運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-04-13 第65回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月十三日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 小澤 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 福永 健司君    理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君    理事 岡沢 完治君       石井  桂君    江藤 隆美君       羽田  孜君    羽田野忠文君       松本 十郎君    村上  勇君       森山 欽司君    豊  永光君       赤松  勇君    勝澤 芳雄君       黒田 寿男君    三宅 正一君       林  孝矩君    青柳 盛雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君  出席政府委員         法務大臣官房長 安原 美穂君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      吉田  豊君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君     ————————————— 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   山手 滿男君     森山 欽司君 同月十三日  辞任         補欠選任   中尾 栄一君     豊  永光君   永田 亮一君     羽田  孜君 同日  辞任         補欠選任   羽田  孜君     永田 亮一君   森山 欽司君     山手 滿男君   豊  永光君     中尾 栄一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政及び法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件及び法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森山欽司君。
  3. 森山欽司

    森山委員 本日は、質疑をいたします同僚委員が多数おいでのようでございますから、私の質疑も大筋にとどめたいと思いますので、ひとつ答弁のほうも簡潔にお願いをいたしたい、前もってお願いを申し上げておきます。  かねて札幌地裁福島裁判官の平賀書簡公表問題その他をめぐりまして、裁判独立問題が大きくクローズアップされ、いろいろ論議を呼んでまいりましたが、特に最近、十年の任期が来ている裁判官再任問題、二十三期司法修習生裁判官任用問題、あるいは四月五日行なわれた司法研修所終了式を混乱させた一人の司法修習生が罷免されたということが伝えられるに及びまして、最高裁判所あり方裁判官人事問題などをめぐって、裁判所公正中正司法権独立の問題が一そう激しい論議を引き起こし、新聞などマスコミにも大きく報道されているようになっております。  そこで、まず第一に、国民裁判所及び裁判官に最も期待しているところは、何といっても裁判の厳正公平ということであります。この厳正公平さが国民からいささかでも疑われれば、国民裁判所信頼しなくなるであろうということであります。次に、国民裁判所及び裁判官に期待しているのは政治的中立でありまして、また真の意味裁判独立の保持であります。  そうして、そもそも裁判独立が問題になるのは、この公平さを担保するためでありまして、ただ裁判独立を騒ぎ立てるだけでは本末転倒であると思います。その意味裁判官政党や、政治的色彩の強い団体に所属したり政治活動を行なったりすることは、その裁判官が特定の政治的主張に動かされているのではないか、いわば色めがねをかけてものを言っているのではないかという疑惑を招き、その裁判国民一般から信頼を得られなくなるのであります。これらの点につきまして国民信頼を失えば、裁判所無視の風潮が国民の間に蔓延し、それこそ将来ゆゆしい問題となります。憲法基本理念である民主主義の原理が失われ、せっかく戦後二十五年の間営々として築いてきたわが国民主主義の基礎は根底からくずれ去ることになるのであります。  そこで、最近問題となっておる二十三期の司法修習生新任裁判官問題について質問をいたしたいと思います。  裁判官の不足が伝えられておるのに、本年は六十二名中七名を名簿からはずし、昨年も三名ほど除いたと聞いているが、指名決定についての基準はどうなっているか、最高裁判所に伺いたいと思います。
  4. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  裁判官というものは、何人からこれを見られましても、その裁判官たるにふさわしい方でなければいけないと思います。こまかな基準ということになりますと、これは人事の問題でございますので申し上げることをはばからしていただきたいと思いますが、いま申し上げました一般的な基準、これがとりもなおさず裁判官の任用の基準であるというふうにお考えいただきたいと思います。
  5. 森山欽司

    森山委員 今年四月に十年の任期が来ている裁判官のうち、再任希望者六十三名中一名が最高裁判所再任裁判官名簿から漏れておるようでありますが、再任指名決定についての一般的な基準はどうなっているのか、このことについても伺いたいと思います。
  6. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 再任の場合も同様でございまして、再任される裁判官として一般的にふさわしい方ということでございます。
  7. 森山欽司

    森山委員 裁判官裁判内容または訴訟指揮のやり方も指名決定の資料となるのかどうかについて伺いたいと思います。
  8. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判訴訟指揮とか裁判内容といったものは、これは訴訟法の分野の問題でございまして、上訴審等において判断されるのが第一義のものであろうかと存じており  ます。
  9. 森山欽司

    森山委員 次に、再任漏れになった判事補再任を拒否されても、簡易裁判所裁判官としての資格があと三年間は残っており、法廷を去るつもりもないので、あらゆる手段を使って再任請求を続けていくと言っているとの新聞報道がありますが、簡易裁判所判事としてあと三年間身分は続くのかどうか、伺いたいと思います。
  10. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これは場合によるわけでございますが、その裁判官簡易裁判所判事本務であって、判事補あるいは判事が兼務であります場合に、判事あるいは判事補につきまして任期が終了いたしました場合は、本務としての簡易裁判所判事はその簡易裁判所判事に任用されましてから十年間は続くということに相なるわけでございます。
  11. 森山欽司

    森山委員 一般裁判官としては適格性を欠くといって名簿からはずされた者が簡易裁判所判事として残るというのは、いかにも常識的でないように感ずるのでありますが、ただいまの答弁のようであるから一応承っておきます。  最近、マスコミの報ずるところによると、日弁連をはじめ大阪、熊本などの弁護士会及び自民党を除くその他の政党政治団体などが、裁判官として採用しなかったことや、再任指名をしなかったことの理由を公表せよと強硬に要求しておられるといわれております。人事の秘密は最高裁判所は当然厳守さるべきであり、そういうことは、たとえ本人が希望しても公表できないのがあたりまえであります。まあ、どこの会社や官公庁でも、採用にならなかったからといって、それを一々公表するというようなことは常識ではないのであります。そもそもこういう裁判官人事問題について政党があまり深く介入するということは、これこそ三権分立のたてまえから、司法権独立に対する侵害になると思うので、私は深く介入するつもりは毛頭ありません。  また、最高裁判所は去る四月七日、日弁連が四月三日会長談話形式で、裁判官新任再任問題につきまして最高裁を批判したことに対し、この談話こそ司法権独立を侵すおそれがあるものであってはなはだ遺憾である旨、事務総長名日弁連会長あて抗議文を出したといわれておりますが、私にはこの最高裁判所の立場はよくわかるのであります。  ところで、最近の四月十一日付の読売新聞の報ずるところによりますと、最高裁の今回の熊本地裁判事補再任名簿から指名しなかった措置について、熊本、福岡、東京、横浜などの地方裁判所裁判官が百五十名ほど最高裁判所に対し要望書を提出し、再任しない理由の明示などを迫ったということであります。新聞だけを見ておりますと、もう裁判官の大部分がそんな意見のように見えるのでございますけれども全国裁判官の数は約二千六百余名でございますから、全体から見ればごく一部にすぎないのであります。それにしても、その要望書内容は一体どういうものなのか。新聞に伝えられるように抗議ないしは批判というようなものなのか、あるいは陳情のようなものなのか、最高裁当局に承りたいと思います。
  12. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 参っております要望書等は現在のところ約百四十名の方からのものが参っております。その内容のほとんどは、もし宮本裁判官再任されないというようなことであるならば、その理由を知らせてほしいというものでございます。中には、慎重にこの問題を処理してほしいという希望も含まれております。そうして少数のものが、宮本裁判官であるとするならば、宮本裁判官適格があるように思われるが、この点をどう考えておるのかというものでございまして、私ども、大部分同僚裁判官あるいは後輩裁判官の私どもに対する事柄の処理を慎重にしてほしいという要望というふうに承知いたしております。
  13. 森山欽司

    森山委員 それでは最高裁判所は今後その理由を示すということがあるのでありますか、最高裁判所方針を伺いたいと思います。
  14. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 事柄は具体的な人事の問題でございますので、私どもはそういったことについて理由を示すべきではないと考えております。
  15. 森山欽司

    森山委員 陳情というふうに受け取っておるというお話でありますが、もしそうであるとすれば、それらの裁判官の多くは新聞にでかでか掲げられるような公表を望んでいないはずだと思われます。大体こういうことが公表されることがおかしいので、これについての見解を承りたいと思います。
  16. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の中には、こういうものを公表すべきでないというお考えの方が大多数であろうかと存ぜられます。しかし、具体的には、外部に発表されてもしようがないというお考えの方も、大ぜいの中でございますので  おありのようでございまして、こういった点、私どもは今後の機会に、人事というものは理由を言うべきものではないといった条理を十分に御説明することによって納得していただけるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  17. 森山欽司

    森山委員 次の質問に移ります。  マスコミの報ずるところによりますと、自民党を除く政党その他の政治団体などが、裁判官新任拒否再任拒否青法協会員なるがゆえであって、これは裁判官の思想、信条、団体加入の自由を侵すものであるようにいっておるのでありますが、この際、青法協の実態についてお伺いをいたしたいと思います。  青法協は、発会宣言及び規約では、憲法を擁護し、平和と民主主義及び基本的人権を守る若い法律家の集まりとされておるようであります。一見、憲法を擁護する団体のように見られますが、はたして真に憲法を守るのかどうか、ほんとうの気持ちがわからないのであります。青法協会員である現職裁判官の中には、むしろ憲法を否定する極端なことを言う人もありますが、一々申し上げることは、あえてこの際は差し控えたいと思います。ここでは青法協政治活動面についてお尋ねをいたしたいと思います。青法協は、昭和三十五年から四十年ごろの間、安保改定反対政防法反対原潜寄港反対ベトナム戦争反対といった政治闘争を積極的に展開してまいりました。特に安保反対闘争では、昭和三十五年五月、緊急常任委員会を開いて新安保条約強行採決無効と岸内閣の総辞職要求する声明を発表するとともに、同年六月には、他の団体とともに国会に対して集団請願岸首相辞職勧告文を手交しました。また政防法案反対闘争では、三回にわたり他の団体と共闘して反対決議をするとともに、衆参両院議長に同法案を採択しない等の請願社会党、共産党には法案阻止に努力するよう申し入れました。さらに原潜寄港阻止闘争では、原潜寄港反対文化団体連絡会議に加盟し、反対集会参加国会請願、ビラまき、署名運動などを行ない、原水禁運動では、日本共産党系原水協主催世界大会代表を派遣しました。これらの事実を最高裁判所は知っておるのかどうか、伺いたいと思います。
  18. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青年法律家協会常任委員会が発行しておられます全国総会議案書の中に、全国総会のための活動報告あるいは活動方針案というものがございますが、そういった青年法律家協会で発行されております書類等によりまして大体のことを承知いたしております。
  19. 森山欽司

    森山委員 以上は昭和三十五年から四十年ころのことでありますが、昭和四十年には特に日韓条約反対闘争において日民協総評弁護団自由法曹団などとともに同条約に反対する法律家集会の開催、批准反対署名ビラまき等政治活動を行なったほか、多くの政治的活動を行なったことを最高裁判所は知っておりますか。
  20. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 大体承知いたしております。
  21. 森山欽司

    森山委員 昭和四十一年には小選挙区反対闘争に取り組み、また外国人学校制度創設反対アメリカ原子力潜水艦横須賀寄港反対等、多くの政治的活動を行なったことを最高裁判所は知っておりますか。
  22. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほど同様の議案書により大体承知いたしております。
  23. 森山欽司

    森山委員 昭和四十二年の闘争として、ベトナムにおけるアメリカ戦争犯罪をさばく東京法廷への会員参加安保体制強化反対日中国交回復促進日中自由往来実現促進北鮮帰国協定打ち切り反対公安条例反対運動などの数々の活動を行なってきた事実を最高裁判所は知っておりますか。
  24. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほど同様のお答えでございます。
  25. 森山欽司

    森山委員 翌昭和四十三年には、安保沖繩問題こそ今日最大の憲法問題であり、これに系統的、多角的に取り組むことをおいて協会存在意義はないとして、安保体制強化反対闘争に積極的な取り組みをなし、そのための政治活動を種々行なってきた事実を最高裁判所は知っておりますか。
  26. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 承知いたしております。
  27. 森山欽司

    森山委員 次の昭和四十四年五月三十日の第二十回全国総会では、四十四年度の活動方針の骨子として憲法改悪阻止安保破棄沖繩全面返還実現などをあげるとともに、これに先立つ情勢分析で、一九七〇年闘争を、安保条約の取り扱いと沖繩返還を両軸に日本政治あり方や進路をめぐって繰り広げられる一大攻防戦であり、青法協にとってはまさにその存在理由をかけた戦いであると言明している事実を最高裁判所は知っておりますか。
  28. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青法協発行書物等によって承知いたしております。
  29. 森山欽司

    森山委員 以上のような政治的活動を種々行なってき、また昭和四十五年五月七日、札幌地裁民事二部が、福島重雄裁判長忌避申し立てに対する却下決定理由の中で、青年法律家協会自衛隊反対運動と基調を同じくすると思われる安保廃棄等政治的な活動方針をも有する広い意味での政治団体であるとの認定を下しております。青法協はみずからは研究団体であると弁解しておりますが、実はこれにとどまらず、まさに政治団体であると断言してもよいのではないか、最高裁判所見解を聞きたいと思います。
  30. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 厳格な意味での政治団体といえるかどうかは問題でございますが、少なくとも政治的色彩の非常に濃い団体であるというふうに考えております。
  31. 森山欽司

    森山委員 法務大臣見解もこの機会に承りたいと思います。
  32. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいまの政府委員答弁と同様であります。
  33. 森山欽司

    森山委員 青法協は、昨年七月の総会規約を改正し、裁判官部会を表面上は切り離しているようでありますが、裁判官部会と他の部会との間で共通事項などについては随時協議を行なうことが明記をされております。さらに裁判官部会推薦決議を条件に裁判官部会代表青法協中央の副議長に加えることにしているなどから見て、やはり裁判官部会青法協中央活動方針に拘束されるのではないか、拘束されないまでも裁判官部会というものが青法協という全体のかさの下にあるのでその影響を受けることが大きいといわれてもしかたがないのではないか。最高裁はこの点どう考えているか、承りたいと思います。
  34. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 一応職能別に分かればいたしましたけれども、いまお尋ねのようなことは私どもも同様に考えております。
  35. 森山欽司

    森山委員 そこで後ほど裁判官の任命問題を伺うのでありますが、これに関連をいたしまして、検事採用について参考のために聞いておきたいと思います。検察官であります。本年度の検事採用に際して、一名の司法修習生採用しなかった事実がありますか。
  36. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ございます。
  37. 森山欽司

    森山委員 どういう理由採用しなかったのか。
  38. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その一名につきまして、所定の選考委員が省内に設けてございますが、その選考委員選考の結果、検事として採用するのにふさわしくないというたてまえから、不幸にして採用することができなかったのであります。
  39. 森山欽司

