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1971-04-14 第65回国会 衆議院 地方行政委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月十四日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 菅 太郎君    理事 小澤 太郎君 理事 大西 正男君    理事 砂田 重民君 理事 古屋  亨君    理事 山口 鶴男君       亀山 孝一君    國場 幸昌君       中村 弘海君    中山 正暉君       村田敬次郎君    豊  永光君       綿貫 民輔君    下平 正一君       山本弥之助君    桑名 義治君       和田 一郎君    門司  亮君       林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   荒木萬壽夫君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      須藤 博忠君         警察庁長官   後藤田正晴君         警察庁長官官房         長       富田 朝彦君         警察庁交通局長 片岡  誠君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    西崎 清久君         文部省体育局学         校保健課長   橋本  眞君         通商産業省重工         業局自動車課長 大永 勇作君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君         労働大臣官房国         際労働課長   大坪健一郎君         労働省労働基準         局賃金部業務課         長       是佐 忠男君         建設省道路局次         長       吉田 泰夫君     ————————————— 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   山本 幸一君     戸叶 里子君 同日  辞任         補欠選任   戸叶 里子君     山本 幸一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第九三号)      ————◇—————
  2. 菅太郎

    ○菅委員長 これより会議を開きます。  道路交通法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。門司亮君。
  3. 門司亮

    門司委員 最初に、どこに聞いていいかわからぬので、大臣に聞いておきます。  いろいろ道交法その他で問題があると思いますが、実際は交通事故の防止というのには、道路工学というか、いわゆる道路上で起こっている事故であって、したがって道路は非常に交通事故関連性を持っているので、この問題が一つ。言いかえますならば、結局、技術というか道路工学というか、その問題と、その次に問題になるのは安全教育。これは何もドライバーだけではないのです。国民全体に対する安全教育、その次に取り締まり関係というのが出てくるわけです。この三位一体行政一体日本にできているのかどうか。完全なものがあるのかどうか。これについてどういうことになっておりますか。どうも見てみると、私は三位一体になっていないような気がする。建設省建設省道路行政について交通安全というものを十分考えた工学上の配慮をされているかというと、必ずしもそうではないように思う。それから、たとえば教育その他についても必ずしもそう関係をしていないのではないか。そしてこの問題は、ことに教育の問題は、運輸省の問題なのか、あるいはもう一つ掘り下げて文部省の問題なのか。こういう点を考えると、日本交通安全対策は、私はいま言った三つの柱が必要だと思うけれども、この三つの柱についてどこが総合的にどういう形で行なわれているかということが、基本法の中にはいろいろ書いてありますけれども、具体的にはちっともあらわれていないようだけれども、どこかでこの三つが具体的にあらわれた協議なりあるいはそういうことを考えられておりますか。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お話しのとおり、一見てんでんばらばらであるようであったし、事実もそうであったかと思いますが、最近、総理府総務長官が主宰いたしまして交通安全対策本部を設けて、それ以来幾らか組織的に足を踏み出したというふうに受けとめております。それぞれの所管が違いますから、形式的にはてんでんばらばら的になりがちでありますけれども共通意識を持って何とか総合的に対策を立てようという機運は熟しておると思います。
  5. 門司亮

    門司委員 そういう機運が熟しただけでは交通の問題は解決しないと思うのです。だから、責任の所在をもう少し明確にする必要がありはしないかと私は思う。なわ張りが非常に強いと思うので、うまくいっていませんので、いまのような答弁交通事故が少なくなり、あるいは安全が完全に行なわれようというようなことは私は考えられない。たとえば交通安全の運動がやられておりまして、ことしなどは一番成績が悪いといわれておるのだが、交通安全運動期間死傷者が非常に多い。なぜ一体そういうことになるか。交通安全の運動自身についても三位一体のものはどこにもないと考えられる。だから、たとえば安全教育をするといったところで、一体だれがやっているかということになる。建設省運輸省警察文部省と、そういうものが一つになって、そうして地方の自治体の協力が得られるときに初めて安全運動というものは効果があると私は思う。ところが、地方交通安全協会が大体中心になってやっておると思うが、それと地方警察くらいでやっていると思うのだけれども、こういうことでいろいろやったって、交通安全運動なんてお祭り騒ぎであって、実際の効果がないのじゃないかと私は考えられる。だから、もう少し考え方を変えていただきたいと思うのです。  最初にそんな議論をしてみたところで、さっきのお話のように、実際上は動き出していないと思う。だから、その前に文部省関係で一応聞いておきたいと思います。  教育機関警察との関係、いわゆる取り締まりとの関係一体どういうことになっているのか、その辺を一応聞いておきたいと思います。何か関連性がありますか。
  6. 橋本眞

    橋本説明員 お答えいたします。  ただいま教育機関取り締まり関係警察との関係という御質問でございますが、私どもはたとえば集団登下校についての通達を出すとか、あるいは通学路につきましての指導を行なうという場合に、指導通達その他におきまして必ず教育委員会に対しましては、道路関係を所管する部局並びに交通規制その他に関する部局との連絡十分密にとるようにという指示を必ずいたしております。そのために教育委員会におきましては、そういった関係部局十分協議の上で、たとえば通学路交通規制とかあるいは通学路指定そのものとか、そういったことについて都道府県あるいは市町村におきましては連絡協議のための会議等を持っておるところもございます。そういう現状でございます。
  7. 門司亮

    門司委員 いまの話は、それだけで私は聞いておきますが、文部省として一体交通安全に対する基本的な態度はどうなんです。いまのような交通安全に対する通達で出ておるんだ——だからといって、私は何も効果はあがらぬと思う。事実上の交通安全に対する教育方針というのは、一体どういう方針を立てられておりますか。
  8. 橋本眞

    橋本説明員 学校におきますところの交通安全教育につきましては、自分並びに他人の生命を尊重するという立場から、児童生徒の心身の発達段階に応じまして、それに適応した教育を行なっております。特に小中学校、いわゆる義務教育におきましては、それぞれの各教科の面にわたりましては関連する教科、たとえば社会科図画工作科あるいは保健体育科あるいは道徳科、そういったところでそれぞれの関連部門につきまして教育を行ないますほか、いわゆる学級指導学校行事等におきましてこれは実地訓練、いわゆる考えるだけの問題ではございませんで、交通安全教育というのは訓練を伴いますので実地訓練、そういったものを主体にして教えております。しかしながら、あくまでも自他の命を守るという観点交通安全教育基本にあるということが言えると思います。
  9. 門司亮

    門司委員 いまの答弁ではどうしようもないんだ。そういうことは別に問題じゃないんだ。人間の命が大事なことはだれでも知っているんだ。私の聞きたいことは、たとえば、これは外国の例を言うのはおかしいけれどもアメリカだって正科に取り入れられているんだな。そうして現実に警察官が行って、一週間に一時間なり二時間なり教えている。道徳教育だけでこういうものがなくなるのなら問題ない。道徳教育じゃなくならぬのだ。ことに子供は衝撃が非常に激しい。だから、人間生命が大事だなんていうことはだれでも知っていることで、だれでも自分の命を粗末にする者はいやしない。わかりきっておる。私の言うのは、そういうことでなくて、率直に時間もないから聞いておくけれども小中学校正科の中に一体交通安全に対する科目で一週間に一時間なり二時間なりさくという考え方がございますか。私は、そういう実際のほんとう訓練をしなければ、説教を幾らしたって何にもならないと思っている。実際にそういう何かありますか。
  10. 橋本眞

    橋本説明員 正科というお話でございましたが、現在、先ほど申し上げましたように、社会科の中あるいは保健体育科の中でそういったことを実際に行なっておりますが、学校教育の場合に、各教科授業のほかに学級指導等がございまして、そこで実地訓練あるいは模擬訓練、そういったことを行なっております。また、学校学級指導あるいは学校行事等のためのいわゆる指導授業といたしまして、これは大体十二時間ないし十三時間年間に行なっておりますが、その場合の行ない方といたしまして、実地訓練指導のために警察官等指示を仰いでやるというふうな場合もございます。現在やっております。
  11. 門司亮

    門司委員 やっておるというが、大体一年に十一時間というと、どのくらいになるか。一週間にこれ何回やるのか。勘定すればすぐわかるけれども、それで一体いいと考えているのか。  それから、警察官教育をやっているというが、実際にどれくらいやっているのです。警察官が何時間行って教えているのです。生徒はたくさんいるんですからね。かなりはっきりしたものでなければ、三百人も五百人もいる、あるいは千人以上もいる学校に行って、一体だれがどういうふうに教えているか。私が聞きたいのは、各学級別に一週間に一時間でも二時間でも警察官が行って、実際に道路標識その他の見方というものを教える必要があるのじゃないか。私が聞いているのは、ただ学校にいる間の児童交通安全だけを考えているわけじゃないのですよ。間違えないように聞いてください。  ここで十分に教育することによって、初めておとなになったときそれが身についてくるということなんです。あなた方学校でたけ教育すればそれでいいたって、そんなことでは何にもなりゃしませんよ、実際は。私が聞こうとしているのは、いま言ったように、おとなになったときに、すでに子供のときからそういうものを身につけておく。ただ子供通学のときの安全だけじゃないんだということでなければ、私はほんとう交通安全をやっているのじゃないと考えている。下校や登校のときに安全を保つことはあたりまえのことです。これが交通教育とは私は言えぬと思う。交通教育というのは、そういうおとなになったときに——本来教育自身そういうものなんだが、子供のときだけが教育じゃない。子供のときの教育というものは、おとなになって役立つように教えられる。やはり交通安全もそれと同じように、ドライバーになる人もあるだろうし、乗って歩く人もあるだろう、いろいろの人があるだろうと思う。そのときの人間の心がまえというものをここで養成しておく必要があるということです。  そういう意味において、私はくどくは聞かぬが、そういう正科の中にこれを取り入れていくという意思はございませんか。人間生命を大事にするというのが一番大事なことだと私は思っているのだけれども
  12. 橋本眞

    橋本説明員 私のことばが足りませんで、意を尽くせないところがございましたが、確かに先生のおっしゃいますように、学校教育におきますものは、そういった態度習慣を身につけるということが一番問題でございます。そういった観点から、現在、交通安全教育はもちろんのこと、教育全般が行なわれておるというふうにわれわれは意識いたしております。  じゃ、いまおっしゃいます交通安全教育だけを正科で取り上げるかどうかという問題でございますが、これにつきましては、交通安全ということ自体が非常に、社会科なり図画工作なりあるいは保健体育の中の保健部面なりあるいは道徳部面なり、そしてまたそれらだけでは包括できない部面が、学校行事等あるいは学級指導等にゆだねられております。でございますので、そういった幅広い観点から、態度習慣学校教育のあらゆる関連する部面で行なっていくという考え方で、現在行なっております。
  13. 門司亮

