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1971-02-03 第65回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月三日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤田 義光君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    赤澤 正道君      稻村左近四郎君    植木庚子郎君       小沢 一郎君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    小坂善太郎君       笹山茂太郎君    田中 龍夫君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    野田 卯一君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    阪上安太郎君       辻原 弘市君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       相沢 武彦君    坂井 弘一君       瀬野栄次郎君    二見 伸明君       岡沢 完治君    青柳 盛雄君       谷口善太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         外務省経済局長 平原  毅君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         国税庁長官   吉國 二郎君         厚生省薬務局長 武藤琦一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   亀長 友義君         林野庁長官   松本 守雄君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         郵政省経理局長 溝呂木 繁君         自治省行政局長 宮澤  弘君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   小川新一郎君     瀬野栄次郎君   渡部 通子君     二見 伸明君   竹本 孫一君     佐々木良作君   谷口善太郎君     青柳 盛雄君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     西田 八郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算  昭和四十六年度特別会計予算  昭和四十六年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、右各案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。二見伸明君。
  3. 二見伸明

    二見委員 私は、四十六年度予算に関連いたしまして、エネルギー及び資源、それから農業問題のうちでも食管問題さらに税制、財政につきまして、総理大臣並びに関係大臣の御所見を承りたいと思います。順序も、エネルギー及び資源、それから食管、その次に税、財政という順番で御質問いたします。  総理大臣は、施政方針演説の中で、五年後、十年後の日本列島ビジョンをお示しになりまして、非常にバラ色ビジョンをお示しになったわけでありますけれども、このビジョンも、帰するところは、一つにはエネルギーをどうするか、資源をどうするかというのが、私は大きな問題だろうと思います。最近は、去年の九月のリビアの石油値上げを発端といたしまして、OPECすなわち石油輸出機構諸国原油値上げ攻勢をかけてきている。いわば、石油値上げ攻勢が現在展開されているわけでございますけれどもエネルギー資源という問題につきまして、総理大臣としてはどのような基本的なお考え方を持っているのか、また現在というものをどのように認識されているのか、まずその点から伺いたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま御指摘のように、これから先、エネルギーをいかにして確保し、いかにして利用するか、また、いかなるエネルギーをこれから使っていくか、こういうことが問題だと思います。ただいま言われるように、八〇年代にもなれば、いまのような状態ではない、すばらしき変わった状態エネルギー試算もしておるわけであります。そういうことを考えながら、国内においてエネルギー源の不足しておる日本は、海外にその資源を求めなければならない、こういうような実情でございますから、最近のOPECの出方あるいはこの問題の取り扱い方、そういうことに対しまして非常に敏感に、これがぴんぴんとわが産業界に働きかけている。私ども、またこれは、いまのところ経済問題だといいながらも当然政治問題に発展するものだ、かように考えて、十分その経緯、これからの行く先などにつきましても、いろいろ考えつつただいま対処しておるというのが実情でございます。
  5. 二見伸明

    二見委員 通産大臣にお尋ねいたしますけれども、今回のOPEC値上げ攻勢が、国際石油市場がいままでの買い手市場から売り手市場に基調が変わりつつあるということ、それからOPEC自身石油資源をめぐってイニシアチブを取りたい、そういう気持ちも私は背景にあると思うのです。そういうことを考えまして、今回の値上げ攻勢が、私は必ずしも一時的なものである、あるいは局部的なものであるとはどうも思えない。むしろこれはかなり永続的なものなのではないか、私はこう見ているわけですけれども通産大臣はいかがでございましょうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 石油の需給が、従来買い手市場であったものが売り手市場に移りつつあるのではないか、それからOPEC側が団結を強める動きに出ておるのではないかと言われます基本的な御判断は、私もまさにそのとおりであろうかと思います。したがいましてこの際、消費国であるわが国といたしましては、将来長きにわたり安定いたしましたような結論が出ますことをこいねがっておるわけでございます。
  7. 二見伸明

    二見委員 先ほど総理大臣は、経済問題であると同時に今後政治問題に発展することも考えられるので、いろいろの経過を考慮しつつ対処していくと仰せになりましたけれども、私は、もう日本国内にとっても、これは大問題になってくるのではないだろうかと思います。われわれといたしましては、この石油値上げについては断固として対処しなければならぬ、断固として石油値上げは抑制しなければならないと私は思います。  ところで、これは通産大臣にお尋ねしたいのですけれどもOPECが第一次の原油値上げを通告してきたときに、いわゆるメージャー国際石油資本は、値上げ分をそっくりそのまま日本の国に転嫁しようというような動きがあった、こう聞いております。これはもちろんわれわれとしても、国際資本に対しては、まるまる日本にかぶせるようなことのないように、これは十二分に対処しなければならないし、折衝もしなければならないと思いますけれども、もしまるまる向こう側言い分をのむといたしますと、一体わが国負担しなければならないものは年間大体どのくらいになるのか。  それからもう一点、それと関連いたしまして三十一日に、テヘランからの報道によりますと、国際資本OPECとの間に話し合いがありまして、国際資本のほうでは一バーレル二十五セントないし三十セントの値上げならば認めてもいい、こういう意向を示したといわれております。もちろんOPECは、これに対しては反対はしているようです。OPECの要求とはかけ離れてはいるようですけれども、もしそれをその線で妥結したとして、国際資本が二十五セントないし三十セントの値上がり分をそのまま日本にふっかけてきた場合に、わが国はどれだけの負担をしなければならないのか、その点をまず明らかにしていただきたいと思うのです。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、テヘランにおける会議というのは非常に緊迫をいたしておりまして、しかもその間におけるわが国立場というのはきわめて微妙なものでございます。結論が出ましたあとでございますといろいろ自由に申し上げることもできますが、ただいまそういう段階でありますことを御了承願っておきますことと、それから、あそこで議論になっておりますのは、いわゆる公示価格の問題でございます。ポステッドプライスの問題でございますので、それがその後、消費者にどのような形で転嫁されるかされないかということは、今度はメージャー消費者との間の話になりますわけで、この辺にもたいへん微妙な問題があるわけでございます。したがいまして、ただいま数字で申し上げることが非常に申し上げにくい。あたかもその値上げ幅をわれわれが許容したというように、間違った伝わり方をすることをおそれますためにさように申し上げるわけでございますが、抽象的に申しますと、たとえばガソリンにいたしましてリットル当たり一円、これはかなりな額になるわけでございますけれども、あるいは二円といったようなことが考えられますし、燈油等々について申し上げますと、一キロリットル当たり四、五百円といったようなことが考えられるわけでございますが、しかし、この点は、私どもがそういう値上げ幅等を許容するという立場で申し上げておるわけではございません。
  9. 二見伸明

    二見委員 大臣がおっしゃられたように、これを許容する立場で申されたのでないことは、私もそのとおりだと思います。その態度でいっていただきたいと思うのです。ただ、われわれがここで考えなければならないことは、石油というものがわれわれの生活にどれほどの密着があるかということです。これは石油製品の一部分でございますけれども、たとえば石油からできるわれわれの日用品にどんなのがあるか。雨具だとかその他のゴム製品化学調味料、寝具、カーテン、装飾品和洋服地その他の衣料、化学繊維はほとんど全部そうです。そのほか医薬品、消毒剤、おもちゃ、都市ガス、プロパンガス、化粧品合成洗剤、いわばわれわれの日常には、石油でできているものが数限りなくあるわけです。もしわが国石油値上げに対して少しでも値上げを認めるような態度になるならば、これは日本国内物価に大きく反映することは間違いないと私は思うのです。現在すでに消費者物価は、野菜を中心としてかなりの高騰を示しているのです。そこにさらに石油値上げ攻勢ということがわが国に及んだ場合に、これはたいへんな政治問題になる。外交問題としてもたいへんな問題になるだろう。国内においてもたいへんな問題になるだろう。その原因はいろいろいわれております。なぜこうなったのか、それはまた後ほど議論したいと思いますけれども、これだけは何としてでも押えていただきたい。こういう石油値上げ攻勢の結果、わが国消費生活自体にも大きな危機感がきている。経企庁長官国内物価の問題と関連して、こういう事態をどういうふうにお考えになっておりますか。
  10. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ただいま御指摘のように、石油関係影響というものは、各般の物資に非常に広範にわたっていることは私たちも十分認めております。ただ、いま通産大臣からお話がありましたように、私たちも、これは一体どのような成り行きになるものであろうか、今後必ずしもはかりがたいものがございます。これを十分注視してまいりたい、こういうふうに考えております。
  11. 二見伸明

    二見委員 これはある新聞の記事でありますけれども石油問題について、「すでに出光興産とシェル石油は、このほど全国の特約店値上げを通告、日本石油丸善石油共同石油ども来月早早」――来月というのは今月のことです。「来月早早にも通告する予定である。」石油会社のほうでは、われわれがこの問題を取り上げる以前にすでに石油値上げを通告する予定である、こういう報道がなされている。われわれの心配にもかかわらず、われわれがいろいろな日本石油を取り巻く環境を考慮して慎重でいるにもかかわらず、すでに石油資本のほうでは日本にその負担分を押しつけようとしてきている、そういう報道がなされている。もう今月にも来月にも、石油による国内物価への問題は、私は表面化してくる問題だと思うのです。当面は、この値上げを私は押えていただきたいと思うのです。総理大臣、これを押える手だてというのはないのでしょうか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのOPECとの会議の以前の、すなわちカラカス決議以前の、昨年のイラン値上げでございますが、これが試算によりますと三百億円程度の影響を与えるといわれておるわけでございます。もちろんそうきまったわけではございませんで、まだ仮の仕切り価格で取引をいたしておるようでございますが、それだけに今回のカラカス会議に対しましてはわれわれよほど慎重でなければなりませんので、さしずめ私どもとして考えなければなりませんことは、このテヘランにおける会議において、われわれがこの会議の会談の結果を直ちに日本側共同責任としてひっかぶるというような態度をとることは、きわめて慎重でなければならないと思っております。イランパーレビ国王が、自分たちの要求しておることは最終消費者に対して負担の増を求めておるのではないという発言をされましたことの意味合いは、いろいろあろうとは存じますけれども結論として、私どもはぜひそういうことであってほしいと考えておるわけでございます。
  13. 二見伸明

    二見委員 石油会社石油製品値上げを通告するということも、政府としては値上げをするなというふうな、そういう申し入れなり何なりはできないのですか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事実問題といたしましては、現在までのところはそのように行政指導をいたしておりますし、また、国内ではある意味買い手市場でございますので、ただいままでのところでございましたら、そのような指導かなり有効に働くというふうに考えております。
  15. 二見伸明

    二見委員 ここで大蔵大臣、この石油値上げについて、現在日本には石油関税というのがかけられております。これは、話によると世界でも最高の石油関税だそうであります。これを引き下げるなり撤廃することは考えられませんか。そうして少しでも石油製品を安くする、この方策は考えられないでしょうか。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 原油関税は、いま石炭対策財源に大部分が充てられております。そういう財政上の都合がありまして、いまにわかにというわけにはいかぬ。しかし検討はしてみたい、かように考えております。
  17. 二見伸明

    二見委員 石油関税石炭対策に回されていることは、私はよく承知をしておりますが、石炭のほうは石炭のほうで別に手当てすればいい。石油関税をいまのままにしておけば、これは最悪の場合には石油製品値上がりに響くのです。もう一点、今回のOPEC値上げ攻勢というのは、いわば日本ねらい撃ちにしたものだ、こういう報道もあるわけです。なぜか。あれだけの石油関税をかけているのだから、下げればいいじゃないかというのが向こう側言い分だという新聞報道も流されております。そういうことも考慮して、石油関税について、私は撤廃しろとは言いませんけれども、下げるだけの検討はしてしかるべきじゃないだろうか。それば財政上の問題もあるでしょう。石炭対策との関係もあるでしょう。それは私わかります。だけれども、これが消費者に多大の負担をかける以上は、この点は考えてもいいんじゃないか、こう思うのですけれども、どうでしょうか。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまこれは石油にどういう負担をかけるか、こういう一般的な問題を考えますときに、かなり石油にいろんな形の負担がかかっておるのです。これを総合してみますと、わが日本石油に対する負担、これは世界の中で中位ぐらいになりましょうか、そう重いほうでもない、軽いほうでもないというところかと思うのです。そういう総合的な判断から、私はいま二見さんのおっしゃるような話は考えてみる必要があると思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、特にいまこれは石炭対策財源かなり緊密に癒着しておりますので、考える場合に、まず関税の問題から考えるのかどうか、こういう問題になってくるだろう、こういうふうに思います。しかし、これはお話のような点もありますので、なお私どもは、宿題というか今後の検討の課題としたい、こういうつもりでおります。
  19. 二見伸明

    二見委員 それから、これは通産大臣外務大臣か、今回のこの問題は、日本外交陣とすれば日本ねらい撃ちにされたという報道もある。結局これは日本石油外交というか、資源外交というか、そこに一つ問題があったんじゃないだろうか。いままでは買ってくればいいんだという考え方だった。あまり資源外交ということは重きをおかなかった。情報ということにも重きを置かなかった。そういう意欲のなさというか、そういう点に基本的な欠陥があったんじゃないだろうか。それがいまここになってあらわれているんじゃないだろうかと私は思うわけです。いまさら文句を言ってもしようがありませんけれども一体外務省というのは、こういう状態をどこでどういうふうに把握したんだ、こうも言いたくなるわけでありますけれども外務省としては、これはいままでのことはいままで、これからはこれからです。今後こういう資源外交というか、こういうものの情報活動というものをどういうふうに考えていくのか。おそらくこれは通産省のほうとタイアップするということになると思いますけれども外務省としてはどういうふうに考えているのか、お示しいただきたいと思うのです。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまもお話がございましたように、これは日本外交上の問題としても非常に大きな問題でございますことは、御指摘のとおりでございます。日本ねらい撃ち云々というお話がございましたが、私はさようには考えませんけれども、ただ、詳しく申し上げるまでもなく、日本は現在最大の輸入国でございますから、したがってこういったような動きが、いろいろの意味で一番影響を受けなければならない立場にある。さような点から、従来とも外務省といたしましても十分な関心を持ち、ことに、ただいまも御指摘がございましたが、情報収集等につきましても十分つとめてまいったつもりでございますけれども、なかなか日本立場というのが微妙であって、ただいまもちょっとお触れになりましたけれども資源外交ということばがございましたが、日本立場として自主的な資源開発ということを大いに考えていかなければなりません。現に今回のこの生産国の中には、実はいろいろと話し合いを持っているところもございますから、そういう点から申しまして、日本としては自主的な独自の立場でこの間に処していかなければならない。それだけに、政府といたしましてもずいぶん苦心をいたしておるところでございます。通産省とはもちろんのことでございますが、関係方面とも緊密な連携をとり、またOPEC諸国とも友好関係を維持しながら、またほかの輸入国大国と申しますか、そういうところとも協調関係を維持しながらこの問題に処してまいりたい。そして自主的な開発ということも大いに努力を進めていかなければならない、こういう立場に立ちまして、多角的にこれからも大いに努力をしてまいりたいと思います。
  21. 二見伸明

    二見委員 総理大臣、私は石油の問題で最悪事態を考えて、その場合の対処を総理大臣にお伺いするわけでありますけれども電力業界の中にも、電気料金値上げ検討しなければならないところまで追い込まれそうだという声があるそうです。しかし、どういう事態になっても、電力料金は絶対に上げないことを私は総理大臣にひとつ約束をしていただきたい。十二月九日に、公定料金の一年間ストップがありますけれども、まず電力料金は絶対押えるということを約束してもらいたいことが一つと、いまトラックとか、地方の中小バスだとか、それから東京だと最近タクシーの値上げ問題が起こっているそうです。基本料金を二百円にしようという動きがある。それは人件費等が口実になっているようでありますけれども、この石油の問題はそれに絶好の材料になります。それも含めて、これだけは断じて押えるということを私は総理大臣約束していただきたいのです。いかがでしょうか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 電力料金値上げは許さない方針であります。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 電力料金、ただいま通産大臣が、値上げは許さない方針だと非常にはっきり申しております。私は、二見君から、上げないという約束をしろ、こう言われましたが、上げないという約束、またいまの上げないという方針だという、その間にはずいぶん開きがあるだろう、なかなか方針だけでは二見君も御了承できないのじゃないか、かように思いますが、しかし、いまの電力会社に対してわれわれの希望するものは幾つもあります。いままでのような経営状態でない――これはよほど目ざめないと当面する難局には立ち向かい得ないのじゃないか、かように思います。一つは、ただいまのような、その燃料である原油が高くなると当然重油が高くなる、そういう問題がそのうち起こるだろう。しかし、そういうことを避けたいというのがただいまの御議論であり、これはぜひ避けたい、こういうことで政府はあらゆる努力をする決意でございますが、しかし、いまの趨勢がともすると産出国に押されがちだ、かような事実はいなめないでもないことじゃないかと思います。その上、また最近問題になっておりますのは何といっても公害です。おそるべき公害、これに対する対策を十分とらなければならない。しかもこの公害のおそろしさから、発電所の建設に対しては地域住民の非常な反対がある。あるいはまた、それを他の原子力等にかえた場合に、さらにまた補償の問題が起こる。発電所一つつくりましても、これはやはり補償の問題が漁業その他に関係を持つ。そういうことを考えると、これから先の電力会社の置かれておる状態はまことにきびしいものがあるだろうと思います。しかし私は、電力会社の果たしておる役割り、その公共性に思いをいたすときに、その料金を消費者に転嫁するというようなことがあってはならない。したがって、あらゆる方針電力料金値上げしないようにつとめていく、これが政府の責任だ、かように思いますので、あるいはお尋ねの点にぴったり答えておらないかもしれませんが、この点を御了承いただいて、ただいま政府の確固不動の強い決意でこの問題に対処しておる、その姿勢をひとつ御了承いただきたいと思います。     〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
  24. 二見伸明

    二見委員 ところで、エネルギー問題の私はきょうは本題に入りますけれども、先ほど総理大臣は、エネルギー政策、資源は、日本にとっても重要な問題であると冒頭言われました。私もそのとおりだと思うわけでありますけれども通産大臣にお尋ねいたしますけれども昭和五十年における資源石油、原料炭、鉄、銅、ニッケル、五十年における需要の見通し、これをまずお示しいただきたいと思います。  なお、それが新経済社会発展計画に基づくものであるかどうかもあわせてお示しいただきたいと思います。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十年における資源の需要の見通しというお尋ねでございますが、概して申しまして昭和四十四年度需要の二倍内外というのが大まかなものさしでございます。したがいまして、石油で申しますと三億キロリットル余り、鉄鉱石二億トン、原料炭一億トン、銅百四十万トン、アルミ二百万トン前後と思いますが、大体そういうことでございまして、供給側で申しますと、この結果、石油はいずれにいたしましても、現在も一〇〇%にほとんど近い九九・何%でございますが、九九・九%というようなところに達するであろう。銅は現在七割ほどでございますが、八割ほど、鉄鉱石は九割ほどがいずれも海外に依存をすることになるわけでございます。  この数値は、新経済社会発展計画が、あれは昭和六十年で考えておられる数値の大体中間点と申しますか、その投射の上にある数字でございます。
  26. 二見伸明

    二見委員 通産省からいただいた資料によりますと、大体五十年の石油の見通しは三億六千万トンである。五十年ですね、石油の需要は三億六千万トンであるというふうに、私通産省の資料をいただきましたけれども、この三億六千万トンの石油というのは、大半が全部海外依存であります。それに対してはどういうふうにこれを確保するのかどうか、確保の見通しはどうなっているのか、その点はどうでしょう。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま私が新経済社会発展計画六十年と申し上げましたのは、新全国総合開発計画六十年でございまして、新経済社会発展計画の数値は五十年でございます。訂正いたします。  そこで、四十四年の石油原油の輸入が一億七千万キロリットルあたりと思いますが、そういたしますとその倍になるわけでございます。供給サイドで申しますと、その程度の供給力は現在の世界の状況からいいまして当然ございます。低硫黄というようなことをあまりぎりぎり申さなければございますが、問題は価格あるいは輸送力等の関係になるわけでありまして、結論を先に申し上げますと、価格の面でわれわれが十分バーゲンをする立場に立ち得るためには、やはり自分たちのものを極力持つ努力をいたさなければならないと思います。これは先ほど外務大臣の言われましたお話になるわけでございますが、われわれが産油国の資源を収奪するというようなことでなく、経済協力等々、先方も希望いたしておることでございますので、そういう方法を通じてお互いにわかり合いながらそういう努力をしていくということが、どうしても、しかも喫緊な問題であろうというふうに考えておるわけで、そういう努力をいたしつつあるわけでございます。
  28. 二見伸明

    二見委員 石油に限らず、資源については二つの前提があるわけですね。一つは安い価格で確保できるということです。もう一つは安定した供給があるということ。この二つが資源については大きな前提ですね。それで、石油に限りませんけれども、いわば資源については、安い価格ということになると自主開発以外にはない。通産省でも、石油については三割の自主開発を目ざすというのがたしか基本線になっているはずです。ところが、自主開発の量を見ますと、自主開発石油のウエートは年々下がっていますね。しかも、井戸を掘ってどのくらい当てられるかというと、世界でもって一・五%ぐらいきり発見率はない。そういう実情を考えると、自主開発ということは非常に必要だけれども通産省が考えているように三割の自主開発は可能かどうか、これは実情は非常に困難ではなかろうかと思うのですけれども、その点はどうでしょうかね。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それにはいろいろな要素がございますけれども、最近深度掘さくの技術がかなり進んでまいりましたから、大陸だな等々を含めましてかなりまだ新しいソースの開発が可能であるというふうに考えておるわけでございますが、従来のところ、どちらかといえば石油買い手市場でございましたことも手伝いまして、二十近い会社がいわゆる一つのプロジェクト一会社という形で誕生しておりますけれども、どうも国としてそれらを総合的にまとめるという、そういうたてまえを持っておらなかったわけでございまして、まあ融資をしようというようなことでまいりました。しかし、これから先を考えてまいりますと、あるところで有望な地点がある、その場合に、そのときになって会社をつくっておりましたのでは、入札等々に間に合わないというような問題が当然出てまいりますから、現在のいままでのたてまえをこの際大幅に変えまして、そういうときには時を逸せず手が打てるような方法を国としてどのように支援すべきかということを実は考えなければならないと思っておりますところで、ちょうど一両日中にはそういう関係の人々の意見も聞きまして、明年度の予算編成を目ざしまして新しい体制を組むべきではないかと、私としてはただいま考えておるところでございます。
  30. 二見伸明

    二見委員 通産大臣お話は、自主開発に非常に積極的ではあるけれども、困難が伴うことだけは私もよくわかります。目標は三割であっても、三割いけるかどうかわからぬ、実情はそうだと思うのです。大臣立場としては言いにくいだろうけれども実情はそうだろうと思います。  もう一つ、自主開発が望めないということになりますと、もし自主開発が成功しない、三割という目標がいかないとすると、その分は買わなければなりません。供給サイドで見れば石油はたくさんあるけれども、買うとなると、これは値段については安い値段ではちょっと買いにくいですね。その点はいかがでしょうか。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点はいろいろ考えられるわけでございますけれども、ただいまOPECとの間で行なわれております交渉が、いろいろ曲折はあろうと思いますけれども、五年なら五年という長期の契約になりましたら、ただいまの問題は、当面上がり下がりと申しますか、それからあとの高騰というようなことは回避され得るはずでございますし、同時に、自主開発が容易でないと言われますことは御指摘のとおりだと思いますけれども、私どもが今度新しい体制をとりまして、そして世界のこれについての情報どもできるだけ早く正確に把握する、いわゆる冒頭に言われました、もはや買い手市場ではないぞという考えに立って努力をいたしますならば必ずしも不可能なことではない。と申しますのは、俗にいわれておりますことは、現在までに開発された石油資源は全世界石油資源の六分の一程度であるといわれておるわけでございますから、努力によりまして、そう前途を悲観したものでもない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  32. 二見伸明

    二見委員 どうも大臣は――私ここでこまかい議論はやりたくないのですけれども、自主開発がむずかしいということは、いままでのデータではっきりしているわけですよ。それは資源の六分の一きり開発していないといえば、それは数字の上ではそうかもしれないけれども、これはどれだけ危険の多い、リスクの多い仕事であるか、発見率がどのように少ないかということは、過去のデータでわかっておるわけです。これから、その過去の発見率が世界で一・五%だ、それが一挙に一割にも二割にもなるわけじゃないでしょう。やはり同じような傾向でもってやらなければならない。しかも、きょう当たるか、あす当たるかわからない。五十年というと、あと五年です。それはあと二十年後、三十年後じゃなくて、あとわずか五年という日限を切った場合に、自主開発でそこまでいけるかどうか。これは無理でしょう。それはやってもらいますよ。やってはもらうけれども、それだけに一切を託しているわけにはいかないでしょう。しかも、先ほど、買うほうにしてもという話がありましたけれども、一番最初私がお尋ねしたときに、現在の石油値上げ攻勢というのは、一時的なものではないと思うけれどもどうだと言ったら、大臣も、そのとおり思うと言われた。ということは、もし買う立場になれば、日本世界で最大の石油消費国だ、そうすれば、絶対にこれは値が上がることはわかり切っている。それは経済審議会でも言っているじゃないですか。私は、それが悪いと言っているのじゃないのですよ。その実情をそのとおり言ってもらいたいのです。別に、それだからといって宮澤さんの責任だと言うのじゃないのですよ。実情をありのままに言っていただければいいのです。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 資源問題の将来を心配いたします点では、私も二見委員と同様なのでございますけれども、だからといって先を暗く考えるかと申しますと、危険は多いことでございますけれども、私は必ずしも実はそう思っておりません。と申しますのは、従来、買い手市場であるということで考えてまいりましたが、これから売り手市場になるかもしれぬということになれば、おのずから私どもの体制も異なってまいらなければなりません。御承知のように、リスクの多い仕事でございますから、リスクのある程度のものは国としてもかぶっていかなければならないであろう。もし、売り手市場であるとすれば、そういうことも考えておかなければなりませんし、また、経済協力等につきましても、そういう観点をも考えていかなければならぬ。現在探鉱中のもので、かなり有望と思われますものが、二つか三つ現にございますし、国がそのような体制をとり、また売り手市場になったという認識が出てまいりますと、これは幸いにして、外貨もかなり蓄積したことでございますから、私はそんなに先のことを暗く考えておりません。また、輸送の問題についての改善も考えられるでございましょうから、将来の供給なり価格なりにつきまして、二見委員の言われますごとく、私は悲観的な見方を必ずしもとる必要はないのではないか、これは正直にそう考えております。
  34. 二見伸明

    二見委員 議論を先に進めるために、まず供給がそれで確保されたとします。今度は三億二千万キロリットルですか、輸入が、五十年には。それを日本に運び込んでくるためには、船はどのくらいあればよろしいのでしょうか。二十万トンタンカーに換算してどのくらいでしょうか。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 俗に、二十万トンタンカーが三キロごとの距離をおいてと言われておる話でございますけれども、これはたとえ話でございますから、おそれ入りますが、後ほど正確に調べまして申し上げます。
  36. 二見伸明

    二見委員 私のほうの計算ですと、二十万トンタンカーに換算すると、年間九航海として百二十隻必要なんです。延べにすると千八十隻一航海、年間九航海とすると百二十隻必要なんです。これはおたくのほうでも計算すれば出ます。きのうおたくのほうにはこれは言っておいたはずなんです。それで運輸省に、私きょう建造計画をお願いしてあるわけですけれども大臣が見えていないので、局長が来ておるはずですから、ちょっと言ってください。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっとその前に、ただいまの点でございますけれども、中東を主たる供給地と考えまして、八航海といたしまして二十万トンタンカーに換算いたしますと、二百隻という推定だそうでございます。
  38. 二見伸明

    二見委員 いいです。――これは昭和四十四年から四十五年度の外航船舶建造量、海運造船合理化審議会の答申でありますけれども、四十五年の十一月二十五日に出た答申です。それによると、昭和五十年度の輸送船の保有量というのは、二十万トンタンカーに計算して七十三隻、こういう数字が出ております。そうすると、八航海で二百隻必要である、延べ数。ところが建造計画では七十三隻、こういう方針が出ておるのです。そうすると、三億二千万の供給量が確保できても、今度は運ぶ船がないじゃないですか。それは外国から借りればいいじゃないかというような話も出てくるでしょうけれども、まさか大半を外国の船にたよるわけにいかないだろうし、外国だって、やはり同じように輸送船の需要はあるのだろうし、そうすると、私は、輸送力にも一つはやはり隘路があるのじゃないかなと思うのです。これは率直に客観的な感じですよ。隘路があるのじゃないかな。だからといって、それは通産大臣が悪いのだというのじゃなくて、そういう感じ、隘路としては輸送もあるのじゃないかな、こう思うのですけれども、それはいかがでしょうか。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的な認識としては、私もそのように考えております。  そこでただいまのお話でございますけれども、建造量との関係ですが、御指摘のように、相当大きな部分が現在でもチャーターになっておりまして、これが海運の赤字の原因になっておるわけでございます。したがって、将来もなかなかその積み取り比率の問題は改善されないであろうと考えなければなりません。ただそのことは、そういう船がないかということになりますと、必ずしもそういうことではない。帰着いたしますところは、そうなりますと、世界の造船の建造能力ということに私はなってまいるのではないかと思います。なおそれまでの間には、おそらくはパイプラインでありますとか、あるいは航路についての新しい措置でありますとか、いろいろなこともこれは極力行なわれるでございましょうが、結論といたしましては、御指摘のように、輸送についても問題があるぞということは、私もそのとおりでないかと思います。
  40. 二見伸明

