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1971-04-26 第65回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月二十六日(月曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 小林 信一君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君       伊藤宗一郎君    木部 佳昭君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       林  義郎君    松本 十郎君       森田重次郎君    加藤 清二君       土井たか子君    西田 八郎君       米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         厚 生 大 臣 内田 常雄君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       大塚 俊二君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         通商産業政務         次官     小宮山重四郎君         通商産業省公害         保安局長    莊   清君         通商産業省公害         保安局公害部長 森口 八郎君  委員外出席者         厚生省薬務局薬         事課長     山高 章夫君         農林省農林経済         局企業流通部長 森  整治君         農林省農政局植         物防疫課長   福田 秀夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定工場における公害防止組織整備に関する  法律案内閣提出第一〇一号)  悪臭防止法案内閣提出第九〇号)      ————◇—————
  2. 小林信一

    小林委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定工場における公害防止組織整備に関する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 ただいま議題となりました特定工場における公害防止組織整備に関する法律案につきまして、私は御質問を申し上げたいと思います。時間がわりと限られておるようでございますので、ひとつ要領よく御答弁をいただきたいし、私のほうも質問を集中的に行ないますので、その点、あまり長々と答弁をされないように、前もってひとつお願いをいたしておきたいと思います。  質問に入ります前に、まず私のお尋ねしておきたいのは、この法律案の第二条の第一号に「政令で定めるもの」とあります。第二号、第三号、第四号にもそれぞれ「政令で定めるもの」というのがあります。この辺につきまして、どういう政令考えておられるのか、明らかにしていただきたいのが第一点。  第二点は、第三条の第一項のただし書き中「政令で定める要件に該当する」というのかございますが、これはどういうような政令で定めるのか。それから一号中のハに「主務省令で定めるもの」というのがあります。これはどういう主務省令で定められるのか。二号のハ、同じく「主務省令で定めるもの」、おそらく同じような内容であると思いますが、この主務省令内容。  それから、第四条の第一項第一号、第二号、第三号及び第四号中「主務省令で定める技術的事項」というのがございますが、その主務省令内容。次に、第四条第二項の政令内容について御説明いただきたいと思います。  続きまして、第五条の政令で定める要件の「主務省令で定めるところにより、」というのがございますが、その内容。  それから、第七条の(公害防止管理者等資格)の中で、一項第一号中の「政令で定める区分ごとに行なう」試験政令及び「当該区分ごと政令で定める資格を有する者」というその政令。第二号中の政令。  それから、第八条の中の受験手数料の「政令で定める額」というものの内容。  それから、第十条の「その他政令で定める法令の規定に違反したときは、」というのがありますが、その政令。  以上につきまして、簡単でけっこうでございますが、要領よく御説明いただきたいと思います。
  4. 莊清

    莊政府委員 第二条の「製造業その他の政令で定める業種」というのは、電気事業法ガス事業法対象及び鉱山の付属製錬所、こういうものを考えております。  第一号の関係でございますが、政令で定める施設、これは現在大気汚染防止法特定施設というのがございます。今後拡大されると思いますが、原則としてそれを全部対象考えております。  それから第一号の末尾に「工場のうち、政令で定めるもの」という政令がございますが、この政令は、いわゆるすそ切り考えておるわけでございます。排出量によって、最初は、大規模発生施設中心に指定することによって、大部分の発生源を押える。中小企業体制整備が整い次第、逐次追加をするという方針でございます。第二号も考え方は同様でございます。  それから第三条にまいりまして、「主務省令で定めるところにより、」統括者選任するという規定がございますけれども、これは手続的な規定でございます。  それからただし書きがございまして、「特定事業者政令で定める要件に該当する小規模事業者であるときは、」統括者を置かなくてよいという規定がございますが、この政令といたしましては、個人事業者等々の場合には、事業者がすべての義務を負っておりますので、しいて必要がないというふうな考え方から、個人事業者ないしそれに準ずるようないわゆる零細中小企業というものを指定してまいりたいと考えております。  それから同じ条文で、第一号のハのところに「大気汚染防止に必要な業務主務省令で定めるもの」、主務省令内容といたしましては、緊急時、事故時における措置、これを業務として指定する考えております。この点は、第二号の排水につきましての「主務省令で定める」業務につきましても考え方は同様でございます。  それから第四条の(公害防止管理者選任)の規定でございますが、「主務省令で定めるところにより、」選任する。これは手続規定もございますけれども中小企業の一部につきましては、たとえば工場アパートをつくっておるというふうな場合がございます。あるいは団地化というような場合がございますので、そういうときには一つ一つ責任者を求めにくい場合もございますので、共同管理者というものを置ける道をこの省令内容として考えております。  それから、第四条の、その次にあります「政令で定めるばい煙発生施設」や「汚水等排出施設区分ごとに」管理者を置く、これは、この政令ではどういう区分考えておるかといいますと、SO2関係及びばいじん関係、第二に新しい大気法有害物質関係、それから排水関係でございますが、いわゆる健康物質を排出する施設一つ、それから環境汚染物質を排出する排水施設一つ、それから順次あと騒音粉じん、こういう全部で六つのグループを考えておるわけでございます。  それから、第四条の第一号から第四号まで、管理者業務を書いておりますが、その中で「主務省令で定める技術的事項」というのがございます。これは第一号、第二号の大気排水の場合には処理施設の操作あるいは緊急時や事故時の措置に関する技術的事項、これを考えております。第二号の排水も同様でございます。第三号の騒音、及び第四号の粉じん省令では、騒音なり粉じん発生施設運転管理等施設使用方法、これに関して省令で定める考えでございます。  それから、次に第四条第二項の管理者選任に関する政令規定でございますが、この政令では手続事項を書いてあります。  それから、第五条の政令でございますが、これは大規模工場で、大気排水いずれにも大規模施設を持っておる、こういう場合には管理者と、それから統括者つまり工場長との間に立って統括者を補佐すべき者を置く必要があるということで、大気排水二系列の大規模施設を置いておる工場、これを政令で指定する考えでございます。  それから第五条、第六条の主務省令は、いずれも手続的な規定でございます。  それから(国家試験)、第八条、「実費を勘案して政令で定める額」、これはまだ金額的には詰めを終わっておりませんが、実費でございます。ほかの各種の国家試験がございますが、すべて実費を取っておるようでございますが、数百円から千円どまりということでございますので、本法の場合にも同様措置する。  それから、第十条の解任命令の条項の中の政令でございますけれども、ここでは電気事業法ガス事業法、こういう法律考えておるわけでございます。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。いろいろと詳しい説明をいただきましてよくわかりましたが、この法律案でございますが、産業構造審議会産業公害部会というのがありますが、その産業公害部会でいろいろと御議論された上でこの法律案ができたと私は聞いております。一体、その中間報告の基本的なトーンというのはどういうものであったか、政務次官からお答え願います。
  6. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 「事業者産業公害防止体制整備に関する中間報告」というものが、ことしの二月の十六日に産業構造審議会公害部会から出ております。これは昨年の七月三十一日以来半年余り討論されまして中間報告をまとめたものでございます。  内容については、公害防止のためには国等による公害防止体制の強化や助成措置の拡充とともに、事業者経営理念の転換をし、公害防止に取り組むべきことが緊急であるということを指摘して、具体的には幾つかの点について問題提起をいたしております。  まず第一に、本社企画技術生産資金等一定部門の各トップが総力を結集して、公害防止に関する基本方針決定及びその実施の推進に当たること。  それから、そのために専門的補助機構として公害担当取締役公害担当部課公害対策委員会、これはスタッフシステムとか、ラインシステムというものでございますが、各企業経営実情に即応して設置することが望ましい。  また実際に公害発生源となる工場においては、公害防止全般責任を持つ統括者や、具体的公害防止対策をつかさどる技術者選任等公害防止体制整備につとめることが必要であるということ。  公害対策を合理的かつ効果的にするためには、地域ぐるみあるいは業界ぐるみで協力を推進する必要があり、今後の課題となっていくということ。  最後に、国や地方公共団体指導体制整備ということで、これに対しては助成措置その他をやっていく必要があるということでございます。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 いま小宮山政務次官からお話がありましたが、私も趣旨としては全くそのとおりだと思いますが、やはりいまからいろいろとやっていかなければならないのは、企業経営理念として利潤追求一本やりという考え方を改めていかなければならないだろうと思います。どうもこの法律を見ますと、工場管理者を置く、また責任者を置くということでございます。やはり基本的には会社全体としてやらなくちゃいかぬ問題である。工場だけでやっても本社のほうでは何にも考えてないということでは、実際いかないのではないかと思うのでございます。現に私の地元あたりでは、各工場の支所はございますけれども本社というのはほとんどない。本社というのは全部東京である。東京へ行って話をするのはなかなかむずかしいというのが実情だと思うのです。その点につきまして、この法律の中で、会社としても経営理念を転換するというようなことを織り込まれなかった理由というのはどういうところにあるのですか。またその辺についてどういうふうに政務次官考えておられるのか、お話を承りたいと思います。
  8. 莊清

    莊政府委員 公害防止のためには、企業は、上はトップ社長から従業員の末に至るまで、頭を切りかえて公害防止に専念しなくちゃいかぬという点は、ただいま政務次官もお答えいたしました、先生からも御指摘のあったとおりでございます。通産省といたしましても、従来から公害関係産業経営者に対しては、近年、経営理念をそういうふうに切りかえて、公害に前向きに取り組むべきであるということを大いに指導につとめて努力してきたつもりでございます。この点は、今後とも政府機構も逐次整備されてまいりますが、産業を預かる通産省としても、今後とも最も重要な職務の一つであるというふうに考えておるわけであります。  お尋ねのございました、法律を見ましても本社について特別の規定が見当たらぬようだが、その点についてはどうかという点がございましたが、設備投資とか、あるいは重要な公害研究費、こういうものの計画決定方針決定、あるいは会社としての予算の配分、こういうことが非常に大切である。これが本社所管事項に属しておるということは御指摘のとおりでございますが、私どもいろいろ昨年来会社内部体制の調査も実はいたしておりますけれども、まず公害型といわれる電気、鉄鋼その他の産業では、会社のいろいろの実情に応じまして部課をつくるとかあるいは委員会をつくるとか、委員会をつくる場合には当然工場長もメンバーに入っておると思います。そういうトップの特別の協議の場をつくりまして、設備投資をやるときにでも公害問題について見落としがないかどうかということを一回特別の機構でスクリーンして、それを取締役会にかけていって、会社の年度間の投資計画なり防止計画を最終的には社長責任決定するということが、少なくとも大企業の場合には、ほとんど一〇〇%近く行なわれつつあるようでございます。  私ども、今回の法律をつくります場合に、それでは特別の担当取締役というふうなものを法律選任しなくちゃいけない、その人に義務を与えると同時に、裏からいえば法律上の特殊の権限を与えるということが公害防止をはかっていく上で一番合理的かどうかという点もいろいろ検討したのでございますが、本社の場合には、技術関係、これが公害の場合相当担当重役として中心になるようでございます。あと生産あるいは設備関係、あるいは企画関係最後にはお金を所管する経理担当重役、それぞれいろいろなセクションがございまして、それがすべてやはり協議する。問題は協議するときの姿勢だろうと思います。公害を防がなくてはいけないという基本姿勢に立ってやるかやらぬかによって、会社のやることというのは内容がもうすっかり変わってくる、こういうことでございますので、私どもは今後とも大いに指導を強化しなければならないと思っておりますが、法律上、現在の会社組織本社組織に、何らか新しくつけ加えるということは、必ずしもなじまないのではないか。指導によりまして、専門委員会部課、こういう補助機構整備というふうなことは、今後とも大いにやっていきたい。  それから、何と申しましても社長以下トップの人に、経営理念として、これでなければだめだということを今後とも強力に指導していく。公害罪法案というふうなものが通る世の中でございますから、こういうことがなければもう企業といえない、こういう理念を徹底させる、これが一番大事なことだろうと思っております。ですから、法律と合わせまして、そういう指導と合わせまして、企業内部体制というものを実質的につくっていきたい、これが基本的な考え方でございます。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 いま、通産省のほうからお話がありましたけれども法律を見ますと、この問題は単に通産省だけの問題ではないと思います。農林省でやはり食品工場その他についての所管もしておるわけです。また厚生省薬品メーカーについては所管をしておられます。やはり私は、そういったところにおきましても、全然公害がないとはいえないと思っております。同じような考え方でやっていただかなくてはいかぬだろうと思います。お話を漏れ承りますと、なかなかこれは、各省の権限問題というのはいろいろむずかしい問題があったようでございますが、その辺につきまして、厚生省及び農林省から、どういうふうな考え方でおやりになるつもりか、その辺をお尋ねしておきたいと思います。
  10. 山高章夫

    山高説明員 医薬品工場のほうの公害防止組織について御答弁申し上げますと、医薬品関係では、薬事法の十五条に、医薬品製造管理についての規定がございます。ここで、管理者としまして薬剤師を必ず置かなければならないようになってございます。そしてまた別途構造設備規則というのがございまして、ここで廃水、廃棄物処理に要する設備でございますとか、あるいは有害ガスの発生する場合の処理に要する設備等規定がございます。それから公害防止管理という面に関しては、現在規定を持っておりません。本法の制定を、幸い御可決いただきまして施行するようなことになりましたら、本法趣旨に沿って管理者の面からも十分に指導してまいりたいというふうに考えております。
  11. 森整治

    森説明員 農林省関係の御答弁を申し上げます。  農林省関係は、大体私どもの中では食品関係企業が多いわけでございますが、これがまた特徴的なことを申し上げますと、非常に零細で数が多いということが特徴であろうかと思います。全部が全部この法律を画らに適用になるということではございません。われわれといたしましては、こういう公害防止組織が、食品関係では、確かに食品衛生関係以外のものとしましては非常におくれておるというふうに認めざるを得ないと思います。しかし、この法律の公布を機会にいたしまして、そういう公害防止組織整備をはかりますと同時に、講習等を通じまして、この法律の目的を十分達成するように、通産省とも、先ほどお話がございましたが、十分協議をいたしまして、運営につとめてまいりたい、こういうふうに考えております。
  12. 林義郎

    ○林(義)委員 いまお話がありましたけれども、やはり公害排除という問題は、現在の一番大きな国民的な課題でございます。そういった点から、ぜひ積極的な姿勢で取り組んでいただくことを要望しておきます。  実はもうちょっとお尋ねしたいと思うのですが、公害関係で、農薬公害というのがあります。先ほど厚生省のほうからお話がありましたけれども農薬をつくるほうの問題は解決されましても、農薬を使用する側におきましては、いろいろ問題があるだろうと思います。やはり公害防止というふうな観点からいたしますと、農薬を使用するところの農業者のほうにおいても、やはり同じような考え方のものを入れる必要があるのではないかという気がいたします。たしか、私は記憶いたしますけれども、昨年の十二月の臨時国会でそういった問題がありましたときにも、そういったような御要望がどこからかあったというふうに記憶しておりますが、その辺につきまして、農林当局はどういうふうに考えるのですか。農薬散布につきまして、全然自由にやらせるのか、あるいはある程度までこういった国家試験とかいうようなものとか、あるいは何か特別の資格のある人の指導を受けてやるというような形にするのか、その辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 福田秀夫

    福田説明員 農薬を実際に散布することによって起こる公害というものを防ぐためには、やはり散布者に対する強力な指導が必要だと思いますが、まず散布者自身のこうむる被害としまして、急性毒性の強い農薬がございます。こういう農薬散布する場合には、厚生省のほうとも御一緒になりまして、被害防止運動というような運動を行なっておりますが、また特に急性議性の強い特定物につきましては、毒物及び劇物取締法によりまして、その使用者資格がきめられておりますので、これにのっとって指導してまいりたいと思います。  それから今度は、使いました農薬によって起こる、今日非常にいわれております食品等に残留しまして消費者に対して非常な不安を与える、これを防ぐためには、現在残留許容量だとか、あるいはそれに伴う安全使用基準ができておりますが、これを確実に守らせるためには、個々農家が個個に防除するというよりも、やはり共同防除を行ないまして、指導者のもとに共同防除を行なったほうがより安全徹底が期せると思いますので、従来から、昭和四十二年でありましたか、四十三年でしたかから、農薬安全管理対策というような事業を行ないまして、共同防除組織推進のための予算措置を講じてまいりましたが、今後またさらに四十六年度からは、農薬安全管理対策事業というような予算を計上いたしまして、いわゆる集中管理防除的な考え方を導入した組織の養成をはかってまいりたいと考えております。これは個々農家が自分のところの作物だけを考えるのではなくて、総合農協あるいは旧市町村くらいの広域な場所におきまして、それぞれ作物の輪作、間作等もすべて考えた上で集中管理した防除を行ないたいということでございまして、もう少し詳しく申しますと、あと作とかあるいは間作その代全部マップをつくりまして、それに伴いまして、使う農薬の種類、時期、方法等を全部集中管理するような組織のもとに散布を行なうというような組織を育成したいと考えまして、そのために必要な設備、備品等々の補助を行ない、そういった組織のモデルを育成し、これを普及したいというふうに考えております。  そのほか御指摘のとおり、さきの国会におきます農薬取締法改正の場合に、新法によりまして作物残留性農薬とか、土壌残留性農薬に指定されました農薬を使用する場合には、農業改良普及員あるいは病害虫防除員等の「指導を受けるように努めるものとする。」というふうになりましたので、末端の第一線の防除指導者であります病害虫防除員の資質を向上するための予算も新たに計上いたしましたし、また末端防除を監督する役所、県の役所でございますが病害虫防除所、ここにおきます農薬安全使用等指導旅費等の増額の予算措置も講じた次第でございまして、今後ともこれらの予算措置等々を活用いたしまして、安全使用が徹底できるような組織の育成並びに指導体制というものを確立してまいりたいと考えております。
  14. 林義郎

