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1971-04-14 第65回国会 衆議院 運輸委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月十四日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 福井  勇君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 村山 達雄君    理事 斉藤 正男君 理事 松本 忠助君    理事 河村  勝君      小此木彦三郎君    砂田 重民君       關谷 勝利君    古屋  亨君       細田 吉藏君    増田甲子七君       井岡 大治君    田中 昭二君       宮井 泰良君    和田 春生君       田代 文久君  出席国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君  出席政府委員         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸省海運局長 鈴木 珊吉君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省船員局長 佐原  亨君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君  委員外出席者         文部省大学学術         局技術教育課長 角井  宏君         参  考  人         (全日本海員組         合中央執行委         員)      斉藤 吉平君         参  考  人         (船舶通信士協         会常任委員長) 中村  穆君         参  考  人         (日本船主協会         労務委員会委         員)      平田  弘君         参  考  人         (愛媛船主会副         会長)     眞木 克朗君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   中村庸一郎君     細田 吉藏君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  船舶職員法の一部を改正する法律案内閣提出  第七八号)      ――――◇―――――
  2. 福井勇

    福井委員長 これより会議を開きます。  船舶職員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため参考人として、全日本海員組合中央執行委員斉藤吉平君、船舶通信士協会常任委員長中村穆君、日本船主協会労務委員会委員平田弘君、愛媛船主会会長眞木克朗君、以上四名の方々が御出席されております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、本日、御多用中にもかかわらず御出席を賜わり、まことにありがとうございます。本案について、それぞれの立場から忌憚のない御意見を承り、もって本案審査参考にいたしたいと存ずる次第であります。  次に、議事の順序について申し上げますが、斉藤吉平君、中村穆君、平田弘君、眞木克朗君の順序で御意見を、お一人十五分程度に取りまとめていただき、次に、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、斉藤参考人からお願いいたします。
  3. 斉藤吉平

    斉藤参考人 私、斉藤吉平と申します。  本日、全日本海員組合を代表いたしまして、船舶職員法の一部を改正する法律案全般につきまして、意見を申し上げさせていただきますことを、たいへん光栄に存じております。  海上で働くわれわれ船員にとりましては、船舶職員法というのは最も身近な法律でございまして、それだけに、海上から寄せられます要望というのは切実なものがございます。その意味におきまして、ぜひ私どもの話をお聞き取り願いたいというふうに考えます。  昭和二十六年に現在の職員法が制定されまして、その後数回小さな改正等もあったようでございますけれども、現在の職員法に対しましては、海上から非常にいろいろな不満がございました。  第一は、非常に階層と職階が多いということでございまして、これは特に陸上一般資格と申しますか、それと比べた場合にその点が出てくるわけでございまして、船内でもって昇進があるたびに試験を受けなければならないというようなこと等もございまして、ぜひ簡素化してほしいという要望が、現在まで非常にあがってきております。  それからもう一つは、筆記並びに口述という学術試験がございますけれども、こういう試験が、現在の変化の激しい現場と非常に差がある、あるいは試験のしかたなり方法なり環境なりというものにつきまして、非常に公平を欠くものがあるのじゃないかということで、そういうものに対する是正ということについても、海上から非常に強い意見等があがってきております。  こういう意見背景にいたしまして、昭和四十三年の十月ですか、運輸大臣から「最近の船舶における技術革新等に対応する船舶職員制度等改善について」という諮問が出てきたわけでございまして、私どももこれには積極的に参加をいたしまして、まず一般船舶の部というところから審議を始めまして、四十四年の七月に答申となったわけでございますが、私どもこの海技審議会参加するにあたりましては、基本的な問題といたしまして、船舶職員法というのは、人の面を通じての安全を担保する法律であるということを確認しよう、さらに現在、海難なり船舶の事故というものが、単にその船なり乗り組み員なりの危険ばかりじゃなくて、船舶が非常に大型化している、あるいは高速化している、あるいは運んでおります油等危険物が大量化しているというような問題から、危険というものが社会的にも伝わる問題であるという点を考えまして、われわれは形式的なばかりではなくて、実質的に安全というものを人的な面から担保するということを考えようということで参加をしていたわけでございます。  その結果といたしまして、筆記中心といたします海技試験から、講習なりあるいは訓練、実技というものを中心としたもの、あるいは現場でもって非常に技術革新技術変革というものが激しいわけでございますが、それに対応するためには、職務の実地経験というものが非常に大事であるという点等もありまして、その点を含めて答申参加したわけでございます。それから、試験あり方に対しましても、公平を期するという意味で、試験管理委員会制度というものの設置を主張いたしまして、それも取り入れるということになってきたわけでございます。  そういうような背景で、今回の職員法の一部改正というのが出てまいりましたことは、その点から見ますと、海上から非常に期待されておりまして、早くこの法律案ができてほしいという要望があるわけでございます。  しかし、この法律案の中に、一点非常に残念なところがございます。それは、乙種通信士通信長として乗り得る船舶範囲というのを、きわめて無原則にというふうに申し上げたらいいかと思いますが、近海区域全域に広げたいという項が含まれているわけでございまして、これは私、以下四つの理由によりましてぜひやめるべきである、この際ぜひいまの法律案から削除すべきであるということを申し上げたいと思います。  第一の理由といたしましては、私ども審議会で真剣に論議をしてきたわけでございますけれども、この問題については意見が一致しなかった点でございます。賛成反対両論が出たわけでございます。私どもいわゆる併記答申というふうに申し上げますが、そのまま取り上げて併記答申の形になったわけですが、運輸省、いわゆる政府が、その併記答申のうちの片方だけを取り上げて法律化したということでございまして、私どもこれに対して、非常に重要な問題を含んでいるというふうに申し上げたいと思います。  われわれ船乗りといいますか、船員の社会におきましては、こういうような大きな変革等があります場合には、船主船員といいますか、労使を中心とした審議会等で十分な意見の交換を行ないまして、理解納得と、その上に立って進められてきたというのが慣行でございます。今度このように、併記答申の中から一方だけを取り上げるということは、いままでのこのような大事な慣行ということを打ち破るということになりまして、今後技術革新に即応しまして幾多の変革ということも考えられるかと思いますが、それに対しましては、非常に重要な支障を来たすといっても私は差しつかえないというように考えるわけでございまして、政府のとりました態度については、許しがたいものがあるというふうに考えるわけでございます。  それから、第二の理由といたしましては、海上におきましては安全ということが非常に大事でございます。特に無線通信ということは安全の中の第一の柱でございます。たとえば、無線連絡がなければ海難が起きたということ自体わからないし、それから海難救助救助活動というものにつきましても、この行動を起こすこと自体、通信連絡がなければできないということで、安全の上にとりましては第一の柱であるというふうに私ども考えているわけでございます。  ことしの一月の五日に、フィリピンの東側の洋上でもって山東丸という船が遭難、沈没をいたしましたが、通信長SOSを発信すると同時に、外国船を含みます付近船舶情報連絡をとり、海岸局あるいは救助のために飛び出しました米国の飛行機というものとも連絡をとりまして、円滑な救助通信体制というのをいち早くつくり上げた。このことによりまして、二十三名中二十二名が救助されたという事例がございます。これはもちろん局長さんは甲種船舶通信士でございました。  また、ことしの一月の二十六日、ベンガル湾の沖合いで漁船が火災を起こしましてSOSを出したわけでございます。すぐそばにおりました僚船が盛んにその連絡をとるわけでございますが、どうもうまくいかない。付近航行しております外国船を含めましたたくさんの船舶が、情報を求めまして電波が乱れ飛ぶというような状態になりましたけれども、この際にも、そばを通りかかりました日本大型タンカーが間に中継に入りまして、さっそくそこで英文でもって刻々と情報を知らせると同時に、電波交通整理というのを行ないまして、このために、救助もその後はかどりまして、救助されたという事例がございます。  このような事例が起きた場所といいますのは、今度の法律でもって拡大され得る海面拡大ということが法律の中でいわれておりますが、もし拡大されましたら、入るべき海岸といいますか海域といいますか、近海区域に当たるわけでございます。  大体乙種通信士といいますのは、通信長としては国内通信を主としてやるんだということでございますが、その一方におきましては、先ほど申し上げました二つ事例のとおり、国際的な無線通信というのがいよいよ過密化してきている。そして特に対内地の連絡、直接通信ができるというのもだんだん狭められてきているというのが現状でございまして、このような中での通信連絡といいますのは、むしろ国際通信というものに十分な知識と、それから十分な経験というものがますます多く要求されてきているというのが実態でございます。そういう中において、近海区域全域拡大するということは、甲種通信士乙種通信士がとってかわるということを意味するわけでございまして、質的な低下ということを示すわけで、これは逆行をする何ものでもない、安全問題につきましても直ちにそれが響くという問題であろうかと存じます。  特に、いま日本がエコノミックアニマルというようにいわれておりまして、これに対処しますのには、国際信用というものが回復されなければならないというふうにいわれております。私どももそう考えるわけでございますが、特に、東南アジアにおける国際的な信頼というのは、私は大事なことではないかと思うのです。そういう意味におきましては、この東南アジア海面においては、何としてもタンカー中心といたしまして絶対に海難を起こしてはならない。その海難を起こしてはならないという前提といたしまして、通信体制というものがより質的に向上していかなければならないということが言えるのじゃないかと思います。  もう一つ、第三の理由といたしましては、どうも運輸省のお考えになっておりますのが、頭数だけといいますか、需給の面からだけとらえているように考えられるわけでございまして、現在技術革新ということが盛んにいわれるわけですけれども技術革新といいますのは、言いかえますならば質的な変化ということでございまして、そのためには、質的変化に対応するにはどう対処すべきかということが緊要なことだと思うのですが、それは単に量的なものからだけではないというように考えるわけでございます。これは大臣諮問も、まさしくそれに触れているというふうに考えるわけでございます。特に電波といいあるいは電子といい、情報化時代におきましては、技術変化の最先端をいくものでございますので、むしろ私ども教育体制の確立こそが重要な問題であるというように考えるわけでございます。  また、それをまさしく裏づけするというふうに私ども考えるわけでございますが、ことしのこの国会で予算が通過いたしました、文部省の管轄に在ります電波高専昇格の問題でございます。いままで電波高校三校というふうにござい達したけれども、これが電波高専昇格をいたしました。それはやはり、いままで申し上げましたように、技術変化が非常に進んでいるこの時代に対応するためには、技術教育のレベルが上がらなければならないということを文部省は考えて、そのような措置をとられたというふうに考えるわけでございますが、その点におきましては、文部省運輸省との間に食い違いがあるというふうに私ども考えるわけでございます。  それから、もし政府がやっております需給関係だけからとらえましても、甲種通信士が足りないから乙種通信士にかえるのだというようなことを言っておるようでございますが、このことだけで需給問題は解決はしないというふうに私ども考えます。といいますのは、電波高校高専昇格をしておるということは、今後乙の供給源がなく在るということでございますし、それから、現在おられます乙種通信士の方を調べましても、その約九割に当たる方々が、やはり甲種通信士資格を持ちたいということで、講習を希望し、あるいは講習を受けているという事実を見ましても、その点が言えるのではないかというふうに考えるわけでございます。  最後に、第四の問題点といたしましては、当然私ども労働組合として、乗り組み員に対しましての職場不安並びに労働条件低下ということが伴ってあらわれてくるというように考えるわけでございます。乙種通信士従事範囲近海区域全域拡大されるということは、西はシンガポールあるいはベンガル湾、カルカッタの近くまでを意味しますし、インドネシアのほうまで入ることになります。そうしますと、船舶職員法通信士が乗船する船はトン数について現在きめがございませんので、この海域に勤務している甲種通信士がすべて乙種通信士に交代するということは、ひいては世界の全海面におきまして通信士が交代をする、資格低下を来たす、その口火になりかねないということを私ども考えるわけでございまして、その意味におきましては、単に職場の不安あるいは労働条件低下ということばかりではなくて、通信士皆さん方が持っておられます誇りなり希望なりまで奪ってしまうということになりかねませんので、私ども労働組合としては、これは絶対に容認しがたいというふうに考えるわけでございます。  特に、私、率直に申し上げたいと思いますのは、現場でもって一番の当事者であります船舶通信士が、近海区域全域拡大をするということにつきましては、第一に非常に危険である、あるいは通信体制混乱を来たすものである、あるいはこれに対しては、経験というものを絶対に尊重しなければあぶないということを、現場当事者がその点を強く訴えているのに、なぜ運輸省がその面を強行するかということでございます。ものごとがうまく運行するというためには、当事者理解納得ということが一番大事なことでございまして、なぜそれを無視してまでやるかということが、特に私どものほうとしては訴えたい点でございます。  結論といたしまして、私どもは、今度の改正法律案の中から乙種通信士の乗船し得る範囲拡大という項目は、ぜひ今回は削除をしていただきまして、もう一度もとに返していただいて、そこで練り直して、みんなの一番いい案というもの、特に私は教育体系を含めたもの、経験を含めたものというふうに考えるわけでございますが、その点をやり直しをすべきだ、ぜひこの点を削除した上で、法案の通過ということをお願いしたいというふうに考えるわけでございます。  以上でございます。
  4. 福井勇

    福井委員長 次に、中村参考人にお願いいたします。
  5. 中村穆

    中村参考人 船舶通信士協会常任委員長中村でございます。  今回の職員法一部改正案のうち、海技従事者資格を改める問題について、まず意見を述べたいと存じます。  御承知のように、昭和三十二年に特に改正強化された船舶職員法第一条は、船舶職員としての資格を定めるとともに、それによって船舶航行の安全をはかることを目的とされておりますが、今回の法案の骨子ともいうべき乙種海技資格者従事範囲拡大は、このように船舶の安全を担保する職員法の趣旨から逆行いたしますので、本改正案に対し反対いたします。  さらに強調したいのは、国際航海に従事する場合、戦前でも甲板部機関部職員の場合、海技資格甲種資格が必要とされ、乙種資格はほんとに日本近海に限られていましたし、通信士の場合も同様、戦前は一級資格が必要とされていました。このような経緯の中で、近来技術革新が進展する中で、ますます知識と技能の水準のレベルアップが逆に必要となってきますが、本法案改正意図は、乙種海技資格東南ア海域一帯、しかも五千トンの船舶まで拡大するわけで、東南ア海域日本近海日本の箱庭と見るような底流は、航行の安全上問題であると考えます。  さて、次に船舶通信士として申し述べますが、本改正案に示されますとおり、甲板部機関部職員乙種資格者従事範囲拡大に伴いまして、乙種船舶通信士、すなわち二級通信士従事範囲がこれに追随されるわけでございますが、今回の法改正の動きにあたって、海技審議会答申の中で、乙種船舶通信士従事範囲拡大及び漁船の五百トン未満の甲板部機関部職員の二等航海士、二等機関士定員軽減、この二つの問題に対し、反対意見賛成意見と併記されています。すなわち、賛否併記して答申されたのでございますが、結果として、乙種船舶通信士従事範囲拡大が、当事者である船舶通信士の大多数の意見を無視して法改正案として上程されたことは、あまりにも片手落ちであり、納得いきません。海運界の一方的な意見要望によってすべてが決着されるというのなら、大きな問題といわざるを得ません。  さて、改正案乙種船舶通信士、すなわち第二級無線通信士従事範囲拡大については、近海区域航行区域とする船舶に、甲種船舶通信士、すなわち第一級無線通信士のことでございますが、なかなか得られないという需給関係が大きな理由とされています。特に、東南ア航路を主体とする四国船主、いわゆる愛媛船主の強い要望によるとも聞いています。事実、去る二月の二十二日、運輸省愛媛船主会会長さんとわ会いしていろいろ懇談しましたが、席上同氏は、乙通従事範囲拡大要望は、一級通信士がなかなか得られないのだ、また二級、いわゆる乙種船舶通信士は非常に安く雇えると、非常に率直簡明にわれわれに指摘されました。需給関係理由とする法改正は本末転倒でありますが、船主団体運輸省方面では、乙種船舶通信士従事範囲拡大することによって需給関係を容易にし、ひいては通信士の低賃金雇用を推進したいとの意図は明白で、これは御承知のように、昭和三十八年の電波法改悪によって通信士定員削減を実現せしめた合理化政策一環として取り上げられており、やがてはますます強力な合理化推進が行なわれて、HX、すなわち電波法上執務時間不定の局種ですが、これを近い将来法の改正措置をもくろんでと思われますが、そのために乙種船舶通信士、すなわち二級通信士雇用対策を講じるため、まず従事範囲拡大を先行する意図ともくみ取られます。  このように、合理化政策一環としての乙種船舶通信士従事範囲拡大は、甲種船舶通信士従事範囲を当然相対的に縮小させることになりますし、全船舶通信士としての職域拡大にはつながらず、いたずらに海上に大きな混乱をもたらす結果になると考えますので、本改正案に絶対反対を表明する次第です。  また、需給関係については、先ほど申し上げましたとおり、昭和三十八年の通信士定員削減電波法改正後、減員を見越して船主側新人採用を極度に抑制し、あるいはそのために会社会社間の通信士融通配乗、これは厳密にいえば法的にもちょっと問題と思われますが、このような措置で当面を糊塗したり、したがって養成学校当局としても、海上のこのような動向に対しては、陸上関係に重点を置かざるを得ない結果ともなりましたし、また現職通信士の場合でも、若手青年通信士は、定員削減や今後予測されます不安定主要素、その他労働条件等とも関連しまして、海上で働く意欲をなくし、見切りをつけて陸上に転職をしていくなど、このような悪循環の関連を経て通信士不足を来たしているので、一切人為的なものでありまして、逆に需給関係をいまさら云々する船主団体関係当局に、この責任は帰すべきであり、われわれ船舶通信士にとっては非常に迷惑な話だと存じます。  一方、資格制度の上で、電波法制定後二十年余も続いてきました二級通信士操作範囲を、われわれが求めたわけでもないのに、一方的な海運界要望により、制度を突然変革させることは、大きな矛盾であり、納得しがたいものがあります。  無線通信士資格別従事範囲は、電波法規によってきめられておりまして、船舶職員法はこの電波法規の基準で通信士資格定員をきめておるわけです。つまり、通信士甲板部機関部と違いまして、電波法上の無線通信士資格船舶職員法上の海技資格のこの二つを必要とするわけで、通信士資格の一級、二級、三級を、海技資格として便宜上甲種乙種丙種に分類しただけで、無線通信士はあくまで、電波法規資格技術体系の中で、その操作範囲従事範囲がきめられておるのであります。したがって、単に乙種という名称によって乙種船舶通信士が、改正案に見られる甲板部機関部職員従事範囲拡大に伴って、同様拡大されるということは当を得ませんし、資格制度そのものが違うわけでございますから、機関部甲板部職員乙種資格従事範囲が異なっても、制度上何にも矛盾はありませんし、不当ともいえないと考えます。  もちろん、それだからといいまして決して通信士資格制度が完全なものであったり、二級通信士現状が満足すべき状態にあるとは考えていません。乙種船舶通信士、すなわち二級通信士は、昭和三十八年の電波法改正後絶え間ない定員削減合理化攻勢を背後に受けながら、常に不安を感じながら、上級資格取得を目標としたり、あるいは多経験者においては、乗船し得る職場を確保したいと念じているのであります。  電波法改悪後、旅客船以外は法規上では一名の一級資格でよいとされています。現状労働協約上の二名体制の中で守られてはいますが、このような状況の中では、大半の二級通信士の志向するところは、上級資格を得て職場の安定をはかりたいという意図は明らかでございまして、従事範囲拡大するだけで二級、乙種船舶通信士の問題がすべて解決するわけにはいかないと思います。  問題は、資格制度を変えることによって当面の船舶通信士雇用状況改善されるような現状ではございませんし、問題の本質も違うと存じます。従事範囲拡大によって当面を糊塗することでなく、まず無線通信士養成機関や再教育機関あり方、現行の国家試験制度等について早急な改善が必要であり、これら抜本的な対策をあわせて二級通信士の一級取得、したがって職域の拡大につながる方途が先決だと考えます。特に、中高年多経験者の第二級通信士をして、容易に上級資格を取得せしめる方途を早急に講ずべきだと考えます。二級通信士資格制度について、船舶通信士雇用対策の上から変更すべきではないと考えますので、したがって、乙種船舶通信士従事範囲拡大にはあくまで反対を表明します。  以上でございます。
  6. 福井勇