    二見委員 総理大臣実は私、長々とつまらない、あまりおもしろみのないデータの突き合わせみたいなことをやってまいりました。なぜかというと、総理大臣は、施政方針演説の中に、「われわれは」、「これからの五年、十年の間に、国土利用の効率化をはかり、人間と自然、人間と環境との新しい調和をつくっていくことが可能であります。」と、こうお述べになりまして、非常にバラ色の五年後、十年後を国民の前に高らかに約束されたわけでありますけれども、まず一つ石油の問題をとってみても、決してこれは容易なわざではないと私は思うのです。輸送能力にも――それはわれわれは何とかしなければならないと思いますし、政府のほうとしても、それは輸送能力はがんばるでしょうけれども、やはりこれが一つのネックになっておる。石油価格についてもこれはネックになっておる。石油価格がもし上がるようなことがあれば、これから五年後日本買い手市場だというので、足元につけ込まれてくれば、これは石油価格は安定――安いものはいいけれども、必ずしも望みがたい。これは卸売り物価に当然はね返ってくるだろう、それは消費者物価に転嫁されてくるだろう、確保できたとしても、船があったとしても。しかし船がなければ三億二千万キロリットルの石油日本に入ってこない。入ってこなくても同じように今度は需給のバランスから石油の価格が騰貴することは考えられる、こう思います。  と同時に、もう一点石油には問題があるのです。公害がからんでくる。三億二千万キロリットル、現在の石油の倍、およそ現在の石油消費量の倍の石油日本に持ち込まれた場合の亜硫酸ガスの状況はどうなんだ。それは脱硫技術も進歩するでしょうけれども、まさか現在の半分以下にまで、そこまで技術の進歩は望めないのじゃないかと思う。いかがですか。これは総務長官でもいいし通産大臣でもけっこうです。石油の脱硫技術から見て、現在以下まで、現在の半分以下に亜硫酸ガスを少なくすることはできますか、五年後には。やるという努力目標は私は当然だと思いますけれども
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 脱硫技術がようやく昨年あたりから実際に動き出したわけでございまして、当初は多少失敗もございましたが、したがって先般も申し上げましたとおり、この脱硫能力を、私ども石油精製の許可をいたしますときに、計画的に上げていくという処置をいたしておるわけでございます。ただいまの試算によりますと、現在使われております原油の中の硫黄分の含有率は一・六二%の由であります。それを昭和五十年には一・四八までもっていけるであろう、これは全国の平均でございますから、過密地帯と過疎地帯とでは、過密地帯のほうに低硫黄を回すということになるわけでございますが、そういう見通しを持っております。
  42. 二見伸明

    二見委員 総理大臣ちょっとお聞きいただきたいのですけれども、四十五年は脱硫分が二百五十六万五千トンだそうです。二百五十六万五千トンが硫黄分としてある。それから五十年ですと三百五十五万トンの硫黄分が出るわけですね。いまでも公害で騒いでいるんですよ。五十年にはそれ以上に硫黄分が出る、大気中に亜硫酸ガスが出るということになると、これは日本にとってはたいへんな問題です。石油が全部確保できても、運んでくる船があって全部できたとしても、最後には公害の問題が残る。そうすると総理大臣は五年後、十年後には日本の国は明るい国土のように仰せになったけれども、はたして額面どおりいくかどうか、私はこれは問題だと思うのです。この点いかがですか。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先に多少技術的なことを申し上げますが、ただいまのお話は、直接脱硫についてお尋ねがあり、申し上げたわけでございますが、排煙脱硫の技術が、ただいま全国で二基ほどやっておるわけでございますが、かなり進むであろうという点が一点、それからLNGをなるべく多く輸入したいという点が一点、むろん低硫黄原油を確保したいという点は御承知のとおりでございます。それにいたしましても、三億キロリットル程度のものはどうしても要るとなりますと、それから先を考えてまいりますと、これは私の想像でございますが、わが国自身がすべて自分の国内に工場をつくらなければならないのであろうか、かなりのものが輸出できるとすれば、発展途上国の希望もございますから、そういうところへいろいろな企業が出ていくということも、相手が受け入れてくれるならばお互いによろしいことではないか。またわが国の産業構造自身が、現在のようにエネルギーを非常にたくさん消費する産業構造から、もう少し頭脳集約的な産業構造に変えられないものであろうか等々、いろいろな可能性と問題とがあるのではないかというふうに思っております。
  44. 二見伸明

    二見委員 通産大臣、私は二十年、三十年後のことを聞いているのではないのです。わずか五年後に迫ったことを聞いているのです。昭和五十年を聞いているのです。原油精製の話もわかります。私は五年後のことを聞いているのです。五年後といえばあっという間に来ますよ。そのときに、いま通産省の見通しでも、それだけの石油を消費することがわかり切っているのじゃないですか。そうすれば硫黄分が、亜硫酸ガスが現在以上に出ることもやむを得ないでしょう、これだけの石油を使えば。最後には公害の問題が五年後には起こってくるのではないか。それはこれからも努力をして出ないようにいたしますということにはなるでしょうけれども。私はそれで、総理大臣のこの間の施政方針演説のあのバラ色日本列島は、ちょっとお尋ねしますけれども、新経済社会発展計画とは関係があるのでしょうか、ないのでしょうか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 バラ色バラ色と言われますが、私ども政治家はやはり一つの目標というか、明るい目標のもとに政治をするところに政治のしがいがあるように思います。暗い面ももちろんあります。しかし先ほど来いろいろこまかな議論をなすって、御本人はこういうことが基礎的な問題だ、かように言われます。私もそのとおり基礎的なデータであり、大事な問題だ、こまかいと、かように言われることはないように思いますが、その輸送船にいたしましても、いま世界にある輸送船を日本はどのくらい使っているか。おそらくこれは数字をちゃんとお調べだろうから、二〇%のものを使っている、こういうことは御承知のことだと思います。わが国自身が世界の輸送船の二〇%を使って、そしてわが国原油を持ってきている、これはすばらしいバイタリティーではないかと思います。私はこの日本国民の持つバイタリティーというものをもっと有効に使うことができれば、ただいまバラ色バラ色と、バラ色の夢だと言われるが、さようなものは克服することができるのではないか、それがわれわれ政治家のつとめじゃないだろうか、かように私は思うのであります。  先ほど来いろいろ低硫黄を確保するとかあるいは排煙がどうなっているとか、こういうことがずいぶんやかましくなっております。しかし最近のように公害問題がやかましくなり、公害問題と取り組まなければ企業自身は成り立たない。福祉なくてし成長なしという、そういう考えのもとでただいま取り組んでおる姿勢でございます。したがいまして、いろいろの基本計画と関係なしに私はかってな演説をしておるわけではありません。その点はぜひ御理解いただき、そして政府の足らないところは鞭撻していただきたいと思います。  私、ただいま一番希望いたしますものは科学の発達、これはすばらしいものではないかと思っております。いまの大気汚染、これなどについての研究は比較的早くついておるように思います。言いかえますならば粉じんの収集、さらにまた脱硫装置、これなどはわりに効果的に実現できるのではないかと思っております。海水の汚濁、汚泥、むしろ汚泥と申したほうがいいかと思いますが、その点はなかなか現状ではむずかしい。これはやはり下水道が整備されて、そうでないとできないのではないだろうか、かように思います。とにかくいませっかく私どもバラ色世界だとか夢だとかいわれるような、そういう状態をつくろうとしている際でございます。せっかく立ち上がっている際でございますから、ひとつ元気をつけていただきたい、挫折させないようにひとつお願いいたします。
  46. 二見伸明

    二見委員 実は総理大臣、新経済社会発展計画で、たとえば成長率は一〇・六%である。この石油三億何千万キロリットルも、成長率一〇・六%をもとにはじき出した数字です。私は石油だけを取り上げましたけれども日本で必要なのは石油ばかりではない。原料炭も鉄もニッケルも銅も、全部同じ状況にあるわけですね。特に銅は、たとえばこの間の十五カ月の卸売り物価の上昇も、結局は銅相場だったという話を聞いておりますけれども日本の重要な非鉄金属も全部ほとんどが海外依存です。しかもその消費量もこれからふえるだろう。今度は、やはりそのほうにも船も必要だろうし、いろいろなことが必要だろう。私は石油だけを申したけれども石油と同じようなことがほかの分野にも全部出てくるわけです。これは、一〇・六%という実質成長率をもとにしてそうなるわけでしょう。全部それで計算したと書いてある。それで積算し直したと書いてある。一〇・六%という成長率をむしろ落としたほうがいいんじゃないか。この間大蔵大臣も、資源問題等が起こってくればそれは考えざるを得ない、こういう御答弁がたしかあったと記憶しておりますけれども、もうそのことについては検討を始めてもいいんじゃないだろうか。去年スタートしたばかりで、いまさらながらここで検討し直すというのは、政府としても、出してすぐ引っ込めるみたいでかっこう悪いかもしれないけれども、そういった状況を考えたならば、私は、もう一度ここで新経済社会発展計画の再検討は、真剣にやるべきだろうと思うのです。しかもあれができたときには、公害問題は――もちろん公害問題はあの中にうたわれているけれども、いまほど深刻な問題じゃなかった。いまほど世論は沸騰していなかった。その時点であればできているのです。そうしたならば、私は、新経済社会発展計画それ自体をもう一度見直してもいいんじゃないだろうか。これは直剣に検討していただきたいのです。いかがでしょう、これは。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん御親切なサゼスチョンです。もちろん、政府といたしましては、絶えずわれわれの計画、この実施の模様をチェックして、そうして絶えず実情に合っているかどうか、そういうことを見きわめていかなければならないと思います。したがいまして、ただいま仰せになるように、一応この辺でもう一度再検討したらどうか、こういうことでなしに、私は、やはり実情に合っているか合ってないか、そういうことを確かめた上で、要すれば、どういうところに原因があって計画とそごしているか、そういうものは克服できるかできないか、そういうことまで検討した上で、しかる上に、必要ならば直すことに別にやぶさかではございません。しかし、ただいま申し上げますように、全然架空な計画で、そのもとのバラ色の夢じゃないかといわれると一言せざるを得ないので、先ほどのように申したのでございます。また、その計画をきめたばかりだからこれを守ります、さようなことは申しません。メンツの問題ではございません。直す必要があれば直さなければならない。しかし、それはやはり計画でございますから、実情に合わない点があるだろう、その原因も十分究明して、やはりその計画の線に乗せ得るかどうか、そこらも考えなければならない、かように思っております。したがって、一般的にどうこうは言えない。もう少し実情を見た上で、いまのような点を注意してまいりたいと思っております。
  48. 二見伸明

    二見委員 それから総理大臣総理大臣の発言を取り上げて私はまことに申しわけないのですが、「これからの五年、十年の間に、国土利用の効率化をはかり、人間と自然、人間と環境との新しい調和をつくっていくことが可能であります。」と、こうあります、できるということですね。「この過程で環境保全対策をはじめ重要な諸問題に取り組み、」これはそのとおりでありますけれども、五年、十年の間に可能である――私は、くどいようですけれども、また石油に戻って申しわけないけれども、三億何千万キロリットルの石油日本で消費されて、脱硫、それはいろいろな技術革新もありますから、かなり亜硫酸ガスも減るでしょうけれども、現在の二倍の石油を使って現在以下の排気ガスになるということは、わずか五年の間では私は不可能だと思います。これは希望的観測じゃなくて、現実に私は不可能だと思う。そうすると、「人間と自然、人間と環境との新しい調和をつくっていくことが可能であります。」この可能ということは断言できるのかどうか。可能ならしめたいというなら私はわかるのです。可能であるというのは、もうあたかもでき上がったという印象を国民に与えるのです。暗い話ばかりするのが能ではない、政治家というものは理想を持っていかなければいけない、私はそのとおりだと思うけれども、あたかも、絶対できるような印象を国民に与えることは現在どうなんだろう。だから私は、もしこういうふうに言うならば、新経済社会発展計画を下げてしまえ、石油の消費量がもっと少なくて済むような計画をつくり直したほうがいいじゃないか、こういう極端な議論を総理大臣に言うわけです。いかがですか。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 表現が適当でないという御説のようですが、私は、必ずしも表現が適当でないとは思わない。これは、やはりそういうところに私ども努力があるのだ、かように思いますので、そういうことをいま無視して、とやかく言うわけにいかない。先ほども通産大臣からお話をしておりますように、原石、原油そのものを日本に持ってくるかあるいは産地において製油ができるか、あるいはもっと鉄鉱石、銅等にしても、ある程度クリンカーまでは原産地でして、日本に来たときにはもうあまりむだがないようにするとか、いろいろくふうしてまいりますから、もちろん鉄鉱石そのものにいたしましても、捨てるようなものまで遠いところから運んでくるには及ばないだろう、また、現地産業もやはり興こさなければ、現地の諸君にもなかなか協力が得られないとか、いろいろの問題があります。また、いろいろこれから発展してものごとを考えていかなければならない、そういうこともございますから、ただいま、これは言い過ぎじゃないか、かように言われると、やや言い過ぎの点もあり、これも全然認めないわけでもありませんけれども、しかし、そういう方向でわれわれは努力するという、それだけはぜひやっていきたい。そのために事業を縮小する、これは一番楽なことでしょうが、事業を縮小することは私ども避けたい。万やむを得ないという、そういう場合はないんだ、こういう取り組み方をして初めて今日の繁栄があるのじゃないのか、お互いのしあわせがあるのじゃないのか、かように私は思います。
  50. 二見伸明

    二見委員 まあ、言い過ぎのところもあったというふうに総理大臣はおっしゃいましたので、これは幾ら言っても見解の相違になりますからやめますけれども、ひとつ、この点は、もう一度いろいろと御検討は絶えずやっていただきたいと思います。  次に私、米の問題を大臣にお尋ねしたいのですけれども、食管問題です。  四十六年度予算編成の最大の焦点だったのは食管制度である。それに対して福田大蔵大臣は、米については買い入れ制限、消費者米価の物統令からの取りはずしなど、多年議論になっていたことを打ち出した、これは相当評価してもらっていいと思っていると、こうある新聞紙上でお述べになっているわけですね。福田大蔵大臣が、相当評価してもらっていいと思っていると、こう言っているその発言の真意は、どういう意味合いでおっしゃったのですか、その点まずお伺いしたいと思います。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 現在、米の管理の問題が行き詰まっております。この行き詰まりを打開するためにどうするか。いろいろ方策はあるわけですが、その方策を行なう場合に、これはもう各界、つまり消費者も生産者も、両方の立場を考えなければならぬ。その方策を打ち出しますと、まあ各方面から、各様のいろんな批判なり反応というものがあるわけです。そういうことで、なかなか食管改革、改善の構想というもの、手段というものがこれは打ち出せない。多年、この問題はどういうふうにするかということを、政府も、与党も考えていたのですが、そういうことで手つかずにきたのでありますが、とにかく必要なもの以外は買わない、この考え方を出すということは、これは相当勇気の要ることであったというふうに思います。特に自由民主党――党というような立場になりますとそうだったと思いますが、その納得を得る。そのことが今回打ち出されたということは一つの大きな前進である。  それからもう一つは、統制というものは――米は何といっても今日統制状態でありますが、統制というものが行なわれるためには、これは大きな経済原則に乗っていかなければならぬ。そうでない統制というものは、これはいつの日にか行き詰まりを来たす。この米について見まするときに、価格、つまり需給の供給過剰の際には、価格が下がるべきものである。ところが、米の場合におきましては、豊作でありましても決して値段が下がらない。価格メカニズムというものが、この制度の中に何ら反映されていないわけです。これも、米の管理上非常な欠陥とされてきたところでありますが、今回物統令の改正によってその問題が解決された。  それから、もう一つあるのです。それは、いま七百万トンという過剰米をかかえておる。これが存在する間は、適正な米の管理行政というものができない。これをどう処置するかということは、数年来の問題だったわけでありますが、今度これを計画的に処理をつける、一応たな上げをして、これを処理してしまうという方針を決定し、これは米の管理を非常に容易にするような状態ができ上がってきた。そういうような意味を込めまして、私は、今回の米に対する措置は、評価していただいていいのじゃないか、かように申し上げておるわけであります。
  52. 二見伸明

    二見委員 第一点は、いままで打ち出せなかった食管改革――大臣は食管改革、食管改善と仰せになりましたけれども、食管改革の方策を打ち出せないでいたのに、これは一歩踏み込めた、そういう点でございますね。それはそれでけっこうでございます。  総理大臣にお尋ねしますけれども、「食糧管理の制度、運営の改善をはかり、」と述べているが、これは、近い将来食管制度を改正しよう、改革しよう、そういう意思を示唆されたものなのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 食管制度を末長く、未来永劫にと、かように私は考えておりませんが、直ちにそれでは変えるか、かように言われると、ただいまのところ直ちに変えるような考え方はございません。
  54. 二見伸明

    二見委員 未来永劫に改正しないで、そのまま置いておくわけではないけれども、いま直ちには廃止しない。去年の国会で食管の根幹論がだいぶ論議になりました。総理大臣も食管の根幹は維持すると仰せになりましたね。その根幹ということですけれども、農民のほうで理解しているのは、生産者米価は生産費所得補償方式で算定して、全量買い上げてもらいたいというのが、農民側のこれは食管根幹論です。総理大臣は、この食管の根幹を維持するということについては、いまでも心境は変わらないわけでしょうか。
  55. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管の根幹ということばにつきましては、そういうことばをお使いになる方によって、いろいろニュアンスがお違いになるようでありますが、政府が食管根幹と思っておりますのは、その一般的定義といたしましては、「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定」という大目的、つまり食管法第一条にありますその大目的に沿うため、必要な政府の食糧管理のあり方をいうものと考えておるわけであります。     〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕 ただいまお話のございました、たとえば米管理の場合の根幹と申しますのは、国民の基本的な食糧である米の必要量を確保いたしまして、国民経済の安定をはかりますため、政府が米の需給、それから価格を調整いたしまして、米の配給について必要な規制を行なうことである、こういうふうに考えておるわけであります。
  56. 二見伸明

    二見委員 農林大臣、農民がいっているのは、生産者米価は生産費所得補償方式で算定し、政府が全量買い入れるべきだ、これが農民側の食管の根幹論なんです。大臣は、食管法の第一条を引っばり出してきて、えらく抽象的に、わかったようなわからないようなことをおっしゃいましたけれども、食管の根幹を維持するということは、この農民側の意見と同じなのか違うのか。
  57. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話しのような考え方もあるようでありますけれども、米の全量買い入れというのは、必ずしも食管の根幹ではないと私どもは理解いたしております。
  58. 二見伸明

    二見委員 要するに、農民側でいう食管の根幹とは違うわけですね。必ずしも同じではない。違うということですね。それはそれでけっこうなんです。  ところで、今回二百三十万トンの生産調整を行なうことになりましたけれども、この積算の基礎をひとつ示していただきたいことと、その翌年、四十七年の予想消費量はどのくらいか、これをまずちょっと明らかにしていただきたい。
  59. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 四十六年の米の需要につきましては、政府買い入れは御承知のように五百八十万トン、自主流通米を百八十万トンといたしております。そのほかに生産者の保有米四百五万トン、合計いたしまして千百六十五万トンと見込んだわけであります。一方におきまして、生産量につきましては、四十四年の水田面積を基準といたしまして、その後の壊廃面積を控除いたしました面積に、四十二年度以降一番高位に安定いたしました実収量、四四三かと思いますが、推定いたしました四十六年度の見込み反収量を乗じまして、これに陸稲の生産見込み量を加えまして、千三百九十五万トンと見込んだわけでございます。このような生産の過剰状況、これを是正しようというので、単年度需給の考え方をとりますと差し引き二百三十万トン、こういうことであります。
  60. 二見伸明

    二見委員 翌年は何ぼですか。
  61. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、米の消費量は、最近所得水準の向上によりまして、食生活に変化を生じておりますので、三十八年度をピークとして、だんだん減少をいたしておるような傾向でありますので、四十七年度の米の需要量については、現在のところ公式の推計はまだ行なっておりませんけれども、この間農林省が発表いたしました米の長期需給見通しによりますれば、五十二年度の米需要量は、四十四年度の大体一割減の千百六万トン程度になると見通しております。このような過去の傾向、それから将来の見通しからいたしまして、米の消費量は減少するものと見られておりますけれども、四十七年度の米の需要量は、四十六年度の見込み量千百六十五万トンをさらに下回るものと考えておりますが、大体その辺の見当だと思っております。
  62. 二見伸明

    二見委員 生産調整の基本的な考えは、これは単年度需給ですね。しかも、これは五年間継続で生産調整をやろうというのが農林省の基本的な考え方ですね。  ここで明らかにしていただきたいのは、昭和五十年における生産調整の目標と、私は、五十万ヘクタールぐらいを転作するという話を聞いておりますけれども、その目標と、四十六年の目標、これを示してください。
  63. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 四十六年で大体五十万ヘクタールに見ておるわけでありますが、四十六年度の生産調整の目標数量は、ただいま申しましたように二百三十万トン、水田面積にいたしまして五十万ヘクタール強に相当いたします。このような大規模な水田面積につきましての生産調整を実施いたすわけでございますから、土地条件、それから技術条件等いろいろな制約がございますので、単年度ですべて転作に持ってまいるということは困難であります。そこで、生産調整奨励補助金の交付、土地基盤の整備、農業近代化施設等を導入いたしまして、逐年転作面積を拡大いたしてまいる考えでありますが、このために、生産調整の実施期間をいまお話しのように五年といたしたわけでありますが、米の需要量の変動等に即して、新たな過剰米が発生しないように毎年度定めることといたしておるわけでありますが、五十年度の調整目標数量は、いま申し上げましたように、毎年度の水田転用面積をどう見るかということによって変わってくるわけでございますことは御存じのとおりでありますので、いま、五十年度にどのくらい見込めるかという点は、申し上げるのがなかなか困難ではないかと思っております。
  64. 二見伸明

    二見委員 では、ことしだけでいいです。
  65. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ことしは大体五十万ヘクタール強であります。
  66. 二見伸明

    二見委員 ところで、ことし二百三十万トンの生産調整を行なうことになるわけですけれども、これは、私、四つのケースが考えられると思うんですよ。一つは、二百三十万トンの生産調整ができて、なおかつ需給バランスがとれたというケースがあります。もう一つは、二百三十万トンが成功したけれども、予想以上に収穫があって、余剰米ができたという場合がある。もう一つは、二百三十万トンに失敗して、そのために余剰米ができたという場合がある。もう一つは、二百三十万トンに失敗したけれども、不作だったので需給バランスがとれたという場合もある。この四つの場合があると思うんですけれども、これはこれでよろしいですね。これ以外にケースがありますか。
  67. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大体詳しくおっしゃいましたので、まずまず大体そんなところじゃないかと思います。
  68. 二見伸明

    二見委員 そこで、問題は、第二、第三のケース、いわゆる余剰米ができた場合の話なんです。これにつきましては、農林大臣、ひとつこれは意味を教えていただきたいのですが、これは、倉石農林大臣が二十五日、宮脇全国農協中央会長ら農業団体幹部と会談して、そのときの申し合わせらしいのですが、それがまた意味がわからない。やむを得ざる事情で政府買い入れ限度量五百八十万トンをこえて発生した米は、その処分方法について農業団体の意見を聞いた上で対処する。これはどういうことをいっておるのですか。これは、私、だれにでもわかるように、――農家だって何だかわからないだろうし、消費者のほうもわからぬだろうし、わかるのはおそらく農林大臣お一人だと思うのです。わかるようにはっきり言ってください、どういうことなのか。
  69. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまのは、新聞記事ですか。――それ、ちょっと事情は違うようでありまして、そういう文書を渡したことはないのです。  そこで、とにかくちょっと申し上げますと、生産調整の量について農業団体と話をいたしましたときに、二百三十万トンは多過ぎる、おれのほうの計算でいくと百七十九万トンだといったようなことがありまして、その点において折り合いがつきませんでした。あとのことについては全部話がつきまして、大々的に御協力申し上げる、こういうのでありましたが、どうしてこれがいけないのかということでだんだん話してまいりましたところが、やはりみんな専門家のことですから、単年度需給均衡ということになると、そろばんで自然に数字は出てまいりますから、数字のことは数字のことでよろしい。そこで、ただいま四つ御指摘になりました中の一つにつきまして、一生懸命でその生産調整はやらなければ農家も農業も困るのだから、それはひとつやるにしても、天気がよ過ぎてでき過ぎるということもあるじゃないか、そのときはどうしてくれるんだ、こういうお話で、せんだって参議院でも、森八三一さんのお尋ねにもありましたけれども、いまお読みになりましたような文書を、これは私ももらったのでありますが、これは私が書いたものでもありませんし、だれが参考に書かれたのかよく記憶ありませんけれども、そういうときに一体どうするのだ、こういう話であります。そこで、そういうことはないはずだと私は言っているのであります。先ほど申しましたように、五百八十万トンと百八十万トンの自主流通と、それから保有米の四百五万トンと二百三十万トンを合計すれば千三百九十五万トンで、平年生産量というのはそれで一ぱいになるのだから、余るはずはないじゃないか、それは数字はそうかもしれぬけれども、おてんとうさまのおやりになることだからわからぬじゃないか、そのときはどうするのだ、こう言うから、それは生産調整をやらなければ困るのは、政府だけじゃなくて、農家の方もおわかりのことなんだから、まず何しろ一生懸命でやってもらえば一俵も余らないはずだ、余ったら、そのときはそのときじゃないか、こういうようなことを言ったのでありまして、こういう文書を渡したということはないのであります。
  70. 二見伸明

    二見委員 農林大臣、そのときはそのときだというのはどういうことですか。
  71. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それで大体皆さんおわかりになったようでありますけれども、――いや、皆さんというのは私の部屋で話をした方々でありますが、要するに生産調整というのが最大の眼目だから、生産調整を阻害しない程度に、ひとつそのときは生産者代表の御意見も聞いて相談しょうじゃありませんか、こういうことなのであります。それをだれか、こう書いてみたらそんなものになったということであります。
  72. 二見伸明

    二見委員 農林大臣、農林大臣のところへお百姓さんが来たとする。米が余ったらどうするんですと言ったら、そのときはそのときだと、あなた答えますか。村からわざわざお百姓さんが出てきた。農林大臣、来年米が余ったらどうするんですか、取れ過ぎちゃったら。そのときはそのときだよで、それで農家はわかりますか。いいですか、これは方法は二つきりないんでしょう。農協に、農民に処分させてしまう、政府はもう五百八十万トン以上は買いませんというのが一つの方法。もう一つは、その場合は政府が買い取ります。これはこの二つきりないでしょう。それ以外に方法があるんだったら言ってくださいよ。
  73. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 だんだん話がこまかになってまいりました。いま、最初御指摘になりましたように、百八十万トンの自主流通のほかに、うんと自分のほうでは売りまくりましょう、こういうことでありました。ごもっともなことであります。それでもなおかつ余った分についてはどうしようかということで、それはやはりいわゆる自由米と称するやみ米に出されることは困ることでありますので、これはやはり農協が保管をされて、農協の手でお売りいただく、そのことは承知いたしました、全力をあげてやりましょう、こういうことであります。それで、まじめに一生懸命生産調整して、その成果があがったにもかかわらず、天然のいろんな状況で余ったというふうなときには、それは農協とも相談をして、そのときにはひとつ生産調整を阻害しないようにしながら相談しようではありませんか、こういうことであります。
  74. 二見伸明

    二見委員 農林大臣、その相談した結果――これははっきりわかるのですよ。相談した結果出てくる答えというのは、政府が買いますという答えと、あるいは相談したけれどもやっぱり買うことはだめですという答えと、どちらかですね。それ以外にはないわけですね。これ以外にないわけでしょう、これは。それが、そのときはそのときということでしょう。買うか、買わないか、どちらかですよと、これっきりでしょう。
  75. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 最初は、買わないほうがたてまえでありますから、うんと売っていただく、それは先方もよく御存じのとおりであります。そういうような努力をした結果なお若干余ったというときには、そのときの状況に応じて相談をいたしましょう、こういうことでございます。
  76. 二見伸明

    二見委員 ということは、そのときは買おうということですね。買うことも考えられる、こういうことですね。十分にその点は考えられますね。そういうわけでしょう。まじめにやってもなおかつ余ったんだから、そのときはそのときなんだ、相談しよう。たてまえは買わないのだけれども、それでもなおかつ余った場合には相談しようということは、これは言うならば買うということですね。
  77. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 単純にそうとも言い切れない。それはもう二見さんよく御理解いただいておるとおりに、生産調整をやらなければ困るのでありますから、その生産調整を阻害しない範囲でひとつ、そういうことばは向こうもよく知っているわけであります。私どものほうでもよくわかっておるわけです。したがって、そういう前提においてひとつ考えましょう、こういうことをいっているわけであります。
  78. 二見伸明

    二見委員 これは結局は明らかにしなければならない問題なんです。そういうのは国会のこの場ではっきりさせておいたほうが農家も安心するだろうし、消費者のほうも納得するだろうし、買うなら買うでいいのです。そうなった場合には買います、そのときにはこれこれの値段で買います、生産調整をやってもらっているんだから、消費者の方には納得してください、これはこれでいいのです。あるいは、たてまえは買い入れ制限なんだから一切買いません、つくり過ぎた農家が悪いんだ、そういうのならそれでもいいのです。いずれかはっきりしなければ、これは話が進まないじゃないですか。方法は二つきりないんだ。しかもこれは前もってわかっているケースでしょう。だから私がさっきわざわざ四つの件について確認をしたら、あなたはそのとおりだと言われた。前もってそのことはわかっておる。もう一度……。
  79. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 事柄を想定すればそういうことにはなりましょうけれども、つまりその事実の、余ったか余らないかということの相談というのは、御承知のように、年度が変わった後です。四十七米穀年度に入ってからのことでありますので、一年半余り先のことです。その間にまたいろいろなケースも出てくるでしょうから、生産調整を阻害しないというたてまえでそのときはひとつ御相談いたしましょう、こういうことで両方別れている、こういうことであります。
  80. 二見伸明

    二見委員 農林大臣、じゃその議論は打ち切りましょう。  ことしは二百三十万トンの生産調整をやりました。じゃ四十七年は生産調整は二百三十万トン以上に、これは数字的にいってなりますね。先ほどあなたは四十七年の消費は減ると言われたんだ。しかも方針は、これは単印度需給でしょう。そうして、四十七年は四十六年よりも米の消費量は減る。この二つの条件を考えると、四十七年は二百三十万トン以上の生産調整をせざるを得ない状態になりますね。しかも、五十年ですと千百五十万トンぐらいでしょう。二百三十を最初の起点といたしまして、それから十とか十五とかずつ、毎年毎年ずうっとふやしていくというのが、政府の生産調整に対する五年間の基本的な考えだと私は理解しておるのですけれども、これはまだ検討しておりませんとは言わないでもらいたいのです。その点をちょっと明らかにしてくださいよ、五年間で計画を立てているのですから。まず、四十七年度は二百三十万トン以上の生産調整をやることになりますね。
  81. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 二見さん御存じのように、いま、平均して一年に三万ないし三万五千の壊廃がございます。これがだんだん、転用をゆるめたりして、かりに五万ヘクタールぐらいになってまいりますと、だいぶ違ってまいります。それで私はさっき、数字がなかなか明確にならぬと申し上げたのでありますが、普通の状態で三万五千ぐらいの壊廃面積であるとすると、まず大体御指摘の程度になるのではないか、このように想像いたしておるわけであります。
  82. 二見伸明

