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1971-04-27 第65回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月二十七日(火曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君   理事 三ツ林弥太郎君 理事 千葉 七郎君    理事 斎藤  実君 理事 小平  忠君       江藤 隆美君    鹿野 彦吉君       熊谷 義雄君    佐々木秀世君       澁谷 直藏君    瀬戸山三男君       高見 三郎君    中尾 栄一君       別川悠紀夫君    森下 元晴君       山崎平八郎君    渡辺  肇君       角屋堅次郎君    田中 恒利君       芳賀  貢君    長谷部七郎君       松沢 俊昭君    瀬野栄次郎君       鶴岡  洋君    二見 伸明君       小宮 武喜君    津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         食糧庁次長   内村 良英君  委員外出席者         農林省農林経済         局統計調査部長 中沢 三郎君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ————————————— 四月二十六日  国有林野の活用に関する法律案成立促進に関  する請願外九件(松澤雄藏紹介)(第五〇〇三  号)  同外一件(椎名悦三郎紹介)(第五一〇五号)  同外一件(稻葉修君紹介)(第五一〇六号)  狩猟者団体法制定に関する請願外五件(吉田実  君紹介)(第五〇一一号)  同外三件(大野明紹介)(第五〇一二号)  同(佐藤文生紹介)(第五〇一三号)  同(河野洋平紹介)(第五〇一四号)  同(中曽根康弘紹介)(第五〇一五号)  同外二件(石井桂紹介)(第五一〇八号)  同外二件(大平正芳紹介)(第五一〇九号)  同(神田博紹介)(第五一一〇号)  同外二件(島村一郎紹介)(第五一一一号)  同外一件(武部文紹介)(第五一一二号)  同(辻原弘市君紹介)(第五一一三号)  同(西村英一紹介)(第五一一四号)  同(藤本孝雄紹介)(第五一一五号)  同(益谷秀次紹介)(第五一一六号)  同外十件(松野幸泰紹介)(第五一一七号)  同外四件(山本幸一紹介)(第五一一八号)  同(小金義照紹介)(第五一五九号)  同外二件(河野洋平紹介)(第五一六〇号)  同外二件(菅波茂紹介)(第五一六一号)  同外二件(田中榮一紹介)(第五一六二号)  同外二件(西岡武夫紹介)(第五一六三号)  同(廣瀬正雄紹介)(第五一六四号)  同(福田篤泰紹介)(第五一六五号)  同(森喜朗紹介)(第五一六六号)  同(稻村左近四郎君紹介)(第五一六七号)  外国産豚肉の輸入抑制に関する請願井出一太  郎君紹介)(第五一〇二号)  同(増田甲子七君紹介)(第五一〇三号)  米価物価統制令適用廃止反対に関する請願  (小林進紹介)(第五一〇七号)  同(小林進紹介)(第五一六九号)  BHC等有機塩素系農薬全面禁止に関する請  願外二件(坊秀男紹介)(第五一六八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(米価問題)      ————◇—————
  2. 草野一郎平

