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1971-02-19 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十九日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村武千代君       佐伯 宗義君    坂元 親男君       田村  元君    高橋清一郎君       中島源太郎君    中村 寅太君       原田  憲君    福田 繁芳君       坊  秀男君    松本 十郎君       村上信二郎君    森  美秀君       吉田  実君    阿部 助哉君       佐藤 観樹君    平林  剛君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       古川 雅司君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      吉田太郎一君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         農林省農地局長 岩本 道夫君         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君  委員外出席者         日本輸出入銀行         総裁      石田  正君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   地崎宇三郎君     吉田  実君     ————————————— 二月十八日  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  六号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第六一号) 同月十七日  零細企業税制改正に関する請願佐藤観樹君  紹介)(第六五七号)  同(横山利秋紹介)(第六五八号)  同(佐藤観樹紹介)(第七四六号)  所得税等大幅減税に関する請願田中武夫君  紹介)(第六九二号)  元朝鮮、台湾両銀行の在外預金返済に関する請  願(佐藤観樹紹介)(第七四七号)  同(中嶋英夫紹介)(第七四八号)  同(平林剛紹介)(第七四九号)  映画等入場税減免に関する請願松山千惠子  君紹介)(第七五〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  預金保険法案内閣提出第一三号)  貸付信託法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)  日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等  に関する法律案内閣提出第一五号)  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一六号)  国有財産に関する件(国有農地の払下げ問題)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  国有財産に関する件について調査を進めます。  国有農地の払い下げ問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 最初に、法制局長官に少しお伺いをいたしたいと思います。  憲法第四十一条の、「國會は、國権最高機關であって、國の唯一立法機關である。」、これは具体的にはどういうことをさしておるのか。まず、憲法四十一条の長官解釈をひとつ伺いたいと思います。
  4. 高辻正巳

    高辻政府委員 「國會は、國権最高機関であって、國の唯一立法機關である。」、これが三権分立機関としての国会の一番の特性をあらわしているということでございますが、国権と申しますのは、普通、国の意思力と解されておりますから、国の意思力最高機関であるということが、文字としての解釈になろうかと思います。  ところで、最高機関といわれている中の最高性とは一体何だというような御質問主眼点だろうと思いますが、これはいろいろな学者がいろいろ論じておりますけれども、おしなべていえますことは、学者によりますと政治的な美称であるというようなことを言う人もおりますが、ともかくも、御承知のような憲法上の構成としては、立法司法行政という三権に分立しておる。しかしそのうちで国会というものは、その構成国会議員で組織され、その国会議員というのは国民の離任という点において一番密着をしておる、そういう人たちの集まっている、そういう人たちによって構成される国会であるから、やはり国の機関においては最高とみなして考えてよろしいものであろう、一番国民に身近なものであると考えてよいだろうというような、極端にいえば政治的美称になるかもしれませんが、そういう気持ちをあらわした条項であるというのが一般的な考えとしてあるようでございます。というのは、法律的にはしからばどうかということがございましょうが、法律的には、御承知のように、国会といえども、その一院である衆議院は、内閣の助言と承認による天皇の国事行為として解散されることもありますし、それからまた国会の制定した法律最高裁判所において違憲審査を受けることもありますから、三権分立上の、憲法上の抑制均衡関係は別途に当然存在し得るというふうに考えられるものだと思います。
  5. 堀昌雄

    堀委員 その次に憲法七十六条「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。特別裁判所は、これを設置することができない。行政機關は、終審として裁判を行ふことができない。すべて裁判官は、その良心に從ひ獨立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」、こうありますね。ですから、要するに最高裁判所というものの範囲は、もちろん違憲であると判決はできるわけでありますけれども、同時に、しかしその範囲はやはり法律をもとにしなければならない、こういう規定があると思うのでありますが、ここで私が少し問題にしたいことは、最高裁判所で、瑕疵があるという判断をある法令についてしたといたします。それは少なくとも現在の日本立法の過程は、主として行政府法律案国会提出をして、やや国会受け身の形で、この行政府の出してきた法律案をここで可決して法律にするという実は構成になっておるわけですね、実態的に見れば。その点は、私は本来のこの憲法が差し示しておる方向とはやや違いがあるのではないのか。この憲法意味しておることは、国権最高機関国会であり、その国会議員国民の選択によって出てきたもので、ここにその権力が信託をされておる、こういう考え方であるが、本来的には、法律は、国会で問題が提起をされ、議員の中から提起をされ、そうして議員によって定められるということがこの憲法の底を流れておる考え方ではないのか。ただ今日までそれがやや行政優位かのような形になって、議員のほうにおける努力がやや不十分であったかもわかりませんけれども、その結果そういう提案行政府が一手に扱ってきたかのような形態になっておることは、私は必ずしもこの憲法期待をしておることと同一ではないような感じがするのでありますが、この点についての考え方はどうでしょうか。
  6. 高辻正巳

    高辻政府委員 こまかい点は別といたしまして、原則的な考え方としては私は全く同感に思います。いまのような措置そのもの憲法に違反するとかというようなことまでおっしゃっているわけではないと思いますが、そういうようなことの運び方としてはもっと別途に、この考え方でいい面もあるのではないかというような点から申しますと、私は同感を表していい分が相当あると思います。
  7. 堀昌雄

    堀委員 もちろん私ども国会として、それはたとえ提案者政府であろうと議員であろうと、これを可決したことにおける責任はあげて私は国会にあると思います。国会にあると思いますが、たまたま今日の日本国会の状態が、ややもすればそういう提案権行政府にまかせて、議員みずからがいろいろな諸般の情勢判断をしながら適時適法をここにつくるという問題を怠っておった点については、これはわれわれ議員の側に問題がありますけれども、実態としてはそういう行政府提案をやや受け身の形で受け取るという習慣が、私は実は今度のこの問題の非常に中心的な問題ではないかと考えておるわけであります。  そこでもう一つ伺っておきたいことは、憲法十四条で「法の下に平等」である、この「法」というのはそのときにおける法であって、過去におけるいろいろな法と今日の法の間には、立法者意思によって、客観的な情勢変化に応じて相違のある立法が行なわれることは私は当然だと思うのです。そうすると、その前の法律といまの法律と、ここでいう法律という「法」は一体どの法を憲法期待をしたのか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。
  8. 高辻正巳

    高辻政府委員 この「法の下に平等」であるという憲法十四条の規定解釈といたしましても、いまおっしゃったような点に関係があると思いますが、それは解釈上の問題であるのか、立法上の指針としての問題があるのかというような問題がございます。われわれはやはり立法当局としましては、現にそういう考え方は現存しておりますが、立法上の指針であるべきだという考えで私ども立法の衝に当たっておるつもりでございます。しかし、おっしゃいますように、だからといって旧来の制度、これは社会進運と同時に変わっていくことは当然でありますし、社会進運経済の状況の変動に応じて、その場その場にふさわしい公共の秩序の要請からいって、法の進展も同時にあるわけで、したがって、きわめて形式的に見れば、従前とは違ったものがあるからといって法の平等に違反するということには必ずしもならない。ということは、これは税制改正なんかで常にわれわれが見るところでございまして、さらに御質疑があるかもしれませんが、大体の考え方としてはそれでいいのではないかと考えます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとことばじりをとらえるようで失礼でありますけれども、いま長官がわれわれ立法当局と、こうおっしゃったのですが、私はこれは立法事務をつかさどる当局ではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  10. 高辻正巳

    高辻政府委員 まことに適切な御指摘でございます。もちろん立法事務に関連をしている意味立法事務の一環に介在をしておる、これが適当かどうか別といたしまして、われわれはともかくも立法事務に当たっておる、立案に当たっておる、こういうのが正確な言い方でございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 実は私はそこで、正確でない表現をふだん使っておいでになるとしたら、これは重大な誤解を与えると思うのですね。立法は少なくともこれは国会の私どもがすることでありまして、皆さんに対し、立法技術といいますか、こういういろいろな条項についてはわれわれは残念ながら不勉強でもあるし、周知をいたしておらないから、皆さん方事務当局の方の御意見を聞くことなくして——これは衆議院法制局も同様でありますけれども、そういう協力を得たいということで、おそらく政府もその意味でお願いをしておることであろうと思いますので、今後はひとつこの点については、字句の解釈ではなくて、内容にかかわる問題でございますので、正確にひとつ御認識をいただき、御発言をいただきたいと思います。  そこで私はいま、今度の問題になっております点をこう考えてみまして、一審、二審及び最高裁判決を全部読んでみまして、確かに私も最高裁判決は正当であると実は考えるわけであります。正当であるのでありますが、それは、少なくとも現在の法律というものが現在これでいいのかどうかという点については、実はわれわれがほんとうはもっと勉強しておれば、最高裁指摘があるまでもなく、立法府が当然考えておかなければならぬことであると思うのでありますけれども、私ども必ずしも農地法というのが当委員会所管事項でもありませんから、われわれとしても不勉強であったために今日こういう事態を招いたことはまことに遺憾であると考えております。  そこでこの問題の中身について少し話を進めたいと思います。記録の関係もありますから、きょうはとりあえず最高裁の今回の判決についてのものを多少読み上げながら実は御質問をいたしたいと思います。    主 文  原判決中被上告人愛知県知事に対する農地売渡処分取消請求および被上告人農林大臣に対する土地売払義務確認請求に関する部分を破棄し、第一審判決右部分を取り消す。右部分につき本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。  原判決中被上告人農林大臣に対する訴願裁決取消請求に関する部分に対する上告人らの上告を却下する。前項に関する上告費用上告人らの負担とする。こういう主文がつきまして、次に理由が掲げられておるのであります。    理 由   上告人らの上告理由第二点について   自作農創設特別措置法(以下、自創法という。)三条により国から買収処分を受けた農地の旧所有者またはその一般承継人(以下、旧所有者という。)が右農地につき都道府県知事のした農地法(以下、法という。)三六条による売渡処分取消しを求めることができるためには、右売渡処分が取り消され、当該土地所有権が国に復帰するならば、農林大臣が法八〇条によって旧所有者当該土地を売り払わなければならない場合であることを要する。けだし、旧所有者にそのような法律上の利益が認められなければ、行政事件訴訟法第九条により旧所有者右取消しについて原告としての適格を認めることができないからである。 これはまさに私はそのとおりだと思います。その次に、   都道府県知事が自創法三条により買収した農地については法八〇条の適用があり(自創法三条、四六条、農地法施行法五条、法九条、七八条一項参照)、法八〇条一項は、農林大臣において買収農地政令の定めるところにより自作農創設または土地農業上の利用増進目的に供しないこと(以下、自作農創設等目的に供しないことという。)を相当と認めたときは、これを売り払い、またはその所管換もしくは所属替をすることができる旨を定め、同条二項は、右の場合には農林大臣当該土地を旧所有者に売り払わなければならない旨を定め、しかも、農地法施行令(以下、令という。)一六条四号は、買収農地公用公共用または国民生活の安定上必要な施設の用に供する(以下、公用等目的に供するという。)緊急の必要があり、かつ、その用に供されることが確実な土地であるときにかぎり農林大臣において法八〇条一項の認定をすることができる旨を定めている。   私有財産収用が正当な補償のもとに行なわれた場合においてその後にいたり収用目的が消滅したとしても、法律上当然に、これを被収用者に返還しなければならないものではない。しかし、収用が行なわれた後当該収用物件につきその収用目的となった公共の用に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、なお、国にこれを保有させ、その処置を原則として国の裁量にまかせるべきであるとする合理的理由はない。したがって、このような場合には、被収用者にこれを回復する権利を保障する措置をとることが立法政策上当を得たものというべく、法八〇条の買収農地売払制度も右の趣旨で設けられたものと解すべきである。 ここまでは私は全くそういうふうに理解をしておりますが、法制局はどう理解をしておりますか。
  12. 高辻正巳

    高辻政府委員 判決を見まして、私もこの点について別にふしぎにも思いませんし、異論はございません。それなのにどうしてということがあるかもしれませんが、それはよろしゅうございますか。あとで御質疑があればお答えいたします。
  13. 堀昌雄

    堀委員 次に、   もつとも、法八〇条一項には、農林大臣がその管理する土地を「売り払うことができる。」とあるので、同項は単に農林大臣に右売払いの権限を与えたにとどまり、売払いの義務を負わせていないかの観があるが、同条二項は農林大臣の管理する土地買収農地であるときは、「売り払わなければならない。」と定めているのであるから、右両規定と前示売払制度趣旨とを合わせ考えると、当該土地買収農地であるかぎり、これを自作農創設等目的に供しないことが相当であるという事実が客観的に存すれば、農林大臣は内部的にその認定を行ない旧所有者に売り払わなければならないという拘束を受け、旧所有者農林大臣に対し買受けに応ずべきことを求める権利を有するものであり、令一七条により農林大臣が旧所有者に対してする法八〇条一項の認定の通知は、旧所有者右買受請求権を有する旨の告知にほかならないものと解するのが相当である。 こうあるわけですね。ちょっとここまでいきましょう。  そこで、ここで問題提起をされておる八十条一項は「売り払うことができる。」二項は「売り払わなければならない。」こう書いたわけですね。これは今度は立法技術上の問題でありますが、一体どちらがどうなっておるのかということは、この指摘のとおりに、見ようによっては、確かにこれは「売り払わなければならない。」ということのほうが包括的に前段を受けておるように受け取れる。それならなぜ前段は「売り払うことができる。」と書き、後段は「売り払わなければならない。」と書いたのか。これは政府提案でありますから、これについての責任法制局にあると思うのでありますが、一体これは何を書こうとしたのか、ここのところをはっきりしてもらいたい。
  14. 高辻正巳

    高辻政府委員 私もいまおっしゃった中で、法制局立案の衝に当たりましたわけですから、むろん立案の衝に当たっての考え方はございます。しかし、立法したのはまさに、先ほど仰せになりましたように国会でございますが、だから国会責任があるとは申せません。立案事務を担当した者として私は申し上げますが……(堀委員責任の問題ではない」と呼ぶ)法制局責任としてと申されましたから、そういうことを明らかにして申し上げたいと思います。  それについては農地法八十条をごらんいただきたいのですが、これも便宜読みます。農地法第八十条でありますが、「農林大臣は、第七十八条第一項の規定により管理する土地立木工作物又は権利について、政令で定めるところにより、自作農創設又は土地農業上の利用増進目的に供しないことを相当と認めたときは、省令で定めるところにより、これを売り払い、又はその所管換若しくは所属替をすることができる。」第二項に「農林大臣は、前項規定により売り払い、又は所管換若しくは所属替をすることができる土地立木工作物又は権利が第九条、第十四条又は第四十四条の規定により買収したものであるときは、政令で定める場合を除き、その土地立木工作物又は権利を、その買収前の所有者又はその一般承継人に売り払わなければならない。」前項規定により売り払うことができる土地がそういうものであるときには、旧所有者に売り払わなければならないと規定してあるのです。第二項は当然第一項を受けておる。第一項の「することができる。」というのは、政令で定めるところにより相当と認めたときはという、この政令というものがありますために、実は正直に申し上げまして、この政令でもって限定ができるものと心得ておったわけです。それで論理が一貫しないわけではなく、もしそういうことであれば、それで売り払うことができるものについては旧所有者に売り払わなければならぬというのが第二項であるというふうに考えておったのが、実は率直な御説明でございます。
  15. 堀昌雄

    堀委員 わかりました。要するにそのことは、私は法律政令省令の書き方がややちょっと逆になっておる点があるのじゃないかと思うのですね。要するにここで書かれておりますことは、八十条一項ですが、規定により管理する工作物または権利政令で定めるところにより何々と認めたときは「省令で定めるところにより、これを売り払い、又はその所管換若しくは所属替をすることができる。」ここが実は、現在の立法技術が数多くのものを省令政令委任をして、法律そのものの中に明確な規定を置いていない。だから法律々審議する場合に、現在の各法律みんなそうでありますけれども、こういう政令委任しておきながら政令あとでつくるという段階がしばしば行なわれているわけですね。ここのところに私は実は非常に立法上の問題があると思うのです。指摘をされておることは、なるほど政令十六条第四号は間違っている、こういうふうにやられると、そこを担保として実はこの法律はできておるのであって、それがなければこの法律は大体、体をなさぬと私は思うのですよ。あなた方のほうではそこに防御線を引いておいて、そうしてこの法律が書かれておる。法律防御線が引かれておってあと政令があるなら話はわかるのですが、政令省令防御線を引いて、それに基づいて法律が成り立つ法律構成というところに今度の問題を複雑にしている重要な案件があると私は思うのですが、その点はいかがでしょう。
  16. 高辻正巳

    高辻政府委員 概して申し上げて、大体実は異論はございません。ただ省令なり政令、特に政令が——法制的には政令以上の段階で実は政策立案をすることがございまして、特に政令に関心が深い。そういう意味では省令についてもむろんそうでありますけれども、私ども立法事務に当たる態度としては、極力政令委任するというようなものは避けるべきであるというのが基本の考え方なんです。ただ何でもかんでも法律に書くことができない場合がどうしても生じてくる。できはするけれども事態変遷に応じて、社会的な事情の変遷に応じてこれは変えていかなければならぬ合理的な理由のあるものもある。そういうものについてはやはり政令でおまかせいただくのも、むろん国会がおきめになることでありますけれども、ふさわしいものがあっていいのではないかという考え方はむろん持っております。しかしそういう理由もなしに政令委任するようなことは避けるべきである、これは全く同感でございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いまのは一般論ですけれども、今度は当該案件八十条に関してでありますが、もう少し判決を読み上げることにいたします。   そうして、法八〇条による買収農地の旧所有者に対する売払いは、すでに、当該土地につき自作農創設等の用に供するという公共的目的が消滅しているわけであるから、一般国有財産の払下げと同様、私法上の行為というべきである。   ところで、令二八条四号が、前記のように、買収農地のうち法八〇条一項の認定対象となるべき土地買収後新たに生じた公用等目的に供する緊急の必要があり、かつ、その用に供されることが確実なものに制限していることは、その規定上明らかである。その趣旨は、買収目的を重視し、その目的に優先する公用等目的に供する緊急の必要があり、かつ、その用に供されることが確実な場合にかぎり売り払うべきこととしたものと考えられる。同項は、その規定の体裁からみて、売払いの対象を定める基準を政令委任しているものと解されるが、委任範囲にはおのずから限度があり、明らかに法が売払いの対象として予定しているものを除外することは、前記法八〇条に基づく売払制度趣旨に照らし、許されないところであるといわなければならない。 ここらが問題なのです。  農地改革のための臨時立法であった自創法とは異なり、法は、恒久立法であるから、同条による売払いの要件も、当然、長期にわたる社会経済状勢変化にも対処できるものとして規定されているはずのものである。」 こうなっておるわけですね。一体この八十条は最高裁判所指摘のように、いまの「当然、長期にわたる社会経済状勢変化にも対処できるものとして」規定されておるのですか。私はされておらぬと思うのだ、実は。ここに私は非常に大きな問題点があると思うのだが、立法技術者の側としてはどういうふうに考えて——これは恒久立法である、そのとおりです。臨時立法ではありません。この恒久立法がこのように裁判所の指摘があるまでは「当然、長期にわたる社会経済状勢変化にも対処できるものとして」規定されているのかどうか。私は実はそう思わない。その点、立法技術上、あなた方はこの法案を提案したときにはそういうことは予想していたのか、していなかったのか、この点を明らかにしてください。
  18. 高辻正巳

    高辻政府委員 農地法立案当時というのはともかく昭和二十七年でございますから、私ども実はこの判決をいただきましてから、当時の事情というものを調べようとしたわけです。しかし、これは逃ば口上で決してございません、事実でございますが、当時参与した参事官も、当時参与した部長も、当時参与した、次長はまだなかったかもしれませんけれども長官も、現にこの法制局にはいずれもおられません、ということで、資料等も必ずしも十分に残っておりませんために、そうこまかい問題になりますと、実はよくわからないというのが正直なところでございます。ただこの自創法、これは特別措置法でございましたから、それが農地法というものにかわりましたことは、臨時立法でなくなったということまでは言えそうでありますが、いまの御指摘の点につきましては、私ども最高裁判所判断というものがそうであるということを伺って承知するというにとどめるほかはないと思います。実態との関連における認識というものは、こういわれていた、これで違うではないかということは、あえて私から申し上げることは差し控えたいと思います。
  19. 堀昌雄

    堀委員 当時の立法技術に携わった方がおられない。これは古いことですから当然でありますが、ちょっとそこでお伺いをしたいのは、政府提案にかかわる法律案は、一ぺん成立をしたら、内閣法制局はその後の、いまのような社会経済情勢変化というものがある中で、その変化に対応できておるかどうかはトレースはしておるのでしょうか、してないのでしょうか。私は、やはり政府として出した法案ですから——もちろん国会のわれわれがきめたということについてはわれわれ責任がありますけれども、しかし少なくともその法律政府提案であれば、立法技術上の問題——これはやや実は立法技術上の問題に非常に関係があるわけです、ここの部分については、当然社会情勢変化が急激に起こった時点においては、そういう二十八年当時は予測せざることが起きているならば、当然その法律の要件の中には、当時予測せざるものを書き加えなければ現在における法律として相当ではないということになり得るものになるのではないかと私は考えるわけですが、これはこの法律に限らず、一般的な法律について、政府提案法律がそういう時代に即応できておるかどうかを内閣法制局はトレースしておるのですか、どうでしょうか。
  20. 高辻正巳

    高辻政府委員 内閣法制局の基本的な性格にも関係があると思います。実際上法制局はいろいろつべこべものを言いまして、役所の中ではきらわれもののほうに入ると思いますが、しかしいずれにしても明らかであることは、政策の立案は何としても政策大臣がやるということです。それで私どもは、その点は厳として身を持しておるということははっきり申し上げられると思います。ただ政策の観点でものを言うべきこと、これは幾らも申します。立案の過程においてこうしたらどうだああしたらどうだということは申しますけれども、これはあくまでも参考にしか申しません。これが明らかに責任をとるのは政策大臣であって、法制局長官ではないという気が——これは逃げるわけではむろんありません。それはやっぱり責任の所在を明らかにする必要があるだろう、そういうことで、われわれが不当な影響を与えることは避けるべきであるという考えが一方に断固としてございます。しかし、それならば何もしてないかと言われれば、やはりわれわれは法律を見ているわけでございますから、これについてはどうだああだというようなことは申しますが、それはわれわれの職責として言うよりも——職責といいますか、職責に近接するものではありますけれども、中心的なものであるとは必ずしも考えておらない。要するに政府法律上あやまちをおかすことなく行政を執行することができるようにするということは、今度の政令でも明らかでございます。そういう面は非常に強いものがあります。
  21. 堀昌雄

    堀委員 わかりました。そうすると、ここに書かれておる「長期にわたる社会経済状勢の分化」に対応できるかできないかという問題については、農林大臣がそれを政策的に判断をし、適宜適切に法律改正提案しておる。あるいは、すべて農林大臣責任に帰するわけにいきません。国会ももちろんこれを議決した責任がありますけれども、私はそういうところに主たる原因がある。われわれも従たる原因の参加者であることを認めながら、主たる原因がある。その点はこういうことになるわけですね。
  22. 高辻正巳

