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1971-02-09 第65回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月九日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤田 義光君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君   稻村左近四郎君       植木庚子郎君    小沢 一郎君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大村 襄治君    奧野 誠亮君       賀屋 興宣君    川崎 秀二君       上林榮吉君    小坂善太郎君       坂元 親男君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       西村 直己君    西銘 順治君       野田 卯一君    福田  一君       松浦周太郎君    松永  光君       松野 頼三君    森田重次郎君       渡部 恒三君    久保 三郎君       阪上安太郎君    辻原 弘市君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       畑   和君    原   茂君       細谷 治嘉君    相沢 武彦君       沖本 泰幸君    坂井 弘一君       中野  明君    岡沢 完治君       竹本 孫一君    青柳 盛雄君       谷口善太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         科学技術庁計画         局長      楢林 愛朗君         科学技術庁振興         局長      田中 好雄君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         国税庁長官   吉國 二郎君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         通商産業省企業         局長      両角 良彦君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省化学         工業局長    山下 英明君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省航空局長 内村 信行君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         参  考  人         (日本銀行総裁)佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   小川 半次君     渡部 恒三君   上林榮吉君     坂元 親男君   笹山茂太郎君     松永  光君   灘尾 弘吉君     西銘 順治君   細谷 治嘉君     畑   和君   安井 吉典君     久保 三郎君   近江巳記夫君     沖本 泰幸君   岡本 富夫君     中野  明君   西田 八郎君     竹本 孫一君   松本 善明君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   坂元 親男君     上林榮吉君   西銘 順治君     灘尾 弘吉君   松永  光君     笹山茂太郎君   渡部 恒三君     小川 半次君   久保 三郎君     安井 吉典君   畑   和君     細谷 治嘉君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十五年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十五年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十五年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十五年度政府関係機関補正予算(機第1号)、右三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。竹本孫一君。
  3. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、二、三の現下の重要な問題について質問をいたしたいと思います。  本日は、主として経済問題にしぼって物価の問題、特に管理価格の問題並びに資本自由化にいかに備えるかという問題について御質問をいたしたいと思いますが、その前に、新聞でけさ非常に大きく報道されております南ベトナム軍ラオス進攻、二万人の人が進攻したという問題について一言だけ総理のお考えを承っておきたいと思うのであります。  言うまでもなく、この事件アジアの平和と安定にも重大な関係がございますし、場合によってはまた沖繩早期返還にも何らかの影響があるのではないかとわれわれも心配をするわけでございます。ラオス政府は、南べトナム軍進攻に対しましてすでに、これは一九六二年のジュネーブ協定違反であり、外国軍隊が自分の領土に入ってくる、侵入をしておるということについては非常に遺憾であるという声明を出しました。各国もそれぞれの見解を表明しておるようでございますけれども佐藤総理としてはこの問題、事件をどういうふうに見ておられるか。また、日本政府としては何らかの意思あるいは態度表明があるのであるか。その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 総理から御答弁があると思いますけれども、事実関係をちょっと私からお答えいたしたいと思います。  昨日の、日本時間で正午に南越政府から南越軍隊ラオス国境から侵入したということを含めての発表がございました。これでいままでのいろいろ伝えられておった情報がその限りにおいて確認されたわけでございます。そしてただいまお話しのございましたように、ラオス政府がこれに対して声明を出しておりますが、その声明の中にもありますように、そもそもが北側が侵入したということもその声明の中にも触れられておるわけでございます。  政府といたしましては、かつてカンボジアに対しまして、ジャカルタ会議等に積極的に参加したような経緯もございます。ことにラオスは御承知のとおり、現政権はソ連、北ベトナム等も承認している国であり、国交関係のある国であり、そしてすべてのと申してもいいと思いますが、関係国ジュネーブ協定の線に従ってラオスの中立的な立場主権尊重をうたっておるわけでございますから、日本政府としても、その線に従ってこの事態が急速に解決し、そして一切の外国軍隊ラオス国境外に撤退することを望んでおるわけでございます。事態が急に進展しただけに、今後の状態を注視しながら、政府としてとるべき手段がございますれば、状況に応じ、また時宜に応じて善処いたしたい、かように考えております。
  5. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ベトナム問題がインドシナ半島全域にわたって拡大しないことを願うと同時に、このベトナム問題解決、これはすなわちインドシナ半島に平和が招来されることだ、そういう意味で同時に解決を要するものとしてラオスの問題を忘れてはならない。事あるごとに実は注意してまいったのでございます。ベトナムでは戦火、戦いが行なわれておる。ラオスは一方的に内乱状態が続くような形でそのまま推移しているけれども、やはりベトナムの南北の問題を解決した際に、同時にラオス解決すべきだ、こういうことを、プーマ首相が来たごとにそういう話し合いもしておりますし、またアメリカに出かけた際もその点を強く指摘していたのでございます。  御承知のように、ラオスに対しては、ジュネーブ会議各国が中立を保障する、こういう形でございまして、ところが一方的に北からも入ってきている。南からも今回堂々と入った。これは堂堂ということばがいいのかどうかわかりませんが、とにかく入った。戦火拡大されたこと自身はこれはもう否定できない状態だ、かように私は思います。しかし、この状態は、おそらくこれなくしてはインドシナ半島に平和がもたらされないという最終的な結論のもとに行なわれたことだろうと私は思いますが、しかし、いずれにいたしましても、ただいま戦争は拡大方向に行った、このことは私自身たいへん残念に思っております。事柄は、ただいま冒頭に申した点に返って、やはりインドシナ半島に平和がくる、それはベトナムだけの問題ではない、ラオスカンボジアすべてにやはり平和がもたらされる、そういうことでなければならない。その点で、ただいまの状態を、そのいい結果をもたらすようなそういう方向に導きたい、これが私ども立場でございます。しかし、ただいままでのところ、政府としては別にこれという処置をとってはおりません。しかし、この状態をいつまでもほうっておくわけにはいかない、かように思いますので、米側に対しましても、ただいま考えておる点を駐在大使を通じて十分に米側にも申し入れたい、かように思っております。  そこで、インドシナの平和は平和だが、沖繩の問題に影響があるかどうか、こういう点について御懸念がおありのようですが、私は沖繩返還、これはただいまのところ懸念すべき状態は起きておらない。むしろ沖繩では、御承知のように、ただいまもうB52はいませんし、まただんだん縮小する形になっておる。軍労解雇の問題がただいま火を吹いておる、こういう状態でございますから、この点は沖繩返還には支障はない、現状においてはですよ。さように私は見ておりますし、またそういうような影響をもたらさないように、来たさないようにあらゆる努力はすべきだ、かように考えております。  いずれにいたしましても、戦火拡大した形をとっていることは、まことに私は残念に思っております。こういう点について私どもも、当方の意向を十分伝えて米側の理解を求める、かようにいたしたいものだと、かように考えております。
  6. 竹本孫一

    竹本委員 沖繩返還には重大な支障を来たすことはないように、また、ないであろうという御答弁でございますので、その点はよろしくお願いをいたしたい思います。ただ、この問題は、先ほど来御答弁にもありましたように、カンボジアの場合とまた話が違いますので、いま総理の御答弁になりましたように、いい結果をひとつ得られるように、積極的、機動的にアクションを必要に応じてはとられるように希望いたしまして次へ進みたいと思いますが、ただこの際、私は一言だけ東南アジアの問題について、インドシナ半島の問題について基本的な考え方を、われわれとして考えておる点を御指摘申し上げたいと思うのでございます。  それは、アメリカ共産主義の勢力の拡大を心配しておる、これはよくわかります。私自身共産主義には反対でありますし、また、イギリスの労働党のある外務大臣日本に来て、帰ってから向こうで報告した話の中に、日本人は共産主義のおそるべきものであるということについてあまりにも知らないので驚いた、犯罪的に無知である、こういうことばを使っておる、そういう点もありますので、私ども共産主義反対する立場からいえば、その点は十分に警戒をしなければならぬと思います。しかし同時に、いまのアメリカのとっている行動というものは、あまりにも反共の過熱した考え方に立っておるのではないか。ウォルター・リップマンが批評したことがありますけれども、これからはアメリカアジア政策は冷静なるカルキュレーション、計算の上に立って考えなければならない。ただ過熱したホットアイデオロジー、イデオロギーだけに過熱してやってはいけないのだということを警告したことがあります。彼の新しい孤立主義の理論でありますけれども、私はやはり、あまり共産主義を、反対だからといってアジアから追っ払うわけにはまいりませんので、その点は政治的にも経済的にも冷静な、科学的な判断というものがなければならぬ。その点については、アメリカ側態度にはあまりにも過熱したものがあり過ぎはしないか。それでは、出発は善意であれ何であれ、かえってアジアの平和と安定を害することがあるのではないか、むしろじゃますることになるのではないかという点を心配しております。これは基本的な問題でございますから、この上御答弁を得ようとは思いませんけれども、やはり、リップマンではないが、彼は特に経済的に冷静な計算をやれということをいうのでございますけれども、私は、政治的にも冷静九計算の上に立って、アジアの平和を真剣に考え汗ければならないではないかと思いますから、希望意見を申し上げて、次へ進みたいと思います。  本日の本論でございますが、管理価格の問題にこれから入りたいと思います。  まず、物価の問題でございますけれども、四十五年は七・七%の物価上昇であるということは、すでに新聞が騒ぎ、十二月には八・三%も上がっておる。一月も、東京都区部については七・九%も上がっておる。こういうことで、物価問題はわれわれ国民あるいは国会の最大の課題一つになりました。なるほど政府努力もある程度実を結んでおります。たとえば卸売り物価がやや安定の方向に向いておる。外貨も高い水準ではございますけれども、それ以上急にふえるということのないような安定点を求めつつある。日銀券の増発も二〇%と思ったのが一五、六%に落ちつきつつある。こういう点で、やや基本的な方向で落ちつくような方向に向かっておる面も私は率直に認めております。しかし、何しろ七・七%の消費者物価上昇ということは、これはたいへんな問題でございまして、この国会において、あるいは物価国会にしたらどうかと野党のほうでは強く要求をいたしておるわけでございますけれども、この七・七%という数字そのものについて、総理はいかなる感じを持っておられるか、まずその辺を伺いたいと思います。
  7. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘のように、非常に消費者物価が上がっております。これについては、竹本さんもすでに御存じのように種々の原因が考えられております。それに対してまた政府としてもできるだけ総合的に対策を進めておるのでございます。何ぶんにも季節商品中心とするものでありますだけに、これに対する対策というものは特殊なものであります。われわれは、おそまきでありますけれども、今日農林省中心にして、この季節商品対策というものに力を入れ、最近においては少しずつ効を奏しつつあると思われます。そのほかの、いわゆる中小企業製品中心とする、手間賃の上昇を理由とするところの引き上げ、これがまた相当全般的になろうとしております。これらは、いま御指摘のように、全体のいわゆる高度成長というものを軌道修正しながら、その全体の鎮静化した状態のもとで個別的な対策を徐々に行なってまいる、こういう方向政府方向でございます。(竹本委員「いや、それはあとからやりますから、総理感じだけ聞けば」と呼ぶ)  そういう意味において、われわれとしても、現下消費物価情勢というものをあらゆる努力をもって何とか抑制したい、こう考えております。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、なまやさしい消費者物価上昇状態ではございません。私は、たいへん高いものだ、かように思っております。
  9. 竹本孫一

    竹本委員 総理は、なまやさしい状態ではないんだという御答弁をいただきましたので、この問題が私の本日の前半の課題でございますから、じっくりきめこまかくひとつ論議をさしていただきたいと思いますが、その前に、いま御答弁いただいた経済企画庁長官に御質問をいたしたいのであります。  あなたは、私が去年の三月二十日にこの予算委員会において物価の問題について、特にことしはげたが非常に多い、したがって四・八%なんということでおさまるはずはないじゃないか、すでにげたがここまで来ておる、あと幾らもないじゃないかと言うときに、二・三ならば倍だから四・六の幅があるんだから、まだ余裕しゃくしゃくとはおっしゃらなかったけれども、だいぶん余裕があるんだ、こういうことを答弁された。速記録がありますからごらんをいただきたいと思いますが、そしてそのときに、最後に御答弁になったのがあります。これは速記録ですよ。  佐藤経済企画庁長官速記録は、「いわゆるサイクルの関係もございます。ことしの異常高ということを、これは捨象して考えていいのじゃないか。しかし、ある程度の値上がりはもちろん予定しなければなりませんが、それらを計算いたしましても大体四・八ぐらいのところにおさまるであろう、こういうふうに思っております。」こう答えられた。ところが、いままだ年度は終わっておりませんから、四十五年度が七・七になるか七・三になるかは知りませんけれども、四・八%でないことは事実だし、大体四・八%の範囲でもないと思うのだけれども、あなたの言われた大体というのはどのぐらいの幅であるか、それを伺いたい。
  10. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 経済見通しそのものがなかなか今日むずかしい問題でありますが、特に物価目標ということになりますと、率直に申し上げましてなかなか的確にとらえにくいのが今日の実情であります。そういう中で、われわれは政策目標としての物価指数目標というものをここに設立しているわけでありますから、まあ大体そういう前後、そういうような感じで申し上げているわけであります。
  11. 竹本孫一

    竹本委員 だから、あなたは物価大臣といわれて、佐藤総理も御自慢の人事の一つであったと思うのだけれども総理、実際問題としてこの物価の問題はたいへんな失敗だとぼくは思うのですよ。四・八%、大体その辺でおさまると言ったら、五二二か五・五ならわかりますよ。しかし、ほとんど倍に近いような七・七あるいはその近くの数字年度の末においてもなるということになれば、これは私は大体じゃないと思うのですね。そうなりますと、物価大臣といわれ、また物価大臣として期待された経済企画庁長官答弁としては、これはまことに無責任な答弁なのであるか、あるいはあとから重大な失態をしたのであるか、いずれにしましても私は非常に問題があると思う。その大体の答弁をして倍にも物価が上がっていくというようなことについて、政治的にきびしい責任感の上に立って一体どういう反省をされるのか、あるいはそれを取り消されるのか、その辺を伺いたい。
  12. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘のように、四・八と七・七でございますから非常な違いでございます。そういう意味において、われわれの見込み違いというものについてはこれは深く反省をしなければならない、こう感じております。したがいまして、できるだけこれに対して今後あらゆる努力を傾注しなければならない、こう考えております。
  13. 竹本孫一

    竹本委員 私は、四・八%におさまらぬであろうということについて、げたの問題を中心に実はずいぶん議論したでしょう。だからその速記録をもっていま言うわけですね。ですから、そう簡単に、ちょっとあれは間違いました、失礼しましたと言うだけでは済まされない。なぜならば、われわれは論議をしないんじゃない。十分論議をして、これは科学的に、政治的に見通しとして成り立ちませんということをぼくは指摘したのですから。その指摘したのにもかかわらず、大体おさまるであろうと思いますと答弁しておるじゃないか。いまのは失礼しましたというようなことで済む問題ではない。総理、いかがですか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん激しい口調で御非難のようですが、私は、卸売り物価が大体横ばいの状態でなぜ消費者物価がかように上がったか、そこに異常なものを感じている。これを、異常なものがあるそういう事態を十分つかみ得なかったという、そういう意味において佐藤経企庁長官はあやまっておる、かように私は思いますよ。これはやはり何と申しましても季節的な商品が予想以上に非常に高かった、こういうことではないかと思います。卸売り物価自身まで非常な激動を来たしておった、こういう状態でおしかりを受けるなら、これはもう明らかに見通しが間違っている、根本的にその力がない、こういう御判断を受けてもしかるべきかと思いますが、私は、経済の基調は大体狂いがないのだ、したがってその上に立っての消費者物価というものを計算すると、その計算においてそこに季節的な要因を入れなかった、こういう点において重大なミスができたのだ、かように理解していただきたい、かように私思います。
  15. 竹本孫一

    竹本委員 物価見通しをする場合には、内外の情勢の分析もありましょう、あるいは合理化投資の効果の問題もありましょう、あるいは需要の強さの問題もありましょう。いろいろの情勢を分析して、集約して、消費者物価は四・八になるのか、もっと上がりますかということをわれわれは議論したわけですから、いまごろになって季節商品がどうだとかあるいは卸売り物価がどうだとか言ってみてもそれは弁解である。やはりこういうような重大な物価の問題については、公害の問題と同じように、これは従来の行政にも政治姿勢にも誤りがあったならあったということを率直に認めて、その反省の上に立って出発をしなければ、ただあれとかこれとか、条件をあげれば幾つもあるのですから、物価というのは最後のところが大事なのですから、ぼくはそういう途中の弁解めいたことを言われるよりも、政治姿勢としては、物価の問題については私は見通しをはっきり誤りました――大体四・八と言ったのだから、大体四・八の範囲であるか、範囲でなければないということをあやまるべきだと思いますが、いかがですか。
  16. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 先ほど申し上げましたように、まことに見込み違いであります。私もちょうど就任当初でございましたが、先ほども総理からもお話がありましたが、今日における物価問題の根の深さ、その困難性、こういうものを……。
  17. 竹本孫一

    竹本委員 そんなことはわかっている。あやまるかあやまらないかを聞いておる。
  18. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ですからそれは、まことに見込み違いであったと申し上げる以外にはないのであります。
  19. 竹本孫一

    竹本委員 経済企画庁長官ほどにはないけれども、私も大体経済はわかっているんですから、一通りのことは知っているんですから説明は要らないですよ。ただ、政治見通しとして政治のきびしさというものがなければならぬ。公害の問題や物価の問題については、あれはちょっと間違いましたということだけでは済まされないということの政治姿勢を私は問題にしているのですから、ただいまの御答弁で一応納得しますけれども、やはりまじめに答弁していただかなければいかぬ。われわれは見通しをやるときにはそんなにでたらめを言っているわけではありませんから、その点は御了承をいただきたい。  関連いたしまして、大蔵大臣に一口伺いたいのでございますが、今度の補正予算二千六百億の問題も、幸か不幸かと言うとことばが悪いかもしれませんが、自然増収をたよりにしてそれでカバーできました。ところが私は、いつまでも自然増収で補正予算を組めばいいというわけにはまいらぬだろう、その点を実は心配しておるわけです。私は常に前向きに議論をしたいと思うのでございますけれども、補正予算を組んでいく、しかも二千六百億というようなことになれば総合予算主義がくずれるではないかといったような問題については、すでに同僚議員から御指摘がございましたから省きますが、私がここで問題にしたいのは、物価がこういうふうに上がってまいりますと、財政予算のデフレーターの問題を考慮に入れて考えてみると、今度は七兆九千四百九十七億円の予算が補正予算で二千六百三十三億プラスする。合計すれば八兆二千百三十億円の予算になる、こういうことですね。八兆円の予算を組んで、国民のために大いに施策を強化される、まことにけっこうでありますけれども、実はその中に物価上昇による水ぶくれというものが非常にある。総理、これをどの程度にお考えになったかということで私は問題にするわけですけれども、たとえばいまの物価が大体財政のデフレーターで見ても、大ざっぱな議論になりますが、五ポイントずつ上がっていったというふうに考えてみると、昭和四十年から二五%ぐらい上がっているわけです。そうすると、われわれは八兆円の予算を組んで、大いに老人福祉も増進するんだと言っている、あるいは道もよくするんだと言っている。けれども、予算の実質は水ぶくれが多いものですから、大体財政のデフレーターを考えると、四十年ぐらいを基準にして考えると、約二兆円前後のデフレーターの関係で水ぶくれがあるではないか。裏から言いますと、これは、八兆円予算で大いに施策を強化すると言っているけれども、実は六兆円の予算である。そうすると、二兆円は、粉飾決算になるのか過大広告になるのか知りませんけれども、とにかく国民として見れば、これはたいへんな問題である。物価が上がれば国民の収入が実質的に切り下げられる、労働者は実質賃金の切り下げになるということで悩むだけではなくて、政府といえども、二兆円なり一兆五千億円なり物価上昇の犠牲を受けているわけです。そういう意味で、政府もまた被害者の一人であるという意味において物価問題は真剣に考えなければならぬではないか。一体財政は、八兆二千億の予算になるわけですけれども、実質的に見れば、四十年あたりを基準にすれば、私は、二兆円近くの水ぶくれがあるだろうと思いますけれども、大蔵大臣の見解も一言、この際聞いておきたいと思います。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 二兆円まではいかぬと思うのですが、それ近くの差が出てくるんじゃないかと思います。つまり、この四十年あたりを基準にいたしまして、それからの推移を見てみますると、GNPと予算の間に、その年々の違いによって違いはありますけれども、大体長期に見ますと一定の比率がある。そういうことから見まして、実質GNPが四十年に比べて今日幾らになるんだ、こういうことを見てみますと、大体倍近くになるのです。四十年度の予算は三兆六千五百億円ぐらいありますか、でありますから、実質GNPの比率でいきますと、七兆円というところに行くべきじゃないか、そういうふうに見られます。実際は、今度編成いたしました予算は九兆四千億円である。ですから、そこに二兆四千億円ぐらいの開きが出てくる。竹本さんの御見解、大体私は遠からずというふうに見ております。
  21. 竹本孫一

    竹本委員 次へまいりますが、この前、三月二十日に私が質問いたしましたときに、いまの四・八%議論をしましたときに、私は、経済企画庁の権限を強化しなさいということをむしろ前向きに主張したわけです。それに対しまして、総理答弁はこうであります。物価問題懇談会とか審議会を設けておる話をいろいろ御答弁になりまして、結論として、「仕組みとしては、一応形は整っておるし、私自身がそういうものを指導しておるということでございますから、私自身、いまのところで不十分だとは思わない。」云々ということばが出ておるわけです。要するに、仕組み、制度、機構、権限といった問題を私が問題にいたしましたときに、総理は、仕組みとしては不十分だとは思わない、形は一応整っておるというふうに御答弁になりました。しかし、いま申しましたように、大体四・八%と言ったものが七%以上上がり、あるいは年で申しますと、七・七%上がっておる。これは努力が足らなかったのであるか、なまけておったのであるか、あるいは一生懸命取り組んで経済企画庁もやられたんだけれども、いろいろの権限の問題、機構の問題、そういう制度的な裏づけが不十分であったために、善意なものであり、努力もされたんだけれども、なお制度、機構の上から不十分な点があったのでできなかったというふうに考えられるか。総理の御答弁との関連において御答弁いただきたい。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 端的に申しますが、いろいろ努力はした、しかしながら各機関間の相互の連絡、そういうものにもつとくふうすべき点が多々あったのではないだろうか、かように私は思います。いわゆる物価は、抑制という方面からほんとうに各機関ともそういう点に真剣に立ち上がった、そういう努力がなされた、かように評価するのにはまだまだ十分でない、かように私思っておりますが、しかしこれは、いわゆるわれわれが努力したにかかわらずそれが十分効果をあげなかった、こういうことについて深く反省もし、そしてどういう点が結果を生まなかったか、こういうことについてもさらにさらに検討すべき点が多々ある、かように私思っております。
  23. 竹本孫一

