運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-04-20 第65回国会 衆議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月二十日(火曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 鈴切 康雄君       伊藤宗一郎君   稻村左四郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       鯨岡 兵輔君    辻  寛一君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       三原 朝雄君    山口 敏夫君       上原 康助君  出席国務大臣         文 部 大 臣 坂田 道太君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君  出席政府委員         行政管理庁長官         官房審議官   浅古  迪君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         行政管理庁行政         監察局長    岡内  豊君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君         文部省体育局長 木田  宏君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         運輸省自動車局         業務部長    小林 正興君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   阿部 文男君    稻村左四郎君   中山 利生君     三原 朝雄君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     阿部 文男君   三原 朝雄君     中山 利生君     ————————————— 本日の会議に付した案件  許可認可等整理に関する法律案内閣提出  第九四号)  文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二一号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  許可認可等整理に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 道路運送法改正と言っていい数多くの問題が許認可整理という法案の中に入っているわけでありますが、この間、運輸大臣がお見えにならぬ席で業務部長さんにいろいろ承ったのでありますが、私は、道路運送事業をめぐる基本的なものの考え方に触れる基本的な問題であるにもかかわらず、これを許認可整理という形でお出しになるということはどうも筋違いではないかと思うわけでありまして、この間わずか四点ばかり御質問申し上げたのでありますが、実は、この通運事業法許認可等の問題を何で今度はお出しにならぬのかと聞いたら、これは通運事業あるいは道路運送事業等を含めて基本的な政策問題だから慎重にと考えて今回は遠慮した、こういうお話が出てまいりました。そうすると、今回の許認可のほうに入っている道路運送法改正に類する許認可の廃止は一体政策基本に触れないのかどうかという観点質問をずっと続けましたら、いずれもその基本に触れるというお話になった。そこで、行政管理庁長官がお見えでございましたから、行管のほうから大臣答弁をいただきたいと申し上げたら、これ以上の点については答弁をいたしかねる、それは運輸政策基本に触れるから。こうなると、いささか答弁の前後一致しない点があり過ぎまして、こういう形の法案出し方というのは、まずもってこれは筋が通らない。今回、ここでこまかい点は大臣お答えいただくというふうに考えておりませんけれども基本的な問題で、許認可整理法案の中に、無償トラックの問題にせよあるいは全国免許あるいは一貫輸送の問題を含む大きな問題が入っておるのに——許認可整理というのはたくさんありますからね、各省みんなあるわけですから、うっかり気がつかなければこれは通ってしまう筋合いでして、こういう出し方では政策論争にまでならぬですから、どうして道路運送法改正なら改正ということで、常任委員会運輸委員会があるのですから、なぜそっちにお出しにならなかったかという点、私はたいへん疑問に思うのですよ。そこらはどうお考えでございますか。
  4. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 お話のように、許認可整理は、ある部分においては運輸政策基本にも関連する点は含んでおります。ただ、今回の許認可整理については、これはかねてから行管から指摘がありましたように、国民の負担の軽減及び行政機関の繁雑な問題を現状立場においてできるだけ解決するものは解決していくようにという指示もあり、事実また、従来相当の期間放置されたままのものもございますので、そういう時勢に伴っての改正をこの際やっていこう、こういうことでありますが、いまお話のような運輸政策の根本問題は、御承知のように交通政策全般の問題でありまして、いま総合交通体系という名で検討を進めておるわけであります。  私、許認可整理法を出す前に、いろいろ事務当局とも内容について検討したのですが、私自身も大出さんのおっしゃるような疑問に逢着いたしまして、もっと根本的に考えるべきではないか、したがって、この問題等出しましても、中途はんぱといいますか、なかなか実際上は理解しがたい点が出てくるであろうということで、再三この問題を検討しましたが、なおやはり全体的な運輸政策、これは道路を含めたそういう問題にも大きな関係がありますので、そこまでやっていくとなりますと、いま緊急に必要な問題も処理できない、こういうような心配もありましたので、それじゃ一応これは基本問題にもかかわることではあるけれども、とりあえず現状のいわゆる煩瑣な行政整理していこう、これによって使用者側国民側の利益が増大するのであるなればそれもやむを得ない、こういうような次善の策というたてまえでこの法律案出したわけであります。しかし、おっしゃるように全体的な問題として考えなければならぬことは、これはたとえばバス事業につきましても、あるいは法律事項でなければできないのではないかと私は思います。しかし行政的にもできないことはありますまいが、現在バス運行については優先レーンというたてまえをとっておりますが、私は、優先的にバスを通すというだけでは実際の効果は非常に無理だと思う。そうなりますと、専用レーンをとるならば、はたして法律改正なしに済むかどうか、現状のままでやれるかどうか問題である、あるいはまた、許可認可の問題にしましても、いわゆる個人タクシー法人タクシーの場合の区別のしかた、これなどもいろいろ問題を含んでおります。ことに、一日二十四時間中における、たとえばこういう自動車運行の場合におきましても、ラッシュの時間と平常時間とではやはり動きが違ってくる。その場合に、個人タクシーに対して、あるいは法人タクシーに対してある程度の義務づけをするという場合になって、はたして行政手段でできるかどうかという問題もある。そういうことにも関連してまいりますから、根本的ないわゆる許認可を含めての内容整理となりますと、なかなかむずかしい問題もあります。しかしながら、最近における都市交通の情勢の変化からして思い切った措置を講じなければ、なかなか実際上の円滑なる運営はできないのではないか、こういう意味におきましても、憲法上の問題もありまして、実はこれらの議論もしたのでありますが、この時間だけおまえは運行すればいいんだというようなことが、はたして法律でできるかということになると、営業の自由の問題も出てくるということもありまして、根本的な問題から入って許認可事項整理にいくべきではありましたが、そこまでは間に合わない。しかし、一日も早くこれらの整理ができることが、十分ではないにせよ国民及び行政簡素化の上においては大きなプラスになるのであるから、十分ではないけれども、やむを得ずこの機会にこの法律を出そうということに方針をきめたわけであります。しかし、おっしゃるようなことは非常に大事なことでありますから、総合交通体系とからんで、これらの問題も将来なるべく早い機会にきちっとした問題としてきめてまいりたい、かように考えております。
  5. 大出俊

    大出委員 これは大臣、私非常に心配になりまして、道路運送法改正なり、通運事業法改正なりというのは、十年に一ぺんくらい過去の歴史をたどれば運輸省がものをいう歴史的事実があったわけですね。何回かごたごたする。抜本的な、一貫運送体制その他を含めて抜本的な問題がいつも出てくる。出てくるのだが、それなりに消えていくというかつこうが長らく続いているわけですね。今回またそういう気配になって、海上運送、コンテナのリース制その他を含めて変わって出てきていますし、六月十五日の通達もある。そういう時期に、この許認可整理という側から非常に大きな問題が出てくるということは、これはまことに本末転倒もいいところでございまして、そこで行管皆さんがお見えになったので、これは私のほうでおいでいただいたのではないけれども、そこに皆さんおいでになりますが、一体この道路運送法だとか通運業法改正といわなければならぬものが入っておるけれども、これは一体どういうことなんですかと言ったら、きわめて事務的なものだといういとも簡単な御説明をなさる。黙って聞いておりましたがね。あと運輸省から関係方々がお見えになって説明をなさいましたが、これまたまことに簡単な御説明なんですね。いやもうたいしたことはございません、ほとんどないものを落とすのです。案件がないのを落とすのだと言わんばかりなんです。案件がないものを落とすのなら、落とさなくたって同じなんです。いま大臣が言うように、緊急に必要なんじゃない。これまたしかたがないので、私は黙って聞いておったんだが、先船行管皆さんに三点ばかり御質問申し上げたら、答えが出てこない。そういう質問であれば、関係省庁に聞いてくれと言う。本来事務的な問題で、私に行管皆さん説明するようなことなら、運輸省お出かけをいただかなくてもいい、所管の省は行政管理庁だ。だから行政管理庁所管法律の形にして、許可認可等整理に関する法律というのが出ておるのだから、行管からお答えいただければいい。しかし、行管皆さん関係省庁から聞いてくれとおっしゃるのだから、十六日の委員会関係省運輸省皆さんから聞いてみたのだけれども各省次々にみなおいでいただいて、十二、三の省について全部聞かなければいかぬことになるのだけれども、そうしますと、運輸省皆さんの御説明からすると、結果的には運輸政策基本に関する問題ということになってきた。だから、行政管理庁長官に念のために御質問申し上げたら、だからそれ以上の御答弁はいたしかねるということになった。行管責任者出しておられるこの法案について、それ以上は運輸政策にわたるから答弁はいたしかねるというふうなものを、いま大臣は、緊急的な、事務的な問題ということで、行政の簡素、合理化に役立つからと言う。役立つのなら、運輸政策基本に触れる、たいへん論議を要する問題であっても、行政管理庁所管法律の形にして、単なる事務的な許認可整理法というかっこうで出す、それで相すむ筋合いのものかどうかという問題が残る。その点考え方が根本的に違っていやせぬかというふうに私は思う。この中身というものは、大臣そう簡単なことではないのです。これはすでに運輸政策審議会からもいろいろなクレームがついている。政策基本にかかわるからです。こういう形で気がつかなければ通ってしまって、あとで騒ぎになるというだけのことです。そういうふざけた出し方はないと私は思う。したがって、大臣がお見えにならなければ答弁いたしかねるという中身の問題だから、皆さんがこの席でそれ以上答弁はいたしかねるとおっしゃるのだから、大臣お出かけにならなければ審議は進まないのですから——それは小林さんは数年前東京陸運局長さんをおやりになっておったから、現場の実際の実情に非常に詳しい方で、私はその点は知り過ぎている。どうも陸運事業そのものについても、陸運事務所あるいは陸運局の人員問題についても、私はけしからぬと思う。行管のものの考え方も、三年五%で一ぺんかんなをかけたら、どこへしわが寄ってもいいというものの考え方は納得できない。だから佐藤総理おいでになるところで質問したこともある。そういうところが減ることは全くもってけしからぬ。三年五%でやろうとするからそういうところにしわが寄るわけです。部外応援というものがございますけれども陸運事務所に行ってみると、服装が違うからあれは部外団体から来た事務員であるということがよくわかる。なぜそういうことが起こるかというと人が足りないからである。陸運事務所現場に行ってごらんなさい。そういうところまで人を減らすという行管考え方基本的に間違っておると思っておる。こういうところはもっと人をふやさなければいかぬ、そういうふうに思うのですがね。したがって、今回のこの問題について、ほんとう基本に触れる、だから大臣おいでにならなければ答弁にならぬという性格のものを、何で許認可整理というかっこうで出すのか、これは自動車局長さんどういうふうにお考えになりますか。
  6. 野村一彦

    野村政府委員 お答えいたします。  基本的な考え方は、先ほど橋本大臣お答えになりましたとおりでございますが、私ども、前々から許認可事項ということは、特に自動車行政については非常に多い。その中には時代の推移とともに必ずしも実情に合っていない事項がかなり含まれておるということを事務的に感じまして検討をいたしておったわけでございます。またいろいろと行政規制の態様あるいは許認可の審査のあり方等につきましても、いろいろ事務的に検討しておったわけでございますが、今回この法律許認可整理法として出しましたのは、私どものそういう行政実態にわたる検討、それから先生の先ほどおっしゃいました運輸政策に関連する事項検討も含めて、いろいろ検討をしたわけでございますが、その中で私どもとしては、先ほど大臣が申しましたような、直接国民に対する利便増進、あるいは私どもの内部の行政事務簡素化による能率化、そういうことに限りまして問題をしぼって、そうしてそれを行政管理庁でまとめられまして、一本の法案とされたものでございます。したがいまして、私どもとしては、目的から考えまして、あくまでもこれは国民に対する利便増進と、それから行政部内の事務簡素化合理化能率化ということを目的としたものでございまして、内容的には先生のおっしゃいますように、運輸政策に関連する事項がございますが、これはもちろん今回の法律だけで処理をできるものではございませんし、行政指導を含む、あるいは予算措置を含む、あるいは業界体質改善等を含みますところのいろいろな問題がございますので、これは先ほど大臣の御答弁にございましたように、総合的な、運輸行政全体の総合交通体系の中で考えて、そうして、さらに今後道路運送法自体改正を要するものはそういう立場改正をするとか、あるいは他の法律立法を要しますものはそういう面で検討をするということで、総合的な立場でやっていきたい。今回のものは、目的といたしまして先ほど申し上げましたような、国民利便増進とそれから行政部内の事務合理化能率化簡素化という観点から、こういうふうに行政管理庁その他と折衝いたしまして問題をしぼった、こういうつもりで私ども審議をお願いしておるわけでございます。
  7. 大出俊

    大出委員 そういう答弁だったんです。十六日の委員会で私が聞いたら、冒頭いま私が聞いたような質問のしかたをしたら、いま野村局長お答えになったような答弁小林さんから出てきた。だからその点は変わってはいない。局長さん、部長さん、みんなそういう意識でやったんでしょう。ところが、一つ一つ質問に入っていったら、それは基本に触れる問題だということになってきた。これは、中身を見ればならざるを得ない。そうすると、基本に触れる問題であるにもかかわらず、それを事務的に処理をしようとしたというのはどういうことになるのですか。初めから、事務的に処理はできないのです。いま問題になっている、新聞種にもなっていますけれども旅費だけで泊まれる旅行なんて、観光業者誇大広告誇大宣伝をする。ついにたまりかねて公正取引委員会まで出てきている。これは三十八年にできたいわゆる三十八年法という法律がありますから。この法律公正取引委員会所管ですよ。不当景品類及び不当表示防止法という法律がありますけれども、それをたてにとって表へ出てきた。これは運輸省が先だったのか、公取が先だったのかわかりませんが、旅費だけで泊まれるというので、観光業者旅行業者が人を集めて会員制で連れて行く。旅費だけだと思って行ったら、その金の中に宿賃、旅館代、みんな含まれている。うたい文句旅費だけだけれども、その内訳というのは旅費プラスホテル代サービス代まで含んで計算をされて幾ら幾らと金を納めさせて、旅費だけのつもりで行ったら、どうも高過ぎるというので調べたら、全部ホテル代からみんな含んでいる。また、無償で他人を乗っける旅館送り迎えゴルフ場送り迎え等バスあるいはタクシー、これはただでやってくれているのかと思えば、これだってテレビを見ればわかるように、伊豆へいらっしゃってください、当旅館はたいへん山の中で閑静なところだ、しかし皆さんに御不便をかけません、無料で送り迎えいたしますから、どこまででも送りますというような調子だ。調べて見れば、旅館代に全部送り迎えタクシー代が入っている。同じことですよ。そうなると、これをはずして届け出制にしたらどうなるか。この法律立法の趣旨は、秩序を維持するという意味うたい文句になっているのです。これは乱用されれば実際にはえらいことになるのです。だから、そう簡単に許可制届け出制に変えればいいという筋合いのものじゃない。実態事務的な処理はできない問題です、事国民全体に及ぶのだから。しかも最近は、人入れ稼業をやっているところは、マイクロバスを持ってきてそこらに立っている人をどんどん乗せて、高いところに売り歩く、そういうことを実際やっている。そうなると、もっとこれは規制すべきものは規制しないと、特にそういうケースは非常に安全管理の問題で基本的な問題がある。定員オーバーもいいところですよ、一ぱい詰めて運んでいるのですから。そうなると、そう簡単な問題じゃないのです。いまに届け出になったら、やろうとすればいろいろなことができる、許可は要らないのですから。そういうことを簡単に能率、簡素、合理化ということだけでおやりになろうという神経が私はわからぬ。おそらく、この間私がいろいろここで申し上げておりますからお聞きになっていると思うのですが、これはやはり基本に触れないとあくまでもお思いなんですか。
  8. 野村一彦

    野村政府委員 ただいま先生無償に例をとっておっしゃいましたことでございますが、私どももちろんこの法律だけで管理、監督が十分であるとは思いません。たとえばいま先生がおっしゃいました旅館バス等につきましても、そのバスを利用される方も利用されない方も、同じような合理的な宿泊料ということ、私どもはそれを実質的には無償であるというふうに合理的に判断されるものについて届け出を認めようということでございまして、実際は無償という名のもとに何らかの形で運送行為対価を得て、実は有償で運んでおるのだという実態のもの——現在の法律もそうでございますが、この改正法案におきましても、無償の名のもとにやっておるが実態有償である、金にしろ物にしろ、何らかの形で対価を得ておるというものについては、これはその面の取り締まりということでもって、そういうことを防止するということで輸送秩序をはかりたいということでございます。私どもは、たとえば先生のいま御説明になりました無償の例で申し上げますと、これはあくまでも純粋の無償というものについては届け出でいいというふうに考えるわけでございます。もちろん安全の面につきましては道路運送車両法等、別の法律体系から規制がなされることは当然でございます。そういうふうに考えております。
  9. 大出俊