    高辻政府委員 こういう問題になりますと、一農林大臣といっていいのかどうか、その辺が問題だと私は思います。それは、国会のわれわれもとおっしゃった点からいってもそうですが、概して言って、法制局が全面的に責任をとってどうだ——のがれるために言っているわけじゃありませんが、われわれの使命からいって、そういうものではなかろうということを申し上げておるわけです。
  23. 堀昌雄

    堀委員 いま私が言っているのは、もちろんわれわれも従たる責任がありますけれども、主たる責任農林大臣、あわせて内閣総理大臣に責任がある。政府提案した法律ですからね。われわれが提案した法律については、問題があればそれはすべてわれわれの側の責任であるけれども政府提案して、いま最高裁判所からこのようにいわれて初めてなるほどそうだったななどというようなことを感じることは——私はやはり提案者であった政府が、自分が提案して立法化された法律については、常に情勢判断しながら、必要に応じてその法律改正を少なくとも国会提案する責任があってしかるべきじゃないかと思います。その点はそうじゃないですか。
  24. 高辻正巳

    高辻政府委員 それには残念ながら異論がございます。なるほど政府行政の執行に当たる行政権を持っておりますから、行政権の執行に当たるわけでありますし、またいままでお話がありましたように、その政府の政策を実施するために、法律案立案をして国会提出するということもむろんあります。しかし同時に、先ほど堀先生がおっしゃいましたように、立法権はまさに国会に属することでありますから、また国権最高機関でありますから、従たる責任とおっしゃいましたけれども、実際上のあれは別として、法律上の問題としては同じではないか、こう考えます。
  25. 堀昌雄

    堀委員 ここで責任がどっちに大きいか少ないかを議論するつもりはないのですけれども、私がいま言いたいことは、国会といえども政府が出したすべての法案を現状に即してトレースすることは事実上不可能ですね。そうすれば提案者が少なくともトレースをして、時宜に応じた提案をするのが相当であって、やはりそれは、いまの理屈の話ではなくて、実態との関連から見てもそれは相当な問題である、責任を追及するという問題ではなくて。ということは、今後このことはまだ各種の立法の中に起きる可能性が十分にある。いま直ちに六法全書を全部読んで、これをどうするという能力はわれわれにはありません。少なくとも当該所管の行政府が、自分たちの所管をしておる行政内容についての法律を、いまここで最高裁判所からこのような指摘を受けて初めてそうであったかと、われわれも思い、政府も思うなどということは問題があるのじゃないですか。これは政治的な問題でありますから、いまあなたに伺ってもしようがない。総理なり農林大臣との論争にゆだねることにして次にいきます。   したがつて、農地買収目的に優先する公用  等の目的に供する緊急の必要があり、かつ、そ  の用に供されることが確実であるという場合で  はなくても、当該買収農地自体、社会的、経済  的にみて、すでにその農地としての現況を将来  にわたって維持すべき意義を失い、近く農地以  外のものとすることを相当とするもの(法七条  一項四号参照)として、買収目的である自作  農の創設等目的に供しないことを相当とする  状況にあるといいうるものが生ずるであろうこ  とは、当然に予測されるところであり、法八〇  条は、もとよりこのような買収農地についても  旧所有者への売払いを義務付けているものと解  されなければならないのである。こういうように、きわめて安易にこれまで行なわれてきたけれども、「すでにその農地としての現況を将来にわたって維持すべき意義を失い、近く農地以外のものとすることを相当とするものとして、買収目的である自作農創設等目的に供しないことを相当とする状況にあるといいうるものが生ずるであろうことは、当然に予測されるところ」であった、こう判断しているわけですね。しかし事実は、ここで予測していないじゃないですか、現在の法律は。そこはどうなのでしょうか。いまここで指摘されたように、ともかく農地としてずっと使えるのだということで一応この法律は書かれて、ただしそうでない、例外規定として設けたものの中に十六条四号があるわけでしょう。ですから、少なくともこの法律考え方としては、将来はここで指摘されたように、「買収目的である自作農創設等目的に供しないことを相当とする状況にあるといいうるものが生ずる」、こう考えておったのは間違いないのでしょう。
  26. 高辻正巳

    高辻政府委員 それはそのとおりであろうと思います。そのために八十条があり、そのために施行令があり、施行令は八十条の解釈を、さっき申し上げたような解釈のもとではありましたが、そういう余地があればこそそういう規定がある、当然のことだと思います。
  27. 堀昌雄

    堀委員 そこで、そういうことで予測されておるのならば、いろいろな、まず公共の問題とかという政令以前の時点の問題として、それにはいかに対処するかという政策が当然あってしかるべきじゃなかったのか。だんだんそういうものを排除しなければならぬ。それを少なくとも農林省当局は十六条四号に乗りかかって、ここに防波堤があるから、そのものの処置を前向きに考える必要はない、こういう判断に立っておったから、今日この十六条四号が残っておったと思うのですね、あなたのほうで法律的に見ると。そうじゃないですか。まあそれは政策部分が少し入るから農林省に聞きましょう。  それじゃ農林省は、いまここのように予想しておる、予想しておるけれども、それを無条件にどんどん八十条で売り払うということにはなっておりませんよ、十六条四号が前段にあって、これをフィルターにして通ってこない限りはだめですよということで、実は安易に考えておった、こういうことになっているんじゃないですか。
  28. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 先生御指摘のように、また最高裁判所判決のように、この八十条の規定恒久立法である農地法下における規定でございまして、将来の行政変化を予測してつくられたものであると考えざるを得ません。したがいまして、長い年月の間には、自作農の用に供する目的をもって強制買収はしましたけれども、客観的経済情勢変化によりまして、そういう目的に供し得ないものが出ることは当然予想されるところであります。そこで、万一そういうものが出ました場合に、農林省としてはいかにこれを活用するか、どういうふうに使うのが最も社会経済の要求に合致するかということを判断をいたしまして、八十条の規定で、先ほど御指摘のように売り払うことができる、それは省令の定めるところにより売り払うことができるというふうにありますので、できるだけ公用公共用等の用途、あるいは国民生活の緊急の用に供するのが最も公平妥当であろうというふうに考えまして、令十六条四号を制定し、それに沿って運用してまいったわけでございます。
  29. 堀昌雄

    堀委員 そこにちょっと問題があると私は思うのです。これは裁判所の指摘されているのと同じでありますけれども前段のほうですでに触れましたが、この判決で、「私有財産収用が正当な補償のもとに行なわれた場合においてその後にいかり収用目的が消滅したとしても、法律上当然に、これを被収用者に返還しなければならないものでない。しかし、収用が行なわれた後当該収用物件につきその収用目的となった公共の用に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、なお、国にこれを保有させ、その処置を原則として国の裁量にまかせるべきであるとする合理的理由はたい。」これも全く私は同感なんですね。だから、そうなれば、あなた方が公共の用に用いるということのほうが望ましいという意味においては、それは私たちも望ましいと思うけれども、そのことと、いまの前段の私が裁判所の指摘について触れたところとは、私はやはり次元が違うと思うのですね。裁判所の指摘のようにこれは次元が違う。だから、次元が違うものをそれによって防波堤をつくっておったという感覚が、今日非常に問題があるので、少なくとも八十条ができたときにはそういうことを予想しておったのでしょうから、すでにここで指摘されておったように、将来農地のために使わなくてもいいようになるだろうという予測をしてここに八十条を書いたのならば、やはりことは八十条の中に、そういういまのような規定のほかに、そうでなしに払い下げる場合もあり得るということを予想してここに法律が書かれていなかった、あるいはそういう改正をしていなかったということが、今日こういう混乱を起こしておる一つの問題であろう、こういうふうな感じがしますが、その点、農林省どうですか。
  30. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 最高裁判所判決の中の前段部分と、ただいま問題になっております後段の部分が次元が違うかどうかという点については、いささか問題があると私思う次第でございますが、前段のほうにいっておりますように、一たん公用公共の用、つまり自作農創設という公共的な目的のために強制買収した農地でありますので、その目的が消失した、自作農創設または農業上の利用増進に供しないということになった場合には旧所有者に戻すというのが、財産権の保護の見地からまあ妥当であるということが前段の判示であろうと思います。しかし、そうはいっても、できるだけ農林省としましてはその農地公共公用目的に活用される、それはそのほうが自作農創設目的と比べてさらに緊要性と申しますか、必要性が高いと判断をされまして、比較考量して、払い下げる場合に当たってそういう条件を付す。その条件を付される根拠は第八十条第一項に、「政令で定めるところにより、」売り払うことができるということで、しかもそれは不要地の認定をして売り払う。不要地の認定については自由裁量権ありという立場に立って運用をしてきたわけでございまして、その自由裁量権の発動としまして、できるだけ公共公用に使えるような運用をしてまいったわけでございます。ただその場合に、幾ら国有地であるからといって、自作農の用に供するために買収した土地を直接公園とか広場とかいうふうに使うことは、最高裁判決前段のここの趣旨に照らしてこれは妥当ではない。財産権の保護という見地から妥当ではないわけでございますので、一ぺん旧所有者に売り払ってそういう目的に使う。そういう目的に使うことを義務づけた上でこの旧所有者に売り払いをするということを、不要地認定制度を通じてやってまいったわけでございます。したがいまして、この前段と後段とは一貫しておるというふうに考えます。
  31. 堀昌雄

    堀委員 私、いま十一時半から予算の分科会で質問時間を指定されておりますので、これから十二時まで予算の分科会に出席をいたしますので、その後に、次の質問者の時間があきましたあとで、あと質問を継続さしていただきたいと思いますので、お願いいたします。
  32. 毛利松平

    毛利委員長 広瀬君。
  33. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まず、農林省に伺いたいのですが、予算委員会でこの問題は国会で最初に私が質問をした経過があるわけでありますが、その際農林省の渡辺政務次官が大臣の代理として出まして、大体最高裁判決を受けて、実際に旧地主に売り渡さなければならない国有農地というものはどのくらいあるのかということで、関係者は一体どのくらいあるのかということを質問したわけでありますが、その際、大体現在高三千三百三十六ヘクタールの中で一割程度ではないか、こういう話があったわけでありますが、それについてもたいへん自信のない答弁であったことは事実なんでありますが、その後これについてどういう調査をなされてきたのか、そして現在あのときからだいぶ、約一週間もたっておるわけであります。そこでその点、数字をひとつ詳しく説明願いたいと思います。
  34. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 予算委員会におきまして渡辺政務次官が御答弁なさいましたのは、市街化区域の中に入っておる国有農地の面積はまだ調査がはっきり進んでおりませんが、推定いたしますと、一割程度ではなかろうか、こういう御答弁であったと存じます。当時すでにもう農林省は調査に着手しておりまして、地方農政局長及び各都道府県知事に依頼をしまして、国有農地の実態調査を進めておったわけでございますが、御質問のとおり、まだ数字がまとまっておりませんので、一応推定でそういうことを申し上げたつもりでございます。今日もなお鋭意数字を取りまとめ中でございまして、今月中にはまとまるものと期待をしておりまして、それをめどに現在調査を取り進めておる段階でございます。
  35. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大体関係地主が、ただいま皆さん調査をされている面積に対して——まだこれがわからぬというのですから、まだ調査が終わっていないのですからやむを得ない。しかしながら、この関係地主は一体どのくらいあるかということも全くわかっておりませんか。
  36. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 関係地主につきましては、はっきりわかっておりません。
  37. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうような状態で、最高裁判決はなるほど出た。そうして旧地主に売り渡さなければならぬのだという判決が出た。それならば、まだそれに該当するものがどれくらいあるのかという数字も面積もわからぬ、関係者の数もわからぬ、そういうような状態の中で、きわめてテンポが早かったわけですね、今度の政令改正について閣議決定に至るまでの時間というものは。それほど急速にやらなければならないという理由は一体何ですか。
  38. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 最高裁判決によりまして、政令法律違反であるということをきめつけられたわけでございますので、政府としましては、一日も早くその法律違反の状態を改善する必要があるということで急いだわけでございます。
  39. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その点については、これは真偽のほどはわからぬわけでありますが、農林省以上に法制局側から非常な督促があったということを聞いておるわけでありますが、あれほど早くやらなければいかぬ、こういうような形で法制局は農林省に向かって要求をされましたか。
  40. 高辻正巳

    高辻政府委員 私は、農林大臣にも農林当局にも直接に申したことはございません。ございませんが、「法の委任範囲を越えた無効のもの」という判定を下されている政令をいつまでも残しておくわけにいかぬというのがわれわれの基本的な考え方でございます。したがって、それはできることならば少しも早く直してもらいたいというのが、正直にいって法制局考え方であるというのは確かでございます。
  41. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 前回の質問にも私は言ったわけでありますが、ほかの同じような法律、本質として類似した、似たような法律というのに土地収用法がある。そういう中では、経済事情の著しい変化というようなものによって、しかも土地収用法を実行した時点のその収用目的も喪失をしているというような状態の中で、これはやはり適正な、そういう事情変更の原則というものを加味した価格で売り渡すということもあるわけでありますね。そういうことは百も承知法制局が、最高裁判決でこの政令委任範囲を逸脱した無効なものである、こういわれているからといって、それらの問題で、収用法の例にならうような法改正の余地がないのかどうかということを含めて、もっと慎重に検討さるべきだろうと私は思うわけです。そういう点について、いまこれだけ国民の世論がわき立ち、国民は憤激をしている。一部の、これも数はわからないのだけれども、不当利得と常識的に考えられる、まあ売り渡しを受ける者はそうは考えないかもしれませんけれども国民の九割九分九厘がそういう感情になるという非常識な——法の究極はやはり常識だと思うのですね。そういうような立場からいっても、この常識を全くくつがえすような今回の措置というものに対して、もっと賢明な施策というものがあるはずだということで、国会の中でも、与党を含めてこの問題をどうすべきか。この国民感情に全く乖離した法律事務的、事務官僚的な考えだけで処理しきれないという本質を持っているわけであります。  それに対して農地法改正しよう、そしてこの問題に対処しようという動きもある。このことにつきましては、かなり私どもしろうと的に考えても、いままですでに同じような例で時価で払い下げをしておる、売り渡しをしておるという事例について遡及ができるかどうかという問題等についても、いろいろ問題があることを承知しておるわけでありますが、農地法改正という形をとって、この問題を国民の常識にかなうような、国民の納得が得られるような解決の方法について、内閣に対するいわば法律顧問的な立場にある法制局長官としての御見解をその点でひとつ伺いたい。
  42. 高辻正巳

    高辻政府委員 御質問の気持ちといっては失礼ですけれども、そのほんとうの気持ち、これは全くよくわかりますが、それとやはり区別して考えていただかなければならぬ点が一つございますので、その点をぜひともわかっていただきたいような気がします。その点を申し上げたいのであります。  農地法の八十条二項というのは、実は国会の審議過程で——いま世の中で急に問題になったのがいかにもほんとうにふしぎにも思える。いまからの結果論でありますが、そういうことで、当時の審議の模様を私はつぶさにもう一ぺん検討してみました。そうしますと、八十条二項というのは削除すべきであるという議論が、当時の衆議院でも参議院でも実は出ております。終局的には、農地法は共産党を除く野党、あるいは与党も一緒だったかもしれませんが、修正案が提出されまして修正になったわけでありますが、八十条二項は、議論としては出ながら実はなくなりませんで、そのまま現存をしておるわけです。  八十条の規定に関して最高裁判断が出て、その八十条の解釈は、遺憾ながら最高裁政府の意見は違っておりましたが、しかし、最高裁判所が八十条の解釈はこうである、その解釈からいけば政令は無効であるという判断を下されて、その政令に従って行政を執行することは憲法を尊重するゆえんでないことは明白であります。そこでわれわれとしましては、その判決の中には、現に農地自作農創設目的に供しないものが客観的事実として存するものに対して、旧所有者が請求権を持つといっておるわけでありますから、現に請求権は発生しておる。そういうものを旧来の政令によってチェックしていくということは、いまの判決趣旨からいうとどうしてもこれは法律を誠実に執行するとはいえない。法律を誠実に執行するということは、憲法第七十三条の内閣の職務の中の第一に掲げてある最も重要な職務でありますから、その誠実な執行に当たるべき内閣としては、ともかくも政令法律に適合するように直す必要があったことは、これはお認めいただかざるを得ないのであります。  それと別個に、今後どうしたらいいか。これは立法上の政策問題になりますが、それをどうしたらいいかということは別個の問題でありまして、これが一緒に論じられるので何かこんがらかってくるような事情が生ずるのではないか。率直にいってそんな感じを持ちます。ですから先生おっしゃいますように、この政令改正したのが悪いのではなくて、別個にそれではどうするかという政治的な配慮の問題が生じてくる、これは当然であろうと思います。それで現在むしろ問題の推移はそちらのほうに移っているのではないか。これはまあよけいなことでありますが、私どもは、だんだんそういう点ははっきりしてきたのではないかというような気がしているわけでございます。
  43. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がありませんので、法制局長官と論争しているひまはないわけです。  そこでこれからの問題として、いろいろ方法を考えて何とか国民の納得のできるような結末をつけたいという意思が、これは与野党を問わず国会の中に充満しておるわけであります。私ども農地法改正することがどこまでできるかという問題についても、もう一ぺん国会として考えたいし、また二円六十銭というまことに常識を無視した、買収価格というものによるいわゆる不当利得ではないか、まさにぼろもうけではないかというような問題に対する税制面からのチェックはできないものか、こういうようなことをいろいろかれこれ各党ごとに考えておるわけでございます。そういう方向以外に、そういうことならば現在の法体系の中で、たとえば税制の面で措置をする、あるいはその土地公共的なものに使われるように、その土地利用、処分というものについてきびしい規制を課するというようなこと、いろいろ考えられるわけでありますが、そういうものについての法制局長官としての御意見がありましたら、ひとつこの際述べていただきたいと思います。
  44. 高辻正巳

    高辻政府委員 その前にちょっと触れておきたいことでありますが、先ほど申し上げるべきだったかもしれません。政令最高裁判決の線に沿った改正をしたというだけでして、「買収の対価に相当する額」というのが法律できまっておるわけで、その解釈問題としていろいろな問題が出てまいりますが、政令は、幾らで返すという、幾らでということには全然触れてないものでございますから、念のために申し上げておきます。  それから立法改正についていろいろ動きがあるということをいま御指摘になりました。現にございます。現にございますが、これはまあ私が率先して申し上げるべきことではないと思います。何となれば、それは現行の農地法なりあるいはこの税制に関して政策上の問題としてどう考えたらいいかということでありますので、むろんわれわれも意見は申し上げますけれども、やはりそれは政策を立てるべきところがまず第一に考えるべきことであるという意味合いにおいて、私は意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
  45. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまの御発言の中で、政令は、幾らで払い下げ、売り渡ししなければならぬということについてはいささかも触れていない。しかし、今日までの支配的な考え方は、農地法八十条第二項において買収の価格に相当する価格というものが問題になっておるわけでありまして、それは買収した当時の価格そのものであるという理解の上に今日こういう議論が展開されているわけでありますが、そのことについて、いわゆる「相当する」というところに弾力的な考え方があり得るんだ、そういうお考えでございますか。
  46. 高辻正巳

    高辻政府委員 私は、その点については、実は政令でもって二円六十銭ということで返すというように世の中は誤解されているやに見える向きがありますので申し上げたのでありますが、いま御指摘の問題は農地法の八十条二項にある、法律にある規定解釈いかんということでございます。これは御承知のとおりいままで実行してきた考え方がございますが、結論から先に申し上げまして、この考え方が誤っているとは思いません。こまかいことはもう申し上げないほうがいいと思いますが、それは法律の八十条二項の「相当する額」という下にカッコがございまして、「買収の対価に加算した額」というようなことが出ておれます。その文言からいいましても、また土地収用法のさっき御指摘の、物価の著しい騰貴があったときには増額請求をすることができるというあの規定のまず前に、これらの価格で返すというところに「相当する額」というふうに書いてあるものとの対比からいいましても、いままでの解釈が誤っているとは思いません。
  47. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまの御答弁で了解したわけではありませんけれどもあと質問者がつかえておりますので、私はこれで質問を終わります。
  48. 毛利松平

    毛利委員長 竹本孫一君。
  49. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんけれどもいろいろ聞きたいので、答弁は簡単に、明瞭にひとつお願いしたいと思います。よろしく御了承願います。  第一に理財局長に聞くことになるのですが、いま問題になっている農地国有財産であるか。
  50. 相澤英之

    ○相澤政府委員 さようでございます。
  51. 竹本孫一

    ○竹本委員 それは行政財産であるか、普通財産であるか。
  52. 相澤英之

    ○相澤政府委員 これは自作農維持創設特別会計に所属する普通財産であります。
  53. 竹本孫一

    ○竹本委員 普通財産の売り渡しということになれば、その原則に従っておおむね時価でいくことが相当と思われるけれども、その点はどうですか。
  54. 相澤英之

    ○相澤政府委員 財政法第九条に規定がございまして、国有財産は相当の対価をもって処分することになっておりますので、他に規定がなければ時価でもってやるということになっております。
  55. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうしますと、問題の農地国有財産である、普通財産である。また、会計法の規定から見ても他に特別な制約がなければ時価で大体いくものが常識的である、普通である、こう理解していいわけですね。
  56. 相澤英之

    ○相澤政府委員 さようでございます。
  57. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、これは主税局のほうになるかもしれませんが、この売り渡しを受けた農地について、売り渡しを受けたということだけで税金か何か、かかりますか。
  58. 細見卓

    ○細見政府委員 売り渡しを受けたということだけでは無理じゃないかと思います。
  59. 竹本孫一

    ○竹本委員 それを転売した場合にはどういう解釈のもとにどういう課税が行なわれるか。パーセンテージは幾らか。
  60. 細見卓

    ○細見政府委員 従来、国税庁の取り扱いは、いわば権利の回復というような考えに立ちまして、当初から農地を所有していたものと、所得税その他、みなしておりましたが、これを特別の立法その他によりましてこの解釈を改めて、現実に国から売り渡しを受けたときに完全な所有権を取得したわけでありますから、そのときをもって所有権を取得したというような考え方規定することは、税法としてはできようかと思いますが、従来は解釈として、もとの所有権を回復したのだという解釈に立っております。その場合に、もしも長期の、もとから所有していたものということになりますと、おそらく大部分農地は例の農地解放のときに所有になっておるわけでありますから、当然に長期所有の土地になりましょうし、それから今後もし現実に国から売り渡しを受けたときをもって取得の時期ということにいたしますれば、あの土地税制に関する特別措置の一連として短期の所有になって、この場合は、長期の場合であれば御承知のように国税で申せば一〇%、それから短期であれば四〇%ないしはその人の上積み税率の一割増しということになっております。
  61. 竹本孫一

