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1971-02-17 第65回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十七日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君    理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君    理事 福永 健司君 理事 畑   和君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡沢 完治君       石井  桂君    河本 敏夫君       羽田野忠文君    松本 十郎君       村上  勇君    林  孝矩君       青柳 盛雄君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      林  信一君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      吉田  豊君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局家庭局長  外山 四郎君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 福永健司

    福永(健)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  裁判所司法行政に関する件及び法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沖本泰幸君。
  3. 沖本泰幸

    沖本委員 これは現在大阪家庭裁判所で取り扱っている事件で、まだ結論が出てない問題になるわけですが、ちょっと問題があると思いますので、裁判所側にいろいろお伺いしたいわけでございます。  内容を申し上げますと、ある中学校の女子の生徒ですが、ソフトのクラブに入っておった。その同僚が校外であまり品行がよくなかったという点があって、注意をした際に――その当該少女ソフト部部長だったわけです。それが注意をした際に、野球のバットおしりをたたいた、こういうことが去年の四月ですが新聞に出て、それでバットでということが内容になって事件が大きい、こう思われたわけですが、その当人あるいはその父兄は、私が約二十年来おつき合いしている方でよく知っておる方です。それでその問題を警察調べ家庭裁判所事件を送ったわけですけれども、そこの調査員やり方について、関係者が非常に憂慮した、こういう問題があるわけです。  というのは、その本人のやったことは、結局本人自体は悪いことをしたとは思っていないわけです。悪いことをした子を注意した、注意したのに軽くバットおしりをたたいたということで、たたかれた子も実際被害意識がない、こういう関係にあるわけです。それを家庭裁判所から出頭命令が来た。出頭命令が来たのがちょうど学期末の試験の最中、その最中に午前九時に出頭しなさい、こういうことだったので、あわてて父兄のほうとかあるいは学校先生、そういう方々裁判所のほうの担当の御婦人調査員事情を話をした。それでもまだどうしても出てこい、こういうことで、結局警察からも説明に行った。それで納得してくれないので、今度は大阪府警のほうからも説明に行った。それでもまだいけないので、今度はおかあさんか出ていっていろいろ事情を申し上げた。それでもまだだめだ、こういうことで、どうしてもその裁判所へ出てこなければならない、こういう強い御意見なんです。  そこで、いろいろ最高裁のほうにもお伺いしてみましたけれども調査員という方のそういう問題に対する調査あり方としては、そういう子供に対して調べる場合には、刺激を与えないように学校に行って調べることもできる、いろいろな状況も判断することができる。そういう上において配慮をして事件処理していく、こういうことができる、こういうお話なんですが、一切学校にはお越しにならない。関係者は呼びつけられる、こういうことで、周囲のその問題に関係している人たちが、裁判所に対して非常に悪感情を現在抱くようになっているわけです。こういう問題に対して、現在裁判所のほうとしては、調査方法としてどういう方法があるのか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  4. 外山四郎

    外山最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘事件は、現在進行中の具体的な事件でございますので、そのこと自体につきましては、私ども具体的な言及を避けたいと思っておりますが、一般的に申しますと、調査官調査におきましては、御指摘のようなケースバイケースでいろいろなやり方があると存じております。  御承知のように、調査官人間行動の諸科学を修めましたいわば専門家でございまして、かつケースワークという技法を駆使いたしまして調査をいたしておりますが、その調査の間には少年人権の保障や、それから少年情操保護、また少年が無用な挫折感を持って更生が阻害されるというようなことのないように調査をいたしておるはずでございます。具体的な事件によりましては、少年裁判所に呼んで聞いたほうが適当な場合もございますし、また学校に行って少年に会うというようなことのほうが適当な場合もございまして、具体的な事例につきましてそのどの方法が最も適当でございますのか、これは私ども何とも申せないわけでございますが、伺いますと、その調査が円滑にまいりませんで、事件処理がなかなか手間どっておるということにつきましては、たいへん残念に存じておるわけでございます。
  5. 沖本泰幸

    沖本委員 お答えがどうも納得いかないのですが、もう少し詳しく申し上げますと、その調査官の言動の中に、出てこなければ出頭命令をかけるぞ、こういうおことばがあるのです。それから関係している人たちの私に対する話の中には、未婚の女性であってお年を召しているから、いわゆるオールドミスだからヒステリックにこういう問題を扱っている。えこじになっているという声が私どものほうに返ってきております。ということは、その方がそういう立場にいらっしゃるということを御本人お話しになるか、あるいはその人たちがその調査官の身分を、そういうふうな問題を調べたか、どっちかなんです。それでその少女新聞に出たということでショックを受けて、もう学校をやめる、こういうことだったわけです。それを学校先生なんかがなだめすかして、父兄がなだめすかしてやっと学校へ行かし、高校へ行く準備をさせるために勉強させておった、こういうことなんです。関係者裁判所のほうに一生懸命たずねていっては了解してもらおうと努力をした。そういうことで現在は高校へ行く進学の勉強中であるということになっているわけなんです。  そういうことですから、内容については触れることはせずにいたしまして、学校へ行って事情をいろいろ聞く、そういう計らいがあっても、私は何も問題はないと思うのです。逃亡のおそれがあるわけでもありませんし、それ以後事件が広がるという問題でもないわけです。その父兄の方も、おとうさんは中学校の教諭です。養護学校先生もずっとしてきておったくらいでして、子供さんもたくさんおりますし、非常に円満な家庭の中にあるわけです。そうすると、裁判所のほうに呼んで調べるということ自体でも完全にその少女ショックを受けてだめになってしまう。じゃ裁判所のほうではっきりした結論を得るために、そういう事務的な扱いのために一人の人間性というものを失わせてしまうのかどっちかという問題にかかってくるわけです。現在では周囲全部が、家庭裁判所はえげつないところだ、そういう感情を持っておるわけです。大阪府警も、学校先生も、校長も教頭も、父兄もすべてがむちゃくちゃな調べ方をする、こういうふうなのが全般の意見です。これでは裁判所の機能というものは全く果たせない。逆の効果を出しておるということになるのではないか、こういうふうに思われるわけなんですけれども、その点についていかがですか。
  6. 外山四郎

    外山最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、家裁に送られてまいりました少年の持っておる問題につきまして、科学的な調査をいたしまして、処分が必要であるかどうか、必要であるとすれば、その問題に応じましてその少年の更地のために必要な保護処分等の手当てをする、その結論を得るための資料を整えるわけでございます。たとえれば医者の患者に対する診断の場であるともいえるわけでございます。ですから、一般的に申しますならば、少年に直接面接をするということが調査一般の大原則であろうかと思いますし、実務でもそのようになっております。少年家庭裁判所に出てきて、直接その言い分を聞く、弁解をしたいことがあればそれを十分言わせるということも一つ教育的な手段であろうかと思います。先ほど伺いますと、この少年は悪いことをしたとは思っていないという御指摘でございましたが、もしそういう点で、新聞に報道されたりあるいは送致されたりする事実について少年言い分があるということであるならば、調査官なり裁判官に直接十分言わせるということが、一つ少年の持っておるコンプレックスのようなものを解消するために非常に効果があるのではないかと思われるわけでございます。  それで、たとえば審判を開いた上で不処分の措置をとる場合にいたしましても、審判少年家庭裁判所に出頭しなければ開けないというたてまえに現在はなっておるわけでございます。先ほど御指摘のありましたのは調査の問題ではございますけれども、一般的にいいますならば、やはり少年に直接会って、少年の言いたいことを聞くということがこの調査の大原則であろうかと思います。ただ、その少年に直接面接いたしまして調査をいたします場合には、少年人権を保障するということ、それから先ほど申しましたように、少年情操を害しないようにするということ、少年に必要以上の挫折感を与えないようにするということについては十分心がけるように私ども指導しておるわけでございます。裁判所に出頭させて調査をいたしますかどうかということは、これも先ほど申しましたようにケースバイケースでございますが、必ずしも家庭少年に会うよりは、家庭裁判所調査官少年とが一対一で十分に話し合うということも、事案によっては非常に必要な場合があると思われますし、実務上そのような方法をとっておる場合が多いと思います。特にこの場合は、おそらく検察官を通じて送致されてまいりました事件でございますので、一般的に申しますならば、少年面接をして調査をするということはまずほとんど例外なく行なわれておることであろうかと思います。ただ、その場合には調査官として十分注意をすべきことは先ほど申し上げたとおりでございます。
  7. 沖本泰幸

