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1971-05-12 第65回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十二日(水曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       池田正之輔君    石井  一君       鯨岡 兵輔君    小坂徳三郎君       中尾 栄一君    中島源太郎君       西銘 順治君    福田 篤泰君       松野 幸泰君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    森  喜朗君       豊  永光君    勝間田清一君       河野  密君    戸叶 里子君       堂森 芳夫君    中川 嘉美君       西中  清君    谷口善太郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省条約局外         務参事官    山崎 敏夫君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     伊藤 圭一君         外務省経済局外         務参事官    小山田 隆君         大蔵省関税局国         際課長     西澤 公慶君         農林省農林経済         局国際部長   吉岡  裕君         通商産業省通商         局輸入企画課長 若杉 和夫君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   宇都宮徳馬君     武藤 嘉文君   大平 正芳君     村田敬次郎君   椎名悦三郎君     中尾 栄一君   中島 茂喜君     松野 幸泰君   福田 篤泰君     中島源太郎君   福永 一臣君     森  喜朗君   松本 善明君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   中尾 栄一君     椎名悦三郎君   中島源太郎君     福田 篤泰君   松野 幸泰君     中島 茂喜君   武藤 嘉文君     宇都宮徳馬君   村田敬次郎君     大平 正芳君   森  喜朗君     福永 一臣君   谷口善太郎君     松本 善明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  核兵器及び他の大量破壊兵器海底における設  置の禁止に関する条約締結について承認を求  めるの件(条約第一六号)  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三  十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正  し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉  の結果に関する文書締結について承認を求め  るの件(条約第一七号)      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件及び核兵器及び他の大量破壊兵器海底における設置禁止に関する条約締結について承認を求めるの件、以上両件を一括議題として、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  3. 石井一

    石井(一)委員 私は、ただいま議題となっております核兵器海底における設置禁止に関する条約について、数点政府見解をお伺いいたしたいと思います。  ざっとこの条約を拝見いたしまして、非常に簡潔なものでございますけれども、その反面私の第一印象は、この条約実効性とでも申しますか、実際の効果というのがどうなのかという疑問が出てきたわけであります。きわめてばく然としておる面があると思うのでありますけれどもわが国は一昨年ジュネーブ軍縮委員会にも参画をして、軍縮問題に対しても積極的な発言を国際舞台においてしておるようでございますが、政府軍縮に対する基本的な態度と、それから具体的なこの条約実効、その効果、こういう基本的な問題をひとつまず最初に簡潔にお答えいただきたいと思います。
  4. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 お答え申し上げます。  軍縮の問題が国際緊張緩和の中で重要な役割りを占めることは、いまさら申し上げるまでもないと思います。わが国といたしましては平和に徹する立場から、この軍縮の問題で、特にジュネーブ軍縮委員会におきましては、積極的な活動をやってまいったつもりでございます。私どもといたしましては、いわゆる全面完全軍縮を究極の目標としておりますけれども、そのためには特に軍事大国間において保たれておる現在の均衡をくずさないように留意しつつ、可能な分野から、いわば部分的な軍縮措置実施を積み上げていくことが現実的であろうと考えておるわけでございます。  政府といたしましては、このような基本的な立場に立ちまして、今後も核軍縮に最も重点を置きまして、核兵器実験全面禁止あるいは兵器用核分裂性物質の生産の停止及び平和利用への転換あるいは化学・生物兵器全面禁止等々の問題につきまして、ジュネーブ軍縮委員会あるいは国連等のあらゆる軍縮交渉の場において、さらに積極的な役割りを果たしてまいりたいと思っております。  なお、実効性の問題につきましては、政府委員のほうからお聞き取りを願いたいと思います。
  5. 西堀正弘

    西堀政府委員 この海底軍事利用禁止条約、これは軍縮とは申しますものの、いわば軍備競争未然に防止するといった意味条約と言ったほうが正確であろうかと存じます。この条約は地球上の約三分の二を占めるところの海底に、核兵器及び他の大量破壊兵器設置禁止して、そして海底における軍備競争が本格化する以前にあらかじめこのような軍備競争を防止しようというのが目的でございます。そういった意味におきまして、この条約は、先生御承知の一九五九年の南極条約、それから一九六七年の宇宙条約あるいは一九六八年の核兵器の不拡散に関する条約と同様な意味を持っておると申すことができると存じます。したがいまして、こういった核軍備競争未然に防止して、国際間の緊張緩和をはかろうとする意味において、この条約軍備競争防止条約として十分の意義を有しているものでございますし、また実効性につきましても後刻御質問があろうかと存じますけれども検証その他におきまして、われわれといたしましては、現段階におきまして十分満足すべき条約ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  6. 石井一

    石井(一)委員 それじゃ実際の効果という面についてもう少し具体的にお伺いをしたいと思います。  大国は、たとえばICBMであるとか、そのほか原子力潜水艦というふうなものを実際に保持しておる。この一条によると、いわゆるいろいろなものを「海底区域の限界の外側の海底に据え付けず又は置かないことを約束する。」ということでありますけれども、これらの潜水艦などは出入りが自由である。したがって、この条約でそういうことを規制しても、潜水艦あたりの問題に対しては規制外になるのかどうか、この点ひとつお伺いしたい。
  7. 西堀正弘

    西堀政府委員 この条約沿岸国の距岸十二海里より遠い公海には核兵器及び他の大量破壊兵器及びこれらの兵器を貯蔵したり、実験したり、または使用することを特に目的とする構築物、それから発射設備その他の施設を備えつけたり、置いたりするのを禁止することを目的としているわけでございまして、ただいまのように原子力潜水艦といった移動性の、ときには浮遊し、または海中を潜航するといったものはこの条約範囲外でございます。要するに海底に定着し、あるいは海底下設置されるものについての禁止目的といたしておるものでございますから、その限りにおきまして、なるほど原子力潜水艦等を規制しないという意味においては不完全ではないかというようなことになろうかと存じますけれども、とりあえず先ほど政務次官が申されましたように、要するに日本といたしましては可能な軍縮措置といいますか、軍備管理措置といったものを一歩一歩進めていくということで、一歩前進であると考えておる次第でございます。
  8. 石井一

    石井(一)委員 結局潜水艦などは対象にならないということでありますから、そこに一つの大きな抜け道といいますか、核兵器に対してそれを完全に除外できない一つ問題点というのがあると私は思うのでございます。どうもやはりこの条約、不拡散条約も含めて、米ソのエゴイズムといったらちょっと極言になるかもわかりませんけれども大国中心の、彼らの失うものはこの条約においてあまりない、結局小国を何となく核から除外するというふうな、私はそれの一環になる危険性が、多少この条約の中に含まれておるというふうに考えるわけであります。もう少し言いますと、結局、そういう危険なものを置かないというだけではいけないので、それを使用しないということを誓約さすか、あるいは核兵器というものをつくらないということを言明させない限り、ほんとう核兵器の脅威というものは除去できない。この間のラオスのいわさる進攻作戦のときにも、新聞情報あたりでは、アメリカが戦況を転換さすために、核兵器を一部使用するのじゃないかというふうなことがいわれた。それがまた非常に心理的に実際的な効果というものを与えておる。私はそういうことを考えると、核兵器の製造というよりも、使用というものに対してもう少しきびしい態度で出ない限り、海底にものを置く置かぬということでなしに、潜水艦出入りは自由である、そして大国はこれによって失うものが非常に少ない、こういうふうに思うのでございますけれども、この辺はどういうふうにお考えになっているか。一歩前進ということは私は認めますけれども、まだまだそういう面で基本的な問題が抜けておる、そういうふうに思うのでございますが、いかがですか。
  9. 西堀正弘

    西堀政府委員 先生の申されましたとおり、核の完全軍縮ということは、われわれといたしましてもこれは第一の目的といたしまして、機会あるごとに軍縮委員会の場、あるいは国連の場におきまして提唱いたしておるわけでございますけれども現実国際情勢のもとにおきまして、先ほど政務次官が言われましたように、軍縮措置を進めていく場合には、やはり現在、世界の平和が保たれておりますところの軍事的な均衡というものをくずすことがなく、一歩一歩進めていく、こういった現実的な立場をとらざるを得ないし、またとるべきではなかろうかと考えますので、先生のおっしゃいました核の使用全面禁止するといった方向は、常に理想としてわれわれは掲げているわけでございますけれども現実の問題といたしましてそこまで一挙に進むことができないという意味において、この条約も、一歩前進であると先生がおっしゃいましたところで、御満足をいただかなければならないというのが現実でございます。
  10. 石井一

    石井(一)委員 一九六三年の部分核停条約、これは大気圏海底に関する核軍縮の問題を規定しているようでありますが、これには地下核実験禁止の問題は除外されておる、こういうふうに私理解いたしております。したがって、米ソにおいては最近も公然と核実験が続行されておるというのが現実でございますが、それじゃ一歩一歩というおことばをとらえまして、具体的に政府国連なり軍縮委員会で、部分核停というものを全面核停に一歩前進させようじゃないかという提案をなされようとしておるのか。私は、地下核実験というものが非常に大きなウエートを占めておるだけに、軍縮を推進しておる日本としては、当然国際舞台で一歩一歩前進をしていただきたいというふうに考えておるのですが、そういう計画はおありでございますか。
  11. 西堀正弘

    西堀政府委員 石井先生いまおっしゃいましたように、一九六三年の部分核停条約、これは地下を除きますところのあらゆる環境、言うなれば大気圏内であろうと大気圏外であろうと、あるいは海中でありましょうと、これを一切禁止しているわけでございますが、地下核実験のみはこれが禁止対象になっていないのでございまして、わが国といたしましては、この残ったところの地下における核実験というものもこれを禁止して、いわば全面禁止に持っていこうという強い希望と申しますか、主張を続けてまいっているのでございまして、現に一昨年わが国ジュネーブ軍縮委員会に入りましてからも、この点につきましては、幸いにしてわが国地震学的な知識技術というものが非常に進歩いたしておりますので、しかもなおかつわが国は、これはもちろん地下核実験に限らないわけでございますけれども軍縮問題一般に関して、わが国はいわばよごれざる手を持ち、またやましからざる良心を持って、ときには非常に野心的な提案をし、言うなれば軍事大国の心胆を寒からしめるというようなこともあったわけでございます。  そこでこの地下核実験禁止でございますが、要するに、いままで地下における核実験だけが禁止対象にならなかったというその主たる理由は、その検証ということが非常にめんどうなことであったわけでございます。この地下核実験禁止検証する方法といたしましては、もちろん現地査察が一番有効なわけでございますけれども、この現地査察を除きますと、地震学的な方法によるのが実現可能な唯一の探知識別方法である。しかもこの方法によって一定規模以上の地下爆発は確実に探知識別し得るということは、従来から軍縮委員会のメンバーの間に広範な合意があったのでございます。  そこで、先ほども申し上げましたように、わが国といたしましては、非常に野心的なと申しますか、非常に理想主義的な提案をいたしたこともあるわけでございます。もう少し詳細に申しますならば、実は一昨年夏の軍縮委員会でございますが、そこでわが代表は、ちょっと技術的になりますけれども地下爆発を監視する地震学的方法というものを大いに利用すべきであるという見地から、マグニチュード四・七五以上のものであれば、ほぼ一〇〇%探知識別することができる、ということは、四・七五以上のマグニチュードのものであれば、地震によるものであるかあるいは地下核実験によるものであるか、これは現在の技術発展段階においてもまず識別可能だ、こういう結論が得られておりますので、−わが国は、いま申しましたように、一昨年の夏の軍縮委員会で、地下核爆発探知識別能力は現在四・七五でございますけれども、将来の国際協力によって、これがマグニチュード四・〇のものまで達したときには、四・〇以下のものも含めて、すべての地下核実験禁止するという旨をあらかじめ合意することを条件として、とりあえずそのマグニチュード四・七五以上の地下核実験禁止提案したのでございます。が、しかし、これはやはり特定の規模以上の地下核実験禁止にあたって、検証不可能な、いまのこれで申しますならば、四・〇以下のもの、現在の技術進歩段階におきましては、検証が不可能な小規模実験禁止をも、要するに有効な検証手段がないままにあらかじめ合意しておこうという意味において、非常に野心的ではありましたし、また理想主義的ではあったわけでございますけれども各国合意が得られなかったわけでございます。したがいまして、現実的な立場からこの提案を若干修正いたしまして、実は本年三月、軍縮委員会におきまして、現地査察によらない地震学的方法によって現在探知識別し得る水準と申しますのは、いま申しましたように、一応いまのところは四・七五でございますけれども、あるいはその点はスペシフィカリーには今回いわなかったわけでございますけれども、とにかくいかような数値が出ましょうとも、現在探知識別し得る水準以上の規模地下核兵器実験をまず禁止すべきだ、こういった提案を行なったのでございます。このように、要するにわが国軍縮委員会におきます代表は、幸いにしてわが国の非常に発達いたしました技術知識といったものに十分に裏打ちをされた精緻な議論を展開することによりまして、軍縮委員会におきましては非常に活発に活躍できますし、また現実問題として非常に活発に活躍をし、また非常な貢献をしてきている。要するに国際会議の場として、軍縮委員会わが国が非常に貢献し得る、かつまたしているところの国際会議の場の一つでございます。そういった意味におきまして、先生質問の一歩一歩前進ではあるけれども日本は特にこの地下核実験全面禁止といった面においてどういうことをやっているかという御質問に対しては、ちょっと口幅ったい言い方でございますけれども日本こそ本件に関しては少なくとも最大貢献をしていると申し上げてよろしいのではないかと存じます。
  12. 石井一