    ○竹本委員 念のためにもう一度聞きますが、所有権を回復したという解釈でいって、したがって長期保有ということで一四%で大体今度も取り扱うという方針ですか。
  62. 細見卓

    ○細見政府委員 その辺は目下立法政策としていろいろ御議論のあるところですから…。
  63. 竹本孫一

    ○竹本委員 いや解釈論として。
  64. 細見卓

    ○細見政府委員 解釈論は、国税庁の解釈を改めない限りそうせざるを得ないと思います。
  65. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一つ念を押しますが、だれか新たに所有権を確保したのだということになれば、パーセンテージは幾らでしたか。
  66. 細見卓

    ○細見政府委員 四〇%ないしはその人の上積み税率が適用されるものの一割増し、こういうことになります。
  67. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで本論に入るわけですけれども、この場合にこれは国民感情から許せない。二円六十銭は許せないということでいまいろいろ議論が出ておりまして、一部には課税措置でいこうということで税金をぶっかけて、一応は返すのだけれどもあと取り上げれば、社会的な公平の観念に合うじゃないか。だから取り上げるのだ。それは租税特別措置で取り上げるのだ。こういうような御議論が一部にあるように新聞では伝えておるわけでございますからお伺いするのだけれども、いまの所得税の場合にどのぐらいの率まで最高いけますか、所得に対してかける最高の税率。
  68. 細見卓

    ○細見政府委員 先ほども申し上げましたように、たとえばその人がその土地を売って譲渡所得があったとすれば、一五%とかあるいは二〇%の税率になるような人についてはそれが四〇%になっておりますし、その人が所得が一億も二億もあって八〇何%の税率が適用される方につきましては、八十何%になるわけでございます。
  69. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が聞いたのは最高のところです。いまの日本所得税法最高の税率は何%ですか。
  70. 細見卓

    ○細見政府委員 税率としては刻みはございますが、地方税を合わせまして八八%ということになっております。
  71. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、これは政策論になるわけですけれども、一度返す。それでいまの税法の問題は一応別ですよ。土地税制の問題は別にして、新しい課税措置でこの不公正を直していこう、こういう御意見がありますので、私の結論を言ったほうが明快になるかもしれませんが、私はそれは無理だという意見なんです。なぜかといえば、おまえのものだといって返しておいて、いまのは失敗だった、やるんじゃなかったといって、今度は完全に個人の所有になっているものを新たに税金をかけて八〇%も九〇%も取り上げようということになれば、それこそ普通の私有財産に、気に食わぬからといってはぽんと八割、九割の重税をかけてほとんど取り上げてしまうということになれば、租税立法上非常に重大な問題があると思いますが、主税局長はいかがですか。
  72. 細見卓

    ○細見政府委員 たいへんいい御意見を指摘していただきましてありがとうございました。
  73. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、いま一部に言われておるような課税措置でいこうという考え方はどだい無理なんで、それこそよく言われる私有財産は神聖な権利だという考え方に挑戦するものであるとぼくは思うのです。しかも政府が自分で一応返しておいてあとからまたそれを取り返すといったら、詐欺か何かわかりませんけれども、全く人をペテンにかけたようなことになって、政治の態度としてもはなはだ不明朗であり、課税技術、租税立法論からいってまことに不当であると私は思うのですが、法制局長官いかがですか。
  74. 高辻正巳

    高辻政府委員 いまのお話の中には何か一時所得的に見ていくのかあるいは譲渡所得として考えていくのか、二つの問題があったような気がいたしますけれども、大蔵省たいへん喜んでいることでもございますし、その点についてはなお大蔵省の意見もよく聞いて、具体的な施策がどういうものであるかということを聞いてみないとにわかにお答えができないような気がいたしますが、一時所得的に考えてそれに税をぶっかけていくというのは何か無理なような気がいたします。しかし譲渡所得として考えていく場合だったら、とにかく新しく所得を生じたものでありますから、その場合についてはまた考えようもあるのではないかというようなことが、全く率直に申しましていまのきわめて思いつきの考え方でございます。ただし、今後よく考えたいと思います。
  75. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が言うのは、譲渡所得であるか一時所得の問題であるかを別にしても、あるいは両方の場合を含めても、今度の場合を具体的に考えた場合に、いままでは五〇%しかいかないから今度土地税制の特別措置をつくって八〇%か九〇%いこう、あるいは一般的に、所得に対して特別九場合には八〇%を今度九〇%までいこうというようなやり方はあまりにもその場の思いつきにすぎないので、そういうことをやるということは租税ファッショへの道だ。民主的な秩序の日本の中ではそういうことは考えるべきでもないし、とるべきでもない。したがって、課税措置で今回の問題のトラブルを解決しようという考えは、思いつきとしては大いに敬意を表しますけれども、実際の政策論として考えるとこれは非常に慎重を要するということを私は言いたいのです。  それで政務次官、租税ファッショになるようなことを考えてはいかぬというぼくの考え方に対して、御意見はいかがですか。
  76. 中川一郎

    ○中川政府委員 このたびの最高裁判決によって政令改正して返すという場合に、法律はそのままで税金を取る、租税でやっていくということは竹本委員指摘のとおりどうも疑義がある。ただし、法律について今後何らかの改正を加えて、それを背景として租税がそれに伴っていくんであればこれは考えるべきことであろう。しかし、現行法をいじらずに租税だけでいくということは租税ファッショに通ずることではなかろうか。したがって、竹本委員のお考え方と同じでございます。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 何らかの改正をやるというが、何らかの改正そのものにぼくは限界があるということをいま指摘しているんです。改正すれば、法律ができるのですから何とかやれるでしょう。しかしその改正案というものを考えた場合に、へたなことをすれば、やっておいて気に食わないとか間違いがあったとかいうことでごっそり取ろうということになると、これは租税上の問題として非常に重大な問題を含んでおるから、私はそういう問題は考えられないということをいま第一点として指摘したわけです。時間がありませんから先へいきます。  第二に、特別措置を講じまして半分だけ取ろう。いまでも五〇%ですから、もう少しまけて六〇%か七〇%いこうということになったとしても、これもまた問題がある。たとえば二十万円の土地だ。それを半分の十万円税金を取るということにかりになっておるところへ、まあ十二万円まで取ろうというようなことになると、結局そのことは、そういう特別措置ができたとしても八万円くれてやることになるのだ。そうですね。いまの法律では十万円取られるということになっておるはずのものを、世論がやかましいからというので特別措置を講ずる議員立法がかりにできたとして、そうしてこれが二十万円までいけば、これは私は租税ファッショになると言うのです。それじゃ少しまけて、ちょうどまん中辺で十五万円までいくかということになると、残りの五万円はプレゼントしたことになる。そうすると、結局ちょっとそらしてきわめて合法的な形において五万円だけプレゼントしたことになるではないか。したがって、完全に取ろうと思えば行き過ぎになるし、半分残せば半分くれてやったことになって社会的な正義感を満足させることはできない。いずれの場合を考えてみても租税措置で今度の問題を解決するということは無理であると思いますが、いかがでございますか。
  78. 中川一郎

    ○中川政府委員 先ほどお答えしましたのがちょっと誤解されているようですが、法律でいじくるというのは、租税だけでいじくってはこれはちょっと行き過ぎではないかということで、法律でいじくると申しましたのは、この売り払いがたとえば時価に相当する価格というものを変更して、新たに売り渡すのだというような措置立法上とられた場合を想定して、それに合わして租税措置も適宜改正していくならできるけれども、これをやらずに通達を変えるとか租税だけで法律を変えていくというのは、さっき言ったような取り過ぎになるかもしれないしプレゼントになるかもしれない。単独ではどうも改正はすべきでないのではないか、こういう考え方でございます。
  79. 細見卓

    ○細見政府委員 ちょっと補足させていただきます。  いまの政務次官の御答弁で大体尽きているわけでありますが、今回の問題は、国からの売り払い代価が不当であるということにからんで問題が起こるわけでありまして、その売り払い代価が適当であるか不当であるかということは農地法法律の中で解決していただく問題でありまして、われわれがこの場合に考えられる問題は、そういう適正な法律が行なわれた段階で税の立場からそれをどう取り扱うかというのは別途の問題だ、こういう意味で申し上げているわけでございます。
  80. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、今回の最高裁判決の問題ですけれども最高裁は売り払いのときの値段について触れているのかいないのか、その点をもう一ぺん明快にお聞きしたい。
  81. 高辻正巳

    高辻政府委員 この判決の文言の上からは直接に触れておりません。
  82. 竹本孫一

    ○竹本委員 聞くところによれば、最高裁のほうでは、二円六十銭で売ることはしかたがないのだというような考えを持っておるというように、政府がかってに解釈をしておるので若干迷惑をしておるという話も私は伝え聞いておるのだ。  そこで法律解釈論として、あるいは判決解釈論としても、こういう場合には旧地主に売り渡しをしなければならぬということは、法律解釈として最高裁ははっきりいっておると思うのですね。しかしその値段をどうしろということまでは最高裁は触れてはいないというふうに私も思うのです。また先ほど政令の問題にも触れられましたけれども政令も、どこへ売るかということについてはいろいろいっておりますけれども、値段については触れていない。したがっていまのところ、その値段を幾らにきめるかということは、この間農林省が、相当な価格というのは二円六十銭だという考えでやられたということであって、それをそうしなければならぬという外側からの、最高裁解釈あるいは政令規定の中からの制約はなかったとぼくは思うが、どうですか。
  83. 高辻正巳

    高辻政府委員 それは私は必ずしも同感でございません。先ほど申し上げましたように、この判決の文言の上からは直接に触れてないことは確かでございます。したがって、政令もまた判決趣旨に適合するようにということでございますから、この売り払いの条件の認定の場合について、これを判決趣旨に合わせたというだけで、売り払いの場合の対価の額については何も触れておりません。しかし、先生自身お触れになりましたような判決解釈、ないしは現行法律規定との関連におきましては、どうもこの法律の定めるところによって、すなわち買収の対価に相当する額によって請求権が発生しているとは、これは現に発生しているのですから、その法律の定める条件による請求権であることは明瞭であろうと思います。ということは、買収の対価に相当する額による請求権であるというふうに解釈されるのがあたりまえではないか。ところでその額は何か。これは法律解釈の問題になりますが、それはよけいなことかもしれませんが、判決の中身としてはそう読むのが自然ではないか、そういうふうに考えます。
  84. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、法制局長官専門家ですから聞きますが、法律上、ここにあるような問題の相当な価格ということばを使った例はどのくらいあるのか、その場合の解釈はどういうふうに解釈するのがむしろ自然であるかという点についての法制局長官の見解と、それから理財局長考えと、二つお聞きしたい。
  85. 高辻正巳

    高辻政府委員 そういう使った例はどのくらいあるかということでございますが、これはあらかじめ伺ってでもおけば少しは調べておくこともできたと思いますが、あいにくどうも急にすらすらと出てまいりませんが、たとえば土地収用法をごらんいただきますと——だいぶあるようです。これを一々申し上げることもないかもしれません、大蔵省でちゃんと調べてあるようですが——土地収用法の百六条あたりをごらんいただきますと、買収補償金に相当する金額を提供して土地を買い受けることができる、買い受けいたしますその場合に「相当する金額」ということばを使っております。これは先ほども指摘がございましたように、これは「相当する金額」というのをいっておるのと同時に、その価格が騰貴したときにはあるいは増額請求権をこれは認めておりますが、その相当する額というのはその場合使っております。  それからもう一つ、これは例でございますが、いまの土地収用法の規定からもわかりますように、相当する額というのはまさに金額のことをいっているのですから、買収の対価に相当する額といっておるような、そういう使い方を私どもいたしておりますが、農地法の当該条項のカッコには「買収の対価に加算した額」として、つまりそれはこういうものであるといっている。その規定の中には買収の対価そのものをそのままずぼしにさしているところもございまして、相当する額というのは、このある価格そのものをさすというのがいままでの解釈でございましたし、この解釈が間違っているとは思いません。
  86. 相澤英之

    ○相澤政府委員 農地法の第八十条第二項の売り払いの場合に「この場合の売払の対価は、その買収の対価に相当する額(耕地整理組合費、土地区画整理組合費その他省令で定める費用を国が負担したときは、その額をその買収の対価に加算した額)とする。」というふうに規定がございまして、買収の対価に国が負担した費用を加えた額というふうになっております。さように解釈しております。
  87. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうすると理財局長解釈では、買った値段プラスその辺の雑費、それだけだ、だから二円六十銭が三円くらいになるのが限界だということですか。
  88. 相澤英之

    ○相澤政府委員 買収の対価に加えますところの耕地整理組合費、土地区画整理組合費というようなものがどの程度の金額になりますか、私つまびらかに存じませんが、それを加えた額というふうに考えております。
  89. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで法制局長官に聞きたいのだけれども、先ほど読まれた土地収用法の百六条ですか、ここでいろいろ議論のある相当の価格がある。その場合に地価が著しく高騰しておる場合にはそれを増額請求ができる、こう書いてある。その増額請求ができるということも、あるいはその増額請求した値段も、あわせてやはり相当な価格であると思いますが、それは相当の価格プラスアルファになるのか、プラスアルファを入れたものも相当の価格と法的には概念すべきかどうですか。
  90. 高辻正巳

    高辻政府委員 これは先ほどもちょっと触れたと思いますが、土地収用法の百六条をごらんいただくと一番いいのでありますが、「補償金に相当する金額」というのがありまして、これを提供して買い受けることができるというのがあります。それから「土地の価格が権利取得裁決において定められた権利取得の時期に比して著しく騰貴したときは、」「同項の金額の増額を請求することができる。」つまり補償金に相当する金額の増額を請求することができる。これは農地のほうを増額したものであって相当する金額ではない。文言上はそう見るのがあたりまえだと思います。
  91. 竹本孫一

    ○竹本委員 ついでにもう一点聞きますが、増増請求ができる、補償金に相当する金を払うんだ、こういうのでしょう。その払うのに、昔の二円六十銭では安過ぎるから、著しく高騰したものをかりに増額請求ができるということは、その増額請求した額がそれが相当な価格になるのではないですか。
  92. 高辻正巳

    高辻政府委員 ことばの一般的な使い方としてそれが相当な額だということは御自由でありますけれども法律規定解釈としてどうかというのが御質問でございますから、そこでいまの相当する補償金というものと、増額請求する増額というのは、金額が違うということを申し上げておるわけです。
  93. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはこまかい問題ですから、政治的にいえば、純法律的にいえば初めのやつが相当する額だ、しかし社会正義が許さないという場合に増額請求ができる。それは増額をさせなければいわゆる相当な額にならぬという解釈も成り立つわけですね。これはしかし政治的だ、法律解釈ではありません。問題は政治的だと思う。政治的だけれども、しかし土地収用法の精神というのは、二円六十銭では、かりにここの例でいえば無理だ。増額請求をしたものが社会通念上の相当する価格だということになるという、われわれは広義の意味理解ができるのではないかということだけを私は申し上げたわけです。  そこで、今度は法制局長官の意見として、十六日の日経新聞ですけれども、「法制局長官見解によると、一、最高裁判決で、自作農創設目的にあわない農地については、旧所有者へ売り払わなければならないとの拘束を受けた」と書いてある。これはそのとおりだと思うのです。それから二番目に「最高裁農地法施行令十六条を「法の委任範囲を越えた無効のもの」との法律解釈を下し、従来の政府側の見解と異なる判断を示した。三、このため政府がみずからの解釈に固執し、現行政令解釈に従って行政を執行することは「法律を誠実に施行」すべき政府の責務に反し、憲法違反のそしりを招く——などの理由指摘し、政府最高裁判決に基づき同法施行令の改正に踏み切ったのは、「憲法を尊重すべき政府としては当然の義務である」との点を強調している。」これはそうですか。
  94. 高辻正巳

    高辻政府委員 結論的にいってそのとおりでございます。ただしそのとおりと申すにしても、文書になっているのを摘記したわけでございますから、その点は違いがありますけれども趣旨はそのとおりでございます。
  95. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、これは予算委員会質疑応答も大体こんなようなラインでやられたと思うけれども、これだけいえば、あるいは法制局長官の狭い立場からいえばこういう解釈でぼくは一応理解できる。しかしここに書いてあるように、憲法を尊重すべき政府としては当然の義務であるとか、それから、とにかく与えられたワクの中で、それ以外のことを考えてはいかぬ。ワクの中だけで考えろという点が、談話の全体の印象はぼくには非常に強く響いております。誠実に執行するとか。ところがいろいろ先ほど広瀬さんの質問にも関連して話がありましたように、農林省も新しい立法ができる、国会ももちろん新しい立法ができる、政府はまた当然に新しいいろいろな立法考えなければならぬ、こういうことでございますから、すべてをいままでの法律のワクの中だけで考えねばならぬような印象を与えるということは、この際むしろ慎むべきではないか。いまの法律解釈としてはそれが全部正しいとしても、しかし時代の流れに応じて、堀委員からも御指摘がありましたけれども、新しい社会情勢に即応した法律立法措置が講ずることができるのだから、せめてこういう発言をされるときには、新しい法的措置が講じられれば別であるけれども、いま与えられた法の範囲ではこう考えるのが当然だというならば私はわかる。しかしことさらにワクをはめてしまって、一切ほかのことを考えてはならぬ。新しい立法考えてはならぬような見解を発表されるということははなはだ適当でないと思うが、いかがでしょうか。
  96. 高辻正巳

    高辻政府委員 どうもおことばを返すようで恐縮でございますが、それは非岸に狭いお考えではないかと思います。法律を誠実に執行するということは、現にある法律を誠実に執行することであって、法律改正されればむろん、旧、改正前の法律を誠実に執行するのではなくて、改正された法律を誠実に執行する。それがあたりまえのことでございまして、当然にそれは含んでおるということは、これは説明をまたないことではないかと考えます。憲法の七十三条を引きますまでもございませんが、内閣の一番大きな典型的な職務の一つは法律を誠実に執行することです。法律があるにもかかわらずその法律を誠実に執行しないことは、内閣の責務としては最もいけないことではないかというふうに考えるわけでして、改正された法律を誠実に執行することはこれは当然のこと外あります。
  97. 竹本孫一

    ○竹本委員 法制局長官、いま言われたのは当然のことでありますけれども、私が言っているのは、今日は農地法改正をわれわれはやりたいと思っている。そういう問題についていろいろ議論が起ころうとしているときに、このワクの中で考えなければならぬように言って、それを誠実に守るのだけが政府の仕事のようなことを言えば、極端に言えば新しい立法措置はこの世の中にないような感じを受ける。タイミングというものが政治では大事ですよ。なぜかといえば、きょうはいませんけれども、国税庁長官が、ビールの値上げのときに、ビールの値上げについては国税庁は一切権限はありませんと言う。そのことは法律解釈としてはそのとおりだ。しかし、ビールの値上げが問題になっているときにそういうことを言えば、これはだれも監督する者がいないのだから、それでは値上げするというのはほんとうか、しかたがないじゃないか、そういうあきらめムードのほうが先に広がってしまう。だから、ものは言い方とタイミングによってずいぶん内容が違う。法制局長官の本旨はよく私はわかりますが、この新聞記事だけ見ると、極端に言えば農地法改正なんか考えないのがあたりまえみたいな話になってしまう。けれどもそれは見解の相違ですから、以後タイミングを考えて——法制局長官ともなれば法律の専門家ということになっているのだ。なっているのだから、その専門家が立法措置の場合は考え得ないようなことを言ってもらっては困る。ちゃんと限界があるのですから。新しい法律をつくれば別だということを一口あればまだ話はわかるが、それはおかしい。  そこで農林省に聞きたいのだけれども、いま言った時価に相当する価格というのが、広義に解釈すれば増額請求も含むと私は政治的に考えるけれども、狭義に解釈して、それは買った値段プラスその辺の経費、雑費などを加えたものだけだ。せいぜいいって千円にならぬというようなことであれば社会正義が許さない。社会正義が許さないから今日これだけの問題が起きておるのだけれども、その許さないのを見通して、農地法改正をやって、相当する価格というものを、いまの土地収用法の百六条のような精神を盛り込んだ個条にするか、まあ内容については一応別としても、その農地法改正の努力を全然しないままに、これをぽんとやったのはどういうわけですか。
  98. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 判決にも出ておりますが、自作農創設のために収用しました農地をその目的に供しなくなった場合には、旧所有者はこれを回復する権利を有するというふうに判示をされておりまして、その権利の内容として、現行法の八十条第二項に規定されております買収対価に相当する価格で回復する権利というふうに解釈をしております。そういう判示をされておりますことを考えますと、現在市街化区域等の中にあって不要地と認定すべき国有農地につきましては、最高裁判決では農林大臣認定の有無にかかわらず、売り払いを求める権利を有するということになっておりますから、すでに権利が発生しておる。したがって法律改正によって、その発生した権利の内容に変更を与えますと、やはりこれは権利侵害の問題を起こしてくるわけでございまして、この改正はきわめて困難であると思うわけでございます。
  99. 竹本孫一

    ○竹本委員 改正が困難だという理由——なぜ改正しなかったか、なぜ改正する努力をしなかったかということを私は聞いたのですよ。だから改正しなかった理由、困難だというなら困難な理由をもう少し言ってください。
  100. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 先ほど申し上げましたように、最高裁の判例によりまして、すでに市街化区域の中の国有農地等については、売り払いを求める権利を有するということに判示をされておりますので、したがいまして、それを改正をして増額をいたしますことは権利侵害になるおそれがありますので、この改正ということが非常に困難であったのであります。
  101. 竹本孫一

    ○竹本委員 すべての立法措置は、ある場合においては、あるいは半分の場合には、必ずわれわれが市民として、庶民として期待をしているある権利の制限ですよ。建物を高く建てたいと思って、いままで高く建てる権利はある。それを何階以上は建ててはならぬということになれば、それはいままでは天の上まで建てられると思っている権利を制限するのでしょう。だから既得の権利を侵害するからということで立法措置が困難だなどといったら、およそ立法措置はできませんよ。新しい法律の多くは、われわれが持っておる権利を、新しい社会情勢に応じて制限するのだから——伸ばす場合もありますよ。あなたのようないまの理論だったら、制限するのだからできないなんていったら、すべての立法措置はほとんど不可能になるのではないか。  時間が参りましたから、私は最後に結論的に、いまの問題でやはり農林省としては当然農地法改正をやって農地法の時価で——相当な価格ということで返すといういまの狭い解釈も私は賛成できないが、少なくとも狭い解釈においても心配のないように改正措置をやっていくべきであったと思うし、したがって私ども野党としては、特に私、民社党ですけれども、もう農地法改正議員立法としてやるべきだとわれわれ態度をきめておりますし、きょうかあした、野党三党の政審会長会談ではその案を出すつもりです。また自民党さんにも良識的に考えていらっしゃる方が多いので、できれば議員全体の議員立法として、当然農地法改正をやりたいということを考えております。いまあなたの議論だったら、そういう農地法改正はできないじゃないかという議論になってしまうのですね。そんなとぼけたことを言ってもらっては困る。法律というものは常に新しくある権利をつくってみたり制限してみたりするので、権利の侵害だからできないなんて、そんなとぼけた議論は私はお返しをしておきたい。  そこで最後に法制局長官にもう一つ聞きたい。それはこの施行令は無効である、こういうのが最高裁判決でしょう。先ほど堀先生もおっしゃいましたけれども、「法の委任範囲を越えた無効なものというのほかはない。」こういっているのですね。その無効だということであれば、これはいまさら最高裁を議論してみてもしかたがないが、そうすると、これは政令でしょう。政令ならば法制局もタッチしているでしょう。法制局は専門家をもって、権威をもって誇っておるのに、こんな無効なものをつくらせたというのはどういうことでしょうか。
  102. 高辻正巳