    沖本委員 いまのお答えなんですが、まず第一に、局長さん自体のおことばの中からも裁判所裁判所というのがずいぶん出てくるわけです。そういう御姿勢の前に問題があるのじゃないかと思うのです。裁判所子供を連れていくということについて、周囲人たちが全部警戒しだしたということなんです。非常におそれているわけなんです。裁判所の門をくぐったらその子はだめになるのじゃないか、こういうおそれを周囲人たちが全部持っておるわけです。  ですから、まず学校なら学校に行って、これは一つあり方としての考えですが、学校の当事者なり先生なり父兄なりに、みずから行ってお会いになって、法律のあるところあるいは問題の扱い方、どういうふうにその子供をしむけて結論を出したらいいかという点についてはこういう方法もある、ああいう方法もある、いろいろなことをお教えになった上で、法律内容であるとか裁判所機構であるとか、そういう問題をまず第一段階周囲の人に教えて、それからその子供に当たるにはどうしたらいいかというような御相談があってしかるべきじゃないか、私はそう考えるわけです。しかし、そういうものはないんです。そういうものなしに、とにかく連れてこいなんです。とにかく連れてこなければ話にならない。そこに問題があるのじゃないかと思うんです。向こうは連れていくことにあれを持っておるわけです。ですから、一応高校進学させてからということで、それまで待っていただきたい。でなければ、事件新聞に出た段階本人学校をやめると言い出しておるわけです。それでは法の目的も、あるいは少年保護していくという問題も解決しないと思うんです。  私も最高裁家庭局のほうにも内容につきましてお伺いしたわけです。ところが、内容の是非というものは別にしまして、向こうからきておる御報告の中に「暴力少女」という字句をお使いになっていらっしゃいました。そういうところですでにらく印を押されておるわけです。当該少女というのであれば別ですけれども、その辺にもうすでに問題があるのじゃないかと私は考えるわけです。ですから、そういうふうにみんなが裁判所へ来て事情説明する中に、およそその意図するところがどういう気持ちを持っているかということが調査官のほうにわかるはずですから、それではこっちから行って話し合いしましょうと、子供に会う前にも準備段階があると思うわけです。そういうかっこうで子供に会って法律というものの内容納得させて、その上でちゃんとした結論を得る、そういう方向に向かうべきじゃないか、こういうように私は思うのです。  ただ、ここでこういうことを申し上げているのは一例だということなんです。安易に全国家庭裁判所担当方々が、そういうふうな扱い方で問題を処理していらっしゃったらたいへんなことだと私は思ったから、本日のこの委員会であらためて御質問する気になったわけです。そうすると、将来健全に伸ばしてあげるべき少女が、裁判所の判決を受けたばかりに転落してしまう、裁判所取り扱いでそれがむしろ非行化していく、こういうことになりはしないかということを私は一番おそれるわけです。法の趣旨というものは、そういう事件を起こした子供に再び事件を起こさないで、さらに社会人としてりっぱな成人をして社会に役立つような人になるためにあるわけなんですが、それがだんだんおやりになればなるほど逆の効果を生んできている、こういうことなんです。それについていかがですか。
  8. 外山四郎

    外山最高裁判所長官代理者 御指摘のありました家庭裁判所事件処理精神というものにつきましては、まことに仰せのとおりだと存じます。ただ、この場合には、聞くところによりますと、学校のほうにも家裁のほうから照会をいたしましたし、学校のほうからも種々御連絡がありまして、その間の連絡はいろいろお話を伺っておるようでございます。暴力少女レッテルを押しているという御指摘がございましたけれども、これは家庭裁判所がそういう先入観を持ってレッテルを押しているとは、私はどうも考えたくないわけでございますが、ただ家庭裁判所に正式に送致されてきましたのは暴力行為ということになっておることは事実であろうかと思います。ただ家庭裁判所事件取り扱いといたしましては、その少年の行なった事実そのものと、もう一つ重要なことは、先ほど御指摘もありましたけれども、なぜ少年がそういうような行為をしたのか、あるいはその行為についてどう考える、いまはどういう状態にあるかということを十分把握して、その少年について処分が必要かどうかということをきめるのがたてまえになっておると存じております。  一般的に申しますならば、全国家庭裁判所は十分さっき御指摘のありましたようなことは心して調査をし、手続を進めておることと思うわけでございます。ただこの場合には、どうもその保護者の方と調査官との間が円滑にコミュニケーションができていないというところがはなはだ残念だと思いますし、この少年事件調査に当たりますいわゆるケースワーカーとしての調査官が、少年関係者と十分に意思が疎通しないという面がありますならば、これはケースワーカーとしては大いに反省すべきところであろうと存ずるわけでございまして、今後の調査官指導教育等の上で十分配慮してまいらなければならないことだと存ずるわけでございます。
  9. 沖本泰幸

    沖本委員 結局コミュニケーションとおっしゃいましたですけれども、行っている人は全部子供事情説明に行っているわけです。そこで調査官とお会いになっているわけですから、お会いになったところで話が進んでいけば、学校でどう取り扱うか、学校における生徒状態であるとか、その少女の日常の状態だとか、いろんな性格だとかそういうものは、すでにそのときに、周囲事情先生からも聞けるし、できるわけなんです。父兄からもそれはある程度事情がわかるわけなんです。ところが、問題がひっかかっているのは、出頭させろ、いや待ってください、出頭させろ、いや待ってくださいだけで現在きているわけです。それじゃどういう時期にやったらいいかとか、あるいはどういうふうにしたらいいか、そういう話の進み方があるはずです。話が進めば、父兄納得をしているし、担任の先生とか校長納得していると思うのです。そこに何ら納得がないわけです。で警察のほうもおこっているわけです。そういうつもりで書類送検したのと違います。そういうことになっているということになりますと、いま申し上げた事情だけで単に調査官の御婦人だけに問題がひっかかっているということになるんじゃないでしょうか。ですから、ケースワーカーとしてお調べになるなら、学校に行ってお調べになることもできるし、父兄に会って事情を聞くということもできるわけです。事情は全然聞かないわけですね、内容については。現在どういうことであるか、こういうことであるか、子供の心境はいまどういう状態であるかということをみずからお聞きになっているというものは、何一つないわけです。ですから、一言で言えば、もう家庭裁判所の中にすわっておって呼びつけてお調べになっている。そういうことであるならば、自分の子供を連れていくともう一つたいへんな子供にしてしまわれる、これで子供の一生はおしまいになるというのが、父兄が一番抱く疑問であり、心配でもあるということになるわけです。ですから、そういうふうな調査あり方とか内容が、少年を扱う点について全国で行なわれておったら、これはもうたいへんな子供をつくっていることになるのです。  で、そういう方々人事については最近どういうふうな人事関係をおやりになっていらっしゃるわけですか。
  10. 外山四郎

    外山最高裁判所長官代理者 ただいまの御意見の中で、少年家庭裁判所に来たらおしまいになるということは、少年審判制度精神から見て、もしそういうふうに考えられますならばたいへん残念なことだと思うわけでございますが、関係者に対してそういう点について十分理解をしていただくことが足りない点があったかもしれません。これは具体的な事件ですから、私が立ち入って申すべきことではないと思いますし、この事件調査は、事件担当裁判官命令に基づいて調査官調査をしておりますことでございますから、私どもとしてとやかく申し上げられないことでございます。  それから調査官指導監督等につきましては、先ほど申し上げましたけれども調査官がその調査過程で、最もその少年に適したような方法調査をする。調査過程におきましては、少年情操というものを害さないように十分注意をし、かつ、その人権を守るという精神調査をしていくべきであるということにつきましては、いろいろな角度から、たとえば調査官研修所等におきましては十分その教育をしておると思いますし、研修等機会にさらにまたいろいろ教えておると思います。それからまた実際の裁判所実務の上では、首席調査官次席調査官あるいは主任調査官というものが調査官指導監督に当たっておるわけでございます。それから私どもとしても具体的な事件についての調査あり方を一々指示することはもちろんできませんけれども調査官会同等機会に、調査官がそういう周囲方々家庭裁判所に対する抵抗感というようなものを呼び起こさないで、スムーズに調査が行なわれるように、また少年が更生しようとする意欲を失わせないように、あるいは少年に無用な精神的な打撃を与えないように調査をすべきであるということ等につきましては、いろいろその方法を議論し、研究をする機会を持っておるわけでございます。そのように調査官指導ということにつきましては、いろいろ心がけているつもりでございます。
  11. 沖本泰幸

