○高辻
政府委員 判決に
対価の額について何か触れているところがあるとかないとかいう
意見があるがというところが最初にございました。これはどこを見ましても、
対価についての直接的に触れたところはございません。それは今度の
政令もまた同様に、
対価については何も触れておりません。いま申し上げたように、
判決の内容は、売り払いを認定すべき場合について
制限をしているのがけしからぬという
判決をいただいたものでありますから、そこで
判決の
趣旨どおりに
政令を
改正いたしまして、
判決と全く同じ方向をとったというのが
政令の唯一の中身でございます。
そこで、
判決には確かに
価格については触れておりませんし、
政令もまた触れてはおりませんけれ
ども、
先ほど申し上げましたように、二円六十銭という額がどうして出るのかと申しますと、これはまさに御指摘の八十条二項の
法律の
解釈の問題になるわけです。で、その
法律の
規定には、「
買収の
対価に相当する額」とあるものですから、それは
買収の
価格としていままでも取り扱ってまいりましたし、今後もまたその点は変わりがないものとして議論があるわけです。これは私は、いままでとってきた
買収の
価格そのものととっておる
解釈は間違っておらないと思っておりますが、もしそうであるとすれば、
判決の示すがごとくに
農地として供用する、
自作農創設の
目的に供しないことが明白であるということになると、そのときに旧
所有者は請求権を持つといっておるものですから、その請求権の内容としては
法律の定める条件によるというのがこれは当然のことであろうということから、いわゆる
買収の
対価に相当する額で請求をする権利を有するのだという
法律の
解釈をそれに付加をして、そういう結論になるわけでございまして、
政令もまたその
対価には触れておらないということを特に申し上げておきたいと思います。
それからもう
一つは、八十条二項について
改正をすることがどうかというのがお尋ねの一点でございました。私も今度の事件がありましたので、これは全く
最高裁は、国家権力の中では
法律を
解釈する
最高のあるいは最終の機関でございますので、
政府は
憲法の命ずるところに従って
法律を誠実に執行するという
意味合いから、その
解釈に従って
政令を
改正した、これは私
どもの
立場からいいますと当然のことをしたといっていただいていいのではないか、ほんとうにそう思っておるわけでございますが、この八十条二項というのは、今度のような問題に関連して立法経緯を私よく調べてみました。立法の経過で、まさにいま御指摘のように八十条二項を削除すべきであるという
意見が衆議院でも実は参議院でも出ております。が、しかし、そういう
意見は
意見としてとどまって、
法律の現行
規定八十条二項が厳として誕生をしたものでございますから、誕生をした以上は八十条の現行
規定に従ってものごとを処理するのが
政府としては当然であるというわけでございますが、これをその当時にありましたように
改正するということは確かに
一つの
考え方でございますけれ
ども、
判決を再び引用して恐縮でございますが、
自作農創設の
目的に供しないことが確かである、客観的に明らかであるというようなものは、その際に旧
所有者が請求権を持つ、ということになりますと、八十条二項をいかに
改正をしましても、そういう状態に現にあるものについてはすべて遡及ができないことになります。で、せいぜい、と申しては恐縮でございますが、今後そういう事実が発生するものについてだけ将来に向かって効力を有するということにならざるを得ないことになります。またそういうものは、従前のものから比べると実際上どの程度の比率になるか存じませんが、かなり多くのものが処理されておりますので、比較的少ないのではないか。これは想像でございますが……。そうなりますと、なおさらいままでのものとの均衡がそこに大きな顔をして出てくる、そういう問題をどう
考えるかというような問題がございます。
せっかくの御指摘でございますので、ただいまわれわれがそれについて
考えることを率直に御説明申し上げたわけでございます。