    門司委員 いまの答弁聞いていますと、ちっともわからないのですが、教育の本体というのは一体どこにあるかということです。学問だけ教えるのが教育じゃないのですよ。一番大事なことは、人間生命ということですよ。人間生命に関することを正科の中に取り入れてやるということに、どこに教育の不都合があるかということです。社会科の問題じゃない。社会科の問題だからといって社会科に押しつける、こっちの問題だからといってこっちに押しつけるという問題じゃなくて、人間生命の問題は、学問であろうと何であろうと、すべての基本人間生命なんです。すでに一年に約百万人ですよ、死んだ人、それからけがをした人。日本国民の非常に大きな、戦争よりももっとひどいんだな。十年、十五年続いてごらんなさい、とんでもないことになってしまう。  だから、この際日本は、教育の問題についてというよりも、その根底になる人間生命をどう保持するかということを一つ方針として、当然私は文部省としては踏み切るべきだと考えている。そうしてこれを実地に行なっている警察官に一週間に一時間でも二時間でも来てもらって、そしてこれを十分教えるというようなことが、私は必要だと思う。これは小学校だけでない。私はよけいなことを言うようですけれども、たとえば公園などに行っても、あるいはスケート場などに行っても、スケートをやっている場所交通標識と同じものをこしらえて、そしてこれは歩いているのじゃないのですから、やはりスケートという一つの速度を持つものに乗って遊んでいるのだから、これから先は行ってはいけないのだ、ここは右へ曲がっちゃいけないのだ、ここは左へ曲がっちゃいけないのだ。全く道路標識と同じようなものを子供の小さいときから仕込んでいくということが、今日のドライバー一つの大きな根底にある基礎なんだな。交通違反をしないようにしていこうとするには、子供のときからそういうくせをつけていくということ、その教育がいまこそ日本は非常に大事だと思うのですよ。百万人の人間が死んだりけがしたりしているのですよ。それを教育者が、そんなことは社会教育のどこでなんというような安気なことでやれるのですか。私はいまこそ文部省は踏み切るべきだと思っている。そういうことが世間全体に及ぼす心理的な影響というものは大きいのである。だから、もしあなたのほうでそういう必要がないというなら、必要がないとはっきり言ってください。私は必要があると思って聞いているのだから。人間生命となにを大事にするということは、教育基本というか、人間道徳上の基本の問題だ。だから、これをわれわれは、少なくとも小学校中学校ではある程度正科に入れて、具体的に言えば、運動場の中でもしょっちゅうそういう訓練をしていく必要があると思う。どこかの学校に、警察のいろいろな紙に書いて張りつけたものがあります。紙に書いて張りつけたものよりも、むしろ学校の中にそういう訓練をしていくという形をとるべきではないかということです。いまローラースケート場なんかに行っても、これは日本でもやっていることだから、別に事新しいことじゃありませんけれども、フランスの小さな公園に行ってみると、小さな五つか六つぐらいの子供ローラースケート場所でやっている。ところが、そこに道路標識と同じものがちゃんと立ててある。これでいいかと聞いてみると、いや、これで私のほうは訓練しています。子供が右に曲がったあるいは左に曲がったのがときどきぶつかるのがあって困りますから、こういう標識を立ててやっていますということを言っているんです。それを単に一週間に何時間か知らぬがやっているという程度でよろしいかということなんです。  私は、人間生命と財産を守ることのためには、この交通安全だけは、いま日本一つの一番大きな問題だ。人の生命に関する問題だのに、これが一番軽視されている。さっきも言ったように、三位一体のそういう道路行政をどうするか。道路をつけるときにすでに交通安全を考えて道路をつけなければならない。ただ道路だけをつければいいという筋合いのものではないと私は思う。そこに当然なければならない取り締まりであるとか教育というものが三位一体のものでなければ私はできないと思う。少なくとも教育教科を変えたからといって、だれも文句を言う人は一人もいないと思うのですよ。文部省は、この際、思い切ってこれを変える意思があるのですか、ないのですか。
  14. 橋本眞

    橋本説明員 先生のおっしゃることもごもっともだと思います。ただ、現在の交通安全教育という観点で考えますと、これは単に一週に一時間とるというふうな問題ではなくて、事あるごとにそういったところに触れて教えていくということも一つの重要な観点かと思います。  現在、学習指導要領等を改定いたしまして、この四月から小学校、来年の七月から中学校がそれぞれ新しく実施されることになっておりますが、その中におきましても、そういった観点指導なり教育を行なうように位置づけておりますし、特にいまおっしゃいました実地訓練ということが、非常に交通安全教育というふうな問題では重要になりますので、そういった点につきましても、実際に模擬訓練施設というふうなものを設けたり、あるいは学校でそういった教具教材を使いまして行なう等の十分の手配をとっておるということが申し上げられると思います。
  15. 門司亮

    門司委員 どこかやっていますか。やっているんなら案内してもらいたいんだがな。どこの学校でそんな教具教材をそろえたところがありますか。交通標識と全く同じ標識を立てて、そしてここはこうなっているんだ、ここはこうなっているという学校があるのなら、見せてごらんなさい。どこの小学校にあるかないか、どこの中学校にあるかないか。そんなものが東京の中に一つや二つあったからといって、あることのしるしにはならない。私は、文部省責任というものは、ほんとう子供生命を守るだけのものではないという交通安全全体に対する認識というものを持たなければ、ほんとう意味教育ではないと思う。一体人間教育をやっているかいないかということ。人間生命を粗末にしている。これは文部省責任ばかりでなくて、政府全体の責任だと思うのです。文部省ももちろん考えてもらいたい。これ以上の答弁を私は求めません。そういういいかげんな、ただ机の上で何かやっていればいいということだけで交通事故が減るかということなんです。これ以上は時間もありませんから聞きません。  その次にひとつ聞いておきたいのは、高等学校の問題です。たとえばアメリカでは、御承知のように、さっき言ったように、正科の中にちゃんと組み入れているのです。小学校中学校交通安全対策指導というものをおまわりさんが行ってちゃんと教育指導している。その次は、高等学校は、全部自動車オーバーホールができるまで全部の学校教育してきているのです。そうして自動車というものに対する認識を全部の国民が持つということ。これは免許証とは関係がない、運行とは関係がない、自動車構造を知るということだ。これは非常に大事なことです。全部の国民がそれを知っておるということ。ところが、日本の今日の自動車免許証を考えてごらんなさい。免許証をとるときに、一体自動車オーバーホールのできる人がどれくらいいるか。かたっと音がしたときに、この音はどこの音かということを運転者がわかるようになっていなければほんとう運行はできない。それをどこで教育するかということです。これを少なくとも中学校高等学校の課程の中で教育をしていく。そうすることがなくして、ドライバー取り締まりをどんなにいまのように厳重にしたところで、なかなかそう簡単に片がつかない。やはり自動車というものを知るということ。  私はなぜそういうことを言うかというと、いままでは比較的自動車の台数が少なかった。ところが、最近はほとんどと言っていいほど自動車が普及されてきておる。日常の交通機関にすでになり切っておるということです。だから、こういう時代には、全部の国民が一応自動車構造を知り、自動車の実態を知って、さっき言ったように、ちょっとした音がしても、ちょっとした手ごたえがあっても、どこが故障だ、どうなっておるかというぐらいのことがわかるように、国民全体が自動車に対する知識を持つということが、交通安全の一つの大きな課題だと思う。これが日本で何も行なわれていないということ。だから、交通事故を見てごらんなさい。数字の上ではほとんど同じだけれども自動車一台当たりで勘定すると、事故件数外国の五倍です。外国の三倍、五倍の事故が起きておる日本で、基本的なそういう小学校当時からの教育、あるいはもうぼつぼつ自動車運転免許をとろうという年配になったときの教育というものが、全く教育の場で行なわれていないというところに問題があると私は思う。これは単なる行政上のテクニックじゃないですよ。人間生命をどうするかということであって、これだけやかましく交通戦争ということを言っておるときに、やはり基本的概念というものをそこへ置いてもらいたい。これは私はやはり文部省の仕事だと思う。これを単に、取り締まり警察だ、道路建設省だ、運行運輸省だというところに、日本一つの大きな行政上の欠陥がありますが、これらの欠陥を補っていこうとするのには、やはり文部省がそこまで踏み切ってやるということ。これは私は国民の反対はほとんどないと思います。お金もかかるでしょう。しかし、それは人間の命にはかえられないのだ。  だから聞いておきますが、そういうことをやるかやらぬかということだけ返事してもらえばいいですよ。一体中学校高等学校に、そういう自動車オーバーホールができて、そうしてエンジンに対する知識を十分持つ、タイヤに対する知識を十分持つというようなところまで教育をするというお考えがございますか。
  16. 西崎清久

    西崎説明員 ただいま先生お話しオーバーホールの問題でございますが、オーバーホールと申しますと、構造に関する理解、組み立て、分解、中身としては非常に高度な内容のものも入ってまいろうかと思います。そういう意味で、ドライバーとしての高校生もおるわけでございますから、将来の問題も含めまして、そういう知識をつちかうということは、先生のおっしゃるように、非常に大事なことだと思います。  ただ、交通安全教育という立場から申しまして、どの程度構造に関する知識を持たせるかという点につきまして、いま私どものほうでは、たとえば自動車構造性能についての理解をさせるということにいたしまして、ブレーキの種類、性能とかあるいはアクセルとか車輪の動き、あるいはバックミラーの性能というような意味での運転者としての基礎的な理解、あるいは事故が起きた場合のいろいろな処置、そういうことも含めまして、構造につきましての知識の充実が教科及び教科以外の活動で行なわれるように指導をいたしております。各都道府県でもいろいろな手引きをつくっておりまして、この手引きの中にも、そういう意味での構造に関するいろいろな知識なり理解が行なわれるような内容を含めております。この点につきまして私ども十分検討もし、今後いろいろ相談をいたしまして、先生の御趣旨が徹底するようにということに相つとめたいと思っております。
  17. 門司亮

    門司委員 いまの答弁で、幾らかおやりになるようなことですけれども、むろんお金はかかりますが、各高等学校中学校自動車を一台なり二台なり置いて実際の訓練を少しずつやっていこう、あるいは機械を全部知らせようということになるとお金はかかります。私は、そのお金の問題は踏み切って文部省はやるべきだと思う。そうして基礎的に、日本にここまで自動車が普及してきた以上は、国民全部が自動車というものを知ることが、私は、交通安全の最初の出発点だと思う。この最初の出発点が十分でないところに日本交通事故が非常に多い原因があるのではないかと痛切に感じられる。自動車の運転をしておっても、ほんとうにこれでいいのかという連中がたくさんいるのですね。ほんとうに実際やっていれば、タイヤにくぎ一本刺さってもわかるはずなんですね。そういう問題は文部省としてもう少し思い切ってやる意思があると思うのですけれども、きょう皆さんにそんなに強いことを言っても、局長さんも来ておりませんし、次官も大臣も出てきてませんから、これ以上皆さんに小言を言っても始まらないと思うけれども文部省はもう少し思い切って交通全体というものについて、単なる児童道徳教育とかあるいは児童の登下校のときの交通安全ということだけでなく、日本の全体の交通安全というものをひとつ見てもらいたいということを、これはこれ以上、私、申し上げる時間はないかと思いますけれども、ひとつ考えてもらいたいということです。  それからもう一つ、私は文部省に聞いておきたいと思いますことは、さっきの問題で逆戻りするようですけれども文部省がいまやろうとしているのは、要するに道徳観念の涵養みたいなことだと私は思います。しかし、道徳の涵養というのは、教えなくても人間自身がある程度交通事故については知っているはずです。だから、そういうことについては非常に大事なことでありますけれども、もしこれをやろうとしても、単に文部省でやる机の上の教育だけの問題では済まされないのであって、交通安全に対する道徳の涵養というのは、実施が伴わなければ事実上何にもならないことで、学問上の道徳の涵養だけでは済まされない。哲学とは違いますからね、実際学者を養成するのとは違う。だから、その辺を文部省もひとつ考えてもらって、もう少し文部省自身がやってもらいたいと思う。  それから、文部省にこの際私がほんとうにこの交通安全対策について非常に大事なことについて聞いておきたいと思うのは、いま私は技術とそれから安全教育交通取り締まりというものとを総合的に考えてものを言ったのですが、もう少し具体的にものを考えてみると、この中から出てくるのが、これは大臣のほうに聞いておきたいと思うことですが、交通安全を強力に進めていこうとするには、いま都道府県にあります、昨日あたりから問題になっている安全の問題で何か組織みたいなものがあるように聞いておりますけれども、この組織の中に交通関係者はもとより、さっきから言っておりますように、都市に対しまする設計者であるとかあるいは自動車の製造業者であるとか、それから精神病の医者であるとかあるいは心理学者であるとかあるいは学校先生であるとか、そういうような問題、あるいはその中に父兄の代表PTAの諸君を入れるとか、これにさらに警察を加えあるいは行政機構というようなものを加えていく。私が行政機構と言っておりますのは、いわゆる行政の機関でなくて、地方の議会の議員というようなものでほんとうに一切の交通安全に対する総合的なものを加えていく必要がありはしないかということです。ところが、日本の場合はこれが案外そうなっていないのじゃないか。いまある都道府県の協会というものは案外そこまで掘り下げたものになっていないじゃないかと思う。こういういまの交通災害自身について、あらゆる角度から見て、いま申し上げましたお医者さんの精神医学——何といいましても、自動車の運転をする場合、往々事故の大きいのはこういう連中が起こしているのであって、それに対するお医者さんの意見というものも聞くべきでありましょうし、それから交通事故からくる救急車による救急対策等に対するお医者さんの意見というものも聞くべきでありましょうし、あらゆる人の意見を聞くことが私は必要だと考えているのであるが、この辺について何か警察庁のほうでお考えになっていることがあるなら、ひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  18. 片岡誠