    ○林(義)委員 確かに昨年の農薬取締法改正のときに、そういう規定が入っております。しかし、これはどちらかというと、精神規定でございます。やはり農協の人であるとか、あるいは県の人であるというのが相当強力に行政指導しないと、私はできないと思うのです。そのときに、やはりこういったような形の規定をつくってみたらどうであろう、この辺は、こういう世の中で、やはり農薬の問題というものは相当大きな問題になってきている。特に自然環境の破壊ということで相当大きな問題になりますので、これからぜひそういった問題を検討していただかなければいかぬと思うのです。  昨年の通常国会のときにもいろいろ問題が出てまいりまして、そういった意見もあったと思うのですが、そういった点について、農薬をやったならば農業生産が上がるのだといういままでの考え方と、農薬のもたらすところの公害という問題、ウエートをやはりあとのほうにかけていただかなければならないのだろうと思います。そういたしますと共同農薬散布するというような話も出ましたが、やはり指導者命令が相当聞かれる、聞かなければならないという形のところまで持っていく必要があると思うのですが、その辺についてどうお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  15. 福田秀夫

    福田説明員 共同防除指導者の問題でございますが、これは現在でありますというと、改良普及員というのが一万何千人いますし、それから末端指導員といたしましては県の病害虫防除員が一万八百人ばかりおります。その他農協指導者等々をもってそういった指導をしている次第でございまして、先ほどお答えいたしましたように、これらの方々の指導のために必要な予算助成措置も四十六年度から増加することにいたしました。  それからまた、先ほど先生の御質問の中に、有資格者とかそういうようなお話がございましたけれども、こういった病害虫防除員とか、あるいはその他の末端指導者に何か資格を与えて、強力な指導ということも考えられるのですが、この場合何と申しますか、どの程度の資格を持った者ならばよろしいとするかという、資格の程度とか、あるいはその要員の確保——と申しますのは、かりに部落単位に行なう共同防除、そういったときに、有資格者の指導が必要ということになりますと、相当大人数の、あるいは十万、二十万というような指導者がいないとこと足りないかと思いますので、そういった要員の確保、これは資格をどの程度にするかということとからみ合うことでございますけれども、その辺の検討、あるいはそういう資格を置いた場合には、その資格者の責任の範囲をどうするか、もし何かあった場合にはどこまで責任を負わせるかというようなこと等々、いろいろかなり慎重に検討しなければならない問題があるのではないかと考えられますので、それらの点につきましても、今後慎重に検討してまいりたいと考えております。
  16. 林義郎

    ○林(義)委員 確かにいろいろと問題はあると思いますけれども、やはりその辺は前向きでひとつ御検討していただきたい。これはやはりこれからの公害防止対策の中で、一つの大きな柱になる問題であろうと私は考えておりますので、ぜひそういった態度で進んでいただけることを要望しておきます。  ちょっと法律そのものの問題でないのですが、関連いたしまして、産業廃棄物処理法案等が昨年の臨時国会で可決されました。これはやはり地方公共団体その他でやられるだろうと思いますけれども、そういったのが大体趣旨であって、産業廃棄物処理事業者がやるというのは少ないのではないかというのが実情だろうと思うのです。今後はだんだん事業経営としてやっていくという形になると思いますが、産業廃棄物処理施設あるいは一般のごみの処理につきましても、やはりこういった技術者制度というものをやっておかなければいかぬ、こう思うのです。この辺につきましては、厚生省どう考えておられるか、御答弁いただきたいと思います。
  17. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御指摘のように、現行清掃法でも技術管理者の制度がございまして、一定規模以上の一般廃棄物処理施設については、一定の資格を有する技術管理者を置かなければならぬことこなっておりますが、清掃法の全面改正産業廃棄物処理施設も取り入れたことに伴いまして、当然産業廃棄物処理施設についても技術管理者制度が適用されるわけでございます。今回の本法案の作成に際しましても、通産当局といろいろ御協議いたしたのでありますけれども、私どもといたしましては、やはり産業廃棄物の性格から見まして、場合によると現行の技術管理者資格をもっと高めるとか、そういったようなことも十分考慮いたしまして、施設の維持管理、衛生的な運営等については、十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 この法律公害防止統括者とか、公害防止管理者を置くということでありますが、私はやはり先ほど申しましたように、公害を出した場合の責任というのは、最終的には各会社社長さんが持ってもらわなければならぬ、あるいは会社が持ってもらわなければいかぬものだろうと思います。こういった形で、いろいろに統括者なり管理者選任しておくということになりましても、対外的な責任は当然会社が負う、あるいは社長が負わなければいかぬことだろうと思います。  その辺のところにつきまして、私はまず第一点にお尋ねしたいのは、先国会からいろいろ問題となっております無過失賠償責任の問題、この法律の問題はこの国会に出すという話ですけれども、一体政府のほうとしては、この法律をこの国会にお出しになる気持ちがあるのか。こういういろいろな公害関係をやっていく法案をいま審議しておる。やはり基本となるところの一つの欠けておる問題は、無過失賠償責任の問題だろう。いまその辺をどういうふうに考えておるか。これはぜひ小宮山政務次官に、通産省としてどういうふうに考えておるか、お答えいただきたいと思うのです。
  19. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 この無過失責任については鉱業法及び原子力損害賠償法などにそれぞれ規定がございますけれども、総理も前向きに検討するという発言がございました。これは現在公害対策本部及び法務省で検討しているようでございますが、その成案ができたときに、われわれとしてはそれに対してどう対処するか、前向きでひとつ考えたいと存じます。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 前向きで検討するというお話でございますが、ぜひ早くやっていただかなければならぬ。同じくこの国会にかかっています悪臭防止法案についても同じようなことがいえるのではないか。悪臭の問題を解決するのはいろいろと法律的、行政的な規制でやるということももちろん必要でございますが、やはり被害者の救済と申しますか、そういった点に抜かりがあってはならぬ。公害の問題というのは、やはり国民お互いがよくなってきた。健康で文化的な生活を営むという場合に、バランスをどこにとるかという問題でございますから、単に行政的に罰則を設ける、あるいはいろいろな規制をかけるという問題にとどまらない、やはりそこで民事的な裁定というか、救済というものをしていくというのが筋だろうと思うのですが、そういった点をすみやかにやっていただくように、政務次官のほうからもひとつハッパをかけていただきたい、お願いしたいと思います。  それに関連いたしますが、第十条に(公害防止統括者等の解任命令)というのがございます。いま申しましたようなことで大気汚染防止法であるとか、水質汚濁防止法であるとか、そういう法律に違反した場合、会社社長さんが責任をとらなければならぬ。ここで、さらにこれは会社の中では、もしもそういったような事態になるならば、会社の内部の内部規制としても、そういった公害防止統括者なり公害防止管理者というものを当然に解任するということが道義的に出てくるのだろうと思います。ところが、わざわざこの中ではっきりと、都道府県知事が「解任を命ずることができる。」というような規定を置いているわけです。罰則を適用する、さらに解任命令をやるというのは、私は何か非常にきついようなものではないかと思うのですが、わざわざここに書かれた理由というのはどういうところにあるのか、この辺について御説明いただきたいと思います。
  21. 莊清

    莊政府委員 立法の理由でございますけれども、公法上の一つの新しい義務として、事業者というものに公害防止のためにこれだけの内部体制を強制する、選任届け出をしなければ罰則をかけるというところまでやはりこの際政府としては踏み切ろう、その必要があるという判断でございます。したがいまして、そういう法律上特別の職務を課せられた工場長等が、職務を非常に怠りまして、その結果として大気汚染防止法とか水質汚濁防止法違反という事態が起こって、司法当局が調査したところが、やはり会社の中での責任者はまさに工場長であった、こういう不幸な事態が起こったという場合には、罰則が当然その工場長にかかってくる、起訴されていくということは、これはもう現在すでにあるところでございますが、新規に法律をつくって工場長に特別の職責を課したという制度の趣旨にかんがみます場合には、その工場長が非常によろしくないという場合には、遺憾なことでございますけれども、やはり監督官庁として、その人を責任ある地位からある期間排除できるということがございませんと、制度の趣旨が生きてこないし、公害防止の実もあがらぬ、こういうことが実際上あり得るのじゃないか、こういう判断でございまして、たとえば鉱山保安法でも似たような制度がございます。あるいは労働基準法でありますとか、毒劇法でも責任者制度、いろいろたくさんございますけれども、公法上特別のこういう責任を課したという場合には、それに伴いまして、最悪の場合にはその人をその地位からはずすとか、資格を取るというふうな制度が他の法令でもすべてある、こういうことで、他の立法との均衡という点も考慮しておるわけでございます。
  22. 林義郎

    ○林(義)委員 他の立法との均衡ということで、いま鉱業法の関係を出されましたけれども、鉱山というのはわりと大きなところもございます。一人や二人でやるということではない。公害の問題というのは、やはり相当の中小のところまでやっていかなければいけないというのが、私は実情だと思うのです。また、それをやっていただかなければならぬのですが、その辺で、もしも十人くらいの中小企業があって、そこの工場長解任命令を出されたらたいへんな騒動になるだろうと思うのです。政務次官の地元でもたくさんあると思うのです。そういったところで、十人でやっていて解任命令が出された、県知事から来たぞということになると、その工場は、さっき申し上げたようにどうにもならないことになる。その辺をどういう形で具体的に運用していかれるのか、これはやはり中小企業者について、相当にきついことになるのじゃないかと私は思うのです。先ほど、一人くらいのところでやっておるところははずすんだ、まさに零細企業だけはずすんだということですけれども零細企業よりちょっと上のところ、いわゆる中小企業というものは相当に被害を受けるのではないかという気が私はするのです。その辺についてどういうふうな配慮がされるのかというのが第一点。  それからもう一つは、中小企業となりますと、なかなかそういった技術者を求めるのはたいへんでございます。どちらかというと、中小企業社長、主人が、自分でいろいろな技術を持ってやっているというのが非常に大多数ではないかと思うのです。そういった点で、新しくその技術者を雇わなくちゃいかぬというような問題になると、これはたいへんでございます。また、いまやっている人をこれから勉強させるということになると、それは商売で一生懸命かせいでおってそんなひまなんかなかなかない。やはりこの資格試験を受けるということになれば、いろいろな法規の勉強もしなければならぬし、いろいろな学問も勉強しなくちゃならぬ。技術的には非常にいいものを持っておるけれども、やはりそういったことはなかなかできないということが私はあるだろうと思います。そういった形で、この附則の中には、公布の日から起算して一年三カ月を経過した日から第三条から第六条までの規定を適用すると書いてあります。しかし、一年三カ月ぐらいでそういったことができるかどうか。また、そういったことをやるためには、相当のいろいろな中小企業に対する助成というものも考えていかなくちゃならぬという気がするのです。  その二点につきまして——第一点は、中小企業者が相当なショックを受けるようなことになるではないかということが第一点。第二点は、中小企業者の中で一年三カ月ぐらいでもってそういった技術者というものが、はたして管理者となることができるだろうかどうか。その辺につきまして、どういうふうな措置考えているのか、お尋ねしたいと思います。
  23. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 本法で適用になる中小企業の問題については、先生のおっしゃるように、非常に問題点がございます。中小企業をそのまま大企業並みにやれば、中小企業事業者はたいへん苦しい立場に入りますので、この点、中小企業に過度の負担にならないような十分な配慮をしていく所存でございます。  で、本法対象となる特定工場の指定にあたりまして、排出ガス量または排出量の少ない小規模工場は、実情に応じて当面は対象としませんで、講習会等の成果をまって逐次対象としていく考え方でございます。しかし、メッキ等については、これは例外といたします。  それから、先ほど問題になりました公害防止統括者と申しますか、これは事業主とほとんど一緒でございます。あるいは代理者というような方も一緒でございますので、それは中小企業については免除をしようということでございます。  それから公害防止管理者選任については、中小企業工場に限っては、各企業共同で同一人を選定することも認めます。  第四番目に、公害防止主任管理者選任は大規模工場に限ることといたしておりまして、中小企業には対象といたしません。これは、第五条の規定でございます。  それから、公害防止管理者国家試験または政令で定める資格は、排出ガス量または排出量の少ない工場については、大規模工場よりやややさしい資格で十分ではないかということで、第二種管理者というようなものを設定していきたいと考えております。  それから第六番目に、中小企業従業員資格取得が容易になるように、講習会、研修等を重点的に実施していきたいと思っております。  中小企業といえども、やはり公害防止マインドというものが欠除されては困る、こういうことで大いに今後とも講習会その他、規定の中で、中小企業が、公害は除かれるのだということがないように、やはり中小企業公害防止に対しては徹底してやるのだということでございますけれども、何といっても、御承知のように、中小企業は資金面その他で非常に苦しいこともございますので、資金面の助成策もとらなければいけませんし、あるいは税制面でも特別償却制度のようなものをやらなければいけないし、技術対策なども、そういうことで特別な補助制度を設けて技術向上をさしていきたいと考えております。
  24. 林義郎

    ○林(義)委員 いまお話にありました中で、ちょっと私、わからなかったのですが、中小企業の場合には公害防止統括者というのは置かなくてもよろしいということになるわけでございますか。それからもう一つは、あるいは公害防止主任管理者というものを事業主が兼ねてよろしいということになるのですか。そういった場合におきましても、やはりこれは事業主は試験を受けなければいけないということになるのだろうと思いますが、管理者とそれから防止統括者と両方兼ねることができるということで考えていいのか、またそれと同時に、中小企業社長統括者であり、同時に防止主任管理者であるというような場合も考えられる、そういったものは政令で書くんだ、こういうことでございますか、ちょっと明らかにしておきたいと思います。
  25. 莊清

    莊政府委員 公害防止統括者工場長ということになっておりますが、零細企業等は統括者を置かなくてもよいと申し上げましたのですが、零細企業の典型は個人事業者だと思います。個人事業者大気汚染防止法等の事業者ということですべての規制をその人個人が完全に受けておる、あらゆる罰則を受けるということでございますし、実態からいいましても個人事業者は当然みずから工場のほうのさいはいも振っておるということでございますので、しいてその個人事業者を、さらに自分を統括者というふうに、みずからを選任いたしまして届け出させるということは、言ってみれば形式といえる面があるということで必要なかろう。それから法人成りをした企業の場合でも、実質は個人事業者と同じで、工場長も置いていない二十人以下くらいの零細企業でございますと、こういうものは今後さらに検討の上で同様の扱いをしたらどうかというふうに考えております。  それで、その場合でも管理者というものは、専門技術者でございますから置かなければいけない、個人事業者の場合、零細企業の場合でも、一定の資格を持った管理者は必要であるということ。ただ、零細企業のほうで団地化しておる工場アパートであるとかいうふうな場合、数社で一人の管理者共同で利用するということが質のいい管理者を置けるゆえんである場合もございますから、そういう場合にはそういう道を開こうということでございます。  最後一つつけ加えさせていただきますと、それでは個人事業者たる事業主がみずから勉強をしまして、管理者を置かずに、自分で試験を受けるなりして資格をとって、事業者管理者というふうになることは法律上認められるかどうかというところまで詰めますと、法律ではその点は禁止規定は置いてございません。この点も運用上可能なようにするつもりで書いておるわけでございます。
  26. 林義郎

    ○林(義)委員 いまのお話だと、結論的に申しますと、公害防止統括者というものは、たとえば二十人以下の会社社長が兼ねてもよろしい、兼ねることができる、こういうことでございますか。
  27. 莊清