    森山委員 面接の際、青法協加入有無を尋ね、加入している者については脱会をすすめたと聞いているが、そういう事実があるのか。これは法務大臣少しこまかいですから、どなたか政府委員でもけっこうでございます。
  40. 安原美穂

    安原政府委員 そういう事実はございます。
  41. 森山欽司

    森山委員 いかなる観点からそういうことをしたか、承りたいと思います。
  42. 安原美穂

    安原政府委員 検察官につきましても、その職務の性質上、厳正公平、不偏不党でなければならないことは申すまでもないことでございまして、その点は裁判官に劣らない中立性要求されるわけであります。  ところで、先ほど大臣からお答えいたしましたように、青法協という団体は少なくとも政治的色彩の濃い団体であるというふうにわれわれは認識いたしておりますので、検察官職務上そういう政治的色彩の濃い団体加入していることは好ましくないという観点からその事実を尋ねた次第であります。
  43. 森山欽司

    森山委員 不採用になった者は、青法協を脱会しなかったために採用されなかったと述べているが、その不採用理由を詳細に述べてもらいたいと思います。
  44. 安原美穂

    安原政府委員 人事のことでございますので、詳細に申し述べることは差し控えたいと思いまするが、要するに青法協会員であるということだけで不採用にしたのではございませんで、採用にあたりましては、その人間の人格、識見、専門的知識、能力あるいは職業に対する使命感、自覚等総合判定いたしまして、残念ながら検事として適格ではないという判断になった次第であります。
  45. 森山欽司

    森山委員 それではまた本番の裁判官の任用問題に移りますが、最高裁判所は昨年の四月八日、当時の岸事務総長談話形式でもって、政治的色彩を帯びた団体加入するのは慎むべきであると発表しておりますが、いまでもその姿勢は堅持されておりますか。
  46. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 全く変わっておりません。
  47. 森山欽司

    森山委員 そうすると、この談話にある政治的色彩を帯びた団体には、先ほどの御返事でもそういうように伺っておりますが、青法協も当然含まれていると思うが、どうでありますか。確認をしたいと思う。
  48. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青法協の現在の性格からいたしまして、入ってまいるものと思っております。
  49. 森山欽司

    森山委員 それでは、従来国会における最高裁及び政府は、青法協会員だという理由だけで指名しないことはないと言ってきておるようでありますが、しかし、青法協政治的団体であるというならば、これはもう新しく裁判官採用をするために面接する際には、検事と同様に青法協加入有無を聞くべきであると思うが、実際はどうなんですか。その辺を伺っておきたい。
  50. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青法協加入しておるかどうかということは、現在裁判官採用するにあたって聞いておりません。
  51. 森山欽司

    森山委員 私は、先ほどの論理的帰結としては、当然新しく採用する人ぐらいは聞くのが当然だと思うのでありますが、聞いてないというところに最高裁の、何と申しますか、姿勢のなまぬるさと申しますか、そういうものがある、私はそういうふうに感じます。もし加入の事実があれば、これは評定上のマイナス要素一つとして考慮すべき事柄になる、またそういうふうに論理の当然の帰結として考えていいのではないか。その点はいかがですか。青法協会員という理由だけで指名はしないが、しかし、青法協会員であるということは人事採用の際に考慮するポイントの一つになる、こういうことははっきり言っていいのじゃないですか。
  52. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ある人を採用するかどうかということは、あらゆる観点から検討し、討論されて決定されるべきものでございます。しかし、青法協会員であるというだけの理由でもって採用しないことはない、このように申し上げたいと思います。
  53. 森山欽司

    森山委員 質疑の時間がだんだん迫ってまいりましたから、私の用意したことを全部申し上げることはできません。  二十三期司法修習生終了式の事件から、一名の修習生に罷免問題が起きた、こういうことについての私の質疑は、時間の関係がありますから、この際一切省略させていただきます。しかし、ただ一つここで、昨年の司法修習生終了式所信訓辞の際、ナンセンスと叫んだり、床板を踏み鳴らした者がいたと報ぜられております。また今年の終了式も、これまで明らかになったように、混乱しておって、まことにこれは遺憾であります。大体かねて二年間の修習過程で、研修所長に対する大衆団交と称して、二回試験落第反対寮規則反対任官拒否反対などの要求をいろいろ出して騒いでいるといわれておりますが、この二回試験というのは、調べてみると、修習終了の際の試験であると聞いておる。成績不良の者について落第させるなというきわめて虫のいい、非常識な要求であります。寮規則反対というのは、かつての大学学生会館紛争と似たものである。こういうことが研修所で行なわれているということははなはだ遺憾であるが、これは一体どういうことであるのか。修習生一人当たり月額四万三千五百円の給料を払い、多額の国費を投じておる研修所のこのような現状は、納税者の一人としても黙って見ているわけにいかないのであります。大体弁護士のほかに判検事ともなるべき人が修習するための司法研修所は、最高裁判所管理下にあります。しかしながら、司法という国民の目の届かないところでこのような事態が起こり、そしてこれまでこのように野放図に放置してきたということは、これは大学と同じでありまして、一体最高裁判所は責任を感じないのであるか、今後これにどのように対処していくつもりか、所見を伺いたいと思います。
  54. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 昨年に続きまして本年もまた修習終了式に混乱が生じましたことは、まことに遺憾なことでございまして、司法研修所を所管いたしております最高裁判所としては、まことに申しわけないことであるというふうに考えております。  法曹は、社会の正義を実現し、社会秩序を守り、かつ基本的人権を守るとうとい使命でございます。そういう使命をになうべく修習を終了するその直前にこのような事態が起こるということは、私どもといたしましても、法曹の教育についていま少し観点を変えて考慮いたさなければいけないのではないかというふうに考えるわけでございまして、このような事態が起こりましたことにつきましては、深く自省いたしますとともに、今後こういうことの起こらないように、あらゆる観点から努力をいたしていきたい、このように考えております。
  55. 高橋英吉

    高橋委員長 森山君、申し合わせの時間が……。
  56. 森山欽司

    森山委員 もうすぐ終わります。  これに関連しまして、前の法務大臣分離研修というお考えがあったように伺っておりますが、法務大臣はこの研修所の現状から、修習制度についてどういうふうにお考えか、承っておきたいと思います。
  57. 植木庚子郎

    植木国務大臣 司法研修所のこの問題につきましては、前大臣のときにもいろいろ御研究になっていたようでありますが、私といたしましても、今後この問題についてなお十分検討の余地がある。その検討の余地と申しますのは、現状に対しての反省、認識を深くすることも必要があるのみならず、さらにただいま御指摘になりました、将来の判検事採用に資すべき研修をするそういう人たちと、弁護士になる希望の方を分離して研修をさせるということも含めまして、今後どういう方法でやるのが一番適当であろうかということについて、なお十分の研究を続けてまいりたいと思っております。
  58. 森山欽司

    森山委員 それでは時間が参りましたからこれで終わりますが、わが国の現在の裁判所で厳重に注意すべきことは、政党その他の政治団体など、外部勢力からの圧力増加の傾向であると思われます。冒頭にも申し上げましたように、裁判の公正中立、裁判官の真の独立こそが国民が心から期待しているところであります。これらを守るために、このような一部外部勢力の圧力に屈することなく、正姿勢最高裁判所は堅持してもらいたい。    〔発言する者あり〕
  59. 高橋英吉

    高橋委員長 お静かに。
  60. 森山欽司

    森山委員 現在、最高裁判所が、裁判の公正、裁判独立を守るために、ようやくき然たる態度をとってこられるようになってきたことは、一応敬意を表するのでありますが、今後とも国民信頼する裁判所の真のあるべき姿を目ざして、いささかも外部勢力の圧力に動かされることなく、ますますき然として万事に対処されるよう念願をいたしまして、質問を終わります。
  61. 高橋英吉

    高橋委員長 小澤太郎君。
  62. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 時間がきわめて少ないので、簡明にお答えをいただきたいと思います。  現在、司法権裁判官独立の問題、これに対する政治介入の問題等が論議されておるときでありますので、これを中心に私は伺いたいと思います。  まず第一に、最高裁判所判事の構成はいまどのようになっておりますか、前歴別に数字を示し  ていただきたい。
  63. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 現在は十五名の裁判官の中で、六名がいわゆる裁判官出身の裁判官の方でございます。五名の方が弁護士出身の裁判官の方でございます。残り四名のうち一名が検察官出身、一名が行政官出身、二名が学者の出身、  このような内訳になっております。
  64. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 それでは、昭和四十年以後新たに任命された裁判官の数を知りたいのであります。
  65. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 四十年以降新たに任命されました裁判官は、十三名の方でございます。
  66. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 最高裁判事を任命することは、憲法七十九条、裁判所法四十一条によって規定されておるのでありますが、法務大臣、内閣においてどのような選考をされるのでございましょうか、おわかりにならなければけっこうです。おわかりになっている限りで……。
  67. 植木庚子郎

    植木国務大臣 最高裁判事の新しい任命につきましては、内閣がこれを任命することになっております。そこで、総理が内閣の首班として十二分に人定めをいたしまして、検討の上で閣議にはかって決定する、こういう順序になると思います。
  68. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 裁判の中立、司法の中立、独立ということを確保するために、各国ともいろいろな制度を設けております。わが国の憲法におきましては、比較的独立をはかるということに留意されておると思うのであります。アメリカでは連邦裁判所判事は上院の承認を得なければならない。イギリスに至ってはセネット、貴族院が最高裁判所の仕事をする。政治介入ということがあり得る可能性が非常に強い。ところが、日本ではそのことがない。ただ一点、最高裁判所の任命を内閣が行なう。内閣が任命するにあたって真に裁判官独立ということを意図し、きわめて慎重にそのことのみを考えて人選に当たるということになるならば、私は政治介入ということがその面において防げると思うのです。一に内閣の態度いかんにかかると思う。いまの答弁によりますと、四十年以降、わが自民党佐藤内閣ができましてから今日まで、長官を除き、十四人の裁判官のうちから十三人が新しく任命されております。この任命にあたりましてはもとより慎重に司法独立考え、念には念を入れて最も妥当な人物を任命しておるとは思いますけれども、そのような数字から見まして、十四名のうち十三名が新たに内閣によって任命されておる。そしてその内閣は国民の支持を得ている長期政権でございます。こういうときに、いかに努力をいたしましても、国民の側からはあるいは政治的介入があるのではないかというような疑念を持たれることがあると思われるのであります。今回のいろいろな論説にもそのようなことが節々にあらわれております。  したがって、私がここで法務大臣に申し上げたいことは、長期にわたって政権を担当しておる政府でありますがゆえに、特に最高裁判事の任命にあたりましては、慎重に慎重を重ねて、いやしくも国民から疑念を受けることのないような人選をしていただきたい。このことをお願いいたしたいと思いますが、御所感いかがでございましょうか。
  69. 植木庚子郎