    竹本委員 本日はその問題を少し掘り下げてまいりたいと思うのでございますが、総理の御答弁にもありましたように、努力もなるほど一生懸命やられたと思うのです。しかし私は、制度、仕組みのほうにいろいろ欠陥があるんだということをこれから指摘しながら私の意見も展開してまいりたいと思うのです。とにかく何としても物価というものは、これは大蔵大臣もあるいは通産大臣も経企庁長官もお考えになっておると思うのですけれども、私は、大体二、三%ぐらいの値上がりというのがまあ常識だと思うんです。七・七%というようなことは全く例外中の例外でありまして、これはたいへんな問題である。二、三%になる時期が一体いつであるか。経済計画の中でそういうことを想定されたこともありますけれども、いわゆる画餅に終わっておる。そういう意味で私は、物価を下げるには下げる目標がなければならぬ、最後努力はやはり二、三%というところへ持っていかなければいかぬと思うんです。ところが、それは一体いつできるかということを私は非常に憂いを持っていま考えているわけです。  これもついでに関連して申し上げますが、大蔵大臣の意見を聞きたいのですが、あなたはこの国会の中でデノミネーションの問題に触れられました。そしてその点は、三百六十円なんという三けたで言うことは全く国辱的な数字であるという点、並びにこれでは表示がめんどくさくて数字の零ばかり多くなってかなわないという点については、私も同感であります。しかしながら、大蔵大臣も言われておるように、これは物価上昇する過程においては取り上げるべき問題ではありません。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 ところが同時に、そう言いながらも、まあ本質的にはあるいはデノミネーションというものは考えるべき問題であるというような御答弁があり、したがって、二、三の質問もそれに関連して出てきたわけであります。しかし、これについて総理、私はこういうふうに思うのです。一般の国民はデノミネーションもデバリュエーションも円の切り上げもみな一緒になっているのですよ。頭の中ではみな一緒なんです。それを正確に、デノミはこうで、デバリュエーションはこうで、円の切り上げはまたその逆なんだということが、経済的な知識でわかっている人はほとんどいない。したがって、デノミネーションの議論もここでいたずらにやるということは、さあいよいよ円の切り上げだとみな思うんですね。だから、そういう議論は避けたほうがいいのじゃないか。私は、円の切り上げにはあまり賛成でありませんから、そういう意味で言うわけですけれども、大衆がわかればいい、しかし、わからないのに、しかも物価が二、三%にならなければという条件を大臣もつけておられるのだ。私もそうなければならぬと思うのだ。したがって、二、三%に物価が安定する見込みが全然ないときに、そのほうはみなわかりませんから、デノミネーションは本質的には考えなければならぬ問題だ、こう言われると、そちらだけが大衆には伝わっていく。しかもそれは、円の切り上、げともデバリュエーションともみなわけがわからないで混乱しておる。こういうことでございますから、私は大蔵大臣にここではっきりとお伺いしたいのは、この問題はもう当分考える条件はないのですから、いまおっしゃるように、物価が二、三%に来年なるんだ、再来年なるんだとはっきり約束されるならそれも一つの方法です。しかし、それはいまの物価関係からいえば、ほとんど不可能に近い。そういう情勢の中でそれを前提として議論をされるということは、いたずらに混乱を招くだけではないか。慎重なる大蔵大臣からすれば、これはどうもあまり触れないほうがいい問題じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話のとおり、円の切り上げでありますとか、あるいはデノミネーションとか、これは私はあまり触れていただきたくないのでありますけれども、皆さんのほうからいろいろお尋ねがある。そこで、私はこれははっきりさせなければいかぬ、こういうふうに考えまして、いま竹本さんもお話しのように、どうも切り上げとデノミがごっちゃになる傾向もあるので、そこでこれは私もはっきりさせる必要がある、さように存じまして、切り上げとデノミの問題は全く別問題であります、こう申し上げておるわけです。  円の切り上げにつきましては、ただいまこれを行なうところの実質上の理由もありませんし、また私ども当局といたしましても、全然考えておりません。こういうことをはっきり申し上げておきます。  デノミネーションにつきましては、これは理論的に言いますと、先ほどあなたからもお話がありましたように、わが国経済、また円の威信のためにも、また計算上の合理化のためにもこれを行なう必要がある。しかし、これは物価が安定した状態になったとき、こういうふうに考えておる。その時期はなかなかいま予見もしがたい状態でありますので、ただいまはそういう時期にはありません。非常に明快に申し上げておるわけなんです。  しかし、なるべくこういう議論はあまりないほうが好ましい、かように存じますので、どうかひとつ御協力のほどをお願い申し上げたいと存じます。
  25. 竹本孫一

    竹本委員 いよいよこの辺で管理価格の問題に入りたいと思うのですが、最近、非常に安定しておったはずの大企業の製品が急速に上がり始めました。数字を一々言うと時間がありませんから、傾向はもう御存じでございますし、申し上げませんけれども、この管理価格の問題というものについて、まず一般的にお伺いをいたすわけでございますが、政府はどういうお考えを持っておられますか。
  26. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 最近、御存じの独占禁止に関する懇談会、いわゆる独禁懇において、これについてわりあい適当な定義を下しておると思われるものがあります。すなわち、一つの独占状態、寡占状態、そうした寡占状態というものが原因になりまして、その結果としまして、需要あるいはコストの変動に対して価格が下方硬直性になってまいる、こういうような価格である。しかもそれは、いわゆるカルテルあるいはまた政府の価格支持、こういうものを伴わないものである、こういう定義を一応下しております。われわれも今日の事態においては大体そこいらが適当な定義であろうか、こういうふうに考えています。
  27. 竹本孫一

    竹本委員 私はきょうは、ひとつ代表的な問題として、管理価格に関して、ビールの問題と板ガラスの問題、最近公取は、また鉄鋼業界の最近の市場の動きについても問題がありそうだ、減産下の値上がりということについて問題をとらえておられるようでございますが、きょうはビールと板ガラスを中心にして独禁法の関係の問題等に触れ、またアメリカのダンピングの問題についても触れてまいりたいと思います。  御承知のように昨年アサヒビールがきっかけになりまして、ビールの値段を上げました。これに対して当時経済企画庁長官は、実はビールの問題につきましては、われわれも非常にけしからぬことであるというので、国税庁といろいろ話し合いをしております、こういう答弁をされました。いまでもけしからぬということについては同じお考えでございますか。
  28. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 きわめて好ましくないと思っております。
  29. 竹本孫一

    竹本委員 きわめて望ましくない、あるいはけしからぬという御答弁でございますが、それならば、あなたはそれに対してどれだけの手を打たれましたか。その経過を聞きたい。
  30. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これについては、先ほど竹本さん自身からお話がありましたように、今日においてはすでに自由価格になっております。ただし、自由価格にはなっておりますけれども、過去のいろいろな沿革、経緯に照らしまして、まだ国税庁の行政誘導の余地も多少残っておるであろう、こういうことでいろいろと国税庁とも相談をし、国税庁自身からも相当の勧告が行なわれたのであります。しかし、最終的にはそのとおりになりませんでしたけれども、これは今日の自由価格制度というものをたてまえといたしまして、まことに残念でありましたが、やむを得ない結果に終わったわけであります。
  31. 竹本孫一

    竹本委員 総理、具体的に申し上、げますから、ひとつ聞いていただきたいと思うのです。ビールの値上げはけしからぬ。そのけしからぬ根拠を少し私は申し上げるわけです。私もけしからぬと思いますが、たとえば四十五年上半期にキリンビールは幾らもうけておるかというと、税引き前で申しますと七十億円もうけておるのです。資本金は二百三十億円で、配当は一五%です。それより弱いんだけれども、百億の資本金のアサヒは十五億三千万円もうけておる。配当は一三%であります。それからサッポロは同じく資本金百億。十三億二千七百万円もうけて、配当は一三%であります。今日の情勢の中で、一五%とか一三%の配当は、私は決して少なくないと思うが、どうか。また七十億円あるいは十五億円、十三億円というふうなもうけをあげておる、これも資本金とも関係がありますけれども、決して少ないほうとは思いません。利益は少なくないんだ、配当は低くないんだ、そういう会社が値上げをするということについて、総理はどういうふうに思われますか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の意見を徴されるまでもなく、先ほど佐藤企画庁長官が答えたとおり、好ましいことではございません。
  33. 竹本孫一

    竹本委員 ところが今度十円値上げしましたね。百三十円が百四十円になりました。そうしますと、半期に七十億円もうけておるキリンビールは、一体年間に幾らぐらい売るか、私詳しく調べておりませんが、大体間違いのないところで二十三億本ぐらいは売るでしょう。いま日本で四十数億本飲んでいるわけです。一人四十本はビールを飲んでいるのです。私はあまりビールは飲まないけれども、とにかくみな飲んでいる。二十三億本売って、十円値上げすれば、それだけで二百三十億円のもうけが、半期七十億円のほかに入るわけですね。もちろんその中で、今度の報告をいろいろ見ると、十円全部とったのではなくて、約七円は流通マージンに回したということになっております。そして三円十五銭がキリンビールの会社に入るということになっておるのだけれども、簡単に申しまして三円入ったとしても、これでまた六十九億円の利益が入ってくるわけですね。コストも少しは上がっておるでありましょうけれども、半期すでに七十億円もうけておる会社が、また十円ぽんとビールを値上げして、今度はまた六十九億円入るということは、これは私、われわれの社会道義の常識からいってまことに許しがたいことだと思うのです。許しがたいと思うから佐藤長官も御努力をされ、国税庁長官も御努力をされておると思うのですね。私は、その御努力は高く評価するのです。しかしその努力が一体実っておるかということになると、全然実っていないでしょう。国税庁長官は、ここにいらっしゃると思いますが、一体何回ビール会社を呼んで値上げをするな、あるいはしないようにということを、要請というのですか、申し入れるというのですか、お話し合いをされましたか、伺いたい。
  34. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ビールの値上げにつきましては、実は昨年五月ごろから卸関係で強くつき上げをいたしておりました事実がございますので、その当時から私どもはビール会社に対しまして、現在の状況で値上げをすることは好ましくないぞという警告はいたしておりました。ところが突然に十月九日にアサヒビールが値上げをいたしました。その際に私どもといたしましては、その値上げの発表にかかわらず、もう一回自粛せよということを申しまして、同時に他の三社を呼びまして、たとえこれを実行したとしても追随するなということを申しました。さらにそれぞれ各社について再度警告を発し、さらに大手のキリンビールにつきましては、その当時以来四回自粛を申し入れているわけでございます。しかし、結果においてはそれが功を奏さなかったわけでございますが、私どもといたしましては、できる限りの努力はいたしたつもりでございます。
  35. 竹本孫一

    竹本委員 国税庁長官の善意を私は信じます。四回呼んでやられた、できる限りの努力をした、現に担当の国税庁長官はそうおっしゃっておる。しかるにビール会社は、いま御答弁のうちになかったけれども、実は呼んで、値上げをしないようにしてくれよといって長官が申し入れたら、必ず翌日上げているのですよ。まるで値上げを催促するように、呼んで、値上げしては困りますぞと言ったら、翌日上げている。キリンビールは最後に二十四日に上げたけれども、二十三日に呼んだのでしょう。会うと翌日上がるんだ。まるでこのぐらい政府をばかにした態度はないとぼくは思うんだけれども、呼んで、値上げしては困りますと長官が言えば、必ず四回ともそろってその翌日に値を上げている。これは政府はばかにされておるのですか。あるいはそれでも政府は何にも言えないのですか。一体どちらと思いますか。どちらなんですか。総理は、仕組みには不十分な点はないと私に御答弁になったのだけれども、そんなに四回まじめに努力をされて、四回忠告をして、しかも翌日必ずビール会社は返礼、返答としては、値上げをもってこたえておる。そういうことを一体どういうふうに政府は受けとめておられるか。またそれは権限がない国税庁長官や公取の悲しさ、権限のない限界だというふうに受け取っておられるかどうか、その点をお聞きしたいのです。
  36. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ビールの価格につきましては、御承知のとおり昭和三十五年までは統制価格をずっと維持しておりました。しかしこういう物資についての統制価格は全くの例外中のものであるということで統制価格を廃止いたしましたが、なお基準価格という制度をもって、三十九年までは権限をもって指示をすることができたわけでございます。三十九年に基準価格を廃止いたしまして、すでに自由価格になっておりますし、また実際に一般的監督権限といたしまして、勧告はいたせましても、実際――ちょっと詳しくなりますけれども、先ほどのアサヒビール……(竹本委員「時間がないから、ぼくの問うたところだけ答えてください」と呼ぶ)はい。要するに最終的にこれを権限をもってとめることができないというのが現在の法制でございます。
  37. 竹本孫一

    竹本委員 昔はマル公がありましたとか、基準価格がありましたとか、そんな思い出話をぼくは聞いているのじゃないのです。私が聞いているのは、四回、政府が、国税庁長官ともあろう方がまじめに申し入れをしたのに、ビール会社は、事もあろうに翌日に必ず値上げをしている。これはいまお話のありましたように、権限のない悲しさ、国税庁の限界ではありませんかということを聞いているのですよ。大蔵大臣、いかがですか。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回のビール値上げにつきましては、私も実はたいへん心配をいたしておったのです。最後にキリンがふん切りをするという前の日でありましたが、お話しの通りです、私の意向だといって長官に、会社側に値上げ考慮方、再考方を申し入れたのですが、ついに聞き入れられるに至らなかった。こういうようないきさつで今回の値上げになったわけでありますが、どうも問題は、いまビール業界というものが寡占体制下にある。この寡占体制下の価格形成というものをどういうふうにやっていくかという基本的な問題を提起しておるのが今回のビールの値上げ問題じゃあるまいか、そういうふうに考えまして、この問題を国税庁でも少し掘り下げてみないかといって勉強さしておるという段階でございます。
  39. 竹本孫一

    竹本委員 いみじくも大蔵大臣は問題のポイントを言われましたけれども、私は寡占価格の形成という問題について政府は真剣に取り上げなければならないという段階に来ておるということを指摘しておるのです。ビールは一つの例に言っただけですよ。こんなに善意を持っていても、こんなに努力してみても一いま承れば大蔵大臣も誠意をもって言われてもビール会社は言うことを聞かない。しかもいま言ったように、キリンビールは半期七十億円もうけておる。そして今度ピールの値上げだけで二十三億本売れば六十九億円は自分の会社に入り込むんだ、こういう計算が出ておる。だからこそけしからぬと言われた。だからこそ警告も発せられた。何にもならぬじゃないか。何の役にも立っていないじゃないか。これは今日の寡占価格時代あるいは管理価格の段階においては、その形成に対して政府としてはどういう行政指導なりあるいは行政の立場をとればいいのか、そういう問題が提起されておる。幸いにして大蔵大臣はこれを、寡占価格の価格形成についてはどうすればいいか、管理価格の問題についてはどう考えればいいかということを掘り下げたいとおっしゃるわけでございます。私はそれが一つのポイントだと思いますから、もう詳しいことは申しませんが、これはほんとうに真剣に管理価格のあり方について考えなければならぬということを私は結論として申し上げたいのです。  なお板ガラスの問題もありますし――もう一つビールの問題について、これも先ほど自由価格という答弁がありましたけれども、自由価格で各会社はコストがみな条件が違う。特にビール会社において一番大事なものは、総理、広告費なんですね。ところが広告費で一番恵まれておるのがキリンビールなんです。ビールはブランドで飲むというのだそうですね。だからほかの会社が一生懸命になって、どんどんビールを飲んでくださいとビール人口養成のために広告をする。そうするとキリンビールは、ブランドが売れておるから、便乗して、ただ自分はすわっておるだけで、ビールを飲む人がふえればそれだけ、自分のところは五五%のシェアですからどんどん売れる、どんどんもうかる。したがってコストの面においても、広告費の面においても、キリンは非常に格差があるのですね。そういう格差があって、寝ておってもうかるような大会社、七十億円半期にもうけておる会社が、さらに値を上げる。しかも一律に上げる。そして売り値も全国みな同じである。自由価格ならば、コストが違い広告費が違うのだから値段が違うのが当然でしょう。それが全部同じになっておるということは、自由価格でコストが違うのに値段が全部同じだということは、一体どういうふうに政府は受け取っておられますか。
  40. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 このビールの価格が今日上昇を示している原因は私はいろいろあると思います。一つは、おそらくいま御指摘になろうとしておるであろうところの今日の寡占の状態、これがあるでしょう。それからまた所得水準の上昇等による需要の強さ、これが一方において何といいましても――本来でありますと、価格が上がれば需要が減るはずでありますが、今日……。
  41. 竹本孫一

    竹本委員 一律になっておる説明だけ聞けばいいです。
  42. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 一律になっている理由は、今日の寡占的な事情がおそらく一つの大きな原因であろうかと私たちは一応推察はいたしております。
  43. 竹本孫一

    竹本委員 総理も、コストが非常に違うんだ、シェアもうんと違うんだ、それがみな値段が同じだということは、国民感情として受け入れられないんだという気持ちだけはおわかりいただいたと思いますから、先にまいります。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、板ガラスの問題のときには、立ち入り検査をやった。ビール会社のときには公取はやっていない。これはどうも私にとっては理由がわからない。  それからもう一つ、私は公取の委員長についでに一緒に時間がありませんから聞くわけですけれども、十月の十日かにアサヒが上げましてキリンが二十四日に上、げたんだけれども総理、大事な点はこれなんです。値上げをやったということになっているのだけれども、ほんとうに小売り価格を上げたのは、キリンが二十四日に上げてから、さあ進めといってみんなが一緒に値を上げたのですね。日は違っているのですよ。しかし実際にやったのは同じなんです。そこで問題は、キリンがあとから上げてくるのをみんなは待っておったのではないか。あるいはまたキリンは小さな、アサヒやその他に先に値上げをさしておいて、自分は五五%のシェアで三円入っても六十何億円入るから恥ずかしいので少し遠慮してあとから出発をする、しかしいよいよやるときは一緒にやりましょうということになっておったのかどちらか知りませんけれども、その間にビール会社のそれぞれの間には意思の連絡があったのではないかということであります。  そこで、私はここで伺いたいことは、政府は、ビール会社はそれぞれ値上げをしたのだけれども、ほんとうに値を上げたのは、キリンが上げた二十四日から小売りの値段を上げたんだということを、事実を知っておられるかどうかということが、一つ。  次には、そういう事実があれば、これはだれが考えてもおかしいでしょう。条件が違うものが同じに値を上げるのもおかしいが、四社がそれぞれ別に行って国税庁にあいさつをして翌日みな上げていったのだけれども、とにかく四社がいよいよ売り値を上げるのはみんな一緒に上げたということは、事実を知っておられるか、それから、そのことはおかしいとは思われぬか。これを、公取の場合で申しますならば、これだけで板ガラスには立ち入り検査をやられたんだけれども、ビール会社の場合にも立ち入り検査をやるだけの状況証拠というものがあるとわれわれは思うのだけれども、どういう解釈をとってビール会社の場合には立ち入り検査をされなかったかということを聞きたいのです。
  44. 谷村裕

    ○谷村政府委員 板ガラスの場合には、私どものほうが事件として審査を必要とする、立ち入り検査を必要とするというに足るある程度の資料を持っておったからしたことでございます。ビールの場合につきましては、いろいろ事情を聴取いたしました。御指摘のような事実も存じております。多少全国一律であったかどうかについては地域により違っていたところもあったかと思いますが、しかしそれによって、私どもが独占禁止法上の権力を発動して立ち入り検査をするに至るまでの資料を得るには至らなかったので、さようなことをしておらなかったわけでございます。
  45. 竹本孫一

    竹本委員 これは見解の相違ですから……。公取の委員長と私は少し違います。条件がまるきり違うものが同じ値を上げる、しかも日にちはそれぞればらばらに上げていったのに、最後に売り出しは一緒にやるということについて、何か連絡はなかったかということを、国民の常識でだれが考えてもこれはおかしいと思いますよ。これは、公取が立ち入り検査をやってでも実情を調べるだけに値しますよ。しかし、まあ証拠がなかったといま言っている、あるんだといって議論したら時間がなくなりますから、私は問題だけ提起すればいいんです。私はまたビール会社を何も責めようと思っておるわけじゃないんだが、問題はわれわれの物価を論ずる場合に一番大事なものは、管理価格なんです。その管理価格、寡占状態にあるものの価格が大事な問題になっておるそのときに、いまの公取にも権限があまりありません、経済企画庁あるいは国税庁にも権限がないので、ある大きな壁があるんですよ。これを突き破らなければ物価問題は解決しないということを指摘したいので、ただ問題だけ指摘すればいいんですから、これ以上いまの公取委員長の見解について――は反対であります、状況証拠はちゃんとあがっておるじゃないかというんだけれども、議論はいたしません。しかし、国民はわかると思うのです。  問題は板ガラス――時間がありませんから板カラスの問題に入りたいと思うのですが、板ガラスの価格が、御承知のようにこれは典型的な寡占産業で、旭と日本板硝子とセントラルの三社で一〇〇%シェアを持っております。三社で一〇〇%。価格は硬直しておるという事実があると思いますが、これをどういうふうに受けとめておられますか。価格が硬直化しておるという事実がある、これをどう見ておられますか。普通板ガラスのごときは昭和四十二年ごろからほとんど上がっておりません。その他の型板ガラスも四十三年からこの間まで上がっておりません。それを今度一ぺんにぽんと上げるわけですね。上げるときに通産省はどういう指導をされたか。ひとつそれもついでに伺いましよう。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでは全般的なことを私からむしろ申し上げたほうがよろしいと思います。  四十年以来大きな価格改定が三度ございまして、四十年、四十二年それから四十五年の四月でございますか、最初のときが、ウエートをとって平均いたしますと一・五%の値下げ、次が七、八%の値下げ、昨年が二%ぐらいの値下げでございます。で、値下げにはなっておるわけで、上がったものもあり下がったものもございますから、これはウエートをとって申し上げておりますが、問題があるといたしますと、下げ幅が不足なのではないかという、そういうことの起こりやすい業界の内容でございますから……。
  47. 竹本孫一

    竹本委員 最近に板ガラス産業の値上げをしたのは――下げたものもありますよ。しかしそれはまたあとで申し上げるのだけれども、業界の、板ガラスの値上げのほうから私は言いますが、値上げは――配当率がこれも御承知のように一四%であります。そして旭硝子の、これは年間決算ですけれども、利益は百五億円であります。それが一四%上げる。そして業界が値上げをしたときの理由としては、需要の構造が変化したこと、国際価格に対応した。その対応という関係で一部を下げたのですね。一部を上げた。下げたほうと上げたほうは率が違いますけれども。もう一つは人手不足と運賃の値上がり、こういうことをいろいろいっておるのです。しかしながら実際問題として見れば、ソーダ灰にしてもその他原料、材料のほうは値下がりをしておるのです。値下がりをした分野があるのに、賃上げのほうに理由をいっておるのかもしれませんが、値上げをしておる。そういうことで、私はそのことは理由がないということを言いたいのだけれども、特にこれはアメリカのいわゆるダンピング問題が起こっておるので、そのダンピング問題をにらみ合わせて値を調整したのではないかと思いますが、そういう点は通産大臣はどういうふうに見ておられますか。ダンピング問題との関連において。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、昨年の価格改定では平均して値下げになっておりますが、その中で型板ガラスが上がっております。これは結果として型板ガラスのみがダンピングで白になっておりますので、そういう見合いがあったかと存じます。
  49. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっとこの機会に、家庭電器、家電の問題もありますから、あわせてひとつ伺っておきたいのでございますが、五ミリの普通板ガラス、みがき板ガラスといったような二つについて、アメリカへ輸出する価格と国内との価格はどのくらいの差があるのか。政府はどういうふうに理解をしておられますか承りたい。
  50. 山下英明

    ○山下政府委員 私どもの調査によりますと、アメリカへ輸出している価格の工場における出し値は、日本において販売されている品物の工場における価格と大体同じでございますが、その他の諸経費を入れた場合には、日本の生産者価格を一〇〇とした場合にそれよりも高い値段になっているという調査でございます。
  51. 竹本孫一