    莊政府委員 一定の資格を備える場合には可能であるということでございます。
  28. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、そういった点に十分留意されまして、これがたいへんなことにならないようにしていただきたい。公害防止という形で、大気汚染防止法、水質汚濁防止法をはじめとしていろんな法律がありますが、どちらかというと、法律的に行政的に、そういった規制の問題、それからどういうふうな形で防止していくかという具体的な手続の問題、具体的なやり方の問題であろうと思います。  具体的なやり方の問題においてはやはり水質汚濁防止法、大気汚染防止法というものがありますから、その規定を守るためにどういうふうにしていくかということだと思いますので、私はいろいろなやり方が具体的にあるだろうと思いますし、またそういった中小企業、特に零細企業等におきましては、実際にできないようなことがあるだろう。しかしながら、その企業としては規制というものは十分に守っておるということがあるだろう。いたずらに、この法律によって管理者を置かなければならない、統括者を置かなければならない、それによって企業が非常に経営上困るというようなことのないように、十分なひとつ配慮をしていただきたい。問題は私は公害がなくなるということが問題であると思います。管理者を置く、あるいは統括者を置くということが問題じゃないと思います。目的はやはり公害防止にあるわけでございますから、その点につきましては十分な配慮をひとつやっていただきたい、こういうことをお願いいたしまして、私の質問を終いりたいと思います。
  29. 小林信一

    小林委員長 島本虎三君。
  30. 島本虎三

    ○島本委員 特定工場における公害防止組織整備に関する法律案、これがいま出され、審議中でありますが、産業構造審議会産業公害部会の「事業者産業公害防止体制の整備に関する中間報告」が昭和四十六年二月十六日に出されておるわけであります。それに基づいてこれはできた、こう思うのです。この関係はどういうふうになっておるのですか。
  31. 莊清

    莊政府委員 通産大臣が産業構造審議会のほうに、体制整備の問題について諮問をいたしたのは昨年の夏でありますが、当然通産省といたしましては、今後の前向きの課題として、こういう問題に取り組んでいく、必要ならば法律をつくっていく、指導も強化するということが必要であるという基本的な姿勢と判断がありまして、それで専門の方々のお知恵をかりるという意味で諮問したわけでございます。このために、常識経験者のほかに、都道府県の知事さんとか、あるいは市長さんとか、消費者の代表の方とか、幅の広い委員さんを一年間お願いしたわけであります。この結果が二月に出たわけでございますけれども、この答申、一々申し上げませんですが、本社機構から地方の工場、特に地方の工場については、一定の資格のある者をやはり責任者として置くべきだ、法律をつくれとは書いてありませんが、席上の大方の御意見はそうでございました。したがって、われわれはそれに基づいて答申を尊重して、われわれが案を立てて、政府内部で調整をした、こういうことでございます。
  32. 島本虎三

    ○島本委員 それならこの中間報告は「産業公害防止体制確立のための方策」ということで、「1企業産業公害防止体制整備」、それから「2公害防止のための事業者間協力の推進」、「3 国および地方公共団体による指導体制整備」、こういうような三点を指摘しておるわけですが、こういうような指摘の中で出されてきたこの法律案は、1のうちの、それもさらにその中の(2)の工場内の体制整備だけを取り上げて法律案にして出してきた。こういうようなことでは、このほかの方策については立法化の必要がない、こういうように考えたのか、立法措置以外にはどのような方策を講じようとするのか、これがはっきりしないと、九牛の一毛じゃありませんか。答申を尊重するといいながらも答申のうちの1、2、3の、1のうちのまた(2)だけの「工場における公害防止体制整備」だけを取り上げた法律案だ、あとの点は全然取り上げていない、こういうことになると、少しこれはおかしいのではないでしょうか。尊重しているということにならないのではないか。こういうことでは、公害防止するためにといいながらも、公害がまたこれに誘発されるおそれがある。これは重大なことです。小宮山さん、どういうことですか。
  33. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 いま先生がおっしゃいました「工場における公害防止体制整備」だけに重点を置いて、ほかはあまり尊重していないではないかというお話でございますけれども、特にこの中間報告の中で「工場における公害防止体制整備」ということが重要なことでございますし、第一項目に述べられております企業内の公害防止マインドの育成とか、そういうこともこの法律としては絶対出さないのだということが主体でございますので、それについてはやはり今後とも技術者あるいは総括の責任者のようなものを置いてやっていきたい。  それから「国および地方公共団体による指導体制整備」というようなことで、今後とも中小企業あるいは大企業においても、絶対公害を出さないということに指導、育成していこうという考え方をこの法律に織り込んで今度法律案を提出した次第でございます。
  34. 島本虎三

    ○島本委員 では、そのほかの方策については立法化の必要がないのだ、こういうようなことですね。立法措置以外にはどういう方策を講ずるのだ、こういうようなことも聞いているのですが、あえて項目を羅列しただけではわからない。この二つだけはっきりさせておいてください。
  35. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 私、そういう意味で、ほかはいいとは言っておりません。各項目については経営者の意識その他の問題もございます。そういうものを指導、育成していくということも、われわれとしては指導していかなければいけませんし、国及び地方公共団体における指導体制を確立していくことも必要だ、そういうことで研修会あるいは養成機関の設置などもやっていこうという考え方で、この中間答申を非常に尊重していると考えております。
  36. 島本虎三

    ○島本委員 その中間報告、この中には経営トップ——公害防止の体制を確立する、これも一つの重大要件として指摘されている。それとまた、経営の各部門のトップが総力を結集して公害の対策に当たらなければならないのだ、こういうようなことも不可欠の要件としてこれは出されているわけです。そういうような経営トップ公害防止意識の徹底、その辺が原動力だったのだ、いままでの公害が出てきたというのは。政府がその辺は別の意識を持ってやっていて、公害なんかあまり考えなかったから、この集積が、公害の十四法案も昨年の暮れにつくらなければならないような要因になってしまった。これはきわめて重要なんです。  したがって、こういうような公等防止意識の徹底、これに対して、経営者トップに対してはどういうような指導と対策を持つのだということなんですよ。ただ講習会をやるとかいうのはあたりまえのことであって、それでは別にどうということはないじゃないですか。だから尊重するというなら、その辺も十分尊重しなければだめですよ。
  37. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 その点については、われわれ通産省といたしましては、公害防止というものは設備投資の一環であるという考え方に立っておりますし、公共の中で企業が存立していくためには、やはり企業公害防止に積極的でなければいけないということも企業者間に趣旨徹底するようにいたしております。  そういう趣旨が非常に徹底してきたこともございまして、各企業間に公害防止委員会あるいは部課制を設けている企業が相当数ここでふえてまいりましたことも事実で、この効果があがったものと考えております。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 効果があがったといまのうちに——それを断言するのは、公害がなくなったときにそれをはっきり断言すべきです。昨年の暮れのいわゆる公害国会といわれる国会に、十四の基本法を含めた法律案が出た。それ以後でも公害に対していろいろな訴えだとか、そういう被害だとか、こういうようなものは、多くなっても減っていないというのが国民の声として出されている。だけれども、これをやったからいいのだ、通産省がそういう考えであるならば、公害はいつの日にかなくなるのだ、こういわざるを得ない。どうも考え経営者トップに対しては通産省は甘いようです。私はその点ではもうはっきりさしておいてもらいたい。  そのこととあわせて、コンビナートなんかの地域ごとの業者間協定、「地域事業者間協力の推進」、それと業種ごとの「業界ぐるみの協力の推進」、この二つが2の「公害防止のための業者間協力の推進」の中にいわれているわけでありまして、その法制化の必要性を指摘しているはずなんですが、この法案の中にはそれの規定が盛られていない。これは一体どういうわけですか。これで尊重しているということになるのですか。
  39. 莊清

    莊政府委員 地域事業者の協力、あるいは業界ぐるみの協力につきましては、この答申に至るまでの間でいろいろ実情のヒアリング等も審議会で行なわれたわけでございますけれども、今後単独企業がやるのじゃなくて、地域ぐるみ、あるいは業界ぐるみでやることは、非常に課題が多いし、またそれが長期的に見て公害防止に役立つ面が多々あるということで先生方の一致した御意見であったわけでございますが、それでは何かこの点について、法律上強制するような規定をこの際設けるのかどうかという点についても検討は行なわれたのでございますけれども、何ぶん公害防止も、こういう面には必要性を感ぜられながらも、具体的な実績という点ではまだまだこれからの面が多いわけでございまして、この審議会の答申にも出ておりますように、まだ今後さらに引き続いてこの審議会としても検討を要する事項であるという御指摘があったわけでございます。  ただ、何もしておらないかと申しますと、決してそうじゃございませんで、たとえば業界ぐるみの協力という場合には全国一本でございますから、公害は各地区で起こってまいりますが、業界ぐるみで、ある問題に取り組むという場合には、中心になるものは当然新しい技術の開発を実施化していくという点でございます。たとえば鉄鋼関係の業界では本年度から焼結工場の亜硫酸ガスを除去するための新しい装置の開発ということで、これは通産省も行政化する方針になっておりますけれども、十数億の金を出して共同研究用の炉をつくってそこで開発をするというふうなことが現に着手されております。そういうことが業界ぐるみの協力のたとえば一つの例でございまして、政府としても資金面あるいは税制面でこういう助成をするということが大切だろうと思います。  なお、地域間では、まあ地域全体というわけにもなかなかまいりませんですが、共同排水処理施設というふうなものをつくってやらなければいけないというふうなことで、まだまだ問題はございますけれども、四日市であるとか、鹿島であるとか、ああいう新しいコンビナートでは、工場の操業と同時に、問題が残っておるにしてもそういうものを共同で最初からつくっていく。政府のほうでもそういうものに対して、今後資金的な助成も行なうというふうなことが一つ中心であろうと存じます。したがいまして、今回の法律では、罰則のついたような形で何らかの条文というところまでは至っておりませんが、今後そういうことが非常に大切だという認識は十分持っておりますので、業界を十分指導したいと考えております。
  40. 島本虎三

    ○島本委員 大切だということはそのとおりなんです。したがって、この中間報告でもこれを指摘しているわけです。そしてこれを法制化するようにということなんです。だけれども、この大切な部分を法制化されていないとすると、やはり現行法でどんなものがこの問題に対して規制するようになっているのか。それと同時に、今後どのような制度を必要と考えるのか。これもあわせてはっきりしておかないと、せっかく中間答申が、必要だとして出されながら、これをもうあいまいにそのままにしておくということは、報告を尊重するといいながらもこれを軽視していることになる。ある場合にはトップを含めてコンビナートやこういういわば地域ごとの事業者間の協力、こういうふうなものはこれから一そう必要になってくる。それと同時に、業種ごとの、業界ぐるみの協力は当然やらせなければいけない。それを、もう将来の問題としてお互いにやってもらうようにしたいなんていう甘い考えであったら、これはどうにもならない。もしそうだったならば、こういうようなことに対して現行法ではこれを規制するのにどんなものがあるのだ、そして今後どのような制度でこれをやろうとするのか、これをはっきりさしておかないと困ると思う。現行法もない、ただ天下り的に、ただ教示的に訓示的に、ただ置いておくというなら、あんまりこれはトップ優遇じゃありませんか。こういうようなことでこの法律を出すなんということになると、肝心なところが抜けている、こう指摘せざるを得ないわけです。それに対してどういうふうに考えますか。
  41. 莊清

    莊政府委員 ただいま御答弁いたしたつもりでございますが、少し不十分だったかと思いますので補足をさしていただきたいと思いますが、地域事業者間の協力、業界ぐるみの協力につきましては、たとえば九ページのところにも出ておりますように、これからの重要課題であって、法制的にそれではこの問題をどう裏づけていくか、どういう措置が必要であるかどうかというふうな問題については、今後さらに検討課題であるということにこの答申ではなっておるわけでございます。  したがいまして、今回提案しております法案の中身として具体的なものは出ておりませんですが、こういう方向で企業指導し、引っぱっていく、また助成もしていくというものとしては、たとえば中小企業が地域間で共同していくという場合には協同組合法もございますし、それに対する金融機関としては公害防止事業団あるいは中小企業関係事業団等もあるわけでございまして、結局そういう助成措置内容を特に今後は中小企業を重点に相当強化してまいりませんと、ある地域にある一つの産地の業界が共同して排水などを処理しなければ、ここではもう処理し切れないというふうな場合に、いかに共同しようとしても、助成措置が不十分であってはやっていけない。私ども通産省としては、そういう助成措置内容の充実ということが今後特に必要であろうと存じます。  業界ぐるみの全国一本の形のような協力となりますと、この答申の九ページから一〇ページにもございますが、やはり中心になるのは公害防止のための新しい技術の開発なり、業界内部での技術の情報の交換というふうなことが中心になろうと思いますが、通産省でも今年度から技術開発に対する補助金制度を相当量的にも質的にも充実強化したわけでございますが、こういう措置関係業界からも、特に中小企業の場合など一そう強く望まれておりますので、私どもとしてはこういう点について、特に今回提案いたしております法案の中に、関係条文としては事の性質上ちょっと出てまいらないわけでございますけれども予算措置なり、金融措置の中身のほうで今後画期的に努力をしなければならないと思っておりますし、またする所存でおるわけでございます。
  42. 島本虎三

    ○島本委員 それはまことに当然であって、そういうような努力なしには何ら成果は生まれぬのだ。しかし、いままでそれにまかせていたからこそ、その場当たりで公害がこういうふうにしていわば世界一のような汚名をちょうだいする結果に相なるのです。したがって、それはきちっとしておかなければだめなのだ。ましてや鹿島やそのほか新しい工業地帯、こういうようなところでは、初めが大事ですから、道路にしても百メートル道路を何にもないところにやったらすぐできるけれども、うちが密集してしまえば、これはできないのですね。そういう場合には、初めから計画を立てて指導する以外にはないのだ。どうもそれに対しては場当たり的な考え方——通産省公害防止のためにといいながら業者擁護に堕している傾向がある。これは仏をつくっておきながら全然魂が入っておらぬ。3の「国および地方公共団体による指導体制整備」、これは、この中にはっきりいわれておるじゃありませんか。「事業者特に中小企業に対する指導体制の充実である。第2は、とくに中小企業公害防止担当者の養成訓練体制の強化充実である。このため、国や地方公共団体による公害防止に関する研修会の開催、養成機関の設置など中小企業公害防止担当者の養成に対する指導助成の方策について早急に検討を進める必要がある。また、さらに、事業者公害防止体制整備地域ぐるみあるいは業界ぐるみの協力関係推進をより容易にするために、国や地方公共団体による指導および法制の整備、金融、税制上の助成等も必要であろう。」こういうふうになっている。これが第十二条にただ——「国や地方公共団体による指導および法制の整備、金融、税制上の助成等も必要であろう。」こういうような指摘だけなんですけれども、十二条のこの規定の程度でいま言った3の指摘、これがこれで十分なんですか。どうも、これで尊重しているといいながらも、これだけのものがたった二行になっている。それも「国及び地方公共団体は、公害防止管理者又は公害防止主任管理者として必要な知識及び技能を習得させるため必要な指導その他の措置を講ずるよう努めるものとする。」つとめなければならない。「努めるものとする。」程度、おそらくこれじゃ、答申を尊重したといいながらも、これはどうもあいまいで大事なものを抜いて、政治資金規正法など小骨一本抜かないなんて言っていながら、いまのような状態にしておるのと、いわゆるこの法律案を出した結果は似てしまうのじゃないか、こういうような危惧が私どもにはあるわけなんです。せっかくりっぱな答申案、中間報告といえども答申を得ている。それに対して出てきたものはほんの九牛の一毛である。これじゃほんとうに私どもとしては了解に苦しむのですけれども、十二条の規定程度では、これは不十分じゃないかと思います。しかし、今後どのように法制を整備して助成制度の充実をはかっていく考えなのか。これはやはり具体的にしておかないと、法律ができたらすぐ実行しないとだめなのですから、ただ単に訓示規定的なものを置いておいたって、現行と変わりないでしょう。この程度は基本法だって言っているでしょう。基本法をただ受け売りするための特定工場における公害防止組織整備に関する法律案だとすると、これはちょっと国民を欺瞞することになりませんか。したがって、これは十二条の規定程度では不十分である。したがって、今後どのような法制を整備して助成制度の充実をはかっていくのか。これは、ここが大事だということは、みんな覚えているでしょう。どうも、覚えていながらもこの程度しか書けないというところに、皆さんの熱意の存在しない理由がわかるような気がするのです。これでは困るのですが、御高見を拝聴しておきたいと思います。
  43. 森口八郎

    ○森口政府委員 先生の御指摘のとおり、地域ぐるみ事業者間の協力の推進については、非常に有用なことだと考えております。審議会におきましても、いろいろその点について議論があったわけでございますけれども地域ぐるみの協力の推進についてどういうような方向に持っていったらいいかどうかというようなことについては、今後さらに検討をする。しかし、今後さらに検討するのだけれども、何か内容を与えて、必要があれば、末尾のところに書いてございますように、必要な法制の整備、あるいは税制上の助成というようなことも考えるべきであるというような結論とされたわけでございます。先生おっしゃいますように、法律をつくることよりも、重要なのはこれを実行していく精神の問題でございまして、仏をつくって魂を入れなければ何にもならないわけでございます。私どもといたしましても、ここに書いてございますような審議会の答申を受けまして、いろいろ公害防止に関する研修会の開催あるいは養成機関の設置あるいは地域ぐるみ、団体をあげての公害防止のための内容について、政府として助成をするというような点については、最大限の努力を傾けて実現をいたしたいというように考えておるわけでございます。
  44. 島本虎三

