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1971-02-09 第65回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月九日(火曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 小山 省二君 理事 菅波  茂君    理事 高橋清一郎君 理事 森下 元晴君    理事 浅井 美幸君 理事 吉田 賢一君       中村 弘海君    綿貫 民輔君       北山 愛郎君    芳賀  貢君       華山 親義君    鳥居 一雄君       瀬長亀次郎君  出席政府委員         法務政務次官  大竹 太郎君         法務大臣官房会         計課長     伊藤 榮樹君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省保護局長 笛吹 亨三君         公安調査庁次長 冨田 康次君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務省条約局長 井川 克一君         文部政務次官  西岡 武夫君         文部大臣官房会         計課長     須田 八郎君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部長 貞家 克巳君         外務省アメリカ         局外務参事官  大河原良雄君         外務省経済局外         務参事官    岡田富美也君         文部大臣官房審         議官      西田亀久夫君         文部省初等中等         教育局審議官  諸澤 正道君         会計検査院事務         総局第一局長  中村 祐三君         会計検査院事務         総局第二局長  鎌田 英夫君         決算委員会調査         室長      池田 孝道君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   山本 幸一君     華山 親義君 同日  辞任         補欠選任   華山 親義君     山本 幸一君     ————————————— 二月五日  昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十四年度政府関係機関決算書 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十三年度政府関係機関決算書  昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (法務省所管外務省所管文部省所管)      ————◇—————
  2. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、私が委員長の指名により委員長の職務を行ないます。  昭和四十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、法務省所管外務省所管及び文部省所管について審査を行ないます。  まず、法務省所管について概要説明を求めます。大竹法務政務次官
  3. 大竹太郎

    大竹政府委員 昭和四十三年度法務省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。  法務省主管歳入につきましては、歳入予算額は二百八十八億七千十四万円余であります。これに対しまして、収納済み歳入額は三百六億四千九百九十二万円余であり、予算額に比べ十七億七千九百七十八万円余の増加となっております。  この増加しましたおもなものは、罰金及び科料の十二億三千四百十万円余、刑務所作業収入の一億五千四百十五万円余、不用物品売り払い代の二億六千七百三十五万円余であります。  次に、法務省所管歳出につきましては、当初予算額は七百三十四億二千二百三十一万円余であります。これに予算補正修正減少額三億五千六百三十三万円余、大蔵省所管からの予算移しかえ増加額十一億一千六百四十五万円余、前年度からの繰り越し額五億二千九百十万円余、予備費使用額三十二億二千九百三十三万円余、差し引き四十五億一千八百五十五万円余が増加されましたので、歳出予算現額は七百七十九億四千八十七万円余となっております。これに対しまして、支出済み歳出額は七百七十億四千三百三十八万円余であり、その差額は八億九千七百四十八万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は三億七千六百十三万円余であり、不用額は五億二千百三十五万円余であります。  支出済み歳出額のうち、おもなものは外国人登録事務処理経費二億七千三百十三万円余、登記事務等処理経費十三億一千二十四万円余、検察事務処理経費八億八千六百三十六万円余、矯正施設における被収容者収容作業等に要する経費六十七億九千百七十八万円余、補導援護経費十一億二千六十三万円余、出入国審査及び被退去強制者収容送還等に要する経費九千二百三十七万円余、暴力主義的破壊活動団体等調査に要する経費十億二千二百九十七万円余、施設費五十六億七千三百四十六万円余となっております。  不用額となったおもな経費は、人件費刑務所等収容者食糧費及び都道府県警察実費弁償金であります。  詳細につきましては、お手もとに提出しております昭和四十三年度決算についてに記述してありますので、御了承願いたいと存じます。  以上をもって、昭和四十三年度法務省所管一般会計歳入歳出決算について説明申し上げました。  よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  4. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 次に、会計検査院当局から検査概要説明を求めます。鎌田会計検査院第二局長
  5. 鎌田英夫

    鎌田会計検査院説明員 昭和四十三年度法務省決算について検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 次に、外務省所管について概要説明を求めます。竹内外務政務次官
  7. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 昭和四十二年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は三百六十億二千三十七万円余でありまして、支出済み歳出額は三百四十二億四千九十万円余、翌年度繰り越し額は十四億九千八百二万円余、不用額は二億八千百四十四万円余であります。歳出予算現額の内訳は、歳出予算額三百五十億五千七万円余、前年度繰り越し額九億三千七百九十万円余、予備費使用額赤十字国際委員会特別拠出金に要した経費)三千二百四十万円でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、海外技術協力実施委託費八億一千八百五十四万円余、在外公館施設関係費一億一千九百三十五万円余であります。  支出済み歳出額のおもなものは、科学技術振興のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として一億一千七十一万円余並びに国際連合その他各種国際機関に対する分担金等として二十八億六千九百七十三万円余、また、貿易振興一環として、外国におけるわが国商品輸入制限運動に対処して、関係国議会公聴会及び関税委員会公聴会に出席し陳述をする等輸入制限問題に関し、政界、業界首脳わが国に対する理解を深めしめるとともに、輸入制限動向実情調査、分析を行なって、ラジオ、テレビ、新聞雑誌等マスコミに対する啓発宣伝工作PRパンフレットの配布を行なう等輸入制限運動阻止のため四億六千百六十三万円余、次に、経済協力一環としての技術協力実施につきましては、コロンボ計画等に基づく技術研修員千、三百四十七名の受け入れ及び専門家二百四十一名の派遣業務のほか、海外技術訓練センターの設置、投資前基礎調査日本青年海外協力隊派遣区療協力農業協力等委託事業並びに海外技術協力事業団交付金国連開発計画拠出等に要した経費七十九億三千二百七万円余、さらに、移住振興につきましては、中南米等への移住者六百二十三名を送り出し及びこれを援護するため等の経費十七億六百九十六万円余であります。  次に、翌年度繰り越し額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰り越しのものは十一億三千六百三十万円余でありまして、その内訳は、各所新営関係費一億七千二百二十九万円余、海外技術協力実施委託費九億二千五百八万円余、在外公館庁舎等施設費三千八百九十二万円余、また、財政法第四十二条ただし書きの規定による事故繰り越しのものは三億六千百七十二万円余でありまして、その内訳は、国際友好団体補助金一億三千万円、海外技術協力実施委託費二億三千百七十二万円余であります。  不用額のおもなものは、外務本省の項で退官退職手当等を要することが少なかったこと、海外経済技術協力費の項で海外技術協力実施委託費を要することが少なかったこと、移住振興費の項で移住者渡航費交付金を要することが少なかったこと並びに在外公館の項では、職員手当を要することが少なかったこと等のためであります。
  8. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 次に、会計検査院当局から検査概要説明を求めます。中村会計検査院第一局長
  9. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 昭和四十三年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  10. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 次に、文部省所管について概要説明を求めます。西岡文部政務次官
  11. 西岡武夫

    西岡政府委員 昭和四十三年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二億二千三百三十三万円余に対しまして、収納済み歳入額は二億三千三百八十三万円余であり、差し引き千四十九万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額六千五百九億六千三百四十万円余、前年度からの繰り越し額三十九億四千六百五十三万円余、予備費使用額二百四十六億四百八十五万円余を加えた歳出予算現額六千七百九十五億一千四百八十万円余に対しまして、支出済み歳出額は六千七百五十五億九千七百五十四万円余であり、その差額は三十九億一千七百二十五万円余となっております。  このうち翌年度へ繰り越した額は二十八億七千百五十九万円余で、不用額は十億四千五百六十六・万円余であります。  支出済み歳出額のうち、おもな事項は、義務教育費国庫負担金三千五百十八億七千四百三十五万円余、国立学校特別会計へ繰り入れ二千九十二億九千三百七十九万円余、科学技術振興費七十億一千八十一万円余、文教施設費三百三十七億七千六百五十万円余、教育振興助成費四百三十九億一千八百九万円余、育英事業費百四十三億五千六百二十八万円余、青少年対策費三十三億六千四百七十六万円余、となっております。  次に、翌年度繰り越し額二十八億七千百五十九万円余についてでありますが、その内訳のおもなものは、文教施設費用地の選定、気象条件設計変更等により、工事施工不測日数を要したため年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額十億四千五百六十六万円余についてでありますが、その内訳のおもなものは、教育振興助成費のうち私立学校助成費を要することが少なかったこと等の理由によって不用となったものであります。  次に、文部省におきまして、一般会計予備費として使用いたしました二百四十六億四百八十五万円余についてでありますが、その内訳のおもなものは、義務教育費国庫負担金に要した経費であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。国立学校特別会計収納済み歳入額は二千六百十二億一千七百八十七万円余、支出済み歳出額は二千五百三十九億二千六百八十万円余であり、差し引き七十二億九千百七万円余の剰余を生じました。  これは国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により、翌年度歳入に繰り入れることとして決算を結了しました。  その内容について御説明申し上げますと、まず、歳入につきましては、歳入予算額二千五百四億三千八百六十九万円余に対しまして、収納済み歳入額は二千六百十二億一千七百八十七万円余であり、差し引き百七億七千九百十七万円余の増加となっております。  次に、国立学校特別会計歳出につきましては、歳出予算額二千五百四億三千八百六十九万円余、前年度からの繰り越し額三十四億二千百六十六万円余、昭和四十三年度特別会計予算総則第十一条第一項の規定による使用額六十五億五千八百二十二万円余を加えた歳出予算現額二千六百四億一千八百五十八万円余に対しまして、支出済み歳出額は二千五百三十九億二千六百八十万円余であり、その差額は六十四億九千百七十八万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は四十一億七千三百八十一万円余で、不用額は二十三億一千七百九十七万円余であります。  支出済み歳出額のうち、おもな事項は、国立学校千四百二十六億二千百八十六万円余、大学付属病院四百八億三千三百四十一万円余、大学付置研究所百七十二億三千三百二十四万円余、施設整備費五百十七億五千五百二万円余となっております。  次に、翌年度繰り越し額四十一億七千三百八十一万円余についてでありますが、その内訳のおもなものは、施設整備費で、用地関係設計変更等により、工事施工不測日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額二十三億一千七百九十七万円余についてでありますが、その内訳のおもなものは、施設整備費のうち学校施設費学校財産処分収入が予定より少なかったこと等のため、これに伴う施設費を要しなかったこと等の理由により、不用となったものであります。  次に、国立学校特別会計におきまして予備費として使用いたしました金額は一億円でありまして、これは、国立学校及び施設整備費に要した経費であります。  なお、昭和四十三年度予算執行にあたりましては、予算の効率的な使用経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項四件の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところと存じます。今後、このようなことのないよう適切な措置を講ずるとともに、国立学校に関して受けた意見の表示及び処置要求についても慎重に検討の上事態改善に一そうの努力をいたす所存であります。  以上、昭和四十三年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。
  12. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 次に、会計検査院当局から検査概要説明を求めます。鎌田会計検査院第二局長
  13. 鎌田英夫

    鎌田会計検査院説明員 昭和四十三年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項が四件、是正改善処置を要求したものが一件、改善意見を表示したものが一件でございます。  まず、不当事項について説明いたします。  四十七号から五十号までの四件は、国庫補助金経理が不当と認められるもので、これは体育施設整備費私立学校助成費公立文教施設整備費及び公立文教施設災害復旧費関係国庫補助金経理におきまして、工事施工不良もしくは出来高不足となっているもの、または補助対象設備購入額等を過大にして事業費を精算しているものについて指摘したものでございます。  次に、是正改善処置を要求したものについて説明いたします。  この件は、国立学校における受託研究等及び奨学寄付金取り扱いについて是正改善処置を要求したものでございますが、教官等受託研究等費用または奨学寄付金として外部から資金を受け入れ、これを国の予算外経理しているものが多数見受けられましたので、今後、取り扱いの適正を期する要があると認められたものでございます。  続いて、改善意見を表示したものについて説明いたします。  この件は、国立大学における国有財産及び物品管理について改善意見を表示したものでございますが、大学紛争に伴う国有財産及び物品管理にあたりましては、今後、国有財産事務分掌者及び物品管理職員等がその職責を遂行するため、事態に対応して適時適切な処置を講ずることができるようにし、学生等不法行為による国有財産等損害の発生を防止するようつとめる要があると認められ、また、損害についての加害者に対する求償に関する事務処理につきましても、その促進について適切な処置を講ずる要があると認められたものでございます。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  14. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 これにて説明聴取を終わります。
  15. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅井美幸君。
  16. 浅井美幸

    浅井委員 文部省当局に私はお伺いしたいと思いますが、問題を三つに分けますが、まず第一番に、国立学校における受託研究費の問題についてお伺いしたいと思います。  先般、鹿児島大学の工学部の教授が、民間会社から研究費用教室運営費名目で金を集めた事件が起きましたが、従来からこの点については、受託研究費の問題について指摘をされてきております。この点について、国立学校において、まず民間会社から受託研究費として幾ら収入があったか、四十一年度から四十四年度までまず明らかにしていただきたいと思います。
  17. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  全国の国立大学の受け入れた受託研究費は、昭和四十三年度五百八十八件、四億二千八百七十三万一千円、昭和四十四年度六百九十二件、四億四千六十五万四千円であります。なお、会計検査院指摘を受けたものは、これ以外の分で、その件数及び金額は、昭和四十三年度三百八十八件、一億六千六百六十九万円余でございます。
  18. 浅井美幸

    浅井委員 受託研究費歳入に納付しないでいま大学教官が保有し、予算外経理したその件数でありますけれども、四十三年度三百八十八件、一億六千万円余、四十四年度について会計検査院のほうはおわかりでしょうか。
  19. 鎌田英夫

    鎌田会計検査院説明員 鹿児島大学の四十四年度受託研究受託金額は、七件で百四十五万円でございます。  以上でございます。
  20. 浅井美幸

    浅井委員 大学教授がこういうふうに民間会社から直接受託研究費をもらって、大学施設設備を使って研究を行なっているわけです。本来、受託研究費というものは、一度歳入に入れたものをさらに歳出としてこれを出さなければならないわけです。それがこういうふうな不正な、あるいはまた不祥なことが起こる。このことに対して、文部省では前回この問題について参議院の委員会等でも取り上げられて、何らかの形でこれを是正する方向あるいは正しい方向に導きたいという審議会かあるいは研究会等を設けるというお話がありました。その後どうなっておりますか。
  21. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  国立大学における受託研究取り扱いにつきましては、会計検査院からの御指摘を受けてもおりますし、歳入歳出予算を通じまして、その取り扱いが適正に行なわれますように機会あるごとに関係者に注意を促しているところでございます。また、昨年四月に会計課長及び大学学術局長の連名の通達を発しまして、受託研究学内取り扱い規定を整備するよう指示をいたしたところでございます。  これによりまして、従来学内規定の整備されていた大学はわずかに十二校でございましたが、その後着々と整備されておりまして、本日現在、学内規定を整備した大学は六十一校になっております。今後ともこの問題について一そう徹底を期しますように、あらゆる機会をとらえまして関係者指導をいたす所存でございます。
  22. 浅井美幸

    浅井委員 鹿児島大学事件でありますけれども、鹿児島はいま次官が答弁なさいました学内規定ができておったところでしょうか、できてなかったところでしょうか。
  23. 西岡武夫

    西岡政府委員 四十五年の十月に学内規定ができております。
  24. 浅井美幸

    浅井委員 この事件について、四十四年の十一月と四十五年の六月の二回でありますけれども、こういうことが行なわれてきた、いわゆる何といいますか、背景、ここらについて今後さらに厳正な、学内規定という問題でなくて、文部省として何らかの監視、あるいはまたこれの運営に対する指導、こういうものに対する明確な指示をなさる、そういう決意がおありですか。
  25. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  この問題につきましては、文部省といたしましては、今後あらゆる機会を通じて、学長会議とか事務局長会議そういった機会を通じまして十分指導をして誤りなきを期したいと考えております。
  26. 浅井美幸

