。いまの時点でも農林大臣は、余り米は出ない、こういうことをお考えになっておられるのか、承りたいと思うわけであります。
  159. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これも先ほど申し上げましたように、本日、生産対策をみんなで熱心に協議をされておるような最中でございますし、それからまた四十五年度の成功いたしました消化から見ましても、大体予約限度数量それから自主流通、そのほかに二百三十万トン、それから御存じの農家保有米の四百五万トン、これを合計いたしてみますと、ちょうど余らない計算になるわけでありまして、私どもは、昨年のような成績が出るであろうと思っておりますので、いまお話のございましたような余り米というようなことを少しも想定いたしておりませんし、しかも長谷部さんもよく御存じと思いますが、農業団体のほうでは、自分たちに一番直結しておる大事な問題であるので、売って売って売りまくるんだ、これは勇ましい冗談、また一つは真実でありますが、そういうふうに一生懸命でやっておっていただく意気込みでございますので、われわれとしては余るというふうなことはむしろ実際に少しも考えておらないわけであります。
  160. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いま農林大臣は、余るというようなことは考えておらない、こういう御答弁でございますが、それでは、私は、今日農林省が、もし余り米が出ないならば、なぜ余り米が出ることを前提として政令改正をやらなければならないのか、この点きわめて疑問に思いますので、ひとつ明確にしていただきたい。
  161. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政令改正は二ついたしておりまして、一つは、買い入れ限度数量をきめることについて、一つは、政府以外に売ってはならない、政令についてのこういう改正をいたしております。  そこで、いまお話のございましたような米につきましては、やはりただいまの法律に規制されておる一定の規制を守りながら、農協に全力をあげて売っていただくことが可能であるような措置を講じなければなりません。したがって、農協がお売りになるということをわれわれは非常に期待をいたしておるわけであります。
  162. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 余り米については、いわゆる農協等に保管をさせる、そしてその販売についてはいわゆる政府の指定する米の販売業者のルートを通して以外は売ることができない、これを内容とする政令改正が準備されているわけであります。つまり、農業協同組合が米を集荷し、一定の期間農業協同組合の倉庫に保管をし、そうして米の販売業者に売り渡す、もしその販売業者がその米を引き取らない場合はUターンすることができません。したがって、どこへもさばくことができない、こういう事態になるわけであります。この点はどういうぐあいに考えていますか。
  163. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 実は生産調整をはじめ農政の転換等につきまして、今日、予算編成が行なわれる前に何回となく農業者団体の方々とお目にかかっております。いろいろなケースを仮想いたしまして相談をいたしたことがあるわけでありますが、皆さん専門家であるからよくお心得いただきまして、まず余り米はないはずである。全力をあげて売りまくるということを言っていらっしゃいました。申すまでもなく、御承知のとおり、世の中にはいかなる不測の事態があるやも知れません。これはそのときになってみなければわかりませんが、どういうことがありましても、私どもといたしましては、日本農業のためにも、日本の経済全体のためにも、生産調整というのも、つまり単年度の需給均衡というものがとれるような生産調整ということを第一義的に考えておるわけでありますから、そういう生産調整を阻害しないという前提で、何かあった場合には農業生産者とも相談をする必要があるときはあるかもしれませんが、それはいかなる事態が起きたかということによって、そのときによって判断されることであります。
  164. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 農林大臣、私の聞いておるところは、そういう抽象的な問題じゃないですよ。余らないと言っておる。米は余らないんだ。しかし、農林省自体は、余った場合を前提にして、今日の政令改正を準備しておる。その政令改正内容を見ますと、いわゆる第二自主流通米というものは、農業協同組合が集めて保管をする、そうして米の販売業者以外には売ってはならない、こういうことになっています。もし販売業者が引き取らない場合は、Uターンして政府買い上げをするということはできません。そこで、もし販売業者がその米を引き取らぬといった場合に、その農民の米は一体どこへいくのかということを私は尋ねておるのです。そこに焦点を当ててひとつ答弁を願いたい。
  165. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そこをさっき私はお答えいたしたわけでありまして、農協、生産者の方々がなまけておって、ことに不誠意でわざわざ生産調整をやらないということはあまり私ども考えたくありませんし、四十五年度の状況を見ましても、一部どうかと思う地方もありましたが、さっき申しましたように一四〇%もやっていただいた。でありますからして、今日のような意気込みでやっていただければ、そういうものはないと思うが、つまり四十七年産米でありますからして、年度がわりから先の話であります。一年半くらい先のことでありますから、そういたしますと、私どもといたしましては、そのときに一体どうしてこういうことになったのであろうかという事情、もしお説のように、余り米が多少あったとすれば、どういう事情でこういうことができたのであるかということを、農業団体等の意見も十分聞きまして、そのときにひとつ判断をしなければならないが、まずまずいまのところではその心配はあるまい、こういうふうに考えておるわけであります。
  166. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 もし余り米が出た場合は、その時点で農業団体と相談をしてきめる、こういう答弁でございますけれども、それでは私は、全国の農民に生産調整をやってくれといってもなかなか協力する態勢は出てこないと思うのです。ですから私はもし一定期間農協が保管をして、そうして売れなかった場合は、これは政府が責任をもって一定価格で買い取ってやるのだ、まずひとつ余り米が出ないように最善の協力を願いたい、こういう態度で私は臨むべきではないかと思うのです。  さらに、このいわゆる生産調整の歯どめ措置として二段米価ほか幾つかの案があったように私新聞で読んでいるわけでありますが、その幾つかの案の中で、大蔵省が主張した今日のこの米の買い入れ制限、これが最終的に採用された、こういうぐあいに承ったわけでありますが、私はこの際大蔵省が主張して買い入れ制限案が最終的に採用されたのですから、大蔵大臣に、もし余り米が出るというような事態になった場合、一体大蔵省はいかなる対策をとろうとするか、いかなる措置をとろうとするか、この点をひとつ承りたいと思います。
  167. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 こちらに関係のあることですから、先に私から申し上げさせていただきますが、このたびとりましたような手段が、私どもといたしましては、そういうことはございません。私ども考えでいたしたことでございます。
  168. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお尋ねのことは、農林大臣がお答えしたとおり私ども考えておるわけです。つまり生産調整をいたしまして、これが二百三十万トン実現をした、こういうことになりますと、これはもう過剰米というものは出ないのです。ですからそういう事態は私どもは予想しておりません。過剰米が出たらどうするというような事態は予想はしないのです。しかし、万一出たらどうだ、こういうことはどういう際に起こるか。一つは生産調整が二百三十万トンというような規模で行なわれなかった場合に過剰米というものが出てくる、こういうふうに思います。あるいはさらに、天候が異常に米作に有利であって、平年作をかなり上回る米作があった、こういうような際ですね。そこでこれは農林省から相談を受けて、大蔵省も同意したのですが、そういう事態に万一ぶつかった場合にはどうするかという際には、そのときになって農業団体の意見も聞いてみようじゃないか、これは私はそうすべきだと思います。それから、しかし生産調整を怠って、生産調整が一〇〇%いかなかったというようなことからこの余剰米が出てきたんだというようなことになった場合におきまして、もしそれを政府がまた買い取りますというようなことになれば、生産調整これは尻抜けになります。そういうことじゃいかぬ。そこで、農林大臣がいまるる御説明申し上げたように、生産調整を阻害しない範囲においてひとつ事を論じようじゃないか。つまり天候のかげんとかなんとか、そういう際のことであります。そういう事態におきましては農業団体の意見も聞いて、その際ひとつこれをどうするかということを考えようじゃないか、こういうことになっておるのでありまして、大蔵省、農林省、完全に意見がその点においては一致しているのです。
  169. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 時間がございませんので、先に進みたいと思うわけでありますが、これはもし不幸にして米が余った、過剰米が出た、こういう場合は、その時点で農業団体等の意見を求めて大蔵省も農林省もそれぞれその取り扱いについてきめるのだ、こういう御答弁でございます。私はこの際、農協が一定期間保管をする、そうして、販売業者に持っていったけれどもそれは引き取ってもらえなかった、しかし政府でも買ってくれない、こういうことで処分の先がなくなる、こういう事態を非常に心配をしておるのです。農民諸君も心配することだと思うのです。新米ですから卸売り業者は取らぬということはないとは思いますけれども、かりに引き取ったにいたしましても、今日七百三十万トンという米がだぶついておるという現状のもとでは、米の販売業者は農民の足元を見て安い値段で買いたたく、こういう事態が予想されるわけであります。したがって、そうなりますと、ますます農家の経済が逼迫をするわけでありますから、いろいろ生産調整に努力をしても結果として余り米が出たという場合は、一定の価格で政府が買い取ってやるという方向に前向きに検討を願えないものか、かように私は申し上げておきたい、こう思わけであります。  次にお尋ねをしたい点は、生産調整の奨励金の問題でございます。去年は一キロ当たり八十一円、ことしは六十八円と下げられたわけであります。とてもこれでは稲作収入を補うに見合うだけのものではございません。しかも先般大蔵大臣はこの奨励金はいわゆる五年間漸減方式をとっていくんだ、こういう御答弁をされておるわけでありますが、私はそれは逆ではないか、政府がすでに認めておりますように、経済企画庁が認めておりますように、年率七・七%物価が上昇しておるという現状のもとに漸減方式をとられた日には、農家経済はたまったものではございません。したがいまして、これにつきまして大蔵大臣の再度の見解を承っておきたい、こう思うわけであります。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 調整政策は五カ年間を予定をしておるわけです。そこで四十六年度に出ますところの調整奨励金が五年間同じ額でずっと続くというようなことになりますと、これはなかなか調整政策それ自体が進行しないのではないか、進行をそういうシステムが阻害をするのではないかというおそれを感ずるわけであります。それからかりに五年目に至りまして高い調整金が払われた、ところが六年目はそれが断層的になくなってしまう、こういうようなことになる。これも考えておかなければならぬ。そういうようなことを考えまして、調整金におきましては漸減ということが筋である。こういうふうに考えておるのでありますが、御指摘のように経済情勢の変化、そういうものもありましょう。ですからその当該年度、四十七年度において、四十八年度において、四十九年度において、現実にいかなる調整費にするか、それは周囲の客観情勢、また調整政策の進行状態、そういうものもにらみ合わせながら、その時点においてきめなければならぬ問題だ、かように考えております。
  171. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に、稲作から他作目への転換の問題について承ってまいりたいと思うわけでありますが、政府の計画によりますると、今日の米過剰は構造的なものであって、昭和五十年度までに、米過剰を解決するためには、約六十万ヘクタールの水田を他作目へ転換をするのだ。そうしてそのうち五十万ヘクタールについては、いわゆる飼料作物あるいは大豆あるいは野菜や果樹、こういう作目が浮かび上がってきておるわけであります。私は、農地の合理的な利用という観点、あるいは食糧の自給率を向上するという観点から見まするならば、この転作という問題は、政策としては正しい方向であろう、かように考えます。しかし心配なのは、その転作の条件であります。はたして今日の大豆にいたしましても、あるいは飼料作物にいたしましても、すでに自由化に踏み切った品目であります。価格の安いものが大量に入ってまいりまして、それの圧迫を受けてまいりまするならば、定着することはきわめて困難ではないか、かように考えるのです。  したがって、私はまず一つ農林大臣お尋ねしたいことは、五年間という生産調整の実施期間中は、これはいわゆる転作の補償金がございまするので、まあまあ心配はないといたしましても、生産調整の段階が過ぎた、いわゆる裸になった段階で、はたして価格、流通の安定政策というものをどういう形で政府はつくっていこうとしておるのか。この点は、やはり私はこの生産調整で転作を大きく奨励するにあたって農民の前に明らかにすべき点であろう、かように思うのであります。  と同時に、通産大臣お尋ねしておきたいのでありますが、このすでに自由化された大豆あるいはトウモロコシ、これはいずれも価格が低廉であります。四十四年度、大豆は約二百五十九万一千トン、トウモロコシは四百十三万二千トンもわが国に入っておるわけであります。したがって基本法で、米作はもうたくさんだ、これからは畜産、果樹、蔬菜だという成長作目を示しましたけれども、これが貿易自由化によって、外国農産物の圧迫を受けて、それらの成長作目が定着しなかったと同様に、今回大豆、トウモロコシを取り上げましても、非常に先行きが不安でございます。したがって、私はこの際、今日の輸入政策というものを洗い直す必要があるのではないか、そうして価格政策はもとより、関税あるいは課徴金制度を検討いたしまして、国内の農業と競合する農産物については、ある程度輸入を制限をするという措置をとってまいらないと、この転作は決して定着するものではない、かように考えておるものでございまするけれども、ひとつこの際、この転作の定着について、大蔵大臣、農林大臣、通産大臣の見解を承っておきたい、こう思うわけであります。
  172. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもにとりまして一番大事な、しかもむずかしい問題を御指摘になったわけでありますが、ただいま農林省部内で、ただいま御指摘のような点について一番全力をあげさしておるわけでございますし、本日開かれております各団体の長のお集まりの生産対策協議会でも、この問題こそが一番大問題でございますし、農家の方々、また日本経済の中に占める農業の立場から考えましても、これを一番私どもは重視いたしております。したがって、御審議を願っております農林予算の中に、私どもがどういう角度でどういう方向に行こうとしておるかということを、あの予算に計上いたしております費目及び金額をごらんいただければ御理解いただけると思うのでありますが、お話しのような転作目といたして考えておりますのは、お話しの大豆、麦類、野菜、繭、甘味資源作物、これらは従来から価格政策の対象物資であることは御存じのとおりでございますが、なお今後転作を進めるにあたりまして、これらの現行価格政策の適切な運用につとめることはもちろんでありますが、奨励補助金の交付とあわせまして集団化、機械化等、この生産性の向上に全力をあげてまいって、そしていわゆる競争力を培養する、しっかりした体質の農業に改めてまいりたい、こう思っておるわけでありますが、いまお話のございました自由化対象品目、これは確かにございます。こういうものについて、私どもはいろいろな角度で、現在すでに転作作物の多くは自由化されておるものが多いわけでありますから、今後の自由化にあたりましては、かねがね政府が言っております総合農政の展開、稲作転換の推進に支障を来たさないように十分な配慮を用いながら、必要に応じまして、弾力的に関税政策等を活用して、そしてわが国の転作していくべき農業の作目について、できる溶けしっかりした体質を備えるように政策として協力してまいる、こういう考えで転作に全力をあげるつもりでございます。
  173. 福田赳夫