    ○片岡政府委員 交通安全対策基本法の第十六条で、都道府県交通安全対策会議が設けられております。そうして十七条で、そのメンバーは、会長が都道府県知事であります。それから委員は、教育長と、都道府県に指定市があれば指定市の長であるとか、教育長であるとか、警察本部長あるいは都道府県の部内の職員から指名する人、その他都道府県の区域内の市町村長、消防機関の長のうちから任命する者、大体そういう構成でございますけれども先生おっしゃいますように、特別の事項、精神病者の問題であるとかあるいは一定の教育の問題であるとかあるいは車両構造の問題とか、いろいろ特別の事項を審議させるため必要があるときは、特別委員会を設けることができるようになっております。したがいまして、この交通安全対策会議を知事が十分に活用すれば、先生のおっしゃるような措置が十分とれるんではなかろうか、このように思っております。
  19. 門司亮

    門司委員 さっきから言っておりますように、法律にそういうのがあるのですよ。どこにでもあるのですけれども、内容はいまおっしゃったような形の内容であって、実際を見てみると、何かトップクラスの長みたいなのが集まって——実際を知らない人なんですね。たとえば心理学者というものがおれば、ドライバーに対するこういう心理的の影響があるものだ、こういう者については免許証をこうすればどうだとか、精神病者はどうだとかというような問題が、やはりその中に織り込まれてこなければならぬと思うのです。そうでなければ、ほんとう意味交通安全対策にはならぬと私は思う。ただ、企画だけを立てて幾らやったって、私は何にもならないと思う。もう少し、いま言ったように、掘り下げた問題がどうしても必要である。その中には学校先生も入れるし、あらゆる角度からこれを入れていくということが私は必要だと思う。ほんとう交通安全に対する日本のいまの行政のあり方というものは、少し上ずってはいはしないか。もう少し真剣にやるべきじゃないかと私は思う。  たとえばこれもアメリカの例ですが、私が現実に立ち会ってきた例です。一つの町で一つの信号機がふえる。それをどう一体評価しているか。私の見学したときには、裁判所の判事と検事と警察の署長と交通の係長と、それから現地におるおまわりさん、五人がまず正面にすわっておって、そうしてあとは全部ドライバーの意見なんですね。これとの話をしている。そこにむろん市長が立ち会っています。そうして、この信号機が一つできると次の信号機までの間にこういう形が出てくる、これは一体どうそしゃくするのだ、そして事故はこういうふうに起こってきやしないかというような、交通標識一つこしらえるにしても、あらゆる角度から検討がされておる。そうして初めてそれが実行されておる。  そういうことを何もいま日本で無理にやれとは言わぬけれども、しかし、それほど大事な一つの問題なんですね。交通安全に対する基礎的の考え方というものが、日本の場合非常に薄いのじゃないか。ここはわりあいに事故が多いからひとつこういう安全装置をしょう、それがドライバーのほうにどういう影響を持っておるかとかいうような、交通安全に対してはもう少し私は一方的ではなくて、全体の意見というものをまとめて、そうして協議をする必要がありはしないかということであります。こういう問題がどうして日本でできないかということですけれども、こういう問題を一体どうお考えになりますか。取り締まりだけで私はよろしいというならそれでよろしいのだが。  それから、この間もあった東京の規制をしたということですね。おまわりさんが非常にまごついたといっておるのですけれども、こういう問題も、現地でそういうことをやるというなら、その前に私は全部の自動車——全部をつかむわけにはいかぬでしょうけれども、大多数の運送業者であるとかあるいはタクシーの業者であるとかいうようなものだけでも集めて、ひとつこういう施設をしようとするのだが一体どうなんだというようなことまで、下までしみ渡って相談をするというような配慮が私は必要だと思うのですよ。警視庁だけでこれがよかろうと考えたからこうやりました、あとはそれで押しつけるのだといういき方は、ほんとう意味交通安全対策にはならぬと思うのですよ。私は、その配慮がどうしても必要だと思う。そういう点についてどうお考えになるか、これをひとつ。
  20. 片岡誠

    ○片岡政府委員 先生のいまの御指摘、二点あったと思います。  一つは、科学的な交通行政をもう少しゃれといりふうに私、受け取りました。御承知のように、わが国のモータリゼーションがまだ後発でございましたので、トラフィックエンジニアと申しますか、交通の技術者がなかなか育っておりませんでした。しかし、ここ数年来交通の技術者が、道路の技術者のほうからも、それから信号機をやっております通信の技術者のほうからもだいぶ育ってまいりました。私どもとしましては、各府県の本部に少なくとも一人交通の技術者を置くという方向で、現在配置を考えております。大都市、東京、大阪のような場合にはすでに数名あるいは十数名の交通の技術者、専門家ができておりまして、科学的な分析なり科学的な整理のしかたを現にやり始めております。  それから精神病医につきましては、免許行政上どうしても知恵を借りなくちゃならないという面がございますので、各府県の本部で直接精神病医を採用するわけにはいきませんが、その県下の令名のある精神病医を嘱託にお願いして、各県の本部に一名ないし三名はかりの精神病医をすでに各県ともお願いをしてお知恵を拝借しておるというのが実情でございます。  それから免許行政に心理学者がもっと入っていくべきだと私、思いますので、大学で心理学を専攻した人たちを大府県ではすでに採用しておりますけれども、これも中小府県のほうへ次第に整備していきたい、このように考えております。  それから相当広域にわたる交通規制をいたします場合、たとえば警視庁がやりました一方通行であるとかあるいは先般のバスの優先路線あるいは大型トラックの規制のような場合、あるいは大阪でやりました御堂筋の一方通行あるいは関目地区の裏通り対策といったような場合には、先生御指摘のように、トラック業者、バス業者、ハイタク業者、それから自家用、それからマイカーの代表といった人たちからも当然意見を聞いておりますし、それから裏通り対策の場合には、町内会、部落会までおりていくという一番末端までおりていきまして、その関係の住民の方々の意見を十分伺って、そして意見を交換しながら案を固めていくというやり方を現にやっておりますし、今後ともそういう方向でやってまいりたいと思っております。
  21. 門司亮

    門司委員 いまのお話のようなことで、実際はわりあいによくいったところもあるし、なかなかいかぬところもある。いかぬところを指摘してもいいけれども、だいぶこの間から話し合いになっておって、そしてうまくいっていないところもある。それはそれとして、時間もございませんから……。  私は、そういう交通安全の中には免許証その他の関係で、さっき言ったように、いまの都道府県にある対策委員会だけではどうしてもうまくいかないと思う。それから同時に、構成もあまりにも何か上のほうだけの諸君が集まっておって、実際の人が集まっていないで協議されているきらいが多分にあると思う。いま申し上げましたように、心理学者であろうと精神病医学の人であろうと普通のお医者さんであろうと学校先生であろうとPTAの関係の諸君であろうと、あらゆる知恵を借りて行なっていくということが必要だと私は思う。なぜ私はそう言うかというと、こういう問題はできるだけ下へおろしてもらいたい。上のほうだけで協議をしてやっているから、それで指令だけで下まで行き届かない。みんなが参画し、集まって協議をするところに下までほんとうにおりていく実体ができ上がるのであって、いままでの官僚——と言うと諸君はおこるかもしれないけれども、官僚であることは間違いないから官僚と言っておくけれども、官僚のものの考え方だけで、自分たちの頭の中で考えて、これでいいと思うから押しつけるのだ、やらせるのだという気持ちでは私はどうにもならぬと思う。もう少し交通安全対策については一般の人の気持ちを聞いてもらいたいということをこの際申し上げておきます。  それからもう一つは、これは建設省に聞いておきたいのだが、建設省関係では一体どうなんだね。道路工学というか、道路構造その他についてどこまで交通安全対策を考えられてやっていますか。それから、どこかに接触した面がありますか。道路をこしらえられる場合に、交通安全に対してそれらの係、たとえば警察であるとかあるいはいま言った府県の問題であるとか、運輸省運行関係の問題であるとかいうようなところに、どこと一体連絡をとって道路行政をおやりになっているのか、その辺をひとつ聞いておきたい。
  22. 吉田泰夫

    ○吉田説明員 先生御指摘のとおり、交通安全のためには、一つには道路工学と申しますか、道路構造自体が改良されて安全な交通がはかれるような物理的基礎ができるということ、それから取り締まりの強化及びその基本になる教育の面、三位一体でなければならないことはおっしゃるとおりでございます。そのうちで建設省では道路の建設及び建設いたしました道路の施設面での管理という面を請け負っているわけでございますが、これまた御指摘のとおり、従来建設されてきました道路構造というものは、大部分が交通安全に万全なものであったかということになりますと、遺憾ながら決してそうではなかったと言わざるを得ないわけでございます。  その最大の問題点は、私どもは従来の道路というものが歩行者とか自転車、これと自動車との混合交通ということを前提としてつくってまいりましたので、そこが現在のように歩行者も多いし自動車も多くなったという現状にそぐわないということであると思います。  したがいまして、歩行者あるいは自転者を道路建設の段階であるいは道路の改良の段階で構造的に分離いたしまして、事故構造的に起こりにくいようにするということがまず先決であろうと考えております。  このために今年度から交通安全の五カ年計画を立て局部的な現道の改良を主にした事業をやろうとしておりますが、その中でも最大の予算、最大の重点を置いて歩道あるいは自転車道の設置に力を注ぐつもりであります。また、過般改正され、この四月から新たに施行を見ました新道路構造令、これは道路の新設、改築を行なう場合の技術的な基準を定めた政令でございますが、これにおきましても、こういった歩道の設置特に市街地部における人車道の分離ということに最大の重点を置き、その他種々の構造面からする交通安全の規定を大幅に設けた次第でございます。  なお、御質問の第二点でございますが、以上のようないろいろな施策を講じますにあたりまして、たとえば交通安全五カ年計画は、法律そのものによりまして、市町村、県、国と段階が積み上がってくる仕組みになっております。その各段階におきまして公安委員会と道路管理者が相互に協議をし、どこの道路のどの個所にどういう交通安全施設を設けたらいいかということを具体的に積み上げてくるシステムになっておりまして、そのとおり実行してきております。また、道路構造令の改正を行なった際にも、これは長年にわたり警察関係者とか学識経験者、道路技術者を含めました広範囲の方々の御意見を聞きつつ、また道路審議会というのが設けてありますが、この中にもいろいろ運輸関係者その他が入っておりまして、ここで多年にわたり審議しました結果を反映して政令化したというようなことでございまして、今後におきましては、今回提案されております道路交通法の改正あるいはすでに提出いたしまして成立を見ました道路法の改正、そういった中に織り込まれております道路管理者と公安委員会との相互の密接な意見の聴取あるいは協議の制度を基礎といたしまして、構造の面及び取り締まりの面の両者が十分意思を疎通した上での交通安全施策を推進いたしたいと考えておる次第でございます。
  23. 門司亮

