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貞家政府委員 まず第一点の
期日の
指定、
変更あるいは
証拠の
申し出について
手数料を徴しないこととした点でございます。御承知のとおり
現行法におきましては、それが独立の
手続を開始するものであるといなとを問わず、どんな中間的な付随的なものでありましても、あらゆる
申し立てにつきまして
印紙を貼用することが要求されているわけでございまして、その
印紙の額は十円あるいは二十円というようなきわめてさまつな額の
印紙を張らなければならないというふうになっておるのでございます。ところが、
申し立ての中には、御
指摘の
期日の
指定あるいは
証拠の
申し出というように、どんな
事件でも必ずひんぱんに行なわれる
性質の
申し立てがございます。こういった
申し立てにつきましては、本来
訴えを起こす、あるいは
控訴を
提起するという
基本になる
申し立ての
手数料の中ですでにまかなわれているというふうに考えることも不可能ではないわけでございます。そうした当然
審理の過程において、あらわれてまいります、しかも数多く出てまいりますそういった
申し立てにつきましては、無差別にそのつど、さして
意味のないような額の
金銭を徴するということは、現在におきます
手数料の取り方としていかがなものであろうかということが考えられたわけでございます。
なお、そういった
申し立てにつきまして、必ず
手数料を納めなければならないということになりますと、もしそれを怠った場合には、その
申し立てを
却下するとかいうようなことになりますれば、結局は
事件の迅速な
進行にも差しつかえるということが起こってくるわけでございます。さらにのみならず、そういったきわめて少額の
印紙をそのつど
当事者が貼用する、そして
裁判所書記官がそれを
審査するというようなことになりますと、
当事者、
裁判所、ともに非常にわずらわしい仕事に忙殺されることになるわけでございまして、むしろそういったさまつな
印紙の貼用、それに伴う
事務ということからは解放いたしまして、
訴訟の
本案の
進行に協力する、
つまり本案の主張とそれに対する
応答とに全力を注ぐということが、望ましい姿ではないかと思うのでございます。
そういった中間的、付随的な
申し立てについて現在要求しております
印紙の額は、先ほど申し上げましたように、きわめてさまつなものでございますから、これを
手間と
手数料という点から考えましても、この
手数料がきわめて軽微でありまして、むしろその
手数料を徴するための
事務量のほうが
金銭的に評価すれば大きいということも言えるのではないかと思われるわけでございまして、また、そういった状況でございます以上、十円、二十円の
印紙を貼用するということは、必ずしも
制裁的な
意味があったとは思いませんし、また、そういった効果を
現実に持っているということはとうてい考えられないわけでございまして、これはやはりそういった
申し立てに対しまして、それを
審査し
裁判所が
応答義務を負う、そういった
制度を利用するための対価と申しますか、
手間に対して払われるべきものだという
性質におきましては、これは特に変わっていなかったと思うのでございます。
そこで今回、以上申し上げましたような
理由によりまして、そういった中間的、付随的な
申し立ての大部分につきましては、別に
法律の
別表で書きますものを除きまして、徴収しないということにしたわけでございまして、これを高額にして
制裁の役に立たせようという
考え方もなくはないと思いますけれども、それは必ずしも妥当ではないのではないか。したがいまして、そういった
手数料というものの
考え方につきましては、従来と
変更はいたしてないつもりでございます。そういったさまつなものを省略して、
基本的なものに含めるという
考え方でございます。
第二の
控訴の
提起につきましては、
訴えの
提起の
一倍半、
上告につきましては二倍という率でございますが、これは従来明治以来ずっと続けておりました
態度でございますし、また外国の
立法例などを見ましても、おおむねそういった
態度がとられているようでございます。これはおそらく
原審の
裁判に対して不服を
申し立てる、そうして
上級審にいきます場合に、第一審での
判断資料に加うるに、さらに新しい
判断資料なり、さらに新しい
法律問題というものが出てくるわけでございまして、そういった丁重な
審理をさらに求めるということに見合う