    植木国務大臣 この問題につきましては、その人事のきわめて重要なことに着目されまして、総理以下この問題に携わる者としては、三権分立のたてまえからも当然でございますし、また裁判独立、ことに国の制度の基本になる問題にもかかわりのある問題でございますから、従来も大過なく過ぎておるのだと私は存じておりますが、今後ともなお一そうそういう態度をもって内閣は進まれるものと期待もし、ぜひともその実現をはかりたいと思っております。
  70. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 次に、下級裁判所裁判官の任命についてでございますが、これは憲法八十条、裁判所法四十条によりまして、最高裁判所司法行政事務の一端として名簿を提出し、それによって内閣が任命するということになっておりますが、内閣はその名簿そのままを常に任命しておるのか。もとよりこれにない者を任命することはできませんが、その中からある者を落としておるというような実例があるかどうか、伺いたいと思います。
  71. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これまで下級裁判所裁判官の任命に際しまして、裁判所から送付した名簿どおりの任命のなされなかったことはございません。
  72. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 内閣の裁判所尊重の態度からそのようなことであろうかと思います。したがって、形式的には内閣刀責任であるが、実質的には最高裁判所の責任である、このように理解してよろしゅうございますか。——御答弁は要りません。  そこで、私はこういう点について質問をいたしたいと思うのでありますが、最高裁判所人事司法行政の一端であると思います。したがいまして、国会の国政調査権の対象になり得るものだと理解しております。しかし、一面におきましては、裁判官憲法七十六条の保障するように、良心に従って独立して職権を行なうのでありますから、その人事は、普通行政官の人事とは違いまして、裁判独立ということに非常に密接な関係がある。したがって、この人事そのものはまことに重いのであります。そういうような関係から、あるいは国会の国政調査権の対象として具体的な人事についてこれを究明追及しあるいはこれに何らかの干渉を加えるということが適当であるかないかはきわめてむずかしい問題であり、少なくともきわめて微妙であり慎重を要するものだと思います。したがって、私はその具体的な問題には触れませんけれども、少なくとも人事行政の行なうその態度なりあるいは姿勢なり方針なりにつきましては十分究明をいたす必要がある、かように考えますので、この観点から質問を申し上げます。  今回の再任新任を行なわなかった理由といたしまして、先ほどの御答弁にもありましたように、またがって総理、事務総長国会におきまして、青法協会員だけの理由でもってこれを拒否しないということが言われております。今回の事件につきましても、個々の人については申しませんけれども、そのような態度で臨まれたのであるかどうか、これを伺いたいと思います。  その前に、今回青法協会員再任された者の数、それから青法協会員新任された者の数、会員でない者で新任されなかった者の数、これをひとつお知らせいただきたい。
  73. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 まず新任の点から申し上げますと、六十五名の裁判官が二十三期の修習生として新任されたわけでございますが、実はこの中に何名の青法協会員があるのか、私どもには一切わかっていない状況であるわけでございます。希望者が六十二名ございまして、その中で七名を不採用にし、六十五名を採用いたしましたが、その後新聞紙上等によりまして、その七名の不採用者の中に六名の青法協会員がおるということを承知いたしました。しかし、私どもとしましては、はたして六名の方が会員であるのかどうかということも確認はできてない状況でございます。  同様のことでございまして、採用いたしました裁判官の中に何名の会員の方がおられるのかということもよくはわかっておりません。ただ、それ以前の新聞紙上等によりまして、今回の裁判官志望者の中には二十数名の青法協会員があるという記事がございましたので、その点から見てみますと、少なくとも十数名の会員の方を裁判官新任しておるのではないかと思うわけでございます。  十三期の裁判官再任の問題では、これは当時青法協会員であるということが青法協自体の発行の文書等によりまして私どもにも明白になっておりましたので、最終の段階において五名の会員の方がおられたわけでございますが、再任いたしました者は、その中で一名の方が依頼免を申し出られ、一名の方を名簿に登載いたしませんでしたので、結局三名の方を再任として採用したということに相なるわけでございます。
  74. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 それではただいまの御答弁で、今回の採用にあたりましては、青法協会員であったかどうかということは承知しておらない、したがって、今回の判断にはそのことは要件に入れておらないということを言われたことだと思います。これは先ほど森山さんにも御答弁がありましたが、そのとおりでございますか。
  75. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 新任再任いずれを問わず、裁判官採用いたします場合には、あらゆるものがその選考の要素になるわけでございますが、ただ不採用にいたしました者あるいは再任名簿に登載いたしませんでした者、いずれもそれが青法協会員であるということだけの理由によるものではないということは申し上げられるかと思います。
  76. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 だけのというと、いろいろまた疑いたくなるという点がたくさんあるのであります。なおかつというのが、先ほどの御答弁のように、青法協会員であるということは全然問題とせずということであるか、いろいろ議論があると思いますが、いままでの最高裁の態度から見まして、ただいまの御答弁は私はうなずけるものがあると思う。  たとえば、御存じだと思いますけれども青法協の機関誌でありまする「こぶし」あるいは「青年法律家」その雑誌に、昭和四十年七月、四十一年十一月、四十二年十一月、四十三年十一月、四回にわたりまして修習生が自分の署名でもって「私の展望」というのを書いております。なかなか熱心ないちずにものを思うりっぱな青年だと思いますけれども、その中にこういう表現があります。「岸信介等はともかく戦後の一時期スガモプリズンで生活を送ったのであるが、直接宣戦を布告し、無条件降服した当時の天皇(裕仁)に至っては全く無責任である。国体が護持されるかどうかをめぐって紛糾し、ポツダム宣言受諾の可否が論ぜられている間に、広島、長崎では市民の無益な犠牲が強いられた。天皇制維持のためには、国民の存在など第二義的なものであった。虫けらのように傷つき死んで行った者に対し、天皇は戦争犯罪人としての責任を感じないのであろうか。私は天皇(裕仁)は日本国民の象徴ではなく、無責任なる戦争犯罪人の象徴であると考えたい。」こういう表現があります。  このように明らかに現在の憲法に反した所見を持っておりますけれども、この方は最後に、昭和四十三年十一月の発表には、「裁判官D生」として、署名しておりますから、現在裁判官としての勤務についておると思います。このような人に対してさえ一任官の際に、採用の際にこれを採用しておる。このような最高裁の態度、これはルーズといいますか、寛容といいますか、考えがあってのことだと思いますから、その点から考えましても、今回青法協会員になっておったというだけのことで採用を拒否するとは考えられません。  しかし、私は一つ問題は、それならばそれ以外のどういう理由があったのか、こういうことだと思います。非常に重大な理由があったんじゃなかろうか、これが世間が心配しておる問題であります。在野法曹も一部の裁判官国民の一部も、なぜそういうことをされたのか、その理由が知りたい。それを最高裁はまさに貝のごとく沈黙しておる。これはいかにも最高裁が問答無用だ、あるいは切り捨てごめんである、権力的な冷酷なものであるという、誤解であると思いますが、誤解を国民に与えておるのであります。そこで私は、この理由をせめて本人になりとも知らしてやってはどうかと思うのです。元来、人事は説明せずといわれております。その理由は、人事の対象となった、不利益処分をいたした人に対してこれこれの理由があるということを公表されることは、その人の人権あるいは社会的な社会人としての信用その他非常に大きな影響が及びますので、そのために、その対象者の利益のために秘密を守るということが行なわれておると思います。決して人事権者の利益なり立場を擁護することばではないと思う。しかし、今回の場合においては、本人が知らせてほしいと言っている。これを知らせてはならないかどうかの問題でございます。そのためにいろいろな問題があるかと思います。今後人事の扱いがむずかしくなる、一々理由の解明を要求されるというようなことは非常に困るということがあろうかと思いますけれども、このために国民最高裁理由なき疑いを持ち、あるいは最高裁に対する不信、それから裁判に対する不信ということに発展することを考えますならば、いろいろな問題がありましょうとも、せめて本人になりともこれを知らせるということが筋であり、温情である、そういうふうに私は思いますが、絶対にできないものであるかどうか、その点についての御回答をいただきたいと思います。
  77. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 人事を扱う者の心がまえといたしましては、ただいまお示しのような慎重な態度で臨まなければいけないということは当然であろうかと思います。また、それが採用ということに相なるものでございましょうとも、また不採用という結果になるものでございましょうとも、採用されあるいは不採用となった者にとって重大な問題であるということも十分に承知いたしております。しかし、人事というものは元来機密なものでございまして、その人がどういう理由採用されたかということが申し上げられないと同様に、どういう理由でもって不採用になったのかということもまた申し上げられないものでございます。本人がこれを希望されればいいではないかというのは確かにごもっともな点がございます。しかし、これは本人が希望するかどうかという個人的な問題ではございませんで、やはり人事行政といったものが、その理由を公表すべきものであるかどうかという一般的な問題でもあるわけでございます。私どもといたしましては、採用することになった理由と同様に、不採用理由もまたやはり本人にも申し上げない、このように考えておるわけでございます。
  78. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 そのような態度もわからないことはないと思います。私もある程度理解できるのでありますが、いまやこの問題はマスコミを含めまして、国民の非常に注視している問題でございます。単に人事は秘密であるというような原則だけで押し通していいものかどうか、いまや最高裁の信用の問題、司法権独立の問題にまで関連していろいろうわさされております。政治の介入というようなことまでいわれている。おそらくそういう政治的な理由ではなくして本人の能力の問題とか、あるいはまた倫理道徳の問題とか、いろいろの法曹以前の問題、そういう理由もあろうかとも想像されます。そういうものをそのままにしておいて、いまや司法の信任が問われているときに、あくまで人事は秘密であるという原則を押し通すことが賢明であるかどうか、将来、日本司法権独立という何にも増して守らなければならないものを、司法の内部においてそれを考えずに、人事権の原則だけを押し通すことが賢明であるかどうかということについて、十分に私は考えていただきたい、このことを申し上げます。  それから、さらに伺いたいのは青法協の性格でございます。もう時間がございませんし、また森山先生から御質問がございましたので省略いたしますが、ただ一点だけ。私は団体加入しているかどうかという問題よりも、その人個人がたとえば裁判所法五十二条による積極的に政治運動をしておるのか、国家公務員法三十八条、百二条に該当する、これは当然欠格条件でありますが、ある  いはそれに準ずるものであるか、あるいは能力の問題であるとか人倫上の問題であるとか、そういう個人について十分に審査をされるべき問題であろうかと思います。青法協が、その個人をそのようなところに押し込んでいく統制力を持つ、そのような危険な団体であるかどうかはまた別途検討  しなければならぬかと思います。  時間がございませんからこれで譲りますが、最後に一つ、私はお願いをしたいと思う。司法権独立、まさにこれは何としても守らなければなりません。しかし、裁判所の側にあるものが司法権独立は孤立であるというふうに考えられるということは、これはたいへんな間違いであると思います。私は学生時代英法をやりました。イギリス  では判決が法律になっていくのであります、もう釈迦に説法でございましょうが。その際に、なぜそういうことができておるかということは、司法官が、裁判官が広い視野に立って、深い人生の洞察に基づいて、そして時局を達見し、そして行くべき道を考えながら公正厳正な判決を重ねていったから、これが法規範として法律にかわってイギリスの慣習法というものはできておるのです。私は司法官はそうあってほしい。そのためには司法官が独立であるからといって、世間から隔絶された孤独で、その中で考えるよりも、もっと世間の中に飛び込んで、独立は孤独ではないという、そういう考えで終始していただきたい。このことを申し上げまして、御所見を最後に伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  79. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいま仰せのとおりでございまして、裁判官独立は決して孤立を意味するものではないということは、私どもも深く日ごろから戒めておるところでございます。
  80. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 終わります。
  81. 高橋英吉

  82. 羽田野忠文

    羽田委員 国民は、基本的人権の擁護と社会正義実現の最後のとりでとして、裁判所に大きな信頼をかけております。裁判国民信頼の支持の上にこそ成り立つものでございます。しかるに最近、裁判官再任拒否とか、あるいは司法修習生の罷免、こういう問題をめぐって司法権独立の危機が叫ばれ、国民の間に不安感が起こりつつあるということは、きわめて重大なことでございます。そこでいま司法界に起こっております問題点の真相が何であるかということを国民の前に率直にお答えいただく、そういうことで若干の質問をいたしたいと思います。  まず第一は、熊本地方裁判所判事補でありました宮本君の再任に関しての問題でございますが、この問題は、再任希望する本人の意に反して任用しないということは、不作為による不利益な処分に当たるのではないか。もしさようであるならば、一般原則に従って、その処分の理由を少なくとも本人には明示することが妥当ではないかということがいわれております。そこで裁判所の法的見解、これは不利益処分に当たるのか当たらないのか、理由の明示がされなくてもよろしいのかという点をもう一度お答え願いたい。
  83. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 再任名簿の登載ということは自由裁量処分であろうと考えております。任命希望に基づいて再任すべきかどうか、再任名簿に登載すべきかどうかを検討いたすわけでございますが、再任希望書といったものはこれは申請行為に当たるものでないわけでございますので、再任名簿に不登載となりましても、申請行為に対する拒否処分があったということになるものではないわけでございます。したがいまして、不登載になったということにつきましても、その理由を述べる必要はない、法律的にはこのように考えております。
  84. 羽田野忠文

    羽田委員 そういたしますと、この再任をされなかったということに不服があっても、不服の申し立てその他の救済の方法というようなものはもう全く考えられないのか、あるいはそういうことも考えられるのか、その点はいかがでしょう。
  85. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 新任の場合と同棲でございまして、不採用となったことについての不服の申し立ての方法はないものと考えております。
  86. 羽田野忠文

    羽田委員 憲法八十条で裁判官任期が十年ということが定められて、その任期が終わったあとの再任についての考え方、法の番人である最高裁考えていることは、この憲法八十条から見ればまさに正しい解釈だと私は思います。ただ実際問題といたしまして、司法独立と身分保障の関係がいま問題になっておりますが、司法独立ということは、裁判官が外からのいろいろな事情に全く気を使う必要がなく、良心と憲法、法律に従って行動するということができるところにあると思うのでありまして、そしてその独立裁判官の身分保障という強力な柱によってこそささえられておる。  そこで、憲法七十八条によると、裁判官は、「心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合」や「公の弾劾によらなければ罷免されない。」という身分保障の規定がございますが、再任の際にも、この条文は適用はないけれども、その精神は準用をして考えられるべきものではないかとも思いますが、この点はいかがでございますか。
  87. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官は非常に強い身分保障を有しておるわけでありまして、いま仰せの場合以外の場合には、免官、転官、転所、職務の停止、報酬の減額すらできないということになっておるわけであります。しかし、そういたしますと、その身分の保障が強度のものであり、およそ今日の社会考え得る最も強い保障を受けておるということでございますので、やはり人事の停滞も生じましょうし、また裁判官の中に独善あるいは沈滞が生じてくるということは、これは人間としてあり得ることであるわけでございます。そこで制度といたしまして、そういった強度の保障を設けた、その反面のものとして、任期制が採用されたというふうに私ども考えておるわけでございまして、ちょうど最高裁裁判官につきまして十年ごとの国民審査の制度があるのと対応するものであるというふうに考えられますので、任期の終了による再任の場合には、そういったものは一切断ち切れるのであるというふうに考えることは、制度の問題としては正しい解釈ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  88. 羽田野忠文

    羽田委員 裁判官職務が非常に重大であるということと、それから任期中における身分保障というものが他のものに比して非常に強い。その関係でその任用はきわめて慎重にし、少なくとも適格でないと思うような者は任用しないということにしていただかなければならないことはよくわかります。しかしながら、そういう強い身分保障も十年目にはなくなってしまう、こういうことになりますと、旧憲法時代には裁判官の身分は終身保障されておった。それからいまでも一般公務員は十年というようなことでなくして、一応任用されると、何か特に悪いことがなければまあ定年までいける。裁判官だけ十年目には全く保障がなくなるということ、これが一つの身分保障が強いようで弱い。そうすると裁判官は常に再任ということを意識して行動しなければならぬということになると、裁判独立が侵される。ここが結局いま心配になっているところだと思います。ここのところをどういうふうに調和していくか。憲法の精神を大いに尊重していくと同時に、その裁判独立を害さないようにどう調和していくか、最高裁でどういうふうにお考えになっているか、ちょっと……。
  89. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 確かにその点はむずかしい問題でございまして、私ども再任の制度を運用いたします上におきましては、いやが上にも慎重を期して事務を行なっておる状況であるわけであります。確かに戦前の裁判官は終身官でございましたので、その終身官であるかどうかという点から見てみますと、現在の裁判官任期制というものは、これを弱める方向に働いていることは事実でございます。しかし、裁判官の地位そのものといたしましては、戦前に比べようもなくこれを強固なもの、りっぱなものとして憲法は構成いたしておるわけでございまして、裁判官は御承知のように特別職でもございますし、また受ける給与も、これを報酬ということで一般職の職員の給与等と別個の観点から高額の報酬を支給するということになっておるわけでございます。また、国民の方々もそのようにお考えいただいておるものと思います。しかし、そういったあらゆる観点から裁判官を高いものとするということは、先ほども申しましたような関係上、やはりバランスということで任期制ができておるものでございます。私どもは、いま羽田委員が仰せになりましたような、任期制があることによって裁判官が萎縮し、あるいは逆に沈滞するというようなこと、これはいささかたりともあってはならないことであるというふうに考えておるわけでございまして、再任の時期にあたりましては、いまも申し上げましたように、慎重の上にも慎重を期してそのようなことのないように全力をあげておるということが申し上げられるかと思います。
  90. 羽田野忠文

    羽田委員 人事局長の人事に対する心がまえ、非常にりっぱだと思います。  そこで、次に法務大臣にちょっとお伺いいたしておきます。この宮本判事補再任問題、再任をせないという問題が起こっておる結局もとは、憲法八十条に、裁判官任期は十年とするということが定めてある。十年ごとに任期が終わるという問題にあると思います。そうしてこの制度は結局アメリカの制度をそのまま取り入れた制度でございまして、旧憲法になかった制度でございます。それで私が考えますのに、今度再任拒否の問題が起こっておるということは、アメリカ法曹制度と違う日本法曹制度の中にアメリカの制度を取り入れた、いわゆるアメリカの着物を日本で着ているというようなことに基因すると思います。アメリカでは法曹界のプールの中から裁判官が十年の任期によって選任をされる。そうして十年の任期が切れると、原則として再任はせないでそのままもとの法曹界のプールに帰っていく。例外として再任をすることができるというのが、アメリカの実際の運用のように聞いております。ところが、日本においては全くこれが逆でございまして、司法修習を終わった者が、弁護士になる者はずっと初めから終わりまで弁護士をやる、裁判官になる者は初めから終わりまで裁判官をやるというように、職業的な画然とした分割ができておる。そこで裁判官が十年ごとに身分保障がなくなって再任されるかどうか、されないかどうかという問題が起こるということは、結局は意に反する首切りと同じ重要さがあるためにこういう問題が起こってきておる。そこで私はこういう問題は当然起こるべくして起こった問題で、この問題の基本的な解決は、日本の制度に合うように憲法八十条の十年の任期をなくするか、あるいは十年の任期を置くならば、日本法曹界の構造をアメリカのようにするか、これしかないと思うのです。  かつて日本弁護士連合会がこの問題を取り上げて、やはりアメリカのように司法修習を終わった者は全部一応弁護士にして、その中から優秀な者を十年任期裁判官に任用して、任期が終わったらまた弁護士のプールに帰ってくるという法曹一元の制度を確立せよということを叫んだことがあります。臨時司法制度調査会の答申では、これに消極的な結論が出たために、その後立ち消えておりますが、私はこの問題は起こるべくして起こったのであるならば、制度そのものを根本的に検討せにゃならぬだろう。司法修習制度、それから舞判官の任用制度というものについて抜本的な検討を要すると思いますが、法務大臣はこの点についてどうお考えになっているか、ひとつお伺いいたします。
  91. 植木庚子郎