    福田国務大臣 御指摘の点は、まさに米の問題の根幹に触れた問題だと思うのです。つまり生産調整をする、これは大事なことですが、調整されたその田んぼが、これがどういうふうに有利に活用されるか、この対策ですね、これが私は当面あらゆる農政の根本になっていく、こういうふうに思うわけであります。いま農林大臣からお話しのように、農林省におきましては、広範な総合農政を進めつつあります。そういう線に沿いまして、やはり農業の生産性の向上、近代化、こういうもの、これにも努力をしなければならぬ。そこで財政当局もその方面に重点を置いた対応をいたしておるわけでございますが、特にいま関税についてのお話でございますが、たとえばグレープフルーツが自由化されたという問題があります。この自由化の問題につきましては、これは関税政策もフルに活用していきたい、こういうふうに考えておるのでありまして、グループフルーツにつきましては、いわゆる季節関税を採用するというようなことで、国産のかんきつ類を保護していきたい。ただむやみに保護保護というばかりにはいかぬと思います。やはり自由化の時代でありますので、保護政策に徹し切るというわけにはまいらぬと思いまするけれども、その辺は内外の情勢とにらみ合わせて、弾力的に、しかも有効に自由化には対処していきたい、かように考えておる次第でございます。
  174. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 農林大臣、大蔵大臣お話しのとおりで、大体の意を尽くされておるのでございますけれども、まあ日本の経済が成長するにつれて、自由化という要請は内外ともに非常に強いものがございます。しかし反面、先生のおっしゃいますように、国内の中で問題点が出る、これに対して配慮をしていかなければいけないことは当然でございます。政府のほうでは四十三年の十二月に閣議決定がございますし、昨年の九月には関係閣僚会議でやはり決定を見ておりますように、関税措置その他を通して弾力的にやっていこうという考えで、かたわら農業構造改善を推進していこうということでございます。
  175. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 農政問題についてはまだまだたくさんございますけれども、分科会なりあるいは農林水産委員会お尋ねをすることにいたしまして、次に、当面する出かせぎの問題についてお尋ねをいたしたい、こう思うわけでございます。  御案内のとおり、政府や自民党の皆さんは、口を開くと、わが国のGNPは世界第二位になったんだ、こういうことで、たいへん誇らしげにお話をされておられますが、われわれ考えまするに、高度成長を遂げたのはわずかな大企業だけであって、多くの国民はいま物価高あるいは公害あるいは住宅難ということで泣かされておるのが現状でございます。とりわけ、この出かせぎは、高度経済成長の最大の犠牲者であるといえるのではないか、私はかように考えるのでございます。今日労働省でも農林省でも出かせぎ者の数を的確に把握してはおりませんけれども、われわれ推定するに、全国的に百二十万人ぐらいいまおられるのではないか、かように考えておるわけでありまして、これがますますいまの生産調整、あるいは米価の据え置き、あるいは買い入れ制限、こういうことで増加する方向をたどっておるのでございます。出かせぎをされる方々は、半年という長い間家族と分かれております。そうして大半は劣悪な飯場で生活をしておるのがその実態でございます。政府や大企業にとりましては、いまの深刻な労働力の不足を補うために、低い賃金で長い時間文句も言わないで働いてくれる出かせぎ者がふえることについては歓迎をされておられるかもしれませんけれども、私たちからするならば、出かせぎというものは解消しなければならない、こういうぐあいに考えておるものでございます。  そこで、私は、政府に対して、今日のこの出かせぎをなくすためにどういった政策を考えておられるか、まずこの点からお尋ねをしてまいりたい、こう思うわけであります。聞くところによりますると、今回農林省と通産省の共管によりまして、農村地域に工業を導入するためのセンターをつくる、こういうお話を聞いております。さらにまた、全国百五十の市町村に、工業導入の具体的な計画を策定いたしまして、工業導入関連の農業基盤整備事業をやっていこう、こういうようなことも考えておるようであります。さらに、それらを進めていくための立法措置として、今回国会提出をする、こういうことなどがいわれております。もちろん今回このような法律が出てまいりました背景あるいは政策目的というものは、わが党がかねがね主張してまいりました工業の地方分散というものとは多少観点が違うかもしれませんけれども、ようやく農村地域に工業を配置をしなければならぬということで腰を上げたということについては、これは評価されてしかるべきものと私は思います。  そこで、具体的に、私は、通産大臣お尋ねをしますが、百五十の市町村に工業を配置する、こういう御計画だそうでございますけれども、具体的にはどういう地域が予定されておるのか。さらには、いままで通産、農林、さらには経団連あるいは農業団体、四者でいろいろ農村の工業導入の問題について話し合いを進めてきたという経緯があるようでありますが、一体どういう企業が農村に進出が予定されておるのか、この機会にひとつ承っておきたいと思うわけであります。
  176. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 農村に工業を導入するということは、先生のおっしゃいますように、たいへん大ぜいの方々が出かせぎに出られておる。これは半年の間非常に不自然な生活をしいられるわけで、またこれは経済成長の、ある意味では農村がそういう形でなければなかなかやっていけないという面もあるかもしれません。そういうことで、通産省、農林省、労働省と一致いたしまして、今国会に農村地域工業導入という法案を提出さしていただこうということでございます。現在、百五十という数を先生おっしゃいましたけれども、まだ私のほうではきまっておりませんけれども、これは基本的には、町村がこういう地域に工業地帯をつくりたいあるいは県がそういうものをつくりたいということでございますけれども、企業側の要請もようわからないのではそれがスムーズにいかない。ですから、農村地域工業導入センターという財団法人をつくりまして、これで情報の流通をさしていきたい。それによって地域地域に工業を導入いたしまして、工場で働きながらかたわら農業ができるようなシステムをとっていきたいという考え方で、この法案を今回提出いたしております。そういう方法によって、出かせぎ労働者を少なくとも地元にとどめ、またこれによって中高年令層あるいは御婦人方の労働力が活用できる、農業収入がふえるという形に持っていきたいという考えでございます。
  177. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 言わんとすることはわかりますけれども、昨今の企業はいずれも公害でまいっておる、さらには深刻な労働力不足に悩んでおる、あるいは地価の高騰によってなかなか工場用地も簡単に取得ができない、これらの諸条件を解決するためにようやく農村に目を向けた、こういう背景の中から出てきたものであうろとわれわれは考えておるわけでありますが、いずれにしても、いま財団法人の開発センターをつくる、こう言われておりますけれども、ここ一、二年の出かせぎ解消のための特効薬にはならないように判断せざるを得ません。そこで、私は、もっと積極的に工場の地方分散というものと取り組んでいただきたい、こういうことをむしろ要請を申し上げておきたいと思うところであります。  なお、現実は、ただいま申し上げましたように、米価の三年連続据え置き、あるいは二百三十万トンという過酷な生産調整、さらには買い入れ制限等が相まちまして、ことしの農村経済というものはさらに一段と行き詰まる。したがって地元には仕事がないわけでありまするから、勢い長期の出かせぎとなって、ふえていくことは当然であります。このままの状態の農政が進んでまいりまするならば、やがては、村じゅうあげての総兼業、総出かせぎという事態になるのではないかというぐあいにわれわれは憂慮しておるところであります。  さて、これらの方々が都会に出かせぎに参りまして、出かせぎ先での実態は一体どうであるか、これまたまさに悲惨な状態であるといわなければなりません。最近は、特に労働災害が激増しております。出かせぎ労働者の約七割前後は現在土建産業の現場で働いております。ここ数年来、労災事故によって休んだ人は、一年間に、労働省の統計だけでも約三十六万人、なくなった方は一年間に六千人でございます。まさに一日十・九人づつの労働者が命を失っておる。たいへんな問題であります。その中で、出かせぎ農民の労災は、しばしば新聞にも出ておりまするので、皆さん御承知と思いますけれども、被災率がきわめて高い。そうして、災害の内容も、重大で深刻なものが多いのでございます。労災で死亡する事故の約四割は出かせぎ者で占められておる、こういうぐあいにもいわれておるわけであります。  私は、ここに、最近における東と西の代表的な出かせぎ農民の労働災害について指摘をいたしまして、お尋ねをいたしたいと思うわけでありますが、その一つは、四十四年四月一日に、東京の荒川新四ツ木橋に発生いたしました出かせぎ者八人の死亡事故であります。西を代表するものといたしまして、四十四年十一月二十五日の夕刻、大阪の尻無川の防潮水門工事における十一人の出かせぎ者の生き埋めの問題でございます。この二つの事故に関連いたしまして、私は、政府関係機関あるいは建設業界の労働安全対策に対する姿勢について質問をいたしたいと思うのであります。  まず私は、この二つの事故の原因について、労働省あるいは警察庁はいかように究明されておるか、その結果をひとつ承りたいのであります。
  178. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。  お尋ねの事故は、昭和四十四年四月一日午後四時四十分ごろ、東京都墨田区内の荒川放水路新四ツ木橋での架橋工事現場で、リングビーム工法により橋脚工事中、突然リングビームが楕円形になり、リングがはずれ飛散したため、現場で作業中の八名が水没、死亡したというもので、警視庁におきましては、約一年六カ月にわたって捜査し、事故原因を究明した結果、業務上の過失致死事件と判断されたので、工事関係者二十五名を被疑者として、昭和四十五年十二月一日、東京地方検察庁に書類送検してあります。  第二のお尋ねの事故は、昭和四十四年十一月二十五日午後七時三十ごろ、大阪市大正区内の尻無川防潮水門での潜函工法による地下工事現場で、突然土砂搬出用の鉄パイプ(直径約二メートル)が途中から折れたため、土砂排除作業をしていた十一名が圧死したというもので、大阪府警察では、現場検証を実施するほか、工事関係者などについて現在なお捜査を行なっているが、事故直後大阪府に設置された尻無川水門工事事故対策協議会による事故原因の調査結果を待って最終的な過失責任の有無を明らかにする予定であります。  以上。
  179. 野原正勝

