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1971-03-10 第65回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君    理事 小島 徹三君 理事 福永 健司君    理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君       石井  桂君    江藤 隆美君       島村 一郎君    千葉 三郎君       羽田野忠文君    松本 十郎君       村上  勇君    林  孝矩君       青柳 盛雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君  出席政府委員         警察庁刑事局長 高松 敬治君         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務大臣官房司         法法制調査部長 貞家 克巳君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局審議官  井内慶次郎君         文部省大学学術         局審議官    安養寺重夫君         厚生省医務局医         事課長     新谷 鉄郎君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局民事局長  瀬戸 正二君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君     ————————————— 本日の会議に付した案件  民事訴訟法等の一部を改正する法律案内閣提  出第八二号)  民法の一部を改正する法律案内閣提出第八三  号)  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第八四号)  法務行政に関する件(大阪刑務所不祥事件)      ————◇—————
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出民事訴訟法等の一部を改正する法律案民法の一部を改正する法律案及び下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。植木法務大臣。     —————————————
  3. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 民事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、民事裁判手続合理化をはかるため、簡易裁判所における訴訟上の和解に関する請求異議訴え等事物管轄の整備及び裁判書調書訴状等における署名押印形式簡略化について、民事訴訟法等の一部を改正しようとするものであります。  次に、この法律案要点を申し上げます。  第一は、簡易裁判所において成立した訴訟上の和解に関する請求異議訴え等事物管轄改正であります。すなわち、現行民事訴訟法におきましては、簡易裁判所において成立した訴訟上の和解に関する請求異議訴え等は、その請求価額がいかに多額のものでありましても、すべてその和解が成立した簡易裁判所専属管轄とされておりますが、これを改めて、その請求価額が三十万円をこえる場合には、これに関する請求異議訴え等管轄裁判所地方裁判所とすることといたしました。  第二は、裁判書調書訴状等における署名押印記名押印で足りるものとする改正であります。  すなわち、裁判関係文書のうち、刑事裁判の分野におきましては、昭和二十六年の刑事訴訟規則改正により、すでに決定書命令書等につきまして、署名押印にかえて記名押印で足りるものとされております。これに反しまして、民事裁判関係文書につきましては、内容の簡単かつ画一的な決定書命令書等もすべて裁判官の署名押印を必要とされ、事件数の増加と相まって、民事裁判手続近代化迅速化を阻害する一因ともなっております。  そこで、これを改めて、決定書命令書調書訴状等につきまして、署名押印にかえて記名押印または認印で足りることといたしました。  以上がこの法律案要点であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。  次に、民法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。  この法律案は、民法の一部を改正して、新たに根抵当に関する規定を設けようとするものであります。御承知のとおり、根抵当は、継続的な取引から生ずる多数の債権一定金額限度まで担保するため、あらかじめ不動産の上に設定される特殊な抵当権でありまして、古くから判例によってその有効性を認められ、各種の経済取引において広く利用されているものでありますが、民法に明文の規定が置かれておりませんために、その法律関係については不明確な点が多く、利用上も種々の支障を生じております。そこで、この法律案は、民法根抵当に関する規定を新設して、根抵当に関する法律関係を明確にするとともに、関係者間の利害を調整する等の措置を講じ、もって根抵当取引円滑化及び合理化をはかろうとするものであります。  次に、この法律案要点を申し上げます。  第一に、根抵当権は、設定行為をもって定めるところにより、一定範囲に属する不特定の債権を担保する抵当権であるとして、その意義を明確にするとともに、特別の規定のない限り、抵当権に関する一般規定が適用されることといたしております。  第二に、根抵当権によって担保される債権範囲については、従来、一定の契約から生ずる債権に限るとする説、無制限にこれを定め得るとする説など、多数の説に分かれておりましたが、この法律案においては、原則として、一定の種類の取引から生ずる債権を担保することとし、必要に応じてこれを変更することを認めることといたしております。  第三に、根抵当権により担保される金額限度、すなわち極度額については、従来、元木極度額及び債権極度額の二通りの定め方がありましたが、この法律案においては、法律関係の簡明をはかる趣旨から、後者の債権極度額の定め方に統一することといたしております。  第四に、根抵当権処分については、従来から問題とされておりました順位譲渡放棄等処分を禁止するとともに、他方において、根抵当権に特有の譲渡制度を認め、また、抵当権一般に通ずる制度として、順位変更規定を新設して、利用の便宜をはかることといたしております。  第五に、根抵当権設定者等の保護をはかるため、一定の要件のもとに、元本債権確定請求を認め、また、元本債権確定後の根抵当権については、極度額の減額の請求極度額に相当する金額の払い渡しを条件とする根抵当権の消滅の請求を認めることといたしております。  その他、共同根抵当元本債権確定原因及び時期、根抵当取引の当事者の一方につき相続または法人の合併があった場合の法律関係などについても、所要規定を設けて、これを明確にするとともに、関係者利害の調整をはかることといたしております。  最後に、必要な経過規定を設けるとともに、関係法律所要改正を加えることといたしております。  以上がこの法律案要点であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。  最後に、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律別表について所要の整理を行なおうとするものであります。  すなわち、簡易裁判所所在地はこの法律別表第四表のとおり、また、高等裁判所地方裁判所家庭裁判所及び簡易裁判所管轄区域は同表第五表のとおり定められておりますところ、茨城県北相馬郡取手町を取手市とする旨の町を市とする処分が行なわれたことにより、取手簡易裁判所所在地表示した別表第四表の記載が現状に合致しないこととなったのを初めといたしまして、最近おびただしい数にのぼる市町村の廃置分合及びその名称変更等が行なわれましたため、右の取手簡易裁判所外五つ簡易裁判所所在地及び立川簡易裁判所外六十六の簡易裁判所管轄区域を示した別表記載が、行政区画等の現在の表示と一致しない結果となっております。そこで、この際、これらの別表記載行政区画等の現在の表示と一致させるため、所要改正を行なおうとするものであります。  以上が下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  4. 高橋英吉

    高橋委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 高橋英吉

    高橋委員長 法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑和君。
  6. 畑和

    畑委員 私は、この二、三日前から新聞紙上あるいはテレビ、ラジオ等によって報道をされております大阪刑務所印刷をした国立大阪大学、それから大阪市立大学の各医学部の入学試験問題が、一回だけではなくして、もう二、三年にわたって、しかも捜査の進展のぐあいによってはもっとさかのぼるかもしれない、こういうようなことで抜き取りがあって、それによって不正入学が行なわれたという報道がなされておりますけれども、この問題は非常に国民に衝撃を与えておると私は思います。重大問題であると思います。  一つは、最も信頼されておった刑務所の中で印刷された入試の問題が内外呼応して抜き取られておった、しかも一回ではない、こういう問題。金嬉老事件静岡刑務所で問題になりましたばかりでありまして、さらにまた今度、大阪刑務所でこうした不祥事件が起きたこと、このこと自体一つ刑務所の規律の問題としてやはり大きく取り上げられ、かつまた究明をされなければならない問題だと思います。  同時にまた、これが相当広範囲にわたっていろいろばらまかれて、しかも相当高額の金で取引をされた。しかもさらにそれに関係しておる人が、はからずも大阪の箕面市の教育委員長、こうした地位にある人が相当大きな役割りを占めている。自分のむすこにもその入試問題を渡してまずこれに成功する。さらにほかにも紹介をした、こういう問題、これも国民にとっては非常なショックであります。人もあろうに師表に立たなければならないところの教育委員長がこうしたことに加担をしたということは、実に驚きであります。  それからさらにまた、これからいろいろ考えられることは、医療行政は少なくとも国の大きな仕事だと私は思う。ところが、その医療行政がきわめて荒廃をしておる。その医療行政荒廃の中に生まれた今度の事件はあだ花だというふうに医事評論家大渡順二さんなんかも言うておりますけれども、まさにそのとおりだと思う。非常に医者が不足である、したがって入試がきわめて狭い門であるというようなこと、本来医療行政にもっともっと国が金をかけてやるべきであるのに、それがなされておらぬというようなことでこういうことも出てくるんだ、こういうふうに痛切にこの事件を通じて考えたわけでありまして、こういう点でも私は国に対する大きな警鐘を乱打する事件でもある、かように思っております。  そういう意味でいろいろな点で私は大きな波紋を描いておる事件だと思うのでありますが、その事実をいろいろ私これから質問していくにあたりまして、その前提として、その事件概貌警察庁のほうからまず最初に伺って、それからそのあと逐次各当局に質問を続けていきたい、かように思います。まず警察庁からお願いいたします。
  7. 高松敬治

    高松政府委員 本年の一月三十日に大阪市の西区新町南通りの路上で殺人事件がございました。殺されましたのは大阪府松原市に住んでいる野村こと姜旭生という人物ですが、これが自分の自家用の自動車の中で絞殺され、さらにからだに数十カ所千枚通しようのもので刺されておるという非常に残忍な殺し方であった。そこで警察では即座にその捜査を始めて、被害者の身辺の捜査をいろいろ行なってまいりました。  被害者強盗窃盗、恐喝というような前科が四犯ありますし、警察逮捕歴も九回くらいございます。昭和三十七年の十二月に大阪刑務所を出て、その後ぶらぶらしていた。ところが、昭和四十二年ごろになりましてから、にわかに飲食店を経営したりあるいは宅建業を営んだり、いろいろ生活が非常にはでになってまいっておりまして、その資金が一体どこから出てくるのだろうか、その辺に何か殺人原因があるのではなかろうかというふうに考えまして、その資金の出所を極力洗っておりました。そうしましたところが、いろいろ捜査をやっておりますうちに、入学難に目をつけて大学入学試験問題を不法に入手して受験生に提供して、そうしてどうも父兄から金をもらっているらしいというふうなことがだんだん明らかになってまいりましたのが、この入学試験の問題の発端でございました。  それで、いろいろ関係者を取り調べておりましたら、同じ被害者のやっております野村商事という商事会社につとめておりました尾崎増義それから家弓光司、この二名の者が大体共犯である、彼らは大阪刑務所無期懲役で服役しておりましたが、服役中にこの姜と知り合いになりまして、そうして刑務所の中で印刷をしていた国立大阪大学あるいは大阪市立大学入学試験問題を不正に入手をして、そうしてこれを刑務所から出ておりました姜に手渡していたという疑いが非常に濃厚になりました。それで関係者その他も次第にわかってまいりました。大体一人につき五百万円ないし千二百万円くらいの金を取って試験問題を漏洩していた。約一億五千万円くらいの金をここ数年間に姜が収受をしていたというようなことがわかったわけでございます。
  8. 畑和

    畑委員 いままで新聞などで報道されたところによりますと、昭和四十三年、四年、五年、この三つははっきりしているようであります。特に一番成功した、金額も多く動いたのが昭和四十四年度のように新聞報道されておりますが、しかし、いま高松局長も数年にわたってということばがございました、新聞にも一部出ておるのですけれども、四十三年度からではなくてもっと前からやっておるのではないかというふうに想像されるのであります。いまの状態捜査当局がつかんだ範囲では大体いつごろからこれを始めておったであろうか、こういう点ひとつ可能な範囲で答えていただきたい。
  9. 高松敬治

