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1970-12-17 第64回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十七日(木曜日)    午前十時二十九分開会     ―――――――――――――    委員の異動  十二月十六日   委員任田新治君は逝去された。  十二月十七日     辞任         補欠選任      矢追 秀彦君     宮崎 正義君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     理 事                 亀井 善彰君                 高橋雄之助君                 達田 龍彦君                 村田 秀三君                 沢田  実君     委 員                 青田源太郎君                 小枝 一雄君                 小林 国司君                 櫻井 志郎君                 鈴木 省吾君                 田口長治郎君                 森 八三一君                 和田 鶴一君                 北村  暢君                 武内 五郎君                 中村 波男君                 前川  旦君                 宮崎 正義君                 向井 長年君                 河田 賢治君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        経済企画庁審議        官        西川  喬君        農林政務次官   宮崎 正雄君        農林省農政局長  中野 和仁君        農林省農地局長  岩本 道夫君        林野庁長官    松本 守雄君        水産庁長官    大和田啓気君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀夫君    説明員        内閣審議官    小泉 孝夫君        厚生大臣官房国        立公園部管理課        長        岡田 達郎君        厚生省環境衛生        局公害部公害課        長        山本 宣正君        農林水産技術会        議事務局研究参        事官       川井 一之君        食糧庁次長    内村 良英君        通商産業省公害        保安局鉱山課長 伊勢谷三樹郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○農用地土壌汚染防止等に関する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○農薬取締法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――   〔理事高橋雄之助君委員長席に着く〕
  2. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  この際、議事に先き立ちまして御報告申し上げます。  すでに御承知のことと存じますが、現在当委員会委員であり、前農林水産委員長であられました任田新治君が、昨夜心筋梗塞のため急逝せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。ここにつつしんで同君の長年にわたる御功績をしのび、各位とともに黙祷して御冥福をお祈りいたしたいと存じます。  どうぞ御起立をお願いいたします。   〔総員起立黙祷
  3. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) 黙祷を終わります。御着席をお願いいたします。     ―――――――――――――
  4. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) 農用地土壌汚染防止等に関する法律案を議題といたします。  これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 前川旦

    前川旦君 最初に大臣にお伺いいたしますが、ただいま当国会で審議されております基本法の中で、土壌環境基準が設けられるということになっておりますが、この基本法における土壌環境基準と本法との関連は一体どう考えたらいいのか。たとえば、かなりきびしいところで環境基準というものが設定されるであろうということが予想されます。その環境基準に、この土壌汚染を防止するこの法律を運営するにあたって、かなりきびしいであろうと予測される基本法における土壌環境基準というものを指標にするのかどうか。全然これは別のものだということになるのかどうか。あくまでも指標としてそれを達成するように努力をされるのかどうか、その関連についてまずお伺いいたします。
  6. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 今回基本法が改正されますれば、土壌についても望ましい基準ということで環境基準ができることになっております。しかしながら昨日来の御議論にもありましたように、重金属が土壌に入っておりまして、それが農作物に吸われ、そして人の健康に影響があるという関係でございます。これが、われわれとしましては相関的な関係があるということはわかっておりますけれども、具体的に一義的にどうなのかということはまだ研究が進んでおりません。したがいまして、その研究を早急に進めた上で環境基準をつくることになるわけです。それで環境基準をつくるということは、われわれとしては法律がきまりました以上、なるべく早くつくらねばならぬと考えておりますけれども、すぐには率直に申し上げまして土壌の面からの環境基準ができない現在でございます。  そこで、まあ御質問に対してお答えすることになるわけでございますが、その環境基準をどの程度のものにするか。これは人の健康との関係で望ましい基準ということになっておりますから、非常にゆるやかなものではないはずでございますけれども、具体的にどの水準になるかということが、まだわれわれとしては明らかにすることができない段階でございます。したがいまして、その環境基準と今度の土壌汚染防止法対象地域との関係ということも、これがイコールになるものか、あるいはもう少し環境基準のほうが広いものなのかということがまだ明らかにできないわけでございます。
  7. 前川旦

    前川旦君 私が大臣と言って指名をしてお伺いをいたしましたのは、昨日の質疑の中で、いまは米なら米に出てくるカドミウムならカドミウムPPM判断しておられますが、将来は土壌に含んでいる――これは外国並みです、土壌に含んでいる汚染物質の量で規制考えるという方向へいくという御答弁があったというふうに伺っているものですから、この基本法における土壌環境基準はそれにマッチしたものであろうと思います。そうなりますと、これはかなりシビアなものがくるんじゃないかと思うんですね。その場合に食い違いがずいぶん出てくると問題があると思う。ですから、ここへ出てきた望ましい環境基準、これはあくまでも指標であり、目標である、それから出ないように努力するんだ、あるいは出ているものはそこまで押えるように努力するんだ、そういうような目標があってしかるべきではないかと思うんですね。そこを実は聞きたかったわけです、その姿勢というものを。
  8. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) お話のとおりでございまして、われわれとしましては、できるだけ早く基本法が改正されました九条の環境基準というのをつくるべきだと考えております。まだ世界的にも土壌環境基準をつくっている例はございません。われわれとしましては、しかし日本の場合にこういう問題になっているものですから、また典型公害に入ってきた以上はそこの試験研究を早急に詰めまして、カドミウムなりあるいは銅、亜鉛というものについてそれぞれきめたいと思って研究をこれから早急に詰めていくわけでございますので、その点御了承をいただきたいと思います。
  9. 前川旦

    前川旦君 具体的になってないということですから、これは私は姿勢だけお伺いしたいと思いましたけれども、次にまいりましょう。  この法案の第三条に「人の健康をそこなうおそれがある農畜産物」とありますが、「人の健康をそこなうおそれがある」――これは食品衛生法から出てきた一PPM考えてよろしいわけですね。
  10. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) お話のとおりでございまして、ただいまは米について食品衛生法で一PPM以上カドミウムが玄米に含まれている場合は、これは食品衛生法七条によりまして販売が禁止されております。現在はそのとおりでございます。そのほかの農作物につきましては、これから食品衛生法でそういうものが出てまいりますれば、当然これに入ってくる。
  11. 前川旦

    前川旦君 それでは同じ第三条に「若しくは当該農用地における農作物等生育が阻害されると認められる」ということが書いてありますが、「生育が阻害される」というのはどういう意味で書かれておりますのか。たとえば土壌に含まれておりますカドミウム、まあ一つの例をあげます。カドミウムによって農作物生育が阻害されるという例があるのかどうか、実態をつかんでいらっしゃいますか。
  12. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) カドミウムにつきましてはある程度カドミウムが入っておりましても、稲そのもの生育が阻害されるというところまではわかってないと申しましょうか、現状では阻害はされないようでございます。ここに書きましたのはむしろ銅、亜鉛でございます。銅、亜鉛につきましては相当土壌に銅が蓄積しますと、減収という事態が起きます。これは先生御承知のように明治以来の鉱毒事件はみんなこちらの問題でございますので、われわれはこちらの生育が阻害されるという場合には、これは銅、亜鉛考えてのものでございます。
  13. 前川旦

    前川旦君 それではたとえば銅、亜鉛がどれだけ含まれておれば、あるいはどれだけふえれば、どれだけ減収になるというそういったデータはできていますか。
  14. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) かなりの地域でわれわれ調査をして持っておりますけれども、この法律を適用する場合は、もう一度その辺の減収土壌に含まれる銅との関係というものを明確にした上で、ここでの政令要件考えるというふうに考えておりますけれども、渡良瀬その他について若干の調査はわれわれすでにあるわけであります。
  15. 前川旦

    前川旦君 私はこういう公害を防止するいろいろなことをやる場合に、必ず事業者側企業側からの非常に根強い抵抗があると思います。いろいろな言いがかりと言えばことばは少しきついかもしれないけれども、必ずつけられるんじゃないかというふうに思います。そこでたとえば農作物等生育が阻害される、これははっきりしたどれだけ含まれていればどれだけ阻害されるのだ、こういうかなりはっきりした突っ込んだデータを持っていないと説得できないというか、後退せざるを得ないということになりますので、その辺しっかりこれは考慮してもらいたいという意味で言っておりますんですが。
  16. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) お話しのとおりでございまして、われわれとしましても科学的なデータを正確にそろえなければなかなかものが言えないということでありますので、昨日も申し上げましたけれども、農林省といたしましても相当な予算をつぎ込みまして、基礎的な調査、それからそういう汚染されておるような地域につきましての精密な調査をいたしたいと考えております。
  17. 前川旦

    前川旦君 それでは第三条の「おそれが著しいと認められるもの」、このおそれが著しいと認める基準といいますか、それはどういうふうに置かれていますか。たとえばカドミウムで例をあげますと、何PPMだとか、これは御承知のように要観察地域では〇・四PPMという数字がすでに出ておりますが、この〇・四PPMという数字をお使いになるのか、あるいはまた別の数字でお考えになるのか、その基準はどのようにお考えですか。
  18. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 「おそれが著しいと認められる」ということは書いてございますが、やや抽象的になって恐縮でございますけれども、カドミウムならカドミウム汚染状況とか、あるいは土壌にだんだん蓄積していくものですから、その進行度合い、そういうものを見ましたりして、近い将来においていまのカドミウムなら人の健康をそこなうおそれがあるということになって一PPMになるわけであります。一PPMに近づくことが明らかな地域ということで、必ずしも〇・四ということに基準を置くというふうにはわれわれ考えておりません。と申しますのは、昨日も厚生省からお話がありましたように、〇・四というのは要観察地域をきめるまあ端緒と申しますか、そういうそれのスタートの数字でございまして、〇・四以上は必ず今度の対策地域になるというふうにはわれわれ考えておりません。その一に近いところが「おそれが著しい」というふうに解すべきではないかと思っておりますが、まだ具体的にそれじゃカドミウムの場合に〇・八のところがいいのか、〇・七のところがいいのか、その辺はきめておりません。これはこの法律が通りますれば、土壌汚染防止審議会がございますので、各方面の意見を聞いてその辺の基準をきめたいと考えております。
  19. 前川旦

    前川旦君 昨日のこの委員会じゃありませんが、衆議院でしたか、公害対策特別委員会山中長官でしたか、〇・八PPMぐらいできめたいという御答弁をなさったように聞きましたが、まだ聞いておられませんか、いかがですか。
  20. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) まだ私そういうふうなことを承っておりません。ただ、長官お話承っておりませんので正確に申し上げられませんけれども、先ほど私が抽象的に申し上げました趣旨は、その〇・八になりますか、〇・七になりますかわかりませんけれども、近くその一に近づくようなおそれのあるところというふうに御理解いただければと思います。
  21. 前川旦

    前川旦君 近くといいましても、いろいろ、この近くというのは時期的な問題ですか、たとえば一年以内とか二年以内とか、何かその辺のめどは考えられておりませんか、まだ。
  22. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) これは一方での企業者側排出規制との関係もあると思うのですが、いままで、たとえばあまり排出規制までかかっていないような工場について非常にきびしいのがかかるとしますれば、これ以上蓄積はとまるわけでございますから、極端に申し上げれば、一PPM以上の米が出ているところだけでいいのかもわかりません、あとはそこでとまりますから。しかし、なかなか――全面的に工場を閉鎖すればもちろん完全にとまりますけれども、なかなかそうもいかないということで、それぞれ水のほうの基準なり、あるいは大気基準ができますので、それの基準のきびしさとの関連も私はあるのじゃないか。それが一年とか二年とか、その辺は私たちにもまだ、正直に申し上げましてわかりません。
  23. 前川旦

    前川旦君 こういうはっきりした成文の法案を出しておいでになるのですから、かなり適確にそういうことも論議をされたのではないかというふうに常識的に考えますけれども、まだ論議されていないというのであれば、これからのことであるというのであればやむを得ません。
  24. 北村暢

    北村暢君 関連して。きのうからこの論議をやっているわけですけれども、私、一つお伺いしておきたいのは、先ほど前川君から公害基本法との関係の問題、土壌環境基準の問題について質問があったのですが、私もきのうの補償の問題と関連して、一・〇PPMの米の出るところに対しては損害補償をする。いわゆる企業責任において費用を負担するのだと、こういうことでありましたが、どうもまだ科学的なデータが出ていないからそうならざるを得ないのだろうと思うのだが、やはりそれでは実は不確実だと思うのですね。土壌汚染なんですから、これが作物について、厚生省許容基準でもって費用負担したり、しなかったりするということなんですけれども、実際は土壌そのもの汚染されているのですから、汚染程度によってこれは費用負担したり、しなかったりするというのが、直接から言えば当然のことです。それがいまやりたくてもわからないわけでしょう、基準がないのだから。またそのデータもないということでしょう。ところがいま稲についてだけは、水田についてだけは一・〇PPMという基準があるけれども、カドミウムの問題は稲の問題ですからそうなんでしょうけれども、しかし、これはわかっいるものは稲だけ、米についてだけですけれども、実際問題として、これはほかの農作物一体カドミウムが入っているのか入っていないのか、この問題が出てくると思うのですよ。しかも土壌から農作物吸収するのですから、その作物によってまた吸収の度が違ってくるという問題も出てくる。これは水質だけではなしに、安中で問題になっているように、今度の大気汚染でもって、ばい煙からカドミウムが出てくるということもあるので、だから土壌だけでなしに直接かかってくるという問題も出てきて非常にまだ解明されていない問題がたくさんあると思うのですよ。たくさんある。したがって、まことに不確実な規定のもとに、いまこの問題が、わかっている範囲の米の一・〇〇PPM、この問題になっているわけですね。ですからこの基本法でいう土壌環境基準というものがわからなければ、厳密な意味におけるこの費用企業負担だとか何だとかいうことが私は出てこないような感じがしてくるのですよ。実際はいま言ったように、その作物によって吸収度が違ったり何かしてくるわけですから、ですからそういう面からいえば、私は汚染度をどこに持ってくるかということが非常に問題だと思うのですがね。そういう点がまだ解明されていない。いま前川君の質問からも、その土壌環境基準については早急にきめたい、こうおっしゃるのでありますけれども、世界的にもそのデータはないし、いままで農林省もそういう意味における研究というものはなされておらないわけですね。今度初めてこの法律が出てきて、いま公害基本法土壌環境基準というものをきめるということになって、これから環境をつくるための研究が始まるわけですね。ですから非常に不確定要素があると思うのです。  そういうようなことが、実際にこの環境基準をきめるようなことがどういう体制で、しかも技術的に可能な見通しというものが一、二年のうちにそういうことができるのかどうなのか、法律環境基準をきめても、五年も十年も先でなければとてもむずかしくて、やってみなけりゃわからないというしろものなのか、どうなのかということね。そうすれば、いまのところは若干不確定要素を含みながら、この法律が通ったとしても、ごく近い将来においてこの基準というものがきめられるならば、技術の発達なり研究の成果によってできるならば、私はそれなりに理解したいと思うのですけれども、そこら辺の技術的な判断というものがどのように検討され、どのような見通しを持っておられるかということが非常に疑問のあるところでありますから、お伺いしておきたいと思うのです。
  25. 川井一之

    説明員川井一之君) いまお話にありましたように、この環境基準にかかわる研究につきましては、体系的な研究はこれから進んでいく段階にあるのでございますけれども、いままでこれに関連する研究が若干ございまして、そこら辺の簡単な概要を御紹介いたしますと、やはり水道が汚染されてくるような地区にいろいろ作物があれば、各作物についてはそれぞれ汚染の特徴があるようでございます。これは限られたデータでございますので、なお今後多数のデータによってこういう傾向は若干変わってくると思いますが、たとえば麦類で申しますと、水稲よりはやや多く吸収するという傾向があります。それからあと蔬菜類あたりにおきましては、比較的多く吸収する蔬菜類、たとえばサトイモ、大豆、ゴボウ、ニンジン、白菜、ナス、バレイショ、どうもこういうものはよけい吸収する傾向があるんではないか、それからキュウリ、インゲン、トマト、ピーマン、トウモロコシ、こういうものについてはわりあいに吸収程度が弱いんではないかというような傾向もつく、それから米につきましての傾向でございますが、先ほど農政局長からもいろいろ御説明がございましたけれども、土壌中のカドミウムがふえてきますと、稲の中のカドミウムもふえてくるという相関はかなり認められておりますが、そういう相関のあらわれるあらわれ方というと、これは各地域のどうもどろの類型と申しますか、特性によってあらわれる関係が違ってまいります。そこいら辺の問題が、環境基準を設定する場合の一つ要件になるわけでございます。研究といたしましては、そこいら辺の相関が、いろんな形の相関があらわれてくるという要因が土壌類型のどういう特性にあるかというような点につきまして、目下組織的な研究を進めておるわけであります。  一例を申し上げますと、たとえば、いままでのデータの――不完全なデータでございますけれども、若干の傾向を申し上げますと、わりあいに砂質地におきましては、少ないカドミウムでもかなり吸収が多い、それからわりあいに粘土の多いところでは逆に吸収がしにくいというような傾向とか、そのほかいろいろ土壌の性質によりまして傾向があるようでございます。現在全国的にこの環境基準を設定するに必要な調査研究を集中的に進めておりまして、できるだけ広くデータを収集いたしまして、その環境基準設定に必要な、基礎的なデータを至急まとめていきたいというような状況でございます。
  26. 北村暢

    北村暢君 至急とおっしゃいますがね、そういういま説明を聞きましても、今度のこの農用地土壌汚染防止法案が通っても、これはいま対象は米だけなんですよね。一PPM土壌の改良の事業なんかもこれは対象になっているのは水田だけなんです。いま説明を受けましたように、これは稲だけでない、カドミウムの問題は実はあらゆる農作物について問題があるわけなんだ。しかもその作物によってカドミウム吸収度合いというものがそれぞれ違っておる。したがって、この土壌環境というものが非常にむずかしいということはいまの説明でもわかりますが、早急に検討するというのですが、先ほど私が申しましたように、一体その環境基準というものは、いろいろなものについて消費者の国民の皆さんが安心して食べられるようなもの、これは食べても安心ですよということができるような基準を示すということがやはり問題だと思うのです。そういうような点からいくというと、一体早急にやるというのだけれども、私が先はど言ったように、ここ一、二年でできるのか、もうものによっては十年先でもわからないのか、そこら辺の見通しを私は聞いているわけなんです。ですから、いまの説明はよくわかりましたけれども、もう少し見通しのところをはっきりさしていただきたい、こう思うのですがね。
  27. 川井一之

    説明員川井一之君) 私どものほうは、環境基準を決定するために、いろいろ判断が必要でございますが、その判断の基礎になる科学的なデータを至急検討するということでございますが、現在、ことしの産出されましたお米につきまして、そのお米とどろと水と、そういう関係のサンプルを収集いたしまして、いま精密な分析にかかっておるわけでございます。したがいまして、ことしのデータをできるだけ――できるだけと申しますのもそう長いことではございませんが、一応研究可能性もございますので、大体この春ぐらいまでには現在のデータを収集いたしまして、いろいろ検討をいたしまして、ある程度基準を設定するということに、判断するに十分なデータが出るかどうかわかりませんけれども、この春ごろまでには、できるだけそういうデータを準備いたしたいということを目途にしております。なお、それに基づきまして、またいろいろ環境基準ということになりますと、いろんな条件も配慮して検討されるわけでございます。そういうことで、研究サイドとしましては、できるだけ早くというようなことでございます。
  28. 前川旦

    前川旦君 それでは次に、指定汚染対策地域、これには上限下限がありますか。
  29. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 上限は私はないと思います。汚染されている、政令で定める要件に該当するところがありますれば、広がりはかなりあると思います。下限につきましては、この法文上は別に定めておりませんので、法文上問題ないわけでございますので、昨日も話が出ましたように、この対策事業は、原則的には公共事業でやるつもりでございますので、かなりまとまった地域をまとめて客土なりその他の事業をやるということでございますから、たとえば十アールかなんかぽつんと一つあるときに、県知事がこういう計画を立ててやるということになりますかどうか、この点になりますと若干問題あると思います。しかし、そこを放置するという意味ではございません。その場合はどういう予算的な措置でやりますかは、これから、そういうところがまだ具体的に出てきておりませんので、何とも具体策は申し上げられませんけれども、そこにつきまして、何らかの対策はとらなければならないというふうに考えております。
  30. 前川旦

    前川旦君 きのうも論議されたはずですけれども、もうちょっと詰めておきたいので、くどいようで悪いのですけれども、下限を設定する理由、根拠は一体どういうことですか。いま、単なる公共事業としてやりたいから、それにはおのずからまとまった地域でなければならないという答弁がありましたけれども、それだけですか、下限を設定するというのは。
  31. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 土地改良事業でやるという原則にしておりますので、土地改良事業は御承知のように十五人以上でもって始めるわけで、おのずからそれで大体の面積も想定されてくるわけでございます。しかし、きのうからも御議論がありますように、たとえば三戸の農家だけが汚染されておったとか、あるいは五戸の農家で五ヘクタールというような小さいものも出てまいりますと、その場合公共事業として取り扱ったほうがいいのか、あるいはそこまでいかなくて単なる予算的な措置でやりますか、その辺はまだ具体的に地域が出てきておりませんので、農林省としてどういう予算を組むかというところまでいっていないわけです。そういう意味で公共事業としては下限があるだろうということを申し上げたわけで、全体として下限があってそれ以上は絶対何もやらないんだということはきのうから何も申し上げていないつもりです。
  32. 前川旦

    前川旦君 土地改良事業としてやるからには土地改良事業としてのやっぱり面積の制限がありますね。たしか特別なものは十ヘクタールだったと記憶しておりますけれども、十ヘクタールを下限考えてよろしゅうございますか。農林省考え方は十ヘクタールだというふうにとってよろしいですか。
  33. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 昨日も御答弁申し上げたことでございますが、公共事業で土地改良事業をやります場合に、団体営の事業では一般的に二十ヘクタールが採択基準の限度になっておりますが、特別な事業につきましてはその基準を下げている場合もございます。下げると申しましても、そうやたらに下げられるものではございませんので、常識的に十ヘクタールというのが一つのめどになると思いますが、この事業は新しい事業でございまして、これから予算折衝をしていく筋合いのものでございますので、いまここで何ヘクタールということを申し上げるわけにはまいりませんが、私どもはほかの事業の例も参照しながら、できるだけ下げられるように折衝してまいりたいと考えております。
  34. 中村波男

    ○中村波男君 昨日も質問をいたしたわけでありますが、公共事業で、いま農地局長の御答弁を聞きますと、幾ら下げても十ヘクタール程度ではなかろうかということでありますが、十ヘクタール以下、現実に岐阜県の神岡町におきましては客土をやらなければならぬということが明らかな地域が出てきているわけですが、これは面積にいたしますと十ヘクタールなどにはならないわけです。そういう現実を踏まえまして、十ヘクタール以下はこれは県単事業でやらせるんだとか、あるいはその他の方法を別途考えるとかという明らかな方針というものをこの機会に農林省として出すべきではないかと思うのですよ。今後出てきたならば検討するというようなことで、検討ということになれば行政的な手続として即決をするようなことにはならないわけですから、おのずから予算が伴うわけですから、したがってやはりこういう場合はこうやるんだという方針をこの機会にひとつ各省間で、各局間で調整を願って明らかにされるということが必要だと思いまして、さらに御質問をいたしたわけですが、いかがですか。
  35. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 昨日から申し上げておりますように、私はどうなるかわからぬということを申し上げておるのではなくて、公共事業としては、先ほど農地局長が申し上げたとおりでございますけれども、それ以下のものにつきましては、これは公共事業ではなくても、これを放置するというつもりではございませんので、何らかの対策をとるということは申し上げたわけでございます。それをそれじゃ具体的にどうしようということになりますと、これは調査をしてみまして、そういう地域が出てきて、これはどうしたらいいかということをきめて予算措置をきめたいと思いますので、われわれはきのうからそういうことを申し上げております。したがって、どうするかということは、どうするかわからぬということを申し上げておるのではないことを御了解願いたい、前向きでそれに対処するというふうにお考えいただきたいと思います。
  36. 北村暢