    大出委員 だから、現にこういう法律があって届け出じゃない、許可制あるいは免許ということになっている。そういう筋合いのものを届け出、つまり届け出というのは書式、様式が整えばいいのです。そうでしょう。現に法律があっても、無償という名のもとに有償でやっている。さっきの旅費だけで泊まれる旅行式のことを、たくさん方々で現にやっておる。ゴルフ場だってそうです。皆さんのところは何をチェックするといったって、街頭で陸運局陸運事務所がチェックしようにもできない。私は事情を知り抜いているのです。皆さんのところの職場で働いている組合の皆さんというのは、私ども非常に仲のいい人たちばかりなんです。知っている方々ばかりなんです。その方々のところで八年間も話しているのですから、わからぬことはない。また、ぼくも職場を一生懸命歩いている。ちょいちょい転勤だ何だといってはお祝いにも行ったり、歓送迎会もやっているのですから、たいていのことは知っている。その皆さんのこぼしているのは、何をやれといったって人がないというのです。それは、タクシーその他の積滞がうんと残るといったって、それでは一体何人の人がやっておるかという問題です。これは何べんも長い間私は質問していますから言いませんけれども、いま言ったように、ほんとう無償かどうかという点についてチェックする足も何もない皆さんには、実態はわからない。現にそうなっている。そこをいまあなたのほうで、真に無償であるかどうかわかってもいないくせに、そんなことではだめですよ。実態は知らないで、ただ単に事務的に許可制届け出制にすればいい、簡素、合理化なんだ——一つも簡素にも合理化にもなりやしません。つまりそこのところで、じゃどうするのだといったら、何か別の措置考えるという。別な措置というのは何をやるのですか。
  10. 野村一彦

    野村政府委員 おっしゃるように、数多くのそういう運送をやっているものがほんとう無償であるか有償であるかということを識別すると申しますか、実態を正確につかむということは、私どもなかなかこれはむずかしいことだと思います。しかしながら、たとえば旅館の例で申し上げますと、その駅からバスを利用する人もあるいは利用しない人も同じ料金でもって旅館に泊まっておるということでありますれば、その料金が高いか安いかということはまたその観点から検討の余地はありますが、送迎するバスを利用する人もしない人も同じ料金であるということであれば、私どもはそのバスというものは無償であるというふうに判断をいたすものでございます。ただ、同じような条件の宿泊をいたしまして、利用しない人は安く泊めて利用する人は高く泊めておるということであれば、明らかにそれは宿泊料の中にその輸送対価というものが入っておるというふうに私ども考えるわけでございまして、こういう点につきましては、その業界団体等のお互いの自主的な規制と申しますか、そういうことにも期待いたしますと同時に、私どもまた場合によりましては警察等の御協力も得て、そういうことのないように、防止をするということで実態をつかみたい、こういうふうに考えております。
  11. 大出俊

    大出委員 省令だとか政令だとか、そういう措置はお考えにならぬのですか。
  12. 野村一彦

    野村政府委員 ただいま、これに基づきまする省令政令等につきましてはいろいろと検討いたしておるわけでございますが、もちろんそういう事務を実施する場合の基準につきましては、政省令、あるいはさらにきめのこまかい指導を必要とするものについては通達等によって、取り扱いが区々にならないように、また実態に即した指導ができるように検討してみたいと思います。
  13. 大出俊

    大出委員 この間四つ、五つ質問したら、その御答弁の中にはみんな、法律はこういうふうにするけれども別途措置をいろいろ考えておるという。別途措置といわれれば政令省令しかない。通達しかない。これまた非常に危険千万で、政令だ、省令だ、ろくなものはないですね。法律審議されるときには出てこない。いつの場合だってあとから出そうとする。私もそれじゃ事済まぬと思って、最近は、政令なり省令なりという案を合わせて出していただかなければ、実は審議しないことにしている。というのは、この間の農地の二円五十銭だって、政令だ、省令だのたぐいです。政令省令というのは、ほんとうにもう法律そのものをながめてみて、もっともらしい説明を聞いても、あとになってみたら、その政令省令のつくり方、これでもって性格がみんな変わってしまう。とんでもないことになる。たくさんそれは例がある。だから私は、やはりそこまでもしほんとうにあなた方が考えておられるなら、事後措置をこういうふうにする、だからだいじょうぶなんだ、やはりそこまで明確にしなければ——ただそれは皆さんの権限だから途中でみんな変えることはできる。そういう意味では、法律改正というのはそう簡単でない。これはこの間すでに長い時間かけてやりましたから、ここで繰り返すのはやめますけれども、とにかく今回のこのやり方というのは、まことに私どもとしては不納得、納得できかねる。  そこで承りたいのですけれども、この事業用自動車の貸し渡しに関する運輸大臣許可、このうち、事業の用に供するための自動車運送事業に対する貸し渡しについてはこれを廃止すること、こういうのがありますね。この資料わかりにくいので一々聞くことにしますが、この資料でいうと何ページの何条になりますか。
  14. 野村一彦

    野村政府委員 許認可等整理に関する法律案の新旧対照表一二七ページでございます。その第三十七条でございます。
  15. 大出俊

    大出委員 昨年の六月の十五日に、いわゆる通称六・一五通達という、貨物自動車運送認可についてという通達がありますね。これは一般事業免許が路線免許として路線だけの収入、営収が百億ですか、これを何か全国に通ずる免許というんですかね、全国免許というんですかね、どうもそういう趣旨の中身だと考えなければならないようなものがあるんですけれども、これは一体どういう基本的なお考えでお出しになったのですか。
  16. 野村一彦

    野村政府委員 ただいま先生の御指摘の通達につきましては、私どもただいま御審議をお願いしております法案と関連してその検討をやっております一環として、とりあえずトラック行政に関する許認可ということを、現行の法律の範囲内でその運用を合理的、能率的に行なおうということでございます。したがいまして、ただいま先生のおっしゃいましたようなトラック事業者の中にも、一般トラックの中にも、いわゆる全国的に路線網を持っております路線事業者と、それから区域的に事業区域を持ってやっております区域事業者とあるわけでございますが、特に区域事業者につきましては中小業者が多く、またローカルな荷主との契約で長期的に大量の輸送をしておる、積み合わせでない輸送をしておるというたてまえでございますので、そういうものの免許というものを促進をするあるいは事業計画の変更の認可の促進をするということで、そういうものについては、従来非常に事務処理がおくれておったので、そういうものを促進して、そうしてなるべくそういうものがすみやかに行政処分——申請から結論が出るまでの期間を短縮すると同時に、そういうものの指導というものが十分合理的な見地からできるようにということであの通達を出したものでございます。
  17. 大出俊

    大出委員 そうすると、今日路線トラックが一つありますね。日通とか、福山通運であるとかあるいは西濃運輸であるとか、たくさんありますね。また、いわゆる地場トラック、ここでいう区域トラックがありますね。このおのおのの分野が法律上はきまっておるわけですね。路線は路線、区域は区域ですね。そこへ持ってきて全国免許、これは正式な名称かどうか知らぬ。知らぬけれども、そう考えなければならない形のものをお考えになるとすれば、これは路線と区域の関係というのはどうなるんですか。
  18. 野村一彦

    野村政府委員 全国免許と申しますのは、これは法律的な用語ではございませんで、路線は、先生御案内のように、Aの地点から途中おもな経過地点を——これはたとえば市町村という一つの行政区画でありますと、どことどこを通ってというふうにバスの路線のように厳密なものではございませんけれども、たとえば九州の福岡なら福岡から関門海峡を経由して、広島を経由して、岡山を経由して大阪に至るというもので、それは一日に何便往復をするという、路線の主要な経過地、着地、発地、それから便数は一日に何本であるか、そういうものをきめて運行しております。それと同時に、それによって運ばれるものは、いわゆる雑貨と申しますか、複数の不特定多数の荷主から依頼を受けましたものを集荷しまして、積み合わせ方式でもって輸送しておるというのが路線の実態でございます。いまおっしゃいました路線をやっておる会社はいわゆる日通その他の大手の会社が多うございまして、大部分は自分が直接やるか、あるいは自分の系列会社等に中継をして大体全国的に広い路線網を持っております。そういうものが路線トラックの大部分でございます。もちろん地方的な路線もたくさんございます。  これに反しまして区域トラックと申しますのは、たとえば鉄材なら鉄材というものをほとんど特定の荷主から輸送を引き受けまして、そして、それは途中の経過地とかあるいは便数とかいうことには関係なく、先ほどの例で申しますと、たとえば福岡なら福岡から、鉄材を一車借り切りでその車に積んで、そして東京へ持っていく、あるいは大阪へ持っていく。つまり路線というものは限らず、目的地はその輸送の契約に応じて持っていくものでございまして、法律に基づく免許に示されたその事業区域の中に、たとえば県なら県というその事業区域の中に着地か発地かのいずれかが入っていればよろしい。そういう形態で、路線を定めずに、もっぱら特定の貨物を運送しておる、そういう実態を持ったものが区域でございます。
  19. 大出俊

    大出委員 私の聞いているのは、そういう二つの形がある、そこへ六・一五通達が出た。営収百億だの何だのとありますね、その六・一五の通達のねらいは一体どこに焦点があるのですか。
  20. 小林正興

    小林政府委員 許認可簡素化整理は、一連の作業といたしまして、通達等、できる措置から従来やっておるわけでございますが、それの一環といたしまして昨年の六月十五日にトラック関係の通達を出したわけでございます。その通達の趣旨は、ただいまも若干話が出ましたが、トラック事業の実態に即して今後の許認可行政指針と申しますか、行政のやり方につきまして一つの考え方を通達として出したわけでございます。その際、ただいま先生お示しの全国的な路線トラックというもの、あるいはさらに、路線トラックの中でも非常にローカル的な路線トラックとございますが、そういったものに対する免許に関する一つの基準といいますか、審査の考え方、そういったものを通達に書いたわけでございます。その際、ただいまお話のありました区域事業というものは、全く同じトラック事業でございますが、実質的な内容が異なるものでございますので、区域事業につきましては区域事業にふさわしい取り扱いのしかたというようなものを分けて書いてあるわけでございます。そういった意味におきまして、全国的な路線というようなものと区域事業との関係をどうこうしようという意図の通達ではございません。トラック事業のそれぞれの業態に応じた取り扱いのしかた、こういったものを通達で明らかにしたわけでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 いまの答弁では、六・一五通達を出し意味がさっぱりわからぬですね。路線は路線、区域は区域、これはもともと明確なんです、いま御答弁になったとおり。そんなことはだれでも知っている。要約していえば、この六・一五通達というのは、中身は一つの集中合併という形が考えられる。ということは、たとえば営収百億ぐらいあるものは——全国免許というのは法律用語にはありませんが、これは前からあることばなんです。これは全国免許という形のものになっていきますよ。そうなると、区域のほうの側からすれば、路線との集中合併くらいは考えなければ、将来やっていけなくなるかもしれぬというものの見方が出てくる。なぜかというと、これは先がある。いま運送取扱人というのが法律上ありますね。国鉄なんかそのはずです。海上コンテナの国際的な運送形態、これはある意味一貫輸送ですね、海上運送と陸上運送のまん中を港湾でつないでいるわけですから。そうでしょう。一貫方式をとりたいわけですね。どこへでも持っていかなければならぬ。相当な資本が要るわけです。そうなると、ここに海上コンテナのリース制という問題が出てくる。これも四十三年に海運局と陸運局の間でいろいろあった。当時私も調べたことがある。このとき、海運局のいうことのほうが強かった。そしてリース制は通達できまった。つまり、このものの考え方は、六・一五通達で陸送全体にワクを広げた。将来かりに、これは出てくるかまだわからぬが、運送取扱人法というような法律が出てきたらどうなるか。これは出てくるんじゃないかという予測がずいぶん前からある。業界でも論議されている。いまは国鉄なら国鉄が法律上の運送取扱人。将来、運送取扱人法の制度が表に出てきた場合に、早い話が、海上運送その他をやっておるある船会社が全国免許という形で海から陸から一貫した輸送形態をつくることを考えれば、五台なら五台ずつ区域なら区域のトラックに——というのは説明が要りますが、たとえば小型貨物を持っている会社があるとする。ここでは大型がほしいわけですよ。三・五トンなら三・五トンというところで小型、大型と分かれているけれども、世の中変わってきまして、ハンドルを持つ側からすると、まず大型に乗りたいわけです。大きいのを動かしておるという優越感が一つある、いまの若いドライバーには。そこへもってきて、大型で無理をすればふところへ金がよけい入る。小型でこそこそやっておるよりは思い切って大型に乗っかってぶっ飛ばして、もらうものはもらいたい、こういう意識がある。だから、一般小型自動車だけの免許を持っておる方々からすると、これは何とかここで——実際は、四トン、五トン持っていても、減量云々というかっこうで、鉄の板を入れて重量を加えたり、インゴットを入れたりいろいろして使っておるわけです。だから、車両が重いんだということで減トン、減量をして小型でいっている。実際は四トン。それはたくさんあるのです。もっと大きいのを持ちたいが、全部小型ならば、大型の免許を取らなければいかぬわけですから、問題が出てくる。まず車を買う資金の問題がある。大きなところは、車をぽんと買っておいて、おまえのところには五台貸してやる、リースするということになると、これは飛びつきたいわけです。そうすると、全体を一つの資本が握って海上から陸上の末端まで、全国的に一つの資本がやる。つまり百貨店がやったっていい。運送取扱人法ができて、運送取扱人の許可をとればいい。いまの海上運送の形態から見ると、そういうかっこうに将来なりそうに見える。四十三年の海上コンテナリース制というのは、ポイントがそこに一つあった。これは論議されたとおりです。そうなると、いまの六・一五通達が出た背景というものは、将来やがて運送取扱人法みたいなものが考えられかねない、こういうふうに私ども考えるのです。路線と区域と明確に分かれているものを、何でこういう通達で営収の一つの限度を線を引いて全国免許的なものをお考えになるのか。そういう背景がそこにあるのではないかと思う。  ところが、いまの皆さん答弁は、答弁になっていない。路線は路線らしく、区域は区域らしくという通達なんです。そんなことはだれが見たって初めからわかっている、法律上そうなっているんだから。そういう意味で全く答弁にならぬ。六・一五通達は、路線は路線のように、区域は区域のようにという事業認定の免許の基準を明らかにしている、こんなことは明らかにしなくたって初めからわかっている。そういう答弁ではいけない。だから、政策基本に触れる問題であるにもかかわらず、許認可ということでこんなものを出すのは間違いだと私は言っている。この問題は、六・一五通達を一つ一つ考えれば、先々どうなるかということは考えられるわけです。いまに始まったことじゃない。何べんかこういうものは頭を出しかかっている。野村さん、あなたは黒住さんのあとをおやりになった自動車局長だけれども、鈴木さんの時代もあった。歴代ずっといろいろ論議をしてくると、そういう構想が背景にある。だから、そこまでものごとは論議をしなければ、そう簡単に——三十七条にいう、事業用自動車の貸し渡しに関する運輸大臣許可のうち、事業の用に供するための貸し渡しについてはこれを廃止すること、これと無関係じゃない、こう考えざるを得ないのです。だから、いまのようなわけのわからぬ答弁ではなくて、政策基本に触れる点をどう考えて六・一五通達を出したのか。あなたはいま、事業用自動車の貸し渡しの問題について関連があって六二五通達を出したとおっしゃっている。だとすると、先々どうなるかという展望がなければ運輸政策は成り立ちはしない。そこらはみんな幕を引いていて、おわかりかどうか知らぬけれども、それじゃ答弁にも何にもなりゃせぬじゃないですか。そこのところはどう考えているのですか。
  22. 野村一彦

