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1971-05-11 第65回国会 衆議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十一日(火曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       鯨岡 兵輔君    辻  寛一君       葉梨 信行君    山口 敏夫君       上原 康助君    木原  実君       楢崎弥之助君    横路 孝弘君       伊藤惣助丸君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         防衛施設庁労務         部長      安斉 正邦君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君  委員外出席者         国防会議事務局         参事官     夏目 晴雄君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  連合審査会開会に関する件についておはかりいたします。  環境庁設置法案について、産業公害対策特別委員会から、連合審査会開会の申し入れがありました。つきましては、これを受諾して連合審査会を開会するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、産業公害対策特別委員長と協議の上、決定いたしますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  4. 天野公義

    天野委員長 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田耕作君。
  5. 和田耕作

    和田(耕)委員 長官に御質問申し上げたいと思いますが、四次防が完成をしますと、日本考えられておる防衛計画の七〇%くらいは達成できるというような御答弁だったと思うのですけれども、これは間違いないのですね。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私の個人的な秤量におきましては、大体七、八〇%という表現を用いております。
  7. 和田耕作

    和田(耕)委員 これが七、八〇%の域に達したあとの二〇%あるいは三〇%の防衛という問題は、どのようにお進めになるおつもりですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体われわれの国際情勢客観情勢に対する見通しは、五年くらいの予測はある程度プロバビリティーをもって見られますけれども、次の五年になるとわりあいにばく然たるものになります。そういう意味で、次の五年、つまり十年計画後期という意味におきましては、わりあいにまだ判定しにくいいろいろな要素があるわけでございますが、一応現在の情勢がそのまま推移すると仮定いたしますと、大体十年の後期におきましては伸び率がストップする、あるいは情勢によっては伸び率は下がる、そういうことが期待されるのではないかと思います。私はやはり、防力というものはのんべんだらりに無制限に伸びていくということは好ましくないので、やはり節度節度をつくって国民理解を得るような政策を展開していかなければならぬと思います。現在の時点におきましては、私はそのように考えております。
  9. 和田耕作

    和田(耕)委員 四次防ができた段階で、あるいは五次防、六次防と、いままでの三次防、四次防というような性格のものを今後も続けていかれるお気持ちなのか、あるいはあとの二〇%、三〇%の整備という問題は、情勢を見ながら計画を逐次補充していくという感じでやっていったほうがいいとお思いなのかという問題については……。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 客観情勢にしてそういう著しい変化がないならば、われわれが一応所期している水準に達したら、あと横ばいになるかあるいは内部更新近代化に力が注がれるという情勢で、それ以上いわゆる増強という考え方にはならないと思います。
  11. 和田耕作

    和田(耕)委員 一般の世間のこの四次防に対する見方等をいろいろ見ておりますと、ここのあたり限度だな、日本自主防衛、憲法の許す範囲自衛力というものはここのあたり限度だな、あるいは限度を越していきはしないかなという感じを持っておると思うのです。こういう問題についての長官の率直な御意見を承りたい。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私のいまの感じでは、新防衛力整備計画に次のいわゆる十年計画の後半、それを加味しまして、そして大体十年間にこの程度のものがあったら一応数個師団のものが一方面にあっても占領の既成事実をつくらせない、そういう程度のものは達成可能であるというような感じがいましておるものですから、その程度のものになれば、もうストップになって、横ばいあるいは内部更新、そういう形になるのではないかと思います。そういう限度を設けることが現状において好ましいと考えまして、そういう考え方を明らかにしたわけであります。
  13. 和田耕作

    和田(耕)委員 将来の問題ですから、いろいろ予期せざる状態変化もありますので、はっきりしたことは言えないと思いますけれども、四次防が曲がりなりにも実現をしていくということになれば、日本自衛隊防衛力根幹はこれで置かるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 よろしいと思います。
  15. 和田耕作

    和田(耕)委員 私はここで四次防の中の兵器あるいは装備の問題についていろいろお聞きしようとは思っておりません。ただこの段階で、相当武力を持つことは間違いない事実、相当の兵員を持つことも間違いない事実、全体として日本防衛力というものは先進国に比べましても第一級の武力を持ってくるということも間違いないというふうに思うのですけれども、ここらで最も考えなければならない問題は、かつての苦い経験のように、武力政治に対していろんな発言をしてくるという問題について、防衛長官として基本的に考える時期にきているのではないか、つまり防衛長官シビリアンコントロールということをよく申されるのですけれども、このシビリアンコントロールという問題について、いままでの考え方とはもっと想を新たにして、この段階でしっかりと検討してみる時期ではないか、こういうふうに思うわけでございます。きょうはシビリアンコントロールの問題を中心にして御質問をしてみたいと思うのですが、長官、このシビリアンコントロールという問題については二つの面があると思うのですね。一つは現在おやりになっているように長官直接のスタッフである内局の人が制服さんに対していろいろな出過ぎ、行き過ぎのないよう常時チェックをするという面が一つ。しかしこれは非常に技術的な問題であって、これだけではシビリアンコントロールというのはできない、もっと政治が軍事に対してはっきりと優位を持つという、この二段がまえの問題が確立されないとシビリアンコントロールは確立されないと思うのですが、この問題についての長官の御意見をお伺いしておきたい。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 お説のとおりであると思います。シビリアンコントロールの一番の中枢は、国民意思防衛力防衛関係を掌握するということでございますから、具体的には国民代表である国会議員、その場所としては国会がその機能を通じて防衛問題を完全に掌握するということであり、また国会から信任された内閣出先機関として具体的にそれを監督するという形になると思います。ですから、国会における政治の場の掌握ということが一番の中枢でございまして、日本防衛政策の運命はそれによって決せられるべきものであると思います。  出先の具体的な行政レベルにおけるコントロールにつきましては、内局補佐官長官を補佐して制服をいろいろ規制するという形で行なわれておりますが、これはその衝に当たる長官判断力に依存するところが非常に大きいので、制服関係内局補佐官との関係を適切に調整するということが非常に重要な仕事になってくるように思います。
  17. 和田耕作

    和田(耕)委員 そこで、私はもっと技術的な問題から入っていきたいのですけれども、四次防という重要な、日本自衛隊根幹を固めるようなこの計画立案過程、この問題について長官にお伺いしてみたいと思うのですけれども、この前大出君でしたか、の質問に対しまして、各現場の自衛隊の部隊の各セクションからいろいろな要求を出さした、これをだんだんとくみ上げていって、そうして防衛長官がこれを裁決して防衛庁の原案ができたというふうに聞いておりますけれども、そういう過程をとっておりますか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私からまず、次の新防衛力整備計画を策定するに際して、中心となるべき重要事項を指摘し、それを計画者に対して指示いたしまして、それに基づいていろいろ具体的な計画が盛り上がってまいりまして、それを何回か参事官会議でふるいをかけたり調整したりしまして、そのつど私のところへ中間報告が参りまして、私がそのつど自分考えを指示いたしまして、そしてまた、それが各幕等によってまたむし返して論議され、それがまた参事官会議等に上がってきて、それが私のところに戻る、そういう過程を何回か繰り返しまして、そして最終的に統一したものでございます。
  19. 和田耕作

    和田(耕)委員 そのような立案過程は、これは非常に合理的なものだと思うのですけれども、もう一つの問題を考えなければならない点は、自衛隊という場合に防衛長官内局あるいは制服さんというこの三つは、内局制服さんとは明らかに違いはありますけれども、全体としてやはり自衛隊法に基づいての防衛庁という自衛力一つ体系にあるわけです。その中では、そういうふうな形で非常に合理的な形だと思うのですけれども、先ほど私が申し上げたとおり、シビリアンコントロールという場合には、その一つ部面一つの問題であって、もっと重要な問題は内閣が、政治がこれに対して立案過程でもっと発言をして、最高方針というものが内閣政治の場から出てくるという、そのような形が必要ではないのか、こういうように考えるわけなんです。そういうような面から見ますと、今度の四次防という非常に重要な防衛力整備計画に対して、国防会議というせっかくある機関がほとんど活用されていない、こういうふうに思うのですけれども、長官いかがでしょうか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防会議はこれからの過程で大いに活動してもらうということになると思います。私は着任以来、防衛庁内部に固有の日本防衛政策あるいは防衛戦略体系というものを持っておらなければならない、いままでややもするとそれが脆弱であるように思われておりました。そこでまず、防衛庁内部基礎観念をしっかりと固めて、防衛庁政策というものはこういうものだということを、私の在任中にしっかりと固めておこう、それができた上で、私らの考えはこうですがどうでございましょうかといって、外のほうに案を出す、そして批判を受ける、そういう時代であるという気が実はいたしまして、そういうので防衛庁内部でいろいろ各方面意見を徴しつつ政策を固めて、そして今度新防衛力整備計画に関するいろいろな基本観念をきめたわけです。その前に防衛白書を出しましたが、そういう形で防衛庁基本観念をきめ、防衛計画見通しもきめて、それを責任を持ってほかの大蔵省内閣に提出して、今度は批判を受ける、自分考えがあまり固まらないうちに外の者といろいろ話し合って影響を受けるということは防衛政策純粋性といいますか、防衛庁は何のためにあるのかわからぬじゃないかといわれるおそれもありますので、まず自分立場を明らかにして、しかる後に批判を受けるという立場をとったわけであります。そこで国防会議参事官会議にいよいよこれを提出し具体的なチェックを受けておるわけであり、大蔵省とまた同様にやることになりまして、それでいろいろ官庁間の調整がこれから行なわれる、そういう過程がいいのではないかと私は思っております。
  21. 和田耕作

    和田(耕)委員 四次防ができて日本防衛計画根幹、基幹が置かれたとしましても、日本防衛ということになりますとこれは一つの力でしかない。これは先般来同僚議員の御質問に対して、とにかくこれで日本を守れるわけではない。ごく限られた範囲でしか守れない。あとの重要な部面日米安保条約というものによってこれを補完していく、あるいはまた外交の政策によってこれを補完していくという、こういう要素が非常に大きいのが日本防衛力というものの非常に特殊な性格を持っておる、他の先進国に比べて特殊な性格を持っておると思うのですね。こういう問題になりますと、つまり防衛政策根本というのは、やはり最初大綱方針として政府あるいは内閣基本方針というものがしっかりと練ってこられなければならない。特に日本防衛という問題はそういうふうな感じがするわけですけれども、国防会議というせっかくの機関があるわけですから、こういう会議防衛根本方針というものを確立をして、それで長官がしっかりこれをこなしながら、下部に一応意思を通して、そして下部のいろいろな具体的な意見を吸い上げて、そしてまた長官がこれを判断をして国防会議にはかっていくというようなことが、非常に私は必要だと思うのです。日本防衛特殊性からいって、政治という問題が防衛の中に入っていく、入っていかざるを得ない、そういうふうな要素日本自衛隊というものの特質だと思うのですけれども、そういう面から見ると、もっと国防会議という形の、内閣政治責任において防衛というものを考えるという面を重視していかなければならぬじゃないか、こういうように思うのですけれども、長官、ひとつ……。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点はまことに同感でございます。われわれが出したこれをたたき台にいたしまして、そういう基本的な諸点につきましても、これからいろいろ審議していただこうと思っております。
  23. 和田耕作

    和田(耕)委員 国防会議参事官、おみえになっておりますね。  国防会議がいままで開催された回数と、そしてどういうふうな審議をしたかということをひとつ御報告願いたい。
  24. 夏目晴雄

    夏目説明員 現在までに国防会議が十六回、いわゆる国防会議議員懇談会が四十五回、計六十一回の会議が開かれております。おもなる審議項目としまして、国防基本方針、第一次から第三次に至る防衛力整備計画、その他戦闘機種決定とかというようなものがございます。
  25. 和田耕作

    和田(耕)委員 四次防という問題で国防会議は何回お開きになったのですか、これと関連をしたもので。
  26. 夏目晴雄

    夏目説明員 四次防につきましては、昨日国防会議事務局参事官会議を開いたのが最初でございまして、まだ国防会議あるいは議員懇談会というものを開催する段階になっておりません。
  27. 和田耕作

    和田(耕)委員 これはこの間いただいた資料ですけれども、昭和四十一年十一月二十日に第三次防の防衛力整備計画大綱について検討されて以来四十四年まで、これが三年間一回も開いておりませんね。国防会議というものを四十四年の十一月七日に、沖繩返還についての防衛上の措置についてというのが一回あります。四十五年、昨年、国防基本方針についてというのが一回あります。この四十一年から、沖繩は特殊な問題として、つまり昨年まで四年間ほとんど日本防衛計画についての議論がなされていない。その間に四次防というものの構想が中曽根さんの頭に浮かんでおる、検討が始まっておるということなのですけれども、そういうふうな形で国防会議というものを扱っていいのかどうか。何かお添えもののような形でしか扱われていない、そういうように思うのですが、長官、どうでしょうか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防会議は開きませんが、官房長官外務大臣防衛庁長官の三相会議を随時開いておりまして、ミニ国防会議みたいな機能を果たさしております。国防会議は必要でありましょうが、科学技術庁長官とかあるいは通産大臣とか企画庁長官とか、そういう関係の方を一々そのたびごとに招集してわずらわすというよりも、もう少し機動的に弾力的に動かして運用していこうというので、この三相会議のようなものを考えたわけでございまして、その間でいろいろな調整をして総理大臣にも報告してやってきたわけでございます。しかし今後、いよいよ新防衛力整備計画が正式に出てまいりましたから、必要なときに国防会議を開いて審議すべきものであると思います。
  29. 和田耕作

    和田(耕)委員 必要なときに国防会議を開くというおことばですけれども、長官は一体この国防会議というものをどういう性格のものだとお考えになりますか。単なる諮問機関というふうにお考えになりますか、あるいは違ったものとお考えになりますか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 性格諮問機関だろうと思います。国防に関する重要事項諮問に答えて答申する、そういうことであるだろうと思いますが、やはり有機的に関係者のいろいろな意見を総合して、日本国防に関する基本的なことをいろいろな合議体によって決定していく、そういう決定に至る安全保障措置合議制ということでとっておる適当な機関であると私は思います。
  31. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは防衛年鑑なんかにも諮問機関ということばがあるのですけれども、そういう理解のしかたは間違っているのじゃないかと私は思うのです。つまり昭和二十九年六月九日の例の防衛庁設置法、この中にはっきり明文がありますね。この第六十二条に「国防に関する重要事項審議する機関として、内閣国防会議を置く。」こう書いてあります。そしてその二項には「内閣総理大臣は、次の事項については、国防会議にはからなければならない。」こう書いてある。そのならない項目の中には、国防基本方針防衛計画大綱、前号の計画に関連する産業等調整計画大綱防衛出動の可否、その他内閣総理大臣云々と、こうあるわけですね。つまりここには諮問機関ということば一つもない。諮問機関というのは総理大臣が必要と認めたときにこれに付議するというものでありますけれども、この防衛庁設置法にある国防会議性格は、単なる諮問機関ではない。つまり国防基本方針をここで審議——決定はあれのようですけれども、実際上決定をするような性格明文があるわけなんです。これを単に諮問機関として扱うかあるいは重要国防方針決定する機関として扱うかということは、私はシビリアンコントロールの面から見て非常に重大な要素だと思う。これは単に諮問機関とは、この条文からいって見られない、こういうように思うのですけれども、長官、いかがでしょうか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 法制的な分類からいえばこれは諮問機関に入るそうです。はからなければならない、はかるという字は諮問の諮で、ただしそれがはかることが義務づけられているものを持っておる諮問機関である。文章に「審議する」と書いてはありますけれども、はかることの審議という意味にも解されます。そういう意味審議機関であるとは思いますけれども、普通の一般審議機関とはやや性格を異にして、そういう義務づけられたポイントがあるということと、それから最初から「審議する」ということばが書いてあるという点においていわゆる普通の諮問機関と違う諮問機関である、そういうように思います。
  33. 和田耕作

    和田(耕)委員 普通の諮問機関といいますと、それは非常に軽い意味であって、こういうふうなはっきりした法律上の明文に基づかない諮問機関が多い。これはいま申し上げたとおり、シビリアンコントロールの一番の根幹一つはここにある。もう一つは、いまできてないけれども、国会の中であるいは防衛委員会とか、いろいろなそういう適当な機関があれば、この問題はできてくるわけですけれども、このシビリアンコントロールの一番大事なところがあいまいであるし、しかも長官はこの四次防の策定の過程において一回もこの会議を開いてない、この意見を聴取していないというところに、将来の問題として非常に危惧に思う点がここにあるわけです。シビリアンコントロールというのを、つまり内局の背広を着た人たち制服に対していろいろ注文をつけ、あるいはチェックするという要素は、確かにこれは大事なことだと思いますが、これよりもっと大事なことは、つまり国防会議を設置するときにきめられた——どういうふうな議論が行なわれたかよく存じませんけれども、この法律明文にある形の内閣日本防衛担当者に対してしっかりとした発言をする、あるいはチェックをする、あるいはコントロールをするという一つ機関としてこれを置いたのじゃないかという感じがするのです。これを設置した当時の増田防衛庁長官は、これは単なる諮問機関ですよということを答弁したらしいのですけれども、これは、こういう防衛問題について当時の情勢からいってはっきり言いたいことも言えない、できるだけ小さく小さく控え目に控え目に言って、そしてこれを通したというような感じもあったのじゃないかと思うのですけれども、この日本防衛計画根本が置かれる段階においては、ここのところがもっとしっかりしてもらわなければならぬ、そういうように私思うのです。ほんとういえば——ほんとうということばはこれは穏当じゃないのですけれども、内局人たち制服に対して、制服人たちもいろいろ不満があるようですけれども、いろいろとこまかくチェックをするということは、これはあんまり行き過ぎてはいけないと私は思うのです。昨年私、北海道の防衛庁の視察に行ったときに、何かしら制服人たちの元気がありません。いろいろな理由があると思いますけれども、何かしら元気がない。はつらつとした士気があがっていない、そういう感じを受けたのです。いろいろな場で話を聞いていると、内局人たちがいろいろの場面で優位に立っておるということとも関係があるのじゃないかという感じさえする。私は、シビリアンコントロールの問題について、一番大事な問題はここのところの場ではない。むしろ内閣つまり政治というものが防衛というものの計画に対してはっきりとコントロールできる、ここのところがかなめだと思うのですね。そういうようなウエートにおいて、シビリアンコントロール二つ要素を私考えるのですけれども、これは間違っているでしょうか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 正しいと思います。
  35. 和田耕作

    和田(耕)委員 そうであれば、いまの国防会議という問題を、もっと長官としても真剣にこの問題の運用について考えてもらわなければならない。つまり、これはいまのような平時の場合はいまの形でもいいと思います。ただ、有事——こういう状態を望まないのですけれども、起こった場合に、最高方針をきめる国防会議人たちが何も知らない、総理大臣もほとんど何も知らない。これは平時からそれを訓練していかないと、平時からよく日本防衛という問題についてこういう人たちがよく承知をしておらないと、有事のときには、つまり一線の制服人たちの非常に刺激的な、感情の高ぶったところの計画によって引っぱり込まれてしまう、そういう危険性があるのじゃないか。そういうことはとっさにできることじゃないので、平素から、このような重要な防衛計画をつくる場合に、こういう国防会議なりそういう常識的な、日本立場から見て正しいと思われる人たちが、防衛の問題についてよくしっかり知識を持っておかなければならない、関心を持っておかなければならない。  そういうような面で、くどくどと申し上げておるのですけれども、いま、これからもそうですけれども、国防会議の運用という問題をシビリアンコントロール一つのかなめとして、これが不十分であればこれを改組してもいいと思う。そういうことを私は思うのですけれども、長官にもう一ぺんその問題についての御意見をお伺いしたい。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防会議は、こういうような時代になりまして、防衛ということが単に防衛それ自体では機能できない、非常に幅の広い国民的基盤、社会的基盤、国際的視野を必要とするという、こういう時代になりますと、むしろ国防会議というような考え方よりも国家安全保障会議というような考え方が妥当するかもしれません。現にそういう議論もございまして、私も傾聴いたしているところでございます。いずれはそういうような考え方に立って非常に幅の広い政治的視点を含めた議論ができるだけスムーズに弾力的に政治中枢部において行なわれるようにすることは好ましいことであると思いまして、そういう点を私は目下のところ考慮しております。
  37. 和田耕作

