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1971-03-10 第65回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 小山 省二君    理事 佐々木義武君 理事 増岡 博之君    理事 粟山 ひで君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       有馬 元治君   小此木彦三郎君       梶山 静六君    小金 義照君       斉藤滋与史君    田川 誠一君       田中 正巳君    原 健三郎君       松山千惠子君    向山 一人君       山下 徳夫君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       渡部 通子君    寒川 喜一君       西田 八郎君    寺前  巖君  出席国務大臣         労 働 大 臣 野原 正勝君  出席政府委員         郵政省人事局長 北 雄一郎君         労働大臣官房長 道正 邦彦君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省労働基準         局賃金部長   藤繩 正勝君         労働省職業安定         局長      住  榮作君  委員外出席者         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     木村武千代君   山下 徳夫君     坂元 親男君 同日  辞任         補欠選任   木村武千代君    小此木彦三郎君   坂元 親男君     山下 徳夫君 同月九日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     田村  元君 同日  辞任         補欠選任   田村  元君    小此木彦三郎君     ————————————— 三月二日  視能訓練士法案内閣提出第七六号)(予) 同月四日  母子保健法の一部を改正する法律案柏原ヤス  君外一名提出参法第六号)(予) 同月九日  中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法  案(内閣提出第六六号) 同月二日  栄養士管理栄養士必置義務等に関する請願  (愛知揆一君紹介)(第一三三九号)  同(砂田重民紹介)(第一三四〇号)  同外一件(菅太郎紹介)(第一四八〇号)  同(内海英男紹介)(第一五一九号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願金丸徳重紹介)(第一三四一号)  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願金子岩三紹介)(第  一三四二号)  同(野中英二紹介)(第一五二八号)  失業対策事業存続に関する請願柳田秀一君紹  介)(第一三四三号)  同(柳田秀一紹介)(第一四一一号)  同外一件(田中恒利紹介)(第一五一八号)  医療事務管理士法制定に関する請願外四件  (渡辺栄一紹介)(第一四一〇号)  ベーチェット病患者救済等に関する請願(伊能  繁次郎君紹介)(第一四七六号)  同(大原亨紹介)(第一四七七号)  同(山口敏夫紹介)(第一四七八号)  同(麻生良方紹介)(第一五二二号)  同(受田新吉紹介)(第一五二三号)  同(鈴木一紹介)(第一五二四号)  同(西村榮一紹介)(第一五二五号)  同(吉田泰造紹介)(第一五二六号)  同(池田禎治紹介)(第一五二七号)  妊産婦並びに新生児の健康管理充実に関する  請願永田亮一紹介)(第一四七九号)  同(西尾末廣君紹介)(第一五二〇号)  老人医療対策に関する請願小沢辰男紹介)  (第一四八一号)  はりきゅうマッサージ健康保険取扱手続  き簡素化等に関する請願外二件(小沢辰男君紹  介)(第一四八二号)  同(服部安司紹介)(第一四八三号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願安宅常彦紹介)(第一  五二一号)  医療保険制度の改革に関する請願松沢俊昭君  紹介)(第一五二九号) 同月四日  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願坊秀男紹介)(第一五  五五号)  同(松尾信人紹介)(第一五五六号)  同(島本虎三紹介)(第一五八六号)  同(根本龍太郎紹介)(第一五八七号)  同(河野洋平紹介)(第一六八一号)  同(門司亮紹介)(第一六八二号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願坊秀男紹介)(第一五五七号)  同(島本虎三紹介)(第一五八五号)  はりきゅうマッサージ健康保険取扱手続  き簡素化等に関する請願外二件(奥野誠亮君紹  介)(第一五五八号)  同(水野清紹介)(第一六八九号)  同(植木庚子郎君紹介)(第一七三四号)  栄養士管理栄養士必置義務等に関する請願  外四件(鹿野彦吉君紹介)(第一五五九号)  同外一件(田中榮一紹介)(第一五九二号)  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願佐々木義武紹介)(  第一五六〇号)  同(根本龍太郎紹介)(第一六〇四号)  同(愛知揆一君紹介)(第一六九〇号)  同(古内広雄紹介)(第一六九一号)  同(足立篤郎紹介)(第一七四〇号)  同(小此木彦三郎紹介)(第一七四一号)  同(小山省二紹介)(第一七四二号)  同(佐々木義武紹介)(第一七四三号)  同(佐藤文生君外一名紹介)(第一七四四号)  同(坂田道太紹介)(第一七四五号)  同(笹山茂太郎紹介)(第一七四六号)  同(塩谷一夫紹介)(第一七四七号)  同(野田卯一紹介)(第一七四八号)  同(福田篤泰紹介)(第一七四九号)  ベーチェット病患者救済等に関する請願(千葉  三郎君紹介)(第一五八八号)  同(寒川喜一紹介)(第一六八五号)  同(西尾末廣君紹介)(第一六八六号)  同(和田耕作紹介)(第一六八七号)  同(和田春生紹介)(第一六八八号)  同(稻葉修君紹介)(第一七三七号)  同(下平正一紹介)(第一七三八号)  同(西宮弘紹介)(第一七三九号)  療術の開業制度復活に関する請願中垣國男君  紹介)(第一五八九号)  同(田川誠一紹介)(第一六八三号)  医療事務管理士法制定に関する請願外百四十  三件(小山省二紹介)(第一五九〇号)  同外二十四件(梶山静六紹介)(第一五九一  号)  失業対策事業存続に関する請願外一件(田中恒  利君紹介)(第一六八四号)  終戦外地死没満蒙開拓者遺族に対する処遇に  関する請願下平正一紹介)(第一七三五  号)  同(向山一人紹介)(第一七三六号)  盲人福祉向上に関する請願武藤嘉文君紹  介)(第一七五〇号) 同月八日  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願石田博英紹介)(第  一七九五号)  同(内海英男紹介)(第一七九六号)  同(大石武一紹介)(第一七九七号)  同(門司亮紹介)(第一七九八号)  同(服部安司紹介)(第一九〇六号)  ベーチェット病患者救済等に関する請願(小平  忠君紹介)(第一七九九号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一九〇三号)  終戦外地死没満蒙開拓者遺族に対する処遇に  関する請願下平正一紹介)(第一八〇〇  号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願平林剛紹介)(第一八  〇一号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願横路孝弘紹介)(第一八〇二号)  はりきゅうマッサージ健康保険取扱手続  き簡素化等に関する請願鯨岡兵輔紹介)(  第一八二九号)  同(西村直己紹介)(第一九〇五号)  医療事務管理士法制定に関する請願外百十一  件(青木正久紹介)(第一九〇二号)  海洋戦没者実態調査促進に関する請願齋藤  邦吉紹介)(第一九〇四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  勤労者財産形成促進法案内閣提出第四五号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  勤労者財産形成促進法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。向山一人君。
  3. 向山一人

    向山委員 主として労働大臣にお尋ねをいたしてまいりますが、わが国は過去数年間、高度経済成長による非常な好況の結果、勤労者賃金水準が急速に上昇してまいりまして、生活も次第に安定しているところでありますが、今日勤労者はどういうことを一番要望しておるとお考えかどうか、労働大臣にお伺いをいたしたいと思います。  また、七〇年代はあらゆる分野で非常に目ざましく変化する時代でございます。情報化時代にも逐次入ってまいりまして、こうした非常な大きな世の中の変化に伴いまして、勤労者の要望もまた逐次変わっていくわけですが、行政担当者としまして施策をとる場合に、五年後、十年後の状況等を推測して、それぞれ施策を講ずる必要があるわけでございますが、いまのような予想される情勢の中で、五年後、十年後には、勤労者は一体どういうことを一番要望するとお考えになられるか、こんな点についてひとつお答えをお願いいたしたいと思います。
  4. 野原正勝

    野原国務大臣 一言にして言えば、豊かな生活を営む、自分勤労自分生活をただささえるのみでなく、自分が大いに豊かな人間としての生活が送り得るような安定したものが求められておると思うのでございます。  ところで、戦後におけるわが国経済発展過程では、わが国勤労者にとっては、諸外国に比べまして著しく立ちおくれておった面もございます。そういう賃金水準も漸次よくなってきまして、賃金が急激に上昇してまいりました。これは国民各層のたゆまない努力の結果でありまして、わが国経済は、戦後一貫して高度成長をなし遂げまして、勤労者賃金水準かなり水準に上ってまいったと思うのでございます。日々の消費生活におきましても改善を見、あるいは必要なものをたくわえをいたすと思うのでありますが、勤労者生活基盤はなお必ずしも十分ではないと思います。  そうした点から考えまして、ほんとうに豊かな勤労者生活実現を期するためには、より一そう賃金上昇も必要でございましょうが、同時にまた、住宅とか貯蓄の面におきまして資産を保有するということ、勤労者みずからの生活基盤をしっかりと強化してまいるということが必要でございまして、国としましては、生活環境の整備、社会保障充実等につとめる必要があるわけでございます。最近の労働運動方向などを見ましても、勤労者意識調査の結果を見ますと、単に賃金の引き上げだけでは十分ではない。むしろ住宅対策であるとか、税制であるとか、社会保障問題等勤労者生活を取り巻く各般施策改善強化が強く求められておるわけでございまして、特に資産の保有という問題につきまして非常に高い関心があるわけでございます。労働省としましては、ただいま御審議をお願いしております勤労者財産形成促進法をはじめとしまして、真に豊かな勤労者生活実現ということに対しまして、諸般の施策充実努力をすることが必要であると考えまして、端的に言えば、いかにして豊かな勤労者生活実現をはかるかという点が最も重大な問題であると考え、今後一そうこの方面に努力をいたしてまいりたいと考えております。
  5. 向山一人

    向山委員 ただいま労働大臣は、わが国賃金水準かなりのところまで来ているというような御答弁がございましたが、現在わが国賃金水準が国際的に見てどの程度の地位にあるのか、また、今後どういうような状態が望ましいとお考えになっておられるか、その点についてお答え願いたいと思います。
  6. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 御指摘わが国賃金水準が国際的にどのような位置づけになっているかということでございますが、これにつきましていろいろな指標がございますけれども、手元に、たとえば一時間当たり賃金国際比較というようなことで見てまいりますと、日本を一〇〇とした場合に、アメリカが三九三・五、イギリスが一六一・八、西ドイツが一五六・六、フランスがほぼ同じで一〇〇・一でございます。イタリアは九三・一ということでございますので、フランスとほぼ同水準イタリア日本よりも低くなってきている。なお、アメリカのほうを見ますと約四倍近くなっているというようなことで、一時間当たり賃金水準比較をいたしてみますといまのようなことになってまいるわけでございます。最折の賃金上昇等の傾向を見てまいりますと、今後やはりある程度この格差は縮まってまいりますし、また日本経済成長に伴いまして、当然賃金水準というものもさらに欧米諸国との格差を縮め、その水準を高めてまいるというようなことが必要であろうと思いますし、また、そういう方向になってまいると考えられるわけでございます。
  7. 向山一人

    向山委員 戦後わが国は非常な目ざましい経済発展をしてまいりまして、昨今GNPにおいては世界第三位といわれるまでに成長してまいったわけでございますが、この裏にはもちろん国民努力もさることながら、勤労者のたゆまざる非常な努力によってこうした成果をおさめたわけでございます。  そこで私は、現在の状況を見ますと、農業が今日のような状況で行き詰まりを来たしている。商業流通機構近代化等を取り上げますと、さらに商業人口が工業に回る可能性もございます。こうして勤労者の数は年々わが国においては今後増加していくだろうと思います。こうした他の産業から移る勤労者関係あるいは企業内において今後いろいろ仕事変更等に対応して変わっていく質の問題、こうした問題を考えますと、ある者は自己啓発をもっともっと積極的に行なって、労働意欲をさらに喚起していかなければならぬという面もあるだろうし、ある面には職業訓練を一そう拡大充実していかなければならない面も出るわけでございますが、こうした関係やら勤労者全般を含めた勤労者福祉施設問題等、こうした各般施策を通じて勤労者の質の向上技能向上をはかっていくことが、ひいてはすなわち勤労者生活向上させていくことになるわけでございます。  こういう点の施策についての労働省状況を実はいろいろと検討してみますと、たとえば四十六年度の予算についてこうしたことを考えながらひもといてみますと、来年度の労働省予算は、一般会計におきましては国全体の九兆四千億というような中におきまして千二百八十七億一千二十一万二千円という額が労働省の来年度の予算でございます。これは国全体の予算から見るとほんとうに約一・三%に相当する予算でございます。この一・三%に相当する労働省予算のうち、失業対策費というのが八百九十五億九千三百四十三万三千円でございまして、これを差し引きますと三百九十一億一千六百七十七万九千円だけになります。そこで国の全体の予算の中に占める一・三%、しかもそのたった一・三%の中の予算の約七〇%が失業対策関係費でございます。こうして考えますと、これは率直に言って、予算の面から見ると、労働省というのではなくして失業対策省か何か、失業対策が約七〇%を占めておる、実はこういう状況でございます。  先ほど私申し上げましたように、今後日本がさらにきびしい国際競争の中でほんとうにたゆまぬ努力をして近代的な経済発展をしていかなければならない時期に、やらなければならぬことがたくさんあるわけでございます。こうした予算面から見て、私ども期待している面をちょっと見ますと、たとえば科学技術振興費はたった一億八千七百六十八万三千円しか計上されておりません。また数においては九九%を占めるといわれるわが国中小企業等におきますところの中小企業対策費を見ましても十七億一千百十六万四千円という微々たる予算でございます。先ほど申し上げましたような職業訓練関係を見ましても、どうも私どもが期待する、現在から今後にわたってわが国産業をささえていくところの夢を持っているわけなんですが、そういう夢と予算の面を見ると、どうも合致してこない。さっき言ったように、七〇%は失業対策費というような関係の現在の労働省状況でございます。  そういう中で今回新しい財産形成考え方等も打ち出されたわけでございますが、私は今後労働省が、もっともっと新しい発想を意欲的に取り上げて、そしてこれらの事業予算面ともマッチして積極的に進めていかなければならない事態ではなかろうかと思いますけれども、これに対する労働大臣の御所見を承りたいと思います。
  8. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のとおりでございまして、まことに遺憾に存じております。四十六年度の予算におきましては、昨年に比べますとかなり前進を見ております。全体的に見ましても、去年の伸び率よりもことしのほうがはるかに伸びたわけでございますが、それにいたしましても、御指摘のとおりでございまして、はなはだ遺憾に存ずるわけでございます。現在すでに全就業者の三分の二は勤労者でございます。わが国のこれからの勤労者対策こそが高度経済成長を進めていく上において最も重要であると考えておりますので、そういった第一線で産業活動にいそしむ方々のためのさまざまの政策考え意味において、これらの予算があまりにも少ないということは否定できない事実でございます。そういう点で、これからの労働行政においては思い切った積極的な施策を講ずる必要があるというふうに考えておりますので、今後はあらゆる機会に御指摘のような点について大胆な主張をいたしまして、予算増額等をはかることは当然でございます。  予算面から見ますと、一般会計では非常に少ないわけでございますが、特別会計等を加えますとかなりの額でございます。しかしこれは失業保険特別会計やら労災保険特別会計その他の面を加えまして七千億以上の額になっておるのでございます。そういった特別会計があるということは、一面においては一つの強みであると思うのでございますが、どうも国家財政の面から見まして、そういった特別会計だけに大きく依存をさせてまいったという従来の経過を考えまして、どうも必ずしも労働省政策が適正な形ではなかったんじゃないかというような反省をさせられる向きが多いわけでございます。そういう面でこれからは思い切った各種の施策を講じまして、予算面でも必要とするものは十分に獲得するということが必要であろうかと思っております。  今回の勤労者財産形成政策のごときも、実はかなり大きな予算を将来は必要とすると考えまするが、とりあえず出発点にあたりまして、最小限度予算で一応スタートを切るということにいたしました関係から、予算面にあらわれたものは非常に少ないわけでございますが、しかし、これはこの制度がだんだんと充実を見るに従いまして、当然もう大きな予算を伴う必要が出てまいるわけでございます。そういう面では一応の——不満足ではございましたが、当初にあたりまして最小限度のところからスタートをするという意味合いで、この政策が実施をされる段階を見たということを非常に心強く考えております。これでもって満足するのではないという点、また単に勤労者財産形成政策のみならず、労働省全体の政策がまだまだ非常に不十分である、たとえば今日の公害対策等の問題につきましても、労働省関係は非常に重要な使命を持っておると私は思います。労働基準監督官の数の増員を行なう必要がある、あるいはまた、各企業工場等にも十分な指導監督を行なう、公害を未然に防止するという面でも非常に大きな公害対策上の使命を持ち得ると考えておれます。そういう面を指摘いたしまして、増員等かなり強く要求をしたわけでございますが、これまたある程度増員は認められたものの、必ずしも十分ではないという点で、はなはだ遺憾に考えております。しかし、ものは一歩ずつ前進するという意味で、これはかなり前進を約束された姿で、今後労働省予算というものは将来に希望が託せるのではないかという点で、これからだんだんと大きく育ててまいりたい、皆さま方の特段の御鞭撻や御協力をお願いする次第でございます。  詳しいことは局長から説明を申し上げます。
  9. 向山一人

    向山委員 先ほど失業対策関係が七〇%を占めるというふうなことを申し上げましたが、わが国労働力状況を見ますと、労働省関係からよく答弁がございますように、昭和五十年までの状況を見ますと、大体数の上においては一・一%から一・五%くらいの労働力伸び率のようでございます。しかし、内容を見ますと、質は年々、ここのところ新しい学卒の数がだんだん減ってまいりまして、一般方々労働力、その中でも中年の家庭持ちのいわゆる婦女子関係の数が逐次ふえているような状況でございます。私は、先ほど申し上げましたように、今後非常に産業構造的にも、仕事の面においても大きく変革をしていくであろうわが国状況から見たときに、こうした状況に対応するような、たとえば職業訓練関係を、もっともっと施設も実際も整備していくというようなことをしていかないと、もうその数に期待はできないわけなんだから、こうした必然的に変わっていく質、そうしたものをさらに向上さしていくというようなことをしていかなければならないのです。従来よりもこの点毎年毎年多少伸びているのでそれほど感じませんけれども、従来のものを基準にしないで、いまの時点に立って考えれば、相当思い切ったことをやらなければいけないのじゃないかというふうに考えるわけなんですが、こんなことについては労働省ではどんな考えを持っておられるか、簡単にお答えを願いたいと思います。
  10. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のとおりでございまして、これからは、経済社会発展計画を見ましても、年々労働需要というものは相当多くを要求されておるのでございますが、労働給源としてはせいぜい一・一%程度でないかということは予想されております。ところが、その質でございますが、熟練労働者技能者というものはだんだん減ってきておる。現に百八十万以上の技能労働者が足りないという問題がございます。職業訓練その他は非常に急務でございます。大量に熟練した技能者を養成する必要があるということから、労働省としましては、これを思い切ってひとつ従来の計画に対しまして三倍程度熟練労働者を養成する必要があるということで、職業訓練に特に力を入れるということでこれを実施しようとしておるわけでございます。  なおまた、先ほど御指摘がございましたが、婦人労働力というものが必ずしも十分ではない。今日一千万程度方々が働いておられますが、なお一そう社会参加をお願いしまして、そういう方々がパートタイマーなりいろいろな形で職業分野に御活躍をいただくという必要性が年々増してくるわけでございます。ところが女性は、御承知のとおり、子供を産んだり育てたりするという特殊な重大な使命がございます。そういった使命家庭生活との両立という問題を考えるときに、やはりそれに伴う社会的な施設託児所を設けるとか、女性保護の見地から行なうべきいろいろな政策要求されておりますが、それも必ずしも十分ではないという点で、これは職場内においても託児所施設をつくるとか、いろいろな政策実現したいということで、いろいろな要求をし、ある程度実現をしておるわけでございますが、これも十分ではないということは御指摘のとおりでございます。  そういった面を考えますと、これからの労働政策は、ただいま御指摘されましたような問題を通じまして、いかにしてこれを強力に実現するかという面が大きな課題となってまいります。そういう面で、今後の労働行政は、従来の行き方にとらわれずに、思い切った政策の転換というか、飛躍的発展が望ましいわけでございます。そういった面につきましても、過去を振り返ってみまして、今後のわが国経済の発展成長は、勤労者方々のお力によらなければ十分にその実現は期しがたいという点を考えますときに、いろいろな政策が当然必要となってまいるわけでございます。そういった面もあわせまして、これから強力に実現をしていきたい、そういう方向で目下衆知を集めて検討をしておる段階でございます。
  11. 向山一人

