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1971-05-07 第65回国会 衆議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月七日(金曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       鯨岡 兵輔君    辻  寛一君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       上原 康助君    川崎 寛治君       木原  実君    楢崎弥之助君       横路 孝弘君    伊藤惣助丸君       受田 新吉君    東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         防衛政務次官  土屋 義彦君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         防衛施設庁労務         部長      安斉 正邦君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         大蔵省理財局次         長       小口 芳彦君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   佐々木更三君     楢崎弥之助君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  この際、公聴会の件について御報告いたします。  環境庁設置法案についての公聴会開会に関する諸般の手続は、さき委員長に御一任を願っておりましたが、理事各位と協議の結果、公聴会は、来たる五月十日月曜日午前十時より開会することといたしましたので、御報告申し上げます。      ————◇—————
  3. 天野公義

    天野委員長 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  4. 大出俊

    大出委員 高辻さん、きょうは私の用事はございませんか。あなたに質問の通告をしたら、私用がございまして午後四時過ぎでなければ出られませんという話(高辻政府委員「いや、それはきょうじゃなくて、きのうの話です」と呼ぶ)ゆうべまたおたくの方お見えになって、きょうは私用がございまして、あしたは私用がございませんから、そういう言いぐさございませんですよ。そんな法制局長官じゃ質問する気がしないじゃないですか。そんなふざけた話はないですよ。きょうは私用があったら出ていってください。一言申し上げておきませんとね、私用があるから行けないなどと言われて、黙っているわけにいかない。(高辻政府委員あとで弁明を申し上げます」と呼ぶ)ときに木村長官がお見えになりませんから順序を変えさせていただきまして、この四次防が防衛庁原案ということでございますから、言うならば政府全体の四次防案ではないと思いますけれども、たまたま中曽根長官から発表されておりますから、新聞その他を通じての世論と申しますか、限界なり、三次防との質的な変化なり、あるいは先々の問題なり、歯どめがあるないの問題なり、ずいぶんたくさんの議論があるわけでありまして、そうなりますと、理論的にものを詰めるということになりますと、やはり戦力の問題にからんでまいります。そこで冒頭にその辺のところについて何点か承っておきたいのであります。  政府という立場での憲法九条にいう戦力、これに対する統一見解、これは何回かございますか。
  5. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答え申し上げます。  戦力に関する統一見解が何回かあるかというお尋ねでございますが、統一見解と銘打ってお示ししたことはなかったと思います。なかったと思いますが、しかし少なくも戦力解釈につきましては、先般も御質疑があったと思いますけれども吉田内閣時代まで近代戦争遂行能力というような説明のしかたをしていた時期があった。それから鳩山内閣からあとは、実質的には同じことだと思いますが、その解釈のしかたが、近代戦争遂行能力ということばを使わないで説明をしてまいったというような点の相違はございますが、統一見解として幾つあるかというお答えでは、なかったと申し上げるほかはございません。  それからついででございますが、先ほどおしかりがございましたが、私はきょうは大出先生の御質疑があるというので、一日あけて参っておりますので、どうぞごゆっくりお願いしたいと思いますが、昨日は私用ではございませんで、私どもの職務の一環だと思いますけれども、自治大学校の研修に頼まれておりまして、できることなら予定のとおりに話をさしていただきたいということを、あるいは秘書官が申し上げたかと思います。私用のために御質疑お答えすることを怠るというようなことは、したこともございませんし、するつもりもございません。
  6. 大出俊

    大出委員 いまの件は、この四次防という問題がいま焦点の一つになっておりますから、そういう時期でございますだけに、政府側法律その他に対する解釈最高責任者である法制局長官が、何があってもまげて御出席をいただく筋合いだろうと私は思っているのですが、ただ単に私用でと電話での秘書官からのお話をいただくと、まことに私迷惑であります。人間的には先輩でございます長官に、言い方はたいへん恐縮ですけれども、ここらのところは、やはり相当納得が必要なんであえて申し上げたわけでありますが、いま釈明いただきましたので了解いたします。  さて、いまお話がございました戦力に関する統一的な見解と銘打って出したことはないとおっしゃるのでありますが、実はこれは、昨年十月に私があなたに御質問申し上げたときの答弁と違うのでありまして、きょうはたくさんここに議事録を持てるだけ持ってまいりましたが、こまかく調べておりますと、あなたのほうは、私の質問に対して、確かに一度だけ統一見解と言って法制局統一した見解を明らかにしたことがある。それは昭和二十七年にこういうことについてお認めになっておられる。御指摘を申し上げますが、この昭和二十七年十一月二十五日に内閣法制局戦力についての解釈統一をした、こういうことでお述べになっておる。つまり議事録によりますと、戦力に関する解釈統一したということでたくさん述べておられるわけであります。いまの人事院総裁である佐藤法制局長官がおいでになるころには、ずっとこの解釈統一、これに従って答弁を続けてこられた。これは高辻さんの大先輩でございましょうから、否定はなされぬと思います。したがって、私、昨年御質問申し上げましたときには、実は徴兵制度中心でございましたから、それに付随して戦力についての何点かを承ったわけであります。そのときの長官答弁は、いま私の申し上げました二十七年の戦力についての解釈統一、この点について確かにそういうことが一ぺんだけございましたというふうに法制局として答えております。この点は昨年そういういきさつがあったようでありまして、こだわるわけじゃございませんよ。したがって、あらためてひとつ念を押しておきたいのでありますが、いま私が取り上げましたこの二十七年十一月二十五日内閣法制局戦力解釈統一した、つまり戦力に関する統一見解——古いことでございますから、あれでございますけれども、そういうものがあります。こういうものがあることをお認めになるかどうか。
  7. 高辻正巳

    高辻政府委員 私も、ただいま先ほどの御質疑に対するお答えとして統一見解としてお示しのものはなかったということを申したつもりでございます。  ところで、二十七年ごろだったと思いますが、法制局戦力解釈統一をしたということが新聞で報ぜられたことは、私よく存じ上げております。私は、この戦力論に実はほとんど初めから関係をしているものですから、大体いまおっしゃることが、おそらくその新聞等によるものだと思っておりますが、あるいはお答えの中でも諸先輩から今日に至るまで、とにかく二十数年間、ほぼ二十年でございますので、その間にいろいろなことが申されていると思いますが、しかし統一見解として示したということは、法制局におった者として実はその事実を存じませんが、しかし法制局の中でしょっちゅう検討いたしまして、そのつど常に統一見解ができているということは、これは否定できないところでございまして、その問題に限らず、常にわれわれとしては統一見解を持っているということは申し上げられると思います。ただし統一見解と銘打ってお示ししたというようなことはなかったと思います。ただ御質疑に対して御答弁をいたしますから、それが常にいわば統一見解として御答弁を申し上げているということは、そのとおりでございます。
  8. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、たくさんここでものを申し上げる時間がありませんが、二十七年十一月二十五日の戦力解釈統一、幾つか項目がありますが、そのあとで時の佐藤法制局長官が答えている答弁がここに十ばかりございます。この答弁中身というのは、いずれも政府によって行なわれたさまざまな憲法解釈、この憲法解釈を整理調整するために、昭和二十七年十一月二十五日に法制局戦力解釈統一した、こうなっておるのであります。この十ばかりある佐藤さんの答弁中身というのは、いずれも二十七年に明らかになっている統一見解の各項に該当する、ほとんどそれと同じ答弁をしている。したがって、これはいま時が過ぎておりますから、ここでそれを詰める気持ちはありませんけれども、非常に重要なことですから私は聞いているのです。したがって、そういう解釈が当時とられていたのは事実であります。それ以後何か歴代の答弁を整理調整してこうだというふうなことを言ったことがない。それはいまあなたがお答えになっているとおりであります。それ以後はない。そこで私は、やはりここまでくると、戦力に関する解釈というものを、このあたりで、国民がこれだけ世論という意味で数々ものを言っている時期でありますから、はっきりさせておく必要がある、実はこういうふうに考えておるのであります。それが前提であります。  そこで、まず一つは、そのあと、これは五十九国会から六十二国会までの衆議院の内閣委員会調査室、参議院の内閣委員会調査室が集録をしております「憲法第九条と自衛権」というのがありますが、この中にいわゆる戦力というものについての論議がない。戦力ではない、自衛権というものの地域的な意味範囲であるとか核関係であるとかいうものは論じられている。それから、この前に実はもう一冊五十六国会から五十八国会までのものがあります。同じ委員会調査室の編集したものでありますが、ここにもない。そうすると、それ以前のやはり戦力解釈というのが、今日まで引き続いて——しかも鳩山内閣のときに論議されておりますのは、戦力そのものをとらえての論議ではない。つまり座して死を待つわけにいかない云々の答弁がありますけれども、これは及ぶ範囲についての論議であります。急迫不正な侵害があった相手のミサイルをたたく、これはつまり範囲論争戦力そのものではない。さらに岸内閣のときに、林法制局長官になりますが、この時代岸総理答弁その他を見ても、やはり鳩山さんの言われた範囲についての論争中心です。ここのところずっと休日が続きましたから、調べてみたのでありますけれども砂川判決もございますが、ほかに戦力それ自体について、戦力とは一体何だ、ここらについての論議というものはない、そこで私は、まず現在高辻法制局長官戦力とは一体どう考えておられるのか、この点を明確にしていただきたい。
  9. 高辻正巳

    高辻政府委員 法制局立場から申しますと、とにかく問題が内閣がかわるたびにかって次第に変わっていいというしろもの、対象では必ずしもございませんので、私が答弁申し上げていることも、実は私自身関係しておったこともございますし、前来の法制局長官が申し上げてきたこととそう変わっていいはずもありませんし、変わったものでもございません。  そこで、ただいま御質疑がございますのは戦力の問題ずばりでございますが、これは確かに、先ほども申し上げましたように、佐藤法制局長官時代近代戦争遂行能力ということでずっとやってきまして、鳩山内閣以後は、確かに御指摘のように、そのことばは、たまに出たかもしれませんが、元来は出ないことになっているはずでございます。かといって戦力問題が全然なかったわけではございませんで、私もまたいま私独自の御答弁をここで申し上げるわけでは決してないわけでありまして、ここで御指摘を申し上げたいのは、三十年六月、二十九年十二月の衆参の予算委員会で、ちょうど鳩山内閣だったと思いますけれども、その当時、林法制局長官でありますが、「最も素朴に考えると、戦力というのは文字通り戦う力ということでございます。」「戦力ということばを……いわゆる戦い得る力と読めば、自衛隊一つ戦力でございます。」と述べつつ、「しかし……自衛隊という、ああいう範囲限度のものは、これは憲法九条の二項で禁止されておる戦力ではないのだ」という説明をしておるわけであります。  この説明は何か結論的なものでありますので、さらに少し説明を加える必要があるかと思いますが、これは御承知の砂川事件判決等——これも前に御指摘があったと思いますが、砂川事件判決は問題の中心自衛隊問題そのものではございませんでしたために、九条二項が「いわゆる自衛のための戦力保持をも禁じたものであるか否かは別として、」といって、そこを断定することははばかっておりますが、しかし憲法九条二項の立法趣旨というものをそこで述べております。それは九条二項において「戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力保持し、」九条一項で「永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためであると解するを相当とする」と述べておりますが、憲法九条の二項の立法趣旨について政府がとっているのと同一の見解を実は示しております。そういうものをバックに置いていまの林前法制局長官答弁をごらんいただきたいと思うのでありますが、確かに戦力というものは読みようによっては戦いに役立つ力そのものだろう。これも前に申し上げましたように、広く考えますと、一億をこえる国民自身戦力にもなりかねない。そこで、それにはある程度の限度が必要だと思いますが、それにしてもそういう意味における戦力は、ことば意味どおり戦力のうちでも自衛のための必要最小限度を越えるようなものが憲法九条で否定をしている戦力である。それ以下の実力の保持はこの憲法九条によって禁止はされていないのだという解釈昭和三十年に示されております。それ以後その考え方の大筋において政府考え方は変わりがないわけであります。私どももまたいまあえて新しい見解を申し上げる必要もないので、それから十数年たっておりますが、その考えと同じ考えを申し上げるほかはございません。
  10. 大出俊

    大出委員 非常にあいまいなんですね。御自分でそうお思いになってしゃべっていらっしゃるから、さっぱり説得力がないのですよ。  そこで砂川判決ですが、あなたは大事なところを抜いてしゃべっておられる。時間もありませんから無理もないと思うのですが、ここで四次防という問題が俎上にのぼっておりますから、私も念のために申し上げておきたいのであります。  「同条項にいわゆる戦力保持しないけれども、これによって生ずるわが国防衛力不足は、」——戦力保持であるということを砂川判決の前段が認めている。だから不足が出てくる。「防衛力不足は、これを憲法前文にいわゆる平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによつて補い、もってわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。」、判決にもちゃんと明確に戦力保持という原則認めているから、足らざるものは憲法前文がいっているような諸国民の公正と信義に信頼をして、これによって補うのだという前提がついている。その上でいまお話がございましたように「同条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力保持し、」というところから始まって——おっしゃるとおりこの裁判の中心は、外国の軍隊とはアメリカ軍隊をさしておりますから、したがって「自衛のための戦力保持をも禁じたものであるか否かは別として」と、ここでは有権解釈を避けている。  もう一ぺん申し上げますが、「自衛のための戦力保持をも禁じたものであるか否かは別として」、別になっているのですね。これは結論が出ていない。ということは何を意味するかというと、自衛のためであっても戦力保持、これを認めるのかどうかという点についてはたなに上げた。そうすると現行憲法存在をして、九条の戦力保持原則が続く限りは、自衛のためであってもいわゆる憲法にいうところの戦力というものは不保持原則が先にある。つまりこの判決というのは、その限りは戦力保持原則というものを認めている。ただ自衛のための戦力というものがはたして適法であるかどうかということについては、それは別だとたなに上げた。結論が出ていない。そうするとこの判決では、自衛のためだからといって戦力保持してよろしいということにはならない。この点は明確になっているのですね。いかがですか。
  11. 高辻正巳

    高辻政府委員 砂川判決は、現にそれをごらんになって御指摘のとおりでありまして、私も大体は覚えておりますからおっしゃるとおりだと思います。ただし大事なことは、砂川判決においては、自衛隊そのものの合憲、違憲論というものが表になっておりませんので、たな上げにできたわけであります。あのときはむしろ駐留米軍についての憲法上の問題が中心になっております。したがってたな上げにされていることは、自衛隊存在というものが憲法違反であるともまた憲法に適合しているとも触れていないわけでありまして、自衛隊憲法違反だといっているわけでないことは申し上げるまでもないと思いますが……。
  12. 大出俊

    大出委員 そういうことを聞いているのじゃない。時間がむだだ。もう一ぺん言います。  憲法九条は戦力保持原則を明確にしている。これはあなたがお認めのとおり、あなたは法律をおやりになっているのですから。さて戦力保持原則、これに照らして考えたときに、裁判所がここでいっているのは、自衛のための戦力保持、これを禁じたものかいなか、これは別とします、つまり自衛のためだから戦力を持っていいのか悪いのか、この点は別にする。そうすると戦力保持原則というものを前提にしてこの判決が出ている限りは、裁判所戦力保持原則というものを否定していない、これは現行憲法なんですから。そうでしょう。そうなると、自衛のためであっても憲法にいうところの戦力を持つことはできない。有権解釈がないのです。そうなるでしょう、いかがですか。そこのところを聞いている。
  13. 高辻正巳

    高辻政府委員 簡単に申し上げますが、憲法保持を否認している戦力を持つことはできない、それは明らかでございます。
  14. 大出俊

    大出委員 それではもう一つ伺いますが、憲法が否認している戦力でない戦力があるのですか。
  15. 高辻正巳

    高辻政府委員 先ほど申し上げましたように、それが憲法九条の解釈問題になるわけですね。その解釈問題が明らかであればもう何をかいわんやでありますけれども、その憲法解釈上の問題として、憲法九条一項は自衛権否定していない。それから先ほどの砂川判決にも明瞭にありますが、九条二項があるのは侵略戦争否定するためである、こういうことをいっておるわけであります。したがって、これはもう簡単に申し上げますけれども、九条二項でいう戦力保持を否認しているのは、侵略戦争に役立つとかあるいは自衛を越えるとか、そういうようなものについて保持を否認しているのだろう、こういう解釈一つ出てくるわけであります。そして簡単な言い方で失礼でございますが、そういう解釈に立っての解釈、それがいままで政府の申している解釈でありますし、また国会自衛隊法というものを制定して、自衛隊の存立を法律によって認めたというのも、実はそういう解釈の上に立ってのことであろうと私は思うわけでありますが、いずれにしましても政府解釈はそういう解釈をしてきておる、こういうわけであります。
  16. 大出俊

    大出委員 そういう解釈に立ってのことであろう。つまりあなたの時代ではない、さきのことだから、古いことだから、自衛隊存在認めたというのはそういう解釈に立ってのことだろうと思う、あなたいまそう答えた。それはあなた以前のことだ。そうなると私はここで一つあなたに承りたい。  当時吉田総理がこれをやっておられた。これはあなたもよく御存じのとおり。総理昭和二十一年六月二十六日に国会答弁で明確にこれを言い切っておられる。侵略戦争はもちろん「自衛権発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ放棄シタモノデアリマス」、これは吉田さん流の口調でしゃべらぬと感じが出ませんがね。さらにこれは注釈がついている。そのあとにまだ答えている。「従来近年ノ戦争ハク自衛権ノ名ニ於テ戦ハレタノデアリマス」、もう一ぺん言いますが、「従来近年ノ戦争ハク自衛権ノ名ニ於テ戦ハレタノデアリマス」、ゆえにわが国においては、戦争放棄によって全世界の平和の確立の基礎をなす決意を、この憲法において表明をいたしたいのであります。こう答えている。つまり吉田総理が言っているのは、近来の戦争というのは自衛の名のもとにみんな行なわれておるのだ。だからその意味戦力保持原則憲法はきめたのだ、こう言っている。そうすると問題は、自衛のためだからという名のもとに、その意味戦力認める、それは憲法が否認している戦力ではないのだという解釈をするということは、あなたが過去を振り返って、そういう立法趣旨であろう、つまりそういう自衛隊というものを創設をした、そういう趣旨であろう、こう言っているが、その過去の吉田総理答弁からすると、明らかにこの中身というものは、近来の戦争というものは自衛の名のもとにおいて行なわれたのだ、だからそれをも含めて、そういうことがあってはならぬというので、戦力保持原則わが国憲法はきめているのだ、こう答えている。そうすると、かりにもその後の皆さん方が、——つまり憲法が否認している戦力というものが一つある。しかし自衛隊というものは認められたのだから、そうすると憲法自衛権認めているのだから、その意味での戦力はいいのだという解釈が出てくるとすると、そういう趣旨できめたのだろうと言っているが、過去のきめた人はそう思っていない。明らかにこれは拡大解釈になる。うしろのほうから五百代言と言ったけれども、三百何というけちなことは私は言わぬけれども、そういうふうになるかもしれぬ。あなたは一番最初から戦力に携わっているとおっしゃるのだから、最初にさかのぼって、どう変わったのかおっしゃってください。
  17. 高辻正巳

    高辻政府委員 御指摘吉田総理大臣の答弁は有名な答弁でよく存じておりますが、それはその後に一その後にというか、直ちにその後に訂正をされております。吉田さん自身が訂正をされたかどうか、私よく覚えておりませんが、あるいは金森さんだったかもしれませんし、ほかの方だったかもしれません。それ以来何といいますか、いまの答弁は突然的に出てきた答弁、経過を見ればそういう答弁であった。当時法制局をはじめとして政府一般の法律解釈として、そういうものが確立していたかというと、これはちょっと疑問だと思います。というのは、その後にそれと違う答弁がずっと出てきておりますから、御指摘でもあれば、私も記録をよく調べて申し上げるのが筋合いだと思いますが、いまその準備がございませんので簡単にそれだけしか申し上げられません。  そこで自衛隊法ができたときは多分そうであったろうという、そんな心細い言い方を申し上げたかもしれませんが、もしそうだとすれば、私は客観的にものを言ったつもりでありますが、当時自衛隊ができますについては、憲法解釈上の大問題であったことは確かでございまして、その当時の解釈として、当時法制局あるいは政府あるいは国会というものでは、自衛隊というもの、つまり自衛のために必要最小限度の実力を保持することは、憲法の九条二項に触れるものでないという確立した解釈をもって臨んだということは事実でございます。
  18. 大出俊

    大出委員 時間の関係もありますから急ぎますが、「日本の防衛」をお出しになった中曽根さんが、その前に談話を出されて、その談話の中で「自衛隊に対する憲法論については、今や自衛隊は二十周年記念日を迎え、われわれはもちろん合憲を確信しているが最高裁判所によって、その憲法判断の論拠と限界が解明されることは国民も期待しているのではないかと思われる。」、つまり裁判所に対する合憲を確信しての談話ですからね。つまりこの発言は合憲の判決を求める期待だと思うのですね。なぜこういう発言を中曽根さん自身がなさるかというと、憲法がはたして、自衛隊というものを対象として、その自衛隊が合憲であるかないかということについての一つまり戦力だから、戦力論争をされておるから、裁判所戦力であるかないかは別としてと逃げた、確定解釈を下していない、いないからこういう談話にならざるを得ぬのですよ、実際は。そうでしょう。歴史をずっと見ると、この戦力論争なり何なり、つまり合憲論争なり違憲論争なりがずっと突き詰められていきますと、必ず出てくるのは憲法改正なんだ。憲法改正論。鳩山総理がいみじくもずっと詰められた結論は、つまり憲法の改正、その意味答弁をされているわけですね。いままた四次防を前にして出てきているのは何かというと、片一方に憲法改正試案であるとかいう問題がまた出てきている。つまりここで四次防というものの構想が出てくると、旧来の自衛隊創設当時の一これは朝鮮戦争あとの警察予備隊から始まったあの時代、保安隊を経て自衛隊となった三十二年前後、この時代解釈で三次防まで何とか言い抜けてきたけれども、ここまでくるとどうもそれでは済まないというぎりぎりのところにきているのですね。それだけにやはりもう一ぺん、ここで憲法にいう不保持原則を立てている戦力、これを振り返って、法制局がぴしっとした解釈をおとりにならぬと、これはやはり国民全体が困る。それは内閣法制局長官には違いないけれども、ここのところはぴしっとしていただかぬといかぬ。あなたは新聞をお読みになっているはずだ。どの新聞をながめたって、社説はじめ各種のその道の専門家の論評というものはみなそこに集中している。そのときに何か私用でございますからというようなことを言われては迷惑だ。そういう意味で私はさっき申し上げた。あなたがその道の専門家だからと思って、あなたなら最高責任者だからと思って承れば、さっぱり法制局長官らしい答弁をされない。これは言うてこないのが悪いとおっしゃるかもしれぬが、私は自衛隊憲法関係で承りたいのだと明確に申し上げている。ほかのことはともかく基本はそれしかない。いかないわけじゃないのですよ。わざわざ私がおたくの秘書官に電話を入れて、先ほどああいう言い方をしたが、それはあなたは私用でいないと言うから、私もそれを言わなかったのだから御無礼した。自衛隊憲法関係、これを明確にしていただきたい、これしかないのだということをちゃんと申し上げている。そしていまあなたが資料の持ち合わせがないとか何とか言われては、ずいぶん——あなたは私用のようなつもりでここに出てこられたなら、私はお帰りいただきたい。
  19. 高辻正巳

    高辻政府委員 憲法自衛隊の問題についてのお尋ねであるということは承知しておりますし、そういうものについてはお答えを私はいたしますが、吉田総理の発言についてその後どういうふうにだれが変えていったかということになると、私は、そういう問題ですとやはり資料を見ないとちょっと責任ある御答弁ができませんので、その点だけを申し上げたのです。あしからず……。
  20. 大出俊

    大出委員 それなら私が責任ある質問をできぬことになります。そうでしょう。私はちゃんと断わっておるのです。これだけちゃんと議事録を持ってきた。全部あるのです。それじゃあなた議論がかみ合わぬじゃないですか。あらためてやるよりしようがないですよ。四次防というものがはたして憲法というものを中心にして、砂川判決でいえば憲法九条にいう否認をしている戦力、これに一体四次防という規模の自衛隊が該当するのかどうかということですよ。憲法九条が否認している戦力であるということになるとすれば、四次防という形でつくられる自衛隊というものは憲法違反だということに総合的につながる。過去の皆さんの答弁からいきますと、兵器そのものは一体戦力かということになると、これは疑問がある。とんでもないものを持ったからといって憲法違反か、それだけで問題の判定ができないとおっしゃっている。しかし総合されたもの、総合力という形で四次防というものが考えられている。そうだとすると、その中に兵器も含む、兵員も含む、つまり自衛隊というものを国防会議中心にして維持、管理していく側の意思の問題まで発展をする。そうすると、その中心は何かというと、いま四次防という構想が憲法九条が否認をする、不保持であるといっている戦力に該当するのかしないのかという問題、その一点に尽きる。その上で一体その歯どめは、あるいは限界はという問題が出てくるわけでしょう。そうでしょう。つまりその戦力解釈が、いまおっしゃるようなことではいろいろな答弁があって、これは歴代の法制局長官、なかなか頭のいい方が、決して三百なんてけちなものでなくて、五百代言か、六百代言か知らぬが、いろいろあって、歴史的に読んでみるとびっくりするような変わり方、そうでしょう。これでは国民諸君が四次防を目の前にして、これから始まろうというわけですから、皆さん金を払うわけですから、しかも日本の将来の安全と平和がからむのですから、そうだとすると、いまこれを明らかにしなければ——五次防の展望まで中曽根長官お持ちなんでしょう。そうなると、四次防、さらに五次防の展望を持っておられるとすると、いまの時期にそこをはっきりしなければ、するときがない。だから私は二十七年の先ほどの統一見解に触れているわけです。あなたはこれまた統一見解と言っちゃうと、何かそこで引っかかってしまうと思って言わぬのかもしれぬけれども、そういうけちなことではない。あなたは、吉田総理答弁があって、だれがどう言っているということはもうお忘れになっているのでしょう。私は調べたのが新しいから頭に入っているということですけれども、それはそれでいいかもしれぬけれども、こういう場合にはやはり法制局としてそのくらいの御用意をいただかぬというと、私は責任上、これは国民に対する責任だが、あなたのほうで責任ある答弁をいたしかねるなら、私が責任ある質問をいたしかねるのはあたりまえでしょう。この点は、あなたはさっき明確にできないという答弁、私は責任ある御答弁ができないという人に責任ある質問のしようがない。そこで、この問題は、あらためてひとつ防衛二法に関する四次防を含むこの委員会の継続をする中でもう一ぺん私は伺いたい。いまの点は先に進みようのない問題ですから。あなたが答弁されたのは、自衛隊創設の古きにさかのぼって、憲法趣旨がそういうものであったろう、こうおっしゃるから、時の総理答弁を私は引き合いに出した。それがあって、金森さんが書いたのか、ほかの人が書いたのか、総理が書いたのかわからぬとおっしゃるならば、私のほうもそれなりにものを考えておるわけですから、前に進まない。それはもういいですから、委員長、この委員会の継続する中であらためてそこを明らかにしていただきたい、こう思うわけです。  そこで、次にこの二十七年の佐藤達夫さんの時代統一見解統一解釈、私はそういうふうに考えたいのでありますが、あなたのほうがそう受け取らぬならそれでもいいが、この次に私はこの当時の議事録を全部持ってまいります。抜粋だけここにありますけれども、言っていることは全部同じなんです。  そこで、私は承りたい。憲法第九条第二項は、侵略の目的たると自衛の目的たるを問わず戦力保持を禁止している、これが第一番目だ。これは佐藤達夫さんのその後の答弁の中にある。これがあなたの先ほどの答弁憲法が否認する戦力、それと、そうでない戦力とは何だと言ったら、それが憲法解釈だとおっしゃる。あなたいま答えたんですよ。だから、憲法が否認する戦力とそうでない戦力があるという意味のことをあなた答えた。自衛のための戦力があると言わぬばかりのことをあなた答弁された、そこまで言い切らぬけれども佐藤達夫さんの時代に、これは統一されて書いてあるから、それを読むのですよ。佐藤当時の法制局長官、それは議事録にある。同じことを書いている。もう一ぺん言いますが、憲法第九条第二項は、侵略の目的たると自衛の目的たるとを問わず戦力保持を禁止している。二十七年の十一月二十五日。これは佐藤達夫さんが、その後、「法律のミステーク」、「法律の悪魔」という本を書いて当時を回想しておられる。私はいまこれをあげたんです。統一見解の第一項をあげたんだけれども、この点をお認めになりますかお認めになりませんか。先ほどの答弁でいえば、これは認められないことになるのです。いかがですか。
  21. 高辻正巳