    ○島本委員 この法案に盛られているこれをずっと全部見て、総体的にこれはどうも公害防止組織整備、この事務について少し抜けているところが多いような気がする。本法案で公害防止責任者としての選任義務づけているのは、公害防止統括者、すなわち工場長クラスが最高になる、そうでしょう。そうだとすると、その上の社長とか専務、こういうようなものの責任については、何ら規定がないままに放置されてある。公害防止統括者解任命令規定があるけれども経営者トップ責任を問う規定がない。これだったら、両罰制がもう公害罪処罰法の中にできている、こういうふうな中で、やはり特定工場における公害防止組織整備に関する法律案でようやくこの公害防止統括者をつくっておきながら、いわゆる法人をも今回覚せいさせるのだ、こういうようなことをはっきり言明しておきながら、トップ責任を問う規定がないことは、これは不公平じゃないですか。どういうような立場でこういうような立法をされたのか。私は不公平だと思う。公平だという理由をはっきりさしてもらいたい。
  45. 莊清

    莊政府委員 先生御指摘のとおり、公害防止のためには企業社長以下のトップ、これの決定にまつところが非常に大きいことは申すまでもないところでございますが、この法律事業者に対する新しい公法上の義務として、工場長以下の段階で規定を設けたというのは、結局実際に各業種を通じまして、公害が具体的に発生する場所は、それぞれの工場で、それぞれの生産の実態に応じまして公害が出てくる。この第一線の工場施設管理し、また検査もやっていくという実際上の行為が日々十分に行なわれませんと、これはどうにもならないわけでございますので、そこの段階で責任者があいまいにならないように、工場長トップにした専門技術家の組織というものを義務づけることにしたのが立法の趣旨でございます。  では、本社社長は何も責任がないのかということでございますけれども、これは全然そうじゃございませんで、公害に関する各種の規制法がそれぞれ整備され、罰則も強化され、公害罪に関する法律も成立しておるわけでございますが、それぞれの法律において、経営責任者というものは、もしもそれぞれの取締法違反の事実が発生いたしました場合には、厳正な法の適用を受けてくるわけでございます。決して工場長だけが、あるいは技術管理者だけが責任を問われて、経営トップ層は公害を出しても責任が法的に問われないということは一切ないわけでございます。  なお、先ほどもちょっとお答えしたのでございますけれども、たとえば設備投資計画などを本社でつくる場合に、公害の分も含めて本社の権限として、もちろん工場長の意見も聞くと思いますが、きめていく場合がございますが、これはいかなる企業の場合でも当然取締役の制度というものがございまして、そこで設備関係あるいは経理関係というふうな分担も明確に定められ、対外的にも明らかにされているということで、はっきりそこで責任も明確になっているわけでございまして、問題が大きい場合には、こういう関係取締役全員の共同責任と申しますか、協議の形で社の最高方針として定められているというのが実態でございます。したがいまして、何か特別に新規にその人だけが責任を負う、その人以外は責任を負わないのだというふうな形での取締役の制度というふうなものを法律ではしいてつくらずにおる、こういうのがわれわれ立法に当たりました際の考え方でございます。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 しかし、この法律案を全部見て、公害防止責任者、この人事、こういうようなものについては一体どういうように考えられるのか、ちょっと伺ってみたいと思う。いままでは、重工業を中心にして、いわゆるこの十年間の高度経済成長政策、これはやはり生産第一主義、こういうようなことでずっと指導してきたでしょう。これを今度一挙に切りかえることはなかなか困難じゃないですか。世論はいかに高まってきても、その中でいかに意識が転換してきても——それに伴ってだんだん変わっていく。そうなりつつある。しかし、やはり長い間の生産第一主義、これを切りかえるということはなかなか至難なことじゃないかと思う。したがって、公害防止部門への人事配置を、左遷するという見方を経営者からも従業員からも完全に払拭してしまうことがやはり必要なんです。いまはそういう時代なんですから……。それなのに、何か公害部門にやられるのは左遷じゃないか、こういうようなことを考えるのは時代おくれであるということで、頭の切りかえというようなものを短期間に実現させるためには強力な指導を必要とすると思う。いまの場合では、これを急にやってもまだまだの感があると思う。強力な指導のしかた、こういうようなことは十分考えておりますかどうか。法律の実施とともに、これをやらないと、この点ではまだまだちぐはぐなものが生まれてくる。ちぐはぐなものが生まれてきたならば法の成果はあがらないということです。この点はどう考えますか。これは小宮山政務次官
  47. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 先生のおっしゃるとおり、やはり公害をどうしても出さない、防止していくのだということが今後とも経営者の中に必要でございます。そういう意味においても、各団体を通して積極的に指導またPRをして、公共の中で企業が生きていくためには、公害を出さないのだという趣旨を徹底していきたいと考えております。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 徹底していく前に、強力に、すべてをあげてこういうようなことをやらないと、これはいまの事態に対する完全な対処にならない、こういうようなことです。ですから、その点はどういうように考えておるのか、聞きたかったわけです。  それと同時に、業務と、どういうようなことになりますか。公害防止責任者選任、こういうようなものに対しては、生産業務と公害防止業務との兼任の形で責任者選任するということは、法律上これは差しつかえないのだ、こういうようなことになっているようであります。そうすると、この場合にどうしても生産性向上のほうに意識が向けられて、公害本来の防止のほうに対しては、発見されなければいいというような程度に堕するおそれがないか、弱められるおそれがないか。この点は、少し経営者の自覚を促すために、政府としても強力な指導を今後行なわなければならないわけです。このままの状態になった場合には、やはりいまのような点は危惧されます。この点は、どのようにお考えになりますか。これは莊さん。
  49. 莊清

    莊政府委員 この法律をつくります場合に、各社の実態というものを調べたわけでございますが、法律だけつくりましても、企業のほうで、先生しばしば御指摘のように、ほんとうにやる気になっていない場合には、法と現実とのギャップといいますか、形だけつくると効果がないということが当然問題になるわけでございますが、企業のほうでも、最近は本社でもそうでございますが、工場でも、公害に非常に縁の深い主として大企業でございますけれども、それぞれ実際上責任者を置き、工場にも担当の課を置くということがほとんど行なわれつつあるわけでございます。それで、生産ラインの人が兼ねておる場合もございますけれども、現在はまだ数は少のうございますが、公害防止をもっぱら行なう、ほかの仕事は行なわずに、公害のチェックを専門にするような職員を徐々に置き始めるような傾向が、公害型の大企業では見られてきたということは、先生御指摘のように非常に正しい方向だと思っておりますが、法律では、管理者というのは、ほかの仕事を一切してはいけないというふうにはきめておりませんけれども、私ども承知しておる限りでは、大企業の場合などでは、それだけ人間の余裕もあるからだと思いますけれども公害のチェックを専門に行なう部局の中から、主として管理者というものを出す、必要な場合には、さらに生産ラインの場の人との兼務の形でもふやすというふうに、非常に正しい受けとめ方で考えておられるというふうに私どもは承知しておるわけでございます。これからは企業の中でも、質のいい人を専門家として育てていこうということを企業自身も考え始めてきたということは非常に大切なことだと思い、通産省としてもそういう方向で企業指導したいと思っております。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 反面、公害産業でも、一応の選任さえすれば足りるものだ、こういうようなことにならないように、実効をあげるようにすべきです。もちろん法律上の選任義務は最低のものですから、業種間の特殊性だとか、工場規模、こういうふうなものに応じて、法律に定める以上にきびしく、以上に具体的な、こういうふうな防止対策を、それぞれの特殊性があるのですから、その特殊性の上にこれを生かせるように、これはやはり工場規模に応じてやるべきだ、こういうふうに思うわけです。最近どうも通産省は、ことばはいいのですけれども、やることと結果が逆になっている。いま言っていることばなら、われわれは全部賛成だ。御存じのように、きれいな水だとか、きれいな空であるとか、あでやかな緑だとか、こういうふうなのは、自然が生存するために人間に与えてくれた、何人も侵すことのできない権利なんです。これを環境権というのだ。ここに総理府の方もいらっしゃいますけれども、その環境権というふうなものは、いま認められているのにかかわらず、一たん水を使う以上、水をよごして出すのも、これも権利であるという、こういうふうな大昭和製紙の考え方が新聞に堂々と出される、こういうふうなのは、言うこととやることと別じゃないですか。指導の根源はどうなのか。ある日こつ然として社長がああいうふうなことを言うのか。そうじゃないはずだ。県を通じ、通産省を通じてそういうふうな指導がなされておるからそれを言うのだ。水を使うことをちゃんと許可されていたならば、当然それはよごす権利があるのだ、こういうふうな考え方は、環境権に逆行するし、いま言ったような、いいことばのどれにも当てはまらない、いわば非人道的な考え方経営者トップがそういうふうな考えをもってやる以上は、やはりこういうふうな形式的な法律だったらどうにもならない、こういうふうなことになるのです。これは大臣がいれば大臣に聞くのですが、水を使う以上、よごすのはそれを使用する工場の特権ですか。
  51. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 これは法律以前の問題でございますから、やはり自然からとったものは自然に返す、きれいに返すというのがあたりまえのことであって、そういうことは、やはり公害防止マインドのたいへん欠如しておるということで、非常に残念でございます。今後とも、通産省といたしましては、強力に指導していきたいと思います。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 指導をやりながら、そういうようなことが現実に行なわれているということは残念です。ヘドロ処理の問題に困難な状態がきた場合に、そういうようなことを言って逃げようとする。これはいけません。それと同時に、皆さんのほうの指導でないとすればこれはうれしいですけれども、そういうような考え方をもって指導をしてはいけない。やるべきではない。新聞のどこかにでも出た場合に、その真意はどうなんだということを十分に確かめて、それに善処すべきだと思います。大昭和製紙の社長がそういうような発言をしたのに対して、通産省はどういう処置をとりましたか。
  53. 莊清

    莊政府委員 大昭和社長さんがどういう発言をしたか、私ちょっと具体的に存じませんが、政務次官からもお答えいたしましたように、環境破壊をしても生産のためにはそれはやむを得ないのだ、経済の繁栄のためには環境が犠牲になるよりしかたがないのだというふうな考え方を、通産省自身現在全然しておりませんし、また、そういうことを現在考えておる財界の指導者というものも私は一人もおらないというふうに承知をしております。今後とも業界全体、そういう点認識を一本にしてよく努力するように、通産省全体として努力をいたしたいと思います。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 公害関係の方法には、政令省令事項が、先ほど林君の質疑の中で出てちょっと感じたのですが、多過ぎませんか。いつか、公害関係法律には政令省令事項が多過ぎる、こういうような批判がなされたことがございます。それに対しても、やはり今後当然改めるべきではないか、こう思っておりましたが、本法案も、全部で十八条の条項の中に、政令事項が十九、省令事項が十二、合計三十一の政省令事項がある。これはどういう理由でこう政令省令をよけいにしなければならないのですか。これはやはり器だけをつくって認めて、つくったならば、あとはその中身に当たるその政令省令事項は、あるいは閣議で、あるいは各省で、それぞれ都合のいいようにきめますよということじゃありませんか、これでは。したがって、こういうようなことをそのまま認めたら、運用の面で法律と逆なほうの運用をされないまでも、骨抜きにされるおそれがあるのです。当然同じような傾向でこの法律も出されてきた。総理府のほうではこういうような指導はしてなかったのですか。十八条の中に政令事項十九、省令事項、十二、合計三十一もの政省令事項がある。こうしなければならない理由、これをはっきりさせておいてもらいたい。  政令省令事項の数だけじゃなしに、これはきわめて重要な部分がゆだねられておるのです。条文を見ただけでは制度の内容、どちらを向いてこれは運用されるのか、ちょっとわからない。一般に国民は、事業者でも、工場で働いている人でも、工場にどのような公害防止責任者があるのかさえも、この法律を見ただけではちょっとわかりかねる。このような法律の場合には、政省令の骨子なり考え方なりを、提案と同時に示してくるのが、国会に対する行政府の当然のあり方だ。相変わらずいかに指摘されても、入れものだけはつくらして、内容はさっぱり示さない。これは官僚中心の悪い傾向ですよ。何回いわれても、こういうような傾向の法律案を出してきたというこの理由。総理府ではこれに対して何ら、同じ公害を見ながら、公害の窓口だといいながら、出した法律案がやはりいままでと同じになっていることに対して、アドバイスをしなかったのか、これでいいのか。あわせて両省から伺っておきたい。
  55. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 いまの政令省令の問題でございますが、確かに前の臨時国会に出しました場合の関係法律には、政令事項で七十一、省令事項で九十二ほどあったわけでございます。この政令あるいは省令につきまして、一部はすでにできておりますが、まだ大体五月上旬ごろをめどに作成中のものもたくさんあるわけでございます。これは実はいろいろ理由があるわけでございまして、特に一つは、主たる要件は当然法律の中にあるわけでございますが、さらにその適用関係を明確にしていく、そういうために政令事項あるいは省令事項におろしてあるものが相当ございます。  と同時に、たとえば規制の対象になる物質だとか、あるいは発出施設の範囲だとか、こういうものにつきましては、そのつど、有害物質が出てきました場合に法律改正をするということは、非常に時期を失するということもございまして、国会で十分御審議いただきました上で政省令に譲るという場合も適当な場合が多々あるわけでございまして、そういうことで政省令事項が相当ふえてきたわけでございます。  ただ、いま先生御指摘になりましたように、政省令事項とする場合に、その内容法律を御審議いただきます場合に十分御答弁できる、また御審議いただける、こういう前提が必要だと思うわけでございまして、そういう点、今回の法律の準備にあたりましては、通産省とも十分相談いたしまして準備もいたしておるわけでございますので、ひとつこの実質の御審議の中で、十分御指摘なりいただきたいと思っておるわけでございます。
  56. 莊清

    莊政府委員 いま対策本部のほうから答弁があったとおりでございますが、たとえば政令も非常に多くて、第二条だけでも六つか七つ政令政令という字がいきなりあるわけでございますけれども、これも決して運用をルーズにするとか、そういう趣旨から発したものでは絶対にございませんで、今後特定施設の数等もどんどんふえてまいる予定でございますし、それから中小企業につきましては、いきなりはこの法の適用はしにくいけれども、所定の技術者の養成の状況等とにらみ合わせまして、なるべく早い将来において本法対象に繰り入れていく、こういうためには、どうしても政令というところにおまかせいただきませんと、実際上前向きにやろうと思っても、弾力的になかなかやりにくいというふうな趣旨から発したものでございますし、省令法律に一々こまかくは書き切れない、今後の進歩によりましてどんどん追加もしたいというような、技術的な事項を省令に譲るという考え方に純粋に立ったものでございます。  内容につきましては、全部はいま考えは必ずしもまとまってはおりませんが、各省とも一応基本的な考え方についてはそれぞれいままでの段階で検討をしておるという状況にございます。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 それで、いま私の言うのは、これは委員長を通じて、今後の審議の過程と、法律案を提案する場合の一つのルールにもなると思いますので、同様にお聞き願いたいのですが、やはりこういうようにして政令省令にゆだねられる事項の多い法律案、これは国民からも相当の関心も持たれております。この点に対して指弾もされているわけです。簡単にいえばわかりやすくしてくれ、そういうことです。ところがみんな政令省令に逃げられる。審議する場合にやむを得ないというような答弁ですけれども、やむを得ないならば、法律案の審議の場合に、政省令の骨子なり、その考え方なり、この中に盛られる要件なり、こういうようなものに対して、法律案と同時にこれは提案すべきじゃないのかというのです。これをやらないで、聞かれたら答えます、聞かれたら答えます、こういうようなことだったら、もし聞かれなかったらわからないままに過ごしてしまうという結果になるので、法律を国民の前に十分審議したということにはならない場合もあり得るということです。したがって、今後の審議の場合にも十分これを参考にして、政令省令こういうものの骨子なり考え方なりを提案と同時に示すようにすべきではないかと私は思うのです。これはもう当然そういうようにすべきだと思うのですが、まだ依然としてされてない。これは私困るのですが、この点に対して、きょうは大臣いないけれども、あなたは大臣にかわる人なんですから、ここで胸を張って、はっきりこの点について答弁してもらいたい。
  58. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 今度の法律政令が十八、省令が十二、たいへん多い。これは先ほど御説明のあったとおりで、今後ともそういう多い場合については前もって出すことにいたします。
  59. 小林信一

    小林委員長 ちょっと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  60. 小林信一

    小林委員長 速記を始めてください。  午後一時二十分再開することとし、暫時休憩いたします。   午後零時二十六分休憩      ————◇—————   午後一時二十九分開議
  61. 小林信一

    小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出悪臭防止法案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。浜田幸一君。
  62. 浜田幸一