    竹本委員 総理、いまのは重大な問題なんです。通産省が調べたところによれば、国内よりも高く売っているという、あるいは生産コストよりも高く売っている、指数一三〇ぐらいだと思うのですが。ところがアメリカでこの板ガラスがダンピングの問題を起こしているときには、これはアメリカの官報に出ている。その官報を見れば、ホーム・マーケット・プライスとはうんと違っておるのだ、安くなっておる、こう書いてある。そしてさらに見出しが非常に変わった見出しをつけておりまして、この価格の決定は公正なる価格よりもより少なく、レス・ザン・フェア・バリューと書いてある。ダンピングというのは、総理承知のように、安く売るからダンピングなんですよ。いま高く売ると言ったでしょう。ちょっとおかしいと思われませんか、私はダンピングというのは安く投げ売りするからダンピングで、それが問題になっていると思うのだ。通産省の御答弁では、高く売っているんだという。生産コストより高くなっているんだと、こう言っている。おかしくありませんか。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は家庭電器の問題とも共通の問題があるわけでありまして、その他の経費というのをどう見るかということで日米間にただいま意見の一致を見ていない。アメリカ国内でもガラスの場合にはまだ結審をしておりませんのでございますから、私どもはダンピングの事実なしという考えを持っておるわけであります。アメリカ側の資料を逐一詳細に示してもらえませんので、議論がなかなか詰めにくうございますが、対米的にダンピングがあったというふうには考えておりません。
  53. 竹本孫一

    竹本委員 私もダンピソグでないことを望んでおりますし、祈っておりますから、特に板ガラスがダンピングしておるというふうに言いたくはないのです。ただ私が問題にするのは、そうではなくて寡占価格の問題、管理価格の問題を問題にするわけなんですけれども、ここでただはっきりしておきたいことは、それはいろいろ計算上、雑費がかかる、運賃もかかるということがありますけれども、それにしても日本より当然に高く売っているんだ、コストはちゃんとあって、それに三割ぐらいいろいろ運賃その他をかけて、それで売っているんだというなら、私は幾らアメリカがとぼけた計算をし、考え方をしたにしても、それをダンピングだといって問題を取り上げるというほど非常識なやり方をアメリカがやるともちょっと考えられない。それで、いま通産大臣からアメリカのほうが十分資料を見せてくれないんだという御答弁があったけれども、実は板ガラスの会社自身が通産省に資料を見せないんじゃないですか。その見せない不十分な根拠の上にしか計算ができないんだから、通産省が計算したところによればわりに高くなるのです。  だから私はまず第一に通産省に伺いたいことは、そういう場合に通産省は必要な資料を要求する権限がありますか。事実その権限に基づいて資料を要求しましたか。会社のお情けで、ちょっと資料の都合のいいところだけ見せてもらった。それ以上に資料を要求する権限があるか。その権限に従って資料を集めたか。その集めて分析した結果、高くなっておる、心配はないんだ、こう言われるなら私、わかりますよ。その点はどうですか。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま外国へのダンピングの問題と、もう一つの国内価格との問題が二つ出ておりますので、これはいろいろな考慮から問題を分けて答えさせていただきたいと思います。  私ども、一般に価格というものは、よく原価を明らかにしてということがいわれますが、私どもの考えている価格というのは原価プラス適正利潤と、そういう考え方ではむしろありませんで、場合によっては競争によって適正利潤がゼロになるかもしれない。あるいは、ときとして原価を国内的には割り込むことがあるかもしれぬ、そういう競争状態をつくっておくということが価格が形成される一番のいい方法であると考えておりますので、原価を見せろ、原価を見ようというようなことは、権限の有無にかかわらず、あまり私どもは考えない。むしろ競争の自由に行なわれる状況を常につくっておきたい、国内的にも資本の自由化、ものの自由化、対外的にもそう考えておるわけでございます。  ただ今度はダンピングの問題になってまいりますと、これは企業の要請によって外交交渉に事をのせるということでございますれば、それは企業側も原価はかくかくでありますということを言ってまいりますでございましょう。それはしかし私どもが権限に基づいてそれを求める、求めたいという考えでおるわけではないわけでございます。
  55. 竹本孫一

    竹本委員 いまの問題は一つの重要な問題を含んでおりますし、また同時に基本的な立場の相違も若干関係があります。政府のいまの自由主義経済立場からいえば、企業にあまり介入はできないという一つのワクがある、これもわかります。しかし同時に物価を論じ、管理価格、寡占問題を論ずる場合には、今度公取でもその問題をやるとか、あるいは総理の諮問の物価安定政策会議におきましても、そういう問題を調べようということになっているのです。問題を取り上げる、けさの新聞にも出ておる。結局、原価を計算することを知らないで、それが高いとか安いとかはだれが考えても言えないのです。そこで、必要な場合については原価を調べることができる、あるいはそれに必要な関連資料を政府が求めることができるというところぐらいまでは踏み切らなければ、原価は企業の秘密だから見せません、政府は企業の内部に介入するということは原則に反対するからやりません、しかし何となく高い、下げてください、そんなむちゃなことが言えますか。私はそれは言えないと思うのです。そうなれば物価問題が重要になって、管理価格が重大な問題になって、寡占の会社といえども物価の問題については協力をしてもらわなければ困る。それでこれは押えなければならぬという場合に、必要な資料の要求権がなければ話にならないということを私は結論として言いたいのです。  実はこのいまの通産省の問題も、総理、私は暴露趣味がありませんからあまりやらないのですが、ほんとうを言えば通産省が資料を出してくれというと、会社が応じないのですよ。もらえるものだけもらっているのですよ。だから政府の結論が甘くなっちゃう、入っていく権利はないのだ。入っていく権限がないから、極端に言えばお情けでもらった資料だけを中心に議論をしておられるわけだ。それは私は政府立場に同情もするし、会社に対して別になにはありませんから、これ以上触れませんけれども、とにかくアメリカが、それはでたらめがあるかもしれませんけれども、国内の正常な価格に運賃その他をつけ加えて、指数でいって一三〇くらいのものを売っているのに、それがダンピングだなんていう問題になるはずないですよ。だから、このことばにもちゃんと書いてあるように、ホーム・マーケット・プライスよりもうんと違っているじゃないか、量も問題にならぬような問題じゃなく、うんと入っているのだ、そして見出しはちゃんとフェア・バリューから、より少なく安く売っておるのだ、こう書いておるのですから、私はアメリカが幾らでたらめといえども、そんなにいまの政府答弁で納得できるような、国内よりは高く売っている、ちゃんと計算はみな入っていますというようなことで納得することができるような話とは思いません。  だから、問題の根本は、どこでそういう間違いが出るかというと、正しい資料を持ってないということなのです。というのは正しい資料の請求権がないということなのです。だから、重要な問題についてはもう少し政府が価格形成の問題にも介入といいますか、それがいやなことばなら関与でもいいし、参考資料を請求するだけの権限というくらいは持つような改善措置を考えなければならぬではないかということを言うのです。そういう問題について、しかも一方業界においては価格協定がある、管理価格で問題がある、こういうことになっておりますから、私は総理に、物価政策に対して真剣に取り組まれようというならば、安定会議でも言っておりますように、特定の問題で特定の必要に応じては原価計算についてでも資料をもらうだけの、はっきり取り寄せるだけの権限を政府は持たなければならぬと思いますが、総理いかがですか。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来、竹本君のお話を聞いていたのですが、ようやく私にも事態の重要性がよくわかってきました。いまお尋ねがありますように、政府に十分の権限を持て、こういう御意見のようですが、私も、そういう点についてはさらにくふうすべきだろう、いままでは公取というような機関があるから、そのほうで相当できる、かように思っておりましたが、なかなかこれでも不十分だ、かように思いますので、いま言われるように、正確なる資料、そういうものが必要ならば提出義務を負わす、こういうことも考えるべき筋のものだ、かように思います。
  57. 竹本孫一

    竹本委員 総理から非常に力強く、そういう必要な場合においてはその資料は要求すべき権限を持つべきであるというような御答弁をいただきましたので、これ以上申し上げませんが、ただ、いま総理のお話の中で、問題は公取でやれるように思っておった、こうおっしゃった。これがまた重大な問題なんです。私の結論はその点なんだ、公取はやれないのです。公取はなぜやれないかというと、公取は独禁法の法律の性格のワクがある。公取というのには私的独禁の禁止及び公正取引の確保に関する法律という法律の第一条に書いてある目的ですべてが制限される。総理よく御存じのように、官僚は法の基礎がなければかってなことはできない、これは国民のためになると思っても、法律に書いてなければどうにもならないのです。それは必要だと思ったら――かってにやれば、これは官僚ファッショになる、それはやってもらっては困る。だから善意な官僚が悩んでおるような問題については、われわれ国会なりあるいは政府なりがそれができるだけの権限を与えてあげるという法の改正が必要なんです。  そこで、私はここで独禁法の改正の問題に入りたいわけですけれども、この独禁法には私的独占ということが書いてあるのですね。そして独禁法には調査だとか立ち入り検査とかいろいろ書いてある。ところが法制局長官もいらっしゃるけれども、法の解釈は、第一条の基本目的によってすべてワクがはまってしまう。独占禁止法というのは何か、公正取引委員会とは何か、言うまでもなく公正な取引をやるということなんです。  そこで、極端に申しますと、これは昭和二十二年ですからある法律で、実は経済の発展の段階が違うのです。いまよくいわれるように高度経済成長、そして公取も調べておられるように、三つの会社が一〇〇%全部のシェアを押えているようなものが七業種かもある。六、七〇%といったら七十種類ぐらいの業種はみんな三社で押えてるのですよ、総理。そうなりますとフェアプレーで競争しましょうというのが、競争をフェアにしようというのが公正取引なんでしょう。独禁法の目的はフェアコンピティション、公正なる競争ということが独禁法の根本なんです。寡占の力や二、三人の談合ででたらめに押えつけて、自由な公正な取引を実質的に制限してはいけないというのが独禁法なんですよ。だから独禁法は、各会社がばらばらにおって、一億円以上の会社が六千ありますが、それが普通にみんなが同じくらいの経済力でみんなが競争しておる、そのときにわがままなやつがかってな支配をする、それはいけませんよといって、競争のある社会で、その競争をフェアな公明正大なものにするのがこの法律なんです。ところが独禁法のできたときとはいま段階が、高度成長でうんと変わりまして、いまは公正な競争どころか、競争がなくなっちゃった。三社で一〇〇%押えてるんだ。そういうときにはもう競争というのはほとんどないでしょう。公取が幾らがんばられてみても、赤坂の待合で三人の社長が集まって、さあ、ビールは幾ら上げましょうか、よろしいアサヒはこれだけいけ、キリンはこの二十四日から上げるんだといってみたって状況調査なんて――いまさっき話がありましたけれども、調査しようといったって、待合で三人の社長が話したものをどうして調べることができますか。これはいかに法務大臣ががんばられてもできませんよ。ですから、いまは競争のある社会を前提にして、公明正大な競争をしてくださいという独禁法でしばる段階ではない。それでは間に合わなくなってる。寡占状態になって独占資本がちゃんと支配をきめておる、なわ張りをきめておる。そういう段階になれば、二十年前の独禁法の法律ではいまの寡占状態を取り締まろうたってそれは無理なんだ。なぜかといえば競争がなくなっている。これは公明正大なフェアコンピティションをやれという法律なんです。ところが今日問題なのは、その三社が一〇〇%のシェアを持っておる、それがどんどん値を上げる、それを押える方法がない、資料も要求する方法がないが、かりに何か公取が立ち入り検査をやろうと思っても、きっかけがなければ――四十六条、事件に関連してでなければできないのですよ。ところがその事件を調べるきっかけがないじゃないか、三人がちょっとお茶飲み話で話してしまえば何もできない。そういうわけで、私が言うのは、独禁法が役に立つ段階と――独禁法はいまでも役に立ちますよ。独禁法だけでは間に合わない段階とあります。独禁法は独禁法で大いにやってください。しかし独禁法を改正するか、あるいは別な法律をつくるか、いずれにしても、いまの寡占というものを前提にし、管理価格というものを前提にすれば、独禁法の公正な競争ということを中心とした考え方では間に合いません。この点総理いかがですか。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどのビールでも、大蔵大臣から対策をいろいろ検討している、こういうお話がございました。いまのお話のように、独禁法でできるという、これは私は公平なる、公正なる競争の原理、それが業界に持ち込まれる、かように思ったから、その点を一言触れたのですが、ただいまのような寡占状態においてはそれだけでは足らない、かように御指摘になっていること、これはその意味を了承しながら、先ほどのような発言をしたわけです。
  59. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと竹本君に申し上げますが、いまニュージーランドの国会議長が来られましたので、ちょっと御紹介する間、質疑をお控えを願いたい。     ―――――――――――――
  60. 中野四郎

    中野委員長 この際、御紹介を申し上げます。  ただいまニュージーランド国会議長サー・ロイ・エミール・ジャック君が本委員会にお見えになりましたので、ここに諸君とともに心からなる歓迎の意を表します。     〔拍手〕     ―――――――――――――
  61. 中野四郎

  62. 竹本孫一

    竹本委員 私が言いますことを最終的にまとめますと、いま総理の御答弁もいただきましたけれども、私はこれはここで結論を出そうとは思いませんから。  一つの方法は、独禁法第一条に――いまアメリカの官報に出ていることばでいうとフェアバリューと書いてある。独禁法は英語でいえば中心はフェアコンピティションです。フェアバリュー、公正なる価格という意味でしょうが、このアメリカの使っていることばもなかなかいいことばです。そこで独禁法の第一条に――公正な競争をやるということを中心に書いてある第一条を直して、修正して、公正な価格の形成、そういうことばを入れれば、これは競争がない寡占価格の場合でも、公正なる管理価格の形成あるいは公正なる価格の形成について公取は動くことができるという根拠法を与えてもらいたい、こういうのも一つの方法であります。  それからいまお手元にお配りをいたしたと思いますけれども、私ども管理価格の監視に関する法律案というのをつくりまして、これに業種指定をいろいろやりまして、少数のものがかってにシェアを持っているようなものについては業種指定をして、それについては管理価格監視委員会において監視をする、その監視の中に当然にいろいろの資料要求権もあれば、立ち入り検査検も認める、そしてその価格を公表もする、そして世論に問う、国民とともに物価問題は取り組む、そして世論がそれはむちゃだというときには、今度は監視委員会からは勧告をする、勧告をして、なお応じないという場合もあるかもしれませんが、そこはわれわれは世論の強さというものを信じまして、国民大衆とともに、ひとつ物価問題は、特に大事な管理価格の問題は解決したいということで、管理価格の監視に関する法律案要綱というものをいまつくりまして、この国会には出したいと思います。これも前向きにひとつ検討を願いたいし、政府としては、少なくとも独禁法がいまの時代に合ったように、二十年前の段階ではない、寡占の状態の今日の段階に合ったように、ひとつ前向きに検討することを総理としてはぜひお願いをいたしたい。先ほど御答弁をいただきましたのはその意味でございましたと思い、了解してよろしゅうございますか。
  63. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申したのも、大体の趣旨は同じですが、ただいま言われるように、明らかにもう一度独禁法そのものも私どもで検討いたしますし、また民社党御提案のこのものにつきましても、私のほうでもよく検討したい、かように思っております。
  64. 竹本孫一

    竹本委員 たいへんありがとうございました。  総理、イギリスにおきましても、商務省の下に独占委員会がありまして、コダックの会社については一二・五%の値下げはちゃんと要求している。それから合成洗剤の場合には広告費がむちゃくちゃだということで、もしそういうむちゃな広告をするならば、税法の損金算入の場合に考えがあるといっておどかしをやりまして、結果においては会社のほうが自主的に広告費は二〇%削減をしたようであります。そういう例もありますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたい。  これをもって第一の管理価格の問題は終わりたいと思います。  もう一つ重大な問題がある。それは自由化の問題であります。     ―――――――――――――
  65. 中野四郎

    中野委員長 国会議長はお帰りになりますから、どうぞ拍手をもって送ってください。     〔拍手〕     ―――――――――――――
  66. 竹本孫一

    竹本委員 自由化の問題についてもいろいろ議論をしたい点があるのでございますけれども、時間がだんだん迫ってまいりましたし、あと日銀の総裁もお見えになると思いますから、結論のほうを急ぎたいのですが、ひとつその前に農林大臣にもちょっと伺っておきたい。  自由化、自由化といいまして、残存輸入制限品目もだいぶ制限を解いてまいりましたが、一月末、八十のうちにはなお四十九品目であったと思いますが、農産物がある。こういう問題について農林省は一体前向きにどの程度取り組んでおられるかということをちょっと伺っておきたい。
  67. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林水産物の自由化にあたりましては、総合農政の展開に悪影響を与えないような配慮をしながら、必要に応じて関税措置その他適切な対策を講じておるところでありますが、ただいまお話しの経過につきましては、すでに二十品目の農林省所管物資の自由化を行ない、あと九月までになお二十八品目が残存する、こういうことであります。
  68. 竹本孫一

    竹本委員 次に資本の自由化の問題について、もう時間がありませんので結論を急ぎますけれども、五〇%原則という問題は見直しをやられる意思であるかどうかということをちょっと伺いたい。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはいろいろ考え方がございますが、ただいまのガラスなどは、先ほどのような点もあって一〇〇%にいたしてしまいました。しかしかなりわが国と諸外国とのものの考え方も違っておりますから、一応五〇%というものを、やはり現在いまの考え方としては、基本にしてまいりたいと思います。そして、あまり問題がなければ将来一〇〇%のほうに向けていく、そういう考え方でよろしくはないかと思います。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま通産大臣からお答えしたとおりのことを考えております。
  71. 竹本孫一

    竹本委員 私も五〇%原則については大体その辺に考えておりますが、次にまいりまして、今度の第四次の場合は、ネガティブリストにするということについては大体方針がきまっておるのでありますか。ただ新聞の報道でありますか。きまり方の問題ですけれども、その辺をお伺いしたい。
  72. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は外資審議会の意見を聞く必要があるのであります。外資審議会ではまた政府の見解を聞かれるということに相なりますが、その政府見解を聞かれた際におきましては、私どもといたしましては、ネガリストを採用していただきたいのだという気持ちを表明したいと考えております。
  73. 竹本孫一

    竹本委員 その場合に、政府のお気持ちとして、ネガティブなりストに載せなければならぬと現在はっきりお考えになっておるものはどういう品目であるかということについて。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいままだ成案を得ておりません。あるいは通産大臣が何か所感を持っておりますかどうか……。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たとえば武器、弾薬とか、国際的に自由化しないことが慣行になっておるものは、これはいたさないということにいたしたいと思います。それからただいま私どもの所管でいろいろ考えておりますのは、電子計算関係中心に、これがどうであろうか、やはり一応ネガに置かざるを得ないかと考えておりますけれども、まだ最終的な結論には達しておりません。
  76. 竹本孫一

    竹本委員 二つほど伺いたいが、一つは複数店舗についてはどういうお考えを持っておられるかということ。それからもう一つは大臣は所管が違いますが、防衛庁のほうに、防衛庁の立場においては、この資本の自由化といったような問題についてはどういうことをお考えになっておるか、その辺を伺いたい。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 複数店舗の問題は、いまのままではいかにもいけませんので、もう少し自由化を進めていきたいと考えております。百貨店法の改正との関連もございますから、その辺をもう少し検討さしていただきたいと思います。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛産業につきましては、安全保障の見地から、国産に依存するということが好ましいと思いますし、OECDのコードにおきましても、これは許可制そのほかの手続が認められているようでございます。したがいまして当分許可制に行なっていくという制度が好ましいと思います。
  79. 竹本孫一

    竹本委員 自由化の問題も本格的に議論すればたいへんたくさんあるのでございますが、時間の制約がありますから、私は端的に自動車の問題を少しお尋ねをしてみたいと思います。  御承知のように、最近自動車はそれぞれ外資が上陸をするというようなことになってまいりそうでありまして、クライスラー、フォード、それからゼネラルモーターズというようなところが三菱自工、東洋工業、いすゞというようなものといろいろ話を進めておるようでございますが、この問題に対するわれわれの心がまえ、並びに政府のこれからの資本自由化に対する受けとめ方という問題について少しお尋ねをしたいのでありますが、まずこの三社の提携申し入れについては、政府としては大体はどういうお考えでいらっしゃいますか。
  80. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基本的には国内の生産体制がかなり整ったと、部品流通については多少問題がございますけれども、まずまずと考えますから、この四月には全体的に自由化に入りたいと考えております。御指摘の申し入ればすべて個別審査の対象になるわけでございますが、私といたしましては、いわゆる企業の乗っ取りというようなことにならない限りなるべく円戸を開くべきであるという考えであります。
  81. 竹本孫一