    高辻政府委員 要するにそのころの言い方と申しますか、近代戦争遂行能力で突っ走っておったわけでございますが、その当時の解釈としては、近代戦争の遂行能力という一定の、これはどういう量であるか説明しろといってもなかなかむずかしいと思いますが、一つの量というものを考えておったものですから、そういうようなこともおのずから出てくると思いますが、いま申し上げましたように、そのいわゆる統一解釈なるものは、確かに、正直に申し上げて部内で検討したことは事実でございます。しかし外に対してわれわれの統一見解でございますといって見解を示したことはございません。われわれはそれを一つの素材として検討を重ねたことは事実でございます。  ところで、いま申し上げますのは、自衛のためなら幾ら大きなものを持ってもよろしいといっているわけではなくて、自衛のためといえども、やはり目的に相応する限度内という一定の量をあらわす意味で、また自衛ということばも使っておるわけです。したがって、自衛のためならもう何でもいいんだというようなことをいっているものでないことはあるいはお気づきかと思いますけれども、そういう限度内にとどまるものであれば、それは憲法九条二項が否認しているものではあるまい。——あるまいというと、少し自信がないのかと言われると困りますが、そういうものは九条二項の禁止している戦力でないんだ、保持を否認している戦力ではないんだという解釈を堅持してまいっておるわけです。この解釈のしかたというものは、たびたび申し上げますが、もうこの十数年来継続して言っておることでありまして、その後これが変わっているということはございません。  それからもう一つ、先ほど資料がないということをたいへんお気になさっておしかりを受けましたが、私が申し上げるのは、吉田総理がそうおっしゃったあとで、だれがそれと違ったことをというか、いまの解釈の基盤になるような解釈をだれがしたか、それはちょっと覚えがないということでありまして、吉田総理の御発言の後に、いま言ったただいまの見解の基礎になる考え方がずっと出ているということは間違いのないことでございまして、だれがそれを最初に言ったか、それだけはちょっと覚えがないというか、そういうことでございますので、その点あしからず御了承願います。
  22. 大出俊

    大出委員 あなたが先ほどの答弁で責任ある答弁をいたしかねるとおっしゃったから、そうなると私も責任ある質問をいたしかねる。あたりまえじゃないですか。質問者と答弁者のほうがお互いに責任のないことを言い合ったら、迷惑するのはこの議事録を見た国民一般。だからそういう不見識なことはしたくない。質問できないです。そんなことはだれが言ったか、私が言ったって意味がないでしょう。あなた責任ある答弁ができないとおっしゃるんだから、そうでしょう。  そこで、木村さんがお見えになりましたが、三十分しか時間がないので、高辻さんには論議の途中でたいへん恐縮ですが、この点はもう三、四点にわたって詰めておきたいのでございます。そうでないと、後ほど中曽根さんに、せっかくきょうは野党質問でお時間をあけていただいておりますのに、つながっていかないものですから恐縮ですが、少し時間をあけさせていただきます。  そこで木村長官に承りたいのでありますが、いわゆるトランシット協定と申しますか通過協定というのが新聞に載りました。これは御存じのとおりリチャード・ハロラン氏がニューヨーク・タイムズ等にお書きになった中身であります。この中身を概略読んでみまして私は幾つか思い当たる節がある、最近では比較的長く内閣委員会でやっております関係でたくさんの質問を重ねてきておりますから。  そこで、木村さんがあっさりここで否定をされておるのですね。木村長官は二十五日、日米間に核持ち込み秘密協定があったというニューヨーク・タイムズの報道について、あり得ないことだと全面的に否定した、こういうふうになっている。あまり肩ひじ張って否定されると疑い深くなるのが日本人の人情でございまして、私も副長官のおっしゃった顔色まで聞いてみたのですが、だいぶ疑いたくなるような感じがするのでありますが、それは主観でございますからさておきまして、ときにリチャード・ハロランという人も、私も彼のニューヨーク・タイムズに書いておりますものやなんかを、特に一昨年十二月の佐藤・ニクソン会談の本土並み返還などという、あのときにたいへん長文の文章をニューヨーク・タイムズに書いておる。まさに今日考えてみて、あの方が書いている中身というのは全く正鵠をついていた、こう考える。それだけに権威のある方でもあり、パト構想などもお出しになったのですが、この背景も調べてみたのですが、この記者の方は国務省、国防省両筋に相当つながりを持った方、こう考えざるを得ない節がたくさんある。してみると、副長官があっさり否定されるけれども、ニューヨーク・タイムズほどの新聞社が、しかもリチャード・ハロラン氏ほどの記者が全く荒唐無稽なことを、国際的にも大きな問題になることを、しかも沖繩返還を前にして、しかも交渉が煮詰まりつつある段階で言うはずがない。何かなければならぬ。してみると、そう簡単にあなたが否定していい筋合いのものかどうか、数々の疑問を私は持っている。そういう意味でどういうお考えで簡単にこれは全くないんだ——知らないというなら話はわかる、全くないという否定のしかたをなぜされたのか、そこのところをまず承りたい。
  23. 木村俊夫

    木村政府委員 私もハロラン記者なるものをいささか存じておりますが、あれほど老練なハロラン記者がああいう記事をどうして載せたか実は理解に苦しんでおるのでございます。その背景等につきましては推測するだけでございますが、政府といたしましては、私がはっきり否定いたしましたとおり、そういう通過協定なるものは、口頭にしろ文書にしろ一切存在いたしません。
  24. 大出俊

    大出委員 いま口頭にしろ文書にしろとおっしゃった。これはあげ足をとるわけじゃありませんよ、重要なことだから承るのですが、ハロラン記者の言っておることも口頭であると文書であるとを問わずということを言っている。そういうものが存在する、存在した、両方のことばを使っている。これは非常に意味のあることばでありまして、私はここで奇異なことを承ったので一つだけ再度質問したいのですが、推測するだけだという意味のことをおっしゃるんだけれども、あなたのほうには、私どもと違いまして、ニューヨークにも出先機関をお持ちなんですね。あなたのほうの組織、機構の方々もおいでになる、これは防衛庁はじめどこでもそうです。そうすると、一体どういう背景、どういうお考えでああいうことをハロランなる人が書いたのかという点について、あれから今日まで時間がある、その感触を確かめるぐらいのことは当然あってしかるべき筋合いだ。ただ単に副長官室におって推測をしている。これは私は非常に無責任だと思うのでありますが、この点は私には非常に奇異に聞こえる。  そこで次に進みますけれども、このハロラン氏は、日本に核を積んだ飛行機がパトロールをやっておって行ったか行かないかということをつまびらかにしてないというようなことを書いている。私は実はF105サンダーチーフなる飛行機が核を積んで日本の飛行場に着いたという話を直接聞いている。聞いているけれども、ここのところ数日の間に沖繩で他の党も調べておられる。いわゆる十八飛行部隊のどういうビルにどういうことがあるなんというようなことを発表している。私は別な角度から調べてきている。だがいまここでそれを言うつもりはない。相手がおりますから時期を見てものを申しますけれども。  もう一つ横須賀の港に現にサブロックを積んでいる原子力潜水艦が入ってきている、アタックサブマリン、攻撃型潜水艦、この事実についても私はたくさん聞いている。そこでこれまた言うと、横須賀——私は横須賀の隣におりますが、横須賀という町はすべてこの種の情報というものは非常に早い。そういう町、そういう風土、性格を持っている。だから防衛庁の島田さん以下おいでになるけれども、艦船修理部の問題、第七艦隊の佐世保移駐の問題についても、もう町の空気を見たら一ぺんでわかる。中曽根さんに私が本会議質問しても、それはわからぬと言う。委員会で二回も三回も質問しても、それはわからぬと言う。言っているんだけれども、町のほうは一年延期だということを先に知っている。大騒ぎした地元の商店だってぴたっとおさまって、きわめて活気を呈してやっている。聞いてみると、あれは先生一年延期ですよ。しばらくたって一年延期、こういう風土なんです。私はたくさんの方々から聞いている。だから、これもまたそのまま言うといろいろめんどうなことになる。  で、ハロラン記者に言わせれば、日本の港にサブロック、つまり核爆雷を積んだ原子力潜水艦が寄港した、過去形でものを言っている。言い切っている、ぴしゃっと。という事実をとらえて、その上で——これはずいぶん長い文章です、その上で、つまりそれが口頭であれ文書であれ、いわゆる核についての通過協定、秘密協定がある、こう言い切っている。アメリカの国務省なり日本の政府否定をされてもある、こう言っている。  私はそこで長官に、実際にいま105サンダーチーフの核を積んだ話、サブロックを積んだ原潜の話をしましたが、私は一番手近にあるので横須賀の原潜の話をしますが、あなたは一体あれから原子力潜水艦というものは何回くらい日本の佐世保、横須賀に入ったか御存じですか。
  25. 木村俊夫

    木村政府委員 一回昭和三十九年に原潜の入港を認めたのです。それ以後、今回横須賀に入港したソードフィッシュが入っております。合計四十六回になります。
  26. 大出俊

    大出委員 四十六回の中で同じ船が何回も入っていますね。したがって船の数でいいますと何隻ぐらいの船が入っていますか、船の名前でいいますというと。重複したのを避けますと何隻ぐらいになりますか。
  27. 木村俊夫

    木村政府委員 昭和四十三年一月佐世保にエンタープライズ及びトラクストンが入港して以来、四十五年三月トラクストン、四十六年三月及び四月トラクストンが入港して、現在まで計四回五隻。この年度別に申し上げましょうか。
  28. 大出俊

    大出委員 いいですよ。  副長官、ちょっと間違っちゃ困るんですがね。それはエンタープライズ並びにその護衛艦ですよ。エンタープライズはサブマリンじゃない、潜水艦じゃないですよ、上へ浮いている。エンタープライズがもぐっちゃっちゃたいへんなことになる。間違って読んでもらっちゃ困る、そこまで用意されているなら。
  29. 木村俊夫

    木村政府委員 それでは内訳を申し上げます。  昭和三十九年度に佐世保に一回、四十年度に六隻、四十一年度に四隻、四十二年度に一隻、四十三年度に二隻——これは佐世保と横須賀と別々に申しましょうか。
  30. 大出俊

    大出委員 一緒でいいです。
  31. 木村俊夫

    木村政府委員 それじゃ四十一年度に六隻、四十二年度に六隻、四十三年度に五隻、四十四年度に九隻、四十五年度に九隻、四十六年度に四隻。
  32. 大出俊

    大出委員 それを聞いているんじゃないので、よく聞いておいてくださいよ、短い時間で質問しているのですから。あなたは三十分とおっしゃるから。私の聞いているのは重複しているのを抜いて——船には艦船番号と、これは防衛庁もそうですけれども、名前がくっついている。その名前別に拾っていったら、一体何隻——スヌークというのは何回入って、バーブが何回入ってきた。スヌークは一隻ですよ。バーブも一隻でしょう。パーミットも一隻でしょう。スキャンプも一隻でしょう。そういうふうに拾っていったら、一体何隻入ってきたかということです。——時間がかかりそうですからいいです。私のほうで話をもう少し進めるから、その間に勘定していただければいいです。  ところで、防衛庁に承りたいのですが、いまアメリカの原子力推進によるアタックサブマリン、つまりSSNであります。SSBNを除きましてSSN、これは当年で何隻でございますか。
  33. 久保卓也

    ○久保政府委員 正確な数字はすぐ申し上げますが、たしか原子力潜水艦全部で八十隻ばかり、そのうちSSBNが四十一隻であったと思います。
  34. 大出俊

    大出委員 SSBNは聞いていない。SSNは何隻かと聞いておる。BNは除いてと言っているのです。逆です。ちゃんと聞いてください。
  35. 久保卓也

    ○久保政府委員 約四十隻ばかりです。
  36. 大出俊

    大出委員 ここに、最近防衛庁の監修と書いてなくなりましたが、防衛年鑑、もとはそう書いてあったけれども、最近はそういうことにするというと、何かあったときに困ると思って変えられたのかどうか知りませんが、中曽根さん笑っておられるけれども、笑わぬでもいいですよ。私は防衛庁のように専門家をアメリカに置いておるわけじゃない、ささやかな代議士でございますから、したがって、こんなものしかない。これを見ますと——新しいのがありましたね。これはまだ私いただいておりませんが、いつもこれは防衛庁の政府委員の方ができましたといってお届けをいただいてたいへんありがたいのですが、残念ながら三月にできたやつは、本年版はまだいただいておりませんので、図書館から借りてきましたが、これによりますと、「潜水艦一〇三隻(ポラリス潜水艦を除く)」、つまり、いま久保さんのおっしゃるSSBNを除いて潜水艦は百三隻ある。さて「このうち四四隻は原子力推進攻撃型潜水艦」、つまり、原子力推進によるアタックサブマリン、これが四十四隻、「うち三四隻はサブロックを積載している」、こう言い切っているのですね、これは。防衛庁の皆さんがお届けいただきますので、私、この防衛年鑑というのを使って御質問したことがあるのであります。ところが、一ぺんだけそれはこの防衛年鑑が間違っているのだとおっしゃったことがあった。あとは一度もない。あとから調べてみたら、やはり防衛年鑑は合っておった。信憑性があると思いますよ。そこで、四十四隻が——いま私が申し上げたように、これは一九七一年三月にできたばかりでありますから、一番新しい。
  37. 久保卓也

    ○久保政府委員 ちょっと訂正します。資料が手元にありましたので訂正いたしますと、SSN原子力潜水艦、BNを除きまして四十七隻でありますが、そのうちでサブロックを装備しているのが三十四隻であります。
  38. 大出俊

    大出委員 四十七隻の三十四隻ですね。  そこで、先ほど横須賀へ来た原子力潜水艦を名前別に拾いますと、回を重ねてきておりますものを除きますと十五隻なんですね。正確な数字でございます、十五隻。そうしますと、四十七隻のうち三十四隻サブロックを搭載をしておりますと、残りは十三隻しかない。原子力潜水艦四十七隻ありますけれども、そのうちでサブロックを積んでないのは十三隻しかない、こういうわけですね。さて、そうなりますと、横須賀には年を重ねてはおりますけれども、年ごとに全部調べてみましたが、ここ数年来、サブロックを積んだ潜水艦がすべて入ってきてしまっておるのですね。確かに私が別なほうで聞いたことが間違いがない。幾つも私は調べて、その情報源の先の先まで調べましたが、間違っていない。ということになりますと、これは穏やかならぬことになる。リチャード・ハロランが書いているように、横須賀の港においてサブロックを積んだ潜水艦が入っていた、知らぬは政府ばかりなりになっている、町の人はみんな知っている、こういうことになる。ここのところあたり官房副長官、あなたは御存じで簡単にこのハロランが書いておりますものを全面否定なさったのかどうか。せめてよくわからない、調べてみる、私に言わせれば、どうやらサブロックなどを積んだ原子力潜水艦が横須賀にも入っておったようだ、将来は厳にそういうことはさせないようにする、こういうふうに言わなければならぬ筋合いだと私は思うのですが、いかがですか。
  39. 木村俊夫

    木村政府委員 ハロラン記者の書いた記事については、米政府もこれを明らかに否定しております。政府といたしましても、日米安保条約の事前協議のたてまえがございますから、一時持ち込みを含めてそういうものは一切これを認めないことにしておりますから、そういう事実はございません。
  40. 大出俊

    大出委員 あなたは事実はございませんと言うけれども、三十九年とあなたは最初おっしゃいましたね、原子力潜水艦が入ってきたのは。そのときは椎名さんが外務大臣、いまの外務大臣の愛知さんが科学技術庁長官、お二人御出席をいただいて長時間にわたって石橋政嗣委員とともに質問をした。私は石橋さんのあとでございましたが、詳細にこの積んであるかないかを調べる方法を詰めてみた。信頼してください、調べる方法はありませんということであった。  そういう事実は一切ございません、ございませんと言って、あなたは調べたわけじゃない。あるいはあなたの関係者、政府の方々を使って調べたわけでもない。そう簡単に一切ございませんなんていうことを言えますか。たいへんなことになりますよ。
  41. 木村俊夫

    木村政府委員 これは日米両政府が責任を持って日米安保条約に基づく地位協定を定めまして、それに基づいて実行しております。一切そういう事実はございません。
  42. 大出俊

    大出委員 第七艦隊の佐世保移駐じゃございませんけれども、日米両政府があえて共同コミュニケまで出して、合同委員会で国と国との間で約束までして、さんざっぱら地元の諸君に迷惑をかけておいて、あっさり一年延期しちゃったということがあるでしょう。そんなに信頼できますか。米政府がそう言いますからそうでございますなんてばかな話はない。  先に行きます。先ほど承ろうと思ったのですが、そっちからお答えが出てきませんから私のほうで続いて申し上げますが、横須賀、佐世保に入ってきた原子力潜水艦、これは合計十五隻、どういうのが入ってきているか。そうして入ってきているのはいつごろつくられたものであって、どういう——原子力潜水艦といいましてもいま中身が三つあるのですよ。そこらは御存じでございますか。
  43. 木村俊夫

    木村政府委員 どうも私、専門家じゃありませんから、よくわかりません。
  44. 大出俊

    大出委員 専門家の方、外務省のアメリカ局の方もおいでになりますし、防衛庁の皆さんがおいでになるので、ほかでお答えいただいてもいいのですが、三つばかりに分かれておりますね。何年ごろできた、艦船番号幾つで、どんなものが入ってきたか。いま公表されている内装その他からいって、サブロックを積むといっても二通りあるのですけれども、そこらを含めてどうなっているか御存じですか。
  45. 久保卓也

    ○久保政府委員 SSNは、実は型からいいますともう少したくさんありますが、サブロックを積んでいるものは三つあります。スタージョン級、これは六七年以降の建造でございます。それからパーミット級、これは六二年から六八年までに建造されました。それからナーワル、これは試験的に一隻つくっただけであります。以上三種類でございます。
  46. 大出俊

    大出委員 申し上げますが、ちょっと記録でもしてください。長官がおいでになるときに申し上げておきたいので、回り道を避けます。入ってきたのから言いますと、SSN五七九という艦船ナンバー、一九五五年につくられておりますが、これがさっきお話しになったソードフィッシュ、二千三百六十トンでございますが、次にサーゴ号、これは艦船ナンバー五八三、これも入ってきております。これは一九五六年にできている。それからシードラゴン、艦船ナンバー五八四、これも入ってきておる。ソードフィッシュ、サーゴ、シードラゴンは、いずれも二千三百六十トン。それから一九五七年型で艦船ナンバー五八八のスキャンプこれは二千八百三十トン。これも入ってきておる。それからスカルピン、これは二千八百三十トン。これも五七年の型、艦船ナンバー五九〇。それから五九二スヌーク、これが入ってきている。二千八百三十トン。シャーク等と同じ型であります。それからいま久保さんは、サブロックを積んでいる型のスタージョンとパーミットをお話しになりましたが、その問題のパーミット、これは早くからサブロックを積んでいる。一九五八年にできて、艦船ナンバーSSN五九四、これがパーミットであります。いま久保さん自身がお認めになった。このパーミットは、申し上げておきますが、スレッシャーができまして、そこで改装型をつくるということでパーミットになった。スレッシャーは沈没しておりますが、つまりパーミット号五九四の艦船ナンバーであります。さらにパーミット型でそのあとにできましたプランジャー、艦船ナンバー五九五、これも入ってきております。これもサブロックを積んでおります。それから五九六バーブ、これも同じ型であります。つまりスレッシャーが沈没をした、そのあとずいぶん試験潜水その他をやりまして、改装に改装を重ねまして、パーミット以降の型になった。だから、これは三千七百五十トンあります。このバーブ、これが入ってまいりまして、そのあとさらに一九六〇年の型、これもいろいろと事情があるのでありますけれども、省略をいたしますが、フラッシャーという型があります。これも三千七百五十トン、これも入っております。さらにまた、そのあと一九六一年にできた船、ハドック、これも三千七百五十トン、艦船ナンバー六二一、さらにそのあとで、いまお話しのスタージョンのあとにできた——あとといっても同じ年度の一九六二年ですが、そのあとにできた型で六三七という艦船ナンバーでホエールというのができて、そのあとにトートグというのができている。これは二回入ってきている。したがって、一九六二年、ここで大きな改装が行なわれまして、この型の船をつくった。そのトートグ、スタージョンができて、これも入ってきております。さらに、そのあとに一九六四年にもいろいろありまして、グリーンリングというのが一九六四年にSSN六四六型でできている。そのあと一九六四年には、例の原子力潜水艦事故その他の関係でいろいろな手間を取りましたが、急速にこれをつくった。さらにそのあとの一九六四年にも艦船ナンバー六六〇、六六一、六六二、六六三、六六四、六六五、これだけ実はつくっておりますが、ここでクイーンフッシュというのが入ってきている。これも以後の型であります。それからガーナード、これも以後の型であります。それからアスプロ、このアスプロというのは、前回の、いまできております三千七百五十トンよりさらに大きくなって三千八百六十トン、これまで実は入ってきている。こうなると、いまあなたが御指摘になった型のパーミットそのものが入ってきているし、スタージョン、これもアメリカの潜水艦、アタックサブマリンの中身としては、非常に画期的な改装が行なわれておりますが、この年に同じ型のものが入ってきている、こういう事実はお認めになりますか。入ってきたのですからね。どちらからでもけっこうです。
  47. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのとおりであります。ただし、いろいろなタイプを申されましたが、私どものほうでは、先ほど申し上げたスタージョンとパーミット、ナーワル、この三つだけであります。
  48. 大出俊

    大出委員 私もここに原子力潜水艦についてのことは詳細に記録されているのを持っている。ここでいまそうおっしゃるから申し上げるのですけれども、このスタージョンというのは、非常に研究されている。ここで大きな改装が実は行なわれている。ここに書いてありますが、サブロック装置を含めてここで大きく改装した。なぜならばサブロックも試験研究の結果、サブロック自身変わっているからですよ。つまりホーミングの方式、これは距離が長いものですから、ソーナーの到達範囲との関係で実は演習経過を見ますと、つまり基地攻撃をやっている、このサブロックが。だから、ほんとうならば、ソーナー装置とあわせてホーミング魚雷の形をとりたい。ところがなかなかうまくいかない、ソーナーとの関係、艦の形もあって。そこでしかたがないから、パーミットのときには、艦のまん中に発射管を置けるようにして変えたんですね。これはなかなかむずかしいことをやっているものだと思いますけれども、推進機を一軸に二個設けて、互いに逆に回転するようにして減速装置その他を含めた改装をしている。したがって、この実験潜水艦のアルバコーワというのを使って何べんか実験をしてきたわけです。そういうかっこうでパーミットのときにもずいぶん大きな改装をした。だから、ここに記録しておきましたが、艦首、このパーミットの艦の一番先のほうに、ソーナーを内蔵するように変えて前に出した。そうしておいて、いままでの型にないのですけれども、発射管を船の中央部につくったという改装です。さらにソーナーとホーミングとの距離の差を何とかできないで、つまり近距離の形の核弾頭にした。サブロックをつくって、そういう形で積んできた。そう変えた。そしてスタージョンのときには、もっと大きな改装をしている。実はそういう経過まで明確になってきている。だから、いま最初に四十七隻のうち三十四隻は核を積んでいる、こういうふうにお話しになっているが、それでは一体核を積んでいるのはどういうものなのか。三つある。パーミット、スタージョン、もう一つの型もあります。ありますが、これは艦尾の改装をしておりますが、そこまでこまかく申し上げてもしかたがないと思います。それからジャックなんていうのは、ポーツマス工廠でつくったわけですね。これは先般艦尾の改装をしまして、これもサブロックその他も積む研究の中身一つであります。私のほうの調べた中身からすると、そういうことになっております。これは多少の違いはしかたがないと思います。したがって、おおむね久保さんのほうと私の意見と違ってはいない。スタージョンにしてもパーミットにしても、似たような見解を持っておる。そうすると、そのパーミットが現に入ってきている。さらにスタージョンの型のものも入ってきている。長官、あなたはここまで申し上げても——先ほど言ったように、久保さんはさすがに国防会議をおやりになって長らくお勉強ですから、そこまでちゃんと御承知である。だから私のほうで調べた意見と違わない。ここまできているのに、あなた、サブロックを積んだ潜水艦が入っていない、アメリカとそうなっているからそんなことはない、そんな無責任なことを言えますか。だからいま世の中に大きな騒ぎが起こる。沖繩返還問題もそうですよ。VOAだってどんどん沖繩では拡張している。そんな簡単にどくはずはない。点検の問題だってそうですよ。アメリカがこう言うからそれでよろしゅうございますと言っているうちに、どんどん入ってきている。アメリカ自身がサブロックを積んでいることをちゃんと明確に発表している船が入ってきていて、どこか横須賀の入り口に来たら船の上からサブロックをおろすのですか。しかも同じ船が沖繩に入っているのですよ。沖繩に入っているこの船は核爆雷を積んできている。私の持っている資料にもある。沖繩ではそれを明らかにしている。だけれどもそれは貯蔵はないんだ、持っていっちゃうんだからと言っている。リチャード・ハロランが、サブロックを積んで日本の港に入ってきたと、過去形を使って言っておる。そんなこと一切ありません、そんなこと言えますか。無責任きわまる。
  49. 木村俊夫

    木村政府委員 私、専門的なことはよくわかりませんが、とにかく日米両国政府間で取りきめをいたしましたことに反して、米国がわが国の信頼を裏切ってそういう行為をしていないということを確信しております。
  50. 大出俊

    大出委員 きわめて抽象的に確信だ、確信だとおっしゃってもそれはだめですよ。あなたは専門的なことは一切おわかりにならぬとおっしゃる。おわかりにならぬで確信だ、確信だと言ったって、それはあなた信じなさい、信じなさいと言って太鼓をたたいているようなものです。そうはいかぬ。どういう御相談をなさってああいう談話を発表したのですか。
  51. 木村俊夫

    木村政府委員 これは別に相談をしたわけでなしに、政府の当然の方針、いままでの方針のとおり新聞記者の方々の質問に対して答えただけでございます。
  52. 大出俊

    大出委員 相談はしない。あなたは専門家じゃないと自分でおっしゃっているでしょう。実は横須賀で一昨年異常放射能が発生したあのときに、私はいろいろ調査をやってみた。そうしたら原子力推進機関、原子炉、原子力エンジン、ここに、これは御存じのとおり港へ入りますと停止をしますから、そうすると水が流れる、あたりまえです、膨張すれば出ていくわけでありますから。エンジンをとめる。出発しようとすると加熱しますから排水をする、異常放射能事件が起こる。調べてみたらあそこにたいへんな高圧線を五本も引いておった。愛知外務大臣は私に何と言ったかというと、アメリカのやることはけしからぬと言っているのですよ、政府に言わぬでそんなことをすると。そういうことなんです、現実に。前回の艦船修理部の事件だってそうです。何にも外務省を通じてものを言わない。年じゅうそれじゃないですか。それをあなたは専門家でないのに、実際に何も御存じないのに、あるはずがないなんて言っている。あるはずがないだろうと言うならわかる。そういう無責任な答弁、無責任なものの発表のしかたではいけませんよ。この事実を否定されますか。それならば理論的にあなた否定してください。
  53. 木村俊夫

    木村政府委員 私は専門的なことではなしに、政府としての当然の立場、またこの日米安保条約並びに地位協定に基づいての両国政府間のお互いの信頼を裏切ることは絶対にないという確信に基づいて発表したわけでございます。
  54. 大出俊