    ○草野委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  3. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 私はことしの生産者米価決定にあたりましての農林大臣のものの考え方につきまして、御質問を申し上げたいと思います。  まず第一点といたしましては、私は米価をきめるところの順序といたしましては、まず最初に食糧管理法の第三条第二項によるところのその方針に基づきまして、そして農林省設置法に規定されておりまするところの米価審議会、その米価審議会お開きになって、そしてその米価審議会に対するところの諮問をやって、諮問をやってから答申を受け、その結果、米価がきまるようになっているんじゃないか、こういうぐあいに私考えますのですが、農林大臣はどうお考えになっているか、まずもって御質問いたしたいと思います。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そのとおりであります。
  5. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 そのとおりであるというところの御答弁でございますが、政府のほうといたしましては、昭和四十六年度の予算編成をおやりになるときに閣議決定がなされていると思います。その閣議決定といたしましては、米の生産調整について、その七といたしまして、昭和四十六年産米生産者米価水準は据え置く、こういうことをはっきりときめているわけなんであります。そうしてまた、一月二十二日の衆議院本会議におきまするところの佐藤総理大臣施政方針演説の中におきましても「生産者米価水準は、これを据え置く方針であります。」こういうふうにして、ちゃんと言明をしておられるわけなんであります。そうなりますと、いま農林大臣がそのとおりでございますというところの御答弁が行なわれましたけれども、すでに米価審議会を開く前に政府のほうとしては米価据え置きをきちんときめて米価審議会お開きになっている。こうなれば、米価審議会なんというのはあってないのと同じような結果になってしまうのじゃないか、この点についてどうお考えになっているか、お伺いしたいと思うのです。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 松沢さん、御存じのように、予算編成するのでありますからして数字の問題が出てまいります。政府は、予算編成方針としては米価水準を据え置く、こういうので、そういう考えを明らかにいたしておる次第であります。一方、ただいまお話にありましたように、法律に基づいて米価決定米価審議会意見を聞くと、こうなっておるのでありますから、そこでただいま米価審議会委員にお集まりを願って、それぞれの御意見を拝聴して答申を出していただく、実際の米価はその答申を待って決定をする、こういうことであります。
  7. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 いま米価正式決定はそういう方向で行なわれるにしましても、総理大臣施政方針演説の、要するに水準を据え置く、それから閣議決定昭和四十六年産米生産者米価水準は据え置くという、要するにこの方針は、一向変わっていないんじゃないですか。ということは、私は時間がございませんから、算定方式内容につきましては、いずれかの機会に譲りまするけれども、たとえば昭和四十三年から米価というものは五・九%上がったきり、その後ずっと据え置かれているわけなんであります。昭和四十三年までの算定方式は九年間続いているわけなんであります。その九年間続いているのを、四十四年になりましたところが、三年間の平均反収からいままではワン・シグマを引いておったわけなんですが、それを〇・五四シグマに切りかえる。今度四十五年になりましたところが、その方式でいくと、さらに物価賃金も上がっておる。したがってそれをさらに引き下げるためには、このシグマを全部取ってしまう。そうして平均反収方式に切り変えられる。それでもなおかつ米価というのは上がるのであるから、付帯労働時間というのを差し引く、あるいはまた利益還元のメリットを取ってしまう、こういう方式米価水準を据え置くというところの方針で、米価はこの三年間ちゃんと据え置きをなさっているわけなんです。そういうことは、いま大臣が御答弁されたところの答弁とはいささかやはり違っておりまして、私が冒頭申し上げましたように、一たん閣議できまり、総理大臣方針がきまってしまえば、もう米価は引き上げるわけにいかないということの状態になっているじゃないか。そういうような状態の中で米価審議会を開かれるということは、米価審議会を無視していると言っても私は過言でないと思うのです。くだらないような審議会を何で開かなければならないか、国民はそう思わざるを得ないわけなんです。こういう点につきまして一体どうお考えになりますか。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 われわれは米価審議会十分尊重をいたして、委員方々のそれぞれお述べいただく御意見速記録もとっておりますし、私どもも十分に拝聴をいたしまして、その御答申を尊重して米価決定いたすということには変わりはないわけであります。したがって今年も同じことをやっておるわけであります。政府は、予算編成にあたりましてその編成方針として米価水準は変えないというたてまえをとりましたが、先ほどいろいろ算出方式についてお話がございましたけれども、私どもといたしましては、国民多数が十分御理解なさっておられるように、現在のわが国の米穀の需給状況ごらんのとおりであります。したがって、このままでただいたずらストックを積み重ねてまいるということが、農業に従事していらっしゃる方をはじめ、国民全体のためにどういうことになっていくであろうかということを考えましたときに、われわれはやっぱり、他の方面にもずいぶん変転きわまりない状況に対処して近代化していかなければならないと同様に、農業においても、生産者をはじめわれわれはそういうことについておくれをとらないように近代化し、その需要の大きい方面に向かって生産を拡大していくということは必要なことではないかというので、先般御審議を願いました四十六年度予算におきましてもそういう方向農業に関する予算を計上いたしておる次第であります。私は、良識のある多数国民は私ども考えについて十分理解をしていただけるものであると確信をいたし、またそういう考えのもとに、ただいま委員方々にも私ども考えを申し上げ、それに対して委員各位の真摯な御意見の吐露を承っておるのが現状であります。
  9. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 農林大臣予算米価をきめてしまうということは私は不可能なんじゃないかと思うのですよ。と申し上げますことは、御承知のように、これは農林省から出してもらったところの資料なんでありますけれども昭和四十年を一〇〇といたしました場合において、昭和四十五年の生産者米価の指数というのは一二六・五になっているわけなんです。物価はどうなっているかと申し上げますと、物価は一三〇・七、それから賃金はどうなっているかというと、製造業の場合におきましては一九七・三と、こういうぐあいにして値上げが行なわれているわけなんであります。したがって私は、食管法の第三条第二項で米価をきめていくということになりますならば、予算編成をおやりになるとき、据え置きをするとか、あるいは閣議でそういう決定をやってそれをもとにしてその拘束の中で審議が行なわれるというような審議会というものは全く無用なものになってしまうのじゃないか、こう思うのであります。米価審議会はあくまでも第三条第二項の米価方針を受けて立って審議が行なわれてしかるべきものなんじゃないか、こう思いますが、こういうふうにして物価が上がり賃金が上がっている、こういう状態の中で据え置き方針というのをおきめになるということは私は非常に問題があると思うのです。御承知のように比嘉正子さんが委員になって、このままの米価であっては農民はめしを食っていくわけにいかない、自殺するでしょう、こういう農民の声に対しまして、自殺者が出るなら見ましょう、そういう問題のある発言を昨年やったことは、大臣承知のとおりであります。その後一体何人死んでいますか。十九人も自殺者を出しているじゃないですか。しかもきのうも米価審議会の会場で新潟県の農民が一人死んでいるわけなんであります。こういう非常に切実な状態に入っている。その中で日本の農政を担当するところの農林大臣が、そんな機械的な、慣用的な答弁で事が済まされると思っているのですか。その点を明らかにしてもらいたいと思うのです。  同時にまた、あなたは生産を高めていこうということを言っておられますけれども、ことし農林省が発表いたしましたところの農業白書から申しまするならば、米を一〇〇として勘定していった場合におきましては、昭和四十年には八八%の需給率であったところのその主食というものが、昭和四十五年になりますと七六%に下がっているわけなんですよ。したがって、農業生産が拡大されているなんという状態は、あなたはそういうことを言っておられますけれども、全然あなたと逆な方向をたどっている。むしろ需給率はがたがたと低下しているわけなんです。この上さらに米価据え置きをやり、減反をやるということになれば、一そう日本農業というのは縮小されるにきまっているわけなんですよ。あなたは農林大臣でありながらそのことをおわかりにならぬのですか。その点についてもあわせて御答弁を願いたいと思うのです。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米価予算のとききめたきめたとおっしゃいますけれども、私ども予算編成にあたって政府考えを示したということで、したがって実質米価は米審の答申を持って、種々御意見を勘案して決定をいたすことは御存じのとおりであります。これは本年に限ったことではありませんで、ずっと継続をいたしておることであります。米価決定米価審議会答申を見てその上で決定をいたすということは、従来からやりきたっておる事柄であります。  それから、ただいま農業全体についてのお話がございました。私ども、米というものだけを取り上げて考えてみますと、米をつくっておいでになる農家方々の身になってみれば、さぞ御心配でもあり御不安な点もあるかと存じます。そういう一こまを考えてみると、まさにそのとおりでありまして、したがって、どういうふうに日本農業全体を位置づけていくかということが先行しなければならないことは、しばしばこの席でもお話し合いが出ておるところであります。米の生産は、技術が進歩いたした結果どんどん反当収穫がふえていく。しかるに国民食生活が変化してきまして、農村においてすら一人当たり消費量が毎年減退をいたしておる事実は否定することのできないことであります。同時に、米の消費が減る反面において、肉類であるとか、野菜、くだもの等の一人当たり消費量が逆にふえていく。こういうことを考えますと、従来のままで米の生産を続けておるということの不合理さは、日本においてはどなたも御理解がいただけることだと思います。したがって、昨年は百万トンの生産調整をお願いいたしたにもかかわらず、農家方々には百三十九万トンの生産調整をしていただきました。本年もまた単年度需給ということを考えまして二百三十万トンをお願いいたしておるのでありますが、大体において地方庁や団体からの報告によりますと、生産者はそれぞれ御苦労を願い、御協力をいただいておるような次第でありますが、そのかわりに私どもとしては去年は一年度限りの様子を見たのでありますが、昭和四十六年度におきましては先般御決定を願いましたように五カ年間にわたって休耕及び転作奨励金を差し上げる、こういうことにいたしたことも御存じのとおりであります。すなわち、余っておるものの生産調整するが、不足しておる農作物の拡大、増産といいものに全力をあげるためには、いまお話し申し上げましたように、生産調整奨励金は千六百九十六億、それから転作だけに直接投資いたしておる予算が四百二億ほどであります。しかもその上に食管赤字繰り入れもあれば、またストックをいたしております米を四年間で始末をするという赤字補てんの予算等、本年から計上いたしておることは御存じのとおりであります。そういうようなことを考えてみますと、米に重点の置かれた農業でありましたけれども、これからはそういうことについて方向転換をしていかなければならないときにいま迫られておる。したがって、米づくりの方、しかも単作地帯方々にとっては多くの問題が残されておりますが、そういうことについて政府全力をあげて御協力を申し上げるし、同時にまた転作可能な地域につきましては、そういう転作によって農業所得をふやしていただくように、そういうことについての政策的な転換予算にも計上いたしておるわけでありますので、私ども米づくり農家の方のことを考えますときには非常にいろいろ心痛いたす点もありますが、多くの方々に今日の日本農業全体についての十分な御理解を持っていただきますならば、私は政府の態度については御協力が願えるものではないかというふうに考えておる次第であります。
  11. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 米が余っている、米が余っているというふうに政府は宣伝しておりまするけれども小麦輸入というものがたいへん膨大にされてきていることは御承知のとおりなんであります。しかもその小麦輸入によって米が余らされているというのが実態なんじゃないですか。しかも小麦輸入農林省指定業者というのは、住友だとか三井だとかいうところの財界がやっているのじゃないですか。あるいはまた、小麦粉をつくっているところの製粉資本というのは四大メーカーによって占められている。これは財界じゃないですか。参議院の青島議員が、自民党は財界男めかけである、こういうことを言ったじゃないですか。そういうことを言わせるような状態小麦輸入というのをどんどんやっている。これが米の余剰の大きな原因であると私は思うのです。しかもその小麦の柱といたしましては、MSA小麦協定というのがあったのじゃないですか。MSA小麦協定による円払い決済によって代金を出した、その代金はどの方向にどういうふうに使われたのですか。その点をはっきり説明してください。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 小麦お話がありましたけれども、皆さんも御存じのように、小麦消費につきましては、これは政府が強制しているわけではありません。ごらんのとおり、終戦以来いろいろな角度で日本人の食生活に変化を生じてきた。したがって、日本人たちのパンに対する、小麦に対する感触というものは非常に定着をしてきております。これについて私どもは、できるだけ米の消費量をふやすために、行政的にはできるだけ小麦輸入量を減退させるような気持ちを持って行政はいたしておりますけれども国民に、米が余っているんだから米を強制的に食わせるということはなかなか不可能であります。そういうことのために、現在の小麦につきましては、御指摘のようにかなり大量に輸入はされておりますが、これから私ども小麦生産につきましていろいろ努力をいたしまして、わが国の国産でもできるだけ増産のできるようにいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  13. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 私は、MSAのこの協定内容、これを見ますると、その円払い決済で支払いされたところの八〇%というのは在日米軍物資調達のために使われており、二〇%というのは日本軍隊建設のために使われたんじゃないですか。これだけははっきりしているでしょう。そういう状態の中で、政策手段によって米から麦に食生活転換をやらせている、こういうふうに断定しても私は差しつかえないと思うのですよ。その点を明らかにしてもらいたいということを言っているわけなんです。  それからその次には、食糧管理法違反というのが昭和二十二、三年ごろあったはずなんです。米が足りないときに強権発動によって家さがしをやって、あなた方は農家から米を奪い上げたわけなんですよ。その件数を警察庁できょう私は調べてみましたところが、にわかなんでありますが、昭和二十三年だけでも四十二万一千九百六十件にのぼっているのですよ。四十二万人の人間が、農民強権発動を受けて不供出罪に問われているわけなんです。その当時の米の値段は一体どうであったかというのです。その当時の米の値段というのは、いまこそ米の値段が高いということをあなた方は言っておりますけれども、その当時は国際価格よりも日本の米の値段のほうが安かったんじゃないですか。どうですか、その点。強権発動をやるときにおいては、国際価格よりも安いところの値段で奪い取ったわけなんです。そうして四十二万人の多きにのぼるところの農民に対しまして強権発動をやってきたんじゃないですか。その点は一体どうお考えになりますか。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 急な御指摘でありますので、一ぺんよくあなたの言うようなお話があるどうか調べてみます。
  15. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 それは、だからはっきりしてもらいたいと思うのですよ。これは農林省のちゃんと資料から出ているわけでしょう。昭和二十七年までは、米価はあべこべに国際価格のほうが高かったじゃないですか。そうでしょう。その当時においては強権発動をやったんじゃないですか、あなた方は。今度米が余るからといって値段を安くするという、そういうべらぼうな方法というやつはないと思うのですよ。そうして、マスコミ等を使って、あなた方は農家をいままで保護をやってきた、こういう宣伝を盛んにやっているわけです。農家が保護されたところの時期というのは一回もありませんじゃないですか。どうですか。四十二万人に対して強権発動をやったんです。警察庁がちゃんと調べているわけよ、ここに。その当時の国際価格日本国内価格よりも高かったんですよ。今度は需給均衡ということによって米価を据え置こうということは、これこそほんとうに食管法違反じゃないですか。食管法というところの法律は一貫してあるわけなんです。昭和十七年から今日まで一貫して続いているわけなんでしょう。その法律のもとに、米が足りないときにおいては、強権発動によって米を奪い上げ、米が余ったら、今度はこの需給調整、いわゆる需給関係を反映させたところの米価にしなければならないというようなことは、理屈にならぬ理屈じゃないですか。こういう点、大臣はどうお考えになっておりますか。
  16. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 昭和十七年に食管法がつくられました当時の事情は、もう日本じゅうどなたもよく御存じのとおりであります。非常に欠乏しておったときで、しかもいまお話のありましたような、当時の官憲は確かに供出のために非常な状態を行なったかもしれません。私どもといたしましてはそういうことを考えてみますと、農業者についてお気の毒だと当時も思っておりましたし、しかし私ども自身が食いものの乏しい時代でありましたので、供出をしていただくことについてはありがたいことである。そういうことを考えますと、農業にいそしんでおいでになります方々には、われわれは消費者立場で心から感謝の意を表せざるを得ないことは当然であります。したがって、ことに農林省に奉職をいたします私どもとしては、この農業者生活の安定、環境の改善等について最善の努力をすべき義務の立場にあるのでありますから、もちろん農業者のためによかれということの施策を実行いたしていくことは当然であります。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、いまの需給事情を勘案いたしますというと、これは農業者利益をはかり、農業生活改善をはかるという立場には立ちながらも、生産調整はしていただいて需給のバランスをとっていただくようにしなければ、日本全体の経済のためにも、農業者のためにも利益にはならないのでありますから、そこで転換先作目についてはできるだけの御協力政府予算でしなければなりませんし、その地域地域に妥当いたしましたような作目生産者あるいはその団体あるいは県知事、市町村長たちがそれぞれ将来に対する展望と計画を持っておいでになりますので、それらを取り上げて、たとえば小規模な土地改良をやるとか圃場の整備をやるとかということについては最大の御協力を申し上げて転換しやすいようにして、そのほうに進んでもらいたい、こういうことのために努力を続けておるのでありまして、私ども多くお目にかかります生産者あと継ぎ若者たちに聞いてみますというと、われわれがお目にかかる範囲の人たちは、かなりの将来に対する望みをお持ちになりまして努力をしていらっしゃることとお見受けいたすのでありますが、私どもとしては、米の生産調整はやっていただかなければならないが、農業が他の方面転換することに最大の努力をしていただくことについては、政府の行政面においてできるだけのことをいたさなければならない、こういうことでありますので、その点に生産者も十分な理解を持って御協力をしていただきたいと、こういうことをお願いしているわけであります。
  17. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 あなたはそういうことを言っておられますけれども農民立場に立って具体的にそれが行なわれているということであるならば、そうなれば十九人の自殺をするところの人は出てこないと思うのですよ。  それからもう一つの問題といたしましては、あなた方があまり急なやり方をやるために、たとえば佐藤造機のようなそういう農業関連産業がつぶれているんでしょう。下請の産業がつぶれているんですよ。日本全体があなたの農政によって混乱しているんでしょう。農民は困っているのじゃないですか。農業関連産業が困っているこの現実をどう見られるかということですよ。困っているけれども将来何とかなるだろうなんというところの農政は私は農政でないと思うのですよ。いま困っているこの現実を困らせないようにしながら方向転換をやるのであるならば方向転換をおやりになったほうがいいでしょう。現実はそういうわけにはいってないでしょう。あなたの答弁というのと現実というのはあべこべになっているところに問題があるわけなんですよ。その点をどうお考えになるかということです。これを第一点お聞きいたしたいと思います。  それから第二点の問題といたしましては、きのう米価審議会の席上におきまして問題が起きた。どういう問題が起きたかというと、生産者代表は、もはやちゃんと米価閣議決定によってきまっている、総理大臣施政方針演説によって据え置きがきまってくるわけだ、答えがきまっておるから、答えが出るように試算だけの方式だけは変えていく、こういうようなやり方で米価審議会政府が臨まれるということであるとするならば、われわれはこの席をける以外にないというわけでけったでしょう。そうしてあなたの答弁待ちというところの状態になっているわけなんです。一体あなたは、きょうは国会に拘束されておられますけれども、あなたが出てそうしてはっきりしたところの答弁、つまり算定方式というのを変えて、そして私がいままで申し上げましたような実情を十分に参酌をしたところの試算を出さざる限りにおいては、生産者の代表はあなたの米価審議会には臨まないという方針になっていると思うのですよ。その場合、もし臨まないという状態になった場合において、あなたは生産者代表の不在の中で生産者米価というのをおきめになるのかどうか、この点をお伺いしたいと思うのです。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農業転換につきましては、これはもう政府もあらゆる機会に政府考えを申しておりますし、予算委員会においても予算編成方針についてお答えいたしておりますので、皆さん方は十分御理解をいただいておると思いますが、私どもといたしましては一億をこえるわが国のような大国で、いざというときに国民食糧をできるだけ自給度を高めておきたい、こういう考えを基本に置きまして農業生産というものの重大性については考慮をいたしながら行政をやっておることは御存じのとおりであります。そこで私がしばしば申し上げますように、農業それ自体を考えてみますと、やはり転換をしていかなければならない時期にきておることは否定のできないことだと思います。農業をやっていらっしゃるいわゆる農民と申しますか農業者、そういう方のお立場もわれわれは考えなければなりません。それからそういう人たちの住んでいらっしゃる農村地域というものを別個に考えなければなりません。それから一方においてわれわれの任務は国民に食糧を供給するという食糧省的な性格についても忘れることのできない大事な地位でございます。そういうことを考慮いたしてみますと、私どもといたしましては狭いながらも日本全体のこの国土の面積の中の六八%が山林であって、一八%が耕地だといわれております。この美しい緑を保護しながら、しかも農業というものによって国民食糧を供給すると同時に、国民保健の大事な場所を維持していくということは農業に与えられた重大な職務でありますので、それには経済的にもやはり安定していただくということが必要でありますので、そういうことに対しては私どもは一生懸命で努力をしなければならないことは当然なことであります。したがって、いまの大事な問題を処理してまいります大事な任務からして、私どもといたしましては米の生産調整はやむを得ないが、これをひとつできるだけ政府に御協力を願って必要な他作物への転換に大いに御協力を願いたいという方針を打ち出しておるわけであります。  第二点につきまして申し上げますが、それはいま私は米審、きのうの散会のときにはちょうどおりませんでしたので事情をよくつまびらかにいたしておりませんが、やはり米価審議会に御足労願っております委員各位は各方面方々でありますので、十分にひとつ米価審議会においてそれぞれの方の御意見を吐露していただきまして、そういうことを参考にいたしまして実質的米価決定政府がいたすわけでありますので、それぞれの方々の十分な御意見を承るようにいたしたい、こう考えておる次第であります。
  19. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 最後ですが、確認をいたしますけれども、あなたの答弁というのは美辞麗句を並べるだけの答弁であって具体性が非常に乏しいと思うのです。それで私は申し上げますけれども生産者代表が引き下がった。ここに生産者代表というのはいなくなるわけで、そのときにおいても米価審議会お開きになってそして米価はおきめになるのかどうかということです。  それともう一つは、やはり佐藤総理大臣施政方針演説、それから閣議決定、要するにこの拘束からのがれることは絶対にできない、こういうぐあいにお考えになっておるのか、この二点を明確にしてもらいまして、もしあなたは総理大臣方針を曲げるわけにいかないということになれば、この席に内閣総理大臣に出席をしてもらいまして、そして社会党のほうとしては総理大臣の所信表明を聞きたい、かように考えるわけなんです。でありますから、その点具体的に御答弁を願いたいと思います。
  20. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 佐藤総理大臣施政方針演説というのは御存じのように閣議決定をいたしまして、それを総理が政府方針として述べることでありますので、米価はこうしなければならないなどという指図は受けたことはありません。予算編成にあたりまして米価の取り扱いはどうするかということでありますので、政府といたしましては米価水準は据え置く方針ということに閣議決定をいたしておる次第でありますが、先ほども申し上げましたように、それは政府予算編成に際する方針でありますから、実質米価決定いたすときには米審の御意見を承った上でそれぞれの機関にはかって決定をする、こういうのが実際でありますので、米価審議会の御答申を得るようにいたしたい。生産者の者がいなくともやるのかやらないのかというお話しでありますが、そういうまだ報告を聞いておりませんのでどのようになっておりますか、私は委員会が済めば一刻も早く米審に帰りまして皆さん方の御意見を承ることにしておりますのでそのように御理解を願います。
  21. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 時間も参りましたのでこれでかわります。
  22. 草野一郎平

