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1970-12-16 第64回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十六日(水曜日)    午前十一時二分開会     —————————————    委員の異動  十二月十六日     辞任         補欠選任      津島 文治君     二木 謙吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 足鹿  覺君                 上田  哲君     委 員                 佐藤  隆君                 柴田  栄君                 玉置 猛夫君                 長屋  茂君                 星野 重次君                 安田 隆明君                 山本茂一郎君                 矢山 有作君                 山崎  昇君                 中尾 辰義君                 峯山 昭範君                 片山 武夫君                 岩間 正男君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        任用局長     岡田 勝二君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府人事局長  栗山 廉平君        行政管理庁行政        管理局長     河合 三良君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛施設庁長官  島田  豊君        外務政務次官   竹内 黎一君        外務大臣官房長  佐藤 正二君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長心得     大河原良雄君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        自治省行政局公        務員部長     山本  明君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        外務省アメリカ        局北米第一課長  千葉 一夫君        外務省経済協力        局外務参事官   鹿取 泰衛君        大蔵省主計局主        計官       吉岡 孝行君        厚生省児童家庭        局企画課長    石野 清治君        自治大臣官房        参事官     佐々木喜久治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○一般職職員給与に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○特別職職員給与に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○外務省設置法及び在外公館勤務する外務公務  員の給与に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案一括議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 山崎昇

    山崎昇君 きのうに引き続いて公務員給与問題でお聞きをしておきたいと思うのですが、たいへん残念ながら時間を制約されてきましたから、飛び飛びになって、あるいは質問が関連性がないこともあるかもしれませんけれども、その点はひとつ理解の上で答弁を願うこととしたいと思います。  きのう研究職の問題について、科学技術庁から申し入れ事項等内容と、それに関連する人事院見解を多少聞かしていただきました。そこできょうは、本来なら相当私も研究職については質問してみたいと思っておる項目でありましたけれども、とうてい全体の時間配分上、時間がありませんので、一点だけ聞いておきたいと思うのです。  研究職全体については、多少、一般行政職よりは率の面では上げているようであります。ただ、この内容を検討すると、何で研究職の四等級だけが一般職より低いのか、対応する等級より低いのか。あとの一、二、三については少しめんどう見ているようでありますが、その点の見解だけまず聞いておきたいと思います。
  4. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 研究職の四等級の場合には一三・六%の改定率になっておりますが、これは行政職(一)の対応いたします数字といたしましては六等級ないし七等級、六等級の場合には一一・九%、七等級の場合には一四・二%ということで、そういう対応になっているわけでございます。したがいまして、これは職員構成関係で一三・六%という形になっているわけでございまして、行政職(一)と研究職の四、五等級改正につきましては、均衡をとった改正にいたしてございます。
  5. 山崎昇

    山崎昇君 いまの説明では納得いかないですよ。研究職の四等級については、おおむね行政職の(一)表の六等級くらいと対応させているわけでしょう。六等級と対応さしたとすれば、〇・六%ぐらい低いですよね、研究職の四等級の場合には。だから一、二等、三等まではかなりあなた方は見たつもりのようだけれども、四等級だけが何か人的構成の結果そうなったと言うけれども、これは少しおかしいのじゃないかと思う。だから、これは私のほうは、どうしても、研究職の四等級だけがあまり上げられていない。研究職全体としては行政職より多少見ているけれども、特にこの四等級だけがそう上がっていないということについて、たいへん納得がいきませんので、これはとても時間がありませんから論争しませんが、将来これは考えてもらいたいというふうにしておきたいと思うのです。  それから、あわせてお聞きをしておきたいのは、どうして公安職初任給だけが特に上がらなければならぬのか。これも、人を集めるのに集めにくいからめんどう見たと、こういうことだろうと思うのですが、それにしても公安職初任給だけがばかに上がっておる。従来は一号くらい上でありましたけれども、今度の場合は二号も上がっておる。これは私は、うがった見方をするのは政治的な発言になるから控えておるのですが、どうも公安だけがあまりこういうやり方をするということは、一般行政職からすれば納得されないのじゃないか。こういう気がいたしますが、どうして公安職だけがこんなに上がるのか。これも説明願っておきたいと思います。
  6. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 公安職につきましては、対象といたしましては、国家公務員の場合には主力は刑務所の看守でございます。それに対応いたしましては巡査巡査部長等職員がおるわけでございますけれども、特に看守及び巡査等につきまして、職員採用が非常に困難になっておる。で看守の場合には、最近は試験を、従来は一度でございましたけれども、一度で充員できませんで二度もやっておるという実情でございます。一方、勤務態様も、御承知のとおり非常に特殊な態様でございまして、かつ勤務時間も週五十一時間程度の長い勤務時間をやっておるわけでございまして、従来からいわゆる水準差と申しまして、二号俸程度の厚みを加えてきておったんでございますけれども、やはりその採用そのものが非常に困難だという面を考慮いたしまして、今回ほぼ一号俸くらいの改定を加えたということでございます。
  7. 山崎昇

    山崎昇君 採用が困難だということになってきて、それだけを最大の理由にしてこういう号俸調整をやるということになると、現業労働者なんかもっと採用困難ですよ。たとえば清掃にしましてもその他にしても。ところが、そういうことについてはあまりこういう措置がとられていない。だから、どうも私は人事院のやることは、水準差という一つの理論的な根拠をとりながら、特定のものについてだけはきわめて優遇するような政策がとられておる。こういうことについて私はどうも納得ができないのです。だから公安職の場合も、従来は二号俸くらいこれは調整していますね。言うならば半年に一ぺんは一号俸上がるということになる、結果から見れば。しかし今後は、三号俸大学の乙と同じくらいのこれは初任給を取っていくわけです。一般行政職と比べたらあまりにも高過ぎるのじゃないでしょうか。これも私は指摘だけしておきますけれども、こういうやり方というのは、なるべく人事院は、私は全体の公務員、二百何万の公務員全体を見ながらやらなければなりませんし、多少は特別の措置も必要であろうと思いますよ。全然はそれは否定いたしません。しかし、いずれにしても今度の公安職やり方というのは異常だと思う。ですから、こういうものを一般行政職公務員が見れば、何か七〇年対策ではないか、あるいは治安対策ではないか、こういうよけいな心配まで職場では議論されているということをあなたに申し上げておきます。そういう意味公安職については私はどうも納得できませんけれども、これはこだわることもできませんので次に移りますが、いずれにしてもこういうやり方は今後改めてもらいたい。こういうことを強く申し上げておきます。  その次にお聞きをしておきたいのは、この医療職の(一)表と(二)表の関係ですが、医療職の(二)表でいえば薬剤師あるいは獣医師等は四年制の大学を出ながら一般医療職(一)表との間に格段の差がある。あまりにもこれは差があり過ぎるのではないか。したがって病院等へ行ってみますと、やはり、薬剤師あるいは獣医師の皆さんでも相当な仕事をしておるんだけれども給与の面で言うとたいへん格差がある。これは従来から問題になっている点なんで、少なくとも四年生の大学を出てきて、それなり国家試験があって、そしてその資格に基づいて仕事をしておる者については、やはりほかのものと均衡をとってもらいたい、そういう意味では薬剤師獣医師等の問題については行政(一)表で扱うようにしてもらいたい。こう思うのです。どうですか。
  8. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) ただいまの御指摘は、医療職の(一)を適用いたしております医者と、それから医療職の(二)を適用いたしております薬剤師等医療職員についてのバランス問題かと存じますが、医療職(一)のほうのお医者さんのほうは、御承知のように養成課程におきましても、四年制ではございませんで六年制になっておるわけでございます。現在はインターン制度が変わってきておりますけれども、従来はさらに一年のインターンをしておるといったような状況でございまして、そういう意味で最初から養成期間が違うという点がございます。それに民間給与を調べてみますと、医者の場合には、医学部を卒業しまして、最近ではすぐに免許をとるようになりましたけれども、そういう職につきまして、もうすでに十万程度初任給になっておるわけでございます。これは普通の大学卒業者初任給としてはいわば破格の水準でございまして、私はこの関係は、やはり需給関係から申しますと供給不足現象ではないかというふうに考えております。やはりそういうふうに需要の数が多いのに対して供給が少ないという職員につきましては、非常に民間給与が高くなるという関係になっているんではないかというふうに考えますが、一方薬剤師等の場合については、普通の行政事務民間給与の場合と大差はございませんで、四年生大学を卒業した場合の初任給というのは、行政の場合の事務、技術と薬剤師の場合の初任給とは、大体従来からほぼ同様な金額になってきております。しかしながら、本年の場合にはやや薬剤師のほうが高目にでまして、六百円ほど高めに出たものですから、その分を行政(一)よりも高め薬剤師初任給改定してございます。そういう関係で、両方の需給関係の違いが、医者給与の形に非常に強く出ておるというふうに承知しております。
  9. 山崎昇

    山崎昇君 需給関係は私もわかります。それから従来は、たとえば高校卒初任給大学卒初任給のきめ方を見ると、大体大学一年について一年半くらいに見ながら金額的には調整をしているんですね。かりに四年制と六年制の違いがあるにしても、いまの需給率関係があるにしても、医療(一)と医療(二)にはかなりな差があり過ぎる。そういう意味では、同じ病院におりながら、薬剤師獣医師からかなり不満が出ておって、やはり思わしくない空気もある。そういう意味では私は、獣医師なり薬剤師についてはもう少し配慮してもらいたいということを、これも申し上げておきたい、  それからあわせて、学歴もさることながら、一つ国家試験を通って資格のある者については、それなりにやはり待遇をすべきでないか。その最もいま端的にあらわれているのが放射線技師だろうと思う。この放射線技師については、初任給だけあなたのほうでことしの四月から改定をした。しかし、在職者についてはほとんど何も顧みらておらない。いまそれぞれ組合なりあるいは職場等話し合いが進んで、上がっているところもありますし、上がっていないところもある。したがって、人事院考え方いかんによってこれらの諸君給与というものが上げられるか、そのままであるかのいませとぎわにきているというふうにもいわれているわけであります。  私はぜひ総裁にお願いしておきたいと思うのですが、ぜひとも考えを直してもらって、在職者についても話し合いをしてやっているところももうすでにかなりあるわけですから、そういう意味では新しい資格に基づいた給与というものについては、積極的な姿勢をとってもらいたい、こう思うのですが、総裁どうですか。
  10. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) このような種類の場合に、制度的に在職者調整をするということは、いろいろむずかしい問題があると思います。たとえば適切な例かどうかは、これはわかりませんからございま保留しておきますけれども、中級あるいは初級で公務員になった人が、あと上級職試験に合格した場合に、その人たち扱いはどうするかという場合に、私は上級をせっかく通ったんだから、それにふさわしい人事扱いをしたらよかろうという気持ちを持っているのですが、そういうことに近い性格のものではないかという意味で、非常に同情的な気持ちは私持っておりますが、制度的な調整にはちょっと向かぬのじゃないかということでございます。
  11. 山崎昇

    山崎昇君 制度的に向かないということはあり得ないと思うのですね、それは。法律が変わって新しい資格をとったわけですからね。それは一人、二人の問題ではないわけです。ほぼ一万人近い人が全員通っているわけですから。したがって、これは当然初任給と同じように考えてしかるべきではないか。すでに民間でも調整しているところもある。それから公務員の中でもそれぞれやっているところもあるようです。そういう意味ではこの問題ぜひひとつ積極的な姿勢をとってもらって、これからいろいろ現場現場話し合いやるようでありますから、その際にはあなた方のほうからだめだとか、そういうことのないように、新しい資格に対応する給与調整については、人事院理解を示してもらいたい、こう申し上げておきたいと思うのです。  いま委員部のほうから総務長官が二十分ということで、私はこま切れでやりにくくてどうもならぬのですが、総務長官に先に要望しておきたいと思う。  それは高齢者の問題です。これは人事院にも関連するのですが、まず人事院に、高齢者はあなた方は昇給延伸をするというのだが、一体どれくらいの、該当者等級表別にどういう該当になっているか。これはいますぐここで数字が出せなければ、あとで私資料としてもらいたい。これによって一体どれくらい節約されるというのか、その点からまず聞いていきたい。
  12. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 該当者でございますけれども、一応行政(二)、医療(一)については六十歳以上、その他の俸給表につきましては五十八歳以上ということで該当者をしらべてみますと、二万二千二百五十四人おりまして、全体の四・五%でございます。で、こういう職員につきまして、勧告といたしましては、昇給期間は一年半ないし二年に延伸をいたしたいということを申しておるわけでございますけれども、これによってどれだけ節約になるかというお話でございますけれども、これは節約というのが目的ではございませんで、結局官民格差の上でそういう職員民間より非常に高く、一方、その分だけ若い職員につきまして官民格差が逆になっておるという点がございますので、そういう関係を是正したいという意味合いでございまして、今後の勧告におきましては、次第にそういう形になってくるという性質のものでございます。しかし、当面、一年間にかりにそういう関係を計算してみますれば、四億円程度かというふうに考えられます。
  13. 山崎昇

    山崎昇君 そこで人事院に聞きたいのですが、法律の八条六項を変えることによって、もう私は昇給性格が変わってくるのではないか。従来は一定の成績をおさめれば——それが大体法律では十二ヵ月となっている。その間良好の成績で過ごせば昇給というものはやることになっている。しかし、かっこ書きで、特例として、人事院規則では、いま説明のあった五十八歳ですか、これに該当してくると、その成績が良好でもこの者は昇給延伸される。これは昇給性格が変わってくるのではないかと私は思うのです。言うならば、この人については、いかに成績が良好であっても、単に年齢に達したということだけで昇給延伸をされる。これは、かつて委員会であなたが私に昇給性格について述べたことと矛盾してくるのではないだろうか、こう思うのですが、この昇給性格が変わったのではないかと思いますが、どうですか。
  14. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほどのお尋ねの節約云々というのは、これは重大な御質疑でございますから、まずそこのところに触れてはっきり申し上げさしていただきます。  この延伸によって、当面それはお金が浮くという面はございますけれども、私ども一つ出発点は、こういう逆格差人たちをかかえておりますと、官民比較をする場合にマイナスの面にこれが作用してきて、たとえば去年の場合これは痛感したのでありますけれども、去年は一けたか二けたか、一〇パーセントか九パーセントかということで、組合諸君も注目しておりましたし、私どもも注目しておった。そういう場合に、〇・三か〇・四か知りませんけれども、逆格差の人をかかえておりますために、本来二けたになる人が一けたに沈んでおるということになれば、官民格差に響いてくる、配分もそれだけ減ってくるという問題から、それは当面どうということはないと思いますけれども、このままこれをほうっておいた場合においては、将来そういう格差の面でマイナスになって、節約という面からいえば、それはマイナスになるほうがあるいはいいのかもしれません、喜ぶ人もあるかもしれませんけれども、われわれとしてはそれは正しい行き方ではない。正確にやはり官民比較して、向こうが高齢者に対して昇給延伸をしておれば、われわれもそれに形を合わせることによって、逆の格差が出ることを防ごうというのが一つのねらいでございますから、それをひとつはっきり申し上げさしていただきます。節約ではないということです。  そこで、次の昇給性格の問題、これはわれわれの考え方としては、従来昇給制度というものについて、確かにここで御説明はしておりますが、たとえば昇給について、成績良好である者はという法律の条文との関連において御説明したのであって、この昇給期間が一年とか何年とかいう問題は、いままで触れたことはないと思います。  そこで、昇給制度のあり方の問題として、大体昇給というのはどういう趣旨からそういう制度があるのかということから照らしてまいりますと、大体生活のいろいろな関係、それから本人の職務の遂行能力の向上、あるいは生活上の負担の重くなる、そういう関係から、だんだん年数を経れば昇給させる。しかし、あるときには山がある。遂行能力もある山から先はそう顕著に伸びるということもあるまい。生活上の負担も、大体ある程度のところから先は若い人ほどにはあるまいという線がありますからして、そこに区切りを求めるべきではないかというのが昇給制度一つ筋論になっている。年功序列型という問題に対して非常に批判がありますのも、そういう点に私は触れておるのだろうと思いますが、民間の場合においては、それが五十六歳程度のところからは昇給扱い方が違っておる。これは筋の立ったことだということで、これに合わせようということでございますし、私から見ますれば、非常にお気の毒な方方もおられますが、これは忠ならんと欲すれば孝ならずという面が実はあります。しかし、昇給制度趣旨といい、それから官民格差の場面からくる一つのポイントがあるということなどあわせ考えて、この措置に踏み切ったということでございます。
  15. 山崎昇

    山崎昇君 いま総裁からるる述べられたのですが、基本的に言えば、民間賃金にじゃ正確に人事院勧告は従っていますか。たとえば十六種類俸給表だって、全部比較はできないでしょう。比較できないものは行(一)の表を中心にして水準差ということでやっているじゃないですか。必ずしも民間賃金を土台にして人事院勧告というのはできておらない、俸給表全体を見たら。まずそれが一つ問題点です。  それから、いまあなたはマイナスの面があると、それじゃ二万人かのこの人の犠牲において勧告率というものが操作されていることになる。それはとうてい私どもの忍び得ることではないです。じゃ、いまあなたの三つ目に言われた年功序列型賃金はだれがこれを設定をしたのか、あなた方じゃないですか、この年功序列型賃金を今日まで維持しているのは。そしていま対象になっている方々は若いときどういう状況であったか、民間と比べてきわめて低い状況に置かれておった。いまあなたの発表した五十八才の数字で言うならば、高校を卒業して四十年間、その人は四十年間は民間より低い賃金で押えられておって、四十年たってようやく、あなたの数字で言えば、若干民間賃金を上回ったら、今度、おまえは年齢に達したから昇給延伸をいたします、これは人事院の言うべきことではない。そういう数字をもとにして、若い者に配分をいたしますなんというごときは、断じてこれは私は許されないと思う。そしてそのほかに、昇給間差額でも、だんだんやはり年配になれば減ってきている。特にどの等級でも、その等級の中間くらいまではかなり昇給間差額を持っていますが、これを過ぎれば間差額ですらかなり低下をしてきておる。こういうことを考えますと、私はこの高齢者職員昇給制限なんということはとうてい考えられないと思っているのです。さらに、あなたの言うように、民間がそうだからこうである、全部がそうかというと、そうではない。どうしてこういう弱い面だけあなた方はこういう措置をとるのか。私はこの高齢者の問題については、どうしても納得ができないのです。  さらに、これは昭和四十三年だと思いましたが、総理府が物価対策審議会ですか何かに資料を出しておるのですが、それを見れば、物価の値上がりによってどういう階層に一番影響を及ぼすか。この資料によると、二十四歳以下の若い者と五十五歳以上の年寄りに一番物価の値上がりが影響するということを述べておる。言うならば、生活上から見ても、この高齢者というのは最も弱いところにある。もう一つ私は、昭和四十一年度のデータでありますけれども、文部省の大学学術局で調べたデータを見るというと、いま日本の大学に在学中の子供を調べてみれば、一番多いのが勤労者の家庭から出ているのが多いという。大学に行っているという。そして、かりに五十五歳を一応定年と仮定をして、五十五歳以上の定年に達したと思われる人の子供が、在学中の者が一番多いといまいわれています。こう考えれば、教育費の面から考えても、この高齢者というのはたいへん生活上で苦しい状態にある。過去の経過を抜きにして、いきなりいまの事態だけで民間を調べて比較をして、高齢者昇給延伸はしていいんだなんという考えはとうてい私はとれないと思う。もしあなた方の見解を示すならば、じゃ四十年間にわたって民間より低かった問題について、どうあなた方は補償しますか。こういう方々は一ぺんも——民間水準よりは絶えず低い賃金で置かれたではないですか。そういうものをどうするんですか。  そこで、私は総務長官にお尋ねをしておきたいんだが、いま人事院総裁に申し上げたように、実情はそういう実情にある。しかしここで八条六項を削除するとか、撤回をするということは、おそらくあなた方できないでしょう。しかしこれは関係者はもちろんのこと、労働組合納得しない、私もまた納得しない。きのう人事院総裁は、去年報告をして、一年間いろんな意見を聞いたと言う。しかし、該当者の意見聞いたことありますか、あなた方は。そういう意味でいえば、私は事ここまできているんだけれども、できるならば、これはもう一ぺん慎重に配慮してもらいたい。そのためには、法律は成立するかもしれません。あるいは人事院は規則を考えているかもしれません。できるならば私は総務長官のこれは決断として、もう一年ぐらいは実施を延ばしてもらいたい、十分これは検討願いたい、こう思うんです。そういう意味総務長官の決断を私はほしいんです。どうですか、総務長官
  16. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 私もよく心情において理解しております。それらの年齢層の方々がことに戦中戦後等において、年齢から推定して、相当な責任ある地位におって苦労してこられた、奉仕者としての立場の公務員諸君である、よくわかるわけです。ただ、ここで私がかりに勇断を示すとなりますと、これはまた別な意味でわれわれとして、たとえば住居手当を勧告を受けましたから実施をいたしますが、住居手当については、私は率直に言ってまだ早過ぎたと思っています。住居手当の勧告の前提となって調査されたものが、住居手当を支給しておる、すなわち社宅を持っていたり、その他特定な条件のもとに調べられた企業が六〇%以上、住居手当を支給しているからということのように拝察をしておりますが、しかし全体の状態から把握すれば、住居手当の支給の実質の率は五〇%に達していないと私は承知しておるわけであります。それらの点から、勧告がありましたから、これは議論なしに実施をいたしますけれども、そういうふうにこちらはこちらで、給与担当のほうとして独自な考え方を持ってやれということであれば、それらの問題点もやはり議論に供されることになると思うんです。しかしながら、やはり人事院においては不毛の議論をしておられるような気がされるかもしれませんが、そうじゃないので、ここで議論しておられますことは、やっぱり反映をしていくと私は見ています。次の年度の勧告のときにも反映をしている面はあるでありましょうし、あるいは今回の高齢者昇給延伸についても、衆参両院を通じてその点は同じような角度からの議論でございましたので、人事院としてはその実施にあたって格別の配慮をしたいということの腹案も固めておるようでございます。それらのところは、人事院が皆さん方の議論を聞いて、そして実施にあたって何らかの経過措置を講じていくということであれば、私どもの干渉する限りでございませんので、それらの点を含めて私ども人事院勧告をもってこれを完全実施をすることを前提として進んでいく。ただし、その間においてその完全実施されたことが、国家公務員にとってどういう問題点を惹起したか等については、きのうも御指摘がございましたとおり、人事局があるわけでございますから、私たちは私たちとして独自の追跡調査、実態把握は私たちの仕事であろうとは存じておる次第でございます。
  17. 山崎昇