    大出委員 確信だけではものは進まない。これはだれが考えたって——これは久保さんが専門的な知識をお持ちになってお答えになっているように、パーミットにしたってスタージョンの型にしたって、サブロックを積んでいることに間違いない。サブロックは全部核であることは、ここに記録がありますが、皆さんの先輩といいますか、時の海原防衛局長がちゃんとここに答えている。アメリカが発表している通りのことをここで言っておられる。外務省の竹内さんが言ったことを否定している、そうじゃない。これははっきりしている。念のために申し上げておきますが、これは先ほどお答えをいただきました昭和三十九年九月一日の議事録です。このときの政府統一見解も非常に不明確きわまるものであった。竹内さんがいろいろ明確にならない答弁をしておった。そこへ海原さんがお答えになって、去年のアメリカの発表では、通常弾頭のサブロックというものは、相手の潜水艦も原子力潜水艦になっているときに役に立たないことが明確になった、だからサブロックは全部核である、この点をアメリカが明らかにした、明確に申し上げておきます、ちゃんと答えている。石橋さんはそこで質問をやめている。それを明らかにしたがったということでやめている。念のために読んでおきますが、「通常の」つまり核でないもの、「通常のものであれば、五十キロとか八十キロとかいわれておりますが、それだけの距離を飛びまして、しかも高性能の相手の原子力潜水艦を破壊するには不十分であるということがわかりまして、現在におきましては、サブロックであれば、これは全部弾頭は核爆雷でございます。このことは、昨年の米海軍省の発表にもそのとおりでございます。なお、この核爆雷が水中におきましてどの程度のスピードのものかというお尋ねでございますが、これは軍事機密でございまして、私どもは承知いたしておりません。」明確に答えている。  核装備されていることを久保局長はお認めになっている、パーミットにしてもスタージョンにしても。パーミットはそのものが入ってきている。スタージョンは同じ型のものが入ってきている。この事実を否定なさるおつもりですか。
  55. 木村俊夫

    木村政府委員 私はその事実は存じておりますが、しかしながら、それがはたして核武装をされておったかどうかということについては、その後の改装状態等もわかっておりませんし、私はその事実はないと思います。
  56. 大出俊

    大出委員 あなたはみずからしろうとだとおっしゃっておって、存じておりますがといま言い直されたって、迷惑千万。あなたは先ほど来知らないとおっしゃった。知らないものは知らないとおっしゃらなければいけませんよ。さっそく調査いたしますとかなんとかいう言い方だってあるじゃないですか。知らないで、専門のことは全然わからぬとおっしゃっておって、いまになって知ったようなことを言われると迷惑。御存じないなら御存じないでいいですよ。私はそんなことを追及しているのじゃない。事実があるから事実があると申し上げているのです。事実をいまあなたはお知りになったのでしょう。あなたのほうはパーミットかどうか御存じないのでしょう。そんなにあなたはかたくなにならぬでもいいじゃないですか。国民が心配していることだから聞いているのだ。お調べください。
  57. 木村俊夫

    木村政府委員 私が事実と申し上げましたのは、その入港の事実ということであります。
  58. 大出俊

    大出委員 じゃ入港の事実はお認めになった。そうなるとアメリカ側は、これはサブロックを搭載していることを明らかにしている。そうなると、あなたはアメリカとの間でなんと言ったって、事実と相違するじゃないですか。
  59. 木村俊夫

    木村政府委員 私はその入港の事実と、その後においての改装の有無ということは存じない、こう申し上げた。
  60. 大出俊

    大出委員 改装の有無というのは、私が申し上げたとおり、久保さんもお認めのとおり、専門屋同士が認めているのだからいいじゃないですか。そうすると残る仕事は、アメリカのほうに対してなぜそういうものを入れたかということを言わないか、そこまで言い切られるなら、どうなっているのだということを調査する責任があるのじゃないですか、政府に。これだけ大きな疑問になっているのに、そこはいかがですか。
  61. 木村俊夫

    木村政府委員 この席では私はお答えしかねます。防衛庁、外務省ともよく調査いたします。
  62. 大出俊

    大出委員 お調べください。私のほうもこれだけ調べて明確に申し上げているのですから、しかもアメリカのほうの書物にだってあるのですから。いまここで副長官に即答しろと申し上げても、それはその衝におありにならないし専門的にこの道をおやりになっているわけでもないですから。ただしこの席で明らかなことは、久保さんがおっしゃるように、パーミット型、スタージョン型、さらにジャックというのがありますけれども、このスタージョン、パーミットという型は、そのための改装をしてそのために積んだのですから。それが入ってきている事実があるのです。これは算術計算でいったって、四十七隻のうちで三十四隻核を積んでいる厳然たる事実が久保さんから発表されている。私のほうはこっちの防衛年鑑をあてにしますが、そうすると四十七隻で三十四隻積んでいるとすれば、積んでないのは十三隻しかない。そこで十五隻入ってきているとすれば、積んでいるのはその中で二隻、算術計算だって明確じゃないですか。御調査願います、調査をされるとおっしゃったのですから。  これは外務大臣に承りたいのですが、きょうは大臣がおいでになりませんけれども、三十九年当時外務大臣が答えておりますが、三十九年にエードメモワールというのがございますね。ここにございます。当時の古い記録でございますが、私もこれをとらえていろいろ質問をいたしました。このエードメモワールに政府統一見解でノーチラス型の通常の潜水艦、こういう言い方をして、ノーチラス型じゃないじゃないか、ノーチラス型というのは一体何隻あるんだと詰められて、いまスレッシャー型も入ってくる、スレッシャー型が二十五隻核を積むといっているじゃないか、こう詰められて、あわてて統一見解をひっくり返した。なぜかといったらいま試験中、研究中、近く結論が出そうだからもう一年間くらいはサブロックは積まないだろう。ちょうどそのとき小泉防衛庁長官で、外務省、防衛庁みんな同じ答弁をしている。それでは一体積むようになったらどうなんだ、常時核装備だといっているんだからどうなんだ。私への答弁の中で横綱大鵬ほど大きい大きさだからそれをおろすのに十五分くらいかかる。ふざけるなという話になって、皆さんのほうはあわててそれを直しまして、緊急避難をどうするんだと言ったら、緊急避難は国際法上やむを得ないでしょうといっておいて、それなら核を積んでどこかの港へいきなり行くのかと言ったら、いや間違いでした、潜水艦だから台風なら沈んで逃げたらいい、そういうふざけた答弁なんです。沈んで逃げたらスレッシャーみたいに沈み過ぎてしまって沈没したらどうするんだと言ったらあわてて直された。そういう論議の上に、一年間期間があるからその点は絶対に入らないようにするというので黙って見ていたら、今日まで何にもしない。そういう不見識なことでは困るんですよ。その上に四次防ということで沖繩返還ということになってきますと、なまはんかなことでよろしゅうございますというわけにいかない。だから横須賀の町を歩いてごらんなさい。方々でその話が出てくる。その潜水艦に乗っていた人が町で酒を飲んだりしているんだからあたりまえの話です。直接新聞記者が兵隊さんに会って聞いている。こういうことまで現実はあるのです。ただそこまでいうと、幾ら外国の兵隊さんのことであっても、個人の問題にかかわるからあえて私は言わないつもりです。そういう事実、証言があるけれども、別な角度から実は私は詰めてきたわけだ。だからリチャード・ハロラン氏が言っている通過協定というものはそういう意味で簡単にできるものじゃない。  さてそこで、口頭によるあるいは文書によるとを問わずというふうになっている。外務省に承りたい。いまの安保条約ができたそのときのいきさつ、安保六条に基づきます岸・ハーター交換公文の中で事前協議の対象が幾つかございましたが、あらためて言っていただきたい。
  63. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答え申し上げます。  事前協議の対象になるものにつきましては、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」こういうことになっています。
  64. 大出俊

    大出委員 もう一つそこで承りたい。それでは配置の重要な変更、装備の重要な変更、戦闘作戦行動に施設を使用する場合、こう三つあるわけです、岸・ハーター交換公文の中でも。戦闘作戦行動には安保五条を除くと書いてありますね。そのはずですね。  さて、皆さんと楢崎弥之助代議士とのやりとりでは、安保第五条を除くというのは一体どこまでかかるのかといったら、おたくの条約局長が、それは戦闘作戦行動だけにかかると答えておられますね。そこまで明らかになっている。さてそこで問題は、核の持ち込みの問題はどこに入っているのですか。
  65. 吉野文六

    ○吉野政府委員 装備の変更に入っております。
  66. 大出俊

    大出委員 装備の変更の中にどう入っていますか。私も何べんも岸・ハーター交換公文を読みましたけれども、頭の中にみんな入っていますが、どうもそこに書いてない。どこに書いてありますか。
  67. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これにつきましては、藤山外務大臣とマッカーサー大使との間に口頭の了解がありまして、装備における重要な変更とは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設の場合をいうということになっています。
  68. 大出俊

    大出委員 いま持っておられたのはあるいは私が持っているこれかもしれませんが、あるいは皆さんは専門屋ですから、もっと詳しいのかもしれませんが、実は私がかつて外務委員会の専門調査室の方に承ったところが、この口頭了解というのはだれとだれがやったのかというのがいままで議事録になかった、こういうお話で、私がこの席で外務大臣に対する質問で当時すぽっと聞いてみた。そうしたら藤山さんとマッカーサー大使、こういう御答弁が出てきた。ずいぶんまたあっさりお答えになったものだ、実はあとから専門調査室はそういうお話でした。ここにそれがありますが、これは東郷外務省北米局長、その前に佐藤外務省条約局長お答えになっている。佐藤外務省条約局長答弁は、「装備に関する重要な変更とは、核弾頭の持ち込み、中長距離ミサイル並びにその基地の建設というようなもの、配置の重要な変更とは、陸上部隊については大体一個師団程度、」云々というところから書いてある、いまお答えになった中身ですね。そして東郷外務省北米局長さんから「新安保の交渉を通じて、核兵器の問題をどうするかというのが一つの問題であった。当時の藤山外務大臣とマッカーサー大使とその問題を話し合って、要するにアメリカがかつてに持ち込むことは日本としては認められない、何らかの理由でそういう事態が生じた場合には、アメリカからあらかじめ日本側に相談し、日本側がよいといった場合にのみそういうことが起りうるんだ、こういうのがその実質であって、それを事前協議の交換公文の第二の問題としてまとめたわけであるが、その間双方の交渉当局においては「装備における重要な変更」という意味が何であるかということは、交渉の経過を通じ、何ら疑いがなく、はっきり了解されていたというのがその経過である。」、ここで承りたいのですが、条約があり、協定がありあるいは了解事項があり、口頭了解がありいろいろあるわけでありますけれども、一体その口頭了解というのはどの程度の効力を持つものですか、その法的効果を含めまして。
  69. 吉野文六

    ○吉野政府委員 私は条約局長でありませんから的確な答弁はできないかと思いますが、両国間の合意である限り、それが口頭であろうと文書であろうと、効力には関係ないことでございます。
  70. 大出俊

    大出委員 そんな簡単な答弁を聞こうと思っているのではないのです。あなた方は効力には関係がないと答えているのですが、冗談じゃないですよ。ちゃんとここに答弁されている。きょうは条約局長はどうされたのですか——委員長、私は条約局長の御出席も要求しておいた。話が前に進まぬじゃないですか。時間がないですから私のほうから言いますけれども、いまのあなたの回答では回答にならぬ。条約、協定、口頭了解というのはこういうニュアンスの相違がある。しかし、それまでの経過は省きますよ。あなたは担当局長じゃないですからこれも私は保留しておきますが、非常に重要なことで、条約局長の当時の答弁の一番最後に「ジェントルメンズアグリメントというか、紳士協約というか、そういう意味での拘束力というものは当然にあると思う。」あなたの言ったのと違う。こういう締めくくりです。いいですか、紳士協約だ。私はきょうは紳士協約とは一体何だという詰め方をしたい、そうしないと、副長官がおっしゃっている口頭あるいは文書によるとを問わず、リチャード・ハロランが言っている問題に結びついていかない。口頭了解というのは当時の記録をどういうふうに残しているのですか、具体的に条約の専門家に聞きたい。そうでないものはぼくはいろいろ見たことがあるけれども、口頭了解というのは見たことはない。特にこの問題について、この口頭了解というのはどういう手続、経過でお互いがどういうふうにしてやるのですか。ひとつ間違って、この口頭了解のときに、口頭で了解したことが別にあったなんていったら困るじゃないですか。もしかりに別に口頭で了解したことがあった、原子力潜水艦がサブロックを積んで入ってきた、入ってきたが黙っていた、アメリカは信頼していますから。しかし実際は口頭でやりとりしたときにそのことも一つ話し合われていた、そうしたらどういうことになりますか。さっきのように核を積んでいるとアメリカが明確にしている、サブロックを積んでいるというパーミットとかスタージョン級が入ってきている。しかもアメリカが言っている四十七隻の原子力潜水艦、攻撃型、そのうち三十四隻が核を積んでいることが明らかになっている。積んでいないのは十三隻しかない。十五隻が横須賀、佐世保に入ってきている。算術計算だって積んでいるのは明らかだ。それでも政府が黙っていた。だれが考えたってわかる。リチャード・ハロランが言ったことが何か間違っているのですか。  副長官からは御調査をいただくという御答弁をいただきましたので、お忙しいところたいへん恐縮でございます。これ以上申し上げてもしろうと論議になったんじゃ意味がないから……。どうもありがとうございました。  そうなると、これまた前に進みませんから、これはきょうは保留させていただきまして、論議が続いてまいります過程で後ほど、私が中曽根さんに御質問申し上げたい沖繩の問題等ともからんでおりますから、ぜひもう少し突っ込んだ御答弁いただきたいのですけれども答弁がないので保留させていただきます。  サンダーチーフの話をいたしましたが、沖繩の核というのにはどういうものがございますか、御答弁いただきにくい質問でございますけれども
  71. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩に核兵器があるかどうかということについては、全然情報を持っておりません。
  72. 大出俊

    大出委員 ただ一つだけ久保さんが御答弁をいただいている本国会における予算委員会等を通じましての中に、ナイキハーキュリーズの買い取り問題をめぐりまして、当然ナイキハーキュリーズは核弾頭を積むことになっているものであるという意味答弁——ここに議事録がありますから、正確に読んでもいいですが、なさっている。だから私は、アメリカ側も原子力法、マクマホン法がありますから、なかなか言いにくいところだと思いますけれども、かといって返還を目前に控えておって、核論議がやかましい昨今の事情にあります。したがって、そのままでも捨ておけない。だから言い方はかまわない、どういうふうにおっしゃっても。事実リトルジョンという戦術核兵器もある。戦術と戦略をどこで分けるかという問題もありましょうから、きょうは時間がありませんから、そういうところまで発展しないで承りたいのですが、戦力論争が残っておりますが、これはもう少しあとのほうで締めくくりにもう一ぺん——高辻さん、そこでたいへん長く御出席いただいて恐縮でございますけれども、話が実はほかのほうへ入ってしまったので、おそれいりますがお待ちいただきたいと思います。  そこで、リトルジョンは明確な戦術核兵器であります、アメリカの装備の体系の中で。あとから詳しく申し上げますが、沖繩にもリトルジョンを装備している部隊がある、これは明らかであります。そうなると、そこのところについて防衛庁の皆さんが知らないと、もし言うのだとすれば、これはきわめて責任回避もはなはだしい。言えないのだというならば、言えない理由を言っていただきたい。たとえばこうこういう法律があるからというなら、おっしゃっていただきたい、いかがですか。
  73. 久保卓也

    ○久保政府委員 私どものほうでは米側と情報交換をよくやっておりますが、この点についての情報を全く得られないということが一つと、それからリトルジョンについては、陸軍の師団装備であると思いますので、米軍が言うのも無理ないなという感じを持っております。
  74. 大出俊

    大出委員 どうもたいへんうまい答弁を久保さんなさいまして、わかったようなことの答弁になるわけでありますが、つまりアメリカの装備の中にはリトルジョンを持っていることになっている、なっているが、置いてあるかないかということになると、私も行ってみたわけではない、別のほうから詰めなければ、持っているという結論が出ない。だからサンダーチーフの問題なんかも、人の名前を言うと、これはアメリカの人だけれども、すぐそっちに響くことになります。いまだいぶうるさくなっていますからね。  実は私はここに原子力法というのをいろいろ調べてみた。この原子力法というものについて実は外務省の皆さんに承りたいのでありますが、まず手始めに原子力法、これは訳したものでございまして、この中身からいたしますと、愛知外務大臣がアメリカ法律なので、われわれ日本に関係ない、こう言われたのですね。ここのところをどういう趣旨でそういうふうに言われたのか。中身は百四十何条ある、実は読んでみましたが。そう簡単ではない。したがって、そこのところも、なぜ一体関係がないのか、そこを承りたい。
  75. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましては、残念ながら私は何ら用意しておりませんから、的確にお答えすることはできないと思いますが、愛知大臣の答弁の経緯その他もう少し調べさせていただいて、お答えいたしたいと思います。
  76. 大出俊

    大出委員 それで委員長、これも実はちょっとあとでお調べいただく関係で申し上げておきますが、非常に重要なかかわり合いがある。百四十二条のd項に、「委員会は、委員会と国防総省が合議の上原子兵器の軍事利用と重要な関係があると決定し、かつ、合議して、国防情報として十分に保持できる等決定した資料については、その機密を解除しなければならない。ただし、第百四十四条b項により締結された協力協定による場合を除き、機密の解除されたいかなる資料も、その資料が国防情報として留保されている限り、いかなる外国または地域防衛機構に対してもこれを通報してはならないし、また他の方法でこれを提供してはならない。」、ずいぶんこれは厳密な規定ですね。機密が解除されていてもだめだというわけですね。それが条約、機構を結んでいる相手方でもだめだというわけですね。そうすると、日本は関係ないといっても、そう簡単にはいかない。相手方は全部拘束されているわけですね。だからあの答弁、ここに議事録がありますけれども、なぜああいうふうに答えたのかという点を私はここで詳細に承っておかぬと、これまたあとに差しつかえる。これはまだ附則がありますが、中心だけ読んだのでありますけれども、これはまたひとついまのお話で、そこから先のところはとおっしゃるので、これもひとつ留保をさせていただきたい。あとから詰めさせていただきたいと思います。  そうしますと、いまの沖繩の核の問題、ナイキの問題がある。あるいはF105サンダーチーフの問題がある。あるいはリトルジョン、砲兵部隊のものがある。それはあると言わぬにしても、相手方の装備からいけば、当然そういう装備体系に入るものである、ここまでは言えると思うのです。そういうのは当然だということになると思う。  そこで、先ほどそういう意味答弁がありましたが、そうすると、中曽根さんに承りたいのでありますが、沖繩の核という問題について、せっかくの四次防がありますので、この辺で前段のほうは終わらしていただきますけれども長官国会答弁の中で、国民が非常に心配していることだから点検をしよう、こういう意味答弁をなさった場面があります。このときもマクマホン法、つまり原子力法との関係も少し出てきておりました、やりとりの中で。そこでこの問題が何となくどうもどこかにいってしまったような感じを受けるのでありますけれども、そういうふうに御答弁をいただきました中曽根さんは、一体沖繩返還交渉の大詰めまでの間にどういうふうに対処なさるおつもりなのか。  時間を省略する意味でもう一つ承りますが、つまり、核に関する点検なり調査なり、あるいはどけてもらいたいという意思表示なり、その確約をとるなりということについての方法は、時期というものとあわせ考えまして幾つかあるはずだと私は思うのですが、その方法についてもお考えがあれば承っておきたいのであります。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まずアメリカの原子力法体系というものは、アメリカの領域、アメリカの主権が通用している範囲内において通用していると思うので、日本国主権のもとにおいては、日本側に対してはこれは通用していない、そういうふうに私は解釈いたします。  それから沖繩における核兵器の問題については、いま向こうの施政権下にある地帯でありますから、アメリカ側自体が核兵器に関する情報は外へ出さない、そういう方針であるようです。ですから、われわれのほうはそういう情報は入手できない、そういう事態であります。  それから第三点につきましては、沖繩返還後と私は申し上げてありますが、ともかく沖繩はかつて核兵器があったという情報があった場所です、たとえばメースBというような。そういう情報のあった場所でもありますし、沖繩民衆の精神状態もわれわれは大いに考えなければならぬ。そこで返還後、たとえばナイキを受領する、もしわれわれがナイキを買い取るというような場合ができた場合にはそれを受領する、そういう場合に、核弾頭ありやなしや、これはもう当然点検する問題でありますし、できたら向こうと合意の上で連絡員を派遣するとか要員を派遣するというような形で何らかの技術的方法を発見して国民や沖繩の皆さんが安心できるような、そういう確認する方法を講じてみたい、そういうふうに努力してみたい、そういうことを申し上げたのであります。この考えは変わっておりません。
  78. 大出俊

    大出委員 たいへんありがたい御答弁だと私は、思っているのです。というのは、とかくいままでの経過の中で、いろいろおっしゃる責任者の方々がおいでになるのですけれども、そのつど変わってしまいまして、どうもどこまで信用したらいいのかわからないという感じのする場合が実はいままで幾つかありました。そういう意味で、いま長官がおっしゃっているのは、いまだにあのときお答えになった中身、そういういわばスタンドポイントをもって言っておられるわけでありますから、そこで、アメリカ側を相手にやりとりをする中で、時期的には私は三つぐらいあるのじゃないかと思うのです。  一つは、返還交渉、これをいまやっているわけであります。返してもらおうというわけでありますから、返還交渉というものを通じて核の問題を提起をして、明確に国民に対して核はどけたのだ、核抜きなんだということの保証を、調査、点検ということで取りつける。これは原子力法がありますが、これは外務省の見解を一ぺん聞かなければそこから先私も踏み込めないのでありますが、そういう解釈をとることはできる、こう私は考えているのでありまして、したがって、返還交渉を通じてやる方法が一つある。  それから、形式的には沖繩の基地は、一ぺん日本に返還をするのでありますから、再協定になる。だから、三万八千七百ばかりの基地関係の地主さんが個別契約の方式なりあるいは一括の方式なりについて論議をしている。かつまた小笠原協定方式をかぶせられることについて反対だといっている。なぜなら、形は一ぺん返還をされるというわけでありますから。そういう時点をつかまえて調査をすること、これは時期的にはできない筋合いではない。日本の主権の側にやる気があるかないかという問題、あるいはアメリカとの関係という判断がありますが、方法論としてはできなくはないだろうと思う。  それからもう一つ、返ってきたら安保条約の適用を受ける。いまの状態ならそうなるわけでありますが、その適用を受けた範囲内におけるやりとりがあるはずだろうと思うのであります。  いま長官お話しになっておりますのはそのうちのどの辺の場面に当たるのか。買い取りの交渉が進んでいるナイキ、ホーク両方含むのだろうと思うのですが、この辺のところは一体返還交渉が続いている過程にとお考えになっているのか、あるいはそのまん中だとお考えなのか、あるいは返還後というお考えなのか。別ワクだというお話新聞紙上で承っておりますけれども、どの辺になるのか、承りたいと思います。
  79. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 核抜き返還ということは、日本国総理大臣と米国大統領との厳粛な約束でありまして、これは返還の時点において実行されるものと確信しております。したがって、返還の際には、核兵器は存在しない、そういう状態で返還が行なわれるものと確信しております。したがって、私が申し上げたのは、その返還以後の時点における場合であります。  それから第二は、存在しないということは確信して間違いないと思いますけれども、しかし、沖繩というものは戦争その他の関係で特殊の場所でもありましたし、いま申し上げたような次第もありますから、できるだけわれわれのほうで確認して安心していただきたい、そういう配慮をやりたい。それには返還後もしナイキを買い取るというような場合には、ナイキに核弾頭ありやなしや、これは点検できることでありますし、それからそのほかの場合においても、ガス等の場合でも、アメリカはあれだけの協力をいたしまして、実地に場所まで見させたという経緯もございます。したがって先方の協力も得て、われわれのほうの要員を派遣するとか、あるいは適当な技術的方法を見つけて確認をして安心したい、そういう意味のことを申し上げたのであります。
  80. 大出俊

    大出委員 国会を通じての、特に予算委員会を通じての政府答弁というのは、目下のところ幾つかに分かれているのであります。これは幾つにも分かれられては困るのでありまして、したがって、ここでひとつ外務省は、国会答弁等を通じて一体どういうふうに態度をおとりになってきたのかという点、この点をどなたでもけっこうでございますが、おわかりいただける範囲お答えをいただきたいのであります。
  81. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ただいまの御質問につきましては、私が国会に陪席している際に承知している限りでは、ただいま中曽根長官の御答弁のとおり、外務省と防衛庁との関係あるいは外務省の数回の答弁についても、特に答弁が食い違っておるというような感覚を持っておりません。
  82. 大出俊

    大出委員 順を追って申しますが、いま中曽根さんが二回目に答弁をされた趣旨からいきますとこうなる。沖繩はメースBもあった、現に毒ガスもあった。あるいは自衛隊がナイキハーキュリーズを引き継ぐ。当然その核と毒ガスの総点検をしなければならぬ。それは返還後、日米安保条約の随時協議その他によって相談すべきものだということになる。これは三月四日の参議院の予算委員会で中曽根さんが御答弁をなさっている。この趣旨に間違いございませんな。いまの御答弁はそうでいいですね。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 さようでございます。
  84. 大出俊

    大出委員 一番先に申し上げますと、佐藤総理の御答弁一つございます。一九六九年四月一日、参議院の予算委員会総理答弁は、これは総理にまた聞きますけれども、「いま現状にある状態、それならば事前協議の対象にならないでしょう、」つまり、沖繩を返してくれという交渉をやるんだから、この趣旨はしたがって事前協議じゃないということですね。「いま現状にある状態、」沖繩が置かれている状態、「それならば事前協議の対象にならないでしょう、」この意味は、核があってもなくても、いま沖繩はそうなっているんだから、それを返してくれと言っているんだから、それは事前協議の対象にならない。「事前協議というのは、そういう事態をこしらえる前に協議するのが事前協議」、できちゃってからは事前協議じゃない。これも総理のおっしゃるとおり、ごもっとも。「そういう事態をこしらえる前に協議するのが事前協議ですから、それはございません。」つまり、事前協議はない。「沖繩に現にあるそのままのものがこっちにくる、あるということをこちらで十分調べれば、もうその調べるだけで済むわけですね。」これまたおっしゃるとおりです。核を沖繩に持ち込むというなら事前協議になるけれども、あるんだということになれば事前協議じゃないと言う。だから、あるかないか調べて、あればどければいいというわけですね。「その調べたときに、どうも気に食わないと思えば、そういう軍事基地じゃ困るから」もっと縮小してくれとか、このようなことをしてくれと言うわけですから、つまり、核をどけてくれというようなことでしょう。「いわゆる事前協議じゃなくて、返還交渉の協議の対象になると、かように御理解いただければいい。」つまり、返還交渉の協議の対象になると理解してくれればいい。これが佐藤総理の二年前の四月一日、一九六九年四月一日参議院予算委員会における答弁、これが出発なんです。  これはどういうことかというと、私が三つ方法があると申し上げた。  一番最初は返還交渉。交渉という段階で、あったらどけろという。調べて、あったらどければいい、こういうことなんですね。これが一つある。つまり、いま中曽根さんがおっしゃった、返還後の随時協議の対象にするなどというのでは——総理答弁がすでにある。いま長官のおっしゃるとおりだと外務省がおっしゃるのですけれども総理がおっしゃるとおりにはしないのですか、外務省。
  85. 吉野文六

    ○吉野政府委員 総理答弁自体も特に長官の言われておるところと大きな矛盾はないと思うのでございますが、総理は、おそらく日米首脳会談のコミュニケに基づきまして、いずれにせよ沖繩は核抜き本土並みで返ってくるんだから、その意味でこの点についてはわれわれとしては何ら疑いをはさむ余地がない、こういう趣旨から、かりに交渉の最中にもし核の存在が確認されるような場合にはその撤去を求める。これは当然でございますから、そういう趣旨のことを申したんだろうとわれわれは考えておりますし、また現に交渉の最中におきまして、われわれは日米共同声明第八項の趣旨が盛られることを当然の前提といたしまして交渉している次第でございます。
  86. 大出俊

    大出委員 第八項の趣旨といいますと、核抜きということになると思うのですね。そうですね。盛られるものと確信して交渉を進めている、といいますと核抜きである。核を抜くのである、あるいは核を抜いてある。つまり共同声明の、いまおっしゃる趣旨のことが盛られるというのでありますから、これは返還交渉に基づく協定ができるわけですから、返還協定に盛られなければ盛られたことにならぬ。そう理解してよろしいですな。
  87. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましては、目下日米間で交渉している最中でございますから、この点はでき上がるまで確たることは申し上げられませんですが、われわれとしてはその線で努力しているところでございます。
  88. 大出俊

    大出委員 盛られることを確信してお進めだといういまお話でございまして、共同声明八項は、「総理大臣は、核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策について詳細に説明した。これに対し、大統領は、深い理解を示し、日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府立場を害することなく、沖繩の返還を、右の日本政府の政策に背馳しないよう実施する旨を総理大臣に確約した。」、これが八項ですね。そうですね。この趣旨のことをいま皆さんは、外務省は、愛知大臣はじめ、この種のことを協定文書の中に載せる、その確信を持っておられる、そういうことになりますな。
  89. 吉野文六