    北村暢君 ちょっとその点。明らかにきのうそういう答弁だったのですけれども、たとえば農作物の被害とか、あるいは小さな土地改良というようなものは企業責任においても、これは対象外にするのだということが出ておるのじゃないですか。企業負担の場合出ていないのですか。そういうものは対象にならないのだというようなことがたしかあったと思うのですよ。ですからそこのところ、十ヘクタール以下でもやるという下限がはっきりしないという企業の費用負担に該当しない、あまり小さなものはしない、こういうようなことになりかねないのじゃないかという心配があるものですから、そこのところを、小さなものでも救えるのかどうかということを心配しておるわけです。ですから以下であっても公害のための、汚染防止のための事業なんだから特別に配慮されてやれるのだということになれば、これはそれなりに理解するわけなんですが、そういうものがあるように私どもは判断しておったものですから、そこのところを、小さなものは対象にならなくなってしまう、だから下限というものがどこらか……いま十ヘクタールそれ以下でもやるということになれば、十ヘクタールで下限があるかないかということをいま盛んに聞いておるわけですから、十ヘクタールだけれども、下もやるというなら、それならばそれなりにわかるわけです。そういう心配があるのだから聞いておるのです。
  37. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) もう一度整理して申し上げますが、この法律によります対策事業法律上は別に十ヘクタールとか二十ヘクタールという下限は置いておりません。ただわれわれが要観察地域とみましたところ、大体最小のものでも、昨日も申し上げたことと思いますが、十四ヘクタール程度というふうな地域もございます。大体は公共事業でやれるものじゃないかというふうに考えたわけでございます。しかし昨日から御指摘がありますように、それを下回る場合もあり得ます。その場合はたとえ公共事業でやらなくても、何らか具体的にそういう地域が出てまいりました場合は別な措置を前向きで考えたいということを申し上げたわけであります。費用負担の問題は、その両者について原因者が明確であれば当然大きくても小さくても費用負担の問題は企業者が負担するという問題はあるわけでございます。これは別に十ヘクタール以上ならば費用負担があって、それ以下はないという意味じゃございません。
  38. 前川旦

    前川旦君 小規模汚染地の問題はあとでお伺いすることにしておりましたが、いま出ましたので……。とたえ小規模であっても汚染源原因がはっきりしておるときには企業者にその費用を負担させる、こういうことですか、いまおっしゃったのは。
  39. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 費用負担法にもございますように、被害が生じておる農用地について実際やる客土事業については原因者がはっきりしておれば、この費用負担法のルールによりまして負担させるということになると思います。
  40. 前川旦

    前川旦君 費用負担はあと関連して聞きたいのですけれども、原因が明らかであるという場合が例としてはむしろ少なくて、企業者としては必死になってこれは抵抗するでしょうね。つまり、因果関係を否定してかかるだろうと思うのです。そういうケースが多い。こういう場合はどうでしょうかね。民法上の不法行為と損害賠償責任、それだけの適用になりますか、小規模の場合は。原因がはっきりしているということは、つまり企業のほうが認めるということであると思うのですよ。それをもしその因果関係その他で争いになった場合には、企業に負担させるといったってそれはなかなかむずかしい問題が出てくるでしょう。その場合には、この民法上の不法行為と損害賠償責任と、その分だけがこの企業とそれから当事者の間に残るのでしょうか、小規模の場合、どうなりますか、それは。原因がはっきり――原因、その因果関係等について否定してかかるときです、争いになったとき。
  41. 小泉孝夫

    説明員(小泉孝夫君) ただいまの御質問土壌汚染防止法の対策事業というふうなことで、小規模云々とか原因者云々というようなことでございますと、農林省土壌汚染防止法の問題になろうかと思いますけれども、かりに費用負担法の問題として考えた場合どうかということでございますが、この費用負担法と申しますのは、実は公害対策基本法第二十二条の趣旨を実現するためのものである。ということはどういうことかと申しますと、結局、この事業者の費用負担と申しますのは、国とか地方公共団体が公共事業として事業者の事業活動による公害防止のため実施する事業がありました場合には、その費用を負担するというふうな問題でございまして、公法上の特別の負担金というような形をこの負担法の場合はとっておるわけでございます。  したがいまして、いまの御指摘のような民法上の問題として云々というふうな問題ではございませんで、負担法で申しますと、この第三条に、「費用を負担させる事業者」というふうなことが書いてございまして、施行者のほうにおきまして、「当該公害防止事業に係る公害の原因となる事業活動」を行なっているものはだれであるというふうなことを認定いたしまして、その費用なり何なりを決定していく、こういう手続でいくわけでございます。
  42. 前川旦

    前川旦君 いまのはちょっとあとでやります。  そうすると、いま下限がある、公共事業であるから下限があると、できるだけその下限を下げるように努力すると、目標は十ヘクタールくらいだというのが下限で、というお話が出ました。  そこで、もう一つ伺っておきますが、この下限のかりに十ヘクタールという数字が出ましたが、それは連続した平面でいっているのですか、飛び飛びのものの合算ではだめなんですか。
  43. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 具体的な現地の状況によりましておのずから違ってくると思いますが、多少離れておりましても工事を施行する見地からの連続性があれば一団地としてとり得る場合もあると思いますが、それはあらゆる線を引く場合の常識と申しますか、常識上の考え方があり得るわけでございまして、一義的に一がいにどうだこうだと申し上げるわけにはまいりません。
  44. 前川旦

    前川旦君 それでは、たとえば一つの広い地域があります。そこで部分的に一PPM以上の米ができる、部分的には一PPM以上だけれども、その一地域全部を平均してみると、たとえば〇・七にしかならなかった、こんなケースもあるだろうと思うのですが、こんな場合はどうなりますか。やっぱりこれはその地域全体としてこの事業対象になりますか。
  45. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 農地の土壌汚染対策地域の指定の姿がどういうことになるのか、いまのところ明確でございませんので、具体的なケースに当たって、実際どういう姿の指定になるかということを今後調査してきめていくわけでございますから、抽象的にこの場でこうだと申し上げられません。ただいまの御設問もそういうのを一切がっさいにして、ひとつの団地として平均して〇・七PPMの場合にそこ全体を指定するのか、あるいはその中の一PPMのところだけを選択して指定をするのか、対策地域の指定のしかたによって考えていかなきゃならぬと思いますので、現地の具体的な事情に応じて判断をしたいと思います。
  46. 前川旦

    前川旦君 これを指定して事業をやるわけですが、汚染の復旧の事業で一番妥当なやつは、この農林省から出ております資料を読ましてもらいましたけれども、排土、客土が一番よろしいというふうに書いてあるように思いますが、事実そういうことでしょうか。排土、客土が一番的確な手段であると考えておるのでございますか。
  47. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 汚染対策事業としてはいろいろな種類の事業考えられますが、一般的に申し上げまして、排土、客土が最も適した事業であろうということは言えるわけでございます。しかしながらそれも現地の実情によることでございまして、あまりその汚染が進んでいないところ、まあそれが対策地域になるかどうかは別として、仮定の問題として汚染が少ないところに客土をするということは、費用と効果との関係から見て適当ではないわけでございまして、そういうところは土壌改良剤の投入のほうがより効果的であるということになります。したがって相当程度汚染を頭に入れまして、排土、客土がまあ考え得る典型的な事業であろうとは思いますけれども、これも現地の実情によるところでございます。
  48. 前川旦

    前川旦君 この農林省からお出しになっている資料にいろいろな方法が出ていますけれども、それぞれ批判も出ております。そうして排土、客土のところが一番適切な印象になっておりますので、いまあなたのおっしゃったことと突き合わせて、やはり排土、客土が、特に重汚染地域、一PPM以上のところは客土、排土ということにおおむねなろうかと思いますですね、常識的に。この場合に問題になりますのは、農林省のほうでこういうデータをつかんでいらっしゃるかどうか。たとえば客土の厚さは一体幾らあったらいいのか。たとえば十センチなら十センチ排土して客土したら、それによってPPMがどれだけ減少するのか、その因果関係、その辺をはっきりつかんでいらっしゃるのかどうか。それをつかんでいないと、これは同じように事業者のほうから反撃がくると思います。そういうデータがないと、それは実際にはそういうことをやったって効果があがるかどうかわからぬじゃないか、あるいは農林省は二十センチというけれども、十センチあればいいのじゃないか。二十センチの根拠はどうか。これはずっとおくれてしまいますね。ですから、その辺のデータを、こういう法案が出されるのですから、おそらくちゃんとつかんでいらっしゃると思いますが、つかんでいらっしゃれば簡単でけっこうです。口頭でごく常識的に御説明いただきたいと思います。
  49. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) ただいま農地局におきまして、要観察地域で、ただいま御質問のありましたようなことを解明するために対策計画を樹立する前提としての調査を実施中でございます。その調査の内容はどういう土質のところでどの程度客土すればカドミウムがどの程度に薄められるかというようなことを追求しておるわけでございまして、近くその結果が第一年次のものがまとまるはずでございます。この調査は四十五年度に始めまして三年計画でやっておりまして、こういう次第でございますから、まず初年度の結果が出ますれば、それを一つの参考資料としていろいろのものを考えてみたいと思います。  先ほど技術会議の川井事官からも御説明がありましたが、土質によって同じ量のカドミウムであっても、植物体への吸収程度が違っておりまして、砂質土壌の場合と粘土質の場合とでは、粘土のほうがはるかに吸収されにくいということでございますから、かりに砂質土壌のところに粘土を客土すれば非常に大きな効果があがる。したがいましてその場合の客土量は少なくて済むということになろうかと思います。そういう点をいま調査中でございますので、調査の結論を得て判断をしてまいりたいと考えております。
  50. 前川旦

    前川旦君 客土というのは一番効果があるということなんですが、たとえば一PPM以上の汚染度地域、これは客土ということに一応常識的になろうと思うのですが、この第三条で「おそれが著しい」、やがて近いうちに一PPMになるであろう、これも指定しますね。この場合はどうなんですか。一PPMにならないでも、これは客土のような思い切ったことをやることを考えられるのか、それとも一PPMになってからするというふうに、待ってやるのか。待ってやるとこれは予防の効果はあがりませんけれども、その辺の考え方はどうなんですか。
  51. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) これは農用地土壌汚染対策地域の指定のあり方にかかってくるわけでございまして、指定されればその指定された地域の中の対策事業を計画をする場合において、そういう計画はされるであろうと思いますし、その場合には、たとえば客土事業を取り上げて実施するということになると思います。
  52. 前川旦

    前川旦君 客土、それから天地ひっくり返すのですか、いろいろ方法がありますけれども、とにかく客土なら客土にしぼって、どのくらいのコストがかかるものか。これはたとえば厚さ十センチなら十センチの排土、客土をされると、一ヘクタールどのくらいの費用がかかる、一平米どのくらいの費用がかかる、大体その辺の数字をつかんでいらっしゃいますか。
  53. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 工事の設計の問題になるわけでございますので、具体的な現地にあたってみないと、一体幾らかかるかということは出てこないわけでございます。と申しますのは、客土をすると申しましても、客土される土質の状況によって客土すべき土の種類が違ってまいります。ということは、その客土材料を求める場所がまた違うことになりまして、その客土の量と、それからその客土材料を持ってくる距離によって経費が幾らでも変わり得るわけでございまして、客土量が多ければ経費が多くなる。それから客土材料を持ってくる距離が遠くなれば経費が多くなる。その相関関係できまるわけでございますから、一がいにヘクタール幾らかかるかということはきまらないわけでございまして、現地のそういった実情に応じておのずから妥当な経費が設計上きまってくるということでございます。
  54. 前川旦

    前川旦君 これはなぜ私聞くかというと、ずいぶん大きな費用がかかると思うのですよ、常識的に考えて。ですから、土地の状態なり、輸送のあれによっていろいろ違うとおっしゃるけれども、たとえば一ヘクタールあたり、かりに十センチなら十センチの厚さで客土、排土するとすれば幾ら幾ら以下ではできないというようなおのずから常識的な数字というものはつかんでいらっしゃるはずなんですね。それでないとこういう法案で実際事業をやるという、これは実際にやる法案なんですから、これをお出しになるからにはどのくらいの費用がかかるのだ、費用分担がどうなんだということもある程度つかんでいらっしゃるはずです。ですからそれを伺ったのです。一律ではいかないにしても、一ヘクタールこれ以下ではできないというのがおのずから常識的にあると思いますがね。
  55. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 質問の御趣旨がわかりました。客土はかなり経費のかかる事業でありますことは御指摘のとおりでございまして、常識的に見まして、十アールあたり二十万円から三十万円程度というふうに、これはごく常識的な話でございますが、御承知おき願いたいと思います。
  56. 前川旦

    前川旦君 わかりました。それでは、この地域指定をすれば対策計画を立てることを都道府県にこれは義務づけているわけですね。対策計画を立てたら、その次にはどういう手続になるのか。どういう方法になるのか。対策計画できました、その次はどうなるのか。その対策計画はあと何も義務づけありませんね。たとえばすみやかに対策計画に基づいて都道府県は実施せよとか、何らかの義務規定がありませんね。対策を立てることについては遅滞なく立てることという文章になっていると思いますが、立てたそのあとがこれはおかしいのですよ。立てたあと、それじゃたとえば何カ月以内に着工とか、すみやかにとか、何かそんな義務規定が規定にちっともありませんけれども、これはどうなんでしょうか。
  57. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) これは御指摘のありましたように、全体としてのマスタープランと申しましょうか、そういうものを立てるわけです。あるいは話が出ておったと思いますが、この事業は県知事が対策計画を立てると同時に、原則的にはこれは県営事業でやるつもりでございます。県知事が自分で計画をお立てになれば、当然土地改良法に基づきまして、これは普通の原則でございます、当然すぐに県営事業を起こすということになるわけでございます。その点われわれは何も心配は持っておりません。
  58. 前川旦

    前川旦君 それでは、県が一応計画を立てましたらできるだけすみやかに県はその実行に着手するのだというふうに指導なさる、そのように解釈していいわけですね。――うなずかれましたからそうでしょう。  それじゃ一体、今度事業費用分担ですね。たとえば公害の発生源である事業所、それから国、県、これはいろいろ分担法にも減額措置がありますが、この費用分担はどの機関できめることになりますか。それをきめる機関はどこになりましょう。
  59. 小泉孝夫

    説明員(小泉孝夫君) 土壌汚染防止法関係の御質問でございますけれども、いまの公害防止事業にかかわるものでございますと、これは公害防止事業事業者負担法によりますと、施行者というふうなことになっておりまして、この施行者と申しますのは、県とか地方公共団体というようなことになろうかと思います。
  60. 前川旦

    前川旦君 費用分担をどの機関できめるのかというお尋ねをいたしましたので、それじゃ県はかってに幾ら持つ、うちは幾ら持つ、国は何ぼ持つということがきめられるのですか。費用分担はどの機関がきめられるのですか。この法律案の中にはっきりしておらぬようなのでお伺いしたいのですが……。
  61. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 昨日もたしか事業主体はどうなるかという御質問が出たのじゃなかったかと記憶しております。あるいは私の記憶違いかもしれませんが、この土地改良事業は、主として県営事業でやるということを頭に置いておりますので、費用考え方は、県営で事業をやるということを頭に置いて公共負担のほうはきめてまいるつもりでございますが、公害対策事業としてやります場合には、費用負担法の事業者負担の分が出てまいります。したがいまして、その事業者負担が施行者のほうできまりますと、その残額ということで公共負担のほうがきまってくるわけでございまして、やはり事業者が負担するもの、事業者負担が先取りされるという形になりますから、ただいま総理府のほうから御答弁がありました施行者によって事業者の負担分がきまりますと、あと残額という形で公共負担がきまるというふうに御理解願いたいと思います。
  62. 前川旦

    前川旦君 企業負担の残りを国と県とが分担をすると、土地改良事業ですから。もしこの復旧――単なる復旧だけじゃなくて、もしそれでほかのこともついでにやっちまえということで、受益があれば受益者にも若干負担してもらうというきのう答弁があったようですけれども、それはそれとして企業負担の残りを国と県で負担するわけですが、その配分はなぜ明記してないんでしょうか。その残額、残りですね。企業負担があるでしょう、企業負担がある。そうすると、その残額について国と県との間で企業負担の残りの分担の割合を、これは法律に書くのが当然なんじゃないでしょうか。その分担はどこできめるんでしょうか。どういうふうにおきめになるおつもりなのか、その辺伺いたいんですが。
  63. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) これは予算措置の問題になりますので、私どものほうで大蔵省、自治省と折衝してきめることになります。で、予算でございますので、具体的なケースに当たりまして負担率をきめてまいりたいと考えております。
  64. 前川旦

    前川旦君 一般の公共事業の負担割合はきまっていると思いますけれども、その基準とどういうふうにこの場合は動きます……。それと全く同じにする御方針ですか。それとも国のほうを厚くするのか、あるいは地方自治体のほうを重くするのか、その辺の方針はいかがですか、どういうお考えでいらっしゃいます。
  65. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 土地改良事業の中にいろんな種類の仕事がございまして、各事業ごとにそれぞれ非常にきめこまかく国の補助率がきめられております。これは一つ事業主体がやります事業の中にも工事の種類がたくさんございまして、その工事の種類ごとにこまかくきめられておる実情でございまして、一がいに何ぼというのが言えないのが実態でございます。したがいまして、具体的にその地区が指定をされ、そこで対策計画が立ち、工事の内容がきまってまいりますと、それに応じてどういう種類の工事は幾らというふうなきめこまかいきめつけをしていかなきゃなりませんので、その際私どもと大蔵省がひざ突き合わせて談判をしてきめることになります。その場合に、やはり災害対策とかあるいはその他特殊なケースは国の補助率が高くきめられておりますので、それらを念頭に置きましてこの事業の特殊な性格が十分反映されるように財政当局とも相談をしてまいりたいと考えております。
  66. 前川旦

    前川旦君 それでは実際にこの事業をやるにあたって、その該当する土地の人ですね、農家、被害者でもありますが、その意見はどこでくみ取ることができるということになりましょうか。この意見はやはり十分にくみ取って、吸い取って話をしなければなりませんし、きのうの答弁の中にありましたように、この事業で単なる災害が除去されるというだけじゃなくて、もっと大きなメリットがある場合には、受益者の負担というものを考えるのだということになれば、それは幾ら負担するのかというような話し合いがいろいろなされると思うんですけれども、どこでどういう機関でその該当する農家の方たちの意見、被害者の意見というものを吸い上げることができるでしょうか。どういうふうにお考えですか。どこで吸い上げるということになりましょう。
  67. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) この計画を立てます際には関係市町村長の意見を知事が聞くということになっております。この段階で市町村長は当然該当地区の部落座談会等を聞いて、事実上計画の段階でも聞くということになるわけであります。具体的な事業実施につきましては、先ほども申し上げましたように、原則的には土地改良法でやりますので、これは農家の申請事業になっております。三分の二以上の同意をとってこの事業を始めるわけでございますから、当然農家の意見を聞くというよりも、農家の形式的には発意になるわけでございますので、十分農家の意向は反映すると考えます。
  68. 前川旦

    前川旦君 だいぶ整理できました。  それでは、きのうの論議の中で、いろいろ変わったと言ったら言い過ぎでしょうけれども、答弁が出たり入ったりしたようなかっこうになったと思いますが、この事業をやる場合に、負担法の適用を受ける場合と受けない場合ですね、どこで分かれるのか、それを一ぺん整理して明らかにしていただきたいと思うのです。整理して答弁を願います。
  69. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) この問題につきましては、私が昨日申し上げ、また総理府から御答弁があったわけでございますが、私が申し上げましたのは、まず人の健康をそこなうおそれのある農畜物が生産されると認められるものということで、これはカドミウムで申し上げれば、一PPM以上のところ、こうなるわけでございます。で、これについては私の解釈では、費用負担法のほうでの被害を生じているところと同じになるのじゃないかということを申し上げたわけでございます。したがって企業者の負担は、原則的にはその一PPM以上の米が出る土壌と申しますか、その範囲が原則であるということを申し上げたわけでございます。
  70. 前川旦

    前川旦君 負担法のことでちょっとこの際お伺いしておきますけれども、よく無過失責任ということばが最近ずいぶん使われております。この負担法が適用されるとなるとこれはたとえば先ほどちょっと言いましたように、民法にありますね、不法行為と損害賠償の問題が。それとは全然別なんだ、全然関係ないものだと考えてよろしいですか、この負担法の適用ということになりますと。と申しますのは、なぜそういうことを伺いたいかというと、たとえば民法上の問題でしたら、故意、過失とか、違法行為とか、それから因果関係とか、いろいろ挙証責任が被害者の側にあると思うんです。そういうものは全部なくなってしまうということになると、事業者の故意がある、過失がある、あるいはやった行為に違法性がある、あるいはいまの結果と因果関係があるということを一一被害者のほうから挙証してみせる責任がなくなる、ずっと前進する、そういうふうに考えていいんでしょうか。
  71. 小泉孝夫

    説明員(小泉孝夫君) この公害防止事業事業者負担法と申しますのは、先ほど申しましたように、この法律に基づいて事業者が拠出いたします金額の性格というものは、あくまでもそういう意味でこの法律に基づく公法上のないしは公害対策基本法二十二条の趣旨を実現する意味でのこの法律費用負担ということでございますので、公法上の負担、こういうふうに考えられるわけでございます。ただし、いろいろ先生が御質問なさっておりますのは、あくまでこれは一つの行為でございます。これをいまの私法上の問題として補償なりなんなりの問題という観点からまた見ることも可能かと存ずるわけでございますので、決してそれを排除したり何かするものではございません。また、この費用負担法というものの性格は、そういう意味で広い意味での原因者負担ということもございますけれども、やっぱりあくまで公法上の負担ということでございますので、施行者の決定に従い、かつ国税徴収の例などにより強制徴収される、こういうふうなことになるわけであります。
  72. 前川旦

    前川旦君 私、ちょっと調べてきたんですが、たとえば汚染の原因が一つ事業所である、こういう例がありますね。その判定、認定はだれがするということになりますか。
  73. 小泉孝夫

    説明員(小泉孝夫君) こういう問題につきましては、事実の誤認等があればまた別問題でございます。これは事実の誤認などがあればいろいろ行政審査法なり何なりという問題がございますけれども、そうでないいわゆる費用を賦課しかつ徴収するというふうなことは、これは施行者が審議会の意見などを聞いてきめます。公害防止事業にかかる費用負担計画に基づいてきめられました公害防止事業につきまして、その事業者を定める基準なり公害防止事業費の額なり負担額なりというふうな一定の所定の手続を経たものに従ってこれを納付しているということになるわけでございます。
  74. 前川旦

    前川旦君 そうすると、この汚染の原因はこの工場である、この事業所である、そういう判断は県がするということになるわけですね。施行者というと県でしょう、県がする。それに対して事業主のほうから異議を言い立てて紛争になるということも考えられると思うんです。一番の問題点はやはり因果関係の問題ではないかと思いますね。これはうちの工場が出したものじゃないとか、よそから来たものであるとか、そういう争いがいろいろあると思うんですが、こういう争いになった場合には、県が因果関係を証明して見せないといかぬのでしょうか。それとも事業所のほうが逆に因果関係はないということを挙証して見せなきゃいけないのでしょうか、その挙証責任はどうなりますか。
  75. 小泉孝夫