    向山委員 賃金の大幅上昇の結果、先ほどの御答弁では、先進国の中ではフランスとほぼ同様な程度であるというふうなお答えがございました。そこで、このわが国状況は、賃金水準の高い欧米先進国とは異なりまして、わが国勤労者にはこうした賃金の状態で財産形成を自主的に進めるだけのゆとりがあるとごらんになっているかどうか。   〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕 西ドイツは十年前から勤労者財産形成政策を実施しておりますが、わが国の現在の所得水準から見まして、勤労者財産形成政策を自主的に進めるどの程度の基盤があると見ておられるか、その辺のことについてお答えを願いたいと思います。
  12. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、賃金水準かなり上がってきております。ただ、その中でさらに貯蓄をやっていく余力がどの程度あるかというような御指摘であろうかと思います。  そこで、最近の賃金上昇のほかに、たとえば家計の黒字率等を見ましても、昭和三十年ぐらいは八・二%ぐらいでございましたのが、最近に至りましては一七、八%というような状況になっております。エンゲル係数も逐年下がってまいっておりまして、この過去十数年の間に一〇ポイント以上下がってきているというようなことからまいりまして、さらに具体的な現在の勤労者の貯蓄の動向等を見ますと、勤労者世帯の中で貯蓄をいたしております率は九九・七%ということでございまして、その保有額も平均いたしまして百十三万程度の貯蓄保有高を持っている。さらにそれを階層別に見てみまして、低所得層と思われまする年収三十万ないし五十万程度の階層のところにおきましても九六・四%ぐらいの貯蓄率を持っているというようなことをあわせ考えますと、まだかなり貯蓄する余力があるのではないか。さらに、今後の賃金上昇等の傾向を見てまいりますときに、現在のこのような趨勢から推定いたしましてさらに貯蓄をしていく余力は出てまいるのではないか、こういうふうに一応考えておる次第でございます。
  13. 向山一人

    向山委員 一方におきまして、わが国社会保障はいまだきわめて不十分でございます。今後勤労者生活の安定をはかるためには、まずもって社会保障を拡充すべきだという論もございます。確かに、いろいろ調べてみますと、年金の関係がおくれているとかいうような面を見ましても、社会保障の拡充は急務ではございます。しかしながら、社会保障だけに依存することは、たとえば英国病といわれるように、財政の上からもまた国民の意識の面でも非常に大きな問題があるわけでございまして、豊かな勤労者生活実現をはかるためには、社会保障と両々相まって勤労者の自主的な努力が非常に必要になってくるわけでございます。社会保障がだんだん充実されますと、あまり勤労意欲を燃やさなくても社会保障の面でだんだんカバーされて、どちらかというと、ほんとう仕事に誇りを持ってやるという面がやや減殺されるような形になっては非常に困るわけなんで、正しい姿というものは、社会保障充実と相まって勤労者の自主的な努力に期待しなければならないと思うわけですが、この問題については労働省はどんなふうにお考えになっているか、お答えを願いたいと思います。
  14. 野原正勝

    野原国務大臣 勤労者が豊かな安定した生活左営むことができるためには、労働条件の改善社会保障充実が必要であることは論をまたないところであります。わが国社会保障は、その歴史も浅く、今後年金制度充実等につきましてまだまだ改善を必要とする時代でございますが、社会保障のみに依存することはなかなか困難でございます。人はそれぞれの努力によってみずからの生活改善向上をはかるべきはむしろ当然であると思う。豊かな勤労者生活実現のためには、社会保障充実勤労者の自主的な努力が両々相まっていくべきものであろう。社会保障が非常に完備しておるスウェーデンの例などを見ましても必ずしも満足をしていない。それはやはり勤労の喜び、また自分みずからが健康である限りは大いに働いて豊かな生活自分みずからの力でもできる、同時に、完ぺきな社会保障制度が裏にあって、それによって各人がみな安心してそれぞれの生活を営むということが理想であろうかと思っております。  そういう意味でまだまだ十分な社会保障制度にはなっていない。また昨日も、中高年齢者の雇用促進の法案の審議にあたりましても特にその点に触れたのでありますが、社会保障制度が一日も早くりっぱな制度として確立をされるということが、一面においては必要なことであるというふうに考えております。
  15. 向山一人

    向山委員 次に、この法案の内容についてお伺いをいたしてまいりたいと思います。  最初に、ともあれ今回勤労者財産形成促進法案が提案されましたことは大きな前進でございまして、この法案によって勤労者生活の安定をはかることに踏み切った労働省に対して、たいへん感謝を申し上げる次第でございます。  そこで、持ち家制度について幾つかお伺いをいたしたいと思いますが、この制度は、従来の雇用促進事業団の中に勤労者財産形成事業部というようなものを設けて実際には進まれる御予定のようでございますが、従来、雇用促進事業団の関係では雇用促進融資というのが行なわれて住宅が建てられてきております。同じ事業団の中でも、財産形成事業部でワクが違うからそういうことはあり得ないとは思いますけれども、勤労者財産形成関係で持ち家制度が進んでいくために、従来の雇用促進融資のほうに影響があっては困る、むしろこちらのほうも積極的に進めていかなければ困る、こんなふうに思いますけれども、これについてはどんな関係になるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  16. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 ただいま御指摘の、従来雇用促進事業団でやっておりますいわゆる事業主に対しまする社宅をつくるための融資等と、今回のいわゆる財産形成の融資との関連でございますけれども、この財産形成政策の一環として持ち家を促進するために雇用促進事業団を通じまして融資いたしまする原資は、御承知のように勤労者財産形成貯蓄を通じて集めました原資を雇用促進事業団が金融機関から受けまして、それを原資としてやる。従来のいわゆる雇用促進融資は財投の原資をもってこれに充てておりますので、全く原資も別でございますし、今度の財形の一環として融資ができたために従来の融資に影響を与えるというようなことは私ども考えておりませんで、全く別に、違う目的をもって進めていくということで考えておるところでございます。
  17. 向山一人

    向山委員 この持ち家制度がうまくいくかどうかという一つのかぎといいますか、それには土地の問題があろうかと思います。そこで土地の問題をどういうふうにするかというふうな問題、これはまたあとで少しお伺いしますが、そんなこととからめて、さらにこの持ち家制度を実際に要望する方は、なるべく質のいいものを要望されるように思います。中小企業等が土地を購入するというようなことは、いまの地価の状況等から見て、非常に事業主の負担にもなりますし、問題がございますので、できるだけ高層建築でりっぱなものができるようなことを考えていただきたいように思いますけれども、そんな点についてはどんなふうにお考えになっておるかどうか。  それからもう一つ、土地取得関係、何としても土地の問題が、非常に地価が上げるだけに心配になるわけです。それから事業主負担が当然かかりますから、そういうことをあわせて考えますと、せっかくこの制度が発足した場合に、土地の取得の問題あるいは事業主の負担の問題、こういうような問題で、一番困っている中小企業に働く勤労者が、実際問題としてはなかなか利用できないような形になっては非常に困ると思うわけなんで、そういうことも考えてみますと、中小企業がこの制度を利用する場合には、金利などの面で、大企業が利用する場合よりも低利な貸し付けができるようなことをすることが望ましいように思いますけれども、こんな点について労働省のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  18. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 特に市街地等におきましては、土地の問題が、非常に地価の値上がり等で現実に困難な問題になっておりますことは御指摘のとおりでございまして、実はこの財産形成政策を私ども当初考えましたときにも、この問題の解決なくして現実に住宅の建設が、土地問題から隘路にぶつかるのではないかということも実は相当検討いたしたわけでございます。そこで、ただ土地問題につきましては、この財産形成政策の一環として、労働省あるいはその機関が直接いろいろな施策を講ずるということもなかなか現実の問題として困難でございますので、これらにつきましては政府全体が当たる。特に建設省におきましてこの問題とさらに積極的に取り組んでもらうということと、緊密に連絡をとりながらやる必要があろうということでございまして、この法律案におきましても、第四条で、主務大臣として考えておりますのを、いわゆる持ち家の政策につきましては建設大臣ということで、この財産形成政策の一環として行なう持ち家建設につきましては、建設大臣が主務大臣の一人としてこれにかむということで、土地問題についても建設省と十分緊密な連絡をとりながらやってまいりたい。建設省におきましても、土地の造成その他についてはいろいろな施策を講じておりますところで、私ども今後この運営にあたりましては、その辺の連絡を密にしてまいりたい。  なお、御指摘のように、市街地におきましては、そのような意味から、限られた土地に住宅をつくるということで、当然一戸建ての住宅ということではなくて、アパート方式によります高層の住宅をつくりそれを分譲していくという方向が当然とらるべきでありますし、私どももそういう方向で、特に市街地にありましては、高層住宅を建設してそれを分譲していくという方向で進めてまいりたいと思っております。  なお、事業主の援助等との関連におきまして、中小企業について特別ないろいろな考えを持つべきだということは御指摘のとおりでございまして、中小企業の問題につきましては、たとえば法案の九条の第一号のところで、住宅の建設にあたりましては単に事業主というばかりでなくて、事業主の団体を融資の対象にいたしまして、特に中小企業の場合には中小企業協同組合等の団体によりまして、中小企業が力を合わせてやっていくということが実効があがる方法でございましょうと思われますので、そういう団体を融資の対象にするとか、あるいは、たとえば十三条等にも、事業主の協力というところで、事業主が互いに協力してこの制度を十分活用していくということが実効があがるゆえんである旨を、そういう意味合いの法文を置いております。  さらに、具体的な融資にあたりましては、当然中小企業主あるいはその団体に対しまする融資につきましては、融資条件を有利にいたす等の方法をあわせて考えまして、中小企業あるいはその団体の方が協力してこの制度を十分有効に活用できる方法を具体的に進めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  19. 向山一人

    向山委員 わが国は、今日約九百五十万戸の住宅が不足しているといわれておりますが、建設省等いろいろな制度で——もちろん官民一体になっていまの住宅不足を解決していかなければなりませんが、いま局長から説明がございましたように、労働大臣が提案理由の説明で「この目的の達成に資するため、国及び地方公共団体は、勤労者について、貯蓄の奨励及び持家の取得を促進するための施策を講ずるように配慮するとともに、労働大臣は、関係大臣とともに、勤労者財産形成に関する施策の基本となるべき方針を定めるものとしております。」こういうようにうたわれております。これは非常に私は重要な事項だろうと思います。そこで、特にこの土地の問題については、この制度がうまくいくかいかぬかということは、やはり一つは土地問題の解決あるいは地価対策が講じられなければなかなかうまくいかないのではないかというふうな心配が非常にございます。そこで、この法律が通過したならば、労働大臣関係大臣とよくひとつ土地の問題については重大に対策をお考えになって、この制度ほんとう勤労者の持ち家政策の趣旨に沿うように、効果のあがるような御努力をお願いいたしたいと思います。それについての大臣のお考えと、それからもう一つ、やはりこういう勤労者を対象にしたあとからできる住宅制度でございますが、住宅が不足している現在、各役所で住宅に対していろいろなことを考えておりますし、住宅制度がいろいろございますが、それらのこと等を比較して考えた場合に、この制度による住宅が、建設資金の金利がほかのほうよりも高いようなことではまことにこの趣旨に合致しないように思います。少なくとも、最低のものと同じか、それ以下というくらいの金利にしていって当然だろうと思いますが、これについてのお考えお答え願いたい。  それからもう一つ。勤労者財産形成審議会というのができるわけですが、その審議会の構成についても、いまいろいろ申し上げましたような中小企業方々ができるだけ利用できるような形、また、中小企業については特別低利な資金が融資できるようなこと、こうしたものも一つの考え方の目標に置いて、この審議会の構成メンバーもぜひ考えていただきたいと思う。そんな点についてのお考えをひとつお答え願いたいと思います。
  20. 野原正勝

    野原国務大臣 土地問題につきましては、かねがね一つの持論を持っておりますが、同時に、私の持論を建設大臣などにも話しまして御検討いただいておるのでございますが、やはり大きく言うならば、土地の値上がりというものは、土地の売買というもの、土地の移動をするという点においてどうもいろんな矛盾が次々に発生してきておると思います。それは、土地所有権を移動するという問題になりますと、土地を持っておる人たちはできるだけ高く売りたいと思うことは常識でございます。ところが、高く売りました結果がどうかというと、必ずしもその土地の所有者のために利益にならない。そのためにかえってトラブルが起きたり、あるいは非常に膨大な予定しなかった財産ができますので、これの使用をめぐっていろんなむだづかいが行なわれる。中にはそれをめぐって、家族で分配の問題で争いが起きておるという不幸を招いておるのであります。したがって土地を持っておる人たちも、必ずしもむやみに土地の値上がりによってそれが利益であるということを考えていないわけでございまして、できるならば土地というものは、所有権をあまり移動しないでこれを使用収益させる、利用せしめるという意味において何か方法はないものかということを考えたときにおきましては、やはり適正なものとしてこれを使用収益せしめるという条件ができないものか。もちろん一定の固定した価格をもっていつまでも賃貸するということはできませんので、物価、賃金上昇に伴いましてこれは当然上がってまいりますが、その上がり方も、やはり時代とともに適正にスライドするという形がとれないかということを考えてみますと、まじめな土地所有者はむしろそのほうがいいのではないかということを考えます。  農協中央会の会長などとも幾たびか話をしておりますが、むしろそういう制度ができるならばそのほうが望ましいのではないか。そういう際において、土地を借りて使っておった方々が、借地権というふうなものをむやみに主張して、土地を持っておった人たちに非常な不利益をもたらす結果になっても困る。その点の保証が必要であるというようなことも考えてみまするときに、やはり土地の権利を譲渡するという政策のみに執着することは危険である。土地の価格が非常に不当に上がっておる現状において、土地の賃貸価格、地代というものを何とか安定したい。その方法としては、どうも将来は売買よりもむしろ適正な賃貸の方法がとられるべきではないかというような点について、建設大臣も非常な関心を持っております。また、農業団体等におきましても、そういう問題について深い関心を持っておる。現在は総合農政という観点から、しばらくは農地の相当面積が農耕地として余る段階でもございますので、そういう面で、大都市周辺の地域は別としまして、農村地域に工場等をこれからだんだんつくっていこうというやさきでもございますので、その問題を適正に進めていくならば、あるいは一つの好ましい条件が生まれてくる可能性があるということを考えまして、いろいろと検討しておる段階でございます。  もしそうなりますれば、土地の価格というもの、あるいは土地に対するばく大な投資を必要としない条件ができるならば、土地は適正な価格でお借りをして、そうしてその上に建物をつくるということになるわけでございますが、そうなれば農村地域等におきましては、相当の面積の土地に庭つきの家もできる可能性もあるということを考えます。これは、住宅の場合におきましても、耐火建築によって、あまり膨大な、非常に高額の費用を払わなくてもある程度可能であろう。家というものは、御承知のとおりある程度上屋をつくりますと、内部は各人がその好みによって間仕切りをしたりあるいは塗装をしたりできるわけでございます。初めから全部完璧なものをつくって、それを自分で買いたいということでなしに、自分の好みを加え、自分努力を加えて、そこに理想的な家をつくっていこうということも可能でございますから、そういった面で何とかくふうができるのではなかろうか。たとえば百坪の土地をお借りしてそれに住宅をつくる。その際には住宅だけの建設資金があれば一応足りるわけでございますが、その際かりに二十坪程度の家をつくる、そうなりましても、おそらく三百万円程度住宅をつくれば非常にりっぱな近代的な建築も可能であるということを考えますと、どうもその辺にある一つの可能性があるのではなかろうか。この問題につきましては、今後十分検討してりっぱな住宅をつくっていく。それも各個人の好みを受け入れたものとして今後の住宅政策を進めていったらどうかというふうに考えておるわけでございます。  詳しいことは局長から答弁させます。
  21. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 御質問がございましたあとのほかの点につきまして、ひとつ中小企業者に対します金利を適正に、しかも低利にやるように、これは今度の財産形成政策の一つの大きな柱がやはり住宅に対する融資でございます。それに対する政府側としては利子補給をやるということが大きな施策でございます。それで、御指摘の点、まことにごもっともでございますので、ほかの機関とのいろいろなバランス等も見ながら、できるだけ許す範囲で、有利な方向で中小企業の皆さんが十分活用できることを考えてまいりたい。  それからもう一つは、財産形成審議会の構成でございますが、これは御指摘のように関係者の御意見をこの審議会を通じて今後のこの制度の発展、改善に反映していくという立場で審議会を運営してまいるつもりでございます。当然中小企業方々の意見も反映されるようにしたい。従来、財産づくり懇談会等におきましても、商工会議所等の代表とか、あるいは中小企業団体の代表の方もお入り願って——今後も審議会の構成にあたりましてはそういう代表者もお入りいただくような方向で運営をしてまいりたいと思います。
  22. 向山一人

    向山委員 時間がありませんので簡単にお答えいただいてけっこうなんですが、現在多くの企業が社内預金をやっております。そこでこの社内預金が勤労者財産形成に役立ってきておるわけでございますが、今回のこの法律の勤労者財産形成貯蓄においては、従来の社内預金をどのように扱っていくお考えであるかどうか。この辺について簡単にお答え願います。
  23. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 社内預金につきましては、現在相当の額の預金がございます。これにつきましては、この制度自体について逆にいろいろな問題もございますので、昭和四十一年以来いわゆろ中央労働基準審議会の答申を得まして、労働者の保護の立場からこの健全化のためのある程度の規制をしなければならぬということでやってまいっております。ただしかし、現実に相当の額の社内預金がございまして、これが勤労者住宅の建設のための一助にも相当なっておるという事実もございます。そこで、この法案自体では、社内預金そのものを財産形成貯蓄の一つとして考えるということにはいかない。しかしながら、税法上のたてまえからは、一定の要件を満たすものについては持ち家、いわゆる住宅減税の対象にしていく、こういうようなことで処理をしてまいっております。
  24. 向山一人

    向山委員 時間が参りましたので、最後にもう一つだけお伺いをしたいと思います。  政府が今回勤労者生活安定のための勤労者財産形成政策を打ち出したことは、先ほども申し上げましたように、たいへん前進でございまして、たいへん喜ばしいわけでございますけれども、そうした間度からいろいろ考えてみますと、まだまだこの法案自身が十分なものだとは私どもも考えられないわけでございます。先ほども話がございましたように、西ドイツなどではこの十年間に数次にわたってこうした勤労者財産形成に関する法律の改正を行なって充実をはかってきているようでございます。わが国においてはようやくこれから出発をするわけですが、今後いろいろ情勢の変化等もございますししますので、この法案もさらに充実をしていっていただきたいし、また適用も、それぞれの情勢に対応して進めていくようにお願いをいたしたいわけですが、こうした問題に対する労働省のお考えについて承りたいと思います。
  25. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のとおり、このたびの勤労者財産形成促進法は、当初の私どもの案に比べまして実はいささか後退を余儀なくされたという点で、必ずしも十分なものではないと思っておりますが、スタートとしましてともかくこの法案を国会に提出できたということは、一つの前進であると思うのです。これからまだまだあらゆる面におきましてこの制度をりっぱなものとして育てていきたい。そういう点では今後もあらゆる機会を通じましてわれわれの主張を強力に実現いたしたいというふうに考えます。そういう面におきましては、皆さま方の特段の御鞭撻や御指導をお願い申し上げたい、かように考えております。
  26. 向山一人