    福井委員長 次に、平田参考人にお願いいたします。
  7. 平田弘

    平田参考人 船主協会労務委員会の労務委員平田弘でございます。  船舶職員法の一部改正審議にあたりまして、意見を述べる機会をいただきましたことを感謝いたします。私どもは本改正案に全面的に賛成という立場から、若干の時間をいただきたいと思います。  航海士機関士に関します改正の内容あるいはその賛成度合い、あるいは沖の船舶職員の熱望度、こういうものは、さきに斉藤参考人が申されましたので繰り返して申しませんが、少なくとも航海士機関士に関する限り申し上げますと、本制度の早期実施というものを切望しておる、こういうことは申し上げられると思います。  次に、船舶通信士に関してでございますが、船舶通信士の船内の地位あるいは職場の問題、こういうものから本案賛成するということでございますが、私はその船内の地位だとか職場の問題というものは少しあと回しにいたしまして、なぜこういうことを考えることができるのかということを申し上げたいと思います。  国際電気通信条約付属の無線通信規則の第二十四条の「船舶局及び航空機局の通信士の等級及び最少限の数」というもので、第二種及び第三種船舶局には第一級または第二級の無線電信通信士証明書を有する通信長を乗せなくちゃならない、こういうふうになっております。今次審議の対象となる近海区域就航船は、もちろん客船を除きまして、わが国の区分では第三種局甲の局でございます。しかして、これらの船舶局の通信士資格につきましては、電波法第五十条におきまして、第二種局の乙を含めまして、通信長には一定の経歴を有し、現に第一級無線通信士または第二級無線通信士の免許を受けている者を要求しております。私どもの解釈、考えによりますと、本条による限り国際条約と同様に、遠洋船舶といえども第二級、言うならば乙種通信士でよいとしておる、こういうふうに私、理解しております。  しかるに、無線従事者操作範囲令の第二条及び船舶職員法の別表第三におきまして、俗にいう近海一区以内に限定されておるのが現状であります。したがいまして、私どもはこのワクの完全撤廃こそ妥当だ、こういうふうに考えますけれども、ともあれ本案のとおり、近海全域就航船までの拡大はぜひお願いしたい、こういうふうに考えております。  遠く東洋に回航いたしましてわが国に入港しております西欧国の貨物船にも、乙種通信士のみの乗船例を見ております。私ども、わずか二十隻ほどの調査の中では不十分かも存じませんが、英国、デンマーク、ギリシャ、西独等の二十隻中十三隻を数えております。  わが国も、漁船につきましては、御存じのとおり、昭和三十九年以来乙種通信士による世界各地からの交信が認められております。漁船通信内容は特殊で類型的であるのに対しまして、一般船舶のそれはより高度で多様なものとして別段の取り扱いが必要である、こういう反論もあるやに聞いております。しかし、船舶通信を大別いたしますと、第一は保安通信であり、第二は営業上の必要からくる商業通信であろうかと存じます。したがって、まず第一の点を考えるときに、船舶がその海域にある限り、原則として漁船、商船で区分されるわけはないはずであります。ゆえに、漁船におきまして支障のないことは当然商船においても実施し得るものである、こう考えます。ただいま斉藤参考人の例にもありましたが、これは別の機会で言わせていただきます。乙種通信士の技術あるいは商業通信の具体的内容と量というものもあとで申し上げますが、そのいずれもが、このたびの従事範囲改正の障害になるということは絶対ないと私どもは考えております。  乙種通信士の技術面について申し上げますと、さきに申しました国際条約の無線通信規則の中に、通信士証明書の発給の条件が明確にされております。また、わが国の二級通信士資格免許の条件が、完全に国際的水準に達しているということは疑いもありません。元来二級通信士資格は、国際通信に必要な知識、技能を有することを前提としてその技術を認められた者が免許されている、こういうことを申し上げたいのであります。  しかしながら、語学などに関連させまして、乙種通信士通信長として現在認められている近海一区は、第二次大戦の敗戦までは日本の勢力圏内であり、日本語による通信が可能とされておった、したがって、二級通信士は和文通信可能な範囲に限定が妥当である、こういう反論も聞くことがございます。当時の日本勢力圏内でありました国との交信は、現在国際通信といたしまして英文を用いておる。それも戦後すでに二十年もたっておる。こういうことを思うならば、この反論は、現在の二級通信士の免許水準に故意に目をおおっておる、こういうふうにいわざるを得ません。別の場合を申しますと、従来二級、すなわち乙種通信士が次席として乗船勤務の場合に、形式的には甲種通信士通信長の監督下であり、定められた時間割りによって当直をしておりますが、その間、その当直の時間は独力で国際通信を行なっております。そして別段の支障はなかったのでございます。  現在、船舶通信士は、昭和二十六年くらいから後は主として仙台、詫間、熊本の国立電波高校の出身であります。これらはすべて所定の語学、専門教育を受けております。内航、近海乙種免状の甲板、機関の職員のように部員として働きながら、独学あるいはそれに近い方法で資格をとってきた人たちと通信士は経路を別にしておる。これはさきの中村参考人も言われましたが、そういう点に注目していただきたい。同じ乙でも乙の位が違う、こう申し上げたいのでございます。したがいまして、乙種の甲板、機関の職員については、試験科目の中に英語がございません。一方、通信士に対する試験の内容は、乙種といえども和文英訳あるいは英文和訳、会話が含まれておることは御高承のとおりでございます。要約すれば、甲板、機関の職員の語学に限っていえば、甲種免状と乙種免状との格差は、英語の教育を受けた者と受けなかった者と、こういう差が考えられますが、通信士の場合は、同じ教育を受けた者同士の間の成績のよし悪し、この程度の学力差しかない、こういうふうに考えられます。よって、語学に劣るがゆえに乙種通信士近海に不適であり、通信阻害のおそれがある、こういうことは考えられません。  また、乙種通信士学術試験は、科目表で見ますと日本付近海上気象、こうなっております。このことから、乙種通信士海上気象に関する知識をもってしては、近海全域には不適であり不安である、こういう反論があるやに承ります。   〔委員長退席、宇田委員長代理着席〕 日本付近海上気象の知識をもってすれば、日本中心とする近海全域の海上気象は容易に理解できるものと、こういうふうに思いますけれども、この議論の前に申し上げたいのは、原則として通信士の業務なり責任は、海岸局より送信される海上気象、海象の情勢を受信し、あるいはファクシミリ放送などによる天気図その他を受信いたしまして船長に届けることでございます。言うなれば情報の仲介であり、耳の役目でございます。したがいまして、異常な状況にいかに対処し行動するかを判断、決定し行動するのは船長の責任でございまして、これを補佐するのは航海士の役でございます。通信士の気象上の知識を取り上げての反論は、やや筋違いかと私は存じます。同じように、日本付近海上気象のみの試験を受けておるところの乙種一等航海士は、三百トン未満の遠洋漁船の船長として、乙種二等航海士は百五十トン未満の船長として、大体近海全域に就航操業しておる実績を持っておるということを申し上げたいと思います。  近海航路船舶通信の内容と量、これは商業通信に限って申し上げますと、日本海岸局との和文通信は主として正午位置、配乗連絡、荷役積み荷連絡などで、近海区域船なるがゆえの特殊なものはございません。問題とされる英文通信を大別いたしますと、たとえば「名古屋五日発、マコ着予定十二日朝」英文で大体七語でございますが、こうした入港通知、それに「水先頼む」とか、「全員健康」とか、「喫水」こういうものが付加されることもございます。それに通過報、荷役積み荷連絡などで、これらはほぼ文型が一定しております。したがって、内容、発受信度数にいたしましても、近海一区船と近海三区船との間に著しい差を認めません。  近海三区就航の某船の昨年九月の通信量は、和文受信が二十九、発信六十四、英文受信ゼロ、発信二、十月の和文受信が十七、発信三十七、英文受信が二、発信十二、こうした例から、私どもは、近海第一区で大体一カ月の平均英文通信取り扱いは十通内外、近海二、三区で十四通内外と見ております。内容は平均できませんが、さきに申しました船の場合短いのは五語、長いので五十語の例を見ております。  以上申し上げましたことにより、漁船通信内容とはおのずから異なるものがあるにいたしましても、別段の取り扱いが必要、こういうものは何もないと考えております。  さらに、近海全域に広げた場合、地理的な条件によって、五百ワット以上の高出力の空中線電力にしなくてはならぬ船舶もあるから、技術操作の範囲拡大される。このことは、機器の運用、保守の能力低下を法が認めることになるとの反論も聞きます。私どもは、第二級通信士の国際的な水準から見ましても、五百ワット以上の出力の機器の運用操作もけっこうだ、こういうふうに考えますが、本審議にあたりまして、現無線従事者操作範囲令の次の条項、「空中線電力五百ワット以下の無線電信及びファクシミリ」の操作の範囲改正までは要望いたしておりません。近海全域といえども、わが国海岸局の出力の増加であるとか、あるいは工業技術の進歩に伴う通信設備の向上であるとか、こういった高性能は当然考えられます。したがって、本年二月調査いたしましたところの近海資格船の中で、五百ワット以上の無線電信を設備している船舶は四十二隻のみでございます。この中には、近海一区以内の船舶も数隻見受けますが、これらの船舶と同じ地域に就航しておりますところの他の船舶は、五百ワット以下で何ら支障なく交信を行なっておるのであります。また、弱電関係の航海機器を含めまして、近海区域の航海日数から見ましても、その間の保守、整備は二級通信士乙種通信士の技術で十分である、こういうふうに考えます。  以上述べましたわが国の資格免許の水準によって保証される技術、通信内容と量などから見まして、安全、確実に直ちに本案は実施し得るものと、こういうふうに考えております。  そこで、先ほども中村参考人が述べられましたが、商船における乙種通信士職場は激減しております。  第一は、第三十九回の国会で決定されました船舶職員法別表第三の改正によりますところの船舶通信士定員変更であります。従来近海、遠洋の千六百トン以上の船舶には次席通信士、五千五百トン以上についてはさらに三席通信士、いずれも乙種通信士定員を定めておりました。これが通信設備の進歩その他によりまして、法律上の定員からはずされました。法律で見る限り乙種通信士定員はゼロであります。ただ、現在は労使間の協約により、遠洋就航船舶の次席の職場が残されております。  第二は、沿海区域就航船の通信設備の変革であります。沿海船のほとんどは、手軽で安全に操作のできる電話が普及したために、符号で送受信する無線電信を敬遠しております。ある資料で、昭和三十五年と四十四年を比較いたしますと、五百トン以上の沿海資格船は、二百十七隻が六百三十二隻と十年間に約三倍に伸びておるのにもかかわらず、無線電信設備船、すなわち乙種通信士を必要とする船は百五十一隻が九十三隻にと、逆に五十八隻も減っております。  すなわち、いままでの法改正通信設備の変革も、甲種通信士定員には何らの変化がなかったということでございます。遠洋、近海船舶のふえただけは需要は伸びております。これに反しまして乙種通信士は、すべての分野で縮小の影響を受け、法では近海一区以下のみに就航する、確実ではありませんが、推定百から百五十隻程度の範囲、それと労働協約、これも廃止の交渉が形を変えて継続されておりますが、目下のところは、これによる遠洋船舶の次席通信士だけの職場になっております。これとて、甲種通信士が法定定員のゆえをもって、定員外の次席といえども甲種通信士資格者を優先採用しており、こういうふうな大手中核体に乙種通信士を採用される度合いは、きわめて少なくなっております。  一方、船舶通信士の養成源でありますところの国立電波高校三校の卒業時における資格取得の状況を見ますと、昭和四十五年三月に本科生二百九十一名中一級十名、専攻科生百十九名中一級三十六名、平均一一%程度であります。残りの九〇%に近い卒業生の中で、ある者はそのまま乙種通信士として就職を志し、ある者は乙種通信士として勤務しながら、さらに甲種通信士へ進むことを願っておる、こういう青年船舶通信士を受け入れる職場が局限されておる、こういうことでございます。こうしたことが、せっかくの卒業生を弱電関係の盛んな求人と相まって、陸上企業に去らせる傾向に拍車をかけ、ひいては通信士の絶対数不足にもつながることになる。これは中村さんと同じ考えでございます。したがいまして、二級通信士船舶乙種通信士として迎える職場、こういうものの拡大こそ、人材の海上誘致を可能にする道ではなかろうか、こういうふうに考えます。   〔宇田委員長代理退席、委員長着席〕  需給の問題をここで申し上げることは、誤解されることがございますが、一般的な事情の変化は一応お聞き及びを願える、こういうふうに思います。すなわち、開運の再建案として施行されました企業合理化の促進によりまして、大手外航会社近海船を積極的に分離いたしました。したがって、近海船のほとんどは、近海船を主とした会社か、あるいは内航船の会社がこれを併有する形をとっております。このことは、甲種通信士の卵であるところの乙種通信士定員として乗せる船舶がないか、あってもきわめて少ないこと、あるいは甲種通信士資格をとって、あるいはその会社で育てた者であっても、一たん資格をとりますと、制度上からも好条件である遠洋航路の船を志望して流れてしまう。同じ乗るならば、やはり待遇のいい、船の大きい、遠いところに行く遠洋の船に乗りたいのだ、こういうことで、近海しか持っていない会社で幾ら育てても逃げてしまう、こういう現状がある。こういうことは、われわれも協約に従い、あるいは各社の努力によりまして、一級への講習、こういうものには相当の便宜をはかっておりますが、しかし、こういうふうに自分で逃げていく者を、これをもって近海内航船主の責任である、怠慢である、人事に対しての見通しを持っていない、こう責められるのは酷ではなかろうか、こういうふうに考えます。  今次の要望は、通信士定員を増減するものでなくて、いままで甲種通信士でなくてはならなかった海域の一部を、乙種通信士でもよいと改めていただきたい、それが乙種通信士のためにも、現在は乙種通信士であっても、将来甲種通信士を志向する人たちのためにも、すなわち、電波高校などの卒業者の大半の人たちのために道を開くことではないか、こういうふうに考えております。反対論のそれぞれの団体には、やはり乙種通信士も含まれておる、こういうことでございますので、私どもはここではっきり、だれだれからどういうあれがあったと、こういうことを申すのは遠慮いたしますけれども、新聞紙上の投書欄あるいは電報、文書その他によりまして、二級の切実なる訴えも、われわれのところにたくさん来ておるということは申し上げたいと思います。  通信士の船内における地位と申しますか、慣習とか実績から、通信長は制服のそで章、肩章、あるいは食卓の位置につきましても、大体一等航海士機関士と同列になっております。賃金面におきましても、従来も、現在の労働協約でも同列になっております。  遠洋船舶の職員は甲種免状でありまして、商船大学なり商船専門学校を出まして、一定の経歴を経て一等航海士なりあるいは船長の免状をとった人、こういう者とも同列でございますので、電波高校出身の甲通に対しては、たいして不利な列でもないわけでございますが、乙種船長を頂点といたします近海船におきますところの一等航海士は、言うならば兵隊からのたたき上げ、部員から登用されました乙種船長または乙種一等航海士の免状受有者でございます。これと同列に並べるということは、通信士そのものが反発することであろう、私はこう考えております。  要約しますと、甲板、機関の甲種免状及び通信士は甲乙とも、少なくとも高校以上の専門教育を受けておるのに比しまして、近海以下の乙種免状の職員は、技術、識見は別といたしまして、学歴面で見る限りには低いといわざるを得ません。通信士についていいますと、先ほども申し上げましたとおりに、乙種というふうに甲板、機関の乙種と同列な名前をつけておるところにこういう誤解があろうか、こういうふうに考えます。したがいまして、例としては不適かもしれませんけれども、一方が士官学校卒の将校だとすれば、片方は兵隊からのたたき上げの将校准尉である。しかも、船長という公的な立場から指揮命令を出す形になっております。職場と日常生活の場が直結しております船舶だけに、出身の相違等からくるこうした間隙を縮めることも決して無意味ではない。そうして、それが先ほど申し上げましたように、安全上に問題がないものでありますから、乙種通信士操作範囲近海全域に広げることは、この面からも妥当である、こういうふうに私は申し上げたいと思います。  今次の改定は、繰り返して申しておりますとおり、通信士定員の変更ではありません。したがって、乙種通信士を含めた船舶通信士全体から見ますと、何らの増減はありません。甲板、機関の職員の場合のように、学校出身者にかわって実地出身者が出てくるのではございません。しかし、当該船舶に乗り組んでいる甲種通信士乙種通信士にとってかわられる、そして甲種通信士が解雇される、これが問題である、こういう向きがございます。法で要求されますのは、乙種通信士でなくてはならぬというのではございません。その法定資格より下位なれば使いようがありませんが、上位であり、より有効であるとの理由ならば、これで解雇される理由は何もございません。  乙種二等航海士で足りる航海士にかえまして乙種一等航海士乙種船長などの免状受有者を、あるいは乙種船長で足りる船長にかえまして甲種一等航海士甲種船長免状受有者を歓迎、乗船させている例は、通常見るところでございます。すなわち、上位資格者の採用が可能でありさえすれば、より優秀な技術を証明されたこれらの人たちを優先採用こそすれ、これを忌避する理由はございません。また、現在の労使間の協定による賃金制度は、船舶の就航海域、トン数、職名、職歴によって本給は定められまして、個々の資格の上下は無関係であります。したがいまして、同じ給料で上位資格者が得られるならば大喜びするのが当然でございまして、また、協約のみならず、実際面におきましてもきびしい解雇制限をいたしまして、単なる長期予備すらも協議の対象となっているのでございます。  ただ、最近の人手不足からか、近海船所有の中小会社に定着を好まずに、同じ乗るならば本給、手当、日当など制度上からも当然高収入になるところの遠洋船舶会社を求めて、おのずから流動する者があることは事実でございます。このこと自体で、これらの通信士を非難するものではございません。それは当然だ、こう考えます。しかしながら、さらにそれが形を変えまして、全日本海員組合長も最近の某紙上で指摘されましたように、労使協定による賃金よりもはるかに高い賃金の、個人契約で臨時船員が生まれ、船をかわるごとに所得倍増、これは組合長の表現でございますが、そういう状態をつくり出していることは、これは重大な問題であります。これらの事態は、海運にとってゆゆしいことだといわざるを得ないのでございます。私どもは、心から乗り組み員の定着をはかり、精一ぱいの努力をし、組合とも誠意をもって協議し、協約、協定も尊重してきております。したがいまして、個人であれ集団であれ、意識的にあえて労使協定のワク外にとどまって自分だけの利益をむさぼり、他の職務との均衡などは意に介しない、こういうような異常な雇用状態が存在するならば、そういうものをつくり出すことは当然批判さるべきでありまして、早急に正常化の方法がとらるべきである、こういうふうに考えます。こうした需給、雇用の正常化は、乙種通信士操作範囲拡大によってこれが若干でもやはり解消されていく、こういうふうにわれわれは考えているのであります。したがいまして何らの不安を招来するものではない、海上安全の不安を招来するものではないということは、いままでに申し上げた理由で御理解願えた、こういうふうに存じます。したがいまして、本案の早期実現方を強く要望する次第でございます。  さらに、労使協定によりまして正常の雇用関係にありますそれぞれの会社所属の通信士が、このためにいささかなりとも不安を感じる、こういうことでございますならば、いつでも労使間におきましてこの問題に関する真剣な討議をし、その解決策を見出す努力は惜しむものではないことを申し上げたいと思います。  長々ありがとうございました。
  8. 福井勇