    竹本委員 そこで問題の中心は、門戸はなるべく開くべきであると私も思います。むしろ外国のほうは日本が、――たしかあれはことばがあるのですね。わが国経済の現状を前提に着実に自由化を進めるというような閣議の決定といいますか了解があったわけですが、その後そういう意味で、わが国の経済の現状を前提にする、着実にということで、実は自由化は、日本のほうはどちらかというと私は立ちおくれていると思うのですね。外国は着実に進めるというのに一向進めないということにむしろいらだちを感じまして、日本のことをミスター・ステップ・バイ・ステップといっているそうですね。とにかくさっぱり進まないということを私は何かで読んだこともありますが、とにかくこれは積極的に取り組むべきだと思います。ところが問題は、日本の自由化の一つの特色は、この大きな流れに、ぴったりとらえて乗るということがはっきりしない。同時に、内に省みてそのための受けとめの準備体制というものを計画的にやるということもあまりやらない。だからますますおそくなるし、外国からいろいろ批判が行なわれるというふうに私は悪循環をしていると思うのです。でありますから、この辺で自由化に対しましては前向きに受けとめる、やるのだ、腹をきめる、同時に必要な準備体制をすみやかに整える、この二つでなければならぬ、こう私は思うのです。  そこで、自動車の場合にもそうありたいと思いますから、いまの通産大臣の御答弁を納得いたしますが、しかしここに問題がある。それはどういうことかと申しますと、日本は、技術はまあ最近において非常に追いついてまいったようでございますから、これはまああまり心配はないかもしれぬ。それからトヨタ、日産の場合でも、自動車についていえば、国内において七七・五%くらいのもう販売網をつくっちゃったそうです。大体これは販売網というのは最後はなかなかものをいいますから、ちょっと上がってきても、なかなかうまくいくものじゃないという点においても、一つの力があるでしょう。しかし、一番重大な問題は資本力の競争、この点になると、日本はまことに自信がない。日本だけではなくてヨーロッパもみなそれでやられました。しかも、そのやり方が実は非常に、まあアメリカ人のやることですから、むちゃくちゃといいますか、手きびしいというのですか、あるいは資本の原則に従ってきびしいというのですか、とにかく非常に激しくやってくる。  時間がありませんから、簡単に一口だけ申しますと、私は、これはひとつ警戒警報の意味で申し上げるわけなんですけれども、ヨーロッパに対するアメリカ資本、アメリカの自動車資本の進出のぐあいというものは、まことにわれわれがぞっとするほどどぎつい、ひどいやり方で進出をいたしております。  たとえばシムカ事件というのがありました、一九六三年。これは今度三菱自工と手を組むところのクライスラーがやったのであります。そのクライスラーのやり方は、六三%初めに株を買い占めて、そしていったので、ついに会社を乗り取ったのですけれども、その六三%になるまでも、最初の二五%はワイアットから、まあこれは普通の方法で手に入れた。後の二六%は、ブリティッシュ・フォードの攻撃を受けてワイアットがまいちゃって、しかもそれを表に出すと自分の会社がたいへんなことになるものだから、どこからかひとつ融資のいいところはないかというので、こっそりスイスの銀行に頼んで、スイスの銀行にそれを買ってもらった。ところが、スイスの銀行のうしろにクライスラーがおったのですね。だから、自分の国内ではみんなに知らせないようにということでスイスまで持っていって、スイスの銀行に取引したのだけれども、うしろではクライスラーが大きな口をあけて、にこにこ笑いながら待っておった。がっぽりのまれて、もう五一%取られちゃった。さらに最後に一二%は、今度は乗り取りを始めたんです。今度証券取引法の改正がございまして、テークオーバー・ビッドということになるわけだそうで、公開買い付け制度が認められるということに日本もなりましたけれども、それをやったわけですね。どういうふうにやったかというと、時価は、どんどん買い取りをやるぞ、シムカがねらわれているぞということで、どんどん上がりました。そのどんどん上がっていく時価よりも、いかなる場合にもさらに二五%高く買う、こういうことでどんどんどんどんやって、一二%の株を集めてしまった。そして最後に、二五%と二六%で五一%、それに一二%をたして六三%にしちゃったわけです。そして最後に会社を乗り取った。だから、一番事の始まりは二五%なんだ。今度いすゞの場合にも二五%か三五%なんていっておりますけれども、ヨーロッパにおけるアメリカ資本の進出の手口をよく調べてみますと、この二五%というのは縁起の悪い数字なんだ。みんな橋頭堡はは二五%から来ている。そして、だんだん、だんだんにやって、最後には時価よりも二五%常に高く買ってやるということで乗り取ってしまった。とうとうこれはドゴールがおこった。フランスのドゴールという政治家がおこって、最後にはEECに訴えた。それもうまくいかなくて、最後に国内法で取り締まる以外に手がないということで、ドゴールはドゴールの手を打ったわけですけれども、いずれにしてもこのシムカの場合には、全くクライスラーにあっという間に乗り取られてしまったというのが事実であります。この事実をわれわれは見落としてはならぬと思うのですね。  次に大事なのはフォード、このフォードがまたやってくる。このフォードが一九六〇年のブリティッシュ・フォードの乗り取りのときはたいへんであります。日本においては大体常識は、株は、総理、半分持っておると安全だということになっている。五〇%原則もそれでしょう。ブリティッシュ・フォードについては、アメリカのデトロイトは五四・六%持っておったのですよ。半分以上持っておった。だから日本の常識でいうと、もう大体だいじょうぶだと思っておったら、それから勝負が始まった。五万四千人かここはつとめておるのでございますが、そのブリティッシュ・フォードの残りの四五%の株の乗り取りを始めまして、これももともと一ポンドの株券を、当時そのとき相場が四ポンド十三シリングだった。それをフォードのほうはそのほとんど倍に近い七ポンド五シリングまでは買うという腹をきめて、どんどんどんどん買い足して、全部買い取ってしまったときには、実質は六ポンド十七シリングだった。すなわち、自分が腹をきめたよりちょっと安いところで全部買い取っちゃった。五四%持っておるのに、なおかつあとの残りの四十何%をそういう形で全部買い取ってしまったのであります。その買い取った結果がまた大事なんです。そこを私は言いたいのです。  それは、第一はもちろん五万人の労働者の運命というものがアメリカのデトロイトに完全に握られてしまったということは当然であります。  それから第二には、イギリスは、御承知のように保守党も労働党もともに福祉政策をやっております。その福祉政策のあり方というものが全部海を越えた向こうのアメリカに牛耳られるという形になった。これも重大な問題であります。  第三番目に指摘したいのは、ケネディとアイクの問題でございますが、ケネディがアイクにとってかわる。御承知のようにアメリカの大統領はもうかわるときには半年ぐらい何もしないということになっておった。ところがアメリカのドルの状態が非常に悪くなりまして、このときの十一月十六日にはドルの節約令というのをつくりまして、アメリカの軍人も家族は帰せ、もうドルはなくなって困っておるのだ、こういうことになりましたですね。そういうことがありましたね、六〇年に……。そのときに、アメリカのそれほどドルが大事なときに、このフォードの乗り取りのために用意した金は幾らであったか、三億七千万ドルであります。政府はドルを節約しなければならぬという態勢の中で、軍人の家族も呼び返せということをきめた中で、そのドル節約令が出るということを知っておるフォードの会社は、その二日前に三億七千万ドルの金を持ち出したのであります。すなわち、これはアメリカのフォードというものは、力もたいへん強いようですけれどもアメリカ大統領の政令、ドル節約令、アメリカの国策に反してでもどんどん出ていくということも大きな事実であります。したがって、こういうものが入ってくれば、アメリカの国策さえ無視してどんどん出ていくのに、日本の国策を無視するくらいは朝めし前ではないかと私は心配するわけですね。でありまするから、そういうことも含めまして、さらに、この売った価格も、当然これはたいへん時価よりもまた安く売ったのです。運賃なんかをつけ加えるやつを安くして売った。こういうことを言えば切りがありません。とにかく国策に反し、国策を無視し、大統領の要請もけ飛ばして出ていく、そういう強い資本であります。そうして時価よりも二割も三割も高く買って、全部買い取って乗り取っちまう。五〇%支配じゃ満足しないで一〇〇%にする。これは一〇〇%にする理由は、一〇〇%とっておかないと一割くらい反対の株主がおりますと、いざという場合に、今度は第三の攻撃を始めるときに前進基地として役に立たないのです。文句を言わせないようにするためには、株式を全部自分が乗っ取って、この会社をつぶしても次の侵略といいますか、侵攻をやるのです。  まあ、時間がありませんから、これで終わりますが、そういうわけで、外国資本の攻勢というものはまことにこわいし、特にアメリカの自動車工業その他は欧州において、こういうもう前科の歴史を持っておる。前科というとことばが悪いですけれども、歴史を持っておる。だからそれが日本にいま上がってきょうというのでございますから、これはよほど警戒をしてもらわなければ困ります。  そこで、イギリスは御承知のように、産業再編成公社というのをつくって、これは非常に功績を残しました。ルーツ・モ一夕ースが乗り取られそうなときには、たいへんな金、三十億の金を出してこれを救いました。それで株の一五%はその再編成公社が、国策会社ですね、国策会社が株を一五%買い取って、そうしてアメリカの乗っ取りを押えたわけですね。重役も一人送り込みました。それからまたSKFのボールベアリングが進出をしようとしたときには、民族産業を守るために三社を守って金を出してやる、そのかわり三社を合併させました。とにかく、イギリスの産業再編成公社は、外国資本の侵略に対して、侵略というとことばが悪いが、侵攻に対して、乗り取りに対して、民族資本を守るためにそれだけの大きな手を打って、産業再編成公社というものをつくってやったのであります。ところが、今度保守党内閣になりまして、先ほどもお話がありましたように企業にあまり介入するのは困るという立場と財政上の負担が多いという立場で、一応これはことしの夏ですか、もうやめようということになった。しかし、これはおかしいことになるなと思って私が注目をしておりますと、実際はそうでない。イギリスの産業連盟、CBI、まあ日本の経団連ですね、これがいま延長運動を始めておる。財界の人たちは、精神主義で民族産業は守れませんよ、こう言っておる。保守党内閣、困っております。もちろん労働党は反対しております。さらにフィナンシャル・タイムズも、この産業再編成公社がなければもう仲立ちがなくなったということをいっておる。そういうこともありまして、イギリスでもこの廃止は失敗である、何とか新しいものをつくろうという動きになっております。さらにフランスは、言うまでもなく産業開発銀行というものが去年の七月一日から三億三千三百万フランで出発をしております。外国の強い資本の侵略、侵攻に対して民族の産業を守るために国策会社あるいは国策銀行でこれをバックしてやる、もうあたりまえのことなんです。  そこで私は、最後にお伺いしたいことは、日本でそれができるものは何だろうということを考えると、まあいままでの実績から見て、これは開発銀行ではなかろうかと思うのです。その開発銀行を強化する必要があるということを私は最後指摘したいのです。というのは、時間がなくなりまして、日銀総裁見えましたから、結論を急ぐわけですけれども、外資法というのが――資本が外国から入ってきますね、資本自由化で入ってくる。これを守るとりでが幾つあるかということを考えてみると、まず第一にあるのは外資法だ。ところが外資法はいろいろいいますけれども、第八条を見ればよくわかるように、これは国際収支を中心に考えているものだ。でありまするから、外資法だけで民族産業保護、こういうふうにぴったりなかなかいかないと思うのです。第二には、商法改正で、ひとつ取締役会に報告をしなければ簡単に名義の書きかえはできないというふうに、最近法の改正がありましたけれども、こいつをあんまりやると、また今度は上場会社のほうとの関係において、株式の流通性をだめにしてしまう。あんまりやると株じゃなくなってしまう。でありまするから、そういう商法の改正ばかりをやっていくというわけにもいかない。それでも間に合わない。第三のとりでとして考えるのは、証券取引法の改正、この国会にかかっております。きょうも大蔵委員会にかかっておるわけです。しかし、この法律もこれは投資家保護という大きな目的から出発をしておるのであって、外資から民族産業を守ろうというのとは目的が違うのです。したがって、いろいろいいますけれども限界があります。また事実この中に産業界の連中は、大蔵大臣にひとつ拒否権を与えて、そのくらいでばちっとやってもらわないと、民族産業は守れないじゃないか。証券取引法改正案大いに期待してみたが、あけてくやしき玉手箱、何にもならぬ、こういう批判もいま出ておる。それは産業界の切実なる要求からいえば、ぼくはもっともだと思うのですね。しかしこれも間に合わない。したがって法的なとりでをつくるという問題になりますと、外から攻め込んでくるやつに対して外資法でも不十分、商法改正でも不徹底、証券取引法も限界がある、こういうことでしょう。そうすると、法律上のとりではできてない。そうなれば、いよいよもって金融的に、金の面ででもせめて心配するな、あとはイギリスの再編成公社じゃないが、フランスの産業開発銀行じゃないが、おれが控えておるから安心しろ、こういう安全保障がなければいかぬと思うのですね。  そこで私は結論として、資本自由化大いにやるべし、これは避けることができない。しかしやるということになれば、外資の大きな力に、特に資本力で衝突する大きなものに対して、われわれは備えるところがなければならぬ。そうしなければわが国の民族産業が守れない。そのまじめな考え方に立ちまして、私は日本でいままでそういう方面に体制金融の実績と経験を持っておる一まあ考えれば私には私の意見があるのですけれども、あまり理想論を言っても間に合いませんから、産業再編成公社もつくれないでしょうから、とりあえずのところはいまある機関を活用、利用するということで、開発銀行の規模並びに権限、融資その他の貸し付けの問題といったような問題について機能を拡大強化することによって、とりあえずこれに対応するという姿勢で取り組まれてはどうだろうか。ひとつ総理並びに大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 御所見の大筋につきましては、私も竹本さんと同じように考えます。外資は大いにこれを自由化に持っていくべきである。しかし同時にわが国の産業を外資の上陸から守らなければならぬ。さように思いますが、そのためには何をおいてもわが国の産業の体質を強化することである、こういうことが大事だ、かように存じますが、そのためには開発銀行の活用、これを強調されましたが、まあそれが非常に大事なことである。また中小のものにつきましては中小企業金融公庫などの活用、これも大事だろうと思いますが、まあ自由化という問題に備えましてそれらの諸問題につきましては十分検討してまいりたいと存じます。
  83. 竹本孫一

    竹本委員 いまもちょっと出ましたが、中小企業もこの大きな荒波にのみ込まれる。自動車の場合も、トヨタ、日産が乗り取られるという心配よりも、日本発条とかそれくらいの、調べてみると資本金二十二億くらいですね。中堅の、トヨタにもつながっていない、日産にもつながっていないが、中堅の二十二億円くらいの会社で非常に優秀な会社がある。いま一番心配になるのは、それを今度外資がねらってきて、ここを押えてしまう。ところがトヨタでもない、日産でもないから、それはカバーしないわけですね、バックしてやらない。そうするとこれらは孤立無援ですから簡単にのまれてしまう。そうするとへたをすると日本の自動車産業のネックを押えられる。こういうこともありますので、大きなものについては開発銀行、中小のものについてはまた中小の機関をつくって、いずれにしても自由化やるべし、そのかわり自由化のあらしについては民族産業を擁護すべし、その制度をくふうすべしという私の意見について、最後一言首相からもお考えを承りたい。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自由化を進め、また資本の自由化もする、これがただいまの私どもの基本方針であります。とにかく私どもこれから国際主義に立って経済発展もしよう、こういう際でございます。その際に、あらゆる点を考慮に入れて前進すべきことだ、かように思いますが、竹本君の御意見はそれについての御注意でございますし、そういう意味におきまして、これはとうといお話だった、かように思いますし、私も大いにこれを基本にしてそれぞれの対策もとることを進めていきたい。大蔵大臣からもただいま大体においてその方向だ、こういうお話がございましたが、主として大蔵、通産その他の関係者におきましても、そういう意味でただいまの御所見は今後の施策の上にも取り入れて、積極的にこれと取り組む、こういうことを申し上げてお答えといたしたいと思います。
  85. 竹本孫一

    竹本委員 日銀の総裁にわざわざおいでいただいたのは、実は景気の見通しについていろいろと論議をしたいのでございますが、持ち時間が幾らもありませんので、私から簡単に問題点を申し上げて御答弁をいただきたいと思うのであります。  中小企業の倒産が、この一月には去年の実績に比べれば三七%近くふえておるとかいうような問題もありますし、業界全体、大資本の側におきましてもことしになってからばかに不況が深刻に拡大してきたという実感を持っておるようでございますが、二回の公定歩合の引き下げによってはたしてどれだけの金利が下がったか。大体銀行というのは金利が上がったときにはすぐその半分くらい上げてしまう。しかし下げるときはなかなか下げないのです。今回の場合においては二回公定歩合を引き下げた、それに対応して大体何%実績において現に下がっておるかということが一つ。  いろいろ問題を一緒に申し上げますが、さらに中小企業の場合には特にこの二月三月景気の落ち込みで非常に困っておると思うのでございますが、その辺に対する見通しなりお考えはどういうふうになっておるか。  それから最近は返済条件の変更というようなことについて非常に申し入れが多い。それだけまあ資金需要が、たというしろ向きではあるかもしれませんけれども、あると思うのですが、そういう返済条件の変更についての申し込みはどういうふうに見ておられるか。  さらにもう一つ、未処理の、申し込んできたけれども処理していない融資の額というものが、最近は一年前に比べて、まあ一年前はまだ景気がよかったのですからいいですけれども、異常にふえておるというふうに思いますが、その辺はどうでありますか。まずこれだけちょっと伺いたい。
  86. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいまお尋ねの第一点でございますが、今回の十月、一月、二回にわたります公定歩合の引き下げをきっかけといたしました市中金利の低下、これはおっしゃいましたようにそれほどまだ具体的にはっきり出ておりません。ことに十月の引き下げの場合には資金の需要が非常にまだ強いさなかに行なわれましたものでありますから、資金需給の緩和がほとんど進みませんで、いままで実際に下がりましたものでわれわれのほうでわかっておりますものは、全国銀行で〇・〇〇七%下がっておる程度でございます。ただ一月の引き下げのあとにおきましては都市銀行の貸し出しにつきましての量的規制を全廃した関係もございまして、資金の需給は前回に比べまして相当大幅に楽になってきつつあります。そういう将来の見通しもございますし、二回合わせまして公定歩合が〇・五下がりました関係もございまして、今度は市中金利も相当大幅に下がってくるものと、みな関係者は考えておる次第でございます。  第二の点の資金の返済条件の変更、これはいろいろな具体的なケースがあるかと思いますが、一般的にまとめて申し上げるのはなかなかむずかしい状況であるかと思いますが、しかしながらこの面も、資金の需給が今後春先にかけまして相当緩和してまいります。その場合に漸次解決されていくのではないか、こういうふうに考えておるのでございます。  それから第三の、いわばうしろ向きの資金の需要が最近ふえておりまして、これは生産調整、在庫調整を行ないます段階においては必ず生じてくる資金の需要でございまして、最近の総体としての資金需要の中では、こういうものの割合が相当高い割合を占めておるということは、具体的にわれわれも聞いております。しかしながら、ごく最近わかりました一月中の金融機関の貸し出しの増加額などを見ましても、相当大幅に増加しておりますので、こういううしろ向きの資金の需要に対しても逐次その供給が行なわれております。最近具体的に相当大口にまとまりました資金の話ができ上がっておることもございまして、今後春先にかけまして、先ほど申し上げましたような資金需給の緩和に伴いましてこの問題も徐々に解けていくものだ、こういうふうに考えております。
  87. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっと大蔵大臣に伺いたいのですけれども、銀行の配当の自由化をやりましたですね。そうしますと当然にこれは収益を高めて、おれのところは普通のところよりもよけい配当しよう、こういうことにならざるを得ない。収益中心主義に銀行としてはならざるを得ない。そのことは、大銀行も中小銀行も、とにかく大会社にはどんどん貸してやる。一時は大会社も手元の流動性を取りくずしておったようですけれども、大会社は三月か四月になれば大体金融はゆるんでくる。その大きな原因は、収益中心になって、配当自由化に伴って、むしろ銀行はそういう有利なところに金を貸すということになるので、すなわち配当の自由化ということが中小企業金融をより一そう苦しめることになりはしないかという心配がありますが、大臣はいかがですか。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 配当の自由化は長い間の金融の合理化、近代化、それの一つの柱であったわけです。たまたまこういう景気情勢のもとにおいてこれを行なわなければならぬという出会いになったわけでありますが、そういうことを考えまして、これは銀行間でいろいろ調整というか話し合いなんかもしまして、自由化とは申しますけれども、ここでそう一挙にでこぼこができるというような状態は避けるようにお願いもし、また実際問題としてそうなっております。したがいまして、いま竹本さんがそういう関係で中小企業への金融が阻害されるかというような御懸念でありますが、そういうことはなかろうと思います。しかしこの問題は長い目でどうしても自由化、自由な競争のもとにその内容の金融機関としての健全性を進める、これは大事なことであると思いますので進めていきたい、かように考えます。
  89. 竹本孫一

    竹本委員 これで最後にいたしますが、日銀総裁にお伺いしたいのですが、一つは金融政策だけでこの落ち込んだ景気を持ち上げることができるというふうにお考えになるか。金融政策の限界の問題ですけれども、日銀だけで――財政も大蔵大臣のほうで、いろいろと予備金だとか、政府保証債の弾力条項とか、いろいろな御苦心をなさっておるわけですけれども、金融政策の限界といいますか、その辺をどのくらいに見ておられるかということが一つ。  それからもう一つ、第二番目には、今度の不況は、やはり長年毎年毎年設備投資を十五兆円、今度は十七兆円というふうにやって、それが生産力化してくるのですから当然に供給過剰になるのはあたりまえなんです。しかも需要が大体一巡して、もうおれのところはテレビもある、自動車も買ったというときは、まつ先にその限界が来るわけですから、そういうものがいま不況産業になっておる。これもあたりまえなんです。そういう意味からいうと、今回の不況というものは、長年非常に強行軍でやってきた設備投資が生産力化したということで来ておるわけですから、私は、在庫調整は普通には六カ月とか九カ月とかいいますけれども、設備過剰から来た不況というものがあるのではないか、したがってそれは相当根が深いぞというふうに思いますが、この点を日銀総裁はどう見ておられるか。  三番目は、したがって在庫調整というものはいつごろに終わると総裁は見ておられるか。この在庫調整が終わっていわゆる景気が回復するというのはどの辺に見ておられるか。私はどうしてもこれは七月ぐらいかなと、そこを見ておるわけですけれども、日銀総裁は何月ごろに見ておられるか。  したがって最後に、その間の期間は金融当局として、日銀当局としては、どういう努力によって中小企業にもあるいは一般産業にもあまり心配、不況感を持たせないようになさるおつもりであるか、それを伺って終わりにしたいと思います。
  90. 佐々木直

    ○佐々木参考人 第一の御質問であります、こういう景気の状況において金融政策がどの程度の役割りを果たし得るかという点でございます。確かに需要が落ちてまいりますときに金融でこの需要をさらに活発にさせるということには限界がございます。と申しますのは、金融というのは金利のついた金を貸すわけでございますから、その借り手のほうがそういう金利を払っても商売でうま味があると判断しなければ金を借りないわけでございますから、そういう意味で積極的に景気を持ち上げるのには限界がございます。したがいまして、そういう場合に需要をふやすためには財政需要、そういうものが政策的に働いてくることが直接的に意味がある、こういうふうに考えられます。そういう点での金融政策の限界はございます。ただ金融政策が落ち込みを防ぐという意味での企業の資金繰りを見るという力は、やはりある程度の効果は持ち得るものだ、こういうふうに考えるわけでございます。  それから第二番目の、いまのこういう景気の落ち込みが過去における大きな設備投資の結果生じました生産力の増大から来ておる、その点も確かにございます。したがいましてこういう生産力の増大がきわめて徐々に同じぐらいのテンポで行なわれますとそれほど強い影響も出てこないと思いますが、どうしてもこれには段階がございますので、その段階の大きなものが出てきたときにやや需給のバランスがこわれてくる、こういうことがありまして、それがいま部分的にあらわれておることも事実であると思います。しかしこれはある程度時間がたち、日本経済全体が伸び、需要が増大してくれば、そこにまた需給関係の好転も期待できる性質のものだと思います。  それから第三の、在庫調整にどれぐらい時間がかかるだろうかという点でございますが、これは業界によりましていろいろ差がございます。早いところもございましょうし、相当時間のかかるところもあると思います。それで、私のいま見ておりますところで、まだいつになるかということについてのはっきりした見通しは立ちませんけれども、大体いま竹本先生のおっしゃった時期とそう差はないのではないかというふうに考えております。  最後の、こういうふうに在庫調整が進みますまでの金融政策の運びでございますけれども、先ほど申し上げましたように、金融機関の貸し出しの増加額につきましての調整はもうやめております。したがって、金融機関からの資金の供給は今後順便になってまいるものと思いますので、量的な心配はあまり要らないのではないかと思いますが、ただ、個々の企業にとっていろいろ今後問題の発生する可能性は十分ございます。そういう意味で、個々の企業、特に中小企業の資金需要につきましては、きめのこまかい配慮を今後行なっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  91. 竹本孫一

    竹本委員 終わります。ありがとうございました。
  92. 中野四郎

    中野委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、この際暫時休憩をいたします。     午後零時十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時七分開議
  93. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。久保三郎君。
  94. 久保三郎

