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岩田参考人 私は、消費者の
立場から、今回の
公衆電気通信法の一部
改正の
法律案に対して
意見を述べたいと思います。
第一点は、今回の
改正の中に盛り込まれております
電報料金の改定についてであります。現行まで十字で打てばそれなりに支出を防ぐことができた、そういうものを、今度は二十五字までという制限に変えることによって一挙に百五十円に上げるということにつきましては、これは十字で三十円で済んだ市内
電報が、たとえ十字であっても百五十円払わなければならないという結果に追い入まれるわけでありまして、したがって、これは一般の
企業におきましてはとうてい考えられない、いわゆる
公社であるからこういう売り方をすることができるという、消費者にとっては非常に迷惑な売り方、商法であると思うのであります。これは、食品に例をとりますれば、一方的にメーカーが、いままでは小袋詰めであったものが今度は一箱買ってくれなければ売らないという商法の転換をしたというのと同じでありまして、通常の
経済社会においてこのような一方的なさら盛りの売り方というのは、それを必要としない人については非常に迷惑な売り方であるわけであります。したがって、消費者にとって
電報という存在が、非常に緊急な場合に簡単に連絡をする方法として重要視されてきている存在の中で、こうしたものまでも
赤字であるという一言をもって値上げをしていくという
考え方について、多くの疑問を持たざるを得ません。
公共料金の抑制をするということは、国会においても
政府の最高責任者が
国民に向かって幾たびか公約した事柄であるはずでありまして、
赤字であればすべて黒字にしなければならないとするその
考え方と、
政府の最高首脳部が
国民に対して約束をしたそのことと、どちらが重要なんだろうということを実は私どもは疑問に思うわけであります。すべてを黒字にするまで値上げをしていくということでありますれば、
政府が公約をなさいました
公共料金の抑制というのは不可能な話でありまして、単にこれは郵政の
関係だけではなくて、すべての独立採算の原則、受益者がすべてをまかなっていくという
考え方については、
あとでもう少し触れたいと思いますが、消費者にとっては非常に重要な、そして議会制民主主義をこういう
関連の中でみずからぶちこわそうとなさろうとすることに対して、私どもは心配をいたします。議会制民主主義の信頼は、やはり
国民に対する
政府公約をまず守るということから始めなければ回復できるものではないと信ずるからであります。
さらに、
現状維持で
電報の
赤字をそのまま
負担していけという思想は私どもも持ってはおりません。しかし、
電報の取り扱いについて最大の
赤字といわれます
人件費の問題につきましても、いわゆる
電話の潜在需要を満たすという約束が
公社において積極的に果たされていたならば、いわゆる
電話を通じて
電報を取り次ぐという方法も決して不可能ではないわけなんでありまして、またはもよりのところに
電話で取り次ぐ、そういうような
合理化をはかる余地はまだまだ残されておると思います。またこういう
人件費のかからない
電話電報というような取り扱いを優遇するという
考え方が出てきますれば、必ずしも人間が配達をしていかなくても済む地区は多くなり、そして部分的に人間が配達しなければならない特殊な地区について総体の中でやはりこれの採算をとっていくという姿勢をぜひ望みたいわけでありまして、
赤字になればすべて取ればいいんだということになりますれば、これは政策も何も不要な存在になってしまうと思うわけであります。
それからその次に、
広域時分制の実施についてでありますが、現行の市内通話の度数制を三分刻みで取っていくということにつきまして、私どもはきわめて困った
事態だと考えております。これはすでに実施をされました公衆
電話の三分打ち切りによって、出先から通話をしようとする人々は非常に迷惑を受けているわけでありまして、議事録によりますると、
郵政当局は定着をしつつあるということを申されておりまするが、これは一方的に自動的に打ち切られているためにやむを得ずもう一回かけ直さなければならないということが繰り返されているにすぎないわけでありまして、これを定着ということに見る
郵政当局の感覚のズレは、全く私どもとしては迷惑な話であるといわざるを得ません。三分でかけるためには、まず向こうへ、連絡個所に
