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広瀬(秀)
委員 私は、
日本社会党、公明党、共産党を代表して、ただいま議題となりました
日本輸出入銀行法による
貸付金の利息の特例に関する
法律案に対し、反対討論をいたします。
本
法律案は、インドネシアにおけるいわゆるスカルノ債務の累積による履行困難な情勢に対処して、長期にわたる債務救済
措置を講じ、その履行の円滑化をはかるために、
輸出入銀行がインドネシア中央銀行に対する
貸付金債務の繰り延べないしリファイナンス分について、当該
貸付金にかかる債権については輸銀法第十九条の特例を設け、利息を徴しないことができることとしようとするものであります。
もちろん、本
法律案の前提に、いわゆるアプス案を中心にしたインドネシア債権国
会議において、無利子三十年償還という方式による債務救済
措置をとることが関係国間で
合意されたことをわれわれも
承知しておるのであります。したがって、国際的経済協力の一環として行なわれる債務救済の
実施を可能にするため、輸銀法の
貸付金利息に関する規定に対して無利子の特例を設け、特別勘定を設けてこれが経理を行ない、その業務に要する
資金の財源として
政府資金の無利子貸し付けの道を開こうとする本法の趣旨については、それなりの理解をすることにやぶさかではないのでございます。
しかしながら、われわれは次に述べる理由によって、あえて反対しなければならないのであります。
その第一は、
日本輸出入銀行が全額
政府出資の中長期
輸出入金融機関として発足をした、国民の税金、預金によって運営される
政府機関であるにもかかわらず、その
融資態度は国民の願望と乖離し、一部の
国内大
企業にのみ奉仕するものであり、さらに反共親米国家向けの
融資に偏重している点であります。すなわち、輸銀
融資の貸し付け残高約一兆三千余億円のらち、造船、機械、大手商社など十社の貸し付け残高だけで約八千三百七十六億円にのぼる現状であります。国別では
台湾、−
韓国、インドネシア、タイ等、いわゆる反共国家群への集中
融資が行なわれ、しかも今日世界の関心の的となっている、現にインドシナ半島における戦争当事国である反共国家、南ベトナム、カンボジアなどに向けての
日本企業の
進出に特段の力をかし、またはその方向に進もうとしていることはまことに遺憾であり、不当な態度といわなければなりません。
第二に、今回のごとく特別立法までしてインドネシア債務救済をせねばならなくなったいわゆるスカルノ債務の累積、裏返せばインドネシアに対する米ソのそれぞれに政治
目的を持つ援助競争の中で、米国のしり馬に乗って無計画、無責任、無秩序な商品援助、設備投資援助等に狂奔したわが国大
企業の態度を、今日においても追認するわけにはまいらないのであります。しかもこの間、いまはこれをあばき立てるすべもなくなりましたけれども、黒い霧がつきまとっていたことをわれわれは忘れることができないのであります。しかもそのしりぬぐいを、国民の税金や預金など、国民大衆の
資金をもって業務を運営している輸銀が行なうことは、大
企業中心のエコノミックアニマル的な一獲千金の危険なかけの失敗のツケを国民に負担きせることであります。一方、大
企業は
輸出代金保険によってほとんどその失敗による損害を補償されており、
あとは
政府がしかるべくしりぬぐいをしてくれるだろうというのでは、国民道義の点から見てもこれまた国民の容認し得ざるところであります。
第三に、
政府及び輸銀は、今日に至るもなお対
中国向けプラント
輸出ないし重機械類、船舶、航空機などの
輸出に対する延べ払い金融に対して積極姿勢を示していないのでありまして、この点はまことに重大な問題点であります。大蔵大臣は、本
法案審議の過程において本
委員会において、海外経済協力援助にあたって政治体制の相違によって差別取り扱いをしない旨の前向きの発言をされておりますが、同文同種の八億の人口を持つ一衣帯水の隣国
中国に対して、国交回復への積極的努力は何
一つ行なわないで、国交未回復であり、
中国が社会主義体制の国であることを理由に輸銀使用を拒否しておるのであります。対
中国友好への実績積み上げ、国交回復への努力の積み重ねの
一つとして、いまこそ
中国向け輸銀延べ払い
融資を積極的に踏み切って行ならべきであるにもかかわらず、いまだに遅疑逡巡をしておることは真の国益にかなう道ではありません。われわれの大きな不満はここにあるのであります。
以上一反対理由を申し述べましたが、
政府はすべからく、われわれ野党の本
法案反対の理由に耳を傾け、輸銀のあり方について再思三省し、国民の理解と共感を得られる輸銀業務の姿勢を正す努力をされるように強く要求をいたしまして、私の反対討論を終わります。