運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-03-05 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月五日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村武千代君       佐伯 宗義君    正示啓次郎君       田村  元君    高橋清一郎君       登坂重次郎君    中島源太郎君       中村 寅太君    原田  憲君       福田 繁芳君    坊  秀男君       松本 十郎君    村上信二郎君       森  美秀君    山下 徳夫君       吉田 重延君    吉田  実君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       田中 恒利君    平林  剛君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       伏木 和雄君    古川 雅司君       春日 一幸君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務省経済局長 平原  毅君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         農林省畜産局長 増田  久君  委員外出席者         農林大臣官房参         事官      大場 敏彦君         農林省農林経済         局国際部長   吉岡  裕君         通商産業省通商         局国際経済部長 室谷 文司君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      斎藤  顕君         中小企業庁計画         部長      斎藤 太一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   木村武千代君     正示啓次郎君   坂元 親男君     山下 徳夫君   中嶋 英夫君     田中 恒利君 同日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     木村武千代君   山下 徳夫君     坂元 親男君   田中 恒利君     中嶋 英夫君     ————————————— 三月四日  個人企業税制改正に関する請願赤松勇君紹  介)(第一五四七号)  同(鹿野彦吉君紹介)(第一五四八号)  同(北澤直吉紹介)(第一五四九号)  同(福田篤泰紹介)(第一五五〇号)  同(葉梨信行紹介)(第一五五一号)  同(内田常雄紹介)(第一五七七号)  同(小此木彦三郎紹介)(第一五七八号)  同(小山省二紹介)(第一五七九号)  同(笹山茂太郎紹介)(第一五八〇号)  同(中村弘海紹介)(第一五八一号)  同(松野幸泰紹介)(第一五八二号)  同(宮澤喜一紹介)(第一五八三号)  同(春日一幸紹介)(第一六六〇号)  同(亀山孝一紹介)(第一六六一号)  同(河野洋平紹介)(第一六六二号)  同(高鳥修紹介)(第一六六三号)  同(三原朝雄紹介)(第一六六四号)  同(安田貴六君紹介)(第一六六五号)  同(海部俊樹紹介)(第一七一〇号)  同(笠岡喬紹介)(第一七一一号)  同(菊池義郎紹介)(第一七一二号)  同(島村一郎紹介)(第一七一三号)  同外四件(田村良平紹介)(第一七一四号)  同(竹内黎一君紹介)(第一七一五号)  同(千葉三郎紹介)(第一七一六号)  同(村上信二郎紹介)(第一七一七号)  日本専売公社防府製塩試験場存続に関する請願  (平林剛紹介)(第一五五二号)  同(平林剛紹介)(第一五七五号)  同(平林剛紹介)(第一六六六号)  中国に対する関税差別撤廃等に関する請願  (広瀬秀吉紹介)(第一五六七号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一五七六号)  同(黒田寿男紹介)(第一七一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等  に関する法律案内閣提出第一五号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)  入場税法の一部を改正する法律案内閣提出第  八号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る二月二十四日すでに提案理由説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部君。
  3. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まず、先般北京で日中覚書貿易協定が行なわれまして、たしか委員会等でも、佐藤総理は、この貿易協定の成立ということについては好ましい、こうおっしゃったと私新聞で拝見しておるわけですが、その点は確認してよろしゅうございますか。
  4. 中川一郎

    中川政府委員 協定ができたことについては好ましいことであるということについては、そのとおりであると存じます。
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、これからも日中の間貿易はより伸ばしていきたい、こういう政府考え方だ、こら受け取ってよろしゅうございますか。
  6. 中川一郎

    中川政府委員 そのとおりでございます。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 今度提案されておる一番大きな問題は特恵関税の問題であろう、こう思うのでありますが、この特恵関税を行なうということは、幾たびかの国際会議あるいは閣議の決定というものが行なわれております。これが当然日本中小企業にも大きな影響を与えるだろうぐらいのことは政府においてもおわかりだったろうと私は感ずるのでありますが、政府は一体いままでに、それに対する対策というものはどんなことをやっておいでになったのですか。
  8. 谷川寛三

    谷川政府委員 すでに御案内と思うのでございますが、特恵供与案をつくる段階におきまして、ただいま先生お話しになりましたようないろいろな問題を考えまして、計画供与案自体につきまして、いろいろ国内産業に及ぼす影響につきましての配慮をいたしております。  簡単に申し上げますと、まず農産物でございますが、これにつきましては、国内産業にとりまして問題が少ないものについてだけ、それに限定して特恵を供与する。大体熱帯産品を中心にいたしまして五十九品目を選んでおります。それから、この農産物につきまして申しますと、税率引き下げ幅につきましても、最低は二割から最高は一〇〇%、無税とするという案にいたしておりますが、品目ごとに洗いまして、国内産品に対する影響考えながらきめてございます。それでもなお国内産業につきまして影響がある場合には、歯どめをいたすエスケープクローズを設けまして被害を最小限に食いとめる。  それから鉱工業産品につきましては、いろいろ検討の結果、これは特恵を与えていくわけにはいかぬというものにつきましては例外を設けております。御案内のとおりでございますが、生糸、絹織物、革製の衣類、合板等品目につきまして特恵供与例外を設けております。それから青天井で特恵を与えるわけではございませんで、特恵供与品目ごとワクを設けております。そのワク範囲内でだけ特恵供与をいたすということも考えております。  それから、ある受益国からある産品の輸入が、たとえば韓国からの綿織物がその綿織物ワクの五割をこえたという場合には、もうその国につきましては綿織物に対しては特恵を与えないという歯どめもつくってございます。それでもなお安い特恵供与品目が入ってまいりまして、当該国内産業相当被害を与えるというような場合には、関税定率法によります緊急関税よりは若干要件を緩和いたしまして緊急関税を発動するという歯どめも持っております。  こういう次第でございますから、大まかに見まして国内産業にはさしたる影響を及ぼすことはあるまいというふうに考えておる次第でございます。  ただ、日本産品がたとえばアメリカ輸出される、その場合にアメリカ特恵供与によりまして後進国競争関係に立つという場合が、これは相当こわいというふうに予想されます。そういうこともありますので、この法案とは別に通産省のほうで、中小企業特恵対策臨時措置法案というものを今国会に上程いたしまして御審議を願っておりますが、それによりまして、たとえば特恵を契機にいたしまして、中小企業におきまして他の有利な産業転換をするという場合にいろいろ情報を提供したり助言をしたり、それからまた転換資金融資一般よりも低利でいたしましたり、それから転換します企業償却資産につきまして特別な短期償却を認める、これは租税特別措置法措置してもらいますが、といったようないろいろな措置を講じておる次第でございます。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろ御説明ありましたけれども、私お伺いしておりますのは、日本中小企業に対して、いま中小企業臨時措置法ですか、それを国会提案をしておられるということは承知しておるのでありますが、もう皆さんのほうでは、これは十二月の統計月報ですが、ここでも皆さんのほうでも書いておるのですよ。ただ、この書き方は、「問題が生ずる場合には政府としても必要に応じしかるべき措置をとるであろう」なんていう、これは責任のある文章じゃないでしょうけれども、この程度でお考えになっておるとすれば相当に問題があるのじゃないか。また、いまこの期に及んで中小企業対策法案を出されたというようなことでは、私は政府としては少し手おくれではないのか。こういうことをやるという場合にはそれなりに、日本へ来る場合の影響もあるだろう、また日本からアメリカ輸出する場合、アメリカ貿易において競合するという場合に大きな影響を持ってくる業種も多々あるわけです。そういう問題に対していまごろ出すということでは私は少しおそ過ぎるのではないか。むしろそっちのほうが先行しながら、予測される事態に備えながらこういう問題を進めていく。私は、皆さんシーリングワクを設けたとかいろいろなことで、国内産業にはあまり影響がないなんというのはおかしいと思うのであって、少し影響がなければこれはおかしいでしょう。特恵関税を認めるというのは、後進国というか、まあ開発途上国に格差をつけて利益を与えようというのが目的であるとすれば、私は影響があるのがあたりまえなんであって、ないなんていうのはおかしいのだ。ないようなものならやらないほうがいい。当然ある。あるとすればそれにもっと先手を打って——この関税法案が先に審議をされて、国内中小企業法案が、上程はされたけれども商工委員会でまだ審議に入っていないなんということは、私はほんとう国内の業者に対してあたたかい手を差し伸べるとすれば、順序が逆ではないか、こういう意味で私は質問しておるのであって、少し手おくれじゃないですか。
  10. 谷川寛三

    谷川政府委員 影響の点につきまして、私は確かに先生がおっしゃいますように、思い切った案を開発途上国工業化促進のためにやらなければならぬと思いますが、そうは申しましても、一方国内競合産業につきましては、これはやはり無用の混乱、ショックを与えてもいけませんから、そこのところも考えなければいけないということで、さっき申しましたようにいろいろ歯どめを設けながら、かつ開発途上国も喜ばれるような案をつくった。だからさしたる影響はないと思いますが、全然その影響がないとは申しません。  それからまたその対策でございますが、これはもちろん法案としては御審議をいただいておる臨時措置法案があるわけでございますが、それ以前から、これは中小企業庁指導部長さんがお見えになっておりますから、あとでるる御説明があると思いますが、中小企業近代化その他体質改善片づきましていろいろと措置がなされておりますので、その点も御了承いただきたいと思います。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや私の言うのは、いま設けられておるのが悪いというのではないので、手おくれだ、もっと早くからそういう方向で指導されるのがほんとうじゃないかということなんです。  次に、いま日本企業韓国台湾にいろいろと進出をしておる。あるいは合弁であるいは独自で工場を持っておるという。これは、持っていっておる一番大きな原因というのは何をねらって向こうへいっておるというふうにお考えになりますか。
  12. 斎藤太一

    斎藤(太)説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、この数年来、たとえばアメリカ市場等におきまして、日本の特に雑貨あるいは繊維といったような労働集約的な産業につきましては、じわじわと低開発国輸出が伸びてまいりまして、日本のシェアが横ばいあるいは低下しつつあるものがございます。これの原因は、韓国台湾香港等の従来の低開発国でございましたところが漸次工業化が進みつつあるということと、やはり賃金水準日本と違いまして低いという意味におきまして、労働集約的な産業におきましては低開発国が漸次競争力を増してきておるというところに根本の、原因があろうかと存じます。したがいまして、これに対する基本的な対策といたしましては、わが国の中小企業生産性向上をはかる。たとえばいろいろ自動化をはかりますとか機械化をはかるということによりまして極力生産性向上をはかる。もう一つは、低開発国でまだつくっておりませんような、いわゆる商品の品質の向上あるいは高級化機械化重化学工業品化、こういったことを進めまして、これによりまして低開発国の追い上げをかわしていくということが必要かと存ずるわけでございます。  そのために政府としましては、たとえば昭和四十四年に中小企業近代化促進法改正をいたしまして、構造改善業種というものを新たに設けまして、業界ぐるみ構造改善につきまして特別の助成をいたす制度を設けたのでございます。そのほか従来からの中小企業近代化促進法によります業種別近代化、あるいは中小企業振興事業団というものにより非常に低利資金を供給しまして、中小企業の協業化あるいは共同化を進めまして生産性向上等をはかっています。また府県に設備近代化資金制度というのがございまして、これは無利子で、国と県が半分ずつ金を出しまして年間約二百五十億円くらいの融資をいたしております。こういった各般の施策によりまして、現在中小企業近代化を鋭意進めておるところでございます。  なお、御質問韓国台湾等日本企業が最近進出いたしておりますのは、やはり向こうの安い労働力を活用するというのが主たる目的ではなかろうかというふうに考えます。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ、あなたのおっしゃるように安い労働賃金、それとやはり今度の特恵関税実施ということをねらっておる。結局、よりもうかるということで向こうへ出ておるに違いないのであって、よりもうかる一番もとはといえば、低賃金労働、もう一つ特恵関税になれば有利になるということで出ておるということじゃないのですか。
  14. 斎藤太一

    斎藤(太)説明員 現在、韓国台湾等進出いたしました企業で、主として向こうの安い労働力を利用いたしましてさらに日本に再輸入いたしておるものもございますけれども、同時に、そこで生産されましたものをアメリカ等輸出をするというのを主たる目的として台湾等進出しておる企業相当にございます。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の質問はそういうことじゃないのであって、大体似たようなことですけれども、そうじゃなしに、東芝が韓国へ出るとか「シャープ」が出ておるとか、一ぱいあるわけですよ。こういうのはなぜ出るのかといえば、よりもうけたいということなんでしょう。そのもうけたいという、もうけられる可能性というものは、日本へ持ってくるとかアメリカへ持っていくのはかってであるが、問題は低賃金労働というものと、もう一つ特恵関税になればより有利になる。日本工場をつくっておくよりも、韓国台湾に持っていったほうがより有利になる、こいううことでいっておるのではないですか、こう聞いているのです。
  16. 斎藤太一

    斎藤(太)説明員 お説のとおり、一つは低賃金の利用、一つ特恵実施されます場合には無税で入ってくるという面の活用も考えておるかと思います。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、特に最近は韓国台湾というところに日本企業進出というものが非常に目立っておるということ、またこれからそういう開発国日本企業進出する。しかもそちらのほうの賃金はというと、これはたいへん低賃金である。ここに一つ——これが全部ではない、大体似たようなものだとは思いますが、あまりにも低賃金で、韓国では女工哀史だといわれるくらい安い賃金で、自殺する人が出るというようなことまで書かれておるほど低賃金でいくわけです。そういうことが続いていきますと、しかも日本企業はどんどん出ていくということになると、やはり権益を守るというところへ次にはつながっていくのではないか、私はこういう感じがするわけであります。と同時に、韓国台湾にこういう形でいく場合、さらにこの特恵をここに与えるということになりますと、いま御承知のように朝鮮の場合には北と南に分かれておる。台湾の場合は御承知のような中国との問題があるというようなときに、ここに特恵を与えるということになると、さらに複雑なむずかしい問題を生じてくる、こう思うのでありますが、政府のほうではどうお考えになりますか。
  18. 中川一郎

    中川政府委員 特恵措置もあるいは海外企業進出措置も、すべて開発途上国、特に台湾韓国等工業がおくれておる、あるいは労働者が余っておるという国内事情でありますので、そういった工業化あるいは雇用の促進ということからいって、純経済的に援助したい気持ちでこういった制度をとり、また企業進出をしておるものと考えておる次第でございます。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほどちょっと申し上げましたけれども、ほんとうに低開発国というか発展途上国というものにあたたかい手を差し伸べるということになるならば、私はもっと勇敢に、シーリングワクを設けたりいろいろな制約をしないで、もっと思い切って特恵を与えるということがむしろ正しいと思うんですよ。ところがいろいろな配慮をしておる。また特恵を与えるまでの、今日までのこの約十年間ですか、話題が出ましてからこの十年間の経緯を見ましても、確かに初めは発展途上国から強い要請が出されたことは事実だし、今日もその意見があることも事実だろうと私は思うのです。しかしだんだん、いわゆる先進国のほうでは渋りながらいまのような形である。しかも各国なかなか歩調が合わない。そこで皆さんにお願いしたのでありますけれどもちょっと間に合わなかったようでありますが、たとえば七〇年十月二十四日、国連における特恵関税合意書、これは、その会議の論議というものを仄聞するに、なかなかいろいろな意見が出ておる。一本にすっきりとまとまった合意書だとは思われないというふうに仄聞しておるわけです。この資料をひとつ見せていただきたいということでお願いしましたが、翻訳が間に合わないそうであります。まあ局長からその辺を率直に御報告を願いたいと思うのです。
  20. 谷川寛三

    谷川政府委員 御要望がありました合意書につきましては、ただいま翻訳を、これは参議院の予算委員会のほうでも御要望が出ておりますが、急いでおりますので、近日中に差し上げるようにしたいと思っております。  いま先生、ばらばらの意見だったというお話がありましたけれども、必ずしもそうではございませんで、これならいけるという合意がなされているわけでございます。一応まとまってまいっておる中身を概略申しますと、まず、一九七一年のできるだけ早い時期に実施することを目途にいたしまして、できるだけ早急に所要の移行措置をとる。実施の時期をきめたということのほか、逆特恵とか既存特恵をどうするかとか、セーフガードをどうするかとか、それから受益国をどういうふうにするかとか、後発開発途上国のための特別措置をどうするか。それから実施期間をどうするか。その原産地規則をどういうふうにしてきめるか。それからいろいろあとあと問題が起こった場合の協議機構をどうするか。それから法的地位をどうするか。こういう八項目につきまして、それぞれ合意が成立しておる次第でございます。  簡単に申しますと、逆特恵とか既存特恵につきましては、これはアメリカあたりで逆特恵をとるのはいかぬというふうな意見が出ておりますが、とにかくもらっておるほうからは損をしないように、一般特恵実施された場合にはなお先進国で御配慮を願いたいという要望が出たりしております。  それからさっき申しましたセーフガード機構につきましては、供与国特恵を供与しましたある種の品目につきまして、関税上の利益を、実施したあとにおきましていろいろな問題が生じました場合は、一部または全部制限し、あるいは撤回する権利を留保するというような合意も成立しております。もちろんその場合には、開発途上国利益についても十分配慮せなければいかぬぞというのがついておりますが、そういう合意も成立しております。  それから受益国につきましては何を基準にしてきめるか。なかなかむずかしい問題がございましたが、結局自己選択の原則、つまり特恵を供与してほしいという希望をしてまいった国に特恵を供与しようじゃないかという点で合意がなされております。  それから後発開発途上国のための特別措置でございますが、特恵供与国はそういう国の輸出関心品目特恵対象品目にいたしまして、税率もできるだけまけてあげるように、できるだけカット幅を大きくするように検討をしましょうというふうな合意ができております。  それから実施期間につきましては、この十年間与えることにしよう、それから、十年経過前にもう一ぺん、ひとつ継続するかどうか検討しようじゃないかという合意ができております。  それから原産地規則につきましては、これもなかなかむずかしい問題がございます。日本はおおらかに、とにかく関税率表の号が変わったら、BTNの号が変わったらひとつその国の産品だと認めてあげようじゃないかということを申しておりますが、アメリカなどは付加価値程度によって検討するというふうな主張もございました。しかし、これにつきましてはできる限り調和をはかるように努力しようじゃないか、まあむずかしい問題でございますのでそういうことで話し合いがついております。  それから協議機構につきましては、実施したあとでいろいろ問題が起こってまいりますが、それにつきましてはひとつUNCTAD、国連貿易開発会議に適当な機関を設けてやりましょうというふうな話し合いがついております。  それから法的地位につきましては、特恵供与をいたします国は、お互いに最恵国待遇があるからといって、開発途上国に与えた特恵関税を自国に与えてくれということは言いませんよ、大まかに申しますとそういうことで合意をしようじゃないか。  たいへん大ざっぱに申し上げたのでありますが、以上申し上げました八つの事項につきまして大体合意ができております。これにつきましては、詳しい文書をまた差し上げるようにいたしたいと思います。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 日本政府は、まあ自己選択とかいろいろ言っておりますが、今度実施するこの特恵関税の適用の対象範囲についてどのような条件と基準でおやりになるのか、また適用される国の数あるいは地域というようなものをどの程度にお考えになっておるのか、お答え願いたいと思います。
  22. 谷川寛三

    谷川政府委員 まず特恵受益国でございますが、これは御審議を賜わっておりまする法律の、関税暫定措置法の部分の八条の二というところに規定してございます。先ほど申し上げましたように、大体この特恵関税の話が持ち上がりましたのが国際連合貿易開発会議、UNCTADの場でございましたので、とにかく原則は、経済が開発の途上にある国で、この国際連合貿易開発会議の加盟国である、そしてさっき申しましたように挙手主義によっておりますから、関税について特別な便益を受けることを希望する国のうちから適当と認める国を選ぶのだということにしてございます。これは第一項でございまして、それで具体的にどういう国を対象にして特恵を与えるかということは、この法案国会で成立をいたしましたあとに、いろいろな各国の状況等を御検討させていただきまして、政令で指定をするようにしたいというふうに考えております。  それから地域につきましては、この八条の二の二項に規定をしてございますが、原則はUNCTAD加盟国でございますけれども、いろいろ考えてみますと、固有の関税、それから貿易に関する制度を持っているという地域につきましては、まあ品物の範囲等になりますが、特恵供与の対象品目になりますと、これは一方の原則国並みに場合によっては供与できないかもしれないけれども、とにかくそういう一応の、たとえば属領にいたしましても、宗主国とは独立した通貨を持っているとか、関税領域を持っている、ほとんど独立国並みだというようなところもございます。そういうところにつきましては、国際親善等の見地からも法律上に特恵を与える余地を残しておく必要があるのじゃないかというふうに考えて、二項の規定を設けた次第でございます。具体的には、そういう地域から特恵供与につきましての御希望がありました際にあらためて検討して政令で指定する。その場合には、一項の便益の範囲内におきましてあらためて品物等は検討さしていただいて、これまた政令で指定をするというふうにしてございます。  それから、この大体の計画につきましては、先ほど冒頭に申し上げましたような計画でまいっておるわけでございます。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまお話の中で、一つは、希望する国、こうおっしゃる。意思表示ルールというか、そういうことになっておるようでありまするけれども、大体皆さんのほうでは、法案が通ってから、法律になってから検討します、こう言っておるけれども、もうそれくらいのものは大体見当がついておるのじゃないですか。どうなんです。
  24. 谷川寛三

    谷川政府委員 問題のない国もございますが、率直に申しまして対日差別をしておる国も、特恵供与を希望しておる国の中にはございますので、そういう国等につきましてはまたいろいろ折衝してみる余地もある。それから、諸外国が特恵供与を希望しております国に対してどういうふうに対処するであろうかという点もひとつ見ていきたいということもございまして、法律が成立をいたしました暁におきまして具体的に検討して政令で指定したいというふうに考えております。
  25. 阿部助哉

    阿部(助)委員 意思表示をした国、こういうことになりますが、具体的にいえば、中国や北朝鮮のほうでは自分からこれをお願いしますなんて頭を下げるわけはないと思うのですよね。こういう場合に政府はどういうふうにするつもりでおるのですか。
  26. 谷川寛三

    谷川政府委員 そういう国々が特恵供与を希望されるかどうかということ、これは私はいまわかりませんけれども、かりに供与希望が出てまいった場合には、いま申しました八条の二の第二項、「地域」と書いてございますが、その規定で読める。ですから、具体的にはそういう御希望がありましたときにあらためて判断をしてまいるというふうに考えております。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、大体常識で考えてみても、これは皆さんも常識で判断されてわかるように、まさか中国や北朝鮮が特恵を与えてくれなんということを言うはずもないし、これはおっしゃらないだろう、私はこう思うのです。そういうときに一体どうするか。政府のほうでは何らかこれをあまり差別のないような形のものに直すのか、その意思があるのかないのかということなんです。挙手原則というか、そういうことを言っておるが、結局これは先進国自己選択という面が大きいわけでありますし、いまの政治情勢の中で、希望してくるとか頭を下げてお願いしますなんて言ってくるはずはないと私は思う。そういうときにどうするかということを聞いておるわけです。というのは、一番最初に私お伺いしておりますように、政府のほうでは覚書貿易の締結に好意を持ち、これを伸ばしたい、こうおっしゃっておる。そういう立場から考えて、これを一体どうするかということを私は聞いておるわけです。
  28. 谷川寛三