    ○草野委員長 芳賀貢君。
  23. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、昨日農林大臣米価審議会諮問をされたわけですがその諮問の主文によりますと、これは全く従来の米審に対する諮問とは異質のものであるということがいえるわけです。したがって、これは食糧管理法の趣旨に反する諮問だと指摘しても差しつかえないと思うわけであります。理由といたしましては、ことしの諮問は「昭和四十六年産の米穀の政府買入価格については、米穀の需給の均衡を図るため米穀の生産調整が行なわれている本年の需給事情に即応して生産費および所得を考慮して決定することにつき、米価審議会意見を求める。」これは最初から米審に対して据え置きを押しつける強迫的な諮問であるということは明らかであります。これを諮問の末尾を変えて、たとえばこういうことにすれば、昭和四十六年産の米穀の政府買い入れ価格については、米穀の需給の均衡をはかるため米穀の生産調整が行なわれている本年の需給事情に即応して生産費及び所得を考慮して決定することとして、そのあとへ米価審議会長小倉武一と署名すれば、これはこのとおりの答申ができるということになるわけです。最初から答申をこのようにしろということを強要した、これは強迫的な据え置き諮問であるということはもう弁明の余地のないことであります。こういうことをやるから、ことしは特に新聞、テレビにおいても決して三年据え置き論を支持しておらぬでしょう。三年据え置きのごまかし米価をつくって米審に諮問をしたということを一斉に論評しておるわけです。こういうごまかし米価を強要して諮問をするということになれば、米審の意見を尊重して政府が実行米価をきめるということにはならぬということは、米審の委員全員がもう最初から承知しておるわけです。だから昨日は生産者代表の委員である全中の宮脇委員をはじめ、四名の委員が、このような三年連続据え置きのごまかし米価を最初から諮問するようなことであっては米審においてまじめな論議をする必要がない、これを撤回して、食糧管理法に基づいた正しい諮問米価の試算においても提出するのでなければ審議会に参加はできない、退場する、こういう正式な発言が宮脇委員を代表して生産者委員から述べられたことは、その席におらぬからよく知らぬなんというとぼけたことでは済まぬわけです。しかもその際宮脇委員は、今回の据え置き米価はにしきのふくろに馬ふんを包んだようなそういうものである、これは酷評というより至言だと思うのですよ。ふくろだけはにしきでりっぱなものであっても、その中身というのは馬ふんである、馬のくそを包んであるというような、そういうごまかし米価というものを米審にあなたが諮問をしたわけだから、これを根本的に是正しない限り生産者代表の委員審議に応ずるわけにはいかぬと、こういうことになっておるわけです。大臣は、本日午前中は当委員会に、午後は参議院の農林水産委員会において米価に対する説明あるいは答弁をすることになっておるわけであって、それが終わってから米価審議会に出かけて、そこできのうの生産者代表の意思表明に対して政府としてどうこたえるかという、そういう用意をしなければ米審には行けないということになっておるわけです。これは全然答弁の必要はないです。これは実態がそうですから。  しかも据え置き米価については、いま同僚の松沢君からも指摘したとおり、昭和四十六年度の食管会計における予算米価というものは、従来の予算米価とは違うわけです。もちろん予算に計上した米価でありますけれども、これは必ずこのとおり実行するということを佐藤総理の国会における施政方針、特に財政担当の福田大蔵大臣は、三月二十四日の予算第二分科会において私の質問に答えて、今年の政府の計上しておる予算米価というものは、これは単純な予算米価ではない、もちろん手続としては米価審議会にこれを諮問して米審の議を経てからきめるのであるけれども、これはあくまでも政府の既定方針に基づく米価据え置きということで実行する、米審に対しては政府据え置き米価諮問を出して、それを政府が極力説得して必ず据え置き答申を得て実行するということを、これは国会の予算分科会において明らかにしておるわけです。あるいはまた農林大臣のしばしばの発言によっても、前年度と同様の米価水準据え置きするということをあなたは言明をしておるわけです。  しかも米審開会に先立って四月二十三日の閣議においては、農林大臣閣議に対して、二十六日から始まる米審に対しては、据え置き米価を試算してこれを米審に諮問するということを説明して閣議決定を得たということは、これは事実であります。だから米審に臨むにあたっても、政府が必要な参考的な数種の米価案というものを出して、そうして米審の中で十分議論をした結果、結論が出た場合にはそれを尊重してきめるというようなものではないわけです。こういうことは、いかに農林大臣が本委員会において、あるいは米審において一般国民に対して、米審の結論を待ってそれを尊重してということを言っても、もう既成事実として、ことしはあくまでも米価は据え置くということになっておるので、そういうことであるならば、何も米審が真剣な議論をする必要はないということにこれは当然なるわけです。  そこでお尋ねしたいのは、どういうわけで三年間期せずして政府の試算米価というものは据え置きになっておるか、ここに据え置き米価内容を究明する必要があると思うわけです。これは数字にわたるわけですからして内村次長からでよろしいが、どういうわけでことし三年連続の据え置き米価というものが、食糧管理法の第三条第二項の規定に基づいて当然試算をしたと思うわけでありますが、どうしてそういう三年連続の答えが出たかということについて、これは明確にしてもらいたいと思います。  昨年私は当委員会において、四十五年度の米価というものは、生産費・所得補償方式内容の試算を変更することによって六十キロ当たり八千二百七十二円に据え置いたが、それを昭和四十三年までに採用した試算によった場合には幾らになるかと聞いたら、その質問に対して農林省としては、その場合には六十キロ当たり一万三十三円になります。これは去年の据え置き米価に比べて一俵当たり千七百五十八円不当に据え置いたということになるわけです。それからさらにこれを四十四年方式によった場合には幾らになるかということを尋ねました際に、これは六十キロ当たり九千二百五十円になります。そうすると、据え置き米価に対して約一千円の不当な値下げという結果が出ておること、これは農林省の説明によって明らかになっておるわけであります。この場合、本年度の米価だけを聞いても正確度を期するわけにはいきませんので、ここでまず第一には、四十三年までに採用したいわゆる限界生産費標準偏差一シグマ方式によった場合には、去年はこれは一万三十三円になったわけだから、ことしは物価、労賃の上昇を勘案した場合には一体幾らになるか。四十四年の〇・五四シグマ方式でやった場合、昨年は九千二百五十円であったのがことしは幾らになるか。もう一つは、昨年二年連続の据え置きをして、いわゆるシグマを零にして、あるいはまた生産性向上のメリットの二分の一も取っ払ってしまう、あるいは付帯労働費も全部これは認めないというような形で四十五年の試算が行なわれたわけですが、この四十五年方式でやった場合に、ことしの米価は幾らになるか。つまり、今年度の据え置き米価を入れると四通りの米価というものが当然出てくるわけでありますから、これに対して年次別に正確な数字を示してもらいたいわけであります。
  24. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十二年産米穀の政府買い入れ価格の算定と同じ方法によりまして四十六年産の米価を算定いたしますと、ウルチ一−四等平均、包装込み、生産者手取り予定価格は、百五十キログラム当たり二万八千六百八十六円になります。(芳賀委員「六十キロ当たりで」と呼ぶ)六十キロはあとですぐ数字をお知らせいたします。  四十四年方式のものについては、実は食糧庁として計算しておりません。そこで、四十五年生産米穀の政府買い入れ価格の算定と同じ方法によって四十六年産米穀の生産者価格をはじいてみますと、ウルチ一−四等平均、包装込み、生産者手取り予定価格は、二万三千六百十四円になります。これも百五十キログラム当たりでございますから、六十キログラム当たりはすぐ計算して御連絡申し上げます。
  25. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の質問中に、特に四十四年方式が全然説明されておりませんし、各年の六十キロ当たりの価格についても至急計算して、質問中に答えてもらいたいと思うわけです。  いまの次長の答弁によりましても、いずれの方式をとっても大幅に値上げをしなければならぬのを、ことし不当に据え置きをしたということになっておるわけですから、それがごまかし米価と言われる点です。そこで、具体的にどういう点をごまかしたかということを、逐一明らかにしてもらいたいと思います。どういう点で操作をしたから据え置きになったということを、これはきょう農林省から配付されました試算の項目についてお尋ねしたいと思います。  第一は自家労賃の評価でありますが、従来は製造業五人以上規模の全国の平均労賃によって自家労働の賃金評価をしたわけでありますが、ことしはこの点が大きく違っておるわけです。結局、賃金の評価を下げれば生産費が下がる、米価が下がるということになるので、この際、政府資料の四ページ以降にありますが、昨年までの製造業五人以上規模の平均賃金の場合には、たとえば男女込み幾らになって、今年これを異質な計算をした場合にはどうなっておるかという点を明確にしてもらいたいのです。
  26. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 まず最初に、四十六年産米価の政府試算の基本的考え方が四十五年産米米価とどう違っているのかという御質問……(芳賀委員賃金だけです」と呼ぶ)賃金だけでよろしゅうございますか。賃金につきましては、ただいま先生から御指摘のございましたように、従来は全国の製造工業の賃金をとっておりましたのを本年は地方調査を基礎にいたしまして、それに米の県別の販売量というもので加重平均をしてきめたものでございます。その結果の賃金につきましては、配付資料にございますように、都市均衡労賃一時間当たり男女込み三百十一円九十銭、男子が三百九十二円五銭になっております。それが全国の平均ではじきますと、男女込み一時間当たり三百七十六円四十五銭、男子が四百五十二円三十三銭、こういう数字になっております。
  27. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これで男女込みにして、従来同様で今年度の賃金格差は幾らになるのですか。
  28. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 男女込みで一七%下がっております。
  29. 芳賀貢