    高松政府委員 四十三年、四年、五年というのは非常に明確であると思います。それからその前に四十年ごろからといううわさもないわけではないのですけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、姜の生活が非常に豪勢になってきたというのが大体四十二年ごろからでございます。その辺まだ調べが十分徹底いたしておりません。
  10. 畑和

    畑委員 新聞報道によると、学校の校長さんまで何か子弟のために出しておられた、それは失敗したというような話も聞いております。その金額が五十万くらいの報道がされておりますが、その点どうですか。それは年度はいつごろか、これもあわせて、もし事実ならば聞いておきたい。
  11. 高松敬治

    高松政府委員 新聞には報道がいろいろなされております。それは私も承知しておりますが、警察といたしましては、現地大阪府警におきましても、私どものほうといたしましても、まだ調べが完全に終わってないということで、氏名なりそういう事実については一切申し上げることを新聞にも差し控えておるという状態でございます。その点御了承いただきます。
  12. 畑和

    畑委員 捜査の都合もありましょうから、重ねてその点は深くきわめようとはいたしませんが、先ほど高松局長答弁にも、数年来というような御答弁もありましたので、そういう可能性がきわめて強いというふうな印象を私は受けております。ともかく事実をできるだけさかのぼって究明してもらうようにお願いしたい。  そこで、姜が出所したのは三十七年と聞いておりますが、そのほかの二人が出所したのはいつでしょうか。
  13. 高松敬治

    高松政府委員 姜が出所いたしましたのは三十七年の十二月十九日でございます。それから現在窃盗で逮捕しております尾崎が出所いたしましたのが四十三年の九月六日、もう一人の家弓が四十三年の十二月十三日にそれぞれ出所いたしております。
  14. 畑和

    畑委員 尾崎家弓があそこの大阪刑務所に入ったのはいつか、それはわかりますか。
  15. 羽山忠弘

    羽山政府委員 尾崎は罪名が強盗致死でございまして、判決無期懲役でございます。そして判決確定いたしましたときは結局入ったことになるわけでございますが、二十六年の十月十六日に確定いたしております。それから家弓は、これは私ども調査では彼の妻の家の姓のようでございます。本姓は岡本というようでございますが、いまはとりあえず家弓ということでお答えさせていただきますと、家弓はこれも強盗殺人死体遺棄無期懲役でございまして、確定いたしましたのが三十年の十二月二十六日でございます。
  16. 畑和

    畑委員 尾崎家弓も相当前からこの刑務所に入っておるということが言えるわけであります。それでもちろん委というのは三十七年の十二月に出てきておる。この間にもうすでに示し合わせて仕事が大体計画されたと見るのが普通だ。なかなか外から面会に行って打ち合わせをするということも不可能だということになりますと、大体三十七年十二月に姜が出てきておるということになれば、その前に打ち合わせをしておるということになると、それから間もなく始めた公算が非常に強いと私は考えられるわけであります。この点はあとでひとつよく調べていただきたいと思います。事実を究明していただきたいと思います。  そこで、お尋ねいたしますが、これは刑務所のほうの問題にもなりますけれども、今度の事件で、この事件の発表で初めて刑務所のほうではこの点が気がついたのですか。連絡をとっておったこと、あるいはさらにまた刑務所の中に忍び込んだという事実、こういう事実も警察調べにより、報道によって初めて刑務所当局は気がついたのか、その点を承りたい。
  17. 羽山忠弘

    羽山政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、昨年の一月十六日の朝に——十五日に大阪刑務所の構内に侵入したという事実がございます。これはその当時北警察署から朝四時前でございますが、外べいにはしごをかけておりて逃げていく者がある、だれか脱走したのではないかという目撃者北警察署に届けまして、警察から通知をいただきまして、その当時刑務所側は認知いたしております。ただいまのは堺北警察署でございます。  あと新聞報道の事実のうちの四十三年、四十四年のソフトボールとかバレーボールに入れて外に投げ出したという事実は、このたびの警察の検挙が報道されましたことによって承知するに至ったわけでございます。
  18. 畑和

    畑委員 そこで重ねて矯正局長に伺いますが、当時四十五年の一月十六日、何人かとにかくへいから外へ逃げ出したという事実を知り得て認知をした、知ったということですね。それで新聞報道等によると、それで点呼をした。ところが、人員異状がなかった。だれも出ていないのだということで、そのまま調査もどうもしなかったように見受けられる。刑務所はいつも中から外へ出るばかり警戒しているものだから、まさか外から中へ入ってくる、どろぼうに入るということは想像しなかったかもしれないけれども、しかし、それは非常な私は手落ちだと思いますね。それでちゃんと警察から逆に聞いたけれども警察も、治外法権みたいだから刑務所のほうから届けて要請してもらえない限り、なかなか立ち入らぬと思うのです。そういう徴憑があった以上はすみやかにこの点警察に要請をして、そうして指紋の調べとかその他をすれば、私はその当時すでにわかったと思うのです。  しかも、これも重ねてあと答弁願いたいのですが、そうしたへいを乗り越えた事実があるのだから、それからさらにまた印刷工場あかり窓がこわされたり、ドリルであけられたりというようなことは今度の検証でわかったそうだが、その前に刑務所側にもわかっていたはずだと思うのですが、その点どうなんですか。へいを乗り越える以外に何か変わったことは刑務所として認められなかったですか。
  19. 高松敬治

    高松政府委員 ちょっと私のほうから当時のことについて申し上げます。  堺北警察署には午前三時ごろに一一〇番で、刑務所西側に、自動車で通りかかったところがはしごがかかっている、何かあったのではないか、こういう通報市民の方からありました。そこで刑務所のほうに対して、これは脱獄ではないかということで刑務所のほうに連絡をしました。刑務所のほうでは人員点呼その他をやったけれども異状はなかった、こういう連絡があったので、そのままに私のほうではやってありました、こういうことでございます。姿を見たというのは、へいを越えて出てくる姿を見たという点は、私のほうへの一般市民通報にはなかったようであります。
  20. 畑和

    畑委員 刑務所のほうの工場あかり窓や何かの点はどうなんですか。そういうことはなかったですか。
  21. 羽山忠弘

    羽山政府委員 お尋ねのとおり、その当時の調査をいま反省いたしてみますと、非常に見落としがあったようでございます。それは、まずその当時、警察から通報をいただきましたのが四時前でございまして、それから夜が明けまして九時ごろまでかなりいろいろなことをやっております。それは、ただいま警察庁局長も言われましたが、刑務所といたしましては、逃げたのではないかということで頭数の点検、これは二千人からおりますので、一回やりますと三十分以上かかるわけでございますが、それを二回やっております。それから、よく逃げましたあとで、偽装就寝と申しまして、ふとんの中に人間が寝ているかっこうをいたしまして、逃げてあとはもぬけのからというようなことがあるわけでございますので、そういう疑いのある囚房は一々かぎをあけましてふとんをまくるというようなことをやりますので、つい時間がかかるわけです。それから明け方になりまして、どうも頭数は合っておるということで、これは問題の区域は四区というところでございますが、その四区の印刷工場付近を詳細に見ております。そのときに、ナイロンロープを折りましてぐるぐる巻きにしまして、腰にでもかけるようにいたしましたロープが一束ちょうどその印刷工場西側に落ちておりました。その付近に茶色の手袋が落ちておりました。その当時の撮影いたしました写真がございますが、それからその付近の外べいに、明らかにへいをずり落ちたというような形跡の足あとらしい痕跡がございました。どうやら外から入ったらしいという想像をいたしたわけでございます。  これらのことは、その当時刑務所保安課長堺北警察署に参りまして、事情を説明いたしまして報告をいたしております。  それから問題はこの工場で、印刷工場でございますが、印刷工場は、特殊印刷物印刷中につき許可なく入場を禁ずというような大きな看板が出ておりましたほか、かぎが厳重にかかっております。それから、その工場の中に仕切りました倉庫用部屋がございます。俗にこれを倉庫室とか乾燥室とか言っておるのでございます。したがいまして、かりに工場かぎが破れましても、中に一つ部屋がございまして、そこにかぎがかかってございます。そのかぎのほかに、四センチか五センチぐらいの幅の、御承知の段ボールなどを荷づくりいたしますときに使いますテープが封をするように張ってございまして、そこから入れば封を破らざるを得ない、こういうふうな状況で、そこも異状がない。たまたまここにガラスがございまして、これはあとでわかったのでございますが、窓のガラスが破れておったのでございます。その点を見落としましたのは、非常に調査といたしましては大きな見落としになるわけでございますが、結局それらを総合いたしまして、試験問題には異状がない、こういう判断をいたしたようでございます。あと承知いたしましたところによりますると、犯人は、工場の外側に渡り廊下があるのでございますが、その渡り廊下の屋根と申しますのがわりあいにひょっとはがれるわけでございます。その渡り廊下の屋根に上がりますと、あとはだんだんに工場の屋根に行くというような構造になっておりまして、四十五工場と四十六工場というのが二むね接着してついております。そのちようどまん中のところが工場の壁面でございますが、そこに横に板を打ちつけた部分がございます。それをドライバーかペンチか何かではずしまして、犯人は上から入りまして、はり伝いに下へ、ちょうどその四十五工場と四十六工場の中間のところに飛びおり、そして問題のその倉庫室というところは四十六工場の一番北側のほうにあるのでございます。そこへ参りまして、ただいま申し上げましたように、どうやらガラスを破って、その内側に金網が張ってあるのでございますが、金網をたんねんにはずしまして向こうへ押して、そして中に入った。中には当時相当枚数の、総計枚数で申しますと、大阪大学その他から請負いました注文は三十万枚以上の紙でございますが、その枚数から、今日われわれがいままでの段階で承知いたしておりますところによりますと、一間ごとに盗んだ。ただし、英語と数学の問題は幸か不幸かそこに置いてございませんで、別の倉庫に仕上がって置いてございましたために、英語と数学の試験問題は被害がなかったのでございますが、その他の社会とか理科とかいうものを一問ごとに盗んだようでございます。そうして外へ出まして、当日は、成人の日の明け方入ったのでございますが、遺憾ながら成人の日で休みでございました。休みでございましても工場の周辺等には見回りが回るのでございますが、あの入学試験問題を印刷しておる工場のところにはあまりむやみに行くなというような説示の薬がきき過ぎまして、その動哨も印刷工場の中をのぞくというようなことはしなかったようでございます。犯人は一日じゅう——昼間はとにかく一日じゅうその工場の中におったわけでございます。  今日の想像でございますが、犯人といたしましても、そこに入ったということを気づかれることは非常にうまくないわけでございまして、入って何か入学試験問題の答案を盗まれたというような疑いが生じますれば、おそらく大学のほうはすぐ問題をつくり直すでございましょうから、そこでそういうことに備えたと思うのでございますが、金網をはずして押したと申し上げましたが、そういうものを非常にうまくもとのように直しまして、そして窓ガラスその他もできるだけもとのように直しまして、またもとの天井から外に出た、こういうことになっておるわけでございます。天井から入ったということにすっかり気がつかなかった、この点が、今日になりまして、当時の調査の非常に大きなミスであったというふうに反省をいたしておるわけでございます。
  22. 畑和

