○
内村(信)
政府委員 それでは、いわゆる
産業航空と申しますか、
小型機の問題これにつきまして、大体の
現況並びにその
事故安全対策、そういったような点を
説明申し上げたいと思います。
まず、一体、
小型機とは何かということでありますけれども、大体われわれといたしましては
全備重量五トン七百、これ以下の
航空機を大体
小型機といっております。具体的に申しますと、
ビーチクラフトあるいはセスナ、そういうふうなもの、あるいは
ヘリコプターそれから
グライダーというようなものでございます。なお、
グライダーには若干五トン七百をこえるものもありますけれどもわれわれ
小型機の中に入れております。
そして、四十六年一月一日現在の
小型機の
保有状況はどうかと申しますと、
固定翼機、これは
事業用が二百四十六、それから
自家用が二百十三、
合計四百五十九でございます。それをなお
単発と
双発に分けますと、
単発が三百六十一、
双発が九十八となっております。それから
ヘリコプターの場合は、
事業用が二百三十七、
自家用が五十八、
合計二百九十五でございます。それから
グライダーは、二百三十八というふうになっております。この
自家用というのは、主として
新聞報道でありますとか、あるいは
企業などが持っております。中には個人で持っているものも若干あるというふうな
状況でございます。
そこで、そういう
小型機を使ってどういう
事業をやっているのかというようなことでございますけれども、それにつきまして概略申し上げますと、まず
操縦訓練、それから
薬剤の
散布、これは
農薬の
散布でございます。
写真撮影、
広告宣伝、
報道取材、それからいろんな
視察調査、それから
建設協力といったようなことをやっております。それで、これらの業務の全体に占める
割合、これを
有償稼働時間で比べてみますと、四十五年には
操縦訓練、これが三五・九%で一番多うございます。これは、いわゆる
飛行クラブなどで行なっております
小型機による
飛行訓練というふうなものでございます。これはおもに
固定翼機であります。それから続いて
薬剤散布、これが一七・一%、これは主として
ヘリコプターでございます。
ヘリコプターで最も多い
部門がこの
薬剤散布の
部門でございます。さらに
広告宣伝が一三・二%、それから
写真撮影が一一・二%、
写真撮影と申しますのは、
斜め写真をとりますとかあるいは
垂直写真をとる。
垂直写真の場合には、これは主として
測量、地図をつくりますとか、あるいは
都市計画のときに上から写すといったような、
精密測量に使う場合に
垂直撮影を行なうものであります。こういったようなものであります。
なお、さらに、この
固定翼機と
ヘリコプターの
パーセンテージを分けますと、大体
固定翼機が六一・四%、それに対して
ヘリコプターが約三八・六%くらいの
割合を占めております。
そこで
企業の
状況でございますけれども、こういった
産業航空の
企業と申しますのは、あまり大きな
企業ではございません。大体十機以下のものが全体の七〇%くらいであります。それから二機ないし三機といったようなものが約半数を占めております。それから
資本金一千万円以下のものが七社ぐらいといったような
状況で、いわゆる
中小企業と申しますか、比較的小さな規模でやっておる
会社が多いわけであります。
そこで、こういうふうなことを行なっておる
事業会社が本年年初において五十三社ございます。大体この多くはいわゆる
産業航空と、それからいわゆる遊覧的な
不定期、こういったものを兼業しておるものが多うございます。なお、十七社は、いわゆる
産業航空を専業しております。
こういった
企業が持っております
小型機の数をもう一回申し上げますと、
固定翼機が二百四十六、
ヘリコプターが二百三十七、合わせて四百八十三機、これが現在こういった
事業をやっておる
会社の
保有機であります。
これらの
企業の
事業活動を見てみますと、まず四十一年から四十三年にかけて、
年間の
有償稼働時間を比べてみますと、年々二〇%くらいの
伸びを見せていたわけでございますが、しかし前年対比で四十四年には一三・二%、四十五年は六・五%というふうに
伸び悩んでおるのが
現状でございます。なお、
不定期航空事業については、最近二カ年、逐次減少というふうな
状況でございます。
そこで、
事業の
内容別に見ますと、
操縦訓練七こういったものは、最近パイロットに対する魅力があると申しますが、空に対するあこがれと申しますか、あるいは
スポーツ航空、そういったような
影響を受けましてしり上がりの
伸びを見せております。しかし一方、先ほど申し上げました
ヘリコプターでの
薬剤散布、これが非常に大きいと申し上げましたが、この
薬剤散布は、最近の農業の