    高辻政府委員 それは先ほど別な方からの御質問がございましたが、農地法八十条のこれは一項でございますが、一項の規定解釈が、最高裁判所解釈と、われわれが、政府が、昭和二十七年来のことでございますが、昭和二十七年の当時から持っていた解釈と遺憾ながら違ったということであります。むろん御承知のとおりに、法律解釈というのはたった一つでなければならぬということはむろんございませんで、先ほど申し上げたように、なぜそういうことをおかしたのであるかということになれば、繰り返しになりますから詳しくは申し上げませんが、八十条一項に「政令で定めるところにより、」認定すると、「認めたときは、」とあるものですから、当時の立案者は、政令の定めるところによりというのは、やはり合理的な範囲であるということはあるにいたしましても、ともかくそこで政令でもって場合を限定できるという解釈をとって、そういう解釈ができ上がったわけであります。で、この解釈につきましては、最高裁判所もおそらくかなりの考慮を払ったと思いますが、もう少し憲法のそこまでのささえをもってああいう判決を下された、これも私は一つのむろん敬服すべき解釈だと思いますが、何よりもそれが最高裁判決でありますので、政府はそれに違った解釈のもとに成り立った政令を執行することによって行政を曲げることになってはいけないというのが基本的な考え方で、政令改正をしたわけです。解釈を間違ったのはけしからぬといわれればそのとおりでございますが、しかし、そういう解釈をとるにはそれ相当の理由があったということだけはお認め願いたいと思います。
  103. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はお認めどころじゃなくて、むしろ政府の従来の解釈のほうが正しいという意見を持っているのだ。しかし、いまさら最高裁をここでさばいてもしかたがないから、法律解釈論はやめますが、むしろ法の委任範囲を越えて無効だと、はたしてそういえるかどうかということについて、ぼく自身はこの最高裁判決と意見が違う。おそらく政府もそういう考えを前から持っていただろうし、いま長官が言われるように、政令の何とかということでそれが解釈できるのじゃないかと思うのです。  そこで、農林省についでに最後にこれを聞いておきたいのだけれども、農林省は従来個人に、旧地主に土地を返しておるのではないか、返しておったのではないか。それはいま問題になったような政令、違反をやりながら返していたのであるか、あるいはそうでなくて、ほかの形で、あるいはほかの立場、ほかの考え方で返しておるのか、その返し方はどういうことですか、今までの……。
  104. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 施行令、政令十六条四号の規定に従いまして、そのとおりに執行してまいりました。
  105. 竹本孫一

    ○竹本委員 十六条の四号だけで全部やったのですか。それ以外のものはないということですね。
  106. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 法律の八十条第二項に「政令で定める場合を除き、」旧所有者に払い下げることができるという規定がありまして、それは政令第十八条で規定がございまして、たとえば旧所有者がもう売り戻しを受けなくてよろしいと言ってきた場合とか、あるいは旧所有者の所在が不明で、公告をして一定の期間以上たったものといったようなものは、旧所有者に売り払う必要はない。  また、すでに買収した農地でございますけれども、一たんこの自作農創設のために農家に売り渡した、その農家が離農してしまったというような場合に再買収をすることになっております。この再買収をしました農地等は、一たんもう自作農創設という農地改革目的に供しまして、目的は達したのでありますから、再び買収した農地は旧地主に売り払う必要はないということでございます。  第三に、代地を提供したような場合につきましても、旧所有者土地を取得しておりますから、これは売り払いしないということになっております。
  107. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで終わりますが、法制局長官に最後に聞きたいのですが、私は八十条の第二項と、それから政令のいまの十六条の四号でなくて、十七条、十八条もあるわけだ。いま十八条の話がありましたけれども、そういうもので旧地主に土地を返すということは、八十条の二項とこちらの十七条、十八条の関係を見たところで、返すということは絶対に不可能であるという従来も解釈であったのか。すなわち、十六条の四号によってのみ、十七条、第十八条を除いては、やれないという解釈であったのかどうかという点を、もう少しこれは議論をしなければならぬと思うのだが、大臣が見えましたからやめますが、いままでは旧地主に、今度の、たとえば簡単に言えば値段の問題は一応別にしまして、返す方法として、旧地主に返すということは全然できないという解釈であるのか。いまのように離散したとかなんとか特別の場合を除いて、八十条の第二項を受けて、政令のどこが受けておるのか、あるいは全然受けていなかったのか、八十条の二項は……。この最高裁判決は、法の委任範囲を越えてこれだけのものを、この中には旧地主も含んで返さなければならぬという解釈になり得るわけだけれども、それを排除しておる。ことさらに狭めておる。だから、委任範囲を狭めたとか、越えたとかいうことになるわけですね。しかし、そうではなくて、八十条二項というものを従来も受けて、そういう形で返そうと思えば返す方法が法的にあったのではないか。絶対にそれは法的に不可能であって、今度の政令改正をやって初めて旧地主に返すことが法律上可能になるのかならないのか。その辺の法律解釈を承って終わりにいたしたいと思います。
  108. 高辻正巳

    高辻政府委員 ちょっとあるいは私が誤解している点があるかもしれませんが、私が理解しておるところに従って申し上げれば、八十条にせよ何にせよ、法律が「政令で定めるところにより、」ということを規定しておりますれば、政令委任の限度では、政府がどのようにでも政令改正してできるわけでございます。いまの政令の十六条四号を改正する以前は、「政令で定めるところにより、」というのは、その政令はそういう場合に限定するのが法の意図として適応しておる、ふさわしいということでそういう規定を置いているわけでありますから、行政の執行者はむろんそれによってやっていると思います。そのほかにはないのがあたりまえだと思っております。しかし解釈が変われば、今回の政令がそうでありますように、それに従った政令改正をして、それによって行政が執行されることになることは当然である。したがって、前には狭いと考えておったのが今度は広くなったという意味においては、変化があったと考えております。
  109. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで終わりますが、最後にひとつ重大な警告をしておきたいのです。もしそうだとすれば、土地収用でも、あるいはこの農地でも、取り上げて、その特定の目的にもうサービスできなくなった、機能しなくなったというものは返すのが、この法律がなくても、最高裁判決でもいっているように、返すのが当然でしょう。いまの所有権考え方からいえば、最高裁判決の中でもそういうことをいっている、返すのが当然だ。そうして八十条の二項はこれを明言している、明定している、明らかに返せと書いてある。しかるに、政令のほうはそれを受けて対応するものがなかったら、これは重大な問題であると私は思います。いずれあらためてその政治責任並びに法律解釈論をやることにして、本日はこれで終わります。      ————◇—————
  110. 毛利松平

    毛利委員長 この際、国有財産に関する件について質疑を暫時中断し、預金保険法案及び貸付信託法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案に対する質疑は、去る十七日すでに終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、両案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、預金保険法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  111. 毛利松平

    毛利委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、貸付信託法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  112. 毛利松平

    毛利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
  113. 毛利松平

    毛利委員長 ただいま可決いたしました両法律案に対しそれぞれ、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表し、藤井勝志君外三名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。広瀬秀吉君。
  114. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 ただいま議題となりました二法案に対するそれぞれの附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  二法案に対するそれぞれの決議案文は、印刷してお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  まず、預金保険法案に対する附帯決議案について申し上げます。  この法律案は、最近における銀行預金等の大衆化の進展、支払い手段としての地位の増大等にかんがみまして、預金者を保護するための措置であります。  しかし、預金者を保護する前に、保険の対象となっております金融機関の経営の健全化を推進することが大切であると思うのであります。  このような見地からいたしまして、特に信用協同組合につきましては、検査、監督等の充実をはかることで、経営の一そうの健全化を推進すべきであると思うのであります。  また、預金保険制度における金融機関から支払われる保険料の負担が、その金融機関の貸し出し金利にはね返り、あるいは金利引き上げの口実に利用されることのないよう、政府は、指導監督を巌にすべきであります。  次に、貸付信託法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案についてであります。  御承知のとおり、従来貸付信託は、融資対象の制約、店舗網等が関連いたしまして、融資先が重要産業等に偏重いたしておったのであります。  この法律案は、最近におきます産業構造の変化、資金需要の多様化に伴う国民経済的要請に即応するため、貸付信託の融資の範囲を拡大し、資金の供給を円滑ならしめることといたしておるのでありますが、しかし、今日の国民経済的要請は、固人の住宅建設、卸売り、小売り業等の流通機構の近代化のための融資に多大の期待があるところであります。  さらに、資金需要は中小企業の分野でも多くを望まれている実情でありますので、中小企業向け融資についても貸付信託が積極的に取り組むよう、政府は十分指導すべきである、このことを希望いたす次第であります。  以上がこの附帯決議案の提案趣旨であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げまして、簡単でありますが提案説明を終わります。     —————————————    預金保険法案に対する附帯決議(案)  政府は、預金保険制度創設にあたり、次の点について充分指導を行なうべきである。 一、信用協同組合については、検査、監督等の充実を図ることによって経営の一層の健全化を推進すること。 二、預金保険の保険料については、金融機関がそれを貸出金利の上昇に転嫁することがないように充分指導すること。     —————————————    貸付信託法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行にあたり、住宅建設、流通近代化促進等の趣旨に即し、個人、中小企業等に対しても貸付信託の資金が円滑に供給されるよう、充分指導を行なうべきである。     —————————————
  115. 毛利松平

    毛利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  おはかりいたします。  両案に対し、動議のごとくそれぞれ附帯決議を付するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいまの両附帯決議案に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。福田大蔵大臣。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの附帯決議に対しましては、政府におきましても十分尊重して、善処いたしたい、かように存じます。     —————————————
  118. 毛利松平

    毛利委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  120. 毛利松平

    毛利委員長 引き続き、国有財産に関する件について質疑を続行いたします。松尾君。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  121. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 私は前回ただしまして、農地局長あるいは政務次官等から十分検討したいという意見がございました。これらとあわせて、先ほどの問題について関連してお伺いしたいと思います。  まず農地局長にお伺いしたいのですが、今回までの経過を新聞報道等によってみますと、とにかく政令の撤回はできない、したがってこれに対しては何らか課税措置等で進めたいし、法改正としても遡及効果という点で問題があるので、課税措置等で考えたい、こういうふうに新聞報道等で承知しておるのですが、その法改正の問題、それから政令撤回の問題、それから課税措置という問題については、いま承知しておるとおりでよろしいかどうか、この点を……。
  122. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 政令の撤回ということになりますと、直ちにまたもとに戻りまして法律違反の状況が出ますので、これをやめることはできません。それから法改正につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、既得権との関連、横のバランスと申しますか、公平原則等に関連してきわめてむずかしいという判断をいたしております。それから税制改正云々につきましては、これは所管事項でございませんので論評を申し上げるわけにはまいらないと思います。
  123. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 法改正については横のバランスその他で非常にむずかしいというのですけれども、時間の関係で詳しくは申し述べられませんが、いままでの論議を見て、法制局長官のお話にもあったように、明らかに司法当局行政府との解釈を誤るような法律そのもの、条文そのものというのは、これは不備といわなければならないと思うのです。こういう不備でいままでずっと払い下げをやってきた。さらにここで、農林当局ではわずか三百三十ヘクタール、こういうふうにいっておりますけれども、これは中間のごくあいまいな数で、もっと多くなるかもしれないというようなことでありますけれども、非常に広範に影響を及ぼしている問題ですね。国会もあげていま取り組んでいる問題です。こういったことに対して、横のバランスがあるので法改正がむずかしいという、こういうことに対しては納得できない。したがって、現段階では非常にむずかしいということはわかりますけれども、前回も尋ねたのですが、昭和四十一年に報償金の問題がありました。これ以降、この八十条については十分検討しなければならなかったと私は思うのですけれども、この点についてもう一回伺いたいと思います。
  124. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 現行の農地法八十条は、いろいろと経緯がある問題でございまして、昭和四十一年に、政令改正して、今日の政令改正に比較的近いような形の改正をしようとして、同じようにいろいろ御批判を受けまして問題を生じた経緯もございます。それ以来、農地法八十条の改正問題を含めまして、この問題にどう対処するかということで、農林省としましては専門家を動員し検討を重ねてきたところでございますが、たまたま昭和四十二年に、ただいま最高裁から判決をいただきました事案が上告されましたので、その結論を待っていたわけでございまして、決してそれまで検討を怠っていたわけではございません。この判決をいただきまして、また十分にこの検討をしまして政令改正に踏み切った次第でございます。
  125. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 四十年に上告をして、そうして今回の判決が出た。その間に十分検討したけれども、その間は判決待ちですね。ところが一月に判決が出て、それ以降今日までの間——判決は一月だったですね。一月に判決が出た、そうしてこの政令改正の間がきわめて短時日である。非常に重要な影響があることを承知して、そうして判決を待って、もちろん判決が出るまでにはいろいろ予想して手も打たれたと思う。ところが、その判決を待って手を打つべきものが、いま現実に起きた問題としては、きわめてまずい、司法当局行政府解釈を異にするような形に終わっているということについては、もう少し期間を置いて十分に検討するのが本意ではなかったのか、これが本筋ではなかったかと思うのですけれども。その判決が出た、したがってすみやかに政令改正をやったというこの趣旨は、十分に検討しなければならない重要な問題との関連はどうなんですか。
  126. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 先ほど法制局長官からも御答弁ございましたように、判決によりまして違法な政令であるというふうにきめつけられました以上は、その違法な状態を一日も早く解消するのが政府の責務でございまして、そういう意味合いにおきまして、この改正を取り急いだ次第でございます。
  127. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それから政務次官に伺いたいのですが、前回の結論として、法改正を含めてその他十分検討したい。大蔵当局として検討された点について、特に農林省では主管局ではないから課税云々ということは考えていなかった、こういうことですけれども、私が承知しているのは、農林当局としては課税措置等で十分検討しなければならないということも論議されておると思うのです。しかし主管が大蔵省ですから、政務次官としてこの問題に対して、あの以降検討をされた結論、これを伺いたい。
  128. 中川一郎

    ○中川政府委員 前回の当委員会で松尾委員から御指摘がございまして、また世論も非常にきびしいものがありましたので、大蔵省としては検討したい、立法措置を含め、あるいは税制、すべてにわたって検討したいということをお答え申し上げました。その後も正直のところ、鋭意税制について、あるいは法改正について、何とかできないものかということで検討を続けております。しかし、農地法の扱いについてはこれは農林省が所掌であり、税制については大蔵省ということになりますが、先ほど竹本委員の御質問にも答えたのでありますが、農地法改正しないで、いまのままの農地法が正しいということの前提である場合には、その上で税制だけでやるのはこれまたなかなかたいへんだ。やはり農林省のほうの農地法改正ができるかできないか、農林省にお願いして、それと相まってどうするかということについてはほんとうに真剣に検討いたしております。また一方、党のほうにおきましても、これらを含んで鋭意われわれと協議いたしておりますが、立法技術からいっても、正直なところむずかしいところもあります。  これはかいつまんで申し上げますと、三千三百町歩ほど旧地主に返さなければならない土地がある。そのうち三百町歩程度、約一割程度は市街化区域あるいは市街化区域と同じ地域にあるのじゃないか。そうしますと、今回の最高裁判所判決によって、これらは権利として取得する、返してもらう。簡単にいえば二円六十銭で返してもらう権利が生じた。権利が生じたところへ、新しい法律でもってこれを召し上げるということになると、先ほど竹本委員はビルの高くなるのを低くする、これは権利の剥奪であるとはいえないし、何も悪くなるんじゃないのですが、高くなってしまったビルの権利を取ってしまった、この既得の権利を召し上げるということになると、これまた権利侵害ということで、憲法違反でやられると負けるというような話もいま真剣に詰めております。しかし、それをまた上回るような高度なものはないかということで鋭意やっておりますが、まだ結論を得ておりませんが、今後も引き続き皆さんの御意見も聞きつつ、まじめにこの問題と取り組んでまいりたい、このように考えております。
  129. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 私も結論からいいますと、いま竹本委員から出ました、法の不備によって起きた問題を課税措置でやるということになりますと、ますます問題はまずい結果を生む、こういうことで、この処置には反対なんです。  その前に一つ、新聞で、何とか課税措置を講じなければならないというような報道がありますけれども法制局長官のほうへは農林当局からこの件については御相談はないんですか。
  130. 高辻正巳

    高辻政府委員 この問題には当然法律問題を、いままで出ておりますように含んでおりますので、この事務的な検討の会には、事実相談を受けていることがございます。目下、その中身は検討中でありますので、結論が出ているわけではございませんと思いますが、いろいろ御相談を受けている。私は現実にその場におりませんけれども、そういうことは事実としてあると思います。
  131. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 もう時間になってしまいましたので、もう一度結論を述べて終わりにいたしますが、いずれにしても今回の問題の発端は八十条にあるわけです。したがって、この法改正は横のバランスその他でまずいという考えですけれども政府にはいろいろ問題はあろうと思います。しかし、いろいろな問題で立法府として議員立法という措置はありますから、これによって改めていくということは当然考えなければ、不備なんです。したがって、いま考えられているという、その安いものにとにかく高い金を払う、いわゆる不当利得あるいは一時高額所得ということに対して、やった者に対しては税で措置しようという考え方は、これは税体系を根本からくつがえす問題になります。したがって、こういうことは断じて考慮に入れない措置、このくらいに取り組んでもらうべきじゃないか、こういうことを強く述べて、私の関連の質問を終わります。
  132. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 小林政子君。
  133. 小林政子

    ○小林(政)委員 法制局長官にまずお伺いをいたしたいと思いますけれども、今回の国有農地売り払いの問題につきまして、政令改正の根拠というものが、最高裁判所判決が根拠になっているというふうに聞いておりますが、私は法律の専門家ではございませんけれども、法とは、私は少なくとも社会正義の立場に立ち、万人が納得をするというものでなければならないのではないだろうか、このように考えております。最高裁判決が具体的に社会にそれが適用された場合に、多数の国民の納得を得るというようなことどころか、今回の場合は、全く国民は、ばかげた改正である、こういう立場から非常に批判を強めているわけでございます。私は、特にこのような政治問題にまで現在発展をするような事態を招いております法というものが、はたしてこの最高裁判決が正しいというようなことが言い切れるものだろうかどうだろうか、非常に大きな疑問を持つものでございます。この点について長官にまずお伺いをいたしたいと思います。
  134. 高辻正巳

    高辻政府委員 ものごとにはいろいろな見方があることは当然なことであります。したがって、判決につきましてもよく、判決が出ますとそれに対する判例批評なるものがございますように、この判決自体についていろんな批評ができることは、これはもちろんだと私も思います。私も、それじゃこの判決をどう思うかということにつきましては、個人的にはいろいろな考え方がございます。しかしながら、やはり最高裁判所というものが三権のうちの一つとして、法の最終の判断を下すところとして憲法がきめておるわけでございますから、しかも最高裁判所としては正義に合致する考え方として判決を下したものでございますから、やはり憲法のたてまえからいいまして、法律の執行に当たる内閣としてはそれに従うのが当然であろう。もし逆に、この法律の正当なるというか、最終的に判断をされた結果に従わずして内閣法律を執行するようになりますと、これは法治主義、法律による行政、そういうすべての基本的な原則を破ることになりまして、これはそれこそたいへんな結果になるんじゃないかと、私どもはやはりそういう考えを持ちます。したがって、判決の中身について批判のあるなしを問わず——これは批判をするのはむろん御自由でございますけれども、やはり正規に最高裁判決として出ました以上は、内閣がこれに対して恭順の意を表し、これに従って行政を執行する、これがわれわれの責務ではないかというふうに考えるわけであります。
  135. 小林政子

    ○小林(政)委員 法制局長官は、最高裁判決ついて、法律を誠実に執行することを国は規制去れている、憲法の七十三条というものを用いて今回の政令改正が行なわれたんだというふうに言われておりますけれども、私は、憲法の七十三条を長官がおっしゃるならば、憲法の十二条には、この憲法というものがあらゆる国民の自由や権利を十分保障しているということが明記されていると同時に、この問題については公共の福祉のために利用する責任を負うものであって、みだりにこれを乱用してはならないということが規定されておりますし、また憲法第二十九条には、「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という規定もございます。憲法の問題を持ち出されるならば、先ほどのお話にもございましたように、少なくとも国民権利に関する問題でございますので、私は、七十三条だけではなく、これらの関連はどうなるのかという点についてお伺いをいたしたいと思います。
  136. 高辻正巳

    高辻政府委員 まさに御指摘のような憲法の条文があるわけでございまして、七十三条を引き出すまでもないと思いましたが、実はこれを引き出したのは、内閣の職責として法律を誠実に執行する意味合いにおいて政令改正したのだという点にだけ引用したわけでございます。おっしゃいますように憲法二十九条なり十二条なりに「公共の福祉」ということばもございますし、そういう規定との関連において、こういう場合には国民権利を制限することもかまわないのだ、乱用にわたる人の行動は抑制することを妨げないのだというふうなにおいが出てくる規定を御指摘になったわけでありますが、そういう規定があればこそ——これは常識的には規定がなくてもそうかもしれませんが、憲法上の担保としては、そういう規定があることによって法律国民の自由や権利を制限することができるわけで、行政の面でこれをやることはやはり慎まなければならぬことだと思います。  したがって、ただいまの法律がそういう判断を受け、しかも国法のたてまえからいうと、それが最終の解釈であるということになれば、内閣はそれに従って執行するのが当然であり、自分の考えどおりに、自分の好むところに従って法律を執行することは許されないことだと私ども考えるわけでございます。
  137. 小林政子

    ○小林(政)委員 最高裁の判例等においても、一たんきめられた内容が、その後の情勢変化等によってまた全く違った判例を生んでいるというような事実も私存じておりますけれども、きわめて短い時間なので、この問題で議論をしておりますと時間がほとんどなくなりますので、この点についてはまた後の機会に譲りたいと思いますが、いずれにいたしましても、社会経済情勢に合致しないような最高裁判決というものを生み出した農地法八十条、この問題がいままで全く放置されたまま長い間来たということに対する行政責任の問題についてどうお考えになられるか、見解を承っておきたいと思います。
  138. 高辻正巳