    ○浜田委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、総理に質問させていただきたいと思います。  今回提案されました悪臭防止法を含めて、この防止法案が通過いたしますれば、実は、十五法案が公害を除くために作成されたわけでございますが、法律措置そのものについては、私は、非常に成功をされたと思いますが、問題は、予算的な措置がついて回りませんと、これは実際に国民を公害から守るという形にはならないと考えます。そこで今回の悪臭防止法案は、特に地方公共団体に対する権限委譲がうたわれているのが特徴でございますが、その場合、地方公共団体に対しまして現在出資されておりまする額を検討いたしますると、人件費等においても百億円の支出であります。昨年の三十億円に比べますと三・三倍の伸び率でございますが、これらの面につきまして私は総理にお伺いしたいと思いますが、もし公害追放のために予算の必要が起こった場合、予備費の充当等についてどのようにお考えになっておるか、お伺いをさしていただきたいと思います。特に予備費支出については、他の方々の答弁ではできないようでございますので、総理から直接お伺いをいたしたいと思います。
  63. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いま浜田君がいわれるように、法律ができただけじゃだめだ。もちろん十分運用のできるそういう予算措置ができているかどうか、これはもう仰せのとおりであります。しかし、国の支出で全部対策を立てるのか、あるいは地方費、あるいはまた事業者負担とか、それぞれの負担区分があるように実は思っております。したがって、そういうものを見て、はたして対策十分なものができないのか、これを考えるべきだ、かように思います。ただ、予算措置がないから、その穴埋めに、しかたない、予備費を使え、そう簡単にはいかない、かように思います。しかし、いま御指摘になりますように、ねらいは実施ですから、行政の実施ということになれば、当然予算が必要だ、この負担はどこで負担するか。これはまあそれぞれの性質によりまして非常に違ってくると思いますが、そういうことで事を欠かないように一応政府はもちろん考えていかなければならぬ、かように思っております。したがって、いま御指摘になりますような悪臭防止法、これに対して直ちに予備費を支出しろ、かように言われましてもちょっと飛躍があり過ぎるんじゃないか。実際問題としてどういう対策、それに対する措置はどうなっているのか。この辺から考えていかないと十分な解決策でない、かように私は思っております。
  64. 浜田幸一

    ○浜田委員 重ねて私は総理にお伺いをいたしますが、たとえば本年の予算関係を見ますと、約一千億円の公害支出費が出されておりますけれども、やがて六月、七月、八月がやってまいりますと、当然また光化学スモッグの時代がまいります。そういう場合、私はこれは特に総理にお答えをいただきたいのですけれども、今回の予算決定にあたりまして、せめて子供たちの目やのど、健康管理予算措置だけは、私どもの要求した分だけお出しをいただきたいのですが、その分が金額的には三千五百万円程度で実は医療対策費が削られているわけなんですが、これは一つの例にすぎませんけれども、そういう問題をも含めて、私はやはりもしそういう現実にぶつかりました場合には、予備費充当とか、何か具体的な財政支出を特にお伺いいたしませんと、世界に冠たる法律をつくられた佐藤総理の姿勢に問題が起こるような気がいたしますので、再度ひとつ予備費支出の条件緩和というものだけはもう少し総理の姿勢として考える、そういう御答弁をいただきたい、こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  65. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまの予備費支出、これを考えるという、そういう答弁をすることはたいへん簡単なことですが、しかし、考えるだけではいかない、これはもっと掘り下げて、その性格を十分認識しないと、予備費を使う以上、これは私の金を使うわけじゃないんで、国民の負担ですから、これは適正であるかないかということは、国民負担がたいへんな影響を受けることですから、そう簡単にはいかない、かように思いますが、しかし、どうしても必要やむを得ない場合に予算を計上してない、こういうときには当然予備費を使うべきである、かように思います。  そこで、いま言われました公害による健康保持、そういう問題は、これは最も大事なことだ、かように思います。思いますからこそ特別な立法をしよう、こういうことであります。しかし、本来からいうと、やはり事業者負担というものが本来の筋だろうと思います。ただ、健康に関するような問題だから、この結論が出ないうちだれも負担してくれない、そういうことで治療の時期を失する、こういうことがあってはならない、かように思いますから、ただいま御審議をいただいているんだろう、かように思います。そういう間においてこれは国がめんどうを見よう、こういう非常に限られた範囲の対策費、こういうものは計上されておると思います。しかし、その中身についてはどうも不十分である、地域的にもっと広げろ、あるいはもっと費用を十分に見ろとか、あるいはまた病気も限らないでもっと広範にしろ、いろいろ御意見はあろうと思います。そういう事柄についての御審議を十分いただいて、厚生大臣等と十分御相談願いたい、かように思います。しかし、政府は予備費を計上しているから、かような考え方で何でもそれに飛びつく、こういうことでは国民はなかなか納得しない。国民の負担ですから……。したがって、政府姿勢としては、そういうことについては十分国民の納得のいくような処置で予備費は使用さるべきだ、かように私は思います。
  66. 浜田幸一

    ○浜田委員 御丁寧に御答弁をいただきましてありがとうございました。私はここで予算関係については、総理にお願いをいたしておきますが、やはり世界に冠たる法案にふさわしい予算計上を私は特に御配慮いただくようにお願いいたしておきたいと思います。私も自由民主党の党員でございますので、総理の人気が落ちることは国民のマイナスだと考えておりますので、ひとつその点は特に御配慮を賜わりたいと思います。  二番目の問題といたしましては、地方委譲の問題に触れさせていただきますが、この問題については特に地方公共団体への権限委譲をさせておるようでありますが、たとえば国の財源を支出いたします場合に、きき役モニターですね。そういう人事配置の一面と、人をふやす場合に必要な予算関係の問題がございます。先ほど私は、百億円がそういうものについて交付税で流されているということを申し上げましたが、もし人が足りない場合予備費は使えないとすると、きき役モニターで悪臭防止を防ぐわけでありますが、そういう人員がやはり足りないような場合、こういう場合には予算措置は一体どうお考えなのでしょうか。この点お伺いをしておきたいと思います。
  67. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 悪臭、これはだれでもわかる。特別な人でなくても悪臭、これは性格上とにかくわかる問題だと私は思います。しかし、悪臭の程度、取り締まる程度、それがどのくらいのものなのか、どういうような計算になるのか、そういうことがやはり出てこないと問題なんじゃないかと思います。とにかくくさいもの、くさいけれども、それがからだにどういう影響があるか。あるいは非常な不愉快さだとか、そういうような環境をこわす、そういう問題があると思います。いわゆるモニターばかりの問題でもないんじゃないか。私は比較的つかみやすい公害というか、環境破壊、こういうものじゃないかと思います。しかし、それにいたしましても専門的な知識が必要だ、こういうことであればそれは十分対策を立てるべきだ、かように思います。その点であるいは私の答弁が不十分なら、厚生大臣から補足させたいと思います。
  68. 浜田幸一

    ○浜田委員 これは先ほどの予算関係の問題と関係がありますが、時間が十五分でございまして、あと五分しかありませんから、これは後ほど厚生大臣にお伺いすることにいたしまして、次に移らせていただきます。  たとえば先ほど総理は御答弁の中で、企業が負担すべきものは企業に負担させるべきだ、それから地方公共団体の負担すべきものはさせるべきだという御意見がありましたけれども、全くそのとおりだと思いますが、たとえばその場合、中小企業零細企業の場合、かりにそういう形で結論づけられました場合でも、現行法あるいは財政援助法の中で、零細企業中小企業がこのままでいくとつぶれてしまうということになりかねない、そういう場合の中小企業零細企業に対する援助法の発動について総理はどのようにお考えになるか、この点が第一点。  もう一つは農林関係でありますが、たとえばこれは総理御存じだと思いますが、養鶏場、養豚場、これは大体町中に農民がつくろうとしてつくったものではないのですけれども、団地開発によってだんだんそういうくさいものがあるところに土地を求めて人が集まってきた場合に、これは養鶏場はやっていけない。そういう場合には、片方では農林の転作振興というものを、私ども政府として、自民党としても出しているのに、逆にそういうところに人が集まってきて、それが悪臭だということで追い払われる、そういう場合には、やはりこの法律の精神の中だけでは悪臭そのものを排除することができないのではないかと思うわけです。参考例として、私は総理にお聞き取りをいただきたいと思うのですが、全国の養鶏、養豚場の数は養鶏で百七十三万六千戸です。養豚が四十四万四千戸あります。こういう状態において中小零細企業、あるいは農林の養豚、養鶏、これは零細企業の中に入るのですけれども、たとえば悪臭法の適用を受けまして、そして除かれなければならない。どけなければならない。そういう場合には、一体政治の姿勢というものはどういう形で取り組むべきであるのか、この点をひとつ、法の精神をいかに生かすかということで、私は総理にお伺いをしたいと思います。  以上、二点お伺いしたいと思います。
  69. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 公害発生源者が中小企業であった、その負担を追及する、こういうことだと中小企業は困るだろう、まいるだろう、こういう御指摘はまさしく中小企業の場合には起こりやすい問題だろうと思います。しかし、それかといってこの責任を他で負担するわけにもいかない、しかし、いま政府考えておるのは、そういう場合は融資その他、技術的な指導その他で協力はできないか、こういうようなことがまず第一段として考えられるように思っております。したがって、特別な融資、そういうものを考えてやる、まあ一応そういうことが基本になる、かように私考えます。  それから第二の問題、養鶏、養豚についてのお話でありますが、この問題はまさしくいまの中小企業である、こういう場合の問題が一つと、同時にまた、最初はその環境ではあまり問題にならなかったが、近所に家ができた、そこでやかましくなった。これはしかし、ひとり養鶏、養豚に限らず、その他の公害の場合にもしばしばそういうことを見受けるのです。たとえば発電所を設けた。そのときにはその付近はあまり家はなかった。しかし、だんだん工場ができる。隣に発電所ができるとそばに工場ができる、それに付随していろいろな家ができる、こういうようなことで、まさしくいまの公害の現状というか、環境破壊の一つの問題だと思います。だが、いまの養鶏、養豚の場合は、比較的移転が容易ではないだろうか、かように思います。これは中小企業であるために比較的いいのではないか。そういう場合に、養鶏、養豚業者の負担においてやるとかいうことでなしに、何か協力方法はないか、かように私は考えます。われわれが旅行してみまして、どうも養鶏、養豚業はだんだん目につくところから遠のいている。こういうことはしばしば見受ける現象であります。これはあまり好まれない。そういう場合にできるだけ業者自身の負担を軽くするように、そういう措置政府はとる。そういう意味でただいま努力しているのは各種合理化資金等の融資だろう、そういうものがあるいはもっと楽に入手できる、金額的に、あるいは金利的に負担が軽くなる、こういうようなことを具体的問題として考うべきだと思います。政府はそういう意味で取り組むべきだ。そうしてそのことは、いま申し上げます環境破壊、公害という場合には、これは中小企業であるばかりでなく、大企業の場合においても同様なことが、できたときはほとんど家がなかったけれども、そこが後に社会的な非常な繁栄を来たしたその結果問題になっている、かように私は思っております。
  70. 浜田幸一

    ○浜田委員 これは最後質問になりますけれども、いま御答弁を承っておりますると、やはり基本的な問題として、この辺でそろそろ公害立法の最終的な問題として、国の責務と企業責任と国民の責務、これを総合して考えてみますと、無過失賠償責任の問題が明確化されてこなければならない時期に来ていると思います。私はこの前の総理に対する質問においては、その問題については、これから総理が政府機関に命じて検討をして、そうして国民大衆の意気を増大することのでき得る段階においてこの問題の対処をしたいという御答弁をいただいてあるわけであります。私はいまこそ総理に大勇をふるっていただかなければならない時期だと考えます。  そこで、最後の問題としてお伺いいたしますが、無過失賠償責任制度の確立の問題について総理はいかようにお考えでありますか、所信を承らしていただいて私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  71. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 この問題は法律的にいろいろな議論があるだろうと思います。いままでのたてまえがたてまえでありますだけに、非常な変更を来たすという、そういうことはなかなか困難なことだろうと思います。しかし、現状等をもってすれば、何らかの対策を立てないと時期を失する、こういうような問題があるように思います。したがって、政府も学者の意見ももちろん伺いますが、同時に法務者が中心になりまして、この問題と取り組んでおるはずであります。また、各省とも十分検討を続けており、成案を得ました上で提案する、こういう前向きの姿勢でただいま取り組んでおる。もっと早い時期に結論が出るのじゃないかと思いましたけれども、事柄の性質上、なかなか簡単にはまいらないでおくれておりまして申しわけないと思っております。
  72. 浜田幸一

    ○浜田委員 二点だけ要望いたして質問を終わらしていただきます。  まず第一は、先ほど御答弁いただきました中小企業零細企業に対する財政的な援助をよろしくお願いいたします。特に農林関係の移転問題に対する配慮は、総理にひとつ特別な御配慮を賜わりたいと思います。  無過失の問題については、ただいまの御答弁どおり、よろしくひとつ早期に実現できるように御配慮願いたいと思います。  ありがとうございました。
  73. 小林信一

    小林委員長 島本虎三君。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 いまの質問に引き続いてお伺いしますが、悪臭防止法が出てようやく十五のいわゆる公害立法がそろった。しかし、やはり法律ができても公害がなくなる。こういうようなことにまだなっていない状態であって、これからなおその実行段階に重要性をいよいよ発揮しなければならない状態になるわけであります。したがって、環境保全の問題もあわせて今度発生源対策が必要である。それと原因責任の立場から、あくまで無過失賠償責任、これは早く制度化する必要がある。これは前から要望してありますし、三月中には実施の段階までこぎつけたいと、山中公害担当大臣も去年まで議事録の中にはっきり載せてあるわけです。まだできておりませんが、早い時期にと、こういうようなことはわかりました。しかし、早い時期にといっても、三月が四月になり、四月もいまや終わりになって、またどれほどずれるかわからないという懸念もあるわけです。まして、この公害に対する無過失賠償責任制度は、挙証責任の転換の問題とあわせて、いまや重大な問題の一つであって、地方議会議員の選挙というものをあわせて見ましても、すべてがこの問題を口にしている、こういうようなことであります。したがって、早い時期にということでありますが、これは今月中に提案の見通しを得るということですが、それとも今国会の中でこれがはっきり出せるということですか、この点を念のためにはっきり伺っておきたい。こういうふうに存じます。
  75. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 無過失損害賠償責任、これは先ほど浜田君にお答えしたようになかなかむずかしい問題であります。とにかく私どもが習った法律の議論から申せば、非常に広範にわたる無過失損害賠償責任、そこまではなかなかいかないのじゃないか、私はかように思います。しかし、特殊なものについて、限定的でもけっこうだが、そういう方向に踏み切らざるを得ないのではないか、かように思っております。しかし、ただいませっかく検討しておる最中でございますので、その結論をまだ私どものほうは得ておりません。したがって、いまのようにたたみかけて、三月と言ったのに四月、もう四月もあとわずかだ、今月出すのか、あるいは五月になるのか、そこらをはっきりしろと言われるのは、ちょっと私お答えしかねますが、ただいま申しますように、問題が問題であるだけに、これは十分考えなければならない、また急がなければならない。そのことはよくわかっておりますけれども、ただいまこの席でいついつと、かような確言はできない、そういう状態であることを御了承願いたいと思います。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 これは、三月の段階から、政府が代表してはっきりやりますということの言明が議事録に残っておりますから、急いで出すようにして、国民の期待するように、政府責任を明らかにしておくべきだ、こういうふうに存じ、これは強く要望しておきます。  それとあわせまして、最近の公害に対するいろいろな裁判上の問題、これについて若干承りたいと思います。  これは四月二十一日、東京地方裁判所でいわゆる公害の毒物劇物取締法違反で起訴されたものに対する結論が出ました。「公害防止費用がかかりすぎるといっても、最低限の法規則は守るべきだ」、有罪判決であります。最近はわりあいに裁判になるとこういう望ましい状態が数カ所に見られるわけであります。  そういうふうにして見ますと、もうすでにその辺までいっている段階において、これに対する政府姿勢と申しますか、こういうようなものに対しては、もう一歩踏み出してもいいんではないかと思われる点があります。それはもちろん毒物劇物の施設をつくれと勧告しても無視したとか、毒物劇物の取り扱い者の届け出を怠ったとか、操業認可の申請もしていないでやったとか、いろいろ具体的な事例がありますから、すぐやった。しかし、同じ具体的な事例の中でも、田子の浦のヘドロの問題で、港則法違反、港湾法違反、刑法百二十五条違反と、いろいろ告発されましたけれども、今後静岡地検の段階で不起訴、こういうことになっておりまして、それは違法性がないということであります。違法性がないといっても、もうすでに長い間ああいうような状態になっている。それは一つの行政、法の欠陥であるということは皆さんが十分認めている。これは社会通念と違って住民の信頼にこたえたものではないじゃないか。地検の態度に意気込みのない歪曲性が見られるのじゃないか。司法権力の庶民軽視といいますか、もしこういう問題があるとしたらとんでもないことだ。  ことに、石原産業の問題等についても、国会で大きく問題になりまして、これも不起訴または起訴猶予であります。そして新聞では、「当時、すでに四円市ぜんそくで死者が出ており、公害訴訟も四十二年に提訴されていた、」また「虚偽公文書作成、同行使の事実はどうなったのか、」また「官庁の姿勢は公務員の姿勢の総和」 「社会通念上、責任は当然ある、」といっていますが、津の地検では「四十三年当時の社会は公害認識が不十分」な時代であった。また「贈収賄の事実なし」「個人よりも官庁の姿勢が問題」である。いろいろいわれておりまして、結局不起訴または起訴猶予であります。  こういうふうにしてみますと、公害が大きくなる段階、裁判へ行く段階、いわゆる地検の段階でこういう大きな問題がたいがい葬られるということは、国民に対して疑義を与える。ことにこういうような問題に対しての司法権力と申しますか、検察権力と申しますか、少しでも庶民軽視、国民軽視というような思想が流れちゃいけないと思うわけです。この点、政府の態度と全くうらはらのところがあるのではないかと思いますが、こういうような傾向に対して総理はどのように思って、これからどういうような決意がございましょうか、国民の前に明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  77. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 島本君のただいまのお尋ねは、多分に島本君の御意見をまじえながら幾多の問題を提供されたように思います。  そこで、まず一つ断わっておきますが、私は裁判に介入する考えはございません。裁判に関する問題は、これは司法の独立、こういうたてまえで分離させていただきたいと思います。だから、行政の範囲だけについての考え方、これについていわゆる業界と政府が癒着しているとか、こういうような批判があれば、それは十分注意しなければならぬことだ、かように私は思います。ことに最近の行政のあり方にいたしましても、在来とよほど方向が変わってきたように思います。と申しますのは、私の姿勢自身が、申しておりますように、いわゆる繁栄、そういうことばかりに力を入れてもいかぬのじゃないか。真の繁栄、それこそは福祉なくしては考えられない。お互いの生活、これがもっとしあわせになることは、福祉に重点を置いて、そうして初めて繁栄というものを考うべきだろう、かように私申しておりますから、それで姿勢は十分おわかりだろう。またそういう意味から各官庁と業界との癒着、これは厳に取り締まらなければならない。それからひとり綱紀の問題というのではなくて、基本的な姿勢そのものが業界にも——それはもちろん、可能な範囲において業界が発展するように、われわれが行政官としての仕事もございますけれども、しかし基本的には、何と申しましても国民のしあわせになる、福祉なくして成長なしというその考え方に徹することが何よりも大事なことのように思っております。  したがって、その意味において具体的にただいまのヘドロの問題、田子の浦の問題、あるいはこれが田子の浦ばかりではない、同時に洞海湾、さらに東京湾、大阪、名古屋等々の港湾においても、政府が積極的に取り組まなければならない問題をいま提示されておると思っております。これはひとり田子の浦だけの問題ではありません。そういう意味で、ことしの予算などは相当広い範囲に調査が進められる予定であります。調査はできても、それに対する対策が立たなければだめなんですから、そこらでどういうような方法が考えられるか。科学的な処理の方法その他についても十分考えていきたい、かように思います。  そこで、ただいま申しますように行政の分野においての範囲にひとつ局限していただきたい。もちろん私は、国会が最高の府として御議論なさることは、それをとめるつもりはございませんが、司法の問題はなるべく司法の範囲にゆだねる、こういうことにしたい。行政の長である私がとやかく言うことはどうか、かように思って、それは遠慮をさせていただきたいと存じます。
  78. 島本虎三

