○畑議員 今回社会党、公明党、民社党三党で提案をいたしました本法案について、その提案の大きな理由、それを御説明いたしたいと思います。
いままで民法の
大原則というものがございまして、民事上の私法上の損害賠償の際には故意、過失が必要である。故意、過失が相手方になければ損害賠償を請求することができないという民法七百九条の
大原則がございます。この民法七百九条の
大原則というものは、近代の最近までの資本主義の発展と相見合うものでありまして、故意、過失がなければ自由に
事業活動をやってよろしい、故意、過失がなければそれによって生ずる損害についても賠償する責めは負わないのである、こういうようなことになっておりました。またその規定によってこそ初めてこの近代社会ができ上がったというわけでありまして、非常に自由な
事業活動ということが保障されたわけであります。
ところが、最近は機械な
どもえらい異常な発展を遂げましたし、非常に精密な機械な
どもできました。またざらに、薬品などにつきましても非常にデリケートな薬品などができまして、事業者といえ
どもほとんどその損害についてあらかじめ予見し得ないようないろんな結果というものが生まれてまいるようになりました。そうなりました場合に、被害者のほうで相手方の、すなわち事業者の故意、過失というものを立証しなければ損害賠償がとれないというようないまの民法の七百九条の制度によりますと、最初の目的と違った結果になってしまうというようなことになってまいったわけであります。特に最近の
公害問題についてしかりであります。
そこで、われわれはそうしたいままでの民法の
大原則に対して、環境の汚染というものを中心とし、さらに俗にいう食品
公害あるいは俗にいう薬品
公害、こういったものにも広げて——正確な
意味での
公害とは違いますが、そういったものも含めて、そういった製造の過程において排出され、あるいはまたその製造の過程において添加されたりなんかしたようなことによって被害が出て損害をこうむった人がおるという場合には、被害者のほうで相手方、すなわち事業者の
事業活動にあたっての故意または過失を立証しないでも、すなわち故意、過失がなくとも無過失で責任を負わせるというような制度にしなければならぬというような
観点からこの法案をつくったわけであります。去年の終わりの例の
公害国会の際にも、われわれ三党で別な形の無過失賠償責任の法案をつくりまして提案をいたしました。けれ
ども、それはそのまま廃案ということになりました。そこで、今度われわれはさらにそれに検討を加えまして、新たな
観点からこの法案を
提出した次第であります。
本来、世論も
公害問題の処理について、被害者救済の問題については非常に関心を持って、そうした制度の制定が望ましいというような
考え方が示されておったのでありまして、総理もかねて宇都宮の一日国会で、そういった制度を検討し提案をするといったような
意味の発言もされたのでありますが、
公害国会の際にはとうとうその提案がなされないということで、われわれは世論にこたえて、
公害国会で先ほど申し上げましたような別の案を提案をいたしました。そうしてさらにまた、政府で提案をするかと思って待っておりましたが、提案がなされないものでありますから、われわれさらにそれに検討を加えまして、この前は物質の名称な
ども指定しなくて非常に抽象的なものだということで非難を受けた点もございますが、そういう点も修正をいたしまして、具体的に物質の名前をあげ、さらにはまた、あげられないものについては政令に委任をするというような形で具体的なものにいたしました。そういう点がこの前とは違っておるわけでありますが、さらにまた食品
公害あるいは薬品
公害、こういうものも加えて提案をいたしたものであります。
われわれといたしましては、ともかく世論にこたえるというような
意味で、やはり七百九条の例外を
一般的な規定でやる必要がある。いままで政府におかれましては、具体的な個別法規の一部修正等によって無過失責任を規定しているところも部分的にはございますのですが、
一般的に七百九条の例外規定を単独法で出した例がございませんので、われわれはこの世論にこたえる
意味でも、この時代の要請に沿った立場で、あえて政府に先がけて提案をいたした次第であります。そういうふうに御了解願いたいと思います。