    石井(一)委員 私はテクニカルな問題を言っているのではなしに、もう少しポリティカルな問題をお尋ねしているつもりなんでございますが、地震国としてそういう技術的な水準が高いし、そういう段階からこういうことが監視できるという問題でなしに、原則的に地下核実験というものを探知しなくてもいい状態をつくるというのが最も理想的な問題なんでありまして、そういう意味からすると、私が先ほどから展開しておりまする理論は、大国は自由にできるんだ、こちらはそれを調べておるにすぎぬという段階をもう一歩進めて、やはり核の軍縮を強力に推進するというのであれば、地下核実験禁止さすという動きにやはり徐々に変えていくという必要があるのではないか、そう思うわけでございますが、これはポリティカルといいましても、非常に大きな問題でありますから、簡単に解決できない世界情勢というものを同時に私は理解をいたしますけれども、今後近い将来そういうテクニカルなプロポーザルをやるということだけでなしに、もう少しポリティカルプロポーザルもやって、地下核実験というものを全面的に禁止さそうというふうな動き日本は非常に活発にやっておられる、野心的にやっておられるということでありますが、野心的というのは、そういうことをやるのが野心的だと思いますが、その辺の見通しはいかがですか。
  13. 西堀正弘

    西堀政府委員 地下核実験も含めて、全面的な核実験禁止をするということ、これを強力に進めよとおっしゃるわけでございますけれども、それには何と申しましてもあらゆる軍縮措置がそうでありますように、検証ということが重大な問題でございまして、単に禁止という条約をかりにつくったといたしましても、ある一国は非常に良心的にあるいはその核軍縮をいたすかもしれませんけれども、他のある軍事大国はあるいは検証規定がない以上核実験を隠れてするということもあろうかと存じます。要するに禁止条約をつくります場合には、何と申しましてもいま申しましたように検証といいますか、その義務が順守されているかどうかを確認するということが最大の問題なんでございまして、したがいまして、その観点から申しますならば、政治的にとおっしゃいましても、やはり技術的に非常に精緻な検証措置あるいは検認措置、要するにその条約義務が確実に順守されているかどうかという点を確認する措置のない軍縮条約というものは絵にかいたもちのようなものでございます。したがいまして、繰り返しますけれども軍縮条約最大の点は憲章である、そういった見地から、日本といたしましては、良心的にあらゆる技術知識を駆使いたしまして、こういった提案をいたしておるわけでございまして、もちろんその目的とするところは、先生の言っておられますところの全面核軍縮全面核実験禁止という点にあることは、これはもう申し上げるまでもないことでございます。
  14. 石井一

    石井(一)委員 それでは、その問題、一応了解しまして、昨年二月に署名いたしました不拡散条約、これはわが国はまだ批准をしておらないようでありますが、その後の経過並びに政府見解はどうなんですか。
  15. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、昨年二月、政府といたしましては条約の署名をいたしましたが、その際に、御案内のように、声明を発しまして政府態度を明らかにしたわけでございます。つまりわが国といたしましては、この条約核軍縮の有効な第一歩となることを確信をし、核を保有しておるフランスあるいは中華人民共和国を含めできるだけ多くの国がこの条約に参加することを期待するとともに、核兵器全面撤廃までの間は核兵器国、いわゆる核を保有しておる国は特別の責任を負うものであること、及び非核兵器国原子力平和利用の研究、開発、実施が妨げられない等の基本的な考えを述べたわけであります。このような政府態度は、いまもって変更しておりません。特に条約批准一つの大きな要件となっておりますのは、原子力平和利用査察の問題でございますが、目下国際原子力機関において検討を進めておるようでございますが、私どもの承知しておる範囲では、大体日本にとっても好ましい方向に向かっておるように思っております。  政府といたしましては、非核兵器国安全保障分野において諸般の情勢をも勘案しながら、特にわが国が他の諸国に比較いたしまして、具体的に申し上げますならば、ユーラトムと何かそこにハンディキャップのあるような、そういうようなことは絶対に避けたいという方針でさらに検討を続けておるわけでございます。
  16. 石井一

    石井(一)委員 そうすると、基本的な見解はわかりましたが、具体的に批准見通しはどういうことになるのですか。
  17. 西堀正弘

    西堀政府委員 いま政務次官がおっしゃいましたように、昨年二月三日に日本がこの条約に署名いたしました際の政府声明にも申し述べましたように、日本批准する前には、まず日本安全保障についての問題はどうなっているかということ、それから核保有国核軍縮交渉を誠実にほんとうに行なっているかどうか。これは一条あるわけでありますが、それをその後誠実に行なっているかどうかということをチェックする。もう一つは、日本におきますところの核の平和利用という面において、これが阻害されることがないかどうか。これは結局国際原子力機関との間に締結されることになっておりますところの保障措置協定というものの内容が重要な問題となるわけでございますが、それはいま政務次官がおっしゃいましたように、大体日本の満足すべき、何と申しますか、ひな形というものが国際原子力機関保障措置委員会においてできまして、これが近く理事会でアプルーブされることになると存じますけれども、そこで実際問題といたしまして、これはいわば一つワク組みと申しますか、モデル協定でございますので、それに従って各国国際原子力機関保障措置協定をこのNPT条約の第三条に基づいて交渉し、締結するわけでございます。そこでこのNPTの条項によりますと、昨年のと申しますよりは、これが発効いたしましたのは昨年の三月五日でございますから、発効いたしましてから百八十日以内、ということは昨年の八月三十一日になりますけれども、それまでにこの条約批准しない国といいますことは、日本とかスイスとかあるいはユーラトムという国々がこれに入るわけでございますが、これらの国々は、批准するまでに、批准書を寄託するまでにこの保障措置協定交渉を開始しなければならないということになっております。したがいまして、日本とかユーラトムのようにこの保障措置協定内容を重視する、したがって、このNPT条約批准にあたっては、保障措置協定内容をよく考慮するという立場をとっている国々は、批准に進むという際には、その保障措置協定内容について、大体実質的な見通しを得て、そういった上で批准するということになろうかと存じます。さて、その先ほど申し上げました百八十日以内といいますのは、昨年の八月三十一日までに批准書を寄託したところの国々は、それまでに実は交渉を開始するわけでございますが、それらの国々は、交渉を開始して十八カ月以内にその交渉をまとめ、この保障措置協定締結されなければならないことになっております。そういたしますと、それは来年の二月二十九日、これまでにこの保障措置協定が発効しなければならないことになっておりますので、それらの国々保障措置協定交渉というものは現に行なわれておりますけれども、おそくも来年の二月二十九日までには発効することに相なろうかと存じます。したがいまして、どのような保障措置協定現実に具体的に各国と結ばれるかということをもユーラトム並びにわが国の場合にはよく観察いたしまして、そうしてそれぞれユーラトムにいたしましても日本にいたしましても、相手国と申しますか、日本の場合はユーラトムユーラトムの場合は日本の進みぐあいをお互いにウオッチしているわけでございますので、したがいまして見通しといたしましては、早くてもことしの暮れあるいは来年の二月の末以前ということはちょっと考えられないのではないかと、これはまことに事務的な見方でございますけれども、もちろんそのことについて政治的な何か決断がくだって、もっと急げというようなことでもありますならばともかく、われわれといたしましては、まあ早くてことしの末あるいは来年の二月の末以前ということはないのではなかろうか、こういったばく然とした見通しでございますけれども、私は有しております。
  18. 石井一

    石井(一)委員 だいぶ時間もたったようですから、少し各論に入りまして、もう二、三点だけお伺いしたいと思いますが、回答のほうは非常に簡潔でけっこうでございます。  この第一条にいろいろなものを置いたらいけないということが書いてありますが、この禁止事項に潜水艦探知用ソーナーいわゆる水中音響装置ですね、これも含まれておるのかどうか、いかがですか。
  19. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この第一条に書いてございますのは、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器と、それらの兵器を貯蔵し実験しまたは使用することを特に目的とした構築物その他でございまして、この中にはいま御指摘のような、ソーナーのように音響を利用して潜水艦を探知する機械というふうな純防御的な兵器は含まれておりません。
  20. 石井一

    石井(一)委員 次に、その二条の十二海里の領海の主張の問題ですが、おそらく日本はこの交渉において、もともと三海里説をとっておる国でありますし、できるだけ広い範囲を規制せよという主張をしたのじゃないかと思うのでありますが、それがいれられなかったのかどうか、この点をひとつ簡潔に御説明いただきたい。
  21. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 先生仰せのとおりでありまして、わが国といたしましては領海三海里説もとっておりますし、この条約の適用範囲はできるだけ広いことが望ましいという態度をとったのでございますが、実際問題といたしまして、先ほど国連局長からもるる御説明がありましたように、あらゆる軍縮条約につきましては検証という問題が非常に重要でございますので、結局多くの国の主張しております領海の外側の海底というものをこの条約対象とせざるを得なかった、そういうわけでいま世界の多くの国は現実の問題として日本とは立場は若干異なりますが、領海十二海里説を大体とっておりますので、大体この十二海里より外のものを対象としたわけでございます。ただ十二海里よりもさらに広い領海を主張する国がありましても、この条約に加盟する以上は、その領海の主張とは無関係にこの条約義務を負うわけでございまして、つまり十二海里の外においてこういう大量破壊兵器海底に置くことは禁止される次第でございます。
  22. 石井一