電話をかけて、そして何分後に
電話するからまとめておいてくれと言ってもう一回かけなければまともな話は通じ得られない、そういう不便さをわれわれは
現実の問題として強制されているわけでありまして、これが今度は住宅用
電話――公衆
電話の場合には長話の防止ということで押しまくられたわけでありますが、今度はそういう心配のないいわゆる住宅用
電話において料金で強制されるということについては、これは通話をする者の
立場といたしましては非常に迷惑な話であります。さらに、データによりますると、
公社のとりましたデータでは、通話の平均が百十一秒と示されており、説明をされております。百十一秒であるならば、言うところの長話をなくせという御
主張は、このデータから見る限り全く矛盾しているわけでありまして、三分間以内の平均値が出ているそういうデータを示しながら、片方において
電話の長話にかかわるしつけの問題みたいな話が
展開されてきている。また別なデータでは、増収が百六十億見込まれるということが出されておるわけでありまして、これらを一緒に考えますと、一体、三分以内の平均値であって、それがなおかつ三分ごとの改定をすることによって、どうして百六十億が浮くのであろうか。ここらの
関連については非常に疑問を感ぜざるを得ません。特に先ほども申し上げましたように、これらの疑問を残したまま、たとえばの話でありますが、一つのデータをとってもこういうような矛盾が存在する。それが議会の中で十分資料
提示やその他のことが
検討されないままにもし採決をされ、成立をしたというようなことになってまいりますれば、一般
国民の議会
審議に対する信頼感はますます失われるということを特に申し上げておかなければならないわけでありまして、諸先生方の十分なる御
検討をお願いしたいわけであります。
それからその次の問題といたしまして、「試験実施」という問題が附則の中で書かれておるわけでありますが、この処置については、私どもは重大な関心を持たざるを得ません。いつ、どこの地区が指定されるのか、これは
電話をかけるほうの消費者の
立場に立ちますれば、全く一方的に
公社がきめることができる。郵政大臣が認めさえすればどこの地区でもかってに選択をして指定することができる。指定されたところは新料金で払わなければならないという義務を生ずる。これは無差別爆撃を突然受けるような心境でありまして、一体こういう処置が公然と認められてくるということについては、他のものについてもこういう慣行ができたらたいへんなことになる。われわれの仲間の中にもこれは
経済ファッショだ、官僚ファッショだという声すらあがりました。このような
法律の中で一部分の人
たちだけが抜き出されて被害をこうむるというような
立場に立たせられるということは、法の公平のたてまえからいっても、またこの
法律自体の第一条の精神からいっても、おおよそ考えられない事柄がこの中に組み込まれてきているということについて、これが実施されれば、おそらくわれわれのいままでの討議の中で参加した人々、消団連傘下の、特に団地自治会、そういうところを中心とした指定地区反対運動は必ず起きるといわざるを得ないわけでありますし、また
民間団体におきましても、これの
法律的な裁判上の争いも
検討せざるを得ないというふうに言われている重大な個所であるということをお伝え申し上げておくわけであります。
それからその次は、前後いたしましたが、
電話設備料の値上げについてであります。これはある日、
法律の
改正によって価格が変わった。そのことによって、いままで長いこと一方的に待たされていた人
たちは新しい
基準によって支払わなければならない。そういう人々に対する考慮というものがやはり払われてしかるべきだと思うわけであります。それはどこかで実施をしようとすれば、当然そういうボーダーラインにかかる者はおるわけでありますが、少なくとも一年以上前から待たされているそういう人
たちに対する考慮は払われてしかるべきだというふうに考えます。ここいらはどうか
審議の中で――申し込み者のせいではなくて、
公社の都合でいままで待たされている人
たち、極端に待たされている人
たちについては、やはりそれなりの考慮が払われてしかるべきなのに、そういうことが払われていない。特にこのことを申し上げておきたいと思うわけであります。
次に、
データ通信のことについてでありますが、先ほど来三人の
参考人の
方々がるる述べられましたように、
データ通信の