    沖本委員 与えられた時間も来たわけですけれども、このままやったってやりとりの問答で終わるわけですから、結論は出るわけではありませんけれども、この事件家庭裁判所結論をお出しになった結果が、子供が変わった人間になってしまったのでは、これはたいへんなことになるわけです。傷つけられたあとでどうこう言ったってどうにもならないから、いま申し上げているわけです。ちょうどそういう事件があったということについて、全国にこういう問題が起きてはならない、こういうことから申し上げるわけです。  これはまあ事件内容、あるいはそれをどう結論を出すかということについては、一切私たちはタッチできるものでもありませんけれども、そこでやらなければならないのですけれども、そこへ持っていくまでの配慮というものは、十分はたから考えられる問題じゃないか、そう思うわけですね。子供がだめになるということは、金にかえられませんでしょう。むしろそういうことよりも、そういうチャンスに、子供裁判所機構とか法律とか、父兄とか学校に対して最高裁判所あり方法律扱い方、そういうものを十分認識さしてやるべきであるということになりますけれども、そこまでいかないわけですね。来るか来ないかというところで押し問答しているわけです。だから、私は調査官という人のお人柄というものに疑問を持たざるを得ない、こう考えるわけです。また、その調査官の上司の方が、実際その一つ一つ事件についてごらんになっていらっしゃるのだろうかというふうになりますと、家庭裁判所の中のあるいはその法律精神、裁判のあり方というものにまで疑問を持たざるを得ない。何のために少年法を一也懸命勉強するか、研究するか、これから出すかというようなところまでいかなければならない、こういうことになります。そういうことについては私たちのほうにいろいろなことを裁判所のほうからおっしゃってくるわけですから、それとこれとは逆ということになります。  最後に、いまのような内容について、今後こういうことがあったとして、あるかないかということはあとになってわかるわけなんですが、あとになっていわゆるその調査官がだめだった、まずかったということ、いまのままでいくと、そのままその結論が出ますから、問題はそういうことであっては困るわけです。だから事務総長、そういう問題に対してどうお考えであるか、これからどういうふうにこういう問題についておやりになるか、その点をお答え願いたいと思います。
  12. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 具体的事件内容について言及いたしますことはちょっと差し控えたいと思いますが、ともかく実務の運用上改善すべき点は十分配慮を加えて、家庭裁判所をますます国民から信頼される裁判所にしていきたいと思っています。
  13. 沖本泰幸

    沖本委員 御答弁は満足できませんけれども、時間が来ましたから、よろしくお願いいたします。
  14. 福永健司

    福永(健)委員長代理 畑和君。
  15. 畑和

    畑委員 私は、きょうは最高裁当局に対しまして、大きなことばでいうと司法権の独立ということについて、最近のいろいろなできごとにまつわって質問いたしたい。  まず最初に、この間二回にわたって最高裁で主催をいたしまして、高裁並びに地裁等下級裁判所の中堅の裁判官の招集をして、いわゆる司法協議会というものを開かれました。新聞等の報ずるところによりますと、これがほとんど青法協の加入問題に事実上しぼられたような論議がかわされたように拝承いたしております。この二度にわたっての協議会目的は一体どういうところにあったのか、お伺いしたい。
  16. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 御指摘のように、一月二十二日と二十六日の二度、司法行政事務協議会というものが開かれたわけでございます。その目的といたしますのは――司法行政事務でございますと、その責任者ということになりますと高等裁判所長官なり地方裁判所家庭裁判所の所長であるわけでございます。そういうことで正式の、下級裁判所司法行政事務に関する御意見を伺いあるいは私ども下級裁判所に対しまして司法行政事務についていろいろ御連絡を申し上げる、そういったことは長官、所長の会同等でやっておるわけでございます。  御承知のように、過去一年を振り返ってみましても、裁判所司法行政のことではいろいろ問題があったわけでございます。そこでこの際、地方裁判所家庭裁判所の中堅として御活躍になっております裁判官の方、具体的に申しますと、大体各裁判所の裁判長の方でございますが、そういった方にひとつお集まりをいただいて、日ごろお考えになっておるようなことをざっくばらんにお話も伺い、また私どももそれに対していろいろ申し上げるという機会を持ったほうがいいのではないかということが考えられまして、その結果二回にわたる協議会を開いた、こういうことになっておるわけでございます。
  17. 畑和

    畑委員 普通の場合には各長官あるいはその代理、そういった方々を招集をして、いろいろ一般の司法事務の協議あるいは示達、こういったような意見交換というのが普通で、ところが今度の場合は、いまの答弁によっても明らかなように、確かに異例な司法事務協議会である。しかもその人選が、先ほど言ったような長官あるいはその代理ということでなくて、特に中堅裁判官を選んだということと、その選び方というような問題について、私は確かに異様の、変わった司法協議会であったと思うのです。それだけに非常に反響を呼んだことは間違いない。一体その目的は何であったかということについては、人事局長の答弁によれば、最近いろいろ司法部内で問題になったことが多い、そこで広く中堅の裁判官を呼んでいろいろな忌憚ない意見を聞きたい、こういうことにあったようでありますけれども、そういう意味でコミュニケーションを深めるという点については、私はそれ自体には異議を申し述べるものではない。ただ、今度のその司法事務協議会が異例の処置であっただけに、そうだとすればもっとなぜ広い範囲の若手の裁判官をも含めて、あるいは若手なら若手だけを選んでそういう協議会を持たなかったか。また、持たなかったが今後持つつもりかどうか、そういう問題もあろうと思います。  ともかく、その人選等についても、新聞紙上に報道されるところによると問題があったようで、いろいろ最高裁長官の指名であるとか所長の指名であるとかいうようなことで、普通の場合の、要するに裁判官の代表という意味であれば裁判官会議できめてその人選をやるべきである。それなのに裁判官会議にはかけないで、天下り的に指名したり何かして、適当な人物だけを、要するに最高裁に仰合するような人物だけを選んだというきらいが確かにある。そして青法協を非難し、攻撃し、そうして、そうした青法協の排撃ムードをつくるための司法協議会といわれてもしかたがないと私は思う。そういう点で、一体人選をどういうやり方でやったか、それを聞きたい。
  18. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 協議会の趣旨がいま申し上げたようなことでございますので、その趣旨を申し上げて各高等裁判所の長官に人選の推薦方を御一任したわけでございます。高等裁判所の長官の中には御自分でお選びになった方もあるようでございますし、さらに地家裁の所長の御意見を御参考にしておきめいただいた方もあるようでございます。そういうふうにして御推薦をいただきまして、その方々に出席をお願いした、こういうことでございます。
  19. 畑和

    畑委員 私は、その選任の方法が、高裁の長官に御一任をして、高裁の長官が直接指名をしたところもあれば、また地裁の所長に意見を聞いて高裁の長官が人選をさらに依頼したというところもある。いずれにいたしましても、ともかく天下り的な司法協議会であるからそうであるかもしれぬけれども目的が広くコミュニケーションを深めるという目的であるとすれば、それに徹するとすれば、もっと民主的にというか、裁判官会議に正式にかけるようにして、そしてこういう目的でやるんだ、したがってこれを裁判官会議へかけて代表を選んでこい、こういうこと、あるいは中堅層は何人、若手層は何人、こういうようなぐあいの程度の指定をして、そして各地裁にまかせる、こういうことをやれば、私は新聞紙上等で非難されるようなことにならなかったと思う。したがって、結局結果的には青法協に対する確かに排撃のムードづくりだといわれてもいたし方がない結果におちいっていると思うのであります。これがまた司法内部にいろんな若手と中堅その他の断層というものが現にあるんですから、それを薄めるというためにはもっとそういった配慮が必要ではなかろうかというように思うのですが、いかがですか。
  20. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 もう少し私どもそういった趣旨を徹底いたしましてやればよかったわけでございますが、御指摘のようなふうに言われることは、実は私どもの真意からいたしますと非常に残念なことであるわけでございます。ただこの種のような協議会は、今度始めましたのが初めてと申し上げても過言ではないと思うわけでございますが、これ一回で終わるということを考えておるわけではございません。御承知のように、裁判所の中堅裁判官と申しましても、裁判官、相当な数がございますので、全員の方に交代に出てきていただくというようなことをいたしますには、相当回数を重ねなければいけないわけでございます。それからまた、必ずしも中堅の方だけと限るつもりもございませんので、逐次何回か開くことによりまして、場合によりましては若い層の方にもまた来ていただき、あるいはまた年配層の方、若い層の方、中堅の方と取りまぜておいでいただくというようなことも実は考えておるわけでございます。ただ具体的なことになりますと、予算等の問題がございますので、そうしょっちゅう開くわけにはいかないと存じますけれども、この種のものはこれ限りでやめるという趣旨ではございませんで、今後何回か機会を見まして、層を広く集めて、そのときそのときの各自の御意見を伺うようにしてはどうであろうかということを考えておるわけであります。また、協議会においでになりました方々も、そういうことが非常にいいことではないかというような御意見であったように記憶しておるわけでございます。
  21. 畑和