    福井委員長 次に、眞木参考人にお願いいたします。
  9. 眞木克朗

    眞木参考人 私は、愛媛船主会の副会長をしておる眞木克朗です。このたび呼んでいただきましてありがとうございました。  船舶職員法の一部を改正する法律案について賛成意見を述べさせていただきます。  近年わが国海運業及び水産業の発展は目ざましいものがあり、船腹量は著しく増加するとともに、船型の大型化、近代化、機器の導入等船舶における技術革新が相当大きく進み、またわが国及び外国の沿岸の航行援助施設も相当整備拡充されてきております。しかるに、現行の船舶職員制度昭和二十六年に制度化されて以来、実に二十年余りになるにもかかわらず、いまだに小改正だけにとどまり、海技従事者の免許資格は多くの種類に区分されており、この中においても、直上級の資格へ進級する場合であっても必ず学術試験が課され、また、受験資格として一定の乗船履歴が要求される等、免許取得のための負担が重く、船舶職員への道をいたずらに狭めているのが現状です。船舶職員の配乗表にかかる総トン数区分の方法も、近年の近代化した船舶にそぐわなくなってきておるために、船舶職員として実際に必要な資格以上の資格を有している者の乗船を義務づけている等、実情にそぐわない多くの点が目立ってきております。  たとえば、近海区域の就航船は昭和三十七年におきましては二百六十隻、平均一隻四千五百重量トン程度で、総トン数も三千トン未満であったのですが、昭和四十五年ごろになりますと七百十隻、平均一隻五千五百重量トンとなり、その内訳は、重量トン数三千トン以下七十九隻、三千トンから五千トンまで二百五十二隻、五千トンないし六千トンまで二百八隻、六千トン以上百七十一隻と、実に五千重量トン以上の船舶が三百七十九隻、五四%も就航しているのであり、これらの多くは船舶職員法のために総トン数はぎりぎりのところまで減トン工事をいたし、大半が二千九百九十総トン型であり、現に三千総トン型以上の船舶も数十隻就航しております。今後この近海区域においては船型の大型化は、必要に応じて高まってくるものと思われます。経済の発展や貿易量の増大と、従来の考え方でははかり知れないくらいに船型も大きくなり、同じ区域しか航行しないのに、甲種の船機長免状を乗り組ませなければならないのは不合理であります。また、海技試験制度における乗船実歴(経験主義)の尊重は時宜に適応したたいへんけっこうなことであり、ぜひこの際実現させていただきたく思います。  次に、本船舶職員法改正の一番大きな問題点であろうかと思われます乙種船舶通信士の効力範囲拡大について。船舶の無線設備についても相当近代化が進展しており、無線機器の性能及び信頼性の向上等によって、船舶通信士の業務は相当合理化されてきていると思います。乙種船舶通信士の有する海事知識については、近海区域船の通信長として必要なものは十分に満たされおるものと認められます。乙種船舶通信士の基盤的資格である第二級無線通信士については、英文の送受信理解についても相当の能力を有しており、国際電気通信条約においても、国際通信を行なうための知識、能力は有しているものと認められていること、また現状においても、近海区域第一区の範囲内にあって、通信長としてソ連、韓国、中共、中国、香港等への相当量の国際通信を行なっておりますので、その効力範囲近海区域全域拡大しても、何ら業務上の問題点はなく、航行の安全上についても支障を来たすことはないのであります。  最近、日本船主協会近海船所有の会員会社に照会集計した結果は、回答会社が六十二社、所属船舶二百四十二隻について、甲種船舶通信士定員に比べて不足している会社は二十六社、不足員数四十三名に達しています。この数字は予備員を見ていないので、実際はさらに大きくなるものと思われます。また、近海船の総数は約七百十隻で、これは船主協会所属の有力会社でこのような状態であります。私たちの所属している地方船主愛媛船主会では、近海二、三区就航船は百二十五隻、会社甲種船舶通信士と正常な労働協約を結んでおりますのが十一名で八・八%にすぎません。他の百十四隻は、臨時的採用者または中央会社よりの融通でまかなっております。近海船で甲種船舶通信士により運航の停止は、この一年間に四件、運航停止寸前、出港六時間前に交代者手配がついたのが十件と、臨時的採用者が大半を占めているので、定着率は悪く、一年間に一航海で交代が十五件、二カ月交代が二十件、六カ月未満が三十件と、ことばでは言い尽くせない苦労をしながら甲種船舶通信士を雇用しているのが現状であります。このような状態ですから、船主自身も悪いとは知りながら、労働協約を無視して法外な賃金の要求に応じなければならず、たとえば百十四名中手取り月額二十四万円、船主総支給額は二十九万円くらいの人は七名、月額三十万円、船主総支給額は三十七万円くらい四名、また特殊な例では、月額四十五万円、船主総支給額は六十二万円になった事実さえあります。  それゆえに、老齢化された免許のみの受有者を雇用せざるを得危いこともあります。百十四名中六十歳以上が十五名、六十五歳以上が十名、特殊ではありますが、七十歳をこえた通信士を雇用した事実さえ二名あります。以上のような状態ですから、甲種船舶通信士という地位を利用して自己の主張を存分にいたし、職場に対する定着性は毛頭なく、渡り鳥的性格を有している者もあります。  このような状態ですから、正常な船内秩序が保てず、通信士自身の思い上がりで船長とのバランスさえ失い、横暴なふるまいに及び、船内人事にまで口出しをいたし、自身の気に入らない船員あるいは船長まで下船させた事実さえ三件あります。このようなことは、地方船主の中では再々起こっており、またそれに近い船内のトラブルは際限のないことであります。こういう事態こそ需給から来るひずみであり、改善されなければ、船内秩序の保持は不可能であり、船舶安全運航を阻害されることは目にみえておるものと思われます。しかるに、甲種船舶通信士の雇用不安あるやに聞き及びますが、その心配は全く無用であります。職場はひとり甲種船舶通信士だけのものではなく、乙種船舶通信士の職域が拡大されれば、乙種船舶通信士に希望を持たせることになりこそすれ、船舶通信士の乗り組み定員の変更をもたらすものではないから、各船主とも雇用不安を生ぜしめることはないと確信しております。この点について船通協が、内部の乙種船舶通信士の地位の向上を無視すること自体ナンセンスであり、乙種船舶通信士意見を聞き入れないのは、公平さを欠いているものと思われます。  私のところにも、乙種船舶通信士より陳情書が多数来ております。たとえば、「二級通信士の訴え」ということでいろいろと来ております。一例をひとつ読ませていただけますればと思いますが、一級通信士職場擁護のため二級通信士の犠牲は認められない。乙種従事範囲拡大問題は、乙種船舶通信士そのものの問題であるから、問題賛否は全国乙種船舶通信士に聞いてもらいたい、必ず拡大範囲賛成している。甲機の人たちは乙免で失業するか、なぜ乙種船舶通信士のみが失業し、路頭に迷い、死活問題を起こし、人権、人道無視の道を歩まなくてはならぬか。海員組合は二級通信士職場確保のため全二級通信士意見を尊重し、忌憚なき意見を聞き、安心して働ける職場を二級通信士に与えるよう努力してほしい。一部の通信士意見のみで従事範囲拡大問題を解決しないこと。賃金の問題は従事範囲拡大問題とは別問題。船舶職員法乙種船舶通信士の法が入れられると、安い賃金の通信士雇用不安はない。船舶通信士協会は全国無線通信士の代表ではない、乙種通信士を入れてくれ。通信士の賃金の高い、安いは協約上の問題である。こういった問題がいろいろ乙免から出てきております。そして最後に匿名で、全国乙種船舶通信士有志会というふうなものまでいろいろ団体を組織して、乙種通信士の声を一つも聞き入れないというようなことを、私のところにも電報あるいはこういった訴え書も来ておることも、よく先生方に御理解をいただきたいと思います。  したがって、近海区域船舶通信士は、すみやかに乙種船舶通信士として正常な労使間の協約に復することを切に願うものであります。  最近における船員需給調査報告を見ると、自然減耗率は外航二団体で五・五%、内航二団体においては一二・六%、全内航においては実に二六・八%に達しており、内航船主団体の減耗率を一二・六%として計算してみても、四十九名の補充が毎年必要であり、甲種船舶通信士全員を配置がえすることは、実際問題として困難であると考えられます。  以上のようなわけで、通信士不足はきわめて大きな問題であり、通信士一名のために船一そう、他の乗船船員二十余名の問題であるということ、及び造船所、関連産業の問題であることをぜひ御理解いただきたいと思います。  最後に、政府の政策でもおわかりのごとく、船は今後とも多く建造されると思いますが、船舶職員の不足は目に見えており、何も必要以上の資格者を要求することなく、私たち近海船主にとっては、この科学技術の発達した世の中で、遠洋だ近海だということ自体がおかしいので、ひとつ甲乙の区別は船の大小における区別ぐらいにするような改正を希望するものであります。  運輸省当局はもちろん、御臨席の先生方も日本の海運産業発展のために、もっと大きな視野を開いていただきまして、外国の船員に負けないだけの関連法規改正を切に願うものであります。また、それに対しての御指導をお願いするとともに、以上の点を十分に御理解いただきまして、本法律案にぜひとも御賛成くださいますようよろしくお願いします。
  10. 福井勇

    福井委員長 以上で、参考人からの御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 福井勇

    福井委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  12. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 参考人の皆さま方は、本日はたいへんお忙しい中を御出席いただき、またそれぞれの立場で貴重なる御意見、御経験その他を開陳いただきまして、まことにありがとうございました。私たちは国政の場から、皆さま方のそれぞれの御希望、御意見というものを、十分しんしゃくしてやっていかなくてはならない、このように思っておる次第であります。私たちも皆さま方と同じように、時間に非常に限りがございます。したがいまして、質問の内容にあるいは失礼の点があるかもわかりません。また、参考人の皆さま方にお願いいたしたいと思いますが、簡単なお教えをいただきたい、こう思う次第でございます。  まず、一番最初に中村参考人にお伺いいたしたいと思いますが、いま眞木参考人から言われたことでございますが、船舶通信士協会が、たとえば愛媛関係の船主等が甲種の希望がある、しかし会社にいないという場合に、あっせんとか、おまえこの船に乗ったらどうだとか、そういうことはされておるんでしょうか、されていないんでしょうか。
  13. 中村穆

    中村参考人 あっせんというより、通信士の方が自主的に行きまして、船に乗る希望をいろいろ出される、そういう状況はあります。
  14. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 私のところへ、いろいろ乙通の方々からの陳情書や意見書が参っております。その内容をしさいに検討してみますと、いま中村参考人がおっしゃったようでない線もあるんではないか。私のところへ来ておるものを見ると、職安法違反行為をやっておるんじゃないかという内容のものがあるのですが、実はこれは十分にまだ調査していないのでわかりませんが、それほど私はある面では甲種方々が不足しておるのではないかという印象を持っておるのですが、それとは別に、職安法違反という内容のものがだいぶ来ておりますので、これはまたいつかの機会に詳しくお教え願いたいと思います。  その次に、平田参考人とあわせてこれは中村参考人にお伺いしますが、乙種から甲種上級資格をとらすためには、それぞれ船舶通信士協会あるいは船主協会あるいは海員組合等で御努力していただいておると思うのですが、具体的には、どういう指導やどういう方法をされておられるでしょうか。
  15. 平田弘

    平田参考人 船主側といたしましては、受講に際しましての学費、生活費、こういうものを支給いたしまして、そういう受講中の生活、勉強その他に支障のないように奨励いたしております。平均的な腰だめの数字でございますが、大体二級通信士から六年ぐらいかかって甲通の試験を受けるというのが平均的な数字でございます。
  16. 中村穆

    中村参考人 労働協約講習はいたすことがきまっているわけでございます。ただし、いま講習に行こうという場合に、自分で希望してもなかなか順番が得られない、そういう場合もありますし、あるいは会社会社の一方的な理由によって自分の希望も達せられない、そういう場合もあるようでございます。本会としては、この人に講習に行け、あの人に行けというような資格はございませんので、親睦団体でございますので、そういうことは一切労働協約の中でやっているという状態です。
  17. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 これは平田参考人にお伺いしますが、法定の資格者を乗せるという問題と現状を調べてみますと、協約との間に相当大きな開きがあると思います。したがいまして、今回の法を改正した場合、船主協会側としては直ちに法定どおりの資格者を乗船さすというお気持ちなんですか。やはりこれはあくまでも組合側と十分なる話し合いをして、納得をいただいて協約において結んでいくというお考え方なんでしょうか、どうなんでしょうか。
  18. 平田弘

    平田参考人 お答えいたします。  現在、定員は組合との協議の重要な事項でございますので、法律は変わったあるいは関係の設備その他が変わったにいたしましても、すべて組合と協議しなければ、定員の変更あるいは新しい定員というものはこしらえておりません。したがいまして、その点に関しましては、労使間の十分な協議がなされるもの、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  19. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 斉藤参考人にお伺いしますが、私たちは海運の集約をやりました。それで利子補給法の関係とかいろいろな問題が出てきました。最近大手の会社その他におきましては、何々近海とかいうことで、いわゆる近海船の会社を新しく設立したり分離したり、いろいろやっておるようでございますが、このときにおける甲板員、機関員並びに通信士の移動といいますか、これについては、船主側と十分なる話し合いというものをされておられるのでしょうかどうでしょうか、これが一点。  そうして、先ほど平田参考人がおっしゃいましたが、そうした場合に組合員の皆さま、いま申しましたいろいろな方々がおられるわけですが、特に通信士皆さん方が、近海関係の会社へ入るのをいやがるという傾向はあったでしょうかなかったでしょうか、その二点について簡単に承りたい、こう思います。
  20. 斉藤吉平

    斉藤参考人 いまのお話にございましたのは、近海区域にいろいろ変えていくというのは、ある意味の仕組み船といったようなことをおさしになっているのではないかというふうに考えるわけですが、仕組み船と申しましてもいろいろな形、いろいろなやり方があるわけでございまして、やはり乗り組みに関しましては、日本人の乗り組み員が乗るという場合には、一定の会社というものに所属したところ、あるいはその系列下ということでございますので、その点につきましては、現在の労働協約でもっておさまっていくというふうに考えるわけですけれども、ただ、仕組み船そのものにつきましても、いろいろな形がございますので、それに対しましては、現在いろいろ法的な面でどう対処するかというのは、むしろ今後の問題というふうに考えております。
  21. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 それから、これはやはり中村参考人平田参考人に御意見を承りたいと思いますが、先ほど平田参考人が、協定によって賃金制度というものは、船舶の就航海域、トン数、職名、職歴によって本給が定められ、資格の上下というのは無関係であるということを述べられたのですが、これに相違ないか、あるかということを、一言ずつ御答弁願いたい、こう思います。
  22. 平田弘

    平田参考人 協約の面による限り変わりございません。
  23. 中村穆

    中村参考人 通信士の場合も、中小労以上はそのとおりでございますが、盟外船、いわゆる愛媛船主の場合も賃金の水準によってきまってございますが、そのきめ方で、いろいろ先ほど愛媛船主の方から、非常に高い金額であるということも言われましたが、実際の基準はあくまでその水準によって、中小労、外労協あるいは内航、そういうものともっと下の水準によってわれわれの通信士の賃金を出す。いま高いと言われましたのは、まず臨時の方が非常に多い、かつその高いのは、船主自体に問題があるのではないかと思うのです。愛媛船主の方は予備員というものが全然ないわけです。定着性もない形の中であちこちの人を引き抜いていく。自分のところで通信士を養成はしない。初めから乗るのは免状を持たないわけですから、どうしても、海技免状を持ってないですから、養成していかなくちゃならぬ。しかし、そういう養成もしないものですから、どうしても引き抜いてくる。それが二十万、二十五万あるいは三十万、あるいは四十万というような話も聞きましたけれども、われわれ本会といたしましては、そのような悪質な通信士は全然知りません。われわれの手の届かないアウトサイダー的な、われわれとしては非常に悲しい存在でございますが、そういう方のためだと思います。そういうことが一部悪宣伝になりまして、非常に高額な要求をしておるというような形になると思います。われわれとしては一応標準がありますが、その中に退職金もない、休暇もない、ボーナスもない、そういう形の中で乗っている方の水準は、やはり臨時の手当が若干つく。そういうものをトータルしますと、二十万、二十五万ということはあるいはあるかもわかりません。それでも年収からいいますと、私らずっと調べましたけれども、転々としていわゆる臨時で回ります場合は、年八カ月が一ぱいな状況です。それで年収からいいますと、二百万円をこす通信士というそういう方たちであっても、それは非常に極少である。これは私ら調べてわかっております。一部高額というのは、われわれにとっては非常に実害なんで、その点ひとつ釈明いたします。
  24. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 眞木参考人にお伺いしますが、いま中村参考人からああいう御説明がございましたが、眞木参考人のところは、いまおっしゃいましたような、もちろん自社で育成するということは、小規模な会社ですからできないと思いますが、電波高専出身の方々は、眞木参考人のような愛媛船主会というようなところには新規の希望がくるか、こないかということと、それからまた、船通協であっせんはされておるのかいないのかということを簡単に御答弁願いたい、こう思います。
  25. 眞木克朗

    眞木参考人 一つずつお答えいたします。  自社の育成は、ほとんど私たち愛媛船主においては不可能です。ということは、大手の船主に相当引き抜かれまして、われわれのところは、とてもじゃ互いが見向きもしないというのが現状です。だから、勢いそういったところの既成の通信士を連れてくるということは、中村さんも言っておられるように事実です。それと、船通協からいろいろと世話になっておる愛媛船主会の会員会社も相当数あることは事実です。しかし、そういう賃金とかいろいろなことも、介入してないと委員長は言っておられますけれども、それは各社の実態として、あるいはこの法案成立において報復をおそれるとかいうことで、隠してくれというような会員会社も相当数あるということを、先生方もよろしく御了承いただきたいと思います。  以上です。
  26. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 最初斉藤参考人からいろいろ意見を承ったのですが、実は私自身もいろいろ勉強させていただきまして、斉藤参考人が述べられました一番大きな前提としての併記答申の問題を、政府法案化したということにつきましては、これはわれわれ自身も非常な責任といいますか、それは一般社会から独立して洋上を航行する一つ船舶ということを考えた場合に、この理解納得というのは絶対私は必要であろうということは強く感じておるわけです。そこで、併記答申があった内容を一方的にしたということにつきましては、昨日も当委員会におきまして各先生方からいろいろ議論のあったところでございます。この問題は、私たち自身もまだ相当に勉強していかなくちゃならないと思いますが、それ以外の問題として、海上通信体制が円満に確保できない、あるいは船舶は優秀な電子技術者を必要としておる、あるいは国際通信混乱を招き、国際信用度が低下する、骨子であるところの安全という問題が阻害されると言われました。さらに、職場不安の増大、労働条件低下、あるいは今回の法改正需給問題を解決するためにやった節がある、こういうようないろいろな御意見等も承ったわけでございますし、最後の意見として、通信関係には教育体系あるいは経験を含めたものでの抜本策を考えなくちゃならないと、それぞれ意見をいただきました。  そこで、いま郵政省の電波監理局長も来られましたが、私自身は、事電波に関してはわが党内においては相当深く研究し、電波監理局長の前ではっきり言いますが、一、二を争うくらい勉強さしていただいておるのではないかという自信を持っております。この私が申し上げるのでありますが、この中にいろいろな、海上不安とか混信とかあるいは技術の低下だとかいうことが言われておると思いますが、その中で語学という問題が、きょうの席ではあまり出てこずに、逆に船主協会のほうから語学という問題についてのお話がございました。私自身考えてみますと、中国語を一年半、ロシア語を二年、ドイツ語は三年、英語は二十年間ぐらいやらしてもらいました。実際自分が当面すると、最初は戸惑うものでございます。しかし、これが三、四日くらいそれぞれの国へ行っておりますと、けっこうわかるようになるという経験から考えまして、甲種通信士乙種通信士との間の語学力の問題というのは、そうたいした問題にならないのじゃないか。それよりか逆に、むずかしい電子機器を次々載せるようになり、それの整備という問題のほうがむずかしい問題になってくるんじゃないかとも考えられるわけですけれども、これとても個人、個人によっていろいろえてふえてというのが私はあると思います。それは甲種皆さん方の中にもえてふえてはあると思うのです。  そこで、一つだけお伺いしておきたいと思いますが、最近のそういう合理化された機器に対する信頼感といいますか、裏返して言いますと、たびたび故障するかしないかということについては、どういう感じを持っておいででしょうか。私に与えられた時間もこれで二十分がきてしまいましたのでやめますが、機器に対する信頼感あるいは故障の度合いということについて、どういうお感じを持っておられるかということを、ひとつお教え願いたいと思います。
  27. 斉藤吉平