    和田(耕)委員 特に私はこういう問題を大事なことだなという感じを受けましたのは、今度列国議会同盟でもって南米の諸国をずっと回って、そして北アメリカへ行って帰ってまいったのですけれども、南米諸国はほとんど、一、二の例外を除いたら全部軍事政権ですね。しかもアルゼンチンとかブラジルなんか、百年近い議会政治の経験を持っておる国が一朝にして軍事政権に変わってしまっておる。しかも軍事政権は今後相当長期にわたってあれしようとしておる。いろいろ理由はありますけれども、こういうような状態を見るにつけても、日本の国の現在置かれておる立場から見て、日本の議会政治つまり民主政治というものは非常に重要な意味を持っておる。世界に対する平和政策ということなしには日本は生きていかれない。平和なしには生きられない、こういう状態日本において、この防衛計画の基本が置かれるこの段階において、特に長官にそういうふうなことを踏まえての運用をお考え願いたい。  こういうようなことを考えるから特にこれを強調するわけですけれども、現在世界でまともな民主政治、議会政治が行なわれておる国はほんとうに指を屈するしかない。アメリカ、アジアでは日本ぐらいのものであります。ヨーロッパでは先進国といわれるほんの数カ国にすぎない。あとは議会というのはほんの名ばかりで、あるところでも名ばかりの議会を持っておる国がほとんど圧倒的に多い。しかもこれは戦後の新しい状態でしょう。特に最近の状態だと考えることができる。列国議会同盟でもソ連の代表が出ておる、チェコも出ておる、あるいはブラジルも出ておる、あるいはヨルダンも出ておる、あるいはインドネシアも出ておる。しかし、こういう国々の議会政治はほんとうの形のものだけにしかなっていない。こういうことで、日本状態考えた場合に、いまの防衛計画中枢が確立しようとする時期に、どの国よりも日本はこの問題について気を配っていかなければならない。日本はアメリカだけではなくてソ連、中共ともおつき合いをしていかなければならない。そういう立場からいって、民主政治という政治姿勢をゆるがすようなことになれば、国の最高の一つの課題というものは果たされない。  こういうようなことを考えてみますと、なるほど日本について最小限度の自衛措置というものは必要でもありますし、大体その限界も見きわめなければならないけれども、限界よりも何よりも必要な防衛力に対して政治がしっかりとコントロールできるかということを、これは心配し過ぎるほど心配して運用しなければならないのが防衛庁長官の任務ではないかと私は思う。そういう面から見て、このいまの国防会議、これを安全保障会議というものに——これは非常に議論が行なわれるところでありますけれども、そういうことが必要であればそういうようにしてもいいと私は思う。そういう問題をひとつ特に長官にお伺いしたいと思ったわけなんです。  次に、この問題と関連して、このあたりで物理的な防衛力の諸設備が完備していく段階においてあらためて自衛隊の教育という問題を長官、本気に考えなければならないと私は思う。この前の質問のときにもちょっと触れたことがありますけれども、日本の憲法という問題は確かにいろいろ議論の多い問題でございます。この日本の憲法という問題とその中における防衛力の問題、自衛隊という問題をもっと私は、これは政府がいま公式に理解している方針でいいと思うのですけれども、これをもっと徹底して教育する方向を考えていかないと、日本防衛力というものは変な方向に走っていくおそれなしとしない。この四次防において長官のお考えになっている教育計画ということをひとつお示しいただきたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 基本的には、日本国憲法のもとにおける節度ある防衛力である、その防衛を担当する者が自衛官である、そういう基本観念に立ちまして、いわゆる自衛官の心がまえときめられておるものを徹底せしめまして、一面においては制服を着た市民といいますか、非常に社会的良識のある市民である。と同時に、一面においては愛国心の旺盛な精強な防衛力担当者である、そういう両面を充実させるような自衛官に育てていきたい。そして最近におきましては、防衛力の内容には機械とか技術力というものが非常に大きな要素を占めてまいりましたから、そういう部面においても練度を向上させて実力のある自衛官にしていきたいと考えているのが、基本的な考え方であります。
  39. 和田耕作

    和田(耕)委員 この憲法問題についていろいろと自由民主党の党組織の中に意見があるようですけれども、長官として現在のいわゆる平和憲法といわれる、民主憲法といわれるこの憲法九条問題を中心としていろいろ議論はありますけれども、しかし、この憲法というものについての長官つまり決意というのですか、どういうふうなお考えを持っておられるのか。この前も一ぺん聞いたことがありますが、憲法を守っていきたいという御答弁だったのですけれども、はっきりそういう考え方を現在の段階でも持っておられるのか、長官に一ぺん聞いておきたいと思います。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 持っております。その点は変わっておりません。
  41. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは特に日本防衛というものに責任を持たれる長官としては、私は非常に大事な問題だと思うのです。長官はもっとたくさんの人の場で、事あるときに、日本の憲法というものが現在の日本防衛という面から考えても重要であるんだという点を強調していただきたいと私は思うのです。つまり、この平和な軍隊という非常にむずかしい構成だと思うのですけれども、しかし、これは何もインチキなあるいは表面だけのものではなくて、そういうものでなくては日本防衛は果たされていかない、こういう問題があると思うのですから、ぜひともこの問題についてお願いをしておきたいと思います。  次に、最初に申し上げたとおり、日本防衛計画というのは、それ自身では日本の国は守られない。特にアメリカとの協力という問題が非常に重要な要素になってきておる。これは単に核兵器だけの問題ではない。今度私はアメリカのバンデンバーグの空軍基地とハワイの太平洋軍司令部を訪問しまして、太平洋軍司令部の次長の方から詳細に承りました。ほとんど兵力の配備あるいは連絡補給等について隠すところがないような形で御説明がございました。そういうふうなアメリカの状態を拝聴をしたのですけれども、最近ベトナム戦争が非常に新しい段階に来て、アメリカにもいろいろな国内の世論が起こっておる、いろいろな運動が起こっておる、いろいろな世論調査が行なわれる等いろいろな問題が出る。こういうことになりますと、アメリカは相当予想以上に早い機会に、来年は大統領選挙もあることですから、ベトナムからの撤兵ということを迫られてくるんじゃないかというふうに思うのですけれども、長官、この問題についてはどういうお考えを持っておられますか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ニクソン大統領はそういう意思を持っておるようでありますけれども、はたして予期どおり撤兵が可能であるかどうか、もう少し事態の推移を見ないといかぬと思います。しかし、大統領がそういう意思を持って積極的に努力をしていることはうかがわれます。
  43. 和田耕作

    和田(耕)委員 こういうようにアメリカのニクソン・ドクトリンというものが、普通に考えられた以上に早く実現をしていくということになりますと、この四次防の考え方にどのように影響してくるとお考えになりますか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 新防衛力整備計画は、日本列島の防衛中心節度ある体系をつくっておるのでありまして、海外関係の軍事的関係は持たない、そういう基本的戦略立場を堅持しておりますから、影響はないだろうと私は思うんです。ただ、ベトナムから撤兵するということが促進されてまいりますと、それが国際緊張とどう影響してくるか、それが国際緊張緩和の方向に影響してくれば、日本防衛にとっても好ましい条件があらわれてくるだろう、そう思って、それを念願しているわけでもあります。
  45. 和田耕作

    和田(耕)委員 確かにそういう要素があると思いますけれども、逆に中国の国際的な影響力というものが非常に高まってくる。高まってくる過程で、アメリカとの一つの緩和の状態はできますけれども、新しい緊張の条件も出てくるというような複雑な問題を持っておると思うのです。この四次防をつくる場合、大体十年間ぐらいの状態考えながら策定をしたというお話ですけれども、七〇年代の前半あるいは後半にかけて、どのような一つ情勢分析に立ってこれをお立てになったのでしょうか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体、平和は持続するであろう、しかし情勢によっては局地的な紛争は生起する可能性はある、がしかし、大戦は回避されるであろう、それが基本でありまして、そういうような情勢変化というものは、各国の外交政策あるいは各国の持っておるいろいろな諸国策との調整といいますか競合の中に、そういうことが曲がりなりにも実現して推移していくであろう。それで極東におきましては、世界的にもそうでありますが、政治的多極化の現象が出てくるであろう。したがって、中国や台湾やあるいは朝鮮半島やあるいは日本列島等をめぐって、政治的な考慮や政治政策というものが非常に重要度を増してくる、そういうように考えてつくられておるわけです。
  47. 和田耕作

    和田(耕)委員 そこで、ここで若干こまかくなりますけれども、アメリカ軍と日本との連携のしかたなんですけれども、現在、日本の陸海空の幕僚とアメリカの陸海空の幕僚との定期的な話し合いはありますか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 在日米軍司令部の首脳とわがほうの政府との間に、基地問題その他を中心にする会合は持っております。それからわがほうの幕僚等は、太平洋軍指令部へ行っていろいろ情報交換をしたり、また先方が来て情報交換をしたりする、そういうこともございます。
  49. 和田耕作

    和田(耕)委員 そういう一つの打ち合わせというのは、完全に長官コントロールのもとで行なわれているわけでございますか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろんそうであります。
  51. 和田耕作

    和田(耕)委員 いま世間でよく制服さんがひとり歩きをしているというようなうわさもありますけれども、この問題ははっきりきまった範囲制服がアメリカの制服さんと話をしているということは、これはあたりまえのことですね。そういうふうな場合にも長官がしっかりとこの問題を把握しておるということが必要なわけだと思うのですけれども、こういうふうな場合に、つまりこの制服さんの扱い方の問題が重要な要素になってくると思うのです。先ほど申し上げたとおり、あんまりこまごまと内局のほうで締めつけていくと、何だあいつらはという感じがあると、やはりそういうふうな気持ちのギャップがあって、そのうっぷんで一つのひとり歩きをするような傾向も出てくるような心理状態も出てくると思うのです。そういう点で先ほどの問題にちょっと返っていきますけれども、現在の内局制服との関係をこの段階で何か再検討する必要があるのじゃないか。もっと制服さんの士気が、自分たちの気合いが上がるような、そういう判断範囲を拡大していくというようなことも必要じゃないかなというようなお気持ちはないのですか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 制服には制服の固有の使命がございまして、第一線で防衛を担当する、こういう非常に専門的な、また技術的な分野もございます。内局には内局長官に対する補佐機関としての別個のまた使命もございまして、それを調整していくのは事務次官とかあるいは長官の大きな責任であります。長官が主としてそれを調整するということになると思うので、その点において長官というのがロボットみたいになっておったり、あるいは人形さんみたいになっておるということは一番危険性が出てくる。私はそういう意味において防衛庁長官というのは非常に重要な職務であると実は思って緊張しておるわけであります。現在のそういう情勢から見ますと、いまのシステムについてそれほど変更を要することはない、情報機能その他において多少増強する要素はあったり、そういういろいろ部分的な問題についてはありますが、組織の基本において変改を要するところはない、そういうように見ております。
  53. 和田耕作

    和田(耕)委員 いまの防衛庁で、海外に出しておる、大使館に派遣をしておる派遣員はどういうところに出しておりますか。
  54. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在防衛駐在官を外国に派遣しておりますのは十三カ国、十八名でありまして、米国が五名、ソ連が二名、英、仏、西独、トルコ、インド、タイ、南ベトナム、インドネシア、中華民国、韓国、ビルマ、これが各一名であります。
  55. 和田耕作

    和田(耕)委員 トルコに送っておるというのはどういう意味ですか。
  56. 久保卓也

    ○久保政府委員 これはだいぶ以前に決定されたわけでありますが、トルコというのはNATOの一国であり、また常に騒乱の地である地中海の一端を占め、かつ従来十数回ソ連と戦闘を交えた国でもありまして、比較的に自由圏と共産圏の結節点であるという判断のもとにトルコが選ばれたようであります。
  57. 和田耕作

    和田(耕)委員 中南米諸国には一カ所も置いておりませんか。
  58. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在のところ南米には置いておりません。私どもの判断では日本の周辺、これは当然日本をめぐる情勢判断をするために必要でありますから、日本の周辺。それから世界の主要な地域で、世界の戦略といいますか、自由圏であれ、共産圏であれ、そういったようなものの世界的な動きを知るに足るような国家ということで選ばれております。もちろん数十カ国に置くことが好ましいわけでありますが、人員その他いろいろ制約がありますので、少しずつその範囲を広めているという段階であります。
  59. 和田耕作

    和田(耕)委員 私、今度南米を回りまして、違った意味防衛庁のしっかりした職員を南米の二、三カ所の地域には派遣する必要があるのじゃないかという感じを持ったのですけれども、それは南米諸国は、先ほども申し上げたとおり、一朝にしてクーデターが行なわれる、そのあとに軍事政権が確立をしているという国がほとんど全部なんですね。そういうふうな国々、これは日本との経済的な関係もだんだんと密接になりつつある国なんですけれども、そういう経済関係は一応別としても、そういう国で、いわば間接侵略的なものと若干関係もありますけれども、そういう目で防衛庁の職員が、南米のたとえば場所がブラジルであるか、あるいはベネズエラであるか、あるいはペルーであるか、あるいは中南米のグアテマラであるか、どこであるかは別として、そういう南米に起こっておる軍事的なものを、防衛庁としては直接の日本防衛という面からではなくて、防衛庁の、自衛隊の任務を果たすためにも、二、三の場所に防衛庁の職員を派遣する必要があるという感じを持ってきたのですけれども、その点、長官どうでしょう。
  60. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 定員がとれれば逐次ふやしていきたいと思いますが、やはり国際政治の焦点になっておる、もう少し緊迫している地点、アジアであるとか、あるいはヨーロッパ、共産圏との接触部面、やっぱりそういう部面のほうが大事ではないか。たとえばアラブ連合のような国にまだ行っていないわけです。しかし、いまの中近東戦争その他を見ておりますと、あの辺にもやりたいというところでもあります。そういうところへもまだ行っていない状態でありまして、定員が次第に得られれば、考えるべき事態であると思います。
  61. 和田耕作

    和田(耕)委員 特に私は南米諸国をいま申し上げるのは、つまりどういう状態のもとで軍事政権が起こってきているかという問題について、私の判断では、現在の大使館の諸君が一生懸命やっておりますけれども、必ずしも十分だという判断にはならない。現地におると制服の人は、制服制服同士という感じがどうもあるらしいので、そういうふうなことも必要ではないか。あるいはまた常時ある国に常置するという形ではなくて、特別の一つの任務を持った半年間くらいの期間を持った調査団のような組織でも、これは外務省の協力が必要ですけれども、そういうものを出して軍事政権というものの性格をしっかりと見詰めてくるということは、今後の日本の、先ほどからいろいろ御質問申し上げているような心配の面に対しての一つの重要なデータをとるためにも、非常に必要だと思うのですけれども、その点重ねてひとつ防衛庁長官に御所見をお伺いしたい。
  62. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはむしろ制服をアタッシェとして出すよりも政治の分野において克明に見ておかなければならぬ分野であると思いまして、緊急度合いからいいますと、むしろそれよりもいま申し上げたような地点のほうが重要であると私は思います。私は憲法調査会に所属しているころ、矢部教授らと南米を回りましてクーデターの研究及び軍事政権の行動というのを見てまいりました。非常にいい勉強になりました。また最近の国際政治情勢を見ますと、いままでの地点のほかに国際的に紛争が起こる、問題になるであろうと思われる地点は南アジア、たとえばパキスタン、セイロンあるいはインド、ああいう南アジアの地点、これはインド洋を控えてそういう危険性が出てくる。それから南米、たとえばチリとかウルグアイとか、あるいはベネズエラ、すでにペルーなんかもそうなっておりますけれども、そういう意味において国際政治においてはあの辺が非常に関心の対象に逐次なってくるように思いますが、軍事的問題からすれば、われわれとしてはまだほかに重要地点があると思います。
  63. 和田耕作

    和田(耕)委員 話を変えまして、防衛庁長官は昨年防衛白書を発表なさいましたけれども、あれを定期的に出すお気持ちはないのですか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 必要に応じて出すべきでありまして、必ずしも定期的に義務づけられて出すという必要はないと思います。
  65. 和田耕作

    和田(耕)委員 いままで防衛の問題については、何かものをいっては損だ、内容でも十のことなら五つぐらい説明をして通っていこうという卑屈な考え方があったんじゃないかと私は思うのですけれども、そういう考え方はこの際全部もう捨ててしまう必要がある。四次防という非常に重要なものをいま目前にして反省をしている段階ですから、国民に対して余すところなく理解を願う、御協力を願うという態度が必要だと思うのです。ちょうど四次防の策定をしたこの段階がいい機会だと思うのですけれども、その意味で昨年長官が出した防衛白書を私はそれなりの評価をするのですが、今後とも大体一年に一回は、内容の大小はともかくとして、防衛白書のようなものを発表していくということが必要だと思うのですけれども、長官、やっぱり出す意思はないのですか。そのつど必要に応じてやるということですか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 基本的な考え方はさきに申したとおりでありますが、よく検討してみます。
  67. 和田耕作

    和田(耕)委員 まだいろいろ御質問したいことはたくさんありますけれども、先ほど申し上げたとおりの一番中心点の、つまりシビリアンコントロールという点について、長官この時期にしっかりとシステムを確立するということを特に念頭に置いていただきたい。シビリアンコントロール二つの分野の中で、特に政治防衛力に対して有効なコントロールができるという、ここのところをお考えいただきたい。国防会議の運用の問題なんかにしても、長官の扱い方は非常に不十分だと思うのですね。もし安全保障会議が必要だということになれば、国防会議をそういうようなものに改造しても、この問題を解決していく必要がある。また国会防衛委員会の問題にしても、いままでいわれておるような委員会が適当であるかどうかはいろいろ議論があると思いますけれども、国会の中と政府の中でしっかりとチェックできるような問題について、一段と長官の気持ちを喚起いたしたいと思うのですけれども、この問題について長官の御決意を承りまして、質問を終わりたいと思います。
  68. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままでシビリアンコントロールについていろいろと御指摘いただきました点は、私も同感でございます。特に国会中心になって政治が掌握するという点と、防衛庁内部において、長官中心にして内局制服との間のバランスをとるということ、これは非常に重要なポイントであると思います。それらの点につきましては今後ともいろいろ研さんいたしまして、改革を加えていきたいと思います。
  69. 和田耕作

    和田(耕)委員 これで終わります。
  70. 天野公義

    天野委員長 午後一時より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  71. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  72. 横路孝弘

    ○横路委員 四次防の原案について、少し各論にわたるかもしれませんけれども、お尋ねをしていきたいと思います。  初めに、この四次防が完成しますと、いろいろ指摘されておりますように、総額で五兆八千億近いもの、昭和五十一年になりますと、年間大体一兆五千億くらい、毎年一八・八%の伸びで、大体世界で絶対額において六番目ないし七番目になる。こうした軍備の拡大というものが、日本を取り巻く周辺の諸国間にどのような政治的、軍事的な影響を与えたのか、あるいは与えているのかという点が実は非常に大きな問題だろうと思うのですけれども、作成にあたって、長官のほうでそういう影響については考慮されたのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  73. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろん考慮をいたしました。しかし、日本防衛努力というものは、いままで憲法の範囲内で非常にスローモーションで行なわれてきておるのでありまして、ほかの各国の継続的な恒常的な努力に比べて非常に見劣りがしておったものであると思います。それを一挙に回復しようとは考えませんが、あるレベルの段階にまで年次計画をもって回復しようという考えもありまして、三次防、四次防と出てきたわけでございます。この程度のものをもってすれば、攻撃的兵器その他を持つわけでもなく、シビリアンコントロールを徹底して、その運用方針をかねて言明している範囲内に限局して行なえば、ほかの国々が軍国主義とか侵略主義とか、そう言うおそれはないと私たちは確信しております。
  74. 横路孝弘