    畑委員 いろいろ長々と弁解のような話を承ったのですが、しかし、そのときにもつと謙虚に、警察にもさらに積極的に連絡をして、それで科学的な捜査をやっておれば、もっと厳密に点検をしておれば、その当時わかったはずだと思うのです。しかもこの二人は前科者で、指紋もちゃんと出ておるのだ。したがって、指紋が出さえすればぴたりとだれがやったということがすぐわかる。それが刑務所のそのときの点検が非常にずさんであった。しかも外部から内部へ入って、内部で盗んで外へ出たなんということは毛頭夢にも考えなかった。それは先ほど言うように、刑務所は外へ出るのばかり出ないように出ないように警戒しておるからそういうことになるのです。外から中へ入ってくるというのは想像しなかったかもしれぬが、そうかといって、ともかくそうした天窓のところの板がはずれたりあるいはまた下のガラス戸がこわれてそこから入っておる。それから金網がそれも巧妙に押し上げるようにして云々と言っているが、もとのように戻してあるといっても、そうはすっかり完全にもとには戻らない。もっとよく点検すれば、私はその辺がわかったろうと思う。しかも試験問題ですから盗まれる可能性があるんで、中からだけじゃないんで、へいのところにロープが落ちてるということにおいては、しかも足あとみたいなあとがずっとあるというようなことは当時確認しているのですから、そうだとすれば、だれかが出たり入ったりしたのですから、もう少ししさいに検討すればよかったと思う。要するに刑務所では自分のところにいる、拘置されておる者に異状がなければいいということだけで終始している。しかもなるべく外に中のことがわからないほうがいいというような秘密主義、この前の金嬉老事件でもわれわれ痛切に感じたのでありますけれども、なるべく中だけでおっつけてしまう、外に知られたくない、こういったような気持ちが刑務行政には充満しておる。このことがはしなくも今度——いろいろ弁解を聞くと無理ないところもないではありませんけれども、そういうことが私はやはり根本的な原因ではなかろうかというふうに思うわけです。要するにそうした秘密主義がこういった結果になったんだろうと思うのでありますけれども、その点十分に反省をしてもらいたい。  そこで、法務大臣、あなたはまだ大臣になられたばかりですが、どうも刑務所においてはいろいろ問題が多いのであります。この間の金嬉老事件なんかもその顕著な例だ。そうでなくてもあちらこちらからいろいろなことも聞いておるんで、またしても今度そうした不祥事が起きた、その点大臣としてどうお考えになっておられますか、承りたい。
  23. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 今回の事件は、まことに残念な申しわけのない事件であったと思います。  まだ十二分に事実をつかんでおりませんので、決定的なことは申し上げかねますが、ただいま畑さんも仰せになりましたように、どうやら刑務所工場管理の上でも不行き届きの点が、あるいは思慮の及ばなかった点がありはしなかったかと思います。また、ただいま指紋云々のお話もあり室したが、これまた先ほど局長説明にありましたように、なわが落ちておった、手袋もそばにあったということもあるのですから、だからあるいは外部から入ってきた者が落とした手袋かと考えれば、なおさら指紋や何かの調べをしなければなりませんし、内部の者でもなぜそんなところにあるのかということで、何があるのか、やはり指紋の問題もこの辺でも気づかなければならなかったのじゃないかというような感じがいたします。  したがって、こうした場合においての手当てとしては、印刷工場の中におけるいろいろな試験の問題を印刷した用紙等が外に出ないようにという注意を一生懸命しておるのはわかるのでありますけれども、しかし、そのためにどこから入ったか、どうも入った形跡がはっきりわからぬ、わからぬ場合に天井まで気がつくのかどうか、その辺がどんな程度の古さの建物で、そこからでもすぐ入れるようになっているのか、あるいはそう簡単には入れないから天井には気がつかなかったのか、その辺は非常に工場管理上の不行き届きといいますか、思慮が足りなかったというような点があるように思うのであります。こうした問題について、そのために犯罪の材料が取り出されて持ち出されてしまって、それが各方面にいろいろな大きな波紋を投げかけたことは、まことに申しわけないことだと私も思うのであります。  なるべく内部のことは外に知らせないようにという傾向があるのかないのか、これは私にはまだわかりませんが、あるいはあり得るのかもしれない。そうしてみると、なおさら単に自分たちの反省なり調査なりにたより過ぎないで、やはり警察当局の鑑識といいますか、あるいは調査というか、こういうことも、やはりそういう場合にはひとつ一緒に立ち会って調べてくれないかというくらいのことはあってもいいのではないかという感じが私はいたします。しかし、これもいろいろ従来のいきさつというものがあるかもしれませんから、反省すべき点は十分この際反省してもらって、そして今後かようなあやまちが再び起きないように厳重に注意をしなければならぬ、かように存ずるのであります。  何か今回の問題に関連して聞きますと、かつて京都にやはり試験問題が持ち出されそうになった事件があり、名古屋の刑務所でもそういう事件があったということを聞きます。幸いにしてそのときには、犯罪の中において囚人と外に出てしまった人との間にいろいろないきさつがあったようですが、これらの仲間割れ等の問題から早く気がついて、そして大きな迷惑を社会に及ぼすようなことがなくて済んだ。京都の場合もどうやらそういうような事案でございますから、今回は私の聞きましたところでは三回目のものである。しかし、その三回目がただ単に一年だけでぽかっと起こったのではなしに、一、二年続いておったらしいということを聞きますと、まことに残念であります。その間の十分な反省、調査をやらないからこういうことになったのではないのかというように、私は非常にいま恐縮に存じておるのでございます。今後事態が明らかになるに従いまして、こうした場合における措置等についても十二分の方法を研究して、そして今後の戒めにいたしたい、かように考えておるような次第でございます。
  24. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連して。いまの場合ですね、先ほど警察のほうからあったが、初めは何年でしたか、初めて起こったのは。
  25. 羽山忠弘

    羽山政府委員 確実なのは四十三年でございます。
  26. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いまのは初めのことでしょう、おそらく。初めだとすれば、それから何年も続いていますね。だからいまのは初めてそういうことがあった、それがずっと続いておるのでしょう。それが何年も続いたとなると、ますますもってどうも不審にたえないのだが、その点、何年もそういうことがあるにもかかわらず、ただなにしておったか、それをひとつまず……。
  27. 羽山忠弘

    羽山政府委員 外から入りましたのは昨年の一月でございます。いままで判明いたしておりますのは、初めは四十三年、四十四年でございますが、それはボールの中に詰めて、運動のときに外にほうり出すというようなことでありまして、侵入いたしましたのは昨年でございます。
  28. 畑和

    畑委員 それでいま大臣の答弁がございましたけれども、先ほど来聞いておるように、わざわざ外の通行人があそこの刑務所の壁にはしごがかかっておるというような通報警察を通じてしてくれた、それでそのへいの中にそういったロープが落ちておったという事実も当時発見し、そうしたへいを乗り越えた形跡は確かにあるということを発見した以上、ただ内部の点呼だけで、全員異状なしということだけでやることで済ますことが私はどうかと思うのです。ほんとうにもうその当時入試印刷をしておるときなんだから、その辺にまで頭が及ばなければならぬはずですね。それを簡単にそうのみ込んじゃって、外形的にだいじょうぶだからということでそれで済ましたということは、私は何としても刑務所側の責任だというふうに思います。ひとつこれからも監督を厳重にしてもらいたい。相当の行政上の処分等もすべきだと私は思うのです。  それから、看守が関係をしておった疑いがあるというふうに一部の新聞で出ておるのもございますが、その辺についてはどうですか。警察のほうはそういう端緒はつかんでおりませんか。
  29. 高松敬治

    高松政府委員 けさの新聞にいろいろ各紙報道をされておりますが、(発言する者あり)私どもいろいろな場合も含めて現在調べておりますが、まだこういうことですというように、具体的にはっきり申し上げるほどまでは調べは進んでおりません。
  30. 畑和

    畑委員 こういうときは往々にして、要するに打ち合わせや何かするときに看守が立ち会うものだから、そういう点で相当看守等についても問題がある可能性が非常に強いと私は思うのです。どうも最近の四十三年、四十四年、四十五年ですか、その三年間だとすれば、姜が外へ出てきてからの話ですし、その前にも在監中に打ち合わしたこともあろうし、あるいは外へ出てから中に面会に行って打ち合わしたとすれば、その辺看守あたりとも相当関連があるのじゃないかというふうに疑うに足る状況もあるわけです。その辺十分にひとつ捜査をしていただきたい。捜査の支障になるかとも思いますから、これ以上究明は避けますけれども、それをお願いしておきたいと思います。いずれにいたしましても刑務所側の手落ちであることは間違いない。この点は十分にひとつ反省をしてもらいたい。  その次に御質問いたしたいのは、こうした不正入学をした者ですね。これはいろいろいま調べておられるようでありますが、警察庁としては一体どういう罪名に触れるということでやっておられるのか。いろいろ人によって窃盗の共犯になる者もありましょうし、あるいはまた、新聞紙上に伝えられるように、偽計業務妨害というような犯罪に当たるとして捜査をされておるようにも聞いておりますが、その辺警察庁の見解を承りたいと思います。
  31. 高松敬治

    高松政府委員 窃盗を行なった者、これはもう問題なく窃盗の罪ということになると思います。あとの仲介者あるいは親、親といいますか父兄、それからその子供というふうな場合になってまいりますと、もう少し具体的にその事情をいろいろ調べてまいらないと、その事実判断の問題はいささか困難ではないかというふうに考えております。私どもではいま検察庁とも、法律的にどのようなことになるかという問題はいろいろ相談しておりますけれども、その反面では、もう少し事実状態を明らかにしたいということで、それらをあわせて総合的に判断してまいりたいので、いま直ちにこれは何だと言う段階にまで現在至っておらないところでございます。
  32. 畑和

    畑委員 もう一つ、ついでに聞いておきたいのですが、この事件によって何人不正入学をしたのか、それを数字をあげていただきたい。それと大学はいまの状態でその二つの大学だけなのか。氏名は必要ありません。
  33. 高松敬治

    高松政府委員 現在わかっておりますのは、不正に受験をいたしましたが二十七名、大体合格したのがそのうち十三名というふうに開いております。
  34. 畑和

    畑委員 それから、さっき高松局長のほうから答弁があったことで、こちらからもやじも飛んでいるが、捜査するについては、何々被疑事件ということで被疑者としての調べをされているのか、あるいはいま言った父兄などは単なる参考人としてやっておられるのか。これは区別があるはずだと思うのですが、それはどうですか。
  35. 高松敬治

    高松政府委員 二人の窃盗で逮捕しました者は別といたしまして、あとは参考人で調べております。それは厳密に申せば多少いろいろのことがあろうと思いますけれども殺人事件自体の犯人の問題にもあるいはからむ場合があるかもしれませんし、いろいろなことで参考人ということで調べております。
  36. 畑和