    説明員(小泉孝夫君) この公害防止事業と申しますのは、あくまで国とか地方公共団体がとにかく現に発生しておりますような事業者の事業活動による公害防止をしようというふうなことで慎重な準備なり計画を持ちまして、かつその前には審議会の意見なり何なりを十分聞きましてやるわけでございますので、もちろん一般的にはそういう紛争などは起こらないと思いますけれども、まあお説のようにかりに起こったらどうかというようなことかとも存じます。しかしこの場合は大体におきまして、たとえば事業者の負担金をどうやってきめるかというふうなことを申しますと、そういう公害防止事業の種類に応じます、いまの御質問はたまたま土壌汚染防止法の場合でございますけれども、都市計画法なりいろいろな法律、下水道法なりございますが、こういうような各法律がございまして、そういうものの法律のそれぞれの事業につきまして、事業活動の規模なりまたは公害の原因となる施設の種類とか規模とかいろいろな要素を判定いたしましてきめるわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、一般的にはそういう紛争がひんぴんとして起こってしまって、公害防止事業が行なわれることがないということは期待しないわけでございます。
  76. 前川旦

    前川旦君 実を言うとあなたの答弁はよくわからないんです。くどいようですけれども、事業者のほうは金を払うわけでしょう、出さなきゃいけませんからね、これは必死になって逃げますよ、おそらく、何とかして払わずに済むように。もし払うとしても、できるだけ少なくて済むように、これはいままでたくさん例のあることなんですが、自分のところが流しました、自分のところが悪うございましたと言ってあっさりすべてを認めるという例のほうがまれだと思うんです。そういう場合に、ずいぶん紛争が多くなるだろうと思うんですけれども、私聞きましたポイントは、県がそういうふうな認定をする、この事業所が汚染の原因あるいはこの二つの事業所がその原因であると、こういう認定をする。それに対して紛争が起こる。紛争が起きたときに一番問題になるのは因果関係ですから、その因果関係の挙証責任はどっちにあるんだということを、どういうふうになさるんでしょうかということを聞きたいわけなんです。たとえば民法上の損害賠償請求権も残ります。これは同じようにダブって残りますけれども、その場合には被害者のほうが挙証責任があるでしょう。しかし負担法の場合も同じであるとなったら、これは実効はなかなかあがらないと思うんですよ。ですから、いわゆる因果関係がないということを挙証する責任を事業所に負わすというほうがいいんじゃないかと思うわけですが、そこを伺いたいわけです。
  77. 小泉孝夫

    説明員(小泉孝夫君) 因果関係を挙証するかどうかという御質問でございますけれども、確かに私が申し上げましたのは、その前の段階かもしれませんが、もう一ぺん念のために申し上げておきますと、これはいわゆる普通の民事裁判なり何なりということじゃございません、あくまで公法上の負担金でございますので、強制徴収ということで、まずお金を取っちまう、ないしは納めなかったら税金と同じように延滞金を取ってしまう、こういう非常に強いものでございます。したがいまして、さらにそのあとで不服があったらどうかと、こういうふうな御質問だと思うわけでございます。そういたしますと、いわゆる行政不服審査法に基づいて異議の申し立てということがあるわけでございますので、その限りにおきましては、やはり処分庁に対しまして異議を、申し立て人のほうが、こういうわけで因果関係がないじゃないかということをまず申し述べなければいかぬ、こういうことであります。どうも先生は一番終わりのほうを……。
  78. 前川旦

    前川旦君 だいぶわかりました。そうすると、もし紛争が起きた場合にはどうなんでしょう。紛争がきちっと済んでしまうまで、全部きれいに紛争が解決するまでは事業の着手ができないということになるんでしょうか。それとも紛争中でもどんどん事業は進めるということになるんでしょうか。それはどうでしょう。
  79. 小泉孝夫

    説明員(小泉孝夫君) まあ一般論のお話で恐縮でございますけれども、そういうことであれば、地方公共団体、土壌汚染防止法の場合でございまして、前提といたしまして事前に十分県なり何なりのほうで調査をし、かつ審議会の意見を聞いて決定いたした、それで実行に着手しようと、こういうふうになるわけでございます。その次に、じゃ強制徴収に着手した、それで事業を始めた、かついまの異議の申し立てが出てきた、こういうようなときは、やはりその異議の申し立てなり何なりを却下して、緊急である公害防止事業をどうしてもやらねばならぬと判断したのであれば、実施していく、こういうわけでございます。
  80. 前川旦

    前川旦君 それでは次に参ります。かなりわかってきました。  加害者が、発生源ですね、明らかな場合はこれはいいんですけれども、人為的な汚染であるということがまず前提で、しかしだれが加害者かわからない、不明である、はっきり確定しないという場合、こういう場合でも、国、県の費用事業は実施するのだというふうに山中総務長官はお答えになったと思いますけれども、これはそのとおりでよろしいでしょうか。
  81. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 汚染の原因者が不明の場合には、昨日も御答弁したとおりでございますが、費用負担法によりまして事業者に負担させる分がございませんので、費用負担法の適用はできないと思います。したがいましてこれは他の土地改良事業の諸制度に準じて対処していくということになりますが、その場合の負担につきましては、費用負担法の事業者負担が行なわれる場合とまあバランスをとって考えていく必要があろうと思いますが、一般土地改良事業のやり方を参考にしながら十分配慮してまいりたいと考えております。で、災害復旧事業とか石炭鉱害地の復旧事業とか、鉱毒対策事業等実質的に農民に負担をさせないで事業をやっているケースもございますので、それらを十分勘案をしながら、円滑に事業が行なわれるように配慮してまいりたいと考えております。
  82. 前川旦

    前川旦君 私の聞きたいのは一点なんです。明らかに人為的な原因で汚染をしている、この汚染事業によって排除する。この場合に山中総務長官の御答弁では、国と地方自治体とでやりますと、こう答えられているんです、ということは、原則として農家の負担なしでやるんだというふうに理解をするんですが、それでよろしゅうございますか、この点なんです。農家負担がどうなるかということなんです、ポイントは。
  83. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 現地の実情によっていろいろ問題のあり方も違うのではないかと考えられるわけでございますが、事業費用負担法によって、かりに原因者があった場合に対処されるような性格のものでありますれば、それとのバランスを考えてやるべき筋合いではないかというふうに考えられます。
  84. 前川旦

    前川旦君 ちょっとおかしいです。それじゃもう一つ伺いますが、自然汚染の場合にはどうお考えですか。自然汚染の場合にその汚染をきれいにする、この場合の費用負担はどうなります。
  85. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 鉱毒によりまして自然に汚染をされておりますケースにつきましては、鉱毒対策事業という特別の土地改良事業を仕組んで現在復旧事業を実施中でございまして、この場合は国費が農用施設につきましては六五%、農地につきましては五〇%ということで実施しておりますが、残額は地方公共団体が実質的に負担をしてやっております。
  86. 前川旦

    前川旦君 どうもよくわからなくなってしまいました。山中長官のここに答弁の議事録がありますが、ずいぶん思い切ったことを言っていらっしゃるわけですよね。それをなぜそうずるずる下がっていかれるのですか。山中長官せっかく――これは山中長官答弁ここにあるのは、企業者がいない場合、つまりこれは自然汚染といってもいいうちに入るかもしれませんが、こういう場合でも「全額国、地方公共団体の負担するところになるのが原則であろうと考えます。」、ずばっと言い切っておられるわけですね。ですから、企業者がいない自然汚染の場合でさえ、それは農家には負担させないで国及び県がやるのが原則ですと、こう言い切っておられる。まして、人為的なもので、ただ具体的にその因果関係がはっきりしないというような場合には、なおさらこれは農家は負担はしないでいいというように導き出されてくると思うわけです。それは、ケース・バイ・ケースということでなくて、はっきり言えるのではないでしょうか。山中長官答弁と食い違うように思うのですよ。
  87. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 昨日も御答弁申し上げたと思いますが、費用負担法を適用される場合の前提と申しますか、考え方の基礎には、被害の復旧という考え方があるわけでございまして、原状に戻すということで、その範囲において企業者に費用を負担させようという考え方に相なっておると思います。したがいまして、事業者がと申しますか、原因者がはっきりしない場合におきましてもやはりそういった考え方で対処をすべきだと考えられるわけで、山中長官があえて原則でありますと答弁をしておりますのも、そういう前提があってのことであろうかと思います。具体的に事業者がいない場合の、原因者がはっきりしない場合の汚染の態様が現地によってさまざまでございまして、どの程度が復旧の範囲に属するか、いろいろ判断のむずかしい面が生じてまいりますので、具体的に事業を仕組む場合に、そういうことも判断をしながら、できるだけ費用負担法の場合とのバランスも考えて農民負担を軽減してまいりたいというのが趣旨でございまして、決して食い違うところはないと考えております。
  88. 前川旦

    前川旦君 これは大臣に答えていただきたいと思います。よくわからなくなるのです、いまのような御答弁を聞いていると。くどいようですけれども、山中国務大臣ずばりとおっしゃっているわけです。ただし、原則論としてということが前提になっています。ここに速記がございますが、山中長官答弁は、自然汚染であっても、企業者がいなくても、あるいは「複合的な原因も追及したがそれも発見できない、あるいはまた、徳川時代からの対馬等におけるような、何百年か前からのものであるというような場合において、」、そういう場合でも「どうしてもそれが必要な場合においては、これは全額国、地方公共団体の負担するところになるのが原則であろうと考えます。」と。これは原則論ですから例外はありますが、それから、先ほど申しておりましたように、事業をやるということで新たにもとよりかもっとメリットがあるというならば、それは受益者が負担するのもやむを得ないという原則はそれはわかるのです。復旧するということですね、もとへ戻す、こういう場合には、これはやはり農家負担はなしでやるということでよろしいのじゃないでしょうか。そういう御答弁があっていいのじゃないでしょうか。大臣いかがですか、これは。
  89. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまお話しのような場合は、なるべく農家には負担をかけない、こういうたてまえであるわけでありますが、とにかく金を要することでありますので、個々の場合にいろいろなケースがあると思いますが、たてまえとしてはやっぱり国と地方団体で負担をして、なるべく農家には負担をかけさせないようにやってまいるべきではないか、こういうふうに私どもは考えております。
  90. 前川旦

    前川旦君 次に、こまかい問題で恐縮ですが、「特別地区の指定」で「勧告」をするということになっていますね。勧告に従わない場合だってこれはあると思うのです。勧告に従わないという場合にはどういう結果になりましょうかね。勧告というのはあくまで勧告であって、これは強制力がないと思います。勧告に従わない、いやおれは米しかつくれないのだ、米をつくるのだ。これは一体どうなりましょうか。その場合、もちろん一PPM以上出れば買い上げはしないわけですけれども、企業はこれに対してどういう責任ができましょうか、その原因者は。
  91. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) いまお話しのように、勧告はあくまで勧告でございますから、強制力はございません。ただ、全体としてこの問題を考えましたのは、一PPM以上出るようなところは、米をつくってもこれは買ってももらえない。それでございますから、おそらく農家はそんなむちゃはしないと思います。しかし、万一するような場合、これは自分で勧告も聞かずつくってもこれは買ってもらえないわけですから、基本的には、この法律との関係では私は自分の責任になると思います。ただ、賠償問題はこれは別にございます。民事上のこれはその企業者と農家との話し合いの問題になるわけでございますけれども、勧告も聞かないでやった場合、これは企業側がその点を詰めてどうだこうだということはありますけれども、これは損害賠償で両者の話し合いの問題になるだろうと思います。
  92. 前川旦

    前川旦君 それでは次に、もう一つこまかい問題。  転作の指導をなさいますね、いろいろ助言、指導を。転作してうまくいく場合だけとは限りません。これは野菜なんか非常に価格が不安定ですから、米であれば一定の収入があったのに、転作にすなおに指導に従ってやって、どすんと収入が減るという場合だってあると思うのですよ。こういう場合には、どういう救済措置を考えていらっしゃいますか。
  93. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) いまの場合、二つの問題があると思うのですが、国としましてあるいは県としまして計画を立てまして転作の指導をしたということによりまして、いまお話しのようなことが全くないとは私も言えないと思います。その場合には、自創資金の融通であるとか、そういうことも考えなければならぬ場合が国としてあると思います。と同時に、転作をやりますと米の収入に比べて低いではないかということは、また別途起こってくるわけでございます。いずれは果樹なりが実ってよくなるということになればそれでよろしいわけでざいますけれども、それまでの間は、その間の損害賠償の問題は、やはり民事上の問題として企業者との話し合いの問題が当然起きるわけでございますから、二つの問題があると思います。
  94. 前川旦

    前川旦君 企業者との間で民事上の問題だけが残るのじゃなくて、国としての何かの対策というものをやはり考えるべきだと思いますが、考える方向で行かれますか。
  95. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) ただいま申し上げましたように、初めからそれを全部国が補償するんだというたてまえはとれないと思います。しかし、現実に農家が経済的に打撃を受けたというような場合には、これは当然自創資金の融通その他いろいろな手を考えて農家が困らないようにして差し上げることは必要だというふうに考えます。
  96. 前川旦

    前川旦君 それでは、現在、一PPM以上検出されている地域は何ヘクタールくらい、あるいは何カ所くらいあるか、つかんでいらっしゃればお聞かせいただきたいと思います。
  97. 内村良英

    説明員(内村良英君) お答え申し上げます。  カドミウム環境汚染観察地域内におきまして一・〇PPM以上の米の作付面積は三十三ヘクタールございます。このほかに四十四年産米の調査の結果一PPM以上のため四十五年産につきましては途中で抜き取ってしまった面積が約七十六ヘクタールございます。
  98. 前川旦

    前川旦君 いまのところつかんでいらっしゃるのは全国で百ヘクタール程度だということでありますが、これは対策を急がれるわけですね。当然急がれるわけです。  そこでお伺いしたいのは、この法案を、法律を実効あらしめるため、つまり事業を推進するため、この法案関係で来年度予算、幾ら御要求なさっていらっしゃいますか。どういう項目、どういう種類を……。
  99. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) ちょっと数字をいまお出ししますので、ちょっとお待ちください。
  100. 前川旦

    前川旦君 時間がかかりますか。
  101. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) いや、すぐわかります。――ただいま、まだ大蔵省と折衝しておりますので、これで確定したということは申し上げられませんが、われわれとしましては、総額にしまして約一億一千八百万程度の要求をいたしたいと考えております。  その内訳は、昨日も申し上げたと思いますが、われわれといたしましては、過去の農林省土壌調査の上に立ちまして一ぺん全国的な総点検をやってみたいということを考えております。この分が一つ。  それから先ほどから御指摘のありますような要観察地域、それからそれに準じられるようなところ等ございまして、そういうおそれのあるようなところを精密な調査をいたしたいということで特別調査をやりたいと考えております。  それから三番目といたしましては、いまの私が申し上げたのは、これは大体おそらくわれわれとしましては初年度四、五十地区くらいを考えております。それから、具体的に対策に着手しなければならない地区も出てまいりますので、それについてはその対策を立てるための調査ということを三番目に考えております。それにあわせまして分析用の機具器械、これがなかなか高価なものでございますので、これの補助もいたしたいということを考えておるわけでございます。
  102. 前川旦

    前川旦君 それではいまの要求予算の内容を伺いますと、調査調査調査で、実行のための予算要求を一つもなさっていらっしゃらないようですが、いま三十三ヘクタール、抜き取ったやつが七十五ヘクタール、合わせて一〇八ヘクタールは、取り急いでとにかく客土するなり何かしなければいけない、緊急を要することだろうと思うのですね。それを、これは来年の、四十六年度予算ですから、いつになりまするか、四十七年の三月までは調査調査で終わってしまって、実際に事業の実行はやれないということになるのじゃないですか。それは少しおかしいような気がしますけれども。もう少し――大臣もたびたび熱意のほどを披瀝しておられるのですからもう少し突っ込んだ姿勢考え方があってしかるべきではないかと思いますけれども、その点はいかがですか。
  103. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 農地局所管の事業といたしまして、とりあえず要観察地域として指定されております二地区につきまして、ただいま先生御指摘のような、緊急に事業をやりますために必要な全体実施設計を組む経費を要求中でございます。これは先ほどから質疑応答に出ておりますように、地域が具体的に指定されまして、そこで土質の、土をどの程度客土をしたらいいか、その土はどの辺にあるかといったようなことを検討しまして設計をしませんと具体的な事業費も出てまいらぬものでございますので、緊急にそういう実施設計をやるということで五地区分の経費一千五十万円、大蔵省に要求しておりますこの一千五十万円を要求します場合に、これはまあ地区の事情によって工事費がきまってくるわけでございますので、緊急に必要があればそれで設計をしまして所要の措置をとってまいりたいと考えております。
  104. 前川旦

    前川旦君 費用負担法と並んでこういう事業を進めるということは大きな前進だというふうに私は評価をしたいのですが、やはりこれを実施するにはたいへん大きな抵抗があると思います。これは企業側からの大きな抵抗ですね。彼らとしてみれば一日でも長く引っぱって延ばしたい、先へ延ばしたいということになるのだろうと思います。ですから、そのペースにどうぞ入り込まないで積極的に攻めていくということでしていただきたいというふうに思います。そのことを強く要望しておきます。  最後に、これには罰則がありますが、立ち入り調査についての罰則が。農民に対して特に罰則があります。何ともこれは割り切れない感じがいたします。それと関連をして、実際に公害を発生している事業所への立ち入り調査、これをする権限ですね。これは一体どこにあるのか、私は、被害者、それから事業を実施する側ですね、農林省なり県なりあるいは公正な中立の方なりが立ち入り調査を十分にやれるという体制をとらなければ実効はあがらないと思う。たとえば企業にべったりの感じのする人だけの立ち入り調査では実効はあがらないように思いますので、ですから被害者側、あるいは公正なところの立ち入り調査のできるような方法を講ずるべきではないかと思いますが、これはどうでしょうか。
  105. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) ただいまの問題につきましては、この法律の体系は第七条にございますように、特別の排出基準、排水基準等を定めますものは都道府県知事でございます。あの大気法律、水の法律にもございますように、土壌のことも考えましてきびしい許容限度をきめるということを知事に第七条で義務づけておるわけです。そうしますと、都道府県知事は大気法律、水の法律によりまして、当然これはあの条文にもございますが、工場事業場に立ち入り検査ができます。それによってこちらは対処をする、そして土壌につきましてはそういう規定が向こうにございませんので、こちらに規定をいたしたわけです。両方合わせまして、同じ都道府県知事がやるわけでございますから、これで十分ではないかと考えております。ただそういう御心配も、われわれもあるわけでございまして、そのために第十一条を置きまして、水質汚濁防止法でありますれば企画庁長官大気汚染防止法であれば通産大臣と厚生大臣、それから鉱山保安法は通産大臣に農林大臣が必要な要請ができる、と同時に衆議院でも御修正がございまして、都道府県知事に対しまして農林大臣からこうしろ、ああしろという勧告ができる、こういうことまでしております。これによってわれわれは運用を期していきたいと考えております。
  106. 前川旦

    前川旦君 終わりました。
  107. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) これにて午後一時まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十八分開会   〔理事高橋雄之助君委員長席に着く〕
  108. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農用地土壌汚染防止等に関する法律案を議題といたします。  これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  109. 向井長年

    ○向井長年君 さきの質問者が質問されて重複する点があるかもしれませんが、私五点ほど質問いたしたいと思います。  まず農用地土壌汚染防止法案が成立した場合の効果についてでありますが、本法案は従来の鉱毒対策土地改良事業によって救うことのできない人為的な土壌汚染防止を補ったものであるが、その限りにおいては私は非常に意義があると思います。しかし問題は汚染地域の指定をして、対策計画を定めた後、実効について本案は何も規定してない、こういうことでございます。これでは本案の役割りを果たせないのではないか、こういうふうに思うわけです。この点についてお伺いいたしたい。
  110. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) ただいまの御質問でございますが、この法律では土壌汚染を防止あるいは除去するための一方では規制をかけると同時に、そういう汚染されたところについての対策をとる、それの具体的な計画を立てるということになっておるのは御指摘のとおりでございます。それの実効につきましては午前中にもお話がございましたが、その対策計画は県知事が立てまして、原則的には県営事業でやるという予定にしておりますので、県知事が自分で対策計画を立てることを義務づけられておりますので、それを受けましてこれは当然土地改良法に基づきまして事業を実施するわけでございます。この法案で計画しか書いてないというお話でございますけれども、われわれといたしましては、十分これで事業実施まで対応できると考えておるわけでございます。
  111. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、これは何ですか、事業主体は県であるということですか。県だけですか、それともその他の団体がありますか。
  112. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) ただいま農政局長から御答弁申し上げましたように、この土壌汚染防止法農用地土壌汚染対策計画に基づきまして、それを受けて土地改良法の手続で事業を実施していくことになります。したがいまして、土地改良法の手続上事業主体になり得るものは、抽象的にはすべて事業主体としてなり得るわけでございますが、かねて御審議をいただいておりますこの法案の性格、特に公害を受けた農家の救済という性格にかんがみまして、また事業の規模等を勘案した上、県営でやるのが最も妥当であるというふうに判断しております。したがいまして、県営が原則と申しますか、主たる場合になるというふうに判断をいたしております。
  113. 向井長年

    ○向井長年君 対策計画は県知事がやるということですから、その実行に当たっても県がやるということが主体であるということですね。そうすると主体はわかるのだけれども、県以外でやる場合もあるということですか。いわゆるその他の公共団体もやれると、こういうことなんですか。
  114. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) 具体的に汚染対策地域が指定されまして、対策計画は立てられてみないと判断ができないわけでございますが、たとえば千ヘクタール以上の範囲にわたってかんがい用水施設をつくるといったような場合は、土地改良法の考え方からいたしまして、いわゆる国営でやるのが妥当であろうと考えますが、そういう場合が出てきますかどうか。これは今後の具体的な計画に属することでございまして、現状の判断では県営が主体であるというふうに考えております。
  115. 向井長年

    ○向井長年君 衆議院で修正された中で汚染地域の市町村長はその指定を都道府県知事に要請することができると、こういうことになっておりますね、修正が。そういうことになって要請する。そうすると、都道府県知事はそれに対してきめるわけですが、そういう範囲はどうなんですか。範囲はきめていないのですね。いわゆる小さい部落あるいは大きな部落全般とか、そういう範囲があるのですが、そういうものは申請すればすべて都道府県知事がそれに対する対策計画を立てる、こういうことになるのですか。
  116. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 法文の上では何ヘクタール以上でなければ申請ができないというようなことは書いてございません。知事の指定におきましてもそうであります。それからまた市町村長が自分の村の中での汚染農用地対策地域としてくれという要請をいたします場合も同じであります。ただ実態問題といたしまして、われわれの過去のまだ若干の調査ではございますけれども、やはり十ヘクタールとか、あるいは二十ヘクタール、場所によりましては百ヘクタールというようなことになっておるわけであります。
  117. 向井長年

    ○向井長年君 次は費用負担についてお伺いしますが、費用負担法案では、発生した公害については損害賠償関係が存在するが、本法案では損害賠償関係の有無にかかわらず、やはり土壌汚染に対する除去、防止、こういう問題について被害はすでに生じておる、こういうことになるわけですが、この原因、因果関係の解明が非常に困難である、こういう場合が事実あると思います。こういう場合においては費用負担というものは、ここでどういう形でこの費用負担というかあるいは賠償をやるんですか。
  118. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 午前中総理府のほうがお見えになりまして、その辺を詳しく御説明があったわけでございますが、費用負担法におきましては原因者の過失、無過失は問わないで、施行者が公害防止のための事業を行なうといった場合には、費用負担計画を立てまして公用負担として賦課をいたします。強制徴収までできることになっております。原因者がおります場合は、それでいくわけでございますが、したがって、午前中総理府の御答弁にもありましたように、因果関係について企業者あるいは事業者のほうからそれは私の責任ではないということがあるかもわかりませんが、それは不服申し立てをみずから証明しなければならないというような御答弁があったわけでございます。それもわからないあるいは昔からの山でありまして、これはだれが加害者かわからぬといった場合はもちろん費用負担もかかりません。その場合にも対策事業費をとる場合があるわけでございますが、これは大臣が御答弁申し上げましたように、国と県が原則的にそれをみる、そうしてできるだけ農家の負担はかけないようなたてまえで努力をしたいというふうに申されたわけでございます。その線で私たちは進めるべきだと考えます。
  119. 向井長年