    ○野原国務大臣 新四ツ木橋及び尻無川の事件につきまして、出かせぎの方々が非常な災害を受けたことに対しては、まことに遺憾に考えているわけであります。そこで、今回の災害につきましては、労働災害科学調査団を設けまして、原因の究明と対策の検討に当たっておるわけでございます。  そのうち新四ツ木橋の災害につきましては、昨年六年に調査団から調査の結果の報告を受けております。それに基ずきましてPRB工法に関する再発防止について関係各省に要望するとともに、各都道府県労働基準局長に通達を発しました。  また、尻無川における災害につきましては、現在調査団において科学的に原因の究明を検討しております。  なお、尻無川水門建設工事において採用されていました潜函工法につきましては、当省の要請に基づきまして、建設業労働災害防止協会において安全基準を作成し、近く関係者に周知徹底させることにいたしております。
  180. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 お話を承りますると、労働省は、新四ツ木橋事件のほうも、それから尻無川水門工事のほうも、いずれも過失責任ということで送検をしておる。国家公安委員長のほうでは、東京の四ツ木橋事件については過失責任として送検をしたけれども、尻無川については、一年三カ月たったけれどもいまだに事故原因が究明されておらない、こういう御答弁でございました。私は、きわめて遺憾であります。すでに労働省は過失責任ということでもう送検をしておるのに、警察は、事故が発生してから一年三カ月経過するのに、いまだに終わっておらない。こういうことについては、きわめて遺憾に思うのであります。  そこで、私、お尋ねをしたいのでありますが、このような大きな労働災害が発生をいたしまして、かりに過失責任ということが判決で明らかになる。そういう場合でも、現在の労働基準法からまいりますと、こういった事故を起こした業者に対する社会的制裁というものはきわめて軽いのであります。たとえて申し上げるならば、五千円以下の罰金、六カ月以下の懲役、これが社会的制裁でございます。したがって、事故を起こしても、建設業界としては何ら姿勢を正すようなことにはならない。いわんや、建設大臣お尋ねしまするけれども、建設省のほうではこういったいわゆる大きな災害を発生いたしましても、その建設業者に対して工事の発注停止のなければ、あるいは指名の取り消しも行なわれておらないのが現状でございます。私はこれでは建設業界の労働安全に対する姿勢を正していくことはなかなか困難ではないか、かように考えておるものでありますが、労働大臣あるいは建設大臣の御見解をひとつ承っておきたいのであります。
  181. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  新四ツ木橋並びに尻無川の建設現場における災害は、われわれもまことに遺憾に存じまして、今後十分にこの工法の安全については専門的な再検討を命じて、リングビームについては、技術的に若干問題がありまして、これは全部停止させました。この工法はとらないことにしております。それから、尻無川のことについては、実はまだ原因がはっきりわからないのでございますが、専門的な研究の結果を待って判定したいと思いますが、工事の材料並びに工法を改善して、これは完成いたしました。  ところで、いま御指摘になりました、こういう事故を起こした業者に対する、刑罰のことはこれはわれわれの関係でありませんが、行政上の処分はどうするかということでございます。これはそういう事故を起こしたからというのですぐに請負をやめさせると、今度は次にやる人がかえって迷惑するので、これは一応やらせます。しかしながら、そういうふうに災害を起こしたものについては、次の工事発注のときには、これは指名をチェックしております。発注する場合もそういう工法に基づく問題を起こしたところのものは、遠慮というか、指名しなかったり、回数を減らすというようなことをやって、現実にそういうことによってたいへん反省をしておるようでございまするが、今後さらにこの点は強力に、行政指導で事故のないようにいたしたいと思っております。
  182. 野原正勝

    ○野原国務大臣 出かせぎ労働者が非常にに多いのは、実は建設の仕事でございますが、特に建設の仕事につきましては、いろんな意味でまた問題がございます。そういった面で十分建設省と連絡をいたしまして災害等が起きないよう、あるいははまた工事の賃金不払い等の問題が起きないよう、十分注意しておるわけでございますが、そういった面で、実は体質的に建設業界がある意味において非常におくれておる。その点を改善をお願いして、今後は特に出かせぎ労働者等が非常な不利益を来たさないように改善をお願いしよう、こういうことでございます。
  183. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 最後に、現在国会で問題になっておりまする、また国民世論から総反撃を食っております国有農地の旧地主への売却についてのお尋ねをいたしたい。  問題になりまして、政府は十五日急遽政府首脳部の会合を開きまして協議をしたようでありまするけれども、当初方針どおり、全国平均坪当たり二円五十三銭で売り払うという既定方針を貫くということを決定しておるようであります。これはわれわれから見まするならば、きわめて重大な問題であります。これには一つの経緯がございまして、実は昭和四十一年の十月三日の日に次官会議で、今回出されました政令改正の五項、六項については改正することを決定しておったのでありまするけれども、翌日開かれました閣議では、農地報償制度をやったばかりであるから、一部の旧地主のみに特別の恩典を与えることは不平等であるとの観点から、これは見送られたという経過がございます。私が特に申し上げたいのは、この地主補償についてはすでに四十年の六月三日法律第百二十一号、いわゆる農地の報償制度が実施されまして、四十年四月から四十二年三月三十一日までの三年間に、旧地主に対して百八十万ヘクタール、総額千二百三十六億円の報償金が支給されておるわけでございます。したがいまして、解放農地に対する補償等については、この農地報償によって決着がついておる、こういうぐあいに国民は理解をしておるわけでございます。したがって、いまさらこういった一部の旧地主に対して特別の恩典を与えるということはきわめて不合理なことである。なお、参考までに申し上げますけれども昭和四十年の五月十三日の本院における内閣委員会におきまして、時の国務大臣である田中大蔵大臣は、この農地報償制度によって解放農地に対する問題は一切ピリオドが打たれるものであるという発言を明確にやっておるのでございます。したがって私は、そういった観点からいたしましても、今日の政令改正というものは撤回すべきものである、そうして新たなる観点に立って農地法の改正考えるべきではなかろうか、かように考えるのでありますけれども、この点に対する御見解を承りたいのであります。
  184. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お答えいたします。  ただいまお話のございました四十一年の経緯でありますが、当時私は農林大臣として閣議に列席いたしておりましたので、事情をよく承知いたしておりますが、閣議の前の各省次官の会議では、このたびと同じような取り扱いをしようということで、政令の改正案考えたようであります。しかしただいまお話のございましたように、その閣議で、農地報償の問題はいわゆる農地報償のあの法律で解決してしまっているのだからというような理由で撤回されたのではありませんで、その時代もやはり多くの方々、それから閣僚の中にも、どうも何となくあと味が悪い。ただいま政府の所有になっておる農地であるからして、これを、当時ちびっこ広場というものがほしいというふうなことが世間からたいへんいわれておりましたので、そういうようないわゆる公共の地として使うことができないだろうか、もう一ぺん再検討してみようではないか、ということで引き下がりまして、それから農林省の中にはそれについての検討会を進めておったわけでありますが、四十二年になりまして——この問題は下級審においては政府の主張が通っておりましたが、それが四十二年に最高裁に係属するようになりましたので、農林省といたしましては、研究会の結論も、やはり最高裁にかかっておるのであるからその判断を待つべきではないかということで、そのままにして継続をいたしておった。ところが去る一月二十日に判決がございました。その判決の結果、やはり私どもといたしましては、あの判決によれば、法第八十条による政令十六条というものはあまりに範囲をせばめて考え過ぎておって、これは妥当なものではないという判示を受けたのでありますから、やはり行政府としてはやむを得ずこの判示を尊重せざるを得なかった、こういうことであります。  それから農地報償のことでございますが、これはすでに当時提案者の説明にもるる申しておりますように、これは解放されましたる地主に対する対価ではありませんで、あの当時のいわゆる農地改革行政に協力してくれた地主たちに対する報償である、その政策に協力してくれた報酬であるというのが、提案者の説明にしばしば述べられておるのでありました、そういうことと、今度の裁判所の判示による所有権の問題とはおのずから別個なものである、このように理解せざるを得ないのではないか、こう思っておるわけであります。
  185. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 以上で質問は終わります。
  186. 中野四郎