    畑委員 参考人という形でやっているけれども、将来状況によっては、新聞にも報道されているような偽計業務妨害というようなことで立件をする可能性もある、こういうことですね。
  37. 高松敬治

    高松政府委員 私どもはそういう何罪ということは別にいたしまして、積極的な態度で調べておることは事実でございます。
  38. 畑和

    畑委員 次に、文部省のほうにお聞きいたしたいのですが、こうして不正入学をした学年、在学しておる人たち、それに対してはどういうふうに処置されるようにされておるか。大学当局がおりますから、それがどういうふうな意向であるのか、文部省としてはどう指導しているのか、それを承りたい。
  39. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 学生の入学許可は、これは大学の権限でございます。問題となっております大学一つ大阪大学、もう一つ大阪市立大学のようでございます。両大学とも本件はきわめて重大な事件であるということで、入学者選抜を処理しております委員会あるいは大学の評議会等の機関で検討しております。両大学とも不正入学が明らかになれば、それはたとえば入学取り消しなどを含む厳正な措置をとるという意向を表明しておりまして、文部省もこの見解を支持しております。
  40. 畑和

    畑委員 四十三年、四十四年、四十五年、この三年間ということで限定をすれば、まだ在学中ということが言えると思うのです。それは結局そういう処分によって除籍ということになるだろうと思う。ところで、卒業しちゃった者にはどうなるのですか。卒業の資格は取り消すということになるのですか。その点どうですか。もしその前からの不正入学があるといたしました場合ですが、それを聞きたい。
  41. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 現在までのところ、卒業した者があるのではないかという疑いは必ずしも明らかでないようでございます。しかし、もしありました場合には、その者の措置も含めて大学では検討いたすと思います。
  42. 畑和

    畑委員 もし三十七、八年ごろから不正入学があったとして、その事実が警察当局によって究明された、はっきりしてきたということになった場合、おそらくはもう学校を卒業して例の医師の国家試験を受けていると思う。大体合格率は九十何%で、ほとんど合格するのが普通。私のむすこも医者で国家試験を通っておりますが、九十何%か合格するのが国家試験の例だ。そういうことになった場合に、もし国家試験を通った者に対して、入学の取り消し、在学の取り消しということがそこまで及ぶのかどうか。その見解は文部省ではどうでしょうか。あり得ることを考えて寄り寄り協議中だという話を聞いておるが、どういう見解に達しているか、承りたい。
  43. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 卒業した者がありました場合は、法律関係は在学者ほど単純でない複雑な問題があろうかと思います。どういう方向で処理するかの線はまだ出ておりません。参考までに、これは全然別件でございますが、かつて山梨学院大学というところで、正当ならざる方法で単位を修得して、それに基づきまして、教育職員の免許状が授与された事件がございます。これが正当ならざる方法で単位が与えられておったということが判明いたしましたので、卒業者につきましても教員免許状無効の扱いをするというようなことがなされた事例がございます。そういうこともございますので、おそらく法律関係がむずかしくても、筋の通った処理がなされるように検討が進められると思います。
  44. 畑和

    畑委員 そうなると、筋が通ったということになれば、結局国家試験のほうもやはり無効というか、取り消しというか、そういうことになる方向で検討されておるようなふうに答弁を承ったわけです。そこで、そういう場合、厚生省のほうはどんな意見をお持ちですか。
  45. 新谷鉄郎

    ○新谷説明員 ただいま文部省のほうから御説明ございましたように、一応卒業をした者があるかどうかわからない段階で、文部省のほうでも、その卒業の資格をどうするかということにつきましては、まだ結論をお出しになっていない段階でございますので、私どもといたしましては、その結論を待って処置いたしたいと思いますけれども、御質問のように、もしかりに文部省のほうで卒業資格を取り消されるということになりますれば、やはり庭師国家試験の受験資格の基本的な要件を欠くことになりますので、私どもは医師の免許資格を取り消すべきであると考えております。
  46. 畑和

    畑委員 その辺が、最近、三十八年ごろから不正入学があった模様だというような報道もされ、したがって、それに対する厚生省あるいは文部省の態度が、いまいろいろ焦点になっているように承っておりますが、私も大体そういう方向であるべきだろうと思います。厳正なるべき試験、入試でもあるし、またそれを前提としての医師課程の修習、その上に立っての国家試験の受験資格がそこによってきまるわけだから、その前提がくずれるということになれば、そうならざるを得ないと思うのでありますが、そのかわり、いろいろその処分については行政訴訟等に持ち込まれる可能性も相当あると思いますけれども、そういった方向が私はしかるべきじゃないかというふうに思われます。しかし、これはまだ捜査の過程で判然といたしませんから、これ以上追及することはやめます。  そこで、ちょっと文部省に聞きたいのです。この間の、さっきも言いましたけれども教育委員長が関係されておりますね。この事件に大きな役割りを占めておられる。箕面市の教育委員長、これはもう非常なショックだった、だれにとっても。この点は文部省当局としてはどうお考えでしょうか、承りたい。
  47. 井内慶次郎

    ○井内説明員 お答えします。  教育行政に従事いたします者が、常に自己の使命を自覚して、姿勢を正しまして、社会の信頼をそこなうことのないようにつとめなければならないことは当然でございます。このたび発生しました不正入試事件に関係いたしまして、市町村における教育行政の最高責任者ともいうべき現職の教育委員長が関係しておったということは、まことに遺憾でございます。教育委員は非常勤で、特別職の公務員でございまして、一般職の者のように直接地方公務員法の服務等の適用はございませんが、地方教育行政法によりまして、「人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもの」の中から任命するというふうに法律で明記いたしておるところでございます。教育行政の重要な地位にある者がこのような事件に関係したとされておりますことは、社会の信頼を裏切るものというほかないと存じます。文部省といたしましても、今後とも教育関係者の服務の厳正につきまして、いろいろな面におきまして指導を徹底してまいらなければならない、かように存じておる次第でございます。
  48. 畑和

    畑委員 教育委員や何かの任命というものが、普通の世間的な地位とかなんとか、やはりそういうことを中心としてどうしても選ばれる可能性があるんじゃないか。そういう点で今度の問題は、私は、国民にもいろいろ教育の姿勢というものに対する疑問を非常に抱かしたと思うのです。そういう点で、もっともっと教育の姿勢を正すということのためには、やはり教育委員の任命というものについて、私は、もっともっと厳正にやってもらいたいと思います。この点は総理も、あるいは文部大臣等も、非常に遺憾の意を表明しておるようですが、大体そういうことに国民は非常に怒りを持っておると思うのです。この点を十分に今後とも注意をしていただきたいと思う。  そこで、次に伺いたいのは、大体、医学生一人一年間にどのくらい金が、国なら国、あるいは私大なら私大でかかるものでしょうか。きょうのNHKテレビの一〇二を聞いておりましたら、やはり相当金がかかるらしいけれども、官立の場合には、やはり負担としては入学金が四千円でしたかな、それで一年間の月謝というか、年間のあれが一万二、三千円というふうに聞いておりますが、非常にその点は安い。安いからみんな優秀な人は助かるわけですけれども、しかし、きわめて門が狭いということで、こうした不正入学というようなことも出てくるわけだと思う。そこで、一体どのくらいかかるものか。そういったって、施設や何かは、いろいろ計算してみなければわからないけれども、相当な金がかかる。国のほうでも、相当金がかかるものだからなかなか出さないということで、一年間に四千三百名くらいしか毎年卒業をしていないというような話を聞いている。また、医者が不足だというような声が多い。特に僻地においてはしかりでございます。そういう点に対する厚生省の考え方を聞きたい。
  49. 新谷鉄郎

    ○新谷説明員 御指摘ございましたように、わが国の医師の不足の問題は、その総数の絶対的な不足の問題と、その配置の偏在と申しますか、大都市に片寄っておるという、両方の問題があると思いますが、その総数の問題につきましては、いま医師の総数が十一万六千名ということでございまして、人口十万人当たりに百十三人という数字が出ておるわけでございます。これを諸外国の数字と比較いたしてみますと、ソ連の場合には十万当たり二百十五人、それからアメリカが百五十人、それからイタリアが百七十三人というような数字が出ておりますので、こういうところに比べれば、やはり総数として不足をいたしておるというふうに考えております。
  50. 畑和

    畑委員 それほど不足をしておる関係であるものだから、したがって今度の事件ども、そういう点でも大きな社会問題でもあると思うのですね。その点は国で大いに考えてもらって、もっともっと、とにかく医療行政のほうに金を出してもらう必要がある。幾ら声を大にしても、なかなかやらぬ。ジェット機は買うけれども、こういう点では非常に国のほうがうしろ向きになっておる。これがこういう結果を招いた。そういう意味で私は大きな社会問題だと思います。教育の問題でもあり社会問題でもある。その点も厚生省あるいは国全体をあげて、総理自身が考え直してもらわぬことには、こういう問題は絶えない。医者が不足なんです。狭い門なんです。それというのは医学部が非常に少ない。したがって、こういうことにもなる。そればかりを責められないと私は思うのです。その意味で大きな社会問題であり、医療行政の問題だ、こう思うのです。同時にまた、文部省のやることですから、文部省の教育に関する大きな問題で、しかも教育委員長が関係していたなんという話になってはなおのこと、たまたま一番信頼される刑務所で行なわれた印刷がこういうことになるということになると、これまた法務省としての大きな責任の問題でもある。こういう点でこの問題はいろいろな方面に波紋を描いておる事件だと思うのです。各当局で十分この点は戒心して気をつけてやってもらいたい、かように思います。  いまちょっと情報が入ったのですが、大阪の拘置所の看守部長が何かこの事件に関係があった、一枚かんでおるというような情報があるのですが、この点はどうでしょうか。警察のほうではそれに近い情報はありませんか。
  51. 高松敬治

    高松政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもとしてはたとえば試験用紙が外へ持ち出されたということについていろいろな場合を考えて捜査をしております。けさほどの新聞にいろいろ報道をされましたことにつきましても、そういう可能性があるかどうかという点でいろいろ現在捜査を進めておるところでございます。中身についてはいまこの席で申し述べるのはお許しをいただきたい、そういうふうに思います。
  52. 畑和