    久保委員 私は、国鉄の財政再建さらには航空企業の再々編成、こういう問題を中心にして、総理はじめ関係の閣僚の皆さんにお伺いするのでありますが、その前に、予算の審議のあり方等について若干、わかり切ったことでもありますが、念のために総理にお尋ねしたいのであります。  一つは、先般本会議で、同僚安井議員の質問に対し、総理は、予算の執行について、人によってさじかげんというか差別するようなことはございません、当然なことでありますが、そういう御答弁をなされておるわけであります。これは当然だと思うのであります。その点に変わりはないものと承知してよろしいか。  それからもう一つは、いま予算の審議中でありますが、予算の審議というのはもちろん法律で当然きめられて、国会の審議を経なければ予算は成立しない。しかし、毎日審議をしていることについて、野党が主として質問をしているのでありますが、これはあげ足とりとか悪口とか、声がでかいとかいうようなことだけで、言うならば、形式的にやむを得ず時間のたつのを総理はじめこうやってお待ちになっているのかどうか。そういうことはないと思うのでありますが、これはたいへん大事なことなのであります。われわれ承知する限りにおいては、なるほど予算審議一つとりましても、与党絶対多数でありますから、いろいろ先ばしった結論をとる方もありましょう。しかし、予算というのは、成立して値打ちがあることはもちろんでありますが、審議の過程において、野党の意見をどう取り入れたり、考えているのか、あるいは政府の方針がそれによって述べられるということだと思うんです。だから単に、時間がたてば成立するので、まあ退屈しのぎにやむを得ずこの辺で目をつぶって待っているということじゃないと思うのです。しかも、予算案を提出して審議を求めるのは内閣の連帯の責任でおやりになっていると思うのです。もちろんその代表というか首席は総理大臣でありますが、そういうことについて念のために一言総理から姿勢についてきちんと承っておきたいと思う。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私並びに政府姿勢答弁を通じて変わっているとは私は思いません。安井君にこの前お話ししたとおり、そのことは、執行にあたっては人によって差別をつけるというようなことはいたさない、これはそのとおり、またかくあるべし、久保君も言われるとおりであります。  また、この審議を通じまして、建設的な御意見ならどんどん取り入れております。これは昨日の堀昌雄君、社会党の方ですが、堀昌雄君の質問に対して、私は建設的な御意見だから、これは取り入れましょう、こういったものもございます。また過去の審議におきましても、そういうような態度でございます。私は別にただいまのような批判を受けるようなことはないと確信をしております。時間がたてばよろしい、さような問題ではない、かように思います。
  96. 久保三郎

    久保委員 当然のことでありますが、その姿勢は正しいと思うのであります。そこで、総理姿勢に対して、閣僚の一員である小林法務大臣の言動について、これから逐一お尋ねをしたいのであります。  法務大臣は、去る一月十八日、静岡県知事選挙に関連して、浜松市の市民会館で演説をなされました。これは選挙の演説でありますが、なされたかどうか、法務大臣からお聞きしたい。
  97. 小林武治

    ○小林国務大臣 いたしました。
  98. 久保三郎

    久保委員 この中身について、私はこれから問題とすべき点を逐一申し上げますので、それが事実かどうか、お尋ねしたいのであります。  一つは、予算の編成の問題に小林法務大臣は触れております。編成の過程ですね。編成は自民党の議員と政府の責任で編成したというのです。ことばじりをとらえるわけじゃありませんが、これも少しくおかしいのじゃないか。編成は政府の責任で、自民党の政策なら政策を基本にしてこれをおやりになるということでありまして、責任は自民党の議員にあるはずはないのであります。しかし、最近どうもそういう編成の過程において、与党議員の介入がたいへん多くなってきたことは事実であります。これについては別の機会に議論するといたしまして、そういう編成の過程で、自民党の議員ならばこれに触れられるが、野党は触れられない、だから野党というものは役に立たないものだということを言っているわけなんですね。野党は役に立たないと思っておられるのかどうか、いかがですか。
  99. 小林武治

    ○小林国務大臣 非常に必要な、役に立つことと思っております。
  100. 久保三郎

    久保委員 この演説にはこう書いてあるのです。「野党の諸君が一指も触れることができない、」いわゆる予算編成ですね。「一切触れることができない。このことをお考えになりますると、皆さま野党というものは役に立たぬものだということがおわかりいただけるのじゃないかと思うのであります。」いまの答弁と一これは千五百人ほど入った、一般に公開した演説会でありまして、身は国務大臣としての演説であります。小林武治個人ということじゃありません。これについて一つ食い違いがあるのじゃないか。さらに幾つかありますから、並べていきましょう。  次の問題としては、「参議院、衆議院において毎日野党の諸君は大きな声を出して悪口を言い、批判をし、あげ足をとって、毎日、新聞にはこんなでかい活字で何の某がこう言った、ああいったと出ますが、あのふた月間あれだけやって予算が一銭一厘なおったことがあるか、そういうことになると、なるほど国会というものはギャアギャア騒いでいるが、予算については力のないものだなとおわかりいただけると思うのでございます。」(発言する者あり)ギャアギャア国会は騒いでいるが、いわゆる予算については国会は何の力もないものだとあなたは言っておられるが、そのとおりか、いかがです。
  101. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、いろいろなところでいろいろのおしゃべりをしておりますから、どこで何をやったか記憶にはございませんが、久保さんがおっしゃるなら言っただろうと思います。しかし、これは、私も総括的に申し上げれば、選挙の関係の演説などは、多少誇張もしたり、あるいはおもしろおかしく言わなければ聞いてくれません。これはよくおわかりになると思うのでございまして、(発言する者あり)したがって、中には行き過ぎがあったかもしれません。誤解を招くようなことがあったかもしれませんが、これはそういう場所で、そういう選挙あるいは党の演説、こういうことでございますから、私の発言がそういうふうな誤解を招く、あるいは行き過ぎがあった、こういうことになれば、それは私がここでおわびをする以外にありません。こういうことでございます。
  102. 久保三郎

    久保委員 言ったか言わぬかわからぬとか、あなたが言うのならそのとおりかしらぬとか、あなたは法務大臣ですよ。うそを言っていい法務大臣なんていうのは世の中にありませんよ。選挙のときに行き過ぎはありますよ、誇張する。誇張するといっても、中身について全然関係のないものを誇張できますか。いまの答弁とこの演説の内容はまるきり違うじゃありませんか。国会が力がないということと誇張したというのはどこが違うのですか。  さらにもう一ついきます。さらにこう言ってます。私どもはいまの憲法で予算というものは国会を通過しなければ成立しないと、こういうことを言うておりますから、形式的にお祭り的に国会にかけなければならない。いかがでしょう。これは誇張の発言とはわれわれは認めがたい。いかがですか。
  103. 小林武治

    ○小林国務大臣 それが誇張の、たとえば多少おもしろおかしく話をした、こういうことに当たると、こういうふうに思っております。
  104. 久保三郎

    久保委員 これは誇張やことばのあやではありません。お祭り的に国会にかけているとは、国会を侮辱し、予算審議にふまじめだということじゃないですか。そういうことがいまのような答弁で許されると思っていらっしゃるのですか、あなたは。いかがです。
  105. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの私が、多少の行き過ぎもあろう、あるいは誇張もあろうということでありまして、話を多少おもしろおかしく……(発言する者あり)私は、皆さん御存じのように、国会におきまして一生懸命答弁しても、皆さまは私がぶあいそうだ、あるいは頭が高い、こういうようなことを言われております。まして外の演説等におきましても、普通のことを言ったじゃ聞いてくれない。したがって、多少誇張もあり、あるいはおもしろおかしく言った、こういうことでありまして、内容につきまして、いまお話しのようなことは真実そういうふうに思っておる、こういうことに必ずしもならない。したがって、そういうふうな誤解があったならば、私は悪かったと、ここでおわびをする、こういうことを申しております。
  106. 久保三郎

    久保委員 おもしろおかしくやるについても、人を侮辱し、国会を侮辱して、それで通れると思っていらっしゃるのですか。そういう態度で予算の審議に臨んでいるとしたなら重大だ。  しかも、続いてあなたはこんなことを言っています。「声だけでかいが中身があまりない、」なるほど声がでかいのはマイクのせいなんだ。「これを聞いておるからその間は退屈だからして居眠りをする。」あなたはちよいちょい居眠りをしていらっしゃるようだが、退屈だというのは、これは閣僚として、いわゆる国務大臣として、閣僚の一員として出ているのじゃなくて、事務屋の一人で出ているのじゃないですか、あなたは。そういう態度でよろしいかどうか。  さらに、「私ども政府の閣僚もあの予算委員会に、用があってもなくてもそれこそ並び大名で毎日出ておらなければならない。」みずから自分の存在を汚してまで人気取りの選挙の演説をやらなければならぬのか、日本国の国務大臣として恥ずかしいじゃないですか。並び大名ですかあなた、ここにいるのがみんな。「まことに退屈この上もない。しかしこの間私どもはこれはハシカにかかったと同じ気持で、とにかく時のたつのを待っておる。」という。さっきの内閣の首班である総理大臣の言明とはまるっきり違うじゃないですか。どうなんです。はしかにかかったと思って、退屈でもやむを得ずそこにすわって並び大名として毎日来ていらっしゃるのか、いかがです。  その次にこんなことを言っています。これまた、まああなたの言うことだからおもしろおかしく言ったのだろうと思うけれども、残念ながら国会を侮辱するこの上もない話が出ている。「とにかく二月、三月さえたてばあのガキのころトコロテンというのを知っているでしょうが、棒ですっと押す、それですっと国会から出てくる、三月三十一日に予算は国会で成立をする。」という。国会をなめた話であります。いまもあなたそう思って、だから居眠りが出るのじゃないですか、いかがです。     〔発言する者あり〕
  107. 中野四郎

    中野委員長 静粛に願います。
  108. 小林武治

    ○小林国務大臣 私どもは、毎日ここに出て熱心に皆さんの議論を聞いております。しかし、並び大名などということは、一種の俗語でみな言うておるから私も俗語に従ってやった、こういうことでございまして……。
  109. 久保三郎

    久保委員 あなたは、まあ並び大名はみんな言うから言ったというならこれは別として、「用があってもなくても」という表現は、これはほんとうに埋けない。いかがですか、そう言ったのですか言わないのですか、どっちなんです。
  110. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは、いま申すように私は覚えておりませんが、皆さんが何かテープかなんかで証拠を持っておれば、そういうことを言うたのだろう、こういうふうに思います。したがって、私は毎日出て一生懸命で聞いておることは事実であります。やはりいろいろ……。
  111. 久保三郎

    久保委員 法務大臣はまだ私が質問しておることについてのがれようとしておる。テープを持ってきましたから、これをかけて、一ぺん法務大臣に聞かせなければ問題は進展しませんので、ぜひこれを……。時間は五分か六分ですから。     〔発言する者あり〕
  112. 中野四郎

    中野委員長 静粛に願います。――静粛に願います。  テープ等の資料の場合は、理事会においてこれをはかることになっておりますので、いまここではちょっと困りますから……。     〔発言する者あり〕
  113. 久保三郎

    久保委員 さらに、この演説は次のようなことになってまいります。いわゆる予算の執行について今度言及していますね、あなたは。あなた、このとき予算の執行についてどんなことをおっしゃったのですか。
  114. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、いま申し上げたように、何を言うたかよく記憶がありません。あなたのほうでもっていろいろお持ちになっておるから、それがあればそのとおり言ったんだろう、かように考えておりまして……。
  115. 久保三郎

    久保委員 お互い選挙演説などは数多く応援演説もそれぞれやっておりますが、大体演説の骨子というのは幾つかの形がありまして、自分でつくっておいてそういうものに当てはめていくのであって、何を言ったかわからぬなんていうのはないのです。しかも私がいまお尋ねしておるのは、予算の執行について言及しているが、あなたはこれについてはどうおっしゃったか、こう聞いておるのです。あなたのいままでの御答弁を聞いておると、どうも私が申し上げておることはあやふやな話みたいなことを答弁されておるが、どうなんです。常日ごろ予算執行についてあなたはどう思っていらっしゃるか。
  116. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、あやふやだなんていうことを思っておりません。私は、演説をする場合にも原稿など持ったことはありませんし、その場の空気でもっていろいろなことを言うから、どこで・何を言ったか覚えておらぬ、こういうことでございまして、あなたのおっしゃったことは否定はしておりません。そちらにそういうテープかあるいは何かあればそのとおりであろう、そういうふうに申し上げておるのであります。
  117. 久保三郎

    久保委員 それじゃ時間もあれですから、あなたの演説を逐一追っていきましょう。  予算の執行でこういうことが書いてあります。予算の獲得ということですね。「予算獲得において一番必要なものは顔であります。」いわゆる執行の段階における予算をとってくるということ、「初めての人が名刺を持って局長のところに来ようとも仕事になることはありません。」これは局長というと政府局長だろうと思うん、だけれども、名刺を持って行っても初めての人じゃ仕事にならないのですか。いかがです。
  118. 小林武治

    ○小林国務大臣 そういうことがあるんじゃありませんか。
  119. 久保三郎

    久保委員 初めての人では「仕事になることはありません。」こう断定しておる。そんなこともあるでしょうと言うが、そういう話と違うのですよ。やはりテープコーダーをかけなければわからぬですね、あなたは。それから「会ってくれません。」初めての人では。会わないのですか。そういう態度政府態度である。先ほど総理からお話がありましたのは、人によってえこひいき、差別などはつけません、これが方針だ、それは当然だと思うのです。まるっきり違うじゃありませんか。いかがです。会ってくれない。
  120. 小林武治

    ○小林国務大臣 そういうこともあろう。これはいま私が申し上げたように、選挙演説等の場合には、だれでも言いたいことをいろいろ言う、こういうこともあるのでございまして、したがって、そういうことで皆さんに誤解を与えたり世間に誤解を与えるようなことはよくないから、その点は私はここでもっておわびをします、こういうふうに申し上げているのです。
  121. 久保三郎

    久保委員 これは選挙の演説で多少というお話がありますけれども、はなはだしくどうも政府なり政府機関の威信を傷つけるようなこともあるわけですね。しかもあなたは、繰り返し申し上げるのだが、国務大臣の席にいらっしゃる。一市井の人ではないのですよ。何を言ったかわからぬと言ったり、そうだとするならそれはそのときでありますからというのじゃ、これはまるでその辺の無頼の徒にひとしいものじゃないですか。  しかも次にこう言っていますよ。これも議員に対する侮辱でありますから読みましょう。「本県からも社会党の議員が出ておるそうでありますが、私は知りません。なぜ知らないか、陳情にも来ない、来たって私もあまり言うことを聞きませんがね。」、社会党の議員ならあまり言うことを聞かぬと言う。「だから私は見たことがない。」と言う。「これに比べて予算の執行なり法の執行は政府の責任である。」、そのとおり。「その政府の当局に陳情一つできない人が何であるか、こういうことに相なるのでございます。」、これはどういう意味なんですか、聞きましょう。
  122. 小林武治

    ○小林国務大臣 知らない人もあります。これは事実を言うたのであります。
  123. 久保三郎

    久保委員 これは誇張もはなはだしい。  先にまいりましょう。ここはまた同じようなことを言っているのです。「どこの県でも市町村でも国に頼らざるを得ない、これは実情やむを得ざることである。」、そこで、この間安井吉典君が、総理に本会議でいわゆる質問の形でお尋ねをした。先ほど私に同じような御答弁をなさった。この点であります。「自由民主党の市町村長が頼めばよい顔をするがですね、あるいは野党の勢力を拡張するためにわれわれはお手伝いすることは絶対にありません。こういうことからすれば、政治は公平でなければならんと」言われているという意味でしょうね。しかし「私はよく言うのです。「公平の中にも多少の不公平はありますよ。」」、さじかげん、えこひいきということを公然と大衆の前でおっしゃっておる。法務大臣が法の執行なり予算の執行にえこひいきなり差別をつけること、これは法務大臣として資格ないじゃないですか。法律を多少曲げていく、こう言っている、人によって。これはどうなんです。法務大臣としてあなたはっきり言っているんだ。大事なことですよ。こういう公平の中にも多少の不公平はあるということを是認して公言しているんですね。これはどうなんです。
  124. 小林武治

    ○小林国務大臣 それがいま私が言うように、多少の誇張もしておる、こういうことでございます。
  125. 久保三郎

    久保委員 次にこんなこともまた言っている。「人情というものは、竹山さんがくれば、はいよろしい、岩山さんがくれば、はいよろしゅうございますと言わざるを得ない。ところが、社会党の市長などがくればこれはどうしたって――めったに来ません。来たって役に立たないからこない。」「政党政治のもとにおいては与党と野党は十と〇だ、」、これはどうなんです。あなたは法務省自体の機関委任事務というか、そういうものをやっていらっしゃる。それがあなたのような大臣のもとにおいてやられるということになると、一自民党以外の市町村長なり県知事はさじかげんでやられることになる。それでいいのでしょうか。
  126. 小林武治

    ○小林国務大臣 私のところなんかあまり陳情は来ません。そういうふうなこともあろうと、こういうことを言うたのであります。
  127. 久保三郎

    久保委員 それではいままでのやつは大体是認されているわけだね。そうですね。  もう少しあるからお尋ねしましょう。  予算が「ふた月たてば、そのままで出していく。国会を通れば役所にみな配分いたします。予算の実行は役所がやる。その際にまた注文をつけるのは自由民主党なんです。浜松に分けてくれ、こちらの方に分けてくれ、竹山さんならしょうがないということになる。そうするとこちらの方にくる。静岡県の社会党の議員で一人でもそんなことを言うてくる人はありません。こういうことになりますと、予算の使用も政府と自由民主党でなければできない。すなわち、日本全体をまかなっている予算の編成も予算の使用も野党の諸君は縁がない。」、こう言っている。しかもあなたは大事な点――法務大臣としてこれは責任ありますよ。これは公職選挙法違反じゃないですか。「竹山さんなら」というのは、竹山候補に対して、これは私は静岡県に予算を持ってくる、竹山さんならあげましょう、こう言っている。選挙応援の演説をやっているのですよ、これは。利益誘導じゃないですか。公職選挙法違反と思うが、どう思われますか。法務大臣、答弁
  128. 小林武治

    ○小林国務大臣 私はそういうやりとりが選挙違反になる、こういう――私は別に利益誘導なり具体的に何もしておりません。ただ抽象的なそういう応援の話をしただけであります。
  129. 久保三郎

    久保委員 抽象的と言うけれども、静岡県の知事に竹山さんがなれば云々と、こういう意味ですよ、これは。ちっとも抽象的じゃないじゃないですか。具体的じゃないですか。法務大臣いかがです。
  130. 小林武治

    ○小林国務大臣 具体的に何をやる、かれをやる、こういうことになればそういうふうな問題、これは抽象的にそういうふうになろうと、こういうことを申し上げただけであります。
  131. 久保三郎

    久保委員 法務大臣、いずれにしてもあなたは予算を握っている人ですよ。これは静岡県知事に竹山さんがなればあなたにやりましょう、しかもあなたは政府の一員でありますよ。内閣の一員なんだ。こういうことになりますと、利益誘導もはっきりしている。これはばかげたことを言っていらっしゃるのじゃないですか。いままで私が、ずっと一々確認をとりましたが、これは事実としてお認めになりますか。
  132. 小林武治

    ○小林国務大臣 先ほどから申し上げておるように、私は自分が記録を持っているわけじゃありませんから、しかしあなたのほうで記録があればそのとおりでありましょう、こういうことを申し上げておる。それも事実でありましょう。ただしかし私は、先ほどから申し上げておるように、こういうふうなわけで私の申したことが不適当である、こういうことのようでございますし、私も行き過ぎがあった、こういうように思いますから、これからは気をつけるし、過去のことについてはここでもっておわびを申し上げる、こういうように申し上げております。
  133. 中野四郎

    中野委員長 田中武夫君より関連質問の申し出があります。久保君の時間内においてこれを許します。田中君。
  134. 田中武夫

    田中(武)委員 久保委員質問をここで一応整理したいと思います。  先ほど来久保委員は、この資料をもちまして法務大臣の演説の内容について確かめました。法務大臣、全部お認めになりますかどうですか。もし認められないとするならば、委員長の許可を得てテープで一応証明したいと思います。いかがです。
  135. 小林武治

    ○小林国務大臣 先ほどから申し上げているように、私には記録も何にもありませんから、皆さんが記録をお持ちになれば、そのとおりでございましょうと、こういうふうに申し上げております。
  136. 田中武夫

    田中(武)委員 それではお認めになったと思います。そうすると、重要な問題がたくさんございます。  まず第一点は、予算の編成は政府が行なう。憲法のもとでそうなっております。ところが自民党と政府――これはまあ政党政治のもとではいいとしても、野党の議員がそのときは居眠りしておるとか、あるいはこたつに寝ておるのだろう、こういう点、国会議員同僚を無視いたしております。(「軽視だ」と呼ぶ者あり)軽視だ。侮辱しております。  さらに、国会の審議というようなものは形式的で、お祭り的にやっておるのにすぎないのだ、一銭一厘も金が直ったことはないじゃないかということは、これは国会の予算審議を無視したものであって、こういうことであるならば、予算、審議は続ける必要がない、こういうことになります。  さらにまた、国会議員が居眠りをしておるとかなんとかいうことに触れて、国務大臣委員会の要求があれば出ていくことが義務づけられております、国会法で。それでしかたがないから出てきておるのだ。こういうことを言っておることも許せないと思います。  しかも、私はきのう、総理、議会民主主義、なお財政民主主義という点で聞きました。ところが、それを全然無視したものであります。さらにまた代表質問なり総括質問で、総理大臣も大蔵大臣も国会における修正権をお認めになりました。これは当然であります。ところが修正権を全然否定した発言であります。  さらに法律違反としては、先ほど来問題になっておりますように、公職選挙法違反の利益誘導でございます。  これを含めて申しますならば、国務大臣でありながら憲法を否定し、国会を無視し、国会を侮辱し、あるいは同僚議員を侮辱し、そうして公職選挙法等の違反を堂々とやっておる。こういうことでは、これ以上予算審議の意味はなさないと思います。十とゼロなら全部皆さん方でおやりなさい。いかがでしょうか。ゼロは、じゃ引き下がることにいたします。十でおやりなさい。  なお、口頭で委員長に要望しますが、これは野党ということで、社会党だけでなく、民社、公明の諸君にも関係がございます。したがいまして、民社、公明の諸君にも関連質問をお許しを願いたいと思います。
  137. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと田中君に申し上げますが、いまここで暫定的に理事と話し合った点について、野党の質問は、いまあなたの関連だけでお許しを願いたいのだが、さらに理事と一ぺん相談をしていただきたいと思います。――本件について鈴切君より関連質疑の申し出がありますが、久保君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鈴切君。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、久保質問を聞いて、実はびっくりしたわけでございます。公明党といたしましては、御存じのとおり、これは大蔵大臣が御存じと思いますが、予算編成のときに大蔵大臣を通じて予算に対する要望をいたしました。それは御存じだと思いますが、ただいまこの小林法務大臣の演説の内容については、オーバーと言いながらも、やはり私は限度があるのではないかと思います。そういう意味において、予算編成あるいは予算の審議等については、自民党だけでやっているのではありません。そういう点においては国会軽視もまことにはなはだしい、こういうことでは予算の審議に応ずることができない、私はそういうふうに思うわけでございますが、小林法務大臣は、このことについて、全面的に事実をお認めになるかどうか、その点についてお伺いいたします。
  139. 小林武治

    ○小林国務大臣 私が先ほどから申し上げておるように、全面的に不適当であるから、私はおわびをします、こういうふうに申し上げております。これはもう今後もかような発言はむろんいたしません。こういうことだけ申し上げておきます。
  140. 中野四郎

    中野委員長 今澄君から同じく関連質疑の申し出があります。久保君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今澄君。
  141. 今澄勇

    今澄委員 私は、法務大臣の答弁を聞いておりましたが、これは重大な問題を二つ含んでおるのですね。一つは、野党側にいかにも予算の修正権はないかのごとき発言というものは、これは国会を侮辱をしておるんですね。それから、議会制民主主義の根底をこれは否定をいたしておると思うのですよ。だから、私、今度のこの予算審議の過程から考えて、このあなたのいまの発言については、これは重大なものを含んでおる。それで、あなたは議会制民主主義と予算に対する野党の存在というものについてどういう考えを持っておられるか、ここで明らかにしてもらいたい。また、あなたの答弁いかんでは、そういうような考え方のもとにおいてわれわれは予算審議に応ずるわけにまいらない。われわれはこの際、ひとつ腹を据えてちょっとここで答弁を願いたいと思います。
  142. 小林武治