    門司委員 いまのお話ですけれども、私が聞いておりますのは、かつて長野かどこかから八王子あたりに来る道路の問題があったということですね。私は、これから先の道路というものの定義については、交通安全を主体とした道路でなければ道路でないという観念を持ってもらいたいと思うのです。非常に私は大事なことだと思うのです。ただ車さえ走ればいいんだという道路でなくて、道路というのはやはり交通の安全を保持するというのが道路の本来の意義だということを考えてもらいたい。そうすると、きのうあたりから議論がありましたように、いろいろ道路構造上の問題がたくさん出てきているのですね。ごく簡単に言えば、私どもの気のついた一つとしても、ガードレールの問題や何かあるけれども、たとえば、最近幾らかできているようですけれども、歩道との高さの問題なども、歩道に楽に自動車が乗り上げることのできるような高さにするよりも、それをもう少し高くして、結局は自動車は歩道に乗り上がらないんだというような形のものが道路構造上必要じゃないかということが実際は都市では考えられるのです。そうすると、歩道にいる人が、自動車がかりに暴走してきても、いまの段階では歩道の上にもう一つガ−ドレールこしらえて、それからの飛び出しを防止しているようなものがありますけれども、それがあってもなおかつ自動車が中に入ってくるのがたくさんあるので、とにかくひとつ歩道が防壁になるような形の道路構造ができないものだろうかということをときどき考えるのです。それをやったからといって交通者には一つも不便は与えないのです。そういう道路構造上の問題として道路工学の問題も少し検討される必要がありはしないかと思うのです。きょう時間があれは——ここにあなた方の書かれた問題があります。これは大池君が書いた「欧米の道路管理の見聞記」というのがあります。この間の四十年の外国交通安全会議か何かに出たときの会議録をここに持っておりますけれども、この会議録をずっと読んでみると、いろいろそういうことが書かれておりますが、必ずしもこのとおりにいけというお話は私はしませんけれども、あなた方のほうでもだいぶこういうことを検討された事実があるのである。  ちょうど時間になりますのでこれ以上は時間を取りませんが、最後に、これは大臣のほうと、それからどこに求めればいいのかわかりませんが、最近に行なわれた世界交通安全会議の報告書をひとつ出してもらいたいと思うのです。行かれているでしょう。四十年の蓑輪君が行ったときと違う形のものがあると思うのです。四十年には蓑輪君が行って、その報告書は持っておりますので、それ以上は聞きませんけれども、大体の概要は出せますか。私は、これが出てくると、いま言いましたような外国における、ことにイギリスが中心になりはしないかと思うのですけれども、だいぶ日本の問題とは違って、外国の場合はさっき言いましたように、道路構造をどうするかとか、あるいは交通安全に対する取り締まり関係をどうするかとか、あるいは教育の問題はどうするかというような総合的な中でいろいろなものが検討されておる。ところが、日本の場合には、さっきから申し上げておるように、遺憾ながらそういうことは非常に欠けている。基本法は一応こしらえましたけれども、その基本法そのものにしても、総理府でいまどなたがおやりになっているのかわかりませんけれども、ああいう一つの小さな部なんですね。これは大臣おこらないようにしてもらいたいのですけれども、露骨に言って、ほんとう局長クラスかあるいは次官クラスの諸君があそこにいればまだいいのですけれども局長クラスの人が事務の担当者じゃないと、そう完全なものはまとまらぬですよ。私も交通安全の特別委員長をやった経験を持っておりますからね。あそこはどうにもならないのです。だから、官僚のなわ張りで各省をまとめてあそこで話をしようといったって、あの基本法をこしらえるのにどれだけめんどうなことがあったかということを考えると、これはなかなかできない。どうですか、大臣。いま総理府にある機構をもう少し強いものに改革される必要があると私は思うのです。そうしてこの中に文部省も厚生省も入りますが、やはり機構も独立した、もう少し大きな機構をとるべきだと思うのです。いまの総理府の機構ではこの問題の処置はつかぬと思うのです。この二つだけ聞いておきたいと思うのです。
  24. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先ほどもちょっとお答えしましたが、対策本部というのは、総理大臣の会長をしておる対策会議の執行機関的なものでございまして、これはいままでにない機構だと思います。できて間もないものですから、機能を十分発揮していないかと思いますが、要するに、日本行政機構は、御承知のとおり、縦割り行政の形式をとっておりますから、ただ単に交通関係だけの諸問題を関係各省から抜き取って一つ部局をこしらえる、省を設けるというようなことも事実上できかねるのでございまして、やむを得ない一応の応急策というか中間的な方式であろうかと思います。問題は、関係各省大臣以下全部の関係者が、これもお話に出ておりましたとおり、基本的人権の最大のものである人間生命、身体に関することであるという認識を明確に持って、それぞれの担当分野において、その一点において共通項分母的に意識してもりもり仕事をやっていくという気がまえができ上がれば、一つのまとまった部局なり省を設けたと同じ効果に近い効果をあげ得るかと思いますから、その意味において、今後の運用で、積極的に打開していくということによって対処すべきものかと思います。
  25. 片岡誠

    ○片岡政府委員 先生のおっしゃっておる世界交通安全会議というのはどの会議かわかりませんけれども……。
  26. 門司亮

    門司委員 最近のものです。私のところには四十年のものしかありませんから。
  27. 片岡誠

    ○片岡政府委員 それを先生に伺いまして、会議がわかりましたら取り寄せたいと思います。
  28. 門司亮

    門司委員 いませっかくの大臣答弁ですけれども、あれができてから三年か四年たちますよ。ちょうどいま四年目でしょう。総理府に事務局ができてから四年たっているのですから、この辺で少し再検討してもらったらどうですかね。私はいま日本行政の中で交通安全こそ、ほんとうに佐藤さんが言うように、政府が人命尊重だという政治姿勢をとるのなら、ここにどれだけのお金をつぎ込んで、どれだけの機構をこしらえるといってもちっとも差しつかえないと思うのです。もしこういうものができないとするならば、これは荒木さんに言うのは筋違いですけれども、佐藤さんの言っている人命尊重というのは実際は当てにならないと思うのです。二万人死んでいるのです。去年の数字は一万六千八百人といっておりますけれども、この数字は事故死だけの数字であって、これに交通事故が原因で死んだ人を加えてごらんなさい。私は二万人をこえておると思うのです。二万人以上の人間を殺ろし、百万人近い身体障害者をこしらえて、それからくる家族のいろいろの悲劇というものをこしらえて、戦争以上の大問題なんですね。この問題に政府が取り組むのに、いまのような大臣お話一体済まされるかということです。私はさっきから言っておりますように、建設省運輸省も、道路構造にいたしましても、運行管理にいたしましても、取り締まりにしても、学校教育の問題にしても、あと始末の厚生省の問題にしても、いまのような機構で交通安全対策が、法律をどんなにたくさんこしらえたって、どんなにこんなものをやったって——私は部分的には多少なくなると思いますよ。これはいまの交通安全というようなたてまえだけでなくて、人の身体に障害を及ぼした場合は刑法でも何でも取り締まりというようなことで、人を殺したのは死刑に処するということで取り締まっていけば、そのときは幾らか減るかもしれません。しかし、そういうことで根底が片づくものではないと私は思うのです。本来なら、ぜひ交通省というものをいまこそこしらえる必要があるんじゃないかと考えておる。それができないとするならば、総理府にもう少し大きな外局をこしらえる。そうしてそこの長は佐藤さんが長であったって、あの人は名前だけが長で何もやっちゃいないでしょう。何かやっていますか、長官。何もやらないで看板だけなら、佐藤さんでなくたって、もっとえらい人が日本にはいるはずです、くっつけたっていい。ほんとうに真剣に考えてもらいたい、このことだけは。だから、十分に機構を改革して、そして大臣が置けないというなら、外局にして、そうして次官会議にせめて出られるくらいの資格を与えてやらなければ、佐藤内閣の面目に関すると思う。佐藤さんが言っていることはすべてほんとうじゃないというように国民は感じますよ。人間尊重だとか生命の尊重だとか、議会のあるたびに佐藤さんはそう言っているんだが、交通事故は年々二割ずつふえてきている。一体どこが人命尊重の内閣かということが言いたくなってくる。そういう意味において、この際、こういう法律の担当者である荒木大臣からひとつ閣内でも少しこの問題を取り上げて真剣にやってもらいたいと私は思うのです。ほかのことと違いますよ、これは。ほかのことは、物価が上がるとかなんとかいったって、すぐ人の命をとっちゃいませんからね。物価がどんなに上がったって、人の命を直接とっているわけじゃない。しかし、これは直接みな死んでいる。そういう痛切な問題がいまのこういうようなやりとりで、しかも大臣のような答弁では満足すべき筋合いは毛頭ないと思う。だから、これ以上私はいやみは申し上げませんけれども、ひとつ大臣、気にとめておいていただきたい、ほんとうに。  ちょうど時間になっていますので、これで終わります。
  29. 菅太郎

    ○菅委員長 山口鶴男君。
  30. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 まずお尋ねしたいと思いますが、酒酔い運転につきましては、いただきましたこの資料を拝見いたしましても、昭和四十五年、前年に比しまして六・六%減少いたしております。過労に基づく居眠り運転、これは一体どうでしょうか。
  31. 片岡誠

    ○片岡政府委員 統計上運転者の過労が交通事故のおもな原因となりましたものは、四十五年中に六千二百五十八件、交通事故全体の〇・八%に当たりますが、その中で雇用者等の過労運転の下命容認があったという一応疑いが持たれたのが六十三件。その中で事件として過労運転の下命容認で検挙いたしましたのは二十三件でございますが、ただ、この過労、一般的に居眠り運転という形をとると思いますが、その過労運転がはたしていかなる理由で過労になったか、過重労働によるものであるか、あるいはそれがどの程度にあるかということにつきましては、統計上明らかになっておりません。
  32. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 酒酔い運転のほうは、本人が酒を飲まないようにすれば防止できるわけです。ところが、居眠り運転というのは、自分が眠るまいと思いましても、これはなかなか自分で規制することは困難である。  そこで、この問題につきまして幾つかお尋ねをいたしたいと思うのですが、労働省では昭和四十二年の二月九日ですか、いわゆる二・九通達というのを出しておられるようでありますが、現在タクシーの運転手の勤務時間それから長距離のトラックの運転手の継続してハンドルを握る時間、こういうものはいわゆる二一九通達が厳格に守られておりますかどうですか。実際に事業場等を点検いたしまして、現状どのような状態になっておりますか、この点をまずお聞かせをいただきたいのです。
  33. 是佐忠男

    是佐説明員 御質問の点でございますが、労働省といたしましては、二・九通達で労働基準法できめている以上の労働者の労働条件の保護ということにつきまして鋭意努力いたしておりまして、昨年の実績を一つ取り上げて御説明いたしますと、昨年自動車業についての監督指導した件数は、一万五千二百五事業場について監督をいたしております。その結果、いわゆる労働基準法違反ということで是正を勧告いたしました割合が合計八二%にもあがっているわけでございます。そのうち長距離貨物などのいわゆる一般道路貨物業だけを取り出してみますと、千二百八十二の事業場について監督を実施いたしており、御質問の労働条件の監督指導ということにつきましては鋭意これつとめている次第でございます。
  34. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 その二・九通達はもとになっておりますのがILOの五十一号の覚え書きだということを聞いておりますが、二・九通達ではハンドル時間を一体何時間に制限をしておるわけですか、タクシー等ですね。それから継続してハンドルを握る時間は一体何時間に規制しておるのですか。そしていまのお話ですと、一万五千二百もの事業場について点検したところが労働基準法違反として勧告をしたのが八二%、これはきわめて高率だと思うんですが、一体こういうようなところは、どのぐらいの時間を事業主が労働者に強制しておるといいますか課しておったのですか。それから長距離の運転手等につきましては、現実継続してハンドルを握る時間がどのくらいの時間のものが実例として一体あったのですか。
  35. 是佐忠男

    是佐説明員 まず御質問の二番目の点についてお答え申し上げます。  確かに八二%、非常に高い違反状況をわれわれ摘発いたしているわけでございます。そのうち監督官の行政勧告に基づいて是正をするという事業場が実は大半ございます。この是正勧告を行なったのにもかかわらず、依然違反の状態を続けるというような事業主に対しましては、いわゆる司法事件といたしまして送検いたしておるわけでございます。これが昨年度の実績でも約百件近く送検に持ち込んだというような状況でございまして、違反是正についても極力つとめているわけでございます。  それから、最初御質問のございました二・九通達に関することでございますが、御案内のように、労働基準法では労働時間を四週間平均して一週四十八時間、こういうふうに規制しているわけでございますが、二・九通達では二週間を平均して一週四十八時間をこえてはならないというような労働時間の規制を行なっている次第でございます。なお、一日の実作業時間といたしましては、十一時間以内にこれをおさめるように指導をいたしているような次第でございます。
  36. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 現実にタクシーの運転手等に当たって聞いてみますと、午前八時に就労して、そしてその間二回ほど一時間くらいの休憩はとるようですが、翌日の午前二時あるいは午前四時というところまで働いているという諸君が相当あります。午前二時といたしますと、二時間休んだといたしましても、それを除いて十六時間、それから午前四時ということになれば十八時間、こういう作業を現実にやっている。ですから、実作業時間十一時間といいましても、はるかにこれをこえる就労を現にやっているという現状じゃありませんか。しかも実作業時間というのは一体どういうのですか。これはハンドルを握っている時間ということなのですか。その考え方一体どうなのですか。
  37. 是佐忠男