    二見委員 御指摘の程度というのは、二百二十万トンでじっと五年間いけるということですか、それとも多少ふやさなければならない事態がくるということですか。
  83. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 その前提がございますのは、いま壊廃の面積がふえれば、それによって調整量は減ってもいいし、その辺ははっきりいたしませんが、政府のほうとしては壊廃をなるべく多くやるように努力をいたしておりますので、まずいまの分では二百三十万トンぐらいはやはり考えなければならぬのではないか、このように見ております。
  84. 二見伸明

    二見委員 ところで、総理大臣に伺いますけれども、ことしの食管赤字ですね。いわゆる逆ざやというのは二千六百億円ぐらいだと思いますけれども、どうですかね。このいわゆる逆ざやによる赤字、これについては二つの意見があるわけですね。米対策上あるいは農業政策として、この程度の逆ざやならば今後あってもしかるべきだという意見と、それは結局国民の税負担なんだから、逆ざやは一挙でなくてもいいから解消する方向に向かうべきだ、こういう二つの意見があるわけです。これはもう多年議論になっておりますけれども総理大臣はこの意見のどちらに御賛成なさいますか。――これは総理大臣にお願いしたいのです。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、逆ざや解消と、そういう方向です。
  86. 二見伸明

    二見委員 逆ざや解消ですね。ということは、逆ざやを解消するためには幾つかの方法があるのです。まず、生産者米価を据え置いておく、そして政府が卸に売る売り渡し価格を順次引き上げていくというのが一つの方法です。売り渡し価格を据え置けば、今度は生産者米価を下げるというのがもう一つの方法です。もう一つは、これは買い入れ制限をはっきりする。そうすれば、トン当たりの逆ざやはいま程度であっても、政府の買い入れ量をたとえば二百万トンとか三百万トンにしてしまえば、その分だけ逆ざやが解消されますから。この三つの方法が考えられるわけです。逆ざやは解消すべきであるという総理大臣のいまの御発言は、食管法を今後どういうふうに持っていくかということに対する大きな発言になるのです。総理大臣はこの三つのうちのどれをおやりになるのですか。――ちょっと待ってください。これは総理大臣が言われたから、総理大臣から答えてください。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような方針で内閣はちゃんと意見が一致しておりますから、農林大臣から説明します。
  88. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話しのいわゆる価格の逆ざやにつきましては、四十六年度予算では、生産者米価の水準はこれを据え置く、それから政府売り渡し価格につきましても、マージンの引き上げに伴う改定、御存じと思いますが、ことしマージンを引き上げました。したがって、売り渡し価格を変えないでマージンを引き上げたのですから、それだけ下がるわけです。解消されておりません。この点については、なかなかむずかしい問題もございますので、将来の課題として政府としては慎重に検討してまいりたいと思っておるわけであります。  それから、食管の管理経費につきましては、今後とも効果的な運送の実施であるとか、倉庫利用の効率化、事務費の抑制、調整資金の早期受け入れ、それから国庫余裕金の金利の節約につとめて、なるべくこの赤字要因を少なくしてまいりたい、こう思っておるわけでありますが、いま御指摘のいわゆる赤字解消ということにつきましては、現在の状況は、われわれもできるだけいま申しましたような赤字要因を解消していくことに努力をいたすわけでありますが、現在まだその研究の過程にございまして、実行してまいるということについてはもう少し時間が必要ではないか、こう見ております。
  89. 二見伸明

    二見委員 これは、これ以上倉石農林大臣に言っても、おそらく御答弁は拒否するでしょうけれども、この方法は三つきりないのですよ。たとえばいまの保管料云々なんて、あれはこまかい問題なんです。逆ざやの大筋は、政府が農家から買い入れる価格と政府が売り渡す価格とが、これにトン当たりたしか三万か四万かの逆ざやがありますね、そこが問題なわけでしょう。これが大きな逆ざやの原因です。この逆ざやを解決するとあなたはおっしゃった。それがまた閣内の統一見解である。そうすると、生産者米価を下げることによって逆ざやを解消するのか、あるいは売り渡し価格を引き上げることによってこの逆ざやを解消させるのか、あるいは全体の政府の買い入れる数量を減らすことによって、トン当たりの逆ざやは変わらないけれども、全体の数量を減らすことによって解消するのか、この三つきりないのですよ。いずれにしても、検討した結果この三つのうちのどれかに結論はなるわけですね。あるいはこの三つを併用したものになるか、対策はこの三つきりないわけですね。この三つのうちのいずれかですね。それはいかがですか。
  90. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 もちろん逆ざやをなるべく早く解消いたしてまいりたい、これは総理大臣がおっしゃいましたとおりでありますが、実はいつでもいろいろな研究会で問題になりますのは、ただいまあります逆ざやをなるべく早く解消するということが必要である、そういうことからして、いわゆる逆二段米価とか、いろいろな御意見もありました。けれども政府としてはそういうことをいまやるべきときではない。同時にまた、消費者米価の引き上げ論というものもありました。しかし、政府はいまそういうことをすべきではない。こういうようなことで現状に至っておるわけでありますが、このことを含めて、やはり食管全体についてはいろいろ問題もございますので、総理大臣が本会議でもお話しになりましたように、われわれは慎重の上にも慎重に、有識者を集めて、いずれかこれを検討してまいらなければならない、そういうときに同時にこういう大事なことも含めて検討をしてまいりたい、このように考えておるのが現状でございます。
  91. 二見伸明

    二見委員 私は、この解消について、政府売り渡し価格を引き上げるような形での解消をはかるならば、消費者に直ちに負担がきますので、これは断じて避けていただきたい。これは一点要望いたします。同時に、これをまたへたに言えば、農家のほうにとっては大混乱になります。いじるならいじるではっきりしていただいて、その前に、価格政策はこうする、野菜でもってこう食えるという、農家が安心して農業できるような条件だけはきちんとつけていただきたい。まずこれを要望いたします。  次に、純理論的なことをちょっとお尋ねします。  間接統制ということをよくいわれますね。間接統制というのはどういうものを前提としなければできないものなのか。これはいま直ちにやるからやらないからは関係ありません、理屈の上だけでけっこうですから、ちょっとおっしゃってください。
  92. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いわゆる間接統制というお話の中にも、やはりいろいろおっしゃる方によってニュアンスが違うようであります。たとえば、いま麦についてやっておりますような、ああいう制度を念頭に置いて考えられる方もあるようでありますし、それから販売関係について自由にして、ある程度政府が売り渡し等についての規制だけするというふうなことを考えておられる方もあるようでありますけれども、いずれにいたしましても、政府としては、まだそこまで間接統制というふうなことについて考えるべき時期ではない、こう思っております。
  93. 二見伸明

    二見委員 では、米相場といいますか、正米市場というのがありますね。正米市場ということは、間接統制――間接統制に移る移らないは別ですよ、やはりこれは一つの条件になりますかね、正米市場ということは。いかがでしょう。
  94. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 正米市場というものは、そういう場合には価格調整、需給調整等のためにあるいは必要になるかもしれません。
  95. 二見伸明

    二見委員 ところで、物統令を今回はずしたことの真のねらいというものを、きょうは率直に、たてまえと本音じゃなくて、本音のほうを私は教えていただきたいのです。それは、京都大学の中島さんという教授が、物統令の撤廃は間接統制へ一歩踏み出すことになる、こう言っておるわけです。それから東畑精一さんも、現在の食管制度をなしくずし的に改めていこうという政策的な意図があったと思う、こう言われている。農家の側でも、物統令をはずしたのはこれは食管に手をつけることだ、こういうふうに評価をしている。先ほど大蔵大臣は、これは食管改革への第一歩だとこうおっしゃった。ということは、物統令の適用を廃止したというのは、いままでの説明では、消費者にうまい米を食わせるとか、米の選択を認めるとか、消費の選択を拡大するとか、いろんなうまい米論争がありましたけれども、それ以外に私は政府のほんとうのねらいがあったのじゃないかと思うのですよ。食管改正と関係して私は物統令というのはあるのじゃないかと思うのです。無関係なものだとは私にはどうも思えないのですけれどもね。これは農林大臣いかがでしょう。
  96. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 二見さん御存じのように、昭和四十六年度予算方針を決定しますときに、政府は物統令の廃止も一緒に発表いたしたわけでありますが、われわれは、いずれにいたしましても四十六年産米が出回るころまでにそういうことについて処置をいたしたい、こういうふうに実は思っておったのでありますが、予算編成のときにそういう話が出て、これが世の中に出るのが少し先になったわけでありますが、ただいまのように米の需給が大幅に緩和いたしておるときには、やはり品質に応じた米の価格形成が行なわれるようにすることを通じて、消費者がまた品質に対して自分の好みを自由に行ない得るようにいたすとともに、米の品質の改善をいたしてまいりたい。実は、率直に申し上げますが、私どもいつでも米の価格をきめますときに、地方農村御出身の議員さんの中からもたくさん御意見が出ますのは、およそ今日のような自由な経済になっているのに、主食である米のようなものが消費者の選択にまかされないというのはおかしいじゃないか。それから一方、農家のほうでは、たとえばお米の自慢をやっていらっしゃる宮城県あたりの農家でも、新潟県の一部でもそうでありますが、自分たちがせっかくうまい米をつくっても、やはり市場に出すときには、あまりうまくないやつと混米されてごちゃごちゃにされてしまうということで、したがって質より量にまいりましたことはよく御存じのとおりであります。ことに私どもは、学校給食などでも子供にできるだけ米を食べてもらいたいと思いますけれども、それにはやっぱりパンより米がうまいと思ってもらうようにしむけなければだめじゃないかというようなことで、かたがた両方の側から考えまして、これはいまのようにストックがたくさんあるときにやることが一番いい、こう考えまして、消費者の選択をできるだけされるように、同時にまた、そういう銘柄が売れるようになれば、生産者も喜んでそういうほうに重点を置いてくださるのではないだろうか、こういう二つの考え方をとりまして、物統令の適用廃止を考えましたが、農林省といたしましては、もちろん、いま一部で心配していらっしゃるように、そうなれば上がるんじゃないかと、 こういう。したがって、われわれは、四十六年産米が出回るころまでには、そういうことについて、大型精米所を大阪のようにたくさんつくるようにするとか、あるいは小売り店の新規参入をふやして競争原理を取り入れるとか、いろいろな施策を講じた上で、消費者に御不安のないようにしながら、消費者に喜んで食べていただくような銘柄の格差というものはやはりつけていきたいというのが本音でございます。
  97. 二見伸明

    二見委員 どうもあまりほんとうのことをおっしゃらないようであります。物統令を廃止して――その前にちょっと一点だけお尋ねしますけれども、うまい米の話ですけれども佐藤総理大臣は二十八日の予算委員会で、米が余った場合、場合によったら政府みずからが販売するくらいの決意をもってこの物統令を廃止する、こう仰せになりましたですね。これは決意になっておりますから、多少ワン・クッションありますけれども政府みずからが販売することは現在の食管法ではできますか。
  98. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総理のおっしゃいましたことは、たぶん、食管法によりますれば、農林大臣の指定するものまたは業者、こうなっております。その農林大臣の指定するものというようなものもいざとなれば活用するのだ、こうおっしゃったことだと思います。大体御存じのように、いまのように米が潤沢にありますときに、往年行なわれました米騒動の時代のような、ああいうことはおよそ考えられないことでありますから、そういうことを特に政府がやらなければならぬという事態はないと思いますが、食管法では、御存じのように四条でそういうことはできるようにはなっております。
  99. 二見伸明

    二見委員 これは、政府が米が上がって困っているときに売り渡す米というのは古米ですか、それともうまい米ですか。いままでの七百万トン余っているあのまずい米を出すのか、それとも新しいうまい米を出すのか。また今度の制度によって、うまい米がはたして政府に集まってくるかどうか。私は集まらないと思うのです。うまい米は全部自主流通で流れてしまう。政府にはまずい米がくる。そのまずい米を結局吐き出すことになるのだろう。だから消費者は、うまい米は安くはならぬと私は思うのですよ。で、新しいうまい米を出してくれますか。
  100. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 なかなか、専門家の前でそういうようなお話になってきますとむずかしいことだと思いますが、二見さん御存じのように、新米が喜ばれるのはこのごろ配給制度ができてからで、昔は、いなかの金持ちというのは、大体古米を土蔵に積んでおいて、そしてその古米のほうから順に食べてきた。そういうもので、だからして、それは実際もう御存じのことなんで、そこで政府がどういうことをやると具体的に考えているわけではありませんで、そういうこともあり得る、とにかく非常に暴騰したようなときには政府も直売することもあり得るのだということを申しておるわけでありまして、そういうことをしなければならないということにはまずならないのではないか。これは二見さんも御理解いただけるところだと思います。
  101. 二見伸明

    二見委員 それから農林大臣、うまい米が食えるかどうか、これは私は流通機構にもひとつかかっていると思うのです。いま卸の段階では、卸同士の取引はできませんね。小売りは卸に縛られている。ここのところまでほんとうは手をつけなければ、消費者好みの米は買えないのです。自主流通米にしろ政府の米にしろ全部卸でもって、卸はそれを他の卸に売買はできないです。小売りはこの卸に縛りつけられている。ここも自由にしなければ、ほんとうの意味での消費者好みの米は出回りませんよ。これはここまで手をおつけになりますか。
  102. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもにとりましてたいへん大事なことを御指摘いただいたわけでありますが、御承知のように、米屋さんは、混米技術ということでいろいろな米を混米して、それがうまくなるんだというふうな宣伝をしていらっしゃいますが、要するに、関東は残念ながら大手の精米所が、東京あたり調べてみますと二軒ぐらいしかないようですが、大阪は御存じのように非常に大きくございますので、たとえばさっき私の申しましたコシヒカリであるとかササニシキといったようなものは、大口精米でやりますと、自分のところで袋詰めにいたしまして、そしてずっと小売りまで銘柄でもってまいりますからして、お客さんもそれによって米を指定して買えるようになる。そういうことが好ましいのでありますから、いまでも企画庁の御要望等もありまして、物価関係でも、急速に人口のふえた地域などにはスーパー、生協等にも米を売らせるようにやろうといたしておりますが、そういう取り次ぎ店、小売り店の新規参入は大幅にやったりなどして、消費者に不安をかけないようなことを農林省はこれからやってまいるつもりでおります。
  103. 二見伸明

    二見委員 農林大臣、時間がありませんので簡単に言ってください。要するに、先ほど私が指摘した流通機構に手をつけるかどうか、イエスかノーかでこれを言ってください。  それから今度の結果、銘柄格差が導入されますね。品質による品質格差、銘柄格差が導入される。これはことしは別ですが、四十七年には政府の買い入れ価格、売り渡し価格にこれを反映させるのかどうか。この二点を、反映させるなら反映させる、反映させないなら反映させない、イエスかノーでもって、要らぬ一切の説明を抜きにしてください。
  104. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 さっきの小売りと卸の結びつきは大幅に緩和する方針でございます。  それから、銘柄格差をぜひ入れるようにいたしたいと思っております。
  105. 二見伸明

    二見委員 大臣、そうすると、政府への売り渡し価格は、いい米は上がりますね。
  106. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま私が申し上げましたのは、そういうことを希望しておりますが、全体として米の出回りまで、物統令をはずすまでには、どういうふうな措置を講ずべきであるかというふうなことをいま専門家に委嘱していろいろ検討していただいておる最中でありますので、それからひとつ方針を打ち出してまいりたい、こう思っておるわけであります。
  107. 二見伸明

    二見委員 きのうはわが党の渡部通子委員の質問に対して、総理大臣は四十七年も売り渡し価格は変えないとおっしゃった。いまの農林大臣の発言は、あたかも変えることです。変えると言われた。しかも変えるという以上は、いわゆる一級品は高くなるのは目に見えている。それは総理大臣のきのうの発言と違うじゃありませんか。どっちがほんとうかはっきりしてください。
  108. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまの状況では政府売り渡し価格というものは変えておりませんし、いまは変えない方針でありますが、銘柄格差を取り入れたいということは私どもは希望しているわけであります。それを実施する段になればどういうふうになるかというふうなことを詳しく調査検討をいたしておる最中でありますと、こういうふうに申し上げているわけであります。
  109. 二見伸明

    二見委員 いいですか、じゃ銘柄格差が導入された結果、これは正米市場が形成されることになりますね。これもイエスかノーかだけで言ってください。
  110. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 さっき私が申し上げましたとおりでありまして、銘柄格差の取り入れば、できるようになってからでないともちろん採用はできませんが、なるべく早くそういう好みに応じた販売方法ができるようにいたしたい、いまそのための検討をしておる、こういうことであります。
  111. 二見伸明

    二見委員 いいですか、総理大臣、これは私は、食管問題についてははっきりしていただきたい。はっきりしていただきたいから、いままでいろいろな問題について農林大臣と詰めてきた。現在農家の考えている食管制度というのは、私は事実上は崩壊していると思います。全量買い上げ、生産者米価は引き上げるという、この農家がいう食管制度というのは、もう事実上はないというのが私の認識なんです。というのは、おそらく買い入れ制限あるいはそれに近い手段をことしもとるでしょうし――買い入れ制限とはっきりいってないけれども、事実上の買い入れ制限を行なうだろう。いいですか。流通機構に手をつけ、流通段階がかなり自由化された。しかもそこに正米市場ができる。昔から、物統令に手をつけて正米市場を形成するということは、食管法に対する、食管制度に対する表玄関からの攻め方だというのが、これは通説になっているのです。買い入れ制限というのは裏口からの攻め方だ。いままで買い入れ制限でもって、政府は食管制度の外堀は埋めたんでしょう。今回物統令の適用を廃止することによって、食管制度というものの内堀に手をつけられた。まだ埋まってはおりません、銘柄格差ができているわけではないし――実際にはできているようでありますけれども、正米市場がこれから形成されるわけでありますからね。内堀が埋められる段階になった。あと残っているのは、食管制度という名前だけが残っているのです。これは私は事実だと思います。お互いに食管を堅持しよう、農家は堅持しよう、政府のほうでも維持します……。名前だけは残って実体は何もないのです。それが私はいまの食管の実態だし、これからの食管の方向だと思うのです。  これは農協の宮脇会長が、ことしの日本農業新聞の元旦号の対談で言っていることばなんです。何と言っているか。「農家の不安はつきつめると米は、食管制度はどうなるのか、ということにあるのだと思うのですよ。私たちが、そういう状況の中でいま、おおざっぱに考えているものは、少なくとも五年先の食管のあるべき姿はこうだ、と政府が明らかにすべきだということです。」と、こう言っているのです。少なくとも五年後には日本の食管制度はこういうふうにいたしますと、これを農家の前に明らかにしてくれ、これが農家の偽らざる気持ちなんです。維持する、維持するといって、なしくずし的にくずしていく。これでは農家は不安で不安で、農業をやっていいのかどうかわからないのは、私はあたりまえだと思うのです。事実上は外堀も内堀も埋めているのだから、食管制度というのは今後はこういうふうにいたしますということを私ははっきり言ってもらいたい。これをやらなければ、日本の農業は改革もできないし、日本の農民の生活の安定もはかれないし、農業の発展もあるわけがない。これをないがしろにしてもらったのでは困る。これをはっきり答えてもらいたい。今後検討します、検討しますでもって、三年も五年も延ばされて、あげくの果ては農家がどうにもならなくなったのでは困るのです。これは今回の予算編成の最大の問題点であっただけに、私ははっきりしていただきたい。福田大蔵大臣は、今回のあれには食管改革に一歩踏み出したと先ほど冒頭に言われた。なかなか勇気ある発言だと私は思うのです。どういうふうに改革するか。これが問題なんだ。あるべき姿はこうだと、総理大臣ビジョンをはっきり示してもらいたいのです。お願いします。これは総理大臣に伺いたい。
  112. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総理大臣のお答えの前に、私の申し上げたことで誤解があるかもしれませんけれども、私のほうはただいま五百八十万トンという必要量を指定しておるということだけでありまして、あと、いまこうなればこうなるのだろうといういろいろ設問を設けられて結論をお出しになっていらっしゃるようでありますが、私どもといたしましては、食管の運営については慎重に検討はしてまいります。ずっと検討はしておるわけでありますが、それにはもちろん生産者団体も入り、いろんなことをして検討するつもりでありますけれども、現在のところでは、食管制度というものについて根本から改まったというふうな御判断は、私どもはそういう判断とは違っております。したがって、政府がやるべきことは、これから時代の推移に従って間違いのないように検討をしてまいりたい、こういうのが私ども立場でございます。
  113. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと二見君、約束の時間が来ておりますから、結論に入ってください。
  114. 二見伸明

    二見委員 食管は、食管制度そのものを改正して、たとえば間接統制のほうにいくという方法もあるのですよ。現在の食管制度はそのままにしておくけれども、ただ政府の買い入れる量を二百万トン、三百万トンという、たとえば災害があると上かなんとかというときのために政府の手持ちとして二百万トン、三百万トンだけを買い入れておきましょうという、現在の食管制度そのままを利用するやり方もあるのです。いいですか、政府がどちらの方向を考えているのか、これを明らかにしてもらわないことには、農家としたって私はもう農業を続けていかれないと思うのです。  これは結論になりますので、私は総理大臣に、総理大臣としての基本的な方向としては、食管はともかく制度を改善すると施政方針演説でおっしゃったのだから、その改善というのは具体的にどういうことなのか。いわばそういう買い入れ制限的な、現在の法律をそのままにしておいて政府の買い入れ量をぐっと減らす、こういうことに最終的には持っていきたいのか、あるいは現在の制度を全部なくして新しい食管というものを考え出すのか、間接統制というほうにいくのか、そこら辺は私は総理としては当然腹案があると思うのです。きょうはそれを最後に、検討しますじゃなくて、本音を出してもらいたいのです。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最終的に私の答弁を求められました。  先ほど来の質疑応答で、農林省さらにまた大蔵省の基本的な考え方、閣内における大体の方向はおぼろげながらおわかりがいただいておると思います。そこで、最後に私に対して、(「まだわからない」と呼ぶ者あり)まだわからないという方もいらっしゃいますから、私に対してもう一度確認したい、こういうことだと思います。  おそらく、現行制度そのものがよろしい、こう言われる方はないだろうと思います。これは何か改善をしなければだめだ、これは消費者立場からも生産者の立場からも同じように言われているんじゃないかと思うのです。そうして国庫自身、国自身が相当の赤字をかかえている。しかも累積赤字は相当の額になっている。これはこのままであっていいわけはありません。もちろん国の赤字、これはとりもなおさず国民の負担であります。そういうことを考えると、われわれ政府はこのままでいいとは思いません。また生産者自身もこれだけのものをつくりながら、努力をしながらそれが十分使われておらない、とにかく国民、消費者の要求より以上のものがいまできている、こういうようなことで、ここに総合農政の展開の必要をいま感じておる。したがって、いまや制度並びにその運用について改善すべきときが来たと思います。宮脇会長が五年後の姿を明確にしてくれろ、こういうことを言われております。これは、私は、たいへん心配のあまりさような状態を言われるのだろうと思います。先ほど来政府も、いま直ちにとは言いません、直ちにこれをどうこうするとは言いませんが、しかし取り組むべき態度、これはいま明確になったはずであります。そうして私どもは、現実にそれぞれの問題を積み重ねた上で、そうして基本的な問題と取り組む、こういう姿勢だ。それには、不安を与えないようにするためにも急激な変化は避けなければならない、ここに政治のあり方があるんではないだろうかと私は思っております。したがって、ただいままでのところで要を尽くさない、かようには言われますが、現行制度そのものについて、これはやはり国民としてはこのままでよろしいという方はないと思います。改善をはかれという。しかし、同時にまた急に急激な変化を与えてはならない。生産者の努力、これを水泡に帰すようなことがあってはならない。ここにわれわれが思いをいたさなければならない、かように私は思っております。  したがって、結果は、先ほど言われたように慎重に取り組みますという結論になりますが、以上のような基本的な事実を踏んまえて、そうしてこの問題と取り組む、この点を御了承いただきたいと思います。
  116. 中野四郎

    中野委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。     午後零時十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時四分開議
  117. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。西宮弘君。
  118. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、まず農業問題についてお尋ねをいたしますが、この予算委員会が始まりまして今日まですでにかなり時間を費やしましたけれども、農業、農民の問題があまり論ぜられておらなかったわけであります。先ほど二見委員の質問がありまして、若干の問題点が指摘をされたわけでありますが、まだまだ解明されない事項が多いわけでありますので、これからぜひその問題について、総理あるいは関係大臣から明確に御答弁をいただきたいと思うわけです。  先般、先月の二十二日でありますが、農政局長会議が農林省で行なわれましたが、その際に、出席をいたしました農政局長が、農家の将来に不安があるということを発言をいたしておるわけであります。つまり、農林大臣の出先機関であります農政局長会議で、農家は将来に非常な不安を抱いているという報告をしておるわけであります。あるいは、これは私の私信でありますけれども、二、三日前に届きました書面、これは農業を専門にやっておる人でありますが、かなりの年配の人でありますが、たいへんに長く問題点を指摘をしておりまして、そしてその中で、福田大蔵大臣はことしの経済予想は曇り後薄びよりだ、こういうふうに言っているけれども、農業に関する限り曇り後台風だ、あらしだ、しかもそのあらしがこれから五年間も継続するのではないか、こういうふうに言っておるわけであります。そういうことで、まさしく戦々恐々としているという状況をつぶさに訴えてきているわけであります。そのことは政府の統計等に見ましても明らかでありまして、つまり農業の生産性が他産業に比べて次第に低下をしている、こういう現象がだんだん年とともに顕著になってきているわけであります。私はそういう状態の中にあって、一体政府はどういう考えでこれからの農業政策を担当するのかということが問題だと思うのでありますが、ただ私は抽象的なことをお聞きをするよりも、いろいろ具体的にお聞きをしたいと思うのであります。  そこで財界がしばしば農業問題について提言をしておるわけですが、そのうちの一つ昭和三十九年の提言があります。これには、国際自由経済のもとにおいて主要食糧の自給は資本、労力の浪費であり、不経済、不合理である、こういう指摘をいたしておるわけであります。つまりこれは現在の国際自由経済のもとにおいては、国内で食糧の自給をはかるというふうなことは資本、労力の浪費、不経済、不合理だ、こういうことできめつけておるわけでありまして、言いかえるならば、日本は無理をしてそういう食糧増産などをしなくてもよろしい、それよりも工業生産を盛んにしてその金で安い食糧を外国から買い入れれば、そのほうがいいのだ、いわゆる国際分業論というのがその根底だと思うのであります。財界がこの提案をいたしましたのは昭和三十九年でありますから、ちょうど日本では食糧不足が非常な重大問題として論ぜられておったときであります。にもかかわらず、そのまつ最中にこういう考え方示したということは、明らかに国際分業論という立場に立っておると思うのでありますが、私はそれでは日本の農業は救われない、要するに財界、あるいはそういう産業資本、工業資本のペースにだけ左右されてしまう、こういうことをおそれるわけですが、その一点について、佐藤総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  119. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総理大臣からお答えもございますことと存じますが、最近の農政局長会議に私も出ておりましたので、よくいろいろな報告を聞いております。確かに若干の不安、これは私前々から申しておるわけでありますが、米の生産調整というふうなことをやる限りは、米についてはこうであるが、農業全体の方向としてはこのようであるというふうなことをまずもって国民全体に政府は示すべきである、そういう考え方で、私どもといたしましては、昨年長い間かかって農業生産の指標等についても調査、研究をいたし、またこのたび行ないます知事会その他自治体や農業団体の方々にも集まっていただいてやろうといたしております生産対策協議会なども、そういう方向で、将来のことについて積極的に建設的にやろうというわけでありますが、いずれそれぞれお話も、御質問もおありと思います。その中でもお答えいたしますが、私どもといたしましては、ただいま御指摘がございまして、どこか財界のお話がございましたけれども、われわれはやはりコマーシャルベースだけで、経済合理主義だけで、すべてのものを判断するということには容易にくみしかねるわけでありまして、私ども農業の立場から申しますならば、やはりとにかく全体の地域の六八%は山林であり、一八%が農耕地帯、そういうものが日本の国土をりっぱに保護しているわけであります。それは続いて農林業でございます。したがって、そういうものをただそろばんずくだけで取捨選択するということは政治論ではないんではないかと私どもは思うわけであります。しかしながら、それにもかかわらず、やはりわれわれの生産するものを買って食べられる消費者があるのでありますから、そういうことを考えますと、やはり農業というものを維持してまいるためには、それぞれ近代化して経営の実体、体質をしっかりさせるということ、農政の方向をそういうふうに向けてまいるということでありますので、われわれといたしましては、農家の方々に生産にいそしんでいただくための不安なからしめることがわれわれの任務であるという考えで農政をやろうといたしておるわけであります。
  120. 西宮弘

    ○西宮委員 御答弁をいただく前にお願いをしておきますが、非常に短い時間でございますので、できるだけ要点だけを簡潔にお答えをいただきたいということを特にお願いしておきたいと思います。  経済企画庁長官はおられますか。――お尋ねをいたしますが、いま自由化を非常に急いでいるわけでありますが、私は特に、たとえば具体的な問題でいえば豚肉の問題などは、畜産物価格安定事業団というのがあるので、日本で非常に値段が高騰したら、そのときに外国から輸入をして、それで鎮静させる、こういうことは必要だと思うのですよ。しかしそうではなしに、無制限に買い入れるというようなことは、かえって日本の畜産を破壊するだけでなしに、いまのせっかくつくられた事業団なども機能を麻痺させてしまう、そういう懸念もあるわけであります。そういう点で、われわれはこの自由化を簡単に進められるということに非常に問題があると思うのです。ひとつ伺いたいのは、こういう自由化を特に急いでいるというようなことは、たとえば繊維の問題などでアメリカからああいう処置を受けている。そういうことが次々繊維外に波及していくのではないか。したがって、それに対する日本の対応として、自由化をできるだけ急がなくちゃならぬ、こういうことでやろうとしているのではないか、そういうことが農村にじかに影響を与えている、こういうふうに私どもは考えられるので、その点について説明をしてもらいたいと思います。
  121. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ただいま農産物の自由化についての御質問でございますが、もちろん最近の国際経済情勢のもとにおいて、わが国に対する自由化の要求というものがますます強まりつつあることは御存じのとおりでございます。しかし当然のことながら、わが日本といたしましては、ただ外国の要求があるから自由化をする、こういう意味ではございません。わが国の経済のいわゆる生産性というものを全体として高めていく、こういう問題があるわけでございます。もちろん、産業によりましては適当な期間保護政策をとり、そうしてこれを育成しなければならない、こういう期間があるのは当然でございますけれども、率直に申しまして保護制度というものは、一ぺんそれが落ちつきますととかく無期限、無制限になりやすい。いわばその上にあぐらをかいて合理化の努力というものはとかく怠られがちになる傾向がないとはいえません。今日、そういう意味においてわれわれとしてもいろいろと各産業部門について反省を要するものがだんだんとふえておると思います。特に最近におきましては、御存じのように物価問題がございます。特にわが国の場合においては、食糧費というものが非常にばかにならない影響を持ってきております。そういう中において、やはりわが国民に低廉、豊富な食糧を供給する、こういう任務というものがあるわけでございまして、そういう見地からもこの農産物というものをさらに合理的なものにしていかなければならない。そういう意味において、国際的な要求は一面高まっておりますけれども国内的な経済政策の立場からいいましても、逐次この自由化というものを行なってまいる。いわば、たまには外の空気にも触れさせなければならない、こういう要求がだんだんと高まっておるわけでございます。私どもは、しかし当面国内のそうした農業方面における今日の問題も十分わかっておるわけでございますから、そうした面を頭に置きながら、過渡的な調整を施しつつ、逐次自由化の方向に持ってまいる、そういう方向を現在とっておるわけであります。
  122. 西宮弘