    ○島本委員 行政の長である内閣総理大臣に、裁判に口をいれろということを私は言ったのじゃないのです。それにいくまでの間のいわば検察当局の陣容、こういうようなものが近代的体制、近代的なというか、現在公害が発生しているそれに対して、はっきり国民が要望する、または法律によってはっきり規制されている、こういうような問題に対して、いま変化しつつある公害の現状に、検察、警察当局もあわせて対応し得るような体制を十分考えておいてやらないといけないのじゃないか。裁判なのじゃないと思うのであります。いま言ったのも、そういうような一つの体制の不備か、またはそういうような現在起きていることに十分マッチしておらない、こういうことからいっているのではないかというように私は思う  からそれを言ったのです。  逆に言うと、むしろいま国民の中にはいろいろな問題が起こされております。というのは、これは聞いたことです。この問題は、石原産業の起訴の問題の陰には、以前津の地検におって退職されたその人が弁護士になって、顧問弁護士としてやっておるから、いろいろとそちらのほうと津のほうがツーツーなんだ、こういうようにいわれておるようなことも聞くわけです。それにしても体制そのものを強化、整備しておくことが必要だ、このことを言っておるのです。私は、総体的に司法に介入せよ、こう言っているのではないのです。
  79. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまのでよくわかりましたが、とにかくこういう問題は、検挙するにしてもまたその後の裁判手続においても時間が非常に長くなる、こういうことは避けるべきだ、私もかように思います。私は裁判の中身についてとやかく言うわけじゃないが、形式的に申しまして、そういうことはもっと迅速に処理がされるべきじゃないか、かように思います。  ただいまの島本君の言われるのも、そういう意味ではたして陣容がそろっているか、こういうことを言われたのだろうと思いますが、私どもは、この公害というような問題、これはたいへんな問題ですから、時間的に長くかかってはなかなか証拠もつかみにくくなるし、ことにまた被害者自身、健康上の問題などのことを考えますと、できるだけ早く処理してもらいたい。これは私も同様でございます。同じような気持ちでございます。
  80. 島本虎三

    ○島本委員 その辺でひとつ具体的な問題として、やはり地方選挙で公害の問題が十分論議され、具体的な住民の生活の問題とあわせて環境権の設定まで高度な論議もあったようであります。それで県知事なり、市町村長または議員の皆さんも、この点は今回の地方選挙で相当関心の的になって、こういうような論議が十分なされておるわけであります。  その中で、公害企業に対する政府の断固たる態度、こういうようなものに対してまだまだ少し十分でない点がある。というのは、千葉県では昭和五十年から給水開始を予定している房総臨時臨海工業用水の給水、これにあたっては公害を出す企業をチェックして誘致を見合わせ、水の使用等についても十分規制するようにしたらいいじゃないか、こういうような意見があると聞いております。兵庫県でも独自にこの問題に対しては検討中であって、公害企業は、工業用水や業務用上水道を停止してもこれは受忍する義務がある、そのほか数項目を現在検討しておる。通産省はじめ政府の意向としては、工業用水道事業法では公害をもたらす企業であっても水の供給を停止することはできないのである、こういうふうにいって、その中で地方の要請との間に相当ギャップもある、こういうようなことを私は伺って、この点はまことに遺憾だ。公害関係の条例そのものは法律の横出し上乗せは可能である、こういうような言明が再々されておる。今度の場合でも、公害をほんとうになくすために、環境権を守って、住民の生命と生活と、それから健康を守るためにも、通産省を初めとして、進んでこの問題等については手をつけなければならぬのに、いまだに逆に法解釈をかたく行なって、公害をもたらすものであっても停止することができないのだ。違法建築に対しては給水停止ができても、公害に対してはできない。上乗せ、横出しをはっきりいってやってもこういうことはできないという形は現状に即応しない、私はこう思うわけです。この用水停止は公害企業の規制手段としては有効であり、住民の声としてこれは生かさなければならない。今後の政府指導姿勢としてもこれは十分考えなければならぬと思いますが、この点についての総理の御高見を賜わっておきたい、こう思います。
  81. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 どうでしょう、いまの、公害企業だから水をとめろ、こう言われるのだが、水だとか空気だとかこういうものは、やはりなければ生存権そのものの否定だ、かように思います。しかし、公害発生の企業というものはわからないわけじゃないのだから、そういうものを誘致する場合においては、十分事業者と自治体との間に取りきめが行なわれるようにこれからはなるのではないでしょうか。ただいまのところ、いま条例はどこまでできても通常の常識で申しますと別に差しつかえないんじゃないか。しかし、これをとめることはたいへんむずかしいことだ。公害発生事業、そういうものと自治体との間で取りきめはできるんじゃないか。そういうものが最近はどんどん話し合い、協定が成立しつつある。協定違反というような場合にいまのようなことが行なわれるのには、そういう意味で問題をはっきりさせておくことが必要なんじゃないか、かように私は思います。どうも一般的にとめ得るんだ、かようには私は言いかねます。しかし、おそらく最近のように公害問題が大きな政治問題になる、社会問題から政治問題になってくる、こういう場合になりますと、地方自治体としても、そういう事業開始の場合に十分取りきめを行なって、その取りきめ違反の場合に、ただいまのような処置が行なわれる、そういうことはあり得るだろう、かように思います。
  82. 島本虎三

    ○島本委員 取りきめをやる、政府の意向を聞く、上乗せ、横出しは可能なんだ、こういうようにいってあるといいわけですけれども、やはりその場合、工業用水道事業法では、公害をもたらす企業であっても停止することはできないぞと上からいってあると、いまの自治体としては、特定の自治体を除いたほかは多分にそのままに従っていく傾向があるので、この場合十分考えなくちゃだめなんだ、こういうようなことを言っているわけなんです。  それと同時に、いま総理大臣もこの問題については今後もやはりとめるわけにいかない、こういうように言われますけれども、とめるくらいの強い規制を考えなくては、今後の公害行政として、使用者または工場のこういうような人たちに、はっきりした自覚と責任を明確にさせぬことには、現在のところできないおそれもある。それくらい強い姿勢をもって政府指導してよろしいんではないか、こういうようなことを聞いたんですが、その辺までいかないで、どうもまだまだ満足する答弁になっていないのが残念であります。きょうの答弁は全部満足できないです。  それだけでなく、そういうような態度だから同じ米のいわゆるカドミウムのあれを調べても、通産、厚生、それから農林、みんなばらばらの結論を出して、国民に、一体政府はどういうふうにしてこのカドミウム問題に対処しているんだというような疑念さえ持たれるような状態を現出するわけです。したがって、強くこれに臨むというならば、もう一度総理大臣は長ですから、その場合はき然として、ばらばらなこういうような発表をしないように、ばらばら行政を一元化して国民に疑念を持たれないようにすべきです。厚生、農林、通産は、あのカドミウムの日本全国の調査、こういうようなものに対しては中間報告はばらばら行政であって、これはだいぶずさんだという印象を国民は強く受けております。この点せっかく公害本法以下十五の法律がそろった現在において、政府指導姿勢そのものが国民に十分理解されないことは、まことに残念であります。総理はこの辺で、最後にき然たる態度で国民の前に言明しておいてもらいたい。
  83. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 たいへん御鞭撻いただきまして……。  御承知のように、野党の諸君は一省にしろ、こう言われましたけれども、私どもは省をつくる前に、やはり環境庁をつくろうということで、今度は環境庁が発足することになっております。ただいま言われますように、農林、通産あるいは厚生、そういうようなところで意見がばらばらにならないように、今度は環境庁でそういうものの意見を統一するということでございますから、行政自身も非常な積極性を持つのじゃないか、また積極性を持たなければならない状態になっておる、かように私は思います。ひとり日本だけの問題ではなく、諸外国とも歩調をあわせて環境保全、同時にまた環境の改善、そういう問題に取り組まなければならない、かように思っております。どうかそういう意味で、政府を御鞭撻賜わると同時に、新しい行政分野ですから、御批判もひとつどんどん強くやっていただいて、りっぱなものをつくり上げたい、かように私は思っております。
  84. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで終わりますが、最後に要請を一つ。  環境庁については、われわれも十分審議して、行政の実をあげるように大いに鞭撻するのにやぶさかではありません。同時に、公害企業からの政治献金はちょうだいしないという強固な態度、それも総理としてこの際発表していただければ、錦上花を添えることになるわけでありますが、私はそれをひとつ強く要請したいのですが、ここで言明できましょうか。
  85. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 公害企業からの献金、これはすでに問題になっておりますが、政党自身でも、そういう企業からの直接の献金というものは、遠慮していると私は理解しております。したがって、遠慮でなしに、もっと積極的に一切受けない、こういう態度をとれ、こういうのがただいまの御意見だろうと思います。そういう意味で、これが業界であろうと、個々会社であろうと、そういうものについてもっときびしい態度が望ましい、このことは、島本君の御意見と同様に、私もさように思いますから、そういう意味ではっきりさせたい、かように思います。
  86. 島本虎三

    ○島本委員 終わります。
  87. 小林信一

    小林委員長 岡本富夫君。
  88. 岡本富夫

    ○岡本委員 先国会公害国会においても、地方自治に権限を委譲するという要求をいたしまして、政府もそういう考えになったわけであります。  そこで、まずこの悪臭防止法について、この法案が通りますと問題が起こりますのは、すでに条例で悪臭防止をやっておる地方自治体もある、それとの関係ですね。この法案では大体悪臭物質をやっておりますけれども、現在、地方自治体の条例でやっているのは、そうではなしに、諸外国でやっておるように、不快なにおい、あるいは不快なガス、諸外国では大気汚染防止法でそれをやっておるわけですが、そういった見地から、すでに条例があるわけですけれども、その条例はこの法案が通っても認められるかどうか。そのままいまのように執行されていくのか。これは厚生大臣に言ったけれどもはっきりしなかったわけですから、総理からはっきりさせてもらいたいと思います。
  89. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いま厚生大臣と耳打ちしていたのですが、法律違反の条例はできない、これはそのとおりだろうと思います。しかし、やはり程度の問題で、法律違反じゃないという問題もあろうかと思います。実際問題として処理するよりほかに方法はないのではないか。いま言われるもいが、もうすでにできておる、そしてそれが実施されておる、そういうもとにおいて、今度つくりましたこの法律に真正面からぶつかるようなものではないだろうと私思いますが、いかがなものですか、実情をよく知らないので……。ただ、法のたてまえを申しますと、法律違反は困る、こういうことでございます。
  90. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、法律違反ということは、この法律が通るとこれに一致していないといけない、要するに、先ほど私が言いましたように、この法律公害物質を規制する法案なんです。ところが、いま各地方自治体ですでにやっているところは、においを対象としている。別の見地になるわけです。それは違反になるのか、その点について伺いたい。
  91. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が出る幕ではございませんが、私と総理大臣と同じ考えでございますので、簡単に補足させていただきますと、公害防止というのは何も国のためにあるのではなくて、地域住民のためにあるわけでありますから、地域住民がそのほうがいいということでやっておって、それが今度できます法律にさしたる支障のない場合には、私はその地域のやり方を認めていっていいの  ではないかと思います。  具体的な例といたしましては、宮城県が悪臭防止条例というものをつくっておるだけでございまして、ほかにはございません。これはにおいを分析しないで、におい全体として規制をしておるようでございますが、だんだん学問が進むに従いまして、においの要素を分析しますと、それが数十数百の要素になる、こういうことでございますので、その要素を私どもはつかまえて規制をしようとしておるわけでございます。宮城県でも、今度法律ができましたら、政府のやり方のほうが合理的だということで、その条例を直されるそうでございますので、岡本さんの言われるような心配は現実にはないということと、また、何となく鼻の感じでにおいが強い、それは違反だということになりますと、罰則などの場合に問題も起こります点も考えなければならぬと思います。いずれにいたしましても、私はしゃくし定木なことはやらないで、地域住民本位に改革をしていくのがよかろう、こういう総理大臣と同じ解釈でございます。
  92. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょっとわかったようなわからぬような答えだったのですけれども、要するに地方自治体で現在つくっている条例は、この法律が通ってもこれは認めることができるのかということを聞いているわけでして、何かあとにいろいろなことがついたのですけれども、これは認められるわけですね。これだけを、どうも厚生大臣はっきりしないので、総理から聞いておきたい。
  93. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまの議論は、とにかく法律に真正面からぶつかっては困る、しかし真正面からぶつからない、法律考えてないもの、そういうものについて条例をつくるなら、その条例はちっとも差しつかえない、私はさように思います。だから、その点は、うしろに法律に熱心な方もいらっしゃいますから、私はそれで御賛成いただけるのじゃないか、かように思います。
  94. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、現在の法律公害物質を規制する、いまある条例はにおいを規制する、こういうことであればぶつからぬわけだからいい、こう解釈してよろしゅうございますね。——頭を振ってますから、そのつもりにしておきましょう。  次に、規制基準につきまして、測定器、これが大気汚染にしましても水質汚濁にしましても非常にばらばらなんです。西ドイツの例を見ますと、何という測定器ではかれ、そして何PPM以下、そしてはかる地点とをはっきり国で明示してやるものですから、地方自治体はそれに合わせてきちっとやる。これをやらないと、実は私、尼崎のを見ておったわけですけれども、非常に大気汚染が多くなりますと、その測定点を低いところにずらしている。それでカーブを少なくして、このとおりです、こういうごまかしをやる場合もあるわけです、住民がやかましいですからね。これでは話にならないのです。ですから、やはりそうした一つの基準というものを国できめる、あるいはその測定器をきめる、これから今後の技術開発もあると思いますけれども、一応の暫定基準をきめて、地方自治体に明示する、こういうのが望ましいのじゃないかと思いますが、総理のお考えを……。
  95. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 そのとおりだと私も思います。いままだ法律をつくって、公害取り締まりに乗り出したばかりだ、こういう状態でございますから、さっきも島本君にも申しましたように、実施にあたっての監視なり、あるいは政府鞭撻、これはどんどんやってください、かように申しました。ただいま岡本君からも、その測定方法なり、機械、そういうものについてもやはりまちまちでは困る。そういうものの使い方等についてもよく指導することが必要だ。これはまさしくそのとおりだ、かように思います。また、検査する場所等についても、これからだんだん統一されてくるだろうと思いますから、比較的ただいまのような不平または不満は解消するだろうと思いますけれども、ただいまの現状ではずいぶん不都合ができておるだろう、かように思います。十分私ども政府は気をつけて、そういうことの非難を受けないように、もっと積極的なことにいたしたい、かように思います。
  96. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはやはり一定の基準を示さなければならぬ、こういうふうに要望しておきまして、次に、さきの委員会ではっきりした答弁をとれなかったので、総理大臣に対して、もう少しはっきりこのお答えを願いたいことは、喫煙の及ぼす人体影響調査、これはすでにワシントン、要するに米国においてはちゃんとやっているわけですね。これをわが国でもやらなければならぬ。先ほど総理大臣は諸外国と歩調を合わすと、ことばじりをつかまえて悪いのですけれども、そういうような話だったので、人体影響調査をおやりになりますか。
  97. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これはただいま専売公社のほうでたばこの煙の中にどういうものがあるか、またそれが人体にどういう影響を及ぼしているか、そんなものもいろいろ研究しておるようです。またそれに基づいて、いま名前を覚えておりませんが、一つの審議会があるようです。その審議会が適当な結論を大蔵大臣に提出する、こういうことになっておりますから、そういう意味で十分注意される、かように私は思います。私自身、別にたばこの害を感じたわけではありません。もうやめて六年ばかりになりますので、ただいまたばこについては、ちょっと非難が少し遠のいているような、どうもぴんとこない点があろうかと思いますけれども、そういうことでありますから、いまの大蔵省あるいは専売公社、十分監督いたしておりますし、また表示をどういうようにするかという、そういう意味でも何かといろいろ問題を提案されて、研究している最中だと思います。したがいまして、ただいま私から申し上げるよりも、大蔵大臣から、それらの点については十分はっきりした、どういう処置をとるということをお聞き取りいただきたいと思います。いま表示されてはいないのですが、何か少し表示が必要じゃないか、かように思いますけれども、事柄は、たばこというのは、その煙の中に有毒なものがありましても、また有害なものがありましても、のみ方によってもずいぶん変わっているようでありますし、どうもたばこ必ずこれがガンになる、こういうわけのものでもなさそうだし、非常に短命だとも言えないし、政治家でも吉田さんも長生きだったし、チャーチルも長生きだった。こういうことを考えると、必ずしもたばこの害ということを大きくするわけにもいかないような気がいたします。これは紙巻きは違う、こういうような議論もあろうかと思いますが、なかなかむずかしい問題がある、かように思います。
  98. 岡本富夫