    是佐説明員 ハンドル時間についての具体的な時間の規制は、二・九通達では行なっておりません。
  38. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私が指摘したような、タクシー運転手等のきわめて長時間にわたる就労というのは現にあるでしょう。どうなのですか。その八二%違反をした事業場がある、しかも是正勧告をしたにかかわらず、是正せぬで百件ほど送検したこともあるということなのですが、具体的な実例はどうなのですか。
  39. 是佐忠男

    是佐説明員 タクシー等の実例から申し上げますと、これは一昼夜勤務の場合は、拘束二十四時間の範囲内で実労働時間十六時間をこえてはならないということになっておりまして、実際われわれが事業場におもむいて、深夜監督などをしてみますと、二時に帰庫しなくてはならない、それで十六時間の実労働時間が一ぱいになるというような場合、二時に事業場でそれを待機していると、二時過ぎに、三時なり四時なりあるいははなはだしいのになりますと朝方帰ってくるというような実例があるわけです。明らかに実労働時間が十六時間をこえるという事案につきましては、これはまことに遺憾なことなので、事業主にも非常に強い勧告をいたしますし、なお、是正されない場合は、これは司法事件として処置するというような仕法に出ているわけでございます。
  40. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 とにかくそういう遺憾な事例もあるということですね。一昼夜にわたる場合には八時から翌朝の二時までには車庫に帰らなければいかぬ、一時間ずつの休養をとって十六時間の労働ということを規制しているようですが、ILO条約第六十七号、路面運送における労働時間及び休息時間の規律に関する条約、これを見ますと、一週四十八時間をこえてはならぬというようなことがあり、一日八時間をこえてはならぬと例外規定もありますが、十四条を見ますと、「いかなる操縦者も、五時間を超える継続的時間操縦をすることができない。」ということがあるわけです。したがって、先ほどの二・九通達では、継続のハンドル時間については規制をやってないということなんですが、このILO条約六十七号では、明らかに、いま申し上げたような制限を十四条で規定をいたしておるわけです。  いまもってILO条約六十七号をわが国は批准をいたしておりませんね。どうなんですか。いま門司先生も非常に強調されたわけですが、まさにわが国は交通戦争という状態ですね。一万七千人の死者、これは二十四時間中のものですから、それをこえて死亡された方を考えれば、あるいは二万人をこえる死者が出ているかもしれない。しかも交通事故のためにけがをした人等を計算いたしますと九十八万、まさに百万になんなんとしているという状況ですね。いかにして交通安全を実施していくかということは、これは佐藤内閣としても緊急の課題でしょう。その中に、いろいろ考えますことは、酒酔い運転を禁止することもそれはけっこうでしょうが、やはり過労運転というものが事故を誘発する一つの要素になっていることは明らかですから、そうした場合、当然こういった条約についてはわが国が批准をする。これは一九三九年にきめられた条約ですから、一九七一年の現在から見ますと、もう三十数年以前にできた条約ですね。それを交通戦争の激化するわが国において今日まで放置しておくということは私はおかしいと思うのです。一体なぜこのILO条約を今日まで放置をしたのですか。この点は外務省と労働省、両方に聞かなければいかぬかと思いますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  41. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 ただいま山口先生からお話しのございましたことでございますが、一般論でまず申しますと、一九三七年から三九年代のILOの条約というものは、非常にきびしいものがございます。たとえば週四十時間の労働時間をきめるような条約が出ております。ただいまお話のございました路面運送における労働時間及び休息時間の規律に関する条約と申しますものも、ある意味では非常に理想的な運転者の労働時間規制が書かれてございまして、この条約の批准国は、現在まで、すでに数十年たっておりますけれども、四カ国にすぎないわけでございます。それだけこの条約の内容がきびしいという点でございます。しかし、きびしいからと申しまして、もちろん内容に非常にすぐれた点があることは当然でございまして、私どもも、そういう点を踏まえまして、国内的な諸法制とのかね合いで具体的な労働時間規制を進めておるわけでございまして、その努力のあらわれが、先ほど先生お話のございました二・九通達でございます。  御承知のように、二・九通達は、労働基準法では脱法として若干の労働時間違反が起こり得る——形式上は労働時間違反ではございませんが、実質的には非常な長い労働時間を運転手に課するということがあるために、いわば労働基準法の規制を上回って二・九通達で時間規制をいたしておるわけでございまして、現状ではこの二・九通達ですら、ただいま業務課長が申しましたように、相当数の事業場が特に業務の繁忙の時期においては違反をいたしておるという状況でございますので、まずこれを是正することが先決であろうと私どもは考えておるわけでございます。
  42. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 この条約自体に関しますことにつきましては、いま労働省のほうから説明のあったとおりでございます。直接的には、国際条約の批准でございますので、外務省が主管いたしておりますけれども、実質問題につきましては、何と申しましてもその国際条約の実施をいたしておりますところの国内体制、国内法制がどうなっておるかという点がまず先決問題でございます。直接国際面にタッチいたしますわれわれといたしましては、できる限りの批准数をふやしていきたいということにおいては、これは申し上げるまでもない次第でございますけれども、やはり関係の省庁と緊密な御連絡のもとに、国内体制をまず整え、しかる上で批准を促進していく、こういう体制をとっております関係上、この条約自体に関しますことにつきましては、労働省からただいま説明のあったとおりで御了承願いたいと思います。
  43. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 国際運輸労連、ITFというのがございますが、ここではILO第六十七号条約はゆる過ぎるのではないか。継続ハンドル時間五時間というのを四時間にすべきだ、そして条約では明確に規定をしていないハンドル時間等につきましても、明確にこれを規定すべきではないかという意見すら起きているということも聞いておるわけであります。そういうITF等の動き等につきましては、労働省なりあるいは外務省は承知しておられますか。
  44. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 国際的な労働者の連帯組織でございますいま先生のおっしゃいましたITF等から、そういうような内々の話し合いが進んでおるということは伺っております。ただ、御承知のように、具体的な労働条件は、わが国内では、国内の労働組合とそれぞれの経営者の間の労働協約できまることになっておりますので、具体的に国内のそういう労働協約において、いま先生が申されましたような点があらわれておるという話は、残念ながらまだ聞いていません。
  45. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 大臣、どうでしょうかね。今度道交法を改正されて、交通事故を防止するために国家公安委員長としても努力をされておると思うのですね。とするならば、この酒酔い運転を規制することはもちろんけっこうであり、いろいろな改正をすることももちろんけっこうでありますが、同時に、交通事故の要因になっております過労運転、これをやはり防止する。道交法の中にも過労運転に対する規定が第六十六条ですか、あるわけでありますが、当然これを実施していくためには国際的な権威ある機関であるILO、そのILOの条約が現にある。これをわが国としても批准して、そうして当然それに合うように国内法を整備していく。単に労働省の通達、二・九通達なんというあいまいなものでなしに、現実に法律としてこの条約を批准し、それにふさわしからざる条文についてはこれを改正していくということは当然なすべき問題である、私はかように思うのです。そういう意味で、内閣を構成しておられます大臣としての考え方、また特に道交法を所管しておられます国家公安委員長としての考え方をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  46. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ILO関係につきましては、国内の諸条件が許す限りにおいて批准さるべきものと思います。批准されたとしますれば、道交法関係にも出てくると思いますが、原則的には労働法制系統で処理さるべきものかとも思います。ILO六十七号の内容をつまびらかにせぬままに恐縮ですけれども、抽象的に申せばそういうものじゃなかろうか。ただし、いまお話が出ておったような内容のものである限り、批准したりせば、道交法の六十六条に具体的な基準を与えることにどうすればいいかということも検討すべき課題だと思います。
  47. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 長官、どうですか。
  48. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 ただいま大臣がお答えを申し上げたとおりだと思います。
  49. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 さっき門司先生交通省設置について前向きにやれ、こういう貴重な御意見をお述べになりました。特にこの交通戦争が大きく問題になっておりますときに、過労運転を防止するための条約がないならばいざ知らず、せっかくILO条約としてあるのですから、どうもその年代にできたILO条約はきびし過ぎるということを労働省は言われましたけれども、とにかく、交通戦争の一番きびしい国をあげろということになれば、わが国がトップクラスであることは間違いないのですから、きびし過ぎるというかもしれませんけれども、四カ国批准している国があるわけですから、率先してわが国がこういうものについては批准をして、そうして少しでも交通戦争をなくしていくということに前向きで取り組むというくらいのつもりがあっても私いいのじゃないかと思うのですが、どらですか。大臣でも長官でもけっこうですから、ひとつそういった意味での前向きなお気持ちがあるならばお答えをいただきたい。
  50. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御趣旨はよくわかるわけですけれども、先ほど労働省からお答えがありましたように、ILOの六十七号条約というものがある以上、それを踏まえて、国内の諸条件と合わせて、労働省としては一歩前進をさせるということで二・九通達というものが出たわけです。したがって、私どもとしても、その労働行政の上に立って同じような通達を第一線に流して、そうして運転管理者に対する指導であるとか、あるいは事業主に対する指導であるとか、こういうことを徹底させる措置を講じておるわけです。  それじゃ、条約があるのだから、批准をしてない段階で私のほうの道路交通法の中に基準として入れろ、これは御趣旨はわかりまするけれども、私どもとしては、それはちょっとまだ時期尚早ではなかろうか。私どもとしては、今日労務行政の担当省がやっていらっしゃる施策の上にのっとって指導を強力にやる、これが筋道であろう、かように考えます。
  51. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 どうも私の趣旨を若干取り違えているようですが、私は条約があるから道交法の中に基準をきめろと言っているわけじゃない。少なくとも警察交通事故をなくすために全力をあげておるのですから、政府部内の次官会議その他閣議等で、当然交通事故防止の趣旨に役立つこの条約については批准すべきではないか、当然それに対しては国内法の整備を先行して逐次整備すべきではないのか、二・九通達というような通達ではなしに、法律その他でこの条件整備を逐次やって、なるべく早くこの条約についても批准できるような体制にすべきではないかというくらいは、警察庁としても言ってもいいじゃないか、こういう趣旨で申し上げているわけです。どうですか。
  52. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 今日の交通戦争の時代ですから、交通事故の原因の一つに、いわゆる過労運転ということがあることも事実であります。したがって、そういう意味合いから、私どもとしては、こういった条約が国内の諸条件に合致をするように国内体制をできるだけ早く整備をしていただく、そしてそれに応じて批准を進めていただきたいということについては、同感でございます。