    ○横路委員 結局、今度の四次防が、特にアジアにおける中国との間の、あるいはまたソビエトとの間の軍備拡大競争になっていくことが一番心配なわけですけれども、いま、ほとんどその影響はないだろうというお話があったわけですけれども、この原案の「情勢判断」のところを読んでみても、アジアにおける情勢として、たとえば中華人民共和国の核武装の問題、あるいはソビエト海軍の拡充の問題というのが、アジアの情勢に非常に大きな影響を与えていくだろうという認識をされているわけですね。そうすると、周辺諸国間のこういう軍備拡大というのはいろいろな影響を与えていって、わが国の軍備拡大というのは影響を与えぬという論理というのはどうも成り立たぬように思うのですが、その辺のところはどういうふうにお考えになりますか。
  75. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外国で開発している核というのは、これを運搬する手段も同時に開発されておるので、他国に対して直ちに脅威を及ぼす性格を持っております。それから、海軍力を渡洋能力をもってこれを造設していくということは、これは同じように外国に対して接触する部面が出てくるので、同じように影響力が出てくるわけであります。しかし、日本の場合は、日本列島の防衛に限局した、そうした性格を持った節度ある内容のものでありますから、他国がこれによって脅威を受けるということはないと思います。
  76. 横路孝弘

    ○横路委員 その点は、あとで四次防の装備計画の内容について一つずつお尋ねをしていきたいと思うのですけれども、もう少し一般的な情勢判断のところでお尋ねしますと、結局、向こう岸が高くなればこっちの岸もやはり高くしなければならぬ。それは核であろうと何であろうと、やはりそういう軍備拡張の論理というものにはまり込みつつあるんじゃないかというように考えるわけですけれども、結局日本の場合、外交が主体でなければならぬ。これは長官もお認めになっているところであります。そうすると、この情勢認識の中で、全面戦争ないしはそれに近いような武力紛争というものはまずないだろうというように考えておりますけれども、しかし、なお一そうアジアの緊張というものを緩和していくために、日本として何をしなければならないのか、長官としてはどのようにお考えになりますか。
  77. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは平和外交による努力をいたします。
  78. 横路孝弘

    ○横路委員 具体的にはどういうことですか。
  79. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 できるだけ多くの国民とコミュニケーションの道を開いて、誤解のないような意思疎通の方途を講じておくということ、それから国際紛争は必ず平和的手段をもって解決する、そういう確信を各国民が持つように馴致していくということ等々であろうと思います。
  80. 横路孝弘

    ○横路委員 そのコミュニケーションが成立をしていない国が日本の周辺国家にあるわけですね。そういう問題について、もう少し具体的にお答えをいただきたい。
  81. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 コミュニケーションの確立していない国々に対しては、やはり積極的にコミュニケーションを開いていくという努力が必要であると思います。これは相互主義で行なうことが適当である、このように考える次第です。
  82. 横路孝弘

    ○横路委員 長官が五月八日のある新聞紙上で、四次防との関連でもって対談をなさっておるわけですが、その対談の中で、結局、一番おそれているのは、やはり中国との間の軍備拡張競争になることが一番心配なんだということを発言されて、そうしてアジアの平和を保つためにアメリカ、ソビエト、中国、日本、この四つの国が話し合いをすることが必要だというようにお答えになっているわけです。私たちも従来からそういう主張をしてきているわけですけれども、この内容をもう少し具体的にひとつお話をしていただきたい。
  83. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 要するに、国際関係を安定させ、平和を成立さしていく、そういうためには、その場合の平和はいわゆる平和共存、あるいは競争的平和共存ということになるかもしれませんが、とにかく平和共存というものを実現していくためには最終的に外交の力にたよることが正しいと思いますし、外交以外にはないと私は思うのです。そういう面から考えてみますと、それはいつできるかわかりませんが、われわれの理念としてまたわれわれの理想像として、将来アジアにおいてアメリカ、日本、ソ連、中国という国々が、ある一定のアンダスタンディング、了解というようなものをつくって、アジア地域における平和を維持していくためのそういう基礎的工事ができれば、これは軍事力にたよらないで、平和的に各国民が交流を盛んにし、また貿易を盛んにしていくというモメントができるのであって、非常に望ましい状態である。日本の外交の問題も、将来はそういうことを目ざして誠実に平和的に前進していくべきである。そう思います。ただ、それがいつできるかということは、いまのところの情勢ではなかなかむずかしい問題があります。中国は現に対立しておりますし、また日本とソ連との関係日本と中国との関係、あるいはアメリカと中国との関係、それぞれ微妙な障害がございますけれども、日本の外交の一つの目標としては、そういうことを一つの理念として進むことは私は意味のあることであると思います。
  84. 横路孝弘

    ○横路委員 この新聞紙上の対談によると、そんな遠いかなたのことではなくて、四次防によって中国との軍備拡張競争がお互いに起こるのを心配する、したがって、四つの国の話し合いがアジアの緊張を緩和するために必要なことだ、たしかこういう話のように私は読み取ったわけでありますけれども、違いますか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が前からずっと強調していることは、中国と日本との間に軍備拡張の悪循環を起こしてはならない、そういうこと、それから漢民族と大和民族が再び戦うことがないように、永久平和の基礎をわれわれ政治家はつくっていかなければならないということ、そういうことを私は強調してまいりました。そういうことを実現していくために、いまのような四大国によるアジアの安定ということもある一つのやり方として構想したところであって、それがすぐできるとは思いません。思いませんが、日本一つの進路を目ざす理念として掲げていくことは適当であると私は思っております。
  86. 横路孝弘

    ○横路委員 それはまさに必要なことなんですけれども、もうちょっと具体的にお話を承っていきたいと思います。先のことだという。確かにその前に、中国の国際社会に対する復帰の問題から始まって、日本との間だって、法律的にはまだ戦争状態が続いているという状態なわけですから、そういう解決しなければならない問題がたくさんあるわけです。中国との問題の解決の方法としてだって、この四つの国が話し合いをするということもまた必要な場面というのは出てくるのじゃないかというように考えるわけですけれども、そうすると、将来的には、この四つの国が、たとえばアジアの緊張緩和のために、形はどういう形か別にしても、ある種の安全保障条約みたいなものを結ぶとか、そういうようなことも含めてお考えになっておられるのか、それはどうですか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安全保障条約の内容がどういうものであるか、そういうことにもかかわりますが、広範な意味でいえば、そういうことも一つの方法になり得る可能性もあります。しかし、そういうところへ行くために、一挙に投網をかけて同時に実現するということはできないので、個別国家間の障害をお互いが取り除きながら、次第に整地作業をやりつつ、そして、そういう多数国家間の平和維持機能を外交的に増進させるということが出てくる順序であろうと私は思っております。
  88. 横路孝弘

    ○横路委員 結局、中国の国連社会に対する復帰という問題が、日本の平和と安全という観点からも必要になってくるわけですね。この間の第二次世界大戦のあと始末という問題でも、これは非常に大きな面を持っているわけですけれども、そういう緊張緩和のための中国の国連に対する復帰という問題については、長官としてはどのようにお考えになっていますか。
  89. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中国が大陸を支配している厳然たる政府であるということは何人も否定できないところであって、いろいろな障害を克服し、調整しながら国際社会に中国が平和的に復帰して、そして世界と共存していくということは好ましい姿であると思います。その一つに国際連合もあり得ると思いますし、あるいは十八カ国軍縮会議というような国際機構に入るということもあるだろうと思います。
  90. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、この次の国連総会で、この中国の復帰の問題というのはやはり非常に大きな問題になるわけですけれども、この問題について、防衛庁という立場から、これは所管は外務省になりますけれども、そういう平和と安全を守るという立場からは一体どういう方向がいいのか、お考えがございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 抽象論としてはただいま申し上げたとおりでございますけれども、次の国際連合における具体的な措置としては、目下政府は研究中でありまして、私が言うことは越権で、外務大臣の領域に属すると思います。
  92. 横路孝弘

    ○横路委員 しかし、結局外交が主なわけですね、平和と安全を守るという点からいうと。先ほど平和外交に徹するというお話があった。平和であれば、何も軍備をそんなにどんどん拡大しなくたっていいということにもなると思うのです。そういう点からいうと、やはり当然しかるべき発言があってかまわないのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  93. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外交優先でありますから、外務大臣にお聞き願いたいと思います。
  94. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、一つちょっと気になることがあるのです。それは、五月八日のやはりこの対談の中で、日本防衛力が専守防衛のためか、あるいは政治外交を背後から助けるものかという問いに対して、長官は、必要最小限度防衛力を持っていなければ外国にばかにされるんだということを述べられているわけですけれども、そうすると、外国にばかにされないためにも防衛力が必要だ、こういうお考えのように理解してよろしいですか。
  95. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が発言したことを、その局部だけお取り上げにならないようにお願いしたいと思うのです。私が申し上げましたのは、国が存立していくためには、経済力も大事であるし、国民の団結も大事であるし、また独立を維持していく最小限の防衛力も大事である、最小限の防衛力がないというような場合にはばかにされる危険性もある、そういう意味のことを申し上げたのでありまして、総合的なものの一部として防衛力というものも考えていただきたいということを申し上げておるのであります。
  96. 横路孝弘

    ○横路委員 そういうことでしたら、別にこれ以上問題は追及しませんけれども、しかし、そのときはそうじゃなくて、何回も読み返しましたけれども、専守防衛のためなのか、政治外交を背後からささえるためなのかという問いに対して、防衛力を持っていなければ外国にばかにされるのだ、だから必要最小限度防衛力というのは必要なんだ、実はこういうお答えになっているわけですね。それはいろいろな局面の一つとして必要なんだということであればそれでけっこうですけれども、ただ、経済大国として外交の発言に重みをつけるために自衛力というものも必要なんだ、あるいは防衛力というものが必要なんだという議論が従来からあったわけですね。そうして今度の四次防を読んでみて、「情勢判断」それから「防衛構想」というところと装備計画の内容というものが、どうもつじつまが合わないというか、最初のところと計画案の内容とが、関連性といいますか、論理的な斉合性というのがない、説得力がないということを実は感じているから、いまの発言を取り上げたわけであります。  そこで、この情勢装備計画との内容の関連性についてこれから少しお尋ねをしていきたいと思うのですけれども……
  97. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの御質問に関連したことでありますが、防衛力は専守防衛のために必要ということであります。
  98. 横路孝弘

    ○横路委員 これから質問に入りますから……。そうなのかどうなのかということですね。  この間大出委員あるいは伊藤委員からも少しお話があったので、若干重複する点があると思いますけれども、最初の「立案の趣旨」の中で、「わが国をめぐる紛争生起の要因等を考慮して、防衛力をもって対処すべき事態」というものを限定したのだというように書かれてあるわけですけれども、「わが国をめぐる紛争生起の要因」というのは、一体この四次防を考えるにあたってどのようにお考えになったのか。ここへ書かれていることは、一体何を頭の中に入れているのか、まずその点からお伺いをしたいと思います。
  99. 久保卓也

    ○久保政府委員 「わが国をめぐる紛争生起の要因」といいますのは、ヨーロッパ、中東地区あるいは中印、それからパキスタン、インド、あるいは台湾、インドシナ、朝鮮といったような地域に比べますると、直接の紛争の要因はない、これが一つ入ります。それから、反面、わが国がアジアにおいて海の中に孤立しておる国である、これは地勢的な面であります。そういうような意味。それから周辺諸国が相当の軍事能力があるといったようなこと。それからわが国の安全保障に直接あるいは間接につながってくる極東の安全と平和、これはたとえば台湾であるとか朝鮮半島であるとか、そういったところの紛争がどういうふうになるか、そういうふうなことを総合的に勘案してというような意味であります。
  100. 横路孝弘

    ○横路委員 私はそこのところがよくわからないのです。つまり日本をめぐる状況の中で紛争が生起する要因というのは、日本のような島国、ヨーロッパのような国と違うわけですよ。いまおっしゃった中でも、極東の問題まで広げてしまいますと、それはまた話は別になるんですね。別になるけれども、海の中の島国としての日本という状況から考えると、紛争生起の要因というのは、結局、侵略を受けるような要因でしょう。逆に言うと、侵略を受けるような要因、あるいは周辺国家からいうと侵略するような要因、そういうような紛争生起の要因というのは、はたして、いまの日本にありますか。どうも、いまの極東、アジアの段階まで問題を広げてしまうと、これはまた別になるので、その点はあとでお尋ねをしていきたいと思っておりますけれども、もう少し限定をして日本の国土というように考えた場合に、そういう紛争生起の要因というのは、はたしてありますか。
  101. 久保卓也

    ○久保政府委員 直接の紛争の要因はありません。したがいまして、ほかでも書いてありますように、差し迫った脅威はないというふうに解釈しております。ただし、日本をめぐる地域、たとえば台湾でありますとか朝鮮半島でありますとかというところが完全に平和な状態で将来も推移するであろうという見通しを立てることは必ずしも適当ではない。やはりそういったような事態もわれわれとしては考える必要があるということは、これはプラスの面。それから、直接の紛争要因はない、わが国と諸外国との紛争要因は領土的にも、宗教的、民族的その他の国益的な問題についてもない、これはネガティブな面。つまり紛争要因がないほうの紛争要因というふうに解釈しております。
  102. 横路孝弘

    ○横路委員 私のほうは、あるいは竹島とか南千島とかあるいは漁業権をめぐる諸問題ですね、いまニシンの問題とかカニの問題、いろいろありますけれども、そういうような問題を考慮に入れているのかと思ったら、それは否定された。これは否定するということでいいんですね。
  103. 久保卓也

    ○久保政府委員 私はそれは否定したいと思っております。ただ公式の議論になるかどうか別ですけれども、沖繩なんかは若干問題がないではない、これは過去の歴史的な事情を見れば。しかしいま当面中共なり台湾なりが何も言っていないのだから、直接的な要因を考える必要はない。したがって、今日少なくとも日本をめぐる軍事的な面から見たところの紛争の要因はないと考えてよかろう、したがって差し迫った脅威はないというふうに判断したわけであります。
  104. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、この情勢判断の中でわが国を含む極東において限定的な武力紛争の生ずる可能性を否定することはできない、これがいま久保局長がお答えになった内容だと思うのです。そうすると、わが国を含む極東における紛争、それに対処する日本自衛力ないし四次防計画というように理解してよろしいわけですね。
  105. 久保卓也

    ○久保政府委員 若干詳しくそこのところは御説明をしたいと思うのです。つまりわが国をめぐる紛争の要因はない。したがって差し迫った脅威はない、あるいは顕在的な脅威はないということであります。ところで将来のことはどうなるかとい  いますと、これは将来はどういうふうになるかわからぬ。おそらく私どもは平和が将来も続くであろうというふうに考えます。したがって、私のことばでいえば、蓋然性のある脅威、プロバブルな脅威というものは将来もおそらくないだろうというふうに思います。これは他の紛争地域と違うところであります。しかしながら、軍事能力を持った国々が周辺にたくさんある。能力というものはいつ何どきその国の意思と結びついて脅威が顕在化するかもしれない。そこで脅威というのは、能力と意図が結び合わさってはじめて脅威というものが出てくる、顕在的な脅威になるということであります。そこで周辺諸国に能力——意図はどうなるかわからないけれども、能力があるということは、その能力が将来何かに結び合わさって、あるいは予測し得ない要因と合わさって、それが顕在的な脅威になるかもしれない。そういった将来の潜在的な脅威に対処しなければならない。それが可能性、ポシビリティとして考えられる。それに対する防衛力である。こういうような意味であります。
  106. 横路孝弘

    ○横路委員 要するに、侵略する意思なり能力なりというものを別にして、紛争の要因ということから考えてみますと、少なくとも日本の国土に関してはそれは全くないというわけでしょう。そうすると、それは全くの観念的な議論あとはなってしまうと私は思うのです。いま局長がお答えになった中で抜けているのは、わが国を含む極東における限定的な武力紛争の生ずる可能性を否定できないのだ、したがって、というようにあと防衛構想につながっていっていくわけですね。そうすると、これは直接わが国の国土の平和とか安全とかいうことでなくて、極東におけるそういう武力紛争に対して、そのことが日本の平和と安全に影響を及ぼしていくから、そしてすなわち防衛構想、四次防の装備計画へとつながっていっているわけです。そこのところはどういうぐあいに御説明になるのですか。
  107. 久保卓也

    ○久保政府委員 極東の安全と平和が日本につながってくる場合もあります。あるいは日本が国内宿勢と関連して独立に脅威につながってくる場合もあります。そこで武力紛争が日本について起こる可能性があるというのは、いま紛争の要因がないということは、将来どういうような要因が出てこないかということは予測はできない。これはもし先生が将来は絶対にこうであるということを歴史的に証明できるならば別であります。私はむしろ証明できない事実を幾つか知っておるわけでありまして、そういうことで、現在今日紛争要因が予測し得ないということは、数年後に紛争が生じないという証明には決してならない。それは歴史が証明をしておるということであります。ですから私どもは、ポシビリティーすら全然ないということであるならば、それは防衛力を持つ必要もないでありましょう。しかし現在プロバビリティーがない、かといってポシビリティーというものは将来可能性としてはある。それは軍事能力が存在するということでありますが、そういう軍事能力があるということとポシビリティーがあるということは、何かに結びついて遠い将来に紛争事態になる可能性というものは、これはポシブルである以上は考えておかなければいけない。そのための防衛力であるということであります。
  108. 横路孝弘

    ○横路委員 ないということの証明は絶対に不可能ですよね。それは論理的にいってそういうことなんで、もしそういうことのために対処しようとするというならば、これはまた別な次元の議論になってくると私は思うのです。いまおっしゃった中で、わが国を含む極東における限定的な武力紛争の生ずる可能性、これが日本自衛隊を強化しなければならぬということとどういうぐあいに結びついてくるわけですか。その辺のところを——日米共同声明で、韓国ないし台湾の平和と安全は日本の平和と安全だということを言っている。そうすると日本自衛隊が対処しようというのは、日本の国の平和と安全というよりは、アジア全体のそういう韓国なり朝鮮なりを含めたそういう武力紛争に対処しようとするものだというふうに理解してよろしいわけですか。
  109. 久保卓也

    ○久保政府委員 言う意味はこういうことであります。この点を明確に分けていただきたいのですけれども、今日紛争要因がある、あるいは戦争が起こりそうである、顕在的な脅威があるという事態をわれわれは考えておるのではない。それは他の紛争地域と違うということです。しかしながら、繰り返しますけれども、軍事能力が存在するということ、これが脅威につながってくる可能性がある。そういうものに備えるものであるということです。そこで、それではどの程度のものが対処能力として必要であるかということになるわけで、その対処能力に対してどうして漸増していかなければならないかという問題になるわけです。そうするとわが国がヨーロッパ諸国、NATOの主要諸国に比べても軍事力は低いわけですが、特にわが国がNATO諸国と違いますのは、アジアで、アメリカという与国はありますけれども、地勢的にいうと独立をしているわけです。NATO諸国は連接をしておるわけです。そういった地勢が違うわけです。与国が同時に結束をして相手の国の侵略に対処し得るという事態にない。わが国が一つの国で周辺諸国に対処しなければいけない。そういう地勢的な位置にあるわけです。そうしますと周辺諸国は——たとえば日本が南米にあれば日本防衛力というものはまた別でありましょう。しかし日本の周辺の国々というものは相当な軍事力を持っている。それが先ほど申し上げますように、可能性、ポシビリティーとしての能力を持っているということであれば、それにある程度対処するものというものはおよそ見当がつくわけであります。しかしその場合も、これはあとで御質問が出るだろうと思いますけれども、十分に対抗し得るというのでなくて、特定の事態に対処し得るということであれば、そこばくの兵力というものは想定し得るわけであります。そこで、われわれが安心をして国民生活を営んでいくためには、その目標ぐらいまでには一応到達していきたい、そこまで漸増して持っていきたい。その第一段階といいますか、それが一次防、二次防、三次防と来ておるわけでありますが、その一つの途中のステーションが四次防、新防衛力整備計画であるというふうに御理解いただきたいと思うのです。
  110. 横路孝弘