    ○芳賀委員 全額で幾らですか。総額じゃなく、時間当たりの差額は幾らかということです。
  30. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 六十四円四十六銭になります。
  31. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、十アール当たりの収量がことしはえらく狂っておって、これはどこに根拠があるかわからぬのですが、十アール当たりの収量がふえれば生産費は下がる、こういうことになるわけですね。だから、ごまかして収量をふやせば生産費は自然下がるということになるわけですが、収量についてはこれは過去三カ年間の、農林省の統計調査部が四千二百戸を対象にして毎年生産調査をやっておるわけですから、従来の試算に用いる平均収量というものは調査農家平均反収ということになって、この三カ年間の平均収量というものを分母に用いるということになっておるわけですから、この点を三年間にわたって明確にしておいてもらいたいと思います。
  32. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 四十六年産の米価の試算に用いました十アール当たりの平均収量は、四十三年産が五百二十一キログラム、四十四年産が五百キログラム、四十五年産が四百九十八キログラムで、平均が五百六キログラムでございます。
  33. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、従来と同様の平均収量をとった場合にはどうなんですか。これは各年度別のが正確を期することができるので、たとえば四十三年は農林省の実収高の平均反収は幾らであって、調査農家平均反収は幾ら、水増し反収は幾らというふうに、四十三年、四十四年、四十五年を明らかにして、平均は実収と調査反収と水増し反収がどうなるかということを明らかにしてもらいたい。
  34. 中沢三郎

    ○中沢説明員 お答え申し上げます。  私のほうから四十二、四十四、四十五年の実収の反収を申し上げます。四十三年度が四百四十九キロ、四十四年度が四百三十五キロ、四十五年度が四百四十二キロでございまして、生産調査農家の反収をそれぞれ申し上げますと、四十三年度が四百九十七キロ、四十四年度が四百八十四キロ、四十五年度が四百八十七キロでございます。
  35. 芳賀貢

    ○芳賀委員 単年度平均は……。
  36. 中沢三郎

    ○中沢説明員 お答え申し上げます。  全農家の実収の反収のほうの平均が四百四十二キロでございますし、生産調査農家の平均が四百八十九キロでございます。
  37. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、昨年までは十アール収量については調査農家平均反収を用いたわけですから、ことし正確にやるとすれば、これは四百八十九キロということになるわけです。それを水増しをして五百六キロということにしたわけですから、これは十アールで十七キロ水増しで、反収をふやして生産費をそれだけ下げたということになると思いますが、この十七キロ調査農家反収よりもふえておるということは、間違いないですか。
  38. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 間違いございません。
  39. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、問題の第三点は自家労働時間、これも十アール当たりの投下労働時間が短縮されれば生産費は下がるということになるわけです。だから、極度に自家労働時間を詰めるということをやらなければ米価の引き下げはできないわけですが、この点も全く従来と違っておるわけです。従来は統計調査部の過去三カ年間の調査農家の労働時間というものを集計して、三カ年の平均労働時間を出して、それに対して先ほど質問しました全国の五人以上規模の労働賃金決定年に評価がえをして自家労働費というものを出すことにしてあるのですが、この点、昨年までの正確な労働時間と、これは水増しというよりごまかしと言ったほうがいいと思いますが、ことし操作して短縮した労働時間の、これは比較だけでいいです。従来同様にやった場合には、四十三、四十四、四十五年の平均の労働時間が幾らになる、今回、表現はごまかしというのが一番的中していると思うが、ことし使った労働時間はそれに対してどうなっておる、この点を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  40. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 昭和四十五年産米米価を算定いたしましたときの生産費の方式によってことし労働時間を計算いたしますと、直接労働が百十一・九時間、間接労働が七・六時間になります今般農林省が算定いたしました生産費によりますと、家族労働時間は直接労働が百七・二時間、間接労働が七・四時間、こういうことになっております。
  41. 芳賀貢

    ○芳賀委員 調査農家の平均労働時間が違うのじゃないですか。統計調査部の生産調査の労働時間の集計によると、これは四十三、四十四、四十五年を平均して百十九・五時間ということになるはずですけれども……。
  42. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 統計調査部の生産費との違いは、四十五年の農林省の算定生産費の場合は五俵以上の販売農家生産費を使っております。統計調査部の場合は一俵以上でございますから、そこに違いがあるわけでございます。
  43. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで、統計調査部の従来の調査農家と今回の分の時間の差がどれだけあるのですか、何時間ですか。
  44. 中沢三郎

    ○中沢説明員 お答え申し上げます。  御質問の三カ年間の平均投下労働時間が百二十六・三時間でございまして、うち家族労働時間が百十五・四時間でございます。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、次長の言われた昨年同様の方式では、百十六時間ですか。
  46. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 直接労働は百十一・九時間でございます。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、足して。
  48. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 間接労働は七・六時間になります。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 足して幾らになる。
  50. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 足しますと、百十九・五時間になります。しかし、統計調査部の統計では間接労働はたしか見てなかったと思います。
  51. 芳賀貢