    山崎昇君 これは総務長官ね、私は決断を迫ったのは、なるほど法律は制定されて、人事院規則はできてくる。勧告の完全実施という大義名分からいけば、あなたの考え方も私はまた理解しないわけでない。しかし、この問題はね、まことに重大なんですよ。時間がないから言いませんが、たとえば昭和三十一年に岩手地方裁判所で昇給考え方についても裁判所の見解が出ているのもある。そういうのも私どもは参考にしながらいろいろいろ述べているつもりなんです。さらにこの問題は、該当者からいえば、なるほど退職手当については、やめるときに特別昇給させれば、延伸された分については多少私は救済の道がある。しかし、残念ながら年金については救済の道がございません。いまあなた方が考えておる十八カ月、二十四カ月でかりにやったとすれば、最低一号半は一般職より低くなる。これによる年金の減額もまたたいへんなものです。特に老後の生活保障と関連するのですから。若い人がこれからどこかで働くなんという問題じゃないのですから。そういうことを考えますと、私はこの高齢者の問題というのはね、よほど慎重に考えませんと、おまえらの犠牲において配分は若い者にやりました、それが人事院考え方でございますなんということをぬけぬけと私は言われたんでは、これは承服できない。だから、人事院はね、もう少し私は弱い面、弱い公務員について考えてもらいたいし、配慮してもらいたい。そういう意味であなたのいま決断を迫ったんだが、これから来年の四月以降実施というのだけれども、これについては相当配慮をしてもらいたい。ということは、できるならばその実施を延ばしてもらいたいと思っておるのです、これは。どうですか、人事院人事院規則をつくることを延ばしてもらいたい。そうして、できるならばもう少し関係者なり、あるいはもっとあらゆる問題について検討をして、その上であなた方が決断する時期もあるでしょうけれども、もう少し私は慎重に配慮してもらいたいと思うのですが、どうですか、人事院
  18. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私どももほおかむりして知らぬ顔しておればそれで済こことでありましょう。人騒がせなことをしてという御批判がおそらくありましょうけれども、私どもの真意は、先ほど申しましたように、公務員給与全体の船が沈むことを防ぐために、少しでも早目に手を打つ必要があるので、その信念に基づいてこれを思い切って措置をしたということでございますから、その関係の方々、当面影響をお受けになる方々に対する衝撃を、これをやわらげなきゃならぬということは十分考慮しております。しかし、その実施そのものを延ばすというところまでは、これは考えておりません。
  19. 山崎昇

    山崎昇君 これはね、私は、ぜひひとつもう一年くらい延ばしてもらいたい。これは人事院規則を考えればいいことなんですから、あなたの決断でできることなんです。そうでなきゃね、かりに二万二千人の人であっても、せっかく四十年も五十年も役所へつとめて、一生懸命やってきて、若いときには低い賃金で押えられて、ようやくこの年齢に達したら、あなたは昇給延伸です、どういう気持ちであなたこの人やめると思いますか。私は人事院というのはね、確かにあなたの言う配分の問題もあるでしょう。しかし、少なくともね、長年勤務して、公務に精励した者に対するこれは冷酷むざんな仕打ちじゃないですか。あまりに私は民間賃金民間賃金ということで、官民比較官民比較ということで、金科玉条のようにあなたしておるけれども、必ずしもそうなっていない面だってたくさんあるではないですか。重ねてあなたに申し上げるが、どうですか、これ。何とかこれ配慮してもらいたいと思うのですが、どうですか。重ねてあなたの決意を聞いておきたい。
  20. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 過去一年間、ともあれわれわれとしては関係の方々にもひんぱんにお会いしましたし、私どもの意のあるところも御説明を申し上げて御納得を求めつつ今日に至っておるわけでございまして、その間の経過的な措置については遺憾ない処置をとった。しかし先ほど申しましたように当面この適用をお受けになる方々、これはもういかにもお気の毒であります。したがいまして、その点についてのまあいわば衝撃の緩和と申しますか、その辺のことについてはもうできるだけの措置を講じて、そうして実施にだけは移さしていただきたいという気持ちでおるわけでございます。
  21. 山崎昇

    山崎昇君 あなたのいま言う衝撃の緩和とは、具体的にどういうこと考えられますか。私はこういう問題は抽象論ではいかぬと思うのですね。一番私は困るのは年金だと思うのですよ。年金に救済の道がありますか。かりにやめるとき十号俸上げたとしても、救済できますか。だからこういうその人の死ぬまでの一生を支配するようなもの、あるいはその生活を支配するようなことについて軽々しくこういう制度変更ということはすべきではない。あなたはいま一年間いろいろの人に会ったと言うけれども、こういう該当者にどれだけ会って意見聞きましたか。賛成するものが一人でもおりますか、おらぬでしょうが。私はほんとうにきのう来この人事院考え方というのは弱い層、そういうものに対してはもう全く冷酷な勧告だ、ことしは。いままでないです、こんなやり方というのは。せっかくあなたは一二・五六という数字出したし、今日完全実施まできたけれども、その裏にこういう冷酷なことをやるというのは予想も私どもしませんでした。(「ちょっと言い過ぎじゃないかな」と呼ぶ者あり)そんなこと関係ない。おまえの言うことじゃないよ、私の見解なんだから。人事院はもう少しこういう弱い層であるとか、あるいは公務員全体のことをもっと考えて私はやってもらいたいと思うのですよ。そうでなければ、いつかの時期には人事院に対してもっと不満が爆発しますよ。そのことだけ私は警告してこの問題は終えて、次の問題聞いておきたいと思うのです。  そこで、特別給についてひとつ聞いておきたいのですが、これもことしの報告書の中にあって、原則的にはいろいろなことが含まれているが、それは一応抜きにします。そこでひとつ聞きたいのは、勤勉手当が率の配分についてワクがありますが、これを減額する場合の理由としては病気、疾病になっているわけです。そこで私は二、三の職場へ行って聞いたら、この病気、疾病の中に産前産後の休暇を入れているところがある。これは一体正しいのか正しくないのか、この一点だけ聞いておきます。
  22. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 産前産後の休暇につきましては、人事院規則一〇一四におきまして就業禁止的な措置がとられておりまして、これに対しましてはそういう場合には有給という措置がとられているわけでございます。したがいまして、私どもの勤勉手当の算定の基礎といたしましては、いわば就業禁止的な措置でございますから、それによって特に不利益になるという形にしているわけではございません。
  23. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、重ねて確認しておきますが、勤勉手当の支給について、産前産後の休暇をとったから勤勉手当を減額するということになると、それは違反になりますね。そういうことはできないことになりますね。
  24. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 期間率の計算におきましては、いま御指摘の産前産後の休暇のゆえをもちまして、期間率を減らすということは制度趣旨ではございません。
  25. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると聞きたいのは、産前産後の休暇をとったから、期間は切れたかもしらぬが、あとは問題は成績になりますね。ところが、そういうことによって勤勉手当を減額しているところが現実にある。これはいまどこということは申し上げませんが、ただ私は勤勉手当の性格からいって、産前産後を理由にして勤勉手当を減額するということは、これは違反になりますねと、こう聞いている。そういうことはあっちゃいけませんね。もしあったとすれば、それは復元をさせなければなりませんね。その点確認をしておきたい。
  26. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 勤勉手当の計算におきましては、勤務期間というのと成績率という両方もをちまして算定をいたすわけでございますが、当面の問題は、成績率という関係は別といたしまして、勤務期間というだけの問題について申し上げますと、産前産後の就業禁止期間におきまして、お産のために休んだというゆえをもって勤務期間の計算を除算するということは制度趣旨とは違うということでございます。
  27. 山崎昇

    山崎昇君 制度趣旨と違うということはあなたの言うとおりだが、ただ現実としてはいまの勤勉手当の出し方をどうしているかといえば、疾病であるとか病気であるとか、そういうもので休んだことによってある程度基準としてやられていますね。したがって、いま全国どこへ行ってもこの勤勉手当の支給はおおむね出勤日数をもって大体判定しているというのがやり方だと思う。ところが、あるところではこの産前産後に休んだということで現実に減額をされている。こういう現象があるものだから、それはやはりいけないことですねと、こうあなたに聞いている。簡単に言うとそういうことなんですが、どうですか。
  28. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 勤務期間の算定におきまして産前産後の期間について除算するということは、制度のたてまえに反します。
  29. 山崎昇

    山崎昇君 次にお聞きをしておきたいのは寒冷地給について聞いておきたいと思うのですが、それはいつごろ勧告が出ますか、いまどういう作業の経過をたどっているのか、まず聞いておきたい。
  30. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 寒冷地手当につきまては、最近北海道における石炭の値段が若干上がってきておるわけでございますが、最近の人事院調査といたしましては、まだ最終的な形にはなっておりませんけれども、大体九%程度上がってきているのではないかというふうに考えております。その結果といたしまして約二千円程度の増高がなされたというふうに見ておりますけれども、一方定率分というのがございまして、べースアップがございますと、それに応じてスライドしていくという分が四割ほどございます。そういう意味で、一方におきまして増額している面がございますので、そういう関係の両者の見合いという点をいまいろいろ検討しているというところでございます。なおそれ以外に地域区分につきましても、各地からいろいろ不均衡であるという御要請がございます。地域区分につきましては、昭和四十三年の改正におきまして一つの評価基準を公表いたしまして、それに基づいてしっかり格づけをするということにしてまいっておるわけでございますけれども、なおそれによりますと、私どもといたしましては、従来からのもので、何と申しますか、やや格づけが高過ぎるという感じのものもございます。他面におきまして、御要望のございますのは、私どもとしては、どうしても必要なものというものは、前回の勧告でやったつもりでございますけれども、非常にいわば基準のすれすれのところで、その後の資料の問題としてどうだろうかという問題が若干あるように思っております。そういう意味で、現在そういう点について検討しておるということでございまして、当面はいずれにせよ、このベースアップの問題につきまして規則・細則等による当面の支払いが問題でございますので、それが終わりましてから、今後さらに検討したいというふうにも考えております。
  31. 山崎昇

    山崎昇君 あなた方の結論が出るのは大体いつごろですか。いまここで述べたから、それがまたどうだということを言いませんが、およそのめどを聞いておきたい。
  32. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) やはり検討をよくしましてからどういう結論になるかということでございまして、いつまでに結論をつけるというつもりではなかなか——検討はするというよりは、むしろやってみてどういう結論になるかというところでございます。
  33. 山崎昇

    山崎昇君 結論を聞いているんじゃないのですよ。たとえば、ことし中にある程度のめどをつけようというのか、一月中ぐらいまでにはめどをつけて検討を終えようというのか。そういう意味で、そのめどをいつごろに置いて大体あなた方は作業をやっておられるのですか、こういま聞いているのです。結論はもちろんどういうふうに出るかわかりませんよ。それまでにはあなた方またいろいろな人に会って話も聞くでしょうし、意見も聞かなきゃならぬでしょうから、そういう意味でいま聞いている。おおよそのめどをどこら辺に置いているのですか。
  34. 尾崎朝夷

    政府委員尾崎朝夷君) 資料の問題もございまして、いろいろ収集をいたす必要もございます。やはり結論が改定すべきだという結論にならないと、やはり御要望の趣旨には沿わないわけでございまして、当面はこれでいいんだという結論ではやはり御要望の趣旨には沿わないわけでございますから、そういう結論が、増額改定するような結論が出るかどうかという点について、今後やっぱりよく検討してみたいということでございます。
  35. 山崎昇

    山崎昇君 検討はいいでしょう。しかし、のんべんだらりん、いつ出るのかわからないで、検討、検討では困るから、きょうはやっぱり委員会ですから、国会としてもこれは相当注目をしている問題だし、いろいろ関係者からの要望も強いことだし、それからまた労働組合ばかりでなしに、これは俗に言う首長さん方もかなり強力にやられている問題でもあるから、おおよそのめどぐらいは持ってやらなきゃならぬであろうと、こう思うのです。ですから、総裁どうですか、たとえば、一月中くらいまでにある程度のめどをつけるとか、おくれても二月一ぱいくらいにはめどをつけるとか、そういうおよそのめどについて総裁から答弁願いたいと思います。
  36. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 仮定の問題として防寒用の諸般の施設のために要する費用が、物価等の値上がりによって非常に上がって、そしていまの局長が言いましたような定率分でもまかない切れないというようなはっきりした事態が起これば、これはもうわれわれとしてはほってはおけないことは申すまでもないのであります。それほど顕著のものがいまありませんものですから、正直申しまして、われわれとしてはじっくりかまえて、諸般の趨勢をきわめていこうと、これはいまお話しのありましたように、北海道が一番御熱心でございますけれども、北海道ばかりじゃありません。各地もうしょっちゅう引きも切らない。局長のところにはもちろん来られますけれども、私のところにはほとんど応接にいとまないほど来られますので、われわれもとても気を許すひまそれ自体がないという次第でございます。その点は御信頼をいただきたいと思います。
  37. 山崎昇

    山崎昇君 御信頼はしておりますよ。しますけれども、やっぱりいつになるのかわからぬというのでは、これは同じ人が何回もくるでしょうから、総裁としては事務当局を督励するなり何なりをして、おおよそは二月一ぱいとか三月一ぱいとかにはめどつけたいならつけたいとか、それがつかなかったからあなたの責任をどうだということを言うんじゃないですが、人事院にそれだけ熱心に各地からきている問題でありますだけに、重要でありますから、三月一ぱいくらいまでにはおおよそのめどがつきますかどうですか。
  38. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 消極的なめどでは何もなりませんので、めどつけるにはやっぱり積極的な意味でのいいめどをつけたいとわれわれはひそかに思っておるわけであります。そういう意味からいいますと、三月一ぱいとか何とかいう期間をお切りいただくのは、ちょっと無理じゃないかというふうに思っております。
  39. 山崎昇

    山崎昇君 期限切っているわけじゃないけれども、あなた方の作業の段取りを聞いておるのであって、ですから私の理解としては、人事院は一生懸命やっておるが、なかなか公開の席上で総裁としては言えない。しかし、おおよそ総裁の意見を参酌すれば、三月一ぱいくらいまでにはおおよそのめどがつくんじゃないだろうか、こう私は印象として理解をしておきますが、ぜひそういう方向でやってもらいたいというふうに、これは希望しておきたいと思います。  そこで各省の方来られておりますから、取り急ぎ二、三ずつ聞きたいと思うんです。  まず自治省にお聞きをしたい。自治省にお聞きをしたい一つは、国家公務員には人事院勧告というのがありますね。それから県と六大都市には人事委員会勧告がありますね。しかし、市町村等についてはそういう制度がない。そこで市町村については、自治省が何か助言指導というかっこうをとっておるようでありますが、これが助言指導ではない、むしろ、県の地方課を通じて半ば強制であるかのごとき指導が行なわれておる、こう私どもは見ておるんですが、制度的におおよそ公務員給与をきめるのに三つのパターンに分かれておる。これについて一体自治省はどういう見解をお持ちになるのかということが一つ。  それから二つ目には、市町村の給与については、おおむね市は五等級がよかろうとか、市町村は四等級制がよかろうとか、あなたのほうの給与課である基準を何かつくって押っつけておるようでありますが、そういうふうにきめた根拠は一体何なのか、どこに根拠があってそういうきめ方をしたのか。  時間がありませんから続けてお聞きをしておきますが、第三番目には、特勤手当についての準則みたいなものを出しておるが、これは一体どういう実態調査を行なってそういうものをやっておるのか、これが三点目。  四点目は、国家公務員にない職種がたくさんあります。地方自治法の二百四条を見ても、国にない手当がやっぱり二、三載っておる。そういう点からいうと、この国にない職種の賃金については、どういうあなた方指導をされておるのか。たとえば、社会福祉関係あるいは清掃、給食、電気、これは発電所もそうでありますが、あるいは繭検定所でありますとか、そういうようにほとんど地方自治体にしかないような職種の賃金について、どういう見解をお持ちなのか聞いておきたい。一応この四点聞いてから再質問します。
  40. 山本明

    政府委員山本明君) お答えいたします。  地方公務員給与制度は地方公務員法あるいは警察法、教特法によりまして、国家公務員給与に準ずるという基本的な考え方を持ってわれわれ指導してまいっておるわけでございます。先生おっしゃいましたように、府県六大都市は人事委が勧告をいたしております。それ以外のところは、市町村が独自で給与改定を行なっておるという状況でございます。われわれといたしましては、基本的には先ほど言いましたように、国家公務員給与に準ずるというたてまえで進めておりますけれども、やはり地方には先ほどお話しのように国家公務員にない職員、職種もございます。あるいはは初任給にいたしましても、その地域のいわゆる地場産業との関連というようなものもございますので、私たちのほうは、国家公務員給与を基準とはいたしますけれども、いわゆる実態に合った給与改定を行なう、あるいは給与の改善を行なうということにつきましては、その実態というものをながめながらやっていっていいのではないか、このように考えております。したがいまして、市町村分を、県の地方課を通じてぐいぐい締めつけるというような考え方は持っておりませんで、やはり自治体として、その実情というものの中から給与改定を行なうという指導をしてまいってきておるわけであります。  それから、等級制度につきましては、基本的には、たとえば県の職員の問題につきましては、国家公務員が八等級でございますのを、一等級、いわゆる局長級という一等級を除きまして、二等級からですから、七等級になっておるわけでございます。それは三十二年でございますか、そのころに県の部長と、それからいわゆる国家公務員の本省のほうの課長と対応させまして七等級にしておる、そういうかっこうでございます。そして、それに合わせまして、市町村におきましても、等級制を五等ないし四等というかっこうに指導したわけでございます。しかし、その後、きのうも先生おっしゃっておりましたように、国家公務員には指定職ができたというようなことで、国の等級の変動がございましたので、したがって、この変動に合わせまして等級を変えよう、考え直そうというので、現在、地方公務員給与問題研究会で、この調査を現在お願いをしておるというところでございます。  それから特勤の準則でございますが、これも二十八年に制定をいたしまして、三十六年まで数回の一部改正で基準を示してまいりましたが、実はこの問題につきましては、各地方公共団体におきましては、かなり特殊事情がございます。その特殊事情に合わせまして、それぞれ実態に合ったようなかっこうで特勤をつくっておりますので、そのつど具体的な基準は実は三十六年以降は示しておりませんで、国家公務員の特勤の変わりましたときに、これについての御通知は申し上げておりますけれども、特勤については、やっぱり地方の実情の中からやらざるを得ないだろう、自治省で基準をつくるのは非常にむずかしいということで、国のほうにつきましては御連絡を申し上げますけれども、自治体はそれぞれ自分の実態に合わせてつくってもらう、こういうふうにわれわれは判断をしておるわけであります。またそれでいいのではないかと、こういうふうに考えております。  それから、国にない職種の職員給与基準についてどうだという御質問でございますが、一応基本的な、先ほど申しましたように、国の国家公務員給与を基準といたしておりますけれども、ないものにつきましては、その職務の内容等の実態が最も類似しておるものをとってまいりまして、それを基礎にして従来は指導してまいったわけでございます。しかし、最近におきまして獣医師あるいは清掃等、かなり国にない問題が出てまいっておりまして、これにつきましては、先ほど申しました給与問題研究会でも御指摘がございまして、おっしゃいましたように、国の同職種の給与に準ずるものとするけれども、特に地方公共団体特有の職員については、労働需給の関係から、民間の同職種の相場賃金があるのではないか、これをやっぱり考えなくちゃいかぬじゃないかという御指摘がございました。これにつきましても、ひとつ基準をつくりたいということで、現在おくればせではございますけれども、研究会で使っていただこうというので、私たちは研究会にいろんな資料を提出いたしまして、地方独自のものにつきましては、やはり何かの基準をつくりたい、こういう作業をしておるというのが現状でございます。
  41. 山崎昇