    斉藤参考人 機器の信頼度というのは、私どもにとりましても、技術革新時代において非常に大事な大きな問題でございまして、一般に政府といろいろやっておられます場合には、信頼度は非常に高まったというふうに発言されておりますけれども、私ども甲板、機関並びに無線も含めまして、海上という環境、それは動揺があり、塩けの海水があり、湿気がありというところにおきましては、非常にたくさんの故障が出ているということを現在キャッチしてございます。きょうちょっとその資料を持ってきておりませんのですけれども、それは故障が出ましたけれども、乗り組み員の手で苦労をしてそれを直し、回復して、現在運航しているというのがむしろ実態でございまして、乗り組み員の率直な意見は、まだまだ信頼度がないと言っているのが現状でございます。特にそれが定員等にはね返ります場合、定員について非常に強い反発を海上から示してきますのは、故障というものを中心として、船内に仕事量が決して減っていないということを言ってきていることだと思います。  通信機器におきましても、私どものいろいろ調べたあれでは、たとえばレーダーならレーダーという安全上一番大切なものの機器修理ということに、非常に大きな力が加えられているということだと思います。私は信頼度はまだまだ不十分であるというふうに考えております。
  28. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 ありがとうございました。これで終わります。
  29. 福井勇

    福井委員長 次に斉藤正男君。   〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕
  30. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 参考人各位、御苦労さまでございます。  私は、まず中村参考人に伺いたいと思うわけでありますが、昭和三十八年に電波法改正されまして、船舶通信士につきましても、法規上乗り組み員の数が規制をされ、縮小されてきたわけでありますけれども、これはいろいろな理由があるかと思いますけれども、合理化という点については間違いのない現実であろうというように思うわけであります。この合理化がどういう形で合理化をされているのか、合理化の内容につきまして、一体どう私ども法案審議の上で解釈をしたらいいのかという点で若干迷うわけでございますので、その合理化が進んできたし、これからも進むであろう、こういうことでありますけれども、具体的にはどういうことなのか、お答えいただきたい。
  31. 中村穆

    中村参考人 先ほど参考意見のときも若干述べましたですが、昭和三十八年の電波法改正、これは四年の経過措置がございまして、その四年後に三名から二名、これはほんとうは法規上では一名になっていますが、現在の労働協約上で二名に現状はなっているわけです。一方、電波法改正とともに、内航船にそれまで電信がついていましたが、先ほど船主方の参考人も申し上げられたように、ほとんどの船が電話化になりまして、その中で二級通信士、そういった方の職場の縮小となるといった形もございます。かつ、先ほど申しましたように、外航船においても三名から二名になり、今回また乙種従事範囲拡大ということによって、甲通、いわゆる一級の職場の職域に介入されてくる。そういう問題とともに、意見にも述べましたように、やがてはHX化、これは先ほど申し上げましたように執務時間不定の局、これをまず法を制定していこう、そういう一段と合理化の筋に従った形が一貫して昭和三十八年以降続けられているわけで、われわれ船舶通信士としましては、生活と権利を守るために必死になっていままで戦ってき、かつ海員組合ともいろいろ話し合って現在まできているわけでございます。  たとえば内航船の場合電話化になったので、われわれとしても航行の安全上非常に心配していますのは、電話の場合は局とだけの直通関係なので、もし航行中の船が遭難でもしたら船と船との対話はできない。現に昨年でも波島丸が北海道で遭難した場合、すぐそばに電話の船が走っていたけれども、波島丸は無線は持っていましたが、相手の船が電話で、その遭難の実態もわからなかった、こういうような非常な危険性もあるのではないか。かつ、電話の場合も、甲板士の方あるいは航海士の方が特殊免状を持って乗船されますけれども、機器の故障がわからずにそのまま出帆してしまう、そういう結果のあったことも私ら存じております。アメリカの場合は、沿海船であっても千六百トン以上は電信を強制しておる。そういうように人命の安全、航行の安全ということは、アメリカでは非常に大事に考えてそういうことをやっているので、われわれとしては逆に内航船の大型船以外でも電信の復活をあえてお願いしたい、そういうふうに思っているような状態です。
  32. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 いまお答えをいただいたわけですけれども平田参考人に関連をして伺いたいと思うのです。  今度の法改正が、きょうは通信士の問題が主でありますけれども船舶乗り組み員の需給の関係を改善するとか、あるいは船腹の増大、船主樹の要請といったようなものにこたえて、きわめて現実的な対処をされる法律改正ではなかろうかというように思われるわけで、船舶航行安全というような意味からいきますれば、若干問題があるのじゃないかというように、私はしろうとでありますけれども考えますが、その船舶の安全、人員なり積み荷の保安といったような意味が薄くなって、船員需給関係というようなところに重点が置かれていやしないかというように思われるのですけれども平田参考人はその点どのようにお考えでございましょうか。
  33. 平田弘

    平田参考人 お答えいたします。  いまの問題は論点が二つになりますので、甲板、機関の一般職員と通信士のほうとに分けて御説明申し上げたいと思います。  今度の職員法改正は、甲板、機関の需給の緩和ということで、その他にはたいした直接的な影響はございません。ただ行使範囲を、たとえば乙種船長の三千トンを五千トンに広げた、こういうのはある意味においては乙種船長の行使範囲を広げたのだから、その面だけは甲免が浮くではないか、こういうことになりますが、あそこに要求されておりますのは船長としての甲長だけでございまして、一般の職員は全部乙免でございますので、その点は需給に響くほどの数字ではございません。問題は、いま二十万トン、三十万トンというような大型船の一等航海士、一等機関士が船長として出ていく場合には、遠洋では千五百トンの船の船長しかできない、近海では三千トンの船しかできない、これはおかしいじゃないかというところから動かしまして、そうして動かしましたときにあのワクを非常に緻密に小さく分けてございますので、あれを広げますと、下のほうで資格の問題あるいは定員の問題が非常に関連します。そうしますと、それぞれの立場から反対賛成が露骨に出てまいりますので、結論としてはあのあたりはさわるまいということになりまして、あそこが現状維持の形になっておりますので、この面から需給関係に直接の影響はない、またそれを考えての対策ではなかった、こういうふうに考えます。  乙種通信士の問題も、甲種通信士の、言うならば一つの優遇策と言っては語弊がございますが、いままである資格でよかったものが、さらに大きな範囲の船にまで乗れるというのに対して、いままで、言うならば、定員その他で締められてばかりおる通信士に、こういうときには全然見向きもしないのかと言われることのほうが、かえっておかしいのではなかろうかという気を私自身も持ったわけでございます。したがいまして、そういった意味から、こういう試験の軽減の措置であるとか、あるいは何らかの方法、あるいは乗っていく範囲拡大というものも通信士の中には当然考えていくべきではなかろうか、こういう考え方から私どもは提案いたしました。もちろん、現在のこういうふうな一般的な需給関係が非常に人手不足のあれでございますから、話題の中にそれが出なかった、全然そういうことは念頭にも考えなかったということになりますと、いささかうそになりますけれども、それは周囲の関係上それを考慮に入れながら、一般船舶職員法改正に準じて乙種通信士の問題も考えた、こういうふうに申し上げたいと思います。
  34. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 それはよくわかっているのです。問題は、航行の安全性という観点から船主側はどのようなお考えを持っておられるか、その点について触れていただきたいと思います。
  35. 平田弘

    平田参考人 船主側の基本的な考えは、通信士に甲乙という名称が頭についておりますので、一般の甲機の職員の乙と同じような程度、レベルというふうに考えられますが、私どもは、通信士は甲乙ともに国際的に、国際航路に従事し得る資格、技術だとかそういうものを認められての資格である、したがって、国際的に容認されておる日本の二級通信士乙種通信士は、当然国際航路にも従事して何らの不安はない、それだけの保証される技術を持っておるのである、こういう理解をいたしております。したがいまして、本案につきましても、せめて近海全域だけは当然妥当なことではなかろうか、そういうふうな考え方を持っております。
  36. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 ここで私は、ちょっと脱線をするようですけれども斉藤さんにちょっと聞いてみたいのです。  通信士というのは、電波法で一級、二級、三級というような資格があるのですが、船に乗ると甲乙丙ということになるのですけれども、私、学校の先生をやっておりまして、甲乙丙丁戊という通信簿をつけたことがありますが、いまは、御承知のように五点から一点までというのが原則になっております。皆さん船にお乗りになっていて、特に通信士の方が甲乙丙という呼び名ですね、これに対して抵抗は全然ございませんか。いかがでございましょう。
  37. 斉藤吉平

    斉藤参考人 正直に申し上げますと、抵抗ございまして、海技審議会のときにも、名称を変える変えないということの論議をしたことがございます。ただ、長年なれてきている問題でございますので、あえてこの場合変えても、どういう名前に変えたらいいのかという、変えた場合の名前というのがつかないので、そのまま存置されたというようなこともございます。  ただ、甲乙丙分ける場合に、甲機の甲乙丙と通信士の甲乙というのは、多少内容が違っているというふうに私は考えております。甲機の場合には職階制につながります、ある意味で独立しておりますけれども。たとえば甲種の船長、一航、二航というものの中には、一つの段階を経て上に上がるという道があります。通信士の場合には、おのおの独立をした一つの免状であるということも事実だと思います。しかし現実的には、いま乙種の免状を持っている方が、さらに勉強をして甲種をとりたいというふうに願っていることもまた事実でございます。甲種通信士の場合には、二級整備士といいますか、技術士といいますか、技術の免状をあわせ含めて持っているというところに非常に大きな差があるというふうに考えております。
  38. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 眞木さんにちょっと伺いたいのですけれども愛媛船主会、こちらももちろん外航遠洋の大会社、大船主に比べれば中小であろうと思うのですけれども、先ほどお話がございましたように、通信士の定着性がきわめて低い。これはほかの産業でも、中小零細については、国の施策そのものが中小向けになっていないのですから、当然だといえば当然。しかし、これが改善のために、愛媛船主会もずいぶん自主的な努力をされてきたと思うのです。にもかかわらず今日のような状態、大きな船、大きな会社船員というように乗り組み員の皆さん方が望む、こういうことでありますけれども、その基本的な欠陥、愛媛船主会が悩まれているその原因は、基本的にはどこにあるとお考えでございますか。中小の宿命だ、やむを得ない、もう泣き寝入りしかないのだというようにお考えでございましょうか。その点いかがですか。
  39. 眞木克朗

    眞木参考人 御質問の趣旨、私たちいなかの船主はたいへんじみな生活をしておるということは、よく御理解いただけると思いますが、人手不足もそういうところにあります。だけれども、やはり学校の先生ならよくわかると思いますが、百点をとる優等生はやはり優秀な会社に行く、低レベルにおる五十点か六十点の落第ぎわくらいしかわれわれに来ぬというのが現状なんです。特に通信士問題については、同じ学校を出て八十点以上の優等生は一級をとる。普通の六十点かつかつの生徒は二級しかようとらない。そういう二級は行く職場がない。だけれども、私たち愛媛船主会、いわゆる近海船を扱っておるのは、甲機の職員においては大体乙免状で事が足りるわけです。その中で甲種免状というトップレベルの者を雇うというところに、一番大きな問題があるわけです。私たち決して分不相応に、日本郵船とか大阪商船とかいうものとけんかしようという意図は毛頭ありません。  それで、そういう甲種船舶通信士という一番優秀なトップレベルの人が乙免の中に入ってくると、これが通信というものについてはレベルはトップなんですけれども、船の海技知識というものについては、甲通といえども乙二程度の知識しかないわけです。それが船内の主導権を握ると、船内の安全が保たれないというのが現状なんです。その点は先生方もよく御理解いただきまして、よろしく……。
  40. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 ちょっと私のお尋ねと違うのですがね。海運政策そのものからくる欠陥が、中小船主側にしわ寄せされているのではないのかということを聞きたかったわけなんです。参考人としてはきわめて激しいお答えでございましたけれども、まあそれでいいですよ。  次に、中村さんに伺いますけれども、何といいますか、いま国民全体が生涯教育ということがいわれて、とにかく一生教育だ。その生涯教育も、国で行なうものもあるし、それから地方自治体で行なうものもあるし、それぞれの職種で行なうものもあるし、本人の努力で行なわなければならぬものもあるし、いろいろありますけれども、総合して言うならば、生涯教育ということが一つの人間開発なり、あるいは人格陶冶なり、あるいは専門職のレベルアップなりというものの指標になっていることは、参考人各位も御承知だと思うのでありますけれども、一体通信士の再教育機関としてはどういうものがあるのか、国ではどうやってくれているのか、船主団体はどうやってくれているのか、あるいは全日海なりあるいは通信士協会なりはどうやっているのかという点について、再教育の機関をひとつ教えてください。
  41. 中村穆

    中村参考人 再教育の機関は、現在では通信士においては日本電波協会というのがございまして、そこで再教育を行なっておるわけです。これは財団法人でございます。われわれはかねてから、再教育機関については、甲板部機関部の場合は国の機関、いわゆる海技大学あるいは海技専門学院、そういった運輸省一環としてやっておられる再教育機関があるわけです。通信士の場合に限りまして、財団法人の電波協会、こういうところで再教育をやっているわけで、結果として講習内容の不備その他も出てくるのではないか、あるいはこの機関から出た人が、国家試験制度と直結した形がなかなか得られないのじゃないか、そういうふうな危惧を持っておるわけです。戦後にわれわれが、電波法が制定されました翌年、電波法ができましたので、通信士協会としましては、再教育機関を郵政当局の御協力を得て自主的にやりまして、それも非常に短期間の、四カ月というような短期間の講習でやっていったわけです。その間、また神戸の海技専門学院、そういうところの一応再教育機関もあったわけでございますが、現在の日本電波協会、これは日本無線通信協会から日本電波協会に変わりましたけれども、そういった財団の組織で再教育機関が保たれている、そういう実情でございます。
  42. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 時間がありませんので、最後にもう一つだけ聞いておきます。  平田さんにちょっと伺いたいのですけれども、今度の改正案が通りますと、近海区域船は通信士が一名になってしまうのじゃないかと思うのですけれども、もしこの一名の通信士が倒れた、病気になってしまったという場合には、一体だれがこれを代行するのでございましょうか、伺いたいと思います。
  43. 平田弘

    平田参考人 はっきり申し上げて、代行する者がおりません。しかし、現在も近海一区は一人でございます。その点、いま二人の者を一人にするというのではございません。全部、近海全域はいまの労働協約でも一名でございます。それでやっております。
  44. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そうしますと、人間なま身でございますから、一名の通信士が倒れてしまったというときは、船はとまるのですか。とまらないで、通信も何もやらずに目的地に行くのでございましょうか。船長の判断はどういうようにされるのでございましょうか。
  45. 平田弘

    平田参考人 私自身船長でございましたので、その経験から申し上げますと、もよりの適当な連絡のとれるところへ参ります。そのまま目的地へ当てもなく――当てもなくと言うと失礼でございますが、周囲の状況にかまわずに直行することはございません。
  46. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 同じ問題で中村参考人に伺いたいのですけれども、そうすると、かなり高熱をおかし、腹痛をおかしてもキーをたたかなければならぬ、レシーバーをとらなければならぬというような勤務にならざるを得ないと思うのですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  47. 中村穆

    中村参考人 そのとおりでございまして、通信士一人乗船の場合、病気になったらどうにもならない。ほかのパートはたくさんの人が乗っておりますので、どうにかお互いにかばい合ってやれますけれども近海の一人乗りの場合はどうにもならぬ。かつ、ほかのパートの方の場合は、御承知のように通信士は医療無線、そういうもので病気の状況を各パート、ほかの人の病気の場合はやれます。しかし、自分が病気になったときはそのまま倒れて、あるいは死ぬ場合もある。感電死がごく最近ありました。だれもわかりません、一人乗りの船ですから。感電死で、無線の機器の故障修理しておるさなかになくなったわけですが、だいぶあとになって、においが変だからといって気がついた。そういう状況もありますし、人が一人ですから、もう病気になった場合はどうにもならないという状況ではないかと思います。
  48. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 終わります。
  49. 加藤六月

    ○加藤(六)委員長代理 田中君。
  50. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 きょう参考人の皆さまから、たいへん率直な意見をいろいろお聞きしまして、私ども現場のことにつきましてはたいへんふなれなことで、また知らないこともたくさんありまして、たいへん参考になると思いますが、そういう意味で、まず皆さんがたいへんなお仕事をなさっており、わが国の現状から申しましても、海に囲まれた資源の乏しい国、そういう国がこのような成長を遂げたその原点は、私は全部皆さん方の関係の当事者にある、このように敬意をまず表しまして、私もしろうとでございますから、質問は重なるようなことがあるかと思いますが、その点をお許しいただいて、教えるというような意味でお答えを願いたいと思います。  まず私は、こういう改正がなされる場合にいろいろな問題が起こることは、やはり現場のいろいろな需給関係といいますか、そういうものが関連して起こってくる、このように思いますから、その辺のことから聞いていきますと、まず私たち一般的に聞いておりますことは、商船はたいへん通信士の方が足りない、それから漁船のほうは乗り手がない、このように聞いておりますが、船主側の代表の方、それから組合関係の方から代表で、ひとつそのことについて、まず一般的なことでございますが、お聞かせを願いたいと思います。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 平田弘

    平田参考人 お答えいたします。  商船の需給に関しましては、現在は大型船の遠洋船舶甲種通信士に関しましては、それほど需給は逼迫しておりません。これは先生方も御存じのとおり、先年の法律改正によりまして法律上の定員が減りました。それを受けまして、労働協約上の定員も若干減りましたために、法律上からいえば乙種通信士資格でございますけれども、何も乙種通信士でなくて、甲種通信士資格を持っている青年通信士の諸君がたくさんおりますので、それで数におきまして足らないということはございません。ただ、いま近海の一、二、三区に対しましては、ただいま申し上げましたように、同じ乗るならばやはり遠洋のほうが待遇その他もよろしいし、会社にも安定度がある、こういったことで、乗るならそっちに乗りたいということで、近海以下の船には腰が落ちつかない、そういった面から近海全体についての需給がきわめて逼迫しておる、こういうことでございます。  それから漁船は、これは乙通でございますから、その点の員数はかなり員数的にはあると思いますが、これは私、漁船関係のほうを責任をもって申し上げる立場でございませんので御理解願いたいのですが、やはり居住区の関係だとか、物理的に小さいとか、あるいはその作業内容が、通信のみでなく一緒に漁労もしなくちゃならない、そういったものが影響しておるのではなかろうか、これは私の想像でございますが、さように考えております。
  52. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 斉藤さんのほうから……。
  53. 斉藤吉平