    ○吉野政府委員 私の申し上げましたのは、その趣旨に沿いまして協定交渉をしているわけでございます。いずれにせよ協定文自身はまだ何ら合意されているわけでございませんから、協定文ができ上がるまでは何とも申し上げることができませんですが、私の申し上げましたのは、その趣旨に沿いまして努力しておる、こういうことでございます。
  90. 大出俊

    大出委員 だんだん変わってくるじゃないですか。先ほどの答弁は、八項の線に沿って一生懸命やっておられる、確信を持ってやっておられる、したがって八項の趣旨が盛られることになるであろう、こういう答弁最初された。そこで私は、となると、これは八項を読み上げて、あなたのほうがほんとうにそう思っているならこの際この点ははっきり確認を求めたいと思って再質問をしたら、だんだんどうも後退をされて、交渉をやっているのだからどうなるかわからぬという答弁にだんだんなってくるのであります。そういったことを何べんも言い変えては困るのですな。これはアメリカ局長ですから一番向こうの事情に通じておられて、交渉の焦点だろうと思うのでありますが、その方がそこまで確信をしておっしゃったということを前提にして、ひとつ愛知外務大臣にあらためて承りたいと思います。  たくさん問題がありますけれども、これ以上この関係質問をいたしますと、保留ばかりになってしまいそうでありますから、あとはひとつ、今国会における一つのポイントである防衛二法案にからみまして、その一番根拠でもございます四次防の構想、「新防衛力整備計画について 四十六年四月二十六日」こういうのがありまして、長官に一括お答えをいただきたい点がありますけれども、しょせん、出されて何日にもなりますから、方々で論ぜられておりまして、明らかになるべきものはなっている感じがいたします。そこで、御答弁をいただくつど、ひとつお考えを述べていただければありがたいと思うのでありますが、非常に私も、ここまでまいりますと、与党、野党云々と言っている筋合いのものではありません、やはりこれはじっくり考え方も承らなければいかぬし、われわれの考え方も申し上げなければいかぬ時期に来ている、こういうふうに思いますから、そういう意味でひとつ忌憚のない御意見をいただきたいのであります。  そこで、一番の出発点、つまりものの考え方でありますが、久保さんにまず最初に承っておきたいのでありますが、私の聞いております限りでは、対外的にこの防衛力整備計画についてのお話をするについて、今回は三次防とはたいへんに違うというか、本質的に違う。その中心は何かというと、ニクソン・ドクトリンなるものがある。そこで、日本から、韓国から米軍が引き揚げていく、また現にいった。したがって、将来に向かってニクソン・ドクトリンの筋を追えば、陸上兵力が有事のときに日本にアメリカからやってくるというふうなことは期待できない。ここのところをきわめて明確に言い切られた場面があったですね。宍戸さんがむずかしい顔をされておりますけれども、横にいた宍戸さんが、そこまではっきりさせてはまずいんじゃないか、もう少し薄めておきなさいと言ったら、久保さんが、いや、これははっきり言わなければいかぬというようなニュアンスの話が私の耳に入った。これは最初のころであります。たしか二十七日でございますか、説明をされたのは。二十八日に中曽根さんが発表され、NHKでお話しになって、記者会見をおやりになった。こういう順序だと思うのですが、これは四次防のものの考え方のポイントだと思っております。つまり旧来の自主防衛ではない。そうなると、つまり佐藤・ジョンソン会談以来の国を守る気慨、そういうものでは断じてない。そうなると、三次防の形は引き継いだけれども、当事者の意思としてはそうではない。つまり陸上支援の期待がきわめて薄いという前提で、あるいは薄めないでものをはっきり言うとすれば、その期待はできない、このくらいまで考えて、つまり四次防というものを計画をされた、立案をされたのだ、こういうことになるんですけれども、そこのところは久保さん、この間実は四次防について、私、お出かけをいただいて、直接御説明を承ったときにも、そういうニュアンスのお話がありましたので、念のために承っておきたいのです。
  91. 久保卓也

    ○久保政府委員 ことばは常に正確をなかなか期しがたいんで、誤解を与えた面もありますが、具体的に申し上げますとこういうことでございます。  まず、私の基本的な考え方——私と申しては失礼でありますが、われわれの考え方の基本には、相手の言うことだけを信用してはいけないんで、やはりわれわれが自主的にものごとを判断すべきではなかろうかということが一つ。そこで、ニクソン・ドクトリンの場合には、当然アメリカが公約をしておることをすべて果たすということが大前提になっております。しかし同時にまた、地域各国の自助努力というものが要請されております。そこで考えてみますると、米国が長い将来において、アジアにおいてプレゼンス、存在をするであろうと考えられるのは、長期的に見れば第七艦隊でありましょうし、次いで空軍兵力であろうということは考えられます。そして、陸上兵力についてはやはりそのつどその状況に応じて兵力は派遣されるであろうということは考えられます。また御承知のように、アメリカの兵力というものは若干漸減の傾向にあります。陸上兵力についてもしかりであります。そしてまたいわゆる二・五戦略が一・五戦略に変わりつつあるというようなこと。それからまた、現実にアジアから陸上兵力が撤兵しつつある。日本においてはすでに早くからそういう状況にある。韓国において一個師団減りましたが、将来も必ず絶対にあるということの保証はいまのところは必ずしもないというような状況である。ということになると、われわれはそういう情勢を反映して、陸上兵力が必ず来るという前提防衛力の整備を考えるのは不適当であるということを申したわけであります。これは私の記者会見ではありません。記者クラブでグリーティングをしました場合に宍戸官房長の注意一によって若干是正をした。是正をしたというのは私の真意を申したわけであります。そういうことを申し上げておる。つまり防衛力整備の上でアメリカの陸上兵力が必ず来るという前提でものごとを考えてはいけないのではなかろうかということを言うわけであります。以前の段階でありますると、その辺は必ずしも割り切っておりません。やはりわがほうの兵力の足りないところは米側に来てもらうのだ、その中には陸上兵力も来てもらうんだという前提であります。  しかし、現実の戦闘状態になった場合に、アメリカの陸上兵力が絶対に来ないということを申し上げているわけではありません。いわゆる主力部隊として海上兵力もありましょうし、アメリカの宣伝しております戦略空輸能力というものもありましょう。しかし、そういう戦略輸送能力にしても必ずしも十分とは考えられないので、われわれは専守防衛の分野については自前でやるという姿勢を示すべきである。その専守防衛の分野でも特に陸上兵力の面は強調されなければならないということを申し上げたかったわけであります。
  92. 大出俊

    大出委員 中曽根さんに承りたいと思いますが、その間の事情は私もわかっておる。わかってはおるのですけれども、やはり微妙な考え方の相違というものが大きく影響を持つ場面もあるわけでありますから、私どもの理解をする立場からすると、簡単なことではない、こう思っておりますので、特に承りたいのであります。  いまの点、長官のお考えは、アメリカは陸上兵力が支援に来るんだということになるとすれば、C5Aなるものもある、フォーカス・レチナ作戦などもある、横田にC5Aが来たこともある例なども含めて、簡単に支援には来られるのだ、だから必ずしも陸上兵力がやってくることを前提にしないということでもいいのではないかというお考えがあるやに聞いておるわけでありますが、それらのところはちょっと問題でありますが、長官どうお考えになるか。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大体久保局長が答えたと同じ考えを私は持っております。ただ、久保君の説明の中で印象的に、米軍が来援に来ない、陸上部隊その他陸上勢力が来援に来ないというふうに言い切っているような印象を与えていることは間違いで、来ることもあり得るし、また来ることをわれわれは期待もしております。しかし、第一義的にはやはり陸上部隊に関する限りはわれわれのほうでやり切るような方向に持っていきたい、そういう願望を持っておるということは申し上げたいのです。しかしもちろん、いざ鎌倉ということになれば、いまの戦略空輸部隊もありますし、それから海兵隊もございますし、そういうような配置を、アメリカはまた洋の東西に向かってやっているわけです、アジア方面及びヨーロッパ方面に向かって。そういうようなアメリカの現体制を見ても、来ないと割り切ってしまうことは間違いであるし、それを前提にしてすべてものを考えるということも間違いであると私は思います。安保条約というものは非常に弾力的にその事態に応じて解釈され適用されるべきものであって——解釈されるという意味が適用されるという意味で御解釈願いたいのですが、硬直的にそれが適用されるべきものではない。だから非常に事態が重大であれば陸上兵力はわれわれが考えておる以上に来る場合もありましょう。事態が軽微であれば来ないという場合もありましょう。そういうふうに条約の適用自体はその情勢に応じて協議によって非常に弾力的に動くということをやはり基本前提として考えて、われわれの心がまえとして、いまの占領の既成事実を局部の限定場面においてつくらせない。そのためにはやはり一義的にわれわれのほうでもし侵略してくるものがあればこれは排除し、そしてがんばっていなければなりませんから、それはそういう一つの目標としてそういうわれわれの計画の目標があるわけですけれども、それが達成できるかどうかは、またそれはそのときの情勢あるいは客観条件によって変わるものですけれども一つのわれわれの目標としてそういう考えを持っているということは申し上げているとおりであります。
  94. 大出俊

    大出委員 いま二人の話を総合しますと、多少のニュアンスの相違はあっても、基礎的には何ら変わるところはないんだ。そこで、そのことをさらに総合すれば、ニクソン・ドクトリンに三つばかり原則があります。つまり、アメリカは条約上の公約を守る、これが一つありましたね。それから核のかさは貸す、簡単にいえば。これも一つ原則です。そして三つ目に、攻撃を受けた場合に第一義的に自国の軍隊が責任を負うという、自助の原則を守れというのがございました。つまりニクソン・ドクトリンのこの三つが中心的柱だと私は思っておりますが、いまのお話は自助の原則、ここまで含めて当然条約上の公約を守るということですから、安保条約五条というものもあるのでありますから、長官の言うように、全くアメリカの地上支援その他を含めてそういう支援はないんだという前提は間違いだろうと言っておられますが、一項の条約上の公約は守るというという点が一つある。核のかさを貸す。そしてこれはこの中に核の抑止力というものを一つ中心にしておりますから、そうすると結論を簡単に言えば、ニクソン・ドクトリンが今回の四次防策定の背景になっている。つまりアメリカとの関係、その上で四次防というもの、つまりニクソン・ドクトリンというものを一つ土台にして四次防をお考えになった。いまのお話を聞いているとそうとれるのですけれども、そう考えてよろしいですか。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、防衛庁長官になる前からニクソン・ドクトリン的考え方は合理性があると思っておった男です。それで、ニクソン・ドクトリンが出る前から、日本の防衛戦略体系というものは、いま私が申し上げたような考えで持っていこうと思っていた人間で、ニクソン・ドクトリンが出たから、それを追っかけてというところも少しありますけれども、大部分ではない。それが正直のところです。  それで、やはり防衛問題についてはその国が第一義的に責任をとるという形に持っていって、外国軍隊あるいは外国基地というものはできるだけ整理統合されるということは、国家関係を健全にしていくためにも、また国際緊張を緩和していくためにも好ましい方向であるとかねがね考えておったわけです。アメリカの大統領も、ベトナム戦争のきびしい体験を経て、そういう点を非常に自覚して、ニクソン・ドクトリンの展開になったと思うのですけれども、それは私は合理的であると思っておりますが、何もニクソン・ドクトリンを追っかけて、われわれがそういうことをやっておるというわけではありません。
  96. 大出俊

    大出委員 ニクソン・ドクトリンが出てくる背景というものには幾つかの大きな問題があったと私は思うのでありますが、いまそこまで論じている時間はないと思うのでありますけれども、そういう意味で、長官の本来の構想であった、たまたま片やニクソン・ドクトリンというものが出てきた、多少はそちらのほうに引っぱられるという感じはあるけれども、本来の考え方、それが中心だったんだ。しかし、その本来の考え方長官にあったということを私は踏まえて、さらに突き詰めれば、やはりこの時点になってニクソン・ドクトリンというものが基礎にならざるを得ない、なった、結果的にはそういうことだと思うのであります、同じことを言っておられるわけでありますから。  そこで、そういうことになると、ここで少し横道にそれがちでありますけれども、世の中の新聞の論調の中にもありますけれども、あのニクソン・ドクトリンといわれるものは、代理戦争という形のものさえ生みかねない、あるいは生んでいる。ベトナムなどの例をあげればそういう言い方になる、そういう面もたくさんあると思うのであります。そうなると、一つ間違うと、アメリカとの関係を踏まえそこなうというと、これはこれだけの四次防という大きな規模の、つまり防衛力の増強をはかるという側面から見て、どうもそういう懸念が非常に強い、こういうことが新聞等で何人かの方々から指摘されているところでもありますが、ここらのところはどうお考えになりますか。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ニクソン・ドクトリンは、そのドクトリン自体を見ると、一つの外交戦略あるいは軍事戦略的政策であるだろうと思うのです。しかし、それはアメリカ側が考えている一つ考え方でしょう。しかし、各国は独立主権国家であって、外交の自主性、防衛体系の自主性、国策の自主性というものを当然持っているべきであって、その自主性の上に立って選択の範囲内にニクソン・ドクトリンが入ってきた場合には、それが提携され、それが採用される、そういう形になるだろうと思うのです。日本は日本独自の国策を持ち、外交の自主性、防衛の自主性というものを持っていて、そしてこの基本的な自主性の上に立って行なえば、代理戦争とかなんとかというものはあり得ない。むしろ協力関係というものは、安保条約によって両国が約束し合っていることで、それは両方に好ましいとして選択した自主的な選択の中にあることなのでありますから、それを代理戦争とかなんとかという見方で見ること自体、私らはとらないところであります。
  98. 大出俊

    大出委員 見方の論議をしているわけではなくて、一つ間違うと、これはそういう方向に行きかねないという疑問を私も持つ一人なのでありますが、外交の自主性というものが一体どこまで生きているかという点を考えると、先ほどのサブロック論争ではありませんけれども、どうも——信頼をしておりますから入ってきていないはずでございます、こう言っておられるけれども、現に側面的にいろいろ調べてみると入ってきている。たまたまアメリカの記者でさえ入っていたということを言い切った記者が出てきた。こういうようなことなのでありますが、そこに、この日本の防衛という問題をめぐって非常に危険な要素が四次防ということになってくると大きく出てくる、実はこういう心配をいたす一人であります。そういう意味でいまその問題を取り上げたのであります。  そこで、幾つかわからない点を先に承っておきたいのでありますが、防衛庁がお出しになった原案、これは今回初めてこういう出し方をされたような気がするのであります。三次防のときにも私いろいろ質問した経験がございますけれども、これも参事官会議だの、あるいは国防会議だの内局がその間にあっていろいろな調整をおやりになって、所々方々で話をまとめた形になって出てきておる。これが前回の例だったというふうに、大ざっぱに言えば感ずるわけであります。今度の場合には、昨年の初めごろからぼつぼつ各幕が積算を始めておられたようでありますが、それがずっと積み重なってきた。だから昨年の六、七、八月ごろになりますと四次防というものを想定して、多少の相違はあろうが、おおむねこういうことになるのではなかろうかという議論なりあるいは論文が出てきている。そういう経過を経て昨年の十月という段階で、いわゆる防衛白書、「日本の防衛」が出てきている。翌日四次防の概要が出る、長官が談話を発表される。長官はああいう発表をされたから実はあの辺でおやめになるのかなと私は勘ぐったのですけれども、中曽根五原則がきわめてさえて生きていましたから、この辺でやめると、あと長官がかわってこられてもとに戻ってしまった場合、前書きや文章はだいぶ変わったけれども積算してきたものは変わっていない。私は中曽根さんが野にあって何でそうしなかったと言う場面が出てくるのではないかと思って、中曽根さんにお別れのつもりで実は質問したのですけれども、現実は自動延長で長官もお困りになったのではないかと私は思っています。私はそこがどうもちぐはぐな感じがするのです。  ただ、そこに一つだけ中曽根さんの筋が通っている点がある。それはどういうことかというと、三次防の段階では各幕が非常に不満を持っておった。私も何人か知った方がおるのですけれども、私の予備士官学校当時の同僚で現地の指揮官をやっておりました、その後、武田毅さんという方はおやめになりましたけれどもね。いろんな方々のお話を聞いている限り、大出俊なんというのは大きなことを言っているのはもう間もないぞ、制服の防衛局長をつくるんだぞというようなことを現地のえらい方が、私の友だちだからそう言うのですけれども、そういう不満はたくさん持っておった。ところが、今回の四次防を見てみますと、各幕がいろいろ言っていることを相当聞いてこられた感じですね。率直に申し上げて、その積算はおそらく長官がかわっても変わらぬでくるなというふうに当時私は考えながら実は中曽根さんに質問したのです。今回出てきたのもそういう感じのものであります。だから昨年の春あたりから論議が始まった中身、たとえば八千トンヘリ空母というのをやれ六千トンだ五千トンだと予測した人もあるけれども、おおむね違っていないことを、当時書いた文献をふり返ってみると、言っておられることになる。  だから、さてそうなると、防衛庁原案でぽんと出されたところに私は一つ意味があっていいはずだ。例をあげて言えば、原案をお出しになるについて最後のところは大蔵省とだいぶいろいろあったようですけれども、私は、福田さんも次期総理をお考えのようだし、中曽根さんとは同じ選挙区だから政治的には最後にはうまくまとまるのだろうと思っていましたけれども、ぽんと出てきた、さあ出した以上はたたき台だという意味のことを言われている面のことも一面あるのですけれども、御論議いただきたいと、こう言っておるのでありますけれども、切れるものなら切ってみろという出し方のような感じがする。いまの五兆一千九百五十億ばかりのものを、ベースアップを抜いて、切れるものなら切ってみろ、切れないはずだ、そこらの国防会議のお茶くみ坊主あたりがなまいき言って、切ろうといったって切れる筋合いのものじゃない、実はこういう出し方のような気がしてならないわけでありますが、今回に限ってこういう出し方をされたのは、何か意図がほかにおありなのか。そこのところを、勘ぐり過ぎなら勘ぐり過ぎで考え方を変えてまいりますけれども、冒頭に承っておきたいのです。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は着任以来、防衛問題を国民の広場に持ち出して、国民の皆さんに大いに論議してもらって、国民に支持される防衛というふうに推進したいということを言ってまいりました。そういう意味で、わりあいあけすけに考え方国民の皆さんに議会を通じても申し上げてきたつもりです。そういう一環として白書も出しましたし、それから新防衛力整備計画も何回か言明をいたしましたり、あるいはいわば予告編みたいなものをずいぶん上映の前にやったわけです。それで国民の皆さんがそのたびごとに批判をし、また議会からもいろいろ御批判をいただいてきたわけで、われわれはそういう批判や議会筋からの指摘どもよくその過程において考えながら最終案にまとめてきたわけなんです。それで私はそういうやり方のほうがいいと思っておるわけです。官庁内部で癒着みたいにして適当に話し合いしながら、そしてある段階になって出してくるというのも一つのやり方です。それまでは秘密を保っていて出してくるというのも一つのやり方ですけれども、私は議会制民主主義のもとにあっては、やはりアメリカやイギリスがやるように、できるだけ国民の前に大っぴらに出して、そして批判を浴びて、直すべきは直し、主張すべきは主張して、その上に立って最終案をつくっていくという、そういうやり方が好ましいと実は思っているわけです。そういう意味で、今回も、防衛庁は防衛庁なりの国際情勢の見通しとか防衛の基本構想とか、いままでにない長期計画の土台を国民の皆さんにもお示しをしてきたわけです。  それで、今回、国会というものを通じて各党の御批判もいただき、国民世論の反映等も見つつ、防衛庁と大蔵省、あるいは防衛庁と外務省、あるいは防衛庁と国防会議等がこれから折衝を進めていって、そして最終案を迎えていく、そういうやり方が実はいいと思っているわけです。このやり方は私が責任を持って自分の方針としてやったやり方で、もし悪いといわれれば、われわれは御批判には耳を傾けますけれども、私は議会政治家としてこういうやり方のほうが好ましい、そういうふうに思っているわけです。
  100. 大出俊

    大出委員 おそらく旧来の長官の姿勢からいってそういう答弁になるだろうと思っておりますが、それにもかかわらず、やはりどうも今回の出し方をめぐりまして、あとでこれは大蔵省が切ると言ったらやっぱりそれなりの問題が出てくるだろうと思いますし、そう簡単に切れるかという問題も出てくる。そこらのことを考えますと、ずばっと出した、何かどうも防衛問題というのが、出した中身によるのですけれども、私ども考えて、ここまでのものをお出しになるということになるとすれば、たとえば予算のアップ率等にいたしましても、諸政策との調和ということを昔から長官は言ってこられましたが、そこらのところもたいへん高いなどということも考えて、どうも少し、まかり通ろうというような感じがするわけでして、そこらも各新聞紙等が心配する論拠の一つになっている、こう思って、いま考え方を承ってみたわけです。  もう一つ続いて承りたいのでありますが、いわば三次防と四次防との基本的な違い、幾つかありますが、どの辺が基本的な違いだというふうにお考えでございますか。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 基本的違いというのは私はないと思います。ただ、いままでの国防基本方針の中のニュアンスの差あるいは強調する部面の強弱という部面はあると思います。たとえば安保条約の自動継続に伴って局面変化もありますし、あるいはニクソン・ドクトリンというものも、新しい客観条件もありますし、そういうことから自主防衛という線をいままでよりは強く出してきた、そういう点、あるいは安保条約にいままで非常に依存しておった部分を自主防衛のほうに少しずつ切りかえつつある、そういう部面はニュアンスが違ってきているところだと思いますが、基本方針は依然として、やはり核に対しては安保条約によるアメリカの核、攻撃的兵力ということについてもやはり安保条約によるアメリカに対する依存、期待、そういう非常に深い基本線は変わってないわけであります。
  102. 大出俊

    大出委員 そこで、私が見て一つ非常に大きな違いになっていると思いますのは、「通常兵器による局地戦」こういう表現は三次防でもあったわけでありますが、この中で限定局地戦と言っていい考え方がそのあとに文章としてついているのであります。この考え方を前に一ぺんここでちょっと承りましたら久保局長答弁をされて、プロバブルあるいはポシブルというこことばをお使いになりましたけれども、プロバブルとおっしゃれば蓋然性ということだろうと思いますけれども、まあ大体こんなことがあるだろう、全く否定できない、そういう意味の可能性があるだろう、さて、いまの力あるいは四次防を踏まえて可能な限界があるだろう、そういう意味お答えになっていたように聞こえるのでありますが、これははなはだしく抽象的でありまして、もう少し限定局地戦なるものの考え方について具体的に御説明をいただけないか、とりあえず聞いてから私、申し上げたいと思って聞いているのであります。
  103. 久保卓也

    ○久保政府委員 二次防、三次防で「通常兵器による局地戦」ということにつきましては、この文章の中にも同じことばがまた繰り返されております。そこで、その中でさらに「限定された侵略事態」というふうなことばを新しくつけ加えたのであります。実態的には三次防のときにも無制限な戦争、つまり通常兵器による局地戦の中で、その範囲内における無制限が戦争ということも考えております。しかし、そういったことを考えるのではない。三次防におきましても特定の地域が侵略された場合にどうするかということを前提にして考えておったわけであります。そこで、今回もそういう思想に立っている以上、また第二次大戦以降いろいろな戦争の様相というものがいろいろな分野で限定されているということから考えると、われわれの防衛力整備の前提として限定された事態、局地戦の中でも限定された事態ということでよろしいのではないか。それ以上にわたる戦争事態は起こらないということはもちろん保証できません。その場合には、先ほど長官も言われましたようなアメリカの支援でありますとか、あるいは国際世論でありますとか、そういうものに支援を依存する。しかし、防衛力整備の前提としてはそういうことで、たとえば戦争の様相でありますとか、あるいは手段でありますとか、場合によっては期間もそれほど長くはないといったような事態を前提にして考えるということを踏まえますと、防衛力整備の一つのめどというものが出てまいります。これは新防衛力の五カ年の間ということでありませんが、将来の一応の目標というものが出てまいります。ところが、いまのような限定された事態というような条件をつけませんと、局地戦の中でもたとえば日本の本土、日本の国民生活を守るためにマラッカ海峡はおろかインド洋まで出かけていかなければならないのじゃないか、あるいは日本海周辺というけれども、それよりももっと遠くへ行かなければならないのじゃないかというようなことが出てまいります。したがって、抑止力とは言い条、通常兵器による局地戦の中でもそれにすべて応じ得るためには相当な兵力が必要になってくる、むしろめどがつけにくくなってくる。そこでわれわれが長期にわたって防衛力整備の目標をつけるためならば、やはりある程度の限定を設けなければそういうような目標が出てこない。そういうような目標を踏まえて、これからの五カ年の整備をはかるのだ、こういう考え方に立ってきたわけであります。
  104. 大出俊

    大出委員 ページが書いてありませんからちょっと申し上げにくいのですけれども、ここには「わが国をめぐる紛争生起の要因などを考慮して、防衛力をもって対処すべき事態、様相を限定し、」こうなっているのですね。ここに一つの思想、考え方があるだろうと思うのですね。だから限定局地戦というものの考え方が出てくるのですね。その前提になるわが国をめぐる事態、様相を限定して——わが国をめぐるといえばソビエトが北のほうにある、中国がある、北朝鮮がある、韓国がある、台湾がある、あるいはフィリピン、あるいは東南アジアを含むかもしれませんが、つまりわが国の周辺、「国際連合を含む国際世論の動向、わが国をめぐる紛争生起の要因などを考慮して、」この「紛争生起の要因」というのは前の「日本の防衛」なるいわゆる防衛白書の中でもうたっておられるところでありまして、私は皮肉を申し上げてわざと、仮想敵国をつくらぬと長官も言っておられたりするので、言ったことがありますけれども、そういうことにとらわれぬで御説明願いたいのです。つまりおのおの能力があるわけですから、それが対象国であるとかなんとかということ以前に、この書き方からすると、紛争の起こる要因、周辺ですから限られているわけですね。この周辺はあとからも出てまいりますが、そうすると、片一方にソビエトがあるあるいは中国があり、北朝鮮がある、こうなっているわけですね。そうするとそこらとの関係をまずどうとらえて事態、様相を限定したのか、ここの説明がまず何もないですね。非常に抽象的に何か全面戦争が起こらぬだろう。たとえば中東戦争じゃありませんけれども、一週間戦争という、イスラエルの飛行機が先に飛んでいって基地をみんなたたいてしまった、片一方は手も足も出ないということになると——小さい国が取り巻かれているわけですから、イスラエルというのは。そうでしょう。先制攻撃をかけて全部つぶしてしまった。一週間で終わったには違いないのですけれども、そうすると日本国憲法というもの、だからさっきから戦力論争をしているのでありますが、ああいうことはできないはずです。そうすると日本という国を中心にしてここに幾つか国がある。その場合にその情勢を限定する、事態、様相を限定する。事態とは何だ、様相とは何だということになりますと、さらに限定とは何だということになるのだけれども、これを一体具体的にどういうふうに見ているのかということ、そこのところはいかがでございますか。
  105. 久保卓也

    ○久保政府委員 一、二例を引きながら日本のことを申し上げたいと思うのですが、たとえばアラブ戦争の場合に一週間で終わったわけであります。この場合にアラブ国の航空基地はやられました。しかしながら、陸上についてはシナイ半島でとまっている。それからスエズ運河を越えての進撃はなかったということ、つまり期間的にあるいは地域的に制約された様相であったというような例であります。あるいは朝鮮戦争の古いことは別にいたしまして、韓国と北鮮の関係で見ますとどういうような脅威が考えられるかと申しますと、第一に考えられるのは、韓国内における北鮮側からのゲリラ闘争、これの可能性が非常に多いという判断のようであります。その次に考えられるのは、国境沿いでの特定地域を短期間に占領するということの脅威がある。そして第三の脅威というものは、かつての朝鮮戦争のように大規模な戦争になる可能性というものはほとんどないというような判断が専門家筋にはあるようであります。そこで見られますように、ゲリラ戦争というと一つの間接侵略的な事態でありますし、第二番目の可能性のあるものは一つの特定地域をなるべく早い時間に占拠しようというような思想があります。これはNATOの正面についてもやはり同じことがいわれております。ただNATOについてはピンからキリまでのあらゆる脅威に備えておりますけれども、そういった奇襲的な短期間にある占領事態をつくり上げるというような脅威というものも数年前から非常に強く取り上げられているところであります。  そういったようなことを日本についても考えてみますと、日本が第二次大戦中に置かれたような事態、そういうようなものは考えにくいであろう。つまり日本が北は北海道から九州に至るまでどこにかつてのように米軍が上陸してくるかもわからない、あらゆる地域に対して備えなければいけないというような事態、あるいはまた二次大戦以後で人が空襲される例はたしかたいへん少なかったと思いますけれども、日本の全土が同じように空襲を受けてしまうといったような事態、そういう大規模な日本にとっては全面戦的な事態というものは非常に考えにくいのではないか。やはり特定の目的をもって特定の期間中に何らかの目的を果たそうというようなことを考えるべきではなかろうか。起こり得るとすれば、そういうことが考えられるのじゃなかろうか。そこが、やはり国連なり国際世論なりの存在というものが二次大戦以前と以後との違いであるということを考える。そういった事態を考えわが国防衛力の整備を考える。しかしながら、事態を一つに判断することは非常に危険でありまして、そうでないような事態もあり得る。そうすると、われわれのほうはいま申し上げたような事態を想定して防衛力を整備しますけれども、現実にそういう防衛事態が起これば、これはその防衛力でもって持久をしていく。持久をしていく間に米軍の支援なりあるいは国際世論の介入なりそういうものを期待する。ちょうど初めに大出先生が言われましたように、戦力保持ということで戦力の中で、われわれが持ち得るかどうかということを別にいたしまして、非常に足りない分野がある。その分野は、憲法前文にいうところの「諸国民の公正と信義に信頼する」こういうことがありまして、われわれは一応ある事態を前提にしてその範囲において防衛力を整備する。もし予想にたがえてそれ以上のものが出てくるならば、米国の支援はもちろん、国際世論、諸国民の公正と信義に信頼するというような考え方をとってみてはどうであろうかというふうに私は思うのであります。
  106. 大出俊