    高辻政府委員 これはまた別個のといいますか、もう少し高いところからというと変でありますけれども、お話をしないとならぬような気がいたしますが、要するに、八十条二項というものが好ましい規定であるかどうかということは常に十分に考えられてしかるべきものであることは当然であります。ほかの法律のすべての規定と同じように——憲法規定であってさえそうであると私は思います。しかしそういう見地からこれをながめてくる場合に、一つの例を申し上げますが、八十条二項というのは、先ほども申し上げましたことでありますけれども農地法が審議されていた昭和二十七年において現に問題にされております。社会党の方でありますが、衆議院においても八十条の二項は削除すべきである。参議院においても同様にそういう意見が出ております。しかしそういう意見が出されていながら、一部の修正は加えられましたが、いまの点の修正は施されないで現在の農地法が制定されたという経緯がございます。そうであれば、その法律改正されない限りはその法律規定に従って行政を執行するのが政府責任になってまいります。  ところで、それをなぜ改正しなかったか。これは、確かに改正をしないほうがいいというお考えがあったかもしれません。しれませんが、改正するという考えがあった人もいるかもしれません。しかしこれは政府だけを責めるのは——実は私とも法律をあずかっているほうからいいますと、法律をつくる権能を持っているものすべてがこれを負うべきではないかというふうに考えるわけであります。
  139. 小林政子

    ○小林(政)委員 私どもは、農地解放の目的というものが、地主的な土地所有というものを排除していく、こういうような立場に立って、この八十条の問題についても、すでに予算委員会等におきましても、八十条そのものが当時の旧地主との妥協の産物である、こういうような見解のもとに、今回これを削除すべきであるという点を強く要求してまいったところでございます。  特に私がふしぎに思いますことは、いま御指摘のように、四十一年にこの問題がいろいろと論議をされましたときに、各党からも具体的な意見が出ていたということでございますが、農地法の適用廃止の措置を担当農林省当局がなぜおとりにならなかったのか。あるいはまたその点について具体的に検討を進めたことがあったのかどうなのか。あるいはまたそれがされていないとすれば、私は行政の怠慢ではなかっただろうか、このように考えられますし、また今後もこの問題につきましては、国有農地の現状を考えますときに、これは法改正をしてでも払い下げるべきではないという見解を私どもは持っておりますが、これらの点について農林省当局の答弁をお願いいたしたいと思います。
  140. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 先ほどもほかの先生の御質問に御答弁したことでございますが、農林省としましては昭和四十一年以来この問題に取り組みまして、政令改正考えてきたわけでございますが、いろいろ経緯がございまして、その当時非常に問題になって、それ以来専門家を集めて研究を進めてまいりましたところ、昭和四十二年にただいま判決をいただいております事案が最高裁上告をされたという経過になりましたので、その判決を待って対処したいということで今日まで来ておるわけでございます。その間十分検討いたしてきたわけでございますが、判決が出て、政令法律委任範囲を越えるものときめつけられました以上、一日も放置は許されないということで改正に踏み切った次第でございます。
  141. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  142. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 では始めて。
  143. 小林政子

    ○小林(政)委員 それでは、本会議の時間がきてしまったということでございますので、一応ここで質疑を打ち切ることはけっこうでございますけれども、私はいまの問題につきましては国税庁並びに農林省当局、あるいは理財局などにつきまして何点か質問をいたしたいと思いますので、引き続き質問をお許し願いたいと思います。
  144. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後二時三十六分開議
  145. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、両案を一括して議題といたします。  両案につきましては、去る二月十日提案理由の説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  146. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 輸銀法による貸付金の利息の特例等に関する法律案を中心にして質問いたしたいわけですが、その前に、これと密接な関係にございます対外経済協力の諸般の問題について、若干質問をしておきたいと思うわけであります。  すでに、わが国においては一九七五年、昭和五十年までに対GNP一%援助をこれに振り向けたい。こういうような状況に方針も確定をいたし、また対外的にも、そういうことをそれぞれの国際機関等においても宣言をいたしておることは御承知のとおりであります。しかもまたそれを可能にする今日の日本経済事情にもある。外貨のたまり過ぎというような、かつて想像もされなかったようなことが今日現実の問題として出てきておるわけでありますから。  この問題はそういう観点において、そしてまた人類全体を通じてこれは非常に大きな、まことにグローバルな大構想の一つでもあるだろう。今日三十五億の人類が、まさに経済的な発展をすべてひとしく享受できるような世界をつくり上げる、そういう、まさに人類未踏の大事業でもある、このように考えるわけであります。そういう中で日本ではもうすでに方針を決定をしておるのでありますが、一方においては、経済協力を今日まで進めてきた過程において、いろいろな問題が持ち上がってきている。日本の企業進出等に対して、エコノミックアニマルであるというような、感謝ではなくて憎悪の的になるというような面があったり、あるいはまた、援助する側にとっては、その開発効果が遅々として進まないということにしびれを切らし、一部挫折感も出るというような状態があったり、あるいはまた、そのことによって被援助国の正しい意味での自助努力というものが阻害される面があるのではないか、あるいはまた、そのやり方いかんによっては被援助国における階級対立と申しますか、そういうようなものなどを激化させ、緊張をつくりだすというような面などもあるんだ。いろいろ非常にむずかしい問題がこの問題にはあると思うのでありますが、いずれにしてもわれわれは対GNP一%を海外援助に振り向けるという大方針をきめている。  そういう中で、今日までの経済援助に対する批判、そういうような中から、最も正しい、先ほど申し上げたような、非常に全人類的な理想に達するための正しい経済援助の進め方というものについてどうお考えなのか。こういう点について、まずひとつ大蔵次官にその点をお伺いをいたして、それからだんだんの質問に入りたいと思います。
  147. 中川一郎

    ○中川政府委員 昭和五十年までにGNPの一%を対外援助に使うということは、政府の方針としてそちらに向かって進めておるところでありますが、その間、せっかく援助をいたしましても、開発途上国からいろいろな批判があります。昨年の国会においてもこの点について数々御指摘がございました。それらについては、誤解の面もありますし、また反省しなきゃならぬ点もある。これらに改善を加えて、せっかく金を使うことでありますから、喜ばれる援助をして、世界の経済発展に寄与していかなければならぬという基本方針で対処しておるわけでありまして、今後もこの点については十分配慮してまいりたいと存じます。
  148. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この海外援助の問題について、これは政務次官にいまのような問題をお聞きするのは——これは本来総理大臣に伺わなければならない、そういう内容のものであろうと思うわけであります。  と申しますのも、日本の場合にこの海外援助というものが、非常に各省にわたってそれぞれ権限が分割されて、いわばばらばら行政になっている。こういうようなこともありまして、統合的に、統一的に、あるいは一元的にと申しますか、そういうような立場で——これだけの大方針を貫徹するためには、今日のような機構の分散というようなものの中では、ほんとうにどこが一体この海外経済協力というものについての責任官庁であるのか。統一された意思のもとに、そして一元的な方針のもとに、そしてまた相手国との関係等についても各省ばらばらではなしに、集中された一つの機関というようなものが、相手国の立場に立ってもたいへん便利であることにこれはまず間違いのないところでありますが、そういうような点がいまだに改善をされてないということはいろいろな場面で指摘をされておるところでありまするけれども、これがなかなかできないということになりますと、この大蔵委員会でありますから、とりあえずこれらの問題について、一体批判の問題点というのはどういうところにあったのか、いままでの日本の海外経済援助に対する批判のおもなるものはどういうものであったのか、そしてそれを克服するこれからの海外経済協力の一番留意すべき問題点というものをどういうように大蔵省として把握していかれるのか、この点をまず大蔵省にお聞きし、さらにまた、直接海外で相手国との折衝に当たる外務省からもその点をお聞きいたしたいと思います。
  149. 稲村光一

    ○稲村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、いままでの援助の問題につきましては、この援助の問題が、対外的に外交問題であるということから、あるいは対内的には財政金融に非常に関係がある、また通商政策とも非常に関係がある、いろいろな意味におきまして各省のそれぞれの本来の業務と非常にその関係がございますので、それぞれが何と申しますか、各省のそれぞれの面で関連をいたします事項が多うございます。したがいまして、その意味でわれわれのほうといたしましても、従来とも連絡を緊密にいたしまして遺漏のないようにはかってまいっておりますけれども、場合によりましてはそれがやや決定に時間がかかるとか、あるいは窓口がたくさんになっているというようなことで御批判があったことは事実でございます。その意味におきましては、われわれは今後ともそういう点を十分、運用におきまして改善をはかってまいりたいというふうに考えております。  それから、先ほど来種々、対外経済協力審議会その他の御意見もございます。そういうものを一本化したらどうだというような御意見も出ておるわけでございますが、われわれのほうといたしましてはいままでのようなことで、現在の機構で十分に運営の改善をはかっていきたいと心がけておりますと同時に、今後将来の問題といたしましては、そういう御意見等も勘案いたしまして、もしそういういい考え方ができればひとつ検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
  150. 沢木正男

    ○沢木政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。  外務省といたしましては、国際的に、日本の援助につきまして毎年OECDの開発援助委員会におきまして年次審査を受けております。そこの場においていろいろな問題点が指摘されておりますが、まず第一は、援助量の拡大の問題でございます。これは、七五年までにGNPの一%援助を実現するということを宣明いたしておりますけれども、現在すでにGNPではアメリカに次いで自由世界で世界第二位である日本が、六九年度の援助実績の総量におきましては第四位である。これじゃいけないんで、さらにGNPにふさわしく量をふやしてほしいというのが、国際機関でいわれております第一の要望でございます。  そうして、援助の質に関しまして、援助の量をふやしていく過程におきまして——日本の場合、政府開発援助が六九年の実績では約三分の一でございまして、輸出信用に基づくものが約半分であります。そこで、将来援助量をふやしていく過程において、政府開発援助をもっとふやしていかなければならないという問題がございます。具体的には、その政府開発援助を構成いたします技術協力、あるいは賠償が漸減するのに伴って無償援助を拡大したい。それによりまして、政府開発援助の総量をふやすように持っていきたいというふうな考え方を持っておるわけであります。  それから、二国間の直接借款におきまして、日本の援助条件が各国に比較してきわめてきびしいということが批判の対象になっております。御承知のように、DACは六五年に条件目標を設定いたしておりますが、日本の場合、いまだこの条件目標を実現いたしておりません。さらにDACでは、大部分の国が六五年の目標を達成したとしまして、六九年の二月に新しい、さらに高い緩和された援助目標を設定しておるわけでありますが、われわれとしましては今後できるだけ日本の援助条件を援和していく必要があるわけであります。  それからさらに、援助の地理的配分につきまして、日本の場合、あまりにも援助がアジアに集中し過ぎておる。もう少しアジア以外の地域にも援助を拡大すべきであるという批判がございます。したがいまして、今後アジア以外の地域、ラテンアメリカあるいは中近東、アフリカというようなところにももう少し幅広い援助を行なっていきたい、国際的な批判にこたえましてそういう対策と方針をもって臨みたいというのが現在われわれが考えておるところでございます。
  151. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 通産、経済企画、両省庁からも政府委員が来ておられますから、同じ質問に対しての答えを聞かせていただきたいと思います。
  152. 後藤正記

    ○後藤政府委員 通産省の経済協力に対する立場を御説明申し上げます。  先ほど稲村局長からお答えありましたように、経済協力というのは、先生御承知のとおりにきわめて多面的な面を持っておりまして、対外的な面では外務省、それから国内的な財政金融に関する問題としては大蔵省、しかしながら経済協力の中身というものは通産省の所管いたしております貿易政策、さらにまた産業政策というものと密接に関連をいたしております。したがいまして、私どもも、たとえば一つの発展途上国に対しまする経済協力としての意味を持つ海外投資の問題につきまして、実際に出ていくのは民間の企業もしくはその複数でありますので、大蔵省で海外投資の許可をされますときに、その内容について、そういったところの国内の生産の関係、需給の関係等を産業政策の一環として考慮いたすわけであります。  さらにまた、発展途上国におきまするいろいろなプロジェクトの伸展その他の必要な機材等、延べ払いによる信用供与をいたしまして——これは主として日本輸出入銀行とかあるいはまた海外経済協力基金とかいうような金融機関と、さらにまた民間の金融機関との協調によって行なわれるわけでございますが、その出ていきます機材というもの、特に最近比重を高めておりますプラント類等の延べ払いについて、全般の鉱工業生産の分野の中において、今後いかなる分野をさらに伸ばし、いかなる分野について海外に市場を求めるかということは産業政策、貿易政策と密接に関連いたすところでございます。  したがいまして、私ども通産省の固有の仕事というものと経済協力というものは密接に関連をいたしておりますので、その意味におきまして関係所管庁、先生御指摘になりました経済企画庁、大蔵省、外務省ときわめて急激に連絡をとりつつ経済協力に関心を向けておるというのが現在の通産省の立場でございます。
  153. 新田庚一

    ○新田政府委員 先ほどおっしゃいましたように一九七五年にGNPの一%と申しますと、新経済社会発展計画によりますと三十九億四千万ドルという数字になるわけでございます。それで、今後発生する問題点としまして、量の問題のほかに条件の問題あるいは援助協力の形態の問題とか地域配分の問題、いろいろございますが、その問題の一環としまして、御指摘行政機構の問題がいろいろ問題になっておるわけでございます。諸外国の例を見ましても、先ほど来申し上げておりますように経済協力という行政は非常に多面性を持っておりまして、たとえば一九六一年西独で経済協力省というものを設置したのでございますが、経済省、大蔵省、外務省、各省の権限集中というものが必ずしも十分にいかないということで、連絡会議をつくって、それを中心にして運営しておるというふうな実情でもあるわけでございます。あるいはアメリカではAIDを中心にしてやっておりましたけれども、最近これを資本協力、あるいは技術協力、あるいは投資援助という項目別に機構を分散しようという動きも一方にあるわけでございます。それぞれその国の実情に即しまして、こういった多面性を持っておる新しい行政組織をどうするかということについて、各国ともいろいろ苦労しておるというふうに見受けられるわけでございます。  ただいまお話がありましたように各省が、外交あるいは財政、国際金融、通商、貿易、それぞれの立場からこの問題を取り上げておるわけでありまして、経済企画庁としましては、この間の意見の食い違いがありました場合にできるだけそれを調整するように最大限の努力をしてまいっておるわけでございますが、必ずしも十分とは考えておらないわけでございます。今後とも各方面の御意見を謙虚た伺いまして運営の改善に努力してまいりたい、かように思っているわけでございます。
  154. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまの経済企画庁のお話によりますと、ドイツ等では経済協力省をつくったけれども、各省に分散されておった権限、役割りというようなものを集中すると、斉合性のある統一的な政策がそういう省から打ち出されていくということにも必ずしもなっていないようだという御説明があったわけであります。  とにもかくにも、外務省なりその他からいまお話があったわけですけれども、今日、日本の海外経済援助というものに対するいわば批判として出されていることは、政府開発援助の比率が低過ぎるではないかということ、それから平均金利その他返済期限、据え置き期間、こういう条件がきびし過ぎるという問題であります。さらに技術援助の比重がこれまた非常に低い。DAC全体では政府援助の二六・二%なのにかかわらず、日本の場合には五・九%ぐらいにしかなっていないとか、あるいはまた輸出延べ払い信用の比重がきわめて高い、いかにもエコノミックアニマル的であるというようなことがいわれている。またそういうようなことを通じて、そういう援助を与えている国との間に貿易の関係をめぐってたいへんなアンバランス、三倍、五倍というような一方的な出超になっているというような事態を招いている問題、さらに無償援助が少な過ぎるというような問題などがあるし、さらにもっと深いところで言うと、日本の海外経済援助という中に入れることが適切かどうかはわからぬけれども、文化教育の面における援助、これは経済援助というようなものの言うならば基盤づくりのようなものでありますが、そういうものに対しての援助が非常に少ないというようなことなどが批判としてあげられているということがほぼ常識であろうかと思うのです。  こういうようなものに対して私どもがこの委員会質問をしますにあたっても、経済協力基金はこれは経済企画庁だということになるし、貿易の関係は通産省だし、さらに技術援助というような問題の特に研修の問題、訓練の問題などになると外務省あるいは文部省などにもつながってくるというようなことで、これは国会審議上非常に不便を感ずるということではなしに、こういうような批判に対して統一的に政策をこれから進める場合、しかも今日、六九年段階では十二億六千三百万ドルくらいだというのだけれども、これを年率二一%以上のテンポで伸ばして、大体四千億ドル経済が七五年に実現するだろう。いえばその一%で四十億ドルだ。この四、五年の間に三倍にもしなければならぬという、こういうような重要な段階において、日本円に直しても一兆円をこえる援助をしていくというような、一兆三千億にも近いような援助をするということについて、これらの批判点を踏まえながら、正しい国民的な国益の追求ということもさることながら、対外経済援助なんでありますから全人類的な視野で後進国を引き上げていかなければ、やはり世界の緊張の根もこれをなくすることはできないというような、そういう次元の高い、また大きい立場というようなものも考えると、何らか、いまのようなばらばらのままで——まあ経済企画庁がそういう場合には中心になって調整をはかるというわけでありますが、そういう点でも、われわれは少なくとも経済協力庁というようなものが、これは総理の諮問機関である対外経済協力審議会ですか、そこでの確たる答申段階では、中間答申のようなことではあるけれども、そういう方向が当然望ましい。まあ諸外国の例でそういう方向にいったけれども必ずしもうまくいかないというような面なども、知恵を出して調整をはかっていくならば、やはり一つの大きな前進であろうと思うわけでありますけれども、そういう問題についてどこが一体その旗ふりをし、そういう方向に進めるイニシアをとるのか。これは経済企画庁、そういうお気持ちがあるのでございますか、その点お伺いしておきます。
  155. 新田庚一

    ○新田政府委員 ただいま御指摘がありましたように、経済協力審議会から、省あるいは庁の設置について検討すべきであるというふうな中間答申が出ております。こういった機構の問題を含めまして、今後七〇年代の経済協力を進めていく場合に問題となる援助の機動性あるいは計画性、条件の緩和、そういった一連の問題を含めまして逐次成案を得るということで、現在各省の連絡会議を組織しまして、一連の問題の検討に入っているということでございます。
  156. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうものを臨時的なそういう場当たり的なことではなしに、そういうことをせざるを得ない情勢というものは、より望ましいもう一つの方法があるはずでありますから、そういう方向に向かって事態を進展させていただく、新しい四十億ドル援助というような事態にふさわしい体制づくりというものについても、各省ともセクトを排して十分真剣な検討をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。この点についての大蔵政務次官考えはどうなのか、その点をひとつ承っておきたい。
  157. 中川一郎

    ○中川政府委員 この点については御指摘のとおりでありまして、四十億ドル援助ということもまあ遠くない、そういう事態に備えて、また援助の内容についての改善はさることながら、これを受け入れる機構、取り扱う機構についても、政府としても前向きで十分検討してまいりたい、このように存じます。
  158. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次の質問に入りますが、政府の開発援助比率が低いということに対して、あるいはまた平均金利等の条件が非常にシビアであるというようなことに対して、どういうように対処していくつもりがあるのか、この点はどこか——やはり国金局長ですか。
  159. 稲村光一

    ○稲村政府委員 ただいま御指摘の問題でございますが、日本の援助の条件がきつい、あるいは政府開発の援助の比率が少ないということに関しましては、先ほど外務省から御説明いたしましたとおりDAC等においても批判が出ておるようでございますが、しかしいずれにしましても、このGNPが政府開発援助の比率を高めるという問題、それから援助の条件を改善していくという問題は、いずれも財政資金と非常に関係が深い問題でございます。したがいまして、これは国内におきます公害問題その他非常に膨大な財政需要との関連において、毎年予算編成のときにおいて考えていかなければならないという、そういう問題でございます。それを踏まえつつわれわれのほうといたしましては、しかしいまのような国際的な批判もございますので、できる限りそういう点で政府開発援助の比率を高めていくということと、それから条件を緩和していくという、両方ともできる限りのところで努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  160. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういう点でも、もちろん対外援助というものは国内の政治、国内の経済政策、財政政策、こういうようなものと離れて抽象的に存在するものではないわけですから、そういう配慮というものは十分あってしかるべきなのでありますが、国際的にやはりDACからもそういう点でいろいろな指摘を受けておる、そういうような状態、しかもエコノミックアニマルだという相手国からの、かえって援助をしながら俗なことばでいえばうらみを買うような、あるいは感謝もされないようなことがいろいろな面で出てきておるというようなことを考えれば、やはりこういう大型援助を、年間四十億ドルもするんだという時代を迎えて、しかもGNPがもう自由世界で第二位だというようなことになってまいりますと、その責任上からも少なくとも一つの目安というようなものも——国際的には経済の国際化といわれる今日でありますし、この対外経済援助等もやはりバイラテラルだけではなくて国際機関を通じてやるというようなこともいわれておるわけでありますから、そういうような中で、やはり二国間援助の場合でも、だんだん比重が少なくなるにしても、相手国からほんとうに感謝して受け入れられるような、そうしてその経済効果、十分援助の効果が得られるように条件というものはやはりゆるめていかなければ国際化にも対応できないわけでありますから、そういうような面についての何らかの目安、目標、こういうようなもの、そういう構想は持ち合わせございませんか。
  161. 稲村光一

    ○稲村政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、国際的な一つの目安といたしましてはGNPの〇・七%というのが出ております。ただ日本の現状では、四十四年の実績が出ておりますが、これによりまずと〇・二五くらいだったと思いますが——これは政府開発の援助がGNPに占める比率でありますが、それを実はどこまで上げるかという点につきまして、あるいは目標年次をいつに置くかという点につきましては、政府におきましてもいろいろ検討いたしましたけれども、先ほど申し上げましたとおり、それぞれ財政資金の問題に密接に直接関係いたしますので、具体的にいつどの程度まで上げるというような目標を設定することは、いまの段階においてはできにくいということでございまして、ただ現在の政府開発援助がGNPの〇・二五%程度というところを、少しでも努力いたしまして毎年引き上げてまいりたいというふうに考えております。
  162. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 満足ではありませんが、次に質問を移します。  通産省に、貿易における低開発国のウエート、また輸出入のアンバランスの問題についてちょっと質問いたしたいのですけれども、対東南アジア関係で、一九六六年当時輸入率が一・五六対一、これが一九六九年になりますと一・八七対一だ。対アフリカの場合、三・一四対一が一・二六対一、これはまあ若干改善されたあとがあるのですが、中近東が〇・三対一、これはまた逆であります。ラテンアメリカの場合も同様でありまして〇・八対一、こういうようなことになっている。問題なのは特に台湾、韓国。台湾は輸出が輸入の三・四倍にのぼっている。韓国の場合にはこれが五・七倍である。ヴェネズエラ等、これは二国間になりますけれども、四・七倍、香港に至っては九倍、レバノン等が十五・四倍という、こういう異常な数字が今日出ておるわけです。  レバノン等につきましては一たんさておくとしましても、一番近い台湾、韓国、しかも日本の海外援助というものが一番多く、政府借款においてもあるいは民間ベースにおいてもつぎ込まれておる、日本の資本がいろんな形で一番入っている、こういうようなところでこういう状態になっている。これはどういうところにこのような理由があり——輸入が少なくて輸出が多いからそういう状態になるんだというだけではなしに、その数字そのものなんだけれども、貿易関係責任官庁としてこれをどういうように評価をし、こういうことが望ましくないことははっきりわかっているだろうけれども、こういう事態はそれじゃどうしたら改善できるのか。これらの問題についての通産省としての考えはどのようなものでありますか。
  163. 後藤正記