    石井(一)委員 次に、三条にいわゆる検証の手続その他が書いてございます。協議その他いろいろ読んでみますと、これで十分なのかどうかというふうな疑問も出てくるわけでありますが、それはそれとして私がちょっと御指摘したいのは、この4のところに「この条約に基づく義務の履行につき重大な疑惑が残る場合には、締約国は、その問題を国際連合憲章に従って安全保障理事会に付託することができる」こういうことでございます。とすると、これはおそらく憲章の第六章の「紛争の平和的解決」ということの適用をさしておるのではないか。しかし、御存じのように七章等には大きな差がある。おそらくこの適用は六章をさしておるのだろうと思います。しかし六章の場合にはそういう拘束力というものはない。七章では侵略行為であれば非常に強い拘束力が出るわけでありますけれども、精神規定とまでは言いませんが、その点私は、規制をするといったってこの条約上はある程度の制約があるのではないかと思うのです。この点をちょっと御説明いただきたい。
  23. 西堀正弘

    西堀政府委員 先生御推察のとおりこの第四項におきまして規定されておるところは、要するにこの点について重大な疑惑が残った場合、それで関係各国が協議をしてみたけれども、どうもやはりうまくいかぬという場合には関係締約国はこの問題を安保理に付託することができるということは、結局この第六章ということになろうかと存じます。したがいまして、先生のおっしゃいますように第七章下におきますところの強制行動といったもuのは少なくとも第一義的にはとり得ないところであろうかと存じます。ここに第三項に規定してありますとおり、まず検証をし、それからわからなければ協議をするということがございますし、そしてなおかつ重大な疑惑が残る場合には安保理、気休めといわれればそういうこともあるいは言えようかとも存じますけれども、しかし、ともかくこの国際の平和と安全ということに第一義的な重要性を持っておりまところの安保理に付託するということは、やはり関係当事国にとっては心理的に非常に圧迫と申しますか、圧力が加わえられる、こういった点で、一応この条項としては満足せざるを得なかったというのが実情でございます。
  24. 石井一

    石井(一)委員 最後に大国のこの条約に対する批准見通しということでありますが、まず第一点はアメリカ、イギリス、ソ連、これらの国は問題ないと思いますが、第二点フランスの動向についてわかれば端的に御見解をお伺いしたい。それから第三点は、これはオールステート方式になっておりますから、国連の未承認国その他がどうなるのか。これらが加入してきた場合にどういう措置になるのか。おそらくそういうことはないと思いますけれども、それの条約的な見解といいますか、これを言っておりますときりがないと思いますが、非常に簡潔にひとつお答え願いたいと思います。
  25. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 最初にアメリカ、イギリス、ソ連でございますが、この三カ国はいずれもこの条約の作成の過程におきまして指導的な役割りを果たした国であります。またこの条約をごらんいただきますとわかりますように、寄託国政府として指定されている国でございますので、いずれも近い将来にこの条約批准することは確実であるとわれわれは思っております。  それから次にフランスでございますが、フランスは実はこの条約を審議いたしました昨年の第二十五回国連総会におきましてこの条約を推奨する決議に棄権したわけでございます。その棄権した理由を若干述べておりますので、そこからフランスの態度が若干推察されるわけでございますが、その言っておりますことは、この条約では距岸十二海里以遠においては単なるそういう核その他の大量破壊兵器禁止だけを言うのではなくして、完全な非武装化、非軍事化をすべきである。したがってこの条約は不十分である。またこの条約検証規定先生から若干御指摘がございましたように不十分であるというふうなことを言いまして、この条約にあまり賛成しかねるということで棄権をしたわけでございます。したがいまして、いまのところフランスがこれを批准する見通しはあまりないといわざるを得ない状況でございます。  それから先ほど承認国というおことばがございましたが、要するに国連に加盟していないような国についてどうなるかということでございますが、この条約は御案内のとおりオールステーツ・フォーミュラをとっておりますので、いかなる国でありましても、この条約に加盟できるわけでございます。つまり国連に加盟しているといなとを問わずこの条約に参加はできるわけであります。そのために批准書の寄託国も三カ所を指定されておる。その三カ所のいずれかに批准書を持っていけば、この条約の当事国となるわけでございます。もちろんわが国の未承認国の場合にはその条約に加盟いたしましても、わが国との間に承認関係が生ずるということはございませんが、われわれはこの海底軍縮という一つ条約社会全体に対してお互いに権利義務を持っておるということが言えると思います。
  26. 石井一

    石井(一)委員 ただ見通しとしてはそういうことはあまり起こり得ないということにもなるが、条約的あるいは技術的にそういうことが可能である、私はそういうように解釈をいたしますが、いまの第三点はそれでよろしゅうございますか。
  27. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ちょっと私御趣旨を十分理解していなかったのかもしれませんが、たとえば中華人民共和国の場合でもこの条約に加入することはこの条約上十分可能であります。ただ見通しが明るいかどうかと言われれば、現段階では何とも申し上げかねますけれども、この条約上は国連に加盟しておるとか加盟していないということとは無関係にこの条約に参加できることになっておりますので、日本との二国間の関係とは無関係に、承認関係とは無関係に、この条約世界のあらゆる国が加入できるということを申し上げたいと思います。
  28. 石井一

    石井(一)委員 終わります。
  29. 田中榮一

  30. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 核丘器その他の海底における設置禁止に関する条約について若干質問をいたしたいと思います。  本条約は、一九六七年にアルタの国連代表が事務総長あて口上書、要請書を出しまして以来、同年の総会において初めて、海底平和利用並びに海底軍事利用禁止の問題が審議されたというふうに伺っておりますが、一九六七年以来今日、条約調印に至るまでのプロセスを、大まかでけっこうですから御説明いただきたいと思います。
  31. 西堀正弘

    西堀政府委員 ただいま大久保先生おっしゃいましたとおり、この海底軍事利用禁止問題の審議の発端といいますのは、一九六七年八月、マルタのバルドと申す国連代表が、現在国家の管轄権の及ばない海域の海底を平和目的のため留保すること、及びその資源を人類の利益のために利用することに関する宣言及び条約、こういった題目を第二十二回国連総会の追加議題とするように要請して、その総会で海底平和利用海底軍事利用禁止問題が初めて審議されたことから始まったのでございます。そして、この総会におきましては、日本など三十七カ国は、技術の進歩によって軍事的その他の目的のため海底の開発が可能となったことに注目いたしますとともに、この海底問題審議のため三十五カ国で構成するアド・ホック委員会の設立をきめる決議案を提出いたしまして、この決議案は、この第二十二回総会において採択されたのでございます。  これでできましたところの海底アド・ホック委員会におきまして、翌年の六月、ソ連は、海底開発に関する法的諸原則に関して最も重要なものは、海底を軍事目的使用することを禁止することであるという発言をいたしまして、また、他方米国は、海底大量破壊兵器のために使用されることを防止するなど、同地域の軍備制限問題を軍縮委員会で取り上げるようにという提案をいたしたのでございます。次いで、七月、ソ連は、領海外の海底を排他的に平和的目的にのみ使用する問題を討議し始めるべきである、といった覚え書きを軍縮委員会に送付いたしました。  第二十三回国連総会は、この海底平和利用問題を討議いたしましたけれども、領海以遠の海底の全面的軍事利用禁止を主張するソ連と、それから、一方、防御的兵器の利用については許されるべきだという米側の意見が対立いたしました。それで、この第二十三回総会におきまして、ベルギーなど六十四カ国が、海底の軍事利用禁止のための海底常設委員会設立の決議案を国連総会に共同提案いたしまして、採択されました。ただ、ソ連は、この決議案中の軍事利用禁止に言及している個所が正確を欠いているといった理由で、この表決には棄権をいたしました。  一方、ジュネーブにおきます軍縮委員会における海底の軍事利用禁止問題の審議は、一九六八年の夏の会期の冒頭、米・ソ両国代表によって提案されましたけれども、この会期では本問題の審議は具体的な進展を見なかったのでございます。  次いで、一九六九年、一昨年の軍縮委員会の春の会期に、ソ連及び米国は、それぞれ軍縮委員会条約案を提出いたしましたが、この米・ソ両案の主たる相違点は、禁止対象兵器について、米国案は、固定された核兵器及び他の大量破壊兵器並びにこれらの発射装置のみを対象とする部分的禁止であったのでございますが、ソ連案は、軍事的利用の全面的禁止を規定していたこと、それから、禁止区域については、米国案のほうは、距岸三海里以遠の海底対象としたのでございますけれども、これに対してソ連案のほうは、十二海里以遠の海底となっていたといったような相違があったのでございます。  この軍縮委員会は、その年の春、夏の両会期におきまして、この両条約案を審議いたしましたけれども、他方、米ソ両国は、委員会各メンバーの見解を考慮しつつ、舞台裏でこの両条約案を一本化する交渉を行ないまして、十月七日、第一次米・ソ共同条約案を軍縮委員会に提出いたしたのでございます。  その主たる内容は、今回の批准について御承認を得ようとしておる条約の実質的内容の基礎になったものでございますが、この米・ソ共同提案に対しまして、各国は、その条約本文について、海底軍備競争から排除するため一そうの措置に関する交渉を継続することを決意するといった規定を設けるべきである、それから、禁止の地理的範囲を規定した条文の表現を明確にすべきであるといったいろいろの提案ないし示唆を行なったのであります。  それで、米・ソ両国は、さらに協議を重ねまして、若干の手直しを加えた第二次共同条約案を十月三十日に提出いたしましたが、依然として多くの軍縮委員会メンバーの満足が得られなかったのでございまして、したがいまして、この共同条約案は、一昨年の国連総会に送付されましたけれども、結局、総会においても同意が得られなかったという経緯でございます。  そこで、米・ソ両国は、これらの不満と申しますか、いろいろな示唆が各国から出されましたので、それを相当部分取り入れた第三次共同条約案を昨年の四月、ジュネーブ軍縮委員会に提出いたしました。そうして、さらにその軍縮委員会での各国見解を考慮いたしまして、表現その他に手直しを加えた第四次共同条約案を九月一日に提出いたしまして、この条約案は軍縮委員会メンバーの圧倒的支持を得まして、第二十五回国連総会に送付されたのでございます。  それで、昨年の第二十五回国連総会におきまして、この条約案を推奨する決議、もちろん日本は賛成したのでございますけれども、これを採択いたしまして、そうしてそれに基づきまして、この条約の署名式が本年の二月十一日に米・英・ソ三国の首都で行なわれた、これが、たいへん長くなりましたけれども、いままでの本条約の作成経緯でございます。
  32. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいまの国連局長の御答弁を伺っておりまして私、感じますことは、本条約調印に至りますまでのプロセスをずっと振り返ってみますと、特に米・ソ二大国が非常に大きな関心を持っておる。ある時点においてはおのおのが単独提案を行ない、その後共同して共同提案を行なっておる。また、十二海里にするか三海里にするかという点についてもかなり論争があったやに受け取りました。  私、ここでお伺いしたいのは、一九六七年、マルタの国連代表が初めてこの問題を取り上げて以来現在まで五年を経過するわけでございますが、その六七年の時点にさかのぼって考えてみましても、これはこの条約が調印される運びになった背景には、軍縮委員会の具体的な成果として一つ大きく評価できる。また、将来の軍備拡大の歯どめとしての本条約の存在というものは評価できる。先ほど国連局長の石井委員質問に対する御答弁にもそのような意味がございましたが、同時に、私は、核兵器及び大量破壊兵器海底における設置という問題が将来の歯どめ並びに軍縮委員会の意向を反映するということだけではなくして、かなりアップ・ツー・デートの問題になってきたのではないか、かなり現実の問題としてここでこういう条約を調印する必要性が高まってきたのではないか、このように考えるわけなんですが、そういう観点からしてその両面をもって見ますと、現在核兵器及び大量破壊兵器海底使用海底設置というものが現実にはどのようになっておるのか。どのようにそれを把握されておるのかという点についてお伺いしたいと思います。
  33. 西堀正弘