    野村政府委員 お答えいたします。  六・一五通達と、先生おっしゃいました運送取扱人との関連でございますが、私明確に申し上げられることは、運送取扱人というものは日本でどういう業態をとるものであるか、またそれはどうあることが望ましいかということにつきましては、私ども運輸省全体の立場から、陸運、海運、また場合によったら航空というものも含めました総合的な、アメリカのいわゆるフレートフォーワーダーと申しますか、そういうものの日本版というものを考えなければいけないと思います。したがいまして、これは相当の集貨能力とかあるいは資産信用力とか、そういうものがあって初めて国際的あるいは国内的な、非常に広範囲にわたるそういう取り扱い事業というものを営み得る適格性があると思います。したがいまして、この問題は将来私ども根本的に考えなければならない問題であると思います。しかしながら、ただいま先生のおっしゃいました六・一五通達というものは、これははっきり申し上げられると思いますが、将来そういうフレートフォーワーダーというもの、運送取扱人というものを前提に置いて、それへの第一歩と申しますか、その一つの接近の素地をつくるためにそういう通達を出したというものではございません。これは先ほど私ども説明が不十分でございましたが、路線トラックについては、将来、先生のおっしゃいますような——現在大手五社あるいは六社といわれておりますが、そういう百億前後の水揚げを持った会社がだんだん全国的な路線網を持つにつれてそういう体制になっていくであろうということと、それはそれで路線の集約統合ということに関連するかと思いますが、区域トラックといいますのは、路線とはもちろん資本の規模も違いますし、それから運んでいる運送の形態も違いますので、別途私どもが現在考えてやりつつありますところのいわゆる中小企業近代化の方策あるいはこれに続く構造改善の方策、そういうことによって区域トラックはあくまでも区域トラックとしての企業基盤の強化を一そういう大手の系列下に組み入れられるということではなくして、横断的と申しますか、そういうことによって基盤の強化をはかるべきだという考えが現在の私ども考え方でございまして、そういう線で努力をいたしておるわけでございます。したがいまして、この三十七条の「事業用自動車の貸渡」ということは、現在はこの貸し渡しの許可が要りますと同時に、それから貸し渡すほうあるいは借り受けるほうが、ともに事業計画の変更として二つの点でダブルチェックを受けておる。これは私は、正規の免許を受けた業者が、同じ区域トラックなら区域トラック、あるいはバスならバスタクシーならタクシー、同業者間ですでに事業計画によって認められております自分の使用する自動車、これを同業者間に相互に譲る、貸し渡すということのチェックは一回でいいではなかろうか。つまり、現在事業計画の変更の認可を受けると同時に、貸し渡しそのものの認可を受けてダブルチェックを受けておりますが、これを一回にしようということでございまして、そういう意味先生の御懸念のような政策基本に触れる問題ではない、事務手続の簡素化である、こういうふうに私ども考えてこの改正をお願いをしておる、こういうわけでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 これは現にトラックでどこどこまで運ぶ、そして今度は国鉄でどこどこまで運ぶ、それから海運でどこどこまで運ぶ、こうなるわけですね、輸送形態というのは。その場合に、現在でいけば一つ一つ免可をとっていなければならない。そうでしょう。これから全国免許の形で、たとえばさっき申し上げました運送取扱人法などができてどこでもやれる、こうなると、いまおっしゃった巨大資本、たとえば日本郵船なら日本郵船がやる。国際的に巨大資本が結集できますね。できるということになると、三つ一緒にやれるわけですから、明らかに一貫輸送体制になる。金があればこれはやれるわけです。だからそういう方向が、背景に青写真が旧来からある。いつそこにいくのかという問題が現在の論点ですね。確かにこれは大きな目で見れば、海上あるいは国鉄、陸運、おのおのというようなかっこうになったのじゃやりきれない。当然そうなれば一貫輸送の方式が、海上コンテナのリース制まで出てくれば考えられなければおかしい。そういう時代がきたときにおいて、それじゃ一体陸運事業をいまやっている区域にしろ路線にしろ、どうなるのだという問題ですよ。そうでしょう。そこへもってきて陸上のリース制というものがどんどん出てくれば、二十台トラックが余りましたという場合に、大きな資本があったら出せる。片方の側からすれば、運転手を置いといてやるよりは貸して十万なら十万取ったほうがよいのですから。だからそこまで考えれば、今日の中小、零細企業を含めて区域トラックというものの存立の条件というのは一体何かという問題も出てこざるを得ない。非常な無理をいましているわけですよ、実際には。区域トラックというのは、これはいまさっきどなたかおっしゃいましたけれども、青森へ行ってリンゴ積んでくるといったって過積みもいいところですよ、これは。だから、たいへんめちゃくちゃになっている今日的現状というものをお考えいただかないとまずいのです。だからこういう手直しが出てくる。あなた方は事務的にとおっしゃるけれども伏線がある。現在、四十五年の海上コンテナについての六・一五通達がある。営収百億という一つの基準が全国免許という形でこの中に出てきている。そこへもってきて、これがまたダブルチェックだからということかもしれないが、そこを一つはずすと将来いよいよ運送取扱人法みたいなものが出てきはせぬかという心配も出てくる。ですから、そうでないならないというように、やはり将来の展望はどうなんだということを明らかにして、その場合の路線はこうなんだ、区域はこうなるんだということをやはり皆さんのほうで明確にさせて、政策的にも明らかにして、その上でこれはそういうことに関係ないのだからここをはずしますよと言わなければいかぬ。それは専門家ばかりいやしない。私もしろうとだけれども、しろうとがものを見てそういう心配をする。やらんとすることはわかるけれども許認可整理の中なんかにこんなものを入れて出してくると、そういう騒ぎまで起こりかねないと思う。慎重にと、この間小林さんがせっかく言われたわけだ。それは慎重でなければなりませんよ。それならばこういう出し方をしないで、やはり政策論争の場である運輸委員会なら運輸委員会常任委員会があるのだから、十年ごとにいろいろな問題をつかまえてやってきている委員会なんだから、古い人もいるのだから、一例なんだけれども、やはりこれはそういうところで論争してもらわないととんでもないことになる、私はこう思う。秩序を維持しようというのがこの法律のたてまえなんだからということを私は言いたいわけですよね。だからそこのところは、いろいろ事務的に許認可を入れた云云とおっしゃるけれども、この間三つ四つ論議したのもそれなんだけれども、そこまで考えていただかぬと間違う。だからそういう意味では関係各方面との話し合いをつけておいていただかぬと、この委員会審議するぼくらが迷惑する。これは行政管理庁が提案している法律なんですから。そうでしょう。えらいとばっちりでぼくらまでものを言わなければならぬことになったんじゃ困る。だから基本的な政策を明示して、その上で、こういうふうに当面事務的にというなら、いうふうにしてもらわぬと心配は絶えない、こうなりはせぬかと思うのです。
  24. 野村一彦

    野村政府委員 先生のおっしゃいますようなフレートフォーワーダーと申しますか、いわば運送取扱人というものがどういう形態になるかということは、これはいろいろ法律上、経済上の問題もございまして、非常にむずかしい問題だと思いますし、運輸省としても複合輸送全般の問題として基本的に検討しなければならない問題だと思います。しかしながら、ここでただいま御審議をお願いしておりますこの事業用自動車の貸し渡しにつきましては、将来のその複合輸送運送取扱人の制度のあり方というものと関係なく、こういう点をお考えいただけば御理解いただけると思います。  つまり、現在海運におきましては、たとえば内航海運業の事業計画の認可というものがございまして、それで使用する船舶の許認可ということが行なわれておるわけでございます。しかしながら、その甲の海運業者と乙の海運業者との間では船舶を貸し渡すということは、これは全く商業ベースで自由に行なわれております。正規の業者間のその船の貸し渡しということは、商業ベースで自由に行なわれております。ところがこの陸運関係におきましては、同じ貨物におきましても、その事業計画の認可が要ると同時に、それプラス船、それ自体の貸し渡しの認可というダブルチェックになっておったわけでございます。したがいまして、将来の運送取扱人の制度、そのあり方いかんという問題とは関係なく、端的に申し上げますと、海運の内航海運において認められていると同じように、事業計画の変更の認可ということはあるわけでございますから、それと同じ制度にして単純明快にしようということでございまして、その内航海運と貨物輸送事業との規制のしかたの平仄を合わせたという意味で、私どもはこれは事務的な問題であるというふうに考えるわけでございますので、その辺は将来の大きな展望といいますか、そういうことを前提に置いて——それがよくわからないままに単にこの点はやっておるのではないかという先生の御批判でございますが、私どもはそうではなくて、いま申し上げましたような内航海運と平仄を合わせたというふうな事務的な改正であるということで、いまの御審議をお願いをしておる。三十七条の「貸渡」につきましてはそういう考えでございますので、御理解いただきたいと思います。
  25. 大出俊

    大出委員 大臣の時間が一時半までだとおっしゃって、ここで論争する時間がありませんから、それまでに私の申し上げたい結論を申し上げておきたい。また皆さんのほうも、関係の各方面のいろいろな疑問については話し合いを進められるというお話なんで、たいへんけっこうなことだし、これは専門家諸君との間にも、それなりの相互理解というものがなければ、やはり運輸行政というものは前向きに進みませんから、そういう意味でそれはぜひお進めいただきたい。そういう分野がありますので、私はここから先のところは遠慮しますけれども、もう一、二点聞いておいて大臣に見解をひとつ承りたい。  もう一つ特定自動車という問題がありますね。これは、特定自動車運送事業に関する運輸大臣免許許可に改める、そうして運賃、料金及び譲渡の認可などを届け出に改める、こういう問題がありますね。この問題について皆さん基本的な考え方をまず承っておきたいのです。
  26. 野村一彦

    野村政府委員 特定自動車運送事業でございますが、現在、端的に申し上げまして、特定運送事業者とそれから非常に実質的にも似ておりますのは一般限定というものがございます。そこで私どもは、今後この法律改正するにあたりまして、特定輸送といいますのは、単一の荷主からの輸送需要に応じまして、そして単一の貨物を運ぶという、輸送需要者と輸送供給者との関係が非常に特定をされておって、ほかにそれが複数の輸送需要者にいくようなものの性質ではない輸送。たとえば一例を申し上げますと、貨物の面におきましては、じんあい、ごみの輸送とか、あるいはタンクローリーと申しますか、車の構造から特定のものしか運べない、そういうきわめて限られたものでございまして、これにつきましては、安全面の管理監督ということを十分いたしますれば、それでもって特に公共の利益というようなものについての侵害ということは、これを免許制をはずしてもないということから私ども許可制にしようということでございます。したがいまして従来特定ということで処理をされておりましたものの中にも、たとえば郵便逓送とかそういうものにつきましても、私どもはこれは一般限定のほうにこの際移して免許事業としてやっていくというようなことで、従来とかくあいまいでありました一般限定と特定との関係を明確にして、特定といいますのにきわめて限られた荷主の特殊の荷物を運ぶ。トラックについていいますとそういうものであるという性格をこの際従来よりも明確にして、そして規制は必要最小限度にしようということから免許制を許可制にするというふうに考えておるわけでございます。
  27. 大出俊

    大出委員 そこで承っておきたいのですが、富士カーフェリーというのがありますね。これが運輸大臣免許申請を出しておりますね。これは東京、横浜、名古屋、四日市、まだ幾つかあるようでありますが、こういう形の申請なんですね。カーフェリーでこんなところに免許をとって一体どうするのかという疑問が一つある。これは御存じですか。
  28. 野村一彦

    野村政府委員 富士カーフェリーがそういう免許の申請を出しておるということは、私は前に海運局におりましたときから話を聞いておりましたので、そういう事案の申請が出ておるということは存じております。
  29. 大出俊

    大出委員 これにもいろいろ疑問が出てくるのです。いまお話しの特定自動車、こう言っておるのは、たとえば米なら米、これは時期がきまっておりますね、どこからどこまでどういうふうに運ぶという。たとえばキリンビールならビールを運ぶ場合に、これはどこからどこまで、時期はいつからいつまでときまっておりますね。だから富士カーフェリーがこうたくさん免許を申請するということになると、これは何かここにあるんじゃないか。これは特定免許に入りますね、いまそれは厳密にするとおっしゃるのだから。ここに資料があるのですけれども、どうもやらんとする中身が、海上コンテナ船が入ってくる、いままでは自動車か内航船でやらねばならぬというかっこう、ところがこのカーフェリーでやりますと、うしろのほうのトレーラーだけ入って輸送されていくわけですから、非常にやりやすくなるということで、いまこの問題についてもう少し調べたいと思っておりますけれども、どうも新しい輸送形態がここでも考えられやせぬかというところ。特定自動車運送事業というのはどういうものかということは、これは明確なんですから、いまおっしゃるように、一般限定などで、より明確にしてやる必要はさらさらないという気が私はするのですけれども、それをまたまたこういうものをいまお話しのとおりに出してくるとなると、何かそこにもう一つ意図があるのではないかということが一これは小林さんもおそらく話し合っているので聞いておられると思うのだけれどもそこらのところ、ないならないで納得をしたいので、少し詳しく説明してくれませんか。
  30. 野村一彦

    野村政府委員 カーフェリーの自動車の利用形態のことでまずお話し申し上げたいと思います。  御承知のように、カーフェリー自体は海上運送法に基づく免許事業として申請があるわけでございます。そしてこのカーフェリーで運びます車につきましては、私ども自動車局といいますか道路運送法上からの制限というものはございません。と申しますのは、つまり道路運送車両法上の登録及び検査を受けた、いわゆるオーソライズされた車でありますれば、それはマイカーでもよろしゅうございますし、それから区域トラックでもよろしゅうございますし、特定とか限定という事業種別とは全然関係がございません。従来は実は路線トラックにつきましては、カーフェリーというものが非常に短距離間のいわば橋のかわりとして使われておりました時代のなごりから、カーフェリーを路線の中に持つ路線トラックにつきましては、そのカーフェリーによって運送される部分もいわゆる路線トラックの免許の対象になっておったわけでございますが、これは最近のカーフェリーの現状にかんがみましてその点を改正いたしまして、船によって運ばれる部分は全く道路運送法上の免許の対象にはならない、したがって運賃、料金等につきましても、カーフェリーの運賃、料金がそのまま適用になるということでございまして、路線トラックに関しては道路運送法上の適用をはずしておる。したがいまして、カーフェリーによって運ばれる自動車というものの業種のいかんということとは全く関係がない、こういうことでございますので、その点につきましては特定の規制免許から許可にするということとは全く関係がございませんので、その点御理解いただきたいと思います。
  31. 大出俊

    大出委員 ところが関係ないと言い切れないのですね。これをフィーダーサービスをやる。枝葉のサービスですね。いまの場合、サンフランシスコならサンフランシスコから横浜に持ってくる。あとは内航船あるいはトラック、こうなるわけですけれども、カーフェリーを使われると、これは日本郵船なら日本郵船がどこからどこまでという限定をして許可をとれるわけですから、だから関係がないというのじゃなくて、こういうものをやられると、日本の国内運送に大きな影響が出てくることは間違いない、これが大きくなれば。だということになると、もしこういうものを認めるなら認めるで、別に法律規制がこの点は必要じゃないかと私は思っている、全くありませんじゃなくて。だから、やはり法律上これを明確にして、こういうものはどういうふうに扱うのかという点をはっきりさせないというと、マイカーでも何でもけっこうなんですなんていうことになっておっぽっておくと、それを政策的にやられれば、内航船も要らなくなる、あるいはトラックも必要なくなる。いきなりカーフェリーでうしろのトレーラーが入っていって運ばれて着いちゃうわけですから。だからそうなると、そこのところも当然、これはいまの運輸政策全体の動きの中から見ると疑問が出てくる。だから、何でまたここに特定自動車というのをあらためてこういうことにしようとなさるのかという点とからんで出てくる問題、そこを私は聞いているわけです。だから、それならば別途の法律規制が必要ではないかということになるわけです。
  32. 野村一彦

    野村政府委員 外国からのコンテナ輸送等について申し上げますと、これは法律規制ではございませんけれども、御承知のように航路同盟というものがございまして、航路同盟の寄港地というものは、たとえばその同盟に加入しておる船主間についてはさまっておるわけでございます。したがいまして、アメリカから運んでくる貨物につきましては、日本の寄港地までの運賃が組み入れられて、たとえば横浜なら横浜、あるいは清水なら清水という、運賃同盟で認められた港までの輸送というものが、その一貫輸送の運賃体系の中で運ばれておるわけでございます。それから先まで持っていくということについては、これは当然別の運賃が要るというわけで、どこでもコンテナ化すれば、同様の運賃と申しますか、簡単に運べるというものではない。そういう意味で、私どももちろんカーフェリーというものが外航のコンテナの国内の一つのフィーダーサービスとして使われるであろうということは考えておりますけれども、今回の特定というものの規制の緩和というものとは、いま申し上げましたように直接関係はございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  33. 大出俊

    大出委員 つまり海上コンテナに関する条約もありますね。だから、あなたのいまおっしゃることがわからぬわけじゃない。ないが、フイーダーサービスといわれているものがそういう方向に使われ出すということになると、これはやはり本来ならば、さっき例をあげて日本郵船の場合を申し上げたように、どこからどこまでという限定になるわけですから、だからそういう意味で、たとえば富士カーフェリーが許可をくれという言い方をする。そうすると、これをながめている一般業者の側からすると、これが先々発展していくとどういうことになるのか。これに免許を与えていくということになると——これに出ているのは、私のわかっているのは、東京、横浜、名古屋、四日市と出ていますね。そうなるとどこでも行けるわけですから、内航船に影響が出てくる、あるいは陸送の面に影響が出てくることも当然考えられる。しかもこれは特定してどこからどこまでという形になるわけですからね。そうでしょう。そうなると関係がないとはいうものの、やはり許可するならば、そこらは別な法律が要るのか要らぬのか、そういう問題も出てくる。だからそこらのところが、さっきから申し上げているように将来の一貫輸送という問題とからんでくる。そういう時期にこういうはずし方を幾つかされると、さっき前の問題で申し上げたように、基本的な政策というものが表に出ないと、こういうものをめぐって、どうもこれはおかしいぞという形になってきて、いわゆる運輸政策の背景になっているいろんな業種の方、日通から始まっていろいろな方々が、これはたいへんだということになる。そのまま置いちゃこれはまずい。やはりこれは皆さんのほうで基本的に、将来の一貫輸送体制というものをいまどう考えなければならぬのかということをはっきりしていただかないと、皆さんのほうはこれは事務的に事務的にというけれども、この間すでに幾つか事務的でないのを申し上げましたから繰り返したくないんだけれども、そういう問題が出てくる。だからそこのところでも、やはり皆さんのほうは政策論争すべきものはする、法律規制が必要なものは必要だという、そういう進め方をしていただきたいとここのところは思っているのです。
  34. 野村一彦

    野村政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、特定につきましては、カーフェリーをもってするといなとを問わず、輸送の着地、発地の限定というものは全然ございません。これは輸送需要者、それから運ぼうとする運送事業者との関係が、きわめて限られた単一の荷主なら荷主ということに限られておる、あるいはその貨物が単一のものというふうに限られておるわけでございまして、着地、発地の問題とは関係ございません。したがいまして、このカーフェリーと特定であるかないかということの関係は、私は法律的にもないというふうに判断をいたしております。
  35. 大出俊

    大出委員 大臣の時間がありませんから、道路運送法並びに通運事業法の両方が今度ここに出ているわけですが、ここで通運事業法の二十条、定額で定めるのを削除するというのがありますね。「運賃及び料金」です。これは三項の削除ということになるのですね。皆さんの資料のほうでおっしゃってください。
  36. 小林正興