  53. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 大臣もそういう趣旨でひとつ御努力をいただきたいことを要請いたしておきます。  ついでに、これに関係します勧告が幾つかございます。一九三九年、路面運送における個人的管理手帳に関する勧告第六十三号、それから一九三九年、路面運送における夜業の規律に関する勧告第六十四号、それから路面運送における労働時間を規律する方法に関する勧告第六十五号、これも一九三九年、それから私有車両の職業的繰縦者の休息時間に関する勧告第六十六号、これも一九三九年、これらの勧告も取り入れて実施をしたらどうかと私は思います。特に路面運送における個人的管理手帳に関する勧告等におきましは、これは一方におきましては、長距離のトラック等についてはタコメーター等もついておるわけですから、これとこの手張を所持するということによって、無理な管理者の下命というものを防ぐことも可能であるし、労働者の権利を守るということについても意義があると思うのですが、この勧告については一体どうお考えですか。
  54. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 先生御指摘の四つの勧告がございますが、御承知のように、ILOの勧告は、国内の行政を進めます場合の非常に貴重な指針でございます。したがいまして、私どももILOの勧告につきましては、詳細に中身を検討いたしまして、できるだけ積極的に行政の面に反映するようにいたしております。たとえば、ただいま先生の御指摘の個人的管理手帳に関する勧告というのがございますが、これは六十三号でございますが、個人的管理手帳にいろいろな労働条件に関する内容を書き込ませまして、しかも操縦者が常にこれを所持して労働条件を守るということですが、わが国でも、ただいまここに持ってまいりましたが、乗務員手帳というものがございまして、これを特にトラック運転手につきまして、具体的に持たせまして、労働時間の管理をいたすように指導をいたしております。現在では、この勧告を取り入れました乗務員手帳制度で約五千の事業所がこれを使ってやっておるわけであります。御承知のように、中には労働時間が、乗りましてからおりて仕事を終わるまで刻明に記載されるような形になっております。   〔委員長退席、小澤(太)委員長代理着席〕  それから、夜業の規律に関する条約でございますが、これは、「各国における権限のある機関は、夜業が常時行われることを許容する運送の種類を定め、且つ夜業とは何であるかを定めなければならない。」こういうような規定がございまして、この点に関しましては、実際上夜業が常時行なわれることを許容する運送の種類を定めるというのは非常にむずかしいので、現状では、こういう点はやられておらないわけでございますが、主要な種類につきましては、二・九通達に織り込んで実施を促すようにいたしております。  六十五号の労働時間を規律する方法に関する勧告も同様でございまして、この場合は主として関係ある使用者及び労働者の団体間の協約によりきめろということになっております。これは労働協約によって労働条件をきめるという原則を特に強調しておるわけでございますが、わが国でも、御承知のように、運輸関係の労働組合が、こういう点は積極的に使用者と、事実上の問題も含めまして、労働協約できめてやっておるわけでございます。  それから、最後にお話のございました六十六号の私有車両の職業的操縦者の休息時間に関する勧告、これは個人で乗用車をお持ちの方が、個人的用務で使用される運転者の労働条件についても、そのほかの労働条件と同様の趣旨で休息を十分に与えろという趣旨でございます。法制上から申しますと、労働基準法の適用外になるわけでございますけれども、これは当然同趣旨で、かかる操縦者に過労がないような指導行政を行なうことは当然でございまして、もちろんそういうふうに取り計らっております。
  55. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ILO条約の一九一九年の第一号条約、労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約、この第一号条約すらわが国は批准していないんですね。そして今日に至るまで百三十に余るILO条約ができているにかかわらず、わが国が批准しております条約の数というものはきわめて少ない。第一号条約すら批准していないことはけしからぬではないかと過般私は外務委員会で申し上げたわけでありますけれども、特に交通戦争激化のわが国の状況にかんがみまして、この一九三〇年代のILO条約はきびし過ぎるというような、そういうつまらぬ態度ではなしに、政府全体としてやはり取り組んでいただくことを強く要請しておきたいと思います。  その次は、やはり交通事故の主要な原因が未熟運転にあるということは、警察庁もしばしば強調しておられるわけですね。ところが、今回道交法改正に際しまして、路上試験を加えるということが部内におきましてはある程度固まっておったようであります。また未熟運転をなくするという趣旨から、この路上試験を道交法に加えるということにつきましては、各方面からも好評だったわけでありますが、残念ながら今国会に提案されました道交法を見ますと、この路上試験が除かれているということであります。新聞等にも天下りOBが圧力をかけたのじゃないかということが大きく報道され、道交法の全面改正案がエンストしたのだというようなことも評されているわけでありますが、その点どうなんですか。真相はいかがでございますか。警察OBはなかなか人のつながりが強くて、人脈につきましても、なかなか結束がかたいというようなお話がございますが、そういうことから天下りOBの横やりによって路上試験がエンストを起こしたということでございますか。事の真相につきまして、ひとつ御説明をいただきたい。
  56. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 ただいまの御質問の御趣旨は、事の真相と全く違っております。
  57. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 全く違っておるとすれば、真相はどういう状況でございましたか。国会の横やりですか。
  58. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 このたびの改正に際しまして、路上練習の義務づけをやりたいということで案をつくったことは事実でございますが、それを見送りましたのは、今日わが国の運転者の養成が、これは諸外国と違いまして、教習所というものを一番大きな柱としてやってもらっているわけです。ところで、この教習所にはすでに今日路上練習を義務づけております。ところが、路上練習をしないままに警察の試験場に来て合格するのがある。これはいかにも事故防止の上からもぐあいが悪い、また両者の均衡の上からもぐあいが悪いということで、どうしても路上練習というものを義務づけなきゃならない。それを義務づける以上は、今日の道路交通の事情ですから、やはりしっかりした先生というものを入れなければならぬということで、私どもとしては、路上練習を義務づけると同時に、私どもで厳格な審査をした先生というものを認めたい、こういう案であったわけで  ところが、運転手養成の主要機関となっておる教習所側としてはやや取り越し苦労をしたのです。それは、その練習を指導する先生が先行き試験免除の検定までやるのではなかろうか、こういう心配があったと思うのです。そこらは私どもの真意とは多少食い違っておったのですが、そういったことについての取り越し苦労、それから私どものこの制度のねらい、こういう点についての趣旨の徹底が、時間的な関係で十分でなかったわけです。そこで反対運動が非常に起きてきた。私は、これを押し切って一向差しつかえない、こう思いましたけれども、しかし、やはり八五%という運転者養成の主力を占めておる教習所が、趣旨ののみ込みが不十分なゆえに反対のままやるのは、やはり私どもとしては考えなきゃなるまいということで、この際の改正では——今度の国会の実質審議期間の点も考えました。そういうことで、本年はひとつ見送ろう、そしてさらに私どもとしては教習所側の意見も十分聴取した上で、基本は私ども考え方で、さらに案をつくって、そうしてでき得るならば、私は来国会ぐらいまでに結論を得たい、これが真相でございます。
  59. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 日本指定自動車教習所協会連合会というものがあるそうですね。連合会長の石井栄三さんという方は、第二代の警察庁長官であると聞いておりますが、そうですか。
  60. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 そのとおりです。
  61. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 先ほど後藤田長官の御答弁がありましたから、このことは了解をいたしておきましょう。警察OBの圧力云々と言われぬようにやっていただければ幸いです。  それから次に、りっぱな運転者を養成するためには、先生方がよくなければならぬ。技能指導員といいますか、これらの方々の資質を向上する、その資格を明確化するということはどうしても必要ではないかと思います。私も技能指導員の資格がどういう形で法律で規定しておるか、いろいろ見てみました。昨日もわが党の山本委員がこの点につきましてはお尋ねしておりましたから、多くを申し上げるつもりはございませんけれども、ここに法律の規定がございまして、第九十八条、ここには技能指導員という字句は全然ございません。これを受けました道路交通法施行令の三十五条を拝見しますと、「自動車教習所の指定の基準」、こうございまして、その中に一、二とございまして、「技能指導員」というのが書かれてございます。そうしますと、りっぱな運転者を養成すべき先生の規定というものが、自動車教習所の指定の基準、どういう要件を具備しなければならぬかというようなことの中にちょこっと入っておるという入り方は、私として非常に意外な感がいたしたのであります。言いかえれば、大切な先生が、どういう装置を備えなければいかぬというような、物件の例示と並んで書かれておる、それだけにしかすぎないということは、どう考えても私はおかしいと思うのです。労働省は退席をいたしましたが、各種技能士というのが労働省関係にいろいろあるようですが、そういうものにつきましては、体系はこの法律で規定しておるように思うのですけれども、いま交通戦争が激化をし、しかも未熟運転者をできるだけ一掃して、りっぱなよい運転手を養成しなければいかぬ、そのことが緊急な課題だといわれておりますときに、それを養成すべき先生が物件の例示と並んで、ちょこっと施行令の中に書いてあるということはおかしいと私は思うのです。この点、長官、どうでしょうか。
  62. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 今回お願いしております道路交通法の改正で、大体今日の交通実態に間に合うような道交法の改正は一応終わるわけですが、率直に申しまして、今日の道交法の改正で積み残しておるのは免許関係の規定だと思います。免許の件につきましては、いましばらく時間をおかし願いまして、手を入れなければならぬ、私はかように考えております。御指摘の点も確かに私は不十分だ、かように考えております。
  63. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 これはひとつ早急に改正をしていただきたいと思うのです。  そこで、現実の事例をいろいろ私も聞いてみたのでありますが、山本委員が指摘をされたことですが、やはり免許状というものを明確にいたしまして、一つの公安委員会でとりましたら、全国とにかく共通ということを明確にすべきだ、私はそのことが必要だと思います。現実はどうか、調べてみますと、十数県で協定をやっているところもあるというお話ですが、現状はさらにひどいようですね。というのは、たとえばいま自動車教習所の技能指導員はなかなか労働時間が長いようです。夜に入ってから教習所に通うというお客さんもあるようですから、勢い労働時間が長くなる。当然、そうなりますと、技能指導員の方々が団結しまして労働組合をつくる、全国にはずいぶんできております。そして使用者と労働条件その他について交渉をするというようなことは当然だと思うのです。またこれは法律で許される正当な行為であります。ところが、使用者のほうはそういう組合をつくってもらっては困るということをお考えの方も中にはおるようです。そうしますと、あなたはうちの教習所の指導員なんだ、ほかに行ったら指導員の資格はないのですよというような形でおどかす。現に一つの県の中でAの教習所の指導員であった、ところが、これがAをやめてBに移るという場合に、Aでこういうかっこうで指導員をやっておりましたという申請書をつければ、Bに移った場合も簡単に指導員の資格がとれるけれども、中にはそういうものをよこさぬところがある。そうすると、退職された方が他の自動車教習所につとめようとした場合に、資格をとるのに非常にたいへんであるということで、いわばいま技能指導員の方が不足しておるわけですね。ですから、教習所とすれば指導員を何とか確保したい。先ほどのOBの圧力ではないかというお話も、教習所はそういう点を心配したんじゃないですか。結局、指導員の方が独立して、そうしていろいろ試験をやるということになっては、指導員の確保にいまでも困難なのがさらに困難になるというところに、教習所協会があげて反対をしたという事情があったように私も聞いておるわけです。  ですから、いま申し上げたように、技能指導員の資格がとにかく不明確である。同じ県の公安委員会の中でも、移動するということに申請書を出さぬというようなことでもって非常に移動が困難なような状況がある。こういうことは、先ほど私が指摘をした技能指導員の方々の資格がきわめて不明確なところに原因があるというふうにも私は思っているのですが、この辺の実態、私の指摘した点はどうですか。そういうことが現に起きているということを承知しておりますか。
  64. 片岡誠