    ○西宮委員 私も、その自由化の問題、一般論として理解できないわけではもちろんありません。ただ農業の場合は農業の特殊性がある、こういうことで、これはたとえばアメリカでも、アメリカで不足する農産物については非常な強い保護措置をとっているわけですよ。あるいはEECの国の中でもお互いに農業問題で意見が合わない、つまり自分の国の農業を守ろう、こういう立場でEECの中で農業問題が最大の重大問題になっているということも周知のとおりであります。あるいは、イギリスがEECに加盟できるかできないかというようなこともこの農業問題がその条件になっている、こういうことで、これは世界各国とも農業問題は特殊な産業として扱われておる。単に日本だけ農業がおくれている、そういう立場から生まれたのではないのだ、こういうことはむしろ世界的な傾向だということを十分御承知を願いたいと思う。  ところで、今日までとられてまいりました政府の農業政策がきわめて無定見だということを、私はこの際またあらためて指摘をしないわけにはいかないわけです。昭和三十七年に初めて長期の見通しを立てたわけでありますが、それによりますと、昭和四十六年に若干米が余る、こういう数字を発表したわけであります。しかし、行なわれました政策は増産増産の一本やりであります。まっしぐらに増産にばく進をしたわけであります。その次は昭和四十三年に見通しが発表されましたけれども、ここでは余るというような予測は立っておらない。ところが二年たった昭和四十五年、昨年の十一月出されましたのには、たいへんに余るのだ、こういうことを言い出して問題が大きくなったわけであります。こういうぐあいにほとんど確たる見通しが立っておらない。あるいは当時の企画庁長官でありました宮澤さんは、昭和四十二年の九月八日には、アメリカの加州米を長期契約輸入をしようということを閣議で強く提唱したということが当時の新聞に載っているわけであります。昭和四十二年の九月といいますると、その年の八月の末に、すでにことしは相当な豊作だ、こういうことで余るんだ、こういうことが予測をされておった時代、現に八月末で百万トン幾らか余っておったはずであります。そういう時期にアメリカから長期輸入の契約をつくるんだ、こういうようなことを提唱しておられたあたりは、私どもにはどう考えてみても理解ができないわけであります。つまりアメリカの過剰農産物に対して協力をするという姿勢あるいはまた日本の産業資本が工業生産品をアメリカに買わせようとする姿勢、そういうペースに動かされていると言う以外に私どもは理解のしようがない。まあとにかくいずれにいたしましても、今日までそういう点できわめて無定見な態度を繰り返してきたというところに大きな原因があるので、これは強く反省を求めなければならぬと考えるわけです。おそらく農林大臣は、特に余るとか余らぬとかいうことについて見通しが狂ってきたのは、最近の消費者が米の消費量が減ったからだ、質問をすればそういうふうに答弁をされるに違いないと思います。それならばなぜ減ったのか。私はいろいろあると思います。小麦を特に食わせようというようなそういう政策がとられてきたこと、つまり学童給食など、小麦を食ったために学童の体位が向上したなどということを文部省等も発表しているわけであります。そういうことで、パンを尊重して、小麦を尊重して米を軽視する、こういうことが行なわれてきたということも事実だと思う。  しかし、それ以上に具体的な問題として、私は消費者米価の値上がりがあると思います。佐藤総理は昭和三十九年の十二月に総理になられたわけでありますが、なるやいなや直ちに昭和四十年の一月一日に米価の引き上げをしたわけであります。あたかも米価値上げをするために総理になったみたいなんですが、その佐藤さんは毎年毎年それから四年間連続値上げをしたわけです。そこでその間に消費者米価は五九・八%、約六〇%値上がりをしているわけです。池田さんの在任中には一二・三五%という値上げを一回やっただけであります。池田さんは、貧乏人は麦を食え、こういうことを言われましたけれども、池田さんの時代には麦を食わなくても済んだわけです。ところが佐藤さんの時代になりますと、四年間に六〇%といいますと、千円の米価ならば四年後には千六百円になるわけですね。これではなかなか米が買えないということになるのは当然だと思うわけです。池田さんは貧乏人は麦を食えというようなことを言われましたが、佐藤さんはそういうことはおっしゃいませんでした。おっしゃらなかったけれども、これはまさに不言実行で、麦を食わせる、こういう方向に傾かせてしまったのではないかと思います。その点について、これは経済企画庁がかつて資料を出したことがあるのでありますが、少しデータが古いので、私はきょうは持ってきませんでした。それは米価の値上がりあるいはあた逆にパンとかうどんとかそういう粉食物が値上がりをすると、それに応じて米の消費量がふえる、つまり麦食が値が上がると米食がふえる、こういう数字を六、七年前でしょうか、発表したことがあるのでありますが、最近そういうデータがないようですから持ってきませんでしたが、その点について企画庁ではどういうふうにお考えでしょうか。――もしいまデータがなければあとで御説明をいただくことにして、時間が貴重ですから先へ進みます。あとでひとつ御説明いただきたいと思います。次は生産調整の問題。これはすで条会議等でも議論をされておりますように、米が余っているから生産調整をするんだ、こういうことですが、佐藤総理、二百三十万トンの米を減らすということになるとどれだけの水田面積を廃止をするのか御承知でしょうか。おそらく御承知ないと思うので私のほうから御披露いたしますが、これは五十一万四千ヘクタールなんであります。五十一万四千ヘクタールと申しましても、これまた必ずしもぴんとこないと思います。そこでこれを例にとって申しますると、たとえば九州各県と山口、島根を合わせた数字になるわけであります。あるいは東京周辺を例にとって申しますると、関東一円、関東七県、それに静岡を加えた数字、それでもなおかつまだ五十一万四千ヘクタールに足らないわけであります。こういう関東なら関東でもけっこうですが、関東と静岡を合わせたその広大なる面積の中で、稲は一本も植えてはなりません、米は一つもつくってはなりません。これが二百三十万トンの生産調整なんですよ。そういうことになれば、これは農家の皆さんが実に重大問題だというふうに考えられるのは当然だと思うのですが、佐藤総理はそういう点について、この生産調整の問題についてどういうふうにお考えか、御感想をひとつ聞かしてください、数字の説明はけっこうですから。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なるべくしゃべらさないように、あまりよけいなことをしゃべるな、こういうお話のようでございますが、先ほど午前中もお答えしたように、現在の制度がそのままよろしいという方はないようだ。そこでやはり消費者立場に立っても、また生産者の立場に立っても、よけいなものをつくるよりも調整をはかっていく、需給調整をはかっていく、こういうところにあるようでございます。また政府もそういう感じでただいまの問題と取り組んでおる、かようと御理解いただきます。
  124. 西宮弘

    ○西宮委員 倉石農林大臣にお尋ねをいたしますが、昨年は政府として、政府の責任で五十万トン減産するだけのことを別途にやる、いわゆる用途変更でやるのだ、こういうことを言っておったわけですね。面積にして十一万八千ヘクタール。ところが実際にやってみたら三万六千ヘクタールしかできなかった、こういうことで、実は三万六千という数字は黙っていても壊廃していく数字なんですよ。ですから去年は実は何にもやらなかった、政府のほうは何にもやらなかった、こういうことになるわけですね。もしあそこで五十万トンに相当するものを政府の手で円滑に、農民の了解を得ながら――これは当然そうでしょう、耕地をつぶすのですから。農民の賛成を得て円滑にやっておれば、おそらくことしの生産調整の目標などもこんな大騒ぎをしなくて済んだのだろうと思う。その点について一言だけ簡単に答えてください。
  125. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話のようなことでございますが、当初、御存じのように百五十万トン調整をしようということでしたが、百五十万トンというのは一挙にたいへんなことであろうということで、それからまた奨励金等についても問題が出てくるであろうということでいまお話しのようなことを考えたわけでありますが、何にいたしましても急遽いたしましたことでありますので、御指摘のように成績はあがっておらなかったわけであります。
  126. 西宮弘

    ○西宮委員 急遽やったために政府のほうは予定どおりにいかなかった。ところが農民のほうは急遽やらされたけれども、一三%も実績をあげているわけですよ。協力をしているわけですよ。これではとても農民の側で納得ができないと思うのです。むしろ政府以上に農民の側は急遽やらされたわけです。政府は前からそういうことを考えておったのだ。その急遽やらされた農民が一四〇%も協力をしている、やっているという中で、政府のほうはほとんど何もやらなかった、こういうことじゃお話にならぬと思うのですが、私は決して生産調整がよろしい、そういう立場で主張しているのではない。ただしかし、政府がやると言ったことをやっていれば、ことしの問題はもう少し軽くて済んでいると、こういうことを特に言いたいために、一体政府は何をやっているのだ、こういうことを言わざるを得ないわけです。  ところでお尋ねをいたしますが、四十六年度にやらせますこの生産調整は、これは強制をするわけですか、農民の協力を求めるわけですか。
  127. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 もちろん農村の方々に協力を求めなければならない、そういうことで、いま一生懸命やっておるわけであります。
  128. 西宮弘

    ○西宮委員 協力を求めるのだとすれば、協力しなかった人に対して何らかの報復手段を講ずる、こういうことはあり得ないことですね。
  129. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 生産調整に御協力を願うためには、その関係団体、それから市町村長その他自治体の方々にもお集まりをいただいて、いろいろな方法について御相談をし、協力を願うわけであります。したがって、それに対して私どもといたしましては奨励金を御存じのように差し上げる。それからして、政府が必要とする米については割り当てをいたすということであります。
  130. 西宮弘

    ○西宮委員 もちろんその人には奨励金を出すとか、これはまあきまっていることなんです。ただ、それ以外に、協力をしない人に対しては、まあいわば報復手段を講ずる、たとえばその人に限って買い入れ制限をするとか、そういう扱いは全くないわけですね。
  131. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 個人別にそういうことは考えておりません。
  132. 西宮弘

    ○西宮委員 個人別でないとすると、どういうやり方ですか。
  133. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま協力しなかった人とおっしゃったものですから、そういう人には区別をつけておりませんと、こういうわけであります。
  134. 西宮弘

    ○西宮委員 ですから、私の人と言ったのが悪ければ訂正をいたしますから、それじゃどういう相手に対しては、そういう差別扱いをするわけですか。
  135. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 報復というふうなことを考えておらないわけであります。
  136. 西宮弘

    ○西宮委員 ですから、具体的に買い入れ制限を、それを適用するのかということを言ったわけです。
  137. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ことしは――つまり、いままでは、予約の申し込みを政府が受け付けた、こういう形でありますが、ことしは限度数量というものを県知事を通じて地方に流す。それで、平年の生産量、いままでの自分のうちの生産量はわかっておりますから、その中で調整をどのくらいということを自主的に御判断を願うようにしたいと、こういうことであります。
  138. 西宮弘

    ○西宮委員 私どもそのやり方に賛成はしておりませんけれども、農林省がそういう考えであることは十分わかっています。百も承知をしています。だから、それに応じて、いわゆる予約限度数量は買い上げる。こういう形で、ただ、人でなければ、あるいは町村とか県とか、たぶんそうおっしゃりたいのだろうと思うけれども、そういう町村なり県なり、そういう人が、生産調整のほうはやらなかったという場合に、これを、予約限度数量をさらに買わないとか、そういう手かげんをしますかということです。
  139. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのところ、そういうふうに具体的なことを別に考えておりません。
  140. 西宮弘

    ○西宮委員 これは実に重大問題だと思うのだ。そういうことを考えていないで、さっきの午前中の質問にもありましたけれども、そのときはそのときだと、こういうことが、こういうやり方が、私はさっき申し上げた、今日まで実に農政が無定見だったということそのものだと思うのですよ。もうことしの割り当ては目の前に迫っているのじゃないですか、とにかくあと何カ月もないと思うのだ。そこに迫っていて、そういう点についてはまだ考えていない、そんなことで責任ある政治がとれますか。
  141. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 おっしゃること、よくわからないのですが、つまり、四十四年、四十五年、御存じのように生産量ございます。そういうものを参考にいたしまして、ことしはわれわれが政府として配給に供すべきものはどのくらい必要であるかということで、七百六十万トン、その内訳は、政府買い入れ米五百八十万トン、それに百八十万トンの自主流通米、それから農家の保有米が四百五万トン、これは通例でございます。それに二百三十万トン調整していただければ、それで全体の生産量が合計になるわけでありますから、それを期待いたしておる、こういうことでございますから。
  142. 西宮弘

    ○西宮委員 西宮いかに魯鈍なりといえども、そういう原則論くらい知っていますよ。ですから、そういうことに時間を費やさないようにお願いしたいと思うのだ。私がお尋ねをしたのは、片や生産調整の協力を求める、片や予約限度数量で買い上げる。そのときにその協力を求めたほうが政府の要請どおりに協力に応じなかった。そういうときには限度数量を買わないとかなんとか、そういう制裁があるのか、そういうことで甲乙がつけられるのかということですよ。聞いたことだけ答えてくださいよ。
  143. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どものほうでは生産調整というものをしていただくことをそれぞれの機関でお願いをいたしておるわけでありますから、その生産調整をみんながやっていただくというたてまえで、そうして予約限度数量というものをきめているわけですから、そういう基準で買い入れる計算をいたしておると言っているのでありまして、個人別にいろいろやったもの、やらないものを区別というのは、いまは考えておりませんということを言っているのであります。
  144. 西宮弘

    ○西宮委員 さっき申し上げたように、人を対象にしてはやらない。この点ははっきりしました。だから、人を対象にしてはやらないというのだから、たとえば生産調整に協力をしなかった人にも、具体的には個人に対しては、その人の予約限度数量以内だけれども買わないとか、そういう差別扱いはしない、こういうことは明らかになった。それじゃ、あと残っているのは、町村とか、県とか、そういうところに、君の県は何%しかやらないから米は買わないぞ、こういうことをやるかやらぬか、こういうことを聞いているのです。
  145. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それは先ほどの二見さんの御質疑にも申し上げたわけでありますが、それであるからして、私どもはあらゆる関係団体に御協力を願って、そうして予約限度数量を下へ下げ、そうして生産調整に協力をしていただく、こういうわけでありますから、もう余るものはないというたてまえで全力をあげていただきたい、こういうことをお願いしているわけなんです。
  146. 西宮弘

    ○西宮委員 そのお願いしている気持ちはわかりますけれども、さっき二見さんの質問、全くそれだけじゃないですか。その気持ちはわかりますよ。だから、その収支バランスがとれるか、余るか、足りないか、この三つしかないわけですよ。それでバランスがとれれば問題はないのだ、これを期待していることは問題はないのだ。ところが余ったときはどうするのだ、足りないときはどうするのだ、こういうことでさっきも質問をしたけれども、これに対してついにその答えがないじゃないですか、ただそのときはそのときだというだけでお答えがない。そういうことでは私は農政の責任を負えないと思う。しかし、そういうことで、これは全く無責任そのものだ、無責任きわまると断定せざるを得ないのだけれども、そういうことが今日の農政を混迷におとしいれているのだということを私は強く指摘をして、ただ時間だけ費やしておれませんから、先へ進みますけれども、これはどうしてもその点はこの国会が終わるまでに明確にしてもらわなければ問題だと思います。  私は去年は――佐藤総理、去年はとにかく生産調整はそれに協力をすれば食管制度が守れるのだ、こういうことで農民諸君は一るの望みを抱いて協力をし、しかも政府の要請以上に実績をあげたわけですよ。ところが、四十六年にはそういうものは何もない。むろん補助金は出ますよ。補助金は出るけれども、その補助金だって去年よりは少ない。あとで大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、これはだんだん漸減するという方針なのかどうか、これはあとでお尋ねします。ところで、そういう補助金も減っている。しかも今度は食管制度を守るのだという、そういうメリットは何もないわけですよ。だから、あとは協力しなければ買い入れ制限するぞ、こういうことでおどかして、いま大臣の答弁は全然その点はあいまいでわからないけれども新聞等に伝えられるところによると、買い入れ制限で報復するのだ、こういうことを言っているわけですね。だから、買い入れ制限ということで、そういうむちを振り回して農民をたたき出すという以外の何ものでもないじゃないですか。ちょうど終戦直後に強権発動ということで農民をかり出したのと全く同じやり方だと思うのです。私はそういうようなやり方でやってくれというようなことはとうていあり得ないと思うのです。そういうことではとてもできない。私もその需要に見合った生産をする、これは当然だと思うのですよ。われわれもそのことを考えているわけです。ただその手段、方法です。そういうむちをもってたたいて農民を追い出す、それではむしろ、イソップ物語りではないけれども、逆にだんだん農民はそれから離れようとしなくなるだろうと思うのです。そうではなしに、たとえば他に転換してそのほうが安心してやれるとか、まあいろいろそういう誘導政策があると思うのです。あるいはまたその不要になる農地は国が買い上げる。実際離農したいというような人も現にあるわけですから、そういうようなのは買い上げる。特に山間僻地などにはずいぶんそういう人もあります。ですからそんなのは政府が買い上げるとか、あるいは田畑輪換をつけるとか、いろいろ方法はあると思うのです。そういうあたたかいやり方で農民を誘導していけば誘導に応ずると思う。むちでたたくようなやり方では、私はかえって政府の期待するような結果も得られないであろうということをおそれるのです。その点について一言だけお答え願いたいと思います。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも基本的な問題ですから一言だけというわけにはいかないようです。先ほど農政局長会議でたいへん見通しが暗い、農村の方々が将来について非常に不安を持っている、こういう第一の疑問がございました。私は人間が農産物なしには生活ができないという現状を考えると、その点ではさような心配を持たれないように、安心して、人間がいる限り農業はどうしても大事な仕事だ、この点をはっきり確認しておいていただきたい。そこで、いまいろいろ総合農政の展開ということがいわれておるのであります。ことに西宮君のところは国内でも有名な米産地ですから、これはもう米について特殊な感じを持たれること、これもよくわかります。同時にまた白菜の産地でもあるように思いますので、ただいまたいへん白菜が高いといって、もう皆さんから、消費者立場から、ずいぶん要望されております。そういうことを考えると、いまこそ総合農政が必要なときだ、かように私は思います。そうして私どもはむちは持っておりません。政府は農業者のおしりをたたくような、そういうむちは持っておらない。そのことははっきり申し上げておきます。どこまでも国民の協力なしにはこういう大事な問題はできないのだ。いま二つの例をとって申しましたからおわかりいただけるだろうと思います。
  148. 西宮弘

    ○西宮委員 あんまりおわかりいただけなかったのですが、政府はむちを持って農民のしりはたたかないというお話だったけれども、むしろしりどころじゃないですね、頭をたたいたり腹をたたいたり、めちゃくちゃだと思う。めった打ちだと思うのですよ。その日本の国の中で農業が大事だということについて総理として十分認識を持っていると言われたことは、私も共感をいたします。それはそれで理解をいたしますが、ただ、いまのようなやり方で、繰り返して申し上げると、たとえば生産調整というやり方は関東一円から静岡まで含めて米は一つぶもつくるなという政策なんです、ことしは、あるいは今後は。そうしてしかもそのやり方は、去年のように、それをやりさえすれば食管制度が守れるというような、そういう農民に対する期待が何にもないわけです。わずかに補助金があるだけです。そしてその補助金も去年より減ってしまった。こういう状態の中では全くめった打ちだといわざると得ないと思うのです。大蔵大臣にさっきの漸減するかどうかということだけ一言……。
  149. 福田赳夫

    福田国務大臣 漸減いたすのが筋であると考えます。ただし、具体的にどうするかということは、その際、そのつどよく周囲の環境等見てきめる、かように考えております。
  150. 西宮弘

    ○西宮委員 ますますもって農民は暗くならざるを得ないわけですな。わずかにあるのは補助金だけだ。ところがその補助金は毎年漸減をするんだ、方針としては、筋としては。こういうことでは暗くなる以外に明るくなれといっても無理だと思うのですね。  米価の問題で一言お尋ねします。これは総理でけっこうだと思うのです。ことしも据え置きならば三年据え置きということになるわけですが、こういうふうに物価が上昇している中で据え置きをするというやり方は、まことに適当ではないと思うのですが、その点について一言どうですか。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米価が適正な水準でないという、これは西宮君の感じから上げろというお話なのかともとりますが、必ずしも生産者米価を引き上げろとかようにおっしゃるのではないだろうと思います。私ども、一番主食であり、国民生活に最も影響を持つ主食、その消費者米価そのものは維持したいと、さような気持ちでおることだけこの際申し上げておきます。
  152. 西宮弘

    ○西宮委員 それじゃ総理、いまの米価はまだ高いというふうにお考えでしょうか。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は高いとか安いとか申すんじゃないんで、現在の米価を維持したい、かように申し上げておる。
  154. 西宮弘

    ○西宮委員 だから、その現在の米価を維持するためには、妥当でなければ維持できないわけですね。高ければ下げるし、安ければ上げるということなんだから。だからその維持したいというのは、いまの米価をどういうふうにごらんになっていますか。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほども、私が総理になってから毎年毎年上げた、たいへんな上がり方だとおしかりを受けたばかりでございますから、いまのところはこの米価をやはり維持するのが適当だと、かように私は思っております。
  156. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、この米価を維持するのが当然だというのならば、要するに、いまの米価は妥当だ、私のいまここで言っているのは生産者米価ですが、妥当だというふうに了解してよろしゅうございますか。――うなずいたんだからいいんですね。これは速記録にうなずいたと書いておきますから。もしそうならば、私はこれは実は前に農林大臣などに何回か聞いたことがあるんです、米価をどう思いますかと。そうすると、政府としては当然でしょうけれども、これは最も妥当な価格です、こういう答弁をされるわけですね。もし生産者米価がそういう妥当な米価である、つまり佐藤総理の言をもってすれば、維持したい米価であるということであるならば、あのいわゆる食管赤字と称するものは、これは生産者のために出る赤字ではなくて、消費者の家計を助けるために出る赤字なんです。だからそのことを十分政府として認識をしてもらわないと困る。その点が非常に議論を混同させると思うのです。これはその生産者に払う米価は妥当なんだということであるならば、あと出るのは消費者の家計を安定させるために使われているいわば消費者生活保護のための経費なんですよ。つまりもっと労働賃金等が高くて、どんな高い米でも買えるというのならば、そういう援助をする必要はない。ところが援助せざるを得ない家計の状況だから、それに援助をして安い米を食わしている、こういう実態なんですから、その辺を間違わないように御判断をしていただきたいと思います。  次に、農林大臣にお尋ねいたしますが、現在の在庫の過剰米ですね、これを私どもは一刻も早く処理をしてもらいたい、こういうことを希望しているわけです。そこでたとえばえさには今度の計画では百四十万トン回す、こういうことになっていますが、私はあちらこちらだいぶ関係方面をたずねてみましたけれども、まだまだ消化能力はあるんです。あるいはそれを大いに希望しているわけです。これは値段も問題でしょうし、いろいろありますけれども、とにかくその需要の側からいうと、まだまだほしいという要請は大いにあるわけです。それならばもっとこれをふやして、現在在庫している過剰米を早く処理をしてもらいたい、こういうことを希望したいのですが、いかがですか。
  157. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 まことに同感でございまして、なるべく早く処理いたしたいのでありますが、御存じのように飼料に出す場合には、概略トン十万円くらい損をしなければなりません。これはなかなか財政負担もたいへんなことであります。それから輸出も一生懸命でやりますし、そこでいろいろ計算をいたしました結果、大体年に二百万トン、まあこの辺ならば何とかなるだろう、こういうことでございますが、なるべくそういうことで国庫の負担を少なくして、早く片づけるようにしたいと、先般農林省に学識経験者を集めまして、そういうことについて研究をしてもらっておる最中でございます。
  158. 西宮弘

    ○西宮委員 財政上の問題もあると思います、それを抜きにしてという議論はむちゃだと思いますから、そういうことは言いませんが、しかし私は、とにかく過剰米が山積みをしているということは、あらゆる面で非常に支障があるわけですよ。そしてまた、第一それに金利、倉敷料を払って維持しているなんというのは実にばかげたことだと思うのですね。こんな愚かな政治はないと思うのですね。ですから、なるほど財政関係もありましょうが、いまここで思い切って金を出してもこういう問題は早く解決をすべきだと思う。ひとつぜひ御検討を願います。  お尋ねをいたしますが、配給面にそういう古い米を回すというようなことをしないと思うのですが、さっき二見委員の御質問にも、古米を回すようなことはまずなかろう、こういう答弁を大臣はしておられましたけれども、これは絶対に避けてもらいたいと思う。そうでないと、また新しい米が出てくるとそれをあと回しにして、繰り返し繰り返しそれをやっていく。これはおそらく何年たってもこういう状況が、そのやり方ならば続くと思うのですよ。ですから、配給米にはそういう古いものは使わない、こういうことを明らかにしていただきたいと思います。
  159. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういうようなたてまえでやっておるわけであります。
  160. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、ぜひそれは厳守をしてもらうということを強くお願いしておきたいと思います。  それから先ほど二見委員の質問で、いわゆる第三の米とでもいいますか、政府の買い上げた配給米、自主流通米、それからそれでもなおかつ余るものが出るという場合、これはあり得ることですよ。天候がよ過ぎて米がとれ過ぎる、こういうことは当然ある。あるいはその逆もありましょうけれども。当然あるので、そのときどうするのだということに対して、ついにお答えがなかったわけです。私は同じようなことを繰り返してむだな時間を費やしたくないと思いますので、残念ながらやめますけれども、これはこういうことでは、さっき私が質問した問題と同様でありますけれども、もうほんとうにきょうあすに、目の前に迫っている問題なのですから、それがいまもって方針がきまらない、こういうことでは農民はいたずらに政府のやり方に振り回されるだけだということになるので、ぜひともそういうことのないようにしていただきたいと思います。これは残念ながらそういう点でくぎをさしておくよりほかしかたがないと思う。  物統令の問題をお尋ねをいたします。これにはいろいろ問題があります。問題があるというのは、これを廃止をすることは無意味だ。第一、一ぺん廃止をしてそのあとでまた厳重に取り締まるなんというのは愚の骨頂ですよ。それでは何のために廃止をするのだというようなことにならざるを得ないと思う。その基本方針を簡単に一言だけ伺いましょうか。農林大臣、一言だけおっしゃってください、物統令に対する態度……。
  161. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これはたびたびお答えいたしておりますように、大体私どもとしては、今日のように大幅に需給が緩和されました機会に、消費者の好みに応じた配給ができるようにすべきではないか。西宮さんの御郷里などは全国でも有名な名柄の米が出ているところで、そういう米でも、それからまたうんとまずい米でも、統制でございますので同じ値段で配給を受ける。いまのような社会になりますと、やはりせめて主食の米ぐらい自分の好きなものを食いたい、そういう方の御要望もたくさんあるわけであります。したがって、そういう方の御要望にも応ぜられるようにするためには、物統令などは廃止をしてやるほうがいいのではないか、好みに応じてやるほうがいいではないか、こういう考え方でありまして、したがって、もしそういうことで価格に不安があるというふうなことであるならば、もちろんわれわれは、四十六年度産米の出回るころまでのことでありますから、十分な措置を講じて、そういう不安を解消するように政府努力をするように、ただいま検討を続けておる最中であります。こういうことでございます。
  162. 西宮弘

    ○西宮委員 私どもはそういうやり方で物統令――とにかくいまは最高価格をきめているわけですから、これをはずしてしまえばどういう結果になるかということは、もうたやすく想像できると思うのですよ。いまの大臣の御答弁だと、要するにうまい米は高くなる、それでも、高くてもいいからうまい米を食いたい、そういう人もあるのでそうしたほうが合理的だと言うけれども、私はいまの時代は、そういううまい米ということを論ずるよりも、むしろ米価を安定させるというほうが先だと思うのですよ。ですから、自主流通米だけでそういう目的が達せられるのですから、さらに物統令を廃止をして、そうしたらどこまで上がっていくかわからぬ。つまり、現在は配給米という制度があって、そのかたわらで自主流通米がありますから、これも適当に牽制されてとにかく現在の相場が保っているわけです。それがそういうものがなくなってしまったということになって、しかもそこに介入してくる、あるいはその操作に当たろうとする人たちが、これからはおそらく大企業家、大資本、そういう人が多いのだろうと思うのですよ。政府に間接統制に移れと言って迫って要請をしたのは、昭和四十二年に要請をいたしましたが、そのときこの要請を出しましたのは三井物産、三菱商事、丸紅飯田、東洋棉花、伊藤忠、こういういわゆる食品独占といわれる人たちですね。この原案を書いたのは三井物産の水上社長だということでありますが、とにかくそういうことで、おそらくそういう大資本が介入してくるというようなことになれば、どんなにしても値段は適当に操作をされてつり上げられていく。農民からは安く買って、それを消費者には高く売る、そういうやり方にならざるを得ない。われわれはもう十分にそういう見通しが立つので、この点についてはどうしても私ども安心できないわけです。これは何もはずす必要がない、はずさないで自主流通米でやれることだし、はずした上でさらにその取り締まりを厳重にするなんというのでは、全く何のためにやるのかわけがわからぬわけですから、そういう愚かなことをしないようにしてもらいたいと思います。まだこれは時間がありますから、ことしの秋までの問題ですから、またそれまでに十分議論をしたいと思います。  私は生産と消費の直結、いわゆる流通経費を省いて合理化する、これは現在の物価高の際に非常に重大な問題だと思うのですよ。実は私自身も農協と生協の提携というようなことで一生懸命やっているわけです。しかも生協などは単に中間経費を省くということだけでなしに、いわゆる有害食品などを駆逐する、こういう点で非常な力を入れて、それには全力をあげているといってもいいと思います。私は、そういう点で、これは非常に大事なことだと思うので、これから先もこの問題については政府がひとつ大いに指導育成をしてもらいたいと思います。  総理、ことしは小さな成果ではありまするけれども、たとえば生協が集配センターなどをつくるときの経費を開銀から融資を受けるということができたわけです。それからその貸し出しの資金量が、厚生省が所管をしておりますが、これが従来千三百万円であったのが二千万円になったわけです。金額は小さいんですけれども、とにかくふえたということで、私どもはそれをそれなりに評価をしているわけですが、これからどうしてもこの仕事を拡充するために、たとえば店舗とか事業場とかそういうものを拡充して十分な機能を果たさなければならぬ、そういうところに、たとえば厚生年金の融資であるとか、あるいは政府機関の金融を充当していかなければならぬ問題がたくさんあるわけです。そういう点を、ことしはほんとうにささやかな前進で、われわれ非常にその点を、方向は評価をいたしますが、残念に思っているわけです。ぜひこれをさらに援助をしてもらうように総理にひとつ――それでは大蔵大臣でもけっこうです。
  163. 福田赳夫