    大出委員 ということになると、いま少しはっきりしてきたのですが、たとえば中東戦争の場合一週間という期間があった。やり方は別として私が言ったように、日本から先制攻撃をかけるなどということは憲法上許されていない。予防戦争はできない。これは高辻さんがおいでになりますけれども、明確になっていると思う。追跡権がありますけれども、追跡していってもそれは相手の領域の手前までである。これも国会論争等で明らかになっていることです。そういう限定がある。そうなると、中東戦争のようなものは当てはまりません。当てはまりませんが、いま言った予測をされているのは、シナイ半島ならシナイ半島という地域に限られた、期間は一週間であるというふうな形の、大都市の爆撃というようなことは行なわれていないといったような意味での、一つつけ加えましたが、一つの限定があった。あるいは南北朝鮮のまん中に三十八度線がある。ここで起こり得る事態というのは、つまり最近は国際情勢の変化もあって、ゲリラあるいは特定の地域を一定の期間占領する、こういうふうなことが予測される。いまのお話からするとこういうわけですね。そういう限度の限定局地戦なんだ、こういうことになりますね、いまのお話からすると。そうすると、全部質問してからと思ったのですが、話が冷えますから承りたいのです。  いまおっしゃっている筋からいくと、これだけの四次防、そしてまた五次防、その辺を確定をして、これだけの金をかけて予算をかけてたいへんな規模の四次防というものをお考えになる理由というのは一体あるのかという問題が出てくる。そこで最後にお答えになっているそればかり考えているわけにはいかない、もっと大きなものが起こったらどうなんだといった場合には、アメリカの、こういうお話がいま出た。そうすると、この前段にあるいまの日本を取り巻く周辺の事情、事態、様相、こうながめると万々大きなものが起こるということはない。起こったとしてもゲリラであるとか一定地域、特定地域を占領しようという行動であるとか、それに限られた期間、そういう周辺の動きはあるかもしれない。つまり日本国内における間接侵略的なゲリラということをさすのでしょう、朝鮮の場合でいえば。それくらいのことはあるかもしれない。しかし、それ以上のものにはならない。つまり国連の平和抑止機能あるいは核の問題等々があって、大戦前と情勢が変わったんだ、こういうことになると思うのですね。そうすると、それ以上のものがなおかつあるかもしれないという予測がなければここから四次防、五次防というところに進もうということにならぬと思うのでありますが、それ以上のもの、たとえばいまどのくらいあるか正確にこの記録を調べておりませんけれども、数年前の数字でいけば極東のソビエト軍、三十万前後の軍隊があった。そうすると八個ソビエト師団、これは皆さんの演習の中にある。おおむね十万人、これがサハリンから東に向かって動いたというところから状況現示があって、十万、動いた兵力は網走、その辺に入ってきたというふうなことが起こった場合、つまりこの作戦計画は相当な事態が予測になっておりますけれども、そういうものも最近の演習の中にはあると思うのであります。先般も岡田春夫さんがおられるときに、緑国、赤国に分けての質問をしておられました。だから、つまり全く予測していないものがなおもう一つある。そこのところのことまで考えての、先ほどずっとお述べになったものに一番最後につけ加わったもっと大きなもの、それも考えに入って四次防というものはなっている、こういうことになりますか、一番最後のところは。
  107. 久保卓也

    ○久保政府委員 ちょっとお話は、私の言うことと同じではないと思います。限定されました侵略事態でありましても、相当な規模になるということは言えるわけでありまして、ですから、たとえば数個師団を短期間に排除をするというような場合に、十三個師団が要るのだということになります。ところが、北海道にも日本海側の海岸にも、それから九州にも相当数の師団が上陸してくるのだというようなことを想定すれば、これはとうてい十三個師団では足りない。したがって、兵力が非常に大きくなる。そういうことを考えるのではないということを申し上げたわけであります。
  108. 大出俊

    大出委員 そういうことを考えるのではないというと、最後に一つつけ加えたのは要らないことになるのじゃないのですか。つまり、シナイ半島だの一週間だの、あるいは北朝鮮との関係における特定の地域の一定期間の占領とか、ゲリラというものだけに限るということなのか。それとも最後の一つつけ加えられて、アメリカの、という話まで出たのだが、そこらのところをどういうふうに周辺の事態、様相の限定ということでおとらえになっているのか、あらためて聞きます。もう一ぺん言ってください。
  109. 久保卓也

    ○久保政府委員 たとえば特定の地域というのが一つの小さな島でないというほどの意味はまず御承知おきいただきたいと思うのですが、日本をもし侵略しようとすれば相当な政治目的を持ってやろうとするわけでありますから、相当な地域になるでありましょう。そうすると、相当の地域に、一方面に対して数個師団程度の、これは上陸作戦を考えれば上陸を考える。そういうときに、それに対して短期間でこれを排除し得るだけの兵力を持ちたい、そういうだけの防衛力を持ちたいということを考えるわけであります。ところで、かりにわれわれの予想に反して十数個師団持ってきたとか、あるいは短期に排除し得ないで非常に長期間かかってくるということになると、われわれが前提にしている防衛力整備の条件と変わってまいりますから、そういったときには、たとえばアメリカの相当の兵力を期待しなければいけないでしょうし、あるいはそういった事態以前に国連なり国際世論の介入を期待する、そういうための外交努力をしなければいけないであろう、そういうことであります。
  110. 大出俊

    大出委員 そういう言い方になると、あまりはっきりしていないということになると思うのです。もう一ぺん聞きますが、それではいま日本にやってくる相手が数個師団から始まって十数個師団まで話が出たのですが、だから、私は前もって一応念を押しているのですよ。「わが国をめぐる紛争生起の要因などを考慮して、」ということになると、対象は日本を取り巻く周辺国なんですよ。そうすると、わが国の当面のことで言っているわけですよ。百年も三百年も先の話ではない。国民だって当面を考えてものを見るわけですから、そうなると、じゃ一体数個師団から始まって十数個師団もの輸送力を持っている国が、日本の周辺にありますか。まず北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国は一体どのくらいの兵力を持っているのですか、海、空、陸に分けて。中国は一体どのくらいの海、空、陸を持っているのですか。ソビエトは一体どのくらいの極東兵力を持っているのですか。そこらを前提にしてくれば、数個師団から始まって十数個師団ということになると、「事態、様相を限定し、」こうなっているのですから、そんなことを考えておられるのではこれはとんでもないことになる。一体そこらは現実にどう考えているのですか。
  111. 久保卓也

    ○久保政府委員 この防衛計画の前提になっておりますように、差し迫った脅威はないという判断に立っております。ということは、たとえば十数個師団で来るであろう、それだけの兵力なり舟艇なりが準備されているだろうということを言っておるわけであります。再々この計画の中でも繰り返されておりますように、また説明の中でもいわれておりますように、十年ほど先の話を考えている。その場合の可能性ということを考えている。そしてまた、防衛力の整備というのは、運用であれ人の養成であれ、非常に長期間かかるわけです。そこで、今日差し迫った危険性、脅威というものはないけれども、将来その可能性というものはどういうふうに変移するかわからない。また将来、たとえばわが国を侵略しようとすれば、侵略し得るだけの兵力を集中するのが通常でありましょうから、そういうことを考えると、相当数のわれわれの予測に反した兵力が全然ないということは言い得ない。しかし、われわれとしては一応十年後の事態でありましても、たとえば欧州のほうでも、あるいは朝鮮半島のほうでも、中国関係でも、一応現状とそう大きく違いはないということになると、われわれとしては日本に対する進攻勢力というものはほぼ数個師団ではないか、これは十年後くらいでありますが、そういう見通しであります。ただ、もし見通しが間違った場合ということを私は言っておるので、国際情勢の将来は、私は幾つか例をあげられますけれども、情勢判断はたいへん間違うということが間々あります。ですから、われわれはこういう判断のもとに防衛力整備は考えます。しかし、もし間違った事態が起きた場合にはどうするかということもあわせて考えておかなければいけない。しかし、それは防衛力の上では考えておりませんということを申し上げております。
  112. 大出俊

    大出委員 十年先とおっしゃったのですが、十年先に自衛隊はどのくらいの規模になるのですか。いままで長官が何べんか抽象的な答弁をされておりますが、その答弁さえこの四次防の説明の中にはない。十年先を見通してこう考えているのだ、そこで四次防はここまでいくのだということも書いてない。一体十年先をどのくらいに見ているのですか。いま十年十年とおっしゃっているけれども、この分析の基礎になっているのは、十年先を基礎にしている。明確に三回くらいお答えになりました。十年先をわがほうはどういうふうにお考えになっておりますか。
  113. 久保卓也

    ○久保政府委員 周辺諸国の様相を展望しまして、大体長官予算委員会で述べられた程度のものを十年後の兵力と考えております。
  114. 大出俊

    大出委員 そうすると、この分析の中に何も書いてないけれども、陸上でいえば、十八万が十年たってもそう変わらないだろう。正確にいえば十七万九千人。変わらないだろう。それから海空についていえば、海は二十四万五千トンくらいになります。そうすると、十年先は、中身は別として、大ざっぱに三十万トンくらいだろう。空の場合には一千機くらいだろう。こういうことをいっておられます。科学技術の進歩その他によって内容は変わるかもしれないけれども、十年先はそのくらいだろう。いま予算委員会とおっしゃいましたから念を押すのですが、ここにはありませんけれども、そういうことがこの説明にくっつくのですか。
  115. 久保卓也

    ○久保政府委員 ただ、この計画の中ではその数字は明確にされておりません。それは公的に認められておりませんが、しかし長官が述べられました数字というものは、私どもはやはり事務的に計算しても大体そういうことになるであろうという感じがいたします。しかし、こまかい問題につきましてはまだ帰一した結論が出ませんので、一応大ざっぱな言い方としてはそういう見方ができるのではなかろうかということで、長官が言われたことを説明的に申せると思います。
  116. 大出俊

    大出委員 長官、これはどうなんですか。十年先、十年先ということがいま三回くらい久保さんから出たのですが、そういう事務的な点は久保さんの御答弁でいいんだけれども、いまの話の筋からいえば、四次防というものは十年先を見通して立てたのだ。その十年間、日本を取り巻く、さっきから念を押している、各国の様相を限定してものを考えるという基礎になっているものは、そう急には変わらぬだろう。万一ということがある。だから、十年先を見通してわがほうは四次防を考え、次に五次防を考えるのだ、こういうのでありますが、その五次防を含めて、十年先というのはしからばどのくらいのことをお考えになっているのか、それによっておっしゃることが違ってくるはずです。その点はどうですか。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 十年先の予測というのは非常にむずかしいわけです。しかし、一応日本の防衛力を整備していく上について、どの程度のスケールでいくべきか、カーブがどういうふうになるかということを国民の皆さんにお知らせすることは非常に重要であるとわれわれ考えまして、そういう意味で、現状、諸条件にして変移なくば大体この辺の見当という考えに立って一応推定はしてみました。その数量は、今度出しました計画の中に入っておりませんけれども、抽象的には入っておるわけです。長期計画の見通しというようなところが、たしか抽象的な文章であって、陸上については十八万体制、現状で、あと機動力、抗たん性とか通信能力とか、そういうことが書いてあるセクションがあるはずです。それから海については近海の云々、空については大体現在の機数で内容は変わらぬ、そういうような文章がたしか入っておるはずです。それで大体抽象的に見通しを表示したわけでありますが、私の感じでは、現状にして変異なくば、この前予算委員会で申し上げた程度のスケールのものを頭に置いていく。それがもしできた場合には、いまの客観情勢を頭に置けば、一方面に対して数個師団のものがもし万一来るという場合に、占領の既成事実をつくらせないという程度のものが概成され得る可能性がある。その程度でいいだろう。たとえば北海道なら北海道の一方面、あるいは九州なら九州の一方面、あるいは本州なら本州の一方面、二方面ぐらいしかその場合にはできないだろう。しかし、それ以上のものが起こるという蓋然性はいまのところそうないから、そこで一応その限度でこれから漸進的につくっていく。しかし、五年先くらいまでは私は現状でいくという見通しはかなり強いと思いますが、その次の五年くらいになると、ちょっと期間が長いものですからこれはわかりません。が、しかし、たぶんそういうものでいけるだろうという見通しのもとにやって、そしてその範囲内でいけば、次のいわゆる五次防の段階になれば上がる率というものはストップする、あるいは下降に転ずる可能性があるようにしたい。そういう一つの長期的予測をもってこの前半の五カ年というものを考えておるわけです。
  118. 大出俊

    大出委員 ぼつぼつ詰めたいのでありますが、意見を申しながら承りたいのでございますけれども、いま長官の言う十年先を読んでというのは——くどいようですけれども、久保さんがさって何べんもそれをおっしゃるから、十年先を見通してつくったんだというので、それは変わるかもしれぬ、先のことですから変わるかもしれぬが、概略を明らかにしておいてもらわぬとやはり迷うと思うのですね。これは社説を書く側の人にしても、幾つかの社説を並べてみるとみんな違いがある。みんなそこのところにぶつかっている。そういう意味でやはり陸上兵力十八万体制といいますか、十七万九千をふやせぬ。だから、省力化その他を考えてやっていくんだと前々から言っておられる。それはちょっといまの国内情勢から言ってそれ以上は、いまの制度のもとにおいてはふやしにくいということ。さらに空の場合には一千機くらい、そして海の場合には三十万トン、というと相当なものでございますけれども、そのくらいのところをお考えなんだというなら、やはりそこの辺は、もう一ぺんそんなめどだとはっきりしておいていただきたい。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大体おっしゃった辺の見当を考えておるわけであります。
  120. 大出俊

    大出委員 これは、そうなると、五年くらいは変わらぬだろうという話をいまされておる。そこから五年先も変わらぬだろうが、少し期間が長いから、いまここであまり画一的にきめかねる、予測しかねる、こうなると私は思うのですね。そうだとすると、いま世の中でいろいろ言っている人たちの中に、いま取り巻く情勢から考えて、こんなに金をかけなければならぬ要素があるのか、これは現実的な分析が必要だと思うのであります。お答えになりませんが、一体日本を取り巻く極東のおのおのの国の様相、当面北朝鮮であり、中国であり、ソビエトの極東、こうなると思うのであります。そこら辺の向こう側の勢力というものはどの程度に見ておるわけですか。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この計画書の中にも書いてありますが、いまとりたてて現実的脅威があるとは思わない。脅威というものはやはり意思と可能性が結びついた場合に脅威は発生する。そういう意味においてまだ差し迫った脅威があるとは思わない。そういう前提に立っております。ただ、国際情勢というものは、秋の天気のように急変する可能性もありますし、自分の国がこうだといっても、国際関係の変動によってどういう事態が起こるかもわからない。そういう客観的な要素に非常に依存しておる部分もあります。そういう面からいたしまして、いま考えられる範囲内で、この程度のものがあっても、この程度のものでいけば何とかやれる。それも、五年かかり、十年かかる。いますぐそれができるという意味ではございませんが、五年かかり十年かかってこの限度はいける、そういう見通しを申し上げて、国民の皆さんの御理解もいただき、御批判をいただきたい、こう思っておるわけです。
  122. 大出俊

    大出委員 これはやはり基礎になりますからね、防衛庁のものの見方を言っていただきたいのです。  私のここにあります資料は、四十三年という時点でありますが、これは関係のところだけ言いますと、ソビエトが、人口その他みな抜きますが、極東のみで陸が二十四万人、海が六十万トン、空が二千機、こういうことです。おそらく皆さんのほうが見てもそう大きな変化はないと思いますが、ソビエトが極東兵力だけで、陸が二十四万、海が六十万トン、空が二千機。それから中国、毛沢東の中国でありますが、陸が二百五十万人、これはどこを見てもそうなっておりますが、海が二十万トン、空が三千機。そして北朝鮮が、陸が三十五万人、海は非常に少ないですね、これは一・五万トン、まあ当然でしょうが。空が六百機。これがいま私のところにある資料です。ほかのものを見ましても、そうたいしてこれは違いはない。  そこで、いまのような兵力関係だが、今度は、防衛ですからいろいろな予測をするのだというお話を常に久保さんはされる。国際的な全部のやつは別にありますけれども、極東だけ限っていえばそういうことになるのでありますが、こういういま周辺を取り巻く兵力関係の中で、この五年間そう大きな推移がない、大きな変化がない、これは、ここに各国の予算がありますけれども、そう見ていいのではないかと思う。  そうすると、この中で、いわゆる蓋然性ということば、プロバブルな考え方からいって、数個師団から十数個師団までの輸送機関まで考えて日本にやってくるということが、ここ五年、十年で考えられる国というのは、能力の面だけ考えて、つまり対象国だ敵国だということでなしに、そういうことばは不謹慎な話だから私も使いませんが、そういう能力からいって、北の場合に一・五万トンしかない海上兵力で、やって来ようも何もないわけであります。さらにまた、来たところで、たいへんな大きな騒ぎになるかというと、そうではない。中国の場合を考えてみても、二百五十万人、二十万トン、三千機。飛行機の場合に、ミグの型のものが非常に多いわけでありますから、足が長くない。おまけに、潜水艦その他いろいろつくっておるようでありますけれども、これまた限度があるということになりますと、あと残るのはソビエト。これは二千機あって、これは相当な力だということが言える。海は六十万トンあるのですからね。だから、自衛隊のいままでのいろいろな経過をながめていると、最近は違いますが、北海道の七師団が時速百キロで走る機械化師団にしてあったりする理由もそこにあったんだろうと私は思うわけでありますが、つまり、そこらのところをあなたのほうの見方は一体どういうふうに見ておるのか。数個師団とか十数個師団だとか、大挙押しかけるといったって、その可能性というものはやはり分析しておく必要があるわけでありますから、そこらのところをどうお考えになっているか、能力という面で。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本は仮想敵国を持っておりませんし、かりにそういう客観的想定をする場合でも、特定国をメンションすることは適当でない、そういうふうにわれわれは考えておりますから、特定国をメンションすることはしないほうがいいと思います。しかし、日本の本土防衛という観点からいろいろな局面を予想いたします場合には、もし侵略が数個師団の力で行なわれるという場合には、空挺師団も必要かもしれませんし、あるいは渡洋船団の能力も若干必要であるでしょうし、ある意味においては空からのカバレージも必要であるでしょう。そういう観点から見て、周辺諸国の防衛能力というものを総合的に判定しつつ、この辺で日本として分相応の、また国民の皆さんもまあといってくれる程度の防衛力というものを自分でつくる場合に、いま申し上げた程度になる、こういうことであります。
  124. 大出俊

    大出委員 そこらが非常に抽象的過ぎて——私は前もって断わっているように、何も敵国だ、対象国だと言っているのじゃない。日本を取り巻く周辺ということになってくれば、具体的問題としてはそこのところを想定せざるを得ない、対象国だとか敵国だとかいう意味ではなくて。これはやはり説得力がなければ、お出しになったと言ってみたところで、また国民に対して出してみたといったって、わからなければ意味がない。だから、そこのところを私のほうは承りたいから、ものを言っているわけであります。あなたのほうがどうしてもそれはお答えにならぬというのならば、これはいたし方ない。先ほど来の十年先、五年先を見通して何個師団かつくる、こうおっしゃる。十数個師団というものが出てくる。出てくるから、そんな可能性があるのかと聞いている。そこらあたりはどうなんですか。
  125. 久保卓也

    ○久保政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもが可能性、ポシビリティーとして考えているのは数個師団程度であるということです。
  126. 大出俊

    大出委員 ということになれば、一体十年先を見通してそこまでの防衛構想を立てる必要があるのかという問題になってくる。しかも、一番前提になっているのは平和維持機能から始まりまして、特に中国との関係ということになる。いまやはり中国との関係改善をする、親交の方向を進めるというような場合に、極東の緊張緩和をはかる必要がある、そうして、アメリカとの関係というものを、さっき私は代理戦争の話もしましたが、これはやはり進める、そういう形の中で専守防衛といっておる、防衛規模というものを逆に減らすというのが私は筋であろうと思っているわけでありますが、そこにやはり今回出されたこの案に対するたくさんの意見が一致している方向は、こんなに大きな規模のものをなぜ出すのだということなんですね。  そこで、時間もなくなってまいりましたので、少し中身に入りたいのでありますが、兵器の国産云々という問題が一つの柱になっている。その前にここでひとつ承っておきたいのは、「おおむね現在の体制を維持しつつ質的充実と抗たん性の向上」、質的充実、人の問題もありましょうが、兵器体制の問題もありましょう。ここの「抗たん性」というのはどういうことなんですか。
  127. 久保卓也

    ○久保政府委員 いろんな分野がありますが、たとえば通信回線につきましても、自衛マイクロの配線を持つということでありますとか、あるいはバッジ組織なんかにつきましてはコンピューターを入れて二重機能を持つということでありますとか、あるいはレーダーサイトにつきましては移動警戒隊をふやすというようなことと、それから本土の計画の場合には一部しか入っておりませんけれども、航空基地の防空機能というようなもの、レーダーサイトの防空機能といったもの、そういったように残存性を高くするような施策を逐次進めてまいりたい、そういうことであります。
  128. 大出俊

    大出委員 時間がございませんから、幾つか取り上げて承りたいのでありますが、一つは兵器の国産の問題をめぐりまして、今回は研究開発費というのが非常に多くなっている。それとからみ、これも一緒になるのでありますけれども、今回の予算規模からいきましても、他の所得政策との調和ということを言ってきたわりにしては、どうもたいへんな伸び率になっているのではないかという気がするのでありますが、基本的な点を避けまして具体的に承っていきたいのであります。  四次防の後年、つまり末年等を想定しますと、四十六年の六千七百九億円、ここからどういうふうに伸びていくかと申しますと、五十一年までに五兆八千億、ベースアップ予算というものが一体六千億ほどで足りるのか足りないのかという問題もあります。これもあとから申し上げますが、ここまでを考えますと、年平均で一九%くらいの伸びになる。そうして五十一年度の予算額、これは三次防の経過を見ましても一兆五千億をこしやしないか。そうすると、昭和四十六年度防衛予算の二・四倍くらいにふくれ上がる。これは一体他の諸施策との調和という面からいってどういうことになりますか。
  129. 久保卓也

    ○久保政府委員 四次防、新防衛力整備計画中の伸びは一八・八%になりますが、これは現在はわれわれのほうで一応従来の新経済社会発展計画の中で各主要な部門と調整しながら、おおむねこれくらいの伸びであれば妥当であろうという感じを持って出しておるわけでありますが、この中で、今後はある程度各省との調整で若干の整理はあるかもしれませんけれども、従来の予算の整理ぐあいから見ますと、必ずしもほかの重要部門と比べまして防衛費が非常に高いということではありません。むしろGNPの伸びが高かったり、あるいは予算の伸びが高かったりした関係上、防衛費の割合というものは社会保障、文教、科学技術振興あるいは公共事業といったような重要事項に比べまして、むしろ割合が漸減しておる、漸減の率が非常に高いというようなことでありまして、現在の一八・八%の伸びというものが相対的にGNPの伸びあるいはまた予算の中でどの程度の位置を占めるべきか、これはやはりわれわれだけの判断ではできませんで、大蔵省その他関係官庁の意向によって調整さるべきものである。現在の段階では一応私どもがほかの部門と比べてそれほど大きな伸びとは考えにくいのではないか。ただ社会資本もそうでありますけれども、防衛費が諸外国に比べまして漸増方針でまいったということでの蓄積というものがない。したがってほかの部門は予算を先取りしているけれども、防衛費の場合には初めのうちは予算は漸増、つまり少な目に押えて少しずつふやしていっているということでありますから、そういうような長期的な、過去から将来への見通しを考えてみましても、そう大きな支障がある額であるとは私ども立場からは見ておらないわけであります。
  130. 大出俊

    大出委員 それはそうなりませんよ。こういう数字のところであまりやりとりしたくないのだけれども、いまの景気停滞等を入れて成長率を一〇%に見て、そうするとこれは五年間の国民総生産の一・三%くらいですよ。だからさっき申し上げたように、五十一年までに五兆八千億という数字になりますと、これはおおむね一九%近辺になる。これは経済社会発展計画といいますけれども、経済社会発展計画は従来伸び率を一体どのくらい見ているとお思いですか。
  131. 久保卓也

    ○久保政府委員 たしか一五・二か三であったと思います。
  132. 大出俊

    大出委員 そうでしょう。やはり一番最後にくっついたのが理由でしょう。だから、あなたは他の関係の予算と違っていままで蓄積がないから、わがほうはというのでしょう。そうなるとたしか一五%前後だとおっしゃる。一九%ということになると、むしろ漸減だというが、漸減どころじゃないじゃないですか。それはやはり認めるべきものは認めなければいけませんよ。だから私は思い切って今回の出し方を申し上げているのですけれども、まかり通ろうという姿勢に見える、たいへん無理な姿勢に見える、そういうふうにそこのところは申し上げているのです。おまけに、ここに米国、ソビエト、西独、フランス、イギリス、中国、イタリア、こう見ていきますと、四十五年、一九七〇年の軍事予算の額でいきまして、米国が二十六兆七千八百四十億円、ソビエトが十四兆三千二百一億円、西独が二兆二千億円、フランスが二兆一千百四十六億円、イギリスが二兆五百六十三億円、中国が一兆七千五百六十八億円、イタリアが八千六百九十八億円、こういうふうでございますね。今回の四次防の最終年度、五十一年くらいを想定すると、このあたりで一兆六千億くらいになる。そうするといわゆる西独、フランス、イギリス、中国、こういうところにたいへんに近づいてしまう。そこにもう一つ五次防があるんだ。四次防が山の六合目、七合目というならば、もう一つ五次防を考えるということになりますと、そこから十年先を見通しておられるようだけれども、大体この辺に並んでしまう、こういうことになる。そうなりませんか。
  133. 久保卓也

    ○久保政府委員 将来の数字はちょっと私どもでも検討いたしておりませんが、そういう数字に近くなる予想はできます。
  134. 大出俊

    大出委員 つまり、こういう数字に近くなる、そういう予想をされるということになると、これは戦力論争を途中でやめましたけれども、途中でやめるわけにいかない。ここまで行ってなおかつ日本国憲法第九条にある戦力というものをどう考えるかという問題がある。軍隊というものはでき上がると一人歩きをするものでして、だから私は長官が出した出し方についてもいささかふに落ちぬ点があるわけです。この論争は、いまおおむねそうなるとおっしゃるから、私はここで私の意見を申し上げておきますが、四次防というのはいかにも規模が大き過ぎる。このことは各世論新聞その他でいろいろいっておりますように、専守防衛といえるかどうか、たいへん大きな疑問になる。この点は留保しておりますから、法制局長官と後ほどいろいろ論争するときにもう少し数字を並べてものを申し上げたいのであります。いまのところは概括的に大体その辺にいくというお話ですから、それだけにしておきます。  さて次に、この四次防予算のうちのどのくらいの規模の予算が国産とおっしゃられている意味での装備予算に回りますか。三次防の場合はおおむね四〇%、これは私が前に装備局長に聞いたときの答弁でございます。事実、その後の三次防の使い方を調べてみますと、四十六年度を加えた三次防期間の総体が二兆五千七百四十二億円になる。これから二千四百六十一億円を差し引きますと、実質二兆二千八百十一億円、そのうちの九千百二十六億円が装備の調達と研究費に回っています。したがって、実質総額の約四〇%、こういうわけですね。これを四次防予算のワクの中からいうと、国産の方針をおとりになっているんですけれども、一体装備費はどのくらいになるとお考えでございますか。
  135. 田代一正