    ○小林国務大臣 私の申したことが、全面的にこれは不適当である、こういうことで、私はその点をいまここにおわびを申し上げておるのであります。
  143. 中野四郎

    中野委員長 田中武夫君。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 小林法務大臣、先ほど来、いま久保委員が読み上げました発言内容をお認めになったわけです。ただ取り消すとここで言ったからといって済むものではありません。一体みずからどう処置をとろうと考えておりますか。あなたの責任をどのようにしてとろうと考えておられますか。それをお伺いします。
  145. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは私が浜松の選挙関係の演説会でしゃべったこと、こういうことでございますから、またそういう機会もあるから、あれは私が間違っておった、こういうことも言う機会があろうと思いますし、あとは、私自身については、きょう皆さんのいろいろなお話を承って、不適当な発言をした、こういうふうに自省をいたしております。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 いま小林法務大臣の御答弁がありましたが、われわれはああいう答弁では了承しかねます。先ほど来お聞きのように、公明党、民社党、われわれともに、こういう国会無視、民主主義政治否定、憲法無視、こういうような態度で閣僚が臨まれる限り、しかも、予算審議において野党の力なんてゼロだと言われたところで、これ以上私たちは予算審議に応ずるわけにいきません。したがいまして、反省の色が見えるまでわれわれは野党だけで少し相談をすることもありますので、この点で休憩を願いたいと思います。
  147. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと申し上げますが、先ほど来理事とお互いにお話の過程におきまして、この取り扱いについては理事会で十分御相談をすることにいたしまして……(発言する者あり)  それでは、この際、理事会を直ちに開くことにいたしまして、暫時休憩をいたします。     午後二時休憩      ――――◇―――――     午後七時三十七分開議
  148. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。保利内閣官房長官
  149. 保利茂

    ○保利国務大臣 本日、小林法務大臣が辞任せられまして、秋田自治大臣が後任に任命せられましたから、このことを皆さま方に御報告を申し上げます。
  150. 中野四郎

    中野委員長 久保君の質疑を続行いたします。久保君。
  151. 久保三郎

    久保委員 われわれはただいまの官房長官の報告を了承いたしますが、本件は国会政府の権威を傷つけたものであることにかんがみまして、今後十分戒慎すべきものと思うのであります。また、西郷前法相の問題に引き続く問題でもありますので、総理の所信のほどを一言承りたいと思います。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 西郷前法相の問題もありと、こういうお話ですが、このたび小林君がやめることになりました。私もたいへん残念に思っております。しかし、今日ただいまやめたこの状況のもとにおいて、去った人をとやかく批判することは、できれば差し控えていただきたい。これをひとつお願いして、私は、政治姿勢を正すというただいまのようなお話しのありましたことをよく銘記いたしまして、そうして精進するつもりでございますから、皆さまもどうかそういう意味で御了承いただきたいと思います。
  153. 久保三郎

    久保委員 それでは通告申し上げました質問に入りたいと思うのであります。  最初には国鉄の財政再建、この問題でお尋ねしたいのでありますが、国鉄の再建計画は、御承知ように本格的には四十五年度から始まります。この一年間やってみて、四十六年度の新しい予算が、言うならば真正な姿で編成されていないということは、この再建計画はすでに失敗したのであろう、こういうふうに思うわけでございます。ついては、この失敗した、破綻した原因というのはどういうふうにお考えであるか、これは運輸大臣にお答えをいただきます。
  154. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまお話しのとおりに、国鉄の再建計画につきましては、四十四年度の鉄道料金の値上げに関連をいたしまして、国鉄の再建計画というものを閣議了解を得て、そのもとに実施に入ったわけであります。しかるに、御承知のような、一つは、当時考えました旅客及び貨物の収入も予定どおりの収入が上がらなかったこと、またもう一つには、当時国鉄当局が考えておった人件費の増が予想を上回った、こういうことも一つであります。しかし、もちろんその他に、御承知のような競争原理に立たされておる。道路が整備されるにつれて、したがって、国鉄の独占企業というものが認められなくなったのがこの数年来の形態であります。かようないろいろの原因からいたしまして、当初考えました、いわゆる再建計画で考えましたとおりのことが行なわれない。ただし、当時閣議決定いたしましたその方針には変わりはない。内容においては、いろいろわれわれが考えた点だけでは、これを十分に実現できませんが、基本的方針、すなわち国ができるだけ財政的めんどうを見てやるということ、あるいはまた線路によっては、これを道路にかえ得るものは道路にかえていこう、こういう措置につきましても、当初考えたようなぐあいには順調に行ってまいらなかった、こういう事情があります。四十五年中、私拝命いたしましてから、これらの措置について最善の努力をいたしてまいりましたが、四十五年度にはこれが十分なる実現を見ることができなかったのでありますけれども、四十六年度予算においては多少、私は万全とは申しませんけれども、そのいわゆる新しい方向を見つけつつある、かように申し上げることができると存ずるのであります。
  155. 久保三郎

    久保委員 ただいまのお話では、再建計画が失敗したというか、うまくいかなかった原因、そういうふうにおっしゃりたかったのだろうと思うのでありますが、われわれは失敗だと思っでいるのでありますが、一つは、収入の伸び悩みあるいは人件費の増だと、こう言っております。収入の伸び悩みというのは、まあ言うなら、われわれが調べた範囲においては、いわゆるローカル旅客が減ってきた。これは言うまでもありませんが、一つは、運賃値上げのためにこうなってきております。御承知のように、ローカル旅客というか、そういうものに対して、特に定期の運賃などは、そういうものを値上げいたしましたから、当然、当時の私鉄の運賃というのは、これは上がっておりません。そういうことからいっても、これは国鉄のほうから流れていったという人為的なものであります。運賃値上げによる収入伸び悩み、こういうふうに思います。  それからもう一つは、経営の方針についても、ローカル旅官が減ってきた原因があります。というのは、収入増をねらい過ぎたために、言うなら優等列車を増発いたしました。優等列車を増発するということは、ローカル列車をダウンさせることであります。当然のごとく収入が伸び悩んだと見ていいと思うのであります。だから、言うなら、計画をつくるならば、当然そういうものを十分織り込んだ計画でなくちゃならないのが、そういうものが織り込み得なかったところに私は施策の失敗がある、こういうふうに断言していいと思うのです。  それから人件費の増でありますが、もちろんこれはいろいろな見方がございます。しかし、私は端的に申し上げて、人を使っていれば、月給を払うのはあたりまえであります。それから物の値段が上がれば、これは月給は上げてやらなければいけません。そういう計算ができていないで、しかも月給も、昇給率は、たとえば五%とか七%しか上げないで、世間では十何%上がってくる、そういうことの見込みがつかないような計画をだれが立てたのだろうかというふうに私は疑問が起きるのであります。  それから運輸大臣、もう一つ大きな原因として、あなたは、言い忘れたのか意識的におっしゃらないのかわかりませんが、結局利払いのかさみですね、借金の利子の支払いがたいへん多くなってきたということです。言うならば、これも計算済みでなくちゃいけないのですね、借金すれば利息を払うのがあたりまえでありますから。ところがそういうものがかさんできて、実際はこの三つの要素が失敗の大きな原因だとわれわれは考えています。だから、この修正というか、これを手直しするというか、これに対して有効適切な対策を立てなければ、これは残念ながらうまくいかない、こういうふうに私は思っているのであります。そこでこの競争、いわゆる独占性が失われたと、こうおっしゃっていますが、これは少しどうも、ちょっと時間的にも何か合わないようなお話かと思うのであります。独占性が失われたから再建計画をどうするかということで始まった仕事だと私は一つ思っております。だから、いまごろになって計画が失敗したのは独占性が失われたからというのでは、これは話が逆でありまして、独占性が失われたから、その中で国鉄はどうやって生きていくかということを計画されるのが当然だと思うのですね。これは少し、国鉄総裁もいらっしゃるから、時間があればお聞きしたいのでありますが、私は、そういうことではちょっと話が違う、こういうふうに思うのであります。それから、国がめんどうを今後見ていくということでなく、めんどうの見方が小さいから、ということを私は言いたいのであります。これは、運輸大臣とすれば当然おっしゃるのがほんとうでありまして、大蔵大臣ならば――さっき、顔がきかないと思われないそうでありますが、予算がもらえないということにも相なるかもしれませんが、いずれにしても、国がめんどうが見足らないということが一つだろうと思うのです。あとから申し上げます、い、ずれにしても。  それからもう一つ。四十六年度予算においては新しい方向を出したという。なるほど新しい方向ですね、利払いをするために借金をする、そういうのが四十六年度の予算であります。予算書にございますように、たしか三百四十三億でありましたか、これは資本勘定から損益勘定の中に、利払いに充てるためにこれは借金しているのであります。こういうのは、いまだかつて国鉄の予算の中にはあったためしがありません。これは新しい方向です。ほめていいのか悪いのかわかりませんが、いずれにしても新しい方向。いずれにしても、国鉄の再建計画は、出発したそのとたんにもう失敗しているということです。これはもう真剣に考える事態にきていると私は思っています。  それじゃどういうふうに練り直し、計画をしていくのかということをお尋ねするのでありますが、私の考え方を若干申し上げてお答えをいただきたいと思います。  まず第一に、独立採算制というものを目途にして考えていく再建というのは不可能であろうということを前提に申し上げたいと思うのであります。  御承知のように再建計画は、昭和五十三年度においては償却後黒字を出すということが目途のようであります。これは言うならば独立採算制、そしてそこで多少の黒字も持っていこうというのであります。はたして国鉄というか、国有鉄道というものが、その使命からいっても、独立採算制で、はたして運営を今後もできるのかどうか。たとえば新全総あるいは新しい法律のできました新幹線網を一つとりましても、今度の予算では御承知のように三線を着工にいきます。東北、上越、成田、将来はネットワークでいきますと七千キロ、いずれにしても青函トンネルも今度は広軌でいこう、こういうことですね。そうなりますと北海道から九州まで、新幹線の交通網、ネットワークをつなぐということになりますれば、これはいまのような東海道だけの新幹線ではありません。日本全体の新幹線になりますから、第二のいまの国鉄と同じようなことがこの新幹線、国鉄の中にも出てくるのは当然であります。また出てきてもいいんです、これははっきり言うと。実際上言って出てこなければいけないものもあります。ただし、新幹線が必要だから七千キロなり九千キロ敷こうというのでありますから、これは国民経済的に見て必要なものはやらなければいかぬ。しかしそれが独立採算に直ちにつながるとは考えてはいけないだろうと思います。でありますから、特に外国でも独立採算でやっている鉄道なんというのはどこ見ても一つもありません、一つも。もっとも、未開というか、発展途上国においてはあるいはあるかもしれません。しかし最近では自動車も並行して発達していますから、おそらく独立採算というのはないんじゃなかろうかと思います。そういうことで、まず第一に、独立採算制というものを、なるほど努力目標はけっこうでありますが、これを真に受けてこのとおりの再建計画でいくというには、これは残念ながら国鉄はやめちゃう以外にありません。そういうふうに思うのです。  それからいずれにしましても、再建のスタートでつまずいたという原因にはそれなりの原因があります。いわゆる今日国鉄がしょっている財政的、制度的な制約というものがあるのですね。たとえば、一つとっても、公共負担の問題もあります。そういうものを一つ一つとってやらなければ立ち上がりができないということを考えてみる必要があろうかと思うのです。一人前の人間と同じような形で再建計画を出そうといったって、これは無理でありまして、重荷をしょっているのであります。そういうことをいまやっていくのに一番必要なのは、財政的、制度的な制約をそのままにして合理化だけを強行しても、これは空中分解します。いまの国鉄が大体それに似かかってきた。特に本年度末の長期借り入れ金の残高は二兆六千億というわけですね。利払いは年間二千億になるというのです。利子の支払いだけで二千億、こういうようなものを持って公共負担をそのままにしておいては、どんな方法をしても、だれがやってもこれは立ち上がりはできないと思うのです。海運の再建の問題もあります。これを引き合いに出すのもどうかと思うのでありますが、再建期間の前半、せめて五カ年間ぐらいは政府関係の長期債務及び利子のたな上げ、及び工事資金に対する利子補給をせめて――海運は四分であります。四分を限度にしてやっています。せめて国鉄の現状と国民的なつながりを考えれば三分五厘ぐらいまでの補給を考慮すべきであろうと思うのであります。いかがでしょう。この点は福田大蔵大臣にお伺いしたいと思うのです。
  156. 福田赳夫

    福田国務大臣 世の中がたいへん変わってまいりましたにつれまして、国鉄の立場というものが非常につらくなってきておる。これはもう私も久保さんと同じように考えます。さらばこそ四十六年度予算では、財政再建補助金をかなり増額をする、またわずかではありまするけれども、二十年ぶりで国の出資を行なう。また財政投融資面におきましては、九百億円の大幅な増額をする、こういう措置を講じたわけであります。利払いという点、これも非常に国鉄財政の重圧になっておりますが、ことは総合的に考えなければならぬ。利払いだけを取り上げて、こういうことでは国鉄問題は片づかないんです。そういうようなことで、本年度これで完全な措置ができたとは思いません。これからまた総合交通対策、これを考えなければなりませんけれども、そういう飛行機の関係、あるいは自動車との関係、そういうものなどと総合的、一貫的に見まして、国鉄はどういう役割りを演ずべきか、こういうことを真剣に考えなければならぬときに来ているんじゃないか。そういうふうに思うわけでありまして、とにかく四十六年度とすれば、一応つなぎの措置は講じました。なおこれから総合交通体系というものを検討いたしまして、その中において国鉄の位置づけ、また国鉄の財政というものも考えていかなければならぬかな、かように考えておる次第でございます。
  157. 久保三郎

    久保委員 総合交通体系というか、そういうものについてはあとからまたあらためてお尋ねしたいと思うのでありますが、運輸大臣に一言お伺いしたいのですが、私が冒頭申し上げた公共負担というのを目標にして再建が可能だとあなたはお考えでありますか、どうです。
  158. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 公共負担というのはおそらく農林物資を中心にしたものだろうと思います。これは金額において四十数億でありますから、もちろんこれは運輸省といたしましては、この公共料金の割引は昨年においてもこれはやめたいということでありましたが、いろいろの農林物資の物価問題等のからみがありまして、結局昨年もこれを続けておるわけであります。本年はぜひともこの割引制度はこの際はやめていきたいと思ったのでありますけれども、御承知のような物価問題等もあり、かつまた急激な影響を与えることもどうかということで、当分これも現状のままということになったわけでありますが、ただお話のように金額としてはそう大きな金額ではありません。四十数億であります。もちろんこれもちりも積もれば山となるでありますからして、ばかにはならぬ金ではありますけれども、再建計画の根本問題としては先ほど来久保さんから御指摘のありましたような、いわゆる国の助成をどう考えていくか、利子補給の点もありましょうし、あるいは建設に対して資金を今後国が考えていくかいかないか、そういうようないろいろの根本の問題から触れてまいりませんと、いわゆる独立採算制をやめるという前提ではなくして、独立採算制をやらせるためには、国が建設の上において、その他借金の問題についてどういう助成をしていくか、こういう問題のからみ合いがあると考えておるわけであります。
  159. 久保三郎

    久保委員 ちょっとことばを間違えて恐縮でありました。公共負担の問題は、これはもちろんお尋ねしなければいけなかったのですが、間違ってお尋ねしたのでありますが、それはそれでいいのですが、四十数億とおっしゃったが、これは貨物の問題であります。貨物が四十四億くらい、これも要求したんだが、大蔵省にけ飛ばされてこれはだめだ。しかし総理は本会議安井吉典君の質問に答えて、貨物の公共負担というか、そういうものは検討しなければならぬと言明をされておりまして、予算の実態と総理の言明とではずいぶん違うのであります。これもそのうちに、総理の言明でありますから、修正されるものであると期待をしておりますが、そういうことであります。私がお尋ねしたいのは、いわゆる独立採算というものを目途にして再建というのは可能だと考えておられますか、こうお尋ねしたかったのでありますが、お尋ねが間違っていてもちゃんとそういうものを目途にして考えておられるというのですが、それは目途にすることはけっこうでありますが、実現が不可能であるというふうに私は考えておりますということだけを申し上げておきましょう。これはいずれまた委員会等でもこまかいお話を申し上げなければいけませんが、それからもう一つ、これは大蔵大臣からはどうも明確な御答弁をいただけなかったのだが、再建の一番手かせ足かせになるのは、いろいろな問題があります、しかし金の問題でありますから、結局この二兆数千億になるところの長期債務に対してどう措置をとるか。それから年間二千億に余るところの利払いをどういうふうにするか。三点目は工事資金。大体ことしも三千五百億ですか、約四千億近くなりますね、債務負担行為を入れれば。そういうものもいわゆるみんな借り入れ金でありますから、これの利子補給をどうするか。私の提案はすでに申し上げたとおり、いまことしはたしか六分までですね。六分以上のものを補給する。去年は六分五厘ですね。海運の再建では四分をこえるものについて、これは利子補給をしていたのであります。企業は民間企業でありますから、いろいろな評価のしかたもございますが、国民全体に直接関係することではありません。国鉄は国鉄、国民に直接関係するものでありますから、せめて三分五厘をこえるものについて利子補給をするぐらいの気持ちがなければ、残念ながら手かせ足かせをゆるめてあげることは不可能であろう、こういうふうに思っているのですが、大蔵大臣はいかがでしょうかと、こう聞いたのですが、明確な御答弁いただけないのですが、はっきりお答えがいただけますか。
  160. 福田赳夫

    福田国務大臣 はっきりお答えしたつもりなんですが、利息だけを取り上げて財政を論ずるわけにはいきません、こういうことなのです。そこで利子以外にも赤字要因というものはいろいろありますから、それらを総合いたしまして、国鉄の支出面、収入面、そういうものを全体をひっくるめて検討しなければならぬ、かように申し上げたわけで新ります。ことしは暫定的というような色彩も多少ありますが、ことしというか四十六年度です、これもできる限りのことはいたしたつもりでございますが、なおこれらのものを総合的に他の交通機関との関連も考慮しながら検討してみたいと、こういうことを申し上、げたわけであります。
  161. 久保三郎

    久保委員 私が聞いているのは、全体いろいろございます、おっしゃるように。それは金の問題ばかりじゃなくて、金というか、借金というか、利息というか、そういうものばかりじゃなくて、ありますよ。ありますが、そのうちでも大きい要素になっている問題をあなたにお尋ねしたのでありまして、そればかりではありませんと、こうおっしゃると、何かそれは除いてこっちのほうばかりやっておりますが、大蔵大臣はお金のほうが中心でありますから、お金のほうを聞いているわけです。これから国鉄にも注文つけることございますけれども、いずれにしても手かせ足かせになっているものを解きほぐさなければ、残念ながら前へ進めないのが国鉄の現状ではなかろうかというふうに私は思っているのであります。もちろん総合的な施策は必要であります。しかし大きなファクターになっているこの借金を多少でもゆるめなければ出られないのじゃないかというふうに考えているわけです。  そうやっていても何ですから先に進みますが、そこでもう一つ、大蔵大臣からお話がありましたように、それ以外の問題も考えなければいけません。特に国鉄は、これは総裁にお尋ねいたしますが、国鉄は年間六千億をこえる工事費及び資材購入費、両方合わせて六千億以上になると思うのですが、こういうものを持っております。これについて思い切った節約をしなければいかぬじゃないか、私はそう思います。もちろんやっているのかもしれませんけれども、まあまあわれわれが見る目ではそんなにではなさそうに思うのであります。  さらにもう一つは、近代化、合理化、これを進めております。しかし、近代化、合理化のための投資についても、かなりロス、いわゆるむだ、そういうものと、何か無責任さが、われわれの目にたまたま映ります。これは厳重に反省すべきものだと思っているのでありますが、内部監査等について国鉄はどういうふうになされているか、お伺いします。
  162. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私のほうは、年間数千億の資材を購入し、また膨大な工事をやっております。たとえば工事につきましては、いわゆる新技術の開発、あるいは標準設計等によりまして、極力工事費の節減につとめております。ただ労賃の上がりとそれから用地費の値上がりにつきましては、これはいかんともいたしがたいということで、極力設計の近代化、合理化をやっております。それから新規の物品の購入につきましては、極力安く低廉に買うようにいたしておりますが、部内の監察機構といたしましては、部内にございます監察局を十分使用いたしまして、そうして極力安く低廉に買うようにつとめております次第でございます。
  163. 久保三郎

    久保委員 お話でありますからそのとおり受け取っていきたいと思うのでありますが、先ほど私から申し上げたようなものが目につくわけでありまして、さらに一そうくふうをこらして、この工事費なり資材購入費というものを厳重に規制するのが必要ではないかと私は考えておりますので、一言つけ加えておきます。  そこで総理一言、私は先ほどから何回も同じことを繰り返しているのは、独立採算制というものを前提にして完全な国鉄の再建というのは非常に困難なことではないだろうか。だからといって財政支出だけを望むものでは私はありません。ありませんが、不可能なものを押しつけておいてこれをやれといっても、これは空中分解以外何ものでもないと私は思うので、この辺のことについて総理はどういうふうにお考えでしょうか。いかがです。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 久保君にしても私にしても、独立採算制をとれた国鉄、その時代はよかったと思いますが、最近は独立採算をとるそのたてまえだと、どうしても運賃、料金を上げざるを得ない、これを上げれば必ず反発を受ける、こういう状態ですから、なかなか独立採算制一本やりではできない。ただいまのところ、いろいろ合理化をはかる、この合理化もまた部内からいろいろ反対される。しかし部内の諸君もこの合理化には協力をして、そうしていわゆる独立採算制で、ときに料金、運賃等の負担が国民にかかりましても納得がいくような立場であってほしいと思います。私はこの制度自身が悪いとは思いません。しかし現状のもとにおいて独立採算制を貫けと、かように強くその制度を守ることにすると、よって生ずる故障あるいは抵抗、これはたいへんなものだろうと思います。そこでいろいろのものをくふうしていかなければならない。先ほど来久保君御自身があげられました幾つかの問題、これがいわゆる総合的な施策の中に盛り込まれる一つ一つであるように思います。先ほど橋本運輸大臣また大蔵大臣からもお答えしたのもそういうような意味で、全部を、独立採算だからということで、国民大衆に直ちにその負担をかける、こういうようなことは避けて、もっと部内で考えられ得ることはひとつ考えてみようじゃないか、こういうことがいま望まれておるのではないか、かように思います。
  165. 久保三郎