    ○横路委員 どうもまだよく理解できないわけですけれども、それはもう一度あと議論しますけれども、その前にもう一つ、そういう極東における武力紛争の可能性と、それからもう一つは国内の潜在的不安定要素ということをいっているわけでありますけれども、これは防衛庁長官にお尋ねをしたいのですけれども、国内の潜在的不安定要素、いまの日本において流動的な情勢が続く限り、そういう要素があるのだというようにお考えになっておりますけれども、あなたは政治家として、あるいは防衛庁長官として、国内の潜在的不安定要素つまり防衛力を増強しなければならぬ不安定要素とは一体何ですか。
  111. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政治が失敗しますと、どういうことが起こるかわかりません。また先般来、二、三年前まで新宿や池袋やその他駅頭は学生群に占領されたり、市民が多大な迷惑を受けたり、機能混乱が起こったりしていることもございます。やはり政治が安定をして、信頼感に満ち満ちているということが非常に大事なことであると思うわけです。
  112. 横路孝弘

    ○横路委員 いまの日本の国内における不安定要素というものは何ですか。
  113. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう芽は随所にある。これは現代社会においてはどの国家にもある。これはフランスにもアメリカにもイギリスにもある芽であります。われわれは政治家としてそういう芽が頭をもたげないように、いろいろ諸施策を行ないながら努力していくとともに、万一そういう芽が暴力行為その他に出た場合に克服できるような体制を警察その他の力をもってしてつくっておくということも大事であります。
  114. 横路孝弘

    ○横路委員 つまりいまは警察の問題じゃなくて、自衛隊の問題を議論しているわけでありまして、自衛隊が対処しなければならないような、そういう芽というのをもうちょっと具体的におっしゃってください。
  115. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いわゆる間接侵略というものが出てくる場合は、そういういろいろ一部の策動する分子等の計画が奏功して、そして相当大きな騒乱状態、内乱状態というものが現出して、そしてそれが外部との連携をもって拡大していく、そういうような場合には警察だけで対処できない場合が出てくる。その場合に、自衛隊防衛出動、治安出動ということによって支援後拠するということは法で明記してあるとおりであります。そういう事態もないとはいえない。いまのところはありそうもありませんけれども……。
  116. 横路孝弘

    ○横路委員 そこのところがよくわからないのですよ。現在のような流動的な情勢が続く限り、そういう不安定要素というものは外部からの影響によって誘発されて、間接侵略の事態に発展するというわけでしょう。そういう可能性があるという。しかもそれにわざわざ留意する必要があるというふうになっているわけですね。そうすると、二、三年前の学生のいろいろな問題をあげましたけれども、あれは警察力でもって完全に押え切れたわけですね。いまはそういうような問題がない。そうすると、そういうような大きな、つまり内乱ということで国の存立そのものが動く、いまの国家制度そのものがゆらぐ、そういうような不安定要素というのは、芽というふうにおっしゃいましたけれども、どういうような要素としてあるのか。自衛隊のほうでは何かお考えになっているわけでしょう。
  117. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まあガンみたいなもので、組織が変化したり、循環器系統が変になったり、そういうことをすると、新しい悪質の組織が出てきたりして、それが急激にふえたりする、そういう要素も社会にはあるだろうと私は思うのです。いまはないからといって、永久にないという保証はない。そういう意味において、内外の問題について治安を維持して、国民生活の平和を確保しておくというのが政府責任でもありますから、憲法の命ずるところに従って、平和的秩序を維持していく力は必要なのであります。
  118. 横路孝弘

    ○横路委員 私が聞いているのは、その組織が変になったり循環器系統がおかしくなるような、それは一体何なのかということを聞いているのです。それは当然もう政治家としていまの日本政治の状況なり日本の社会状況を見ていて、いろいろそれなりの判断をお持ちになっていると思うのですね。それはわれわれみんな特っている。しかし、そのことが今度四次防で、陸上自衛隊相当、ヘリコプターから何から機動力をさらに強めて近代化していくわけですね。そういう装備で対処しなければならないような、そういう要素というのは、一体いまの国内にそこまで行くような要素があるのかどうか。
  119. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく去年はハイジャックというようなものがあって、それで外国に向かって船、飛行機を進発させて、海外に基地をつくるという事実もありましたし、右のほうにはまた三島事件のような事件もあって、これがかなり国民に衝動を与えたという事実もあります。そういうように右や左について何かのことでそれが拡大していく要素は絶無とはいえない。それは社会のいろいろの安定性にも関係してくることでございます。そういうような芽は客観条件に応じて出てくる。ちょうど気象学のようなもので、高気圧とか低気圧とかいうものは、この周囲全体の気圧のバランスとか、流れとか、そういうものによって芽がひょっと出てきて、それがある力学的、客観的力によって台風に成長していく。台風に成長していくというと冷たい水を吸収して、それがまたエネルギーになって、さらに大きな力を培養していく。そういうことがあるので、やはりガンや台風みたいな気象学的要素も社会の中にないとはいえないわけです。そういう芽はいろいろな環境から出てくる。そういういろいろな、あるいは暴力革命をやろうというものは、いまは平和な顔をしておるかもしれないが、ないとは言えない。いま日本共産党は平和革命、人民議会主義ということをいっておられますが、それが信ぜられるかどうか国民が判定しますけれども、一ころ前までは火炎びん事件なんかを起こして、そして公然とやっておったのが、昭和三十年の初めでしたか三二年テーゼとかいうので変わったので、変わるということは、また変わるのじゃないかという疑念を起こさせますね。そういう面からして、世の中というものはくるくる変わっていきますから、万般の事態を考えて、政府としては生命、自由、幸福追求の権利を国民に対して保障しておかなければならぬと思うわけです。
  120. 横路孝弘

    ○横路委員 台風の話をされましたけれども、それは自然現象なんで、われわれの社会というものは人間の力が支配できる社会なんですね。政治というものはそういうものでしょう。その自然現象にまかせておいて軍事力だけどんどん拡大するのではなくて、そこには政治によるコントロールというものがあるわけです。そうじゃないですか。まあ、こういう議論をしていても時間がもったないからやめますけれども、ただ、いまの潜在的不安が外部からの影響によって誘発されるというように書いてある。いま共産党の話が出ましたけれども、安保のときには国際的な共産主義のいろいろな脅威なんということが問題にされましたけれども、いまのお話ではまたそれを、十年前の話を持ち出したわけじゃないでしょう。
  121. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、歴史を回顧して申し上げただけであります。
  122. 横路孝弘

    ○横路委員 いろいろお話を聞いてみて、結局きわめてわずかの、もうほんとうに万に一つぐらいの可能性にこれからさらに強力な武装をして対処していくのだということに、何かここで議論されていることは結論が尽きるような気がするのですね。  そこで、先ほど久保さんの方からあとで出てくるだろうということがありましたけれども、その問題についてお尋ねをしていきたいと思います。  そこで、防衛力をもって対処すべき事態様相を限定して、それに対して必要なものを整備するのだとして、目的、態様、手段の限定された侵略事態ということをいっているわけですね。これはこの間の議論の中でも、まあせいぜい数個師団ぐらいだろうというようなお話もあったわけです。ここでちょっとお尋ねをしたいのですけれども、たとえば一個師団がわが国に上陸するというための必要な最低限度の兵力というものはどういうことになりますか。皆さんのほうでいろいろ、輸送船がどのくらい、兵員がどのくらい、支援の戦闘機その他がどのくらいというようなことは想定されているわけでしょう。
  123. 久保卓也

    ○久保政府委員 一個師団単位の必要な船舶というのは、私どもで算定しております。ちょっといま数字を持っておりませんので、あとでまた別のときにお知らせしたいと思います。  ただ、航空機の場合には、これは一個師団であれ数個師団であれ、とにかく作戦目的に必要なだけの出動が予想されますから、一個師団であるから何機であるという算定はできないと思います。通常は輸送船あるいは商船を利用して、何隻分であるかというようなことは算定いたしております。
  124. 横路孝弘

    ○横路委員 それじゃあとでお知らせ願うことにして、この目的、態様並びに手段ということで限定をしてありますね。先日の議論ですと、これのほかにさらに場所的な限定もたぶんあるのじゃないかと思うのですけれども、この目的、態様、手段には、それぞれどういうことを想定されているのか、その限定されたという意味をお話し願いたい。
  125. 久保卓也

    ○久保政府委員 その前に、いま一個師団の場合の船舶の数の御質問に対して、いまもらった資料によりますと、四十隻と想定しておるようであります。ただ、これは大きさが書いてありませんので、あまり意味がありません。  そこで、限定された態様でありますが、言うまでもなく、二次大戦の前と二次大戦後の戦争の態様はずいぶん違っております。二次大戦前でありますと、ヒトラーでありましてもナポレオンでありましても、モスクワまで行ってそれを攻め落とさないと国は滅びなかったわけであります。つまり城下の盟を立てさせ、その国の全土を占領するといったような事態、しかも無制限にその戦争が行なわれる。それは期間的にも手段的にも、つまりある時期にはガスも使われたこともあったわけですが、そういう意味で無制限な手段が使われておった。全土的な、国土全部を占領するということが目的とされた戦争が通常であったというふうに私どもは理解するわけです。しかも軍事能力だけでなくて、あらゆる手段がそこに動員された。したがって二次大戦のときに総力戦ということばがたしか使われたと思いますけれども、そういったような事態と二次大戦後では違うのではないか。これはもちろん必ずしも将来の情勢を特定のものときめつけることは困難であります。無理がありましょう。そこである程度のバッファーを考えておかなければいけませんでしょうけれども、しかしわれわれが限られた予算の中で防衛力整備するという場合には、やはり起こり得そうなこと、可能性のその中でも強そうな事態について考えるのが通常でありましょう。そうすると、二次大戦後の戦争というものは、この前は例示をいたしました。ほかにも例はありますけれども、ああいったような戦争が二次大戦後は行なわれておる。そこで日本についてどういうことかと申しますと、たとえば日本で北からも陸上攻撃が行なわれる、あるいは西についても中部日本についても上陸作戦が行なわれる、つまり日本全土を占領するというような趣旨の戦闘が行なわれるということは、われわれは考えない。あるいはまた、日本の侵略のためには半年も一年も二年もかかってもよろしいからとにかく侵略するんだ、といったような事態は考えない。これはいずれも三次防でいうところの通常兵器による局地戦の事態でありますけれども、その事態であってもなおかつ非常に広範な長期的な戦争、戦闘様相は考えられない。そこで、われわれ現在考えるところでは、そういった事態は考えない。三次防の防衛力整備の場合には、実体的にはそんな大規模なものを考えておったわけでは実はない。そこで実体に合わせまして三次防における表現をもう少ししぼって考える。しぼって考えると、一応の防衛力限度と申しますか目標数値というものがでてくる。その限度というものをしぼらないとなかなか出てこないという意味で、しぼってみたわけです。  そうすると、ただいまも長官が申されましたように、日本の上陸作戦が考えられるとすれば、一定地域、特定の地域である、一方面であるというようなこと、それから手段としましてはもちろん核兵器は使われないというようなことでありましょう。それから期間的には、いま申し上げたように半年も一年も続くというような事態は、あり得るかもしれませんけれども、可能性の少ないものと考えて、防衛力整備の前提としては、そういったきわめて長期的なものは考えない。比較的短期的なものを防衛力整備のほうでは考える。ですからもし実際の防衛戦争、防衛戦闘というものが長期化すれば、そのときに運用として考えていかねばならないわけでありますが、防衛力整備の前提としてはそういう限ったものを考えていくというようなことであります。
  126. 横路孝弘

    ○横路委員 それはそうすると、防衛力整備のこれからの装備内容を出すためにそちらのほうを前提にしておって、情勢判断その他のところをしぼったわけですか。
  127. 久保卓也

    ○久保政府委員 そういうわけではありません。要するに日本に対するポシブルな、可能性のある脅威としてはどういうものがあるか。その中でも比較的可能性の高いもの、比較的可能性の少ないものがありましょう。われわれは核戦争というものも可能性としては考えねばならないかもしれませんけれども、そういったようなものは防衛力整備の前提には考えないというように、まず防衛力考えるからには、その前提となる脅威の分析をする、その脅威の中で可能性の比較的高いものについて防衛力整備考える、こういう順番になるわけです。
  128. 横路孝弘

    ○横路委員 先ほどの議論にまた戻ってしまうのかもしれませんけれども、結局可能性としては非常に薄いし、紛争の発生の要因というのはないということなんですけれども、もし日本武力を行使しようなどという国があった場合は、それは必ずしもそんな一カ所だけの地域と場所と時間を限定をして、態様、手段を限定してやってくるなどということはあり得ないわけですね。そうじゃありませんか。だからそこのところがどうもごまかしのような気がしてしょうがないのです。どこか攻めてくる国があれば、もしほんとうにそういう可能性があるとすれば、それはやはり日本の国土全体における全面戦争以外あり得ないんじゃないですか。
  129. 久保卓也

    ○久保政府委員 そういう判断に立てば、防衛力整備はもっとばく大なものにならざるを得なくなると思います。しかし私どもは、たとえば国対国の戦争を考えてみます場合に、いまおっしゃったような、つまり第二次大戦中に日本は上陸をされませんでしたけれども、あの場合にまさに上陸を受けようとした。どこに上陸してくるかわからないような情勢であった。そういうような事態において、当時の陸軍が百万でしたか二百万でしたか、相当の兵力を国内に擁しておったと思いますけれども、そういった事態を考えるのは二次大戦後の情勢から見ると必ずしも常識的ではない。全土的な戦争が行なわれておりますのは朝鮮戦争くらいなもので、ベトナム戦争についてもある程度の聖域というものが設けられている。その他たとえば中東紛争につきましても、御承知のようにシナイ半島でとまっている。あるいは中印紛争がありました。これは国境を越えて中共が出てきまして、途中でとまりました。そのときに私は当時の制服の人から説明を受けたのは、これは中共側の補給線があまりに延び切って、そこでそれ以上の戦闘を継続し得ないのであろうという説明を受けたことがあります。しかし私はそういう判断には立たない、やはり国境紛争であるという——今日では当然のことでありますけれども、当時では必ずしもわかっておらなかった。そこであの場合も中共が目的とする範囲内に軍をとめるので足りたというように思うわけです。ですから先生がおっしゃるようなことも考えられます。考えられるけれども、そういうような考え方はとらないで、やはり一応戦後に多く行なわれた紛争の実態を見て、それに応ずる程度で足りるのではないかと考えたわけであります。
  130. 横路孝弘

    ○横路委員 長官に確かめておきたいのですけれども、昨年の三月十九日に自民党の安全保障調査会で「これからの日本防衛 ——四次防の整備計画策定の前提について——」ということでお話をなさっている。その中で結局、自衛隊というのは何に対処しようかというと、これからは万一外部から侵略があるとすれば、何らかの原因で国内の治安が乱れた場合に反乱分子に地方政権を樹立させた上で、これを外部から支援するというような形をとるのであって、艦隊が船団を組んで海洋を越えて来襲してわが国の本土に部隊を上陸させるというような形の侵略は目下のところ考えられない。したがって自衛隊はこのような事態に備えて訓練し、装備することが必要であるということを述べられていますけれども、結局このように理解してよろしいわけですね。
  131. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう内部的動乱というもの、それからそれに乗じて直接侵略を誘発するということ、その両方であります。
  132. 横路孝弘

    ○横路委員 この議論はこれで終わりにして、次に議論を進めていきたいと思います。  そこでことしの二月の十日あるいは三月の九日に参議院の予算委員会で、わが党の上田議員との間でオペレーションズリサーチについての議論が非常に興味深くいろいろと行なわれているわけでありまして、その点について防衛局長に少し事実だけ確かめていきたいと思います。  最初に42Mというリサーチですね。これは39Lと、二つ説明がございますけれども、この42Mというリサーチの目的は一体どういうことなのか、内容も含めて簡単でけっこうですから。
  133. 久保卓也

    ○久保政府委員 39Lの場合には、三次防の兵力を一応前提にいたしまして——これは防空作戦でありますが、防空作戦の場合の三次防の兵力を一応基準にいたしまして、つまりナイキ、ホークあるいはF104、F86といった戦闘機、そういうものの組み合わせによって日本に来襲が予想されまする航空機の性能、機数等、それからECM、電波妨害の機能、そういったようなものをかみ合わせて、一体どの程度撃墜し得るであろうか、どの程度の継戦能力——継戦能力というのは戦争を続け得るというか防空作戦を続け得る能力があるかということを判定したものであります。  それから42Mと申しますのは、新防衛計画におきまする兵力を一応基準にします。これはそれぞれの計画の前でありますから、若干数値をいろいろいじっております。つまり組み合わせをいじっておりますが、一応四次防におきまする兵力を基準にいたしまして、そして同じようにどの程度の撃墜率あるいは継戦能力があるかといったようなことを判定をいたしまして、そういうようなことによってどういうような兵器の組み合わせがよろしいか。つまり、戦闘機とそれからナイキ、ホークの組み合わせがよろしいか、あるいはレーダーサイトの抗たん性と申しますのは、レーダーサイトはどの程度生き残るであろうか、飛行場もしかり、そこでそういうような抗たん性に応じて今後どういう施策を講じなければならないかというようなことを検討するための一つのシミュレーションであったわけでありますが、もちろんこの種のORというのはインプットによってアウトプットは当然変わってまいります。ですから、これを断定的なものと考えるわけにはいきませんで、一応われわれが作業をする場合の一つの基準にいたします。実際に兵力算定をする場合には、いろいろな要素を加味しながら検討を続けるというような筋のものであります。
  134. 横路孝弘

    ○横路委員 したがって、42Mのほうは、これは一応、先ほども和田議員との間に、四次防策定について長官のほうから下におろして、それを上げてきていろいろ検討した結果こういうものになったというお話がありましたけれども、もっぱら具体的な武装力といいますか、そういう軍事能力の面を下から積み重ねてくるための一つの基本になっているわけですね、42Mというのは。
  135. 久保卓也

    ○久保政府委員 長官から指示される大綱になるような事柄はまた別にありまするが、そういったものの範囲の中で防空上限られた前提の中でどういう組み合わせが一番よろしいかということを作業するのは、これは制服技術サイドの問題であります。
  136. 横路孝弘

    ○横路委員 そこでその前提ですね。リサーチの目的はそういうことだ、結局四次防完成時のいろいろな兵力、特に航空兵力のいろいろな能力について検討されたということでしょう。それがこの目的になっているというお答えだったと思うのですけれども、その場合の前提としては、どういう前提でお考えになったのか。いま一つの前提としては四次防の完成時というようなお話があったと思いますが、そのほかにも前提になっていることがあったらお答えいただきたいと思います。
  137. 久保卓也