    畑委員 確かに私はやり方はまずかったと思う。若手がほとんど入ってない。そこへ入ってないところで若手の非難をしても、それはもう裁判でも何でもやはり相手方の言うことを聞かなければだめなんであって、自分たちだけいい気持ちになって非難していたって、非難されるべき若手の連中がそこへ出ていなければ何もならぬ。かえってみぞを深めるばかりだ。これはわれわれがしょっちゅういろいろな場合にぶつかる問題でございますが、やはり若い者にも言いたいことをどんどん言わせる、反対の意見もどんどん言わせるということにおいて、初めてその辺で合致点も出てくる。もの言わざるは云々というようなこともありますし、腹ふくるるわざなんということもありますし、言いたいことをやはりどんどん若手にも言わせることが必要だと私は思います。そういう点で今回限りではない、若い者等を対象にして考える余地があるようでありますから、これはやはりどうせやるとすれば若手のほうも別の機会に若手としての機会をつくるべきだというふうに私は思うのであります。これは希望として申し上げておきます。  それから、その協議会で、新聞の報道するところによると、大体青法協に加入は好ましくない、再任を機会に脱退すべきであるといったような意見、モラルの問題であるけれども好ましくない、そういったような意見が圧倒的だったというふうに報じられておりますが、そのとおり間違いございませんか。
  22. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 全員がすべてその問題について御発言をいただいたというわけでもございませんし、また、事柄の性質上決をとるというような問題でもございませんので、そのような点も御留意いただいて、大体御指摘のような雰囲気であったということは申し上げられるかと思います。
  23. 畑和

    畑委員 そこで、この問題が特に注目を引いたのは、近く四月に再任期を迎えるということで、たまたま時点的にその前奏曲ではないかということが非常に心配されたと思うのです。そのあとにまた高裁長官会同とかなんとかがあるような話を聞いておる。もうあったのかどうか知りませんが、それに符節を合わしたように順繰りに積み上げていって、そうして四月の再任期に対してどうするかということがやはり非常に心配のもとになったと思うのです。  しかし、この再任の問題については、この機会に確認をいたしておきますが、ついこの間衆議院の決算委員会で華山議員の質問に対して人事局長事務総長か知りませんけれども青法協に加盟しておるということによって再任の名簿から削るというようなことはしない、こういうような確言をされたやに聞いております。私はそうあってしかるべきだと思いますが、その点について決算委員会での答弁に間違いないか。そうして、それをそのとおりやっていく考えかどうか、この点をひとつ承りたい。これは事務総長にひとつ……。
  24. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 いまお話のありましたように、過日衆議院の決算委員会で私並びに人事局長から、いまお話のありました趣旨をはっきり申し上げております。またそつのもりでおります。
  25. 畑和

    畑委員 それを聞いて安心したのですが、ひとつその態度は貫いてもらいたい。青法協の問題云々は、私は確かにモラルの問題だと思います。それをやかましくいろいろなことをあげつらうということが、かえって司法部内では動揺を深めるもとだ。裁判官はとにかく憲法に従って、良心に従って独立してその職権を行なうのでありますから、憲法を中心としてやっていただけばほぼ間違いないと私は思うのです。その点であまりにも政治的中立性の問題等を前面に持ち出して、それを重要視したり何かすると、かえっていろいろな問題が出てくるというふうに、実は司法部内のことを私も弁護士の一人でありますから心配して、いつも言っていることなんであります。ぜひやはり司法部はそういう点でき然たる態度を持ってもらいたい。いろいろの雑音、そういう意味の雑音は気にしない。ところが、どうもだいぶ気にしているようですな。現に最高裁長官が一月一日に「裁判所時報」の「新年のことば」で年頭所感か何かを述べておるでしょう。これを見ましてもだいぶ神経質になり過ぎていると思うのです。これをちょっと読んでみましょう。  「ところが昨年、一部少壮裁判官の政治的色彩の強い団体への加盟をめぐって、裁判の公正について世間の危倶と批判を受けるような事態が生じ、最高裁判所裁判官会議においてもこれを放置するわけにはゆかず、裁判官倫理の問題として、裁判官各自の自粛自戒を要望せねばならないことになったのである。しかるにこれに端を発してその団体を支援する方面から、却って裁判官の思想の自由、裁判の独立をことさら強調し、逆に裁判所に対し、政治干渉があるとか、独立に危機があるとか、事実を粉飾して全くいわれのない非難、誹謗の論議が横行しはじめ、裁判所に対する国民の信頼がゆらぐような懸念を生じつつあることはまことに遺憾に堪えない。私はそのような中傷に値する何らの事実も無根であることを確信するとともに茲に新年にあたり、」云々、こうなっております。これは受け取りようによってはそのとおりかもしれませんが、こういうふうに裁判の危機ということが叫ばれておるが、裁判の危機なんて何でもないんだ、そんなことないんだ、こう長官は言っておるわけだ。言っておるわけだけれども、それを支援する団体の方面からいわれなき誹謗、中傷とかなんとかということばを使って、それに対抗してやっているようなことではいけないんだ。むしろき然としてそんなことはほうっておいて、そうむきになる必要はない。むきになることは、かえって裁判所がどうも何か考えているといったようなことになるのではないかというふうに実は考えられるのです。  この長官のことばにつきましても、それはもっともでもあろうという意見もあろうと思いますけれども、私から考えると、こういった態度はいけないんじゃないか。大体最高裁長官のこの前の去年の五月三日ですかの例のあいさつ、それが私は気に入らない。ああいうことを言う必要はない。この前も私は言いましたが、ああいうことを言う必要はないというふうな見解なんです。かえって司法部が動揺しているというような印象を与えるのであって、少しも利益はない。あのとき以来、むしろ逆にこの司法の独立が強く叫ばれておるようになった。むしろ危機だといわれるのもそういうところから出てきていることが相当多いのじゃないか。外からの危機と中からの危機と二つあると思うのです。  特に私はそういう意味で、中からの危機は単に青法協だけを非難することでとまるものじゃないと思うのです。青法協に加盟していたってたいしたことはない、憲法を守ることが中心なんですから。青法協自体は、御承知のように憲法を守ろうということで結成されたものです。ただ安保に反対だということ、これは憲法を守るというところから当然出てくる結論だ、私もそう思うのです。私も安保に反対ですから、憲法を忠実に守るためには、われわれは安保は憲法違反だとすら思っている。ところが、最高裁判所はあの裁判のときに判断を避けたんですね。しかし、私は問題は残っておると思う。そういう点で安保に反対するのは政治団体だ、それに加盟しているからけしからぬ、こういう非難がよく外から出ます。それをあまり気にしなさんな。気にするとかえってごちゃごちゃして外からの勢力に利用されることになると私は思っておるのです。共産党に入ったって、いまの裁判所法の逐条解釈からすればいいんですから、積極的な政治活動をしなければいいんです。幾ら党員になっても、何していようが、政治団体に入っておっても、積極的にやらなければいいはずです。それが憲法に従って、良心に従ってやれば、そんな逸脱は私は絶対ないというふうに確信いたしておるがゆえに、むしろそれを中心に考えるべきだ、かように思います。  私の意見がだいぶ長くなってしまいましたが、その点については概括的にどうお考えですか。私いろいろべらべらしゃべりましたが、ちょっと無理かもしれませんが……。
  26. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 一月一日の「裁判所時報」に載っております長官のごあいさつは、畑委員も仰せになりましたけれども、ひとつ額面どおりにお受け取りをいただきたいと思うわけでございます。また、長官が司法の危機というようなことがあってはならないという強い信念をお持ちになっておるということ、これも畑委員に御推察いただいておるとおりだと存ずるわけでございます。私どももその点についてはいささかもその確信に欠けるところはないつもりでおるわけでございます。ただそれと同時に、やはり裁判の中立公正ということは、どうしてもいささかもゆるぎない独立のためには必要なことであると思いますばかりに、裁判官の職業倫理の問題として、過去一年来いろいろ問題になりましたような経緯でもって、その職業倫理の確立の必要性ということを強く考えておることもまた事実でございます。しかし、最終的にはすべてそれは司法の独立、裁判の独立ということのために考えておることでございますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  27. 畑和