    久保委員 わかりました。ただ国鉄がやっていること自体、あまり政府筋には理解されていないのではなかろうかと思うのであります。これは多少同情的な見方でありまして恐縮なのでありますが、私はそう思っているのです。この深刻さは、自分だけ深刻になったって、ほかの人がちっとも深刻に思わぬようなものもありますよね、これは人柄によりますけれども。国鉄はまさにそういう人柄じゃなかろうかと思っているのです。しかもこれは私企業でないところに問題があるのですね。そういうことを十分考えていかなければ、先ほど大蔵大臣は、来年度予算は暫定だ。計画を立ててから二年目に至って暫定とはこれいかにということばになると思うのですね。これはまさに根本的な施策を練らなかった証拠だと私は思っているのです。それは国鉄当局にも一半の責任がある。ほんとうに国鉄が困っている、ここまでやっているんだ、どうにもならぬという姿がちっとも正しく政府の筋に映らぬ証拠ではなかろうかと私は思うのであります。総理は大体おわかりかもしれませんが、いまのお二人の答弁では残念ながらそういうふうには思いません。いずれにしてもこれはことしから――ことしというか、ことし一年間検討されると思うのですが、あとからも申し上げますが、形式的な検討を何回続けても同じですよ。だから一カ月かそこらの間に、ほんとうなら予算が通過するまでの間に、再建計画というのは練り直しをちゃんと発表するのが当然だと私は思うのです。い、ずれにしても先に行きましょう。  総合交通体系というのを最近はやり――はやりと言っては語弊がありますが、たいへん口にしてまいりました。先ほど大蔵大臣からも総合交通政策というか、これを確立して、そういう中で考えていく……。それでお尋ねしたいのは――これは、企画庁長官がいいのでしょうね。総合交通政策というか体系というか、こういうものはあなたのところで主管されるようでありますから。この総合交通体系というか、政策を急がれているようでありますが、国鉄財政再建とはいかなるかかわり合いがあるのでしょうか。たいへん簡単なお尋ねで恐縮でありますが、どんな関係がございましょうか。
  166. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 国鉄問題も、もちろん鉄道の重要な一環でございます。そういう意味におきまして、私どもがこの総合交通体系の検討をこれから始めようといたしておる際でございますが、その一部として重要な役割りを持っておると思います。すなわち、総合交通体系の中において今後鉄道、その中での国鉄の職能分担、こういうようなものをどうした方向で考えるべきか、これらのことは私ども検討をいたしますが、しかし同時にいわゆる国鉄再建問題はまた国鉄自体しての問題を非常に含んでおりますから、それらにつきましては目下運輸省を中心にいたしまして、まあ従来からこれを検討しておるわけでありますが、今後も再建計画あるいは再建の各問題について、運輸省を中心に検討してまいる、こういうことになっております。
  167. 久保三郎

    久保委員 いまのお話が、大体国鉄の財政再建と総合交通の関係である。そうしますと、簡単なお尋ねだし、簡単なお答えでありますからなんでありますが、国鉄の職能分担というものを総合交通体系の中ではきめていくのだ、こうおっしゃる。この財政再建の中でも、国鉄の職能分担というのはさまっておられるようでありますね。たとえば都市間旅客、それから中長距離の大量貨物、都市の旅客、そういうようなことが主として国鉄の分担であろう、こういうことなんで、それだけおきめになるならば何も総合交通体系というのは要らないのじゃなかろうかと私は思うのであります。これをどう生かすかの問題で、お話はなかったのですが、そのとおりだと思うのでありますが、どう生かしていくかということを総合交通体系の中に組み込んでいくということだろうと思うのですが、この総合交通体系とかいうのは一つのビジョンだろうと思うのですね。そうですね。総理の施政方針演説でもそうでありますが、むずかしいことは、ビジョンを描くこととか未来像をつくることによって、現実の苦しさから解放されようとするのが人間であります。そういうのが大体通弊でありまして、バラ色の未来像と現実の間をつなぐものを現在国民は必要としているのであります。バラ色の未来像と現実の苦しさの間をつなぐものがいま現に必要なんでありますよ。  国鉄もそのとおりなんです。新全総も新しい交通ネットワークもけっこうであります。しかし、借金の利子払いに借金を重ねていくようなこの財政をどうするかが現に必要な問題なんですね。これに解答を与えない政治政治ではないだろうと私は思っているのであります。これは真剣に考えておらない証拠だと私は思うのです。いわゆる総合交通体系の中間報告が出ましたね、運輸大臣。その末尾には青い鳥だと称しているんです。だからある国鉄の関係者は、青い鳥よりいまわれわれは焼き鳥がほしいんだ、こう言っている。おわかりでしょうが。国鉄財政再建がいままで政府の公式の場にあがったのは、いうならばあらためてあがったのは、昭和三十八年の十二月、昭和三十九年度予算編成の最後にこれは問題になったのであります。その国鉄の状況というのは、規模は違いますけれども、状況は今日とちっとも変わりない状況でありまして、予算編成難におちいって時の石田総裁が、まあことばは悪いのでありますが、総理に直訴というか、しりをまくったとかいう話があります。そのときどうやったかというと、閣議の了解事項として「国鉄経営の抜本的再建のため、党」――党というのは自民党でしょうね。「党並びに政府は、国鉄の基本問題を調査する委員会を設置し、昭和四十年度以降の五カ年計画及び之に対する資金確保についての検討を速やかに開始すること。」こういう決定をなされているわけであります。引き続いて三十九年一ばいかかりました。そして第三次長期計画というものができました。しかし肝心の経営の抜本的な基本問題及び資金の確保についてはから手形にひとしいものであったことは、現実のいまがこれを証明しております。さらに今回のこの財政再建でありますが、これはもうお話し申し上げる必要はございませんね。これはずうっと佐藤総理の時代であります。これまた同じような事情から、国鉄財政再建推進会議なるものを四十三年につくりましたね。そして国鉄財政再建促進特別措置法なる法律が四十四年に制定されました。越えて四十五年から、先ほど申し上げたように今日ただいまの再建計画が実施をされたのであります。  こういう歴史をわざわざ私が言うのは、むずかしいことはみんなビジョンとかバラ色の未来像につないでいってしまうのですね。調査会とか法律とかはつくるけれども、中身は何にもないということを申し上げたかったのであります。ことほどさように深刻味が足りないところに、問題の解決がおくれているのであります。これについてどういうふうに橋本運輸大臣は思いますか、いかがでしょう。
  168. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 大臣の前に私のほうからの意見をひとつ申し上げます。  いま久保先生のおっしゃったとおり、いろいろバラ色のビジョンがございます。しかしおことばを拝借するのは失礼かと存じますが、いま私どものほしいのは、もちろん青い鳥もほしいのでございます。将来の日本の交通をどうするか、それに対して国鉄がどういう役割りを演じなければいけないかという意味の青い鳥はぜひ必要だと思います。これは四十数万の職員を率いる意味においても私は絶対に必要だと思っております。しかし同時にやはり焼き鳥がほしいんであります。それは毎日毎日の生活をどうするか、毎日毎日の利払いをどうするかという問題が切実な問題だと思います。ことしの予算から申しますれば、その点については、先ほど大臣が言われましたとおり、必ずしも満点とは申しません。いろいろつなぎの技術がございます。それを今後根本的に、抜本的にどうするかということが、やはり新しい総合交通体系の中で論じられませんと、とかく総合交通体系ではバラ色の話が多くて、現実のどろくさい話が抜けてきがちだと私は思います。その点ぜひ私は政府に対しても、今後どろに染まった国鉄の問題というものを取り上げていただきたい。いろいろ問題がございます。たとえば赤字線の問題とかいろいろございます。しかし、それをどうするかということにつきましては、もっと全体として国鉄が根本的な曲がりかどにあるということをぜひ国民にも御認識願って、そしていろいろな面で御協力願いたいということをぜひお願いする次第でございます。この点、大臣の御発言の前に、私から  一言申し上げさしていただきます。
  169. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 大体総裁がお話し申し上げましたから御理解願ったと思いますけれども、総合交通体系の必要なのは、私個人の考え方からいいますというと、たとえば昭和六十年における貨物輸送あるいは人間の輸送等の量が大体想定されております。しかし、道路が運べる量というものをこれから想到して、どれくらいが道路で運べるだろうか。どう考えましても、五倍もしくは六倍になるところの貨物の量を道路で運ぶことは困難でありますから、そこにもやはり国鉄の位置づけが必要である。あるいはまた長距離輸送というものが、もちろんこれは飛行機がその役割りを持っておりますが、たとえば函館-東京間の直通のお客さんは、二七%が国鉄であって、あとの七三%が飛行機であります。しかし、一方また福岡-東京間の旅客を見ますというと、これは国鉄が七〇%運んで飛行機が三〇%であります。これももちろん飛行場の問題もありますけれども、やはり国鉄が長距離、中距離等の旅客に対しまして持つその役割りは、なかなか重要なものがあります。ただ、問題は、国鉄という交通機関、これは私鉄も同様で鉄軌道というもの、及び大都市通勤圏の交通圏、こういうものは一つ政治の政策あるいは物価問題にも関係いたしますが、そこで必須機関でありますだけに、それだけに料金等についてはある程度の規制が行なわれざるを得ない。金がかかっただけ料金を取ればよろしいというわけにはいかない。そうなりますというと、いかにして建設資金を合理的なものとして――料金から考えて建設資金というものをどういうぐあいに考えていくか、こういうことであります。四十六年度予算におきましては、十分ではありませんけれども、たとえば従来六分五厘であった利子を今回の四十六年度においては五分五厘と一分引き下げてもらった。おっしゃるように三分五厘まではまいりませんけれども、一分を引き下げてもらって、これが百三十二億円、及び孫利子、先ほどお話がありましたが、これも六十二億円、これは昨年からやっておりますけれども、本年度六十二億円。その他複線、電化につきましても二十億、あるいは新幹線に対しても三十億、こういうぐあいに一般会計からの金の繰り入れをやってもらっております。これなんか四十六年度における画期的な措置。それから量からいうと、運輸大臣として満足ではありませんが、しかし質としては新しい質を四十六年度の予算において見出した。こういう意味において、これからわれわれはじっくり、といっては間に合いませんから、急ぎつつ、かつまた慎重にこの再建計画を練り直す、かような考えでやってまいる次第であります。
  170. 久保三郎

    久保委員 いろいろお話がありましたが、私が申し上げていることとだいぶ隔たりがありますので、時間も食いますから先を申し上げたいと思うのですが、一百申し上げますと、総合交通体系というのは、これは総裁も言うように、いろんな機能を働かせるために必要だと思っています。思っていますが、国鉄の財政再建に直ちにこれは特効薬であるなどと考えていたらばたいへんだということを申し上げたいのであります。  それからもう一つは、総合交通体系というのは、いわゆる体系の中でこれは誘導していくわけでありますから、たとえばイコールフッティングの問題一つとっても、自由競争というか、そういうものを前提にだけ問題を解決しようという考え方には、私はたいへん問題があろうかと思うのです。そういう問題についてもこれは今後十分検討してもらいたいし、あらためて申し上げますが、総合交通体系だけで国鉄の財政再建はできないのですよ。だから、それだけは御認識いただいたほうがいいと思うので、申し上げておきます。  次に、いまお話がありました赤字線というか、国鉄を二分割するという話が最近出てきております。つい先般は、ローカル線、赤字線撤去ということで八十三線区、いまでは二線区取っ払いましたから八十一線区になりますね。こういうものと、もう一つは、大体二万一千キロあるうち一万キロだけ黒字線と、それにつながる幹線、亜幹線というかそういうものと、それ以外の枝線を区別して経理しようとか、あるいは二分割して地方にそういうものは移していこうとかいう議論があります。しかし、これは、はっきり言うと、決して国鉄財政再建にも何にもなりません。甲の人から乙の人に大体所有主をかえるだけの話でありますから、国民経済的に見ればちっとも合理化でも何でもない、こういうふうにわれわれは考えているのであります。もちろん地方交通として、地域における交通をどうするかというものは、これは国鉄ばかりじゃありません。全体の交通機関、国民の足をどうするかは、国鉄財政再建問題とは別個な次元においてこれは議論し政策を立てていくのが当然だと思うのですね。過疎地帯における、あるいはモータリゼーションの進展、こういうことで御承知のように公共輸送機関がだんだん私的な機関としてはやっていけなくなってまいりました。そこで言うならば国鉄のような公企業がここに存在しなければならぬ理由が、新しい課題として出てきたことは、御案内のとおりであります。それを忘れているのか見過ごすのかわかりませんけれども、国鉄を二分割して地方の自治体の負担においてやっていこうなんということは、過疎を激化し地域格差を拡大する以外の何ものでもなくて、国鉄の機能そのものももはやそれは存在の値打ちがなくなってしまいます。だからこの点は考えていくべき線だと私は思うのでありまして、地方交通はいま申し上げたような線で再建問題とは別個に考えていくのが当然だと思うが、この点は運輸大臣いかが考えますか。
  171. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 お話しのように国鉄二分割論というのはあるようでありますが、私はその考え方には原則として賛成しておりません。ただ問題は、先ほど来お話がありましたように、地方における地方交通線といいますか、この中にはすでにいわゆる軌道としての役割りを済まして当然道路にかわったほうがいい場合のものもあるわけであります。もう一つは、これは外国には非常に少ない例でありますけれどもアメリカは私鉄でありますが、ヨーロッパにはほとんど私鉄はありません。日本には私鉄という一つの別個の交通機関があります。こういうような意味からいって、国鉄が国の幹線もしくは準幹線、骨格となるところの旅客の輸送の体系を握る。しかし、それとはあまり関係の少ない地域、これが純粋に地方的に必要である場合の問題、これはどうすべきかという問題はやっぱり前向きに検討してもいいのではなかろうか。いきなり国鉄からはずすはずさぬの問題ではなく、赤字黒字の問題よりも、いわゆる根幹線及び準幹線、これは国鉄がやるべき線である。ただ、国鉄としては、そうあまり輸送上に大きな貢献はない、しかし地方としてどうでも必要である、あるいはすでにそれだけの役割りをしてしまった、当然道路にかわってもいい、総合交通もその問題が入ってくるわけですが、そういう問題についてはやはりこれは慎重に検討する価値がある、かように考えているものであります。
  172. 久保三郎

    久保委員 いまの後半のお話は、ちょっと私としてはおかしいと思うのですね。なぜ国鉄でいけないのか、なぜ地方自治体にまかせたほうがいいのか、ちっともこれは明確じゃありません。むしろいま地方自治体が必要なものは、交通、運輸に対して地方自治体が権限がないということがたいへんだということなんです。たとえば、国鉄が間引き運転しようが、バスが間引き運転しようが、これに対して一切のくちばしはいれられないのが地方自治体なんですね。こういうものをまず第一に確立して後に、地域交通というのはどうするかを考えていく必要があると思う。これは、運輸大臣知っているように、昨年法律改正で各陸運局単位に、地方陸上交通審議会ですか、これができました。これは一年間開店休業というか、まだあんまり仕事をしていないようであります。各地方におけるところのこういう地域の交通をどうするかをこの審議会をして明確にやっぱり具体的な対策を立てさせる、これに基づいて国の政策を行なっていくというぐらいの立場がなければ、いま地方交通というのは守れないのでありまして、国鉄の二分割論や赤字線撤去や自動車に転換するなどということを考えたって、はっきり言ってこれはとてもじゃないができっこありません。どうかひとつその点考えていただきたいと思う。  時間がありませんから先に行きます。  次には運賃の問題でありますが、国鉄の経営成績を見ますると、大体伝統的に旅客が赤字で貨物が黒字、最近は貨物も赤字になってまいりまして、たしか四十三年度は千億くらいの貨物が赤字、旅客が大体三百億、合わせて千三百億が赤字なんでありますね。客貨に分けると、こういうことになっている。でありますから、旅客についても問題がありますが、大半はやはり貨物が赤字でいる。線別計算で赤字線、黒字線の議論はするが、客貨の赤字、黒字の議論はあまり最近しなくなってきている。  まず第一に、私ども考え方からいくならば、この客貨別の赤字、黒字の議論をすることも一つではないかと思うのです。だから国鉄の再建をいうならば、いままさにやろうとするものは、貨物輸送をどうするか、これは言うまでもありませんよ。先ほどもお話が出ましたように、物的流通、そういう問題がいま日程にのぼってきているさなかでありますから、これとあわせて国鉄の貨物輸送をどうするか、そして運賃はどうするかということを考えるのが当然だと思うのでありますが、この点は総裁、いかがでしょう。
  173. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 国鉄の経営を貨物、旅客に分けましたときに、貨物に大きな赤字が出ていることは、これは確かと思います。ただ貨物運賃は、御承知のとおり、いろいろ等級がございまして、いわゆる生活必需品物資その他石炭等は非常に安くなっております。それでもって非常に大きな赤字が出ておりましくわりあいに運賃のいい、値段の高いものは、結局高くすればトラックに取られてしまうというふうな状況になっております。したがって、今後貨物運賃をどういうふうにしていじっていくかということは、非常に大きな問題でございまして、今後のトラック政策その他との関連でもって考えなければならない問題だというふうに思っております。  それから、先ほどちょっと御質問の、大臣がお答えになった点で、いわゆる国鉄二分割論、これは私が言い出したことでございますが、一言だけつけ加えさせていただきます。  私は、国鉄を二つに分けるというふうに言ったのではなしに、国鉄の機能として国鉄が分担すべき面と、それから地方である程度分担していただく面と分けなければいかぬ、これは明治三十九年の国有鉄道法以来の思想でございます。したがって、先生が冒頭におっしゃった国鉄が独立採算としてやっていける面は、いわゆる黒字線プラス大きな赤字線、幹線糸は、これはどうしても独立採算制でやっていく、しかし地方交通については、ある程度国なり地方の援助をいただかなければやっていけないという意味の分割論でございまして、経営を二つに分けるとか、いまの国鉄というものを二つに分けるという思想でない、機能的に見て二つの経理のしかたをしたいという意味でございますので、その点誤解のないように申し上げておきます。
  174. 久保三郎

    久保委員 いま総裁から自発的にお答えがあった点でありますが、その趣旨はわかるのでありますが――いい悪いは別ですよ。特に地方に負担を願うということは、国鉄が言い出さなくても、それはいいと私は思うのですよ。地方に必要なものは地方で出せというのは、これは簡単な理屈でありまして、政策じゃありません。だから、そういうものは政府がやはり考えていくべき筋合いのものであろうかと思うのであります。いずれにしましても、二分割論は、いかなる面からいっても私どもは同意できかねる問題だと思っております。  次に、運賃の問題でありますが、たとえばいまはしなくもお話がありましたトラックに取られてしまうからというので、そういうことで極端なことをいうと、採算を無視して運んでいるものがありませんかと聞きたいのです、これは実際。収入さえあがればいいのだということ、現場はどこに行っても予定収入というのが書いてあります、駅区に参りますと。感心だと思いますけれども、それでは支出のほうはというと、これは全然書いてない。貨物を受け付けて発送したらば幾ら収入になるから取った、こういうんですね。取ったけれども、もうかっておるのか、それはペイしておるのかどうかということとは全然関係がないというようなやり方が国鉄の中にはありはしないか。もしあるとするならば、これはやめてもらいたい、私はそう思うのです。いずれにしても、いままでそういうことでありますから、とにかく貨物の運賃というのは、物的流通全体の問題として、国鉄のシェア、トラックのシェア、航空、内航いろいろありましょうから、そういうものをいわゆる誘導するための一つの目的にも国鉄の貨物運賃というのは考えていくべきであって、その中の国鉄貨物運賃はどうあるべきかを、これこそ総合交通政策の中で一刻も早くきめてもらわねばならぬと私は考えておるわけであります。  いずれにしても、時間がありませんから次の問題、これは総理にお伺いをしたい。パイプラインの問題が、いよいよ安全の問題を含めて日程にのぼってまいりました。パイプラインについては、これは四十五年の二月の閣議決定において、国鉄再建計画の中でこれはきちんとしておるはずでありますが、聞くところによりますというと、政府部内においては、まだ何か事務当局の間で権限争いみたいなものがあるそうでありますが、閣議決定でありますから、そのとおりと承知してよろしいかどうか。いかがでしょうか。
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 閣議決定、これは運輸省で扱う、こういうことをきめたかと思います。しかし、いま国鉄公社でパイプラインをやるのだとか、あるいは私鉄のものでやるのだとか、そういうことはきめてございません。ただいま、いろいろ事務当局間でも議論をいたしておりますが、経済団体でも、どういうことがいいか、いろいろ検討している最中でございますから、まだ結論が出ておらない、かように御了承をいただきます。
  176. 久保三郎

    久保委員 総理、これはあなたの御答弁違いますよ。ここに閣議決定を持ってきているのでありまして、これは四十五年の二月というのは私の誤りで、四十四年九月の十二日に「日本国有鉄道の財政の再建に関する基本方針」その中の「3、日本国有鉄道の措置」その中の「(3)関連事業等の整備」その中には「パイプライン輸送等日本国有鉄道の鉄道輸送と密接な関連を有し、その機能の促進に効果があり、又はその施設を有効に活用することが望ましい事業については、これを経営し、又は適切な投資を行なうものとする。」こうきちっときまっておりますので、念のためにお尋ねを申し上げたわけであります。いかがでしょうか。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国鉄がやることを禁止してはいないだろう、国鉄が関連することをやってもいい、こういうのだと、かように思っております。しかし、先ほど申しますように、国鉄が専門的にやる、こういうものじゃない。御承知のように、過去においてもホテルを経営したことがございますし、また最近もそういうことをやろうとしている。だからパイプライン、これもやはりそういうものだと、かように考えて、ただいまどういうようにしてやるか、これがいまいろいろ相談されつつある、そういう段階でございます。
  178. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 総理答弁されたとおりでありますが、パイプラインのいわゆる原則論を総理はお話しになったのでありまして、一般的にパイプラインを国鉄が全部独占でやるのかどうかということは、必ずしも独占でやるという意味ではない。この閣議決定にもありますように、国鉄が関連事業としてやるほうがいいというもの、そういうものについては、国鉄がいわゆる輸送の形態として、近代化の形式でありますから、それでやったらいいだろう。であるからパイプライン全体を、場所によってはあるいは民間企業もしくは他の企業によってやる場合もあろうし、この場合は国鉄をもってこれを行なわしめる、こういう考え方で、それらをどういうように調整するかは、目下通産省とも打ち合わせをしている問題であります。個々の問題の御質問であれば、これは別問題としてお答え申し上げます。
  179. 久保三郎

