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1971-02-24 第65回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十四日(水曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君   理事 三ツ林弥太郎君 理事 千葉 七郎君    理事 小平  忠君       江藤 隆美君    鹿野 彦吉君       熊谷 義雄君    小山 長規君       齋藤 邦吉君    坂村 吉正君       澁谷 直藏君    瀬戸山三男君       高見 三郎君    中垣 國男君       別川悠紀夫君    松野 幸泰君       森下 元晴君    山崎平八郎君       渡辺  肇君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    中澤 茂一君       芳賀  貢君    松沢 俊昭君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       二見 伸明君    小宮 武喜君       津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省農地局長 岩本 道夫君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   亀長 友義君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   瀬野栄次郎君     西中  清君   鶴岡  洋君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   西中  清君     瀬野栄次郎君   矢野 絢也君     鶴岡  洋君 同月二十日  辞任         補欠選任   鶴岡  洋君     渡部 一郎君   合沢  栄君     和田 春生君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     鶴岡  洋君   和田 春生君     合沢  栄君 同月二十二日  辞任         補欠選任   鶴岡  洋君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     鶴岡  洋君 同月二十三日  辞任         補欠選任   鶴岡  洋君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     鶴岡  洋君 同月二十四日  辞任         補欠選任   美濃 政市君     芳賀  貢君     ――――――――――――― 二月十九日  海洋水産資源開発促進法案内閣提出第五八号) 同月二十三日  家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六九号)(予) 同月二十二日  中国産食肉輸入禁止解除に関する請願(黒田寿  男君紹介)(第九二八号)  BHC等有機塩素系農薬全面禁止に関する請  願(相沢武彦紹介)(第九二九号)  同(浅井美幸紹介)(第九三〇号)  同(新井彬之君紹介)(第九三一号)  同(有島重武君紹介)(第九三二号)  同(伊藤惣助丸君紹介)(第九三三号)  同(小川新一郎紹介)(第九三四号)  同(大久保直彦紹介)(第九三五号)  同(大野潔紹介)(第九三六号)  同(大橋敏雄紹介)(第九三七号)  同(近江巳記夫紹介)(第九三八号)  同(岡本富夫紹介)(第九三九号)  同(沖本泰幸紹介)(第九四〇号)  同(鬼木勝利紹介)(第九四一号)  同(貝沼次郎紹介)(第九四二号)  同(北側義一紹介)(第九四三号)  同(桑名義治紹介)(第九四四号)  同(小濱新次紹介)(第九四五号)  同(古寺宏紹介)(第九四六号)  同(斎藤実紹介)(第九四七号)  同(坂井弘一紹介)(第九四八号)  同(鈴切康雄紹介)(第九四九号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第九五〇号)  同(田中昭二紹介)(第九五一号)  同(多田時子紹介)(第九五二号)  同(竹入義勝紹介)(第九五三号)  同(鶴岡洋紹介)(第九五四号)  同(鳥居一雄紹介)(第九五五号)  同(中川嘉美紹介)(第九五六号)  同(中野明紹介)(第九五七号)  同(西中清紹介)(第九五八号)  同(林孝矩紹介)(第九五九号)  同(樋上新一紹介)(第九六〇号)  同(広沢直樹紹介)(第九六一号)  同(伏木和雄紹介)(第九六二号)  同(二見伸明紹介)(第九六三号)  同(古川雅司紹介)(第九六四号)  同(正木良明紹介)(第九六五号)  同(松尾信人紹介)(第九六六号)  同(松尾正吉紹介)(第九六七号)  同(松本忠助紹介)(第九六八号)  同(丸山勇紹介)(第九六九号)  同(宮井泰良紹介)(第九七〇号)  同(矢野絢也君紹介)(第九七一号)  同(山田太郎紹介)(第九七二号)  同(和田一郎紹介)(第九七三号)  同(渡部一郎紹介)(第九七四号)  同(渡部通子紹介)(第九七五号)  同(阿部助哉君紹介)(第九七六号)  同(赤松勇紹介)(第九七七号)  同(石川次夫紹介)(第九七八号)  同(江田三郎紹介)(第九七九号)  同(岡田利春紹介)(第九八〇号)  同(加藤清二紹介)(第九八一号)  同(金丸徳重紹介)(第九八二号)  同(川村継義紹介)(第九八三号)  同(木島喜兵衞紹介)(第九八四号)  同(黒田寿男紹介)(第九八五号)  同(小林信一紹介)(第九八六号)  同(小林進紹介)(第九八七号)  同(後藤俊男紹介)(第九八八号)  同(佐藤観樹紹介)(第九八九号)  同(斉藤正男紹介)(第九九〇号)  同(島本虎三紹介)(第九九一号)  同(下平正一紹介)(第九九二号)  同外一件(田中恒利紹介)(第九九三号)  同(武部文紹介)(第九九四号)  同(楯兼次郎君紹介)(第九九五号)  同(辻原弘市君紹介)(第九九六号)  同(堂森芳夫紹介)(第九九七号)  同(内藤良平紹介)(第九九八号)  同(中澤茂一紹介)(第九九九号)  同(中嶋英夫紹介)(第一〇〇〇号)  同(中谷鉄也紹介)(第一〇〇一号)  同(中村重光紹介)(第一〇〇二号)  同(西宮弘紹介)(第一〇〇三号)  同(芳賀貢紹介)(第一〇〇四号)  同(長谷部七郎紹介)(第一〇〇五号)  同(平林剛紹介)(第一〇〇六号)  同(古川喜一紹介)(第一〇〇七号)  同(堀昌雄紹介)(第一〇〇八号)  同(松本七郎紹介)(第一〇〇九号)  同(松平忠久紹介)(第一〇一〇号)  同(三木喜夫紹介)(第一〇一一号)  同(美濃政市紹介)(第一〇一二号)  同(八木昇紹介)(第一〇一三号)  同(柳田秀一紹介)(第一〇一四号)  同(山中吾郎紹介)(第一〇一五号)  同(山本弥之助紹介)(第一〇一六号)  同(横路孝弘紹介)(第一〇一七号)  同外十九件(古屋亨紹介)(第一〇一八号)  同外二十八件(粟山ひで紹介)(第一〇一九号)  同外十四件(河野洋平紹介)(第一〇五七号)  同(相沢武彦紹介)(第一〇五八号)  同(浅井美幸紹介)(第一〇五九号)  同(新井彬之君紹介)(第一〇六〇号)  同(有島重武君紹介)(第一〇六一号)  同(伊藤惣助丸君紹介)(第一〇六二号)  同(小川新一郎紹介)(第一〇六三号)  同(大久保直彦紹介)(第一〇六四号)  同(大野潔紹介)(第一〇六五号)  同(大橋敏雄紹介)(第一〇六六号)  同(近江巳記夫紹介)(第一〇六七号)  同(岡本富夫紹介)(第一〇六八号)  同(沖本泰幸紹介)(第一〇六九号)  同(鬼木勝利紹介)(第一〇七〇号)  同(貝沼次郎紹介)(第一〇七一号)  同(北側義一紹介)(第一〇七二号)  同(桑名義治紹介)(第一〇七三号)  同(小濱新次紹介)(第一〇七四号)  同(古寺宏紹介)(第一〇七五号)  同(斎藤実紹介)(第一〇七六号)  同(坂井弘一紹介)(第一〇七七号)  同(鈴切康雄紹介)(第一〇七八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一〇七九号)  同(田中昭二紹介)(第一〇八〇号)  同(多田時子紹介)(第一〇八一号)  同(竹入義勝紹介)(第一〇八二号)  同(鶴岡洋紹介)(第一〇八三号)  同(鳥居一雄紹介)(第一〇八四号)  同(中川嘉美紹介)(第一〇八五号)  同(中野明紹介)(第一〇八六号)  同(西中清紹介)(第一〇八七号)  同(林孝矩紹介)(第一〇八八号)  同(樋上新一紹介)(第一〇八九号)  同(広沢直樹紹介)(第一〇九〇号)  同(伏木和雄紹介)(第一〇九一号)  同(二見伸明紹介)(第一〇九二号)  同(古川雅司紹介)(第一〇九三号)  同(正木良明紹介)(第一〇九四号)  同(松尾信人紹介)(第一〇九五号)  同(松尾正吉紹介)(第一〇九六号)  同(松本忠助紹介)(第一〇九七号)  同(丸山勇紹介)(第一〇九八号)  同(宮井泰良紹介)(第一〇九九号)  同(矢野絢也君紹介)(第一一〇〇号)  同(山田太郎紹介)(第一一〇一号)  同(和田一郎紹介)(第一一〇二号)  同(渡部一郎紹介)(第一一〇三号)  同(渡部通子紹介)(第一一〇四号)  同(赤松勇紹介)(第一一〇五号)  同(井上普方紹介)(第一一〇六号)  同(江田三郎紹介)(第一一〇七号)  同(金丸徳重紹介)(第一一〇八号)  同(山本政弘紹介)(第一一〇九号)  同(斉藤正男紹介)(第一一一〇号)  同(島本虎三紹介)(第一一一一号)  同(田中武夫紹介)(第一一一二号)  同(千葉七郎紹介)(第一一一三号)  同(中嶋英夫紹介)(第一一一四号)  同(中谷鉄也紹介)(第一一一五号)  同(平林剛紹介)(第一一一六号)  同(八木昇紹介)(第一一一七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十日  国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措  置法案の成立促進に関する陳情書  (第三〇号)  食糧管理制度堅持等に関する陳情書  (第三一号)  同  (第九八号)  国営かんがい排水事業早期完成等に関する陳  情書  (第三二号)  総合農政の確立に関する陳情書  (第三三号)  農林漁業金融公庫造林融資条件改善等に関す  る陳情書  (第三四号)  瀬戸内海海域における赤潮対策に関する陳情書  (第三五号)  漁港機能施設に対する助成強化に関する陳情書  (第三六号)  農薬の安全使用に関する陳情書  (第三七号)  保健休養林の造成に関する陳情書  (第三八号)  米の生産調整に関する陳情書外五件  (第九二号)  有害農薬使用反対等に関する陳情書  (第九三号)  中型さけ・ますはえなわ漁業漁法転換に関す  る陳情書(第九四号)  総合農政確立等に関する陳情書  (第九五号)  林野公共事業の拡充に関する陳情書  (第九六号)  農業改良普及職員設置費補助金の確保に関する  陳情書(第九七号)  花卉園芸振興法早期制定に関する陳情書外二  件(第九九号)  農業共済職員給与改善等に関する陳情書  (第一〇〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 草野一郎平

    草野委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  3. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 私は約一時間というめどで、この前大臣所信表明をされましたので、それにつきまして御質問申し上げたいと思います。  この所信表明の質問をする前に、過去数年間にわたりましての毎国会ごとにおけるところの農林大臣所信表明も拝見してまいったのでありますが、ほとんどが農業の繁栄をうたい文句にしておられるのであります。倉石農林大臣も、この前の所信表明演説の中には、食料の安定的供給だとかあるいはまた農業に従事するところの者と他産業に従事する者との所得を均衡させるとか、あるいはまた近代的な、文化的な生活のできるところの生活環境づくりというようなことを言っておられるのでありまするが、現実の農村の実態はこれと逆な方向農政が進んでいるのではないか、こういうぐあいに私は考えているのであります。一体現在の農政は、大臣の言っておられるような安定的な供給をすることのできるようなそういう農産物というものは何と何であるかということをまず最初にお伺いを申し上げたいのであります。またそのためにいままでどのような具体的な施策を講じてこられたか、また所得均衡と言われるが、農業生活できなくなりまして、そして出かせぎをやったり日雇いをやったりしているところの農民を大臣は一体どのように認識しておられるのか。第三点といたしましては、過疎地帯の数がだんだんと増しているわけなんであります。およそ過疎地帯を見られればおわかりだと思いますが、文化などというところの、要するにそういうことばすら使うことができないようなそういう状態になっているわけなんでありますが、こういうような農村というものをどのように見ておられるか、この三点について、まず最初にお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農業ばかりでございませんで、いろいろな産業面で非常な勢いで流動いたしておることはただいまお話のとおりであります。ひとり農業に限らないのでありますが、そこでそれぞれの職場におられる人たちは、やはりそういう時代推移に伴うて、おくれないよう自分がまず対処していくことを考えなければなりません。国が全体の産業政策等を国の力で計画を進めていくような国もありますけれども、私どもとしてはやはり、御自分自身が主体になってどのように対処すべきであるかということをそれぞれの人々が考えなければならぬと思いますが、私どものような国柄では、やはりそうではあるが、行政的にそれができるだけうまくいくように、そういうことに協力するのが行政の任務ではないかと思っているわけであります。したがって、たとえば五十二年を目当てに長期の見通しを一応立てておりますので、そういう方向に従ってどのように協力していくべきであるかということを一応計画を立てましたが、あの中で、やはり米は、五十二年の需給率ということを考えましてもさらに急速に需要が減退してきておる。そこで生産調整のような問題が起こってくるわけでありますが、人口一億をこえるわが国におきまして、やはり国民主食である米のごときものは一〇〇%の需給率を維持するようにつとめたい、それ以上のものは生産調整をすると同時に、ほかのいわゆる選択的拡大を目標といたしておりますような農産物生産の増強に振り向けていかなければならない。これは私どもは、生産調整が先行するというよりも、いまの日本農業構造が変化していく、そういうことの生産対策はまず第一に必要である、引き続いてやはりそれに伴うて生産調整が行なわれなければならないと、こういうふうに考えておるわけでありますが、政府は、御存じのように米の生産調整に伴ってそれぞれの——われわれだけでは独善的でもいけませんし、また多くの人々の御協力を得なければなりませんので、このたび生産対策協議会というものを設けまして、地方自治体の首長をはじめ農業団体等指導者に御参加も願って、これから鋭意そういう生産対策の取り組み方についていろいろ御協力を得、お知恵を拝借するという形でスタートいたしておるのでありますが、私どもといたしましてはでき得るだけ、国内生産し得る可能性のあるものについては、米の転作についてそういう方向に力を入れてまいりたい、そうすることによってやはり農業を維持し、緑の農村を維持し、そしてまた同時に、他産業に比べてひけをとらないような農業を育成していくことが必要である。しかしながら、やはりそういうことを施策として考えて実行いたしてまいりましても、現状の姿においてすでに過半数が兼業農家であります。したがっていまのような状況のもとに考えてみますと、この兼業農家所得を増進させるという施策は非常に重要な一つ施策になってまるいわけであります。したがってそういう方々労働力というものを、太平洋のいわゆるメガロポリスといったような形になることは私どもとしては極力避けるべきであって、やはり人口産業もなるべく国内に平均的に分布されることが好ましい。したがって政府はこの国会にもそういうことのための法律案を提出いたすつもりでおるわけでありますが、つまり一口に申しますならば公害を伴わないような産業、また地理的に地方地方に合うような産業を、地方方々と御相談の上で、これを地方に分散することによって、農村にあります労働力というものをできるだけそれに吸収して、現金所得を得てもらって、そして農家経済全体としての所得の増進をはかることが必要ではないか。これは私どもが発明いたしたわけではありませんで、ヨーロッパなどにおいてはもうすでに御承知のとおりであります。そのようにいたしまして、私どもは、いわゆる農村におられる人々が他産業に比べましてできるだけ劣らない所得を得られるようにしていく必要があるのではないか、一応概念的にはそのように考えておるわけであります。
  5. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 時間がございませんからできるだけ簡潔に御答弁を願いたいと思います。  そこで、一億の国民に対して安定的供給ということを言っておられますが、いまわが国生産状態を見ますると、昭和三十六年に農業基本法が制定されたときにおきましても、やはり米だけで農業に依存するということについては問題があるのじゃないかというようなことで、転作方向日本農政が向いたことがあるわけなんであります。そういうような状態の中でとうとう荒らしづくりという問題が起きまして、そして米の生産というものが非常に低下をする。一人当たりの国民の米の摂取量は減ってはまいりましたけれども、しかし全体としては供給に非常に困難を来たしているところの状態が起きたことがあるわけであります。同時に、それでは転作をやったところのもので成功した例があるかどうかということになりますと、これまたあまり成功しておらぬわけなんであります。そういうようなことで、一つの例として考えてみまするならば大豆がそれでありますけれども、二十九年には四十三万ヘクタールもあったわけです。それが四十四年には十万ヘクタールというぐあいに減っているわけなんであります。それに、そういう方向に軽換していかなければならぬじゃないかというにもかかわらず、三十六年の七月には貿易の自由化というやつが実施されているわけなんであります。そういうようなことからして、大豆生産というのはほんとうに国民の必要とする量の何%も供給することができないという状態があるわけなんでありまするが、こういうことを再び繰り返しているところの農政というものがいま農林大臣が言われているところの農政ということになるのじゃないか、こういうことを懸念して私は質問しているわけなんであります。簡潔に御答弁を願いたいと思うのです。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 なるべく簡単に申し上げたいと思いますが、あまり簡単では私ども申し上げたいと思うことが言えませんが、なるべく簡単にいたします。  松沢さんよく御存じのように、何といっても米というものはこれだけ長細くできておりますわが国の領土の中でどこにでもでき得る可能性のあるもので、しかも国民全体が主食として好むものであります。したがって、米の適地であるないにかかわらず米は増産され、そしてまた一時非常に欠乏いたしておった時代のこともありまして、米は特段の保護を受けてやってまいりました。したがって増産また増産、その間に技術も進歩をいたしてきた。そういうことのために、やはりどなたも考えますのに、一番そろばんの合う、そして安全性のあるものは米であるということで、それに皆力を入れられた。これは必然的に起こるべきことだと思います。したがって、ただいまのお話のように、大豆というふうなものについてはそろばん勘定からいいましてやはりどうしても減退してまいった。しかし、松沢さんも御存じのように、いま完全自給し得るものは米だけでありまして、その他のものについてはわが国生産はされますけれども、それを育成していく肥料等について大部分が輸入にまたなければならないという現象であります。したがって私どもは、ここで大きく農政についてみんなが反省して、できるだけ外部の力にまたずにわれわれが自給度を増し得る、そういうものにひとつ力を入れていくべきではないか、こういうことのために今度の生産調整でもやはり永年転作については五年間のめんどうを見るとか、いろいろそういうことに気を使って、その間にわれわれが考えております、農家の人が考えておりますような永年作物が定着してまいるようにいたしていきたい、こういうのが考え方の中心になっているわけであります。
  7. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 米に対しては保護政策を加えてきたということを言っておられるわけなんでありますが、これは政府のほうから出してもらいましたところの「米と小麦の政府買入量輸入価格推移」というのを見ますと必ずしもそういうことにはなっておらぬじゃないか。つまり昭和二十二年におきましては買い入れ価格というものが一万二千八百十三円、ところが輸入価格というのは四千六百八十円、それから四十二年が買い入れ価格が二万九千八十円、輸入価格が一万七円、それから四十四年になりますと今度三万一千円と二万八千円、こういう比率になっておりますので、必ずしもそういう傾向になっておらぬと私は思うのです。  そこで、いろいろ保護政策をやってこられたということを言っておられますけれども政府は昨年の十月末で古米、古々米などが二百七十万トン余剰が生じた、こういうふうに発表しておられるわけでありますが、要するに、公表しておられるところの数字の根拠というものは一体何なのであるか。各県の食糧事務所の所長の報告によって発表したということになりまするならば、その食糧事務所ごと個別倉庫ごとに現在どの程度どうなっているかということを明らかにしていただきたいと思うのです。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 食糧庁長官からお答えいたさせます。
  9. 亀長友義

    亀長政府委員 先ほど御指摘のように、四十五年の十月現在でのお話であったと思いますが、そのときの政府全体の手持ちの米は一千四十五万五千トンでございます。これは食糧庁の各事務所の総在庫数量の具体的な積み上げでございます。そのうち古米は、四十五年の十月でございますから四十四年産以前のもの、これが七百二十万トンでございまして、いま御指摘の二百七十万トンというのは七百二十万トンの話でないかと思っております。  そのうち過剰米としてどういうふうに見るのかという問題でございますが、過剰米の見方という問題は本来量的には非常に弾力的なものである。結局将来量的に主食に向ける見通しがないあるいは品質的に向ける見通しがない、こういうものの見込みを過剰米数量というふうにわれわれは考えておるわけでございます。したがいまして、いまこのくらいな過剰の見通しであるということでございまして、将来その米がかりに何らかの理由で主食用に回るということもございますし、その点はそういう変動要因をいろいろ含んだ見通し数量であるということでございますので、その数量一つ一つ食糧事務所過剰米というわけではございません。  以上のような状況であります。
  10. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 これはいますぐ資料が出ないとなれば、いますぐでなくてもいいのですけれども、各食糧事務所の倉庫があるでしょう。要するに、具体的にこの倉庫には何俵入っているのだ、この倉庫には何俵入っているのだというのを全国の全部の倉庫の資料をひとつ出していただきたい、こういうことなんです。
  11. 亀長友義

    亀長政府委員 何年産の米が何俵どこの倉庫に入っているというのは、要するに総在庫量の調査でございますから、それはすべての倉庫について資料をつくることは可能でございます。しかしまた、現に各食糧事務所には、それぞれ県内のどこどこの倉庫に何年産が何俵、何年産が何俵ということははっきりいたしております。ただこれを提出をするということになりますと、非常に膨大なものになります。その点は御了解を願いたいと思いますが、各食糧事務所には何々村の何倉庫の何年産が何俵、何年産が何俵ということははっきりいたしております。
  12. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 それは後ほどそれじゃ膨大なものになってもいいからひとつ出していただきたいと思うのです。  さてそこで、余剰米というものが政府の宣伝のようにこうたくさん生じたところの最大の原因というのは一体何であるか、その責任の所在というのはどこにあるかということを、これは大臣からはっきりしていただきたいと思うのです。
  13. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま過剰米お話が出ました。米の生産昭和三十四年以降四十一年まで、年によって多少の違いはございましたけれども、おおむね千二百五十万トンないし千三百万トン程度で安定的に推移いたしてまいりましたけれども、四十二年になりまして一躍千四百四十五万トンという飛躍的な生産の増大が生じたわけであります。それ以来四十四年まで連続三年間大体千四百万トン台の生産が継続いたしましたことは御承知のとおりでありますが、他方米の需要は先ほどもお話しがありましたように、食生活の高度化といいますか、多様化に伴いまして減退傾向にございまして、総需要量は三十八年度の約千三百四十万トンをピークにいたしまして、四十四年度には約千百九十七万トンになっております。このような生産の飛躍的向上とそれから一方米の需要の減退によりまして過剰米が発生いたしたものでありますが、四十四年に至りましてこの過剰傾向がわれわれの見るところきわめて恒常的なものになってまいりましたので、政府としては米の生産調整に着手するなど必要な施策に努力いたしてまいったのでありますが、しばしばほかの席でもまたこの席でも申し上げておりますように、われわれはかつて五十二年度までの見通しを発表いたしましたが、あのころからただいま申しましたような傾向で上がったり下がったりしておるうちに、たしか四十年度であるかと思いますが、非常に需給が緊迫してまいりました当時には、大体百万トン近い外米の輸入どもいたしたようなことでありまして、そういうような経過をたどっていま申し上げましたように今日に至っておる、こういうのが実情であろうと存じます。
  14. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 私はこの米の根本的な過剰になったところの原因は、麦との関係が非常に深いのじゃないか、米と麦というのはこれは切り離すことのできない因果関係を持っている、こういうぐあいに思うのでありますが、この麦の中でもやっぱり外麦輸入というものが相当大きな影響を与えていると思うわけなんであります。  戦後アメリカの小麦の輸入に対しまして、輸入補助金というものを出しておられていたのでありますが、この輸入補助金というのはどういう理由によって出されたのか。そして二十九年までこの輸入補助金というのは続いているわけなんであります。その点をはっきりしてもらいたいと同時に、二十九年までどの程度の金額を輸入補助金として出しておられたか、その点を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  15. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように昭和二十五年から昭和二十九年まで輸入食糧に対する価格差補給金というのが出ております。これは当時食糧の輸入価格がかなり高いものでございまして、海上運賃もかなり高かった、こういうふうな事情でございます。一方、国内食糧につきましては、消費者価格を食管法の趣旨にのっとりまして決定をいたしておりまして、当時の緊迫した食糧事情から政府はその価格安定をはかっておったのでございます。こういう関係でございましたので、割高の輸入食糧を国内の消費者価格に相当する価格で提供しなければならないということに相なったわけでございまして、そのために輸入食糧の価格国内消費者価格との差額を国が財政負担をいたしておったわけでございます。これがいわゆる輸入食糧価格調整補給金という制度でございまして、昭和二十九年度まで実施をいたしておりました。その後、輸入価格が低落をいたしましたので、この補給金は不要になった次第でございます。  この二十五年から二十九年、会計年度で申しますと、二十六年度から二十九年度ということに相なりますが、この間に食管特別会計が一般会計から受け入れました輸入食糧補給金額は、昭和二十六年度三百二十一億、昭和二十七年度四百二十七億、昭和二十八年度二百三十一億、昭和二十九年度六十六億でございます。概数で申し上げますとそのような状況でございます。
  16. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 これは国内価格よりも輸入価格のほうが高かったのでそのために出した、こういうことになっているわけなんでありまするが、こういうぐあいにしてやはり低麦価政策、そういう政策を強行していくために出したところの措置である。そういう中で麦というのがどんどんとやはり国の中に入ってくるというところの一つの原因というのができたと私は思うのです。  二番目といたしましては、この麦の輸入の問題といたしましては、MSAの小麦の輸入というのがあると思うのです。このMSA法五百五十条で五千万ドルの余剰農産物をアメリカから購入したと私は聞いているわけなんであります。そういう小麦輸入の代金というのは円払い決済であって、そのうち八〇%はアメリカ軍の現地の調達分に回してあとの二〇%というものは日本に贈与される。その贈与されたものというのが、これはやはり軍事費に回されるという、こういう条件つきのものであったわけなんです。こういうような変遷を経ながら、順次この小麦の輸入というものが増加をしてきて、その小麦の増加に伴って米というものがじゃまにされる。その結果が七百二十万トンという数字にあげくの果てにはなったというふうに私は考えるわけでありまするが、大臣はこういう点につきましてどうお考えになりますか。
  17. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまのようなお話も若干あるかとは思いますが、米の需要につきまして、これはたとえば学校給食などにもいま私どもは文部省にお願いをいたしまして、鋭意米を使ってもらうようにいろいろな努力をしてもらっておるわけでありますけれども、やはり食べる子供たちに強制するわけにもいきませんので、そういうような傾向を見ておりますとやはり小麦というものの食料に供するという点においてはかなり、ある程度国民の間に定着をしてきております。したがって米の需要拡大のために主食用小麦の輸入を抑制すべきであるという御意見もございますけれども、われわれといたしましては消費者の好みを政府の力で押えるというわけにもまいりませんが、ただ行政的にはなるべく米を消費してもらうように非常な努力をして、たとえばいま学校給食の話を申し上げましたけれども、そういうような努力を続けておるわけであります。
  18. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 大臣、いま小麦というのは主食の三〇%を占めるようになっておるわけなんです。このことはつまりいま私が経過的にMSAの援助だとか、あるいはまた価格の補助金だとか、要するにそういう形、あるいはまたまだあるわけなんでありますが、農産物貿易発展援助法というようなことで、これにも八千四百万ドル、さらには第二次は六千五百八十万ドル、こういうぐあいにして小麦というのがどんどん入るようになったわけなんです。こういう経過を踏まえてくる中で、外麦の消費の傾向というのが強いからというのは当然であり、そういう中でまた小麦の輸入指定業者、これがあるわけなんでありますが、これがやはり限定されておりまして、その限定されたものが小麦という商品の上に定着化してきている。そうして内麦の減産、それから外麦の輸入増加というふうな方向をたどりまして、今度は小さいところの製粉資本というものが整理をされる形になっている。そして大製粉資本というものが強化をされておる。そして現在皆さんのやっておられるところの方法といたしましては、原麦の割り当て方式の検討とか、あるいはまた輸入割り当てのワクの譲渡及び移転の許可制、それから運賃の値引き、それから今度は運賃、工場の負担の本庁ワクの拡大、バラ積みの値引き、そういうような優遇策というのをとられてきているわけなんです。現在では四大企業、日清製粉それから日本製粉、昭和産業、日東製粉、こういうものが全体の製粉の七〇%を押えるということになっているわけなんです。でありますから、日本国民というものが米から麦に嗜好が変わったということではないのであって、こういう資本の動きが小麦というものを国民に食わせるという、そういう政策的なものであろうと思うのですよ。でありますから、米の消費拡大の方向でこれからも進むのであるということを農林大臣が幾ら言われたといたしましても、こういう背景というものにメスを加えない限りにおいては、小麦と米の関係というこの因果関係というものは依然としてこのような状態が続いていくのではないか、そういうことになりますと、やはり国の中の余剰米とかいわれるところの七百二十万トンというものが出た原因というものもこの辺にあるのではないか、私はこういうぐあいに考えるわけでありますが、この辺どうお考えになりますか。
  19. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまのようなお話、私どもは需要があるので輸入があるのではないか、そのように思っております。そういうことに対するただいまの松沢さんの御指摘とは私どもの観測は違っているわけでありますが、やはり需要のあるところに従ってそういう輸入も増加してくる。したがって、先ほども申しましたように、私どもとしては行政的には強圧するわけにはまいりませんけれども、なるべくひとつ米に代替してもらうようなお手伝いをしておる、こういうわけであります。
  20. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 たとえばそれではこういうのは一体どういうわけでなされなければならぬわけですか。バラ売りの場合においては値引きをするというのでしょう。要するに外麦が船に積み込まれて日本の港に入ってくるときは大体バラで入ってくるのでしょう。そのバラで入ってくるものをどうしてトンで六百円も値引きをしなければならぬわけですか。値引きをしなければならぬという理屈はないと思うのです。要するにバラの原麦をその値段で買ってくるのですから、それを値引きをするという理屈はないと思うのです。これはやはり製粉資本というものを擁護するところの具体的な一つのあらわれだと思うのです。そういう製粉資本というものを守ろうという体制を続けていく限りにおいては、それは米の消費拡大といっても消費の拡大にならぬじゃないか、こう思うわけなんですが、その点はどうお考えになりますか、大臣からひとつ答えてください。
  21. 亀長友義

