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1971-02-12 第65回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十二日(金曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 中井徳次郎君    理事 天野 光晴君 理事 内海 英男君    理事 米田 東吾君 理事 瀬野栄次郎君       小浜 一郎君    坂元 親男君       塩谷 一夫君    羽田  孜君       藤尾 正行君   三ツ林弥太郎君       吉田  実君  早稻田柳右エ門君       卜部 政巳君    千葉 七郎君       辻原 弘市君    内藤 良平君       小川新一郎君    貝沼 次郎君       小宮 武喜君    津川 武一君  出席政府委員         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省道路局長 高橋国一郎君         消防庁長官   降矢 敬義君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    高橋 盛雄君         科学技術庁研究         調整局総合研究         課長      小久保 肇君         国立防災科学技         術センター所長 寺田 一彦君         水産庁長官官房         総務課長    樋貝  勇君         運輸省鉄道監督         局民有鉄道部土         木電気課長   山本 正男君         気象庁観測部地         震課長     諏訪  彰君         建設省河川局防         災課長     生瀬 隆夫君         建設省住宅局建         築指導課長   前川 喜寛君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     河角  広君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     萩原 尊禮君         参  考  人         (京都大学名誉         教授)     棚橋  諒君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十六年一月上旬の暴風及び高波による災  害対策  地震対策      ――――◇―――――
  2. 中井徳次郎

    中井委員長 これより会議を開きます。  災害対策に関する件について調査を進めます。  まず、昭和四十六年一月上旬の暴風及び高波による災害対策について、これは島根県を中心としたものでありますが、その後政府においてとった措置等概要を、政府当局から説明を聴取いたしたいと思います。総理府総務副長官湊徹郎君。
  3. 湊徹郎

    湊政府委員 ただいまお話がございました、一月上旬の暴風浪による島根県を中心とする災害について、今日まで政府がとってまいりました措置概要について御説明申し上げたいと存じます。  被害概要については、すでに前回委員会において御報告を申し上げたわけでありますが、政府はこの災害に対処して、次の措置をとることによって、被災施設復旧の促進並びに被災者災害復興意欲の振興をはかっておるところでございます。  第一番目は、非常に集中的に被害のございました漁港施設災害でございますが、これにつきましては、すでに先月の二十六日から三十日にわたって、島根県に技術調査団を派遣いたしました。そして気象海象その他資料収集並びに被災地現地調査を行ないまして、いまその資料の整理、解析を行なっておる最中でございますが、漁港港湾施設災害調査結果と総合調整を現在行なっておるところでございます。  さらに、技術調査に続いて災害査定でございますが、これは前回委員会において申し上げましたように、島根県につきましては一応緊急査定ということで、二月十五日から二十七日まで査定官を派遣する予定でございます。さらに、同じように被害のございました富山、京都、山口、兵庫鳥取等についても、引き続き現地災害査定実施する予定でございます。これも過般議論になったところでありますが、県の御報告によりますと、港湾を含めて局地激甚災害対象になるような市町村が実は二、三ございます。そういうところを中心災害査定等実施をして、査定結果をまって激甚災害指定を進めたいというつもりでございます。  二番目には、港湾施設災害でございますが、これは二月の一日から六日まで、同じように島根県に技術調査団を派遣いたしまして、特に被害の大きかった浜田港をはじめとして、県内の沿岸各港において気象海象資料収集施設被災の状況、地形条件さらに海底の条件等まで現地調査を行ないまして、さきに申し上げました漁港施設災害調査結果と両方合わせながら、総合的に目下資料解析をやっておるという段階でございます。  さらに、災害査定については、これは港湾でございますが、その調査結果をまって、今月の下旬に港湾のほうは現地査定を行なう予定でございます。  三番目には、天災融資法の適用でございますが、これも過般の委員会で、特に特例的に天災融資法発動せい、こういうふうなお話がございまして、あの際も申し上げたのでありますが、天災融資法の通常の発動基準が三十億になっておる、それに対して、局地的な災害の場合はおおむね十億円をめどにして運用発動する、こういう方針を、すでに四十二年に当委員会中心に御決定をいただいておったのでありますが、その運用は、実はその当時一回だけしか発動いたしておりません。しかし今回は、過般申しましたように、漁業あるいは漁港に集中的な特殊な局地災害である、こういうことで、天災融資特例運用による発動をやりまして、この点はすでに二月八日に政令を公布した次第でございます。その天災融資予定額でありますが、おおむね三億四千万円、これを天災融資として融資することにいたしております。  それから、漁港近代化資金でありますが、これにつきましては、島根県のほうから今日約一億円の融資要望がございますし、その他兵庫県からも三千万円程度の御要望がございますので、この点は融資ワクの増額をすることに決定をいたしたわけであります。  その次には、天災融資関連をして主務大臣指定施設資金、これが漁船等について出るわけでございますが、これについては現在県のほうと調整して、おおむね融資総額約三千万円程度、こういうふうなことで、これも、まとまり次第施設資金融資を行なう予定でございます。  次に、漁船保険でありますが、島根県には、水産庁漁船保険中央会の職員をさっそく派遣をいたしまして、現地調査を行なうと同時に、漁船保険組合に対して、これは国のほうは再保険、こういう形になりますが、再保険金を請求するように現在指導をしておるところでございます。  次に、被害漁船復旧対策でありますが、破損いたしました漁船応急修理をいたしますために、造船所も不足しておりますし、船大工も不足をいたしております。それらの整備のために、二月十五日から二十一日までの間、島根県下の実態調査を行なって、そこら辺、場合によっては関連する県等応援等もいただいて、対策を樹立、指導させることにいたしております。  次は、世帯更生資金の貸し付けでございますが、これにつきましても、四十五、四十六年度両年度にわたって、おおむね二千五百万円程度の話が現在詰まってきております。これについては漁船修復能力等との関連もございますので、そこら辺で固まり次第、必要な措置をとるという手はずを整えておる次第でございます。  大体以上のとおりでございます。
  4. 中井徳次郎

    中井委員長 これにて政府当局からの説明を終わります。      ――――◇―――――
  5. 中井徳次郎

    中井委員長 次に、地震による災害対策について調査を進めます。  まず、地震対策に関する種々の問題につきまして、参考人から御意見を聴取することといたします。  参考人として東京大学名誉教授河角広君、東京大学名誉教授萩原尊禮君京都大学名誉教授棚橋諒君、説明員として気象庁地震課長諏訪彰君、以上四名の学識経験者方々の御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本問題につきまして、おのおの御専門の立場より、忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。特に、数日前にロサンゼルスでたまたま地震がございまして、私ども予定をいたしておりました――別にそんなことを予測したわけではもちろんなかったわけでございますが、こういうときございます。ロサンゼルス方々に哀悼の意を表するとともに、どうぞそういう面も含めましてお願いをいたしたいと思うのであります。  なお、議事の進行上、一人約二十分程度に取りまとめてお述べをいただきまして、その後各委員方々より質疑を行ないたと思います。いま質疑通告者は四名ございまするが、まだ多少ふえるかもしれません。そういたしまして、一時前後に終了をいたしたい、かように考えておるわけでございます。  そこで、まず地震対策一般につきまして、河角参考人から御意見を承りたいと存じます。河角参考人
  6. 河角広

    河角参考人 ただいま委員長からもお話がありましたとおり、去る九日に起こったロサンゼルスの大地震は、私たち南関東地域に住み、かねてから大地震来襲を心配している国民に異常な関心を呼びさましました。その直後に、計画されたように、まことにタイムリーに開かれたこの災害対策委員会参考人としてお招きを受け、地震対策の問題について、日ごろ願ってまいりました事柄につきまして申し上げる機会を得ましたことは、まことにふしぎな神の配剤と存じます。  思い起こせば七年前、私は、あの新潟地震直後の国会災害対策委員会におきまして、南関東地域強震来襲に見られる周期性から、この地域震災に関する宿命と、予想されるその災害が国の運命をも左右しかねないほどに重大であることを申し上げ、それに対する措置を間に合ううちに考えていただくことを、私の第一の願いとして要請いたしました。それが今日、世論と皆さまのお力と、政府をはじめとしまして各地方行政機関の御努力によりまして、来たるべき地震に対する被害想定も進み、その対策具体的実施の軌道に乗りつつあることを見ることを得ましたことは、大正十二年の大地震災害をこの東京で身をもって体験し、そのような災害を再び繰り返さないためにこの小さな生涯をささげようと決心いたしました私にとりまして、まことに感謝にたえない次第でございます。  あの七年前の私の発言によって、その翌月、東京都は防災会議の中に地震部会をつくり、被害想定対策険討を始めました。また、国のレベルでの南関東都県地震対策とその問題点検討は、三年前に、防消庁長官から消防庁審議会に諮問されまして、昨年の三月その答申が出ました、国会にも報告され、皆さまも御承知のことと存じます。そして政府は、その答申の線に沿いまして、昨年五月、中央防災会議の中に八つの部会をつくり、その主管を各省に分担させて、それぞれ具体的な対策の立案を始めていると聞いております。また地方行政機関は、このほかに県、市、区とか、さらに消防署、警察署等レベルまで、同様な作業をそれぞれ数年前から各地で進めております。  それら当局者の得た作業結果や意見を、私が聞き得ましたところを総合いたしますと、どなたもすでに御承知かあるいは御想像なさいますとおり、最も大きな問題点は、過密巨大化した近代都市が、多種多様な大きな災害要因を加えてきたため、その対策には絶大な資金努力と時間を要する点でございます。それは国民各自の能力を越え、地方自治体の可能性の限界をも越えたものであり、国の全面的な援助なしではとうてい不可能な大事業であるとともに、国や自治体が全幅の力を傾けても、国民の協力なしではとうてい実現することの不可能な大事業であります。  いまさら選良の皆さまに、この地震対策問題点重要性をるる御説明申し上げるまでもないと思います。昨年三月提出されました消防審議会答申でも、また六年余にわたり、東京防災会議地震部会検討した被害想定の結果も、そのつど新聞、雑誌、テレビ等で報道されましたので、御承知のことと存じます。ことに、最近のロサンゼルス地震関連するもろもろの報道は、皆さまごらんいただいたと思いますが、それだけでもほとんど十分といえるくらい、これらの点に関して報道し尽くされております。  それで、その問題点中の要点だけをかいつまんで、特に最近非常に問題になっている公害に比べて申し上げてみたいと思います。  東京防災会議でも、消防審議会でも、まず百年に一回くらい来襲することが期待されます震度六・〇という、ちょうど大正十二年の関東地震の際、ほぼ東京での平均震度くらいでございますが、それに対して、南関東四つ都県想定された全壊家屋数は約五万五千、危険物によります出火件数を除きまして、そのほかの原因から起こる出火が約千四百、消火不能で拡大していく火災数は、冬の夕食時を考えますと約三百点にのぼりまして、これが大きな都市の広い地域焼け野原にすると推定しております。  このうち、検討の進んでいる東京の場合をもう少し詳しく申し上げますれば、以上の火災想定は、東京の場合は、年間平均風速三・五メートルの場合についての想定でございますが、もしその風が十二メートルというような強いものになりますというと、消火不能の火災数は、二百三十点も東京二十三区内で残ることになりまして、現状のままでは、避難不能の住民数は、東京都内で五十六万人という大きな数に達する。これはもう焼死を免れないであろうと思われる数で、これは防災会議地震部会で科学的に推定した結論でございます。  さらに、もし東京都の二十三区内世帯三百二十万の七割の家庭で、石油ストーブを使用しているときに地震が起これば、さらに、いままで考えました火災のほかに三万件の出火が見込まれます。都民がその六割を消してくれる場合にも、そしてまた、先ほどの年間平均風速の三・五メートルの場合にあっても、この二十三区内は、たくさんの石油ストーブによる出火のために、三時間以内に約二十三区の九〇%が焼け野原になってしまうといち推定が、東京消防庁から出されております。このような事態になったときに、 体部民の何人が避難できるか、全く疑問でございます。思うも身の毛のよだつことでございます。  その上に、都区内には約十万の法規制対象になる危険物取り扱い所がございますから、それらから起こる危険や、新建材などから出る有毒ガスの危険を考えますとき、その災害は、公害と比べまして一体どんな比率になるだろうかというようなことは、私が申し上げなくたっても、皆さまおわかりになることと存じます。  もう私に割り当てられた時間が残り少なくなったと存じますので、しり切れになるのをおそれまして、私は、ここで国に対して要望したいこと、私がいままで東京都、神奈川県あるいは消防審議会などで関係してきたこと、あるいはまた、その他で聞いたことから感じております、国に対して要望したいことだけを、ここでまとめて、最初に並べて申し上げておきたいと思います。そして、時間が許しましたら、それらについて詳しい御説明を申し上げるなり、あるいはまた御質問に譲って、そこでお答えできたらいたさしていただきたいと存じます。  第一は、以上申し上げましたように、地震災害は、このままで放置すれば公害と比較できぬほどの大きさになる可能性がある。そして、これは国と地方行政機関国民が一体となって、もし必要なればいろいろの法規制をも行ない、勇断をもって実行すれば、非常にたいへんな事態ではございますけれども、全く手のつけられないというものではなく、十分その災害を防ぐことが不可能でない問題であると私どもは考えております。  第二の点は、この震災は、住民の環境の悪さから起こることを考えますとき、新たに国で設けることを考えておられます環境省とかあるいは環境庁とかというようなところで、公害とともに、いや、公害に優先して地震対策を考究、実施していただきたいとまで私は思っております。  第三は、以上の実施に際し、文明とともに、全く予想もしなかった新形式の災害も起こることが考えられます。たとえば、危険物から起こる災害とか、新建材から発生する毒ガス、あるいは超高層ビル、地下街の問題、地下鉄、高速道路問題等、いろいろある点を抜かりなく対処するためには、まだわれわれの経験が少なく、わからない点もございますので、海外に起こる震災近代都市に起こっているような場合には、さっそく調査団を送って、そして、このわが国の大都市首都圏震災対策のために生かしていただきたいと思うわけでございます。建設省では、このたびのロサンゼルス地震調査団を派遣すると私は聞いておりますけれども東京都でも同じことを考えておりますので、この調査については、事前に両者間で協議して、重複を避けるとともに、バランスのとれた、遺漏のない調査ができるような体制を政府全体として考えて、実行していただきたいと思うことでございます。  第四に、新しい災害の様相を研究して、その対策行政に移すくらいのところまで研究する一いままでの、ただ地震の理学的とかあるいは工学的の研究でなく、そういう行政に生かせるところまで研究する震災防備学というようなものが現在欠けておりますので、そのような講座や研究機関をつくることを要望いたしたいと思います。  第五に、次期の大地震発生時期については、統計学的には九九・九%以上の確率で、六十九年、プラスマイナス十三年という周期性があり、そしてまた、その危険期あと七年で近づいていくという状態に、現在関東地方があることを考えまして、地震対策を急がなければなりませんけれども、しかし、統計的のことから考えますというと、その危険期の以前でも、強震発生確率はゼロではなく、大体四分の一の確率があることがわかっておりますので、引き続いて参考人として呼ばれております萩原名誉教授に、地震予知連絡会調査研究会長をしておられます同名誉教授に、そのほうで地震予知のための調査研究を推進して、そうして、その情報をなるべく早く対策実施に反映することができるようにしていただくことをお願いしたいと思います。  第六番目には、公害問題で各企業責任がきびしく追及されておりますけれども地震対策につきましても、その施設の内外で大量の死者や大災害を起こさないように、きびしく査察や指導を平素から国でやっていただき、責任のある対策企業側実施してもらうようにして、そうしてその実施を十分監視していただきたいということでございます。  第七番目には、東京都や建設省で、東京江東地域地震対策都市開発方式でやり、そうしてそこに防災拠点をつくることを眼目とする対策をいま実施しようとして研究をし、それの事業に取りかかろうとしておりますが、その事業は、地震対策としては最小限度対策であって、それが東京都の震災対策の最重点であるように考え、そしてそれで十分であるなどと考えていただいては全く困ることでございまして、同じような施設は、東京の中にも、他の地区にも必要でございますし、横浜などにもそのような必要が出てくることを十分認識しておいて、落ちなくそういう施設をつくることを実施していただきたいと思います。  なお、いま申し上げましたその防災拠点火災安全性につきましては、かなり大規模な実験がすでに十回も行なわれましたけれども関東地震の当時に各地に見られました旋風の問題、つむじ風の問題は、まだ学理的にも研究が不十分であり、また実験研究もまだまだめどがついていない状態でございますので、引き続きその点の解明に努力を続けていただきたいと思うことでございます。  それから、その次の問題といたしましては、最近非常に超高層ビルがふえてきておりますけれども、その超高層ビル設計に関係しまして、いまでは力学的な設計というものも行なわれるようになり、どういう地震動が加わればどんなふうにゆれるという計算電子計算機を使ってできますので、そのときのゆれ方からその建物危険性の判断もできますので、それを繰り返し繰り返し行ないまして、地震に安全になるような設計をすることが行なわれているわけでございますけれども、その計算基準にしております地震のときの地面の動き方、いままでの強震記録を使ってそれをやっているわけでございますけれども、その記録が、いままでは外国の地震か、あるいは日本でも小さな地震の場合の記録だけしか使えなかったために、いま東京で考えておりますような大地震が起こった場合に、超高層ビルが、少なくとも中にいる人は、振動によって大きなパニック現象を起こして、階段に殺到したりなどして、大きな被害を起こす可能性があることを考えますと、もっと日本で起こった大地震の実際の記録を用いて、いままで行なわれているような力学的な検討をしていただきたいと思うのでございます。いままではそれができなかったのでやむを得なかったのでございますけれども、最近地震研究所教授研究によりまして、気象庁でとれました強震計記録を、地震計によるゆがみを補正いたしまして、そしてほんとう地動に直して、それを用いて、建物がどんなふうにゆれるかというその応答を計算することもできるようになったわけでございますので、そういうような計算を多数の地震について行なって、そしてそれによって、現在つくられている代表的な超高層ビルなどの安全性を、ほんとう事前に確かめておいていただきたいと思うわけでございます。  それは、なぜこんなことを申しますかというと、その超高層ビルの建っている地盤によりまして、その超高層ビルの共振を起こすような特別な地震動が強くなる可能性があるのでございます。卓越周期と申しますものが、地盤によって、地震動にあらわれる可能性があるのでございますが、その地盤によるそういう現象については、まだ何も調査が行なわれていないという点も困ることでございます。そのことを検討するためには、超高層ビルに共振れを起こすような周期地盤のほうから生じさせる地盤構造について調査をして、そうしてその影響を考えればいいわけでございますので、そのためには、かなり深いボーリングを行なって、そしてその地盤性質を調べて、それによって、どんなふうな地震動に震源から来る地震動が変化して、それで超高層ビルがどの程度動くかというような、そういう解析を行なう必要がある。そのためには深いボーリングがいま必要で、そのボーリングをして、そして地盤性質を調べるということが必要でございますが、次にお話しになります萩原名誉教授会長をしておられます地震予知連絡会においては、この東京の近辺に三の深いボーリングをして、そしてそこで地震観測つをやる予定がありますけれども、そういうような深いボーリングをやるときに、その穴を利用して地盤調査をやるということも必要でしょうし、あるいはまた、現在建てられている超高層ビルの近いところに深いボーリングをして、その安全性を確かめるというようなことも必要になると思います。  こういった問題につきましては、あと棚橋名誉教授からいろいろ御意見も出るかと思いますけれども、私ども地震専門家として、ぜひそういうことは事前に安全を確認しておきたいと思うわけでございます。神奈川県の防災会議で、最近地盤調査を行ない、その地盤図をつくって、そういう点まで、普通の低い建物については検討をすることをやっておりますけれども、超高層ビルのような、長い周期を持つものまでのことが検討できるほどの深いボーリング資料がございませんので、そういう点をこの際ぜひ補足できるように、国としての御助力を仰ぎたいと思います。  以上申し上げましたように、南関東地域の大地震来襲は、統計的にあと十年足らずで危険期に入るばかりでなく、地震予知連絡会では、すでにこの地域に危険な前兆現象が進んでいるという事実を見出しておられます。そして、この南関東地域を観測強化地域指定しておられます。その点もお考えくださいまして、日本の全人口の四分の一近くが集まっており、そしてまた、政治、経済、文化の中心であるこの南関東地域は、その方面の重要性から見ますと、人口の比重よりももっと大きな重要性を持つものと考えられます。南関東地域の問題は、ほんとうに国の運命にも関係すると私は心配いたしますので、この重要な地点の地震対策のために、できるだけのことを間に合ううちに御配慮いただきたいと私は心からお願いして、私のお話をやめさせていただきます。  どうも、時間が超過いたしまして恐縮でございます。(拍手)
  7. 中井徳次郎