    ○田代政府委員 三次防は実質でおおむね九千億でございますが、四次防はおそらく二兆五千億くらいになると思います。
  136. 大出俊

    大出委員 防衛生産委員会が出した数字がここにありますが、それによりますと、三次防の装備費、装備の調達、研究、開発を入れまして九千百二十六億。四次防はこの数字でいきますと大体二兆八千億くらい、四〇%にはなるのでありますが、いま二兆五千億という。しかし中身を当たりますと、あとで申し上げますが、今回の場合は、三次防に比べて国産の比率が非常に高い。研究開発費にしろ千七百億もお組みになっている。となりますと、五〇%こえますよ。二兆五千億どころじゃない。あとではじいた数字を申し上げてもいいけれども、実は防衛産業に装備予算という形でたいへん流れていくことになる。それを前提としてひとつ承りたいのでありますが、長官、AEWについて私が昨年十月に質問いたしましたときに、何としても持ちたいとおっしゃった。どうするのだと言ったら、これは買うのだという話が当時あった。十二月になって一機幾らだと聞いたら七十億とお答えになった。二月に予算委員会が始まって、今度は八十億くらいとおっしゃった。そのうちに長官は、小学生にダイヤモンドを預けるようなものだと言って、頭から水をかけるようなことをおっしゃった。ここに議事録がありますが、今度は五年間で開発をすると言う。しかもその開発は機体を含めてという技研の話のようでございまして、技研のほうではどうもXC−1あたりを使って機器を乗せる、こういうことのように受け取れるのでありますが、そこまではここに書いていない。これは一体どういうわけで二転三転されて、かつまた国産だということになって、機体を含めて五年間でということになったのか。そうすると、たいへん高いというのですけれども、一体幾らくらいになるのか。私は、すそ野が広がる、長期的に見れば国産が必要だという理屈は、長官立場に立てば一面わかるような気がするけれども、だからといって、国民の金でございますから、効率を考えずにやるわけにいかない。そこで一体二転三転された理由と、自主開発されるというのだが、たいへんな非効率的なことになりはせぬかという気がするのでありますが、いかがでございますか。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 早期警戒機の問題は、まず第一に現在のレーダー体制及び防空、要撃能力等見ておりますと、低空侵入に対しては盲点ができている。そこで低空侵入に対処する能力を付与することは必要であります。それがまず第一点です。つまり早期警戒機という機能が必要とされる、そういう判定をまずいたしました。  第二番目に、それを国産でやるかあるいは外国から買うかという問題になりますと、これはいろいろ検討した結果、国産でやれるというわがほうの技術者の報告もあり、それから外国から買うというものがどの程度の信頼度があるかという点について、いわゆるE2、ホークアイとか、そういうものについて、どの程度の信頼度があるかという点について、まだ必ずしも証明された安全度、信頼度はないわけです。そういう面からして、これから外国から手に入れようとするものについて、不安定性がかなりあるということ、それからわがほうでこれを開発する能力があるということがわかりましたので、しからば外国に金を落とすよりも、これを国産でやって、国内に技術を蓄積していくということも考えたほうが国のためにもなる、長期的に見ておそらくそれは各方面に波及していくであろう、そういうことも考えまして、そして費用についても、外国から買えば大体この程度になるだろうと一応目算される程度のものでやれるという、当方の目算もありましたので、国産自主開発という形でやることにしたわけです。ただ、研究、開発しているうちに、どうしても乗り越えられないようなものについては、買うこともこれはやむを得ないであろう、しかし極力与えられた年度内に国産自主開発でいく、そういう方針をきめたわけであります。
  138. 大出俊

    大出委員 重ねて承りますが、XT−2の先例が一つあります。このT2というのは私も当時質問したことがございますが、国内開発がきまったときに、一機四億ないし五億、こう言っておられた。当時の議事録にあります。まあ五億が幾らか出ても六億まではいかぬだろうという意味答弁があった。これが開発費に六十五億円かけられているのですね。四億から六億の間、大きく見てもこれでできるはずであった。XT−2は十五億円くらいになるそうじゃありませんか。四億か六億でできる、国会などにもそう言っておやりになって、六十五億の開発費をつぎ込まれて十五億円になる。これは一体どういうことになるのですか。今度またAEWについても、これは七十億だといっているうちに、八十億だという御答弁がございましたけれども、これは百億以下ではできないでしょう。そこで一体研究開発費を幾らおつぎ込みになるつもりですか。XC−1だってそうです。私は確かに国産という面についての言いたいところはわかりますけれども、かといって国民全体の立場からして、いまここにこれだけの金を使うことをはたして認められるかどうかという点、いかがでございますか。
  139. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 いまの御質問の最後から申し上げますと、AEWの開発につきましては約六カ年、百二十億程度の開発費を要します。  前段の御指摘のT−2でございますが、現在予定どおりの開発が進んでおります。  価格の問題につきましては、ロールスロイスという会社の倒産の問題に関連しまして、価格の値上がりの問題が新聞にも載りまして、論議されました。いま先生御指摘の十五億という数字は、われわれは存じておりません。現在四次防では、約十億を予定して組んでおりますが、T−2の開発の状況を申しますと、第一点は、三次防を組む際に超音速の高等練習機を導入したいということで輸入を考えました。その際に、日本としても超音速機をつくる必要がある、そのためには一線機は無理なので練習機で始めようという結論が出まして、三次防で急遽開発になったわけでございます。その際に輸入するものの航空機が四億ないし五億であろうということは論議されました。それに対して開発になれば多少は高くなるという前提はございましたけれども、もちろんそう高くなるとは考えておりませんでした。ただ、たとえば五億と予定しましても、四十一年当時から比べますと、その後の物価指数から見ますと、やはり七、八億、八億欠けるという関係はございます。  もう一つは、ロールスロイスの倒産に至りましたいまの十五億問題につきましては、われわれは極力詰めております。ロールスロイスの倒産からくる影響はそうございません。むしろ国内の一般物価問題に関連するいろいろな思惑がございます。これにつきましては、当然今後、あるいは予算を組む段階あるいは契約をする段階、あるいは企業努力を要請する段階で詰めてまいりたいというふうに考えております。
  140. 大出俊

    大出委員 私はいまの答弁では全く納得しない。私も数字を持っている。私は結論を先に言いますが、国会が調査団をつくってこの点は調査すべきだと思う。簡単なものじゃないですよ。あなたはいま自分でわからぬなんてことをおっしゃるけれども、六十五億も開発費をつぎ込んで、四億から六億といっておって、十五億になる。その証拠には、あなたのほうはXT−2の問題で調査団をおつくりになったでしょう。佐藤憲郎さんという空将の方が団長でしょう。——うなずいておられる。お認めになりますね。調査団をつくったでしょう。
  141. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 二月四日にロールスロイスが倒産しまして、その状況について各方面から意見がございましたので、われわれといたしましては三月末に佐藤空将を団長とする調査団を出しました。出しました目的は、一つは私たちの開発しておりますT−2という航空機の搭載エンジンが、アドーアというロールスロイスとフランスのツルボメカ社の共同開発をしているエンジンでございます。しかもそのエンジンは、フランス政府とイギリスの政府が共同開発していますジャガーという高等練習機の搭載予定エンジンでございます。その際に情報としましては、フランス政府としても、アドーアというものに対する検討をしているという情報もございましたので、もしフランス政府がジャガーの開発に支障がある、あるいはその搭載エンジンとしてのアドーアに疑問を持つのであれば、われわれとしても問題がございます。もう一つは、ロールスロイスが倒産した結果、供給体制はどうかということについても問題がございます。さらにもう一つ加えまして、価格問題についても問題がございましたので、その三点を調査するということで派遣したのでございます。  結論的に申しますと、その供給体制につきましては、フランス政府、イギリス政府ともジャガー、アドーアの開発体制には支障はない、継続する。ロールスロイスの会社の再建も政府中心として進んでいる。だからアドーアというエンジンの供給体制には心配はないということの結論を得まして、それが調査の一番大きな目的でございます。  もう一つは価格の問題でございますけれども、これがわれわれとしましても、また相手方としましてもきびしい交渉問題でございますので、現在も続けておるわけでございます。
  142. 大出俊

    大出委員 それにも全く納得しかねる。これは調査団をお出しになって、またあなた方は調査結果に基づいて採用するとおきめになったはずです。しかし六十五億も金をかけて開発をされる、少なくとも国会で四億だ六億だといっておいて、これが十五億にもつく、そういうことを私どもは放任できませんよ。そこえ持ってきてXC−1、これだって日本航空機製造株式会社ですか、日航製、こういっていますが、防衛庁はこの会社にはずいぶん金をかけています。まるきりかかえているようなものですよ。この会社は一体つぶれるのですか、つぶれないのですか。もう倒産寸前じゃないですか。これは試作の二機目をつくって、主契約者をおたくは変えたでしょう。日航製じゃないでしょう。川崎重工といえばいいのですか、川崎航空機といえばいいのですか、あなた方は変えているはずです。これは来年の三月までいくかどうかです。もうつぶれる、こういうかっこうで、あなた方いつも国産、国産ということをいっておって、これを国民の側から見たら一体どうなりますか。この間バッジ問題で皆さんの側から——あれだけの資料というものはなかなか出にくいと思って私はよく読んだ。私も調べておりましたが、あそこまでよく調べた。防衛庁のどなたかが差し上げたんじゃないかと疑問を持つくらいな資料です。これは名前を申し上げては質問された方に申しわけないが、そう思わざるを得ない。ファイアビーの問題なんかだって、いま陸上が三機、海がもっと持っているはずだけれども、ホークの射場がないとおっしょるかどうかしらないけれども、陸は使っていない。蔵の中に入ったままです。そこへ持ってきてAEWにしてもひんぴんと私どもの耳に入る。中曽根さんが昨年レアード国防長官に会いに行かれた。その前に自民党の有力な方が先に行って会っておった、あれは日本が買うのだからと言って。そんな話が出てくる。そのうちに小学生にダイヤモンドをやるようなものだという話が出てくる。そうしたら今度は国産だという。ダイヤモンドをやるようなものを何で国産にする必要があるのですか。しかも百二十億も開発費をかけて、会社側の責任ある方々の発言がいろいろ載っているけれども、これは国産、国産という方向でどんどん伸ばしていかなければもたない会社が幾つも出てくる。そういう形での国産には私は賛成しかねる。だから私はこれは担当の委員会なら委員会理事会に相談していただいて、調査のための調査団くらいつくって調べなければ——今度はつまり四次防のワクの中の国産という規模を調べてみると、予算的に五〇%こえますよ。二兆五千億、とんでもない話です。私はあとでこまかくあなたに質問しますが、全部数字をあたっている。そんな額じゃない。それをほうっておけない。いかがですか、長官。これはAEWにしたってたいへんな額になる。私は、こういうことを放任しておいて、予算規模ばかりやたら五兆——ベースアップだって六千億じゃ終わらないですよ。私も賃金の専門屋だ。だから、正当にベースアップをはじけば、昨年の一二・六七みたいなはじき方をすれば、この予算は六兆をこえちゃう。こんなことではたいへんな騒ぎになるから五兆で押えて、五兆一千九百五十億だ。そういうことじゃ納得できませんよ。しかも、ここまでの規模のものになるとすれば、私は高辻さんにじっくり承りたいのだけれども、これもなおかつ憲法九条にいう戦力でないとおっしゃるか。しかも、イギリス、フランス、中国、そういうところと並んでしまうであろうというところをお認めになっている。そういうふざけた話はないと思うんですよ。いまのこの兵器の国産の方針を長官はお立てになっておりますけれども、いまのXC−1、XT−2、今回のAEWを含めまして、どうお考えになりますか。幾らそれは国産にすべきである、すそ野が広がると言ったって、それは国民の税金を使うのですから、それじゃ私は事は済まぬと思うのですが、いかがですか。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 新防衛力整備計画におきまする調達系統の費用というものは大体二兆五千億と私は聞いております。  それから、やはり日本に自衛権があり、自衛権を保障するに必要最小限度の防衛措置、防衛力というものを考えてみた場合に、この程度のものがあって憲法違反だとは私は思いません。やはり国を防衛するという基本的立場があって、そしてそれに必要な最小限度の措置というものを認めている以上、日本のいろいろな客観情勢やら国内情勢等を見渡してみて、この程度の防衛力を持つということが憲法違反になるという判断は私はとりません。  それから、国産に関する問題につきましては、これはいろいろ議論もあるところであります。しかし、ややもするといままで日本の自衛隊なり防衛庁は、外国の製品のカタログやなにかに、ちょっと極端な表現をすると、目を奪われるような感じがしないでもない。やはり技術力を蓄積して、そしてその技術力自体が一つ防衛力にもなりますし、それからそれがまた波及していくということも結果的には考えられる。そういう効果も考えてみて、長期的に息の長い考え方でいったらどうであろうか。外国から手ごろなものを買うということは、その場でわりあいに簡単に済むことでありますけれども、はたしてそれが国益につながるかどうか、これは慎重に検討を要するところでもあると私は思いました。それで、しかし短期間にやるとかなり金がかかりますから、時期をずらしまして、AEWにしても、次の防衛力整備計画の間は研究開発ということで、現品は手に入らないでしょう。そして、新しいいわゆる五次防の段階になってそういうものが手に入る。時期を非常にずらしたわけです。それは、平和も持続するであろうという見通しのもとに、その程度のテンポで進んで適当であろうという判断をしてやったわけなのであります。
  144. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、これは長官にお願いしたいのですが、私はどうしても疑問が残りましてね。ここに二組の資料を持っておりますが、それで何とも納得しかねる。XT−2、XC−1、これは調査をおやりになったのだそうですし、しかも予算のかかる、単価についてもたいへんな違いがある。蒲谷さん、あなた言い方がまだ確定していない。七億であるかのようでありないかのようである、はっきりしない。これは資料をお出しいただきたい。これだけの四次防を御計画になっているのですから、やはりその前提は国産あるいは研究開発費、この辺のところに大きな疑問が残っては困る。これは当然だと思う。だから、その前提になりますから、そして、AEWについてはどういうお考え——この中にはないのですから、このお出しいただいたこれを見たって何もわからぬ。これは何にも書いてない。中身はわからぬ。わからぬことだらけ。だからぜひその資料をいただいて、そしてそれに基づいて私は納得したい。そういう意味で、委員長、これはこの資料をいただきたいのですが、いかがでございますか。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 提出するように努力をいたします。
  146. 大出俊

    大出委員 高辻さん、せっかくお待たせして申しわけないのですが、本会議の時間中しゃべっているわけにまいりませんので、あらためて質問いたします。  そこで最後に、これもいま御答弁いただきにくければあとからでけっこうでございますが、基地の問題に関しまして方々に例がある。沖繩なんかでも返ってまいりますと、三万七千何がしの運用地地主の皆さんといろいろ問題が出てくる問題でありますが、特徴的な例が私の足もとにありますので申し上げますが、先に概略を申し上げておきますと、戦後アメリカ軍が入ってきて接収をした。個々の百坪、二百坪というふうな土地がどんどん接収された。それをつぶして道路を米軍がつくった。こういうかっこうです。この道路になったところを接収解除をした。解除をして、判こをついて受け取った地主さんは、道路になっているわけですから使えない。しかも使用料はもらえない、自分の土地になったのですから。ところが、原形復元を要求して、がんばって判こを押さない地主さんは、いまだに使用料をもらっている。しかも、そこは道路になっている。同じ状態。だから、その土地はどうかといえば、防衛庁財産になっているはずだ。そういうかっこうになっているところがたいへんたくさんある。これは実は前もって地図を差し上げたりいたしてありますが、これは昨年私のほうから一ぺん質問もいたしておりますが、それは四十五年八月十八日です。これはやはり接収云々のかかわり合いは国でございまして、決して地方自治体ではない。そうなると、いま困っているのは地方自治体であり、かつ住民なんですね。一・八メートルの道路を五メートルに拡幅をしてある。だから、いま車が通っている。一・八メートルに縮小してしまえば車は入らない。これは現実に不可能なことだ。ということになると、この土地はやはり国が責任を持って買うものは買う、自治体に道路管理の責任を負わせるなら負わせる、そういうことにしなければならぬ筋合いだと私は思っておる。その国の責任についてどうお考えか、まず承りたい。
  147. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍に提供しております地区におきまして道路がありまして、その道路が民有地である場合、これが返還になった場合にその取り扱いをどうするか、こういう御質問だと思いますが、具体的にいろいろなそういうケースがございますが、基本的には、そういう道路が公共の道路になっておる、したがって、その地元の自治体としましては、それを道路として使いたいという希望が非常に多いわけでございますので、その辺が非常に複雑になってまいりますが、まず基本的には、やはり原状回復をしてその民有地の地主に返すということがたてまえだと思いますが、もうすでに道路として使用されておる、市としても使いたい、また一般の住民も利便を得ておる、こういうことにつきましては、結局は、やはり何らかの補償措置を講じるということが必要ではないかと思いますので、そういうケースがありました場合には、具体的にそのケースケースごとにわれわれとしても十分事情を聴取いたしまして、何らかの補償措置を講ずるということで相談してまいりたいというふうにいま考えております。
  148. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから……。実は大蔵省の皆さんをお呼びいたしましたのは、筋が一つございまして、予決令九十九条二十二項というのがある。これは特に縁故のある人に売り払いまたは貸し与えることができるという条項、だから区画整理ができないところがある。国有地もある、民有地もある。その場合に、この道路に面したところ、接収地でありますが、そこの扱いなどの場合に、自治体がそこを利用しようとすると、地主さんが、基本的な潜在権利があるのだからといってそれを払い下げろと言われると、そこにも争いが起こる。そこらを含めて大蔵省は一体どう考えるかということを聞きたかったのですが、本会議のベルが鳴りましたので、このあと理事間の打ち合わせをさせていただきまして、高辻長官にも途中で実はやめさせていただいておりますので、どうもたいへんお待たせして申しわけないのでありますが、時間の関係でそうさせていただきたいと思います。
  149. 天野公義

    天野委員長 午後三時委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後二時休憩      ————◇—————    午後三時十四分開議
  150. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。伊藤惣助丸君。
  151. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 きょうは同僚委員から四次防に関して詳細な質問がありましたので、私も関連しまして四次防の構想に限ってのみ質問したいと思っております。  まず入る前に防衛庁長官に伺いたいのですが、国防の基本方針についてであります。  これは前国会ですか、長官はかつて四次防を策定する前に国防の基本方針を出す、このように前向きな姿勢で取り組まれておったようでありますが、その後自主防衛五原則あるいはまたその国防の基本方針の改定についていろいろな話があったようで現在なお流動的である、こういうふうに承っておるわけでありますが、最近の報道によりますと、長官が私案として、国防の基本方針は全面改定ではなくて部分改定に切りかえていく、こういうような長官の私案が報道されておりますが、その国防の基本方針について長官見解をまず伺いたいと思います。
  152. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防の基本方針につきましては、前に申し述べましたように、できましたのは昭和三十二年で十三年前でもありまして、米軍の大部隊が駐とんしていたときの産物であり、その後客観条件、国内情勢も非常に変化してまいりましたので、時代に合うように補足的修正をいたしたいと考えております。大体やはり政治的に大局的に見た視野からの観点というものがいまの国防の基本方針に若干不足しているような気がいたします。たとえば軍国主義というような非難がこないように、その歯どめとして、日本の国防は憲法を守り、文民統制のもとに行なうという大黒柱をがちっと入れておいたらどうか、あるいは日本の防衛に関して、外敵の侵略に対しては、いまの基本方針ですと安保条約、安保体制に全面的に依存するような表現の印象を与えておりますが、やはり自主防衛の要素も加味して、第一義的には自分の国土は自分で守る、足らざるところは外国と提携、協力して守る、そういうような要素を入れたらどうか等々を考えております。  ただ、国防の基本方針は、いままでは官庁内部でわりあい国民の知らない間につくられたような印象がありますが、やはり全国民の関心のもとに手続を尽くしてやることが好ましいと思うわけです。それで、いままでは新防衛力整備計画及び議会等で非常に多忙でございましたので、あまり急にやることもどうかとも思い、この新防衛力整備計画決定の前後にきめることが望ましいということを言っておりましたが、後になってもいいと私ら思います。そして、やはり慎重に手続を尽くして行ないたい、そういうように考えております。
  153. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この自主防衛ということについては、いままで国防の基本方針においては安保を補完するということが、今度は安保を補完とするというふうに変えて自主防衛をするんだ、こういうふうないままでの考え方があったわけでありますが、何か今回の私案は、そういうニュアンスではあるけれども、それよりも一歩後退したようなそういう考え方が私案の中にあると思うわけですが、私案の内容について、前回長官が発言した例の自主防衛五原則をそのまま用いるのかどうか、また特に安保体制についての考え方なんかももう少し詳細に伺いたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私案というようなものはまだないのです。私が頭の中で考えておりますことををいまこういうふうに申し上げたので、別にすでにつくられた、書かれた私案というようなものはございません。  それから例の自主防衛五原則の内容というものはできるだけ入れるようにしたほうが適当であろうと私は思います。そういう意味も多少ありまして憲法云々というような表現もあるわけであります。  それから自主防衛の点につきましては、安保条約の扱いでございますが、国防の基本方針ということになると自分の国を守る基本方針でありますから、そういう意味からも、やはり自分で自分の国を守ることを第一義にする色彩を入れて、そして安保体制というものは補完するという形にしたほうがいいのではないか、そう思っておるわけで、その考えは前と変わっておりません。
  155. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 前に聞いたところによりますと、佐藤総理または外務大臣等も、どうもこの安保体制を補完とするというところに異論があるように承ったわけです。長官はそういうことを御存じの上で、さらにこういったことを発言されているわけですが、その点は総理や外務大臣と、あるいはまた米国の政府筋、そういったところとの話し合いですか、また打診といいますか、そういう中で長官がこういうふうにいくべきである、こういうふうに思われて言われたのか、あるいはまた一方的に防衛庁長官が自分の考えをおっしゃっているのか、その点はいかがですか。
  156. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 別に、国防の基本方針ですから、アメリカに相談する必要もなし、打診したこともございません。政府部内においては話し合ったことはございます。ございますが、これは軽く感じを言い合った程度でありまして、別に各自が主張を持ってどうするああするといったものではございません。総理大臣もたしか施政方針演説の中で、自分で自分の国を守り、安保で補完するというような発言をしたことがあると私記憶しております。まあ安保条約には幾つかの機能がありまして、経済協力条項もございますし、それから日本の防衛に関するところもありますし、極東の平和及び安全維持に寄与する、そういう要素もあるわけでございます。ですから、安保条約全般をとらまえた形の表現を国防の基本方針の中で全部とらまえることはむずかしいのではないか。また適当ではないのじゃないか。しいていえば、外敵の侵入に対しては自分で自分の国を守ることを第一義的としつつ安保体制というものも機能させるとか、そういうような程度のニュアンスで、やはりほかの機能の問題が問題になっているのではなくて、国防というものが問題になっているという場面においては、自分で自分の国を守ることを第一義とするという表現がやはりいいのではないかと私考えます。
  157. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうなりますと、補完ということは、自主防衛を主にして安保を補完とする。この間の防衛白書においては、安保は半永久的といいますか非常に長期的に考えておるのでありますが、そういう点はどういう見通しなのか。途中で安保体制というものについて、こちらにそれ相当の自主防衛の体制ができ上がったときには、また改定というようなものは考えられるのか、あるいはまた軍事面、核のかさ以外のことについては、地位協定も含めて大きく変貌、変更するような考えがあるのか、そういった点について伺いたいと思います。
  158. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本は核兵器を持たないことを政策としておりますし、攻撃的兵器もまた現憲法下われわれは持ちません。したがって、その部面はやはりアメリカとの提携によってカバーしなければならぬ部面で、そういう方針をわれわれが維持している限り、日米間の安全保障体制というものは半永久的に必要ではないかと考えております。しかし、個々の、安保条約、条約となりますと、その内容は時代とともにいろいろ変化しておるので、これは歴史がすでに証明しているところであります。
  159. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この自主防衛についてですが、米国の軍事専門家あるいはまた政府の一部にもこういう声があるように聞いております。というのは、日本が自主防衛でやるということで、独自な線での一つの防衛構想といいますか、そういうものでいく、要するにアメリカと離れて一人歩きするということについてはアメリカとしても非常に危惧を抱くというようなことを述べている専門家もいるわけでありますが、それについて長官はどのように考えられるか。自主防衛はどこまでも日本の国益に従って日本独自で考えていくということはもちろんあるでしょうけれども、ただアメリカは安保条約という一つの条約によって極東の平和と安全に寄与することを日本にいろいろな形で言ってきているわけですね。ですから、そういった米国の日本に対する希望というものもあるでしょうけれども、そういうような声があるということについて長官はどのようにお考えですか。
  160. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 自主防衛といいましても、いま申し上げましたようにある条件下における自主防衛で、その条件というものはアメリカとの提携というものが前提になっているわけであります。もし米国側にそういう声があるとすれば、安保条約というものを無視したりあるいは廃棄した形の自主防衛というものについて、そういういろいろな憶測がおそらく起こるのだろうと思いますが、それは誤解でありまして、われわれは日米間の提携というものを前提にした上での自主防衛というものを考えているのであります。
  161. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 特に米国は例のニクソン・ドクトリンによりまして相当アジアから撤退するといわれているわけでありますが、私たち国民立場からいいますと、そのことが即自衛隊の自主防衛ということで、極東における米軍の、あるいは自由陣営の最前線基地としての役割りを持つような自衛隊、あるいはそういうことを前提とした、自主防衛じゃなくて他主防衛というか、そういう型に国民は非常に心配しているわけです。そういう点については長官はどうお考えですか。
  162. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう考え方は毛頭ございません。
  163. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この国防の基本方針については、四次防の前後に出すという一つの見通しを述べられましたが、いつごろまでにこれは正式に決定する考えなのか、その点もう一回聞いておきたい。
  164. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、前後と申し上げておきましたが、後になる可能性が多いのではないかと思います。
  165. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 国防の基本方針についてはそういう一つの方向で長官がいま述べられましたが、またさらに具体的なものが出てから、大事な国防の基本方針でありますので質問したいと思います。  きょうは先ほど大出委員からもいろいろ新防衛力整備計画について、政府の原案について質問がありましたが、私も聞いておりまして、なお説明してほしい、またなお疑問に残る点が幾つかあります。その点について質問したいと思います。  特にこの計画をつぶさに読んだわけでありますが、これを読んでまいりますと、最初に、わが国に対しては差し迫った脅威があるとは考えられない、こういう前提、または全面戦争の起こる可能性は少ない、こういう一つ結論めいたものを前段で述べながら、しかし現在のわが国の独立と平和を守るためには十分な体制ではない、また必要な防衛力の備蓄がいまだ不十分である、こういう一つ説明がなされているわけであります。さらに防衛力として所望の域に達していない、こういうふうにいわれているわけでありますけれども、こういう全く相反するニュアンスを前提としていること自体にわが国の防衛構想のあいまいさといいますか、そういうことを感ずるわけです。私は、こういう一つの構想から見て、この第四次防というのが具体的に何を想定して、また、どういう必要性から、さらに、なぜこの五年、十年という期間の中で整備しなければならないのかということについて疑問を感ずるわけでありますが、その点について明確な答弁を願いたいと思うのです。
  166. 久保卓也