    亀長政府委員 バラ売りの値引きにつきましては、昭和三十四年七月以降実施をいたしております。現在御指摘のようにトン当たり六百円を引いておるわけでございますが、バラの売却をいたしますと私どものほうとしては政府経費が非常に助かるわけでございまして、大体千二十二円程度はトン当たり政府の管理経費が助かる、かような観点から六百円値引きをして奨励をする、かような立場をとっておるわけでございます。  もちろんバラで買うためには相手側としてもいろいろ施設が必要になってまいりますが、そういう施設を整備させてこのバラ売却を推進するというためにはある程度の奨励措置を講じなければなかなか推進されない、こういうことがあるのでございまして、私ども値引きをいたしておりますのは、あくまで食管の政府経費の節減の範囲内というふうに考えておる次第でございます。
  22. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 私は大臣に聞くわけなんですけれども、バラのまま買ってくるわけですから、値引きという理屈はないと思うのです。それをさらに包装してやるということになれば金がかかるということをいま食糧庁長官は言っておられますけれども、それは包装すれば金がかかるにきまっておるわけです。だから包装しないままサイロの中に積み込むわけでありますから、要するにそのサイロというものも国が助成しておるのでしょう。そういう形の中に製粉資本というものを擁護しておるわけなんですよ。そうして零細な製粉業者というものを片端から整理するということなんです。こういう方向でいくということになれば、消費拡大にはならぬじゃないかということなんです。やはり麦というものを輸入して資本がそのことによってもうけろ、そのためには日本の米作というものがどうなろうとやむを得ないじゃないか、こういう一貫した背景というものがうしろにあるのではないか、これでは七百二十万トンも八百万トンも余剰米が出るのはあたりまえじゃないか、その責任というものを農林大臣はどう考えておるかということなんです。
  23. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま食糧庁長官がここで御説明申し上げましたような事務的なことを私はよく存じませんでしたので、長官からお答えをいたさせたわけでありますが、いまお話のございましたように、特別に何々資本であるとかそういうふうなことは私どもは一向考えておりません。つまり国民の需要が存在するところにやはり輸入増があるわけでありますので、行政的にはひとつ米に代替してもらうような、強制するわけにはいきませんが、できるだけ消費の拡大をはかるように努力をいたしてまいりたい。それ以外には何もほかのことを考えておりません。  ただ、ただいまバラ積みのお話がございました。私かつてカナダへ参りましたときに、海岸でバラのまま船に積み込む施設を見てまいりました。なるほどああいうものを見ておりますと、こちらでもやはりなるべく海岸で輸送力の節約のできるところに施設をして工場をつくるということは、コストダウンに必要なことでありますし、したがって麦は御承知のようにこれは管理をしても、たいへんに赤字が増大しておるような次第でありますので、私どもとしてはできるだけ節約をはかって、コストを下げるということは物価政策上も大事なことではないか、このように理解をいたしておるわけであります。
  24. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 時間がありませんので、次に進ませていただきたいと思います。  ことしの生産調整二百三十万トン、これはすでに府県に割り当てがいっていると思います。それからさらに買い入れ限度数量、これを五百八十万トン、自主流通米百八十万トン、こういうふうにきめられたわけなのでありますが、要するにそれをきめるにあたりまして、今度は食糧管理法の施行令の一部の改正、そうして米穀の売り渡しに関するところの政令の一部改正というのが行なわれたわけなのであります。これは法律的に非常に疑問のある点があると思いますが、食管法の根幹というものは、一体農林大臣は何とお考えになっているか、その点をまず簡単に御説明を受けたいと思うのです。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 根幹ということばをお使いになる方々によって、たいへん幅広く感じるわけであります。非常に狭く言っていらっしゃる方もあり、広く言っていらっしゃる方もある。別にこれは法律用語ではございませんので、したがって私どもといたしましては、根幹というのは、法律に言っておりますように、国民に食料を安定的に供給すること、それから同時に、そういう必要なために、価格、需給等について政府調整をする、それからまた配給について政府がこれを統制していく、そして安定的に国民食料を供給し得るようにつとめる、これが食管の根幹である、このように理解しておるわけであります。
  26. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 昭和十七年の井野農林大臣の食管法の提案理由の説明によれば、生産されたる米麦は必ず政府がこれを買うという体制を明らかにしたんだ、こういうことを言っておりますし、当時の平野力三委員の質問で、三条の「命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」というこの解釈は、農家の飯米以外のものを全部売り渡せ、要するにこういう意味なのかどうか、こういうことに対しましては、これは当時の湯河食糧管理局長も、これはさようでございます、そしていわばこの法律というものは政府が専売的にこれを買い入れ、売り渡しをするものである、こういうことを言っておられるわけなのでありますが、これが食管のほんとうの立法の精神だと思いますけれども農林大臣はどうお考えになりますか。
  27. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 当時、需給がきわめて逼迫いたしました状況のもとでは、生産され、それから流通いたします米を極力多く確保しなければなりません。食管法の提案理由の説明、それから政府委員答弁でも、そのような趣旨を述べたものであると私どもは考えておるわけでありまして、それが法律上全量買い入れを義務づけておるものであるとは、理解いたしておらないわけであります。
  28. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 昭和二十七年五月二十九日の食管法の一部改正の法律が制定されました当時は、麦の供出、配給制度というのを廃止をいたしますとともに、今後の麦の需給調整を行なうために、新たに麦類の政府買い入れ及び売り渡しに関するところの制度を設けることに改正をやっているわけですが、この場合においてもやはり、もし売れなかった場合においては政府が全量買うというところの制度になっているわけでありますから、やはり法律の最初のたてまえというものを尊重しながら一部改正というものが行なわれているのじゃないか、こういうぐあいに私は考えるわけであります。それからさらに、これに基づきますところのいろんな政令を見ましても、命令で定めるものというのは、政府に売り渡すべきところの米穀の政令の第一条、第二条、第三条、第四条、第五条で、これはまた非常にはっきりしているわけなんです。特に第十条には、「市町村長は、農業生産に支障を生じないように、農林大臣の定める生産者保有米穀及び種子用米穀を確保して政府買入数量を定めなければならない。」ということまできちんと規定しているわけなんです。それから食糧管理法の施行規則第三条には「都道府県知事は、食糧管理法第三条第一項の規定により政府に売り渡すべき米穀につき、その売渡の時期を定めなければならない。」ということになっておりますけれども数量の規制というのは全然なされておらぬわけであります。それから食管法施行令の五条の五には、自主流通米ができるまでの間は、「米穀の生産者は、その生産した米穀を政府以外の者に売り渡してはならない。」こういうことになっているわけであります。規則にいたしましても命令にいたしましても、すべてが完全な政府管理であり、しかも種子と飯米を残しては全量買わなければならないというぐあいになっているわけです。だから法律を解釈する場合におきましては、その法律とその法律が委任しているところの政省令、規則、そういうもの全体をながめながら、これは一体どういうことを言っているのであるかということを解釈していかなければならぬと私は思うのです。そういう立場からいたしますと、自主流通米そのものも私は食管法に抵触するのじゃないか。ましてや今回、政令の改正をやって買い入れ限度数量というものをきめたのは、明らかに食管法の立法の精神に反しているじゃないか。そういう点で一体どうお考えになるか、お伺いしたいと思うのです。
  29. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、食管法は国民食糧の確保及び国民経済の安定をはかるため、主要食糧の需給及び価格調整並びに配給の統制を行なうことを目的としておる、こうなっております。したがって政府買は入れば、この目的を達成するために政府買い入れて管理する、必要のある数量買い入れるということでありまして、ただいま松沢さんるるお述べになりましたのは、需給がああいう状態のときでありまして、今日のような事態になりまして、私どもといたしましては法が当然認めております政令の改正をいたした、こういうことでありまして、その需給の事情がこういうふうになっておるときには、やはり私どもとしては必要な措置を講ぜざるを得ない、このように御理解をいただきたいと存じます。
  30. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 法律の論争をここでやっても並行線になると思います。でありますが、五百八十万トンの限度数量というものをおろしたというのは、これは県知事におろされるわけでありますが、きょうの新聞を見ましても、各県とも、たいへんやはり市町村長は板ばさみにされている。下のほうでは、とてもこれはこなすわけにいかない、上のほうからは押しつけられる、板ばさみになっていると新聞に報じられているわけなんです。そこで、買い入れ限度数量、そういうものを県知事が市町村におろすのは、これは国の機関委任事務になるのですか、どうなんですか。
  31. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そのとおりでございます。
  32. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 国の機関委任事務ということになりますと、これは地方自治法の百四十六条によって、その市町村長や県知事というものが、政府が指示をしたとおりにやらない場合においては、これはそれなりの措置を講じることになるわけなんですが、そういう地方自治法百四十六条の一条文によって、市町村長や県知事がもし政府の割り当てはとてもわれわれは受けるわけにいかぬというふうにして返上した場合においては、そのような措置をお取りになるのですか。
  33. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 原則として、国が強制力をもって生産調整のようなことをやるべきではない。したがって、先ほども申し上げましたように、生産対策協議会というようなものができまして、県知事、市町村長、議長、農業団体、その他、ほとんど二十有余の団体にことごとく参加をしていただきまして、生産対策に非常な御熱意を持って御協力願うことになっておりますので、これはやはり政府の希望いたしておるように御協力の結果成功し得るものである、こういうふうな考え方で逐次まことになごやかに進めておる次第であります。
  34. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 なごやかであれば、何も質問する必要はないわけなんでありまして、きょうの新聞も、御存じだと思いますけれども、ここに出ておりますように、「楽観ゆるさぬ個別配分」「買入れ制限に反発」「板ばさみの市町村」「需給均衡押付けゴメン」「見通し暗い転作」「にがい奨励作物の失敗体験」ということで、これはもう、一面、生産調整の問題を取り上げているわけなんであります。だから、非常になごやかに行なわれているということにはならぬわけなんであります。  そこで、去年と違うのは、去年は、自主流通米の問題は別といたしまして、政令の改正はなかったわけなんです。ことしは買い入れ限度数量というものを政令で規定している。そして、いまお聞きしますと、これは国の機関委任事務である。こういうことになると、これは強権発動ではありませんか。あなたは御協力をいただきながらやるという気持ちだと言うけれども、米の足りないときにおきましては、米を出せという強権発動をやったわけなんであります。今度は、米が余ったからといって、米を出すなというところの強権の発動をやろうということなんでしょう。こういう農政のあり方というのが、一体まともな農政のあり方であるかどうか、その点お伺いを申し上げたいのであります。  同時に、農業基本法の前文には、「農業の自然的経済的社会的制約による不利を補正し、農業従事者の自由な意志と創意工夫を尊重しつつ、農業の近代化と合理化を図って、農業従事者が他の国民各層と均衡する健康で文化的な生活を営むことができるようにすることは、農業及び農業従事者の使命にこたえるゆえんのものであるとともに、公共の福祉を念願するわれら国民の責務に属するものである。」こういうことをいっているわけなんであります。そういうことになりますと、強権発動によって買い入れ限度数量を政令改正でやって、そして押しつけていく、強権発動をやっていく、そういうことは農業基本法の精神に反していないのであるかどうか、その点もはっきりしてもらいたいと思うのです。
  35. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 何だか強権発動なんて戦時中のような感じを受けるおことばではありますが、私どもは、農村から出てきておる代議士でございまして、まわりがみんな農家でありますから、専門的には存じませんけれども常識的にはよく戦時中のことも知っております。  顧みますというと、日本の今日のような、いわゆる経済大国などといわれるようになりましたそのいしずえの大きな力は、私は農村及び農業者の力にあったと思っております。しかも、足りないときには、いまお話しのように、いわゆる強権が発動されたりなどして、われわれから考えても反感を持つようなことが行なわれました。しかし、現状において、私どもは、強権的なことは少しも考えてはおりませんし、またそんな時代ではございませんことは御存じのとおりであります。ですから、生産調整の量にいたしましても、農業団体の皆さん方とはずいぶん何べんかお目にかかりましたが、その意見の調整は困難でありましたけれども、大局的に見てやはり生産調整はやむを得ない。そこで、そんなうしろ向きのことよりも、前進しようではないかということで意見が一致をいたしまして、まず生産対策に真剣に取り組もう、そのためには前提になるこの生産調整も一応やらざるを得ないではないかということで、ありがたいことに四十五年には一四〇%の成績をあげていただきました。私は、日本人というものは、やはり、黙って、黙々としておっても、英知と聡明さを失わざる民族であると思います。  そういう点において、信を腹中におきまして、必ず成功していただくというお考えで、またわれわれも、国会が一応終了いたしましたならば、全国に参上いたしまして、できるだけ多くの農業団体等にお目にかかりまして、今日の状況を説得いたしまして、農業がつまずくことがないようにわれわれの真意を伝えて御協力を願うつもりでおります。
  36. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、いま大臣が言われましたように、これは強権発動ではないのだ。強権発動でないということになれば、買い入れ限度数量そのものを市町村長はとても——もう新潟ではきのうから県庁に徹夜交渉で農民が押しかけているのですよ。きょう、おそらく、生産調整のための会議が開かれているけれども、開くことができない状態に入っていると思うのですよ。そういう状態であるわけなんでありまするから、したがって、もし生産調整、そして限度数量というものを市町村長が下の農家のほうにおろすことができないというところの状態に入った場合においては、さっき私が申し上げましたように、国の機関委任事務なんだ、そうだと言われますが、それならば地方自治法の百四十六条の条文の適用というものは、これはおやりにならないのかどうか。あくまでも協力要請という立場でやっていくのであって、絶対にそういう強権をもって——そうならば、それは裁判に出して、代執行や何でもかけてやっていかなければならない性格のものではないのだ、こういうふうに理解して差しつかえございませんか。
  37. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は現状の段階において、ただいまのお尋ねのようなことを軽々しく申し上げる段階ではないと思っております。とにかくいま他府県においては、どんどん一般末端まで下がっておる県がかなり多くなっております。いろいろ個別的にはそういう状況があるかもしれませんが、とにかくいまは一生懸命で県当局もやっていただいておる最中でありますので、これは皆さん方の御熱意に御期待申し上げて成功することを祈っておりますと、これ以外にはないわけであります。
  38. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 それでは、これで終わりますけれども、強権発動ではないのだということだけは確認して差しつかえないでしょうか。
  39. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま、そういうことを私どもは発言をすべきときではありませんで、せっかく皆さんにお願いして、心よくお引き受けを願って、御努力を願っておる最中に、できなければこうやるぞという、そういう失礼千万のことは、私の口から申し上げることはできない、こういうことであります。
  40. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 ただ、私が言いたいことは、政令の改正でこれは形式上から言うならば強権発動はできるわけなんですね。国の委任事務なんですから、これはできるのですね。そうでしょう。これはできるのです。官房長、どうですか。
  41. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 法律的には国の委任事務でございますから、地方自治法の何条でしたか忘れましたけれども、何か罷免権を発動できるような規定があることは私も承知いたしておりますが、ただいま大臣がおっしゃったとおりだと私は考えております。
  42. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 できるにもかかわらず、やるかやらぬかというのは次の話だというふうにして解釈する以外にないのですね。どうですか、大臣
  43. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどのお答えを繰り返す以外にいまは何にもありません。
  44. 松沢俊昭

    松沢(俊)委員 じゃ、これで終わります。
  45. 草野一郎平

  46. 二見伸明

    二見委員 大臣は、お時間の都合で途中で退席されるそうですので、最初にちょっとお尋ねしまして、また大臣が午後こちらにおいでになったときに残りの質問を保留させていただきたいと思います。  最初に、過日の予算委員会で私が大臣にお尋ねした余剰米の処理の問題で、大臣は、そのときはそのときだと言われて、どういうふうに余剰米が処理されるのか、あまり大臣は明らかにしたくなかったようでありますが、きょうは余剰米の処理をどういうふうに基本的に考えていらっしゃるのか、その基本的な考え方をひとつお示しいただきたいと思うのです。というのは、ある新聞の報道によりますと、二十二日に参議院の議員面会所で、中川大蔵政務次官が農業団体との話し合いの中で、食管法を改正しない限り買い入れ制限はできない、ただしその場合価格が問題になる、こういう発言をした。これがある新聞の大きなニュースとして載っているわけであります。これは食管法を改正しないでも買い入れ制限はできるのだと言ってきたいままでの政府答弁と食い違うことが一つ。その場合価格が問題となるということがどういうことを意味するか、これは二段米価という感じがするのですが、そういう発言がありますので、そういう発言を踏まえた上で余剰米の処理というのは、いまの買い入れ制限はしないで、ただ価格に問題がある、価格を引き下げて買うというのが、いま農林省としては基本的に考えている考え方なのか。承ってはいないけれども、大体その方向に近いのかどうか、その点はまずいかがでしょうか。
  47. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 中川政務次官がどういうお話を大衆の前でなさったか聞いておりませんけれども政府の方針としては、先ほど来ここでお話のございましたように、限度数量をきめてそれだけ政府買い入れる、いままでの予約をやっておったのとちょうど同じようなものでありますが、そういうことであります。  そこで、余った米というお話がございましたけれども、何べんか申し上げておりますように、これは農業団体とも十数回会っている間にいろいろ数字を並べてみますと、一つも余らない勘定になるわけです。これはもう御存じのとおりであります。保有米四百五万トン、そのほか政府買い入れその他計算してみまして、二百三十万トンやっていただければ、余るはずはない。そこで団体の有力な方々がおっしゃるには、わかった、ひとつわしの団体では売って売って売りまくるよ、これは半分冗談、半分本気のところでございます。いまでもいろいろお手配をしていただいているようでありますから、したがって——それも野放しでは、いわゆる自由米ではありませんので、正規の規制のもとにやっていただくわけでありますが、そういうことについて全力をあげてこれからやっていただくわけでありますので——さっき松沢さんの御質疑にも、いま何か言わないほうがいいのではないかと申し上げたのは、去年ですら一四〇%やっていただいた、そういう方々が、これから末端に至るまで限度数量をおろして、ことに実務をやっていただく町村長さんとその村の農業団体の方々の御苦労は、私ども身にしみてよく理解  いたしているわけでありまして、まことに相済まぬことだと実は思っているわけでありますが、そういうときに、せっかくようし売って売って売りまくってやるのだとおっしゃっているときに——皆さんは国会議員でありますので、国会で話の出るのはしかたがありませんが、まあ、そんなことがないようにやろうじゃないか、こういうことで別れておりますので、そのときはそのときだ、こういうようにざっくばらんに平素の御懇意づくで私は申し上げましたけれども、まあ、そうは言っても、不測の事態というのは、この世の中のことですから何ともわからぬ、それからまたおてんとうさま相手の仕事でありますので、天気がよ過ぎたら計算どおりにはいかないこともあるかもしれない、そういうときにはどうしよう、それは全販連のことじゃないかといったような、ざっくばらんにいろいろな話がありましたけれども、そういう仮想をしていろいろなことをいま言ってもしょうがないじゃないか、だからわれわれとしては、まず第一に重要なことは、生産調整をやっていただいて、ことし単年度需給ということだけはひとつしっかりやろうじゃありませんかということでございますので、それをやっていただくということが前提で、生産調整を念頭に置きながら、しかも不測の事態が起きたときには、ひとつ農業団体とも御相談してそのときの措置は考えよう、まあ、その程度のことを、私どものほうでこの間そのときはそのとき、こう申し上げたのでありますが、そんなようなふうに考えているわけであります。
  48. 二見伸明

    二見委員 大臣、ことしは一四〇%の御協力をいただいた、確かに数字の上で一四〇%になるわけですけれども、地域で見ると、これは需要にばらつきがあるわけですね。たとえば二百三十万トンが成功しても、地域によって当然ばらつきが出てくるだろうと思います。東北のほうでは減反反対の声も出ておりますし、そうした場合、私これがいい悪いではなしに、こういうことを農林省が考えているのかどうかだけを伺いたいのですけれども、非常に努力した、確かに努力したことはわかる、でも、なおかつおてんとうさまの都合で、天気の都合で余剰米が生ずるケースもあるだろう、そういう地域もあるだろう、同時に、最初から減反に反対であるという立場でもって、生産調整がうまくいかなかったところもあるだろう。私は二通りに分かれるだろうと思うのです。その場合には、政府としては差別するということは考えているわけですか。それともそれは協力の度合いは違うにしろ、協力してくれたことには変わりないのだからということで、同じ扱いをしていただけるかどうか。それとも、いやそうはいかない、協力してくれたところと協力してくれなかったところについては、余剰米の処理については差を設けたいのだ——設けるというところにまではまだいかないけれども、設けたいという気持ちが強いのだ、こういうお考えはあるのでしょうか。その辺はいかがでしょうか。
  49. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまくどくど申し上げましたように、今日の需給事情を勘案いたしまして、生産調整ということをやらざる得ない、こういうのでありますから、やはり先ほど私が申し上げましたように、それでもなおかつ余剰が出たときには、生産調整というものを念頭に置きながら団体ともひとつそのときに相談をして措置する、これよりしょうがないのではないかと思っております。特に、非協力、そういうところについて一体どのようにするか。これは団体の方々でもいろいろじかにわれわれに御意見を述べられる方がございます。世の中で正直な者と不正直な者と同じように扱うことはよくないとかいろいろ御意見があります。したがって、まだいま一生懸命でお願いしている、下へおろすことに努力している最中でありますから、あまりここで申し上げるところまでいっておりませんが、十分にその辺の扱いについては検討しなければなるまい、こう思っております。
  50. 二見伸明

    二見委員 生産調整に非協力だという表面的な受け取り方になるわけですけれども、その場合にも、生産調整協力できない農家の側の事情も私は十分にあると思うのです。私のところでは米以外にほかに収入がないのだからというところでは、これは生産調整にはどうしても応じ切れない、あるいはいままで政府のとってきた農業政策に対する著しい不信感というものも、非協力農家の中にはあるだろう。そういう点、政府のほうに反省がないで、ただ非協力だからということでもって一方的な差別措置をとった場合には、私はこれは新たな政治問題が出てくるのではないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  51. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 特に成績の悪かった農家に対して懲罰的なことは全然考えておりません。全体の米の需給を調整をするということにつきましては、もちろん私どもはそれを期待いたしておるのでありますから、これからなお説得していかなければなりません。ただいまのように御不満な方もおありになると思いますが、これはやはり市町村長さんや団体、また農林省の出先等をできるだけ動員して、御協力願えるように説得を申し上げていくということが必要なのではないかと思っております。
  52. 二見伸明

    二見委員 大臣、もう一点だけお尋ねいたします。  この余剰米の処理については、最終的には農業団体と話し合ってきめるという大臣答弁、私わからないわけじゃないのです。ただ、その場合には、先日も申し上げたのですけれども、結論は二つしかない。買い上げる、 それから買い上げない、この二つしかない。たとえば買い上げるという結論を出したとしますね。−この間大臣は、それは四十七年度予算になるからここでは答弁は、ということでしたけれども、買い上げるということになった場合には、いわゆる二段米価という考え方をとるわけですか。そのほうをとりたいというお気持ちが強いわけですか。それともことしの政府買い入れる値段でもって買っていただけるのですか。どちらのほうに大臣の心情は強いのですか。
  53. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 どうも二見さんのお尋ねは、いつもずっと勉強されて、先のことを多くお聞きいただくので、弱っちゃうのですよ。そんなところまで考えていないのであります。申し上げましたように、だからこれから予算委員会でも終わりましたら、ぼつぼつそういうことについていろいろな方の御意向を徴しながら、ひとつ検討してまいりたい、こういうのであります。
  54. 二見伸明

    二見委員 大臣、けっこうです。  食糧庁長官はいらっしゃいますね。——物統令撤廃に伴う技術的な、こまかい問題について二、三お尋ねします。  最初に、食管法第八条ノ三、第八条ノ四で購入通帳の問題があるわけですが、これは今後どうするわけですか。物統令を撤廃した場合には、これは廃止するわけですね。
  55. 亀長友義

    亀長政府委員 購入通帳に関しましては、食管法に規定がございますので、従来どおり発行いたす考えでおります。
  56. 二見伸明

    二見委員 法律に規定されているから発行するのはわかるのですけれども、物統令を撤廃したら、事実上は、消費者にとってみればもう購入通帳の意味というのはないわけでしょう、現実的には。現実的にいま購入通帳というのは、これは意味があるのですか。
  57. 亀長友義

    亀長政府委員 現在の食管法のもとでは配給の基準量をきめておるということにいたしておりまして、一人当たり月間十五キロという限度量を設けておるわけでございますが、実際は十五キロとっておる人はあまりないので、平均はそれよりはるかに下でございますが、そういう意味において、配給通帳というのは、法律の規定もありますし、私どもとしては、いますぐこれを廃止することはできないというふうに考えております。
  58. 二見伸明

    二見委員 要するに、配給通帳の問題は、物統令とは関係がないわけですね、物統令を撤廃したら。たとえばことしの十月ですか、十一月ですか、物統令を廃止する。物統令の適用は廃止しても購入通帳とは関係ない、あれは値段が違うだけだ、こういう解釈になるわけですか。
  59. 亀長友義

    亀長政府委員 物統令を廃止いたしましても、現在の食管法のもとでは、購入通帳を発行いたす、かような考え方でございます。
  60. 二見伸明

    二見委員 購入通帳を持っていけば配給米が買える、しかもそれは十キロ千五百十円で買えるというなら購入通帳は意味があるのですけれども、購入通帳を持っていっても千五百十円で買えないわけです。たとえば千八百円、千九百円するということになると、購入通帳なんか事実上意味がないわけです。それは、おたくのほうでは、法律があるから出すのだということをおっしゃるのですけれども、このために何百万か予算を組んでおるわけですね、五百万なり六百万なりの。
  61. 亀長友義

    亀長政府委員 現在は、量的に政府の配給基準量というのは十五キロでございますから、たっぷりある。しかし実際に、その半分ぐらいしか平均的にとらないという状況でございますから、購入通帳は一見要らないのじゃないかという印象を与えておるわけであります。購入通帳自体は、量的なものの証明でありまして、価格の証明ではございません。したがいまして、物統令を廃止して、価格にいろいろ上下ができるという状態のもとにおきましても、量的確保ということが残っておる以上は、購入通帳は、現在の法律の規定によりまして発行いたすということに考えております。
  62. 二見伸明

    二見委員 食糧庁長官、おたくの奥さんは、購入通帳を持ってお米を買いに行くのですか。
  63. 亀長友義

    亀長政府委員 私の家は、米は持ってきてくれますので、通帳は持ってまいっておりません。
  64. 二見伸明

    二見委員 この点は、実態に即したやり方でもってやってもよろしいのじゃないかと思うのです。おたくのほうは、うっかり食管法を改正するとほかのところまで響くのじゃないかというおそれがあると思うのです。これ以外のところに手をつければ、われわれのほうでもかみつきますよ。
  65. 亀長友義

    亀長政府委員 購入券をやめたらどうかという声は非常に強いのであります。そのためにわざわざ一般会計で予算を組んで通帳を印刷したりしていますが、もし御指摘のように、これは法律の条文にございますので、法律を改正するというような機会には購入券の問題についても検討すべき問題であることは、私は御指摘のとおりだと思っております。
  66. 二見伸明

    二見委員 要するに食管法を改正するのは、購入券のこういうこまかな問題では改正しないで、食管制度そのものを大きくゆさぶるような改正のときにやろう、こういうことですね。われわれのほうはそこら辺がちょっと少し疑問があるのですがね。疑問があるというか疑義があるのです。基本的にはそういう考え方でしょうね。
  67. 亀長友義

    亀長政府委員 購入券を廃止いたしますと、いわゆる量的な保証の制度というのは一応はずれるという論理になるわけでございまして、そうなりますと、単に購入券は発行しないが量的な確保あるいは個人に対する量的なチェックと申しますか、そういうところを購入券以外のところでどこかやるのか、あるいはそういうこともしないのかということが問題になるわけでございまして、もちろんそういうことを検討した上で、御指摘のように切符だけの部分を改正するということも考えられないわけではございませんけれども、やはりこれは全体の食管の制度でございますので、全体的な検討を踏まえた上で、御指摘のような点についても検討を進めるべき問題だろうと考えております。
  68. 二見伸明

    二見委員 話は変わりますけれども、物統令適用除外になって新規参入を認める、生協やスーパーでも米を売らせる、こういう政府のお考えのようでありますけれども、その場合生協やスーパーが米を売りたいという真意というのは、これはどういう米を売りたいというふうに彼らは考えているのでしょうか。
  69. 亀長友義

    亀長政府委員 生協やスーパー、いろいろ御希望ございますが、そういう人たちから私が聞いておる話では、やはりいままでのお米屋さんみたいに自分のところで小さな搗精機を備えて、わずかの馬力数の精米機を備えつけてやるというシステムではなくて、やはり大型精米工場で生産されて袋詰めになったものを店頭で販売するというような形を考えているようであります。もちろん全部がそうであるとは申し切れませんが、私の聞いておる範囲ではそういうことを考えておるようであります。
  70. 二見伸明

    二見委員 したがって、うまい米を売りたいというのが生協やスーパーの考え方でしょうね。
  71. 亀長友義

    亀長政府委員 うまい米と申しますか、要するに商品の形態として非常に簡易に運搬し、簡易に消費者に消費されるというふうなことを考えておるようであります。その大きさもやはりこれは一人一人経営者によっていろいろでありますが、たとえば都市等においては大体従来のような十キロというようなものではなくして、三キロ詰めとかというふうな形態も可能なものを考えておるようであります。  それから、うまい、まずいの話でございますけれども、これは米でもまずいといっても、たとえばライスカレーに向ければそういうものもまた価値がある。そういう消費者のかなり選択を入れたような米のバラエティーをつくるということ、あるいはまた特定の銘柄米を売るというようないろいろな用途別と申しますか、消費者の選択に応じたいろいろなタイプに分けてそういう袋詰めを売るというようなことを考えているように、私は話から推察をいたしておるわけでございます。
  72. 二見伸明

    二見委員 実は消費者米価が上がった場合には、政府は、生協やスーパーを通して政府の手持ちの米を直売する、こう総理大臣あるいは農林大臣は言われているわけですね。そうして消費者米価の値上がりを押える。その場合、いままでのお話を聞きますと、どうもスーパーだとか生協は、銘柄品であるとかあるいはたとえばまずいといってもカレーライス用だとか、小さな単位ですね、三キロ入りだとか一キロ入りだとか、そういう小さなポリパッケージにした売り方をしたいようでありますが、まず第一の消費者米価が上がらないという保証として政府がとる生協やスーパーに直売をするというやり方が、はたして生協やスーパーのほうでそれを受け入れるかどうか。そういういままでのお話と、政府手持ちの米を生協やスーパーが喜んで売るかどうか。ここら辺の見通しはついているわけですか。
  73. 亀長友義

    亀長政府委員 政府が直売をするという話が予算委員会で出ましたことに関しまして、私どものほうでいまの二見さんの話をお伺いしますと多少誤解されておるのじゃないかと思うのでございます。いよいよ米が上がったときにどうするのか。たしか米騒動なんという話も出たようです。質疑応答の中で、そういう異常事態の場合には政府が直売することも考えているんだというお話大臣方からあったわけでございまして、それは非常に異常事態のことでございまして、通常の状態の場合には、私どもはスーパーとかそういうものに一般の主食用の米を直売をするという考え方は持っておりません。やはり従来のような形態での卸、小売りというふうな販売ルートを考えておるわけでございます。その際の販売の流通の中にスーパーや生協が販売業者という形で新規参入をしてくるということを考えておるわけでございます。したがいまして、かりにスーパー、生協がたとえば小売りの新規登録、新規参入の方針によりましては当然そういう地位を得てくるわけでございまして、その際には普通の小売り業者と同じような条件で卸業者から仕入れて売る、かような形になるわけでございます。  そこで、そういうような形をわれわれも考えておりますし、また生協等の希望しておる側もそういう形を考えておるわけでございます。その際に見通しはあるのかといいますと、現在でもすでに小売り販売業者という資格で農協スーパーというようなものもございますし、それ以外の一般スーパー、さらに生協でもかなりの登録資格を持って小売り販売を行なっておる者が現在、ございます。結局その数が相当ふえるということでございまして、私のほうへも現に生協、スーパー等からも、自分たちは新規参入が認められればその際に米の販売業者としての資格を獲得いたしたいという希望は、公式、非公式に承知をいたしておるところでございます。
  74. 二見伸明

    二見委員 現在、配給米は十キロ千五百十円ないし二十円ですけれども政府が手持ちの米を放出する場合は、お米屋さんでお米の値段が千五百二十円が千六百円になったり千七百円になったり……。何か一定の基準を設けて、これ以上になった場合には政府の手持ちを出す、こういうふうにきめるわけですか、それともやたらに適当などんぶり勘定的な考え方でもって出すわけですか。
  75. 亀長友義

    亀長政府委員 経済情勢といいますか、そういうものの非常に異変のある場合を考えますとこれはまた別な話でございますが、通常の状態、いま私どもが判断できるような状態のもとで考えますと、私どもとしては、従来の政府売り渡し価格、四十六年度予算では政府売り渡し価格に小売り業者、販売業者のマージンも上がるだろうということを見込みまして、さらに一俵当たり六十五円値引きをして本年度の予算価格を決定いたしておるわけでありますが、そういう価格で売っていけば、大体において現在の千五百二十円の価格はやはりその辺の価格に維持できるのじゃないか、かように考えております。もちろん、それには、しばしば申し上げておりますような新規参入であるとかというふうないろいろ関連措置が必要である、そういうものの準備が進むという前提で申し上げておるわけでございまして、現在の段階では、私どもはかような判断を持っております。
  76. 二見伸明

    二見委員 先ほど、購入通帳は消費者が量的な保証を受けるためにあるのだ、価格とは関係ないというお話でありましたね。たしかこれは総理の答弁だったと記憶しておりますけれども、配給米をとっておるのは五四%ぐらいですね。ということは、その人にとってみれば購入通帳というのは意義があるわけです。それを持っていけば千五百二十円で買えるわけです。そういう意味があったわけですね。価格と関係ないというけれども、現在は価格と関係があるわけです、購入通帳は。配給通帳を持っていけば千五百二十円で現在買えるわけですね。物統令が廃止されると、たとえ購入通帳を持っていっても千五百二十円で買えるかどうかわからぬわけですね。あなたのほうでは、新規参入を認めるから競争が起こって、それほどの値上がりはないだろうというのが予想ですけれども、消費者にしてみれば購入通帳を持っていったから千五百二十円で必ず買えるという保証はないわけですね。だから、千五百二十円が五十円なり六十円なり、あるいは百円なり上がった場合に、千五百二十円に価格を押しつけるだけの政府手持ちの米は出すわけですね。そしてそれは、ここまで上がった場合には出す。たとえば豚肉の場合だったら、これ以上上がった場合には放出するという制度がありますね。それと同じような考え方で、これ以上上がったならば政府手持ちの七百万トンの米を出す、その基準は設けられるわけですね。
  77. 亀長友義

    亀長政府委員 御指摘のように、物統令が撤廃になりますと米穀通帳を提示しても千五百二十円の米の保証はないじゃないかということでございますが、現在でももちろん配給の対象には自主流通米も入っております。したがって、米穀通帳で買っております米がすべて千五百二十円であるとは限らないので、自主流通米、それより高目の米も入っておるということでございます。ただ、通帳を見せれば、千五百二十円を要求すればいままでは買えたじゃないかというお話は、御指摘のとおりでございます。そこで、現在の千五百二十円の米というのは物統令撤廃後にほんとうになくなるのかどうかという点でございますが、その点に関しましては、いま御指摘のように、私どもとしては新規参入のほかに、量的にもそれに見合う価格で売る。また、直ちに直売ということなどは考えておりませんけれども、従来の販売ルートで量的には十分間に合うだけのものを流していくというだけの用意はございます。
  78. 二見伸明

    二見委員 消費者米価が上がるのはいろいろな理由があるでしょうけれども一つには、小売りの米屋さんがいままでのきめられたマージン以上にマージンを取りたいから上がるというケースが考えられますね。そうすると、政府の手持ちの米を放出して千五百二十円におさめるためには、現在の政府の売り渡し価格、これを下げなければならぬでしょうね。現在の売り渡し価格でもって米屋さんに米を回すのか、あるいは現在の売り渡し価格をかなり引き下げた水準でもって渡すのか。私は、かなり引き下げた水準で出すならば全然望みがないとは思わないのです。その点、どうでしょうか。
  79. 亀長友義