    中野委員長 これにて長谷部君の質疑は終了いたしました。  次に吉田賢一君。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
  187. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第一点は、綱紀の粛正につきまして内閣の御所見を伺いたいのであります。  そこで、きょうは諸般の事情から総理がお出になっておらぬ。官房長官は副総理格として総理の御意向と大体同様であると、御答弁の趣旨を理解しておいてよろしゅうございましょうね。——御同意のようでありまするので、次のようなことを伺ってみたいのであります。  私が綱紀粛正を論じまするゆえんのものは、わが国の政治、行政の全体を通覧いたしまして、その姿勢を正して、そして国民にこたえ、報いることについて、いまほど切実に反省が要請されておるときはないのではないであろうか。ずいぶんと経済国力はあるといわれながらも、問題は山積であります。というようなときに、いまここに顕著な最近の不祥な二つの事件が起こりました。当委員会におきまして、去る九日、はしなくも一議員によって暴露せられました小林法務大臣のみずから国会を侮辱する暴言、ふるまいであります。これは例のテープレコーダーなどが披露せられておりまするので、読んで、あまりにも国会議員である、かつ省の長である、かつ法務行政の長である、特に法秩序の厳格をみずから守って範を示さねばならぬその地位の者が、国会を侮辱しもしくは否定するような発言が公然と浜松市の公会堂で行なわれておる。聞いてあ然といたします。一体こんな大臣があるのであろうか。こんなに国会というものは低調な品位の悪いものであろうか、こういうような感じさえ受けるのであります。これはここで問題になるや、即日辞職と決定して内閣を去ったのでございますけれども国会に与えた汚名、侮辱、暴言というものはまことに遺憾千万であります。  いま一つは例の西郷吉之助元法務大臣の件、これも最近の顕著な事実であります。参議院のみずからの会館において、しかしてこれは法務大臣というような地位にあった人が、暴力団によってじゅうりんされる、手形が強奪される、暴力によって傷害事件が起こるというような不祥事件が起こった。一体国会議員の仕事場といったら何というていたらくであろうか。これが素朴な国民の受けておる感じですよ。新聞等幾多投書欄にこれはあらわれておりました。私ども遺憾にたえません。  そこで一面また考えてみますると、今日は行政の諸問題が、たとえば公害にいたしましても未解決の問題が山積であります。交通にいたしましても、幾らでも人命がこれによって失われていく。考えてみると、教育にしても都市の問題にしても、あらゆる問題についてあまりにも行政上の諸問題が多過ぎる。物価も同様であります。こんなことを反面思いまするときに、私は内閣はよほど厳粛な気持ちを持ちましてこの二つの最近の不祥事件につき国民に謝す——どういう方法ですればよいか。これは総理もここで相当丁重なことばも出ましたことも存じております。けれども委員会でそうすることによって真に国民には徹底しない。一体官房長官は、これの結未を国会を通して、施政演説をしたごとくに全国民にその意のあるところ、その所信を明らかにするということが当然の責任であろう、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  188. 保利茂

    ○保利国務大臣 西郷元法務大臣、小林前法務大臣自体、まことに遺憾に思う次第でございます。私は内閣官房長官としまして各省大臣のとっておられる状態についてはしさいに、たいへんなことですけれども注意をいたしておるわけでございますけれども、西郷さんにしても、特にまた小林さんのごときは、私が平生接しておりますところでも非常にみずからにきびしい方であり、したがって法務大臣として法務行政を処理されておるところには全く頭の下がるような状態であったと思うのでございますが、ただ同時に一面、国会議員としての立場もある。そこでああいう発言がなされたということは、総理大臣も言っておられたようにまことに遺憾。小林大臣も、総理がこの内閣に特に注意をいたしておりますのは綱紀の問題でございまするし、これに関連して内閣に非常な迷惑をかけたということで辞表を出されましたことによりまして、非常に惜しい人だけれども、これはもうやむを得ないことじゃないかということで辞表を受理されて辞職になられたようなわけでございます。私どもは、内閣、行政府は、これは総理がかねて言われるように、国民とともに国民にかわって行政府を預かって、国民のために国民にかわって行政をやっていくというその意識をしっかり持たなければならない。私は国会も同様だと思うのです。国会国民にかわって国政の審議に当たられる。内閣は国民にかわって国民のために行政をつかさどっておるという、そういうことから、その意識をしっかり胸に置いて仕事をしていかなければならぬのじゃないだろうか。そういう点で幾多反省すべきところもあろうかと思いますけれども、とにかくそのことに徹するということがきわめて大事であろう。私はおそらく総理も全然同様だと思いますが、要するに国民政府である、国民国会であるという意識に徹して処理していかなければならないというような考えでいたしておるわけでございますが、たまたま小林大臣についてはああいう発言、まことに穏当を欠く発言がございました。そのためにみずから責任をとられたようなことでございます。これは国民の皆さまもよく御理解をいただけるところだろうと思います。西郷さんのことにつきましては全く私どもも知らなかったということがはなはだ申しわけのないことでございまして、知る由もないことでございましたので、まことに残念に存じておるところでございます。  なおまた、先般来当委員会でいろいろ指摘がございまして、公害に関する諸問題等もございました。特に公害行政が非常にやかましく、むずかしくなってきておる際でございますから、今日の場合、行政の第一線に当たる方々の官紀の振粛ということは最も大事なことじゃないか。ただいま総理大臣の旨を受けましてこれに対してどういうふうに徹するか。私が心配いたしますのは、またあまり法を守れ、法にきびしくなれということをやりますというと、いわばしゃくし定木で、国民のほうからいえばたいへんに迷惑なことになってくるわけでございましょうし、法を守りつつ、しかも国民に対しては懇切を第一として当たっていくというような特段のくふうをこらすべき、特にこの公害行政の問題についてそういう感を深くいたしておりまして、近く内閣として適切な措置をとらなければならない。ただいま準備をいたしておるような次第でございますから、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  189. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 長官は、個人としての、また議員としての西郷並びに小林氏を何か御信頼になり、いたわるようなことばがございました。個人としてはそうでありましょうけれども大臣というものは省の長官であること申すまでもなく、司法の行政の長官というものは一そう身を持すること厳粛に、いま長官が仰せのごとくに、国民国会を尊重するということにおいてはこれまた人後に落ちない、このかまえがなくして綱紀の粛正はから念仏です。その昔、大正四年でしたか、大隈内閣のときに、あのわれわれが尊敬する尾崎行雄先生が司法大臣のときに、例の大浦内相の議員買収事件が起こりました。記録、文献によりますと、平沼騏一郎検事総長と協議の結果、政界を去り、引退し、謹慎する、こういうところまで内務大臣が言って、ここで諸般の追及手続が遮断されております。同僚であり、お互い個人として信頼する仲で、情においてはそれはほんとうに忍びない。けれども、憲法を守り、筋を通したい、行政、司法、立法の三権分立の精神を通したい。これに徹しておったのが尾崎司法大臣であろうと私は思います。  そのような厳粛な姿勢がなくして、綱紀粛正なんて言い得るものじゃございませんです。それならば、たとえば本会議もしばしばあるのでありますから、総理は本会議で、日本の将来に大きな夢を描くような演説をなさった。幾多の機会があるのでありますから、全国民に謝する。そしてみずからが任命した法務大臣ですから、閣僚の一員として、自分が代表しておったのであるからという立場において国民に謝する。かつまた別個の手段としては、全公務員に対してやはり綱紀の粛正を厳達するというようなことが、私はほんとうの国民に対する態度でなければならぬと思う。ここから再出発することなくしては綱紀粛正はから念仏になります。厳に私はその態度を要請してやまないのであります。重ねてこれについて、そのような手段をおとりになりませんか。決してこれは佐藤さんのメンツでも何でもありません。この内閣はそこまで真剣に綱紀の問題について考えておるのかということになるわけでありますから、これがほんとうに国民国会を代表する政党、その政党の内閣、議院内閣制の本領はそこにあると私は思うのです。この点いかがです。簡単でよろしゅうございますから、結論だけ。
  190. 保利茂

    ○保利国務大臣 たいへん貴重なお話を教えていただきましてありがとうございました。総理大臣も、法務大臣のあの事態について遺憾の意をこの議場を通じて国民の方々にも表明されておられまするし、また全公務員の官紀の振粛方につきましては、総理大臣から私に命令も出ておりまするし、私はそれを受けて、ただいま振粛の方途について、今日の複雑な行政の中に第一線をとっておられる公務員の方々に対して適切な措置をとらなければならない、ただいま準備をいたしておるところでございます。
  191. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法務大臣に一言伺います。あなたは発熱中でお気の毒ですから、ごく簡単にとどめます。  あなた御自身でないのにまことにこれは御迷惑千万な答弁と思いますが、やはり法務大臣の所管事項は司法の一端をになう検察の指揮があります。さらに行刑の問題があります。考えてみますというと、法務省の法秩序の維持というものは一そう峻厳でなければならないことは、これは申すまでもございません。かくいたしまして私は日本の司法権の尊厳というものが維持されるゆえんであろうし、この法務行政というものがこれにこたえる道を全うし得ると思うのであります。いま述べました二つのこのまことに不幸な、不祥な事件につきまして、あなたの率直なる感懐をひとつお述べ願っておきたいと思います。
  192. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 小林前法務大臣すでにおやめになっておりますので、批評がましいことはこの際避けたいと存じます。西郷元法相に関しましては、手形事件に関連し、刑事事件等も派生して、ただいま真相究明中でございますので、いずれ真相の究明を待って批判さるべきものかと存ぜられるのでありますが、いずれにいたしましても、法の秩序維持、法務省の権威の上からいって遺憾なきを得ないのでございます。この重大な法秩序を維持すべき法務大臣の後任に任ぜられました以上、私といたしましては、ただいまもお話しのありましたとおり、自粛の上に自粛、自戒の上に自戒をいたしまして、進退厳正、公正、明朗を旨といたしまして、法の権威を、また法務省の権威を高からしむるよう身をもって範を示す決意で、最善をこの点尽くす所存でございます。  所感に添えまして、私の決意のほど申し述べさせていただいた次第でございます。
  193. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 行政改革につきましてお尋ね申したいのであります。  一つは中央の行政管理機構の課題でございます。この点を含めまして、行政改革の問題は、この席もしくは他の委員会等におきまして、佐藤総理からは何回となく、私は勇断をふるってやる、ただし、宿弊は久しいのであるというような余韻を残したような答弁があって、しかしその誠意を見るべきものがある、待つべきだというような私は誠実な態度に読んでおったのでございますが、一向改革があらわれてこない。先般、あなたのほうの川島副総裁が生存中に行政改革を指摘いたしまして、ぜひこれを断行するように、幾多の具体案までも示して世にこれを問うような姿勢に出られました。そして佐藤四選後は重要な一つの課題にしてこれをせられるであろうといって国民も理解をしておったのですが、不幸、突如この世を去りなさって、それからはまた何か消えたようになって、先般の施政演説の一部に行政改革という字句はありました、しかし内容はない、これが現状でございます。  私がこの中央の管理機構の問題に触れるという意味は、これはとかく今日は各省の分裂がはなはだしい。たとえば物価庁ともいうべき企画庁におきまして、消費物価の今日のこの不安定の継続、天井知らずに上がるような実勢、国民はこれに向かってどれだけ被害を受けておるかわからぬ。閣僚会議、物懇の提案等々の結論を羅列して提案をいたしましても、なかなか実行がされないゆえんのものは、これは各省がばらばらであるからであります。もっと裏を返していうならば、総理大臣のやはりリーダーシップが明らかに発揮されておらぬというところに欠陥があるのではないか。しからば、中枢部である内閣の総理府の中核部におきまして、もっと何らかの形におきまして、これは総合行政をやり得る直接の責任を持つような個所をつくるべき必要はないであろうか。もちろん屋上屋を架すようなことは、これはいけません。したがいまして、これは適切に総理のトップマネージャーとしての指揮権が完全に行使し得るようなその補完措置がなされてしかるべきでないかと、こう思うのでありますが、これは非常に重要な行政改革の根本になるのでありまするので、この点につきまして官房長官、総理にかわる意味でひとつ御答弁を願いたい。
  194. 保利茂