    山崎昇君 それでは確認しておきますが、市町村の給与については、県の地方課を通じて締めつけたことはありません、そういうことはやりません。市町村は独自である程度のことは考慮するとしても、判断して給与体系はつくり上げてよろしい、これが自治省の見解だということを確認しておきますよ、一つはね。  二つ目には、いままであなたが指導してきた町村の四等級制を見れば、どういう現象が起きるかというと、これは国の行政(一)表の五等級が一等級ですね、五等級が一等級ということは行政(二)表と同じですね。給与表から言うならば町村の総務課長さんというのは、これは単純労務の俸給表と同じ結果を招来しているわけですよ。ですから、いま自治体の場合には総体的にどういう現象があるかというと、県は国より一段階下、市町村はまたその下、現業はまたその下ということだ、だから自治体の現場に行けば行くほどみじめな賃金になる、こういうことをやっぱり自治省というのは知っておってもらわないと。そして町村長会等に私ども行きますというと、これは自治体のほうの指導でございます、四等級を破ることができませんというのが町村長の言い方です。そういうことはありませんね。ですから、私は、いまあなたから説明がありましたけれども、市町村長の給与については市町村が独自で判断をする。しかし、その判断は大ワクとしてはいろんな均衡があることも承知をしておりますが、判断をする、それに自治省は干渉しない。このことをあらためて私はきょう確認をしておきたいと思う。  それから、国にない職種もいろいろありますが、わけても単純労務者の範囲というのは、政令が廃止をされて以来、いまのところ法律もなければかわった政令もありませんから、単純労務者の範囲というものは確定したものがありませんね。したがって、他の一般職と同様にこれは私は扱うべきものではないだろうか、こう思っているんです。ところが実際はそうなっておらない。やはり行政(二)表であるとか、あるいは労務職俸給表であるとか、別な体系でこれらのものがやられておるんですが、いま給与研究会の専門委員会ですか、そこで検討されると、こう言うから、私もしばらく時間をかしていいと思う。  ただ、しかし、この中で一点聞いておきたいのは、動物の飼育者について、あなたの見解を聞いておきたい、これは文部省の所管か厚生省の所管か私もよくわからぬけれども、たとえば私はこの間、仙台の動物園へ行きました。そしたら、あそこにはいろんな動物がおりますけれども、たとえばキリン、聞いてみますと一頭二千万ぐらいだというんですね。あるいはカバとか、ラクダに至っては相当な値段だそうであります。ところがそれを扱う人は、単純労務者というワク内で行政(二)表でやりますから、ものすごく低い賃金でやられておる。ところがこういう動物飼育の方々の仕事というのは、単にえさをやるだけのものではない。相当その動物について研究をする、あるいはまたときによっては獣医師以上の研究もしなければ、その動物について飼育することは困難である。言うならば、ある意味で言えば専門の技術者として考えていいのではないか、こういう意見等が出されました。だからそういう意味で言えば、これは人事院にもお聞きをしたいんだけれども、あらためてこの単純労務者の範囲というものについては私は再検討すべき時期に来ているのではないか、こう思うのです。検討されて、あなた方、まだ政令もなければ法律もつくっていないと思うんだが、そういう意味で、いま例として動物の飼育関係を出しましたけれども、これらについて一体どういうお考えを持っておるのか、もう一つ、具体的にわかりやすくするために言うと、北海道の釧路に丹頂ヅルがおりますね、これは世界であそこしかいない。この間三羽ふ化しまして、いま十カ月ぐらい飼育しているそうであります。古賀というかつての上野の動物園長の話を聞けば、この丹頂ヅルの飼育者は世界的に何か優秀な人でなければできないそうですね、こういうものは。それを単に単純労務者というワク内で待遇関係等を考えることは誤りではないかという意見等もあります。ですから、そういう意味でこういう——実際には学歴もありません、しかし、長年にわたって研究をして、その人でなければできないような職についている人の給与について、人事院なり自治省はどうお考えになるのか、聞きたいと思う。
  42. 山本明

    政府委員山本明君) 第一点の問題につきまして、私のほうからもう一度申し上げますと、先ほど言いましたように、地方公務員給与国家公務員給与に準ずるというたてまえはとっております。しかし、これをどのようなかっこうで移すかということになりますと、正直申しまして、従来の自治省では具体的に準じ方なり、準ずる幅について具体的な、明確な指導をしておらない。そこで、地方公務員給与問題研究会で準ずる幅なり、準じ方は、地方公共団体の規模あるいは種類ですね、それから置かれておるその社会的な条件、経済的条件、民間のいわゆる地場産業との関係、そういうものの中から類型をつくったらどうであろうか。たとえば大都市と山間部の町村というものが同じ基準でいいであろうか。県のところで、ただいま七等級で指導しておりますけれども、市町村が全部四等級というかっこうでいいだろうか。そういう問題があるわけでございます。そういうものをただいま検討いたしまして、おのずから基準というものを設けまして、その基準の中でそれぞれの自治体の実態の中からそれぞれの給与をきめていくということを考えてみたらどうであろうか。その基準のとり方あるいは基準の上下というのは、いま言いましたように実態というものがございますから、山間部で考えました場合には、農協に行っておる職員とか、準公共団体との均衡の問題も出てきましょう。あるいは大都市でございますと、最近は府県よりも給与をもっと高くしなければ職員がこないということもありましょう。そういう実態を合わせてきめていただこう。こういうことで私どものほうでは現在検討し、府県の七等級、それから市町村の四等級ないしは五等級という問題についてはもう少し時間をかしていただきまして基準をつくってみたい、こういうことでございます。  それから二番目の問題につきましては、動物飼育の問題でございますが、これも、われわれは一応単純労務者として取り扱いをしておるわけでございますが、ただ、単純労務者だけでなしに、全体を通じまして、地方ではやっぱり専門職、専門といいますか、スペシャリストがいるんじゃないかということで、これも研究会でひとつ研究してみようか。それぞれいまタンチョウヅルの場合はあるいはそうかもしれませんが、そういう専門、スペシャリストというものを考えていかなければ、部長にならなければ等級は上がらない、課長にならなければ等級が上がらないということでは、ほんとうに能力のある人の採用ができないだろう。だから、専門職を考えたらどうだろうかという御意見がございまして、これについてもいま検討を進めておるという実態でございます。
  43. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 全く適切な御指摘だと思います。思い当たるところ、まだほかにも私自身いろいろ持っておりますが、こういう人についてはどういう、このままの待遇でいいかという問題はほかにもいろいろございますが、従来これは問題にして、われわれとしてもずっと検討を続けて、運用上、給与局長にも頼んで、できるだけ適切な運用をしてくれということにもしておりますけれども、何かちょっとぴかっとした扱い方はないものかということで検討を続けていくつもりでございます。
  44. 山崎昇

    山崎昇君 そこでもう一つ自治省に聞いておきたいんですが、人事院勧告人事委員会勧告と相違を来たした場合に、あなた方はどういう指導をされるのか。ということは、たとえば東京都の人事委員会が東京都に勧告しますね。東京都下の市町村は、この東京都の人事委員会勧告を最大限私は尊重すると思う。そのあと人事院勧告なり参酌するものはすると思う。そこで、具体的にするために一番いいのは、今度の住居手当につきまして、人事院勧告と東京都の人事委員会勧告と違うものが出ている。その場合に、東京都知事は都の人事委員会勧告で実施をしていくと思う。そうすると、東京都の中には国家公務員もおります。御存じのように、附則八条の職員もいる。そこで、これはたいへん矛盾が出てくるわけですね。そういう場合に自治省は一体どうされようというのか。それから基本的には、いま申し上げたような、その県の人事委員会勧告というものを中心に、県下の市町村は判断をすべきではないんだろうか、第一義的には、こう私は思うんですが、それについての御見解を承っておきたい。
  45. 山本明

    政府委員山本明君) これは先ほどから申しておりますように、地方公務員給与国家公務員に準ずるという基本は、たてまえはとっておりますが、本年から、たとえば通勤手当の問題とか、それから医療関係の一等級とか、特一とかいうかっこうで、かなり地方の実態に合わせました勧告がことしあたりから出てまいっております。われわれといたしましては、そういう実態の中から出てまいりましたものにつきましては、これはやはりその勧告を自治体が尊重せざるを得ないだろう、こういう考え方を持っております。
  46. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、いまいうように、私は具体的に東京都の場合を言ったんだが、東京都の人事委員会勧告に従って、もっと具体的に言えば公宅に入っている者以外は、全部一律に千円出しなさいという勧告なんですから、そうすると、東京都下の市町村はこれに見習って、人事院勧告と違った住宅手当が出てくるわけですね。条例をつくるわけです。それでよろしいんだとあなたはいま答弁されたんだと思う。それでいいんですね。
  47. 山本明

    政府委員山本明君) 住宅手当の問題につきましては、われわれとしては国家公務員に準じて、住居手当を支給していただきたいという指導はいたしておりますけれどもかなりこれ自身いろろな問題点があるわけでございます。したがいまして、実態によって、そういうかっこうで自治体が実施するとするならば、まあやむを得ないのではなかろうか。われわれとしては国家公務員どおり実施してもらいたいという考え方を持っておりますけれども、そういうかっこうになりますれば、やむを得ないのではないかと、このように考えております。
  48. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、人事院総裁に聞きたいんですがね、こういう場合はどうなりますか。たとえば東京都にいる公務員で、地方公務員かなりおりますが、そういう者はいまいうような支給方法になる。人事院勧告は違った支給方法がある。その場合に、いま自治省のほうは、その自治体が東京都のような例をとれば、それはそれでやむを得ないという、こういう返事なんだが、違った勧告が出ているわけですがね、人事院としては、これについてそれはそれでけっこうである、やむを得ない、こういう見解になりますか、これは混乱が起きますからね、私、聞いているのです。
  49. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これはきのうの外務公務員のお話ではございませんけれども、私どものかさの下に入れば、これは問題なく統一的なことになると思います。そうでない以上は、はっきり分かれていますから、われわれとしてはそれを横から拝見するほかはない、これは率直なお答えであると思います。
  50. 山崎昇

    山崎昇君 そこでもう一つ自治省にお聞きしますが、公営企業関係について聞いておきたい。  これはもう時間があまりありませんから一点だけ聞きますが、特に赤字だと言われる交通、それから病院ですね。これらの職員について一体給与面をどうされようというのか。特に財源問題等について自治省はどういう対策を講ずるのか、聞きたいと思う。私は抽象論ではなかなかいかぬと思いますから、具体的に一、二例を出しますが、たとえば北海道に増毛という町がある。ここに道の道立病院がある。ところがこの町には開業医が一人もいない。そこで、赤字ではあるけれどもこの道立病院を廃止したのではここは無医村になっちゃう。ですから、いま各自治体の長はたいへん苦労しながら、国保病院であるとか、健康保険の病院であるとか、あるいは町立の病院であるとか、市立の病院であるとかを維持しながら、その地域の住民の健康と生命を守るために必死の努力をしている。ところがどんなに努力をしましても、またそこの従業員がどんなに働いたとしても、いまの医療制度のもとでは赤字にならざるを得ない。その場合に、そこに働いている職員については赤字だから給与改定ができないとか、あるいは赤字だからどうだということに私はならないと思う。そういう意味で、一地域の問題でありませんで、全国的にそういう問題を招来をしているわけなんですが、そこで、この交通でありますとか、病院でありますとか、とりわけ、公営企業の中でも赤字をかかえておる企業の職員に対する給与改定をどうされるのか。その裏づけである財政についてどうお考えになっておるか、聞いておきたい。これが一つ。  さらに、一般的な財源として、最近の国勢調査を見てもおわかりのように、過密、過疎、とりわけ過疎の問題は深刻ですね。私が一番承知している中でひどいと思うのは、北海道の歌志内という市でありますが、かつて七万九千という人口がおったのが、いま一万八千ですね、国勢調査の結果。しかし、職員をずばずば首切るわけにもいかない。その当時持っておった建物は全部持っておる。行政水準もそういきなり下げるわけにはいかないし、少ないだろうけれども、一万八千だから、町や村にするというわけにもいかない。市長は四苦八苦しているわけです。こうした過疎地域の職員の今度の給与改定等について、一般的な意味で、一体財政をどうされるのか。これを第二点目として聞いておきたい。  第三点目には、従来、自治体の中には、翌年に給与改定を持ち越していたところがずいぶん多かったんだが、ことしは例年より早く国会で給与法が通過しそうでありますから、そういうことからいうと、多少の例外が出るかもしれませんが、全体的には年内に給与の切りかえを終えるべきだと思うのですが、そういうことについて自治省はどういう指導をされるのか、この三点を聞いておきたい。
  51. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) まず第一点の、赤字であります公営企業の給与改定の問題であります。公営企業は、御承知のとおり地方公営企業法のたてまえによりまして、原則的には独立採算制をとっておるわけであります。したがいまして、給与改定を行ないます場合には、当然に、その企業収入によって給与改定をまかなうというのがたてまえでございます。ただ、現実の問題といたしまして、赤字になっております公営企業がございます。特に、いま御指摘病院会計並びに交通会計におきましては、相当の赤字をかかえておる団体があるわけでございますが、ただ、病院につきましては、現在、その病院種類によりまして、非常な僻地の診療所でありますとか、あるいは、地方の無医地区をかかえます地域的な中核病院になっておりますものにつきましては、それぞれ地域の医療を確保するというたてまえで、一般会計からの財源措置というものを、これは衛生行政の面からも、所要財源として相当額の繰り出し、財源措置もいたしてやっておるわけでございます。また、病院会計の場合には、公営企業法で、財務規定の適用がありますだけで全部適用ということにはなっておらないのがほとんどでございますので、現実的には、一般職員の場合と同じような形での給与改定が行なわれるということになる。そういう意味で、病院会計の場合には、当然に、診療収入によります部分と、一般会計からの現在の公営企業法のたてまえによるところの負担区分に基づく繰り入れ措置と、この両者で大体まかなっていけるんではないだろうかというふうに考えております。そういう意味で、まず病院会計は、全体的に見ます場合には、給与改定が行ない得ないようなところはないのではないだろうかというような感じがいたします。  交通会計につきましては、現在、特に大都市における交通事業というのが非常な赤字でございます。再建団体も大都市が全部再建団体だというような状況でございまして、これはおそらく給与改定の財源をひねり出すということは、現在の企業経営の状況から見ますと相当な努力を必要とするであろうというふうに考えております。この点につきましては、各市ともそれぞれ、どういう方法で企業の健全化をはかりながら給与改定を行なうかということについて現在検討をしておる段階でございます。これらの大都市の交通事業につきましては、それぞれの市の交通事業の実態に応じまして、私どもも、再建計画の改定という作業を通じまして個々に各市との話し合いをしながら、この問題の解決をはかってまいりたい。かように考えておるわけでございます。  それから、第二点の過疎市町村の問題でございます。ただいま御指摘のような都市は、炭鉱関係の市町村に非常に例が多いと思います。最近の炭鉱の閉山等に伴いまして、非常な人口の急減があるわけでございます。これらに対する対策といたしましては、やはりそれぞれの実態に応じた財源措置が必要になります。また、人口の急減に伴いまして、あき家の家屋が残ったとか、あるいは公共施設等も残って、残っているのは借金とあき家だけだというような状態も出ております。これらにつきましては、現在、普通交付税の面におきましては人口の急減補正というような措置をとっております。さらに特別交付税におきまして、そういう市町村の財政の実態に応じた財源措置はとってまいるつもりでございます。おそらく、来年度以降の交付税におきましても、現在の人口の動態から見ますならば、人口急減補正というような制度は存置せざるを得ないというふうに考えております。そういうことで、こうした人口の急激に減ってまいります市町村につきましては、今後の財政運営に支障のないように、交付税におきまして両面の措置をとりたい、こういうつもりで処置したいわけであります。
  52. 山本明

    政府委員山本明君) 第三点の御質問でございますけれども、私のほうに四十四年の状況が実はございます。都道府県は三十七が年内にやっております。それから六大市は、これはみんな年度を越しております。それから市と町村は、大体半分が年内、あと半分が年を越しております。これは、御承知のように給与法とそれから交付税法との関連がございますが、今回のように早く手続をいたしますれば、一日も早く職員に渡すことに私たちは賛成でございますけれども、できるだけ早く渡すように措置をしたほうがいいと思っております。
  53. 山崎昇

    山崎昇君 それでは、自治省は、公営企業についても、いま病院と交通と分けて説明がありましたが、一括して言うならば、過疎の問題も含めて、そこに働いておる公務員給与改定については支障ないようにいたしますと、簡単に言えばね。またできるはずであると、こうあなたは言うのだが、そう私は理解をしておきます。個々の自治体といろいろ相談はしておるかもしれませんが、全体的に言えばそういう考え方である、こう私は理解して一応自治省の質問を終わっておきたいと思うのです。  あと、時間がありませんから、文部省と厚生省に一点ずつだけ聞きます。  厚生省にお聞きをしますが、ほんとうは私は社会福祉の問題について相当聞きたいと思っておりましたけれども、もう時間がありませんから一点だけ聞きます。これも具体的に町名を言わないとわからぬと困るから申し上げますが、石川県に富来という町があります。この石川県の富来という町は船員の町でありますが、町立の保育所が十カ所、ここに約四十五人ばかりの保母さんがいます。ところがその保母さんの半分以上は船員の奥さんになっている。そこでどういうことが起きたかというと、船がドック等に入ると、この保母さんをやっている方々は、いろいろな打ち合わせのために休暇をとって行くわけです。そこで、自分が行ったら、子供を世話しているものだから、かわりに保母さんを頼むのですが、その頼んだ保母さんの給与は、休暇をとった人が払っておる。そうして、資格があろうがなかろうが隣近所の人を頼んできて、一週間でも十日でも保母という仕事をやらしているのが、この富来町の実態であったわけです。  そこで厚生省にお聞きをしますが、この保育所という問題はずいぶん最近強化が叫ばれておるけれども、こういうところもある。そこで、一体、保母さんの定員なり、あるいは休暇をとった場合の代がえ措置等について、厚生省はどういうふうにお考えなのか。いま私は具体的に例を申し上げましたが、それについてだけきょうは聞いておきたい。
  54. 石野清治

    説明員(石野清治君) ただいまの御質問でございますが、いままでの保育所の保母の給与につきましては、措置費の体系で全部一律に、たとえば四歳以上であれば何対何という形できめております。したがいまして、休暇等がとられますと、実際上はいま先生御指摘のようなことが起こるわけでございますけれども、実は来年度この問題につきまして、非常勤保母と申しますか、そういう問題につきまして配慮してまいりたい、こういうことで努力いたしております。現在のところはそういう事態がまだ解消できないと思います。
  55. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、いま私が指摘したようなことは、これはあっていけないことですね。本人が金払って隣近所の人を雇うんですから、これは町なら町がやはり有資格者というものをきちんと雇って、子供を預かるんですから、しなきゃなりませんね。そうすると、いまやられておる富来町の場合には違法であることは間違いがないし、現実的にはいいことではない。こういうことについてはなくするように私はしてもらいたいし、いま来年から何か非常勤の保母さんという話でありますけれども、私は保母の定員全体について、また代替要員の問題については、もう少し真剣に考えてもらいたい。単に、どれくらいのことを用意するか、まだわかりませんけれども、いずれにしても、いま全国で保育所の問題はたいへん重要な課題になっておりますから、その点は要望しておきたいと思うんですが、いまとられておるような富来町の場合、あなた方はどういうじゃあ具体的に指導をしますか。一点だけ聞いておきます。
  56. 石野清治

    説明員(石野清治君) 先ほど申しましたとおり、現在の保育所の制度というのは必ず、たとえば六十名なら六十名の定員のところに何名の保母がいなきゃいかぬという形でだけ規定し、それに対して国の予算を出しておるわけであります。しかし、個々につきましてはいろいろな問題が出てくると思いますので、たとえば産休でありますとか、そういう問題については現在予算措置を講じております。なお、御指摘の点につきましても、さらに努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  57. 山崎昇

    山崎昇君 それでは文部省にお聞きをしておきますが、学校給食について、これはいま奨励法なんですね、法律としては。だから、極端に言えばやらぬでもやってもいいんですが、大体いま小中学についてはほとんどが給食制度がとられておる。また、最近は一部事務組合とか、あるいは給食センターだとか、そういう形で一万食であるとか二万食であるとか、大規模な給食施設というものがつくられてきておる。そこに働いている給食従業員ですが、これもまた昔はPTAで雇ってみたり、さまざまな形態でありましたが、そういう片手間でできるようなものではもうない。また、もしも事故が起きたら、これは子供が対象でありますから、たいへんなことになる。細心の注意を払いながら学校給食というものがいま行なわれているのですが、文部省としては、この学校給食について将来どう指導されるのか、また、そこに働く給食の方々の給与問題等については、どういう見解をお持ちなのか、一点聞いておきたいと思います。
  58. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 学校給食の将来の構想でございますが、先般本年の二月二十八日に文部省の保健体育審議会から学校給食の改善充実方策についての答申があったわけでございます。御承知のとおり、四十四年の五月一日現在におきまして、総児童生徒数の九二%が学校給食を受けているわけでございます。完全給食について申しまするならば、七三%がその完全給食を受けているという状況でございます。学校給食が児童生徒の教育上非常に有意義であり、あるいは体位向上、食生活の改善に非常に有効であるということは、これは一般に認められているところかと思いますが、そうした観点に立ちまして、四十五年度からおおむね五カ年計画によりまして、小中学校につきましては完全給食を実施し、その他の未実施校の解消をはかっていきたいというのが、保健体育審議会の答申でもございますし、同時に文部省が年来考えておる方針でもございます。そういう方向に拡充整備をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、ただいま具体的な問題として御質問がございました学校給食調理従事員の問題でございますが、この身分は御承知のとおり地方公務員でございまして、したがって、その給与は地方公共団体の条例で定められているわけでございます。教職員と違いまして、教育公務員特例法のような国の基準というものがこれは明確には打ち出されていないわけでございまして、一般の地方団体の職員としての措置が行なわれておるわけでございます。この給食の従事員につきましては、従来から給与の単価がかなり低い、こういう御批判がございまして、私ども自治省にお願いをいたしまして、本年度、四十五年度から給食従事員につきましては、給料の単価を大幅に改善をいたしまして、月額二万五百十六円を三万四千二百三十円というように、比率にいたしまして六六・八%の改善を行なっております。こうした財政上の改善措置が行なわれましたので、これを前提にいたしまして、給食従事員の給与、処遇、資質等の向上につきましては、さらに努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  59. 山崎昇