    斉藤参考人 いま需給の問題ということが取り上げられたのですが、私は、この需給という観点からだけ今度の法律を取り上げられていることに、非常に不満を持っているものなんですが、需給といいますのは、質的なものは別にしまして、量だけを取り上げているというところに、私はほかの産業と比較しましても問題があると思います。これは目先の問題だけ、目先の解決ということだけでありまして、ほんとうに長期にわたっての根本的な解決にはならないというふうに私は考えまして、真実大事なことは、この前海技審議会でも甲機の場合をいろいろ論議しましたときには、その場合の再教育体制はどうなんだとか、再訓練はどうだとか、強制講習はどうするのだというような、教育というものを一応、十分ではありませんけれども、裏づけとしていろいろ審議をされていたわけなんですが、通信士の問題につきましては、まだ安全の面から賛成である、反対であるということだけで、その教育体系ということについては、一つも論議されないままに今回ここに問題が上がってきているというところに、私は本質的な問題があるというように考えております。  特に、先ほど生涯教育というおことばもありましたのですが、もう一般陸上なり諸外国なりが、能力の開発であるとか能力の再発見であるといったような、むしろ積極的に労働力の開発、能力の開発ということが行なわれております今日、なおかつその辺が完全にないがしろにされたまま、ただ単に需給だけでもって問題を片づけていこうというところが、私ども非常に不満な点で、これだけをもってしては決して本質的な解決にはならなくて、必ず問題が将来まで残っていくというふうに考えております。
  54. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 ちょっと初めに私の立場をはっきりしなかったために、斉藤参考人のほうからそういうふうなおことばをちょうだいしたと思いますが、私たちとしましても、やはり需給関係現場にあるということを踏まえて、そうしまして、やはり安全ということを第一義に考えなければならない。その意味に立ちますと、今度の改正はこれは考えなければいけないと、一応反対の立場をとっておりますから、その点ははっきり申し上げておきたいと思います。  そこで、いま私がお聞きしましたことで、中村参考人にもう一回お尋ねしたいと思いますが、いわゆる甲乙のそれぞれ通信士が、現在就航しておる船に対して、どういうふうに充足といいますか、足りておるのか足りておらないのか。これは実際の現場状況をお聞かせ願いたいと思います。
  55. 中村穆

    中村参考人 非常に不足の状況です。休暇がありまして、休暇を申請してもなかなかおりられないというような状況で、それによって健康を害する。ただいま私のほうで健康の調査をずっとアンケートを出していますが、非常にそういったための病気ということが多いというような状況です。
  56. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまのお話によりますと、通信士が足らない、こういうふうなことだろうと思います。私たちもこの法律改正につきましていろいろ聞いてみますと、確かに通信士が足らない。先ほど平田参考人のお話にも、近海一区はいままで通信長として乙の方が一人乗っておられる。この方が病気になった場合にはたいへんなことだろう。その一人乗っておるということについても、先ほど中村参考人のほうから現状の説明を聞きましたが、船主側のほうとしては、いわゆる甲通については足りておる。実際通信士さんのほうでは足らない。今度の問題になりました乙通の従事範囲拡大についても、乙通ではあぶないということとあぶなくないという、一つのことが相対立しておるように私は聞くわけですよ。  こういうことでは、私は問題の解決がだんだんできなくなるんじゃないか、こう思いまして、いわゆる船主側については、そのような、これは一人乗っておるために、現状としてそういう生死にかかわるような問題が船の上で起こった場合を想定いたしますと、私は、利害とかその船が安全に航行するという以前に、人道的な問題からももう少し考えなければいけないんじゃないか。そうなってくると、全体的な通信士の不足という問題を解消していかなければならないじゃないか、こう思いますが、その点について、平田さんのほうからもう一回お答え願いたいと思います。
  57. 平田弘

    平田参考人 ただいまの最初のほうの、御質問ではないかも存じませんけれども、いま通信士が一人しか乗っていない場合の危険度でございますが、これはおっしゃるとおりに、いまのところは通信士以外に通信のできる者はございませんので、これが外国の例のように、航海士の中にでもある程度通信ができるような方法を講じる、そういう点もあると思いますが、現状におきましては、別にそれにかわり得る航海士機関士は乗っておりません。これは医者の場合もさようでございます。医者もドクター一人でございます。それで、そういうのは、いまのたとえば感電死の問題でございますが、これは話が少し横に回りますが、これは労働安全規則、労安則と俗に申しますが、ここで御審議願えたと思いますが、その中でも、そういう感電のおそれある作業の場合にはもう一人置け、そばにつけておくだけでも置け、こういう措置が講ぜられておるはずでございますので、その場合には、何らかのその間における連絡不十分なり何なりがあったのではなかろうか、こういうふうに感じましたので、かく申し上げておくわけでございます。  いまの需給問題でございますが、これは実は通信士のほうは、他の甲板、機関と違いまして、陸上の弱電その他の求人が非常に盛んでございます。したがいまして、われわれとすれば、どちらかといえばそちらに取られるのをどうしてこちらへ持ってこようかという努力が、陰に陽になされておるわけでございます。そこである年に、たとえば計画造船なんかの伸びがとまりまして数が少なくなりますと、電波高校あたりに申し込む数がぐっと減ります。そうしますと、そのときに入りました卒業生は、自分たちの先輩が海上に出ていく数字が非常に少ないものですから、もう入学したときから海上に行くのをやめまして陸上のほうを志向する、こういう傾向がございます。したがいまして卒業時に、今度は船のほうが数が足らないから来てくれといわれても、なかなかそうはいかない、こういうあれでございます。  昔、昭和二十六年以前ごろまでは、ただいまの電波通信大学の前身でありますところの目黒講習所の方々が、通信士として海上勤務をされておられましたが、大学になりまして技術が非常に高度化し、その面での求人が他のほうにあって引っぱられますので、あそこの正規の教育を受けられた方は、現在海上に一人も見えておりません。現在は電波通信高校かあるいは電波通信大学でも別科、そういう別のコースを歩まれた方が見えるようになっております。  したがいまして、いま人が足る足らぬの問題は、これは甲通と乙通とに分けざるを得ないと思いますけれども、甲通の場合でも、ここに手元に持っております資料で申しましても、外航二団体におきまして、無線の四十三年の採用者は八十五名でございます。四十四年が九十三名でございます。それがその前の四十二年、それから四十一年には、二百十八名だとかそういった大きな数字がそれだけに減っております。というのは、外航のほうは会社も非常に大きいし、船舶も多うございますので、みなが落ちついてそこに定着しております。それが、先ほど申しましたとおりに、大型船の遠洋船は三人の定員労働協約で――あれは法的の改正が前提でございますが、労働協約で二人に減っておる。二人乗っておるところが一人になった。こういうふうにいたしまして、平均一隻に一人ずつくらいの定員が減った。この方の中には、大体資格としては乙通の方もいらっしゃるだろうし、あるいは甲通を持って次席だとか三席をつとめておられる方もあったわけでございます。そういう人たちが余りましたために、外航さんのほうは採用の手控えを最近行なっております。  それからまた、ただいま労働協約では次席というあれがございますが、法律的には次席という定員はございません。したがいまして、この一人を減らそうかどうしようかということが労使の中で交渉が行なわれております。それで、これは一応まだ継続審議みたいな形になっておりますが、これの成り行きいかんによっては、いま外航遠洋船舶一隻に二人乗っておりますうちの一人が軽減されるということになりますので、外航の大手筋としてはこういう採用を控えております。これは中村参考人が言われたとおりでございます。  私ども近海船主以下になりますと、そういう近海船は、定員といたしまして甲種通信士一人だけでございます。それで乙種通信士の乗る船はきわめて限られております。したがいまして、乙種通信士のまず一番採用しやすい、学校を出て二級だけを持っている通信士を採用して、そしてこういうふうに育てるというその源になる骨がない。どうしても甲種通信士をとってきた者でなければわれわれのところに採用しない。そうすると、それはどこかで経歴を積んで採用される。そうすると、乙種通信士として船舶に乗り組まずに、陸上で一級とってきた人は、いまからあらためて船に乗ろうというような意欲はないかに存じます。したがいまして、一級通信士近海船主以下の就職希望の方はきわめて少ない。  そこで、全体的の数字から見ますと、一応定員とそれと数字が合っておりますけれども、大手の会社は安定しておる。それから中小以下の船主に対してはきわめて足らない。いま眞木参考人が言いましたように、百三十人内外のところに、ほんとうにその会社に定着し雇用契約を持っておるのは十二、三人の方にすぎない、こういうような状況を招来しておる、こういうことを申し上げます。
  58. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 中村参考人にお尋ねしたいと思いますが、いまの状況をお聞きしておりまして、甲通の方に対しては大体充足しておるような印象を受けるのですが、その点と、それから眞木参考人が言われました、いわゆる臨時に雇ってくる通信士の方の例外的な方がいらっしゃる。そういう人たちを通信協会としてはどのようにしていくか。していくと言いますとあれですが、何とかそういう人たちを正式な場に戻すような方法はなされないのか、そういう二点についてお答え願いたいと思います。
  59. 中村穆

    中村参考人 大手は人が足って、小さい近海愛媛船主、そういうところが足りないのだというようなお話もありましたが、これは大手を問わず人は足りないという事実です。先ほども申し上げましたように、公暇申請してもなかなか下船ができない、こういう実態は外労協、中小労を問わずそういう状況でございます。そのために融通乗船というような措置がとられておる。これは参考意見でも若干述べましたが、そういうような実態でございます。  それから愛媛船主、小さい近海船の定着性がない、落ちつくようにしたらどうかということでございますが、これは愛媛の方もいらっしゃるので非常にぐあいが悪いのですが、船内環境が非常に悪い。何も通信士だけでなく、ほかのパートの方も含めて乗下船の度合いが非常にひどいわけです。この会社にいたら翌日はもうこっちに行ってしまう。少しでもペイがあったら行く。それで愛媛船主船主側も、普通の乗船俸給にアルファをつけ、あるいは時間外は野放し、幾らでもとれ、そういうことで定着性をねらっていますけれども、船内環境が非常に悪い。かつ、そういうために去る二月二十二日運輸省愛媛船主会長とお会いたしたとき率直に申し上げたように、愛媛船主の船は遭難が船主会では一番多い。そういうことも率直に認められています。といいますのは、そういうように通信士を含めても非常に定着性がない。そういう形の中で非常に危険性のあるフィリピン航路が多い。ラワン船でいわゆる乙免の方、これは先ほど船主の方も言われましたように、英語も全然しゃべれない。そういう中で通信士はおのずから異種労働、いわゆる通訳からあるいは船内のトラブル、タイプ、全部やらざるを得ない形にいま追い込まれております。異種労働です。事務兼です。そういう中で非常に生命の危険――いわゆる積みつけについても、乙種の方はどうしても甲種の方より落ちる。そういう非常な危険性の中でいままでやられておるわけで、そういう形ですと、定着せいといってもなかなか定着性はむずかしいのじゃないか。  今度法が改正されたといたしましても、おそらく定着性は望めないのではないか。来てみてびっくりして、この愛媛船主の船には乗れない。これぐらいの金では乗れない。その証拠には、波方に部員の学校があります。そこの学校の卒業生は、非常に失礼ですが、愛媛の船主の船には乗らない。みんな中小労以上の阪神あるいは京浜に出て、そういう会社甲板部員、機関部員として就職する人が圧倒的に多い。こういう事実は、愛媛船主の実態あるいは管理、船員政策、そういうものも含めて非常に危険性があるのじゃないか。それから航行の危険性も非常にある。そういうような状況がございまして、通信士としても、そういう中でいわゆる愛媛の船主の船に乗りますと、英語はできないものですから、すべて外交折衝面は自分がやらざるを得ない。夜中もたたき起こされる。  現に私らも非常にふしぎに思うのですが、いわゆる国際航海でございますし、いわゆる民間外交の人だ。船長、機関長が英語を知らないでは、ほんとうは日本のつらよごしじゃないかと思います。日本の外交のほんとうに一つの民間外交、こういうときにこういう措置は、まことにおかしくて、われわれとしてはむしろ英語の講習、そういうものを乙種甲板部機関部の方にはぜひやらすべきだ、この法案改正にあたりまして意見は述べませんでしたが、そういうふうに思っています。  定着性に関しては、大体そういうことでございます。
  60. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 もう時間が来ましたから、最後にまとめてお願いしますが、私いま中村参考人のお話を聞いておりまして、何かしらん問題の原点がわかったような気持ちがするわけです。  そこで眞木参考人にお尋ねしますが、いまの船が航行する中においての船内秩序といいますか、こういう問題が大きな影響を来たしておる。どんなに法律でこうきめてみても、そういう問題が解決できなければ、かえって法律が逆用されるのじゃなかろうか、私はこのような感じがしたわけです。そこで今度の改正で、ただ私のことばが足らないで申しわけないかもしれませんが、便宜上乙通の従事範囲拡大をやることは、いまの船の安全という立場から見た場合には、かえってたいへんな問題が、起こらないにこしたことないですけれども、何かしらんそういうことが起こった場合にたいへんな問題じゃなかろうか、私はこういう気持ちがするわけでございます。いままでの経過を聞いてみますと、近海一区に乙通の従事が許されたことも、戦時中でございますか、ああいう日本が南方に進出しておるときに、一応の便宜上の処置として近海一区にあのような処置がなされた、このように聞いておりますが、その後の、終戦後の国際情勢を考えてみますと、確かに私は近海二区、三区に出ていくためには、そういう船内秩序も解決するとともに、法的にいわゆる国際信用を高めるような日本の海運関係、海事関係のりっぱな姿をつくっていかなければならないのじゃないか、こう思いますが、最後に眞木参考人斉藤参考人のほうから、このことについてお答え願いたいと思います。
  61. 眞木克朗

    眞木参考人 先生の御質問もごもっともでございまして、中村参考人からの発言にありますように、何も賛成者、反対者両方が仲よくやっていくということはあり得ないので、愛媛船主会現状というものは相当誇張されて誤解されておるのじゃないかと思います。愛媛にも海難事故はありますが、それは他の中央の船主にも海難事故はあります。ある一点だけをとらえてそういう――私も波方の海員学校は設立以来ずっと兼任で講師もしておりますし、私自身が教えて、そんな大半が中央に流れておるようなことはありません。  それから船内の秩序、定着性と、いろいろなことは言いますが、それはある一部にはあります。だけれども、その通信長が船内の混乱を招く。おまえら、こんな安いことじゃいかぬじゃないかというような指導権を握っておること自身が一番大きな問題で、たまたまそういうニュースが船通協のほうに伝わっておるものだと思います。  それから愛媛船主もいろいろと、百二十社からありますので、近海区域の二、三区だけの就航船でも、いまも申しましたように百十四そうありますので、この中においても相当な船通協からの援助も、たびたび申し上げておるように受けております。だけれども、これをあえてここで言えということになれば、やはり船がとまる、とまったものをだれが補償してくれるのかということにもなりますので、その点はもう御臨席の先生方にもとくと御了解を得て、御賛成願いたいと思っております。  いろいろとそういった船内秩序の問題、いろいろなものを指摘されておりますけれども、極端な例では、通信長の名前をあげてもけっこうですが、造船所に来るなり、この造船所の社長を呼べ、わしがここに来るのにあいさつにも来なかったと言って、そうして混乱させた通信長さえあることは事実なんです。歴史が新しい会社は、中央の大手の会社みたいな船内節度はありませんけれども、和気あいあいとした家族的な雰囲気は保っております。だから、何かというと、いなか百姓のやるような船主だ、いなか船主のやることだというさげすまされたことばで私たちは見られていることは事実ですけれども、その中に脈々と流れておる、われわれは英語がわからぬとかどうとかいえども、昔の小さな帆船時代からすでに東南アジア航路には就航している歴史を持って、その海難比率といえば、先ほど斉藤参考人も申されておりましたけれども、これは愛媛のではなくして、神戸のほうの船主の事故でありますから、神戸、中央の船主といえども事故はありますから、その点はとくと、愛媛のある一点だけをとらえて、誇張したことを聞かないようにお願いしたいと思います。
  62. 斉藤吉平

    斉藤参考人 ただいまの御質問が、全般的なものにわたるというように私、一応解釈いたしまして、その点でお答え申し上げたいと思うのですが、どうも運輸大臣諮問そのものが、この技術革新時代に対応して、船舶職員法をどう改善したらいいのか聞かれているのに対して、近海全域に拡大をするのだということ、それは裏を返しますと、甲から乙へという質的な低下ということを前提にしての答えというのはそもそもおかしい。技術革新時代にどうしたらいいのだという場合には、その質的な変化に対してどう対応するのか、あるいは質的にどういうふうに再教育体制というものを裏づけしていったらいいのか、その辺から一つの論議が始まりませんとほんとうの解決にならない。そういう意味で、この今回運輸省から出されておりますものが、本質的にまだ十分に足りていない問題であるというように、まず第一点考えるわけです。  もう一つは、情報化時代といわれて、陸上ではいろいろなことをいわれているわけですね。船舶もこの情報化の時代から決して離れることができないもので、特に私どもが感じますのは、いまの船舶ほど情報が逆にいって少ないということで、むしろ情報をいかにして船に多く流すかというのが大事な時代である。その情報というのはどういうふうに入るかというと、船舶通信士の手を経て入っていくわけでございますから、その点を軽く見ているのではないかという点にも一つ問題があると思います。  それから安全の問題でございますが、私は、いまの海難なり安全というものは、立場を変えた把握のしかたをしなければいけない。といいますのは、たとえば東南アジア海域は国際海域でありますが、その場においてたとえばタンカー等、油を運ぶ船というものは非常に多くなって、いま三分の一以上を占めているわけですし、あの航路を通って日本に入ってくる船も多いわけです。そうしますと、船というものは一隻だけではなくして相対的な関係になるということを考えますと、海難というのはただ単なるその船の海難だけではなくて、相対的に他の船に及ぼす問題、あるいは他の地域社会に及ぼす問題がありますので、安全と公害というもののつながり方から考えますと、海難というのは今後は絶対に起こしてはならないという一つのきめ手といいますか、それだけの高度なものにならなければならないというのが、むしろ一般世の中から逆に要望されていることだと思うのです。それだけに、安全というものの質的な向上というものをはからなければいけない。それに対応するのが、ただ単にこの範囲拡大し、質的な低下をはかってみようとか、それだけの答えであっては、これは全然意味がないのじゃないか。  それは、私、最初述べましたように、国際的な信用、特に東南アジアの国々から日本は信頼されなければ、将来日本自身が行き詰まってしまうという、そういう国においても国際信用というものは一番大事なことなんで、そのためにはもう海難を起こしてはならない、そのためには船内の質的な向上こそ大事であるというふうに、全般的な意味から感じたわけでございます。
  63. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 ありがとうございました。
  64. 福井勇

    福井委員長 次に和田春生君。
  65. 和田春生

    ○和田(春)委員 参考人の皆さんには、お忙しいところ、たいへんありがとうございました。なお、私の場合はこのあと引き続いて質問を行なうことになっておりますので、時間もだいぶん経過をいたしておりますから、端的に三、四の点をお伺いいたしたいと考えます。  まず第一に眞木参考人にお伺いいたしたいと思いますけれども、先ほど来のいわゆる船主側の代表的な意見、こういうことを伺っておりますと、特に愛媛船主会の場合に非常に船内秩序がまずい、あるいは通信士の横暴に悩まされているというようなお話でございました。その原因は、やはり甲通の乗船を義務づけておるわけですが、乙通まで広げれば改善をされる、まあ乙通を乗せるようにしないことがすべての原因ではないけれども、最大の原因であるようなお話であったのです。もしかりにこれが原案どおり改正されたとして、乙通の範囲になって事態が改善されなかった場合に、まあ国会の場でそういうお話をなさったのですけれども船主としてどういう責任をおとりになりますか。その点をお伺いしたい。
  66. 眞木克朗