    福田国務大臣 生協は、今日の物価情勢というような社会環境下におきまして、だんだんと注目を浴び活動分野も広くなってくる、そういう傾向にあるものと考えます。したがいまして、これに対しましては、それに応じた国としての処遇はすべきである、こういうふうに考えます。いま私も具体的案件として、神戸の生協が何かセンターをつくりたい、こういうようなお話がありまして、それの金融についてのお話を伺っております。生協だからこれはもう政府資金が必ず出るんだ、こういうふうには言えません。言えませんが、生協だからこれは政府資金が出ないんだ、こういうふうにはいたしたくない、ケース・バイ・ケース、そういうことで善処していきたい、かように考えます。
  164. 西宮弘

    ○西宮委員 佐藤総理が会長をしておりますこの団体で、今度生協について非常に明快な方針を出されたわけですよ。したがって、私どもはそれに大いに期待をいたしておりますので、総理大臣が会長をいたしております何というのでしたか物価会議です。そこで特に生協だけを取り上げまして、こう書いてあります。「地域制限の緩和等制度の改善を行なうため、消費生活協同組合法の改正につきすみやかに検討する。」とともに「事業用施設に対する政府関係機関による融資を検討する。」こと、これは総理が直接お出になったかどうか知りませんけれども、総理が会長をしているわけです。どうぞせっかくこういう決定をされているわけですから、総理もこの方向で進めてもらうということを一言だけおっしゃってください。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはただいまお読みになったとおり、私も申し上げております。とにかく生産者と消費者と直結をする、そういうような努力でございますが、しかし、これだけではうまくはいかない。やはりただいま継続審議になっております卸売市場法、その改正もぜひ皆さま方の御協力を得て早く通して、流通機構の整備にわれわれもかかっていかなければならぬ、かように思っております。
  166. 西宮弘

    ○西宮委員 この農業問題の最後に、私は二四五丁をぜひやめてほしいということを農林大臣に要請いたしておきます。これは時間もありませんからるる申し上げませんし、かつ農林大臣も十分御承知だと思うのです。これは非常に問題を起こしております。ことに、たとえばフランスで行なわれました世界科学者連盟主催の国際会議においては異常児が産まれるという問題があったり、したがって、この会議では製造、使用の中止を決議をしておる、あるいはスウェーデンではすでに禁止をしておる、アメリカの国立ガン研究所においてはネズミにガンが発生するという研究成果が発表されておる、こういうようなことで非常に危険なので、日本でも現に青森県の下北のサルが死んでしまうというようで、あそこではやめたようですが、これはそういう地域の住田の問題とそれからこの劇薬を扱う職員の問題と二通りありますから、ぜひこれは今後やめにしてもらいたいということをお願いしたいと思います。
  167. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 二四五Tにつきましては、先般の国会で農薬取締法の改正法案を議決していただきましたときの附帯決議等も存在いたしますので、その御趣旨を尊重して私どものほうでは十分に検討いたしまして、万遺漏なきを期するように監督いたすつもりでございます。
  168. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、質問通告をいたしておきました第二の問題に移らせてもらいたいと思うのであります。  佐藤総理にお尋ねをいたしますが、総理は、昭和四十一年十二月十五日の衆議院の本会議で、こういうふうに述べておられます。「政界の積弊を一掃し、政治に対する国民の信頼を回復することにこん身の努力を傾ける決意であります。このことこそ、今日私に課せられた国家と国民に対する至上の責務であると信じます。」以上のとおりに、四十一年の十二月の国会で演説をしておられるわけでありますが、それから今日まで、この国民の信頼を回復するために、あるいは政界の積弊を一掃するために何をされたか、お答え願います。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの立場がその基本の精神でございますと、かよう申せば一言で済むのですが、しかし、期待されるものは政治資金規正法、いまなおできないじゃないか、こういうことを御指摘になろうとしておると、かように私も思います。  この政治資金規正法については、私もいまなお、もうこれは廃案だとかように考えておるわけではございません。いろいろ過去において三回ばかり出して苦い経験をなめておる、そういうことで、この問題をやっぱりいかにして各党の皆さん方から協力を得るか、こういうようなことでくふうをすべき段階だ、かように思っております。
  170. 西宮弘

    ○西宮委員 「政界の積弊を一掃し、政治に対する国民の信頼を回復することにこん身の努力を傾ける決意であります。」と言っている限りには、政治資金規正法の問題はもちろんでありまするけれども、私は単に政治資金規正法の問題だけではないと思う。たとえば現にその一つの例として、いわゆるその積年の弊風の一つとして、今回新聞等をにぎわしております西郷さんの問題ですね、こういう問題もそういう線上に発生してきた問題ではないか。したがって、私はその点について二、三お尋ねをしたいと思います。  まず、議員会館でいわゆる暴力団ないしは暴力団に近いような人たち、そういう人が集まって数時間関係者をカン詰めにしたり――その中には西郷議員もおるわけです。カン詰めにしたりあるいはそういう暴行、脅迫のごときものが行なわれていると、こういうことがあってよろしいのかどうか。私は、そういう事態がもしあったならば西郷前法務大臣は当然に一一〇番に電話をする、あるいはまた、そのために議員会館の中には非常用のブザーがついているわけですよ、なぜそういうブザーを鳴らして危機を知らせる、あるいはまた一一〇番に電話をかけるというようなことをやらなかったのか、まことにふしぎなのです。といっても、これはなぜやらなかったと聞きましても答える人はないと思うので、私はまことに――官房長官でも答えてくれるなら答えてもらっても……。  そこで、手渡しました手形ですね、六千万の手形を渡しておるわけです。脅迫をされて出しているわけですけれども、その出した相手は――これは、刑事局長にあとで間違いがないかどうか確認をします。宮本興業の宮本グループに三千五百万、それから鼓グループ千五百万、東声会の幹部が立ち会っておりますね。中村グループ、これも相当の団体ですね。これも実に相当の団体ですが、これに五百万、それから元極東組の幹部である人ともう一人の人、二人の人に五百万、合計六千万、こういう金が渡っておるわけですが、これについて間違いはないか。あるいは、こういう暴力団まがいの人と西郷さんはいつごろから接近をし始めたのか、こういう点をお聞きをいたします。これはいまこういう人を取り調べておりますから。  それから、時間の関係で、全くついででありますが、刑事局長にこの点も御返事を願いたいと思いますのは、もし詐欺の告訴が出たならば、警察としては厳重な捜査をするかどうか。こういうことをお聞きをいたしますのは、実は、いわゆる詐欺まがいの行為で被害を受けている人があるわけです。しかし、そういう人も、どうせ出しても、何しろ相手は前法務大臣なんだから、警察も十分調査をしないんじゃないかというようなことを心配をいたしておりますので、そういうことは絶対にないのかどうか、その辺も一緒にお答え願いたいと思います。
  171. 高松敬治

    ○高松政府委員 ただいまお話しのございました一月九日夜に西郷議員の債務を代理弁済するという人が書かされた手形は七千万円、これははっきりいたしております。ただ、その手形の分配がどのようになっているか、どういうふうになったかという御質問でございますが、この点は、二十六日に逮捕いたしまして、たしか昨日勾留になって、その点を目下調べております。まだその点は明確でございません。  それから、詐欺の告訴があった場合にそれをどうするか、こういうお話でございますが、この問題につきましては、はたしてこれが、手形の問題が民事事件なのであるか刑事事件なのであるかというところが一点の問題でございます。もちろん私どもといたしましては、もしそういう告訴が出た場合には、その辺の事情をよく調べまして、民事事件か刑事事件かということで判断して処理してまいる、かように考えております。
  172. 西宮弘

    ○西宮委員 もちろん私も、だから詐欺まがいの行為ということを言ったんで、民事か刑事か、それによって、刑事でなければあなたのほうには関係がないわけだが、刑事事件として扱われるというようなことになったらば、それはもう十分に徹底的に捜査をしてもらう、これは当然のことだと思うけれども、念のためにお尋ねをしただけです。  それでは二番目に、第三国人の帰化の問題についてお尋ねをいたしますが、まず最初に、法務大臣に帰化行政に対する基本的な態度というものを伺いたいと思います。  私自身は、実は、善良なる三国人はできるだけすみやかに日本の社会に迎え入れるということが必要なのではないかと思うのです。何となれば、今日三国人が帰化をしている数とそれからその三国人が日本国内で自然増いたしておりまする数字は、後者のほうがはるかに多いわけであります。したがって、年々歳々その第三国人がふえていくわけです。こういうことは、私は、必ずしも健全なる社会ではないのではないかという心配があるわけです。実は私は昨年でしたか、東南アジアを回りまして、そういう国々がかかえておる民族問題の深刻さを骨身にこたえて感じてきたわけであります。したがって、こういう問題に対処する対処のしかたは、善良なる市民であるならば、これは早く日本の社会に迎え入れるということが適当なのではないかと思うのですが、その辺の考え方はいかがですか。
  173. 小林武治

    ○小林国務大臣 これはお話しのとおりでありまして、日本の社会に同化し、善良なる市民である限りは、できるだけ私は帰化の便宜をはかってやりたい。私、就任早々さようなことを事務当局にも、帰化はできるだけ希望に応ずるように、こういうことを指示しております。
  174. 西宮弘

    ○西宮委員 民事局長にお尋ねをいたしますが、問題になりました武藤真吾という人について四点お尋ねをいたします。  この人が帰化の申請をして不許可になったのはいつか。第二回目、許可になったのはいつか。不許可になった理由は何であるか。第四点、その調査する機関は、民事局は東京法務局に依頼をし、東京法務局は、東京ならば警視庁に調査をしてもらう、こういう手続を経るのだろうと思いますが、以上四点についてお答え願います。
  175. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 お答え申し上げます。  武藤真吾にかかわる帰化事件の経緯でございますが、第一回の帰化の申請は、昭和四十三年の四月十九日にいたしております。この事件につきましては、翌年の昭和四十四年八月四日に不許可の処分がなされております。この理由は、暴力団に関係があるのではないか、こういう疑いが持たれたためでございます。  それから第二回の申請でございますが、これは昭和四十四年の十二月五日に再申請がなされております。これに対しまして四十五年一月十三日に許可がなされております。この許可のなりましたのは、前回の不許可の理由が、暴力団に関係があるのではないかという点でございましたので、この点を中心に調査をいたしましたところ、積極的に暴力団に関係したという資料が認められませんので、一応暴力団には関係がないものと認定いたしまして、その許可がなされたわけでございます。  それからこの調査は、東京法務局に申請がございまして、東京法務局におきまして係官が当事者、関係者等について調査いたしましたほか、警視庁等にも調査を依頼いたしております。
  176. 西宮弘

    ○西宮委員 最後の点ですが、法務局が調査をして、警視庁にも照会をした、そういう実態の調査について責任を持つのはどっちなんですか。
  177. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 これはもちろん法務局でございます。
  178. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは民事局長にお尋ねをいたします。あるいはあわせて警察のほうも照会を受けて調査をしたそうですから、お尋ねをいたします。  これで見ますると、一ぺん不許可になってから最後に許可されるまでわずかに五カ月であります。その五カ月の間に、そういう暴力団に関係している云々という疑問は解消したのかということでありますが、先ほど小林大臣の御答弁のとおり、できるだけ善良なる市民は早く帰化を承認をする、許可をする、これが政府の大方針だとこういうことを言われた。したがって、それをあえて不許可にしたからには、その暴力団との関係というのを相当に重視をされたに違いないと思う。もっと、たとえば刑事犯罪を犯して何年とかそういう具体的な理由ならば、これはだれに聞かれても非常に明瞭に不許可にした理由を説明ができるわけです。しかし、たとえば暴力団と関係があるのではないかというようなことはなかなか明確に――たとえばその申請者に対して説明するにしても、あなたはこういう理由で不許可になりましたというようなことは言いにくい問題ですね。ですから私は、なるべく早く許可をしたいというのが政府方針ならば、それをあえて許可しなかったからには、この暴力団の関係というのは相当重大な問題だと考えたに違いないと思う。それが近近五カ月で完全に解消してしまったのかということに非常な疑問があります。しかもその人は今度一年足らずできわめて悪質きわまる犯罪を犯して、現に逮捕されているわけです。こういうことがなぜ予見ができなかったのか。この武藤真吾という人は、たとえば名前だけでも新聞には七つあげてあります。人によりますると十幾つかの名前があるんだ、こういうことで、したがってその捜査がしにくかったという点があるかもしれませんけれども、そういうことできわめて悪質な人だと思う。そういうことが一年足らずで暴露することが発見できなかったのか。最初許可するときにそういう問題が全然気がつかなかったというなら、これもまたあるいはやむを得ないかもしれませんよ。しかし、暴力団に関係あると見て不許可にしたわけです。許可をしなかったわけですよ。その人間が今度は簡単に解消してしまった。しかも一年足らないでこういう大問題を起こしている。これではどう見ても筋が通らないと思うのだが、その辺はどうなんですか。  それから、ついでに局長にお尋ねしますが、一ぺん不許可にした場合は、その次に許可するまでの間に、申請を再度出させるというのにはある一定の期間をおいて出させるということで、窓口指導をしておるようであります。窓口でそういう指導をしておるようだけれども――つまり、いろんな人の話を聞いてみると、まあ一年はたってくれ、こういうことを言っておるそうだけれども、この人なんかはほんとうに、不許可になるとすぐ出してきたわけですね。その辺非常におかしいと思うのだが、どうなんですか。
  179. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 お答えいたします。  結果的に、帰化を許可された者が犯罪を犯したという結果になりましたことは、十分調査が足りなかったのではないかという御疑問を抱くことはもっともでございますが、この当時におきましては、まださような徴候というものは発見できなかったわけでございまして、先ほど申し上げましたように、不許可の理由が、暴力団に関係しているかどうかという一点に重点を置きまして、これは法務局の担当官が再申請のときに関係の人々に当たりまして、相当詳しく調査をいたしたわけでございます。  それから再申請の期間でございますが、これは不許可になりました場合に、その理由によりましては相当の期間をおかざるを得ないという場合がございます。たとえば前科を犯しておるという場合に、それから相当の期間を観察する必要がございますので、一年ぐらいは様子を見るということをいたしておりますが、本件の場合におきましては、事情が暴力団に関係があるかどうかという点でございましたので、その点を比較的短期間ではございましたけれども調査したわけでございまして、再申請を本人がどうしてもしてくるという場合には、別に期間の制限というものは法律上はないわけでございますので、再申請がありますれば、それに基づいて調査をして判断を下す、こういう扱いをいたしております。
  180. 西宮弘

    ○西宮委員 その一年後に犯罪を犯すというようなことは当時徴候を認められなかったということだけれども、その前にすでに暴力団に関係ありとして不許可処分にしているわけですよ。全然何にも最初からしなかった人ならば、それはいまのあなたの御答弁も無理もないとわれわれも了解できますけれども、前に、それで許可しないということで通知を出してそういう処分を決定して、その人がまた出してきて、今度は何もその徴候を認められなかった。しかもその人が一年たったらこういう大事件を起こしている。こういうことではあまりにも調査はずさんだといわざるを得ないと思う。  したがって、これはどうしても西郷さんが大臣になられて、私の想像をもってするならば、許可されなかったので西郷さんに頼んでやってもらうということになったのではないかと思う。その西郷さんとの関係は、いずれ警察の調査のほうで明らかになってくると思いますから、それを待ってもけっこうですけれども、一言民事局長にお尋ねをいたしますが、西郷さんからはどの程度に言われたのか。これは、ぜひともやれというふうに言われたのか、あるいは西郷さん在任中に許可になった人たちの中に、たとえば今度の警視庁で摘発しております事件に関係している人が何人あるのか、その程度まずお尋ねします。
  181. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 本件の許可に関しまして、当時の西郷法務大臣から特に指示あるいはお話があったかどうかという点でございますが、これは私ども事務当局といたしましてはそういうお話は受けていないというふうに聞いております。(西宮委員「在任中に許可した人が何人あるか」と呼ぶ)これは非常にたくさんございまして、たとえば……。
  182. 西宮弘

    ○西宮委員 在任中に許可した人で今度の事件に関係した人が何人あるか。たとえばきのうの夕刊にも一人出ていますね。あれは私たちでも官報を拾って見ていけばすぐ見つかると思うのだけれども、あなたのほうでわかっていると思うので、何人あるかということをお尋ねしたい。
  183. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 まず逮捕されました中には帰化された者はいないようでございます。  それから昨日、新聞で知りましたMという人物でございますが、これはまだその人物を確認しておりませんので、ちょっとお答え申し上げかねますけれども、年末、ちょうど四十四年の十二月に許可をいたしました者が約二百五十名ございます。
  184. 西宮弘

    ○西宮委員 事務当局としていまのような発言をされますけれども、私ども、これはどう考えても西郷さんからかなり強い指示があったものと判断せざるを得ないわけです。西郷さんとこの武藤真吾の関係は、いずれ警察のほうで明らかになってきましょうから、私どもはそれを待ちたいと思う。ただその際に、いま局長が、全然関係がない、西郷さんとの関係は全くないというようなことを言っておられると、かえって逆な結果が出てくるおそれがあると私どもは思う。私は、もちろんそういうことを言ったからといって、事務当局が何か法を曲げて処理したというような、そういう不純な動機に動かされたというふうには毛頭考えておりません。この点は私は事務当局を信頼してよろしいと思うのですが、ただ、西郷さんがかなり自分の地位を利用したということは私は十分に想像できると思うわけです。  次に、これは警察庁にお尋ねをすることになるかと思いますが、西郷さんが就任をされた昭和四十三年の以前に、西郷さんの手形がきわめて非常識きわまるやり方で町の金融業者に流されておった。町の金融業者と申しますのは、俗にトイチ屋などといわれるような、十日に一割ずつ利息を取るといったような、そういう不当きわまる高利の金融機関があるわけです。そういうところに相当流されておった。昭和二十二、三年ごろからかなり広範にそれが流されておったというようなことを私どもはうわさとして聞いているわけです。これは私があえてうわさと申し上げるのは、実は私も大事な問題でありますから関係者にその点も当たってもらったわけです。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 ところが、どこでもそれはもうわれわれの社会では周知の事実だというようなことを言っておるのですが、ただ、彼らは自分自身の商売ですから証言をするとか、そういうことはとうてい応じてくれないわけです。したがって私はあえてうわさと言わざるを得ないわけですが、こういうこともおそらくいまの警察のお調べなどが進んでいくとはっきりするのではないかと思うのですけれども、その点どうでしょうか。いまの調査中にそういう事実は見えておりませんか、警察のほう……。
  185. 高松敬治

    ○高松政府委員 私どもが調べておりますのは現在の一月九日の恐喝、暴行あるいは傷害という事件でございます。手形が流れているかどうかというふうな問題は、先ほども申し上げましたように、手形事件というものの性質から申しまして、直ちにそれが刑事事件というわけのものでもございませんし、その実態というものは私どもも十分に承知はいたしておりません。
  186. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、いまの事件の捜査の過程で、これに関連をして、派生をしてそういう問題が線上にあらわれてくるのではないかというふうに考えるわけです。その手形そのものはもちろん合法でしょうけれども、いま申し上げたようなきわめて極端な暴利をむさぼっているわけです。したがって、そういうことは当然に法に違反をすることになるわけです。そういう法を無視した高利な金利で手形の割り引きをさしておる、こういうのが私の聞いておるいわゆる西郷さんのやり方ですから、だから悪いことをしているのは相手だけれども、それをやらしているのが西郷さんだ、こういうことにいまのが事実ならばなるわけですから、これは警察としても無関心ではあり得ない問題だと思います。私は、もしこういうことが就任以前に、つまり佐藤さんが任命される以前にあったとすればたいへんな重大な問題だと思うのですが、しかし仮定の問題でありますから御答弁はいただきません。  その次に福田大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、岡田さんという人が福田赳夫先生あてに手紙を出しておるわけです。長い手紙でありますが、「そこで再三西郷先生をお訪ねしてお話しいたしましたところ、西郷先生は「福田先生にお話ししたところ参議院選も来年に控えていることだし、自民党で決裁してやるから今後約束手形を発行しないように」と恩情あるお言葉をいただいたと申されました。私といたしましては、政務ご繁忙な福田先生を煩わすことについてはこの上もない失礼なこととためらっておりましたが、」云々というので、ぜひそのごあっせんをお願いしたい、こういう手紙が岡田逸平という人から福田赳夫先生あてに出ているわけですが、御承知ですか。
  187. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう手紙をいただきました記憶はあります。
  188. 西宮弘

    ○西宮委員 それに対してこういう返事が出ておるわけです。これは福田さんではありませんで、福田大蔵大臣に代わりまして秘書官越智通雄という名前で、「十月二十一日付福田大臣あての御書面たしかに拝受いたしまして、大臣にお見せいたしました。西郷吉之助先生は福田大臣の親しい政友でございますが、新聞等で御案内のとおり西郷先生の経済問題の諸事につきましては、福田大臣もかねてより心配されているところであります。貴殿からの御書面につきましては、早速西郷先生にお届け申し上げましたので、取急ぎ御知らせかたがた御返事申し上げます。」、こういう手紙なんであります。ここで西郷吉之助先生についてはたいへんに心配しておられる、こういうことで、これは相手の岡田さんが福田先生あてにお願いをしたのは、西郷先生ではらちがあかないから、あなたにこれを何とか解決をしてもらいたい、こういうことをお願いしたわけですね。それに対して福田大蔵大臣は十分かねてから心配しております、こういう文面なんですが、これはもらった人から見れば、それじゃ福田さんが何とかしてくれるんだろうというふうに受け取るのはあたりまえだと思いますが、福田さんのお気持ちもそういうことでしょうか。
  189. 福田赳夫

    福田国務大臣 西郷さんに関する手紙でありますので、西郷さんにこの手紙は回しておけ、そういう私の指示に従いまして秘書のほうでお回しをした、こういうことですね。まあ、ただお回しいたしますというのでもそっけない。そこで多少前後に粉飾がついておる、おせじというか儀礼のことばがついておる、そういうふうに御承知願います。
  190. 西宮弘

    ○西宮委員 そうしますと、福田大蔵大臣としては、この問題については一切関係していない、つまり肩がわりをしてやるとか、何とかめんどうを見てやるとか、そういう気持は毛頭ない、こういうことですか。
  191. 福田赳夫

    福田国務大臣 具体的にその案件に対してどうこうという考えはしたことはございません。ただ西郷先生は私どもの同僚閣僚でありましたし、また多年の政友でもございますので、御相談があれば何かと懇切丁寧に御相談に乗っておった、こういうことでございます。
  192. 西宮弘

    ○西宮委員 佐藤総理にお尋ねをいたしますが、党内で党員の一人として、しかも有力な党員としてこういう問題を起こしているわけですね。そして金銭問題で非常に苦境に立っておるわけですが、総裁としてはどういうふうにお扱いになりますか。いま福田さんば政友として十分親切に相談に応ずる、こういうお話でありましたが、佐藤総裁もその点については全く同様に、いわば道義的な責任を感ぜられて西郷さんの問題について始末をされる、そういうお気持ちがおありかどうか。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 西郷君の問題ではせんだってもお答えをいたしましたように、まず第一に、西郷君を法務大臣に任命したこと、国務大臣に任命したその責任が私にはあるわけでございます。その点では、この機会を通じて皆さま方に私の不明を謝したつもりでございます。また同時に、わが党の所属議員でございますから、そういう意味においての私どもがめんどうの見れることは見たい、かように思いますが、これはめんどうの見れることと見れないこととございますので、事柄の性質によって、その点はすべてをひっくるめてめんどうを見るとか、かようには私は申し上げません。
  194. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、党内のいわゆる政友ですから、その意味でめんどうを見るということは、そのお気持ちはわかります。しかし、この点だけはぜひ注意をしていただきたいと思うし、かつ私も問題として指摘をしておきたいと思うのです。と申しますのは、新聞によると、西郷さんが大臣になられたときに相当の政治献金をしたんではないか、こういうことを新聞が書いておるわけです。もしかりにそういうことが事実だとすれば、西郷さんがあのときには党に対して、あるいはまた党内のグループかもしれませんけれども、それに対して相当な貢献をした。したがって、今回自分が苦しんでいれば、党なりあるいは党の先輩なりがめんどうを見るのは当然だというふうに西郷さんは思いがちだと思うのでありますが、私はそういう点で、新聞でいわれているようなことがもし万一事実ならば、これこそ重大問題だと思うわけですが、その点についてはいかがですか。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 はっきりお答えいたしますが、総裁としてまた総理として、西郷君から特別な金銭的な援助を受けたようなことはございません。
  196. 西宮弘

    ○西宮委員 おそらくそういう答弁をされるに違いないと思いました。私も別にそれを反駁するだけの根拠を持っておりません。しかし世間でいわれることは、たとえば政治の世界にたいへんな金がかかる、こういうことが常にいわれるわけです。昭和四十三年といえば、自民党では総裁選挙もあった年であります。片や名聞の末裔でありまして、大臣の栄職につきたい、そういう願いも相当熾烈なものがあったろうと思います。そういう二つを結び合わせて考えたがる、世間の人はそういうふうに考えがちなのではないかと思うのであります。私は、とにかくいまの政治にたいへんな、巨大な、巨額な金が使われるというところに根本問題があるんで、この点はぜひ私は政治の姿勢を正していかなければならぬと考えるわけです。なおその問題についてあとで申し上げたいと思いますが、たいへん失礼な言い方でまことに恐縮千万でありますが、私の感じだけ申し上げさせていただくならば、私は、西郷さんは少し常軌を逸し過ぎているのではないかと思います。私に非常に失礼なことを言わせていただくならば、国会議員を辞任をして、みずからの立場を明らかにするというくらいの決意があっても差しつかえないのではないかというふうに私は思いますけれども、総理はいかがですか。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私に関することなら別ですが、西郷君に関することは西郷君自身が、これはまたお答えする機会もあるだろうと思います。
  198. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは西郷さんの問題についてはこの程度にとどめますが、私は、これは残念ながらいまの政治の中であらわれた、現象面としてあらわれたほんの一部ではないかと思う。いまのように政治に金がかかりますると、そういういろろいな不祥事件が出てくるということを私は避け得ないのではないかと思います。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一言いたしておきます。西郷君の場合は西郷君の特別な事情だろうと思います。これはどうも、政治がいま金がかかるからといって、保守党議員がいかにもそれに全部同じように感ずるというような印象を与えられるような発言のおそれがあった、かように思いますの  で、その点だけは注意して申し上げておきます。
  200. 西宮弘

    ○西宮委員 私はいま私の印刷物を配っていただくようにお願いしたのですが、いいですか。
  201. 坪川信三

    ○坪川委員長代理 いま理事間で話しております。
  202. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、いまお配りしようと思ってお願いしたのは、別にむずかしい資料ではないのです。ただ時間がありませんから、ここで読み上げておったのでは時間がかかるので、これは官報に載っておるのをただ拾ってきただけの数字でありますから、別に特だねでも何でもありません。官報の数字そのままであります。そこに書きましたのは、過去十年間の政治資金について――いま配っていただくそうですが、これは官報の数字だけなんでありますから別に驚くものではありません。ただ裏に注釈を加えましたけれども、註の一に「「この数字が、正確に政治資金収入の総計をあらわしたものとは思われない。届出されないかげの巨額の資金があると見るのが政界の常識であろう」といわれるが」、これは朝日の社説です。「この「かげの巨額の資金」を捕捉することはできないので政治資金規正法に基いて、届出のあった分について記載した。」、こういうことでありまして、私もその点非常に残念に思います。いわゆる陰の巨額の資金というものがもしあるとするならば、それを捕捉をしてその上で議論をしたいのでありますが、それができないままに、そういう不安を感じながらこの議論をせざるを得ないというのは残念であります。  私が佐藤総理にお尋ねをいたしますのは、この政治資金の中で、俗にいわゆる佐藤派と称されるグループの資金が非常に多いわけであります。こういう点で、自民党全体の収入総額の中に占めている俗にいわゆる佐藤派と称される団体の資金は、常に二割、三割、多いときには四割近くにもなっているわけです。私はそれでは党としての機能を果たすことができないのじゃないかという感じがするわけであります。もちろん他党の私がそういうことをかれこれ申し上げる必要はありませんけれども佐藤総理は最近しきりに政党本位の政治ということを言われるわけです。その際に、こういう党内の一実力者がそういう巨大の金を党内で操作をする、こういうことになりますと、なかなかそういう政党本位の政治ということができなくなるのじゃないかということを私は懸念をするから申し上げるわけです。なお、このいわゆる佐藤派と称する団体の資金は、昭和三十五年にはこのランクにおりまするけれども昭和三十六年以降は、直ちに池田さんのグループを追い越しまして、党内のトップに立って非常な勢いを示しているわけです。私がたまたまここに書きました朝日新聞の社説は、日本の政治の権力者は金によってその位置を獲得するんだ、こういう意味の社説を書いておるわけであります。私は、もしその社説が真理であるとするならば、その佐藤さんのグループの歩み方というのは、まさにそのとおりだといわざるを得ないと考えるのでありまするが、佐藤さんは最近特に政党本位の政治ということを強調されておりまするので、その際こういう状況で政党本位の政治ということが可能なのかどうかということについてお尋ねいたします。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの西宮君のお尋ね、ちょっとわかりかねるのですが、私はいま各派閥、いわゆる政党内の派閥、そういうものが本体を忘れたような状況だと、これはけしからぬとおっしゃってしかるべきだろうと思います。しかし人の集まりでございますから、そこらにある程度の派閥、そういうものはあり得るのじゃないだろうか。まあわが党の場合大きいからずいぶん派閥も多いようです。社会党においてもやっぱりそういうものもある。こういう点は、それだからといって、そのもっと全体としての一つの意識、この意欲があるからこそ政党はできておるのでありまして、幾ら派閥が派閥本位だと申しましても、政党としてのワクははずしておらない。そのことを考えると、やはり国民に呼びかけた場合でもそのことのほうが大事なんじゃないか。総ワクとしての、保守、革新だ、かような言い方はいたしませんが、自由民主党のワク内の私ども派閥だ。社会党にもやはり社会党のワク内においてのある程度の派閥、そういうものはあるだろう、かように思うのです、これは人のつながりでございますから。それで今度選挙の場合に、そういう党意識で選挙が行なわれるようにできるだけくふうすべきじゃないか、これは私の主張でもあります。したがって、ただいま言われる点が、どうも派閥本位、そのもの自身が直ちに政党だ、かように考えるわけにはいかない、このことだけ申し上げておきます。
  204. 西宮弘

