○山崎昇君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
一般職の職員の給与に関する
法律等の一部を
改正する
法律案に関連して、公務員の賃金に対する
政府の基本的な見解について、若干の
質問を行なうものであります。
本年度の人事院勧告は、七〇年代の新たな前進を目ざして戦った春闘の成果と、二百五十万公務員労働者が統一して戦った結果として、要求が多少反映したものと言うことができるのでありますが、長年にわたる低賃金と激しい物価高、さらには、
生活様式の急速な変化を
社会的にしいられている公務員労働者の苦しい
生活実態から見れば、赤字の一部を解消することにはなり得ても、
生活を改善するものとはならず、公務員労働者の切実な統一賃金要求に照らすとき、不満と言わざるを得ないのであります。
特に今回の勧告は、大多数の下積み職員にはわずか四千円から八千円ほどの引き上げであるのに比べ、次官、局長クラスのいわゆる高級公務員は、
一般職の水準をはかるに上回り、特に次官に至っては実に三〇%に近いけたはずれの賃上げをしているのであります。世論を代表するといわれる新聞、テレビの社説、論説等もこの点を指摘し、「常識はずれの上厚下薄」、あるいは「トップのお手盛り」と論断しているのであります。さらには、わずか六億円しか節約にならないといわれるいわゆる高齢者の昇給延伸を実施しようとして多くの公務員労働者の憤激を買っているのであります。
政府は、昨年来の公約どおり完全実施の
方針をとったのでありますが、人事院発足以来二十三年、人事院が実施時期を明記して勧告してから実に十一年の歳月を経て、ようやくにして実現したものであります。まさにおそきに失したと言うべく、この間における公務員労働者の
経済的損失は実に四千億円と算定されているのであります。
また、
政府は、新
経済社会発展計画の中で、賃金指標を設定し、賃金水準の上昇を年一二・一%程度に誘導したいという所得
政策的意図も示しているのでありますが、人事院勧告制度という最大の安定賃金制度に公務員賃金を縛りつけ、
経済計画のワク組みの中に押し込もうとしているものと思われるのでありますが、七〇年代における公務員賃金のあり方並びに公務員賃金の決定方法等について、まず、
総理の
所信を承りたいのであります。
次に、ただいま提案されております給与
法案の中に、高齢者の昇給延伸の
措置が含まれているのでありますが、この
措置は、該当する高齢職員の現在及び将来にわたる
生活と
権利にかかる重大な勤務条件の変更であり、さらには給与、任用の制度と運用全般にかかわる重大問題であると思うのであります。特にいま高齢層といわれる年齢に達している者は、戦前、戦中の
日本社会の激動の中で数々の辛酸をなめ、戦後の悪条件の中で公務に精励してきた功労者なのであります。しかるに、給与面では、途中採用による減俸
措置、あるいは
昭和三十二年の給与改定以前の頭打ちなど幾多のたび重なる損失をこうむり、近年の給与改善によっても、なお回復されていない
状態にあるのであります。このため、普通昇給による給与の増額は欠かすことのできない予定収入であり、これの停止あるいは減額
措置は家計に深刻な打撃になることは申し上げるまでもありません。加えて、
現行の年金制度及び退職手当制度は、俸給月額を基礎に算定される結果、普通昇給の増減がそのまま現在及び将来の所得にはね返る仕組みとなっており、それだけに昇給制度の意義と
役割りは大きく、軽々しく変更させてよいものではないと思うのでありますが、この
措置を撤回する意思はないか、見解を聞きたいのであります。
次に、退職手当の問題についてお尋ねいたします。国家公務員の退職手当制度は、公務員の勤続に対する報奨と退職後の
生活を保障することを
目的としていることは言をまちません。ひとり高級公務員のみが多額の退職金を握り、しかも天下りして優雅な余生を送っていることは多くの批判の的となっておりますが、大多数の公務員は、在職中の低賃金とも関連し、その額がきわめて低いため、退職後の
生活保障になっていない現状にあるのみならず、再就職の機会をさがし回らなければならない
状態にあるのであります。
現行の退職手当は、
昭和三十四年に定められて以来、すでに十年以上も経ており、多くの矛盾が山積しているのでありますが、今後いつごろをめどに
解決される考えか、また退職手当を含めた高齢者問題がどうあるべきなのか、その
施策を示すことが先決であると思うのでありますが、
所見を承りたいのであります。
次に、
大蔵大臣にお尋ねいたします。例年、八月に人事院勧告が出され、年末に臨時
国会が開かれて給与
法案が