    植木国務大臣 事はきわめて重要な問題でございます。しかも日本憲法の基本にも関する、この修正にも影響の起こる問題でございますから、私といたしましては、ただいま軽々にこれに対して柔軟な態度をとってしかるべきものかいかがかについては、なお十分考えてみたいと思います。現時点におきましては、やはり日本憲法できまして今日までの運用の上において、最高裁当局並びに政府当局の考えて、また実行してまいりましたこれに従っていくのがさしあたり必要であり、またそれで十分でないかと思っておりますが、根本的な憲法そのものでも、改正問題についてはやはり研究して差しつかえのない問題でございます。そういう広い意味からいえば、あるいはこの際考えてみるのも一つ考え方だと申し上げるのがしかるべきかもしれませんが、私はただいまのところそれについて改正等の意見を持っておりません。
  92. 羽田野忠文

    羽田委員 引き続いて最高裁にお伺いいたしますが、阪口司法修習生が罷免されたという問題につきまして、いろいろな論が出ております。これは、最高裁は罷免したけれども裁判所法の六十七条によると、修習生は少なくとも二年間の修習をしたあと試験に合格したときに司法修習生修習は終わるという明らかな規定がございます。したがって、この修習生はもう終了式より前に修習が終わっているのだ、だから法曹資格は取得しているのだから弁護士に登録できるのだというような意見があるようですが、もしそういうことになると、これは一つ一つの問題のときに、ほんとうに法曹資格があるかないかということで非常に紛糾する問題が起こってくると思うのですが、最高裁はこの点についてどうお考えになっているか。
  93. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 弁護士になる場合にいたしましても、判検事になる場合にいたしましても、修習を終了したということがその要件とされております。そこで、修習を終了するということはどういうことかということでございますが、裁判所法の六十七条には、少なくとも二年間修習をした後試験に合格するということを修習終了の要件といたしておりますので、結局この二つの要件がともに充足されることだけが修習終了の要件に相なろうかと思われるわけでございます。で、具体的にお尋ねの阪口前司法修習生の場合におきましては、最高裁判所が定めております修習期間の修習を終了しておりませんので、その意味におきまして、試験には合格いたしましたけれども、少なくとも二年間の修習を終了していないという意味において法曹資格要件としての修習の終了には当たらない、このように考えておるわけでございます。
  94. 羽田野忠文

    羽田委員 この修習生終了式にとった行為は、やはり秩序を守り、良識人の集まっているところにおける行動としては、確かに最高裁の言うがごとく、その面目を失墜した行為ということで厳重なる懲戒に値すると思いますし、それをやった最高裁の態度というものは私はりっぱであったと思います。ただちょっと疑問を持っておるのは、これは修習生の身分を失わせるというような重大な事案でございますので——最近の行政手続における一般原則は、不利益な処分をする際には利害関係者にあらかじめ意見の陳述の機会を与える、その上で不利益処分をするという原則が大体一般化しておる。この修習生に全く弁明の機会を与えずして罷免をしたということはちょっと何か行き過ぎではないか——行き過ぎというよりも聞いてもらいたかったというような気がします。自動車の免許証の停止や取り消しなどでも、必ず弁明の機会を与えておる。どうしてこれをやらなかったのであろうかということが一つの問題。もう一つは、そういう面目を失墜した者に対する懲戒は確かに必要なんだけれども、罷免するということはちょっと極刑のような気がする。ところが法規を見ると、修習生の場合には罷免よりほかに懲戒の方法がない。これは私は懲戒手続の制度上の欠陥ではないかと思うのですが、この点は最高裁はどうお考えになっておられるか。
  95. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 まず最初の、なぜ弁解等の機会を与えなかったかという問題でございますが、法律的には弁明を聞く等の手続が一切規定してございませんので、聞く必要がないということに帰するわけでございます。しかし、私どもは決して法律にそうなっておるからそのようにしたのだということを申し上げるわけではございません。阪口修習生の行為は罷免に値するということでございますが、そこで行為と申しましたのは、実は修了式が開始されましてその直後に司法研修所長が式辞を述べるべく壇に登りましたところ、阪口修習生が席の中ほどから立ちまして発言を求め、発言の許可等もちろんない中で、研修所長の演壇のほうに歩み寄りまして、十分間ほど新任をされなかった修習生の意見を聞いてくださいということを叫んだわけでございます。それに対しまして、研修所長は手でこれを制したわけでございますが、この制止を振りほどきまして、演壇の前に式辞用に設けられておりましたマイクをわしづかみにいたしまして、しかも所長のほうに背を向けて一般修習生のほうに向かってマイクを持って発言を続けたのでございます。そこで所長はこれをしばらく手で制する形をとりましたけれども、もはやこれに呼応して一般修習生からも発言が続くような状況になりましたので、式の続行は不可能であるというふうな判断をいたしまして、壇をおりて自席に戻りました。自席に戻りましたので、式を主宰いたしております司法研修所の事務局長が所長に伺いを立て、なお静かになさいということを二、三度申しましたけれども、もはや場内騒然として聞き入れる様子もございませんでしたので、やむなしということで研修所長の指揮を仰いだ上、終了式を終了するということを事務局長が宣言したということになっておるわけでありまして、その間、問題になりました時間というのは十分足らずの時間であったわけでございます。  ところで、そういう状況のもとにいま申し上げましたような阪口修習生の行為が罷免に値するという判断を受けたものでございまして、その式場には研修所長、事務局長をはじめ数十名の研修所教官も列席いたしている目の前で行なわれた行為であったわけでございます。いわゆる現行犯的な行為でございますので、この事実の認定ということについての意見を聞く必要はなかったというふうに考えたわけでございます。と同時に、かりに、このような行為に出ました動機あるいは情状という点につきましても、これをどのような動機であり、どのような情状であるというふうなことでありましても、その行為が罷免に値すると考えられましたので、そのような行為をとる必要もない、このように考えて、実質的にもまた弁解を聞く必要なしと判断いたしたものによるわけでございます。
  96. 高橋英吉

    高橋委員長 畑和君。
  97. 畑和

    ○畑委員 私がこの問題につきましていろいろな質問をいたしまする前に、ここに至りました一昨年来の歴史的経過をちょっと振り返ってみたいと思います。  まず一昨年に東京都の公安条例違反事件、これが無罪となりました。ところが、それに対して自民党の側から偏向裁判だというようなことで、いわゆる偏向裁判の批判がきびしくなされたのであります。それからさらに自民党司法制度調査会、こういうものが設置をされて、制度並びに人事の面から裁判所のそうした行き過ぎを規制しなければいかぬ、こういったことが提唱をされたのです。ところが、最高裁がこれに対して異議を述べたので、結局これは実際にはそうした方向とちょっと変わった方向でこの制度調査会が設置をされるということになった。こういう自民党並びにその政府の危機感といったようなものが青法協問題の一番の、そもそものもとであります。それからやがて福島裁判官の忌避の申し立て、法務大臣が国を代表して裁判所の福島判事に対して忌避の申し立てをする、こういうような異例の事態が起こったのです。それからその後、去年の三月ごろ、司法修習生から裁判官新任する、そうした時代でございましたけれども、前の最高裁の事務総長の岸さんからおもに修習生に対しての考え方の披瀝がございました。政治的色彩の濃い団体には修習生裁判官等はこれに加入すべきではない、こういった談話がございます。それからさらにこれを受けて、最高裁長官が五月、憲法記念日に際して談話を発表いたしました。その談話は、いわゆる裁判官加入問題は裁判官のモラルの問題であって法律問題ではないけれども、しかし、極端な軍国主義者や無政府主義者あるいはまたはっきりした共産主義者等は裁判官として好ましくない、好ましい存在ではない、こういうような談話を発表した。われわれのほうでは法律的に処理をするんだから、青法協に加盟するというような、また極端な軍国主義者あるいは共産主義者であっても規制はしないけれども、しかし、外部からいろいろ問題となり得ることがあり得る。それはたとえば訴追委員会のごときである、こういったような最高裁長官の談話が発表されたことがございます。大体事務総長談話と長官の談話、これによって裁判所姿勢というものが外部に対して明らかにされたのであります。それからまた、法務大臣が分離修習の構想を述べられたというような問題、あるいは平賀書簡問題、それからさらにそれを支持した飯守発言というものがありました。その平賀書簡問題のときには、平賀裁判所長は結局注意処分という処分にあいまして、そのときは福島裁判官は何ら裁判所から責められなかった。ところが、その後福島に対して訴追がございました。その訴追の結果、訴追委員会の決定が俗にいうあべこべ決定ということに相なった。そこでいままで福島に対して非難も注意処分もしなかった裁判所は、札幌の高裁がまず福島を、訴追委員会の決定の直後、これに迎合するかのごときようなことで処分をした。外部にいわゆる平賀書簡を発表した、あるいは平賀メモを発表した、こういうような理由で処分をいたした。こういうような最高裁青法協関係をめぐる一連の動きがございました。  そうして今回、宮本判事補再任の拒否、それから七名の、司法修習生から裁判官希望の者の新任を拒否するというようなことになりました。さらにまたエスカレートして、阪口修習生の罷免問題にまで発展をした。そこで法曹界は、まさに司法の危機だとして大問題となって今日に至っております。マスコミあるいは世論におきましても、まさにそうした受け取り方をして、これだけ法曹界が混乱をしておるというようなことになったと思うのであります。  そこで、私は、まず宮本判事補再任拒否の問題について質問をいたします。  この問題についても、自民党委員からも、もうすでに質問がございました。詳しくさらに質問しようとは思いませんけれども、宮本判事補は、伝えられるところによりますれば、判決等の裁判能力も非常にすぐれておるというふうに聞いておりますし、また人柄等も非常によろしい、こういうふうに聞いております。したがって、宮本判事補再任の拒否の理由が一体何であるかというと、結局、青法協に宮本判事補加入をしておったということが理由ではないか、少なくとも理由のうちの大きな理由ではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、その点の理由については、先ほど来いろいろ質問がございましたが、その理由を明らかにしてもらっておりません。しかし、やはり世論も大きく関心を持っておるのでありまするから、しかも本人がその理由の開示を要求しておるのでありまするから、先ほどの人事局長の答弁はありましたけれども、私はとうていそれによって満足するものではないのであります。結局いわゆる十年間の任期というものは来ます。したがって、再任の場合も法律的には自由裁量であるというようなことから、裁判官の身分保障というような問題とも関連して、それを侵すものではない、こういったような答弁がいまございましたけれども、しかし、それであっては十年ごとの再任期にあたりまして、非常な不安を各判事補なり判事なりが持つことは当然であります。しかも、かつて再任を拒否されたというような例はほとんどない。長谷川裁判官が去年再任を拒否されたという事実がございます。転任地等について意見が合わないというようなことで、そういう理由再任をされなかったという例が、去年の場合初めて起こったと私は承知いたしております。それ以外には、再任を拒否された場合は、健康上の理由とか、そういった特別の事情でない限りは再任を拒否された例がないのであります。したがって、この点について再度理由を明らかにしてもらいたい。
  98. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、再任を拒否いたしましたという理由につきましては、これは人事の機密に属することでございますので、一切お答えができかねる次第でございます。ただ申し上げられますことは、これも先ほど申し上げたことでございますが、青法協会員であるというだけの理由ではございませんということでございます。
  99. 畑和

    ○畑委員 先ほど来のいろいろな答弁を聞いておりましたのですが、あるときは、今度の新任問題なんかに関しては青法協会員であったなどということはちっともわからなかった、それで、いろいろ新聞等に書かれて初めてわかった、青法協とは無関係であるというような意味答弁を先ほどの自民党委員に対して人事局長はされたかと思うと、また、青法協だけを理由としたのではない、こういう答弁もあるということでありまして、その点につきましては、むしろ自民党の方の言うほうが筋が通っていると私は思っている。森山さんの質問のほうがむしろ通っている。むしろ不正直なのは、はっきりしないのは最高裁じゃないか。どうもその辺がはっきりしないですね。青法協というのは理由ではない、あるいは青法協加入しているということだけで再任しないということはないと言ったり、それじゃプラスアルファなのか、あるいはさらに青法協とは全然別個の独立した理由で、それだけで理由になり得るというような理由で不適格と判断したのか、どうもその辺がわからぬ。その辺を明確にひとつ答弁してもらいたい。どうもその辺が、むしろ最高裁のほうは何とか言いのがれをしようというような態度にしか見えない。その辺はどうですか。プラスアルファなんですか、独立したものなんですか。
  100. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 新任の場合に青法協会員であるということは一切わからなかったということを申し上げましたのは、青法協会員が不採用になったのか、あるいは新任裁判官の中に青法協会員が含まれておるのかというお尋ねに対してでございまして、どなたが会員であるかということが一切私どもにはわかっておりませんでしたので、その事実は一切わかっておりませんということを申し上げたわけでございます。新任の場合におきましても、やはりどうして不採用になったのかという理由については何も申し上げていないわけでございまして、これは再任の場合も同様であるわけでございます。ただ、再任の場合には、すでにどの方が青法協会員であるかということが、青法協の発行しておられます機関誌等によりまして私どもにもわかっておりますので、そのことを申し上げただけでございまして、宮本判事補をなぜ再任名簿に載せなかったかということにつきましては、これは先ほど来繰り返し申し上げておりますように、人事の機密でございますので、一切その理由は申し上げることを御遠慮させていただきたい、このように申し上げておるわけでございます。
  101. 畑和

    ○畑委員 人事の秘密、人事の秘密とあなた方は言いますけれども、一体どうして人事の秘密だからといって全然公開できないのですか。本人たちが理由を明らかにしてほしい、こう言っているのですよ。そして世論も、ほかの場合と違ってここまで世論も注目をし、関心を持っておるときでありますから、人事の秘密ということ一点ばりであなた方はわれわれに対してその理由を明らかにしないが、せめて本人に対してだけでも明らかにしなければいかぬと私たちは考えるのですが、どうなんですか。
  102. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げておりますように、どういう理由でこれを採用したのかということにつきましてもやはり申し上げられませんのと同様に、どういう理由名簿に登載しなかったのかということにつきましても、やはり申し上げることは御遠慮させていただきたいということでございます。
  103. 畑和