    眞木参考人 船主としての責任をとれということになると、未来のことでどのようになるかわかりませんけれども、現在よりは船内秩序がよくなるということにおいては自信があります。  それと、現実に電信船が百二十五そう中乙通の――百二十五そうじゃなく百三十何そうあるのですが、この近海一区以内で乙通のみで乗船しておる船も十何そうかあるわけです。この船においては、わりあいにそういった船内トラブルも苦情もなく、全日海とのそういうトラブルにおける労務委員会等も開いておることはあまりありません。だから、そういったよいほうに改善されていくとは思います。
  67. 和田春生

    ○和田(春)委員 続けて眞木参考人にお伺いしたいのですが、乙通に変えるという形になりますと、当然それだけ乙通の供給が必要になってくるわけですけれども、やはりいまのいろいろ言われている問題、私どもも事実はそうだとは思いませんが、かりにお話のとおりといたしますと、それは需給関係ということがたいへん影響している。一体その需給関係を緩和するだけの乙通のプールがおありだとお考えですか、どうですか。
  68. 眞木克朗

    眞木参考人 先ほど来の御質問ですが、私たちもいまから十年ほど前に、小さな四百九十九トンの内航船の乙通を義務づける船を持ったことがあります。その当時に、乙種通信士というものが必要だというので地元の高等学校に、四国の特に漁船地方ですが、二級の養成校をつくりまして、それがいま二級の職場がないので、船主船員局はいかにするかというぐらいに、そういう人たちはみんな陸上に流れております。それと、詫間の電波高校が私たち四国の地元にありますので、そういうところにお願いしに行っても、一級をとらなければわれわれできぬのだ、ここで一級をとるような生徒だったら、あなた方のところには行きませんよ、二級をとってくださいと言われますけれども、二級をとって養成するだけのまだ資力もなし、先ほど平田さんが言われますように、そういう乗船の職場もないのであります。そして現実に、愛媛にも職業補導所という県立の職業訓練校がありまして、ここでは二級の養成はぼつぼつ始めております。こういう者が全部陸上に移っておる。ということは、特に船に乗る職場がないから、そういった者が造船所の艤装とか弱電関係に流れておることも事実ですが、そういった若手で海を希望する諸君もいると私は確信しております。
  69. 和田春生

    ○和田(春)委員 先ほど平田さん、眞木さん、お二人とも大体論旨で共通しておった点は、乙種船舶通信士近海区域をカバーするのに十分な能力を備えているのだ、できれば遠洋区域も全部二級資格乙種通信士でいいのだということをお二人とも言われておったと思うのですね。ということは、これはあとの質問との関係で眞木参考人にお伺いするわけですけれども乙種船舶通信士の技術レベルというものが最近上がってきているからそういうふうに言われるのか、あるいはこの中に一部いわれておりますけれども技術革新その他で非常に機械の性能が高まってきた、つまりそういうものを、単に通信の操作だけではなく、いろいろ機械そのものを保守、整備していくという点には、機械が高度化すればするほど高度な技術を必要とされるわけですけれども、それに対応するだけのやはり能力を、最近の乙種船舶通信士は備えてきているからそういうふうにおっしゃるのか、その辺いかがでしょうか。これはひとつ眞木参考人にお伺いしたいと思います。
  70. 眞木克朗

    眞木参考人 和田先生の、いろいろな技術革新に乙通は対応できるのかという質問ですが、そのように思いますが、事実甲通、乙通にかかわらず、現在の技術革新、電気機器、甲板部関係でもそういう無線にお世話になる電気機器にしても、セットされたものが多く、ある一点の故障、原因をつかんでいって直すというのじゃなしに、そっくりメーカーに依頼して、電報を打って取りかえるという作業が非常に多くなっております。こういうふうに私は、技術革新のためにそういったセット化されたものであるというふうに考えておる。たとえばレーダーなんかにおきましても、ある一部が悪いから取りかえてくれとか、船内で直してくれとかいうことは、甲通が乗っておってもほとんどありません。必ず港に入ったらメーカーを呼んでそこを取りかえるというふうな事態、またそういうことで、こわれればメーカーというものの手を経なければならないような点が、ますます技術革新のために多くなっておるのが現状じゃないかと思われます。
  71. 和田春生

    ○和田(春)委員 ちょっとお尋ね申し上げた趣旨とお答えと違うようなんですけれども、事実上船の中でかなりの保守、整備、修理が行なわれているからつつがなくやっているわけで、港に入ったときなんかにそういうことが行なわれると思うのですけれども、私がお伺い申し上げた趣旨は、先ほど眞木参考人がお話しになったことと実は関連するのですけれども、大体一級のとれるような二級通信士の人はわれわれのところに来ない、言えば、まあ六十点すれすれかそれ以下の者しか来ないんだとおっしゃっておったわけなんですね。そうすると、同じ二級通信士の中でも、なかなか勉強しても一級がとれない、いわばすそのほうしか来ないのだということを前提にして、遠洋航海も含めて全部カバーできるということとは矛盾しないかと私は考えたものですから、その点ちょっとお伺いしているのです。
  72. 眞木克朗

    眞木参考人 いや、遠洋航海ぐらいも私は認めてほしいということなんで、この際は近海区域をお願いしておるのであります。  それと、二級の中で、二級のすそのほうではなくて、一級の中のすそのほうであって、二級のほうであれば上等のほうが来ると私は思います。
  73. 和田春生

    ○和田(春)委員 これは論議じゃございませんからあれですが、そこで今度平田参考人にちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、先ほどもお話しになったように、航海、機関の場合は甲種の免状と乙種の免状というのは上下の並列関係でございませんですね。乙種船長から甲一をとり甲長にいくという人もいないわけではございませんが、これはレアケースだと思います。ですから、かりに乙種船長の免状の範囲拡大をする、そうすれば、それは職場拡大に通ずると思うのですけれども、先ほど来皆さん御強調になっているように、一級、二級という資格は、その航海、機関の甲種乙種とは違うと思うのですね。これは上下の関係になっていると思うのです。そういうときに二級の従事範囲をだんだん拡大していく、やがては、希望かもわかりませんけれども海上においては全部二級でよろしいのだ、つまり一級は必要としないという状態にしたい。そういうふうになった場合に、それは本質的に職場範囲拡大になるとお考えでしょうか。むしろ最近はそういう点について、将来性というものを考えずに、太く短く生きていこうという者は、いろいろなことをやりますけれども、将来性というものを考えた場合に、そうなったときの海上は、通信士にとってはなはだ将来性の互い職場、つまり、全般としてレベルの低い職場になってしまうという場合に、それが職域の拡大になって通信士がどんどん海上に来ると考えられるでしょうか。私はどうも逆の結果が出るように考えられてしかたがないのですけれども、その辺のお見通しについてどう考えているか、端的にお伺いしたいと思います。
  74. 平田弘

    平田参考人 職場拡大というのに、先生と私との意味の取り違いがあるかもしれません。ただ単に定員の増である、それが職場拡大である、こういうふうにとるならば、私は、職場はますます縮小していく傾向にある、乗り組みの数は、だんだん船が新しく合理化されるにつれて、そういう不自然なところに勤務する人数を減らしていく形になる、最後に船長がおりることによって無人になる、こういうふうに考えます。  したがいまして、いまの和田先生の御指摘のように、甲板、機関の甲種乙種の免状も、それは乙種免状の者から見れば拡大であれば、今度は甲種免状のほうから見ればその場合は縮小でございます。したがいまして、甲板、機関の場合も、この拡大は、全体から見た場合に実数の変化はないということでございます。したがいまして、通信士の問題甲と乙との同じ通信士の中で、その職域を数で、既得権だとかなんとかいった形でその数を分け合うならば、近海一区以内の船を、乙通の乗れる船を、現行におきましては、必要があるなしにかかわらずつくっていくという以外にはないわけです。したがいまして、私どもはその中における乙通の職域を拡大することは、ある意味においては、それは数の上から見れば甲通の職場のあれになりますが、しかし、甲通はそのほかに伸びる道を持っております。要するに、遠洋船舶の増だけは甲種通信士職場はふえるわけであります。ところが、乙種通信士におきましてはこれがふえる見込みは少ない。したがって、この近海部門に上げたために、それでは乙種通信士職場拡大はそのまま甲種通信士を圧迫するものにはならないと私は考えます。  それについて、では将来乙種通信士として船舶に乗ってくる者がたくさんあるのか。先生は海運界の御出身でございますので、そういう求人のほうをほんとうに御心配になっての御質問だと思いますが、そういう意味からいいますと、私どもは、現在の電波高校のうち一割ぐらいしか甲通をとっていない。あとは二級、乙通である。これが高専になりましたといたしましても、それが九〇%とまでなることはまずなかろう、もしもあったにいたしましても、まだ一〇%前後の二通、あるいはその他の別科だとか短期とかによりますところの二級通信士の養成源というものがたくさんあります。そういう者が一級を目ざす、通信士となったからには、たとえば一級なら一級までおれの能力をぶっつけてみよう、そしてそれをとってみようという意向がありましても、二級としての自分が乗っていく職場がなければ、陸上で勤務しながら一級の通信士をねらい、そして甲通をねらうということは、きわめて困難であろうかと思います。  したがいまして、普通の職階では、これは甲板、機関とは違うかもしれませんけれども、低位の資格の者の定員のほうが多く、そうして上になるほど数が少なくなっていくピラミッド型のほうが妥当かと、こう考えますが、しかしそれは別にいたしまして、現在の通信士の法的のあれから見ますと、甲通の千幾らに対しまして、乙通の職場はわずか百四、五十か、よく考えても二百前後にしかすぎない。そうすると、学校の新卒で、そして新しく二級通信士として出てくる者をそこに受け入れる道を開くことが、やがて一級の卵を仕入れることになる、一級へ伸びる青年たちを受け入れることになる、こういうふうに考えまして、私どもは二級通信士の道を開くことが、将来そういう通信士海上へ誘致する有力な一つの方法ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  75. 和田春生

    ○和田(春)委員 その問題は、ここは討論の場ではございませんので、私はそうは思いませんけれども、これは後ほど政府関係の当局に御質問したいと思うのですが、いま平田さんのお話の中に出てまいりましたけれども電波高校三校が今度高等専門学校に昇格をする。これは教育レベルのアップをねらっていると思うのです。これは結局、二級教育ではなくて一級を目標にするということになるのではないかと私ども理解をいたしております。そうなっていった場合に、平田参考人のお見通しのように、電波高専になったってあまり一級をとれるのはいないんだ、大かたが二級ではなかろうかというようにいけばいいのですけれども、多くの人が一級をとるようになった、そうなった場合に、一体二級の供給源というものを船主としてはどこに求めようとされるのか、その点について平田参考人眞木参考人に一言ずつ、こういう計画がある、こうだということを……。
  76. 平田弘

    平田参考人 先ほども申し上げましたとおり、電波通信大学からの求人源にたよっておりましたのが電波高校のほうに移りましたごとくに、私どものほうでは、そういう場合における二級通信士は、あるいは電波通信高校の中に求める。その中に別科とかそういう制度もございます。あるいは水産高校の制度もございます。あるいはその他の私立のそういう学校もございます。二級通信士の求人源は、またそれなりに開拓の余地は十分にあるとわれわれは考えております。
  77. 和田春生

    ○和田(春)委員 それでは斉藤参考人にお伺いしたいのですが、先ほど組合や船通協は、乙種通信士意見を無視しているというふうなことが眞木参考人平田参考人から指摘をされた。その中に乙種通信士有志会という組織からも要望がひどく来ているというのですが、甲通、乙通を含めましてほとんど全部組織している海員組合で、乙通有志会という組織の存在を御存じか。あるとすれば代表者はだれか、何人くらい乙種船舶通信士を組織しているのか、御存じならお答え願いたい。
  78. 斉藤吉平

    斉藤参考人 正直申し上げまして、私きょう初めて伺いましたので、乙通有志会があるというその名前も実は知りませんでした。ちょっと存じておりません。
  79. 和田春生

    ○和田(春)委員 その点、船通協の中村参考人は専門の組織を持っていらっしゃるのですが、御存じでしょうか。
  80. 中村穆

    中村参考人 この法案が上程される前後から、有志一同という形で、大体八十何名くらいの二級の方の署名をもって、いろいろ運動をされておるということは知っています。また一昨年ですか、毎日新聞に投書をされた鈴木良雄ですか、そういうことも知っています。ただし、鈴木良雄さんという方に関しては、私のほうでいろいろ調べましたけれども、会員でございませんし、通信士にもそういう方はいないということが判明したような次第です。大体八十何名、一部の通信士の方が、特に老齢、多経験者が、学力、基礎力、そういったもの、それから生活条件、そういうことから、再教育を受ける意欲もあまりないというような方で、心情的には非常にわかると思います。
  81. 和田春生

    ○和田(春)委員 この点、眞木参考人は、乙通有志会という代表者並びに実態は御存じでしょうか。
  82. 眞木克朗

    眞木参考人 私のところに来ておるのは、いろいろ電報などみな来ておりますが、名前を、おそれて公表できないというのが実態でございます。
  83. 和田春生

    ○和田(春)委員 実態はいかがでございましょう。何人ぐらいおりますか。
  84. 眞木克朗

    眞木参考人 乙通の区域拡大させてくれという正式な電報はここに持っておりますけれども、有志会の代表であるということの名前は来ておりません。
  85. 和田春生

    ○和田(春)委員 その点はよろしゅうございます。  最後に、斉藤参考人にお伺いいたしたいと思いますが、このような問題がここに出てきたわけですけれども、今後技術革新に伴って海上ではいろいろな変化が出てくると思うのです。そういう場合に、労使あるいは公益、政府当局、関係者の協力というものがたいへん大切でありますけれども、もし今回の改正案のように、非常に時間をかけて議論をして審議会の中で二つ意見併記答申になった。その片方だけをワンサイドに取り上げてできたものが、国会で強行採決をされたというようになった場合、今後のこの種の審議会なり、そういう変化に対応する労使の協力関係あるいは政府、労使の協力関係に、たいへん大きなひびが入るのではないかということを私どもはおそれるわけですけれども、ひとつ海上の労働団体として、そういう点に対しての所見を最後に伺っておきたいと思います。
  86. 斉藤吉平

    斉藤参考人 私、いまの点はきわめて重要な点と考えます。いままで何のために審議会というものが存在するのかというように、各種審議会の意義をも失われてしまうような問題点がここに含まれておりますので、このようなことが一方のみの意見を取り上げてなるということになりますと、将来私どもは、審議会に対しても参加を拒否することも当然あり得ることだというふうに考えております。
  87. 和田春生

    ○和田(春)委員 終わります。
  88. 福井勇

    福井委員長 参考人に対する質疑はこれにて終了いたしました。  この際、参考人各位に一言申し上げます。本日は御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)     ―――――――――――――
  89. 福井勇

    福井委員長 引き続き政府当局に対し質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。和田春生君。
  90. 和田春生

    ○和田(春)委員 先ほど参考人の皆さんから、それぞれのお立場に基づく貴重な御意見を伺ったわけですけれども、この改正案は、申すまでもなく政府の責任で出されたわけであります。そこで、重要なポイントについては運輸大臣に直接お伺いをいたしたいと思いますが、いろいろな扱い等について、政府委員、関係者各位の明確な御答弁を得たいと思うのです。  まず最初に船員局長にお伺い申し上げますけれども、今回の船舶職員法改正につきまして、乙種船舶通信士従事範囲近海区域船全部に広げる、こういう改正案が出てきたわけであります。その改正のねらいですね、船主側がどう言っているとか組合側がどう言っているとかいうことは別にいたしまして、これは政府の責任で出したわけですから、その改正のねらいを政府としてはどうお考えになっているか、その点をお伺いしたいと思います。
  91. 佐原亨

    ○佐原政府委員 これは、結局船舶の安全をつかさどる法律でございますけれども、いろいろこれまでの経緯を見ますと、先日久保先生も言われましたように、改正の動機はやはり需給関係にあるんだろうと思います。動機は需給関係である、問題意識は需給関係から起こりますけれども、ただ、需給が非常に逼迫したから、安全を無視して改正するということは考えられないはずでございますので、一応動機は動機といたしまして、しからばここを改正した場合に、安全上どういう問題が起こるかということを慎重に検討することになると思います。で、審議会では併記答申になりましたけれども、片や、先ほど来いろいろ言われておるような客観情勢がございます。われわれといたしましても、乙通にすることによって近海船の安全が通信の面で阻害されるかどうか、こういうところをわれわれなりにいろいろ検討して判断したわけでございます。  それから、さらに一言申しますと、先生も御存じのように、通信士資格、能力、技量というものは、一応電波監理局の一級、二級という試験によって担保されておる。したがいまして、当然主管官庁である郵政省にもわれわれのほうから相談をしております。それで一応近海まで広げても差しつかえなかろう、こういう御意向もございましたので、それでわれわれは法律改正に踏み切った次第であります。
  92. 和田春生

    ○和田(春)委員 この問題について、私はいまの船舶通信士の問題に焦点をしぼってお伺いしたいと思います。と申しますのは、私の考え方の大前提を申し上げますけれども、安全の確保をいろいろ言われましても、それはだれがきめるかということになるわけであります。結局、それは船を動かしている船主あるいは船員、また監督官庁である役所、あるいは海運関係に関して学識経験のある学者とか、そういう人たちが集まって御相談をなすって、これならよかろう、こういう一応の合意を見て結論が出たことについては、私も船のほうの専門的な立場の仕事をやってきましたけれども、外部から文句をつける筋合いはまずないと考えているわけです。よほどそれが公序良俗に反するとか、あるいは法律上無理なきめであるとかいうような場合は別といたしまして、そういう関係者が合意をしたということについては、それを見守っていくという形でよろしいと思うのです。  そういたしますと、今回の船舶職員法改正については、ほかにもいろいろ議論がございました。議論はございましたけれども乙種船舶通信士通信長として従事する範囲近海区域全域に広げる、この改正案以外については、一〇〇%とまではいかなくても、ほぼ九九%の合意は関係者の間に、いろいろ議論はあったけれども得られていると思う。ですから、今回の船舶職員法改正について、自余の問題については私はここで問おうといたしませんし、それはけっこうだと思います。ただ、乙種船舶通信士に関する問題につきましては、今回の運輸省のとられた提案というのは、非常に片寄ったものだと思うのです。片方は現状、片方は改正をする、その両方のうちのワンサイドを全部とっちゃったわけなんです。やはり中間においても、現状にほとんど近い線から現状どおり、現状に非常に近い線から今回の改正案ないしは改正案に非常に近い線、いろんな幅があるのですけれども、そういう中身を一切無視してしまって、そして併記答申の片方だけを一〇〇%取り上げて提案をしてきた。そこでいま、改正のねらいというのは、そういうことの関係でどこにあるかということをお伺いしたわけです。それに対して船員局長は、動機は需給の関係であるということを明確に答えられたわけです。もちろん、それによって安全を無視したものではないというただし書きがつきました。そのとおりと政府意図を受け取ってよろしゅうございますか。
  93. 佐原亨

    ○佐原政府委員 専門家であられる和田先生からいろいろ御批判があれば、謙虚に承りますけれども、われわれはわれわれなりに検討いたしまして、われわれなりに関係官庁と相談した結果では、安全上さほどの支障はない、このような結論になりましたので、お願いをしたわけでございます。
  94. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういたしますと、安全上さして支障がないということは、別に安全を高めるということは、この改正から出てこないということですね。
  95. 佐原亨