減反政策というふうなものに基づきましてもまた一方
農薬の
公害というふうなものもございまして、逐次減っているというのが
現状でございまして、この辺から、いわゆる
ヘリコプター事業者というものは非常に大きな
影響を受けておりまして、これからの方向をやはり考えていかなければならぬというふうな
一つの岐路に立っておるというふうなことでございます。
なお、それから
広告宣伝というようなものも、従来はわりに
伸びておったのでございますが、これまた、いわゆる
飛行機の上から放送をやるわけでございますから、やかましいというふうな
騒音公害になりまして、方々で規制されるというようなこともございまして、これまた
下降線をたどっておるというのが
現状でございます。
それで、ちなみに一機
当たりの
年間稼働時間を見ますと、四十三年が四百三十七・五時間くらいでございましたが、大体現在は四百時間前後となっております。このうち、特に
ヘリコプターの場合は、この二カ年、四十四年、四十五年と逐年低下という傾向を示しております。これは先ほどの
農薬の
散布が減るというようなことも
一つの
原因かと思っております。
こういった
企業の
経営内容について見ますとも三十七社、報告のありましたのが三十七社しかございませんので、それだけをとりますともそのうちの二十二社が赤字、他の十五社は
黒字でございますが、これもかろうじて
黒字というところで、決して
営業成績は楽観を許さないというのが、こういった
企業の
現況でございます。
それから、
事故の
状況でございます。先ほど来申し上げましたような背景におきまして、
小型の
航空機業界にとりまして十分な注意を払っておりますが、しかし、
事故はやはりございます。これは、大型の
定期飛行機運送事業等に比べますと、やはり
小型機の
事故というのは相当多いというのが
現状でございます。
お手元に資料を差し上げてございますので、一枚目と二枚目に出ているわけでございますけれども、
小型機の
事故は、
昭和四十二年から四十五年までの四
年間をとってみますと、百七十五件になっております。二枚目の一番左の総
件数と書いてあるところでございます。その内訳といたしましては、
昭和四十二年が四十四件、四十三年が五十六件、四十四年が三十二件、四十五年が四十三件でございまして、各年を通じまして
飛行機が大体十四件から二十二件、
ヘリコプターが十二件から二十五件、
グライダーが一件ないし六件という程度に発生しております。一方、こういった
事故によりまして、
昭和四十二年に十六人、四十三年十九人、四十四年十人、四十五年二十一人というような死亡が出ておりますのは、たいへん遺憾なことだと存じております。
それでは、このような
事故が、どういった
原因で出てきたのかということでございますが、一応その
原因別に分析いたしてみますと、まず、
操縦士の
操縦ミスに基づくものが相当多うございまして、百十七件で全体の六六%、
あと整備関係に基因するものが三件で二%、機材に基因するものが二十六件で一五%、その他が十九件で一一%、不明六件で四%、
調査中四件、二%というふうに見られるわけであります。
そこで、ごらんのように、
操縦士に基因するものが大
部分であるということに
一つの
問題点があろうというふうに存じております。それからなお、その他として十九件と申し上げましたが、これは、おもに気象の
急変等になかなか対応できないというのが
原因のようでございます。
一方、
小型機の
事故割合を
飛行機——固定翼と
ヘリコプターに分けて見てみますと、
飛行機が七十三に対して、
ヘリコプター八十七と
パーセンテージからいいますと四六%対五四%で、
ヘリコプター事故のほうが、
固定翼事故よりもその率において上回っておるというのが
現状でございますこの
事故率を
有償稼動時間一万時間
当たりについて見ますと、
飛行機については四
年間の平均で二回、
ヘリコプターについては三・一回というふうに、単位時間
当たりの
事故率も、やはり
ヘリコプターのほうが多いというふうに出ております。
そこで、こうした一万
飛行時間
当たりの
事故件数は、
昭和四十二年に三・二、四十三年に三・二、四十四年に一・八というように横ばいもしくは下降いたしてまいったわけでございますが、
昭和四十五年には、二%と若干上昇しておるようでございます。この
原因は
ヘリコプターにあるようでございます。そこで、その
ヘリコプターについての一番
事故の多いのは
農薬散布、この場合に一番
事故が多いように見受けられます。そこで、
農薬散布の
ヘリコプターのみをとらえて分析いたしますと、
昭和四十二年には四・一、四十三年は四、四十四年は二・三、四十五年は四・八というふうに、
昭和四十五年は過去四
年間の最高の
事故率となっております。そして、これが全体に反映いたしまして、
