○米田
委員 私は、日本社会党を代表して、本法案に強く反対し、以下その理由を申し述べます。
第一の理由は、いま国民が政治に求めている切実な願いは何かということであります。それは物価の安定であります。早く物価を押えてくれということであります。本
改正案によれば、
郵便料金
平均三五%、高いところでは八〇%を越える料金値上げでございます。これはどう
説明を聞きましても、この国民の願いに反してさらに物価をせり上げ、国民生活を一そう脅かすこと以外にございません。われわれは絶対に認めることができないのであります。
佐藤
内閣の物価安定政策の公約違反という点についても、われわれはこれを見のがすことはできません。これは政治道義の面からも許されないことであります。すなわち、公共料金の一年間凍結の約束違反、主婦連合を通じて国民に約束したはがき、封書は値上げはしませんという約束違反などでありまして、国民の政治に対する不信は、そのまままさに政党政治への不信であり、議会制民主主義の危機でもございます。
私が
指摘したいのは、今日の物価引き上げの真犯人は、政府自民党であるということでございます。真に政府において物価を抑制しようとする意思と姿勢があるといたしますならば、それは、
一つ、公共料金を押えることであります。この
郵便料金の値上げをやめることであります。二つ、独占物価の管理価格を押えることであります。三つ、
協定料金を政府指導によって押えることであります。以上の三点を政府の責任で実行することであります。これは自由主義経済の中で、自由民主党の政権の中で実現可能なのでございます。
第二は、本
改正案は、
郵便法第一条の
郵便の公共性と全く相いれない独立採算、
企業主義、総合原価主義を強く導入し、しかも財政法第三条に違反する、憲法上の財政民主主義、租税
法律主義を無視するものであるということでございます。すなわち、
郵便法第一条は、単純明快に
郵政事業の公共性を規定づけています。日本の
郵便事業は今日百年の歴史を持ち、国民の中に最も深く親しまれて、そして高い公共性をもって貢献してきておるのでございます。この原因は、
郵便法第一条の規定が貫かれて今日に至っているからでございます。
現行
郵便法が制定されましてから、電信電話の分離、すなわち
電電公社の創設を迎えましたが、これも現行
郵便法に示される
郵政事業の性格の中では、アメリカの求める
企業性を追求することは許されないとして二十七年に分離したのではございませんか。要するに、
企業主義、独立採算はこの
郵便法の中には同居できないということでございます。それが今回突如として第三条の
企業主義、独立採算至上主義が導入されるのであります。われわれがこれをもって
郵政事業の公共性くずれたりとするのは当然と思うのであります。われわれは本
委員会の審議を通して、
郵便法第一条の趣旨に反しても相矛盾する第三条を挿入せざるを得ない当局の本音を知りました。すなわち、国営事業の上にあぐらをかく官僚のてまえがってな料金操作欲であります。
さらに財政法第三条との
関係であります。これは本
委員会で最も力点を置いて審議した問題でございます。すなわち、この
改正案の
関係では、財政法第三条に照らして二つのポイントがあると思うのでございます。
一つは租税法定主義の原則、憲法第八十四条の
関係、二つは国営事業に対する国民支配の原理に基づく国会の議決権と財政民主主義の原則でございます。憲法第八十三条にそれがうたわれておるわけであります。
私は、国民の権利擁護と憲法を守る政治家の責任から、そもそも憲法に由来して定められているこの財政法第三条に照らし、公共料金、国営
企業料金については、もっとシビアに運営されねばならないと思うのであります。今日郵政当局の、すなわち行政の側からの恣意的な解釈は許されません。今日、行政府の独善と横暴な法解釈、法の運用を認めることは、立法府の責任を放棄して国民の権利を売り渡すことになると思うのでございます。
また私は、
郵便料金は
国鉄料金や電電、専売などの料金と単純に比較して云々すべき性質のものではないと思うのでございます。
郵便の公共性は人間の生存権そのものに属するほど高いものであるからであります。われわれは
郵便料金こそ採算をはずしても、すなわち国の一般会計が当然負担しても公共性を守り、国民生活の最低
条件である
郵便という名の対話の制度を守るべきだと思うのでございます。
次に第三点でございます。業務の
正常化、サービスの向上について申し上げたいと思います。いま
郵政事業に国民が求めているものは
郵便の速達、早く届けるということ、確実な送達、この二つでございます。すなわち、基本的なサービスの向上であります。このことはまた今次郵政審議会の答申においてきびしく
指摘しているところでございます。注目すべきことは、
郵便審議会は、そのための施策について、
郵政省当局にその能力なしとみなしているところでございます。しかしながら、審議会は不信任する権限を持ち合わせておりません。そのため最後の試みとして、今回の答申に業務の
正常化、
労使の安定を前提
条件に義務づけて五つの問題提起をしたものと解すべきだと思うのでございます。われわれは本
委員会の審議を通じ、この点をただし、当局の積極的な諸策を求めましたが、ついにこれはむなしい
ことばのやりとりに終わりました。
すなわち、この法案の審議を通してはっきりしたことは、何
一つ誠意ある具体的な対策としての、
正常化に欠くことのできない
労使安定化、
改善策がないということでございます。あるのは依然として前近代的な、権力的な
労使対策、労務対策で、
職員を力で管理し、
労使対立の緩和をはかるどころか、逆に
職場での締めつけと人事権、経営権による分裂支配を強める姿勢をくずしていないということでございます。審議を通して、しばしば
大臣の口から、姿勢を正す旨の誠意をもった
答弁がございました。しかしこのことにつきましては、具体的な事実を求めましたが、その実証になる施策は何
一つ示されておりません。戦前の特高警察にも似た労務連絡官制度はやめない。
労使の意思疎通に欠くことのできない団体交渉の場を広げることについてもだめだと言う。思想
調査は行なわない、
職員の属する政党または
組合のいかんを理由とする差別人事をしないという断固とした保障も態度も示されないのであります。
労使関係は相対的であるといいながら、不当な労務対策の犠牲者である自殺者が出ても、まずみずからこれを認める勇気がないのであります。
全逓
組合員に対する過酷な大量処分はあっても、当局の反省はございません。はなはだしいに至っては、
組合弾圧の手先である管理者を自衛隊に体験入隊させてまで
組合弾圧態度を強めるなど、どれをとってみても、国民が望んでいる業務の
正常化と
労使関係の安定化に当局が積極的に
努力し、具体策を持って誠意を傾けているという何らの手がかりも得ることができなかったということであります。
要するに、業務の
正常化、サービスの向上をたな上げにしても安易に国民の負担だけを料金値上げによって求めるというのが今度の
改正案であると思うのでございます。
したがいまして、私
どもはこの
改正案に賛成することはできません。むしろこの際撤回することを再度求めまして私の討論を終わります。(拍手)