○曽祢
委員 十分御承知のことなんで恐縮ですけれ
ども、やはり
国民にわかってもらう必要があるので……。
五一年十二月の
吉田書簡、要するにダレスにクリスマスプレゼントを強引にふんだくられたような書簡ですけれ
ども、その中でも、
日本は究極において日中両国間の全面的平和及び通商
関係を樹立することを希望する。
中国全体との……。そこで、中華民国
政府とこの種の
関係を発展させていくことが現在可能であろう。これは
一つの可能性として中華民国
政府、これがあるべき
中国全体の当然の
代表政府であるというふうではないというふうに……。日中両国間の全面的平和及び通商
関係を樹立することを希望し、これが基本方針、よって中華民国
政府という一種の
政府との間にこの種の
関係を発展させていくことが可能である。そこで
国民政府がもし希望するならば、サンフランシスコ平和条約の諸
原則に従って両国
政府の間に正常な
関係を再開する条約を締結する用意がある、これが私は
ほんとうに
吉田書簡の真意であり、まあそれにしても、できてしまった条約はどうだというと、確かにできてしまった条約は、これが、平和条約になったりいろいろな点でいろいろの解釈上きわめて
国民政府に一見有利なるがごときていさいはしているけれ
ども、私は、正確な
日本の意思は、
吉田書簡に発したこの意思は、やはり条約において貫かれていると思うのです。
これは当時の古い記録ではなはだ恐縮なんですけれ
ども、重要な点ですから、お許しを願って……。
私はこれを吉田
総理に
質問しているのです。これは
参議院の
外務委員会の昭和二十七年六月二十六日、いわゆる日華平和条約の審議をしている、これは七月に
国会を通ったわけですが、その最終的な
質疑のときに吉田
総理に
質問しているのです。私の
質問の趣旨は、いろいろなふうになっているけれ
ども、なるほど形は平和条約ともなっているけれ
ども、やはり
吉田書簡の基本方針は貫かれておるのですか、そうでしょうな、こういうことを吉田さんに
質問しているのです。吉田さんの返事は、「
中国との
関係は最も重大なものと
考えて、先ずその一歩として、中華民国政権との間に条約
関係に入った」のである、「
中国」全体の
中国という民族国家「との
関係は最も重大なものと
考えて、先ずその一歩として、中華民国政権と」政権という
ことば、「中華民国政権との間に条約
関係に入った」、それからさらに、「我々の企図しておるところは、
日本が全
中国との間に善隣
外交と言いますか、多年の間の
関係を復活して参りたい、この趣意においては毫も変らない」まず中華民国政権との
関係をまず第一歩として、全
中国との
関係に入りたい。「先ずその一歩として、中華民国政権との条約
関係に入った、」こういうふうに非常に明確になっている。ですから、この条約はこの
吉田書簡の精神は
一つもこの条約によって変わってない。趣旨としては、決して
吉田書簡の趣旨に反しないつもりでやったのであります。吉田さんは当時
外務大臣でありませんで
総理ですけれ
ども、はっきりそういうことを答えているわけですね。さらに私から執拗に「
日本政府は、この中華民国
国民政府というものを全面的な
中国の主人として「承認したものではない、こう
考えまするが、その点は
総理のはっきりしたお
考えを、イエス・オア・ノーで
お答え願いたい。」これに対して吉田
総理は
——ぜひこれをごらんください。
参議院の
外務委員会会議録四十三号(二十七年六月二十六日)に載っている。これに対する吉田
総理の返事は、「これは条約にもはっきりと書いてありますが、現に中華民国政権の支配しておる土地の上に行なわれる事実を認めて、その支配せられておる領土を持つ中華民国との間に条約
関係に入る。将来は将来であります。併し目的は」「
中国全体との条約
関係に入ることを希望して止まないのであります。」なかなか敵ながらあっぱれといっては
ことばは少しなまいきかもしれないけれ
ども、なかなか吉田さんのあれというのはたいしたものだと思いますね。私は、
総理の言うことは、「ずばりと言えば、全面的な承認ではないとこういうことでございましょう。」つまり
中国政府とのこの条約で、全面承認ではないということでありましょう。吉田国務
大臣「そういうことです。」議事録をひっぱってきてたいへん恐縮ですけれ
ども、
委員長、こういうわけですね。これ、非常に重要な点なんでして、私は吉田さんの条約が金科玉条であるとかなんとかというつもりもございませんが、私は
ほんとうに
吉田書簡の趣旨等が条約にやはり生きていると思う。なるべく、
国民政府のいろいろな意見もありましたし、
立場もありましたから平和条約についてみたらいろいろ譲っている点もありますけれ
ども、基本的のこの
考えというのは当時のこの
日本の保守政権の
代表である吉田さんの
考えは、いわゆる条約に貫かれている、このことによって
日本のそれからあと十九年の歩みを見れば、われわれがどの政権に好意を持っているかは別として、まさにこの
台湾の
国民政府は、大陸に帰れなんということは全然問題にならなくなる。こういうことから見ても、われわれはやはりそれこそ原点に帰ってとでも申しましょうか、決して無理なことをするんじゃなく、
ほんとうにこの
日本と
国民政府との条約は、当然初めからそういう位置づけにあった、これのために
日本と大きなほうの
中国政府との間の
国交回復に妨げにならないような
一つのセッティング、舞台装置の上に全体の仕組みができているのだということをこの際認めて何ら私は差しつかえないと思うのですが、いかがですか。