    ○岡本委員 佐藤総理はいま、私はたばこを吸わないからあまりぴんとこないというようなお話でありましたが、総理は一億の国民の総代表でございまして、自分が関係ないからあまりぴんとこないというようなお答えでは、私はもう一つ満足はできない。私は婦人でないので婦人のことは関係ないということもいけない。したがいまして、すでに時代は吉田さん時代とは非常に変わっております。しかも、こんなに人口がどんどんふえてまいりまして、いろいろな公害病がたくさん出ておるわけであります。このときにおいては、やはり公害患者をなくして、そうして少しでも国民に健康的な生活をさせていくという責任があろうと思うのです。英国では大々的に禁煙運動が起こっておる。また英国の王室医師会では、三万人も喫煙によって死んでいるというようなデー久も発表しているわけですが、こうした諸外国の例を見ましても、やはりたばこの問題については、これは大蔵大臣の担当だから、返事するのは適当でないというお考えは、私は大蔵大臣の上にいるのが総理大臣だと思うのですね。ですから、そこらで行政意識を発揮しないで、やはり総理としてそれをきちんと明確に指示をする、そうして有害物資の表示も、これも諸外国でやっているのですから、やらせるようにやはり指示をしていく。あとは審議会でいろいろな研究は必要でしょうけれども、こういう考え方に立っていらっしゃるのか、それとも大蔵大臣から言うてくるまで待っているのか、積極的なのか、それとも消極的なのか、この点についてひとつ……。
  99. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私のことばじり、どうも気に食わぬ点があったようで、岡本君から、必ずしも本意ではないでしょうが、私もそうのまないからというような意味で逃げたつもりじゃございません。この問題はもうすでにアメリカが表示して、発ガン性だ、こういうような意味でいろいろ議論されておる、そういうことはよく私も知っております。したがいまして、日本の場合もそれを議論する必要ありやいなや、こういうことは積極的に話をしておる最中でございます。したがって、この問題を等閑視するつもりはございません。ただ、先ほど申しますように、専売事業審議会ですか、そういうものがいろいろやっておりますから、その答申を待ってしかる上で処置したい、こういうのが公式な議論でございます。しかし、この問題自身を、ただいま申し上げるようにとりますと、のまない人はいま言われるように関心がない。のんでいる人でもこれにたいへん熱のある人があります。したがって、たばこの全然ないような世の中にしようとは言いません。無害のたばこができないか・こういうような議論もあると思っております。そういうものができればたいへんけっこうですが、やはりニコチンがあるところにたばこの魅力もあるのじゃないだろうか。私はかつてたばこをのんでいた時分、やはりニコチンの薄いたばこというのはあまり関心が持てなかったということを考えますと、やはりそういうものがあるからこそリラックスができる、こういうようなものじゃないだろうか、かようにも思いますので、愛煙家の立場にも立ち、また禁煙家の立場にも立ち、そうしてその点が乱用されないようにすることが望ましいのじゃないか、かように思って先ほどのようなことを申し上げたのであります。私の真意はただいま申し上げるとおりでありますから、これは専売事業審議会、その結論を待ってしかるべく処置すべきだ、かように思っております。
  100. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、もう一問。  それで専売の審議会というのは、やはりどうしても税収のもととなるわけです。結局は国民の健康を害して税収をあげたところで、これは何にもならないわけですから、やはりいま総理がおっしゃったように、人体に無害のたばこの開発を指示をしなければならぬ、こういうように私は思うのですが、これを大蔵省に対して、専売公社に対して指示する考えはあるかどうか、これだけひとつ……。
  101. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いろいろ紙巻きたばこ、このたばこの葉を日本でもつくりますし、一体外国のどこから買うのが一番いいのか等々、たばこの質についてはこれはまあ専売公社が専門的にいろいろ、アメリカの葉がいいとか、あるいはもっと、ギリシャその他東欧諸国の葉がいいとか、いろいろ研究されておりますから、ただいま言われるように、無害のそういうたばこができれば、それにこしたことはないと思います。ただ、のむほうから申しまして、やはり味がどうなりますか、コクがどうなりますか、そういう問題を考えないと、ただ毒がない、害がない、それだけならもうやめたらいいじゃないか、こういうような議論もおそらく出てくるだろうと思います。その方向も望ましいことじゃないか、かように私は思いますので、これは佐藤がのまないからたばこをやめろと言った、こういうような議論になっても困ると私は思いますので、そこらに愛煙家はどういうところに期待をしておるのか、これはよほどむずかしい問題じゃないかと思います。しかし、少なくとも衛生的見地から見れば、人体に害がない、こういうものでなければならぬ、かように私も思います。これはひとつ、そのそれぞれの専門家にある程度研究をさす、その際に岡本君の御意見は十分生かされるように私も取りかかるつもりでございます。
  102. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、これで終わりますが、最後に総理、愛煙家は要するに趣味だからしかたがない、のまなければいいじゃないかというような意味じゃないでしょうか。それならば、麻薬を打っている人は趣味だからしかたがない、取り締まらないというのと同じように、極端にすればなりますから、やはり何はあっても国民に害のないような、政府姿勢としてはやらなければならぬということを強く要望いたしまして、終わります。
  103. 小林信一

    小林委員長 西田八郎君。
  104. 西田八郎

    ○西田委員 悪臭防止法が提案をされまして、公害関係法案が大体全部出そろったというところで、最終的に公害に対する政府の基本施策ですか、基本的な姿勢というものについてお伺いしたいと思います。  昨年の末に開かれました、いわゆる公害国会といわれた六十四臨時国会に前後して、非常に政府は積極的な姿勢であったように思いますし、また行政当局のほうでも非常に積極的な姿勢で臨んでおられたように思う。ところが、一たん法案ができますと、何かそれで公害対策はすべて終わったというような印象を私どもは受けるわけであります。心なしか、あの六十四国会の前後の東京の空は、月も星もきれいに見えました。最近また非常によごれてきているように思う。これは風、気候の関係もあるかもしれぬけれども、しかし私は、ただそれだけではないと思います。したがって、今後の政府のこの公害に取り組む取り組み方ですね、その基本的な姿勢をひとつ聞かしていただきたいと思うのです。  それに関連をしまして、この成立をいたしました法案に付随をして、政令省令が相当多数政府のほう、あるいは各省のほうに権限が委譲され、その政令省令もけさほどの委員会答弁でも、まだほとんどそれが成案を得ていない。もちろん期間的にも、法律の具体的施行という段階まで期間があるということもあるでしょうけれども、何かその辺に政府の積極的姿勢が欠けているように思えてならない。したがって、この政令省令等をいわゆる法律の施行の期日までに間に合うように実際に政府は成案を得て公布をし、それによって公害企業を積極的になくす意思があるのかどうか。この二つについて総理から御答弁をいただきます。
  105. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 西田君にお答え申し上げます。  先ほど来公害と取り組む姿勢について基本的なものとして触れたつもりでございますが、私は、公害とは、やはり公害の一種ではありますけれど心、炭鉱災害、落盤とか爆発等でとうとい人命を失う、このことについても、かつて国会で、せっかく炭を掘ってお互いがこれによってエネルギー源を確保しよう、これはやはり社会に役立たす、けれどもそれをやらないうちに人の生命を失う、何と情けないことか、こういうことを実は申したことがあります。まさしく公害はいまの非常な顕著な例、それに類似しているものだとかように思いますので、われわれは経済成長もずいぶん力を入れたように思いますけれども、これも当時としてはこの経済成長をしない限りにおいてしあわせは来ない。いわゆる富裕にならない。豊かなところにやはりしあわせがあるのだ、こういうような考え方だったと思います。しかし、ある程度物質的に恵まれてくると、もっと精神的な面を大事にしなければならないし、やはりねらいはどこなのか。経済発展はどこまでも手段である、目的、目標とするものは、これはもうお互いのしあわせにあるのだ。そのことを考えると、取り組み方が違うのじゃないか、かように思います。これはもう大にしては国内における産業の保護から、小にしては、と申してもいいと思いますが、外国貿易との競争におきましても、やはり保護的な立場にとかく立ちやすい、これらのこともやはり反省せざるを得ない。それよりももっと大事なことは、お互いにしあわせがどこにあるか、こういう取り組み方をしないで産業の発展も意味がない、かように実は私は思うのであります。したがって、そこらでは行政の取り組み方が、これはもう百八十度とは申しません、私はそれは同一のものだと思いますが、ただ、一面的な見方だけはやめてもらいたい。両眼を見開いてもらいたい。むしろよく見えるほうは社会的しあわせだ。そのほうを大にして、そして産業の発展のほうも同時に見ていく、こういうことが望ましいのではないか、かように実は思っておる次第であります。  しかし、いままでの行政のあり方がどうも発展の方向に向けられていた。それを切りかえるという、何か公害防止といえば足を引っぱる、停滞するというような感じにどうもおちいりやすい。どうもいままでは利益を一〇〇%あげたんだから、やはり公害防止施設、これもしなければならない。そこで足を引っぱられるというような感じがあったり、また公害のためには、事業さえなければ公害は発生しないじゃないか、非常な極端な飛び上がった議論すらあるのでございます。そこらに、いままでの行政を切りかえるということがいかにむずかしいか、それについてはやはり理解もしていただきたい。政府はそういうような在来の行政の態度を変えるのだ、こういうことで取り組んでいるのだから、そういう意味でぜひわれわれの態度も見直していただきたい。また、そういうことにかなっていなければ、ひとつ御叱正もいただきたい、かように実はお願いしておるような次第であります。私はそういう意味からだんだんとよくなりつつあるのではなかろうか、かように思います。  そこで、思い切って公害国会というものをやった。十五法案予定されていたが、まず十四、今回その一つができたら、これで法律的には一応整備された。しかし、その法の運用ということになりますと、事柄の性質上、また初めてのものもずいぶんあります。ただいまの悪臭防止法、これなどは実際むずかしい問題で、何をもって不愉快なにおいとするか、こういうような問題になってきますと、これはたいへんな問題だと思います。また、先ほど議論されましたように、悪臭を発散しているものが中小企業の場合、ことに小さな、地域的なもの、こういうようなものが非常に多い。それだけに取り扱い方もむずかしい、こういうような問題があろうと思います。したがって、ひとり悪臭だけではなく、一般の公害取り締まりという新しい分野でありますだけに、なかなかむずかしいものがあるのではないだろうか、私も法律をつくっていただきながらそういうことを考え、そしてやはり漸を追うて完全なものにしていくという、ここらにある程度の余裕を求めなければならないのではないだろうか。先ほど来からお尋ねがございました。皆さんの御期待に沿い得るような答弁では必ずしもなかったろうと思いますけれども、しかし、事柄の性格上、やはり漸を追うて進んでいくというような性格のものだ、そこらでひとつ政府を鞭撻してください、かようにお願いしたのもそこらにあるのでございます。  いまお尋ねになりました二点、私はただいまのように考えますが、とにかく新しい問題であるということだけお互いにはっきり認識しないと、政府はあんなに言ったけれども、ちっともやっていないじゃないか、あるいはまた、政府のほうは大官はいいけれども、その衝に当たっている者は十分問題の所在を理解しておらない、ことに取り締まりにばかり厳重である、こういう議論がおそらく出てくるだろうと思いますし、また片一方からいえば、いまなお産業中心だ、こういうようなことで公害防止をする効果があがっていないという御批判もあろうかと思います。それらの点については御叱声、御鞭撻を賜わりますようお願いしたい、かように考えます。
  106. 西田八郎

    ○西田委員 ただいまの総理の答弁は、生産と人間の社会の発展と進歩ということに関連をして御答弁があったと私は思う。しかし、あくまでも生産をするということは、人間社会の進歩と発展、人間の暮らしの向上ということにつながっていかなければならないと私は思う。ところが、その生産のために人間の暮らし、特にその周辺である環境が破壊されるというに及んでは、私は何がための生産かということになってくると思う。この辺が私と総理の若干の考え方の相違であろうかと思う。私は決して生産を全面的に停止せよという意味ではありません。しかし、ここまで破壊されてきた環境というものをどう取り戻すか、そして人間本来の生活に戻すかということは、いまきわめて重要な問題ではなかろうかと思うのです。したがって、ここである程度の環境を整備しよう、そして暮らしよい環境をつくっていこうということになってくると、一部度を過ぎた企業においては、生産の停止もやむを得ないのではないか。そしてそれが自然に還元する方法を見つけ出し、また有害な毒素を排出することがある程度減少させられるという方法を見つけるまで、何らかの方法で処置をしていかなければならぬと私は思います。そうしますと、経済成長というものが若干足踏みをするということになります。そこで政府方針と若干食い違ってくるものが出てくるわけです。結局、生産を停止して環境を守るか、環境はある程度国民にしんぼうしてもらって生産をこのまま持続していって成長を見るか、二者択一だと思う。まさに選択を迫られていると思うのですが、首相はどうお考えですか。
  107. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 結論から申しますと、私は西田君が二者択一だと言われることについてちょっと同意しかねるのです。と申しますのは、現在の科学技術をもってすれば、ただいまのようなことは克服可能なんではないか。これは絶対克服できないもの、こう見て二者択一という選び方は間違っておる、かように私は思っております。また、われわれ政治家は、二者択一といわないで、一つをとる、しかし、弊害は一切起こらないように、しあわせな世の中にしていく。環境をきれいに、また自然は保護される、そういうものであってほしい。それにはどうしたらいいか。それにはいまの科学技術の力をもってすれば私は可能だ、かように思っております。そういう意味で英知を集めなければならない、かように思うのでございまして、あまり短気を起こさないで二者択一だ、こういう結論に早目に走られないようにお願いしたいと思います。
  108. 西田八郎