    ○芳賀委員 じゃ、私の言った百十九・五時間と同じじゃないですか。百十九・五時間と百十四・六時間の差は何時間ですか。
  52. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 百十九・五時間と百十四・六時間の差は四・九時間でございます。
  53. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで大体の据え置き材料がわかったわけですが、そこでお尋ねしますが、十アール収量では十七キロ違うわけですから、これを四十三年までの算定でいくと、十キロ当たり生産者米価というものは千九百円ということになるでしょう。そうすると、この分だけで約三千二百円違うわけです。それから労働時間で、先ほどの六十四円四十六銭ことしは労賃を引き下げるということになると、これは時間だけで千八百円以上ですね。これは労働時間の切り下げだけでコストが下がるということになるわけです。それからもう一つは、単位当たりの労賃というものを六十四円四十六銭下げておるわけですからして、これに十アール当たりの所要労働時間を加えると、賃金のダウンだけで約七千三百円ぐらい生産費が下がるということになるわけです。この三つの要素を加えると、十アール当たり一万二千四百円程度、この三つの要素だけで生産費がダウンされるということになるわけであります。ですから、この差額というものを据え置き米価に加算すると、これは大体六十キロ当たり九千八百円程度の米価ということになるわけですね。そういうことになるでしょう、これはあとで計算してみればわかることです。答弁は要らぬですよ、そういうことになるのですから。これがいわゆるごまかしの内容なんです。ほかに何にもしかけがないでしょう。労働時間を従来と違った方法で短縮する。一番貴重な農家の自家労賃の評価を昨年よりも切り下げておるわけですからね。民間の製造業賃金は去年一年間で前年対比一九%上がっておるわけです。これは一九%上げるのじゃなくて、前年よりも下げておるわけですからね。収量についても架空な収量を使って、全く実在しない数量というものを据え置きのために用いておる。これは理論的なものは何にもないじゃないですか。こういうようなごまかしの試算をして、先に据え置きの答えを出して、それに合わせるような新しい算式を用いて、それを今度は閣議決定を経て米審に諮問をして、このとおりの答申を求めるというような、そういう不当なやり方というものは従来前例は全然ないのですよ。何のために農民だけを犠牲にして米価据え置きをしなければならぬか。その理由に対して、生産者はもちろん、国民全体もこれは理解に苦しむところです。簡単に、これに対して解明ができれば、農林大臣から明らかにしてもらいたい。
  54. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米価は、御存じのように、食管法が制定されましたころは、先ほどもお話がありましたように、非常に需給が窮屈であった当時であります。したがって、需給を緩和して生産を十分にしていただくためには、価格政策で保護をしなければなりません。当然なことであります。今日のように米の余剰が非常にふえてきておるときに、もし統制がはずれておるものといたしましたならば、米も一つの商品でありますから、需要供給の関係で当然価格は低落しておるでありましょう。しかし、依然として食管法というものが存在して、統制が続けられておるのでありますから、それを扱っておる政府としては、需給事情を考慮いたさなければならぬことはやむを得ないことであります。つまり、需給が非常に窮屈でございました時代には、どのようにして価格政策でその生産を刺激するかということのために、いろいろな努力をして米価を上げてまいったことは御存じのとおりであります。いまやどのようにして生産調整をするかという場合に、やはり農作物の中で何よりも一番いいものであるということになれば、したがって生産は刺激されて、生産調整は困難になるでありましょう。私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、そういう国民全体の経済の中で米というものの扱いは調整せざるを得ない、需給緩和の今日の状況にかんがみてやむを得ない。そこで、ただそれだけ要望いたしましてもいけませんので、五年間にわたって奨励金を出し、永年転作には特段の奨励金を差し上げることによって、農業生産方向転換していかなければならないという今日の段階であることに、農村の人々に十分な理解を持っていただきたい、こういうことで、しからばどのような価格決定をするかということで、いまのような制度のもとで算式を出しますには、やはりそれなりの算式を考慮いたさなければなりませんので、今回の算式を米審に提出をいたした、こういう次第であります。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次長にお尋ねします。  先ほどの計算はできましたか。
  56. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 四十二年方式によって計算した場合の一俵当たり、すなわち六十キロの価格は一万一千四百七十四円になります。それから四十五年方式で四十六年産米価をはじくとすれば、六十キロ当たり、一俵九千四百四十二円ということになります。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、幾ら違うですか、これは。一万一千四百七十四円になるべき米価を八千二百七十二円に据え置きにした場合に。
  58. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 四十二年方式と今回算定しております一俵当たり八千二百七十二円、すなわち一万一千四百七十四円と八千二百七十二円との差は三千二百二円でございます。それから四十五年方式で四十六年産米米価を算定した場合の一俵当たり価格九千四百四十二円と八千二百七十二円の差は千百七十円になります。
  59. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣、いいですか、いま次長から言ったとおり四十二年までの方式で計算をすれば、ことしの米価は六十キロ当たり一万一千四百七十四円になる。これに対して、政府の米審に諮問した米価、まあこれは馬ふん米価といわれるわけだが、これが八千二百七十二円ということになると、これは一俵ですよ。六十キロ、一俵で三千二百円違うのですからね。これから見ると、ことしの農協を中心とした農業団体の一俵当たり一万七百七十八円というものはまことに、四十二年までの試算よりも一俵七百円も低い、ささやかな要求米価だということがこれは明確なわけですよ。こういう生産者の、ごく遠慮した要求米価さえも踏みにじって、きのう大臣が三番町の外へ出て生産者代表の皆さん方と若干の話し合いをして、そのあとで、全国百二十万人の米価要求の貴重な、血の出るような署名簿を農林大臣受け取ってくださいというのを、あなたは振り向きもしないで建物の中へ入って正面のシャッターをおろしてしまったでしょう。生産者代表は、こういう百二十万の米生産者の血の出るような陳情書というものをぜひ大臣受け取ってくれと言ったところが、それを今度は警官隊が阻止して、警官のどろぐつで全くとうとい国民としての要請請願を踏みにじってしまったじゃありませんか。当然三千二百円上げなければならぬのを、農民の要求は二千五百円ということになっておるわけだから、これを見てもこの今回の諮問米価というものは、政府の三年据え置き強行態度ということがいかに不当なものであり、むしろ人道上の見地からいっても、これは許すことのできない政府の態度であるということがいえるわけです。  そこで、なぜこのようにして無理やり据え置きをするかということになると、やはり理由があると思うのですよ。適正に米価決定すれば、それに伴う国の財政負担というものは、消費者米価を上げない場合は、当然これは伴うわけだから、それをやらなければ、たとえばことしの減反によるところの生産奨励金、これは予算からいうと千七百億でしょう。それから古米の処理については、ことしは二百万トンを工業原料あるいは家畜の飼料に転用するということになって、この二百万トンを配給に回さない場合の差損が約一千八百億、合わせると三千五百億、減反政策と古米の処理に国の負担がかかるということになる。これはもう政府の政策の失敗がこういう事態を招来したわけですから、当然これは農民に犠牲を転嫁しないで、政府の責任において行政的、財政的な処理をすべきであるにかかわらず、いろいろ考えた結果、三年米価据え置きにして、上げるべき米価の財源というものをこの減反政策と生産奨励金と古米処理の差損に充当する。農民の犠牲によって、この財源を、米価据え置きによって生み出すというところに、三年米価据え置きするというそういうねらいがあるわけでしょう。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕 そうじゃないですか。それ以外に何らの目的はないと思うのですよ。これは次長でいいですが、六十キロ三千二百円の格差というものは、これはトン当たり幾らになるのですか。
  60. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 トン当たりにいたしますと、五万三千三百三十三円になります。
  61. 芳賀貢

    ○芳賀委員 トン当たり五万三千三百円ですね。それをことしは米の買い入れ制限を強制割り当てをして、この数量は七百六十万トンでしょう。この七百六十万トンはどうしても国として、政府の責任で確保しなければならぬ数量でしょう。だからこれはやはり買い入れ米価の対象になるということになるわけだ。その中に自主流通米百八十万トンあるということを言うかもしれないが、とにかく七百六十万トンの米はことし何が何でも農家協力でこれを消費者に供給してもらわなけれならぬわけだから、だから五万三千三百円にこのどうしても必要な七百六十万トンを掛ければ、これは何千億になるのですかね、ちょっと計算してください。
  62. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 約四千億円になります。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いいですか、大臣、本来であれば、これは米価を正常にきめれば、四千億要るのですよ。四千億要るということは、農民の所得が四千億ふえていかなければならぬのを、これをあなたが押えているわけですからね。農民に補償しなければならぬ、農民として確保しなければならぬ農業生産努力を通じて農業所得というものが、四千億円むしり取られているわけだ。そういうこととになるでしょう。だから日本農業の場合においては、専業的な自立農業というものはこれは全然見込みが立たぬわけだから、もう出かせぎとか兼業あるいは脱農以外ないわけですからね。そこで三年据え置きを強行した場合には四千億円財源が生まれるでしょう。だからこの四千億からことし恩に着せたようなことを言っておるでしょう。とにかく千七百億円、米の生産調整奨励金政府が出しているじゃないか、ありがたく思えということを言っておるでしょう。この間、政調会長の水田君は武道館の農協の七千人集まった米価大会に来て、ことしは生産調整奨励金を千七百億円政府は計上しておる、これを米価に当てはめればことしは一七%米価を上げたと同じようなことになる、去年の八百億円を差し引くと七百億ある、これは七%、去年よりはさらにベースアップをしたと同じだというような、こういうでたらめの演説をして、これはもう大衆は何を言っているんだかわからぬからぽかんとしておったのですけれどもね。この四千億から生産調整奨励金は、全国の生産者が全面的に協力してくれた場合でも千七百億しか要らないのでしょう。そうじゃないですか。二百万トンの古米処理の差損が千八百億。これはきょうから大蔵委員会において食糧管理特別会計法の一部改正の論議をすることになっておるが、実際の当年度支出は三百二十億円でしょう。だから生産調整奨励金と二百万トンの古米処理の差損の千八百億を足しても三千五百億じゃないですか。四千億から三千五百億円のこの費用というものを引いた場合においても、まだ五百億円残るじゃないですか。こういうまことに冷酷無情な米価政策というものを用いて、おまえさんたちがうんとつくったから生産調整奨励金を出して減反政策をしなければならぬ、古米の処理がたいへんじゃないかということを宣伝しても、何にも政府は、びた一文特別の財政負担をしてこれらの問題の解決をするわけじゃないでしょう。全部これは連続米価据え置きの政策によって四千億という、当然農民に補償しなければならぬ米価を通じての所得というものをむしり取って、生産調整と古米の処理の財源に充当する、それを行なってもまだ五百億円余るというようなやり方というものは、一体どこにいまの佐藤内閣としての農政上の基本があるわけですか。人口、食糧問題の上に立って、農業というものが国民全体に対して食糧の生産と供給をする。これは国民経済から見たら一番重大な基本的な産業でしょう。こういう点はもうごまかしても農民は全部わかっているわけですよ。国民もわかっておる。だから新聞にしてもテレビにしても、去年までは物価値上げの元凶は生産者米価の値上げというような一方的な大宣伝をやったけれども、ことしはテレビを見ても新聞を見てもそういうことは何もないでしょう。もちろん新聞なんか、かってに何割も一方的な値上げをしたからそういうことはおこがましくて言えぬかもしれぬが、世論というものはむしろ政府の三年連続据え置きのこの米価政策に対して集中的な非難を浴びせておるじゃないですか。しかも最近は、いまの自民党、佐藤内閣に対して、佐藤総理に対して、幾ら農民が切実に米価の適正な値上げをやると言っても、これは全然受け付けばしない、あくまでも農民を犠牲にして高度経済成長をはかるというような考えを変えない。むしろこれは、日本総理大臣に言うよりもアメリカのニクソンに頼んで、日本の佐藤総理にニクソンからこうしなさいという指示をしてもらえば米価が上がるかもしれぬというような、そういうわらをもつかむような不安に満ちた考えというものが、農村に充満しておるわけですよ。一体これに対して農林大臣はどう思っておられるのか。本来、松沢君が言ったとおり、この席に総理大臣が出席して明快に政府の責任を明らかにすべきと思いますが、これは二時からの本会議で、農業白書に対する本会議質問でわが党は千葉七郎君が代表して、これらの問題についても追及をすることになっておるが、せっかく大臣が来てすわっておるわけですから、政府の農政担当の閣僚として、これらの点に対して所信があれば述べてもらいたい。無理に述べてくれとは言いませんよ。
  64. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いろいろ芳賀さんの御高見を拝聴いたしたわけでありますが、あなたとここで、限られた時間で議論をしようとは決して思いませんが、先ほど私が申し上げましたように、食糧需給が窮屈でありました時代には、生産を刺激するためにいろいろ価格政策で保護するということは、これは日本だけでなくどこでもやっていることであります。したがっていままで、そういう時代には、たとえば労働賃金のとり方でも五人以上の全体規模の都市労働賃金生産費に加えた、これなどは普通に考えてみれば他の農作物にはそういう取り上げ方をしておらないのでありますから、したがっていろいろ、しかもワン・シグマをつけ加えておる。そういうようなことを考えてだんだんやって分析してみますと、先ほど、こういう数字を積み重ねれば四千億というお話がありましたけれども、それについてはいろいろ議論が成り立つことであろうと思います。しかしそれをいま申しておることもいかがかと思います。したがって私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、去年は直接の転換についてわずかに八億何がししか出ておりませんが、四十六年度予算には四百二億円、これは御存じのように転作対策費であります。そのほかに、奨励金は御指摘のように大体千七百億、そのほかに食管の赤字補てんというものはおそらく三千億余りあるでございましょう。大体大きな数字で申しますと、六千億余りのものになるかと思っております。しかしこれは、現在のような統制が行なわれているところでありますので、政府はそのようにせざるを得ません。したがって、この米の管理というものについてこれでいいだろうかという反省はずいぶん各方面から出ておることは御存じのとおりであります。  で、私ども農政担当者といたしましては、とにかくあらゆる方面の御意見を拝聴いたしながら、こういう米管理等につきましては慎重に検討してまいるつもりでありますが、その前、現在の段階においてはやはり生産調整はやっていただかなければならない。御存じのように、たとえば生産者米価が今度幾らかでも上がるとなれば自主流通米はほとんどだめになってしまうことは、専門家でいらっしゃる方は皆さんよく御存じのとおり、百円が百五十円の違いでありますので……。そうなってまいりますと、消費者に及ぼす影響というものは、米の味わいの点においてもそうでありますし、全体の物価から考えましても、逆ざやが今日のようにどんどん、どんどんふえていくということが国全体の経済の上でどういうことになるであろうかということも政府としては考えてみなければなりません。したがって、そのしわ寄せを米づくり農家方々だけにかぶせるというわけにいきませんので、これはできるだけ転換その他のことについてごめんどうを見るということ、そういうことはもちろん大事なことでありますので、私どもも皆さま方に御協議を申し上げ、予算的にもできるだけのことはいたし、なおこれからもやってまいるつもりでありますが、米が単年度で需給バランスがとれるようになりさえすれば、米はやはり農作物の一番の重点でありますので、これの生産に大いに努力をしていただかなければならないのは当然なことであります。私は率直に申し上げますが、農政の担当者といたしまして、本年の米というものだけ考えましたときには非常に心暗い気持ちになります。これはわれわれがやはり生産者立場に立つからであります。そこで、これをどのようにして盛り立てていくかということが残されたわれわれに対する義務でありまして、政府としてはそういうことに対して全力をあげてやってまいる、こういう覚悟でありますが、本年の生産調整はぜひやっていただくためには、やはり価格で生産をさらに刺激するような施策というものはとらないほうがいいのではないか、そのほかのことでできるだけのことをいたしたい、こういうふうに考えているのが私どもの真実の叫びであります。
  65. 芳賀貢