    山崎昇君 いま概略お聞きしましたがね。もう一つ問題があるのは、この職員の身分ですね。これは非常勤という者もおれば、臨時という者もおれば、あるいはところによっては正規の職員になっているところもさまざまです。いま五カ年計画をお聞きしますと、完全給食に持っていきたいということですから、言うならば法そのものとしては奨励法のようだけれども内容的には義務的みたいになってきますね。そうならば、この従業員の身分等についてもやっぱり安定をしなければなりません。これは片手間で、臨時でやらせるような仕事でありませんから、そういう意味では早急にひとついま身分の不安定の者については安定するような方向をつくってもらいたいし、また、年次計画等を立てるならば、当然その中でこれらの問題についても配慮してもらいたい、こう思うのですが、身分の確立についてだけ再度お答えをいただきたいと思います。
  60. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 四十四年度の数字でございますが、小学校の給食従事員でございますが、公費が負担をいたしまして、公務員の身分を持っているものが四万八百七十二名、中学校におきましては六千百八十五名でございますが、実はこのほかに私費負担のものが、小学校におきましては二百二十一名、中学校におきましては三十八名という数字が出ております。地方財政法等のたてまえから申しましても、この私費負担というものは、これはすみやかに是正をいたすべきでございます。給与の改善も行なわれておりますし、本年度は中学校につきましては、給食従事員の人員を、実はこれは賃金でございますが、一名増員するというような改善措置も行なわれておりますので、こうした措置を前提にしながら、御趣旨の方向でさらに努力いたしたいというふうに考えます。
  61. 山崎昇

    山崎昇君 どうも時間の制約で、飛び飛びで、たいへん私のほうもやりにくいし、また、政府側のほうもたいへん問題が多かったと思います。行管にはせっかく来てもらいましたが、時間がなくなりました。たいへん恐縮に思います。  最後に、私は今度のこの勧告を見て、何としてもぬぐい去れないのは、やはり上の者だけがかなりいい、あるいは弱い層には追い打ちをかけるような制度になってきている。これが合理化かどうかわかりませんけれども、そういう気持ちがまだ晴れません。ほんとうは時間をかけてもっともっと具体的にいろいろの角度から聞いてみたいと思いましたけれども、いかんせん時間の制約がありまして、きょうはこれでやめたいと思いますが、どうか人事院もまた政府側も、そういう弱い層なり、全体的にもし判断をされて、今後の公務員給与の問題なり身分の問題なり、あるいはその他の労働条件等についてはもう少し配慮してもらいたいということを、重ねて私の意見として申し上げて質問を終わっておきたいと思います。
  62. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 三案に対する午前中の審査はこの程度にいたします。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時五十一分開会
  63. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律一等の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案一括議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  64. 上田哲

    ○上田哲君 四次防——新防衛力整備計画と長官が名づけられている計画案が世に出まして、参議院内閣委員会は今回は初めての審議でありますので、その点をまずお伺いをしたいと思います。  まあ百六十億ドルとか五兆八千億円とか、三次防に比べて二・二倍という金額もさることながら、いろいろな議論がありますけれども、この四次防構想の中でいろいろと特色があるといわれている点、その一つは、これまでたとえば二次防などでもたいへん抽象的な言い方であった侵略態様の予想などについてかなり具体的に出てきた、こういう評価もあります。それほどでなかったという言い方もあるのですが、一方に侵略態様の予想の分析と、これに対応する防衛戦略、この二つでこの計画が成り立つのだろうと思うので、まずその点からお伺いをしたいのですが、この長官が表明をされている新防衛力整備計画案の、四次防の立案の趣旨によりますと、国際情勢の分析の中では、わが国に対して差し迫った脅威があるとは考えない、こういうことになっています。そうして万一の事態に備えて防衛力が要るのだ、こういうことになっています。そこでこれを具体的にどうなっているのかということを、この表現の中なり、あるいはその後のあちらこちらで表明されている御見解など総合してみると、大体この文章の中にある限定的軍事衝突または間接侵略的事態が生ずるような可能性、こういうことばになるのではないかと思います。大体そういうことでよろしいのでしょうか。
  65. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) たいへんおそくなりまして失礼いたしました。大体お説のようなことでいいと思います。直接侵略と間接侵略と両方に対する備えを持っていく、こういう考え方でございますが、いまの客観情勢を見ますと、大規模の船団を組んで正面から上がってくるというような形のことはいまのところは予想されない。もしあり得るとすれば、政治と軍事と混在した形で間接侵略的な形でものごとが起こってきて、それが延焼して直接侵略を誘因する、そういう可能性がいまのところ考えれば考えられる、こういう基本的な考え方であります。
  66. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと限定的軍事衝突、具体的に言うとどういう事態でありましょうか。
  67. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 間接侵略等によりまして内乱とか暴動とか、騒擾が起きたり、そういうところから外国との牽連関係が出てきて、外国がそこに対して上陸をしてくるとか、使嗾するとか、武器援助をするとか、そういうことで彼我の衝突が起こる。こちら側からすれば抵抗と対峙が起こる、そういう形が可能性のある形である、そう考えるわけです。
  68. 上田哲

    ○上田哲君 間接侵略的事態が生ずるような可能性というのは、これは抽象論でなくて、具体的に言いますと、どういうことでありましょうか。
  69. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それはいろいろな問題があると思いますが、国の情勢が乱れて、思想的に、あるいは社会的に、あるいは政治的に、あるいは経済的に非常なショックが起こるとか、そういういろいろな問題を機に国政が乱れて、そうして秩序が普通の状態でなくなるという、そういう状態を導火線にして起こるという可能性があると思います。
  70. 上田哲

    ○上田哲君 いま御説明になったような表現なり段階であれば、四次防というものが、これまで第一次から第三次にわたる整備計画を実施してきた過程からして、あえて二倍余りというような形をかまえるほどの事態があるというふうに理解ができないわけでありまして、相手方から、防衛庁のことばでいえば脅威の見積もりというような侵略の可能性、そういうものが変わらないけれども、こちら側の防衛力というものは少しでも高ければ高いほうがいいということになってしまうのですか。
  71. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それは客観情勢も秤量いたしまして、考えられる最悪の事態についてもこの程度の抵抗力を持っておる、そういうような考え方をもってこちらもわがほうの力を計算し備えていく、こういう考え方に立っておるわけです。
  72. 上田哲

    ○上田哲君 大艦隊、大空軍によるような侵略、大規模な直接侵略というものはもうほとんど——こういう文章などの中でほとんどという表現が使われることは決定的な言い方だと思うのですけれども、そういうものが全くといっていいほどあり得ないというようなことを大胆率直に出されるということは、これまでなかったはずであります。そういうものを前提にしながら、なおかつ倍以上の防衛力を整備しなければならぬというような事態として、侵略のさまざまな様相の推定、これはどうもいまの御説明でぴんとこないものがあります。やや禅問答のようなことを私が繰り返して言いますのは、きょうここで長官から引き出せるようなことになるかどうかわかりませんけれども、どういつでもこうした防衛力整備計画の根底には基本的な、まさに四次防とはいわずに新防衛力整備計画といわれている意味からしても、かなり長期にわたる、五年なり十年のところを見込みながら、長官の表現を使うならば自主ということすら中に織り込んでの大戦略構想というようなものができ上がっていなければ本来はいけない。少なくともそこに向かって相当な作業が進んでいなければならないと思います。その辺のところにひとつ踏み込んで、できれば五年に及ぶ長期計画案でありますから御答弁をいただきたいと思うので、侵略の形態、予想の問題をその程度において、ひとつ対応する防衛力の構想ということをお伺いしていきたいと思うのです。  この「防衛の基本構想」という文章の中には、根本は「侵略を未然に防止するため」である。そして間接侵略と直接侵略ということばが使われているんですが、間接侵略ということばについては、「早期に事態を収拾して治安を回復」する。後段の部分には、いろいろ議論が派生するのですが、きょうはそのことはしばらく問わないとして、「事態を収拾」ということばがあります。ところが直接侵略については、「わが防衛力をもって第一義的に対処し、わが国周辺における航空優勢、制海を確保しつつ被害の局限、侵略の早期排除に努めるものとする。」ということになっておるので、間接侵略のほうは一行半、直接侵略のほうは四行ほどにも及ぶのですが、つまり字数は多くなるけれども、こちらのほうは自信がない。間接侵略ならなんとか収拾するけれども、直接侵略の場合は第一義的にはわが防衛力をもって対処するけれども、まあできるところまでやって、問題は被害の局限にすぎない。平たくいえば直接侵略については投げてしまっている。四次防でも四次防の構築する防衛力の極限においても、間接侵略はともあれ、直接侵略については対応できないということをはっきりうたっているということは確認できると思いますが、いかがですか。
  73. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) まず新防衛力整備計画の基本的な観念でありますが、一つは日米安全保障条約が六月二十三日に自動延長になりまして、アメリカは日本と同様、一年の予告でいつでも同条約を廃止できる、こういう形になってきております。それはいままでの条件と非常に違う条件で、やはり日本がある程度自主的に日本の本土防衛については第一義的責任をとって、万全を期するようにならなければならぬということになっております。それから第二に、最近のニクソン・ドクトリンの動向等からも見まして、防衛力整備計画をつくるときに大体予想しておりましたが、米軍がある程度日本から整理統合されていく。一部は撤退する可能性も十分ある。次の五カ年計画の展望を見ますというと、相当のものが日本に常駐しなくなるということを頭に置かなければならぬわけです。そうして、そういう考え方に立って、北海道からいずれ沖繩に至るまで、本土の防衛についてはわれわれの力で第一義的に局地戦を防衛しぬく。そういう考え方に立って日本の防衛力整備を考えてみますと、どうしても新防衛力整備計画程度の力は必要である。こういう考えになるわけです。米軍撤退は、最近新聞の報ずるところによれば、かなり現実になってきているところであります。そういうような基本観念に立って日本の防衛力整備の状況を見ますと、たとえば米軍から貸与されている兵器類、艦艇類等を見ますと、大体まだ五〇%程度あります。こういうものを国産に代替して、ある程度の弾薬等における蓄積を持っておかなければ、自主的にこの抵効力を蓄積するわけにまいりません。そういう考えに立ってある程度の持続的抵抗能力、排除力というものを考えて今度の計画ができているわけでありますが、それで起こり得べき情勢というものを考えますと、現在の段階におきましては、軍事と政治が混在した形で、間接侵略という型から直接侵略を誘発するという型の可能性が多いように見受けられます。国際情勢がこれで急変すればまた別でありますが、いまのところではそういう可能性は少ないと思います。しかし国際情勢が急変しないとも限らない。かっては独ソ不可侵条約が急激にできて、国際情勢が急変したという時代もあります。そういうような情勢から見て、やはりわれわれとしてはあらゆる場合に対応する考え方を持っておかなければなりませんけれども、やはりものごとには順序がございますから、急激にやれば相当な予算、負担を国民にお願いしなければなりませんから、現在可能なものから逐次漸進的に整備していくという形をとっておるわけであります。  そこで、起こり得べき可能性というものは間接侵略的なものが多い情勢であり、最悪の場合には、舳艫相銜んで上陸してくるということももちろん考えなければなりませんので、そういう全般にわたることをカバーするように防衛力整備計画はできている、そういう考え方になると思います。それで、直接侵略というものが行なわれた場合でも、われわれのほうは排除するという考え方を持って、そういうふうにまた書いてあります。やはり撃攘して、日本に橋頭堡とかあるいは占領地域をつくらせないというのが、われわれの基本的な考え方でありますが、もしどうしてもそれがやむを得ず行なわれるという場合についても、ある程度それを局限しておいて、そうして国連の活動とか、あるいは国際的な平和的収拾とか、あるいは日米安保条約における米軍の増援とか、そういうこともあり得るものとしてやはり計算に入れておく。ですから第一義的には、排除するということが第一義的なものでありますけれども、しかしあらゆる対応態勢についていろいろな考慮を持っている、そういう意味であります。
  74. 上田哲

    ○上田哲君 直接侵略というのが、長官のことばを借りれば、舳艫相銜んでくるような大兵力の襲撃ということであれば、これに対してはもちろん第一義的には対処するけれども、それは航空優勢なり制海権を得ようとする努力であって、しょせんは、そうなってしまえば被害の局限である。平たくいえば、これはそういう侵略が起こった場合にはだめだということに、これはもう前から話されているところだと理解します。事実この文章の中では、そのあとに、「この場合、わが防衛力の及ばないところは、米軍に期待する。また、核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存する。」と、はっきり書いてありますから、逆に言うならば、もう一ぺんお尋ねしますが、核の脅威に対しては——この文章を逆に読みまして、核の脅威に対しては米軍の核抑止力に依存しなければ、また、米軍に期待しなければ、われわれの防衛力の及ばないところが直接侵略についてはあるのだ、こういうふうに読むことができると思いますが、よろしいですか。
  75. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) やはり核の脅威に対する抑止力としては、米軍の核抑止力に依存せざるを得ない。でありますから、私も外人記者クラブ等々において、アメリカの核抑止力が機能している限り日本は核武装しないといったようなことも言ってきておるわけです。
  76. 上田哲

    ○上田哲君 きょうひとつお話しをしたいのは、ここがポイントであります。もう一ぺんお尋ねをいたしますが、アメリカの、アメリカ軍の核抑止力が有効であれば——これをとるとらないは別でありますけれども、主張されるところは、アメリカ軍の核抑止力が有効であれば、その抑止力のかさの中にあるということでありますから、そうであるとすると、アメリカの核のかさの中で、抑止力の中で、わが国は核武装を行なわないということが従来いわれてきたわけです。それを一歩進めると、アメリカの核抑止力が失われる段階には核武装をするのでしょうか。
  77. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) そのときは国民の意見をよく聞いて、政治が、いわゆるシビリアン・シュープレマシーという基礎に立って判断をすべきだろうと思うのです。しかし、私はきのうも答弁いたしましたように、核武装というようなことは、日本はしないほうが賢明である、そういうふうに、私の個人的見解は表明してあるわけです。  核拡散防止条約等、いわゆる核防条約を見ましても、第十条に脱退の規定があったと思いましたが、あの条項には、その国の至高の利益を侵害される場合にはこの限りにあらず、脱退できる、そういうふうに書いてあります。国家の至高利益が侵害される場合には、核防条約から脱退して核武装する可能性も、あの条約によれば認めておるわけであります。それをすぐわれわれは引用して、そのとおりやるという意味ではありませんけれども、われわれとしては、現在においては、やはりアメリカの核抑止力に依存して、そして平和共存のもとに平和を維持していくということは、最も賢明な政策であると思って、それを現状を維持していこう、そう考えておるわけであります。
  78. 上田哲

    ○上田哲君 重要な御発言があったと思うので確認をいたします。二つあったと思います。一つは、将来に向かっては国民の意見をよく聞いてきめていくのだという表現がございました。ことばじりをとらえる意味は全くありませんから、念のために申し上げますが、将来には、われわれが理解していたのは、将来にわたっても核武装をしないということであったと思うのですが、とは思っているけれども、将来は国民の意見を聞いてきめていくんだという言い方の中には、もしそういう事情になるならば、核武装はすることもあり得るということになるのかどうか、この点が一点です。  御答弁を受けてから二点目を質問いたします。
  79. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) やはり、防衛というのは憲法や法律に従ってやらなければならぬ、これが第一義です。それと同時に、国民のコンセンサス、国民の大多数の支持というものが基本であります。だから国民の世論や国民の意見というものをよく聞いて、賢明な判断をしていくことが政治家の仕事であると思うので、国民の大多数の意見を無視して政治がまた存立し得るものとは考えられない。現在の憲法並びに法律の命ずるところに従えば、日本は原子力基本法もありますから核武装はできない。そういう形になっております。この形を維持していくことが、私は賢明であると思っております。
  80. 上田哲

    ○上田哲君 確認をしたわけでありますけれども、おっしゃるところは、つまり現在の憲法やその他の法規においてならば核武装をすることは違憲でもあるし、できないことだけれども、それ以上に国民のコンセンサスを基底において修正する立案をし、修正を行なっていくべきものであるから、つまり国民のコンセンサスが、国民の大多数がということばも使われましたけれども、その方向を志向するならば核武装ということもあると、これはそういう方向に持っていかないように、この法規を生かし、あるいは憲法を維持していくという政治的意思表示もあり得るはずだと私は思うのですが、いまの御意見の中には、それをこえてコンセンサスが、国民の大多数の意見によっては核武装ということも将来はあり得るのだということを御発言になったというふうに理解をいたします。  そこでもう一点。先ほど表明された御意見の中に、確認をしておきたいことは、将来の見通しなり政策事項なりということがまあいろいろあると思うのですが、現在私は、まあ防衛庁なり佐藤内閣なりが核武装をしようと思っているとは思っていないのですが、今日ただいまは。しかし、それがどういう論理においてそうした核武装しないということを決定しておられるのかということを明確にしておかないと、いまの問題、将来にわたってはわからぬということが、たいへんあやふやになってくると思うのです。現在の論理は、この四次防の概要の中に書かれていることばからしても、これまで言われたことばからしても、アメリカの核抑止力が有効であるならば、われわれはそのかさの中でいくということでありますから、そうすると、逆にいえば、アメリカの核抑止力のかさが危うくなってくる、破れがさになってくる、抑止力が衰えてくる、意味を持たなくなってくる場合には、第一点にお話しになったような、国民大多数の意向によっては、そういう論理からして、核武装をするときがあり得るということになると思うんですが、いかがですか。
  81. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 私は、アメリカの核抑止力がきかなくなった場合には、私個人としては、核武装の方向に持っていかないほうが賢明だろう。そういうことを言っているわけであります。しかし、国民の大多数の意見、世論というのは、やはり政治としては尊重しなければならない。防衛の基礎には国民のコンセンサスというものが一つの重要な柱としてあるからであって、それを無視するわけにはいかない、そういうことを言っているのであります。また、核問題については、日本はこういう狭小な列島で、しかも一部に人口が集中し、産業、工業地帯が非常に集中しているのであって、中国とかソビエトとか、フランスとか、アメリカのように広大な土地を持って、一カ所や二カ所やられても、ほかの部分が生き残れるという情勢ではない国の地形を持っている。そういうこととか、あるいは、かりに海でポラリス潜水艦のようなものを想定して、そういうことを考えてみると、自分の大事な土地や生活の根拠が破壊されてしまっては意味がない、そういう可能性もあるわけです。それから日本がそういう方向に指向するということは、東南アジアや外国の無用の刺激や誤解を受ける危険性がある、軍国主義とか、帝国主義という反応、また国際政治に及ぼす影響、そういういろいろな諸般の点を考えて判断しなければならない問題で、こういったような理由からも賢明ではない、そういうことを言っているわけであります。しかし、私個人の意見をもって国民大多数の意見をじゅうりんするわけにはまいりません。そういう意味で、やはり国民のコンセンサスというものをよく考えなければいかぬと、こういう政治家としての立場を申し上げているわけであります。
  82. 上田哲

    ○上田哲君 私はちょっと驚いているのですが、もう一ぺん確認させていただきたい。  国民の大多数の意向がそちらを向くならばということは、たいへんことばとしてはきれいですが、あえてパラドクシカルに伺いますが、春秋の筆法をもってお伺いすることになるが、国民の大多数が民主主義を否定するなら、そういう方向にいくこともまた正しいのでありますか。そういう論理でこういう核問題を論じてもいいのか。私は長官が、そういう状態が起これば、国民の大多数がそっちを向くならば核を持つこともあるのだという御発言をなさったのはかなり驚いているのですが、その点をもう一ぺん伺います。
  83. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、私個人としては賢明でない、そういうことを言っているわけです。しかし、やはり民主主義の社会ですから、国民の世論というものは非常に大事なところであって、防衛の基礎というものは、何といってもやっぱり国民のコンセンサスに支持されて、初めて防衛というものは成立する、国民のそういう支点になるコンセンサスなくして防御はできない。防衛の本質というものを考えてみるとそういう気がするわけです。そういう論理的なところから、私は申し上げているので、政治的判断を加えれば私はそうじゃないほうが適当である。政治的な判断と論理的な問題とを、どうぞひとつお見分けして御判断を願いたいと思います。
  84. 上田哲