    ○畑委員 最高裁の秘密主義がぼくはわからない。秘密主義、閉鎖主義、それがまた最高裁一つの大きな体質だと思うのです。こういったものがいまの最高裁の体質であって、その体質から最近のこの一連の問題も出ておると私は思う。その点に対する答弁は、きわめて不満でございます。ともかくあなた方が幾ら強弁しようとも、青法協だけをもって再任拒否理由にしない、こういうようなことをいままで言ったりなどとしておりますけれども、しかし、今度の場合の例を見ましても、われわれの懸念がここで実際のものとなったわけです。やはり裁判官といえども思想、信条の自由があり、あるいは団体加入の自由があるわけです。そうでしょう。それで、最判所法の五十二条にもはっきりその点が書いてある、積極的な政治運動をしなければいいのです。団体加入していてもいいのです。それなのに、青法協というものが中心になって、それがかかわり合いを大きく持っておるということは、これは争えない事実だと思う。幾らあなた方が強弁しようと、それが理由だと思う。青法協に入っていること、さらに若干積極的な発言をしたりなどする、こういうことが理由じゃないですか。やはり青法協というものは一つの大きな理由である。青法協と切り離して、独立してほかのものだけが、別のものだけが理由だ、それだけ独立して適格性はないのだというものではなくて、青法協というものがあって、それに何かがプラスをして、それで再任ができない、させられない。ということになれば、やはり青法協ということが再任拒否の大きな理由になっているということは、私は否定することができない、こういうふうに思うのです。いかがですか。
  104. 吉田豊

    ○吉田最高裁判所長官代理者 ただいま宮本判事補判事に任用しなかったその理由が、青法協会員であることが理由だというふうに言われたのでございますが、今度判事補から判事に任命されました中には、青法協会員である方も同じように任命されているのでございます。決して宮本判事補青法協会員という理由だけで任用ができなかった、こういうわけではございません。  それから、もう一言申し上げますが、人事の機密だからといってその理由を隠している、こういうふうなことを非常に非難されるようでございますが、人事の機密ということはやはり本人の名誉、信用にも関係がある問題でございます。この点は先ほどから仰せになりますように、本人が明らかにすることを望めばかまわないのじゃないかということも考えられるのでございますが、人事の機密というのはただ本人の名誉、信用の問題だけではございません。人事行政を円満に運営するためには、どうしてもそのことを本人のみならず、外部の方にも明らかにすることができないわけでございます。たとえて申しますと、ある裁判所に甲という裁判官を転任させます場合に、そういう理由で転任させるならば、むしろ乙の裁判官の方がいいのじゃないか、こういう意見がかりに裁判所の内外に起こってまいりますと、紛糾が生じまして、人事行政というものは円滑に運営することができない……。   〔発言する者あり〕
  105. 高橋英吉

    高橋委員長 お静かに。
  106. 吉田豊

    ○吉田最高裁判所長官代理者 こういう意味で、私は人事のことは外に明らかにしてはいけない、こういうふうに考えているわけでございます。
  107. 畑和

    ○畑委員 とにかく、青法協会員であるという理由だけでと、こう言うけれども、結局はやはりだけでであって、青法協会員であることとプラスアルファで、そうして、それによって再任を拒否された、こういうことに受け取らざるを得ない。そうすると、したがってやはり青法協ということが大きな部分を占めておる、こういうことにわれわれは了解せざるを得ない。あとは答弁は要りません。  それからまた、次に新任の七名の場合でありますけれども、七名のうち六人が青法協会員であるそうであります。それでそのほかのもう一人は、青法協に入ってないけれども、「任官差別を許さぬ会」というものの発起人だそうであります。いわゆる同調者であります。この人などは五十何歳という人で、簡易裁判所判事希望しておったそうでありますが、これも拒否された、こういうことであります。それからそのほかの六人の人たちがいますけれども、六人の人たちは青法協会員で、同時にまた「任官差別を許さぬ会」の会員にもなっておる。あるいはその中に、検事のかわりに被疑者を調べる、こういうことは法律上許されないということで、それを拒否した人が何人かいる。それからまた、クラス発言を非常に積極的にやった者であるとか、中にはベ平連のデモに参加した人も何人かいるそうです。それは私が今度の七人の拒否された人について調査をしたところでありますが、そういうことがおそらくプラスアルファになっているのだろうと思うのです。しかし、これらの事実は、これだけのことで新任をさせないということは、いまあなた方が非常にいろいろ世間からも言われる、政府からもいろいろ言われる、自民党からもいろいろ言われる、そこであなた方が何とかして自己規制をしようということにあせるのあまり、今度新任も拒否し、あるいはさらに、新任ならまだしも再任を一名拒否したというようなことは、私は思想、信条の自由、団体加入の自由という憲法の基本をむしろ最高裁が踏みにじっているというふうに理解せざるを得ない、こういうふうに考える。  それからさらに、阪口君の場合について申し上げますが、阪口君の場合につきましても、先ほど羽田野君から質問がございましたので詳しくは触れませんけれども終了式での阪口君の行動というものについては、新聞紙上等にも報ぜられておりますし、私もまた阪口君自身からも聞いております。聞いたところによりますれば、そう問題にする、罷免に値するような行動ではなかったと私は思う。それでしかも、式の混乱というものは阪口君自身が巻き起こしたものではありません。阪口君はちゃんと丁寧に三度もおじぎをして、そうしてそのほかの七人の拒否された人たちに発言の機会を与えてくれ、こういうことを申し上げて、その上でマイクを持ってしゃべり始めたということなんでありまして、そのあとで結局終了式の終了後、事務局長が宣告をしたということによって、ベ平連関係に関係をしておった一部の修習生が騒いだ、それをむしろ阪口君が押えた、阪口君はクラス委員長として押えた、それだのに、その阪口君に対して極刑をもって臨んで、罷免とは何事ですか。あまりにも情がなさ過ぎると私は思うのです。もう法曹としての資格がなくなってしまうということになるわけだ。私はこういう態度はけしからぬと思う。  同時に、そのときは、聞くところによりますと、毎年、最高裁長官をはじめ来賓が来られるそうです。おそらく法務大臣も呼ばれるはずだったのだろう。ところが、来賓もちっとも今度は呼ばないのですね。それで終了式にしてはまことにお粗末な、何の飾りつけもない、そういったような終了式だったそうであります。そういうことも、私は、あらかじめどうも予想してかけられたわなではないかとさえ考えられるのであります。しかもその終了式は終了した。それはかってに研修所のほうで終了を宣したのでありまして、しかも阪口君はそれほど、罷免に値するほどの行動はしていないと私は思う。それを極刑をもって臨むということは非常に問題だと思うのです。あのときのテレビ放送なども、私は偶然なま放送を見ました。見ましたけれども、私は阪口君にそれほどの責任があるとは思われない。それを結局極刑をもって臨むということはまことにけしからぬと私は思う。  先ほども言われましたが、裁判所法の六十七条の第一項、弁護士法の第四条、こういうものによっても、むしろ修習が終わったのであって、したがって、弁護士会ども、大阪の弁護士会等は、もし入会の申し込みがあればそれを受け入れる、こういうことまで言っておるわけであります。この問題についても、法曹会の対立がますます最近激化しつつあるわけであります。裁判所のほうにおいては、もしかりに日弁連のほうで、あなた方のほうの見解と違って、これは司法修習を終わったものであるというような理解のもとに、そういう解釈のもとに登録を受け付けて、弁護士を始めたという場合になったら一体どうなるんです。それこそ弁護士会との対立ということになると思うのです。これについても、よほど十分に考えてもらわなければならぬと思う。官報にも、もう修習を終了したものということで掲載をすでにされておる。ところがあなた方は、終了式が終わらなければそういった資格はないのだというような見解で、官報は間違っていたのだから、したがって実質がないんだからということで、官報の掲載からまた削除をしたというふうに聞いております。そういうことで一体いいのでしょうか。あなた方は法律家ですよ。それで一体いいのでしょうか、私はそう思う。三百代言みたいなやり方を最高裁が今度はやっているのじゃないか、私は、よさにこういうふうに思うのです。この阪口君の場合のごときは、まさに狂気のさたですよ。まことに血も涙もないやり方だ。それでこれを、もし不服の申し立て、いろいろ訴訟などをやってみた場合に、一番最終判決をするのは最高裁である。最高裁が処分したのだから、幾ら下級裁の判事が、よろしい、阪口君の言い分はもっともだということで、阪口君を支持する判決をしたとしても、最高裁はおそらく否定的な判決を下すでしょう、自分が処分したんですからね。そうでなければ、自家撞着ですよ。そういうことによって最終的に阪口君は結局救われない、こういうことにもなるわけです。この点についてひとつ見解を承りたい、簡単でよろしゅうございます、時間がないから。
  108. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官のみならず、法曹全般につきましては、やはり修習生は法律に関する理論と実務、高い識見と円満な常識を涵養するがために修習を行なうものでございます。二年間修習をいたしまして、それぞれの実務に散るわけでございますが、最も法曹として必要であるとされる、いま申し上げました高い識見、円満な常識、それにふさわしい品性と能力という観点から見まして、阪口君の行為は、これは修習の効果を全くあげていないものというふうに判断されたわけでございまして、やはりその行為はまさしく罷免に当たるものといわざるを得ないのではないかと思うわけでございます。私ども、決して罷免をするということだけが方法であるとは思ってはおりませんが、十分に検討されまして、なおかつこの場合は罷免やむを得ないというふうに決定されたものと了解いたしております。
  109. 畑和

    ○畑委員 時間がございませんからその問題はそれまでにいたしまして、次の質問に移ります。  先ほど申し上げましたような、今度はしなくもいろいろ問題になりました最高裁のいわゆる閉鎖性、あるいは秘密主義、あるいは権威主義、独善的な官僚主義、あるいは批判の拒否の体質、こういった体質、こういうものからいろいろな一連の問題が出てきたと私は思うのです。これはどうしても直してもらわなければならぬと思うのです。一体、新憲法によって新しい裁判所というものをわれわれも得たわけでありますけれども、今度の裁判所は、旧憲法時代の天皇の名においてする裁判所とは違うんだ、国民の名において裁判をする裁判所なんだ。したがって、そういう点で国民裁判所であるように、あくまでもつとめなければならぬと思う。先ほど申し上げましたいろいろな体質、これはそれに反すると私は思う。しからば一体そうした体質はどこから来たのか、こういうことを考えてみますると、まさに行政優位の最近の最高裁あり方が今日のそうした体質をもたらしたと私は断言せざるを得ない。事務総長をはじめとする事務総局ですね、ここにおられますが、そういった人たちはなかなか優秀な人たちだと私は思う。しかし、そうした人々は、裁判ということに対しての経験は比較的それだけ少ないわけです。最高裁裁判官が、裁判官出身の人が六人おる。そのうち四人までが事務総長の経験者だ。最高裁は大体が司法行政——最高裁の中でも司法行政というものは、本来裁判活動のサービス機能を果たすべきものである。ところが最高裁では、サービス機能である司法行政のほうが優位を占めておるというふうに考えられるのです。豊富な裁判の経験を有するところの裁判官をもっと大事にして、そうした裁判官最高裁裁判官に任命すべきではないかというふうに私は考える。最高裁の体質を改善するためにもそうすべきである。ここに事務総長どもおられますけれども、私は、そうすべきだと思う。六名のうちに四名もそうした事務、何というか司法行政を相当してきた人たちが最高裁裁判官になっておるということだけを見ましても、ゆがんでおると私は思うのです。例の、問題になりました下田前駐米大使の裁判官任命、あるいは岸さん、ついこの間まで事務総長をされた人が、高裁の長官になって、すぐとんとん拍子に、間もなくまた最高裁判事になった。少し早過ぎるといわれる。検察官のほうがもう次の番だといっていたのに、検察官のほうでなくて、今度は裁判官のほうが一人よけいになった。こういうような任命のしかた、こういったことが結局そうした体質を生んでおると私は思うのです。  そこで、官房長官に聞きたいんですが、任命にあたってこういうことを十分配慮をすべきではないかと思うのですが、どうお考えですか。
  110. 保利茂

    ○保利国務大臣 今日の日本の状態からしまして、さまざまなそれぞれの考え方あるいは見方、いわば百家争鳴といいましょうか、そういう中にあって、裁判所の権威というか、裁判の権威というものが国民から絶対の信頼を得られるようにありたいという、いわゆる三権分立のそのたてまえのもとに、裁判所だけ、裁判だけは、まあいろいろ議論も見方もありましょうけれども、これは絶対に信頼しなければならない、そういうことが国民的に考えられ合意されるということが大事であろうかと思うのでございます。一々のことでございますけれども、総理大臣の、内閣のきわめて厳粛な憲法上の権限でございまして、したがって、最高裁判所判事の選び方につきましては、内閣において、総理大臣において非常に苦心をといいますか、慎重に、ただいま人事局長言われるように、円満なる常識、高い識見、そして国民皆さまが裁判所あり方として御納得のいく人を選びたいというその評価の上で、最近の裁判官も任命されておる、私はそう思っております。
  111. 畑和

    ○畑委員 ところで、現在の最高裁裁判官の任用制度、それが御承知のような制度になっておるわけでありまして、そうなりますと自然と行政府司法、すなわち最高裁との癒着といってはことばが少しひど過ぎるかもしれませんけれども、そういった傾向、あるいは行政府に対する最高裁の従属の傾向、こういったものを生んでおるということは私は争えないと思うのです。この傾向こそが司法権独立を危うくしておるのではないか、こういうふうに思うのです。  この間やめた鈴木判事補という人が最後に言ったことばが新聞に載っておりましたけれども、そのことばは私も非常にもっともだと思うのですね。こういうことを言っている。権力の側からきらわれる宿命を持っているのが裁判所だ、権力の側から歓迎されるような司法はもはや司法ではない。裁判官の自主規制は司法の自殺である。今度の問題に関連して、鈴木判事補はそれに憤慨してやめてしまったのでありますが、そういうことを言っておるのです。このことはやはり一つの意見だと私は思うのです。  先ほど来質問がありましたように、佐藤内閣によって任命された裁判官は十五人のうち十四人というふうに聞いておるわけであります。時の政府のおめがねにかなったような人を選ぶような可能性がどうしても出てくる、そういう危険性があるということは争えない。極端なことでありますけれども、中郵事件というような判決がございました。ああいった重大判決の変更までも時の政府の意のままになる、こういうことすら言われておるくらいでありまして、いまの制度は結局国民審査という制度によってその任命後にチェックをされるような形にはなっておりますけれども、一体どの裁判官がどういういい裁判をしたか、悪い裁判をしたかということについて、国民は一々知りません。これは形式だけにすぎない、こういうことになっておるのです。それで任命だけは内閣の専権、しかも総理大臣の専権である。法務大臣なんてあまりあずかり知らぬようだ。先ほど聞いてみても、やはり官房長官が相談にあずかって総理がきめる、こういうことが実際のようでありますけれども、そうした任用の公正さを担保するために手段がありはしないか。新憲法に基づいて裁判官が最初に十五人任命されたときに、裁判官任命諮問委員会という制度がありました。このことを私は思い出した。最初の裁判所法にはその規定がちゃんとそのときにあったのだ。ところが、その年の終わりに、もうそれが済んだらすぐそのあとその制度を削除してしまった。ところで、その後また復活すべきだという意見があったらしくて、裁判所法の一部改正の中の一部としてこれの復活が提案されたことがある。ところが、中心問題である最高裁の機構改革というものによって、それが一緒の法案でありましたから、これはつぶれたのであります。それでいまは諮問委員会制度というものはない。これは私はやはり復活する必要があるのではないか。少なくとも公正さをあるいは公正らしさをやはり担保するためにも、国民審査制度だけでは足りないということで、総理大臣がかってにやることをさせないというような意味でも、私はこの制度の復活が必要だというふうに考えるのでありますが、いかがでございますか。官房長官とそれから法務大臣、簡単にお願いします。
  112. 保利茂