    谷川政府委員 冒頭に政務次官からお答えしましたように、たとえば日中貿易につきましては、これを伸ばしていくことが考えられなければならぬということは、これは政府でも考えておることであります。したがいまして、御案内のとおりケネディラウンドによりますところの関税率の一括引き下げにつきましては、第五十八回国会におきまする国会の決議の旨を尊重いたしまして、できるだけ格差を解消するということを考えております。今度御審議いただいておりますこの法案によりましても、そのことを盛り込んでおります。これにつきましては、四百二十四品目につきましては格差を解消いたしました。大体九四%くらいは日中貿易に関係のあります品目の解消ができたと考えます。かつ、今度御審議いただいておるこの法案によりまして、KRにつきましては繰り上げ実施をいたしますから、これも中共産品につきましては繰り上げ実施をしていくというふうに考えております。これはグローバルにケネディラウンドはやっておりますから、条約のない国につきましてもいま申しましたように均てんをすることが考えられるのでございますが、特恵関税はKRとは違いまして、とにかく開発途上国に特別の税率を供与しようじゃないか、差をつけることにねらいがあるわけでございまして、ですから、先ほど申しましたように自己選択と申しますが、これは開発途上国のほうから特恵供与を選択してもらうということでございまして、手をあげていただかなければいかぬ。手をあげてないのに一般的に特恵を与えることになりますと、これはケネディラウンドと選ぶところがなくなってまいりまして、特恵意味がなくなるということでございますから、あくまで特恵を希望していただくということが条件でございます。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたのおっしゃるのは、アメリカやあるいはまたほかの国の場合は私はわかりませんけれども、日本政府として、日本のいま置かれておる立場から考えるならば——特恵はそれでいいでしょう。手をあげた国に与えていいでしょう。しかし、いま日本の置かれておる立場からするならば、そして中国貿易を伸ばしたい、また、いま非常に少ないようだけれども、北朝鮮との貿易もやっていこう、こういうことになった場合に、その点を考慮することは特恵の精神と反するという理由、理論的な根拠は何もないんじゃないですか。
  30. 谷川寛三

    谷川政府委員 御質問の御趣旨はよくわかりますけれども、くどく申し上げるようでございますが、特恵の性質からいたしまして、ちょうどケネディラウンドの均てんのように、この特恵を先ほどお話がありました国々に一般的に均てんさせるということになりますと、これは最恵国待遇によりましてよその先進国にも一般的に与えなければならぬということになりまして、さっき申しましたようにケネディラウンドと選ぶところがなくなる。特恵意味がなくなる。さっきUNCTADの合意書について申し上げましたように、特恵についてだけは、幾ら最恵国待遇があっても先進国はそれをくれとは言わぬぞという合意がなされておりますが、いま申しましたように特恵でないかっこうでケネディラウンド式にやるようになりますと、均てんさせるようになりますといま言ったような問題が起こるということでございますので、どうしてもこの原則はくずすわけにまいらないということでございます。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 たいへん原則にこだわるようでありますが、あなたがこだわるなら、じゃ、ケネディラウンドの場合に、中国にいま、大きな部面は大体バランスをとったけれども、まだとってないものが相当あるわけですよ。あなたの言うように、原則を非常にかたくお守りになるようなら、まずケネディラウンドの場合に原則を当てはめて、いま差別しておるものを取っ払ったらどうなんです。
  32. 谷川寛三

    谷川政府委員 これは私のほうもできるだけさようにしたいという考えで、前向きに前向きに考えております。毎年新たな輸入がありますと、その品目をずっと洗いまして、できるだけ均てんをさせるようにしておる次第でございます。先ほど申しましたように四百二十四品目、九四%程度は格差がなくなった。残っておりますのが二十三品目でございます。一番大きなものは生糸、絹織物でございますが、これにつきましては関係者でいろいろ協議をいたしました。きょうは農林省からもお見えになっておりますから、詳しくはお答えをそちらのほうからしてもらいたいと思いますが、概略を申しますと、国産の生糸とあまりにも値開きが大きい。二三%余りの安い生糸になっております。それから中共の生糸の生産高を見ましても、十七万俵でございますから、日本に次ぐ非常な生産力を持っておりまして、輸出力が非常に高い。かつ、最近は和服になりますような上質の糸ができるようになってまいっておるということで、日本の生糸の問題を考えますと、いま直ちに一五%の税率を半分にするわけにはいかぬということでございます。  その他の品物につきましては、毎年洗い直して、さっき申しましたようにできるだけ前向きに考えていく。ことし残りました二十三品につきましても、来年もう一ぺん洗い直しまして、国内産業体制が整備いたしますならばまたひとつ均てん品目の中に入れていこうというふうに考えておる次第でございまして、姿勢といたしましてはできるだけ格差を解消していきたいという考えでございますことを御了承いただきたいと思います。
  33. 阿部助哉

    阿部(助)委員 できるだけ洗い直す、こうおっしゃるけれども、これはもうずいぶん長いこと問題になっておるのでして、もっと思い切ってやり直していいんじゃないですか。あなたの、原則をもし尊重するとすれば、こっちのほうもやっぱり原則をぴしゃりと当てはめるというぐらいのことは政府もおやりになっていいんじゃないですか。この生糸の問題はもうだいぶ長い問題です。そして、値段の点でそんなに差があるのですか。農林省のほう、ごく最近の値段の問題をちょっと教えてくれませんか。
  34. 大場敏彦

    ○大場説明員 ただいま関税局長からお話がありましたように、生糸はKRも除外しておりますけれども、世界の生糸の生産はおおむね六十万俵というぐあいに見られておりますが、その中で中共の生糸生産量が約十七万俵をこえておるというぐあいに膨大な量を占めております。なお、わが国は三十数万俵でございまして、なおおもな国はソ連とか韓国、こういったことになっております。そういったことからいたしまして、中国というものが相当膨大な輸出力を持っております。なお、参考までに申しますれば、現在日本輸出国でありませんで、輸入国に転落しておる、こういった実情でございます。実際、そういった実情を反映いたしまして、中国からわが国への生糸の輸入量もここ数年来非常に激しいスピードで上昇しておりまして、また一方生糸の品質も非常によくなってきておりまして、国産生糸との競争力も高まってきておるということも事実でございます。  また、いま御指摘になりました輸入価格につきましても、わが国の国産の生糸に比較しまして非常に割安になっております。参考までにこの数字を申し上げますと、過去数年でございますが、国産生糸二十一中2Aという一つの標準のものがございます。それが過去数年間を平均いたしますとキロ当たり七千五十五円ということになっております。これに対しまして中国生糸はCIFで五千三百九十八円、マージン、諸掛かり等計算いたしまして五千七百四十六円というぐあいに七割から八割、年によって若干の変動はございますけれども、そういった値開きになっておる現状でございます。こういったこと、つまりかつてわが国は輸出国として世界に君臨しており、過去数年前までは欧州諸国等を席巻しておったのですが、それがこういった競争力の後退によりまして、むしろ欧州市場等から駆逐されて輸入国になっておるという実情でございます。そういったこともございます。  また一方、かてて加えて、これは御質問にはなりませんでしたが、農林省といたしましても大規模な稲作の転換事業をいたしまして、農民に御協力をお願いする段階でございます。そういった中でやはり転作の定着度というものを考えますと、野菜その他のものも重要でございますけれども、そういった桑等、永年作への転作ということをことさら重視をしておるわけでございます。そういう意味で、この問題はわが国の生産農民にとっても重要な関心を呼んでおります。
  35. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はごく最近のあれを聞きたいと言ったのです。  もう一つは、日本の場合には輸出をしておるのではなくて輸入をしておるわけでしょう。そういう点でどれだけ——価格の点で多少問題があるとあなたはおっしゃるのだが。  それからまた最後のほうはちょっと聞き取れなかったんだが、稲作をやめてまた桑を植えろというのですか。農林省はそういう方針をとるのですか。
  36. 大場敏彦

    ○大場説明員 最近時点の数字を申し上げますと、先ほど平均で申し上げましたが、たとえば四十五年の平均を申し上げますと、日本の価格が八千七十五円、それに対しまして生糸のCIF、輸入諸掛かり、マージン等を加えました価格が六千六百二十七円でございますから、やはり八割程度で、二割程度の格差がある、こういう実情でございます。  それからただいま御指摘になりました、また桑を植えさせるのか、こういう御指摘でございますが、大規模な稲作対策事業を展開しますが、その作目の一つとして桑というものを考えていることは御指摘のとおりでございます。
  37. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう農民はそんなに何べんもだまされませんよ。農林省の言うことを聞いて得をした農民は一人もいないですよ。農林省は何を考えてやっておるのですか。一番最初はドルをかせぐために植えろということで、繭を一生懸命つくらせた。それが斜陽産業で、ナイロンや何かに押されて、のこでこいでしまえということで、今度は一生懸命麦をつくらせた。麦は今度アメリカと競合してだめだということで・外麦を入れるからということで、MSA小麦や何かを入れたわけですね。麦の作付減反、日本は幾らもないじゃないですか。二〇%を割っているじゃないですか。そしてそういう政策ばかりやっておって、また繭に転換しろなんていったって、農民はもう農林省を信用していませんからね。皆さんは信用されていないんだから、もういまさら桑を植えて繭をつくれなんてべらぼうな話をしても農民はそれはやりませんよ。そんなべらぼうな話はないですよ。米にしてもみなそうなんです。農林省の政策、三年たてば大体変わるんだな。米の作付減反も、おそらくもう三年たってごらんなさい。また足らない。そうかといって五年も六年もさきの古米を回収するわけにいかない。日本のうまい米が足らないからまたたんぼをやってくれなんてことにならないこともないのじゃないか。いまはそんなことよりも、現実に日本は生糸を大体五万俵くらいは輸入しておるわけでしょう。輸入で十七万俵全部入れるということじゃないのでしょう。それを入れるのになぜ中国韓国との差をつけざるを得ないのかということなんでして、これは私は大蔵省の問題だと思うのですけれども、この問題は韓国のほうへの日本のいろいろな指導等もあって、また大手商社の青田買い等もやりながら韓国では繭の大増産をやっておる。そして農林省のほうは韓国の分だけはまるがかえで輸入しようなんということも計画があるように聞いておるわけです。そういうことならば、せめてあなたのおっしゃる原則を守るというならば、KRの点では早くこれを是正すべきではないか。農林省のほうの話は私ちょっといただけないですね。
  38. 谷川寛三

    谷川政府委員 先ほど農林省のほうからもお答えいたしましたし、私も概略お答え申し上げたような事情でございますが、実は韓国とのお話が出ましたので、こんなことを申し上げるのもどうもあんまり、なんでございますけれども、その点は一応バランスをとっておるわけでございます。さっき申しましたように、中国産の生糸はわが国産の生糸に比べまして二三%余り安くなっております。ところが韓国とわが国とを比較して見ますと一四%くらい韓国のほうが安い。ところでケネディラウンドによりますと生糸の税率は一五%でございますが、韓国は条約国でございますからケネディラウンドで一括引き下げがまいりますので半分になります。ですからそれで韓国との間のバランスはとれておるという判断をしておる次第でございます。
  39. 阿部助哉

    阿部(助)委員 価格でバランスがとれているというのですか、税率がバランスとれているということですか。
  40. 谷川寛三

    谷川政府委員 税率をそうすることによりまして、貿易上の競争関係ではバランスがとれておるのではないかと申し上げたような次第でございます。
  41. 阿部助哉

    阿部(助)委員 輸入する数量でバランスがとれておる、こういうことですか。税率が同じだということですか。
  42. 谷川寛三

    谷川政府委員 私、税率、価格の面でバランスが一応とれておると申し上げた次第でございます。
  43. 阿部助哉

    阿部(助)委員 税率は同じだったですかね。私、違うと思ったのですが。
  44. 谷川寛三

    谷川政府委員 さっき申しましたように、価格の点では韓国に比べますと半分くらいまだ安いわけでございますが、日本との関係では、つまり中共の生糸が日本の生糸よりも二一二%余り安い。韓国はそれが一四%安にとどまっておる。一方、税率は中共産品が一五%、韓国が七・五%になりますので、税率関係、価格関係はそれで一応バランスをとったというふうに判断をしてなにをしたわけでございます。
  45. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、外国の品物を大蔵省は見ながら、ここの国はコストが安いから税率は上げる、ここの国は高いから税率は下げるというふうに、一つ一つその国の価格を見て税金をきめておるのですか。
  46. 谷川寛三

    谷川政府委員 そういうことはいたしません。いたしませんが、先ほど申しましたように、ケネディラウンドによるところの恩典をガットに入っておらない国々に対してどうするか。国会では、できるだけバランスを失しないようにしていくべきであるという御決議がありますけれども、そういう条約に入っていない国をどうするかという場合ですから、その場合にはやっぱり日本の同種産品との競争関係をよく考えて、一品、一品査定をさしていただきたいということでございます。グローバルにはそういうことはいたしませんけれども、こういう場合には。しかし、前向きにやっていくことについては、姿勢だけはさっきも私冒頭に申し上げましたように変わりございませんから、ですから、できるだけ格差はないようにしていきたい。特定のものにつきましては万やむを得ぬということでございます。
  47. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はあまり個々の問題に入る意思はなかったのですけれども、あなたが原則だ、こうおっしゃったから例をあげたわけなんですが、私はあなたの見解にはどうも納得ができないのですよ。日本のいまの生糸の需要はもっと大きくなっていくだろう、こういわれておる。それで農林省はいま日本でもまた桑を植えるという話でありますが、輸入量がもっとふえるというのは政府のほうでも見込まれておると私は思うのです。それなるがゆえに韓国では大増産計画を立ててこれを指導しておられる。それでそれはまるがかえをしよう、こういうことでしょう、農林省のほうでも。それならば、いままでも問題がある中国のいまのKRの場合には、これは少なくともバランスをとるべきではないか。これは当然のことじゃないですか。  しかも、条約加盟国だとかいろいろおっしゃるけれども、この加盟をする、しない、国連加入する、しないという問題、これを言えばまた別の問題に発展しますけれども、一番それに反対しておるのは日本なんじゃないですか。重要事項指定方式なんというものをアメリカのお先棒かついでやっておるのは日本なんでしょう。一番近くにあり、いろいろな、文化の面から地理的な面から民族的な点からいっても一番近い、しかもあれかけ、前の軍閥というか日本被害を与えておいて、いまだに国交回復を一番じゃましておるのは日本だ。こういうことはもう世界の常識でしょう。そういうあれを、条約に入っておるから、いやなにだから、こうおっしゃるならば、これはまた全然、別個にKRに近づけるとか近づけないということもおかしなことなんです。あなたの理論はどうも一貫してないと私は思うのです。  だから、一貫しておるならば私はやっぱりKRの面は少なくとも同じにしろということだと思うのです。それがどうも個々のあれの値段がどうだからというようなことならば、世界全部値段できめるのか。そんなことやっておるのか。やってないじゃないか。そうすると、中国の問題だけこうやっていくということは、どうもあなたの理論が一貫してないじゃないか。KRと特恵とは違うのだ、こういうようなのは私は承知はしないけれども、一応あなたが原則だと言うならば原則と認めてもいい。それならばKRのほうはやっぱり原則どおりやるべきだということなんです。
  48. 谷川寛三

    谷川政府委員 KRと特恵の違いは御理解いただきましてたいへんありがとうございました。  KRにつきましては、先ほど私申し上げましたように、政府国会の御決議の旨を尊重いたしまして、できるだけ前向きに考えたいということでございますが、特恵につきましてはまた今後慎重に考えさせていただくことにいたしまして、四十六年度におきましては、いま農林省からもお話し申し上げた、私もお話し申し上げたような事情で、格差解消を見送らさしていただきたい。  なお、誤解のないように申し上げておきますが、ガットに入りますことと国連に入りますこととは別でございまして、ガットのほうは御希望があれば入れるという事情にございまして、御了承いただきたいと思います。
  49. 阿部助哉

    阿部(助)委員 できるだけなんということでなしにぴしゃっと言ってくれないと、私これ二日もかかりますよ。品目一つ一つをこれからやりますが、どうですか。
  50. 谷川寛三

    谷川政府委員 先ほど申し上げました格差が今度の改正でも残りますものにつきましては、生糸、組織物はなかなかむずかしい問題がありますが、その他の物品につきましては、とにかく国内の生産体制が整備中であるから、もう一年輸入の動向を見て、来年考えようじゃないかという品物も実は私ども考えているのでございます。ことしなども、いろいろ従来問題になっておりましたシャープペンシルとか、万年筆とか、それからござの一部といったものも中共関心品目でございましたが、KRを均てんをするようにいたしました。そういったふうに、一挙にというわけにはいきませんが、先ほど申し上げました精神でやっておりますことをひとつ御了承賜わりたいと思っております。
  51. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう少し具体的にどれどれとどれどれとを、とにかく来年考えるということをあなたおっしゃるなら別ですけれども、それでないと私は二十何品目全部やりますよ。もう少し具体的に言ってくれますか。
  52. 谷川寛三

    谷川政府委員 考え方を申し上げたのでございまして、この品目を必ず来年は解消するということを申し上げますことは、関税審議会でいろいろ御議論があることでもございますので、それはひとつごかんべんを賜わりたいと思っておりますが、とにかく姿勢だけはそういう姿勢でやっておりますことを、たいへん恐縮でございますが、御理解をいただけないのだろうかと思っておりますのですが……。
  53. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは干しガキというのは何でそんなにあれするのですか、こむずかしくしておるのですかね。
  54. 谷川寛三

    谷川政府委員 干しガキにつきましては、これは輸入を見ますとほとんどが中国大陸から参っておるものでございまして、非常に安値でありますために、考えてみますと、山形とか山梨県あたりの干しガキに比べますと、もっと格差を設けないとやっていけないという、むしろそういうものでございますけれども、まあこのいまの税率で一応いこうじゃないかと……。しかし格差解消はなかなかむずかしい。ことにくだものにつきましては、御案内だと思いますが、農林省からお話し申し上げたがいいかと思いますが、果樹農業振興特別措置法によりまして、いろいろ重要な種類の果樹を指定いたしましてやっておるのでございますが、このカキもその中に入っておりまして、総合農政との関係でいま直ちにこれをKRに均てんさせることはむずかしいということでございます。
  55. 大場敏彦

    ○大場説明員 こまかな数字は実は私手元に持ってきておりませんので、数字に基づく御説明はお答えできないのは残念でございますが、ただいま関税局長がおっしゃいましたように、農林省の物資は干しガキだけに限らず、いろいろほかに率直に言ってかなりございます。やはり日本の低生産部門を構成している農産物が多いということもまた事実でございます。これはその地域なり、その構成する産業にとってはやはり相当のウエートを持っている、農民の生活にもウエートを持っている、そういう物資であります。それと同時に、国際競争力という意味でかなり中共等の潜在的な、またあるいは顕在的な競争力がある。そういう場合にKRという形で均てんしてしまえば国内の市場が席巻されてしまう、こういうような不安や動揺を呼び起こす。こういう危険性のあるものにつきましては、もう少し現状を確かめ、かつ農民間に不安を与えないような形で解消していきたい、こういう形で、KRは均てんしないということで大蔵省と御相談をしている、こういう段階でございます。
  56. 毛利松平

    毛利委員長 関連質問を許します。広瀬君。
  57. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま農林省のお答えを聞いたわけですが、この干しガキの問題について、日本でどういう地域分布でどれだけ生産量があるのか、この点について明確な資料をひとつ出してもらいたい。これがあるならばここで阿部委員質問に答えてもらいたいのだけれども、なければこれはしっかりしたものを資料としてやはり出してもらわなければいけない、そういうように考えますし、それから去年なり、ごく最近のところで、大体去年の暮れといっていいと思うのですが、どのくらいの値段が、たとえば東京のデパートあたりでつけられておるか。聞くところによると、一個二百円あるいは二百五十円というところまで相場がついているというような話も聞くわけだけれども、その価格の問題についてもひとつここで説明をしていただきたい。資料があったら説明をしていただきたいわけです。
  58. 大場敏彦

    ○大場説明員 ただいま干しガキの生産量それから輸入の状況、価格関係、こういうお尋ねでございました。四十五年はまだとっておりませんので、四十四年の数字でございますが、干しガキの生産量、推定でございますが、約一万三千トン。それから輸入でございますが、四十四年が約千七百トン程度。それから価格関係、国産ものと輸入ものの価格関係でございますが、これは質の関係がありますから一概にそのまま比較はできない点もあろうかと存じますけれども、国産の価格が卸で二百四円、それから輸入もの八十三円、ここでかなりの値開きが生じている。それから昨年の暮れに幾らであったかという点、この点ちょっと数字を持っておりませんので、調べてお答えします。
  59. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは資料はほんとうにあるのですか。
  60. 大場敏彦

    ○大場説明員 限られたものしか載っておりませんが、ただいま四十一年、二年、三年、四年というような、この数年間の数字は持っております。
  61. 阿部助哉

    阿部(助)委員 さっき中国の生糸の問題を聞きましたが、これは北朝鮮からのものは入っておりますね。
  62. 谷川寛三

    谷川政府委員 昨年は非常にわずかでございますが、二千五百九十六俵入っております。
  63. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはやはり韓国と一五対七・五ですかの関税率の差があるわけですか。
  64. 谷川寛三

    谷川政府委員 格差が残っております。
  65. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この格差は何でつけてあるわけですか。さっき中国の話はお伺いいたしましたけれども……。
  66. 谷川寛三

    谷川政府委員 価格は、この数字で見ますと大体中国並みでございます。
  67. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、その価格がどうだから税金を高く取るということをやっておられるわけですか。品質の点はどうなんです。
  68. 谷川寛三

    谷川政府委員 各国別に格差を設けておるわけじゃございません。KRは大体グローバルでございますから、均てんをいたします場合も、さっき申しましたように主要な国に、一番競争力の点で心配のある国につきまして見まして、そして均てんさせるかどうかをこれまたグローバルにきめてまいります。その場合に価格だけじゃございません。いま言ったように輸出余力とか、どういう品物かとか、日本の国益にならないようなものであるかどうかとか、さっき農林省からもお答えいたしましたが、いろいろな要素を勘案いたしまして洗っておるわけであります。      ————◇—————
  69. 毛利松平