    畑委員 石田長官の熱意はわかっている。それはだれだってそういうふうに考えますよ。しかし、人によってやり方が違うのですね。やり方を変に間違えば、幾ら熱意があっても、熱意、熱意で押していったって、かえって逆効果になることがある。私はそれを言っている。逆効果ではありませんか、こう言っている。かえって心配するのあまり――われわれには何らよそから非難されるようなことはない、司法の独立は厳然としてゆらいでいないんだということを言っています。言っていますが、そういったいろいろな言い方がかえって逆の効果をもたらしやせぬか、こういうことを私は言っている。意気は壮とするに足りても、結局やり方がへただったら逆ですよ。私はそういうことを心配して言っているのです。  それから、青法協に加盟しているということだけで、そのことを理由にして名簿からはずすということはしないということですね。ただ、ほかにときどきほかの理由を表に出してやる場合もあるけれども、しかし再任の場合などは、いままでの例は健康上どうしても裁判ができないとかなんとかいった場合を除くほかはほとんどなかった。長谷川裁判官が転任を拒否したということで、この間一つそういう問題で再任ができなかったという例はありますが、それ以外には、健康上の理由以外にはそういうことは適格性を欠くということでやられた例はほとんどなかったと思うが、それを確認しておきたいがどうですか。
  28. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 再任を御希望になりながらも名簿に載らなかった例というのは、私、これまでの正確な数字をちょっと持ち合わせておりませんので、はっきり数字をあげて申し上げるわけにはまいりませんが、前人事局長が法務委員会でかつて御答弁申し上げたことがございます。それを引用させていただきまして、毎年一人くらいはあるというふうに御答弁を申し上げておきます。
  29. 畑和

    畑委員 その毎年一人くらいあるのは、再任を希望しても再任にならなかった、大体その理由は、健康上のからだが持たないとか裁判がやれないとか、そういった場合ですが、それ以外にありますか。いま言った長谷川裁判官のような任地がどうしてもだめだという場合、そういうのをちょっと聞いておきたい。
  30. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 そういうこともあろうかと思いますが、正確には人事のことでございますので、なかなかいま畑委員のおっしゃったように病気だけというふうに限定できますかどうか。そういったことも含めまして結局再任にならなかったという例、こういうふうにお受け取りいただけないかと思います。
  31. 畑和

    畑委員 そうすると、場合によると、青法協ということは関係ないと言っておきながら、青法協は実質的な理由であって、ほかに理由を求めてやる可能性もなきにしもあらず、そういうことを実は心配しているのです。そういうことはないですか。そういうことがなければいいんですが……。
  32. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 総長が先ほど御答弁申し上げましたようなことで御了解いただきたいと思います。
  33. 畑和

    畑委員 そうすると、再任の問題はそうですが、今度は新任の問題。十三期生、これが新任されるのですが、この問題についても、この前十二期生ですか、あのとき女の人が採用されなかった。女だという理由だ。ほかの理由があるかもしれませんが、実質的には女だという理由だ。女性だからあまり歓迎せぬ、それで差別だ。あとの男は二人とも青法協に入った、だけれども理由はほかの理由だそうですが、新任の場合は青法協に入っているということで採用しないということはないのですね。
  34. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 新任の場合に、青法協の加入のみを理由として採用しないということはありません。
  35. 畑和

    畑委員 のみを理由としないのだから、その辺どうも若干、この前の例もあるから心配しておるのだが、まあそこまで詰めてもしかたないですからこれはやめます。  そこで、もう一つこれに関連をいたしますが、裁判官の任用制度について一般的にちょっと質問したい。     〔福永(健)委員長代理退席、小島委員長代   理着席〕 これは実はこの前私、予算委員会の総括質問で総理におもに質問して、それに関連してあなた方の意見を聞こうと思ったのですが、この間のハプニングで私、質問をやめましたものですから、いま総理がいないので、どうもその辺焦点が失われるような形になっておるのですけれども、その点についてちょっと申し上げます。  御承知のように、いまの制度は、最高裁判所裁判官の任命、これは内閣が任命する、長官は内閣が指名してそうして天皇が任命する認証官ということになっておりますが、これを保障するために、御承知のように国民審査制度、例の選挙のときに、任官してから後最初に行なわれる衆議院選挙のときに、あわせて信任を問う、マル・バツでやるということの制度でチェックをするという制度になっています。ところがこれは御承知のように、実際にはどの裁判官がどういう裁判をしたかというようなことはほとんどわかりはせぬ。それのために、最高裁の判決には、だれが多数説、だれが少数説、少数説はどういう理屈というのがちゃんと規則できまっておって、それを見て判断すればわかるということにはなっているのだが、実際には、大衆がどの裁判官はどういう裁判をしたかということなどはわかりはせぬ。だからだれもわからずにそのまま出す、バッテンくれる人はあまりいない、バッテン書くにしてもめちゃくちゃに書くというくらいのもので、ほとんど制度的には形だけのものに終わっている。ところが、いまの制度だと、内閣総理大臣に何でも任命権があるわけですね、長官も裁判官も。ということになると、司法、行政、立法の三権のそういう意味での独立がどうも保障されないのじゃないか。いまの制度だと、日本の総理ほど強い権力を持っているところはない。最高裁裁判官の任命権を押えている、それから下級裁判官の任命の名簿も場合によったら削ることができるということにもなっておる、裁判官の任命権は最終的にはとにかく内閣にある、こういうことです。統帥権もそのとおり。その他もちろん立法権は、御承知のように大多数を擁している自民党ということになると、何でもできるということになるわけです。その総裁ですから、そういうことでみんな全部を一手に掌握するというようなことになっていると私は思うのです。  そこで、この間も例の異例の人事といわれた前駐米大使の任命の問題をめぐって非常に論議があったわけですが、あのことについても考えられるのでありますけれども、かつては一番最初に御承知のように、裁判所法三十九条の四項、五項というものがあって、「裁判官任命諮問委員会に諮問しなければならない。」というふうになっている。「裁判官諮問委員会に関する規定は、政令でこれを定める。」ということになって、最初の、少なくとも昭和二十二年の四月十六日の法律第五十九号による裁判所法、これにはそういう規定があった。第一回の最高裁裁判官はこれによって任命された。ところが、その翌年、最高裁判所法の改正で、この二項は削除になった。そうしてその後は・・したがって諮問委員会の諮問を経ないで内閣が任命するようになったということになっておるのです。私は、これはやはり先ほど言うたように、国民審査がほとんど形式にすぎないということから見ると、少しでも任命権者の専横を抑えるための歯どめをする必要があるということで、裁判所法がこういう規定を最初置いたと思う。ところが削った。削ったというのは、結局責任が明確でない、繁雑である、形式的であるというような理屈で除いたように聞いております。そのときにもおそらく当時の最高裁も協議にあずかったと思うのです。  その後、さらにあなたのほうでも、御承知のように一度これをもとに戻す案があったことがあります。裁判所法の一部改正の法律案が出まして、それにはこれをもとに戻すことが議案になって出たことがある。昭和三十二年の三月十二日ですか、第二十六国会、そこで当時の中村法務大臣が法案の説明をしております。その中に、例の最高裁機構改革の問題が出たときに、裁判所法の中でこの二項を復活させるということが法案として入っておった。ところが、これが例の最高裁の中二階の機構改革のことが異論があって流れたということによって一緒に流れておる。  こういう経過を私は調べることができた。そうすると、このときにもおそらく最高裁も協議にあずかっておるはずである。出すのは法務大臣が出すのでありますけれども、おそらく最高裁としてもこの協議にあずかった、あるいは最高裁のほうの発意が大きなウエートを占めておるのではなかろうか、こう考えておるのです。それがほかの関係で流れてしまったということですが、これについて最高裁判所はいまどう考えておるか。当時必要であろうということで復活をさせようとしたと思うのです。昭和三十二年、いまから十三、四年前ですか、それがそのままになっております。  これについて、いま最高裁は、これがあったほうが望ましいと考えておられるかどうかということです。
  36. 長井澄

    ○長井最高裁判所長官代理者 最高裁判所裁判官の任命及びその諮問委員会につきましては、ただいま畑先生が御指摘のとおりの経過をたどっているわけでございます。第一回の最高裁判所裁判官任命の際には諮問委員会の答申を経まして任命がなされました。当時の国会の議事録によりますと、諮問委員会の論議、検討が形式に流れるきらいがある、そうして任命についての責任の明確さを欠く結果を招来しているということで廃止されましたことは御承知のとおりであります。その後、最高裁判所機構改革の問題に伴いまして、弁護士会の意向を強く受けまして、ただいま御指摘のございましたような二項の任命諮問委員会の復活の案が提案されたわけでございますが、裁判所といたしましては、最高裁判所裁判官の任命は憲法上の制度でございまして、申し上げるまでもなく均衡と抑制の上に立っておる内閣の重要な権限事項である。したがいまして、任命諮問委員会裁判所に付置された機関ではございませんで、内閣総理大臣の直接の監督下に置かれる行政府の諮問機関という立場をとっておりまして、憲法の三権の抑制、均衡の関係から申しますと、裁判所として、特に機関として御意見を積極的に申し上げる立場にはないという考えをとっておりまして、昭和三十二年の提案の委員会におきましても、その後審議未了となりまして、提案の措置もとられておりませんので、現在私のほうといたしましては、特に最高裁判所裁判官について任命諮問委員会を設けるべきである、その諮問に基づいて任命すべきであるということにつきましては、積極的な意見を申し上げる立場にはない。特にその必要を感じておるという状況にないということでございます。
  37. 畑和