    ○保利国務大臣 お話しのようなことで、新しい憲法下の裁判所が発足するについて、最高裁判所裁判官の任命についての諮問委員会が設けられ、そうしてこれが設けられるとすぐお話しのように廃止されておる。これはやはり廃止されるには廃止されるだけの理由があったと思う。結局は責任の所在を明確ならしめるという上からいって、諮問委員会という制度が一応廃止されたのではないか。これは後来の問題としてはお互いに大いに研究しなければならぬところだろうと思いますけれども、現状はそうでございます。  したがいまして、いま憲法上総理大臣の厳粛な権限になっておりますから、その権限を公正厳粛に行なうように、しかも全責任を持って行なうようにつとめていくために、いろいろ各方面とは申し上げませんけれども、あなたの専門の法曹といいますか、あるいは法務省あるいは最高裁判所筋等につきましては、十分その人についての御意見も承って、そうして最後に総理大臣が判断をされて任命をいたしておるような状態でございます。
  113. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいま官房長官のお答えになったとおりに私も理解しております。例の諮問委員会の廃止後におきましての実情から考えてみましても、従来の人選その他においておおむね誤りがなかったと私は思っておりますし、また今後につきましても、あの制度廃止の理由そのものもやはり根拠のある問題でございますから、したがって、私は趣旨といたしましては、官房長官のお答えになりましたとおりに考えております。
  114. 畑和

    ○畑委員 私、時間が来ましたから質問を終わります。
  115. 高橋英吉

    高橋委員長 沖本泰幸君。
  116. 沖本泰幸

    ○沖本委員 質問に先立ちまして、三権分立の立場から立法府のほうから批判することはどうかというようなお話もございますが、憲法擁護の立場を堅持するためにあえて質問したいと思います。  まず、最高裁のほうに御注文したいと思いますが、この一連のいま世間で問題になっておりますことをとらえてみまして、最高裁憲法の番人として憲法の確固たる擁護と司法独立を守って、少なくとも司法の尊厳に対する疑惑を国民に与えないことに最大の努力を払ってもらわなければならない、こういうふうに考えるわけです。それと同時に、今回の再任あるいは新任拒否、罷免については私たちはきわめて遺憾である、こう考えております。  そこで、まず第一にあえてお伺いしたいわけですが、もう一度御検討なさって撤回するお考えはありませんですか。
  117. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 新任再任等の問題につきましては、裁判官会議におきまして、個個の人たちにつきまして慎重に御検討をいただいた結果のものでございますので、そういうことは現在のところ考えておりません。
  118. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうであれば、先ほど畑先生がおっしゃったとおりなんですが、理由を明らかにしてもらわなければならない、こういうふうに思うわけです。そういう点から具体的に理由をもう一度検討なさって、明らかにするお気持ちはありませんですか。または、理由を明らかにしないということであれば、いわゆる青法協に属していらっしゃる方々あるいは青法協に対して支持をしていらっしゃる方々を理由にしたものであると私たちは理解する、こういう考えをとりたいわけですけれども、その点いかがですか。
  119. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官採用の問題につきましては、その裁判官の人格、識見、能力、年齢、経歴等あらゆるものがその要素として検討されるわけでございまして、その結論といたしまして、先ほど来繰り返し申し上げておりますような結論と相なったものでございます。その場合に、その結論になりました理由ということでございますが、この点につきましては、これまた先ほど来申し上げておりますようなことで、やはりここで申し上げさせていただくことを御遠慮させていただきたい、このように考えております。  しかし、ただお断わり申し上げておきますが、理由を申し上げないということはいいかげんにしておるということでは決してございません。私ども人事の問題はほんとうに慎重にあらゆる角度から御検討をいただいて、その結果の結論として出てきておるものであるということだけは確信を持って申し上げられるのではないかと思っておるわけでございます。
  120. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほど吉田事務総長は、人事行政を円滑にするためにというおことばをおっしゃっておられました。であれば、このようにきょうはいろいろと国民の目に映るようにテレビにも入っているわけです。そういう事態になって、この際ですからむしろ明らかにしたほうが円滑にするんじゃないでしょうか。私はそう思うわけですけれども、いかがですか。
  121. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいまのお考えもまことにごもっともな点がございます。しかし、制度というものは、一つ一つの場合に例外をつくっていくということはまた非常な弊害を伴うものでございますので、本件の場合、かりにこの際明らかにしたほうが全国民の御納得がいけるという問題であろうといたしましても、やはり長い人事行政の制度という観点から見てまいりますと、原則的な立場というものは堅持しなければいけないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  122. 沖本泰幸

    ○沖本委員 こまかい部分にも触れていきたいと思いますけれども、そういうことになりますと、むしろ極端な言い方かわかりませんが、最高裁みずから弾劾裁判をやっているんじゃないか、こういうふうにとられてもしかたがない、こういうことになります。そういうことですから、司法権独立裁判所の内部のほうからくずしているんじゃないか、こういう批判に変わってくる、こういうふうに私は考えるわけです。その点いかがですか。
  123. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 決してさような三はないわけでございまして、裁判官は厳重な身分の保障も持っておりますし、また、私どもはそういったものをでき得る限り尊重してきてまいっておるわけでございます。その決心につきましては、今後といえども何ら変わるところはないわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、身分の保障ということとの関連におきまして任期の制度があるわけでございまして、任期満了による再任の問題等におきましては、やはりその制度に沿った運用がなされてしかるべきものでありますし、私どももそのような運用をいたしておるわけでございます。かりにそういう運用をいたす場合におきましても、その心がまえというものは全く慎重にこれを行なっておるということは、再々申し上げたとおりでございます。
  124. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほどもあなたが国民審査の制度、十年目ごとに再選をするという点なんですけれども、これは先ほど羽田野先生も、四十八条についていろいろと具体的に質問をなさったわけです。ですけれども、いまおっしゃたような身分保障という点からいきますと、生活的な身分保障あるいは精神的な身分保障、こういう両方あると思うのです。そういう中にあって、いま内容を明らかにしてあげることのほうが動揺を起こさせない身分保障になるのではないでしょうか、私はあえてそう言いたいわけです。理由を明らかにしてあげることのほうが動揺を起こさせない。いわゆる簡単なわかりやすいことばでいえば、十年目に首を切られる、こういう制度であるととられてもしかたがないわけです。その理由が明らかにならなければ、十年目ごとに首を切られてしまうのだ。そうすると、勢い最高裁のほうに気を配って、絶えずその動きに気を配って裁判をやっていかなければならない。そういう日常であれば、それこそ司法権独立というものはなくなってしまう。こういう論理になってきます。短いことばでお話をすればそういうことになってくるから、むしろあえて理由を明らかにしてあげるということのほうが身分を保障することになるのではないですか。私はそう思いますけれども……。
  125. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官はそういう任期制のもとに任用されたものとして各人がその覚悟を持っておるわけでございまして、任期制の運用ということがありましても、そのことによって上のほうを向いて仕事をするとか、あるいは裁判独立が守れないといったような裁判官は一人もいないものと私どもはかたく信じておるわけでございます。  任期制の運用につきまして、名簿に登載しなかった理由を言うことのほうが皆が安心するではないかということでございますけれども、そういった面ももちろんあることは私どもも十分承知いたしております。しかし、またそれによって制度の運用上、公正という面から見ましても失われるものも多いわけでございまして、かれこれ比較いたしますと、私どもは、やはり制度はその制度の原則に従って運用され、そしてそれが正しく運用されておるかどうかという問題は、今後任期制といったようなものの持つ本質あるいは今後の運用というものをごらんいただければ、おのずと裁判官の方々もおわかりいただけますし、また国民の方々からも十分な御理解がいただける、このように確信をいたしておるものでございます。
  126. 沖本泰幸

    ○沖本委員 今後の運用、こうおっしゃいますけれども、今後ではないですよ、現在が問題になっているのですよ。現在を明らかにすることのほうが今後の運用のために安心して問題をとらえやすい、こういうことになりますし、各裁判官もそういうことによって動揺しない、こういうことになると私は思うのです。  それでは質問を改めて伺いますけれども、私たちの立場、国会のほうの立場からいくと、最高裁のほうは相当人員の増加ということで予算を要求なさったわけです。そういう点からいくと、だれもかれも何でもいいから採れということではありませんけれども、こういうふうに、いま畑先生もおっしゃったとおりに、非常にまじめであり、何ら非の打ちどころがないというふうに熊本の地裁のほうでも皆さんがおっしゃっておられるこの方が再任されないで落とされていく。その理由が明らかにされないで、私たちに予算を認めろということとは全然逆ということになります。われわれはそういう点、疑問を持つわけなんです。その点、いかがですか。
  127. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 十三期の熊本地裁の宮本判事補につきまして、宮本判事補再任名簿に登載しなかったということについて、熊本の現地の同僚の裁判官が十分の考慮を望むという要望書を提出しておりますことは、先ほども申し上げましたし、私どもも十分承知いたしておるわけでございますが、しかし、裁判官再任するかどうかといったような問題はあらゆる観点から検討されるべき問題でございまして、最高裁判所裁判官会議におきましては慎重に検討を重ねられました結果、名簿に登載しないという御決定をいただいたものでございます。そういった事情のものでございますので、やはり現地の裁判官もそういった人事の原則といったものを十分に御説明申し上げれば御理解をいただけるものというふうに考えておるわけでございます。
  128. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでは、いわゆる判事補で満十年すると判事になる、こういうことになるわけですね。そうしますと、そうなった場合の俸給はどういうふうに変わるのでしょう。
  129. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 十年までは判事補でございますので、判事補の報酬を支給されるわけでございます。判事補の報酬は、一番下の十二号から一号までございまして、その間に順次昇給いたしまして、大体十年直前においては判事補の最高俸給である一号報酬を支給されておるということでございますが、これが判事になりますと、あらためて判事の最低の報酬でございます八号の報酬を支給されるということになるわけでございます。
  130. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その金額は変わったと思うのですが、現在どういうふうになっておりますか。
  131. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 判事補の現在最高の報酬は一号で十三万三千六百円でございますが、判事の最低の報酬は八号十五万八千円ということに相なっております。
  132. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、再任されないということになると、簡裁の判事になるわけですね。そうしますと俸給はどれくらいになるのですか。
  133. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 宮本判事補の場合は、簡易裁判所判事本務でございますが、得ております報酬は判事補の最高の報酬額と同額の報酬額を得ておるわけでございますので、昇給等の措置がとられない限り、これまでと同額の報酬を受けるということに相なるわけでございます。
  134. 沖本泰幸

    ○沖本委員 金額的にどういうふうになるのですか。
  135. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 金額といたしましては、先ほど申し上げました十三万三千六百円というのを現在支給されておりますし、特段の措置のとられない限り、この報酬を受け続けるということになるわけでございます。
  136. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それから、大体私たちの聞くところによりますと、身分的にも、皆さんもよくおっしゃっているのですが、簡易裁判所判事さんはいわゆる簡判、簡判とおっしゃっているわけです。弁護士会のほうでも簡判と、こういうふうに名前だけ聞くと少し軽べつされたような、身分的に考えられるわけです。そういうものに落とすということになるわけです、理由が明らかにならなければ。というと、これは何かの一つの圧力じゃないですか。そういうふうにとられてもしかたがないということになります。そういうことによっていわゆる裁判官が動揺しないという保証は何もありません。動揺するでしょう、こういうことになりますと。ですから理由を明らかにしたほうがいいのじゃないかということになります。その点いかがですか。
  137. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 簡易裁判所裁判官が、俗に簡易判事というふうに俗称されておることは御指摘のとおりでございますが、それは決して職務内容が特に低いというような問題ではございません。現に民事の訴訟におきましても、昨年の国会で御審議をいただきまして、訴訟物の価額は上限三十万円まで上がっておるわけでございまして、十分りっぱなお仕事があるわけでございます。現在、現に判事になりましても簡易裁判所判事の兼務を得て簡易裁判所判事としての仕事をなさる方も全国には相当数があるわけでございますので、そういうような意味におきまして、簡易裁判所判事職務というものを特段に一段低いものというふうには私どもは決して考えていないものでございます。
  138. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ですから、そういう内容からいくと、本人自体は自分の意思に反して転所とかあるいは転勤させられない、こういう身分保障になっているわけです。そういうものが法律で定められておりながら、十年で再任をしていく、こういう制度と相反するのじゃありませんですか。法律できめられておるものが、十年間の再任によって、一切そういうものが関係なしになっていく。いま現実に起きている問題自体がそのことを意味している、私、そう考えるわけです。こういう点、矛盾がありませんですか。
  139. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官は厳重な資格を要求されて任命されるわけでございますが、任命されましてもやはり十年の任期を経ますうちには、先ほど来申し上げておりますように、停滞ということもございましょうし、沈滞ということもございましょうし、いろいろの問題があるわけでございます。そこで十年の任期を区切りまして、一たん全部の官を任期により終了といたしまして、あらためてこれを判事補あるいは簡易裁判所判事、そのいずれの官でございましょうとも、あらためてそういった官につけるかどうかということについて、それぞれの審査がなされ、適当であると認められた者が再任名簿に載せられて内閣に送られる、これが再任制度であるわけでございます。  したがいまして、十年の任期というものは、その時点においてあらゆる観点からその裁判官の適否の問題を判定し直すという制度であるわけでございます。そのような制度としてこれまでも運用されてきておるものでございまして、今回もまたその運用の一環としてなされたものである。もちろん個々の裁判官につきましてはそれぞれ慎重に検討がなされて、再任に適するかどうかという観点からの判断がなされたものであることは申し上げるまでもございませんが、そのようにして判定された結果、宮本判事補につきましては判事に任用する名簿に登載されなかったということになっておる次第でございます。
  140. 沖本泰幸