    西堀政府委員 実はこの条約設置禁止されているような兵器または施設が現在のところいかなる海域、公海の部面でございますが、配置されているかという点につきましては、このような兵器が現在どの程度実は開発され、それから実用化されているか、及び、したがいましてその配置状況については実はいずれの国からも公表されていないというのが現状なのでございまして、したがいまして、正確に一体そういった兵器がどの程度またどの海域に設置されているかという点につきましては、全く正確には不明である、これは申し上げざるを得ないのでございます。ただ現段階におきまして、そのような兵器設置には非常に大規模な作業を要しますし、またかりに設置されたといたしますならば、設置後におきましても維持管理のために定期的にかなり大がかりな作業を要するのではないかと考えられますので、かりにそういったものが設置されているといった場合には、これはやはりおのずからわかってくるのではないかということは、逆に申しますならば、現在のところ、非常に大規模な、そういったここで禁止されているようなものはあまりないのではないかと、非常にばく然たるお答えで恐縮でございますけれども、われわれとしては考えております。
  34. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 先ほど私申し上げましたように、本条約は特にアメリカ、ソ連が非常に大きな関心を持っておる。ということは、核保有国または世界大国としてのリーダーシップを発揮する面から、こういう将来の拡大の歯どめという意味での関心を示したと同時に、私はアメリカ及びソ連の自国においてこういったことが近い将来実現される可能性がきわめて高まってきたこともあわせて、この条約の調印が急がれたのではないか、こういう見方もできると思うのです。といいますことは、マルタのパルド国連代表が発言して以来五年、これはかなり飛躍した考え方かもしれませんが、近く返還が予想される沖繩、琉球列島の三海里内、十二海里ということはいまちょっと考えられませんが、琉球列島の沿岸においてもこうした核兵器及び大量破壊兵器海底設置ということは、これは考えられる事実である。先ほど国連局長の御答弁にも、よく実態はわからぬ。わからぬということは、ないであろうという意味が多いと思いますが、同時にあるかもしれないという両面が私は含まれてくると思うのです。こういうことを考えましたときに、わが国がこの条約に調印してさらに批准するということになりますと、明年に控えた沖繩の復帰に対して今度はわが国の政権下に入るわけでございますので、この核兵器及び他の大量破壊兵器の存在の有無を確認する必要があるという理論が出てくるのではないか、また当然されるべきではないか、私はこのように思いますが、いかがでございましょうか。
  35. 西堀正弘

    西堀政府委員 これはわが国におきましては、非核三原則というものを政策として打ち出しております。したがいまして、沖繩の返還につきましても核抜き本土並みということがいわれておるわけでございますので、その点確認ということはもちろん、私主管ではございませんけれども、当然のこととしてやっておるものじゃなかろうかと私は考えておるわけでございます。  なお領海につきましては、プラス三海里から十二海里までの海域につきましては、もちろん申し上げるまでもないことでございますけれども、この条約禁止対象にはなっていないということは一つ付言させていただきたいと存じます。
  36. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 防衛庁の方いらっしゃっていますか。——いまの国連局長の御答弁でそういう調査はやっておるだろうという趣旨の御答弁がございましたけれども、その点についてはいかがでしょう。
  37. 伊藤圭一

    ○伊藤説明員 ただいま外務省のほうから御答弁になったとおりだろうと思います。私のほうとしても具体的にはよく存じておりません。
  38. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 現在アメリカ政権下でありますので、琉球列島の三海里内にこういうものを置くことはきわめて自然に行なわれるわけです。ところがもし返還になった場合には、わが国の非核三原則によりましてこういう核兵器に関する海底の施設設置ということはきわめて好ましくないしいうことになる。こういう条約わが国批准するにあたりまして、その琉球列島三海里内もしくは十二海里のこういう施設の存在の有無を確認する必要があるのではないか、このように思うのですけれども、その点については国連局長と全く同意見であるという御答弁でございますか。
  39. 伊藤圭一

    ○伊藤説明員 防衛庁といたしましてはわが国の防衛力ということで自衛隊としてやっているわけでございますので、外務省の御見解どおりだと思います。
  40. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 この点は本条約批准にあたりましてきわめて重要な問題であると思います。で、沖繩返還が目前に迫って、こうしたことが何ら問題とならずに日本条約批准するということはきわめて片手落ちというか、何か一つ穴が抜けておるような感じがいたします。あとでずっとそのことは続けてまいりますけれども、私この条約をずっと拝見しておりまして、先ほど石井委員からも実際の効力ということについていろいろ御質問がございましたけれども、第三条をずっと読んでまいりますと、十二海里外において、船舶を浮上させて、海洋において船舶がそこにある程度とどまって、どうやら海底で何かやっておるらしい、こういった事実があった場合に、観察によって検証することはできるわけですね。ところがこの観察も当該活動を妨げないようにしなければならぬということは、ごく常識的に考えますと、あまりそばまで行ってはいかぬということじゃないかと思う。当該活動を妨げないように観察するのは、飛行機か何かで遠くのほうから何をやっておるかな、こういうことしかできないのではないか。それで疑惑が残った。何となくおかしいなという疑惑が残った。そうしますと、この条約によりますと、妥当な疑惑が残った場合には疑惑を除くために協議するというわけですね。その船舶の主またはその該当国と協議する。ここで疑惑が晴れれば問題はないわけですが、協議した後なおかつ帰りながら何となくおかしいな、こういう疑惑が依然として残存している場合には、この条約の締約国に通告するというのですね。全部に通告する。そうしてその締約国と相互に協力して観察及び検証を行なう。その協議及び協力によってもなおかつ当該活動に関する疑惑が除かれない場合は、国連安全保障理事会にこの問題を付託する。付託した後、平和的な手段でこの問題の調停が行なわれるんだと思いますが、最終的にどうも当該活動というものが自国の利益に沿わないと判断した場合は、この条約から脱退してしまうんだ。それが八条にうたわれておるわけです。ということになると、一体この条約の効力というのはどの辺にあるのか。ただ将来の軍備拡大の歯どめという意味での姿勢として許可する。現時点では何らわが国としてはこの観察及び検証の具体的な、効果的な行動は予測し得ないのじゃないか。それでいろいろ関係国間に連絡をしたり、国連の安保理事会に通告をして、究極的に納得いかない場合は脱退するんだ、こういうきわめて大ざっぱなことをいま申し上げたわけですけれども、いま私が申し上げたような第三条並びに八条、この条約の具体的な効力というか、わが国にとってのメリットというものをどの程度評価しておられるのか、お伺いしたいと思います。
  41. 西堀正弘

    西堀政府委員 なるほどこの条約検証手続というものは、まず観察をして、疑惑が残ったら協議をする、なおかつ疑惑が残ったらというようなきわめて緩慢なと申しますか、非常に厳格ではないじゃないかということばは、なるほどそのとおりでございますけれども、これはやはり公海自由の原則というものもございますし、これを一つの妥協の産としてここで満足せざるを得ないわけでございますけれども、しかしながら軍事大国がかりに公海の中にこういった大量破壊兵器核兵器をはじめとしたものを設置するというようなことを自由にしておく場合とこれを比較いたしてみますと、これはやはりある疑惑が残るというような、嫌疑をかけられるということは、軍事大国にとって国際世論の前に耐えられないのじゃなかろうかと思うのです。そういった意味において、この検証手続がきわめてぎしぎしと厳重な手続になっていないということのみをもって、この条約の軍備管理ないしは軍備競争が本格化する前に、これを事前に防止するといった目的を、国際世論という点を考えますならば、これは過小に評価すべきものではなかろうと考えておる次第でございます。
  42. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いま御答弁で、国際世論ということが云々ということであれば、観際及び検証の必要の事態が生じたときに、この条約ではそれを拒否することもできるわけですね、当該活動を行なっている当事者であるならば。たとえば太平洋にいずれかの国の数隻の船が数日間そこにとまっておる。それに対して疑惑を生じて、はるか空中から観察した。それで協議の申し入れをした場合に、その申し入れに、これだけ調印して、オールステーツ・フォーミュラでこの条約批准するわけですから、協議の申し入れには必ず応ずるという一項があってもよかったのではないか。疑惑を持って協議の申し入れをしても、それを必ずしも百%受け入れる義務というようなものは、ここには何らうたわれていない、私、このように解釈しておるのですが、その辺いかがですか。そういった手続が明確になっておって、その後国際世論云々ということならわかるのですが。
  43. 西堀正弘

    西堀政府委員 ただいま先生おっしゃいました、「疑惑をもった締約国と疑惑をひき起こした活動について責任を有する締約国とは、疑惑を除くために協議する。」とございますので、これは協議には応じなければならない、協議を拒否することはできないわけでございます。その協議に応じたあとのことは、先ほどと同じような議論になるわけでございますけれども、事、協議のところに関して申し上げますならば、協議を拒否することはできないということになっております。
  44. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 「協議する」というこのプロセスというか、この問題の解決のための具体的な過程はここにうたわれているように解釈したのですが、この「協議する」ということは、当該活動を行なっている主が、片や協議の申し入れをするほうに対して、必ずその協議に応じなければならないという義務的な意味も含んでいる、このように解釈してよろしいわけですか。
  45. 西堀正弘

    西堀政府委員 そのとおりでございます。
  46. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 それは条約上の一般的な通念であるのか、それともこの条約に関してそういったことが言い切れるのか、その点はどうでしょうか。
  47. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ただいま国連局長から御答弁があったとおりでありまして、条約において「協議する」と書いてある以上は、その協議に応じなければならないわけでございます。たとえば航空協定なんかの付表の改正、路線の改定なんかにいたしましても、改定について一方の締約国が協議を申し入れたときは協議するというふうになっております以上は、協議に必ず応じなければならない。ただし、その結果、協議しても路線の改定について意見が合わなければ、それは行なわれないことになりますけれども、協議は必ず開始しなければならないということになっております。この場合にも、疑惑を持った国がその関係国に申し入れた以上は、外交的なルートを通じて、協議手続は必ず開始しなければならない。ただ、その協議の結果、申し入れた国の言うとおりになるかどうかということは、この条約では触れていないわけでございます。
  48. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 何か食い下がるようで恐縮ですけれども、私は、協議を申し入れする場合に、その根拠というのは必要だと思うのです。この観察の内容は、当該活動を妨げないように行なうわけですから、空中から視察か何かするのだと思うのです。それでどうも疑惑が残るので協議したい。海底で何かやってるのじゃないかというようなことを言うかどうか知りませんけれども、そういった場合、相手が、いやとんでもない、ちょっと一週間ここにとまっているんだ、何ら協議をする必要なんかありません。確かにこの条約の範疇で考えれば、「協議する」ということは、該当事件に対して申し入れがあればそれに応じなければならないというふうに受け取れますが、現実に起こる事件がこの条約とは全く関係がない、海底にそんなものを設置したり何かしているような要素は全くないと、この当該活動を行なっているものが主張した場合には、その辺はきわめてあいまいになってしまうのじゃないかと思いますが、それはいかがですか。
  49. 西堀正弘