    ○芳賀委員 はっきりしておきたい点は、とにかくことし、四十二年までの方式でいけば去年までの据え置き米価を三千二百円上げなければならぬわけですね。いいですか。これは内村次長が明確にしているわけだから。その一俵当たりの値上げ額をことしどうしても必要である七百六十万トンで計算すればちょうど四千億という農民に対しては米価を通じての所得を上げなければならぬ、与えなければならぬわけだ。それを据え置き政策によって、当然その補償しなければならぬ、与えなければならぬ所得を、政府が政策上権力的にこれを押えて収奪しておるわけですね。これは明らかなわけだから。その四千億から生産調整奨励金の千七百億を出す、ことし二百万トンの古米処理の差損の千八百億を出すとしても、三千五百億あれば間に合うわけだから、まだ五百億余るでしょう。先ほど大臣転換奨励費で四百億つけておいたと言っても、それも五百億残っているわけだから、その中で間に合うということになる。じゃ政府は何にも財政的な負担してないじゃないですか。農民に与えるべき米価の中で全部そういうもののしりぬぐいを農民に犠牲を転嫁してやらしておるということは、これはもう明々白々ですからね。弁解の余地はないのですよ。そういうことを幾らごまかしても、もうごまかしはききません。それが昨日の米審における生産者委員の四名の、このような据え置き米価をにしきの袋に馬ふんをくるんだようなそういう諮問をするのであればもう審議の必要はない、したがって退場する、農林大臣としては諮問を撤回して新しく正当な米価諮問するかどうかはこれははっきりしてもらいたいということで、きょうは懇談会になっておるでしょう。生産者代表は出ておらぬでしょう。あなたはいやでも、米審を運営するということになれば、きょう参議院の農水の審議が終わってから米価審議会の会場へ行かなければならぬわけだ。その場合米審に対してあなたはどういうような政府としての所信を明らかにして米審においても協力して審議をしてもらうことにするか、これは具体的なものがなければ審議を進めることはできないと思うわけです。もうその用意がすでに固まっておればここで明らかにしてもらいたいと思う。
  66. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いやでもおうでもということはないのでありまして、一刻も早く解放していただいたら向こうへ参って米審で御相談をいたさなければならない、こう考えておるのでありますが、きょうは本会議等もございますので、できるだけ早く参りたい。  そこで、先ほど芳賀さんのそういうお話しがありましたけれども、私じかに承っておりませんので、じかに参上いたしまして委員の各位にお目にかかってどのようなことであるかということについて御意見を十分承ってその上で判断をしてまいりたい、そして一刻も早く答申を出していただくように御協力をお願いしたい、こう考えておるわけであります。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後になりますが、最近、政府農業政策を進める上で価格政策というものはもう用いない、構造政策一本やりでやるということをいっておるが、この構造政策ですね。政府は総合農政という名で構造政策を進めておるわけですが、これはもう明らかにヨーロッパのいわゆるEECの構造政策をまねておることは明らかです。いいものをまねするのはいいが、EECの構造政策の悪いところだけをまねしておるというのがいまの政府農業政策です。もちろんEECにおいても、従来二年ほど価格政策については農産物の過剰傾向を押えるための一つの便法として価格のストップということをやってきたわけですが、ことしになって、三月二十五日にEEC六カ国の農相会議がベルギーのブラッセルであった際、過去二カ年間行なった価格据え置き政策というものが、これは世界的の傾向でありますが、インフレがどんどん高進する中において、収益性の少ない農民生産する農畜産物の価格だけをストップした場合においては、農民生活農業経営に徹底的な致命的な打撃を与えるということを十分配慮して、三月二十五日の農相会議ではすべての農産物に対して価格引き上げの方針決定したことは御存じのとおりであります。生乳については六%、畜肉についてはことし六%、来年四%、二カ年間で一〇%引き上げをする。麦類の穀類については三%から六%の幅でそれぞれ引き上げを行なうということで、急拠価格引き上げを行なって、そして農業政策というものを軌道修正するということを決定したことは農林大臣としても御承知のとおりであります。いままでEECの構造政策の悪いところだけをまねて、その中でひとつ価格政策というものは重点的に実行しないというごく短期間のEECの価格ストップをまねて金科玉条のように据え置き政策をやっておるわけですが、向こうの、皆さんの先生であるEECのほうはことし全面的に農畜産物の価格引き上げをやったわけだから、そういう点を見習う必要があると思うのです。悪い点だけをまねていかにもこれが近代的な農業政策であるというのは、そういう偏狭な政策というものは取り返しのつかないことになると思うわけです。その点は、これは答弁は要りませんが、重要な点ですから、この際農林大臣並びにきょう政府の局長、長官あまり来ておりませんが、幸い内村次長というのはなかなか国際派で優秀な素質を持っておるというようにわれわれは認めておるので、こういう点も国際的な農業政策の判断とか、視野というものを広げる努力というものは十分やってもらいたいと思います。きょうはこの程度にとどめておきます。
  68. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 二見伸明君。
  69. 二見伸明

    ○二見委員 松沢委員と芳賀委員の質問ありましたので重複を避けて二、三大臣にお尋ねをしたいと思います。  最初に確認いたしますけれども松沢委員の質問の中で、大臣予算方針として米価据え置きをきめたけれども、実際の米価というのは米審の答申をまってきめるんだ、米審できめるんだという御答弁がございましたけれども、これはこのとおり額面どおり受け取るならば、米審で引き上げの答申をすれば、大臣はそれをそのままおのみになるということも含めての御答弁でございますかどうか。その点はいかがでございましょうか。
  70. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御存じのように、審議会というものは国民に責任を負うものではないわけであります。国民に責任を負うのは行政府でありますから、したがって最終決定は行政府の責任において決定をいたす、これは当然なことであります。しかしながら、専門家の方々にお願いをいたしまして米価審議会というものをつくっております以上は、その答申の御趣旨は、われわれが意思決定をするためには当然尊重して考えられなければならないものである、このように理解しておる次第であります。
  71. 二見伸明

    ○二見委員 最終的な意思決定は行政府にある、そのとおりだろうと思います。答申の意思を尊重して最終的な決定政府にあるんだ。そうすると、最終的な政府としての意思決定というのは、佐藤総理大臣の施設方針演説の中で、生産者米価水準は据え置くんだという方針は明らかなんです。行政府としての最終的な意思決定は、これは明らかなんです。大臣はいま、米審の答申は尊重するけれども最終的には政府がきめるんだということは、政府据え置き方針と違った答申が出た場合には、これは政府としては受け入れられないという意思の表明ではないかと、私いまの答弁は思うのです。その点は私はそう考えるのですけれども大臣はいかがですか。
  72. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 しばしば申し上げておりますように、予算編成方針として米価水準は変えない、こういうのであります。御存じのとおりでございます。しかし、実質的な米価というものは米審の意見を聞き、こうなっているわけでありますから、米審の意見を聞いて、米審がどういうような答申を出されるかによって最終的にはそれを参考にして政府は意思決定をする、こういうことには変わりはないわけであります。
  73. 二見伸明

    ○二見委員 先日の農協の大会で、自民党の水田政調会長は、予算米価はきまったけれども実際の米価はきまっていないんだ、こういうお話でございました。そうすると、予算編成方針として据え置きが打ち出されたのは、あれは政府の最終決定ではないということですね。あれは一応予算を組むためにああいう方針はきめたけれども、それは政府としての最終の決定ではないんだ、これから変更もあり得るんだということですか。
  74. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米価については、繰り返して申し上げるようですが、米価審議会意見を聞いてきめるわけでありますが、政府予算編成に臨む態度は水準は据え置く、こういうしっかりした方針はきまっているわけであります。そこで答申を得ましたならば、答申をよく吟味いたしまして、どのように対処すべきであるか、私は答申に盛られた御趣旨はもちろん尊重すべきものであると思いますが、その上で正式な米価決定いたしたい、こういうわけであります。
  75. 二見伸明