    ○沖本委員 幾ら言ったって押し問答になるわけですけれども、一向に意図する答えは出てきませんけれども、たとえて言うならば、民間会社で首を切られますね。そして訴訟を起こして法廷で首を切った理由を明らかにしてほしいと言った場合、これは会社の人事の秘密ですから明らかにできません、こういうことは言えませんですよ。そちらのほうが専門のほうなんですから、そういうことが起きた場合当然これは明らかにされなければならない。同じ事態がいま起きているわけです。裁判所だけが特別だということにはならないと思うのです。人事の秘密ということは、人事異動とかいろいろな異動とかそういう問題が起きたときに、人事の秘密に当たるのではないでしょうか。現在の段階のような内容を伴っておる場合は、これはもう人事内容を明らかにしていくということが当然だ、私はこう考えるわけです。ですからわれわれが考えてみても、また国民の立場から考えてみても、どうしてなんだろう、こういう疑問が残ってきます。なぜ、簡単なことなのに明らかにできないのか。だから畑先生も秘密主義であるというふうにとらえられてしまう、こういうことになると思います。こういう、民間会社的に首を切った理由を明らかにしてほしいという質問が出た場合は、どうなさいますですか。
  141. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 一般の職員も同様でございますが、裁判官以外の職員につきましては、確かにある時点で退職を求めるということは、いわゆる罷免として、どういう理由があるかという不利益処分の問題が生じてくるわけでございます。またそういった場合には理由を明らかにするのが妥当ではなかろうかというふうに考えております。しかし、再任の問題は、任期が終了した者を採用するかどうかという問題でございまして、これは別個に考えるべきものではなかろうか。したがいまして、かりに再任名簿に登載されなかったといたしましても、その理由を申し上げる必要はないというふうに考えておるわけでございます。任期のある官職は裁判官だけではござ  いませんで、いわゆる行政庁の官職にいたしましても、重要だと認められております官職として、あるいは会計検査院の検査官でございますとか、人事官でございますとか、いろいろ任期のある方があるわけでございますが、任期制というのはそういった官職の重要性ということとの関連にもおきまして、また身分保障との関連にもおきまして設けられているものでございまして、その任期が終了した際に再任するかどうかということにつきましては、これはやはり理由を申し上げる必要もないと考えておるわけでございます。   私ども理由を申し上げないのは、法律的に理由が要らないということももちろんでございますが、それ以上に、先ほど来申し上げておりますような、この人事の問題ということで、やはりこれは申し上げることを御遠慮さしていただいたほうがいいのではないかということで申し上げているわけでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  142. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでは先ほどのことにもう一度返りますけれども判事適格性がなくて簡易裁判所判事適格性があるということは、これはおかしいんじゃないですか。その点どうですか。
  143. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 宮本判事補は、これまで判事補としての身分を持っておりましたが、再任は、判事に任用するかどうかという問題でございます。ところで、判事の任用の名簿に載せられなかったということに相なるわけでございますが、そうであるとしても、簡易裁判所判事としてのあとの任期が残ることになります。これは、いわゆる憲法に保障されました裁判官任期と対応するものとしての身分保障という結果から出てくるものでございまして、簡易裁判所判事任期というものはやはり残って、その期間は裁判官としてお仕事をしていただくということは、当然のことであろうかと考えております。
  144. 沖本泰幸

    ○沖本委員 押し問答になりますから、これはもう一応宮本判事補の場合はおきまして、阪口修習生の問題についてお伺いします。裁判所法の第六十七条、先ほどもお触れになりましたけれども、「司法修習生は、少くとも二年間修習をした後試験に合格したときは、司法修習生修習を終える。」とこうなっておりますですね。先ほどのお話では、修習二年間を終了していない、残っている、だから資格に当たらない、こういうお答えであったわけですけれども、では残っているのはどのくらい残っているのですか。
  145. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 少なくとも二年の期間、修習を終了するというふうに、いま御指摘の裁判所法の条文に規定がございまして、その御指摘の条文の第三項に、修習に関する事項は最高裁判所がこれを定めるというふうに、委任の規定が、ございます。その委任の規定を受けまして、司法修習生に関する規則を最高裁判所が制定いたしておりますが、その規則の十一条で、修習のことについてはさらに司法研修所長に委任をいたしておる関係に相なっておるわけでございます。そこで、司法研修所長はそれを受けまして、二十三期の修習生につきましては、四月五日までを修習期間と定めまして、カリキュラムを編成し、その決定をして、これを修習生に知らせております。したがいまして、四月五日までが修習期間である。阪口修習生は、当日ではございますけれども、四月五日に罷免されておりますので、結論として修習を終了していないということに相なるわけでございます。
  146. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、修習期間を終了したから試験するんじゃないんですか。
  147. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 条文の形からまいりますと、まさしく御指摘のとおり、修習の期間が終わってから試験をするという書き方になっておるわけでございます。しかし、この点は、そういたしますと、修習を終了して試験に約二カ月を要しますので、その間修習生の方が判事検事弁護士等になれないという非常な不利益を受けられるということもございますので、これまで裁判所法制定以来の運用といたしまして、修習期間中に試験を行ない、この修習終了ということと試験合格ということと二つの要件が両方とも充足されたときに修習を終了するという取り扱いをいたしてきて今日に至っておるわけでございます。したがいまして、試験修習終了前に行なわれておるというのが実情でございます。
  148. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ですから、この内容からいきますと、裁判所自体が法律に反しておるのではないですか。法律で定められておるのです。裁判所のほうであらためて別にきめるということになっておりますけれども、それは修習期間が残っておるといっても、普通一般考えられるような、いわゆる実務的あるいはいろいろな技量の上から修めるべきものが残っておったというなら、それは修習期間が残っておったということはいえますけれども、幾ら間があいていたということになりますか。そういう内容をとらえて、修習期間が残っておるとはっきりおっしゃるということ自体、裁判所のほうが詭弁だというふうに私はとりますけれども、この点どうですか。
  149. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほども御説明申し上げましたように、修習期間としてのほとんどの実質を終了しておることは御指摘のとおりでございます。ただ阪口修習生の行為は、高い識見と円満な常識を要求される法曹人として、最も必要とされる正義を守り秩序を維持するという高い希望と申しますか目標というものに全く相反する行為であるというふうに、そういう行為の評価の観点からこれを見てまいりますと、修習期間はほとんど無に帰しておると申し上げても差しつかえないのではないかと思われるほどの行為であったわけでございます。したがいまして、その行為は、かりに修習の実質のほとんどを終了しておるということでございましても、やはり罷免に値する行為であり、また罷免するのが妥当である、このように考えられたものと思っておるわけでございます。
  150. 沖本泰幸

    ○沖本委員 あと一言で終わります。  おっしゃっておることは、全くこれは酷に過ぎて、われわれ常識でとうてい判断できない、こういうふうな内容だと私は考えるわけです。ですからもう一度お考え直し、いろいろと御検討していただいて、国民の納得できるようなお答えを出していただきたい、こういうことを要望いたしまして、一応質問を終わります。あとは留保しておきます。
  151. 高橋英吉

    高橋委員長 岡沢完治君。
  152. 岡沢完治

    ○岡沢委員 最初に、植木法務大臣お尋ねをいたしますが、先ほど森山委員青法協をどう評価するかという質問をいたしました場合に、植木法務大臣は、政府委員答弁のとおりという御答弁がございました。法務大臣最高裁判所人事局長を政府委員とお考えでございますか。
  153. 植木庚子郎

    植木国務大臣 先ほどのは官名を間違えまして、その点議事録を訂正さしていただく手続をいたしました。この際、おわびをいたします。
  154. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、この問題は、この発言は単なる食言では済まないと思うのです。きょうのこの裁判所司法行政に対する質問の中心も、最高裁判所あるいは一般裁判所政治に従属しておるのではないかという国民の疑念を晴らすために、われわれは国会議員として政府並びに最高裁判所に意見を求めておるわけなんです。この場所で法務大臣裁判所人事局長をあたかも政府委員であるというふうに誤認をされて発言をされた。私は、裁判所政府のためのあるいは佐藤内閣の従属機関であるという無意識の結果の発言だと解釈されてもしかたがないと思うのでございますが、重ねて意見を聞きます。
  155. 植木庚子郎

    植木国務大臣 重ねておわびをいたします。申し上げましたとおり、速記録の訂正を申し出てお願いをしてございます。その点、御了承願いたいと思います。
  156. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私に与えられた時間は二十分でございまして、この問題だけに固執するわけにはまいりませんが、しかし、ほかの大臣ならともかく、政府における法の番人である法務大臣最高裁判所人事局長についての御発言に誤りがあるということについては、私は納得いたしません。裁判あり方あるいは裁判所あり方について、われわれも求め、裁判所もおそらく一番期しておられるところは、公正な裁判と公正らしさだと思うのです。この問題について政府の最高責任者である法務大臣最高裁判所に対する御発言を誤るということは看過できないということを指摘して、次の質問に移ります。  最高裁判所人事につきましては、すでに小澤委員、畑委員からも質問がございました。本日の主たる課題は、最高裁判所が行なわれました下級裁判所人事についてではありますけれども、やはり私は最高裁判所あり方そのものを考えます場合に、この人事の問題に触れざるを得ないと思うわけであります。畑委員からも、最高裁判所の現在の裁判官のうちで十五名中十四名までが佐藤内閣の任命によるものであるという指摘がございました。そのあとの一人は最高裁判所の長官でございますけれども、長官自身も最高裁判所の長官に任命されたのは佐藤内閣の指名に基づいてでございますから、一切の人事がいわば佐藤内閣によってなされている裁判官によって行なわれているというところに、われわれとして、国民としても、今回の人事について不審を抱く一つ理由があろうと思うわけでございます。  もちろん、これは憲法に基づいた任命方法でございますから、そのこと自体われわれは違法であるとかいうことを申し上げるつもりはございません。また、特にわれわれ野党側からいたしました場合、内閣を取れない、政府を取れないというところにも政治的な一つ理由があると思いますけれども、しかし、現実は悲しいかな二十数年保守党内閣が続いておるわけでございますから、やはり運用の面で、せめて国民から見て最高裁判所裁判官だけは人事の佐藤といわれる佐藤さんといえどもどうにもならぬのだという印象を与える必要があるんではないか。その意味から、畑委員の  ほうからも、最高裁判所発足当時のいわゆる諮問委員会的な制度を採用する余地がないかという御発言があったかと思います。私は当然に下田前駐米大使が最高裁判所判事に任命されたときのいきさつ等を考えました場合、私は下田判事の識見とか人格について云々するつもりはございませんけれども新聞報道によりますと、任命のその日まで官房長官と総理以外は御存じなかった、他の最高裁判事法務大臣も全くつんぼさじきであったということが報じられているわけであります。といいますと、最高裁判所判事も佐藤総理の胸一つだということになるわけでございまして、ここにまで人事の佐藤の影響が及ぶということについては、大きな問題だろうと思います。私は、当委員会でも指摘いたしましたが、たとえば法務大臣、これも自民党の代議士から選ぶべきでない。今度の場合は、植木法務大臣は、非常に失礼でございますけれども佐藤派から選ばれておる、この前の小林法務大臣も佐藤派から選ばれておる。こういうところにも検察に対する不信あるいは裁判官人事に対する不信もあり得るのじゃないか。  そういうことを考えました場合に、単に責任の所在を明らかにするという詭弁を弄されないで、当然最高裁判所裁判官の任命については、国印がその構成を納得するようなたとえば諮問委員会あるいは推薦委員会等を設けて、その意見に従ってあるいはその意見を参考にして、内閣は責任か持って任命されるというのが妥当だと思うわけでございますが、官房長官は欠席になりましたので、法務大臣から私の意見についての所見を聞きます。
  157. 植木庚子郎

    植木国務大臣 最高裁裁判官の任命問題につきましては、すでに御承知のとおりでございますが、あらためてここで私の知っている範囲から申し上げますと、それは内閣がこれを任命するということに相なっております。したがって、この人事は内閣の重要な人事であります。それが事三権分立に関連する大きな問題であるからでございます。その意味におきまして、私は現行の制度運用におきまして総理が主としてこの人選の任に当たっておられるのを承知しておりますが、これについては、たとえばかつて裁判官のこの現行制度ができます最初のときに、裁判官任命諮問委員会というような制度がありまして、ここで御研究、御審査をなされて、そしてその結果によって最初の任命をされたわけであります。これが御承知のようにその後この制度がなくなりまして、なくなったにつきましては、やはりその従来の諮問委員会制度でやることがはたしていいかどうか、これにも長所もありますが欠点も伴わざるを得ないようであります。その点につきましてやはり反省が行なわれた結果、現行の制度になって運用をされておる、こう思うのであります。  私は、今日までの任命の状況を見ましても、私自身の理解しておるところによりますと、これは大過なくその後の運用も行なわれておりまするし、また、そのときそのときにおいて最も慎重に、時の内閣総理大臣としては十二分に事の事態をわきまえ人選を定めて、そしてそれを閣議にはかられて閣議で決定する、こういうことで、いわゆる内閣の任命ということの実をあげておると、こういうふうに思っておるのであります。
  158. 岡沢完治

    ○岡沢委員 最高裁判所裁判官、あるいは最高裁判所がすべての下級裁判所人事権を持ちあるいは司法行政上の監督権を持っておるという場合に、最高裁判所が厳正公平、不偏不党、政治色が入らないという努力をすることは、単に私は総理一人がお考えになるのではなしに——総理がいかに主観的にそうありたいと思われましても、人間でございます。また、任命されました最高裁判所裁判官お一人お一人は、それは憲法七十六条に従いまして、その良心に従って、あるいはその憲法及び法律のみに拘束されるという原則は守っておられると思うのです。しかし、それはあくまでも主観的なものであって、やはり人間である場合に、佐藤内閣から任命されたということは否定されない事実として本人にもあるいは国民の側からも見られるわけであります。そういうことを考えました場合、われわれは裁判所の公正らしさを担保する意味からも、客観的に諮問委員会あるいは推薦委員会あるいは選考委員会というようなものを大前提に置きまして、国民だれもが納得するような人々でその委員会を構成する、たとえば在野法曹あるいは識見のある人、あるいは行政的また国際的な視野のある人。私はその人選そのものも非常に大切だと思いますが、少なくとも佐藤総理が、いま大臣自身がお答えになりましたように、実際上は胸三寸、一人でおきめになるという人選よりは、国民から見てきわめて公正さが担保できると思うのです。もう少し積極的に私はこの問題については御検討あってしかるべきではないか。われわれ野党がすぐにでも政権が取れる、政権交代可能な政界の実情でありましたら、その懸念はないわけでございますけれども、まことに残念ながら保守党政治が続いているということを考えました場合、せめて運用上そういうくふうはあってしかるべきだと思います。  時間がございませんので、次の質問に入ります。  阪口修習生弁護士登録に関連いたしまして、罷免が有効か無効かについては、いろいろ意見のあるところでございます。先ほど来同僚委員からも質問がございました。裁判所法六十七条あるいは弁護士法四条の規定からいたしますと、有効であるという解釈も十分に成り立つと思います。現に弁護士会でもそういう動きがございます。もし阪口修習生弁護士登録を希望され、それを日本弁護士連合会あるいは単位弁護士会が受理された場合、最高裁判所としてはどういう処置をおとりになりますか。あるいはその登録を受理された阪口弁護士の資格についてどう御判断されますか、お尋ねいたします。
  159. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私どもは、阪口修習生試験は合格いたしましたけれども修習期間を終了することなく罷免されたものと考えておりますので、法曹資格はないというふうに考えておるわけでございます。日本弁護士連合会におかれても、十分その点は御審査いただくわけでございますので、阪口修習生の登録をお認めになるというようなことはあり得ないことであるというふうに考えております。  しかし、かりにそういうことがあるといたしますれば、それは個々の裁判においてそれぞれの問題になることでございまして、一般的にどのように取り上げるかということまでは私どもとしては考えておりません。
  160. 岡沢完治