    毛利委員長 この際、関税定率法等の一部を改正する法律案に対する質疑を暫時中断し、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑はすでに終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、これを許します。広瀬秀吉君。
  70. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私は、日本社会党、公明党、共産党を代表して、ただいま議題となりました日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例に関する法律案に対し、反対討論をいたします。  本法律案は、インドネシアにおけるいわゆるスカルノ債務の累積による履行困難な情勢に対処して、長期にわたる債務救済措置を講じ、その履行の円滑化をはかるために、輸出入銀行がインドネシア中央銀行に対する貸付金債務の繰り延べないしリファイナンス分について、当該貸付金にかかる債権については輸銀法第十九条の特例を設け、利息を徴しないことができることとしようとするものであります。  もちろん、本法律案の前提に、いわゆるアプス案を中心にしたインドネシア債権国会議において、無利子三十年償還という方式による債務救済措置をとることが関係国間で合意されたことをわれわれも承知しておるのであります。したがって、国際的経済協力の一環として行なわれる債務救済の実施を可能にするため、輸銀法の貸付金利息に関する規定に対して無利子の特例を設け、特別勘定を設けてこれが経理を行ない、その業務に要する資金の財源として政府資金の無利子貸し付けの道を開こうとする本法の趣旨については、それなりの理解をすることにやぶさかではないのでございます。  しかしながら、われわれは次に述べる理由によって、あえて反対しなければならないのであります。  その第一は、日本輸出入銀行が全額政府出資の中長期輸出入金融機関として発足をした、国民の税金、預金によって運営される政府機関であるにもかかわらず、その融資態度は国民の願望と乖離し、一部の国内企業にのみ奉仕するものであり、さらに反共親米国家向けの融資に偏重している点であります。すなわち、輸銀融資の貸し付け残高約一兆三千余億円のらち、造船、機械、大手商社など十社の貸し付け残高だけで約八千三百七十六億円にのぼる現状であります。国別では台湾、−韓国、インドネシア、タイ等、いわゆる反共国家群への集中融資が行なわれ、しかも今日世界の関心の的となっている、現にインドシナ半島における戦争当事国である反共国家、南ベトナム、カンボジアなどに向けての日本企業進出に特段の力をかし、またはその方向に進もうとしていることはまことに遺憾であり、不当な態度といわなければなりません。  第二に、今回のごとく特別立法までしてインドネシア債務救済をせねばならなくなったいわゆるスカルノ債務の累積、裏返せばインドネシアに対する米ソのそれぞれに政治目的を持つ援助競争の中で、米国のしり馬に乗って無計画、無責任、無秩序な商品援助、設備投資援助等に狂奔したわが国大企業の態度を、今日においても追認するわけにはまいらないのであります。しかもこの間、いまはこれをあばき立てるすべもなくなりましたけれども、黒い霧がつきまとっていたことをわれわれは忘れることができないのであります。しかもそのしりぬぐいを、国民の税金や預金など、国民大衆の資金をもって業務を運営している輸銀が行なうことは、大企業中心のエコノミックアニマル的な一獲千金の危険なかけの失敗のツケを国民に負担きせることであります。一方、大企業輸出代金保険によってほとんどその失敗による損害を補償されており、あと政府がしかるべくしりぬぐいをしてくれるだろうというのでは、国民道義の点から見てもこれまた国民の容認し得ざるところであります。  第三に、政府及び輸銀は、今日に至るもなお対中国向けプラント輸出ないし重機械類、船舶、航空機などの輸出に対する延べ払い金融に対して積極姿勢を示していないのでありまして、この点はまことに重大な問題点であります。大蔵大臣は、本法案審議の過程において本委員会において、海外経済協力援助にあたって政治体制の相違によって差別取り扱いをしない旨の前向きの発言をされておりますが、同文同種の八億の人口を持つ一衣帯水の隣国中国に対して、国交回復への積極的努力は何一つ行なわないで、国交未回復であり、中国が社会主義体制の国であることを理由に輸銀使用を拒否しておるのであります。対中国友好への実績積み上げ、国交回復への努力の積み重ねの一つとして、いまこそ中国向け輸銀延べ払い融資を積極的に踏み切って行ならべきであるにもかかわらず、いまだに遅疑逡巡をしておることは真の国益にかなう道ではありません。われわれの大きな不満はここにあるのであります。  以上一反対理由を申し述べましたが、政府はすべからく、われわれ野党の本法案反対の理由に耳を傾け、輸銀のあり方について再思三省し、国民の理解と共感を得られる輸銀業務の姿勢を正す努力をされるように強く要求をいたしまして、私の反対討論を終わります。
  71. 毛利松平

    毛利委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  72. 毛利松平

    毛利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  73. 毛利松平

    毛利委員長 ただいま議決いたしました日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表し、藤井勝志君外四名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。森美秀君。
  74. 森美秀

    ○森(美)委員 ただいま議題となりました日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案に対する附帯決議案について、提案者を代表して趣旨を御説明申し上げます。  案文でありますが、案文は印刷してお手元に配付しておりますので、朗読は省略いたします。  現在、発展途上国の経済開発を推進するための経済協力は年々拡充されつつありますが、経済協力も、発展途上国開発のむずかしさの前に、数々の解決すべき課題をかかえている実情であります。  このときにあたって、政府は、経済協力の趣旨にかんがみ、経済協力のための資金供給にあたり、受け入れ国の政治体制のいかんによって差別的に取り扱うことのないよう、特別の配慮をすべきであります。  また、わが国の経済協力の体制、それに開発途上国からの経済協力の要請等を勘案し、協力資金の供給の明確を期するため、政府は、経済協力の実施機関のあり方について、その業務分担について検討すべきであると思うのであります。  以上、簡単でありますが、趣旨説明を終わります。  何とぞ御賛成をお願い申し上げます。(拍手)     —————————————    日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案に対する附帯決議(案) 一、政府は、開発途上国に対する経済協力の主目的が受入国の経済の開発と国民生活の向上のための自助努力を援助するところにあることにかんがみ、日本輸出入銀行等政府機関を通ずる経済協力の実施に際しては、受入国の政治体制等により差別的に取扱うことのないよう特段の配意を行うべきである。 二、政府は、経済協力の実施機関としての日本銀出入銀行と海外経済協力基金のあり方について、それぞれの機能が明確に区分されることを目途として、両者の業務分担を再検討すべきである。     —————————————
  75. 毛利松平

    毛利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  おはかりいたします。  本案に対し、動議のごとく附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  76. 毛利松平

    毛利委員長 起立多数。よって、動議のごとく附帯決議を付するに決しました。  ただいまの附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。福田大蔵大臣。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの御決議に対しましては、政府といたしましても、御趣旨を体しまして十分努力をいたしたいと存じます。(拍手)     —————————————
  78. 毛利松平

    毛利委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  80. 毛利松平

    毛利委員長 引き続き、相続税法の一部を改正する法律案及び入場税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。堀君。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 今回の相続税の法律案は、一昨年の予算委員会、昨年の予算委員会におきまして論議をいたしてまいりましたものが、ここに、やや不十分ではありますけれども、形を整えてまいりましたことについては賛成をいたしたいと存じます。  ここで、この前の予算委員会でも申しておりますけれども、私の基本的な考え方は、夫から妻へ、要するに水平的に相続が行なわれるものは、やがてはまた妻からその子供へということで垂直的な相続が行なわれるわけでありますから、できるだけ水平的相続というものの課税は少なくして、そのかわり垂直に移動するときには、これは当然ある程度相続税を十分に取るべきである。こういう考え方に基づいて実はこの論議をしたわけでありますが、その妻の座の税制の優遇という問題については、総理大臣も御賛成でありますが、福田大蔵大臣は、この妻の座の優遇のための税制ということについては、今日いかがお考えになっておるか、ちょっと承りたいと思います。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も今回の税法改正にあたりまして、あなたと総理との間の問答を思い起こすわけでありますが、妻の座を贈与税、相続税の立場から優遇すべしという御議論、私も同感なんです。さればこそ今回、居住用財産に限りましたが、その免税額も倍にいたす、こういうような措置をとることにいたしたわけでございます。気持ちといたしましては堀さんと同じように考えております。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、現在の各種の制度の中で、もう一つ実は問題が残っておると思うのであります。というのは、一昨日皆さんのお手元に大蔵省から配付していただきました「主要諸外国における贈与税の概略」、これを見ますと、日本、米国、西独、フランス、英国——英国にはもう贈与税はないのでございますけれども、この主要先進国の中で、この前予算委員会でも申しましたけれども、妻に贈与しても他人に贈与しても、贈与税の基礎控除も税率も同じだという国は実は日本以外にはどこにもないのでございます。時間がありませんから中身は申しませんけれども、主税局長そうですね。
  84. 細見卓

    ○細見政府委員 フランス、ドイツはやはり日本と同じ制度でございます。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 同じ制度と言われたら時間がかかりますよ、あなた。ここに配っておる資料を見ると、税率については、日本の場合は最低一〇%最高七〇%、これは妻と他人の間に区別はない。しかし西ドイツにいけば、血縁関係の濃淡により税率が異なる。第一階級(配偶者または子)最低二%最高一五%、以下第五階級まで税率は次第に高くなり、第五階級の最高税率は六〇%、フランスの場合は血縁関係の濃淡により税率が異なる。配偶者最低五%最高二〇%(二十万フラン超)、直系親族最低五%最高二〇%、兄弟姉妹十五万フラン以下三五%、十五万フラン超四五%、上記以外の四親等以内の親族一率五五%、その他一率六〇%、こうなっておるのじゃありませんか。だから、少なくともここに書かれておることは、フランス、西ドイツでは妻がやはり税率上きわめて優遇されておるけれども、日本の場合は他人も妻も同じ税率が行なわれておる。あなたの言うように、日本とみな同じでありますということになっていないじゃありませんか。
  86. 細見卓

    ○細見政府委員 お手元にお配りした資料が不十分であったことと思いますが、西独とかフランスとかいうのはみな相続税なんです。贈与と申しても、それは相続税の体系が違いますので、承継主義をとっておる。だから相続税即贈与税になるわけであります。日本の場合には御承知のように相続税と贈与税は違う体系をとっております。相続税で申します限りは、ドイツ、フランスなどが軽減税率をとっておりますように、日本もその直系卑属に対する税率あるいは配偶者に対する税率は、そのほかの人に対する税率とは異なっておる。その優偶の度はおっしゃるようにかなり違っております。しかし考え方は大体同じようになっているる、そういうわけでございます。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 間違った資料を自分の主税局が出しておるじゃないですか。主税局が間違った資料を出して、私が読み上げたら、その資料は間違っておると言う。そんな無責任なことは私は承服できないですよ。私のほうは贈与税について資料を出してもらいたいというので、ここに表題は「主要翼外国における贈与税の概略」と書いてあるじゃないですか。
  88. 細見卓

    ○細見政府委員 そのとおり贈与税でございまして、贈与税であり、諸外国におきましては相続税であるわけです。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 だから、ほかのフランスと西ドイツは贈与税と相続税が同じなら同じ。ところが日本の場合は贈与税と相続税は違うのであって、贈与税に見合うものがありませんというならないということである。しかし事実は、日本は贈与税と相続税に分けておる。向こうのは贈与税も相続税も一緒に扱うというなら、違うということじゃないのですか。そこのところ、はっきりしてください。冗談じゃない、そんなばかな。
  90. 細見卓

    ○細見政府委員 贈与税という見方をすれば贈与税でございますし、死んだときに清算されるという意味におきましては相続税でございます。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 だから私は、ここの資料で見れば贈与税と書いてあるでしょう、だから贈与税とみなしてこれは資料が出ているんじゃないですか。相続税の資料を私は要求したのじゃないのだから……。もう主税局、ちゃんとしてください、この資料は間違いか正しいのか。あなたのほうの題名は「主要諸外国における贈与税の概略」と書いて、あなたの答弁は相続税の話を持ってきているけれども、そんな答弁のしかたはないじゃないですか。あなたのところの資料だから。
  92. 細見卓

    ○細見政府委員 そういう意味で、それぞれの国は違った民法を持ち、違った相続体系を持っておりますので、ことばでそのまま、贈与税であれば日本の贈与税と同じ贈与税だというわけにはまいらない。もちろん、しかしその税の負担のあり方という意味ではこれは贈与税でございます。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたの最初の答弁は、贈与税と同じであります、こう答えているじゃないですか。じゃ、いまの答弁は違うじゃないですか。あなたは、これを贈与税とみなせば税の負担においては違います、こう言うのでしょう。要するに日本の場合と向こうの場合は税の負担の度合いが違う。最初の答弁は、贈与税としては同じでございます。だから同じではないだろうと言って読み上げた。だからそのことはどうなんですか。どっちなんですか。税の負担としては、贈与税である、生前、生きている間に行なわれた相続税の形態においては、税の負担が妻とその他の第三者の間では違うということは明らかなんじゃないですか。
  94. 細見卓

    ○細見政府委員 説明がなかなかうまくできないのでありますが、西独及びフランスにおきましては、御承知のようにこれは遺産承継税でありますので、しかもその遺産承継税というのは、遺産の段階でなくて、生前の贈与を全部含めて、フランスは一生、ドイツは十年、そういう形になっておるわけでございますし、アメリカにおきましては、もう堀先生承知のように贈与したほう、つまり遺産税であるというわけです。イギリスもそういうわけです。ですからそういう意味で、承継税の形をとります場合には、相続税というものは相続税と承継税と贈与税とが一体になってしまう、そういう意味を申し上げたわけです。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、おわかりになったでしょうか、いまの話。たいへん言い回しがむずかしくて——まあ私は大体わかっておるのですけれども、非常に表現がむずかしいですからね。要するにこのことは、向こうのほうじゃ贈与税と相続税を一体として見ておる。日本の場合は今度の税は贈与税と相続税と一体で見てないわけです。実は今度の法律に出されている分は、もしこっちで取ったらこっちは落としますよとなっているわけです。それ以外に日本では一体にならない贈与税があるわけですから。一体にならない贈与税といえども、私は贈与税というものは相続税と結果としては無関係ではあり得ないと、こう考えておるわけです。  そこで私がきょう特に申し上げたいことは、幾ら何でも——その他の、相続税体系と別にややはみ出したようなかっこうで贈与税という制度がありますが、これは他人に対しても基礎控除四十万、その次は二十万、二十万と、また四十万やれる。要するに三年間に八十万ずつやっていけば税金がかからないという仕組みが実は現行の日本制度にあるわけです。ところがこれは他人にやっても四十万、二十万、二十万、妻にやっても四十万、二十万、二十万という基礎控除のあり方は、私はいまの日本のそういう相続税体系のやや外にはみ出しているかどうかわかりませんにしても、これは妻の座を無視したものじゃないだろうか。大臣、その点どうお考えでしょうか。他人と妻とが完全に同じという発想は一体どこから来ているのだろうか。もう妻は他人の始まりという……。兄弟は他人の始まりというのはありますけれども、妻は他人の始まりというのはないですぞ。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお話しの基礎控除、その制度の発足がどういう趣旨であったか、こういうことかと思うのですが、これは妻も他人もないのです。少額不追求だ、そういう趣旨の立法なんです。ですから、その立法の趣旨からいうと、妻の場合には金高がかさんでもこれが少額不追求といえるかどうか、こういうことにもなるわけでありまして、そういう、この制度自体の根源にさかのぼって論じなければならぬ問題である。もう一つの問題は、わが国の夫婦財産関係、これはわが国の民法に端を発する問題でありますが、この制度との関連をどういうふうに理解するか。こういう二つの問題があるのじゃあるまいか、そういうふうに考えております。しかし法制審議会のほうでも、夫婦財産制、日本の現行の制度、これをひとつ検討してみる、こういうふうにいっております。そういうような段階でありますので、その推移等ともにらみ合わせながらこの問題を考えていきたい、かように考えます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまの基礎控除の問題、多少そういうこともあるかもしれません。しかしやはり国民感情として見ますと、そういうことは私は理解できないと思うのですよ。税の理屈としては少額だからと、こういうことでしょう。しかし、いま年間四十万円というのは、いまの物価情勢でもあまり少額だとは思わないのです。そうすれば少なくとも、さっき私が申し上げました水平移動ですね、要するに、妻と夫というものが共同でなした財産を妻に移動するときも、それから第三者の他人に移動するときも、同じ基礎控除というのは私は国民感情として納得できない問題であろう。これが第一点。  第二点は、税率が同じというのも——これは相続税の体系からきておる税率でございますから、これはやはり税率としては、あるいはフランスや西ドイツにあるように、妻に対して一つの特定の税率をそれ以上にこえたものについては設けるというのが、私は相続税において、さっき主税局長が言いましたように別立てになっておる以上は、当然ではないかと思うのです。  二点あるわけです。そこで、いまここですぐやりますということにもならぬでしょうけれども、これはひとつ来年度税制までに一ぺん十分この点はおやりをいただければ、私はこの妻の座の税制問題は一つの締めくくりになるのじゃないだろうか。ここだけが残っておる、こう感じておりますので、もう一つこの点を十分御検討を願って、来年度税制の中にさらにここを補完をしていただければ、私は妻の座の税制問題はおおむねこれで、現行の段階では一区切りつくのではないかと思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 感情論とすると、私もフェミニスト、同志ということで共通するものを感じます。よく検討することにいたします。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 その次は、実は入場税の問題でございますけれども、昭和四十四年の参議院の大蔵委員会で、木村繭八郎委員質問に対して福田大蔵大臣は、ひとつ来年はぜひ入場税の減税を行ないたい、こういう御答弁がありました。それが昨年の参議院の予算委員会で、木村委員の御質問に対して大蔵大臣は、実は昨年そういう約束をしておったけれども、ことしは物品税の手直しをするわけにいかないので、物品税の関係から入場税を見当らざるを得なかった、こういう御答弁が実はあったわけです。今度は、ことしはこういうふうに入場税をやって、物品税というものは消費税体系として関係があるので延ばした、こう言っておられる。昨年私が物品税の問題に触れて、特にこの免税点の中に適正でないものが非常にある。非常に低過ぎるものもあるし高過ぎるものもある。これは少なくとも現在の様態に照らして一ぺん洗い直すべきだという議論をいたしましたときには、大臣も一ぺん考えてみよう、こういう御答弁が実はあったわけです。ところが今度はきわめて不完全な、減税という名に値しない入場税の改正がいま提案されておるわけですね。じゃ、どうして物品税の免税点問題を——昨年の理由になっているはずです。入場税をやれないというのは物品税との権衡でやれなかったのだと、大臣、はっきりと参議院予算委員会で答えられた。今度は入場税はやったけれども物品税に全然さわらない。昨年私がこれだけ議論したのにさわらないというのはどういう理由によるのか、ちょっと大臣からお答え願いたい。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、入場税につきましては、次に免税点について洗い直しをしたい、こういうふうに考えておってああいう答弁をしておるわけなんです。それから物品税につきましても、これは対象品目もありますけれども、免税点をどういうふうにするかということが、これは経済の動き、そういうものと関連しまして重大な段階に来ておる、そういうふうに感じたので、いずれにつきましても再検討してみたいというふうに申し上げたわけです。  ところが、物品税につきましては、これは一つは、あの答弁をいたした後におきまして、世界的に付加価値税という傾向が強くなってきておるわけです。わが国において付加価値税を採用するかしないか、これは重大問題であってにわかに結論は出せません。しかし、そういう世界的な動きのあるということもにらんでおく必要があるのではないか、こういうことが一つである。と同時に、これは実際手がけてみよう、そういう段階になりますると、ある物品につきまして手がけるということにしますと、これが一波万波というようなことになりましてとても収拾ができない。これはお察しくださることがおできになるのではないか、こういうふうに思いますが、そういうようなことで物品税につきまして手をつけるということはやめにしたのです。ただしかし、入場税につきましては、そういう波及がないというようなことから——これはいま御不満が述べられましたが、さぞ御不満でございましょう、こういうふうに思います、気は心という程度になりましたが、とにかく改正をとり行なおうということにいたしまして、ただいま御審議をいただいておる、こういうことでございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、きょうの大臣の発言は非常に重要な発言をしておられるわけですが、物品税の免税点その他の改正を見送り、今度の入場税もほんとうの気は心という程度にとどまったというのは、すぐうしろに、消費税体系としては付加価値税を実施するという前提で、それに合わせるためには当分、物品税なり入場税のような消費税はごく、ミニ改正といいますかにして、あとの問題に備えるということが最大の理由のように受け取れるのでありますが、さよう了解してよろしいでしょうか。
  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはそうじゃないのです。いま前提というおことばがありましたが、前提にはいたしておりません。ただいまもはっきり申し上げましたように、消費税体系の変更、つまり付加価値税の導入ということはこれはたいへんな大問題である。それで軽々にこれは結論は出せません。結論は出せませんが、そういう世界的な風潮がある。そこでわが国においても検討はしなければならぬような段階に来ておる、こういうふうに考えられますので、そういう客観情勢ともにらみ合わせるときに、一部の消費税体系を根本的に変えるというのはいかがであろうか、こういうふうに考えたわけであります。重ねて申し上げますが、消費税体系を変更する、そういう前提というたてまえではございません。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、物品税のようなものを抜本的に改めるのは一応見送りたいというのはわかりますが、そうすると、その前提でない以上、物品税の免税点の上げ下げ、これはあり得るということですね。来年度以降に付加価値税の問題があるから、この間やらないということなのか、やり得るということか。去年あれだけ議論したわけですから……。私、物品税について一項一項議論して、これは会議録にちゃんと載っております。あまりに不当なものが多過ぎるということですね。取るべきものが取られてないで、取らなくてもいいものがずいぶん取られておる。これはもう少し現在の情勢に即して改めるということについては大臣も御反対ではなかったようですが、そういうようなことは来年度なり再来年度なりに行ない得るのかどうか、もう付加価値税が起きるまでは一切消費税にさわらないというのか、その点をひとつお聞きしておきたい。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺は弾力的に考えております。前提論というようなたてまえではございません。そこで、一年先、二年先に物品税の改正があり得るかというお尋ねでございますが、これはあり得ることであります。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 あり得るということでありますから、これ以上は時間がありませんのでやめておきますが、国民が日常負担する税のことでありますから、やはり公平な税の負担にするためには、実はあり得るではなくてやるべきだと思うのです。やってまたそれがあとからどうなるかは別として、一年でも二年でも、公平な負担になっていないことに政府も気がついておるならば、これは行なうのが当然だと私は思いますので、その点強調しておきたいと思います。  それから第三点目の問題として、消費税に関係しておりますので少し申し上げておきたいのですが、御承知のように最近二級酒の売れ行きがたいへん伸び悩みになってまいりました。この二級酒が伸び悩みになった現象の中には、一般に名目所得が上がってきたために、嗜好品であるものはやや高級なものを国民が選択するという傾向が出てきておるわけです。こうなりますと、私ども、酒類の問題について昨年値上げの問題もありましたし、いまカルテルの廃止の問題について政府検討を求めておるわけでございますが、競争をやらせるためにはフェアな競争をやらせることが必要ではないか。ところが、特級、一級、二級という級別を冠しておることは、酒類の中に差別を設けておることになるのじゃないか。二級酒というのは劣等な品種である、一級というのは一等の品種である、それから特級というのは特別なものである。汽車もかつては一等、二等、三等というのがあったのが、一等、二等になり、今日は等はなくなってしまったわけです。汽車でもそうなっておるのです。少なくとも二級酒がこれだけ低滞する、一級、特級が売れておるという実情の中で、まず級別というものを廃止して、そして公正な競争をやらせるということが必要な段階に来ておるのじゃないか。簡単に級別を解消すれば税率の上で問題が起きます。当然ある幅の段階を区切って、小売り課税と蔵出し課税の間にレールを敷いて、従価税をこの際級別廃止とあわせて併用することが、自由化対策の中で二級酒の地方におけるメーカーをフェアな競争条件の中に立たせることになるのじゃないか、こう考えておるわけであります。これはすぐ簡単にはいかない問題でありますから、今後の自由化をやる段階に応じて、ただいまから検討を開始してもらって、完全自由化になる段階には、そういうふうな級別廃止、従価税ということで、清酒の問題をもう少し公正な競争をさせるようにすべきではないか、こう考えますけれども、大蔵大臣いかがでございましょう。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しの点は御要請のとおり検討をいたします。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、今度の入場税の問題をずっと議論をしながら考えたのでありますけれども、いま百四十億円程度のものを、ほんとうに必要な文化の問題に関して国民から税を取るという発想に比べて、もう一つ問題がありますのは、ギャンブルの競輪、競馬その他の入場税を三十円に免税点を据え置いたという問題であります。なぜ三十円に据え置いたかといえば、百円に免税点を持っていけば入場税がなくなるというほど、実はギャンブルの入場料はごく安いわけであります。しかし、今日一億一千万人もの者が一年間に実はこのギャンブル場に入って——もちろんこの人たちがギャンブルを行なうこと自身は、現在国が認めておる以上いたしかたないのでありますけれども、片や国民生活の向上という意味では内容的に非常に価値のある文化問題に対して課税をし、片やそういうギャンブルに行く人に対してはそういう意味の課税がないというのは、どうも国民感情としていささかどうであろうか。この際、ギャンブルに入るほうの現状の入場税を取りやめて、新たにひとつ、このギャンブルの入場者に一人三百円なり五百円なり程度の特別の入場税を目的税として課して、そしてこれを身体障害者のための資金に、現在あるものの上に上積みして日本の身体障害者のためによりあたたかい手を伸ばすということは、国民全体としても納得のいく問題ではないだろうか、こう考えるのでありますが、これは一つの新しい提案であります。大蔵大臣、これらについて検討をされる意思がありやいなや、お答えをいただきます。
  108. 福田赳夫