    小林政府委員 資料は一七三ページでございます。現行通運事業法第二十条の第三項「運賃及び料金は、集貨、配達、取扱、積込、取卸その他業務の種別について定額をもつて明確に定められなければならない。」という三項を削除いたす改正でございます。
  37. 大出俊

    大出委員 つまり三項の削除というのは「運賃及び料金は、集貨、配達、取扱、積込、取卸その他業務の種別について定額をもって明確に定められなければならない。」こうありますね。これを削除する、こういう意味ですか、そうでしょう。
  38. 小林正興

    小林政府委員 さようでございます。
  39. 大出俊

    大出委員 ここもやはり非常に問題があるところでございまして、物価対策閣僚協議会なんかで、運賃の弾力性という意味で一つの提議が行なわれておりまして、こういうものを切ってしまえば運賃が弾力性を持つ、つまり言いかえれば過当競争だということになると、一〇〇のものが七〇になるということですね。そういうものの考え方が根本にある。これは何で二十条というのがあるかというと、やはり私は中小の業を含めて、ある意味での保護規定だと思っている、荷主に弱い業者ですから。ところが、これをみんな切ってしまうと、一体運賃、料金決定原則というものがどうなるんだという問題がもう一つ出てくる。ますますもって買いたたかれて——それは物価対策閣僚協議会のほうは、安くなるからいいだろう、安くなるからいいだろうたって、ダンピングさせられれば、当然そのしわはどこに寄るかということは明らかであります。そういういまの時期に、何で一体この二十条の三項を削除するか。運賃、料金決定原則というものは一体どうなんだ。そこはどうですか。
  40. 小林正興

    小林政府委員 まずこの改正の趣旨を申し上げますと、現在の定額制のもとにおきましては、たとえば集配料あるいは積み込み料、取り扱い料、それごとに定額一トン当たり幾らということで定めなければならないことになっておるわけでございます。しかしながら、たとえば積みおろしということを考えました場合でも、非常に貨物の運び方、種類によりまして、その作業の態様が異なるわけでございます。たとえば米等におきましては、いまだに肩荷役を要する場合もあります。また商品の種類によりましてパレット輸送と申しまして、フォークリフト等の機械で作業できるというように、非常に作業の態様が多様化しておるというのが最近の情勢でございます。また取り扱い等の便、不便の問題を考えましても、発だけを受ける場合あるいは発着を一貫して受ける場合という問題もあろうかと思います。そのほかやはり商取引でございますので、一定の期間に非常に大量の貨物を受ける、あるいはリンゴの出荷期等におきまして、非常に大量の定型の貨物を一手に受けるというような場合も考えられる。現行法のもとにおきましては、運賃制度、これは認可制は今後も変わらないわけでありますが、いわゆるいかなる運賃制度を認可いたすかという場合に、冒頭に申し上げましたように、きわめて単純な業務種別ごとの定額制、こういうことになるわけでして、これに対しまして業務の態様あるいは荷主との関係、作業の問題等で若干の変更を加えます場合には、個別に変更認可を要するわけでございます。したがって、今回定額制を削除いたします第一の理由は、そういった個別に認可をしなければならないという事例がきわめて多いわけでございますので、これを要しないように、あらかじめ弾力性のあると申しますか、一定の幅のある運賃制度というものを考えるわけでございます。したがいまして、これを削除いたしましても、定額制そのもので運賃料金を定めるということを全く廃すわけではございません。たとえば非常に小口の貨物というような、旅客輸送に近いような個々の一見荷主のような場合には、これは今後も定額制が運賃制度として最もいいという場合もございましょう。そのほかそういった通運と申しましても、車扱い運賃、小口貨物扱い運賃、コンテナ運賃、いろいろございますが、そういったものに応じて新たな運賃制度を今後考えていきたい、こういうことであります。  そこで二十条の三項の規定を排除いたしまして、運賃決定原則といたしましては、第二項に認可基準が定まっておるわけでございますので、現在の認可制、これについては全く変わりないわけでございます。要は最近の実態に即応して、今後いかなる通運の新しい運賃制度を考えていくかという際に、障害になる三項を削除するということでございまして、先ほど先生お話しの定額制をやめることによっていわば自由運賃になる、あるいは非常に競争が激化されるという問題とは直接関係ございません。しかしながら、お尋ねの業者間の競争原理と申しますか、そういったものが出ることは、現在の定額制のもとにおきましても、手形決済等いろいろございます、あるいは割引等を認可を得ずしてやるというような場合もあるわけでございまして、こういったいわゆるダンピングとかあるいは極端な競争というようなものにつきましては、当然従来と同様あるいはそれ以上に行政を強化していかなければならない、こう思っておるわけでございます。
  41. 大出俊

    大出委員 あなた、その二十条の二項があるからとおっしゃるけれども、二項というのは適正な料金ということになっているだけでしょう。私はいま法律を持っていないけれども、この資料に二十条は書いてない、略となっているけれども、適正な運賃、料金になっているだけでしょう、二十条というのは。何も定額を廃止して——しかし定額が必要なものもあるだろう。法律上これはみんななくなってしまうわけですから、削除するのだから、一体それじゃそれをどこで規制するとおっしゃるのですか。
  42. 小林正興

    小林政府委員 説明が少し舌足らずでございましたが、定額制度というような運賃制度のあり方、これにつきまして絶対に定額制度でなければならないという規定を削除いたしたわけでございまして、先ほど申し上げましたのは、定額制によるべきものにつきましては定額制による、あるいは若干幅運賃を導入するというのにふさわしいような、たとえば先ほど申し上げましたような積み込みというような場合、あるいは長期大量定型貨物における割引というようなものを、ここの認可を得ないで一定の幅運賃を設けるというようなことを導入しやすいようにいたしたわけでございまして、運賃制度そのものが、ある荷主に対して不当な差別扱いをするというようなこと、あるいは業者間のダンピングと申しますか、そういうようなものにつきましては、現行法にございますように、運賃制度を明確に認可によって規制するということは現在と変わらないということでございまして、通運事業といたしましていかなる運賃制度を考え、そして認可申請に及ぶかということが今後の問題であるわけでございます。
  43. 大出俊

    大出委員 大臣に承りたいのですが、物価対策閣僚協議会で運賃に弾力性を持たせる、こういう言い方が一つ出てきているわけですね。これはもう御存じだと思うのです。ここで定額制によらなければならぬというのを切っているわけですから、定額制によらなくていい、こうなるわけですよ、削除するのですから。そうなると、これは物価対策閣僚協議会のものの考え方は、運送料金を落とそうということなんです。運送コストを下げようということなんです。この話し合いというのは、事物価に関するのですから、何もこっちのほうを少し下げればこっちのほうは上げてやろうという論議じゃない。総体的に輸送コストを下げようという考え方。だから、この定額制によらないというのは何かというと、買いたたかれる、荷主のほうが強いのですから。そうなると当然輸送業者のほうは過当競争になる。完全収受、この前の論議じゃないですけれども、あれよりまだなお悪い。よるべき基準が法律上なくなってしまう。だから一つ間違えば一〇〇のものは七〇に減るということ、それがねらいなんですから。そうすると、これは明確に中小の運送業者にしわが寄る、こういう結果になる。荷主なんか確かにこれは安く運送料金を下げられるかもしれない。しかしそのしわがどこに寄るかというと、つまり中小の運送業者に寄る。これは間違いない、それがねらいなんですから。それは筋違いではないか。何でもかんでも物価が下がればいいというので、弱いところにしわを寄せればいいという筋合いのものじゃないと思う、この点は。時間がないから簡単に申しますが、大臣その点はどうですか。
  44. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 必ずしも大出さんのおっしゃるように、運賃の値引きをやらせようという目的でこの改正が行なわれたわけではありませんで、先ほど来業務部長からも話がありましたように、一つは輸送形態が変わってきたということ、そういう変わってきた状態に対して、従来の定額制度では運賃の定めようがないということが一つの理由であります。  この条文にもありますように、第二十条の二項の中で「運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によってこれをしなければならない。」、その一に「能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。」、こういうような一つの基準を置いておるわけであります。したがって、物価政策の上から、ただいわゆる運賃引き下げということが目的ではありませんで、もちろんこれは時代とともに合理的な措置が必要でありますから、時代が新しく変わってきたのに対して、昔のような形でものを進めるわけにはまいりませんので、そこでこういう法律改正を行ないましたが、もちろん業者の適正利潤というものは——お互いに社会は共存共栄でありますから、この点については、運輸省当局としましても、もしそれらがこの法律違反で、いわゆる荷主側によって圧迫されるような事態があれば、運輸省自身が事業者保護のたてまえから十分なる監督指導はしていかなければならない、こう考えておるわけであります。したがって、いままでいろいろお話のありました点については、貴重な御意見でありますから、これらを十分体しながら、いやしくも監督行政としての目的は果たしていきたい、かように考えておる次第であります。
  45. 大出俊

    大出委員 大臣、そう言っても——大臣の時間があるので、私は多く言わぬでも、あなたのことだからわかると思って言っているのです。すでに十六日にだいぶ前段の論議はしていますから、あまりしちめんどうくさい話をしないでかけ足でものを言っていますけれども基本になっているのは、物価対策という観点から閣僚協議会をお開きになった。物価対策閣僚協議会、そこで出てきたのが運賃の弾力性という問題、輸送形態が変わってきた、こういううたい文句を一つ表に出してきている。しかし適正な利潤。さっきから私が申すように、適正なと書いてある。現行法は定額制によっている。その定額制を取ってしまって、よらないでいい。つまりそういうかっこうになれば、運送料金は下がる、こういうものの判断が——物価対策でものを考えているのですから、輸送コストを下げようということですから、輸送コストを下げるというのは運送料金が減るということです。それは運送業者にしわが寄るということはあたりまえのことです。そうでなければ物価対策閣僚協議会で論議する必要がない。下げようということです。荷主のほうの腹が痛むのじゃない、運送業者のほうの腹が痛む、こういうかっこうになる。そのことは働いている諸君にしわが寄るということになる。これは幾ら何とおっしゃったって明確です。物価対策の観点からとらえて下がらなければ、あなたがいま言うように輸送形態が変わったからこうしたんだといったって、上がるのなら物価対策にならぬ。下げようというねらいがある。下げようというねらいでこの定額制を廃止されるということは、あまりにも中小の運送業者のことをお考えにならな過ぎる。たださえ荷主に対して弱いのですから、そういうものの考え方基本的な問題だというのですよ。輸送形態が変わったというならば、それは政策上一体どうなのかということの論議が先ではないのか。ことごとにそういうところが頭を出しているこの法律改正許認可の廃止なんですね。届け出の変更なんですね。だから問題は、形態が変わったなら変わったで、さっき一貫輸送ということを言ったけれども、これだって大きな変化です。そういう方向に向いていることは間違いない。フィーダーサービスの問題だってそうです。みんなそっちに向いている。運送取扱人だってそうです。みんなそっちに向いている。変わったなら変わったで、何で基本的にその変化に対応して——適正な利潤ということについても、それをどう考えるのかどいうこと。いま、荷動きも少なくなって一番苦労しているのは、区域トラックなんか見たってひどいものですよ。これは大臣、私がここで調べている中身によると、こういうことです。これはほかの法、道路運送法の四十五条等で関係があります。いいですか。郡山と東京の間を米一俵百六十円で運んでくるのです。これは郡山−東京間を米一俵百六十円で運べる筋合いのものじゃないのです。ドライバーの賃金は一体幾らに見るかということを考えれば、一ぺんでわかる。ところが十トン車ということになると、百六十俵で大体十トン車は満載なんですね。どう多くたって百七十俵までで十トン車満載。ところが四百俵積んでいるのですね。全く過積みどころじゃない。郡山−東京間を、十トン車で米百六十俵か百七十俵積めば満載なのに、四百俵積むんですよ。倍ならわかるけれども、これは倍どころじゃないのです。これだけやれば、これならば確かに郡山−東京間を米一俵百六十円で運べますよ。鉄道で運んだら幾らについているんだ。そうでしょう。四百俵積んでいるから手間になるのですよ。さっき冒頭に申し上げたように、三・五トン車に乗るよりも、こういうむちゃくちゃな、百六十俵しか積めないものを四百俵積んででも大型に乗っかって、十トン車に乗っかってぶつ飛ばせば実入りがいいわけですよ。いまの世の中の若い諸君は、それをやりたがるんですよ。だからとんでもない事故が起こってしまう。年じゅうこれですよ。  もう一つある。青森県の五所川原から、岩木山・津軽富士の見えるところですが、東京までリンゴを運んでくる。リンゴ一箱二十キロですよ。さっき小林さんがリンゴの話をされたけれども、私も調べた。青森の五所川原から東京まで運んで、輸送料金がリンゴ一箱二十キロで百十円。これを国鉄で送ってきた場合に、東京に着いて、東京から目的の集荷地に送る配達料九十円ですよ。五所川原から東京に着いて、着いたやつを駅から築地市場なら築地市場まで九十円です。それを五所川原から東京まで運んできて、百十円から配達料金九十円出したら、つまり国鉄の運賃が二十円になってしまうんです。そういうばかなことが何ででき上がっているのですか。これはとにかく過積みも過積み、四百個以上ということですよ。二十キロ四百個積んだら一体何トンになりますか。これはさっきリンゴの産地なんかと小林さんおっしゃるけれども、冗談じゃない、とんでもない。十トン車で五万五千円なんですよ。油代にもならぬ。五所川原から東京まで。しからば何でもうかるかというと、二十キロのものを四百個積んでいるのです。そうすると五万五千円が十二万円から十三万円になる。積載量どおりだったら五万五千円にしかならぬ。それを四百個も積んでしまうから、一箱二十キロにきまっているのですから、二十キロの四百倍、合計すればわかりますよ。だから、正規のルートで積載量一ぱい積んでくれば五万五千円です。それを四百個も積むから十二、三万になる。それがいま年じゅうぶっ飛ばしている。だから駅に着いてから市場まで配達するのに九十円だというのに、五所川原から運んだって百十円で一個当たり輸送料金が済んでしまう。こういうことを片方で平気でやらしておいて、それは皆さんも平気でやらしているのじゃないかもしれない。ないかもしれないが、区域トラックの現状はそうなっているんですよ。そこへもってきて、そっちのほうにしわが寄る政策ばかり、物価対策閣僚協議会で輸送体系がかく変わりましたよという。確かに百六十俵しか積めないのに四百俵積めるようにしているのですから、たいへんな変わりようですよ。十トン車ですから、それを、小林さんも陸運局長おやりになったけれども、街頭チェックをやって、いけないと言わなければならぬ。もう現職でおやりになるには、とてもじゃないがそんな人はいないわけです。そうなると、これがいまの世の中に横行している一方に、こういう改政をしてきて、物価対策の見地からというが、冗談じゃないですよ。ここら大臣、事故の最大の根源だ。しかもこれはオーバーロードの根源だ。一体どうなっているのですか。これは陸運行政の面で、机の上だけで法案をいじったってどうにもならぬのですよ。
  46. 野村一彦

    野村政府委員 ただいま先生の御引例になりました事実、これは私どもとしては非常に残念な事態であると思います。  問題は、基本的には荷主と運送業者の力関係が、運送業者というものが荷主に非常に隷属したというような関係に事実上なっておりまして、運賃は認可運賃でございますので、先生の御指摘を待つまでもなく当然認可運賃を守らなければなりませんし、また運ぶ量につきましても、過積載ということがあってはならないことは、これはお説のとおりでございます。この点につきましては、たとえば自重計というものが開発されまして、トラックに非常に信頼性のある自重計というものができれば、それを取り締まるということにつきましても、荷主自身の自粛、それからまた私どもの監督ということも行き届くかと思いますが、いま残念ながら、そういう自重計というものが、あるにはありますけれども、十分な信頼性がないというようなことから、また私どもの目が行き届かないで、過積みの問題、運賃ダンピングの問題が起こっておることは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、私ども法律以前の問題として十分取り締まらなければならないということで、関係方面にお願いをしておるわけでございますけれども、不行き届きでそういう事態があるということはまことに遺憾でございますので、今後ともそういう問題につきましてはさらに気をつけたいと存じます。
  47. 大出俊