    亀長政府委員 物統令撤廃をいたしますと、政府の売り渡した米につきましても、かなり上下の格差をつけて売られるということ、これは当然だろうと思います。やはり消費者に好まれる米は高くなるし、そうでない米は安くなる。問題は、従来の水準とどういうふうになるかということでございまして、廃止になれば結局一律価格、統制価格ではございませんから、バラエティーが出てくる。ただ、全体としての米価の水準が上がらないように配慮をしなければならない、かような考えでございます。御指摘のように、六十五円、予算で値引きをすることにはしておるけれども、それ以上に小売りがマージンというのを要求してくれば、足して売るということは可能だから、実際値上がりするのじゃないかというお話でございますが、そこはどうしても私どもは新規参入等の方法によってこれをチェックする、さらに政府として量的には十分な放出をする、かようなことで対処をしていかざるを得ないと思いますけれども、もちろん私ども当面の問題ではないと思いますけれども、一般的な問題としては、将来マージンが非常に上がる、それが妥当なものである、全体の物価、人件費との関係から見て妥当なものであるということになれば、御指摘のような政府価格について配慮を加えることもないとは私ども申しません。絶対ないとは申しませんが、大体私どものいまの見通しでは、当分、当面は現在の予算に組んであるような方法でいけるのではないか、かように観測をして、そういう方針で実施をいたす考えでおります。
  80. 二見伸明

    二見委員 大体政府が手持ちの米というのは、うまい米はあるのですか。
  81. 亀長友義

    亀長政府委員 政府の持っております米は、非常にまずい米も持っておりますけれども、うまいものも持っております。ただ、自主流通米ができましてから、かなり自主流通米にいわゆる銘柄米等が向いておりますから、そういう意味で、全体の組成からいえば、うまい米はどちらかといえば自主流通に回るということになっておりますけれども、地域によりましては自主流通に習熟していない地域も去年等もありますし、ことしもありますし、農業団体等でも必ずしも十分に手回しがよくなかったという例もございますから政府の中にもうまいものもあります。
  82. 二見伸明

    二見委員 消費者の立場からすれば、幾ら安くてもまずい米なんか食えないわけですよ。政府の手持ちにうまい米があるようなお話ですけれども、話によると、政府のストックの中にはうまい米なんかほとんどないというのが聞いている話です。それは私、調べたわけではありませんから、真偽のほどは明らかになりませんけれども、まさか政府が放出する場合、古々米あたりは放出するお気持ちはないでしょうね。一番新しいお米を放出するわけでしょう。
  83. 亀長友義

    亀長政府委員 いかなる事態を想定してかということによって変わるのでございますけれども、私どもは新米穀年度、ことしの秋からにおきましても——大体いままで御承知のように年間百万トンくらいは前年産米、古米でございます、それを新米とまぜて食べてもらうというシステムにいたしてきておりまして、これは全体の米の需給対策としましても、百万トンくらいはいわゆる備蓄ということも兼ねまして前年産米を翌年に繰り越して食べる、また新米を百万トン残して翌年に繰り越して食べる、こういう備蓄ということも兼ねまして、約百万トン程度は古米を毎年食べていただくという計算にしておりますから、通常の状態のもとにおいては、やはり新米と古米とをまぜて政府としては売っていく、かようなことになろうかと思います。その辺に関しましては、大体そういうふうな、従来のような考えで対処をしたいと思っております。
  84. 二見伸明

    二見委員 政府手持ちの米を放出する場合の価格については、物価上昇等を考慮する場合もあるというお話でありましたけれども、ただいま現在、過剰米の処理は豚の場合だと、えさなんか二万幾らでしょう。輸出だと四万か五万でしょう。私は豚並みの値段で国民におろせとは言いませんけれども、消費者米価が上がってきた場合に、それを下げるという効果を持たせるには、これはかなり引き下げてもいいんじゃないだろうか。また引き下げていくのが筋じゃないかと思うのですよ。しかも食べさせるのが新米ではなくて、へたすれば古々米だってまぜられてしまうおそれもありますし、古米と新米をまぜて売却するということですが、そのくらい引き下げた価格でもってやらなければ消費者米価というものは安定できないでしょう。私はそこまで決意してもらいたいのです。どうせおたくのほうは物統令を廃止することはきめているんだから……。われわれのほうで幾らやめろと言ったって、おたくのほうは、いや、きめた以上はやめられないとおっしゃるのはわかっていますから、事後の処置として、政府の手持ちの米を放出する場合にはかなり引き下げた価格まで私は下げていいと思うのです。それだけの決意を私は農林省にしていただきたいと思うのですが、政務次官はかなり大胆な御意見をお持ちのようですが、いかがでしょうか。
  85. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 たびたび食糧庁長官から答弁をしておるとおり、こういう過剰状態で物価統制令を撤廃しても、米価水準の全体が上がるというようにわれわれは考えてないし、上げないようにいろいろな手を使います。それでもなおかつ大幅に上がるというような事態は、万々ないと思いますが、あるときには、値段でも何でも操作することはあたりまえ過ぎるほどあたりまえのことであります。
  86. 二見伸明

    二見委員 政務次官は値段をかなり大幅に下げる——高くするわけにはいかぬでしょうけれども、大幅に下げるという御答弁でございますので、私それを了承いたします。と同時に、放出する米は、まずい米だけは絶対に出してもらいたくない、何の価値もありませんので、うまい米を出す。しかも安い値段で出す。このことだけをお約束いただきたいと思います。政務次官、いかがでしょう。
  87. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 先ほど申し上げたとおり、それは古々米とかなんか、そういうようなものを放出することはいたしません。通常食べられる米を放出するのは当然であります。
  88. 二見伸明

    二見委員 以上で終わります。
  89. 草野一郎平

    草野委員長 午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時一分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  90. 草野一郎平

    草野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。小宮武喜君。
  91. 小宮武喜

    ○小宮委員 私はまず最初に、特に今度の国会が物価国会といわれておりますので、そういうような関係から物価問題と関連して農林省の野菜行政についてひとつ大臣の所信をただしたいと思います。  御承知のように、この野菜は国民生活にとって欠くことのできないものでありまして、それだけに今日の野菜価格の暴騰は家庭を預かる主婦たちの大きな脅威であります。したがって、どうして安定させるか、野菜対策に真剣に取り組んでほしいというのが主婦といわず消費者全体の声であるわけでございます。にもかかわらず、農林省は、昨年の秋口の野菜の高値のおりには十月以降になれば安くなる、こういうような発表をしたのでございますが、しかし予想は全くはずれて一向に安くならぬ。次は、今度は米の減産対策で野菜への転換を多くやるので必ず安くなります、こういうようなことを言ってみたり、そうかと思うと、一方では米から野菜への転作お断わりというようなキャンペーンをやってみたり、あるいはキャベツの産地破棄制度をきめてみたり、また最近になってこの野菜への転作を二倍にふやすとか、こういったようにネコの目の変わるようにぐらぐらぐらぐら方針が変わっておるわけでございます。そういった意味では、農林省の野菜行政というのは全く支離滅裂でその場その場の言いわけと行き当たりばったりの対策にすぎないと思います。そういったことら、消費者はこの農林省の野菜行政に対して不信を抱いておるわけです。こういった消費者のこの野菜行政に対する不信に対して、農林省として、大臣はこの野菜行政について大体どういうふうに考えておるのか、ひとつまず所見を聞きたいと思います。
  92. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 野菜につきましていろいろな場所でいろいろ御配慮を願って、また御批判もあるようでありますが、私どもから見ましてやはりちゃんといろいろな筋を通して計画的にやっておるわけであります。御存じのようにこれを調整するわけにもまいりませんけれども、大体従来野菜指定産地という制度を設けまして、それからまた全国の大きな消費地を全体で七つほど指定をいたし、その間にできるだけ計画生産計画出荷というふうなことでやってまいっております。一々申し上げることは遠慮いたしますけれども、要するに先ほどちょっとお話ありました昨年の暮れのことは、これはもうほかのところでもそういうことがあるだろうというふうな御意見で、要するに天候の関係で若干の不作でありましたことは御存じのとおりでありますが、その後の状況を見ますと、実は私は毎日のようにずっと野菜の価格のことにフォローしておるわけでありますが、どうもときどきよそでお話をしていらっしゃる方、それから書きものなどで書いていらっしゃる方のをよく注意してみると、価格が安定してきているその日の書きものの中に、とんでもない野菜の高騰のことを論じていらっしゃる方もあります。いまはもう小宮さんよく御存じのように、きわめて安定的に進行いたしておりまして、比較的われわれの思うようにいきませんでしたのは白菜であります。これはもういろいろなところで指摘しておりますように、群馬県、茨城県等、白菜の特殊な産地がたいへん不作であったということもあるでしょうが、これとても最近の価格はずっと落ちついてきております。要するに私どもは、やはり需要は非常に堅調でありまして、供給がそれに見合わないという点も若干あるのではないかと思っておりますが、この間の物特の二日間の委員会でもいろいろな議員さんが御論じになりましたように、やはり生産費の価格安定をしてやることが必要ではないか。私どもは、やはり思い切って生産していただくためには、ある場合にはオーバープロダクションみたいな状況になったときには、ある程度の価格保証をしてあげる。これはいまでもすでに基金制度もありますけれども、そういうことについてはなお十分な措置を講ずる必要があるかとも思いますが、それに加えて最近は、御承知のように宮崎県のような、ああいう県をあげて生産をやっていただくところからカーフェリーなどによってコンスタントに一定量が来るようにもなってまいりましたし、品物によっては北海道から大消費地の東京に直送されるようなものもすでに何べんか来ております。タマネギ等につきましては、三月に入りましてから外国から到着いたしますものの数によっては、むしろ国内生産とかち合うことがありはせぬかというようなことを私は実は心配いたしておるような次第でございまして、私どもの目から見ますと、さっき申し上げましたように、もう少し需要に見合った供給が行なわれるように力を入れなければならぬということはございますけれども御存じのようにせっかく予算で皆さまにいただきました指定産地に対する助成でも、きょうやってあした効果があるというわけではございませんで、御承知のように調査して準備するだけでも三年もかかるわけでありますので、私どもはいまの計画が着々進行いたしてまいりますならば、消費者にも安定した供給ができるのではないかと思いますし、またそういうことについて全力をあげてやってまいりますために、農林省では次官を長にいたしました対策本部もつくりまして、機動的に農林省ではこの野菜対策に取り組んでおることは御承知のとおりであります。
  93. 小宮武喜

    ○小宮委員 大臣がいま答弁されたことは全くわれわれも賛成なんですけれども、しかし実際は、それが現在までなされておったのかどうかというと、やはりこういった野菜問題が大きな社会問題になったときはいろいろな答弁をされておるわけです。しかし、いまの需要に応じた供給をするとか、たとえば計画的に生産をして計画的に出荷をするというような問題、こういうような問題として考え方としては私も全くそのとおりでございますが、実際やられておるのかどうかということになると非常に疑問を持つわけです。と申しますのは、これは政府は四十一年に大消費地と生産地との間に野菜を非常に優先的にひとつ供給して価格の安定をはかろうではないかというような制度を、この指定野菜の産地制度を設けましたね。ところがこの指定野菜産地制度に対しては、政府は四十五年度までにもうすでに三十二億の補助金を出しているわけです。ところが指定産地の五百九十一カ所のうちで百カ所以上が指定野菜をつくっておらぬ。またつくっているところでも生産が非常に減少しておる、また出荷が非常に減っておるということが、まあ判明しておるわけです。これは、農林省が今度こういった野菜問題が大きく取り上げられてからのことを調査された結果判明しているわけですけれども、そこで農林省は指定解除の強行方針を出してみたり、また四十六年度からこの指定野菜をいまの十一品目を十三品目にふやしてみたり、また産地も六百四十カ所にふやすなど、いろいろどろなわ式な対策を私はしておるというふうにしか考えられません。したがって、このようなことではたして野菜の価格の安定ができるのかどうかという、これについて疑問を持っておるわけです。だが従来のように、ただ指定産地を指定した、品目をふやしたということだけで、また今回も十一品目を十三品目にふやして五百九十一カ所を六百四十カ所ですかふやしてみても、この野菜の価格安定につながるかどうかということが疑問なんです。その点については大臣としてどういうようなお考えを持っておられるか、ひとつお聞きしたい。
  94. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまお話のその百カ所というのはどこでございますかよくわかりませんが、私どもといたしましてはとにかく国費を使って援助をいたしまして、そして指定産地を育成しておるわけでありますので、こちらの希望するように活動していただかないところはやはり取り消すという措置を講ぜざるを得ません。けれども私は野菜についてもいろいろなことを実は考えさせられるのでありまして、この間もテレビを見ておりましたら大工さんの手間賃が四千八百円、植木屋さんが五千円だという、ああいうものを聞いておりまして、私どものような野菜の産地から選ばれておる代議士にとりましては大根だとかゴボウだとかというような地下を深く掘り下げる労働力が非常にかかります野菜等につきまして、高いとか安いとかとおっしゃるその基準がどこにあるのか。もちろん安定的な価格供給すべきでありますけれども、たいへんむずかしい問題ではないかと私は思うのです。いま指定産地のお話がございましたので蚕糸園芸局長から申し上げさせますが、いまの百カ所が十分に機能を発揮してないではないかということにつきまして、どこであるか私はよくわからないのでありますが、政府委員から一ぺんお答えいたさせます。
  95. 荒勝巖

    荒勝政府委員 補足させていただきます。実は私たち野菜の指定産地制度をとりまして以来、毎年指定産地を計画的に追加してきている次第でございます。四十一年に当初野菜の指定産地制度を設けましたときは、御存じのように六品目をいたしまして、四十二年にさらにニンジン、ネギの二品目の追加、四十三年にナス、四十四年にレタス、ことし四十五年にピーマン、四十六年にさらに二品目の追加というように年々野菜の品目の種類を、国民の嗜好する野菜を逐次追加してきている次第であります。したがいまして、また指定産地につきましても当初四十一年に三百十産地を指定いたしましたが、さらに四十二年には百、四十三年には五十八カ所、それから四十四年には約五十七カ所。四十四年にさらにこの中でいままでの指定産地のうちあまりりっぱに育ちそうもないものは十四カ所解除いたしまして、さらに四十五年に三十六カ所、四十五年十二月には四十四カ所というふうに計画的に指定産地らしいものをつかみまして、その中から一人前の指定産地に育てていくべく努力している次第でございます。  なお御存じと思いますが、指定産地を育成するのに足かけ六年、計画段階で三年、それから産地の助成事業の段階で三年、六年たちまして一人前ということで、現在までに産地が一応事業として完了いたしましたものは、百七十一産地程度がようやく事業として完了いたしておりまして、あるいは御指摘されるかもわかりませんが、育成がおそいというふうに、六年もかかるとはおそいと言われるかもわかりませんが、われわれとしましてはいわゆる近代化計画を立てまして、事業が完了して指定の要件であります少なくとも二分の一以上の出荷が指定産地から指定消費地域へ出せるようにいたしますのには、やはり時間がかかる。指定の当初のときには二割くらいしか出荷能力のないものが、いまや一人前になりまして、りっぱなものは八割から九割近いものが指定消費地域へ出されるように育成しておりまして、これにつきましてはひとつ十分に御了解していただきたいと思う次第でございます。
  96. 小宮武喜

    ○小宮委員 指定産地に指定の野菜をつくらせる場合は、たとえばどれくらいこういうような品物をつくりなさい、こういうものをどのくらい出荷をしてくださいというような品目別にそのような生産計画生産出荷といいますか、そういうようなものをやはり目標を示して指導しておるわけですか。  もう一つは、いま大臣答弁にありましたが、そうしたら指定産地で指定野菜をつくっていないとかあるいは出荷が非常に減っておるとかいうような問題は、これはないということですか。
  97. 荒勝巖

    荒勝政府委員 指定の要件のときに、ただいま申しましたように少なくとも生産される二分の一以上のものを指定消費地域に出荷するということが、指定の要件の一つでございます。さらに当該指定産地に指定されたうち三分の二以上の面積をカバーすること、逆に言えば三分の二以上の農民の人が協力してもらわぬと面積的に三分の二にまとまりませんので、三分の二以上の面積をまとめることというのが二つの大きな要件で、二分の一の出荷ということを指定消費地域の出荷を二分の一というふうに強く私のほうで条件づけておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、初めから二分の一という約束はしたものの全然その後いわゆる共同出荷体制も整わなければ、また面積も予定の面積にも行きそうもない。初めから条件は悪いというものは、指定土壌でも先ほど申し上げましたように、十四カ所だけいままで指定の取り消しをしておりますが、われわれといたしましてもこういう野菜生産のむずかしい段階でございますので、何とかして一人前の指定産地に育成していきたいということで、さらに先ほど大臣からお話がありましたように、稲作転換等でさらにいい産地が今後見つかることを希望しまして、転換水田のあと地で野菜生産の非常に立地のいいところを今後全力をあげて探し出しまして、一人前の指定産地に育成していくつもりでございますが、新産地の育成が十分に行なわれないうちにあまりにもどんどんと不合格者を出して削除してしまうのもどうかと思いまして、いまの段階では全力をあげて現在の指定産地が一人前に育つように育成している次第でございます。それが先ほど申し上げましたように、六年かかる。六年たちますと、中にはりっぱに育っておりますけれども、今後やはり都市近郊化のこういう時代の流れでございますので、都市近郊で指定——かつてはいい産地であったものも逐次後退していく傾向もございますので、今後は都市化の波のあまりかぶらない、中国地帯さらに先ほど大臣が御説明申し上げましたように南九州とか東北あるいは北海道まで指定産地の領域を今後広げていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  98. 小宮武喜

    ○小宮委員 補助金を毎年支給するわけですから、そういった場合はそういった農林省が考えておるような条件を達成させるように補助金を出したわけでしょう。そのかわりただ補助金だけ出しっぱなしで、あとはそういうような問題を何ら指導しておらないというふうに考えるわけです。ひとつそういうふうな原因がどこにあるのかということを私なりに考えてみますと、これは農林省が生鮮食料品価格安定本部を設けました。そして各生産契約の経済連に対して、いろいろ大根だとか白菜の出荷要請を督励してみた。しかし色よい返事はないというようなことで、いろいろそういった原因を考えてみますと、たとえば仲買い業者が産地で畑ごと大根だとか白菜だとか、こういったものを十アール当たり大体十二万円から十三万円で買い占めておる。産地ではこういうような仲買い業者が八割までを買い占めておるというのが——私は現在の全部とは申しませんが、実態があるわけですね。また農家のほうも先ほど大臣も言われたように、いろいろな価格の問題は確かにあります。これは考えなければならない問題だと思いますが、農家のほうもまた業者と組んだほうがもうけたということになると、やはり県や農協が呼びかけてもそっぽを向くというのが、これはもう人情だと思うのです。こういった産地における仲買い人の畑ごとの野菜の買い占めに対して、現在の法律でこれを取り締まるというわけにはなかなかいきませんけれども、これを今後も放置しておったら、幾ら指定産地をふやしてみても、指定野菜をふやしてみても、いまの状態一つも変らぬのではないか。それで、野菜が上がればそのたびごとにいろいろな言いわけをしてみたり、またいろいろな対策を打ってみたりするけれども、そういうことでは、ほんとうに農林省として抜本的な野菜の対策を考えなければどうにもならぬ時期に来ておるんではないかというように考えます。そういった意味で現在そういった産地で、この産地仲買い人が野菜を畑ごと買い占めておるという問題については、これは、農林省としては今後放置するのか、何らかの措置を講ずるのか、その点のお考えがあればお聞きしたい。
  99. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 野菜価格の安定をはかりますためには、いまお話し申し上げたように私は計画的、安定的出荷体制の確立をはかることが何よりも必要だと思いますが、野菜は農産物のうちでも特に季節性が強いわけでありまして、品目、時期によりまして野菜の需給が逼迫した場合は生産者団体による共販組織の弱い産地で、産地商人がいまのお話のように野菜生産者との間に介在することは間々あるようでございますが、これは私、どこと言ってもいけませんけれども地方でときどき承る話でありますが、団体が集荷をいたします場合にあまり親切でないとか、かえって経費がかかるとか出てくる。買いに参ります商人のほうがはるかにサービスがよろしい。これは至るところで聞く話であります。私はやはり専門農協の方々にも始終苦言を呈しているわけでございますが、同じ生産地でその生産を育成してまいるのが専門農協の仕事でございますから、やはり団体の人々。傘下の人々にできるだけ親切にやっていかないというと、要するにそろばんの合うほうに出すほうが生産者は利益なんでありますから、私はやはり競争ということを考えますときに、現にこれは私どものほうでも、いなかのほうでも、よくそういうことは聞くことであります。したがって私どもといたしましては、やはり生産者のために専門農協が親切にできるだけサービスをしてあげるというように仕向けていくのでなければ、その間に業者が介在して、しかも生産者の手取りがふえるようなことがあれば、どうしたってそのほうに行きやすい。そういうことで私はやはりせっかく国が指定産地を指定いたしましてお手伝いをいたしておるのでありますから、さっき局長が申し上げましたように大消費地に必ず二分の一出していただくように、それからまた三分の二は共同出荷をしていただくようにというふうな、そういうきめられた方式で、しかも生産者と集荷団体とが緊密にサービスし合うというふうな体制がうまく行なわれてまいるように指導してまいりたいと思っております。
  100. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま大臣が言われること、全くそのとおりだと思う。特に野菜農家というのは全国で九十万戸ぐらいあるわけですけれども、実際は作付面積を見ても大体二十四万ヘクタールで一戸平均が二十六アールというような非常に零細な野菜農家があるんですね。しかもこのうちの野菜農家の五一%は兼業農家なんです。したがって非常に副業的でやっているし、また機械化もできぬ。そのために生産性も低いというような問題があるわけですね。同時にいまやはり先ほどから大臣が言われておるように計画的な生産計画的な出荷、この問題についてやはり農家はほんとうに野菜が高い高いといわれるけれども、何をどれだけつくったらいいのかということを迷っておるわけだ。私が例を申し上げますと、これは一昨年、その前ですか、タマネギがとにかく暴落して、それで私が行ったところでは農家の軒先から畑の中に、三反四反の畑にみなタマネギは掘る手間賃だけでも損するということで腐らしておる。また私が行ったところでは荷車に積んで川に捨てに持っていく。そうすると実際は流通機構の問題に関係するが、長崎に帰って市場を見てみると一個十二円も十三円もしているというような現象がある。これは卸売り市場のところで、また流通機構の問題は話をしますけれども、そういった意味で、そのときジャガイモがよかった。だから翌年はジャガイモをつくる。またジャガイモが一ぺんにできるものだから今度は暴落してタマネギが値上がりするというようなこと、そういう悪循環を非常に繰り返しているわけです。そういった意味では指定産地だけでなくて、やはり野菜農家に対して、全国的な立場から計画的に生産して計画的に出荷させるというような問題も、大臣が言われるようにこれは価格の問題も確かにあります。価格の問題についても大工さんの賃金が四千五百円、私も電車の中で見ました。そうしますと、また大臣所信表明にかかってくるわけです。これは先でやるつもりだったけれども大臣も去年の六十三特別国会でも、農業従事者の所得を他産業所得と格差を縮めていくということを言われておるし、今回のまた所信表明の中にもそのことがうたわれておるわけですね。そうすると具体的にそういうようなことを考えておりながらも、しかし現実には農業者の所得と他産業労働者の所得はますます広がってきておるのではないかというような気もします。だからその点についてはまたこのあとで質問しますから、そのときお答え願いたいと思いますが、いずれにしても計画的に生産する、計画的に出荷するというような問題は、これはぜひひとつ指導してもらい、その点の価格保証についても、政府としても十分考えてもらいたいというふうに考えるわけです。  もう一つ大臣はこの価格安定特別調査実施要綱の中で、既存の市場など流通機構のあり方を考え直すということを言っておられますね。これは何をさしておるのか、何を考えておるのか。たとえば現在国会へ提出されておる卸売市場法と関係はあるのか、それともまた別個のものか。大体いままでの報道から見ても、私もいろいろ考えておりますけれども、大体具体的に何を考えておるのか、ひとつこの点についてお聞きしておきたいと思います。
  101. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大筋は私どもやはり卸売市場法を考えておりますが、これはいずれももうすでに御審議を願っておるわけでありますが、これが成立することによっては、私どもはかなり違った取引関係が出てくると思いますけれども、そのほかの、先ほどのお話にちょっと出ました、生産農家生産したものが消費者に渡る段階において、やはりもっとロスを省けるようにすべきではないか。これは集荷業者、つまり生産者団体がつくっておる集荷団体が御存じのとおりございます。そういうところでもやはりできるだけ中間のロスを節約して、そして生産者に、先ほどお話しのようにことしうんと暴落すれば来年はつくらないのでありますから、そういうことは両方で困ることでありますので、そういうことについて適切な、妥当な方法で取引ができるように指導していかなければならぬではないか、こういうことも考えているわけであります。
  102. 小宮武喜

    ○小宮委員 次に、生鮮食料品の緊急輸入の問題ですけれども、農林省としてはタマネギ対策として、台湾タマネギを一万五千八百トン緊急輸入するということを、これは通産省にワクの決定を申請したということですけれども、この緊急輸入する場合の問題として、今回の台湾タマネギも輸入価格は二十キロが千八十円ということで、いま国内での卸値は二十キロ千五百円から千六百円ですから、確かにそのまま市場に出れば安いわけですが、小売り値もあるわけですからそうはいかぬ。しかしほんとうにこの輸入タマネギが、国内のタマネギの値段よりは安くなるかどうかということについては、非常に私疑問を持っております。  なぜ私がこういうようなことを質問するかと申しますと、去年の六十三国会で、ちょうど一昨年の十二月に農林省が韓国から正月用ノリの高値を押えるために三千五百万枚だったですか、緊急輸入したことがありますね。その場合に正月用として、そうしてノリの高値を押えるために、国内産のノリの高値を押えるために緊急輸入した。その三千五百万枚のノリが昨年まで大阪の倉庫に眠っているわけですね。このことを私は本委員会で質問したことがあります。その場合に渡辺政務次官は、それは国内価格が折り合わぬために倉庫に保管されておりますという答弁をはっきりしておるわけです。そうしますと、こういったほんとうに物価を抑制しようということで緊急輸入することは、そういうような生鮮食料品の輸入業者がかえってもうけるために輸入してやるような結果になりはしないか。したがって私は今回タマネギの問題にしても、ほかの生鮮食料品にしても緊急輸入のワクとか手続はするけれども、あとは輸入業者にまかせっきりでしょう。そうするとあとの小売り価格の形成だとかそういうような市場に出すか出さないか、いろいろそういった問題については農林省側からワクはとってやる、輸入の手続はしてやるけれども、あとは何の権限もなければ責任もないわけですね。あとは輸入業者が輸入してもうけて売ろうとかってなんです。こういうことで、ほんとうにこれは緊急輸入するということの性格上からいって、こういったことが許されていいのかどうかということを非常に疑問を持つわけです。タマネギの今回の場合もどうなっておるかはよく知りませんが、実際そういった緊急に輸入する場合の措置について、緊急輸入したら輸入業者だけもうからせる結果になりはしないかということを私は考えるわけです。そういった意味でこういうふうな緊急輸入をするような性格のものはやはり何らかの措置が農林省としても講じられていいのではないのかというような考えを持つわけですが、国内における価格の問題とも関連して、緊急輸入の性格からいって、そういうような物資に対しては何らかの考え方を持つべきではないのかということを思うわけですが、その点についての見解があればお聞きしたい。
  103. 荒勝巖

    荒勝政府委員 タマネギの輸入の現状につきまして、一応私から概略御説明申し上げたいと思います。  ただいままでに、二月中までに入りましたタマネギが約一万一千トンぐらい、こまかいデータはございますけれども、一万一千トン前後が入っております。昨年の十二月ごろからでございますが、ほんとにいわゆる自由——野菜は全部自由化されておりまして、何ら政府において制限はいたしておりません。ただ台湾タマネギだけは別でございますが、一般的な自由なものはこの十二月から一月、二月にかけて一万一千トンほど入っておりまして、これがおおむねそれぞれアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド等ばらばらしておりまして、銘柄といいますか、タマネギの規格等も相当ばらついておりまして、一ケース二十キロものでございますが、平均しまして三ドル前後で日本に入っているわけでございます。それにつきましては私のほうで、各方面からいろいろ御意見をいただいておりますので、調べましたところ、輸入されたものの約半分が中央卸売市場の卸のせりにかけられておりまして、それが輸入量の約四六%が中央の一類都市といいますか、十一大都市の卸売市場にかかっておる。あとのものは規格等があまりよくないので、大体地方市場いわゆる三類都市といっておりますけれども、十万人以下の都市の正式の卸売市場でない地方市場に回っておるのではないか。と申しますのは大体中央卸売市場に出回っている全野菜のうち中央卸売市場に出回る割合が、野菜は約四五%がこの十一大都市の卸売市場に回っておりまして、あとの五〇%前後は地方消費ということで、大体そういうことで卸売市場としては輸入タマネギの入荷割合といいますか、せり割合はそういうことになっているんじゃなかろうか、こういうふうに見ておる次第であります。  なお、台湾タマネギにつきましては、先般私のほうは十二月ごろまでには一万トンを台湾からと、こういうふうに考えておりましたが、やはりタマネギの需給が非常に逼迫しているような事情もありまして、二月初めに一万七千トンというふりに、一万トンをさらに七千トン増ワクいたしまして、通産省と折り合いがつきまして、ただいまこれは輸入組合という一つのカルテルによりまして今後輸入の手続が進められていきまして、三月の上旬ごろから四月にかけてこの一万七千トンが入ってくるんではなかろうか。これは正式に価格は三ドルで、輸入数量は一万七千トンということで話がつきまして、これが中央卸売市場に上場されるときには、われわれといたしましては、大体二十キロでございますが千五百六十円で、キログラム当たりにしますと七十八円、上ものであれば八十円前後ということになるのではなかろうかというふうに思っておりますし、また、そういうことで関係タマネギの輸入商社の方々を呼びましてただいま指導している次第でございます。
  104. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは時間がございませんので、次に移ります。  米の生産調整について質問します。午前中も質問がありましたけれども、中川大蔵政務次官ですか、この人は二十二日に、全日農の代表との話し合いの中でこういうようなことを言っております。米の買い入れ制限は、食管法を改正しない限り行なわない、全量買わざるを得ないが、その場合価格が問題になる、ということで、これは米の買い入れ制限をしないということだと私は理解しております。特にまたその同じ日、倉石農林大臣は、これも二十二日予算の分科会で、買い入れ制限のための政令改正は食管法には抵触しない、こういうふうに言っておるわけですけれども、この大蔵政務次官の考え方と農林大臣の考え方、これは食い違いないのですか。
  105. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大蔵政務次官がどこでどういう御演説をやったかよく存じませんけれども政府のこのことに対する有権解釈は、私が申し上げておるとおりであります。
  106. 小宮武喜

    ○小宮委員 まあそれは私もそう思いますけれども、しかし政府部内で、少なくとも金を出すほうの大蔵省と農林省がそういうように見解が違う、解釈が違うということでは、これは困るわけです。しかしまあ私は農林水産委員ですから、農林大臣の言うことを信用することにします。それで、再々質問が出ておるわけですけれども政府は食管の根幹維持ということをしょっちゅう言われておるわけですが、この食管の根幹維持というのは今後も守っていくわけですか。
  107. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどもお答えいたしましたけれども、食管の根幹ということばをお使いになる方は、それぞれニュアンスが少しずつ違うようでありまして、承っておる私どもでもだいぶ感じの違うことを感じるわけでありますが、私ども考えておりますのは、つまり米の管理につきましては、国民の基本的な食糧である米の必要量を確保し、国民経済の安定をはかるため、政府が米の需給及び価格調整して米の配給について必要な規制を行なうことである、こういうようにいままでも申し上げておりました。
  108. 小宮武喜