    畑委員 以上で私の質問は終わります。
  53. 高橋英吉

    高橋委員長 林孝矩君。
  54. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私もこの大阪刑務所の不正事件に関して二、三質問いたします。  最初に、法務大臣の先ほどの答弁を聞いておりますと、法務行政を担当しておる立場から私は非常に矛盾を感じる点があるわけです。それはどういうことかといいますと、刑務所の中に起こっている過去のいろいろな問題、たとえば松山刑務所で起こった暴力事件だとかあるいは大阪拘置所の切手事件、奈良少年刑務所の所内における看守の収容者に対するリンチ事件、それから今回のこうした事件、それがまた京都、名古屋等で——これは仲間割れからわかった。今回は仲間割れでなくて、こうした状況で大きく社会問題になっているわけですけれども、こういう仲間割れを待たなければ防げないというような印象を与えたんでは、これは刑務所の中で今後こうした問題が起こらないとも限らない。保証はないわけですから、仲間割れがあったら防げる、なければ防げないというような印象を国民に与えたり、あるいは今後受験する、大学を目ざして一生懸命努力している人たちに対して、それでは非常に悪影響を与えるのではないか、そういうふうに私は感じたわけですが、その点大臣はいかがでしょうか。
  55. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまのお尋ねは、もしいま林委員のようにとれるような私の答弁でございましたら、その点は私の本旨とはだいぶ違いますので、その点は御了承を願いたいと思うのです。  過去に名古屋と京都にあったことがあります。しかし、それは幸いにして大事に至らなくて済みました、と言ったことは、それはいずれも発覚の動機はなるほど仲間割れその他の方面からの事案で試験問題が外部に漏れることがなかったのですけれども、しかし、事はまたそれほどやはり刑務所当局が作業上においても、管理の上においても相当気を配ってやっておりますから、だから大事にも至らなかった。それは発覚の動機はあるいは密告その他によったのかもしれませんが、幸いにして事件がいままでにたくさん世上になかった、うわさされたり問題を起こしたようなことはなかったということは、やはり刑務所当局もよほど心して、そうして施設の管理についても、あるいは囚人に対する取り締まりについても十分気を張っている、その気を張っていたことが大体両々相まって功を奏して事件に至らなかったのだ、こういうふうに私は説明申し上げたいつもりでおったのであります。
  56. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこでこうした問題が起こりますと、国民感情としては、自分のむすこがいま勉強している、今度目ざす大学についてもこういうことが起こっていくのじゃないかとか、いろいろそういう不安が起こっていく、これは非常に社会的にもマイナスだと思うわけです。現在刑務所で試験問題を印刷している、そういう実態を明らかにしてもらいたいと思います。
  57. 羽山忠弘

    羽山政府委員 こういう事態が起きましたことにつきましては、深くおわびを申し上げます。  捜査いたしましたところでは、昨年度でお許しいただきたいのでございますが、刑務所印刷を刑務作業といたしておりまするものの数は五十八庁でございます。全国に刑務所、少年刑務所という施設は合計六十六庁あったわけでありますが、ことしもあるわけでございますが、そのうらの五十八庁が印刷をやっております。そうして入学試験問題、国家公務員採用試験問題その他の試験問題というものを印刷いたしました刑務所の数は四十三庁でございます。その注文されました相手方といたしましては、大学、高等学校、それから私どものほうといたしましては法務省の司法試験管理委員会、それから通産省その他の所管が合計いたしますると五百四十五でございます。
  58. 林孝矩

    ○林(孝)委員 刑務所に依頼している大学等の名前はわかりますか。
  59. 羽山忠弘

    羽山政府委員 目下電信照会いたしまして調査中でございますが、まだその結果がまとまっておらないのでございます。
  60. 林孝矩

    ○林(孝)委員 文部省ではまとまっておりませんでしょうか。
  61. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 文部省では国立大学は十六校が刑務所に頼んでおるようであります。
  62. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の資料によりますと、これは文部省の大学学術局からいただいた資料ですけれども国立大学は十六校ではなしに十七大学ございます。それから公立大学が十六大学、それが全国にわたる刑務所印刷されておるわけです。これ以外に私立の大学もあるのではないかと思うのですが、その点は文部省いかがでしょうか。
  63. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 たいへん失礼いたしました。国立は十七カ所、御指摘のとおりであります。それから私学につきましては詳細承知しておりません。
  64. 林孝矩

    ○林(孝)委員 法務大臣にお伺いしますが、いま国立が十七大学、公立が十六大学、先ほど矯正局長のお話によりますと、大学以外に高校等の入試、それから公務員の試験等、刑務所の中において印刷されている試験の問題というのは非常に多いわけです。こうした問題が再び起こらないようにするために、こうした関係している刑務所が全部出ておりますが、それに対する今後の対策として具体的にどういうことをいま考えられておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  65. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ちょうどおりしも試験の時期に差し迫っておりますから、今回の大阪事件の実態が十二分にはまだ明らかになっておりませんけれども、とりあえず十二分に注意をしなければいかぬというので、局長名でもってそれぞれの出先の刑務所に警告を発して、十分気をつけるようにということは申しつけております。今後の問題といたしましては、やはり今度の実態も参考にしまして、そして管理の完全を期してまいりたい、かように思います。
  66. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もう一つは、この試験制度そのものの問題でありますけれども、先ほど同僚委員から質問がありましたように、医学部の試験というのは独特の試験の態様を示しておるわけです。こうした試験制度を今後こうした印刷所を利用して行なっていくかどうかという点でありますが、その点はどうでしょうか。文部省にお伺いします。
  67. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 大学は能力に応じて進学させるべきものであります。また、大学の学生につきましては定員というものがございます。定員を上回る志願者があれば何らかの方法で選抜をしなければならない筋合いになります。どういう方法でやるかということにつきましては、いろいろの議論はございますが、まあ現時点では何か単一な方法で弊害を伴わずそれだけでよろしいという方法はむしろあり得ない。入学者選抜の方法といたしましては、従来から行なわれております学力検査、それから高等学校から出します調査書、俗に内申書と申しております、それらを主にいたしまして、さらに面接でありますとか、あるいは高等学校の推薦でありますとか、そういう選抜資料を徴し、多角的に能力を調べるのがまあよろしいのではないかというのが大体多数の意見であります。学力検査につきましても、多くの人数をこなす関係で、従来どちらかといえばいわゆるマル・バツ式の問題が多かったわけでありますが、これをできるだけ考え方をためす、たとえば論述式などと申しておりますけれども、そういう方法を加味したらいいではないかといういろいろな議論がございまして、漸次その方向で改善しつつございます。しかし、やはり事柄の性質上、学力検査がゼロになるということはまあ望めないと思います。とすれば、問題の中身は改善を加えるとしても、やはり問題用紙を印刷するという事態はなくならない。そこでできるだけ信頼できるところで秘密を保ちながら印刷する方法についてさらにくふう、努力を重ねるということ以外に問題の是正の方法はなかろうかと存じております。
  68. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、現在の試験制度というものは、いまの御答弁を総合しますと、変わらない、ただこういうことが起こらないように印刷の面でくふう是正する以外にない、そういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  69. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 現在の入学試験のやり方は、改善の余地は多々あろうかと思いますが、抜本的にまるで違ったやり方、つまり学力検査を省略するという方向にはいかないだろう。とすれば、その問題印刷の秘密保持に全力を尽くすほかはない、こう申し上げた次第でございます。
  70. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、先ほど文部省と厚生省の見解について少し質問があったわけですけれども、確認しておきますが、これは先ほどの質問と同じようにあくまでも三十七年当時からそういうことが行なわれておったという前提です。その場合に、すでに国家試験を通って医師の資格を持っている、そういう人の資格は取り消されるという文部省、厚生省両省の解釈と決定事項ということでありますか。
  71. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 文部省としましては、大学卒業の時点までについて管轄しておるわけでありまして、しかも大学に入学させる、あるいはそのだれを入学させるかとか、あるいは卒業の認定をするということにつきましては、現行法では大学が措置すべき事柄でございます。大学としては不正入学が判明いたした場合には入学取り消しを含む措置をするという方針を立てております。それを文部省も支持いたしております。  それから、万一卒業者が出た場合、これは実はそういうことはないという現時点までの情勢でございましたので、まだ突き詰めて検討はしておりません。したがいまして、文部省が決定したというわけではございませんが、まあ似たような他の前例などから徴しても、また大学の考え方の方向からいきましても、そのまま卒業を認めるというようなことではなくて、もっと筋の通った処置のしかたをするであろうと思いますし、文部省もそういう方向を支持いたしたい、かように考えております。
  72. 林孝矩

    ○林(孝)委員 厚生省はどうですか。
  73. 高橋英吉

    高橋委員長 厚生省帰ったので、じゃあ林君、金曜日にひとつ……。
  74. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの問題は厚生省の見解と文部省の見解が分かれているところなんです。非常に重大な点でありますので、質問を留保さしていただきます。  それから、事実関係の問題ですけれども、先ほども少し話がありましたが、刑務所の看守が関係しておったかどうかという点であります。(「現地で発表しておるよ」と呼ぶ者あり)関係しておったという可能性をいま捜査当局では持っておるかどうかという点、いかがですか。
  75. 高松敬治

    高松政府委員 現在いろいろな部面を含めまして捜査を一応やっているという状態でございます。
  76. 林孝矩

    ○林(孝)委員 捜査をやっているのはわかっておりますけれども、その捜査の過程で、きょうの新聞等で発表されておりますし、いま現地で発表しておるという話でありますが、看守が関係しておったということなんです。そういう疑いを持って捜査をしておったかどうかという点はいかがですか。
  77. 高松敬治

    高松政府委員 私ここへ来るまでに現地でそういう発表をしたということは全然報告を受けておりません。したがいまして、発表したかどうかわかりませんが、私どもとしてはいろいろな点から申しまして捜査は一応はやっているという状態でございます。
  78. 林孝矩

    ○林(孝)委員 捜査はやっているということは、看守が関係しているという疑いを持って看守を取り調べているということですか。
  79. 高松敬治

    高松政府委員 私ここへ参ります時点までには、看守を取り調べたということはないと思います。ただ矯正局の系統でいろいろ事情はお聞きになっておるはずでございます。
  80. 林孝矩

    ○林(孝)委員 矯正局ではその点いかがですか。
  81. 羽山忠弘

    羽山政府委員 大阪の矯正管区に命じまして、関係者に徹底的な調査をさせております。若干はっきりしないような点がございますので、十分に調査をするように指示いたしております。
  82. 林孝矩

    ○林(孝)委員 若干はっきりしない点が重大なんですけれども、それが看守が関係しておるという点がはっきりしないという意味なのかどうかという点についてはどうですか。
  83. 羽山忠弘

    羽山政府委員 新聞に出ましたことで申し上げますと、産経新聞に出ましたFという男、これはどうやら関係がないようでございます。私どものほうでは別途に——関係と申しましてもいろいろな関係のしかたがあるわけでございまして、じかに盗みの共犯のような関係から始まりまして、そうでないいろいろな関係のしかたがあろうかと思います。それから一番いやらしいのは、この連中から一ぱいごちそうになるということまで、情を知ってか知らぬかは別といたしまして、そういうことも含めまして関係というふうに考えておるわけでございます。そういう点を徹底的な調査をするようにということを、大阪のほうへ申しておるわけでございます。
  84. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そういう事態を、事実関係だとかあるいはそういう情報というものを知っておったか知らなかったかということは、関係しているという意味では非常に重大な問題だと思うのです。矯正局としては、そういう疑いがあるということでもちろん捜査されておると思うわけですけれども、具体的な問題として、すでにけさの新聞でも、名前は出ておりませんけれども、関係しているという報道がなされておるわけなんです。そういう事実を完全に否定するだけのものを矯正局ではお持ちになっているのかどうか。それともそういう事実がやはりありそうだ、非常に疑いがあるという現段階での判断なのか、その点はいかがですか。
  85. 羽山忠弘