    中井委員長 ありがとうございました。  次に、地震予地問題等について、萩原参考人から御意見を承りたいと存じます。萩原参考人
  8. 萩原尊禮

    萩原参考人 地震の予知、地震が前もってわかるということは、日本のような国の国民にとりまして非常に強い願いでございますが、長い日本地震学の歴史にもかかわらず、これは非常にむずかしい問題でございまして、いまだに実用の域に達しておらないのでございます。しかし、この地震予知というものの実現のために非常に多くの努力が払われております。それで、今日、この地震予知というものの研究がどういうところまで進んでおるかということにつきまして、簡単に新説明いたしたいと思います。  ちょうどいまから十年前のことでございますが、昭和三十七年に、学界及び地震に関係したいろいろな仕事に従事しておりまする各省庁の機関の方々、そういう有志が集まりまして、一体地震予知というものを実現させるためにはどういうことをすべきであるかということを、長い間かかって討議いたしまして、計画書を公にいたしました。その後、いろいろ地震予知に関する研究計画が進められておりますが、このときの計画書がもとになっております。  幸いこの計画書が関係方面に認められまして、昭和四十年度から、地震予知研究推進のために特別の予算が出るようになりました。そして文部省に測地学審議会というのがございまして、これが地球物理学に関する観測業務――これはいろいろな官庁及び大学で行なわれておりますが、これの調整を行なうということになっておりますが、この測地学審議会が特に地震予知部会を設けまして、いろいろな研究推進に対して審議をするということになりました。  地震予知というものはまだ研究の段階でありますので、地震予知に関することを業務にしておるところはどこもございませんが、各関係機関がお互いに協力して、本来の業務の形をくずさないで、協力という形で地震予知というものの必要な観測をやっていこう、そういう方針がとられてまいったのであります。  それで、一体この地震予知のためにどういうことをすればよいのかと申しますと、それは要するに、必要な地球物理学的な観測を全国的に行なっていくということに尽きるのでございまして、要するに地震というものは、地殻の岩石に無理がたくわえられて、地球内部からの原因で非常に大きな力が加えられて、その無理に耐られなくなって大きな破壊が起こる、これが地震であります。一般に、ものが破壊するということを前もって正確に予測するということは、非常にむずかしいことでありますが、ただ、そういう岩石に無理がたくわえられていくときに、岩石は変形いたします。そういう変形の進行をはかっていけば、どれだけ無理がたくわえられてきたかということがわかるはずでありますが、これは、地表で測量を行なうことによってわかるわけであります。また、その破壊が近づいた場合に、その変形が異常に進行するということも期待できるわけでございます。そういうわけで、測地的な測量ということが、地震予知にはまず第一に必要なことになるわけであります。  そのほかに、こういった無理がたくわえられ、岩石が変形してまいりまして、弾性の限界を越えて破壊に近づく。そういう場合には、大きい破壊が起こる前に非常に小さな破壊が起こるということが期待されます。これは要するに、地震の活動を、大きい地震から非常に小さい地震までの活動を含めて絶えず監視していれば、それをとらえることができるということになります。  このほかに、そういった岩石に無理がたくわえられたときに、岩石の物理的な性質がいろいろ違ってくる。そういうことをはかっていれば、地震危険性が近づいたということがわかるであろう。そういう見地から、人工地震による地殻の中を伝わる地震波の速度の変化、そういったものをはかるということも計画されております。  そのほか、非常に磁気的な鉱物を含んだ岩石でありますと、それに力が加わりますと、その磁気的な性質が変化し、地上の磁気がごくわずかであるが変化する。そういうことも期待できます。そのために地磁気の観測、測定ということも大切と考えられます。  こういうような見地から、まず日本の全域にわたって行なう観測というものが考えられております。  その一つは、測量でございまして、これは国土地理院が現在日本の測地測量は担当しておりますが、これの三角測量、水準測量等、こういうものをできるだけひんぱんに繰り返していく。元来測量というものは、日本の精密な地図をつくることのためのものでございますが、そういう目的だけのためでありますと、何十年に一回という割りに測量のやり直しをすればよろしいわけでございますが、地震予知の目的からは、もっと非常にひんぱんにこれを行なっていかなければならないわけであります。  そのほか、検潮場の整備という問題がありますが、検潮儀というのは潮をはかる機械でございます。海面の高さをはかる機械。毎日二回海には潮がございまして、上下しておりますが、こういうものを記録いたしまして、一カ月あるいは一年というような非常に長期間の平均をとりますと、その平均の海水面というものはほぼ一定してまいります。これが変化する。これは気象海象の影響を受けますが、これが大きく変化するということは、陸地が隆起し、あるいは沈下したということになりますので、そういう検潮場を日本の海岸にたくさん整備する、そういうことが計画されております。  そのほか、今度は、地震のこういった基本的な観測は、 マグニチュード三以上の地震につきましては、気象庁が業務として観測を行なっておりますのは、皆さま承知のとおりでございます。ただ、こういった基本的な観測に比べまして、もう少し詳しく、ある限られた特定の地域を観測するということが計画されておりまして、これを特定地域の観測と申しておりますが、これについても測量がございます。測地的な測量がございまして、基本的な観測に比べて、さらにひんぱんに、ある特定の地域の測量を繰り返して行なうということが計画されております。  それからまた、地殻変動の観測所というものは、いろいろ地球物理学教室を持っている各大学がこういう観測所を持っておりますが、これに傾斜計とか伸縮計、そういうものを据えまして、地殻変動を連続にはかるということが行なわれております。  あと、先ほど気象庁が、マグニチュード三以上の地震対象として観測を進めているということを申し上げましたが、それよりさらに小さい微小地震、極微小地震という地震、これは、最近の観測技術の発達によって観測できるようになってきた、非常に小さい地震でございますが、これは現在まだ研究段階であるので、各大学が研究観測として行なっております。こういうものを、特別な地域について行なうということが計画されております。  それからまた、先ほど申しました人工地震による地震波伝播速度の変化、これは通産省工業技術院の地質調査所が担当することになっております。  それから地磁気の観測、これは気象庁、運輸省海上保安庁水路部、それから国土地理院、それから各大学、そういったところが協力してやっていくということが計画されております。  組織的にこういった観測を行なっていくというのが地震予知研究計画でございますが、それがスタートしまして約五年ばかりたちましたときに十勝沖地震がございまして、このとき政府は、地震予知の重大性にかんがみまして、さらにこの研究を一歩進めて、実用化を目途として推進するように努力しょうというようなことの閣議了解がございました。そこで、実際にその具体的な方策については、文部省の測地学審議会がまかされた形になりまして、その結果、こういった、ただいま申し上げましたような観測をさらに推進していく、そうして地震予知の実用化に早く到達するようにということのために、総合的な推進体制が設けられることになりました。  これは地殻変動に関するいろいろな資料、主として測地的な測量の結果になりますが、これは国土地理院にあります地殻活動検知センター、実際には地殻活動調査室という名前になっておりますが、こういう一つのセンターにすべての資料が集まる。また気象庁が行なっておりますような業務的な、地震観測から得られる地震予知に必要な資料は、気象庁地震予知観測センターに集められる。また大学関係の資料、これは地震の観測の資料もありますし、地殻変動の観測の資料もございますが、こういうものは、東京大学地震研究所地震予知観測センターに集められる。この三つのセンターに、地震予知に必要な資料がそれぞれ集められまして、これが地震予知連絡会というものに送られる。地震予知連絡会は、現在国土地理院に事務局がございまして、関係機関及び大学から委員が出て構成されておりますが、ここでこの連絡会がいろいろな判断を行ないまして、そしてある観測で異常を見つけたような場合は、そこの観測を強化する、さらに、その異常が地震と関係ありそうに思われたときは、そこに観測を集中していく、そういったようなことを考えております。  こういうことによって、地震予知の実用化ということにつとめることになっております。これが現在の地震予知研究の推進の現状でございます。  以上で私の説明を終わります。(拍手)
  9. 中井徳次郎

    中井委員長 ありがとうございました。  次に、建築学の立場から、地震対策について棚橋参考人から御意見を承りたいと存じます。棚橋参考人
  10. 棚橋諒

    棚橋参考人 日本の建築の耐震性について申し上げます。  一言で申し上げますと、わが国は世界じゅうで最も耐震性の高い建築が建てられた地域であります。地球上の人類の最も多く住んでおります建築は、土を方形にして太陽でかわかして固まった、いわゆるアドベを積み上げてつくった建物であります。それらが大部分でありますが、少し上等になりますと、石を石灰で固めて積み上げたり、あるいはかまで焼いたれんがを使っておるのであります。こういう建築は実に耐震性の少ないものでありまして、激震地へ参りますと、全村これのこわれた瓦れきの山になっておるのであります。  私は若いころ、昭和九年に台湾の地震を見に行ったのでありますが、被害地は台中省の一部でありまして、当時、台湾は日本の領有でありましたので、当地へ進出しておった会社の社宅など、日本風の木造の家もある程度ありましたが、それらは一軒も倒壊したものはありませんでして、日本人の死傷者は報告されておらなかったと記憶しております。それに反しまして、日干しれんが――土碓と台湾では申しておりますが、土碓の住宅は何千戸も破壊して、何千人もの死傷者が出ておったと思います。  これを見て考えることは、地震被害というのは、構造物の破壊とこれに伴う人命の損傷であるということであります。地震によって構造物が受ける損傷が経済的な損失でありますれば、地震のように頻度の少ないものに対しては、補修すればよいのでありますが、人命の損失は、あくまでも防がねばならないのであります。これが建築物を耐震的にしなければならない第一義的なものであると思います。  建築の耐震性を支配するものは構造材料であります。つまり、何を使って家をつくるかということが第一であります。昔の自然材料としては木材が第一でありまして、現代においては鋼材、鉄骨が第一であります。  材料というものは、力を受ければ縮みまたは伸び、曲がるのでありますが、こういう力に対してどこまで抵抗できるかという強さの性質と、こわれるまでにどれだけ伸び、縮み、曲がるかという変形に対する性質があるのでありまして、わずかの変形でこわれる材料をもろいといいまして、大きい変形のできる材料を粘り強いというのでありますが、鋼材は一番粘り強く、木材はそれに次ぎ、石、れんが、土碓はみなもろいものであります。これが耐震性を第一義的にきめる性質であります。  われわれは粘り強い材料を使わねばならない。今日、わが国は鋼材を十分に産出しておるのでありますから、これを用いれば、十分に耐震的な建築ができると思うのであります。コンクリートは、石材やれんがのようにもろい材料でありますが、これに鉄筋を挿入することによって、ある程度粘り強い材料にすることができるのでありまして、この性質を十分に見きわめて使っていけば、鋼材に次ぐ材料となり得ると思うのであります。  私は一九六二年、昭和三十七年にヨーロッパの学会に出席しまして、帰途このとき地震の起こったイランを調査して帰ったのでありますが、震害地はテヘランから百五十キロほどのところにありまして、数部落がちょうど台湾の場合と同じように大きな被害を受けて、全村瓦れきの山というような状況でありました。それから私はテヘランへ帰りまして、向こうの週刊紙の人からインタビューの申し込みを受けまして、その節、向こうの人に申しましたのは、君がたが、土で固めたお皿を落としたらこなごなになってしまうであろう。たとえせとものであっても割れてしまうであろう。しかし、金属のお皿であったら、へこむかもしれないけれども、割ればしない。結局、土硬でつくった家屋を鉄骨化するのが要点であって、これは一朝一夕でできるものではありません。日本では鉄鉱石も少なかったのですが、今日鋼材を十分に生産して、耐震的な建物をつくっておる。一世紀に近い努力によって、こういう状況になったのだという話をしたのであります。  幸いにして、わが国の在来の構造であります木造は耐震性の高い建物でありまして、これは、木造の建物が変形に耐える性質を持っておるからであります。しかし、これでも濃尾地震においては、美濃、尾張に大きな震害を与え、そのときの教訓によって石造、れんが造には禁止的な規定がつくられ、またこの教訓によって、木造建築に対しても、これを耐震的にするための指針が与えられたのであります。  木造建築は、日干しのれんがの建物より格段に強いものでありましても、鳥取、福井の地震では、被害の激しかった地域では八〇%、九〇%が倒壊しておるのであります。しかし、私がそのときざっとした統計をしてみますと、倒壊した家屋の中で死ぬ人は、十人に一人ぐらいの割合だったと思うのでありまして、アドベの建築の、あるいはれんがの建築の死傷率よりは、格段に低いと想像されるのであります。また鳥取地震のとき、激震地のまん中にありました国鉄の官舎群に倒壊したものがなかったということも、これまでの木造の建築に対する耐震指針がよかったということであると思っております。  木造建築には火災というものがつきもののようでありまして、関東の大地震も、死傷者も経済的損害も、ほとんど火災が原因でありました。木造建築の集団というものは、必ずしも地震でなくても大火災を招きやすいものでありまして、江戸はしばしば大火に見舞われておりますし、ロンドンは一八〇〇年代に大火にあいまして、木造建築を禁止したのであります。わが国におきましても、函館の大火とか、あるいは近いところでは静岡の大火、鳥取の大火等があるのであります。木造建築の集団をなくすることが、今後における問題であろうと思います。  鉄は火熱を発生しませんから、建築の構造部分の木材を鉄に置きかえれば、都市の燃えぐさの八五%はなくなるのでありまして、都市大火の危険性はほとんどなくなるのであります。ヨーロッパは、一平方メートルに二十キログラム以下の木材が使われる場合は、鉄骨は裸で、耐火被覆なしで使えるようにするという機運にあります。わが国も世界にさきがけて、いままでのような過酷な耐火被覆の規定を取り去るならば、経済的で軽量で工期の早い鉄骨建築に、木造建築は十年を経ずして置きかえられて、世界で最も安全な都市ができると思うのであります。  地震火災について申しますと、鳥取でも福井でも火災が起こっておりませんが、関東地震では、東京下町の木造家屋の倒壊率は一〇%程度でありましたが、あのような惨事になっておりますのは、消火活動が地震の際にほとんどできないからであります。これらの危険に対処する方策もよく考えねばならぬと思います。しかし、これらは火災都市計画の専門家の問題でありまして、私の専門外でありまして、私の専門は建築構造でありますが、人命をそこなうことのないように、また発火の危険をなくするために、建物が倒れないようにするということが第一であります。それには鉄骨の建築を普及していくということと、都市の大火の原因になりますところの燃えぐさを減らすために、木材の使用を抑制するように一般に啓発したい、こういうふうに思っております。  以上であります。(拍手)
  11. 中井徳次郎