    ○久保政府委員 この場合の前提といたしましては、核兵器が使われないということ、それから日米安保体制がありまするけれども、このシミュレーションの中では米国が防空に寄与するという要素は捨象しておるということ、それから、部隊の展開をすでに完了しているものとして考えます。これはORでやります場合に幾通りもの侵攻方法を想定をするわけで、それに応じてそれぞれの計算をするわけでありますが、たとえば一方面に集中して来る場合でありますとか、あるいは全国的に散発的に来ます場合とか、いろいろな態様が考えられるわけでありますが、それぞれの態様についてはすべて事前に部隊の展開、つまりナイキ、ホークであれ、あるいは戦闘機の部隊であれ、必要な基地に配置をされているということが前提になっております。
  138. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、この参議院の予算委員会の議論によると、一応その前提としていまもお答えがありましたけれども、予想される脅威の量と質というものを見積もって、それに対してこちらのほうがいろいろなプランを立てて、そうしていま言った撃墜率といいますか、つまりどれだけの能力があるのか。また一応この答弁によりますと、三〇%をこえる、四〇%近い撃墜率というものが42Mの場合に、四次防完成時の場合にある、こういうお答えになっているようでありますけれども、そういうものとして理解してよろしいわけですね。
  139. 久保卓也

    ○久保政府委員 四〇%近いと申したのは上田委員が申されたのでありまして、私のほうとしては、三〇%かあるいは三割というのが、軍事常識的には続けて攻撃し得ないということが一応戦術的にいわれている数字である、そういった数字を若干上回るというふうに申したわけであります。
  140. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、その際の脅威の見積もりについて、参議院の予算委員会の答弁では大体六百数十機、六百四十機ないし六百六十機くらいというふうになっているようですけれども、それも間違いありませんね。
  141. 久保卓也

    ○久保政府委員 その数字も上田委員の数字でありまして、私は六百数十機と申したろうと思います。
  142. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから六百数十機でよろしいわけでしょう。  そこで、結局脅威の見積もりというのは、日本の状況の中で周辺国家をながめてみて、このお答えですと、非常に最大限のところに、つまり航空機の能力なりなんなりについては最大限のところに何か置いて想定された。それで六百数十機、しかもその機種としてどういうものを想定されているかというと、グラインダーとかフィドラーとか、かなり大型、中型の爆撃機とか、ミグ21とか23とか一番近代的な戦闘機を想定している。これも間違いございませんね。
  143. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのことばも上田委員が言われたので、私のほうは機種を申しておりません。
  144. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、機種は言っていないけれども、大体それで間違いないという趣旨の——考え得る飛行機を想定しての上田さんの質問に対してですね。そうすると、考え得る飛行機の想定というのは、別に仮想敵国の議論にここから入っていこうというのじゃなくて、つまりどういう想定をされて42Mというのはやられたかということをお伺いしたいわけなんです。飛行機の機種は問わぬとしても、いずれにしてもこの日本を取り巻く周辺のいろいろな飛行機の機種の中で最大の能力を持っているものをいろいろ組み合わせてつくった、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  145. 久保卓也

    ○久保政府委員 日本周辺諸国の中にありまする日本を侵攻し得る機種というものを想定して考えております。
  146. 横路孝弘

    ○横路委員 では、そこでこのリサーチの結果がつまり四次防の積算の根拠になっている。そのほか局長の答弁ですと、いろいろそれを参考にして、あと経費ワクの問題とか、人員養成その他の条件を加味して四次防というのはこれからつくりつつあるのだ。——これは三月の時点ですから……。そうすると、今後の四次防の原案というのは、これは一応42Mでやった積算というものを一つは参考にして、あとその経費ワクの問題なんかを加味してつくった、こういうように理解してよろしいわけですね。
  147. 久保卓也

    ○久保政府委員 単に経費ワクでありますとか、整備能力などだけでなくて、やはりたとえばナイキ、ホークなどでありますると、日本の政経中枢を一応はカバーしなければならないといったような面も考慮いたします。そういうようないろいろな要素を考慮して大体この42Mで出された数字の中で三次防あるいは新防計画がほぼ経費の中では妥当なものであろうという結論を出しておるわけであります。
  148. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、従来のいろいろな議論というのは、ともかく足りないのだ、先ほども長官おっしゃられました、あるいはGNPの何%という議論だったわけですが、ここでそういうような軍事能力というものを表面に出して議論したというのはやはり一つの新しい段階だろうと思うのですが、そうすると、このお話をお伺いしていて、先ほどの情勢認識の話と、それから42Mの中で四次防のいろいろな軍事能力の積算根拠としてやられた想定というのが全然違っているわけですね、六百数十機が……。六百数十機ということになると、どういうことなのかよくわかりませんけれども、周辺の軍事能力というものを国防白書で、「日本防衛」で見てみても、朝鮮民主主義人民共和国なんかの場合わずか五百八十機ですね。韓国の場合二百機でしょう。国府の場合四百十三機しか飛行機を持っていないわけですね。そうすると、六百数十機やってくるという想定そのものというのは非常に大空襲を想定しているわけですね。そうすると、いままでいろいろお話があった紛争生起の要因あるいは侵略のいろいろな目的、態様、手段におけるいろいろな限定というものは、やはりこれはごまかしになるのじゃないですか。
  149. 久保卓也

    ○久保政府委員 さきの防衛構想といまの六百数十機というものと合わないのじゃないかという御懸念があるようですが、私はまさにそこのところを言っているわけなんです。ケーパビリティー、能力というものが六百なら六百というものに合わされておる。六百機が来そうだということはプロバビリティー、蓋然性がある、来そうだということである。来そうだということだと、たとえば即応態勢をとっていなければいけないとか、いろいろな分野の準備がなければいけません。しかし、われわれは将来の問題として、ケーパビリティー、能力に対応することを考えるということですから、周辺の諸国の能力というものに対応するものを考えるということなんです。ところで、それでは限定された事態かどうかといいますと、二次大戦に日本は灰じんに帰しました。ああいったような事態になるであろうということは、私どもは考えにくい。しかしながらたとえば九州なら九州、北海道なら北海道だけが空襲を受けるか、そういう場合もあり得ましょう。しかしながらやはり一応たとえばゲリラ的に、散発的に全土的に攻撃を受けるということは当然前提として考えられる。これは陸上作戦と違って航空作戦の特殊性だと思うのですけれども、少なくとも二次大戦にわれわれが受けたようなああいったような焼尽作戦というものは考えにくいのではないか、しかしさればといって、航空攻撃、あるいは海上についても同じでありますけれども、その攻撃が一定地域だけに限られるか、この点についてはそうではありません。しかし陸については一方面に対する攻撃であろうというふうに考えるわけです。
  150. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると先ほどの、われわれは戦略守勢の方針のもとに局地戦以下の侵略事態に有効に対処をするということで、目的、態様、手段等について限定された事態の想定というのは、陸上自衛隊についてだけなんですか。
  151. 久保卓也

    ○久保政府委員 ですから、いま申し上げましたように、たとえば航空作戦について申しますと、これは例はちょっとまずいのですけれども、横路委員が言われましたように、もし日本を侵略しようと思えば、日本を全部とってしまうだけの兵力を集中するかもしれない。したがって、たとえば動員をかける、あるいは急速に生産をして装備をふやす、あるいは他の地域から部隊を転用して持ってくるということになりますると、われわれの対象に考える兵力というものは非常にふえてくるわけであります。つまり現在各国に、わが国の周辺にどれくらいの兵力があるということだけでは足りなくて、それに上積みされてくるわけであります。しかしそういった事態は考えません。一応わが国の現在あるいは将来のある時点においてわが国の周辺に存在をしておる兵力の中で、その中で日本に指向される兵力を脅威の前提として考えるということで、それが非常に大きく増強されてわれわれに向けられるということを考えていない、そういうことであります。
  152. 横路孝弘

    ○横路委員 結局、先ほどの42Mについての前提としては、たとえばアメリカ軍の航空兵力というものは考えていないわけですね。さらにECMとかECCMを使用するとか、いろいろな前提があったようでございますけれども、そういう前提の上に、要するに防空というのは六百機ないし七百機、その中間くらいでやってきても、しかもその飛行機の機種が一番最新鋭の新しいやつ、爆撃機から戦闘機も含めてそういうものがやってきたとしても、それに対処するだけの力というものが、撃墜率が三〇%をこえているわけです。対処し得るのだ。そういう想定のもとに四次防の完成時というものを想定しているのだ、こういうふうに理解してよろしいわけでしょう。
  153. 久保卓也

    ○久保政府委員 大体世界の常識的といわれる三割はこえそうであります。しかしながら継戦能力、つまり戦闘が何日も何回もずっと続いていくという場合においては、これはわがほうの抗たん性、兵力の抗たん性という面において欠ける面があるので、そういう意味での継戦能力というものにおいてはまだ十分でないという結論が出ております。
  154. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、これは長官にお尋ねしたいのですけれども、いまのお話ですと、ともかく大空襲に対処するだけの力を備える、これが四次防の完成時のいまのお話ですね。そうすると、先ほどからお伺いしていますけれども、情勢分析なり防衛構想というものと装備計画というものと、ぱっと一読したときにつながらないというのは、実際皆さん方がお考えになっているのはそうじゃないからでしょう。装備計画の内容、その基本になっている兵力分析というのはいま局長からお話があったとおり。しかし情勢分析はそうじゃないですね。だからそこをはっきりさせたらどうですか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり憲法の許容する範囲内の自衛権発動ということで許されている範囲のミニからマキシが入っている、そういうことであります。
  156. 横路孝弘

    ○横路委員 憲法論を聞いているのじゃなくて、それはあとでゆっくりやりますからいいのですが、そうじゃなくて、この「日本防衛」という国防白書にしても、あるいは「新防衛力整備計画」という四次防の原案にしても、そこで国民に皆さん方が出しているいろいろな予想、こういうものに自衛隊は対処するのだというものと、実際に四次防の中でやられようとしているそういう想定とが違うじゃないですか。だからそこのところをごまかされないで、はっきりするならさせたほうがいいじゃないですか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 違っているとは思いません。つまり極東情勢見通し、それからわがほうが対処しようとする事態、そういうものはミニからマキシまで、それも限定された範囲内のものであって、マキシばかりいっているとミニは閑却されますが、ミニばかりまたいっていますとマキシが閑却されます。要するに間接侵略、直接侵略に抵抗できるわれわれの力を培養しようとしているわけです。
  158. 横路孝弘

    ○横路委員 そのマキシマムに対して対処しようとするのが四次防だ。少なくとも航空兵力についてはそうだということになりますね。
  159. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは次の防衛力整備計画で想定した範囲内に対するマキシ、ミニという意味であります。
  160. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、まだいろいろな事態に対処するだけの力を備えていこうということですか。
  161. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり十年計画の前期の性格を持っていますから、一応この程度までは整備しようというものから見れば、この新防衛力整備計画でいろいろ装備をしようとしているものが、それだけで一〇〇%でないわけであります。七、八合目と私は言っております。それはわれわれがたくわえようとする力がそういうことであるということです。しかし客観情勢見通しというようなものはさほど大きく変わらないけれども、五年ぐらいはたぶん変わらないといえますけれども、その次の後半の五年というのは、ちょっとここで予想しにくいんですね。だから条件にして変化なくんばと、そういうことで言っているわけです。
  162. 横路孝弘

    ○横路委員 私がお尋ねをしているのは、目的、態様、手段等の限定された事態に対して対処するのが四次防だというように、この原案でなっているわけです。ところが、いまのお答えだと、そうじゃなくて、マキシの脅威に対して対処するのが四次防なんだ、これは違うでしょう。
  163. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは限定局地戦ということを対象にして、その中のミニからマキシ、そういうことを言っているんです。
  164. 横路孝弘

    ○横路委員 それはそうじゃないじゃありませんか。42Mのリサーチの中でやっている想定は違うわけです。それは事実としてお認めになりませんか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いろいろな資料をつくるためのORとかコンピューターを使う仕事は、あらゆるケースを想定してやってもいいと思いますし、またやることがあると思うのです。しかしわれわれが計画として策定していく、まとめ上げていくというときには、いま申し上げたような限定局地戦ということを頭に置いてやっているのです。
  166. 横路孝弘

    ○横路委員 それが42Mの四次防の積算の根拠になっているということは、参議院のほうで御答弁なさっているわけです。私が言っているのは、そういう想定はけしからぬとか仮想敵国がどうだということは——従来足りないから足りないからとおっしゃっていて、今度も足りないということだけれども、少なくとも周辺の一番新型の爆撃機なり新型の戦闘機が六百機ないし七百機やってきてもだいじょうなような組織になっている。四次防の完成時において三〇%の撃墜率ということからいけば、そういうことなんです。そこのところをごまかさないで、きちんとやったほうがいいです。そこのところを皆さんが一歩前進するという意味でお尋ねしている。
  167. 久保卓也

    ○久保政府委員 御質問は必ずしも私の答弁をそのまま受け取っておられないのです。つまり長官も言われましたように、限定された事態に対してマキシマムの事態を考えているということを言われました。つまり限定された事態というのは、さっきも言いましたように、日本の周辺にある軍事力というものが、それ以上特に増強はされないという前提に立つわけです。実際に増強されるかもしれませんが、増強されないという前提であります。具体的に申せばわかるわけでありますけれども、そういう意味において、日本の周辺に特定の時期に、将来予想し得る、存在しておる兵力を一応前提にするということであります。それに対してわがほうで一応計算したところでは、これは計算でありますから絶対に確かとは申しませんけれども、三割程度一般的常識をこえている。ですが、さっき申し上げたように、継戦能力には欠けるということですから、だいじょうぶな兵力にはならないということであります。
  168. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、六百ないし七百の大型の一そこにこだわるわけでありますけれども、その戦略爆撃機から最新鋭の戦闘機を含めてやるのが、それが限定された事態なわけですか。先ほど目的、限定手段についていろいろお話をお伺いしたけれども、そんなお答えじゃなかったように私は聞いておった。
  169. 久保卓也

    ○久保政府委員 速記録をもう一度全部最初からお読みいただくと御理解いただけると思うのですけれども、航空作戦の場合にこれはいろいろな態様が考えられる。特にたとえば一定の地域に対する上陸作戦が考えられる場合には、主たる航空攻撃の方向はその特定地域に向けられるでありましょう。だからといって、ほかの地域に航空攻撃が行なわれないという意味ではない。しかしこれは当然作戦の常道として、いろいろの日本側の後方補給面をたたく場合もあるでありましょうし、あるいはゲリラ的な攻撃もあるでしょうし、日本国民の士気を落とさせるという意味での攻撃もあるでしょう、いろいろの態様が考えられる。しかしながら、第二次大戦のような、わが国の至るところが全部焦土に帰するような攻撃を受けるといったような事態は考えておりません。ですから、相手方の兵力のありようについても、また攻撃のしかたについても、ある程度の限定はあるでしょう。ただ、特にそれが顕著に出てくるのは、陸上作戦の場合にきわめて顕著に出る。ですから、陸上、海上それから航空というのは、先ほども申し上げましたが、それぞれの態様が違っておるわけであります。
  170. 横路孝弘

    ○横路委員 先ほどお尋ねしたのは、実はここのところで議論しようと思って出したわけですが、防衛庁長官が昨年の三月十九日「これからの日本防衛」という中で言われたこの事態というのは、基本的には、限定された内容をここでお話しになっていると思いますけれども、国内の治安が乱れた場合に、そういうものを、反乱分子の地方政権を樹立さした上でそれを支援をするという形をとってやってくるのであって、艦隊が海を越えてやってきたりするような事態というのは考えられない。したがって、自衛隊が対処しようというのはそういう事態ですね。そういう事態というのは、文章上外部から支援をするというような、そういう想定事態に対して訓練をし装備することなんだというように明確にお話しになっている。私がお伺いしたのもそこなわけです。そうすると、いまのお答えとはやはり違ってくるわけです。
  171. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう場合にもあり得るわけです、数個師団で来るというのは。つまり、それが誘発して外部からの直接侵略を引き起こす。もし起きている場合には、向こうだって、そうむざむざ人間を置いていったり殺したりするようなことはしないでしょう。そういう意味から、やはり数個師団で来るということは、そういう場合もあり得ることです。
  172. 横路孝弘

    ○横路委員 どうもそこのところが、やはりこれをだれが読んでも同じように抱く疑問ですね、この原案を読んで。つまり最初情勢判断防衛構想というところと、それから以降の装備計画というものがどうもすうっとこない。ここに飛躍があるわけです。その飛躍がどこにあるのかということは、私この参議院の議事録を読んで、やはりここにごまかしがあるから、これが当然飛躍になって出てくるのだというふうに考えたわけです。六百機、七百機の空襲というのはベトナム戦争あたりではどうですか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近の近代戦を見ますというと、いわゆる大国というものは一挙に集中して兵力を使うので、散発的な使い方はしないのです。これはアメリカを見てもあるいはほかの国を見ても同様です。朝鮮戦争あるいはそのほかの戦争を見ても同様です。イスラエルとの中近東戦争を見ても同様です。つまり非常に集中型、集約型の、大量兵器を一地点に対して使う、こういうケースが多いわけです。
  174. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、そういう大国の集約的な兵力のいろいろな侵攻に対しても対処するだけの力を持つ、これが四次防だということで次の質問に入っていってよろしいですね。
  175. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 限定局地戦というものを想定した場合にそういうものもあり得るという意味であります。
  176. 横路孝弘

    ○横路委員 どうも従来から防衛問題というのは、議論しても生産的ではないわけですね。非常に消耗なのですよ。ほかのいろいろな問題ですと、われわれのいろいろな政策なり何なりというものがある程度、論理的に話をするというとわかっていただけて、政策に反映する余地というものがあるのですけれども、内閣委員会をはじめとして、防衛論議というのは、過去の議事録を見ても、非常に非生産的で、聞いているほうも非常に消耗だろうと思うのですよ。どうもそういうようなことになってしまうわけですね。だから、そこのところを、私はこの参議院の予算委員会の議論というのは、一歩前進さしたという意味では、また新しい問題提起だ。議論の場というのも、こういう議論の場だってあるわけですからね。ですから、その辺のところを実はもう少し明確に御答弁いただけると、またもう一つ違った面での防衛論争というものができると思うのですけれども、どうもそれをおやりにならないですから、そこで従来の型に戻って、少し憲法論と法律論に入っていきたいと思うのです。  法制局の方見えていますね。最初確認だけでよろしいのですけれども、憲法論として、自衛隊というのは、自衛のための必要最小限度の実力組織である、つまり自衛という主観的目的のほかに、必要最小限度のという客観的要素、この二つが必要だというのが従来の確定した解釈としてよろしいですね。
  177. 荒井勇

    ○荒井政府委員 憲法第九条第二項の規定は主権国家として固有の権利と認められるところの自衛権を否定するものではないという見解の上に立って、その結果として、おっしゃるようなことに大体なるということだと思います。
  178. 横路孝弘

    ○横路委員 さらにこの二項のほうの戦力というのは、いわゆる近代戦を遂行し得る装備編成を備えているそういう実力組織だ、したがってそれに至らないものが自衛隊なんだというのが、これまた従来の確定した解釈だったわけです。それもよろしいですね。
  179. 荒井勇

    ○荒井政府委員 憲法がわが国の保持することを禁止しているところの戦力というのは、国の自衛のため必要かつ相当限度を越える武力をさすということでありまして、その限度内にとどまるものであるという限りにおいてこれを保有するというのは、憲法の禁止するところではないということであります。
  180. 横路孝弘

    ○横路委員 あなたはいま必要かつ相当とおっしゃいましたね。必要かつ最小限度じゃないのですか、従来の解釈は。
  181. 荒井勇

    ○荒井政府委員 相当というのは、わが国の置かれた情勢のもとにおいてその限度を越えないという意味相当だということですから、その限度を越えないという点は、表現すれば、もとより必要最小限度ということになろうと思います。
  182. 横路孝弘