    浅井委員 あまりこのことについて私は深く触れたくはございませんけれども、産学協同になるとか、いろいろの名目でいままでも注文が出ております。その点、厳正な執行ができるように、不明朗なことのないようにお願いしたいと思います。  次に、私は入学金の問題について、またさらにPTAの負担軽減の問題に関係してお尋ねしたいのですけれども、現在国立大学入学金というものはどういうふうになっておりますか。
  27. 須田八郎

    須田政府委員 お答えいたします。  ただいま学部の入学料は四千円でございます。
  28. 浅井美幸

    浅井委員 国立大学入学金は四千円でありますけれども、実際問題、国立大学入学するとき約二万円程度の費用がかかるということで、父兄のほうから、いわゆる大学入学金、あるいはまた入学に伴うところの費用というものについて非常に疑問があるのです。たとえば横浜国立大学の経済学部で入学金が四千円、授業料が六千円、これは年間一万二千円でありますけれども、六千円納める。そして、入学に伴う金額印刷費、カッコしてゼミナール、これが七百円から千円、普及会費、これは同窓会費にあたるのかしりませんけれども、これは千五百円、それから経済学界及び研究会費が一万円、その他に自治会費をまたさらに徴収しておる。こういう実態について、これは次官、どのように考えたらいいのでしょうか。
  29. 西岡武夫

    西岡政府委員 文部省といたしましては、ただいま御指摘のような実態につきましては、もちろん了解を与えているとか、そのような種類の金額を徴収することについては認めているというところではないわけでございます。ただいまの実態につきましては、申しわけございませんが、現在のところ報告を受けておりません。すみやかにその実態調査をいたしまして、御報告を申し上げたいと考えております。
  30. 浅井美幸

    浅井委員 まだ御存じない——私はきのう、きょうにかけて調べた費用であります。  それから千葉大学におきまして、人文学部、これはやはり授業料が一万二千円、入学金四千円、後援会費六千円で健康保険等が二千円。この後援会健康保険は一応任意という形でありますけれども、ほとんど強制的に徴収をしておる。それから東京学芸大学にいきますと、入学金四千円は間違いありませんが、後援会費自治会費として一万一千円がつけ加わっております。さらに授業料が一万二千円。また一橋大学では、入学金四千円は違いありませんが、授業料が一万二千円、学生自治会学生新聞等、これは四年分で六千円から七千円、さらに「一橋論叢」という論文をつくる費用として一万円から二万円、こういう費用入学時においてかかっております。その他各国立大学も出ております。  私は、この実態について文部省で掌握をしていない、あるいはまた報告を受けていない、あるいはまたそのようなものを認めてはいないといいながら、実際問題としてこの父兄負担というものは、学生入学にあたってこのような高額な費用負担になっておる。この事実をあなたはどう考えますか。
  31. 西岡武夫

    西岡政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、後援会費という名目で徴収された六千円という金額がどのように使用されているか、その実態との関係があるわけでございますが、その内容を十分調べてみた上で、適正であるかどうかということが判断されると思うわけでございます。もちろん不要なものについて、学生父兄の過重な負担が起こるということは適当ではないと考えているわけでございます。
  32. 浅井美幸

    浅井委員 二十三年の一月三十日の閣議決定で「官公庁に対する寄附金等の抑制について」という通達決定をしておりますけれども、「財政の緊迫化に伴い、最近諸官公所(学校を含む)においてその経費の一部を諸種の寄附に求める傾向が著しいが、寄附者の自由意志によるといわれる場合においても、その性質上半強制となる場合が多く或いは国民に過重の負担を課すこととなり、或いは行政措置の公正に疑惑を生ぜしめる虞なしとしない。よって極力かかる傾向を是正するため、次の方針によるものとする。一官庁の諸経費予算を以て賄い、寄附金等の形によって他に転嫁することは、極力これを慎むこととし、これがため行政諸施策は国家財政との関連において実行可能のものに限定するよう努めること。二 官庁自身による場合はもとより、後援団体を通じてなす場合においても寄附金の募集は厳にこれを禁止すること。三 自発的好意による寄附の場合においても、割当の方法によるものでなく、且つ主務大臣が弊害を生ずる虞がないと認めたものの外その受納はこれを禁止すること。」等々がありますけれども、この後援会費という名目、この千葉大学後援会の六千円の徴収というもの、これは妥当ですか。
  33. 西岡武夫

    西岡政府委員 ただいま申し上げましたように、これが官庁の経費に充てられるというような実態があるとすれば、これは明らかに不適当であると考えられます。ただ、後援会で自主的に、官庁で当然計上しなければならない経費以外、大学当局で当然国の費用でまかなわれなければならないもの以外の自主的な行事なり出版活動なりが行なわれているとすれば、これはそれぞれの実態に応じて判断をしてしかるべきではないかと考えております。
  34. 浅井美幸

    浅井委員 もう少し具体的に言っていただきたいわけですけれども、いまの閣議決定の二番の「官庁自身による場合はもとより、後援団体を通じてなす場合においても寄附金の募集は厳にこれを禁止すること。」先ほど私があげました一部の例でありますけれども、東京学芸大学においても後援会費自治会費として一万一千円集めておる。これは私がいま窓口で調べてきた数字であります。私は具体的な例をあげて、あなたにこれは妥当かどうかということについてお伺いしておるわけです。これはどうですか。
  35. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  その学生自治会等で使います経費につきましては、これは自治会独自の問題であろうと思うわけでございます。したがいまして、私がお答え申し上げておりますのは、それがその名目において当然大学当局で予算として計上しなければならない部分がそのような名目のもとで支出をされていたとすれば問題があろう、それ以外の点については、その自治会費なり後援会費名目で取られた経費がどのように支出をされているかというその事実を調査をした上で判断をしてしかるべきではないかと、かようにお答えをしておるわけでございます。
  36. 浅井美幸

    浅井委員 実態はどうか知りませんけれども、名目後援会費として集めているわけですよ。あなた、これから調査なさるわけですが、本来、こういう国立学校においていま入学金等が非常に高くかかるというのは、これはもう一般の世論であります。これは私立の大学においてはもっと多額の金がかかっているわけです。国立大学においてさえこういうふうな実態なんです。ですから、これを掌握をしておる、あるいはそのようなことのないように指導監督しておるのが文部省であるはずです。それをこれからあなたが調査なさるわけですから、非常に怠慢ではないかと私は思うのです。こういう実態、これは私が作文していま申し上げておるのではない。現実に窓口において行なわれておることについて、あなたは今後実態調査なさるという御答弁でありますけれども、実際問題、こういうことが行なわれていることを私はいま指摘しているわけですから、名目はいずれにせよ、こういう後援会費という名目で集めていることは事実なんです。このことをあなたはこれから調査なさると言いますけれども、私は認めていただきたいと思うのですよ。そして、こういう後援会費として集めておるものの実態が、いずれの使い方にせよ、それはこの閣議決定の「寄附金等の抑制について」という条文に違反するのではないか。  あるいはまた、三十年の九月二十八日には、文部事務次官として「官庁における寄附金等の抑制について」、こういう通達を出しております。「各省庁におかれては、この際あらためて末端下部機関及び職員に対して寄附金等の受入抑制を励行させる措置を執られ、国民に過剰な負担を課し又は行政に疑惑を招く等のことなきを期せられたい。右命によって通知する。」このように文部事務次官が通達をしております。  こういうことがいま行なわれていない実態ですから、これについてどのようにお考えか、また、どのように今後なさるのか。現に、こういうことについて過剰な負担をさせないように——いまちょうど入学の四月を迎える直前であります。現にこのことについてあなた方が何かの措置をとられるかということを私はお聞きしているわけです。
  37. 西岡武夫

    西岡政府委員 先生御指摘の事実について、文部省として十分その実態を把握していない点につきましては、文部省といたしまして非常に申しわけないと思うところでございます。したがいまして、すみやかにその実態調査いたしまして、いかなる名目であろうと、その後援会費なり自治会費なりの名目で取られたお金が、大学当局の施設整備あるいは備品等の購入のために支出をされているというような実態があるとすれば、これについては直ちに取りやめるような措置をとりたいと考えております。また、先生御指摘のとおり、いかなる形であろうと、学生父兄に過重な負担をかけるということは、もちろん適当でないと考えております。
  38. 浅井美幸

    浅井委員 これはよろしくお願いをしたいと思います。  さらに、公立の小学校や中学校、すなわち義務教育です。これについての父兄負担の問題、寄付金を含めてですね。これはいま是正をされておるとあなたは思われておりますか、それとも、まだそういうものが現に存在していると思いますか。この点についてどうですか。
  39. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の問題につきましては、長年そのような事実の関係につきまして不適当であるという議論が行なわれ、文部省といたしましてもそのようなことのないように十分指導をしてまいったところでございます。御指摘のとおり、実態としては、そういう事実が存在をしている点がまだ残されているのではないかと私どもも考えているわけでございまして、今後とも十分そのような過重な負担が義務教育諸学校におきましても行なわれないような指導を続けていく所存でございます。
  40. 浅井美幸

    浅井委員 具体的に私申し上げますならば、公立の小学校の全国平均のPTAその他の負担は大体千五百円くらいです。それから東京で千二百円程度といわれてきております。この中で、特に東京学芸大学の世田谷小学校は、四十三年のPTAの入会金が一万円、PTAの寄付金が二万円、PTA会費が一万八百円、計四万八百円です。それから四十四年が同じ分でやはり四万八百円、それから東京学芸大学の附属竹早小学校が、同じような項目で四十三年が四万四百円、四十四年が四万四千円、小金井小学校が四十四年度が四万円、大泉小学校が三万六千円、東京教育大学の附属小学校が四十三年四万二千七百円、四十四年四万八千四百円。これらの大学の附属小学校ではいわゆるPTAの寄付あるいは入会金というのが非常に高額になっております。これはいま是正されておりますか。ことしはこれはどうなっておりますか。
  41. 西岡武夫

    西岡政府委員 御指摘の点につきまして、四十五年度についてはまだ具体的な数字の報告を受けていないところでございます。過去の実態につきましては、先生の御指摘のとおりの事実があったことは間違いございません。
  42. 浅井美幸

    浅井委員 これはまたことしもこれと同じような金額で行なわれようとしております。したがって、こういう過去の実態というものを私がわざとここで申し上げたのは、例年そういうことが慣習的に行なわれておる、あるいはまた、子弟の教育というものについて非常に親が弱い、出さなければ子供の教育ができないのではないか、あるいはまた教育は向上しないのではないかという盲点をついてこういうことが行なわれておるということである。したがって、先ほどの大学入学金についても同じでありますが、こういうことを早急に是正しなければならない。こういう点について、私は最後に、今後この問題を含めて、文部省としてどのような措置をとるのか、あるいは態度で臨むのか、明確にお答え願いたいと思います。
  43. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の問題につきましては、文部省といたしましても、これまでも指導をいたしてきたところでございますが、御指摘のとおりまだ十分その趣旨が徹底をいたしていないところがあろうかと思います。したがいまして、今後ざらに強い指導をいたしまして、父兄に過重な負担のかからないよう十分改善されるよう努力をいたす所存でございます。
  44. 浅井美幸

    浅井委員 それから、先ほどの大学入学金及び入学に伴う費用実態調査、これは私は資料として要求をしておきます。それからいまの大学の付属小学校、これらに伴ういわゆる負担実態、これの資料の提出も求めておきたいと思います。  提出していただけますか。
  45. 西岡武夫

    西岡政府委員 すみやかに調査の結果を御報告申し上げる所存でございます。
  46. 浅井美幸

    浅井委員 次の問題に移りますが、昨日、人事院から閣議並びに国会ですかに出されました「義務教育諸学校等の教諭等に対する教職調整額の支給等に関する法律の制定についての意見の申出」これがきのう出たわけでありますが、私はこの点で二、三お伺いしたいわけでありますけれども、まず、今回の人事院の勧告に準ずれば、労働基準法の第三十六条、第三十七条の適用除外のおそれがある、こういうふうに伝えられておりますが、この点についてはどうでしょうか。
  47. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、昨日人事院から意見の申し出があったわけでございまして、これを受けまして、現在文部省といたしましてはすみやかに法案を提出いたす準備をいたしている段階でございます。ただいまの御指摘の点につきましては、現在立案の過程で検討を続けているところでございます。ただ、人事院の意見の申し出の中で指摘をされております点は、先生の御指摘のような方向であると私どもは認識をしているわけでございます。
  48. 浅井美幸

    浅井委員 適用除外の真意というものは、一体それはどこにあるのか、この点についてどうでしょう。
  49. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。これは人事院の意見の申し出の中で述べておられますように、超過勤務手当の制度というものが教育にはなじまないものであるということと、教職員の勤務の時間というものは、包括的にこれは評価するのが妥当であるという人事院の意見に基づいてそのような考え方が出てくるものと考えております。
  50. 浅井美幸

    浅井委員 教職員を聖職とするかあるいは労働者として考えるか、議論の分かれるところでございますけれども、やはりこれは教職員としても労働基準ということについての適用は当然ではないかと私は思うのです。ですから、適用除外の方向にあなた方が持っていこうという考え方は少し誤りではないか。なぜかならば、労働基準法の立法の精神と趣旨は、第一条は労働条件の原則、また第三条は均等待遇、これらの最低基準を守ろうとしているものであります。したがって、いまそのような方向にいこうとする文部省の考え方であるならば、これらの最低基準さえ守れない、こういうふうに私は考えますけれども、この点はどうでしょうか。
  51. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  具体的な法案の内容等につきましては、昨日人事院の意見の申し出があった段階でございまして、現在その作業に取りかかった時点でございますので、いまの時点で、具体的な形でこの場でお答えを申し上げるまでには至っていないという点を御了承いただきたいと思うわけでございます。  ただ、先生御指摘の人事院の勧告に基づけば、労働基準法三十六条、三十七条の適用の除外についてどういう方向が考えられるかという御指摘、御質問でございますので、そのような方向に、人事院の意見の申し出に基づけばなろうかという方向を申し上げたという程度でございまして、具体的には今後の法案作成での段階で、当然中心的な問題として私どもは考えていかなければならない問題である、かように考えているわけでございます。
  52. 浅井美幸

    浅井委員 ですから、その中心的な問題を、検討には違いないのですけれども、いままであなた方はこの問題について何回か繰り返されて論議をしてきた問題であります。きのう勧告があったからといって、それがきょう直ちに新しい問題として提起されたわけではないのです。したがって、文部省としては、その方向についてどのような方向をこれからとろうとしているのか。検討には違いないのですけれども、いま次官がおっしゃったように、適用除外の方向で検討しておるのか、それとも、適用除外ではない、適用の方向で認めている、この方向でもっていきたい、こういうふうにおっしゃるのか、どっちでしょうか。
  53. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  人事院の意見の申し出の中で人事院が指摘をしております方向は、労働基準法三十六条、三十七条を義務教育諸学校の教職員について適用するのは適当ではないという指摘がなされているというふうに私どもは理解をいたしまして、そのような方向で検討をするというふうに御理解をいただきたい、かように思います。
  54. 浅井美幸

    浅井委員 承知いたしました。  では次に、月額の百分の四、すなわち調整額の支給を四%にした。そのことについて、この四%はあなた方は妥当と思われますか、それとも低いと思われますか。
  55. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの具体的な御指摘につきましては、私どもは人事院の意見の申し出を尊重をいたしまして、その方向に沿ってすみやかに所要の立法措置を講じたいというふうに考えているわけでございまして、人事院の示された具体的な数字について、私どもがここで高いとか安いとかという議論をいまの段階で申し上げるのはいかがかと考えている次第でございます。
  56. 浅井美幸