    羽山政府委員 けさも実は、読賣新聞でございましたか、けさの新聞には非常にびっくりいたしたのでございます。大阪のほうに照会いたしましたところ、大阪のほうでもまああの新聞記事は非常に意外であるということで、たまたまその新聞記者の方がおいでになっておる、これから新聞記者の方にどういう事情であろうかということを、お差しつかえなければ伺うということで、私はこちらのほうへ参ったわけでございまして、そのあとはどうなったか、よくこれから帰って報告を聞こうと思っております。
  86. 林孝矩

    ○林(孝)委員 矯正局の局長として、いろいろそうした面の行政指導に当たられるわけなんです。そこでそうした大阪刑務所内に、関係している看守がいるかどうかということは、一番局長の関心事であると私は思います。そういう観点で、きょうここに出席される時点までもいろいろ指示をされてきたと思うわけなんです。その感覚の中に、その指導の自分の意思の中に、いろいろな状況を判断した結果、そうした看守が関係しているという疑いが非常に強い、そういう印象で処置するのと、もしそういうものがあっても、なるべくそういうものを外部に漏らさないようにという、秘密主義という先ほど指摘がありましたけれども、そういう感覚でやるのと、結局国民に対する印象というものは全部逆になってしまうのですよね。ほんとうにこういう問題を徹底的にやるという答弁をされるならば、そうした感覚というものをはっきりここで御答弁されたほうが、ああそういうことをやっているのだから、早期に解決するだろうという期待が生まれてくるし、何かあいまいなままで済まして送っていくというふうにすると、ますます疑惑が疑惑を生んで、雪だるま式に大きな問題になっていく、それが今日までの矯正局の矯正行政の中にあったという点を先ほどから指摘されておると私は思うわけなんです。いかがですか。
  87. 羽山忠弘

    羽山政府委員 隠すとか隠蔽するとか、くさいものにふたをするというか、そういうことはもう絶対にいたさないつもりでありまして、現地に対しましても、万一不幸にして何かその端緒をつかんだならばすぐに捜査当局のほうに連絡しろ、変に内部で取り調べをしてはいかぬということを申しております。
  88. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私のお伺いしたのは、その点もありますけれども、矯正局の現在関知しているそういう事実関係、つまり看守が関係しておったかどうかという疑いの点についてですが、その点はいかがですか。
  89. 羽山忠弘

    羽山政府委員 私ども承知いたしております事実関係は、現地で警察当局からお伺いいたしましたところを報告したものと、それから大阪の検事正が法務大臣あてに報告したものがすでに二回参っております。それの内容等を総合いたしまして判断をいたしておるわけでございまして、いままでのところでは、これは確かに看守が関係しておる、特に試験問題を盗むということに関係しておるというような疑いを持つまでにはまだ至っていないのでございます。
  90. 林孝矩

    ○林(孝)委員 くどいようでありますけれども、その盗むというところに関係したかという、まあ関係のしかたはいろいろありますけれども、先ほど矯正局長がおっしゃったように、そういう情報を知っておったとか、事実関係について疑いを持っておったけれども、それを言わなかったとか、そうしたいろいろなものを含めて疑いというものが出てくると思うのですが……。
  91. 羽山忠弘

    羽山政府委員 ただいまことばが非常に不正確でございましたが、そういうもの一切含めまして、たとえばでございますが、どこかでこのたびの窃盗犯人等にごちそうになったとか、そういうことがあれば、これはすべて検察庁なり警察のほうに通報するようにということで、いま鋭意調査をさせておるのでございます。
  92. 林孝矩

    ○林(孝)委員 わかりました。それでは、看守が関係してなかったという否定的な根拠も、現在のところははっきりしない、そういうことですね。
  93. 羽山忠弘

    羽山政府委員 さようでございます。
  94. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほどの警察庁捜査のほうですけれども、いろいろなケースが考えられると思うのです。たとえば看守が関係しておったということがはっきりしてきた、そうした場合に、事実関係が明らかになるに従って、犯罪というものはこういう犯罪だという構成要件がはっきりしてくると思うのです。いまの時点ではっきりしていることは、結局密売グループによるところの事実関係だと思うのです。先ほど来、現在の時点においてどういう犯罪になるかということがはっきりしないという話だったけれども、ほんとうにはっきりしないで現在捜査しているのか、こういう疑いがあるということをはっきりと認めて事実関係を洗っているのか、その点はどうですか。
  95. 高松敬治

    高松政府委員 先ほども申し上げましたように、その事実判断というと、適用法条の問題につきましてはいろいろ問題がある。その点の検討をいま検察庁と打ち合わせながら進めておる。したがって、どの法条によって立件送致するというところまで、まだ煮詰めてはいないわけでございます。その点にまだ若干時間がかかりましょう。たとえば試験問題を売り込む、買う、それからそれらの中に入っている仲介者のような者もございますし、いろいろな態様がございます。それらの態様もあわせ考えないと、その問題は解決できない。そこで、この席でただいま、たとえば業務妨害罪でやるというふうなところまで、私申し上げるまでに至っておりません。そのような意味を申し上げたわけであります。  それから、看守の問題につきましていろいろ問題がございますけれども、これは私、多少歯切れの悪いことを申し上げておりますけれども、何と申しましてもたとえば主犯であると考えられる姜は死んでおる。ただいろいろなうわさだけでものごとを処理するわけにはまいらない。だから、これにはなお若干の時日を要するわけです。事実を調べていきまして、それでそういう容疑があるのかないのかということを明確にしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  96. 林孝矩

    ○林(孝)委員 法務大臣にお伺いしますが、こうした部類の事件、この事件は時間がたつに従っていろいろな方面に発展していく。ですから早急な対策といいますか、早急な処置といいますか、そういうものが行政面でできる限りにおいてなされなければならないと思うわけです。先ほど大臣の答弁をその点についても伺ったわけですけれども、さらにもう一歩進めて、たとえば現在の矯正局長から出された通達以外に、こうした刑務所印刷施設があって、そして印刷が行なわれているという、そういう全国の刑務所に対して、いろいろな項目を立ててこの点についてきちっと点検するとか、あるいはこういう問題は二度と起こらないようにこういう点を全部やるとか、全部の刑務所に対するそうした調査といいますか、点検といいますか、そういうものをやるというような考え方はございませんか。
  97. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答えいたします。  それはただいま御質問になりましたように、単に抽象的に警告を発するとかあるいは注意をしろということを促したというだけではなくて、やはり管理規程がございまして、その管理規程は多年の経験によってできている規程でございますから、まずそれについてそれぞれの点検その他再調査と申しますか、念のために調べ直しておけというようなことを、こまかく規程がございますから、そのとおりになっておるかどうか、これを直ちに実行せよということを通達しておるわけでございます。  なお、ちょっともう一言つけ加えますが、先ほどたいへん看守その他についての御疑問も新聞等にも若干何らか書いてあるようですから、御心配になるのはありがたいのですが、私は間違いがあったときにはいかに部下であってもやむを得ない。それはほんとうに事実をありのままに調べていかなければいかぬ。それを単なる疑いでやったんだろう、やったんだろうというような過酷な調べをするとか、あるいは日を急ぐあまり一方的に断定をして、そうして間違いを起こすというようなことは、これまた人権に関する大問題でもありますから、やはりそこは専門で監督をしておられる、あるいは警察当局のように専門的にこうしたことについての調査に堪能なる方々の御調査にまって、その上でわれわれはしかるべき処置をとりたい、かように考えておる次第でございますから、この点もひとつ御了承を賜わりたいと思います。
  98. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それぞれが専門の分野でやっていく中からこうした問題が起こってきておりますもので、私もそうした質問をしたわけです。その点大臣も了承していただきたいと思うわけです。この問題は時間的には今後もまだ継続というか、調査が進むに従っていろいろな問題が出てきますので、きょうの質問はこれで終わって、あと保留さしていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、法務大臣とされましても早急に、こうした事件は非常に影響が大きいものですから、二度と起こらないようにどうすればいいかという点で具体的な対策をきちっと発表されて、実行されるように要望しておきます。
  99. 高橋英吉

    高橋委員長 沖本泰幸君。
  100. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は、関連的になると思いますが、まず矯正局長にお伺いしたいのです。  先ほど収監している数が二千人、こういう御発表をなさいましたけれども、この二千人に対する看守の数というものは十分なんでしょうか、足りないんでしょうか。もう一点は、その二千人そのものが大阪刑務所の中で収監する数にマッチしているのかどうか、多過ぎるのではないか。それからへいの高さですけれども、どこも同じようなへいの高さなんですか、そういう問題はどうなんですか。
  101. 羽山忠弘

    羽山政府委員 大阪刑務所は御存じでないと思いますが、非常に大きな刑務所でございまして、約二千人の、しかも無期懲役その他の長期の受刑者を収容いたしております。それに対しまして職員の総数は約四百八十人でございます。この大阪刑務所は四区に分けておりまして、その一つ一つが小さな刑務所のようになっております。区長が四人おりまして、それが小さな刑務所の所長のようになっております。と同時に、講堂でも炊事場でもすべて四つずつあるという非常に特殊な刑務所でございます。人間がはたして多いか少ないかということにつきましては、いろいろ反省すべき点はあろうかと思いますが、私どもといたしましては、こういう事故を起こしました現在において、人間が少ないとか多いとかいうことははなはだいかがかと思いますので、この点はひとつ遠慮させていただきたいと思うのでございます。ただ収容者の数と職員の数とにらみ合わせまして、しからば、たとえば試験の印刷の注文を少しとり過ぎたのじゃないか、手が回らない、よく点検ができないほど注文をとったのではないか、それらの点につきましては今後十分に検討してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  102. 沖本泰幸

    ○沖本委員 数の点は遠慮したいというお話なんですが、要は最初の発端は一一〇番で、へいを乗り越えた脱走者があるのじゃないかというところからなんです。ですから、へいの高さとか、あるいは刑務所自体に抜けられるような盲点があるのかないのか、そういう点がやはり一番問題だと思うのです。どこの刑務所でもそういう盲点があるところは、監視を厳重にするとかなんとかいうことでなければならないわけです。現在の大阪刑務所は堺の町のどまん中です。私よく知っておりますけれども、そういう点から脱走したのじゃないか。はしごがあったという点も、午前三時ごろ車が通っているということなんですね。ですから町の中に刑務所がすぽっとあるわけです。ことばを足して言えば、交通を遮断して、刑務所の存在で堺の人は非常に困っているわけです。おまけに看守の舎宅が刑務所にひっついてあります。そこも車を通さないように遮断してしまっています。そういう点で一般市民はぐるぐる遠く回って通らなければならないような不便をかこっているわけです。そういう点は、もう少し足せば、移転してほしいということが地元の要望です。それはそれとして、そういうところにもやはり犯罪を起こすような内容がある。無期とか長期というような人をそこに置いているということ自体にも問題がある。そういう点の内部構造とかいうものをこの際検討しなければならないわけです。ですから、へいのところに一つの盲点があったのかなかったのか、あるいは見てみなかったかどうかということなんです。数があるとかないということではなくて、そこに問題があると思うのです。その点いかがですか。
  103. 羽山忠弘