    ○佐原政府委員 乙よりも甲がいいことは当然でございますから、高めることにはならないと思います。
  96. 和田春生

    ○和田(春)委員 そうすると、船舶航行安全あるいは通信の完全な確保という面からいくと、この改正からはメリットが出てこない、残るところは需給関係になる、こういうことになると思うのです。それで需給関係に、こういう改正をするとプラスになるというふうにお考えになっている理由を、端的にお伺いしたいと思います。
  97. 佐原亨

    ○佐原政府委員 たびたび申しますように、動機は需給ではございましたけれども需給のために職員決をいじくるということは、これは邪道だろうと思います。それで、先ほど来いろいろ話がございましたように、今度の資格を緩和することによって需給にどれほどの影響が起こるかといえば、私はあまり起こらないと思います。全体的に、国としてはやはりマクロで見ますから、通信士全体の数字をながめた場合には、さほどの影響はない。ただ、現在は一級と申しますか、甲種通信士が、先ほど来も話がありましたように大手に偏在しておるわけでございます。したがいまして、マクロで見ますと、確かに需給面ではさほどの問題はない。ただ部分的に見ますと、内航中小船主の面で、非常に甲種船舶通信士の採用に悪条件が重なっておる、その面の緩和は行なわれるであろう、このように考えます。
  98. 和田春生

    ○和田(春)委員 改正をするのには、やっぱり改正する理由がなければ私はいけないと思うのですね。意味のない改正をやったのではナンセンスだと思うのです。もちろん、間違っておるものを正すというんならいいのですけれども、先ほど来の質問でも明らかになりましたように、安全の点についてプラスを別に企図したものではないし、それは実現できない。乙よりも甲のほうがいいのは当然だという船員局長のお答え。そして、動機が需給であるという形になると、需給関係にやはりメリットが出る――私は需給関係改正することは是認しているわけじゃないのですよ。いま政府の御答弁が、それが一つの動機であったと、こう言うので、それなら一体どういうメリットを考えているかということについて、全体としては特別な変化はないんじゃないかというお答えだった。ただ、部分的にいろいろ問題が出ている点を緩和することになるんじゃないか、こういうことになるのですけれども、そうすると、この改正というのは、いま問題になっているというふうにお考えになっている部分のために改正をする、そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  99. 佐原亨

    ○佐原政府委員 非常にむずかしい問題をはらんでおるわけでございますけれども、大体甲から乙、丙、あるいは甲長から甲一、甲二、こういうような段階的な資格制度があるわけでございます。ほかの社会でも同じように、通常のあるべき姿はピラミッド型になるのが普通であろう。これは機関、エンジンのほうを見ますと、大体そういう形を保っております。ただ通信の部分だけが、甲種が非常に多くて乙種が少ない逆三角形のような法定職員数になっております。この点は、やや現行制度に何か妥当でない点があるんではなかろうか、こういうような感じを持ちます。今度乙通を広げますことによって、ピラミッド型にはなりませんけれども、大体平衡的な数になると思います。これが、先ほど来平田参考人が言われました、一級の養成機関としての乙通を残すというような意味で、非常にメリットが出てくると思います。
  100. 和田春生

    ○和田(春)委員 いまの御答弁は、ぼくは船員局長らしくないと思うのですよ。といいますのは、ほかの職場のように、たとえば部長が一人である、その下に課長が何人かおる、係長がさらに複数である、課員が一ぱいおる、船長は一人であるけれども航海士は三人乗っておる、甲板員もおる、そういうふうに職場の構成そのものがピラミッド型になっておれば、そういうピラミッド型になります。しかし、現在の船舶通信士職場は、かつては三名船もございました。多くの客船では、通信長が一人の下にたくさんの通信士をかかえていた。いまでも捕鯨の母船なんかにいきますとそういう状況がありますが、しかし、いまはほとんど一人ないし二人です。しかも、一人船というのが非常に多いわけでしょう。そうすれば、そこに甲種を強制するのか乙種を強制するのかによって違ってくるのはあたりまえな話なんで、甲種を必要とするという職場が多かったわけでしょう。乙通が少ないからといって、逆ピラミッド型だから問題があるなんということは、全然ナンセンスなことであって、極端なことをいえば、全部通信長が一人船になった、法律どおりになったとした場合に、遠洋船についてみれば、全部通信士甲種通信士であって、乙通は一人もいないはずです。それは、いま協約ではそういうことはきめられておりませんけれども、かりに船主意図しているようになったとすればそうなるわけでしょう。  そうすると、そのあとがあるのです。あなたの論理でいけば、もし船主の言うような形で、全部を甲種通信士通信長にしたら乙通が一人もいない、こういうのはまことに問題だから、それでは全部を乙通に変えろ、こうなるのですか。
  101. 佐原亨

    ○佐原政府委員 まことに私がまずいことを言ったような気がいたします。いまのことばは訂正いたします。  ただ、資格制度あり方といたしまして、あまりにも乙通の職員が狭過ぎる、こういう現実は確かにあると思います。で、先ほど来からもいろいろありましたように、乙通といえどもりっぱな資格、能力を持った技術者でございますので、この人たちに働く場を与えるという必要性は十分認められると思います。船舶職員法といいますのは免許制度でございますから、まず一般的に禁止をいたしまして、一定の資格を持った人に禁止を解除する、こういうたてまえになっております。その禁止が安全上支障がないという点が結論として出た場合には、なるべく無理に高める必要はない、こういうことは言えると思います。先ほど来言いましたように、近海全域を乙通にして安全上支障があるかどうかを検討した結果、一応その点では問題はない、こういう結論を出したわけでございますから、当然禁止を解除するという意味においては、現在のハイレベルよりも下げてもいい、こういう結論になろうかと思います。現実に現在の甲通が全部乙通になる、ならないということは別問題でございますが、資格制度といたしましては、理論的に可能な限り低目にきめるのが妥当ではないか。これは、法律が最低線をきめるというたてまえになっております以上あたりまえではないか、このように考えます。
  102. 和田春生

    ○和田(春)委員 いま需給関係のメリットということから、質問がだんだん発展をしているわけですけれども、いわゆる無線に従事をする技術者の資格は、船舶に乗るか乗らないかということは前提じゃなくて、御承知のように、電波法によりまして一級、二級、三級と、こういう資格が基本になっておると思うのです。その全体としての一級、二級、三級という無線従事者の中から、船舶に乗り組む者について、若干の海事知識というものが必要でありますから、その海事知識試験を行なって、甲種船舶通信士乙種船舶通信士という資格を与えておる。御存じのとおりだと思います。  そういたしますと、何も船舶の面だけで、甲種船舶通信士が頭でっかちに多くて、乙種船舶通信士が少ないということは、全然問題にも何もならないんじゃないか。かりにいえば、海上というのは陸上と違って非常に危険主要素もある、そこで、海上における通信は、特殊なものは別にして、全部やはり一級通信のものでなければならぬという取りきめがあったとしても、私は一つもふしぎではないと考えるのですね。そうすれば、海上職場は全体として非常にグレードの高い、技術的にも高度を必要とする職場になる。それは、やはり通信に従事をする、あるいは無線技術者としては、一つの目標として、それは将来性のある職場であるというふうな期待もつなげるかもわからない。逆に、先ほど来参考人として船主が述べておられた、これは政府の考え方であるとは申しませんけれども、二級をだんだん広げていく、将来は遠洋まで二級通信士の乙通にしてほしいと思っているくらいだ。かりにそういうことになると、一級、二級、三級という三つのグレードのもとに通信士がおるという中で、海上という職場通信士にとっては資格の低い職場なんだということで、それはいろいろな面で考えてみても、将来うだつが上がらないかもわからない。そして一生懸命勉強して一級をとって、より高度のものになろうとすれば、船という環境は勉強するのにはたいへん不自由なんですね、拘束されておりますから。そうすると、逆にますますそういう形で二級の範囲海上で広がれば広がるほど、全体の無線従事者の中で、海の職場というものは通信士にとって期待ができない、あるいは将来性のない職場だという形で、質のいい者は逃げてしまう、学校を出てもなかなか来ない、あるいは中に一たん乗ってみても、早く足元の明るいうちに陸上に変わろうということになる。特に最近は、御承知のように弱電関係、エレクトロニクス関係で、そういう人たちも非常に必要とされている職場もあるわけです。  そうなっていくと、海上通信自体にとってたいへん大きな問題になる可能性をはらんでおるのであって、需給関係が動機である、そうすれば全体としての需給関係についてはあまり影響がないというふうにおっしゃいましたが、逆に、部分の問題を緩和してやろうとすることが、全体についてはイメージダウンになって、かえって問題を悪化するという原因になると考えるほうが、最近の世の中の動きから見ると私は妥当だと思うのですが、その点について、ひとつこれは運輸大臣にぜひ所見をお伺いしたいと思う。全体の政策を大局的にお考えになっているところで、お感じでもけっこうですが、専門的表面は別として……。
  103. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 法改正の目的についての考え方、多少私、事務当局とはニュアンスが違うかもしれませんけれども需給関係、もちろんこれは局長も、需給関係を原因にしておるんじゃないと、こう言っておるようでありますから、あるいは違っておらないかもしれませんが、ただ通信士機関士の場合も、こういう技術関係の者は同様でありますが、いわゆる技術の開発が進められてきて、それ自体が高度のものに進んでいく場合、これを取り入れてそこで一つの最低限をきめていく。同時にまた機械自体が、たとえば五百ワットなら五百ワットの機械というものが、初期においてはやはり通信距離がある程度限定をされる、だんだん進んでまいって、それ自体が非常に長距離まで操作及び能率が可能である、こういうような事態が出てきた場合に、一応法のたてまえとしては、安全性を考えた上で、これは航海上の安全でありますが、そうしますと、安全性という全体を考えながら、一応技術開発というものとそういう関係というものは調和さしていく。実際の運用上、これは海員組合と船主側が、労務事情等もありますからして、実際はそのとおりにならなくとも、それ以上のものであってもこれは差しつかえないわけでありますが、とにかく、技術が進歩したものに対して、そしてそれに伴う制度が従来のままであるということでは、せっかくの技術進歩というものが無視される危険が出てくるわけですね。  そういう意味でもって、国際的にもあるいは自動アラームですか、こういう制度も利用されて、それが人との関係において機械に置きかえられる、こういうことが国際的にも通用しているわけなんですが、そういう意味において技術革新、技術が進歩した場合に、その関連における諸制度がその観点から進められていく、改正されていくということは、一応私は原則として認めていいんじゃなかろうか。  ただ、これを実際上に適用する場合に、いろいろなその他の条件がありますから、労務関係なり、あるいは従来の慣習なり、あるいはなれの問題もありましょう。そういうことからして、労使関係においてそれはそれとして、これは最低基準でありますから、その上の条件において話し合いで進められておっても、これはもちろん差しつかえはない。そういう意味において、必ずしも局長需給関係を前提として言っておりませんから、私とあまり意見は違わないと思いますが、ただ結果としてはそういうことが起きてくると思います。しかし、そういうことを前提としてではなく、一応法律のたてまえからいうなれば、技術が革新されていった、その技術革新に伴う諸制度の改変ということは、これはその他の場面においても適用されておるわけですね、あえて無線通信士ばかりじゃなく。そういう意味にひとつ考えていったほうが、この問題を考える上においては妥当ではなかろうか、かように考えます。
  104. 和田春生

    ○和田(春)委員 もう少し端的にお伺いをいたしたいと思うんですけれども、私は、こういうことも考えなくてはいけないんではないか。大臣のおっしゃるように技術革新というものは進んでいる、その基本的な大臣のお考え方については、私たちもいま述べられた中に同感の点もあると思うんです。陸上技術革新を見ましても、いわゆる中級技術者というものについては職場がなくなっても、あるいはコンピューターを導入をしていく、そうするとそれに対して高度の技術者というものが必要となってくるという面があると思います。船舶の今後の発展というものを考え、あるいは無人化であるとか無線誘導であるとか、コンピューターによる航行中も含めての全般的な管理という形になりますと、海を走る船にとっては、やはり通信連絡の設定とか、あるいはそれを含めた全体としての機械を管理していくということが、非常に大切になってくるというのが、技術革新という面から見ると今後の方向ではないか。  そういうふうに考えた場合に、単にいまの無線の設備だけを見て、通信の機械だけを見て、性能がよくなったとかいろいろなことを言いますけれども、単なる通信のトンツーの技術者だけと考えて、それは程度の低い面でレベルダウンをしてもかまわないのだというふうなことが正しい方向であるのか、そうではなくて、むしろ現在の航海士機関士通信士もひっくるめまして、そういうような新しい時代に対応する十分な技術的知識を持った者、極端にいえば、船長自体も今後は、そういう非常に高度に機械化をされた船舶という単位を管理する管理技術者の頂点に立つというふうに考えていくと、どうもいま大臣のお答えになった技術革新という方向を見た場合に、今度の改正というのは逆行して、これから非常に中枢になってくるというところを、単なる通信の技術者と考えて、グレードダウンしたってかまわないのじゃないか、それで多少需給が緩和されれば、当面切り抜けられるじゃないか。そして一方において、現在すでに電気通信大学の卒業生は船に来ないと言われている状態があるわけですけれども、むしろ逆に、これはあとから関係者にお伺いしたいと思いますけれども、より高度の教育を受けてくる無線関係の技術者というものを、海の職場からどんどん陸に追いやってしまう、そういう方向を盛った改正ではないかという気がするのですけれども、その点はいかがでございましょう。
  105. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 いまちょうど和田さんがコンピューター関係に触れましたので、実は先ほどちょっとそれに関係してお答えしようと思ったのですが、甲種乙種という内容ですが、私も詳しいことはわかりませんけれども甲種乙種の違いは、たとえば五百ワットの機械を扱う点においては、甲種であろうと乙種であろうとその技能においては差異はない、こう理解していいわけですね。ただ、それ以上の大型を扱う場合においては、これはやはり甲種でないといけないということだろうと思うのですが、少なくとも五百ワットまでは、甲種の人が扱おうが乙種の人が扱おうが、その効果においては全く同一である。甲種乙種の違いは、そういう扱う機械の上にもう一つ、高度というよりは、きっと違った仕事を持っているわけですね、甲種無線通信士というのは。  そこで、いまコンピューター関係のお話が出ましたが、将来は、いわゆる衛星によるところの無線操縦なんというのが出てくるのじゃないかというような話もあるようですね。これは先の話でしょう。その場合には、乙種とか甲種無線通信士、そういうような形では全くないのでありまして、それは全く違ったシステムの上に立ってくるわけですね。それは乙種とか甲種の問題では解決できないのです、そういうコンピューターを使っていくという場合、あるいは総体的な操縦をしていく場合は。もちろん、それらは基礎としては必要でありますけれども、他の技術が入りませんとそのコンピューターというものは扱えない。たとえば、いわゆる旋盤工の熟練工というものが数年前までありました。これは非常な長い間の経験とその人の才能とによって、当時は機械に劣らざる精密なものをつくることができた。しかし、この数年間、いわゆるコンピューター等によるオートマチックの技術の発達によって、とうてい熟練工がやっても及びもつかない密度の高いものを、今度は機械自身がやれるようになった。それは熟練工が操縦するのじゃないのです。そういう高密度の旋盤を機械がやる場合は、いわゆる従来やってきた旋盤工の熟練工が操縦するのじゃなくて、コンピューター及びオートマチックの操縦の技術を持った人がこれを操縦しなければならぬ。でありますから、職種自身がこれから内容が変わってくるわけですね。これから相当オートマチックになったりコンピューターを扱うことになってきますと、従来の甲種無線通信士とか乙種無線通信士というだけの知識ではできないのであって、その上にコンピューター、あるいはソフトウェア、これは別な人がつくりましょうけれども、コンピューターを十分に駆使し得る能力を別個に持っていなくちゃできない、こういうことになりますので、これは性質が変わってまいります。  そこで、私は甲種乙種の違いは、ある種の共通技術については技術は同じだろうと思うのです。ただ、甲種船舶無線通信士というものは、全体的な違った技術を必要とするという面において相違がある。したがって、ある一定区域のものについては、甲種無線通信士であっても乙種無線通信士であっても航海上の安全は危険はない、こういう前提に立って、技術開発に伴うところの法改正というものができたのではなかろうか。したがって、いま和田さんがおっしゃるように、決して技術のレベルが低下をするわけではなくして、機械の発達に伴って当然ある一定区域のものについては、いわゆる乙種無線通信士であっても、その航行上その他においては全然心配はない。こういう点において、いわゆる法改正は技術の革新に伴ってやったっていいじゃないか。  しかし、実際上の労務関係の問題等、あるいは航海になれるとかなれないという問題があります。そういう問題から考えて、それらはまた労使間において話し合いの上で進めていって、この法律乙種無線通信士でなければならないという法律ではないので、もちろん甲種無線通信士であってもよろしいわけです。だから、法律は最低限というか、航海上の安全を考えた上でのものでありますから、これが乙種無線通信士でなければならないという規定になればいろんな問題が起きてこようと思いますが、そういう意味ではございませんので、したがって、そこに甲種無線通信士を使ってももちろん問題はない。あるいは、全体の知識を知っておるという意味においてはよりベターであるかもしれません。そういう意味においては、私自身は、この改正は必ずしも質的低下を呼ぶものではない、かように理解しておるわけです。
  106. 和田春生

    ○和田(春)委員 私の伺い方が多少悪かったので、すれ違ったのじゃないかと思うのですけれども、私は、いまの無線通信士が即コンピューター技術者であれとか、あらねばならないということを言ったわけじゃないのです。そういうようなシステムが発達していった場合に、陸上の場合のように全部有線で結びつけられるというものではなくて、海の上を船は動いておるわけです。たとえば月に行くような衛星の場合のように、ずっと空中を直線ならあれですけれども、球面の海を動いているわけです。そういうような船等の場合に機械化をされて、無線誘導とか無人化とか、全体としてのコンピューターによるコントロールというものが高度化をしていけばいくほど、その通信連絡の設定ということは根本的なもので、それの誤りとかそれが切れるとかいうことになると、ますますスピードアップしていく、船の量も非常にふえてくるという場合に、それがいろんな問題を引き起こすということになるのじゃないか。そうすると、そういう機械化、合理化が進めば進むほど、むしろ船と陸上との通信というものについてはより高度なレベルが要求されていくということになるのじゃないか。  そういう状況の中で、現在のトンツーの無線通信に働くそういう通信屋といいますか、そういう面だけを見て、機械の性能がよくなったから、それは甲から乙にグレードダウンしてもいい、やがては二級通信士で全部カバーさしてもいいではないかという考え方は、これから五年先、十年先を見た場合に、むしろ逆行しているのじゃないかという意味を含めて申し上げたわけでありますけれども、これはいま大臣のおっしゃったことを全部否定しているわけではなくて、多少私の伺い方が悪かったと思うのです。そういう点で、大臣にはまたあとで総括的にいろいろお伺いしたいと思います。  電波監理局長にお伺いしたいと思うのですが、いまの電波教育、また通信士資格、一級、二級の従事範囲、技術レベルに対する試験制度、こういうものについて、最近の機会に改正するというおつもりはございますか。当分いまのままでいこうとお考えになっていますか。
  107. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  現在、先生のおっしゃるように技術革新がどんどん進んでいるわけでございまして、私ども将来の通信というものに対しましていろいろ検討しているわけでございますけれども、少なくともいまの段階では、特に根本的な改正をやろうというところまではまだいっていない、しかし十分に検討は進めている、こういうことでございます。
  108. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういたしますと、いま二級を土台にして取得する乙種船舶通信士の免状並びにその通信長資格範囲が問題になっているわけですけれども、いまの二級通信士に要求されている技術レベルあるいはその試験の水準、そういうものについては、現状は当分そのままでいこう、特に二級をレベルアッブしようということは、いま考えておられないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  109. 藤木栄