    ○岡沢委員 法律の解釈は裁判所が専門ではございますが、先ほど来問題になっております裁判所法の六十七条、文字解釈に関する限り「司法修習生は、少くとも二年間修習をした後試験に合格したときは、」しかも試験に合格していることは明らかでもございますし、この文章からいたしますと、二年間の修習を終えた後に試験がされておるということが前提だと思います。しかも先ほどのお話では五日をもって修習は終了する。しかも五日、終了式の終了も宣せられたわけでございまして、常識的な解釈といたしましては、修習を終えた者というふうに解釈することも十分に私は根拠のある法解釈だと思います。裁判所といえども独善解釈は許されないと私は信じます。  さらに、弁護士法の四条は、「司法修習生修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する。」裁判所法の六十七条と弁護士法の四条をあわせ考えました場合、いま阪口修習生弁護士登録を申請し、弁護士会がこれを受理するということもあり得ますし、またその解釈も必ずしも間違いでないと思いますだけに、いまの局長の御答弁について、今後その登録がかりに実行された場合、かなりな法律問題あるいは国民そのものに対する混乱ということも考えられますので、ぜひ日本弁護士連合会と十分な解釈の統一がなされべきだと思いますが、その辺について最高裁としてどういうお考えなのか、お尋ねいたします。
  161. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいまも申し上げましたとおり、私ども考え方としては確定いたしておるわけでございます。日本弁護士連合会がどのようなお考えでございますか、伺っておりませんので承知いたしておりませんが、もし何らかのお話し合いの機会があるとすれば、私どものいま申し上げました考え方をお伝えするということに相なろうかと考えております。
  162. 岡沢完治

    ○岡沢委員 先ほど、四月五日の終了式の模様についての御答弁に対して、事実関係に誤りがあるということを、私いま阪口修習生に会いまして指摘を受けました。  十分足らずの式だとおっしゃいましたが、実際は一分十五秒。それから研修所長は一度も制止的な態度をおとりにならなかった。これはテレビ等の録画でも明らかだそうでございます。また、式を終了するについて所長と中島事務局長と相談の上だというお答えがありましたが、そういう御相談も衆人環視の中で見た場合になかったそうでございます。まあ現行犯と同じように明らかな事実だとおっしゃいましたが、この事実についてもこれだけ食い違いがあるわけでございます。  私は、時間がございませんが、先ほどの与党委員質問にもございました懲戒処分、罷免処分というのはきつ過ぎるのではないか。やはり裁判所法六十八条によって罷免しか処分の方法がない裁判所法にも問題があると思うわけでございます。この法解釈はもちろん国会の問題でございますが、ぜひ最高裁判所としても御検討いただきたいと思います。  あわせまして、この罷免が事実に徴して酷に過ぎるという場合に、救済方法についてお尋ねをするわけでございますが、再採用は法律上は可能州どうか。その場合に、あらためて二年間の修習を必要と解釈されるか、お尋ねいたします。
  163. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 罷免の効果というものについては、法律には何らの規定がございません。ただ、罷免された者が再採用を願い出たという事例がこれまでございませんので、そういった問題については私ども、今後の検討の問題ではなかろうか、こう考えております。したがいまして、それ以後の問題でございます修習期間の通産等の問題につきましては、現在お答えを申し上げる用意がございません。
  164. 岡沢完治

    ○岡沢委員 裁判所法第六十六条によりますと、「司法修習生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる。」阪口修習生があるいは阪口前修習生が、司法試験に合格した者であることは明らかでございます。私は、法律上、採用は可能だと思いますが、その点について重ねて人事局長の見解を聞きます。
  165. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 法律的に再採用を妨げる事由はないようでございます。
  166. 岡沢完治

    ○岡沢委員 時間がございませんので、最後の一問にいたします。  宮本裁判官再任拒否理由の非公開については、ここで何回か問答がなされました。人事の秘密あるいは裁判官会議の非公開の原則、わからぬではございませんが、それ以上に大きな法益と申しますか、裁判所に対する国民信頼の問題があると思います。あるいは下級裁判所裁判官最高裁判所人事に対する信頼の問題があろうかと思います。先ほど御答弁にありましたように、すでに百四十名をこえる裁判官から、宮本判事補の不再任理由を明らかにしてほしい、あるいは慎重な人事を行なってほしいという要望があったことも事実でございます。そういうことを考えました場合、人事の秘密も一つの原則ではありましょうが、より大きな、何と申しますか、裁判あるいは裁判所に対する国民信頼をかちとるためにも、あるいは下級裁判所の動揺を防ぐためにも、あるいは最高裁判所人事行政についての納得という観点からいたしましても、あるいは在野法曹の動きに見られますように、国民の不信を払拭する意味からいいましても、この際は例外として不採用理由を明らかにされる、せめて宮本判事補本人にはその理由を明らかにされる、あるいは修習生裁判官任用を拒否された者に対して、その理由を個人的に明らかにするということは私は必要かと思いますが、重ねてその点についての見解を聞いて、私の質問を終わります。
  167. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 岡沢委員の御意見は、まことにごもっともであろうかと存ぜられるわけでございますが、ただいまのところ、やはりそれについて理由を述べるということは考えておりませんので、御了承をいただきたいと思います。
  168. 岡沢完治

    ○岡沢委員 終わります。
  169. 高橋英吉

    高橋委員長 青柳盛雄君。
  170. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、最初に法務大臣お尋ねいたします。  自由民主党は、安保条約は合憲である、自衛隊も合憲であるという解釈をとっております。これに対して政府としても同様の態度をとっておられると思いますが、そこで、安保条約や自衛隊は違憲であるという主張も国民の中には非常に多いし、また自民党以外の野党の大半はそういう態度をとっているわけでありますが、この野党側の態度あるいは国民の大多数の者の態度は反体制の思想を持ったものだというようなことをよくいっております。これは政治的な意味でいうわけで、法律的には厳格な規定はありませんけれども、反憲法的であるとか憲法否定的な思想であるというようなきめつけ方が行なわれておりますが、政府として、反対の考えを持っておる者は憲法を否定するのだとかあるいは反憲法的であるというように規定しているのかどうか、それをお答え願いたいと思います。
  171. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私は、それは反憲法的とかなんとかということばで一言に批評し去るべき問題ではないと思います。やはり憲法におきましても言論の自由は認められておりますし、それが当たっておるかどうかという問題については、その人その人、その国民によっておのずから見るところが違うのでありますから、私は反憲法的云々ということばで評し去るのも行き過ぎであると思います。
  172. 青柳盛雄

    ○青柳委員 自由民主党の四十六年度の運動方針を見ますと、この反体制運動というものは即、法の精神を冒涜するものである、法律秩序を乱るものである、こういうきめつけ方をいたしておりますけれども、はたして政府としても、反体制運動が憲法を否定するものであるとか法を冒涜するものであるとかあるいは法秩序を侵害するものであるというような解釈をとっておられるかどうか、それもお尋ねしたい。
  173. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私は、そうした問題につきましては、いまの党のあの内容の中にどういうふうに盛り込んであるか知りませんが、やはり政治的な批判であって、これはまた許さるべき政治上の意見である、かように考えるのであります。
  174. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そうだといたしますと、裁判官がいわゆる反体制的な考え方を持っている、自民党政府考えている安保条約は合憲であるということとは違う反対の考え方を持っているということは全く自由なことであって、それが裁判官としての適格性を欠くということにはならないということもお認めになりますか。
  175. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その点になりますと、私は若干違うと思います。それは、裁判官がそうした政治的な濃厚な色彩のある団体に所属しておられると、したがって、その団体の影響もお受けになるでしょうし、あるいはそれと全然同じ考え方を持っておられるのかというふうにも国民の相当の人たちがやはり思われる。やはり裁判官としては最も厳正公平でなければならぬ、右に偏してもいかぬ、また左に偏してもいけない、中正妥当な立場をとるべきものである、これが裁判官としては好ましい態度であると私は思うのです。思想の上でそういうことをお考えになっておるとかどうとかは、これはまた自由でございましょうが、それが国民に与える影響が——あの裁判官がこういう思想を持っておられるということははっきりしているが、そうするとこの裁判の判決もまたこれに影響を受けておるのじゃあるまいかというようなことを疑わせる。その疑いを持たせるということが、いわゆる裁判官として適当ではないというふうに私は思うからであります。
  176. 青柳盛雄

    ○青柳委員 憲法をどのように解釈するかは全く各人の自由であり、裁判官もその例外ではないと思います。これが思想の自由から引き出される当然の結論であります。だから憲法安保条約は守らなければいけないのだ、そういうふうに書いてある場合に、いや、これは守ってはいけないのだという考え方を持つとすれば、これは憲法否定の考え方でありましょうけれども憲法には安保条約はどうこうということは一言も触れていない、あるいは自衛隊が合憲であるかいなかということは一つも触れていない。すべてこれは憲法の解釈問題であります。だからその解釈の自由は、裁判官だからその自由はないのだ、それは合憲であるのかあるいは違憲であるのかということについては何ら判断をしないのが中正公正だ、こういう論理は成り立たないと思うのですよ。だから、どうもそこの辺に論理のごまかしがある。裁判官は中正公正であるということは、憲法を自分の良心に従って正しく解釈し、適用するというところに中正公正があるのであって、自分の良心を曲げてまで、たとえばこれは違憲だと信ずるのに、政府あるいは自民党が合憲だといっているから、合憲にしておかなければだめだというふうに盲従することが裁判官独立を保持するゆえんである、こういう論理というものが俗世間には通りそうに聞こえるけれども、よく考えてみればおかしいと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  177. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その点確かに仰せのとおりです。
  178. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そういたしますと、先ほど申しました自由民主党の四十六年度の方針によりますと、最近問題になっておる青法協というものは反対制の団体である、そして裁判官がその中に入るということは、厳正、中立、公正であるべきものであって、法の精神を冒涜するものだというようなことをいって、法秩序の根底をゆさぶるものだ、こうきめつけているわけですね。だから青法協というものはもう裁判官になる資格がないのだという方針を先ほど森山委員からも盛んに強調されましたけれども、これはさすがに政府もそれから最高裁も、だけでは新任再任を拒否しないのだ、こういうふうに表面的には言いますけれども、先ほどからの答弁を聞いておりますと、最高裁としては名簿に登載しなかったことあるいは新任しなかったことについて、一切理由は、人事の秘密であるから述べない、こう言う。そうすると、口先では最高裁としてもあるいは政府としても、青法協だけでは不採用理由にはならないと言っても、結局は採用しないのは青法協会員であるということに帰着することは明白だと思うのです。もっともこれに対しては、そういう青法協会員の数名の者が再任あるいは新任されているらしい、正確なことはわからないけれども、こういう答弁です。しかし、そのことをもって一人のあるいは数名の青法協会員が排除されたということを合理化する理由にはならないと思うのですね。やはりねらい撃ち、一罰百戒的なやり方、これで青法協を壊滅させよう、少なくとも裁判官の中にはそういう者は一名も存在しないようにしようという意図が露骨にあらわれているというふうに考えるのですが、この点についていかがですか。
  179. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その点は、先ほど最高裁当局の仰せにもあったのでございますが、決して単に青法協会員であるがゆえにというのみをもってはこの人事をやったのではないのだ、たくさんの諸条件もお考えの上でおやりになっているが、これは事人事の機密に属するから説明はいたしかねる、こう言っておられるのであります。だから、その点は全くさように御信用申し上げてしかるべきだと私は思っております。
  180. 青柳盛雄

    ○青柳委員 もう時間がありませんが、一つだけ最高裁のほうにお尋ねいたしますけれども、二十三期の修習生新任にあたって七名の人が排除されたということなんですが、これは裁判官会議の議を経て排除されたのではなくて、すでに裁判官考試委員会主査の矢崎憲正最高裁事務局次長が名簿作成の段階において七人を取っていたということが、週刊朝日の四月二十三日付の記事に載っております。前回私がお尋ねしたときには、新任する場合でも定員オーバーということはないから、すべての名簿を出して審査を個々的に願うのだという答弁矢口人事局長から、最高裁代行からなされておる。速記録に載っているとおりです。そのこととこの週刊朝日の記事とは明らかに矛盾しております。これが事実だとすれば食言をされていることになりますが、いかがですか。
  181. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 週刊朝日の記事は拝見いたしておりませんので、どのようなことが書いてあるか存じませんが、今回の六十二名の修習生からの裁判官採用の場合におきましても、採用の面接はいま御指摘の矢崎次長以下全員五名の者でいたしましたが、その結果を裁判官会議に御報告し、各人について御審査をいただいた結果、七名の不採用を御決定いただいた次第でございます。
  182. 高橋英吉

    高橋委員長 この際、整理のために最高裁の吉田事務総長にお聞きしたいのですが、裁判官政治的な色彩の濃厚な団体加入することはモラルの上で好ましくないというふうなことだとすれば、自由民主党の党員であることがはっきりしているような裁判官もまたモラルの上で好ましくないという結論になるのですかどうですか。
  183. 吉田豊

    ○吉田最高裁判所長官代理者 いまお尋ねのように、自民党党員であるということも裁判官のモラルとしては好ましくないと存じます。
  184. 高橋英吉

    高橋委員長 この際、最高裁矢口人事局長から答弁の訂正につき発言を求められております。これを許します。
  185. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほど私がお答え申し上げました中で、新任裁判官の数を六十五名と申し上げたかと存じますが、五十五名の誤りでございますので、おわびして訂正させていただきます。
  186. 高橋英吉

    高橋委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時十四分散会