    ○小宮委員 それはもうそれくらいにしましょう。しかし生産調整をやるのはこれは農民自身ですよ。またそのためには農民の協力を求めなければならないことは当然でしょう。その上部団体である農協の協力もまた得なければならないことは当然ですね。ところが今度の生産調整にあたって、農協の上部団体である農協中央会では四十六年度の生産調整政府の責任で実施をしろというような、非常に政府生産調整に不満の意を漏らして、いまそういったことをいっておるわけですよ。しかしそういった意味では農協の協力を得なければこの生産調整は成功しないことは明らかでございますが、農協の協力が得られるという自信があるのかどうか。その後、農協側でも、生産調整推進協議会——それを協力を得るために、大臣がいままでの生産調整推進協議会をこういった形に変えたのだろうとは推測しておりますけれども、こういった推進協議会には出席しないといっておったのが今度の対策協議会ですか、それには出席するというふうに方針が変わったわけですね。これは農協が、今度の四十六年の生産調整には協力するというような意思表示だと見ていいですか。
  109. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 人さまの気持ちをこちらがかってにそんたくするのは失礼でございますから何とも申し上げかねるわけでありますが、私は労働運動でもそうだと思いますし、政党の指導でも、何かの団体の指導者というものは、大ぜいの方が集まって顔の違うように考え方も少しずつ違っているのでありますから、そういう人たちをまとめて指導される方のお骨折りについては十分理解を持っているつもりでありますが、何しろ生産調整というのは二百三十万トンとなりますと昨年の倍以上でありますので、これは地域の生産者によりましては、そんな量は多過ぎる、なるべく荷物の軽いほうを、それはもう当然希望されるのでありますから、そういうお立場の方々を指導される農協の指導者たちの百九十九万トンと言われましたようなことについても決して私どもは御無理だと思っておりませんが、農林省としてはつまり国費でいろいろな助成をしなければなりません立場でありますので、単年度需給均衡という原則は動かすことはできません。そこで、そういうことで計算いたしますと、二百三十万トンしていただかなければならぬと、こういうので、その点においては数字は合いませんでした。専門家同士ですから計算してみればわかるはずでありますが、なかなかそこで折れ合いがつきませんでしたけれども、いつまでもそんなことを言っておっても、農林省もやはり農業者団体と一緒に御協力願わなければスムーズに仕事がまいりませんし、農業団体もまた農林省と無関係で団体及び生産の仕事はできないのでありますから、これはもういつの間にか以心伝心で集まってまいりまして、さっき御指摘のように調整なんというようなことでなくて、むしろ積極的に農業生産対策ということで御協力を願うということになりました。そういうことでありますからして、私どもは、四十五年にも一四〇%もやっていただいたのでありますから、ことしもたいへんに成功さしていただけるものと確信をいたして、頼みにいたしておるわけであります。
  110. 小宮武喜

    ○小宮委員 成功させてもらうということで頼みにしておるということでございますが、これは午前中もちょっと質問がありましたが、もうすでにこの割り当てを新聞報道によれば山形県も拒否した、新潟県でも、先ほど午前中にあったように拒否した。やはり今後ほかの県でもどんどんこういうような例が出てくるのではないかというふうに考えるわけです。したがって、大臣の自信のほどは理解はしますけれども、やはりこういった割り当てを拒否するような県が今後も出てくるのではないかというふうに私は見ておるわけですけれども大臣はその点は安心しておりますか。
  111. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 むしろただいまお話しのございましたのと逆で、逐次御協力を願う県が全部になってしまうのではないか、私はこういうふうに見ております。
  112. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから自主流通米の問題ですが、これは四十四年度から発足をして、当初は百七十万トンが、八十五万トンだけは消化をして八十五万トンは残ったわけです。今度は四十五年度は百八十万トンですけれども、四十五年度はわりあいに成績が順調だというように聞いておるわけです。この四十四年度の自主流通米はもちろん政府が買い上げておるわけですけれども、四十五年度の自主流通米、いわゆる自主流通米といっても第一と第二というふうにいわれておりますが、この第一自主流通米については、売れ残っても国が全部買い上げるということを確認していいですか。  それと同時に、これは大臣でなくてもけっこうです。その場合、第一自主流通米の保管料も、これは国がみんな支払うわけですか。その点もひとつ参考のためお聞かせ願いたいと思います。
  113. 亀長友義

    亀長政府委員 本年度の自主流通米としまして百八十万トン計画しておる、御指摘のとおりでございます。この自主流通米につきましては四十五年産米の実績、現在進捗中でございますけれども、比較的順調に進捗いたしております。本年度の計画は百七十万トン、四十六年産はこれより十万トン多いだけでございますので、本年度の実施状況から見まして、この百八十万トンの自主流通米が売れ残るという事態は、私どもは想定をいたしておりません。また事実農業団体もこれについては確信があるということでございますので、これが売れ残って政府に持ってくるというふうなことは考えておりませんが、制度として従来あったように、どうしても売れ残った場合には政府へuターンを認めるという基本的な制度があるわけでございますが、その制度そのものに関しましては従来と同様に取り扱いたいと考えております。  それからもう一つは限度外の米の話でしょうか。第二自主流通米ということばをお使いになりましたが、おそらく予約限度数量外の米の話だろうと思いますが、これにつきましてはできるだけ農協等の指定集荷業者を通じて販売をするということに相なっております。もちろんこれが完全に生産調整ができますれば、そういう米が出ないはずでございますので、出ないということが第一でございますが、出た場合には農協等ができるだけ自主販売をするということでございます。  それから保管料の助成等のお話がございましたが、本来の自主流通米につきましては、四十五年産米の例に準じまして、金利、保管料等について助成をいたしたいというふうに考えております。しかしこれは予算の実行上の問題として考えてまいりますが、当初予算で特にその点を計上しておるわけではございませんが、四十六年産についても四十五年産と同様の扱いをいたしたいという考えでおります。いわゆる限度外の米につきましては政府では特に助成はいたさない、現在ではそのように考えております。
  114. 小宮武喜

    ○小宮委員 第二自主流通米については、政府最初の方針は、何か農協に保管して売却させるというような方針だったわけですね。ところが最近になって政府の統一見解というものが出されて、その中には「やむを得ざる事由により予約限度数量の七百六十万トンをこえて生産された米で調整保管されたものが万一売れ残った場合には、農業団体等の意見を聞いた上で生産調整を阻害しない範囲内でその取り扱いをきめる」こういう非常に長たらしいむずかしいことばを使っておるわけですけれども、こういうふうにこの余剰米については農協が保管して売買するということは、このような統一見解としてこういうふうに変わってきたわけですね。ニュアンスが長たらしい文章に変わったという経緯は大体どういうようなことなんですか。  それともう一つは、一緒に聞きますが、やむを得ざる事由というのは大体具体的にどんなことですか。ひとつこの点も例をあげて教えてもらいたい。  もう一つは、売れ残った米を政府は買い上げるとははっきり言っていない。しかしこの文面から想像すると、売れ残った場合は政府は責任を持つということは、政府が買い上げるというふうに私は理解するわけですけれども、そうなのか、いま言われたように、やむを得ざる事由とはどんなものをさすのか、具体的に例をあげてもらいたいということと、この統一見解というものは、余った第二種自主流通米についてはどういった取り扱い——これは大臣は、農協と話し合いをしてきめるということにしておりますから、まだきめておりませんということで逃げると思いますが、念のためにひとつ聞いておきたいと思います。
  115. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私がお答えしようと思っていることを先に結論をお出しになりまして——まあそういうことでありますが、別段統一見解とかそういう文章を出したとかということではないのでございますが、生産調整を含めてこれからの農政につきましては、四十六年度予算編成に際しまして、私ども農業団体の方々ともずいぶん何べんかいろいろなお話し合いをいたしました。農業団体のほうでは一生懸命でやって売りまくりますよということで、それぞれの手配をしていらっしゃるようでありますが、先ほどもお答えいたしましたように、それはいわゆる自由米ではなくして、一定の規制のもとに農協が保管をしてお売りになる、こういう手続でありますが、万一といわれるような万一というのが出てまいりましたのは、生産調整は二百三十万トンやった、それから限度数量政府の買い上げ量とそれから百八十万トンの自主流通米もやった、それから農家保有米四百万トン、こう見てまいりますと、一俵も余らない計算になるが、たいへん天気がよ過ぎて計画よりよけい出てしまったということがないでもないが、そういうような不測の事態を一体どういうふうにやったらいいのだろう、こういう話が出てきまして、それはわれわれいまお互いに話をしているのは、来年、米穀年度過ぎてからの話でありますから、そんな先のことはそのときでいいではないかということでありましたが、やはりそういうことも一応考えなければならない、しかし前提としてわれわれは生産調整、単年度需給均衡をはかるという生産調整がどういうふうに行なわれたかというふうなことを勘案しながら、もちろん他人同士ではなくて、政府、農林省と農協のことでありますので、十分そのときの事情を参酌して措置せざるを得ないだろう。その措置はどういうことをするかということについては、いま別に何にもきめているわけではないのであります。
  116. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは消費者米価の物統令からの適用除外の問題ですが、この問題については大臣は何も知らなかった、これが消費者米価を物統令適用除外をしたということについてのいきさつについては何も知らなかったということを言っておられるわけですね。その点についてこれは大臣はほんとうに知らなかったのかどうか。しかし、その後その経過については十分聞いておるはずですから、この予算編成のどたんばでこの消費者米価が物統令から適用除外になったということの経過について、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  117. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ちょっと伺いたいのでありますが、私が全然知らなかったというのは言っておりませんし、どこかにそんなことを報道されておったとすれば、間違いであります。これは私どもは前々から考えておりますことは、いま消費者の方々がかなりいろいろ要求を強く出されるような社会になってまいりました。こういう社会で、しかも毎日毎日召し上がる米について、いまのような制度で自分の好む米を自由に買い得るやり方があるでしょうか。ありません。私はやはり消費者が御自分の好まれるものを自由に入手できるという——しかも、米が足りなくて配給をされているのではなくて、先ほど来お話しのように七百万トンもストックを持っているようなこういう時代に、消費者の好みに応じたような米が食べられるように——しかも、この間も東北のほうのうまい米をおつくりになっている方々の団体が私のところへお見えになりまして、先祖代々うまい米をつくっているのだけれども、一向にその銘柄について評価してもらえないのはわれわれにとって遺憾千万だという話をしていらっしゃいました。私はいまのように米が豊富になってまいりましたときこそやはり消費者の選択に応じて消費者の好まれるようなものが入手できるようにすれば米の消費量もふえるのではないだろうかと思いますし、また自由にそういう選択がされることが好ましい社会だと思います。そういうことをいたしますためには、やはり物統令というものの適用がやむを得ずしていままであったかもしれませんが、こういうときにこそ廃止すべきであるというのはかねがねわれわれが研究課題といたしておったのでありますけれども、四十六年度予算の編成に際しましてやはりそういう方針を政府は打ち出した、こういうことでございますが、しかしながら、それについて、物価等について若干御心配をなさる向きもございますので、農林省といたしましては、本年の米の出回る前にはできるだけの措置をしなければならぬということは前々から検討いたしており、なおいまも続けております。そのようにいたしまして、たとえば競争原理を導入することによって価格の上昇を防止するとか、あらゆる手段を講じまして、消費者の御不安なからしめるような措置をいたして適用を除外いたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  118. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまのお話しのように、消費者米価を物統令から除外したということについて、消費者米価が上がりはせぬかということで消費者団体なんか反対をしておるわけですけれども、これは農林省の中でも、先ほど大臣が言われたように、現在のような米の需給状態のもとでは値上がりはしないということを言っておったわけです。佐藤総理は、この点については予算委員会の質問に答えて、やはり何らかの歯どめが必要だということを言っておるわけです。というのは、佐藤総理自身がやはり消費者米価が上がりはしないかという懸念を持っておるのではないか、こういうふうに思います。また、いま言われたように、大臣も、これも十五日の予算委員会で、消費者米価の値上がりはあり得るというような印象を受けるような発言があっておるわけですが、いまのようないろいろな答弁ありましたけれども、もう一度確認したいことは、この消費者米価を物統令から適用除外した場合に消費者米価の値上がりはあり得ると考えておられるのかどうか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  119. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまのお話も私は記憶がありませんで、そういう答弁はいたしておりません。  私どもは先ほど来申し上げておりますように、大体いろいろな方が米価のことについて御論議をなさいます。上がるのではないかとか下がるのではないかとか、いろいろ御議論をなさいますが、どのことを基準にして上がるとか下がるとか言っておられるのか、それも明白でない場合がかなりございます。私どもとしては、やはり消費者米価の水準は上がることのないように最善の努力をいたしたい、こう考えておるわけでありますが、いま申し上げましたように、米の出回るころまでには十分な措置を講じて、御不安をなからしめるようにいたしたい、こう考えておるわけであります。
  120. 小宮武喜

    ○小宮委員 この消費者米価の値上がりする場合は政府保有米を放出してこれを抑制するということを予算委員会の質問にも答えておるわけです。また大臣は、これを言うとまたそれは私は言った覚えはございませんということになるかもしれませんが、これも十五日の予算委員会答弁を見ると、こういったことは精神的なものであるというような答弁をなされておるわけですけれども、そうなると、ほんとうに消費者米価が値上がりする場合は政府としては政府米を放出してこの値上がりを抑制するという考え方なのか、それともそういうことはないと考えて、ただ精神規定にしたいというような考え方なのか、ひとつこれは大臣から直接お答えを願いたいと思います。
  121. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 さっきも申しましたように、とにかく品物が不足しておる場合であればあるいはそういう御不安も消費者にあるかもしれませんが、とにかく政府は先ほど来お話しのように大量の米をかかえておるわけでございます。そういうことによって、政府もやはり操作をいたします。かりによくよくの事態を想定いたしてみましても、政府直売も行なうといったような姿勢で対処すべきものであると思いますが、おそらくそういうことはないのではないか。そんなことを考えるのはよくよくのときではないかと思っておるのでありますが、小宮さんよく御承知のように、大型精米をなるべく多くいたしましたり、それからいま農協等でも米の小売りをあれしておるところもございますし、それから最近はまた、急激に人口のふえてきました都市などには、スーパー等にも小売り参入を認めておるというふうな時代でありまして、やはり私どもは小売りについても競争原理ができるだけ用いられるようなことを考えて、かりにも物統令の適用廃止についての御不安のないように全力をあげてやるつもりであります。
  122. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、総理府の家計調査によりますと、全国で八千世帯の米の購入形態別を見てみますと、一般の消費者家庭で配給米が五四・六%、やみ米が四〇%、自主流通米が五・四%となっているわけです。それから配給米の占める割合は、四十二年の六九%から四十四年が五八%というように低下しております。特に東京あたりに例をとりますと、配給米がもう四七%というように、半分以下だということになっておるわけです。したがって、やみ米というのは自由米だとか特選米だとか、いろいろ呼ばれて売られておりますけれども、しかし、そのもとをただせばほとんどが配給米だというようなことさえ言われておるわけでございますが、もしこの総理府の家計調査が事実であるとすれば、この配給米をそういった自由米だとか特選米だとかということで売り渡しておりますそのもうけだけでも、トン当たり三万円くらい違うわけですから、約二百万トンの配給米が、これはやみ米に化けておるというように考えるわけです。そうすると、五百億か六百億の金が米業者のふところに入っておるのではなかろうかというような推計がされるわけですけれども大臣は、この総理府の家計調査の結果についてはこれをどういうふうに見ておられるのか、ひとつ御参考までに聞いておきたいと思うのです。これは食糧庁長官でもけっこうです。
  123. 亀長友義

    亀長政府委員 先ほどお読みになりました総理府の家計調査は、もう数字の調査でございますから、そのとおりでございます。サンプルのとり方等、いろいろまた検討すれば問題あろうかと思いますけれども、現在あるこういう性質の調査では、一応総理府の家計調査をわれわれも一つの有力な資料として考えておるわけでございます。非配給米といわれております、いわゆるそれはやみ米というようなものだと思いますが、その中に、相当量の本来配給米に回るべきものが回っているのじゃないかという御指摘に関しましては、私どももこれはかなりな程度において認めざるを得ない。現在、いわゆる格上げ販売というようなことが販売業者の間で行なわれておるという事実は、私どもも認めざるを得ないと思います。
  124. 小宮武喜

    ○小宮委員 こういったやみ米が横行しておるということについても、これは自由競争の原理だから、もうこれが当然だということで、こういったやみ米の横行も、これは政府としてはそのまま認めるのかどうかということと、もう一つは、米の買い入れ制限によって買い入れ対象からはずされた米をめぐって、結局、商社とか商人の動きが非常に活発化しておるということを聞いておるのですけれども、こういった商社とか商人あたりの動きによって消費者が不安におとしいれられるような事態が起きた場合は、やはりこれは何らかの措置を講ずべきじゃなかろうか、そうせぬと、やはり米の流通問題に関しては非常に混乱を起こすのではないかということも、私、考えるわけですけれども、そういったやみ米の横行だとか、また、そういう買い入れ制限によって買い入れ対象になった米の買い入れの問題をめぐって、いろいろな商社とか商人が活発化しておりますが、こういうような問題についても、これは自由競争の原理で、それはもうやむを得ないというふうに考えておられるのか、これは食糧庁長官にお聞きしたいと思います。
  125. 亀長友義

    亀長政府委員 最初の、いわゆる米の販売業者がいわゆる格上げ販売等で、政府から買ったものを配給米以外の形で売るということにつきましては、私どもいろいろな方法でそういうことの監視その他をいたしておりますけれども、実際の問題といたしまして、これは農林省だけでなくて、具体的には都道府県知事の御監督ということでもございますが、なかなか細部まで徹底するということは困難でございます。これを法律でもって厳格に規制を本来はすべきでございますし、また、物統令があります以上、それは当然価格の面では物統令違反ということになりますし、また、配給の面では食管法の違反ということにもなるわけでありますけれども、実際問題として、これがなかなか徹底をしないという嘆きを持っておるわけでありまして、実際上、いまの物統令を廃止すればこういうものがある程度表面化してくるということは事実でございます。ただ、現在の統一規格価格ということからは免れ得るわけでありますから、やはり安い米は現在よりも安くなる、いいものはやはり現在よりも高くなるという形で、上下の開差というものは品質において出てくるものと思います。  それから、予約限度外の米がたくさんできて、それは自由になるのかというお話でございますが、これは先ほど申し上げましたように、農協等を通じまして一定の秩序のもとに売る本来の自主流通米と大体同じルートをわれわれ考えておるわけでございまして、やはりそれと同じルートで売ってもらって、いまの米の流通秩序というものを乱さないようにしてもらうという考えであります。いろいろ新聞等で商社の動き等が報道されておりますが、私どもとしまして、そういうものをもちろん、これはいまの段階で食管法上の地位を与えるというつもりは毛頭ございません。ただ、こういう問題でありますから、いろいろな動きがあったり、また、先を見越していろいろ話をするという人があることは事実であります。私どもは決してそういうものを好ましいと考えておるわけではございませんが、もし生産調整がうまくできればそういうことはないはずでございますし、また、あったとしても、農協等の集荷団体等がしっかりこれをやっていただければ、そういう事態は防げるというような、かような観点から、農協等にもいろいろ話をしておるような次第でございます。
  126. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間が迫ってきましたので、一応進めますが、去年の四十五年度の生産調整の場合に、一律減反方式を採用したために、いなかに回ってみましたところ、特に自家消費米だけしかつくっていないところでは、やはりそういうような農家でも、結局、一律減反でやられたものだから、稲作農家でありながら、また自分は配給米を買わなきゃいかぬというような問題が起きて、非常に不満が訴えられておりましたけれども、今回のこの四十六年度の生産調整にあたっては、大体どういうような方針でこの生産調整の割り当てをやっておりますか。一律減反方式は、これは廃止したわけでしょう。
  127. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  生産調整に関しましては、もちろん国といたしましては、一定の基準、御承知のように、平年反収、いままでの販売実績、地域分担の指標、こういうものを勘案して各府県に割り振り、府県は、さらに市町村に、市町村は個人にということでございますが、原則的には、今回食糧庁買い入れ限度数量ということで、うらはらで米は生産調整をしていくということもございまして、原則的には販売農家を対象にして実施をするということに本年度はいたしております。もちろん地域の実情なりあるいは村落内のいろいろな社会的関係から、やはり自給農家の方にも御協力をいただかなければならぬというふうな面もかなりございます。また、特に西のほうの自給農家の多い県では、やはり販売農家だけやるといっても、なかなか村内がまとまらないという場合もあるかと思いますが、これはあくまで例外的なものである、かように考えております。しかし、そういう場合には、もちろんこれは政府としては還元配給をいたしますし、それから、予約限度数量の面におきましても、予約限度数量を割り当てをする際に、販売農家の多い県には若干の配慮はいたしてございますが、さような面で調節をとってまいりたい、かように考えております。
  128. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、生産調整奨励金の問題について質問しますが、大蔵省がこの四十五年度に実施した生産調整にあたって、昨年の八月から九月にかけて百四カ市町村、約三千戸を対象に、全国の財務部を動員して生産調整の実情を現地監査をしたところ、調査対象の約一%が転作とか休耕などを行なわずに奨励金を受給しておるというようなことが、これは報道されておるわけですけれども、その総額は大体十一億だというふうに推計されるということまでも報道されておるわけですが、ここで大臣にひとつお聞きしたいのは、こういうふうな事実があるのかどうかということをまずお聞きしたいと思います。
  129. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお話でございますが、四十五年度の生産調整奨励金千百二十六億を交付いたしましたやり方でございますが、これは実施いたしました農家から実績の申告書をとりまして、それに基づきまして、市町村長が現地に確認班を出しましたりしまして現地調査を行なった上で出しております。したがいまして、原則的には事前にチェックがされておるということになるわけでございます。ただ、何ぶん生産調整の対象農家の数が二百数十万戸に及んでおりますので、いろいろ問題があったわけでございます。  そこで、いま御指摘の大蔵省の地方の財務部が事前の調査をやったわけでございます。その結果を農林省へもこれは口頭でございましたけれども御連絡がございまして、一部の町村について確認事務が完全でないところがあるというお話がありました。そこで農林省といたしましては、そういうことがございましたので、そういう不適正な指摘がありました町村につきましては全部再確認をやらし直したわけでございます。それからまた、その不適正がありました県につきましても、不適正でない町村についても二部落を選びまして、再抽出をしまして再確認をさせたというようなこともいたしました。そこで、われわれといたしましてはそこまでやりましたので、現在のところよほどのことがない限り不正の受給はないというふうに考えております。いま、ただいまおっしゃいました数字は、その事前の数字を推計すればそうなるということであろうと私考えております。
  130. 小宮武喜

    ○小宮委員 了解しました。  次は、これもひとつお聞きしますが、四十五年度の生産調整にあたって、これは先ほども質問がありましたけれども協力農家と非協力農家の取り扱いをどうするのかというような質問を私したことがございますが、その際の答弁は、報復的な措置はとらぬというような答弁があったわけです。これは大臣もこの二十二日の分科会での質問の中で、やはり非協力者の場合でも制裁的な措置はとれないということを答弁しておるわけですから、そうすると、四十五年度の場合、たとえば京都、新潟、こういったところへは割り当て量を達成できなかったわけですが、そこの米も今度は四十五年度の場合は全部買い上げたわけですか。
  131. 亀長友義

    亀長政府委員 四十五年産米に関しましては、いずれの県に関しましても無制限買い入れでやりました。
  132. 小宮武喜

    ○小宮委員 そうすれば、今度の場合も、大臣もはっきり答弁しておるわけですから、それで生産調整を幾ら行なっても、協力したくない人は協力しなくてもよろしい、どんどん米をつくりなさいということに結局なるわけですね。それで、結局はいま言ったようなそういった余った米は、第二種流通米のほうに回して最後は農林省と農業団体と話し合いできめましょう、最悪の場合は買い上げましょうということにもなりかねないわけです。そういうようなことをしておってはたしてこれは大臣が言うように、皆さん方の協力を期待しておると言われるけれども、やはりそういったことで生産調整が実際成功するのかどうか。去年一四〇%だったから、ことしもまたそれ以上だといわれるかもしれませんが、やはりこれは非常に大きな問題で、先ほどから大臣も言われているように正直者がばかをみるというような結果にもなりかねない。全国的にこれが蔓延したら生産調整なんか元も子もなくなるというふうに私は考えるわけですけれども、その点についてひとつ大臣の見解をお聞きしたい。
  133. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 四十六年度におきましては、先ほど政府委員からお答えいたしましたような、前年度の経験にかんがみまして、米の需給の実態に即応して生産調整の実効を確保いたしますとともに、政府買い入れの適正を期するため生産調整を考慮しながら生産者別の予約限度数量を定めて、政府買い入れはこの予約限度数量から自主流通に向けられる数量を差し引いた数量について行なうという措置を講じましたことは御存知のとおりであります。したがって、いま小宮さんのおっしゃったようなぐあいとは少し違うわけであります。大体米をつくっている生産者自体が非常にたくさん無計画生産されればどうなっていくであろうかということを十分よく御存じでいらっしゃいますからして、そういう点を私どもは御信頼申し上げておる、こういうことであります。
  134. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は農業生産の誘導の問題でちょっと質問しますが、農林省は四十六年度の生産目標の二百三十万トンの各都道府県別の割り当てをもう決定しましたね。その中で、昨年十二月に発表した農業生産の地域指標の問題ですね、この地域指標の問題を今度のこの生産調整の各都道府県割り当てにやはりどれだけ、どのように加味されたのかということをまず質問をしたいと思います。
  135. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 四十六年度の生産調整の目標数量の配分の基準といたしましては、いま先生の御指摘のように、昨年の十二月に「農業生産の地域指標の試案」というものを農林省が公表いたしましたわけでございますから、これを用いるということにいたしまして、過去におきますところの政府買い入れ数量、それから当該県におきますところの生産数量、それに「地域指標の試案」に示されましたところの要減産数量、これをおおむね三分の一ずつのウエートを用いまして割り当てを行なった、御承知のとおり四十五年度の場合には転作の難易度を示すPQ指数というものを用いておったわけでございますが、これにかわるところのいま申し上げました「地域指標の試案」というものを用いた、こういうことでございます。
  136. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほど質問をやりかけたのですが、農業者の所得と先ほど申し上げました他産業労働者の所得の問題ですね。これは、先ほどから申し上げましたように、四十五年度も四十六年度も大臣所信表明の中には解消していくというようなことが述べられておりますけれども、実は四十四年度と四十五年度の、これはまだ資料がないかもしれませんが、農業従事者の所得はどういうふうになっておるか。また、昭和五十二年度の地域分担、農業新地図の中で地域分担をやっておるわけですが、その中でも農業所得者の賃金というものは他産業労働者との格差はどうなるのか。ただ文章的に、抽象的に、ただ解消するというだけでは、単なるうたい文句だけでは、これは何にもならぬわけです。したがって、具体的にどうするのか、この点についてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  137. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 農業の比較生産性の問題でございますが、実は御承知のとおり基本法ができて以来毎年白書等でこの数字を発表いたしておるわけでございます。まだ四十五年の数字がございませんが、四十四年で申し上げますと、製造業に対する農業の比較生産性の問題は三三・七%、非農業に対する農業の比率は三四・一%ということでございまして、四十三年に比べますと若干下がっております。  それから五十二年の問題でありますが、御承知のとおり「農業生産の地域指標の試案」におきましては、すべての農産物につきましての計測をいたしておりませんので、実は農業の総産出額がどうなるかという試算をいたしておりませんので、現在申し上げておりますように比較生産性の関係がどうなるかということの推測はいたしておりません。
  138. 小宮武喜

    ○小宮委員 農業構造の改善について質問しますが、政府は四十五年度の生産調整を実施するにあたって五十万トンに見合う十一万八千ヘクタールの水田転用計画を明らかにしたわけですね。この分については実際その計画どおりにいくのかどうか質問したところ、十月にならなければわからぬということを大臣答弁しておったわけです。ところが十月は過ぎて年も変わっておりますから、この十一万八千ヘクタールの水田転用計画は実績はどうなのかということです。
  139. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大体三万六千ヘクタールぐらいだったと思いますが、結局ほっておけば平年度二万ヘクタールくらいでありますから、壊廃、それこれ合わせますと百五十万トンの生産調整ということになりますので、全体ひっくるめてみれば目的量は達成された、こう考えております。
  140. 小宮武喜

    ○小宮委員 それではもう一つ最後に質問しますが、農村の工業化の問題ですが、これは私自身も非常に賛成なんです。農林省当局は就業構造の改善だとか、たとえば農業者年金基金にしても、農業の後継者の若返り、育成という問題もねらいにあったと思うのです。ところがその後農村に進出する企業の実態を見ますと、やはり若年労働者を求めておるし、また実際雇用されておる人も三十歳以下の若い若年労働者なんですね。そうしますと、農林省が考えておるような就業構造の改善だとかまた農業者年金基金法のねらいだって、従来のような高年齢層の人たちがやはり農業を続けていくという実態が現在出てまいっておりますけれども、この問題は若干私は矛盾を感ずるわけです。というのは、やはり若い人たちが後継者として農業を引き継いでもらう、そのために農業者年金基本法ができたし、また就業構造改善だって若い人が農村にとどまって農業に従事してもらうという立場から見れば、そういったできた企業に若い人がみんな採用されて逃げていっておるということになった場合に、この方針そのものはいいわけですけれども、そういったねらいから見れば若干矛盾するのではないかというように考えておりますが、この点だけを一つお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  141. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そういうことに関する法律案をいま国会に出しておりますので、いずれまたゆっくり御審議を願う時間があると思いますが、私どもといたしましては、やはり人口が全国的に平均に分布されること、それから産業がなるべく平均化して分布されること、それから日本人の人口が一方に片寄らないで、なるべく平均的に分布されてくることが好ましいことだと思います。そしてやはり将来はおそらく地方都市に五十万とか百万とかいう人口を擁する都市が出てきて、それから農業適地がその間にかなり大きな規模の農業地帯ができて、それと調整が保たれながら公害を伴わないような産業が配置されることが望ましい。しかも小宮さん御存じのように、純粋農業者というのはもうすでに一%程度になってきている。しかも残された農業者の中の多くの人々兼業農家でありまして、こういうような労働力の配置を考えてみますと、やはりわが国はぜひとも地方の状況に応じた産業分布をしてまいることが必要だ。そういうことによって、いま多くを占めておる兼業農家人たちの雇用機会を増大してまいることができる。御存じのように、最近ヨーロッパなんかでも農業に中高年齢層が多くなるといわれてはおりますけれども、いま機械化してまいりました職場の労働力でもかなり年齢層が上になってきております。したがって、やはり若年の人々は若いときには工場づとめをしても、あと取りがやはり農業に帰られるような時期がやがて来るのではないか。私はこの問題は実は簡単な時間でお話し合いをするにはなかなか足りない、将来日本のあり方をどうしていくかという大きな問題をかかえておると思うのでありますが、一応いま申し上げましたような考え方で、産業地方に分散されて、雇用機会を増大いたしていくことが必要ではないかということの考え方を持っているわけであります。
  142. 小宮武喜

    ○小宮委員 質問を終わります。
  143. 草野一郎平

  144. 二見伸明

    二見委員 午前中に引き続きまして大臣に二、三お尋ねしたいと思います。  最初にお尋ねしたいのは、農業政策というものの方向は、私、大きく分けると二つになると思うのです。これは大まかな私の感じですけれども一つに、たとえば野菜を年間何トン生産するとか米を何トン生産するとかいう、いわば国民生活の食料を確保するという、量的な面が一つ農業政策にあるだろう。それから当然出てくるのは、畑地面積をどのくらいにするとか、たがぼの面積をどのくらいにするとかということは当然それに出てくるわけであります。もう一つは、農業形態といいますか、農家の形態といいますか、たとえば専業か兼業かという、その形態をどういうふうに今後持っていくかという、二つの面で農業政策というのは考えられるのじゃないかと私は思うわけです。  実は大臣の当委員会における所信表明を拝見いたしますと、「農業に従事する者が他産業に従事する者に劣らない所得を得られるよう、生産性の高い近代的な農業経営を確立し、」こう言われているわけでありますけれども、このことばから私感ずることは、政府農業経営の形態という面からいくならば、いままでどおり自立経営というかあるいは経営規模の拡大、専業、こういうところに農業経営の形態は望ましい方向なんだ、それにウエートを持っていこう、そういうお考えのように受け取れるわけですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  145. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 一応私どもとしては、つまり農業というものがしっかりした体質を備えた農業をぜひほしい、そうでなければやはり国際的にも負けてしまうわけでありますから。しかしよく考えてみますと、農業ことに農林省のサイドから見ますといろいろな見方があると思うのです。それは農業という立場それから農民という立場それから農村という立場それから食糧省的な立場、いろいろなことが重なり合っておると思うのでありますが、先ほど小宮さんの地方分散のことについても申し上げたのでありますけれども、これを日本はどういう方向に持っていくべきであるか、これは大きな問題であると思います。好むと好まざるにかかわらず、あらゆる産業形態が時々刻々変化してまいるわけでありますから、それに対応していくようにしなければならないと思います。  そこで農業という面から見ますと、やはり「総合農政の推進について」でも申し上げておりますし、それから基本法にもいっておりますけれども農業として一本立ちのできる、しっかりした体質を備えた農業を育成してまいりたい。しかしそうは申しましても、わが国の特殊性で、先ほど申しましたように、かなり長時間兼業農家というものが継続するのではないだろうか、その労働力というものをどのように活用する必要があるかということが、やはり農村というもの、農民というものを考えたときに重大な問題だと思っておりますが、ただいまお話のございましたような農業をりっぱな農業として、自立し得る農業を一応育てていくということが、農業のしっかりしたものをつくっていくのには必要ではないか、このように考えておるわけであります。
  146. 二見伸明