    福田国務大臣 ギャンブルに対しまして重課をするというお考え、それは私賛成です。さればこそ今度三十円という免税点を据え置きにした。そういう同じ考え方に基づいておるわけです。堀さんはさらに一歩進めまして、特別の入場税、これをギャンブルに対して設定したらどうだ、こういうお話でございますが、それも、私が考えておる一般の入場税とギャンブルに対する入場税とは別のものである、別に考えていい問題だという思想に相通ずるというふうに考えるわけであります。これはよく検討いたします。  第二の問題は、おそらく目的税にするというようなお考えのようでありますが、これは私はなるべく目的税は設けたくない、そういう考え方でありますので、これはひとつ賛成という返事はなかなかできないのですがね。しかしそれとは別に、社会保障、小さい者、弱い者の立場、これは九兆四千億円という大きな予算があるのですから、その中において十分配慮いたします。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 私はギャンブルから税を取るだけでは問題が残ると思うのですよ。実はそこから税を取るのは、これは自分たちがギャンブルで使う前に、身体障害者のために寄付をしたのだというさわやかな気持ちで税を納めてもらうことのほうが意味があるのであって、一般会計に入れるためなら私は何も取る必要はないと実は思っておるのです。現在身体障害者予算というものが十分にいっているかといえば、私はいろいろ身体障害者の問題を扱っておりますけれども、いまの状態はきわめて不十分なんです。だから何とかこれをふやしたいということについて、ギャンブルでもうけた人も損をした人も、すっからかんになったけれどもきょうは三百円は身体障害者に寄付してきたのだ、これはこの人たちのせめてもの心のささえになるだろう、こう思うのです。私はこういうことのためにこそ目的税というものがあっていいんじゃないか、こう思いますので、前段は御賛成のようだけれども、後段もひとつ十分再検討をお願いして、私の質問をこれで終わります。
  110. 毛利松平

    毛利委員長 関連質問要望があります。春日一幸君。
  111. 春日一幸

    春日委員 五分間しかございませんから、答弁はひとつ簡明に願いたいと思いますが、第一番に、物品税の免税点の問題なんですけれども、これを回避するための口実として、直間均衡をはかるとかあるいは付加価値税の創設とかという問題とからみ合わせて、そうしてことさらにその問題を混迷におとしいれられておるきらいがあると思うのです。付加価値税というものとの関連でこれを考えておるというようなことを先般来述べられておりまするが、付加価値税と物品税とは、税体系としてこれはむしろ別個のものではないか。かつてシャウプ勧告がなされましたときに、付加価値税の問題はむしろ事業税との関連においてこれがアドバイスされ、国会でもそのように論議され、法律は通ったけれどもこれが実行不可能になったというような経過等もございまして、全然別個の問題である、税体系としては必ずしも同一の形態のものではないと思うが、どうですか。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 別にからめておるわけじゃないのです。にらんでおるという程度でございます。
  113. 春日一幸

    春日委員 むやみににらんで、にらんだといったってそのにらみ方はむしろやぶにらみというものであって、正式ににらむならいいけれども、関係のないものをにらむとはどういうことですか。大体事業税を廃止するために付加価値税を創設すべしということで、それもいかぬというておじゃんになった問題なんでございますけれども、それは物品税とは全然関係ないのです。関係のないものをにらむなんてことは、にらまれたほうが迷惑しごくであるのみならず、税体系をくずしてくると思うんだ。この問題で、免税点を上げ下げするということになると、非常にいろいろと意見が集中してきて、取りさばくことが困難だと言われますけれども、いままで本委員会はこの問題を取り上げて、四年ごとに周期的に問題を公正に処理をしてきておると思うんです。かつて三回も四回もなし得たことが本日の段階においてなし得ないというはずは断じてない。ことさらにこれを避けようというのは、一体これはどういうことなのか。というのは、国民というものにはやはり、いままでの行政慣行、慣例というようなものがあって、期待感というものが期せずしてそこにあると思うのですよ。だから、四年目ごとに直されてきた。四年目ごとに直されてきたその理由は何であるかといえば、その間において物価の値上がりがある、人件費の値上がりがある、だから免税点の設定というものを動かさなければ、免税点そのものを設定しておる政策意図というものがその効果を確保しがたい。こういうことで四年目ごとになされるという期待があるのですよ。それを今度だけすかたん食らわしてやらないというようなことは、これは政治モラルとしても行政慣行としても許されることではないと思う。むずかしい、むずかしいといったって、そのむずかしいことをかつてやってきたじゃないか。かつてやってきたことが今回やれないというはずはないと思う。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 なおこの上ともとくと検討いたしたいと存じます。
  115. 春日一幸

    春日委員 検討したいということでございますからいいですけれども、そこで問題は、私は特にお願いをしたいが、政策には税体系もあるし、いろいろな政策があるが、中小企業政策という政策の柱もあるのです。中小企業者が、人件費が上がって、原材料費が上がって、五年前に設定された免税点ではほんとうに、実用品であるとか大衆品であるとかというものを、その免税点の限度内で生産し供給することができないという現状になってきておるのですね。だから、経済政策として、特に中小企業政策として、いまやこの免税点というものはこの際何らかの調整をせなければならぬぎりぎりの段階であると思う。この点は法律事項じゃございませんから、行政措置でやれることでございますから、どうか今国会中においてぜひともひとつ誠実に——機会均等の原則というものもあります。免税点の引き上げが入場税に対してなされたときに、物品税に対して免税点の上げ下げができないというはずは断じてございませんから、ぜひともひとつこれをやっていただくことを強く要請いたしまして、私の質問時間が参りましたから、これで終わります。
  116. 毛利松平

    毛利委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  117. 毛利松平

    毛利委員長 この際、相続税法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  採決いたします。  相続税法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  118. 毛利松平

    毛利委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕
  120. 毛利松平

    毛利委員長 午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後二時八分開議
  121. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  関税定率法等の一部を改正する法律案を議題として、質疑を続行いたします。阿部君。
  122. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほどもちょっとお伺いしたのですが、中国や北朝鮮の場合、皆さんは、法律が通れば特恵を要求するというふうにお考えですか。
  123. 中川一郎

    中川政府委員 この問題は相手国のことですから、日本が予測することはなかなか困難な問題でございますが、いまの情勢では特恵として手をあげるということはちょっと期待できない。推測ということになればちょっとむずかしいのではないか。しかしわが国としては、あげていただくならば歓迎して受け入れる用意がある、こういうことでございます。
  124. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは国交のない国、そういうものが意思表示をするというのはどういうのを意思表示するというのですか。たとえば政府と思われるものが発言をするとか、あるいは中国にはここに何か弁事処みたいなものがありますけれども、そういうものが意思表示をしたらそれでいいというのか、北朝鮮みたいに全然そういうものもないときは、向こうの業者みたいなものが要求したらそれでいいというのか、政府なのか、その辺をはっきりしてください。
  125. 中川一郎

    中川政府委員 業者での意思表示ではちょっとむずかしいかと思いますが、国交がなくても、たとえば中共の場合でも藤山さんのような人が行かれて、いろいろな接触を持っておられます。ああいうようなのを通じ、あるいは北朝鮮の場合でありますと、社会党の皆さん方が行かれるような場合に意思表示があるというようなこと等、弾力的に幅広く考えていっていいのではないか、このように思っておるわけでございます。
  126. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまのようなお話で、藤山さん等がああいう交渉に行った、そういうところで向こう側が意思表示をしたというような場合にはこれは認める、こういうことになるわけですね。
  127. 中川一郎

    中川政府委員 そういう場合に十分考えるべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  128. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そういう特恵の場合、イギリスやカナダは大体いまどんなふうになっておるのですか。
  129. 谷川寛三

    谷川政府委員 御質問の趣旨は、イギリスやカナダが中共に与えるかということでありますね——。これはただいまのところはっきりしておりません。いろいろな方法で接触をいたしましたが、日本と同じように検討中ということのようでございまして、ただいまのところ不明でございます。
  130. 阿部助哉

    阿部(助)委員 特恵の問題については、冒頭にもちょっと触れましたように、発展途上国が要求をしたということは事実であります。しかし、これが実際は、ある意味でいえば、国連でこねくり回して、それで合意書ができた。そして合意して日本へ持ってくると、日本政府がまたそれなりにやっていく。とすると、実際これを設けたからといって、どれほど発展途上国利益を受けるんだろうということになると、私非常に疑問を持つわけなんです。その点で、皆さん質問すれば、これから効果があるだろうと思うという程度なのでありましょうけれども、実際問題としていろいろなワクを設けたりしておって、発展途上国がこれで満足すると思いますか。
  131. 谷川寛三

    谷川政府委員 率直に申しまして、必ずしもこれで一〇〇%満足しておるとは考えません。国連貿易開発会議の場におきましても、いろいろと要望が強く、日本案のみならず各国の案に対しましても開発途上国からいろいろ要望がありました。しかし、これはごちゃごちゃやっておってもなかなか片がつかないから、とにかくやりましょう。さっき申しましたように、七一年中のできるだけ早い機会にやりましょう。それからまた実施してみて、再検討の機構が設けられればその際にお互いに検討し合う機会もあろうじゃないかということで、とにかく実施を急ごうじゃありませんかということになった次第でございます。日本の場合も、冒頭に申し上げましたように、国内産業のことを十分考えつつも——さっきちょっと申し落としましたが、ワクを設けます際は後進国からの輸入額を基準にいたしますけれども、一割は先進国からの輸入額も補足ワクとしてプラスしてワクをきめるとかいうような配慮もいたしまして、開発途上国工業化促進するということを考えておる次第でございます。
  132. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そういうことで発展途上国に恩恵を与える、こう言うが、要求に応ずるというのは、表面でありますけれども、実際これを実施した場合、アジアにおいては、日本発展途上国との貿易の中で、やはり韓国台湾、フィリピンというのが日本貿易のほとんど大半を占めておるのじゃないだろうか、こう思うのであります。そうすると、特に韓国台湾というところが一番大きな恩恵を受ける、こういうことになると思うのですが、どうですか。
  133. 谷川寛三

    谷川政府委員 まだ具体的にどこの国がどういうふうに恩恵を受けることになるかということは、実施してみませんとなかなかわからぬのでございますが、いま御指摘のように、韓国台湾が一番有利になるかと申しますと、必ずしもそうではなかろうというふうに考えております。と申しますのは、韓国が一番要望しておりました生糸、絹織物が特恵の供与の対象外になっております。それから、台湾等の要求しておりました合板とか革製品等も特恵の対象外になっておりますことを考えますと、必ずしもお話のように、韓国台湾が今度の措置によりまして一番恩恵を受けるとはいえないと考えております。
  134. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、やはりここは一番大きな恩恵を受ける。またそれだからこそ、一番冒頭に申し上げましたように、いろいろな日本企業がいま低賃金特恵関税ということをねらって韓国台湾進出をしておるという現実を見ても、私はそうだろうと思うのであります。そしてまた、この国は日本の円借款であるとか、あるいはまたいろいろな経済援助、そこでいま言ったような経済進出というものとがからんでくる。しかもそれが政治的に見れば、佐藤・ニクソン会談にいわれるように、日本の安全にとって重要な地域である、こういうふうになってくる。そうすると、韓国台湾というのがある意味で、政治的にも経済的にも全く日本一つワクの中に組み込まれていくのじゃないだろうか。そういうことになってくると、ますますアジアにおいてむずかしい問題をかもし出してくる。そういう点で私は、韓国台湾にはむしろこれは与えないというぐらいの姿勢をとるべきだと思うのですが、いかがですか。
  135. 中川一郎

    中川政府委員 阿部委員は、台湾韓国に特別に与えて、アジアの情勢に何か変わった空気をつくるんじゃないかということをだいぶ御懸念のようでございますが、決してそんなことを考えておりませんで、先日来御審議いただきました海外援助の問題と特恵供与というのは、政治的立場を離れてやるべきことであり、先ほど御質問にもありましたように、中共、北朝鮮が手をあげればという、非常に大きな気持ちでやっておるわけでありまして、その中から台湾韓国について切り離すというようなことは考える必要もないし、またそういうことは現実問題としてできないのではないか。ただ、阿部委員御指摘のようなそういう懸念がないように、これからアジアの中の日本のあり方というものについて慎重を期するようにということについては十分傾聴してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  136. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次官の見解はそうであろうと思いますけれども、経済の仕組みからいきまして、こういう形で経済進出をしていくと、先般のテレビで自衛隊の人が言っておるように、日本のいろいろな資本が、工場企業進出をしておるとすれば、そこに事が起きればわれわれが出ていくのは当然だというような発言までテレビ等で言っておる。むしろこれはいろいろな指導の中でそう言わされておるのだろうと思うのでありますけれども、そういうような現実になってきておる。戦争はいいかと言えば、いいと言う人はだれもいない。みんないやだと言うでしょう。しかしそれにかかわらず、現実にいままで歴史の証明するところ、戦争というものは起きてきておる。それは何かといえば、やはりこういう経済進出というものがその根っこにある。いま日本が、この前の経済援助のときも私申し上げましたけれども、貿易重点ではなしに、いよいよ今度は資源開発に重点が入るという方向へいっていることも、これも争えない事実なんです。まして今度の、資源開発のために重点を置いた経済援助、そうしてこういう特恵関税、それに伴うまた経済進出というものがからんでくる中で、そこの国に事が起きれば、その企業の安全のため、資本の安全のために兵を動かさざるを得ないというのが、私はこれはいままでの歴史の証明するところだと思うのです。だから、かりに一個人、政治家が善意であろうとも、これは経済の宿命であり法則だと思う。そういう危険性をはらんでおるのじゃないか。表面は発展途上国の援助だと、こうたてまえはなっておるけれども、その名にふさわしいほどの特恵ではないじゃないか。そうしておいて、それをやることによってむしろ日本の経済進出をする。そうしながらまた同時に、日本中小企業にそれなりに回っていくというところに私問題があると思う。この対外援助にしても、まず日本国内の矛盾をほんとうに解決しつつやれば、それで経済援助の場合にはそういう点が非常に少なくなるけれども、日本国内においてはいまの農業であるとか中小企業と大企業との矛盾というものはどんどん広げながら外国へ資本が出ていくというときに、必ずそういう危険性を、戦争の危険性をはらんでくると私は思う。ましてや今度の問題も同じような形で進められるのであって、特恵というのは表面はりっぱだけれども、実際は日本企業後進国への搾取強化にすぎないのじゃないかという感じをむしろ私は持たざるを得ないのでして、その点で私は不安を感じておる。中川次官はそういう心配御無用だと、こうおっしゃるけれども、私はそれは争えない姿じゃないかという感じがするので、もう一ぺんひとつお答えを願いたいと思います。
  137. 中川一郎

    中川政府委員 阿部委員のせっかくの御指摘ですから、われわれも十分耳を傾けて御意見として拝聴しなければならぬと存じますが、そもそも今度の特恵は、先進国日本を含めた先進国から言い出したことではございませんで、開発途上国からぜひともこういうことをやってもらいたいという要望が強くありました。それを受けて立たざるを得ない。しかも、これをやります場合には、国内にも中小企業と大企業との摩擦の問題、あるいは農業の問題、地元の産業国内産業、いろいろと問題がある中にやらざるを得ないことで、やむなくといったら悪いんですが、後進国家の要請にこたえなければならぬという気持ちでやっておるところでありまして、決して、特恵をやって経済進出をする、そして戦争に巻き込んで、海外へ軍事的に出るなんというような意図はもうさらさらありませんし、また今後も絶対あってはならない。これは政府当局だれしも考えておるところではないかというふうに考えます。御指摘の点が今後もちろんないように、また誤解もないように十分配慮してまいりたいと存じます。
  138. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ちょっと違うのですがね。皆さんがそういう意図を持つ持たずにかかわらず、必然的にそういう方向へ走らざるを得なくなるのではないか、この不安を私は強調しておるのでして、では、これで南北問題が解決するなんというふうにお考えですか。
  139. 中川一郎

    中川政府委員 経済援助の問題と特恵供与は、やはり南北問題の解決の大きな手がかりになるであろうというふうに思いますし、それから阿部委員御指摘のように、意図はないけれども結果としてそうなるのではないかという御心配でありますが、結果的にも決してそうならないように十分配慮していきたいと考えておるわけでございます。
  140. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私これで終わりますけれども、私は発展途上国から要求があったということは否定してないのです。しかし、この特恵がそういう仕組み、要求のあったような形をすなおに取り入れてやられておるかといえば、そうではないということを言っておるのです。それは国連の段階でも、合意の段階であらわれておるように、いろいろな意見がある。しかもまた、それぞれの国に持って帰っても、それぞれの国でまたいろいろな細工をしてこれを実施しておるという点におそらく不満が出るだろう。私が一番強調したいのは、こういう問題も同時におやりになるのはけっこうだが、経済援助であるとかいろいろなこういう問題は、同時に日本国内の矛盾というものをもっともっと解決しながらやらないと、国内のアンバランスというものをやりつつ、矛盾を深めつつこういう形のものをやることは、必ずいわゆる帝国主義的な方向へ進まざるを得ないということを申し上げておるわけであります。いまここであなたから私が満足するような御答弁をいただけるとは私も思っておりませんけれども、しかしこのことだけは幾たびも幾たびも私たちが確認をしながら政治を進めませんと、始まってからではおそいのであります。そういう点で、この特恵の問題、これは確かに、格差をつけて、そうしてこの人たちの有利になるようにというのが本来のねらいでありますから、そのこと自体は、私は格差をつけることは当然のことだろうと思うのです。しかし、それにはやはり隣国の中国あるいは朝鮮の問題等も十分配慮をしていただきたい。  ただ、その点で最後に確認をいたしておきますけれども、藤山さんがおいでになったようなときに向こうが意思表示するとか、あるいは北朝鮮に使節団等が行ったときに意思表示をするということであればこれは認める、こういうことだけ確認をいたしまして私質問を終わります。
  141. 中川一郎

    中川政府委員 ただ誤解があるといけませんので、阿部委員の最後の、北朝鮮あるいは中共等が、使節団が藤山さんのような姿で行ったときに手をあげたら直ちによろしいというわけではございませんで、十分そういうルートを通じて配慮検討して、それがいれられるように努力をしていきたい、こういう意味でございますので、あげたらすぐよろしゅうございますということになりますとまたあとで問題かと存じますが、その辺は阿部委員も政治家でございますから、そういうかたいことを言っておるのではない、前向きの姿勢でというような御質問かと存じますけれども、念のため申し添えさせていただきます。
  142. 毛利松平

  143. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、関税定率法等の一部改正法律案につきまして、主として農畜産物に開校する事項について若干の御質問をいたしたいと思います。  質問に先立ちまして大蔵政務次官にお教えをいただきたいわけですが、関税制度というのは国内産業を保護していく、こういう観点に立って仕組まれておるのかどうか、まず御質問をいたします。
  144. 谷川寛三

    谷川政府委員 まあ、なんでございますね、以前、日本の国際競争力もそうついでないというような時期におきましては国内産業を保護するという機能に期待するところが強かったと思います。しかし、今度の改正をごらんいただきましておわかりいただけますように、そういうところから出まして、そうして日本経済を取り巻く内外のいろいろな問題に積極的に取り組んでいく、関税機能を活用していくという新しい姿勢が示されている。つまり、一つは物価問題に、完全とはいいませんけれども、関税政策を活用していく。それから輸入自由化を一方において進めていきますことが大きく要請されておりますので、その際に関税の面でいろいろと措置をしながら自由化をスムーズにしていくことも考える。それから公害対策関税を使っていく。それからけさほど来御議論をいただいておりました南北問題の解決にも資する。これは今度の場合特恵関税の供与でございますが、そういうふうに、ただ単に国内産業の保護というところじゃなくて、多目的関税政策、関税機能を積極的に生かしていくということが新たに要請されているというふうに考えております。
  145. 田中恒利

    田中(恒)委員 経済の発展に伴いまして、関税に対する考え方というものが、いま局長おっしゃいましたように多元的に変化をしていくということも、それぞれの産業なり品目によっては考えられる側面もあるかと思いますけれども、まあ今日まで国民が一般的に頭に置いておりますのは、関税でもって、国内のいろいろな生産物と外国との競争関係というものを公正な状態に置かす機能をここで果たすんだ、こういうふうに一応認識しておると思うのです。  特に私がきょう御質問申し上げます農産物につきましては、御承知のように、国際的に見まして日本の農業経営が非常に零細である、こういう観点に立ちまして、全体的に国際競争力が非常に低いということで、今日まで貿易政策の中におきましては非自由化という側面が非常に強く出ておりましたし、関税そのものの取り扱いについても、日本の農業を保護していくという観点が中心であったというふうに理解をしておるわけであります。今回、残存輸入制限八十品目のうち農畜産物の関係が四十九程度あると思うわけでありますが、これが一月十九日の閣僚会議におきまして本年九月までに四十品目に縮める、こういう決定がなされまして、三十品目が農畜産物に該当しておると思うのです。この自由化の問題は日本の農業にとりましてはきわめて重大な影響を与える要素をはらんでおると思うわけであります。これらにつきまして今回法改正がなされておるわけでありますが、農畜産物に対する関税の取りきめについて、この法律提案に際しましてどのような観点でなされたのか、この点をちょっとお聞きをしておきたいと思うのです。
  146. 谷川寛三