    浅井委員 これは人事院が当然文部省と相談なさってきめているのではないかと私は思うのです。その月額の百分の四とした根拠は、文部省調査によれば、いわゆる残業が小学校の教員では一週間で二時間半、中学校で一週間で三時間五十六分、高等学校で三時間三十分。日教組の調査によれば、小学校は十三時間四十六分、中学校は十八時間六分、高校が十五時間二分、このように明らかに差異があります。この四%アップの根拠というものは、一体人事院はどういうように出したか。また、文部省からこれの連絡がいかなければ、あるいは相談しなければ、四%アップというものについての根拠は私はないと思うのです。ですから、そういう四%アップが人事院の勧告ではあったとしても、文部省として妥当であるとお考えかどうかということを私は聞いているわけです。
  57. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  今回の人事院の意見の申し出の調整額そのものにつきましては、もちろんこの調整額を支給することによって、懸案になっておりました超勤問題を解決するということも含まれていると考えておりますけれども、同時にまた、基本的に教職員の勤務の特殊性、専門性、そういったところに着目をいたしまして、教職員の待遇の改善をこの機会にはかるという意味も今回の人事院の意見の申し出には当然含まれている、むしろそのほうに重点が置かれていると私どもは考えているわけでございます。  なお、四%につきましては、もちろん現在の教職員の給与の実態から申しまして、もっと大幅な教職員の待遇の改善をしてしかるべきであると文部省としては考えているわけでございまして、また、具体的に四%という数字は、給与法の号俸で申しますと一号俸相当というふうに御理解をいただきたい、かように思うわけでございます。
  58. 浅井美幸

    浅井委員 いまあなたは給与体系の問題が主眼であるようにおっしゃいましたけれども、「給与等に関する現行制度を改め、」と、この一行はございますけれども、この教職員給与体系の抜本的な改善、これに対する意見、これについて今回の人事院のこの勧告の中にはない、このように私は見ておるのです。あなたはいま、あるようなことの御答弁がありましたけれども、これは単なる一部の残業に対するところの待遇改善というだけのことであって、根本的な教員に対する待遇改善、給与改善の問題を含んでいない、私はこういうように思いますが、いかがですか。
  59. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  私がただいまお答え申し上げましたのは、もちろん今回の人事院の意見の申し出が教職員の給与の抜本的な改善であるということではございませんで、その方向も含めて半歩前進と申しますか、一歩前進という意味で私どもは理解をいたしましてそのようにお答えを申し上げたわけでございます。
  60. 浅井美幸

    浅井委員 では、あなたのほうでは、今後この教職員給与体系の抜本的な改善をなそう、そういうお考えである。いつごろまでにそのような方向にあなた方文部省ではなされるお考えですか。
  61. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、本年五月に、中教審がわが国の教育改革についての最終的な答申を出されるやに聞いているわけでございますが、私どもはその答申を踏まえまして、教育制度の抜本的な改革に具体的に取り組んでいくわけでございます。その中で、教職員の待遇の改善というものは非常に大きな部分を占めている問題であろうと私どもは考えているわけでございまして、ただ、この問題は教職員の資質の向上と無関係ではあり得ないわけでございます。  したがいまして、今後教職員の養成の新しい制度のあり方、また現職の教職員の再教育の問題、こういった問題とのかね合いが重要な問題でございまして、やはり相当の時間をかけて検討をしていかなければならない問題であろう、したがって、少なくともここ五年ばかりの将来を目ざして私どもが取り組んでいかなければならない問題である、かように考えているわけでございます。
  62. 浅井美幸

    浅井委員 この問題は、給与体系は一昨年の教特法の審査の際から問題になっております。これは相当長期間検討されてきておる待遇改善を本格的にやるのにまだあとさらに五年もかかるという考え方は、あまりにもスローモーな考え方ではないかと思うのです。  そこで、時間もございませんので急ぎますが、時間外勤務の規制について、今回の勧告では、教職員に命令による勤務ができるようになっております。この業務内容ですが、「文部大臣は、人事院と協議して時間外勤務を命ずる場合の基準を定めるべきものとする。」この基準は、今後どのようにおつくりになるのですか。
  63. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の問題につきましては、これから具体的に取り組む問題でございまして、いまこの時点で具体的な内容についてお答えを申し上げる段階ではないというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  64. 浅井美幸

    浅井委員 文部省と人事院と協議して広範囲にしたい、こういうふうに承っております。この広範囲にするということをやりますと、無制限、長時間の超勤をしいられるということで、日教組は強くこれに対して反対をしておりますけれども、この点についてどういうふうにお考えですか。
  65. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の広範囲ということの具体的な意味でございますが、この点につきましても、これから教職員の仕事というものはどういうものがあるかということを一つ一つ具体的に検討をして、その中で、できるだけ関係者の間で了承される、納得のいく線で私どもは決定をしていきたい。その際には十分人事院と協議をいたすわけでございますので、いまのこの時点で具体的な範囲、そういったことについてお答え申し上げる段階ではございませんけれども、十分教職員の職務の実態に合わせて善処をしていきたい、かように考えている次第でございます。
  66. 浅井美幸

    浅井委員 答弁が具体的に全然出ないのですけれども、超勤の命令をするというけれども、時間的に何時から超勤するのか、命令された人に対しての給与的処遇はどうなるのか、あるいは、いまあなたがおっしゃったように、具体的な例として運動会の準備はどうなるのか、あるいは家庭訪問はどうなるのか、あるいはまた事務職員の消耗品、学用品等の在庫調査はどうするのか、あるいはテスト等の残業の問題についてはどうするのか、これらについて私は明確にお聞きしたかったわけですけれども、どうも答弁が出そうもないのですが、この点はどうですか。
  67. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、昨日人事院の意見の申し出がありまして、それを受けましてこれから立法措置にかかるわけでございまして、ただいま先生御指摘の問題は、かなり具体的な事実の問題に関係があるわけでございます。したがいまして、人事院からももちろん適正な御指摘、御意見があろうかと思いますし、その人事院の御意見文部省の考え方とを十分突き合わせまして妥当な線を見つけていきたい、かように考えているわけでございます。本日この時点で先生御指摘の問題について具体的にお答えすることができない事情を十分御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  68. 浅井美幸

    浅井委員 最後に、いま文部省と人事院と協議してきめるとおっしゃいますけれども、いわゆる教職員の代表をまじえて三者で、いわゆるあなたのおっしゃった教職員のことの奨来、あるいは待遇改善、環境保全ということから、命令できる業務の内容の打ち合わせを行なうにあたり、教職員を入れる考えはあなた自身お持ちですか、どうですか。
  69. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答え申し上げます。  現在のところ、公式な形で人事院と文部省と教職員団体との間で公式な協議の機関なり場を設けるという考え方はございませんが、実際問題といたしまして、十分教職員諸団体の意見文部省としては聞いて、できるだけ教職員諸団体の意見にも沿うような方向で善処をしたいと考えているわけでございます。
  70. 浅井美幸

    浅井委員 まあそれもあれですけれども、私は強く日教組の代表、いわゆる教職員の代表といいますか、そううものを入れて、実態に即したこういう業務命令なら業務命令をつくるべきである、と私は思うのです。そうでなければ、あなた方の一方的な考え方に終始して実際問題にそぐわないものができる、このように私は憂えるわけですから、この点について、前向きに私は検討していただきたい。私たちは、教員の地位の確立はもとより、とにかく教員の労働条件や福祉保障を含めての待遇改善はすみやかに行なうべきである、そしてわが国の教育の向上に対して教員を十分に当たらしていくべきである、このように主張しております。その点、強い要望にかえて私の質問を終えたいと思います。
  71. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 吉田賢一君。
  72. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 では、文部省を先に済ませます。  去年の一月に、例のヨーロッパのOECDの教育委員会の教育調査団がいろいろな日本の教育の実態に対する報告をしておるのでございますが、そのうちで、一つは、大学等、高等教育などへの入学の準備という実情が、個人個人の生徒の学力、能力をつくるというよりも、むしろ入学試験にパスするという技術を修得するということに重点が置かれておるということをいみじくも指摘しておったようであります。もちろんこの点は、つとに国内におきましても問題化してきた点でありまするが、そこで、このような指摘があり、国内でもすでに問題になっておるのでありますが、文部省といたしましては、初中教育の観点から、この種の問題についてはどう解決していくのか、どうこれを受け取っておるのか、この辺についてまず明らかにしておきたいと思うのです。
  73. 西田亀久夫

    ○西田説明員 入学試験が学校教育に非常に大きな弊害をもたらすという問題は御指摘のとおりでございまして、現在中央教育審議会が教育制度全般に対する改革の検討をいたしております中で、この問題が基本的に重要であるということを考えまして、これに対して、現在改革の基本構想の中で具体的な提案をいたしております。  その内容は、御承知のとおりに、高等学校で勉強をまともにした生徒の学習成績がそのまま大学入学に高く評価されて、入学試験に通るための特別な練習、訓練を要するようなそういう選抜の方法というものを極力少なくするということが目標であるということをいたしております。そういう観点から考えますならば、高等学校の成績の評価の方法、その入試制度における活用の問題並びに各学校間のいろいろな格差といわれますものをどのように公平に選抜の場合に評価するか、かような観点から具体的な提案が出ております。  現在そのようなことが一つの方向として多数の大学人にも、あるいは高等学校の方々にも次第に支持される方向に進んでおります。文部省といたしましては、大学学術局においても、入試問題の改善の観点から具体的にその改革を取り進める準備が着々進んでおります。長年の慣行がございまして、なかなか一挙の改革はむずかしい点はございますが、少なくとも入試改善につきましては、高校、大学関係者の間にかなり広い同意の範囲が出てまいりました。文部省といたしましては、これを学校制度改革の重要な一環としてぜひ実現をいたしたい、こういう点で現在検討を進めておるところでございます。
  74. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ただに大学入試のみならず、私立高校などのいわゆる優秀校への入試は相当激烈な競争もあるのが現状でございます。したがいまして、児童に至りますまでこの弊風が浸透しておるのが現在の実情でないか、こう思われるのであります。さすれば、高校自体のその関係者の間の検討協議もさることながら、やはりもっと下級校に対しましても同様な態度をもって取り組むべきでないかと思うのですが、この点、 いかがですか。
  75. 西田亀久夫

    ○西田説明員 御指摘のとおりに、中学から高等学校への進学につきましても、現在私立高等学校が全体の約三割を占めております。     〔高橋(清)委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、父兄の中には、それらの私立高校への進学によって将来本人の上級学校への勉強により便宜な道を確保しようというような観点から、無理をしてそれらの学校にみな元詰めかけるという傾向が確かに見られるわけでございます。しかしながら、公立の高等学校につきましては、御承知のとおりに、教育委員会が中学、高等学校、両者の間の橋渡しを十分にすることによって次第にその問題は解決されつつあります。  私立の高等学校は、当然、その学校として独自の校風を持ち、独自の教育上の特色をねらうという本来の使命を持っておりますので、それに対して賛同する父兄がそこに積極的に志願をするということは今後とも起こることと思われますが、文部省としては、むしろ公立中学校、公立高等学校の間における試験による弊害というものを極力縮小し、私立学校はその教育目的に従ってそれぞれ特色を発揮していただくという方向に進むことが正しい方向であろう、かように考えておるわけであります。
  76. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 何ゆえ教育ママが発生するのか、多くの母性をしてかくあらしめておりまするその根本の背景は何なのであるか、ここを突いていくことによって、公私にかかわらず、文教の府といたしましては、協力とか指導とか、いろんな角度から可能な手段を講じてしかるべきだと思うのであります。私立学校は放任の実情、公立学校は指導、規制していくというようなことが社会的に一体何を生みおるのか。そもそも、この教育ママを生む社会的な背景、根底は何なのか、そこを突くことなくては問題の解決はできないと思うのですが、どうですか。
  77. 西田亀久夫

    ○西田説明員 先ほど御指摘がございましたが、わが国において、入学選抜のために多くの方がいわゆる有名校に集中をして、非常に無理をして進学競争に力を尽くすという傾向は、OEODの調査団でも指摘されておるとおりであります。  これにつきましては、わが国の文化的、社会的な全体の背景を考えますと、問題がたいへん深刻なところにあるようでございます。その調査団と日本の当局者との話し合いの席におきましても出ましたように、一つは、日本は明治以来、社会のさまざまな階層の方が自分の実力を自由な競争の中でためし、そして社会的にりっぱな地位を得る機会として学校教育が長年にわたって認められてきた、このことが日本の近代化において、一面においてはたいへんな効果をあげたわけでございますが一、これが極端に進みまして、学校というところは一要するに立身出世の手段であり、他人と競争するためのものであるというような風潮が強く出てまいりました。しかも、過去の学校制度におきますそのような限られた少数の学校の卒業生が、社会の中で相当有力な地位を占めておるというのが現状であろうかと思います。そのような過去の歴史から、やはり名の通った学校において高い学歴を持つということを父兄が強く念願するという傾向が現在も続いておるわけであります。  これに対する基本的な解決策といたしましては、あるときにある場所における競争で勝ったということがその人の一生涯の経歴を決定しないという、そういう真の実力による個人の自由な競争ができる状態をつくるのがほんとうではないか。入学試験は必ずしも個人の能力を適切に判別する方法としてはよろしくないということもいわれておりますが、さらに基本的には、人間が、特定の時期にある学校の入学試験に通らなくても学習の意欲を持ち、ある勉強をしたいという希望を持ったときに、いつでもその教育の機会が開かれており、そこで実力を身につけるならば、それが社会で正しく評価される、そのような状況をつくることが基本的に大切だというふうに考えております。  中央教育審議会でもさような観点から、高等教育も広く一般の人にこれを公開いたしまして、そして勉強したいときにはいつでもその専門分野の学習ができる、そのような開放的な学校制度をつくるということが基本的に長年のそのような弊害を直す方法であろうということでございまして、そのことによって、御指摘のいわゆる教育ママといわれますような極端な傾向を是正する方向に向かうのではないか、かように考えております。
  78. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 学力偏重、学歴をもって出世、生活安定の手段にする、社会はこれを買う。東大卒業、これはエリートコースだから優秀な人材だろうということで、至るところ、社会のあらゆる重要機関をこれらの人が占めていくというようなことになる。それ見習えというような風潮を根本的に打破するということが一つの教育の目的ではないであろうか。しからば、第一、教育について学校中心主義、学校偏重ということにも大きな反省が要るのではないであろうか。この二点についても、文部省としてはもっと抜本的な態度をもって臨むという姿勢がなければなるまいと思うのであります。具体的に学校偏重という弊風を打破する、学生にまず求めるというよりも、現実の社会を是正するという方向への努力は一体どうしたら可能なんであろうか、こういう点さえ考えさせられるのでありますが、この二点について、文部省としてはどういうふうなお考えを持っておられるのでしょうか。
  79. 濱野清吾

    ○濱野委員長 西田君、そんな大きな問題、君で答弁できるかい。大きな問題だぞ。
  80. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 文部省全体としての締めくくりは、また適当の機会に大臣からいただきますから……。どうですか、具体的な事実関係に限りまして、ひとつ簡潔にやっていってください。
  81. 西田亀久夫