    ○保利国務大臣 なくなられました川島先生が総合企画庁的な構想を持っておられたということは承っておりますけれども、私は直接どういう構想が持たれておったかということのお話を残念ながら伺う機会がなかったのでございます。  そこで、いま総理大臣行政上のリーダーシップが十分でないじゃないかということでございますけれども、私はそうは思っていないのでございます。むしろリーダーシップの強さを感ずるくらいでございまして、これは各省大臣とも同様であろうと思うのです。おそらくだんだんこれから、わが党のほうでもいろいろ御研究をされておるようでございますから、この複雑な行政を能率的に動かしていくような機構上のくふう等は衆知を集めて研究されることだと思うのでございますけれども、戦時中のあの企画院的なものになるおそれはないんであろうか、それは非常な反省を要することであろう。それから有能な各省大臣がそれぞれ行政を担当しておられて、その間の各省にまたがる事案については、いろいろ内閣には内閣の審議室もあり、総理府の審議室もございまして、これが十二分にその機能を発揮できれば、私は現状をもってしても相当の効果をあげ得るというように考えまして、総理はそこをどういうふうに考えておられますか、そこまで私は知りませんけれども、まあとにかく官房長官、総理府総務長官おりまして、そしてそれにはそれのスタッフもおりますわけでございますから、各省と連絡を密にいたしてまいりますならば、大体吉田委員の御懸念のようなことは、現状においてもある程度果たし得ると考えておりますわけですけれども、いずれにいたしましても、内閣プレーンといいますか、そういうものの存否並びに効用というものを私は慎重に検討する必要があるんじゃないか。どうしたらいいということは、どんなに機構を整えてみましても、結局扱うものは人間でございますから、その人よろしきを得ざる限りは、どんな機構をつくっても私はだめだというような感じからいたしまして、心ずしもどうも理屈どおりにもいかぬように考えますし、その辺は総理大臣が内閣を率いられる上で特段の考えをせられる必要のあるところである、私はそういうふうに考えております。
  195. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 行政の運営は人にあり、この問題はあとで触れます、非常に大事な点でありますから。ただしかし、リーダーシップ必ずしも発揮されておらぬと思わぬとおっしゃいますけれども、たとえば企画庁において物価安定対策を立案して閣議了解を得て、そしてこれを世に発表して、言うなら社会に約束をした。けれども、どうも安定の実はあがってこない。効果があがらぬのはその原因は何か、こう反省追及して、そして次に打つべき手を考えるというのが、これが筋でございます。しかしひるがえって国民の側から見るならば、たとえば公定料金の問題にしましても、運輸省関係になりますとたちまちそのほうで頭を打つ、あるいはその他食料方面になりますと、これまた農林省関係で頭を打つ、こういうことになりまするので、これは藤山長官以来の一つのガンです。でありまするから、そこに影が薄いと言えばそれはあなたのほうも気持ちが悪いでしょう。しかしやはり勇気をふるって断固行政の各部門を指導するのが総理大臣なりというこの姿勢に徹していきまするならば、一たん国民に、物価安定こそ現内閣の内政上の今期の重大課題だとして臨む以上は、やはりその辺のなし得べき体制を整えるということは人とともに大事であります。それならば、一例をあげて申しますならば、私の言うゆえんは何ももう一つ企画庁をつくりなさいというのじゃないのであります。そして屋上屋を架して大蔵省から職権を取ってきてしまうという、そんなことをしなさいというのじゃないのです。行管もやめてしまって、企画庁もやめてしまって一本にしなさいというのじゃございません。けれども、いずれにいたしましても、いまの企画庁にしても行管にしましても、それぞれ相当事績をあげようという努力をしておられるのはわかるのです。実を結ばすことについて、これはやはり中枢部に足りないものがある。何か。たとえばもっと一元的な施策、政策の立案というものを一体どこでやるのだろうか。それは調整するのだといえばそれまでですよ。総理大臣が調整するというならそれまでです。そうは言っておらぬ。総合的な施策をどこでやるのだろうか。環境庁の問題はあとで聞きますけれども環境庁の問題にしてもなかなか簡単じゃありませんわ。一面だけということになっておるおそれありということになりましたら、たとえばシンクタンクというようなものでもやはり設置いたしまして、民間からも優秀、有能な者をここへ入れてくる、エリート中のエリートを集めまして、そしてそこにほんとうにこの時代に処していくところの最高の行政体制をつくっていくというような、その機構問題の解決に一歩前進せないかぬと私は思うのです。言うているのはそこですよ。だから、たとえば総合企画庁をつくりなさいとか、——川島さんもそんなことばを使っておりました。私も川島さんが持っておりました原文を持っております。使っておられましたが、何もそういうようなものに私はこだわりません。しかし、いまの総理府の体制では弱過ぎる。いまは弱過ぎます。だから総理の姿勢はよいとしましても、なかなかリーダーシップをあらわしていくことは困難ではないか。しからばこの機会に反省なさい。なぜならば行政改革の一つの根本の課題だから、こう言うのです。でありまするから、そこはリーダーシップ云々というならおれのうちをばかにしておる、そんなものじゃないのだとおっしゃるかもわからぬけれども、そういう意味じゃないのです。ここは無性格に申し上げております。何も個人的なそんな失礼なことばは使いたくないですよ。ないけれども、運営の実態といたしましてそこに欠くるものがあり、こういうのでございまするから、私は一段とそこに新しいくふうをこらして、そして機構を充実する、強化する。言うならば一種の中央管理機構を充実していく実を備えるようになさいと言うのです。問題はそういう意味ですよ。それを答えてください。
  196. 保利茂

    ○保利国務大臣 吉田さんのお話の御真意がよく理解できました。なるほどリーダーシップをふるってもそれがなかなか末端に及んでその目的を達することがむずかしいじゃないか。そういうことで、そのリーダーシップをより生かしていくために機構上あるいはは機能上に考えをしなければならぬじゃないかというような御趣意のようでございます。その限りにおきましては全然同感でございます。  そこで、よけいなことでございますけれども、そういう中にありまして、たとえば公害の問題、おそきに失したかもしれませんけれども、とにかく多岐にわたっておりまする公害部門、内閣に公害対策本部をつくられて、そして総理大臣がみずから本部長になって、総務長官が副本部長になられて、なるほど機構はそのままだけれども、機能は統一、調整といいますか、そしてあの臨時国会までのあれだけの準備ができたのは、私はやはりそういう意味で吉田さんの言う総理大臣のリーダーシップ、その機能が発揮できるような仕組みということは絶えず考えていかなければならないという意味において、十分私どもも研究をしなければならないと考えます。   〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  197. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたとの約束もありますので、ちょっと簡単にとんとんと飛びまして、同種問題を他の大臣の方々にお答えをいただかなければいけませんのですけれども、次に進むことにしますから、どうぞあしからず御了承願いたいのです。  さっきおっしゃいました行政運用は人にあり、もっともであります。その人の問題ですが、これまた重大な課題であります。あらゆる意味におきまして、もっと日本の公務員につきまして、これこそほんとうの魅力のある公務員制度をこの際つくり上げなさい。それをすることなくしては公務員というものの能率はあがってまいりません。日本の官庁機構が、その効率から見ても、能率から見ましても、どこから見ても、人は相当な人材が集まっておったのにかかわらず、だんだんと優秀な人材、エリート中のエリートはむしろ民間に行くような傾向はないでしょうかというようなことさえ私ども考えられるのであります。それならば、どういう点に欠点があるんだろうか。それはもういろんな面で考えなければいけません。第一、親方日の丸の意識は払拭しなければいけません。ましてまた同時に、しかしながら公務員につきましてはほんとにその処遇を改喜しなければいけません。待遇の改善も大事であります。私は何年か後に優秀な公務員の人材が民間に去っていって、昔のコネを利用いたしまして顧問になる、社長になるというように去っていく例をよく存じております。もっと公にガラス張りの中におきまして、アメリカのごとくフォードの社長が国防省の長官になるように、堂々と胸を張って民間に行くなら行き得るように、そして民間においては月百万円の月給をもらう、よろしいじゃないですか。堂々とやればいい、やり得るようにすればいい。それにはお互いが人材を交流していかなければいけません。待遇も改善してやらなければいけません。しかし信賞必罰でいかなければいけません。親方日の丸で、あまり努力して成績をあげたらいかぬ、というてあまりおくれてもいかぬ、働かず、そう勤勉にしないでなまけないようにする、それが出世の道だというて悪口を言うている者がございますが、それはとんでもないことです。やはり労務管理をしなければいけません。労務管理は行なわれておるんだろうかというようなことをちょっと考えることさえあるのであります。こういう点も考えます。でありますので、この際やはり公務員制度の改革というものは抜本的に取り組まねばなりません。とかく一部におきましては、こう言うと首切りにつながるというて心配する向きもありますけれども、何の心配も要りません。この七〇年代に処していくべきりっぱな公務員制度をつくるということは、これは行政運営の根幹です。柱ですよ。これなくして行政運営はできません。国民にこたえられません。凡百のあらゆる施策を実行する者は公務員ですから、その公務員に自負心を持たして、自尊心を持たして、老後の心配もさせぬようにりっぱな待遇もいたして、そしてそのかわり十全に働かす、十分に成果をあげさすという指導、配置、指揮監督というようなこともせなければいけません。一口に申しますと、こういうように考えるのです。こういうようなことを、これも勇断をもってやらねばいけません。定員法のような問題でももうごたごたしてしまうような情ない姿はだめです。この点はどうでしょう。これはもうほんとうに内閣の重大責任でありますので、官房長官も、これはもうほんとうに真剣に総理を代表する意味で答えてください。
  198. 保利茂

    ○保利国務大臣 御所論につきましては、公務員のあり方、人材の登用ということは国家的に考えてみましても、私は個人としては全面的に同感でございます。いろいろ公務員制度の改革等については長い間検討をいただいておるようでございますけれども、まだ結論が出ていないようでございます。どうかそういうふうな方向にできるように、何とか持っていく方法はないものだろうかということを、正直なところ申し上げます。
  199. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 いまの問題は、人だよりにしないで、みずから長い公務員の体験もお持ちになるあなたであるし、いまの内閣の諸公、佐藤さんにしましても長い間の公務員生活でありまするから、いろいろな御体験からきまして、みずからやはり案を出さなければいけませんわ。ほんとうにそれこそ抜本的な改革案を世に示しまして、国民のための国会を通じまして、そして世論の批判も受けながらこれが実現を期するというような、こういう勇気を持って私は案をおつくりになることが必要であろうと存じます。  そこで、それはそうとしまして、あなたにこの二点だけ伺っておかなければいかぬのです。  一つは、今後、行政並びに財政でありますが、改革というものを相当進行さしていかなければいけません。改革を進行さしていくという推進の役割りとしましては、やはり総理を中心といたしまして、閣僚協議会でも何でもよろしゅうございますが、そこが行政改革を推進していく。もちろんこれは行管の長官もそれぞれと重要な役割りはありますけれども、やはり中心は総理がなりまして改革を推進する。そして財政の改革にしましても行政の改革にしても、この際七〇年代に処すべき行財政の体制を整えるということは、総理がやはり陣頭指揮的に中心になっていくという体制が必要ではないであろうか。これが一点。  いま一つは、これはわれわれの場でありますが、しかし内閣はいま政党内閣でありますからお尋ねするわけであります。昔の純然たる天皇補弼の臣の内閣であれば、これは問いません。しかし今日は与党は内閣と共同責任であるわけでありますし、皆さん御自身も党籍並びに国会に席を持っておられる方であります。国会審議を一そう効率化するという意味におきまして、たとえば立法の情報、利用の制度等々にいたしましても一段とくふうする余地はないであろうか。いま非常にその必要があるのではないだろうか。でありまするから、あらゆる行政の情報、財政運用の情報なども国会のそれぞれの機関に即時に入手できますように、そこには一つのタンクでもつくっておくように、たとえば審議の資料提供の機関としましては国会図書館もあります。立法考査局もあればそれぞれ各委員会調査室もございます。ございますが、そういったところが受け入れまして、そしてその情報は整理して分析して、そして国会に提供する、こういうことはこの時代に適する状態にまで進歩発展せしめられておる。だからボタン一つ押すならば、その問題はいつどこでどういうふうになっておるかということが一ぺんにわかる。議員もすぐにその知識を得られる。これはコンピューターを利用すれば何でもないことであります。技術屋を養成して設備すれば何でもない。最高裁が判例を調べるのでも、アメリカではもうすでにやっておりますが、一つ電話をかけておけば、一時間後にすぱっと適する判例が出てきます。引き受け会社がやってくれますというようなこともありますので、国会におきまして行政庁の持っておるような各般の情報は、財政執行の情報も行政執行の情報も、いろいろな情報は即時に手に入るというふうにして国会審議に益する、これが国会審議を高度化する最大の、というよりも非常に重要な道であろう、こう考えるのであります。  これらの二点につきまして、やはり内閣として相当な決意をもって臨むべきときが来ておる、こういうように私は考えるのであります。これはあなたにお答えいただいて、これははとくと総理とも御相談になって、閣僚の皆さんとも御相談になって、実現の方向へ前進するようにぜひせられんことをひとつ強く要請したいのであります。どうでございましょうか。
  200. 保利茂