    谷川政府委員 ただいま田中先生お話ございましたように、残存輸入制限物資はただいま八十品目残っておりますが、この四月には二十品目自由化をして六十にしましょう、そしてこの九月にはさらに二十品目を自由化して四十品目にしましょう、そしておおむね西独並みの、ヨーロッパ並みの自由化をやろうじゃないかという閣議決定になっておるわけでございます。ところがいまお話がありましたように、いま残っておる品物は農産品、それから中小企業関係、とにかくいろいろな面で、まあ野放しに自由化をしてしまいますと急激なショックがきて心配だというものがたくさん残っております。一方ではもちろん農業、中小企業近代化、体質改善を進めてまいりますが、さっき申しましたようにここでひとつ関税の機能を活用して、一方では自由化の要請にこたえ、一方では国内産業に急激なショックがこないようにすることを考えようじゃないかという基本的な考え方で、今度措置をしておるわけでございます。  今度一般的に関税につきまして措置をいたしました品目は二百二十一品目ございますが、そのうち二十五品目につきましては自由化対策でございます。しかし、自由化はいたしましたが一方において関税障壁がまた設けられたとなりますと自由化の効果が無になりますので、自由化の効果を無にしないような方向で措置をしなければならぬというので苦心しておるわけでございますが、お話がありました農産品につきましては、たとえばグレープフルーツでございますが、これはいろいろ問題もございましょうが、一応九月、ことし中には自由化をしたいということになっております。それにつけても日本のハッサクとかナツミカンとの競合を考えなければいかぬということ。ところが一方消費者のほうは、どうもグレープフルーツは高い、もっと何とか安くならぬものかという声もございます。ですから苦心をいたしまして季節関税というのを採用いたしました。これは各国でもこの制度は非常に活用されておりまして、効果のほどにつきましては私もまだ研究不十分でございますが、従来から各国は活用しておりますので、これは効果があるに違いないと思っておりますのでやりたいということでございますが、ハッサク、ナツミカンの出回り期にはいまの二割の関税を四割に高くするということにいたしまして、競合のかんきつ類を保護しつつ自由化の効果を消費者にも及ぶようにしていきたいというのが一つの類型でございます。  もう一つは豚肉や生きた豚でございますが、これは差額関税というのをとっております。差額関税と申しますのは……(田中(恒)委員あとで聞きますよ」と呼ぶ)じゃ類型だけ申し上げておきますが、差額関税の思想を取り入れておる。  それから木炭でございます。これはあたる木炭ではなくて、溶鉱炉に使う木炭でございますが、これにつきましては関税割当制度を採用いたしまして、需要者が使う範囲では、日本ではまだこれでは不十分だ、入れざるを得ないという範囲までは安くしまして、それを越えて入ってくる分は関税を高くするという、関税割当制度の思想でございます。これを採用していこうというふうなことを考えております。  しかし、どうしても引き上げざるを得ないというものが出てまいりました。たとえば牛、馬でございますが、これについてはただいま無税のものを増税をすることにいたしております。増税をすると申しましても、自由化して増税をして、これは意味がないんじゃないかという議論が一方にございますが、実はずっと関税率を洗い直してみますと、いままでは自由化しておりませんから外国から入ってくるものがありませんので、関税で何らの措置をしなくてもようございましたから、いいかげんなというわけではありませんが一応の関税率を設定しておりましたけれども、いよいよここで自由化となりますと、内外価格差を比較するとか、あるべき関税の姿を検討し直さなければいかぬじゃないかということで検討し直した面もございますが、それはそれとして、いずれにしましても直ちに引き上げるということは極力避けることにいたしました。そして、いま申しましたように、いろいろな関税のテクニックを使いまして、自由化の効果を阻害しないようにしつつやるということをやっておる次第であります。
  147. 田中恒利

    田中(恒)委員 だいぶ長く御説明をいただきましたが、ある程度承知をしておるつもりなんですが、問題は、今日まで、農畜産物については、特に国内の関係品目については、自由化をするということになると非常に衝撃を与えるので、できるだけこれを残してきたわけですね。ところが、いろいろな事情でいまそれを取っ払わにゃいけないということになったんだ。そういうものについては答えは簡単なので、いわゆる国内のそういう関係農産物を、やはり多少はこれから生産性を上げて、構造改善もやらにゃいけないでしょう。その政策の方向はわかりますけれども、それに対して非常に衝撃を与えるような立場を原則にせずに、やはり関税でもってせきとめするんだ、こういう観点でお進めになっておるのか、それとも、国際的な価格の問題もあるし、物価問題もやかましくなってきております、そういう観点を特に重視をしてやられようとしておるのか、この点をお聞きをしておるわけでありますので、そこのところを……。
  148. 谷川寛三

    谷川政府委員 先ほど申し上げましたように、いろいろなことを考えまして、国内産業に急激なショックがこぬように考えておりますので、御了承をいただきます。
  149. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、特に農畜産物だけではない面もありましょうが、食料でありますから、あとでいろいろお聞きしますが、たとえば今度豚肉の自由化が予定をされております。そして、いまお話がありました差額関税というものが設けられました。輸入基準価格というものが安定法のまん中に置かれまして、それを中心として一〇%たり、その差額という方法を講ぜられておりますね。こういうものが一方にある。一方には、羊の肉と馬の肉が、いままで八%であったものがゼロパーセント、無関税、こういうことになりましたね。  そこで、日本の豚を守るというか、豚という本のは、これはいま、率直に申し上げまして、日本の畜産の中では豚が一番、ある面では政府の政策の路線に沿って、だんだん近代化されていくというか、いま多頭飼育されまして、進んでおるわけですよ。こういうものは単に豚肉の問題じゃないのですよ。豚肉だけじゃなくて、食肉全体の動向が養豚というものに対して決定的な影響を与えるわけです。特に羊の肉とか馬の肉とかいうもの、これは今度無税になるわけでありますが、これが最近非常に輸入がふえておるわけですね。これは資料がお手元にあると思うわけでありますけれども、羊の肉は、農業基本法ができた三十六年に二万二千六百六十二トンでありましたが、これが十二万九千二百二十トン、約六倍になっております。それから馬の肉は、これも約五倍に上がっております。牛肉は約三・五倍ぐらい、基本法制定当時から上がっております。豚肉の場合は、国内の価格の動向に基づいて緊急輸入の処置をとってきたわけでありますから上がり下がりはありますけれども、これらの輸入は、ある一定の線を置きながら毎年度上がってきておるわけですね。こういうものが実は豚肉というものに対して非常に大きな影響を与えるわけであります。こういう形で畜産物あるいは農産物の輸入にあたって個別商品単位に、それぞれの品物の需要なり国際的な価格といったようなものを想定して関税率を設定するという方法がよろしいのか、食肉全体という観点に立って最も妥当な関税というものを置くのがいいのか、こういう問題があると私は思うんです。  豚の問題にあたって私どもが一番考えなければいけないのは、おたくのへそ価格の問題もありますけれども、食肉の需要全体がこの自由化によってどういうふうになっていくか。特に御承知のように、いま羊の肉とか馬の肉とかいうものが、本来牛肉でもって使われねばいけないものにまぜられて、非常に安い値段であって不良食品になって出回っておる、これが現実なんですね。ここに消費者の肉に対する物価問題の一つの押えがあるわけですね。こういうものが自由体制の中に入っていけば、ますますこれは商社のもうける一つの最もいいメリットになることでありますから、動き出すと思うのです。こういう点についてやはり関税政策として何か考慮すべき点があるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  150. 増田久

    ○増田(久)政府委員 いま羊とか馬の免税の問題が論議されまして、その中で肉全体の問題として関税考えるべきではないかというお話であったわけであります。先生御存じのとおり、馬肉あるいはマトンというものは、わが国におきます生産というものは現在ほとんどといっていいぐらい、ないような状態になっておるわけでございます。と同時に、これが使われておりますのは、先生御存じのとおり、プレスハムという、これは日本独特の製品、大衆食品でございます。そういうことで、これは本来的に、たとえば魚の肉をまぜるとか安い馬肉をまぜるとかということで、大衆食品という形で出発してきたものございまして、本質的に豚肉と競合——全然とは申し上げませんけれども、本来的に高級なハムなどと競合するものではないわけでございます。そういう意味で、われわれは馬肉なりマトンの関税を免税にしたということにつきまして、それが直接的に豚肉の問題に響いてくるとは考えていないわけでございます。
  151. 田中恒利

    田中(恒)委員 しかし私は、この輸入量の増大ということとからんで、これが豚肉の価格動向というものに対してやはり大きな影響を与えていくのではないかという面がどうしても想定されるわけですけれども、農林省のほうはその点はだいじょうぶだというふうな御答弁と理解していいですか。
  152. 増田久

    ○増田(久)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、全然とは申し上げませんけれども、豚肉を使っているハムと馬肉等を使っているハムというものはおのずと区別されておりますので、直接的な関連はない、そういうふうに考えているわけでございます。
  153. 田中恒利

    田中(恒)委員 実際には、豚肉と馬肉とがまぜられておるということが問題になって、いろいろ騒がれておる面があるのじゃないですか。
  154. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先ほど申しましたとおり、下級と申しますか、安いハムにつきましては、くず肉等と馬肉あるいはマトンをまぜて、安い大衆食品として市場に提供されていることは事実であります。
  155. 田中恒利

    田中(恒)委員 大蔵省の関税というのはなかなか大きな問題でありますから、それぞれ一つ考え方があるわけでありますけれども、国内の基盤の脆弱な産業に対して、関税制度をもってささえていくというような要素でこの関税率というものを考えるならば、私は一つ考え方としては、単に品目ごとに問題を整理して、品目ごとの生産なり流通なり国際価格なりといったような観点だけじゃなくて、競合する一切のものを考慮しながらある一定の関税の方向というものを見出していくという考え方があってもしかるべきではなかろうか。私も専門家でありませんから、実は確信を持って詰めるだけのものがありませんけれども、そういう感じが特にこの農産物等をめぐって、特にいま問題になっております豚肉の問題をめぐりましては、豚肉そのものよりも豚肉に競合するいろいろな肉類の自由化というものが非岸に大きな影響を与えていくので、この点の配慮をしながら、特にここ当分の間は日本の農業が一人前になるような状態に持っていくまで関税等でのささえが非常に大きな役割りを果たす、そういうふうに思っているわけであります。こういう点を関税政策という観点に立って検討していただく余地があるのかないのか、これを政務次官に。
  156. 中川一郎

    中川政府委員 田中委員の御指摘のように、これは同一品目だけでの比較といいますかバランスという問題もありますが、同じ肉という、競合というのですか、幅広い検討も当然なされていかなければならぬ。そして、たとえば羊によって豚がやられるというようなことのないよう十分配慮していかなければなりませんし、ただいま局長が申し上げましたように、今回の馬肉あるいはマトンについては豚に対してさしたる影響はないという判断のもとにいまやられたということでございますので、今後ともそういう総合的なバランスがとれるようにやってまいりたい、かように考えます。
  157. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、豚の自由化が一応九月を目途に決定ということになっておるわけでありますが、——これは農林省にお尋ねしたほうがよろしいかと思いますが、今日の日本の養豚というものは国際競争力を持っておるのか持ってないのか。最近の養豚の現状等を見守りながら、農林省として、豚の自由化と九月に一応想定しておる時点に立って、どういうふうに御見解を持っておりますか、お聞きをいたしておきたいと思います。
  158. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先ほど先生からお話がございましたけれども、日本の養豚業界というのはいま非常な構造改善のプロセスにあると思うのでございます。昭和四十年に二十頭以下というのが九五%で、シェアも五〇%以上の頭数を持っていたわけでございますけれども、現段階におきましては二十頭以上層というものが農家数で一五%、しかも豚の頭数からいきますと七一%という大きいシェアを持っている。したがって、すさまじい勢いで規模拡大と申しますか、多頭化の方向に向かってきているわけでございまして、そのかわりに多くの合理化が行なわれていることは御承知のとおりであります。  ただ、それが国際競争力があるのかどうかということは、こういう現段階で見た場合に、率直に申し上げていろいろ比較のしかたがむずかしく、規模頭数だけで申し上げれば、たとえば台湾では一戸当たり四・五頭でございます。それに対しましてオランダが約五十頭、イギリスが八十頭程度というような形でございますので、規模から見ればまだ小さいということも日本の段階ではいえるわけでございますが、先ほど言いましたとおり、平均では日本は十四・五頭ですけれども、二十頭層以上の階層の専業化の勢いが非常に強いということを考えますれば、近き将来に日本がそういう先進国に急速に追いつくであろうということは考えられるわけでございます。  それからもう一つ、比較のしかたとして、過去に入りました日本のCIFの価格と日本の価格を比較してみますと、先生御存じのとおり、現在日本のへそ価格は三百八十三円、それに対しまして日本のCIFでアメリカものが四十二年から四十五年までの平均で三百六十七円、台湾ものも大体その見当でございます。したがって、価格の差というものはおおむね一割以内で入ってきておる。ただし、これは先生承知のとおり、いわゆるビッグサイクルというものがありまして、非常に乱高下があります。いま申しましたのもあくまでも平均での話でございますので、それを特に比較するのはなかなかむずかしいかとも思うわけでございます。  ただ、抽象的なお話で申しわけないわけでございますけれども、豚の生産費のうちの約四二、三%というものはえさ代でございます。四〇%が素畜、というのが大体の豚の生産費の構成比になっているわけでございます。えさがやはり昨年度二度ほど値上がりして養豚農家を苦しめていたのは事実でございますけれども、しかしわが国のように海外から飼料を無税で入れているという国は先進国に実はないわけでございまして、わが国の飼料価格は常に国際価格で消費されているということでございますので、そういう意味におきまして、えさ代の中の海外との差というものはそれほど大きなものではない。  それから、問題は素畜の問題でございますが、素畜の問題は、養鶏と違いまして、まだどの国におきましても子取りのところについての技術革新というものは生まれていない。そこに、どの国でもなかなか豚の合理化というものができない。したがってまた、そういう生産事情があるために、豚が国際商品にもなれないという大きな性格を持っているわけだと思うわけでございます。  これはむしろ各国の労賃費という問題が問題になってくるかとも思いますが、これが各国とも大きな開きをそう持つものではない、こう考えますと、われわれは抽象的一般的に考えますれば、われわれがいまの多頭化の方向を積極的に進めていくならば、当然近き将来において国際競争力を持ち得るものになる、さように期待をしているわけでございます。しかしながら現段階においては、私は、直ちにあるというふうには断言するわけにはいきません。そういう意味で、今回のような関税措置をとるとともに、畜産物価格安定法に基づきます豚価安定対策というものは今後も積極的に進めていく考えでいるわけでございます。
  159. 田中恒利

    田中(恒)委員 いまの段階では国際競争力を持っておるとはいえないというような意味の御説明があったと思うわけでありますが、それに加えて、いま局長も申しましたが、えさの値上げというものが昨年は二度にわたって相当大幅に行なわれております。  特に今後豚の問題で非常にやかましくなってくるのは公害の問題でありまして、現在の大規模養豚を中心といたしまして、屎尿処理施設、公害施設を設置しなければ豚飼いはできない、豚を飼うものは山のてっぺん先へ姿を隠さなければ豚飼いはできないという状態にいまなろうとしておることは御承知のとおりでありまして、今国会に悪息防止法という法律が近いうちに出るようでありますが、これらは完全に養豚の関係者に関係してぐることでありまして、公害問題は何といいましても今日の最大の課題でありますし、農業の分野では養豚というものが非常にこれと密着をしていくということでありまして、ここ一年二年の動向としては、養豚業者の生産費の増加というものはかなり大きく上回っていく、そう考えなければいけない。特に日本の農政の一つの大きな筋道として、米を二百三十万トン減反していくという、大幅ないわゆる米減反政策が投げかけられているわけであります。これは月給取りといたしましたならば、ちょうど収入の二割近くがダウンするという意味なんでありまして、これはたいへんな問題だ。それはやはり何にかわるかというと、畜産なり果樹なり、そういう分野に転換をさせなければならないということになっておる。こういう政治的なタイミングから見ましても、いまここで自由化に踏み切るということについては、少なくとも生産者段階ではまことに気持ちにぴったりこないというか、たいへんな不安をいま起こしておることは御承知のとおりであります。こういう中であえて踏み切らねばいけない理由というものが実は十分よくわからないわけでありますが、一体なぜ自由化に踏み切ってこういう処置をとられようとしておるのか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  160. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生のおっしゃいますとおり、いまの総合農政の非常なむずかしい段階におきまして、今後の発展作目であります養豚業につきまして自由化ということは、非常に農民に心理的にショックを与えるものではないかという感じは十分わかるわけでございます。しかしながら、なぜこういうふうにあえて踏み切らざるを得なかったかという背景を申し上げますと、言うまでもございませんけれども、残存輸入制限品目をできるだけ減らしていくという一つの国の政策があるわけでございます。それからもう一つは、物価安定という問題があるわけでございます。特に豚肉につきましては四十三年、四十四年におきまして異常な高騰を見せたことは御承知のとおりでございます。現在畜産物価格安定法に基づきまして、上位価格、下位価格というものの間に豚価を安定せしめるという制度になっているわけでございますが、現実の姿としては、下位価格になりますと畜産事業団が買い出動をいたしますので下位価格は十分働くけれども、上位価格は本来消費者のためのものであるべきにかかわらず、現実には何ら働いていないではないか、こういう批判を多くの方からいただいていたわけでございます。そういう意味で、畜産物のいまのやり方、特に上位価格を突破したようなときに、従来のように緊急割り当て制度という制度によって、豚肉を緊急に輸入していって価格を冷やすというやり方では、現実問題として、過去の経験からなかなか機能的に働かない。そういう意味で、今後とも畜産物の農家の再生産を確保するための制度は強力に進めるべきではあるけれども、同時に消費者サイドから見て、上位価格を突破するという事態は避けるべきである。そういうためには、こういう従来のようなシステムではなく、自由化という対策でこの問題は講ずべきではないか。こういう判断に基づきまして、昨年の五月の物価閣僚会議におきまして豚肉は自由化すべしというような方針が出され、今回こういう方向で踏み切ることにいたしたわけでございます。
  161. 田中恒利

    田中(恒)委員 この自由化の問題はたいへんな日本の大きな問題でありまして、単にいま局長が言ったような豚肉の動向なり物価安定なり、そういう問題とは別に、もっと大きな、日本アメリカとの国際関係というものがかぶさってきておる、こういう理解を私はいたすわけであります。  特に今度物価対策という問題が、関税の内容といたしましても、ある意味では考えられておる一つの分野だと思うのです。物価がこれほど上がってきておるわけでありますから、消費者の物価安定政策というものに力を入れなければいけないことはもちろんでありますが、一体これをやられて、そうしたら豚肉の値段が安定して下がっていくという自信をお持ちでありますか、この程度の内容で。この物価の問題というのはそういう簡単なもので——この間タマネギの輸入が行なわれまして、逆にタマネギが上がってきた、こういうことが行なわれるわけでありますが、自由取引という形になりますと、関税の今度の内容はしかもそう大がかりなものでありませんが、こういう程度のもので豚の物価問題が解決するというようなことは私はおよそ考えられない。むしろ逆にいろいろな思惑が動いて、今後の自由化後のあり方をめぐっては逆に物価騰貴が起きてくる、こういう可能性すら残っておるような気がするわけですが、物価問題についてだいぶお下げになっていく、こういう御自信があるわけですか。
  162. 増田久

    ○増田(久)政府委員 私たち農林省の立場を率直に言わしていただきますと、やはり豚というものは今後の基幹作目であるということが一つと、それから第二に、各国ともそうでありますように、豚はあくまでも国内で自給すべきが原則で、こういうたてまえは依然として貫いていくつもりでございます。そういう意味で、われわれは畜産物価格安定法というものを現実に厳正に忠実に守っていきたい。しかしながらいまの現実のやり方では、上位価格を突破したときにおいては、過去の経験から見てそれを防ぐことは現実にできなかった、こういう反省のもとに今回こういう自由化に踏み切ってきたわけでございますので、今後、四十三年、四十四年のような異常高値という事態はこの制度によって十分避け得るもの、かように期待をいたしておるわけでございます。
  163. 田中恒利

    田中(恒)委員 この一〇%の関税率の根拠というのは、一体どういうものですか。
  164. 谷川寛三

    谷川政府委員 内外の価格差を比較いたしまして、つまり詳しく申しますと、枝肉——国産の豚肉でございますが、枝肉の卸売り価格をとりまして、それと外国の豚肉のCIF価格に輸入諸掛かりをプラスいたしましたものと比較いたしまして、一〇%の関税が適正であるというふうなきめ方をいたしておるわけでございます。
  165. 田中恒利

    田中(恒)委員 その国内価格については、非常に国内の価格が上がった場合は何か修正をしておるわけですね。
  166. 谷川寛三

    谷川政府委員 異常に高騰しました際の価格は修正をいたしております。
  167. 田中恒利

    田中(恒)委員 四十二年、四十三年、四十四年の三カ年の平均でやられておるわけですが、この四十三年、四十四年というのは豚の卸売り価格が非常に高くなったときであります。これをこのままに平均いたしますと、これは関税率がどのくらいになるのか、計算せられてないのですか。だいぶ修正せられて八・何%になっているのですけれども、このままに計算されたらもっと高くなるのじゃないですか。
  168. 谷川寛三

    谷川政府委員 いまの異常に高騰したときをとりますと一割よりは若干高くなりますが、これはちょっと異常値でございますので捨象したほうがいいではないかということで、先ほど申しましたように、確かに四十二年から四十四年までの価格はとりましたが、そういうものは調整いたしまして一割をとっておるということでございます。
  169. 田中恒利

    田中(恒)委員 この一〇%というのは、そういう面ではあまりはっきりした算定根拠というか、こういう事由だから一〇%なんだというふうに明快な理由を持っておるわけではないわけですね。
  170. 谷川寛三

    谷川政府委員 ただいま申しましたように、あるべき適正な内外価格差というものを、先ほど申しました異常高騰時の価格は調整して判断をした。ですから適当にチャートしたわけではございません。
  171. 田中恒利

    田中(恒)委員 あるべき価格というのは一体どういう価格ですか。上がった分を補正したというのですけれども、上がった分というのは、一体どの程度を上がった分と見るわけですか。
  172. 増田久

    ○増田(久)政府委員 上位価格をこえて非常に上がったときということで、計算としては、四百三十円をこえたものにつきましては四百三十円という価格で計算をいたします。
  173. 田中恒利

    田中(恒)委員 私、この問題を申しますのは、こういう価格でやるのは、これも一つの方法でしょう。しかしやはり日本の豚の生産費、これは農林省でわかっておる。それから特に日本に入ってくる外国の豚の生産費、こういうものがやはり根底にあって、そういうものの対比の関係で、これは一〇%という関税率を出されておるわけでありますが、こういうものが出されるのが最も客観的な事実に基づいて行なわれるものではないのか、こういう考えを持っておるわけでありますが、この辺についてはどういうふうにお考えでしょう。
  174. 増田久

    ○増田(久)政府委員 われわれは畜産物価格安定法に基づきまして豚肉の価格計算をいたすわけでございます。制度といたしましては、いわゆる需給均衡価格ということで、四年間の市場価格を基準にいたしまして、その間における生産費の動向その他を勘案いたしましていわゆるへそ価格をきめまして、それを上下に標準偏差で開くという形で上位価格と下位価格をきめているわけでございます。その際、需給均衡価格をきめます際に、当然われわれは生産費というものを横ににらんで計算しているわけでございます。それで、われわれの現在の三百八十三円という価格につきましては、これは原生産費そのまま直に使うわけではなしに、次の次年度へ投影させて推定をしますわけでございますけれども、当然そのへそ価格はおおむね生産費に見合うものという想定で計算をしているわけでございます。
  175. 田中恒利