    向山委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  27. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員長代理 川俣健二郎君。
  28. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまの向山議員の質問を伺っておりまして、私も全く同感でございます。ただ、大臣が最後に、最初の構想がかなり後退してしまったというところに、どうもせっかく労働省が花火を上げヒットさせようとしているのを、わが野党が、勤労者の財産を形成してくれるのですから、これはもろ手をあげて協力をするべきだし、賛成をしたいところなんですが、どうも読めば読むほど竜頭蛇尾というか、最初の構想がどこへいったやら、これは単なる貯蓄奨励法案のほうがいいのではないかというような感じまでしたわけです。  そこで大臣、スタートはこのぐらいだというけれども、スタート方向が違っているような気がするので、もう一度立法の趣旨というか、できれば過去からどのようにいきさつが変わってきてしまったのか。特にフローとストックという耳なれないことばに、これから労働者、特に貯金をしてくれる、協力をしてくれる人方になじんでもらわなければならぬのでしょうから、フロ、とストックということばをひとつ日本語としてわかりやすくお話をしていただきたいと思います。
  29. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 いままでの経緯その他について、事務的の問題もございますので私から御説明ないしお答えを申し上げまして、必要によりあと大臣からお話をいただきたいと思います。  御指摘のように、労働省といたしましては、この財産形成政策の問題については、過去数年来の懸案事項ともいうべきものでございまして、実は当初この問題を取り上げてまいりましたのは昭和四十一年でございました。昭和四十一年の八月ごろに、当面勤労者にとって非常に大事な問題はやはり住宅の問題だ。したがいまして勤労者住宅問題の解決のために、持ち家を勤労者自分で持っていくという政策を推進していくために、国としていろんな施策を講ずべきではないかということで問題を提起いたしたわけです。そこで、これらの問題につきまして関係者の御意見をいろいろ承る場を設けたいということで、財産づくり懇談会という形の懇談会を設けまして、この問題について御検討願い、同年の十二月には、懇談会から御要望というような形で、政府は勤労者の持ち家の普及を国の政策の優先的な柱として強力に推進すべきだというような御意見をいただいたわけです。その後労働省といたしまして、どういう形でこの問題を進めていくかいろいろ検討してまいったのでございますが、当時この問題を具体化するための全体の基盤が必ずしも熟しておらなかったような情勢もございまして、その後若干時間がかかってまいったわけです。  そこで、昨年からはいよいよこの問題と本格的に取り組もう。特に西ドイツあたりでやっております制度で、十年前に発足した当時の勤労者賃金水準あるいは労働条件等を見ますると、ほぼその水準を越えてきている。したがってそういう情勢からも、こういう制度をとり得る基盤が徐々に醸成されつつあるというような角度から、この問題を取り上げて、具体化しようということに踏み切ったわけでございます。  そこで私どもは、財産づくり懇談会等に、昨年の六月一応の試案と申しますか、構想を出しまして、いわば一つの御意見をいただくたたき台というような形で一応試案を出してまいっております。それにつきましては、たとえば財産形成貯蓄では、そのメリットといいますか、インセンティブを与えるために税額控除——税額から減税分を控除するという措置を全面的にとるべきだ。それからさらに、その対象となりますのに、住宅を新たにつくっていくための場合のみならず、つくった住宅に対しまして取得していく費用を払っていくような場合にも、それをも減税の対象にすべきだ。それから、たとえば住宅の分譲のための資金については、これを特別の事業団を設けて、そこでともかく貯蓄をやり、原資を、いわば基金というようなことでそこに積み上げて、それを原資として融資をしていくというようなこと。それからさらに、先ほど向山先生の御質問にございました土地の問題等につきましても、たとえば先生取得をしていくとかいうようなことを織りまぜまして、実は相当思い切った案を考えておりました。  ところが、その後関係各省その他といろいろ折衝いたしまして、この具体化をいたしますときに、いわば後退したということはいなめないところでございますが、いわば非常に現実化されてまいったわけでございまして、たとえば貯蓄等につきましても、これをもし特別の事業団でこういう一定の期間の貯蓄等を扱うということになりますと、相当膨大な人員もかかえなければならない、あるいは機械化もしなければならないというようなことで、相当経費等も見なければならぬ。それよりも、一定の条件で金融機関に扱わせるということのほうが、より具体的であり、また安全でもあるというようなことから、当初の構想を変えまして、金融機関に一定の条件——と申しますのは、財形貯蓄という銘柄のものをはっきりつくるということ、それから集まった金の一部は必ずこの住宅の建設のための原資として吐き出すのだというこの二つの条件がはっきりするならば、金融機関に取り扱わせることも現実的にいい方法であろうということで、金融機関に扱わせることにいたしました。  なお、減税措置につきましては、これは実はいまの税額控除の措置を全面的に適用してまいるということに、先ほど申しましたようにいたしておりましたが、実は税額控除の制度というものにつきましては、これを勤労者だけシングルアウトして取り扱うことについて、税制上のいろいろな問題その他がございまして、新しい税のしかたとして、これをいま直ちに導入することについて、税法上あるいは具体的には税制調査会等の御意見もいろいろございまして、そこで従来の証券利子の非課税制度、これを勤労者に限ってワクを拡大してこれを適用していくという方向で踏み切ってきたわけです。   〔佐々木(義)委員長代理退席、粟山委員長代理着席〕 その他、前に申しました点について、いろいろ関係各省あるいは関係の審議会等の御意見等も聞きながら、現実的に手直しをせざるを得なかった。したがいまして、その結果といたしまして、私ども、先ほど大臣がお答えいたしましたように、十分魅力のあるものと言いがたいということは、何と申しましても残念ではございますけれども、しかし、この制度が新しく発足することによりまして、ともかく新たなる路線が敷かれる、これを今後十分利用しながら、その実績を見ながら改善する余地は十分残されている。したがいまして、今後この実績を見ながら十分改善のための努力をすることのほうが、今回これを断念するよりはよりベターではないかということで踏み切った次第でございます。  なお、フローよりストックへというお話でございますが、これは実は賃金上昇につきましては、近年非常な高度成長の結果、大幅な賃金アップが毎年行なわれている。私ども、先ほどもお答え申しましたように、賃金水準がそれではもう十分なのかといいますと、これは欧米の諸国に比べまして、イタリアフランス並みにはなったけれども、西ドイツ、イギリスよりはまだ低いし、アメリカに比べればさらにまだ非常に隔たりがあるということで、私どもはさらに、経済成長ばかりでなくて、十分この賃金水準上昇考えねばいかぬ。しかし同時に、欧米とさらに劣っておりますのは勤労者が持つ資産状況でございまして、これは日本勤労者は貯蓄性向が非常に高いということはいわれておりますけれども、現実に資産の保有高等から見ますると、必ずしも十分でない。アメリカに比べて約六分の一ぐらいの保有高と、まあいろいろな比較のしかたがあろうかと思いますが、いわれておるところでございます。そこで、フローよりストックへということは、私どもといたしましては、賃金上昇と同時に資産の形成をこの際考えていく、ストックというのは資産の形成を考えるということを申し上げておりますので、賃金上昇と同時に資産の形成ということを、まあフロー、ストックということと置きかえて考えてもいいのではないかというふうに思っております。
  30. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、いまの局長のいきさつのお話を伺ってみますと、全くそのとおりだと思います。ただ最後に、ここでぶん投げてしまわないで、あきらめないで、一応顔を出すということで提案したと思います。私らから見れば、幾ら野党が数が減って成り下がったかもしれませんが、もう少しやはり懇談会等でそういうようないきさつにおける話というか、懇談会の中にメンバーに入れるなりしなかったのかというような感じが一つあります。  もう一つは、よく社会党——私もそうなんだが、児童手当もそうですけれども、どうも期待したほどじゃない。公明党の多田時子君じゃないが、小さく産んで大きく育てるというお話もあった。しかしこれは、小さくレールを敷いて——方向がちゃんと方向づけられればいいのだが、どうやらこれは、小さく育つどころか、未熟児どころか、どうにもならないような法案だと思います。そこで労働省の人がたが、局長以下みんな苦労して、まず一応ここまで法案をつくった。しかし、たな上げされたものにむしろ魅力があると思います。大臣はいつまでも大臣をやるわけではない。大臣は置きみやげにしておきます。しかしこれは、例にとりたくないのだが、中小企業退職金共済事業団の制度じゃないが、いまだにあんな状態なんです。あれと同じように、やはりこれは単に法案をつくったということだけで、野原さんが置きみやげに置いていったという歴史だけで、私、あんまり伸びないと思うのだが、大臣、将来の見通しというのはあると思いますか。
  31. 野原正勝

    野原国務大臣 どうも、まことにそういうことをおっしゃられると残念でございます。これは必ず伸びます。ということは、いまこそ中身は必ずしも十分ではないけれども、勤労者財産形成の手だてというものは、将来とどまるところを知らないほど大きな力になってくる。これは今後の結果を見たいと思います。これはおそらく歴史的なものではなかろうか、いまはなるほど、いかにもおっしゃるとおり必ずしも十分ではない。しかしこれは両三年後においてはかなり大きな力になる。当然財産形成事業団という形で独立した大きなものになる。同時に、これを中心とした財産形成という政策わが国経済の発展に、特に勤労者方々の期待した方向に向かっていく。たとえば政府の財政投資におきましてもほんのちょっぴりでございまして、ことしわずかな出資を行なったわけでございますが、これはそのうちに必ず大きな財政上の負担を進んで行なわざるを得ない情勢になる。それによってまた土地の先行取得もできる、あるいは住宅用地の獲得が可能であるということになりまして、勤労者方々は、この制度、この機関等によってこれからは安心して自分たちの生活の拠点に考えていくところまでいくのではないか。おそらくたいへん大きな魅力あるものに育つに間違いないと思うのであります。ということは、この財産形成政策がいよいよ実現されるということになりまして以来、実は意外な方面からいろいろな相談がありまして、こういろものに対しては自分たちのほうも何とか入れてもらいだいとかいろいろなことを言ってまいりますが、ともかく将来大きなものとして伸びる可能性を持っておる、秘めておると思うのです。これをいかにして伸ばすかということは、今後この制度が出発して、いよいよ発足をする前に、当然これは国会においても十分な御議論もあり、いろいろな御意見もつくと思います。そういう意見を中心としてだんだんと積み重ねていくということでいいのではないか。  とにかく、何と申しましてもスタートでありますから、このスタートをひとつ皆さんが、これは将来どうせだめなんだ、未熟児だということでなしに、いまこそ必ずしも十分ではないが、これからは大きなものになる、自分たちの力で育てるというお気持ちを持っていただけば、これは育つのであります。そういう観点からひとっこれに対してぜひ御協力願いたいと思います。  私どもは、こういうものは最初から完ぺきなものをつくろうとかなり努力をしたのでありますが、遺憾ながら時間が足らなかったという実情でございます。しかし、考えてみると、これは何と申してもこの際はまず発足させる、皆さまのお力を借りまして、勤労者の皆さんの膨大な背景をパックとして、大きな推進力となっていただいていくならば、この制度は必ず育つ。ドイツ等の事情を聞きましても、これが今日まで来るにはかなり年数がたっておりますし、またいろいろ改正もしております。したがって、初めから完ぺきなものを望んでも、やむを得ない点もあったと思います。そういう面で、私はあえてこの制度はまずここに発足を見るという点に主眼を置きまして、今後の発展については、皆さま方の全面的な御協力を得て、ぜひともこの制度を育てていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  32. 川俣健二郎

    ○川俣委員 残念ながら時間がなかったということは言われたくない。時間がなかったら、法案をつくる前に、もう一ぺんやり直そうか、われわれも審議に入るからということになる。ただ法案をつくった場合に、まず非常にいい論争になりかかったから具体的な話は別にします。問題はこれは政治だと思います。問題は、この法案に協力する人はだれかというたら勤労者全体です。  この法案を見せられた場合に感ずる人たちを大体分けてみると、三つあると思います。一つは、貯金するぐらいの賃金があるならいいんだが、われわれには貯金能力もないよ、それだけの賃金をもらってないという、いわゆる底辺の人たちがこの法案を見た場合にあると思います。それから、いまそうないだろうが、宵越しの金をあまり持たないんだということで、もらった金をどんどん使うという消費のほうに持っていくのを、この辺で何とか是正しようという意欲は、労働行政である程度できるかもしれません。三つ目の方は、貯蓄意欲のある人は常に有利な貯蓄を考えております。いいですか、一番有利な貯蓄というのは社内預金ですよ。私もあれをやってきましたが、社内預金なんだ。  そうしますと、これは将来の見通しというか、この法案に乗ってくる労働者というのは、したくたってできないという、最低の生活をどのようにするかということ、それから、貯蓄意欲はあるのだが社内預金のほうに逃げてしまう。それを強奪するといったって無理だ。そこでどうだ、おれがいい家を建ててやるから、悪い不動産屋にひっかからぬようにいい土地を買ってあげるからということで引き出すということであれば、貯金するほうの勤労者が十を出したならそれに三か四を加えて十三、四にして与えれば、これは乗ってくると思う。ところがこれは、たとえば百万円の貯金をしたところで、三分の二は市中銀行から産業資本に逃げるのでしょう。簡単に言うと、百万貯金したところで三十万しか使えないでしょう。そういうところを考えると、どうも自信がないと私は思うのだが、局長はどう思いますか。
  33. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 実はこの制度を活用されるかどうかは、勤労者の皆さんが自由に選ぶものですから、したがいましてこの制度が魅力ない場合には活用されないでしまう、これは御指摘のとおりです。  そこで、いまの御指摘の点でございますが、この制度の一つのねらいといたしましては、勤労者が個々に自主的にいろいろ努力される、それだけでは必ずしも実効があがらぬという場合に、全部の力をそこに合わせて、さらに事業主の力もこれに加え、これに国、地方公共団体等が援助をして総力をあげると、ここに実を結んでくるのではないかということを考えておるわけでございます。  そこで、いま具体的に百万貯金して三十万しか戻ってこないというお話でございますが、これはたとえばいま金融機関から雇用促進事業団に還元してもらうわけですけれども、その場合に三分の一というのをきめたわけではございません。しかし全額というわけにはいかぬだろう。というのは、貯金を預ける場合に、金融機関としては今度融資する場合には長期の資金の貸し出しになるわけでございます。そこである程度のコストもかかってくるということ、それからまた、貯金をいたします場合に、これは勤労者の自由意思によって貯蓄をいたします。したがいまして一年間は出せないということにしておりますが、その後は出すことも可能なわけでございます。そこで、しかし融資の財源としては長期にこれを寝かすということになりますので、それから個々の勤労者の方が何百万預けてその人に三十万返るというのじゃなくて、全体が金として集まった場合に、それが事業主を通じて融資をされれば、個々の場合には持ち家ができない場合にも、全体の金が集まってそれを高層住宅等で事業主が共同して行なう場合に、そういう方法をとれば、持ち家取得の可能性が出てくるというようなことがございますので、いま御指摘のように、百万が三十万だけ戻ってくるということではにわかに考えられないというふうに思っておりますので、そこを総合的にどう運営をしていくかということにかかってまいると思うわけでございます。これらにつきましては、財産形成審議会等もつくりまして、そこでさらに実績を見ながら、どの点が改善を要するかということで十分検討をしながら、この制度が活用され、育っていくようにしてまいりたい、こう思っております。
  34. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だからスタートが違う。日本版とドイツ版と違うんだということで、日本の型ができてしまうと思うのですよ。たとえばドイツの場合は、あなたもそれから大臣もかなりモデルにしたという話があるんだけれども、ドイツの場合は、革新勢力が国の富の分配構造という大論争からずっと積み重ねていったわけでしょう。それでたとえばこういうことだと思うのですよ。ちょっとした例でも、いわゆるフォルクスワーゲンです。一九六〇年七月の法律に基づき、フォルクスワーゲン社は株式会社に改組され、その株式の二〇%ずつは連邦及び同社所在の州が所有し、残り六〇%の何々マルクが百五十万人の勤労者に公開された。しかもその次がいいんだ。対象は単身者で年収何々マルク以下、家族持ちで年収何々マルク以下と、こういういわゆる独自ではとても土地も家も求められない最低限の人方を救うということから、これは始まったんだ。この法律には、まず貯金する能力のない人たちは入れないんだ。そこで私が思うには、たとえばこれは非常にとっぴな、素朴な、幼稚な質問をしますと、いま失業保険が三千億ある。労働大臣管轄でいいのでしょう。あるいはこれから集めようという貯金を全部労働大臣のところに集めて、労働省銀行でもいいんじゃないですか。勤労者銀行でもいいんだ。あるいはいまの労働金庫を活用してもいいわけだ。何も市中銀行に三分の二をやるから三分の一は七分五厘で、しかも雇用促進事業団——タイミング悪く、いま汚職だ。そういうような雇用促進事業団にやらせる、そういうような状態よりも、むしろ労働省がみんなもう金をもってこい。そのかわり政府がこれだけ援助して——援助といったって、いまの援助は予算を見ると六億でしょう。六億のうちの五億はみんなが積み立てた失業保険から五億持ってくるわけだ。あと一億です、一般会計から政府が援助するというのは。そういうところから見ると、もう少し一いきさつではこういう考え方もしたんだろうと思います。それではどこにぶつかったのか、そこをひとつ。現況ですね。
  35. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 実は勤労者の自主的な努力に対して国がどう援助していくかという援助のしかたの問題といたしまして現在提案しておりますのは、減税措置でやっていく。当初私どもは減税措置と同時に財政的な援助、これもあわせてやろうかということで進めてきたわけです。ところが財政的な援助につきまして、西ドイツが当初は減税措置でやっておりましたのを、いろいろな改正その後の経緯を経まして今日では財政援助に切りかえてきております。そこで日本の場合におきましては、財政援助だけでこの問題を処理するということにつきましては、何か特別の個人の、一般的な行政政策の推進のためということでなくて、本人の自主的努力との組み合わせでどう考、えていくかということになった場合に、その財政措置を全面的に採用していくことについて制度になかなか無理があるということで、むしろ税の面でこれを措置することが公正を期するゆえんであるということにいろいろな角度から落ちついてきたわけです。  ただ、いま御指摘のように、貯蓄余力のない人たちについてどうするかということについては、この問題は実は将来の問題として残るわけでございますが、現在におきましては、たとえば先ほどのにございましたように、勤労者の貯蓄の状況から見ますると、現状におきましては、勤労者の九九・七%は何らかの貯蓄をいたしておりますし、それからまた低所得層である五十万、三十万クラスの貯蓄の状況を見ても九六・四%は貯蓄をしておるという実情でございますし、さらに勤労者のいろいろな意識調査等からいたしましても、今後の老後の生活をどうしていくかということについて、これは生産性本部の調査でございますが、自分の在職中の貯蓄や財産で生活をするということを言っておりますのが全体の五割を占める。さらに持ち家等につきましては、一生かかっても自小の家を持ちたいということを希望する人が六七・五%というようなことでございます。そういうようなことからいたしますと、この制度を利用する余地は現状においてもありますし、将来さらにその余地が増してまいるということを考えておるわけでございます。さらに将来の問題につきましては、今後実績を見ながら十分検討をいたしてまいりたいというふうに思っております。
  36. 川俣健二郎

    ○川俣委員 局長は免税の恩典をかなり考えているというんだが、いま予算はどんどん参議院のほうにいっているんだろうが、それと租税特別措置法ですね、これで実はどのくらいの予算を組んだのか、それが一つと、それからいま最低生活者も、どうしてどうしてどんどん貯蓄もするし、財産も形成するようになったというんだが、おたくのほうで出した「労働経済の分析」によると、こういうように分析してあるんだ。「黒字の処分内容では、昭和三十八年から四十三年の五年間に財産購入が支出額で十三・六倍と大幅な伸びをみせており、とくに中、高所得層での伸びが大きく、これらの層では黒字が土地、家屋といった形での資産保有へ向いつつあることがうかがえる。ただし、これらの層においても借金がかなり増加していることから資産の購入資金を借入れる場合が多く、」そして「他方、実物資産の代表として住宅の保有状況をみてみよう。」勤労者の持ち家比率は昭和三十三年五一・〇%だった。三十八年は四八%に下がった。四十三年はさらに四七・三%と低下傾向を続けている。「これは大都市を中心に若年労働者等が増加したこと、公共住宅の整備がすすんでいること、地価の高騰等による持ち家の取得難等によるものと考えられる。」さらに「最近は高所得層の方から土地・家屋の購入建設による住宅資産の形成がすすんでいるが、低所得層においては土地の価格の高騰、建設費の上昇のため」年々低下しておるというようなことが書いてある。そこでいまの、これは過去何年か前にだれですか、石田構想、そういうものからスタートした。それからずっと二、三年前ですか、根本構想。そうすると、根本構想の思想は、これがすべてだと言わないのだが、やはり家を買ったり土地を求めたりするなんというのは、あまり官庁が入るとうまくないのだ、それより、民間の不動産屋を利用せいとは言わないのだが、そういうのをうまく活用したほうがいいんじゃないかというのが根本構想の思想じゃなかったか、そういうことと少しぶつかったかどうか、その辺を……。
  37. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 減税についてどの程度の見込みであるかというお尋ねでございますけれども、先生いまおっしゃいましたように、租税特別措置法の改正を今国会にお願いをいたしておりまして、その四条の二で「勤労者財産形成貯蓄の利子所得等の非課税」という部分が載ってございます。これにつきましては昭和四十七年度の一月一日から実施をすることになっておりますので、本年度の減税はないわけでございますが、初年度は非常にわずかのもので数千万円程度にとどまると思います。  なお主税局のほうの見通しでは、所得税の平年度減収見込みは平年度三十一億五千万円程度というふうに踏んでいるようでございます。
  38. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 建設省の住宅建設計画と私どもの関係でございますが、建設省の第二次の住宅建設五カ年計画というのが一つの建設計画の指標になっておるわけでございますが、それによりますと、大体四十六年度以降五カ年間において、おおむね一人一室を規模とする九百五十万戸の建設をはかる。九百五十万戸のうちいわゆる公的な資金による住宅建設を三百八十万戸、そのほかは、したがいまして、一般民間デベロッパーというようなことを期待しておるのではなかろうかということも考えられるわけでございますが、私どもの計画は、いまの公的資金による建設戸数三百八十万戸のうちで、公営住宅住宅金融公庫の融資による建設あるいは住宅公団によるもの、これらがそれぞれ六十七万戸、百三十七万戸、四十六万戸とございますが、その他の分で九十二万戸ということを試算いたしております。その中で私どもは一翼をになっていくということに考えてまいりたい。そこで建設省も、ただいまの建築計画からいいますと、その公的資金によるものでこの全体のいまの九百五十万というのをなかなか消化するということはできない。そこで、民間の最近のいろいろの動向を見ながら、民間の住宅建設というものを大いにこれを助長し奨励していこう、こういう趣旨で考えられておるものと思っております。
  39. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ少し急ぎます。  いま賃金部長が答弁してくれたから思い出すわけじゃないのですが、これは一体賃金政策なんだろうか。物価と賃上げとの関係論争、これは革新、保守を問わず、日本でいつの間にか立ち消えになっちゃったけれども、所得政策とこれは関係あるのだろうかという質問をされた場合にどういうように……。これは大臣のほうがいいと思います。  それからもう一つは、これは労政の仕事じゃないだろうかというような感じもする、基準局長を前にして言うようだけれども。しかしそれはたいして他意はないのだ、むしろ労働省全体のあれで、新しい仕事なんというものは、積極的にやる意欲のある局長や部長のところに仕事がいくものだから、これは会社だって局だって同じだろうと思う。そういういきさつであったのか、そういうものから見ますと、これはやはり勤労者全体に協力を得なければならない法律であるだけに、まず理解をしてもらう、ほれてもらう、協力してもらう、こういう段階でないと、初めからこれは賃金政策だ、所得政策の肩がわりだ、こういうことの質問に対してちょっと答弁……。
  40. 野原正勝