    ○横路委員 それじゃ、必要かつ相当なんと言わないで、従来の確定した解釈として必要かつ最小限度というのがあるのですから、そうおっしゃったらいいのじゃないですか。どうですか。重ねてそれを確認しておきます。
  183. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その限度というものは、わが国の置かれている客観的な情勢というもとにおいてその最小限度と認定していいということが相当であるといいますか、最小限度といっても、客観情勢と離れて抽象的に最小限度というものはないという点は御理解をいただけると思うわけでございますけれども、周囲の情勢から見てこれだけ持つことはやむを得ないというのが、まあ表現すれば最小限度といえますが、それは相対的な関係といいますか、周囲の情勢との関係で保持することがやむを得ない、合理的な相当範囲だということであろうと思います。
  184. 横路孝弘

    ○横路委員 どうも何を言っているのかよくわからないのですけれどもね。どうして必要最小限度というふうにお答えできないのですか。変えたのですか、解釈を。
  185. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点はいままで答弁したところで申し上げているつもりでございますけれども、それは必要最小限度と答えても全く同じことでございます。
  186. 横路孝弘

    ○横路委員 どうもそこに心配があるのは、実はいま新潟地方裁判所で小西誠という被告に対する自衛隊法違反の裁判をやっていますね。きのうも法廷があって、新聞を見ますと、釈明命令が裁判所のほうから検察、国のほうに出されたわけでありますけれども、この釈明事項の中で、実はいまあなたのおっしゃっている客観的要素というのは全く落とした釈明をしているわけですね。これは当然法制局のほうとも調整なさった上で書かれた釈明書でしょう。
  187. 荒井勇

    ○荒井政府委員 私のほうは存じておりません。
  188. 横路孝弘

    ○横路委員 法制局のほうは、この釈明書については何も関与していない、こういうことですか。
  189. 荒井勇

    ○荒井政府委員 法務省の官房訟務部が主体になってやっているということでございまして、私ども法律案なり政令案の審査の事務に当たっている部局といたしましては、相談にあずかっておりません。
  190. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで防衛庁長官にお尋ねしますけれども、この「日本防衛」の中でも、憲法上の限界として自衛のため必要かつ最小限度というのが落ちているのですね。これはどういうことで落としたのですか。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はその原文をつくっておりませんから、本人の意思はよく知りません。しかし私はそれはもう当然のことで、憲法第九条の解釈は、自衛権の発動、緊急避難、そういう場合に限定されておるのであって、もうそれは当然の前提と思われているんじゃないですか。
  192. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、法制局のほうに確認しておきますけれども、自衛隊の憲法で認められている範囲というのは、自衛目的というほかに装備なり能力なりが近代戦を遂行し得るだけの力に至っていないこと、そして必要最小限度の力であるということ、それが要素であるというように解釈をしてよろしいわけですね。
  193. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点は従来から答弁してまいりましたところで、変わっておりません。  それから、先ほど法務省の官房訟務部と申し上げましたが、これは民事事件と誤解いたしておりまして、刑事事件でございますれば、もちろん検察庁という組織のもとで検討されていろいろ訴訟手続等を準備されていることと存じます。
  194. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、こういう解釈から、他国に脅威を与えるような力あるいは攻撃的な兵器は持てないというようなことになってきているわけでしょう。従来の国会議論というのは、個々の兵器についてこれは攻撃用か防御用かという議論がなされてきたわけでありますけれども、トータルな力として、やはりそのトータルな力についても憲法上の制約というものは入るわけでしょう。制限というのは、つくわけでしょう。
  195. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点は、個々の装備につきましても、全体的に評価した場合におきましても、そういうことになりますが、わが国としてはそういう侵略目的のためあるいは国際紛争の解決のために力を使わないということをいっておりますから、その基本線の範囲内で当然考えていくべきものであるというふうに考えます。
  196. 横路孝弘

    ○横路委員 その主観的な要素じゃなくて、客観的な要素というのも憲法上の制約を受けているんだということについては、確認されてよろしいわけでしょう。しかも私が聞いているのは、個々の兵器ばかりではなくて、トータルな兵器そのものについても、そういう憲法上の制約というものはかかってくるんだということについてもよろしいわけでしょう。
  197. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点は客観的に考えましてもやはりそういう他国を脅威するような装備であるというふうに全体的に考えられるというものは、憲法で認められるところの必要にして最小限度というものに当たらない。それはその具体的な内容たるやそのときどきの国際情勢なり国際環境のもとにおいてきめられるべきであるというふうに考えます。
  198. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、先ほど来議論を聞かれたと思いますけれども、日本の場合一応数個師団程度の上陸というようなことを限定された事態として考えている、脅威として考えているわけですね。だから対抗するものとしていろいろな武力を持っているわけですね。そうすると、たとえば客観的な力として日本が周辺他国に上着陸できるようなトータルな力を持つということも、これは憲法上のいろいろな限界、いまおっしゃった話から考えると脅威の内容として考えてよろしいわけですね。
  199. 荒井勇

    ○荒井政府委員 海外に侵略行動を開始するということは、憲法でも認められておりませんし、そういうような武力というものをそういう目的をもって保有するということは、当然もとよりのこととして認められないわけでございます。
  200. 横路孝弘

    ○横路委員 その意思は別として、ファントムのときに爆撃機論争というのがあったでしょう。あれはやはりそれだけの脅威を与えるからということではずしたわけですね。だから個々の兵器についていままで議論してきたわけですよ。そうじゃなくてトータルな兵力として周辺国家に、たとえば日本数個師団上陸させるだけの力を持っているということになれば、それはその国民に対して脅威を与えるということになりますね。そういう輸送力なり兵力を持つということは、それは憲法上認められないというように考えてよろしいのでしょう。
  201. 荒井勇

    ○荒井政府委員 そういうそのときどきの国際情勢なり国際環境のもとで、具体的にどのような情勢になっているか、どういう防衛力というものの保持が許されるかというのは、第一次的にはその専門の行政部門を所管している防衛庁判断するところであると思いますし、さらにそれは国防会議等に諮問をし、それから最終的にそれを具体的にいたします場合には予算措置なりあるいは法律の一部改正というような措置によって国会の御承認を得なければならないというものでございますので、そういう諸機関判断によって、さらにそれは国民によって最終的に支持されるかという問題もございますけれども、具体的な国の行政のあり方として考えますと、そういうことになろうかと思います。
  202. 横路孝弘

    ○横路委員 私はその憲法判断だけ聞いているのです、法制局ですから。ですからファントムの場合は、あるいはいろんな航空母艦についても、従来の議論というのは、それが他国に対して脅威を与える、これは憲法上許されないんだ、憲法上歯どめとして認められなかったわけでしょう。ファントムから爆撃装置をはずす問題にしたってそうですよ。そういう個々の兵器ではなくてトータルな兵器として考えた場合は、そういう周辺国家に上陸するだけの力を持つということはやはり脅威を与える。これは自衛の問題について、憲法上の問題として、それは許される範囲を越えているというように解釈をしてよろしいのかどうかというように聞いているわけです。
  203. 荒井勇

    ○荒井政府委員 自衛のために保持することが許される限度というものを越えるということになるとすれば、それは憲法上許されないということになろうと思います。
  204. 横路孝弘

    ○横路委員 だからその場合は装備についても能力についても制約があるわけでしょう、憲法上。だから私具体的に聞いているのは、いまの四次防で想定している、あるいは日本の場合が想定している脅威というのは、しかも万が一の可能性の問題として、せいぜい見積もって数個師団が上陸してくることだというように防衛庁のほうでは答えているわけですね。逆にわれわれのほうから数個師団上陸するだけの力を持つということは、これは憲法上の議論として——意思は別ですよ、意思だけで判断するならこれは別な議論。そうじゃなくて、あなたは先ほどから意思ばかりじゃなくて客観的な能力というものも憲法上の制約に入るんだ、こうおっしゃっているから、しかも戦力については近代戦を遂行するだけの組織的な力というのが戦力です。自衛隊はそこまで行っていないということは憲法上の解釈として確定している。したがってそういう数個師団を周辺諸国家に上陸させるだけの力を能力として持つということは憲法上の制約を受けることになりませんかと聞いている。
  205. 荒井勇

    ○荒井政府委員 憲法解釈論としては、自衛のため必要な最小限度武力というものを越えるとすれば、それは憲法の認めるところではないというし、その範囲内であるとすれば憲法によって認められるということでございまして、それが具体的な数量的なものがどういうものであるかというのは法制局が判断することではなくて、それぞれの行政機関なりあるいは国会というものが最終的にはおきめになることだというふうに考えます。
  206. 横路孝弘

    ○横路委員 数量の問題を聞いているのじゃなくて、そういう周辺国家に上陸するだけの力を持つということはどうなんですかと言っているのです。これは高辻長官のいままでの発言があるわけですよ。ほんとうはおられると一番いいわけですけれども、それはあとでお伺いしますが、それはどうなんですか。私は、別に数字でもってどうだということじゃなくて、そういう客観的な力を持つことはどうなのかということを聞いている。
  207. 荒井勇

    ○荒井政府委員 そこは、自衛のため必要な最小限度武力というものは、その周辺国家の中で考えられる最も大きい蓋然性のあるその対象というものを中心にして考えますと、それはその周辺国家の中にはそういう大きな装備を持った、そういう大きい武力を持った国だけではないという意味で、その小さい装備なり武力を持った国との関係でどうなるかという問題は御指摘のような点があろうと思いますけれども、憲法上では、その最大の蓋然性のある侵略の可能性というものに対してもそれは備えることが必要かつ不可欠であるというものであるとすれば、そこまでの保有は認められて、それをいかに運用するかというのはコントロールの問題ではないのかというふうに考えるわけでございます。
  208. 横路孝弘

    ○横路委員 それは衆議院の予算委員会で四十二年三月二十八日ですか、猪俣さんとの間で議論がある。議論がある中で高辻長官はそんなことを言っていないのですよ。一体どこまで用意できるかというのはいろいろな問題がある。これは猪俣さんが暴力団のケースを出して、従来もよく出されておりますけれども、甲という暴力団、乙という暴力団がお互いに相克していた、乙がやってきそうだということでいろいろ日ごろから訓練をして、Aの入り口から入ってきたとき、Bの入り口から入ってきたとき、こういうぐあいに備えるという訓練をしておったわけです。そこへやってきたわけです。そこでいろいろ乱闘になった。その備えていたほうの暴力団が正当防衛を主張したことに対して、裁判所はだめだと言っているのです。それは正当防衛にならぬ、こう言ったわけです。そのことを例に引かれて猪俣さんが議論をした。そのときに高辻さんは、どういう用意ができるかというのが問題なので、非常に大きな侵害に対して兵力を持って用意して、いつでも来たらこれに対してかかるという意味の戦力というものは、これはだめなんですよと言っている。つまり、自衛のためといったって、そこに客観的な能力として限定があるということを、こういうことばで表現をしている。  そうすると、いまの発言というのは違うじゃないか。自衛のためであればいいのだという、そうじゃないのですよ。だから私のほうは聞いている。個々の兵器についてじゃなくて、そういうトータルの、いま自衛隊の持っている力はそれは別にして、そういう数個師団を上陸させるだけの力というのは、いまおっしゃったように周辺国家にもたくさんあるわけですね。その辺のところはどうなんですか。
  209. 荒井勇

    ○荒井政府委員 長官が答弁されておりますのは、わが国が国権を発動する武力の行使は、他国から武力攻撃を加えられた場合において、自国の防衛の正当な目的と限度にとどまらない限りはとうてい九条一項が許すとはいえないというところから発してまいるわけでございまして、個々の保有する兵器等についてもその限度があるということと、それから一国防衛の正当な目的と限度を越えるものはわが憲法がその保持を禁止すると考えるべきものである。その一国防衛の正当な目的と限度をやはり越えることがあってはならないということを繰り返して答弁申し上げておりますけれども、基本的にここで答弁されているとおりだと思います。
  210. 横路孝弘

    ○横路委員 いまのその前の答えはそうじゃなくて、私の聞き違いでなければ、意思だけの問題として片づけたわけでしょう。そうじゃなくて、その能力が問題なのだというわけですよ。時間がございませんし、いずれまた法制局長官がお見えになったときお尋ねを続けていきたいと思いますけれども、もう一度あとでここの議論は出てまいりますから、そのときまた続けていたします。  そこで今度は自衛権発動の要件について、これも確認だけでけっこうですけれども、国連憲章の五十一条で、武力攻撃が発生した場合には自衛権を有する、発動し得るというような規定になっていますね。一方、自衛隊法七十六条の場合には、外部からの攻撃のおそれがある場合は防衛出動ができるというふうに規定されているわけです。ここのところの議論が、昨年の二月二十六日あるいは三月十八日、楢崎委員との間に衆議院予算委員会でいろいろ議論があったのですけれども、従来の議論を見てきても非常に混乱していると思えるわけです。すなおに解釈すれば、七十六条も自衛権行使の一つの態様として防衛出動があるというように考えれば、おそれありということで、なぜこの憲章が削ったのかというのは、いわゆる侵略行為を行なうというのを規制をしようということですね、そういう目的のための規定だと思うのです。そうすると、自衛隊法七十六条というのは、やはりすなおに解釈すれば憲章五十一条に反するということになるのじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  211. 荒井勇

    ○荒井政府委員 防衛出動いたします要件として「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」と書いている点はどうかということでございますが、防衛出動するという場合に、必ず自衛権を発動するとは限らない、ただそれは、そのまま状態が悪化して自衛権の発動をやるという場合もありますし、それはおそれのある段階で、現実に侵害があった後に出動しただけでは場合によっては間に合わないということもあり得るというので、防衛出動をするけれども、自衛権の発動には至らないでとまるという場合もあるわけでございます。そういう蓋然性ということを考えると、おそれのある場合というものも全然否定するわけにはいかないけれども、それが常に武力行使あるいは自衛権発動ということに必ずしもつながるものでもないという点で、少し国内立法の場合には、憲章五十一条の規定との間にズレといいますか、観点の差があるのではないかというふうに考えます。
  212. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、この防衛出動の場合は自衛権発動の三要件といわれているものはかかるのですか、かからないのですか。
  213. 荒井勇

    ○荒井政府委員 それは防衛出動したあと、具体的に自衛権を行使するという場合に、もちろんおっしゃるような三要件がかかるということでございます。
  214. 横路孝弘

    ○横路委員 それはもう、自衛権発動の場合はかかるわけですけれども、防衛出動の場合はかからないということですか。
  215. 荒井勇

    ○荒井政府委員 それは、防衛出動だけの要件としてはその自衛権行使のいわゆる三要件というものはかかりませんで、自衛隊が現実に武力を行使する場合にその三要件が必要だという意味で先ほどお答え申し上げたわけでございます。
  216. 横路孝弘

    ○横路委員 その辺のところが、これは四十四年の七月十日の参議院の内閣委員会のときのおたくのほうの答弁とは違っていますね。おたくのほうでは、自衛権を行使するためには、常々申し上げておるような厳重な要件がある、その要件に該当して初めておそれのあるという事態のもとで防衛出動し、自衛隊がそういう厳重な要件を備えるという事態に至って、その段階において現実に自衛権を行使するという、二段においてかかるような答弁があるわけですけれども、さらに昨年の二月二十六日の高辻さんの答弁では、自衛権を発動する際の行動の一つとして防衛出動があるのだ、こういう答弁もされているわけです。その辺のところは整理するとどういうことになりますか。
  217. 荒井勇

    ○荒井政府委員 自衛権行使の三要件として、急迫不正の侵害があることというのが第一要件でございますけれども、その急迫不正の侵害、すなわち「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」ということで書かれておりますから、それは侵害が起こる可能性が非常に強いという、そのおそれがある段階防衛出動というものを命ずることができる。ただし、それは一定の手続を経て行なわれますから、そう荒唐無稽なことは毛頭ないのはもとより、非常に合理的に考えてやむを得ない場合であるということであるというふうに考えるわけでございまして、実質的に、現実に万一行使される、発動が行なわれるという場合を考えますと、その場合も実質的には急迫不正の侵害があるというのにひとしいといいますか、そういう事態でなければ防衛出動というものは行なわれ得ないであろうというふうに考えるわけです。
  218. 横路孝弘

    ○横路委員 結局、それはかかるんでしょう。七十六条のほかに七十七条という規定もあるのですよ。
  219. 荒井勇

    ○荒井政府委員 二月の二十六日でございますかの高辻長官の答弁の中で「確かに御指摘のように、七十六条には「防衛出動」として「おそれのある場合」が入っております。しかし、防衛出動する場合に、常に武力攻撃するとはむろんきまっておりませんので、防衛出動武力攻撃とは同じレベルの問題ではございません。したがって、防衛出動をしました後に武力攻撃の必要があるかどうかは、もとより別途に考慮すべき問題だと思います。」こう答えられております。その防衛出動をしました後に、武力攻撃といいますか、自衛権の発動をするということについては、それはまあ別個に考慮すべき問題だという意味で、そこに要件について若干の差の点があるということを言外に言われておられるというふうに思います。
  220. 横路孝弘

    ○横路委員 その前からの解釈というのはともかく、いろいろこれはよくわからないのですけれども、これは実は、あとから議論するのに必要だから聞いているわけで、防衛出動の場合は、自衛権の急迫不正の侵害というようないろいろな要件、これは七十七条の準備行為という規定があるわけなんですよ。そうすると、まず、かかるのかかからないのかという点が第一点。それから、第二点の、一番初めに私がお伺いした防衛出動ですね。これはおそれのある場合も出動できる、憲章の自衛権発動とは違うのだという考え方ですね。それはそういうお答えならそれでよろしいのです。かかるかかからないのかという点だけもう少し明確に、いま言外にかかるという趣旨のようでありますということのようですけれども、従来からやはりこの問題というのは議論されているわけですから、私は、その確定した解釈だけぽっぽっとやってもらって、そしてあとで本筋の議論をしたいわけなんです。もう時間もだいぶ迫ってきたのでひとつ簡明にお答えをしていただきたいと思う。
  221. 荒井勇

    ○荒井政府委員 武力の行使を前提として防衛出動する場合には、その三要件というのはいずれの場合にもかかっているということが言えると思います。  それから、七十七条を御指摘になりましたけれども、七十七条の防衛出動待機命令は、防衛庁長官防衛出動命令が発せられることが予測される場合において待機命令を出されるということで、その防衛出動内閣総理大臣が命ずるものであるというのと対比いたしますと、それはもとより質的な差異があるということだと思います。
  222. 横路孝弘

    ○横路委員 それから、この点をちょっと確認しておきたいと思うのです。そうして、次の問題に移ります。  自衛権の行使し得る地域については、たとえば参議院の予算委員会、三十九年ですが、池田内閣総理大臣は、範囲は国内に原則的には限るべきだ。それから、当時の法制局長官林さんも、やはり日本の国土に対する攻撃というのは、現実にあったそういう現実的な攻撃に対抗するということで、原則というのは領土、領海、領空の範囲であるということ。原則はそうなんだ、ただ一歩も二歩も出れないのかといったら、そうじゃなくて、攻めてきた、たとえば領海外から撃つこともあるわけだから、その場合において出ていける、というような解釈になっているわけです。そのような解釈でよろしいのですね。
  223. 荒井勇