    ○向井長年君 これは明確になっていないんですが、そういう不明な場合においては国あるいは県が持つ、こういう形はこれは明確に何らかの形にすべきじゃないですか。これはいま倉石大臣がそういう答弁をしたけれども、しかし大臣がかわっちゃう場合もあるし、よそへいっちゃってそんなことできないという形になってくるおそれがあると思う。大臣、ですからそういう問題については明確に政令なり何らかの形で入れておく必要があるんじゃないか、いわゆる原因、因果関係の中から明確にこれが証明できない問題に対して。これはいかがでしょうか。いまそういう方針だということはお聞きしましたけれども、その点何らかの形で示しておかなければいけないんじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  120. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府の一貫した方針でございますので、人がかわっても間違いないと思いますが、金のかかることですから、予算も伴うことでありますが、だんだんとそういうことについて具体的な事案が出てくると思います。私も政府の方針としては、いま申し上げましたように、結果のあらわれている被害について因果関係の明白でないもの、何百年来蓄積しているようなものもある、いろいろなケースがあると思います。いま局長が申し上げましたように、そういうのはたてまえとしては政府及び公共団体が負担すべきものであるならば、ほかの人には迷惑をかけないことにしたい、こういう考えでございます。
  121. 向井長年

    ○向井長年君 私午前中いなかったから重複しているかわかりませんから、ほかの議員から質問された点を再び繰り返しておるように思いますけれども、その点御了解いただきたいと思います。  そこで土壌汚染試験研究調査について、試験研究調査については比較的これは進んでおるにいたしましても、これはカドミウムは別として、いま政令を見ますと追加されておりますね。政令でこういうものを入れるんだ、いわゆる銅、亜鉛、こういうことが政令の見込みだということで書かれておりますけれども、これはやはり鉛も砒素もあると思います。したがって、今後こういう調査研究に待たなければならぬわけでございますが、現実に被害が出てからでは、これはおそいですよ。したがって、これを未然に防止するということが重要でございますから、そこで十八条の研究の推進、普及に関する規定がございますけれども、これは訓示的な規定ですよね、いわば。そうでしょう。したがって、訓示的な規定だけでいいのかという問題、あわせて試験研究の現地調査拡充をどうしてやっていくか、どこでそれをやるのか、こういうことでございますが、これはいかがでしょう。
  122. 川井一之

    説明員川井一之君) 土壌汚染防止に関する国の研究でございますけれども、これにつきましては、大気汚染とか水質汚濁、そういうものとの関連が非常に深いわけでございます。そういうこともございますので、大気汚染、水質汚濁等、公害に関する試験研究の一環として現在実施しております。  なお、研究の体制でございますが、これにつきましては国の研究機関といたしましては、農業技術研究所、それから農事試験場、園芸試験場、林業試験場、蚕糸試験場と、それから畜産試験場、食糧研究所、その他全国に地域農業試験場がございます。こういう研究機関が組織的な共同研究体制をしきまして、積極的に進めるという形をとっております。  なお、公害に関する試験研究といたしましては、全国の都道府県の農業試験場及び大学、民間、各権威ある研究機関がございますので、こういう機関と有機的な連係、あるいは分担、協力関係を強化いたしまして、公害の多様な問題に対応してまいりたいという状況でございます。  なお、土壌汚染の防止につきましても、これらの研究の一環といたしまして、しかも緊急を要する問題でもございますので、特に重点的に進めていくという状況でございます。
  123. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) いまの試験研究の体制に続きまして調査の体制でございますが、ことしすでにわれわれのほうといたしましては、特別調査というようなことで、要観察地域を中心にしまして九県ほどを調査をしておりますけれども、来年はこの法律が通過いたしますれば、われわれといたしましては、まず全国的な概況調査をやりまして、いわば総点検ということでございますが、これは過去に農林省といたしましても、すでに土壌調査をかなりやっております。そういうものを使いまして総点検をやっている。それから要観察地域のほかにも該当地域がかなりあるようでございますので、その地区数はまだ確定をいたしませんが、やはり四、五十ぐらいの地区につきましては、もう少し精密な調査をしたい。その中で具体的に対策途上の地区につきましては、対策調査をやりまして、また計画の樹立の準備費も県に出すということを考えております。  なお、特別調査をいたします際には、必要があれば現地試験をやるための費用も加えようというふうに考えております。
  124. 向井長年

    ○向井長年君 農林省としてはいま、いわゆる総合点検をやる、あるいは特別地域の指定を現在やっている。これはいいんですが、県においても農業試験場とかいろいろありますが、こういうところもやはり併合してやるということですか。そこでそういうところにもやらせると、農林省は直接やると、こういう中で、これは併合してやるんでしょうけれども、やはり地域の問題ですから、県においても相当力を入れなければならぬ、こうなってくるわけですが、そういう問題については積極的に県にやらそうという姿勢でもっていくのか、あるいは農林省が主体となってやる、県も付随的にやりなさいというものであるのか、その点いかがですか。
  125. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 御指摘の点は、現在の県の試験場に土壌関係の専門の職員を三百九名置いております。これは補助職員。一つ調査でございますので、農林省がやり、県がやる、ばらばらにやることはございませんので、農林省から補助金を出し、そして県の補助職員を中心にしまして調査をしたいと考えております。
  126. 向井長年

    ○向井長年君 いま特別地域の九県というのはどことどこですか。
  127. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 九県は、ことしやっておりますのは秋田、宮城、群馬、長野、兵庫、愛媛、長崎、大分、鳥取の九県でございます。
  128. 向井長年

    ○向井長年君 この政令でこのカドミウムを加えて銅、亜鉛を規定する見込みと、こうなっておりますが、砒素とか鉛とか、これは入れないんですか。
  129. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 政令に出しましたのは、当面のことを申し上げたわけでございますが、砒素、鉛につきましては、これは人の健康にも関連があるということになっておりますので、厚生省ともよく相談をいたしまして、その上で調査検討が済みますれば、砒素、鉛も指定をいたしたいと考えております。
  130. 向井長年

    ○向井長年君 次に農作物の作付等についてお伺いいたしますが、人の健康をそこなうおそれのある農作物については作付をしないよう勧告すると、非常にやわらかな形で規定されておりますけれども、これはもっと強い形をとらなければならぬのじゃないかと思うんですよね、規制措置と申しますか、そうだと思うんですが、この点どうなんですか、勧告程度でいいのかどうか。
  131. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) この点につきましては、御承知のように食品衛生法カドミウムを一PPM以上含む米については製造販売が禁止をされております。それには罰則がついておるわけでございます。したがいまして、そういうことを前提にいたしますと、対策地域におきまして一PPM以上出るようなところに米を植えてはいけないということを農家に知らせるわけでございます。そして、なかなかそれを聞きそうにもない、あるいは知らずして植えてしまったというところには、そこは植えてはいけないというようなことを注意をするという意味で勧告ということにしたわけでございまして、食品衛生法を頭に置いた上でありますと、この措置で私は十分だと思っております。
  132. 向井長年

    ○向井長年君 その場合、作付禁止または転換をしなきゃならぬということになりますね、そういうところに対しては。そうすれば、やはり自分の土地でありながら、そういう汚染地域だから農民は非常に損失といいますかね、損害をこうむるわけですから、これに対して補償等はどう考えておりますか。
  133. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) これは当然加害者といいましょうか、原因者がおりますれば、民事上の問題といたしまして損害賠償を農家が加害者側に請求することになります。現にことしの安中なりあるいは富山の三日市では加害者のほうが損失補償をいたしております。
  134. 向井長年

    ○向井長年君 そうでない場合があるそうですね、原因者の不明というやつが。そういう場合においてはどこがこれは補償するんですか。
  135. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) その場合に、法律のたてまえといたしまして国が補償するということは、法律的には私はないと思います。しかし作付転換をやりまして、うまくいけばよろしいわけですが、なかなかそうはいかないということで、農家が経済的な打撃を受けるという場合には、政府といたしましても、自作農創設資金を融通したり、その他の資金の融通をいたして、農家の経営が困らないような措置はとるべきだと考えております。
  136. 向井長年

    ○向井長年君 これは無過失責任の問題と同じようなかっこうになってくるのですけれども、結局原因者不明の場合においては補償する責任なり、義務はない。しかし、何らかの形で農民に考えてやらなければいかぬ。こういう政治的な意味ですね、いまいわれているのは。ところで実際問題とすれば、そういうところは農民に責任があるわけじゃないのですね。農民そのものの汚染地域ではない。ただ、そういうところだから勧告をされて、やめようということになりますから、結局損は損でかかってくるわけです。それをただ何らかの形で農民に融通したいということでは、それは困るのじゃないか、その点はいかがですか。
  137. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 原因の不明の場合なり、あるいは自然で汚染されている場合、いろいろあるかと思いますけれども、そうだからといいまして、農家が汚染された土壌に稲を植えまして、米にしましたところが、それがやはり食品衛生法で禁止されるわけであります。これはやはり農家の損失ということになるわけでございますから、その事前の策としていろいろ勧告をするわけでございます。その勧告の結果、いろいろ農家の経営上困った場合には、いろいろ国として救済的な措置は講ずべきだということは、先ほども申し上げたとおりでございますけれども、国としてそういう自然汚染あるいは原因者不明の場合は、国が損失補償の法的な責任があるということは、私は言えないと思います。
  138. 向井長年

    ○向井長年君 そういうところは食品問題じゃなくて、他の方向に転換していくという指導をするということでしょうね、おそらく。いわば食品問題じゃなくて、花をつくるとか、そういう方面に転換するように指導していこう、こういうことになるのですか、大体の方針として指導方針は。
  139. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) その辺につきましては、対策計画の具体的な立て方だと思います。やはり農家の希望によりまして、客土してでももとの水田に戻したい、また経済的にもそれで引き合うといった場合には、もとの水田に戻すということもありましょう。非常に汚染がひどくて、これはもう水田にしておくことができないというようなことになりますれば、やはり非食物性のものを植える。場合によりましては、他用途に転用するということも考えるべきだと思います。
  140. 向井長年

    ○向井長年君 次に、この無過失責任の問題ですが、特にこれは非常にこの法案は無過失責任になじみやすい法案ですね。そういう中で、土壌汚染は鉱業からの汚染が大部分だと思われますけれども、これについて鉱業法では無過失責任が導入されている。しかしながら、これはなじみやすい分野であるけれども、これは限界が明らかでないという、こういうことになっておるのですが、そもそもこの土壌汚染は、事業活動の上で排出基準がきめられて、これを守っておる、基準は守っておるけれども、長年の蓄積で、先ほど言った長年の蓄積からくる過失が出てくると思うのですよ。こういう問題について、この法案はどうも効果がないと思うのですねこのままでは。したがって。被害はすでに生じている、もう当初から基準は守っておるけれども、蓄積して何年か後にその被害が出てくる。こういう問題があるわけです。特にそういう問題について、過失がなくても結果生まれる無過失責任を導入しない限り、この法案の効果はないのではないか、こういうように私は思うわけです。この点いかがでしょうか。
  141. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 無過失責任の問題は、これは民事上の問題でございます。この法律では、汚損された土壌についてのいろいろな対策を立てるわけでございますが、その場合には事業者の故意、過失に関係なく、費用負担すべきものは費用負担法でさせるということになっておるわけです。  それからなお無過失の問題につきましては、先ほど御指摘にもございましたように、鉱業法ではすでに無過失責任の原則が立っておりますので、それからまた、土壌汚染の場合は鉱山がわりと多いものですから、かなりの部分は民事上の問題としてはそちらで解決がつく。それ以外の工場事業場ということになりますと、無過失の問題はまだ解決いたしておりません。これにつきましては、公害本部を中心といたしまして検討するということになっておるわけでございます。
  142. 向井長年

    ○向井長年君 もう一つ、指定された以外の区域で、特に林地とか、あるいはまた農地法の対象外の土地ですね、こういうところの汚染除去に対しては、いまのところないわけですね。そういうところに対してはどうなりますか、いわゆる林地なり農業対象外のところ。こういう問題が出てきませんか。
  143. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) お話の点は、私もないということは申し上げられないと思いますが、現段階におきましては、林地の汚染、それと林産物、森林その他との関係というような関係がまだ明確にされておりません。そこで、おそらく林野庁が中心になるかと思いますが、林野庁の調査研究が進みました上で、そういう汚染があり、かつ林産物等が被害を受けて、あるいはものによりましては人の健康をそこねるようなことにもなる、こういうようなことがありますれば、その段階におきましては、法を改正するなり新しい立法をすべきだというふうに考えております。現在ではまだ明確でございません。
  144. 村田秀三

    ○村田秀三君 私はいままで、きのう来いろいろと論議をされてまいりましたことと重複する部分が多いのでありますが、まあほぼ理解できました。と同時にまあ少しこまかい点になりますと、なお理解できない点もありますので、そういう点を整理するつもりでひとつ質問を申し上げておきたいと思います。そこで、ことばの表現だけでやっておりますと、むしろなかなか理解できない面もあろうかと思いますので、むしろ実例をあげて、これはどうなんだという御質問のしかたをしたほうが、明瞭に結論がわかる、こういう意味で、例として特定の地域をあげます。   〔理事高橋雄之助君退席、理事亀井善彰君着席〕  ここに地図があれば一番いいのですが、福島県は磐梯地区と小名浜地区にカドミウム地帯があるわけです。そこで磐梯地区は、要観察地域厚生省の指定を受けました。それと同時にその周辺地域、御存じのように磐梯地区の公害源というのはまあ一社であるということになろうかと思うのでありますが、これが日橋川の上流に位している。そうしますと、その下流一帯と言ってもいいのではないかと思いますけれども、塩川町であるとかあるいは湯川、その日橋川の水をかんがい用水としている地帯、ないしは噴出される排煙の拡散される地帯、まあ会津若松の一部であるとか、あるいは河東であるとかいうところ、ないしはその工場が立地されております上流地帯にも、むしろ上流地帯のほうが風向の関係汚染がひどいようでございますけれども、そういう地域の状態とか。そうしますと、いままでの論議農林省の今後の対策としての考え方を聞いておりますると、これはまあ厚生省の要観察地域の地帯は、もちろん指定地域に指定される、こういうことに理解をいたします。同時にその周辺一体、つまり湯川、塩川あるいは北会津、若松、河東、全部とは申し上げませんが、その一部の地帯も一PPMにはならないが相当量の汚染米が検出をされる、含有度が検出をされておる、そういうことでありますから、それらの地帯も今後の調査いかんによっては対策地域に指定をされ得る。と同時に、また同じような問題でありますが、小名浜は別して要観察地帯には指定をされませんでしたけれども、最高〇・九〇七という高度の含有量を持つ汚染米が生産をされておる、こういうことでありますから、当然いままでのお話の経過からするならば、この小名浜地区もまた要対策地域として指定をされるんだと、こう理解していいですか。
  145. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 基本的には私先ほど申し上げました調査をやりました上で指定をすることになるわけでございます。先生の御説明といいましょうか、現実の地区につきましては的確にはまだお答えができないわけでございますが、先ほど要観察地域はみな入るというのはもちろんのこととおっしゃいましたけれども、必ずしもそれはそうではないと思います。要観察地域というのは、御承知のように、〇・四PPMということを調査対象にしましたあと、いまの人の健康の調査をする、その他の対策地域として厚生省がおきめになった地区でございます。その地域そのままになるか、あるいは今後の調査の結果によりまして、対策をとるのにどの範囲をとったらいいかということでございますので、必ずしも全部がそれになるとは私たちはそう考えておりません。もう少し狭いのかもわかりませんし、それからまたいまのお話のように、もう少し下流のほうとしては、上流といいましょうか、工場の上のほうといういまお話がございました。これにつきましては、たとえば水のほうから言いますと、カドミウムを含む水が田畑に、たんぼに流れ込むわけでございますから、そこを調べました結果、やはりそこでも土壌汚染されているということになりまして、一つ基準にはまっておりますればそれは当然指定すべきだと思います。  それから大気の問題につきましては、これも私がまだ聞いておる範囲でございますが、普通汚染される範囲は、工場中心、風向きあるいは地形にもよるそうでございますが、二キロの範囲はかなり強く汚染されるようであります。そういうことを頭に置きまして、具体的に調査をした上でこの指定をするということになろうかというふうに思っております。  それから、小名浜のいまの〇・九〇七ということでございますが、これがどの程度どの範囲に出ておりますか、私たち的確にはまだわかりませんけれども、われわれの調査といたしましては、かなり全国一律の調査方法をきめまして、等質な土壌の上で、いわばこれは一つ考え方でございますけれども、二・五ヘクタールに一定の調査ができる範囲まで精密な調査方法をきめた上で調査をいたしました上で指定地域考えていくということでございますので、いま小名浜が入るかどうかはこの席ではまだ確答はいたしかねるわけでございます。
  146. 村田秀三

    ○村田秀三君 いま私小名浜のことを〇・九〇七と申し上げましたが〇・九〇八です。これは県の調査ですね。だから県の調査を裏づけるような農林省調査ということにあるいはなるかもしれません。それはいずれでもよろしいわけですね。農林省自体が確証を持ち得るそういう調査でなくてもこれはよろしいだろうと思うのですけれども、要するに、これは県知事が地域を指定いたしまして、これは農林省の、農林大臣の許可を得る、こういうかっこうになるかと思います。第一義的にはこれは県が線引きをされるものと私は思います、もちろん農林省基準に基づいてということになりましょうが。そこで、どうしてもやはり小名浜が〇・九〇八、これは農林省が確認をしてみなければ何とも言えませんということなんだろうと思うのですが、現実がやはり〇・九〇八出ました、ないしは〇・五出ました、そうして工場は有害物質を、ここではカドミでありましょうけれども、それを排出しているという状態の中では、これは指定せざるを得ないというふうに私は理解するわけですがね。これが現実であるわけですよ。そこを歯切れよくひとつ答弁をしていただきたいと思いますね。
  147. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 私が非常に抽象的に申し上げているように受け取っておられるようでございますけれども、具体的にここの地域を指定するかどうかということを言われておるのだと思いますが、これはたびたび申し上げて恐縮でございますが、政令でこういうところは指定の要件をまずきめまして、その要件自体を土壌汚染対策審議会にはかってきめるわけでございますが、いま小名浜を指定するかどうかということを言われましても、それは指定いたしますというところまでは申し上げられないわけでございます。
  148. 村田秀三

    ○村田秀三君 私も小名浜を指定するのかどうかという聞き方をしているわけではありません。最初申しましたように、実は実例をあげたほうがわかりやすいのじゃないかということでございまして、でありますから、そういう状態が認められれば、それはもちろん指定されますよと、こういう答えがあればそれでよろしいわけです。
  149. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) その点につきましては、カドミウムにつきましては、一PPM出るような土壌、そういうおそれが著しいところを政令要件としてきめるつもりでございますが、小名浜のいま説明されましたところがそれにはまりますれば当然指定するわけでございます。
  150. 村田秀三

    ○村田秀三君 これはきのう来やっておりますのでね、どうも私も重ねていろいろとお伺いするのはぐあいが悪いわけでございますが、磐梯地区を環境観察地域に指定をされて、これは厚生省ですね。そうして、それはその地域一帯を見ますならば、それは〇・七、〇・八もありましょう。一・三五ぐらいのところもあるようであります。そういうことでされたわけですね。この間の連合審査のときには厚生省が指定をした要観察地域、これは第一義的には地域指定をされるであろうという答弁はされておりますね。それと同時にまたきのう来一PPM以上でなくても、よしんばそれ以下であっても、つまり将来汚染されるであろう、汚染度が高くなるであろう客観的条件、これがあればやはり個別的に調査をして、そうして地域指定をするのだというふうに私は聞いておったのですが、それでよろしいのですか。
  151. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) それでよろしいと思います。現に一PPM以上の土壌、それから近くそれに近づくおそれのあると申しましょうか、近くそれに近づくことが明らかなところは指定をいたしたいと思います。
  152. 村田秀三

    ○村田秀三君 そこで、政令規定見込事項の中に、「一定量以上」ということばが書かれております。これも政令でぴたっと幾ら幾らというようにおきめになるのじゃないかと思いますが、これはもういまから大体予定されるわけですか。
  153. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 本来ならばこの土壌汚染の問題でございますので、たとえばカドミウム土壌に一〇PPM以上入っているところというようなきめ方にすべきだと考えております。しかしながら、たびたび申し上げておりますように、まだ土壌に、たとえば一〇PPM入っておればこれは人の健康をそこなうおそれがあるという段階に達しておるという一義的な一証明がついております。そこで当面は、米一PPMという厚生省基準がございます。食品衛生のそれを取りたいということを考えておるわけでございます。そこで当面は、この一定量と申し上げますのはカドミウムを一PPM以上含む米が生産されるというふうに考えていただきたいと思います。
  154. 村田秀三

    ○村田秀三君 そうしますと、いま前に私が質問申し上げました一PPM以下であろうとも、客観条件の中では将来蓄積されるであろう、そういう危険性があるであろうという地域は、これは該当しなくなるわけですか、政令の中で。
  155. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) この「見込事項」にございますように、「一定量以上の特定有害物質が含まれる農畜産物が生産され、」とこう書いてあります。ここが一PPM以上となるわけです。「若しくはそのおそれが著しいと認められること」と書いておりますので、その一定量というのは一PPMということで、それに近いところは入れると、こういう意味でございます。
  156. 村田秀三

    ○村田秀三君 くどいようですが、わかりました。そうすると、その汚染が著しいと認められる地域、たとえば、先ほど実例を申し上げましたその日橋川の水を使っている限りは、これは将来蓄積されるであろうということは、これは計算されるわけですね。まあ排水の問題であるとか、そういう問題、今後の規制いかんによるということにもなりましょうけれども、いずれにしてもずっとこの下流地域一帯、まあよしんば〇・〇程度の含有量しか検出されないという地域であっても、その日橋川を使っている限りは、これは将来やはり一PPM以上になり得るであろうということは計算がつくわけですね。そういう地域も入れるわけですか。
  157. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 少しそれは範囲が、先生がおっしゃいますのは広過ぎると思うんです。ここで書いてありますのは、近い将来それに近づくことが客観的に見ても確実だと思われる地域に限定をいたしたいと考えておりまして、水が流れておるから、その可能性がある範囲はみんな、こういうふうには言えないというふうにわれわれは考えております。
  158. 村田秀三

    ○村田秀三君 きのう北村委員質問の中にもありました、〇・四PPM以上の米が現に生産されれば、その辺に限界を置きたいということですか。
  159. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 〇・四というのは、たびたび申し上げて恐縮でございますが、これは厚生省調査をしようとするための端緒といいますか、手がかりでございます。われわれのほうはそれよりはおそらく狭くなるんではないかというふうに思っておりますけれども、これはまだ私はそういうふうに思っておるんでありまして、具体的な調査をいたしました上で、どの範囲に限ったらいいかということは、具体的に審議会等にはかって詳細な基準はきめたいと思っておるわけでございます。
  160. 村田秀三