    ○西田説明員 ただいまのお尋ねの点は、教育政策としてたいへん大きな問題でございますが、私が担当いたしております中央教育審議会における現在の制度改革の論議なり考え方の中から、現在認められておりますものをお答えとして申し上げたいと思います。  学歴偏重といわれます一つの傾向が、それを受け取る社会の側の教育に対する考え方に深く影響を与えることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、現在の学校に対する社会の考え方というものを直接的に行政としてどのように変えることができるかということは、たいへんむずかしい問題でございます。いまから五十年ほど前の高等教育の機会はたいへん限られた範囲でございまして、その人々がこれまでやってきた実績というものから、現在の学校に対して同じような有名校というイメージが国民の中に非常に固定化しておるわけでございます。  将来の具体的な施策といたしましては、いわゆる有名大学というものがきわめて少数あり、その他の学校はこれとすべての点において格段に違うというような学校の全体の整備状況に問題があるという指摘が各方面でなされております。  したがって、社会の学校に対する考え方を改めてまいります一つの方法としましては、学校自体の、ある学校はすべての点においてトップである、他の学校はそれより格段に落ちるという状態を改めて、Aの大学はこういう分野においてきわめてすぐれた特徴を持っておる、Bの学校はまた別の面における特色を発揮する、多様な学校がそれぞれ独自の分野でその特色を競うというように学校を整備するということが、いわゆる特定校に対する偏見を是正する一つの方法であろうといわれております。  それからもう一つは、学校教育そのものが教育のすべてについてこれを取り仕切ってやるべきものだというように考えることに一つの問題があるわけでありまして、よくいわれます家庭、学校、社会、すべての分野において人間の成長と発達を助ける教育についてそれぞれの分野で独自の役割りを果たすべきだ、こういう考え方が近年強くいわれております。現在中央教育審議会では特別な委員会を設けまして、いわゆる生涯教育というふうな観点を導入いたしまして、家庭、学校、社会全般の中で教育について、それぞれが独自に担当すべき分野が何であるかということを総合的に検討するということを進めております。これらの結論を得ました上で、あらためて学校教育というものの固有の役割りとその他の分野との深い関連について十分検討いたしたいというのが現在の状況でございます。
  82. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 生涯教育のことはあとで伺いたいと思うのですが、そこで、さかのぼりまして初等教育、初等教育そのものから、また縦の関係におきまして根本的な是正の段階にきておるのでないかというふうに考えられるのであります。数年後に社会に出る、そして相当教育を身につけておるという年齢にあらずして、この初等教育の現状につきまして、一体何が実質上一番重要なのであろうか。文部省といたしましてこれをどう把握しておるのか、この点をちょっと聞いておきたいです。
  83. 西田亀久夫

    ○西田説明員 これも学校教育全般について中央教育審議会指摘されております問題は、わが国の初等教育におきましては、これが人間の一生涯のさまざまな成長、発達の基礎をつくる場所であるという立場からあらためて考え直しますならば、現在義務教育が九年になり、また高等学校には八割以上の人が進学するという全体の状況から考えますと、初等教育といわれます幼稚園、小学校等の教育において、基本的にその教育において重点を置くべき点が何であるかということをあらためて考え直す必要があるということが指摘されております。そして、その指摘の最も重要な点は、これまでともすれば国民の平均的な水準を引き上げるという立場から、十人の子供たちがそれぞれ十人十色のさまざまな個性なり特性を持っておる、これに対して、必ずしも教育がそれに対応するような十分な教育の個別化ということが行なわれていない。いわば一種の平均的な教育になる傾向があった。これを教育の内容において、方法において一そう一人一人の持っておる可能性というものをごく基礎の段階において積極的に伸ばしていくような教育の内容、方法の改善が必要であるということがその中心であります。  同時に、個人の個性の尊重ということが根幹であるといたしましても、そのような教育の根底には、国民教育としてわが国の文化と伝統を正しく受け取っていくこと、あるいは将来の社会においてさまざまなものの考え方を発展させ、そこに民主的な社会の多様性というものを実現するためには、国民教育として、この社会そのものがそのような多様な形で存在し得るような一つの共通の規範ということばを使っておりますが、それを体得させるということが、初期の段階においてもきわめて重要であろうということを指摘いたしております。  いささか抽象的でございますが、初等教育についてはさような点が現在指摘されております。
  84. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 中教審の中間報告はともかくといたしまして、具体的に文教の行政の中、心である文部省といたしましては、この初等教育においてこれから伸びようという児童生徒の個性を引き出し、延ばし、あるいは能力を引き出していくといったような面について、一体具体的に何を、そしてどうするならば教育の目的を達し得るのかという辺はどういうふうにお考えになっているのでしょう。これは現実の問題としまして、中教審の考え方、いまの中間報告における種々の構想等々は一応別にいたしまして、実際の文部行政上、どういうふうにこれをなすことがその目的を達し得る道か、そして可能か、障害は何か、言うならば問題は何か、この点はいかがですか。
  85. 西田亀久夫

    ○西田説明員 現実の行政におきまして、現在も文部省では初等、中等教育における教育の具体的な方法の改善という問題がその一つの課題でございます。これまでのように、先生が一つのクラスの生徒にある程度平均的な教育、指導を与えていくという立場をさらに一歩進めて、一人一人の子供の個性を見詰めながら、その個人個人の伸び方に応じて適切な指導をする方法としては、諸外国におきましてもさまざまな方法がとられております。わが国でも、それらの新しい教育方法の導入につきまして、さまざまな研究的な立場でそれらの方法について実験的な試みが現在進行中でございます。  また近年、一人一人の子供が自分で、与えられた教材を自分の勉強の進み方に応じてこなしていく、そういう個別的な学習ができるためのさまざまな教育上の教材とか機器とかいうようなものの活用も次第に進んでまいっております。これらにつきましても、現在研究的に一部の学校においてそのようなことの研究がなされております。  また、文部省の初中局といたしましては、学校教育というものが、ただいま申し上げましたような意味でほんとうに教育の効果をあげていくためには、学校の組織、編成、運営のしかたというものをどういう形にすればそれが最も高い効果をあげ得るかという立場から、総合的な立場で学校の維持、経営の最適化に関する専門家調査研究も現在進行中でございます。
  86. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 初等教育における児童の将来というものは、これは言うなら教育の基礎でありますから、この基礎について一から十まで中教審の答申待ちというような、そんななまぬるい消極的な姿勢で長い間日本の文教をあずかってきたということは、私は僣越でなかろうかと思う。やはり文部省といたしまして、この問題の盲点はここにあり、こうするならばこれがこう改革できる——長年の体験上、また幾多の優秀な人材がいるのでありますから、現に教育に従事する人が全国に無数にいるのでありますから、そういった声、体験、意見等を聞く機会は何ぼでもあるわけなんであります。今日は多様な世界観、考え方に入っておりますし、あるいはまた価値観というものも種々になっておりますし、こんな科学時代でございまするので、児童にとっても、世の中へ一歩出ましたら、単純な学校の教育のような場じゃありません。そこで非行少年も起こるし、ノイローゼにもなるし、あらゆる不幸な個人、家庭の現象さえ生むわけなんでありますから、そこで何がこれをなしておるのかということについて突きとめて問題をつかみ、解決するという道を開くべきでないかと思うのだが、一体教職員の方々が一々の生徒、児童の個性なり能力なりを見きわめてこれを開発し、伸ばしていくということに真剣に取り組み得る体制になっておるのかどうか、これは現実の問題ですよ。この点も率直に反省すべきものは反省して、形式的に文章で、作文で改革するんじゃございませんで、将来の日本の運命を左右する重大な課題なんですから、現実にそれがどうなんだろうという点については、ひとつ率直に、実情によってここを明らかにしておいていただきたい。しからば、これをどうすることがよろしいか、それが可能か適切かという次の問題に発展していくのでありますが、どうですか。  これは何ですか、審議官一人じゃなく、答弁するなにはいないのですか。担当局長はきょうはいないらしいですね。
  87. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 初中局の諸澤でございます。  ただいま西田審議官から小学校の段階における教育においての個性の伸長という眼目について御説明申し上げましたけれども、そのためには、一面において学校の教育をあずかる先生方の数をさらに充実して、一人当たりの受け持ち児童数をより適正なものにしていくという仕事、あるいは学校における施設設備、教材等の開発、充実という意味における財政的な補助といったような仕事を文部省としては計画的に進めてまいっておるわけでございます。  一方、小学校の教育はいわば国民としての基礎をつちかう教育でありますから、その内容は単に知的な教育に偏重すべきものではなく、いわば全人的な発達を促す教育でなければならないわけであります。したがいまして、小学校の各教科のほかに道徳の領域を設けておりますわけでありますが、その趣旨とするところは、いわば人間尊重の精神というものを具体的な学校、社会、家庭等の場で実現し、さらに平和的な国家の形成者とし、あるいは、進んで世界の平和に貢献できるような国民としての基礎をつちかう意味における道徳性の涵養というその教育は、単に道徳の領域のみならず、各教科の教育を通じて実現すべきものであろうと思います。  そしてこのような教育活動の目安になりますものは、文部省が定めますところの学習指導要領でございますが、この学習指導要領が御承知のように先般改正になり、この四月から新しい学習指導要領に即して教育が行なわれるわけでありますが、この学習指導要領の改定にあたりましても、いま申し上げましたような小学校教育における知育のみならず、徳育、体育、いわば全人的な発達を促すことを目標として改正を試みておるわけでございます。  また、学校の教育におきましては、最初に申し上げましたような物的な条件の整備というものももちろん大切でございますけれども、何といっても教育を担当するのは教員でありますので、この教員の資質を向上するということが非常に大きな問題であろうかと思います。  そういう意味におきまして、文部省では近年、直接文部省において学校の校長さんあるいは中堅の教員の方々を集めまして、数週間にわたって研修を行なう、あるいは各県で毎年新たに採用いたしますところの新規採用の教員を対象として研修会を行なう等の各種め研修活動を活発にいたしますとともに、先生方に広く世界に目を向けていただいて日本の教育を考えていただくということから、本年度は五百人の教員の東南アジアあるいはヨーロッパ、米国等への海外視察の補助等の事業を行なっております。  また、先生方の教育の活動をより深めていくためには、それぞれの専門の領域の理解と知識をより一そう深めていただかなければならないわけでありまして、そういう意味において、現在全国的に各教科その他の教育活動の研究を主体とする教員の団体が多数ございますが、それらの団体の活動をより活発ならしめるために、各般の財政的な援助をするというような仕事を行なっておるわけであります。要するに、そういったような活動を通じて、教育を担当する先生方の資質をより一そう向上させるということを一つの眼目といたしておるわけでございます。
  88. 濱野清吾

    ○濱野委員長 この際、関連質問がございますから、これを許します。鳥居一雄君。
  89. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 関連して一、二お伺いしたいと思うのですが、世間には義務教育における教育権の所在につきましていま論議されておるわけでありますけれども、文部省はこれに対してどういうふうに考えておられますか、伺っておきたいのです。
  90. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 ただいま御質問のございました教育権の問題でございますが、この点につきましては、昨年の七月に東京地裁から出されましたいわゆる教科書裁判の杉本判決の中に論議されておるところでありまして、この判決によりますと、およそ子供を教育する権利と責務は親にあるのだ、そして教師はこの親の信託を受けて教育に携わるのだ、そのことは、直接国が教育の内容に立ち入ることを基本的に認めるものではないのだ、こういうことが判決の要旨でございます。これをとらえまして、教育権は親にあって国にはないのだ、こういうような理論もあるわけでございますが、私どもが考えまするに、この解釈のよって来たるところの憲法二十六条の「すべて國民は、法律の定めるところにより、その能力に應じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」というこの条項は、まさに、国が次代を背負う国民の教育に対して責任を負うべきことを規定したものであると考えまするので、したがいまして、国は、学校教育において単に施設整備の仕事を持つのみならず、進んで教育内容についても、その基準を定め、教育の内容がどうあるべきかということについても目安をつける責任があるのだ、こういうふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、そのようなものを教育権と考えまするならば、われわれは、国に教育権があり、むしろ積極的に教育の内容についても、これが教育の機会均等と水準の維持向上をはかる上に必要な任務を果たすべく、教育内容についても当然関与するものである、かように考えておるわけでございます。
  91. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 もう一つ、文部省のほうでは義務教育における指導要領をあらためて出すそうですけれども、これに対して世間の一部に、これとは別個の指導要領をつくりまして義務教育における参考にしていこう、こういう一つの動きがあるそうですけれども、これに対して、文部省ではどう考え、どう対処していく考えですか。
  92. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 ただいまの教育権の問題と関連するわけでございますが、いまの杉本判決のような考え方に立ちますならば、学習指導要領といったいわば教育の目標なり内容を定める基準というものは、しさいにわたって国が定めるべきものではない、こういうような結論になろうかと思うのであります。しかしながら、ただいま申し上げましたように、私どもは、国は学校の教育の内容に対しまして、特に下級の学校の教育というものが、国民としての機会均等と教育の水準の維持をはかるということが任務であります以上、当然に教育の内容にわたりましても、その目標なり内容の基準なりは国が定めるべきものである、そして、先生はこの国が定めた学習指導要領を基準として教育活動を行なうべきものであるというふうに考えておるわけであります。  したがいまして、ただいま御指摘の点につきましては、学習指導要領は、現在の法律のたてまえからいいましても、国がこれを定めるべきものであり、そして、その国が定めた学習指導要領は、先生方がこれに即して教育を行なわなければならないという意味で拘束性を持つものである、かように考えるわけでございます。
  93. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 以上で私の質問を終わります。
  94. 濱野清吾

    ○濱野委員長 ちょっと、重要なことですから委員長から聞いておきたいのだが、杉本判決に対する文部省の措置はどういう措置ですか。
  95. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 昨年の七月に判決が出まして、文部省は、その後この判決を承服しがたいとして、直ちに東京高等裁判所に控訴をいたしました。そういたしまして、去る二月の五日の日に第一回の口頭弁論がございまして、今後引き続き高等裁判所においてこの問題は審理されることになっております。
  96. 濱野清吾