    中井委員長 ありがとうございました。御苦労さまでした。  最後に、火山の活動状況等について、諏訪説明員より説明を聴取いたします。諏訪彰君。
  12. 諏訪彰

    諏訪説明員 本日は、先輩の三人の先生方と御一緒にこの席にお招きいただいて、非常に光栄に存じます。特に私は、気象庁震課長というような現職にありますけれども、きょうはその地震課長というようなポストではなくて、専門とするところの火山問題について、広い立場から皆さんに私の意見を聞いていただく、そういった機会を得ましたことを非常に幸いと存じます。  従来、この地震問題は確かに大きい問題に違いありませんけれども地震問題はいろいろの場において取り上げていただいたのですが、総合的な火山対策というようなことを国会において取り上げていただいたのは、今回が初めてだと思います。そういう意味において、気象庁というような立場だけではなくて、日本の火山学界を代表した意味でも、非常に記念すべき機会だと思います。  日本は、御存じのように地震国であると同時に火山国でありまして、今後とも噴火のおそれがある山というのが、いま施政権が及んでいる地域だけでも大体六十二、三火山であります。そのほかに、昔ドイツの軍艦が日本の近海を通って海底噴火を発見した。しかし、どうも信憑性ははっきりしませんけれども、そういったものがあるものですから、それを足しますと、現在施政権がある地域だけでも六十五、六の火山があることになります。こういうような火山は、結果的には将来噴火しないで済む山も幾つかはあるかもしれませんけれども、そういうようなところで地震が群発したり、あるいは噴気活動が活発化したり、その他の火山性の異常現象というような現象が起こりまして、国民の立場から見ますと、さてどうなることか、大爆発をしやしないか、こういうような人心不安、動揺ということで、仕事が手につかないというようなことを起こすおそれが多いわけで、日本全体としまして、いま申し上げたような火山をマークしていく必要があると思います。そして、近く沖繩が日本に返還されますと、また二つそういった山がふえることになっています。そのうち有史以後、噴火の記録がはっきりしている山は大体五十二ぐらいあります。沖繩を入れますと五十四ぐらいになります。  ごく最近の戦後――お手元にお配りしました表を見ていただくとわかりますように、戦後に噴火した山は二十一火山でありまして、そのほかに地震群発とかあるいは噴気が活発化したとか、そういった異常現象の起こった山が十六火山ありますから、全体として三十七火山が問題を起こしてきた。そしてこれを年々という点から見ますと、全国どこかの山が選手交代して七火山ぐらいずつ噴火をした。そしてそのほかに、いま申し上げたような異常現象を起こしたのが四火山ぐらいずつあった。結局、毎年十一火山前後の山が社会的に問題にされてきている。そして、その表の中で黒く塗りつぶしたマルがありますが、大体平均すると、年に一回ぐらいは人命、財産に相当の被害を出す噴火があった。これは現実の問題でございます。  そのほか、火山問題というのは、実は地震と違いまして、火山があるために日本は恵まれているという面があるわけです。しかし、その恵みが大きいだけに、その恵みを活用しようと思えば思うほど人が寄りつき、施設をつくるものですから、一たび活動すると、昔考えられなかったような災害が出てくるということがあります。たとえば、日本の山紫水明の風光といいますけれども、そういったものは大体火山の織りなしたものだ。大体国立、国定公園の七割は活火山を主体にしておりますし、逆に、いま申し上げたような広い意味の活火山の七割は国立、国定公園になっており、ほかのものも道立公園あるいは県立公園というようなことになっています。  それからまた、たとえば温泉なども、現在熱海だとか伊香保だとかいうような温泉場が千六百カ所ぐらいありまして、現在使われている源泉だけでも一万二千カ所以上もお湯が出ているわけです。これは、自噴とか動力採取とか両方含めてそういうことになりますけれども、その結果、年間には六億数千万トンのお湯が出てきている。こういう意味で、国民の体位向上あるいは保健衛生、医療というような面においても、火山の恵みが非常に大きいわけです。  そのほか、最近では地熱の利用が非常に多角的になってきまして、いろいろの点に使われているのですが、地熱発電というようなことも、現実に岩手県の松川とか大分県の大岳というようなところで実現し、もっとこれが広まっていく傾向にあります。  そういったわけで、古いものになりますと硼酸だとか湯の花だとか石材だとかいうもののほかに、日本で見られるような金、銀、銅の鉱床というようなものも、広い意味の火山活動のたまものですけれども、特に近年においては、観光開発というようなものが非常に進んできたわけです。そのために、戦前は木こりか山伏しぐらいしか登らなかったような山に、現在では活動火口の付近まで一日に三万人、四万人登り、たむろするというような山ができてきています。したがって、もとは山のふもとまで石が降ってくるとか溶岩流が流れてくるとかいうようなことがなければ、まあ山の木が燃えるという程度で済むはずだった噴火に対して、現在では、時と場所によっては、一つの爆発でわずか千メートル石を飛ばすような爆発でも、数千人から二、三万人の死傷者が出るという状態があらわれてきています。  それでは、それに対しまして、火山活動の実態を究明し、そして防災に役立てていく、こういうような研究なり観測なりというものが、日本としてどういうように行なわれてきているかといいますと、地震学と同様に、明治以来過去百年間ぐらいの歴史しかありませんが、特に日本人自身が火山の脅威というようなものを感じて、その実態の究明につとめるようになりましたのは、一八八八年、明治二十一年の磐梯山の大爆発があります。そういったものを契機にし、さらに今世紀の初頭、一九〇二年、明治三十五年の伊豆鳥島の爆発のときに、わずか百二十五名ですけれども、あの島に住んでいた全住民が全滅したことがあります。したがって、その爆発の惨禍を語る人はだれも残らなかったというような事件があったわけです。  そんなことが非常な契機になって、学界も政府も非常に力を入れてくださって、一九一〇年の北海道有珠の明治新山の噴火のときに、大森房吉先生が、火山に地震計を持っていって観測した。それから、その年のうちに浅間山にも地震計を移して観測した。こういうのが世界でも日本でも――要するに火山に聴診器を当てたという最初の機会になっています。そして、翌年の一九一一年に震災予防調査会と長野測候所、いまの長野地方気象台ですが、そこの協力で浅間山に火山観測所ができた。これが日本とすれば最初の火山観測所ですし、また世界的に見ても、ベスビアスの火山観測所というのが古いのですが、これはまあ博物館的というようなものだったものですから、診療所的な意味の、実際に観測をやって山を監視していくというような意味の面からは、世界でも草分け的な立場になったわけです。  しかし、最初にできた浅間の観測所というのは、当時のことで非常に不便だったという点もありますが、山腹にあったために一年じゅうは観測はできない。それで半年くらいしか観測ができなかったわけです。しかし、こういうような観測は、地震観測の場合も同じですけれども、やっぱり連続的に長年こつこつとデータを積み上げていって、そうしますと、これが平熱であるのか微熱であるのか、また、そういう観測を続けることによって、その山の氏素性、体質も明らかにされる。どのくらいどこがおかしいのかというような資料がだんだん積み上がってくるわけですが、そういった浅間の最初の観測所では、一年間通じて観測するということができなかった。それに対しまして、関東震災の前年の一九二二年、大正十一年に、いまの軽井沢測候所の位置に長野測候所の支所ができて、これが三百六十五日二十四時間、山の脈をとっていくという最切の施設になったわけです。その後、この浅間山につきましては、たしか昭和八年になると思いますけれども、東大の地震研究所の観測施設研究施設もできました。それから同時に、西日本では、阿蘇山に昭和の初めに京都大学の研究施設と、気象庁のいまの阿蘇山測候所ができて、観測あるいは研究というようなことが、気象庁と大学の手を携えたような形で、両方の山で、始められたわけです。そういう意味でこの山は世界的に見ても火山観測、あるいは特に噴火予知の研究のゆりかごの地ということができます。  それから、そういった間に、日本火山学会というようなものが、昭和の八年かなんかにできました。それで、火山学会がそれから数年間いろいろ研究を印刷したり発行したりして日本の推進力になったことがあるのですが、しかしその当時、さっき申し上げたように、まだ火山活動を究明し、その恵みを生かして害を除くというような社会的な必要性が乏しかったことと、山の上でずうっと観測するというようなことが実際上できなかった。それは、一つには測器が、機械類が進歩しなくて、なかなか山と取り組むということに困難があったわけです。現実に、そういうわけなものですから、観測調査研究費というようなものも与えられなかった。まあ言ってみれば、いわばさいの川原の石積みみたいなもので、ちょこちょこちょこちょこやっては、個人研究的なことで終わってしまう。こういうような状態が戦前まで続いたわけです。そこへもっていって戦争があったものですから、そこで途絶えた。しかし、私は最初に申し上げましたように、地震研究、観測にしろ、この火山の問題にしましても、じみにこつこつこつこつとやっていかなければ資料は集まらない。と同時に、きょう観測していなければ、きのうまでは普通でも、きょうから異常が出てきた場合には、きょうの観測がなければわからないわけです。そういうようなわけで、観測を絶えずやるということと、それから観測されたデータを刻々解析していくという、そういう体制までとられなければ、火山にしろ地震にしろ、監視も予知もできないことだと思います。  それで、そんなようなことがあったのですが、終戦後火山開発というようなことも、いま申し上げたように非常に急速に発達してきました。特に近年は観光開発というようなものが盛んになり、たとえば観光の面でいいますと、四十三年に全国の国立、国定公園の来遊者、利用者の数は、四億一千万人余りだという厚生省の統計が出ております。そういうようなわけで、老若男女が年に四回は国立、国定公園へ行く。その大部分は、ほとんどは活火山を主体にしている。こういうふうな状態になったわけです。  それと同時に、また一般住民の立場から見ましても、桜島の大正三年の噴火のようなものがあれば、いまはあの付近の危険区域の人口というものは三、四十万人にもなっている。また北のほうに目を転ずれば、北海道十勝岳においては、大正十五年に爆発のほかに大泥流が発生して、二十キロも先まで、あっという間に住民が泥に埋まって、百数十人の人がなくなりましたけれども、いまは人口はどんどんふえてきておるわけですから、いまそういう現象が野放しにされていたら、やはり数千人の被害を出すというようなことが起こり得ると思います。それから冨士山などにしましても、宝永四年、一七〇七年の噴火の、たとえば灰というようなことを考えてみますと、川崎、横浜付近でさえも四、五センチメートルも灰が降る。もう富士宮だとかあの辺、小山だとかああいうところでしたら一メートル、二メートル灰が積もるというようなものですから、もしこういう山が爆発したら、関東震災ほどでないにしても、日本の中枢は致命的な打撃を受けるだろうと思うわけです。それから、草津白根とか阿蘇山のごときは、先ほども申しましたように、一日に四万人くらい来ることがあります。これはもう近年において急にそういう状態になってきたわけです。  それで、戦後においては、そういった経験がもとにありまして、しかも火山観測とか噴火予知の学問の進まなかったあれは、大体火山現象を実態をきわめるというようなことになりますと、物理的なメスの入れ方、ものの考え方、地質岩石学的なものの考え方、メスの入れ方、あるいは化学的なガスの分析、あるいは地理的なものの考え方、こういうようなものを総合してこそ初めて火山の実態なりが究明され、また予知も十分にできるようになる。ちょうどお医者さんが血沈を調べ、便を調べ、体温を調べ、レントゲンの写真をとる、こういうようなかっこうで初めて予知というようなことにも結びついていくわけですが、日本の教育制度が大体物理学科、地質学科、化学科と、こういうような分け方で明治以来やってきているものですから、そういうのがばらばらにしか行なわれなかったというようなことも弊害があったと思います。  そういうようなことから、戦後昭和二十七年に明神礁の噴火のありましたころ、いま引退されました、地震研究所におられた水上武先生と私は語らって、電話で呼び寄せられる程度の人を糾合して、毎月いろいろの角度の人を集めて談話会をやるというようなことを、昭和二十七年に始めたわけです。そういうようなことがだんだん発展して、昭和三十一年のいまころになって初めて日本火山学会というものができたわけですが、名前の点では戦前にあった火山学会の名を踏襲していますけれども、質的にはかなり違ったものが新しく生まれてきたわけです。  しかし、いま申し上げたように、社会の必要性は増大し、またかゆいところに手の届くような測器が出てきたというようなこともありまして、近年においては急速に進歩して、火山専門とまでもいわれないかもしれないけれども、火山学会の会員というのはいま四百数十人に達しています。そういうような過程において、そこの表を見ていただけばわかりますように、日本火山学会が再興されて、そして昭和三十七年には、日本学術会議と国際測地学・地球物理学連合の共催で、日本で噴火予知に関する国際会議をやった。これが世界的に見ても非常に成功をおさめたわけです。  いま申し上げたようなわけで、私は大学の仲間と手を携えてそういった学問的な進展とほとんど軌を一にして、気象庁の組織的な観測を打ち立てるということを努力したわけで、たとえば日本火山学会ができたと同じ年に、気象庁が初めて火山観測という名の予算をいただいた。それまでは、いろいろ共通経費というような中から捻出するという程度のことしかやっていなかったわけです。それから国際火山学会議をやったというときに、初めて文字どおり全国をカバーするような形の組織的な観測体制をつくるということがスタートしたわけで、大体五年間にわたって、初めて合わせて二億円余りの観測研究施設が整備されたわけです。その前は非常に微々たるもので、三十一年に初めてついたのですけれども、全国の山に対する調査経費は百五十万くらいしかなかった。ここにおいて初めて、国家事業らしい体系ができ上がってきつつあるわけです。  どういうやり方かということはあとにしますけれども、この表を見ていただくとわかりますように、偶然ですけれども、そういった整備に関連して、四十年から火山情報というものを業務的に各官署、測候所、気象台が出すようにした。火山の実況を公表して、今後当分は山に登ってはいけないとかいうようなことを発表するように業務化されたわけです。これによって、それまで黒いまるが幾つかありますけれども、その業務化された時点からここ数年間、要するに黒いまるがなくなっているということが、これは二億円の投資にしては非常に効果があったんではないかと、私は自画自賛しています。もちろん、実はこの期間は大きな火山活動というものがなかった、まあ専門的な立場から見てそういうことはいえます。しかし、さっきから申し上げているように、阿蘇の火口に三万人、四万人来ているときにばかんとやれば、大きな活動はなくても、被害は従来出ているわけですから、こういった整備の効果というものは、これである程度実証されているんではないかと思います。しかし、いま申し上げたように、これだけの火山国で、初めはわずか年間百五十万だった。あと、いよいよ本格的だと称して五年間で二億円投じたのが、国として本格的に火山対策として投じられたものです。そういうような意味において、もちろんこれでは十分ではないわけです。  それで、それでは内容的にどういう観測を進めていけば、山のおこもりができ、十分に恵みを生かしながら害を除くことができるかということを考えたいわけですが、その場合に、結局噴火の前兆現象をつかまえるということが、地震と同じことになると思います。それで、大体萩原先生の御説明のようないろいろの現象が考えられるわけですが、火山におきましては、特に火山性の地震微動の観測とか、あるいは地形変化、地盤変動の観測、あるいは土地が伸び縮みするとか、傾斜するとか、上がり下がりする、あるいは非常に局所的ですけれども、火口の深さが浅くなったり深くなったりする、こういった地形の変化を追跡していく。それから、電磁気学的な立場から地磁気とか地電流、そういったものの異常な変化を追っていく。あるいは熱学的な立場から地温、噴気温などの温度をはかっていく。あるいは化学的な立場から火山ガスや温泉の量とか成分などの変化を追っていく。こういうようないろいろの方法がありますし、また同時に過去の噴火の記録、文献を調べること、あるいはいろいろの山の地質構造あるいは地形、岩石の種類とか、こういうようなものを調べて、いわば火山の氏素姓、体質をそれぞれについて調べて、そして今後噴火が起こるとすれば、どういったたぐいの噴火がこの山では起こりやすいかということも調べておく必要があるわけです。  そういうようなことをやるわけですが、まあ私の考え方としては、六十幾つの山をのべつまくなしに観測していくというわけにはいかないわけですから、活動性と、それからその地域でもし噴火が起こった場合に人命の損失というようなことを考えて、危険区域の中にどのくらい人が立ち入っていたり住んでいるかというようなことを考えまして、活動性と社会性から、各火山の活動の監視の必要度の大小を評価する。そうして大きいほうにはAクラスと名づけ、順次B、Cクラスと名づけて、Aクラスにはいわば総合病院をつくる。それからBクラスには診療所程度のものをつくる。そしてそれによって無医村を解消していく。そしてCクラスは、まあもよりの気象官署で、特に火山の専門という人は平生はいないわけですけれども、異常現象の発見につとめるというわけですが、それだとB、Cの山については非常に不備になるものですから、これは機動観測班、いわば移動病院をつくっておいて、全国の約半数の各火山について、定期巡回精密健康診断式に機動観測を繰り返していく。数年に一回はよく調べておく。それから同時に、何か異変が起きたときに、それから経費を捻出するとかかんとかいって手間がかからないで、即刻立ち上がって事務が展開できるように、緊急調査をすみやかにできるようなことをする。そういう意味で機動観測班を全国的な対象としてつくる。こういうようなことを、昭和三十七年以後の展開で始めたわけです。  しかし、それによって常時観測の体制ができましたのは、Aクラスのそこにありますような四火山とBクラスの十数火山に限られています。しかも、その観測の種目やいろいろも、一度にできないものですから、主として振動観測に限られている。それから振動観測の点も、ある程度まだ乏し過ぎるというようなことがあります。したがって、機動観測も同時にできたわけですが、形、骨組みはできたけれども、これから肉づけをしないと実際の火山活動監視の要望にはこたえ切れない。要するに、ちょっと地震ががたがたあっても、あるいは何かうわさがあっても、しょっちゅう赤ランプをつけて、安全率をかけて赤ランプをつけっぱなしということでは、火山の恵みを生かすことにはならないわけですから、いろいろ問題があるわけで、必要なときに必要な情報なり予報なりを出す、必要でないときは早く解除する、こういうようなことがだんだんできていかないとだめなわけですが、いまの点ではそういうことが十分にはできない、十分というか、ほとんどできていないわけです。ただ青天のへきれき式の噴火はなくなったけれども、赤ランプのつけっぱなしという状態があるわけで、それをやるためには、総合的な調査と観測網を早く整備する必要があると思います。これについては、何しろ山の数が限られているものですから、地震対策と違って、まあ私は、せいぜい十五億円もかければ、日本の山から噴火による人命の損失というようなことは追放できていくのではないかと思っています。  それに関連して、要するに日本の火山地域が開発されていく場合に、いろいろの観光施設ができて、山の上まで汗をかかないで行くようなところが一ぱいあるわけですけれども、あまりいろいろのロープウエーができ自動車道ができるということで、せっかく精密な観測をやろうとしても、自動車の衝撃がじゃまになって観測ができないというような山が一ぱい出てきています。今後早くこういう施設を整備して、そういったところにはあまり自動車など近づかせないというようなことをやらないと、将来、実際にもっと観測の必要度が出てきたときでも、もう観測すべきいい場所は、観測所をつくるいい場所はなくなっているというようなことにもなるのではないかと思います。  非常にざっぱくで、あれこれ雑然と、長々と申し上げて恐縮に存じますけれども、これで私の御説明を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  13. 中井徳次郎

    中井委員長 これにて意見並びに説明の聴取は終わりました。
  14. 中井徳次郎

    中井委員長 これより、参考人各位並びに政府当局に対して質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、たくさんの御質疑のお申し出がございまして、六人いらっしゃいますので、願えますれば十分ないし十五分程度でひとつ御協力が賜わりたいと存ずる次第でございます。  それでは、最初に羽田孜君。
  15. 羽田孜

    ○羽田委員 私は、まず、二月九日の大地震でたいへん大きな被害を受けられました、ロサンゼルス並びにその近隣の住民皆さま方に対しまして、はるかより心からのお見舞いを申し上げるものでございます。  さて、ただいま河角先生はじめ参考人の諸先生方から、地震に関しましてたいへん貴重な御意見を伺わせていただいたわけでございます。私、自由民主党を代表しまして、諸先生のお話の中から、また、このたび起きましたロサンゼルス地震関連しまして、若干の御質問を申し上げてみたいと思うわけでございます。  先ほど来、河角先生はじめ皆さまからのお話がございましたように、もし現在東京に、たとえば関東震災のような地震が起きたら、また、先日ありましたロサンゼルス地震程度地震でももしいま起きたら、一体どういうことになるんだということを、防災会議の推定、また消防庁におきます推定からお話を聞きまして、ほんとに身の毛がよだつような思いをしたわけでございまして、私ども国会におきましてもこの問題とほんとに取り組まねばならないということを、思いを新たにしたような次第でございます。私ども地震に関しましては、この一カ月ぐらいのいろいろな週刊誌等を見ましても、四冊ぐらいのものに、この地震のことについて書いてございます。その見出しなんかにおきましても、最近の地震続出を厳重警戒せよとか、いま大地震で壊滅する地域はここだとか、非常にショッキングなものが各雑誌にあらわれておるわけなんでございます。そして、昨年の日本に起きている各地震、また世界各地に起きました地震等を見ましても、ほんとに私ども、何かおそろしい不安を持つような気持ちでいまおるわけでございます。  そういったことで、私からまずお聞きしてみたいと思いますのは、先ほど来、河角先生、また萩原先生からもお話があったわけでございますけれども地震の予知ということについてでございます。先ほどお話の中に、六十九年地震周期説というのですか、これは河角先生がお述べになっておる説でございます。そこへもってきまして、例の三浦半島また房総半島、そこらあたりにも非常に地盤の沈下が、また隆起が起こっておるというようなことで、大体一九七八年あたりから、この南関東一帯はいわゆる大地震の時期に入るということなんでございますけれども、これは長期的なものだと考えるわけでございます。そこで、たとえばこれが一年前に、ことしこそは起こるぞ、それからまた、何カ月か前に、何カ月後には起こるぞとか、また、何時間前にどうだということがわかりますと、一般都民も、また市民も、それに対する対策というのは立てられるわけでございますけれども、そういった点につきまして、河角先生、また、予知のほうに特に権威のあります萩原先生から、簡単でけっこうでございますので、御意見を承りたいと思うわけでございます。
  16. 萩原尊禮

    萩原参考人 では、私からお答えいたします。  先ほど申し上げましたような地震予知の実用化を目途としていろいろな観測が行なわれておるわけでありますが、ただ現在、こういう研究計画がスタートいたしましてまだ間もない状態でございまして、こういう状態になったらばあと何カ月で地震がある、そういう一般法則はまだつかめておらない状態で、もしそれがつかめたときには、もうすでに研究の段階を脱して、実際に実用の域に入った状態でありまして、こういった現在のような体制で研究を進めていくのではなしに、一元化して地震庁といったようなものができて、そこでやるようになるのだと思いますが、現在はまだそこにいく途上にあるわけでございます。  そういうわけで、私ども非常に経験にも乏しく、また現在集められている地震予知に必要な観測の資料というものも、まだ十分には集められていない状態でございますが、といって、これを長い間の幾つかの大地震が起こるのを待って経験を積んで、それで実用化するということではとうていいかないのでございまして一何とかしてそういった前駆的な現象を見つけて、前もって警報を出すというところに持っていこうということに努力しているわけでございます。  例の新潟地震のときに、偶然のことでございますが、あそこの新潟平野に、例の水溶性のガスを取るために水をたくさんくんで、地盤沈下が起こりました。そのために、新潟平野を含む相当広い範囲に、水準測量がひんぱんに行なわれておりました。そこへもってきて新潟地震が起こりまして、非常に地震前の地殻の変動状況がわかったのでありますが、これによりますと、その震源地の付近は、明治の初年に初めて測量が行なわれましてから、年間一ミリぐらいずつ隆起をしておった。この一ミリといいますのは別に異常な動きではありませんで、日本のようなところでは、至るところ一ミリ、二ミリの変化はあるわけですが、これが地震の起こる数年前から急に上昇速度が加速いたしまして、年間数ミリから十ミリになって、そして地震が起こった、そういうことがわかりました。  こういうふうに、大地震発生前に異常な地殻変動が非常に進行するであろうということが期待されるわけです。そういった異常をとらえようと思って、いろいろと観測を進めているわけです。  また、このほかに、非常に地震活動、小さな地震がたくさん起こるということも期待されるわけです。これは例の松代群発地震のときに、極微小地震の観測によりまして、かの地震の活動区域がだんだん松代町から北東、南西にかけて広がってまいりましたが、これが有感地震が起こり、また被害地震が起こる約半年前から、極微小地震は観測されるようになった。そういうことから、松代地震の場合は、そういった極微小地震の観測によって、ある地域地震活動が盛んになる数カ月前に予測できた、つまり長期的な予報ができたというわけでありますが、こういった群発地震と突然起こる通常の大地震とは、同じにして考えるわけにはいきませんが、ここにやはり共通したものはあるのでありまして、そういった小さい地震の活動、それから土地の異常な変形、こういったものをとらえようと、いろいろと南関東において観測を続けているわけでございます。  ただいまわかっていることは、一九六八年に、房総半島の水準測量を国土地理院が行ないました。この地震予知計画ができる前は、大正十二年の大地震の直後に水準測量の改測がございますが、長い間なかったわけでございます。六八年に再び改測いたしまして、それからまた、続いて一九七〇年に改測いたしましたところが、関東地震後、徐々に半島が沈下しておりまして、大地震のときは、半島の先端は二メートル近く隆起したわけでありますが、その後徐々に沈下しておる。これは普通の状態でありますが、最近の二年になって急に隆起に転じた。しかもその隆起の量が、二年間に一番大きいところで二十八ミリ、二センチ以上、年間十ミリ以上の速度で一応隆起した。年間十ミリというのは、私どもにとりまして非常に異常な速度でございます。このために、関東南部でいろいろな観測を強化するということに地震予知連絡会がきめたのでございます。  その後いろいろの観測を強化するように進めておりますが、国土地理院では、南関東を含んで――いわゆる最近できました光波測離儀というのがございますが、これは光を使って二つの三角点間の距離をはかる機械、こういうものを使って土地の伸び縮みをはかる、そういうことを進めるということをいたしております。しかし、非常に微小地震、極微小地震をつかまえますのには、感度の高い地震計が必要でございます。ところが、非常に大切であります東京の付近は、御承知のように非常に地盤がやわらかい。かたい地盤に機械を置くためには、どうしても深い井戸を掘って、そこに置かなければならない、こういうことになります。ところが、東京の付近では、井戸を掘りましても、この基盤に達するのは相当な距離がございまして、筑波山に出ておりますようなああいうかたい花こう岩、こういった基盤の上にどうしても感度のいい機械を置かなければならない。そうしますと、どうしても何千メートルも掘らなければならない。こういうことで、東京の観測というのは非常にお金がかかるわけでございますが、幸い科学技術庁の国立防災科学技術センターがこの仕事を引き受けることになりまして、その予算も認められまして、埼玉県の岩槻に三千五百メートルの井戸を掘って、そこに地震計及び傾斜計を据えるという計画が進められまして、井戸も今年度中に着工するということになっております。  こういうように観測を進めておりますが、そういったものからいろいろな資料が出てくるまでには、やはりあと二年、三年とかかるかと思いますが、こういう資料がだんだん集まるようになりますと、こういった地殻変動の異常、あるいは地震活動の状態、これが詳しくわかるようになってくるものと思います。こういうことによって刻々地殻の異常と申しますか、地殻に貯えられていくエネルギーの状態、それから、それに対してまた地殻がどう変形していくかといったようなことがわかってまいりますと、非常にわずかな経験しかございませんが、そういうものと照らし合わせて、地震の起こる何年か前、さらに何カ月か前に、そういった異常から判断して、地震が起こる可能性が非常に強くなってきたというようなことを申し上げることができるに違いない、そういう私どもは確信を持ちまして、日夜努力いたしている状態でございます。
  17. 河角広