    ○村田秀三君 そこで申し上げますが、まあ一・〇PPM以上、これは政府は買い上げない。そこで〇・四から一までの間は買い入れはするけれども配給はしないということですね。だから少なくとも〇・四以上の地域は、急速に対策を立てなければならない地域だろうと私は思うんです。よしんば、後ほど触れますけれども、対策、計画を立てる、そして防止事業をするわけですから、その防止事業が効果がかりにあったといたしましても、これは〇・四PPM以上のものは配給はしない、買い入れはするということであるならば、これは国の損失というものは将来ともに続くということになるわけでありますから、当然これは対策をしなくてはならない地域であろうと私は理解するわけでありますけれども、その辺はどうでしょう。
  161. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 〇・四からすぐ対策が必要かどうか、これは先ほど先生もおっしゃいましたように、排出規制の強さにも私は関係してくると思います。それでたとえばある工場排出規制がある数字になっておりまして、ほんの少ししか排出しない、あるいはもうすでに機械が改良されて排出していないということになりますと、〇.四程度のところはあるいは指定する必要はないのかもわかりません。これ以上は蓄積をいたしません、そういうものとの関連がございますので、一律に〇・四以上のところは全部緊急性があるというふうには、あるいは言えないのではないかと思います。むしろ、緊急性があるのは、やはり現実に一をこえているようなところ、ほんのそれに近いところというところに、私は緊急性があるというふうに思っております。
  162. 村田秀三

    ○村田秀三君 これは緊急性の問題ですが、一PPM以上のところは、とりわけ緊急性があろうと思いますね。しかし、防止事業を直ちに開始をして効果をあげたといたしましても、土壌の問題は〇・四でずっととまるわけですね、理屈の上では。そうしますと、やはり〇・四以上の米は買い入れはするけれども配給はしないという状態が続いて、そして国は損害をこうむる、こういう問題であります。ないしは現実の問題として、〇・四以上の汚染地帯の自主流通米は移動を停止されたり、そうして売れないという問題が起きたり、現実に農家に損害を与える。あるいはその地帯の野菜にいたしましても、あすこは汚染地帯だということで、これは販売にならないという問題が出てくる。こういう問題があって、現に農家に損害を与えるわけでありますから、そこは緊急性がないからというような考え方を持たれるということは、私はいかがかなと思うのですね。同時に、完全に防止し得るかどうかということになりますると、私は後ほど触れますけれども、これはなかなか完全に防止し得るという状態ではなかろうと思います。だとすれば、やはりその対策地域というのは、むしろ排水の使用される地帯ないしは排煙の拡散する地帯一帯を指定をして、その中で現実の問題として防止事業を興すのはここ、ここでありますという具体的なきめ方をしたほうが私は効果的だろうと思います。いま二であればほうっておいていいということにならない。二であるものを三にしないようにするのが私は最も大切なことであろうと思うのですね。そういう考え方を私は持っているわけでありますが、この考え方はどうですか。
  163. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 要観察地域というのは、必ずしも〇・四ではないんです。そこでいま先生はたびたび〇・四以上と、こう言われるのですけれども、   〔理事亀井善彰君退席、理事高橋雄之助着席〕 これは調査のとり方によるのですけれども、〇・四から上はということにはならないわけでございます。そうなりますと、あとはそういうことで厚生省が要観察地域を調べて、いろいろと何種類かの調査をやっておられるようでございますが、それは人の健康との関連でつくっておられるようであります。今度は土壌汚染の場合は、これ以上土壌汚染しないように、あるいはしてしまったところをどうするかということで、全体としての計画を立てるわけでございますが、必ずしもダブりません。けれども、また逆にそれじゃ非常にそれより狭くなるかといわれますと、あるいはそうでないのかもわかりません。その辺のことになるかと思いますが、そこで私が先ほどから申し上げておりますのは、現に一PPM以上出ているところ、近い将来それになりそうなところをまとめて指定をすべきだということを考えておるわけでございまして、必ずしも〇・四以上をみんなしなければいかぬというふうにも考えていないわけであります。
  164. 村田秀三

    ○村田秀三君 どうもあれやこれやの場合をいろいろ言われるものですから、ますますこんがらがるのですが、そうしますと、私は先ほど磐梯であるとか、湯川の話もいたしましたが、湯川地域まで対策地域に指定をする、そして具体的な防止事業は、その中で最も緊急を要し、かつ効果的であろうという施設について実施をする、そういうように理解していいのですか。
  165. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 先生が言われます地域は私まだよくわかりませんので、そこまで入れると言われるのですけれども、これまたちょっと何とも申し上げかねるわけでございますが、非常に抽象的で恐縮でございますけれども、この現に一・〇出ているところ、それに近いところ、近くなりそうなところを指定いたしまして、そうして、それじゃ指定があればすべて排土、客土をやるかというと、そうではありません。排土、客土をやるところ、あるいはそれに近いところに水源転換をやるとか、石灰をまけばいいというところが出てくるかもしれません。そういう計画を具体的に立てるわけでございますので、お願いいたしたいことは、われわれも磐梯等は至急にやるつもりでございますので、その結果をひとつお待ちいただきたいと思うわけであります。
  166. 村田秀三

    ○村田秀三君 地図がないとなかなか理解できないようですから、その辺でこれはやめておきます。  それから対策計画の中の事業としてかんがい排水路の工事ということになっておるわけでありますが、このことについて具体的に申し上げますと、あくまでもこれは磐梯の例ということになりましょうが、工場の上の水源を取って汚染された農用地のみをかんがいするというこの考えですと、これは湯川の問題なんというのはなかなか解決つかないのです。要すれば、工場排水は川に落さないのだと、日橋川という本流に落さないのだという観点に立たないと、これは解決しないと思うのですね。そうしますと、これはわれわれが概念的に考えております農用地のかんがい排水路というものとは相当違った角度で検討してみなければならぬのじゃないかという感じがいたしますが、その点はどうでしょうか。
  167. 岩本道夫

    政府委員(岩本道夫君) それぞれ現地によって事情が違いますので、一般論として規定することがむずかしい面がございますが、まず、やはり汚染を防止するためには工場排水を規制するのが第一だと思います。この規制につきましては、すでに質疑応答で明らかになっておりますように、農林大臣関係大臣に要請をしまして排出規制をやってもらうわけでございまして、その排出規制をやることによって目的を達すればこの水源転換等の工事をやる必要はなくなるわけでございまして、まずそれが本来であろうと思います。水源転換でかんがい排水事業をやるというようなことは経費がたいへんかかることでございますので、なるべく排出規制を主にしてやるのがたてまえであろうと思いますが、土壌汚染を防止するという見地で、どうしてもそれでは十分でないという場合に水源転換の事業考えなければならぬと思いますが、水に関係する仕事でございますだけに、客土と違いまして、ある一部分だけかけるというのは非常にむずかしうございますので、その場合には相当広い範囲を目的とする仕事にならざるを得ないのではなかろうかという気がいたします。そうなりますと、その費用負担をどうするかということは、具体的な費用の割り振りの問題として、別途具体的な現地について検討していかなければならないと思いますが、事業の性格から、かんがい排水の事業というのは、やはり広い面積になるのではなかろうかというように考えられます。
  168. 村田秀三

    ○村田秀三君 水の問題はいまおっしゃられたように、私もなかなかこれは非常にむずかしい問題だろうと思いますですね。だから地図を持ってこないとなかなかわかりにくいわけですが、ずっと下流の湯川のほうまでも対策するような規模の工事でなければ、これは成功をおさめるわけにはいかない。そういう意味で私はそこまでやはり対策地域に指定する必要があるんじゃないかということを実は申し上げておったのですがね。  それからもう一歩ちょっと考えてみますと、少なくともやはり工場、これはもちろん第一義的には排水規制をするということは当然であります。しかし完全にでき得るのかどうかということを考えてみますと、私は今日の技術の状態においてはなかなか不可能じゃないかという、そういう考え方を持っておるものです。それはもちろん、むしろ農地局に質問するというよりも要望になろうかと思いますけれども、結局日橋川の本流には排水は落とさないというたてまえで、それは相当大規模な下水道を利用して、そうして終末処理を完全にするという、その構想を前提としない限りは、私は解決はあり得ない、こう実は考えておるわけでありますから、まあその防止事業関連をしてどのような今後の計画をお持ちになりますか、考えるところがあれば御答弁をいただいてけっこうでございますけれども、まあ私の要望といたしましては、それらの点を十分考慮して、ひとつ施行されるように、計画を立てるように要望をいたしておきたいと思います。  それからもう一点は、これまた非常に困難な問題でありますけれども、完全にというより、完全性を高めるためにということでありますけれども、防止事業の中には煙の問題は直接ないわけですね、工事としては。ただこの法文の中で理解できることは、ばい煙の排出基準、これを農林大臣がいま関係大臣に要請をして、そうして県知事に勧告することができるというものだけが関連があると思うのです。で、結局その問題について、大臣の決意というものがどの程度まであるのか、そうしてそのことがはたして可能なのかということに私はなるかと思うのでありますが、具体的に、つまりそれ以外のばい煙に対するところの対策というものがもし考えられておるとするならば、ひとつお答えをいただきたい。
  169. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) この法律をつくります前からいまのようなお話についても政府部内でいろいろお話をいたしておるわけであります。まだ率直に申して名案もないようでありますが、しかし、このまま放置しておいていいというわけではありません。大気汚染を通じて土壌汚染されることを防止いたさなければなりません。その対策としては抜本的なもの、または排出規制の強化等発生源対策があげられると思うのでありますが、たとえばまあグリーンベルトのようなものをつくって、そうしてそれによる防止対策というようなことも一つ考えられたわけであります。さらに種々検討をいたしまして、これに対処してまいりたいと思っておりますが、私は出てくる公害というものについて、公害を出すのは人間の知識で出すわけであります。たとえばばい煙なんかでもそうであります。それで亜硫酸ガスが出るのから、御存じのように、硫酸を取って処理しておるところがございます。これはやはり人間の知識でつくり出しました公害を、人間の知識でたくみに処理して、経済効果をもたらしているようなものもあるんでありますから、われわれといたしましては、今度こういう公害に真剣に政府も取り組むわけでありますので、あらゆる角度から、そういうことを検討してまいらなければならないのではないか、こう思っておるわけであります。     ―――――――――――――
  170. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) この際、本案の審査を一時中止し、農薬取締法の一部を改正する法律案等を議題とし、村田君の質疑を許します。
  171. 村田秀三

    ○村田秀三君 議題を変えてまことに恐縮ですが、委員長のお許しをいただいて、農薬取締法関連する質問をいたしたいと思います。  それは、けさの新聞を見ますると、一昨日、北村委員質問をいたしておりましたが、BHC等の母乳汚染の問題、それと同時に森林除草剤の二四五丁、この二つの問題に関する記事が載っておったわけです。そういう意味で、急遽ひとつ質問を追加してみたいという気持ちになったわけでありますが、まさにこれは北村委員が心配をされ、そしてその使用について禁止の方向での検討を迫っておった理由というものが明らかになってきておるんじゃないかと思うのですね。そこで、端的に申し上げますが、BHCなど禁止の問題については、厚生省はこれは母乳にまで影響を及ぼしてきておる、これはたいへんなことであるから、近く農林省に対してその使用の禁止をひとつ申し入れる、こういう新聞の内容であります。したがいまして、この新聞から見る限りは、まだ農林省には何らの連絡もないのかとも思われますが、もしも連絡がありました場合に、どのように措置をなされますか、これが第一点。  それから、この二四五丁、これはとりわけ催奇性の問題がだいぶ論議をされておったわけでございまして、明らかにベトナム等におきまして、その例症が出てきておるということであれば、やはりこの問題については、大臣から相当慎重な発言はされておるようでありますけれども、少なくとも早急に私は使用を停止する必要があるんじゃないか、こう実は考えるわけでございまして、その二点について、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  172. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) まず、第一点の、BHCの問題でございます。昨晩、厚生省のほうから私のほうの担当課に連絡がございまして、それもこういうことをここで申し上げていいかどうか、ちょっとよくわからないのですけれども、連絡がありましたのは、新聞のほうから、どうするつもりか、農林省に禁止を申し入れたらどうかね、こういうことを新聞のほうが聞いたそうであります。それに対して担当官が、そうしようかなということを言ったという話でございます。それをあとからその担当課が――これはまた母乳を扱っている課ではございませんので、乳肉衛生課だそうでございます。そこの課長から、私のほうの課長に、そういうことを私のほうの担当官が言ったので、あした新聞に出るかもしらぬから、あらかじめお知らせしておきますという釈明の電話があったわけでございます。われわれのほうは、きょうになりましてこれを担当いたしますのは、母子衛生課のほうでございます。そちらにどういうふうなことになっているのかということを問い合わせましたところ、来年の三月までに中間的に緊急調査をやることにして、それを取りまとめたいと、その結果に基づいて、農林省に対策を検討していただきたいということの申し入れをするということを言っておりますので、一両日中にそういうことになるというふうには、まだ現段階では承っておりません。もし、いまお尋ねのそういうことが正式にあれば、そのときは当然厚生省のほうでもいろいろ御調査になりまして、汚染源の経路等を教えていただけるわけでございます。もしその結果、これはたとえでございますが、母乳にBHCが全面的に影響があるということになりますれば、今回農薬取締法の改正がもし通過いたしますれば、全面禁止をいたします。とすれば、これは登録の取り消しをいたすわけでございますし、それから汚染源の内容につきまして、これとこれとには使ってはいけないということになりますれば、それはまた指定農薬にいたしまして、たとえばもうすでに稲には使わないというように指導はいたしておりますが、それを法律で明確にして、稲と何とには使ってはいけないと農林大臣の使用基準をきめまして、これを農家に守っていただく。守らない場合には、罰則がかかるという手段もございますので、そういうことで対処をすべきだというふうに、いま考えております。  それからもう一つの、二四五丁の問題につきましても、私も先ほど新聞を拝見したわけでございますが、これにつきましては、よくその辺を確めた上、これは林野庁あるいはこれは催奇性の問題でもございますので、厚生省ともよく御相談をしまして、対処すべきだというふうに考えております。
  173. 村田秀三

    ○村田秀三君 そうしますと、いまの母乳BHCの問題はおよそわかりました。いずれにしろ厚生省が全国的に調査をするということ、これも新聞に出ておったようでありますから、その結果は三月ごろに集約できるであろうというところから、ただいまのような発言になったと思うのでありますが、いずれにいたしましてもこれは重要な問題でありますから、ひとつ厳重に対処をしていただきたいと、こう思います。それからBHCの製造は中止されておるわけでありますね、中止をされておる。そうしますと、よしんばそれが指定農薬としてある程度使用してもよろしいというものがあるとすれば、これは製造中止ということにはならないような気がするのですね。製造中止ということは、全面禁止ということと私は同義語だと思う。ただ、しかしいま相当に在庫があるから、その在庫がある分だけをひとつ使用制限して消化しましょうというような考え方が前提であるとするならば、これは私たいへんな問題だと思います。同時に稲わらには使ってはいけないが、その理由が、それを食べると牛の乳にBHCが影響するのだ。であれば、牛は稲ばかり食べておるかというと、そうではなくて、これは草も食べておる。もちろんつくったところの牧草も食べるでありましょうし、同時に山草も食べるというわけでありますから、稲には使ってはいけないけれども、森林の防虫防除には使ってよいということには私はならないと思うのです。この辺の見解はいかがですか。
  174. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) BHCの問題は、昨年以来問題になりましたのは牛乳の問題でございまして、牛乳の汚染源を調べてみますと、稲わらということになったものですから、そういうものとの関連で昨年の末農林省としては業界に自粛を求めて製造中止をしたわけであります。したがって今後どんどんBHCがつくられるということはございません。ただ流通をしておりますのがわれわれの調査では七千五百トンぐらいございます。ございますけれども、これはもう来年以降は稲には使わせないということをはっきりさせております。ただ果樹用なり、いまお話の森林用にはかまわないわけであります。これを使っては非常な害があるということには現在なっておりません。そこで現在のところは残っているものにつきましては指定農薬にしまして、稲にはいけない、果樹、森林等にはよろしい、こういうことにしたいと考えておるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、厚生省調査も三月までに出ますので、その結果を見ましてやはりこれは果樹にもいけないというようなことになりますれば果樹にも使わせないということを明確にしたいというふうに考えておるわけであります。
  175. 北村暢

    北村暢君 いまの答弁で大体様子はわかりましたけれども、問題は、母乳のBHCの残留農薬の汚染された問題については、これはやはり先ほどの、昨晩における厚生省農林省との課長同士の電話その他の問題がいろいろあって、新聞に出る出ないという問題があったという経過はわかりました。しかしそのくらいいま重要な問題であるということは、マスコミも重要視していることは間違いないわけですね。チクロの問題これは全部チクロは回収しましたね、製薬会社が回収している。事母乳の問題ですから、私もきのう、おとといですか、きびしく質問をしたわけなんですけれども、この法案を提出するにあたっては、先ほど来言われているように、牛乳に対する稲わらが汚染源であるということで稲に対してはBHCは使わせないということ、使用禁止をしておる。しかし母乳については考えていなかったことは、私は事実だと思うのですよ。それがいま来年の三月までに厚生省が結論を出すと言うから、それを待ってやる。待って禁止をすることになれば、いま作物といっても施設園芸くらいのものですからあれでしょう、来年の作付に間に合うということにはなるのだろうと思うのですが、それが使うか、使わないかということが未定ですから、実際にいま七千五百トンくらい流通はしているということになる。しかもこれは土壌に残留すれば二年、三年は残留をして作物に二、三年は吸収されるという問題が出てくるわけです。したがって三月に使用を禁止をしても、ここ二、三年というものはまだ残留農薬が出てくるという可能性はあるわけですよ。  ですからこれは私はそういう意味において、いま禁止しても二、三年は出てくる可能性があるんですから、早い機会にこれは手を打たなければいけないのではないかというふうに思います。ですからこれは私どもも事母乳に関する問題ですから、一生を通じて幾らとればいいというようなのんきな問題ではないと思います。ですからこの間からもきびしく言っておるのですが、これはやはりこれだけ公害問題がやかましくなり、もうとやかくのごまかしではきかないところへきておるわけですね。もう東京都も一刻も早く追跡調査を徹底的にやると、こう言っていますね。そういう事態にありますから、これは私は政治判断からしても、すみやかに使用を中止するという農林当局の配慮が必要だと思う。おとといの論議を聞いて私はさすがに農林省だと思った。これは牛は大事にするけれども、人間のほうはお粗末だ、人間より牛のほうを大事にしている、これはさすがに農林省だと思って感心して聞いた。これでは許されませんよ、常識ではね。農林省のいままでの農薬に対する考え方というのはそういうふうな感覚だった。人間よりも牛を大事にする政策でまことに見上げた心がけだけれども、それでは今日私は通用しない。  だからそういう意味において私は事は厚生省の課長と農林省の課長とのやりとりであったかもしれないけれども、ああいうことが新聞に堂々と出るということは、申し入れするかしないのか、するかもしれないと言ったことが、もうすると言ったように出てしまった、それくらい私はマスコミは敏感にこの問題にきておると思うのですよ。そこは私はやはり行政の範囲で許されるものと、政治判断の問題とあると思うのですけれども、そういう意味において私は農林省にもこの問題に対しては、もう東京都が追跡調査をどんどんやるということが出てきていますからね。それにその結果を待って何だのかんだの言っておるよりも、農林省判断として緊急性を考えるならばすみやかに何らかの処置を、やっぱり様子を見ているとか、結果を待っているとかいう時期ではないような感じがしておる。これは私の政治判断だからまあそう言うのでありますが、そういうことなんです。  それからもう一つは、果樹、林業にもとおっしゃられましたが、いままでの論議を聞いていると、農薬というのは農業サイドだけでものを考えておる。林業のほうは林野庁で、農政局の所管じゃないというふうな感じを受けている。したがって牛乳の汚染が稲わらであると、こう言うのだけれども、それは確かに長崎等において牛に稲わらを食べさしておるところには、そのBHCが稲わらが汚染源であるということは言えるかもしれませんけれども、北海道等は牛に稲わらなんか食べさしておらぬ、しかし稲わらだけが原因なのかどうかということについては若干疑問があるんですよ。BHCはその牛のえさになる稲わらだけでなくて、林業にもBHCを使っているわけですね。山にも使っている。牛は、BHCをまいた草から、BHCをまかない草だからと区別しては食べないと私は思う。だからこれは林業の問題特にまた牛は草のあるところを好んで、本能的に草のあるところへ行くわけです。そして山にBHCを使っていないとは言えない。そちらのほうはどうなっているのか、実態はさっぱりわからない。こういうことでしょう。したがって、牛乳一つ見ても、稲わらだけ見てもこれは可能性は多いわけですけれども、林業の、森林関係のBHCの規制も、当然牛乳一つ汚染を見ても、これが考えられなければならない問題ですね。まだその点については何ら調査もなければ、そこまで頭が行っていないという感じがするのです、この前からの論議を聞いていると。その問題が一つあると思います。  したがって、BHCの問題は、牛乳の汚染源としての場合は、稲わらだけでなしに、やはり森林にまくBHCというものも対象にやはり考えなければいけない。特に母乳については、この前も申したように稲わらじゃないんですから、他の農作物から入る、あるいは、河田さんからこの前ありましたように、えさを通じて、肉、卵というようなものを通じて母乳に慢性的に入ってくる。こういう形になるので、やはりそういう意味において、私はこの際、BHCの問題については、あらゆる角度から検討すれば、すみやかにこれは措置しなければならない問題ではないか、このように考えるのです。ですから、そういう点からしてぜひひとつこれは農林大臣公害国会にふさわしい答弁をしていただきたい。
  176. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) BHC、それからDDTによります母乳汚染の問題がいま出たわけでありますけれども、厚生省とも十分連絡をとりまして、まず汚染経路等を明らかにすることが必要じゃないかと思うのですが、そういう連絡に基づいて汚染源が明らかになりますれば、その汚染源を断つ必要があります。そういうことのために万端厚生省と十分連絡をとりながら、先ほど農政局長もお答えいたしましたように、登録等の場合、つまり使用を禁止することも含めて措置をいたすことが必要ではないか、こういうふうに考え、そのようにいたしたいと思います。
  177. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) ちょっといまの北村先生のお話で補足させていただきたいと思いますが、新聞にも出ておるのでそう言われたのではないかと思いますが、DDT、BHCが二、三年土壌に残留するというお話が書いてありますが、これは、DDTにつきましては外国の文献でも二年とかなんとかというのはございますが、BHCにつきましては、これはべータBHCでも、数カ月ないし一年かかれば全部分解してなくなります。それからガンマBHCはもっと早く分解するということで、これは新聞が違っているのじゃないかというふうに思います。  それからもう一つ、農薬だから林業のほうについては何にも、ちょっと横にどいているようなお話でございましたのですが、農薬はこれは樹木、農林産物を含めて農薬取り締まりの範疇に入っておりますので、私たちは、その点につきましては十分それぞれの適応した措置をとるべきだと考えております。
  178. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) 林業のお話が出ましたが、ちょっとつけ加えさしていただきます。  林業でいまBHCを使っておりますのは主として森林害虫の防除のために使っております。森林害虫は一年を通じまして発生する生態がございます。冬は土壌の中で、春先にはそれが出てきてふ化する。それで松の葉っぱを食ったり、あるいは材と皮の間へ入ってせん孔するというような性質がありまして、種類によってはいろいろ生態が違っております。発生する時期も違っております。そこである程度残効性がないと薬のきき目がない。最近、戦後、特に熊本、中国方面で海岸の松が枯れるということで、海岸地帯にはもうすでに太い松は存在をしないということにまでなっておりますが、そういった、虫に食われようとしておるところの緑をどうやって防ぐかということでいろいろ苦心をしておるわけであります。  そこで、その薬をまいたものが人体に入ってはいけないということで、散布の基準をいろいろ考えまして、人家とか農耕地、そういうものに近いところで使う場合には、残留性のないところの、分解の早いガンマBHCというものを使うとか、そういうところから離れたところ、人体に入る危険のないようなところ、そういうところではBHCを使うとかいろいろ区別をいたしまして、最近の、発生がいろいろといわれておりますところの公害、そういうものを絶対起こさないような配慮でいま実施をいたしております。
  179. 北村暢