    ○濱野委員長 もう一つ、一部で指導要領を自由におつくりになって、杉本判決の趣旨にのっとっていることだと思いますが、それについて、文部省はこれを拘束する立場にあるといっておるが、事実上できるのかできないのか。
  97. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 その問題につきましては、判決が出ました後に文部省は、初中局長名をもちまして、各都道府県の教育委員会、知事あてに通知を出しております。  その趣旨といたしますところは、一つは、わが国の司法制度におきましては三審のたてまえをとります以上、第一審の判決が出ましても、所定の期日内に当事者が控訴をいたしましたならば、第一審の判決がそれをもって既判力、拘束力を持つものではない、したがって、この判決が出たからといって教育行政に何ら変化を及ぼすものでないということを言っておるわけであります。そのことは、すなわち、ただいま申し上げた学習指導要領のあり方につきましても従来どおりであるということを示したものでございまして、この趣旨によって、各都道府県の教育委員会を通じて、県下の市町村の教員並びに学校に従来どおり教育活動が行なわれるべきものであって、教育の現場に混乱を起こさないように注意してほしいということを要請しておる次第でございます。
  98. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 初中教育につきまして、昔のような盲目的な国家主義の教育とか、あるいはまたそうかといって、反面、日本の伝統を忘れてしまったコスモポリタンをつくり上げるというようなものでもない。そこに、日本の平和とかあるいは国民性とか伝統とかいうものとの調和もとりながら新しい世界に貢献していくというような、こういう豊かな個性なり能力の伸長、開発を目ざしていくということになるべきだと思うのだが、そこで最近の実情からかんがみまして、一体、個人としての、もしくは社会人、家庭人としての児童のモラルはどういうような位置づけをすべきであろうか。この点について、道徳指導要領とかいうものも拝見せぬではありませんが、もう少し何か具体的に、この現在の世相に対して、こういう点がこうあるべきだ、もしくはこれが筋だという点、これをモラルというようなつかみ方でどう位置づけをするべきであるかということをどういうふうにお考えになりましょう。
  99. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 最初にお答え申し上げましたように、子供の道徳教育というものは、いわば特別の教科のごとくこれを取り扱って、一種の知的教育のごとく扱うことは適切でないという趣旨から、現在小学校、中学校におきましては道徳という教育活動の領域がございますが、それは単に道徳の時間だけで教育するのではなくして、各教科の教育の中におきましても、単にそれぞれの教科の知的教育のみならず、あるいは国語あるいは社会という教科活動を通じて、そこに子供に対し人間としての人間尊重の精神であるとか相互協力の態度であるとか、そういうものをつちかっていこう、またクラブ活動の領域がございます。このようなクラブ活動あるいは学級会等の活動におきましても、同じような趣旨のもとに、人間としての発達を促すという配慮をして教育をするというような眼目でただいまの学習指導要領はつくられてあるわけでございます。
  100. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 あと、簡単でよろしゅうございますから簡単に要点だけをお答えください。  児童の情操教育といたしまして、ヨーロッパあたりにおきましてはいわゆる児童演劇の運動がかなり行なわれておるようでありますが、これまた生徒の情操教育といたしまして、わが国において、教育行政上、教育の実際上どのような位置づけをしておるのか。この点いかがでしょう。
  101. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 現在小学校におきましては、情操教育をねらいとする教科としては、音楽、図画、工作等の教科がございますが、これらの教科のねらいとするところは、単にじょうずに歌を歌う、あるいはたくみに工作をするということではなくして、それらの活動を通じて子供の情操を豊かにしていくということをねらいとするものであり、そのような趣旨は、この両教科のみならず、特別教育活動において、あるいは学芸会等の活動を通じて子供の情操の発展をはかっていくということを考えておるわけでございます。
  102. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いまお尋ねしましたのは、具体的に児童演劇の問題を取り上げたのですが、それはいかがですか。
  103. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 具体的に児童演劇というようなことで、現在の学習指導要領なり指導書には、文言はあったかどうかちょっと記憶いたしておりませんけれども、実際には学校の音楽等の教育において、多少そのような内容を盛り込んでいくとか、あるいは、先ほど申し上げましたような特別教育活動において、学芸会等の行事を行なうというようなことを通じてやっておろうかと思います。
  104. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この児童演劇の問題はまたあらためて聞きますから、少し具体的に、実情ないしはいろんな計画があればありとして、諸外国とも比較いたしまして調べておいてください。それに基づきましてまた具体的に聞いてみます。  それから、教育の目的を達しようとしますと、一つは、優秀な教員を教育界に入れるということが一番大きな課題であろう、こう思います。優秀な人材が、とかく教育界をきらうという傾向はないであろうかということも危倶するのであります。この点は、さきに問答されておりました教職員に対する待遇の問題との関連もあります。言うならば、物的にも、ないしは社会的に真に先生に値するような、尊敬もし得るような地位であることを認識さすというような、経済主義的にないしは功利的に一労働者なりというような、そういうような考え方にあらずして、やはりとうとい、りっぱな、豊かな個性を開発するという重大な使命を持ったところの職であるというような、名実これにふさわしいような地位を与えるということが必要ではないだろうか。ですから、この点につきましても、やはり処遇の問題はどうあるならば優秀な人材が来るか。たとえば給与関係にしてもその他にいたしましても、他の職域よりもよほど教育界のほうがよい条件なりと、こういうふうに考えることすら、これもあながち無理ではない。かくすることによって、教育界が名実ともにだんだんと社会的に尊重されていくということにもなり得るのではないであろうか。特別な地位を約束する。たとえば裁判官が独立地位を約束せられまして、いろいろと保護されておるのが現状でございますが、こういう点にも比較いたしまして、これらについてのいろいろな諸準備はありましょうか。考え方はありましょうか。そういう構想でも持っておられるであろうかどうか。これはひとつお考え方だけでもよろしゅうございますから、答弁しておいてもらいたい。
  105. 西田亀久夫

    ○西田説明員 御指摘のとおりに、特に初等中等教育におきましては、先生というものが教育の質を決定する基本的な条件であるという観点から、学校制度全般の検討の中で、ただいま御指摘のような教員の資質向上とその地位の改善について抜本的な検討が現在中央教育審議会で進行中でございます。  これまで方向といたしましては、一つは、学校を卒業する人たちが他の職種よりも進んで教職につくということを奨励いたしますための初任給の改善の問題、それから、初任給から年齢に応じて給与の上がっていきますその倍率、いわば昇給曲線というものが、教職にふさわしいものとしてはどういう姿がいいであろうか、これを他の職種及び諸外国のそれらとの比較において現在検討が進んでおります。  もう一つは、当然そのような地位、処遇の改善と一教員の高度の資質を育成するという問題が不可分でございます。これにつきましては、教育の現場にある人々が日常的な研修のみならず、さらに相当長期にわたって、現職のまま教育に関するより高度の専門性を身につけるような新しい大学院レベルの教育機関をつくって、ここで組織的に高度の専門性を身につけた教員の養成をはかるべきであるという考え方が出ております。この場合に、現職の人々にそのような機会を与え、そしてその人々が教育の現場に帰って、多くの先生の中でいろいろな専門分野においてより高い指導性を発揮し、教育全体の中に生き生きとした活動を積極的に伸ばすという考え方をとるべきである、こういうことが現在検討されております。  これらを含めまして、全体的にどこから手をつけて、具体的にどういう見通しのもとに、教員の資質及び地位の改善を行なうかということは、本年五月ごろの中教審の答申の中でやや具体的にその方向が提案されるものと期待いたしております。
  106. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それからもう一点、各初等教育には、校長のほかに教頭というのがありますね。教頭は非常に大事な行政上の地位も占めておると思うのですし、事実上そうなんでありますから、これも大切な一つの職責を果たす上において、文部省としてはどういうふうにこれをお考えになっておるか。教頭の地位、処遇等につきまして、いかがでございましょう。
  107. 諸澤正道

    ○諸澤説明員 教頭は、校長を補佐して校務を統括する任務を負っておるわけでございますから、学校という一つの機関における重要なポストでございます。現在、この教頭のポストの設置の根拠は省令にゆだねられておるわけでございますが、われわれといたしましては、このような教頭の仕事の重要性にかんがみまして、現在校長に一二%の管理手当がつけられておるのと対応して、一〇%の管理手当を給与しておるわけでございます。そういたしまして、今後におきましても、学校のより有機的な円滑な機能的な運営をはかるという意味におきまして、中教審でも今後の学校の管理体制の整備ということを改善の一つの眼目として掲げてございますので、その趣旨に沿いまして、今後さらに学校の円滑な管理運営という観点からこの問題を検討してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  108. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 学校教育の問題はまだ多々あるわけなんでありますが、ちょっと触れておかなければならぬのは生涯教育のことなんであります。  そこで時間もだんだん迫ってまいりましたので、なお大臣の出る機会にさらに少し突っ込みたい点を保留いたしておきまして、生涯教育に移ります。  生涯教育と称するのは、これは中教審の中間報告にも出ておりますし、社会一般広く論議されておる最近の一つの重要な課題でありまするが、生涯教育というのは、一体どういうふうに一口で言うならばこれを把握しておられるのか、これはいかがですか。
  109. 西田亀久夫

    ○西田説明員 先ほど申し上げましたように、中央教育審議会の特別の委員会でこの問題を全体的に検討し、その中での学校教育の役割りを再検討することが進行いたしております。生涯教育ということばは広くいわれるようになっておりますが、まだ日本及び諸外国におきましても、必ずしも内容に固まったものができていないように思われます。  現在中教審でこの問題を考えます場合に、生涯教育というような角度から特に重視しなければならぬ点は、一つは、人間の生きる社会がきわめて急激に変動をし、人間がこれに十分適応し積極的に生きていくためには、学校教育の段階だけで勉強が完成するという考え方はとらないというのが一つの観点でございます。したがって、生まれてから死ぬまで、必要な時期に必要な勉強ができるような条件をつくることが、人間にとって必要になってきたというのが第一の観点であろうかと思います。  第二の観点は、人間の社会生活が次第に経済発展によって豊かになり、そしてその人間の経済的、時間的な余裕をどのように生きがいのあるものにしていくかという角度から、青年になりましてもあるいは老年になりましても、自分の生涯を見詰めて絶えずみずから研さんをしていかなければいけない、こういうことが人間の必要として出てまいった。特に人間の寿命が延びてまいりまして、第二の人生という立場から自分の生涯を考えるという問題も、現実の問題として出てきておるわけでございます。  また、第三の問題点といたしましては、これまで学校に出席をして、そこでのみ教育というものがもっぱら行なわれるような状態から、社会にはラジオ、テレビ、さまざまな情報の伝達機関を通じて人間が自分で勉強しようと思えばできるような状態が次第に出てまいりました。そういたしますと、一体人間の一生涯の中で、いつごろ何を勉強することが一生のために基本的に大切なのかという角度から考え直し、特に学校でやらなければならぬことは何か、家庭でもっぱら力を入れるべき点は何かというのを総合的に考え直そう、こういう角度から問題を取り上げる、中教審ではさような観点を取り上げて全体を検討することを、いわゆる生涯教育的な観点による教育の再検討と、かように考えております。
  110. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その場合におきまして、母が生まれ出た子供を教育するということを起点とするならば、死に至るまでみずからを教育するというふうな御説明もあったようでございまするが、他面におきまして、個人的な人格を養成する能力を開発していく、個性を伸ばすということ、いまの世に生きる力を持つということ、これも大切なことでございますが、非常に複雑化した社会でありますので、社会の要員として、また半面、幅の広い人間形成というものが、これまた同時にされるべきではないであろうか。こういう点においては、ひとり家庭というのじゃなしに、またみずからというのではなしに、社会的にやはりお互いさま、よりよい社会を建設し、貢献し得る人となり得るように、こうあるべきだと思うのですが、その辺は、どういうふうに将来の構想を持っていくことが、生涯教育を発展せしめ、一つの大きな道に開けるであろうかという辺は、いかがでしょうか。
  111. 西田亀久夫

    ○西田説明員 生涯教育は、御指摘のとおり、単に本人がみずから研さんを積むという立場だけではございませんで、すべての国々がこの問題を取り上げております背景を考えますと、近い将来に家庭、学校、社会を通じて、そのような教育に最もふさわしい条件をひとつ組織的に整備をするという考え方が背景にあるようでございます。これはまだ完全な形ではでき上がっておりませんが、これまで、ともすれば家庭教育、学校教育、いわゆる社会教育といわれます分野が、それぞれその他との関係においてどういうつながりを持ち、どこに重点を置いてやっていくべきかということが必ずしも明確でない点がございました。  文部省では、先般社会教育審議会も社会教育のあり方についての一つの中間的な報告を出しておられます。中教審の今後における生涯教育の立場から見た学校教育の役割りというものをあわせまして、将来の学校教育と社会教育、それから家庭教育と申しますならば、家庭の中に入るわけではなくて、それらの家庭教育をあずかる父母に対して、どのような教育指導能力なり教育に対する見識を広めるような機会を提供するかという問題になるわけでありますが、それらを含めまして、これらを行政上の組織、制度あるいは財政上の援助というような方策を含めまして、全体が国民にふさわしい教育上の条件として整備されるように考えていかなければならない、かように思っております。
  112. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 生涯教育は、これは母体の中の別世界の生きた胎児というものは対象にならぬのでございますか。
  113. 西田亀久夫

    ○西田説明員 現在、生涯教育の問題を検討いたします審議会の特別委員会の中には、いわゆる生理学に関する御専門の方に加わっていただいております。最近の学問研究の一つの趨勢といたしまして、子供が母の胎内に宿り、その生まれるまでの段階におきましても、人間の生涯の発展の基本的な資質に非常に重要な影響があるということがいろいろ指摘されております。これらは母子の保健という立場からの問題もございますが、生まれてくる子供たちの将来の可能性を伸ばすという観点から、さらにそれらの父母がどのような配慮を必要とするかという問題もあわせ考えなければならないという角度でございまして、現在のところ、具体的な結論がどのように出るかはわかりませんが、その問題も生涯教育という立場から考えますならば、一つの重要な段階であろうということがいわれております。
  114. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 生涯教育がすでに世上重要な教育課題として論議の一対象になってきたのは、ただに日本のみならず、世界的な一つの傾向であります。さすれば文部省といたしましても、可能な限りこれは発展せしむべき方向へ努力が要ると思うのです。したがいまして、これには財政の援助も必要かもわかりません。人材の養成も必要かもわかりません。中教審のみならず社会的の大きな関心を求めなければいけませんので、研究調査も必要かもわかりません。というようなことがありますのですが、それは予算措置といたしまして、たとえば四十六年度はどうか、あるいはここ数年来——きょうのいまの段階、四十三年度決算をやっておる際でありますが、ここ数年来、生涯教育に対して何らかの財政措置がとられしゃいなや、今後どうするかという点について、ひとつ簡単に数字をあげてもらいたい。
  115. 西田亀久夫

    ○西田説明員 生涯教育という角度からの検討は、現在社会教育審議会、中央教育審議会で始まったばかりでございまして、率直に申しまして、こういう観点から教育政策全体をどういうように再検討するかという検討の段階でございまして、これまでの実績において、これが生涯教育的な施策であるというように具体的にお答えをするものがまだ出ていないわけでございます。今後そういう角度から、いままで行なわれておりました施策、また、いままでとられてなかった施策について、どこに重点を置くかという角度から総合的に検討が行なわれることと考えております。
  116. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これはあなたのほうの会計、予算当局とも御相談になって、また大臣とも御相談になって答弁いただいたらよろしゅうございますが、たとえば社会教育にいたしましても、社会教育の運動もございます。あるいは家庭と学校との関連、連絡、PTAとの関係等におきまして、これも大事なことで、これは学校経営の財政にも影響することでございまするので、また、かたがたこの問題につきましては、生涯教育と言わざるも、言うなれば生涯教育の関連予算といたしまして相当組んであってしかるべきだ、こう思うのであります。でありますから、これはひとつ十分に調査になりまして、関連予算はこういうものがあった、今後こういうふうに伸ばさなければならぬというものがあろうと思いますので、しかるべき機会報告してもらいたい。また可能ならば、当委員会あて、何らかの資料を提供してもらいたい。生涯教育に関する関連予算の一覧表でよろしゅうございますから、そういうことを御依頼申し上げておきます。  なお、文教の問題は重要な日本の国政課題の一つでございまするので、私もまだ聞きたいこともありますけれども、きょうは政府の出席の関係上、問題を保留しておくことにいたします。
  117. 濱野清吾

    ○濱野委員長 吉田さん、この問題は三月、四月になるともっと大きな問題が出てくる、そのときに理事会で相談しましてみっちりやりましょう。だから、本日はこの程度にして……。
  118. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そういたしましょう。
  119. 濱野清吾

    ○濱野委員長 華山君。
  120. 華山親義

    華山委員 ちょっと伺います。  いま世の中は非常に変わってきている。文部省もこれに対応しなければいけないと思いますけれども、一つの問題はフリーセックスの問題です。笑いごとじゃないですよ。ほんとうですよ。ポルノグラフィーの問題、これはわれわれの古い道徳的な観念からいいますと、世の中を動かしていくところのたいへん大きい問題だと思う。それでポルノグラフィーにいたしましても、回ってみますというと、共産圏国家においては非常に厳重ですね。日本も厳重だ。しかしほかでは、自由主義国におきましてはほんとうにフリーなんですね。ニューヨークには二百軒の店があるといわれておるし、一つの産業になりつつあるといわれておるわけです。北欧等におきまして従来そういう傾向があったけれども、現在はそれがアメリカに移る。何でもアメリカのまねをする日本ですから、日本だってそれに無関心だというわけにいかないと思う。これは道徳の基本に影響のある大きな問題でございますが、文部省はどういうふうにお考えになっておりますか。あるいは中教審でもよろしい、どうお取り上げになるつもりですか。
  121. 西田亀久夫