    田中(恒)委員 へそ価格というのではなくて、一〇%の根拠というのは、日本の豚のこの三カ年間の卸売りの価格ですか、それから外国から入ってくるもののこの価格、これを対比しておるわけでしょう。そういう形で一〇%の関税率というのが算定せられるのじゃなくて、本来やはり価格差というものを見る根拠は生産費でありますから、せっかく貴重な農林省の生産費があるわけですから、その生産費と、日本に入ってくるアメリカなり韓国なり台湾なり、こういう国々の豚の生産費というものが比較をせられて、そこでどれだけの差があるかということがより客観性を持っておるのじゃないか、こういうふうにいま御質問をしておるわけであります。
  176. 谷川寛三

    谷川政府委員 詳しくは増田局長からお答え申し上げるのがいいかと思いますが、確かに先生のお話も一つ理屈でございますが、しかし海外の生産費というものはなかなかつかみにくうございますから、私どもといたしましてはさっき申しましたように、輸入価格と国内の卸売り価格とを比較せざるを得ない。それが一応そういったものもいろいろ反映されてできておるのじゃないか。なまに生産費を比較することはなかなか困難でございますので、こういう計算方法をとった次第でございます。
  177. 田中恒利

    田中(恒)委員 こんなようなことはないと思うのですよ。それはそれぞれの国でそれぞれ生産費をやっておるはずでありますし、日本政府が海外にたくさんな出先を持っておるわけでありますから、これはとろうと思えばすぐとれると思うのですよ。ところがどうも生産費は、私が聞きましてもあまり役所にないのです、豚の生産費は。ちょっとおかしいわけであります。特に自由化といいますか、そしてそれに伴う差額関税制度をとろうとするのに、一体入ってくる豚がどれだけでできているのかわからなくて、それで関税政策なり、あるいは日本の農政というものが進められたのでは、これは豚をつくっているものはたまらないし、消費者だって的確な判断が立てにくいと思います。これはもう少し、整った政府があるわけでありますから、政府のほうでこれは積極的に必要な資料は取り寄せてみて一ぺん検討してもらいたいと思います。  時間もありませんので、ここで問題はもう要約をいたさなければなりませんが、畜産物価格安宗法でもちまして、豚肉が下がった場合には事業団が買い上げる、上がり過ぎた場合には事業団が放出をしていく。豚なりあるいは牛乳なりの価格というものはこの水準で安定させるのだという基準価格と上位価格というものがあります。今度新たに輸入基準価格というものがこの関税制度の軸としてつくられるわけですね。この輸入基準価格まで差額関税を取っていくということになるわけでありますが、こういうことになってまいりますと、私はひとつ農林省にお尋ねをいたしたいのは、畜安法の運営というもので下位と上位で価格安定をさせるという、このねらいが非常にやりにくくなっていく面があるのではないか。農林省の御説明を聞くと、輸入基準価格から上位価格の間で価格操作が出る可能性が非常にある。ところが、われわれがいろんな団体等の意見を聞きますと、逆に、輸入額というものは、いままではいろいろ緊急輸入として処理してきたのであるが、自由になるわけでありますから、この輸入基準価格、なるほどそこまで関税を取るわけですから、ここまでは上がってくるでしょう。しかしそれはぎりぎりであって、それから上というのはあまり出てこない。この点が実は底でもあるし上でもある。こういうことになって、価格の形成というものは、特に国内の養豚の価格の形成というものは、いわゆる底とまん中との間に固定されていく、こういう不安なり、こういう問題を指摘をしておるわけであります。  私はこの問題は、短い間に理屈の言い合いをいたしましてもなかなか、平行線になる側面があると思いますけれども、しかし少なくともこの安定法のねらっておる上位と下位のこの幅で価格操作がなされるというものが、何らかの形で狭まって、上だという人もおるし下だという者もおる。あるいは事業団の放出といったような事態がこれからもう行なわれない。そうすると事業団そのものは意味がないじゃないか、こういう問題も指摘をされてきておるわけでありますが、こういう畜産物価格安定法の今後の運用をめぐって、今回の輸入関税基準価格というものが私はある程度大きな役割りを果たしていくというような気がしてなりません。輸入の問題はなかなかこれは複雑でありますので、一ぺんに理屈どおりにいかない側面が多少あるだけに、私はこの二つの意見とも非常にこれはそれぞれの問題を指摘しておるように思っておるわけでありますが、しかしどうもこの畜安法というものが何らかの形で、今日までとは違ったような状態にやはりなっていくような心配をせざるを得ないわけであります。この点についてはどういうふうにお考えになっておるでしょうか。
  178. 増田久

    ○増田(久)政府委員 確かに、自由化をいたすわけでございますから、その影響は全然ないとは私も考えておりません。先ほど何回も申し上げましたとおり、四十三年、四十四年のようなああいうばか高値は今後はないであろうというふうにいま考えておりますが、しかしながら、先生のいまおっしゃいましたとおり、せきとめ価格まで全部差額関税を取りますから、その結果として、輸入ものが幾ら入りましても、そこから、輸入ものだけでそのものがその以下の価格になるということはあり得ないということでございます。したがいまして、輸入する側から申し上げますれば、今後、値が確実に上がるという、それが相当長期に続くであろうという見通しがありませんと非常に不安なものであるわけでございます。と同時に、これも申し上げましたとおり、これは各国とも自給商品でございまして、国際貿易の上にあまり乗ってこない商品でございます。したがいまして、いま買いどきだといって国際的に買いに出ましても、そう簡単に適期に適量だけのものが入ってくるという保証はどうも十分ある商品ではないわけでございます。そういう意味で私はやはり、こういうせきとめ価格はやりましても、従来のようなばか高値はなくなるけれども、安定帯の上位をこえ、またはこえるおそれのある事態は十分ある。したがって、畜産物価安定法はこれによって阻害されることはないし、われわれとしてはその制度をあくまでも堅持していきたい、かように考えておるわけでございます。
  179. 田中恒利

    田中(恒)委員 私はやはり、この四十五年の一月から十月の輸入価格の動向を見てまいりますと、今回きめられました三百八十三円五十銭、これ以下の輸入価格というものはたくさんあるわけですね。アメリカはこの統計では多少上回っておりますけれども、それでも大体上位価格を多少上回る程度でありまして、台湾、アイルランド、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、こういう国々はいずれも輸入基準価格よりも安い価格で入ってきておるわけでありますが、私はやはりこの辺がどうも相場になっていくような気がしてなりません。特に先ほど来もいろいろ議論の中にありましたように、これからいわゆる開発輸入という側面がこういう農業の分野でも出てくる、こういう情報はすでに商社関係は流しておるわけですね。特に豚の自由化を見込みまして、韓国台湾、これは労賃が非常に安いということで、ここで牧場をつくってやった豚を枝肉にしたり、なまにして持って帰ってくるのだ、こういう動きがすでに業界誌等には載っておるわけであります。こういうことがだんだん本格化をいたしてきますと、輸入基準価格というものが底値であるし、また上限価格であるというような形で豚肉の相場が形成されて、価格安定法の趣旨はここで半分になってしまう、こういう感じが非常に強くいたしておるわけであります。この点は、相場の動きというのはなかなかむずかしいのでありますけれども、これは十分配慮をしておく必要があると思うわけであります。  なお、時間が参りましたので、あと一つ質問をいたすわけでありますが、これは今度の農産物関税の関係で一番大きな関心になっておりますグレープフルーツの問題であります。このグレープフルーツにつきましては基本的に、国会審議を通しまして、アメリカとの温州ミカンの輸出ワクの増大ということが一つの前提、いま一つが、いま提案されております季節関税を設けるということでありますが、季節関税のほうは当委員会でいま審議をされておるわけでありますが、アメリカとの関係については具体的にどういう状態になっておるのか。
  180. 大場敏彦

    ○大場説明員 ただいま御指摘になりましたように、グレープフルーツの輸入の問題につきましてはいろいろ経緯がございまして、四十四年、一昨年の日米輸入残存問題の協議の際に、御指摘になりましたように日本側から、日本産温州ミカンの輸入解禁州を実質的に拡大する、こういう了解のもとに日本側はグレープフルーツを四十六年末までに自由化する、こういうことを表明した経緯がございまして、また同時に、御指摘になりましたように、現在御審議をお願いいたしております季節関税制度をその場合には設定するということを明らかにしております。その季節関係制度につきましては、自由化されたときにはこの季節関税を発動する、こういう前提のもとに、ただいま御審議願っています改正法案の中に織り込まれております。  それからもう一つ日本産温州ミカンの輸入解禁州を実質的に拡大する、こういうことにつきましては、わがほうとしてもアメリカに対し種々、外交チャネルを通じ、あるいはその他の機会を通じまして努力をしています。たとえば昨年十一月にパームビー農務次官補が来日いたしましたときにも、もっぱらそのことではございませんけれども、その機会を利用いたしましてかなり政府側から申し上げましたし、また本年一月から二月にかけまして、これは事務ベースの話でございますけれども、農林省から担当課長を、輸入解禁州の実質的拡大の前提になるようないろいろ技術的な問題の解明ということの討議をさせるために派遣した経緯がございます。また今後いろいろ折衝の努力はもちろん続けてまいりたい、かように存じます。
  181. 田中恒利

    田中(恒)委員 この話がきまらないとグレープフルーツの自由化の問題というのははっきりしないというふうに理解してよろしいですか。
  182. 大場敏彦

    ○大場説明員 グレープフルーツの問題につきましては、ただいま申し上げましたように本年十二月末までに自由化するということを表明いたしまして——その後の経緯を正確に申し上げますが、四十四年十月の関係閣僚協議会において、それを裏づけする意味で本年十二月までに自由化するということが決定されました。その後、昨年の九月の関係閣僚協議会におきまして、これはグレープフルーツを特にメンションしたわけではございませんが、四十六年十二月末までに自由化するものと決定された品目につきましては、四十六年四月末日を目途にしてその完遂につとめる、こういった協議会の決定がございます。こういった経緯がございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、これにはいろいろ複雑な——複雑といいますか、非常にデリケートな問題がございます。輸入解禁州の実質的拡大、こういった問題もはらんでおりますから、この取り扱いについては私ども事務当局のお答えだけではなくて、うちの政務次官あるいは大臣、上司の方々の御答弁にもあらわれておりますように、慎重に取り扱っていきたい、こういうつもりでございます。
  183. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、このグレープフルーツの季節関税でありますが、十二月から五月四〇%、六月から十一月二〇%、こういうことになっておりますが、この二〇%、四〇%というのは一体どういう根拠でお出しになったのか。あるいは月ぎめですね、半年ずつにきめられているわけですが、これはどういう関係でこの月を考慮せられたか。
  184. 谷川寛三

    谷川政府委員 まず期間でございますが、期間は、先ほど申しましたようにハッサク、ナツミカンの出回り期を中心にいたしまして、その期間は高い関税を適用するという考えでやりました。そして四〇%の根拠は、二割をさらに二割引き上げております根拠は、グレープフルーツとハッサクをとりまして値開きを検討いたしまして四〇%の関税を設定した次第でございます。
  185. 田中恒利

    田中(恒)委員 グレープフルーツはハッサクよりもナツミカンが一番大きな関係だ、こういうふうにわれわれは理解をしておるわけですがね。ハッサクとナツミカンは多少価格が違うわけですね。
  186. 谷川寛三

    谷川政府委員 これは御専門の農林省の参事官からお答えをいただきたいと思いますが、私どもの理解しているところでは、品質的には一番ハッサクに近いというふうに考えております。農林省の参事官からお答えをお願いをしたいと思います。
  187. 大場敏彦

    ○大場説明員 ハッサク、ナツミカン、これはどっちも関係が深い、こういうことでございまして、たとえば先ほどの期間のきめ方にいたしましても、ハッサク、ナツミカン、それぞれおよそ一〇〇%に近い——かんきつ類では八割近いのでありますが、ハッサクにしろナツミカンにしろ、一〇〇%の出回りをする期間は税率四〇%とするというぐあいに、国内の生産者に対する影響というものを考えながらこの季節関税制度を設けていく、こういったことになっております。ハッサクのほうをとったほうがよいではないか、あるいは逆にナツカンのほうをとったほうがよいではないか、いろいろ御批判はあろうかと思いますけれども、ハッサクをとりましたにしても、その基礎としては、なまの数字そのままをとっているわけではございません。日本のハッサクカンとアメリカのグレープフルーツ、そういう品質格差というものはいろいろ技術的に見方はありますけれども、品質格差というものを見ておりますので、ハッサクカンを基準にとるか、ナツカンを基準にとるか、その辺の問題はわりあい品質格差という点でならしてある、こういうふうに判断しております。
  188. 田中恒利

    田中(恒)委員 ハッサクの生産量、ナツミカンの生産量、ハッサクの価格、ナツミカンの価格、ちょっと教えてください。  それを調べる間に……。いまアメリカの報告を見ますと、グレープフルーツ一個五十六円か五十七円くらいで売れております。小売り価格ですね。日本へ来ておるのは、これは品質にもよるわけでありますけれども、大体三百円から二百五十円、こういう状態であります。レモンが自由化になりまして、アメリカで二十八円のものが日本で三十三円から四円くらいですね、日園連の資料を見ますと。そういたしますと、いまグレープフルーツがたいへん問題になっておりますのは、生産費が安くて非常に量がふえてきておるし、しかも年間入ってくる、こういうことでありまして、しかも非常に値段が安い。農林省は百五、六十円になるだろうということを言われておるようですが、しかし、レモンの自由化後の動きから見ますと、アメリカの小売り価格とそう差がない形で入ってくる、出回ってくる、こういう可能性があるわけであります。そうすると百円以内ということは当然想定されるわけであります。そうなりますとこれは、四〇%、二〇%の関税はハッサクにしてもナツカンにしてもなかなかたいへんな問題でございまして、ナツカン等はせっかく農林省がおつくりになれといいましても、やめたほうがいいといって木を抜くのがたくさん出ておるわけですが、そういう問題が起きる危険性をはらむのではないかと心配しておるのですが、いかがでしょうか。
  189. 大場敏彦

    ○大場説明員 先ほどお尋ねのありました数字をまずお答え申し上げます。  ナツミカンの生産量でありますが、これは四十四年の数字がただいま手元にありますけれども、三十四万一千トン、それからハッサクカンが約六万トン、こういう状態でございます。ですから先生御存じのとおり、もちろんナツミカンは圧倒的に多いということは間違いございません。  それから価格でございますが、昨年は例年に比べて比較的値段がよいという状態でございますが、たとえば十二月現在で見てみますと、甘ナツでございますと、キロでございますが百三十円見当、四十四年が七、八十円ということになります。それからハッサクは四十四年が百十円から百二十円ということに対しまして、四十五年の十二月では百三十円、こういう状態でございます。  それから国内に与える悪影響はないか、こういった御指摘でございますけれども、先ほど申し上げましたように、いまグレープフルーツは一ころよりもむしろ値段は上昇しておりまして、小売りで中玉で四百グラムのもので申し上げますと三百円から四百円くらい、こういったものが現状ではないかと思っております。それが、いろいろ見方がございますが、自由化にされればアメリカのFOBの値段もほかの国並みにだんだん安くなってくる、こういったこともございましょうし、業界あるいはくだもの屋等の意見を総合勘案いたしますと半値くらい、いま三百円から四百円くらいで売られているものが百五十円から二百円くらいじゃないか、こういった見方をしております。  それから、いま影響がないか、こういった御指摘のことにつきましては、そういったことにもかんがみまして、ことにハッサクカン、ナツカンが一〇〇%近く出回っているという期間をほとんどつかまえまして、それに対しましては基礎関税で二〇%のものに二〇%加えて四〇%という関税で対処していきたいと思います。それから、関税制度だけではもちろん十分だとは思っておりません。いろいろ国内の生産の合理化のための投資、助成、そういったものは従来から予算面においても充実させていただいておりますし、来年度におきましても新しい芽は出していきたい、その努力は今後も続けたいと思っております。
  190. 田中恒利

    田中(恒)委員 いまお話がありましたように、ナツミカンが三十四万トン、ハッサクは六万トン。ナツミカンの六分の一であります。値段はナツミカンが安くてハッサクが高いわけであります。この量が少なくて値段の高いのが基準になって対比されておるというところに一つの問題があると思います。この点はいろいろ問題になっていく点だと思うのです。やはり日本の関係業種に最も大きな影響を与える分野に焦点を合わせて対比をしなければ、私はちょっと問題が残っていくんじゃないかと思いますし、アメリカ等の状況を見ますると非常に心配になるわけでありますので、この点についてと、それから、もうだんだん最後になりますので、特に農産物その他のものも関係いたしますが、こういう事態に入った場合に、いろいろ国内に、グレープ等の場合は特にいま心配しておるわけでありますが、非常に急激な衝撃を与えて、何らかの処置をとらなければいけないという場合に、緊急関税の問題であるとかその他アフターケアの問題を何かの形でとらないと、これは放置しておりましたら——バナナの問題にいたしましても、どんどん入ってきましたけれども、御承知のようにいま業界は百億近い借金をかかえて、結局自分の首を締めたようなかっこうになっておるわけです。こういうようなことになりますと、日本国内産業自体がやはり影響を受けるわけであります。これらの問題について最後にお尋ねをいたして、私の質問を終わりたいと思います。
  191. 谷川寛三

    谷川政府委員 先ほど、グレープフルーツとの価格差をきめます場合にハッサクの価格をとったと申し上げましたが、ハッサクの価格は実はナツミカンよりも三割方高いわけでございますので、消費者の方からは逆に攻撃を受ける面があるかと思いますが、いろいろなことを考えまして高いほうの価格をとってこういう数字をきめた次第でございます。  それからまた国内のかんきつ栽培業者に対する影響につきましては、先ほども農林省の参事官のほうからお話を申し上げたのでございますが、ただいま先生お話しのように、関税定率法には緊急関税の規定がございます。でございますから、ただグレープフルーツの価格が自由化の結果半分に下がったからというだけではそれは発動できませんけれども、安いグレープフルーツがどんどん入ってき出した。それによってハッサク、ナツミカンの栽培農家が甚大な影響を受ける。それのみならずかんきつ栽培業者全体にも、国内のミカンの値段が下がりまして甚大なる被害が起こる。そして総合農政の展開にも重大な支障が起こりそうだということになりましたら、私どもは機を失せず緊急関税の規定を発動いたします。関税局のほうもその体制を整えておりますし、寄り寄りまた農林省とも緊密な連絡をとりまして、万遺漏なきを期したいと思っております。
  192. 毛利松平

    毛利委員長 古川君。
  193. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして若干質問をいたしたいと思います。  最初に関税局長にお伺いをいたしますが、この関税というのは一体どういう目的で設けられたものであるか、その点から御説明をいただきたいと思います。
  194. 谷川寛三

    谷川政府委員 そうなりますとなかなかお答えがしにくいのでございますが、関税の仕組みが、先ほども御議論がございましたが、いろいろな考え方でやっております。各関税のいろいろな物品表、関税表にありますように、いろいろな分野のものにつきまして、国内産業を保護すとという面もありますし、それから財政収人を確保するという面もございますし、それから、数年来そういうふうになっておりますが、石炭対策の財源にも使うというような、目的税といっては何でございますが、目的に使うという面もございまして、そういう仕組みになっておりますが、先ほど申し上げましたように、今度関税全体を見直しますにつきましては、そういう国内産業の保護というだけで考えてはいかぬのであって、いろいろ多目的関税機能を活用するような方向で検討をする必要があるんじゃないかという、関税審議会の御答申の旨に従いまして改正を進めてまいったのでございます。
  195. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 関税定率法という法律でございますが、この立法精神と申しますか、立法の趣旨は何を目ざしているか。いま関税とはどういう目的で設けられたかということをお伺いしたわけでございますが、ただいまの御答弁のようなことでございますか。
  196. 谷川寛三

    谷川政府委員 そういうことは直接的には書いてございません。関税を課します場合の課税標準をどうするんだとか、税率をどういうふうにきめていくんだという技術的な法律でございますが、まあ根底には先ほど申し上げましたような精神が秘められているということを言ってもよかろうかと思います。
  197. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 この関税定率法の第一条はいわゆる立法の趣旨、第二条は定義、第三条に課税標準及び税率を定めているわけでございますが、この点について、できれば条文に沿って御説明をいただきたいと思います。
  198. 谷川寛三

    谷川政府委員 第一条は立法の趣旨でございます。この法律は、先ほど申し上げましたように、税率それから関税を課する場合の課税標準をどうするんだ、それから今回もこの法律に基づきまして改正をしておりますが、関税の減免とか、そういった制度につきまして仕組みをつくってまいりたいということを規定してございます。  それから定義のところでは、輸入とはどうだとか、輸出とはどういう意味なんだとか、大体常識的なことでございますが、一応法律的に規定をしてございます。  それから第三条は、関税を課しますのは輸入貨物の価格なり数量を課税標準として課税をするんだ。関税というのは、従価課税、従量課税ということでございますが、その税率は、膨大な課税率表がついておりますが、別表にきめたところでやるんだということを詳しく規定をしているものでございます。
  199. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 今回関税定率法改正が行なわれるわけでございますが、この改正案のいただきました要綱に述べられております中に、いわゆる「物価対策・輸入自由化対策に資する等の見地から、」というふうにしるされておりますが、これはこの関税定率法の立法の趣旨に沿っているかどうかという点について御見解を伺いたいと思います。
  200. 谷川寛三

    谷川政府委員 先ほども申し上げましたように、この法律の立法の精神に、秘められたる精神に基づきまして、かつ最近の国際化時代に沿うような方向で新しい関税の展開をしていくという意味でなにしたものでございまして、いまお話しのとおりでございます。
  201. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 そうしますと、この関税定率法によって物価対策あるいは輸入の自由化に資するということは何ら問題がない。裏を返していえば物価対策という目的のためにこの関税定率法をいじる、改正をしていくということがこの立法の精神にそむくものではないというふうに判断をしてよろしゅうございますか。
  202. 谷川寛三

    谷川政府委員 はい。新しい関税政策の展開をするのだということで、時代の要請に沿ったものであるというふうに理解をしております。
  203. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 ただいまの御答弁でございますと、こうした関税定率法改正によって物価対策に資するような見地を求めているということは、当然その効果を十分見込んでいる。これは後ほどお伺いしてまいりたいと思いますが、今回この改正案の要綱に述べられているような、そうした同じ見地から、過去にこの関税定率法改正をしたことがあるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  204. 谷川寛三

    谷川政府委員 従来の改正におきましては、特に大きく目的を打ち出して、つまり大きな柱を立ててやったことはないようでございます。
  205. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 そういたしますと、近くは四十三年の三月、四十四年の三月に改正が行なわれておるわけでございます。このときはどういう見地から法改正をしたのか、この点御説明をいただきたいと思います。
  206. 谷川寛三