    河角参考人 ただいまの御質問に関連しまして感じたことを、簡単に申し上げさしていただきたいと思います。  質問者御自身のお考えは違うと思いますけれども公害関係の研究者、公の研究機関責任者がこういうことを言っておられるということを知って、私、実は驚くといいますか、非常に心配しているのでございますが、自然の災害には、まだ人力では防止できないものが幾つもある、そのようなものに対しては、事前発生を予見して逃避するか、災害後の被害をできるだけ小さくするような措置をとるしか手が出せないというようなことを言っておられます。こんな考え方が、非常に有識者が言っていることでございますので、一般に相当深く信じられているのじゃないか、それを私はおそれるのであります。ここの皆さんがそういうことではないと思いますけれども、私は、地震災害というものは、本格的な対策さえやれば、かなりといいますか、ほとんど被害を防ぐことができると信じておりますので、事前対策を行なって、安心して、地震の起こる時期などを問題にしなくて業務を続けられるような社会づくりといいますか、都市づくりをやっていただきたいというふうに考えて、防災問題と取り組んでいるものでございます。そういう意味で、地震予知が、いまのお話のようにできれば非常に有効であるには違いございませんけれども、そうでなくても、もうふだんから対策を講じておいて、安心してやれるようにという体制づくりをぜひお願いしたい。このような間違えた考え方が、ただ公害研究といいますか、対策を進めるための我田引水の議論かとは思いますけれども、そういうことに国がまどわされることがないようにお願いしたいと思いまして、一言申し上げたわけでございます。  そして、私の申し上げましたいろいろの問題につきまして、時間がなくて先ほどは申し上げることができませんでしたから、ここに資料を持ってきてございますので、それをただ一括してこちらに提出させていただきまして、もし御参考になるものだったらごらんいただくようにさしていただきたいと思います。これに、いままで私が関係しましたいろいろの対策関係の結論その他についてはまとめてありますので、それをごらんいただけば、かなりまで――実はことしのといいますか、今月の二、三日前に発行された雑誌に書いたものまでここに持ってきておりますので、対策概要は、国や東京都、神奈川県、あるいは建設省、消防庁などでやったことまで書いてございますものがここにありますので、これを一括して呈上さしていただきまして、私の……。
  18. 羽田孜

    ○羽田委員 予知につきましてまだいろいろとお伺いしたいわけでございますけれども、もうたいへん時間もございませんので、予知がほんとうに精度が高くなればなるほど災害というものが未然に防げるということで、これからも大いに御研究いただきたいことをお願いしたいと思うわけでございます。  ちょうどきょう、棚橋参考人がおいでになっておるわけでございますけれども、最近高層建築というのが、この東京には非常に多くなったわけでございます。特に三十数階建て、また四十階建てという建物がありまして、これにつきまして耐震度はどうだというと、大体どなたも、その設計者のお答えというのは、まあかつての関東震災大正十二年の大震災くらいのものだったらびくともしないのだというお話があるわけでございます。まあ耐震関係に関しましては、もちろんそれ相当の研究を進められた上で、しかも日本の耐震基準といいますか、そういったものも、建築基準が非常に欧米各国に比べましてもきびしいということで、私、それに対してある程度の信憑性というものは、自信を持っておるものでございますけれども、ただ、先ほど先生からお話がありました中に、また新潟地震なんかの経験からいたしまして、いわゆる建物そのものは耐震性の強い建築方法によっておる。しかし、その地盤が弱ければという問題があるようでございますけれども、この問題につきまして、簡単でけっこうでございますので、棚橋先生からお答えいただきたいと思うわけでございます。
  19. 棚橋諒

    棚橋参考人 地盤の弱いところは、それに対する適切な方策があると思います。それをとっておればだいじょうぶだと思っております。
  20. 羽田孜

    ○羽田委員 まあこの地盤に対しては、それ相応の処置があるというお話でございまして、それは当然だと思うわけでございます。もちろん、鉄骨を打ち込むとかいろいろと方法があると思うわけでございますけれども、実際に新潟に起こった地震においてそういう結果が出た。また、今度のロサンゼルス地震において、やはり亀裂が入ったとか、またガラスが飛んだというような事態があるものでございますので、そういった点につきまして、また一そうの御研究をいただきたいと思うわけでございます。  非常に時間が短いものでございますので、あまり突っ込んだ御質問ができないのが残念でございますけれども、いま現在この地震というものに対しまして、施設の面から、また工学的な面から、また自然科学的な面からいろいろと検討が加えられておるわけでございますけれども、一たん地震が起こったときに、この特に一千万の大都市である東京、この不安といいますか、これが特に夕刻ですとか、また人が通勤途上にあるときとか、そういったときですと、非常なパニック状態といいますか、そんな状態に追い込まれるのじゃないかと思うわけですが、こういった点で社会学ですとか、心理学ですとか、また、何か暴動が起こるよというような問題につきましての政治学的なものですとか、そういった研究というものは進んでおるものかどうか、これは河角先生からちょっとお伺いしたいと思うわけでございます。
  21. 河角広

    河角参考人 ただいまの御質問に関して、一応東京都の防災会議あるいは国その他で考えておるということは、申し上げられると思います。  パニック状態が起こるという問題は、これはもう人間の本性でございますので、ほんとうにその現象についての知識が十分身についていて、そうして経験を積めば、そういったときに間違いなく対処できますので、そのためには、住民に十分のPRをふだんからよくやって、そうして訓練を積み重ねておいて地震のときに対処してもらわなければならないというので、その意味で東京都では、おそらく来年度から予算をつけて、いろいろの現象について住民教育をしていきたいと考えておる次第でございまして、ついでに申し上げたいと思いますが、超高層ビルなどの中の住民についても、地震のときに非常に大きくゆれますと、必ずパニックが起こると思いますが、それが階段に殺到するというようなことで、たいへんな事態になりかねないことは、もうおっしゃるとおりでございますので、それを防ぐために、あの建物がどんなになるかという問題について、十分な科学的な根拠のある検討をしておいてやらないと、住民も納得できないと思いますので、それに対する措置を、先ほどのお話の中で、ぜひやってほしいということを私申し上げておきましたので、前の議事録を御参考いただきまして、何かの対策をぜひやっていただきたいと思います。  それから、非常に大きな地震になりますと、火事の問題というのが一番の心配の種になるわけでございますけれども、これも石油ストーブの火事を、先ほど非常に大きな災害になるように申し上げましたけれども、しかし、石油ストーブの火事というのは、東京消防庁実験によりますと、初期ならば、消すのはそんなにむずかしいものじゃない。もう消火器が一つあれば、一分以内だったらわけなく消して、一人で消しとめられる。まあ消火器を一握りちょっと握ってしゅっと粉末をふきかければ、それで石油ストーブの火は消えるというくらいのものでございますので、これは都民にその事実をよく身につけて、自分で自分のうちの石油ストーブは全部消すというようなことができるように教育していただけば、もう何の心配もなくできることでございますので、そのほうの努力をこれから都としては始めたい。そういうためには国として、消火器の各家庭に備えつけとかなんとかというような点で財政的な措置ども考えていただければ、非常に有効かとは思いますけれども、、それもまあ住民にできないほどの問題ではございませんので、できるだけそういうことをやりますというと、もう大災害といえども、先ほどの公害関係の研究者の言うようなことではないと思いますので、ぜひそういう点を、有識者の方がまず理解していただいて、そうして一般国民にまで徹底させていただくいろいろの措置をこれからやっていただけば――もう予知ができても、二、三年前に予知されたところで、対策というのはなかなか時間がかかってできないものでございますから、間に合ううちにと私申し上げますのは、十年くらいの時期は非常にそのためには貴重な、なかなかそれでは短過ぎるくらいにまで思う時間でございますので、ぜひそのことを考えて、そういう対策を軌道に乗せていただきたいと思います。
  22. 羽田孜

    ○羽田委員 いま教育というお話があったわけでございますけれども、、実際に私ども平素感じておりますことでは、この教育という面で非常にまだ不足している面が多いのじゃないかと思います。教育どころか、いわゆる一般の民心を不安に追い込むようないろいろな記事をたくさん拝見するわけでございますけれども、一体どういったときにどういうあれをするのだということの教育というものがまだ非常に足りない。ほんとうにパニック状態といいますか、そういったものになることを私非常におそれているわけでございますけれども、今後とも行政府等御指導いただきまして、その徹底をはかっていただきたいということをお願いしたいと思うわけでございます。  ほんとうに時間がありませんので、最後に一点一点だけ、河角先生にやはりお聞きしたいのでございますけれども、新聞等によりますと、建設省でもさっそくロサンゼルスに対して――ちょうど東京と似たいわゆる近代都市として、ロサンゼルスがもろくも、今度の地震によって大きな災害を受けたということで、これの調査研究のために建設省からも、また東京都からも――東京都の場合は先生が団長でいらっしゃるということでございますけれども、あらゆる分野についての御研究をなさると思うのでございますが、何か構成人員は五名ということでございますけれども、これで十分な御活動ができるかどうか、この点についてちょっとお聞きしたいと思います。
  23. 中井徳次郎

    中井委員長 河角さん、簡単にひとつお願いいたします。
  24. 河角広

    河角参考人 先ほどこのことも一応は申し上げたつもりでございますが、五名で十分だとは決して思いません。東京都の財政ではそのくらいしかできないということでございますが、建設省のほうでも計画があると聞きましたので、そういうメンバーを十分に調整して、そして国からもきでるだけ多数出していただいて、重複のないように、そしてチームワークをとってできるようにこの調査をやらしていただきたいと思っております。
  25. 羽田孜

    ○羽田委員 どうもありがとうございました。時間があれでございますので、同僚議員に譲ることにいたします。
  26. 中井徳次郎

    中井委員長 藤尾正行君。
  27. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいまわが党の羽田委員から、まずロサンゼルスの今回の災害被害者に対します丁重なお見舞いのことばがございましたし、また、本日御出席参考人の先生方に対します、心からのお礼を申し上げておりますので、私も同様であるということを申し上げると同時に、本委員会におきまして、こういった際に緊急にこの地震問題をお取り上げをいただきました委員長はじめ理事の各先生方の御努力に対しまして、心から敬意を払い、お礼を申し上げたいと存じます。私はできるだけ簡単に、羽田委員の御質問とダブらないようにお話を進めてまいりたいと思います。  ただいま河角参考人から、地震というものの被害、これは非常に大きいものであるけれども、これを平素から十二分の対策さえしておけばそんなにこわいものじゃないんだ、むしろこれを被害妄想的に、地震が起こったときにはどこがどうなるか、たいへんなことになるのじゃないかというようなことをやたらにしゃべる、無責任に書く、あるいは公表するということのほうがおそろしいという御発言がございました。私も、まことに時宜を得たりっぱな御発言だと思っております。こうなってまいりますと、ここに私どもがちょうだいをいたしました「東京地方(関東地方南部)における大震火災対策に関するの答申概要」というものをちょっと拝見をいたしましても、六十九年の周期説もあるとか、あるいは予想される災害の予測であるとかということが非常に書かれておりますし、私も、これを拝見しただけでたいへんなことだということを感じるのでございますけれども、これに対します十二分の対策が平素から、国におきましても、各地方自治体におきましても、また国民の間におきましても立てられるということを、この際、この委員会の審議を通じまして国民皆さま方にお伝えができますることを、心から期待を申し上げるものでございます。  しかしながら、私は非常な危惧な思いをする点が一つございます。と申しますのは、この中に書いてございますような、たとえば避難訓練というようなもの一つを取り上げてまいりましても、私どもは、非常に忌まわしい経験でございますけれども、かっての戦争当時、いろいろな想像せられます爆撃に対しまする退避訓練でありますとか、あるいは焼夷弾に対しまする退避訓練でありますとかいいますものを、非常にこまかにかつ組織的にやったはずであります。しかしながら、その効果はあまりあったように私は思えません。こういったことを考えてみましたときに、一たん私どもの間に大災害が起こるということになりましたときに、平素の対策ほんとうに十二分の上にもさらに十二分に念を押してなされることが必要である、かように考えるものでございますが、一体こういった点につきましての対策というようなものが現にどのようにとられておるのかということを一点だけ、河角参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
  28. 河角広

    河角参考人 簡単に御返事申し上げます。  東京都の防災会議で長年にわたって調査してまいりまして、その対策はかなり根本的なところまで進んで、もうほとんど具体的な対策が長期、中期の計画にまでわたって、また現状の対策までできておりますので、それに従ってやるためには、ただ住民に対する、ほんとうにその体制を生かすことができるようなふだんの訓練を積み重ねていくというだけのことであると思います。  それから、いま国におきまして、国の援助で都市再開発の手法によりまして、江東地区に防災拠点を六つつくる。それは予算は、六千億とか五千億とかいうような非常に大きなものでございますけれども、それは再開発の問題で実用になる投資でございまして、それが防災の役に立つものでございますので、防災だけにそんな六千億もかかるというわけではございませんで、そういう手法で避難拠点をつくる計画が、もう本年度から予算がついて具体的に始まっているわけでございますので、そういうものをぜひ早く完成していただく。  それから、先ほども申し上げましたように、そういう必要な地域が江東地区だけでなく、東京のたとえば上野付近とか中野付近とかいうようなところまで必要になりますので、そういう点もお忘れなく、あるいはまた横浜でも必要が出てくると思いますので、そういう点にも国としての応分の対策をお願いしたいと思います。
  29. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いろいろありがとうございました。  ただいま河角参考人から御指摘になられましたように、現実に計画に盛られておりますのは、江東地区に対します六カ所の退避所である。これが将来、上野にもあるいは横浜にも、各方面につくられなければならぬ、こういう御指摘がございました。  そこで建設省にお伺いをいたしますが、今回ロサンゼルスの非常な御不幸な災害に対しましてさっそく調査員をお出しになる、非常にけっこうなことだと思います。こういった地震というようなことに対しまして、江東地区だけで六千億円の退避のための投資が必要である、かような御指摘でございます。ということになれば、日本全国におきましてどれぐらいの投資が必要であり、そうしてそれがどのように早くなされていくかということが、われわれに課されました非常に大きな責任であるということだと思いますけれども、現実に建設省御当局におかれましてお考えになっておられるそういった計画、それの実施状況は現にどうなっておりますか、ひとつ簡単にお答えを願います。
  30. 大津留温

    ○大津留政府委員 御指摘のように、都市の改造あるいは都市計画ということ自体が、すべて地震に対する何らかの効果を持つものであろうかと思います。したがいまして、建設省実施しております都市対策、あるいは道路、ダム、あるいは防潮堤、あるいは建築に対するいろんな施策、こういうものは、いずれも何らかの形で耐震上の効果を持つものであろうと考えております。したがいまして、建設省が考えておりますこれから十年間、二十年間の投資計画というのは、そのすべてが何らかの形でそれに寄与するものであろう、こういうふうに思います。また、建設省実施しております土木研究所、建築研究所のいろいろ構造上の研究というものは、主として地震時における構造耐力が十分かどうかということが主たる眼目でございますので、そういった研究もまた地震対策と言えるかと思います。  しかしながら、それらの研究なり事業はすべて多目的な目的を持っておりますので、純粋に地震対策のみのための調査あるいは研究事業費というものを取り出してみますと、来年度におきましては予算額といたしまして、先ほどお話が出ておりました江東地区の防災拠点の造成事業、あるいは建築研究所の強震測定のための研究費、あるいは国土地理院におきます基準点測量によります地震の予知のための調査というようなものをひっくるめまして十一億四千四百万円、こういうことに相なります。
  31. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいま御報告にありましたとおり、四十六年度の予算におきましても、建設省のこれに対しまする対策は十一億円何がしであります。河角参考人の御指摘になられました、当然われわれがなさなければならない防災対策というものに資するところ、まだまだ至らざるところ多い、私はかように感ずるものであります。したがいまして、今後ともこの問題に対しましては十二分の御留意を払いまして、予備費からでも何でも、必要なものはどしどしと御実行を願いたいと存じます。  次に、私はこの前、実は通産の政務次官をやっておったわけでありますけれども、御案内のとおりの板橋のガス爆発でありますとか等々の爆発事故が、私の在任中においてすら二回ございました。ただいま東京都内、あるいは大阪市内でも名古屋でも、みんな同じであろうと思いますけれども、私どもの住んでおります都市のこの地下、こういったものの中には、そういった非常に危険きわまりない導管が縦横に走っておるわけであります。しかも、その下には地下鉄が走り、その上には非常に過重な自動車の交通がある。こういった状態のもとにおきまして、非常に重大なこういったガスというようなものを通じます導管が、依然として明治以来の鋳鉄管である。しかもそれが非常に古いというようなことが現にあるわけでございまして、それに対しまする対策が、私は一向に進んでいないような気がいたします。この点につきましてはどのようにお考えでございますか。
  32. 河角広