審議され、年内ぎりぎりに差額が支給されるのが何か恒例のごとくなっているのでありますが、六カ月分も七か月分も差額が支給されるということは、
政治的にも決して好ましいことではないと思うのであります。現在、公務員の給与改善に要する経費は、
一般会計
予算の中に五%を組み、残りを予備費で対処する形式をとっておるのでありますが、過去における経験値、趨勢値等を見ながら、当初
予算に
一般財源として組み込み、勧告後、直ちに内払いができる
予算制度が確立できないかと思うのでありますが、今後、給与改善費をどう当初
予算に組み込んでいくかという基本的な問題とあわせて見解を聞きたいのであります。
また、去る八月二十五日、
政府は人事院勧告の取り扱いを決定した際、給与改定財源の一部に充てるため、
行政経費の八%削減をもあわせてきめておりますが、前例のない高率の節減率で、はたして
行政効率が落ちないかとも思うのでありますが、本年度の財源
措置をどうするのか、補正
予算を組むのか組まないのか、お答えをいただきたいのであります。
次に、人事院総裁にお尋ねいたします。まず、実施時期の問題であります。人事院は、四月調査八月勧告の
方針のもとに、三十五年以来五月実施を勧告しているのでありますが、民間の春闘や公労委の仲裁裁定はいずれも四月から実施しているのでありまして、名実ともに民間給与との均衡をはかるためには、四月実施が当然だと思うのでありますが、今後の人事院の
方針について
伺いたいのであります。
次に、指定職俸給表の格づけ変更に伴う下位等級者の底上げ問題についてお尋ねいたします。
昭和三十九年の指定職俸給表の設定により、高級公務員につきましては
一般職俸給表と分離したのでありますが、本省局長クラスは、当初二等級であったものが、この制度の創設により一段階上位の一等級にランクされ、その後、いわゆる一局削減によって指定職乙に格上げし、今回さらに甲に移行するという、実に五年間に三段飛びの運用となっており、実質的に賃上げを運用面でも実行しているのであります。その反面、下位等級の職員につきましては、三十二年以来ほとんど一定のワクに閉じ込めているのであります。このようなことは、公務員に非常な不信感を与え、上級職と下級職との間に断絶を画す以外の何ものでもないと思うのでありますが、高級公務員の職務評価をどう変えたのか、今後、下位等級につきましてもバランスのとれた底上げを行なうのかどうか、聞いておきたいのであります。
次に、年金制度についての意見についてであります。国家公務員の利益擁護の
責務を負う人事院としては、高齢層職員の給与、任用あるいは退職条件等の全般的な待遇問題について慎重に
検討しなければならなかったのではないかと思うのであります。特に、退職後の所得保障である年金制度につきましては、国家公務員法に、
国会及び
内閣に意見
申し出の権能が与えられているにもかかわらず、この権能を放棄し、高齢者の昇給延伸に踏み切ったことは、片手落ちと言わざるを得ないのであります。人事院は今後この年金制度に対する権能をどうなされるおつもりか、見解を聞きたいのであります。
また、今回の
法案を見ますと、実質的な面にわたる多くの部分がすべて人事院規則にゆだねられており、高齢者の昇給延伸の当面の
措置として人事院が説明していた部分が、人事院の一方的な規則の
改正で変更されることは、
国会を軽視するものと思われますが、人事院のいう当面の暫定
措置はいつまで存続させるつもりなのか、あわせてお答えいただきたいと思うのであります。
次に、特別給についてお尋ねいたします。人事院は、「民間における特別給の支給割合には、職務の段階等に応じて相当の差異があることが明らかとなったので、
一般職国家公務員におけるこの種給与のあり方について、今後さらに
検討する必要があると考える。」と、本年度の報告の中で述べておりますが、民間の特別給と公務員のそれとは、おのずと性格を異にしているのでありまして、これが実施されることは絶対に許さるべきではないと考えるのでありますが、総裁の見解を聞きたいのであります。
次に、寒冷地手当についてお尋ねいたします。この手当につきましては、
昭和四十三年に抜本
改正があったのでありますが、衆参両院の
内閣委員会における附帯決議及びその後における物価等、
経済の変動に伴い、人事院としても、すでに勧告の時期にきておるものと判断されますが、いつごろを目途に勧告をされるのか、その見通しについて聞きたいのであります。
次に、
行政管理庁長官にお尋ねいたします。
政府は八月二十五日、人事院勧告の取り扱いを決定した際、それまで十月あるいは十一月ごろを目途に
検討していた、いわゆる第二次定員削減
計画を急遽繰り上げ、