    ○上田哲君 私は論理的な部分と政治的な部分と逆にとらえているのです。論理的な部分は、私はさっき長官の御発言の中に注目すべき点が二つあったと言うのは、政治的部分と論理的部分と申し上げたのであって、第一点が政治的部分である。つまり政治的な立場から言えば核武装すべきでない、その方向に政策志向をしていくべきだ、あるいはコンセンサスにこたえていくべきだということを、たじろがずに表明されることが、中曽根長官の政治的見解だと私は思っていたのですが、国民大多数のコンセンサスを基底に置くならば、そうじゃない場合はどういうことになるか。私は特に政治的な発言としては初めて伺ったので驚いているわけです。  そこでそのことをおっしゃるように論理的部分でもう一つ押えていきたいと思います。私は戦略論理としてそこはしっかりしておきたい。もう一点は、核抑止力がある場合には、その核抑止力の中でわれわれは核を持たない。それはもう書いてあることだし、そのとおりだと思います。信じもします。しかし核抑止力が危うくなった場合には持つのですか。これは将来にわたってコンセンサスがどうであるとか、政治的見識がどうという問題じゃない。戦略的論理としてそういうことになるのですか。核抑止力がついえても破れても持たないのですか、そこはいかがですか。
  85. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) これはいままで申し上げたとおりで、これを総合してぜひ御判定願いたいと思います。私は政治家として、核武装というものはしないほうが賢明である、今日においては憲法、法律等の命ずるところによってそういう政策を進めていることであって、こういう関係をできるだけ維持していくことが政治家として大切である、そういうように考えておるわけであります。
  86. 上田哲

    ○上田哲君 論理としては、核抑止力のかさのいかんにかかわらず核武装の方向をとらない、この論理でいくということでいいですか。
  87. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 政治家としての論理はそのとおりです。
  88. 上田哲

    ○上田哲君 戦略理論としてはいかがですか。
  89. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 戦略的には一〇〇%どういう形になるかわかりませんが、先ほど申し上げましたように、日本の地形とか、いろいろ客観情勢とか、そういうものを考えてみて、戦略的にも私は適当ではないんではないか、そう思います。しかし、そのときの情勢を見なければ、ここでいま断定的なことは申し上げられない。
  90. 上田哲

    ○上田哲君 非常に遠い将来についてはわからないという部分は許容されるのですが、いま具体的に五兆八千億円という数字をかけて、このことを防衛力整備計画として出していかれる。五年間に関してはきわめて政治的責任を負うべき範囲として将来を望見しなければならない、見きわめておかなければならないと思います。いまおっしゃる論理は、明年から始まる四次防の最終年度まで十分、当然適用さるべき考え方であるというふうに思いますが、よろしいですね。
  91. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 新防衛力整備計画の中には核武装というような考えは全然入っておりません。
  92. 上田哲

    ○上田哲君 聞こえなかった。もう一ぺん言ってください。
  93. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 新防衛力整備計画の中には、核武装というような考えは全然入っておりません。
  94. 上田哲

    ○上田哲君 その考え方はここにあるように、アメリカの核抑止力に依存して持たないのだということだと思いますが、私は先ほどの御見解どもあわせて、どうしてももう一ぺん確かめておきたいと思うのですが、アメリカの核抑止力がいま非常に大きな検討期に入っていると思う。つまり明らかに七二年から始まる五年間の中で、七〇年代中葉を山として大きく検討をしなければならない問題として、アメリカの核抑止力の効率の問題が出てきていると思います。  若干古い話になるかもしれませんけれども、レアードのいわゆる国防白書の中でそうした問題がかなり具体的に出ていると思うのです。つまりレアード国防長官が言うところの重大な関心事というのは、ソビエトの戦略攻撃兵力が、一年間にあらかじめ予測したよりも早く拡大する傾向だということで、たとえば一九七〇年中期までのソビエトのICBM、SLBMの数は、その前の一年間に行なった予測を百発も上回っている。一九六八年の九月一日にソビエトはICBM九百発も保有していた。六六年の半ばには二百五十発、六七年の半ばには五百七十発、これが昨年の九月には千六十発、この調子でいくとSS9とかSS11を中心にするソビエトのICBM兵力は数の点からも一九七〇年半ば、つまり四次防の半ばです。一九七〇年の半ばには千二百五十発以上になる。さらに一九七〇年代後半には二千五百発になって、しかし、それに対してアメリカは現在千五十四発、しかも、いまのところアメリカに数的拡充の計画はない。こういうことが言われているわけです。  あとでももう少し話をしたいと思いますが、もちろん抑止力ということは、同じ数の核があればいいというようなことではないのは言うまでもありませんが、少なくともアメリカが目下数的優位を誇っているSLBM兵力も、潜水艦の数ではアメリカが四十一隻だけれども、これに似ているソビエトのY型原潜なるものが年間八隻の生産スピードで拡充されているそうでありますから、レアードによれば、このままでいけば一九七四年から七五年に三十五から五十隻が実戦配備につく。つまりアメリカがICBM、SLBMで現在の保有数をそれぞれ千五十四発と六百五十六発のままでいく、こういう可能性が強いということですが、それに比べるとソビエトのほうは七五年までにICBM二千五百、SLBM八百発、数的にはソビエトの二倍弱の優位ということになる、こういうことに計算が出ております。このことは、いわゆるアメリカの核抑止力の中に入っていこうとしているわれわれの国の防衛戦略というものに、どのような変更を与えることになりましょうか。
  95. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) レアード国防長官の国会の証言等を私もよく知っております。しかし、米ソの核の威力というものは、お互いにどういう強弱関係にあるか、これは米ソでもよく知らぬだろうと思います、相手のことは隠しておりますから。しかし一応想像されておることは、発表された限度においては、アメリカがまだ非常に優位にある、非常に優位にとは言いませんが、優位にある。たとえばポラリス潜水艦あるいはB52の海外配置、こういう戦略的展開、いろいろな点を考えてみますと、やはり私はアメリカのほうが優位に現在はある、そのように思います。しかし、ソビエトがそれに対してどう対応していくか、これは今後注目していくべきところであると思います。
  96. 上田哲

    ○上田哲君 レアードのこの表明というものが、結局は予算獲得の誇大広告じゃないかという意見も確かに反論としてあるようではありますが、しかし、そういうことでのんきにかまえているわけにいかないので、そういうのんきさからいけば、米ソの核戦力の比較というものは、どうも両方ともよくわかっていないのだという程度では私は足りないと思います。少なくとも、先ほど申し上げたように、核抑止力なるものの基本構想というものは、必ずしも同数持っておれば成り立つというものでないことは、私もそう理解をしております。たとえばかりに、ミサイルが五〇%の正確度くらいで計算をしたとしても、ソビエトはアメリカのICBMの基地にある千五十四発をたたくのにはその二倍のMRVかMIRVをぶち込めばいいのだそうでありまして、ポラリス型原潜のSLBMの六百五十六発は相当部分残っている。たとえばICBMは全部たたかれても、アメリカのほうではこの六百五十六発のSLBMの三分の一、二百ないし二百十発が、ソビエトの百から百五十発たたくと、ソビエトは大体人口でいえば二五%から三〇%失い、工業施設の五〇%から五五%、半分以上失ってしまう。これではアメリカ本土を灰にしても合わないから、ソビエトの指導者は先制攻撃をやらないだろう、こういう関係に立つということが、核抑止力なるものの基本構想だということになっている。ここまでは私たちも理解いたします。  そういうことであるならそれでもいいのですが、ここで問題にしているのは、なるほどソビエトのことはアメリカが、アメリカのことはソビエトはわからぬかもしれないが、ほかならぬレアードがこういう考え方を否定をしている。ここに私はたいへん大きな問題があるだろうと思う。いま長官が、ポラリスその他のB52という話をなすったんでありますけれども、そこで出てくる言い方は、いつも、それでもなおアメリカのポラリス、ポセイドンが復活するのだからだいじょうぶだという言い方なんです。ところが、ほかならぬレアードがこれを反論していて、こう書いている。「テクノロジー上の発達とソビエトが全世界的ASW向上を決意したことによって、七〇年代半ば以後は、ポラリス・ポセイドンの脆弱性の度合いが相当増える結果になるかもしれない——国防計画を立てるものとして私は合理的に予想できる将来、つまり五〜七年以後はいかなる戦略システムの非脆弱性についても決して保証しない」、つまりこの意味するところは、不死身である、どんなにやられたってポラリスはだいじょうぶだという言い方がいままで出ていたのでありますけれども、必ずしも不死身のものではなくなってくるのだ、こういうことをここで言っている。つまり本家本元のレアード国防長官が、核抑止力なるものの基本構想戦略というものをもう当てにできなくなってきたのではないかと、こういうふうに言っていることについて、お互いがよくわからぬではないかということでいいのかどうか、もう一度伺いたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど申し上げまたように、抑止力というものは十対十、必ずしも同量を必要とするものではない。第二撃の能力の可能性による抑止力というものが一番働いているわけでありまして、第二撃能力というものがどの程度まで作用し得るかという限界を見きわめるということは、非常にまた大事でもあると思います。私らはそういう詳細なところまで知悉しておりません。またそういうことは米ソも出していないだろうと思います。しかし、大体常識的に考えてみると、勢力が均衡している、大体において均衡しているというような場合においては、これは第二撃能力においても、両方がボタンを押さないで平和を維持していく方向にいくほうの可能性が非常に強い、そういうふうに判断していいのではないかと思います。
  98. 上田哲

    ○上田哲君 米ソはそういうことを出していないとおっしゃるのですが、これは公式におれのところは何発あるとかいうことを出す出さないという問題ではなくて、常にそういうことがまるきり測定されないのならば、われわれの国の防衛戦略だって全く何を基準にして脅威の目じるしにするかということになるのだし、アメリカ自身が国防白書の中でこういう推定を出しているということについて、よくわからぬからということでいいのでありましょうか。
  99. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 予想し得ることは、SALT——戦略核兵器制限交渉等の動向を見ましても、大体において両方の力が均衡しつつある。だからこの辺で一服しよう、そういう形で出てきておるので、そういう客観情勢から考えれば、第二撃力はお互いに抑止する、そう考えているわけであります。
  100. 上田哲

    ○上田哲君 SALTはそうなっているということは、両方が均衡しているからということであるかどうかというのは、大いに議論のあるところです。現実にレアード自身が強調していることは、長官のことばを読めばますますそうなっていくということは、明らかにソビエトの戦略攻撃能力というものが、アメリカのちょっとぐらい上に出るどころではなくて、激しい優位、計算のしかたによっては数倍というところにいくだろうということを——まあこけおとしの部分もあるのじゃないか、予算要求の意味合いもあるのじゃないかという評論もあるのだけれども、言っているというところに問題があると思うのです。百歩譲って、いまSALTがそういう形でもって成り立っているのだということを認めるにしても、現実にいまアメリカ側が抜くということができなければ、抜かれるかもしれないソビエトの核製造能力に対して、直ちにアメリカ側の核能力を増強しようという計画を持っていますか。
  101. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) レアード国防長官が私に話したところによりますと、核関係、大陸間弾導弾、つまり戦略的兵器関係の予算がたしかアメリカの国防予算の一二%とか言っておりました。この数字はSALTの状況によってはまたふえる可能性も出てくる、そういうことを言っておりまして、やはりソ連の力と見合いながらアメリカの力の弾力性を考えているのだろうと私は思っております。
  102. 上田哲

    ○上田哲君 どうもうまくかみ合っていかないので歯がゆい気がするのですけれども、百歩を譲って、現在ただいまはフィフティ・フィフティだというようなある種の第二撃能力までも計算をした上で均衡が成り立っていると考えていい。しかし、今後の趨勢というのは、激しくアメリカ側が核戦略体系の増強をはかっていくというのでなければ、七〇年代中葉から八〇年代にかけては明らかにソビエト側の核保有能力のほうがまさっていく、こういうことになる趨勢というのは、これはもう私はだれかの部分的な見解とか、だれかがどこかでそんな目新しいことを言ったということではない状態になっているのではないかと私は思うのですけれども、少なくともそういう情勢からすると、米ソの核バランス、こういうことばが七〇年代の中葉以降の世界の戦略分析論の基底にあっていいものかどうか、そういう不安を持つのですが、そこはいかがですか。
  103. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) やはり戦略論の基底に米ソの核バランスというのは非常に重要な要件を占めているだろうと思います。
  104. 上田哲

    ○上田哲君 私がお伺いしているのは、このような米ソの核競争の中で、ひょっとしたら数倍の試算さえできるほどに大きな差が開いてくるというソビエト側の核優位性の中で、七五年という明らかに四次防の計画が責任を持たなければならない年代で、米ソの核バランスということが言えるかどうか。そのことを四次防の基底に置いて戦略論を構成することができるとお考えになっているのか、そこです。
  105. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その点はわれわれは重大な関心を持って推移を注目していかなければならぬと思っておりますが、やはりいままでの過去の趨勢を見てみますと、追いつ追われつしたりしていますが、大体ある時点、ある期間をとればバランスをとっておる、そういう形に動くと思います。ソ連のほうとしても、戦争をしかけようという考えよりも、むしろやはり防衛的に戦争を抑止しようという考えがあると思いますし、アメリカとしてもそういう気持ちがあると思います。そこでボタンを押して米ソ両国が大戦を誘発してやったところで、何ら益がない、ほかの国に乗ぜられるだけだという考えになるでしょう。そういう意味においてまず常識判断としては、両方でバランスをとりながら、しかもその中で両方は優位を保っている、そういう基本的観念に立っていくだろうと思うのです。民生の面から見ますと、ソ連のほうがはるかにアメリカよりも劣弱です、洋服にしても、食物にしても、その他にしても。そういう面から、多大な軍事費をもってアメリカをさらに追い抜いていくということは、ソビエトの内政上考えられるものかどうか。来年度予算、新聞で読んだところによると、やはり民生と軍事費のバランスをある程度とりつつあるようです。そういう良識がやはり政治家としては働くのではないか、そうとも考えられます。
  106. 上田哲

    ○上田哲君 最後の部分は、もう政治家の良識というところで論じられるのでありますから、そうであれば、原爆や水爆を何発持っていようといなかろうと、その数字比較は問題にならない。どういう武器を持っていようと問題にならない。戦争をすまいという政治家の良識にたよるべきだと、こういうところに行ってしまいます。私どもはそういうものにたよれれば、もとより軍備は要らないのでありますから、われわれはどういう良識を保持しようとしても、ゆえなくして降りかかってくるかもしれない物理的な力としての戦略論に対して、侵略に対して、われわれは対処するというのはどうかということを議論しているはずなんであって、その究極のところが、小さい規模の間接侵略ならば何とかなるが、そういう大規模な直接侵略になってくればどうにもならぬというならば、それぞれ核抑止力というところに最後は収斂をしていく。その核抑止力というものを前提とする限り、やはり数量的な比較というものは非常に大きく変わってこざるを得ない。これが変わってくるということになると、そのことを計算をしないでこれから五年間の戦略論を立てていくということは、非常に見通しを誤ることになるのじゃないか。  もう一つ問題にならなければならないことは、数は少ないけれども、七五年くらいになると、わずかに二十発とか二十五発とかいう数字になるようでありますけれども、中国の製造能力が出てくる。これがあたかもキャスチングボートのように全体の力のバランスというものに大きな影響力えてくるかもしれない。その辺のところを四次防の戦略論としてはどういうふうに見込まれているわけでしょうか。
  107. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それはやはり核にしては、アメリカの核というものはカウンターパートとして考えておるので、そこで安保条約意味があると私は思っております。それは日本に対して侵略的意図を持つ国に対して、すべてアメリカの核というものが核に対してはきいてくる、そういうふうに考えておるわけです。
  108. 上田哲

    ○上田哲君 その七五年というあたりは、たいへん先の見通しが立てにくいところであるはずでありますし、それから私どもももちろんそうした自分自身の計算能力を持っているわけではないけれども、おおよそながめ見る限りでも、そうしたバランス上の、戦略均衡上のいろいろな問題が出てくるでありましょう。  もう一つは、しきりにわれわれの側から問題にしなければならないナショナリズムの問題というものが、その時期どういう形で推移するかということになります。そこで、これは仮定の問題ということに振り戻してしまってもかまいませんが、そういう核均衡論というものが大きくゆらいでくる状態を想定した場合に、いまのような状況を現実の問題としてお考えになった場合に、その場合でも論理としては核武装をお考えにならぬということで四次防を打ち出されるということを明言なさいますか。
  109. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 四次防はそういう考え方に立っております。
  110. 上田哲

    ○上田哲君 長いこといろいろ言いながら、一つのことばを言いたいのですが、アメリカの核抑止力ということがいろいろな形の上で脆弱になってくる。レアードのことばを使って、まさに非脆弱性を保証し得ないということが出ておるのですが、まさにアメリカ自身が認めた形で非脆弱性を保証し得ないというふうに言われても、わが国の防衛庁長官は、四次防の中ではそのことを意図しないといま言われたのですが、そのことが現実の問題となって、アメリカの核抑止力が脆弱化するということになった場合にも、論理として、そのことによって核武装をするということはあり得ないということでよろしいですね。
  111. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 核武装することはありません。
  112. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、どういうような侵略の危険があるのかという立場から、そしてそれに対応してどのような防衛力をつくっていくのかということが、たとえば核一つを取り上げても、もうここまで大きくなってきた防衛計画の中では、単に防衛戦略論ということだけではなくて、私は国づくり論というようなところまで発展をしていかなくては、たとえば経済構造に波及していく防衛産業の問題などなどからいいましても、あるいはいかに省力化をはかるといっても、すでに二十六万に達している自衛隊員の数の問題からしても、あるいはそれが自衛隊を出てから後、国民全体の中に人口比を占めていく問題からしても、これは単純な防衛戦略論ではなくして、私はことばの問題かもしれないが、長官の言われる非核中級国家ということばは、あるいは概念は、単に防衛戦略を大きくくくる表現ではなくて、国の骨格あるいは国づくり論というふうに考えなければならぬところまできているのじゃないか。少なくともその当否は別にして、そういう考え方を前提にしなければ、これから先の膨大な防衛力整備計画というものは議論することはできないところまできているのではないか。きのうの新聞のある活字では、私はたぶんこれは活字の打ち間違いだと思うのですが、非核中立国家にしたいということを長官が答えているのであります。私はもしこれが活字の打ち間違いではなくて、したがって、まさしく非核中立国家という言明をなされたのであれば、横見出しでトップにいくような話であって、大いにここで賛意を表するのですが、そういうことばに振りかえられても、さほど奇異に感じられない部分があると思うけれども、いまわれわれの国が、この防衛構想というものからもっと大きく踏み出して、われわれの国の骨格をどっちに向けていかなければならないかという考え方の展開が迫られているというふうに思います。非核中級国家という概念というのは、それくらいの骨組みをかまえて打ち出されているものと理解してよろしいですか。
  113. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の防衛構想というものは、単に戦術論とか、軍事的観点のみで規定されるものではなくて、やはり外交や内政や、あるいは国際関係全般を見通した上での政治論としての防衛戦略構想、そういう基礎と栄養分を持った上でできるものである、私はそう思いまして、そういう内容を持って言っているわけであります。
  114. 上田哲

    ○上田哲君 防衛白書によっても、長官は、非核中級国家という考え方もまた私が打ち出した構想の柱であって、ひとつ専門家などの意見も含めてこの概念を成熟さしていかなければならぬ、願うところであるというふうに受け取られる表現を使われておるように思うのですけれども、つまり非核中級国家という考え方は、まだ未成熟ではあるけれども、これからのわれわれの国づくりの指標として考えてみたいということだと受け取っておきます。  そこで、そういう構想であればこそいろいろ出てきておるわけですが、陸上は五方面十三個師団はそのままであったとしても、たとえば予備自衛官が六万にふえるとか、戦車だけでも千両になる、海上はもう重点が置かれるわけですから、まさに二十四万五千トンくらいまでいく、高速ミサイル艇などというのも出てくる、空軍は全機種更新をする、あるいは沖繩を含めて新機軸を打ち出す。たいへんな構想になるわけです。この中で非常に重要事項として取り上げられているのが研究開発、三次防で四百九十億ですか、三次防から四次防への比率が二・二倍だというのに対して、この研究費のみは三・五倍ということになる。これが一番伸び率が高いわけでありますけれども、この研究開発が多いということの裏返しは、つまり国産装備への重点をかけていくということだと考えられますが、その辺はいかがでしょうか。
  115. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 未来性をはらむものに重点を置いた、こういうことであります。
  116. 上田哲

    ○上田哲君 たとえば陸上でも、いままでアメリカ軍とヒフティ・ヒフティでやっていたものを国産化で八−二くらいに持っていくと、これはやはり非常に大きな特徴であると思うのです。アイテムの多様化というものと合わせて、量的に言うならば、装備品の調達というもののウエートが非常に高くなってきたと思います。これは大きな特徴だと思いますが、いかがですか。
  117. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 私の方針が、人的負担力といいますか、マンパワーにたよる部分をできるだけ少なくして、省力化して、そうして機械とか、装備にたよる率を大きくして、人間一原単位の効率を高めていこう。そうでなければ、日本の産業構造にも合わない非常におくれた古い防衛力になってしまう。そういう基本に立って、人件費、糧食費等に対するほかの物件費の比率を高めようという考えに立ったわけです。
  118. 上田哲

