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竹本委員 そこで問題の
中心は、門戸はなるべく開くべきであると私も思います。むしろ
外国のほうは
日本が、――たしかあれは
ことばがあるのですね。わが国
経済の現状を前提に着実に自由化を進めるというような閣議の決定といいますか了解があったわけですが、その後そういう
意味で、わが国の
経済の現状を前提にする、着実にということで、実は自由化は、
日本のほうはどちらかというと私は立ちおくれていると思うのですね。
外国は着実に進めるというのに一向進めないということにむしろいらだちを
感じまして、
日本のことをミスター・ステップ・バイ・ステップといっているそうですね。とにかくさっぱり進まないということを私は何かで読んだこともありますが、とにかくこれは積極的に取り組むべきだと思います。ところが問題は、
日本の自由化の
一つの特色は、この大きな流れに、ぴったりとらえて乗るということがはっきりしない。同時に、内に省みてそのための受けとめの準備体制というものを計画的にやるということもあまりやらない。だからますますおそくなるし、
外国からいろいろ批判が行なわれるというふうに私は悪循環をしていると思うのです。でありますから、この辺で自由化に対しましては前向きに受けとめる、やるのだ、腹をきめる、同時に必要な準備体制をすみやかに整える、この二つでなければならぬ、こう私は思うのです。
そこで、自動車の場合にもそうありたいと思いますから、いまの通産大臣の御
答弁を納得いたしますが、しかしここに問題がある。それはどういうことかと申しますと、
日本は、技術はまあ最近において非常に追いついてまいったようでございますから、これはまああまり心配はないかもしれぬ。それからトヨタ、日産の場合でも、自動車についていえば、国内において七七・五%くらいのもう販売網をつくっちゃったそうです。大体これは販売網というのは
最後はなかなかものをいいますから、ちょっと上がってきても、なかなかうまくいくものじゃないという点においても、
一つの力があるでしょう。しかし、一番重大な問題は資本力の競争、この点になると、
日本はまことに自信がない。
日本だけではなくてヨーロッパもみなそれでやられました。しかも、そのやり方が実は非常に、まあ
アメリカ人のやることですから、むちゃくちゃといいますか、手きびしいというのですか、あるいは資本の原則に従ってきびしいというのですか、とにかく非常に激しくやってくる。
時間がありませんから、簡単に一口だけ申しますと、私は、これはひとつ警戒警報の
意味で申し上げるわけなんですけれ
ども、ヨーロッパに対する
アメリカ資本、
アメリカの自動車資本の進出のぐあいというものは、まことにわれわれがぞっとするほどどぎつい、ひどいやり方で進出をいたしております。
たとえばシムカ
事件というのがありました、一九六三年。これは今度三菱自工と手を組むところのクライスラーがやったのであります。そのクライスラーのやり方は、六三%初めに株を買い占めて、そしていったので、ついに会社を乗り取ったのですけれ
ども、その六三%になるまでも、最初の二五%はワイアットから、まあこれは普通の方法で手に入れた。後の二六%は、ブリティッシュ・フォードの攻撃を受けてワイアットがまいちゃって、しかもそれを表に出すと自分の会社がたいへんなことになるものだから、どこからかひとつ融資のいいところはないかというので、こっそりスイスの銀行に頼んで、スイスの銀行にそれを買ってもらった。ところが、スイスの銀行のうしろにクライスラーがおったのですね。だから、自分の国内ではみんなに知らせないようにということでスイスまで持っていって、スイスの銀行に取引したのだけれ
ども、うしろではクライスラーが大きな口をあけて、にこにこ笑いながら待っておった。がっぽりのまれて、もう五一%取られちゃった。さらに
最後に一二%は、今度は乗り取りを始めたんです。今度証券取引法の改正がございまして、テークオーバー・ビッドということになるわけだそうで、公開買い付け制度が認められるということに
日本もなりましたけれ
ども、それをやったわけですね。どういうふうにやったかというと、時価は、どんどん買い取りをやるぞ、シムカがねらわれているぞということで、どんどん上がりました。そのどんどん上がっていく時価よりも、いかなる場合にもさらに二五%高く買う、こういうことでどんどんどんどんやって、一二%の株を集めてしまった。そして
最後に、二五%と二六%で五一%、それに一二%をたして六三%にしちゃったわけです。そして
最後に会社を乗り取った。だから、一番事の始まりは二五%なんだ。今度いすゞの場合にも二五%か三五%なんていっておりますけれ
ども、ヨーロッパにおける
アメリカ資本の進出の手口をよく調べてみますと、この二五%というのは縁起の悪い
数字なんだ。みんな橋頭堡はは二五%から来ている。そして、だんだん、だんだんにやって、
最後には時価よりも二五%常に高く買ってやるということで乗り取ってしまった。とうとうこれはドゴールがおこった。フランスのドゴールという