    河角参考人 いまの御質問、非常に大事な点だと思っておりますけれども、その点につきまして、東京都の防災会議ではかなり詳しく調査研究をしておりまして、少なくとも地震の際には、ほっておけばたいへんなことになりますけれども、ガス会社は大きな強い地震を感ずると同時に、もう即刻、自動的に元せんを締める装置までちゃんと持っておりまして、職員もその教育を受けておりますので、自動的な元せん締めがいけない場合にも、職員がすぐ締めるということになります。そうなりますと、ガスの圧力はほとんどたいしたことございませんので、幾らガス管が方々で切れても、大事態に至るという心配はない。ただ、高圧管の中にあるガスの量が少し多くなりますので、それが心配になるかと思いましたけれども、しかし、その量もいま一番大きいのが、一メートル以上の直径を持ったガス管の中に高圧のガスが詰まっている場合にも、それが二十キロぐらいの間のものが一どきにといいますか、それがこわれて漏れるというような場合にも、そのガスの熱量というのは、タンクローリーの中のガソリンの熱量と大体匹敵するくらいのものでございまして、ガス会社では、大体四キロごとにそういう高圧管を締める装置を持っているそうでございますから、そういう点から考えまして、致命的な影響を及ぼすような災害は、ガス管からは起こらないだろうと、われわれは考えております。
  33. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ガス管からは大体だいじょうぶだというお話でございますが、ただいま私どもの政治の日程に上がっております問題に、ガソリンの送油管の、つまりパイプラインという問題がございます。これは鉄道に沿っていくとか、あるいは道路に沿っていくとか、河川敷に引くとか、いろいろ議論があるわけでございますけれども、こういったことも非常に重要なことでございますし、また、一たん災害が起こりましたときに、コミュニケーションが混乱をする、私はたいへんなことだと思います。あるいは水が切れるというようなことになりましても、これは一大事でございます。  こういったことを考えてみましたときに、かつて、もうすでに建設省がお始めになられまして、その効果はある程度確かめておられると思うのでありますけれども、共同溝の利用ということが非常に重大なものになってまいる、かように思うのであります。現在、この共同溝といいまするものが初めて東京都内につくられましてから、約五年近くになろうといたしておりますけれども、それが大都市の中におきましてどのように進んでおりますか。これはひとつ道路局長からお答えをいただきたい。
  34. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 御指摘の共同溝につきましては、共同溝の整備に関する法律に基づきまして、建設省といたしましては、できるだけ整備を進めてきておるわけでございます。現在の方針といたしましては、主として幹線道路の改築事業が行なわれる場合には必ず共同溝を入れるという方針で進めております。  したがいまして、たとえて申しますと、現在国道二百四十六号線、通称玉川通りと言っておりますが、たまたま玉川電鉄を地下に入れるのと、それから、首都高速道路三号線を延伸いたしまして東名高速道路を迎えにいくことになりますが、この工事が同時に始まっておる個所につきましても、共同溝を設置するように、現在設置の工事が進んでおるわけであります。  なお、国道二十号線、通称甲州街道と言っておりますが、半蔵門から新宿に向かっていく道路でございますが、それもたまたま道路を拡幅しております。このときにも、地下に共同溝をつくるようにという指示をいたしまして、幹線道路の整備とともに必ず共同溝を入れる方針で、現在鋭意努力しているわけでございます。したがいまして、国道に関する限り東京都は、今後の工事はほとんど共同溝が入ることになりますが、非常に進捗しております。  ただ残念なことには、ガスがなかなか入りたがらない。かつて板橋の事故がございましたが、この場合にもガスが入っておりませんでした。これは大きな問題でございまして、われわれ道路管理者といたしましては、電気とか電信のみならず、ガスも必ず入るようにということを強く要望しております。特に、ただいま御指摘の地震による災害の場合には、一番大きな事故が起きるのはやはりガスかと思われますので、これはつとめて入れるようにわれわれは慫慂しておりますが、なかなか現在は応じておらないのが実情でございますが、最近東京瓦斯も、わりに積極的に入るようになってきたような情勢でございます。  次に、名古屋でございますが、名古屋は、昭和四十五年度から初めて共同溝が始まるわけでございますけれども、あれは東邦瓦斯と申したと思いますが、これはガスも入ることになっておりまして、名古屋も四十五年度以降推進されることになる予定でございます。  大阪は、あのような悲惨なガス爆発がありましたので、われわれ道路管理者といたしましても、東京と同様、できるだけ入れるように慫慂しておりますが、現在のところなかなか進んでおらないのが実情でございます。  いずれにいたしましても、御指摘のとおり、われわれ道路管理者いたしましては、掘り返しを規制するという従来の方針だけではなくて、都市災害から守るためにも、どうしても共同溝を推進すべきだという強い決意を持ちまして、それぞれの企業者に強く要請しておるのが実情でございます。
  35. 藤尾正行

    ○藤尾委員 大体ただいまお聞きになったとおりでございますけれども、共同溝が着々と新しい道路に沿ってはっけられておりまするが、都市のまん中、いままでの旧市街というところにはなかなかこれが進んでいないというようなこと、あるいはガスがこれに入りたがらない、それとの関連が非常に粗漏になっておる、あるいは大阪でも進んでいないというようなことを、いつまでも放置しておくわけにはいかぬだろうと私は思います。こういった点は、十二分に御研究の上早急に御対策を賜わりますようにお願いを申し上げておきます。  あまり長く御質問をするわけにもまいりませんので、あと一点か二点ひとつお伺いをいたします。  今度のロサンゼルスの事故を拝見いたしましても、高速道路が途中で切れておるというような実例を、写真等で紹介がされておるわけでありますけれども、いま東京都内あるいは大阪市内というものは縦横に走っておりますこういった高速道路網といいまするものが、はたしてそういった耐震性というものを十二分に考えて設計をせられておるものであるかどうか、ごく簡単に、そうかそうでないかという点だけでけっこうでございますから、お答えを願いたい。
  36. 河角広

    河角参考人 ロサンゼルス被害は、私、写真などについております地名を見ますと、震源にかなり近いところで起こった被害であると想定されまして、非常に強かった、われわれが東京地震対策で考えている程度よりも非常に強かったという点で災害が起こったことも、一つあると思います。  もう一つは、アメリカの高速道路設計基準が、日本の道路の設計基準よりも非常にゆるい規制であったということで、私どもの目から見ても弱そうだったという事実がございます。それに比べまして、東京といいますか日本でつくられております高速道路はかなりじょうぶであるというわけで、まあ今度のアメリカにあったようなあの地震でも、中心地帯は非常に強くゆれますので、そういう地震に対してまで安全だとはいえないかもしれませんけれども東京で考えておる程度の、関東地震のときの東京のゆれ方程度ではこわれないということを、われわれ都の防災会議としても了承しているところでございます。
  37. 藤尾正行

    ○藤尾委員 日本の場合には大体だいじょうぶだという非常にお力強いお答えがございましたので、私は非常にこれは安心をいたしのであります。  次に、道路の問題と関連をいたしまして、道路に対します交通量が非常に大きい。これが一たん非常の際にどのような事態になるかということを考えてみましたときに、先ほど河角先生御指摘になられました江東地区六カ所の待避所は、実はあるにはあるけれども、これだけでは十二分ではないのだということでございましたが、私は、とてもじゃありませんけれども、江東地区の六カ所のところへ東京の一千万に近い人口が移動するというようなことは考えられない話でございまして、そんなことはとうていできることじゃないと思います。  こういったことを考えてみましたときに、東京の都心部でありますとか、あるいは非常に重要な部分でありますとかというところに対しまして、こういった非常災害というものに対する特別の避難所というような考え方が、都市計画の中にどの程度加えられておるのか。あるいは今後これをどのように考えていくのか。たとえば一つの例が、皇居というようなものが、東京の都心のどまん中にはあるわけであります。皇居の中にやたらに乱入するわけにはいきませんけれども、こういったところのスペースをどのように利用していくかというようなことを、私は、当然国としても、東京都としてもお考えになられるべきである、かように考えます。幸いにいたしまして、四十五年度の予算におきましても、別にこれといって指摘をせられたわけではないわけでありますけれども、すでに政府におかれましては、これの調査費をお使いになって調査を始めておられると承っておりますけれども、そういった調査がどの程度進んでおりますか、ひとつこの点を最後に一点だけ、お聞きをいたしてみたいと考えております。
  38. 河角広

    河角参考人 いまの御質問に関しまして、先ほども、すでに東京都では、避難に関しては長期、中期計画までつくっておるということを申し上げました。その計画の中には、もう現在開放されております北の丸公園とか、いろいろな皇居の中の公園に開放された部分は、もちろん避難地に使いますし、非常事態の際は、それ以外の皇居の中の地域も避難地として使うことは、計画の中に書いておりますけれども、公にはまだしていないで、非常事態のときには、お願いすれば必ず使わせてもらえるという確信で、ものを考えておりますことを申し添えておきます。
  39. 藤尾正行

    ○藤尾委員 最後にお尋ねをいたしますが、東京の地下鉄でございます。これは東京だけでございませんけれども、こういった地下鉄というようなものが災害に対して非常に弱いとか、あるいはそうでないとかという議論が、いま盛んに行なわれておるわけであります。こういったものがもしかりに弱いとするならば、その弱い部分を補強する措置が当然とられてしかるべきである、私はかように考えるのでありますけれども、運輸省におかれましては、こういった非常災害対策というようなものを、この地下街とか地下鉄とかいうようなものも含めて十二分にお考えになっておられるかどうか、その点だけをひとつお答えをいただきたいと思います。
  40. 山本正男

    ○山本説明員 運輸省の土木電気課長でございます。  先生の御指摘のまず一点、地下鉄の構造物が大震に対して十分であるかどうかという問題、これにつきましては、私どもこの工事をいたしますときには、設計上の強度の計算をチェックをいたしております。  大ざっぱに申し上げますれば、関東震災のあのような地震が参りましても、現在の地下鉄の構造物はだいじょうぶであるというふうに考えておりますが、天災地変のことでございまするので、さらにいろいろな研究結果も加味し、将来改めるべきところがもしもありとするならば、その検討も進めてまいりたいと思います。  次の、災害が起きた場合の対策、その辺のことにつきましてどうかという御質問、これが第二点だと思いますか、電車か運行中に大きな――特にこの場合は地震に限りまして推定をいたしますが、相当いろいろな点で混乱を生ずるかとも思います。     〔委員長退席、米田委員長代理着席〕 躯体がだいじょうぶでございましても、大きな地震が参りますれば、あるいは電車の運行が必然的にストップになるという事態が起こるかと思います。これにつきましては、かねがね、緊急避難訓練をどういうふうにするかというようなことも、私ども指導してまいったと思っておりますし、また地下鉄事業者におきましても、おりに触れこういったような点を反省反すうし、訓練をしてまいっておりますので、だいじょうぶだと思っておりますが、これも、御指摘のような御趣旨にかんがみまして、一そうまた検討もし、努力もしてまいりたいと思っております。
  41. 藤尾正行

    ○藤尾委員 以上で質問は終わりますけれども、ただいまお伺いをいたしました諸点、これに対しまする御回答といいまするものは、私の質問に対する御回答でなくて、国民全体あるいは大都市市民全体に対します皆さま方の責任のある御答弁であるはずであります。したがいまして、こういった点を考えまして、われわれはこのような対策をとっておるからだいじょうぶであるという御趣旨のように承りまして、私は非常に安心をいたしたのであります。しかしながら、それをもちまして十全とはいえないわけでありまするし、また、かりにもし十全でありましても、さらに十全の上に十全を加えるということが当然為政者のとるべき態度であり、特に行政当局におかれましてはそのようなお考えを御徹底をいただきまして、そうして足らざるところは補い、絶対の上にも絶対に安全であるということをひとつ御確認を願って、御精進をいただきたいということを心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  42. 河角広

    河角参考人 私は、いまの御質問に対してでなくて、地震対策について、いままでいろいろ関係の委員会やその他に関係しまして感じましたことは、おっしゃるとおり、ほんとうに十全の上にも十全といいますか、ちゃんとした、しっかりした確信をもって国民の信頼にこたえていきたいという希望に燃えているものでございまして、現在存在するいろいろの施設地震に対する安全性のチェックというものは、必ずやっていきたいと思っておりますが、それに対する調査費というのが、地方自治体などではなかなか出ないという現状でございますので、そういう点をぜひ国としてここで考えていただいて、そういう点まで十分調査できるように――先ほどの超高層ビルの問題などもその一つでございますけれども、大きな土木施設とか重要施設につきましてはすべてチェックができるように、予算的な措置をお願いしたいと思います。
  43. 米田東吾

    ○米田委員長代理 内藤良平君。
  44. 内藤良平

    ○内藤委員 まず、参考人の諸先生には、御多忙のところいろいろ有意義なお話をしてくださいまして、社会党としましても心から御礼を申し上げる次第です。また、同僚の諸君からお話ありましたように、九日には対岸のロサンゼルスで大地震が起きまして、被災なさった皆さんに対しまして、この機会に心からお見舞いを申し上げますけれども、同情を禁じがたいのでありますが、これもまた、他山の石ということばもございますので、こういう機会に、これをひとつ世界の人々のためによく生かしていかなくちゃならぬ、こういう立場で若干お話しをしなくちゃならぬ、参考人の皆さんにもかいつまんで御質問したい、と思っておる次第です。  まず河角先生に。先ほど来いろいろお話が出ましたので、重複させないようにと思っておりまするが、何といいましても、やはりこのロスの大地震あとにわが日本では南関東東京の大地震、こういうことが、国民の皆さんからもたいへんな問題になっておるわけであります。きのうきょうの新聞紙上でもこれを大きく取り上げまして、いろいろ国民の皆さんに警鐘を乱打しておる、こういうぐあいに受けとめておりまするが、河角先生は、事前対策を進めてまいりますと、そうまた心配をしなくてもいいのじゃないか、こういうお話でございました。いろいろ対策も、八項目にわたってお話があったと私承っておりまするが、この場は国会の場でございますので、東京都なり地方自治体でいろいろやっているわけですが、率直に、今日の時点で国に対する最も必要な御要望といいますか、いますぐやってもらわなくちゃならぬという御要望ですね、いろいろ多岐にわたっておるようでありますけれども、逆にいいますと国の地震に対する対策の欠陥といいますか、国の足らざる点といいますか、これをひとつえぐり出して、河角先生から一言――一言といいますか、なかなか要約できないでしょうけれども、まとめてこれだというところをお知らせ願いたい、まずこれをひとつお伺いいたします。
  45. 河角広

    河角参考人 非常に大事な問題を御質問くださいまして、私としても非常に意を強くしたわけでございますが、国としてこの地震対策についてようやく軌道に乗ったということは、先ほど申し上げました。     〔米田委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、その軌道の乗り方が、はたして私の心配しております、十年以内に対策が完成するかどうかというその点から見まして、私は大きな危惧を持っておるものでございます。  先ほど、運輸省でしたか建設省でしたか、地震対策関係の予算の額を伺いましたけれども、その程度の額は、東京都で考えております防災拠点対策費などに比べますと全く微々たるものでありまして、先ほど来申し上げました私の、十年後には非常に危険期に近づくというような統計的な結果を考えますと、それに間に合うように、国と国民と自治体と三つが共同戦線を張っていただくということが一番の大事なことで、そのためには国が音頭をとっていただいて、大きな予算を出していただいてやるよりほかには、なかなか早急に対策が進まないと思いますので、その点をほんとうに心からお願いしたいと思います。
  46. 内藤良平

    ○内藤委員 河角先生、何となく御遠慮なさって御発言なさっておるような感じでございますが、これはもうできてしまいまするとたいへんなことですから、私は、率直に国に対して専門の先生が、たとえば金額にしましてもこの程度のことを、あるいは何カ年計画でやらなくちゃいかぬ、そういったお考えを持っておると思うのですけれども、そういうものをこの場に、私などにお知らせ願えればありがたいと思うのです。お持ち合わせがあると思うのですけれども、いかがでございましょう。
  47. 河角広

    河角参考人 ただいまの御質問に関して、申しわけございませんが、国としてというような大きな問題にしますと、まだ私自身そこまで考えておりませんで、私は、南関東地域が危険に瀕しているというその心配、ただそれだけにいま取り組んでおりまして、その問題だけに限らしていただきたいと思いますが、それにしますというと、東京都の防災拠点六つをつくるだけでも五千億というような予算が必要で、それが、できれば十年間でやりたいというのが、東京都の予算ではできないので、十五年計画でやるといっておりますが、それは都自身である程度はやれるのか、国の援助が必要なのか、どうも私、まだそういう政治の問題までは相談を受けておりませんので知りませんけれども、しかし、先ほど申し上げましたようないろいろの対策をやるというのは、とにかく兆という単位の金が、できれは――十年に一兆円なんというようなそんなけちなことではなくて、少なくとも関東地域南部の四つの都県についての予算というようなものが、やはり年間の予算としても数千億といったような程度のものが必要になるんじゃないか。ただ私、まだ具体案を持たないので、はっきりしたことを申し上げかねますけれども、そういうふうな見当の金を国として御心配いただきたいというような、ばく然とした願いを持っているものでございます。
  48. 内藤良平

    ○内藤委員 ありがとうございました。  東京都としましても、東京都だけで五千億程度の金を十カ年でかけてと、こういうお話なのですね。それも、東京都だけではなかなかなしがたいので十五年ぐらいになる、こういうお話でございます。ロサンゼルスのことなぞを考えまして、五千億を五カ年計画でできます場合にはなお効果がある、こういうことでございますか、いかがでしよう。
  49. 河角広

    河角参考人 地震の起こる時期につきましては、まだ科学的にはっきり推定することができなくて、私の統計学的な研究によりますと、今後二十年、そして前後十三年が危険期ということで、いつ地震が起こるかということについては統計学的には何も推定ができませんので、五年間とか八年間とかそういうものに対策ができれば、いいことは確かでございますが、それが延びたからといって必ずだめだという、何の役にも立たないというわけではないと思いますけれども、しかし、役に立たない場合もあることはおっしゃるとおりでございますので、できるだけ早くそれをしたいというのが私の念願であります。  そういう意味で、いろいろな重要問題の順位を国のレベルで、これはもう経済学や政治や、そういうこと全部の有識者を集めた人たちで、その行政の順位まで決定できるようなほんとうの組織を考えて、そして最終的には東京といいますか、日本の大都市ほんとうの防災都市につくり上げていく最終的な都市計画をきめて、それに従って、それを何年で実現できるかというような経済効果はもちろんですけれども可能性の面まで検討した組織をつくって、この大問題に国として対処していただきたいと思うわけであります。
  50. 内藤良平

    ○内藤委員 次に、やはり河角先生、これは新聞に出たのでありますが、ロサンゼルスの場合は、建造物の基準であるとか、市民対策、ラジオの対策、医療、無線対策、こういうものが生きて安全が非常に保たれた、こういうふうに報道されておりますが、先ほど来先生のお話のございました南関東の場合におきまする事前対策の中におきまして、これらのものは一応取り上げられて、対策としては一応立てられておるものかどうか。ロサンゼルスの例を比較しましてお話し願いたいと思う。
  51. 河角広

    河角参考人 いまの御質問の項目は、各都県防災会議としては、十分いままで考慮に入れて考えてきているものでございまして、非常時に際しましては、もう民間の放送網などまで動員してやりたいという計画は立てましたが、それをほんとうに利用できるところまで、まだ現実に行政面に取り入れてはございませんけれども、考えることはもう十分考えておりますことと、それから神奈川県、東京都などで、かなりの自主的な放送施設を持っております。たとえば消防庁、警視庁等は独自のものを持っておりますけれども、それだけの回線では非常に足りなくて、もっと放送網を完備しないと、火事の問題一つ取り上げましても、どこの地点に火事があるから避難路をどういうふうに変えなければならないかというふうな指令を、住民にまで徹底させるためには不十分でございまして、ヘリコプターその他から、一般住民に短波を使って知らせるというような方法まで、考えるだけは考えておりますけれども、それを順々に地震対策として完備していくその行政的な措置は、まだ手がついてはおりませんが、必要最小限程度のものは――必要といいますか、かなりのものは消防庁、警視庁、それから東京都で連絡網、無電の連絡網を持っておりまして、これはかなり役に立つと思いますけれども、それをさらにさらに大きくしていかなければいけないことは確かでございます。
  52. 内藤良平

    ○内藤委員 ありがとうございました。  萩原先生に若干お伺いいたします。私も気象庁の仕事を若干見学したことがございますが、地震課がある程度で、地震に対しましてはさしたる業務機関がない現状であろうと思います。  先ほど来地震の予知の問題で、いろいろ同僚諸君からもお話がございましたが、何といいましても、前もって地震のおそれを住民の皆さんに知らせる、これが非常に大事なことだと思います。われわれの知っている範囲内でも、なかなか学問的にも容易じゃないということで知っておりますが、先ほどの先生のお話もありましたが、センター的なものとして、気象庁なりあるいは東大というところでいろいろやっておりまして、予知連絡会を持っておる、ここで判断されておるということのお話でございました。この中で常設的なものは、気象庁地震課だけでございましょう。したがいまして、これはほんとうに連絡会議的なものであって、予知センターとしては非常に弱いような感じを持ったわけでありますが、これを相当強化いたしますと、地震の学問ではわが国は世界でも先進国と聞いておりますので、今日よりは相当予知の効果をあげることができるんじゃないか、かように考えたのですが、いかがなものでしょうか。なお強化する余地がある、やりようによっては、地震の予知がもっと学問的にもあるいは情報的にもできる、ここら辺のお考えをお聞かせ願いたい、こう思っている次第です。
  53. 萩原尊禮