    ○西宮委員 もちろん派閥イコール政党などと思っておりませんし、党内においての派閥であることはよくわかります。まあ佐藤さんは社会党の問題も例にあげられましたけれども、少なくとも私ども社会党の場合は、こういう金銭によって、何といいますか、それを根拠にしているというようなことは、これは絶無に近いと思うのです。それに比べて自民党の場合こういう状態である。私は大前提としてさっきから繰り返して西郷さんの問題以来申し上げておりますることは、いまの政治を毒しているものは金銭だ、金と政治の癒着だ、百害のよってきてるところことごとくここに根源があるのだ、こういうことを申し上げておるわけです。こういうやり方ではいわゆる政党本位の政治はできない。さればこそ第五次選挙制度審議会においては、政治資金は政党が集めて派閥は集めない、まあ派閥はごく少額にとどめる、こういう答申を出したわけです。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、それは実現をされておらない。私はその点について、それじゃ佐藤さんは、やはりいままでどおりこういう状態で自民党を運営していく、要するに自民党内の実力者が金をもって党内の操作に当たるというようなこともそのまま承認をしていく、こういう御態度でございますか。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる私の金を集めている団体は幾つもございます。しかし私自身がみずから陣頭に立って金を集めているような状態では今日はございません。したがいまして、この運営そのものが、もう最初こしらえたときとよほど変わっている。この事実だけは認めていただきたい、かように私はお願いをしたいのです。この中の会といいますか、これは佐藤派一本ではないように、私自身もその会のあり方を十分知らないほど、周山会、育成会その他のものがあるようでございますが、それに私自身はタッチしておらない、このこと自身をいま言われたことと結びつけて考えてみていただきたい。私自身が全部の金を配分しておるとかあるいは私自身が積極的に金を集めておる、こういうことだといま言われるような批判も当たろうかと思いますが、さようなものではないということを申し上げてあきます。
  206. 西宮弘

    ○西宮委員 一から十まで佐藤さんが佐藤派の金集めに奔走している、そういう状態でないことはもちろん私どもも常識として承知をいたしております。ただ、それではお尋ねをいたしますが、基本的な問題として、こういう多額の、巨額な金を使う、膨大な、ばく大な、巨大な金を政治に使う、こういうやり方はやはり従来どおり継続していくべきものなのかどうか、それが望ましいのかどうかという点についてお尋ねします。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 はっきり申し上げて望ましくない、このことははっきり申し上げます。
  208. 西宮弘

    ○西宮委員 望ましくないにもかかわらず、ますますその傾向を強めているわけですよ。私はそういうことになると、冒頭にお尋ねをしたように、積年の弊風を一掃するためにこん身の努力を払う、こういうたいへん重大な決意を表明しておられるのだけれども、一向に実行がそれに伴っておらない、こう断ぜざるを得ないと思うのですが、その点についての御反省はいかがですか。
  209. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいつもしばしばそういうことで指摘されるのでございます。またことしの場合、この会議を通じましてももうすでに質問を受けたようにも思います。私はこれに答えて、やはり金のかからない選挙、そういうものでありたいし、そのためには党本位の選挙が望ましい、またそういう意味で十分検討もしていただきたいと思っておる。政治資金そのものが問題になるが、同時にこれは選挙制度とも関連が多分にある、そういうことをも理解していただきたい。昨年国調が行なわれたばかりでございます。ことしも参議院の定員について是正すべきだ、こういう議論がございますが、ことし予定されておる参議院選挙、これにはやはりいま定員を改正することは間に合わないように思う。また十分に国調の結果が精査されて、しかる上で定員是正をするのが当然だろう、かように思いますので、そういう際にあらためて私は検討したい、かように思っております。
  210. 西宮弘

    ○西宮委員 もう一つ申し上げたいのは、私は透明度ということばで表現をいたしておりますが、これは要するに、その資金の中に占める寄付というので表現をされております。そういう届け出をしておるものです。寄付ならばその内容を明らかにしなければならない。ところが寄付以外の収入だと内容を書かなくてもよろしい、こういう法律になっておりますので、その寄付扱いにしないというのが相当の量を占めるわけです。これはまことに残念なんですけれども、いわゆる佐藤派、たくさんの団体があります、この裏側に書いてありまするように、佐藤派と称しますのは四つか五つの団体だと思いますが、それ全部を取り上げてみましても最も低いんですよ。たとえば昭和三十五年で申しますると〇・〇二、まあ二%、三%、五%あるいは〇・七%などといったように極端に低いわけです。私はこの点はまことに残念だと思うんですよ。先ほど総理が言われましたように、何も総理が一々こまかい指図までしているとか私は思いません。しかしこの問題が重要な問題になっているのですから、一声くらいは、あれは十分中がわかるようにしておけよというようなことを会計係にお話しをされるくらいのことはあってもいいのではないかと思うのです。まあ偶然かどうか知りませんが、残念ながら佐藤派はその点が特に低いわけです。その点について何か御所見ございますか。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはおそらく会費というか、会員から取っているから透明度としてのものが低い、こういうことだろうと思うのです。私は会費と寄付、特別寄付、そういうものとは区別されている、かように理解しております。やっぱり支持者が固定していると、会費は比較的に納めいいというか取りいい、集めいい、そういう状況じゃないかと思います。どうも透明度といわれることは、ちょっと私は自身抵抗を感ずるのですが、その会員はおそらく明確になっておる、かように思います。
  212. 西宮弘

    ○西宮委員 会員は明確になっておりまするけれども、それは全然公表されないわけです。政治資金規正法のそもそものねらいは、公開の原則にあるわけです。現在行なわれております政治資金規正法は、寄付の額を規制するとかそういうことは全くありませんから、あれは実態はいわば政治資金公開法なんですよ。ところが会費の名のもとに全部伏せてしまう。そういうことが絶えず問題になっている。たとえば、佐藤さん、新聞をごらんになってもおわかりのとおり、あの政治資金規正法に関する届け出は、毎年年に二回行なわれるわけです。ところが、二回行なわれるたびごとにそのことが新聞等ではでかでかと書かれる。つまり国民は中を知りたいんだ、こういうことなんです。たとえば私が一例に、いま問題になっております公害問題について、公害企業と称するそういう企業がどういう政治献金をしているだろうかということを調べてみますると、全く、たとえば国民協会をはじめといたしまして各派にまたがっているわけです。しかし、残念なるかな、それがいわゆる会費という形で隠されてしまっておる。こういうことのために、もうほんとうにわずかしか表面には出ないわけです。これはもう全く小さな節穴からのぞいてみたらちらっと見えたという程度にしか見えない。その程度に見えるだけでも、それはみんなそれぞれ相当額の金を国民協会のみならず各派閥に献金をしている。こういうことは重大問題でありまするけれども、残念ながら、それはほんとうに九牛の一毛しかあらわれてこないというところに問題があるので、あの政治資金規正法を改正案として審議会が提出をいたしましたのは、そういう名目のいかんにかかわらずこれは公開すべきである、こういうことを進言しているわけですよ。佐藤さんはそれをおやりになる御意思がありますか、どうですか。
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど幾らめんどうを見ないといっても、会計係に注意すべきことは注意しろ、こういうお話がございましたが、実は私は、私の関係する金を集めている連中に対して、いままで何々業界というような形で納められている会費の中に、今日問題を起こしている公害を発生している会社、これがあるかないか、あるならばそういうものの献金は謝絶してくれ、断わってくれ、こういうことで十分徹底さしたつもりでございます。でありますから、ただいま言われるとおりの状況に置かれておる、かように私は理解しております。
  214. 西宮弘

    ○西宮委員 それはたいへんけっこうですが、私がお尋ねをいたしましたのは、その公開の原則を貫徹する、そういうふうに政治資金規正法を改めてもいいし、あるいはいまのままでやってもよろしいんだけれども、そういう方向に進めようとする御意図があるかどうかということをお尋ねしたわけです。
  215. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体政治資金そのものがもっとかからないような方向に進むということなら私考えますけれども、ただいまのような、どう申しますか、小さい範囲の改正、それはかえって逆な方向へ行くのじゃないだろうか。ただいままでは会費で取っていたあるいは業界全体として特殊な会社との結ばれつきをつかないで済んでいた。したがって、比較的その点では業界からの献金ということのほうが納得がいきやすいのです。あるいは個々の特殊な会社から献金されると、どうもその会社に対して特別の因縁をつくるのじゃないか、こういうことで――そうでもないでしょうが、いいところもあるが悪いところもあるんだ、かように私は思いますが、大体献金はなくて済むような一本の方向でいくという、そういう方向が望ましいんではないだろうか、かように思います。  しかし、今日の実情がどうも金がかかっている。おそらく後援者一人もなしに自分だけでやっていけるとか、あるいは党だけからの支援は受けるが、もう個人的な支援は一切受けない、こういう政治家はおそらくないだろう、かように私は思いますので、そこらの点は本筋に返って、とにかく金のかからないような方向にみんなが奮起しなければならないだろう。私が苦い経験をなめたということも実はそういう点にあるわけでございまして、なかなかそう簡単にはいかない、かように私は思っております。
  216. 西宮弘

    ○西宮委員 その原則に返って、金のかからないような政治をやりたい、こういうことにはわれわれも大賛成。したがって、そのためには、私ども野党の側から、政治資金規正法の改正案をもし政府がお出しにならなければ、私のほうで出しますから、ぜひそれを審議して成立をさせてもらいたいと思います。  ただ、残念ながら、ただいままで総理と問答いたしておりました中では、単に抽象的に政治資金はなるべく少なくしようという、そういう希望をお述べになっただけで、私は、少なくともそのいまの公開の原則を貫く、こういうことによって、ある特定の業界あるいは業者、それと政治が癒着をする、そういう問題を十分に食いとめることができる、国民の監視の中で、そういう疑惑を持たせないということができる。にもかかわらず、そういうことに対して総理は何らの積極的な建設的な意図を持っていない、こういうことはまことに残念しごくだと思うんですよ。私はそういうふうに断ぜざるを得ないわけですが、もし総理が、それは君の誤解だ、私はあくまでもそのつもりだ、その公開の原則を貫徹するのだ、そういう御意図ならば、もう一ぺん御答弁を願いたいし、もしそうでなければ、私はいままでの佐藤総理の姿勢の中からは残念ながらそういう点が見えない。それじゃ国民の疑惑が深まるばかりですよ。  だから、公開の原則を貫徹する、ただその一事によっただけでも、私はいまの政治を改革することができる。たとえば外国の立法令を見るといろんな例があります。たとえば資金の制限は一切しない、そのかわり公開は徹底する。あるいはまた歳出は公開しなくてもよろしい、そのかわり歳入だけは全部やらせるとか、あるいはまた政党はやらなくてもよろしい、そのかわり政党以外の政治団体は公開をしなければならぬ、まあ最小限度だろう。そういう立法令などがいろいろあります。いずれにしても、そういう外国の諸令は公開の原則だけは貫徹しよう、こういうことがいずれも根底をなしているわけです。ところが、公開の原則についても、いまの総理の答弁の中からは全然建設的な御答弁がいただけなかったということは、まことに残念なので、その点私の意見を表明いたします。
  217. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 西宮君の所説、まことにごもっともです。少なくとも金額も減らさなきゃならぬが、最も大事なことは公開の原則、この公開の原則を考えろとおっしゃることについて、私も同感でございますから、これはいかにして公開の原則を貫くか、その方法等について十分に検討してみることにいたします。
  218. 西宮弘

    ○西宮委員 その大事な問題であります公開の原則ですね。これは現在の政治資金規正法は、さっき申し上げたように、いわば公開法なんですから、それに返ってやられる、こういうことであります。私はその点を具体的に申しまするならば、あのこの前の選挙制度審議会が答申をしたことをそのまま実行してもらえばよろしい、あるいはまた政府がそれに基づいて御提案がなければ、私のほうで提案をいたしますから、どうかこれを成立さしていただきまするように、特にお願いをいたします。  いろいろ申し上げたいこともたくさんございますが、時間がなくなりましたので、これで終わります。
  219. 中野四郎

    中野委員長 これにて西宮君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、安井吉典君。
  220. 安井吉典

    ○安井委員 きょうの質問に入る前に、簡単に総理にお伺いをしたいことがあります。  一月十四日の経済同友会の「変換期に立つわれわれの指点」という年頭見解の中に、平和共存の立場から中国を国際社会の一員に加えるための方策についてもっと進めるべきだという主張があります。さらに一月の二十八日アメリカの上院本会議で民主党のグラベル議員が、中華人民共和国の国連加盟を進める決議案を提出いたしました。アメリカの中にもいろいろ動きがあるものだな、こう思うわけであります。  ところが、この国会でのこれまでの日中関係改善のための数々の議論、数々の提案に対して総理の御答弁は、中共と言っていたのを中華人民共和国と言い直しただけで、前進が全くなしということではないかと思います。政府は、どうも台湾との関係を維持することにこだわって、日中打開の新しい対策に踏み出す意欲を欠くものではないかと思います。台湾の人口は千三百万人、中国本土は七億五千万人、私はこれだけ見ても、子供でも政府態度はおかしいと思うのではないかと思うわけであります。  そこで、今度自民党の藤山愛一郎氏が二月十一日羽田を立って北京へ行かれます。きのう野党三党の書記長が藤山氏に、大局的立場から日中正常化の話し合いができるよう太いレールを敷くため全力を尽くしてほしいという激励をいたしました。  総理は出発前に藤山氏にお会いになりますか。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだその約束を取りつけておりませんが、できれば会いたいと思っております。
  222. 安井吉典

    ○安井委員 野党のほうも激励しているくらいでありますから、ぜひお会いになってお話し合いをひとつしておいていただきたいわけであります。  藤山氏に総理は何を期待されますか。
  223. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 藤山君もいままで出かける自分の用件というものを新聞その他にも一部は発表しております。私は、何と申しましても中国大陸との関係を深めなければならない、かように思っておりますので、あらゆる面でお役に立つような手をとりたい、いわゆる前向きの姿勢で話がしたい、かように私は考えております。
  224. 安井吉典

    ○安井委員 ぜひそういうことにして、できればもっと具体的な依頼でもしていただければと、こう思うわけであります。  今度、世界卓球選手権大会で中国卓球代表団が、政治三原則を認めることで話し合いが実って、来ることになったようであります。藤山さんもこちらから向こうへ行けば、向こうからも要人がこちらへ来るという交流が始まるのではないかと思うのでありますが、向こうから要人が来るという、その来日に対して、それを政府は認めないというふうなことがあるのではないかという心配が一部にあるようでありますが、まさかそんなことはないと思うのですが、いかがですか。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は過去においてもう発言しておるように、人の交流、これが必要だ。また、ましてやいま中国大陸との間を改善しよう、かように考えますと、やはりこちらから行くばかりじゃなく、相手国からも来ていただきたい。差しつかえない限り、わが国の国益に反しない限り、これをあたたかく迎える、 こういうことであってほしいと思います。  ただいま私はちょっとふしぎに思うのは、卓球選手が出かけた、卓球選手が出かけて、これが政治三原則との関係で来てくれることになったという、卓球と政治とどういうふうに結びついているのか。これはお尋ねをするというのはちょっと逆かわからないが、もしお答えが願えれば、そこらもひとつお話を聞かしていただきたい。
  226. 安井吉典

    ○安井委員 それはなかなか日本卓球協会との間で話がきまらないで、そういう中で最後にそれで折り合いがついたというわけで、それを法務省がのんだというわけじゃないだろうと思いますが、そういう経過があったようであります。しかし、いずれにしても先方はきわめてかたいということだけははっきりのみ込んでおかなければならぬと思うわけであります。  そこで、出入国管理法案を今国会に提出をするように政府は準備をされているそうでありますが、これはどうも外国人、特に中国や朝鮮の人のほうから評判が悪いわけであります。日中改善が非常に重要な段階である際でありますから、今度の国会は私はこういうめんどうな法案はお出しにならないほうがいいと思うのですが、どうですか。
  227. 小林武治

    ○小林国務大臣 この法律は、御案内のように、昭和二十六年にできておるポツダム政令である管理令、こういう非常にこの時代に合わない規定によって取り扱いをしておる。いまのように大きな飛行機で大量に外国人が往来する、こういう時勢においては合わない。したがって、これらの入国の手続の簡素化とかあるいは在留管理の合理化とか、こういうことを主としてねらってこの法案を出す、こういうつもりでありまして、私は、この法案自体が日中関係に悪い影響を与える、かようなことは考えられない、こういうふうに思っております。
  228. 安井吉典

    ○安井委員 総理、どうでしょうか、日中改善の問題がこれだけ大きな課題になっている際でありますから、やはりこの際は、法務大臣はだいぶ思い込んでおられるようでありますけれども、総理のほうはもう少しうしろ向きで、さっき前向きと言われましたけれども、これは出さないようなネガティブな方向でひとつ御答弁願いたいのですが、いかがですか。
  229. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安井君、ちょっと珍しい発言のように思います。私は形式を言うわけじゃありますんが、ポツダム政令でそれをいつまでも守っているというのはおかしいんじゃないか。もうポツダム政令を直すこと、その中身が問題なんで、そういう法案が出たら十分ひとつ御審議をいただいて、もういつまでもポツダム政令で国の出入国をきめる時代じゃないんだ。それこそ革新政党らしく発言が望ましかった、かように思います。どうかよろしく御審議のほどをお願いします。
  230. 安井吉典

    ○安井委員 どうも逆襲したおつもりのようでありますけれども、ポツダム政令そのものを残せと私どもは言っているのじゃなしに、いまお出しになる内容は、政治活動をきわめて制限するとか、とにかく現在の時点にきわめて悪い影響をもたらすような、そういうような内容だから、私は申し上げているわけです。さらにひとつ御検討おきを願いたいわけであります。  予算の問題でひとつ大蔵大臣への御質問でありますが、今度の予算に対するキャッチフレーズは中立機動型ということであります。このよしあしは別として、私は不況対策はこれは非常に重要だと思いますけれども、この運用をもし誤ると、インフレや物価高に走ってしまうおそれもあるわけであります。したがって、運用は慎重にということをこの間も本会議で申し上げたら、全く同感です、こう大蔵大臣のお答えでありました。私は問題は、この機動性をいつどのように発動するのかという点が大切で、この点はやはりこの予算委員会としてもはっきりさせておく必要があるのではないかと思います。例の予備費の大幅にリザーブする問題やら政府保証債の問題、弾力的な運用だとか、そういうふうな問題で財界のほうから要求があったから発動したとか、選挙が近いからここでひとつというふうなことでの発動では国民は納得しません。ですから私は、経済指標を中心にするとか、何か具体的な指標というもので運用する、そういうふうなことがなければならぬのじゃないかと思うわけであります。運用のめどといいますか、そういうのをひとつ伺っておきたいと思います。
  231. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はしばしば申し上げているのですが、過熱もなくまた落ち込みのない経済状態、そこへ日本経済というものを定着させたい、こういうふうに考えております。いまの経済情勢は、どちらかというと落ち込みへの可能性、これをはらんでおる、こういうふうに見ております。しかし、いずれにせよ、過熱というような事態が見られますれば、予算の執行を抑制するとか、景気鎮静化の策をとる。しかし、逆にいまおそれられていますように、落ち込みの傾向が強いという際には、弾力的手段を使う、こういうことを申し上げておるわけなんです。  問題は、いついかなる時点でどういうふうということですが、これは経済はそう簡単なものではないと思うのです。指標がどこへ来たからどう、こういうものではないと思いますが、大体の見当は経済成長実質一〇%、これをめどにいたしまして、これを大きく上回るという傾向があれば抑制に出る、また大きくこれを下回るという傾向が出てきますれば、下ざさえの、あるいは浮揚の措置をとる、こういう考えでございます。
  232. 安井吉典

    ○安井委員 抽象的には、それでわかるわけです、大きく上回るとか下がるとか。しかし、それをだれが判断するのかといいますと、これは大蔵大臣判断されるのかもしれません。さっきも総理大臣に間違われるくらいな大人物ですから、おまかせしておけばそれでいいのかもしれませんけれども、しかし、国民にはやはり客観的な判断がほしいわけですね。私は、何かそういう意味合いで、その判断のめどといいますか、そういうようなものをやはり何かおつくりになっておいていただかなければ、どうも心配が残るような気がするわけです。重ねてお伺いいたします。
  233. 福田赳夫

    福田国務大臣 経済見通しで一〇・一%実質成長ということをいっておりますが、大体一〇%というものをにらみまして、これを大きく割り込むような傾向が見えるという際には機動措置を発動する、かように御理解願います。
  234. 安井吉典

    ○安井委員 私はそれだけではどうも満足できないのでありますけれども、この議論はあとに残しておきたいと思います。やはり何か国民がなるほどなあ、こう納得できるような運用のしかたをさらにお考えおきをいただいておきたいわけであります。  物価の問題につきまして、御担当は企画庁長官だと思いますが、お伺いをいたしたいと思いますのは、新年度の経済見通しのうち、物価上昇率を五・五%と見ておられるわけです。ところが、四十五年度の消費者物価上昇率を当初四・八%アップと見込んだのが、先般ついに七・三%アップまで改定せざるを得なかったわけです。それを前提にして五・五%がきまったものだ、こう思うわけであります。  ところが、四十五年の一月から十二月までの総理府の物価指数によっても年間上昇率は七・七%、この全国統計が開始された昭和三十八年以降最高のアップ率だ、こういうふうに報ぜられています。さらに昨今の、この間うちから問題になっている野菜の値上がりが指数に入ってきますと、四十五年度の指数というものは、改定したばかりの七・三%を必ず大きく上回るようになるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。そして同時に、四十六年度は五・五%はますます怪しくなるのではないかと思うのであります。この中に、物統令の廃止の問題も五・五%の中に織り込み済みですか。それらの点についてちょっとお伺いをいたします。
  235. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ただいまの五・五の数字についてございますが、私どももなかなかこれは努力の要ることであるというふうに感じております。まあ、昨今の生鮮野菜を中心とする季節商品の値上がりはまことに異常なものがございます。農林省でもいま必死になって出荷対策をやっておりますが、年を越しまして逐次その効果が出てまいるものとわれわれも期待をいたしております。率直に言いまして、体制もまだ十分整っておらない点もあると思いますが、やはり各方面の努力によって、そうした生鮮食料品の異常高というものを逐次鎮静化していきたい、そういうことも頭に置きながら、また一方においていわゆる全体としての景気の鎮静化、非常に超高度とも申すべき需要というものがやはり相当鎮静してきておることも事実でございます。そうした経済全体の過熱状況の鎮静化というものも頭に置きながら、各般の物価対策を今後進めてまいりたい。そういう前提に立ってわれわれとしては五・五%というものをぜひとも実現したいものである、こういう考えに立っておるわけであります。  その際に、ただいま物価統制令というお話がございましたが、これは、こういう個々のものを別に数字的に入れておるわけではございません。マクロ的な予想を立てておるわけであります。また同時に物価統制令につきましては、これは農林大臣もたびたび申しておりますように、これによって消費者米価が実質上の値上がりにならないように、今後それらについての体制の整備、それから政策の運営について十分配慮をしてまいる、こういうことをはっきりと表明しておるところでございますから、そうした点も十分参酌する必要があろうか、こう思うのであります。
  236. 安井吉典

    ○安井委員 いま尋ねた中にありました、四十五年度の指数は七・三%でおさまりますかどうですかということについてのお答えがありませんでした。
  237. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 四十五年の一月から十二月、すなわち暦年の指数は、御指摘の七・七%でございます。これを横ばいにいたしますと七・七%ちょっとぐらいにおさまるわけであります。昨今の情勢から、それより少し上がるとは思いますけれども、生鮮食料品等の上がる率は少し落ちてくるのじゃないかということもわれわれは十分期待をいたしております。そういうこともあわせて、七・三%を多少こえることがあるかもしれませんが、できるだけそうしたところに落ちつくように、こういう気持ちでおります。
  238. 安井吉典

    ○安井委員 私は、経済見通しとか、物価見通しなどというのは、どうも単なる目安であって、ほんとうにそれを実現しようとかなんとかいう意欲がなしに、ただ予算を組んだら、そういうものがあったようにかっこうをつけなければいけないので置いているような、ああいうものを立てているように見られてしようがないわけであります。いつもそれが当たったためしはないし、それをほんとうに真剣に実現しようなどというものでつくったものじゃないのじゃないかというふうな気がするわけです。ですから、私はそこに政府物価政策の甘さというものがあると思います。あくまでほんとうに消費者物価を安定させようという、そういうお気持ちがあるのなら、きちっとした目標をきめて、こう見通しがある、その見通しをあくまで担当大臣に責任を持ってもらう。人事の佐藤さんだそうでありますけれども、担当大臣が責任をもってこれが実現できないようならやめてもらう、それぐらいのおもしを持った目標なら私はわかるのですよ。どうもそうではないと思います。したがって、それぐらいな真剣なかまえを持っての見通しを立ててそれを実現する、そういう意欲を私は示してもらわなければいかぬと思うのですが、この点は総理どうですか。あくまで見通しを実現するというそういう御決意を伺いたいわけです。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安井君も御承知のように、いまや情報化時代だといわれておる。私どもが取り得る情報、これはもう身近にあるわけです。したがいまして、最近の見通しは過去のような見通しとは違って、その正確度はよほど高まっているんじゃないかと思っております。ただ、人間がそういう情報を得ながらそれをいかに判断するか、その判断が間違うととんでもないことになる。ただ、データそのものとすればすでにそろっている、それを正しく理解する、そうしてあやまちなきを期する、こういうことでなければならない、かように思っております。経済企画庁もそういう意味で最近の見方についてはなかなか慎重であります。ただそれを表現として、佐藤君は比較的軽いような表現をいたしておりますけれども、しかしその熱意は十分買ってやっていただきたい、お願いしておきます。
  240. 安井吉典

    ○安井委員 企画庁という役所は、これは実施官庁じゃなくて、各省がやるやつのそのあとの数字だけがくるところではないか、こう思います。しかし、物価の問題に失敗したら企画庁長官が首になるんだぞというぐらいになれば、各省大臣もこれは一生懸命になるんじゃないかと思います。私は、そういう意味物価の問題に対する取り組みの決意というものを政府に強く要求をしておきたいわけであります。  公共料金を一年間上げないというふうなことを先般来お話しであるわけでありますが、その一年間というのはいつからいつまでですか。
  241. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 別に非常に形式的にいつからいつまでということではございませんけれども、私たちがあのときに提唱いたしましたのは、ちょうど予算の編成の時期の直前でございまして、ちょうど各種の公共料金の値上げが非常にやかましくうわさされておったときであります。そうしたことを頭に置きまして、公共料金の抑制方針というものを打ち出したわけでありまして、あのころから頭に置いて大体一年と、こういうような感じであります。
  242. 安井吉典

    ○安井委員 来年の春郵便料金や電報料金を上げることを政府はおきめになっているわけですが、それはまあ一年以内に入らないわけですね。それからもう一つ、来年は国鉄再建計画の中の国鉄料金の値上げの年にたしか政府の計画ではなっているんじゃなかったかと思うんですよ。ですから、いつからいつまでが一年か、据え置きか知りませんけれども、それからあとの段階においてぞろぞろっといろんなものが一ぺんに出てくる、そういうことになりはしませんか、どうですか。
  243. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 一年という大きなめどを立てましたが、残念ながら郵便料金につきましてだけ三種、四種について多少の例外ができましたが、しかしその他のものはすべて一年は抑制をするということがはっきり実現したわけでございます。そこでその一年が済んだあとでどういうことになるか、こういうことでありまして、これはやはりこの郵便料金につきましてはある程度のめどがたっておりますが、その他のものは、まだ今後の事態に対処して、われわれとしてもできるだけ抑制の方針を貫いていきたい。国鉄につきましてはまだ来年は本来のスケジュールには入っておりません。もちろん今後いろいろと問題が起こるかもしれませんが、事態をよく究明しまして、われわれとしては抑制方針等十分にらみながら善処してまいりたい、こういうふうに考えています。
  244. 安井吉典

    ○安井委員 公共料金の中には地方公営企業の料金の問題もあるわけですね。電車賃、バス賃あるいは水道の料金等もあります。下水道の料金の問題もあります。それらの問題も含めて、いわゆる公共料金についての対策はやはり物価問題という立場からアプローチしていけば、どれもこれも赤字で経営がどうにもならぬというところに問題があるわけです。それらの点は、やはり政府の公共負担の不十分さ、あるいは国営や自治体の経営というふうな性格を持つにもかかわらず、それに対する財政援助の不足、そういうようなものが私は根底にあるような気がするわけです。だから、公共料金の問題については、もう少し、本来国や自治体が負担しなければならないものまで企業体に負担をさせている問題を国や自治体でカバーしてあげるということと、それからもう一つは、いまも申し上げましたように、金利に対する利子補給だとか、その他の財政援助措置を強力にやる、そういうようなことで、公共料金の問題は相当程度据え置きが可能になるのではないか、こう私は思うわけであります。それについてはどうですか。
  245. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 公共企業、目下のところ値上げの申請は一件も出ておりませんが、いずれにしましても、公共企業体の料金問題は、やはり物価政策上も重要な問題でございます。まあ総じて申し上げますと、公共企業体というものは、とかくいわゆる合理化がおくれがちの部面である、そういう意味において、私たちもできるだけこれを抑制し、厳正な態度で臨んでまいりたい、こう思っております。しかし、ぎりぎり経営の合理化をいたしましても、なおかつ、どうしても困難な場合がございます。そのときに、一体これをいわゆる財政的な公共負担によってまかなうべきであるか、あるいは料金の引き上げによってまかなうべきであるか、これはやはりそのときの総合的な経済判断によって、私は決定すべきものであると思っております。国鉄のような場合におきましては、御存じのように相当一般会計からの財政負担も出しておるのでございますが、これをすべての原則にすることが適当かどうか、これには相当の疑問もございます。できるだけ、ひとつ経営の合理化をはかる。それからまた郵便制度等の問題についてもわれわれは考えられるのですが、こういうふうに人件費の比率の高い部門におきまして、今日のような人件費の上昇ぶりでございますから、こうしたものにつきましては、制度全般の抜本的な改正をやはり考えなければならない、そういうふうに感じております。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の出る幕でないかもわかりませんが、この公共料金にアプローチするしかた、物価の面もあるだろうと思いますが、もう一つ国民大衆に対するサービスという問題、これはやはり見のがしてはならないと思います。したがって、サービスに欠くるような点があれば、これはやはりその原因も追及していかなければならない。経営の合理化もはかりますが、またそういう意味においての料金の適正化、そういうことも考えていかなければいかぬ。ただ単に物価だけからアプローチされることには私は不満なものですから、つい立ち上がったので、御了承いただきます。
  247. 安井吉典