    北村暢君 いまおっしゃるとおりに、森林害虫防除のためにBHCは人体に害にならないように使っていきますという方針なんですよね。使っていきますという方針なんです。害にならないような方法で使えということなんです。しかし、厚生省のほうから言わせれば、もうそういう人体に害のあるものはこの際BHCについても使ってもらいたくないというのが願望だろうと思うのですがね。またそれは、世論もそういう意味で、新聞は若干拡大したような表現になっているかもしれないけれども、そういう形で新聞に出てきている。しかも、BHCの問題については、各論説を見ても、これはもう使用についてはほんとうに慎重にやるべきだという論調がずっと出ていますわね。これはもう御存じのとおりだろうと思います。  で、人体に害のないようにと言うのですけれども、先ほど私が申しましたように、牛というのは、ほうっておけばこれはもう草のあるところへ行く習性を持っているんですよ。どんなにしたって、ここは農薬を散布した地域だ、そうでないなんて区別は牛にはつかない。まあ例を言えば国有林では牛を放牧することは認めない。申請してもなかなか許可してくれない。それじゃ実際にはどうかというと、担当区さんの見てない間は牛を農民は放してしまう。入っていけない国有林に牛はちゃんと入っている。うまい草のあるところへちゃんと行くんです。そうして、それ国有林の営林署の担当区さんが来たということを報告する者が下にちゃんとおって、バイクのダダッと音がすれば、それ来た、牛を隠せというので牛を隠す。そういうことが事実行なわれている。長官がどんなうまいこと言ったってDDTをまいたところに、危害のないようにしてまきましたから安心でございますなんと言ったって、牛はちゃんと食べに行くんですよ。国有林に入っちゃいけないなんて言ったって、うまい草のあるところにはちゃんと行くんですよ。  だから私はそういう実態から言えば、行政措置で頭の中で考えて、入らない処置をとりましたなんて言ってみたところで、それは長官のここの答弁だけの話なんです。決してそれは安全であるとは言えないんですよ。しかも危害のないようにして使いますと言っている、これからも使うと言っている。製造は禁止されている、製造は禁止されているんですよ。そうすると、あと何年かしか使えないものだ。それをいま一年か二年先にやめるか三年後にやめるか。七千五百トンなくなれば使いたくたって製造しないんですから使えない。しかしこれは、林野関係は輸入したものを使うかもしれない、製造はしなくても。そういう点について私はこの際英断をもって製造を禁止したBHCを、それは七千五百トンあれば企業者なり、いま手持ちをしている農業団体なりに影響を与えることは当然です。そういうことはもう十分承知している。十分承知していながら、これは何らかの方法で、やはり政治的な判断で――何億か金がかかるでしょう。いまBHC、農業団体の持っているのは、私ども聞いておるところであると大体五億円くらい持っているようです。そういうものを含めて、この際農林省は政治判断として、私は製造を禁止したBHCを一切使わないということ、これをやったらいかがですかと、こう言っているんです。  どうも農政局長の、また大臣答弁林野庁長官答弁とは違うわけですね。ということは、農作物については三月ごろまでに厚生省と十分に連絡して、だめだということになれば使わない処置をとるかもしれない、そういうことでないんですか、慎重に対処するということは。ところが林野庁のほうは、危険のないようにして使いますというニュアンスに聞こえるんです。ここら辺のところはどう整理されますか。
  180. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) いま若干ことばの足りない点があったようでございます。将来ともずっと使うんだということではございません。いまのところ天敵による防除、また新しい薬剤の開発ということも委託調査なんかもいたしておりまして、絶えずそういった新技術というものは変わっていくと思います。そこで、厚生省なり関係方面なりが製造中止なり使用禁止という線が出れば、当然これは森林においても使えなくなる。ただ、いま申し上げましたように山の緑が害虫によって失われるというときに、まあいま一応農薬として認められておるところのBHCを使っておるわけです。しかもそれはアルファ、ベータという残留性の高いものはほとんど使っておりません。分解の早いガンマBHCに切りかえておるというふうなことでございます。  それから放牧地の話が出ましたが、これは肉牛の場合は相当山のほうに入っておる例も知っておりますが、乳牛の場合はそれほど私は奥のほうの山に入る例は聞いておりません。まあいずれにしてもそれは放牧地なのか、あるいは単なる放牧地でないところへ、国有林の中に黙って入っていくのかどうかというところ、そういうお話がございましたが、一応薬剤をまく場合には放牧地とか採草地とか人家とか、その近いところにはまかないという方針で進んでおります。
  181. 村田秀三

    ○村田秀三君 これは最後になりますが、先ほど二四五丁の今後の考え方を農政局長から聞きましたが、慎重に検討すると言ってみましても、四十六年度は使いましたということでは私はならないと思います。ですから私は一昨日来の論議を聞いておりますと、時期は六月ごろだそうでございますから、その六月前に、つまりきょうの新聞に出ておりまするようなおそれ十分であるという方向が確認できるならば、六月前にもやはり使用しない。あるいは全然これはもう影響がないということが確認できて、そして使用する。まあいずれになるかは別といたしまして、少なくとも六月前に結論が出るというふうになさるのかどうかですね、これはまあ省できめなければ林野庁でも使いたくなくても使うということもありましょうが、これは林野庁長官農政局長にそこのところをきちっとお聞きしておきたい。
  182. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) 先般来二四五丁の話がいろいろとございました。まあ新聞紙上にも出ております。けさの新聞にもベトナム枯れ葉作戦に関するパリの会議というのがございまして、そこへ行ってこられた先生も慎重にやるべきだということを言われております。その行ってこられた先生にも、なお早急に問い合わせたいと思います。  なお問題は二四五丁が人体にどのような作用をするのかという医学的な分野につきましては、これは林野庁のよく扱えるところではございません。そこでそういった例が言われておるところの二四五丁の使い方と日本国内の使い方を比較してみなければならない。ベトナムで使われておりますのはヘクタール当たりのまく量も非常に高い量をまいておるわけであります。一二・四キログラム。日本でまいておりますのは一キログラムから二キログラム、これは原体でございます。しかもベトナムでまいておるのはもう繰り返し繰り返しまいておる。相当太い林木まで枯れる、落葉するという効力で、しかもその二四五丁と一緒に使っております製剤には油性の、一度ついたら離れないというようなものを使っておるようであります。ところが、日本で使っておりますのは分解が非常に早い。しかも気候も温暖で湿潤であるということで、いろんな研究機関によるところのデータでは二カ月ぐらいもあれば分解してしまうということが言われておる。そこでもう一つは、その濃度の点につきましては、いまお話ししましたが、それから頻度、何回ぐらい繰り返し繰り返しやるのかということでありますが、農業で使われております農薬と違いまして、林業には林木一生の間に一、二回か三回ということで、しょっちゅう使っておることではございません。そういう頻度の点からいきましても、まあ影響ないだろう、また残留性にいきましても、そういった薄いものが何回も何回も繰り返されて撒布されるという場合に、蓄積性、残留性、そういうものからいきましても、いまお話ししましたように……。(「そんな講釈要らぬよ」 「とても聞いてられないよ」と呼ぶ者あり)
  183. 村田秀三

    ○村田秀三君 いまそんな問題聞いているのじゃない。いまの林野庁の状態を聞いているのじゃないのです。とにかく新聞にも出て、いま問題があるわけだから、六月が使用時期だそうだけれども、その前に使うのか使わないのか。(「安全性の宣伝やっているじゃないか」「何だ、不見識な」と呼ぶ者あり)
  184. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) それではそういうことで、説明はそれくらいで終わらしていただきますが、もう少し……(「安全性の宣伝なんか聞いているのじゃないよ。」と呼ぶ者あり)この春までまだ期間もございますので、十分科学的に関係方面の意見も聞きながら、慎重にこれに対する答えを出してまいりたい。関係方面の意見その他がありまして、これがクロという結果が出ますれば、当然これは中止をしなければいけない。どうも失礼いたしました。
  185. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) いま国有林野の使用者としての林野庁長官の御答弁があったわけでございますが、われわれといたしましても、その催奇性の問題その他厚生省と緊密に連絡をとりまして、その薬が人畜に影響があるということになりますれば、これはこの法律が通過しましたあと取り消しという手段等もございますので、そういうことで対処をいたしたいと考えております。     ―――――――――――――
  186. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) ただいまから再び農用地土壌汚染防止等に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
  187. 河田賢治

    ○河田賢治君 今度法律は新しくつくられるのですから、その施行の結果についてはわれわれ立法府の国会議員として責任を持たなきゃなりません。したがって、本来なれば、十分こういう問題について各一条一条これを質問もし、また答弁もいただく、討論も重ねるというのが私たちは責任のある態度だと思いますが、残念ながら私の持ち時間というものは大体、いま委員部のほうから言われたんではもう十六分しかありません。新しい法律をつくるのにわずか十六分しか私には与えられない、非常にこの点は残念に思います。今後とも新しい法律はわずかな修正の法律とは違いますから、こういう点は十分これから運営についても御検討を願いたいと思います。  第一に、もうかなりいろいろな点で質問がされましたので、私はできるだけ要点だけを抽出して質問いたしますが、農用地土壌汚染防止について、政令では、当面はカドミウム、そしてまた次いで銅と亜鉛を規定する見込みと、こういう見込み事項がございます。銅についてはいつからやるのだということについては、まだ近い将来ということで、はっきりといつごろから、来年やるか、あるいはこの暮れにでもやるとか、来年ですね、そういう答弁はありませんでしたけれども、しかし有害物質については、それぞれかなりの面では学者の諸君が研究しているわけです。たとえば、銅などにつきましては、これは局長も言われましたように、農林省技術者やあるいはまた学者諸君が、すでにもう一九六〇年代の初頭にこれを研究して、現に農林省自体でもこういうものをまとめられて発表されているわけですね。これによりますと、たとえば足尾で有名な、本会議でも問題になり、明治初頭から鉱害のまず一番大きかった足尾においても、御承知のとおり銅の問題は非常に大きな公害闘争の領域に属しておりますし、またそれがために研究もかなり積まれておる。  この調査をまとめられたこの農地局監修の「農業と公害」という四十四年の四月発行されたものによりますと、一九三六年の春日井博士や一九四〇年の石塚博士らの研究によっても、〇・〇一ミリグラム、これでは一〇〇%の収穫があるということが書かれてあるわけですね。そうして、これが一ミリグラムに達すれば大体四八%収量、つまり半分近くになる。こういうように水耕液の中の銅と稲の相関関係というものはかなり明らかにこの本ではされておるのです。したがいまして、この本でもまたさらに土壌内の銅の濃度と稲の生育関係というものもかなり法則的な関係があるということが調べられて、その実際の数値がここに出ております。それからまた銅の被害地の研究も行なわれて、現地でのこういう調査もかなり進んでおるのです。で、一応の研究の成果がもうりっぱに今日ここに発表もされておるような状態なんですから、私はこの公害問題で早くこういうものの政令を私たちは定めるべきだと考えます。  もちろん、この銅以外のこともこの本の中にも書いてあります。しかし、御承知のとおりもう一方では銅山自身も、銅山つまり事業所自身も、足尾では煙のほうの害をなくすためにはもう自溶炉――みずから溶ける――自溶炉を完成して亜硫酸ガスが硫酸として回収生産されて、煙害はもうピリオドを打ったといわれておるのです。あるいはまた別子銅山では、ベテルゼン式の収煙設備をドイツから輸入して、亜硫酸ガスから硫酸を回収して、化学肥料を造成して、つまり一石二鳥の効果をあげているといわれておるのです。そうだとすれば、もう川に流れる汚染だけが問題になるわけです。しかし、もちろんこれがこれらの製造過程で十分なこれがなくてもある程度これを製造業者がいろいろ研究を重ねれば、こういう方向もかなり公害の発生源でなくすことができるだろうと思うのです。ところがこういうことがきまらぬものですから、結局あの広大な足尾銅山の下流では農民がいまだに――この間テレビでもやっておりました――いろいろと河川の近くでは非常に収穫が減っておる。そうして、一々川から秋の取り入れ後にはどろをあげてそうして外に捨てる。そうして川の流域から少し遠くなれば収量は大体一〇〇%取れるというふうなこういう結果を生み、農民もこういう戦いを続けて、毎日毎日の今日苦しいこの農業条件のもとで、また生活条件のもとで彼らは生存をしておるわけです。  したがいまして、こういう問題で、完成した一〇〇%のいわゆる科学的な水準をわれわれはいま求めるべきではなく、少なくとも今日あるところの科学的な進歩したこの水準で一応まず方向を出していくと、そうして、それで規制をする、また製造過程もさっき申しましたようにだんだんと業者自身も公害の問題に対するいろいろなこの反発が起これば彼らも財布のひもをゆるめて、そうしていろいろな設備の改善をやるに違いない。そうすれば今日こういう土壌汚染についての一応のこういう特に被害の大きい地域では早くこの政令をもって定める。そうして一応暫定的にもきめて、さらにこれを科学水準の完成、発展に伴って、また政令でこれを改めると、こういう処置が必要ではないかと考えます。ただ、いろいろな、今日政令をきめたらまたあとを変えるのがたいへんだとか、あるいはまた、十分に全国的にこれが実施されるのがなかなか困難だからということで延ばしておるようでは、この政令をつくり上げて、そしてできるだけ早く資本家にも規制をする、また働く農民にも有益な農作物を早くそしてつくってもらうという方向にはなかなかいかぬだろうと思うんです。こういう点から、この政令の問題を定める問題について、銅、亜鉛等は今日の水準から見てはたして何とかこれを守らなきゃならぬものかどうかというこの問題についてひとつ質問したいと思うんです。
  188. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) ただいま私のほうで出しました本等を御引用になりまして銅のお話がございました。私たちもこの法案を提出いたします際に考えましたことは、一つは人の健康の問題、カドミウムの問題もありましたけれども、農林省といたしましては、農家に経済的な損失を与える生育障害も入れなきゃならぬということで今回入れたわけです。したがいまして、当面問題になっておりますカドミウムはすぐにやらなきゃならぬとわれわれ思っておりますが、引き続きできるだけ早い機会に銅、亜鉛等は指定してやるということはこの前も申し上げたところでございまして、ずるずるとうしろに送っていくつもりはございません。  それからまた、御指摘のようにかなりわれわれのほうも試験研究としてのデータがございますので、それを行政にどう移していくか、政令基準をどうきめるかというのを早急にきめまして、なるべく早い機会に銅、亜鉛を指定をしたいというふうに考えております。
  189. 河田賢治

    ○河田賢治君 次に、汚染対策地域の指定の問題ですが、これは都道府県知事あるいはこれらの地方自治体のきめる問題と、それから農林省で今日まだ環境基準なるものはできておりませんけれども、土壌汚染防止について、やがて地方自治体でも進んだところはやはり農民の利益を守るためにもこういう環境基準をつくることであろうと思うんですね。その場合に、地方自治体がこの土壌汚染防止法環境基準をみずから設定して、そして条例をつくりあげる、今日、いわば農林省としましては、カドミの土壌汚染ではなくして、これらの土壌の中から生産された米、これがいま一番中心になって一PPMというものが基準になっておりますが、こういう環境基準を地方自治体が条例を定めたいという、また新聞などにも発表しておる地方自治体もありますが、この基準をきめる場合に農林省はどのようなお考えを持ちますか。地方自治体独自にやるところはやらせていくというお考えですかどうですか、この点を聞きたい。
  190. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 環境基準は、今度の基本法の改正によりまして、政府が人の健康の保護あるいは生活環境を保全するために維持されることが望ましい基準をきめるわけでございます。この環境基準を頭に置きまして大気なり水の法律における排出規制がされることになるわけでございますが、土壌につきましては、先ほども申し上げましたように、たとえばカドミウムにすれば土壌に一〇PPM入っておれば人の健康をそこなうんだということまで究明がされております。そこで当面一PPMということで出発をしたいということを申し上げたわけでございますが、先ほど河田先生のおっしゃいました知事がやるのは、これは排水基準大気なり水の法律に基づくきびしい基準でございますが、これは環境基準ができません間でも当然できるわけでございます。で、土壌のことを考えまして知事が、いわゆるきびしい許容限度といいまして、上乗せ基準と言っておりますが、これは当然つくることができるわけです。農林省も、土壌関係からいいましてよりきびしい基準の必要がある場合には十一条でもって知事に勧告をいたすということでございます。
  191. 河田賢治

    ○河田賢治君 じゃ一つ具体的な例を申しましょう。いま米の問題では一PPM、これが、以上、以下で基準になるわけですが、この基準として、地方自治体が、この基準をカドミの〇・四PPMですね、これを以上にして、そしてこれに基づいて対策、計画を立てる、そしてたとえば東京都では、御承知のとおり、日本電気のあの工場に端を発したカドミの汚染で、多摩川流域の昭島、立川、国分寺、八王子、府中、各市で広範な地域土壌、河川が汚染され、その程度でも用水、川の底、ここの底質では二一九PPM、これは昭和用水です。それから水田土壌では八九・九PPMとか、米の中には最高が二・二四PPMというように、安中や黒部をはるかにしのいでいるわけですが、これももちろん抽出地点というのがわずかしか出ておりませんからどの程度の面積ということはわかりませんけれども、この生育調査が今後は必要ですけれども、この一PPM以上のところは三地点〇・四PPMをとれば九地点と、こう大幅に差が出ている。もしも東京都が、今日人間の健康を保つためにはどうしても安全基準をつくらなくちゃならぬ、そのためには、御承知のとおり米の買い上げも〇・四PPM以上のものは現に買っているわけですね。これが食管法の問題ではどうなるか。これは別といたしまして、都は、そういう規則で、住民の健康、人間の生命、これがもう地方住民に直結しておりますから、これは大事だということで買い上げているわけです。その場合に、たとえばこの指定地域をかりにここでするとしまして、ここは市街化区域になるかあるいは調整区域になるかしりませんけれども、かりにここが農用地としてずっと存在をするとすれば、この地域がそうなれば、やはりこの地方自治体で〇・四PPMの産米地帯、これらをやはり計画の中に入れるに違いないと思うのですね。こういう場合に、農林省のほうでは、これはもう省令違反あるいは政令違反だということで農林大臣はこれを承認しないということになりますかどうですか、この辺を伺っておきたいと思います。
  192. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 東京都下の問題につきましては、まだ私たちのほうで具体的に調査をしておりませんので適確には申し上げられませんけれども、この法律の適用といたしましては、先ほどからたびたび申し上げましたように、一PPM以上の米が出る土壌、それに近い将来、もう客観的に見ましてもなるおそれのあるところは、この指定をいたしたいと考えております。またそういう当面の政令の要求はきめたいと思っております。  ただ、いまの〇・四PPMというお話は、先ほど村田先生のときにたびたび申し上げましたように、これは厚生省が要観察地域をつくるための調査の糸口といいましょうか、端緒でございまして、〇・四PPMがそのまま地域指定以下かどかということは、これは別の問題でございます。
  193. 河田賢治

    ○河田賢治君 これは昨日もだいぶ、米の含有量の中のカドミの一PPMについては、厚生省自身もこれは暫定的なものである、ほんとうに科学的にこれは決定したものではない。また現に日本のいろいろなこの方面のいわば専門学者にしても、厚生省の、あの尿の中から〇・三五ですか、ああいう取り方は、一日だけ研究したって、そんなものはわかるものじゃないと、日の中にも、時間的ないろいろ上り下りがあるし、非常に不安定な問題だ、だから、結局安全なものは〇・四PPMくらいが最小限安全であろうということを発表しているわけです。こういうものが、つまり厚生省自身もこれは暫定的なものだと言っている場合に、農林省やあるいは農民の立場から見て、私たちは、これをもう絶対これ以下であってはならぬというような、そういう考えはちょっと私は正しくないと思うわけですが、しかし、御承知のとおり、このカドミの問題を立てる場合に、たとえば事業者の負担の問題、対策地域の計画の中にいろいろと防止事業をやりますが、大きな鉱業所では発生源が一つですから、これは簡単なんですね。ところが、東京付近のあのようなところは、きわめて小さな、わずか三人から五人ぐらいの零細な業者がカドミを使ってメッキもしておる。あるいは途中でやめた者もある。それからまた、かつて、ずっともう戦前に使っていた場所もある。で、こういうものは、これをいわば事業者負担に入れる場合に、非常にこれは困難ですね。一つのところならもう完全に――安中とか、あるいはその他日光とかというところならもう完全に事業者負担ということもできますけれども、そうでない、零細な企業者もたくさんある、大きいところもあるという場合には、地方自治体としてもこれを事業者負担に割り当てることはかなり困難である。いま負担させられたらもう倒産するところも出てしまう。こういうような場合もあると思うんです。そうすると、負担能力のある場合には、やはり一つ事業計画の中には、これはどのようにして事業負担を取るのか。これもやはり取らなきゃならぬとお考えになるのか。あるいは、かつてそこへたれ流しをしていた何カ月間の量はどのぐらいになるというような計算をさしてこれは取らなきゃならぬものなのか。この辺をひとつ聞き、さらに、東京都あたりでは御承知のとおりお米なんかについても、補償工場へ持っていかずに、あるいは資本家に持っていかずに、都に要求しているわけですね、一PPM以上の米は。どこも買い手がない、事業者がわからぬというので、都にこれを買ってくれという要求をしているんです。こういう場合は、非常にたくさんな発生源のあるときには、これらの地方自治体というものは非常に困難を感ずるわけです。しかし、こういう場合でも、事業計画の中に、これらの事業負担を地方自治体が肩がわりするところもあると思ううんです。そうすれば、もう地方自治体はこの事業計画を立てるにあたって、みずからの負担というものは相当たくさん持たなきゃならぬ。国が多く持ってくれれば問題はありませんけれども、地方自治体の財源からしてそういうこともできないであろう。こういう場合は、一体農林省としては、あるいは政府としては、どうお考えになりますか。
  194. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 御指摘のように、単一の事業体が原因者であるということがわかっておれば、これは確かに簡単でございます。複合している場合等がございます。この点につきましては、これは法律の原則でございますが、費用負担法の五条にその原則を書いておるわけであります。それは抽象的でございますけれども、この「事業活動の規模」なり、それから「施設の種類」なり、あるいは「排出される公害原因となる物質の量」なり「質」なり、その他の事項を基準としまして、結局、それぞれの案分といいましょうか、そういうことをきめるという原則が書いてあります。これをもとにしまして、施行者が各企業に案分をするわけでございます。その場合に、中小企業等の問題につきましては、この法律にもございますが、「中小企業者に対する配慮等」という規定がございまして、「国及び地方公共団体は、税制上及び金融上必要な措置を講ずるよう努める」ということが書いてあります。それぞれの具体的な事情に応じてそういう対策が講ぜられるかと思います。それから国といたしましては、先ほどからこの問題は出ておりましたけれども、財政負担の問題でございますから、最終的には、大臣も申されましたけれども、予算できめることになると思いますけれども、できるだけ国の負担も持つということで努力をするということでございます。
  195. 河田賢治