    ○久保政府委員 ただいまこの原案の立案の趣旨のうちから幾つかの点を取り上げられて、矛盾をしているではないか、また長期的な見通しの中でそういう大きな兵力をどうしてつくるのかというふうな御質問がありました。この点については、私どもは矛盾とは感じておりませんが、私のことばを使って御説明すればあるいはおわかりよろしいのではないかと思いますので、そういたしますと、その差し迫った脅威がないということは、いわゆる顕在的な脅威がないということでありますが、私のことばを使いますと、いわゆる蓋然性のあるような脅威がないということ、つまり、紛争要因がある、たとえば国境の問題があるとか、あるいは政治的な問題で抗争があるとか、そういうような問題がない。これは、たとえば朝鮮半島であるとか、インドシナ半島でありますとか、中東地域、ヨーロッパ地域というのは、それぞれの問題点があるわけであります。そういうような地域というものは、やはり一種の紛争についての蓋然性がある。したがって、それなりの大きな防衛力といいますか、軍事力というものを準備しなければならない。ところがわが国には、そういった差し迫った脅威、顕在的な脅威というものはない。そこで考えてみますと、これは世界的な軍事的な常識になっておるわけでありますけれども、脅威というのは、ケーパビリティー、軍事的な能力とそれから隣国を侵略しようという意図、この能力と意図の二つが合わさって侵略、脅威というものが出てくるのだ、こういう説明であります。そこで、わが国の周辺におきまして、わが国を侵略しようというような意図のある国は、私どもはあろうと考えておりません。したがって、仮想敵国というものは存在しないというふうに思うわけです。ところが、片一方のケーパビリティー、能力がある国というのは、これは非常にたくさんあるわけです。この能力というものが、いつ何どき意図に結び合わさって脅威に顕在化してくるかもわからない。そういう場合に、その能力があるということ自身を可能性と考える、ポシビリティーと考えるわけです。そこで、そのポシビリティーに対してわれわれは軍事力というものを準備する。ですから、蓋然性、プロバビリティーに対するもの、つまり、紛争要因があるようなものについては、相当な軍事力を用意しなければならないでしょうけれどもわが国の周辺諸国についてそういうものはない。しかし、能力というものはあるから、そういうものに応じてそれに対応するだけのものは考えておかなければいけないのではなかろうか。しかしながら、その場合でも、この能力に十分に対応し得るものを持つということは、これはたいへんなことであります。わが国とヨーロッパ諸国との違いは、ヨーロッパ諸国は、周辺諸国と一緒になって一つの脅威、これはワルシャワ条約機構もNATOのほうも同じことでありますけれども、幾つかの国が合わさって相手の脅威に対抗しようとしておる。わが国の場合には、アメリカというものが存在するわけでありますけれども、地理的にいうと孤立をしている。どこともアメリカ以外の提携国はないわけであります。そういった面から見ると、この周辺諸国の能力というものについてのある程度の範囲内の防衛力というものを持っていなければならない。十分な防衛力というものは必要ないだろうけれども、ある程度のものは持っていなければいけないだろう。そういうことですが、この防衛力というものは、一朝一夕、二年、三年ででき上がるものならば格別としまして、やはり相当長期間を要するものであります。一応のある限られた範囲内での防衛力を整備する、そのしかたを国防の基本方針に従って漸増してまいったわけでありまして、そういう漸増してまいったのが、おおよそあと十年近くもすれば大体いいところに達する、いわゆる所望の兵力に達するのではなかろうかというのが一貫した考え方であります。
  167. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの局長お話の中に、仮想敵国はない、しかしその能力のある国がある、その能力のある国の脅威が顕在化した場合に、やはりわれわれとすれば、それに対応をする防衛力整備計画が必要なんだというお話だと思うのですが、そうしますと、その脅威の分析、また脅威の顕在化という問題についてはどういう形でくるということを想定するのか、もう少し脅威の分析について説明願いたいと思うのです。
  168. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは相手方の意図というものがわからない現在で、どういうことであるかわからない、あるいは将来どういうふうに変わるかわからないということがありますし、それから、紛争要因というものはわが国については存在しないというふうに考えられます。そうすると、脅威というものは全然ないかというと、さっき言いましたように、軍事常識的に見れば、周辺諸国の能力があるということ自体が一種の脅威である。それを潜在的な脅威というふうに普通はいわれておりますが、そういうものに対応し得るものを一応持っているということで、その場合に、それじゃ、どういうようなモメントでそれが発生するかということが必ずしもわからない。これは将来のことでありますから、私は、十年前後に一応の目標兵力を達成しようと思っておるわけですけれども、十年後に脅威が顕在化するという意味ではさらさらございません。そこで、どういうような条件になってそれが発生するかわからないけれども、しかし、一応われわれのほうでは、ある限られた範囲内で準備をしておく。その準備をしておくということが、潜在的な脅威というものを顕在化させない要因になる、つまり抑止力になるということであります。  そこで、脅威がどういうふうな場合に顕在化するかということは、ここで白紙に議論するということはあまり意味がない、と申しますのは、絶対に戦争というものは起こらないというふうに判断された過去の歴史の中で、その何カ月後に大戦争になっている事例というものは幾つもありますので、私どもは、やはりそういった将来は絶対に平和であり、戦争というものは起こり得ないということじゃなくて、起こった場合に備える、あるいは起こらないように備えておく、むしろわれわれの防衛力というものは潜在的な脅威というものが顕在化しないためにある範囲内において準備をしておくということであろうと思います。
  169. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その辺ちょっとわからないのですがね。その脅威の分析、能力がある国の脅威を顕在化させないためにもこちらが持つんだ、それによってこちらも飛行機を何機買い、または戦車を買い、あるいはまた船をつくるということなのですけれども、私は、現在ですら自衛隊の規模というのは大きいというぐらいに実は考えておるわけです。今回、私も同僚委員と一緒に南米までIPUの会議で行きました。ベネズエラというところに行ったわけですが、ベネズエラという国は、日本の二・四倍あります。しかもあのベネズエラという国は、人口も非常に少ないわけでありますけれども、いろいろな新しい国が生まれたり、また国境の問題でいろいろトラブルがある。しかしながら、非常に軍事力というものについては小さいものしか持っていない。それは国際環境も違いますし、国情も違う、それは条件が違うことはよくわかっております。しかしながら、現在ですら日本の防衛力というものは、数字的に見ましても、アジアでは、自由圏では一番の戦力がある。さらに軍事費の絶対額も十二番目だ。しかも日本には平和憲法がある。こういう一つの環境の中で、そういう一つのワクがあるにもかかわらず、そういった能力のある国に対して、脅威が存在するから、その脅威が顕在化しないためにさらに現在の自衛力を二・四倍するんだ、こういうことについては非常に納得しかねるものがあるのですが、そこできょうは法制局長官が来ておりますから伺いたいのですが、先ほども質問がございましたけれども、非常に戦力の問題になりますとまたややっこしくなりますから、私は避けますけれども、現在の憲法第九条から見て、この四次防という一つ自衛隊、さらに五次防という——今度の新防衛力整備計画というのは、大体十年後を見通しての五年間の防衛力整備計画であるというふうに先ほどから聞いておるわけでありますが、さらに五次防になりますとそれ以上のものになるわけです。四次防を整備をいたしますと軍事費は絶対額では七番目になる、しかもアジアでは最強の部隊だ、こういうふうにいわれているわけでありますが、それは憲法第九条から見て何ら自衛範囲を出ていない、戦力ではないとはっきり言い切れるかどうか、長官にお尋ねします。
  170. 高辻正巳

    高辻政府委員 いま新防衛計画なるものについて私がこれをつぶさに審査して承知をしているわけではございませんので、具体的な問題については責任を持ってお答えする時期ではないと思いますが、先ほどからも申しておりますように、または防衛庁長官がおっしゃいましたように、憲法の九条二項で戦力保持を否認はしているけれども、この九条一項において自衛権というものは否定しておらない。その自衛権を行使するための保障措置としてのいわゆる自衛のための措置、これは憲法上否認されるものではないという立場にわれわれは立っておるわけです。一般的なそういう論旨そのものは実は最高裁判所判決にもあらわれておるところでありますが、そういう考え方のもとで、いかにこの新防衛計画なるものが自衛のための必要な限度にとどまるかどうか。これこそが実は問題の焦点であろうと思います。  ところで私どもとしては、政府における責任当局がこの防衛の範囲内にとどまるものであるというふうに確信を持っておる。当然われわれとしてはその専門的知識について敬意を表さなければならぬと思います。むろんそういう認識についてすべての人々が完全に一致するということにはならぬかもしれません。ならぬかもしれませんが、私どもとしてはやはり責任当局の見方というものが一番傾聴すべきものではないかというふうに考えます。いずれにしても、その中身についていま私がこれを論定するのは問題だと思います。というのは、この中身をよく知らないで申し上げるのはなお無責任だと思います。そういう観点から責任当局としてこれは必要な限度以内のものであるということであれば、また現に私どもも、今回の新防衛計画なるものも通常兵器による局地戦における問題の対処というのが中心であるようでありますから、そうであれば、理論的な問題としては憲法上問題はないという結論になると思います。
  171. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、わが国には戦力保持の精神という一つのユニークな条項があるわけでありますけれども、それから見て憲法違反だという一つのパターンはどういうものがあるのか。
  172. 高辻正巳

    高辻政府委員 憲法違反だという声があるというのは、この新防衛計画に関して……。
  173. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いや、要するに防衛力整備計画がどんどん進みますね。兵器もいろいろな面で進んでいきます。最近の兵器というのは、もう非核両用兵器とかあるいはミサイルとか、あるいは戦略爆撃機であるとか、いろいろと出てきますね。いままではスリーBというものは攻撃的なものである、これは憲法に違反する、しかしながら防衛のためであるならば核でも持てるという論議があるわけですね。そういう中でいえることは、長官は兵器のほうはよく御存じかどうかわかりませんけれども、それではわが国のこういう憲法の中でどういう兵器を持つことがいけないのか、憲法違反になるのかという一つのパターンですね。私から言わせれば、四次防も五次防も憲法違反ではない、戦力ではないという一つ自衛権範囲であるという解釈に立っていきますと、これはもう上限がわからぬわけですよ。いま国民のわれわれは、その防衛整備計画というのはどこまでいくのか上限がわからないわけですね。しかもその予算というのが四次防五兆何千億という、いわば一年間で一人が一万円から一万五千円くらいの税金の負担をする。さらに四人家族で一世帯であるならば、五次防というのは二十三万円くらいの負担が国民にはあるわけですね。ですからこういう平時に、しかも国際環境にいろいろな脅威のあるような国があるとしても、二十数年間これできたわけですね。それをむしろそういう防衛力を整備することによって他国に脅威を与えるのじゃないか、こういう心配を国民はしているわけです。私が先ほどベネズエラの例を出しましたのは、現に隣の国との紛争がある。しかしそのときどういう話し合いをしているかというと、国境問題については外務大臣が話し合いをしまして、十年後に話し合いをしょう、こういう話し合いを——これは南米ですからのんびりしているのかわかりませんけれども、そういうような外交政策、決して軍事にたよらない、こういう行き方をしている国の姿があるわけですね。わが国の場合と環境は違いますけれども、周辺諸国にそういう脅威がある、だからこっちも持つのだ、脅威を顕在化させないために持つのだということは納得いかない。しかも戦力保持の精神、これはもう全世界の中でも、ほんとうに憲法制定当時は、日本は非常にユニークな憲法を持っておるということで安心して日本との経済関係を持った国がたくさんあるわけです。それが最近になって防衛力が大きくなってきておる。しかも外交の背景には経済力、さらに最近は武力も持ちつつある。海外に投資したものについても、やはりマラッカ海峡防衛論などを通じて海外派兵や派遣もあるのじゃないか、こういう心配を他国もしているわけですね。そういう点について私は法制局長官から、たとえこういう防衛力整備計画があったとしても、これはここを越えたら憲法違反だ、上限はここまでなんだ、兵器でいえばここまでなんだというくらいの明確な答弁をいただきたいと思うのです。私は先ほどの同僚委員質問から、憲法におけるいろいろな問題については、長官はもう前法制局長官の当時からやってきておる、こういう話を聞きました。ですから十分に頭にある、考えてもいると思うのです。ですから、率直な意見をお聞かせ願いたいと思います。
  174. 高辻正巳

    高辻政府委員 あまり私が長く時間をとるのもどうかと思いますので、筋道だけを申し上げたいと思います。  大体憲法九条の考え方としては、これは何べんも申し上げていることで重ねて申し上げるのも申しわけないのですが、憲法九条の一項というのは、まさに国際紛争を武力で解決することはいけないということがきわめて明瞭にあらわれておるわけであります。したがって国際紛争があれば、それは平和的に解決しろ、国際裁判所にいくのもいいだろう、第三国の調停を得るのもよかろう、いずれにしても個人間の紛争について暴力を行使しないで、それぞれしかるべく筋を通して解決をするのがいいと同じように一それ以上かもしれませんが、国家間の紛争というものは平和的に解決しろ、これはもうきわめて一点の疑いもない憲法の規定であります。ただし、国際紛争を解決するというのではなくて、わが国が武力攻撃を受けて国民の安全と生存が保持できなくなった場合、その場合にもなおかつ身を滅ぼすべきかどうかというのがぎりぎり一ぱいの論点になると思います。そういう場合には、国民の安全と生存を維持するためにその必要の限度で防衛をするというのは、まさかに憲法の否認しているものとはいえまいというところから、自衛に必要な限度の武力組織、実力組織、それから行動の限界というものが問題になってくるわけで、この両点については、少なくとも政府一般がそうでありますけれども、私ども法制局としては、その限界を失えば、これは実は憲法の規定が根底からくつがえされることになるくらいに考えておりますから、その限界というものは非常にやかましくいうものであります。そうではありますけれども、この限界内におけるものは、いまいった本旨から許さるべきではないか。  現実の問題として、しからばその限界いかんということが常に問題になります。いまの御指摘の問題もその点でありますが、この限界は、武力攻撃を受けたときの状況、あるいは可能性、可能性まで行かなくても何かそういうような考慮のうちに入れなければならない諸般の状況、これは世界がもう少し文化的に進んでいけばそういうことはなくなるとは思いますけれども、いまの国際社会において国家が対立する現状ではこれがなくなったとは言い切れない。そうすると、そういう認識のもとでどこまでが限界であるかということと相伴って考えざるを得ない。その限界を考えるについての認識、これが先ほど申しましたように認識の問題でありますために、必ずしも国民全員が一致するとは限らない。その場合に多少の見解の相違というものがあることはやむを得ないことと思います。しかしそういうふうに、いま仰せになるように、国民の代表機関である国会等を通じて非常にそこを神経質に議論することは私は意義があることだとほんとうに思っておりますが、いまの問題についていえば、たとえば兵器を例におとりになりましたが、兵器についてはっきりと申し上げられることは、性能上純粋に国土を守ることのみに用いられる兵器の保持、これはいまも御指摘がありましたが、たとえ核兵器であっても性能上国土を守ることのみに用いられる兵器であれば、これは持って悪いという理論上の根拠はない。しかし同時に、性能上相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器の保持というものは、これは逆に通常兵器であっても持てないというのが理論上の問題であります。しかし核兵器の問題については、すでに再三政府がいっておりますように、政策上の問題としてたとえ憲法上持てるとしてもそれは持たないといういわゆる非核三原則の政策上の先例があることは御承知のとおりでございますが、差しあたりは兵器の問題を中心にしておっしゃいましたので、この辺で一応とめておきますが、さらに海外派兵の問題は、もし必要があれば申し上げますが、またあらためて御質問があればそのときに申し上げます。
  175. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 何かごまかされたような感じがするんですがね。わかるように答弁してもらいたいのです、いままで言ったことをまたいわれても、また同じことじゃないかと思うので、時間がかかるばかりですから。  一つ憲法違反になる。じゃあ攻撃的兵器というならば、あなたのいまおっしゃるのは、核兵器であろうと通常兵器であろうと、攻撃的兵器はだめなんだ、そうですね。守るためならばいいんだということですね。その区別は非常にむずかしいわけですよ。ですからそれを具体的にどの兵器がどうなのかということなのです。たとえばいまのABMだとかあるいはミサイルだとかいっても、みな長く飛ぶんですよ。だから、長く飛ぶというのは、北海道から撃てばどこでもすぐ向こうのほうには届きますよ。九州の南端からでも届きますよ。そういうような一つのミサイルだったら足の長さでいうならどのくらいなのか。極端にいいますと、こういう兵器はだめなんだという、それは大事なことなんですね。それが明確であればやはりこの防衛庁も装備計画については考えると思うのです。それが上限が示されないからどこまでも行くということもありますし、さらに私は大事なことは、前にもございましたが、やはり他国に脅威を与えることは憲法違反でしょう。憲法の精神に反するわけですよ。そうですね。現に四次防、あるいは五次防ということになれば、非常に周辺諸国はそれに対応して神経質になってきているわけですよ。いわば私からいわせれば、三次防でもそうでありますけれども、四次防以降になれば他国は脅威を感ずる。私はそういうふうに思いますし、またそういう報道も実は共産圏でもされておりますよ。ですからやはり、憲法上の問題として兵器でいえばこういう兵器はだめなのだ、また一つの武力集団といいますか、このくらいならばこうなんだという一つのパターンというものを教えてほしい、こういうふうに思うのですよ。もう一歩進めて答弁してください。
  176. 高辻正巳

    高辻政府委員 御質問の問題、これはいままでに何べんとなく出て、さらにあらためていまお尋ねでございますことは、つまりいままでの答弁というのが明確でないということのようでございますが、兵器の種類をあげて言えとおっしゃいますので例示でも申し上げる以外に手はないのでありますが、たとえば核兵器といっても、これはいろいろあるのかもしれませんが、いわゆる水爆とかそういうようなもの、敵国の都市の爆撃に用いる壊滅的打撃を与えるための核兵器みたいなものは、これは当然先ほどから申し上げ趣旨からいって許されないことだと思います。いいほうの例はこれはみんな一々あげる必要はないと思いますが、さてそれでは、すべて兵器を私知っているわけでないものですから、だめな兵器を全部あげろといっても、これは私に対しては無理な注文ではないかと思いますが、要はやはり考え方の基本としては、先ほど申し上げたような理論の筋というものが問題なんで、そういうものをわきまえて新防衛計画でも、やはりそういう線に沿った計画ができているに違いないと私は確信しております。
  177. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう少し前向きで答弁願いたいんですがね。要するに現在、五次防までいろいろ長期展望として考えておりますね。大体それが上限のような発言も防衛庁長官はしておるわけですね。大体日本の防衛力はやはり限界がある。これにもありますが、それは数字的にも、大体十年間の警備目標が達成すればそれが限界なんだというようなことが書いてあるわけでありますけれども、じゃそれ以上のことをもう一歩聞きますけれども、この防衛庁でいっているような、それは限界のようなことがここに書いてありますけれども長官もそのとおりに思うのか、あるいはいま言った核兵器だとかあるいはその攻撃的なものを持たなければ、もっともっと防衛力を持っても憲法に違反しないのか、この点はいかがですか。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私らがいままで申し上げてきましたのは、われわれ防衛庁側の整備目標、十年くらいでこの程度、これで次の新防衛力整備計画ではそれの七、八割ぐらいまではまいります。そういうわけで、われわれ防衛庁側の行政目標としての整備目標を言ったので、限界問題はまた別で、憲法論やその他が出てくるだろうと私は思います。いずれにせよ自衛権範囲内で、必要最小限度自衛措置としての防衛力という範囲を出でないようにわれわれは戒心していかなければならないと思っております。この程度のものはもちろん十分憲法範囲内であると私らは確信しております。
  179. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この防衛力整備の長期目標、三番ですね。それに「防衛力は本来、国際情勢の推移、科学技術の進歩などの要件の変動に左右されるものであるから、その整備について長期的な目標を数量的に表現することはむずかしいが、半面、わが国防衛力の整備に当たっては、他の国策との調和が重要であるほか、国民世論、財政経済など、種々の要素を十分考慮する必要があり、さらにまた安全保障において非軍事的要素の比重が高まっている客観的情勢にかんがみると、わが国の安全保障において防衛力の果たすべき役割には限界がある。」、こういうふうにはっきりいっているわけですが、この点について防衛庁としては、こういう中で一つの限界を見ているようですが、法制局長官考えは同じか。
  180. 高辻正巳

    高辻政府委員 元来私は、国際紛争を解決する手段としては平和的手段によるべきであるということは、憲法が命ずるところでもありますし、それは当然のことだと思いますが、この自衛力を保持するというのは、何といっても外国からの武力攻撃というのが前提でございます。その武力攻撃の様相というものをはたしてどういうふうに考えたらいいものか、これは私は何といってもしろうとでございますので、それをはっきり申し上げられませんが、専門当局である防衛庁がこういう考えを持っていることについては、私もおそらくそうであろうというふうに思います。
  181. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それをいいますと、いろいろまた議論がかみ合いませんし、やはりそういうことも法制局としてはもう少し調査をして、日本の兵器の能力とか性能とか、やはり武器の種類ぐらいはよく知った上で、少なくとも平和憲法のもとではこういうものは持たないのだ、持ってはいけないのだというくらいな前向きな見解を出すべきじゃないかと思うのですよ。たとえば、オーストリアという国は中立を宣言していますよ。憲法においても潜水艦は持たない、三十キロ以上飛ぶたまは持たない、いろんな制約を明確にしておりますね。ですから、わが国においても、たとえ憲法においてそういった具体的なものはきめはないとしても、やはり戦力保持の精神というのは非常に大事なことでありますし、平和憲法である以上は、法的な見解、こういうものはいけないのだという例示もして見解を出すべきじゃないか、こういうように私は思うのです。それがやはり一つは今後の日本の防衛に対する憲法の上限になるのじゃないか。それを客観性だとか、国際環境の変化によってだとか、世論の動向によって考えていくということは、無限に防衛力がふくらんでいくということも考えられますし、いかにもそれでは軍事力偏重です。やはり一番大事なことは非軍事的努力ですよ。外交政策ですよ。それから、いろんな国との友好政策といいますか、現在の核戦略時代からいいましても、現在はいわば勝っても負けても核戦争が起きれば全部が滅びるという時代ですから、そういった点を明確にする必要があるのじゃないか、そう思うのですが、その点どう思いますか。
  182. 高辻正巳

    高辻政府委員 憲法九条をもとにしてのいろいろな御配慮はよくわかります。防衛庁に限りませんが、われわれも、たとえば憲法上疑義があると思われるような節々の問題については、実は政府部内ではよく連絡をしてくれております。したがって、そういう場合には、われわれはわれわれとして信ずるところに従ってわれわれの考えを示すということはあるわけでありますが、われわれのほうからこの兵器をいろいろ勉強をして、そうしてこれを分類をして、憲法上ここまでであるというようなことを私どもが言うには、私どもは必ずしも適当でない。やはり専門当局からの相談といいますか、申し出に従ってわれわれがわれわれの憲法上正しいと思うところに従ってこれに判断を与えるというのがいままでの方法でもありますし、また今後もそれでいいのではないか。ただ、おっしゃるような意味自衛力の限界問題についてはよくよく考えていかなければいけないという御趣旨はよくわかります。しかし、個別に法制局がそういう兵器を研究して、これを分類して示すということはどうも、せっかくの御提言でありますけれども、われわれは必ずしも適当でないのではないか、こう考えるわけであります。
  183. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 法制局は、もう少し国民立場から見て、そんな一つ法律解釈を、理論のみに走って実態を無視するようなやり方をとってはいけない。私は政治的な発言をしろとか、政策的に言及しろと言っているのじゃないのです。やはりり何らかの形で防衛力の限界、または第九条においては、こういうものはこういう規模でいくべきである、たとえば理論づけであっても、もう少しその点については明確にすべきだと思うのですよ。はっきり他国に脅威を与えるようなものはいけないのだ、たとえばそういうふうにいわれておりますね。そうしますと、他国に脅威を与えないというものはどういうような防衛力までいうのか。それはやはりいろんな認識の問題であると思いますけれども、やはり極端な一つの整備計画、さらにこのことによっていろいろな事件が発生するような、そのことによって国際環境というものに影響を与えて、またそのことによって非常に向こうに不安を与え、二国間においてトラブルが起きるとか、または相手がいろいろな面で装備を強化するというような行き方も考えられるわけですね。ですから、そういうことについてはやはり憲法上許されるべき防衛力の限界は明確にすべきである。そのことを私は希望しておきます。  長官に伺いたいのですが、この防衛力の整備計画の中で「所要経費の面において他の重要な国家諸施策との調和に留意した。」、こういうことなんですが、ただ現状はどうかといいますと、今回の三次防の一番最後は一七・八%の伸び率がありますね。そして諸施策というのは何かというと、社会保障であるとか、または福祉問題を頭に置いての発言だろうと思う。しかし現在の社会福祉関係の伸びは一四%くらいですよ。だから言うことと実際は違うわけです。しかも四次防になりますと、やはり一七%以上の伸び率でいかなければ、その金額に到達しない。そういう現実があるわけですが、この点については実態と違うのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 たしかことしの予算で社会保障関係が一兆四千億から一兆五千億近く、防衛費は七千億円くらいであったと思います。それで経済社会発展計画の中におきまする数値を見ますと、社会保障関係は、医療費の問題であるとかあるいは児童手当であるとか、これを数えるとかなりふえるのではないかという感じがいたします。絶対的な金額との比較をいたしてみますと、そうバランスがくずれるものではないだろう、私らは一応そういうふうに考えております。
  185. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現実はくずれているわけですがね。ですから、一つの構想、一つの行き方というものが防衛庁にはあるわけですから、われわれはそれについて賛成はしかねますけれども、ただ問題は、ことしの予算が七千億円といっても、債務負担行為を入れれば一兆円をこえているわけです。いわゆる兵器の購入については何年もかかりますし、債務負担行為を加えますと、一兆円をこえることは事実です。そういう社会保障なんかとのバランスは、実際には保たれていない、こういう現実があるわけですね。だから今後はそういった点も大いに頭に入れて考えるべきではないか、私はそう思います。  それから、この「基本構想」の中で質問したいと思うのですが、「わが国周辺において必要な限度における航空優勢、制海を確保しつつ」というふうにあるのですが、これはどういうことなのか、具体的に伺いたいのです。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一つは日本が侵略されるという場合に、日本の政経中枢だとかあるいは防護主要点とかというものが空襲でやられるということがあるわけです。そういう場合に、上空に来て爆撃されてから対策を講ずるというのではおそいのであって、ある程度の距離からもうすでに始動して、そこからは入ってこれないような措置を講ずることが、政経中枢やあるいは防護用地を確保するために必要でもあります。そういう意味もありますし、それからもし直接侵略で船団ないし航空機で侵略が行なわれる、空挺師団等によってそういうことが行なわれるというようなことを考えてみましても、これが上陸地に近接する前にそれを撃破しなければ所期の目的は達成いたしません。そういう意味において、日本の周辺、本土周辺の必要限度範囲内において航空優勢ないし海上優勢を確保しておくということは、そのときそのときの事態によって必要になるだろうと思う、そういう意味でございます。
  187. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いろいろ疑問はありますが、たとえば航空優勢、いわば日本の国が爆撃を受けるというひとつ問題があった場合、いままではたてとやりの関係でいいますと、たてが航空自衛隊、それからやりが第五空軍、こういうことだったのですが、これが第五空軍がだいぶ引き揚げまして、米国に帰ったり沖繩に行ったりするわけでありますが、その場合日本は、いままでのそういう航空の優勢を保つために両方の役割りを果たすということですね。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本は依然としてたてでありまして、やりの機能は米空軍等に期待しておるわけであります。
  189. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは第五空軍がともに日本のそれぞれの基地にいるならばですが、たとえば九州の築城基地ですか、あの辺でそういう事態が発生してきたときには、第五空軍はそれではどこから飛んできてやりの役割りを果たすのか、こういう問題が一つありますね。それからまあ千歳には相当おりますけれども、それも引き揚げますからね。そういう日本の地域から考えても実際にそれは不可能だと思うのですね。実際にたてとやりはやはり日本でやるんじゃないかというふうに私は思うわけです。そのことについていろいろ問題もありますけれども、どこまでもたて一本でいくということで日本の国を守ることができるかどうかですよ。優勢を保てるかどうか、こういう問題はあるんじゃないでしょうかね。  それから、「制海を確保しつつ」ということなんですが、これは領海を守るということですね。領土、領海を守るということなんですが、これは防衛局長に聞きたいんですけれども、具体的に現在の兵器、現在の周辺国にある脅威または兵力、いろいろありますけれども、その場合技術的にいって、日本の領海、領空を守る現在の海上自衛隊で、この範囲は領海何マイルぐらいなのか、その辺いかがですか。
  190. 久保卓也