    二見委員 農家所得という面から見ますと、現在の農家の保有しているたとえば米作農家ですね。その実情を考えますと、農家所得の向上のためには、私は、兼業の機会をふやすということは、いい悪いというよりも、やむを得ないだろうと思いますし、それは現在の時代の趨勢のような気がいたします。これを否定したのでは、たんぼだけで食っていくということは、これは事実上無理だろう、そう思います。それからもう一面、先ほど大臣の御答弁の中にありました国際競争力という面から考えていった場合には、それではどういうふうに日本農業がなっていくべきなのか。たとえば兼業が中心となっていった場合には、国際競争力というものは強くなるのか、この点はどういうふうに御判断なさっていらっしゃるか、その点いかがでしょうか。
  147. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 変化を遂げてまいります過程において、やはり一番大きな大宗であります米を考える場合、米は国際競争力が私は一番強いものだと思います。日本人の腹に合うような一千万トン近い米を、かりに野放しにしても全部供給し得る国は世界じゅう見渡してもございません。私は米はりっぱなものだと思っております。ただ若干ずつ国民の消費は減る傾向はあるかもしれないが、これは農業の大宗である。しかし、これもあまりばかげた価格であるというと消費者に迷惑をかけますので、これはやはりある程度のしっかりした生産を続けると同時に、また所得が確保されなければ継続できないわけでありますから、そういう点においてこれを保護する必要はあるだろうと思う。しかし、そのためには、やはり一応申しましたように、四ないし五ヘクタールぐらいな自立経営農家を育成したいということを言っておりましたが、これらの分野につきましては、あるいは若干の変化を見てまいるかもしれません。なぜならば、いまの状態で四ないし五ヘクタールの農家が、しからば欧米の自立経営の農家と比較してどうかということになれば、まだ弱体であると言わなければなりませんから、その点はあると思いますが、そういうことで、その他の品物につきましては、これはもうよく御存じのように、生産されるものは日本という国の土の上で生産されますけれども、それを育成していく飼料その他の面において見ると、大部分が海外に依存しておるという、そういうような状態である日本農業というものを見ますときに、いわゆる国際競争力という面から見ますと、なかなか問題は多いと思います。   〔委員長退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕 しかし、やはりそれだけのことを考えておるわけにもいきません。たとえば、農村保護し、緑を守っていくというふうな違う見地から考えれば、若干の価格補償はいたしましても、やはり国内生産されるものを保護していく必要がある。いろいろな点において総合的に判断していかなければならぬと思いますが、私は、全体としては、やはり日本農業というものはわれわれの手によってあとう限りの育成をしていくことに最善の努力をしなければなるまい、そういう方向だろうと思います。
  148. 二見伸明

    二見委員 そういたしますと、当面農業をどうするかということは、一年や二年で解決できる問題ではありませんから、かなり長期にわたってやらなければならない問題ですけれども、そういたしますと、一方では自立経営といいますか、農業一本で一本立ちできるような農家というものを育成していく。と同時に、農業所得というものを考えた場合には、一方では兼業ということもこれは当然考えていかなければならない。当面は二本立てでいく。だけれども、あなたのほうのお考えとしては、兼業を進めながら、なおかつこの兼業の中が分化してきて、兼業から離農にいく者もいるだろう、兼業からあるいは規模を拡大することによって専業に移るほうにいく者もいるだろう、兼業を進めながら兼業の中の分化をこれからはかっていこう、こういう基本的なお考えになるわけですか。
  149. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 広域営農団地ということを農林省でも言っておりますが、私は、やはりそういうことが必要ではないかと思います。これから産業地方に分散してまいる一つの国策にいたしましても、やはり広域の営農団地と一緒にこれは並行してやっていくことが成功する道ではないかと思うのであります。そういう場合には、やはり農業としては成り立たないような小さな農業方々は、むしろ他に職場を転換することによって現金所得が多くなるという雇用機会が与えられますならば、その方は御自分でそういう道を選択されるでありましょう。そういう方々にはいまは農業者年金制度等もありますが、さっきちょっと御指摘になったと思いますけれども、かなり大きな専業農家よりも兼業農家のほうが所得全体としては大きいという例がもういなかのほうにもたくさんございます。そういうような状況を考えてみますと、それぞれの小さな農家のお考えで、たとえば自分の土地は売らないで、農協に委託をして他に職を選ばれるなり、あるいは売ってしまう考え方の方もあるでありましょうし、あるいはまた同じような形態の人々が集まって協業で農業を、一つの選択した農産物を協業でやっていこうとする考えもあるでありましょうていろいろな形態はあると思いますが、やはりできるだけ大きな、自立経営を中核にして、そして広域的な営農をやっていく。その間にそれぞれの立場で兼業の人が働いていただく、そういうような形が望ましいのではないか、こう考えております。
  150. 二見伸明

    二見委員 農家の実態を大臣も十二分に御存じだと思いますけれども、たとえば米作ですね。たんぼをたくさん持っておる農家というのは間々あるわけですね。それから逆に、非常に変な話ですけれども、四十アールとか五十アール、四反歩、五反歩という、いわば昔でいえば零細農家ですね。これはもう兼業以外にありませんから、四反歩、五反歩程度はおじいちゃんかおばあちゃんにやらしておいて、だんなは町へ出て働くということで、むしろ農家所得全体とすれば決して悪くない。一番苦しんでおるところはどこかというと、たんぼを一町とか一町五反とか、それだけでは生活ができない。だからといってそれをほうり出して町へ出るわけにもいかないという、いわば中途はんぱな階層があるわけですね。そこら辺が一番農家にとっては苦しいところだろうと思います。サラリーマンにしてみれば、中小所得のところに税金が一番高いというのと同じような感じがするわけです。そういういわば、中農という表現が適当かどうかわかりませんけれども、そういうところに対しては、これからどういうような方策を進めていくのかということを一点伺いたいことと、それから今度農村地帯に工場を持ってくるという法案が当委員会にかかりますけれども、これは農家所得の面から見れば非常にプラスになるだろうと思います。と同時に、今度は兼業の機会をふやすことによって、兼業農家が農地を手放すかというと、必ずしもその面ではうまくいくかどうかわからないということと、今度は純粋な農業の立場でいくならば、工場が進出してきたことによって農村が買い荒らされるというか、そういう現象も起こってくるのではないだろうか。これは茨城県の鹿島でそういう現象が事実起こっております。そういう点の心配を私たちはするわけなんですけれども、そういう点については、大臣、いかがでしょうか。
  151. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまの点は、私は、将来百年後の子孫に笑われないようにしなければいけない一番大問題ではないかと思います。せっかくこうやって御先祖から美しい島国をちょうだいいたした現代人が、山を切りっぱなしで裸にしてみたり、いまお話しのようなへたなことをやって、りっぱな農村をスプロール化してしまうようなことは、私は現代人として一番警戒すべきことだと思います。したがって、いままでのように、私の郷里のほうでもそうでありますが、無計画にいわゆる工場誘致というふうなことをやって、そして無計画に公害をばらまいて歩くようなことは厳に警戒をしなければなりません。これは地方の自治体の長などそうでありますが、世の中の指導者たちは、将来百年後の子孫に恨まれないようにするためにはどうあるべきかということを前提にものを考えながら、農業政策も工業政策もやっていかなければならないんではないか、私は実は、むしろそういういいかげんなことをして、大事な農業地帯がスプロール化して取り返しのつかないようなことになることこそ一番警戒すべきことではないかと内心思っておる一人でございますが、そういうような意味も加えまして、私はやはりみんなで警戒しつつ、地方が十分にその地域の将来の発展のために計画を立てて、そういうものをわれわれも十分検討した上で対処をする必要がある、これは私はほんとうに軽率にやってはいけない重大な問題だと思っております。  もう一つ先にお話しいただきました中農でございますが、この方々は、これは先ほど申し上げましたように、個々の方々の選択が大事であると思うのであります。それらの方々の御選択によって、許されるならばそういう人たちでできるだけ協業をやっていただくことがたいへん必要ではないか。この間、私のところの渡辺政務次官が西ベルリンに政府会議がありまして行ってまいりまして、彼の報告の一つに、マシーネンリンクという、これは私は非常におもしろい構想だと思っておりますが、農家方々が一人一つの機械を、トラクターを持っている、そうするとそれをみんなで共用する、あるいはほかの農機具を持っていればそれをまたみんなで共用するという、そういうようなことで、お互いが固定資産に金を使わないように、経済的に用いるんだ、そういう渡辺君のドイツのお話を聞いておりましたら、ある新聞社の方が私のところに来て、現に愛知県ではそれと同じことをやっていますよ、大臣はひとつ予算でも成立したらさっそく勉強してきたらどうかという御注意も受けましたような次第で、そういうようなことで、中農の方々の能率の向上をはかることは大事なことではないかというふうに考えているわけであります。
  152. 二見伸明

    二見委員 それからもう一点。将来の日本農業というものを考えた場合に、望ましい農業人口というのは大臣はどの程度だというふうにお考えになっていますか。これはたしか農林省からいただいた資料によると、人口で六百万で、農家戸数で四百五十万戸という数字が出ておりましたけれども、これはそういうふうになるだろうという見通しの数字でございまして、政府のほうとして積極的にそういうふうにするというんじゃなくて、自然とそういうふうになるであろう、この農家人口の減少から見て、そういう数字が出ておりました。これは政策的な意図でそうなるというよりも、自然的にそういうふうに減るという数字です。ただ国際競争力であるとかいろんなそういう条件を考えた場合に、はたして日本農業というものはどの程度の人口が最も効率的なのか、その点について、いかがでしょうか。
  153. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは農林省が五十二年の見通しについて書いております。私どもはまだこれが必ずしも最終的な結論であるというわけでもありません。状況の変化に伴って検討はしてまいらなければなりませんが、私はやはり農業として一本立ちで立っていきますためには、日本全体の農業就業者の人口というものはかなり少なくて済むようになるのではないか、これはただ私どもの推定でありますけれどもわが国で非常によく似た国でイギリス、ごらんのとおりでありまして、全体の人口の三・九%くらいに減ってきていると思います。ところが生産力は毎年毎年増強しております。私はそういうことを考えてみますと、やはりEECでもそうでありますけれども、これからはいろいろ省力について科学的な研究が進んでまいりますから、労働力一つのものをつくるのにいままでよりは少なくて済むかもしれませんけれども、大体において省力が進んでまいりますので、農業においてもやはりそういうことが考えられるのではないかと思いますが、いまのところは従来の歴史から見まして、やはり五十二年を一応のめどとして、先ほどおっしゃいましたようなところがまずまずそういうような傾向になるのではないだろうか、このように見ているわけであります。
  154. 二見伸明

    二見委員 ちょっと話が変わりますけれども日本農業政策、いままでは米偏重の農業政策であった、これからはそういうわけにはいかない、これは農家のほうもそれはそれなりに納得していると私は思います。それで米偏重でないためには、農産物価格政策というのはいかにあるべきかということをこれからは、いま直ちにこれは改めるということじゃなくて、将来の問題としてこれは検討してもいい問題じゃないだろうかと私は思うわけです。われわれのほうにもまだ成案がきまったわけではありませんけれども、たとえば現在の価格政策というものは五類型に分かれている、しかもその中身を見れば、米の場合だとか麦の場合、あるいは野菜の場合、豚肉の場合、全部価格の算定方式が違うわけです。それはこういう形になったのは、それぞれ歴史的な由来が私はあると思いますけれども、野菜専業農家というものもこれから出てくるだろう、畜産専業の農家も出てくるだろう、あるいは米だけの農家も出てくるだろう、あるいは多角経営の農家も出てくるだろうということになると、価格政策というものは何かもう一度基準というものを考え直してもいいのではないか、これはドラスティックにやるものではない、これは農家方々の御意見も十分聞かなければなりません。各界の意見も集めなければならないと思いますけれども、そういうことはこれから検討し直してもいいのではないかと私は思うわけですけれども大臣、その点いかがでしょうか。
  155. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いままでのいろいろな価格につきまして、農林省が決定をいたしておるものが十幾つかあると思いますが、それぞれの歴史的経過でこういうふうになっております。取り扱います局でも園芸局もあれば、その他の局もございます。私はただいま御指摘になりましたような点は、きわめて重大な課題だと実は思っておるのであります。いま私別に成案を持っておるわけではありませんが、私はやはりいまの産業構造の中における農業という立場を考えまして、やはり価格政策についてはもっと掘り下げて検討する必要がある、これは農林省においてもそういう角度で勉強しておるわけでありますが、なお重要な問題でありますので、十分研究いたしたいと思っております。
  156. 二見伸明

    二見委員 確かに現在の農林省のお考えですと、各局に分かれたいわば価格政策は縦割りできめられているわけですね。大臣も成案はないけれどもこれから検討する、私たちもこの問題はこれから検討していきたいと思います。そして大臣のほうでも今後いろいろな問題、いろいろな御見解がありましたならばそのつど率直にお示しをいただきたいと思いますし、これはお互いに研究してまいりたいと思います。  時間がありませんので、最後に食管に関連した問題を一点だけお尋ねします。  食管法の第三条で、これは生産者米価の問題でありますけれども、「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」こうあります。いままでの生産者米価の算定方式は生産費・所得補償方式だ、こういわれておりましたけれども、この第三条の条文とこの生産費・所得補償方式というのは、これは関係があるのでしょうか、ないのでしょうか。
  157. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 生産費につきましては、いまお話しのように生産費・所得補償方式というふうな方式を用いておりましたが、これから慎重に検討いたしてまいるつもりでありますから、いま別に具体的なお答えはできませんが、現在のような大幅な生産過剰のもとにおきましては、従来のような方式をとれるかどうかということにつきましても、去年の米審のときにもいろいろ御意見がありました。したがって、これから十分にひとつ私ども部内でも検討いたしまいりたいと思っております。
  158. 二見伸明

    二見委員 そういたしますと、生産者米価の算定方式は、算定方式というかこの基準は、まるきり変更されるということもあり得る、ただいまの御発言はこのように理解してよろしいでしょうか。
  159. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまのような需給の緩和いたしてまいりましたときに、いわゆる生産費・所得補償方式という方式を採用できるかどうかということについてはいろいろ問題が多いことだろうと思いますので、現状に即してひとつ十分検討をいたしてまいりたい、こういうことでございます。
  160. 二見伸明

    二見委員 この問題は非常に重要な要素を含む問題でございますので、私後日また時間を改めて大臣の御見解を承りたいと思います。  以上で質問を終わります。
  161. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 田中恒利君。
  162. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は農政の責任者であります倉石農林大臣所信表明を何回か読ましていただいたわけでありますが、やはり一番強く感じますことは、今日の日本農業に対する農林大臣の認識の問題であります。いろいろな政策の方向が投げかけられておるわけでありますが、一体いまの日本農村や農民の実態を農政の責任者としての大臣はどのように御認識をせられておるのか、私はこの点が実は一番強くお聞きをいたしたいわけであります。  先ほど来いろいろ御答弁の中にお話がありましたが、私はいまの日本農業というのは、農林省やあるいは私ども自体が考えておる以上に深刻な様相を持っておるような気がしてならないわけであります。  この間、昨年の秋ですか、農林省の農家経済調査で、昭和四十四年度の農家経済農業所得が前年度を下回ったという報告がありました。これは私ども農業に関係しておる者にとってはまことにショッキングな調査でありまして、これほど物価が異常な高騰をしておる中で、日本農家の一町歩平均の、ある面ではいま農政の一番焦点になっている階層でありますが、この農家所得が前年度を下回る、こういう報道がされたわけであります。私はその後農林省にいろいろ聞いてみますと、昨年の十二月に確定値が出ておりまして、年間ずっとやってみますると多少上回っておるそうでありますが、それでも前年に比べて一〇〇・四%。〇・四%、金額にいたしまして、昭和四十三年が五十二万七千円の農業所得が五十二万九千三百円、したがって二千三百円のアップであります。これが今日の農家所得の実態であります。いろいろいわれますけれども、結局農政の焦点は農業所得をどこに持っていくか。農業所得を上げるか下げるか、ここのところに農政の成功、農政の失敗、この辺が私は尺度として出てくると思うのです。そうするとどうもこの二、三年の傾向を見てまいりますと、農業所得がだんだん減ってきております。いわゆる所得率が低くなってきております。経費が高くなってもうける分が、ふところに入る分が減ってきております。一体こういう状態を通していまの日本農政方向をどういう方向に持っていくべきなのか。この問題についてひとつ大臣のいまの日本の農民の状態についての御認識をまずお伺いしたいわけであります。
  163. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 わが国経済社会の発展の過程で、現在の農業御存じのように米の過剰、地価の上昇、それから中高年齢層の滞留等によって近代化のおくれなどいろいろ困難な問題に直面はいたしております。しかしながら畜産物、野菜、くだもの等の需要の増大など国民所得の向上に伴いまして食糧消費構造の高度化、他産業における安定的な就業機会の増大など、経済社会の発展の中に農業の近代化の機会や条件が醸成されているものと私どもは考えております。また農業経営につきましては近代的な新しい農業経営の萌芽も見られるわけでありまして、私といたしましてはこれらの条件やこれらの芽ばえを積極的に生かしていき、きわめて困難ではありますけれども農業の近代化を現実の基盤の上に立って一歩一歩進めてまいる、そういうことによって豊かな生活を実現するようにいたしたい、これが私ども農業に従事する者のために考えておることでありますが、生産性の高い近代的な農業確立と申しましてもなかなかむずかしい問題はたくさんございますけれども、一応いま私が申し上げましたような方向農業に対してまいりたい、このように考えております。
  164. 田中恒利

    田中(恒)委員 そういうふうにお答えになると思うのですけれども、どうもそれじゃぴんとこないわけであります。確かに兼業の機会がふえましたから兼業所得がふえておりますから、農家経済農家所得そのものは曲がりなりにも上昇しておることは事実でありますが、そのことでもって事足れりとするわけには私はいかないと思うのです。やはり基本的に農政というのは農業の収入をいかにふやしていくか、ここのところにポイントが置かれて政策がとられないと、兼業収入でカバーをしてきておるし、その兼業農家がふえることによって、一方では専業的な農家が部分的ではあるけれどもできておるということも承知はいたしております。しかし、いま現実に日本農村の中で農林省が言われるような自立農家が出てきております。出てきておりますが、これはあまり農林省とは関係なしに、きわめて自発的に大きくなってきておる層でありまして、あまり農林省のお世話にならなくても自分たちでやっていくという農家が出てはきておりますが、きわめてこれは点でありまして、線として組織として集団としての農業というものは、やはり全体的に見た場合にはくずれ去るような気がしてならないわけです。そういうあせりを、農民はもとよりでありますけれども、今日農業に関係する多くの人が持っておると私は思います。こういう認識の上に立って当面の政策を幾つか打っていただきたい、そういう観点でいま問題になっております米の生産調整について午前中来いろいろなお話があったわけでありますが、一体農林省は二百三十万トンの米の減反というものが日本農業に対して短期的に長期的にどういう影響を与えるか、少なくとも来年の農業に対して二百三十万トンの米減反というものがどういう影響を与えていくのか、どういう見通しの上に立ってお進めになっているか、この点をお聞かせいただきたい。
  165. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話しの中に大型の自立経営農家は農林省に関係なくお世話にならないでもうちゃんとやっていくのだ、こういうお話でございまして、ほんとうにそれはありがたいことだとわれわれは思っておるのであります。大体行政というものは手取り足取りして人を引っぱっていくような、そういう政治機構の国もあるかもしれませんけれども、そういうもののお世話にならないでりっぱにやっていかれる。そこでりっぱにおやりになる方たちのために必要な土地改良であるとか圃場整備であるとかいうことについては行政がお手伝いをいたすことが必要だと思いますが、農林省などのお世話にならずにりっぱにやっていかれるような農家がどんどんできることが私どもの成功ではないかと思うのであります。ただそこで、これは農業だけではありませんが、急激な勢いで一般の社会経済の状況が変化してまいります。その変化に対応して戸惑いされることのないような農村方々のお世話はわれわれがやるべきことである。そういうことで考えてみますと、やはり大きな部分を占めている兼業農家方々労働力というものを、どのようにして所得を多くしていくか、これは私は大事な政策目標だと思います。それ自体は農業の問題ではないかもしれませんけれども、農民の問題であり、農村の問題でございます。私どもはそういうことを総合的に考えまして、やはり理屈を抜きにしても、先ほど申し上げましたように、兼業農家というものの実力はわが国農村にかなり占めておるのでありますから、効率的にこの労働力というものを運営するようにしむけていくということが大事なことではないだろうか、こういうことで工業の地方分散等も考えて、そして農村地域の方々の全体としての所得水準を上げていくということがいまの移り変わっていきます社会経済に対処して必要なことではないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。
  166. 田中恒利

    田中(恒)委員 いまの大臣の御答弁の中で、自主的に農家農業経営を拡大していく、こういう傾向はまことによろしいので、それが農政の求める点だということは私も同感であります。この点はあとで関連をいたしますので、自主的に日本の農民を伸ばしていく、農政は側面的に足らざるところを補っていく、こういう観点で今後の農政の進め方がとられるべきだ、こういうふうに解釈をいたして大臣と同感の意を表明しておきますが、いま御質問いたしましたのは二百三十万トンの減反が日本農業に対してどういう影響を与えるか、この点についてお聞かせをいただきたい。
  167. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 失礼いたしました。足りなかったですが、二百三十万トン、いまこれが先行いたしておりますから、これが議論の中心にもなるようでありますけれども、私どもはやはり農業全体が大きな勢いで変わりつつあるのだ、したがって、米にウエートを置いた農業だけでは立ち行かなくなってまいりましたことは御存じのとおりでございます。したがって、どのようにして農業を転換していくか、そういうことが非常に大事な農政の眼目であって、その移り変わってまいりましたことに対処する一つとして生産調整というものが出てきているわけでありまして、したがって、生産調整というものをうまくやっていただくには農家方々の御協力を得なけばれならないのは当然のことであります。したがって、生産調整をおやりいただく農家については、それぞれ個々別々にいろいろな御事情がおありでございましょう。そういう方々のことにつきましては、実際に当たっていただく町村長さんや農業団体の方々が直接に生産調整を指導していただくのでありますから、個々別々のケースについてはいろいろなことがありましょう。しかし私どもとしては、一応この二百三十万トンにしていただくためには、予算面にも計上してありますように、休耕、転作等にそれぞれ助成金をお手伝いいたしまして、そうしてなるべく早く転換作物を指定して、そうしてその転換が定着するように御協力を申し上げたい、こういうことでお願いをいたしておる、こういうわけであります。
  168. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうも私の質問のポイントと必ずしも合わないと思うのですが、私は四十四年の農業所得が前年度に比べてわずか〇・四%しか上がらなかった。この原因は米価の据え置きだ、こういうように思います。おそらく農業白書が新しく発表されると思いますが、四十五年度の農家経済の動向についても、米価の据え置きが決定的な要因になって、農業所得というのは私は停滞傾向をたどっておるのではなかろうかと思います。特に昨年からことしにかけてのこの米の減反というものが、少なくとも農家経済に対して短期的には非常に大きな衝撃を与えていくということは事実だと思います。農協等におきましても、先般全国農協中央会では、日本の農協の中で約三百万平均この二百三十万トンの減反で収入が減っていく、こういう推測の調査の結果を報告いたしておりますし、いま市町村長がこの米の減反配分をめぐって一番心配しておるのは、市町村の税収がこれで下がっていく、こういうことであります。私は全体的にこの問題が与える影響は大きいと思う。それに対応する農林予算というものが確保せられておるかというと、なるほど昨年に比べて一応一般会計の予算が上がった程度のものは上がっておりますけれども、私は少なくとも一六・四%ですか、それだけのベースダウンですよ。月給取りでいったら約二割近い月給が下がるということであります。それほど減らされておるにもかかわらず、農業の予算がそれに対応するだけふえておるとは思いません。ことしの農林省の予算の中では、米に対する予算が四七%を占めておるわけでありますから、あと五三%でありまして、比率からいきましたら、前年度に比べて畜産とか果樹とか新しい分野では額がふえておりますけれども、比率でいえば多少下がっております。だから私は、こういうような状態で出されてくる減反というものは、やっぱり無理を少なくともこの二、三年の日本農家に対しては与える、こういう想定に立たざるを得ないのであります。こういう点を実は私は大臣に御質問したわけでありますが、具体的にお答えを得ることができなかったのですが、同時にこの二百三十万トンの減反というものは、行政府としてどのような法律的根拠に基づいて進められておるのか、この点をまずひとつお聞きしたいわけです。食管法に基づいてなされておるのかあるいはその他関連する法律——一体この二百三十万トンの米の生産調整の根拠になっておる法律の条項はどこなのか。これは食糧庁長官でもけっこうでございますが、お聞きをいたしたい。
  169. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 御承知のとおり、米の生産調整地方公共団体とか農業団体の自主的な協力によって実施することといたしておるわけでございまして、特に法律的な裏づけによって行なっておるものではないわけでございます。
  170. 田中恒利

    田中(恒)委員 そうすると、食管法の国民食糧の安定的供給、需給の調整、こういう観点に基づいて行なわれておるものではないということですか。
  171. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 国民食糧の安定的供給ができるように五百八十万トンの割り当てをいたしておる、百八十万トンの自主流通も認めておるわけでありますから、もちろんただいま生産調整をやりましても、やはり国民食糧の安定的供給ということは、政府はちゃんとやっておるわけであります。
  172. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうも法律的根拠があまりないということなので、これは私の判断で間違いがあってはいけないわけですけれども、実は農業基本法第二条には、国が必要な施策を講じなければならないというところの第二条の第一項第一号には「需要が増加する農産物生産の増進、需要が減少する農産物生産の転換、外国産農産物と競争関係にある農産物生産の合理化等農業生産選択的拡大を図ること。」という条項があります。あるいはやはり基本法第九条にも「国は、農業生産選択的拡大農業生産性の向上及び農業生産の増大を図るため、」「農業生産調整等必要な施策を講ずるものとする。」こういう条項があるのです。だから私は、たぶんこういうところに根拠を置かれてやっているんだろうと理解しておるのですが、いまの官房長の御答弁では、あまりはっきり言わないのですが、ただその場合といえども、私は法律解釈をする必要はありませんけれども、非常に生産の転換であるとか生産調整であるとか、こういうことばを使っておるのでありまして、生産を縮小させる、こういうような意味でやるんじゃないのだということが、こういうことばの内容を通して感じられるわけなんです。特に大切なのは、大臣がいま言われたように、農業基本法第五条で「国及び地方公共団体は、第二条第一項」——いわゆる生産の転換でありますが、「又は第三条の施策を講ずるにあたっては、農業従事者又は農業に関する団体がする自主的な努力を助長することを旨とするものとする。」こういうふうに書いてあります。これは、さっき大臣が言われたことと基本的に一致するわけですが、自主的に農業団体や農業者が進める生産の転換に国が協力するのだ、こういうふうに基本法第五条で明確に書いている。今度の生産調整にあたっては、この基本原則の上に立って進められるのかどうか、この点を大臣からお答えをいただきたいと思います。
  173. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はそういう法律上のこともさることながら、やはり農業団体は生産者の団体でございます。その生産者の御協力を気持ちよく受けるのでなければ、うまくいくはずがありませんし、また団体のほうでも、農林省と緊密に提携をしていろいろやっていただくことのほうがぜひ必要でございますので、ともどもに御相談をいたして進めておる、こういうわけであります。
  174. 田中恒利

    田中(恒)委員 私も法律のことを、ここで一々こまかく議論をする時間もありませんが、しかしやはりこれは行政府が行なう、しかも日本農業にとってはかつてない大事業ですよ、この米の生産転換というのは。やはり法律に基づいて行政は動いているわけでありますから、私は法律的根拠、そこのところを明確にさしておかなければならぬと思うのです。そして、そこにははっきりと農業団体や農業者の自主的ないわゆる自主性に基づいてやるんだということを書いておるから、この線もはっきりしてもらわなければいかぬと思うのですよ。大臣、どうですか。これは気持ちだけではだめですよ。全国の農業団体や農民と農林大臣との間でお互いに理解し合ってということだけではだめなんですよ。法律に基づいて仕事をせられておるわけですから、ここのところ間違いなく進めますというふうに返事をしてもらわないと、これはちょっとおかしいですよ。
  175. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御注意はありがたいのでありますけれども、御注意のとおりにとにかく緊密な連絡をいたしまして、御協力をいただいておる、こういうわけであります。
  176. 田中恒利

    田中(恒)委員 もうなかなか大臣答弁がうまくて、しっぽを出さぬのであれですが、しかし、いろいろ団体等とも協力をいただいておると言われるのですけれども、少なくとも当面は団体は、生産調整のこの二百三十万トンについては賛成をしていない。買い入れ制限については認めておりません。これは十二月の三十日に全国農協中央会で抗議文的な声明を出しております。「政府首脳者が度々の公約に反し、現実にみずからが、食管制度の根幹を破壊する行為をあえて進めようとしていることを示すものであると同時に、生産調整については、本年度目標数量以上の実績をあげた米生産者を信頼せずその協力を期待しないことを表明したことにほかならない。よって、米生産調整の実施とそのもたらす結果については、あげて政府がその責任を負うべきである。」こういうふうに言っているんですよ。それから、そのあと大臣と宮脇さんとがお話をして、どこまで歩み寄ったか知りませんが、少なくとも全国農協中央会の正式な発表とはこれは違う。ですから、農業団体は協力するわけにはいかぬのであります。大臣は、いろいろとお話をされてお互いにやります、こういうことになっておりますと言われておりますけれども、それは各県の会長から上くらい、あるいは全国の団体の役員の皆さん、そういうところとは大臣が会えば都合よくお話をするのですけれども、少なくとも単協の組合長さんなどのところまでいけば、この問題はそう簡単じゃないですよ。私は最初農業の現実をどうお考えになっているかと言いましたのは、その点なんですよ。そこのところが私は甘いと思うんですよ。そこで、そういうことをひとつ認めて、十分それを見た上でこの生産調整を進めてもらわなければいけない。しかも、その生産調整の進め方は、さっきもおっしゃいましたし、基本法にも書いてありますように、自主的な農民の判断に基づいてやっていくということを根底にしていただかなければいけないんですよ。ここのところをあまりぼやかされますと、これから議論が進まないわけですが、どうですか。
  177. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大体ただいまの政府は、そうなんですけれども、できるだけ多くの国民の御意向を聞くようにいたして、民主的に運営してまいりたいというたてまえでありますが、ことに農業のことにつきましては、たいへん大きな仕事をしていただくのでありますから、ことにこれを強制などというような、そんな意思をわれわれは全然持っておりません。ただしかし、みずから米をつくっていらっしゃる方々の多くの人に会ってみましても、このままに生産過剰が進んでいったらどういうことになるであろうかということは、米づくり農村方々御自身がよく存じていらっしゃるわけであります。したがって先ほど農協の決議のお話もございましたが、大ぜいの人の中には、いろいろな意見がありますので、そういう意見を調整してまいる指導者の御苦労は十分お察しできますので、いろいろな経緯もありましょうが、結局はやはり日本人らしい聡明と英知でうまく処理していかれる、こういうぐあいに御信頼申し上げて、成功するにきまっている、こういう決意でやっているわけであります。
  178. 田中恒利

    田中(恒)委員 食糧庁長官にちょっとお尋ねいたしますが、いま問題になっております第二次自主流通米ですが、この第二次自主流通米というのは検査をせられるわけですか、しないわけですか。
  179. 亀長友義

    亀長政府委員 第二次自主流通米、いわゆる予約限度数量以外の米の問題だと思いますが、これは普通の本来の自主流通米と大体同じようなルートで売っていただくというようなことで、農協指定業者を通じて売るというものであります。でありますから、当然これは農産物検査法の検査を受けていただく、かような考えでおります。
  180. 田中恒利

    田中(恒)委員 それからもう一つお聞きいたしますが、先ほど来大臣は、しばしば農協等が売って売って売りまくる、こういうように言われておったわけですが、私はどの米を売るのかなといま考えるわけでありますが、農協の皆さんがおっしゃっておるのは、自主流通米を売って売って売りまくれ、たぶんこういう気持ちのようだと私は理解をしておるわけです。その場合に、売れるだけ売って、第一自主流通米と第二自主流通米について食糧庁のほうでとかくの制限をつけるというようなことはございませんか。
  181. 亀長友義

    亀長政府委員 予約限度数量外の米をどういうふうに売られるかという問題でございますけれども、私どもといたしましては、本来の自主流通米とルートも同じでございますから——農協としても内部的な精算の方法はいろいろ変わってくるかもしれません。本来の自主流通米のほうは政府の保管料等のいろいろな助成もある。片一方のほうはそういうものは現段階においては何もないということでございますから、農協の精算方法に関してはいろいろ違ってくるかもしれません。しかし販売のルートとしては大体同じでございますから、おそらくこれは農協としてはそう差別をつけてもらいたくないだろうし、私どももまた特別に、たとえば予約限度外の米に何か無理に印をつけさして、それが買いたたかれるというようなこともまことに気の毒な話だと考えております。具体的にどうするかはきめておりませんけれども、もちろんそういう米が出ることは政策的には歓迎をいたしませんけれども、出てきた以上は、農協は本来の自主流通米となるべく同じような形で売れるようにしていくのがいいのではないかというふうにいま考えておる次第でございます。
  182. 田中恒利