    谷川政府委員 四十三年度の改正は、従来の暫定措置法で定められておりまする暫定税率を延長する、それから中共関係のケネディラウンド均てんを規定するという程度改正でございました。四十四年度について申し上げますと、ここでも先ほど申しましたように暫定税率の延長、それからKR均てんの品目の指定、それからこのときは、これは日本労働力不足対策という面も含めておりますが、加工再輸入減税をやってはということで、そういう制度が新設になっております。そういったような改正でございまして、さっき申しましかような大きな柱はなかったようでございます。
  207. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 そういたしますと、今回この物価対策ということを一つの大きな見地として掲げたわけでございますが、これは今回が初めての新しい法改正の展開であるというように理解してもよろしゅうございますか。
  208. 谷川寛三

    谷川政府委員 はい。どうもあまり胸を張って申し上げるのも何でございますが、そういう目的一つ大きく立てたつもりでございます。
  209. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 さらに、この「見地」ということがどうもひっかかるのでございますが、この物価対策、輸入自由化対策に加えて公害対策ということも一つの見地に掲げていらっしゃいます。このようにいろいろな見地があらわれてくるわけですが、今後これ以外の見地からこの関税定率法改正していく、いじっていくということは考えられるかどうか。それと同時に、今回の改正のような見地から、これを前例として今後もこの法改正をしていくというお考えをお持ちであるかどうか。その点を伺いたいと思います。
  210. 谷川寛三

    谷川政府委員 今後ともこのような目的を立てまして、できるだけの関税機能の活用をはかってまいりたいと思っております。ただ、このほかにどういう目的があるかと御質問をされますとちょっとお答えしにくいのでございますが、とにかく時代の要請に応じたように関税機能の活用を積極的弾力的にはかってまいりたい、かように考えております。
  211. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 非常にくどいようでありますが、今回新たにこうした物価対策あるいは公害対策という見地からこの改正を行なうということを改正案の要綱に述べていらっしゃる。いろいろな見地が今後出てくるとして、これがこの関税定率法の立法の精神をそこなうおそれは生じないか。この点もう一度確認をさせていただきたいと思います。
  212. 谷川寛三

    谷川政府委員 関税政策運営の精神に反しないようなことをやらなければならないと思っております。
  213. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 以下、こうしたこの関税定率法の今回の改正によってねらっている効果について、その内容を一つ一つこれからお伺いをしてまいりたいと思うのでございます。  最初に、公害対策として脱硫重油の製造用の原油、この減税制度の拡充ということをうたっております。と同時に、もう一つ低硫黄原油——以下LS原油と呼ばせていただきますが、この関税の軽減等をはかっております。この点について、通産省からおいでをいただいていると思いますが、具体的に以下お伺いをしてまいりたいと思います。  最初に、LS原油というのは一体どういうもので、どういう国々で年間どのぐらい産出量があるか。さらにわが国では全輸入量あるいは全使用量の中でこのLS分がどのくらいあるのか、この点からお伺いしてまいりたいと思います。
  214. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 お答え申し上げます。  LS原油と申しますのは、その中に硫黄分が一・〇%以下の原油のものをわれわれLS原油と呼んでおります。日本昭和四十五年で約二億キロリットルの原油を輸入しておりますけれども、このうちLS原油というものは約一七%に相当いたします。三千四百万キロリットルの輸入をしております。世界的に見ますと、現在全世界で年間約二十四億キロリットルの原油を消費しておりますが、そのうちいわゆるLS原油というのは北米、カナダ、アフリカ地域に主として産しまして、日本が原油輸入の九〇%を依存しております中東ではほとんど産出しておらないというのが現状でございます。
  215. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 そうした国々からわが国は原油を輸入しておるわけでありますが、その中でLS原油の輸入が可能なワクと申しますか、可能量といいますか、こうした点がございましたらひとつ御説明をいただきたいと思います。
  216. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 昭和四十五年度で三千四百万キロリットルのLS原油を輸入したということは先ほど申し上げたとおりでございますが、ただいま今後五年でどの程度輸入し得るかという推定をしたものがございます。これが約五千五百万キロリットルでございます。
  217. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 このLS原油の輸入でございますが、これは求めれば幾らでも輸入できるというものではないと思います。国際情勢、それから現在いわゆるLS原油を探鉱している、採掘を試みている、その途上にある分、あるいはいろいろな政治的な背景、こうしたものから当然制約を受けると思うのでございますが、LS原油の輸入の限界と申しますか、そのワクがあるかどうか、その点もう一度お伺いします。
  218. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 先ほど五年後に五千五百万キロリットルと申し上げましたが、たいへん失礼いたしました。これは昭和四十八年度でございます。  現在、将来を見通すということはなかなかむずかしいのでございますが、われわれは、石油業界がそれぞれのサプライヤーから長期にどの程度のものを輸入したいというふうな、もちろん希望もしあるいは契約もしておるわけでございますが、それらをベースにいたしまして、どの程度輸入が可能であるかというふうなことを試算したわけでございます。したがいまして、四十八年以降どうなるのかというふうな御指摘でございますと、数字的に申し上げるのはたいへんむずかしいのでございますが、いわゆる傾向ということになりますと、日本は年間約二二%余りの増加率で原油の処理量がふえてまいります。この勢いでまいりますと、あと五年を経ずして三億キロリットルの原油になる。しかもその大半を中東に依存せざるを得ないような地理的条件に日本はあるというふうなことから、やはり相当買う努力をし、同時に開発の努力もいたしませんと、LS原油というものはそうたやすく手に入らないというふうに考えるのが普通かと思います。
  219. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 わが国内においてLS原油の需要量というものは当然あると思います。希望しただけ買い付けをすることができないといった事情はいまの御答弁でわかるわけでございますが、現段階において日本が必要とするLS原油を目一ぱい輸入しているのか、買い入れているのかどうか。またさらに余裕があるのかどうか、この点お伺いをしたいと思います。
  220. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 私は現在、目一ぱいの努力をして輸入しておるというふうに思います。
  221. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 関税局長にお伺いいたします。今回このLS原油の輸入につきましては関税の引き下げをはかっているわけでございますが、このことによって買い入れ量の幅がどれだけふえるとお考えでございますか。
  222. 谷川寛三

    谷川政府委員 通産省のほうからお答えを願いたいと思います。
  223. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 関税局長、いま通産省のほうから、もういま目一ぱい輸入をしている、今後需要があってもこれ以上ワクを広げることはできないという意味の御答弁をいただいたわけでございます。ところが今回の関税定率法改正によりまして、LS原油の関税の引き下げを行なっているわけであります。当然これは買い入れ量の幅を広げるということを目途にしていると思うのでございますが、その点どうも納得がいかないので、ちょっと御説明をいただきたいと存じます。
  224. 谷川寛三

    谷川政府委員 ただいま通産省のほうからお答えがありまして、今度の改正によりまして、目一ばいと申されておりましたが、少なくとも低硫黄化計画に盛り込まれておりますところのいまの精製用の輸入確保を、引き下げることによって一応確実にすることができるのではないかというふうには考えております。
  225. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 納得できませんので通産省にお伺いいたしますが、この点はどのようにお考えでございますか。
  226. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 ローサル原油の購入というとに目一ぱいの努力をしておるというふうに申し上げましたことは間違いないと思いますが、ローサル原油の需要というものは世界的に伸びてまいりまして、これはヨーロッパでもアメリカでも大消費地でたいへん需要が伸びている。そのために日本としても買いにくいという状態が起こってきたわけでございます。それでこのたび関税引き下げというふうな手段を講じて、なお一そう買いやすくするというお願いをわれわれいたしまして、このたびの関税引き下げということの御了解をいただいたわけでございます。
  227. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 どうもその点納得できないのでございますが、それじゃ振り出しに戻りますけれども、関税局長、このLS原油の輸入関税引き下げによってどういう効果をねらっているのか、その点もう一回はっきりしていただきたいと思います。
  228. 谷川寛三

    谷川政府委員 とにかく端的に申しますと、亜硫酸ガスによる大気汚染防止のためにあらゆる努力をしなければならぬというので、その一つの効果を期待いたしまして、いま御質問がありましかように二つの方法で、昨年やりました脱硫装置をさらに拡大する、それから新たにローサルファのものにつきまして減税をするということをやったわけでございます。
  229. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 通産省のほうの御説明では、世界的にLS原油の需要が高まっている、したがって日本としても買い付けが非常にむずかしい。そういう情勢を踏まえて、ただ単に関税を引き下げたということだけで公害対策に見合っただけの買い入れの幅をふやす、そうした効果があるとお考えになりますか。
  230. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 LS原油をできるだけたくさん輸入するということは、これは今後の公害対策上の数ある手段の中の一つでございます。やはり、先ほど申し述べましたように、地理的な位置づけから中東原油の依存度が非常に高くならざるを得ない日本としまして、その主力を重油からの脱硫、すなわち製品になった重油から硫黄分を除いていくというふうな設備を積極的につくっていくことがまず第一に必要である。それから、その前に日本に入ってくるサルファ分をそもそも低くするということは当然考えなければならないということから、今回のローサル原油に対する引き下げ、それから脱硫設備に対する関税の引き下げ、そのほかにもいわゆる公害対策といたしましては、LNGの積極的な導入であるとかあるいはまた排煙脱硫であるとか、そういうふうなことの総合的な手段によらなければなかなか環境基準を守ることはむずかしいというふうに私ども考えております。
  231. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 この関税引き下げの効果を、当局はいわゆる公害防止と公害対策という点に置いていらっしゃるわけでありますが、これまでの質疑応答によりまして、私はどうしてもこれは納得できないわけであります。どれほど公害対策としてこれは効果があるのか、この点が一つの大きな問題でありますし、あえてもう一度関税局長にお伺いしておきたいのでありますが、このLS原油の輸入の関税の引き下げによって直接恩恵を受けるのはだれだとお考えでございますか。
  232. 谷川寛三

    谷川政府委員 結局、私さっき申しましたように、公害対策になるわけでございますので、終局的には国民が利益を受ける結果になると思います。  先ほど申し落としましたけれども、四十二年以降のローサルファの輸入の状況を見ますと、全体の輸入量に対する割合でございますが、だんだんと政府でもローサルファを入れましょうということを申しておりますし、業界でもそういうふうに努力をされてきておるあとが見えます。四十二年で申しますと九%の構成比でありましたものが、四十三年においては一一%、四十四年には一四%、減税をいたしませんでも努力をしていただいております。しかし、さっき通産省からも話がありましたように、欧米でローサルファを中心にして非常に需要が高まっておりますので、非常に買いにくくなっている。しかし、いまのローサルファの輸入量をふやさなければいかぬということで、いま申しましたように業界でも努力をしておりますが、さらに今度の減税によりまして、ローサルファの購入割合をふやすことに有利になるのではないかというふうに私は効果を期待しておるわけでございます。
  233. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 私の質問に対する御答弁にはなっていないような気がいたします。  ではお伺いをいたしますけれども、これは通産省からいただいた資料でございますが、わが国の石油の需要の予測によりますと、昭和四十三年が約一億六千万トンということでございまして、昭和五十年には三億六千万トンというふうに推定をしていらっしゃるわけでございます。今後LS化あるいはLS原油の輸入が促進されていくということでございますけれども、こうした総需要の絶対量がこのようにふえていくわけでございます。こうした関税の引き下げというような措置が、いわゆるLS分野の占める割合にどれだけの効果を及ぼすかということが一つ疑問になるのでございます。この点いかがですか。買い付け、輸入そのものがむずかしいということ、その反面国内でいわゆる脱硫という操作によってLS化が行なわれていく、そういうことを当然含んだ上でございますけれども、輸入の関税引き下げという点についてしぼって考えてみたときに、一体どれほどの効果を見込めるか、その点どうお考えになりますか。
  234. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 LS原油についての需要量の増加の傾向は、これはヨーロッパあるいはアメリカ等に比べますと日本が著しく高くなっておるわけであります。同時にLS原油というものの値段について過去を振り返ってみますと、ここ四年、五年前はそんなにいわゆる値開きというものはなかったのでありますが、ここのところ急激に日本を中心とするそれらの需要が高まったことが大きな原因になりまして、サルファが低いということが大きな価格差になってあらわれておるというのが、現在の世界のマーケットの建て値の実情でございます。
  235. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 先ほど関税局長は、今回のこの関税引き下げの措置が公害対策に有効であるという御答弁をなさいましたけれども、こうした将来の需要の予測と考え合わせまして、昭和五十年、五年後には倍以上というふうに見込まれておるわけでございます。その中にあって、はたしてこうした措置が公害対策に有効であるとそれでもお考えでございましょうか。
  236. 谷川寛三

    谷川政府委員 先ほどから通産省でお話し申し上げておりますように、非常にローサルファの獲得には困難を来たしておりますが、通産省で立てております低硫黄化計画、それはたしか四十八年度の輸入量を四千九百五十万キロリットルと見込んでおるようでございますが、少なくともこれが確保には、さっき申しましたように今度の減税が有効に働くのではないかというふうに私は考えておるところでございます。
  237. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 どうもはっきりしないわけでありますが、観点をひとつ変えましてお伺いをします。  開発銀行からいわゆる融資の対象になっております脱硫装置との関係でございますが、この点ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  238. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 脱硫設備につきましては開銀が融資しておりますが、これは公害対策ワクの中から融資するということになっております。実績について申し上げますと、昭和四十四年度の実績でございますが、約三十億が融資されております。
  239. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 この融資対策ですね、原油の脱硫化を進めていく効果と、今回の関税定率引き下げ等の措置と、この点の関係をどうお考えでございますか。
  240. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 関税の引き下げは二つございまして、先ほど関税局長のほうから御説明ございましたが、LS原油に対するもの及び脱硫設備の設置とその恩典に関するもの、この二つがあるわけでございます。及び脱硫設備に対する国の融資の援助あるいは税制上の援助等から、脱硫設備の設置の非常に促進になっておるというふうに私どもは考えております。
  241. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 重油の脱硫黄の減税単価の引き上げを行なっております。LS原油の関税の軽減によって、また減税単価の引き上げによって、もう一度お伺いすることになるわけでありますが、直接恩恵を受けるのはだれかと考えるわけでございますが、もう一度御答弁をいただきたいと思います。消費者は石油販売価格の上でどうなるか、その点を含めて御答弁をいただければよろしいかと思います。
  242. 谷川寛三

    谷川政府委員 直接にどうかと申されますと、二つあるうちの脱硫重油のほうは、直接的には脱硫重油の業者でございます。それから、低硫黄原油を入れますものにつきましては、低硫黄原油の石油のメーカーでございますが、さっき私申しましたように、結果的にねらっておりますのは亜硫酸ガスによる大気汚染の防止でございます。それをねらっておるわけでございますから、結果的には国民のほうに還元されるというふうに思っておるわけでございます。
  243. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 通産省にお伺いいたします。  石油の脱硫化が今後進んでいくこととあわせまして、いわゆる石油の販売価格にこれは何らかの影響があると思いますが、この点いかがでございますか。
  244. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 脱硫するということはたいへんコストのかかることでございますが、これは、これまでのところ特にその脱硫コストが消費者の販売価格に直接影響を及ぼしておるというふうな傾向は出ておりません。今後ともそういうことは企業の合理化の努力の中に吸収していかれなくてはならないというふうに、われわれ了解しております。  脱硫コストということでございますが、これは今回は五百円の関税価格でございますけれども、実際にはキロリットル当たり約千七百円ないし千八百円のたいへんなコストがかかるというふうに試算されております。
  245. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 当然今後こうした脱硫化ということを積極的に当局として進めていく方針であると考えるわけでございます。その点間違いございませんか。
  246. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 私どもただいま持っております計画によりますと、脱硫設備は昭和四十五年で三十八万六千バーレルでございます。今後、三年後の昭和四十八年には七十一万バーレル、約倍近いものを持つ計画になっております。
  247. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 こうした脱硫装置につきましては、融資の対象にもなっておりますし、今回こうして減税措置もはかられるわけでございます。しかし一方、先ほどの御答弁でもありましたとおり、販売価格のほうにも何らかの形で影響があらわれる。そうした場合、石油業法の第十五条の適用をその時点で考える御意思があるかどうか、一応お伺いしておきたいと思います。
  248. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 ちょっと私、業法をここに持ち合わせておらないのでありますが、石油は関連製品といいますか、一つの原油という種類のものから、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油につき策しても数種類のものが生産されるわけでありまして、これらの中でいわゆる脱硫設備にかかるのは重油の中で一番重いものでございます。したがいまして、これら関連製品が一連の設備の中で生廃されるわけでございますので、重油の脱硫即重油の値段プラスという形でこれはあらわれてくるものではございません。それらからいいまして、私どもの現在の立場、公害の防止のためのこういうふうなコストアップというものが、ただいたずらに消費者にそのまま転嫁されるというのは好ましくないという方針をとっておりますので、その線に沿って今後とも考えていきたいというふうに思っております。
  249. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 もう一度お伺いしますが、もしそれが消費者の販売価格に転嫁されたという事態が生じた場合、この十五条を適用なさいますか。
  250. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 十五条の適用というのは、その法律を適用しなくてはならないというほどのコストが、この脱硫のために発生してくるというふうには私どもはいまのところ考えておりません。
  251. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 時間がありませんので政務次官にお伺いいたします。  減税制度の拡充と関税の軽減をはかっているわけでありますけれども、以上私がいろいろお伺いいたしまして、どうしてもこれが公害対策として効果があるというふうには考えられないわけであります。その点について政務次官からもう一回はっきり御答弁いただきたい。  それから、普通の硫黄度の濃い原油を使って公害を出しておるのは、これは大企業ばかりではない、中には中小企業等もあるわけでございますが、今回の税制の改正、この関税定率法改正が、公害対策上、一体どの程度のメリットを認めて公害対策としてこの税の軽減をはかっていらっしゃるのか、その点をお伺いをいたしたいと思います。  あわせて、時間がありませんので一緒にお伺いいたしますが、石油と同じように、今後石炭あるいは原子力等の公害との関係も関税考えていくというようなお考えを持っているかどうか、この点もお伺いしておきたいと思います。
  252. 中川一郎

    中川政府委員 先ほど来古川委員が御指摘、御質問なさっている点、よくわかるのでございます。これだけの減税措置が公害対策にどういう経緯を経て直接役立っているか明らかにせよということでございますが、これだけの対策を講じた結果、ローサルファの原油をどれくらい買うことに役立つか。回答としては、これだけの減税をすることによってどのくらいの量がふえるということが明らかになれば御納得いただけるのだろうと思いますが、百十円軽減いたしました結果どれだけふえるということがはっきり言えないところに苦しみがあります。先ほど来局長あるいは通産省からも答弁いたしておりますように、非常にLS原油を求めるのに苦労しておる。数量は先ほど説明がありましたが、四十八年度にこういう数量を確保するのにもなかなかたいへんじゃないかというときでありますので、この数量を確保するのには減税して差し上げたほうが目的を達成するのに役立つであろう。それが何ぼ役立つということを明らかにできないのは残念でありますけれども、少なくとも害の少ない原油をきびしい中で買い求めるのにはかなり役立つであろうというところから今回措置をいたしたところであります。数字的に何キロリットルこれでふえるのだということが明らかになりますとけっこうでありますが、姿勢としてはそういう気持ちで、現下の公害対策にこれくらいのことはやはりやるべきであろうという結論でこのような措置を講じた次第であります。  また重油脱硫減税の減税単価、三百円を五百円に引き上げましたことも同様でございまして、このことが即直接的にどの数量ということが言えないのは残念でありますけれども、これらを通じて公害のない原油の扱いということにしていく姿勢を示しておるということだけは受けとめていただきたいというふうに存ずるわけであります。  また今後の公害、原子力その他に対して、それぞれ適切な措置はとってまいりたいとは存じますが、直接いまの税金との結びつきをどうするかということでございます。いまここで約束できるような回答はできませんが、輸入機械に対してだけは減免の措置は講じておりますが、その他につきましては、これからまた十分くふう検討さしていただきたいと思います。
  253. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 このような形で公害対策に取り組んでいこうというその姿勢は認めたいと思います。だからといって、こういう措置をしたことによって公害対策をやっているのだと大きい顔をしていただくと、これはまた困るわけでございます。以上、質疑応答の過程で御了解いただいたとおりであります。  次に移りたいと思いますが、特に今回、物価対策という見地で関税の引き下げをはかっているわけであります。どの程度の効果が期待できるかというといろいろ問題になってくると思います。と申しますのは、これまでしばしば、消費者物価の引き下げに効果が少ないという理由で、関税の引き下げあるいは輸入の自由化が阻害されてきた、阻止されてきた、あるいは見送られてきたという経緯があったと私は記憶しております。その点、あらためて今回物価対策という、そういう見地を大きく打ち出して関税の引き下げをはかっているわけであります。この点、どのような御見解をお持ちでしょうか、局長からお願いしたいと思います。
  254. 谷川寛三

    谷川政府委員 先ほど申し上げましたように、今度の改正一つの柱にさしていただいておるわけでありますが、中身を申しますと、一つはケネディラウンドによりますところの関税率の一括引き下げ、これを、ガットの条約によりますと来年の一月に最終税率に達するわけでありますが、これを九カ月早めましてこの四月からやりたいということで、千九百品目余りのものにつきまして改正をしようとしておるわけでございます。  それから、その他といたしましては、バナナ等のくだもの、それから、先ほども御議論がございましたが、マトンとかそういったもの、あるいはフィルムといった生活関連物資を中心にいたしまして関税の引き下げを行なう。  それから、これまた先ほど議論がありましたが、そのほかに輸入自由化を進めていくということにいたしまして、これまた物価対策に非常に効果があると考えられますので、それを関税機能を活用することによってスムーズに積極的に推進していこう、こういうことを考えているわけでございます。  そこで、こういった関税政策、輸入政策が物価にどういう影響を与えるかということになりますと、なかなかこれは予測は困難でございますが、こういう試算をしてみました。まず、ケネディラウンドでございます。いま第四ステージから第五ステージに移るわけでありますが、第五ステージを九カ月早めるわけでございます。その第四ステージと第五ステージの品目、千九百何品目につきまして実効負担率を比較いたしますと、一%負担が下がっておりますので、これから対象品目の輸入価格が平均的に見まして一%程度は下がるはずであるというふうに見込みを立てております。一%であります、ケネディラウンドの繰り上げ実施によりまして。  それから、その他の品目につきましては、たくさんございますのでございますが、おもなものを申し上げますと、これは仮定を立てております。四十五年の一月から十月までの平均の輸入価格をとりまして低下率を試算しておるわけでございますが、たとえばバナナについて申しますと、御案内のようにただいま六〇%の税率を、季節関税をとりまして四月から九月までの間は四割に下げることにいたしました。この期間はバナナが輸入量の大体六割くらい出回っておりますので、そういうことも考えますと二二%程度下がるはずであるというふうな一応の試算でございます。  それから、マトンと馬肉は、先ほどもお話がありましたが、八%の税率無税にいたしましたが、これが七%余りは下がるはずであるというふうに考えております。  それから、カラーフィルムでございますが、一般的に使いますあの巻いたロールフィルムでありますが、これが四〇%から二六%に下がりますので、約一割は——すべて輸入価格で申しておりますが——輸入価格が下がるはずであるというふうな試算を立てております。  非常にむずかしいわけでございまして、バナナにいたしましても通常の需給関係で考えておるわけでございまして、したがって、流通過程でいろいろまたその関係の御当局の御指導が要るとは思いますが、とにかくそれがすぐ価格が下がるかと言われますと、私もお答えを申し上げる自信がありませんが、いま申しましたような計算をいたしますと、輸入価格がそれぞれ下がるはずであるというふうに考えておる次第でございます。
  255. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 今回の法改正の大きな柱として物価対策を掲げていらっしゃるという御答弁のあとで、まことに心もとない御答弁をいただいたわけでございます。どうも消費者物価の引き下げという効果に対する期待はなかなか持ちにくいというような感じがいたしました。さっき私最後に申し上げたのですが、消費者物価引き下げに効果が小さいという理由でこれまでこうした配慮がなされなかった。それが急に昨年来、物価の高騰によって物価対策閣僚協議会あたりでにわかに関税引き下げの問題が大きく浮かび上がってきた。効果が期待できないままに、いわゆる物価対策を何ら政府は行なわないではないかという世論の攻撃をかわすために、あえて今回関税の引き下げというこの法改正を物価対策にひっかけたという印象が強いのでございます。単純に考えれば、輸入制限の物資については、輸入量が増大すれば、国内の供給量が増加する限り、理論的には消費者物価の抑制に効果があるというふうに考えられるわけでございますけれども、いま盛んに局長がバナナとかマトンをあげていらっしゃいましたけれども、全体の消費者物価の引き下げに、あるいは安定にどれだけの効果があるかという点は大いに疑問があるわけでございます。  これに関連をいたしまして、いわゆる輸入ワクの拡大によりまして、輸入の増大量にはそれぞれ各品目国内数量の二%までというワクがはめられているということでございます。こういうワクがありますと、この物価対策の効果についてもおのずから限界が生じてくるのではないか。これが国内の需給にどの程度影響があるか、その点をお伺いしたいと思います。
  256. 谷川寛三