    ○河田賢治君 これは東京都の問題に関連して、立川市ですね、ここは一・八PPMのカドミが検出された。そこで立川の、米軍の立川基地の汚染が十分考えられるということを毎日新聞は十月三十日に報じておりますが、しかし、戦前あそこは陸軍の工廠や航空技術研究所などがあり、軍関係の施設と、飛行機の部品の製造や機体の整備なんかをやっておりましたから、相当、この基地内の残堀川、ここは合流してそうして多摩川に通ずる。ですからこの用水路というものあるいは河川というものが、非常にここは汚染されているわけです。また当時、亜鉛や青酸カリなんかの溶液も大量に流したといって当時勤務していた立川市の衛生課長も話しをしております。また十一年前、立川で小林純教授が〇・四七PPM検出して、汚染されていたということを、ことしの一月の雑誌「世界」でも発表されているわけですが、おそらく今日この立川基地内で、どの程度にこういう汚染物質を流しておるのかということははっきりわかりません。しかし、過去にはそういう工場があったということも事実なんです。そうしますと、この河川がかなり、上流からもあるいは下流にもこういう発生源がそこへ注いでおるわけですが、こういう場合に、この軍用基地内へ、汚染調査あるいは水質調査、こういう関係から、農林省はこういうところへもどんどん入って調査をおやりになることができますか、あるいはまたやる意思がございますか。この点を聞いておきたいと思います。
  196. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 土壌汚染防止法によりますれば、立ち入り調査は農家の農用地に立ち入るということになっております。ただし、排出規制との関係は、先ほどもたびたび申し上げましたように、これは大気法律、水の法律に基づきまして、都道府県知事がきびしい基準を定めるということになっておりまして、その場合に工場事業場等に立ち入るということになっております。そちらのほうの法律で米軍の関係に立ち入れるかどうかということは私はわかりません。
  197. 河田賢治

    ○河田賢治君 ここに川が流れているのですね、川の底のいわゆる底質ですね、ここにはもうカドミがうんとたまっているわけです、さっき申しましたように。二〇〇何ぼという非常に大量のあれがあって、やはり米の一%以上のところは、水質もいま非常に悪いということがもう東京都の発表しましたこの資料の中にも明らかになっているのです。そうすれば、たとえばここで一つの計画を立てて、そしてここで特別な汚染防止地域として指定する。そうすれば、その河川の流域、たとえば米軍がその地域を持って、そこを川が流れているのですから、そういう川の流域も改造しなければ、これは防止の計画は立たぬと思うのです。こういう場合に、農林省なり、あるいは都がやるかもしれませんけれども、当然こういうところにも入って、そしてそれらの調査もする、あるいは工事をいよいよやることになれば、そこへ入っても工事をやるか、こういう問題なんですね、こういう点をはっきりしておいてもらいたいと思う。もちろんこれは外務省の関係かもしれません。あるいは防衛庁かもしれませんけれども、しかし、農林省がそういう腹を持たなければ、さっきの問題のとおり、何でも厚生省とか、きめられぬようではだめなんですね、その点ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  198. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 立ち入り調査は、先ほど申し上げましたとおり、都道府県知事が権限を持っているわけでございます。都道府県知事が米軍の施設なりと話し合いをしまして、そこの了承をとった上で立ち入るということはもちろん可能ではないかと思いますが、具体的な運用は都道府県知事にまかされておるわけであります。またその指導につきましては、それぞれの担当の各省が正式にきめることだと私は考えます。
  199. 河田賢治

    ○河田賢治君 最後に一つ、これは大臣質問したいと思うのです。農林省土壌汚染の防止法をつくられるときには、私たちから見てもこれは当然だというような条項が、もう最初の「目的」のところからずっと入っていたわけですね。それが日を経るに従って、こうだんだんと後退してきた。新聞なんかでも公害問題はずいぶん後退したということが世上言われているのです。また新聞でも、この法案の作成の過程で、財界から、おそらく経済団体連合会、あるいは商工会議所等かもしれませんが、土壌汚染防止の立場からきびしい規制が実施されると企業経営が不可能になる。第二に、したがって、カドミ等の有害性や、人体、農作物などへの影響の科学的究明が不十分なる現状では、予防的排出規制は時期尚早であるという趣旨の意見書が提出されたといわれております。これは新聞でございますから、はっきりしたことはわかりませんが、当然農林省あたり受け取っておられるのじゃないかと思いますが、この点ひとつ大臣にお聞きしておきたいと思うのです。
  200. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) いまの農林大臣は、一ぺんもそういうことは受け取ったことはございません。
  201. 河田賢治

    ○河田賢治君 そうだとすれば、財界の圧力はなかったというならば、最初の原案ですね、水質あるいは大気汚染は、単なる一般的な公害を防ぐだけでなく、人間の健康また生命を維持するための農産物をつくるわけでしょう。そうすれば、特別の、特に有害物質などについては特に土壌の中にこれは蓄積されるわけですから、普通の意味での規制とはもっと異なった規制をしなければならない。このことは科学的にも明らかなんですね。そうするとそういうものが大体において法案の最初に立案された当時は、それが入っておりながら、こういうものがなくなって、そしていま提出されておる法案が出たということはどういう理由に基づくものか、この点をひとつ釈明していただきたいと思います。
  202. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 第一次とか、第二次とか、原案というお話がありましたが、そういうことは私は見たことはありません。
  203. 河田賢治

    ○河田賢治君 それは農林省大臣でなくして局長さんあたりが集まっておつくりになったかもしれませんが、そうすると一応、この担当の局長さんにお尋ねします。最初に九日に出たやつがありましたね。それから十三日に、これがだいぶ変わってきて、それでいよいよ大綱ができて法案になったわけですが、その辺のいきさつについてお伺いして私の質問を終わりたいと思います。率直にひとつ述べていただきたいと思います。
  204. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 土壌汚染を防止するためのいろいろな規制をし、かつ対策をとる、こういうことでございます。その立案を農林省が命ぜられて、われわれ筋書きを考えた際に、ほかの法律関係なく、一応土壌だけから見てこういうことで筋書きならこうなるということを一ぺんつくってみたことがございます。そしていろいろ考えてみますと非常に変わったとおっしゃいますのは、おそらく排出基準のところだと思うんですが、これは私たちも、あのときに頭のうちにありましたし、あれにもたしか書いたかと思いますが、一般の基準では土壌汚染対策としてはゆるいと申しますか、そういう基準ではいけないという場合にきびしい基準をつくるんだということにしておったわけです。その点は今回の法律の第七条でもそういうふうにしておりました。都道府県知事が必要な措置をとるものとするということで知事に義務づけておるわけでございまして、立案の趣旨は変わっていないという私のつもりでございます。  おそらくもう一つ、御指摘は無過失責任の問題があろうかと思うんですが、これにつきましてはたびたびこの席でも申し上げましたように、なお通常国会を目ざしていろいろ検討するということになっておりますので、土壌だけで特別の問題ではございませんので、これはここから落とした、こういういきさつでそんなに初めからこの法案の立案までに大幅に後退したというふうには私たちは考えておりません。
  205. 河田賢治

    ○河田賢治君 終わります、時間ですから。
  206. 宮崎正義

    宮崎正義君 昨日からいろいろ論議をされておりまして、なるべく重複を避けたいと思いますが、大事な点についてはやはり重複せざるを得ないということもあらかじめ御了承をお願いしたいと思います。  最初に特定有害物質の指定のことにつきましてお伺いしたいと思うんですが……。
  207. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) きょう御提出いたしました政令規定見込事項にも書いてございますが、当面一番問題になっておりますカドミウムにつきましてはまず指定をしたいと考えております。それから、いまわれわれといたしましても過去の調査等も持っておりますし、緊急にいろいろな調査を進めまして、銅、亜鉛の指定を続いてやりたい。それからあとわれわれの頭にありますのは鉛、砒素でございます。この重金属は人の健康とも関連がございますので、厚生省といろいろ御相談の上、その辺のことがまとまった際に、指定をいたしたいと考えております。
  208. 宮崎正義

    宮崎正義君 なぜあらためてそういうことを伺うかと申し上げますのは、やはり農用地土壌汚染防止に関する法律案を当然政府がお出しになるのには、ここにもありますが、「ついで」銅とか亜鉛とかを規定する見込み、さらには鉛とか砒素等――いま答弁がありました。というのは、過去から多くの汚染問題で国民が悩まされてきているわけです。したがって、今回の法律の制定をする場合には、当然公害をこうむっている国民の上の立場からすれば、銅、亜鉛、爼上に乗っているものは当然これは乗せるべきであるというふうに思うわけであります。  一例をとって申し上げますと、これは北海道の幌別炭鉱と言いまして、壮瞥町にあるところですが、これは明治三十五年採掘をするようになりまして、大正九年にこれは三井鉱山の所有になりまして、現在では北海道硫黄株式会社に変わっておりますが、これは幌別炭鉱と言っておりますが、一時は一万九千百トンぐらいを採掘をしておったわけでありますが、この鉱山から多くの公害を起こしておるわけですが、これはいま始まったわけではないわけです。創業から考えまして、また大正年間に――大正九年に本格的にやるようになってきておりまして、もうすでに相当年限を経てきているわけでございます。この間私どもが知らない間にどれだけこの公害を受けて、あるいは極端な言い方をすれば人命をそこなっていたかもわからないということが言えるわけです。この公害の問題がずっと起きてきて初めてこれも俎上にのってくるわけでありますが、この幌別炭鉱の及ぼす影響というものについてどのようにお考えになっておりましょうか。
  209. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 私突然伺いましたので、不勉強でございますので、まだ的確にお答えできるかどうかわかりませんが、至急いま調査していただいたところによりますと、洞爺湖に入ります長流川の上流に鉱山がいまのお話のようにありました。これは酸性水PH三・四ぐらい出しておる。この影響で洞爺湖の水がPH五になっておるということでございます。このかんがい用水を使用して水稲が植えられておるわけでございますが、水稲は酸性に強いので、水稲としてはそれほどの被害はないというふうに報告を受けております。また、土壌汚染はないというふうにわれわれ聞いております。なお、漁業者の話によりますと、ヒメマスの資源が枯渇しているとの話でありますが、これは洞爺湖の水の酸性であるのかどうかはまだ明確ではないというふうに聞いております。
  210. 宮崎正義

    宮崎正義君 実はそういうふうにうまい回答ならばいいんですが、現実はあまりにも違っているわけです。それでこれは通産省の公害保安局の課長さんが見えてますね。この幌別炭鉱の内容についてひとつ御説明願いたいと思います。
  211. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) お答え申し上げます。  先生幌別炭鉱とおっしゃっておりますが、これは炭鉱ではございませんで、硫黄鉱山です。先ほど農政局長から御答弁がございましたように、この長流川の上流には鉱山が実は二つございます。一つが先生御指摘になりました幌別硫黄鉱山でございます。もう一つは同じ硫化鉄鉱を掘っております徳舜瞥鉱山です。この二つの鉱山がございます。幌別硫黄鉱山には、先ほど農政局長がおっしゃいましたように、非常に強い酸性水が坑内水として出てまいっております。これを処理いたしますために二つの方法をとっております。一つは鉱山の近傍におきましてボーリングを多数打ちまして、そのボーリングの穴を通じまして地下に浸透させる、そういうかっこうでPHを改善するという方法をとっております。もう一つの方法は、出てまいりました酸性水を石灰をしきました槽の中を流しまして、これで中和をして流しておるという方法をとっております。非常に酸性が強いために現在の処理のしかたは必ずしも十分とは言えないのでありまして、私どもが持っております一番新しいデータでも、鉱山の排出口におきますPHは三・六であるというデータがございます。  さらに、この地区におきましてもう一つの問題は、幌別硫黄鉱山からさらに下流のほうに弁景温泉という温泉がございまして、この温泉がまた酸性の温泉でございます。で、これと重合いたしましてこれが洞爺湖に流れ込んでおるわけでありますが、ごく最近におきます洞爺湖流入口におきます私ども監督局の検査によりますると、これはことしの十月の八日の検査でございますが、PHは五・八であるというデータが出ております。御承知のように水質法によってきまっております環境基準は五・八から八・六の間であればよろしいということになっておりまして、いろんな努力の結果現在ようやくこの環境基準下限にまで持ち込むことがようやくできたということでございます。  もう一つ徳舜瞥鉱山というのがございまして、この徳舜瞥鉱山のほうは石灰の投入をやりまして処理いたしておりますが、これの鉱山の排出のデータは、四十四年の七月のデータではPHが六を上回っております。ただ非常に残念なことには、四十五年の六月に私どものほうが調査しましたところ、これがPHが四・六と逆戻りしているわけでございます。これにつきましては、監督局のほうから鉱山に厳重なる指示をいたしまして、と同時に始末書を取っておりますが、鉱山側の釈明によりますれば、当時は非常に渇水期であったために、非常に希釈度が少なかったのだということを申しておりますが、これは理由にはなりませんので、その後も鋭意改善に努力さしているという現状でございます。  で、問題は、この幌別硫黄鉱山の酸性水を抜本的に処理するのにどうしたらいいかということが一番の問題でございます。これを十分にやりませんと、なかなか環境基準を維持することがむずかしいわけでございます。そこで、いま北大の後藤教授に御相談を申し上げまして、どうやってこの強い酸性水を中和していったらいいかということを研究中でございますが、私どものところに入っている情報によりますると、例の北海道でてん菜糖の工場がありまして、この廃液を処理しますのには、石灰でもって処理しまして、この処理をしたときに澱物としてライムケーキというものが出る。これは非常に強アルカリ性の物質でありまして、これをここに持ってまいりまして、これによって中和をすれば相当の効果が出るのではないかということが言われております。これが実験の結果非常に有効であるということになりますれば、通産省といたしましては、明年の雪どけを待ちまして、この処理施設を設置させるという方針で目下臨んでいるところでございます。  大体以上のようなことが当地におきます鉱山の状況でございます。
  212. 宮崎正義

    宮崎正義君 いま徳舜瞥のことは言いません。徳舜瞥鉱山のことは言いませんけれども、われわれは大滝鉱山とも言っているのですが、この硫化鉱のズリをそのままにしているということは御承知ですか。
  213. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) 聞いております。それにつきましては、この硫化鉱のズリを排除するようにすでに指示し、かつその工事をやっているはずでございます。
  214. 宮崎正義

    宮崎正義君 個人の企業、会社ですから、石灰なんかも非常に経費の問題で手に入れられないということもあるわけです。同時に先ほどの幌別鉱山のほうも、これは説明がありませんでしたけれども、これは四十三年の十一月二十日に私はこの本院の委員会において、この問題をやはり取り上げているわけです。当時と今度はひとつも変わっていない。経営状態からやっている内容、そうしてその犯している排水の問題、これらの点についてどうお調べになっておりますか。
  215. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) お答えいたします。  先生御指摘のように、この鉱山の排水処理の改善ははかばかしくないじゃないかというお叱りでございますが、まことに残念ながらそのとおりだと思います。データの上でその辺の経緯を少しく御説明いたしますが、鉱山の排出口におきます排出のデータを時系列でちょっと申し上げてみますと、四十三年の十二月ごろのデータはPHで二・八、このPHの数字はあるところまでは大きくなるほどよくなるということでございますが、四十四年の六月にはPHが三・〇、それから四十四年の七月にはPHが三・六、四十五年の六月にはPHが三というようなことで、先生御指摘のように、改善ぶりはまことにはかばかしくないというのは先生御指摘のとおりでございます。
  216. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで、先ほど答弁の中にもございましたけれども、長流川の合流の地点、それから弁慶川のほうからくる地点、両鉱山のほうから洞爺湖まで約十キロぐらいではないかと思います。この十キロぐらいある山林とか河川、それからその付近にある宅地、それから公園に及ぼす影響性、そういうものをお調べになったことございますか。
  217. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) 私ども監督部の直接の仕事は、この発生源対策ということでございまして、その周辺の被害状況ということについては私どものほうでは直接調べておりませんので、そのようなデータは持ち合わせておりません。
  218. 宮崎正義

    宮崎正義君 これは当然その監督局である方面でやはり調べておく必要があるんじゃないかと、こう思うわけです。それから、及ぼされている影響性というものは当然これはデータもつくり上げておかなければならないのじゃないかと思います。  今回この公害問題等がこのように国民全体の中から起きてくる中で、しかも大正九年からやっている操業のことから考え合わせてみても、これは当然なやるべき処置であり、またそれに対する対策というものも今日まで考えていなければならなかったと思うのです。先ほども御説明がありましたけれども、中和装置だとかあるいはボーリングしてその中に落としていくというお話もありましたけれども、実際問題としては経営が成り立たないような形でそこまで手が回らないという、そういう硫黄鉱山にいる所長の話を私は直接伺ったこともあるのです。こういう点から考え合わせてみて、そのまま何年も何年も放任をしておくという、そこに私は問題点があると思うのです。この点についてどういうふうにお考えになっていこうとされるか、またどうそれをやっていこうか。本来ならば通産大臣をお呼びしてはっきりさせなければならないところですけれども、おいでになりませんからやむを得ませんけれども、どういうふうにしていくか。また将来はこのように処置をして、そうしてこの国民に影響を与えていることに対してはこのように助成も補償もしていくというような、ここまでいかなければいけないのじゃないかと思うのですがね、この点どうなんでしょうか。
  219. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) 第一点の、被害面に対する調査の件でございますが、私どもの調査は、先ほどちょっと落としましたが、発生源におきます調査ということのほかに当然、環境調査というのもやっておりますので、その辺までは私どものほうで十分やっていけるということを申し添えておきます。  それから第二点でございますが、先生も御指摘になりましたように、非常にこれは弱小企業ではないか、したがってその処理がはかばかしくないという原因の一つは、その処理施設に金を投ずることができないからそういうことではないかということでございますが、実態はそのとおりでございまして、幌別硫黄鉱山を経営しております会社は、北海道硫黄株式会社と申しまして資本金は五千万円という非常に規模の小さな会社でございます。したがいまして、相当金を大々的に投ずればある程度の処理は可能でございますが、そうもいかないというところが非常に悩みでございまして、そこでいろいろとできるだけ最小の費用で最大の効果をあげるためにはどうしたらいいかというような研究が必要になってくるわけであります。それで先ほど申し上げましたような方法を講ずるというのは、もっぱらそういう観点から考え出されておるわけでありまして、この方法によりましてうまく処理できますれば、非常にこの種の問題としてはまあいい。できるだけ、そういうふうにできる範囲内で最大限の努力をさせるという態度で処理をしていきたいという方針でございます。
  220. 宮崎正義

    宮崎正義君 はっきりしていると思うのですがね。この助成をしてやるかやらないかということなんですがね。そうしてやってあげませんことには、これはどうにもならないような事態じゃないでしょうか。ただ助成するということばが悪ければ、監督局のほうで、もう一歩手を入れて、これは早急にやらなければいけないと思うのですね。だいぶまた地域の方々が騒いでおります。したがって、私どもは特にこれを取り上げたわけですけれども、いまの御答弁だと、お金をつぎ込めばできるのだ、できるのだという話だけで、そうさせるのだ、そうさせるのだと言うけれども、相手方がお金がないのですから、これはお金がなくて酸性のひどいのを流しているわけですから、これは大局の上に立っても、当然手を打ってあげるべきだと、その手の打ち方はどうしてやるのだということをやはり明確にしていかなければいけないのじゃないか。  まあ、それはそれとしておきまして、なぜ私、こういうことを言いますかというと、約十キロのところがもうすっかり河川も赤銅色になっている。色が全く変わっている。もう河川だなんていうものじゃないというほど、赤銅色に砂も岩も石ころもみななっておる。それから流れてきて長流川の合流のところからまたさらにひどくなってきておる。長流川の上のほうはこれは魚がとれる。合流点からは一匹もとれないというふうになっているわけです。ですから、その一事を見ていきましても、人体に、人畜に影響がないということは言えるはずはないと私は思うわけです。で、さらに山林が汚染されて、そしてその土地が、宅地が汚染されていく。それが今度は国立公園のほうに及んできておるということから考えまして、農用地の範囲というものを農政局長は、本法案のことだけにとどめていこうとするのか、その点について伺っておきたいと思います。
  221. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 今回提出いたしております法律につきましては、第二条に定義がございますように、「耕作の目的又は主として家畜の放牧の目的若しくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう。」ということにしておりまして、具体的に趣旨を御説明いたしますと、普通の田畑それと、採草放牧地、それからなお肥培管理をいたしておりますこのごろの都市公園というふうな、小さな苗木等をつくりますそういう苗木の畑、そういうところまで含めて考えておりますが、先ほどお話がありました山林、宅地ということはここでは考えておりません。それの理由は、当面問題になりましたのは、人畜に――人畜といいますか、「人の健康をそこなうおそれがある」ということと、それから生育障害によって農家に経済的打撃を与えるというところに着目してつくったわけであります。たびたびそれ以外のものをどうするのだという御質問があるわけでございますが、その点につきましては、たとえば林地にいたしましても、林地汚染と人の健康あるいは生育障害の関係等、まだ法案としてお出しして対策を立てるというところまで調査研究が進んでおりませんので、そういう研究も進めました上、それぞれの担当部局が対処するということになっておるわけであります。
  222. 宮崎正義

    宮崎正義君 厚生省国立公園部の岡田課長さんですか、洞爺湖の今日の水質というもの――水質のほうは企画庁のほうでしょうけれども、どんなふうな形態に今日国立公園が保たれているか、現況を説明願いたいと思います。
  223. 岡田達郎

    説明員(岡田達郎君) お答え申し上げます。  最近におきます洞爺湖の自然景観でございますが、これにつきましては最近におきます旅館等の増加等が影響いたしまして、透明度等は相当落ちておるというふうに聞いております。で、洞爺湖のみならず、全国的にもこうした傾向がはなはだしくなってまいっておりますので、今国会にも審議をお願いしておるところでございますけれども、自然公園法の改正案を提案いたしております。
  224. 宮崎正義

    宮崎正義君 経企庁の西川審議官ですか、洞爺湖の水質についてどのように調査されておりますか。
  225. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 洞爺湖につきましては、温泉街の汚染によりまして汚濁が進行しつつあるというような情報は耳にいたしておりましたのですが、現行法によりますと、保全法によりますと、温泉街というものが規制対象となっておりません。そのようなことから、実は現在まだ洞爺湖につきましては北海道庁のほうにおきましても水質保全のほうの調査水域にもなっておりませんので、われわれといたしましてはいま厚生省のほうから話もありましたように、湖沼の問題というのが温泉によりまして、温泉街その他によりまして汚濁してきているというのが相当全国的な問題になってきている、いまそのような情報だけで、調査はいたしておらなかったわけでございますけれども、新しい今国会に提案されております汚濁防止法によりまして、いわゆる三次産業的なものまでも将来規制の範囲を広げるというような観点から、早急に湖沼のほうのそういういわゆる企業によります汚濁でない汚濁というようなものについても早急に調査の手を広げてまいりたいというふうに考えておりますが、現在におきましてはまだ企画庁といたしましては調査いたしておりません。
  226. 宮崎正義

    宮崎正義君 洞爺湖の汚濁といいますか、四方が大体農地であり、山林であり、それから雨が降れば雨と一緒になって農薬が及ぼす影響性というものもある。それから食品工場があそこにもあります。そこからも相当な排水を出しております。これまたすごい燐性のものを出しております。それから、先ほど来申し上げております幌別鉱山と徳舜瞥鉱山から出しておる排水、それらが国定公園をすっかりいためているというふうに私どもは見ておるわけですけれども、この点に対して自然保護という、また国立公園を、国立公園法の立場の上からどういうふうに公園部の岡田課長あるいは経企庁の西川審議官はお考えになっておるのですか、伺っておきたいと思います。
  227. 岡田達郎