    ○片岡政府委員 そういう話を耳にすることがたまにございます。しかし、私ども指導としては、一つの県内におきましては、たとえAの指定教習所で指導員の資格をとった場合であっても、当然Bの指定自動車教習所でも資格がある、あらためて公安委員会の審査を受ける必要はないという行政解釈で第一線を指導しておりますので、同一県内については問題はない、私はそのように考えております。
  65. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 その行政指導をさらによく徹底をしてもらいたい。それからまた、技能指導員の方々に、そういう行政指導が行なわれているという事実を知らしめるような行政指導をやっていただきたいと思うのですが、この点はどうですか。
  66. 片岡誠

    ○片岡政府委員 いたしたいと思っております。
  67. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 同時に、長官から御答弁をいただいたからいいのですが、念のために荒木国家公安委員長にもお尋ねしたいのですが、結局、運転者を養成すべき先生、技能指導員というものが、とにかく施行令の中の指定教習所の基準の中の物件と並んでちょこっと書いてあるというようなことはやはりまずいと私は思うのです。長官もこれをすみやかに是正をしたいと言っておられますが、これはいち早く法律改正で実現すべき課題だと思うのです。国家公安委員長のお考えもあわせて聞いておきたいと思います。
  68. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私も、御指摘があるまでは、そんなかっこうで規定されていることは知りませんでした。まさにかっこうが悪い面もあって、また実質的にも、できるならば法律的に定めらるべき筋合いのものかと思います。検討いたします。
  69. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 少なくとも、荒木国家公安委員長は以前文部大臣を非常に長く御経験をされたわけでありまして、教員の免許状と同じようにきちっと、一つの県で教員の免許状をとりましたら全国どこでも共通に使えるというくらいの権威ある免許状に技能指導員の方々についてもしていく。そういう形で技能指導員の方々の資格が明確になり権威が高められるならば、私はよりりっぱな運転者が養成されるというふうにもなると思いますので、この点は強く要請をいたしておきたいと思います。  それでは、時間もありませんから、あと若干の問題をお尋ねしたいと思うのですが、私は率直なところ、現在自動車の数がとにかく多過ぎるのではないかと思います。ある資料を拝見いたしましたら、こう書いてあります。東京の道路延長は約二万キロメートル、このうち、幅員五・五メートル以上の道路につきましては五千六百三十キロメートル、昭和三十五年に比して四・六%の伸びであるが、登録台数は、現在東京都におきまして二百十万台、昭和三十五年に比較をして三五〇%と伸びている。ですから、道路は四・六%しか伸びていないが、自動車のほうは三五〇%に激増している。自動車の走行可能な幅員四・五メートル以上の道路一体現在どうかというと、八千三百キロメートル、これは何車線という道路もありますから、これを車線延長に直して計算をすると、一万三千八百キロメートル。走行に必要な六十メートルの車間距離で走ったとすると何台走れるかという計算をすると、その許容量は約二十三万台だというんですね。現在東京におきまして登録台数が二百十万台ある。しかもこれは東京都の登録台数ばかりではいかぬと思うのです。周辺の近県からも東京には乗り入れてくるわけでありますから、そうなりますと、この車間距離六十メートルをとって走り得る許容量の二十三万台の十倍あるいは十倍をこえる自動車が東京にひしめいている、こういう計算になると思うのです。  通産省にお尋ねしたいと思うのですが、こういいったことからいって、およそわが国の自動車の許容量、あるべき台数、これ以上ふえては困る、こういう台数ぐらいは通産省は考えてしかるべきじゃないかと思うのですが、どうですか。現在一千八百万台、こういわれておるわけですが、わが国の道路の事情等から考えまして、そうして現在のような自動車の伸びでいったら一体どうなるのか。昭和五十年には大体三千万台をこえる、三千数百万台に達するだろう、こういわれておりますが、そういうものがわが国の道路からいってはたして許容し得るのかどうか、この点いかがでございますか。
  70. 大永勇作

    ○大永説明員 道路との関係での許容量という形で計算したことはございませんが、諸外国の例を見ましても、それぞれの国の国情、すなわち国土の広さでございますとか道路の面積等に応じまして普及の限界というものが大体あると考えております。そういう意味で、日本の場合の普及限界というものにつきましては一応計算をしておるわけでございますが、それによりますと、大体三千九百万台程度というのが日本の場合に保有の限界値になるのではなかろうか、そこからあとはもうふえないというような形になるのではないかということで計算をしております。  内訳でいいますと、大体乗用車が二千七百万台……。
  71. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それはいいです。  いまの自動車の伸びからいうと、その三千九百万台にはおよそ昭和何年ころ到達をすることになりますか。
  72. 大永勇作

    ○大永説明員 これも昨今非常に需要が伸び悩んだりいたしておりまして、非常に予想が狂う面がございますけれども、大体の感じでいいますと、先生御指摘のように、昭和五十年に三千万台程度になりまして、それからあとは非常に伸びがゆるくなりまして、昭和六十年ごろにいまの保有限界に達するということになるのではなかろうかというふうに考えております。
  73. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 警察庁は、この道交法をつくりまして自動車の安全運行ということにつきましては御関心を持っておるわけですが、警察庁としては、わが国の自動車がおよそこのくらいの限度を越えることは困るのではないかというような試算はいたしておりますか。どなたでもけっこうです。
  74. 片岡誠

    ○片岡政府委員 昭和五十年には三千万台になるだろうという予測はしておりますけれども、そういう限界の自動車の数量については試算をしておりません。
  75. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 通産省は、自動車会社を大いにバックアップしまして、つくれつくれというほうですからまあなんですが、少なくとも警察のほうは、現在の道路の事情、道路交通法の規定等からいってこんなにふえることは困る、およそこのくらい以下でなければならぬというようなくらいの考え方は私は持ってしかるべきじゃないかと思うのですね。通産省のような自動車企業擁護の立場ではなしに、安全運転という面から、私は警察庁としては当然一つのあるべき姿というものを考えてもよろしいと思うのですが、どうですか、長官。
  76. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 今日すでに千八百数十万台に達しておりますが、その台数で今日の道路実態からいえばすでにパンクをしておるということですから、私どもだけの立場でいえば、すでに車は多過ぎる、こう言えます。そこで、今度の法律改正でもお願いしておりますように、都市への乗り入れ規制の強化であるとか、あるいは公共輸送機関の優先の規定であるとかいった規定を設けざるを得ない。本来こんなものは理想からいえば必要のないことで、これはパンクをしておるからそういう法改正をせざるを得ない、こういうことでございます。  だから、私ども立場では、これ以上困るということは言えますけれども、   〔小澤(太)委員長代理退席、委員長着席〕 およそこういった生活に密着した便利なものを、私どもの消極行政立場から、これはもう生産をやめてくれというのはやはりちょっと言いにくい。そうでなしに、私ども立場で言えることは、自動車の台数というのは、先ほどお話を聞けば、三千九百万台が限度だとおっしゃる。それは人口そのものから考えて無限のものでないことはきまりきっておる話ですね。そこで、そういう目安があるならば、そこまではいくということで道路なりその他の施設のほうを積極面でやっていくべきだ、私はさように考えます。
  77. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 建設省としてはどうですか。いま長官が言われたように、環境整備も重要じゃないか、こういうのですが、自動車の趨勢に対しましてその環境整備について建設省としては一体どういう構想がございますか。
  78. 吉田泰夫

    ○吉田説明員 建設省におきましては、昭和六十年に三千五百万台に達するだろうという前提のもとに、その六十年、三千五百万台の自動車交通が、歩行者等も含めて全体でございますが、安全、円滑に行なわれるように必要な最小限度のものは道路の整備という形で整えていかなければならない、こういう長期の計画を立てております。それを当面の五カ年ぐらいの期間に区切りまして、第何次の道路整備五カ年計画というふうな形で実施しておる次第でございます。  道路自動車関係は、まあ全国的なマクロの数字からも対応して論ぜられるべきでございますけれども、より具体的にはやはり地域別あるいは交通目的別にこれをブレークダウンするとともに、特に個々の自動車の大きさとか重量、こういったことと既存の道路あるいは今後改良していく道路との関係を適切なものとして、道路の損傷も防ぎつつ、交通の安全もはかっていくというようなことが必要かと考えます。  御質問のとおり、自動車そのものの伸びをなかなか人為的に押え切れるものでもないと思われますし、これはいろいろ交通の規制の面で大都市地域等完全にパンクしておるようなところにおきましては、道交法あるいは公安委員会の行政措置によります当面の緊急な優先交通施策等にも十分協力しつつ、やはり基本的には道路の整備をもって対処してまいりたい、このように考えております。
  79. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 総理府の交通安全対策室長お見えですね。おつくりになりました交通安全基本計画、拝見をいたしました。陸上交通の安全のために今後とるべき施策についていろいろ書いてありますが、とにかくどうなんでしょうか。まあ昭和六十年に通産省は三千九百万台、建設省は昭和六十年に三千五百万台というようなものを想定していろいろ考えておられるというのですが、全体を所管する交通安全対策室長とされましては、大体自動車の数、それからそれを取り巻くところの環境整備について一体どうあるべきかということについてはお考えになっておられるわけでありますか。
  80. 須藤博忠

    ○須藤政府委員 きのうも申し上げましたが、この自動車の伸びの関係でございますが、五年後の昭和五十年には大体三千万台に達するんじゃないかというふうに私ども想定をしたわけでございます。この三千万台と申し上げます数字は、関係省庁等の意見その他いろいろ多方面の意見も十分お聞きいたしまして、大体の意見が三千万台ではないかということで一致しておったわけでございます。  それから、私どもこの基本計画を立案するにあたりまして、当然この基本計画は交通安全対策基本法の第二十二条第二項第一号に書いてございますように、「総合的かつ長期的な施策の大綱」というふうなものを規定しろということになっておりますので、どの程度一体規定すべきかという基本計画の思想といいますか基調というものを考えまして、大体昭和四十六年度から向こう五年間というものを一定のめどとして一応基本計画を立案するということにいたしたわけでございます。したがいまして、向こう五年間の自動車台数の伸び、それによって起こると予想される交通事故の発生、死傷者の数というものを想定いたしまして一応必要な施策というものを定めて、この基本計画に盛り込んだというのが趣旨でございます。
  81. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 通産省にお尋ねしたいと思うのですが、この中にも安全な自動車をつくるための技術開発ということを強調しておられるわけですが、最近の自動車を見ますと、モデルチェンジには非常に熱心ですね。形を変えるというようなことには非常に熱心でございますが、もっと自動車の安全性確保あるいは公害防止ということについての指導というものがどうも足らぬような気がするのです。モデルチェンジなんてせぬだっていいじゃないですか。もっと衝突の際の衝撃をいかに少なくするか、それからブレーキ等を整備いたしまして歩行者の被害をいかに少なくするかというようなことは、現代の科学をもってすれば私は簡単にできるはずじゃないかと思うんですね。ところが、モデルチェンジをして、きのうも公明党の和田委員からも強調されましたけれども、要するに、かっこいい車をつくるということに力を入れて、安全性という面が非常に欠けているという気がしてなりません。そういうことについては通産省は一体どんな努力をやっておるのですか。
  82. 大永勇作

    ○大永説明員 モデルチェンジにつきましては、これは形だけの問題ではございませんで、従来モデルチェンジが行なわれてまいりましたのは、やはり走行安定性の問題でありますとか、高速性をよりよくするというようなことでパワーアップをする、それに伴って形も変えていくというふうなケースが非常に多かったわけでございますが、御指摘のように、最近におきましては、そういった高速性能でございますとか、パワーという問題ではなくて、安全とか公害の面にやはり重点が移ってまいっておるわけでございます。したがいまして、たとえば研究費にいたしましても、従来は自動車業界全体で使っております研究費のうちで、大体二割程度、百五、六十億円程度しか安全、公害関係に使っていなかったわけでございまして、そのほかが高速性能でございますとか走行安定性あるいはモデルチェンジといったところの研究に使われておったわけでございますが、昨今におきましては、研究費の重点が安全、公害関係に移ってまいりまして、大体今後五年間の間に三千五百億円程度が安全、公害研究費に充てられるということになるであろうというふうに考えておるわけでございまして、業界自体がそういうふうな考え方になっておりますけれども、われわれといたしましても、安全、公害問題につきましては、積極的に指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  83. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いまテレビのコマーシャルなんか見ておりますと、公害上どうであるとか安全がどうだということはさっぱりないのですね。見たところ、かっこいいとかどうだということにコマーシャルの大半というか、ほとんど全部が費されている状況でしょう。これは私の見るテレビもあなたの見るテレビも同じでしょうから、これは変わりがないと思うのですけれどもね。ですから、そういったコマーシャルの重点についてももっと考えてもらってもいいじゃないですか、業界を指導してもらっても。  それから従来二〇%くらいが公害、安全の研究開発に使われておったというのですが、これからはもっとそういうことに全力を尽くす。とにかく安全な車をつくるということに通産省の指導を全力をあげて徹底するというくらいのことをやっても私はいいじゃないかと思うのですが、どうですか。
  84. 大永勇作

    ○大永説明員 安全な車でございますとかあるいは公害のない車というのは、これは宣伝すべきポイントというよりも、当然の前提であろうと思います。したがいまして、御指摘をまつまでもなく、そういった点につきましては、通産省といたしましても最大限の努力をいたしてまいりたいと思います。
  85. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ことばだけで終わらないように、ひとつ実績で示していただきたいと思います。  それから運輸省にお尋ねいたしますが、ホンダN360の欠陥を指摘したのは警察庁ですね。きのうのお話ですと、東京地検から依頼がございまして、自動車公害研究所ですか何かで検討してまだ公表はしていない。やがて検察庁のほうに連絡をするというようなお話でしたが、警察のほうにはどうですか、連絡をするのですか、せぬのですか。
  86. 隅田豊