    西堀政府委員 この条約上の解釈といたしましては、やはり「協議する」とあります以上、山崎参事官の申し上げましたように、協議には応ずる、しかしその協議の場において相手国の政府が、そういった敷設の作業なんてとんでもない話だ、ただ単にあそこにちょっととまっていたんだと言った場合には、これは協議不成立ということになろうかと存じます。その場合には、その疑惑を有したところの締約国としては、疑惑のなお残る場合でございますから、それ以後の検証手続がワークし始めるわけでございます。この「協議する」というところに関します限りは、山崎参事官ないしわれわれの解釈いたしますとおり、協議には応ずる、ただ、その結果として協議が不成立ということもあろうかと存じますが、それはそれ以後の問題になろう、こういうふうに解釈すべき問題だと思います。
  50. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ですから、協議しないでも、疑惑が残った場合にこういった手続が続行できるということに解釈してよろしいならばけっこうなんです。その辺はどうですか。
  51. 西堀正弘

    西堀政府委員 いま実は本交渉に携わった者に聞きましたところ、先生のおっしゃいましたとおり、協議に応じないというような場合におきましては、それを乗り越えまして、たとえば安保理に付託するというような場合もそのようになっているようですし、したがいまして先生が推測されたとおりの解釈が正しいようでございます。
  52. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 それならそれはけっこうなんですが、この条約——ほうぼう飛んで恐縮ですけれども、英文を読みますと、「トリーティーオンザプローヒビションオブザ」云々とありまして、「オンザシーベッドアンドザオーシャンフロアアンドインザサブソイルゼアロブ」とありますが、このシーベッド、それからオーシャンフロア、サブソイル、このおのおのの意味は、これは英語の字引きで見ますとおのおの違った解釈でございますが、外務省で訳されたこれを読みますと、三つまとめて海底と、こういうように一本にくくっておられますけれども、これはいままでに全部このように解釈してこられたのか、それともこの条約に限ってのみオーシャンフロア、サブソイルを含めて海底と解釈されたのか、その点について伺いたいと思います。
  53. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 御指摘のとおり、この条約ではタイトルにおきましては、シーベッドということばとオーシャンフロアということばとサブソイルゼアロブということばと、三つございます。ただ、この条約は、各条文をしさいに見てまいりますと、それが全部一貫して使われておるわけではございませんで、あるところではサブソイルゼアロブということばが落ちているわけでございます。内容的にわれわれも日本文をつくりますにあたりましてこれをいろいろ検討したのですが、たとえばいま具体的に御指摘申し上げますと、第一条の二項、それから第四条ではサブソイルゼアロブということばが入っておらないわけでございます。ただ、それが入っていないから、それは意識的に除いたのであるかということでわれわれも研究いたしまして、また交渉過程もしさいに検討したのでありますが、特別の意味はその点にはないということは、大体確認できたわけでございます。そこで、これをその場合にサブソイルゼアロブ、その下というふうなことばを訳しませんと、かえって非常に、訳してあるのと訳してないのとで意味が違うのではないかという感じも出てまいることがあるのではないかということで、考えまして、訳した次第でございます。そこで法制局ともいろいろ御相談したのでありますが、振り返って考えてみますと、日本語の海底ということばは海の底のみならずその下までも含んでおるのではないかというわれわれの解釈になったわけでございます。具体的に申しますと、たとえば海底トンネルあるいは海底資源ということをわれわれはいうわけでございますが、海底トンネルという場合には、その海底の上をトンネルが通るということはないわけでございまして、海底の下を通っておる、それが海底トンネルである。また海底資源という場合には、海底の表面にあるたとえばマンガン鉱のようなものだけではなくて、その海底の下を掘った石油をいうわけであろうということから考えまして、海底ということばは日本語の場合、海の底の表面だけではなくてその下も含んでおるというふうに考えられるということで、この条約の用語の不統一の点、しかもそれが特別の意味はない点を考慮いたしまして、一貫してこれは海底と訳すことにした次第でございます。
  54. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私、お伺いしたいのは、いままでもこういった問題、いわゆるサブソイル云々というようなことを海底としてくくってきたのか、本条約だけに限って海底ということばだけで包括したのか、その点はどうなんでしょう。
  55. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 もちろんわれわれはこの条約日本文を作成するにあたりまして先例も調べたわけでございます。先例によりますと、この条約にもりファーされております領海条約の第二条には、「イッツシーベッドアンドサブソイル」ということばがありまして、それを「海底及びその下」とたしか訳しております。  そこで実はそのこともありまして、われわれとしてはやはりこのサブソイルは先例にもあり、きちんと訳すべきではないかということを感じたわけでございますが、ほかのところでいろいろ落ちておる。落ちておるためにその不一致がはっきり出てきまして、非常に困ったわけでございます。正直いって困ったわけでございまして、やはりこの条約の場合あまりにもあちこちにいろいろな表現があるものでありますから、この場合には一括して海底と訳すことが日本語のテキストとしては正しいであろうと感じた次第でございます。
  56. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 現在大陸だな資源その他の問題がいろいろと大きな問題になりつつありますが、今後こうした条約ができました場合には、海底という日本語の概念を地下まで包括するのだ、こういう統一見解でいくおつもりであるのかどうか。それとも、これはタイトルにはこうあるけれども内容的にその海底もしくは地下ということがあまり明確でないから、この場合は海底にしたのだ、一本にしたのだということ、将来海底及び地下というような問題が具体的にクローズアップされるようになった場合には、当然そのとおりに訳さなければならぬということなのか。海底という日本語は外務省としてはそこまで含むのだ、こういうようにおきめになったのか。その辺はどうでしょうか。
  57. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 仰せのとおり、今後海底資源その他海底問題という問題がいろいろ出てまいりますが、これは法制局ともわれわれは協議した次第でございまして、海底という場合には、海の底の表面のみならず、その下をも含むという意味であるということについては、法制局においても了承されておるわけでございますので、国内法の関係その他におきましても、海底はその下を含むという解釈で法制局でも一貫してやっていかれるものと承知いたしますし、国際条約日本文の作成にあたりましても、われわれとしてはそういう態度で臨みたいと考えております。
  58. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ここでまた琉球列島に戻りますが、返還後、琉球列島の三海里内にこうした核兵器及び他の大量破壊兵器というものが設置されておったということが事後になってわかった場合には、これはわが国独自の判断なりまた協議によって、その問題の対処に当たらざるを得ないと思うのですが、復帰前の、また沖繩返還を目前にしたわが国の姿勢としては、その有無というようなものはどういうふうに確認できるのか、確認しようとしても全くそのすべがないものか、また確認しようとすれば何らかの方法を具体的に考案してその方法で確認せなければならないものなのか、その点のお考えはいかがでしょうか。
  59. 西堀正弘

    西堀政府委員 これは先ほども申し上げましたとおり、わが国は非核三原則をいっておるわけでございますので、沖繩が返ってきます場合に、その領海に核が置いてあるというようなことはわれわれとしては毛頭予想もしておりませんし、それじゃそれを確認できるかと言われますと、これはアメリカ政府がいままで管理権を持っておりました以上、アメリカ政府がそれを置いてないということは、これはそのとおり、額面どおり受け取らざるを得ないと思うわけでございますが、現に返ってきましたときに、日本で調べてみたところそこにあったということになりますと、それはアメリカが核抜きということに合意しております以上、アメリカの、まあ違反と申しましてはちょっとことばが悪うございますが、とにかく期待に反したということになるわけでございます。これは非核三原則といいますか、わが国の核政策にからむ問題でございまして、この条約では領海はもちろんのこと、日本の場合には三海里でございますけれども、領海をこえるあと九海里すなわち十二海里まではその当該沿岸国設置しようとすればこれは設置できるわけでございます。したがいまして、この条約上は何ら問題ないわけでございます。しかし繰り返しますけれども、それは日本がそれによってそれを黙認するんだという意味では毛頭ございません。それは日本の非核三原則という政策目的にかんがみまして、もちろんあり得ないことでございますし、われわれとしてはそういったことは毛頭予想しておりません。ただ申し上げたいことは、この条約におきましては距岸十二海里までは禁止対象になっていないのだということでございますから、この条約の問題とは別の問題であるということだけを申し上げたいと思います。
  60. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私、まことに不勉強で申しわけないのですが、こういう条約を拝見するまでは海底核兵器があるなんということはあまり考えていなかった。沖繩の核抜き本土並み返還ということは、いわゆる地上に限って、沖繩のあの列島の上に核があるかないかということが問題として取り上げられてきたのでありまして、これが、いまアメリカ施政権下の沖繩列島の海底にあるというようなことが予測されるようなまた裏づけるような条約批准するにあたりましては、これから返還に対するわれわれの考え方も、琉球列島のみならず、海底をも含んだ上で核抜きということの事実をわれわれは考えていかなければならない。こういうことを申し上げたかったわけですが、もし時間があれば大臣にも伺ってみたいと思います。——まだ時間がだいぶあるようでございますので、しばらく質問を続けます。  先ほど防衛庁のほうからも御答弁ございましたけれども、将来疑惑が生ずるような事態が起きた場合に、私しろうと考えで、空の上からずっとながめ渡す程度しか観察はできないではないか、このように一方的に申し上げたのですが、この辺はいかがなものでしょうか。
  61. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この条約の三条の一項でいいます観察による検証ということは、条約に書いてございますけれども、われわれの解釈といたしましては、これはもともとは公海の自由の一つの反映である、公海の自由では、お互いに観察することは自由なんでございまして、ただ人の行動を妨げないようにするということは、制約がございますけれども、自由でございます。したがいまして、この一項に関する限りは、この条約はなくても、もともとどこの国も持っている権利であるというふうにわれわれは解釈しております。したがいまして、常識的に考えまして、こういう問題でなくても、人がやっていることであっても、たとえば底のほうで何か魚をとっているというようなことであっても、それは観察していいわけでございます。したがいまして、それは飛行機を使うこともありましょうが、船に乗ってそこまで行って、底のほうで何か魚を取っているか、何か物を置いているかどうか見に行っていいし、そうして必要なら潜水夫をおろしていってもいいと思います。ただ、あくまでも観察でございますから、それは人の物でもありましょうからこれをあけてみるとか、そこまでいきますと、ちょっと問題が起こる。あくまで観察でございます。その範囲においては、かなりのことはやろうと思えばできると思うわけでございます。
  62. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 その観察に関連しまして、最近他国の潜水艦その他がわが国の近海へいろいろ出没している。本日の新聞報道によりますと、ソ連の原潜が浮上したままで北上したというようなことが報ぜられておりますが、こういった観察と同時に、その警戒体制というものはどういうふうになっているのか。何か空のバッジシステムみたいなものが海にはあるのかどうか、それはいかがでしょうか。
  63. 伊藤圭一

    ○伊藤説明員 ただいま御質問ございました点につきまして、お答え申し上げます。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕  わが国の周辺海域の警戒、哨戒、どういうふうにやっているかという御質問でございますが、御承知のように、法律に基づきます任務を持ちまして警戒についておりますのは、航空自衛隊の領空侵犯措置だけでございます。したがいまして、自衛隊は有事の際に哨戒し、警戒し、直接侵略から日本の国を守るというのが任務でございますから、平時におきましては特別の任務、哨戒任務、警戒任務を持って回っているということはございません。しかしながら、有事の際に有効に活躍できるために平時から訓練をいたしております。そしてまたこの情報というものは、長い時間をかけましていろいろなデータをとっておく必要がございますので、訓練を、哨戒訓練あるいは警戒訓練、そういうものをやりながら、そのときどきに得た情報というものは、情報の蓄積として集めてはおります。しかし、本日新聞に載っておりました案件も、P2Vが哨戒訓練に毎日出ておりますが、その途中でたまたまああいう状況を写真をとってまいって報告したものということになっております。  以上でございます。
  64. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 本条約がその効力を生かせるかどうかというポイントは、わが国の観察能力に負うところが非常に大きいのではないか、こういうように思います。  私、いままでの御答弁をずっと総括いたしまして、観察能力というものはまだきわめて不十分な状態ではないのか。かなりその観察行為そのものが明確に定義できないといいますか、厳密な定義づけができない。ただ普通の訓練の途上で発見されたとか、何か常時そういう観察体制というようなものがしかれて、それでこの条約批准するのであるということならばきわめて筋が通った問題でありますが、今後、この条約批准について、またこれからのいろいろなわが国の防衛上の問題からして、この観察云々の行為を強化するといいますか、かなりもっと具体化する、拡充していくという、そういうお考えなのかどうか、お伺いしておきたいと思います。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕
  65. 伊藤圭一