    田中(恒)委員 第二自主流通米だから特別に売り方をこうするとかああするとか、先とかあととか、そういうことはしない、こういう御見解のようでありましたので、これは自主流通米でありますから、あくまでも食管のルートには乗せて販売するということがたてまえになっておるようでありますから、ぜひそういう形で処理をしていただきたいと思います。  さらに京都食管として新聞には報道せられたわけでありますが、第二自主流通米について、倉庫の保管料、予約概算金の金利など政府のほうではめんどうみないということだから、京都は京都独自でこういうものをやっていく。さらにこの販売については、十キロ入りのビニールの大袋に京都米と表示して、それについて若干の袋代の補助もする、こういうような独自の制度をお考えになったということが新聞に載っております。これについては農林省は他県に波及することをたいへん心配しておる、こういう談話も食糧庁の次長さんやあるいは総務部長等から出ておるわけでありますが、実はこの動きは必ずしも京都だけではなくて、すでに新聞等で聞く範囲でも、全国でも数カ所に、場合によれば市町村等が独自にこういう形のものをやらなければ今度の場合はなかなか問題の処理がしにくい、こういう報道もなされておるわけであります。この際、このような地方自治体なり団体等が余り米に対しては自主的に独自にでも金を出して何とか処分をする努力をしていく、こういう努力に対して農林省のほうのお考えは一体どういうふうでございましょうか。
  183. 亀長友義

    亀長政府委員 これは地方によっていろいろなお考えがあるようでありますが、私どもの基本的な考え方としては、やはり生産調整を完遂するということが基本的な問題でございまして、生産調整を阻害しない、あくまで生産生産調整をやるんだという前提で、地方の事情においていろいろ配慮をされるということは私どもとしても一がいに拒否すべきものではないと思いますけれども生産調整をなるべくさせないんだという前提でそういうことをお考えになっておる県なりあるいは地方がもしおありだとすれば、私どもとしては賛成をいたしかねる、かような次第でございます。
  184. 田中恒利

    田中(恒)委員 生産調整をさせないというふうには皆さん考えてないと思うのですよ。少なくとも日本の国の政府に対して真正面から反対するような元気のいい知事さんなんかあまりありませんよ。市町村長にもない。それでもなお末端の農民生産者との関係を何とかうまく処理するためには、自治体なり団体なりで無理をしてもこういう処置をすべきだということで、こういう動きが出てきておる。こういう解釈をした上で適切な指導をすべきであるし、本来これは何も自治体や団体にやらすのじゃなくて政府がやらなければいけないことですよ。あるいは政府には、やってみたあとでどれだけ出るか数字を見た上でやっぱりやるのだという腹があるかもしれませんよ。おっしゃいませんけれども、そういうにおいは感ずるわけであります。本来、第二自主流通米といえども政府が取り扱ってすべきことだと思うのです。政府にかわって積極的に自治体なり団体なりがやるというのですから、これはむしろ農林省としてもありがたいことだとお考えになっていただくべきことだと思うのです。  たいへん時間の制約がありますので、米の問題まだたくさんありますが、あとで芳賀先生のほうからまた御質問があるかと思いますので、私は貿易の自由化の問題につきまして若干御質問をいたしてみたいと思うのです。  ことしは残存輸入制限が大幅に緩和される、特に農産物は非常に大きく該当するということでありまして、いよいよ本格的に日本の経済が開放経済の段階へ移行していく。特に従来まで農林省等もそれなりに心配はしてきたと思いますが、押えておったものもこの際吐き出さなければいけない、こういう状態に現実にはなってきたと思うのです。そこで農林大臣として、農産物輸入自由化についてこの際基本的にお考えになっておられる点、農産物自由化をめぐってどういうふうな考えで自由化に対処せられるか、この点をまずお尋ねをしておきたいと思うのです。
  185. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 貿易の自由化全体につきましては、わが国産業経済政策の立場からできるだけ自由化をして、資本及び物資の自由化については取り組んでまいりたい、こういう原則でありますが、しかしお話しのように農産物につきましては、そういう原則を貫くためにもなかなか困難をいたすものがございます。したがって真剣に取り組むわけではありますけれども、それにはやはりそれぞれの物につきまして生産対策等を講じて、合理化をはかり、コストダウンをして太刀討ちのできるように育成していかなければならない。その上でできるだけ自由化という目標が達成されるようにはいたしたいものだ、このように見ておるわけであります。
  186. 田中恒利

    田中(恒)委員 農産物自由化によって政府が関税等必要な処置をとられるわけでありますけれども、もしそういう最大限とれる処置をとりましても著しく国内農産物に影響を与えるような事態が起きた場合には、政府は一体どのような処置をおとりになるか、この点をお聞きしてみたいわけです。
  187. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 具体的にどういう例が出てくるかということによってもそれぞれ対処方が違うと思いますが、いまお話のございましたように、私も言い漏らしましたのは、やはりできるだけ生産対策等について助成をいたしましたりいろいろやりまして、そうして自由化をいたすにつけましても、物によりましては季節関税等弾力的に関税政策を用いてやってまいるというのがいまきめておるやり方であります。具体的に何か問題がございますればそれにお答えをいたさなければなりませんが、大体そういう方向自由化と取り組んでまいる、こういうわけでございます。
  188. 田中恒利

    田中(恒)委員 そういうことをやられましたあとにおきましても、国内の関係の農産物に対して非常に大きな影響を与えるような事態が起きた場合に、一体どういう、たとえば輸入の制限をするとかあるいはストップするとか、こういうことをやりますか、もうやりませんか、そういう場合は。その点です。
  189. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 どういうようなケースで、そういうことがあり得るでありましょうか、それはちょっと私にもよくわからないのですが。
  190. 田中恒利

    田中(恒)委員 私こまかく計数的にはここへ資料を持ってきておりませんけれども、レモンの自由化等に際しましても、やはり日本のレモンというものは、アメリカから入って来るレモンによって非常に大きな打撃を受けましたね。あるいはいままで干しブドウ等についても同じような傾向が出てきたわけです。ああいうような事態が出てきた場合には、自由化をしたからといって、そのまま見のがすのじゃなくて、やはり輸入の制限措置をとってもいいと私は思うのですよ。そのことなんですがね。
  191. 荒勝巖

    荒勝政府委員 御存じのようにレモンの自由化に伴いまして、自由化以前と自由化後、その後四十四年あるいは四十五年と非常にレモンが多く輸入されるようになりまして、その結果といたしまして、多少日本の一部にありましたレモン栽培が行き詰まった点は認めますが、それにかわりまして、われわれといたしましては日本の温州ミカン等、国内の嗜好者に非常に需要の強い作物への転換等をはかりまして、農家といたしましては、ある程度レモンの自由化に伴うあとを十分にやっておられるのではなかろうか、こう思っております。
  192. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうもしかし農林省はあまりこの農業基本法の趣旨を体して農政をやっていないような気がしてならないわけであります。私は農業基本法ばかり読んできておるわけでもないのですが、農業基本法第十三条には「輸入に係る農産物との関係の調整」という条項があるのですよ。そしてここでははっきりと、もし輸入をして、競争関係にある農産物価格が著しく低落をしたり、または低落をするおそれのある場合には、関税率の調整輸入の制限その他必要な処置を講じなければならないというふうにちゃんと書いてあるのです。基本法第十三条にちゃんと書いてあるのです。こういうことがおわかりにならなくて、農産物自由化をやられちゃって、そしてとんでもない影響が、関係農産物価格をめぐって出てくる。しかしいろいろな補給金とか生産調整か何かで事を過ごすんだということでは、これでは私は農産物自由化なんかという、こういう大きなあらしに、現実の日本農業の実態はまだ耐えられないと思うのですよ。基本法のここに書いてあるわけですが、これをどういうふうに解したらいいのですか。
  193. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ただいま御指摘農業基本法の条文あるいは個別の品目について申し上げますれば、たとえば繭糸価格安定法の中などにも、たとえば生糸の輸入ということで繭糸価格安定の仕組みがうまく動かないような緊急事態が立証されれば、あの制度を守るために随時適切な措置をとるというような規定がございます。これらはいずれもガットの第十九条というのに掲げられておりますものの考え方と思想的に同じものでありまして、そのものの輸入あるいはそのものの国際的な価格の急激な変動あるいは数量のきわめて短期的な変動こういうもののために、関連したものがはなはだしい被害を受けるという場合に、緊急に防護措置をとるということは、国際的にも認められた一つの考え方であります。
  194. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで具体的に一、二お尋ねをしておきますが、グレープフルーツの自由化が四月から行なわれるというような報道がなされておるわけであります。グレープフルーツの自由化の問題については、しばしばこの委員会におきましても議論がなされてきたところでありますが、四月自由化というのは確定をしておるのかどうか、お尋ねをいたしたいわけです。
  195. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 グレープフルーツの輸入自由化につきましては、昭和四十四年の日米協議の際、日本側は、米国の日本産温州ミカンの輸入解禁州を実質的に拡大するとの了解のもとに、日本はグレープフルーツを四十六年十二月末までに自由化することとする考えである旨を表明いたしました。かつ、この場合グレープフルーツに季節関税を設定することを明らかに当方からいたしておるわけであります。このような、日米協議の結果を勘案いたしまして、四十四年十月十七日の関係閣僚協議会におきまして、四十六年の十二月末までに自由化することが決定されました。その後内外の情勢にかんがみまして、四十五年九月十日の関係閣僚協議会において、四十六年の十二月末までに自由化するものと決定されました品目については、四十六年四月末日を目途にその完遂につとめると決定された次第であります。しかしながらグレープフルーツにつきましては、さきの日米協議のいきさつもありますので、こういうことを念頭に置きながら慎重に対処してまいりたいと思っております。
  196. 田中恒利

    田中(恒)委員 必ずしも四月自由化というのが確定をしておるわけではないような御答弁いただいたわけですが、グレープフルーツについてはいま大臣からお話のありましたように、対米温州ミカンの輸出の州の拡大という前提があります。いま一つ季節関税の問題がありまして、季節関税につきましては本国会に提案をされておるわけでありますが、この対米輸出州の拡大ということにつきまして、その後農林当局は具体的にアメリカ側と何らかの形で折衝をお始めになったのか。もし折衝した経緯がありますれば、状況はどうなのか、この際明らかにしていただきたいと思うのです。
  197. 荒勝巖

    荒勝政府委員 昨年グレープフルーツのことで、われわれといたしましても本件のグレープフルーツの自由化が近づいているという前提に立ちまして、温州ミカンの対米輸出ということにつきまして、外交ルートを通じまして、いろいろと接触、連絡いたしておりますが、さらに昨年の十一月、アメリカからパンビー農務次官補が参りまして、本件につきまして相当いろいろと話し合いをしたわけであります。さらに本年の一月から二月にかけまして、いわゆる現在まだ五州しかアメリカが解禁州を実施しておりませんので、その拡大のことにつきまして、その問題点がさらに検疫上の問題というふうに聞いておりますので、農林省から果樹の担当官と検疫の担当官、課長二人向こうに参りまして、技術的な話し合いをいたしましたが、今後さらに本件については折衝をしてまいりたい、こういうふうに思っておる次第であります。
  198. 田中恒利

    田中(恒)委員 果樹課長、植物防疫課長さんほか外務省、通産省、それぞれあちらのほうにお行きになったということもお聞きをいたしましたわけでありますが、なかなかこの問題は、日米交渉の中で突如起きた問題でありますだけに、たいへん大きな政治問題でありますので、農林省の中堅の幹部の方の段階では、これはなかなか話のつくものではないと思います。この程度の段階でありますから、当然四月自由化というのはなかなかいまの状況ではむずかしい、こういうように理解をいたしておるわけであります。やはり自由化の日程というものも迫っておる様子でありますので、本格的にアメリカとの折衝が行なわれると思うわけでありますが、これは場合によれば倉石農林大臣みずからあちらのほうへお行きになる、こういうようなことも考えられるのじゃないかと思うのですが、その辺はいかがでございますか。
  199. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま政府委員からお答えいたしましたように、当方といたしましては、アメリカとの話し合いをいたしました当時のいきさつもございますので、そういうことについて先方が十分こちらの考え方を尊重してくれるように折衝をいたそうと思っております。
  200. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に豚肉の自由化の問題でお尋ねをいたします。これは九月だそうでありますが、これも九月実施というのは確定をしておるのか。あるいは豚肉の自由化をめぐって、政府としてどのような方策をとろうとしておるのか、この点からお聞かせをいただきたい。
  201. 増田久

    ○増田(久)政府委員 豚肉の自由化につきましては、関係閣僚協議会の方針に基づきまして一応本年九月末日までに輸入自由化する方針でございますが、すでに豚肉につきましては畜産物価格安定法に基づきまして、畜産振興事業団の現物の売買操作によって、一定の安定価格帯の間に価格を維持することを目的といたしました価格安定制度が現実にありまして、今後もそれを続けてまいるわけでございます。特に生産者にとりまして重大な関係のあります基準価格制度、それによります買い入れ制度というものは今後も続けていくわけでございます。  そのほか今度の自由化に備えまして一〇%の関税を課するとともに、安定価格帯の中心価格に相当する価格以下で輸入される豚肉につきましては、中心価格輸入価格の差額を関税として徴収する制度を新しく導入いたしましたので、国内の安定制度の円滑な運用には支障は及ばないものとわれわれとしては考えておるわけでございます。そういう考えのもとに、今国会に関税定率法の一部改正案を提出していることはすでに御承知のとおりのことでございます。
  202. 田中恒利

    田中(恒)委員 ただいま御説明のありました差額関税でありますが、現行畜産価格安定法に基づきまして、上位価格、基準価格、そのワク内で豚肉の価格安定をはかるという、こういう趣旨で安定法が操作をされておるわけでありますが、今度の豚肉の差額関税によりますと、この安定帯の中心価格、いわゆるせきどめ価格といわれる価格を基準にして関税が一〇%、あるいは多いとか少ないとか、多いほうをとるという形で関税がかかるような仕組みになっております。そういたしますと、たとえば豚肉のことしの上位価格は四百二十二円ですね。基準価格、下位価格は三百四十五円。この中間は三百八十三円五十銭ということになりますね。この三百八十三円五十銭という中心価格が、輸入豚肉の一応これは相場というか、そういう点になっていきますね。そうすると、いままで四百二十二円という上位価格の水準が逆に三百八十三円五十銭のところに下がっていく、こういう結果になる心配があると思うのですよ。これは畜産物価格安定法に基づく安定帯価格の幅を下に下げるということになるので、私は豚肉の価格水準を下げていく機能がこの差額関税の中から出てくるという心配をしておるのでありますが、この辺についての見通しはどうですか。
  203. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生すでに御承知のとおりだと思いますけれども昭和四十三年、四年に異常なる高値が続いたわけでございまして、そのときに免税措置をとりまして緊急輸入をやったわけでございます。ところが現実に商社が海外に買いに参りましたところ、実際には玉がないという形になりまして、非常に高い豚を輸入せざるを得なかったということが、結果として国内の相場をあまり下げることに強い影響を持たなかったという事情があるわけでございます。それはなぜかと申しますと、各国とも豚肉につきましては自給ということがたてまえになっておりまして、豚が国際市場において取引される商品にはなっておりません。ある国が主産地であってある国が特定の輸入国であるというような、ほかの商品に見られるような形は豚については見られておりません。世界の生産が大体三千二百万トンから三百万トンありますけれども、国際貿易量というものは、そのうちの一%にも及ばないというような実態であるわけでございます。したがいまして、そういう豚の国内自給という商品の性格というものは、私は今後とも変わるわけはないと考えておりますとともに、実際問題としましては、せきどめ価格をきめるわけでございますから、輸入ものは全部これ以下で入ることはない。と同時に、当然輸入に伴いまして、そこにいろいろの諸チャージがかかってくるわけでございますから、実際の豚肉の価格の変動というものは、こういう関税制度をとりますならば、当然下位価格と上位価格の間をわれわれの考えているような形で動き、上位価格をこえ、あるいはこえるようなおそれがある事態も十分考えられる。してがって、われわれは畜産物価格安定法に基づく安定帯価格の運用にはほとんど影響がないというふうに考えているわけであります。
  204. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、いずれこの問題は少し時間をとって議論をしたいと思いますが、必ずしもそう甘く動くとは思えないわけであります。やはり自由化ということになりますと、いろいろな商社の動きが出てまいります。私どもが聞いておる範囲でも、いわゆる大手商社というのは、もう韓国とか台湾とか、非常に労賃の安いところに豚を飼育して、そしてなまなり枝にして持ってくる、こういうような動きもあるというふうに聞いておりますし、そう、いま畜産局長の言われたような形で豚の相場というものが成り立つようには考えておりません。特に、やはり考え方としては、畜産物安定法に基づく安定帯価格の中で操作するというのならわかりますけれども、そのまん中というのは、これはおそらく豚肉の輸入が、消費者物価を多少下げなければいけないというような観点もあるから、まん中をとれば何とかその辺の顔も向けられるのじゃないかという気持ちがあるのではないかというふうにも思いますけれども、消費者物価問題はやはり輸入価格の問題だけではないと思うのです。別途にいろいろな流通上の問題があると思います。私は、やはり安定法の趣旨に基づいて、安定帯の中で操作をしていくという形での差額関税の制度をつくらないと、これでいったら畜産物価格安定法は意味がない。むしろ畜安法を改正しなければいけないのじゃないかという議論が出てきますから、これは要望しておきますが、私どもはこの豚の九月自由化というものは問題がある、こういうふうに思います。明日も全国の豚の生産者が集まって大会を開くということでありますけれども、これほどえさが上がり、それから米の生産調整で畜産の生産拡大がいわれておるまつ最中に豚を自由化していく。しかもどうも豚の状態というのはいま決して伸びつつあるとはいえないと思うのです。豚にしましても、乳、チーズにしましても、これは停滞傾向にございます。こういうさ中にやるということはタイミングとしても非常にまずいと思うのです。だから、こういう点は、まだ九月まで時期がありますが、いま十分農林省当局として御検討していただきたいと思うのです。  時間がありませんので、私は実はあと農林大臣と、二つの点について提案というか問題を指摘をしてみたいわけでありますが、十分議論する時間がなくなりました。しかし申し上げますが、一つはやはり価格政策の問題であります。いま公明党のほうからも日本農産物価格政策について議論がありましたけれども、私は、やはり価格政策というものは短期的に農業所得を維持する政策として非常に有効な役割りを果たす、こういうように考えております。したがって、日本農業の長期的な展望に立っては本格的な構造政策というものを当然考えなければなりませんけれども価格政策がこれに並行して進められないと、私は日本農業というもののビジョンを描くことはできないと思うのです。これは各国の例を見ましても、やはり大臣も言われましたけれども農業発展の力というのはやはり農家の自主的な力であります。その自主的な力というのは、やはり一定の所得を蓄積さしていくという方向に向けないといけないと私は思うのです。この役割りを果たすためには、今日の状態の中では価格政策というものを相当重視しなければいけないと思うのです。われわれは農業基本法ができた当初から、この基本政策の中には価格流通対策が非常におくれておるということを指摘してきたわけでありますが、今日の日本農村状態というのはこの点をいみじくも的を射さしたと思うのです。食管の問題、米価の問題、こういう問題にある意味ではおそれをなしたというか、この問題が頭へきちゃって、新しい日本農業の発展をしていく部面における価格政策の裏づけというものはほとんどないと私は思うのです。ことしの予算を見ましても、たとえば牛乳の不足払いに対するものあるいは転換の大きな期待作物といわれる大豆等に対する補給金制度、こういうものに対する予算は逆に少なくなってきております。私は、全般的にこの日本農政の中に今日、価格政策というものは後退しておると思うのです。私は、これをやはり重視していく必要があると思うのです。それは価格政策の体系であるとか、どの基準の農家をとっていくとか、方法はいろいろあると思いますけれども、やはりもう少し倉石農政一つのバックボーンとして、価格政策というものに対して力を注いでいただきたい。これは議論をしたいわけでありますけれども、時間がありません。  いま一つは、やはり市場の問題であります。市場開発の問題であります。大臣は先ほど来も需要に対応する生産、こういうことをしばしばおっしゃられておりますけれども、これは古いのでありまして、今日は需要をいかに巻き起こしていくかという問題が、政策が焦点にならなければいけないと思うのです。米にいたしましても、農産物にいたしましても、需要を起こしていくような政策を提起をすべきだと思うのです。私は、貿易の自由化の問題で、たとえばいま日本農産物輸入、膨大なものですね。これは一々十年前の数字を申し上げませんけれども、数字を見ましてもものすごい農産物輸入をやっております。日本農産物の輸出はどうか。日本農業生産性が低いから輸出ができないのだということになるかもしれませんが、この十年来輸出というものはほとんど伸びておりませんね。なぜもっと本格的に国内外の市場を日本農産物が確保していくというような政策を打ち出さないのか。こういうところからじり貧の農業状態が出てきておるのではないか、こういうようにも思っておるわけであります。  この二点については、時間がありましたら大臣と多少議論をしてみたかったわけでありますが、時間がありませんので、いまの価格政策を短期的にやはり相当重視をして、農家所得をある程度確保していくという観点に立って考えることについてどうか、あるいは国内市場を中心として海外に対しても日本農産物のマーケットを拡大をしていく、つくり上げていく、こういう政策に大きく金をぶち込んでいくというお考えはないか、この点についての御意見をお伺いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  205. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 貴重な御意見を拝聴いたしました。参考にいたしまして研究をしてまいりたいと思っております。
  206. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 芳賀貢君。
  207. 芳賀貢

    芳賀委員 先日、二十二日の予算委員会第二分科会並びに第四分科会において、大蔵大臣並びに農林大臣に対して起疑を行なったわけでありますが、その際農林大臣に対しまして、政府が二月十五日の閣議決定をもって食管法の施行令の改正あるいは米穀の売り渡し令に関する改正をいたしまして、改正された政令を基礎にして、今回四十六年度産米に対して事前買い入れ限度割り当てをすでに都道府県を通じて市町村長に流しておるわけでありますが、その際私は、今回の政令改正は、食糧管理法の規定に照らして違法性が非常に濃いということを指摘したわけでありますが、本日は具体的な質疑に入る前に、今回の改正された政令の主要な点について、まず農林大臣からその趣旨とするところを明らかにしてもらいたいと思うわけであります。  第一は、食糧管理法施行令の改正の点でありますが、これは施行令の第五条の五と第六条をそれぞれ改正したわけであります。現在においてはすでに旧令ということになっておるわけでありますけれども、第五条の五は、いままで「米穀の生産者は、その生産した米穀を政府以外の者に売り渡してはならない。」第六条は、同じように「政府以外の者は、米穀の生産者からその生産した米穀を買い受けてはならない。」というように、政府以外に売ってはならない、政府以外から買ってはならぬという、いわゆる食管の売り渡しまた買い受けの原則がきめられておったわけでありますが、今回これを抹殺して、内容の非常に不明な改正をしたという点についてはいかなる理由であるか、大臣から明らかにしてもらいたいわけであります。
  208. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今回の二つの政令の改正の趣旨は、米穀の需給の実態に即応して生産調整の実効を確保いたしますとともに、政府買い入れの適正を期するために、四十六年産米の政府買い入れについて予約限度数量を定めて、その範囲で買い入れ等の措置を講ずることといたしました。その実施のため、政府への売り渡し義務数量の決定の手続及びこれに関連して米の流通上の取り扱いにつき所要の改正を行なう、こういうことでございます。  そこで、両政令の改正のおもな内容を申し上げますか。
  209. 芳賀貢

    芳賀委員 施行令の五条と六条のこと。
  210. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 一つは、政府に売り渡すべき米に関する政令の一部改正、これは従来予約が無制限にできることとしていたものを改め、定められた生産者別の予約限度数量の範囲内において行なうものである、これが一つであります。これが第一条……
  211. 芳賀貢

    芳賀委員 それは違うでしょう。いま聞いているのは別の政令じゃないですか。委員長大臣に注意してください。質問をしておる点に答えてください。二つの政令を改正しているわけですが、そのうちの一つを聞いている。
  212. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そのうちの一つを申し上げているのです。
  213. 芳賀貢

    芳賀委員 それは別でしょう。私が聞いているのじゃないでしょう。売り渡し令のほうをあなたは言うているでしょう。
  214. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 五条の五のほうのお話ですか。失礼いたしました。  施行令の一部改正、これは生産者は、その生産した米穀を、自主流通米その他一定の場合を除き、すべて政府に売らなければならない、とされておりました規制を緩和して、政府に売り渡す場合その他一定の場合を除き、自主流通米として販売しなければならないというこの規則に改めるものとする、これが第五条の五であります。なお、これによりまして、予約限度数量の範囲内の米は——これはまだお聞きになりませんでしたか、そういうところでひとつ……。
  215. 芳賀貢

    芳賀委員 この施行令の五条の五、六条の改正は、二年前に政府の自主流通米制度を実施に移そうとしたときに改正されておるわけでありますが、そうなると自主流通米はいままでの政令の中では、これは明確になっておるわけです。そうすると、何のために今回また政令の改正をしなければならぬかということになるわけですね。今回の改正は、いままでは、政府以外のものに売ってはならない、それを抹殺したわけですから、今回は、政府以外のものに自由に売ってもよろしいという、そういう趣旨で改正をしたということになるんですか。
  216. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この施行令にございます、いま私が読みましたように、政府に売り渡す場合その他一定の場合を除き自主流通米として販売しなければならないという形の規則に改めるものとする、こういうのでありますからして、 いままでやっておりましたのは、政府に売らなければならない、こういうことでありましたのを、政府に売り渡す場合その他一定の場合を除き、自主流通米として販売しなければならない、こういう形の規制に変えた、こういうことでございます。
  217. 芳賀貢

    芳賀委員 従来の政令も、大原則は政府以外のものに売り渡してはならぬということを明定して、ただし自主流通米に販売を委託をする場合、それから農林大臣が指定する場合、というただし書きを入れると、三様の売り渡しができるということになっておるわけです。今回の場合は、一番大事な原則を抹殺したわけでありますが、しかし内容を見ると、やはり政府に売り渡す場合、農林大臣が指定する場合、自主流通米のために売り渡しを委託する場合という、三様の売り渡し以外にはしてはならないということになっておるわけですからして、原則を抹殺したということは、政府に売りなさいという規定を非常に弱める趣旨で改正したということになるわけですか。——ちょっと待ちなさい。閣僚が閣議でこれはきめたわけですから、亀長長官が閣議に行って、あなたがきめたわけじゃないでしょう。
  218. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、何かむずかしい言い方のように政令はなっておりますが、いままでは政府に売らなければならない、こういうふうになっておりましたのを、政府に売り渡す場合その他一定の場合を除いて、自主流通米として販売してよろしい、こういうわけであります。きわめて明白だと思うのです。
  219. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一つある。その三様の売り渡しというのは、従来の政令に乗っておるわけですよ。そうでしょう。政府以外に売ってはならぬという、政府に対する全量売り渡しの規定と、ただし命令で定める場合においては自主流通にかかる販売の売り渡し委託をしてもよろしい、その他農林大臣が指定する場合はよろしいということに、従来も、ただし書きを入れると、三様な売り渡しができるわけですね。今回の場合にも、政府に対して売り渡すべしの原則規定を抹殺したわけですからして、農林大臣が指定する場合、命令の定めるところによって自主流通米の販売のために売り渡す場合、これもやはり三様になっておるわけです。   〔丹羽(兵)委員長代理退席、委員長着席〕 だからこれによると、政府に売り渡しなさいという原則を非常に弱めてしまったわけだから、何が中心になっているかわからなくなっちゃったわけでしょう。そうじゃないですか。だから、そういう改正のやり方というものは、食糧管理法に照らした場合には違法の疑いが強いということに当然なるわけですね。だから、売り渡す場合の三様の場合というのは、これは方法としては従来と変わりがないと思うのですが、生産者が売り渡す場合の、売り渡す道ですね、その点はいかがですか。
  220. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話しになりました道は、三つあります。それは同じであります。
  221. 芳賀貢

    芳賀委員 同じであれば、それ以外の場合には売ってはならぬということも変わりないわけですね。この三色の売り渡し方法以外には、生産された米は売ってはならぬということになるわけでしょう。
  222. 亀長友義

    亀長政府委員 ちょっと御説明をさしていただきますが、三つのルートという点は御指摘のとおり三つのルートでございます。ただ従来の政令では、原則として政府に売るんだということが大きな原則になっております。今度の改正では、政府に売り渡す場合、これは原則的には第三条の義務を課した場合というのが中心になっておるわけでございまして、自主流通として売るほうが一般的である。政府に売り渡す場合とその他農林大臣の指定する一定の場合がこれの例外。原則、例外という感じはいたしますが、ルートとしては、御指摘のように三つのルートという点は従来と同じでございます。
  223. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、従来の、政府以外に売る場合には、これは特別の場合ですね、特例措置みたいなことをやったし、今度は並列的にやるという考えなんでしょう。そうでなくても、これ以外には売ってはならぬということになっておるんでしょう。
  224. 亀長友義

    亀長政府委員 この三つのルート以外にないということは御指摘のとおりでございます。
  225. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、ある、なしでなくて、それ以外のルートで売ってはならぬ、というふうに今回の改正もなっておるんじゃないですか。
  226. 亀長友義

    亀長政府委員 三つのルート以外に売ってはならないということ、前と同じでございますが……
  227. 芳賀貢

    芳賀委員 その点が明らかになればいい。  それでは、ことし生産された米はこの政令で示す場合以外には生産者としては売れないわけですね。売ってはならぬということになっておるわけだから売れないわけです。
  228. 亀長友義

    亀長政府委員 この三つ以外には売れないことになります。
  229. 芳賀貢

    芳賀委員 売れないことを政府が政令で定めておるわけですから、今年の生産された産米としても、これは全部政府の、つまり食管法の管理のもとに置かれるということには変わりないわけです。一部管理で一部管理でない、一部統制で一部は統制でないというようなことにはならぬわけですね。
  230. 亀長友義

    亀長政府委員 すべての米につきましては三つのルートしかないということは間違いございません。先日も同じような御質問があったかと思いますが、直接買うものと、それ以外に食管法第九条によって流通の規制を受けるものという種類はございます。しかしいずれもその規制の根拠は食管法であるということは間違いございません。
  231. 芳賀貢

    芳賀委員 だから国内生産される米についてはすべて国が管理する。今後も管理する。今後というのは語弊があるけれども、政令改正を行なったけれども、食糧管理法というのは厳然としてあるわけですから、それに基づいて米は全面的に国家の管理のもとに置く、統制のもとに置かれるということは間違いないでしょう。
  232. 亀長友義

    亀長政府委員 国家管理とか統制とかいうことばの定義にもよりますでしょうけれども、すべての米は食管法のもとで規制を受けるということには間違いございません。
  233. 芳賀貢

    芳賀委員 第六条の点については買い受けの規定でありますから、第五条の五が改正になった場合には、それを受けてそれに対応できる改正を行なうというふうに理解してよろしいわけですね。
  234. 亀長友義

    亀長政府委員 そのとおりでございます。
  235. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、食管法第三条第一項の規定によるいわゆる売り渡し令の改正点について、これは非常に本質を変えるような改正でありますし、一見しただけではその意図するところあるいは実行方法というものがよくわかりかねる点もあるので、従来の売り渡し令と比較して新しい法令の時期等が出ておるので、それを一通り尋ねてみたいと思います。  第一条の関係については、従来は事前売り渡しの申し込みを農林大臣が定める売り渡し条件に基づいてするわけですが、そのいつまでという期限を定めて公表しなければならぬということになっておるわけですが、今度の場合には売り渡し申し込みでなくて、「生産者別申込限度数量の範囲内で」農林大臣の定める売り渡し条件による申し込みの期限を定めて公示するということになっておる。そこで「生産者別申込限度数量の範囲内」というのは、ことしは事前売り渡しの申し込みをする場合にはあらかじめ政府買い入れ限度の割り当てをするわけですから、割り当てされた限度数量の限度を越えない範囲で期日までに申し込みをしなさいというふうに解釈すべきであるというふうにも考えるのですが、特にこの点、限度を越えて申し込んだ場合、どうしてもいままでどおり政府に売り渡したいということで、それではあらかじめ示された買い入れ割り当て限度では不足するので、当然限度を越えた形で申し込むわけでありますが、その場合には政府としては申し込みを拒絶するということになるわけですか。  それから今回の改正による申し込みの期限、これは従来と大体同様の時期を考えておるのか。または大幅に時期が違うようなことを考えておるのか。  さらに従来の公表と今回の公示というのはどういう相違をねらってこれを改正したのか、そういう点について詳しく説明してもらいたいと思います。
  236. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  「申込限度数量の範囲内」ということで政令は規定しておりますので、この申し込み限度数量を越えた申し込みがあった場合には、申し込みとして有効な申し込みとはいえない、かように解釈をいたしております。  それから売り渡しの申し込みの期限でございますが、別に従来とそう大きく変えるつもりはございませんが、生産の模様によって若干時期の調節を考えなければならぬのではないだろうかという程度に考えておるのでございます。  それから公表と公示は別にございませんで、印刷ミスでございまして、公示のほうが正しいのでございます。旧の公表は公示のミスプリントでございますから、同じでございます。
  237. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでいま長官の言われたのは、申し込み限度数量を越えて申し込んだ場合には受け付けない、拒絶するという意味ですね。せっかくの生産者の申し込みを拒絶するということになるのですか。
  238. 亀長友義