    ○保利国務大臣 前段の財政行政に対するお尋ねの問題は、これはもう総理大臣と大蔵大臣、総理大臣と行管長官、まさにあうんの呼吸といいましょうか、ぴったりして、特に行政改革については異常な——総理はああいうふうな人でありまして、誇張してものを言わない方ですけれども、非常に熱意を傾けて、実際の行政改革については真剣に取り組んでおられる。そしてそれだけの実効を、十分ではないと評価されるかもしれませんけれども、いろいろの条件の中においてはともかくも相当の実効をあげてきていると、私どもそう判断、評価をいたしておるわけでございます。今後とも行財政の点についてはどうか御懸念のないようなお願いをいたしたい。そうしてそのことはまた総理にもよくお伝え申し上げておきます。  なお、後段の問題は仰せのとおりだと思います。国会のほうでどういう施設を御用意になるか、これは国会でお考えいただけばいいとしまして、内閣、行政府としましても、いまお話しになりましたところには非常に教えられるものがあるのでございます。どうもむだが多過ぎるということと、そして必ずしも目的を十分に達していない、そしてみんながやっておるものが間々あるようでございます。そういうものについて強く反省をして、ひとつ実効のあげ得るような検討をいたしたいと考えます。
  201. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 前後しますが、予算財政制度の改革の問題についてお尋ねしたいのでございます。  この問題は、申し上げるまでもなく、すべての行政財政がその裏づけになっておる次第でございまするから、したがって、財政の問題を考えまするときには、現在の実情にかんがみまして予算制度、その運用というものが非常に重要でないかと考えるのであります。今日の実情から見ますると、たとえば小林放言じゃないけれども、年末になるとおれらもうきりきり舞いでたいへんだ。なぜか。結局全国から陳情が上がってくるからです。しかし野党の諸君は帰って昼寝をしているんだろう、なぜなら用事がないからという放言もありましたが、あるいはそんなようなくらいに陳情団をお受けになるのかもわからぬ。陳情団は自費で——天から降ってくる雨を旅費にして来るのじゃございません。みんな公務員は公務員で税金を使うてきますわ。そしてそれぞれの経費を使います。これは何年か前のことでありましたけれども、あなたのほうの主計局であったかで御調査願った結論は、昭和三十年ごろでありましたか、年間陳情の諸経費は六、七百億円にのぼるだろう、こういうお話があったことを覚えております。おそらくそういう推算をするならば、今日は千億円をこえるのではないだろうか。そうして予算のぶんどりであります。年末の予算期にはそのとおりですよ。私のおる第一議員会館でもそうです。一団数十名、ざらにあります。その数十名の人は、みんな昼になりますと定食で一ぱいやってござる。陳情団ですね。一体だれがそんな金を出すんだろうか。その団長さんが出しているのかもしれません。しかしまたどこかが御招待するのかもわからぬ。というようなことは、何でこんな浪費をしなくちゃならぬのだろうか、こういうことを考えますると、そういうようなことをしにこいでも、電話一つで事が足りるようにしたいものだ。もっというならば予算制度の組み方というものを合理的に、科学的に、ほんとうに国民が納得するようにできぬものだろうか、こう考えるのであります。  そこで一つ問題は、例のPPBSの導入の問題であります。これは大蔵省も真剣に御努力になっていることもよく存じております。企画庁も三年間もシステム分析の研究をやっております。これもよくわかります。よくわかりまするけれども、遅々としてはかどらない。どういうわけなんだろう。やはりこれは政治の今日のような腐敗の傾向が邪魔していくのではないであろうか、研究の研究に終わってしまうことになるのではないであろうか、そのことを私は考えるのです。先般ジョンソンが、六五年でしたか、六五年のあの演説の一節なんかにも、このPPBSの導入の問題につきましては、国民のできるだけ多くのしあわせの施策ができるんだ、そしてより少ない経費で、より適切に、より早く、こういう簡単なシステムがあるんだからというようなことが、各省がこれを採用するというときの演説の一節にあります。というようなことを思いますと、調査研究というものをうんとやっていきましたならば日程にのぼってくる、現実の日程にのぼってくるということは必ずしも遠い将来でないように私は考えるのであります。  そこで大蔵省といたしまして、大臣といたしまして、あなたも御熱心なことはよくわかりますけれども、どうか速度を早めてそしてPPBSの積極的な導入を——もちろん事業別予算制度については一部には行なっておるという説もありますけれども、これは法改正も要ります。ほんとうに効率をあげて、原価主義も採用いたしまして、予算とその効率というものを測定するという制度もなければいけません。情報の制度もなければいけませんわ。いけませんので、こういう面につきましてやはり適切な科学性を持った合理的な施策を行なって、そして予算編成する、政策を選定する、むだ金を使わないようにする、国民の血税を大切に使う、こういうようなことを積極的にどうしてもこれはやらなければならぬ段階に来ておると思うのです。こんなことは釈迦に説法ですけれども、議論の議論をするつもりは何らないのです。一ときも早く現実の実行日程に移しなさい、こういうことをあなたに申し上げるのであります。御感想いかがですか。
  202. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国でPPBSを採用する問題、これは多年吉田さんの力説されている問題です。私も、これはぜひこれをわが国において取り入れたい、かように考えているのです。ただこの問題はそう急速というわけにいかない。いろいろなむずかしい準備が要るわけでありまして、一つはその要員の訓練、確保、それからもう一つはデーターを吸集しておかなければならぬ問題それから技術を開発しなければならぬという問題そういういろんな諸準備、おぜん立てが整いまして初めてこれを実用化し得る、こういうふうに考えなければならぬ問題です。予算の硬直化、そういうものを考えますときに、このように進んできた科学技術社会の中で、財政がそういう科学技術の進歩に立ちおくれというようなことであってはならないのでありまして、私どもは全力を尽くしてPPBSの採択に準備をしておるわけであります。これはもう政治的情勢がこれを妨げているとか、そういうような問題は全然ありません。全力を尽くして準備をし一刻も早くこれを採用してみたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  203. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 関連しまして企画庁で、長官見えていますね、あなたのほうで、経済的研究所で例のシステム分析室で、各省庁から有能なスタッフが集まってだんだん調査研究をしておられます。これは過般愛知県の矢作川ですが、水質につきまして、いろいろ水質基準の設定につきまして御研究になっておりまして、やや成果があがったようであります。もう一、二カ月の後には公に発表なさるらしいのだが、これはおもしろいところまで到達したと思うのです。しかしこれはすぐPPBSには結ばぬものと私は考えております。ただ、水質汚濁防止法もできた際でありますのでこの公害問題と取り組むことについてのPPBSの導入の一課題といたしまして、重要な資料の提供があったものと私は考えるのであります。したがいまして、この出しておるデーター、結論によりますと、分析の結果はかなり統一的な政府の水資基準が設定し得るようなデーターが出ておりますですね。としましたならば、いま大蔵大臣もおっしゃいましたように、これはたとえば県庁なりあるいは県庁の公害の方面なり、あるいは水質ならば、いまの水系なら建設省の所管でしょう。建設省からある条件のもとに、たとえば工場の数、工場の距離、そしてまた水量の実情ないしは水質の実態というようなものにつきまして、ある計算した数字をつかみまして、その資料を提供して受け入れまするならば、これはあなたのほうの研究しておるあの結論に当てはめていきましたならば、ずばりずばりと水質基準の設定は可能だと私は思うのです。というふうにいたしましたならば、これは九州の何とか川、北海道の何とか川に至りますまで、一級河川につきましては全国的に可能ではないであろうか。これもきょうあすにはすぐ結論は得にくいかもわかりません。なぜならば、地方におきましての技能者はまだそろっておりません。公害談はあるけれども、公害課は何をしたらええかという、しろうとさんみたいなところさえ私は目撃しておりますから。というような状態でありますので、そういう辺のデータを集める得る体制を用意する、こういうふうにすることは非常にこれを推進するゆえんになるのではないであろうか、こういうふうに実は思うわけなんであります。  そこで、企画庁といたしまして、この経済研究所のシステム分析室の成果を、いま申したような方向に向かって積極的にこれを活用していく、早急に活用していくというふうにせられてはどうかと思うが、それはどうでしょう。
  204. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま御指摘のように、私ども昭和四十三年に例のシステム分析を始めましてちょうど三年になります。で、水質について試験的にやってみまして、やっと初歩的といいますかパイロット的といいますか、いま御指摘のような多少の成果があがりつつあります。しかし、何ぶんにもまだこれは非常に十分なものではございません。結局データー不足ということが基本的にあるわけでございます。先ほど大蔵大臣からも話がございましたが、吉田さんのおっしゃっているPPBSという意味も、いわる狭い意味での財政に関するPPBSのほかに、いま御指摘のように私どもは広い意味のPPBS、すなわち行政の能率化、それにシステム手法を適用する、こういう見地からいたしますと、これ自体一つのPPBSの成果であると思いますから、ひとついまのデータ不足あるいは要員の不足、そうした基本的な条件を徐々にほぐし、拡充して、いま御指摘のように、できるだけこれを実施に移す体制に持っていきたい、こういうふうに思っております。御存じのように公害につきましては今度公害行政を相当刷新いたしました。その結果といたしまして地方地方において測定の体制もずいぶん整ってきますし、そして測定、監視の体制が整ってきますと、それをフィードバックすることも可能になってきます。そういうことでデータの不足をできるだけ補いまして、そしてそれをもとにしていま指摘のような方向に向かってまいりたい、こういうふうに考えております。
  205. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 総務長官、見えてますね。——いまの問題に関連いたしまして、あなたのほうですでに環境庁の設置法案を御用意になっているらしいんですね。今国会に御提出になるかのように伺っております。そこで環境庁自身の問題もありますが、これはいまの問答いたしました点から入っていくのでありますが、あなたのほうは、たとえば公爵の重要な一部でありまするところの水質汚濁の防止につきましても、環境庁は相当な職責を今後負担していこうといたしておるようであります。そこで、一体ほんとうに水質の汚濁を防止しようと思うならばどうすればいいんだろうか。私は試みに公害対策の四十六年度予算案の内容を、公害対策本部の収録いたしましたものをずっと一覧してみたのでございます。一覧してみたのでありますけれども、どうもずばりっといまのような水質汚濁を防止するというような対案、その具体的な方策、対策というものの予算がほとんど見られないのじゃないだろうか。もちろん環境庁自身は基本的なそういう機構に、大きな機関になるんでしょう。公害対策室もありあるいは測定の経費もありあるいは下水道の整備などあり、防止の工事のそれもあり、直轄河川等々あり、また若干の財投の資金もあるようでございますけれども、ほんとうにずばっとこの水質汚濁を防止し得るような政策は、一体どの手法をもってこれを実現しようとするのであろうか。これは目的ですから、汚濁防止になり得ないのならば、そんな環境庁はなくてもいいのじゃないかという結論さえ生じます。汚濁防止をし得るところの手段、方法は一体何なんだろう、こういうふうに考えてみましたときに、一体どこをねらっているのだろう。発生源に対する対策なんであろうか、処理に対する対策なんであろうか、あれこれの予算はついております。あれこれの予算はついておるけれども、発生源を絶滅しようというのか、処理に対して手段を講じようというのかということになりますというと、下水道ということになると処理です。あれこれとついておるけれども、根本的にほんとうにこれをなくするというような手段が予算を通じてはあらわれてはおらぬというふうにどうも考えるのであります。何をしからば具体的に政策としてこの目的を達しようとするのか、その点をひとつまず明らかにしておいてもらいたい。
  206. 山中貞則