    大出委員 野村さん、これは私が自分で調べたのですからもっとこまかく申し上げてもいいけれども、時間がないから簡単に申し上げているのです。ほんとうにそれこそ輪荷重といって、一つのタイヤにどのくらい重量がかかるか。五トンですよ。車輪が四つあるのですから、そうすると二十トンでしょう。車は十トン車ですよ。一つの車輪に倍の重量がかかっている。そうすると道路はどうなるか。それは幾ら簡易舗装したって、中級舗装をやったって——正規の舗装をすれば二十五センチですよ。コアを抜いてみて調べればわかる。正規の舗装をやったって、とてもじゃないが道路はどうにもならぬ、しかもこれは片っ方は法律違反でしょう。それでドライバーはどうなんだというと、それは一人で来るのですよ。居眠りでもすれば、上が重いですからひっくり返ってしまうんですよ。そして暴走だ。暴走も何も、荷主から時間をきめられているんですから。荷いたみがするから。荷主に対して運送業者というものはそれだけ弱いんですよ。だから私がこの法律改正で一貫してものを言っているのは、物価対策閣僚協議会でもそうなんですが、物価の引き下げの見地からというのでどこに焦点を置いたか、定額制はおっぱずす、おっぱずせば安くなる、一〇〇のものは七〇になるという観点で提議されているのです。そういうかっこう。そういうサイドからものを考えると、リンゴの箱二十キロをもう少しふやして、いま積んで五所川原−東京を走っているやつを、四百個をさらに五百個にするぐらいのことを考えなければ区域トラックのほうはやっていけやしませんよ。だから私は、そういうサイドからのみものを考えるということはよくないと言うのですよ。こういう形のものを放任しておいて、片っ方で——大臣大臣の時間の関係がありますから、先ほど二つ、三つまだ大きな問題があって話を途中にしていますけれども、つまりここでひとつ現実を申し上げないと話がかみ合わぬような感じがしたので、現実を先に引き出した。二時間ぐらい質問してあとでものを言わなければならぬ現実なんで、先に申し上げたのだけれども、これは大臣、やはり少しものを考える角度を切りかえていただきたいという気がする。これでは道路もたまったものじゃない。年じゅう起こる事故、新聞は簡単に片づけるけれども、実際はここにある。運輸行政、一体どっちを向いているのだということになる。一体どれだけ——路線業者等は大きいですから別として、それでも日通さんだって国鉄に行けば頭が上がらぬから、言われたとおり、これは大臣一番よく知っているはずだと思うのです。そうだとすれば、中小の区域トラック業者なんかたまったものじゃない。おっぱずして基準がなくなってしまえば、よけい荷動きが薄くなる。この二月三月は荷動きが薄くなるという現実です。片っ方にいま火の車で、いつ不渡りが出るかという騒ぎでしょう。どこで中小の、たとえば小型一般を二十台持ってやっている。普通ならりっぱな業者ですよ。そうでしょう。ところがいま港湾なんかでもそうですけれども、形態がおっしゃるとおり全部変わってきまして、できるだけ自分の資本を入れないで、雇い制にして、仕事のあるときには頼む。あしたもくれるかと思えば、そこでいきなり引き払う。そうすると中小の運送業者にすれば予定が立たぬのだ。いままでなら荷が厚いから、電話一本かければあそこですぐ取ってくれるというのでいけるのだけれども、くれると思ったところが翌日切られれば計画が立たぬ。そうすると二十人の運転者を含めて車は遊んでしまう。それを一カ月間やられたらどうにもならぬですよ。そうなっているからこういうことを区域業者がやるようになるのですね。だからそこらのサイドからものを考えてくれぬと、だから政策が先ではないかと申し上げるのだけれども、これはトラック業者はたまったものじゃないですよ。そこらのところを大臣ひとつお考えをいただかなければならぬ。だから許認可だけの問題じゃない。もっと運輸政策全体の問題としてとらえるべき性格じゃないか、こう申し上げたいわけですが、大臣いかがですか。
  48. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 お話でありますが、どうも政策以前の問題のようでありますね。現在の定額制度の法律があっても、なおかついまおっしゃったような事実がありとすれば、これは別の問題として考えなければならぬ問題で、いわゆる交通総合体系の上からいえば、中長距離は鉄道で持っていかなければならぬ。そして中短距離はトラック輸送でやる、これが原則だと思うのですね。しかし現実の問題としては、いわゆる荷主の強力なる力がありましょうが、それがために実際上のいままでの基準運賃なりあるいは定額運賃等が守られない。これは力の相違のことがあろうと思います。これはしたがって政策の問題以前の問題でありまして、これはぜひひとつ運送業者ももっとお互いに大同団結といいますか、せっかく法律で規定されておるのでありますから、その法律を守る、それを十分行なうと同時に、もちろん運輸省といたしましてもそういう過積みを強要する荷主に対しての措置、そういうことも考えなければならぬと思っております。したがってこれらの問題は、定額料金をこの際廃止したことが低物価政策を積極的に進めるという意図では必ずしもなくして、やはりこの法律に明示してありますように、適正利潤というものは考慮してやっていかなければいかぬ、こうなっていますが、また実際問題は、いまお話があったような荷主と運送業者との間の力のバランスからして押されておるという現実は無視できないと思います。これに対しては、もちろん陸運局、まあ現場陸運局でありますから、それらを通じましていわゆる荷主に対しても積極的な指導を行なう、同時にまた輸送業者に対しましてもやはりお互いがしっかりした秩序をみずから守らなければ守れないのです。せっかく法律でこういうふうな適正利潤を考え、あるいはいろいろのことを考えましても、それが全く無視せられてお互いの話し合いでもって押されっぱなしであるということでは困るし、また道路運送法からいって、これをもし厳重にやれば実際上はトラック業者も非常に困るでありましょうが、ただいまおっしゃったような安全輸送という面から見れば、ただ野放しにもできませんので、もちろんこれは十分に気をつけていかなくちゃなりませんが、いずれその点については業界あるいは荷主に対しましても運輸省といたしましては積極的な指導をしてまいりたい、こういうふうに考えて、決して低運賃政策を進めてこの改正が行なわれたということでないことはひとつ御了承願いたいと思います。
  49. 大出俊

    大出委員 最後にしますが、大臣が言わんとするところは大臣立場でわかります。わかりますが、あらゆる角度から検討してみて、物価問題の閣僚協議会というのは、物価がいかにも上がってしょうがない、どこかを下げなければならぬ。いまの各種製品というものは輸送コストそのものが一番大きなウエートを占めていることは事実なんで、そこに焦点を当てた論議をされているのだから、輸送コストを下げようということはつまり料金、運賃政策ですね。これが占める比率が低くなっていけば物価は下がるという原理、原則でものを考えている。だから大臣が幾らそう言われてもそこに中心が置かれざるを得ない。荷主に対して弱過ぎる運送事業者なんだから、極端に弱過ぎるのですから、その運送業者が多少ともよりどころになる法律上の条文を切ってしまうということは、以前の問題だとおっしゃる、法律があってもとおっしゃるが、それならなぜ法律どおり運用されないかと言いたい。それがそうならない。しかたがないとおっしゃるなら、法律は要らないのです。そうでしょう。だからここにある定額制という問題が輸送業者の側に幾らかでも足がかりになっている限りは——本来ならもっと大きな足がかりにならなければいかぬのです、この法律を適正運用すれば。それができないというのが現実だ。ぼくだって法律どおり世の中が動いていないということは知っているからその非は責めないけれども、しかし足がかりになっているものを切ってしまうということは考えなければならぬ。この間私がいろいろやりとりしたときにこの席で、そういう中小、零細な運送業者に対しては別表助成の方法がある、たとえば金融措置であるとか中小企業対策であるとかあるとおっしゃるなら、なぜそれを事前に総合的にお考えになって、こういう零細、中小の運送業者が成り立つようにしてあげないか。ないではないか。タクシーの場合だって、上がったばかりの料金をまた上げようとしたという段階で初めて年度末金融対策を考えるなどということを政府は言い出す。そんなことは初めから考えていかなければならぬ。考えておけば、上げたばかりでまたタクシー料金を上げようとは言いはしない。そうでしょう。そこに手落ちがありはせぬか。  もう一つだけ言わせていただきますが、この間も例にあげたけれども、陸上の質問をしていますから陸上運送のほうをあげるとかどが立ちますから海上をあげますと、下請のはしけ回漕をやっている回漕業者がある。十六隻の船を持っている。私も税務署とずいぶん話し合ってみた。十六隻あった。が、第十六何々丸という船が実際にはない。帳簿上だけです。これは古くして新しい問題ですよ。じゃ十六隻目の船のない帳簿は一体どうなっているかというと、つまり人件費、油代などといって落としているのだけれども、その金は実際には船がないのだからそこに使っていないことだけは間違いない。元請、仕事をくれるほうに営業係長、課長さんがおる。つかみでそこへ三十万、五十万の金を預ける。荷をもらうそのつど持っていかなければ、くれない。それが長年、三年間積み重なった。それは架空の船名で帳簿をつくっている、そこで落としてきたわけですよ、処理のしょうがないから。税務署がこれを調べてわかった。船がない。三年さかのぼって七百万税金をとる。過少申告加算税をそれに上乗せをする、こうなった。つぶれる。税務署のほうも知っているわけだから、あなたは一体どこに金を幾らやったか言ってくれ。言ってくれれば、もらったほうが過少申告なんだから、そっちから取る、おたくの会社から取りません。しかし言ってしまえば二度と再び仕事はくれない。村八分です。そこで会社はつぶれても言わない。あの男はいい男だ、よくがんばって言わなかったということになって金を回してくれる、荷を回してくれるというので何とかやれる。つまり一番弱いところに一番しわが寄っているのが現状なんですね。いまの中小、零細の運送事業という形のものは海上でも陸上でもそういう商慣行が成り立っているわけですよ。そうでしょう。だからいまのようなことが起こるわけです。法律以前の問題という以上に法律の運用は一体どこへいったのかということになる。つまりそれほど弱い中小の輸送業者、運送業者に対してよりどころに多少ともなるものを何ではずそうとお考えになるか。つい口がすべって適正運用されてないからというおことばもあった。適正運用されてないというのは行政機関の責任じゃ雇いのか。運輸大臣だって行政長官でしょう。そこは一体どこへいってしまったのだということになる。だから私は、大きいところは別として、そういう中小の、景気が下向いてくると成り立たなくなるところに、きょう、あす困るのだから、なおそっちにしわが寄るというふうに考えざるを得ないことはなさらぬほうがいい。だからその前にやはりどうすればそれが成り立つかの政策論争が必要ではないのか。将来の輸送形態を考えたら、かつての港湾の三・三答申じゃありませんけれども、事業の集約まで出てきましたが、やはりそこらのところまで突っ込んだ論争がなければ、簡単に許認可のほうへ持ってきてこういうものを突っ込んで出してくるというのは筋が違いはせぬかと言いたいというわけですよ。だからわれわれあまりそのほうを専門にやっている人間じゃないところにこういうようなしわを寄せて苦労をさせないで、運輸委員会になぜお出しにならぬかと言いたいところです。だからそこの弱さというもの、決定的に弱いという現実を大臣やはりお考えをいただいて、その弱いところをじゃ運輸行政の面でどうしてやるか。適正な料金、適正な利潤なんといったって、適正な利潤をもらえないからいまのようなことになる。そこをどうお考えになるかという点を言っておる。私も何も単に理屈を言うつもりはない。そういう弱い層を何とかしてあげたいと思うから、ものを申し上げている。そこのところを最終的に御答弁いただきたい。決して法律条文をあっち向いたこっち向いたと論争しているのじゃない。現実にそう弱いのだから、その成り立たなくなるところをどうすればいいか、ここの問題です。
  50. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 問題は、定額料金の問題だけで問題を解決でき危いと思います。ということは、問題はやはり需要供給及び経済原則でありますから、たとえば先ほど例として青森のリンゴのお話が出ましたけれども、青森からリンゴを持ってくる場合は幾つかの方法がありましょう。一つは鉄道、一つは飛行機、一つはトラック、この三つの方法があると思います。その中において生産者、いわゆる荷主のほうですが、荷主のほうは、どれによって運ぶことが一番安くつくであろうか、こういう点がまず原則だろうと思うのですね。おそらく自動車運送業者もこの法律に従って一々契約をしているとは思いません。そうじゃなくて、おそらく荷主と、鉄道はこれだけで運べるのだ、だからしてそれよりか幾らか安くなるかならぬかという、普通われわれが扱うところの商習慣によって話し合いが進められていくだろうと思います。私は現在の物価の問題を、ことにこういうようなものの値段の上において、その占める輸送料のコストが高いから、そこで物価が高いのだというふうには考えておりません。もちろんこれは関係はありましょう。問題は、いまやかましくいわれておるのは、その間における中間マージンの問題が大きくいわれているので、おそらく運賃の占める地位というのは、そう現在においては大きな問題ではないと思います。先ほどちょっと出ましたタクシーの問題にしましても、あるいは物資の輸送の問題にしましても、占める地位は決して少なくありませんけれども、それが物価高の最大の原因だということにはならないと思います。ただ、おそらくこういうトラック運賃のきめ方は、こういう条文がありますけれども、なかなか法律によって、お互いの事業者が、こう法律があるのだから、われわれは適正料金考えながらきめてくる、こう言っても、相手のほうはなかなか承知しないのでありますから、そこで標準になるものは、鉄道輸送で送った場合にはこうなるのだ、それより高いときは鉄道の輸送のほうで送ったっていいのだという荷主の議論にもなってくるのじゃないかと思います。したがって、いわゆる輸送機関の相互関係が一つは大きなファクターとなって料金がきめられるだろうと思いますが、ただ、それ以外には、もちろん若い運送業者などは積極的な気持ちもありまして、あるいはそういうような別なファクターでもって料金をきめる場合も起きましょうが、ただ問題は、この認可料金にいたしましても、その適正な認可料金が、いま言ったように、たとえば郡山から百六十俵程度の米を運んで適正料金になるかならぬか、そのきめ方にはもちろんあると思います。もし運輸省が、十トン車で百六十俵を運べる、そうして一台のトラックを使ってそれが一日の労働賃金を含めて収入として不適正である、こういう料金のきめ方であれば、これは運輸省の責任であります。しかしながら、これが百六十俵運んで大体適正料金である。にもかかわらず、それ以上の倍、二倍半のものを運ぶならば、これは別なファクターが作用しておる、そう考えなければならないと思います。私はこまかいそういう料金のきめ方についてここで御説明申し上げられませんが、今後とも、運輸省認可する場合には、いわゆる適正な利潤も含めた、そうして労働過重にならないような料金できめる必要がある、これはもう当然のことでありますが、いろいろ御意見がありましたら、それらを十分に含めて今後とも指導してまいりたい、こう考えております。
  51. 大出俊

    大出委員 時間が十二時を過ぎまして、大臣の時間の関係があると思いますから、ここでやめますが、ひとつ局長さんに承っておきたいのでありますが、これで終わりでございますけれども、冒頭に申し上げましたけれども、一般の小型貨物の免許をとっているところがあります。趨勢として大型化しつつある。前回の御答弁では、小型だけでやっているところはないというお話だった。ところが、実は私がいろいろものを頼まれて片をつけてあげたりしている幾つかのところで、大型は一つもない。全部小型。ただ、小型は二十台なら二十台あっても、大型がほしい、これは間違いない。その場合に、趨勢として大型化されるのだから大型を持ちたいが、免許をとり直さなければならない、申請しなければならない。ところが、例の新重量税等々との関係もあって、業界の諸君の口の端には、大型免許をとること等について、自動的にどうもそうなっていきそうである、だからいまここであらためて免許申請をしなくたっていい、やがてそうなるのだからという論議なども、諸君の論争を聞いていると出てきていたのでありますが、そこらは将来に向かって運輸省運輸政策上いまのトラック運送というものをつかまえて、大型化していく趨勢にあるのだ、だから二十台持っている小型、今度は大型を入れていく。免許は三・五トンの基準ですから、とらなければならぬわけですね。そこらのところの指導方針というものは、基本的にどうしろということで業界に向かって言っているのですか。
  52. 小林正興

    小林政府委員 ただいまお尋ねの小型あるいは大型、いずれも区域トラック事業をやっているものだと思いますが、これらにつきましては、先ほど出ました昨年の六月十五日の通達におきましても、そういったものについての的確な取り扱いという意味で通達を出してありますが、その中にも事業区域をどういうふうに定めるのがいいか、あるいは営業所ごとの配置車両数について事業経営者にもう少し運輸事業運営上の弾力性を持たせることができるかどうか、そうした観点から簡素化の通達も出したわけでございますが、その際に考えましたのが、小型事業とそれから普通車以上の区域トラックと二つの種類に峻別しておくことは現在の段階では必要がない。したがって事業としては区域事業者と小型事業者とを一本化するというのが改正の趣旨でございます。  それで、その際に、さらにもう一つの問題は、十六日の国会で、この席上で御答弁申し上げましたのは、いわゆる貨物自動車でございませんで、軽自動車でございます。これにつきましては輸送量がきわめてわずかだという意味で、これだけで事業をやっている者は現在ございませんので、それにつきましてはトラック業者の付属の運搬業ということで自由にお持ち願う、こういうような考え方整理をしたわけでございます。
  53. 大出俊

    大出委員 私の申し上げたいのは、ちょっと舌足らずでしたけれども、つまりいま非常に苦しい状態にある地場トラック業者の皆さんについて、やはりここまで来るというと、荷が薄くなっていく、荷動きが少なくなる、ますます苦しくなる。あるところにはありますがね。片っ端どうもおかしくなっていく今日の実情、私はそう言えなくはないと思うのですよ。そういうところに対して将来こうすべきであるとか、やはり何かそこに皆さんのほうで行政権限というものをお持ちなんだから、荷主との関係でますますバランスがくずれていく、そういう状況を知っておられるわけだから、だとすると、業界対象でもいいけれども、定額というものはなくなって、運賃値上げというものは、たとえば九州、北海道等でおやりになったり、品目、距離平均で二八・何%かお上げになって、昨年十一月値上げをおやりになっているわけですが、はたして、この料金値上げをやってほんとうに上げたことになるのか。片方では競争原理が働いて値下げとなり、片方では値上げをやって、これは路線じゃなくて区域だけですが、今度おやりになろうというわけですから、資料を整えてやれるところはやるというわけですから、値上げをやったって、一方で定額制をはずす、物価対策の見地から弾力性があるからというのだから、料金値上げに一体なるのかどうか、形式的には上げてみたって、中身は上がったことに一つもならぬ、こういう結果になってしまう。しかも、完全収受はできない、どんどん引き延ばされる、こうなっている現状を踏まえて、料金値上げをしなければならぬという気持ちが野村さんのところにおありになるようだから、そうでしょう、料金値上げをしようということは、苦し過ぎるように見えるから上げてやろうというわけですから、十何年間も上げていないのですから、そうでしょう、タクシーとは違う。そうだから、上げてやらなければ、上げたことにはならぬ。だから、そこまで突っ込んでものを考えた場合に、つまりこの種の法律改正が行なわれたら、定額がなくなっちゃった。それならば、何を一体上げたらいいのだ。いまの現状料金だって下げられるという趨勢にある。そこで片方で上げたって、じゃあ何を基準に上げろというのかということも出てくるのですよ。だから、そういう点をあわせ考え皆さん指導してやらないというと、ばたばたつぶれても競争原理だからしかたがない、それで済む筋合いじゃないだろう、こう思いますから、それを念を押したかったわけです。最後のところはどうお考えになりますか。
  54. 野村一彦