    ○藤木政府委員 現在、郵政省におきましては、通信士の国家試験というものをやっておりますけれども、もちろん、その技術のレベルといったものは変化してまいるわけでございまして、向上してくるとそのほかの条件も変わってくるわけでございますので、試験の内容自体は多少変わるということはあると思います。  ただ、現在の制度自体を、たとえば二級通信士というものを、すぐに変えるというつもりはございません。
  110. 和田春生

    ○和田(春)委員 そうしますと、先ほど大臣もちょっと触れられましたけれども、二級通信士の操作し得る、これは機械設備のほうですけれども、空中線電力五百ワット以下、これは二級通信士でよろしいということになっておるわけですが、その点についても、さしあたって改正するというお考えはないわけですね。
  111. 藤木栄

    ○藤木政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  112. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういたしますと、電波監理行政の大もととしては、試験の方法とか今後の改善についていろいろと検討しているけれども現状においては、現行法の体制ということであまり変わりがない、こういうふうに理解をいたしまして、文部省にお伺いいたしたいのです。  今度電波高校を全部高等専門学校に昇格させよう、国立電波高校三校を高専校に昇格させるという、そのねらいは何でございましょう。
  113. 角井宏

    ○角井説明員 お答え申し上げます。  国立電波三高校を昇格いたさせましたのは、最近における電波技術の高度化に対応するための措置でございます。御承知のように、最近の電波技術の革新に伴いまして、これからの船舶通信士にはより高度の資質と技術と教養が要求されますので、それに対応して教育のほうのレベルアップもはかる必要がある、こういう趣旨でございます。
  114. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういたしますと、たとえば一級、二級、三級というような無線従事者の資格というものが、将来大きく改正されるとかあるいは内容的にいろいろ変化をさせるという場合は別といたしまして、現状を前提としたときに、この電波高専の出身者というものに資格をとらせる目標は、一級に置いて教育をさせるのでしょうか。それとも、従来の電波高校のようにまず最初は二級程度で、運のいい者か特にできのいい者は一級をとれることがあるかもわからない、そういうような程度なのか、その辺をお伺いしたい。
  115. 角井宏

    ○角井説明員 旧電波高校の教育がやや不信を招いておりました最大の原因は、あそこでは第二級の通信士資格しかとれないというところにございましたので、当然、第一級の無線通信士をねらって教育を進めていくつもりでございます。
  116. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういたしますと、先ほど電波監理局長にお伺いをいたしましたが、関連をいたしまして、現在、無線従事者の資格あるいは教育のねらいということについては、まず一級を目標にして、当初はかりに二級しかとれなくても、やがては一級にいく、そちらを目標にしての教育体系を国としては考えておられるというふうに理解してよろしいわけですね。
  117. 角井宏

    ○角井説明員 電波高等専門学校につきましては、そういうことでございます。
  118. 和田春生

    ○和田(春)委員 そこで、今度は船員局長にお伺いしたいのですけれども、先ほど船員局長は、船舶の場合においては、一級が多過ぎて二級が少ないと逆ピラミットになると御訂正になりましたけれども、一応そういう感じで二級を広げてもいいという改正運輸省としては設けて、つまり二級のいわゆる通信長としての従事範囲を広げようという改正案運輸省の立場でお出しになった。ところが、同じ国として教育をするほうでは、一級がとれないということが不評判の最大原因だったので、できるだけ一級をとらせる方向に持っていこうという点について、ぼくは政府部内に意思不統一があるように考えられてしかたがないのですけれども、それはそちらでおやりになることなんで、運輸省として関係がないとすると、二級を広げるということに対して、二級の供給源を、国としての教育体制をどこに求められるお考えですか。
  119. 佐原亨

    ○佐原政府委員 一級の需要は、今後の大量建造、それから先ほど先生もちょっと触れられました今後の船舶の近代化、コンピューター化、こういった面で、むしろ一級にそちらの仕事をやってもらう、それで二級のほうは、もうちょっと程度の低い近海程度の仕事をやってもらう、こういう考え方でスタートしておるわけでございます。一級を養成することが決してむだだとか、必要でないとかということを申すつもりはございません。したがいまして、電波高専昇格して一級養成を目ざして教育が行なわれることは、一向差しつかえないどころか、たいへんけっこうなことである、そのように考えております。  ただ問題は、先生おっしゃる二級の供給源でございますけれども、これは先ほど来平田さんも何回も言っておりましたが、一級を目ざしてやりましても必ずしも一〇〇%受からない。これは見通しでございますからわかりませんけれども現状からいいますと、電波高校の専攻科、定員百五十名おりますが、そのせいぜい二割程度が一級に入っていくという現状である。こういったような現状、これはこれからのカリキュラムの検討その他でかなり上がってはくると思います。そのほかにも短期大学あるいは別科、そういったものを利用する。それでも足りない場合には、これはまた文部省との御相談になりますけれども、新たな定員増、こういった措置を講じながら供給源をはかっていきたい、このように考えております。
  120. 和田春生

    ○和田(春)委員 いまの船員局長のお答えは、私は非常に矛盾していると思うのです。といいますのは、片方では、ともかく一級をとらせることに教育の目標を置くと言っているわけです。電波高校がまさに不評判であったという一つ理由は、電波高校の従来の教育レベルではなかなか一級がとれないというところにあった。それは事実だと思うのです。そこで、その教育のねらいというものは、国が全力を尽くして努力をして成功すれば、電波高専の卒業生は、一級をとる者の数がどんどんふえていくわけです。相対的に二級にとどまる者の数は減ってくるわけです。従来幾ら勉強しても一級をとれなかった人は、これはだんだん減耗していくわけですから別としましてね。また、こういう人はだんだん年もとられていくわけです。しかし、教育体制としてはそういうことになっていくわけでしょう。  そういう中で、今度の運輸省改正案の原案どおりでいくとすれば、近海全域に、通信長としては二級でいいという形にするわけですから、いままでたまっておったストックというものは別にして、やはり将来新しくやるという場合に、二級の供給源は国の政策体系の中では減ってくるわけです。いまでさえも全体として通信士需給関係が逼迫しているという中で、ぼくはこれは完全に逆方向を向いていると思う。そうすると、その二級の供給源というものは民間にまかせるお考えなのか。国としてはまた別科であるとかなんとかいうものを考えますけれども、それは結局二級しかとれない者を間に合わせにやろうということですから、いまのように全体として若年層が減ってきていろいろな問題が出てきているときに、そんなものをつくってみたからといって、喜んで来るという人は少ないはずです。もしそういう別科とかなんとかで応急にでっち上げるということが通用するぐらいなら、いまの電波高校定員をふやしても、どんどん応募者が殺到してきて、非常に質のいい、一級のとれそうな人が来るはずなんですけれども、結局、あなたが先ほどから言われている電波高校の評判が悪かったということと、もっと評判が悪い、応急の間に合わせのものをお願いしようなんということは、根本的に食い違いがあるように私は思うのですが、そういう形で改正して、運輸省として二級の供給に責任を持てますか。
  121. 佐原亨

    ○佐原政府委員 二級の免状を持った人は、いままでは非常に狭い職域しか与えられなかった。したがって、来手がないのはあたりまえなんです。それが今度は近海通信長にまでなれるということになれば、当然希望者はふえる。これは見解の相違かもしれませんが、われわれはそういうふうに見ています。
  122. 和田春生

    ○和田(春)委員 ということは、二級どまりでいいということですよね。近海通信長は一級をとる必要はないということです。その人が遠洋の通信長になりたいと考えれば、どうしても勉強して一級をとらなければいかぬ。ところが勉強して一級をとっても、そういう職場の遠洋船を持っているのは大手の会社で、大体終身雇用制を主体にしておりますから、よほど人手がなくなったとか、急に船腹が増強してひっこ抜きをやるという場合以外には、厚い壁で入れないということになるわけです。そうすると、二級については職場は広げたことになるかもわからないけれども、そこは二級しか必要としないわけですね。一級を必要としない。そうすると、それは結局電波高専からの落ちこぼれか、どうにもしようがない質の悪い者しか流れ込んでこないということになりはしませんか。優秀な人がどんどん来るという保証はどこにございますか。
  123. 佐原亨

    ○佐原政府委員 落ちこぼれというと、個人に対して非常にあれになりますけれども、人それぞれの分があるわけでございますから、それで、その船会社通信長として一生を終わりたいという人がおれば、それはそれでいいのではなかろうか、私はそういうふうに思います。
  124. 和田春生

    ○和田(春)委員 これは見通しの問題だから、ここで答えは出ませんよ。しかし方向は逆でしょう。つまり近海でも通信長になれる、そうなればそこに二級が来るのだという考え方が正しいならば、無理して全部電波高専に上げて一級を目標の教育をしなくても、二級でも通信長になれるのだから、従来の電波高校でもいらっしゃいといってやるのがあたりまえでしょう。それは二級しかとれないから評判が悪い。そして片方では電波高専昇格を、同じ制度の中の文部省でやられているわけです。少なくとも現行レベルにおいて一級を目標にしておるわけです。運輸省のほうは二級でも通信長になれる職場を広げていくということは、明らかに政策方向としては、いかに強弁しようとも、それは逆を向いているじゃありませんか。いかがですか。
  125. 佐原亨

    ○佐原政府委員 一級の需要が現在にとどまっておるということですと、あるいは先生のおっしゃるようなことになるかもしれませんが、一級の需要は今後どんどんふえるわけでございます。
  126. 和田春生

    ○和田(春)委員 一級の需要がどんどんふえれば、電波高専で一生懸命勉強して、一級になってみんなできるだけいいところへ行きますよ。一回受けてだめなら、二回でも三回でも四回でも受けて一級をとって、あなたが需要のふえるといういいところへ行こうとしてみんな努力しますよ。どうしてもとれない人は中におるでしょう、能力上。二級に残るでしょう。そういう形にいくわけでしょう。だから、一級の需要がどんどんふえるということは、いまの電波高専をつくるという教官体系からいけば、二級の教育に対しての国のウエートというものはどんどん低下をしていって、もっぱら一級の方向に向いていくということになりはしませんか。船にも行けるのだから、おまえさん無理して一級をとらぬでもいいと、あまり勉強せずにほいほいやっておって、二級をとったら近海区域の何千トンかの局長になれるよ、それでよかろう、そんな教育はできないでしょう。
  127. 佐原亨

    ○佐原政府委員 二級をとった人はもう二級どまりでいいのだ、ある人はそういうふうに考えるかもしれませんが、中には、もっと勉強して一級になるという人が当然おると思います。それはそれでいいだろうと思います。
  128. 和田春生

    ○和田(春)委員 これは水かけ論ですが、あなたほどうも言っていることがわからぬらしいのだけれども、一級の職場を広げていって、一級で行ける範囲が広くなるというと一番将来性のある職場なんです。そうすると、二級の人はやはり一級をとりやすい条件を目ざしますよ。船会社へ行くのなら大手の船会社へ行きますよ。それから陸上へ行くのなら、勉強して一級をとりやすい環境、勉強のしやすい環境を選びますよ。船舶通信士の条件の悪い、待遇のあまりよくない、そして不安定なところへ行くようなことは考えられないはずですよ、当然。そういうことをやはり考えておかないといけないではないか。  しかし運輸省は、二級で通信長ができる職場を広げてやるという形を考えている。ところが、電波関係の仕組みなりあるいは教育の面では、むしろ一級に多くやろうということにねらいを置いておる。二級を養成するという独特の機関は何も現在考えられておらない。そこがたいへんな矛盾じゃないですかと言っておる。電波高専にして、これは一級を全部目標にいたしますよ、しかし、近海汽船の通信長なら一級の資格が必要ないのだから、二級で今度は乗れるようになったのだから、二級を目標にした教育をこういうふうに国として準備をいたしました、したがって、片方は電波高専に上げても、こちらはいいのですというのは矛盾じゃないのだけれども、それがいま何にもなくて、全部電波高専にしてしまう、あとは民間まかせ、あなたまかせということになるわけです。いまの二級の底がついたら、あと新しい供給をどうするのですか。
  129. 佐原亨

    ○佐原政府委員 今度の改正と同時に、そういった措置をとらなかったという点が問題にされておるのかもしれませんが、先生もとっくに御存じのように、先ほど来もいろいろ話が出ましたが、現在の労働協約の改定をめぐりまして、労使がほんとうに話し合いを始めておるわけでございます。もしこれが――政府はこれには介入するつもりはございませんけれども、かりに一名になったといたしますと、需給関係は非常に逆転してまいる。そうしますと、少なくともある時期は供給について投入する必要はない事態がまいります。それでいま政府としては、その将来の需要に応じて養成をどうするかということをきめるには、まだちょっと時期尚早である、こういう段階にあるというふうに判断しております。おっしゃるように、もし永久にもう二名でいくのであって、船がどんどんできてこれだけの需要があって、二級の需要もこういうふうになるということがもうはっきり確定しておるならば、当然文部省と話し合いをいたしまして、養成機関の規模拡大その他を講ずる必要があろうかと思います。ちょっと非常に微妙な時期にございますので、先生のおっしゃるように、これの改正と同時にそちらを手当てしてないという御批判は、ちょっと勘弁いただきたい、こう思います。
  130. 和田春生

    ○和田(春)委員 時間もあまりありませんので、最後にこれは運輸大臣に総合的にお伺いいたしたいと思うのですけれども、いまのやりとりを通じて大臣もお聞き願ったと思うのですが、結局、需給関係というものがその頭にきて、そしてそこのところでこの法改正をしゃにむにやろう、そういうことが表に立って、全体としての通信士教育体制であるとか、教育のあり方であるとか、あるいはほんとうの意味の大局的立場に立った需要関係の見通しというものをほとんど欠いたまま、併記答申の片方の意見だけをとって出してきている、私どもとしてはそういう印象を強く受けるわけです。これは私は非常に残念なことだと思います。冒頭にも申し上げましたように、関係者が合意をしたということであるならば、これはわれわれからくちばしを差しはさむ必要はないと思いますけれども、そういう問題をはらんでいるにかかわらず、併記答申二つ意見が出ている片方だけを全部とったということについては、これからの問題を考えた場合に、先ほど来いろいろと他の委員方々からも追及がございましたけれども、海運政策、船員対策、そういうものを考えていった場合、私は非常な問題を残すのではないか。短兵急に過ぎた。改正をするのならするで、もっとじっくり腰を据えて、そして関係者の、一〇〇%とはいかないけれども、やはり九割以上の合意を得た上で問題を処理してもおそくはなかったと私は思いますし、また、そういう中からもっと知恵のいい、喜んでもらえる改正というものもあるいは出てきたかもわからない、こういうふうに考えるわけです。  こういう点におきまして、私たち野党側は、この改正案については、そういう趣旨によってこの点削除をしてもらいたい。これは船員側からも要望があったわけですけれども、そういう強い要求を持っているわけですが、少なくとも政府として、この種の問題を今後のことを考えて修正に応ずる、そういうお考えがあるかないかという点をお伺いをいたしたい。関連してこの種の問題についての大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  131. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 これは技術的の問題でありますので、実際の運用上種々の問題があろうと思います。ただ、たとえば飛行機のパイロットの場合も、いわゆるジェットエンジンを動かす操縦士、そういう場合におきまして、国際的な、といっても遠距離国際ですね、それを動かす操縦士も、それから幹線、といいますれば札幌から福岡まで、これは国内幹線航空路といっていますが、その操縦士も、同じような資格の人ではあるわけですが、ただ、やはりいろいろ気象条件とかその他の条件等、あるいは飛行機のくせもありましょう、そういうものを覚える、身につけるために、当分の間、そういう意味においては幹線で数年間大いにやった上で、それから国際線に回しておるようであります。これは飛行機の場合ですね。平たく言えば、やはりそういうふうに理解してもらえばおわかりが願えるのではないか。必ずしも二級無線士といいましょうか、乙種船舶通信士職場を広げるということだけではなくて、やはり一級船舶通信士になるためには、内容等においてももちろんこれは考えていかなければならぬ。  たとえば、現在の試験の内容におきましても、甲種船舶通信士海上の気象及び海象ということで、その他は乙種船舶通信士でも同じようでありますが、ところが、乙種船舶通信士日本付近海上気象、これだけが試験の題目になっておるようであります。しかし、甲種のほうはそうではなくして、海上の気象及び海象、こういう広い知識がなくてはいけない。その他の条件は全く同じようなことを要求しておるようであります。また、一級無線通信士のいわゆる資格要件の中には、たとえば欧文による普通語の速度が一分間に百二十、それに対して二級無線通信士は一分間に百字、こういう差があるようですが、これは二十字の差であるということで、正確度の問題とはちょっと違うようでございますが、そういう意味において、やはり一級無線通信士あるいは甲種船舶通信士というものを――段階的にやはり乙種船舶通信士のある程度の人を持つ必要があるという意味においては、乙種船舶通信士の働く余地もある程度これは考えておく必要があろうと思います。  しかし、いま和田さんがおっしゃるように、全体としてこれから世の中の知識がだんだん広くなってまいりますから、いろんな意味においての、技術だけではなくその他の条件等も身につけるほうが好ましい。そういう意味においては、ある程度中距離の航海に従事する船舶通信士も、でき得べくんぱ甲種船舶通信士であるほうが好ましいと思います。しかしながら、やはりこの甲種船舶通信士になるためにはそれだけ試験が要る。試験の中にはいま言ったような違いがあります。これは、おそらく船員局としては試験の内容を、今度従来の試験の内容よりも当然に広げていかざるを得ない。  そういうことを考えまして、いわゆる審議会においてもいろいろ議論のあった点は、十分に今後実行するに上においてはこれを取り入れまして、反対意見もあったわけでありますから、反対意見の聞くべきものは十分に実行の上で生かしていく、こういう考え方でまいりたいと思いますし、また皆さんが、十分これは専門家がおそろいでありますから、この中においていろいろ妥当なる線ができますれば、これは決して大臣としてこれを無視するものではありませんし、十分に関係者の間で話し合いがつくなれば、その根幹を曲げない程度における修正については、私自身が反対する考えはもちろん持っておりません。ただ、できれば、そういうぐあいに技術革新時代でありますから、常に一歩一歩前進する体制を持っていくことが好ましいというぐあいに考えておりますので、このような改正案を出したわけであります。
  132. 和田春生

    ○和田(春)委員 最後に、これは要望意見ですけれども、どういうふうになるかは、これは委員会の審議、国会できまるわけでございますが、この問題については、先ほど来の船員局長の答弁によりましても、安全という面についてはメリットがない。むしろ問題が出るかもわからない。それから全般の需給関係についても、これは船員局長自身がお答えになったことですけれども、あまり影響はない。部分の問題については緩和をするかもわからない。私どもの見解によれば、将来性ということを考えた場合に、たいへん問題のある改正である。また、電波教育の方向と職員法改正の方向というものは、多分にちぐはぐなものがあるというふうに非常に問題を含んでいる。メリットといえば、一部の労務管理の悪いためになかなか船員を雇えない船主要望にこたえたという点において、皮肉な言い方をすればメリットがある、こういうふうにしか考えられない改正――改正というよりも改悪だとわれわれは考えるわけです。  イデオロギーの問題がからんでおるとか、基本的な政策の問題について、与野党の意見が対立があるとかというような問題は、これは政府与党の責任において、対決をしても問題を出されるということはあり得ると思います。しかし、このような技術的な問題につきまして、こういう形で野党側がまっこうから反対せざるを得ないというような改正案を軽率に出される――軽率ではないと思いますけれども、そういうことは今後の国会運営、また今後の海上の労使関係につきましても十分考えていただきたいと思いますし、これは特に大臣を補佐する事務当局にも強く要望いたしまして、私の質問を終わることにいたしたいと思います。
  133. 福井勇

    福井委員長 次回は、明後十六日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時十五分散会