    ○後藤政府委員 仰せのとおり、日本の貿易構造は、主として発展途上国、先生が御指摘になりましたような地域に対しましては輸出超、しかもそのアンバランスが地域によりましては年々さらに拡大してきているということは事実であります。   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  この問題でございますが、現在の日本の貿易構造というもの、それはおのずからまた世界全体の中における日本の産業構造というものと密接な関連をいたしております。つまり非常に高度の、付加価値の高い製品というものは、たとえば西欧諸国その他の、自分のところよりも技術水準の高いところへは出ていかないわけであります。おのずからそういったものは比較的高度に工業化されていない発展途上国のほうへ向いている。発展途上国との間にできる限り貿易のバランスをとっていきたいということは確かでありますが、しからば日本の現在の国内産業との関係において、コマーシャルベースで買い得るものがどれだけあるかという点を追及してまいりますと、地域的に見まして、先生御指摘のようなアンバランス状態に落ちつくということが結果として出てまいるわけであります。つまり、買いたいにも日本の現在の経済で希望しているものがないということであります。これはまあ地域により国によって違ってまいります。その国自体の発展の段階によってこれは変わってまいりますが、しばしば、特に東南アジア諸国、日本と最も密接な近隣関係にあるこれらの国々から非難の対象となっておる点も、まさに先生御指摘のとおりでございます。  さらにまたこれと援助との関係でございますが、たとえば先生が例におあげになりました韓国、台湾等に対しまして借款を供与し援助を実施するとなってまいりますと、その内容といたしまして、当然こういった発展途上にある国はその国の工業化を促進するために生産資材というもの、重工業製品の機械類、そういったものを輸入するわけであります。したがいまして、ある意味から申しますと、そういった援助を与えることが日本からの輸入をより促進して、結果においては片貿易をさらに進める、こういった結果が出てまいるわけでございまして、この辺、二律背反的な非常に苦しいジレンマがあるわけでございます。しかしながら本来、貿易というものは二国間のAとBとの国においてバランスがとれるという性質のものでないことは、これは貿易の本質の問題でございまして、一つの国の立場といたしましては、貿易のバランスというものはグローバルな世界全般、全地域を一括して考えた上でとらざるを得ないのが貿易の本質であると考えるのでございます。ただ、しかしながら、そういったことを申しておりましても、現実に日本と一番経済関係また歴史的にも関係の深い東南アジアをはじめとする近隣諸国から、その片貿易に対するこれが是正要求が出ておることも確かでございます。主としてこういった国におきましては、まだ現在工業段階が進んでおりません。持っておりますものは一次産品が主となっております。こういった国々からでき得る限り一次産品を日本に買えるようにする、いろいろな方法を講じて日本経済組織、経済機構の中に乗り得るような形にその一次産品が入ってくるようにする手を打ちますと同時に、援助その他を通じまして、そういった国々がさらに工業的にも進歩し、たとえばそういった発展途上国では人手が非常に余って労賃が安い、しかしながら一方日本においてはあるいは立地の問題あるいは人手不足の現象等も現実に顕現して、あらわれてきておるのであります。したがいまして、そういった主として発展途上国が一番取り組みやすいような軽工業分野とか人手の労働集約的な産業とか、そういったものは、日本経済の実情が許す限りにおいて、漸次国際分業的な立場においてそういった国々にシフトさせる、そしてそういった国々の産品はこちらで買ってあげられるようにするというような方向に漸次、これは自然の趨勢としてもなっていくと思いますけれども、貿易政策というものを取り扱っていく上におきましても、産業政策の一環としてそういった方向に向けるように考えていくことが大切であると存じます。  片貿易問題という点は、ただに経済的な問題だけに限らず、あまりにも特定の国との間にアンバランスが出てまいりますと、その国の国民感情を刺激いたしまして、先生御指摘になりましたように、何か日本は自分の国に物を売り込んで利潤を吸い上げることばかりやっておる、こういったようないろいろな反発を招いてくるわけであります。したがいまして、そういった点をも考慮し、漸次——一挙に両方スクェアにするということはなかなかこれは事の本質上出てまいらないわけでございますが、日本の国の産業政策、貿易政策というものを通じて、漸次是正の方向に進めていくことが貿易政策の目標とするところでもございますし、それがまた、ただ援助という、先進国側から一つのメリット、恩恵といっては語弊がございますが、そういったものを受けるということでなしに、自分の足で立って、自分自身の力によって経済発展を遂げて、発展途上国が先進諸国のレベルにまでアップしていくというような方向を助長するゆえんかとも存じますので、そういった点を十分に留意しつつ、今後の産業政策、貿易政策というものは進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  164. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 企画庁にお伺いしますが、海外経済協力基金の六九年度、昭和四十四年度直接借款は千九十億と聞いておるのですが、そのうち輸銀貸し付け利子に対する特例法がかかっている、その根源になっているインドネシアに五百二十八億出されている。それからいま貿易のアンバランスについて指摘をした韓国に対して四百三十億つぎ込んでおるわけですね。いま通産省から答弁のあった出超が四・七倍というようなことには、これは韓国の工業の発展の度合い、それからそれがどういう発展のしかたをしているかというようなこと、そういう地理的、歴史的、さらに経済的な諸条件もあるけれども、こういうことは望ましいことではないということについてはいまおっしゃったとおりだろうと思う。そういう中で、一千九十億のうちで四百三十億もそういう韓国に直接借款を認めていく、こういうようなことが、いま通産省が述べた考え方に、この四百三十億というものがどういう形でそういうものの是正というような方向に発展をしていくということになるのか。そこらあたりの関連をどう考えてこの四百三十億を使われたのか、御説明をいただきたいと思います。
  165. 新田庚一

    ○新田政府委員 先生御指摘の四百三十億、ちょっと私数字を持っておりませんが、インドネシアにつきましては、御承知のスハルト政権への政権交代がありまして、六八年以降経済の再建安定のために国際的なコンソーシアムを中心として経済協力をやっておるわけであります。経済協力基金としましては、実は本格的な活動を始めましたのは昭和四十年、韓国との条約に基づく無償経済協力以来、特に四十三年からインドネシアのそういった経済協力をやることになりました。したがいまして、直接借款の残高としましては韓国とインドネシアが相当なウエートを持っていることは事実でございます。こういった国につきましては、やはり外貨事情あるいは発展段階、そういった点がありまして、経済協力の条件そのものがだんだんソフトになっておるというようなことから、従来輸銀の融資じゃなくて経済協力基金を使うというふうに相なった関係で、そういったウエートが加わったという面が出ているのではないかと思います。先ほどの一次産品の貿易の問題で、こういった国が逐次経済発展の過程になりますと輸出競争力というものがつきまして、先ほど後藤局長が言いましたような輸出振興を通じて外貨の獲得というふうに進んでまいる、そういうふうに確信しているわけであります。
  166. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこのところをもう少し具体的に述べてください。いま締めくくりのところで言われたことで、この四百三十億——これは経済協力白書に出ている数字でありますから間違いないと思うのでありますが、この四百三十億が具体的にどういうことで、いま最後におっしゃった輸出力というようなものが出てくるところに結びついてくるのか。具体例をあげて、この直接借款の使い道を通じてどういうことになるのかということについてひとつ述べていただきたい。
  167. 新田庚一

    ○新田政府委員 インドネシアに現在やっております経済協力案件は、通信とか発電とかあるいは交通だとかいった、現在の段階では主としてインフラストラクチャーな公共投資が中心になっております。したがって、若干輸入の節約とかあるいは輸出振興的なプラント的なものがございますが、現在のところはそういったものが中心になっております。インドネシアの経済事情そのものがそういった基礎的段階を早くテークオフしなければいけないという段階にあるものですから、これがやはり将来の輸出競争の基盤にはつながると思いますが、当面はそういった状態でございます。
  168. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま私が申し上げたのは、四百三十億についての対韓国直接借款の問題、特に貿易のアンバランス、いわゆる出超が四・七倍にもなっておる韓国との関係において、四百三十億そこにつぎ込んでおる。この直接借款がどういう部面に投資され、それがどのように韓国の対日輸出入バランスを回復するのに役立つのか、その具体的な問題を聞いたのであって、この点についてもう一ぺん御説明をいただきたいと思います。
  169. 新田庚一

    ○新田政府委員 韓国につきましてもやはり、先ほどインドネシアのときに申し上げましたように、鉄道とか港湾とか電力といったものがかなり多うございますが、プロジェクトにつきましても、中小企業振興とかあるいは輸出産業の振興とかあるいは製鉄所の建設とかといったことで、輸入の防遏、それから輸出振興に、インドネシアよりももっと早くつながるようなプロジェクトが多いように思います。
  170. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 十分な答弁ではありませんが、個別の問題に入りますとまた幾ら時間があっても足りませんので……。  「海外経済協力基金は、東南アジア地域その他の開発途上にある海外の地域(以下「東南アジア等の地域」という。)」こういうことで、なるほど東南アジアというのが特に取り上げられて、「東南アジア」と「東南アジア等の地域」、こういっておるものですから、どうしても東南アジア、特に韓国だとかインドネシアとか、そういうようなところにあまりにも片寄り過ぎておる。そのほかの地域というものも同列に扱っておるのだと思うのでありますが、その点具体的な数字を見ましても、日本からの援助を地域別に見ますと、アジアが八三・二%、ラテンアメリカが六・七%、欧州が五%、アフリカが四・九%というふうに非常に格差があるわけです。地理的な関係、あるいは国際的にも大国がある程度その地域を分担する、何らかの国際機関においてそういう取りきめでもあってこういうことになるならいいのですけれども、東南アジア、いわゆる大東亜共栄圏というようなもの、しかもその裏に軍事的なもの、政治的支配というものとどうも結びついた形でこういうものが発展するということについては、やはりわれわれ自身も危惧の念を抱くし、相手国自身がそういう面で三島事件なんかに過度の神経をとがらす。経済協力とも関連して、そういう土台の上に三島事件に対して非常に東南アジア各国が敏感であったというようなことにもなりかねないと思うのです。  この経済協力基金等につきましても、直接借款千九十億のうち九百何十億という、もう九割近いものをそこに持っていくということについては一体どうなんだ。こういう点については外務省としても、いわゆる東南アジア地域以外のラテンアメリカとか欧州関係あるいはアフリカ、中近東なども含めて、いろいろやはり外交折衝の中でこういうものに対する批判なり、あるいは批判の裏返しとしての援助要請というようなことがそれぞれあるだろうと思うのでありますが、こういう事態は、日本の将来を展望した経済協力の姿の中で、これほどアジアに集中し、東南アジアに集中するというそのことについてはもっと考え直さなければならない。それぞれの開発途上国の要請というものに一番敏感に接触をしているのはやはり外務省だと思うのですが、そういう角度において、この問題についてどういうようにお考えになられますか。
  171. 沢木正男

    ○沢木政府委員 先ほどお答え申しましたとおり、外務大臣の今年度並びに昨年度の通常国会におきます外交演説の中でも、援助をアジア以外の地域に拡大したいという外務大臣の方針を述べておられますが、現在そういう方針のもとに、すでにラテンアメリカ、中近東、アフリカ等についても援助を拡大すべく活発に動いております。  それから経済協力基金の融資第一号はスエズ運河でございまして、東南アジアではございません。それからブラジルのほうのウジミナス製鉄所に対する投資もいたしておりますし、経済協力基金も、直接借款では現在のところアジアしかございませんけれども、一般案件で扱っておる中にはアジア以外の地域も含まれております。
  172. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その点では外務大臣が言明しましたように、そういう方向に私どももいくべきである。あまりにもこの援助が片寄ってはならない。やはり世界的な視野で、敏感に開発途上国の要請をキャッチしながら、弾力的にこういういまの数字の実態になっているものを改善していくという方向に十分意を用いていただきたい、このように思うわけであります。  通産省にお伺いしますが、特恵関税が供与されるということになって、いまの対韓国との関係においてそういう輸出入バランスがきわめてアンバラになっている、この改善をするために、この特恵供与というものをそういう意味から通産省としては評価しているかどうか、まずこの点を……。
  173. 後藤正記

    ○後藤政府委員 おそれ入りますが、特恵を私直接に担当いたしておりませんので、細部にわたってお答えを申し上げるわけにまいりませんが、特恵の問題もこれまたやはり広い意味におきます経済協力と申しますか、かねがね国連開発の十年以降、いろいろ低開発国側の反発等、まあナショナリズムの高揚とかいろいろな問題がありまして、むしろバイラテラルな、つまり二国間における援助、与えるもの与えられるものといった感じよりも、何らかの一つの機構、スキームを通じた形で、特に特定の国から与えられるという形でなしに、むしろ多角的なマルチの場から発展途上国が、恩恵と申しますと語弊がございますが、そういうメリットを受けまして、それが自立の一つの足がかりになっていくというような方向へ今後の経済協力、南北問題というものは進むべきである、こういうような意見がだんだんと強くなってきております。その意味におきまして、たとえば特恵というもので一定のグループのところが一定のグループに対してこういう恩典と申しますか優遇措置を講じまして、この二国間のきわ立ったぎすぎすした関係じゃなしに、発展途上国に経済自立への道を与えるようなやり方というものは、そういった経済協力的見地から見ても私は望ましい行き方である、かように考えております。
  174. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 韓国との関係において、新聞の報ずるところによると、日本の企業が特恵問題を中心にして、韓国の安い労働力というようなことで、これに特恵が与えられるということになりますと甚大な影響を受ける産業が、たとえば合板であるとか織物関係であるとかあるいはしぼり業者など、その他いろいろそういうようなものがあるわけです。そういう人たちがどんどん韓国に企業進出をして、加工再輸出、保税加工貿易というようなものに乗って今度は逆に韓国へ日本の企業がどんどん進出して、いわゆる特恵ヘッジとでもいうような形で行って、そして安い労働力を使って生産をし、それを国内に持ってくるというようなことでみずから生き延びようというような——これは通産省でもこの国会に、そういう被害甚大なものが転業の特別の計画をした場合に対するいろいろな政策を出しているわけでありますが、そういうような情勢を背景にして韓国にすさまじい進出をする。七〇、七一年にわたってそういう事態がもっとひどくなっていくだろうと思う。  これは日刊工業新聞の十一月九日の記事でありますが、「日本企業韓国への進出活発に すでに三十五社も 過去五年分に相当 “特恵の恩典”ねらう」、こういうようなことでどんどん進出をする。あるいはこれも十月三十一日の新聞でありますが、「東芝は韓国に焦点 資本参加など検討急ぐ」。また一月十六日の日刊工業によると「韓国に電卓の合弁会社 当初は月産一万台」とか、あるいは「村山大島つむぎ韓国製品が市場に 地元業者はビックリ」、こういうような記事が出たわげであります。また「韓国でYシャツ加工 原反輸出、製品を輸入」、「韓国に合弁会社 伊藤忠が認可申請 合繊の縫製加工で」、「続々と国際分業  埼玉県の縫製各社 共同で韓国に合弁」、化学繊維関係でも、「韓国に新会社設立へ 北播織物工業協組 成都産業と合弁 ギンガル製品年末から生産」というようなことがずっとここ出ておるわけであります。こういうようなことはやはり相手国の低賃金をねらって進出をしているというようなことで、朝日新聞の昨年十二月二日の記事によりますと、ソウルで、ある織物工場で工員がの低賃金に抗議して焼身自殺をしたというようなまなましい報道もあるわけですね。  こういうような事態と、特恵関税の実施によって被害の及ぶ日本の企業がそういう形で韓国に企業進出するというような問題などについては、日本の政策当局として一体どう、そういう事態に対して指導をし、監督をされ、あるいは規制なりをするお考えですか。そういうことについてはもう野放しで、どんどんそういう形で向こうは来てほしい。もっと工業製品を伸ばしていかなければならぬ。加工再貿易で輸出をやったということになって、さっきの四・七倍はこれで是正される。あるいは向こうは最近どこかに自由地域を設定するというようなことなんかもあるようですね。そういうような形でどんどん来てもらいたい、そしてそれを輸出に向けていきたいというようなニードが向こうにある。日本にはそういう形で脅威を受けている産業がある。それが結びついて、そして四・七倍というアンバラを解消するためにはこういう方法が必要なんだということで、向こうの低賃金にいやが上にも拍車をかけるような形で日本の企業が進出していくというような事態というものは、私は好ましい事態ではない。これは何らかの形できびしく規制をし、監督をしていかなければ、隣国との問題としても将来禍根を残すような事態になるおそれもあるだろう、このように思うわけでありますが、これは一体どうされるつもりでございますか。
  175. 後藤正記

    ○後藤政府委員 これは非常にむずかしい問題だと思います。私の理解いたしておりますところでは、本来関税というものは、自国内の産業、それの産出する製品というものと、それから他国の、これは賃金の問題あるいは原料の点あるいは立地問題等も加わってくるかもしれませんが、そういった生産品が非常に安く入ってくる、そういうものに対して、国内産業というものをそういったフラッドから防遏しようという意図から各国が関税というものをつくっておる、かように私は理解いたしておるわけでございます。この特恵関税というものは、そういった関税の中に一つの例外的なケースをつくりまして、別の政策意図、政策目的から発展途上国の経済自立、経済発展を進めるために、総論的、長期的な見地からこれを進めていきたいということでございます。したがって、そういった本来関税のあるべき形——まあこれは関税局長が申し上げるほうがよろしいのですが、私の理解している範囲内で申し上げるわけでございますが、そういったものからおのずから矛盾してくる問題が出てくるわけであります。  したがいまして、たとえば今度の特恵措置にいたしましても、地域により、それからまた業種によりまして、当然国内の産業というものに、これは非常にきびしく影響するものあるいはそれほどでもないものと、いろいろな濃淡の差はございますが、そういった影響は出てくる。問題はその程度の問題で、関税を実施しておるという政策目的というものと、それから経済協力、援助というものの一環として、南北問題の解決の一助として特恵というものをやっていくという政策目的は違うわけでございますから、問題はどうしてその二つの間の調整をとっていくかという問題であると思います。したがいまして、特定の地域、たとえば先生が例示なさいましたような一つの地域、これに対して特恵関税制度を適用して、そのために国内に現在ある産業が壊滅に近い打撃を受けるというような場合は、これまた非常に困るわけでございまして、問題はそのインパクト、衝撃、被害を受ける程度の問題であり、どこまでが国内産業として現時点において耐えられるか、そしてまた長期的に見た場合に、どういったぐあいに両者の矛盾を、若干の摩擦はありながらも二つの政策目的が両方とも成り立っていくように調整していくべきかという点であると存じます。したがいまして、特定の地域、特定の品種によって国内産業に非常に壊滅的な打撃を与えるような方向というものは、特恵措置としてもこれについては考慮が加えられなければならないかと存じます。そういった見地からは適当な考慮が加えられなければなりませんが、もう一つのほうの政策目的からいったら、特恵というものを進めて発展途上国の経済自立に資するということが、長い目で見ていったら世界の経済の繁栄、ひいては日本自身の経済、貿易の発展というものにつながっていく。長期と短期との問題、全体と部分との問題、二つの政策目的の調整の問題ということになってくるかと存じます。したがいまして、千編一律に同じようにやるというようなことでなしに、その間に短期的、長期的、両方合わせた考慮が加えられなければならない問題かと存じます。  初めにお断わり申し上げましたように、たいへん恐縮でございますが、私特恵問題を担当いたしておりませんので、私の考えとしてお聞き取り願えれば幸いでございます。
  176. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 局長、いま特恵問題について御高説を拝聴したのだけれども、私が聞きたかったのはそういうことではなしに、とにかく特恵で被害を受ける日本国内の業者が韓国に向かってどんどん進出して、向こうの低賃金を利用するのだということを大体メリットとして彼らは考えておる。そういうことで輸出を増大していこうという。韓国政府としてはそれを受け入れる素地はある。しかしながら、日本がそういう形でどんどん低賃金を利用するのだということで行くということになればなるほど、通産省としては貿易構造のバランスをとるような方向に持っていこうとすることについては異議があるかもしれぬけれども、しかしそういうものが相手国に対してどういう影響を及ぼすのか。そういうような場合に日本の国内でどこが——そういう合弁会社を設立する。これは資本投資をしていくわけですけれども、あるいは借款を与えていくわけですけれども、そういうようなものに対してどこがそれをチェックしていくのか。かってやたらに過当競争になるような、しかもしぼれるだけしぼってというような形で向こうの労働力をしぼる、そういうような形のものをどこが一体有効に、大きな目的実現の立場において、海外経済協力の本旨の立場でチェックをし規制をするのか、この点を聞きたかったわけですよ。そういう点についてはどういう角度で、どういう条件で進出を認めていくのか、そういうことをどこが一体しっかり押えるのか、このことだけを聞きたかったわけです。
  177. 後藤正記

    ○後藤政府委員 御承知のとおりに、現在海外進出、海外投資は一定の限度以上は許可制になっております。これを許可するのは大蔵省の所管であります。その際に当然、進出する企業、それからまた進出してから先の影響等の問題で通産省の産業政策、貿易政策というものと関連をいたしてまいりますので、大蔵当局と通産当局とはその投資案件について十分緊密に連絡しつつこれを行なっておるわけでございます。海外投資と申しますのは、いろいろそれだけのメリットがなければ企業というものは進出しないわけでございます。したがいまして、先生おっしゃいましたように、非常に低廉、良質な労働力をそこで獲得したい、あるいは日本において得るよりももっと安価に容易に原料が入手できるとか、いろいろなメリットをねらって出ていくわけでありますが、それが直接に国内産業に響いてきます場合には、許可権限にかかるものは、通産省としてはこれは好ましくないという意見を出して大蔵省とも連絡をいたします。一定限度以下でございます場合には、これは法令の権限内でとやかく申すわけにはいきませんけれども、言うなれば話し合いベースで、そういった方向に出てこられることは国内産業というものと非常に重大なる関連があるということで、行政指導の話し合いベースになっていくということであるかと存じます。
  178. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 特恵の問題については、関税定率法の改正も本委員会にかかるものですからその際に十分やりたいと思うのですが、時間の関係もありますので、本題の輸銀の貸付金の利息の特例等に関する法律案に関連して御質問いたしますが、インドネシアで二十億九千万ドルの債権が、強硬に協定どおりに引き揚げられるとするならばとうてい支払いにたえないという事態を招いて、アプス案に従って債権国会議が決定をした。その債権処理についての決定が行なわれ、これを今国会にはかって、日本の場合には九千三百二十万ドル、この債権を輸銀がリァイナンスしよう、こういうことで、それについてのいわゆる貸付金の利息に対する特例を設けようとされるわけですが、いわゆるスカルノ債務——スカルノさん、御承知のように国際的には非常にはでな動きをした人でありますが、現在こういうような状態、こういうような事態になった。今回この対象になる、アプス案によってリファイナンスをしなければならない、総額で、まだ大国とはいえない開発途上国のインドネシアが、二十億ドルという大きな額を、二十年でしたか、十五年据え置きというような条件の中で払っていかなければならないということになっているわけですけれども、こういう事態を生んだ原因というのは一体どこにあったのか。これは、そういう中にやはり日本の商社の過当競争というようなことなども一体なかったのかどうか。こういうような点について、こういう事態を生んだ原因というものは一体どこに求められるのか。この点について大蔵省の見解を聞きたい。
  179. 稲村光一