    久保委員 たいへんデリケートなお話ですね。その辺に私は問題があるのだろうと思うんですよ。これ以上この席で申し上げるのはどうかと思うのですが、安全性が第一でありますし、一番効果的なものを考えていくのが当然だと思うんですよ。私は苦々しく思っておるんですよ、いまの御答弁、申しわけありませんけれども。きちっとなぜなさらぬか。大体運輸省が監督していくということだろうと私は思いますけれども、私鉄がやるかどうかというのは、これは問題がありますね。ありますが、少なくとも輸送というか物的流通の一環として考えたならば、やはりこういうものの安全性を考えてみて一元的なものにしていくほうが一番いいと私は思っています。  それで、時間もありませんので、次にもうちょっとございますので……。  航空企業の再々編成について二点だけお尋ねしたいのであります。この問題はもう前段抜きでお話は十分おわかりのことだと思うのですが、ただ問題は、かなり最近こういうものがいろいろなうわさを交えて報道されておりまして、われわれ自身もどれがほんとうなのやらよくわかりません。しかし、たしか昭和四十一年でありましたか、当時、航空企業の小さいものの経営が非常に悪化してまいりました。かたがた、引き続くところの航空事故が続発しましたので、言うならば、いま考えれば、企業救済でもあったのでありましょう、特に国内航空は当時七十億ぐらいの累積赤字を持っておりまして、そこで日本航空に一体化、合併というか、そういう方向で運営をしていこうということに政策的になったわけですね。東亜航空は全日空に言うまでもありませんが合併するということ、そこで昨年の大体いまごろまではその線で進められて、たしか国内航空と日本航空は今年九月期で大体合併ということになっていたはずだと思うのです。ところが、最近というか去年の十一月ころになりまして、にわかに答申を出してもらって、政府はこれまた百八十度の転回をいたしまして、そこで国内航空と日本航空は当初の合併をやめて、両者は合体するということになったのですね。  特に国内航空の問題でありますが、日本航空に今日まで、言うならばジェット機の727三機ウエットチャーター、そういうものをはじめとしていろいろな点で庇護してもらったと言ったら語弊がありますが、そういうことだと思うのですね。そこで、先ほど申し上げたように、七十億近くの異積赤字はことしの大体九月期でゼロになるというふうに企業も非常に好転したのであります。だから、もちろんその中には、御承知のようにウェットチャーター料にしてもかなり有利に、合併を前提にしていますから、民間企業である国内航空にサービスしていたんだろうと思うのです。また事実そのようであります。だからこの際、百八十度転換したことについて、時間がありませんから私はいろいろなことを申し上げませんけれども、政策転換して分離するとなれば、日本航空は政府の出資会社であります。言うならば、これは国民日本航空でありますから、日本航空が特定の私企業である国内航空に特別な利益を与えて、与えっばなしということは国民感情としてもできません。だから当然のごとく、これは清算をきちっとして公正にやってもらう必要があると思うのですが、この点はいかがですか。  それからもう一つは、国内航空と東亜が合併して第三の企業をつくるというその理由の一つは、最近における航空需要の激増である。なるほど近年急速に伸びてはいます。しかしながら、四十一年に再編成したときの理由は、先ほど申し上げたとおり、企業体質と安全性の問題から、これは小さい企業ではという話が出てやったのであります。はたしてこれによって安全性が保てるのかどうか。しかもこの合併した第三の会社は、ローカルのダブルトラックを直ちにやろう、許そう、幹線の乗り入れも認めていこうという。なるほど航空需要からいけばそのとおりの線が出るかもわかりません。しかしながら、安全性からいって、さらには空港あるいは航空管制の現状からいって、はたしてそういうふうな大幅な増便が必要であるのかどうか、可能であるのかどうか、これはかなり疑問があると思うのですね。  しかも、もう一点お尋ねしたいのは、この第三の会社は、言うならば国内航空と東亜が合併していくならば、ある特定の民間企業が大きな資本というか、特定な資本の支配するところとなりはしないか。だから答申も広く民間資本をこれに参加させるということが条件のように聞いておりますが、参加させるだけで資本の比率等はどうなっているのか。資本の比率を間違えば、ある特定企業だけが支配能力を持つ。特定企業が支配力を持つということは、航空企業の公共性と安全性からいって疑問があると私どもは思っているのです。  この三点についてどうでしょうか、お答えいただきたい。
  180. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 前回の航空編成の場合と今回の場合とは事情が違っておりますことはおっしゃるとおりであります。これは稻葉秀三さんが懇談会の会長をしておりますが、この懇談会におきまして、将来の航空輸送のいわゆる数量等についての推算、予測が出されたわけでありますが、昭和五十年において現在の約四倍、昭和六十年においては現在の十一倍に国内旅客の数が激増するであろう、それに対してやはりいわゆる企業の体制並びに内容等を考えなければいかぬ、こういうような懇談会がありまして、それが六月であります。懇談会の席上でそういうような答申がされましたので、それに従って運輸省といたしましても、最近における航空界の状況及び大型化の傾向が強まってきておることは――御承知のように六十人乗りの飛行機を飛ばすよりはやはり三倍なら、ジェットならジェットを飛ばすほうが飛行場能力がよくなるわけであります。そういうことからして、当然これは飛行場自身も大型化に進んでまいる、また飛行機自身ももちろん大型になってくる、こういう状況にかんがみまして、いわゆる赤字の問題からものを考えるということじゃなくして、将来の長期見通しの上からいかに日本国内の飛行機の状況があるべきかということについて運輸政策審議会にこれの諮問をいたしたのであります。その諮問の結果が十一月に出たので、その諮問の答申案に従って、そこで先ほどお話しのあったようなこういう再編成を行なった。  問題は、そのうちで久保さんから御指摘のあった日本航空がいわゆるチャーター料として払っておる金があります。この金が適正に今後――これは閣議了解の中にも書いてありますけれども、これを決定する場合、両者だけできめてはいかぬ、当然これはその案を運輸省に提出をされて、運輸省が会計検査院及び大蔵省と協議の上、これの承認をするなりあるいは修正をするなり、かような決定をする、こういう厳格な姿勢で臨む方針でおりますので、その点においては、私たちはこの問題の処理については誤らない方針でやってまいりたいと思います。  もう一つ、第三の会社、新会社がいわゆる一企業の独占になりはしないか、こういう心配でありますが、これにつきましては、あの閣議了解の中でも広く新しい資本を参加させろ、こういう方針で進めてまいっております。しかしながら、とりあえずは、新会社としてはいわゆる既設会社の合併を行なった上で、そうしていわゆる会社の資金の公開を求めるわけでありますから、今後とも運輸省としては行政的な監督の上において、私たちが意図したような方向に進んでいくように努力をいたしたいし、またそうなければならぬと思っております。したがって、航空の安全上から考えましても、将来の長期展望から見ましても、このような再編成が必要であるという見解に立って業界を指導してまいったわけであります。
  181. 久保三郎

    久保委員 終わりますが、一言だけ申し上げます。  第三企業をつくるのは、赤字、黒字の問題ではないとおっしゃったが、非常に気になります。企業が赤字で航空企業なんというのは安全性を保てるわけがありませんよ。だから、どうかその点は間違いだと思うので、御訂正をいただいたほうがいいかと思うので、一言申し上げておきます。  それから、運輸大臣の言明を私どもはそのとおりだと思っています。今後の行く末をよく見てまいりましょう。少なくとも目先をすぐにぱっぱっと変えるような政策は、航空政策はいままでも航空の「航」の字がない「から政策」だといわれているのはそのせいじゃないかと私は思っている。いずれにしても企業の体質が悪いのを航空企業などにやらせるのはどうかと思うので、この点は十分考えてもらいたいし、そのためにも合併をさせて、その上で広く民間資本を仰ぐというのは、これはなかなかむずかしいんではなかろうかと思うのです。私はむしろ民間資本を中心にして広く集めて、その中へ一緒くたに持ち込んでいくということのほうが、これは筋が通りはしないかと思うのです。いずれにしても、姿勢はきちんとしてこの航空の再編成はお願いしたいものだということを申し上げて、終わりにします。  ありがとうございました。(拍手)
  182. 中野四郎

    中野委員長 これにて久保君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十五年度補正予算三案に対する質疑は全部終了いたしました。     ―――――――――――――
  183. 中野四郎

    中野委員長 これより昭和四十五年度補正予算三案を一括して討論に付します。  討論の通告があります。順次これを許します。楢崎弥之助君。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、日本社会党を代表して、昭和四十五年度補正予算案に対し反対の討論を行なうものであります。  まず第一に、佐藤内閣の本補正予算案に対する取り組みが国民の要望に遠く離れ、国民生活と福祉の向上に逆行しているという事実であります。物価の値上がりは当初見通しの四・八%を大きく上回り、四十五年度実績見込みでは七・三%と、去る三十年以来最高の値上がりを示し、四十五年の暦年ベースでは、消費者物価は朝鮮動乱後の値上がり以来の上昇記録となっております。さらに、大企業本位の資本蓄積、民間設備投資中心の政策は、経済、社会両面にわたるアンバランスを拡大させ、所得と資産の格差をはじめ、あらゆる面における不均衡とひずみを広げつつあります。  しかも、こうした佐藤内閣の悪政は、国民大衆の家計を圧迫しているだけでなく、最終需要を鈍化させ、最近は不況的現象を引き起こしており、中小企業は一そうの困難に直面させられようとしております。いま必要なことは、GNPを戦果とする経済戦争をこれ以上続けることではなく、従来の産業優先政策を大きく転換し、人間優先、国民生活福祉に政策の重点を移すことではないでしょうか。しかるに今回の補正予算は、こうした政府の失政には目をおおい、むしろ失政の上塗りをするものとなっていることを指摘しなければなりません。公害対策物価対策をはじめ国民の緊急な課題は全く見失われてしまっているのであります。  第二の問題は、佐藤内閣が過去六年間、勤労者に重い税負担を押しつけ、他方では租税特別措置をはじめとする不公平税制をとり続けてきたという事実であります。今回の補正予算におきましても、その財源は三千十一億円の租税及び印紙収入の自然増収によってまかなわれているものであります。自然増収はいわば勤労大衆にとっては税の取り過ぎ分であり、物価値上がりの中で実質所得は減価されるにもかかわらず、名目賃金に累進税率がかけられる結果生じたものでありますから、勤労者に対して減税してしかるべきものであります。昭和四十年以来、国税だけを見ても、税の自然増収の累積額は十九兆円をこしているのに、減税額は三兆円にすぎません。雇用労働者は佐藤内閣成立以来五百万人もふえているのに、国民分配所得の中の雇用者所得の割合は逆に低下しており、法人所得や個人財産所得は増加しているにもかかわらず、法人税や資産課税は逆に減税を続けています。こうしたさか立ちの行き方は、この際改めるべきが当然でありましょう。  第三に、補正内容を見てみましても、きわめて重大な問題を含んでおります。食管会計への繰り入れにいたしましても、明らかに政府の農政の失政によるものであります。佐藤内閣は、成立以来消費者米価の値上げを連続して四回も行ない、消費者米価は四十年から四十三年までに実に五七%も値上がりとなっております。そのころから米の消費が急に減り始め、米の過剰傾向が明らかとなってきました。これに対する適切な対策は何一つ行なわないで、なしくずしに食管制度の破壊を行なおうとしてきたのであります。佐藤内閣ほど農業軽視をとった政府はありません。しかも、昨年の米の生産調整の失敗、自主流通米制度の採用など、消費者米価は値上げ、生産農民は農業の破壊に苦しみ、家計支出を増大させております。この政府の農政の失敗が今回の補正予算にもあらわれているといわなければなりません。  さらに、公務員給与の引き上げにつきましても、すでに第六十四回国会で給与法は成立していたにもかかわらず、期限切れ寸前になって補正予算が通らなければ給与財源に困るという口実で、ろくすっぽ審議もしないまま補正を通そうとする態度は本末転倒であります。特に総合予算主義が事実上くずれているにもかかわらず、当初予算におけるベースアップ分の計上を五%に押え、実質的に賃上げ抑圧をはかろうとする態度はきわめて悪質であります。物価上昇が大幅に見込まれ、民間賃上げも一八%台となっている今日、それにふさわしい予算を当初予算において確保するのが当然でありましょう。  また、今回の補正では、地方交付税交付金の追加支出と合わせ、年度当初予定していた国への借り上げ分三百億円の返還が行なわれることになっております。最近政府は地方財政好転を口実として、本来地方自主財源である地方交付税を政府の恣意的運用のもとに置こうとする傾向が強まっており、地方自治を圧殺しようとしていることはきわめて遺憾であります。地方財政法、地方交付税法の精神に照らし、地方交付税交付金は直ちに特別会計に繰り入れるべきであり、国の思惑によって左右するようなやり方は断じて排除すべきであります。  以上、三点にわたって今回の補正予算に対する反対の要点を申し述べましたが、もし政府国民の要望を無視し、これ以上悪政を続けるならば、経済の矛盾は一そう激化し、国民生活に一そうの重圧を加えるものにならざるを得ないことを強く指摘しておきたいと思います。  最後に、本補正予算案審議の過程において生じました小林法務大臣の辞任は、国権の最高機関である国会の権威にかかわる問題として、この際、佐藤内閣の猛省をきびしく促しまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  185. 中野四郎

    中野委員長 次に、登坂重次郎君。
  186. 登坂重次郎

    ○登坂委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和四十五年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十五年度特別会計補正予算(特第1号)並びに昭和四十五年度政府関係機関補正予算(機第1号)について賛成の討論を行ないます。  この補正予算は、昭和四十五年度本予算作成後に生じました事由により、特に緊急やむを得ざる経費の支出を行なうものであります。  さて、本補正予算案の内容を検討いたしますれば、一般会計の歳出は、追加金額において三千百三十七億円、補正減少額五百四億円、差し引き二千六百三十三億円の増加となっております。したがって、補正後の本年度の予算総額は八兆二千百三十億円となっております。  歳出の追加の第一点は、公務員の給与改善費であります。その所要額は千六十五億円となっております。本年度は給与改定の実施時期を昨年五月にさかのぼって人事院勧告を完全に実施いたし、平均引き上げ額八千二十二円、昇給率におきまして一二・六七%となり、かつてない大幅な引き上げとなったのであります。  次に、歳出追加の第二点は、食糧管理特別会計への繰り入れ七百三十億円であります。これは、当初予定いたしておりました米の買い入れ数量及び古米、古々米の売却数量等の増加により食糧管理勘定の不足を生じたための補てんであります。御承知のとおり、古米の在庫が約七百万トンにも達しております現状にかんがみ、これらに対処して食管制度の改善をはかるとともに、農家経済の安定を期するという観点から、当然の経費として賛意を表するものであります。  次に、歳出追加の第三点は、万博あと地購入費の八十三億円であります。これは、万博のあと地を国と大阪府と相折半して保有することといたしており、その購入費として必要な経費であります。  さらに、歳出の追加として、地方交付税交付金千八十六億円及び義務的経費の追加分といたしまして百六十五億円があります。義務的経費の追加は、生活保護費の不足見込み額、国民健康保険助成費、義務教育費国庫負担法に基づく教育職員の給与費負担金の不足額等であります。これらの経費の計上を通じまして、地方公共団体の財政並びに国民健康保険等の運営の健全化をはかるものであります。  次に一般会計歳入について申し上げます。  これは必要な財源といたしまして租税及び印紙収入、専売納付金等でまかなうものであります。  さらに特記すべきものは、今回の補正におきまして公債発行額を五百億円減額することといたしている点であります。現下のわが国の経済情勢より見て、節度のある財政の運営をはかり、経済成長の鎮静化につとめるとともに物価対策の一助といたしたことは、まことに適切なる措置と考えられるものであります。  以上申し述べました理由により、私は本補正予算案に対し賛意を表し、討論を終わります。  何とぞ委員各位の御賛同を賜わらんことを要望いたします。(拍手)
  187. 中野四郎

    中野委員長 次に、相沢武彦君。
  188. 相沢武彦

    ○相沢委員 私は、公明党を代表いたしまして、昭和四十五年度補正予算三案に対し、反対の討論を行ないます。  反対理由の第一は、政府の標榜する総合予算主義は、その本来の趣旨から見ればすでに崩壊したにもかかわらず、総合予算主義の放棄を明確にしないことであります。  私どもは、昭和四十三年、政府が総合予算主義を打ち出したときにおいて、総合予算主義が現実性に欠く理由をあげ、政府に総合予算主義の撤回を強く求めてきたのであります。しかし政府は、これを聞き入れることなく、四十三年度から三年間、総合予算主義の原則を貫き通すことを言い続けてきたのであります。しかしながら、総合予算主義をたてまえとした毎年の予算が、本年に至っては二千六百億円の大型補正を提出するに至りました。このことは事実上当初予算の性格を大きく変化させることであり、同時に裏面から見ると、総合予算主義のたてまえを減税、福祉政策要求をしりぞけるベールにさえしているといわざるを得ないのであります。  反対理由の第二は、政府の自然増収の見積もりにきわめて重大な誤りをおかしたことであります。  政府は、自然増収をきわめて過小に見積もることにより、国民的要望である大幅減税を阻止する口実にし、財政配分の適正を欠いたのであります。自然増収三千十一億円の陰に重税にあえぎ、冷たい社会福祉政策に泣いている国民を思うときに、どうしても政府の放漫な態度を認めることはできないのであります。  反対理由の第三は、中央集権的な財政姿勢と公害対策に対する政府の基本的姿勢であります。  本補正予算におきまして、国は地方自治体に対し、地方交付税の減額特例措置による九百十億円の借り入れのうち、三百億円を返済しようとしております。しかしながら、地方自治体では公害防除のための財政需要が急速に高まっている現在、全額返済はけだし当然のことであります。本補正予算案による措置は、政府の公害対策についての消極性を示すものであり、地方自治の尊重を欠いた中央集権的な財政姿勢をみずから示しているものといわねばなりません。反対理由の第四は、米の生産調整における政府の無責任であります。  四十五年度に百五十万トンの生産調整を計画した政府は、百万トンを休耕転作に、残り五十万トンを宅地、工場用地に転用する計画を立てたのでありますが、農業者は最大限に努力して目標を上回る生産調整を実施したのであります。にもかかわらず、政府の用地転用計画の実現は目標の三分の一しか達成しないという現状を見るとき、政府の無責任を見のがすことはできません。  最後に、本補正予算案の提出時期についてであります。  本補正予算案は、当然ながら昨年末の臨時国会へ提出すべきであったと思うのであります。なぜならば、本補正予算の最大の要因である給与改善案は、臨時国会で成立した給与関係法の改正に伴う支出だからであります。あくまで法律と予算は同時に国会の審議を受けるべきものであると思うのであります。  以上、本補正予算案に対する反対の理由を要約して申し上げ、私の反対討論を終わりますが、なお、本日の予算委員会で問題となった前小林法務大臣の浜松における発言は、議会制民主主義を否定し、予算審議を冒涜するものであったことにかんがみ、今後佐藤内閣にその根本姿勢を正すよう猛省を促すものでございます。(拍手)
  189. 中野四郎

    中野委員長 次に、岡沢完治君。
  190. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、昭和四十五年度補正予算三案に対し、反対の意見を申し述べます。  政府は、一昨々年以来強く主張しておられました総合予算主義を完全に撤回され、当然の任務であるかのように二千六百億円規模の補正予算案を提案されたのでありますが、政府は、財政法に規定する補正予算の編成について、明らかに編成権の乱用におちいっておられるのではないかと私は思います。本案には、歳出補正に七百三十億円の食管会計繰り入れ、すなわち米の買い入れ増加経費が計上されております。これは、当初の見込み以上に米の増産があったから、食管制度のたてまえとして当然に補正すべきであるというのが政府の意見でありましょうが、国内米の買い入れ数量において、当初予算では六百五十万トンと予想し、今回は七百一万トンに改定しておられます。すなわち、五十万トンという大幅な見込み違いであります。私は米の買い入れ追加をこの際非難するのが目的ではありませんし、ここはその場所でもありませんが、このような大幅な買い入れ数量の見込み違いが平然として横行し、しかも、てんとして恥じない態度をとっておられる行政府の無責任さを非難したいのであります。  もう一点具体的に指摘いたします。政府は歳入補正で、租税及び印紙収入として三千十一億円を計上されました。この金額は、昭和四十五年度の所得税減税規模二千四百六十一億円を五百五十億円も上回っております。また三千十一億円の増収のうちには八百一億円の所得税増収が含まれておりますが、私はこれらの増収より推定して、昭和四十五年度の減税水準が低く過ぎたことをこの際指摘せざるを得ないのであります。財政法第二十九条は、「内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。」と規定し、「法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」云々とうたっております。しかし、今回の補正予算案に計上されておる食管繰り入れ追加七百三十億円は、予算編成後に生じた事由に基づく緊急の支出ではありません。明らかに予算編成時に予測されており、当初予算に当然に計上されるべき性格のものの計上漏れであります。また三千十一億円の租税等の収入補正は、当初予算において歳出財源及び減税財源の双方に充当されていたはずの金額でもあります。  私が繰り返し申し上げたい点は、政府は、毎年度の当初予算の規模を政治的にことさらに低く想定し、最初から補正予算の必要を予想してかかる二重構造予算の編成を繰り返しているという点であります。これは、当初予算の段階では、予算規模を控え目に計上して減税規模を圧縮する効果をあげることになります。また補正予算の段階では、政策上の見込み違いを一挙にしりぬぐいする効果をあげます。いずれにせよ、補正予算の編成が官僚独善の手段として利用され、政府見通しの誤り、失政の隠れみのになっている事実を私は指摘したいのであります。  近年は幸いにして大きい自然災害がなく、大幅な災害復旧予算を編成する必要もほとんどありません。したがいまして、真に歳出の補正をなさざるを得ない機会が少なくなっておるのでありますが、補正予算をあたうる限り小規模に押える努力について政府はもっと反省すべきではありませんか。私はもとより補正予算の機能を否定するものではありません。また、政府が神のごとく賢明で、当初予算ですべてを完全に予測し、いささかのあやまちをもおかしてはならないというような無理を求めるものでもありません。私が指摘いたしたい点は、予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊急となった経費の支出を補正するという財政法第二十九条の規定を乱用するなということであります。  本日の本委員会におきましても、本年一月十八日の浜松市における小林前法務大臣の発言が非難の対象になりましたが、その発言の中でも、予算編成にからむ政府と自民党の癒着、政府の予算編成権の乱用が一つの問題点として浮き彫りにされました。質は違いますが、今回の補正予算政府案もまた、明らかに政府の予算編成権の乱用といわざるを得ません。  以上の諸事由により、私は本案に反対の意見を明らかにして、討論を終わります。(拍手)
  191. 中野四郎

    中野委員長 次に青柳盛雄君。
  192. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、日本共産党を代表して、昭和四十五年度補正予算案について反対の討論を行ないます。  この補正予算案は、公務員給与の改善、生活保護、国民健康保険等の経費の追加、食管会計への繰り入れ、地方交付税交付金の支出など、現行制度のもとで当然補正さるべきものを含んでおります。  しかし、その中には、この際十分検討されなければならない政策上の重要な問題があります。  第一に、食管会計への七百三十億円の繰り入れなどについてであります。  いま、いわゆる過剰米の問題を控えて緊急に重要なことは、米の食管制度を守るとともに、米以外の農作物への転換を容易にするため、転換作物に対して安定した価格保障制度を確立することであり、また外国農産物の輸入を制限することなど、日本農業の自主的、民主的発展を目ざす総合的農業政策に転換することであります。しかるに政府は、依然としてこれまでの反人民的農業政策に固執して、過剰米問題を正しく解決し得ないばかりか、四十六年度にも二百三十万トンに及ぶ生産調整を強行しようとしておるのであります。わが党は、食管制度の廃止に反対する立場から、食管会計への繰り入れば当然のことと考えますが、このような政府の農業政策には絶対に反対であります。  第二は、地方交付税交付金の問題であります。  今日、地方交付税制度を抜本的に改正し、交付税を大幅に引き上げ、実情に即した基準財政需要額の算定などを実施すべきであり、これは全国地方自治体から強く要求されているところであります。しかるに政府は、この地方自治体の切実な要求を無視し続けております。沖繩県への援助は、地方交付税以外の一般財政から当然支出すべきものであるのに、今回のように地方交付税特別交付金から三十億円支出しようとするがごときは、窮迫している地方財政をさらに圧迫するものであり、全く不当な措置であります。  第三に、国民健康保険助成費の支出に関連する問題であります。  国民健康保険の療養給付費財政調整交付金等に、四十四、五両年度をあわせて六十五億円が追加されるのは当然でありますが、これに関連して指摘しなければならないのは、政府管掌健保の赤字対策が全く行なわれていない点であります。その赤字は四十五年度でも五百億円に達するのに、これに対する繰り入れば、当初予算でわずかに二百二十五億円が計上されているにすぎず、本補正予算では全く無視されております。これは四十六年度における健康保険法の改悪を待っているからにほかなりません。すなわち政府国民の健康を守るべき義務を怠り、もっぱら被保険者に負担を押しつけようとする態度であることを明らかにしたものであります。  このように、本補正予算案は、国民の生命と生活を全く省みないものといわざるを得ません。  なお、小林法務大臣の辞職は、議会制民主主義を否定した許しがたい暴論の当然のことと思いますが、この発言は、はしなくも佐藤内閣の国会無視の姿を暴露したものであって、法務大臣の辞職によって一切が解決したものではありません。  わが党は、今後も佐藤内閣の反動的姿勢に対して闘うものであることをここに付言して、反対討論を終わります。(拍手)
  193. 中野四郎

    中野委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより、昭和四十五年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十五年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十五年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  194. 中野四郎

    中野委員長 起立多数。よって、昭和四十五年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決いたしました。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたしました。よって、     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  196. 中野四郎

    中野委員長 明十日は、午前十時より、昭和四十六年度総予算について公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後九時十五分散会