    野村政府委員 先ほど来大臣から答えましたように、力関係というものがございまして、運送業者は荷主に非常に力の面から弱くて、先生の御指摘のようにいわゆる法律認可された料金が守れないというまことに残念な事態がございますが、ただ実際に私どもが体験いたしましたケースで、これは中小業者相互の協力ということによって、その運賃のダンピングというものを防止しているケースはございます。それは、たとえば共同集金制ということをとっておるわけでございます。同じような荷主に同じような業者がいろいろものを運んでおります場合に、従来はダンピングで、たとえば七〇%しか取れなかった。それがある例によりますと、共同集金制をつくって、そしてお互いに荷主を公開する。それは営業上の秘密という点からいえば非常に私は事業者には勇気を要することだと思いますが、そういう人が何社か集まって共同集金会社をつくって、そしてそこに集金人を置いて、その人たちが公開された荷主のところに行って法定料金をもらうということになりますと、その経費は、おそらく私の知っております例では人件費も含めまして一〇%以下で済んでいる。そうすると、いままで七〇%しか取れなかった料金が一〇〇%とれて、それに共同集金会社の経費を引きましても九二%とかあるいは九一%とかいう料金が確保できている。そういうことがございますので、私は機会あるごとにそういう共同事業というようなことをやったらどうか、そのためには共同集金制というようなこともやったらどうかというようなこともすすめておりますが、なかなかこれはいろいろ商業上の都合もございまして、必ずしも大方の御賛成を得ておりませんけれども、それで成功した例もございます。したがいまして、私どもは運賃の改定ということを考えます場合に、いろいろコストアップの要因を考えると同時に、その実際に認められた運賃というものが完全に収受されるということに持っていくように努力しなければならないと思いますので、ただいま先生のいろいろの御示唆に富む御批判あるいは御教示というものを考えまして、さらにそういう中小業者の共同化、連携化あるいは構造改善ということを含めまして、もっと企業基盤が強くなって荷主と対等な立場で折衝ができるというような立場まで持っていくように私どもとしても努力をしたい、かように考えます。
  55. 大出俊

    大出委員 海運もそうですが、運輸省皆さんが、運輸省自体が船主、荷主にきわめて弱い、しみじみそう思います。私は八年、毎年毎年港湾問題を手がけてやってまいりまして、比田さん以来歴代の港湾局長さんとやってきましたが、あまりといえば船主に弱い、荷主に弱い。陸運もまたそうであっては相ならぬと思うのですよ。ここのところをほかならぬ橋本運輸大臣だからざっくばらんに申し上げるのですけれども、もう少し行政面で船主、荷主あるいはまた陸送の面の荷主に弱くならぬでいただきたい。そうして一番弱い、しわの寄りかねない中小の運送業者というところにやはり政治的な焦点を当てていただいて、そこを強くしていただく、つまり行政指導あるいは法律改正はそっちを向いてくれなければ困る。逆を向かれてはまことに困るので、そこのところだけ大臣に念を押しておきたかったのです。
  56. 天野公義

    天野委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ————◇—————    午後二時十四分開議
  57. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。鈴切康雄君。
  58. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうは、私、交通安全教育全般について文部大臣にお伺いをいたしたいと思います。  先般、春の交通安全運動が行なわれまして、そのときに人身事故は一万七百五十五件、死亡が二百五十三人、負傷者は一万三千七百九十一人と、一日平均の死者は四十二・二人という痛ましい記録が発表されております。今度の期間は六日間、おもに入学、入園を重点に、子供や老人の歩行者保護に主眼が置かれましたけれども、春の交通運動としては最悪に終わってしまったわけであります。特に自転車とそれから歩行者の死者の約七割が老人と子供ということになりますと、幼い子供の生命を守る上においても、交通安全教育ということがますます重要性を増してくると思うわけでありますが、文部大臣はこの点どのように考えられておられるか、まず御所見をお伺いいたします。
  59. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 今日の交通はほんとうにひどいものでございまして、われわれといたしましても、特に幼児あるいは小学校、中学校等の学童生徒の安全教育のためには努力をいたしておるわけでございますけれども、いまお示しのようなことでございまして、まことに遺憾なことだと思っておるわけでございます。  統計をずっと拾ってみますると、四十一年から四十五年まで幼児が、つまり学齢に達しない子供がかなり高い死亡率を示しておりますし、また老人が非常に多いようでございます。小学校の子供、中学校の子供も痛ましい犠牲者となった者もおりますが、しかし、一般に比べますると、多少ではございますけれども、その率は少なくなってきておるようでございます。これはやはり小中校における交通安全の教育がかなり徹底しているということも一面においてはいえるのではないかというふうに思います。でございますけれども、決して十分なものではございませんし、なお一そう努力をいたさなければならぬ、こういうふうに考えて努力をいたしておるわけでございます。
  60. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま交通事故にあわれた方々の大体の傾向をお話しくださいましたけれども、これは体育局長ですか、子供の交通事故の死者及び負傷者の実態と、過去五年間の交通事故の推移はどのようになっておりますか、その点についてひとつ。
  61. 木田宏

    ○木田政府委員 まず死者のほうから申し上げたいと思いますが、四十一年に日本全体で一万三千九百人の死者がございました際に、幼児及び小中学生の段階では千九百人でございまして、この四十一年を一応一〇〇といたしましてこの五年間の伸びを見てまいりますと、国民全体といたしましては死者が一万六千七百六十五人、一二一という指数の伸びでございます。それに対しまして幼児、小中学生の合わせたものにおきましては千九百九十七人というふうに、一〇五という指数でございまして、全体の伸びに対しましては伸び方は低くなっておるということがいえるわけでございます。その中で、特に小学校、中学校の児童生徒にありましては、たとえば小学校の高学年では指数が九一、中学生では九五というふうに、一般の伸びよりも少し逆に減っておるというような動きが出ておるわけでございまして、この死者の数が減りつつありますことにつきましては私どもも喜んでおるところでございますが、負傷者につきましては、死者に比べましてかなり高い比率で伸びてきております。四十一年を一〇〇といたしました国民全体の負傷者の数が五十一万七千でございますが、四十五年には負傷者が九十八万というふうに一八九という高い指数で伸びております。幼児、小中学生合わせたものをこれに対比してみますと、四十一年の七万七千から四十五年の十一万八千というふうに、やはり絶対数におきましてかなりの伸びを見せておりますが、指数は一五二でございます。しかし、死者の伸び等から比べましてかなり高い数字になっておるわけでございます。負傷者にありましても、小学校の高学年、中学生の段階にありましては、たとえば中学生のごときは伸びが一三五という数字でございますが、これを私どもといたしましては、少なくとも小中学生につきましてこうした痛ましい伸びがないように努力をしたいと考えておるところでございます。
  62. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 死亡の原因の中で交通事故によってなくなられる子供さんが非常に多いわけでございます。大別した場合の死因の中で、交通事故で生命をなくした子供さんは他の疾病に比べてどのような実態になっておりましょうか、その点について……。
  63. 木田宏

    ○木田政府委員 厚生省の人口動態統計をとってみますと、幼児期から小学校の前期あるいは高学年、中学校の段階、それから高等学校段階と、五歳段階で年齢を区切ってみましても、死亡原因の第一位に上がってまいりますのが不慮の事故でございます。たとえば一歳から四歳までの段階では実数で三万六千人ほど出ておりまして、不慮の事故の総数が千九百二十九名でございます。これは同じ時期の死亡者の三万六千という総数から比べてみますならばかなり一応低い数にはなっておりますけれども、幼児期の者は不慮の溺死とか水死等が一番でございまして、自動車の事故はそれに対しまして第二位になっております。小学校の前期におきましても、不慮の事故の数と申しますのは死亡総数に対してかなり減ってはまいりますけれども、しかし、この時期も、死亡原因を見てまいりますと、やはり水死、溺死等が第一位に上がってまいりまして、自動車事故が第二位でございます。それに対しまして、中学生の後半、満十五歳から上になりますと、子供たちの不慮の事故では圧倒的に自動車事故が多くなってくるわけでございます。この学齢期の児童生徒の年齢におきまして不慮の事故が比較的高い。また死亡原因の中でとってみますと、一歳から四歳までの段階では幼児の死亡の約一割が不慮の事故でございますけれども、五歳−九歳あるいは十歳−十四歳という学齢期にありましては、この死亡原因が、たとえば五歳から九歳までの段階では不慮の事故による死亡が約四割という高い比率を示してまいります。またこの十歳から十四歳までの五歳段階をとりますと、不慮の事故によります死亡原因が全体の死亡者の約三割という高い割合を示してまいりますので、これは幼少期にあります子供たちに対する親あるいは責任を持っております者、保育の責任あるいは指導の責任を持っております者が、こうした不慮の事故による死亡原因が高いということにつきましては十分留意してまいらなければならないことと思っております。ただ割合といたしましては非常に高く出てまいりますけれども、死亡数はたとえば一歳から四歳までの死亡総数が三万六千あるのに対しまして、五歳以上になりますと三千人程度にぐっと減ってまいります。これは子供の健康とかいろいろなこともかみ合ってくるわけでございますが、それにいたしましても、死亡数の中で不慮の事故と申しますのが高いということは注意しなければならないかと思っております。この不慮の事故の中で自動車によります事故が大体三分の一見当に当たっておるというふうに理解をいたしておるところでございまして、交通事故の問題はこれから十分留意しなければならぬと考える次第でございます。
  64. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま統計的にお話しをしていただきましたことをかいつまんで申し上げますと、子供の交通事故の推移というのは、昭和四十一年から四十五年の間に至る死者というものは比較的横ばいになっている、負傷者はやはり四十一年から四十五年にかけては急激に伸びている、その中で国民全体からの比率を見てみると、まだ小学校、中学校の生徒はそれに比べて幾ぶんか低い比率を示している、そういうことになると、交通安全教育の効果があがっているのではないかという判断に立っておられるというふうに先ほど言われたわけでございますが、それと同時に、今度は要するに普通の疾病に対して交通事故というものは非常に高位の地位を占めて現在いるわけです。そうなりますと、これはいわゆる現代病の一つだと、そのように私は私なりに考えております。そうなった場合に、現代病をなおすのはそれではだれかということになりますと、やはり何といっても交通安全教育にまたなければならないところが多分にあるのではないか、しかも疾病に対する者が医者とするならば、現代病に対するこの交通事故に対してはやはり教師が医者の役目をする重要な地位にあるのではないかと私は思う。また考えてみますと、教育というものはやはり何といっても人命尊重ということが基本にすべてが行なわれなければならない。そういう意味も含めますと、私は交通安全教育が現在の状態で必ずしも完全ではない、まだほんとにスタートされたばかりであって、実際に、効果は幾らかはあがってきてはいるにしても、まだまだ教育に対しては相当力を入れていかなければならぬではないかというふうに私は判断するのですが、文部大臣はどのようにお考えになりましょうか。
  65. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 もう私もそのとおりだと思います。決して十分だとは思っておりません。より充実した安全教育をやっていかなければならないというふうに思っております。私、毎年、大阪のある放送会社でございますが、そこで交通安全に対しての作文の表彰をやっております。したがいまして、その表彰を受けられた学童やあるいは父兄や、あるいは先生やその他の交通取り締まりの方々といろいろなお話をする機会がございますが、子供たちが作文によく書きますことは、自分たちもやらなければならないし、やっておるんだけれども、どうもおとなの者がかえって交通信号を無視してやったり、あるいはおとなのドライバーが非常にむちゃくちゃな運転をするのだ、だから自分たちが大きくなってドライバーになったときにはそういうことがないようにやらなければいかぬというような作文も出てまいるわけでございまして、確かに私もいろいろなお話を聞いておるわけでございますけれども、わりあいに小学校、中学校の子供は先生方の教えやあるいは父兄の教えを守ってやっておるのに引きかえて、おとなのほうに問題が非常に多いということを痛感いたしておるわけでございます。  それでございますから、私どもといたしましては、単に学校教育だけじゃなくて、やはり社会教育の面においてもこの交通の安全教育というものを考えていく、あるいは町ぐるみ、地域住民がその気持ちになっていただくということがまず第一じゃないかというふうに考えております。
  66. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人命尊重の立場からいきますと、交通事故はほんとうに皆無にしなくてはならない、私はこう思っておる一人であります。特に幼児あるいは小学校、中学校のそういう幼い子供が交通事故でなくなられて、そして同級生が花束を差し上げたり、あるいは弔辞を読んでおられる姿、これはまことに痛ましい限りだ。しかも幼い子供にその交通事故の問題が克明に印象づけられるということ、そういう意味においても交通安全教育というものに対してはより以上力を入れていかなければならない問題ではないか、このように私は考えるものであります。  交通安全を保つためにはいろいろの要素はあろうかと私は思いますが、たとえて言うならば、現在の道路の整備が悪いためにドライバーがハンドルを取られてしまって、そして交通事故を起こすとか、あるいは交通取り締まり規制という問題に対してもやはり厳重に今後やっていかなければならない問題もあるでありましょう。そういうものがありますけれども、何といってもやはり交通安全教育の確立ということがどうしても一つの大きな要素になってくる。そこで教科課程とかあるいは学校行事の中で今日どのようにこういうふうな交通安全教育がとられているか、その実態についてちょっとお話し願いたい。
  67. 木田宏

    ○木田政府委員 学齢に達しますまでの幼い子供のことにつきましては、これはまず親のほうで子供が安全に生活し得る、行動し得る、また、そのために保護するという親の責任を第一義に考えなければならぬことと考えておるわけでございます。学校におきましては新入生が入ってまいります四月に、安全に子供たちを学校へ登校させる、また下校させるということが最大の問題になってくるわけでございまして、学校におる間は比較的安全でありますから、その登下校を安全に通わせるということに学年当初はことのほか努力をいたしております。  そのための方法といたしましては、まず学校によりまして通学路を指定し、指定した通学路を一年生から六年生までのグループをつくりまして、グループのリーダーが責任を持って低学年の子供をかばいながら登校させるというような集団登下校の措置をとっておるところが過半数でございます。そのようにいたしまして、学校へ安全に来るという事実上のことを考えなければなりません。また、学校に参りましてからも、その登下校の指導をグループごとにいたしますほか、通路の歩行訓練等のことを特に学年の初めには重点を置いていたしておるわけでございます。要は安全に通ってくるということを第一義に考えるわけでございまして、そのために必要な時間組み等は、正規の一週間に一ぺんずつ一時間のこまをつくってという考え方ではなくて、むしろ学年の初め、学期の初め、そういうときに必要な時間をとりまして、グルーピングをつくり歩行訓練を重点的に指導する、こういうやり方がほとんどの小学校を中心にとられておるところでございまして、私どものほうではこれを一応正規の授業ではございますけれども——正規のといいますか、正規ということばにちょっと問題がありますが、学校の教育活動として行なっておることでございますが、国語とか算数のように一週間の時間割りに組むということではございませんで、随時必要な時間数をそのために当てるという特別指導の形で行なっておるわけでございます。  そういう特別指導の時間数は、現在小学校で平均いたしますと一年間に十二、三時間の時間数を当てておるのでございます。これは学校によりまして必要の度合いが異なってまいりますので、多いところは二十時間以上の時間を当てているところもございますが、まず第一義的に子供たちを安全に登下校させるということに指導の重点を置いてまいります。その次に、先ほど申しましたように、クラブ活動の時間あるいは随時必要な時期に子供たちの歩行訓練あるいは信号による横断のしかた、あるいは小学生の高学年から中学生になりますと自転車の乗り方等の指導をまた適宜行なっておるわけでございまして、そういう形で学校におきましては交通安全教育を随時適切に行なう。文部省といたしましてもそのように指導をいたしておるところでございます。
  68. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かに特別指導というふうな考え方は私はわかります。わかりますが、しかし、特別指導ということになってまいりますと、たとえば保健科においては安全、事故の実態とかそういうことが取り上げられ、また社会科においては地域社会の交通、それから図画工作では規制、道徳においては交通道徳、モラルというような内容が織り込まれているわけです。  しかし、交通安全教育というものは、それなりにまた一貫性もなくてはならぬのではないか。ただ単にばらばらでありますと、どちらかといいますと、教科の中に片手間というような考え方になってしまうのではないか。時間のとり方も実際に平均して十時間から十二時間ということでありますけれども、多いところは二十時間以上をとっているところも実際にはあるわけです。それかといって、三時間ぐらいで済ましておるところもありますし、また場合によっては全然やらないというようなところもあるわけです。そういうふうな考え方、校長等の考え方、あるいは当事者のそれに対する熱意のあらわれ方によって、ずいぶんこの問題の取り上げ方が違ってくるのではないか、非常にその点を私は心配するわけであります。非常に交通事故の多いところであっても、あるところでは非常に熱心にやっておる、あるところはさほどやらないというような問題は、確かに先ほど言われましたように、特別指導という行き方は、交通教育に対して必要なあり方ではあるけれども、どちらかというと、流されてしまうような場合も考えられるのじゃないかというふうに非常に心配をするわけです。  私は、少なくとも交通教育は、片手間で教えるというのではなくして、教科課程と同じくらいのウエートあるいはそれ以上のやはり指導と訓練が必要ではないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、その点についての御見解をお伺いします。
  69. 木田宏