    ○西田説明員 二、三年前に日本の教育界に対する一つの大きな衝撃は、御承知のとおりに大学紛争といういわゆる暴力的な行動でありました。これが青少年の問題に非常にきわ立ってまいりましたときに、現代の社会がかような直接的な行動を生み出す背景として何があるかということが中央教育審議会で検討されました。その際に、諸外国のさまざまな動き等を見ておりますと、おそらくこの暴力的なもののあとに教育界における新しい問題として出てまいりますものは、ただいまのセックスの問題ではないだろうか、こういうことが審議会の中でも議論をされました。そして、審議会の会長の森戸先生は先般ヨーロッパに行かれて、特に北欧の国々をそのような角度からも見てこられました。まだこれについて、将来の行政施策としてどういう方針をとるべきかというようなことまで結論は出ておりません。むしろ、そのような青少年の行動というものが生まれてくる背景、それが青年期までの人間形成においてどういう要素が特にそれらの問題に関連があるかというようなことを、さまざまの角度から検討いたしませんと、これに対して教育政策として具体的に何が可能であるかという問題は非常にむずかしゅうございまして、現在ではまだ明確な方向がわからない段階でございます。それに対する問題意識はきわめて強くあるわけでありますが、ただいまのお尋ねに対しまして、文教としてどのようなことが可能であるかということについて、従来性教育あるいは純潔教育、もろもろのことはすでに行なわれておりますが、さらに基本的に何が必要かについては、今後の検討課題としてまだ結論が得られてない状況でございます。
  122. 華山親義

    華山委員 現在、いまのように世界がなっている、この世界の大勢は私は悪いとは言えないと思うのです。しかし、そのままでいいのかどうか非常に大きな問題であって、これは世界のあるいは日本人の持っている道徳がどう変わっていくかという問題だと思うのです。私は文部省にとりまして非常に大きな今後の問題だと思いますし、また、これに対しまして、政策を打ち立ててどうこうしようという問題ではないかもしれません。その点、ひとつ十分に心の中に込めて、いろいろな審議会等でも論議をしていただきたいと思うのでございます。  もう一つの問題は、家庭教育とおっしゃいますけれども、かぎっ子というものができている。都会ではそういうふうな状態、これで家庭教育というふうなことが、はたして従来のような考え方でできるのかどうか。それから農村地帯に参りますと、出かせぎがある。半年はおとうさん方が家庭におらない。それが非常にふえつつある。そういう実態であります。子供は野放しの状態にだんだんなるのじゃないのか。そういうときに、幼稚園なりあるいは保育所なり、そういうふうなものの考え方と結びつけて考えなければいけないと思うのです。ややもすれば文部省は、従来の道義的とかいろいろなものの考え方に拘束されて、世の中が移っていくということに無関心なんじゃないだろうか、あるいは考えが及ばないのじゃないだろうか、そういうふうな気がしますが、出かせぎで残された多くの子供、また都会のかぎっ子、こういうことについて、何か特別なお考えがございましたならば伺っておきたい。
  123. 西田亀久夫

    ○西田説明員 中央教育審議会が幼児教育の問題に触れた検討をいたしますことを予定いたしまして、実は昨年、文部省の大臣官房では、特に幼年期の子供における教育上の諸問題を検討いたしますために、幼児教育に対する社会的要請という角度から、かなり総合的な実態調査実施いたしました。現在それらを部分的に集計の段階でございますが、御指摘のように、それらの子供たちが、特に小学校にあがります前の段階でどういう家庭環境の中に置かれておるか、そのきょうだいなりあるいは父兄との関係、さらにいわゆる父兄の保護育成という条件を欠いておる子供がどうなっておるか、このようなことについてやや総合的な調査実施いたしました。  中央教育審議会では、幼稚園教育の普及徹底というような問題の背景には、幼年期における教育指導の重要性とともに、現在の家庭生活の変化、社会生活の変化により幼児の生育期の環境が非常に悪化する、しかもこれからどうやって子供を保護するかという観点もあわせ考えなければならない、そのような点から、厚生省関係の保育事業との関連を十分見きわめまして、将来の幼稚園教育の普及ということによってこの問題をできるだけ解決してまいりたい、これらの調査の結果を土台として将来の具体的な施策の検討が行なわれることと考えております。
  124. 濱野清吾

    ○濱野委員長 ちょっと西田君、委員長から聞いては悪いけれども、この間、NHKのフリーセックスの問題の統計を見ましたが、百人ばかりの男性の若い人、百人ばかりの女性の若い人がフリーセックスについてどう考えるかというときに、たいへんな数字が出たのです。知りませんか。NHKに照会してください。いま華山委員から質疑があったが、おそるべき数字が出ています。  これは一つには、純潔運動だとか貞操だとか、それから道徳心だとか、そういうようなものを、一部の勢力をおそれて、ひきょうな態度で——答弁するときにはりっぱなことを言うけれども、ちっともやっておらぬのだ。それを見てあなたの娘さんがああいう状態になったらどうなるかということを世間の親にかわって考えてもらう必要がありますね。NHKに照会してください。出てきますよ。自由恋愛じゃないんですよ。はっきりセックスの問題なんです。これはたいへんな数字です。
  125. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 外務省、簡単でございますので先にやります。  目下なお最終結論が出ていない例の日米間における繊維規制をめぐりましての外務省を中、心としました交渉、折衝から特に受けた私どもの印象なんでありますが、経済外交のウエートが次第に大きくなってまいりましたわが国といたしまして、一段とこういう面が痛感をされないか。つまり、今後条約であるとか協定であるとか交渉というようなものが幾多行雇われるその中で、経済的の面がわが国におきましては多分に大きく浮かび上がっていくだろうと思うのでありますが、かかるときに、外務省といたしまして謙虚に反省いたしましたときには、もっと経済について真に高度の専門的な学識、知識を持つ必要があるんではないであろうか。この点については相当反省される面がありませんかどうか、この点はいかがでしょうか。     〔委員長退席、高橋(清)委員長代理着席〕
  126. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 お答えを申し上げます。  確かに先生御指摘のよう表面においての欠点はいままであったかと思います。御承知のように、外務省は、いわゆる外務省で採用した職員のみならず他省庁からもこれまた外交官としても採用し、在外公館にも配置をしております。しかしながら、そういうような専門的な知識を持った人間が十分に配置されているかと申しますと、私どもは必ずしも十分だとは心得ておりませんので、今後さらにいろいろと新しい問題も予想されますので、その面についても十分配慮をしてまいりたいと思います。
  127. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 やはり外務省が主導権を持ってこういう外交折衝をするということであるならば、相手の経済事情、わが国のそれ、両者の関係、世界的実勢ないしは変動への見通しというようなものは、かなり堂に入った権威のある判断を表し得るのでないと、ほんとうにわが国のために、また相手国も考えながら交渉を順調に進めるということは至難になってくるのではないか。さすれば、どうするならば外務省としてそのように経済知識の陣容を一そう充実し得るか、本省においてももちろん、在外公館においてももちろんおっしゃるとおり各省から派遣されて、そして出向しておることも存じておりますが、しかし、それとても二、三年も落ちつくか落ちつかないかで回り歩いておるのが現状ではないでしょうか。こう思いますると、何かそこに切実に反省をしていかなければならぬものがあるのではないだろうか、こう思うのですが、この点につきましては、ひとつ外務省の基本的な姿勢の問題として、人材を充実する趣旨におきまして検討を要しますので、やや広範な次元から考えてもらわねばならぬと思いまするから、きょうはそれらの点につきまして可能な範囲だけ御答弁願っておけばけっこうであります。
  128. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 お答えを申し上げます。  先生もあるいは御承知かと思いますが、実は外務省の現在の職員数というのは非常に不足をしておりまして、実は外交再開時から比較いたしましても、むしろこれは実態におきましては減少しておるという現状でございます。もちろん、私どもは職員の数が少ないからいまの状態でやむを得ないではないかと考えるわけではございませんが、特に経済外交はますますこれから重要性を帯びてくるのは当然の傾向でございまして、私どもは、先ほど申し上げましたように、他省庁からのそういう応援の方もございますが、外務省にも、御存じのように経済局あるいは経済協力局という局もございまして、そこでいわば専門の職員もまたおるわけでございますので、そういう関係省庁あるいは関係金融機関ともいろいろ連絡協議をいたしまして、経済問題についてまず事前の情報キャッチ、それから手抜かりなくさらに一そうその体制を進めてまいりたい、こう思っております。
  129. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 各省に分かれて行政を分担しておる。そこで主管庁は、たとえば通産省なり、あるいはまた財政金融については大蔵省があるというふうになるので、例をあげれば、海外の投資あるいは経済協力等から考えてみましても、それは他にこれこれの主管庁があるからということになれば、同じような状態で外務省が陣容を充実することは、これは至難であります。また、それはかえってむだでありましょう。ということになりましたならば、やはりそういう関係をどう活用し得るかというだけの人材が必要ではないであろうか。だから、一から十まで他にたよるということになっていきますと、これはやはり間違いのもとであります。  きょうは経済局長も見えておるが、繊維問題で先般局長にもちょっと会ったことがあるのですが、やはり繊維交渉の実態をじっと横手から見てみましても、総合的にどんどん進めていっておるのはむしろ新聞の報道であります。やはり外務省と通産省が、少し誇張して言うならば、それぞればらばらになっているんではないであろうか。それぞれの立場があり、外交は外交の立場があり、通産は通産の立場がある。内に業者があり外は貿易の関係もあるというふうに、それぞれの角度で、それぞれにお互いがなわ張りを持っておるような感じが切実にするのであります。やはり総合的につかんでいっておるのは、むしろマスコミなんだというようなことになりましたならば一体どうなるであろうか。そこで、やはり当委員会におきましても、常にその方向に向かって進んでいっておるのでありますが、やはり行政機関が相互にある重要課題に対して、一致の体制で進むべき課題につきましては連絡をもっと緊密にしていく、そうして、もし主導的な地位が外務省にありとするならば、そこへ通産省にしましても人材その他の資料を全部集中していく、こういうふうにしていって初めて十分に計画も立ち、ないしは具体的な方針を実行し得るのではないであろうか。その辺が何となくここが少しなお他人行儀があるのではないだろうか。これは日本の行政各省庁が、ひとり経済問題とは言いません、他の諸般の問題につきましても、行政がばらばらで、物価問題にしましても公害問題にしても、今後そうならないとも限らないというようなこともあれこれ考えますので、それならば、ここは他の経済省庁との連絡を一そう緊密にし、かつまた、自主性を十分に発揮せしめ得るような体制をみずから主体的に充実していくということをしなければならぬのじゃないだろうか。私は、いまの段階こそこの反省に立っていくことが必要ではないかと思うのですが、これはいかがでございますか。
  130. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 お答え申し上げます。  経済外交の推進にあたりまして、関係省庁がばらばらであってはいけないことは当然のことでございます。私ども外務省としましても、これまでも関係省庁と定期的にあるいは随時、問題によりましてそれぞれ連絡、協議をやってまいってきているのでございますが、そのやり方についてはなおかつ反省を要する点は多々あろうかと思っております。いずれにいたしましても、政府としての統一、一体性はぜひ貫いていきたい、こういう方向でさらに努力を重ねたいと思います。
  131. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは抽象的にそうもおっしゃるけれども、現実にはなかなかうまくいっておらぬのがほんとうじゃないであろうか、こういうふうに思われます。たとえば医療協力の問題にいたしましても、医療協力となるならば、これはもし大学教授陣が現地に医療協力で出張するとなると、大学との関連も重要でございましょう。あるいはまた資金援助ということになるならば、これは一面におきまして、大蔵省あるいは民間資金、政府系の資金等々との関係も重要になってまいりましょうから、これは適当にいつも連絡してやっておられる一これは昔から連絡はしておるけれども、しかしなかなか実績が統一的に、敏活に、そして真に大きな役割りを果たし得るような体制になっておらぬということが私どもうかがい得るのであります。随時随所に各種の問題についてうかがい得るのであります。だから、その辺については、経済外交時代が展開するような今日の七〇年代でありますので、外務省としましては思い切ってここにもう一度よほど猛反省をして、そこに欠くるところなきや、さらに充実の要なきやということの反省が必要でないか。そして他省庁との連絡につきましても、経済省庁との連絡、民間との連絡等々にしましても、相当思い切った手を打つべきではないか。たとえば民間人を採用するというようなことも、臨時に、ときに必要ではないであろうか。あるいはまたジェトロ等を大きく活動させていくという上においても、なおいろいろな面で検討し、連絡する必要があるのではないだろうか。こういうようなことも考えてみますと、どうもいままでのやり方は武士の商法に似たような感じがせぬではないのであります。それはことばに通じ、典礼に通じ、慣例に通じ等々は専門家かもわかりませんけれども、経済的感覚ということになりましたならば、どうもしろうとくさい、役人的だというようなことが免れません。これはアメリカやヨーロッパあたりを歩いてみまして、そして各国の総領事館あたりへちょっちょっと寄り道しまして具体的な問題に取り組んで考えてみますと、随所でそんな問題に触れてまいります。ほんとうのところを聞こうと思うならば、やはり在外公館よりもその専門家のほうがよほど確かなきょうのことが聞けるということであっては心細いじゃないか、こういうことも考えられるのであります。さすれば、そこはやはり専門省庁に劣らないくらいの充実をみずからしておく必要がいまきておるのじゃないだろうか、こう思いますので、この点につきましてはさらに再総点検をするというくらいな姿勢であってしかるべきじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。何でしたらよく御相談をくださって、いまの答弁しか繰り返さないならば、もう要りません、それはこれまでやっておることですから。こういうふうな猛反省の時代が来た——七〇年代はなまやさしいことではいけません。ことに私どもは行政改革を相当積極的に主張しつつあるわけなんです。こういう際でありますので、行政改革の面から考えましても、経済外交の面につきまして外務省に注文しなければならぬ、言わなければならぬことはだいぶあるのです。きょうはそこまで触れませんけれども、あるのです。ですから、これらの点については、ともかく大きな反省の時代が来ておる、こう思われます。どうでしょうか、同じ答弁ならもうかまいませんから、大臣とよく相談されていいのですよ。
  132. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 先生御指摘の点は、私どもも十分に了解できるところでございます。したがいまして、同じ答弁なら要らぬということでございますが、先生の御質問の趣旨をよく愛知大臣にも伝達をいたしまして、他日、しかるべき機会に愛知大臣より所信の表明をいたしたいと思います。
  133. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それからもう一つ、特に経済外交の面で機密保持という問題ですね。これはそうざらにあることではありませんけれども、やはりしかるべく機密保持に関する措置をとり得るような体制は確立さしておく必要があるのではないであろうか、こういうふうに考えられます。この点については、具体的に何がどう必要かということはいま触れませんけれども、これらの点についてお考えになっておりましょうか、どうでしょう。
  134. 岡田富美也

