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岡沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま
議題となっております
自動車重量税法案に対して、以下述べます
理由から反対の意思を表明いたします。
われわれは、今日の
道路をめぐる社会的な諸問題を考えるとき、交通施設の
整備をはかり、
道路環境の
改善を進めることが、国民福祉の増大に不可欠のものであり、行政上緊急を要する課題であることに、あえて異論を差しはさむものではありません。しかしながら、国が課税等国民の
負担と犠牲において資金を調達し、それを一定の事業に投入する場合、その規模や
内容が国民にとって納得できるものであり、それによって得られる国民の福利が、国民の
負担と犠牲を償って余りあるものでなくてはなりません。こういう姿勢こそ財政運営の基本であるべきだと私は思います。
そこで、この
法律案の
提案理由としてあげられました、
道路その他の社会資本の充実の必要性という視点に返って考えてみますと、特に物理的な生命の長い
交通資本などについては、将来の望ましい総合的、有機的な交通体系はどのようなものであるべきかが慎重に検討され、これに基づいて的確な
整備の中身がまずきめられなければならないはずであります。したがって、
政府のいまなすべきことは、七〇年代の総合交通政策のビジョンの確立であり、これに基づく具体的な
整備の
内容を決定することであります。そして、それを国民の前に示し、その国民的コンセンサスの上に立って初めて、必要な
財源対策の検討に入るべきなのであります。目的も構想もはっきりしないまま、資金配分だけが先行したような形の中で、取れるだけはまず取っておこうというがごときは、まさにさか立ち政策、本末転倒もはなはだしいといわざるを得ません。独善的な発想や単なる思いつきで新税を設け、しぼるだけしぼるというような鬼収奪官的な行動は厳に戒めらるべきものであります。
しかも、
政府は、この新しい
負担を自動車の利用者に求めるにあたって、自動車の走行が多くの社会的コストをもたらしているということを
理由にあげているのでありますが、すでに有料
道路を除いた
道路投資額の大部分を自動車
関係者に
負担させている現況に加えて、この上さらに何を根拠として過重な
負担を自動車利用者に求めようとされるのでありますか。社会的コストをいうならば、自動車の使用者、利用者はすでに応分以上の
負担を十分支弁していると見るべきであります。
道路は、単にそれを利用する自動車のためだけにあるのではなく、国の産業基盤的観点からも、国民の
生活基盤的な観点からもきわめて重要な社会資本でありまして、
道路整備による受益は、その直接利用者のみならず、広く国民一般に及ぶものであります。したがって、
道路資本についてこれ以上の
財源を求めるとするならば、それは一般
財源の投入額を増加してこれを補うか、建設公債によってこれをまかない、
長期的にその償却をはかっていくべき性質のものであるとわれわれは考えます。しかるに、一部自動車の使用者にのみこれを求めようとする
政府の意図は、全く理解に苦しむところであります。
しかも、この税収を
道路のみならず、新幹線、地下鉄、国鉄赤字路線などへの配分することも考えられているようでありますが、鉄道等の建設のための
費用を自動車ユーザーに
負担させるいわれは、これこそ全くないといわなければなりません。
御承知のとおり、自動車に対する課税はすでに八税目の多きに及んでおり、もはやその税
負担は限界に達し、新税による
負担の余地は全くありません。今回の重量税の性格は、
現行のこれら八税目の課税と必ずしも重複しないと
説明されておりますが、事はそのような形式論の是非ではありません。
政府は何を基準に自動車の保有者にこれ以上の担税力があると考えられるのか、その点について十分納得のできる
説明もできないまま、一部の特定の者に対してのみ過重な
負担をしいることは、課税公平の大原則を無視した全くの悪税の創設であると断ぜざるを得ません。むしろ現在必要なことは、この八税目の多きに及んでいる自動車
関係諸税を、国、地方を通じ保有と消費の両面にわたって交通整理をし、より簡素、明快な税体系に整理することではありませんか。
また、自動車は、現段階におきましては、全く大衆化いたしており、いまや国民
生活の必需品というべきであります。このような自動車に対して一律的に新たな課税を行なうことは、国民
生活の実態を考慮しない大衆課税の実施であるといわざるを得ません。特に中小企業、農業等におきましては、いまや自動車はその経営上欠くことのできない手段となっており、したがって、これに新税を課することは、これらの経営及び家計に対する大きな圧迫でもあります。
さらに、物資の輸送、旅客の運輸、いずれの面におきましても、自動車による輸送が内陸輸送の第一位を占めている現状のもとで、この新税の創設が強行されるならば、国民大衆の期待するサービス機能を低下させるとともに、輸送コストの
上昇を招き、物価の高騰をもたらすことも必至であります。
このような国民
生活に及ぼす重大な影響を無視し安易に
提案されたこの
自動車重量税の創設法案は、
道路整備、交通政策、都市政策のすべてにわたって、先見性のある施策を怠ってきた
政府・与党がその
責任を一方的に国民大衆にしわ寄せしようとするねらいを持つものであり、われわれは、
生活の安定と向上を希求する国民の名において、本法案に強く反対の意思を表明して、意見の陳述を終わります。(拍手)