○松本(忠)
委員 いまの総裁の腹の中も、ほんとうのことだろうと思うのであります。そこで、いずれにいたしましても企業努力によってこれを達成してもらいたい、そして
国鉄の
赤字を少なくしてもらいたいということは、
国民ひとしく望んでおるところでありますから、これに対する怒力は官民あげて、もう全体でやらなければならない問題だと思うわけであります。
そこで、その問題は、第一線に働いている人々この人たちの企業努力がなければとうていその目的の達成というものはできないわけであります。しかしながら、先般
東北線におきまして起きましたあの事故、二月十一日の事故、あれはもうくどくどしく申し上げる必要もございません。これはもう言語道断だろうと思うのです。これに対して一言も弁解の余地はないだろうと私は思うのでありますけれ
ども、それについて、やはり何かが
国鉄に欠けているんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけであります。その具体的な例として
一つ私、申し上げてみたい点がございます。
それは、
大臣はもうすでに総裁に対して、「貴職は」云々というような、いままでにかってないような警告を発せられておりますけれ
ども、ほんとうに総裁も一生懸命やってもらわなければならぬし、それからまた、第一線の人も一生懸命やってもらわなければならぬことは当然のことでありますけれ
ども、現実に第一線においてどういう姿があったかということを、私は
大臣に聞いてもらいたいわけなんです。
これは、もう時間もありませんからかいつまんで一応申し上げておきますが、私の知っている人であります。江東区の亀戸七丁目の三十一番地の四というところに住む川澄フヨさん、五十二歳の御婦人でありますけれ
ども、こういう方があのあづま2号に乗っておりました。川澄さんは石巻へ行く予定でございまして、あづま2号の二号車、グリーン車に乗っておったわけでありますが、あの事故にあいました。そうして床にたたきつけられてめがねがどこかへ飛んでいってしまった、こういうわけでありますけれ
ども、幸い軽症だった。医者で一応手当てをしてもらいたいという要請に従って大田原の藤田病院に行って手当てを受けて、午前五時三十分ごろ再び汽車に戻ったそうであります。
御
承知のように、あのダイヤで参りますと、午前七時十七分に仙台に当然着かなければならないわけでありますから、食事の支度、そういうものは一切持っておりません。そして五時半から実に三時間、八時半までというものは、食べるものもなければ飲むものもない。その事故車に乗って寒さにふるえていた。これは、別に彼女一人じゃないわけで、全体がそうだったわけであります。ところがその当時、八時半ごろには、現場には対策本部というもののテントが張られて、しかも、その対策本部には炭がかんかんおきて、そうして偉そうな人が車座になって炭に当たっているということです。そういう事態があって、一方汽車の中はどうかといえば、汽車賃を払ってわざわざ事故にあって、そしてお客さんは寒さにふるえて、これはほんとうにお客さんのほうは気分がかんかんですよ。片方では炭火がかんかん、こういう
状態なんです。
それで、八時半にいよいよ列車が出るということになった。前部の車に乗ってもらいたいということで二両切られた。西那須野でまた五両切られた。結局車内は大混雑だった。こういう
状態で、黒磯に行くまではほんとうに苦しい思いをした。そして黒磯で別の車に乗りかえてやっと混雑が緩和されたそうですけれ
ども、この黒磯においても弁当を買うこともできなかった。白河でも買うことができなかった。とうとうすきっ腹をして石巻の親戚まで行ったわけであります。その石巻の駅でも、
国鉄の人に、この急行券の払い戻し、この問題について聞いたところが、けんもほろろだった。それはわからないな、こういうことを言った。とても冷たい仕打ちだったと非常に憤慨しているわけです。
私はこういう話を聞きまして、
国鉄の「国」の字は、残酷物語の「酷」の字にしたほうがいいんじゃないかと思うのです。これが実態なんです。こういうことは出てこないのです。新聞にも報道されない。しかしこれが事実だとするならば、これは何とか
国鉄の根本的な精神というものを改めなければ、いかにその機械上物理的にいろいろの方策を講じたとしても、これで事故は絶滅しないのじゃなかろうか、こういう点を私は非常に心配するわけです。高橋という運転士が酒を飲んでいる、普段から酒飲みだったということは十分わかっていた。しかも、点呼には何人もかかっているわけです。幾つも幾つものチェックがされているにもかかわらず、それが発見されなかった。
こういう点から
考えまして、要するに
国鉄の第一線の方々、そして中間管理職にある方々、こういう方々の姿勢というものを抜本的に
考え直す必要があるのじゃなかろうか。しいて言うならば、御婦人をはじめそうでありますけれ
ども、せめて黒磯とかあるいは白河で駅弁を、無料で配布しろとは言いませんけれ
ども、八百人乗っていたのですから、少なくとも五百本や六百本の駅弁をすぐ手配させて、そしてお茶ぐらいつけて買ってもらっていいと思うのです。そういうことすらやる気がない。気がつかない。こういうところに私は問題があると思うのです。この点についてくどくどしい弁解は私は聞こうと思いませんけれ
ども、簡単でけっこうでありますけれ
ども、
大臣と総裁から一言ずつ伺っておきたいわけであります。