政治家がおこって、
最後にはEECに訴えた。それもうまくいかなくて、
最後に国内法で取り締まる以外に手がないということで、ドゴールはドゴールの手を打ったわけですけれ
ども、いずれにしてもこのシムカの場合には、全くクライスラーにあっという間に乗り取られてしまったというのが事実であります。この事実をわれわれは見落としてはならぬと思うのですね。
次に大事なのはフォード、このフォードがまたやってくる。このフォードが一九六〇年のブリティッシュ・フォードの乗り取りのときはたいへんであります。
日本においては大体常識は、株は、
総理、半分持っておると安全だということになっている。五〇%原則もそれでしょう。ブリティッシュ・フォードについては、
アメリカのデトロイトは五四・六%持っておったのですよ。半分以上持っておった。だから
日本の常識でいうと、もう大体だいじょうぶだと思っておったら、それから勝負が始まった。五万四千人かここはつとめておるのでございますが、そのブリティッシュ・フォードの残りの四五%の株の乗り取りを始めまして、これももともと一ポンドの株券を、当時そのとき相場が四ポンド十三シリングだった。それをフォードのほうはそのほとんど倍に近い七ポンド五シリングまでは買うという腹をきめて、どんどんどんどん買い足して、全部買い取ってしまったときには、実質は六ポンド十七シリングだった。すなわち、自分が腹をきめたよりちょっと安いところで全部買い取っちゃった。五四%持っておるのに、なおかつ
あとの残りの四十何%をそういう形で全部買い取ってしまったのであります。その買い取った結果がまた大事なんです。そこを私は言いたいのです。
それは、第一はもちろん五万人の労働者の運命というものが
アメリカのデトロイトに完全に握られてしまったということは当然であります。
それから第二には、イギリスは、御
承知のように保守党も労働党もともに福祉政策をやっております。その福祉政策のあり方というものが全部海を越えた向こうの
アメリカに牛耳られるという形になった。これも重大な問題であります。
第三番目に
指摘したいのは、ケネディとアイクの問題でございますが、ケネディがアイクにとってかわる。御
承知のように
アメリカの大統領はもうかわるときには半年ぐらい何もしないということになっておった。ところが
アメリカのドルの
状態が非常に悪くなりまして、このときの十一月十六日にはドルの節約令というのをつくりまして、
アメリカの軍人も家族は帰せ、もうドルはなくなって困っておるのだ、こういうことになりましたですね。そういうことがありましたね、六〇年に……。そのときに、
アメリカのそれほどドルが大事なときに、このフォードの乗り取りのために用意した金は幾らであったか、三億七千万ドルであります。
政府はドルを節約しなければならぬという態勢の中で、軍人の家族も呼び返せということをきめた中で、そのドル節約令が出るということを知っておるフォードの会社は、その二日前に三億七千万ドルの金を持ち出したのであります。すなわち、これは
アメリカのフォードというものは、力もたいへん強いようですけれ
ども、
アメリカ大統領の政令、ドル節約令、
アメリカの国策に反してでもどんどん出ていくということも大きな事実であります。したがって、こういうものが入ってくれば、
アメリカの国策さえ無視してどんどん出ていくのに、
日本の国策を無視するくらいは朝めし前ではないかと私は心配するわけですね。でありまするから、そういうことも含めまして、さらに、この売った価格も、当然これはたいへん時価よりもまた安く売ったのです。運賃なんかをつけ加えるやつを安くして売った。こういうことを言えば切りがありません。とにかく国策に反し、国策を無視し、大統領の要請もけ飛ばして出ていく、そういう強い資本であります。そうして時価よりも二割も三割も高く買って、全部買い取って乗り取っちまう。五〇%支配じゃ満足しないで一〇〇%にする。これは一〇〇%にする理由は、一〇〇%とっておかないと一割くらい
反対の株主がおりますと、いざという場合に、今度は第三の攻撃を始めるときに前進基地として役に立たないのです。文句を言わせないようにするためには、株式を全部自分が乗っ取って、この会社をつぶしても次の侵略といいますか、侵攻をやるのです。
まあ、時間がありませんから、これで終わりますが、そういうわけで、
外国資本の攻勢というものはまことにこわいし、特に
アメリカの自動車工業その他は欧州において、こういうもう前科の歴史を持っておる。前科というと
ことばが悪いですけれ
ども、歴史を持っておる。だからそれが
日本にいま上がってきょうというのでございますから、これはよほど警戒をしてもらわなければ困ります。
そこで、イギリスは御
承知のように、産業再編成公社というのをつくって、これは非常に功績を残しました。ルーツ・モ一夕ースが乗り取られそうなときには、たいへんな金、三十億の金を出してこれを救いました。それで株の一五%はその再編成公社が、国策会社ですね、国策会社が株を一五%買い取って、そうして