    萩原参考人 お説のとおりでございまして、地震予知連絡会というのがございまして、これから私ども努力で、だんだん大きく強固なものにしていこうと思っておるわけでございますが、現状においてははなはだ弱体なものでございます。  なおまた、先ほどお話に出ました気象庁地震観測業務にいたしましても、毎年地震予知計画に基づきまして、地震観測施設の近代化ということがいろいろ行なわれておりますけれども、まだもっと規模を大きくしなければならないと思います。ちょっと、こういうことを申し上げると、気象庁長官におしかりを受けると思いますけれども気象庁全体として大体六千人余りの人がおります。それに対しまして、地震の観測に従事しております者は大体百名余りでございまして、六十分の一ぐらいでございます。その人数からもわかりますように、現在、気象観測に比べて、地震観測のほうは非常に小規模な状態でございまして、毎年整備されつつありますが、なお一そう、もう少し強固なものになってもらいたいという希望を持っております。
  54. 内藤良平

    ○内藤委員 どうも河角先生も萩原先生も、あまり御遠慮が多過ぎると思うのですが、どうぞ率直にお話し願いたいと思うのであります。  私が気象庁へ伺った際にも、地震課の人数なり設備を見まして、これが世界で第一の地震国の日本地震の元締めかと、非常に残念に思ったわけでありまするが、それは四十三年ごろですから、二、三年前でございます。いままた萩原先生から、除々によくなっているけれども、しかし、このとおり、地震がいろいろあちこち出まして国民の皆さんも心配しておる中で、どうもそのほうは進まないような感じのお話でございました。  率直に言いまして、先生、どの程度の金をかけてやった場合におきましては、今日の日本地震の学問でいまよりは正確な、なお前びろな予知ができる、学問的な面から見て、理想的といいますか、先生もお考えがあるんじゃないでしょうか。もしありましたら御発表願いたいものと思います。
  55. 萩原尊禮

    萩原参考人 現在、地震予知計画として特別に地震予知のためについている予算というのが、昭和四十五年度で約六億でございます。これは国土地理院とか気象庁、それから大学、その他防災科学技術センターというようなもの全部含めましてでございますが、昭和四十六年度は、例の東京観測の井戸のお金がありますので、約七億程度と少しふえております。  率直に申しまして、毎年少しずつはふえておりますが、特に南関東の問題もあり、地震の予知ということの実用化を急速に実現しようといたしますと、欲をいえばきりがないのでございますが、私としては、さしあたってとにかく倍増、倍はなくては、どうにも早急にその目的を果たせない、そういうふうに感じております。
  56. 内藤良平

    ○内藤委員 国の対策も十億以上必要だという先生のお気持ちだと思います。ありがとうございました。両先生からいろいろなお話を承りまして、私たちもたいへん参考になったのであります。厚く御礼申し上げます。  なお、これは結論ではありませんけれども政府関係の皆さん、これは何省ということじゃないのですが、あのロスの地震に対しまして建設省が派遣する、東京都が派遣する、こういう話ですけれども政府としてこのロスの問題に対して調査団を派遣することについて、きょう参りました、災害対策特別委員会に関係のある官庁の中で、そういう相談はないのですか。あるいは、その必要を認めておりませんか。あるいは、認めておるけれども遠慮して出さないでおるのか、消極的なのか。そこら辺の政府に対する関係官庁の働きかけ、あるいは働きかけても、政府は知らぬふりしておるのかどうか。建設大臣あるいは東京都だけでは何か弱いような感じですけれども、そこら辺のいきさつをわかっておる方がおりましたら、少しくお知らせ願いたいと思います。
  57. 高橋盛雄

    高橋説明員 お答え申し上げます。  今回のロサンゼルス災害は、都市災害としてわが国の場合にも非常に参考になるということで、私たちとしても非常に関心を持っているわけでございます。それで、その被害の結果を総合的に知りまして、今後のわが国の都市災害の大震対策上取り上げていくべきものについては十分取り上げていきたい、このように思っているわけでございます。  それで、今般の災害は、申し上げましたように都市災害であるということで、都市問題、高速道路の問題、たの他施設問題ということで、建設省が直ちに調査団派遣という話になったというふうに思いますが、なお、実は私どもとしては、去年の五月以来大震災対策の各省の連絡会議を持って、八つの部会を設けまして各項目について検討しておりますけれども、その各省の御意見もこの際十分に伺いまして検討してまいりたい。いずれにいたしましても、外国に出張するということになりますので、その辺の問題もあろうかと思いますが、各省よく御相談して検討してまいりたい、このように存じております。
  58. 内藤良平

    ○内藤委員 きのうきょうの新聞を見ますと、これは詳細わかりませんが、新聞で知った範囲内でも、ロサンゼルスという近代的な都市で、わが大東京あるいは南関東、横浜ですね、こういう方面に非常に類似しておるこの地帯の大震災、たとえば、先ほど来論議されましたガスの問題でも、あるいは地下鉄の問題でも、あるいは高速道路、ハイウエーの問題ですね、こういう問題でも、あるいは自動車の問題でも、いろいろ近代的な大都会の地震の――これは被害者の皆さんにはまことに申しわけありませんが、またとない機会と私は思います。しかも、太平洋の沿岸は地震の多発地帯であります。当然これは、わが日本にも将来来る。諸先生は、もうここ十年以内にあると言っておられる。こういう絶好の機会にこの関係の官庁が、防災会議という名前になっていますかどうかわかりませんが、積極的に出て、そして政府として、国として、学者の先生をはじめ関係官庁なりあるいは大臣なりを糾合した大調査団を出して、そしていろいろな問題をその中からくみ取って、いままでの対策にさらに万全な対策を立てる。あるいは、諸先生のお話にありましたような、いろいろ予算面におきましてもけちなやり方をしておって、せっかくの研究もできない、あるいは地方自治体だけにまかせておく、こういうことを、こういう機会に打破する絶好の機会じゃないかと私は思うわけであります。そういう場合に、関係の官庁の皆さんから政府に対して、そういうことが一言も――一言くらいあるのかもしらぬけれども建設省でやる、東京都でやっておる、この程度では、まことに災害問題、特に地震問題には消極的といわざるを得ない、私はこう考えます。だから、きょうの会合を契機じゃありませんが、積極的にひとつ政府に働きかけて、どこの役所かわかりませんけれども――関係の役所がみんなありまして、中心的な役所がないから、どうもこういう問題はないがしろになっております。自動車事故の問題でも公害問題でも、センターたる役所がないから、だれかやるだろうというかっこうになっておると思います。それで国民の皆さんが思わざる被害をこうむっている今日の現状、これを打破するためにも、これは意見になりますけれども、どうかひとつ関係官庁の皆さんが、この私の意見にだけじゃなくして、でき得るならば――話が飛びますけれども委員長、このわが委員会でもこれを決議するくらいのことをしていただいて、そして政府が率先してロスの災害をひとつ大いに探究して、わが地震日本の将来の地震問題の大いな資料にする、対策にする、こういうぐあいに、私はまず関係官庁に気合いをかけたいと思うのです。どうですか皆さん、私の言うことは無理ですか。これは総理府だけの答えでは――ここへ来た役人で一番えらいのはだれですか。――代表してどうですか。私の言ったことに対して、反論がありますか。やるとかやらないとか、やれないとか、一言言ってください。
  59. 降矢敬義

    ○降矢政府委員 先生のお話をまつまでもなく、中央防災会議がこの問題の統括をやっておりますので、私はけさ次長をして、政府としてどういうことにするのかということを問い合わせさしております。いまお話がありましたようなことでございますが、私のほうではぜひ派遣をして、でき得れば、河角先生もいらっしゃるということでありますので、それに加えていただければ、そういう機会をとらえてぜひ調査いたしたいと考えております。
  60. 内藤良平

    ○内藤委員 もう終わりますが、私、これは緊急動議ではありませんが、委員会理事会等におきまして――ロスの問題を契機に大調査団でも派遣する、これは国会としても、あるいは政府にそれをすすめるとか、何らかの措置委員会としてとっていただきたい。緊急なあれで申しわけありませんが、一言最後にお願いいたしまして終わります。  諸先生、どうもありがとうございました。
  61. 中井徳次郎

    中井委員長 ただいまの内藤先生の御発言、しかと承りました。善処いたします。  次に、卜部政已君。
  62. 卜部政巳

    ○卜部委員 ただいまわが党の内藤委員のほうから、地震災害に伴う防災措置、この政府の欠除について鋭く指摘をするとともに、今後の取り組みについての発言がなされました。したがいまして、この点については重複を避けまして、若干、同僚議員等の発言もございますので、簡単に質問をしてみたいと思います。  そこで、まず河角先生に質問をいたしたいと思いますが、先生のおことばの中に、都市の再開発方式というおことばがございました。その再開発方式というものをちょっと聞いておりますと、南関東に限られた御発言、なかんずく十年間に五千億の予算を計上する程度のものが示されたのでありますが、私はやはり都市の再開発方式というものは、ストックホルムの旧市に見られるように老朽化した場合とか、さらにスラム街のような場合にこれを一掃していく、緑地帯をそこに形成するとか、さらにそこには、当然開発にふさわしい都市への建設がなされてこなければならぬと思っているわけであります。そういうことと相まった中での防災的な措置というものが行なわれなければならない、こう思っているのでありますが、そうした面において、ひとつ先生のほうから、ただその五千億という計上だけではたして事足り得るのか。これは東京都だけだから、政府がしてくれないから、やむを得ずこういう措置をとるのだということで私は了解しているわけですが、前段に申し上げたような展望に立っての再開発をすることが、私は正しいと思いますが、先生の御意見はいかがなものでしょうか。
  63. 河角広

    河角参考人 全くいまの御説のとおりでございまして、もう再開発という手法で、ほかに法律がないので、やむを得ずそれに従って地震対策をやるというような、私としては非常にこそくな手段だと考えております。むしろこの地震対策というものを正面に打ち出した、そして都市地震に対して全くじょうぶなものにつくりかえるというような都市計画まで入れた、ほんとう都市改造という、しかも防災化というものを取り入れた法律なり何なりつくって、それを担当する官庁もつくって、やらなければならないほどのこれは重大事件、それのために、先ほど、環境庁とういようなものが、公害だけではなくて、むしろ地震のほうを主としたものとしてやってほしいという発言をしたわけでございますが、そういうような構想でやっていただきたい。いままでの都市計画というのは、全く防災という問題が入っていなかった計画であったということを、私は非常に不満に思っているものでございますので、この点をぜひ改めて、できれば担当の省ぐらいはつくって考えていただきたい問題だと思っております。
  64. 卜部政巳

    ○卜部委員 先生、そういたしますと、五千億の問題にいたしましてもそうでありますが、そうした先生がいま描いておる構想について、政府にこの問題について強く申し入れたことはございませんでしょうか。
  65. 河角広

    河角参考人 その問題につきましては、先ほど八つの項目をあげまして、具体的にいろいろのことを申し上げましたので、それをほんとうに強力に実施に移していただきたい。そのためには、八つの中にはございましたけれども震災防備学、非常にうまくない名前でございますけれども、私が名前をつけて先ほど申し上げましたけれども、そういうものもまだ卵のような状態にいるのでございますので、そういうものを、ほんとうにいまのような大目的のために進めるとともに、そこで国家計画まで立てられるような学問的な研究所、といっては少しあれですけれども、政治まで含んだような、そういうことまで取り扱える研究所のようなものをつくって、そうして、そこの結論はすぐに政治に生かしていただけるようなふうに持っていっていただきたいと思うわけでございます。
  66. 卜部政巳

    ○卜部委員 わかりました。冒頭に申し上げましたように、東京都民は、幸いにして先生のような方がおいでになって、こうした十カ年計画がつくられておるから、そうは言いながらも不幸中の幸いだと私は思うのです。しかしながら、何といっても政府は全国的な視野に立っての措置をしなければならないのに、東京都それ自体にこういうことをさせるという政治的な欠如を、私は残念に思います。しかし、その問題については内藤委員が触れられましたので、次に進んでまいりたいと思います。  今度は、同じく河角先生に質問をいたしますが、先生は、何か超高層のビルの問題について若干危惧があるようなお話をされたやに、私は聞いておるのです。もし誤解がありましたら、あとから解明していただきたいと思います。  今日、超高層ビルがどんどん立ち並んでおりますが、このビルの設計等につきまして、三百三十ガールの地震に対しては五・一一秒である、その層間変位というものはわずか二センチである。ですから、関東の大震災の三・三倍、これくらいの強震があってもびくともせぬ、こういうようなこともいわれておるわけですが、河角先生のほうからは、こうした問題に触れられまして、これからも研究を深めていただかなければたいへんなことになるのではないかという説明がございました。この点についての一つの関連を、私は若干疑問を持って聞いてまいりましたが、それが私の聞き取り方が間違っておりましたならば、私のほうが訂正をいたしますが、この点について、もうひとつ掘り下げて御説明をいただければと思います。
  67. 河角広

    河角参考人 先ほど、最初のお話で申し上げましたけれども、その内心についていま返事をしろという御質問でございますので申し上げますが、超高層ビルというものが日本で可能かどうかということを検討する最初の委員会に、私も引っぱり出されて入りました。それは東京駅を超高層ビルにしようという計画で、十河総裁のときに始まった委員会でございましたが、それに加わっていたものでございますけれども、そういう意味で、その当時できる限りの科学技術的な検討はしたといいますか、私もしたものと了解しております。しかし、その後科学的にいろいろのデータがふえてまいりましたので、それをも含めて、ほんとうに安心できるかどうかということをこの際、あまり超高層ビルがたくさんできて、あとで失敗だったというようなことにならないように、いまの時点で十分な検討をして進んでいっていただきたいということでございまして、私自身は工学者でございませんので、それが危険であるか危険でないかというような点を抱くということすら不遜なものでございますけれども、ただ、あの超高層ビル設計したほんとう責任者ともいうべき、一番最初の超高層ビル研究委員長をしておられた方のある雑誌の座談会の報告の中に、こういう点は検討が抜けていたということまで書いてあるので、そういう点をこの際はっきりさせていただきたいというだけでございます。
  68. 卜部政巳

    ○卜部委員 では、棚橋先生にお伺いをしたいわけですが、いまの河角先生のお話の中にもありましたように、その超高層ビル設計のときに抜けていたという問題の話にちょっと触れられたわけですが、棚橋先生のほうからは、今度の建築物につきましては大体自信があるというようなお話でございましたが、私の前段の質問に対してどうでございましょうか。
  69. 棚橋諒

    棚橋参考人 私は、現在は、鉄骨の高い建物はみな安全であると思っております。ロサンゼルスでも大体安全であったように聞いておりますが、いま日本でやっております多くの高い建物は、安全であると私は思っております。
  70. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういたしますと、旧基準法によりましては三十一メートル以上の建物を建ててはいけないということがありましたが、それが撤廃をされまして、今日新建築基準法が制定をされておるわけです。それで、これは剛構造だとか柔構造だとかいうことで、建築に関していろいろと論議がかわされてきたこともあるわけでありますが、そういうものが剛柔あわせされて、これからの超高層ビルにつきましては、棚橋先生のお話によりますと絶対にだいじょうぶだということで、確認をしてもよろしいということでございますか。(棚橋参考人「よろしい」と呼ぶ)はい、わかりました。  では、時間もございますから、これは気象庁の地震課長にひとつ質問をいたしたいと思います。  この間、二月四日でありますが、島根県に御承知のような災害発生をいたしました。私はこの委員会におきまして気象庁の方に質問をしたわけでありますが、気象庁の方は、全然気象状況の警報その他あやまちが多くて、皆さん方に御迷惑をおかけしたということで終わっただけでありましたが、きょうは、幸いにして地震課長がおいでになっている。私はきょうは気象庁課長でないと、こうおっしゃられるのですが、あえて私は質問をするわけなんですが、その点ひとつ課長さん、お許しをいただきたいと思います。  その二月四日のときに、島根県の沿岸部に地震のいわゆる感度というものがなかったのかどうか、ひとつお知らせをいただきたいと思います。
  71. 中井徳次郎

    中井委員長 きょうは、説明員でおいでをいただいております。
  72. 諏訪彰

    諏訪説明員 二月四日に、気象庁の担当の職員が御返事をしたのはどういうことなのか、私はその関連がよくわかりませんものですから、その関連をちょっと御説明いただきたいと思うのです。
  73. 卜部政巳

    ○卜部委員 全然わからない……。
  74. 諏訪彰

    諏訪説明員 地震があったということがわからなかったという……。
  75. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうです。
  76. 諏訪彰

    諏訪説明員 起こるということが予測できなかったということですか。
  77. 卜部政巳

    ○卜部委員 あとのことについてもわからない。
  78. 諏訪彰

    諏訪説明員 起こって、その後さらにどうなっていくか……。
  79. 卜部政巳

    ○卜部委員 それ以前もわからない。
  80. 諏訪彰

    諏訪説明員 確かに一つ地震がありましたあとに、それが本震であとだんだん静まっていくのか、あるいは、さっき萩原先生の御説明があったように、大きな地震の前駆的な現象として地震が起こっているのか、そういうようなことが見きわめがつけがたかったというようなことだと思います。
  81. 卜部政巳

    ○卜部委員 きょうは説明員としてのあれですから、あえてその点に触れませんが、内藤委員のほうから指摘をいたしておりますように、私は、やはりこの気象庁の定員の充実、同時に日本国民の生命を守る、そういう立場からして、もっと充実した姿にしていただきたいということから申し上げておるわけです。  まあ関連でございますが、この場合におきましても、地震課長、これは今度気象庁に帰ったら言っていただきたいのですが、海の水が引いて、壁のような波が打ち寄せてきておる。テトラポットというものが、はるか堤防の先にあるのが、ばあっともう湾内に入り込んできておる。明らかに地震による津波ですよ。そういうものがわからない。事前にもその警報が出ないという状態であります。ましてやこういうような、今度のロスのような大地震が起きたときにはどうなるか、こういうことも心配されますので、ひとつその点には十分な配慮をしていただきたいと思います。  続いて、火山の問題について地震課長お話しになっておりますから、ちょっと御質問をしたいと思いますが、御承知のとおりに水陸の分布や地形の高低などによって変化が多い、こういう関係から、自然のいわゆる景勝というものが実にりっぱである。同時に資源も多いということから、火山地帯には住民がたくさん住んでいるということだと私は思います。課長のほうから、いろいろとこれに対する防災のお話がなされておりますが、たとえば湖水ですね、こういうような場合に、水抜けトンネルなんというものをつくっておるんでしょうか、どうでしょうか。その点をひとつお伺いしたいと思います。
  82. 諏訪彰

    諏訪説明員 地震の場合にも、河角先生からいろいろお話がありましたように、地震予知とかいうことと同時に、あるいは車の両輪の立場で、防災措置とか防災科学というようなものがやはり進まなきゃいけないと思いますけれども、火山についても、やはり全く同じようなことがいえると思います。  それで、日本は残念ながら、この火山のメカニズムがどうだというような研究は相当進んでいるんですけれども、溶岩流が流れ出したらどうだとか、あるいは泥流が流れ出すのに対してどうしたらいいかとか、そういうような科学は非常に、大体まあ部門をなしていないというのが現状だと思います。  たとえばインドネシアにおいては、もうオランダ領時代から、ケルートという火口湖から噴火する山があるわけですが、その火口湖に水抜きトンネルをつくって、絶えず水位を調節して、活動が活発になったときでもあまりあふれ出すというようなことのないようにしている。これはインドネシアでさえ、現在そういうことをやっています。それから、ハワイなどでは、たとえば溶岩流の向きをそらさせるために提防を現実に築いてみたり、あるいは流路を変えるために爆弾を落とす、飛行機から空爆してやる。そういうようなことがよその国では、十分ではないですけれども、いろいろ行なわれています。  しかし、日本においては火山の観測すら、昭和三十年に実は桜島の爆発があって、三十一年に予備費として百五十万円、全国的に調べなさいということでとれた。それがそれ以後、翌年から経常費で百五十万円ついて、そして三十七年から初めて数千万円というのを五カ年かけて、日本の火山観測体制というものができかかってきたという程度だものですから、まして防災科学的な調査とか工事とかいうものは、ほとんど行なわれていないというのが現実だと思います。  しかし、たとえば火山の噴火でも、溶岩流が流れ出すタイプの噴火、あるいは打ち上げ花火型に行なわれる噴火、あるいはそれが混合される噴火といろいろありますが、十勝岳の噴火とか、日本において相当の災害を出したものの中には、泥流が山ろくになだれ落ちたというようなのが非常に多いわけです。磐梯山もそうですし、十勝岳もそうなっています。こういうふうなのが起こりやすい山というのはわかっているわけですから、そういうところには、いまお話しのあったようなことも処置していくべきなのが当然だと思います。特に現在火口湖があって、将来ともその火口湖から噴火するおそれのある山は、東北でいいますと蔵王山とか、あるいはこの辺でいいますと草津白根の湯がまとか、あるいは九州でいいますと霧島のいろいろ火口がありますが、こういうようなところに対しては、全部水抜きトンネルをすぐつくるということはないにしても、そういった調査もしておくということは必要だと思います。
  83. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると課長、あれですか、巡回視察だとかあるいは噴火の警報装置、こういうものなどもまだできていないということですか。
  84. 諏訪彰