    ○山中国務大臣 的確なお答えになるかどうかわかりませんが、環境庁の出発にあたります前の四十六年度予算でございますから、出発自体は御御承知のように七月一日を予定いたしております。その七月一日に出発をいたします環境庁の想定されまする姿は、大体の公害防止のための実施の基準その他の規制、監視、測定、それらの日常の業務は大体地方自治体にほとんど全部移管をいたすわけでございますので、予算面においてはそれらの面は下水道予算等の具体的な実施予算を除いては、御指摘のような金額としてはばらばら、相当新規のものも意欲的に出してはございますが、まとめて予算の金額で処理するという面においてはあるいは御納得いただけない点もあるかと思うわけであります。しかしながら、地方に権限を委譲いたしますことに伴いまして、地方のほうで、また実務が移るわけでございますので、やはり地方財政の公害の事業に対する国の補助の特例という単独立法をいたしたいということをたびたびお答えいたしてまいりましたが、ようやくそれも煮詰まってまいりまして、近く国会提出できる予定でございます。  それらの内容等は、終末処理等がついていないものは下水と今後いわないという、下水の終末処理を必ずつけなければならないという公害国会の立法を受けまして、終末処理について十分の四の補助率を二分の一に引き上げ、その他都市下水路、公共下水路、特殊下水路等につきまし、全般的に公害防止地域を重点的に、補助率を最低二分の一以上に引き上げておるわけでございます。  さらに全般的な、全国的な問題としては、水質に関する問題として河川の底質の汚濁あるいはヘドロのしゅんせつその他の工事あるいは港湾等の水質の改良工事、汚濁の防除工事あるいは土壌汚染、そういうようなものを全国的に、これまた二分の一以上の補助率をもって特殊立法を今国会に出すつもりでございます。  それらの財政措置の前提には、あくまでも推定されます関連の企業が公害防止事業費事業者負担法に定められた負担者負担法に定められた負担率によって負担をいたしました残りについて、国が二分の一の負担をすることになるわけでございますから、それの残りがそれぞれの地方自治体の支出に相なります。しかしながら、そればかりではなおまだ足らない点がございますので、起債等について特別のめんどうを見まするほか、その起債の元利等については五〇%の補てんをいたしたい。ただし、不交付団体についてはその補てんが、手段がとれませんので、いま特別交付税等でどのような手段がとれるかを、自治省、大蔵省理財局とともに詰めておるところでございますが、それらの全般の体制を展望いただきますと、今後の環境庁の出発後のあり方は、地方自治体の身近な問題としてこの汚染の問題をとらえ、そして環境庁自体は自然の保護環境保護ということがまず大きな柱になりまして、厚生省の国立公園行政あるいは鳥獣保護等の林野庁行政というようなものは、実務まで担当することによって、やはり諸外国の公害に対する姿勢である環境汚染に対してまずこれに挑戦する姿勢、守り抜く姿勢というものを中心にいたしまして、不幸にして公害の発生するおそれのあることは、そのおそれを排除するとともに、発生してしまった仕事については、地方自治体の実務を通じてその被害を排除していくという姿勢をとっていくつもりでございます。アメリカのように六千名、十四億ドルというような予算で出発をいたしましたところにも職員を派遣して調べてみましたけれども、やはり一長一短があるようでございます。でございますので、日本環境庁のあり方については諸外国も非常な注目をいたしておるわけでございます。  吉田委員の御質問はまだございませんが、おそらく環境庁長官は、長官としては各省庁の長官たる大臣と並列の権限しか与えられていない。その場合において、各省庁の実務行政の面においてどのような権能を持ち得るかというような御疑問もあろうかと思いますが、これは内閣法第六条に定められた、総理大臣の権限としての閣議において定められた方針に従って行政機関の長を指揮するという点をこの環境庁の設置法の中に取り入れまして、この権限の発動を総理大臣に要請する、いわゆる意見を申し述べるという権限を環境庁長官に特別に与えるという配慮をしておるわけでございます。
  207. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、いまの御説明によりますというと終末、処理に重点を置くような、どうも感じを受けたのでありまするが、そして一つは地方行政庁にまかすというようなことが重点になるようにも受け取れるのでありますが、この発生源に対しまして、たとえば排水の源を浄化するとか、あるいはさらに、そのよって来たる、流さんとするものについて毒素を取り除くとか、あるいは一定分量を減らすとかいうように、発生源自体に対する対策というものについての配慮は一体しないのであろうかどうか。終末処理というものによっていくということが完全であり得ないということは、幾多の事例がこれを証明しておるのではないだろうかというふうにさえ私は思うのであります。そうして、それがまた、ものによりましては下水道というようなことになりましたら、これはどういうような機関が終末処理機関になるかもわかりませんけれども、しかし重金属類を流していくということになりましたら、水路自体が腐敗するということもあり得ますし、結局発生源対策というものと、そして処理段階における対策というものと、あれこれと批判検討するということで取捨選択をする、政策も選択する、そこに私はPPBSの導入の一つの可能性と分野が提供されてくると思うのであります。そういうことなくして、一定の動かすべからざる命題のごとくに考えて、終末処理一本でいくというような行き方で、はたして実効があがるのかどうだろうか。それは日本で公害問題についてもっと古い伝統の歴史があればいいですよ。たとえば、民間におきましてもそうです。海の水質の汚濁につきまして、水を持ってきて、ひとつ検査してくれ。厚生省に持っていきましても検査する機関がないので、民間に金を出して委託して調査研究してもらうというような実情なんです。国立研究所といいましてもそれは貧弱です、技能者が十分じゃありません。そういうようなことを考えましたならば、研究所自体のいまの段階はまだ幼稚ですよ。それならば、終末処理一本でいくというような行き方にあらずして、発生源対策というものも重視して、取捨いずれを選択すべきかということ、こういうふうなことが政治です。そういうふうに思いますので、一体どちらが経済的で安あがりになるのであろうか、効果はどちらが大であろうかというようなことも、これは選択しなければいけません。それは企画庁の一つの任務かもわかりません。企画庁がそこまで分析をやっていかれたらたいへんにおもしろいですけれども、そこまでなかなか手が及びませんというふうにさえ考えるのであります。でありまするから、環境庁の発足せんとする前夜におきましては、そのような含みを持って、一つの目的を水質に限りましたら、水質汚濁の防止の目的に到達する手段を考えるという、そのかまえがなくしては私はどうかと思う。その点はいかがでございましょう。
  208. 山中貞則