アメリカの乗っ取りを押えたわけですね。重役も一人送り込みました。それからまたSKFのボールベアリングが進出をしようとしたときには、民族産業を守るために三社を守って金を出してやる、そのかわり三社を合併させました。とにかく、イギリスの産業再編成公社は、
外国資本の侵略に対して、侵略というと
ことばが悪いが、侵攻に対して、乗り取りに対して、民族資本を守るためにそれだけの大きな手を打って、産業再編成公社というものをつくってやったのであります。ところが、今度保守党内閣になりまして、先ほ
どもお話がありましたように企業にあまり介入するのは困るという
立場と財政上の負担が多いという
立場で、一応これはことしの夏ですか、もうやめようということになった。しかし、これはおかしいことになるなと思って私が注目をしておりますと、実際はそうでない。イギリスの産業連盟、CBI、まあ
日本の経団連ですね、これがいま延長運動を始めておる。財界の人たちは、精神主義で民族産業は守れませんよ、こう言っておる。保守党内閣、困っております。もちろん労働党は
反対しております。さらにフィナンシャル・タイムズも、この産業再編成公社がなければもう仲立ちがなくなったということをいっておる。そういうこともありまして、イギリスでもこの廃止は失敗である、何とか新しいものをつくろうという動きになっております。さらにフランスは、言うまでもなく産業開発銀行というものが去年の七月一日から三億三千三百万フランで
出発をしております。
外国の強い資本の侵略、侵攻に対して民族の産業を守るために国策会社あるいは国策銀行でこれをバックしてやる、もうあたりまえのことなんです。
そこで私は、
最後にお伺いしたいことは、
日本でそれができるものは何だろうということを考えると、まあいままでの実績から見て、これは開発銀行ではなかろうかと思うのです。その開発銀行を強化する必要があるということを私は
最後に
指摘したいのです。というのは、時間がなくなりまして、日銀総裁見えましたから、結論を急ぐわけですけれ
ども、外資法というのが――資本が
外国から入ってきますね、
資本自由化で入ってくる。これを守るとりでが幾つあるかということを考えてみると、まず第一にあるのは外資法だ。ところが外資法はいろいろいいますけれ
ども、第八条を見ればよくわかるように、これは国際収支を
中心に考えているものだ。でありまするから、外資法だけで民族産業保護、こういうふうにぴったりなかなかいかないと思うのです。第二には、商法改正で、ひとつ取締役会に報告をしなければ簡単に名義の書きかえはできないというふうに、最近法の改正がありましたけれ
ども、こいつをあんまりやると、また今度は上場会社のほうとの
関係において、株式の流通性をだめにしてしまう。あんまりやると株じゃなくなってしまう。でありまするから、そういう商法の改正ばかりをやっていくというわけにもいかない。それでも間に合わない。第三のとりでとして考えるのは、証券取引法の改正、この
国会にかかっております。きょうも大蔵
委員会にかかっておるわけです。しかし、この法律もこれは投資家保護という大きな目的から
出発をしておるのであって、外資から民族産業を守ろうというのとは目的が違うのです。したがって、いろいろいいますけれ
ども限界があります。また事実この中に産業界の連中は、大蔵大臣にひとつ拒否権を与えて、そのくらいでばちっとやってもらわないと、民族産業は守れないじゃないか。証券取引法改正案大いに期待してみたが、あけてくやしき玉手箱、何にもならぬ、こういう批判もいま出ておる。それは産業界の切実なる要求からいえば、ぼくはもっともだと思うのですね。しかしこれも間に合わない。したがって法的なとりでをつくるという問題になりますと、外から攻め込んでくるやつに対して外資法でも不十分、商法改正でも不徹底、証券取引法も限界がある、こういうことでしょう。そうすると、法律上のとりではできてない。そうなれば、いよいよもって金融的に、金の面ででもせめて心配するな、
あとはイギリスの再編成公社じゃないが、フランスの産業開発銀行じゃないが、おれが控えておるから安心しろ、こういう安全保障がなければいかぬと思うのですね。
そこで私は結論として、
資本自由化大いにやるべし、これは避けることができない。しかしやるということになれば、外資の大きな力に、特に資本力で衝突する大きなものに対して、われわれは備えるところがなければならぬ。そうしなければわが国の民族産業が守れない。そのまじめな
考え方に立ちまして、私は
日本でいままでそういう方面に体制金融の実績と経験を持っておる一まあ考えれば私には私の意見があるのですけれ
ども、あまり理想論を言っても間に合いませんから、産業再編成公社もつくれないでしょうから、とりあえずのところはいまある機関を活用、利用するということで、開発銀行の規模並びに権限、融資その他の貸し付けの問題といったような問題について機能を
拡大強化することによって、とりあえずこれに対応するという
姿勢で取り組まれてはどうだろうか。ひとつ
総理並びに大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。