○西宮
委員 私も、その自由化の問題、一般論として理解できないわけではもちろんありません。ただ農業の場合は農業の特殊性がある、こういうことで、これはたとえばアメリカでも、アメリカで不足する農産物については非常な強い保護措置をとっているわけですよ。あるいはEECの国の中でもお互いに農業問題で意見が合わない、つまり自分の国の農業を守ろう、こういう
立場でEECの中で農業問題が最大の重大問題になっているということも周知のとおりであります。あるいは、イギリスがEECに加盟できるかできないかというようなこともこの農業問題がその条件になっている、こういうことで、これは
世界各国とも農業問題は特殊な産業として扱われておる。単に
日本だけ農業がおくれている、そういう
立場から生まれたのではないのだ、こういうことはむしろ
世界的な傾向だということを十分御
承知を願いたいと思う。
ところで、今日までとられてまいりました
政府の農業政策がきわめて無定見だということを、私はこの際またあらためて
指摘をしないわけにはいかないわけです。
昭和三十七年に初めて長期の見通しを立てたわけでありますが、それによりますと、
昭和四十六年に若干米が余る、こういう数字を発表したわけであります。しかし、行なわれました政策は増産増産の一本やりであります。まっしぐらに増産にばく進をしたわけであります。その次は
昭和四十三年に見通しが発表されましたけれ
ども、ここでは余るというような予測は立っておらない。ところが二年たった
昭和四十五年、昨年の十一月出されましたのには、たいへんに余るのだ、こういうことを言い出して問題が大きくなったわけであります。こういうぐあいにほとんど確たる見通しが立っておらない。あるいは当時の企画
庁長官でありました
宮澤さんは、
昭和四十二年の九月八日には、アメリカの加州米を長期契約輸入をしようということを閣議で強く提唱したということが当時の
新聞に載っているわけであります。
昭和四十二年の九月といいますると、その年の八月の末に、すでにことしは相当な豊作だ、こういうことで余るんだ、こういうことが予測をされておった時代、現に八月末で百万トン幾らか余っておったはずであります。そういう時期にアメリカから長期輸入の契約をつくるんだ、こういうようなことを提唱しておられたあたりは、私
どもにはどう考えてみても理解ができないわけであります。つまりアメリカの過剰農産物に対して協力をするという姿勢あるいはまた
日本の産業資本が工業生産品をアメリカに買わせようとする姿勢、そういうペースに動かされていると言う以外に私
どもは理解のしようがない。まあとにかくいずれにいたしましても、今日までそういう点できわめて無定見な
態度を繰り返してきたというところに大きな原因があるので、これは強く反省を求めなければならぬと考えるわけです。おそらく農林
大臣は、特に余るとか余らぬとかいうことについて見通しが狂ってきたのは、最近の
消費者が米の消費量が減ったからだ、質問をすればそういうふうに答弁をされるに違いないと思います。それならばなぜ減ったのか。私はいろいろあると思います。小麦を特に食わせようというようなそういう政策がとられてきたこと、つまり学童給食など、小麦を食ったために学童の体位が向上したなどということを文部省等も発表しているわけであります。そういうことで、パンを尊重して、小麦を尊重して米を軽視する、こういうことが行なわれてきたということも事実だと思う。
しかし、それ以上に具体的な問題として、私は
消費者米価の
値上がりがあると思います。
佐藤総理は
昭和三十九年の十二月に総理になられたわけでありますが、なるやいなや直ちに
昭和四十年の一月一日に米価の引き上げをしたわけであります。あたかも米価
値上げをするために総理になったみたいなんですが、その
佐藤さんは毎年毎年それから四年間連続
値上げをしたわけです。そこでその間に
消費者米価は五九・八%、約六〇%
値上がりをしているわけです。池田さんの在任中には一二・三五%という
値上げを一回やっただけであります。池田さんは、貧乏人は麦を食え、こういうことを言われましたけれ
ども、池田さんの時代には麦を食わなくても済んだわけです。ところが
佐藤さんの時代になりますと、四年間に六〇%といいますと、千円の米価ならば四年後には千六百円になるわけですね。これではなかなか米が買えないということになるのは当然だと思うわけです。池田さんは貧乏人は麦を食えというようなことを言われましたが、
佐藤さんはそういうことはおっしゃいませんでした。おっしゃらなかったけれ
ども、これはまさに不言実行で、麦を食わせる、こういう方向に傾かせてしまったのではないかと思います。その点について、これは経済企画庁がかつて資料を出したことがあるのでありますが、少しデータが古いので、私はきょうは持ってきませんでした。それは米価の
値上がりあるいはあた逆にパンとかうどんとかそういう粉食物が
値上がりをすると、それに応じて米の消費量がふえる、つまり麦食が値が上がると米食がふえる、こういう数字を六、七年前でしょうか、発表したことがあるのでありますが、最近そういうデータがないようですから持ってきませんでしたが、その点について企画庁ではどういうふうにお考えでしょうか。――もしいまデータがなければあとで御説明をいただくことにして、時間が貴重ですから先へ進みます。あとでひとつ御説明いただきたいと思います。次は生産調整の問題。これはすで条
会議等でも議論をされておりますように、米が余っているから生産調整をするんだ、こういうことですが、
佐藤総理、二百三十万トンの米を減らすということになるとどれだけの水田面積を廃止をするのか御
承知でしょうか。おそらく御
承知ないと思うので私のほうから御披露いたしますが、これは五十一万四千ヘクタールなんであります。五十一万四千ヘクタールと申しましても、これまた必ずしもぴんとこないと思います。そこでこれを例にとって申しますると、たとえば九州各県と山口、島根を合わせた数字になるわけであります。あるいは東京周辺を例にとって申しますると、関東一円、関東七県、それに静岡を加えた数字、それでもなおかつまだ五十一万四千ヘクタールに足らないわけであります。こういう関東なら関東でもけっこうですが、関東と静岡を合わせたその広大なる面積の中で、稲は一本も植えてはなりません、米は
一つもつくってはなりません。これが二百三十万トンの生産調整なんですよ。そういうことになれば、これは農家の皆さんが実に重大問題だというふうに考えられるのは当然だと思うのですが、
佐藤総理はそういう点について、この生産調整の問題についてどういうふうにお考えか、御感想をひとつ聞かしてください、数字の説明はけっこうですから。