    諏訪説明員 御返事申し上げます。  いま申し上げましたようなわけで、組織的観測研究体制というものは、日本としては昭和三十七年度からスタートしたという状態で、それに伴う人員の若干の、わずかですけれども増加というのも、三十八年度から数名ついたというような程度のものです。  しかし、十年、二十年前に比べますと、そういった体制も骨組みができかかってきたし、また昔ですと、毎日山へ登って、中腹にあるところへ地震計の紙を取りかえに行くというようなことで、非常に危険と労力とを要したわけですけれど、もいまは、気象庁のやっております火山のたとえばそういった地震観測というようなものは、全部テレメートリングになっています。有線か無線かテレメートリングになっています。そして、たとえば樽前山においては、太陽電池を使って電源にしてやっているというようなことで、火山につきましては、六十余り活火山があるといいましても、社会的に非常に問題になる山というのはせいぜい四十ぐらいだと思いますし、しかも噴火現象も、その前兆現象も、大体火口の中心山の中心から半径十キロぐらいを描けば、そこの中に前兆現象が顕著にあらわれるというようなわけですから、観測をやる場合にも非常に効率的にやれるわけです。いまから十年、二十年前ですと、ただ観測、保守がむずかしいだけではなくて、たとえば地震計の倍率でも、一二百倍とか数百倍どいうような地震計だったのですが、いまでは数千倍でも数万倍でも観測ができる。だから、観測施設をつくれば、寝耳に水に現象だけがどんどん起こってくるということはないわけで、そういう意味では、火山の監視というのは実用化の方向にもう向かってきているのではないかと思います。現実に気象庁では、全国の火山について、年に百回以上は火山情報を出しています。ただ、もっとこれを正確にしていく、そして、よしと呼ばれるような方向へ持っていくことが必要だと思います。
  85. 卜部政巳

    ○卜部委員 時間が来たようであります。委員長もいまお聞きのように、そして先ほど萩原先生が御指摘のように、地震そのものについても気象庁の体制が十分でない。地震全般もさることながら、噴火口の問題等についても、ごらんのように全くインドネシアのそれに劣るような措置しかとられていない、こういう状況でございます。したがいまして、先ほど内藤委員の発言にもありましたけれども、総括的に、この委員会政府に対して、日本国民の生命を守るという立場から、その体制を強化するという決議を、私はぜひともひとつ行なっていただきたいことを申し上げまして、簡単ですが、私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  86. 中井徳次郎

    中井委員長 次に、貝沼次郎君。
  87. 貝沼次郎

    貝沼委員 まず、質問に入る前に、先日アメリカのロサンゼルスにおきまして災害にあわれた方に対して、心からのお見舞いを申し上げるものであります。  さて、ただいままでたくさんの非常に大事な御意見、あるいはいままでの結果等の報告等がありまして、非常に参考になったわけでありますが、私も二、三の点について伺っておきたいと思います。  まず第一点は、河角先生にお伺いしたいわけでありますが、地震の話をする場合には、まずたいていの場合、地震周期的である、こういうことが大前提になっているようでありますけれども、この周期性というものが、はたしてこれが正しいのかどうか、この辺についてのお話を伺いたいと思います。
  88. 河角広

    河角参考人 御返事いたします。  時間がございませんで、私の六十九年周期研究について、それがどの程度確かであるかという証拠を一々あげて御説明ができませんでしたが、ただ、九九・九%以上、九が三つ続く程度以上の確率周期性があるということが、統計学的には確実に証明されております。それについての証明方法は、私が提出いたしました学術的な論文に詳しく書いてございますので、その点、これはデータが、古い地震のもっと新しい資料がたくさん集まってこない限り、またそんなことは、ほとんど現在の日本の歴史学で望みがないことでございますけれども、それがない限り、周期性があるということについては疑う余地がないと私は思っております。
  89. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、もう一点は予知の問題でありますが、これは萩原先生にお伺いしたいわけであります。  予知がたとえばできたといたします。そうして、何年後においてここには地震が起こる、こういうことがわかった場合に、たとえば東京の場合、何年先のことであるならば、その災害に対処することができるとお考えでしょうか、その辺のところをお話し願いたいと思います。
  90. 萩原尊禮

    萩原参考人 私ども地震の予知というものが実現するように努力しているわけでございますが、将来この地震予知というものが相当実用化の域に達しましたときを考えましても、地震の警報を出しても、地震対策が十分とられていなかったら、いたずらに混乱を起こすだけで益がないと思っております。
  91. 貝沼次郎

    貝沼委員 実は私も、その点が非常に心配なわけであります。たとえば天気予報であるならば、明日は雨です、そして雨は降らなかった、こういう場合は、かさを持って帰ればいいわけでありますから、これはたいした問題になりません。しかしながら、地震の場合は、何年後において地震が起こる、こういうふうなことになりますと、その都市自体が、これはもういろいろな意味で大混乱を来たすおそれがあるわけですね。そうして、実は当たりませんでしたというのじゃ、これはたいへんな問題になるわけであります。こういうようなところから、予報の出し方というものが実は非常にむずかしいのじゃないかと思うわけです。  実は私も、まだ学生当時のことでありますが、新潟に住んでおりまして、新潟地震の予報というものを知りまして、――当時は東北大学の中村左衛門太郎先生だと思いますが、そういうふうなことから避難の訓練、にぎり飯のつくり方等まで、当時はみんなやったわけであります。ところが、それではなかったのですけれども、その後やはり新潟に大地震が起こった。そうして、ごらんのようにあれだけの大災害であったわけであります。  こういうふうなことから考えて、確かに河角先生がおっしゃるように、いまから一人一人訓練をしていくならば、これは防げないことではない、私はそう思うのですけれども、しかし、その場合に、たとえばたまたま数人の人、特に東京のように人の出入りの激しいところにおいてはあり得ると思うのですけれども、そういう少数の人たちがその訓練を受け切っていなかったがために火災が起こった、あるいはLPガスの爆発があったとか、いろいろなことがあった場合に、一生懸命やったところも、類焼で焼けてしまったり、吹っ飛ばされたりするわけであります。そうすると、やはり都市自体が大混乱におちいることは間違いないと思うのですね。そうすると、都市に対しては、いまから計画的に、たとえそういう少数の人が訓練を受けていなくても、これが防げるような対策というものを講じておかなければならないのではないかと思うのであります。こういう点につきまして、河角先生はどのようにお考えでございますか。
  92. 河角広

    河角参考人 御返事いたします。  もうおっしゃるとおりの非常な混乱が――実は大正十二年の大地震の十数年前に、東京地震の予言というのが出ました。それは明治三十九年に大地震説ということで、私の先生の今村明恒先生から、地震対策をやれという意味の警告として発表されたのですが、大正四年に、東京地域に非常に地震が頻発した。それが大地震になるのではないか、その前兆ではないかというので、株式相場の下落まで起こったという大事件が起こりました。そのために、学者は捨てておけないで、その予言を学術的根拠がないという説明で圧服してしまったのに、それから八年後にあの大地震が起こったという、そういう例がございまして、地震の予言というものにつきましては、私ども、非常に慎重でなければならないということを肝に銘じて教えられてきたものでございますけれども、私は六十年周期というのが確実にあることを信じておりますので、それを事前対策をやるという方向に皆さんにPRをいたしまして、そうしてその方向でパニックが起こらないようにしたいという念願でございます。  私どもも、そのことを発表する前は非常に心配いたしました。どの程度その真実を一般住民に知らせるべきか、どんな事態になるかという、たとえば火事がどうなるというようなことについても、昭和三十六年に東京消防庁被害想定をいたしまして、非常な事態だということを出しましたけれども、それを発表する前に、していいかどうかという点を非常に慎重にやりましたが、それは発表しましたけれども、たいしてパニックも何も起こらなかった。都民は非常に慎重に受け取っていてくださる。そういう意味で私どもも、ほんとうに順々に、わずかずつその事実を慎重に発表しまして現在に参りまして、最近では非常にショッキングなことも発表いたしますけれども、それに対して都民がパニックを起こしたということも聞いておりませんし、私どもは、それを全然逃げようがないことだといえば、それはパニックになりますけれども、そうでなくて、避ける方法があるんだから、その避ける方向に自分も努力し、また自治体あるいは国にそういう対策要望するという方向に、都民の運動をもっていってもらいたいというふうにもつていくつもりで、いままでそういう発表をしてまいりまして、その方向は、私は誤りではなかったと信じております。
  93. 貝沼次郎

    貝沼委員 私も、やはりある程度のことは前に発表しておかないと、ほんとうにその気にならな いし、また、これは必要だと思うのです。いろいろな地震の記事等が最近出ておりますので、国会においても真剣に取り扱うようになってくると思うのです。また、実際に地震が起こって、それに対していろいろな手を打つことを考えるならば、それ以前に対して手を打つというほうが、はるかに金はかからないし、いいのではないか。まあGNPを伸ばすためなら、これは起こってからやったほうがいいわけでありますけれども、しかし、それは人命尊重の立場からまずいのではないか、こう思います。  したがって、この際問題になってまいりますのが、日本だけの研究資料によるものであるのか、それとも諸外国の各大学等の研究、これと連携をとりながらの研究成果を進めていらっしゃるのか。そうであるとすれば、それはどの辺までの国がデータを出し合って、正確な研究あるいは研究発表等をやっていらっしゃるのか、その辺のところを河角先生にお伺いしたいと思います。
  94. 河角広

    河角参考人 ただいまの問題につきまして、先ほども、悪い名前ですけれども震災防備学といったようなものは、まだ全然、どこの国にも体系はなしていない。ただ、東京都と国の消防庁の消防審議会でこの対策調査し始め、神奈川県その他の県やあるいは市などで対策を考える。全く現状では暗中模索といってもいいような、いろいろのことを考えて、そうして心配になる点を一々いろいろな人から聞いて、それに対して検討していくというような、非常にまあ効果のあがらない作業をいままで続けてきているわけでございまして、もしそういう問題について世界に先進国があったら、それはもうどんなに助かるかわからないのでございますけれども、こういう問題は、日本のような地震国が世界にそうほかにないために、全くほかの国では手がついていない問題でございまして、その外国からの資料を集めてどうとかというような点には、それは建築土木等の耐震工学という面では日本が先べんはつけましたけれども、諸外国が最近は非常に進んでまいりまして、それとの協力は十分行なわれておりますけれども、いまの地震対策というような具体的な政治に関連するような問題については、いまのところ、何もよそから学び取るようなものといいますか、体系的なものがないと私は考えております。  そういう意味で、ロサンゼルス被害につきましても、向こうで、いろいろの点で対策が何もできていなかったということが新聞でも報道されておりますけれども、しかし、そのときに受けた向こうの経験が、日本対策に非常に役に立つ。失敗が多いと思いますけれども、そういうものが役に立つという意味で、調査団として向こうへ行きたいと考えているわけでございます。
  95. 貝沼次郎

    貝沼委員 私も、このロサンゼルス調査というのは、非常にわが国にとって大事なことだと思うのです。したがって、先ほども社会党のほうから、当然これは国としても手を打つべきである、こういうふうな意味のお話もありましたが、私も、これは当委員会といたしましても、強力にそれを推進するように要望したいと思うのであります。  さらに、棚橋先生に一百伺いたいのでありますが、先ほど高層建築の場合安全であると、一言でいってそうだと思うのでありますが、それは、そのビルだけを考えた場合に安全だとおっしゃるのか、それとも、わきのビル等も考えて、たとえば倒れてくるとか、そういういろいろなことがあると思うのでありますけれども、その辺までも考えに入れた上での安全だとおっしゃるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  96. 棚橋諒

    棚橋参考人 私は、高層建築は倒れないという意味で、付近の建物にも別に被害がないと言うて、そういうお返事をいたしましたつもりでございます。
  97. 貝沼次郎

    貝沼委員 外から倒れてきたものに対してもだいじょうぶでございますか。もう一回お願いいたします。
  98. 棚橋諒

    棚橋参考人 その高層建築に外から倒れてくるものですか、それは大きさによりますから、何とも申し上げかねます。その場合によると思います。大きいものが倒れてくるか小さいものが倒れてくるかによっても違いますが、その場合によって違うと思います。
  99. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間が参りましたので、一言だけ河角先生にお伺いいたしますが、現在東京の場合に新しい建築物あるいは古い建築物、いろいろ雑居しておるわけでございますが、私は、あとにできたものほど、地震についてはいろいろ考えているのではないかと思うのです。そうすると、先にできているものがいろいろ地震によって影響を受け、場合によっては、どういうふうになるか知りませんが、たとえば倒れるとかくずれるとか傾くとか、そういうようなことが起こった場合に、そういうことはあり得るとお考えなのか、それとも、そういうことはもう心配する必要ないというお考えなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  100. 河角広

    河角参考人 お答えいたします。  東京都では、実在する建築物の耐震性を十分調査して、そしてどの程度被害があるかという被害想定をやるという方針で被害想定の方法を考え、それからまた、実際にその地域にどの程度地震が起こるかという震度の分布図もつくって、そしてそれに従って建築物の性質までお考えに入れて、どの程度ゆれてどんな被害になるかというような推定までやるというので、基本的な調査を行なっておりますので、現在ある建物が、全然安全であるとか、あるいは古いから心配だとかいうようなことではなくて、実際の建物の個々について調査をして、危険なものは危険というふうにやって安全を期するようにしていくという方針で、現在調査を進めております。  ただ御参考までに申しますと、古いからあぶないという点は、コンクリートなどでは老化現象というのがありまして、それで弱くなるという面がないとはいえませんけれども、古い建物は安全率というものを考えまして、まだ学問的にあまり進歩がしていなかった時代には、非常にじょうぶ過ぎるような設計をしたものもありますので、一がいに年齢だけで被害があるということがいえない。ことに最近つくられます建物は、建築基準法の規定ぎりぎりに、なるべく費用をかけないでつくることが建物設計の名人だというようなことが行なわれておりますので、もし少しでも、設計基準のときに考えた地震のゆれよりも強い地震が来ますと、すぐこわれてくるというようなことが、十勝沖地震などではあったのではないかと私は思っているわけでございます。  そういう意味で、新しい建物が決してすぐ安全だということもいえないということを考えまして、すべてのある建物を耐震的な診断をして、そして来たるべき地震震度を考えて安全の診断をするべきだというふうに考えております。そういう方向で、神奈川県も東京都もいま進んでおります。
  101. 貝沼次郎

    貝沼委員 質問は以上で終わりますが、いずれにいたしましても、地震の問題とかこういう問題は、非常にはなばなしい、また、非常にはでな仕事ではございません。非常にじみな、しかしながらそれは非常に大事な問題である、こう私は思うのです。  私も、自然科学あるいは基礎研究という問題につきまして、日本政府の考え方というものが非常に冷酷であると思うのです。まあ地質調査所あるいはいろんな関係のところも私、見て歩きましたけれども、どこへ行っても困る問題は、やはり予算措置をしてくれない。そしていざというときには、それがなされていないがために起こっている災害が多いわけであります。今度の公害の問題にしたって、これは基礎研究に力を入れてさえおけば、もっともっと早く防げるような問題もあったわけであります。ことに何十万あるいは何百万の人たちが一瞬にして事故にある可能性のあるこの地震問題につきましても、私はもっともっと予算なりあるいは力を入れて、アメリカのアポロ計画まではいかないまでも力を入れるべきであると思うのであります。この点を委員長要望しておきたいと思います。  以上で終わります。
  102. 中井徳次郎

    中井委員長 次に、津川武一君。
  103. 津川武一

    ○津川委員 津川ですが、参考人の先生方、御苦労さまです。ありがとうございます。共産党でございますが、河角先生に、時間がないので項目を並べてお尋ねして、重複すれば、そこのところは総合的に答えていただきたいと思う次第でございます。  一つは、いままで火災のことがいろいろ出ましたが、江東デルタの水でございます。地盤が毎年非常に沈下してくる。地盤が低い。地盤がやわらかい。伊勢湾台風でも、やはり水が非常に大きな被害の原因になったのでございまして、ここはどうすればいいのか。私は防災計画で特別計画を立てられることが必要かと思いますし、十年、十五年とお話が出ましたが、それよりは私、少なくともここだけはもっと期限を縮めていかなければならないのじゃないか、こういうことでございます。この点、先生の御意見、方針。  これと関連して、隅田川の水が地震で割れて落ちたときに浸水する地域がたくさんありますので、こういう水の関係をひとつお願いしたいのです。  第二の問題は、先生も御指摘されたように、十万カ所の危険物の製造所、貯蔵所があるというわけでございまして、新潟地震の場合を考えても、これは何とかしなければならないと思うわけですが、今度の答申を見ましたときに、危険物施設の耐震構造の規制を強化する、こういう答申意見でございますが、私は何かここに、この際でありますので、危険物のそういうものを国民の、住民のおるところから切り離す方法、転送、移す方法、どうしてもしようのない場合には、まわりに安全地帯なり緑地帯なりをつけ加えていただく方法が必要かと思うのですが、消防審議会答申によりますと、耐震構造の規制を強化するということでありますので、もう少し先生の突っ込んだお考えをいただきたいと思うのです。  この危険物関連しまして、石油輸送のパイプライン、これがあった場合に、またこれもたいへん問題になりますので、パイプラインをどうするかなどということの御意見、御方針、これが第二項目でございます。  第三項目は、先生おっしゃるように、風速十メートル以上のときはたいへんな火事になる、こういうことでございますが、この場合東京都の、南関東の、大阪の、名古屋の消防体制がいいのかという、こういうことでございます。御検討されたと思うのでございますが、消防署も足りない、ポンプも足りない、署員に至っては一万人近くも足りないというふうな状態になっておりますので、ここいらに対する端的な御意見を伺わしていただきたいと思うのであります。  四番目の項目は、災害発生時に対する人命の尊重、人の命と健康の尊重のことでございます。関東震災の場合、一番困りましたのは大小便の処置なのです。これは私も、当時の先輩の話を聞いてみたのですが……。  それから、その次に困ったのは、どこのどなたかということの認否と、問い合わせが来るのに応じる体制がない。こういったことが非常に大事なことになると思うのです。  水道が破れる、ガス管が破れる、こうなった場合、水の補給、冬の場合ですと採暖をどうする、収容する場所をどうする、収容する場所に国民を移すだけの輸送運輸機関があるのかどうか。道路がガラスや何かでこわれてしまう、かわらでこわれてしまう、こういうことなんでございます。  その次に、医療機関でございます。十勝沖地震の場合、非常に医療活動がおくれてしまいましたのは、各病院の戸だながガラスがみんなこわれてしまって、薬ビンもフラスコもみんなこわれてしまいまして、医療機関が御自分のあと始末をするだけで一ぱいで、水道がこわれて水を持ってくることで一ぱいであって、どうしても医療機関が動かない。こうなってくると、そういう計画がかなり緻密でなければならない。無電やヘリコプターでいろいろなことをするときに、第一の指令はこれでなければならないのじゃないか。先ほど御飯の話も出ましたが、こういったものが計画の中で最重点にせしめなければならない要項じゃないかと思うのでございます。この点に対する先生の御意見。  その次の項目は、房総半島地帯の隆起が始まった、日本列島の地形の変化が始まったということですが、十勝沖地震の場合、だれも予想していない山くずれ、地割れ、これが一番困ったわけです。今度の防災計画の、消防審議会の御計画を見てみましたのですが、房総半島から三浦半島に対してこういう大きな変化が起きているときに、このことが抜きにされているのじゃないか。ここで地割れ、山くずれで川がとまってしまうことも、洪水が出てくることもありますので、ここいらに対する先生の御意見を伺わしていただきたい。  最後に、国の責任でございます。国政のあり方でございます。東京都が五千億円も計画して十年、十五年と一生懸命になっているときに、国がこれを見ていていいでしょうかということです。  私は、日本のいまの国政の最重点が――先生が言われる六十九年周期でいきますと一九七八年、プラスマイナス十三年というともうその時期に入っておるかと思うので、ここで日本の国の防災をほんとうに先生が考えられていて、国というもの、国家存立の意味合いというものの重点は、私はここでなければならないのじゃないかと思うのです。GNPの増加、これも必要ですが、この増加したものの投資の重点がここでなければならぬじゃないかということを考えておるのですが、先生の御意見。  その点に関連して、先生の周期説と関連して、十年、十五年でいいかという、ここいらあたりをひとつ、どこからでもいいですから、総合的に教えていただきたいと思うのであります。
  104. 河角広