    ○二見委員 これは大臣諮問でございますけれども、この中の諮問の説明でこういうふうになっておる。「米穀の政府買入価格は、最近における米穀の需給事情を考慮して、昭和四十四年産および昭和四十五年産とその水準を据え置いた」のである。四十四年、四十五年は最近における米穀の需給事情を考慮して据え置いたんだ、こういうふうにまず説明がありまして、そして今回の諮問に際しては、「これまでの米価のもとにおいて米の需給は大幅な供給過剰となり、需給の不均衡を是正するために米の生産調整のための特別の施策を講じなければならない事態にありますので、米穀の政府買入価格の決定にあたってもこのような事態を十分考慮しなければならない事情にあります。」両方合わせると、四十四年、四十五年には需給事情を考慮して据え置いたんだ、四十六年も需給事情を考慮して据え置いてもらいたいという、これは大臣としての気持ちのあらわれであるし、米審に、今回の米価についてはこういう立場でもって検討していただきたいという、これは大臣の意思のあらわれじゃないんですか。
  76. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 委員方々を拘束する気持ちは毛頭ございませんし、そんなこともできるはずはありませんが、政府側の立場としては、ただいまお話しのように、予算編成方針でもきまっておる方針で進みたい、こういう考えを披瀝いたしておる諮問であります。
  77. 二見伸明

    ○二見委員 委員方々の意思を拘束する気持ちはないけれども、でき得るならば、政府としては据え置き方針をきめているんだから、その方向でもって答申を出してもらいたいという、そういう気持ちのあらわれなわけですね。だから、その政府の気持ちと相反する答申が出てもらっては困るんだ、これが大臣がきのう諮問されたときの率直なお気持ちじゃないですか。
  78. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 とにかく大ぜいの委員がおられるのでありますから、それぞれのお立場で、それぞれの御見解を吐露していただく間に、われわれもいろいろ反省すべき材料も出てくるでありましょうし、全く、あそこで承っておりますといろいろ教えられるところが多いのでありますから、御高見は十分に吐露していただいて、そして答申を出していただくのでありますから、私どもがどのように考えておりましても、答申によってはやはりそれを参考にして政府の最終的態度を決定しなければならない、こう思っております。
  79. 二見伸明

    ○二見委員 ですから、くどいように何度もお尋ねするのですけれども、その答申の結果によっては、据え置きという考え方を変えることもあり得るんだということですね。変えないかもしれないけれども、変えるかもしれないということですね。答申据え置きで出てくれば政府のほうとしては願ったりかなったりで、米審の答申をそのまま尊重して据え置きにおやりになるでしょうし、若干引き上げてもいいんじゃないかというような答申が出てくれば、政府としてはその場合はそういう答申を尊重して、据え置く方針だったけれども引き上げよう、引き上げざるを得ないという決定をお下しになる場合もあり得るのですか。
  80. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 閣議決定する政府全体の方針でありますので、私があまり出過ぎたことを申してもいけませんが、これは担当しておるのは農林大臣でありますので、そういう意味で先ほど来申し上げておりますように、米審の答申というものはできるだけ尊重すべきものである、それを参考にして、われわれはきめるべきものである、このように考えております。
  81. 二見伸明

    ○二見委員 あまりこの問題をやっても堂々めぐりになりますので、水かけ論というか、大臣答弁は非常におじょうずでして、そのとおりいままでのいろいろな答弁考えていくと、尊重はするけれども無視する、尊重しながら無視するという態度のほうに私は強く受け取れるわけです。  ところで、政府の今回米価据え置きたいというそのねらい、表面にあらわれてきているのは、生産調整をしているんだから米が供給過剰なんだ、だから米価水準を据え置くことによって米づくりを減らしていきたい、こういうところに据え置きのねらいがあるわけですね。
  82. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど来るるお話しを申し上げましたように、今日の一般需給情勢等が一番われわれの念頭にあることであります。
  83. 二見伸明

    ○二見委員 米の需給が緩和している、米が余っているというのはことしばかりじゃありませんで、このまま推移するならば、来年も米は余るでしょう。需給事情は相変わらず緩和でしょう。四十八年も供給は過剰でしょう。米がすでにストックがあることを前提にすればですよ。しかも大臣は先ほど、需給が逼迫しているときには価格政策でもって刺激をして増産をするんだ、需給が緩和しているときにはそういう刺激策をとるのは好ましくないと、芳賀委員に対してそういう御答弁をされました。そうすると、米の問題、いまわれわれは四十六年産米でもって米価水準を問題にしておりますけれども事情が変わらない限り政府のこの方針は、四十七年も四十八年も同じ方針で貫くことになりますね。価格政策による増産の刺激は与えないというその基本的な姿勢は変わらないわけですね、ここ数年は。その点いかがでしょうか。
  84. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大体見通しをつけまして、御存じのように四十六年度予算編成にあたりましては、休耕、転作をとにかく五カ年間継続でやる、こういう方針予算の御決定を願っておるわけであります。したがって、それから先はどうなるかということは別といたしまして、とにかく五年間の間にあとう限りの努力をいたして、転作を定着させたい、こういう考えであります。気候の著しい変化であるとか風水害であるとか、いろいろな問題もありましょう。したがって、私どもといたしましては、一応ここ二、三年はやはり生産調整は続けてまいらなければなるまいということは想定いたしておりますが、やはりそのときどきによりましてはわれわれの予想せざるファクターが加わってまいりますので、いま将来のことを、こういうふうな方針であると申し上げることは困難でありますが、いずれにいたしましても米の生産というものは、大体において、先ほどもいろいろお話がございましたが、反当収入等でもすでに技術の進歩その他でだんだんふえてきている、逆に消費量が減退しておるというこの傾向はやはりある程度継続するものと想定しても、人間の常識としては間違いではないだろうと思う。したがって、そういうことを想定しながら五カ年間の計画を立てておるわけでありますが、米価についてどういうふうにするかというのは、やはりそのときどきの状況に応じて変化はあり得ると思わなければならぬと思います。
  85. 二見伸明

    ○二見委員 大臣がこの諮問についての説明の中で、米価水準は他の農作物に比べてなお相対的に有利であり、だから米の供給が過剰になったんだ、他作物に比べると米のほうが有利だから米に生産が集中してしまったんだ、こういうことですね。逆にいうならば、他の作物は米に比べて不利なんだ、だから、米価水準を据え置くということは米の持っている相対的な有利性というものを引き下げるんだ、米も決して有利ではないぞ、これから米つくりもあまりよくはないぞという、これはそういう政策になるんじゃないですか。いいですか。他作物に転換をして他作物が米以上に有利になるような条件が整備されてくるなら別ですよ。そのほうの政策は遅々として進んでおらぬ。一方、米だけは押えるということは、米も有利と不利の格差が大きいから、有利なやつを下げて、その格差を縮めてやろう、こういう考え方でしょう、この据え置きの一つのねらいというのは。その点はいかがなんですか。
  86. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御存じのように、わが国は北は亜寒帯から南は亜熱帯まで細長く続いておる列島であります。したがって、いろいろな作物がありますが、全国平均して有利につくれるのは米であります。その点はまことに民族としては幸福なことだと思うのであります。しかも一時的に非常に少なかった時代に、災害保険をはじめ、あらゆる保護を与えて増産を奨励いたしました結果、今日のようになってまいった。先ほど来価格政策のことにも言及されましたが、私どもといたしましては価格政策のみで生産を刺激していくということは、農政全般としてはとらざるところではないかと思っております。したがって芳賀さんの御忠告もありますので、間違った国のまねをした構造政策等はとる意思はございませんけれども、やはり構造政策が大事なことであるのは当然なことでありますが、そこで本年の生産調整は、生産調整をいたしておる間に米価生産を刺激するような、そういう━━━━━な行為はやはり行政としてはとるべきではないんではないか。したがって私どもといたしましては、他の作物に有利性をだんだん強めていくということは必要でありますが、またそれに重点を置いてやるわけでありますけれども、ことしの需給状況を見て米の生産調整をやってもらわなければならない、こういうことであります。
  87. 二見伸明

    ○二見委員 大臣は、いま生産調整をやっているときに価格政策でもって刺激を与えるのは━━━━だ、こういう御答弁でございました。四十七年、四十八年、向こう五年間生産調整をやるわけです。そうすると、大臣のいまの答弁をそのまま援用するならば、生産調整をやっている間は価格政策はとらぬということですね、米に対しては。それは━━━━だというのが大臣の基本的なお考えですから、そうなれば四十六年は当然大臣としては据え置きたいでしょうし、四十七年もどうなるかわからぬけれども、特別の突発的な事故があれば別としても、そうでない限り大臣としては据え置いていきたいというのが基本的なお考えですね。向こう五年間は、基本的な考えとしては米価水準というものを押えておきたいんだ、そうでなければ、生産調整をやっている中で刺激政策をやることは━━━━なんだから、価格政策はとりたくないんだ、こういうことになるんじゃありませんか。政府としては、おそらく私は長期的には今後とも据え置く方針だろうと思いますよ、そうとしか考えられない。いかがですか。
  88. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これはさっきもお答えいたしましたように、私は非常にむずかしい問題だと思うんです。どういう突発の事態がないとも限りませんし、それからまたこのごろは技術は進歩いたしましたから、多少の台風等はあまりこたえなくなってきておりますけれども、どのような状態で急速に生産が減退するというふうなこともないとは限りません。したがって、これからどういうふうにしていくかということにつきまして、将来の展望というものは、ことに価格の面などでは予告することは非常にむずかしいことではないかと思うんです。ただ、いままでの生産力をもってすれば、まず大体五年間くらいは長期に安定政策、転作を定着せしめる手段を講じていくことが一番いいであろうし、そういう将来の展望を示すほうが農作物をつくっていただく方にも御安心願えるのではないだろうか、こういうことで、生産についてはそういうことを考えている次第であります。したがって、そのほかに何が出てくるかわからないことを予測いたしますというと、価格のことについてはあらかじめ想定することはなかなかむずかしいことではないか、こう思っているわけであります。
  89. 二見伸明