    ○木田政府委員 交通安全教育というのは、現実に子供たちが道路を安全に歩けるという生活問題だと思うのでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、学校では、子供が安全に来れるようにという現実を確保することを考えなければいけません。よって、学年の初めとか学期の初めに集中的にそういう時間を設ける学校が多いということを申し上げたのであります。  教科と同じようにという点につきましては、交通安全というのが、ただ知識を教えるということよりは、現実に安全に歩いて生活できるという現実を確保するという点に交通安全教育の主眼がありますために、毎週一時間ずつの時間を組んで、算数や国語のように組織的に教えていくだけの長さとか大きさというものが、他の教科と同じようにあるというふうにはちょっと考えにくいのでございます。そこで、現実に子供たちをしつけるという面で必要な時期に重点的な指導を行なう、またそのために地域社会の協力を求めるように学校当局が働きかける、こういう努力をいたしておるわけでございまして、統計をとってみますと、いま鈴切委員御指摘のように、指導時間が非常に少ないところもあるわけでございますが、これはやはりその地域との関連とか学年との関連等ということによると思いますので、そうした実態を勘案しながら実があがるような指導を心がける、こういう姿勢でいきたいものだと考えておる次第でございます。
  70. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、いま申し上げたいことは、要するに、各教科課程におきます問題は、大体社会、数学、国語、理科等の問題が、全部ある程度知識を教えていくという、そういう考え方でワクがきまっておるわけでありますけれども、安全教育というものは、一つは正しい知識と、やはり正しい行動という問題が伴わなければならないのであります。そうなりますと、正しい知識と正しい行動というものは、教科課程よりもより以上に、一つはむずかしい問題が私はあろうと思うわけです。そういう点において、時間が、片一方は二十時間以上もとって、何としても災害から子供を守らなくちゃならない、そういう熱意のある学校と、片一方は、やはり同じ地域の近くにいながら、時間もあまりとっていないし、さほど力を入れていないという格差がある。これは少なくとも是正をしていかなければならない。また場合によっては、へんぴなところだから交通教育が必要でないとは私はいえないと思うのです。それはなぜかといえば、当然、教育課程という一つの課程を経た、義務教育という課程を経た社会人にすべての人がなりますし、社会人になった場合には当然都会にも来るでありましょうし、交通道徳あるいは知識等を身につけていかなければならないわけでありますから、そういう点で、多少地域的な差はあるにしても、私はそのところがやはり指導のむずかしさでないかと思うのですけれども、そういう点について、文部省では「交通安全指導の手びき」を昭和四十二年に作成をされたわけであります。私はむしろこれは非常におそかったのじゃないかというぐらいに思っております。しかし、その内容等においても、実際におつくりになったわけでございますけれども、いまの交通事情あるいはいろいろの観点から再検討する必要が出てきているのではないか。すべてこの「交通安全指導の手びき」によって計画が各学校で練られるわけでありますから、お手本自体にやはり抜けているところ、改定をしなくちゃならないところがあろうかと思うのですが、その点についていかがでございましょう。
  71. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘がございましたように、現実に学校でどう取り扱うかというのは、時間が毎週きまって、教える内容がきまっているということでございませんために、かえってむずかしいということがございます。それだけに、安全に登下校ができ、しあわせに生活できるということを身につけさせるという観点から、いろいろな教科の中にも、これは道徳教育等も同じようなところがございますけれども、取り上げていただかなければなりません。その指導観点を取りまとめたものが「交通安全指導の手びき」でございます。  これをつくりましたあと、また指導事例その他も関係の日本学校安全会等から小学校、中学校別に出ておりますし、また、私どもも毎年関係者の会議あるいは指導会議を全国あるいはブロックで持っておりまして、常にその実情について現場の意見その他のフィードバックを求めておる次第でございます。各学校によりましてかなり現実の事情が違いますし、一律にいきかねる点はございますけれども、校長を中心にした伝達あるいは連絡の会議、教師を中心にした会合等の席で、意見の交換という過程を通じまして、現実の指導に適した意思の疎通をはかるという試みをいたしておりますので、当然そうした会議の中から、現在の指導の手引きにつきましても、足らない点その他をつけ加えるということは考えなければなりません。特に最近、学習指導要領を改めまして、小学校、中学校とも新しい学習指導要領で指導することになってまいりました。その際に、保健学習全体、これは子供の健康と安全のことを全般的に取り上げる学習課題でございまして、その保健学習の具体的な指導事例の中で、小学校、中学校ともそれぞれまた子供の衛生、安全ということの取り上げ方を指導する指導書をつくっておるところでございます。そういう一つ一つの現実を積み重ねてまいりまして、必要な改善その他は試みてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  72. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「交通安全指導の手びき」というものがそのようにして昭和四十二年に出されて、確かにいろいろ研究をしてみますと、また追加をしなくてはならない点もまた、理屈の上から考えて少し改定をしなくてはならない点もいろいろあろうかと私は思うわけです。そういう点において、当然改定をしなくちゃならないというその考え方に私は大いに賛成でありますが、しかし、現在それに基づいて年間指導計画を各学校が作成をして、それの指導に当たるわけです。それは基本的な交通安全に対する知識と実地訓練、それともう一つは地域の特殊性にかんがみての交通安全指導という問題を加味して、各学校でこういう計画書をつくらなくてはならないと私は思うのですけれども、その計画を作成して指導している学校もありますし、また作成していないが指導しているという学校もありますし、またつくっていないというところも実はあるわけであります。そういう非常にぱらぱらの状態に置いてはたしていいものであろうかどうか。それは先ほど申し上げましたように、各指導訓練の中においての時間のとり方にも、熱心なところは相当の時間をとってやろうという意欲もわくだろうと思うのであります。この問題は非常に地域の特殊性等があるわけでありますけれども、少なくとも学校の取り扱い方の格差あるいは校長の判断等での違いあるいは担任の教師のものの考え方、こういうものでずいぶんいろいろ変わってくると思うわけであります。こういう点について、少なくとも今日、交通安全教育がこのようにして重大になってきた以上においては、義務づけてやらせる必要があるのではないかというふうにまで私は考えておるわけなんですが、文部大臣、その点どういうようにお考えになりましょうか。
  73. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 確かに地域によりまして、多少の交通安全教育の不徹底あるいは徹底しているところの差があるということは考えられるわけでございますが、しかし、今日一番何が問題かといったら交通による傷害だ。そしてそれは子供たちがけがをしたりあるいはたまになくなったりという痛ましい現象が出るばかりではなくて、おとうさんやおかあさんがそのことによってなくなる、つまり交通遺児の問題も起こっておるわけでございまして、これは各学校、各学校長、担任の先生、父兄、かなり関心の高い問題でございまして、その意味から申しますと、各学校においてそれぞれ苦心、苦労を重ねておられる。確かにそれはまだ不十分なところもあろうかと思いますが、全体としては最近、交通問題というものを学校教育の中でどうやって位置づけるか、あるいはとらえていくか、努力をするか、不十分なところがないかということはやっておられると思いますし、また小学校の段階におきましては、毎日子供たちが学校に通ってくるし、また帰っていくわけでございますから、そのことは先生の頭の中から離れない問題だと私は思います。  これを教育的にどういうふうに創意くふうをされるかということにつきまして、手引き書等も備えておるわけでございますが、新たないろいろの交通状況等の変化からあるいは手引き書等を改定するということも今後十分指導してまいりたいと思いますが、私たち全国の教育長会議であるとか市町村の教育委員会とかいうようないろいろの会合がございます。そのときにも交通安全の問題は必ず話題になる問題であります。しかし、そうは申しましても先生御指摘のようにまだまだ不十分な点もございましょうから、今後御指摘のようなことを頭に置きながら十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  74. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 せっかく「交通安全指導の手びき」が出されまして、それは交通禍から児童を守ろうという前向きの姿勢であるわけですから、それが全体的に学校に同じように熱心に取り上げられるという方向に今後進んでいかないと、ただ指導だけで、こういうものができたからこれを参考に各学校でつくりなさいということでは、いまだに指導計画が作成されていないところすらあるわけでございますから、そういう点については義務づけるぐらいの熱意をもって文部省は臨まなければいけないのじゃないか。それくらいの熱意を示すことによって初めて今後の交通安全教育という問題に対して相当のウエートが置かれたというふうに判断されるのじゃないかと思うのですが、もう一度……。
  75. 木田宏

    ○木田政府委員 現在ほとんどの学校で、これは九九%以上でございますが、交通安全指導の時間を特設いたしまして、その時間数には若干の増減がございますけれども、半数以上の小中学校は、十時間から十五時間の時間を特設いたして指導いたしております。その指導内容は、先ほども申し上げましたように、歩行のしかたあるいは車の乗り方、車がこういうふうに流れるという動き、こういうことを内容として指導いたしておるわけでございます。先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、毎日子供たちを学校に安全に連れてくるということは学校の第一義の指導課題でございますから、時間数を何時間というきめこそございませんけれども、私は交通安全指導というものが学校で行なわれております健康診断以上に現に行なわれておるということを考えておるのでございます。その内容をどのようにして高めていくかという意味でのくふうと努力は、私どもが今後していかなければなりません。また個々の学校ごとにどのようにつとめましても、子供の事故がほかの交通事情との関連で起こるという関係もございます。指導内容に合わせまして通学路の指定をし、あるいは通学時間に道路における車の交通規制をする、通行禁止の措置をとる、こういうことまで加えてまいりまして、何とか安全に子供たちが登下校できるという実態を確保したいというふうに努力をいたしておるところでございまして、通学路の指定の距離は、現在十一万五千キロほどの通学路が指定されておりまして、その中で全国的には四千五百カ所ほど登校時間の通行禁止措置をとっております。その総延長が二千三百キロほどになっております。個々の学校を全国的に調べました結果、まだこの通行禁止個所では足りませんで、もう少し延ばしていく必要があるわけでございますが、学校におきましてはそれぞれその学校の置かれた特性にかんがみまして、子供たちの指導とともに、こういう通学路の指定あるいは警察その他の御協力によります車の禁止措置等によって何とか安全の実態を確保する、こういうことに一段と努力を加えたいと存じておるところでございます。
  76. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは社会教育局長ですか、若者の必ず通過する関所である教育機関は義務教育課程だ。それだけに、学校においての交通安全問題に真剣に取り組む姿勢が必要であることは当然だと思うわけです。現在の青年層、中年層、高年層が交通安全教育を受けた場所と学校教育がそれに対して果たした役割りがどのようになっているかという問題もまた私は非常に大切な問題ではないかと思います。なぜかというならば、一つには運転をしている人々は少なくともこの層の人たちであります。ここに新聞にもありますように、十八日の朝、埼玉県の蕨市市内の県道で公園にバレーボールをしに行こうと横断歩道を通りかかった女子小学生四人が、無謀運転の乗用車にはね飛ばされて一人が死亡、三人が大けがをしたというなまなましい事故が伝えられておるわけでございますが、そういうふうに運転をしておる人たちは少なくとも青年層であり中年層であり高年層であるわけであります。それから二つには、学校の教師もいわゆる青年層であり中年層であり高年層に含まれるわけであります。また三つには、子供を保護する立場にある親もまたこの層の中に含まれるわけであります。そういうことを考えたときに、文部省としてはその実態を掌握して認識を持つということはこれまた大切なことと思いますけれども、どのような調査と認識を持っておられますか、この点についてお伺いします。
  77. 木田宏

    ○木田政府委員 実は先生のお持ちの資料、事故の統計数字等をごらんいただいてもおわかりになっておることと思うのでございますが、事故の件数一つとってみましても、小中学校在学中の子供たちは少のうございますけれども、そこで教育を受けて高等学校に進み、高等学校を卒業する年齢になりますと自動車によります死亡事故数というのが非常に高くなってまいります。そして実は十八歳から二十五歳ぐらいまでの年代をとりますと、死亡総数の約半数が自動車事故と自殺という一位、二位の死亡原因で占められるという状況でございまして、これは私ども青年指導のあり方から見まして非常に大きい問題である。せっかく小中学校で勉強をし、また高等学校まで学んで世の中に出たときに、その青年たちが自分の身を安全に処することができない、しかもそれが病気ではなくてこうした事故で、みずから起こす事故あるいはみずから遭遇する事故で高い死亡原因になる、負傷原因になるという点につきましては、私ども青年指導の問題としても、あるいはそこへ参りますまでの一般的な教育指導の問題としても、非常に大きいことであるというふうに思っております。  先ほどやむを得ない用事で社会教育局長退席いたしましたが、私も前職社会教育局におりまして、何とかこういう問題を母親たちの集まりあるいは青年のグループの際に呼びかけて、自分たちが世の中に出たときに危険にあわないだけでなくて、人もまた危険にあわせることがないという、そのルールにのっとった行動ができるように自覚を持ってほしいというふうに訴えたものでございますが、そういう観点から、社会教育にありましても青年学級あるいは婦人学級等の学習活動の中で、安全、衛生という問題を相当時数取り入れて、各地での学習活動を展開してもらっております。現在婦人学級はことのほか幼児の指導もありますから大切だと考えておりますので、一万四千学級ほど婦人学級があるように承知いたしておりますけれども、そういう学習活動の中に何時間かはこの安全と衛生、子供たち、青年たちの行動のとり方という問題を取り上げてもらっておるような状況でございまして、これからの社会教育の活動内容といたしましても、青年期におきます交通問題、交通安全、それから特に婦人の場合には幼児に対します保護ということを十分に指導しなければならぬ、こういうふうに考えておるところでございます。
  78. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ちょっと、いま学校教育の中における交通安全の教育、この主体になるのはやはり学校の先生でございます。先生方に対しましては、たとえば文部省といたしましては昭和四十二年度から交通安全指導者講習会というものを全国に設けまして、そしてこれをやっておるわけでございます。あるいはまた学校安全研究協議会というものもやはり昭和四十二年度から実施いたしておるわけでございまして、特に交通安全指導管理を含む学校安全に関する研究調査あるいは学校保健安全講習会、これは昭和四十五年度から実施をし、全国に四十七会場、全国の会場で約一万四千人、会期は二日間でございますが、保健、安全に関する指導事項について講習をする。あるいはまた日本学校安全会関係でございますけれども、学校安全研究会、これは昭和四十年度から実施をいたしております。あるいは安全教育指導者講習会等もやっておるということでございます。  それからまた家庭教育におきましては、家庭におきまして親が子に対して安全教育を行なうということは当然なことながらやはり大事なことでございます。現に親の学習の場といたしましては全国に一万六千カ所、これは昭和四十四年度の調査でございますが、家庭教育学級が開設されております、そこでの講習、学習内容の一つといたしましては、子供の安全に関する問題が学習をされております。また、これに対しまして家庭教育学級に補助金をわれわれは出しておるわけであります。あるいはまたその学習がより効果的に行なわれるための参考教材といたしまして、文部省といたしまして、幼児の運動と事故防止、あるいは交通安全の指導などの録音教材を作製いたしまして、これを無償で配付しております。千三百七十四万円、これは昭和四十五年度でございます。さらに文部省企画の家庭教育テレビ番組、これは昭和四十五年から開設をいたしまして、特に交通安全に関する番組といたしまして「魔の場所魔の時間」あるいは「右を見て左を見て」というものを制作委託をいたしまして、全国に放映して家庭における交通安全教育の参考に供しております。  こういうわけで家庭、学校、そしてまたいまお話しの社会教育の面におきましては青年学級、婦人学級を通じてやっておる。しかし、これとてもまだまだ十分だとはいえないということで、私たちといたしましては総合的にこれをとらえていかなければいかぬ、また同時に、単に文部省だけでこれをやりましてもいけないわけでございまして、警察庁その他とも連絡をとりつつやるということで、いま総理府を中心といたしまして総合的な交通対策というものを各省と連絡を緊密にいたしつつこれをやっておる。そして一応昭和五十年までを目標といたしまして、とにもかくにも死者あるいは負傷者というものが激減するような計画のもとに、いま山中長官大いにがんばっておるというところでございます。また国会におきましても、それぞれの分野において皆さん方の御協力を得ておる次第でございます。そういうわけでございます。
  79. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は私がお伺いしたのは、そういう意味内容ではなかったわけであります。現在安全教育を受けておられる子供さん、これは当然これから社会人になっていっても相当のモラルも知識も、それからまた言うなれば行動も身につけるわけです。ところが、中年層あるいは高年層あるいは青年層、こういう方々が実際に交通事故の加害者にもなるし、また言うなれば学校で教える側にもなるし、また一つは子供を保護しなくちゃならない立場にある、そういう方々がはたしてどういうふうな教育を受けているかという実態、それからそれを文部省としてはどういう認識をされているかということ、これは非常に重要な問題になるんだということを私はお伺いしているわけですけれども、それはいまここでお聞きしてもなかなかおわかりにならぬと思います。  そこで、私のところでは、交通安全対策の実態調査としての総点検を昭和四十五年の十一月に実施をいたしました。ここに特に交通安全教育という問題についてのいろいろのアンケートをとってみましたので、これはぜひ参考にしていただきたいと思うのです。  まず第一に、「あなたは交通安全教育をうけたことがありますか。」「それはどのような所でうけましたか。」という一つのアンケートであります。交通安全教育について、受けたことがないと答えた人が四七・一%と、受けたことがあると答えた人の四六・六%をわずかに上回っております。いずれにしても、約半数の人は、交通安全教育を受けていないのが実情でありまして、交通事故の増加が大きな社会問題となっている現在、交通安全教育体制の整備、そして全国的な交通安全教育体制の確立ということは非常に急務であるということですね。  それから教育の機関を見ますと、警察で受けたというのが四三・七%、最も多いわけであります。交通安全協会の主催によるものが三一・二%とかなり高い比率を示しております。一方学校におけるところの教育はわずかに九・六%と、かなり低率であります。PTAの主催が六・二、母親の会、婦人会等の主催が一・九、合わせて一七・七%、きわめて低率であります。  このように、学校及び地域の安全教育がおくれている原因は、交通安全教育を、警察など特定の機関が教えてくれるものとする誤った認識あるいは交通安全は自分たちの手で達成させるものという意欲の欠如などが最大の要因をなしていると考えられ、全国民的な交通安全教育体制の確立を早急に樹立しなければならないことを示唆している。これについてのデータはあとでもしお入り用でしたら私のほうで差し上げるようにいたします。  それから、「あなたは、現在、小・中学校で行なわれている交通安全教育についてどう思いますか。」「あなたが充実していないと思うのはどんな理由からですか。」ということについては、学校で行なわれている交通安全教育について見ると、「充実していない」と答えた人は二八・四%で、「充実している」と答えた人の二倍の比率を示しております。ここで注目されることは、「わからない」と回答した人が五一・六%と、非常に多かったわけであります。交通安全教育が学校でどのように行なわれているか知らない、あるいは学校の交通安全教育が家庭内に反映していないなどの理由によるものと考えられるが、回答者自身が交通安全教育とはどのようなものかといった認識に欠けている点がありました。  それから「あなたは、交通安全教育の内容に、なにが最も必要と思いますか。」あるいは「交通安全教育を、学校の正科目に入れる必要があると思いますか。」ということについて、交通安全教育の内容については、「交通道徳について」が六八・一%と多数を占め、交通道徳の高揚が強く指摘されております。しかし、交通事故の防止は、交通道徳の高揚のみで解決し得る問題ではないとする観点に立てば、交通安全教育に対する一般の認識が依然、片寄ったところにあり、十分理解されていない点もありますし、交通安全教育を正科目にする必要性を説いている人は六六・一%。  こういうふうに、この交通安全対策の実態調査、約一万人に私どもアンケートを出しまして、そして調べたこの内容は、先ほど申し上げました、やはり中年層あるいは高年層、青年層等の交通安全に対するところの教科課程というものを如実に語っているのじゃないかと思いますので、やはり国民全体の交通安全教育体制というものが私は必要になってくるのじゃないかというふうに思うわけであります。この資料につきましてはまた後日差し上げるようにいたしますが、その点いかがですか。
  80. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 非常に貴重な資料を作成していただいて、また分析をしていただいておるわけでございますが、ただ私ども考えますのは、やはり私どもが対象といたしております交通安全の教育というものは、学校教育を主体と考えなければいけない。それからまた学校を中心とした地域社会におけるPTAあるいは御父兄、住民の方々に対する教育を子供を通じてやっていく、あるいはそこの地域社会における社会教育を通じてやっていくということに一応限定されるわけでございまして、しかしそれだから、一体国民全体の交通安全に対する認識が不足しているのじゃないか、あるいは交通安全に対する国民の道徳が低下しているのじゃないか、あるいは青壮年あるいは中高年齢層の人たちがそれを身につけていないのじゃないかという御指摘は、またまさに御指摘のとおりだと思いますが、それはやはり政府全体としてとらえるべき課題であるというふうに思いますし、おそまきながら政府といたしましても、総理府を中心としてそれを総合的にとらえよう、つまりいまの先生方の御調査をどうやってこれから包含してやっていくかということ、交通安全教育——教育というのは文部省、それはそのとおりでございますけれども、一応は主体は学校教育を中心として、その周辺の教育にわれわれの責任の所在があるのではないかというふうに考えておるわけであります。
  81. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 交通安全教育というものは確かに義務教育ということが主眼になるかもわかりません。しかし、それを取り巻く環境、そうしてまた教育者、そういうものを総合的にやはり一つの教育体制として組んでいかなければ、今後効果がなかなかあがらない問題じゃないか、こういうふうに私は思いまして、より以上広域的な考え方に立っていま申しましたし、そういう意味において交通安全対策の実態調査の中に交通安全教育という問題を取り上げたわけでありますので、その点についてひとつまた参考にしていただきたい、こう思います。  時間もだいぶたったようでございますが、学校管理下の災害と管理外の災害というものは、やはり相当違った数字が出てきていると思いますけれども、交通事故の状況はどのような状態になっていましょうか。
  82. 木田宏