    ○岡田説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、経済外交の上におきまして機密保持の重要でありますことは、これは政治関係の問題に劣らずそのとおりでございまして、私どもといたしましては、各般の点におきまして、この機密の保持の点については万全を期しております。具体的にはこまかく触れませんが、たとえば電信系統の取り扱い、あるいは文書の取り扱い、それから政府の対外経済施策に対するところの方針等の取り扱いというふうないろんな角度におきまして絶対に重要な機密が漏洩することのないように、万全の手を打っております。
  135. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 別の方向の問題の一つなんでありますが、実は私自身も当人に会い、また当委員会調査室の池田室長も会ってきておるのですが、国籍はタイにもあり、日本の国籍もまだ失っていないのじゃないかと思うのですが、タイ国に中山という医師がおります。これは戦時中にインドとビルマでしたかの山峡で終戦を迎えて、二年ばかり食うや食わずでそこらをさまよって、そして逃げ延びていまタイに落ち着いております。そしていま医師としまして一種の奉仕的な活動をやっております。また山田長政の遺跡を保存するという方面にも大きな関心を持ちまして、何かと協力しておるという奇特な人材でございます。こういった日本の、言うならば戦時のつめあと、不幸な人生をたどりました一人、そしていまなお献身的に外国人のために残る半生をささげて今日暮らしておるような人、よしんば日本の国籍がなくても、このような人に対しては国として何らかのねぎらいがあってしかるべきでないであろうか。そして、できるならば生涯がしあわせにいき得るように、また多数のそういう人々があちらこちらと埋もれておるのに違いございませんので、そういう人を見つけて、発掘いたしましたならば、同様に国として適当な慰謝、慰問、激励、保護等をなすべきではないか。ことにいま三国人と結婚をして、そして子女を持っております。こういうような子女に対しましても、日本留学の道を開いてあげて、そしてその人が人生としてしあわせにいき得るように、また世界的に何らかの貢献の道を歩いていく、平和に貢献してくれましたならばというようなことも念願しながらそういうことを考えるんですが、これは日本が経済大国といわれるだけが能じゃありません。モラルが高い国民としまして、ほんとうに平和に寄与し得る人道的な大きな道でないかとさえ私は考えております。外務省といたしまして、ひとつよく検討せられまして、このような問題につきましては、何らかの措置をひとつおとりになるように具体化していくべきだと思うのですが、この点はいかがでございましょう。
  136. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 いまお話を初めて伺いましたので、私どももまだ調査もしておりませんので、さらに詳しくお話を聞かせていただいて、何か考えたいと思います。
  137. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 外務省の問題は、時間の関係もありますので、きょうはこの程度でひとつ打ち切っておきます。御苦労さまでございました。  残る法務省ですが、法務省、おいでになっておりますね——すみません。時間がなくなってまいりましたのでごく簡単に項目羅列のようなかっこうになって、長い時間待たして恐縮でございますけれども、ひとつお答えを願っておきたい。簡潔にお願いいたします。  一つは、憲法七十九条の四項には、最高裁判官の国民審査の方法が規定をされております。これは別に最高裁の裁判官の審査法があることは御承知のとおりでございまして、私どもの総選挙の際に、すべての場合じゃありませんが、何人か名前が並んで、そして罷免するというときにはペケのしるしをしていくというようなことになっておるんですが、この制度につきまして、これは本来は最高裁という司法の最高峰の重要機関であります。これを内閣が任命する——認証ではありましても、内閣が任命をするということになりまするので、内閣が自分の好いた人を引っぱってきて最高裁判官にするというようなことにつきましては、現に国民の審判を必要とするという憲法の精神に基づく趣旨でございまするが、現実のこの審査法の実情、法律の内容及び運営実態を見ますと、私どもの総選挙ですと、経歴が全部載ります。公報も出しますし、政見の発表もいたします。テレビその他公報も出します。ところが、最高裁判所の裁判官をやめてもらいたければペケにしておけというには、何にもない。資料もなし。だから、一般の国民は何が何じゃらわからぬ。名前を書いてあるけれども、名前を聞いたことも見たこともない。どこの山の中の何をしている人かいなというような点であります。それがペケの場合はやめさせるが、それ以外はそのまま、そして十年目にこれを審査する、こういう法律の趣旨であります。  憲法の大精神の筋を通していく見地から考えましても、この制度についてもっと充実いたしまして、この人はこういう経歴の人である、決して偏向の人でもなし、また経歴から見ても人材から見ても、その地位にふさわしい、適任者なりやいなやということがわかり得るような条件を国民に示すということがほんとうの憲法の趣旨である こう考えるのです。  でありますので、国民審査法のこれらの欠点につきまして、これを改めて、充実して、憲法の趣旨に沿うように改正をすることをしてはいかがか。法案をつくるのは法務省でありますから、ことに、例の法制審議会もあることでございますので、いかがでございますか。
  138. 大竹太郎

    大竹政府委員 お答えをいたします。  最高裁の裁判官の審査の方法が非常に形式的に流れて、実質的に効果がないのじゃないかという御質問だろうと思うわけでございますが、いまお話しになりましたように、国民審査の制度は、民主的国家において、ことに最高裁判所裁判官という地位が非常に重要なものであるという点を考えました場合に、内閣が指名したものを、いわゆる主権者である国民が一定の時期にこれを審査してやめさせることもできる一つの制度でありまして、その制度そのものから見ると、非常に重要性があり、意義のあるものだと思うわけでございますが、いまおっしゃったような点において非常に形式的に流れるという点、むしろこのやり方について考えなければならないのではないかと思うわけでございます。  実は、御承知かもしれませんけれども、この審査の方法、審査そのものの所管は、選挙と同じく自治省の所管であるわけでございまして、もちろん先ほどおっしゃったような裁判官の実績その他をわかるようにするとか、そういういろいろな方法があるわけでございますので、それらの方法につきましては、所管庁であります自治省ともよく相談をいたしまして、いまの御質問の御趣旨を生かすようにいたしたいと思います。
  139. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 よく相談してください。自治省は選挙を実行する官庁である。あなたのほうはやはり司法権の一端をになっておる司法行政の主管庁でありますし、最高裁は裁判そのものをやる重要機関であります。これは非常に大事なことであります。  そこで、次に第二点は、被害者救済の制度であります。とかくこれが日本では非常に欠けております。イギリスにおきましては、暴力事件の被害者は、救済制度がほとんど完備しております。しかし今日、たとえば極端な例を言いますならば、暴力によって殺された。暴力をした人間に対して民事訴訟の損害賠償は請求できますけれども、しかし、たいていの場合は加害者犯人は無資力である。そんな者を相手にし七訴訟を起こされません。ですから、そういう人は泣き寝入り、不幸な目にあった、新聞だねになっただけであります。まことにこれは気の毒なことであります。新しい制度といたしまして、例の道交法の違反の場合に、自賠法などによりまして自動的に国家が補償する、保険するという補償制度が一応できておりますけれども、これは一つのこの制度を導入いたしましたものとして称賛に値します。ただ一般のその他の、いま申したようなイギリスにならって被害者救済の制度をこの際検討する必要があるのではないだろうか。だから、広くされてはいかがか。これこそ法務省の重要な課題として御研究になってはどうか。具体的によく存じませんが、アメリカもどこかの州でこの制度をやっているとか聞きましたけれども、これこそ法制審議会などで至急に審議して、どういうふうに救済したらいいのか検討され、制度として実現するようにすべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  140. 大竹太郎

    大竹政府委員 お答えをいたします。  自賠法の制度でございますが、これは申し上げるまでもなく、御承知のように加害者も一部負担しておるわけでございますし、もちろん国もある程度の負担をしておるわけでございますが、こういう殺人というようなものにつきまして、もし加害者が貧困その他で損害賠償の義務を全然履行できなかった場合に、国が一体どれだけめんどうを見るべきかどうかというような問題につきましては、こまかいことは局長のほうから答弁させますが、本来、国にその義務があるかどうかということについても相当疑問があるわけでございます。ことに、自賠法のことをおっしゃいましたが、他の補償制度等々との均衡の面から考えてみましても、あらゆる角度から慎重に研究しなければならない問題かと考えるわけでございます。  先ほど外国の制度その他についておあげになりましたが、局長が来ておりますから、局長のほうからそれらの点について答弁させたいと思います。
  141. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 殺人その他の被害者に対する国の被害補償という問題でございますが、この点につきましては、ただいま御指摘になりましたように、イギリス、ニュージーランド、それからアメリカの若干の州、カナダの若干の州で、国としての補償制度をとっておるところがございます。  ただいま政務次官からお答えを申し上げましたように、本来国として補償すべきかどうかという問題につきましては、やはり他のいろいろな補償制度との関係があろうと思うのでございます。われわれ、社会生活を営みます場合のいろいろな危険を負担しておるわけでございますが、犯罪、特に暴力犯罪による被害を国の立場で補償するという問題につきましては、なぜこの危険だけを補償しなければならないかという問題に帰着するわけでございます。かような、他の補償との関係におきまして、やはり相当検討する問題があろうかと思うわけでございます。もっとも、先ほど来御指摘のように、イギリスその他の国におきましても、暴力犯罪による被害ということだけに限定はしておるわけでございますが、それにいたしましても、いろいろな他の補償との関係がやはり問題になろうと考えるわけでございます。
  142. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 みずから原因をつくらずして残酷な暴力被害を受けるような人に対しましては、何はともあれ国はまず補償すべきでないかというような考え方に立って検討する、その姿勢がなければいけません。何もそれは全部というわけではありません。イギリスにおいてもそうやって条件は限定しておりますし、また誘発した原因があるなら、それも除外するようなことになっておるのですから。いずれにしましても、日本は文明国として、経済国として、ともかく他国に範とすべき諸条件が整備されていかなければならぬ段階にきておるわけなんです。特にそういうようにヨーロッパにおきまして諸国が行なっておるような先例があるのでありますし、アメリカにおきましても同様でありますから、日本におきましても、この被害者救済制度をこの際積極的な姿勢で検討する。ひとつ次官、大臣とも相談しておやりなさいよ。これはどうしてもいかなければ、またどこかの委員会でもっと深く掘り下げまして、いろいろな事例を申し上げてもいいのです。私どもが判断するところでは、一種の公害とまで見られるような事例が何ぼでもあります。あまりにも悲惨です。ほっておく手はありませんわ。もし個人の篤志家がおったら、みな救済しますよ。それほどのことさえ思いますので、この点はひとつ御要望申し上げておきます。ぜひ検討してください。  三番目は、刑務行政の実績の問題でありますが、最近、少年院を出ました少年が、どうもまた次々と非行を繰り返すという傾向が強いように考えられます。統計の数字がどうなっておるか、いまは詳しく存じておりませんが、どうもそうらしい。また少年院から出てきた者が呼び出しに来る。せっかく新しい将来を目ざして一生懸命になっておりましたその善良な少年を、きのうの悪友がまた誘いに来たり何かすると、少年院の内部でそのような連絡があったのではないかとさえ考えられるのであります。  いずれにいたしましても、刑務行政につきまして、もっと改過遷善の実をあげるということについて、この際相当の反省を必要とするのではないか。特に私は、少年犯の場合に、少年院を通じましてそういうことを痛感するのでありますが、この点はどうでしょう。これはもう時間がなくなっちゃったので、簡単でよろしい。
  143. 大竹太郎

    大竹政府委員 お答えをいたします。  少年院の問題にいたしましても、また刑務所の問題にいたしましても、出てきた者が重ねて非行を繰り返すというようなことは、非常に困ることであり、国としてもこの点について大いに配慮しなければならないわけでありますが、幸いにいたしまして、少年院を出た者または刑務所を出た者がまた非行を繰り返してもとへ戻るというような数字は漸次減ってきておるということになっております。こまかい数字につきましては係のほうから御答弁させていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、少年に対する矯正教育、あるいは成年者の保護観察の問題等々、いずれも重要な問題でございますので、さらに一そう研究をしてまいりたいと思います。  詳細は係のほうからお答えをいたさせます。
  144. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それはけっこうです。  刑事局長に頼んでおきますが、この少年院問題は、数字の平面的な問題といいますよりも、やはり非行少年は根絶するくらいの意気込みで当たっていかぬといかぬ時代が来ておるのです。これは申すまでもありませんけれども、少年の非行というような大それたことがぼつぼつふえてきました。これはおそるべき傾向であります。そういうようなことも考えますので、ひとつこの点も、言うならば、私がせっかく発言をしたのでありますから——もっと女性の問題、売春の問題等々、あれもこれも触れたいのですけれども、時間がないからもうやめておきますが、実情はどうか、またアフターケアはどうなっておるんだろうかというようなことについても、一ぺん全国的に総点検なさい。その必要があります。そういうふうにいたしまして、きのうまでの態度を一てきするというくらいな高姿勢で積極的に取り組むようにしてもらいたいと思います。  政務次官、その辺は十分にお考えくださいまして、また別の機会にひとつ十分に資料をもって明らかにしてください。そして、かくかくの実績なり、こういうような方向づけをしておるというようにしてもらいまして、ほんとうに漸減をしていくように指導してもらいたい。  その次は、いまどんどん法律ができまして、日本はまさに法匪たらんとするおそれあり。今度公害関係法ができまして、またあれこれと罰則ができます。罰則は無数であります。罰則の数というのを日本の法律のうちで拾いましたならば、一体何ぼあるんだろうということさえ、人に尋ねてもわかっている人なしです。そのくらい罰則が多いということであります。  たとえば西独におきましては、エアハルトが退陣してキージンガーとブラントの連立政権ができましたときに、これは相当整理をいたしたはずであります。行政秩序違反というようなものと本来の司法事件と峻別いたしまして、行政秩序違反につきましては、たとえばヨーロッパにおきましていまの過料、日本語に翻訳しますと過料といいますか、こういうことになっておりますが、こういう過料というような、これまた今日は交通事犯につきましてこの種の思想が導入されておるようではございますけれども、もっと広く総点検いたしまして、罰則の非常に過多なのを整理してみる、これは刑事政策上非常に重要な課題であると思うのであります。これも大きな問題でありますが、これはひとつ大臣とも相談されて、日本の行政秩序違反というものと本来の司法事件との区分をする、こういうふうにして刑事政策の一つの課題として検討する価値があるのでないだろうか、すでに諸国においてはどんどん進めておるのでありますから。これだけ一種の罰則がふえてまいりまして、手続やら何やらに時間も食い人も食い、お互いに煩瑣なことです。何ぼ人手があっても足りない。そしてまた三審制でありますから、不服ならばどんどん裁判所に持っていく、裁判所は何ぼでも事件がたまってしまう、裁判官の負担量が膨大になってくる、ろくな裁判をし互い、ほんとうにモラルの高い、責任を負うような態度がなくなってくるというようなおそれがあります。そういうように次々と悪循環するおそれがありますから、ぜひこの際は刑事政策の一つの大きな課題といたしまして、行政罰は厳にこれを区分してしまう、こういうふうに整理するような段階ではないだろうか。西ドイツあたりでやっているような、あのくらいこれを俊敏に処理してのける、簡単にする、こういうふうにすべきではないかと思うのですが、これはどうでしょうか。これについても具体的な答弁はできないですか。
  145. 大竹太郎

    大竹政府委員 お答えをいたします。  行政法規の罰則の整理の御質問でございますが、この内容を整理すべきであるということは仰せのとおりでございます。しかしこれは罰則でございますので、御承知のように現在作業が進行しております刑法の改正の問題とも非常な関係があるわけでございまして、実は、この刑法の改正の作業の進捗と相まちまして、いま仰せのような行政法規の内容の整理を法務省としても大いに考えているところだということを申し上げて、御答弁にかえたいと思います。
  146. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、これは法制審議会などにおいて具体的な検討事項に入っておるのでございましょう。どうですか。
  147. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 現在事務当局におきまして行政罰則の再検討をいたしておるわけでございますが、まだ法制審議会にこれを諮問するという段階には立ち至っておりません。
  148. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 終わります。
  149. 高橋清一郎