    河角参考人 御返事いたします。  おっしゃるとおり、江東デルタ地帯のゼロメートル地帯が非常に多い、その地帯で堤防がこわれる、あるいは津波が来るというようなことで、浸水の問題は、非常に大事な問題として東京防災会議あるいは国の――先ほど、八つの部会ができて対策を考えているというものの一つに、江東防災総合委員会というものが建設省にできておりますが、それなどで、この問題は慎重に取り上げて考えておりまして、東京都の試算によりますと、内部河川の堤防が一割こわれると、それからの浸水が、たとえ外郭堤防でもって、水門で水を閉じてもそれが三十分くらいかかるといういま見通しなので、そんな状態では、もう十分足らずで江東地区のゼロメートル地帯は浸水が起こるという結論になっておりまして、これはもう非常な大問題でございますので、建設省の江東防災総合委員会ですか、そういうところでは、もうこの問題は、避難拠点と同等くらい重要視してその対策を考え、内部河川の堤防はこわれる心配のないように、その両わきに道路をつくり、あるいは緑地帯までつくって、幅があれば、こわれても浸水はそう起こらないようにするというような計画までいま立てておりますので、この点は大事な問題でありますけれども、かなり近い将来にその対策が行なわれる見通しだと思っております。  それから、その次の危険物取り扱い所の関係でございますけれども、この問題は、確かに十万カ所もありますが、そのうちガソリンスタンドが、非常に多くの数を占めております。ガソリンスタンドの地震による被害といいますか、それもたいしたことはないし、そこからの出火ということも、元せんを締めてくれるというそのことだけを徹底してもらえば、たとえ多少の地震による被害があっても、火事の心配はガソリンスタンドからはないと私ども考えております。しかし、そのほかの危険物につきましては、落下してびんが割れて薬自体で発火するもの、あるいは二種類、三種類混合しますと発火、爆発するようなものもございますので、そういうものについては振動実験までいたしまして、それの格納方法の規制、あるいはどんなたなにどういうふうに置くべきかというようなことまで指導する基礎的な実験は済んでおりますので、消防庁その他で近いうちに、そういう規制は法律的にしてくださると思っております。  その次のパイプラインの問題、これも非常に重要な問題で、現在の交通事情から考えて、こういうものはぜひなくてはならないと考えられるものでございますけれども、これの地震に対する安全性の問題、これは非常に大事で、これから漏れたら非常に心配な事態になるわけでございますけれども、実は原子炉の安全性研究で機械学会が主となりまして、こういうパイプライン系統の地震に対する安全設計基準というようなものが非常に最近進歩しておりまして、その知識を生かして、地震に対しても絶対だいじょうぶなようなパイプラインの設計、あるいはつくることをやるようにすると思いますので、われわれとしては、科学技術を信頼する意味で、それほど心配ないんじゃないかと思っております。  その次に、火事に対する風速が十二メートルというような場合はたいへんな問題になることは、もう私ども自身が非常に心配していることでございますけれども、風速十二メートルというような場合が連続的に、半日なり一日も吹き続くというような確率は一%程度のものでございますけれども、それでも、そういう場合まで慎重に検討したわけでございまして、そういう場合について消防力がはたして十分かどうかという御質問でございますけれども、これは消防力にたよるというようなこと、もしいまの石油ストーブなどや危険物から起こる火災を抜きにしても、先ほども申し上げましたように、東京都内に七百三十二カ所の出火が見込まれる。そのうち六割を都民が消して、二百九十九を消防庁が受け持って消すという、いまその計画でございますけれども、それが風速十二メートルになりますと、二百九十九のうち現有の消防力で消せるのは七十だけであって、先ほど申し上げましたように、それが燃え広がっていきますと五十六万人もの死者が出るというのですから、これを防ぐ方法というのは、消防力の増強とかいろいろな問題をこれからよく考えなければなりませんけれども、消防力の増強は、いまの消防をどの程度持っていなければならないかという消防法の規定がございまして、その基準から見ても、現有の消防施設の充足率というのはまだまだ低いものだそうでございますので、こういう点ももちろん考えていただかなければいけないし、それから、火事の問題につきましては、都民の協力でもっと消すことができるように、その方向からも何か考えなければならない。両方から攻めていかなければこれはどうしようもないことで、風速十二メートルという場合の対策は非常にいま苦慮しているところでございまして、御指摘のとおり大問題だと思います。ただ、そういうことが起こることは気象的に一%の確率でございますので、その点で幾らかの救いはあると思います。  それから、人命尊重の立場から、水の問題あるいは便所の問題、あるいは暖房の問題、これは冬の季節になりますと非常に重大問題でございます。水の問題は冬に限りませんけれども、暖房の問題とかございます。  便所の問題につきましては、これは私ども専門でございませんので、東京都では、これを衛生あるいは医学の専門家を集めまして、そういう専門委員会をつくるなり何なりして、この問題をこれから考えていきたいと思いますが、水の問題につきましては、これは水道のことに関係いたしますので、この水道の耐震性については、かなり防災会議として検討をいたしました。そしてその結論は、新しくつくられている水道管の本管とかあるいは埋めかえをした新しい配管は、かなりなまではだいじょうぶだという結論でございますけれども、また貯水池も非常にじょうぶにできておりますけれども、ただ問題は、地盤のやわらかいところからかたいところへ移るというようなそういう境目で、だいじょうぶだといわれる本管も、ほんとうにだいじょうぶかという問題については、まだ防災会議として調査を要するという態度で、いまその調査費を要求しているところでございます。  それから便所の問題、これは、避難施設をつくるときには、もちろん十分考えなければならないわけです。まあ避難所に多くの人が避難しているというのは、東京全体がたとえば焼け野原になるような事態になってしまえば、またそこから幾ら焼けあとに帰っても安全になるわけでございますので、せいぜい一日くらいの避難所に人がとどまっているという事態に対処できるようなことを考えればというような、少し安易に過ぎるかもしれませんけれども、いまのところそんな考えでおります。そうしてから、水の問題につきましては、飲料水は、水道局関係ではだいじょうぶだろうと言っておりますけれども、これも安心ができませんので、貯水槽をつくって、そうしてそれを消火にも用い、飲料水にも使うようにしょう。実は戦時中につくった貯水槽の水が、現在でもなお、こして使えば飲料水になるというちゃんとした実験結果がございますので、そういうふうにしよう。それから神奈川県では、消防用の貯水槽を、そのままというのではなくて、小学校の庭その他にプールをつくりまして、それも鉄板でつくって、絶対に地震でこわれないようにして水をたくわえておいて、その水をこして飲料水に供しようという計画で、着々とそのプールを増設しつつあります。そういうような意味で、飲料水の問題も、実際の行政的に心配のないようにするという問題は、いまのような見地から、順々にその担当の部局で予算をとってやってもらうようにというところでございます。  それから医療機関の問題、これはもう大事な問題でございますけれども、ただいままで私が関係してまいりました東京都の防災会議地震部会、あるいは消防審議会とか、神奈川県の防災会議地震対策部会といったようなところでは、まだそこまで手が伸びておりませんので、そうして委員にそういうメンバーまで入っておりませんので、別な機関で、むしろこれは厚生省の立場から考えてもらおうという意味で、国の防災会議の八つの部会に非常に期待しているところでございます。  それから、地割れの危険性の問題、これはおっしゃるとおり、非常に慎重に考えなければならない問題で、ことに最近ニュータウンの造成とかいうようなことで、新しく地形をすっかり変えて、そして谷を埋め、山を削って宅地をつくるというようなことが行なわれておりますが、その埋めるときに、いままで民間企業でやっていた場合には、もうかまわず山を削って谷を埋める。そうすると、下は水が流れてるようなところへ土を埋めて、その上に家を建てて平気で売っているというような事態があるわけでございますけれども、そういうものは、地震のときに必ず地すべりを起こして大被害を受ける可能性がありますので、そういう点も十分注意するようにというので、東京都では昨年度、約三万くらいあると思いますが、がけくずれのおそれのあるような危険地帯は、もうすっかりシラミつぶしに現状の、どんな設計のへいがあるとか、あるいは自然の傾斜だとか、それから木がはえているとかいないとか、あるいは傾斜地から何メートル離れたところに家があるか、それは山くずれとか地くずれでくずれる心配があるか、また下の家は埋まる心配があるかというような、具体的な調査を一カ所一カ所全部シラミつぶしに調査して、ほとんどいま完成していると思っております。そういう意味で、地震によってくずれる心配というようなものの被害想定も、これからそれに基づいて行なうつもりでおるところでございます。  それから、国の責任というのは、先ほど来皆さんから非常に申し上げられまして、私も、自分自身災害の問題を非常に心配しておりながらも、それがほんとうに生かされるような対策がやっていただけるかというと、もう国に乗り出していただく以外に道がない。そうしてまた、住民に協力を求めるしか方法がないということを考えますと、その両面に向かって国でも考えていただくし、自治体も、自分も努力するかわりに、住民にも協力を求めるという方向に、住民協力、それから実地訓練を積み上げ積み上げていってもらうようにしてほしいというふうに考えておりますが、国の責任は非常に大事な問題でございますので、ぜひ十分な援助をしていただいて、大災害から国を守るといいますか、個々の地域住民を守っていただくということは、そのものが国の運命を守るということにつながると思いますので、ぜひ十分に考えていただきたいと思います。それに対する投資は、その被害額に比べますと非常に微々たるもので、もう決して投資が割りに合わないなんということではない、十分割りに合う事業だと私は思います。これは生産とは結びつかないように見えますけれども、ロスを食いとめるという面から見ますと、生産よりももっと重大な国の利益につながるものだと思いますので、その辺のことをお考えの上に、十分な国の力をこの方面に出していただくようにお願いしたいと思います。
  105. 津川武一

    ○津川委員 たいへんありがとうございました。  そこで、河角先生でも棚橋先生でも、どちらでもいいのですが、高層建築物が安全だということを聞いて非常に意を強うしているのですが、ただ地震の場合、水がとまる、電気がとまる、 エレベーターが動かない、中におる人たちが群衆心理でどっと階段に殺到するなどということの対策は、どうなさればよろしいのか。どちらの先生でもよろしいからお伺いさせていただきます。  それから、河角先生にもう一つ、ガソリンスタンドのこともありますが、危険物の貯蔵、加工、製造している、いわゆるコンビナート的なものに対してのお考え。  それから最後に、これもとちらが――諏訪さんにお願いしたいのですが、火山のことで非常にいいお話を伺わさせていただいて、非常にありがとうございました。長期的に、連続的に調査しなければならぬ、総合病院的に、診療所的に、移動診療班的にしなければならぬというわけです。これは必要ですし、やっていただきたいと思うのです。  そこで、いま私たちの郷里の岩木山で、火山が爆発するのではないかという心配がかなり出ているのですが、深浦の測候所に二人しかいないのですよ。気象庁では人がいないのですよ。気象庁の皆さんが人が足りない人が足りないとおっしゃって、長官にここで説明していただくと、足りないからふやすと言っていますが、今度運輸省に行くとしかられてしまう、大蔵省に行くとしかられてしまって、一向にこの問題が解決しない。この点、せっかく話していただいたことをやり抜く上で、気象庁の人員ということに対して諏訪さんのお意見、必要であればほかの三人の参考人の御意見も聞きたいと思うわけです。  その次、第二番目に、全国の火山六十二、三、これを見ているということでございますが、火山の爆発が起きるか起きないかといういろいろな基準の中に、たくさんのことも教えていただいたわけですが、いま岩木山ろくで、三日半に一回地震が起きているんですよ。それから、電磁気の変化が起きている。地磁気の高いところと低いところが出て、高いところが低いところを馬蹄型に、円形に囲んでしまっておるわけです。それから、温泉の温度が十五度から二十五度、上がっている。それからガスが、亜硫酸ガス、硫化水素、塩素ガスが盛んに出て、ウサギだとかテンだとか、動物が死ぬのがこのごろ急にふえた、こういうことになっているわけなんですが、これに対する観測の状況はどうであるかというと、京都大学から八日、弘前大学はときどきちりぽり、県では温度計三個、これだけなんです。気象庁の計画しているところからいきますと、四、五人で二週間か四週間おやりになるというわけなんです。地震計三台で、ガスと温度の測定器だけだというわけなんですが、地元の方たちは、地震観測点が三角形に三つほしい。それから噴気の観測点がほしい。地盤の傾斜観測がほしい。水準測量……
  106. 中井徳次郎

    中井委員長 ちょっと津川さん、途中でございますが、きょうは参考人に対して基本的なことをお尋ねをする、それで大体午後一時ごろに終わるということが、もう三時近くになって、たいへん御年配の方もいらっしゃいますので、その辺のところをお考えになって、あなたの御質問けっこうでございますから、この次に正式に、萩原さんなり諏訪さんなり――これは気象庁の関係でございましょう、正伝にこの委員会でお尋ねになって、きょうはいわゆる学者だとか、御経験に基づいてのお話を伺っているわけですから、具体的に、何人おるのを何人にせいとかいう話は、日本全体のことはけっこうですが、岩木山のことがどうだというのは、ちょっとその辺のところ心得て、ひとつ御質問のほどお願いします。
  107. 津川武一

    ○津川委員 すぐ終わります。  そういう点で諏訪さんに、気象庁の陣容をどう考えるかということ、岩木山山ろくがこういうふうな状態に立っているので、専門的な御意見ではどうすればいいかという、この二つを伺わせていただきたいと思うのです。  最初の点は、どちらの方でもよろしゅうございますが……。
  108. 河角広

    河角参考人 私からだけで済むかどうかわかりませんけれども、私の承知している面だけを、超高層ビルの問題につきまして御返事いたします。  超高層ビルにおきまして、地震時には、普通の電灯会社から配給を受けている電源はストップすること、これはもう間違いないと思います。  そういう場合にパニックが起こってはたいへんですので、超高層ビルでは、予備電源というものを必ず用意しているはずでございますから、その点もかなり信頼はできるとは思っておりますけれども、私自身もやはり、御心配のように、そういうエレベーターその他が、地震の直後にすぐに電源が切りかえられて動くとは、なかなか信じがたいのでございますので、避難路に当たる階段が狭いという点を非常に心配しております。  この問題については、東京消防庁や国の消防庁もやっていると思いますが、非常に慎重に法規制の問題まで考えて、また、火災が起こった場合には、避難階段の問題などはことに重要になってまいりますので、その点を現在は検討中であると私は思っておりますし、いまのところ、防災会議として地震対策で考えますのは、いまの人命尊重という面ではほうっておけませんけれども、御承知のとおり不燃建築といいますか、鉄筋コンクリートや鉄骨コンクリートの建物というようなものについての消火の問題は、もう都では考えないで、もっぱら消防力は木造家屋の一般住宅にだけつぎ込むというような計画で、超高層ビルというようなものについての詳しい検討がまだ進んでおりませんので、問題があるという点は私十分理解しておりますけれども、まだ対策までは一これは別に行政的な面で考えておられることと思いますので、そちらにバトンをタッチしていただきたいと思います。
  109. 諏訪彰

    諏訪説明員 先ほどから御説明申し上げておりますように、日本の火山対策とか火山観測研究体制というのは、戦後になってやっと芽をふきだした、まだ、組織的な体制ができ始めかかってから十年もたってないような状態なんです。  私は、いろいろ先輩の方がおられるわけですが、こういう災害に直結するようないろいろの現象の観測研究体制というのは、一貫してできる体制でなければだめだ。こうかんかんがくがくでもって、そして責任があるようなないようなかっこうでやるのではなくて、国として、気象庁であろうが、どこであっても私はいいと思いますけれども、どこかが責任を持って、そこに聞けばいいんだ、そこに言うのが一番たよりになるというところが一つあることが、絶対に必要だと思います。何か異変があったときに、あの人はこう言った、この人はこう言ったというようなことで、極端に言いますと、何とか新聞は何とか教授を使った、何とか新聞は何とか所長を使ったというようなやり方では、国民は混迷するだけだと思います。そういうような意味で、私は、僣越ですけれども日本の火山観測研究体制は、先ほどから申し上げているようなかっこうで、とにかく基本的な体制をつくり上げる。そして、それにプラスしていろいろな、なおアルファの研究をされることはけっこうだけれども、いま申し上げたように基本的な、組織的な研究観測というものはやっていくんだということに考えております。それで、岩木山の問題につきましても、全国的な立場からその一環として考えていきたいと思うわけですが、ちょうどいま御指摘の岩木山については、東北地方の十勝沖地震がありましたときに、岩木山の噴気、地熱が活発化した、こういうようなことを弘前大学の宮城助教授が認めたわけです。それから、最近秋田駒ケ岳の噴火がありまして、また引き続いて、去年の十月十六日に秋田県南東部の地震があった。それに関連して、その前後にまたそれがさらに活発化したというような、御指摘のようなことがあったのですが、たまたまその十月の末に、十和田湖でもって日本火山学会の大会がありました。私は、青森県知事からの御依頼もありましたものですから、その会議が開かれる前に青森県へ行きまして、関係の県庁の方あるいは弘前大学といったような関係の学者と立ち会って、山の途中まで、現場まで行ったのですが、雪が降っていて、また学会もありましたものですから、ただ行ってきたというだけにすぎなかった。しかし、これは地震対策も同じですが、今後観測研究をいま申し上げたような線で進めるとしても、やっぱり一般の方々が無知、無関心でも困るし、また、そうかといって浮き足立っても困るわけです。そういう意味で正しい火山知識を植えつける、普及するということが非常に必要なんで、関心を持っていただくことが必要だものですから、県の教育委員会と地元の新聞社と共催で、私が行きました機会に、火山についての講演会もやらしていただいたわけです。  そんなことで、当面の岩木山の問題としては、雪解けを待って、さっきお話しのような機動観測、基礎調査実施する。それによって――いままで小規模にいろいろの人がつついてきていますけれども、大体この山はこういう山だから、今後はこういう手を打っていくべきである、それから、緊急の場合にはどこに体温計を差し込むのが最も効果的か、そういったことをわからせるための基礎調査というのを来年度になったら実行させていただきたいと思います。  それと、岩木山に限りませんけれども、岩木山において、最近において自動車道路が上まで行き、リフトに乗ると山頂まで汗をかかないで登れる、年に数十万から数百万の人が登れるようになったわけです。そういうようなことで、活動性がどうだということではなくても、社会的に災害の起こる可能性は非常に増大したわけで、最初に、昭和三十七年以降の新規事業においては、まだいわば岩木山はC級だと私は思っておりましたけれども、この機会に全国の山をまた洗い直して、気象庁として、また政府としてよく検討していただいて、そして、そういう山も含めた新しい体制を考えていけるようなことをさせていただきたいと思っております。
  110. 津川武一

    ○津川委員 どうもありがとうございました。
  111. 中井徳次郎

    中井委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終わりました。  参考人方々には、ほんとうに長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時一分散会