    畑委員 諮問委員会というものが、裁判所に付置するものじゃなくて、内閣のほうに設けられるべきものであるというふうになっておることは、もちろんです。ただ最高裁としても、この前の法改正の案ができたときには協議にあずかったのか、あるいは裁判所のほうからの申し出なのか、おそらく何か、話に聞くと、法務委員会でいろいろその問題について研究をしたような話です。その結果、それがたまたま政府に取り上げられて、その法案がつけ加わったというような話も聞かないではないのですけれども、まあとにかく一回最初あって、それが翌年削られて、それが十年たってまた出てきて、それがほかの理由で廃案になったというようなことであるからには、あなたのほうとしては当たらずさわらずそのまま黙っていたほうがいいということかもしれぬけれども、そんなことではいかぬのじゃないかね。やはり司法の独立というものはそういうことによって間接に侵されるのですよ。裁判官を、内閣総理大臣の気の向くようなやつをどんどん裁判官にすれば、がらっと変わってくる、判例も何も。大体そういうことすらいわれている。中郵判決もあれも偏向裁判だといわれている。ある自民党の一部の人たちは、偏向裁判だ、最高裁だって偏向だと言う。そこでだんだん任期がくる人が次々とやめていったら、あとで待ってましたということで、ほかの内閣の御意向に沿うような裁判官にすげかえて、そして中郵判決すらもくつがえすといったようなたくらみもある、こういうふうにすらいわれておる。これはうわさかもしれぬけれども、こういうふうにすらいわれておる。そういうことによって――憲法判断事項については何とも司法の独立だから言えない。しかし、裁判官の、人によってはいろいろな思想、考え方の持ち主、ニュアンスがある。したがって、そういう気の向いたような人を選べば、したがって最高裁の判決も右寄りなら右寄り、ますます右寄りになる可能性がある。これによって司法権の独立は間接に侵されるということは大いにある。  したがって、私はこの点は非常に重要だと思う。むしろ、憲法がこうなっているからしかたがないけれども、大体内閣の任命ということも相当問題だと私は思うが、これは憲法に関係する問題だから何とも言えないけれども、しかし、そういう危険すらある。それであるからには、やはりそれを保障するような制度は必要じゃないか。あなた方は意見がありませんと――非常にそれは消極的だね。どうですか、しかし意見はあるでしょう。あったほうが望ましいとかなんとかいう意見はあるでしょう。どうですか、長井さん。
  38. 長井澄

    ○長井最高裁判所長官代理者 意見があるだろうというお尋ねといたしますれば、それは個人としてあるいは市民として意見がないということを申し上げることはできないと思いますが、憲法問題に関しましては、裁判所としては裁判でのみ憲法上の役割りを果たしていくという立場にございまして、機関として政治的な意見を申し上げますことは、やはり司法権の独立を守る上からも慎重にしなければならないという考えに帰着いたすものと思っております。事務当局でございますから、ことに慎重に申し上げなければならないと思いますけれども、憲法を守ることに――先ほどの長官の年頭のおことば、内部的にはき然としてやっておるのであるから心配しないでやれというおことばにもございますように、事裁判に関しまして私どもは御懸念のないような体制でやっておるつもりでございますが、あとは世論によって御判断をいただくという以外に、いまの憲法の制度のもとではやむを得ないのではないかと考えておる次第でございます。  国民審査の制度の点も御指摘がございましたけれども、やはり任命以来いろいろな批判は浴びましても、その面で在任された裁判官への批判はやはり積極的な支持という結論を得ておりますので、この点につきましては形式論であるという御批判はもちろんございますけれども、機関といたしましての御意見は差し控えさしていただきたいと存じます。
  39. 畑和

    畑委員 終わります。
  40. 小島徹三

    ○小島委員長代理 青柳君。
  41. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、次の二つの問題について政府の見解をただしたいと思います。その第一点は、いわゆる国有農地の売り払いの問題であります。それから、その第二点は代用監獄の問題でございます。  この第一の問題については、本国会でも大いに論議をされております。その争点は、おもに買収価格の一坪二円六十銭で旧地主に売り払うのが不当であるという点に集中しているようでございます。そして、それはそれなりに大問題であることは当然でございますが、私はこの点は別にいま論じようとは思いません。それとは別に、この政令改正を行なった政府のやり方に問題があるのではないかと考えるものであります。  いわゆる国有農地は、戦後ポツダム宣言の線に沿って日本の封建制の残滓である地主制度を廃止するため、農地改革を行なうため自作農創設特別措置法を制定し、農地解放を実施して、耕作農民が小作人の地位から自作農となり、農業生産に意欲を燃やし、食糧生産に励み、日本農業の自主的、平和的発展に寄与するようにしたことに伴いまして、その手続として、一たん国有地として買収した農地がそのまま昭和二十七年制定の農地法に受け継がれて、引き続き国有地として保有されてきたものであります。本来、自作農創設の対象として保有すべきものであることはもちろんでありますが、その後日本の工業化が進み、経済の高度成長に伴いまして、それらの土地が、農地として利用するよりも工業用の土地として、あるいは自然環境または生活環境を保持するために利用することが社会福祉を達成するために合目的的であるという配慮あるいはその他の事情によりまして、自作農創設地の対象にされないままになっているというのが現状でございます。  このような土地を政府が国土の合理的な民主的な総合的利用の見地から、他の用途に転用することは、自作農創設のため買収したという当初の目的だけから見るならば、すなわち農地法の趣旨を狭く解する限り不適法であるという解釈も成り立つ余地はあるかもしれませんが、前に述べましたとおり、農地解放が日本の民主化をはかる目的をもって実施されたものであることをもあわせ考察するならば、農地法の趣旨を必ずしもそのようにのみ狭く解釈することが妥当であるとは考えられないのであります。  はたしてそうだとするならば、農地法施行令第十六条第四号の規定それ自体は適法なものであります。問題の最高裁大法廷の判例は、同令第十六条第四号が、農林大臣が農地法第八十条第一項の認定をすることができる土地として、「公用等の目的に供する」土地等として、それだけに限ると規定していないにもかかわらず、本文に「左に掲げる土地等に限り」とあるのをとらえて、あたかもこの規定が「公用等の目的に供する」土地に限っているものと狭く解釈したものであって、正しくないと考えます。しかもこのような規定をとらえて無効であるなどと論じたことは、明らかに勇み足といわなければならないと私は考えます。このことは、本年二月十三日公布された政令第十三号においても、農地法施行令第十六条第四号の規定を廃止せず、第五号ないし第七号の規定を新たに追加した点を見ても明らかであり、その限りにおいてはこの政令改正は別に違法なものということはできないと考えます。またそのときに、「左に掲げる土地等に限り」というのを文章において直しまして、「次に掲げる土地等につき」と「限り」という字を除いている点も、最高裁のような誤解を招かないためにはよろしいのかと思います。  ところで政府は、読売新聞の二月十六日夕刊の報道によりますれば、この最高裁判例は全面的に正しいものであるかのように解釈され、このような見解に従って施行令を前述のように改正するのは政府の義務であるとの統一見解をきめたとのことでありますが、この報道にして誤りないとするならば、このような統一見解がはたして判例に従ったものといえるかどうかという疑問が生じてまいります。なぜならば、最高裁大法廷判例は、農地法第八十条は「公用等の目的に供する」土地でなくとも、「当該買収農地自体社会的、経済的にみて、すでにその農地としての現況を将来にわたって維持すべき意義を失い、近く農地以外のものとすることを相当とするものとして、買収の目的である自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする状況にあるといいうるもの」はすべて「旧所有者への売払いを義務付けているものと解されなければならない」といっているのですから、せっかく前述のような施行令の改正をしてみましても、すなわち、さらに前述の第五号ないし第七号の規定を追加してみましても、その対象になりますのはわずかに三百ヘクタールであって、なお約三千ヘクタールの土地が残っているのですから、依然としてこれに限るものというような解釈をとられるならば、これらの改正もまた農地法第八十条第一項の委任立法の範囲を越えるもので、無効であるという論理的な結論にならざるを得ないと考えられるからであります。  はたしてそうだとするならば、政府がどのように政令を改めてみましても、いわばイタチごっこのようなものであって、改正の意味をなさないということにならざるを得ないともいえます。  私は前にも触れましたように、最高裁の見解は旧地主の買い戻し権をあたかも憲法二十九条の至上命令のごとくに誤解するのあまり、封建制への逆コースになることもあえておそれず、農地法第八十条が政府の民主的な国土の総合利用のための行政処分を認め、そのために農林大臣の認定基準を政令に委任した趣旨を全面的に否定し、右の認定は行政処分ではなく、「覊束された内部的な行為」にすぎないと解釈し、事実上政令を制定する余地のないものとした点において、重大な誤りをおかしているものと考えます。  なお、最高裁は、このような解釈をするに至った他の論拠の一つとして、「右認定は、その申立て、審査等対外的の手続につき特別の定めがない」という点をあげていますが、それは農地法の不備であると考えることはできるにいたしましても、これをもって右の農林大臣の認定を「覊束された内部的な行為」と断ずるのは当たらないと私は考えます。  最高裁判例といえども国民の批判の対象となることは当然であり、その批判にして正しいものであるならば、政府としてもその正しい批判に従って、つまり特定の最高裁判例を絶対視するのではなく、引き続き従来どおりの施策を実施し得るものと考える余地は残るものと私は考えます。なぜなら、特定の最高裁判例は、後になって最高裁が再検討することが可能であるからであります。最高裁人間によって構成されているのであって神ではないのですから、誤りをおかさないと断ずることはできない。  なお、私はいま述べたことの誤解を生じては困りますから、あえて付言しますが、政府がむやみに最高裁判例を否定し、違法と最高裁がいう施策を実施してもかまわないと言っているのではなくて、政府の解釈が国民の圧倒的多数の考え方からいって民主的なものと評価される場合に限っては、最高裁の判例と抵触してもなおそれを実施しても、憲法を無視したものとはいわれないのではないか。本件の場合についていうならば、政府は最高裁判例が出たからといって、急いで今度のような政令改正をするのではなく、すなわち無条件に売り払いをするような道を開くのではなく、第四号の規定を活用し、「公用等の目的に供する」という基準によってどしどし売り払いをするということでよかったのではないか。そうすることが農地法の真の精神にも沿うものであり、社会の一般感情にも従うと考えます。ところが、政府は昭和四十一年当時すでに旧地主側の要求に押されたのか、このような改正を計画しましたが、世論の反駁で見送りとなり、裁判所の出方を見守っていたという感じがいたします。そして今度この判例の出たのを機会に、あえて前述のような政令改正を行ない、責任はあたかも最高裁のほうにあるというように、転嫁しているわけじゃないでしょうけれども、そういうふうな感じがするのであります。しかし、実際問題として旧地主の強い要求を、これをもって満足させているのではないかというふうに解釈することもできないとは限りません。  私は、相当長くこの問題についての私見を述べましたけれども、法制局といたしましては、このような私の考え方が合理的であると考えるかどうか。国会議員として国政の運営が正しく行なわれているかいなかを検討する立場から、以上のように私見を披瀝いたしまして、法制局の法律的見解を承りたいと思います。
  42. 林信一