    ○上田哲君 装備品の国産化ということは、たてまえとしては海外への輸出ができないというようなこともあるので、それらが重なって非常にコスト高になる。航空機の一部を除いては非常にコスト局になるので、NATOなんかも非常にいろいろなことをやっているようですけれども、わが国一の場合は非常にコスト高になっている。この点はどういうふうにお考えでしょうか。
  119. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その点は御指摘のとおりで、やむを得ないと思っております。
  120. 上田哲

    ○上田哲君 やむを得ないというのは何か基準でもありましょうか。
  121. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それはたとえば米国の非常に優秀な兵器に対して、国産でつくる場合に何割くらいアップになるか、そういう一応の目見当みたいなものはあると思います。しかし、いままでの経験で見ますと、あるそういう目見当でやったものが、実際はかなり金がかかってそれをオーバーしている、そういう現状であります。それにはかなりいろいろな初めの計画のときから無理もあったようであります。そういう無理をなるたけ少なくしながら、効率的な研究開発に持っていこうという考え方に立って研究開発費をふやしているわけであります。
  122. 上田哲

    ○上田哲君 目見当などということで、その辺も聞いてみたいところですが、四次防と三次防が違うところは、三次防には計画年度中における物価上昇率というものを見込んでなかった。今度はそれを見込んでいるというところに一つあらわれていると思います。これはコスト高対策その他から関係があると思うんですが、四次防の中での物価上昇率は、これまでの防衛力整備計画の中でなかった初めてのものとして、物価上昇率をどの程度に、どういう数字に見込まれているわけですか。
  123. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) ものによってそれは非常に違うと思うんです。詳細は防衛局長に答弁させます。
  124. 蒲谷友芳

    説明員(蒲谷友芳君) ただいま大臣がお答えになりましたように、それぞれによって違っております。現在の経済企画庁でとっております経済指標をもとにいたしまして、各アイテム、各品種ごとにその中に占める人件費なり物件費なりの構成比を見まして、それのウエートを掛けましたもので各品種別に試算しております。それも現在の試算段階でございますけれども、そういう傾向でございます。
  125. 上田哲

    ○上田哲君 これは初めてのことなんだそうですが、大体どれぐらいの物価上昇率を見込むかというのは、これはものによっていろいろあるというのなら、ものによってでいいですから、目玉商品みたいなものがあるんですから、もう少し具体的に説明してください。
  126. 蒲谷友芳

    説明員(蒲谷友芳君) 現在防衛庁の原案、その中で現実に装備品自体の中身の詰めもできておりませんので、申し上げることがいいかどうかわかりませんが、いま申しましたような指標をとりまして、その中に慣熟度なりそういうものを勘案しまして、その結果、たとえば航空機でいえば数%を見ておるということでございます。
  127. 上田哲

    ○上田哲君 数%というのは何%ですか。
  128. 蒲谷友芳

    説明員(蒲谷友芳君) いまのところ外部から非常に関心を持たれておりますし、いろいろと意見がございますので、具体的な数字を申し上げることはどうかと思いますけれども、まあ五%弱というふうに考えていただいたらいいと思います。
  129. 上田哲

    ○上田哲君 たいへんおもしろいことでありますけれども、五%で、特に弱ということになると一般論ではないでありましょうけれども、物価上昇率がそれを上回ってしまった場合にはゆゆしい事態になる。現に三次防まではそういうものを見込んでなかったんだから、計画変更が途中で出てくるということになるのですが、それは初めからある種の弾力性があるのですか。それとも、計画変更が起こるんですか。
  130. 蒲谷友芳

    説明員(蒲谷友芳君) 現在の段階では経済企画庁の指標をとりまして、われわれの試算ではその程度でおさまると考えております。
  131. 上田哲

    ○上田哲君 その程度でおさまらないことは間違いないのですから、そこはまた聞かなければなりませんが、五%弱というのはたいへんおもしろい数字だと思います。また、後ほどこまかいデータ、を出していただいて、その辺のところは検討したいと思うので、一律には言えないということでありますが、トータルが五兆八千億という数字が切ってあるわけですから、その辺が積算できないということにならぬので、データとして後刻御提出をいただきたいと思いますが、よろしいですか。
  132. 蒲谷友芳

    説明員(蒲谷友芳君) 先ほど申し上げましたように、現在の四次防自体のこまかい中身は詰まっておりません。概算的なものでございます。その中でのいろんな試算をしておりますので、部内で検討いたしますけれども、国会の場に出せる数字かどうかという点については、検討いたしまして、後ほど御報告いたします。
  133. 上田哲

    ○上田哲君 長官にお伺いするんですけれども、コンセンサスを前提にしなければならぬのだということを、新防衛計画の三つの柱の一つに置かれている防衛庁が、そうした問題は出せないのだということになると、何がコンセンサスかということになってくると思います。間違いなく国民から税金を集めることによってしか成り立たない防衛費というものを、一体そういう数字まで出せないのかどうか。大体物価上昇率をどのように見込むかなんということは、現在はっきりできないとしても、出せないということがあれば、それはどういうことかということをお尋ねしたいので、これは私はしっかり出していただけるものと思いますが、いかがでしょうか。
  134. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) よく事情を調べまして検討いたしますが、やはり品目別にやるということになると、見積もりの値段とか、そういうものに響いてくるのじゃないか、そういう気もいたします。大蔵省との折衝その他でまだ煮詰まっている数字でもないものですから、もう少し検討の要があるのじゃないかと思います。ある程度流動性を持っていいものではないか。そういう意味からまだお見せするほどのものに至っていないのではないかと私は想像しております。
  135. 上田哲

    ○上田哲君 たいへん防衛的な御発言ですけれども、見せてもらえるようなものになっていなければ、どうして五兆八千億というトータルが出てきたのかということになるのですが、まあ防衛産業等の関係、発注上の問題なんというのは、一つ一つの値段じゃなくて、これは物価上昇率の見込みなんですから、どのくらいこれが影響してくるか、ちょっと論理的ではありませんが、それは後ほどひとつ長官の資料提出の誠意にゆだねるとして、この問題について伺いたいのは、いままで三次防では出さなかった物価上昇率の含みを、今回はどうして中に込められることになったのですか。
  136. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) やはり三次防の経過では、その間に航空機や艦艇の値上がりが相当あり、特にそれは人件費、工数に響いてきている問題で、そのために非常に困難があったわけです。また、そういうために計画が途中で変更になったり、無理がありましたので、そういうことをできるだけ少なくするために今度は入れさしたわけであります。
  137. 上田哲

    ○上田哲君 これまで防衛支出あるいは防衛調達というものが軸となって、これは非常に波及効果が大きいということが問題なんですけれども、これが日本の全体の生産指数の中で占める割合ということが議論にならなけりゃならなかった。これに対して長官は、大体鉱工業生産の中に占める比率は〇・四%だということを強調されてきました。先国会でこの問題について私のほうの試算を申し上げて議論をして、そちらのほうで計算をしていただいたら、全体として大きいとは——私はあえてふくらまして言いはしないが、大ざっぱにいえばけたの一つ違った数字になったという見方も出てきている。今後日本の経済構造の中に防衛産業というものをどのように位置づけていくかということが問題になるんでありましょうから、そうしたこれまで、前国会でお願いしておいた数字の問題、それから二・二倍になっていく大防衛計画の中で、しかも最高の伸び率の研究開発費、たがってそれが大きく装備の国産化へ向かっていくという趨勢の中で、日本の防衛生産の占めていく割合はどうなっていくのか、その部分の見通しをひとつ正確に御説明いただきたいと思います。
  138. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) いまの御質問の最終的な論点がよくわからないんですけれども、もう一回お話し願いたいと思います。
  139. 上田哲

    ○上田哲君 簡単に言えば、いままで長官は〇・四%ということをしきりに言われてきた。この数字が変わっているだろうと思うんです。この数字をどの程度に見込まれるのかということです。
  140. 蒲谷友芳

    説明員(蒲谷友芳君) 現在の日本の経済成長率を見ますと、むしろ低下するかもしれませんけれども、大体変わらないんじゃないかという気もいたします。
  141. 上田哲

    ○上田哲君 前国会で、何と言われたかな、局長鳥あなたのところでお願いをした数字がありましたね。あの数字関連でいくと、どういうことになりますか。
  142. 田代一正

    説明員(田代一正君) たしか先回御質問がございまして、私もちょっといま手元に資料がござませんので、的確にどういうことを言われたかよく……。
  143. 上田哲

    ○上田哲君 三・四でしたね。
  144. 田代一正

    説明員(田代一正君) そういう計数でしたか、産業連関表を中心に分析した数字を御説明いたしたような気がいたします。ただ四次防についてどうなるかということは、これはやはり産業連関表がまた改まってくると思いますので、そういう点もいろいろ考えなければいけないのですが、大数達観といたしましては、さっき装備局長から話がありましたように、今後の経済成長というものを考えますというと、まあ一応ウエートというものはそう違わないかもしれません。そういたしますというと、やはり産業連関表的な日本の経済構造があまり変わらないということになれば、そうあまり違ってこないということじゃないかというぐあいに考えます。  なお、しさいに計算いたしておりませんので、適確な答弁はいたしかねます。
  145. 上田哲

    ○上田哲君 私は、抽象的に議論しなければならないところもあると思うのです。たとえば軍国主義論なんというものは、あまり数字のところだけで言えない、ありようの問題、心がまえの問題ということもあると思います。しかし、この問題はかなり数字的に議論ができるところであって、少なくともムード的な軍国主義論よりも、一つの大きな柱として、巨大な発注者である防衛庁から流れ出る日本産業構造への影響力がどのくらいになっていくかということをしっかり算出しなければならない、これは国民的な責務であろうと思うのです。その点で言うと、先般お願いをした数字というのも、これも確かにけたが一つ違ったのですから、けたの違いというのはどういう意味なのかということを出していただかなければならないし、その上で、ひとつ明らかに全体として二・二倍になっている四次防なんだから、その影響はどうかということをもう少し、たとえば航空機は別なんだというようなずさんな計算は許されないのですから、そういう数字を出していただくところでこれは議論をしたいと思います。残念ながらこれは私のほうではデータが取り切れないものだから、最後はそっちで計算してもらわなければならないので、これはこの次の機会に出していただきたいと思います。  振り戻りまして、長官にお伺いしたいのだが、私は、装備局長ですか、全然数字の上ではパーセンテージは変わらないだろうと言うことは、どうもこれは信じがたいのですけれども、それは後ほど、さっき申し上げた意味で議論をさせていただきたいと思いますが、大方針として、責任者の長官にお伺いしたいのは、少なくともいま大きく心配をされている問題は、この四次防を中心にしてさらに先に伸びていくであろう防衛計画の膨張の中で、日本の産業構造がやはり変質をしていくのじゃないかという心配がある。そういう心配をさせないために、そういうところへ持ち込まないように、たとえばGNPの対比の比率の問題であるとか、あるいはいかに最高の伸び率を示したとしても、研究開発費の使い方とか、配慮されているのかどうか、そういう配慮をされたからこういう結果になったとでも言えるのかどうか、その基本方針だけ長官に伺っておきたいと思います。
  146. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) やはり国政並びに国民経済の中における防衛費の機能というものをある程度考えて、もちろんやっております。
  147. 上田哲

    ○上田哲君 産業構造の変化に及ぼしてはならない影響ということを大きく留意されたということでありますね。
  148. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) これは公共事業費とか社会保障関係費とか、教育研究費とか、そういうものとの見合いを考えながらやっております。したがいまして、われわれは基本的に日本の経済構造の中において、軍事費というものが過度に膨張したり、あるいは軍需産業が非常にふくれ上がって産軍コンプレックスをつくることのないように、そういう点ももちろん考えてやっております。
  149. 上田哲

    ○上田哲君 後ほどそのことを議論したいと思います。  それで、そうした問題が一つには長期展望に立つわけですから、いろいろと出てくる点が集約的に基地問題になっていく。自主防衛というものの内容が何であるかという議論はたいへんまた抽象的になっていくでしょうから、裏返しの問題として基地問題というものを伺っておきたいと思います。  アメリカ軍の全面引き揚げというべき事態が来年の六月までに起こるであろうと言われています。近く、これはきわめて近く、年内のうちに安保協議委員会で最終的に日米の考え方がまとまるというふうに聞いておりますが、そのとおりでありましょうか。
  150. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その点は衆議院段階でもお尋ねがありましたが、日米間の事務当局においていろいろ折衝しているところでありまして、まだ多少流動的なところもあり、ここで公表することは差し控えたいと思います。
  151. 上田哲

    ○上田哲君 私は、この点については長官がたいへんいつも歯切れの悪いことを言われておることを恨みといたしますが、まあ対外的なことがあるのだということは隠れみので、ある程度認めないでもないけれども、たとえばきょう十六日、かりに三、四日のうちにこうした問題が、国会が終わったあとで発表されるということなどが連続しては、たいへん国民の信頼というものをこの際に失うであろうということを私はやはり強く申し上げておきたい。  そこで、外交的な配慮というようなことばには私たちも最大の配慮は払いますけれども、それでは今日まで事務レベルで行なわれていた形での経過ですね、触れられる限りでよろしいですが、どのように進められてきたのか、そこをまず伺いたいと思います。
  152. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 五月十九日の日米安保協議委員会において、私から米側に対して、在日米軍基地の整理統合並びに自衛隊との共同使用等の問題について発言いたしまして、米側はこれを了承して、そして事務レベルの会議を開くことになって、直来事務レベルの会議はできました。それから、小幡事務次官が七月に外務省の審議官かと、アメリカ局長と一緒に渡米しまして、ワシントンにおいて先方の同程度事務レベルとまたいろいろ基本方針等について打ち合わせをいたしました。私は九月に訪米して、レアード国防長官とその点の基本的な問題について話をしてまいりました。そしてアメリカから帰ってまいりましてから、こちらからさらに促進しまして、その事務レベルの会議のテンポを速めさしたわけです。たまたまアメリカ側は予算年度との関係もあって、その問題についてアメリカ側からの意思表示も出てまいりまして、いま最終的な段階において彼我折衝している、これが実情であります。
  153. 上田哲

    ○上田哲君 七月に小幡前次官が訪米されたときに、分担金の話もかなり煮詰まったと聞いておりますが、そういうことでしょうか。
  154. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 分担金の問題は、日本側とアメリカ側と意見が不一致のまま帰ってまいりまして、その後また米側のいろいろ整理統合等に関する考え方も明らかになってまいりまして、分担金の問題も煮詰まってきつつあり、また煮詰めなければならぬ問題であると思っております。
  155. 上田哲

    ○上田哲君 全面引き揚げとして想定されている内容はどのようなものでしょうか。
  156. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その点は、先ほど申し上げましたようにまだ公開することをはばかる次第であります。
  157. 上田哲

    ○上田哲君 実質的なアメリカ兵力としては、岩国、佐世保以外はほとんど考えなくてもいいというふうに理解できましょうか。
  158. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その点も、公表をはばからしていただきます。
  159. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカ軍の全面撤退というふうな印象を受け取るべき変更が近く起こるということはいかがでしょう。
  160. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 全面撤退という印象を与えるようなものではないと私は思います。
  161. 上田哲

    ○上田哲君 今日までのアメリカ軍の、日本国内に百二十基地と数えられる軍事基地の形態、これが基本的にこれまでになく大きく変化することはいいでしょうか。
  162. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 若干の変動はあると思います。
  163. 上田哲

    ○上田哲君 若干ということは、基本的にということではありませんか。
  164. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) まあ、若干ということは若干ということで御了解願いたいと思います。
  165. 上田哲

    ○上田哲君 長官が九月に訪米されてレアード国防長官と会談されたときには、いま間もなく目の前にあらわれるであろうアメリカ軍の若干の撤退ということの内容についてゆくりなく話をされ終わっていたのですか、どうですか。
  166. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 詳細具体的にはありません。しかし、パッカード事務次官との話においては、それよりも少し具体的なような感じのする話はありました。
  167. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、長官は巷間伝えられている、アメリカ軍からの非公式通告ということで、たいへんアメリカ当局者と折衝していない部分を含む発表として、寝耳に水で驚かれたことになるのでありますか。
  168. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 別に驚いたわけじゃありません。また寝耳に水でもありません。
  169. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、長官は全部話を聞いてきたということになるのか、あるいは聞いていない部分が出ていても、日本の防衛庁長官はアメリカ側の軍隊の引き揚げその他の計画についてはほとんどまかせっきりで心配しないということになっているのか、どうでしょうか。
  170. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) われわれも政治家ですから、勘を働かし、においをかぐということはある程度できることですから、この辺という想定はありまして、大体そういうワク内のことであると私は考えております。
  171. 上田哲

    ○上田哲君 私もまだかけ出しでありますけれども、そういう立場で努力をしておりますから、多少の勘があります。そういう勘と勘をかけて議論をしていることは、われわれの国の安寧にかかわる基本の問題であります。この問題について、長官がほんの数日後に迫っている具体的な会合の場あるいは交渉の場、そういうものを控えて、しかもすでに社会的な権威を持っている報道機関の中で非常に詳細に報道されている事実について、私はもう少し突っ込んだ見解がなされてしかるべきだと思います。具体的に少しお伺いをしたいのですが、少なくともアメリカ側が何を言うかは、いろいろな参酌されるところがあって言いにくいのかもしれませんが、アメリカ側に向かって、向こう側が、われわれの国の軍事基地をどのように引き払っていくかということを無為に待っているのではなくて、少なくともこちら側から一方に自主防衛というような旗も掲げられているのであって、アメリカ軍の軍事基地をこのようにして排除してほしい、撤去してほしいということは申し入れられていると私たちは理解をしておるんですが、少なくともその原案がなければならない、この原案は五区分だということでありまして、そして前国会ではこの委員会で、この五区分の内容については一カ月後には成案を得て発表するということでありました。私はその資料を要求したままになっております。一カ月ははるかに、数倍、時間がたったんでありますが、この五区分の百二十二についてどうなっているのか、具体的に御報告をいただきたいと思います。
  172. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 在日米軍基地の整理統合と日本との共同使用その他については申し入れをしておりますし、それから特に首都圏における——東京近郊を中心にする首都圏における整理統合については強く言ってきているところです。しかしその内容についてはここで申し上げるわけに——いまのところお許し願いたいと思います。  いまの資料につきましては、どういう資料であるか、私まだ存じませんが、もしそういう御要求がございましたら、可能な限り、時間が許す限り御提出するようにいたしたいと思います。
  173. 上田哲

    ○上田哲君 それはたいへん納得できないのでありまして、もう何カ月も前に、それは一カ月後にできるから報告をするということになっているんです。それがどうなっているんですか。
  174. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 在日米軍基地の自衛隊による管理の問題につきましては、基地管理協議会を防衛庁の中にこしらえまして、いろいろ検討を進めておったわけでございます。かなり内容的には煮詰まってきておったわけですが、もうすでに御承知のように、在日米軍基地についてのかなりの情勢の変化というようなことも予想される事態になっておりますので、これまでに検討した結果につきまして、さらに訂正を要するものも出てくるであろうというようなことから、今後の情勢を見きわめた上で最終的な姿を決定をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  175. 上田哲

    ○上田哲君 ああいうふうな表現でも、さらに大きな変更が出てくることはもう御承知のとおりだと言っているじゃありませんか。あそこまでは長官言えないんですか。
  176. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それは衆議院段階におきましても御容赦願ったのでありまして、まだ流動的なところもあって、公表は差し控えさせていただきます。
  177. 上田哲

    ○上田哲君 流動的なところに変わっているんだと言われておるのですが、私はもとに話を戻しますが、一カ月後にできるのはできたのですか、できないのですか。
  178. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その資料の内容は私知らないのですが、どういう資料ですか。
  179. 上田哲

    ○上田哲君 わかっている人でいいです。議事録に載っているはずですから。
  180. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) ただいま申し上げましたように、検討した結果はかなり煮詰まったものとなっております。その内容は、各米軍基地につきまして、自衛隊が防衛上ここは将来必要とするであろうか、あるいは将来のことを考えてもこの基地はもう要らないであろうとか、そういう各米軍基地についての防衛上の価値判断といいますか、そういうことはやっておるわけでございますが、いま申し上げますような事情で、なお検討を要する、こういうことになっておるわけでございます。
  181. 上田哲

    ○上田哲君 いままでまともに資料が出たことはありませんから、このことだけおこってみたって意味がないという意味で、私はこれ以上おこりませんが、少なくとも——新聞の報ずるところによればと言わなければならぬのが私は非常に悲しいけれども、新聞では、場合によっちゃ二十一日になるという数字が出ているところで、あなた方が御出席になってそういう会議が開かれる。そういうことは想定していなかったら、ちょっと役人の仕事はつとまらぬというぐらいの段取りになっていることは天下周知の事実なんです。そうであれば、少なくともこちら側が話をしていく原案というものは、この前は理屈をつけて出さなくても、今度は出さなければならぬだろう。今度はどうなっていますか。
  182. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) そういう当方の基本的な考え方でありますならば、これはやはり先方との話し合いがつくまでは、私は出すべきでないと思います。いま資料の内容を私は了解いたしましたけれども、どの基地がどういう価値を持っているかというようなことは、ほかの基地との代替性とか、ほかの基地がどういうように流動しておくか、そういうことのからみ合いもあると思うのです。そういう意味において、彼我折衝する場合の、こちらの手持ちのそういうような内容は私は出すべきものでないと、かように思います。
  183. 上田哲