    野原国務大臣 これは全くどうも所得政策とは全然関係のないものでございます。むしろ財産形成という姿は、豊かな勤労者生活実現ということで尽きるわけでございまして、これが所得政策関係を持つということを全然考えておりません。労働基準局の中の、財産形成の部門は賃金部が扱っておりましたが、これは実はさまざまな方面からおかしいんじゃないかという御議論もございました。賃金関係じゃないじゃないかということも御議論がございましたが、いままでいろいろな関係賃金部がやってまいりましたので、にわかにこれを改正はしませんけれども、将来この問題が大きくなった際においては、労働基準局の賃金部が扱うべきものかどうか、これは検討を要するところであります。いままでも、あえて基準局の所管、ぜひとも賃金部でなければならぬというふうにも考えておりませんので、これはとりあえずいままでやってまいりました賃金部がまじめに検討をしてやってきたということから、一応そこでやっておりますが、この政策が将来大きく発展するに伴いまして、おそらく省内においてはこれをどこで扱うか、お世話するかという問題は今後検討されるときがくると思います。したがって、賃金部がやっておるからどうこうということは一切関係がないわけでございますが、どうも何となく印象が、ただいまお話のようなことがあるように考えます。そこで、労働基準局の賃金部でやっておりますが、この問題につきましては、今後この新設に伴いまして、あくまでも勤労者のための政策という点からこの政策がだんだんと育つに伴いまして内部体制もしっくり、この財産形成を進めていくのにふさわしいような形に変えることを考えていきたいと思っておりますので、いまのところは一応そういう形でおりますけれども、あえてこれに固執したものではないということを御理解をいただきたいと思います。
  41. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私もそう理解したいと思います。いまの論争が一つの参考になると思うのですが、社内預金というのは労務がやるべきか、経理がやるべきか。ところが、いま非常に労務がやるような傾向になってきた。それはなぜかというと、単なる貯金をさせるというのではなくて、これはいい意味でも悪い意味でも労務管理に使われ出した。それはもちろん財産形成です。そこで伺いますが、この法律ができ上がったとして、今度は全国にこれを流す。そしてもちろん事業主に協力を仰がなければなりません。その場合に、労働者一人一人が事業主と協定を結びます。それから銀行と協定を結びます。その場合に、私は、川俣はこの預金は労働金庫に納めてくださいという意思を表示します。ただしその場合は、会社としてはメーンバンクというか、お得意銀行にどうしても納めたがります。その場合の動きをある程度想像して、ひとつ手続を教えていただけませんか、きわめてスムーズにいくんですよという。
  42. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 具体的なお話でございます。これが施行になりまして、現実に財形貯蓄をやり出すことになった場合のことだと思いますが、事業主を通じて財形貯蓄を行なうということになりまして、その場合に、これは控除して納めるということのためには、基準法の二十四条の規定がかぶるわけでございます。したがいまして、労使協定によって控除をしていくということになろうと思います。財形貯蓄そのものは、財形貯蓄をしようとする勤労者と金融機関がいわゆる貯蓄契約をやるということになる。その場合に、その貯蓄契約に基づいて事業主としては賃金から控除して——それは協定に基づいて控除をいたしまして、一定の期日に定期的に銀行に勤労者にかわって納める、こういうことになると思います。そこでいま、具体的にどこの銀行を望むか。これは第一次的には、銀行と直接貯蓄契約をやる勤労者がどこの銀行と契約をしたいか、こういうことになるかと思います。ただ現実には、それを事業主が勤労者にかわって、いわば代行してそれを納めるということになりますので、もちろん御指摘のように事業主のほうの意向もそこに加わってくるということにならないとは限りません。なろうかと思います。しかし、基本的にこの財形貯蓄をやってあれしようとする場合には、労使で協定を結んでやるということが現実にはたてまえ、前提になろうかと思いますので、そのときにたとえば労使の間で、金融機関の選択等についてどういう話し合いをするかというようなところで一つの余地がございましょう。それからもう一つは、法律の七条で事業主の努力義務としていろいろ書いておるのでございますが、ここで「事業主は、その雇用する勤労者勤労者財産形成貯蓄契約を締結しようとする場合及びこれに基づいて預入等をする場合には、当該勤労者に対し、必要な協力をするとともに、」——協力をする。したがいまして、控除で事業主が出すということは、勤労者にかわって、いわば代行して納めるのだ、そういうのが協力であるというたてまえになっておりますので、御指摘のようなことが具体的に各企業におきましてどういう話し合いが行なわれるかということは、いろいろあろうと思いますが、私どもとにかく、たてまえはあくまで勤労者が第一義的に貯蓄契約をするのだ、そして預け入れをする場合には事業主がこれに対して協力をするのだ、こういうたてまえで運用をされていくことを期待しておるわけでございます。
  43. 川俣健二郎

    ○川俣委員 協力でも努力でもいいのだけれども、勤労者には、こう言っては悪いけれども、企業と違って一人一人にはメーンバンクがあるわけではない。どこでもいいんだよ。ただし、勤労者がかたまった組織としては、納めてもらいたい銀行があると思います。ところが、そういうのが団体でやるのか、一人一人事業主に協力をやってくれと言うのか、その辺どうですか。
  44. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 契約そのものは、勤労者個人が貯蓄契約をいたします。したがいまして、その線ではあくまで個人ベースの問題であろうかと思います。ただ、こういう制度が新しく発足をする、そしてこれに基づいて財形貯蓄をやる、その場合に事業主がいろいろな協力をするという場合には、その当該工場、事業場でそれぞれ労働者の代表者あるいは労働組合等とどうしようかというような話し合いが現実に行なわれるのではなかろうかと思っておりますので、そういう場においていろいろ具体的な話し合いを通じて適正な方法が講ぜられるものと思っております。
  45. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまのは民間の場合だけれども、公務員の場合を考えてみます。住宅を建てます。その場合に、共済組合を使うと書いてあります。ところが、公務員でもいわゆる勤住協を使っているのがかなりあると思います。これはいいのかどうか、伺いたいと思います。
  46. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 この制度を公務員にも適用するということになりまして、これについてどう処理するかという問題を政府部内で論議をいたしまして、結局一般民間のものと公務員とを一応分けて立てたわけでございまして、この法案の十五条にも、公務員等に関する特例を規定いたしておるわけでございます。そこで、先ほど財産形成貯蓄から資金を持ってくるお話が出ておりますけれども、全体の立て方といたしましても、一般の民間の勤労者が行ないます財産形成貯蓄、これは各銀行等がその当事者になるわけでございますが、それにつきましては雇用促進事業団のほうで一括して借り入れをして、そして貸し付けをする。それから公務員等につきましては、いまお話が出ました共済組合が雇用促進事業団によることなく、直接に借り入れてやっていく。こういう立て方になっておるわけでございます。そこで、公務員につきましては、公務員の行ないました財産形成貯蓄の一定割合というものを共済組合のルートで持ち家建設に投入する、こういうふうに割り切りました関係で、雇用促進事業団の貸し付け対象として、第九条の第一項第二号にはいま御指摘の勤住協が出てまいりますが、ここでは一応私どもの考えといたしましては、民間の勤労者に限ってその対象にしていくという考え方で割り切ったわけでございます。
  47. 川俣健二郎

    ○川俣委員 公務員は現実に勤住協を使っているんじゃないですか。伺いたいのですが……。
  48. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 勤住協が行なっております勤労者の分譲住宅は、実際に勤住協が直接に行なっております場合と、いわゆる住宅生協に委託をして行なっておる場合とがあります。多くの住宅生協が持ち家の建設分譲を行ないます場合に、その分譲を受けるほうの勤労者の中には、学校の先生とか、そういう方々、公務員の方々も一部入っておられるように私ども聞いております。そこで、その辺を、勤住協の場合に限っては民間と言わず公務員と言わず一括して処理してはどうかという御提案であろうかと思いますけれども、しかし、その点につきましては、先ほど申し上げましたように、その原資の振り分けが、一応民間の場合は雇用促進事業団、公務員の場合は直接共済組合という振り分けのたてまえを貫いております関係で、先ほどお答えしたようなことになっておるわけでございまして、将来共済組合がどういうやり方をするか、それと勤住協との関係をどう処理するかということは、将来の問題として検討いたしたいと思います。この原案では、先ほど申し上げたようなことで一応割り切っておるというわけでございます。
  49. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は何か支障を来たすような気がするので、これはきょう一日ではありませんから、また後日考え方をわが党から出したいと思います。  それからもう一つ、いまお話が出た勤住協というものの下でやっておる住宅生協と、住宅生協が勤住協と同じ立場でやっておる地域とあると思います。その場合に、勤住協だけを法律にうたうということは——私はなぜこういうことを言うかというと、法律を出す以上は協力をいただかなければならない、みんなに愛してもらわなければならない、門戸を開放しなければならないという意味で申し上げておるのですから、その辺を——住宅生協はどうか。
  50. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 この点も問題の一つでございますが、この法律のたてまえといたしまして持ち家建設をいかなる形で行なうのかということでございまして、第九条では、一般民間の分につきましては雇用促進事業団が、第一の貸し付け対象といたしましては事業主または事業主で組織された団体、それからもう一つの対象といたしまして、日本勤労者住宅協会というものを対象に取り上げているわけでございます。つまり、片方ではなるたけ事業主の持ち家援助を引き出すというために、事業主にそれを融資条件といたしまして、事業主のほうでまず建てて分譲するというルートと、それから実際に勤労者の団体が勤労者のために持ち家建設分譲を行なっておる、そのルート二つを予定したわけでございます。  そこで、御指摘は、それはそれとして、なぜ日本勤労者住宅協会だけを選定したかということだと思いますが、まあこの勤労者の団体のルートだけでなく、九条一項一号のほうの事業主のルートのほうにつきましても、もっと広くいろいろな団体について貸し付けの対象を開放すべきではないかという議論が一つあると思うのでございますが、これにつきましては、率直に申し上げまして、私ども政府部内でもいろいろ検討をいたしすしたけれども、何せ先ほど来御指摘ありましたように、この制度がようやく芽を出すという程度のことであって、これから先どういう資金の蓄積状態になるか、活用し得る資金がどういうふうにたまるかというようなことも、まだ不確定の要素が多いわけでありますので、私どもの考え方といたしましては、今後この制度は、先ほど来大臣がお答えいたしておりますように、今後何回か拡充を積み重ねていかなければならない。したがって、最初の発足といたしましてはできるだけそういったものを限定的に考えて、確定なものに限って、そして将来の資金状態を見て徐々にこれを拡充するということが、一番現実的な方法ではないかという基本線がございまして、九条一項二号に限らず、一号につきましてもある程度限定的な規定のしかたをいたしておるわけでございます。そういう意味で、日本勤労者住宅協会だけを取り上げております。  御指摘住宅生協につきましては、実は私ども勤住協の実態をいろいろ勉強いたしましたとこるが、日本勤労者住宅協会は直接に持ち家建設をして分譲するというケースは非常にわずかでございまして、大部分はやはり下に委託をしておる。矛の場合にも、委託しておる対象がほとんどいわゆる住宅生協でございまして、勤住協が委託をしておる団体が全体で四十七ございますが、そのうち四十三が住宅生協、あとの四つが公益法人、ほとんど住宅生協に委託をしておるということで、住宅生協は全国に相当数ございますけれども、ほとんど全部といってもいいほど大部分の住宅生協が、勤住協の委託を受けて持ち家建設分譲をしているというのが実態でございますので、勤住協は御承知のとおり特別立法に基づいた特殊法人ということで、建設大臣の監督のもとにある全国的な協会でございますから、このルートを使って、しかも御指摘の、実質的にも住宅生協が大部分行ない得るという、このルートを通してやるということが発足の段階では一番妥当な方法ではないかというふうに考えたわけであります。
  51. 川俣健二郎

    ○川俣委員 説明はわかりました。説明はわかりましたが、この問題に対する考え方は保留しておきます。(「説明はわかっても、よしあしは別だ」と呼ぶ者あり)そういう意味です。  それから、次の質問のために伺いたいのですが、最初の構想は、事業主に、組合と協定して賃金を昇給、ベースアップする場合に、この部分は将来住宅を建てるなり土地を買うなり、いわゆる財産形成の分ですよ、そういうような賃金を払いなさい、こういうように指導をしようとしたのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  52. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 そういうように指導をする考え方はとっておりません。あくまで財産形成貯蓄をやるかやらぬかは個々の勤労者の自由な選択ということ、そのたてまえは、いままでのいろいろな試案でも貫いてきておるわけです。おそらく先生の御指摘のことは、最初、財産形成についての財政的な援助措置もあわせてやりたいというようなことがございまして、その部分について何かそういう考え方があるのではなかろうか、特に最初、財産形成給付というようなことばを使った段階がございましたので、あるいはその辺をいまのようにおとりになったのかと思いますが、あくまでこの制度勤労者の自主的な選択を前提としての制度であることは終始一貫してきております。
  53. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうこともあるのだが、局長、これはこういうことですよ。賃金の一部を貯金しなさいという、強制的な意味じゃなくて、賃上げの場合は、協定したそのほかにプラスアルファとして、これは将来財産形成として、労働者の手に渡すのじゃなくて、やはり貯蓄をして、財産形成の指導の賃金の分ですよというような考え方をしたのかどうかということです。
  54. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先生御承知のように、西ドイツの財産形成法では二つの道行きを考えておりまして、一つは勤労者の要請に基づいて、貯蓄に充てるために、わが国のいまの制度のようにやる場合に、減税その他の援助の対象にする。それからもう一つは、先生がまさに御指摘のように、一般の賃上げとは別個に、財産形成給付というものを労働協約によって確認をして、そしてそれを国の援助の対象にする、こういう考え方があるわけです。私ども、もとより西ドイツその他の制度を勉強いたしておりますので、その過程で、日本にこれを導入する場合にどういう形がいいのか、いろいろ議論をいたしましたし、財産形成懇談会にもいろんなそういった西ドイツの例を引きながら御相談をいたしたことも事実でございますが、結論といたしましては、今日御提案しておる法案は、御案内のとおり、財産形成給付という考え方は一切とっておりません。勤労者が自由に自分の意思でやりたいという場合にそれを援助していく、こういうシステムでございます。  そこで、そういった財産形成給付というものの考え方が、一体わが国で今後どうなるかということは、もとより労使の自由な話し合いの中で将来考え得ることはあっても、国がいま急に立法の過程でどうこうしようということは一切考えておらない次第でございます。
  55. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、どうです。この法案ができて、やはり事業主に協力してほしい、春闘が終わったところで、ひとつゆっくり夏ごろになってプラスアルファとして、将来財産を形成する分として自動的に何%昇給するように通達でも出すという気持ちは、どうですか。
  56. 野原正勝

    野原国務大臣 まあ、そこまではどうかと思いますが、とにかく賃金問題は、労使の話し合いであくまでもきめてもらいたい問題でありますが、立法の趣旨がよく理解されれば、できるだけ財産形成をしたいという方がふえてくると思います。先ほども議論がございましたが、家を自分で持ちたいという願望が非常に強いわけでありますから、若いうちからできるだけこういうものをやりたいという願望にこたえて、それに対してできるだけの援助をする、まあ、ただいまも援助が必ずしも十分じゃないのでございますが、そういう積極的な今後の財産形成の援助を進めてまいるということになりますれば、必ずこの政策はある程度実を結ぶに違いないと考えております。まあ、賃金問題とにわかにこの政策とをかみ合わしていくという段階ではないと思いますけれども、事業主もこういう政策に対する理解を持って、賃金問題等につきましても理解を一段と深めて、貯蓄が幾らかでもできるようなふうにやってもらえば、まことに幸いであると考えております。
  57. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも、だんだんさびしくなってしまうのですけれども、そうすると、局長に伺いますが、労働大臣の立場というものなんですよ。さっき根本構想の思想は、私が考えたような思想であったのかということをお答えいただきましたが、あとで記録を見ればわかりますが……。それから、それと問題は、金を出すというか、金を集めた以上は、それは一切資金の運用は大蔵省だという章があるのですが、勤労者から見れば、労働大臣財産形成をやってくれる法律なんだから労働大臣に全部預けます、労働大臣の所管のバンクでもつくって、じゃんじゃんやればいいじゃないですかということです。そうすると、そうはいかぬ、やはり運用は大蔵大臣がつかむし、建設大臣も住宅を建てるとなれば口を出すということで、この四条は、三大臣によって基本方針は定める、そうしたら、労働大臣というのはどういう立場になるのですか。
  58. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 四条で、ここにそれぞれ主務大臣を労働大臣、大蔵大臣、建設大臣、大蔵大臣にあってはしかじか、建設大臣にあってはこれこれというふうに書いてありますが、三項には労働大臣は基本方針を定めるにあたってあらかじめ云々、第四項、労働大臣勤労者財産形成基本方針を定めたときはというようなこと、それからさらに第五条では、関係機関への要請これらのそれぞれ主管の大臣として労働大臣にいたしておるわけであります。ということは、私どもは、やはりこの法律の全体の主管大臣は労働大臣だ、ただ勤労者財産形成政策の基本方針をいろいろ立てる、これも主管大臣の事項でございますが、その中でたとえばこの中身として減税の問題もございますし、いまの金融機関に対する指導監督の問題もございますし、あるいは建設省所管の住宅の問題、宅地造成等いろいろな問題も当然含まれてまいると思いますので、それらについては、これは本来的にはその面だけをとりますれば、これは大蔵大臣、建設大臣の所管事項になっているわけです、設置法上。したがいまして、その部分に関連するものは、ここでそれぞれの主管大臣が当然考えてもらわなければならない。それと私どもは、この法律だけですべての、たとえば勤労者の持ち家制度が全般的に行なわれるという意味ではなくて、第三条にございますように、国及び地方公共団体は、この法律の目的の達成に資するため、これこれの施策を講ずるように配慮しなければならないというのは、この法律で言っているほかに、いろいろな施策があるわけでございます。それらについても十分配慮するようにということを法律に書いてございますが、そういったいわばこの法律によって財産形成制度というものの推進に資するために、いろいろな施策を総合的に講ずるという前提でこれが書いてあり、その中心的な法律のその施行については、労働大臣が主管大臣として責任を持つ、こういうことで貫いてまいることになっているわけでございます。
  59. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも責任は持たされるかもしれないが、あまり権限を与えられないような感じがするので、御自分の大臣に対して。それで、もう少し私らとしては意見を申したいところだが、さしあたりいまの雇用促進事業団に一応窓口としてやらせるということだが、いきさつとしては、これは独特の事業団をつくろうということを考えた、その場合になるほどと思ったが、いまあってもなくてもいいような、いわゆる中小企業退職金共済事業団、あれを発展的解消をして事業団を大きくしようという考え方だったんでしょう。その考え方は、いまでもそういう考え方でいるのかということをお聞きしたい。
  60. 野原正勝

