○
岡部(實)
政府委員 いままでの経緯その他について、事務的の問題もございますので私から御説明ないし
お答えを申し上げまして、必要によりあと大臣からお話をいただきたいと思います。
御
指摘のように、
労働省といたしましては、この
財産形成政策の問題については、過去数年来の懸案事項ともいうべきものでございまして、実は当初この問題を取り上げてまいりましたのは
昭和四十一年でございました。
昭和四十一年の八月ごろに、当面
勤労者にとって非常に大事な問題はや
はり住宅の問題だ。したがいまして
勤労者の
住宅問題の解決のために、持ち家を
勤労者が
自分で持っていくという
政策を推進していくために、国としていろんな
施策を講ずべきではないかということで問題を提起いたしたわけです。そこで、これらの問題につきまして
関係者の御意見をいろいろ承る場を設けたいということで、財産づくり懇談会という形の懇談会を設けまして、この問題について御検討願い、同年の十二月には、懇談会から御要望というような形で、政府は
勤労者の持ち家の普及を国の
政策の優先的な柱として強力に推進すべきだというような御意見をいただいたわけです。その後
労働省といたしまして、どういう形でこの問題を進めていくかいろいろ検討してまいったのでございますが、当時この問題を具体化するための全体の基盤が必ずしも熟しておらなかったような情勢もございまして、その後若干時間がかかってまいったわけです。
そこで、昨年からはいよいよこの問題と本格的に取り組もう。特に西ドイツあたりでやっております
制度で、十年前に発足した当時の
勤労者の
賃金水準あるいは労働条件等を見ますると、ほぼその
水準を越えてきている。したがってそういう情勢からも、こういう
制度をとり得る基盤が徐々に醸成されつつあるというような角度から、この問題を取り上げて、具体化しようということに踏み切ったわけでございます。
そこで私どもは、財産づくり懇談会等に、昨年の六月一応の試案と申しますか、構想を出しまして、いわば一つの御意見をいただくたたき台というような形で一応試案を出してまいっております。それにつきましては、たとえば
財産形成貯蓄では、そのメリットといいますか、インセンティブを与えるために税額控除——税額から減税分を控除するという措置を全面的にとるべきだ。それからさらに、その対象となりますのに、
住宅を新たにつくっていくための場合のみならず、つくった
住宅に対しまして取得していく費用を払っていくような場合にも、それをも減税の対象にすべきだ。それから、たとえば
住宅の分譲のための資金については、これを特別の
事業団を設けて、そこでともかく貯蓄をやり、原資を、いわば基金というようなことでそこに積み上げて、それを原資として融資をしていくというようなこと。それからさらに、先ほど
向山先生の御質問にございました土地の
問題等につきましても、たとえば先生取得をしていくとかいうようなことを織りまぜまして、実は相当思い切った案を
考えておりました。
ところが、その後
関係各省その他といろいろ折衝いたしまして、この具体化をいたしますときに、いわば後退したということはいなめないところでございますが、いわば非常に現実化されてまいったわけでございまして、たとえば貯蓄等につきましても、これをもし特別の
事業団でこういう一定の期間の貯蓄等を扱うということになりますと、相当膨大な人員もかかえなければならない、あるいは機械化もしなければならないというようなことで、相当経費等も見なければならぬ。それよりも、一定の条件で金融機関に扱わせるということのほうが、より具体的であり、また安全でもあるというようなことから、当初の構想を変えまして、金融機関に一定の条件——と申しますのは、財形貯蓄という銘柄のものをはっきりつくるということ、それから集まった金の一部は必ずこの
住宅の建設のための原資として吐き出すのだというこの二つの条件がはっきりするならば、金融機関に取り扱わせることも現実的にいい方法であろうということで、金融機関に扱わせることにいたしました。
なお、減税措置につきましては、これは実はいまの税額控除の措置を全面的に適用してまいるということに、先ほど申しましたようにいたしておりましたが、実は税額控除の
制度というものにつきましては、これを
勤労者だけシングルアウトして取り扱うことについて、税制上のいろいろな問題その他がございまして、新しい税のしかたとして、これをいま直ちに導入することについて、税法上あるいは具体的には税制調査会等の御意見もいろいろございまして、そこで従来の証券利子の非課税
制度、これを
勤労者に限ってワクを拡大してこれを適用していくという
方向で踏み切ってきたわけです。
〔佐々木(義)
委員長代理退席、粟山
委員長代理着席〕
その他、前に申しました点について、いろいろ
関係各省あるいは
関係の審議会等の御意見等も聞きながら、現実的に手直しをせざるを得なかった。したがいまして、その結果といたしまして、私ども、先ほど大臣が
お答えいたしましたように、十分魅力のあるものと言いがたいということは、何と申しましても残念ではございますけれども、しかし、この
制度が新しく発足することによりまして、ともかく新たなる路線が敷かれる、これを今後十分利用しながら、その実績を見ながら
改善する余地は十分残されている。したがいまして、今後この実績を見ながら十分
改善のための
努力をすることのほうが、今回これを断念するよりはよりベターではないかということで踏み切った次第でございます。
なお、フローよりストックへというお話でございますが、これは実は
賃金の
上昇につきましては、近年非常な
高度成長の結果、大幅な
賃金アップが毎年行なわれている。私ども、先ほども
お答え申しましたように、
賃金水準がそれではもう十分なのかといいますと、これは欧米の諸国に比べまして、
イタリア、
フランス並みにはなったけれども、西ドイツ、イギリスよりはまだ低いし、
アメリカに比べればさらにまだ非常に隔たりがあるということで、私どもはさらに、
経済の
成長ばかりでなくて、十分この
賃金水準の
上昇も
考えねばいかぬ。しかし同時に、欧米とさらに劣っておりますのは
勤労者が持つ
資産の
状況でございまして、これは
日本の
勤労者は貯蓄性向が非常に高いということはいわれておりますけれども、現実に
資産の保有高等から見ますると、必ずしも十分でない。
アメリカに比べて約六分の一ぐらいの保有高と、まあいろいろな
比較のしかたがあろうかと思いますが、いわれておるところでございます。そこで、フローよりストックへということは、私どもといたしましては、
賃金の
上昇と同時に
資産の形成をこの際
考えていく、ストックというのは
資産の形成を
考えるということを申し上げておりますので、
賃金の
上昇と同時に
資産の形成ということを、まあフロー、ストックということと置きかえて
考えてもいいのではないかというふうに思っております。