    ○西田委員 私は結論を早まっているわけじゃないのです。しかし、現在の環境汚染というものを守っていくといいますか、これ以上悪くしないというためには、私は現時点においては二者択一だと思う。それを両方兼ね合わせてやれるならいままでやれるはずなんです。進んだ科学技術をもってすれば必ず可能だとおっしゃるけれども、もうこの問題が出だしてからそろそろ十年になる。十年間そのまま放置されてきておるわけですから、その間に一体科学技術はどうだったかということになってくると、そう進歩はしなかった、したがって、今日こういう問題が出ておるのじゃないですか。ですから私はそうだとは思わない。  そういう議論をやっておってはなんですけれども、そこで私のお伺いしたいのは、いまおっしゃるように、両面相まっていくということになると、国民の生活というものはこれ以上ひどくなると思う。またこれ以上ふえる。第一、下水道の整備もできていないし、水質はまだまだ汚濁していくでしょうし、大気は、石油の脱硫装置が十分開発されていない現状においては、まだまだ汚染が進むでありましょう。ですから、そういうことになってくると、国民の生活というものはいまよりもひどくなる。したがって、ぜひともいまのうちに食いとめるべきだと思うのですが、総理の考え方を聞かしていただきたい。
  109. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いま、西田君がたまたま触れられましたように、私はいま公共投資は非常におくれておる、かように思います。ことにその点は、下水の整備の問題にある、かように思っております。とにかくきわめて最近になってようやく水洗便所というようなものが普及しつつある。いままではとにかく日本式の便所というものが保存されていた。その生活様式のもとにおける下水の整備、そういう状態では、ただいまの進んだ科学の世の中にとても追いついていけるものじゃありません。だからその点で、環境を整備する基本を整えるまでは足踏みしてもやむを得ないのじゃないか、そういう議論も起こり得る、これは私はある程度納得がいくように思います。しかし、われわれは政治家ですから、足踏みをするというようなことがあってはならない。そこを克服していく、そこに政治力を結集する、こういうのでただいませっかく立ち上がっている際ですから、あまり失望さすようなことを言わないで、御鞭撻を賜わりたい。  私は、そのこと一つ考えましても、これは可能なことではないだろうか。またいま石油脱硫装置の話が出ております。脱硫そのものは可能かもわからない。しかし、まだ製油所の設置場所等についてこれからやかましくなるだろう、こういうことは当然考えなければならない、かように思っております。また、工場分散ということは、いわれながらもなかなかできておらない。だから、新しいものですね。製油所自身よりも、いまのところは発電所、その場合が一番問題なようです。しかし、正しい意味においての発電所、エネルギーの必要なこと、これは感じながらも、どうも発電所をつくりたいところは反対される。しかし、公害がこれだけやかましくなっている際に、その公害対策なしの発電所をつくるというような電気事業者はいないはずですから、そこらは十分話し合いのつくことじゃないだろうか。私はそういうことを考えながらも、どうも日本がいま一番困っているのは、油の問題からエネルギー源、発電所の問題ではないか、かように思っております。ここらにもわれわれがまだまだ考えていかなければならないものがある。一般的には御指摘になりました下水の整備がそれこそ急務だ、かように私は思います。
  110. 西田八郎

    ○西田委員 時間も参りましたので、最後に、総理に希望をしておきたいわけであります。  いま総理も認められるように、確かに公共投資が非常におくれておることが、環境、特に下水道の不完備が水質汚濁の原因をなしておる。これは目下の急務であります。さらにまた、新しい科学技術一つ企業で開発するということはとても困難である。したがって、政府はその点については積極的に取り組んでもらいたい。  そしてもう一つ、先ほども質問が出ておりましたが、あちこちで測定する測定値が違う。したがって、測定器等を統一してやったらどうかという御意見がありました。また検察的行為をもってやらしたらどうかという御意見もありました。私は、もっと公害監視機構に対して機動性を持たして、同じ機器を積んだ、同じ測定器で、そしてやはり特定の汚染地域についてはパトロールをするというような監視隊ですね、こういうものを編成をして、そして全国の環境汚染度合いというものを調査する、測定する、こういう方法はどうかというふうに考えますので、そうした点の——これは私は、行政の力でできるものだと思うので、そうしたことをぜひ実現さしていただくように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  111. 小林信一

    小林委員長 米原昶君。
  112. 米原昶

    ○米原委員 先ほど岡本委員から第十九条との関連、この法案が成立した場合の条例との関係なんかで、たとえば宮城県条例は違法にならないような答弁があったわけです、先ほどの答弁では総理大臣も厚生大臣も。厳密に言えば、そうじゃないのじゃないかと思うのです。  先日私が十四日に質問したときには、この法案が成立した場合には、宮城県条例は違法になる、こういう意味の答弁が曽根田部長からありました。もっとも、よく速記録を見ますと条件がついておるのですね。つまり宮城県条例の考え方は、いわゆる臭覚モニター方式ですか、物質を指定する方式でない、別の方式です。それ自体は条例としてつくっても差しつかえないけれども、その条例の中に、違反者に改善命令が発動できるし、命令違反の場合には罰則を適用するというようなことを条例できめる、その点は違反になる、こういう答弁だったと思うのです。さらに、違法になるという意味が、この法案で指定される十三の物質については違法になる、こういう答弁があったと思うのです、私、速記録を見まして。  そうしますと、私もこの点がこの法案の一番重要な点だ、方式の相違の問題ですから。私たちが修正案を考えたのも、この点が重点なんです。この点をどう扱うか。それでもう一ぺん突っ込んで御質問したいのですが、ここで指定される十三物質以外の物質を含む諸物質による悪臭について、宮城県条例できめておるような臭覚モニター方式による規制を行なうことは、それならば合法なのかどうか。この法律にはない、そういう物質について、臭覚モニター方式を適用していくことは、合法になるという意味にもとれますが、そういう意味にとっていいかどうか、この点です。
  113. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先ほどの委員会におきましては、私は公害部長と違いまして、少しおとなでございますから、あまり法制局流の法制論を実はわざと避けました、正直に申しますと。まことに不得要領だと、岡本さんでございましたか、御批判をいただいたような答弁をしておるわけです。そのもとは、さっきもここで御答弁いたしたとおりでございまして、まだ岡本さんはわからぬとおっしゃるが、私はあれでいいのだ、こういうことを申し上げておるわけですが、それは、そもそも悪臭の原因というものは、初めは厚生省でもわかりませんでした。これは数百、数千、数万のいろんな物質のコンビネーションによるわけでございますので、そのうちのどれを押えればいいかということは、必ずしもわかりませんし、またわかりましたところで各個の悪臭物質の構成物質につきまして、それを規制する規制基準をつくるということは、事実上困難でございますので、まあ多くの悪臭物質構成要因のうちからとりあえず十三、これも法律で明記いたしましたのは、たしかアンモニアとメチルメルカプタンだけでございまして、その他一ぺんに十三の悪臭物質につきまして基準などができるかどうか、私もまだそこは明らかにいたしておりません。しかし、おそらくは、言明をいたしたことでございますから、少なくとも十三だけは、メチルメルカプタンなどとそう時を違えないでこの基準をつくることと相なると思いますが、いわば宮城県方式でございますと、これは十三だけの悪臭物質によるものでなしに、その他いろいろの悪臭物質要因を一緒にいたしましたものを官能的な反応で規制の対象としてとらえるわけでございますので、十三以外の悪臭物質要因がたくさん入っておると私は思うわけであります。  そこで先般、米原さんのお尋ねに対しましても、十三について違った定めをするということは、法律と真正面からぶつかります。これはいまのお尋ねの最後のほうにもございましたが、それ以外のたくさんのプラスアルファの要因を入れての全体としての官能的な試験、判定による悪臭認定でございますから、私はおとなになって、十三を除いたその他の物質について規制をされる、こう考えれば、宮城県がもしどうしてもこの条例でやりたいということでありますならば、必ずしも今回の法律と抵触するということをむきになって私が言わなくても、その地域ではそれがいいというなら、いろいろの見地から理屈をつけまして、私はことさらこれを取り上げるつもりはない、実はこういう気持ちが腹の中にあるわけでございます。  しかし、ただいま米原さんからのお尋ねのしまいのほうの、十三以外の物質についてはどうきめていくかということでありますならば、それは一そう明瞭でございますから、それはどうきめられても条例は法律違反になりません。ただし、厚生省は、そのことにつきましては、衛生科学官庁でありますから、あまり学問的におかしいきめ方をいたしました場合には、それこそ行政指導と申しましょうか、あるいは行政協力と申しますか、それはおかしくはないでしょうかということを申し上げることはあり得るにいたしましても、それ自身は法律違反ではない、こういうふうに私は考えます。
  114. 米原昶

    ○米原委員 それでは、もうちょっとその点明らかにしてもらいたいのですが、十三物質以外だったら、そういう規制をやってもよろしい、合法だ、その合法だという意味は、たとえばいまの宮城県の条例に出ておるように、改善の勧告をやる、それから命令を出し、命令違反の場合には罰則がついておるのですね。そういうことをやっても差しつかえない、十三物質以外には。そう理解していいですね。
  115. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、法律上差しつかえないと思います。ただし、これは公害立法系列以外の他の法律、たとえば地方自治法でございましたか、条例に付すべき罰則に関する件というような法律がおそらくあると思います。まあ条例をもって十年の懲役というようなことはあり得ないと思いますが……。
  116. 米原昶

    ○米原委員 それでは、もう最後ですから……。  それで、いまお話しになったこととも関連するわけですが、いろいろな悪臭を出す物質は非常にあるんですね。私たちの聞いたのでは、四十万種類あるということですが、代表的なものでも、ほんとういうと十三ではとても足りない。そういうことで、これは非常にむずかしい問題がおそらくある。方式の相違もそこから起こってくるのだろうと思うのです。規制基準について、この前、林委員のほうから質問があったのですが、そのときの答弁で、何かにおいの強さをゼロから五まで、つまり六段階程度に区分する、範囲の一番きびしい上限、一番きびしい段階で一・五か二くらいに考えているという答弁政府委員のほうからありました。しかし、つまり全然におわない、強度ゼロというところは、そうすると規制基準になってないという答弁にとれるのですが、地域によっては、においが少しでも感じられてはいけない場合もあるわけです。そういうふうに上限を一・五か二くらいでいいというふうにここできめてしまうのはやはりまずいんじゃないか。政府答弁は、この前そうだったもので、ちょっと疑問に感ずるわけですが、具体的にどの地域にどの強度を適用するかは、知事が地域の自然的、社会的条件を考慮してきめるとして、少なくとも規制基準の上限は、におわない、ゼロということにすべきじゃないか。ただし、そのゼロという場合に、いまもお話がありましたいろいろな物質が、一つずつの物質についてのゼロなのか、それとも複合で、複合作用が多いものですから、その点、規制基準という場合に、個々の物質についていっておられるのか、複合した場合をいっておられるのか、そのあたりちょっとはっきり聞かしておいてもらいたい。
  117. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは私が申し上げますよりも、私のほうに科学者がおりますので、科学者からお答えをさせていただいたほうがよろしいと思いますが、お許しいただきとうございます。(「何という科学者だ」と呼ぶ者あり)曽根田科学者でございます。
  118. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 科学者ではございませんが、先般、林委員の御質問に対してお答えしたのでありますけれども、一応私ども事務的には、臭気度の範囲としては、臭気度二あるいは一・五程度を考えておるわけでございます。ゼロまでという御意見もあろうかと思いますけれども、やはり悪臭を、この法律のように生活環境をそこなうおそれのある物質としてとらえている以上、ゼロというのは全国的な規制の基準としてはいかがなものであろうか。もちろん先ほど大臣からお答えがございましたように、悪臭物質という形ではなくて、混合体としての悪臭ガスという形での規制は、この法律の範囲内で地方公共団体法律的には規制可能でございますので、地域によっては、場合によってはそういうような規制のしかたもあり得るということで御了承願いたいと思います。
  119. 米原昶

    ○米原委員 その場合、単独の物質についてゼロ、そういう基準ですか。単独の物質についてきめられるのかどうかということです。
  120. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この法律の規制対象以外の物質につきましては、単独に、独自の立場で規制を行なうことは法律的には可能であると思います。
  121. 米原昶

    ○米原委員 つまり現実のにおいはこの十三物質に限らない。数十とか数百、これの組み合わせで起こるわけで、単独の場合の基準といいましても、単独の場合、一つ一つについては濃度が基準以内であっても、全体としては悪臭を発するというケース、むしろそのほうが多いのではないかと思うのです。だからこそ、こっちはただ物質指定規制方式ではうまくないのではないか。全体のモニター方式、これを唱える学者のほうが多いと聞いておりますが、厚生省の実際の公害防止の研究会でもそういう学者のほうが多かったと聞いているので、やはりモニター方式というものをかなり重んじて、そして物質指定規制方式でこれを補充する、両方とも実際にやっている中でだんだん確定してくると思いますし、防止の方法、それから悪臭の測定の方法も、客観的な、科学的な方法も、だんだんできてくるでしょうから、まだ完全にできていないとすると、両方式を適当に入れたほうが、実際的でもあるし合理的でもある、こう思うわけです。その点どうでしょうか。
  122. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御指摘のような問題は、この法律の一番の問題としてあるわけでございまして、この点につきましては、本法案作成にあたりまして、関係の学識経験者等の意見も聴取したのでありますけれども、結論といたしましては、規制を行なう法律対象としては、やはり客観的に規制値を測定できる物質ごとの規制方法が実際的ではないかということに落ちついております。しかしながら、御指摘のように、特定物質を消しても、なおどのようなにおいが残るかということは、依然として問題として残っております。この点は、われわれも今後とも研究を続けまして、必要な場合には、逐次未知のそういう物質を、研究の結果追加するというようなことで十分対処できるものと考えておりますけれども、そのような関係学者等の意見も聴したということで御了承願いたいと思います。
  123. 米原昶

    ○米原委員 では、質問を終わります。
  124. 小林信一

    小林委員長 これにて内閣提出悪臭防止法案に対する質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。    午後三時七分休憩      ————◇—————    午後五時三十九分開議
  125. 小林信一

    小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出悪臭防止法案について議事を進めます。  先ほど、本案につきましては質疑を終了いたしたのでありますが、この際、一言、委員長より政府に確認いたしたいと存じます。  法案第十九条による地方公共団体が条例により悪臭の原因となる物質の排除を規制することを認めておりますが、物質によらず、モニター方式により悪臭を規制することができますかどうか、御答弁願いたいと思います。
  126. 内田常雄

    ○内田国務大臣 小林委員長から御確認の点につきましては、先般私がお答えを申し上げたとおりでございますが、さらにそれを要約いたしますと、政令規定をいたします物質以外の物質につきまして、条例によって、個々の物質ではなしに悪臭として規制することは、法律上差しつかえないものと私は考えております。     —————————————
  127. 小林信一

    小林委員長 この際、委員各位と十分協議し、私の手元で起草いたしました内閣提出悪臭防止法案に対する修正案を提出いたします。修正案はお手元に配付してございます。     —————————————
  128. 小林信一

    小林委員長 その趣旨について御説明申し上げます。  一、第八条第一項中「事業場の周辺地域における住民の生活環境がそこなわれていると認めるとき」とあるのを「住民の生活環境がそこなわれていると認めるとき」に改めること。  二、改善命令規定については、附則第一項ただし書により、法施行後二年間は適用しないこととされているのを、政令で定める事業場に限り、法施行の日から二年間の猶予期間を設けることに改めること。  以上が修正案を提出した趣旨内容であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。  これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  修正案について御発言はありませんか。     —————————————
  129. 小林信一

    小林委員長 なければ、次に、本案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、これより採決に入ります。  まず、本案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  130. 小林信一

    小林委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採択いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  131. 小林信一

    小林委員長 起立総員。よって、本案は修正案どおり修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  132. 小林信一

    小林委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が山本幸雄君外四名から提出されております。  まず、提出者から趣旨説明を求めます。山本幸雄君。
  133. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員 私は自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党を代表いたしまして、内閣提出悪臭防止法案に対する附帯決議を付すべしとの動議について御説明いたします。  まず、案文を朗読いたします。    悪臭防止法案に対する附帯決議(案)  一、水路等の管理者は、当該管理水域等の悪臭発生の防止について、広く生活環境を保全する見地から、適切な水路等の管理に努めること。  二、国は、悪臭防止のための施設の設置等につき、資金のあつせん、技術的な助言等を行なう場合には、特に小規模事業者に対し、重点的に配慮を行なうこと。  三、地方公共団体が条例によつて、悪臭発出事業場等の事前指導等を行なう場合には国も十分これを援助指導すること。   右決議する。 以上でありますが、この動議の趣旨につきましては案文中に尽くされておりますので省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  134. 小林信一

    小林委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議のごとく本案に附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  135. 小林信一

    小林委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議について政府より発言を求められておりますので、これを許します。内田厚生大臣。
  136. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ただいま御決議になりました事項につきましては、政府といたしましてもその趣旨を尊重し、極力善処いたしたいと考える次第でございます。     —————————————
  137. 小林信一

    小林委員長 ただいま議決いたしました内閣提出悪臭防止法案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 小林信一

    小林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  139. 小林信一

    小林委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十四分散会