    ○伊藤説明員 ただいまの段階までは、この条約に関連してどういうふうに観察をやる必要があるか、それからその機能はどういうものを持つ必要があるのかというようなお話は、まだ外務省のほうから伺っておりません。  それで、先ほど参事官のほうからお答えいたしました、空から見るあるいは必要に応じては人をもぐらせるということも、現在海上自衛隊で持っております飛行機あるいはフロッグマンなんかもございますので、必要があればできる範囲は、まあどの程度できるかわかりませんけれども、ある程度はできるのではないかというふうには考えております。
  66. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 わが国は核を持っておりませんので、これは核保有国にしてみれば相当重大な関心事であると思うのです、この条約そのものは。わが国も同時に関心を持たざるを得ない立場にあるわけですが、核を現在持っていないからといって、観察云々ということは、アメリカ及びソ連があれほど独自の案を提案するほどきわめて積極的にこの条約に取り組んでいた。また、その観察の範囲につきましも、いわゆる三海里から十二海里という両論がぶつかって、かなり論議を呼んだ。こうしたいままでのプロセスをながめましても、ただ観察ということがいままでの平常どおりの観察で済むというような甘い考えではいけないのではないか。この条約批准する以上は、やはりそれ相当の体制を考えてやはり国際的なレベルに歩調を合わせる必要があるのではないか、こんなことを思いますが、その点についての国連局長の答弁を伺って、私は質問を終わりたいと思います。
  67. 西堀正弘

    西堀政府委員 確かに先生御指摘のとおりだと存じますので、その点防衛庁のほうともよく協議をいたしまして、万全を期したいと存じます。
  68. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  69. 田中榮一

    田中委員長 じゃ速記をお願いします。
  70. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いま時間がないので大体打も切ろうと思ったのですが、やや時間の余裕があるようでございますので続けて伺いたいと思うのです。  防衛庁のほうになるかと思いますが、ここで問題になっている核兵器及び大量破壊兵器海底設置ということは、わが国の現在の能力からしてどういうものが推測されるのでしょうか。これは私はきわめて重大問題だと思うのですというのは、先ほども申し上げましたとおり、五年前にこれが話題になったときは、将来に対する歯どめという意味よりもかなりそれは現実の問題となってきているからこれだけ大きな論議を呼んだのだと思う。であるならば、アメリカ及びソ連がどういうものを意図してこういった条約に腰を入れだしたのか、またわが国としてもそれをどの程度予測してこの条約批准せんとしているのか、これはきわめて重要な問題であると思いますので、明確なるお答えを願いたい。
  71. 伊藤圭一

    ○伊藤説明員 実はこの件につきましては調査課長が一番詳しいかと思いますけれども、私が聞いております範囲について申し上げますと、攻撃用固定、ミサイル発射基地の建設でございます。それから移動式ミサイル発射装置の設置、ABMの設置でございます。それから潜水艦基地の建設、それから核機雷、こういったものが一応考えられると思います。
  72. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 先ほど山崎参事官の御答弁で、防御用のものはこの条約の適用を受けないというお答えがあったかと思いますが、それは間違いございませんか。
  73. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 先ほど御答弁申し上げましたが、ソナーという例があげられたわけでありますが、ああいう防御的な通常兵器というものはこの条約のワク外であるということを申し上げたわけでございます。ただ、条文のそれ自体からいえば、これはまさに大量破壊兵器以外の兵器ということでありまして、概念的に言えば通常兵器全部であります。しかしそういうものはこの条約対象外であるというふうに御了解願いたいと思います。その中に純防御的なソナーなども含まれるというわけでございます。
  74. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 特に海底の問題でありますので、その装置が防御用であるか攻撃用であるかまたは軍事用のものであるか、平和利用のものであるか、その識別判断というのはきわめて困難を予想するわけですが、そういった論議はこの条約調印のときにはなかったのでしょうか。
  75. 西堀正弘

    西堀政府委員 条約調印のときにはもちろんございませんでしたけれども条約の審議の段階におきまして、平和的な目的に使われるものであるか、あるいは軍事的な目的に使われるものであるか、あるいは防御用のものであるか、攻撃用のものであるかといったような点は大いに論議されたのでございまして、また、そういった論議が行なわれましたからこそ、当初のソ連の提案にありましたように、海底の軍事利用、これを一切禁止するといったような点は、いま申し上げましたような区別がはっきりとつかないというようなこともありまして、それで結果といたしまして、当初のアメリカ案のように核兵器その他の大量殺戮兵器といったような提案にソ連も妥協してまいったのでございまして、そういった論議は審議の過程において大いにあったのでございます。
  76. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 先ほどもいろいろ指摘しましたように、この条約の適用上の実際的な効力については私多々疑問を持つものなんですが、ただこうした軍縮委員会等の成果がわが国にとりまして承認批准ということになれば、わが国軍縮に対する一つの姿勢を高く宣揚するという意味での評価は私は十分にいたします。ただ先ほど国連局長の御答弁にありましたように、核保有国であるフランスがこの加盟に難色を示しておるという御答弁がちょっとございましたが、その理由をもう少し詳しく、なぜフランスが難色を示さざるを得ないのかその辺の様子をもう少し詳しくわかりましたらお願いしたい。
  77. 西堀正弘

    西堀政府委員 フランスはこの海底非軍事化条約に限りませず、ジュネーブ軍縮委員会、これにメンバーにはなっておりますけれども先生御承知のとおり参加いたしておりません。それではなぜそれをいたしておらないのかと申しますと、これは推測の域を脱しないのでございますけれども、要するにフランス的なと申しますと曽祢先生に違うとおっしゃられるかもしれませんけれども、非常に論理をたっとぶと申しますか、カーティジアン的な、要するに不正確なものあるいは両者の妥協によって成立する、そういったことをいまやっていてもあまり意味がないではないかといった、非常に論理の明快をたっとぶフランス式な考え方から軍縮委員会には参加をがえんじない。それからこの海底条約に関しましても、この規定のしかたが不十分であるといったようなことから、先ほど申し上げましたように国連総会におきますところの推奨決議にも賛成しなかったというようなことでございまして、これはあくまで推測の域を脱しませんけれども、この条約にそれではなぜ参加しなかったかという点は、そういったばく然としたフランスの軍縮問題一般に対するところの態度の表明ではなかろうかとこれは推測いたす次第でございます。
  78. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私も私なりの意見がございますが、これも推測の段階でございますのでここで申し上げませんが、私関連して伺っておきたいことは、アメリカとの安保条約締結国としても、もしアメリカが日本の三海里から十二海里の間にいま問題になっております核兵器及び大量破壊兵器等の設置を依頼してきた場合は、日本としてはどういう態度をとるのか。いかがでしょうか。
  79. 西堀正弘

    西堀政府委員 この条約にアメリカが批准をし、また日本批准をし、そうしてこの条約の当事国になったという段階におきましては、この条約をお読みいただけばわかりますとおり、領海、これはその国の主権が行使されるところでございますので、したがいまして、かりに、日本は政策としてそういうことを考えてもおりませんので、これはあくまで仮定の問題でありますけれども日本核兵器ないしは大量殺戮兵器をこの領海に置くこと、これは条約上もちろん可能でございます。それから三海里をこえる十二海里までの九海里、これも可能ではございます。したがいまして、この領海の中にアメリカがそういうものを置きたいと言ってきた場合におきましては、これはアメリカにそういったものを置かせるということは条約上は可能でございます。しかしながら三海里から十二海里までの九海里の間につきましては、これは当該沿岸国に限るわけでございますので、したがいまして、日本といたしましては、かりにアメリカが三海里から十二海里の間の九海里の範囲に、そういった兵器を置きたいと言ってきた場合におきましても、この条約上の義務といたしまして、そういうことはできないわけでございますので、そういうものをアメリカに設置させることを日本としては合意することがこの条約上できないのでございます。
  80. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 以上で質問を終わります。
  81. 田中榮一

    田中委員長 ちょっと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  82. 田中榮一

    田中委員長 速記を始めてください。  戸叶里子君。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 この前の委員会でガットの譲許の修正または撤回の承認を求めるの件というのが出ておるわけで、その中のチューインガムの問題で質問をいたしました。そしてほかの党の方も質問をされたと思いますが、私きょう一点だけもう一度伺いたいと思いますことは、大体基本線としてこの間はっきりいたしましたことは、今回の譲許表の改正というのはつまり国内産業の育成それからもう一つは非常に基盤の弱い企業を守るためにあるものの税金を上げてそしてほかのものを下げたというふうなお話でございました。  そこで基本線としてお伺いしたいことは、近い将来においてこういうような形、この精神でもって譲許表を改めようとしている産業があるかどうか、これをまず第一点としてお伺いしたいと思います。
  84. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その点は前回の委員会でもいろいろの角度から御説明申し上げたところかと思いますけれども、ただいま考えておりますこの自由化とそれから関税譲許との関係で新しい問題として考えておるものはただいまのところはございません。ただ御承知のように、一方関税譲許の問題でなしに、日本として自主的にと申しますか関税定率法の改正ということは別個にあり得るわけでございまして、そういう関係でたとえば対外的に新しい措置をいたします場合に国内の産業の保護、その他の角度から関税定率法を改正するということはあり得ると思います。しかしただいま申し上げましたように、ただいま日程にのぼせております自由化品目との関係で、関税譲許の問題として扱うものはただいまのところは考えておりません。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 いまのところ考えていらっしゃらぬということですが、そこでもう一つお伺いしたいのは、一つのものが上がりますとこっちがある程度下がるんですね。その中の選ぶ品ですね、選んだ品で、今度私どもがどうも納得できないのは、たとえば七面鳥の肉とかペットフードとかアーモンドとかいうのは国民の物価の安定になるわけでもないし、それから一般の人に影響があるというようなものでもない、ある特殊な人たちに影響のあるものですね。そういうものを、まあアメリカとの交渉ですから向こうがこれを下げるんだと言えばしかたがないかもしれませんけれども日本としてはこういうものが最も適当だと思っておやりになったことですか。もっとほかにあるけれども、まあ相手があって相手も主張することだからしかたなしにこれらを認めざるを得なかったということなのでしょうか。その辺のところはやはり正直に伺っておきませんと政府考え方がこういうところに標準を置いて交渉されるのかというような錯覚を私ども起こさざるを得ませんので、正直にこの辺のところをお伺いしたいと思います。
  86. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まことにごもっともな御質疑でございますし、その辺に政府としても苦心の存するところがあったわけでございますけれども、代償として下げることにいたしましたものは、これは外国側に聞こえるといかがかと思うのですけれども、まあこういうものは譲ってもたいしたことはないというようなものを代償として、これは一種の相談ごとでございますから、それよりも守るほうの五%上げを大事といたしまして、それの代償としてこれならまあ日本としては忍び得るものである、常識的に申せばそういうことでこういうふうな話し合いがまとまることができた、かように御理解をいただきたいと思います。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 まあそれだけの問題なんですけれども、ただ、いま大臣がおっしゃったように、常識的な問題として特にこれならいいだろうというようなお考え方、ちょっと私解せないと思います。もっと下げたほうがいいようなものも考えられるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、いま具体的に私これこれということは申し上げませんけれども、あまり国民生活に関係のないようなものが常識的にまあいいじゃないかというふうに選ばれた。そのピックアップしたというそういう考え方の根拠というものが私はどうも解せないんですね。やはりアメリカ側がこういうものはぜひ下げてほしいという形できた意見のほうが強かったんじゃないか、そういうところに問題があるんじゃないか、私はそう思いますけれども、この辺のことをもう一度伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  88. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはもちろん相談ごと、話し合いでございますから、実はこれは専門家からこまかくお聞き取りいただけるともう少し事態がはっきりするかと思いますけれども交渉に際しては先方としてはやはりこれこれというようなものの希望が出まして、そうして話し合いでそのうちのこれとこれはそれならこちらとしてもよかろうということでいたしましたので、先方の希望どおりにはいっていませんし、あるいはまた話し合いのことですから、こちらももう少しこちらの期待からいえばほかの考え方もあり得たかもしれませんですけれども、ここで先ほど私申しました、ことばは不適当と思いますが、まあまあこのくらいならばというところで落ちつけた、こういうふうな状況でございます。
  89. 田中榮一