    ○荒井政府委員 原則はそのとおりでございます。
  224. 横路孝弘

    ○横路委員 つけ加えておけば、四十三年のときには、これは三木さんが外務大臣ですけれども、自衛権の行使というのは、日本の施政権の及ぶ範囲に限られているんだ。攻撃があってもそれ以外には出ていけないんだ。日本自衛隊というのは、憲法その他の解釈でいわゆる領空、領海以外には自衛隊は出ていけないのだ。こういう答弁さえも、これはわずか三年ほど前に、参議院の予算委員会で森中さんの質問に対して答えている。原則はそのとおりだ。それはそれでよろしいわけですね。  そこで、次の問題は、武力攻撃の発生という問題ですね。ここにおられる楢崎委員が三つの場合を想定をしていろいろと質問をされたあの統一解釈とその統一解釈に対する議論というのは、幾ら読み返してもわからぬわけですけれども、結局、あの統一解釈というのは、三つの場合の一番初めの段階、無電を打ったという段階でも、これは解釈の解釈になりますけれども、否定はしていないわけですね。
  225. 荒井勇

    ○荒井政府委員 昨年の三月に統一見解として出しましたことは、そういう無電が発せられたというような時点でその武力攻撃が発生したというふうに考えるというのは適当ではないということでございます。
  226. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、これはだめだというわけでもないわけでしょう、この統一解釈からいくと。
  227. 荒井勇

    ○荒井政府委員 このときには、三つの場合を想定して議論になったようでございますけれども、政府としては、こういう場合に武力攻撃の発生がある、したがって、自衛権発動がその時点でできるというふうに解釈するあるいは論ずるということは適当とは考えないということで結論を示しているということでございます。
  228. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、この武力攻撃の発生という解釈ですね。これは現実の損害というものは必要でなくとも、現実の侵害行為というのは必要なんでしょう、武力攻撃の発生というものを解釈をする場合に。
  229. 荒井勇

    ○荒井政府委員 やはり自衛権発動のための要件としての武力攻撃が行なわれて、そこに急迫不正の侵害があるということは、それは行使の要件として考える限り、そういうおそれがある、あるいは脅威が発生したというだけの段階では無理であるというふうに考えられます。
  230. 横路孝弘

    ○横路委員 だから、何らかの具体的な武力攻撃、それによるわが国に対する侵害行為というものがなければだめなんでしょう。武力攻撃が始まらなければだめなんでしょう。
  231. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その武力攻撃が発生したときというのはどういうときであるかといえば、それは武力攻撃が始まったときという意味であって、その武力攻撃の着手の時点、それが武力攻撃が発生したときというふうに従来考えております。
  232. 横路孝弘

    ○横路委員 だから、そんな議論をしておると、また武力攻撃が始まったときというのはどういうときだという議論になるでしょう。だから、その実行の着手というものを少し刑法的に侵害行為の構成要件を考えておっしゃってください。
  233. 荒井勇

    ○荒井政府委員 そこは現実の事態として考えますと、どの時点で武力攻撃が発生したか、あるいは始まったかというふうに見るべきかは、そのときの国際情勢でありますとか、相手方がその際にいろいろ意図を示しているというような、相手方の示しているところの意図であるとか、あるいはその攻撃手段の態様であるとかというものによるところがきわめて大きいのでございまして、抽象的、一般的にこれを論ずるということはなかなかむずかしいんじゃないかというふうに考えます。
  234. 横路孝弘

    ○横路委員 先ほど自衛隊のいわゆる自衛権行使の範囲というのは原則として日本の領土、領海、領空なんだということは、これはまあ確定した解釈としてお話しになった。そこで問題なのは、この防衛思想とからんで、これはあとで問題になるんですが、実行の着手というやつを——これは刑法ではいろいろ議論があるんでしょう。窃盗のときの実行の着手はどうか。たとえばすりなんかの場合、ポケットに手をかけた場合、これが実行の着手。それからいろいろな判例、たとえば密入国の場合、密輸入の場合、これは関税法という法律の構成要件とも関連してくるけれども、外国の港、どこでもいいんだ、荷物をともかく関税法の規定によらないで積載をしたときに、これはもう実行の着手があったという解釈さえあるんですが、そんな刑法解釈をここに類推して当てはめると、周辺国家の部隊移動があった、これは実行の着手なんだという、あなたのいまの実行の着手を問題にし始めると、そういう議論になっていくんですよ。そうではなくて、現実に、ともかく何らかのたとえば発砲があったとか、領土、領海に対する侵害行為があった、そういう現実のわが国の主権に対する侵害行為が発生したときなんでしょう。
  235. 荒井勇

    ○荒井政府委員 現実のケースでどういうことが考えられるかというわけでございますけれども、たとえば相手方が戦争行為の開始というものを宣言して航空機を発進させた。それがわが国のバッジシステムによって捕捉された。相手がそういう意図を明らかに明示してそうして発進さす。その機器たるやこういう攻撃的な機器であるというようなことになってきますと、その意図がはっきり明示されているだけに、ここで始まったといいますか開始されたというふうに考える可能性というものは、そのときの国際情勢その他によって具体的な判断がされざるを得ないということであろうかと思います。
  236. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、バッジシステム、これからだんだんそういう早期警戒機や何かどんどん開発をしていく。飛行機が飛び立つというときにそれをとらえて自衛権発動ができるということですね、状況によっては。
  237. 荒井勇

    ○荒井政府委員 平素そのような戦争行為の開始の脅威を加えてこられるということは、いままで想定された事情というものからいってめったに考えられないと思いますし、だから無条件にそういう航空機の発進があったからその武力攻撃が始まったときであるというふうに考えることは、もとより毛頭考えられないわけでございます。だから、それはそのときに置かれた情勢いかんによって考えざるを得ないということであろうかというふうに申し上げているわけでございます。
  238. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、たとえばこれはもう昨年の二月二十六日のこの議論の中で先制的な自衛権の問題としていろいろ議論されている。そこで、急迫不正な侵害を受けないで自衛権を行使し得る、こういうのは先制的自衛権の意味なんだということを規定をした上で楢崎さんが聞かれている。それに対して、やはり先制的なものに対する反撃というか、これは通常の自衛権の範囲に入らないんだというふうにこれは高辻さんがお答えになっている。それは座して死を待つことができるかどうかという従来の議論がありますね。しかしそれはすでに戦闘行為に入ってからの議論でしょう。自衛権行使の問題として議論されているわけじゃないでしょう。違いますか。そうするといままでの議論ですと、そういう意思さえ明白ならば飛行機が飛び立ったというときはそれを攻撃できるんだ、こういうことですか。
  239. 荒井勇

    ○荒井政府委員 非常に極端な場合を申し上げたのでございまして、そういう非常に極端な場合を除外して考えますれば、それはわが国において現実に武力攻撃による被害が発生したというときがその武力攻撃が発生したときであるというふうに考えざるを得ないと思いますけれども、純粋に理論的な可能性として、非常に異常な事態が発生し先ほど申し上げたような事態になったという場合に全く否定し切れるかといいますと、それは横路委員質問の初めの時点でおっしゃいましたように、そのときに全く武力攻撃の発生がまだないというふうにいえるかどうか、その点について若干の保留をされる要素は絶無ではないと思いますけれども、ただ政府としてはそういう自衛権行使の時点を論ずることは適当でないということで公定解釈を申し上げておりますから、その公定解釈の線に沿ってお答え申し上げるほかはないと思います。
  240. 横路孝弘

    ○横路委員 それは政府の確定した解釈なんですか。自衛権行使の場合の、つまり実際の戦闘行動に入ってからじゃないですよ、最初のときですよ。最初のときの自衛権発生の要件たる武力攻撃の発生、その発生の問題は主権に対する侵害行為がなくともいわゆる実行の着手でいいんだ。実行の着手というのは何か。状況からいえば飛行場を飛び立ったときやることができるのだ、理論的にそれはいわゆる三要件に当てはめてもそれでいいんだ。こういうのが公権解釈なんですか。従来そんな解釈はどこにもないと思うのです。
  241. 荒井勇

    ○荒井政府委員 いままで武力攻撃が発生したときというのは武力攻撃が始まったときということであるけれども、じゃどういう時点が武力攻撃が始まった時点であるかというのは、非常にむずかしい問題である。そういうことから公定解釈が出ているということでございますので、そのむずかしい問題をまさに含んでおりますけれども、こういう公定解釈をもって政府としては臨んでいるということであるというふうにお答え申し上げるほかないと思います。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連して……。わかりやすく言い直してみたいと思うのですよね。武力攻撃の発生する場合という解釈を、自衛のための武力行動をこちら側が起こしていいという時点はいつかという観点から見てみた場合ですよ。そのときにいまのあなたの御答弁では明らかに武力攻撃の意図をもって軍事行動が現実に開始されたときには、こちら側として自衛権を発動する時点だ、このように解釈されるわけですね。あなたの答弁だとさっきバッジとかなんとか……。だから横路委員質問の途中で実害が現実にあったときというようなことばも入っているんですからね。もう少しあなた自身が整理して自分でわかる答弁をなさったらどうでしょう。
  243. 荒井勇

    ○荒井政府委員 自衛権行使の三要件としてはその武力攻撃が発生している、始まっているということのほかに、排除するためにほかに手段がない、外交手段によって排除し得るというんならそれは自衛権行使の要件には当たらないということでございますから、そういう排除なり措置というものもとられるはずでございます。それからこの統一見解の中でも述べておりますように、自衛権の行使というものは武力攻撃のおそれや脅威があるというだけの段階では発動できないということははうきり申し上げておりますので、そういう統一見解の範囲内でそれは対処されるということになると思います。
  244. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ相手の基地を飛び立ったときにたたくということはできないのでしょう。
  245. 荒井勇

    ○荒井政府委員 この統一見解によればまさにそのとおりでございます。
  246. 横路孝弘

    ○横路委員 すると、あなたの先ほどの御答弁は訂正されますね。一番最初に確認をしたのは、自衛権の自衛隊が行動する範囲というものはどうなのかというところから議論を始めて、それは原則として国内に限るのだ、国内とは何かといったら、領土、領海、領空に限るのだと、三木さんの答弁によるとそこから一歩も出てはいけないというような、そういう解釈さえ、答弁さえ出てきているのです。それは原則なのでしょう。では戦闘行動が始まったときに少しぐらいそれに密接した地域に出ていけるかどうかというのが、これが憲法上の制約として、いままでこれは確定した答弁だと思うのです。そこから議論をしていって、そしていまの自衛権の実は行使の問題でお話が出たので、そこのところはいいですね、発進なんということはおそれとか脅威の段階でもって現実の武力攻撃の発生と解釈すべきじゃないという点は。
  247. 荒井勇

    ○荒井政府委員 そのとおりでございます。
  248. 横路孝弘

    ○横路委員 そこでちょっと防衛庁のほうにお尋ねしますけれども、制空権並びに航空優勢あるいは制海権とこう言われておって、それが四次防を目ざすものだということになっているわけですけれども、どうもはっきりしないわけですね。従来いろいろ議論があって出てきているわけですけれども、一体制海権というのはどういう概念になるわけですか。
  249. 久保卓也

    ○久保政府委員 日本近海周辺におきまして相手方の艦艇の跳梁を許さない程度、どの程度が跳梁を許さない程度かというとなかなかむずかしいわけなのですけれども、要するにわがほうの海上交通なりあるいは艦艇なりの安全が相当程度確保されるという抽象的表現以外にはなかなかむずかしいのじゃないかと思います。
  250. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで三月十七日、これは四十五年ですけれども、やはり楢崎さんに対する答弁では、寄せつけない力、こう長官答弁されているのですね。むちゃしてやってきたらあぶない、そう思われる程度防衛力、威力を持つということが制海権の要素です、こういうように答弁されているわけですけれども、それでよろしいわけですか。
  251. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本土防衛に必要な範囲内で阻止力として機能することもやはりその機能の一部であると思います。
  252. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、抑止力としても制海権ということになりますと、それはいわゆる平時における概念として考えてよろしいわけですか。
  253. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 制海権ということばの解釈にもよりますけれども、要するにある局面におけるそのときの客観情勢から見た海上優勢ということであって、それは寄せつけない力というのも中には含まれている、そう見ていいと思うのです。
  254. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、それはその平時における概念も含めているのですか。平時、戦時を問わない概念として制海権を考えておられるのですか。
  255. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはケース・バイ・ケースですから、大体そういうことが起きた場合にどの程度のものが妥当と考えられるかということですから、そのとき起きる場合のことを頭に置いてそのケース・バイ・ケースで考えらるべきでしょう。
  256. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、いわゆる自衛権発動してからあとの概念なのか、平時においてもそういう概念なのか、これは概念論想だけじゃなくて、実は装備との関係でもって問題になってくるから聞いているのですよ。それはどうなのですか、明確じゃない。
  257. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛権を発動するというときは、やはり正当防衛上必要な範囲内ということになります。それは必ずしも鉄砲が撃たれたとか魚雷が撃たれたとかいう行為があったあとだけを私は限定するものではない。やはり自衛権を発動するに必要な緊迫した脅威が出てきた場合には、自衛権発動ということは可能な場合もあり得るのではないか。これは法制局に聞いてみなければわかりませんが、魚雷とか大砲というものを発射してしまったというようなことばかりを頭に置いていないのではないかというように私一応思いますが、これは専門家に聞いてください。
  258. 横路孝弘

    ○横路委員 その議論はまたしますけれども、それは現実に武力攻撃が始まったときと言っているのです。主権が侵されなくてもいいけれども、武力攻撃が始まっていなければならぬというのが法制局の解釈ですよ。だから、始まるというのはいまの長官のそれとは違います。私が聞いているのは、いまの答弁も問題ですけれども、そうじゃなくて、制海権として考えておられるのは自衛権を発動したあと状態のことを考えておられるのか、そうじゃない日常ふだんのことを考えておられるのかというように聞いているのです。
  259. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはいつも申し上げるように、そのときの客観情勢に応じて自衛に必要な範囲というものは考えられる。だから大体どこからどこまではわが海であるといってやるということは私はオーバーだろうと思うのです。そのときそのときの情勢に応じて必要と認められる範囲というのが抽象的な表現で、それを具体化するというのはそのときの情勢に応じて判定される、そう思うわけです。
  260. 横路孝弘

    ○横路委員 そんなにむずかしいことを聞いているわけじゃないですよ。要するに制海権として考えているその制海権を獲得するためにこれから海上自衛隊を強化するわけでしょう。そうすると、その考えておられるのは、自衛権を発動してからあとの制海というものを考えてやっておられるのか、そうじゃなくて日常ふだんに制海権というものを確保するのだということでやっているのかということなのですよ。だから制海権という概念が平時、戦時を問わないものなのか、戦時概念なのかということなのです。
  261. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 戦時といいますか、緊迫した事態も入るのではないかと思うのです。そういう自衛権行使が妥当であると認められるような情勢が来た場合、もちろん平穏時においてそういうものはないでしょう。しかし、そういう自衛権行使が妥当であると判定されるような事態においてはそういうものも成り立つでしょう。そういう意味で、ある意味における海上優勢を確保しておくということが、本土防衛上、そうして自衛上必要であるという、そういうような観念として考えていただきたいと思います。
  262. 横路孝弘

    ○横路委員 成り立つでしょうでなくて、おたくのほうで先ほど話があったように、従来自衛権を行使する地域というのは領土、領海、これはいまだって原則としてそうなのですよ。その制海権ということばを今度航空のほう、制空権じゃなくて航空優勢なのですね。そこのところをこれからお尋ねをしていきますけれども、そうすると、防衛出動をした場合の防衛出動してから以後の概念というふうに考えたらよろしいのですか。それは何も概念だけの問題じゃなくて、具体的にそのことを想定されて装備計画を立てられたわけでしょう。違いますか。
  263. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 要するにそれが妥当であるかどうかということは、そういう局面が出てきて、そうしてそれに対応すべく合理性ありやどうかということ、局面が出なければないわけですね。そういうように考えていただいていいです。
  264. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、それは平時概念じゃなくて、少なくとも自衛権を行使してからあとの状況、あるいは防衛出動時がそれに入るのかどうかということになるわけですよ。それをどういうぐあいにお考えになっているのかということだけをお尋ねしている。そうであるのかそうでないのかということを、ここからだということをお答えしていただけばいい。
  265. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 つまりそういう局面が出てくるときということで解釈している。これはたしか予算委員会で楢崎さんと法制局長官が、自衛権の発動の時期いかんというので大論争をおやりになりましたね。あのときの論争の政府側の答弁ということでお考え願いたい。私はあのとき聞いていて、法制局長官の答弁を妥当と思っておりましたから、そういうふうに御解釈願いたいと思います。
  266. 横路孝弘

    ○横路委員 先回りをしないで聞いたことだけ答えてもらいたいのですがね。どうもやはり心配があるから、何とかそこをごまかしていこうとするが、そこのところをごまかさないで答えられたらどうですか。これは航空自衛隊の用語辞典にも海上自衛隊の用語辞典にも入っているでしょう。
  267. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 要するにその局面が起こるとき、そういうことで言うのですから、そういうことがなければないわけですね。しかし、そういう局面がどの程度どの場所で起こるかということはわかりませんから、もし起きた場合にこの程度は必要であろうと思う範囲内のものは持とうとしておるわけでございます。
  268. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、何らかの緊迫状況が起きたときにはいわゆる海上優勢態勢というものをぱっととるんだ、こういうことになるわけですね。
  269. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 時によりますね。相手の状況とか……。
  270. 横路孝弘

    ○横路委員 そうでない場合もあるわけですか。
  271. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 必要のないときはとってはいけないのであります。
  272. 横路孝弘

    ○横路委員 防衛出動した場合の議論をしているんですよ。緊迫した状態でというわけでしょう。自衛隊はいつでも出ていっていろいろな戦闘機の配列なり艦船の配列ができるわけじゃないでしょう。だからそこのところを明確にしてくださいよ。たとえば制空権、制海権といってしまうと、米軍あたりの用語辞典を見てもそれは一種の支配力であって、日常ふだんに戦時、平時を通じて対象国の行動に対して所望の影響を与えることができるんだ、そういう相手方との優位性、支配力というようなことが戦時、平時を問わない概念としていわれているんですよ。あなたのところは海については制海権といって、空については制空権といっておりませんけれども、それは別にして、概念として違うわけでしょう。ことばをあれしているわけじゃないでしょう。こういうことばが今度の四次防の中に入ってきたというのはそれなりの戦略があって出てきているはずです。いま平時の概念でないということはおっしゃった。ふだんからそういうことをやるということじゃないということはおっしゃったわけですね。そうすると、何にもないときには一般的なパトロールとかなんとかということはやらぬということでしょうな。だからごまかさないできちんと、自衛権を行使してからあとの問題なのか、それとも防衛出動した時点から問題になるのか、その辺のところはどうなんですか。これはまさに先ほど先回りして言われた自衛権の行使の要件ともからんでくる問題としてあると私は思うのです。
  273. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 制海権ということばについては私は疑問を差しはさみまして、制海権というのは最初野党側の質問から出たことばです。私は、そういうことばを使っていいんでしょうか、疑問に思います。われわれは航空優勢とか海上優勢とかということばを使っておりますが、かりにそういうことばで航空優勢とか海上優勢ということばを使うという意味でおっしゃるならば、これこれこういう意味で限定して言っておるのです、制海権というのはそういう意味であるとしておとり願いたいという意味で断わって言ってあります。
  274. 横路孝弘

    ○横路委員 最初のときの答弁がどういう事情で出てきたかそれは知りませんけれども、第四次防の原案の中に航空優勢、制海確保と書いてあるじゃないですか。航空優勢、海上優勢といえばいいわけでしょう。使い分けしているというのは今後の戦略の中で意識的にやっているんじゃないかと私は思っているから聞いているんです。そうじゃないんですか。
  275. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いわゆる制海権というようなものではないのですね。制海という意味つまり海上における優勢という意味でしょう、海を制するというんですから。だからそういう意味の解釈としておとり願いたい。いわゆるマハンが言っているような、あるいはいま御指摘になった意味における制海権というような考えでいっているのではありません。
  276. 横路孝弘