    ○山中国務大臣 あるいは私の申し上げ方がまずかったのかもわかりませんが、私の申し上げました、いわゆる終末処理に重点を置いたようにお受け取りいただいたのは、これは地方に大幅に権限を委譲したために国が財政上めんどうを見る場合のことについての特例を申し上げましたので、あるいはそういうふうにお受け取りいただいたのかもしれません。ただいまの御質問でさらに先生の御意思のあるところがわかりましたが、それについては、やはり国立公害研究所というものを国民の要望にこたえるりっぱな統一された研究所にしていきたい。これは四十八年までかかって筑波につくるつもりでおるわけでございますので、それらについて各省庁がばらばらで研究いたしておりまして、研究の成果もともすれば省庁の中で循環しがちである、ましてや民間の研究資料その他は吸い上げることもしておらない。そういうようなこと等を考えまして、四十八年までの完成をめどにいたしますが、その機能としては、各省庁の公害に関する研究分野を一括して予算も要求いたし、配分いたしますとともに、その公害研究所においてみずから諸外国ともそれぞれの研究成果を交換し、協力し合えるようなものにしたいという念願を持っておるわけでありますが、さしあたりはそれらの補完をいたしますために、データバンクというものを出発させたい。そのデータバンクが先生のいまおっしゃったようなPPBSに直接つながるものではありませんが、そのデータバンクの資料の集め方、活用のしかた、あるいはそれらの諸外国との交流のしかた、あるいは国内への技術の発表のしかた、あるいは民間の利用等を受け入れていく受け入れのしかた等について、その緒につく入口にはなり得るのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  209. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは総理の分野になるかと思うのですが、世上伝えられるところによりますと、この環境庁には、大臣を新たに一人ふやすというような説があるのでございますかな。これはあなたの分野じゃないかわからぬが……。  そこで、あらかじめ、仮定の前提に立ちまして、行管の長官にちょっと伺っておきたいのですが、もしこれ、私どもは、行政改革の見地から考えてみまして、できるだけ勇断をもって、少数の大臣をもって多数のそれぞれと省庁を率いて行くぐらいな、そういう新しいシステムを組んでもらいたい、このくらいに考えるのであります。もっと能率的に、合理的に、そういうふうにありたいと思うのですが、この場合に、大臣増員というようなことに結果いたしまするというと、行革の姿勢がよほど後退するのではないかということを実は憂慮いたしておるのであります。巷間伝えられるところ、いろいろそういった端摩憶測がある段階でありますので、まさかと思いまするけれども、この点について、ひとつ仮定を前提にした御意見を伺うことはこれはどうかと思うのですけれども、総理大臣がおりませんのでやむを得ませんので、行管の長官、あなたの御所見をあらかじめ伺っておきたいです。いかがでございましょう。
  210. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私では適当でないかと思いますが、お答え申し上げます。  環境庁を設置しまして、これに専任大臣を置くということは、まことに適切なものかと存じております。
  211. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 どうも行管の長官が、単に専任大臣を置くのは適切なり。専任大臣を置くのは適切なりということになってまいりますると、その裏を返せば一人大臣増員ということにつながるようであります。やはりこれは何らかの手段を持ちまして、そして大臣は増員しない範囲におきましてこの種の問題を解決するというふうにすることが、私は、行政改革に忠実な内閣の姿勢でないか、こう思うのでありますけれども、これはひとつ総理の所信は後日に聞くことに留保しておきたいと思うのであります。  そこで、行政改革全般の問題でありまするが、私は、指摘いたしますることは、まず中央の管理機構をもっと強化することということでありますのですが、同時に、やはりそれはほとんとうに優秀な人材を集めまして、そして総合的な統一施策もなし得るような機関にすべきでないか、あるいは行財政の改革の推進役もここで受け持って、そして推進をしていくということにすべきだと思うのですが、これは企画庁まがいのものになってはいかぬというような御意見もありましたので、これも傾聴する面であります。この点につきましては、私も必ずしもそういうことに同調はするつもりはないのであります。ないのでありますけれども、もっと中央は総理のリーダーシップを発揮するために強化する必要があるということについてはだんだん申し上げたとおりでありますが、これらの行政機構改革の基本的な一つの課題につき行管の長官の御意見を伺っておきたい。
  212. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 内閣機能の強化の問題かと存じますが、かつて内閣補佐官という制度考えたことがありますが、不幸にして成立に至りませんでした。総理大臣のリーダーシップの強化という問題として考えますれば、内閣そのものに優秀な人材を配置いたしまして、総理大臣のリーダーシップを補佐する機関が考えられるかと思いますが、現在でいえば、内閣の審議室を強化することによって内閣内において総理大臣を補佐する機能が強化されるわけでございますから、そういう構想があろうかと思います。
  213. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大蔵大臣に伺いたいのでありますが、公害防止対策、特にいまさっき言われましたのは、水質汚濁防止法の運用の問題でありますが、この問題から入りまして、やはりどのような施策をすることがこの水質汚濁を防止する最も適切な手段方法たる施策になるかということを、たとえば発生源の対策考えたりあるいは終末処理の処理対策考えましたり、また別の角度から経済的な負担のことを考えたり、たとえば発生源を考えていくということになりますというと、これはまあ企業の圧迫ということにも通じましょうし、あるいはまた廃業ということにも通ずるおそれがありということになる。したがってこれは出しっぱなしでよろしい。しかし処理をする対策は企業も持ち地方も持つ、公共も持つ、公私ともに持つというようなことになりました。いま世上行なわれておる議論もその範疇に入ってまいりまするが、そういうようなことにつきまして、もっと大きな見地から、高い見地から政策を選定するという角度からPPBSの手法をここに導入していくということにいたしまして、そして最も適切な方法を発見する。そしてそれは比較的経済性の高い、そして公害防止の目的を達し得る各般の角度から一番適切な手段である、こういうことを財政の配分の面、予算配分の面からも帰納いたしまして、これは検討し得る課題ではないであろうか。私もこの公害対策の関連予算というものをずっと一覧して見たんだけれども、どうもそこに統一性があるような感じがいたしませんのです、いまの段階では。山中長官、相当な抱負を持っておられますので、どうあらわれていくかということは後日注目すべきでありますけれども、この予算にあらわれた面から見ますると、どうもまだそれぞれやっていくということにすぎないのではないかということでありまするので、このPPBSの手法を導入するということを、この予算編成の角度から考えまして用いていくということが一つのチャンすではないであろうか。私は、公害に対しましての一つの導入、次は物価の問題あるいは交通の問題、気象の問題等々幾つか若干例をあげておいたのでございまするけれども、それぞれの分野が展開してまいると思いまするけれども、まず、ちょうど企画庁があんな水質のシステム分析なんかやった実績もあるし、公害庁が発足しようというその前夜でもありまするので、非常におもしろい課題だと考えるのでありますが、その辺はいかがでございますか。財政の見地から、予算編成の見地から考えまして、これを展開していく手法をひとつ新たに進めてもらう、いかがでございましょうか。
  214. 福田赳夫

    福田国務大臣 水質汚濁につきましては、これは昨年の暮れの国会でいろいろな立法ができましたが、あれらを総合的に運用するということでかなりの効果をあげるというふうに思います。根本は、公害発生源に対しまして公害を発生しないような措置ということかと思いますが、それから実際問題とすると下水の処理、これが非常に大きな柱になってくるだろうと思います。まずはとにかく公害対策事業というものを地方公共団体がやらなければならぬというケースもまだかなりあると思いますが、どういうふうな全体の仕組みにするかというようなことでPPBS、こういうものが活用されるということになれば、たいへんけっこうな結果が出てくるんじゃあるまいかというふうに考えます。ただ、先ほども申し上げたとおりこれは実用化し得る段階に来ておらないのです。そっちのほうを取り急ぎまして、そういう企画立案、こういう面で役に立てるような日が早く来るように充力したいものだと考えております。
  215. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 いまPPBSの実用化の問題ですが、これは何ですか防衛庁もかなり研究しておられます。いろいろと研究しておられますが、各省、実施官庁、たとえば建設省とか農林省とか運輸省等々、それぞれにかなりおもしろい分野を持っておられるのですが、それぞれにしかるべき予算をつけてどんどん研究の成果を持ち寄る、お互いに交流するというふうにいたしまして、いっときも早くどこかで先べんをつけるということになりまして、そしてよしんばアメリカが先にやっておったにかかわりませず、日本といたしましては世界最優秀な成果をあげるようなものを開発した、こういうふうな希望を持ちましてこれは進んでいけぬものでしょうか。この点につきましては来年度、四十六年度予算措置といたしまして相当これは何かお組みになったものはありませんか。
  216. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣から申し上げましたとおりPPBSを実際に使いまして予算編成したというところまでまだ至っておらないわけでございます。私どもとしては四十四年度から一億円の予算でいろいろ研究をいたしておりますが、四十六年度におきましては昨年と同様一億三千万円の予算を計上いたしまして、これは各省にそれぞれ移しかえをいたしまして使う予定にいたしてございます。とりあえず先ほどの大臣お話がありましたように、要員の養成がとにかく私どもとして急がなければならないということでございます。アメリカ等では大体千名ぐらいの専門家を使っております。私どもその養成といたしまして四十四年度から講習を続けておりますが、年間中堅の技術者といたしまして私どもが養成をいたしておりますのが四十五名程度で、これが来年三年目に入るわけでございます。それから幹部の研修も同数程度毎年続けております。このように要員の養成を非常に急いでおりまして、まだ各省のテーマは四十四年度には三十八件、四十五年度には二十七件ばかりのテーマを、各省のテーマとして研究を続けております。これらの成果ができましていろいろデータの蓄積をはかって、これでそういうことから実施に移す方向に進みたい、こういうふうに考えております。
  217. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 最後に検査院長、あなたには時間がなくなってしまいましたので、ごく簡単に述べまして終わりたい、こう思うのでありますが、いま話題にいたしました財政資金の効率的使用、これは検査院のある一面の重要な目的でございますが、これにつきましてPPBSの積極的導入であるとか、ないしは事業別予算制度の導入、確立というようなものがほんとうにこれは今日の急務でないかと思いますが、これにつきまして伺っておきたい。  それからまた同時に、検査院やら主計局やらその他行管などの間に電子計算機その他を用いまして、このネットワークもつくって、そして財政運用の実態の情報を持ち寄る、交換するというようなことが非常に大切な問題ではないだろうか、これが検査院の検査推進の立場から見ても、その成果をあげる上から見ても、国会に正確な財政執行の結果を情報提供する角度から考えましても、非常に大事な課題でないかと思われますが、これについての御所見を伺っておきたい。  それから一面におきまして、この予算は決算的予算ということをわれわれしばしば言うておるくらいでありますので、このしりの始末をきちんとするということが大事でありまするから、大蔵省には四六検査もありますし、会計検査院は常時検査もあるし等々、いろいろいたしますが、お互いにもっと平素から緊密な機関を設けるぐらいに連絡を取り合いまして、そして取りきめて財政の効率的運用、その成果を測定する情報を提供さす、こういう結果になりましたということを提供さすということを、この三者間等におきまして緊密な連絡のもとに成果をあげるようにしてはいかがか、こう思うのです。この点につきまして検査院長の御所見を伺って、これで質疑を終わることにいたします。
  218. 山崎高

    山崎会計検査説明員 ただいま御質問がございました予算執行の効率性がどうなっているかということ、これはまことに大事なことでございまして、私ども検査につきましては力を入れております。毎年不当事項の指摘におきましても、あるいは各省に対しまして改善の要求をする場合、あるいはわが検査院の質問によりまして是正された事項というようなものも検査報告に盛りまして、この検査には重きを置いておるわけでございます。  なおPPBSの問題につきましては、これは財政当局が真剣にただいま検討中の問題でございまして、私のほうといたしましても、政府分野におきましてPPBSが採用になった場合に、その検査をどうするかということにつきましては、たとえばこれは国連のフェローシップによるものでございますが、現にPPBSの検査を行なっておるアメリカの会計検査院に職員を派遣して研修させたり、調査させたり、また大蔵省主催の研修会等にも職員を派遣するほか、わが国におきましてこの制度が採用された場合の検査につきまして、対応できるように、部内の研修を進めておる次第でございます。  次に、コンピューターを検査院に置くという問題のお話でございますが、コンピューターを置きましても、計算書の正確を期するというような、単なるそろばんのかわりにするというようなことでは、高価なものでありますので不経済でありますし、さらにもっとより深い利用をする方法考えなければいかぬということがあるわけでございます。何ぶんにも検査というものは、法令の解釈の問題、予算の問題あるいは価格の問題、あるいは不当性の程度の問題等いろいろな判断が入りますので、一概に検査院においてコンピューターによって検査ができてその当否をきめるというところまではまだ一足飛びにはまいらぬと思うのでございます。検査院といたしましては、むしろ受検官庁といいますか、検査を受ける官庁が漸次コンピューターの設置が増大している現状でございますので、これに対して、受検官庁のコンピューターをいかに利用してやるか、あるいはこれに対する検査をどうするかという点に主眼を置きまして、目下職員の研さんを進めているというわけでございます。  それから第三点は、検査院の検査結果の情報の提供の問題と思うのでございますが、これは法律的には、正式に申し上げますと、検査院の情報は、検査報告によって議会に情報を提供するわけでございます。この検査報告の中にはあるいは不当事項があり、あるいはこのように是正したという事項もございますし、また各省に対しましては、こういうような是正、改善をしたらどうかという意見を表示いたしまして、それにつきまして各省がこういう措置をとったということも載せているわけでございます。これが法律上の正式の情報提供であると思うのでありますが、そのほかに実際には事務的な問題といたしましても年々二回程度、これは事務レベルの段階でございますが、大蔵省の主計局などと情報の交換をいたしまして、予算ができるだけ効率的に執行されるように留意をいたしておるわけでございます。  以上、御答弁申し上げます。
  219. 中野四郎

    中野委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  委員の各位におかれましては、たいへんおそくまで御協力をいただきまして、御苦労さまでございました。  明十七日は、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時七分散会