    野原国務大臣 当時そういう構想で進めてまいって最後まで粘ったのでございましたが、どうも遺憾ながらその段階ではストップになりました。しかし私は、やはりこれには財産形成事業団を明確につくったほうがいい、またいずれ遠くないうちにそれはできると思っておりますが、その際においては、やはり中小企業退職金共済事業団を発展的解消をして、あの機関を持つことが最もふさわしいのではないかということを考えております。この時期はおそらく、相当程度この政策が浸透して将来の発展が約束されるような段階がくれば、おのずからそうならざるを得ない。また黙っておったのではしかたがございませんから、積極的にこういう方向で進めていく。その時期というものは、そう遠くはないと考えております。ぜひ一つの確固たる事業団をつくって、豊かな勤労者生活実現に向かって強力に施策を行なう段階であろうかと考えております。
  61. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはりあっちへぶつかり、こっちへぶつかりしてできてしまった法律だと私も思うんですがね。それで私も、さっきの向山議員がいろいろ質問していただいたので、ダブらないようにぼつぼつやめますけれども、それでは最後に、中退共の場合にも見通しを私は去年聞いてそれを執念深くことしもまたいつかやるのですが、局長はそれではいま労働者がどのくらいおって、何年後はどのくらいの加盟者があって、何年後はどのくらいのものになるか。西ドイツなんか模範にならないんだから。根本的なあれが違うんだから、日本の場合は。だからあまり高くくくらないで、控え目にでもいいから予想をひとつ発表してみてください。
  62. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま先生御指摘の点は、実は制度を私ども組み立ててまいりまして、私ども自身、どのくらいになるだろうかという非常に関心を持っておるところでございますけれども、正直に申し上げまして、全く新しい制度でございますので、これがどんなふうに進展していくかということは非常にむずかしい状況でございます。ただ、まあそうは申しましても、いま先生からおっしゃいましたように、一応推定をしてみなければならないと思いまして試算をしたものがございます。  四十七年度の全国の雇用労働者数は約三千五百万程度でございますが、その中で定期性預金の勤労者世帯の保有率でございますとか、あるいはその中で特にこの形式の財産形成貯蓄を選択する割合がどの程度あるであろうか、あるいは事業場の協力状態がどうなるであろうか、いろいろなことを見込みまして私どもは、初年度はまあ五十万人程度が見込まれるのではなかろうかというふうに思っております。  そしてまたどの程度の貯蓄をするかということにつきましても、貯蓄動向調査等から手がたく試算をいたしまして、一人平均大体六万三千円程度を貯蓄するのではないかという前提を立てまして試算をいたしますと、四十七年度は財形貯蓄の総額が百五十八億円程度になると見込まれます。それがしばらくの間毎年五十万人ずつの新規加入者があるものとして計算いたしますと、五年後の昭和五十一年度までには財産形成貯蓄総額の残高合計は三千三百億円程度になるであろうというような試算をいたしております。しかしこれはあくまでも試算でございまして、これよりも少なければ、半分であれば半分になるし、倍であれば倍になるというものでございまして、一応の試算であるということを申し上げておきたいと思います。
  63. 川俣健二郎

    ○川俣委員 部長の見通しをしかと記録にとどめておいてもらって、またやります。  そこでわが党は一応、大臣それから局長が率直にお話ししたように、やはりあっちへぶつかりこっちへぶつかりして、なかなか思うような法案にならなかったという、それに対しては野党が共闘体制の形で、これは与党がこれに協力してくれればいいんだが、やはり修正案が三つ、四つどうもほしいような気がするのですよ。これはまあ一応理事会等を通じて働きかけますけれども、一応きょうは第一回目の質問ですから、私は終わります。  そこで資料だけちょっともらいたいのですが、ドイツの賃金水準と比べたきわめて的確な勤続年数、年齢それからできれば業種。  二つ目は勤労者ストックというのをせっかく使ってくれたので、では勤労者ストックに関する統計資料が確立されておるなら、何らかのそういう統計資料があるかどうか。  それから所得の分配構造という論争から、西ドイツも十年間論争して始まったんだが、それじゃ日本の場合は法人所得と雇用者所得との傾向がどのようになっているのか。並行していっているのか、離れているのか、それともくっつこうとしているのか、その辺の傾向を、できれば五年といわず十年間ぐらいの傾向を見たいと思います。  それから一部免税法案というのだけれども、それじゃ少額非課税貯蓄というこの実態が、一体どのぐらいの数字を示しておるのか。そういう場合には貯金の動機を示す何か、こういう場合は貯金するし、したがるというのを、われわれがつかみやすい資料があったら……。  それからやっぱり、中小企業の共済金じゃないんですが、これもそうだと思うのだが、問題は大部分の金がどのように流れるかということが案じられます。三分の一はがっちり雇用促進事業団でつかんで、そしてうまく運用するというのだけれども、問題は三分の二なんです。大きいほうなんです。それが一体どのように流れておるのか。現在の失保にしろ退職金にしろ。そういった資料がありましたらお示し願いたい。  以上です。
  64. 田邊誠

    ○田邊委員 ちょっと関連して。いま川俣委員から資料の要求がありましたから、私もあとで質問の際に、あらかじめ言っておいたほうがあなたの都合がいいでしょう。親切に資料要求しておきます。  いまの川俣委員勤労者の貯蓄の状態というのですけれども、わが国の貯蓄の総量ですね、これは一体どういう推移を示しているか。勤労者の貯蓄の推移と現在の状態、これに比較をしたほうがいいと思います。  二番目は、民間企業や公団それから勤住協も入りますが、そういうもの等でつくっておる標準家屋の分譲価格というのが年度別にどういう推移を示しておるかということをひとつ。  それからこの法律案の中で一番実は問題になるのが、事業計画が明確にないということです。これはあなたのほうでいま考えられておる事業計画というものがもしおありでしたならば、ひとつこの内容を出してもらいたいということをお願いしておきます。よろしゅうございますか。
  65. 粟山ひで

    ○粟山委員長代理 ただいまの要求資料をそろえて出してくださるようにお願いいたします。
  66. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 いま両先生の御指摘の資料は全部大体調製できると思いますが、できるだけ調製いたしまして提出いたします。
  67. 粟山ひで

    ○粟山委員長代理 この際、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時十七分開議
  68. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  69. 山本政弘

    ○山本(政)委員 最近、郵政省の、組合員に対する不当労働行為というものが頻発しておる。先日も田邊委員のほうからいろいろ質問があったようでありますが、私がきょうお伺いしたいのは、特に全逓玉川の問題についてお伺いしたいと思うのです。  これは労務管理上も非常に幼稚だというのですが、それから不当労働行為等もあるように見受けられるのです。  これは、実は仮定の問題ですけれども、人事局長お見えになっていますね、人事局長のおねえさんが結婚式をするといった場合に、あなたは行かれますか、行かれませんか、社会通念上として。
  70. 北雄一郎

    ○北政府委員 参るのが自然であろうかと思います。
  71. 山本政弘

    ○山本(政)委員 もう一つ仮定の問題でお伺いいたします。  あなたの奥さんのおとうさんがおなくなりになったというような場合に、あなたは告別式に参列をされますか。これはどうです。
  72. 北雄一郎

    ○北政府委員 参列するのが自然かと思います。ただし、いずれの場合におきましても、やはり公務に従事しております以上は、仕事というものの関係からどうしてもそれが許されない場合にはやむを得ないかと思います。
  73. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃもう一つ。あなたが、まあ御結婚なさってお子さんもおられるのでしょうが、かりにお見合いをなされるというときに、日にちがきまっておる、そのときには、あなたはお休みになるのか、あるいはお仕事をなさるのか、どっちでしょう。
  74. 北雄一郎

    ○北政府委員 やはり同様であると考えます。すなわち、緊急やむを得ざる用務が発生した場合は別として、そうでなければ、そのときには参ることになろうかと思います。
  75. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いま私は仮定の問題として三つのことをお伺いをした。そして人事局長は、公務上必要がある場合には休暇がとれない場合もあるだろう、そしてなお、三度目のお答えのときには、緊急やむを得ざる場合というふうなお話があった。いま郵政省は、日曜の配達を廃止しておりますね。これは全逓本部と本省間の間で話し合いできまった。そのかわり日曜のを完配するというようなことで、時間を三十分ですか、延長されていると思うのです。ただ、いま私が申し上げた場合は、たまたまいずれも月曜の日にそういう問題が起こっておるということで、月曜の年休不承認ということで問題が起きるわけであります。  そこでお伺いしたいのですけれども、月曜の年休不承認ということは、これは完配、要するに郵便物の完全配達ということと関係があるわけだけれども、緊急の場合になるのかどうか。つまり、そういうことに当てはまるのかどうか。そのために、いま申し上げた三つの例の場合に、年休をとらせないということが社会通念上から言って妥当かどうか、この辺はいかがですか。
  76. 北雄一郎

    ○北政府委員 ただいまのお話も、いわば仮定の問題だというふうに存じますが、全局が日曜配達を休止しておるわけではございませんが、日曜配達を現に休止しておる局等におきましては、月曜日に当然郵便物が非常に多くなる、したがって、これを配送するために、平素以上の労働力というものを集中しなければならない、こういうことはあるわけでございます。そういった月曜当日、本人の私的な用事があるといった場合、休暇を願い出る、この場合にその願い出た時期というものも一つは関係しようかと思います。相当以前に願い出たものでありましたならば、局側のほうでも、大体の労働力、平たく言いますならば、たとえば非常勤職員でありますとかそういった手配ができるわけでございます。ただ直前になりましてそういった申し出がある。これが結婚式とかそういった場合には、直前ということはまずないと存じますけれども、かりに直前にそういった申し出があるといった場合には、そういった緊急の労働力の手当てができないというような場合が生ずるかもしれません。そういった場合には、それがたとえば郵便の集配を担当する人でありましたならば、その日一日その人の受け持つ区域について郵便の配達が全然できない、こういうような事態もあり得るかと思いますので、こういった場合には、やはり年休を与えないで、別の日に振りかえるということになろうかと存じます。
  77. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は、三例のうちに、奥さんのおとうさんがなくなった人、これはまあ緊急の場合だと思う。だから、そのときに、おそらくそういう余裕がなくて年休願いをしたと思うのです。  私がいま二つ御質問申し上げたときの問題について実例をあげましょう。十月二十六日の結婚式に参列をしたいということで十月十日に出しているのですよ。そうすると、これは十六日間の余裕があるでしょう。余裕があるけれども、しかし、そのことに対して年休を許してないのですよ。ここにちゃんと、メモをとりなさいということでメモをとっているが、妹の結婚式に年休をくれなかった課長、私はこの課長という人はたいへん常識のない人だと思うのですけれども、妹の結婚式であろうとなかろうと、業務がふくそうしているから月曜の年休は認めない、こう言っている。十六日前ですよ。どこに日にちの余裕がないのかということです。  もう一つの例も同じような例なんです。事前にそれだけの処置ができる余裕がありながら、頭からそういうことを否定して年休を無視している。先ほど私が労務管理上非常に幼稚なところがあるようだと申し上げたのはそれなんです。そういうことから、あとで私がお話し申し上げるような事件が出てくる。こういう余裕があるときに、どうなんですか、当然与えるべきじゃありませんか。もう一ぺんお伺いします。
  78. 北雄一郎

    ○北政府委員 先ほど一般論として申し上げましたが、いま具体的なお話を承った次第でありますが、具体的なケースにつきましては、私どもこの場合、ただいま初めて伺いましたので、よく調べをいたしたいと存じます。ただ、御指摘の十二月二十六日という日でございますけれども、年末の当該局における郵便の配送業務が円滑にいっておればどうであったか、あるいはそれが円滑にいっていなくて、非常に大きな郵便の滞留があったという場合、この二つの場合では、やはりその時点における事情の変化といいますか、そういった本のもあったのじゃなかろうかと推察いたしますけれども、具体的にはよく調べましてお答えをいたしたいと思います。
  79. 山本政弘

    ○山本(政)委員 十二月二十六日じゃないですよ。十月二十六日なんですよ。十二月二十六日がふくそうするのはあたりまえ——あたりまえというのはおかしいんですが、十月二十六日なんですよ。
  80. 北雄一郎

    ○北政府委員 わかりました。
  81. 山本政弘

    ○山本(政)委員 あなた方が四十二年の九月九日の交渉で妥結したときに、これは直接あなたとは関係がないことですが、しかし東郵と東京地本とのおそらく話し合いの中で妥結したのだろうと思いますが、そこでメモも交換されておって、そして社会通念とは一体どういうものかということで具体的にあげているわけですよ。同居の家族が病気をした場合、父母の病気の場合あるいは冠婚葬祭の場合は年休は認めましょう、こういう約束がされているはずです。そういう約束がされて、しかも事前にかなり日にちがあるにもかかわらず、頭から聞こうとしない。こういう言い方が、一体管理者として適任なのかどうか。妹の結婚式であろうとなかろうとそんなことは問題じゃないのだ、そして東郵とメモを交換し、確認されておっても、月曜の休暇は全然認めないのだという言い方が一体あるのかどうか。そういう管理者がいるから、そういう課長がいるから、労使の関係がうまくいっていないんですよ。郵政省の人管第五十号、これは四十六年二月二十二日に人事局長の名前で「今後の労使関係改善について」ということで出しているが、労使の間のコミュニケーションをきちんとしなさい、そして、いままでの実態というものを見ながら、沿革や現状や実態を抜きにして考えてはいかぬ、こうあなた方は書いて通達を出しているにもかかわらず、そういうことが平然と行なわれている。私は三つの例をあげたけれども、ここには七件ほど類似例が出ているのです。これは全部といっていいほど年休の問題でトラブルが起きている。しかも、いずれも約束をしたような冠婚葬祭とか同居人の病気とか父母の不幸とかいうことに関連してなんです。労使の関係を、何で管理者のほうが故意に摩擦を起こすような取り扱いをするのか、私は理解ができないのですよ。一体あなた方は、どういう指導を部内の一般長になされているのか、私は確認したいものですからあなたにお伺いしたいと思うのです。
  82. 北雄一郎

    ○北政府委員 労使関係につきましては、先ほど先生御指摘になりました最近の通達もございますけれども、その前に二月九日にやはり大臣の依命通達というものも出ておるわけであります。さらにさかのぼりますと、去年の十二月に全逓との間におきまして、そういった労使関係を今後いかに持っていくか、いかにあるべきかというような問題につきまして、一定の合意に到達しておるわけであります。したがいまして、時間的に順を追いますと、そういう合意がございまして、これを省といたしましても、今後省の下部末端まで徹底していきたい、そういう趣旨から二月九日の依命通達を出し、また二月二十二日の先ほど先生御指摘局長通達を出しておる、こういうわけであります。今後もあらゆる機会を通じまして、それらの通達をさらに具体化して徹底するという努力を続けておるところであります。
  83. 山本政弘

    ○山本(政)委員 あなたのほうは、組合員のほうの意見ばかりだから信用ならない、こういうふうにおっしゃるかもわかりません。しかし私は、正確にメモしたものを私のところに持ってきなさいと言っているし、それぞれ書いたメモというのは違うのです。マジックで書いたものもあるし、普通のペンで書いたものもある。その中でこういうことを言っておるのですよ。課長が、お医者さんにがかったんだったら認める、しかしお医者さんにかからぬで薬を飲んで休んでいたら、これは欠勤として認めることはできない、病気休暇としては不承認だ、こう言っているというのです。あなたが常識的にお考えになって、そういう態度というものをもし管理者がとったとするならば、一体どうお考えになるか。
  84. 北雄一郎

    ○北政府委員 これも具体的に課長がどう言ったかということを私ども把握しておりませんので、ただいまお示しのことを、恐縮でありますが、いわば仮定の問題として受け取って答えさせていただきたいと思います。  病欠という制度はございますけれども、御承知のようにこれは一種の有給休暇でございます。たいへん遺憾でございますけれども、間々これを悪用いたす者が現実にあります。ほんとうの病休というものは、労働力を早く回復してもらう、また個人の健康の障害を早く回復してもらうという意味で、これは進んで喜んでとってもらうという態度でございますけれども、その中に間々ありますところの便乗してずる休みをする、こういったものは厳に抑制をしていきたい、こういう趣旨で私ども指導しておりますし、また現場の管理者も、そういった点に中心を置きまして病休の取り扱いをしていく、そういうふうに相つとめておるはずでございます。
  85. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、人事局長は、組合員というものには間々ずる休みがあるということを頭からお考えになって管理しておるのですか、それはどうなんです。
  86. 北雄一郎

    ○北政府委員 何も全部がやっておるということではございません。病休の制度というものは、先ほど申しましたように、それなりに必要な制度であり、正しく運用されるべき制度である。ただ現実には、はなはだ遺憾でありますが、中にはこれを悪用する者がないでもございませんので、そういった悪用ということは厳に戒めていく、こういう態度でございます。
  87. 山本政弘

    ○山本(政)委員 厳に戒めていくときの指導の方法に問題がありますね。つまり局長なら局長、課長なら課長として指導の方法があるだろうと思うけれども、頭から二日分薬をもらったのだったら二日の休みだろう、こういう言い方が指導の方法として適切だろうかどうだろうか。あなた方が二、三年前に書かれた指導要項の中にはそういうふうに書いてないと私思ったのだけれども、本人は、三日分薬をもらって、三日間休まないで二日で出てきているのです。そういうことに対して、頭からそういう言い方をすることが正しいかどうかということなんです。そうでなければ玉川にトラブルがそんなにたくさん起こってこないはずです。あなた方は、なぜ多発するかということで組合のほうばかり責めて、官側に対して何か指導をやったことがありますか。通達の出しっぱなしだけでしょう。あなたのような考え方をするからトラブルが大きくなるのですよ。私は組合員の全部が全部神さまみたいだということは言わぬ。しかし、もう少し指導の方法とか管理の方法をあなた方が考えたら、組合員だってもっとすなおになるだろうと私は思う。特に玉川というのは局長がかわってからこんなことになっているんでしょう。それまではそうなっていなかったはずです。邪推では決してない。私をして言わしむるならば、玉川だけをあなた方は、ある意味では、労務管理で重点的に痛めつけてやろうとしている。そうとしか思えないトラブルが出てきておる。ちょっと考えてやれば起きないトラブルが、管理者の不親切、そしてあなたのおっしゃるように、ずる休みが間々あるからというような観念でやるから起こってくると思うのですよ。その点どうお考えですか。
  88. 北雄一郎

    ○北政府委員 私ども、そういった点につきましては、むろん通達等の指導のほかにもいろいろ会議もございますし、詳細に指導する機会も多々あるわけであります。いまお示しのような具体的な問題につきましては、例としておあげになりましたような単純な割り切り方をすべきだとは言っておらないわけでありまして、いろいろな資料、材料から慎重にそしてはっきりその区分けができるようにすべきだと言っておるわけであります。決してそういう単純な区分けのしかたをしろと言っているわけではございません。
  89. 山本政弘

    ○山本(政)委員 局長から先ほど、十分な時間がなくて、緊急の場合には配達が欠区になるから年休をとらせない場合があり得るというような意味のお話があった。  そこで私はお伺いしますが、余裕がないとつまり年休はとらせない、こういうことなんですか、あなたのおっしゃりようからすれば。ここに一つ事例がある。集配の人できょう三時十五分に父親がなくなった。嫁に行った娘から連絡があったから、課長にあした休ましてくださいと、こう年休をすぐ請求したところが、だめだと断わった。ところが、そういう断わった管理者は、早出の出勤、早出といえば七時の出勤ですね。組合に対して超勤命令を一時二十五分過ぎに命令してきているわけだ。これ、午後ですよ。そうすると、超勤命令というのは、私は四時間前に命令するように協約できまっていると思う。命令したのはこの時間ではないわけです。そして、そこの管理者は、朝間に合わなかったから、きょうは物が多いので超勤をやってもらうのだと言って、本来ならば四時間前にやるべきなんだけれども、四時間前でなくても一時間前でも命令はできる、こう言っているのですよ。よその人に対しては、組合に対しては、まことに気の毒なやむを得ない事情というものがあって、きょうなくなったから、あしたとにかく葬式があるんでしょうよ。そのときにはいけませんと言って断わっておいて、自分たちが今度は人を動かすときには、四時間前にと協約できまったものも無視して、一時間前だってできるのだと言って使おうとしているのだ。そういう人事管理というのがノーマルな人事管理ですか。非常に一方的じゃないですか。
  90. 北雄一郎