    谷川政府委員 通産省その他からお答えをいたします前に、いまちょっと御質問の中に、とにかく枯れ木も何とかのにぎわいということでやったんじゃないかというお話がありましたが、そうじゃございませんで、とにかく効果につきましては、正直に申しましてこれがどういうふうに価格に響くということを申し上げる自信がありませんが、しかし、理論計算をいたしますと先ほど申しましたように試算ができるのですからこれを、流通機構等のいろいろの監視は必要でございますが、効果あらしめるように関係当局でいろいろくふうをしてやらなければいかぬというふうに思っているわけでございまして、決してとにかく事項をふやすためにやっているのじゃございません。かつ、これは申し上げるまでもないところでございますが、こういった関税措置によりまして、直接関税を下げました物品の輸入価格がいま申しましたように下がるという効果だけじゃございませんで、国産品の価格を抑制するという効果もございますでしょうし、さらに長期的に見てまいりますと、国内産業の合理化によりますところの価格の安定ということも期待できると思います。そういうふうな間接的な効果も私はこの措置によって期待しておるわけでございます。かつまた、先ほど申しましたように関税の引き下げと同時に輸入の自由化も行なわれることでございますから、これによりましてまたいろいろといい効果が出てくるのではないかということを期待しておるわけでございます。ですから、とにかく何でもやらなければいかぬという政府の姿勢をひとつ見ていただきたいと思います。
  257. 室谷文司

    ○室谷説明員 二%の問題につきましては、ただいま先生からお示しになりました数値は、実は昨年の四月に物価関係閣僚協議会で、従来の割り当て品目で二%に達しないものについては、少なくとも国内消費量の二%の割り当てをする方向で検討しようという方針が決定されまして、引き続いて開かれました六月の協議会でこれが最終的な決定を見た次第でございます。ねらいといたしましては、本来物価引き下げにつきましていろいろな対策を積極的にやる一環として輸入政策の積極的な活用をはかろう。その場合に、本来これらの割り当て物資につきましては自由化を行なうということが最も望ましいわけでございますけれども、しかし農産物で二%というワクがここで出てきたわけでございますが、その場合、従来全然割り当てをしてなかった品目品目をはじめとする消費財は自由化の困難なものもかなり多い。そこで輸入ワクの増大を積極的にはかりたい、そういうことを含めまして約二十八品目につきまして、二%に到達していないものにつきまして割り当ての増大をはかるということにいたしたわけでございます。その結果、前年の四十四年の上期の割り当てにつきましては、これらの品目について三千六百万ドルの割り当てがなされておったわけでございますが、この決定に基づきまして四十五年の上期におきましては八千四百万ドル、つまり約一三五%アップ、約二・三倍のワクの増大をはかった次第でございます。品目の例示を申し上げますと、ハム、ソーセージ等の加工肉、ビスケット、チョコレート等の菓子類、マカロニ、スパゲティ、トマトケチャップ、リンゴ、練豆炭等がございます。
  258. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 恐縮ですが、時間があまりございませんので、以下端的にお答えをいただきたいと思います。  このワクの根拠についていま少しわかったわけでございますが、二%に押えるということにつきましては、国内の消費者、それから生産者の利害を当然調整したと思います。そういう点、ひとつはっきりしていただきたいのと、いまお答えをいただきました品目をずっと見ておりますと、これはほとんど農林省関係の所管の品目でございます。農林省いらしておりましたら、どうお考えか一言伺いたいし、これをこえまして三%にいたしますと、通産省所管の革製品とかあるいは繊維が入ってくるわけでございまして、この辺に宮澤通産大臣が提案したといわれているこの二%の輸入のワク、この点何かすっきりしないものを感じるわけでございます。  以上まとめて御答弁をいただきたいと思います。
  259. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 お答えいたします。  農林省といたしましては、昨年四月の物価閣僚協議会におきまして物価対策という観点から二%までの割り当てをするようにという決定がございました。そういう物価対策という観点を入れまして、先ほど御紹介のありましたような国民生活に非常に関係の深いものを中心にいたしまして、私どもの勘定でいきますと二%以下の割り当てしかいたしておりませんでした約二十六品目につきまして割り当てをいたしたわけでございます。この二%の決定は閣僚協議会におきまして物価対策の観点ということできまったわけでございます。この二%の割り当てを今日まで行ないまして目下輸入が行なわれておるわけでございますが、今日までのところ特に国内の農林水産業につきまして支障を来たしておるということはございません。
  260. 室谷文司

    ○室谷説明員 通産省といたしましては、二%のワクをとりあえず一応達成した後におきましても、消費財を中心としまして、つまり今度二%に引き上げた割り当て品目であるといなとを問わず、関係省と相談をいたしまして積極的に輸入ワクの増大をはかってまいりたいと思っておる次第でございます。
  261. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 関税局長にお伺いいたしますが、いずれにいたしましても物価対策という一つのねらいを持って今回こうした関税の引き下げが行なわれるわけでございますけれども、全面的にその効果が及ぶということにはいろいろな阻害要素があると思います。その点をどのように考えていらっしゃるか。  もう一つ、こうした引き下げられた関税分がいわゆる一部の業者に超過利潤として吸収されてしまって、消費者物価には何ら反映しないという疑問が大きく残るわけであります。この点についてはどのように対処をしていかれる御所存か、その点をお伺いいたしたいと思います。
  262. 谷川寛三

    谷川政府委員 私のほうからお答えすることではないかもしれませんが、関税改正を通じまして関係の産業官庁等と緊密な連絡をとっておりますので、とにかく今度やろうとしております物価対策関税措置が末端に及ぶように、いろいろ行政指導等も通じましてやろうじゃないかということで各省間で協議をしております。いろいろな阻害要素が流通段階を中心といたしまして確かにあろうと思います。ですが、いま申しましたようにとにかく模様を見ようという段階でございます。また詳しくは、おいでになっております各省からお話があると思います。そういうふうに私ども覚悟しておる次第でございます。
  263. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 時間が参りましたので、後日また別の委員からお伺いをしてまいりたいと思います。  最後に政務次官にお伺いしたいと思います。いま局長に伺った点は非常に大事な点だろうと思います。せっかく今回物価対策の大きな柱として関税の引き下げを行なった、あるいは輸入の自由化をはかった、あるいはKRの繰り上げ実施を行なった。こうしたことがいろいろな阻害要素によって何ら消費者物価の引き下げには効果を及ぼさない。くどいようですが、一部の業者にそれが吸収されてしまうというようなおそれは、これまでの例をあげるまでもなく当然不安として残るわけなんです。いまの局長の御答弁では、見守っていくというふうにお答えになりました。見守り方にもいろいろあると思いますが、政務次官としては、ひとつ政府を代表して、どのような所信で今後処していかれる御所存か、それをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  264. 中川一郎

    中川政府委員 今度の改正で、物価問題ということを柱にしてやりました。内容としては、御批判もありましたが、それぞれ措置はいたしました。ところが、引き下げはしたが業者の超過利潤になって吸収されたのでは消費者物価対策にならぬじゃないか、御指摘ごもっともだと存じます。そこで、この問題については閣僚会議等でも、物価対策は非常に大事だ、きめこまかくあらゆる問題で総合的にやろうということになっております。そのうちの一環であることは確かでありますし、こうして引き下げをいたしました以上は、これが消費者物価に直接影響するよう、いま局長から話がありましたように、大蔵省が直接やるわけにはまいりませんが、関係各省、こういった姿勢を業界に十分伝えまして、それができるように、見守るだけではなくして、直接ひとつ指導に当たって、効果があがるように万全を期したい、このように思いますので、非常にいい御指摘をいただきまして、これもまた反省の場として、さらに一そうがんばるつもりでございます。
  265. 毛利松平

    毛利委員長 正示君。
  266. 正示啓次郎

    ○正示委員 たいへんおそくまで、各委員のお疲れのところを私にお時間をいただいて恐縮でございます。  まず第一に、私は、大蔵副大臣、副大臣としてお伺いしたいのですが、今度の関税改正は、すでにこちらの専門調査員も調べておられるように、例年に比べるとたいへんな規模でございます。前年が九十億という大きな規模であったかと思うと、今度は三百六十一億円、しかも各委員からすでに御指摘のように、物価問題、公害問題あるいは輸入自由化問題と、いろいろな多目的を掲げて、政策的な関税改正であります。  そこで、きょうは私どものほうの自民党の税制調査会長がここに来ておられるのでありますが、これは各党同じだと思うのでありますが、こういうふうに画期的な関税定率法改正をやる場合になると、これは自民党だけではありません、各党においてもよほど党において——いわゆる内国税については税制調査会を設けてちゃんとやっておるわけでありますから、こういう問題は事前に各党の、自民党においては坊調査会長を長とする税制調査会においてこれは大いに審議すべき問題であったと思うのでありますが、これは大蔵委員長もよく御承知のとおりでありますが、そういうことについて大蔵副大臣から最初にお答えをいただきたい。
  267. 中川一郎

    中川政府委員 内国税につきましては、党の税制調査会と逐一御相談を申し上げてやっていることは事実でありますが、関税につきましては、非常にきめのこまかい問題が、事務的なことも多いというようなこともあり、でき上がりましてからそれぞれ御協議申し上げておったところでありますが、広く意見を聞くということについてはこれはもうやぶさかでございませんので、今後御検討いただける体制といいますか、党のほうとも相談をいたしまして、できるだけ事前に御協議できるように処置してまいりたいというふうに考えております。
  268. 正示啓次郎

    ○正示委員 たいへん時間がありませんので前へ進みます。  私は、きょうはグレープフルーツ問題、これは私の郷里のミカンの非常な問題でございますので、農林省の蚕糸園芸局からおいでいただき、また外務省からも経済局長においでいただいております。それから最後に豚肉の問題にちょっと触れて、皆さんにあまり御迷惑をかけぬように急いでまいりたいと思います。  さて、このグレープフルーツの自由化は、先ほどもすでに御答弁がありましたが、本年末ということになっておったのを四月末に繰り上げようと、こういうふうな閣議決定が行なわれておるようであります。ところが、私どもの党において、いわゆる果樹議員連盟のたびたびの決議等にも明らかなように、またここに私は持ってまいりました二月二十一日付の新聞にも、グレープフルーツ自由化四月末実施は困難か、温州ミカン米輸入拡大に反発、という見出しで重要な記事が出ているわけです。これを要約いたしますると、このグレープフルーツの自由化問題については、自由化する方針はきめておるけれども、その前提としてアメリカへの日本産の温州ミカン等の輸出拡大が前提条件である、こういうことを長谷川農林大臣のときにはっきりと米側に意思表示をしておるわけであります。グレープフルーツの自由化を認めるかわりに、米側は温州ミカンの輸入規制を緩和しなければいかぬということで、当時、日米の共同コミュニケにも、温州ミカンの輸入が拡大されるものと理解してという、いわゆるリザーべーションがついておるわけでございます。そこで、農林省の主管課長から先ほどお話しのようにすでに答弁されて、この点について交渉に当たられ、現在の牛場駐米大使もこの点については十分理解をして行っておられるわけであります。現在アメリカは、五十州のうち、ミカン類を全然産しないアラスカ、ワシントン、オレゴン、アイダホ、モンタナの、いわゆる北部五州だけが日本のミカンを輸入しておるというふうな、たいへん片寄ったやり方をやっております。  そこで実は、先般ニクソン大統領の最高のブレーンの一人であるミスター・ジョン・P・シーアーズ、この方が見えたんです。これはたいへん若い人で、故ケネディ大統領といとこ同士なんですが、一方は民主党で一方は共和党でございますけれども、いずれこの人はニクソン大統領の非常な片腕として、上院にも議席を得よう、こういうことでありますが、その方とざっくばらんに話をしたときに、繊維問題その他を話しましたときに、どうも日本人はアメリカ人やシナ人と違って、あらゆる問題をテーブルの上にざっくばらんに持ち出さない、相手の腹中を勘案して遠慮しいしいものを言うくせがあるんじゃないか、そういうことが今日の日米の経済問題をより以上に複雑にしておると思うから、何か言うことがあったら言ってくれというので、このグレープフルーツの輸入自由化の前提条件を持ち出したわけです。それに対してミスター・シーアーズは、ここにまた二月二十六日付の、いわゆるニクソンの外交教書が出ておりますが、ここに出ておることを向こうから先手を打って、アメリカ日本にたくさんの農産物を買ってもらっておる。——これはいわゆる外交教書の中にはっきり出ておるわけです。米国商品の最大の賢い手が日本である、そして七〇年には日本への輸出が約三五%増加して四十五億ドルになった、その中には十億ドル相当の米国の農産物が含まれておる云々、と書いてありますね。こういうふうに、日本はたいへんに米国の農産物を買っておる国であるから、いまのようなグレープフルーツ問題に関連するミカンの対米輸出、これについてはひとつ胸襟を開いて話し合おう、このことをシーアーズは約束しておるわけでございます。  そこで私はまず第一に農林省に伺いたいのでありますが、この前提条件についていままで交渉された経過、これは蚕糸園芸局ですか、ここからひとつ聞きたい。  それから外務省の経済局長からは、この点についての外交交渉がどういうふうになっておるか。この二点をまずお伺いいたしておきます。
  269. 大場敏彦

    ○大場説明員 ただいま正示先生御指摘のとおり、グレープフルーツの輸入の自由化につきましてはいろいろむずかしい経緯がございまして、四十四年の日米協議の際に、日本側は、米国が日本産温州ミカンの輸入解禁州を実質的に拡大する、そういう了解のもとに日本側としてはグレープフルーツを四十六年十二月末までに自由化する考えであるという意見を表明いたしまして、同時に、自由化する場合にはグレープフルーツに季節関税を設定する考えであることを明らかにした経緯がございます。その後いろいろ内外の情勢の進展にかんがみまして、四十五年に関係閣僚協議会で、グレープフルーツにつきましては、四十六年十二月末までに自由化することに決定された品目につきましては、これを早めて、四十六年四月末を目途にその完遂につとめると法定したわけでございます。こういう経緯がございますが、先生御指摘のとおり、グレープフルーツにつきましては先ほどの日米協議の経緯もございますので、こういったことを念頭に置きながら慎重に処理していきたい、こういうふうに考えております。どういう努力をしたか、こういうことでございますが、たとえば、先ほど申し上げましたが、いろいろ外交チャンネルを通じまして温州ミカンの輸入拡大について米側の理解を求め、それから現実に昨年十一月パームビー米農務次官補が、別の要件ではございましたが、参りました際に、時間をさいてもらって、この問題についての日本側の率直な意見を申し入れしてございます。それからなお本年一月から二月にかけまして、農林省から担当課長を二人アメリカに派遣いたしまして、植物防疫あるいは双方の果実の生産事情、こういったものの実情交換といったための、交渉といいますか、話し合いのための会議を持ったといった経緯もございます。その過程におきまして、いろいろ日本側のかんきつ生産者が抱いております心配、懸念というものをアメリカ側に強く印象づけるという努力はだんだん向こう側もわかってきたように思っております。しかし、向こう側も植物防疫上非常にむずかしい問題があるということをわれわれが理解してやらなければならない点もあろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、私ども事務といたしましても、上司のほうからもこの問題につきまして懸命に努力しろ、こういう御指示をかねてから受けておりますので、この努力は今後続けたいと思っておる次第でございます。
  270. 平原毅

    ○平原政府委員 お答えいたします。  この問題につきまして、牛場大使も非常に懸念しておられます。幸い繊維の問題もある程度民間のほうの話し合いで目鼻がつくような感じでございますし、いま御指摘のとおり、グレープルーツ自由化の時期というものも近まってきておりますので、今後とも牛場大使を督励いたしまして、交渉していただきたい、こう思っております。ただ、御案内のとおり、連邦政府の輸入制限ではなくて、各州検疫法、州の権限に属する事項であるというのが一つの問題でございます。ただ、御指摘のとおりわずかに、五十州のうち北方の五つの州だけがグレープルーツを産出いたしません。日本の自由化によって直接利益を得ます州がまだこれを禁じておる、こういうところが私たちの今後の交渉と申しますか、取引、ネゴシエーションの中心課題になっていく。それからまた、御指摘の五州のほかにも、もし植物検疫法というものの解釈で、わがほうのミカンが入ってもいい、ミカンを産出しない州が先生御存じのようにございます。その中では、たとえ一つの州でございましても非常に大きなマーケットになり得る州がある、こういう点も考えまして、いろいろ重点的に交渉を行なっていく、このように考えております。
  271. 正示啓次郎

    ○正示委員 いろいろ外交チャネルあるいは事務的折衝等をやっていただいておるんですが、先ほど申し上げましたように、アメリカ人自身が、経済問題はもっとざっくばらんに話し合いましょう、政治問題、イデオロギーの問題というようなことはこれはなかなかむずかしいけれども、お互いに経済の問題はざっくばらんに、全部カードをテーブルの上に出し合って話し合いましょうと言っておるのでございますから、どうかその点について農林当局、外務当局が一段の努力をされて、そしてこの前提条件が満たされない限りは——私は関税定率法の原案というものはりっぱなものだと思います。二割、そして季節関税でさらにかさ上げ二割で四割、その辺が一つの案として先ほど御説明のようにけっこうだと思いますが、しかしこの前提条件というのは非常に大事でございますから、これをまず実現するというふうにぜひ御努力を願いたい。  そこで最後に大蔵省の関税局長に伺いますが、そういう努力を行なっても、結局、自由化してみる、そのとき二割、四割でやってみるけれども、たいへんこれが見込み違いで、たいへんグレープフルーツが安く入ってくるということになって、どうしても二割、四割では価格維持、あるいは日本のかんきつの再生産を確保できないということになった場合には、緊急関税を発動するということをしばしば大蔵大臣も言明しております。ここに副大臣おるわけですからこれは間違いないのでございますが、具体的な手続をちょっとここで関税局長から披露していただきたい。
  272. 谷川寛三

    谷川政府委員 こまかく申し上げますと時間がなんでございますから概略申し上げますが、まずこういうことにしてございます。私どもにおきましては常に輸入価格、これはグループフルーツに限りませんが、その輸入価格に関しましてどうなっているかということを、各税関から常時とってにらんでおります。そういうこともいたしておりますが、いま申しましたようにいよいよ安いものが入ってまいりまして、ハッサク、ナツミカンだけでなく、かんきつ類全体に値下がりによる甚大な影響が出てきた、それによりましてさっき申しました総合農政の展開も困難になってきたという事態が生じましたら、各省で協議いたしまして、さっそく関税審議会におはかりをいたしまして、これは特別の部会がございますので、そうしてどういうふうにやるか、具体的な事項につきまして政令を出しまして、そして関税定率法緊急関税の規定に従いまして、通常の関税率のほかに、日本のハッサク、ナツミカンの価格から通常の関税率を引きましたものをプラスいたしまして緊急関税をかけるということをしたいというふうに思っております。
  273. 正示啓次郎

    ○正示委員 最後に畜産当局にお尋ねをいたしますが、先ほどもちょっと出ておりましたが、いわゆる豚肉に対する差額関税、こういうことが、一〇%または差額関税かのいずれか高いほうという案が出てさるわけでありますが、このいわゆる輸入基準価格というものが、全国農業協同組合で農協畜産対策というようなことで非常に問題になっております。そこでわれわれも、この点については非常にデリケートな問題でありまして、先ほどもちょっと御質問がありましたが、いわゆるへそ価格、変なことばでございますが、こういうことを言っておるようであります。このへそ価格と上位価格というものが、畜産振興事業団の関係で——畜安法によってありますが、これは一体どういうことになるのか。豚肉の再生産がなければこれは実は消費者自身が困るわけです。そこで消費者の利益考えつつ、しかし豚肉の再生産を確保するということが必要だと思うのでありますが、この輸入基準価格というものはあなた方はへそ価格を考えておるんじゃなくて、いわゆるまた上位価格でないかもしれない。しからば再生産を確保する価格だと思うのでありますけれども、一体どういう価格を考えておるかということを最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  274. 増田久

    ○増田(久)政府委員 いわゆるへそ価格でございますが、これは、畜産物価格安定法に基づきまして豚肉の価格を算定するわけでございますが、その場合にいわゆる需給均衡価格ということで、過去四年間の市場価格を基準として、その他のその間における生産費の動向等を考慮して一つの価格をきめまして、それを上下に開く、標準偏差で開くわけでありますが、その開く際の基準になる価格がいわゆるへそ価格であります。これは現在三百八十三円でございますが、生産費はこれよりやや低いところでございまして、この価格で支持されれば、せきとめられれば畜産の豚肉の再生産は十分可能である。しかもこれから下がりますれば当然事業団の買い出動ということになりますので、畜産物価格安定法というものが存続いたします限り、豚肉の再生産は必ず確実に可能である、かように考えております。
  275. 正示啓次郎

    ○正示委員 畜産局長、問題はその業者、いわば豚を飼う人たち、こういう人たちを納得させなければいかぬと思うのですね。今日のところまだそこまでいっていないと思いますので、ひとつ最後の御努力を、これは倉石農林大臣その他政府関係者、私もその一人でありますが、みなが、ぜひ再生産を確保して消費者に迷惑をかけないようにやっていかないと、せっかく苦労した今度の関税定率法改正というものは生きてこない。だから今後の努力を要望いたしまして私の質問を終わります。どうもありがとうございました。      ————◇—————
  276. 毛利松平

    毛利委員長 この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、来たる三月十日参考人の出席を求め、その意見を聴取することとし、参考人の人選等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来たる三月九日火曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会