下降ぎみであった
事故率が再び上昇をしているというふうな、遺憾な結果に相なっております。
そこで、一体
事故はどういうときに発生するかという点から見てまいりますと、
飛行機の
関係七十三件のうち、
地上の
事故が四件、六%、
地上滑走中が四件、六%、離陸中が十一件で二八%、
航路上、
飛行機の
飛行中が三十件、四〇%、これが一番多うございます。
着陸が二十四件で、三二%。
航路上
飛行中とそれから
着陸の際というのがわりに多いようでございます。
それから
ヘリコプターについて見ますと、一番多いのが
農薬散布中五十件、五七%というのが一番多いようでございます。そこで、それはなぜであろうかということでございますが、
昭和四十五年には、
農薬散布の
ヘリコプターは、過去四年のうちで一番多い一万時間
当たり四・八回、年に十五回といったような高率を示しておるわけでございます。この
原因といたしましては、従来は、比較的
散布しやすい
平地あるいは原野といったようなところに
薬剤の
散布をしておったわけでございますが、最近
減反の
影響を受けまして、こういった
平地の
部分が
水田から他のものに転作されるということになりまして、比較的
山岳地帯と申しますか、山のほうの
地帯に
水田が残っているということになりますので、いままではやらなかったような、そういうところまで行って薬をまかなければならぬために、
飛行が非常に困難であるというふうなことから、
農薬散布の
事故が多くなっているということが
原因であるというふうに見ております。
そこで、こういうことに対しての
対策でございますけれども、私どもといたしましては、常に
事故発生のつど
事故調査を行ないまして、
事故の
状況を見まして、あるいは
運航面、
整備面、各般の
安全確保についての勧告を与えるというようなことをやってまいっております。特に
ヘリコプターの
農薬散布の
事故につきましては、
離着陸場の選定をしっかりするとか、あるいは
薬剤の
散布方式をきちっとする、あるいは、これはよく
送電線にひっかかって落ちる場合が多いわけでございます。したがいまして、
障害物をよく確認するようにする。事前に標識をつけるというようなことをして、そういう
事故を防ぎたいということを考えております。
さらに、
農薬散布の
ヘリコプター事故の過半数は、いま申し上げましたように、
送電線等への接触、これが大
部分でございます。これは
農薬散布の場合には、七メートルないし八メートルというような低高度で
薬剤を
散布するわけでございます。
薬剤を
散布するにあたって、つまり
ヘリコプターがホバリングをいたしますと、その空気が
地上へ当たって舞い上がります。それによって、その
薬剤が葉の裏につくというようなことで、その
農薬散布というものが無効になるというようなことのために、七、八メートルというような低空を飛びます。そのために
事故が多くなるだろうということも考えられます。一そこで、これまで使用してまいりました粉剤の
農薬をやめまして、
微粒剤の
農薬にかえる。そういたしますと、高度十五メートルくらいに上げても効果があるというふうなことが最近わかってまいりましたので、そういう研究を続けまして、昨四十五年から約百五十ヘクタールの
試験散布をいたしまして、大体好結果を得ております。したがいまして、ことしは約三万ヘクタールを
微粒剤農薬で
散布するということに計画しておりますが、こういったことによりまして、さらにこういう
農薬散布事故を減らしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
まだ申し上げたいこともございますけれども、本日はあまり時間もないようでございますので、大体
事故の
現況並びにおもな対策というふうなものを申し上げたわけでございますが、結局、
事故の
原因というものはいま言ったようなことでございますけれども、やはり根本的には、
中小の
企業が多くて需要がだんだん減ってくる。そういたしますと、勢い
過当競争にならざるを得ないというようなことがあり、やはり経済的に非常に苦しいという面があり、それによって無理をするということもあるのではないかというふうに考えられますので、やはり経済的な
基盤というものを強化する、たとえば協業とかそういうようなことによって
合理化をしてまいる、あるいは部品の
共同管理をするといったように連携を保ちつつ、これを行なうことによりまして、やはり
過当競争というものをなるべくなくしていくようなことをやって、
経済基盤というものを整えることが、根本的な問題ではないかというように考えておるわけでございます。
きわめてざっぱくでございましたが、大体御指定の時間もまいりましたので、一応終わらしていただきます。