    ○林政府委員 ただいまるるお話がございました。私どもの立場といたしましては、少なくとも現行憲法が内閣に対しまして法律の誠実な執行を命じておる、これは内閣の職責でございます。さらに法治主義あるいは司法国家主義ということを原則といたします現行憲法のもとにおきまして、遺憾ながら私どもが確信をもってこの政令が正しいと思っておりましたその考え方と合わない、反対の趣旨の御判示があったわけでございますが、これらに対しましては、私どもの立場からはいま申し上げましたような理由で、これは従わざるを得ない、それが法というものである。いまお話しのように、法律論と実際の政策論あるいは政治論とが必ずしもかみ合わないという点がございますが、その政策の点は別個お考えをいただかなければならないというのが私たち考えであります。
  43. 青柳盛雄

    ○青柳委員 繰り返して申しますけれども、いまでも、改正後でも生きておりますところの施行令の第十六条第四号は、何も公共の用に供する土地だけに限っているというわけではなくて、「等」と書いてありまして、まだほかにもゆとりがあるわけです。それが何かしら本文のほうに「限り」とあったのに、最高裁があげ足とりみたいにして、そして農林大臣が適当な売り払いを考えるということに対して、これは覊束された行為だからもう認定の余地はほとんどないみたような、裁判所がもう独自的に判断ができる、だから行政の裁量などというものは全然考えようとしない、そして裁判所が認定すれば、これはもう客観的に農地としての対象にならないのだという認定をすれば、もう既得権益として、旧地主に売り払いを請求する権利が生じてしまうというような見解を貫いているわけですけれども、これに従わなければならないということは、政令に委任するという農地法八十条の趣旨、すなわち政府の行政判断を国民はこの農地法八十条第一項において認めているからこそああいう法律ができたのだ。  そこで私は、最高裁裁判所がそこまで介入することができるのかどうか、最高裁の判例だからといって、もう無条件降伏しなければならぬというようなものではないのじゃないかというふうにも考えるわけです。そういう点はおそらく判例批評としても相当今後論ぜられるだろうと思いますけれども、何か政府が、待ってましたとばかりに、四十一年にできなかったことを今度やってこういう物議をかもすというようなことに、政治姿勢としても問題があるのじゃないかというふうに思うのですが、その点について、法律を専門にやっておられる法制局ですから、政治のことはわかりませんとおっしゃられればそれまでですけれども、解釈として私の言ったような判例批評のようなものができないかどうかということを聞いているわけです。
  44. 林信一

    ○林政府委員 個人の立場といたしましてはいろいろ批評、評論もできると思いますが、いかにいたしましても、政府、内閣が解釈いたしました農地法第八十条、その解釈が間違っておるという最高裁の御判示でございます。先ほど申し上げましたように、われわれ、国会で御制定になりました法律、それに基づく法令、これには従わざるを得ません。したがいまして、今回この改正をあえていたしたわけでございますが、別に他意があったわけではございません。かりに政令の改正の有無にかかわらずそれをやらないといたしましても、最高裁の判示自体に従えば、旧土地所有者は裁判所に対して土地の売り払い請求ができる、そういう訴えを起こせるということでございますから、これはまことにやむを得ない措置であるということでございます。これを改正いたしませんと、政令の形をもとのままにいたしておきましたのでは、政府は最高裁の判決に従ってないというかのごとき外観を呈するわけでございます。そういう点を明らかにするという趣旨におきまして、政令の改正をあえていたしたということでございます。
  45. 青柳盛雄

    ○青柳委員 最高裁の判例をよく読んでみますと、第一審の裁判所にこの事件を差し戻しになりまして、一審の裁判所が係争中の土地について自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が存するかどうかを審理すべきである、裁判所が審理してそうだという判定を下せば、農林大臣の認定などというものは飛び越えて、もう権利を発生しているのだという、全く行政権などというものは要らない、客観的な事実を裁判所が判定するのだというような形で、政府が国土の総合的な民主的な利用ということで適切な管理運用をしようということに対して、何か権限侵犯といいますか一どうですか、そういうような問題については研究されたことはないのでしょうか。
  46. 林信一

    ○林政府委員 特にそういう問題について検討はいたしておりません。しかし、先ほど申し上げましたように、あくまで私どもは、行政を行なう上におきまして法令には従わざるを得ない、法令の執行は内閣の職責であるということは憲法にうたわれておりますので、これはいかにしても動かせないという考えでございます。
  47. 青柳盛雄

    ○青柳委員 繰り返してお聞きしますけれども、認定ということはこれは行政処分でも何でもないのだ、そういう見解もあるけれどむ、これは内部的なそういう覊束された行為だ、売り払いももちろん行政処分じゃない、こういうのですが、どうも国有財産などが、何らか客観的な事情が生じてくれば、もう売り払いは民事行為みたいなもので事務的に義務づけられるのだ、そこに行政的な配慮というものは全然入れる余地がないのだというふうなところまでいってしまうのは、はたして国政を国民の福祉、利益ということから考えて、責任を持つところの行政府に許されるかどうかというような点を私はやはりもっと研究すべきではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  48. 林信一