    ○北政府委員 お示しのようなこと、よく調べすましてまた御報告したいと思います。
  91. 山本政弘

    ○山本(政)委員 人事局長の部内一般長あてのいまさつき私が申し上げた「今後の労使関係改善について」、二項目にこう書いてある。いろいろ書いてきて、「これらの施策を実施していくにあたっては、それぞれの施策の目的にふさわしい適切な手段と方法によるべきであり、いやしくも組織介入等不当労働行為にわたることのないよう格段の配意をされたい。」とこういっている。そうですね。そしてその次に、「昇任、昇格等に関連して職員を評価するような場合は、職員の具体的な能力、言動等にもとずいて、公正に行なわなければならない」、こういっている。私は、集配課に昇任差別の例があるような気がする。しかし、これはあなた方にひとつあとで私は報告をいただきたいと思うのです。だけれども、私が考えたら、これは昇任差別の、つまりあなたがここにうたっておることとはうらはらのようなことが行なわれているような気がするから申し上げます。小沢文雄君です。この際名前を申し上げます。四十五年四月まで集配分会の副分会長だった。この人が春の、つまり春闘ですか、不参加の意思表示をして副分会長をおりた。四十五年十月に主任が発令をされた。先任者約二十名を飛び越えておるのですよ。菅原健次さんという、数年前まで執行委員。同じように四十五年春の闘争で全逓の運動に不参加をした。そして夏から別のグループに入っている。あるいは第二組合と言ったほうがいいかもわかりません。夏入っている。四十五年十一月には主任が発令されておるのです。これは十名を飛び越えておるのですよ。あなた方から言えば、ここに書いてある「具体的な能力、言動等にもとずいて公正に行なわなければならない」、だから具体的に判断をしました、そうおっしゃりたいのだろうと私は思うけれども、しかし私どもから見れば、これはどうも少し飛び越え過ぎておるというような感じがするわけです。あとであなた方のほうでどういうわけであれしたのかひとつ教えてもらいたい。しかも、第二組合に行った人たちが、全部局長表彰を受けて、管外出張をやっておる。第一組合のまじめに働いておる人たちにそういうものが何もないのですよ。あなた方は分裂支配をやっているじゃありませんか。これを見れば、私はどう公平に考えても、片一方のグループだけが局長表彰をもらって、片一方はゼロ、片一方だけが管外出張に行って、片一方はゼロ、そういう人事管理が公正な人事管理とは私はちょっと思えません。第一組合の中でもきちんと仕事をやっておる人たちがおるはずですよ。局長にこのことをお伺いすることは、まだ調査不十分であるかもしれませんから無理かもしれない。無理かもしれぬけれども、しかしこの点はどうお考えですか。
  92. 北雄一郎

    ○北政府委員 私も、先生のお話でありますので、十分調査はいたしたいと思います。ただし、結果的な数字だけからは判断はできないのじゃないか。たまたま具体的な能力等からそういったことになることもこれはあり得ることでございます。むしろ、何でもかんでもいわゆるところてん人事というようなことは排すべきことだ、かようにも考えておるわけでありますけれども、しかし、そういう考えの中でも、やはり組合のほうからも必ずしもそれが公平じゃないのじゃないかということで、かつて問題が提起されております。それらを実は受けまして、去年の十二月の合意ということも生じ、先ほど先生がお読みになりました通達の趣旨というようなものも、そういったことがあってはならないということをさらに強く下部に示したものでありまして、私どもの精神はそういうことであります。したがって、そういった精神が的確に下部に行なわれますように、今後とも十分に注意をしてまいりたい、こう考えておる次第であります。
  93. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は、飛び越えることがけしからぬとかなんとか言ってないのです。ところてんが必ずしもいいと言ってないのです。別のグループの人が全部昇任をし昇格をし、そうして表彰され、管外出張までやる、こういうことがあるにもかかわらず、片一方のグループには全然それがないということはおかしいじゃないかと言っているのです。飛び越えたっていいのですよ。私は必ずしもところてんがいい、そんなこと言っていない。片一方はナッシング、片一方はオール、そういう人事管理というものが正しいかどうか、そのことを聞いておるのです。そのことだけなんですよ。
  94. 北雄一郎

    ○北政府委員 広く郵政部内全般というようなことになりまして、かりにそういうことがあればこれはすこぶるおかしいと私も思います。また、部内全般でなくても、たとえばもっと非常に大きなスケールでものを考えました場合に、そうして何百人も選ばれるという中で、片一方だけだ、これは非常におかしいと思いますけれども、比較的小さなグループ、その中では結果的にそういうこともあり得ようかと思いますけれども、御指摘のケースにつきましては十分調査をしたいと思います。
  95. 山本政弘

    ○山本(政)委員 比較的小さなグループではそういうことがあるというけれども、両方合わせたら三百人くらいなグループでしょう。三百人くらいなグループの中にそういうことが考えられますか。
  96. 北雄一郎

    ○北政府委員 まあ二百五十人くらいの局でありますけれども、その程度の局でざらにそういうことが発生するというのはないだろうと思いますが、当該局の場合につきましては、私も具体的に承知いたしておりませんので、十分調べましてまた御報告したいと思います。
  97. 山本政弘

    ○山本(政)委員 御報告されるというのだったらあれですけれども、そういうことをしようとしている意図というのは歴然としておると思うのです。三月五日だと思うのです。玉川の区民館に第二組合員及び全逓の批判グループといったほうがいいでしょう、そういう人たちを集めて、局のほうで世話役会議を持っているじゃありませんか。そういうことを考えてみれば、つまりいまの格差、差別昇任、差別昇格といいますか、そういうことがあり得るということが類推できますよ。つまり社会通念からいえば。あなたはそうお思いでありませんか。これは一体どうなんです。
  98. 北雄一郎

    ○北政府委員 いまおっしゃいました三月五日の集会というようなことも、私いま先生から初めて伺いましたので、そういったことを取りまぜてよく調べてみたいと思います。
  99. 山本政弘

    ○山本(政)委員 労政局長にちょっと伺います。  もしそういうことが——もしでなくて現実にあったわけだ。そういうことは一体あなたの立場からしてノーマルといえるのか、ノーマルといえないのか。それだけでいいです。
  100. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 一つの職場に二つの組合がございまして、管理者側が一つの組合のみをひいきして一つの組合をいじめつけるということがございますれば、これは私どもとして労働行政上はなはだおもしろからぬ事態だと思います。
  101. 山本政弘

    ○山本(政)委員 人事局長、いまのお話でおわかりだと同うのですけれども、そういうことが現実にあったわけですよ。群馬でもそうだったでしょう、前橋ですか。全くないところにそういうことが出てくるはずがない。あなたはいつでも調査した上だとかなんとか言ってごまかして報告も何も持っていらっしゃらない。しかし現実にこういうことが出てきておるということなんですよ。もしということでなく、これが現実に起こっておるとするならば、あなたはどうお考えです。
  102. 北雄一郎

    ○北政府委員 そういった組合による差別ということにつきましては、これは労政局長と全く同じ考え方であります。
  103. 山本政弘

    ○山本(政)委員 はぐらかさないでください。任用の差別ということは、あなたは調査して私に報告してくださると言った。いまここで言っておるのは、第二組合及び全逓の中の批判グループの人たちを一カ所に集めて世話役会議を開いておるということは一体どうなんだ、これは正しいのですか正しくないのですかと言っておるのです。
  104. 北雄一郎

    ○北政府委員 その事実自体は別といたしまして、かりにそういったことがありまして、しかも世話役活動とおっしゃいましたのですが、郵便局の管理者がその会合を司会するとか会合に加わるとかという中で何か組織介入のような話があるということであれば、これはまことによろしくないことだと思っております。
  105. 山本政弘

    ○山本(政)委員 人事局長、なかなか慎重で、たいへん頭がいい。お考え考えして私に答弁されているようですけれども、その中で、司会をするとか云々をするとかいう話があったけれども、そういうことに対して世話をするということ自体問題がありゃしませんか。つまり、第二組合とか批判グループの人たちを一カ所に集めること自体おかしいじゃありませんか。労政局長はそれはおかしいと言っているのですよ。あなただって人事局長なんでしょう。労使の問題について全くしろうとであるとは私はいわせませんよ。当然あなたは、そういうことに対して、そういうことは好ましくないし、あり得べからざることだということはちゃんと御承知のはずだと思うんですよ。司会をしたらなおさら悪いじゃありませんか。中に入って世話役を内部にわたってまですることだって、なお一そう悪いことですよ。しかし、一カ所に一つのグループだけ集めるということについての世話役をしたことだって、私はたいへんおかしいと思うんですよ。その点どうなんです。
  106. 北雄一郎

    ○北政府委員 そういった人たちを集めるということは、これはどういう趣旨か、集めるということは不穏当な場合が多かろうと思います。集めるといいましても、どういう意図で集めるかということもあろうかと思いますが、そういった特殊な人々が何かそういった相談をする、あるいは相談をする可能性が十分あるというようなもの、それを集めるとおっしゃいましたが、どういう形か、何月何日どこそこに集まれというようなこと、目的はこれこれだ。どういう具体的なケースか存じませんけれども、まあそういった誤解を招くようなことは慎むべきだ。しかも誤解どころではなくて、その中身が非常によろしくないことであるならば、なおさらこれはいけないことだ、はっきりいけないことだ、かように存じます。
  107. 山本政弘

    ○山本(政)委員 もしも集めるなら、要するに組合員というのは、たとえば集配なら集配というのは、同じ仕事をしているはずだから、同じ内容の仕事なはずなんだから、一組合も二組合も批判グループも何もなくて、仕事の上のことなら、全部の人を同じところに集めて、そうして何か話をするのだったら、必要があるならば、話をするということが私は当然だと思う。しかしそれをことさらにグループを分けて、そして片一方のグループだけ集めてするということは、これは正しいやり方じゃないだろうし、そして同時に、片一方のグループに何かをしているんじゃないかという疑惑を持たせることも私は事実だろうと思うんですよ。そういうことはあり得べからざることだと私は思うのですね。その点は間違いないですね。
  108. 北雄一郎

    ○北政府委員 仕事のことで集めるということになれば、先生おっしゃるように、やはり仕事の単位で集めるのが筋だろうと思います。私的なことで集まるというのでありますと、先ほどのように少し話がぼやけますので、少しぼやけた答弁になりました次第です。
  109. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、私的なことで集めるということで、片一方の連中を全部、一つのグループを全部集めるということはノーマルですか。あなたのおっしゃることはどうも不可解なんですけれども、ノーマルですか。それは、断わっておきますよ、一組合は全部除外して、その他の者を全部集めているのですよ。
  110. 北雄一郎

    ○北政府委員 それは、先ほど言いましたように、誤解を招く場合が非常に多いと思いますし、そういうことはすべきでない、かように思います。
  111. 山本政弘

    ○山本(政)委員 郵政省からこれが出たのが二月の二十二日。さっきのお話をお伺いすると、この前にずっとそういう本省、それから本部間の話し合いがあって、そしてこれが何日かたっておりたと思うんですが、その過程の中で、これがおりる二日前の事件なんです。年末で不当処分があった。われわれにいわせれば不当処分。そして減給処分というのが、六カ月が一名、四カ月が一名、三カ月が一名、二カ月が七十四名を発令している。これに対して零時四十分から郵便局のB館で、これは郵便の予備室であるそうですけれども、報告集会を開いている。私もその場所は知っておるのですが、そこで零時四十分に副支部長の司会で開会をして、支部長から処分の内容その他のことについて説明をしておったところが、局のほうから庶務会計課長、課長代理、それから主事の人たちがお見えになった。ちょうど入り口のところに石井君という人のほかに五、六名の人たちが出入り口におった。それを局側のほうが来て、集会を許可してないから解散しなさいということでメガホンで繰り返しました。その間三名の人たちは、その組合の人たちを突破して中に入ろうとした。ところが、集会が終わりになったので、副支部長が組合員に、管理者を入室させるように指示をしたのですよ。そして庶務会計課長、課長代理が、それに呼応するかのように突っ込んできた。一番うしろにおった石井君というのが逃げおくれてそれに突き飛ばされた。そして後転して後頭部を打って脳震盪でいま入院しているのです。私がふしぎに思うのは、そのときには三人の人たちは自分たちの責任であるということを言われたようであります。しかしそれが、一週間たち、十日たつ間に、前言をひるがえして、自分たちがしたのではない、こういうふうになってきておるようであります。私の申し上げることと局長のおっしゃられることがあるいは食い違うかもしれません。食い違えば私は、なおあなたたちのおっしゃることについて私なりに指摘をしていきたいと思うのです。  しかし、ともかくも私が申し上げたいのは、いまいろいろの事情をお話しをいたしました。年休の不承認あるいは労務管理上の問題、そして組合介入の問題、そして一つのグループだけを集めて、何をしたか知りませんが、そういうことがあった。そういうことの積み重ねの中に実はこういう問題が起こってきたのではないだろうか。そして、そういう態度というものが、初めは自己の過失を認めながら、いまはてん然としてそのことに対して恥じない、そういう態度になって出てきているのではないかと思うのです。ですから、人事局長にお願いしたいことは、問題のいきさつと、だれか石井君を押し倒したのか。その後局側はどういう処置をとったのか。そういうことをひとつお伺いしたいと思います。
  112. 北雄一郎

    ○北政府委員 私どもで調査をいたしましたことを申し上げます。  二月の二十日でございまして、先生おっしゃいましたように、処分に対する抗議ということで集会が開かれたわけであります。この集会が無届けでございました。局内で集会をやります場合には届け出を要するきまりになっています。したがって無届けで開いたということ、これはやはりこの職場、郵便局内の秩序を保持する面におきまして解散をさせなければいかぬわけであります。そこで庶務課長ほか二名が、解散命令を出すべく当該予備室の入り口におもむいたわけであります。  入り口に参りましたら、そこに御指摘の石井君ほか六名の人がおりまして、立ちはだかっておりまして、課長帰れ、集会を妨害するな、うるさい、ということを口々に大声でどなっておったという状況であります。そこで、室内に入れませんので、庶務課長が立ちはだかっておる人の肩の間からメガホンを突き出して、そして解散命令を発しようとしたのでありますけれども、メガホンを手でふさがれまして解散命令を出すのも妨害された、こういう状況であります。なお、その部屋の入り口に防寒のジャンパー、制服でありますけれども、制服をぶら下げるなどとして中が見えないようにするというようなこともございましたので、そんなのをぶら下げれば制服が破れるじゃないか、そういうことをするなというようなことで、いろいろそこで押し問答をしておったわけであります。  そういうことで約十分間過ぎたそうでありますが、十分間ほどいたしまして、なお庶務課長ほか二名が室内に入って解散命令を出そうとしたけれども、今度は、石井という人は加わっておらなかったけれども、ほかの三名が正面にがんばってこれを入れなかった。そのときに、部屋の奥のほうから、副支部長らしい声で、そんなに入りたければ入れてやれというような声がありまして、そのために入り口に立ちはだかっておった三人がぱっと左右に散ったそうであります。そこで代理と主事の二人がそのとき一歩室内に踏み込んだ。課長は室内に踏み込んでおりません。代理と主事が一歩室内に踏み込んだわけであります。このとき石井君というのはどうしておったかといいますと、問題の入り口のほうに顔を向けてあとずさりをしておった。そのとき、だれかわかりませんけれども、だれかが石井君の前をぱっと横切った。そのときにドスンという音がして、石井君が入り口から約一メートルのところにあおむけにひっくり返ったのがわかった、こういうことでございます。  そのときに課長は、そういうことで室内には入っていない。入りました二人のうち、成田という代理でありますけれども、代理が入ったとたんに三人ぐらいの者に引っぱられまして、入ったすぐ右側の壁にうしろ向きに押えつけられておるわけであります。そういう状況でありますので、石井君が倒れましたことは、そのドスンという音でわかっておりますけれども、課長はそのとき部屋に入っておりませんし、成田という代理は壁に押しつけられた状態であって、とてもそういう石井君に当たるような状態になかったということであります。  それからあと、先ほどの副支部長が課長のところにやってまいりまして、いろいろ、課長が押したんだろう、どうするんだというようなことで、それから大ぜいの者が課長をつるし上げる、こういう場面になったわけであります。そういうことでまた若干の時間がたったようでありますが、その間、石井君はだれかによって、まあ管理者側ではありませんから、だれか、おそらく同僚によってそこにありました長いすの上に寝かされて防寒着をかぶせて休息しておったということであります。そして、そのうちにだれかが救急車を呼びまして救急病院に連れていかれた、こういう状況であります。その間、課長はずっと大ぜいにつるし上げを受けていた、こういう状況と承知しております。  大体、現場の模様につきましては、以上申し上げたことが私どもの調べた結果でございます。
  113. 山本政弘

    ○山本(政)委員 人事局長、さすがにこうであるという断定をなさらなくて、称しておる、こういうことです。私も組合員が称しておりますということでお話ししましょう。  会計課長と課長代理、それから主事の人たちが三人で押し込もうと話をしておった。十二時五十二分、しばしば中断をされておった集会が終わりに近づいたので、副支部長が入り口に立っていた組合員に、管理者を入室させるように指示した。庶務会計課長と課長代理が強く押した。そして一番うしろにおった石井君が逃げおくれてもろ手で突き飛ばされて後転、後頭部を床で強打した、こういうことなんです。だからぼくも、あなたがおっしゃるように、組合員が称した、こう、ておきましょう。  ただ、それから先がちょっと違うと思うのです。会計課長をつるし上げたというのだけれども、会計課長は、当然そういうことに対して、管理者として組合員が倒れて動かなければ何かの処置をとるはずだと思うのです。処置をとったのは現実には管理者じゃないのです。女性の人が電話で救急車を呼んで小倉病院に送っているわけです。私は何人かの人に会って聞いた。そしてここに図面もちゃんと、どういう状況にあったかということを調べてもらった。必要だったらこれを差し上げますけれども、いずれにしても、組合員の話によれば、庶務会計課長は、もろ手で突き飛ばしたということを最初は容認をしておる。そして、あなた方がこんなことをするからこういうことになってしまった、こう言っておる。そこまでの問題は、組合側の主張とあなた方の主張とは若干のズレがあると私は思うのです。かりにズレがあるとして——私は組合員のほうを信じたいと思いますけれども、一歩譲ってズレがあるとしても、その後の処置に対して管理者としては何もしていないということです。しかも荒井という課長に至っては、おたくの息子さんが脳貧血で倒れたので救急車で病院に運びましたよ、こう言っておるのです。そして三日後の二月二十三日には、石井君はどうしましたか、入院でもしたのですかと親御さんに電話をかけておるのです。私はちゃんと自分で調査したのだからこれは間違いないのです。そんなに管理者同士にコミュニケーションがないものですか。庶務会計課長と集配課長の間に、あなた方の指導する局の管理者というのはそんなにコミュニケーションがないのですか。労使のコミュニケーションは、ここで二十二日にあなた方は強調されておりました。私は、横のほうにもあなた方はそういう通達を出さなければならぬと思うのです。労使関係だけでなくて、横の管理者同士もコミュニケーションをちゃんとしなさいということを出す必要がある。庶務会計課長がかりに——私は再三繰り返しますけれども、組合員の主張というものを認めたい、だけれどもあなた方の主張と食い違いがある。しかし庶務会計課長というのは事実を見ているはずであります。そして荒井集配課長はそのことについて何らかの連絡を受けているはずですよ。受けなければ、石井君が入院されたということがわかるはずがないでしょう。そして三日後に、入院をしましたか、何てばかばかしい、どこにそういう管理者としてあるまじき態度がありますか。あなた方の労使関係というものはそこで端的に象徴されるじゃありませんか。そういう管理者の態度だから労使の間にも無用のトラブルが出てくるのですよ。答えてください。
  114. 北雄一郎

    ○北政府委員 救急車で病院へ行ったわけでありますけれども、そのときに、課長はずっとつるし上げられておったわけです。しかし、そのときに医者へは局の車を出そうというふうに言っておったのでありますけれども、救急車が来て、結局本人は救急車で行ったわけであります。それから、入院したということは、当日のうちに集配課長ももちろん連絡があったようでありまして、私はたぶん当日だと思いますが、当日集配課長が石井君の父親に、入院したことについて連絡をしております。そのときに、父親からも集配課長にいろいろ話があったわけであります。そういうことでありますし、その後集配課長が病院に石井君を見舞いにも行っておるわけであります。
  115. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どうもあなたのお答えは歯切れが悪いですね。いいですか。つるし上げたとかなんとか言ったって、本人が倒れたんだ。あなたが押し倒したんじゃないかということは組合員が言いますよ、それは普通の場合だったら。処置をしなさい、それがつるし上げたんだといえばつるし上げになるかもわからない。局の車でやりなさいなんて一言も出ていないのです。出ていないから夏目さんという女性が見かねて救急車を呼んでいるじゃありませんか。あなた方は、間違いであるんだったら間違いであるということだけはすなおに認めるべきですよ。いままでの数回かの全逓の問題に対してあなた方は、その点については私どもが誤りでございました、ということを一度だって言ったことがありますか。すべて無過失、無責任じゃありませんか。当局といえども神さまじゃありませんよ。いつの場合だってあなた方の話は無過失になっておるじゃありませんか。今度の場合だって同じですよ。そして無責任である。責任なしとしているのですよ。石井君はいま麻酔で頭の痛みをとめているのです。脳波に異常があるとされている。前を横切っただけで自然に倒れるわけがない。組合員が組合員を倒そうということは考えられないですよ。私はたいがい静かにものを言っているつもりだけれども、あなた方はそういう意味では全く自分を責めるという気持ちが何にもないじゃありませんか。そういう中で正常な労使関係が出てきますか。出てくると思うんだったら答えなさい。
  116. 北雄一郎