    ○木田政府委員 先ほど申し上げました学齢児の死傷数というのは、その九割以上が学校管理以外のように記憶いたしております。ちょっといまどのくらいの比率か数字でもって——また後刻御説明申し上げますけれども、私の理解いたしておりますところではほとんどが学校の登下校以外の、休日、土曜日の午後等の遊び時間、それも夕刻が一番多いというふうに承知をいたしております。どの程度の比率になるかは追って御説明申し上げます。
  83. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その認識は確かにそうだと思いますが、結局それは何かということになりますと、やはり遊び場がないということが大きな原因になっているようですね。ですからそういう点について、具体的にはどういうふうにいま文部省としてはお考えになっておりましょうか。
  84. 木田宏

    ○木田政府委員 いま特に都会地におきましては、子供の遊び場が非常に少なくなっておりまして、そのために文部省としては、これは社会教育局の事業でございますけれども、学校の校庭あるいは体育施設を子供たちのために土曜、日曜は開放して、青少年の健全な育成をはかるという事業を進めてまいっております。本年度もその予算はかなりふやしまして、校庭開放事業といたしましては二億五百五十万円の予算を計上いたしました。前年度一億三千九百万でございました。この事業の趣旨は、市街地の校庭を、本年度は約三千校でございますけれども、三千カ所開放することによって子供の遊び場をつくってやりたい、こういう趣旨のものでございます。この意味で、各市町村におきましても、この種の活動が非常に伸びてまいりまして、予算もふやしておるところでございます。  一方また、体育施設のほうで、スポーツ施設としての開放事業というものも一歩進めておりまして、学校の校庭にクラブハウスをつくる、そういう催しを今年度の予算でも思い切って拡充をいたしました。そして、いいモデルのクラブハウスを各府県に一つサンプル的につくりまして、漸を追って校庭を体育指導のために使えるようないい事例をつくってまいりたい。一方また、学校の体育施設を中心にいたしまして、子供たちのスポーツ教室というものを開設するようにいたしたい。これは日本体育協会に補助金を出しまして、日本体育協会が都道府県の体育協会、そして末端の体育団体並びに学校の施設その他の体育施設を活用するようにタイアップをいたしまして、子供たちがスポーツのために集まれるようなスポーツ教室をつくりたい。ことしは第一年次の試みといたしまして、各府県に四教室でございますが、コースが五コースでございますから、二十コースずつ、そうしたスポーツ教室の試みを体育団体とタイアップして広げていこう、このようにいたしまして、子供たちが放課後思い切って遊べるような環境をつくっていく努力を始めたところでございます。
  85. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 学校の校庭開放、これはもうほんとうに子供たちとしては安心して遊べる場所の一つでありますから、これはもうほんとうに大切な問題だと思います。また歩行者天国等も、近ごろ交通を規制をして、そして安心して通行ができる、遊べるという場所ができたということも、これは私は非常に評価される問題だと思います。  あと、公園という問題になりますけれども、私は、交通児童公園というのは、これは非常に評価していいと思うのです。実は、私どもの大田区にも交通児童公園が二カ所か三カ所できまして、これはかなり前に交通児童公園というものをつくろうということで、全国的に回りましていろいろ調査したあげく、萩中とそれから調布に交通児童公園をつくりまして、これが非常に好評であるわけなんです。  そういうふうな交通児童公園というもの、これはおそらく文部省だけではないでしょう、厚生省等もかみ合わなくちゃならないと思いますけれども、この交通児童公園について、私はもっと地域的につくれる場所があるならば、少なくとも補助金を出しても交通児童公園をつくってあげるべきじゃないか、このように思うのですが、大臣、その点ひとついかがでしょうか。
  86. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 やはり児童のためのそういったことは、単に文部省ということだけじゃなくて、厚生省と連携をとりつつ、子供たちのための交通公園をつくることに協力を申し上げ、また努力してまいりたい、かように考えております。
  87. 木田宏

    ○木田政府委員 私どものほうでは、交通安全教育センターの設置費補助という事業がございまして、毎年各県一カ所ずつでございますが、交通公園に設置してありますような交通安全施設を、あるところは校庭の中に、あるところは学校の外ででありますけれども、いまお話しのような公共の施設あるいはみんなが使える施設に設置をいたしまして、子供たちの教育に資しておるわけでございます。四十三年度からもう続けてきております。いま御指摘になりましたような御趣旨に沿って、学校を中心ではございますけれども、それも校庭の中という意味でございませんで、子供たちのためにいまのような施設を広げていく試みを続けておるところでございます。
  88. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 交通児童公園というのは、これは確かに子供たちがもうそこで遊びながら交通教育を身に体しているという姿、これは私は非常に評価をしているわけであります。それで、いまの交通安全教育センター、これは要するに、児童のためのいわゆる交通安全教育をするための施設だというふうに考えたわけですけれども、私はやはり今後少なくとも、教師がこういう交通安全教育に取り組むために相当資料とかあるいは分析とか、それからまた勉強とか研究をしなくてはならないと思うのですけれども、そういう意味における交通センターというもの、こういう考え方はございませんか。
  89. 木田宏

    ○木田政府委員 教師のためには、いろいろと先ほどから話題に出ております「指導の手びき」を設け、発行をし、また講習会等を開催いたしまして、その認識を高め、指導内容を高めるという努力をいたしておるところでございますが、実はそのためにも、適切な事例あるいはスライド、そういうものを取りまとめて教材をつくるという必要がございますので、民間の団体ではございますが、交通安全教育協会にそうした指導資料の調査研究費を委嘱費として出して為るのでございます。この安全協会は、ただいま御指摘がございました教育者を中心にいたしまして、子供たちの交通安全教育のために役立つ仕事をしたいという民間団体でございますが、そういうところに研究の委嘱費を出しまして、教材、教具としてもどういうものがいいか、指導上便利であるかということを現にやっていただいております。国直接に施設を持つという考えは現在のところございませんけれども、そういう積極的な民間団体とタイアップいたしまして、十分な指導資料あるいは指導の体制はつくっていきたいというふうに考えておるところでございます。  それから、先ほど申し上げました各府県に補助をいたしております交通安全教育センター、これまた子供たちの指導のみならず、そこが教師の講習会その他の指導の場所にもなるわけでございますから、私どもも、その意味で、指導の教材、設備等の整備は一段と推進したいというふうに思う次第でございます。
  90. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 義務教育費国庫負担法によりますと、国は二分の一、地方自治体が二分の一ということで教材等の購入が行なわれるわけでありますけれども、模擬の信号機あるいは掛け図、スライド、標識あるいは自転車等の購入なんですが、これはどうしても交通安全教育には必要な教材になってくるわけでありますけれども、しかし、その学校、学校によってものの考え方が違いまして、必ずしもこれを教材として取り上げるというふうに考えないところもあるわけでございますし、また、地方自治体では非常に窮屈なところもあるというような状態なんですが、少なくともこういうふうな教材については、私は各学校を文部省としては総点検をしていただいて、ないところにおいてはどういう理由でないかということを調査されて、そうしてやはり教材等においても相当充実をしてあげる必要があるのではないか、こういうふうに思うのですが、その点について伺います。
  91. 木田宏

    ○木田政府委員 御指摘のように、義務教育の学校の教材費につきましては、義務教育費国庫負担法によりまして、教材整備の十カ年計画を立てて、昭和四十二年度からその教材整備に努力をいたしておるところでございます。その教材機器の中には、交通安全のための掛け図、信号機、交通標識等も基準としてあがっておりまして、所管の初等中等教育局におきまして、義務教育の学校で整備すべき教材の基準を明示いたしております。その中でどれから優先的に整備するかは各自治体あるいは学校にゆだねられておるところではございますけれども、文部省といたしましては、一応必要な教材の整備基準というものを明示して、この補助事業を実施いたしております。いま私こまかい数字を持っておりませんけれども、十分初中局とも連絡をいたしまして、この教材の整備について遺憾のないようにしたいと考えます。
  92. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実はこの間新聞に、四月の十五日の「静岡ニュース」の中に「安全教育に専任教師」というふうな見出しで、「静岡市内小・中校交通事故一掃めざし」というようなあれが出ておるのですが、これは非常に画期的な行き方であり、その熱意というものは評価されるのじゃないか。やはり専任教師による安全教育の徹底がもう必要な時代になってきたのではないか。教育分野での正式な制度化というものを文部省ももう取り上げる時期じゃないか。なぜかというならば、先ほども申し上げましたように、青年層あるいは中年層、高年層は比較的こういうふうな安全教育というものを受けていなかったという方々がおられますし、むしろいまの学校の場合においては生徒のほうが先生よりよくものを知っている、先生が間違ったような教育というとおかしいですが、知らないため非常に戸惑っているというふうな姿が見えるわけであります。そういう点からいうならば、やはり専任教師を設けて、その教師がたとえば警察、交通安全協会等との連絡を取りつけながら安全教育を具体化して、各学級主任を通じて児童あるいは生徒を指導していくという時代にもう来たのではないか。ただばらばらに、その教師の力の差のためにいろいろちぐはぐして交通安全教育がスムーズにいかないというのでなくして、もう専門的な立場で教育する人が必要であると私は思うのです。この間新聞にその点が書かれて、なるほどさすがに静岡のほうはこういう点については相当進んでいるなという点を見たのですが、文部省としてはその点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  93. 木田宏

    ○木田政府委員 子供の交通安全のためには学校の教師のみならず、非常にたくさんの方々の御協力をいただかなければなりません。もっとも交通一般ということになりますと子供のことだけではございませんが、交通安全のための指導員といわれております者が、これは府県市町村の職員のほかに教育委員会、学校あるいは安全協会、町内会、PTA、特にPTAなどは登下校の際に、これは四十四年度くらいの数字だったかと思いますが、九万人前後協力をしてくださっております。交通安全のために指導員として指導をしております数は全部で二十六万強というふうに承知をいたしておりますが、その中で一番大きいのがPTAでございまして、その次に婦人会の方々指導、協力をちょうだいをいたしております。ただこういうそのとき好意で積極的に御協力をくださいます者のほか、それらの連絡役と申しますか中心役になる専任の職員もあったほうが望ましいには違いないと思います。教育委員会、学校の関係でも、この指導員として積極的に参加をしております者の数が、七千三百という数字があがっておりまして、全国的に見ますと、それぞれの地域で中心的に働く人が、ある場合に学校の先生であり、ある場合に教育委員会の職員である、ある場合に警察の職員であるということがこのデータ等からうかがえるわけであります。もちろん静岡のように積極的に関係者と協力をして、学校の教師が先頭に立つということは非常に望ましいことでございますが、ほかの地域にもこうした数字から見ますと、相当程度のことが行なわれておるというふうには理解はいたしております。しかし、その実は死亡者の減だとか負傷者の減となってあらわれてこなければならぬわけでありますから、私どもこういった関係者の協力を一段と高め、職員が必要ならば、必要な方々に特別な任務を負荷するということは、また考えてまいりたいと思っております。
  94. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間もだいぶたちましたので、最後にお伺いいたしますけれども、現在の教育界では、交通問題の重要性というものについては十分に承知はしておるわけでありますけれども、実際にそれではどういうふうにしたら交通事故が減るかという、その資料の不定というか、研究というかそういうことがまだまだなされていないというところに、私ずいぶん大きな問題があろうかと思います。実際にそれではどこから手をつけていったらいいかという点についても、まだ研究をする余地があろうかと思います。しかし、少なくとも児童の生命というものは、教育行政の根幹をなすものである。生命の尊厳を訴えるということは、やはり教育行政の根幹をなすものである。その教育行政の根幹をなす交通安全教育というものに対して、幼い子供が生命を落とされるということに対してもほんとうに皆無にしていかなければならない。またその努力も必要ではないかと思うわけであります。  最後に文部大臣に、交通安全教育というものを私はさらにさらに今後研究もし、そうして予算もかけ、あるいはどんどんとそれに対して前向きの方向に持っていかなくちゃならないと思うのですが、文部大臣の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  95. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 交通安全教育につきましては、子供たちの生命を守るということ、そうしてまたその子供たちがおとなになった場合にも、自分がドライバーになっても死傷者を出さないというようなこと、それが非常に大事なことでございまして、交通安全教育の学校教育の中におきます大事さというものは、はかり知れないものがあると思うのであります。私どもといたしましても、今後とも十分この点に留意をいたしまして、予算面におきましても、また指導上におきましても、実際上の活動におきましても万全を期してまいりたい。そうして一人でもそういうような死傷者がないような段階まで持っていかなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  96. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる二十二日木曜日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十九分散会