    ○林政府委員 改正後の政令あるいは最高裁の判決の趣旨に従いましてもなおかつ具体的なその土地が自作農創設等の目的に供する必要のあるものであるかどうか、こういう点につきましての認定は、最終的に行政府が責任を持ってやらざるを得ない。裁判所が個々のケースについて判定するわけじゃございませんので、そういう余地は残っておるということでございます。
  49. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そういう解釈だとすれば、裁判所で売り渡しを命じてもなお判断する余地が農林大臣にはあるという御趣旨ですか。
  50. 林信一

    ○林政府委員 もちろんその行政庁の判断が違法であるという最高裁判所の判断があればこれはまた別でございます。
  51. 青柳盛雄

    ○青柳委員 どうも判例をよくお読みになっていらっしゃるかどうかわかりませんけれども、判例のほうではもう直接裁判所に売り渡しを請求できるのだ、裁判所にそういうことを訴えて、それで旧所有者は判決の結果として強制的に所有権を自分のほうに戻すことができるのだというふうにも読めると思うのですけれども、そうは読んでいないわけですか。
  52. 林信一

    ○林政府委員 昨日もこの席で申し上げたことでございますが、判決の文章によりますと、「旧所有者は、買収農地を自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、法八〇条一項の農林大臣の認定の有無にかかわらず、直接、農林大臣に対し当該土地の売払いをすべきこと、」を求めることができる。こうございます。したがいまして、買収農地を自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じたかどうか、この判断は個々のケースにつきましては、まず第一次的には売り払いをいたします行政庁それ自体が自己の責任でしなければならない、そういうことになります。
  53. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そうすると、まず認定の有無をその関係者は確認した上でなければ裁判所には訴えられないということになりますか。
  54. 林信一

    ○林政府委員 多少ことばが足りませんでしたけれども、認定行為は国が積極的に旧所有者に売り払いをする場合でございます。これを怠っておりました場合は、旧所有者が国を相手にその土地を売り払えという請求ができる、国はそういう請求が出てくる前に自分の責任でそういう行政を執行しなければならないという趣旨でございます。
  55. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この問題はさらに論議を尽くすことにいたしまして、時間がありませんから次の問題に移ります。  第二の問題は、昨日の法務委員会におきまして官房長のほうから本国会に提出予定法案として「刑事施設法案(仮称)、現行監獄法を、より積極的に被収容者の基本的人権の保障と受刑者に対する効果的な矯正処遇・社会的復帰の促進をはかる観点から、全面改正すること。」という趣旨の内容のものを用意しておられるということでありました。これは前々から旧監獄法の不備あるいは時代おくれになっておるような点が多々ありますので、こういう改正をするということは望ましいものと考えられているわけでありますが、そのことに関連いたしまして、前々から在野法曹の間でも問題になっております弁護人と被疑者、被告人との接見交通権の問題でございます。  これは、日本弁護士連合会の人権擁護委員会でも取り上げたことがありますし、また各地の弁護士会でも取り上げたことがあるわけですが、ことしの一月二十二日に長野県弁護士会が「長野県内各警察署等における接見室の実態調査報告書」というものをつくり上げました。これはいわゆる代用監獄を主体といたしましてその実態を調査したものでございます。それによりますと、この接見交通を行なう接見室というものの設備が非常に不完全であるということが主として明らかになっております。「調査対象中、警察署の二一・四%が接見専用の室を設置していなかった。被疑者、被告人の弁護人との秘密接見交通権は、何人にも監視されず、漏聴のおそれなく、自由に接見し得ることをその具体的内容とするが、取調室がそのまま接見室に早替りしたり、宿直室が接見室に代用されることは、漏聴の点からも又被疑者に常時官憲に監視されているのではないかとの心理的圧迫を与える点からも、権利を確実に保障する方法とは認められない。速かに、独自の接見室を設置すべきである。」ということがいわれ、また、「調査対象中、五七・六%が声が外に漏れ、九%が漏聴の危険を感じさせ、完全に漏聴のおそれのないものは三三・四%にすぎなかった。接見交通の秘密性は、現実に声が外に漏れないばかりか、心理的にも漏聴の危険を感じさせないことが大切である。」こういうようなことで、具体的にはどういう状況かというと、「接見室の扉や、隣室・廊下との仕切り材が薄いため。」とか「扉がよく閉らない」とか「建物が老朽していたり、仕切り材が貧弱なため」であるとか「通風用の格子窓が造作されている」とか、いろいろ具体的にあげております。  私は、ここで法務省にお尋ねをいたしたいのでありますが、この代用監獄制度というものが監獄・法の規定できめられているわけで、警察署の留置場がこの被疑者、被告人を拘置所と同様に留置できる、拘禁できる、そのほかに懲役または禁錮に処せられたものは一月以下ならば置いてもよろしいというような規定があるのでありますが、この代用監獄というものをいまの時代に依然として警察まかせでやっているということがはたして人権擁護の観点からいって適当であるのかどうか。どうも刑務所は既決囚を扱うところであり、拘置所は未決を扱うところであるという程度のことはだれでもわかっておるのでありますが、この留置場が全く拘置所と同じ役割りを演ぜられているということに大きな問題があると思うので、今度の改正にあたってはこの点はどう考えておられるか、それをお尋ねしておきたいと思うのであります。
  56. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 ただいま御指摘の監獄法改正につきましては、鋭意努力中でございまして、まだ部内、部外の関係者と未調整の部分がかなりございますので、内容が確定的になったというわけではございません。  お尋ねの代用監獄の点も同様でございまして、まだ確定的ではございませんが、大体の方向と申しますか、いままで作業してまいりましたものの考え方を簡単に申し上げますと、やはり当面の状況と申しますか、当面のいろいろな事情を勘案いたしますと、代用監獄というものを全廃してしまうというわけにはなかなかまいらないのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  57. 青柳盛雄

    ○青柳委員 どういう観点から全廃できないというのか、この点もお聞きしたいのでありますけれども、司法警察職員が犯罪の容疑者を逮捕して取り調べをするという場合には、自分の手元に置いておいて朝な夕な夜中でも自由に取り調べができるというほうが便利であることは事実でございます。また、弁護人など面会に行く者も、遠く離れた拘置所に入れられてはなかなか簡便に行かれないから、もよりの警察署の留置場にあるほうがよろしいというような便宜的な考え方もありますけれどもあとのほうは人権尊重の立場からいうならば、弁護人の便利だけのことを重視すべきではないというふうに考えるわけであります。むしろ第一の点、警察が被疑者をいつまでも俗に言う豚箱に入れておいて好きなときに引っぱり出してきて調べる。そういう中で拷問というような問題あるいは自白の強制というような問題がひんぱんに起こってくる。よく法廷でも暴露されるわけでありますけれども、朝の八時ごろから夜の十一時から十二時ごろまでぶつ続けに調べられたなどということがありますけれども、これは拘置所で預かっている被疑者、被告人でありますれば、警察は、そういうかってなことはできないわけであります。勢い人権は尊重されるような物質的な保障がそこに出てくるわけでありますが、代用監獄というものが民主主義の現代において依然としてまかり通っておるというようなことについて何ら反省をしない、これは問題にならないということ自体、いささか監獄法の改正を考える立場の法務省として手落ちではないか。この問題について警察庁当局などと何か相談をしたことがありますか、どうですか。
  58. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 まだ内部の関係者と調整の段階でございまして、警察庁とは調整をいたしておりません。
  59. 青柳盛雄

    ○青柳委員 今後これをおやりになる方針はお持ちになっていらっしゃいますか。
  60. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 これとおっしゃいますと……。
  61. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いまの警察庁のほうの意向というものを聞き、両者の間でこの問題をどう解決するか。
  62. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 その点警察庁とは意見を調整すべき時期が来ると思います。
  63. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この代用監獄について、法務省は何か経費を償還するだけのことであって、警察庁に対していろいろと指揮監督はできないらしいようでありますけれども、この問題、被疑者、被告人の人権にかかわる問題について、警察庁が留置場の施設を非常に悪くしているというようなことの注意を喚起するというようなことはやる権限がないし、そういうことをやる気もないということになりましょうか。
  64. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 御指摘のとおり、法務省といたしましては警察庁に対しましてこの代用監獄に対する監督権というものは現行法上ないということに相なっております。ただ、私ども承知いたしておりますところでは、たとえば先ほどお話のございました長野県のほうで御調査になりました結果等につきましても、警察庁は警察庁なりにかなりこの調査の御意見を尊重して大いに改善すべき点は改善するというふうに努力しておられるように承知をいたしておるわけでございます。
  65. 青柳盛雄

    ○青柳委員 おしまいにします。
  66. 小島徹三

    ○小島委員長代理 次回は、来たる十九日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十一分散会