手数料といたしまして、
一倍半あるいは二倍というようなことになっているのだと思うのでございまして、その
態度を踏襲したわけでございます。もちろん、これは
訴訟費用のうち
裁判所に納める
手数料というものが全然無料ではないということは、結果的に申しますと、
乱訴なり
乱上訴を抑制するという作用を営んでいると思いますし、
訴訟費用の
制度としてそうあるべきだと論じている者もあるわけでございます。しかしながら、常にそういった
制裁的な要素というものを重視いたしまして、高額にするというわけにもまいりません。
一倍半、二倍という
金額は、東西を問わずほぼ普遍的になっているように思われるわけでございます。
そこで、御
指摘の
民訴法三百八十四条ノ二の場合でございますが、これは
控訴を棄却いたします際に、
控訴が
訴訟の完結を遅延させる
目的のみのためになされたと認められる場合でございます。これはまさに
制裁的な
意味があるわけでございますが、これは
控訴の実体に入って
内容を
審査いたしまして、結局その
控訴の
提起が
訴訟をおくらせる
目的だけから出ているのだ、そういう悪意があったと認められる場合だけに限るわけでございます。これに対しまして、今回
民事訴訟費用等に関する
法律の九条の二項の各号でいっておりますものは、
却下あるいは取下げの場合でございまして、いわば
玄関払いの場合でございます。この場合には
実質に入らず、いわば
入り口で
却下される、あるいは取り下げるということでございまして、それに必要な
裁判所の
手間ということも考えますと、やはりこれは全額徴収するのは不適当であると考えられたわけでございまして、もちろん、その中には
実質的に見ますと、これは不当な
控訴、
訴訟遅延のための
控訴あるいは
上告があったという場合もございましょうけれども、これはとにかくそこへ行き着く前のいわば
玄関払いの場合でございますから、そういった
判断をいたしまして、
制裁的に
民事訴訟費用法三百八十四条ノ二と同じような
取り扱いをここで考えるということは、きわめて困難かと考えるのでございます。したがいまして、そういった
区別が出てくるわけでございまして、一見いたしますと棄却の場合には取り上げられてしまう、
却下の場合にはこれは返してもらう、おかしいではないかという感じもいたすわけでございますけれども、よくよく考えてみますと、やはりそれは事案が違うわけでございまして、私どもはこれは矛盾した
態度であるとは考えていないのでございます。
なお、
民事訴訟法三百八十四条二の
実情につきましては、これは
裁判所当局からお答え願うといたしまして、その次の御
質問でございますが、
民事の第九条第二項の各号でございます。第一号におきましては「
口頭弁論を経ない
却下の
裁判の
確定又は最初にすべき
口頭弁論の
期日の終了前における取下げ」ということになっておりまして、これはまさしく
入り口で、結局
裁判所の
手数を要しないことになった場合でございます。
上告の場合は実はこの第五号に別に書いてございまして、
上告の場合には「
原裁判所における
却下の
裁判の
確定又は
原裁判所が
上告裁判所若しくは
抗告裁判所に
事件を送付する前における取下げ」これが半額
還付の事由になっているわけでございます。やや
控訴の場合と異なっておりますが、これは
控訴提起の
方法と
上告提起の
方法と違いまして、
控訴を
提起いたします場合には、
控訴訟は
原審あるいは
控訴裁判所に出すわけでございますが、いわば
原審は素通りになりまして
控訴裁判所に
事件が送付されるわけでございます。ところが、
上告の場合には必ず
原裁判所に
上告状を提出いたしまして、
民事訴訟法の三百九十九条におきまして、
実質ではございませんが、その
上告について
実質に近い
審査が行なわれる、そういった
上告審査手続があるわけでございます。したがいまして、その時点をとらえるのが相当ではなかろうか。また
上告審に
事件が参ってしまいますと、今度はいわば
上告審は
書面審理が
原則でございますから、前
段階と本
段階と申しますか、予備と本番との限界というものは必ずしも明確に
手続上
区別されていないわけでございまして、この場合に
控訴と同じように取り扱うということは適当ではない、
手続上はっきりとした
段階がございますので、そういった
段階でもって
区別をいたしまして、そこで
却下あるいは取り下げが生じた場合に
原則として半額を
還付するということにした償うが適当ではないかと考えた次第でございます。