    ○稲村政府委員 お答えを申し上げます。  このような多額の債務——日本は、先ほど先生おっしゃいましたとおり九千三百万ドル程度でございます。数字そのものは、日本の分は、精査いたしまして若干の異動はあるかと思います。いまの計算では大体九千三百七十万ドルくらいになるかと思いますが、その原因につきましては、これは当時の日本の商社に輸出競争と申しますか、過当競争があったかどうかということでございますが、これはいずれも当時のインドネシアの事情からいたしまして、やはり早く経済の開発、発展というふうにいきたいということでいろいろ輸入すべきものがたくさんあり、それを延べ払いで一生懸命輸入をしたということであろうかと思われます。二十億ドルある中で一番大きな債権はソ連でございますが、どういうものを輸入をしたか、世界全体を通じまして必ずしもはっきりいたしませんが、私たちの了解しておりますところではただいま申し上げたようなことでございます。
  180. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国際政治的にも、この原因になった援助競争が東西間においてインドネシアを接点にして、よく解釈すればそれだけスカルノの政治性というものが、東西援助競争の接点にインドネシアを置くというようなはでな外交手腕を発揮したということで、国際援助競争があそこをめぐって行なわれたというような事態があったわけなんですが、そういうことをここで一々論議しておってもしかたがありませんので……。  輸銀の総裁も来ておられるわけですが、すでにもう一九六六年、六七年、六八年の債務についてリファイナンスをやられておるわけですね。そして、それで何とか済むだろうと思っておったところが、もうどうにもならない事態になって、債権国会議が国際的に開かれて、アプス案のレポートを中心にして今回の措置が行なわれた。このリファイナンスを最初にやられる前に、輸銀は、インドネシアに対して日本の企業なりが進出をしたというようなものに対してどの程度融資をされておったわけですか。
  181. 石田正

    ○石田説明員 大体問題が起こりましたのは四十一年でございまして、四十一年度までにずっと前から貸しておりましたのが、四十一年度末におきましては大体二百七十七億三千五百万円でございます。
  182. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私は基本的な問題についてちょっと伺いたいのですけれども、国内の銀行、いわゆる一般の都市銀行なりの場合に、融資先に対して、それがどういうために、金をどう使うのかということについて慎重に審査もするし、あるいはまた貸し付けた企業に対して、それがほんとうにそのとおり使われて、どういう企業の経営改善のためになっているかというのは、やはりある程度トレースしているだろうと思うのです。輸銀の場合に、これはすぐれて政策金融でありますけれども、企業としてはそういう輸銀融資で非常に優遇されておるわけですね。金利の面においても、あるいはまた支払い条件、期間等を含めて非常な優遇を受けておる。そういうものに融資をして、それがほんとうに、俗なことばでいえば生きた金に、海外経済援助というような立場において融資を受けた企業が海外に投資をする、延べ払いをするというようなことによってどういう効果がほんとうに実現できているのかというようなことについては、どういう追跡調査というか、そういう点でも関心を及ぼしてトレースしていくというような努力をなさっておりますか。
  183. 石田正

    ○石田説明員 大体いま申し上げました数字の大部分は輸出でございまして、そのほかに別にPSというような立場のものもございます。大体投資とかPSというような問題になりますと、これはどういうプロジェクトであって、それがどういうふうに返済されてくるかということにつきまして、わりあいにフォローしやすいわけでございますけれども、普通の単純な輸出になりますと、その輸出につきまして、それが向こうまでいきまして、そして、使われるということはわかりますけれども、それがどういうふうに効果があったかということの一々について追跡調査をするというふうには、これは普通の貿易でございますのでできない。われわれといたしましては、むしろ国内サイドをとりまして、要するに輸出入銀行の大体の仕事がそうでございますけれども、バイヤーズクレジットと同じで、向こうの輸入業者に金を貸すという方法をとりませんで、大体サプライヤーズクレジットといいまして、向こうに売りましたものに対してこちらの輸出業者に金を貸すという構成をとっております。そうなってまいりますと、われわれの焦点は、その会社というものがほんとうに金を出すのにふさわしい会社であるかどうか、資力的に心配がないかどうかという問題と、それから輸出をいたします場合にいろいろ条件がございます。それについては、輸出するものに対しましてたとえば銀行のLCがついておるとか、あるいは長期なものにつきましてはいわゆる保証状というものが信用のあるものが出ておるかどうかというふうなことを確かめまして、その点について信用上心配がないということでありますならば、こちら側の輸出業者に対して金を貸す、こういうやり方をやっておるわけでございます。
  184. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 このインドネシアに対する債権がこういう状態になっている。たとえばその他のところで、いわゆる低開発国の債務の累積というものが、やはり海外経済援助において世界的な立場において債務の残高というものがきわめて累積をされてきて、五百何十億かの巨額になっているというようなことなんでありますが、そういうようなことが一つの問題点なんだと指摘されておるわけですが、このインドネシア以外にこういうリファイナンスをやって、しかも極度の優遇を与えなければならないような事態というものは、ほかの国に対する経済援助あるいは輸銀の関係した中で例は出てくるのか。インドネシアだけじゃなくて、たとえば韓国がどうかわからないけれども、韓国などでも非常に債務が累積をしておるだろうと思うのですね。そういうようなことで、これと同じような事態というのは将来起こり得る可能性というものについてどういうようにお考えでしょうか。
  185. 稲村光一

    ○稲村政府委員 ただいまお尋ねの件でございますが、同じような非常に長いソフトな条件と申しますか、無利子で長い債務救済というのをしなければならないような、そういう例が今後起こるであろうかという御質問であろうかと思われますが、ただいまのところ、このインドネシアの問題は、アプスも報告の中でもいっておりますとおり非常に特例的な措置でございまして、当面これと同じような事態がほかの国に起こるかどうかと申しますと、むしろちょっと起こらないのではないかというふうに考えられます。これはむろん長い将来のことは何とも申し上げられないかと思いますが、当面のところといたしましては、このインドネシアの問題が特別なケースであるというふうに考えております。
  186. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 今回リファイナンスで無利子貸し付けになるわけですが、約九千三百万ドルになるわけですね。これに対して、輸出入銀行に対して「特別勘定に係る業務に要する資金の財源に充てるため、」ということで、予算で四十二億円が計上されている。九千三百万ドルということならば四十二億にならないわけですね。これはなぜ四十二億ということになるのですか。予算との関係は、この法案の裏づけとしてそういう予算措置国民の税金から出される、輸出入銀行にそれが出されるわけですね。ところが九千三百万ドルということで、これは当然何分か利子を払ったものとしてという仕組みになるのですか。これはどういうことですか。
  187. 稲村光一

    ○稲村政府委員 ただいまの御質問でございますが、来年度におきましてはこのために一般会計から輸銀に対して貸し付けをいたします額は四十二億円でございます。これは法律案にもございますとおり、一般会計から無利子で輸銀に貸し付けるというふうに考えております。これは実は新年度の四十六年度の分でございます。今後毎年予算の定めるところによりまして、その年の所要額を同じようなかっこうで輸銀に無利子で一般会計から貸し付けるというふうに処理いたしたいと思っております。
  188. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 単位を一けた間違えましてちょっといま疑問に思ったのですが、そうしますと、この特別勘定に毎年これから、この債務の元本が返るまでこれを出していく、こういうことになるわけですか、これはもうずっと四十二億でいくことになるのですか。
  189. 稲村光一

    ○稲村政府委員 ただいまのお尋ねの件でございますが、この特別勘定に入れます金額の毎年度の算定は、その年度のうちにインドネシアのほうから、三十年の均等償還でございますから返ってまいります分がございます。これに対しまして、一応特別勘定といたしまして引き受ける額がございます。それのいわば差額ということでございまして、毎年同じ四十二億というわけではございません。年賦償還が、三十年間にわたりますけれども、ございますので、当然金額は毎年少しずつは減っていくということになるかと思います。
  190. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間が少しオーバーしましたが、まだ次の質問者の政府委員が来てないそうでありますから続けさしてもらいますが、輸出入銀行の四十六年の貸し付け規模は五千三百五十億ということでございますね。輸出入銀行としては、これから先、新しい海外経済協力というようなものも一つの大きな転期にきていると思うのです。こういう中で総裁として今後の運営のあり方についてどういう点に一番力点を置き、また問題点をどう明らかにして今後の運営に当たっていくおつもりなのか、この点を聞いておきたいと思います。
  191. 石田正

    ○石田説明員 先生御承知のとおり、輸出入銀行というのは大体輸出とか輸入のためのファイナンスとか、あるいは海外投資とか、そういうようなものを手がけてくるのが多かったようでございますが、だんだんと世の中が変わってまいりまして、海外経済協力という問題——あるいは海外経済協力ということばがいいかどうか問題がありますが、海外援助といいますか、そういうふうな業務を日本全体としてだんだんとやるようになってまいりました。そういう場合に、輸出入銀行が進んでどんどんやっていいのかといいますと、それは輸出入銀行だけの判断ではできないわけでございます。大体そういうふうなものにつきましては、まず政府がいろいろと発展途上国と御相談になって、このくらいのことを日本としてやろう、こういうふうになりました場合に、それは輸出入銀行にやらせるのが適当であるというふうに判断をいたしますると、輸出入銀行にやらせるというような合意がまずできるわけであります。それができますると、政府機関であるわれわれといたしましてはそれを受けてやるというのがいままでの実情になっているわけでございます。これは新しい円借款の貸し付けにいたしましても、リファイナンスの場合におきましても変わりないのでございます。もちろん、われわれがそれに対しましてあらかじめ資金の供給を受けているものでありますならば、これはどんどんやって差しつかえないわけでございまするけれども、しかし、予算を組みましたあとでもってそれをやれというお話がありましても、それをやりますると、初め予定しておるもののほかのところが縮まなければならない、こういうことでございまするので、われわれとしては非常に心配いたしまして、種々政府に対しまして、もしそういうものをやらなきゃならぬのなら、ほかが縮まらないようなぐあいに、年度末におきまして財政投融資をふやすとかなんとかいう措置をしていただかなければ困ります、こういうことでやってきたわけでございます。だんだんとそういうふうなことでやってまいりまして、まあ関心と申しますと、私どもの銀行といたしまして、海外協力といいますか、そういうふうな面におきまして、いわゆる相手方の政府に対してこれだけの金を出すということをわがほうとして積極的にやろうという気持ちはございません。これは政府がおやりになることだろうと思うのです。政府のやることであって、受けるにつきましては、われわれが金に困らないようなぐあいにちゃんと手配をいたした上でよその国に対しましてコミットせられることが望ましい、こういうことを常々申しておる次第でございます。
  192. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次の質問者の関係者が全部来たそうですからこれでやめますが、外務省には技術協力関係の特に研修訓練制度の問題について伺う予定でおり、また通産省には海外資源開発の問題、特に石油関係の問題を伺うつもりでおったのですけれども、時間の都合できょうはこれでやめておきます。御苦労さまでございました。  以上で終わります。      ————◇—————
  193. 毛利松平

    毛利委員長 引き続き、国有財産に関する件について調査を進めます。  国有農地の払い下げ問題について質疑を許します。堀君。
  194. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと中断をいたしまして、たいへん失礼をいたしました。  それでは、午前中に引き続いて質疑を少し継続をいたしたいと思います。  午前中に、十六条が「法の委任範囲を越えた無効のものというのほかはない。」というところまでをやったと思うのでありますが、   これを要するに、旧所有者は、買収農地自作農創設等目的に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、法八〇条一項の農林大臣認定の有無にかかわらず、直接、農林大臣に対し当該土地の売払いをすべきこと、すなわち買受けの申込みに応じその承諾をすべきことを求めることができ、農林大臣がこれに応じないときは、民事訴訟手続により農林大臣に対し右義務の履行を求めることができるものというべきである。したがつて、このような場合に都道府県知事が右土地につき売渡処分をしたときは、旧所有者は、行政訴訟手続により右処分の取消しを求めることができるものといわなければならない。 こういうふうになってきているわけでありますが、この案件はすでに、実は昭和三十六年の十一月でございますかに、愛知県知事が当時の耕作者にこの土地農地法規定に基づいて売り払っているわけであります。  そこで農林省にお伺いをいたしますが、昭和一十六年に売り払ったときの一平方米あたりの価格は、一体幾らで売り払いを行なったのかをお答えいただきたいと思います。
  195. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 三十六年に売り払いをしておりまして、統制小作料の十一倍という価格でございまして、売り払い価格は十アール当たり一万三千七百六十円に相なっております。
  196. 堀昌雄

    堀委員 十アール当たり一万三千七百六十円というのは、一平米では一体幾らになるでしょうか。
  197. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 おおよそ十三円七十六銭でございます。
  198. 堀昌雄

    堀委員 実はこれはあとから触れますけれども、この訴訟が起こされておるのは、すでに国有地であったものが愛知県知事によって耕作者に払い下げられておる。それを自分たち旧所有者の手に返すのが相当であるということで訴訟が起きているわけでありますが、いまのところで一平米当たり十三円七十六銭で払い下げられておるということが明らかになりました。  ちょっと法律関係のほうを先にしてからこれに移りたいと思いますので、先へ進みます。   なお、法八〇条に基づく農林大臣認定、あるいは同条に基づく農林大臣の売払いを行政処分とみる見解があるが、右認定は、その申立て、審査等対外的の手続につき特別の定めはなく、同条の定める要件を充足する事実が生じたときにはかならず行なうべく羈束された内部的な行為にとどまるのであるから、これを独立の行政処分とみる余地はないし、また、昭和三七年法律第一六一号による改正前の法八五条が法三九条一項所定の農地等の売渡通知書の交付に関しては、訴願による不服申立方法を認めていたのにかかわらず、法八〇条の土地売払いに関してはそのような不服申立方法を認めていなかつたこと、および法三九条一項の売渡通知書による売渡しの対価の徴収には農地対価徴収令の定めがあり、その不払いには国税徴収の例による処分がされるが(法四三条)、右売払いの対価にはそのような定めのないことから考えても、売払いを行政処分とみることはできない。 こうありますが、ここでこの最高裁判所の見解は、八十条に基づく認定あるいは同条に基づく農林大臣の売り払いを行政処分と見るかどうかという点で一つの判断を下しておるわけでありますが、現在の八十条のこの規定は、いまここに書かれておるような経緯で改められておりますけれども、これは行政処分なのか、私法上に基づく行為となるのか。その点は法制局長官政府側はどういうふうな見解でおるのでありましょうか。
  199. 高辻正巳

    高辻政府委員 これは訴訟の当事者として実は法制局があずかっておりませんために、念のために当局から伺いましたが、初めは私法的な行為というふうに考えていたようであります。それ以上のことはちょっと申し上げられません。
  200. 堀昌雄

    堀委員 それでは、これは、実は下級裁判所のほうでは行政処分とみなして処理をしたという経緯があるわけですね。けれども、それは政府も初めから私法上の問題であって、行政処分とは考えていなかったということでありますから、この点は最高裁考え方と同一であったと、こういうことでよろしいわけですか。
  201. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 この事件につきましては、ただいまの私法行為でずっと通したわけでございますが、ほかの事件で行政処分だという主張をしたものもある模様でございます。
  202. 堀昌雄

    堀委員 実はここらのところが私は今後の一つの問題点になる点ではないかと思うのであります。なぜかといいますと、私はこの農地法、今度あらためて読んで感ずるのでありますけれども、本来行政財産というものはこのような取り扱いを受けられないことになっておるんだと思うのです。要するに、一般に払い下げその他を行なう場合には、行政財産は、国有財産法のたてまえからするならば普通財産になってからでなければ一般には払い下げないというのが、私は国有財産法のたてまえであると思っておるわけであります。ところがずっとこれを読んでおると、農地法だけは例外で、一応その行政財産を直ちに処分ができる仕組みが実は残されておる。ですから、ここに私は今度の問題の一つの盲点があるのではないか。これは、普通財産に置きかえた後でなければこれを払い下げることができないという行政財産一般のルールの中に入っておりさえすれば、実は普通財産としてできたものは大蔵省が所管して、これは当然時価で払い下げるというのが国有財産の処分の通常のあり方であるから、農地として将来も、要するにここで保有をする必要があるというその農地については、私は当然農地という特殊な関係において、これは行政財産としての処分があっていいと思うけれども農地でないという考え方で問題を処理しようとするときに、それを普通財産として処理しないで行政財産として処理するという、この発想には非常に問題があると思っているわけです。この点は法制局長官どうですか、そこに今度の問題の一つの分かれ目があるんじゃないかと私は考えるわけでございますけれども
  203. 高辻正巳

    高辻政府委員 ただいまの、訴訟の当事者としての一方の考え方も必ずしも徹底はしてなかったようでありますが、確かに御指摘のような点についてはもう少し考えなければならぬ点があるかもしれないと思います。思いますが、実は、その辺から問題がありはしないかというお気持ちはわかるのでありますけれども、いずれにしても、農地法国有財産法の特則と申しますか、要するにこれも法律規定であることはいうまでもございませんが、午前中に、先生御出席になったかどうか知りませんが、財政法の九条ですか、法律に定める、「法律に基く場合を除く外、」というのがあったと思いますが、その法律の定める場合にこれは該当するわけでありましょうから、これを普通財産と見るか、行政財産として処分するか、それも一つの問題には違いないと思いますけれども法律ではその対価の額については、実は農地法規定がある。この規定解釈もむろんもとよりございましょうが、その規定としての額がきまっているとすれば、時価によるか時価によらないかということは、おのずからその規定解釈によって結論がつくのではないかというふうに考えるわけです。
  204. 堀昌雄

    堀委員 いや、私はそこに触れておるわけではなくて、その前に、要するに農地法のたてまえが、行政財産がストレートに処分できることに例外を設けておるわけですね、実は。それは、農地農地として動いている間は、私は農地法対象だと思うのですよ。だから、農地法としての対象範囲ならこの問題は実は起きないわけです。それが将来自作農として——裁判所のことばどおりに言いましょうか、「すでにその農地としての現況を将来にわたって維持すべき意義を失い、近く農地以外のものとすることを相当とするもの」となっているのは、それはもう農地ではないのですね。農地でなくなる。農地でなくなるものを実は農地法の中にとどめておいて行政処分をするということになったところに一つの問題点が出ているのではないか。農地でなくなったものは、その時点で直ちに所管がえをして普通財産にするといってここに移動しておけば、あとの処分は実はこの農地法のここで書く必要はなかったのじゃないかという気持ちがしておるわけです、これをずっと読んでみて。そこから先を普通財産の処理にしておけば、実はいま今日こういう問題を議論しなくても、おのずから普通財産の処理は大蔵省として適当な処理をする。そうなれば、もし、もとの地主が返してくれといってくれば、それはお返しをいたしましょう。そこの間は、国と所有者の間は、要するに相対で話ができることになるのですが、たまたま農地の場合を頭に置きながら、実は農地でないものまでもその中に含めて農地法が書いておったところに少し無理があったのではないだろうか、私はこういう感じがするわけです。これは立法のときの、前の話ですからあれですけれども。  というのは、今日私はこの議論をしておるのは、今後私ども農地法を変えるべきだと考えていますから、変える方向というのは一体何だろうかということを考えてみるときに、私は、いまあまり変なこじつけをここで法律としてやることは適当でない。しかし論理的には少なくともいま私が申し上げたように、農地法というのは少なくとも将来とも農地であるという土地を管理する法律であるべきであって、ここで、裁判所が指摘しておるように、「近く農地以外のものとすることを相当とするもの」というものは農地でないわけですから、農地でないものはひとつ農地法の外に出すということであったほうがよかったのではないだろうかということを、実は死んだ子の年を数えるようでありますが、将来の問題を含めてちょっと論じておきたいと思っておるわけであります。その点はどうでしょうか。
  205. 高辻正巳

    高辻政府委員 確かにおっしゃる点は、いまの重ねての御質疑でよくわかりました。よくわかりましたが、農地でなくなったのであるから、農地として存続させるにふさわしい、将来農地としてそれを利用する用に供するというたぐいのものではないから、別途に農地法からはずして管理、処分等を規定すればいいではないか、確かに一つの御意見だと思います。思いますが、また同時に、自作農創設のために収用をして、そしてそれが目的に供されなかったというので旧所有者に返そうという、この一連の原因に基づく結果というものがそこには出てきておるわけでございますから、農地法規定して悪いということはまた同時にないのではないか。これはいろいろな考え方があろうと思います。いま堀先生がおっしゃった考え方がもう全然問題にならぬとはむろん思いませんが、しかし、そうでなければならぬという考え方でもないと私は思います。やはりこれも、いままでの取り扱い方も一つの筋がある取り扱い方ではないかというふうに考えるわけです。
  206. 相澤英之

    ○相澤政府委員 国有財産の取り扱いの問題でございますので、ちょっと一言補足させて御説明させていただきます。  自創特会が買収しました農地は、これは行政財産ではなく、普通財産になっております。行政財産は、国有財産法第三条の第二項に定義がございまして、公用財産、公共用財産、皇室用財産または企業用財産ということになっておりまして、これ以外の一切の国有財産が普通財産ということで第三項に定めております。自創特会で取得しました農地はこの行政財産の各号に該当いたしませんので、私どもはこれは普通財産であるというふうに解釈しております。その国有財産法の第八条におきまして、「行政財産の用途を廃止した場合又は普通財産を取得した場合においては、各省各庁の長は、大蔵大臣にこれを引き継がなければならない。」、第八条でございます。原則は、先生が御指摘されましたように普通財産を取得した場合は大蔵大臣に引き継ぐことになっておりますが、これにはただし書きがございまして、「但し、政令で定める特別会計に属するもの及び引き継ぐことを適当としないものとして政令で定めるものについては、この限りでない。」そこで、政令で定める特別会計は、国有財産法の施行令の第四条に各号列記してございますが、この第二十五号に自作農創設特別措置特別会計の名前が掲げられております。したがいまして、自作農特会で取得した普通財産である農地は大蔵大臣に引き継ぐ必要がないわけでございます。
  207. 堀昌雄