一般非現業職員の三年間九%定員削減、三公社五現業並びに
政府関係法人への削減
計画の拡大、
行政機構改革と省庁間の配置転換の
強化などをあわせて決定したようであります。このことは、安上がりの
政府と一方で宣伝しながら、他方では自衛官、警察官等、治安
関係職員を増員し、防衛力
整備計画の増強や、軍国主義復活への道を、一そう
強化しようとするもの以外の何ものでもなく、勧告完全実施を口実として、そのための
財政費用を新たにつくり出そうとするものと言わなければなりません。さきに、
政府が決定し、実行している第一次定員削減
計画でさえ、完全に消化し切れていない
状態にあるにもかかわらず、さらに高率の三年九%の削減は、公務員に労働過重をもたらし、ひいては
行政能率の低下をも招くものと思われるのでありますが、完全実施と定員削減との関連を、基本的にどう認識されておられるのか
伺いたいのであります。
次に、定員外職員の問題についてお尋ねいたします。私は、かつて総定員法を
審議した際、
佐藤総理に定員外職員の問題についてお尋ねいたしました。その際、
総理は定員外職員の存在にさえ驚いたのでありますが、その
実態を調査し、すみやかに
対策を講ずることを約束しているのでありますが、その後一年半たった今日まで、
対策を講ずるどころか、いまだその調査結果すら公表されていない
状態にあるのであります。その約束はどうなったのか、また、この定員外職員の問題を放置して、いたずらに定員削減のみを急ぐ
政府の無為無策は、まさにここにきわまったと言っても過言ではないと思うのであります。この定員外職員の定員化についてどのようになされるのか、また、身分の確立、労働条件の改善など、本年三月二十八日、本院
予算委員会における私の提案に、どのような
対策を講ぜられるのか、
総理並びに
行政管理庁長官の
所信をお聞きしたいのであります。
次に、自治大臣にお尋ねいたします。申し上げるまでもなく、地方公務員の給与制度につきましては、地方公務員法により、「生計費並びに国及び他の
地方公共団体の職員並びに民間
事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」となっているわけでありまして、従来、国家公務員について給与改定が行なわれる場合は、地方公務員につきましても、これに準じて給与改善が行なわれることが通例となっております。しかしながら、
地方公共団体にも人事委員会が置かれ、地方公務員の給与のあり方なり、給与改善の勧告等を行なっているのでありますが、この機関が現在どのように積極的にその機能を果たしているのか、また、自治省として今後この人事委員会制度をどう運営されていくのか、基本的な問題としてお
伺いいたしたいのであります。
次に、先ごろ自治大臣の私的な研究機関である地方公務員給与問題研究会が、二年にわたる調査研究を終え、報告書をまとめたようでありますが、この結論の是非はともかくとして、
都道府県、
市町村を通じて技能職員につきましては、国の同職種の職員の給与水準を
基準としてきめられていますが、たとえば清掃、給食等に従事する職員のように、
地方団体特有の職員につきましては、その労働需給の
関係から、民間の同職種の相場的な賃金水準が形成されているときには、それによることが適当と指摘し、同時にまた、給料表、昇給制度等の給与制度につきましても、そのあり方を指摘しているのでありますが、今後どう取り扱われるのか、お尋ねをいたします。
最後に、公営
企業関係職員の賃金及び財源についてお尋ねいたします。本来、公営
企業関係職員の賃金は団体交渉で決定すべきであります。しかるに
政府は、この団体交渉を実質的に制限するような指導、さらには賃金改定について圧力とも思われるような指導を行なっているようでありますが、私どもはこのようなやり方を絶対に認めることはできません。国家公務員、地方の大多数の公務員が人事院勧告等により給与の改定が行なわれようとしているとき、ひとり公営
企業関係職員のみが、やっと昨年の改定に準じて改定している
状況であるのでありますが、今後、これらの職員の給与改定について、
政府としてはどうあるべきだと考えておられるのか。また、自治体
財政と関連をして、給与財源についてどのように
措置しているのか、あわせてお答えを願いたいのであります。
お尋ねしたいことは多々ありますけれども、時間の制約もあり、詳細は委員会の
審議に譲ることにいたしますが、
政府は、公務員労働者が
生活に不安を感ずることなく、安心して公務に専念できるよう、労働条件の改善に最善の努力を払われるよう強く要請いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