    ○横路委員 先ほどの問いにまだ答弁してないのですが、そうするとそれは防衛出動してからあとの概念ですか、自衛権を行使してからあとの概念ですか。
  277. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはさっき申し上げたように、つまり局面が出てきてその局面に対応する措置であるから、まず平常時の考え方ではありませんね。自衛権を行使するに必要な局面が出てきてからそういうものが出てくる、そういうふうに御理解願いたいと思います。
  278. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、それは防衛出動時以後の概念として考えてよろしいわけですか。
  279. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その辺は防衛出動時になるか——出動時という意味が、前の場合と出動下令後といろいろありますね。そういう意味で片っ方には待機というものもありますね。ですから、その辺の法的解釈はわれわれのほうでもう一回検討してみます。しかし、たしかあのときも、法制局長官と楢崎さんの質疑の中でそれもカバーされていた議論があったと私記憶しています。
  280. 横路孝弘

    ○横路委員 それは実は自衛権の行使の問題としてやはりこの際議論しておかなければ——何か公海で洋上撃破態勢をとるんだなどということがもう堂々と議論されているわけですから、これは従来の憲法解釈からいくとおかしい話なんですよ。そこでさっきちょっと口をすべらして出てきましたけれども、先制的な自衛権みたいな概念というものが、しかもこれだけいろいろな電子機器関係が発達をしているような状態の中で四次防というのは装備が進められていくわけですね。そうすると、相手の兵力の移動に伴ってすぐこちらが何か行使をするような態勢というのは考えられる。そういう装備を目ざしているんじゃないかという危惧を感ずるからそういう議論をしたわけなんで、そこのところを統一して解釈されるということであるならば、これは単にことばだけの問題ではなくそういう自衛権の行使の問題とからんでくるわけですから、おたくのほうで考えている航空優勢あるいは制海確保あるいは制海権というものは一体どの時点を通して考えておられるのかという、その解釈をひとつ確定をしていただきたいと思うのです。
  281. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはいままで申し上げているようにそういう局面が出てきて、そして自衛権行使を妥当なりと認定されるとき以外はそういうものはできない。ただしふだんから、そういう場面がどの辺に起こり得るであろうか、また日本防衛を全うするためにどの程度のところまでは最悪の場合でも用意をしておくことが適当であるか、そういう想定に基づいて最悪の事態に備えて用意しておくことはいいことです。それを発動するかどうかは別です。発動する場合というのは、そういう局面が出てこなければ発動できないでしょう。その場合でも妥当であると判定される限界でなければならぬので、過剰防衛はいけないということになります。つまり正当防衛ないし緊急避難として正しいと認定される範囲内のものに限って、しかもそういう局面が出てきたときという意味において考えていただきたいと思うのです。
  282. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、いまのお話でだいぶ具体的になってきましたけれども、自衛権発動ないしは非常に密接した状況で制海権なり航空優勢という問題を考える、こういうことですね。そうでなければおかしいのであって、自衛権発動のはるかかなたから制海権ないしは航空優勢を考えるということになりますと、この範囲は非常に広くなるわけです。  そこで、もう一つお尋ねしたいのは、一昨年の五月に、これは新聞発表という形になっていますけれども、七〇年代の自主防衛ということでおたくのほうから外務省に説明という形で何項目か出されて、この委員会にも提出されたものですけれども、この中で「着上陸侵攻に対しては、陸海空の防衛力を統合発揮し、とくに、初動において侵略を排除しうる態勢を整備する。」のだということがこの中でいわれていますけれども、この「初動において侵略を排除しうる態勢」というのはどういうことなんですか。
  283. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それがいま申し上げましたそのときに当たるわけで、緊急避難なり自衛権を行使するその初動という意味ですね。
  284. 横路孝弘

    ○横路委員 自衛権を行使する初期において侵略を排除し得る態勢、そうするとその行使の範囲というのは、先ほどの解釈からいって公海はどの辺まで入るわけですか。
  285. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ですから、それはそのときそのときの相手の出方、兵力量、そういうものによって過剰防衛にならぬ範囲において認められる。さっきから申し上げているとおりです。
  286. 横路孝弘

    ○横路委員 制空、制海のこの議論も先ほどのいわゆる自衛権の行使の範囲との関係で非常に大きな問題があると思いますけれども、あらためて法制局長官御出席のときにもう一度議論を整理していきたいと思います。  そこで、時間がなくなったので簡単にお尋ねをしたいのですけれども、今度の四次防の中で装備をするC1、それから揚陸艦、それからT2、特に支援戦闘機の関係装備能力、これらの飛行機の能力ですが、どのようなものなのか。この三つについてそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  287. 久保卓也

    ○久保政府委員 C1、これは貨物輸送機でありますが、最大速度四百四十ノット、巡航速度三百八十ノット、航続距離が七百マイル、そのときの搭載量が八トンであります。それからT2は最大速度が一・六マッハ、行動半径が要撃時で百五十マイル、支援戦闘時で三百マイル、装備機関砲と赤外線ホーミングのミサイル、爆弾も装着ができる。それからもう一つは……。
  288. 横路孝弘

    ○横路委員 揚陸艦は四次防の中ではどうなっていますか。
  289. 久保卓也

    ○久保政府委員 揚陸艦は大型が三千トン、それから小型が千五百トン、四次防の中では大小それぞれ三隻ずつということになっております。
  290. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、いまの対地支援戦闘機ですね。これはファントムと航続距離、スピードについてはどういう比較になっていますか。
  291. 久保卓也

    ○久保政府委員 ファントムF4Eの航続距離が、これはいろいろありますけれども、爆弾八発積んだ場合が二百四十五マイル、それから空対空ミサイルを積みました場合が約四百マイル、それからFSのほうでありますが、これが速度が先ほどと同じで一・六マッハ、それから航続距離がやはりT2と同じで三百マイル。なお先ほど揚陸艦と申し上げましたが、現在輸送艦と申しておりますので、念のために訂正をいたします。
  292. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、FS、T2には空対地のレーダーとか爆撃計算装置とかコントロールボックスといわれている、ファントムではずした部分ですね。これは当然はずすことになるのですか。
  293. 久保卓也

    ○久保政府委員 FS、T2に載せられます装置といたしましては管制計算器、それから慣性航法装置、爆撃に必要な照準装置をつけることになっております。
  294. 横路孝弘

    ○横路委員 その照準装置というのはいわゆる空対地の関係のミサイルを発射できるような照準装置というように解釈してよろしいのですか。
  295. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在考えておりますのは、爆弾を、たとえば雲の中から照準して落とせるというような装置であります。ミサイルの装置はいまのこの計画では考えられておりません。
  296. 横路孝弘

    ○横路委員 そしたらミサイルは載せないというように考えてよろしいわけですね。
  297. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在の装備の中では出ておりませんが、将来は別であります。別途研究開発を進めておりますので、ミサイルASMが出てまいりますれば、それの関連の器材を載せるようになるだろうと思います。
  298. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、いま性能を聞いたらファントムとそんなに航続距離なり何なり変わりないじゃありませんか。
  299. 久保卓也

    ○久保政府委員 それは爆弾の搭載量その他で違ってくるのでして、先ほど申し上げましたように、爆弾八発を積んだときには二百四十五マイル、これはF4Eでありますが、FSの場合に、これは搭載量を同じにしないとなかなかわからないのですけれども、三百マイルと申しましたときの搭載量はちょっとここには出ておりません。爆弾八発を積む可能性はありますが、その場合にはだいぶ短くなるだろうと思います。正確にはちょっと調べてみます。
  300. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連して。ASMを将来搭載する、この将来というめどはどのくらいですか。
  301. 久保卓也

    ○久保政府委員 近距離空対艦の誘導弾の開発の終わりますのが昭和五十四年度でありますので、実装備はまだ計画はできておりませんけれども、それ以降に当然なるわけであります。
  302. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では五次防で入ってくるというわけですね。
  303. 久保卓也

    ○久保政府委員 五次防の中身はまだ考えておりませんので、昭和五十四年度までにでき上がりましたときに、五次防が五十二年から五十六年といたしますと、その末期に出るか出ないかという感じのようであります。
  304. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ファントム論争をしたときに、その攻撃性とからんでその爆撃能力を問題にしたわけですね。御案内のとおりです。それでわざわざ正規の爆撃装置をはずして腰だめでやるというような論争もやったわけです。それに対してT2のほうはASMを搭載する。そうすると、ファントムのときにその論争をしたこととどういうふうに関連してくるのですか。
  305. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのファントム論争の場合には、比較的足の長いものに爆弾を装着して正確に照準できるような装置を持っておるということが攻撃性を意味するのではなかろうかということで爆撃照準器が落とされたものだと思うのです。ところでいまASM、航空機に載せますASMは何に使うかといえば、当然のこととしまして日本に上陸してくるであろう艦艇に対する攻撃であります。その場合にもちろん爆撃で攻撃することも可能でありますけれども、これはASMはまだ短い二十マイル以内のものだと思いますが、そういったもので日本への上陸を阻止するということは日本の自衛上効率的な兵器であるというように考えられます。そうすると、ASMでもって外国の領土を攻撃するという趣旨のものではさらさらありませんし、FSの場合は、先ほど申しましたように三百マイルでありますから、距離が短い。主たるねらいは日本に上陸するであろう艦艇に対する攻撃、日本への上陸を阻止する、しかもその場合なるべく効率のいいものをということでありますから、これは議論がおのずから別のものではなかろうかというふうに思います。
  306. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ASMの技術開発は防衛庁でやっておるのですか、あるいはどっかの防衛産業に委託してやらしておるのですか。
  307. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 現在、四十七年度から着手する予定でございますので、まだ基礎的な段階であります。それでそのほうは決定しておりません。
  308. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 決定していないというわけですか。庁内でやられるわけですか、技研等で。それとも防衛産業に委託される方針ですか。
  309. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 当然民間企業に委託してやらせるという考えております。
  310. 横路孝弘

    ○横路委員 実はこの装備の各論について、その上着陸能力について議論しようと思ったのですが、時間がなくなりましたので、基本的なことだけ二、三質問して、もう時間が来ましたので終わりにしたいと思います。  「装備の方針および開発に関する基本方針」というものを昨年おたくのほうで発表されました。通産省のほうにお尋ねしますけれども、これは通産省のほうとも相談の上発表されたことですか。
  311. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 その基本方針につきましては、これを発表されます前にこちらに御通知はいただきましたが、内容についての協議という形はございませんでした。
  312. 横路孝弘

    ○横路委員 発表されたあとはどうですか。
  313. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 発表されたあとにつきましては、この方針について、防衛庁の説明を聞いたあとでわれわれも検討いたしましたが、私どもが従来考えております方針とそごをするものではございませんので、私どもとしてもこの方針に沿いながら私どもの分野で協力をしていこう、こういう考えでございます。
  314. 横路孝弘

    ○横路委員 そごするものではないというお話だったわけですけれども、この基本方針が四次防の中でやはり生かされているわけでしょう。防衛庁、四次防との関係ではどうですか。
  315. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろん生かされております。
  316. 横路孝弘

    ○横路委員 具体的におっしゃってください。競争原理の問題なんかどうですか。
  317. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国産自主開発というものを、客観条件やその他をよく配慮しながら進めていくという点や、あるいは競争原理を導入するとか、そういうような点において生かされております。
  318. 横路孝弘

    ○横路委員 防衛庁防衛生産委員会との話し合いが去年の十月から行なわれているようですね。これはどういう人たちといままでどのくらいの話し合いを持たれて、どういうことが議題になったのか、ひとづかいつまんでお話しいただきたいと思います。
  319. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 こまかい資料は持ってございませんが、大体昨年から四回ほど行なっております。防衛庁の代表としましては私、装備局長が担当しまして、防衛生産委員会としましては千賀専務が担当しております。  大体行なわれました四回のうち、二回は関係の工業会の役員が——役員といいますか、専従の役員が出ております。あと防衛生産委員会の専従の職員と私たちがやっております。初め二回ほどはこの基本方針考え方意見交換をいたしました。私ども説明しまして、向こうの質問がございました。一回は予算ができました段階で、四十六年度予算の内容を説明しております。あとは今後どういうふうに運営するかという問題でございますけれども、当然こういう会は両者の意思疎通をはかる問題でありますし、防衛庁としての行政問題とは別個でございますので、いまやっておりますのは、適正価格ということで防衛生産をする、この適正価格を追及するにはどういう方向が考えられるかという問題で、両者の資料を取りたいと思っております。たとえば、いま一つの問題としましては、防衛生産につきましては賃金なりあるいは物価なりが非常に価格に反映するという問題がございますけれども、この問題について、確かに特殊な製品で生産量も少ないし合理化の余地が一般の商品と違いますけれども、どういう方向で、企業努力でそういうものを吸収できるかということについてのデータで検討するというような問題について今後話し合いたいということで、最後の会を終わっております。
  320. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、経団連の防衛生産委員会が去年の八月に、「次期防衛力整備問題に関するわれわれの意見」というものをまとめられた。その中で、装備の国産化について官民合同の懇談会をというような提案があったわけですけれども、いまその話し合いをされているというのは、そういう趣旨でこれから制度化し定期化していこう、こういうお考えなんですか。
  321. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは私が、やってよろしい、ただしこれこれの注意をしてやるように、そういう意味でやらせておる会であります。それはわがほうの政策を先方によく浸透させるということ、それから先方が実際問題としていろいろ困っている問題や何かについてわがほうによく説明させるということ、それをやはりオープンの会議で堂々とやったほうがよろしい、それで個々別々に料理屋や何かでやるということでは適当じゃないから、やるなら堂々と昼間やりなさい、ただし、これこれの配慮を持ってやれ、そう言って私がやらしている会であります。
  322. 横路孝弘

    ○横路委員 それで防衛産業の整備方針として七項目ほどあがっているわけですね。これについていわゆる企業側から防衛庁に対していままでのところはどういう要求があるわけですか。
  323. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 現在企業としましては基本方針考え方については基本的に賛成ですということでその説明をいたしましたけれども、具体的な要請というものはまだ受け取っておりません。もちろんこの工業会で出たことでありますけれども、われわれが考えておりますよりも少し企業側の一人よがりの点が多いのでございまして、まだ要望というまでの意味はないというふうに考えております。むしろわれわれのいまの考えをよく説明し、向こう側も納得した上で基本方針の問題についての向こうの気持ちも聞いてみたいと思っております。
  324. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで通産省のほうにお尋ねしたいのですけれども、適正な競争原理の導入ということですね。航空機にしてもミサイルそのほかにしても、なかなかこれから競争原理を導入して育成していくということになると、これは五年、十年、二十年くらいの先の話になると思うのですけれども、基本的な考え方としては、こういう各種の特に飛行機について問題になると思うのですけれども、どういうお考えを持っているのか、通産省としてのお考えをお伺いしたい。
  325. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 競争力の原理の導入の面でございますが、この面につきましては、企業活動の調整を目的といたしました航空機製造事業法、さらには武器等製造法というものがございます。私どもとしては、この両法の運用という面からいたしまして、できるだけこういった競争原理も取り入れながら運用してまいりたい、こう考えております。しかし、御指摘のように、これは競争するという立場になりますと、非常に多額の設備投資あるいは技術者の養成等も要りますので、やはりある程度時間をかけてそういった要請に沿いながら業界も指導していくということではなかろうかと思います。
  326. 横路孝弘

    ○横路委員 通産省のほうについでにお伺いしておきたいと思いますが、「自国産業による開発、生産」ということで、「原則として自国産業に限定する。」つまりこれは外資と提携しているような産業にはまかせないという方向だろうと思うのですけれども、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。あるいは防衛庁との協議はしていないということですけれども、若干の話の中でどういうことになっているのか。
  327. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 外資関係の企業の取り扱いでございますが、外資企業と申しましてもいろいろな段階がございます。技術提携は外資とは申されないかと思いますが、きわめて程度の強いもの、あるいは戦前から非常に薄い形であるけれども一部の外資が入っているもの等々いろいろございます。考え方としては、私は防衛庁考え防衛生産という面から申しますと、そのとおりでよろしいかと思います。ただこれをこの際適用するということになってまりますと、それぞれのケース・バイ・ケースに応じましてそのもの自体の判断をとくと防衛庁と協議をして、いわば担当する企業をきめていく、こういうことになろうかと思います。
  328. 横路孝弘

    ○横路委員 概略的なことだけお尋ねしたいと思うのですけれども、「適正な防衛生産基盤の確立」というのがありますね。これは競争原理の導入ということとの関連で考えてみると、特定企業に集中することのないように配慮するといったところで、そんなにあちこち競争をさせるわけにはいかないので、どうしても二つぐらいにしぼられるわけでしょう。そうすると、競争原理の導入といったところで、結局特定企業に集中してしまうという従来の統計をとってみても明白になっているわけで、その辺のところのかね合いというものは、通産省としてはどのようにお考えになっているのか。
  329. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 私どもの面からいたしますと、防衛産業というものにつきましては、基本的には防衛需要といいますか防衛庁の必要とする装備をまかなう範囲内で必要な指導育成をしていこう、こういう考えでおります。そのまかなうに必要な範囲内という考え方の中に競争原理を取り入れるということでございますが、いまお話しのように、競争させるために必要な量の何倍も余るような設備投資をするということは、それ自体国家経済としてむだなことだと私は思います。したがって、その点にはおのずから制約があろうかと私は思いますが、防衛装備に必要な生産設備にいたしましても、それぞれ民間のものにも共用できるものもあり、あるいは将来それが転用し得るものもある、こういった面も相当程度ございますから、こういった面を考えながら、方向としては競争原理の導入という方向を打ち出しながら、いま申し上げたようないろいろな局面を具体的に判断をしながらその面の指導をしていくということではないかと思います。
  330. 横路孝弘

    ○横路委員 本会議の予鈴が鳴りましたので、これで終わりにしたいと思うのです。  最後に、この整備方針では非常に大まかな点だけなんで、たとえば適正価格による調達の問題にしても、さっきちょっとお話がありましたが、さらに研究開発の方針のほうの問題で、たとえば工業所有権、特許権等の問題があるわけなんですけれども、この大まかな方針を具体化していく、そういう作業というのはこれから進められるわけですか。
  331. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 この方針自体は、長官の御指示によりまして内局なり各幕なり調本なりあるいは技本なりが毎日の作業をする中でこの精神を具現するということでございます。われわれとしましても、部内でもそれぞれ必要な場合において必要な打ち合わせは行なっております。現実の個々のケースにつきましてこの精神にのっとってものを解決する、ものを処理するという考えで、あるものは短期的に、あるものは長期間かかりますけれども、進んでまいるという基本的な方針でございます。
  332. 横路孝弘

    ○横路委員 たとえばこの適正価格の問題なんかは、具体化というのはどのように進めていくわけですか。
  333. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 たとえば現在行なっております調達方針の中で、原価方式につきましても、昨年の予算で部外にいまの原価方式の妥当性の検討をお願いしております。また、予算の計算をいたします際に概算要求をしますけれども、その予算の積算方式についてどうするか、現在の各幕なり調本なりあるいは内局なりがまず妥当な予算を要求すべきだ、それを現実に契約する場合にはどうするか、あるいはそれを検査する場合、領収する場合にどうするか、個々の問題について具体的にいままでの問題を洗って、自分自分批判しながら前進していくという考えで取り組みたいと考えております。
  334. 横路孝弘

    ○横路委員 この装備関係でもってたくさんの問題が残ってしまいましたけれども、またあらためてお伺いすることにして、これで終わります。
  335. 天野公義

    天野委員長 この際、御報告申し上げます。  環境庁設置法案についての連合審査会は、産業公害対策特別委員長と協議の上、明十二日水曜日午前十時より開会することといたしましたので、御了承願います。  次回は明十二日、連合審査会終了後開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十四分散会