    亀長政府委員 有効な申し込みじゃないと考えます。
  239. 芳賀貢

    芳賀委員 有効でないというのは無効だと思いますが、では無効の申し込みというふうにこれは処理するわけですか。
  240. 亀長友義

    亀長政府委員 そのとおりでございます。
  241. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合、有効、無効の根拠というものが大事になると思うのですね。これだから無効なんだとか、だから有効なんだというその争いが生ずる場合もあると思うのですが、その根拠というものはどこに置いて有効、無効を争うわけですか。
  242. 亀長友義

    亀長政府委員 根拠は、この政令第一条に範囲内において申し込むということに相なっておりますから、それが根拠だと考えております。
  243. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、今度の申し込み限度数量の割り当てというのは、これは強制割り当てと認めて差しつかえないですね。
  244. 亀長友義

    亀長政府委員 これは法令に根拠を持つ本人の申し込み得る最高限度をきめたものであります。
  245. 芳賀貢

    芳賀委員 だから法令に基づく割り当てということになると、やはり強制力を持った割り当てということになるのでしょう。
  246. 亀長友義

    亀長政府委員 これは限度数量でございますので、その数量自体が本人に直接その数量をどうこうしろという強制力を持つものではございませんので、本人がそれ以上申し込みをしても有効でないという意味のものでございます。したがいまして、その範囲内において本人がいかほどの申し込みをするかということは本人の自由でございます。
  247. 芳賀貢

    芳賀委員 だからこれを越えて申し込んではならぬ、これを越えて申し込んだ場合には、これは無効の申し込みだからそれはいけないということになれば、やはり限度内という強制割り当てということになる。強制が伴うなら有効だとか無効ということにならぬのじゃないですか。
  248. 亀長友義

    亀長政府委員 法令の根拠によりまして、これ以上の申し込みは受け付けないという意味において、それをもし強制とおっしゃるならば強制でございますが、政府に売り渡さなければならない米穀の数量をきめるものではございません。その数量は、あらかじめ本人がその範囲内において申告した数量を義務として政府が売り渡し人に課するわけでございますので、この限度数量というものはあくまで政府はそれ以上のものは買わないという最高限をきめる性格のものでございます。
  249. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は大事です、限度を越えた申し込みは当然あり得るのですから。そういう場合には限度を越えたことを理由にして、それは無効の申し込みとして政府が処理するということになるわけでしょう。だからその場合、限度を越えたから絶対だめだ、無効だという場合には、やはり割り当てというものは強制を伴った割り当てということになるわけじゃないですか。ならぬというならまことにけっこうな話ですよ。強制を伴わないということになれば、これは無効の申し込みだからといって否定することはできないと思うのですよ。
  250. 亀長友義

    亀長政府委員 本人が予約限度割り当て数量を越えるものを政府に売りたいという希望を持っておられました場合に、その希望どおりにはしないという意味で、強制と申せば強制でございます。
  251. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう趣旨を込めてあらかじめ割り当てをするわけですからね。総買い入れ限度の割り当てを先にするわけでしょう。申し込み書を出す場合には、その範囲内で売り渡し申し込みをせよということになるわけですからして、これはやはり強制を伴った割り当てということになるのじゃないですか。これは戦後の供出割り当てなんかとはだいぶ様態が違うが、強制を伴うということについては変わりはないと思うのですよ。
  252. 亀長友義

    亀長政府委員 強制ということの意味いかんによるのですが、先生のおっしゃるような御趣旨であればそのとおりでございます。
  253. 芳賀貢

    芳賀委員 先生の御趣旨じゃなくて、あなたのほうが改正をやっているわけですからね。われわれはこういうような改正は違法の疑いがあるということを指摘しておるわけです。だからこういう点が大事じゃないか。強制を伴うとか伴わぬとか、生産者の政府に売り渡したいという申し込みが無効のものであるというようなことは、従来扱ってきた食管制度の取り扱いと全く違ってくるわけですからね。強制の字句をおそれて、あいまいにするわけにはいかぬじゃないですか。こういう現実は必ず来るわけですからね。法律の論争をするわけだから、抽象的な、あいまいな議論というのは全然意味がないでしょう。これは強制を伴う事前買い入れ割り当てということになるわけですからね。率直に言ってください、とにかく一時間の持ち時間しかないわけですから。まだ序の口でしょう。
  254. 亀長友義

    亀長政府委員 これ以上政府は買わないという意味において、それを強制と言えば強制でございます。
  255. 芳賀貢

    芳賀委員 その次に、都道府県知事はトンネルの段階と思いますが、ただここで聞いておきたいことは、従来の事前売り渡し申し込み制度のもとにおいては、都道府県知事の担当すべき役割りはなかったのですよ。今度は都道府県知事それから市町村長に割り当てをおろしていくわけですから、今度はどういうわけで都道府県知事を段階的に一枚加えたかという点はどういうことですか。
  256. 亀長友義

    亀長政府委員 この申し込み限度数量政府買い入れるものの総量というものは、全体の米の需給なりそれから生産調整数量から計算をいたしたものでございまして、これを最末端の生産者に割り当てる方法として、都道府県知事が国の機関として県内の町村長に割り当て、町村長がさらに生産者に割り当てる、国の行政の段階として都道府県知事にこういう役割りがある、かように考えております。
  257. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、従来は都道府県知事はこうした役割りは分担しなくてもよかったわけですが、今度は農林大臣の行なうべき仕事を都道府県知事にまずやらせるということですね。
  258. 亀長友義

    亀長政府委員 農林大臣は国でございますが、国の機関としての事務を県知事にお願いをするということでございます。
  259. 芳賀貢

    芳賀委員 次に都道府県知事から今度は市町村長に対して割り当てが示されるわけでありますが、その場合われわれとして非常に重大に考えておる点は、市町村長が生産者個別に割り当てをする場合の方程式として、第一には、昭和四十二年から四十四年までの各年のその者が政府に売り渡した米の年平均数量を基礎にして、その「数量及び米穀の生産の転換又は休止を図るための国の施策を実施するため当該都道府県について定められる昭和四十六年産の米穀の生産の転換又は休止の目標を基礎として定める。」この点が政令を読んだだけでは何を意図するのか全くわからないわけですね。特にわれわれとして奇異に感ずることは、この中に「国の施策を実施するため」云々とうたっておるが、これはどういう意味なんですか。
  260. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまのような需給事情にかんがみまして国は生産調整をやらなければなりません。その国の施策ということを意味しているわけであります。
  261. 芳賀貢

    芳賀委員 そんなものは施策にならぬじゃないですか。たとえば農業基本法にうたってある国が行なうべき施策とこれは関係のある事項を援用したのかもしれぬというふうに善意に解釈しておったわけですが、これはただ割り当て事務をやるために何ら意味のない 「国の施策」——あるいは「国の施策」と書けば威圧感を与えてそれに盲従するというような効果をねらっておるのかもしれませんが、そういう点はどうなんですか。
  262. 亀長友義

    亀長政府委員 ここは「国の施策」という前後に具体的にいろいろついておりますのでおわかりになると思いますけれども、「米穀の生産の転換又は休止を図るための国の施策を実施するため当該都道府県について定められる昭和四十六年産の米穀の生産の転換又は休止の目標を基礎として定める。」と書いてございまして、当然私どもはこれは生産調整を政令の上で書きあらわしたものだ、いわゆる生産調整の政令の上での表現であると考えております。
  263. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大臣が、そういう考えで政令にこれをうたったといえば否定はできないですけれども、減反政策をやるために、何も国の施策の遂行なんということばを使う必要はないのじゃないですか。できるだけ政府が食管を通じて買い入れを少なくするために、自主流通米とかあるいはそれ以外の売り渡し方法というものを考えておるんだから、何も大義名分を立てた堂々たる国の施策じゃないんじゃないですか。しかも従来の政府の食糧政策の大失敗というものを糊塗するために、国の施策だからこれに協力せいなんというのはちょっとおこがましいじゃないですか。もうちょっと謙虚に政令を改正するならしてもらいたいですね。自分の失敗を隠蔽して居直るかのように、国の施策だから生産調整に従え、そういうことになるわけでしょう。威圧するためにこんな必要のない国の施策——これは戦時中に皆さんが使った手口と同じじゃないですか。  そこでこの生産調整の割り当てについては、二十二日の第四分科会において農林大臣にも尋ねましたし、また第二分科会で大蔵大臣にも関連して質疑をしたわけですが、これは大臣の答えも私の指摘も全く同様でありまして、生産調整については法的な根拠はない、したがってこれを行政権限で強制する、あるいは権限を持って割り当てるということはもとよりできないので、生産調整についてはあくまでも生産者の理解と協力をいただいて実行する以外に方法はないということを率直に言っておるわけですからね。それをこの政令の第一条の四の二項でありますが、そういう政府の率直な解釈とは違った意味を持つように見られるわけでありますが、その点はどうですか。大臣、あなたが明快にできなければ政府委員でもいいんですよ。ただ政府委員答弁をあなたがそのとおりだといって認めるということでないと、私はあのとき答弁しなかったら、長官の言ったことは責任を持てぬということになると、あなたが明快に説明できない場合は、それはかわって政府委員でもいいですよ。しかしあなたが命じた政府委員の説明とか答弁というものは、大臣が同席しておるわけだから、そのとおりであると責任を持つということであれば、無理にあなたに苦労させなくてもいいと思うのですよ。
  264. 亀長友義

    亀長政府委員 生産調整が法的に強制をしてやらせるものでないということは、先ほど御指摘のとおりであります。しかし生産調整は、現在の状態においてはどうしてもやらなければならぬという要請のある政策だというふうにわれわれ考えておりまして、この生産調整を円滑に実施を進めていくということがどうしても必要であります。また現在食管のいろいろな問題がございますが、生産調整の実効を期するとともに、あわせてこの平仄を合わせて買い入れ面の改善をはかって米管理の適正をはかる、かような目的が片方にあるわけでございまして、そこで政府買い入れ数量をきめる際に、それ自体が法的な強制力を持つものではございませんが、生産調整の割り当てのしかたというのを基礎として予約限度数量を設けるということは、私どもは妥当なものである、かように考えておる次第でございます。
  265. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は今後非常に重大な、政令改正が違法の改正であるという争点になると思うわけですが、生産調整は強制するものではないということになれば、二百三十万トンの生産調整数量というものは、政府としての期待でしょう。ことしはぜひ二百三十万トンに生産者の皆さんに協力を願って生産制限をしてもらいたいという期待の数字だと思うのですよ。押しつけるというわけにはいかぬでしょう。限度数量の押しつけというものは、別な意味で論拠があるかもしれぬが、最初から法的根拠はありません。生産者が自主的に理解、判断して協力してもらわなければならぬということを言っておりながら、これはやはり強制を伴った意味の効力を期待しておるんじゃないですか。
  266. 亀長友義

    亀長政府委員 われわれとしましては、予約限度数量を設けるものは、生産調整の実効を期するためというねらいもあってやっておるわけでありますが、生産調整そのものは、もちろん法的強制力を持っておりません。したがいまして、御指摘のように政府の期待であります。でありますから、この期待に反して生産調整が行なわれないで米がつくられるということはあり得ると考えます。その場合に、当然予約限度数量外の米ができるという結果になるわけでありまして、ただわれわれのとっております予約限度数量というのは、政府では買わないというだけのことでありまして、米をつくることそのものを否定しておるものではございません。そういう意味で、生産調整が強制力を持っていないということと、何ら矛盾をした措置ではないというふうに私どもは考えております。
  267. 芳賀貢

    芳賀委員 これは一応説明を聞いてだけおきます。われわれとしてはこの点を明らかに違法のものであると考えているわけだから、今後これは国会の中でも十分な論争をしていきたいと思うわけです。ただ、たまたまいま末端に対する割り当ての時期ですから、こういう問題を不明のままで国民である生産者に強制を伴う割り当てをすることは、たいへんな事態になるわけですから、その点は十分留意しておくべきだと思います。  そこでこの政令の第一条の四の二項の規定でいきますと、町村長は、各生産者ごとに四十二年から四十四年までの政府に売り渡した米の年平均数量というものを算出して、それからいわゆる生産調整数量を差し引くということに当然なるわけですね。その場合の生産調整の割り当て方法というものは、国全体としては二百三十万トンですが、それを都道府県に配分する場合には一律方式じゃないんですね。全国的には減反率でいくと大体一七%ということになっておるが、都道府県ごとにこれはみな差異があるわけです。たとえば北海道の場合には二〇・三%の減反率を割り当てしておるわけですから、北海道の知事は、先般それと同じ方法で、北海道全市町村に対して同率の割り当てをしておるわけだから、農林大臣に頼まれてそういうことをやったわけですから、北海道の米生産者は、全部二〇・三%の生産調整の割り当てを一律に受けるということになるわけですよ。その生産調整数量を売り渡し実績平均数量から差し引いた残りが限度数量ということになるわけですね。これは間違いないですね。
  268. 亀長友義

    亀長政府委員 過去三カ年間の販売数量の平均から、生産調整数量を引いたものが基礎ということございます。もちろんこのほかに、いろいろ変動調整要因というのも考えております。一応の基礎ということでございます。
  269. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう方程式で限度数量を算出してきめるということになれば、ことしの収穫時期に、政府は、生産調整に全面的に協力してくれれば限度数量をこえる米というものは絶対にあり得ないということをしばしば言明しておるが、こういう方程式だと、あり得るということになるのですよ、どうしても最初から。たとえば、政府がこの二百三十万トンの生産調整数量、七百六十万トンの限度数量をきめた根拠というものは、この政令にうたっているような方式でやっているわけじゃないですね。まず第一に、昭和四十六年度に生産される米の総生産量を千三百九十五万トンと推定して、それから、単年度需給均衡をはかるという目的の数量である生産調整数量の二百三十万トンを控除したものが、つまり四十六米穀年度における需要量ということになるわけだ。それが千百六十五万トン。そのうち、農家の食用及び種子用保有数量が四百五万トン。これを差し引くと、農家の自家消費を除いた需要数量というものが七百六十万トンということになるわけです。七百六十万トンの限度数量、これは場合によっては全量政府が食管で買い入れるという数量でありますが、政府直接買い入れ予想数量が五百八十万トン、自主流通米に乗せる計画で百八十万トン、合わせて七百六十万トンの内訳が付されておるわけであります。だから、政府としては、この限度数量を求める場合、このような一定の方程式によって計算をしておるわけですね。国がやれる計算とか方程式が、都道府県あるいは市町村において、あるいは生産者個々にこの方式が用いられないということにはならぬと思うんですが、それはどうですか。政令にうたっておるようなやり方にしなければ七百六十万トンという答えが出ないのか。政府が基礎となった試算をした、いま指摘したような方程式を用いても、限度数量というものは正確に出てくるわけですからして、いずれが算定をする場合に理論的な根拠があるかということになれば、私は、政府のみずから行なわれた、いま私が言ったとおり、ことし生産者が耕作する水田を、災害なかりせばの予想のもとで、善意な努力で生産したところの生産量がこれこれある、それでは単年度の需給では過剰になるので、過剰と認められる二百三十万トンをまず引く、引いた残りから農家の自家用米の四百五万トンを引いたその残りというものが、単年度これはどうしても必要な米の数量ということになるわけです。必要な米の数量が、いわゆる今回事前買入割当を行なった限度数量の七百六十万トンということになるわけですね。この一年間に千三百九十五万トンとれるという全国の米総生産農家の順調にいった場合の生産量というのは、個々の農家の耕作を通じての生産量というものを総集計したものが千三百九十五万トンということになると思うんですよ。だから、末端の個々の生産者においても、このような方程式による計算をすれば、むしろ正確な限度数量の計算というものはできると思うんですよ。そう思わぬですか。
  270. 亀長友義

    亀長政府委員 買入限度数量、予約限度数量の決定あるいは生産調整数量は、御指摘のように、平均の反収を前提にして、千三百九十五万トンという計算をしておるわけであります。それを村々にまで適用できるということになればまさにそのとおりぴたりいくのじゃないかという御質問でございますが、村々になりますと、統計調査上のマクロの計算でございますから、県あるいは市町村という段階の末端まで統計の数値が全部ぴたり適用できるかどうかという点は問題でございますので、その同じ方式をとったから末端の農家までぴたりいくかどうかということは、技術的にもかなり困難性があるのじゃないかと思います。  それからまた、食糧庁の場合には、販売数量という観点から申しますと、農家保有量の変動ということもございまして、これもわれわれ努力はいたしておりますけれども、なかなか正確には捕捉しがたい問題があるわけでございまして、そのような観点から、私どもは過去三年の販売実績というきわめて現実的な指標をとって配分をいたしておるわけでございます。もちろん、過去三年の販売実績でございますから、四十二、四十三、四十四年というのは米の生産水準の非常に高い年でございまして、反収からいっても全般的にはかなりよい年でございました。現在までの時点で考えれば、その間に反収の変化もあり、あるいは面積の変化もあったと思いますが、その点に関しましては、やはり最末端の市町村でできるだけの調整をする、これ以外に方法はないのじゃないかと私ども考えまして、そういう点も政令の中にできるだけのことは織り込んだつもりでございます。  結論的に申しまして、ナショナルベースで計算をした国全体の方式を末端の個人個人にまで適用するには、統計調査上で、あるいは、特に政府の買い上げ量をきめる際には、あまりにも問題が多過ぎて、実務処理として困難であろう、かように考えるわけでございます。
  271. 芳賀貢

    芳賀委員 それはできないということはないですよ。やる気がないから、こういう安易な、末端で混乱を起こすようなそういう方法を考えて、しかも、それを政令に載せてというのは、これはあとでまことに大きな問題を惹起することになると思うのです。あなたはできないと言いますが、たとえば歴史的に見ると、戦後の売渡制度というものは、ここで説明するまでもありませんが、昭和二十三年産米から二十五年産米までの三カ年間については、これは事前供出割当制でやったわけですね。それから、二十六年産米から二十九年産米までの四年間は事後供出割当と、収穫時に実態を調査して供出割当を行なった、いわゆる事後供出割当が四年間続いておるわけです。三十年からいわゆる事前売渡申込制になって、去年は生産調整を行なったが、制度的には十六年間事前売渡申込制度というものが続いてきたわけです。だから、今回の事前割当ということになれば、過去の実例としては、昭和二十三年から二十五年まで行なった事前供出割当、これはいまのようななまやさしいものじゃないですからね、事前供出割当ですから。その際どういうような方程式でやったかというと、これは記録にもありますけれども、二十五年の二月一日、二日の両日にわたって中央農業調整審議会を開催して、審議会に対して農林大臣から昭和二十五年産米の事前供出割り当てを昭和二十五年産米農業計画という形で諮問をして、二日間の審議を経て答申が原案了承ということになって翌日の二月三日に全国知事会議を開いて、そこで都道府県別の割り当てを指示したということになっておるわけです。その辺までは今回と同じなわけですね。そうしてどういうような方程式を用いて末端の割り当てをきめたかというと、まず第一に私が先ほど指摘したとおり、全国の総生産量、これは昭和二十五年ですから生産量が当時は石数でして、六千八百五十四万八千七百石、トン数にすれば千二十八万二千三百五トンですね。これを当該年の生産数量、それから保有数量として三千六百二十万五千八百石、トン数で五百四十三万八百四十トンの保有数量を差し引いて、この中には飯用、種子用、飼料用というような内訳があるわけであります。自家用を除いた残数量をいわゆる供出数量として割り当てて、これが三千三百三十四万二千九百石、トン数で四百八十五万一千四百四トンということになるわけです。これを都道府県知事から市町村長におろして、個人別の供出割り当てについてもこれと同じ方法を末端におろしてきちっと数量割り当てを完了しておるわけですね。だからこれができないとかむずかしいとか実態に合わぬなんというのは、これは児戯に類した詭弁ですよ。いまから二十年前の皆さんの先輩はちゃんとこれをやったのですよ。食糧庁長官だってそのころ農林に入っておるでしょう。将来を嘱望された若手の特権官僚で、亀長というのはうまくいくかもしれぬというそういう時代があったでしょう。その先輩が戦後の食糧事情の困難な中において、これは相当の強制力を伴ったけれども、きちっとやっておるわけですからね。いま後輩のあなた方が高度経済成長下においてのんびりやっておる中で、できませんなんというのはおかしいじゃないですか。あなたができなければ、われわれがやってみせますよ。町村の中でこういう計算でやって答えが出たらそれを限度数量として押えるということであればできますよ。それは町村における各生産農家の水田面積というのは統計調査部で掌握しておるわけだから、しかも昨年四十五年には生産調整をやって、政府も多額な奨励金を支出しておるわけですからして、生産調整の面積の確認あるいは総体の耕作面積の確認というのはもう全部個別にやっておるわけです。そういう資料というものはもう町村別、個人別にはっきりしておるわけですからね。二十五年以降はもう新規開田は認めないということで、やっていないわけですからして、二十五年から六年にかけては水田面積の増減というものは以前ほど顕著ではないと思うのですよ。そういうはっきりした基礎資料があるわけですから、国としてはこういう方法で二百三十万トンの生産調整数量協力してくれれば、残りの米は全部限度数量として買い入れますという約束は当然できると思うのですよ。それをやれないというような理由をつけて、過去の実績から生産調整数量を差し引いた限度数量なんということは、これは個別に当てはめた場合には全く実行不可能ということになるのですよ。そう思わぬですか。
  272. 亀長友義

    亀長政府委員 確かに先生のおっしゃるように、食糧確保臨時措置法のときにはそういうことをいたしておりました。もちろんこれは各人について平年反収を調査し、保有量を調査し、正確にやることが理論的であるということは、私もまさにそのとおりだと思います。しかし食確法の運用におきましても、確かにそういうことでございましたけれども、なかなか最末端まで厳密にそのことが行なわれておったかどうかについて、私どももいろいろ検討してみましたけれども、実際問題としては末端では話し合いというようなこともあったようでございますし、またそういうことからくる行政の任務というものも非常にむずかしい問題だと私ども考えております。それから事柄の性格といたしまして、食確法当時のいわゆる強権供出の量をきめるというのと、今回の予約限度数量をきめるというのとは性格もかなり違ったものであろうというふうに考えております。過去三カ年の販売量をとったのがきわめて安易じゃないかという御批判はあろうかと思いますが、四十二年、四十三年、四十四年の米の生産事情から申しましても、三カ年をとれば、大体において各人の適正な販売力というものを端的に表示したものとして把握することができる、かような観点からこの三カ年の販売量というのを基礎としてとっておるわけでございまして、それ以上の問題としましては、この政令にも書いてございますが、市町村長は「農地についての権利の設定又は移転による農地面積の増減その他の特別の事情により当該年平均数量を基礎とすることが著しく適当でないと認められる米穀の生産者については、合理的に判断して必要と認められる範囲内において、当該年平均数量を修正することができる。」ということも政令に規定をいたしておりまして、実際の運用におきましては、いろいろ御指摘のございましたような理論的な問題も十分加味をして、市町村長において適宜な措置をとられる余地を政令としては持っておるわけでございます。
  273. 芳賀貢

    芳賀委員 具体的な問題として、たとえば昭和四十二、四十三、四十四年のこの生産の基礎になる開田面積が相当変わってきておるでしょう。特に東北、北海道を中心に、この三カ年間は毎年三万ヘクタール程度開田が行なわれておるわけですね。だから東北、北海道の地域では大体三年間に十万ヘクタールの新規開田、いわゆる水田の面積増が行なわれておるのです。しかし全国的に見ると、年間約二万ヘクタールぐらい転用あるいは壊廃で減少を示しておるわけだから、差し引きということになれば、当該三カ年で一万ヘクタールぐらいしか伸びていない。だから毎年水田面積がふえる。ふえれば生産量もふえるということになるわけですね。また水田面積が転用、壊廃等で減少した地帯は耕作面積が減るから生産量も減り、また売り渡し数量も逓減するという結果になるわけでしょう。だから三年間だんだん面積がふえた、生産がふえた、売り渡し数量がふえたという地帯は、三カ年平均の平均売り渡し数量ということになれば、それでは実態に合わないということに当然なるでしょう。また面積が減り、生産も売り渡し数量も必然的に減った地帯の平均売り渡し数量ということになれば、現時点においては、それは過大な売り渡し数量になり、限度数量になるということにもこれは当然なるわけでしょう。それはあり得ることだし、常識的にわかるでしょう、そういう点は皆さんは専門家ですからね。面積の増減の問題からくる不合理性。もう一つは全国的にはこの三カ年間は大体千四百万トン程度の総生産を維持してきたわけですが、しかし地域的になると、北海道、青森県、東北の一部等においては、昭和四十四年は相当冷害が深刻だったわけです。特に北海道の場合には大体七分作程度ですから、収穫が激減した場合の売り渡し数量というものは、平常を欠いた異常な売り渡し数量の減少ということになるわけです。ところが今度の場合には四十、四年の冷害凶作が実績年の中に入っておるわけでしょう。冷害年を除いた平常な三カ年間の売り渡し数量の平均であるということになれば、まだ大きな変動はこないとしても、もう明らかに冷害が原因になって売り渡し数量が激減した、そういう年度もこの三カ年の中に取り入れて、その平均実績がこれだけである、それからことしの期待される生産調整数量というものは四十五年度に実際現存しておった耕作農家の水田面積に、ことしは四十五年度の共済組合の基準反収をかけた、そういう一定率の計算によって生産調整数量をきめるということになれば、生産調整数量は、昭和四十五年度の実面積を基礎にして一定の反収をかけて二〇・三%をきめる。売り渡し実績は冷害を加味した非常に正常を欠く少ない数量でやって、それから生産調整数量を引けば、限度数量というのは過小になるにきまっておるのです。まさか四十六年度に北海道あるいは東北が大冷害になるというような期待とか見通しでそういう限度数量をきめたのではないと思うのですね。だから一定の生産調整数量に対しては、押しつけじゃなくてこっちから協力するということで計算をしても、どうしても実態に合わぬという結果が生ずるわけでしょう。そういうことはあり得るでしょう。  そこで、もう時間がありませんから、実例を一つ示しておきたいと思います。  これは北海道のKという町でありますが、四十五年の水田面積は統計調査部の調査によりまして二千八百七十ヘクタールあるわけです。そうして昨年は北海道は平均すると大体三〇%の減反率でありましたが、このK町においては二八%の減反率でありまして、八百七ヘクタールの生産調整を行なったわけです。二千八百七十ヘクタールから八百七ヘクタールの生産調整を行なった残り二千六十三ヘクタールの作付を昨年完了いたしまして、そして生産をした結果、昨年の売り渡し数量は、これは農協並びに業者の集荷数量を合わせますと大体十三万五千俵程度の米が去年は出荷されておる。二八%、約三割減反をして、それで十三万五千俵をこえる政府に対する売り渡しが行なわれておるわけであります。ですから、ことしのこれに対する限度数量というものは、北海道一律ということになれば、生産調整は、昨年よりも少ない約五百七十ヘクタールということになるわけであります。これは昨年よりも二百三十ヘクタールくらい少ない減反ということになるわけです。そこへことしの限度数量の割り当てが五千六百九十一トン、これは俵数に換算すると約九万五千俵ということになる。去年約三割の減反をして十三万五千俵の米が売り渡されておって、ことしそれよりも一割少ない減反率でやればいいわけでありますが、九万五千俵、そういう限度数量ということになると、ことしは少なくても限度外の数量というものが自家用米等を正常に控除しても約二千四百トン、これが示された限度をこえる数量ということになる。俵数に換算すると四万三千俵の米が限度を越えて出てくるわけですね。だから二〇・三%の減反を忠実に協力しても、示された限度数量によるとなお二千四百トン、四万三千俵の米は余ってくるということになる。だから農林大臣が余るはずがないといかに強調しても、この町村あるいは個々の生産者にこのような政令の方式でおろした場合に、こういう現象が随所に生まれるということになる。それを忠実に是正するという努力をしないで、これもめんどうくさいから一律生産調整でやる、凶作を含めた売り渡し数量もそのまま計算に入れて、これだけしか買わないのだというような実情に沿わない割り当てをした場合においては、それを了承する、それに基づいた申し込みをしますということにはなかなかならぬわけですね。だから私が言った方程式を当てはめた場合には、こういう大きな間違いというものは生まれないのですよ。そうじゃないですか。これは一つの例ですけれども、市町村あるいは個々の生産農家、善良な生産者に対してこういう問題が出てくるわけですからね。たいへんなことになるのですよ。午前中に松沢委員が言ったとおり、こういう状態では町村長としても政府協力して割り当てをすることができないでしょう。実態をわかって割り当てできないという場合にはこういう数量の割り当て作業というものはできません、知事にお返ししますということをいわざるを得ないわけですね。地方自治法の百四十六条がどうだなんておどかしたって、地元住民の立場に立った自治体の長というものは、何も政府の命令だけを伺って、場合によっては罷免されたらたいへんだなんて思っていないのですよ。罷免したところで、地域住民は、やはり地元の利益を守り、発展を守るというき然たる態度で抗議をした場合においては、これは全面的に地元の支持があるということは疑う余地がないわけですからね。政令を見ただけでもこういう問題というものは幾多あるわけですから、その点はそういう問題に当面した場合にはどうするかというような点についても、あらかじめ市町村長等に対しては、あるいは農協等の関係団体に対しては、そういう場合には実情に合致したような修正を行なって、正当な限度数量を市町村長の権限において決定しなさいというような指導というものをやらなければいかぬと思うのですよ。その点が一つですね。  それから今度の政令にも前の政令にもありますけれども、事前売り渡しの限度数量に対して妥当を欠く割り当てが行なわれた場合には、それに対して異議を申し立て、一定の手続をしてそれを変更してもらうことができる、こういう点は今回の政令の改正にもちゃんとうたってあるわけですね。従来のいわゆる増額補正あるいは減額補正というものはできることになっておるし、また不服の申し立てもできることになっておるわけですが、今回の場合には、当然行なわなければならぬ変更の申し出等についても、政令にはそれをうたってあるけれども、それは農林大臣が必要と認めて告示した場合でなければやってはならぬということになっておるのは一体どういうわけですか。当然やらなければならぬことを農林大臣が認めなければやってはならぬということでそれを抹殺するようなやり方はおかしいじゃないですか。私が言ったような間違いは出てくるわけだから、その場合には変更の手続がこれこれの方法でできるということを政令でわざわざうたっておいて、そのあとで、ただしこれは農林大臣が諸般の事情というものを勘案してどうしても必要だと認める場合以外はできないということを政令でうたってあるじゃないですか。こういうような冷酷無情な強制的な割り当てあるいは取り扱いというものはいまだ例を見ないわけでありますが、それらの点について政府から明快にしてもらいたいと思う。  それからもう一つ不服の申し立てができるということになっておるが、この申し立ての相手の機関は行政不服審査法に基づく不服の申し立てをやるということになるのかあるいはそれ以外の方法で不服を申し立てるのか。時間の関係で重要な三点を指摘したわけですが、それらに対して明快な説明をしてもらいたいと思う。
  274. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  四条、五条はいずれもこれは義務数量に対する増減の規定でございます。限度数量の範囲内で政府は申し込みに応じて売り渡し義務を課するわけでございます。その課した義務が実情に合わなくなってふやすとか減すとか、あとで修正の問題が出てまいります。それを四条、五条で規定してあるわけでございます。  それから第五条の二は農林大臣が積極的に数量をふやすという必要がある場合だけでございますので、もちろんこれは私ども現在の需給事情でそう発動する必要はないと考えるので、農林大臣が告示した場合に限る、かように書いたわけでございます。
  275. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長、時間はわかっているが、大事な点ですから。委員長が聞いても、全然法令上の説明がなっていないでしょう。これによると第五条の二の解釈は、これは増額あるいは減額、減額は少なくしたほうがいいと思うけれども、限度数量の割り当てに対して事前にそれは適当を欠くということが判明した場合には、生産者が町村長に申し出て実態を調査してもらって、そこで町村長がまかされた権限の範囲内で限度数量の修正をすることができるということが一つうたってあるわけですね。それはできることになっておるが、第五条の二で「第四条の規定による政府買入基準数量の決定及び前条の規定による指示は、農林大臣が、事前売渡申込の状況、米穀の需給調整上の必要等を勘案して当該決定及び指示をすることが必要であると認め、農林省令で定める手続によりその旨を告示した場合に限り、することができる。」ということになれば、町村長が個々のケースに基づいて政令の示したところで適切な限度数量の修正変更をやろうとしても、農林大臣が必要と認めて省令で定める手続によって告示をした場合でなければだめだということになれば、不特定多数の生産者を相手にしてまず告示をしてからでなければだめだというのは、これはどういうわけですか。
  276. 亀長友義

    亀長政府委員 ちょっと御趣旨がわかりかねるのでございますがお答えいたしますと、第五条の二は政府買い入れ数量に関することでございまして、これは先ほど申し上げましたように、予約限度数量がきまる、その数量の範囲内で生産者が申し込みをいたします。そこで政府がそれを受けて本人に売り渡し義務を課す。そこで政府買い入れ数量というのがきまるわけでございまして、その政府買い入れ数量を増減する場合の規定でございます。現在のところ四条、五条、五条の二、いずれもそのようにして課せられた義務数量の変更に関する規定でございます。予約限度割当数量の変更に関しては特段の救済規定を置いておりません。
  277. 芳賀貢