    ○隅田説明員 N360の問題につきましては、警察庁のほうから私どものほうに、N360の起こしました事故の中で数件のものが構造上の問題もあるのではないかという照会があったわけでございます。それに対しまして研究所のほうでやっておりますのは、これは全然別個に裁判上の関係の問題といたしまして、今度は東京地検のほうから鑑定を頼まれて、事実上の研究実験をやっておるわけでございます。ちょうど事態が重なりましたので、私たちといたしましては、一応机の上で警察庁からいただきましたデータを全部分析をしてみたわけでございますけれども、やはりそれだけでは構造上の欠陥があるかどうかということはどうも見当がつきません。幸いにして警察庁のほうもそういうことをやっておりますし、鑑定上の問題でありますので、これを右から左に使うということは地検の御意見を伺わなければなりませんが、一応実験が全部済んで、地検の御承認を得れば、その結果を参考にさしていただいて警察庁に御意見を出したい、こういうふうに考えております。
  87. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 具体的な事実をあげて警察庁から照会があったわけですから、当然警察庁のほうにそれに対する考え方というのは示されるのがあたりまえだと思うのですが、どうなんでしょうか。
  88. 隅田豊

    ○隅田説明員 そのとおりでございます。最終的なものがまだちょっと時間がかかっているということでございます。
  89. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それはいつごろになりますか。
  90. 隅田豊

    ○隅田説明員 研究所のほうの最終的なまとめをやっておりますので、それがいつごろになりますか、研究所のほうもまだちょっと最終的なことを言っておりませんが、私たちのほうでは、四月中には何とかまとまるのではないかということで、一応見当をつけております。
  91. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 きょうの新聞を拝見しましたら「また欠陥車続々」こうありまして、三菱自動車の製造している「コルトギャランシリーズのうちクーペを除く、乗用車、ライトバン五車種十一万六千台の配線に欠陥があると、運輸省に届け出た。」こう報道されております。新しい車種を出しますときには、当然運輸省としては精密な点検をして、それから新しい車種の車が出るはずだと思うのですが、あとからこういう形で欠陥車が続々出る、会社のほうから運輸省のほうに連絡があるということでは、運輸省のほうの事前の点検というものが全くいいかげんだったのじゃないかという感じがわれわれするわけですね。そういうものは新しい車種を出すときの通産省のチェックというもので防ぎ得ないものなんですか。どらも運輸省というのはめくら判を押して、あとからユーザー等が問題を提起して、会社のほうで誤りを認めて、それから公表というような道をたどらなければ見つからぬものなんですか。それほど運輸省というのは、そう言っちゃ申しわけないですが、めくら同然の状態なのですか。この点はいかがでしょう。
  92. 隅田豊

    ○隅田説明員 御指摘のとおりでございまして、あるいは理想的に申しますれば、運輸省の行ないます審査で完全にその車について問題を指摘して改善をさした上で発売をさせることができれば、これはもう申し分ないわけでございますが、残念ながら現在の私たちの行なっております審査あるいは実際審査を行ないます手段から考えてみますと、たとえば百万台に一件起きるとか、こういうような非常にめったにないことではございますが、起きたら大きな問題になるというようなものにつきましては、極端なことを申しますれば、一年か二年ためしにずっと使っていればあるいはそういうことがつかめるかもしれない。ただ理論上、計算上あるいは現物の一台のテストをしたということぐらいではわからないというケースが事実上ございます。私たちといたしましてもできるだけ、しかし、発売後にこういうことが発表せられるということは非常に残念なことでございます。この欠陥車が出たということ自体を一つ一つの経験として積み重ねて、いろいろな今後の審査方法というものには反映をさしてきておりますけれども、しばらくの間は、逆にそういうメンツにとらわれずに、やはり欠陥というものが出たら積極的にこれを取り上げていくという方針をとっておるわけでございます。
  93. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 このコルトギャランの欠陥の内容というのは、新聞で拝見しますと「運転席計器板下の電気配線の取付けが悪く、アクセルのワイヤと接触してショートするおそれがある」、考えてみればきわめて単純なものですよね。こういう単純な欠陥というものが運輸省の検査でもわからぬというようなことはおかしいと思うのですね。非常に複雑なものであるなら別ですが、このアクセルがワイヤと接触してショートするおそれがあるということぐらいは、これはきわめて簡単な欠陥ではないかという気がするのですが、これはいかがですか。
  94. 隅田豊

    ○隅田説明員 その点は御指摘のとおりでございますが、図面上、今度の車は、実は設計上から申しますと、二十センチぐらい離れております。その二十センチぐらい離れているものが、非常に珍しいケースといたしまして、簡単に言いますと、ぶらぶらになった状態で接触することが起きたということであります。ですから、私どもが事前にこれは全数をチェックいたしたとしても、発見はおそらく不可能だったろうと思います。ただ、そういうことが一件出たということから反省してみますと、もう少し何とか手当てをしておけばぶらぶらにならないで済んだのではないかというような見方をわれわれしております。そういう意味で、一般整備工場における整備ということもございますので、リコールという形をとらせて、個々の方々のユーザーの車を見て、もし非常に接近しているというようなことが、生産段階と違った状態になってしまったようなものが出てくると非常に危険でございますので、リコールさしておる、こういうことでございます。
  95. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 警察庁にお尋ねしたいと思うのですが、どうでしょうか、事故率の高い車というのを公表することはできませんか。事故は全部警察庁に集まるわけですから。そうしますと、結局その車種の車がどのくらい出回っておるということも簡単にわかると思うのですね。そうしますと、どの種類の車が事故率が高いかどうかということは当然私は簡単にわかるはずだと思うのです。そういうものを公表するということは——もちろん事故の中には本人の責めに帰すべきものもあるでしょう、まあそれが多いかと思いますけれども、比較的そういう事故率が高いということは、安全性その他に何らか事故を起こしやすい傾向があるということを示す一つのものさしであることは間違いないと思うわけで、したがって、毎年毎年、全部というわけにはいかぬでしょうが、一番から数えて十番までこういうものが事故率が高かったということを公表するということは、メーカーに対して反省を与えるきっかけにもなると私は思いますので、そういうことについて警察庁、どうでしょうか。やりませんか。
  96. 片岡誠

    ○片岡政府委員 現在の事故統計には車の車種、年式、型というものはとっておりません。それをとるようにすればとれることだと思いますけれども先生のおっしゃった、事故を起こした要因はおそらくいろいろのケースがあろうと思いますし、分母におそらく車の走行キロ数をとるべきでしょうし、その辺の問題もあって、必ずしも正確にその車に問題があるという形ではなかなか統計上も処理しにくいのじゃないか、そのように考えております。
  97. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ですから、それが高いのが欠陥車だどうだということじゃないですよ。要するに、事故を起こしやすい車はこの車だった。起こしやすいといいますか、この車が事故率が多かったということは、やはりユーザーにとってもメーカーにとっても一つの指標といいますか、また反省するとすれば、反省する一つのきっかけにもなるわけで、警察庁が企業だけを大いに擁護するということであれば別ですが、決してそういうつもりはないでしょうから、車種別、年式別ぐらいはとって——何も、だからこれが欠陥車ということじゃないのですからね。こういう車の事故が多かったということくらいは発表したっておかしくないと思うのです。長官、どうですか。
  98. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御意見、わからねわけじゃありませんけれども、やはり車の事故というものは、運転するのは人がやるわけですから、婦人がどういう車を好むかとか、若い方がどういう車を好むかとか、いろいろなことがあろうと思います。したがって、この車種の車の事故が多かったということを単純に私のほうから発表するということは、世間をミスリードするおそれもありはしないかという心配を、ただいま御意見を承っておって、感じたわけでございます。したがって、ありのままの、何というか、この車種がこの程度事故が多かったということの発表はただいまいたしかねる、かように私は考えております。
  99. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ミスリードもあるだろうし、そうでない、いい意味での反省の材料になるということも私はやはり一面言えると思うのですね。検討してください。ここで言えと言ったって、そういうつもりがなければ、はいとは言いっこないのですから。まあ、どういう車を若い人が好むとか御婦人が好むとかいう、それは傾向はあるでしょう。しかし、とにかく特定の車に事故を起こしやすい人間が乗るというようなことはないので、不特定多数が乗るわけですから、統計の原理からいきましても、そうそうおかしいことはないと私は思うのです。そういう意味で、ひとつ御検討をいただきたいと思います。  最後に、お尋ねしておきたいことが一つありますのでお聞きしたいと思うのですが、この前の暮れの公害国会におきまして、公害防止に関して道交法の改正を行ないました。大気汚染、騒音、振動、これらの基準につきましては総理府令・厚生省令でこれを定めるということになっておりました。長い期間たったわけでありまして、当然その案もほぼ固まったと思うのですが、一体どのような総理府令をおきめになる御予定であるか。また厚生省令は警察の所管じゃありませんけれども、おおよそこういう方向にいっているということがありますならば、お示しをいただきたいと思います。
  100. 片岡誠

    ○片岡政府委員 はなはだ申しわけございませんが、相手方の協議をする役所の厚生省のほうが公害関係の立法に基づく政令、省令がたくさんございますので、私どものほうとの詰めがまだ十分いっておりません。私どもは厚生省のほうをせかしておりますけれども、できるだけ早く、できれば五月中くらいに総理府令・厚生省令をつくっていきたい、かように思っております。
  101. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 何PPMということはまだ今後詰めるのかどうか知りませんが、どういう種類のものをきめるということぐらいはおわかりだろうと思うのです。一酸化炭素それから酸化窒素あるいは炭化水素、ホルムアルデヒドあるいはオキシダント、一体どんなものを大気汚染ではきめるつもりですか。
  102. 片岡誠

    ○片岡政府委員 道交法交通公害の定義をいたす場合に、環境基準がその前提になると、私、思います。したがいまして、環境基準のできたものから逐次きめていくということに相なろうかと思います。
  103. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうすると、環境基準がいまきまっているのは一酸化炭素だけですね。そうすると、当面きめるのは一酸化炭素だけということですか。問題は、道交法改正、広域における交通規制というようなのは当然光化学スモッグ等を想定しておられるだろうと思うのです。そうした場合に、一酸化炭素だけきめて、ほかの環境基準がないからほかは知らぬ、酸化窒素は知らぬ、オキシダントはわからぬということでは、あの道交法改正の趣旨に合わぬと私は思うのですね。この点はいかがですか。
  104. 片岡誠

    ○片岡政府委員 したがいまして、厚生省としては環境基準をつくることを極力やっておるということでございます。したがって、おっしゃるように、一酸化炭素以外の環境基準そのものをつくることを極力厚生省がやっておる。それができれば、私どものほうの交通規制の基準になる交通公害の定義のほうも必然的に出てくる、こういう順序だと思います。
  105. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、五月に総理府令をきめるときには、オキシダントについても厚生省が環境基準をきめ、それに従って当然この基準がきまる、こう了解してよろしいわけですね。
  106. 片岡誠

    ○片岡政府委員 排気ガスにつきましては、そういうふうに環境基準がきまらないとなかなか数値的に私ども独自でつくるというわけにはまいらないと思います。ただ、たとえば騒音につきましては、環境基準がまだできておりませんけれども、一応の審議会の案もできておるようでございますし、環境基準が万一できない場合に、私どもとして最小限度の保障をするということも場合によっては考えざるを得ないかもしれませんが、できれば厚生省のほうできちっと環境基準をつくり、私どものほうの交通公害の定義も明確にしていくというのが、一番理想的だと私は思っております。
  107. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 きょうは厚生省は呼んでございませんので、これ以上議論してもしかたありませんので、また別途、委員長道交法審議をいたしておるときに厚生省を呼んで、この点については質問する機会を保留いたしまして、本日はこれで終わっておきたいと思います。
  108. 菅太郎

    ○菅委員長 承知いたしました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。   午後一時散会