    ○二見委員 生産と価格というのは、私は大きな関係があると思うんですよ。生産調整をこれから向こう五年間やる段階で、突発的な事故でもって需給が逼迫したというときには、それは五年間継続する生産調整をやめればいいわけですね。やめるか、あるいは一時的に中止するか、そうすれば需給の逼迫は当面解消できるわけです、そういう事態が起これば。しかし、そういう事態は万々起こらぬだろうというのが政府の基本的な考え方でしょう。生産調整の背後にある、そんなに需給が急激に逼迫するということは考えられぬというのが政府側の考えだろうと私は思います。そういう段階だからいまの技術をもってするならば、しかも他作物よりも米のほうが相対的に有利であるという実情からするならば、政府としてはむしろ増産が一番こわいんだ、何よりもこわいのは増産なんだ、だから増産に刺激になるような政策はとりたくないのだ、こういうことになるのじゃありませんか。極力米づくりは押えてもらいたいのだ、単年度需給が均衡するような限度でもって米づくりはやってもらいたいのだ、それ以上つくってもらっては困るのだというのが基本的な考え方でしょう。そのために政府は、一方では買い入れ制限をこれからもやるだろうと思います。これは一つのむちのほうだろうと思うのです。もう一つは今度はあめをしゃぶらせないという方法でやるのじゃないですか。価格は高くしませんよ、米はつくってももうかりませんよ、あなた方が考えているほど米づくりはもうかるものではありませんよ、そういうふうな方向に持っていくのではないのですか、向こう五カ年間は。それから先はまた別としても。それが基本的な考え方じゃないのですか。大臣は、いま来年のこと、再来年のことはわからぬ、わからぬとおっしゃるけれども、基本的にはそういう考え方にあると私は思うのですが、いかがでしょうか。
  90. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農林省のつくっております長期見通しでも、五十二年千百万トンぐらい需要、生産考えられておるようでありますが、これは若干ずつ消費が減退していくという、こういう傾向、それから生産力は、反当収量は逆にふえてまいるという計算も織り込み済みだろうと思っておりますが、そういうことを考えてみますと、やはり比較的長期に安定して、安心をして生産調整をやっていただき、その間に転換していただくということがそのねらいである、これはそのほうがかえって米をつくられる農家の方にも親切な態度ではないか、こう思うわけであります。  そこで生産調整をやるために五年間の計画を立てましたが、価格についてはどうなるか、これは二見さんも御指摘のように一般常識になっております。価格政策で刺激すれば増産が行なわれる、これは当然の理論だと思いますが、したがって、われわれとしては、一応はそういう考えで対処いたさなければなりません。しかしいまの立場で、現在の段階においてどのようなことが起きてくるかもわかりませんので、価格について想定するということは、これは非常にむずかしいことではないか、こう考えるのであります。いまそのことをお答えいたしておるわけであります。
  91. 二見伸明

    ○二見委員 日本の食糧の確保、あるいは農業という点から考えて米の水準を据え置く、場合によっては将来も据え置くこともあり得る。米づくりは減るかもしれません。それに見合って他作物への転換がスムーズに進むのかどうか。たとえば政府考えておるように、大豆の自給度が高まるのか、麦の自給度が高まるのか、野菜の生産が安定するのか、そこら辺の対策は、私は決して満足なものだとは思いません。一方的に米を減らすことだけにきゅうきゅうとしておるのが実情ではないだろうか。それを農業全体の目から見たならば農業全体としてはずっと縮小される方向に来るのではないか、食糧の確保という面から見ればこれからのやり方はずっと縮小される方向に来るのではないか、私はそういう心配、不安感を持っておるわけですけれども政府としては、そういう点はこれからどういう方向でやっていくのか、農林省の基本的な、具体的な考え方をお示しいただきたいと思うのです。
  92. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米につきましては、いまのような需給状況でありますので、この生産調整しなければならぬということは、たびたびお答えいたしておるわけでありますが、転作の対策につきましては、政府は四十六年度予算編成にあたりましても計画を御説明申し上げておるわけであります。  先ほど価格政策のお話がございましたけれども、私どもといたしましては、やはり輸入品に対してわが国の農作物と競合するようなものについては、一定の期間はあるいは季節関税ということを考えますし、それからふだんの関税その他場合によっては課徴金等の制度も考慮しながら、わが国の米から転換していく農作物の生産を助長していきますためには、ある程度の価格による保護というものは、これは日本だけではありません、諸外国ともやっておることでありますが、そういう制度を段階的に採用せざるを得ないのは当然のことだと思っております。  同時にまた、規模を拡大してコストを安くすることには一近代化のためにも努力はいたしますが、そのほか価格政策でも保護しなければならぬものもありましょう。しかしながら農業全体といたしましては米が小さくなるか、生産が縮小されるから他の農業も縮小されるということであってはいけないのでありまして、ただ農業従事者が減っても生産は逆にふえるという傾向は、農業基本法においても自立経営農家の育成ということをいっておられるのでありますし、私どももそういう方向はとるべきであると思いますが、農業それ自体を縮小するということは、当然考えておらないわけであります。
  93. 二見伸明

    ○二見委員 適正米価ということも今後の基本的な考え方なんですけれども、今回は生産費及び所得補償方式によって行なうということが一応たてまえにはなっておりますね。だけれども、これは需給事情というものを勘案するというか即応する、そういう需給事情というものが大幅に取り入れられてきておる。これはいままでわれわれがすなおに考えてきた生産費及び所得補償方式と名前は同じかもしれないけれども、実態は、中身は違ってきておるわけですね。政府は適正米価というものについては今後はどういうふうな考え方をしていくのですか。需給事情が逼迫しているときと緩和しているときとは違うというのがいままでの御答弁でしたし、そうなると適正米価に対する考え方も今後は大幅に変わってまいりますね、どういう方式をとるかは別としても、名前は同じでも実態が違えば違うのですから、実態面から見れば適正米価についての考え方は大幅に違ってきますね、その点いかがでしょう。
  94. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 昨年の米審のときにも、米審の建議というわけではありませんが、有志の大多数の方々から、明年度は、つまり明年度と申しますのはことしになるわけでありますが、この生産費及び所得補償方式は採用ができなくなるのではないか、したがって、こういう方式について再検討すべきではないかという申し入れが有志からありました。私どもといたしましては、やはり物の価格はどこまでも需給事情を勘案いたしながら処理していかなければなりませんものでありますから、いろいろ御意見はあるかもしれませんが、今回のような算式をもって算定をいたしたわけでありますが、将来の需給事情、それらの状況等を見て、このままの制度が継続するものであるならば、どのようなふうに対処すべきであるかということは、引き続いて検討していかなければならないことだ、このように思っておるわけであります。
  95. 二見伸明

    ○二見委員 今回のやり方というのは、据え置きということを前提として、それに生産費及び所得補償方式でもってどういうふうにすれば据え置きになるかということを、言うならば逆算で積み上げてつくったわけですね。答えは最初から出ておるのです。答えは据え置きで出ている。その算式の中の数字をどういうふうに変えるかということで、いわばつじつまを合わせたわけでしょう。その結果、平均生産費を下げるとか労賃を低く見るとかという、こういう方式をとったわけです。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 いわばもうこれは三年続きでこういう方式、いろいろと中身を変えてきたわけですけれども、四十四年、四十五年、四十六年と、こういうふうに方式を変えてきたわけです。そうすると、政府としては、この方式をとるならば、もうあと据え置くだけです——今回のこのやり方は、われわれとしては認められないけれども、一応政府としてはつじつまの合った数字が出てきた。では来年はどうするのだろうか、来年もし据え置く場合にはどういうふうにするのだろうか、考え方はどういうふうにするのか。そういうことになると、適正米価というのはもう実際には行なわれ得ないで、政府のほうで、まずもって自分のほうで、いろいろな方式はあるけれどもそれはあとでつじつまを合わせるための数式にすぎないのであって、最初から据え置くのだとか、あるいは五%アップだとか、こういう数字を前もってきめておいて、あとはいかにして数字を合わせるかということだけに農林省としての作業は残っておる。農林省の作業は、そこから先が農林省の作業じゃないかという気が、このやり方を見ていてもするのですがね。そうすると、適正米価というものが今後どうなっていくのか。合理的な形で、農家方々が納得できるような形でもって適正米価というものが今後きめられていくのかどうか、私はその点非常に疑問に思うわけです。そういう点についての大臣の基本的な考え方をお尋ねしたいし、また今後どうするのかお尋ねをしたいのですが、いかがでしょうか。
  96. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今回の米審においてもぼつぼついろいろな御意見が吐露されております。おそらくきょうも懇談会でやっていらっしゃることだと思いますが、そういう方々の御意見等も十分参酌いたしまして、これから私どもが来年の米価等についてはどのようにすべきであるかというふうなことをさらに検討を続けてまいらなければなるまい、こう思っておるわけであります。
  97. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点お尋ねしますけれども、たとえば今度の算定のやり方で、いままでと違いますね。いままでは、過去五年間五俵以上の農家の平均生産費だったけれども、今度はそうじゃありませんね。言うなれば、生産費を切り下げるということですね、この考え方は。それ以上のコストの高い農家は米をやめたほうがいいのじゃないか、そういう考え方がよしあしは別として背景にあるのじゃないかと私は思います。そうなった場合に、もう米づくりはだめなんだ、コストの高い米はつくっていられないのだという農家に対して、では米以外にどういうふうに転作すればいいのか、どうすればいままでと同じような所得が得られるのか、そこら辺の対応策というものが私は明確ではないと思う。これをつくったらいいでしょう、こういうふうにやればだいじょうぶですよという、農林省としての明確な、そしてきめのこまかい、親切な指導というものはないと私は思うのですね。そういう点については、私は農林省のほうにも大いに反省してもらいたいし、すぐにでもつくってもらいたいと思うのです。その点はどうでしょうか。
  98. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私ども考えておりますように、昨年農地法、農協法等を改正していただきましたときにも、そういう点についてるるお話がありました。それから農業年金基金制度というふうなものをつくりましたのも、新しい構造政策に出発いたしますための必要から出てきたものであります。それで、私どもとしては、全般が統制ではございませんので、政府が命令してこうやれああやれという筋合いのものではありませんが、たとえば中小企業であるとかほかの業界におきましては、おそらく農業のほうよりも行政が世話をやく部分は非常に少ないだろうと思います。それぞれお一人お一人が自分の知恵と従来の環境等を参考にいたしまして、御自分の発明くふうでやっていらっしゃる。そこで、農業というようなものにつきましては、比較的団体的に行動ができるものでありますので、組合もでき、その他の農業団体等もできるわけであります。比較的行政が指導しやすいものでありますから、そういう面では御相談に応じるようにいたしてまいりたいわけでありますが、私どもは、やはり農業として立ち行くためには、規模をできるだけ大きくして、競争力を強くしていくということが必要ではないか。そのために、そういう方針のときに自分はどうすべきであるかということを御本人がいろいろごくふうなさいまして、職業をかえていきたいという考え方の方には就職の機会を拡大するように努力しなければなりません。しかもまた、兼業でもやっていきたいという方はこの兼業をどのようにして生かし、農業をもどのようにして継続し得るかということについても、われわれの行政の面でできるだけの御協力をしなければならぬということでありますが、要は、農業全体としては縮小されないように力を入れてまいりたい。そのほかでなお余剰の労働力を持っておられる農村の人々には、雇用機会を拡大して現金所得、農外所得を得られるようにしむけていくことが政策としては必要ではないか、このように考えておる次第であります。
  99. 二見伸明

    ○二見委員 終わります。
  100. 草野一郎平

    ○草野委員長 次回は明二十八日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十八分散会