    芳賀委員 だから間違ってもかまわぬぞということじゃないのですか。あなたの言う四条、五条というのは説明とは違うですよ。これは政府買入基準数量を実態に合わないので、過小であるから変更してもらいたい、そういう問題が生じた場合、それは当然の事情であるというような場合には「農業委員会の意見を聞いて、その通知に係る数量と異なる数量政府買入基準数量として定めることができる。」政府買い入れ基準数量というのは、これは農林大臣が市町村長を通じて示すわけですからね。それを是正するためには、実態を調査して必要ありと認める場合には、農業委員会の意見を聞いて——文書通知によって生産者に対して買入基準数量を示せということになっているわけだから、その示した数量と異なる数量政府買入基準数量としてきめることができる。異なる数量というのは、この場合には最初に通知された基準数量よりも増額した基準数量をきめることができるということになっておるじゃないですか。こんなものは中学校の生徒だってわかりますよ。「できる。」となっておるが、第五条の二で、農林大臣がそういうことをやるのは必要であると認めなければ、これはできないということになっておる。省令の手続で告示されなければ、それは政令にはうたっておるけれどもできないんだということをわざわざ第五条の二でこれを規定しておるじゃないですか。そうなれば、一たん市町村長が行なった買入基準限度数量の変更というものは事実上できない、そういうことになるじゃないですか。重大な過失やあるいはまた誤りがあるということがわかっても直せぬというようなことは、法律やあるいは法令の規定としては当を得ないじゃないですか。そうでしょう。
  278. 亀長友義

    亀長政府委員 どうも私の説明が不十分であったのかもしれませんが、新しいほうの政令の四条、五条、五条の二、古いほうの四条、五条、五条の二、いずれも政府買入基準数量ということばに変わっておりますけれども、予約を受けて政府生産者の間に決定をした買入数量、その変更、増加に、国として必要があってどうしても少ないからふやさなければいかぬとか、そういう場合の問題でございまして、事前割当予約限度数量の変更とは異なるものでございます。でありますから、先ほど申し上げましたように、予約限度数目里……。
  279. 芳賀貢

    芳賀委員 前の政令を改正して、今度は新しい政令にしたんだから、変わるのはあたりまえじゃないですか。
  280. 亀長友義

    亀長政府委員 変わっておりますが、実質的には限度数量が存在するという以外の点においては四条、五条、五条の二は同様でございます。  先ほど御質問がございましたが、予約限度割当数量の増加に関する救済規定があるかというお話でございますが、増加を認めるような規定はございません。これはなぜかと申しますと、非常に御不満だろうとは思いますけれども、制度の上からいたしまして、政府が課するのは食管法第三条に基づく義務を課するのである。義務を課するのであるから、それを簡単に申しますと、減してくれということはあってもふやしてくれということはないはずだという法律上の理屈から、ふやすという修正の政令が書けなかったという事情でございますから、予約限度割当数量に関する修正を求める規定はないわけでございます。
  281. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたの説明は法律の説明にはならぬじゃないか。農林省にまともな説明をする者がいなければ、これは内閣の法制局長官でも連れてくるよりしょうがないでしょう。政府委員のほかに、一番親玉の農林大臣が明確にできればやってもらいたいと思います。自分がきめた政令の内容をまともに説明できないなんというのは情けないと思わぬですか。農林省の役人はそういう能力の人しかいまいないのですか。じゃ、大臣から言ってください。あなたは落第ですよ。冗談じゃない。農林大臣大臣答弁すべきを、なかなか明快にできないようだから、補佐の食糧庁長官でもよろしい、そのかわりあなたの発言したことは農林大臣がそのまま認めるということでやってくださいと言っておるわけですからね。きょう明快にできなければあしたでもいいですよ。何も短時間に結論出せなんて言っておるわけじゃないですから、何も私は無理に追及しておるわけじゃないですからね。皆さんのほうも十分勉強して、取り組む姿勢も十分というときでそれはいいですよ。
  282. 亀長友義

    亀長政府委員 それでは御説明申し上げますが、第四条は、「市町村長は、前条の場合において、同条に規定する米穀の生産者であって、その者についての第二条の通知に係る数量が、その者のその年産の米穀の実収高及び前三箇年における政府への米穀の売渡数量、当該市町村の区域内に住所を有する他の米穀の生産者についての同条の通知に係る数量等を勘案して過少であると認められるものについては、前条の規定にかかわらず、やむを得ない事情があると認める場合を除き農業委員会の意見を聞いて、その通知に係る数量と異なる数量政府買入数量として定めることができる。」というふうになっておりまして、従来の「政府買入数量」ということばを「政府買入基準数量」ということばに直しましたのは、自主流通米をも含むという意味を明らかにするために、ことばの変更を行なっただけであります。その「政府買入基準数量」を生産者が予約限度数量の割り当て内で申し込みをいたしますけれども、それが非常に少なかった、ほかのものに比べてえらく少ないという場合に増額ができるという規定でございます。  第五条は、「市町村長は、当該市町村の米穀の実収高がおおむね明らかとなったときは、当該市町村の区域内に住所を有する米穀の生産者のうち事前売渡申込をしないものであって、その者のその年産の米穀の実収高及び前三箇年における政府への米穀の売渡数量、当該市町村の区域内に住所を有する他の米穀の生産者についての第二条の通知に係る数量等を勘案して一定数量の米穀を政府に売り渡すことが相当であると認められるものにつき、やむを得ない事情があると認める場合を除き農業委員会の意見を聞いて、その一定数量政府買入数量として定め、これを文書をもって当該生産者に指示する。」ということでございまして、事前売渡申込をしない者があった場合に、限度数量の中において売りなさいという指示をするだけであります。  第五条の二は、「第四条の規定による政府買入数量の決定及び前条の規定による指示は、農林大臣が、事前売渡申込の状況、米穀の需給調整上の必要等を勘案して当該決定及び指示をすることが必要であると認め、農林省令で定める手続によりその旨を告示した場合に限り、することができる。」というのでございまして、段階的に申しますと、限度数量がたとえばその人に十俵くる、ところが第四条で申し込みは三俵しかしなかった、しかしほかの人が見ると、その人が五俵くらいできる能力があるはずだという場合に、市町村長は五俵出しなさいということができるというのが第四条であります。しかしいまは米の需給事情の関係で、本人が三俵しか出したくないのに、市町村長が自分の判断で五俵出せという必要はないから、そういう場合には第五条の二で農林大臣が指定した場合だけ三俵を五俵にしなさいと言えばいいのである、そういう規定でございます。
  283. 芳賀貢

    芳賀委員 それがおかしいんですよ。いいですか。限度数量というものは、生産者の意思によってきめるわけじゃないでしょう。だから第一条のときに私が指摘したとおり、生産者が指示された生産調整数量を完全に消化して、そうして政府に売り渡す、あるいは政府が政令で示した売り渡し相手に対して限度数量の申し込みをするわけですけれども、これだけは売り渡しできるという数量を申し出をしても、示された限度数量をこえる場合には、それは無効の申し込みであるからして受け付けるわけにはいかぬといってこれは受け付けないでしょう。そういうことになるでしょう。その点がいままでと違うんじゃないですか。そこから問題は出発するんですよ。たとえば亀長君が、ことし生産調整には全面協力して、それで百俵の売り渡しができるというふうに考えておるところに、七十俵の限度数量の指示しかなかった。しかし実際にもう確実に百俵、生産調整を消化しても売り渡しが可能だからして、まじめに百俵の可能数量というものを限度数量として提出したところが、これは限度をこえるものであるからして申し出は無効であるということで否定されるわけですからね。しかし百俵売れるということは間違いないわけだから、生産調整にも協力しておるわけだから、そういう場合にはやはり正規の手続において基準数量の改定をしてもらう以外に方法はないでしょう。そういう実態は地元の市町村長はわかるわけですから、市町村長はわかるけれども、市町村にあらかじめ示された限度数量の範囲内において個々の生産者に対しての割り当てをしろということになるからして、実態に合った計算をすると、市町村に示された限度数量をこえるということが当然出てくるわけです。そういうことはできないぞということをあらかじめ示されておるからして、実態に沿わない。生産者全員に対する配分をしなければならぬということに当然なるでしょう。そういうことはあり得るでしょう。市町村長は百俵の限度数量亀長君に与えなければならないけれども、そういうことをやれば町村の限度数量がオーバーする、越えるということになるので、やむを得ず七十俵の限度数量の割り当てをした。ところが生産者はそれではだめですということで、政令でなくて、食管法の指示するところに従って百俵の事前売り渡しの申し込みをした。ところがこれは無効であるということになるわけだから、またこれは無効になったということになれば、これは町村長が基準数量の増額変更をすることができるということになっておるわけですから、当然これはできるわけでしょう。できることになっておる。あるいはまた百俵の限度数量の申し込みを、事前売り渡しの申し込みをしたが、これは七十俵が限度だからだめだといわれれば申し込むことはできないでしょう、百俵あるのだから。そういう限度数量の申し込みはできないということで、結果的に申し込みをさせられない者も出るわけですよ。それは政令から見ると申し込みをしなかったという者になるわけですね。それらの生産者に対しても、これは従来の政令によっても収穫が判明した時期において今回の政令においても市町村長はその収穫の実態というものを確認することは必要であるが、それはさておいて、やはり事前に指示した売り渡し数量の実績からあり得べき生産数量調整数量を差し引いた残りを売り渡しの申し込みをしなかった者に対してもこれはすることができるということになっておる。そういう指示をされてもこれは妥当でないので、当然増額の修正をしてくれということになるわけですね。それができるということになっておるわけです。なっておるけれども、これは農林大臣がその必要があるということを告示しなければ市町村長は修正をして、あらかじめ文書で通知された基準数量の増額変更をすることができないということで、ここでもう封じてあるわけでしょう。そうなると、一回限度数量の割り当てを受けた場合にはどうすることもできない。それでもう自殺をするような困窮に追い込まれても修正をしてもらうことはできない、どうしようもないということになるじゃないですか。それほど厳重なことをしなければいまの政府の食糧政策というものを進めることはできないのですか。これは農林大臣から答えてください。
  284. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど来政府委員がお答えいたしておるとおりでございます。
  285. 芳賀貢

    芳賀委員 そんなとおりということはないじゃないですか。そういう実態を最高責任者としての農林大臣はどう考えているのか。必要があると認めて告示をするのはあなたですよ。食糧庁長官の話だと、いまの状態からいうとそういう必要はないと思うから四十六年は告示はせぬといったけれども、この売り渡し令はいままでも毎年毎年新しい米穀年度ごとに改正をしておるわけだが、とにかく四十六年はいかなる事情があっても告示はしないということになれば、これはもう農民を自殺に追い込むということになるのです。こういうおそろしい殺人的な政令改正というものは、おそらく生産者としても盲従することはできないと思うのですよ。そうなれば当然割り当ての返上とか、あるいは政令の無効の訴訟をするとか、あるいはまたこの法律に政令で示されておる、食管法に示されておる不服の申し立てが成規の手続でできるということになるわけですからしてそういう事態が起こる、そういう事態は生産者が起こしたくて起こすのではなくて、政府のこのような制度の改変というものが生産者を刺激してそういう混乱と、場合によっては社会秩序が破壊されるような状態をかもすということにこれは当然なると思うのですよ。そういうことを行なわせるというか醸成するというのがいまの政府の政治のあり方ですか。
  286. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 もちろん市町村長は、予約限度数量の割り当て等につきましては直接生産者に接触する方々でありますので、十分にその実情を知った上でそれぞれ手配をいたすものである、またこの人たちの話を聞いておってもそういうふうに考えますので、きわめて妥当な方法を各市町村長はやってまいるであろう、私はこのように信頼をいたしておるわけであります。
  287. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほど委員長のおことばもありましたので、きょうはこの程度にしておきますが、今回の政令改正を中心とした新しい制度の改変ということに対しまして、われわれとしては絶対了承するところにいっていないわけですから、またこれは適当な機会にあらためて明快な政府の方針、あるいは法令上の解釈というものを十分勉強して整えてもらいたいと思うのです。  そういうことで一点答弁が残っておりますが、不服の申し立てができるということは、これは行政不服審査法に基づいた不服の申し立てということを意味するのかどうか、その点だけ聞いてきょうはこの程度にしておきます。
  288. 亀長友義

    亀長政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、予約限度数量の割り当てに関する異議申し立て等は特別の規定は置いておりません。これは食管法の第三条の義務を課するものであるから、その義務をふやしてくれという申し立てば本来あり得ないという論理に基づいて特別の規定がないわけであります。しかし行政不服審査法は一般の行政案件について審議の対象になるというたてまえでございますから、かりにそういう予約限度数量を割り当てして、それによって食管法の政府への売り渡し義務を課せられるということについて不服である、自分の義務をふやしてもらいたいということが救済素因として成り立つのであれば、これは当然行政不服審査法の対象になるというふうに考えます。
  289. 草野一郎平

    草野委員長 津川武一君。
  290. 津川武一

    ○津川委員 日本農業は三年米価据え置きという事態、昨年の百五十万トン生産調整、ことしの二百三十万トンという生産調整のために、いろいろな変化がそれと並行して起きておると思うのでございます。その変化の一つとして兼業農家の増大、それから出かせぎ農民の増加ということが出てまいりましたが、きょうは出かせぎ農民を保護していかなければならぬという立場から少し質問をしてみます。  そこで、こういうふうに出かせぎがかなりふえておる原因を農林大臣はどう考えておりますか、まず答弁してください。
  291. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いろいろ簡単に出かせぎというお話が出ますけれども、津川さん御存じのように、ヨーロッパなんかでは、イタリアなどはもうほとんど西独のほうに長距離で定期的にやっております。出かせぎといえば何でもすぐにこう感傷的なことを考える人もありますが、実態の中には、津川さん御存じだと思いますけれども、いまはかなり進歩した労働力の健全な移動が行なわれております。これはしかし、なるべくそういう方々については組合が組織されるとか、あるいは福利施設を増進させるとか、もういまは経営者のほうが、名前は別に申しませんけれども、たとえば一つの大きな自動車メーカー、そういう方たちは、定期的に来てくれる人々だけのためにりっぱなアパートをつくりまして、むしろそこにつとめている人が一時的に農村に帰って仕事をするのだというふうな扱いをしているようなものが、最近はたくさん出てきております。一がいには申せませんが、そういう方々のために福利厚生の施設等あるいは労働条件等十分によくするということは必要でございます。御存じのように、職場の労働者というのは大体二百八十五、六日が年間平均の労働日数のようですけれども農村人々は八十日あるいは百日。労働日数というのが少ないのでありますから、これをどのように効率をあげて所得をふやすかということは、一つの将来の大きな問題だと思っております。そういう面で、いわゆる出かせぎというようなものも分析して研究してみなければならない、今日のような時代にはたいへん大切な方々ではないか、こういうふうに見ておるわけであります。
  292. 津川武一

    ○津川委員 私たちは出かせぎ者を感傷的にとらえることは絶対にしていません。農政上の問題として、国政上の問題として科学的にとらえることが何よりも必要だと思います。農林大臣のいまの答弁は、非常にことばたくみですが、現実をあまりに知らな過ぎます。たとえば天下の三井建設の労務宿舎——一月十二日に練馬で火事があって出かせぎ者が焼け死にました。一月二十八日深川で火事があって出かせぎ者が焼け死にました。黙って見ておれないので、私は練馬も深川も、それから消防署の人に案内してもらいまして、天下に名だたる大資本の三井建設の労務宿舎であるならばさぞかしいいであろうと思って行ってみました。ところが、防火責任者が置かれていませんでした。煙報知器が置かれておりませんでした。火災警報装置が備えられておりませんでした。大臣、少し認識が違いませんか。こういう実態を聞いたことありますかどうか、ひとつ……。
  293. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ここでわずかな時間で議論してもいけませんが、基準局で発表いたしておるものをごらんくだされば、いまあなたが指摘されたようなこともあるかもしれません。大都会に出てきておる人たち、それはいろいろあるでありましょうが、私がさっき申しましたのは、だんだんわが国においてやはり労働力不足を訴えられてきている、そういう場合にいいかげんなことで人を雇おう、使おうという考えを持っても、労働力は充実されませんので、最近は非常に注意をして、その労働力確保のためにいろいろな設備をするようになってきた、こういうことを申しておるのでありまして、認識が違うとか違わないとかいうのは、個々別々のことをかってに言っておればそうかもしれませんが、私はそういう点については知っておることもあれば、知らないこともあるかもしれません。例外的にあなたのお説のようなものもあるかもしれませんが、おしなべてやはり、労働省の報告を見ておりましても、大体使用者も、また職場に働く人の感覚もだいぶ違ってきているということをさっき申したのであります。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  294. 津川武一

    ○津川委員 政府が労働省の統計を信頼するのを私は信頼するなとは申しませんが、一度消防庁に行って聞いてみていただきたいのです。合格しているのはK建設くらいのものであります。あとは消防庁でほとんど全部注文をつけております。先日、一月十三、十四、十五、十六日消防庁が総点検をやっておりますので、その結果をぜひ大臣、聞いてみてくださるよう私はあなたにここで忠告申し上げて、論議を進めていきます。  そこで、昨年度は生産調整をやりましたし、米価を据え置いたので、昭和四十四年と四十五年を比べて出かせぎ者がどのくらいふえておりますか、ひとつお答え願います。
  295. 中野和仁

    中野政府委員 出かせぎ者の定義によりましていろいろな数字のとり方があるわけでございますが、農林省の統計調査部の調査によりますと、昭和四十三年に比べまして、四十四年は約四万人ふえております。
  296. 津川武一

    ○津川委員 それも農林省の統計調査だというので、私は信用しなければならない立場にあるのですが、そう簡単になかなか信用できない情勢があるのです。そこで、農林省が出かせぎといっているのは、六カ月以内のものを出かせぎと見ているようですが、現在の農政上から見ると、六カ月以上出かせぎをしなければならぬような情勢が出ております。六カ月以上出かせぎをしている人を出かせぎ者として調べていますかどうか。
  297. 中野和仁

    中野政府委員 仰せのとおり、出かせぎ者の定義につきまして、農林省は従来一カ月以上、六カ月未満ということでとっておったわけでございますが、これは昨年の国会だと思いますが、出かせぎ者の定義を明確にしろということがございまして、農林省、労働省相談をいたしまして、一カ月以上、一年未満居住地を離れて他に雇われて就業する者であって、その就業期間経過後居住地に帰る者をいうという定義にいたしました。そこで、これはその定義に従って調査したものではございませんが、たまたま昨年ですか、七〇%のセンサスによりますと、農家での出かせぎが四十万戸ということになっております。したがいまして、いま仰せのように期間のとり方によってかなり数が違ってくるということは事実でございます。
  298. 津川武一

    ○津川委員 農林省の統計調査部のセンサスでは四十万になっていますね。このセンサスの場合、これから一年以内の者も含めて調査することをひとつ考えてみてくれませんか。
  299. 中野和仁

    中野政府委員 今後農業調査といたしましてもそうしたいと考えております。
  300. 津川武一

    ○津川委員 そこで、出かせぎ者が出ている地域に対してどんな認識をお持ちになっておりますか。
  301. 中野和仁

    中野政府委員 出かせぎの多いところは、先生の地元をはじめ、やはり米の単作地帯が非常に多いわけでございます。これは夏はもちろん米が中心でございますが、冬働く場所がないということで外へ出る。この出ること自体、日本の高度成長経済の中にあってやむを得ないといいましょうか、あるいは当然といいましょうか、その辺のことはあるかと思いますが、本来農業だけで食えればそれが私も一番望ましいと思いますけれども、なかなか規模の零細な農家あるいは兼業しなければやっていけない農家等ございますので、やはりいま申し上げたようなことでございますけれども、出かせぎの実態から見ますと、やはり出かせぎ者の対策ということで、都会に出たあとの対策ということも十分やっていかなければならぬのではないかというふうに私は考えております。
  302. 津川武一

    ○津川委員 そこで、やはり出かせぎで多いのは青森、秋田、岩手、山形、新潟などという米の生産地であるし、積寒地帯であるし、もう一つは四十六年度に労働省と農林省で出かせぎの調査をやる計画を持っているようですが、一年以内の出かせぎ者を考えて、県やなんかでやった調査のところをもう一回調べてみた。そうしたらこういうことになりました。たとえば秋田県の平賀郡雄物町では、四十四年に千二百人出ているのが四十五年には千五百人にふえているのです。これは役場が握っていなくて、民間の人がやったのですがそう出ている。青森県の五所川原というところで四十四年に両親がともに出かせぎに出ている小中学校の家計で調べてみたら百三十五戸あったのが、昭和四十五年には二百三十戸にふえている。こういう実態があります。労働省、農林省の調査、これは官庁調査でなくて、官庁調査だと官庁が来たというので、必ずしも実態が出ないので、思い切って調査費を出して、どこか民主団体なり大学なり民間人に調査さしてみるということを加えてみたらどうですかという提案なんですが、どうでございます。
  303. 中野和仁

    中野政府委員 農林省といたしましては、ことしの一月一日現在で、先ほど申しました農業調査調査をいたしたいと考えておりますが、ただいま四十六年度予算におきましては、いまおっしゃいましたような他の団体に委託をするという予算は農政局としては組んでおりません。
  304. 津川武一

    ○津川委員 それから「農産物の需要と生産の長期見通し」で、農林省は昭和四十五年までの需要と生産見通しは持っておりますし、これで農家人口農業従事者、あるいは専業農家兼業農家というものの見通しは持っているでしょうが、出かせぎ者の見通しはどうでございますか。
  305. 中野和仁

    中野政府委員 農産物の長期需要の見通しとの関連では、農業従事者が六百万戸になるという推計をしておりますけれども、それに関連しまして、出かせぎ者が何人出るかという推計は出しておりません。
  306. 津川武一

    ○津川委員 出かせぎ者はやはり貴重な農業労働力なので長期見通しに対して農業労働力がどこまであるかということなしに見通しを立てると、さっき芳賀さんが盛んに皆さんを教えたみたいに、たいへんなことになりますので、この点長期見通し計画のときにもう一回考えてみませんか。
  307. 中野和仁

    中野政府委員 農林省は、 (発言する者あり)いまそちらで声がありましたけれども、農林省としましては、出かせぎ者の見通しを立てるのはやはりほかの経済との関連その他があるものですから、農林省の側から一体何人出かせぎがあるかということはなかなか推計その他むずかしいのではないかという私は気がいたしますけれども、なおそういうことが可能であるかどうか、これは関係者とも相談をいたしてみたいと思います。
  308. 津川武一

    ○津川委員 可能かどうかでなく、やはり農業労働力として非常に重要な問題を含んでいるので、長期見通しで、政府計画を立てる場合には、これはぜひ考えなければならないと思うので、可能かどうか見てみるというのではなくて、きっぱりとこれはやるように要求して、時間がないので次の質問に入っていきます。  そこで、この間出かせぎの方たちが農林省の農政局に行きまして、いろいろ出かせぎのことでお願いしてみたわけですが、私もその場に立ち会ったんですが、その中で出てきたのは、一つには労働災害が多い。死人が出ている。賃金の未払いが出ている。雇用契約がはっきりしない。事故が出たときの補償がはっきりしていない。こういうことが農林省の農政局に訴えられましたし、二つ目には、先ほど話した出かせぎ者の飯場、宿舎における火災、交通事故、きょうも各務原市で青森県からの出かせぎが、出かせぎに行く途中の車の事故で三人なくなっております。これが二つ目の問題です。三つ目には、労働基準法がきちんと守られていなかったり、賃金をもらうのであるが、団体交渉などができなかったりしておる。非常に苦しい立場に置かれております。四つ目には、出かせぎ者の帰郷、盆暮れに、正月に帰るときの旅費の支給だとか、こういうものも足りない。五つ目には、休みが少ないし、せめて一カ月一日の有給休暇などがほしい。六つ目には、本人は日雇労働者健康保険、家族は国民健康保険などということで、かなりめんどうなことが出ておりますし、七番目には、出かせぎのためにはかなり経費が要るのだが、その経費は出かせぎのかせぎを得るための経費として差し引かれない問題もあったりしておりますし、こういうことが、出かせぎ者の現場におけるいろいろな悩みであります。  もう一つ、出かせぎ者を出しました農村においては、子供さんが出かせぎに行った父親の顔を忘れたとか、消防に事欠くとか、いろいろな問題が出ているわけであります。  これは全部国の中で施策を必要とする事項でございまして、文部省、厚生省、労働省、大蔵省、農林省というふうに別々に分かれておるのでございます。そこで私は、出かせぎ者の問題を、農業施策と関連して申し上げておきましたので、農林大臣において、こういう関係者をひとつ一回でも二回でも、年じゅう話し合って、総合的な施策を講ずる必要があるのではないか、いま持っておる施策をひとつ総合的に集めて、総合的に高めていく必要があると思うのでございますが、この点大臣はどう考えておりますか。
  309. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま全体として農村農業を継続していくためにすら労働力不足を言われておるときでありますので、私どもとしてはなるべく農村に定着していただくような施策がほしいと思っております。しかし、やむを得ずその間いわゆる出かせぎにお出になるような方に対しては、私どものほうの直接の所管ではありませんけれども、労働者の方をできるだけよくしてあげるということは大事ではないか。したがって、そういう点については労働大臣等とも十分お話し合いをすることがわれわれにとっても義務だろうと思っております。
  310. 津川武一

    ○津川委員 いまの大臣答弁だけは私は納得しました。この間、農政局に行ったらぼくらの範囲内であって大臣にしかられるからどうにもならない、こういうふうにとれるところもあったんですが大臣がそうしてくれるなら、これはありがたいと思います。  そこで、出かせぎに出ていく一つの原因ですが、機械を買っているのです。農機具の機械の償却期限がきている。元利払いしなければならぬ。このために出かせぎに出ているわけです。大臣は先ほどはしなくも西ドイツのマシーンネンリンクのことを話してくれましたね。したがって、これから出かせぎに行く人は、機械を購入するためにいかなければならぬ。そこで、この機械を国なり県なりで買っておいて、出かせぎにいかなければならぬような人に使わせる。この施策をはっきりとれたならば、私は出かせぎはかなり減ると思うのです。これが一つ。それからすでに出かせぎに行っておる人についても、何のために行っているかを具体的に調べてみて、機械代の元利払いのために行く人があったならば、ここでその利息を補給するとか、元利払いの支払いを一時延ばすとか、こういう施策が機械、農器具に対して必要だと思うのです。この二つに対して答えていただきます。
  311. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 毎月労働省が統計を出しておりますあの統計の中に、失業率一%というのがあります。大体、いまアメリカあたりで五%を上回ったとか何とかいっていろいろ騒いでおるようなときでありまして、私どもは労働省の統計を見ますときに、えらい違いだなと考えるわけであります。そういう意味で、私どもとしては出かせぎの方々にもいろいろなものがあると思うのです。そこでさっき私がドイツの例をお話しいたしまして、これは渡辺政務次官の御報告になったことをそのままお伝えいたしたのでありますが、あれはつまりああいう機械を持っておる者が共同的に使用して能率を上げる。したがって、一人一人がそういう設備投資をする必要がないのだ。きわめて合理的にやっている。これは非常に私はわが国でも学ぶべきだと思いますが、ただ遺憾ながら、ドイツのようなああいう平たんな地域と、日本のような地域では若干差があるかもしれませんけれども、そういう意味で申したのであります。あなたのおっしゃろうとすることはよく私もわかっておりますので、先ほど来、これは二見さんとのお話し合いのときにも出たお話でありますが、なるべく私どもとしては、地元に労働力が定着するような施策が必要ではないか、そういう方向農政もやってまいりたいと思っているわけでございます。
  312. 津川武一

    ○津川委員 国会委員会における儀礼的なことばでなくして、実際私たちも単作地帯で見たら、機械は半分あればよろしいと言っているのです。ところが、現実に機械を買うために出かせぎに行こうとしている人がいるのです。これに対して、大臣がいま言ったことを一つの国の制度として進めてみるという姿勢がほしいのです、施策がほしいのです。これをひとつやってみませんか。
  313. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ちょっとよくわからないのですけれども、マシーネンリンクというのは、さっき申しましたように、一人一人がむだな投資をせずに、効率的に機械等を保有して、効率化していくように活用するといういわば協業に類することでありますが、そういうようなことはもうすでに御存じのように、われわれのほうの農政でも奨励いたしておるわけであります。ことに兼業農家方々などが、比較的小農と言われるような方々が、やはりできるだけ協業でやっていかれるためには、そういう方策が必要ではないか、このように考えているのであります。
  314. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 津川君、割り当ての時間がもうじきですから、最後ひとつ……。
  315. 津川武一

    ○津川委員 わかりました。  そこで、現地で出かせぎに出ている労働力を使いたいという——これは今度は法案としてもわれわれが審査しなければならぬ問題ですが、そこで、農村にくる工場は下請もしくは下請の下請であって、すぐ工場を締めて破産して、それで農業計画をみんな狂わしてしまう。それが一つ。したがって、かなり大きな力のある工場を農村に持っていく。弱いものなら国でこれはかなりバックアップする、このことが必要だろう。これが一つ。この考えがあるかどうか。  二つ目には、いまだに日給七百円なんです。これではやはり出かせぎに出てこなければならないので、農村に進出する工場の賃金というものを、労働省なり通産省なりに、農林大臣が交渉すべき筋合いのものだ。  三つ目には、兼業しておって、農業をやりながらの工場通いなので、田植えのときに、稲を刈るときに休むと首になるのです。これじゃやはり問題が解決されない。そこで、休んでも首にならないように、農業を前提にしての労働力吸収、雇用ということを考えていくか。もう一つは、去年の七月の千葉県の南のほう、房総半島の水害地にこの間行ってみましたが、田植えどきや稲刈りのときに工場のほうが応援してくれている、こういう形の工場がある。この三つが、かなり出かせぎをなくしたり、農村における労働力を有効に使うために非常に必要なんですが、この三つのことに対する大臣の見解を伺わしていただきます。
  316. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 近く地方産業を分散いたすことについての法律案も御審議願うわけでありますので、ただいまお話のようなこともひとつ十分研究をいたしまして、なおじっくりと御相談をいたしたいと思いますが、原則としてはやはり地方の知事さんが中心になって地方的ないろんな計画をお立てになりますので、そういうほうとも十分連絡をとりまして、万遺憾なきを期するように努力をしてまいりたいと思います。
  317. 津川武一

    ○津川委員 もう一つには、私青森県の県会議員をやってつくづく思ったのですが、洪水を防止するための中小河川の改修をやるために、青森県全体で三千億円必要なんです。農林省と建設省と県がやっているのは一年に八億円なんです。この間の千葉県の洪水地を見たときに、国が国土保全としてやるべき個所が二千二百九十三カ所ある。その中でも、すぐ手をつける対象に数えられているのは三十七カ所なんです。こういう国として当然やっていい仕事、これをかなり精力的にやることによって、私は農村に工場を持っていく以上の効果が、国土保全、国土を災害から守るという点にあると思う。この点も大臣、ひとつ農林省自身でやれるものもあるし、建設省と相談しなければやれないものもありますので、方針を聞かしていただきたいと思うのです。
  318. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大事なことでありますので、そういうようなことについてはひとつできるだけ財政の許す限りは、われわれも努力しなければならぬと思っております。
  319. 津川武一

    ○津川委員 時間がきたのでこれで終わります。  そこで、私たちは、出かせぎしなくてもいいような農政にほんとうに取り組んでいく。もう一つは、まだ出かせぎしなければならない現状でありますので、出かせぎ先でのいろいろなトラブル、危険、健康破壊から出かせぎ者を守る。それからもう一つは、出かせぎ者を出す農村農業なり、民生面なり、衛生面を守っていく。こういう立場に立って、いま話した必要な国土保全の事業を農村で興す。農民が出かせぎしないで、安心してそこで納得して就業できるような工場を持ち込んでいくということを主張しておるのでございますが、実はこういうことのために、農林省が出かせぎのために出しているお金を調べてみたのです。これは皆さんが教えてくれたのですが、二億一千六百万円です。先ほど話ししたこの調査でいう四十万で割ると一人に対して五百四十円、私たちが実際にあると思っている百万ないし百二十万の出かせぎに対すると二百円にしかならないので、この点非常に大きな決意をもってもう少し予算をふやすように努力すべきだと思うのですが、大臣に最後の見解を聞かしてもらって終わります。
  320. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 津川さんほどの方ですからほんとうにいまおっしゃったようなことだけ考えておられるんじゃないのではないかと思います。いまのそこにありました二億何千万というものだけが出かせぎの仕事ではないでありましょう。出かせぎの人たちがかりに出るならば、やはりいろいろな福利施設を充実するようにするということも出かせぎ対策の一つでありますし、地元のほうに漁港の改修をしたり河川を改修したりすることは、それ自体土木工事ではありますけれども、漁港の修理によっては沿岸の仕事もさらに活発になってまいる。でありますから、出かせぎのために幾らというようなことを言っても意味はないのじゃありませんか。やはり全体として大事な仕事をしていくということじゃないか。  十分御存じのことを私のほうから逆に申し上げて失礼いたしました。
  321. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 次回は明二十五日委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時一分散会