    堀委員 私はずっとこれを見ておりました感じで、どうも行政財産ではないのかという感じで実はずっと読んでおったわけです。というのは、売り払いについての大蔵大臣との協議はしなくていい、こういうかっこうになっているものですから、ちょっと私もそこまでこまかく国有財産法のほうを見ていなかったので、どうもこれは行政財産がストレートに払い下げられておるのかと思って……。ありがとうございました。いまの点はよくわかりましたから、それは普通財産であっても大蔵大臣と協議をしないというだけということで特例を設けてあるのなら、もうこれはそれでしかたがないと思います。  そこで、   これを本件についてみると、本件各土地上告人らあるいはその先代の所有に属していたが、昭和二二年一二月二日自創法三条により国に買収され、その後売渡処分のないまま、京都農政局長の認許によって昭和二八年一二月一六日稲沢都市計画事業稲沢土地区画整理の地区に編入されたが、被上告人愛知県知事は、昭和三六年一一月二日法三六条により本件各土地の売渡処分をしたことは、原審の確定したところである。   上告人らは、京都農政局長が右認許をした以上、法八〇条一項による農林大臣認定があったものと主張するけれども、 ——ここはもういいですね、原審の判決どおりだから。そのところは少し飛ばします。   しかし、本件各農地売渡処分取消しを求める訴えの利益の有無を判断するにあたっては、本件各土地につき自作農創設等目的に供しないことを相当とする事実が存するかどうかを審理すべきであるのに、原審がこれをすることなく、旧所有者は同項の認定のあった土地に対する売渡処分についてのみその取消しを求める訴えの利益を有するものであるところ本件各土地については右認定がないとして上告人らの右訴えの利益を否定したのは、法律解釈を誤つたものといわなければならない。 と、こうあるのです。そこで、まあこれはまた地方裁判所に差し戻しになっておるわけで、実はまだ地方裁判所の判決は出ていないのですね。確かに、こうなるとその事実認定の問題ですね。もう一ぺん差し戻したけれども、「本件各土地につき自作農創設等目的に供しないことを相当とする事実が存するかどうか」と、こうなるわけですが、この点については、今度は、いままでの法律論議でなくてこれは事実認定ですから、農林省はこれはどう考えていますか。
  208. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 本件の土地につきましては、自作農創設目的に供することが適当であるとして小作人に売り渡した土地でございますから、不要地として認定すべきものでないという考えを持っております。
  209. 堀昌雄

    堀委員 持っておりますはいいのですが、これはまだ裁判になるわけですね。ここが今度は名古屋地方裁判所における争点になってくるわけですね。ですからまだ裁判係属中でありますから、要するにこの判決の主文が示しておりますように、この十六条四号というのは行き過ぎた政令だ。これはまあやめました。これはやめた、やめないにかかわらず、実は争点はまだ残っておると思うのですね。実はいまの事実の認定という争点が残っておる。だからいま、もうあたかもこの旧所有者に払い下げが確定したかのように受け取られて、問題がいま非常に広がっておるわけでありますけれども、事実は、さっき私が触れた昭和三十六年十一月に十三円七十六銭で耕作者に渡す場合も、二円五十三銭で旧所有者にいく場合も、いまの特価から計算してみるならば、同じような条件が実はどちらへいってもあるわけですよ、この問題はもうすでに。そういうことですね。だから、しかしまあ訴願の経緯から見て、もう一ぺん名古屋地裁におけるこの事実審理の問題があるわけですから、その点について、もしあなた方の政府が、事実認定でやはりここは、いま本件各土地につき自作農創設等目的に供しないことを相当とする事実はない、これは自作農創設等目的に供する土地であるということを確実に裁判で勝つことができるならば、いまの問題は実はここまで発展しない問題になるわけです。実際のところはまだわからないわけです。そういうことじゃないですか、これは。長官、どうでしょうかね。
  210. 高辻正巳

    高辻政府委員 確かに、おっしゃいますように本件訴訟自身については、いま仰せになりましたような、この農地社会的、経済的に見て買収目的に供しないことを相当とする状況にあったかどうかについてさらに第一審裁判所で検討されることになるわけですから、本件の具体的な争訟の当事者について、問題の事案はその事実の認定によって左右されることになることは当然であります。ただし、最高裁判所法律解釈の点は、これは最終裁判として確定しておるということはいえると思います。
  211. 堀昌雄

    堀委員 そこで問題は、いま私が提起しておるのはもう一つの側面があるということです。実は国民は——かりに今度は国が、事実認定でこれは自作農創設の用に供する土地であるというふうに勝ったとかりにしましょうか、勝ったとしますとどうなるかといえば、さっき言った耕作者が十三円七十六銭で買ったことが正当だということになるわけですね。それでそれは十三円七十六銭で買った人たちの所有になる。国民の側からすれば——いまその土地が幾らか私もわかりません。しかし市街地で区画整理も行なった土地でありますから、五万円するのか十万円するのかよくわかりませんけれども、その五万円と二円五十三銭の差額の問題も、五万円と十三円七十六銭の差額の問題も、国民感情からしたら私は大同小異ではないかという気がしてしかたがないのです、実はこの問題の中で。これは政務次官どうですかね。同じような感じ——それは確かに、二円五十三銭引きますと十一円二十三銭違いますね、平米当たり。しかし、十一円二十三銭平米当たり違うことは、今度の問題ではネグリジブルな問題ではないだろうか、こう思うのですが、どうでしょうか、国民感情として。
  212. 中川一郎

    ○中川政府委員 金額比率でいけばネグリジブルなものですから、そのとおり同じようなものといえると存じます。そこに、この問題のむずかしさ——耕作者に渡す場合は十三円で合法化されておるのに、農地として使うんだといって持ってきたけれども、使わなくなったからもとの所有者に返してやるのだというときに二円ではいかぬという理論は、十三円何がしで払い下げている以上、こっちの権利も認めてやらなければいかぬのじゃないかというところにむずかしさがあるわけでございます。
  213. 堀昌雄

    堀委員 ですから、この問題は実は、いま世論が非常に沸騰していますのは、旧所有者に二円五十銭で返すことに非常に沸騰しておるのですが、実はすでにこれまでもかなり払い下げが行なわれておるわけですね。  ちょっと伺いますけれども、農林省、このいまの十六条四号で買収農地公用公共用、これに売り渡されたものはどれくらいあるのですか。
  214. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 ちょっとお待ちください。
  215. 中川一郎

    ○中川政府委員 その間にちょっと補足いたしますと、二円五十三銭といまの十三円七十六銭、性格としては同じものだと思うのです。というのは、北海道のように安いところは三銭とか五銭とかある。それを全国で平均すると二円五十三銭になる。名古屋のその土地はたまたま十三円なにがしのところであったということですから、金額の差はあっても性格としては同じ金額である、こういうふうに解釈をすべきではないかと思います。
  216. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 国有農地等の売り払い実績によりますと、公用公共用に売り渡されました国有農地等の面積は四百九十四ヘクタールでございます。
  217. 堀昌雄

    堀委員 そうするとその他の「国民生活の安定上必要な施設の用に供する緊急の必要」があったものというのはどのくらいあるのですか。
  218. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 ちょっとお断わり申し上げますが、ただいま公用公共用に供しました四百九十四ヘクタールは、手元の統計では昭和四十年から四十四年まででございまして、手元に三十九年までを持っておりませんので、ただいまの四百九十四ヘクタールは四十年以降四十四年までの数字であると御了解願いたいと思います。  この四十年から四十四年までの国民生活の安定の用に供しました面積が三百八ヘクタールでございます。
  219. 堀昌雄

    堀委員 この四百九十四ヘクタールは公用または公共用ですから問題はありませんけれども、三百八ヘクタールが、事実はここで書かれたような形で転売その他をされて、非常に問題に、すでに新聞でも伝えられておるところになっておるわけであります。  そこで実はこの問題は、私はもう時間がありませんから、簡単に少し締めくくりをしたいのですが、午前中にも松尾委員のほうからも話がありましたけれども、ここまで来て、この旧所有地に返る分だけを税制上の処置等で何らかの処置をしようということは、これは私は問題があると実は考えるわけです。そうではなくて、いま問題になっておる国民感情というのは一体どこにあるかといいますと、すでに農地として耕作者に売り払われた土地、それはこの時点、三十六年であろうといつであるかを問わずですけれども、それが特に都市周辺では開発利益を受けて非常に上がっておるわけですね。この前、例の報償金の問題のときも実はずいぶん議論になったわけです。議論になったので私はそのときにも申したのですけれども、こういう開発利益をとにかく全部その土地所有者のものだという発想は問題があるんじゃないか。特にこれは、自作農創設ということで強制的に収用した土地が、その次に農地から離れるときには当然何らかの処置をして、少なくともこれを強制収用された地主といえども納得のできる処理を国家的に行なうのが正当ではないかという議論をしましたけれども、しかし、そのことは実は何ら今日まで取り扱いをされておらぬというのが実情であります。  しかし、まだまだこの問題は次々に起こってくるわけです。いまの都市開発が進むにつれて、そういう都市開発利益によって値上がりした土地と、過疎地域における同じような形の土地とがあるわけです。過疎地域における同じような土地は、依然として農地として農地の価格になっておるわけです。片や都市に接近した部分だけは開発利益を受けて、いまや農地であっても農地でない価格になっておる。これについては前から世田谷における土地の問題等まで、今回は税制改正をしようというところまで来ておるわけでありますけれども、そういう点を考えると、この問題の根本はいま私が申し上げたように、要するに、かつて農地であったけれども、それが農地以外の形で農地を離れるところの時点では、開発利益を含めて国が税金を取って、少なくとも旧所有者も納得ができ、その他のすべての国民が納得できるような形の処理を全般的にするということが、基本的にこの問題の解決になるのではないか。いまここで焦点になったこの問題だけの処理を、たとえ八十条の二項をわれわれがここで議会の手によって変えたとしても、その中には、いまの耕作者のほうに行っている分と、それから土地所有者に行っている分とに隔てをつけることになるところに、実は問題が生じてくるのではないか。  こう考えれば、実際にはそれよりもさらに有効適切に行なえるわれわれのいまの対応手段というのは、少なくとも自作農創設のために国が収用した土地については、その土地が宅地となる段階農地から離れるときには売り渡しをされた者から離れるわけですから——農地として転売がもし行なわれておれば、これは農地農地の間ですから問題は別として、少なくともその農地が宅地に転化したときに、異常な開発利益をその人たちのふところに入れさせるところに国民感情の反発があるのであって、私は、農地法のそういうこまかい技術的の問題が国民のそういう反発を受けておるとは実は思わないのです。だから、この問題をここのごく小部分の取り扱いの範囲だけで解決しようとしても、そこには憲法十四条の「法の下に平等」であるという問題が常にひっかかってきて、やはり問題が残るのではないだろうか。どうしても一歩踏み込んで、この際土地政策というものの全般から見て可及的すみやかに——この問題はこの問題で一応まだ係争中でありますから、時間が少しかかるんだし、できればこの国会中にそういう形で土地税制というものをもう一ぺん再検討した上で、公平な負担を、それは旧所有者であろうと、農地法によって耕作者が得た土地であろうと、自創法によって処理された土地はすべてそういう処理をするということをこの際行なうことが本質的な解決ではないのか、こういうふうに考えるわけでありますが、これはきわめて政治的な問題でありますから、ひとつ政務次官のお答えをいただきたいと思います。
  220. 中川一郎

    ○中川政府委員 ただいま御指摘の点がこの問題の核心に触れた点であろうと私は思うのであります。開発利益を、農地法の定めるところによって移動する、あるいは戻すところだけに、両方にかけよという堀委員の御指摘、ごもっともだと思うのですが、そうなってまいりますと、開発利益というものは農地法対象にならない土地には一体どうするのか、農地法で移動した土地あるいは戻った土地だけに開発利益をかけるのかという問題、一般の農地は捨てておいていいのか。一般の農地も同じなんだからひとつかけようじゃないかということになる。あるいはそうなれば、開発効果は農地以外の宅地についてもあるではないか、それを見のがして農地だけを取るのはどうかというふうに発展してまいります。この辺が大問題である。のみならず、開発利益を召し上げないのみならず、税制上どういうことになっておったかというと、税金も、ほんとの農地の収益しかあがらないという前提で、きわめて安い土地税制しかなかった。これはおかしいじゃないかというので、今国会において土地税制といいますか、線引きした中の土地だけは、五年、七年、十年と年限を置きますけれども、せめて宅地並みの税金を取るようにしよう、こういうことでやったわけです。ところが、こういった線引きに対する土地税制のアンバランスだけを直すにあたっても、野党の皆さんにも、あるいは農家の皆さんにも、あるいは党内においてもいろいろと反対のあるところであります。言ってみるならば、本論じゃない、税制だけとってみても議論のあるところでありますから、それを根っこまで開発利益をかけていくということになってくると、相当な議論が出てくるんじゃないか。この辺がわれわれが悩みを持っておるところでありますが、今度の二円五十三銭の本質の解決をする公平論ということになりますとそこまでさかのぼらざるを得ないという重大問題をかかえておるために、立法をやったらどうだ、こう言われても、やりたい気持ちはあるけれども、なかなか踏み切れないということで、検討はいたしておりますが、悩み抜いておるというのが現状でございます。
  221. 堀昌雄

    堀委員 時間がありませんから、この以後の議論は一応、お互いがいま考えなければならぬところにきておるわけでありますけれども、少なくとも今度の案件を通じて私が申し上げておきたいことは、これまでに対処できる時期が私はあったと思います。特に例の報償金を出した時点でそれらの問題はもう一ぺん農地法を再検討しておく必要があったんじゃないかと思うのでありますが、今日いまからそれを申してもいたし方ないことであります。しかし何にしても、私どももいまの問題が国民感情として全く納得しがたいことであるという点については同感でありますので、当面何らかの処置を講じる。いま私が申しておるのは、最終的に処理をするためには少なくともそこまで踏み込まなければほんとうの解決にならぬということを申し上げておるのでありますが、その過程における第一歩を何らかの形で、われわれ議会としても責任をもって処置する責任がある、こういうふうに私は感じておるのでありますので、それらについては同僚議員ともよく相談をして、そしてできれば私は、出与え方としては政府の出した農地法に瑕疵があったわけですから、この際議員がみずからの判断に基づいてこの問題の処理を議員立法で行なうことが正当ではなかろうか、こう考えておりますので、それらについては政府もひとつ十分これに協力されて、国民が納得するような問題の解決に努力されることを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  222. 毛利松平

    毛利委員長 小林君。
  223. 小林政子

    ○小林(政)委員 午前中に引き続きまして、何点かにわたって質問をいたしたいと思います。  ただいまもお話に出ておりましたとおり、土地問題は深刻な社会問題になっているわけでございますけれども、特にこの住宅用地だとか子供の遊び場の問題、あるいはまた公園の問題、お年寄りのいこいの場所など、相当深刻な要請があるにもかかわらず、とかく土地がない、用地の確保ができないというようなことが理由になっているわけでございますけれども、私は国が保有している土地をその用途に向けるということはしごく時宜を得た適切な処置になるのではないだろうか、このように考えます。結局国民感情が強く反発をいたしておりますのも、このような強い土地に対する要請、それがありながらも三・三平方メートル当たり二円六十銭というような、極端な価格でもって売り戻すというようなことについて全く納得ができない、こういうことで強い反発が出ているのだというふうに理解をいたしております。  したがって、私は先ほども午前中の質問のとき申しましたとおり、この現状の中では、いま国有地になっている土地については公共の用地として取得すること、使用することがきわめて問題を正しく解決する方向になるのではないだろうか、こういう立場から質問をいたしたわけでございますけれども、特にこの中での私権問題等がいろいろ論議もされました。しかし、私は当時正当な価格を支払って、しかも千五百億の報償金を政府が支払ったという、国が責任はもう当然果たしたものだ、このように考えますし、したがって、その旧地主の権利というものは消滅して、そして国の所有というものに移っていると解すべきが正当ではないだろうか、このように考えます。一たん所有権を国に移した、こういう経過措置を見ますときに、これをただ一般の土地の私有権というようなことだけで見ることが妥当なのかどうか、この点について、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  224. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 旧地主に出しました報償金の対価の問題は、性格として別問題でございまして、報償金は地主さん方が農地改革協力されたということと、その心理的影響を配慮しまして出しました、いわゆる報い償うという意味の報償金でございまして、いわゆる補償ではございません、対価ではございません。したがいまして、それが出たからといって、農地法八十条二項の権利がそこで消滅したというわけにはまいらないと思います。  また、国が持っております国有農地等を直接公園とか児童広場とかに使ったらどうかという御説でありますが、最高裁判所判決にも示されておりますように、自作農創設という特別な目的のために、特定の目的のために収用されました財産でありますから、その目的がなくなったときは一たん旧地主に返す。返した上で公用公共用に使うというのがたてまえでございまして、これが財産権、私権保護の基本につながることだと思います。前の改正前の政令は、そういう意味におきまして、できるだけ国が持っております農地公用公共用に振り向けるために、政令ではその場合に限って旧地主に売り払うことができるという規定を置いておったのでございますが、それが法律違反であるということで最高裁判所の処断を受けたわけでありますので、今回政令改正をしたという次第でございます。
  225. 小林政子

    ○小林(政)委員 それはよく私も承知をいたしております。一たん旧地主に返して、そうして公共の、あるいは公用に使途するということが確実なものに対して、一応旧地主にもそれを買い戻しを許可していたという事実については存じておりますけれども、御承知のとおり東京都では現在百三十一ヘクタール、これが今回の買い戻しの市街地内の対象になっておりますけれども、すでに買い戻された農地等につきましては、その実態を調査してみますと、ほとんどがこれは住宅になっているのが実情でございます。しかもそれが非常に転々と所有権が変わっているというのも実情でございますし、また足立の実態等も調べてみましたけれども、六万二千三百五十八平方メートル、これが今回の買い戻し対象の面積でございますけれども、すでに実施されております実態を調査してみますと、これもほとんどが所有権が何回か変わった住宅になっているというのが実情でございます。  私どもこのようなことを考えますときに、やはりこの際、先ほど開発利益などいろいろな問題が出ておりましたけれども、私は、地主に返すのではなくて、公共用として使用していくことが最も妥当な方法ではないだろうか、このように法律改正を行なうべきではないだろうか、このように考えます。東京都などの事実を見てみましても、公共用として土地を取得したいと思っても、実際には旧地主は時価でなければ、また時価にごく近い価格でなければ離さない、こういうような実態も出てきていることがこの調査の中でも明らかになっております。こういう事実から考えてもこれが一番妥当ではないだろうか、このように考えます。  時間がございませんので先へ進みたいと思いますけれども、国税庁にお伺いをいたしたいと思います。  いま不当利益というものを防止する措置として、農地法改正問題とか、あるいはまた時価でこれを売り戻すことができないかとか、公共用地としての行政指導を一段と強めていくという措置がとれないかとか、さまざまなことが論議をされておりますけれども、私は特に課税の問題につきまして、いろいろ国税庁でも検討がされているというふうに伺っておりますが、国有農地所有権について、この所有権をいわゆる旧地主が国から確保した場合には、所有権というものは移転というふうに見られているのか、所有権の回復ということで見ておられるのか、どのように見られるのか、この点について明確に伺っておきたいと思います。
  226. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 主税局でございますが、お答えいたします。  この農地法八十条第二項の規定によります売り払いにつきましては、すでに昭和三十二年以来取り扱いを統一いたしておりまして、そういう表題のもとに、これは当該所有者が当該資産を引き続き所有していたものとするという扱いでやってきております。と申しますことは、今回の最高裁判決権利を回復するものであるという考え方に立ちまして、こういう取り扱いをしてまいったわけでございます。
  227. 小林政子

    ○小林(政)委員 大蔵省主税局は今後その見解を変える意思をお持ちになっているのかいないのか、その点だけ伺っておきたいと思います。
  228. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 現行法制のもとにおきましては、この取り扱いを続けることが正しいと考えております。
  229. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は今後の見通しを伺ったのですけれども、もちろん現行法律のたてまえではそのとおりだと思いますけれども、今後の見通しについて再度御答弁を願いたいと思います。
  230. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 今後の見通しという仰せの御趣旨は、おそらく、この農地法八十条第二項の規定に基づきます売り払いについて何らかの税の取り扱いを変えるに足る条件が整ったときにどう考えるか、こういう御趣旨だろうと思います。その場合にはそれに応じて、立法がどのようになるかによって税の取り扱いというものはやはりしかるべく扱いたい、かように考えております。別の申し方をいたしますと、もしもこの売り払いが新たな所有権の移転であると考えるに至りました場合には、それに応じまして、その場合に所有権が移転したのだという考え方税制上の取り扱いをきめるべきであると考えております。
  231. 小林政子

    ○小林(政)委員 どちらにもとれるという、そういう御答弁をいただいたというふうに解釈をいたしておきます。  最後に、理財局長にお伺いいたしますが、先ほど来問題になっております国有農地の問題は、普通財産として管理をされてこられたというお話でございますけれども、一般の国有財産につきましては、その売却について、特に土地の問題等につきましては、市街地区域内の国有地等につきましては原則として民間には売り渡さないというような方針で臨んでおられるということを承っております。この財産管理という立場に立って考えますとき、今回の国有農地の問題等について矛盾をお感じにならないかどうか。  それからまた、農地法改正を行なって、民主的な土地政策の立場から公共用に使用すべきが妥当な措置であろうと考えますが、この点についての御意見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  232. 相澤英之

    ○相澤政府委員 一般に普通財産の売り払いにつきましては、ただいま御指摘がございましたように、原則として公用公共用に充てる場合に行なうということで、一般に民間に対する売り払いはできるだけこれを抑制するという考え方で処理をいたしております。しかし、自創特別会計におきまして持っておりますところの農地につきましては、農地法の第八十条によりまして処分が行なわれるわけでございまして、一般の国有財産の処分とは異なる取り扱いとなっているわけであります。  それから、自創特会の持っております農地につきまして、それが自作農創設のために売り渡しを行なわれない場合におきましては、農地法第八十条の第一項の規定によりまして売り渡しが行なわれるわけでありますが、従来の取り扱いは、先刻来お話がございましたとおり、農地法施行令の第十六条によりまして、これを公用公共用、あるいは国民生活の安定のために緊急な必要のある場合に限って売り渡しを行なうということに制限をいたしておったわけであります。その制限が法律に基づく委任範囲を越えるものであるということで、最高裁判所判決によりまして否定されたわけでございますので、行政指導として、今後、売り渡しました農地について公用公共用に充てるための指導を行なうということは十分可能であるし、またそうしていくべきであると思いますが、制度として、現行法のもとにおいて公用公共用にこれを確保するということについては困難であろうというように考えております。
  233. 小林政子

    ○小林(政)委員 最後に要望して終わります。  私は、やはり農地法改正を行なうべきである、そして民主的な土地政策の立場から公共用に使用をすべきが妥当な措置であろうというふうに考えますので、その点強く意見を述べまして、質問を終わりたいと思います。
  234. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、来たる二十三日火曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時八分散会