    ○安井委員 総理から特に御発言をいただいたわけでありますが、モスクワに行きますと、電車賃は三コペイク、バスが四コペイクですか、地下鉄が五コペイク、四倍すればいいわけですから、十二円、十六円、二十円です。いつ値上げしたのかと聞いたら、こういう物価も上がるからいつですかといったら、これは革命のときですと、こういうわけですね。そうすると、五十年前ですよ。社会主義国と日本の場合とはこれは違うと思いますけれども、しかしほんとうに真剣に、これは国民に対する国のサービスだ、住民に対する自治体のサービスだ、そういう側面を強く押し出せば、やっている国が現にあるわけですからね。さっき国鉄に対して相当お金を出したというふうにいわれますけれども、ヨーロッパの国々の国鉄の状態なんか見たら、それはもう及びもつかないような出し方でしか、いまの政府はないと思います。もちろん料金問題だけで公営企業の問題、公共企業体の問題を私は言おうと思っておりませんけれども、しかしそういう側面を、いま物価の問題がもうこれぐらい重大な段階でありますから、やはりそういう面への検討というものは非常に大切だということを一つ指摘をして、次の問題に移りたいと思います。  機関委任事務と、それから例の朝鮮人国籍書きかえ問題について、自治大臣それから法務大臣にひとつ伺いたいと思うのですが、これはだいぶ法理論のややこしい問題もございますので、この中身について私はイエスかノーかのお答えをいただければいいようなふうにひとつお聞きをしていきたいと思います。  まず、機関委任事務につきまして自治大臣にひとつ伺っていきたいわけでありますが、自治体の事務には固有事務と委任事務があって、委任事務は団体委任事務と機関委任事務と、こういうイロハの分類方法があります。そのうち機関委任事務は自治体本来の姿から一番遠いところにある姿にあります。ところがこの機関委任事務が最近どんどんふえていろいろ問題を起こしているわけでありますが、私はこの問題を分けて二つにしたい。一つは行政的な側面、一つ財政的な側面です。地方自治は憲法に保障された自主独立性を持っているわけであります。ところが、その本質を忘れた態度が中央政府にもあるし、それから自治体のほうにもあるわけであります。特に機関委任事務については、地方自治法がもう二十五年もたつのですけれども、それでも、地方へ行きましたら、県庁へ行ったりあるいは中央の役所へ行くのを何か上の上級の役所へ行くように思っている人もあるし、またそれを当然のこととして国や県庁の役人の人が下に臨んでいる、こういうふうなことではないかと思います。中央官庁がまるで出先視するような、そういうような態度から、いろいろな通達行政が行なわれているのではないかと思います。しかもその数がどんどんふえていって、自治体本来の仕事を圧殺しています。特に都道府県のごときは、その機関委任事務がむしろおもになってしまって、本来の住民福祉のための固有事務のほうは少ない。三割自治から一割自治、そういったような姿さえあらわれているわけであります。  そういう行政的な側面が一つと、それからもう一つ財政的な側面でありますが、これは国の事務なんですから、それを自治体に委任しているわけです。ですから経費は全額国が負担をして自治体に負担させない、させてはならないというのが原則で、地方財政法第十条の四もはっきりそのことをきめているわけであります。問題の外国人登録事務も、この十条の四の第三号で、はっきり外国人登録事務と、こう書いてあります。しかも十八条には、委託費の交付額は「必要で且つ充分な金額を基礎として、これを算定しなければならない。」こういう義務も課しているわけであります。ですから、全額国が持つのですから、交付税は一銭も入れてくれません。ところが、実態は、いろいろな資料を私持っておりますけれども、これは北海道の帯広市の場合は、四十四年度のものを見ますと、自治法の別表第四に掲げた機関委任事務だけでも七億二千二百六十九万一千円という支出をしておるのに対して、実際交付されている金は五億二千二百五十三万六千円という、一億三千万ぐらいもらい不足であります。それだけ結局市民の税金で国の仕事を持ち出してやっている、こういうことであります。補助金、たとえば学校の建設その他の補助金の単価が安いことによって、超過負担を生じております。これは問題でありますが、きょうは私はこれは取り上げません。ところがこれは、超過負担じゃなしに、地方財政法に違反した負担であります。こういう行政的なあるいは財政的な問題がこの機関委任事務にあるわけであります。  この事実に対して自治大臣は、どういうふうにお考えになって、どう対処されていられるのか。特に地方制度調査会も、従来から、機関委任事務は減らせとか、中央官庁の運用の改善だとか、自治体の不当な負担を解消せよとか、こういうような答申もしていたように記憶するわけでありますが、ちっとも改善されていない。こういう現状について、いかがですか。
  248. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 外国人の登録事務に関する経費につきましては、ただいま先生御指摘のとおり、これは地方の公共団体、市町村あるいは府県で引き受けるべきものじゃない、全額国でこれを補償すべきものであろうと心得ております。  御指摘のとおり、いわゆるこれは法律上違反だとおっしゃいますが、財政上から見れば超過負担でございまして、これが解消については年来つとめておりまして、四十六年もつとめましたが、まだ十分でございませんので、関係方面とも連絡御相談を申し上げまして、これが解消につとめてまいりたいと考えております。
  249. 安井吉典

    ○安井委員 私は、いままでは機関委任事務一般について申し上げたわけでありますが、自治大臣は特に国籍、外国人登録事務に限ってお話がございました。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕  そこで、それの問題に移りますが、外国人登録事務の財政については、委託費を法務省は自治体に支出はしているわけでありますが、一体都道府県と市町村別に幾らぐらい出しているのですか。
  250. 小林武治

    ○小林国務大臣 私いま区別をいたしておりませんが、この委任事務を始めた当時は一億何千万円、四十六年度予算においては三億二百万円と、相当の増加を来たしておりますが、この内容等はほとんど大部分が市町村に行っておる、そういうことでございます。
  251. 安井吉典

    ○安井委員 どのような計算基礎で支出されていますか。
  252. 小林武治

    ○小林国務大臣 私はいまその内容あるいは起算の基礎等については、ここに書類を持っておりませんが、調べて、事務当局からお答え申し上げます。
  253. 安井吉典

    ○安井委員 これはあとでもいいから資料で出してください。  私の手元にあるものによっても、これはいま申し上げた帯広市ですが、四十四年度の分にすると、実際支出額は、外国人登録事務に八十六万四千円。やはり一人一人これはいるのでしょうね。ところが、法務省から出ている金は八万二千円。いま問題になっている田川市の場合は、外国人登録事務に実際かかっている金は、これは各年度出ていますが、四十四年度で百二万九千二百五十二円、これに対して法務省が委託金として出しているのは五万六千百円。二十分の一です。どうですか、こういう事情は御存じですか。
  254. 小林武治

    ○小林国務大臣 私、いまの数字は報告を受けておりませんので、これらにつきましても、全国的な調査をしておると思いますから、あとでお答えいたします。
  255. 安井吉典

    ○安井委員 御存じないようですから、念のために地方財政法第十条の四を読みますと、「もっぱら国の利害に関係のある事務を行うために要する左の各号の一に掲げるような経費については、地方公共団体は、その経費を負担する義務を負わない。」そして第三号には「外国人登録に要する経費」こうはっきり明記されています。そしてまたさっきも申し上げましたように、必要なお金は必ず計上しなければならないという規定が同時にあるわけであります。  そこで、この朝鮮人国籍の問題に対する法務省の通達行政が間違っているということを、私もいろいろな角度から調べているわけでありますが、外国人登録法の第十条の二の規定では、第一項に「市町村の長は、登録原票の記載が事実に合っていないことを知ったときは、その記載を訂正しなければならない。」こうあるわけです。つまり間違いの訂正は純然たる市町村長の権限、こういうことで法律が市村町長という機関に委譲をしているわけであります。別に法務大臣の事務補助者として市町村長をきめたというわけでは決してありません。授権事項です。ですから施行規則を見ましても、訂正をしたらその結果を報告さえすればいい、こういうことであります。ところが、「韓国」から「朝鮮」という国籍の訂正だけは、すべて一件ごとに法務大臣に伺いを立てて許可制としているわけです。機関委任事務というのは包括的指導監督権はありますよ。国家事務でありますから、包括的な指導監督権は法務大臣、それに委任された知事にあると思います。しかし、それをオーバーしているやり方ではないか、こう思うのですが、いかがですか、法務大臣
  256. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの問題は一般的の問題として正誤というふうなことはおやりいただいてよろしい、こういうことでありますが、韓国あるいは朝鮮半島出身者の登録につきましては、特別ないろいろの事情があるということもおわかりのことと思いまするが、要するに外国人登録事務のようなことは全国的にある程度の均衡を保つ必要がある、こういうことでもって市町村長においてその独自の判断によってこれをお扱いになるということはいろいろの支障を来たす、こういうことでございますので、いままでのいろいろのいきさつから考えまして、これらの事務はある程度全国的に統制すると申しまするか、調整すると申しますか、そういう必要がある。こういうことのためにこの事務についてはいまのような通牒が出ている、こういうことでございます。
  257. 安井吉典

    ○安井委員 全国的な統一をとるために一々認可許可をし、つまり法務省においてチェックすることが必要だというふうにお考えなら、これは法律を改正して、市町村長の権限ではなしに、認可許可事項だ、こうされればいいわけですよ。それをしていないで、授権事項について、その授権事項を制限するような通達指導が私は問題だ、こう申し上げているわけであります。  そこで、自治大臣にやはりそれではお聞きしておかなければいかぬと思うのでありますけれども、自治体の本質からすれば、自治体の長というのは国の機関とこの際はされるのかもしれませんけれども、しかし住民から公選されているわけであります。固有事務ならこれは全く国からは独立独歩であります。しかし機関委任事務では、さっきから申し上げているように、包括的な指導監督権は法律は主務大臣に認めています。しかし、この指導監督権には自治体の長という特殊な地位から非常に大きな制約があるわけですよ。自治大臣に御答弁を願う前に、自治省の長野士郎著、「逐條地方自治法」というのがあります。この長野君はいま財政局長ですが、たしか行政局長か、課長時代に――それは長野君一人でなしに、自治省がみんな集まって書いた本でありますが、この逐条解説の中に、知事や主務大臣の市町村に対する指導監督権という中身を解説してありますよ。その一般的な、包括的な指揮監督権の中には監視権あるいは訓令権、これがあると、これははっきり認めています。しかしながら、取り消し権だとか停止をする、そういう権限も本来的にはないのだとさえ書いてあるわけであります。しかし、違法な場合には取り消しをすることができるという法律の明文があれば、これは取り消し、停止ができます。その明文は、自治法の百五十一条にはっきり書いてありますから、これはできるわけです。しかし、その条文がなければ、包括的な指揮監督権があるというそれだけでできないわけです。特に認可権というのがあります。認可権は下級、官庁に対して、これこれのやつは認可が必要だという、そういうことを言うわけでありますが、それに対しても、ここの中にははっきりと四二七ページに書いてありますよ。「認可権に関しても、国と地方公共団体の機関との関係を考えるならば、当然に含まれないと解すべきものであろう。」これは自治省の見解だと思うのでありますが、どうでしょう、自治大臣
  258. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 確かに機関委任事務につきましては、地方自治法の第百五十条の規定によりまして、地方の公共団体の首長は、その該当する主務大臣の指揮監督に属するわけであります。しかしながら、同時に、地方自治の本旨に反しない指揮監督が行なわれるということが必要でありまして、その点については大体長野君の著述の趣旨は私は妥当だろう、こう考えておりまして、その点については自治省としても多大の関心を持っておるところでございます。
  259. 安井吉典

    ○安井委員 この本の表現は、これは間違いないのでしょう。その点ちょっともう一度確かめておきます。
  260. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 是認をいたします。
  261. 安井吉典

    ○安井委員 これで一応はっきりしたわけでありますけれども、そこで国籍のあり方の問題があと残るわけであります。もう私は朝鮮人です、私は朝鮮人ですとこう言う人に、第三国である日本の自治体が、いや、あなたは韓国人なんだ、これは変えるわけにはいかぬのだ。あなたは韓国人だ、いや、私は朝鮮人です、いや、おまえは韓国人だ。私はやはりこれは人道的な問題だと思うわけであります。ですから、いまのようないろいろな見解や人道的な立場から革新市長を中心に――これは革新だけでなしに保守の市長もみんな始めたわけでありますけれども、全国で一月十四日現在でも三十八都道府県、百四十九市、十九区、四十二町、一村、千九百三十九世帯、四千百九十三人書きかえが終わっています。このトラブルの途中で法務省が見解をゆるめたということもあって、そういう手続の済んだ者も含まれておりますけれども、まだにらみ合ったままの者も中に含まれています。  そこで、この朝鮮国籍の扱いの不当性でありますけれども、昔は「朝鮮」でも「韓国」でもどっちでもいいですよというのが政府態度であったわけです。これは符号だとか用語なんです、これが政府態度だったのが、四十年の十月二十六日、一朝にして法務省の統一見解が発表されました、「韓国」だけが国籍で「朝鮮」というのは符号ですと。この日以来「韓国」から「朝鮮」への書きかえはまかりならぬという、こういう通達です。私は、政府の、いままでいろいろな行政措置があったと思うのですけれども、これくらいむちゃなやつはないと思うんですよ。いままでは「韓国」でも「朝鮮」でもいいというのですから、自分は里帰りが必要なんだから「韓国」と書いてくれ、そういうような、わりあいに気楽な処理さえしておったと思うのでありますけれども、これが一朝にして、「韓国」なら徴兵検査に、戦争に行かなければいかぬ、こういうことになるわけでありますから、これは重大な問題です。こういうむちゃなあり方があって、それ以来ずっと政府は、「朝鮮」から「韓国」への書きかえはどんどんやりなさい、しかし「韓国」から「朝鮮」への書きかえは原則としてだめです、しかし伺いを立てなさい、伺いが立てられたら、たまには認めることもあるでしょうというので、ずうっと長い間ほとんど認められていません。ところが去年の夏から、いまの革新市長のほうの動きができてから、一挙にして千四百人が書きかえられた、こういう経過であります。私は、どうも「韓国」と「朝鮮」との間の不公平な取り扱い、これがどうも気になってしょうがないわけです。政府は朝鮮民主主義人民共和国は承認しておりません。しかし、厳然とこの国があることは認めていて、札幌のプレオリンピックにも選手が来ていますよ、外務省がきちんとオーケーを出して。日本の民事裁判でも、朝鮮民主主義人民共和国の民法をそのまま適用して、夫婦別れや婚姻の問題を処理しています。だから個人が国籍を、これは承認国ではないにしても、個人がどこの国籍を持つかというのは、これは政治の問題とは無関係だということではないかと思います。この「韓国」と「朝鮮」の不公平な扱い、これはどうなんですか、大臣
  262. 小林武治

    ○小林国務大臣 国籍の問題は、世界人権宣言があるとかいろいろなことがありますが、いずれもそれは国籍法によってきまる問題でありまして、「韓国」と「朝鮮」の関係は、もうよく御承知のように、いろいろの従来のいきさつがあって、そして韓国というものの国籍を持っておる、こういう本人の申し出で直した。したがって、韓国籍を得た者は韓国国籍の者だ、その国籍については韓国法によって韓国の国籍を失わない限りは他の表示に直すことはできない、こういうことでいたしておるのでありまして、われわれが別に意図的に差別待遇をする、こういうことでありませんし、また「朝鮮」から「韓国」に直しなさい、こういうことを政府が特に指示したこともなく、これらはすべて御本人の自由によっている。したがっていまだにやっぱり二十数万人の朝鮮籍の者がそのまま日本に安住をしておる。こういう状態であるのでありまして、一たん韓国籍を持った者は韓国の政府の同意がなければ「朝鮮」に直せない、こういうことは何も、これは実態をわれわれはとらえてやっておるのでございます。その中で、「韓国」に直したものの中に、錯誤によるものとか、あるいは自分が知らない間にやられたとか、あるいはおどされて直されたとか、こういうふうないろいろの事故があるのでございまして、こういうものにつきましては、韓国籍に直ったもの自体が誤りである、こういうことで、これらの者の申し出についてはもとの姿に直す、こういうことを認めて、いま申すように千何百人、こういうような方はそういう事態のために直した。なぜこのようなものが急にできて、従来はなかったかということになると、これはやはり日本政府関係のことよりか、むしろ他の事情によって、そういうふうないろいろないきさつが外部において生じて、そして熱心にそういうふうな、また「朝鮮」に直してもらいたい、間違いだから直してもらいたい、こういう方々がたくさん出てきた。こういう現象であると、かように考えております。
  263. 安井吉典

    ○安井委員 この韓国籍と朝鮮籍との問題は、いわゆる分裂国家という、そういう不幸な状態の中から生じている問題であります。ですから、二つの国の国籍法を見ると、どちらの国籍法にも――朝鮮民主主義人民共和国の国籍法によると、本人が朝鮮籍を希望すれば朝鮮の人は全部朝鮮人だ、朝鮮の国籍だ、こう書いてあります。それから韓国の国籍法にもやはりそう書いてあるわけです。どっちも同じです。それは、分裂国家というそういう中に起きている問題です。ところが、分裂国家はほかにもあるわけですよ。ベトナムがそうでしょう。ドイツがそうでしょう。さっき問題になった中国がそうでしょう。これはみんなあるわけですよ。ドイツもそうです。ところが法務省の扱いの中では、東西ドイツもどちらもドイツ、どいつもこいつもなしにドイツです、これは。それからベトナムはベトナム、中国は中国一本。みんななっているわけですよ。ただ朝鮮と韓国だけにこういう問題が起きているわけであります。ただ、この中で一番重要なのは、一たん韓国籍を持っても、さっき言ったようないろいろな事情で韓国籍を持った。用語なんですからどっちへ変わってもいいんですから、そういうふうな安易な考え方で韓国籍を持っちゃった。ところが、本来おれは「朝鮮」だ、こういう人が出てきた場合に問題が起きるわけでありますが、しかしその人がいま韓国の大使館へ行って、私はもう一度「朝鮮」に戻りたいから証明書を下さいと言ったって、これはなかなか出しません。出す道理がありません、いまの段階ではですね。それを持ってきたら変えてやるというふうなこういう考え方では、私は問題は解決できないのではないかと思います。ですから、どちらの国籍法の中にも、この点はっきりそういうふうに書いてあるわけですから、これはもう私は希望のとおりやってやるのがほんとうだ、こう思うのですが、もしも百歩下がってそうではないにしても、おれは韓国人だというので、韓国の証明書を持っている、しかし持っているが私は朝鮮人ですと、いわば二重国籍に類似したケースだというふうな見方もできないわけではありません。この二重国籍類似の状態については、一九三〇年四月十二日の、国籍法のてい触についてのある種の問題に関する条約というのがあるわけです。この第五条によれば、国籍というのは一人について一つしかない。これはもうあたりまえです。そしてそれについて、その「個人が有する国籍のうち右の個人が常住的で主要な居所を有する国の国籍」、主要な居所といったって、これはみんな日本に住んでいるわけですから、これでは当てはまりません。しかし、「又は、事情に照し、右の個人に事実上最も関係が深いと認められる国籍のみを慰めることができる。」と、こういう規定もあります。これは、日本は条約を批准しているというわけじゃないにしても、二重国籍の処理には国際的な慣例なり条約があるということであります。世界人権宣言第十五条の趣旨からいっても、本人の希望が私は一番重要なことであって、それで国籍を間違っているといえば訂正してあげる、それがほんとうの態度ではないかと思うわけであります。その点、ここですぐには意見はあるいは一致しないかもしれませんけれども、私はそれを強く主張しておきたいと思います。  そこで、田川の事件については、市長独自の判断で法務省との話し合いが行なわれて、市長の話によりますと、法務省は職務執行命令は撤回するということが一つ、それから二番目には、あれは十人と四人と、こうケースが違うわけです。十人というのは間違ったというやつだし、四人というのは、これは一たん韓国籍を取得して証明書を持っているという人ですね。その十人のケースの場合は追認する、あるいは黙認する。それから第三には、李判福一家四人は、伺いを立てるが、認可の見通しは明るいというふうなことを市長は言っているようであります。おとといですか、法務省の入管局長から田川のほうに電報があって、この一と二のほうは認めるから伺いを早く出せと、こういうふうなことになっているというそうでありますけれども、この点はどうですか。
  264. 小林武治

    ○小林国務大臣 田川の問題でいろいろ世論の批判があったわけでありますが、昨日田川の市長から、四名は「韓国」に再訂正をいたしましたということで、したがって私どもとしては、この問題についての職務執行命令の訴訟の対象はなくなった、こういうことで訴訟はいたさない。他の十名については、よく調査をいたしたところ、十分に韓国籍であると、こういうふうな資料がいま見当たらない、したがってこれに対する職務執行命令についてはこれから福岡県知事と協議の上で適宜処置をする。――結論においては、これらは市長の訂正したとおりになると私は思っております。
  265. 安井吉典

    ○安井委員 法務省はメンツにかかわっているわけですね、結局。ただメンツだけでしょう。先ほど十人の問題についての通達の違法性というものは、はっきり自治大臣が認めたじゃないですか。そういう一般的な経伺のしかたでありますけれども、こうなっている以上、その十人のケースについてはこれはもう当然ここで認められるということに私はなるのではないかと思いますが、どうですか。
  266. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は法務省の職務執行命令が間違っておる、こういうふうには思っておりません。これはいま申すように、指示を得ないでやった、こういうことはわれわれのほうの通達に反しておる、こういうことで執行命令も出ております。したがって、あらためてこれは指示を得て、そしてそれに対しまして、これはよかろう、こういうふうな扱い方をされると思うのでありまして、われわれのほうの命令が間違っておる、こういうふうには考えておりません。
  267. 安井吉典

    ○安井委員 どういう電報を打たれたのですか、田川へ。
  268. 小林武治

    ○小林国務大臣 電報は入管局長から出しておりますから、局長から直接お答えいたします。
  269. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 お答えいたします。  田川市長に対しましては、十名についての「朝鮮」への書きかえは当時その旨の経伺があれば承認すべきものであったことを了解する措置をとる所存であるという趣旨の電報を打っております。結論的には、田川のとった処置を黙認するような形で、それが結局先ほど大臣の答弁がありましたように、職務命令の撤回に将来善処されると、こういう趣旨でございます。
  270. 安井吉典

    ○安井委員 黙認で結局執行命令の撤回につながる、こういうふうな御答弁だと思いますが、そうだとするとこれは全国こういうふうなケースは一ぱいあるわけでありますが、全国全体的にそういうふうな処理になるのだと思いますが、どうですか。
  271. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 全国で書きかえが現在行なわれたところの事情がそれぞれ非常に複雑で、かつ申し立ての理由が異なっておりますので、一律に田川市と同断に処置することは必ずしも適当でないと考えておりますが、何らかの措置を考慮しなければならないという問題は残るかと思います。
  272. 安井吉典

    ○安井委員 どうも大臣の話と局長の話はだいぶ違うけれども大臣は何も知らぬのじゃないですか。とにかく何か少し前進してきたというふうな気がいたします。これは大臣どうですか、局長のいまの話でいいんでしょうね。
  273. 小林武治

    ○小林国務大臣 それでよろしゅうございます。
  274. 安井吉典

    ○安井委員 これはまたさらにもう少し問題を詰めなければいけませんけれども、十人と四人のケース、こう二種類に分けて、その十人的なケースについては現実に窓口書きかえが行なわれておるのを黙認する、そういうふうな形で処理をしたい、こういうふうな御意向と受けとめるわけであります。ただ残りの四人ケースについても田川市長は新しい資料が見つかって、この間のものと違って問題をはっきり証明できるような新しい資料が見つかった、それを書いて伺いを出すというふうなことを言っておりますので、それはそれで十分検討をして、田川のケースは田川のケースとして、市長と法務省側の話し合いの方向でぜひ処理をしていただきたい、そういうことを言っておきます。しかし、一般的な問題としては、国籍のあり方については、私がさっき主張いたしましたように国籍の人権の立場からの見方、さらにまた二重国籍の扱いという国際法の取り扱いもあるわけですから、私は、現在田川が伺いという形にした問題も、これもやはりあの法律の本来の趣旨に立って、市町村長の権限なんですから、そういう権限事項として処理していただく、こういうふうなことを強く要求しておきたいと思います。その問題をここで議論したらまた堂々めぐりになると思いますから、これは私どもはあくまで従来からの主張は正しいと確信をしておりますので、そういう態度でひとつ検討していただきたいわけであります。  いずれにいたしましても、裁判を裁判をというので、ずいぶん裁判を振りかざすわけでありますけれども、機関委任事務はあの自治法の別表第三、別表第四でも七百もあるわけですよ。その七百の機関委任事務で市町村長に対して一々裁判でやっていったら、それこそ大蔵大臣は幾ら訴訟の費用を置いたって足りるわけがありません。しかも七百のうち開闢以来の初めてなんですからね、こんな問題は。これはやはり自治体の側でも、違法な通達、指導あるいは国籍問題の処理、その憤りといいますか、たった一つ、自治法始まって以来一度だけあの砂川事件がありましたけれども、それを除けばたった一回ですよ。そのことから思えば、私は法務大臣の今日までのあり方、小林法務大臣の前任の時代からかもしれませんけれども、しかしいまのこのあり方にこそ問題があるので、かつてない不信をいま買っているという事態をしっかり私は理解をしてこの問題を処理していただきたい、そのことだけ一つ申し上げておきたいわけであります。  そこで沖繩の問題をこれから少し伺いたいわけでありますが、まず総理に沖繩問題との関連においていま拡大するインドシナ戦争に対する政府の見方なり対応なりについてひとつ伺っておきたいわけであります。  七〇年の六月のニクソン大統領のいわゆる約束というのがあるわけでありますが、それをほごにしてベトナム作戦からカンボジア作戦に入り、そしてついにアメリカの飛行機の支援のもとに南ベトナム軍がラオス南部に進攻しようとしているという報道があります。戦火はいよいよインドシナ全域に拡大されたということではないかと思います。カンボジア進攻についてはアメリカの議会の中にもそれを規制する決議案まであったわけでありますけれども、それを無視してカンボジアへの進攻、そして今度のラオスの問題になりますと、これは中立化についての六二年ジュネーブ協定があるわけであります。それに対する公然たる違反ということに私はなるのではないかと思います。そのことで北側のほうも当然反攻をするでありましょうし、ラオスでの軍事的な対決は激化してしまう。アメリカ側は名目はベトナム撤兵を完遂するためと言いながら、どんどん拡大をしているというのが実態であります。こういうようなことでは、もう取り返しのつかないどろ沼戦争に入るおそれがある、こういうふうに最近の新聞を見て非常に憂慮にたえないわけでありますが、政府として、この情勢をどう見ておられるか、わが国には米軍の基地それから沖繩にも基地が一ぱいある、そういう現実を踏まえてどう考えておられるか、これをひとつ伺っておきたいと思います。
  275. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず、情勢判断の問題でございますから、私からちょっとお答えかたがた御説明いたしたいと思います。  ただいまお述べになりましたように、インドシナの情勢というものが流動的であって、これについて特にこの一両日はラオスの状況についていろいろの報道が出ておりますが、当事国におきましての報道というものは、現在出ております報道を確認しておりません。一面においては、ただいまも御指摘のございましたように米空軍の援護のもとに、南越の陸上部隊がラオスに入ったというふうな報道もございますし、また、一方からいえば、ジュネーブ協定に違反して北側が行動をしている、その情勢がますます顕著であるという報道もございますわけですが、それらについて、当事国から情報は確認されておりません。日本政府としては、一つ一つのこういったような軍事行動とか、確認されていない情報等については特にそうでございますが、コメントする立場にはおりませんが、政府といたしましては、もちろん戦争状態が拡大しないように、和平の状態が一日も早く来るようにということを望んでおることは申し上げるまでもないところでございます。
  276. 安井吉典

    ○安井委員 これは総理に伺いたいわけでありますが、明けておととしの十一月二十一日の佐藤・ニクソン会談による共同声明、その第四項の最後のところでありますが、「総理大臣は、日本としてはインドシナ地域の安定のため果たしうる役割を探求している旨を述べた。」こういうふうな書き方があります。それからもう二年もたつわけでありますけれども、今日までこの共同声明に沿って「インドシナ地域の安定のため果たしうる役割」、日本はどうすればいいのか、それはずいぶん探求をされてきたのではないかと思うのでありますが、どういうふうなことをやってこられたか。それからまた、いまのような新しい事態に対してどうなさろうとするか。それをひとつ伺います。
  277. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも過去の事実との関連もございますから、総理から御答弁の前に私からお答えいたしたいと思いますが、まず第一に、ただいまおあげになりました昨年秋の両巨頭会談のあとの新聞記事は、これは一昨年の秋の共同声明とは性格が全く違ったものでございまして、両国政府の者がそれぞれ会談の模様を伺いまして、そして内外の記者団等に対しまして、こういうお話の模様であったようだということを記者会見のときに話しました内容でございますから、その重さというものは一昨年の場合とは違うわけでございます。  それからインドシナ半島に対してどうやって和平をつくり出すかということになし得る限りの日本としても貢献をしたいということは、先ほど私も思し上げたとおりでございますが、どういうことをやったか。その中で、具体的な事実といたしましては、成果ということはともかくといたしまして、昨年五月ジャカルタ会議、これはカンボジア問題が一番心配された時期でございますけれども、ジャカルタ会議に積極的に参加といいますか、むしろ世話人的な立場日本が参加いたしまして、そして、ジュネーブ協定の精神に沿うて、たとえばカンボジアにつきましても、一切の外国軍隊の撤退ということをはじめ、主権の尊重、中立の維持というようなこと、あるいはカンボジアの内政についてはカンボジア人民の自主的な努力にまつべきものであって、そういう状況をつくり上げようということの合意をまとめたわけでございます。そしてそれに基づきまして、たとえばジュネーブ協定の議長団の国々、あるいは国連、あるいは国際監視団参加国というようなところに、マレーシア及びインドネシアと日本の三国がそれぞれ外務大臣の特使という肩書きの者三人で一団を組織いたしまして、国際的に関心を呼び起こし、また、具体的にカンボジア会議でできましたコンセンサスを実行に移すことについて相当の努力を傾注したつもりでございます。今後におきましても、インドシナ問題等については、精神としてはそういう精神で日本としては協力をしてまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  278. 安井吉典