    ○上田哲君 押し問答してもしかたがないから、出さないと言われれば出ないであろうということで、お伺いをするから、その中身は出せないならば、見ません。しかし、それはできているかどうかということは、今回はいかがですか。
  184. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それは中間的なものはできております。それは私も説明を聞いて、責任者から大体ここはこう、ここはこうという話は聞いております。しかし文書にして正式に出すという段階には、押しとどめております。
  185. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカ側と交渉をする素案としてはでき上がっていると理解していいんですか。
  186. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 専門的な見解はできております。私はそれを聞いた上で判断しておるわけです。
  187. 上田哲

    ○上田哲君 長官のお考えとしては、でき上がっているそのようなときに、アメリカ側との今回の話が煮詰まるという見通しはお持ちですか。
  188. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど申し上げました、いろいろな流動性がある。それから先方の見解が最終的にどこに一番腹があるかという点がまだわからない点が残っております。そういう意味において、若干の交渉の余地がまだあるのです。そういう意味において、まだ公表することはできないのであります。
  189. 上田哲

    ○上田哲君 巷間伝わっているいろんな言い方はかなり具体的に、私どもにももうほとんど変更のない部分として理解できるところもあるんですけれども、上限下限で見ていくと、いろんな見方もできると思うのです。私の推定を参考に申し上げますけれども事務的な流れとしては、五月の十九日の協議委員会以来、七月の次官訪米、九月の長官訪米、流れはそういうことになっているだろうと思います。しかし、その流れの中で言えば、少なくとも長官はせき立てたからと、そういうこともあったでしょうが、全体の推定値を言えば、ややピッチが早かったという状態、まあ腹が立つから寝耳に水ではなかったかという表現を使いましたが、そういうことばの適否は別として、ペースとしてはかなり早く来たのではないか、こういうふうに考えます。先月の末の本院の本会議でも、七六年ぐらいには在日米軍はもういないであろうと言われております。うんと先へ手を広げてその辺を上限と考えた場合でも、一体そういう上限と、それと今日百二十二あるいは五月、七月、九月と、こういう段取りを考えて、今月末に開かれることだけはもう間違いないことはお認めになっていられる日米協議委員会で、出てくるものはどの辺のものなのか、その辺のことは言えないですか。
  190. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) そこが遺憾ながら言えないところであります。
  191. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ仮定の問題で進めるよりしかたがありませんが、岩国以下ほとんどの基地がそういう意味で常駐しないと、補給その他を主軸とするものしかなくなってくるということ、これは具体的な数字がどうで、地名がどうだということを言わなければ、ニクソン・ドクトリンが出て以来、だれだって見当がつくような話ですから、その辺詰めないで、大体の絵をかき合って話ができると思うんですが、そのような想定すべき事態が生じた場合には、これはどう考えても、結論的に言えば、常時駐留という形ではなくて、これを有事駐留ということばを使うかどうかということについては好ききらいの問題があるでしょうけれども、常時駐留という形にはもうならなくなっていく、こういうふうに考えられるんですが、いかがでしょうか。
  192. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それは職種により機能によりいろいろ違うと思いますが、傾向としては、そういう常駐しないという方向に行く傾向にあると思います。
  193. 上田哲

    ○上田哲君 常時駐留ということではなくなったといま言われるわけで、そうなっていくと、これを有事駐留ということばに変えるかどうかはいいんですが、私はそうなれば有事駐留ということばしかないと思いますが、あるいは別な機能のことばとして使うならば予約提供ということになる。予約提供ということになると、これは私は二4(a)から(b)へというような形では、少し地位協定の問題としてはみ出しが出てくるんじゃないかというふうに思います。これはまあ無理やりにそこのところを拡大解釈をしていくという方針はどうあれ、やはり率直に言えば、常時駐留をしているんではないという観点に立つなら、これはやっぱり地位協定改定というところに、二4(b)でも無理なんだというところにいかなきゃならぬというふうに思うのですが、御見解はいかがですか。
  194. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 二4(b)を弾力的に適用して、そういう範囲内でやっていくつもりであります。
  195. 上田哲

    ○上田哲君 これは私どもはどういうふうに考えても、二4(b)の弾力的な運用というものとは、実態が違い過ぎるというふうに思いますけれども、そこのところを争ってもおそらく水かけ論ですから、その点を包んで先へいくとすると、二4(b)を改定するほうが私は筋だと思う立場から、それはそういうふうにお考えになっていると思うんですが、地位協定を改定できないというのは、やはり七二年まではどういうことがあっても地位協定の改定ということはできないということが大前提にあると考えるのですが、このことが無理であるかどうかは争いませんが、地位協定は七二年まで全然手をつけないという方針ですか。
  196. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 地位協定は当分手をつけないという考え方に立っております。
  197. 上田哲

    ○上田哲君 地位協定の適用ということがかなり実態的に無理になっても、改定をしないという考えでありますか。
  198. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 当分は弾力的適用でいけるという見通しでおります。
  199. 上田哲

    ○上田哲君 当分というのは七二年という意味でしょうか。
  200. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) まあその見当じゃないかと思います。
  201. 上田哲

    ○上田哲君 一つだけ何となく得たような気がするんですが、この地位協定の改定というようなことまでを考えなければ、無理が出てきている。常時駐留下でなくなった事態、これは私はやっぱりこれまでの安保条約の考え方の変質だと言わなきゃならぬと思うのです。主たる米軍が常時駐留でなくなったということは、これはやはり安保条約の変質であると考えるのですが、いかがですか。
  202. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 別に変質であるとは思いません。安保条約の範囲内において変化が起こりつつあると考えていいと思います。
  203. 上田哲

    ○上田哲君 安保条約の範囲内において変化が起こったんだということは、常時駐留が有事駐留に変わっても変質ではないという意味ですか。
  204. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 常時駐留、有事駐留ということばの定義のいかんにもよりますけれども、安保条約の適用の範囲内における変化であると、そういうふうにわれわれは解釈しております。
  205. 上田哲

    ○上田哲君 具体的な内容が示されませんでしたけれども、起こり得る事態の推定でいえば、有事駐留という事態も含まれていますか。
  206. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 有事駐留ということばを私はあまり好きじゃないのです。民社党の方がよく使っておりましたけれども、別に民社党だからきらいだという意味でなくして、安保条約を解釈するのに有事駐留という考え方を、そのことばをあまり適当であると思わないのです。そういう意味において言うわけであります。たとえば米軍が常時いなくても、ある期間を区切っているとか、あるいはスタンド・バイの状態にしておいて、ある時期にまた来るとか、そういうことは安保条約の中でもある程度は想定されていることであると思うんです。そういう弾力的考え方をして安保条約を解釈したらいいと私は思っております。
  207. 上田哲

    ○上田哲君 だれがつくったことばだから使いたくないということは私も少しはあるのですが、有事駐留ということばを、私はその意味では専売特許でないものとして使っているんですが、ことばの好ききらいがあると思いますから、それはいいです。しかし、はっきりしていることは、常時駐留というベタの形ではなくなったということは、これはお認めになるわけですね。
  208. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) いまのことばの定義を留保さしておいていただいて、そういう状態は出てくる可能性はあります。
  209. 上田哲

    ○上田哲君 これは一つの進展だと思うのですが、そうすると、それは安保条約上の変化であって、安保条約に対する変質ではないというふうに言われることは、政府のこれに対する解釈が変わったというふうに考えていいんですか。
  210. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 解釈は変わっておりません。私は防衛庁長官になる前から、七〇年代では基地は整理統合しろ、そして米軍の一部撤退、相当部分の撤退、それを安保条約の弾力的運用によって行なうべきである、そういうことを公言してきた一人でありまして、そのときから安保条約の弾力的運用ということばを使っておるわけです。それは七〇年安保の前から言っていることばです。そういう意味において、私らの言っていることは、安保条約の範囲内であるということを前から考えておったわけであります。その後も法制当局と意見を交換しまして、それでよいという法制当局側の意見でもあったわけです。
  211. 上田哲

    ○上田哲君 七〇年安保以前というのはあたりまえのことです。これは自動延長で何も変わってないですから。六〇年六月から変わってないということでいいですね。
  212. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 六〇年六月というのは新安保ができたときですか。——もちろんそうです。
  213. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると私はたいへんなことが出てくると思うんです。六〇年の安保では、政府はこういうことをしきりに言っています。当時の外務大臣は藤山さんでありましたけれども、たくさん読むとたいへんですけれども、当時のいわゆる安保国会、四月二十八日ですね。これは野党委員の質問に対して藤山外務大臣が、前のところは省きますけれども、野党委員が、「この条約全体を通じて、日本に常時米軍が駐留していなければならないという規定はどこにあるか。」、歴史の流れというものはおもしろいと思うのです。その当時は常時いるというのはおかしいじゃないかということを野党議員のほうが言っているんですが、これに対して藤山外務大臣は、常時駐留していることが適当と考える。常時駐留ということばを使ったのはまずいのかしれませんが、藤山外務大臣、岸総理大臣は、今回の条約において有事駐留を禁止している規定はないのだ、しかし現状は常時駐留を認めておくことが必要である。日本の自衛隊の状況、置かれている客観情勢から見て常時駐留を原則とする——適当とか原則ということばがありますから、これは逃げ方はことばの上ではあるかもしれません。しかし、たくさん、長いのを読もうと思えば幾らでも読めますけれども、いまおっしゃるように六〇年六月から変わっていないんだということであれば、安保条約の有権解釈としては、明らかに常時駐留以外にないんだということをしきりに政府は言われている。これを、変わってないんだといういまの言い方とどうしても結び合わせようとすれば、これは当時からは考え一方が変わってきたということにならざるを得ないのですが、いかがですか。
  214. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) いまの引用なすったのを私拝聴いたしましても、やはり安保条約の解釈のワク内で言っておると、そういうようにいま聞いたわけです。
  215. 上田哲

    ○上田哲君 いま生きている人のことばを大事にしたいと思いますが、そうしますと、従来、政府は、アメリカ軍は日本に常駐することのみを考えていたのではないのだ。有事駐留ということばがきらいなら、それはそれでいいです。常時駐留でない場合も十分考えて前からいたのだということでよろしいですね。
  216. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) いまの説明の中に目下のところとか、現状ではとか、そういうことばもあったり、原則としてとか、そういうことばがあることは、やはり安保条約の幅というのはかなり広い範囲に広がっていて、常時いることも、あるいは必ずしも常時いないことも含まれていると解釈して差しつかえないと思います。
  217. 上田哲

    ○上田哲君 私ども三百代言のやりとりになってもいけないと思うのですけれども、原則としてということは、決して量だけで問題にするのではないが、主たる勢力がほとんどいなくなるということになれば、原則ということはやはりそちらのほうに移ることになります。そういうことも当然考えていたのだ、そういうことでいいですか。
  218. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 将来そういうことが起こる可能性を排除はしていない、そういう考慮で発言されていると私は思います。
  219. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、十一月二十八日の本会議で長官が答弁をされた。七六年ぐらいにはアメリカ軍が日本じゅうからいなくなってしまうと答弁をされた。そのときには、安保条約は変質をするのですか。
  220. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) あのときの発言は、たしか常駐しなくなる可能性も必ずしもないわけではない、そういう展望を言ったわけです。それで私の考えでは、そういう状態でも安保条約が変質したとは考えられない。
  221. 上田哲

    ○上田哲君 事実上日本国内にアメリカ軍がいなくなる状態でも安保条約は変質していない、つまり常時駐留という形が全くの形でなくなる状態になっても、安保条約は変質するということはないということですね。
  222. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 常駐せずという態様が問題だと思います。ある場合には管理要員がいたり、ある場合には基地の機能だけは維持しておいたり、ある場合にはそういう状態からスタンバイの状態にあったり、それはいろんな態様があり得るわけです。通信施設が残っているとか、兵たん補給施設が残っているとか、そういう可能性ももちろんあるわけです。そういうわけで、その機能、機能をよく見て解釈すべきであると私は思うので、私が頭に置いた情勢においては安保条約は変質していない、このように思うわけです。
  223. 上田哲

    ○上田哲君 まあ補給要員や保安要員が若干残っていたら、それでもいることになるんだということになると、これは議論の対象にならぬと思うんですけれども、そういうような場合でも安保条約の変質、変更がないということになれば、地位協定の改定は行わないということがついてきますか。
  224. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 地位協定については、先ほども申し上げたとおりで、それ以後のことについては、それ以後の事態を見て考えるべきものであると思います。
  225. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、いずれにしても相当部分がわれわれの国内からいなくなるということになり、それにもかかわらず、軍事機能としては今後とも基地を確保していくということになると、先ほどのことばが一番当たるのは予約提供ということであって、自衛隊の肩がわり基地管理ということがそこに出てくるわけです。アメリカの会計年度の六月末ということは、これは間違いなく出てくるわけですから、そういうことになると、当然われわれの国の会計年度とのかね合いで、大部隊が引き揚げたあとのアメリカ軍基地の管理ということに人とお金が要ることになる。どれくらいの予想を立てておられるのか。あるいは少なくとも新年度予算にそのことを盛り込まなければならないはずですが、その手順はどうなっておるか。もしそうでなければ、どう対応されるのか。
  226. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その点はいま交渉中、つまり流動性といったのは、そういう点が流動的なところがあるのでありまして、まだ申し上げる段階に至っていないのは遺憾であります。
  227. 上田哲

    ○上田哲君 具体的にひとついま問題になっておる例をあげるわけなんですが、山田弾薬庫ですね、いろいろな説明があるでしょうけれども、印象からすれば、それはアメリカ軍が帰ってくれるのはけっこうだけれども、思っていたよりは早く引き揚げるということになってきた。したがって、危険な山田弾薬庫をせっかく向こうが返してくれるという場合に、ちょっと待ってくれという感じに受け取れています。新聞記事ではそう書いてあるのですよ。全体としてそういうムードがあるような実は国民感情が起こるほどいま急激に動いておる。どうも長官があまり言われないので、ますますそんな感じがするのですが、そういうことは議論の対象からかりにはずすとしても、どうも山田弾薬庫についてわからないことは幾つかあります。アメリカ軍のほうから福岡施設局に申し入れてきたときには全面無条件返還ということを聞いたのだ、これはこれまでのそういう形からいっても理解されるのだそうですけれども、そういうことでいいのかどうか。そのとき受け入れ態勢が整わないとか、時期尚早であったとかいうような表現があったそうでありますが、受け入れ態勢とか時期尚早ということは、具体的にどういうことでしょうか。
  228. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 大体そういう問題は中央交渉できめるべき問題で、結局は合同委員会で正式にきめなければならない問題です。それを現地の米軍司令官が現地の施設局の局長のところに持ってくるということは筋違いのことで、そういう意味で、これは中央で話し合ってくださいということを話したのです。目下中央においてその話し合いをしておる最中であります。そこで、その内容については、先ほど来申し上げたように、ここで公表できないのは遺憾であります。
  229. 上田哲

    ○上田哲君 遺憾なことばかりで、まことに遺憾ですけれども、受け入れ態勢が整わないとか時期尚早であるとかいうことであるのですか、ないのですか。少なくとも時期尚早であるということならば、地元の北九州の市議会では四十四年十一月に、弾薬庫の無条件全面返還の決議を超党派で行なっております。受け入れ態勢が整わないとか時期尚早ということは、この場合あり得ないと思うのですけれども、そういう理由があるのですか、ないのですか。
  230. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 要するに、中央においてほかのものといま一括して話し合いをしておる最中で、そうして経費の問題であるとか、そのほかの諸般の問題についてやはり話をセットして、それから公表さるべき問題なんで、話し合い進行中に途中で公表することははばからしていただきたい、こういうことであります。
  231. 上田哲

    ○上田哲君 施設庁長官がこれは記者会見をされて話をされていますね。で、この中でもう少し突っ込んだ話が出ているはずです。二4の(a)なのか(b)なのかなどなど含めて、少なくともそこで話をされた程度までは話をしてください。
  232. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 板付の米軍当局から福岡施設局のほうにまあ返還をしたいといった返還予告の通知がありまして、この取り扱いについては、いま大臣からお話しされましたように、こういう問題は本来中央レベルにおいて話し合いをすべきであるということで、その申し入れを一応返上いたしておるわけでございます。そこで、現在中央レベルにおいて米側といろいろな角度から検討いたして協議いたしておるところでございますが、まあその場合にいろいろ米軍の考え方もありましょうし、自衛隊としてもいろんな希望もございますし、また、地元の要請もございますので、そういういろんな角度からこの問題をもう少し煮詰めて結論を出すべきである、こういうことでいま協議をしている、こういう段階にあるということでございます。
  233. 上田哲

    ○上田哲君 私わからないので伺いますが、無条件全面返還ということできたことは間違いないですね。
  234. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 無条件ということがどういうことであるかわかりませんが、要するに返還の予告でございますので、返還をしたいと、まあこういうことでございます。それを無条件というのかどうか、ちょっとことばが適切であるかどうかわかりませんけれども、とにかく返還をしたい、こういう板付の当局の意向はそういうことであったと思います。
  235. 上田哲

    ○上田哲君 わからないので聞きますけれども、たとえば二4(a)がありますね。それから(b)になりますね。その(a)が(b)になるというような場合に管理権が移ると、(a)から(b)にそのまま移るのですか、一般論ですがね。一ぺんたとえば大蔵省なら大蔵省に国有地として戻って、そこから(b)になるのですか。こうまっすぐいくのですか。
  236. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 一ぺん日本側の財産になりまして、そしてあらためて合意をすると、こういうことでございます。
  237. 上田哲

    ○上田哲君 そうなりますと、(a)から(b)、あるいはそのまま(a)のもっと前からそうですね、返ってくるその途中で一ぺん国へ返るということになると、その国から先は、必ず自衛隊にいくとはさまっていないわけですね。何か特別な規定があって、一ぺん国に返ったものが必ず自衛隊にいくという優先権か何かありますか。
  238. 島田豊

    政府委員(島田豊君) それはその取り扱いについては、個々のケースごとにきめられると思います。それが当然自衛隊に返るということじゃなくて、それは大蔵省の普通財産と申しますか、そういう大蔵省の管理下に移る、こういうことでございます。
  239. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ確認しますがね、どういう法規によっておるのか私は知らないから、二回知らないからといって聞いておる。私よく知らないから、もしあるのならしっかり教えてくださいよ。つまり、それは国の財産に一ぺん返るんであって、二4の(a)から(b)というと、いかにもつながっているようだが、それはそのままいくんじゃなくて、一ぺん国の財産に返ってから、全く平等な立場で自衛隊にいくのか、たとえば地元の市町村にいくのか、などなどですね。そういうことになるんであって、優先権はありませんね。
  240. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 結論からいいますと、そのとおりでございます。
  241. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、これは必ずしも弾薬庫として使われるということについて、防衛庁は発言権をいま持ち得るかどうかわからぬわけですね。
  242. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 返還のときに、やはり合同委員会、あるいはその下部機構でいろいろと話があって、そしてこれはどこへ使うのが適当であるから返すとか、どこに使わしてもらいたいから返してくれとか、そういう話し合いでいくわけです。ですから一応国有財産に戻るというのは、いわば登記面の変動の法的な状態がそういうふうになるということであり、運用については、やはり話し合いというのが生きてくる、そう私は思っております。
  243. 上田哲

    ○上田哲君 わからないというのは、私はそこなんですよ。わからないからこれは納得するように説明していただければけっこうなんですが、おかしくないですかね、明らかに日本の国有財産でしょう、もともと。しかも向こうが返還の意思を出したということになれば、それが国有財産に変わるのは、どうして、登記上の帳づらであって、自衛隊の優先権というのはいかなる立場に立って——明らかに向こう側も要らないといっているわけでしょう。明らかに継続使用するということをアメリカが言うのでなければ、自衛隊が持つか持たないかということは、合同委員会という話とは合わぬじゃないですか。明らかに日本の法規の上に立っているからにはこれはありますよ。条約が優先をするということはあるでしょう。しかしこの場合は、条約のカテゴリーから出てきて、返還ということになってくるならば、(b)にするかどうかというのは全く、防衛庁の優先権というのが出てくるというのは、どういう法規に基づくのか。合同委員会のほうじゃなくて、国内法規の何かなければいけないのじゃないですか。
  244. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その返還のときの話し合いのときに、何々に使うから返してくれ、あるいは地元で公園にしたいから返してくれ、あるいは住宅地域にしたいから返してくれ、あるいは防衛庁が使いたいから返してくれ、あるいは先方側が自分のほうは要らなくなったから返還したいという場合もあるでしょうし、あるいはこれを何に使うということを希望するということもあるでしょう。それは安全保障条約というものがある以上は、安全保障条約の運用の面において、そういういろいろな行政的なものが付随していくということは当然あり得るわけです。ししたがって、法的には国有財産で大蔵省の管理に一たんなるけれども、その利用については、やはり合同委員会におけるいろいろな考え方というものは作用してくる、そういうことは行政上でもいろいろあり得ることです。そういうふうにわれわれは解釈しております。つまり合同委員会における話し合いというものは、安保条約の運用上の一つの政治的機関として重要なものであるだろうと考えているわけです。
  245. 上田哲