    ○北政府委員 私ども、もちろん省側、局側が常に正しいという前提でものを申しておるわけではございません。私どももこの事案につきまして一応十分調べたつもりでございます。そういたしまして、調べた結果、省側にもまずいところがあるということであれば、それに対しては適正な措置をとるということについてはいささかもやぶさかな気持ちは持っておらないわけであります。ただ、本件につきましては、先ほど来御説明申し上げたようなことが調査の結果として出ておるわけでございます。
  117. 山本政弘

    ○山本(政)委員 荒井集配課長が見舞いに行った。それは集配の責任者としてあたりまえです。それじゃ、庶務会計課長は行きましたか。そのときの当事者ですよ。
  118. 北雄一郎

    ○北政府委員 実はその点、調査が不十分なのか、あるいは行っておらないのか、そこは存じませんが、取り急ぎ調べました関係で私ども承知しておりますのは、集配課長が父親に電話をし、かつ見舞いに行ったということだけでございます。ですから、むろんそういう点につきましては、今後もよく調べてみたいと存じます。
  119. 山本政弘

    ○山本(政)委員 笹沼さんは行っていないのですよ。一度も行っていないのです。労使関係の前に、人間としてそういうことが問題になるんじゃないか。かりに笹沼さんが両手で押したのではないとあなた方がおっしゃることにしても、当事者の側の最高の責任者じゃありませんか、現場のときの。一度も行っていないのですよ。労使の前に、人間としてやらなければならぬでしょう、ほんとうなら。私が申し上げたいのは、局長以下課長、課長代理、そういう感覚があるから無用の摩擦を起こすと言うのですよ。もう一ぺん答弁してください。
  120. 北雄一郎

    ○北政府委員 庶務会計課長が行っておらないとすれば、これは私、率直に言いましてよろしくないと思わざるを得ません。やはり、どういうことでありましたにしろ、負傷いたしまして入院をしておるわけであります。自分の局の職員であるわけでありますから、これは当然見舞いをし、病状もよく聞き、そして一日も早い全快と申しますか、それを鼓舞するというのが当然やるべきことだと存じます。
  121. 山本政弘

    ○山本(政)委員 時間がきたようでありますから私の質問は終わりますけれども、きょうせっかく労働大臣お見えになったのですから、ひとつこういうことだけは注意していただきたい。別に答えは要りません。  年休にしても、つまり非常に緊急の場合でなくて、事前に連絡をして、そして官側としては差し繰りができるにもかかわらず頭からそれを否定したり、それから私どもが社会通念上からいえば無理からぬと思うことを年休を不承認にしている。たとえば親御さんがなくなったときの年休を不承認にしている、そういうことが行なわれている、あるいは昇任昇格というのですか、そういうような問題についても、私どもから見ればたいへん不合理な点があるように思われるし、それから、二つあるグループの一つのグループを一カ所に集めて世話をするとか、世話の内容は私はよく知りませんけれども、これは労政局長からも、そういうことは誤りであるというお答えをいただいた。そしていまお聞きしたように、私は、労使の関係の前に人間としてしなければならぬようなことをしておらぬことが、無用に労使の紛争を招いておると思う。そういう点について、これは筋が違うかもわかりませんけれども、しかし労働大臣ですから、全逓の問題についてもひとつ格別の関心を持って御指導していただきたいと思います。  私の質問を終わります。
  122. 倉成正

    倉成委員長 西田八郎君。
  123. 西田八郎

    ○西田委員 労働大臣が本国会の開会後、本委員会で所信を表明をされておりますが、その中で二、三お伺いしたい点がありますので、まずその点からお伺いをしていきたいと思います。  まず、委員会で配付されました労働大臣所信表明のプリントの中の第三、労働外交の積極的展開ということで、アジアを中心とする対外協力の強化を政府の方針として進めていきたい、こういうことで、昨年の十月ですか、労働省の編集されております「労働時報」第二十三巻十号に、九ページから一〇ページにかけて比較的この部分について詳しく述べられておるわけでありますが、この中で私は重要な部分が抜けておるのではないかと思う。それは情報の収集その他も大切でありますけれども、先日の委員会でも私はここで意見を申し述べたのですが、やはりはだをもって感ずるという、これほど積極的な交流はないわけでありまして、やはりお互いの労働代表を相互に交流するということはきわめて重要な問題だと思うのです。これについては政府は考えているのかどうか。最近労働組合諸団体の独自の交流は相当活発に行なわれてきております。また、日本生産性本部等の派遣ということで、交流も行なわれてきておるわけでありますけれども、労働大臣はこれに対してどういうふうにお考えになるか、その点ひとつ御答弁をいただきたい。
  124. 野原正勝

    野原国務大臣 アジアを中心とする対外協力という問題、これは今後、日本経済の発展、また日本経済成長のもたらした力を、アジアのいまだにおくれておるというか貧困な地域に役立てたいと考えておりまして、それにはやはりでき得るだけ労使双方の人的交流がまず必要でございます。そういうことと同時に、向こうのほうからできるだけわが国に対する技術協力、技術的な面を受け入れて、技術の協力をしていきたい。日本労働力が不足しておる傾向から見まして、ややともすると直接に労働力として受け入れたらどうかという主張も一部にございますけれども、私はそういう形はできるだけとりたくない。やはり技術協力の面を進めていって、やがてあの東南アジア地域にその地域にふさわしいいろいろな工場が起きて、そこに多数の勤労者が働いて生産に従事する、そのためのまず技術協力、あるいはそういう工場施設等につきましても積極的に協力をするという形があって、初めてそこにアジアの地域が全体として近代国家としての大きな生産が発展をするという形が好ましいと思うのであります。そういう形で、すでにILOのアジア行政担当官会議をやったり、あるいはアジア地域にいろいろな代表者の派遣をするとか、向こうからも先般大ぜい参りまして、いろいろな会議が持たれたわけでございます。私もつとめてそういうところに出席をしまして、その方たちにお目にかかるということにしておりますが、こうした、わが国からも経済協力のための労使の協力調査団等を向こうに派遣する、向こうからもお招きをするという形で、政・労・使の方々が隔意ない意見を交換し、アジアの経済協力の強力な橋がかかるならば、それが一つの、将来に向かっての大きな発展に役立つではないかというふうに考えております。さようなわけで、私はアジア全体につきましては、そういう形でこれからもますます交流を深めてまいりたい。最近、いろいろの機会に労働団体等の幹部の方々とも話し合いをしておるのでありますが、非常に積極的にこの問題については御理解を持っておられます。非常にけっこうなことだと思います。日本経済成長発展というものは、単に日本だけが経済が発展するという形ではなくて、できるならば、これからは広くアジア全体が大きく発展をする、そのためには、アジアのまだおくれておるいろいろな体制を、できるだけ協力していきたいというふうに考えておるのでありまして、これからもその方針で進んでまいりたいと思います。
  125. 西田八郎

    ○西田委員 多少答弁が、ずばりお伺いしたがったのですが、いろいろと申し述べられて、むしろ理解に苦しむところがあるわけなんですが、私の申し上げておるのは、労働組合、労働者が構成をしておる諸団体、主として労働組合ということになるわけでありますが、その労働組合の独自の交流がかなり盛んになってきておるわけですね。せんだっても、TWALOといわれる、アジア繊維労働協議会の執行委員会が持たれているわけです。それがいわゆる韓国、香港あるいはニュージーランドと持ち回りになって、そうして開かれておるわけなんです。そういう点で、日本の労働組合の代表が行く。向こうの代表を招く。そこで、実際にはだに触れて、その国の実情なり民情なれというものを見てくる。そのことがまことに大きな刺激になり、かつまたそれが知識となって、いろいろな形でそれぞれの国の産業の発展に寄与をしてきておるわけであります。したがって、文部省や総理府では、青少年のそうしたことを育成するという意味で、育成事業としてかなり予算を取ってやっておられるわけでありますから、これは労働省においてもそういう方法で、ただ単に労働省の出先機関であるアタッシェを使って情報収集するというだけではなしに、積極的な人事面における交流をはかってはどうか、こういうことをお尋ねしているわけであります。それについて大臣、どうですか。
  126. 野原正勝

    野原国務大臣 先般もTWAL〇の方々日本にお見えになりまして、ホテルニューオータニへ私がお招きをしまして、親しく懇談をいたしました。いずれにしましても、アジアの方々をお招きをするとか、あらゆる機会にわが国経済の交流、人事の交流を深めまして、緊密にひとつアジア全体が大きな発展をするように、側面からできるだけの御協力をいたしたい気持ちでやっております。
  127. 西田八郎

    ○西田委員 それは、ただ招くというだけではなしに、こちらからも派遣しなければだめなんです。そのことを私は重点にして聞いているわけなんです。
  128. 野原正勝

    野原国務大臣 これは、昨年バンコクにレーバーアタッシェを置くことにしたわけでありますが、近くバンコクのレーバーアタッシェも、日本から今月中には赴任をいたしまして、向こうに参ることになっております。おくれておりますが、これは単なるアジア全体の情報等の収集のみならず、アジア全体の経済協力にいかなる処置をとったらいいかといったような前向きの姿勢で、これからはひとつレーバーアタッシェの機能を強化いたしまして進めてまいりたい、その考えでございます。
  129. 西田八郎

    ○西田委員 多少趣旨が十分伝わってないのが残念なんですけれども、ここで一つ要望しておきたいと思います。  韓国への往復は、飛行機で行って一週間いても、日本円にして十万そこそこで行って帰ってこられるわけです。香港はもう少しかかりますが、台湾にしてしかりですね。あるいはインドにしましてもパキスタンにしても、そう金がかかるものじゃないわけなんです。ですからそうした予算措置を労働省としてしていただいて、積極的にやはりそうした面からの交流をはかるということを、ぜひ政策として取り上げていただきたいと思うわけであります。そのことを要望をいたしておきます。  次に、第四に、やはりこの所信表明の第四の中で「発展のおくれた分野に働く人々の労働条件の改善」ということばがあります。一体その発展のおくれている分野というのはどういう分野をさしているのか、ひとつお伺いをしたい。
  130. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 必ずしも正確な定義ということではないのでございますが、御承知のように労働条件の面からいろいろ考えてまいります場合に、日本経済成長あるいは最近のいろいろな技術革新その他の発展によりまして、全般的には労働条件が向上されている。これはまあ大数的に観察いたしますれば、そういうことが言えるんではないか。その中でやはり、必ずしも労働条件の面でも十分向上改善が見られない分野が、いわば取り残された分野と申しますか、そういう分野が少しあるのではないか。その面をひとつ今後は重点的に取り上げていこう。たとえば中小企業その他、労働条件が必ずしも大企業と比べて十分いってない、あるいはそこにおいて労働組合の組織力も必ずしも十分でないために労働条件の引き上げが十分行なわれてないところとか、そういった中小企業の一部とか、あるいは最近非常に問題になってきております女子の家内労働の面とか、そういったような部分を、そこでおくれた部分というようなことで全般的に把握して取り上げていきたい、こういうつもりでおります。
  131. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、その中には、同一企業、同一事業場の中で同じように働いている人で、本工と臨時工という区分がありますね。臨時工というのは概して木工よりも悪い条件下に置かれておるわけですが、そういう人たちもこのおくれている分野というふうに理解していいのですか。
  132. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 行政の対象としてつかまえます場合に、先ほど私が申し上げましたように、中小企業あるいは家内労働とかというようなことを一つの集団として考えておりますが、そのほか特別なものといたしまして、いま御指摘のような雇用形態等によりましてパートタイムの問題とかいろいろあろうかと思いますが、特別に行政対象として重点を置かなければならぬものである場合には、当然そういうものも考えてやってまいりたいと考えます。
  133. 西田八郎

    ○西田委員 この所信表明の文章の中では主として労働条件の改善というふうにありますが、労働条件というのは幅が広いわけです。賃金、労働時間、休日、休憩その他退職金等も含めて労働条件といわれておるわけですが、ここでは主として最低賃金ということに重点をしぼっておられるように思うのですが、その他の労働条件についてどうお考えになっているのか。
  134. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 たとえば労働時間の問題等につきましても基準法でいろいろな規定を設けております。しかし事実上たとえば長時間労働が行なわれておる、こういったようなある分野が現実に存在することも考えられるわけでございまして、そういった面にも着目してまいりたいと思うわけでございます。
  135. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、時間、休日、休憩、そうしたことも含まれると解していいのかどうか。
  136. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 そういう労働条件全般にわたりまして必要なものは取り上げてまいりたいと思うわけでございます。
  137. 西田八郎

    ○西田委員 そこで、改善をされる方法なんですけれども、いわゆる基準法において最低の基準は定められておるわけであります。しかしそれ以上に労働条件をよくするということは、あくまでも企業における労使関係ということになると思うのです。そうしますと、現在の法令その他の権限をもってしては、悪いところの改善は、基準法以下のところは別として、それ以上のことは私は、労働省としては、役所としてできないのではないかというふうに思うわけであります。そうした場合、その方法について具体的にひとつお示しいただきたい。
  138. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 御指摘のように、労働基準法を実施しております労働省の立場といたしまして、法律上の権限に基づく行政といたしましては、基準法の違反に対しましてこれを是正させ、必要により法的な制裁措置を加えていくということが、監督行政としてはまさにそういう点に権限行使は狭められるといいますか、それに尽きると思います。ただ、私どもが考えておりますのは、たとえば安全の問題とか衛生の問題とかということになります場合には、むしろより積極的に勤労者ほんとうに明るい環境のよい職場で働くといういわゆる環境づくりというのは、これは基準法のいろいろな規定は別といたしまして積極的に取り組んでいくべきものだと思いますし、こういうものについては労使関係の直接の問題というよりも、むしろ全般的な環境づくりということで積極的に指導してまいる。そのためにたとえば職場環境の改善のための融資制度を活用するとかいうようなこともあわせて進めてまいりたい。ただ労働条件プロパーに関する問題につきましては、最低、基準違反を是正させると同時に、あとは労使の相互の理解と協力によって改善努力をしていただくために私どもも外部から、外部からというのはおかしいのですが、その環境づくりのために協力をしてまいる、こういうことを考えております。
  139. 西田八郎

    ○西田委員 これはきわめて重要なところでありまして、組織を持っているところはいいのです。小さいながらも組合をつくり、そして労使で話し合いというか闘争というかいろいろの形態で労使の力関係というものは存在すると思うのです。そうした形で存在するところはいいわけなんです。ところが、それ以下のところというか、いわゆるそうした組織を持たないところに問題があるわけなんです。そしてそういう企業では、表面上は非常にりっぱにつくろっておられるわけです。たとえば給料も初任給三万五千円、四万円という形をとられておるわけです。ところが、そこから引き去られるものは何も書かれていない。あるいは労働者には知らされていない。そうすると、実際は一日休んだだけで皆勤手当が飛んで、その皆勤手当がべらぼうに高い。四千円であるとか五千円ということで給料から控除をされるというようなこと。あるいはまた他の企業でやっておる交通費の負担が全然なされていない、すべて自前だ。負担をしてもらおうと思ったら、非常に便利が悪い会社の指定するバスに乗ってこいというようなことになって、そうしたことが、多く中小企業という、いま言われましたいわゆる発展のおくれた分野に働く人々を取り巻いておるわけなんです。ですから、そういうところを一体どう救っていくかということ、これは非常にむずかしい問題であろうと思うのですけれども、これは特に行政指導といいますか、そういう面では表面に立って双方に勧告あるいは命令するというようなことはできないにしても、行政指導の面ででき得るのではないか。しかしそれを労働省が全部するわけにはいかないので、結果的には都道府県の労働部あるいは商工労働部、いろいろになっておりますが、そうした地域における行政の機構でやっていかなければならぬということになるわけです。そうした点について労働省が地方のそうした労働関係行政機関に対して何か連絡をとり、指導するようなことを定期的に行なっておられるのかどうか。
  140. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 地方の労働行政機関といたしまして都道府県におきましては労政課がございます。労政課に対しましては、労働教育という立場で労使双方に対して接触をするということが一つ。それからもう一つは、中小企業につきまして、労務管理の改善の指導をするということで種々材料を流してやったり、あるいは教育方法等につきまして私どもがいろいろサジェストをするというようなことをいたしております。
  141. 西田八郎

    ○西田委員 これはひとつ積極的に進めていただきたいと思うのです。特に最近のように若年労働力が不足し、そして中高年齢層が過剰ぎみになってくると、中高年齢層はどこへ行ってもあまり歓迎されないわけですけれども、若年労働者についてはかなり激しい争奪戦があって、その争奪戦の中には私がいま申し上げましたようなからくりというものがあるわけです。そうして労働者を失望させ、定着を悪くするというようなことも起こっておるわけでありますから、そうした点については特にきびしくというか、強く指導をしていただきたい、こういうことをお願いをしておきたいと思います。  最後に、「合理的労使関係の確立」というふうに言われておるわけでありますが、労働省の言われる合理的な労使関係というのはどういうものか、お伺いをしたいと思います。
  142. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 これは、労使関係というのは千差万別でございますので、こういうかっこうの労使関係があればこれは表彰に値するというふうにはなかなかまいらないわけでございますが、悪いほうから申しますと、昔ございました暴力的なものとか、あるいは暴力に及ばなくても、使用者側でいえば不当労働行為的なものとか、あるいは非常に感情的な労使関係というのは、いずれも合理的なものとは考えない。私どもといたしましては、やはり相互信頼の上に立ちまして、団体交渉であれあるいは労使協議制であれ、できるだけ話し合いということを十分に尊重して、そうしてお互いの立場をできる限り相互に理解し合いながら話し合いを煮詰めていくことを基本にするということが、大体合理的な行き方ではなかろうかと思います。
  143. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、結局、私は話し合いそのものも力関係だというふうに思うわけでありますけれども、その話し合いをする労使関係なら合理的だというふうに言われるわけですか。
  144. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 話し合いというのは、ただ話していればよろしいというわけではもちろんございませんが、やはりお互いの立場をできるだけ相互に理解し合って、そうして、全面的にはなかなかならぬまでも、相互にある程度の信頼関係を持っているという上で話し合う。話し合いの形としては、労働条件等については団体交渉、そのほかの問題については労使協議制というようなこと、そういう話し合いということを極力大事にして、そしてそういう相互信頼の上に立った、お互いの立場を認め合った話し合いということを中心にして労使の間の問題を処理していくという形は、私どもとしては、一応合理的な形と申してよろしいのではないかと思います。
  145. 西田八郎

    ○西田委員 これは議論しかけると切りがないので、単に、合理的な労使関係ということが書かれておりますので、それに対する労働省の見解というものを聞きたかっただけの話で、議論を吹っかけようとは思っていません。しかし、いまの労政局長答弁にも私は若干引っかかるものがあるわけですが、それはそれとして、きょうは議論を吹っかけようと思うわけではありません。やはり相互の主体性、自主性というものを尊重する中で相互の立場を理解し合い、そうして話し合っていく、労働条件については団体交渉、あるいはその他の条項については労使協議というような立場に立って話し合っていくということをおっしゃったのだと思います。  そこで、そういうことになりますと、ちょっとこれは突っ込み過ぎかもしれませんが、経営権という問題が非常に大きな問題になってくる。これについて、労働省にもし見解があったら聞かしてください。なければけっこうです。
  146. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 経営権ということばが俗にいわれておりますが、これは明確な定義があるわけではありません。ただ、三公社五現業の場合におきましては、管理、運営事項は団体交渉の対象にならぬとはっきり書いてあります。この場合には、その事項がすなわち経営権であると申してもよろしいかと思います。しかしその場合でも、その境目については御承知のように種々争いがあるくらいなものでございまして、いわんや一般民間の場合におきましては、そういうはっきりした線はございません。しかし株主総会の事項なんというのは明らかに経営上のことで、労働者が口を出す筋合いでもなし、純粋の経営上の事項と完全な労使対等の立場できめるべき事項なんというのは、すぱっと線が引かれるというよりは、だんだん色合いが変わってくるというものではなかろうか。そういうものについては団体交渉という手段が必ずしも適当でないという場合には、労使協議ということで、ある程度経営上の事項につきましても労働者の発言権を認めてもいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  147. 西田八郎

    ○西田委員 これは見解を聞くにとどめたのですから、これもこれで一応労働省としての見解が理解できました。したがって、この所信表明に対する質問をやめます。  次に、失業保険ですが、これの運用というのですか管理というのですか、そういうことについて若干伺ってみたいと思います。  現在、失業保険というのは保険料で保険収入が入ってきますね。そうすると、それから必要な給付金その他、あるいは労働省の必要な支出を差d引いて、そうして全部資金運用部資金のほうへ積み立てとして持っていかれるシステムになっているのですか。
  148. 住榮作

    ○住政府委員 御指摘のとおりでございまして、失業保険特別会計では、収入といたしましては労使の保険料による収入、それから給付に対しましては、一般保険については国庫負担が四分の一、日雇い失業保険については三分の一、これが収入になりまして保険給付に充てておる、あるいは福祉施設の運用に充てておる。その場合に剰余金が生ずるのでございますが、その剰余金につきましては、失業保険特別会計法によりまして積み立て金として資金運用部に預託する、こういうのが現在の体制のあらましかと思います。
  149. 西田八郎