関係については今後非常に重要な位置づけがされてくるであろうとわれわれも考えております。これを部分的にこうした
法律の一部
改正の手だてとして突っ込むのではなくて、
岡本参考人も言われましたように、まず基本法をつくって、そして
電報、
電話というような種類とは性格を異にするこれらのものについて、そのあるべき姿、規制しなければならない点、それからその
影響するいろいろな問題を、別個に
検討するに十分な存在であると思うのであります。
コンピューターが導入されることについては、それなりに便利さもまた進歩もあることは認めておりますが、反面、機械でありますから、そのために起こる事故も決して少なくない。
アメリカにおいてもそういう
コンピューター事故によるいろいろな困った問題が起きている。本来何でもない人が信用取引を中止されて、データの間違いである、または機械の故障であるというような事例が出たり、また
アメリカの話ではなくて、
現実に
日本でも料金計算において、全く留守にしていた期間の
電話料が通常より八万円も高く請求された。そして再三再四足を運んでその不在を証明し、かつそういう中で幾らかまけてもらって妥協せざるを得ない、そういうような消費者の
立場からすると困った事故も発生しておるわけであります。それらの点から、
コンピューターを否定はいたしませんが、
コンピューターにかかわる取り扱いはそれだけに慎重な、十分な
検討を必要としますし、また、こういった部分
改正ではなくて、基本的な基本法の制定等を通じて十分な御
審議をいただかなければならない点が多々残されていると思うのであります。
最後に、
受益者負担の問題について一言申し上げて終わりたいと思います。最近、この
受益者負担という原則がいろいろな方面で積極的に用いられております。高速道路をつくる、それについて
受益者負担としてガソリン税を財源とするというように、もうすべてが
受益者負担の原則で押しつけられてきている。これはまともに税金を払っている納税者の
立場からいいますと、
受益者負担という名前において税金が二重三重にかけられてきている、そういう感じを免れないわけでありまして、一体税金というのは何のために使われているのかということが問題になり、そして政治への不信へ次第につながりつつあるという事実を国会においてもぜひ重要視して考えていただきたい問題だと思うのであります。これは何でも利益を受ける者がすべてを
負担していくんだという原則でありますれば、そこにおける財政的な政策も不要でありましょうし、一番簡単な方法ではありましょう。しかし、それでいいのかということが、議会政治というものを中心にして運営されるという
国民感覚の維持のためには、やはりもっともっと
検討されてしかるべきだと思うのであります。
以上、大要を急いで申し上げましたが、結論といたしまして、特に今年に入りましてからの郵政
関係の値上げは、すべての面において一斉に行なわれているという感じを消費者に与えています。小包料金の値上げがつい最近行なわれました。また郵便料金の値上げがただいま公聴会にかかったという時点であります。さらに
電報、
電話、こうした料金が値上げをされていく。これらの事柄につきましては、
企業はそれらの経費増加を物の値段に転嫁して補給することは可能であります。しかし、これは明らかに物価の問題にはね返ってまいります。消費者は、住宅用の
電話の値上げだけではなくて、こうした一連の通信、連絡、そういうものにかかわる一切の経費増を商品で受け、また自己
負担の形で受けとめていかなければならない、そういう物価値上げの誘発という問題を非常におそれます。したがって、
政府が再三公約なさいました物価安定の大方針と
公共料金抑制の大方針を貫かれるという
意味におきましては、今回出されております一連の配慮の中でぜひこれらの問題を再
検討していただきまして、
国民にかかわる
負担の軽減に最大限に努力した上で、これらの問題の
提示をしていただきたいものだといわざるを得ません。したがって、消費者の
立場から、今回出されましたこの
法律改正につきまして、結論として反対であるということを申し上げざるを得ないことを非常に残念に思うわけであります。
意を尽くしませんでしたが、いま
国民生活が置かれているこの窮乏感なり反発感なり、こういうものをどうか十分におくみ取りいただきまして、十分な御考慮を政策の中で生かしていただきたいということを申し上げて、私の
参考意見を終わりたいと思います。