    羽山政府委員 お答えを落としまして恐縮でございますが、刑務所のへいは約五メートルございまして、これは大体全国の規格が一律になっておるわけでございます。すでに先ほど大臣も申されましたが、前にも入学試験問題を盗もうとして入った例があるわけでございます。それから昭和四十二年以来外べいを乗り越えて中に入りました例を調べてみたのでございます。このたびのこの事件を含めまして正確に申し上げますと十二件ございます。入学試験問題を盗もうというようなことで入りましたのがこのたびの案件を含めまして三件でございますが、このほかにたばこその他の物品を不正に受刑者に交付するためにへいを乗り越えて入ってそういう物品を隠して逆げたというような場合、それから逃走を援助するために入ったという場合、あるいはこれはまことに常識では考えられないことでございますが、酔っぱらっておもしろ半分に入ったというような場合、いろいろあるわけでございます。  それで、へいが五メートルで一応だれも越えにくいということでも、施設側といたしましては油断は禁物でございまして、越える人はどうすれば越えられるかということを朝から晩まで考えているかもしれないわけでございまして、施設側といたしましてはあのへいも必ず越えられるのだということを前提にいたしまして、警備その他の問題を考えていかなければいけないということを、いまさらながらでございますが痛切に感じておるわけでございます。今年度の予算におきましても、視察テレビというものをだいぶいただいたのでございますが、たとえば昼間は見張りがございまして見張りが立っておりますが、夜は見張りがございません。見張りを置きましても暗くなりますので実益がなくなってしまうのでございます。その辺をテレビと照明というようなものをもっと改善いたしまして、警備上の改善を期する方法はないものだろうかというようなことでいろいろ検討をしておる段階でございます。
  104. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま刑務所はほとんど町中に、中心になりつつあるわけです。ですから、刑務所を移転してくれという話は非常に多いわけなんです。それは十分御承知のはずなんです。そういうところに問題があるわけなんで、町中にあるからへいを高くするとか、そういう犯罪、逃亡しようとかなんとかいう気持ちを防ぐために何か方法があったはずなんですね。そういうところはやはり手落ちじゃないかと私は考えるわけです。  たまたまたばことか物品とかという話が出ましたので私申し上げますけれども、四十二年に府中の刑務所を単独で見に行ったことがあります。そのときの話の中に、外から中へ通信したり何かするやり方としてボールを使うという手を私そのとき聞いているのです。これは府中ですが、いま問題が起きたのは大阪です。ですから、同じように外と中との何らかの連絡、何か送り渡すとかいう方法としてボールを投げ込むというのは常習手段としてやっているわけです。ですから、あなた方のほうでその問題を真剣にお考えになっていたらそういうことは全部キャッチできていたはずなんです。その辺に私はあなたのほうに重大な責任があるのじゃないかというふうに考えるわけです。すでに四十二年に私はそういうことを知っているわけなんですから、その点は私は確かに刑務所側の手落ちだと思うのです。ですから、手落ちということは、そういうことが常時行なわれていることを黙って見ているのじゃないか、あるいは何らかの方法で、金嬉老のときにもありましたけれども、つかまされるなりなんなりして看守自体が見て見ぬふりをする、あるいはたばこくらいだから大目に見てやるとか、そういうふうないわゆる人数の少ない、あるいは一定個所に看守が固定されてしまう、長期に勤務しなければならないところに大きな問題が出てきて、そこに問題を起こしてくる基因がある、私はそういうふうにこの問題を考えるのですが、矯正局長のほうでそういうふうに野球のボール等を投げ込んだようなことが過去にいろいろとあったというときに、いまも御説明ありましたけれども刑務所側はそれを検討なさらなかったのですか、どうなんですか。そういうことを防止するために何らかの措置、あるいは各刑務所にそういう事実があるとかないとかいうことを検討されていれば、こういうことは防がれておる、こう思うのです。へいを乗り越えたのはあとの段階ですね、その前はそういうものによって連絡しておったということなんですから、ですから、先ほどから質問がありますように、すでに数年前からこういうことはあったのじゃないかということに対しては、十分私が申し上げたことで説明がつくことなんです。その点いかがですか。
  105. 羽山忠弘

    羽山政府委員 まことに御指摘のとおりでございまして、確かに管理上非常に大きなすきがあったことは否定できないと思います。この点まことに申しわけないと思うのでございます。一口に申しますならば、今回の事件に関連して申し上げますならば、やはり根本的にはこういう重大な印刷に従事させる受刑者を非常に信用し過ぎた。そうしてそれらにほご等の紙の整理などを行なわせまして、どういうふうに整理するかというふうなことをしっかり見届けるというようなこともしなかった。そこでボールの中に入れられて外に投げられたというようなことは、これはもう施設といたしましてまことに申しわけなく、今後十分に反省してまいらなければいかぬと思うわけでございます。
  106. 沖本泰幸

    ○沖本委員 繰り返して恐縮ですけれども、ボールを投げ入れるということは一回、二回ではないわけですね。さっきあなたおっしゃられておったとおり、過去何回かにわたってたばこや物品を届けている、あるいは入れている。これは通信文を入れるかもわかりません、いつ幾日に出ていくとか、こういうことが新聞紙上にはっきり出ておるわけです。ただそういうことだけで、目立たないところで行なわれたということではなくて、運動時間に出ているとか何かのときを利用してこういうことをやっているわけですから、ちょっと注意しておればこういうことは防げたわけなんです。しかし、絶えず常套手段としてそういうことが刑務所の中で行なわれておる。私が府中刑務所に行って聞いたところ、府中刑務所は暴力団関係の人たちを主体として収監している、こういうことなんで、その人たちの常套手段としてそういうことが行なわれている、こういうことなんですね。であれば、刑務所のほうでそういうことは常套手段として行なわれているということはすでにわかっていなければいけないのです。また看守について、いろいろな点については厳重にいま調べているということなんですけれども、そういう問題を考えていけば、確かに何らかの連絡があり、大目に見ているということははっきり想像できるわけです。そういう点について、矯正局長の御答弁では私はどうも不審に思えてしようがないわけです。そういう点、厳重にお調べいただきたい、こういうふうに考えるわけです。  また、そういうことが行なわれるということは、看守自体の給与とかあるいは現在置かれておる生活環境とか勤務の内容、そういうものの中にやっぱり金嬉老に続いて問題が起きてくるというような内容を十分はらんでいると私は考えざるを得ないわけです。ですから、当時から看守の勤務内容について十分検討がされていない、こう私は考えたいわけですけれども、大臣、その点いかがでございますか。
  107. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 御指摘の点、まことにごもっともと思える節がたくさんあるのでございまして、私もかねてこの前の金嬉老のあの問題のときも、わが党の法務部会の研究の座において、やはり給与の問題も非常に大事なんだ、だからこれはぜひある程度の改善は、漸を追うてでもやむを得ないが、できるだけ早くやってやろうじゃないかというようなことも主張したようなことがございます。今日こういう事件が起こりまして、いま大阪刑務所の定員が、あそこは収容している数が多いですから、したがって、いわゆる看守の数も相当余裕を置いてあるのかどうか、その配置の実情は知りませんけれども、しかし、全国的に見まして、看守の定員が足りないということはわれわれつとに感じておるところでございまして、機会があるたびごとに定員の増加を財政当局に求めておるような次第でございます。こういうこともやはり大事な問題ですから気をつけなければならぬと思って、各担当の職員諸君もそのつもりでやはり努力をいたしておるわけでございます。
  108. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ついでに御質問しますけれども、いわゆる天窓を抜いて入ったとか渡り廊下を伝わって入ったとか、いろんな問題点がいまどんどん出てきているわけです。そういう点について、問題を今後抜き取られないような完全な管理体制というものを早急に組まなければいけないと私は思うのですけれども、その点、矯正局長いかがですか。
  109. 羽山忠弘

    羽山政府委員 大阪刑務所だけでございませんで、先ほども大臣が申されましたが、私の従前出しております通達の再点検とその確実な励行ということと、それから周辺の警備、たとえば見回りをする回数をふやすというようなことにつきましても、かなり具体的に指示をいたしまして、同じような事態が起こらないように努力をいたしておるのでございます。  一言申し上げますと、大阪刑務所自体におきましても、実は今回非常に驚いた——驚いたと申しましては語弊がございますが、非常に驚いたのでございますが、大阪刑務所自体におきましても、入学試験問題印刷上の注意というので、非常に詳細な達示を出しておりまして、毎年試験時期になりますと、これを詳しく説明いたしまして、周知徹底をはかり、事故の起きないようにということをやっておるのでございますが、遺憾ながらこのたびはその実行上のすきができましてこういうことに相なったということになるわけでございます。
  110. 沖本泰幸

    ○沖本委員 矯正局長は当法務委員会において、前の小林法務大臣もおっしゃったわけですけれども金嬉老事件のときに、この際刑務所を総点検する、そうしてもう完全に改める、以後こういう事件は絶対に起きないようにしたいということをおっしゃったわけです。それでこういうことが行なわれておる。常時問題がいろいろあったという点については、十分反省していただきたいし、もう一度さらに、こういうふうな外との連絡とかあるいはこういう問題が起きないように、内容にいろんな死角があるのじゃないか、こういう点を検討して早急に改善していただかなければならない。きのうもテレビで言っておりましたけれども国民感情としてそのとおりだと思うのです。どろぼうをつかまえて囲っておくところへどろぼうが入った、これが国民感情だ、全くそのとおりだと思うのです。これでは治安維持に当たったりいわゆる法の公正をはかっていただく法務省としては全くもうどうしようもないというような内容になるわけですから、これは十分反省していただいて、早急に改善していただかなければならないし、あるいはその勤務する人たちの給与の体系とか空活の環境の内容とか、そういうものをこの際一切がっさい改善していただかなければ、再びこれは起きてくるということになるわけです。まして無期とか長期とかいう人を見る看守の人たちが、その無期の年限中、勤務し一緒に生活しているということでは、当然そういうことが想像できるということになるわけですから、配置をかえるとかいろんな点で、今後金が幾らかかろうと十分考えていただかなければならない問題だ、私はそういうふうに御注文申し上げたいわけです。  さらに、これは委員長に申し上げたいわけですが、いま申し上げたいのはへいのいろんな死角とかそういう問題、私たちもこれは研究してみて気がつくところがあれば法務当局に対して御注意申し上げなければならない、こういうふうに考えるわけですが、早急に委員長のほうとしても、現地を視察して問題点をわれわれとしても研究する、こういう方向で視察することを御企画いただきたいわけですが、その点御要望申し上げまして、質問を終わります。  大臣、いまの看守のことについて一言お答えしておいてください。
  111. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの切々たる御注文、まことに恐縮に存じます。御趣旨を体しまして私もさらに努力をいたしてまいりたい、かように存じます。
  112. 沖本泰幸