  150. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が二十分程度しかありませんので、簡潔に、最初に外務省に御答弁をお願いしたいと思います。  第一番目に、毒ガス撤去の発表についての信憑性についてであります。アメリカ政府は五日、第一次撤去の際の移送経路を変えなければ、この夏じゅうにでも毒ガスを完全に撤去すると発表した、これについてであります。アメリカは、毒ガス撤去の事実につきましては二転三転、今度四転しております。最近の発表、すなわち二カ月前では、即時安全に全面撤去せよということについては、ジョンストン島の毒ガス兵器の貯蔵庫がそう簡単にはいかない、一カ年以上かかるということであって、政府もまたそれを信じていたと思うのだが、突然こういった発表が行なわれて、夏じゅうには全部撤去する、しかも条件がついておる。県民の世論は、安全ではないのでこのコースは変えてほしいということを言っておりましたが、こういった条件をつけて撤去するということは、県民に対する挑戦です。沖繩県民はいわゆる死の恐怖にあるのです。こういったような信憑性、これは工事の過程において何か奇跡が起こったと私は思うのです。奇跡が起こらなければ、このようなことは政府として言えないのじゃないか。どういう奇跡が起こったか。外務省はどう考えますか。
  151. 大河原良雄

    ○大河原説明員 昨年の十二月四日にレアード国防長官が沖繩にあります毒ガスの撤去について声明いたしました際には、ただいま御質問ございましたように七一年中、ひょっとすると七二年にかかるかもしれないという趣旨の発表でございましたけれども、先日米国防長官が新たに声明いたしましたのは、あらゆる努力を払いましてジョンストン島における施設の作業を促進するめどがつきましたので、おそくもこの夏までには撤去を完了することができる、こういうことでございまして、米国政府といたしまして沖繩の毒ガスの早期撤去という日本政府並びに現地の強い要望をも十分参酌いたしましてただいまのような措置をとったというふうに承知いたしております。
  152. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私の聞いているのはそれじゃないのです。去年、二カ月前に、一カ年かから虫ければ毒ガス兵器の貯蔵庫の建設は無理だから七二年までには撤去するが、そんなに急に撤去できないということがアメリカ政府の発表だった。にもかかわらず、今度夏までには全部撤去するのだと言ったのは、何か工事関係で奇跡が起こっておる、普通の常識ではそうとしか考えられないのだが、外務省ではこれをどう考えておるのか。奇跡と考えておるのか、奇跡であるのかどうか、でなければ政治的配慮に基づく発表の方法をとっておるのじゃないかということを沖繩県民は考え、非常に不安に追い込まれておるから聞くのです。どうですか。
  153. 大河原良雄

    ○大河原説明員 私、先ほど申し上げましたように、二月五日にレアード国防長官が発表いたしましたのは、夏までには撤去できるような工事のめどがついたということでございまして、昨年の十二月当初にレアード国防長官が声明いたしました際には、ジョンストン島における工事がかなり長い期間かかるということを予想されておったのでございますけれども、その後の現地の情勢その他を米政府として考えました上、ジョンストン島における工事の促進を大幅にはかりました結果、この夏までには撤去できるような工事の促進のめどがついた、こういうことでございます。
  154. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 では奇跡が起こったわけですな。どうですか。奇跡が起こらなければ、あのような工事を一カ年あるいは一カ年半かかってやるというものがわずか数カ月の間にできるということはちょっと不可能だ、これは常識なんです。だから私はそれを聞いておるのですが、やっぱりそういった奇跡的なことが起こったわけなんですね。
  155. 大河原良雄

    ○大河原説明員 当初の予定しました工事以上にあらゆる努力を米政府として傾け、それに必要な経費も大幅に増額して工事の促進につとめたのだ、こういうふうな説明を受けております。
  156. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは討論してもしようがないことなんで、次に移ります。  去る臨時議会で愛知外務大臣は、毒ガス撤去について、何年ごろ沖繩に毒ガスが入れられたか、どこにあるのか、毒ガスの種類は何であるか、その種類別のトン数は幾らか、致死量は種類別に幾らかと聞いたときに、六十二年ごろに入れられたと思う、だが、その他の質問については政府委員をして答弁させたいということを言っておりましたが、それに関連して、いま政府委員が出席しておられます。  いまの毒ガスはどういった種類があり、その種類別にどのよう宏量があるのか、致死量はどういうふうな致死量があるのか、おわかりですか。
  157. 大河原良雄

    ○大河原説明員 沖繩に米軍が毒ガスを搬入いたしましたのは、一九六二年が最初であるというふうに承知いたしております。現在発表されております沖繩にあります毒ガスの貯蔵量は全部で一万三千トンでございましたけれども、そのうちの百五十トンは先般搬出を終わっております。沖繩にあります毒ガスの種類といたしましては、先般百五十トン搬出を終わりましたカラシガス一、それから神経性のGB、それから神経性のVX、この三種類だというふうに承知いたしておりますけれども、数量の内訳について米側は説明をいたしておりません。したがいまして、数量については私ども承知いたしておりません。
  158. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、それに対する補償の問題ですが、第一次の毒ガス撤去の際に避難騒ぎが起こり、そのために琉球政府は二万六千ドルの損害の要求をアメリカにやっております。ところが、アメリカは言を左右にしてこれを出そうとはしない。外務省は、いわゆる外交の力でアメリカに対してそれを出させるような決意があられるか、アメリカが出さなければ日本政府でも肩がわりして出すといったような意向があるのか、これを承りたいと思います。
  159. 大河原良雄

    ○大河原説明員 琉球政府から米国民政府に対しまして総額二万六千ドル余の補償要求が提出されていることは私どもも承知いたしております。現在、この問題について、米国政府といたしましては慎重な検討を加えているというふうに承知いたしております。したがいまして、本土政府といたしましても、この問題について慎重に事態を見守ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  160. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 もし出さなければ、日本政府で出す用意ありますか。
  161. 大河原良雄

    ○大河原説明員 ただいま御答弁申し上げましたように、本土政府といたしましてもこの問題について慎重に見守っていきたいというふうに考えておる段階でございまして、補償の問題について具体的にどういうふうな態度をとるべきかにつきましては、まだそこまで考えを及ぼしてございません。
  162. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次は請求権の問題ですが、政府は、講和発効前の請求権は平和条約第十九条の(a)項で放棄したという態度をとっておりますが、五二年以降、これについては検討されるということになっておると思うのです。  それで、いま読谷村、これはナイキ基地のあるところでありますが、その読谷村の漁業組合から五二年から六五年まで十三年間の損害賠償額、これは漁業権に対する問題でありますが、五十五万五千ドル、その後の漁業制限補償額四万二千七百ドル、そして一九四五年以来残波岬沖合いの漁業立ち入り禁止によってもたらされた有形無形の損害ははかり知れないのであるが、この損害請求に対して、この前アメリカ政府は、平和条約第十九条によって請求権を放棄したのでこの請求の申請は却下するという通知がきて、この漁業組合は全体をあげて非常におこっております。そして再審の道はないかなということを言っておりますが、日本政府としては、講和発効後におけるこのような漁業権に対する損害補償、これについてどういうふうな見解を持っておりますか、明らかにしてほしいと思います。
  163. 井川克一

    ○井川政府委員 まことに申しわけございませんけれども、ただいまのは講和前補償……。
  164. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 講和後です。五二年から十三年間の補償金額を出してあるわけです。これが却下された。
  165. 井川克一

    ○井川政府委員 先生の御指摘のとおりに、私ども、日本政府の見解といたしまして放棄いたしておりますのは講和前補償でございます。サンフランシスコ条約十九条によりまして放棄いたしておりますのは一講和前のものだけでございます。講和後のものにつきましては、自治大臣もたびたび申されておりますように、琉球政府あるいは地主の方々その他の方々の十数項目にのぼるいわゆる請求権の問題が提示されております。政府といたしましては、沖繩住民の方々のこのような補償要求に関しましては、現地の実態を十分に勘案しつつその取り扱いぶりをいまだ慎重に検討中でございまして、ただいまの御指摘の漁業補償を取り上げるとか、あるいはどれを取り上げないとかいうふうなことを現在まだ申し上げる段階にきておりません。いずれにいたしましても、政府といたしましては、沖繩住民が戦後長期間にわたり種々の苦難を体験してこられた事実を十分念頭に置きつつ、公正妥当な解決につとめる所存でございますけれども、同時に、米施政下の沖繩があらゆる面において本土と異なった法体制にあったということ、この事実もまた考慮する必要があるかと考えておりまして、現在御指摘の漁業補償につきましてどうするということをまだ申し上げられる段階にございません。
  166. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは検討中ではいかないと思うのですよ。十日前に、事実なまなましく申請が却下されているのですよ。この点について日本政府はどういうふうにするのか、少しくらい具体的に答弁できないのですか。これは当然五二年以降のものですよ。以前のものではないのですよ。事実、また却下されておる。しかも、この却下の理由は、平和条約第十九条(a)項で請求権を放棄したから却下するのだ、これなんです。これは五二年以降のものなんです。だから、それがあれば——御存じでなければ、早目に検討してこれに対する結論を急いでほしいというのが沖繩県民の要望なんです。どうですか。
  167. 井川克一

    ○井川政府委員 私、いまだその判決そのものも見ておりませんし、したがいまして、事案の正当性及び却下の根拠その他についてまだ検討いたしておりませんので、残念ながら現在申し上げられる段階にはございません。ただ、私が知っておりまする限り、漁業組合の問題につきましては、四五年八月から五二年四月二十七日まで、読谷漁業協同組合はいわゆる講和前補償を多少受領しているということになっておりまして、したがいまして、先生のお話の十九条との関係が私よく理解できないわけでございますので、さらに判決などを調べまして、十分検討いたしてからお答え申し上げたいと思います。
  168. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、国有地の問題についてお尋ねします。  いまアメリカが管理している、米軍が管理している国県有地の問題については幾らくらいやっているかどうか。それは総理府関係の所管であると思いますので、外務省にお聞きしたいのは、現在まで相変わらず公有地は、陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則の第五十五条、これに基づいてアメリカが占領軍として管理している。ところが、私がお聞きしたいのは、五二年の四月二十八日、すなわち平和条約が発効したこの時点から占領目的は終わったと見ておるのですが、しかし一貫して、公有地、国有地を含めてアメリカが相変わらず管理しておる。そのうちで、国有地を沖繩県民に貸して、これをまたアメリカが地代を取っておる。私もその一人であります。年間二十ドルぐらい出しております。五坪ぐらい、司法省すなわち刑務所のかどの見張り小屋のあと、私も出しております。これが大体年間七十万ドルぐらいあると見ております。だから、ただ使いしておる国有地は三千万坪余っておる。国県有地を含めて一億一千万坪、これを五二年四月二十七日以前は、いま申し上げましたヘーグ陸戦法規というもので管理しておる。それはわかります。だが、二十八日以降は、いわゆる平和時に返ったはずである。すなわち、占領目的は済んだはずである。三条によるものであるはずである。どういう目的で、またどのような法の根拠に基づいて、講和発効してから現在まで、十九年ですか、アメリカが依然として管理している、占領継続という形に実際上なっておるか、その法的根拠はどこにあるのですか。
  169. 井川克一

    ○井川政府委員 御指摘の点は二つの問題があると思います。  第一点は、いわゆる占領軍の権利として持っていたものが平和条約発効によってどうなったかという点だと思いますが、この点はまさしく平和条約第三条によりまして、わが国は、アメリカ政府が施政権を全面的に沖繩において及ぼすということを認めておりますので、その施政権に基づきまして、沖繩のために旧県有地を使用して施政の任に当たっている、そういうととだと思います。  第二点の、そのような土地をまた貸ししたりというお話でございますけれども、確かにそのような事実があるように聞いております。沖繩旧県有地のうち、有償で沖繩県人や外国民間人に貸し付けられておるものがあるということを聞いておりますので、政府といたしましては、その貸し付けの実態を十分調査の上、納得のいく処理をしていく所存でございます。
  170. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この問題は、あとで自衛隊が沖繩に派遣される場合、基地をどういうふうにするかという問題に関連すると思いますが、これに関連いたしまして、もし返還協定が成立すると、外務省の見解としては、これは平和条約三条は撤廃するということをやらぬでも、返還協定成立と同時にアメリカが施政権を放棄する、したがって三条は空文化するという答弁が私あてにありましたが、そうなりますと、いまの軍用地、これはみんな個人も契約をしております。去る議会におきまして、共産党の松本議員に対して、この基地の問題、この取り扱いについては収用令、これを適用するかどうかという問題と関連して、いまの軍用地がアメリカに日本政府が提供できるように、安保条約あるいは地位協定などに基づいてできる、協力するだろう、こう答弁しております。  私がきょう伺いたいのは、那覇市あたりは全体の三分の一は軍用地なんです。ですから、那覇市長は、アメリカに対してその解放を数回にわたって求めております。だとなれば、こういった要求をしておる沖繩県民にむしろ協力して、そういう解放をするという姿勢が正しいと思うのです。政府は、軍事基地を維持するために協力するというよりは、県民が要求している、県民に協力して軍用地の解放を求められるということが、国民を愛する政府の正しい姿勢じゃないかと思うのですが、それはどうですか。
  171. 井川克一

    ○井川政府委員 先日、衆議院の予算委員会におきまして、松本議員の御質問に対しまして、愛知大臣は、地主さんとの話し合いというものをできるだけやっていくという、土地の所有者との関係につきましてはそのように御答弁になりました。さらに、いわゆる基地の問題につきましては、安保条約の目的に照らして、その観点から基地というものを見ていく、したがいまして、安保条約の目的に沿っているものというものを日本政府としては提供する、したがいましてその不要不急のものを整理していく、さらに沖繩の民生発展あるいは市街地、そのような観点からも、できるだけ沖繩の方々の御要望に沿うようにしていきたいという答弁をされております。
  172. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私お聞きしているのは、沖繩県民の要望は、返してほしい、だからむしろ返してほしいという県民の要望にこたえて、県民の要望に協力する姿勢のほうが正しいんじゃないかというふうに考えているから聞いているわけなんです。これを、時間がありませんので、さらに検討されて、要望にこたえるということであれば、県民の要望は軍用地の解放を求めておる、そういった意味で努力してほしいと思います。  時間がありませんので、法務省に簡潔に質問いたします。  これは、この前最高裁に質問したときに、法務省の管轄であるので、法務省のほうが答えてくれるんじゃないかということであったので一応お聞きしますが、沖繩で布令で罰せられた者のうち、すでに刑を済まして出獄をして釈放されている、この人々の復権の問題です。まだ相かわらず、何といいますか、前科者としての取り扱いを受けておる。これは復帰の時点ではどういうふうになるか、復権するのかどうか。それと、現に布令でもって刑務所に服役している受刑者、これの再審理をされるかどうかという問題、もう一つは、コザ事件に見られるように、布令でいま裁判中であるのが、これは七二年返還までも係属する裁判がある、係属する性格を持っております。この三つについて法務省の見解をお聞きしたいと考えます。
  173. 大竹太郎

    大竹政府委員 御指摘の点につきましては、沖繩の刑事裁判が復帰後どういう法的効果を持つかという御質問だろうと思うのでございますが、これは法務省関係の復帰後の基本的な重要な問題でもございますので、現在、法務省といたしましても研究、検討をしている最中であるということをお答え申し上げたいと思います。
  174. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が切れましたので終わりますが、最後に要望しておきます。  これは人権の問題で、いまいわゆる布令でもって罰せられて現に前科者扱いをされておるのは、家族を含めて相当の数に達しております、受刑中の者も審理中の者も。これは早めに検討されて結論を出していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  175. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 次回は来たる十二日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時二十三分散会