    田中委員長 これにて関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件に対する質疑は終了いたしました。
  90. 田中榮一

    田中委員長 別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  91. 田中榮一

    田中委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 田中榮一

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  93. 田中榮一

    田中委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後 零時二十四分休憩      ————◇—————    午後一時十七分開議
  94. 田中榮一

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  引き続き、核兵器及び他の大量破壊兵器海底における設置禁止に関する条約締結について承認を求めるの件について、質疑を続行いたします。曽祢益君。
  95. 曾禰益

    ○曽祢委員 最初に、けさの委員会におきまして大久保委員の御質問に対する御答弁で、大体条約が成立するといいますか、締結されるまでのいろいろな経緯について概要のお話があったので、それは大体それで了承いたしたのですけれども、それと、一貫して日本政府態度、つまりこの海底軍縮といいますか、海底の軍事利用反対あるいは核兵器大量破壊兵器に限っても、要するにこういった問題に対するいろいろな米ソの案が出るあるいは総会並びに軍縮委員会等における各国の意見等がございまして、そういうものに一々どう対処したというこまかいことは要りませんが、一貫してこういう主張であったが、残念ながら、おそらく理想的から見ればかなり後退していると思いますので、こういうふうになったと、経緯と結果とを日本の主張という点からもう一ぺん説明を願いたいと思います。
  96. 西堀正弘

    西堀政府委員 これは午前中にも申し上げましたように、わが国は、事、軍縮に関します限りはよごれない手、あるいはやましからざる良心をもって、時に非常に野心的なことも提案いたしまして、時には軍事大国の心胆を寒からしめるといったようなこともあるわけでございます。そういう意味におきまして、田中軍縮代表は非常に恵まれた立場にあるということが一応いえようかと思います。  この海底軍事利用禁止問題につきましても、したがいまして、これは当初の日本立場は朝海代表が一九六九年七月軍縮委員会で最初の発言を行なった際に、わが国の原則的立場といたしまして、究極的には海底の軍事利用を禁止すべきである、しかし、午前中にもちょっと申し上げましたけれども、その憲章問題ということを考えますと、全般的な軍事利用というところまではちょっと進めない。差し当たっては核兵器及び他の大量破壊兵器海底設置することを防止する措置を直ちにとるべきである、こういう点。  それからもう一つ、これは非常に野心的であったわけでございますけれども、公海のみならず、領海の下の海底も含めたすべての海底禁止の地理的範囲とされるべきである、こういった主張をしたのでございます。それで第一の点は、結局米ソの妥協でございますけれども、米国の主張が通りまして、朝海代表の主張したわが国の主張がいれられたわけでございます。それで後者の点はこれは相当反響を呼びましたし、またわが国の主張に同調もあったわけでございますけれども、ここまではやはり進めないという現実立場から、したがいまして領海プラス十二海里まで、それ以遠のところだけを、公海の部面だけを禁止するという点の妥協に、わが国といたしましても現実的考慮からこれに合意せざるを得なかった、こういうことでございます。したがいまして、わが国といたしましては、繰り返しますけれども、事、軍縮に関します限りは非常に理想主義的なと申しますか、野心的な提案を行なっておる、そうして必要に心じて妥協もする、こういう立場でございます。
  97. 曾禰益

    ○曽祢委員 この領海の海底についても非核化、非軍事化を主張したというのはわれわれも趣旨においてむろん賛成なのです。ただ、しからばすべての締約国の領土全体にということはきわめて実際的でない、こういうふうに思われるので、特に領海の海底について普通の領土と切り離してこの非核化あるいは非軍事化を主張した根拠、それはどういう点にあるのですか。たとえばそういうところは隠しやすい、隠すということが非常に危険だ、普通の領土よりもなかなか感知しにくいというような、それが危険だと、国際的な競争に火をつけるというふうにお考えになったのか。なぜ領土と領海の海底とを分けた取り扱いをされたか、その根拠を示していただきたい。
  98. 西堀正弘

    西堀政府委員 これも午前中ちょっと申し上げましたけれども、現在それでは海底にどういった軍備と申しますか、軍核競争というものが行なわれているかという点につきましては、技術の今日の発展段階におきまして明確なことをわれわれ知らないわけでございます。したがいまして、できることなら全面的に海底というものをとにかく平和利用にもっていく、海底を軍事利用にするというようなことは全面的にこれは禁止しようではないかという、いわば野心的と申しますか、理想主義的な立場からこういった主張をいたしたわけでございまして、したがいまして、その動機と申しますのは、今後のおそらくいまでもあるいは若干あるかもしれませんけれども、いわばその海底における軍核競争というものが本格化していない、その段階においてはできることなら全海底平和利用に向けるべきではなかろうか、こういったのが朝海代表の、領海をも含めるといった提案をした動機でございます。
  99. 曾禰益

    ○曽祢委員 それはどういう現に軍事利用が行なわれているか、今後もどういう可能性があるかということではなくて、私の聞いているのは趣旨なのですよ。いやしくも領土である限り、残念ながらこれは核軍縮そのものになること、核兵器禁止そのものにつながることともいえるくらい、領土の中に置くことを禁止するということはできないでしょう。しかるに海底なるがゆえに、領海についてまで、たとえば米ソの領海について一切いけないということを主張するのは、非常に勇気あることはいいけれども、領土との関係においてかえってアーギュメントというものはあまり強くないというそしりすら免れないと思う。なぜそれにもかかわらず海底である限りは一般領土と違うのだ、全部非軍事化するのだということを、少なくとも原案としてでも日本が主張されたということは、それだけの論拠と根拠がなければいけない。それを聞いているわけです。
  100. 西堀正弘

    西堀政府委員 この点は当時私自身ジュネーブにおりまして、朝海代表がこういった主張をされるという内部の打ち合わせ会議にも実は私参画いたしたのでございますけれども、それをいま想起いたしますと、朝海代表の頭の中には、要するに核兵器それから大量殺戮兵器、こういったものは全面的に禁止するのだという観念が一つ、と申しますのは、先ほど申し上げましたように朝海代表の二つの主張があったわけでございます。一つは、ソ連の言うような全面的な軍事利用を禁止するというのに対して、朝海代表は、その武器の種類については大量殺戮兵器、もちろん核兵器をはじめとする大量殺戮兵器禁止するのだというのがありましたので、したがいまして核兵器並びに大量殺戮兵器は、行く行くの姿としては全面的に禁止するのだ、これが一つ朝海代表の頭にあったわけであります。もう一つは、現実に現在海底でどの程度のほんとうに軍備が行なわれているかということがわからない現在におきまして、しかも各国がこれを発表していないという現在におきまして、領海たるといなとを問わず、海底についてはいまの核軍縮全面禁止と同じように全面的にこれは禁止するということを主張しても、あながち先生のおっしゃるように不当ではないのではないかといった考慮が朝海代表の頭にあったのじゃないかと思うわけでございまして、いま先生のおっしゃいましたような考慮からそれはちょっとという異論も確かに内部の打ち合わせ会議でございました。しかし結局それは当時の朝海代表の判断で、日本はこの点大いに平和国家を標榜する一つのよすがとしてこれをやるのだという決断が下ってこれをやったというのが経緯でございます。
  101. 曾禰益

    ○曽祢委員 私はあながち非難するつもりじゃありませんが、ただこれは朝海代表がやったとかやらないじゃなくて、やはり日本政府の訓令に基づいてやることなのですから、思いつきじゃいけないと思うのです。言った限りにおいてはそれはやはりちゃんと論拠があり、それが相当な通る可能性があることを言わないと、領土と領海とを分けて、海底と普通の土の上とは別だという行き方では、かえってあとで弱くなるのじゃないかと思うので、これは御注意になっちゃうわけですけれども、やはり今後のこともありまするから、ただ思いつきでやらぬようにして、必ず言っていることの一貫性と論理性がなければいけないと思うのですね。そういう意味で申し上げているのです。この海底の問題についてはさらにあとで——けさも大久保委員からきわめて重要な御指摘があったのを、私もその点について海底というものの訳語や意味について御質問するのですけれども、その前に、ついでにこの禁止されるべき構築物や何かは別として、兵器そのものからいうと、これもけさ質疑応答があったようですけれども、なお明確にしていただきたいのですが、一体その他の大量破壊兵器ということは具体的にこれこれということがはっきりしているのか。現時点においては、今後ともいろいろな武器が出てくるかもしれないけれども核兵器以外の大量破壊兵器というものはたとえばこれこれということを、おもなるものをはっきり御指摘できますか。
  102. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 軍縮分野におきましては、大量破壊兵器とは何を意味するかということは常に問題になるわけでございますが、これに関しましては実は一九四八年の八月の国連の通常軍備委員会で採択した決議がございます。大体その定義がいまも通用しておるわけでございます。具体的に申しますと、その当時の定義で言えば、原子爆発兵器、致死性の生物化学兵器、放射能兵器及び破壊効果においてこれらの兵器に匹敵する特徴を有し、将来開発されるいかなる兵器をも含むと観念されております。具体的に言えば、現在の時点で言いますと、核兵器それから致死性の生物化学兵器及び放射能兵器がこれに該当するということで、大体軍縮分野においては概念が確立しておるわけであります。しかしこの条約との関連で申しますれば、何といっても核兵器が中心であると申し上げていいと思います。
  103. 曾禰益

    ○曽祢委員 わかりました。とにかく原子及び熱核兵器それから致死性のCB兵器それからその他の放射性の兵器。そういたしますと、それを運ぶほうの、たとえばミサイルそのものは入らないのですか。その点は明確でしょうか。核弾頭でなければこれはマスデストラクションの兵器と見ないでいいのかどうか。
  104. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 大量破壊兵器といいます場合には、ミサイルはそこには入りませんが、この条約の関連で申しますと、書いてございますように「これらの兵器を貯蔵し、実験し又は使用することを特に目的とした構築物発射設備その他の施設」というふうになっておりますから、ミサイルなんかは発射設備としてこの条約禁止対象になるわけでございます。ただしそれは、そういう核兵器その他の大量破壊兵器を使うことを目的とした、ミサイルということになるわけでございます。
  105. 曾禰益