    ○安井委員 総理からも次に御答弁があると思うのですが、その中で、いまの状態はどうなるかわかりませんけれども、非常に心配なんで、これについて何か対処するお考えがあるのかどうかということを、あわせてお答えいただきたいと思います。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣から一並びに二、その二問について詳細にお答えをいたしましたので、私からつけ加えるものはございません。ただいまたいへん心配していらっしゃるラオスの問題にいたしましても、私どもが現状においてコメントする何ものもない、そのことを私からも申し上げておきます。
  280. 安井吉典

    ○安井委員 私は、とりわけこの共同声明の中にはっきりこう書いておられることでありますから――ここに表現がなければ、私もとりたててここでその問題を触れようとは思いませんでしたけれども、ここまで書いてあるのですから、やはり日本の安全やアジアの平和を達成するという立場から、いろいろと御検討をいただきたいわけであります。  そこで特にきょう伺いたいのは、この同じ第四項の中に「総理大臣と大統領は、ヴィエトナム戦争が沖繩の施政権が日本に返還されるまでに終結していることを強く希望する旨を明らかにした。これに関連して、両者は、万一ヴィエトナムにおける平和が沖繩返還予定時に至るも実現していない場合には、両国政府は、南ヴィエトナム人民が外部からの干渉を受けずにその政治的将来を決定する機会を確保するための米国の努力影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現されるように、そのときの情勢に照らして十分協議することに意見の一致をみた。」とこういう合意事項があるわけであります。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 いま沖繩返還交渉は着々進んでいて、間もなく四月ごろには調印ができるのではないかという先般来の御答弁であります。この協議というのは、その返還協定のことを言っているのか。それとも、返還協定時にはベトナムの問題がどうなるか、まだこれはわかりません。来年の七月返還という大体の話というふうに承っておりますけれども、その時点までまだだいぶ期間があるわけですよ。ですから、協定は協定として、さらにまたこの共同声明による協議というものが来年の返還時までに行なわれるのか、その点はどうですか。
  281. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお読み上げになりましたように、共同声明の第四項後段のくだりは、沖繩返還予定時期に云々と書いてありますから、その時期までに万一必要があれば協議をするということでございますが、前々から申し上げておりますように、返還協定あるいは返還それ自体は、六項、七項、八項が基本のワクでございますから、そのワクの中で行なわれる。また、かりに四項後段の協議があるとしても、そのワク組みの中で行なわれるということに相なっておりまして、これは安保条約の中にいわゆる事前協議とかなんとかその意味の協議ではございませんですから、ただいま――まあいま四月云々とかあるいは来年七月云々というおことばがございまして、これがまだきまっておるわけではございません。まだそこまで話が詰まっておりませんけれども、それは別といたしまして、ただいま鋭意努力中の返還の作業そのものに全然影響することはございません。  それから、お尋ねの肝心の点は、返還の実際の時期と、万一必要とされる場合の協議との時間的関係でございますが、これは共同声明のこの趣旨からお読み取りいただけますように、はっきりした時点をはっきりしているわけではございませんで、返還協定の作成の過程等においてあり得る問題であろうかと思いますけれども、ただいまのところベトナム戦争は終結はしておりませんけれども、まあ御心配の点もよくわかりますけれども、見方としてはデスカレートをずっとしておりますし、B52の問題も御承知のように片づいてきておりますから、現在のところ、第四項後段を援用していわゆる協議というようなことは、ただいまのところは予想いたしておりません。また話も出ておりません。
  282. 安井吉典

    ○安井委員 ただいまのところは予想もないし話もないが、ただ、これはこういう規定があるわけですから可能性だけは残っている、こういうことですね。
  283. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまくどくど申し上げて恐縮でございますが、いつ幾日までに、またいつにやらなければならないというような、いわばぎくしゃくした問題ではございませんで、返還話の進行中にありとすればあり得るというふうにお考えいただいていいかと思いますが、ただいま私としてはさようなことも予想しておりません。
  284. 安井吉典

    ○安井委員 返還話の進行中という意味は、調印が済むまでと、こういうことですか。
  285. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは四項後段にありますように、返還予定時期までの間ということには相なりますけれども、まあ率直に私一個の感じ方を申し上げますれば、さような協議ということは、いまの段階におきましては予想しないで済むのではなかろうかと、これは非常に率直に、あるいは大胆な言い方かもしれませんが、私一個としてはさような感じを持っております。
  286. 安井吉典

    ○安井委員 愛知外務大臣のその希望的な観測が当たるようにこれは期待をしておきますが、ただこの問題がちょっと気にかかるわけです、これからも。その点だけひとつ指摘をしておきたいと思います。  沖繩の問題について政府は、返還のスケジュールをこの間もごく大まかな形でお述べになっているわけでありますけれども沖繩現地では返還間近し、何か明るい見通しというふうに想像されますけれども、実はそうではなしに、むしろ復帰不安というそういうふうな色が非常に濃いというのが実情のようであります。  ところで、この国会は、会期中にどうやら政府のスケジュールからいうと調印という段階を迎えそうであります。これはまだわからないということでありますけれども、どうもそんなような気がいたします。そして、その次は参議院選挙後の臨時国会があって、それから批准国会と、こういうようなことが議運段階でも話し合われているということも聞いております。したがって、この国会の中で沖繩に関するいろいろな問題が相当程度明らかにされておらないと、批准国会というのは何か事後承認の国会にならないとも限りませんので、私は、この国会の間にいろいろな問題をやはりはっきりさせておいていただく必要があると思うのであります。復帰不安という県民の気持ちにもそれがやはりこたえるゆえんではないかと思います。だから一般質問の段階では、私どものほうも中谷君だとか上原君も立てて、いろいろ重要な問題点をお聞きをしてまいりたいと思うのでありますが、私どもは、コザの騒乱罪の適用問題だとか、毒ガスの問題だとか、あるいは裁判権移管の問題だとか、軍の雇用者の問題だとか、そういうのが目先ございますし、それから何をおいても心配なのは協定の中身です。この協定の中で、たとえば安保は、あるいは地位協定はどう適用されるのかとか、事前協議のあり方だとか、基地の提供のあり方だとか、請求権の処理、裁判の効力、そのほか県民の権利や利益に関する問題が織り込まれることになるわけでありますから、この問題について非常に大きく関心を持つわけであります。ですから、そういうような意味合いにおいても、私は、いま進められております協定の中身というものを中間的にやはりこの際発表していただくことがよいのではないかと思うわけです。この点は、先般来外交交渉中だからそんなことはできないというお答えでありますけれども、これは私は重要だと思いますので、この点ひとつ伺っておきたいと思います。
  287. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還協定の問題は、これは他の機会にも御説明申し上げておりますけれども、返還協定それ自身の問題と、それからそれに関連する対米交渉の問題と、それから本土並み本土復帰でございますから、国内的な措置がまたたいへんでございますが、政府といたしましては、この協定の批准国会で御審議をお願いいたしますときには、それら万般のことを全部ひとつ十分御審議をいただいて、特に沖繩の方々に十分御安心をいただきたいと考えております。  返還協定それ自体で申しますれば、これは本質的には返還の時期もそこで入るわけでございますが、核抜き、本土並みということがはっきり出てくると申しますか、それに含まれて安保条約並びに関連の取りきめというようなものが変更なしに規定できるということが一つの眼目になりますから、この点は何も御心配ないと思います。それから裁判権の問題、対米請求の問題、それから資産の引き継ぎの問題というようなことが実質的な内容になってまいります。それからその返還の取りきめによりまして、安保条約関連取りきめがそのまま変更なしに沖繩に適用されますから、地位協定が返還の日から、ずばりと変更なしに適用されますから、それについての諸準備というものも、相当これは煮詰めていかなければならない問題であります。それから提供する施設、区域は、返還の時期と同時に安保条約によって日本側が提供をすることになるわけでございますから、安保条約の目的に合致するように、したがって、そこで現在のものからの縮小ということを考えなければなりません。そういうような点につきましても十分話を煮詰めてまいらなければならない。  これらの点につきまして、ずいぶん問題が多岐にわたりますから、先ほども念を入れて申しましたように、四月という時期を限定されますと困るのでありますけれども、おそくも夏ごろまでには何とか話し合いを決着させたいということで、ただいまも日夜、鋭意努力をいたしております。いま申しましたように内容が相当多岐にわたります。それからただいま仰せのとおり、ことに沖繩の県民の方々からすれば一人一人の立場でいろいろの立場で非常に心配といいますか、期待といいますか、ほんとうに身に即した問題でありますだけに、念には念を入れてやってまいらなければなりませんので、ただいま、まだその内容等についてお話をするところまではいっておりませんので、御了承いただきたいのであります。いわゆる批准国会で十分御審議を願いたいと思っております。
  288. 安井吉典

    ○安井委員 返還協定になるのか条約になるのか知りませんけれども、それが国会に付議される際には、県民の世論をわれわれが聞いたからその世論によって修正をする、これはできますか。
  289. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはその約定の形が、協定という文字が使われるか条約という文字が使われるか、これは今後の日米間の話し合いによるわけですが、いずれにいたしましても、日本国内では国会の御承認を得なければならぬ。それから、これは条約論一般になりますから、もっと的確に専門的にお答えをしたほうがよろしいかと思いますけれども、条約につきましては、これを修正ということがないということが通則でありますことは御承知のとおりと存じます。
  290. 安井吉典

    ○安井委員 だから私は申し上げているわけで、県民の世論に反したようなものができても、あとで国会はイエスかノーかを言うだけだというふうな形で処理されるのでは困るわけであります。県民の世論を正確に反映するという道は、いま話し合われている協定の内容を、いまも概要御説明がございましたけれども、もっと具体的な、特に権利義務に関係のある問題そういうような問題をやはり中間的に表に出して、県民の世論にさらす、そしてそれから調印、これが私はほんとうの民主主義のあり方だ、こう思うのであります。その点、さらにひとつ検討をしていただきたいわけであります。ただ、この点をちょっと伺っておきたいのでありますが、協定は非常に抽象的なもので、基地の態様などの具体的な規定は協定には置かないのだ、それは協定を調印してからあと、沖繩返還準備委員会なるものを設けて、そこで時間をかけて話し合い、きめていく考え、こういうふうな新聞報道があるのでありますが、そのとおりですか。
  291. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず一番の前提は、御承知のように安保条約関連取りきめ、地位協定が全部沖繩に適用されるわけでございますから、そういう関係において別の取りきめとかなんとかいうことは全然ないわけでございます。それから、先ほどの答弁で足りなかったかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、協定それ自身もきわめて大事でございますけれども、同時に、ただいまお話しになったような問題、それから国内的な諸般の法律関係、政令関係等もまた非常に大切な問題でございますから、これらをあわせて批准国会では十分御審議が願える、私どもはかように考えております。
  292. 安井吉典

    ○安井委員 いまの沖繩返還準備委員会でさらに煮詰めるという話はほんとうなんですか。
  293. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうもこれも非常に率直に申し上げるのでありますけれども、いろいろそれぞれ御研究になってのことと思いますが、事実でないと言うとしかられますけれども報道が非常に行なわれておりますが、ただいままでこの協定等についての報道というものは政府筋から出ているものではございませんで、いろいろ御想像を積み上げてかくもあろうかと書かれておるのだろうと想像いたします。ただいまおあげになりました記事については、政府としては何ともお答えできません。つまり、そういう方向で進んでいるわけではございません。
  294. 安井吉典

    ○安井委員 この報道を一応否定されたわけですけれども、私が心配するのは、協定なるものは非常に抽象的なかっこうで表現がなされて、ごくわずかな条文でそれが終わってしまう。それを国会が通ってから、現実の基地の問題だとかそういうこまかい問題――そのこまかい問題こそが沖繩立場からすれば大事なんです。そういうような問題は協定が終わってあとで相談をしてきめていくのだ、そういうことになると、きわめて重大な問題が国会はなしに終わっちゃうというおそれがある。どうもいままでの報道を総合して考えてみますと、政府は何か、国会を通過するときはごく簡単なかっこうでさっと通してしまう、あとの大事なことはあとで相談をして、それはもう国会にかける必要はないのだ、こういう態度を私は非常に心配するわけです。どうですか、総理。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安井君もずいぶん、この協定というか、日米間の話し合いについては御心配のようですが、私は、この日米間の基本的な話し合い、協定、これはどんな形になるか、とにかく返還協定、これはあまりそう心配しなくてもいいんじゃないか、かように思いますよ、大ざっぱに。ただ、返還されたその暁において、いままでなれっこになっていたアメリカ施政権下で暮らしていた沖繩県民、この百万の県民が今度日本の施政権下に移ってくるわけですね。そのときにわれわれがこれをいかに迎えるかという――ただいま外務大臣からもお答えしたように、本土でアメリカと取りきめた安保条約並びに地位協定、これはそのまま適用される。だから本土と別なものではございませんが、しかし、本土の場合は別に生活態様そのものが変わるわけではない。しかし、沖繩県民の方は、返還が実現したそのとたんにドルの生活から今度は円の生活に変わるのだ、一つのものをとってみてもこれはたいへんな問題だと思います。そこで私は、その点に一つの祖国復帰ということを心では望みながら、一体生活様式はどうなるのか、どんな変化が来るか、これは不安があるだろうと思います。山中総務長官が、そういう意味で協定もさることだが、復帰後の沖繩県、豊かな県づくりについていろいろ苦労しておるということもただいま申し上げるような点なのです。私は、国会において御審議をいただくのもあわしてそういう点があるのではないか、かように思っております。  大まかに申しまして、日米間の問題は、とにかくいままでは軍事的に占領されておる、軍事的に軍の基地として使われておる、そしてアメリカの施政権下にある、これを今度は本土と同じように日米安全保障条約、同時に地位協定のもとに返す、そういうことだから比較的容易だと思います。先ほどラオスの事変、これが拡大し、だいぶ心配じゃないか、こういう点もお触れになりましたが、もうB52は沖繩には一機もいない。またB52が沖繩に来て、沖繩を基地としてどんどん出ていく、こういうような状態なら確かにたいへんな心配だと思いますが、そういうことはない……(安井委員「いや、そんなことじゃない」と呼ぶ)だから地位協定もそういう意味であまり御心配なさらなくていいのじゃないか。ただ問題は、県民が非常に不安に思っておるのは、いまの本土と変わった状態が出ておらないか、毒ガスあるいは核兵器、そういうようなものが一つあるだろうし、またお互いの生活をとにかく切りかえなければならない。その切りかえがはたしてできるかどうか、そういう点は、これはあとで一般質問のときにさらにお尋ねがあるということですから、そういう点で沖繩の方の御意見もよく伺ってみたいと思います。
  296. 安井吉典

    ○安井委員 私が聞きたいのは、今度の協定なるものの中に、ごく簡単なことで、あとの重要な問題はあとで政府がきめるから、国会は協定だけ通してくれという態度ではだめだということを言っているわけですよ。その協定がものすごい分量になっても、基地を一々書いてあって、図面がついていて、これはなかなかたいへんかもしれませんけれども、それは国会は一生懸命やりますよ。やはり二段方式で、協定だけ先に通してあとの詳しいのは政府がきめますでは、これはだめだということです。その点を私は念を押しているわけです。どうですか。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、本土並みに扱われる、そこへ重点を置いて県民も御理解をいただきたいと思います。ただ、いまの現状が沖繩にずいぶんたくさんのアメリカ兵がいる、また軍基地も本土のようなものじゃないのだから、いまのように一々その施設を精査する、こういうようなお話でなくて、たてまえ自身が本土と同じようになるのだ、そこでわりに皆さん方の御審議も楽じゃないか、かように申しておるのです。
  298. 安井吉典

    ○安井委員 それは総理、問題をごまかそうとしておるのですよ。私は、国会の審議のあり方をどうも簡単に済まして、あとの問題は政府限りで、国会ベースには関係なしにきめちまおうというそういう態度では困る、そのことを聞いておるわけですよ。重ねて伺います。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外国との条約、協定については、先ほど外務大臣がお答えしたとおりでございます。しかし、皆さん方がいまのうちからこういう点が心配だ、こういうことがあれば御遠慮なしに御発言願います。
  300. 安井吉典

    ○安井委員 総理は何とかしてこの際だけ逃げようということで一生懸命になっておられるということだけ明らかになりましたが、この点はさらにまたあとでお尋ねが続いていくと思いますので、あと二、三点ありますので、これは私どものほうはあくまで中間で発表してもらいたいということ、それから協定の中には問題点を全部盛り込んだ、そういう協定でなければ国会の審議は困りますと、この点だけは申し上げておいて、これはさらにもっと詰めていただきます。  それから、アメリカの援助の大幅削減の問題がありますが、これは政府はどういうふうに受けとめており、またどう対処しますか。
  301. 山中貞則

    ○山中国務大臣 アメリカ側はすでに本年度の実行いたしておりまする予算の年度内から、一般の琉球政府財源に対する援助については打ち切りの方向を示しつつございます。たとえば、ことしは教職員の人件費補助を打ち切ってまいりましたし、来年からは、たとえば一例として、中部病院のハワイ大学からの医師の派遣にかかる費用等は見ないとか、いろいろの感触を得ておりましたので、事前に大蔵とも十分に――米側が施政権を持ちながら財政援助について削減する、その姿勢は別として、財政上の問題としては十分にこれを勘案いたしております。したがって、ただいま伝えられる米国の議会その他において議論せられておりまする七二年の援助費についていうならば、琉球政府に本年度渡されました金額をまるくいいまして日本円で四十七億ほどでございますが、それが三十一億になる見込みでございます。したがって、十六億ほどの減額が出ることになりますけれども、これはことしの予算が三百五十億の現年度予算から来年度の四十六年度にかけて六百億をこえたということにおいて明らかにカバーできるものであり、琉球政府の由主財源等についても十分配慮してございますし、先ほど例をあげましたような中部病院等のハワイ大学からの派遣医師等については、本土政府からもその二分の一を負担するというこまかな配慮等もいたしておりますので、実際上の影響はないと考えております。
  302. 安井吉典

    ○安井委員 私は、アメリカ側が、ニクソンの新しい方針にもよると思うのですけれども、援助費を三分の一減してしまったというふうなことは、これは沖繩の人たちは、施政権者の責任を放棄したのではないかというふうな批判さえしているそうです。ですから、このことは、現に放棄しつつあるというふうに総理も言われますけれども、それなら本来の施政権を――お金のほうは三分の一、特にこれは民政費のほうを徹底的に落としているようです。だから、施政権者としての立場を放棄しておるのなら、それは放棄したように、たとえば裁判権の問題でも――これはやはり総務長官、一生懸命に金をこしらえてその分を穴埋めしたというならば、その穴埋めをした本土側の希望をかなえてもらわなければいかぬですよ、現実には、法律的には施政権はアメリカが持っておるのですから。持っていながら実質的に放棄をし、あるいは放棄をしつつあるという実態に対して、これはやはり本土政府としてもそのことを踏まえて、いまの裁判権の問題をはじめいろいろなアメリカ側が権利だけを主張している問題がたくさんあります。それらの中にはっきりした主張をやっていくべきではないか、私はかように考えるわけでありますが、その点どうですか。
  303. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、とりようによってはそのような表現も可能でありますが、米側が逐次、現在の財政の運営状況から見て、日本の本土においても相当な経費の削減のための撤収等も行なっておりますし、沖繩においても軍の撤収等が始まっておりますが、それらの一連の措置の中で、緊縮財政の中で切ってくるものでございますので、たいした金額ではありませんし、その姿勢としては私たちとして、それが施政権者であってもなお財政的な義務的な援助を放棄してはならない、そのことに留意されたいということを、先般の日米協議会でも正式に文書として米側にも申し渡してあるわけでありますが、現実には、ただいま申しましたように、琉球政府の手取り分が十六億の減額になるという事態に立ち至りました。そのことはたいへん遺憾であります。しかし同時に、四十六年度予算の中でも、米側にもその日米協議会で了承を一応たてまえ上求めることになっておりますが、すでに措置済みのものとして、沖繩においてただいま御指摘のありました問題等に関連をする諸費用、たとえば、御質問もあるかと思いますが、軍雇用者の間接雇用の問題等も重大な問題でございますので、防衛庁、防衛施設庁職員二十名を私ども沖繩北方対策庁の出先である沖繩事務局に配置する予算、あるいはそれに伴って今後この雇用問題について検討する機関等についてもいろいろと議論をかわしておるところでございます。  裁判管轄権についても、コザ事件の後でありまして、はなはだ遺憾ではありましたけれども、私としては率直に一歩前進として受けとめた。いわゆる軍事裁判に対する沖繩県民のオブザーバーとしての参加ということも一つの前進ではあろうと思います。しかし、完全復帰前に裁判管轄権を返すことについて非常に厚い壁のあることを、就任以来対米交渉の中で一貫して感じておりますが、これが人権が無視される現状につながる淵源であることを思いますときに、この問題については非常な、いかなる努力を傾けても前進を遂げなければならぬと考えて、ただいま努力いたしておるところでございます。
  304. 安井吉典

    ○安井委員 裁判官の問題も裁判権の問題も、オブザーバーというふうなことでは県民の世論はなかなか納得しないと思いますよ。ですからこの際、施政権者としての責任を果たさないアメリカに対して、もっと強くやはり日本政府は交渉すべきだ、こういうことを一つ申し上げておきたいわけであります。復帰後の知事あるいは主席の問題でありますが、現在の主席の任期は十一月に切れるわけです。ですから、その段階で選挙をやるのか、やらないのか。これは沖繩の琉球政府としての決定事項かもしれません。それからもう一つは、沖繩県ができた段階では、いまの地方自治法の百五十二条、二百四十七条の規定によりますと、知事またはその代理者が欠けたときは自治大臣が臨時代理者を選任し、職務を行なわせることができる。こういう規定で、沖繩県ができたその最初の日から一応臨時代理者を置かなければいけない、こういう問題もあると思います。したがってこの暫定の主席の問題や知事の問題、これはやはり県民の世論からして相当大きな問題ではないかと思います。その点について、政府としてどういう御見解を持っておられますか。
  305. 山中貞則

    ○山中国務大臣 琉球政府でも、その問題点を検討するために復帰対策県民会議というものをつくっておられるようであります。これは保守、革新等も公平に選定をされた人選のように一応承知をいたしておりますが、そこで県民の声として、これは最終的には手続が布令の改正ということになるわけでありますけれども、これらも、米側がそれをあえて押しつぶして一方的な意思を行使しようという意図は全然見られませんので、この県民会議等を通じて琉球政府考え方が議会を含めて固まりますれば、私どもは、選挙を行なわれるなりあるいは復帰時点まで延長されるなり、それらは沖繩県民の御意思を尊重したいと考えております。  さらに第二点の、復帰時点における現在の主席、復帰後の知事はどのように扱うかという問題で、ただいま自治法の自治大臣による任命というお話がございましたが、これはやはり沖繩の人々の心情から考えて、そのような手段は法律上あり得ますけれどもとるべきではないであろう、またとらないほうがよろしいと考えておりますし、奄美大島の復帰いたしましたときの前例等は、その当時の復帰いたしましたままの市町村長をそのままみなして市町村長といたしましたので、当然みなす措置をとることによって主席は知事になり立法院議員は県議会議員となり、市町村以下同じということになるものと考えておる次第でございます。
  306. 安井吉典

    ○安井委員 この問題について私はどうしろときょうは言いませんけれども、しかしあくまで県民の世論に従うということ、この態度が一番大事でありますから、その点だけひとつ申し上げておきたいわけであります。  それから復帰に際して、法律の改廃、暫定措置等が必要になるわけで、それについていろいろ作業も進んでいると聞くのでありますが、どういうようなお考え方で臨もうとしておりますか。
  307. 山中貞則

    ○山中国務大臣 原則は、沖繩県民を公平に、沖繩県として本土の各県と変わらないように、本土の各県民と変わらないように扱うべきであろうと考えます。しかしながら、私たちが復帰まで計算いたしますと合計二十七年沖繩を米軍の事実上の軍政下に置いてまいりました本土の責任において、沖繩の人々のために残さなければならない措置あるいは特別に考えなければならない特例法等は、多分に沖繩側の立場に立って考えなければならない点が多いと思います。でありますので、ただいまは閣議で昨年第一次の要綱を決定いたしましたが、税制等を含む第二次の案をただいま検討中でございますけれども、それらを受けて臨時国会に返還協定を御審議いただく、国会に提案するための必要な特別措置あるいは暫定措置等に関する法律をいま洗い出しているところでございます。いずれも各省庁いろいろの見解がちらほら新聞に出ますけれども、窓口は私のところ一本にしぼっておりますので、その法律も大体推定件数五百数十件、一部新聞に六百一件と出たようでありますが、この中には沖繩産糖の買い入れに関する暫定特別措置法みたいな、本土に返ってくれば必要のない、廃止する法律等が含まれておりますので、正確には五百七十数件に落ちつくかと思いますが、これらの問題を一括して国会に提案をいたし、これがはたして沖繩県民の二十七年の苦痛に本土がこたえ得る全部であるかどうか、これらについて十分の御審議を仰ぎたいと思いますし、返還協定と異なりまして私どもの作業はオープンでございますから、琉球政府との間にも十分に相談をいたしますし、議会における質疑応答等を通じても返答できる時期がきた場合においては、幾らでも質疑応答の間において明らかにして、県民の皆さま方に御安心願うように努力をしたいと考えます。
  308. 安井吉典

    ○安井委員 この法律の問題はもっと煮詰めなければいけませんので、きょうの質問は一応伺ったことだけにしてあとの人にやっていただきたいと思います。  あと時間が残り少なになりましたので、総理を解放する前に、最後にこの間の楢崎委員の質問の中で、安保条約第六条の事前協議制の問題についてのやりとりがありました。総理は国会に相談する場合として、戦争に発展するような重大な場合には相談をいたします、こういうあげ方をされたわけでありますが、具体的によくわからないのですがね。戦争になるような場合とは一体どういう場合をおさしになっているのか。たとえばベトナム戦争が激しくなって、こちらの基地から出撃をするような場合とか、あるいは朝鮮半島でもしも万一戦争状態になって板付その他の基地から発進するような場合とか、そういう場合を想定して言われたのか、それらの内容がよくわからないのですが、ちょっと御説明をいただきたいわけです。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法律論と行政配慮、そういうものに分けて考えてみたい、かように思いますよ。私は法律論からいえば必ずかけなければならない、かようには思いません。しかしながら事が重大であればやはりかけなければならぬ、かように思っております。これもたとえば、国内でいわゆる自衛隊自身が自衛行為等に出るという場合でも、それには時を逸せずそういう措置をとりますけれども、しかし国会の承認がなければならない、こういう問題もあります。私はいまイエス・オア・ノー、そういうことはいずれもあり得るということを申しておりますが、私は戦争に巻き込まれるというようなことはない、そういう場合にはノーを言いたい、かように思っておりますから、まず危険はないかと思います。しかし、私どもが想像しないような事態が起こるから戦争ができるのですから、したがって、ここの本土に常駐しておる米軍が、あるいは本土から他に出かける場合に、これはやはり事の性質、あるいはそのときの国際情勢、そういうことでは国会に報告する、これは行政的な当然の責務だろう、かように私は思うのであります。いまそれじゃどういうことを考えているか、こういうような突っ込んだお尋ねでございますが、ただいまのところそういう心配のものはない、こういうこともいえるかと思います。どうもいままでの程度の事前協議、いわゆる日本からアメリカの兵隊が引き揚げるとかあるいは韓国へ移駐するとかいう程度のものであれば、これは別に問題はございません。しかし韓国においてもうすでに事変が起きている、そしてそれに対して出かけるような状態があるとか、たいへんひんぱんな問題が起きてくるとか、こういうようなことになると、いわゆる極東情勢、たいへんな緊張をかもし出しておる、こういうような事態だと、私は国会にもはかるべきそういうときではないか、かように思っておるのでございます。
  310. 安井吉典

    ○安井委員 これはもうちょっと時間を残しておきたかったのですけれども、さっき総理が何かごまかしの答弁をだいぶ長々やられまして、それですっかり時間がなくなってしまったのですが、これはどうもいまの御答弁でも、いろいろ聞いている諸君もなかなかわからないのじゃないかと思うのですね。もう少しやはりいろいろ今後の段階で詰めていきたいと思うのですが、われわれは少なくとも事前協議においてイエスと言うような場合はすべて国会にかけるべきだ、こういうふうに思います。というのは、総理は何か前進的な言い方をこの間されたとお考えかもしれませんが、国会にかけるかかけないかの判断は、これは総理御自身が、政府自身がするわけでしょうから、そこでせっかく前進的な答えのように見えても、そこでするりと逃げる余地をお残しなわけですよ。問題はやはり事前協議でイエスというふうな場合は必ず国会にかける、こういうふうな基本原則を私はやはりこの際確認をしておくべきではないかと思います。戦争に突入しそうになったその前の晩に国会に相談かける、こういうようなことでは意味がないのではないか、国民を代表する国会としてこれはやはり不満であります。そういう点もう少し私ははっきりすべきだと思うのです。いかがですか。
  311. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、法律論としては、これは私は政府の専管する事項だ、かように考えております。しかし国会は何と申しましても最高の国家機関、最高の機関ですから、そういう意味でもし政府が事前にそういう事柄について全然話をしない、これは事前にというわけじゃございませんよ、全然話をしない、こういうことだと、国会はおそらく遠慮なしに政府を糾弾するでしょう。重大なる事態が起きているのに、それを自分たちの専管事項としてかってなことをしたといってこれは許さないだろう。またそれについては国民は必ず味方するだろう、かように私は思いますので、それこそやはり国民をおそれる姿勢でなければならない、このことを私は先ほど来から申しておるのです。ただ理論が、理屈がこうだからそれでよろしいじゃないかというような軽い感じではいけない。もっと国民の前に説明のできる、そういう姿勢でなければならない、これが私の姿勢であります。
  312. 安井吉典

    ○安井委員 この問題をはじめ、きょうの質問の中で私として不満に思うような御答弁がたくさんあった、それらの問題については一応保留をいたしまして、きょうはこれで終わります。
  313. 中野四郎

    中野委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  明四日は、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十五分散会