    ○久保政府委員 あとのほうの御質問お答えいたしますと、守るということの内容がたいへんむずかしいわけで、うまく答えられないと思います。ただし、日本本土の周辺百マイル前後というものは比較的守りやすい。しかし攻めるほうは兵力を集中できるわけですから、わがほうがかりにその動向を察知しないと非常に守りにくい面も出てまいる。それからまた百マイルから以遠になればなるほど、これはわがほうの兵力が分散いたしますし、敵は所望の地域に出撃しやすいですから、これはわがほうも比較的守りにくい分野である。そこで結局それを守る度合いというものをますます高めるためには、やはりどうしても数量よりもその兵力量の中での質の高度化ということが重要になってくるというわけであります。
  191. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ぼくが聞いているのはそうじゃなくて、海上自衛隊、これは航空自衛隊も含みますけれどもわが国の領海、領空あるいは領土を守るためには、現在の通常兵器、まあ核兵器ではどうにもなりませんけれども、通常兵器においては領海から何マイルあるいは何海里先で押えれば、この領海、領空を守ることができるという、そういう一つの純軍事的な問題をいま私は聞いたわけです。わかりますか。
  192. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまのお話は、陸、海、空によってちょっと違ってまいります。たとえば陸の場合には、非常に本土の周辺、きわめて間近なところで敵を撃滅できればそれで足りる。空の場合には、これはレーダーのカバレージ、レーダーの覆域の関係もありますので、おそらく百マイル以遠、百マイル前後から先のところでつかまえる必要があるでしょう。それから海の場合には、これは本土防衛のみならず商船隊と申しますか、海上の保護ということになりますので、この点が相当、周辺海域という場合にほぼ千マイルぐらいの海域が考えられると思いますけれども、その周辺について航行の安全を確保しようということでございます。しかしその中でどの程度守れるかということになりますと、これは兵力量と質の問題になるということになります。
  193. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その場合の今度は日米関係、いまは大体守れる範囲を聞いたわけですけれども、それは質の問題と量の問題といろいろあると思います。五千マイルという非常にまた遠い距離をいま局長があげられましたが……。
  194. 久保卓也

    ○久保政府委員 千マイルです。
  195. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 千マイルで一応軍事的には領海、領空を守れる一つの技術的な問題だ、こういうわけですね。
  196. 久保卓也

    ○久保政府委員 領海、領空を守るという場合には、陸と空の場合には先ほど申し上げたようなことなんですけれども、海上の場合に、直接に領海、領空を守るのは何百マイル以遠である必要はございません。しかし海上交通、遠方から物資を運ぶ船舶を保護するということになりますると、数十マイルということでは足りないということを申し上げたわけであります。
  197. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 何マイルですか。
  198. 久保卓也

    ○久保政府委員 それは、一応われわれのほうの周辺海域というのが、東が南鳥島、南が沖の鳥島、西が南西諸島といったような海域、これを周辺海域というふうに国会でも再々答弁されておりますが、それはほぼ本土からいいますと千マイル近く、だと思います。
  199. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 と言いますと、かつて防衛庁長官答弁されましたが、わが国を防衛する限界というのは、わが国の領海、領空を守るところが限界として必要だというふうに長官答弁しておりますね。ですから大体、では海上も千マイル程度、そのぐらいで考えているということになるわけですか。
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 海上の場合は、万一の際に潜水艦の跳梁を許さないという区域という意味であります。大体どの程度であるかということは、そのときの相手の情勢、局面の様相等によって個々具体的に判断しなければならぬと思います。つまり自衛権範囲内においてそれが必要最小限のものであるかという判定は、相手方の出方にもよるわけでありますから、そういう意味において、機械的に数字を出すことはできないと私は思います。そういう感覚に立って、本土を中心にそれを守るに必要な相当のものはどの程度かという具体的ケースの判定としてお考え願いたいと思うのであります。
  201. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そういう軍事的な問題が私は非常に重要だと思いますし、またそれを知らないと——どの程度の船をつくりどの程度の足の長い飛行機あるいはまたヘリコプターとかいうような積算の基礎にもなると思うのですね。いままではそういった点が何回聞いても明らかにされてきていない中で、いまこの問題を通じて伺ったわけですが、何か久保局長に聞くとわかるんだけれども長官に聞くとわからなくなってしまうような、敵の出方によってきまるというようなことになりますと、やはり今度は、海、空が現在相当に力を入れておりますけれども、そういう一つのものがないと、どこまでいくのかもまたわからないわけですよ。ですから実際に、では海上自衛隊においてどういう訓練をして、どういう一つの想定でまた装備計画を考えているのかということも、全然わからぬわけですけれども、しかも私が一番次に聞きたいと思っている点は、安保条約によって、この中にもありますが、第一義的には通常兵器においてわが陸、海、空の自衛隊がやるのだ、そしてそのあとアメリカの核またはアメリカのやりに依存する、こういうふうにいわれているわけでありますけれども、その場合、じゃあ日米の防衛分担はどうなるのかということです。いつか長官がそのことについても作業中であるというお話を聞いておりますが、その後その作業の進行状況はどうなっておるか。さらに私たちは、今度の自動延長とか、またニクソン・ドクトリンによってだいぶアメリカの極東における戦略構想が変わるわけですが、それに基づいてわが国との日米防衛の分担も変わるのじゃないか、こういうふうにも考えているわけですが、それらの点も含めて防衛庁長官答弁を願います。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛分担は前から言っておりますように、やりは大体においてアメリカ、たては日本、そういう構想に基づいておのおの独自の作戦指揮系統を使って行なう。その間に連絡協調を密にする。そういう基本思想であります。それから前にも申し上げましたように、核とか攻撃的兵器の部分はアメリカに依存する。日本の場合は、本土防衛を中心に必要な自衛権範囲内における力をたくわえ、かつ運用を行なう。そういう基本方針にのっとっておりますから、やはり本土周辺という形になります。それが防衛分担ということであるだろうと思います。具体的な場合に、じゃあ何マイルとか何キロとかいう御質問が出ますと、それはそのときの相手の兵力、客観情勢等に応じて伸縮されるのであって、われわれが過剰介入をしないように、過剰防衛をしないようにやる必要もあります。でありますから、機械的に一律にきめるわけにはいかない。そのときの相手方の出方によってわがほうの必要とする力も運用もきまってくると思うのであります。
  203. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その日本の防衛は、第一義的には、アメリカの応援、米軍の応援を得るまではこちらでやるという、何といいますか、弾薬の備蓄量だとか、あるいはまた現在の兵器の形態といいますか、あるいはまた現在の装備の実態といいますか、それは今度の四次防、新防衛力整備計画で十分に自衛隊の規模が完成されると、こういうことですか。
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大体われわれが一応この限度考えておりまするものの七、八割程度が概して言えば整備されるであろう。これは五兆一千九百五十億の予算をそのまま認められればという意味であります。
  205. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 弾薬の備蓄量というのは大体どのくらい考えているわけですか。
  206. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大体一カ月くらいはささえられる、そういうことを頭に置いてあります。
  207. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それに基づいて米軍との協定なり、分担、あるいはまたそういうことについては具体的に取りきめがあるわけですか。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 具体的に取りきめはありません。そういうことが起きたときに、これはお互いにすぐ連絡し合って、防衛区分、分担をきめる、そういうことになると思います。
  209. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在日米間において、一年に何回となく日米の合同演習がありますが、それはその法的根拠といいますか、どういったものに基づいて展開されているわけですか。
  210. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは安保条約による協力だろうと思いますが、正確には政府委員をして答弁せしめます。  それから共同演習といいましても、いま行なわれておりますのは、標的を向こうが出してくれて、こちらがそれを追っかけてみる、そういう程度のもので、いわゆるジョイントオペレーションというようなものではないのであります。
  211. 久保卓也

    ○久保政府委員 安保条約そのものに書いてあるわけではございませんけれども、その精神に従って共同訓練を行なっておるということのようであります。
  212. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 制服同士で話し合い、あるいはまた軍人さん同士において取りきめが行なわれている、あるいは全然ないということはまたおかしいと思うわけですね。安保条約がある。ただ期待するなんというような、そんな行き方といいますか、そういうものは私は国際条約の性格からいってもないと思うのです。そういう点、もしあるとすればお教えいただきたい。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 実際ありません。私もあるのじゃないかと思ってよく調べてみましたらありません。やはりこれは額面どおり両国の指揮系統に従って両国が行なうのです。もっとも制服レベルにおけるいろいろな連絡とか情報交換というものはよくやっております。しかし作戦区分とかなんとかというようなものは具体的にはございません。
  214. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はそういう点が非常に、与党の皆さんの立場に立っても何かすっきりしないものを感ずるわけです。  ただもう一つ言いたいことは、核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存している、ことばの上ではわかるわけですけれども、ではどういう体制で日本は守られているのかということです。この間もロサンゼルスからバンデンバーグ基地に行って、ミニットマンであるとか、タイタン2型とか、すごい大陸間弾道弾とかICBMを見てまいりました。それが何千発もあるわけです。そういうものとの、たとえば友好国に対する取りきめはあるのかというと、あるというのです。私もいままでないと聞いておったわけです。しかしわれわれの答弁する範囲ではないと、そのいわば案内してくれた将校さんは言うわけです。日本に帰って聞いてみると、またわれわれも前々からそういうことについてはあるのじゃないかと聞いたら、ない。そういう意味で実は聞いたわけですけれども、そういう点はあるということですか。その点どうなんですか。
  215. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本に関してはありません。しかしNATOとかあるいはほかの諸国に対してはあるかもしれません。
  216. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ハワイに行ってもやはり同じような質問を私はしました。それについては非常に重大なことであるので、文書でくれ、それをよく見た上で答弁する、こういうわけなんです。実際に私たちがいつも思う点は、あってはなりませんけれども、米軍の核抑止力ということについて、日本はでは米国のどの艦隊、またどの核またはどの基地から守られているのかということについては全くわからぬわけですよ。一説によりますとポラリス潜水艦が極東には七隻くらい配備されておって、しかもグアム島に基地があって、それが一たん有事のときには動くのだとか、いろいろなうわさは聞いております。そういったことが軍事機密であるならこれはまた聞いてもわからぬでしょうと思いますが、そういったことを長官は知っているわけですか。
  217. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 極東配備の米国の空軍、海軍あるいは海兵隊というものの配置は知っております。おそらく有事になれば、そういう配備されているものは極東を担当しているわけでありますから、そういうものが適宜向こうの中枢部局からの命令によって動いてくるものだろうと思います。
  218. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官は、そういう核戦略体制というものをごらんになりましたか。核兵器を見られましたか。
  219. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 見ません。
  220. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それが米国に対して非常に不信を大きくするのです。核兵器なんというのは世界にあっても二十数年前にできたものですよ。今回も、核兵器を見せろと言ったら、ないと言って断わられましたけれども、核の戦略また核抑止力というものについては、少なくとも防衛庁長官、国の軍事専門家あるいは最高のレベルの皆さんが実際にそういったものを見、あるいはまた実態を知り、そしてこうなっているのだということ、また核というものは非常にこわいものなんだ——本や軍事評論家がいろいろ言ったこと、またアメリカの一片の情報によって、それが守られているとかあるいはそういう戦略体制にあるから安心だなんという、そういう考え方でいること自体問題だといえば問題じゃないか。少なくとも長官あたりは、先ほどの答弁にもありましたようにマクマホン法というのは、核兵器がそこにあるとか、あるいはまたいろいろな情報を流した者については非常に重い罪になりますけれども、日本の国は適用されないというのですから、日本列島は安保条約によって米国の核戦略体系の中にこういう形にされているのだ、みんなの前では言えないけれども私は見てきたというぐらいの認識を、もう少し戦略についても持つべきじゃないか。先ほど官房副長官から、原子力潜水艦のことについても非常に信頼しているのだという話を聞きましたけれども、お互いに信頼し合うということが外交関係かもしれませんが、少なくとも事防衛に関して軍事的な専門家というのは、そうであってはならないと思うのですね。私も数年間防衛を担当しておりますが、実は核というものをどうしても見たい、またはもう少し核のことについて知りたい、いつもそう思っております。そのぐらいの気概があってもいいのじゃないですか、長官
  221. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 核兵器及び核兵器の運用体系についてはよく勉強しております。これは大事なことでありますから一生懸命やっておりますが、現物を見たことはまだございません。おそらく、見せてくれと言っても外国人には見せないのじゃないかと私は思います。またうっかり私が見たりなんかすると、あいつはつくりたいんだろうとすぐまた言われますから、あまり物騒なものには近づかないほうがいいとも思っております。
  222. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 兵器の国産化の問題でありますが、先ほど大出委員からもいろいろ質問がありました。私は率直に申し上げまして、日本の現在の工業力、また日本のいわば高度な技術をもってしても、国産化したとしても現在の値段よりは高いのじゃないか、特に国産化の問題については防衛予算の半分近くを使うようになっておりますので、兵器を国産する場合にはもう少し防衛庁が専門的に検討すべきではないか、こう思いますが、その点長官いかがですか。
  223. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はやはり国産自主開発という方針が正しいと思いまして、それで調達方針でも昨年そういう基本的な方向をきめましたし、またそれを実施しているわけであります。ただしかし、何でも国産自主がいいというわけではないので、それは価格や性能や取得時期その他諸般の影響等も考えてきめなければならぬことで、盲目的に国産自主開発を推進しようとは思っておりません。
  224. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在航空自衛隊一つの例を申し上げますと、104−Jというのは当初が四億円、そして五億円、六億円と上がっておりますね。ファントムは二十三億円、またそれ以上であろうといわれております。ファントムについてはずいぶん議論もされましたから避けますが、たとえば戦車の場合を見てまいりますと、現在の六一型戦車というのは約七千万円ですが、新型戦車になりますと、それが最初は一億八千万円ぐらいが二億三千万円ぐらいになるのじゃないか、こういうふうにいわれているわけです。聞くところによりますと、その戦車というのは英国から砲身を買う、水中でももぐれるような戦車である、こういうことでありますが、六一式戦車より性能は抜群にいいというところはどういうところなのか、まず伺いたいと思います。
  225. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 六一戦車と比べますと、大きいと申しますよりは搭載戦車砲が、六一が九十ミリでございますが、いま開発しております新型戦車は百五ミリでございます。六一の経験から新しいいろいろな要素を組み込んでおります。たとえば戦車が走りながら姿勢を制御できるし、また射撃において姿勢を変えられるという装置になっております。その他射撃装置とかあるいは目標をとらまえます装置、暗視装置とかいろいろなものがございますが、そういうものなりFCSの性能なりにつきまして新しい要素を組み込んでおります。大きいところはスピードが少し増している問題、百五ミリを積める問題と、走行中または射撃中に姿勢を制御できるという点でございます。また多少のものは水中にも入れるように気密性を持たせまして、シュノーケル方式を採用して浅い川を渡る機能も持たせております。
  226. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私が兵器を考えた場合に、どんどんいいものはできますけれども、それをチェックするのが装備局長でありますし、また日本の国情を考えて製作にあたっては指導すべきじゃないかと思うのです。日本の川で水をもぐって行くなんというところがありますか。日本の川はヘドロか何か知りませんけれども、もぐったら出てこれないことが多い。そんないい戦車なんか必要ないと思うのです。砲が少なければ砲だけでいいじゃないですか。しかも報道によりますと、こんな戦車は世界で一番高いというのです。イタリアなんかでつくっている戦車でも、日本と同じような開発だけれども、それでも安いというのです。たとえば防衛庁が今度の新型の戦車は非常にいいと言うけれども、軍事専門家から見ればそんなものは世界から見ればたいしたことはない、こういう見方が一致しているというのですね。同じ百五ミリ砲を装備したスイスのPZですか、これが一億四千万、それからスウェーデンのS型、これは一億三千万、またフランスのAMX30、西ドイツのレオパルド改良型、これが皆百五ミリ砲を備えておりますけれども、一億六千万、西ドイツなんかではアメリカと共同で進めた重戦車のMBT型という戦車が、開発価格が二億円になるということで、それがわかって中止になった、こういうこともあるわけです。しかもスイスのPZ型ですか、これは七百台の製造計画だ、だから日本が数百台を目標にしているわけですから、そういうのと比べても非常に高いということになるのですが、その点についてどう思いますか。
  227. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 現在、百五ミリを積んでおります各国の戦車がございます。先生御指摘のように、一億一千万くらいから一億七千万くらいまで、先生御指摘のスウェーデンのS型というのは、われわれの調査では一億七千万となっております。大体これは在来型の戦車でございます。これに対して新しい研究成果を積んだものでいま開発しておりますのが、日本の新型戦車と、先生御指摘の米、英、独の共同開発しましたMBT70でございます。MBT70は、われわれの調査では大体二億八千万くらいを予定していると聞いております。これが高いということで問題になったことは聞いております。われわれも、現在の戦車が、六一は約七千万でございまして、それを基礎にいたしまして試算をしまして、現在の新型戦車の取得年次を考えまして、大体五十年か五十一年ということを中心にいたしまして、いまの物価あるいは賃金の上昇関係考えまして、いまの四次防には二億円弱の試算をしております。そういうことで、現在先生御指摘のような二億何千万になるのじゃないかというような新聞の報道でございますが、われわれの現在の四次防のそういう計画は、大体四次防期間中にかかりまして、入手するのがやはり後年度になります。大体いまから七、八年を考えた価格を考えなければなりません。そういう前提で、一定の基準で価格を組んでおります。いま新聞に報道されましたのは、たぶん民間企業が自分の去年なりことしなりの現実の賃金アップなり、現実に見た価格なりを見て試算したものだと思いますけれども、われわれとしましては一定の基準で組んでいまして、この方式で今後の価格折衝をするという考えでございます。
  228. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 非常に兵器は高いわけでありますが、それが最初防衛庁が考えているよりもみんな相当な増額をしているわけですね。ですから、私はこの国産化についてはもっともっと慎重に検討しなければならぬと思います。  それでもう一つ伺いたいのは、早期警戒レーダー機でありますが、これは低空から日本に侵入する飛行機を捕捉していくということでありますが、軍事的に見た場合、そういう低空で来るということを捕捉するのに海上自衛隊のレーダー、あるいはまた現在の二十四カ所にあるレーダーサイトの死角のところに現在いるわけですね。あるいはまた、そのことによってそういったことができるんじゃないか、ある専門家で言う人がいるわけです。そしてまた早期警戒レーダー機がもし出れば、アメリカとの、いわば日米の情報収集でどういう役割りを持つのか、たとえばEC旧型の情報収集機というのがありますね。あれとの関連はどういうふうに考えておるのか、その点わかったら。
  229. 久保卓也

    ○久保政府委員 その点は庁内でも一応検討されているところであります。つまり船にレーダーを載せて、低空の航空機が探知できないかということでありますが、AEWを、たとえば日本周辺でありますが、一つの例として日本海側に配置いたしますと、隻数は忘れましたが、船のレーダーですと、当然地球は丸いわけですからレーダーの探知距離が短いわけです。数十マイル以内になります。そうしますと、飛行機を上空に浮かべるのに対しまして、二列に船を配置しなければいけません。おそらく二十隻前後であるかと思いますけれども、そういった船を配置する。しかもその場合に耐波性の関係がある。つまりレーダーの安定性の関係で波の動揺に耐えるためには相当大型でなければいけないということになりますと、かりにたとえば艦艇にいたしますると経費が非常に高くなるし、艦艇要員というものが非常に人数がふえてくる。かりに一般の商船でありますと、日本の防衛のために民間人を動員するということも、いざという場合にどうするかは別としまして、少なくとも計画としては好ましくないということになります。それともう一つは、通常の場合、艦船からレーダーで把握いたしましても誘導するということはできません。AEWの場合は音声ではありますけれども、若干飛行機を誘導すること、つまり敵の飛行機に対して会敵させることは可能ですが、船の場合にはそれができない。もう一つ致命的なことは、単に相手の飛行機を見つけて知らせる、いわゆる敵艦見ゆ式の通報というものは比較的やりやすいわけでありますが、高度なり方位なりを正確に把握しにくいということ。最後に問題になりますのは通信の問題で、相手が数機程度の場合はよろしいのですけれども、十数機以上の非常に多くのものが来ました場合には、これは無線で連絡するわけですけれども、通報が追いつかないという難点があります。  そういうことで、どういう面から考えましても、船を多数浮かべて、そうして相手方を捕捉し通報し、また場合によっては要撃させることは不可能であるということになります。  まだ難点がありますのは、残存性ということで、日本海において船を浮かべることはたいへん弱い、足がおそいわけでありますからたいへん攻撃されやすいわけであります。そういうことから考えましても、専門的に申せば、そういうような構想は成り立たないということが言えようかと思います。
  230. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 結局、AEWですか、これは非常に装備や何かの関係で一機が八十億円もするんじゃないかといわれているわけですね。しかもそれを常時日本の周辺に配備するとすれば、十数機というけれども予備を入れれば二十機ぐらい必要であるということも専門家筋ではいわれているわけですね。そういうことをする必要、またそうしなければならないという何かが現在あるかどうかということですね。二十数年間そんなことしないできたわけでありますけれども、いまここで急にそういったことをやるという必要がどこにあるのかということですが……。
  231. 久保卓也

    ○久保政府委員 低空攻撃に対処しなければならないということは、二次防当時からもいわれておったことですが、もっと具体的になりましたのは三次防になってからでありまして、そのためにAEW機についての開発でありましたか、配慮でありましたか、一言触れられてあると思います。問題は、航空機が進歩いたしてまいりますと、航空機の速度というものは、御承知のように高高度で通常一番速い。低高度五千フィート以下になりますと、非常な燃料消費その他もありまして、速度が非常に落ちる。つまり飛行機の長所というものをなくすわけです。ところが、飛行機の進歩によりまして、五千フィート以下でもマッハの速度が出るようになってくる、そういうような飛行機が非常にふえてまいりますと、低高度攻撃というものが常識的になってまいります。ですから二次防あるいは三次防当初に比べまして、日本周辺の航空機の質の高度化によりまして、低空よりする攻撃の危険性というものが非常に出てまいります。高高度であれば通常のレーダーでとらえられまするけれども、低高度であると非常に近くでなければとらえられない。近くでとらえても、今度は要撃機が発進して会敵することができなくなる。したがってそういうふうな攻撃を日本本土は受けるということになるわけです。ですから、われわれが防衛力の整備を周辺諸国の兵力の質、能力に応じて長期的に整備していくという場合には、やはりそれに応じて低空能力というものもつけてまいらなければいけない。しかし長官も先ほど申されましたように、さしあたってここ数年のうちにどうこうということはあるまいということで、これはまあ開発して国産する、その後に装備を考えるということで間に合うだろうというふうなことを考えて計画を進めているわけであります。
  232. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は軍事的にそういう一つのものを考えることについては、まあ一面から、ある意味でいうとわかるわけですけれども、それ以外の方法はないかということですよ。たとえば米軍ではトランシット、これは静止衛星ですが上げておりますね。それで地上にある何か十センチぐらいのものまで捕捉する、あるいはまた非常にレーダーとかいろんな面でそれを使って、静止衛星を上げて監視しているという話もあるわけですよ。わが国でも人工衛星を上げているような時代でもありますし、そういうこととの経済的な問題、そういうことも検討したことがあるのですか。
  233. 久保卓也

    ○久保政府委員 まずレーダーの関係でいいますと、オーバーホライズンのレーダーがあります。これは長く前から技術研究本部で研究をしておりますが、たいへんむずかしい問題で、おそらく実現するとして八〇年代の問題であろうというわけですが、しかもこの場合の目標というものは非常に大きな目標、たとえば数十機以上の大編隊の場合に捕捉できるであろうということで、いまの航空攻撃というのは二機ないし数機程度の範囲での攻撃というのが常識でありますから、かりにオーバーホライズンができましても、たとえば大陸のだいぶ奥のほうにある大編隊をつかまえるという戦略的な用途には使えまするけれども、日本本土を攻撃するであろう戦術的な用途には使いにくいというのが結論になると思います。  それから衛星の面で申しますと、私が聞いている範囲では、もちろん衛星というのは地球の周辺を回っているわけで、一時間半でありますから、そうするとある地点に来るのに一時間半、まあ無数にこれを飛ばせば別かもしれませんが、その場合に停止をしている衛星であれば比較的常時監視しているということになるかもしれません。ですがこの場合も、私の知っている範囲では、衛星が停止するのは赤道上であるというふうに聞いておりますので、日本の上空の場合には静止衛星を置くことは困難なのではなかろうか。そうすると、やはり衛星ということになるわけですけれども、現在の技術の度合いでは、衛星によって、たとえばICBMの発射を探知するということは可能かもしれませんけれども、局地的な航空機を衛星でもってとらえて通報する、しかもかりにそれをポイントをつかまえ得ましても、高度をつかまえられるはずはございません、上から見ているわけですから。したがって、いわんや飛行機を誘導して会敵させるということはやはり不可能であるということで、どうも技術的に見て、衛星でもっていまのAEWにかえることはまず不可能であろうし、かりにまたそうであっても、経費的にこれはとても負担にたえるものではない。アメリカでもそういった研究というものは、いまのところそういう方向では進められておりませんから、アメリカから情報を得られるわけではない。先ほどEC121のお話も出ましたが、これは一般の情報収集というものでありまして、航空機の行動を探知をして、少なくとも要撃のためのものであるというふうにはこれは考えられない。しかも日本の防空を担当するのはやはり日本でなければなりませんから、そういった専守防衛の分野では最小限度わがほうで機能を持つべきであろう、そういうふうに考えます。
  234. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ちょっと衛星については防衛局長自信がないようですが、必ずしも赤道上にしか上がらぬということじゃないですよ。幾つかトランシット衛星というものが、軍事衛星が上がっていますね。それでもうすでに実用化されてソ連もアメリカもやっておるわけですよ。日本も静止衛星を上げていろいろな電波をとらえてやろうという一つの構想もあるわけですよ。ですから、それをいろいろ科学の進歩によりまして、高度でもつかまえるまたは誘導することもできるような、それは私は将来できるのじゃないかと思うのです。だから、いずれにしても国民の血税を、非常に脅威があるとか、あるいはまた国際情勢が不穏である、まあ臨戦体制である、平時ではないという条件のもとで考えるというならば、それはそういうことも考えられるかもしれませんけれども、いままでそういうことがなかった。しかもやることによって、むしろ共産圏が、あるいはまた周辺諸国が脅威に思うような、そういうものは私はやるべきでない、こういうふうに考えるわけです。  最近、特にアメリカの下院外交委員会のアジア特別調査団が報告した報告書、ごらんになったと思いますが、その報告書を読みますと、日本が四次防とかあるいは新防衛整備計画とかいうものによってどんどん大きくなることについて、彼らはこう言っておるのです。「軍事的に日本は、再軍備と大東亜共栄圏復活に大きな努力を払うグループがあり、再軍備には憲法上の制約があるけれども、拡張解釈の可能性があるほか、核運搬手段のシステムをも」これは全体ではありませんが、そういったものをも「手に入れようとしており、日本の新軍国主義強調に対する懸念を裏づけている」、こういうふうに報告しているわけです。そして「われわれは、自分たちが目撃した新軍国主義に対する心からの危惧を抱いて日本を離れた」また「日本の再軍備は防衛の域をはるかに出ている」というものも出されているわけです。  防衛庁長官に伺いたいのですが、これは全く根拠がないとおっしゃるかもしれませんけれども、私たちは特にこの四次防の原案を見る限りにおいては、そういう調査団の意見を実感として感ずるわけでありますが、その点長官どう思いますか。
  235. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 アメリカの調査団の認識は誤解か、さもなければ調査不足だろうと私は思います。日本のどこに軍国主義があるのか、もっとでかい目で見てもらいたいと私は思うくらいであります。大体こういう憲法を持っている国は世界でほかにはないはずでありまして、原爆も持たず、また攻撃的兵器も持たず、そして国内には非常に強い平和思想があって、国会の厳重なコントロールのもとにいま防衛が運用されているという、こういう状態を見て、これを軍国主義であるというならば、軍国主義ということばの定義を変えなければいかぬだろうと私は思います。
  236. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 新軍国主義が復活する懸念がある、こういうふうなことを言っているわけですよ。長官答弁もわかりますが、実際現実の問題としては確かに四次防というのはすごい脅威といいますか、先ほど申し上げましたように世界でも七番目の軍事費を、絶対額を持つ国になるわけですし、むしろ世界は軍事費というのは削減されている、にもかかわらず、日本の軍事費というのは世界一高い伸び率を示しながら整備されている、こういう一つの現実があるわけです。  私はこれで質問を終わりますが、国民は、自分の血税で憲法のワク内だと言いながらも大きくなっていく、そういう現在の自衛隊のあり方を、心配はしてもこれでいいという人は少ないと思います。したがって、今回の四次防の原案については十分検討されて、そして、私たちが常に言っております、自衛権は必要でしょうけれども他国に脅威を与えない、そしてまた憲法のワク内において必要最小限度にしぼって、平和国家として今後は日本の防衛力を整備していく必要がある、私はそう希望を申し上げまして、質問を終わります。
  237. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる十日月曜日午前十時より公聴会公聴会終了後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会