    ○沖本委員 以上で終わります。
  113. 高橋英吉

    高橋委員長 沖本さん、現地視察は開会中はなかなかむずかしいような様子ですけれども刑務所の移転問題なんかもありましょうから、ひとつよく相談しまして……。  青柳君。簡単にひとつ。
  114. 青柳盛雄

    ○青柳委員 大阪のこの問題は、単なる偶発的な事件ではなくてその根が深いのだということがいまや世論の関心の的になっているようであります。けさの新聞にも、看守が手引きをしているのではないかという疑いがあって捜査が始まっているという。手不足であるとかあるいは受刑者を甘やかしたとかいうような職務怠慢ということももちろんあるでしょうが、そうではなくて、むしろこういう不祥事件が起こる根源が刑務行政の中に根深く存在するというこの点を徹底的に摘発いたしませんと、幾らここで再びこういうことが起こらないように厳重に注意いたしますなどと言っても、それでは問題は少しも解決する方向へ前進しないというふうに考えるわけです。  そこで、私はお尋ねしたいのですけれども刑務所というところは別に治外法権地域ではございません。そこは一つの特殊な社会があるわけでございまして、そこでもろもろの犯罪が行なわれる可能性は十分に考えられるわけです。もちろん暴行傷害のようなこともありましょう。同時に、窃盗事件というようなものが頻発しているのではなかろうかというふうに考えるのですが、刑務所内に起こる犯罪事件について、刑務当局のほうは、みずからだけで適当な調査をしてそして処理をしてしまうというようなことをするのか。これは、収容者といえどもやはり人権がありますから、もし犯罪の容疑があるならば、これは捜査機関が、司法警察職員が十分に調査をして、そして公判に付するべきものは公判に付するというような手続で、公判によって初めてその犯罪の有無が明らかにされるというのが常識だと思うのです。それを部内だけで適当に処理してしまうというようなことがもし行なわれるとするならば、これは刑務所が依然として秘密のベールの中に包まれて、伏魔殿のような、一般の社会の人々は何がそこで行なわれているのか、どういう不正な事件あるいは犯罪が行なわれているのか全く知らない、そして金嬉老事件とか今度のような事件が起って初めてたいへんなことがあそこでは行なわれているのだということが世人を驚かすということになるわけであります。だから、いま言った点について、いままで刑務所内における犯罪事件というようなものが一体どのくらい起こり、どのように処置されてきたかということについて御説明を願いたいと思います。
  115. 羽山忠弘

    羽山政府委員 刑務所内で犯罪の容疑を認知いたしました場合には事件送致と申しまして、警察または検察庁に送致いたすことになっております。刑務所内の犯罪につきまして、刑務官吏は司法警察職員の職務を行なうという規定がございますので、それに基づきまして取り調べまして事件を送致いたしております。  四十四年の統計によりますと、在監中の行為によりまして起訴された者の数がわかっておるのでございますが、総数が二百九十九でございます。おもなものは、けんかをいたしましてお互い同士がけがをさせる、すなわち傷害でございますが、二百九十九件のうち圧倒的に多いのが傷害でございまして二百二十三、それから暴行十九、それから逃走が十、その他というような数字になっておるわけでございます。
  116. 青柳盛雄

    ○青柳委員 おそらく刑務所内でも窃盗事犯というものは相当数あるのではないか。ところが、いまの統計によりましても、はっきりあらわれた傷害、暴行、逃走といったようなものが主であって、窃盗事犯については案外軽く見ているのじゃないかということを疑うわけでありますけれども、本件の場合まさに窃盗事犯でございます。窃盗事犯に対して相当神経質に扱っているとするならば、こういう問題もそう簡単に見過ごされるということはないと思うのでありますが、それはそれといたしまして、外から侵入したということ、しかも入試問題を盗み出すためにということが、はからずも矯正局長答弁の中で今度が三度目だという。一回目はいつあって二回目はいつあって、しかもそれがはっきりと入試問題を盗み出す目的であったというようなことがすでに明らかになっていることに対して、一体一回目、二回目はどういう対処をしたのであるか、それを具体的に説明してもらいたい。
  117. 羽山忠弘

    羽山政府委員 一回目、二回目と申しますのは名古屋の刑務所でございまして、昭和四十三年の一月中に二回連続いたしまして、釈放者が内部の者と連絡をとりまして、へいを乗り越えて中に侵入いたしまして、中の印刷工場で働いております受刑者がかねて抜き取っておきました問題を窓ぎわの紙が引き抜きやすいようなすき間に突っ込んでおきましたのを、外から入りました者が盗んだ、こういう事件でございます。盗まれたのは、当時新聞にも出ましたが、南山大学の問題でございまして、枚数が約百四十枚ぐらいであったと記憶いたしております。  これは、その当時その問題を買った方かどうか存じませんが、何かそれを入手された方が大学へ参りまして、こういうものが今度の入学試験問題だそうだがほんとうかと——あるいはこれは共犯が持っていったかも存じません。先ほど大臣が申しましたように、私どもは仲間割れではないかと想像いたしておるのでございますが、そう言ってまいりましたところが、大学のほうで見ますと、これはまさにそのものずばりであるということで、急拠大学のほうで全部の問題をつくり直されて試験を実施されましたので、入学試験の不正と申しますか、入学試験を実施する上におきましての実害、不正は未然に防止された、こういうことになるわけでございます。この当時、名古屋刑務所の状況にこりまして、印刷する場所、そこに配置する職員の責任の明確化、その他十数点にわたりまして具体的な指示を出しておるのでございます。
  118. 青柳盛雄

    ○青柳委員 すでにそういう苦い経験が名古屋刑務所において起こっている。そこでいろいろ手は打ったというのですけれども、先ほどの話では、四十幾つもの刑務所入学試験問題の印刷をやっている。そういう事実のある場合には、すべての刑務所について同様な事件が起こる可能性があるということはだれでも常識的にわかるわけです。しかも外から入ってくるなどということは今度が初めてじゃなかった。そういうことであるならば、よほど警戒をしなければならないことだと思うのですが、たまたまこの大阪刑務所で侵入事件のあった昨年の一月の末に、入試印刷を担当していた二十五歳になる看守が懲戒免職になっているという事実が新聞報道されております。それは服役中の暴力団に便宜をはかったというのが処分理由であるというのでありますけれども、たまたまその看守が侵入事件のあった当時入試印刷を担当していた。だから大阪刑務所当局は、この侵入事件というものは中と外とが連係をとった、しかも中にいる受刑者ではなくて、場合によったら刑務所の職員が一枚かんでいるのではないかという疑いを持たれてもしようのないような状況。だからこの二十五歳の看守が具体的にどういう処分を受けなければならぬような行為をしたのか、この侵入事件の問題とは関係ないのかどうか、これを明らかにしてもらいたい。
  119. 羽山忠弘

    羽山政府委員 おそらく私が昨日読みました新聞とただいま先生がお持ちの新聞と同じだと思うのでございますが、Fというローマ字で表示してあると思います。これは木工場に配置しておりました職員でございまして、印刷工場に配置しておった職員ではございません。これは木工場に就業中の受刑者と非常に親しくなりまして、その人間から頼まれて手紙を不正に発信をした。すなわち刑務所から受刑者が手紙を出します場合には、法令の規定によりまして一応中の検閲を受けることになっております。そういう検閲をしないで発信をした。それから外部の受刑者の親族から現金八万円を受け取りまして、その金でたばこ、アリナミン、チョコレートなど約八千三百円相当を買いまして、それを受刑者に交付した。残りの七万幾らの金額自分でもらってしまったというようなこと。それから小包み——わいせつ写真、砂糖、アリナミンなどを梱包いたしましたものを不正にその受刑者に交付したということで、公務員法八十二条第二号の適用によりまして免職となったわけでございます。この男がちょうど昨年の侵入当時に処分されておりますので、あるいは疑いがかけられたのではないか。処分になりました日は一月の三十一日でございます。したがいまして、疑いがかけられたのではないか。  ただいま御質問のように、内部の者が今度の事件にも関係があるのではないかというお疑いはまことにごもっともでございます。その当時また懲戒免官になった者があれば、それが関係があるのではないかという疑惑を持たれるのも無理からぬことと思うのでございますが、本人は、私ども承知いたしまする限りでは、どうも入試問題には関係がないのではないか。と申しますのは、実は昨日、大阪刑務所からの電話報告によりますると、懲戒免官になりました本人が刑務所に電話をかけてまいりまして、刑務所自分を懲戒免職にしておきながら、さらになおかつ入試問題までの嫌疑をかけるのかといって、だいぶ不満を漏らした電話をかけてきたというような事情もございますので、この人は入試問題には関係がなかろうというふうに判断を一応いたしておるわけでございます。
  120. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その問題はなお今後の十分なる検討を必要とすると思いますが、どうもあれですね、刑務所内部の看守等の人が協力をしないと、具体的に大阪大学あるいは市大の試験問題であるということが、刑務所内の仕事に従事している収容者にはわからないはずだ。だから、やはりこれを知っているのは看守だけだというようなこととか、この用紙もはたしてどこのものなりというようなことも、職員であればわかるけれども仕事のやっている受刑者にはわからないというような疑いの点から、一回四十万円で四年間も見て見ぬふりをしたというふうに見出しはなっておりますけれども、単に見て見ぬふりをしたのではなくて、手引をした、要するに十万円という対価をもらうわけですから。だから、いまやこの問題は、単に受刑者の中の不心得者があるいはそういう犯罪を犯したであろうというだけにとどまらないで、一大汚職事件として発展する可能性があるというのがもっぱらの観測でございます。  したがって、これが単に捜査当局関係者の供述等から割り出されてくるだけを待つのではなくて、先ほど矯正局長も言われたとおり、刑務所の役人自身が司法警察職員としての任務を持っておるわけです。また綱紀の粛正ということは口がすっぱくなるほど言われておる際だけに、そしてまた伏魔殿のように社会から隔離された一つの特殊な社会である刑務所、そこで何が行なわれているかということは、法務省当局みずからが自主的に自発的に究明しなければならない問題だ。それがどのような役人の責任問題に転化しようと、そういうことをおそれてもみ消すというようなことをするのだったら、これは慢性はますますひどくなって、極論すればもう命がなくなる、そういうところまでいってしまわなければならないという重大問題だと思うのです。  だから、たび重なる不祥事件について、大臣、お伺いしたいのですけれども、徹底的に内部の状況について調査をおやりになるという考えがあるかどうか、それだけお尋ねして、私は終わります。
  121. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 あらためて申し上げるまでもなく、先ほどからも申し上げておるところでございますが、十分に事実をきわめて、その事実の上に適正な判断を加えて、処置すべきものは処置しなければならぬ、かように存じております。今回の大阪事件につきましても、大阪刑務所長ほか幹部の者数名、ちょうど転勤の時期になっておりましたので、特にこの際、この間の事情を明らかにするために、転勤の発令を延ばしてあります。そうして十分実態をきわめて適切な処置をいたしたいと思っております。
  122. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その調査の結果は、また国政調査の段階で国会にも明らかにしていただきたいと思うのです。  終わります。
  123. 高橋英吉

    高橋委員長 次回は来たる十二日午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時七分散会      ————◇—————