    ○西田委員 その最も近い時期における、運用部資金のほうへ積み立てられておる失業保険の残額は幾らあるのですか。
  150. 住榮作

    ○住政府委員 決算の済んでおります四十四年度末の運用部に預けております積み立て金は三千九十七億円でございます。四十五年度は、これは見込みにすぎないのでございますが、剰余金がおおむね四百五十億程度になるのではなかろうかというように見ております。
  151. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、三千五百億程度の金がいわゆる失業保険の積み立て金として積み立てられているわけですね。  そうすると、その運用部資金というのは労働省が使おうとしても使えないわけですね。大蔵省の管理のもとで、運用部資金として利用されておる、こういうふうになっておるわけですか。
  152. 住榮作

    ○住政府委員 失業保険特別会計法によりますと、剰余金は資金運用部に預託しなければならない、こういうことになっておりまして、私どものほうでは運用部資金に預け入れておる、こういうことでございます。  そこで、その財源が御承知のように一般の財政投融資の財源になっておるわけでございますが、必ずしもその見返りということではございませんけれども、御承知のように雇用促進事業団で事業主に対する住宅融資とか福祉施設融資あるいは訓練融資、こういうことで運用部資金から四十六年度においては百八十七億ほど融資を受ける、こういうことになっておるかと思います。
  153. 西田八郎

    ○西田委員 そこで私は疑問を感ずるわけなんです。三千五百億の大金が運用部資金に積み立てられておって、その中からわずか百八十七億というのが労働者の雇用を促進するという形で事業団に交付もしくは支出として出されておる、融資されておる。しかしこの三千五百億という金はいわゆる三者が共同で出し合った金なんですね。ですからその金をもっと適切に運用する方法はないものかどうか。たとえば厚生年金なんかでは、厚生年金基金という形において運用されておりますね。ですから失業保険も、失業がふえてどんどんと払わなければならぬというようなことではないと思う。ですから、そうだとするなら、三千五百億という金を大蔵省にまかしておくのではなしに、やはりその三者によって管理をして、そしてそれを有効に労働行政のために使うということのほうがより適切ではなかろうかと思うのです。法律がそうなっておるからという答弁ならしかたがないのですけれども、そういう方向改善をしようという意思はありませんか。
  154. 住榮作

    ○住政府委員 失業保険の積み立て金、それはまさしく保険料でございます。労使の負担による金でございます。そこで、失業保険の性格を考えてみますと、これは短期保険ということでございますので、あまり剰余金なり積み立て金を持つべき筋合いのものではない、これは先生御承知のとおりでございますが、実は、先ほど申し上げましたように、現在の積み立て金は三千五百億ほどになろうかと思うのでございます。これは金額としては非常に膨大なようでございますが、年間の保険料収入に対しまして一・六倍程度。これまた御承知のように、あまり金が余るようであれば、保険料の取り過ぎでございますから、料率を下げる、こういうことに制度上なっておるわけでございまして、保険料収入の二倍になったときは労働大臣は料率を下げろ、こういうことになっておるわけでございます。現在のところ三千五百億、額としては非常に大きいのでございますが、保険料の収入規模も大きくなってきておりますので、それが一・六倍というのが現状でございます。  そこで、厚年のような長期保険とは違いまして、短期保険ということからくる一つの制約がございます。それと同時に、ただいま先生御指摘のように、法律にはそういうような制度になっておる。実は私どもも、せっかく労使の金でございますので、それが労使に還元されるような運用は強く望んでおるわけでございますが、そういうような考え方がもとになりまして、雇用促進融資等も実はでき上がっている。しかし、それは金額としては、預けてある金から見ればまだまだ非常に少ない、こういうことかと思います。私どもといたしましては、その趣旨としては全く先生の御指摘のとおりでございまして、できるだけ預けられた金が被保険者なりあるいは事業主、保険料を負担するものの利益のために還元される、こういうような姿勢は当然持つべきだ、こういうように考えておるわけでございます。
  155. 西田八郎

    ○西田委員 いまも安定局長から、いやそれは当然そうあるべきだというふうな所信の表明といいますか、見解の表明があった。私は当然そうすべきだと思います。そして、それは、公に設けられたこの基金といいますか、資金、積み立て金というか、それを管理する委員会、運用する委員会を設けて、それで当然管理をしていくべきだと思うのです。とにかく大蔵省が何でもかんでも金を出すこと、あるいは金は人にまかせられぬというのが大蔵省の姿勢でありますけれども……(寒川委員「金の性質を考えろ」と呼ぶ)その大蔵省の考え方もやはり誤っておると思う。こういう問題は、当然そうすべきであるし、そして、寒川さんが金の性質を考えろということを言うておられるわけですが、そのとおりであります。そして、それらのことが今度議題になり、いずれまた私も質問したいと思う財産形成等に適切に援助していくという形をとるのがそのいい方法ではないか、良策であると思うので、すでに一部雇用事業団等にはそういう方法で支出も——それは、それがあるから大蔵省は出しておると思う。もし失業保険の積み立て金が労働省になかったら、大蔵省、何が出すもんですか、けちな大蔵大臣が。それがあるから出しておるのですよ。それならそうした方法をもっと拡大していくべきであるというふうに私は考えるわけであります。そこで大臣、ひとつこの問題について、大臣の任期中に何とか努力していただけませんか。
  156. 野原正勝

    野原国務大臣 西田さんのお説全く同感でございます。これは何とかひとつ事業主や勤労者のためにもつともっと役立てるような道を開きたい。それにはどうしても皆さま方の全面的な協力を得なければ容易でございませんが、当委員会皆さま方に格別の御鞭撻をいただきまして、何かうまい案をつくり強力に進めていくということが必要でございます。これは皆さま方の御協力を得ましてぜひとも実現をいたしたいというふうに考えております。
  157. 西田八郎

    ○西田委員 時間が来たようですから終わりますが、応援せいということですが、応援してますよ。これは労働四団体でつくっておる中央労働福祉協議会——中央労福協というものがこの問題についてはとにかく数年前から言うてきておるんですよ。ところが実際は労働省自身がなかなか踏み切らぬのです。それは、あまり言うと大蔵省からにらまれる、にらまれると、そうでなくてさえ少ない労働省予算が削られる、こういうようなことから労働省が遠慮しておられる。ですから、それは大臣も胸を張ってやってください。私はもう先頭に立っていきます。場合によりましてはすわり込みでもなんでもやりますから、どうぞひと(お願いをいたしまして終わります。
  158. 倉成正

    倉成委員長 次に寺前巖君。
  159. 寺前巖

    ○寺前委員 この前は大臣がおられませんでしたが、鉄鋼関係で行なわれている四組三交代制の新しい勤務体制ですね、これは人員をふやさずにやるものですから、いまいろいろな矛盾が生まれてきていると思うのです。これはもうざっと一年間になってきたわけですね。この前は、この問題ルめぐって予備直という有給休暇の一定の部分をを画的に休暇をとらすというやり方をしているのは、労働者の最低基準を示すところの労働基準法に違反する行為じゃないかということをめぐって局長と若干の討論をやらしていただいたのです。これはお預けにしてありますので、また後日にしたいと思う。きょうは、やはり四組三交代制とあわせて、次に休憩時間の問題が問題になっていくわけです。できるだけ生産をうまくあげていく、そのためにはこの休憩時間を一斉にとらさぬで、部分的にとらしながらやっていくというやり方が、四組三交代制の中での新しい特徴点としていま出てきているわけです。こういう事態を現実にして、はたして労働者の労働条件がうまく守れているのだろうかどうだろうか、これはもう私がここで言うまでもないことですけれども、労働基準法の三十四条第二項で、所轄の監督署に届け出をやって許可を得てからそのことが行なわれるということになっていると思うのです。  そこで、私は、この四組三交代制の新たな次元の中で、現在、日本のそういう職場において一体どれだけの工場がそういう届け出をして許可を得てその一斉休憩でない時間が許されているのだろうか、ちょっとその実態をまず最初に聞きたいというふうに思うわけです。
  160. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 御指摘は、基準法の三十四条の第二項に基づきまして、原則として休憩は一斉に与える、ただ行政官庁の許可を受けた場合はこの限りでないという規定がどの程度適用されているかという実態の問題だろうと思うのですが、実は全般的にそういう事項を統計的に取り扱った資料がございませんので、まことに遺憾でございますけれども、いまここで全数どのようなことだという実態について申し上げかねるのでございます。
  161. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、全体がそういう状況にあるから、それじゃその中の許可を与えた職場がその後どうなっているだろうか、許可を与えたとおりに実行されているかどうかという監督をどの程度やったかということについても、おたくのほうではわかりませんか。
  162. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 監督につきましても、三十四条の二項の適用についてという事項別の監督を集計はいたしておりませんので、どの程度のという的確な数字はちょっと申し上げられないわけでございます。
  163. 寺前巖

    ○寺前委員 私はこれは非常に重要な問題だと思うのです。おたくのほうで最近労働災害をめぐっ  ての白書みたいなものをお出しになりまして、いただきました。死亡事故が最近は横ばいになってきておる、これは気をつけなければならないという問題を指摘しておられます。あの資料を読みますと、三期に分けて、一期はどういう状況だった、二期はどういう状況だった、四十年以後は新しい段階としてもう一度見てみる必要がある、死亡事故が非常にふえてきているという立場からあの資料が整理されてあると私は見ました。そこで、そういう立場から見ると、明らかに生産は四組三交代制という新しい段階が出てきているのだから、休暇の与え方、休憩の与え方、明らかに疑問になる問題点が出てきているのだから、当然、これらの職場がどういう申請をやっているか、この申請に対して、それはよろしくないという指摘をしたところは何件出てきているか、許可を与えたところは何件か、そして、それから一年たってきたいま、はたしてその結果はどうかということの調査をやってしかるべきだと思う。私はすみやかにそういう処置をとっていただきたいと思うのですが、局長さんどうでしょう。
  164. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 実は定期監督を実施しております場合には、その実施の項目の中には、各法律に照らしての違反事件をいろいろ監督しているわけでございます。その中で、たとえば休憩の規定に違反する事件として、四十四年度で把握しておりますのは千八百五十八件でありますが、その中身が、いま申し上げましたように、実は二項のこの届け出、それがわからないわけでございます。  さらに、いまの御指摘の点でございますが、労働基準法の各条項別にはっきり一つの実態をつかむことが非常に大事なことは御指摘のとおりでございますが、この監督を通じまして、いまの、たとえば休憩違反をさらに詳細に調査することがどの程度の事務の量になるか等の問題も実際問題として実はございますので、いまここで直ちにということは申し上げかねるわけでございますが、いまの監督に関しまする統計のとり方についてよく検討をいたしたいと思います。そのときに、あわせていまの御指摘の問題も検討をさせていただきたいということで、お許しをいただきたいと思います。
  165. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、監督官が強化されるように同時にやらなかったらできないといういまの御指摘、当然だと思います。しかし、生産のあり方がどんどん変わってきている。これに対して労働者の職場条件を守るために積極的に監督官をふやさなければならないというふうに、これを生かしてほしい。そして、特に許可を与える事業というのは、やはり特殊な問題を含んでいるから特別に許可が要るということになっているのだから、それを全うするための監督行政に必要な人員は当然入れるべきだ。これは大臣に重ねて聞いておきたいと思います。責任を持ってこの処置をやってくれるように検討してくださいますか。
  166. 野原正勝

    野原国務大臣 基準局長の御答弁のとおり、この問題については今後十分検討して、私もしっかりとその方向で進めたいと考えます。
  167. 寺前巖

    ○寺前委員 第二番目に、私がこの問題を提起してきたのには一つの理由があるわけです。実はいつぞやこの委員会においても私が問題にしました、例の川崎製鉄の葺合工場の問題です。この工場は労働災害が全然なかったということで表彰を受けた工場なんですが、事実はとんでもない、労働災害が一ぱいある。そこからいろいろな刑事上の問題にもなる内容のことが行なわれておるということになるわけです。こういう工場が、それじゃ反省して、はたして新しい段階にいまきているのだろうか。ここの労働組合の諸君たちは、再三にわたって会社に申し入れて改善要求してきたのにもかかわらず、やらなかったところから告発問題に及んで、あの内容が明るみに出てきたわけです。そういう意味では、私はこの工場の内部の問題については、労働組合と当該の庶務課の間で職場条件について十分に話し合って解決をしてもらいたいというのを前提にするわけでありますけれども、しかし出されてきている問題は、私は全面的に調査したわけではございませんので、手紙として一つの問題提起があるから、私は検討する必要があるだろうということで、実は昨日神戸の東監督署に寄ってみたのです。  それはどういうことかというと、この人が出してきた手紙にはこう書いてあります。   私が働いている葺合工場では鋼帯課という工  場があります。   ここの職場は労働組合の役員さえ、会社の許  可がなければ自由に立入りできないようになつ  ています。   この鋼帯課にはゼンジミアミルという圧延機  が四基と、連続焼鈍が約十六基ありますが、会  社は工程の一部秘密を理由に労務管理をたくみ  に行い、ここの作業に従事している四〇〇名以  上の労働者に労働基準法の最低の権利である休  憩時間の四十五分も保障していません。   圧延職場は以前は一斉に休憩をとっていまし  たが、生産をあげるためと、休憩時間もとら  ず、交替で食事をとり、圧延作業をやらされる  ようになり、さらに昨年四月、四組三交替制が  導入されてから、連続焼鈍などでは、大幅に要  員が減らされ(例えば、十二名が九名に)た  上、仕事の量が増され、さらにきびしくなりま  した。   会社は、圧延や、連続焼鈍は分割食休といっ  ていますが、休憩時間がほとんどとれず、十  分、十五分と個人差がありますが、交替で弁当  をかき込む時間が休憩時間となっており、四十  五分間の保障はありません。   いそがしい時は弁当を半分食べて仕事をや  り、また半分食べるというやり方です。   こうした会社のひどいやり方に文句をいうと  職制の圧力がかかったり、賃金を差別されるの  でものもいえない状態です。云々ということで  手紙が来ております。この内容そのものについ  て、この人が出されてきた問題がどうかという  ことについては、自分自身調べておりませんか  ら知りませんけれども、しかし私が監督署へ  行って調査した限りにおいては、やはり幾つか  の問題があるように思います。  ここでお伺いしたい第一番目の問題は、一斉休憩の除外の申請、これを三十六年と三十九年に当該工場では出しております。ところが、そのときの各仕事別の人数を見ますと、合計しても二百六十人ほどなんです。ところが今日の四組三交代制以後の段階においては、この手紙にありまするように、四百人以上の人たちがそういう仕事に変わってきている。明らかに仕事の内容が変わってきている。それから休憩時間についても、そのときに出したところの申請、それは三十分、三十分という参考資料をつけて、こういうふうに休憩をとらしますというやり方が書いてある。しかし現実にとらしているのは、この人が書いているような実態であるかどうかは別として、少なくとも違うということは事実のようです。そうすると、人数面においても違うし、休憩のとらし方においても新しい変化が起こっている。それにもかかわらず、前に出したところの申請書のままで、許可を得ているからということで新たな労働条件が認められるものなのかどうか。こういう場合に、三十四条二項に基づくところの処置をしなくてもいいのかどうか。私はこの点においては明らかに違法行為だと思うのですが、局長さん、どうでしょ
  168. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 三十四条二項に基づいて行政官庁の許可を受ける場合におきましては、一定の様式をきめておりまして、その様式に基づく一斉休憩の除外許可申請書を所轄の監督署に提出して許可を受けることになっております。その事項で、休憩時間を一斉に与えることのできない事由をはっきりさせること、それから始業及び終業の時刻を明確にすること、それから休憩時間及びその与え方をどうするかということを明確にすること、該当の業務がどういう種類であるか、さらに該当労働者の数が男、女、計でどうなるか、こういうことを申請書の記載事項として要求しておるわけです。したがいまして、いま御質問の具体的な事例につきましては、手元にございませんので明確に申し上げることはできませんが、一般論といたしまして、この許可は包括的、一般的に与えるものではなくて、いまの一定の様式に基づく申請書に基づいて許可を与えることになるわけでございます。したがいまして、その許可を与えた事案が実質的に変わってまいっている場合には、当初与えた許可がそれまで効力が及ぶとはちょっと考えられませんので、当然その実体的に違ってきた面につきましては、当初の申請を変更届けをするか、あるいは新しく申請をするか乏いう手続をとることが、私は法律上期待している正当な手続であろうと考えます。
  169. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、違法行為だということになったら罰則はどういうことになるでしょう。
  170. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 この違法行為につきましては、百十九条によりまして五千円の罰金ということになるわけでございます。
  171. 寺前巖

    ○寺前委員 五千円の罰金だけで済むのですか。
  172. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 手続違反についての罰則はそうなっております。
  173. 寺前巖

    ○寺前委員 手続違反というのはどういうことですか。届け出しなければ一斉休憩の除外はできないのでしょう。三十四条で、基本的には一斉に与えなければならない。しかし、こういう許可を受けた場合はこの限りでない。この問題でしょう。だから、事態は全然違うものになっておったら、これは全然新しい問題なんだから、したがって、新しい問題の場合に、与えなければならないというこの手続をやっていなかったら、これは単なる手続問題ではなくして、本質的に違法行為をやったのではないか。そうしたら、その罰則がたった五千円で済むのですか。百十九条はそうはなっていないと思います。
  174. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 ちょっとその前に訂正させていただきます。  いまの百十九条は、五千円の罰金のほかに、または六カ月以下の懲役が該当いたします。ただ、私が手続違反だということを申し上げましたのは、三十四条は原則として一斉に休憩を与えるということにして、ただし書きで、ただし許可を受けた場合にはそれを一斉にしないでもいいということが法律のあれになっております。そこで、許可を得るか得ないかということは手続の問題でございますので、それで手続が正当にとられたかどうか——とられておれば許さるべき事案であるかどうかという実態判断は別といたしまして、手続に違反するということがこの法律のまず第一の問題になるであろうということで、その違反についてこういう罰則がある、こういうことを申し上げたのであります。
  175. 寺前巖

    ○寺前委員 ということは、どういうことなんです。要するに、実態は変わってしまっている。人数も明らかに違うし、仕事の休憩の与え方も全然違う。全然違う作業方式に変わっている。だから、一斉に与える云々の問題は全然新しい形態の問題としてある。全然届け出しなかったら、手続問題ではなくして、基本的に何もやらないでおいてやり始めたのだから、これは重大な違法行為とは見ないのですか。単に手続をしなかったから悪かったのだということで済む問題ですか。その点どうなんです。
  176. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 それは、一般的な問題としても、たとえばこれは手続にかかわらしているわけです。要するに、許可という手続をとれば一斉休憩を与えなくてもいいということに実体法的にはしておるわけです。そこでまず第一に、手続に違反するかどうかということがあるわけです。手続に違反した場合に、それがたとえば実体的に、本来手続をすればその実態は認められるようなものである場合——現にたとえばいま私どもは、一応交代制というものをとっていく場合に、それが正当に交代制の手続がとられておって、一定の休憩時間がそこで保障されている場合には一斉休憩を与えないでもいいということで、一つの許可の行政的な基準を示しておるわけでございます。したがいまして、多くの場合にはもちろん申請が出ることを条件といたしますが、申請が出た場合に、その基準に照らしまして、許可すべきものかすべからざるものかの判断をする、基準に当たるものは一応許可をする、こういうことになるわけでございます。  そこで、本件につきましては、一応当初交代制にしようということで許可の申請が出てきているわけです。それが実態が実は変わってきておりますので、当然出し直さなければならないということは私が冒頭に申し上げたとおりでございますが、その場合に、まず手続違反のあることははっきりしております。ただ、今度はその手続違反の中身が、実態が、この法律の許可に当然当たらないようなものの実態であるかどうかということの判断がもう一つそこに加わって、お説のようにもしそういうような事態が現実にあるとすれば、実体法に対する一つの違反問題ということが出てくるのではなかろうか、こういうふうに思います。
  177. 寺前巖

    ○寺前委員 わかりました。  それで、私がここで特別にこの問題を取り上げたのは、手続はあとからやっておけばいいという、だれかが問題にしなきゃあとからちょっと手を打ったら済む問題だということになっては、労働基準法が空文化してし使う。そういう意味では、積極的に、一番最初に問題提起したように、一体登録している会社というのが、どれだけ工場があって、それが現実にどう行なわれているかということを、やはり重大な関心問題として監督をしてもらい、違法があった場合にはきびしく処置をしていくということがあって初めて、労働大臣もその責務を果たすことができると思うのです。そういう意味において私は、当該工場に対して積極的に調査を行ない、この違法行為については面接処置をされるように要望して、終わりたいと思います。  終わります。
  178. 倉成正

    倉成委員長 次回は明十一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十一分散会