    説明員(岡田達郎君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、洞爺湖をはじめといたしまして、全国の国立公園あるいは国定公園におきまする湖沼が最近における利用者の激増によりましてその自然景観を害するようなこと、あるいは害するおそれがきわめて濃厚になっておる湖沼は少なくございません。そこにおきまして、現在の自然公園法の手法に従いまして、自然公園の中の特別地域にございます湖沼で厚生大臣が必要と認めますものにつきまして、その湖沼に影響を与えます汚水等の排出についてすべて厚生大臣の許可にかからしめるという手法をとってまいりたいというふうに考えたのでございます。で、これまで自然公園法におきましては、単に自然の風致と申しますか、景観と申しますか、見た目の色合い等を主として問題にしてまいったわけでございますけれども、それだけにとどまっておりますと、この水質の汚濁によりまして著しく自然景観をそこなう場合も少なくございません。したがいまして、この際、湖沼等の景観を守る意味合いからいたしまして、そういう排水を行なう行為につきましても、この許可にかからしめるということでまいるというふうに考えておるわけでございます。  で、御存知のように特別保護地区、それから特別地域、それから普通地域、それからさらにこの五月の改正によりまして海中公園地区というのが設けられたわけでございますが、これらの地区及び特別保護地区につきましては、これはありのままの自然を確保する必要があろうというふうに私ども考えておるわけでございまして、私どもこうした特別保護地区に水を流すということは原則として一切認めないという方針でまいるというふうに考えておる次第でございます。海中公園地区につきましても同様でございます。問題となりますのは特別地域でございます。この特別地域につきましては、現在の湖沼の実態からいたしまして、そのまま放置することはできないという湖沼に対しましてそうした規制をかけてまいりたいというふうに判断しておるわけでございます。もちろん、一般の人家等によります排水はそう大きな影響はないというふうに判断しておるわけでございますけれども、特に旅館あるいは飲食店、そういったようなものが、特に洞爺湖の場合もそうでございますけれども、ほとんどがたれ流しの現状になっておるというような状況でございますので、適当な浄化槽あるいは沈でん池等を設けてもらいまして、その上でもって湖水の汚染あるいは汚濁を防止してまいるというふうに考えておる次第でございます。
  228. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 先ほど申し上げましたように湖沼につきましては汚染源という問題からいままで手おくれであったというような事実があったわけでございますが、最近まず一番最初といたしまして、諏訪湖につきまして排水規制をかけるように告示をいたしました。引き続きましてそのほかにも富士五湖とか、あるいは琵琶湖の湖北のほうとか、いわゆる自然的な景観を残さなければいけない――洞爺湖もそうですが――問題があるのは事実でございます。そのために環境基準を四月に閣議決定いたしました環境基準におきましても、特に河川湖沼の部におきましてはAA類型というものを設けましてこういう自然のままの状況を保全したいという考え方も類型の中に含めたわけでございます。今後汚染源の排出規制の問題を、いままで手が出なかったところでございますけれども、まず第一番に新しい水質汚濁防止法におきましては、いわゆる指定水域制度をはずしまして、全国一律にまず企業に対しましてはナショナルミニマムと申します基準をかけてしまうということになっております。洞爺湖におきましてもいま先生おっしゃいましたように食品工場といたしまして、でん粉工場が一工場ございます。これにつきましては新法が施行になりますと直ちにこれで一応シビルミニマムとしての基準がかかるということになるわけでございます。それ以外のいわゆる非常に汚濁のもとになっておりますホテルその他につきましても、水質汚濁防止法としての特定施設として指定するかどうかという問題につきましては、今後前向きの姿勢関係各省と協議してまいりたいと、このように考えております。そのようなあれをとりましても、なおかつ環境基準が守られないような水域につきましては、さらに都道府県が条例でもってよりきびしい基準を上のせすることができるというようなことになっております。第一段といたしまして、全国一律規制がかかること、並びに特定施設の範囲を拡大していきまして、従来二次産業中心であったものに対しまして、一次産業、三次産業等のものにつきましても対象とするというようなことで、いわゆる山間のこういう自然景観の保護というものに対しても寄与してまいりたい、このように考えております。
  229. 宮崎正義

    宮崎正義君 山林及び田畑の農薬なんかについての考え方を伺いたい。これはあの山からたんぼからずっと雨と同時に入ってくる。これらに対する考え方はどうなんでしょうか。
  230. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 具体的な個所につきまして、これは道庁に先生からお話しがありまして、緊急に問い合わせたわけでございますが、あの地区では農薬によってヒメマスの自然の枯渇に関係があるんではないかという話もあるそうでございますが、道庁の見解によれば、水田の余り水が洞爺湖に流入するのは少量であるということで、ほとんど影響がないという意見が支配的だそうでございます。これは具体的な道庁の報告でございますが、一般の問題といたしまして、今度は水質汚濁性農薬というものを指定することにいたしております。したがいまして、かなり人畜に影響を与えるといった場合には、水質汚濁性農薬の指定をいたしまして、所要の規制ができるという体制を農薬取締法の改正によりましてやりたいと考えておるわけでございます。
  231. 宮崎正義

    宮崎正義君 西川審議官のほうはどうなんですか、そういう農薬の汚濁が入った場合にですね。
  232. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 水質汚濁防止法で行なっておりますのは、排出を規制することにより水質の汚濁を防止するということになっております。そのために農薬の場合につきましては、いわゆる排出口というものはございません。水質汚濁防止法として規制することは、現実的に不可能でございます。ただし、水質汚濁、水質保全という全般の目的から考えまして、ただいま農林省農政局長のほうから答弁がございましたように、その使用の方法なり何なりのほうから規制をするということがあるわけでございます。そこで、現在そのような形で規制されております水銀系農薬、有機燐系農薬、この農薬につきましては、すでにそういう使用の農薬のほうの規制が行なわれておりますので、私どもといたしましては、水質に関します環境基準の中に、この有機燐並びに水銀というものは取り入れておるわけでございます。そのような農薬取り締まりの使用のほうからの縛りで初めて環境基準というものも守られる、排出規制では守られ得ないわけでございます。現在、有機塩素系の問題につきましては、農林省のほうの農薬の関係の前進を待ちまして環境基準のほうにも追加いたしたいということで、検討項目として有機塩素のほうは残してございますけれども、農薬取り締まりのほうの前進を待ちたいと、このように考えておるわけでございます。
  233. 宮崎正義

    宮崎正義君 水産庁長官がおいでになるんですが、ヒメマスとかの量なんか、どういうふうにお聞きになっておりますか。
  234. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 洞爺湖のヒメマスあるいはワカサギが数年前一番とれるころは百五十トン前後とれておりましたけれども、この一、二年はせいぜい二、三トンというふうに非常に漁獲が減っているというふうに承知いたしております。
  235. 宮崎正義

    宮崎正義君 これはあそこの有名なモがあるのですが、そのモが全然なくなっちゃったのです。もう全くなくなっちゃったのです。これで非常に自然の美観というものを失っております。これは洞爺湖ばかりじゃございません。先ほど御答弁にもありましたように、日本全体の湖水というものに大きな影響を与えているということ、北海道なんか特に湖が一ぱいある。しかも、北海道の湖というのは特異な湖が多くて、多くの国民の人たちが北海道、北海道といって観光に見えるのも、やはり大きな一つの湖、そういう自然環境というものが非常にいいわけなんです。そういうところがだんだん北電の排水、あるいは旅館が並び、なまのままどんどん流し込む。それから食品工場、そういう工場から流し込む廃液、鉱山からは酸性の強い硫酸銅の排水が流れてくる、こういうようなことはもう至るところにあると思います。で、こういうことを考えますと、厚生省のほうはその国立公園という立場の上からとういうふうな――何というのですか、弁償というか、たとえば工場から、あるいは鉱山からどんなふうにして自然の破壊というものを弁償さしていくかという、そういった点は特に考えておりますか。
  236. 岡田達郎

    説明員(岡田達郎君) お答え申し上げます。  厚生省といたしましては、できるだけ自然景観を維持する、保護するという観点から、それぞれの所管官庁にお願いをいたしまして、できるだけその自然の景観が守られるようにつとめるとともに、直接厚生大臣がその権限にございますいろいろな公園事業、あるいは公園の区域内におきます工事につきましての規制を厳正にやってまいるというふうに考えておる次第でございます。
  237. 宮崎正義

    宮崎正義君 先ほどの岡田課長さんのお話がありました、浄化槽とかあるいは沈でん槽とかいうものを考えておられると言いますけれども、これはどういうふうに進められておりますか。
  238. 岡田達郎

    説明員(岡田達郎君) 浄化槽あるいは沈でん槽、そういうものの設置につきましては、今後旅館等に対しましてそれを付置するというふうに私ども考えておるわけでございますが、その際に必要な資金面等の手当て等につきましては、たとえば環境衛生金融公庫等の資金を活用するというふうに考えておる次第でございます。
  239. 宮崎正義

    宮崎正義君 地元は何年来となくこの浄化槽の問題で悩んでいるわけです。大体十五億ぐらいかかるということで、その金の出場所というものを非常に悩んで陳情もしたというような話も聞いておるわけでありますが、この点に対してどんなふうな助成、考え方をしておられますか。
  240. 岡田達郎

    説明員(岡田達郎君) お答え申し上げます。  私どもの調査したところによりますと、現在北海道のほうにおきまして、先生御指摘の浄化槽とおっしゃいますが、これは公共下水道の布設の問題ではなかろうかと思うのでございます。これにつきましては、現在も調査しておるというふうな話も聞いております。公共下水道の建設につきましては、これは建設省のほうの御所管でございますけれども、私どもは洞爺湖のみならず、日本国じゅうのこうした汚濁の危険性のある湖沼につきましては、多かれ少なかれ単に個々の旅館なり、あるいは家庭なりが設けます浄化槽あるいは沈でん池、そういったもののみならず、公共下水道の整備ということが特に必要なことになってくるものだというふうに判断しておるわけでございますけれども、今後ともそういう方面につきましては担当の所管庁のほうに強くお願いしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  241. 宮崎正義

    宮崎正義君 農政局長にもう一回お伺いするのですが、いまずっとやりとりやっておりまして、国立公園というものを自然の保護という点から考えまして、それらに影響してくる約十キロから鉱山の廃液が流れてくる、それらが河川をよごし、それから宅地、田畑に影響を与えながら国立公園の湖水の中に入ってくる。こういうことから考えてみて、これは汚染対策地域というふうに考えられないものでしょうかね。
  242. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 常識的に先生のほうのいま言われましたようなことであれば、それをまとめてどういう対策をとるかということについては一つのお考えかと思います。しかしここでわれわれ考えましたのは、先ほども申し上げましたように、直接人の健康をそこなうもの、健康障害という面から入ったわけであります。いまのような広範なお話になりますと、対策としましては、あるいは水質汚濁防止法、あるいは鉱業法といいましょうか、鉱山保安法といいますか、そういうふうないろいろな法律のほうからの規制というものが全部一つに重なった一つの対策というものでなければならないのではないかというふうに私は考える次第であります。
  243. 宮崎正義

    宮崎正義君 これは各省にいろいろまたがっておるものですからなかなか容易じゃありません。日本の行政の特色といいますか、前にも私はこの点を申し上げたわけですが、あそこでヒメマスの養魚をやっておるわけですが、その水を引き込むために農林省なら農林省だけで済まない、道路を横断すれば建設省、それから林野を開けば農林省、それから公園をいじるわけですから、今度は国立公園法に基づく厚生省というので、一つのことをやっていくのにも相当な、国民の側から言えばどこか一カ所に申し出ればそれがスムーズにいかれて、自分の要望していくものが簡潔にできるんだというふうに考えるのが国民の考え方だと思うのです。それが、あっちへ行け、こっちへ行け、こっちではだめだ、あっちへ行けというふうな、一つのことをやっていくのに容易じゃない。いま私がいろいろな方面から申し上げていることも、そういう一つの総合的な考え方の上に立っての行政のあり方というものが将来は考えていかなければならないと思うのですが、これは次官がおいででございますので、次官の所見を伺っておきたいと思います。
  244. 宮崎正雄

    政府委員宮崎正雄君) 現在の現状は、仰せのような点が多々あると思います。したがってその横の連絡を緊密にするということは、これは当然やらなくちゃいかぬと思うのですが、だからといってそれをじゃ、一カ所にまとめてうまくいくかどうかということにつきましても、なるほど窓口は一つになるが、実施段階になりますというと、それぞれまた所管庁と連絡をとらなくちゃいかぬというようなこともあるいは起こるのじゃないかと、こういうように思いますので、機構だけではなかなかちょっと私は一挙に解決するわけにはいかぬと思う。やっぱり姿勢とそしてその熱意といいますか、それがおのずから横の連絡も積極的に緊密になると思いますが、しかし、そうした面の弊害は、これはすみやかに除去するようにお互いに努力しなければいかぬと、このように考えております。
  245. 宮崎正義

    宮崎正義君 農薬の問題にしても、通産省で許可して、使わせるところは農林省、そしてその弊害を検査するところは厚生省、こういうことになるわけです。こういう点も大きな弊害をあおってきています。ですから、そういう点等も当然お考えになっておるわけなんですが、これがうまくいかないというのが今日の日本の行政の姿、一挙にいきませんけれども、何年たってもいかないというような現況が今日の姿だと思うのですが、この点、将来の課題として私は希望を申し上げてその一元化していく方向、小さな範囲からだんだん大きな範囲へと一元化していくというような、小さいものからやっていけるような一元化ということは非常に必要じゃないか、こう思うわけです。これは希望でとめておきますけれども。  それから、次には、北海道では共和米というのですが、共和村にできます米ですが、住友金属鉱山があそこにありまして、明治四十一年から製錬開始をやっているわけですが、これが大体六十五年間くらいにわたってカドミウムを流してきているわけです。この点についての分析といいますか、これがおわかりでしょうか、実情を。
  246. 山本宣正

    説明員(山本宣正君) 私のほうで十二月九日に北海道庁から電話連絡によりまして、共和村の四十五年の産米三十七試料を道庁の公害研究所が分析いたしましたところ、最高〇・九七PPM、〇・九PPM以上のもの二サンプル、〇・七から〇・八PPMのものが二サンプル、それから〇・六から〇・七PPMのものが五サンプル、〇・五から〇・六PPMのものが七サンプル、〇・四PPM以下が五サンプル、こういう結果が出たということが電話連絡でもらっております。道といたしましては、この汚染の精密調査を進めるということで住民の健康調査を今後していくための方法を検討しているという報告を受けております。なお、鉱山の排出中のカドミウムの濃度につきましては、〇・〇〇一ないし〇・〇六一PPM、平均では〇・〇二二PPMという程度の報告を現在受けております。
  247. 宮崎正義

    宮崎正義君 率直に言いまして、これは農用地土壌汚染地区の指定というようなことを単刀直入に、時間がございませんからすぽっと聞いてみるわけですが、いまの発表からいくと、これはなりませんね、ところが、はかった時期にもよると思うのです、そういう点を考えていきますと、これが、カドミウムが出るというようなうわさが広がりまして、自主流通米のほうに影響を与えてきているわけです。この点について私は伺っておきたいのですが、この自主流通米に対する考え方ですね、農政局長ですか、食糧庁……。
  248. 内村良英

    説明員(内村良英君) 私どものほうにも共和村についてカドミウム汚染の報告はまいっております。そこで、現在のところ、一・〇PPM以上の汚染は出ていないようでございます。御承知のとおり、こうした問題が起こったところにつきましては、県側の要請があって現在公害地区の米の配給は一応暫定的にとめております。すなわち、食糧庁としては、持っている米を売却しておりません。そのような状況になっておりますので、自主流通米につきましてもなるべく政府に売るように指導しております。
  249. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) ちょっと補足しておきたいんですが、いまこの地域は指定になりませんでしょうというお話がございました。ただ、これは先ほど通産省からもお話がありましたように、私たちも同じ報告を受けておりますが、百十五ヘクタールについて二十九点ばかりしか受けておりません。これでは、なるかならないか私もわかりませんが、先ほど申し上げましたように、やはりこういう地帯につきましては少なくとも二・五ヘクタールに一点はきちんと等質の土壌のところをまとめて調査区をつくりまして調査をした上で対策を必要とするかどうかという判断をしたいと考えておりますので、必ずしもならないというわけではございません。
  250. 宮崎正義

    宮崎正義君 いまそれを私は言おうと思ったんですが、先に答弁していただいたので、それはそのようにやっていただきたいと思います。  それからここで、いま食糧庁のほうのお話ですと、そういうところは大体自主流通米はさせないという方向づけなんですね。で、これらに対する将来の考え方はどういうふうに持っていこうとされるのか、これは農林省のほうになると思うんですがね。
  251. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 対策地域の指定をまずやりまして、そこで対策計画を立てるわけでございます。そうしますと、場所によりまして、いろいろな考え方が出てくるわけでございますが、私たちのほうで第五条にございますように、やはり土地の利用をどう持っていったらいいかということをまず考えるわけです。非常に汚染がひどいところになりまして、これは農地の復旧がむずかしいというところは、非農地にするよりしようがないかもしれません。  もう一つ考え方は、やはりその地帯が米地帯だということになりますと、農家の希望としても水田に復旧したいということでございます。その場合には排土、客土等をやりますし、場合によっては水田転換ということをやることもありましょう、また汚染程度によりましては水田をやめて畑に変える、畑に変えましても、やはりカドミウムが出るという問題がございますので、畑としてのやはり土地改良が要るかと思います。そういう手も考えなければなりませんし、また場所によっては非食物性の作物に変えるということも考えておるわけでございまして、その点は具体的な地域の実情に応じて、綿密なと申しますか、農家とよく相談した計画を立てるということになると思います。
  252. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで食糧庁の次長にお伺いしますけれども、現在八千俵ですね、自主流通米が返却されてきちゃったわけですね。これはまあ契約当事者がやればいいんだと、こう言ってしまえばそれっきりだと思います。それだけじゃ済まされないと、こう思うわけですがね。その点御存じでございましょうか。
  253. 内村良英

    説明員(内村良英君) 現地からの報告によりますと、自主流通米と明記された検査請求書は受け付けないということにしております。そこで、この米が完全にどこにも処分できないということになりますと、農家としては非常に大きな損失になるわけでございますが、一・〇PPM以下の米でございますから、政府はこれを買い入れるということの措置をとりたいと考えておるわけでございます。
  254. 宮崎正義

    宮崎正義君 そうするとこの八千俵に対するものについては、政府が買い上げるという方針で進まれるわけですね。先ほど農政局長からのお話がありましたけれども、将来といいますか、あっちこっちにこういう問題は相当起きてくると思います。これに対しておそらく鉱山と名のつくところの付近は一応名があるためにこんなような問題が一ぱい起きてくる。したがいまして、たとえば地域を指定するとかいうようなことも、全国的な一覧表でもおつくりになって、そして知らしてあげるという、先にこういうところはこういうふうにやって、こういうふうにするよという、方向づけてやるということはお考えになってないでしょうか。
  255. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) その辺がたいへんむずかしいところでございまして、われわれのほうの過去の土壌調査によりましても、汚染程度が相当いっておるという地域も大体わかっておるわけです。ただそのわかっておる範囲でそういうことを発表しますと、このごろ、マスコミの悪口を言うわけではありませんが、たいへんだということになりますと、そこの農産物が暴落するという問題がございますので、やはり具体的な調査をやりまして、慎重にそれを取り扱うべきではないか。ただわかっておる範囲をばっと百とか二百とか出すということは私はいかがかというふうに考えます。
  256. 宮崎正義

    宮崎正義君 もう一つお伺いしておきますが、これは同僚委員がやはり聞いた中の点でありますけれども、その農用地土壌中の特定有害物の含有量の程度を越えた地域ですが、また及び当該限度を越えるおそれ――これは論議をされておりますから――のある地域土壌汚染が指定されると、いわゆるその地域は米は生産されないということになります。そうなりますと、そのようなところは生産調整奨励金といいますか、そういうふうな対象にするのかしないのか、この点を伺っておきたいと思います。
  257. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 具体的な例で申し上げますと、ことしの安中なり富山の三日市につきましては休耕いたします。ただ、政府のほうの生産調整の場合には三万五千円でございますが、聞くところによりますと八万円程度補償が出ておるようでございます。農家はやはり高いほうがよろしいので、全部そちらのほうで休耕しておるのが実情でございます。したがいまして、おそらく原因者がありまして、補償がつく場合はおそらくそちらのほうで休耕するのではないかと思います。ただ原因者が不明だとか、あるいは自然汚濁といったような場合には、これは一般の生産調整対策として考えざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  258. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで補償のほうのことになるのですが、先ほど午前中に前川委員も盛んにこまかく論議をやり取りされておりましたが、その点の中で、私が心配な点が一つあるんです。これは対象面積が十ヘクタール、こういうふうに大体の目やすというふうにお考えになっておりますけれども、農家の十ヘクタール対象だといいますけれども、三反歩だとか五反歩だとか、あるいはいま改善事業をやっておりますね、改善事業をやっておりましてたんぼの一枚の大きさを変えております。そういう個々の場合に、それをどうするかというようなお話もありまして、やり取りを聞いておりましたんですが、そこで個人が民法によって訴訟を起こしていくということになるんですが、農家は個人的なことになると非常に弱い。何人か固まってそういう訴訟なら訴訟を起こす、企業体との訴訟を起こしていくというのは、何人か固まってやればそうなるんですが、個人の場合になりますと、非常に何というのですか、泣き寝入りといいますか、従来の消極的な環境の中にきた農家の方たちが非常に泣かされるのじゃないか、わかりやすく言えばたんぼ一枚が自分の生活圏であった、生活のすべてだったというようなことも言える人だってあるんです。そういう場合なんかどんなふうにやろうとしていますかね。
  259. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) 対象面積としまして十ヘクタールというのは一つの例で農地局長が申し上げたかと思いますが、これは公共事業としてやるにはやはり相当なかたまりがなければならない。また土地改良法を適用してやるわけであります。それ以下の面積につきまして復旧対策その他の対策事業としては、具体的にそういう地区が出てまいりますれば、その際に、公共事業でなくてもどういうふうにやれるかということを具体的に検討して前向きにやりますということを申し上げたわけです。ただそれとの、いまの業者といいましょうか、事業者との間でも、損害賠償の問題になると、これは農家と企業者との話し合いの問題で、費用負担の問題は別でございますが、これは施行者が企業者から直接徴収をしてやるわけでございます。ただ、その間民事上の損害賠償については両者の話し合いになるということになるわけでありますが、これにつきましていまの弱い農家のためということでございますが、これは当然国なり県、地方団体が中に入っていろいろなあっせんその他する必要がありますし、われわれもそういう指導をしたいと思います。
  260. 宮崎正義

    宮崎正義君 私の質問は終わりますが、次官がおいでになるので総括的にお伺いするのですが、先ほどから私は申し上げているのですが、農用地の範囲の問題、この点をもう少し、将来と言うけれども、いつの範囲に範囲を拡大し、また範囲のことを将来はこういうふうに考えているのだというその所見、それらを伺いながら、先ほど来私が申し上げております各省間にわたっての統合が――今度は公害対策本部というものができているわけですから、その本部のほうからでも、先ほど来の一元化ということをお考えになった上でどういう方向づけをしていくかということを御答弁願いたいと思います。
  261. 宮崎正雄

    政府委員宮崎正雄君) 農用地土壌汚染防止等に関する法案は、現実に問題となっております土壌汚染に起因する農畜産物汚染農作物生育阻害に対処することにしたものでありますが、宅地、公園、林野につきましてはその汚染による被害の実情の有無等につきまして今後とも調査を進め、その結果によって対処することにいたしたいというのが農林省の現在の方針でございます。
  262. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) 本案に対する質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五十三分散会      ―――――・―――――