    ○曽祢委員 それはちょっと英語から考えておかしいんじゃないですか。「ランチングインスタレーションズ」と書いてある。それはミサイルそのもののランチャーみたいなものはランチングインスタレーションだろうけれども、ミサイルそのものは第一義的に大量破壊兵器ではないかもしれないけれども、少なくとも距離の長いものは事実上核弾頭とほとんど切り離せない。そういう意味でやはり禁止される兵器そのものであって、ここにいう構築物じゃないでしょう。発射、インスタレーションじゃないでしょう。ミサイルがインスタレーションだなんて聞いたことがない。
  106. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 私の御説明が必ずしも正確でなかったかと思いますが、ミサイルの場合、そのミサイルに核弾頭がついておれば、その核弾頭のついたミサイルは一体として観念して、これは大量破壊兵器に入ると思います。したがいまして、それを発射する設備のほうはまさに発射設備で読むわけでございます。
  107. 曾禰益

    ○曽祢委員 非核弾頭だったら問題にならぬわけでしょう。どうなんですか。
  108. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 仰せのとおりでございます。
  109. 曾禰益

    ○曽祢委員 私がいま非常に重要に考えるのは、やはり大久保委員が指摘された海底ということなんです。これは常識的に考えて、けさの外務省の説明では納得できませんよ。海底というものは、普通に考えれば一つのサーフィスです。面積です。そのものに中まで入っていくという意味はないはずです。ですから、海底及び海底の中の地下に置いてはいけないということが今度の条約の一番のポイントだと思う。海底ということばの意味にそういうものも含むのだという非常に無理な解釈をしておられますけれども、私は、日本語の解釈としてもこれは合理的でないと思う。ただ海底とだけやって、その海底ということが必ず海底地下まで含むのだなんということは、一般の人はこれを読んだってわかりませんよ。しかもこの条約は、言うまでもなく日本語訳は正文じゃないでしょう。だとすれば、やはりほんとうにこの条約のねらっているものは、むろん海底のサーフィスにも置いてはいけない、そういうところに置いてもいけないし、中に構築してもいけない、両方の意味がはっきりしているのですよ。これは日本語以外のどれも——私はロシア語を読んでいないからわかりませんけれども、英語を読もうがフランス語を読もうがスペイン語を読もうが、中国語なんか日本語のひとつの兄貴分で非常に参考になると思うのですが、非常に丁寧に詳細に書いてあるじゃないですか。これはどう考えても海底だけじゃ済みませんよ。中国語を見れば「海洋底床」。「海」というのは水でしょう。「洋」というのはオーシャンでしょう。「底床」の「底」というのはほんとのサーフィス、「床」というのは寝床、ベッドです。つまり英語でいうフロアというのが「底」であって、英語でいうシーベッドというのが「床」なんです。実にどんぴしゃり、なかなかよくできている。「及其下層土壌」と書いてある。これで初めて海底及び海底地下につくってはいけないんだぞということのこの条約の非常に大きな意味がはっきり出るのじゃないか。条約のタイトルからして、この条約が何をねらっているのかということがはっきり出るように、どうしてそう訳さないのですか。  もう一つ、ついでだから申し上げますが、なるほどこの条約にはいわゆる海底、英語で言えば「ザ シーベッドアンドザオーシャン フロアアンドインザサブソイルゼァロブ」と書いてあるところと、そうでなくて、いわゆるその地下という点が抜けている場合が確かにあります。しかし、重要な場合は必ず、及びその地下ということがはっきり書いてあるじゃないですか。前文の最初のところには地下がなくて、第一項、第二項、第三項になって軍縮という点になってくるとちゃんと必ず地下ということが明示されているわけです。ですから、さっとやってしまうときには海底とやっているのですけれども、その地下ということまで一々いわないけれども、第一条ははっきりと海底及び地下ということが書いてある、こういう重要なところは。それから第三条の第一項でも、これはもうはっきりと地下ということが書いてある。それから第四条は、これだけ、重要だと思われるのになぜここではないのかというと、大陸だなだとかあるいは専管水域だとかいろいろな関係が出てきてめんどうくさいから省いたのだろうと思うのです。第五条のような重要なところになると、やはりその地下ということが出ている。  ですからこれは、抜いたところとあれしてみたけれども、たいして重要じゃないから一本にしたなんというのは、ぼくはそういう訳はルーズだと思う。もっと明確な説明をしてもらいたい。!私は説明できないと思うのですね。いかがですか。
  110. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 けさほども申し上げましたように、確かにこの点は、条約におきましても用語が必ずしも統一されておらないわけでございますが、いろいろに、サブソイルがあろうがなかろうが、内容的には同じことを言っているということは、先生も御了解いただけると思います。  そこで、そういうことにおきまして、われわれとしてはこれをどう訳すべきかということになったわけでございますが、先生の御指摘によれば、重要なところは全部サブソイルなんかがついているというお話でございますけれども、ただ、われわれいろいろ点検いたしましたときに、この条約で一番のポイントは一条だと思います。  その一条の二項の一番最後のところには、「ザシーベッドビニースイッツテリトリアルウォーターズ」というように、シーベッドというふうにしか書いてないわけでございます。それでこれの中国語のテキストを見ますと、やはりこのとおり訳しまして「海床」としか訳してございません。だから中国語のテキストの場合には、タイトルでいう「下層土壌」ということばはもちろん使っていないわけでございます。  われわれとしては、こういうふうに文字どおり直訳すれば問題はもちろん簡単でございますけれども、やはりこの一条の二項は非常に重要な点でございまして、へ理屈をもしこねるとすれば、「領海の海底については適用しない。」と書いてあって、シーベッドとしか書いてないから、その下は適用されるのかというふうな反対解釈も出てくるわけでございます。そこで、一つ一つ忠実に訳すことがかえっていろいろな誤解を生むということで、われわれとしては非常に苦慮したわけでございます。  その点について法制局ともいろいろ相談しまして、先ほども申し上げましたように、日本語としては、海底トンネルとか海底資源とかいうふうにいわれますように、その下を含んで言うことが非常に多い、むしろそのほうが多いということに着目いたしまして、一貫して誤解が生じないように海底と訳した次第でございます。
  111. 曾禰益

    ○曽祢委員 いまのお話ですけれども、第一条の第二項は、つまりどこのゾーンに禁止されるのか。ですから、距岸十二海里のゾーン、その中に領海もあるしそうでないのもある。ゾーンの分け方なんです。その点で重要であることはわかるけれども、しからばその地下まで含むか含まないかということは、ポイントじゃないからそれを簡単にやっているのです。ですから、ここで抜かしているから、重要なところにないからというのは、私は理屈としてはおかしいと思う。  それから日本語の話としてでも、これはもう一ぺん別にやろうと思って法制局を実はわざわざ呼ばなかったのですけれども日本の法令とか条約等の先例もむろん伺わなければなりません。条約の先例はけさちょっと言っておりましたが、どうなっておりますか。
  112. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 条約上の先例としましては、先ほども申し上げましたように、領海条約第二条には「イッツベッドアンドサブソイル」ということばがありまして、それを海底及びその下と訳出しております。
  113. 曾禰益

    ○曽祢委員 法令はないのですか。
  114. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 法令につきましては、非常に申しわけありませんが、まだ十分調べておりませんけれども先ほども申し上げましたように、この点につきましては法制局と十分協議してこの日本語を使おうということにしたわけでございますので、法制局としても同じ解釈をとっておると了解いたします。法令につきましてはさらにわれわれとして調べてみたいと思います。
  115. 曾禰益

    ○曽祢委員 日本語の解釈としては、あなたは海底資源それから海底トンネルですかをあげて、このほうが多いと言われますけれども、それはこれからつまり海洋科学が発達して、海底——ぼくの言う海底の下のものをだんだん利用してくるからたまたまそうなっただけであって、いままでの観念では、海底電線はどうですか。地の下をくぐってないじゃないですか。これは冗談じゃないのです。海底電線はくぐってないのですよ。海底トンネルというのは、ほんとうは正確には海底地下トンネルなんです。トンネルというものは、海底ということばに地下まで含む意味があるのではなくて、トンネルということばに、当然に岩石や土壌を掘っていくから、海底地下トンネルを海底トンネルと、日本人は頭がいいから一つ省略しているだけなんです。海底資源のごときは言うまでもないじゃないですか。海底の中にある地下埋蔵資源を、日本人の頭のよさで一つ飛ばしただけで、海底のことばの中に地下まで入っているというのは、これは日本語の問題なので、法制局でもなくて、学校教育の問題になってしまう。ほんとうですよ。そういうことによってこの重大な問題を片づけてはいけないと思う。しかも海底と書けば全部地下まで入っているというのは、この条約の訳としては非常に不親切じゃないですか。日本語だけ見ていたらわからないですよ。地下までいっているかいってないか全然わからない条約をつくっておる。少なくともあるところには地下というものが出てくるし、あるところには出てこないから、不統一の訳だけれども、その不統一のほうが——しかも正文の不統一のほうがちゃんとニュアンスがよく出ている。重要な点は全部地下まで読めるのだぞということが出ている。それを自己一流の解釈で、海底というのは当然地下も含むのだという解釈で海底ということばに統一しているのは私はどうしても納得できない。もう一ぺんお考え直しをする余地はないのですか。大臣こんなことはおかしいと思いませんか。
  116. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 御指摘の海底電線というふうな場合には、確かに海の底の表面を意味すると思います。ただ、今後の経済開発その他を考えていきますと、海底について問題になる場合はまさに海底地下も非常に問題になる。それを一々法令の問題をあわせて地下を明示するように日本語を使うかどうかという問題も法制局では考慮されたのだと思います。しかもたとえば海底資源といいます場合には、その海底地下資源だけではなくて、海底の表面の資源も現実に問題となっておるわけでございます。その点を今後の法令用語としてあまり区別して訳し分けることはかえっていろいろ問題が生ずるであろうという考慮もあったと思いますが、法制局としてはこのほうがベターではないかというわれわれに対する示唆があったわけでございます。そういう意味で、まあこれは日本語の語感でございまして、あるいは私のほうが間違っておるのかもしれませんが、海底という場合にはそのサーフィスだけではなくて、やはり一つの厚みを持ったものというふうに観念すべきであるというようにわれわれも感じまして、これで統一したほうがいいと考えた次第でございます。
  117. 曾禰益

    ○曽祢委員 この次の機会に法制局を呼んでいただきます。それでもう一ぺんこの議論をやりますが、しかし、私はいまの議論は暴論だと思うのです。底というものはサーフィスときまっておりますよ。底ということば自身が床であって、はじめてそこから上に建つもの、そんなことは——第一、底という字を考えてごらんなさい。家の中の低いだからこうなっておる。海底そのものにその地の中までという意味があるということは、これはどうしてもわれわれの感じ、及び日本語の普通の常識からいって承服できない。ただ、いまの科学の発達からいえば、海底のそのものの資源、たとえば魚類等の資源もあるけれども、むしろ地下埋蔵資源のほうが重要になってきている。またこの兵器についても、ただ海底へぽかんと置いておくよりももっと悪いのは海底地下にランチャーなんかを置く危険があるから、これをつくったわけでしょう。ただ海底からさらに下へもぐったというニュアンスの全然出ないような訳で、ほんとうは外国語のほうが正文なんで、正文よりかあいまいな日本文で本委員会を通そうなんていうのは不届き千万だ。それは承服できません。
  118. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 次回に法制局の関係官もお呼びになるということでございますから、それまでに私たちとしても法制局とよく協議いたしまして、あらためて政府としての見解を申し述べたいと存じます。
  119. 曾禰益

    ○曽祢委員 終わります。
  120. 田中榮一

    田中委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十三分散会