    ○上田哲君 それがわからないのです。条約が国内法規の上に立つということはいいのです。しかし、条約上の規定から離れたところで、明らかに離れるからこっちへ返ってくるわけでしょう。帳づらだけの問題だというけれども、幅づらということは、国内法規のカテゴリーに返るということでしょう。そうして向こうが要るというときにはしかたがない、好ききらいは別にして、上に押えられている条約があるから、だからこれはしかたがないけれども、離してきたということになれば、国内法規優先ということになるので、上のかさはなくなるわけじゃないですか。それをまだ向こうが使うということならば、残念ながら引っ張り込まれますよ。向こうが使うということを受けて、合同委員会でとにかく管理権は返すけれども云々という話があるならわかるけれども、全く自衛隊が使うか使わないかということだけになるならば、向こうが使わないということになればいいわけでしょう。そうすると向こう側が意図しないところまで、合同委員会は、安保条約というものは、国内法規を縛るということになってしまいませんか。
  246. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) やはり返還されるときに、合同委員会でいろいろ話し合いした内容というものが財産について付随してきて、その財産をどう処理するかというときに、それは関係各省の意見を聞くということになりますけれども、すでに行なわれているそういうものが妥当なものであると思われる場合に、認識される場合には、大蔵省もそれに従ってそういう方向に処理されるのだろう、そういうふうに私は思います。
  247. 上田哲

    ○上田哲君 返ってきたときに、それを大蔵省中心に、大蔵省が使うというわけじゃない。だから各省のいろんな考えをまぜて、どっちにしょうかということにいろいろ検討していいし、そのために、返ってくるときのき方が参考になるということはけっこう、それはおやじの財産をもらったあと、子供がどうやって分けるかということは、おやじの遺言にかかわるだろうといわれることはよくわかります。しかし、明らかに安保条約が決定していたものが、要らないといって返してくるときに、その使い方まで指定してくるということには、法的にはならぬのではないか。だから国有財産に返らないような法規があるなら別、国有財産に一たん返るならば、その国有財産を決定していくということは、すでにアメリカの条約上のかさはなくなっているわけなんだから、これは日本の国内法だけで決定していい条件があるのではないか、これがどうしてもわからない。それがどうしてもそうじゃないと言うならば、アメリカと結んでいるわれわれの国の条約が、国内法を、向こうが要らないといった場合に、規定をするという、そういうふうな、たとえばそれの条約を受ける法規が具体的にあるのかどうかということを説明してもらえばそれでいいのですがね。いまのお話は法律論ではないと思うんです。法理論ではないと思うのです。
  248. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 返還というもののいろんな態様があると思うのです。三条使用によるものが返ってきて二4(a)になるとか、二4(a)が二4(b)になるとか、あるいはそういう項目がなくて、一般に返還されるとか、いろんな態様があると思うんです。そういう場合に、合同委員会で大体両者一致したという線は、返すときに日本国政府とアメリカ側の代表の考え方がある程度一致したという約束ができていることですから、それが大蔵省のかりに返還という形になってきた場合には、今度は国内諸官庁との話し合いの際に非常に尊重されて、政府は一体ですから、そういう意味でそちらの方向に動いていく、そういうふうに処理される、そういうものであると見ていいと思うのです。それからこれを二4(a)にしますとか、二4(b)にしますということが、合同委員会で成立しているときには、同じくその話し合いの結果というものが、日本側で処理する場合に尊重される、そういうことになるだろうと私は思います。
  249. 上田哲

    ○上田哲君 わかりました。二4(a)、二4(b)ならいいですよ。ただ、わかりましたというのは、前段でそういう返し方によって影響されるんだというところは、影響されていると言うのです。それはしかたがないと思いますよ。ただ、法的にそれが規制できるのかどうか、そういうところが私はよくわからない。だから、二4(a)ならもちろん問題ないし、二4(b)ということになればいいわけでしょう。ところが、全面返還なのかどうかということを聞いているんですが、アメリカが山田弾薬庫を使うんですか。われわれは明らかに使わないと聞いているし、もう要らないという御答弁を聞いている。現に十月十五日でもってあそこにいる基地労働者五十五人全部が、予告期間を先にずらしてまで首切りが、解雇が行なわれているわけです。とにかく、ここでアメリカが山田弾薬庫を使わないという理解で私たちは説明を受けている。アメリカが使うというなら(a)とか(b)に引っかかってくるでしょう。それがないなら、当然の問題として、日本側に全く管理処分権があるのじゃないですか。管理処分権が日本の法規の中で成立して、それを大蔵省が中心になってやる。どうですか。アメリカが基地を返すときに、いろんな注文がついたとしても、アメリカが使わないというなら考えることはないですよ。日本の法的独立が侵されていることになるんではありませんか。だから、伺いたいのは、アメリカがまだ山田弾薬庫を使うと、だから使えるような形を(b)でもいいから残しておいてくれというようなことになっているというようなら、しかたがない、条約がありますから。そうであるのかどうか。
  250. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) ですから、それは日本側の行政処分だろうと。大蔵省が中心になって関係各省の意見を聞いたり、そういうふうにして行政処理としてそういうことが行なわれるんだろうと思うのです。私は法的な根拠というものはよく知りませんが、それは国有財産法に基づく大蔵省の権限として、関係機関の権限に基づいて、そうして関係機関が集まってそういう行政処理をする、そういうことではないかと思います。
  251. 上田哲

    ○上田哲君 よし、わかりました。そんならわかった。そうすると、こちら側の行政処分だというのならば、そこには防衛庁が優先権を持つという権限はどこからも出てこないわけですね。
  252. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) それは各省の協議によってそういう形になると思います。
  253. 上田哲

    ○上田哲君 はい、わかりました。そういうものが日本国内法を規制しないということならば、それはそれでけっこうだ。そうすると、防衛庁が何ら先にこの山田弾薬庫を使うということにはならないのであって、たとえば公園にしようが、地方団体に渡そうが、これはとにかくいろいろの自由があるわけです。実際問題としては力関係の問題が出てくるにしても、ここはアメリカとの関係ではなくなるということになるわけですね。ところが、どうも実態問題としてそういうことになっていかない。どうやらほとんど地元なり何なりが、もういろいろ運動があって、弾薬庫とい危険なものはやめてくれということになっていて、いわばそれに答えた形にもなるから、こうなっていながら、どうも最近は法的には全くはっきり、いま雲が晴れましたけれども、優先原則というものはないにもかかわらず、これがまた同じ機能の弾薬庫として継続していく可能性が出てきている。これは二通りひとつお伺いしたいのだが、そういう方向で、向こうが要らないと言っても、またわがほうはまだ弾薬庫として使うのですか、それが一つ。もう一つは、これを使う場合には入れるたまがあるのですか。
  254. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 正式に返還された上の話でありますが、そのときにいろいろ相談してみようと思っております。まあ防衛庁としては。もし万一将来返還されるというような場合には、やはりその機能を生かして、防衛庁で弾薬庫として使わしてもらったらいい、そのように考えております。
  255. 上田哲

    ○上田哲君 たまのことはお答えいただきましたか。これは長官じゃなくていいですよ。
  256. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) もちろん入れるたまはございます。
  257. 上田哲

    ○上田哲君 ここにたまがあるというのはたいへんなことでありまして、おそるべきというか、巨大な弾薬庫に一体一発でも入れて置けば、入れるたまがあるということになるかもしれませんけれども、私はたいへんそれは常識的ではないと思います。ぜひともたまが爆発するという危険性、とんでもない市民生活の平穏な状況の裏に、へた間違えば一ぺんにそれが吹っ飛んでしまうという危険があるということが問題となる。その問題というのは、アメリカのしるしのついているたまであるか、日本のたまであったかは問題はないわけであります。せっかくこれがなくなった、それでアメリカ側がいいと言った。ここでは言えないことがあるかもしれないけれども法律的に行政措置以上には、自衛隊といわず大蔵省といわず、地方自治体といわず、この土地を使わしてくれということは競願できるわけですよ。そういうことであるならば、愛される自衛隊ということばをお使いになるならば、この際ひとつ山田弾薬庫のあとをむりやりかき集めて入れるたまがあるということを言わずに、ぜひひとつ緑の公園にするとか、住民のためにせっかく市議会でも全会一致、超党派で弾薬庫にしないでと言っていることでもありますから、少なくとも十月十五日の予告期間を踏みにじってまで首切りも行なわれたということであるならば、これはぜひひとつ、実はこれはこちらで、弾薬庫に使うのだからというようなことで、むりやりに持っていかずに、ぜひひとつここでは話ができないというのですから、それ以上は言いませんけれども、ふたをあけてみたら入れるたまがあるというから、あらがいはいたしませんけれども、入れるたまがあったけれども、そこには入れなかった、こういうことにぜひ努力をしていただきたいと思います。そういう山田弾薬庫の問題はほんの一例でありますけれども、全国に散在をしているアメリカ軍基地に働いている諸君が、全面撤退と言われているアメリカ軍の引き揚げに伴って当然職場を失うということになります。こういう職場をそういう意味で失うこと自身はけっこうなんですけれども、しかし、たいへん裏返しの部分であっても、そこである種の国民的貢献を果たしてきた諸君が、いままでと同じように、しかも急速な形で馘首されるというような事態が起きて、これはたいへんなことであります。現に風説によれば、この国会が終わって、安保協議委員会でも終われば、時を移さず一万人と数えられるような基地で働く人々の馘首が発表されるのではないかというようにいわれております。これはいかがですか。
  258. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 全般的な趨勢といたしまして、昨年の十月ごろからかなり駐留軍従業員の解雇が続いておりますが、今後も引き続いてそういう状況にあるのではないかというように、われわれとしては一応予測しながら、いろいろの対策を考えておるということでございます。
  259. 上田哲

    ○上田哲君 そんなのはだめですよ。もっとはっきり言ってください。あさってになれば国会終わっちゃうんですよ。そうすると、あなた方と話ができない。終わってしまってからやられたんではどうにもならない。この基地で働いている諸君をもって組織している全駐労は、だから国会終了日の十八日を控えて大ストライキの予定があるんですよ。国会でわれわれがこれだけ真剣に質問しても、いろいろの差しさわりがあるからものが言えないとおっしゃる。あなた方にしてみれば、命をかけて戦っている基地労働者の諸君が、大ストライキを打ったときの影響のほうが大きいでしょう。われわれ力なき野党議員の一人や二人が幾ら頭から湯げを出して質問したって、言えないと言われれば、幾ら引き出そうとしたってもできないうらみを、きょういろいろかみしめたけれども、そういう問題を起こしてまで言えないということにはならぬでしょう、鋭意努力していますなんて。島田さん、なったばかりだから、いろいろ言いにくいと思うけれども、なったばかりのほうがまだ言えると思う。もうちょっとはっきり言ってください。一万人やるのか、やらないのか。
  260. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほど在日米軍の削減なり、あるいは在日米軍基地の縮小整備、この問題につきましては非常にまだ流動いたしておりまして、具体的にはお話ができない、そういう段階にあるというのは長官からお話がありましたが、労務問題というのは、そういう問題と非常に関連が深いわけでございます。私どもとしては、大体そういう趨勢にあるというふうには感じておりますけれども、まだどういう状態で解雇がなされるかということにつきましては、今日の段階でははっきり申し上げられない、そういうことを申し上げたいわけでございます。
  261. 上田哲

    ○上田哲君 じゃあ一つずつ聞きますけれども、どういうふうに言ったって言えなくったって、これは一歩と言いたいけれども、百歩、千歩譲って、アメリカという強大な相手がいることだから、わが政府としてはものが言えないんだと、だからいかに追及されても、一歩でも交渉を有利にするために黙って待ってくれないかと言われれば、これ以上言わないということはしかたがないからですよ。しかし、その振り返りとして、事態が明らかにされずに、そこで働いていた諸君の首が問答無用に切られるということは、これは言えるとか言えないという問題じゃないでしょう。明らかにいまどう言ってみたってアメリカの次年度、会計年度の終末期を目ざして、相当ということばがあったから、相当ということばが大部分であるかどうか、議論をしていたらばかばかしいから詰めないけれども、いずれにしたって撤退計画というものが実現していくことは、世界の情勢として、ニクソン・ドクトリンの中でも明らかなことだから、そういうことであってみれば、当然に解雇計画というのが出てこなければならぬ。解雇計画はあるのかないのか。
  262. 島田豊

    政府委員(島田豊君) そういう在日米軍基地の縮小整備という一つの傾向に伴いまして、それに伴って当然解雇問題が起こってくるということは予想せられておりまするが、まだ具体的に何名ということについては米軍からわれわれのところには正式にきておりませんので、現在の段階ではそういう具体的な問題についてはちょっと申し上げられない、そういう段階にあることを御了承いただきたいと思います。
  263. 上田哲

    ○上田哲君 事務レベルと言うんですから、そんなことは事務レベルの話ですよ。話をしているんですか、ないんですか。
  264. 島田豊

    政府委員(島田豊君) そういうことが十分われわれとしては予測せられますので、そういう事態が起こりました場合にどういうふうにするか、これはたいへん大きな世界的な影響をもたらす問題でもありますので、そういう対策について現在いろいろ検討し、その策を進めておるというのが現状でございます。
  265. 上田哲

    ○上田哲君 どうもよくわからないな。そういう話をしているんですね、話をしているわけですね。
  266. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 駐留軍の離職者対策につきましては、従来から……。
  267. 上田哲

    ○上田哲君 離職者対策じゃないですよ。解雇計画があるのかないのかという、話をしているのかと言うんですよ。
  268. 島田豊

    政府委員(島田豊君) その点につきましては、今日の段階ではまだよく明確に申し上げられません。
  269. 上田哲

    ○上田哲君 何ですか。
  270. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 明確に申し上げられません。
  271. 上田哲

    ○上田哲君 そんなのだめですよ。
  272. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 補足いたしますが、大体基地の整備統合等、将来起こるべき事態に備えて防衛施設庁と先方との間でもしそういう問題が起きた場合に、特別手当、手当の問題をどうするとか、あるいは予告期間の問題をどうするとか、そういういろんな問題について、こちら側としてはあらかじめ対処して、いろいろ申し入れておくことは申し入れておかなくちゃならぬし、もし将来そういう問題が起きた場合に、予算的措置を彼我においてどういうようにやるかというような問題について、具体的に相談をしていることは事実です。しかし、どこで何人とか、そういうところまで先方は意思表示はしていない。こちらは、しかしそういうことが将来起こり得るということを考えて、万全の手配をしておかなければなりませんから、そういう点において、先方に対していろいろ要求すべきことは要求し、話し合いを進めているというのが現状です。
  273. 上田哲

    ○上田哲君 話し合いを進めているということですから、いるということを大事にしておきます  いま予想されているような基地の引き揚げということからしますと、今日まで、たとえば昭和二十五年段階、二十七年段階、三十二年六月段階、三十五年六月段階、三十八年十二月段階、節目があるわけです。これは最盛時というとおかしいけれども、一番多かったときには二十九万人も基地で働く人々がいたわけでありまして、それが全く大きな節でどすんどすんと大きな音がするくらいに解雇せられていった。この節目ということで見るならばですね、まさに今回もその節目に当たることは、もうそこで働いている人間にしてみればすぐわかることですよ。そういう状態になってみれば、はじき出される数字が一万人という風説が決してヤマカンで言っている数字ではない。きわめて年の瀬に身を切られるような冷い風を感ずるという数字なんです。だから一万人ということを、吹っかけて言っているというようなものとしてではなくですね、話をしている、対策を講じているというのならば、その辺のところをひとつしっかりもっととらえて考えていただきたいと思います。まず精神論ですけれども、もう一ぺん念を押しておきます。
  274. 島田豊

    政府委員(島田豊君) そういう大量解雇の事態が予測せられますので、これは先ほど申しましたように非常に大きな問題でございますので、われわれとしても対策には万全を尽くしたいと、こういうふうに考えております。
  275. 上田哲

    ○上田哲君 ようやくそこで三つ出てきた。話はしている、それから予測される、そして三つ目には、それを十分に保障していけるように考えると。まあここまではきましたから、これはまあことばだけにならないように、ぜひお願いをしなければならない。  で、ここに全駐労からの文書があるわけですがね。「このような非常事態に対し、雇用主である政府が労働者に対する確固とした対策方針を未だに明確にしないことを極めて遺憾とするものであります。従って本組合は、この重大事態に対し、敗戦後二十五年にわたり真面目に勤続してきた駐留軍労働者に対し政府の責任ある措置として、左記を早急に講ずるよう、重ねて強く要請致します。」ということになっています。そこでたくさんありますけれども、重要なところ、「昭和四十五年度予備費緊急支出をふくめ、次の措置を実施すること。」、一番目は「特別給付金を一律八万円引上げ支給すること。」、二番目は「雇用安定法の制定と、法制定までに発生する人員整理者全員に対し、再就職までの期間生活保障の措置を講ずること。」、三番目、「駐留軍離職者対策センターに対する国の助成金を大巾に増額すること。」、四番目、「臨時措置法による援護措置の増額と離職者対策の拡充強化をはかること。」等々です。  いま三点にわたって見解が出ましたけれども、それを絵空ごとにしないために、このことについてはぜひひとつ具体的に実質的に御努力をいただかなければならぬと思うので、責任あるひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  276. 島田豊

    政府委員(島田豊君) ただいまの各事項につきましては、まず特別給付金の増額支給につきましては、現在これは勤続年数によりまして異なりますが、人員整理を受ける離職者につきましては、現行は二万円ないし二十七万円の特別給付金を支給いたしておりますけれども、これは来年度の予算といたしまして五万円ないし八万円の増額、したがいまして、七万円ないし三十五万円の増額支給ができますように現在要求をいたしておるところであります。  それから、特別休職手当の制度を創設いたしたいということで、これは中高年齢層が非常に多いということに着目いたしまして、そういう中高年齢層の方々が離職されます場合に、解雇発行日以降三カ月間、いわば一つの待命制度的なものとして考えまして、特別休職手当を考える、こういう一項目を要求いたしておるところでございます。  また、各所にあります離職センターへの助成につきましても、増額要求をいたしておるところでありまして、こういう事項につきましては、極力その予算措置について努力をいたしていきたいというふうに考えておるわけであります。  なお、現在基本労務契約におきましては、解雇予告期間が最低限四十五日となっておりますが、これにつきましても、本年の当初以来、一般の労働慣行なりその他を考えまして、九十日間の予告期間を置くように、これは米側に再々申し入れをいたしておりまして、米側も極力その点については努力をするということを確認いたしております。なお、この問題につきましては、引き続き努力をいたしたい。  なお、それ以外の離職者対策につきましては、たとえば職業訓練でありますとか、あるいは職業紹介でありますとか、その他の各種援護措置につきましては、関係各官庁の努力をも待たなければならない点が多々ございますので、これにつきましては、総理府にあります中央離職者対策協議会を中心といたしまして、各官庁の協力を求めながら、そういう措置について万全の措置を講じていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  277. 上田哲

    ○上田哲君 これについては九月の二十九日の本院の内閣委員会の席上で、中曽根長官自身も努力を約束されております。この際長官からのはっきりしたひとつ御決意を承りたいと思います。
  278. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 駐留軍関係の離職者のいろいろな待遇面や処置につきましては、われわれとしては誠心誠意努力してまいりたいと思っています。いま施設庁長官が御報告いたしましたような措置を来年度予算でも盛り込んでおりまして、これらの処置をぜひとも実現するように、予算の際にも努力をしてまいりたいと思っております。予算の及ばない部面もまた出てくるかもしれませんが、それらにつきましても、われわれとしては、できるだけのことをしてあげたいと思っております。
  279. 上田哲

    ○上田哲君 これについては防衛庁や防衛施設庁が大いにがんばっても、さいふを締めているところがその気にならなければどうにもならないのです。大蔵大臣の代理として大蔵省からしっかりした御答弁をいただきます。
  280. 吉岡孝行

    説明員(吉岡孝行君) ただいま防衛庁のほうから御発言がありましたように、来年度予算の問題として特別給付金、それから特別休職手当、それから離職者センターに対する補助金増額等の要求が出されております。われわれとしましては、ただいまそれを来年度予算編成上の問題として鋭意検討中という段階でございます。
  281. 上田哲

    ○上田哲君 頼みますよ。これは何だかわけのわからぬことでは困るので——ちょっと私も困ったですね。(「再答弁」と呼ぶ者あり)うしろから言われて、残念だけれども、これではやはりすわれないから、ぜひひとつあなた、私はあえて大蔵大臣代理と言ったのですから、官姓でも名のって——これは先にいってふえる数ではないのだから。事実、防衛庁長官も、なりたての施設庁長官も、一生懸命いまがんばらなければならないということを言ったんだから、このことで不満が出てくる余地はないのです。ただ、胸に響くような、傍聴の人もいるわけです。胸に響くような、問題が無意味にこじれていかないような——何かお経読むような国会答弁だから、こういう事態を引き起こしたのだということを言われることのないように、やはり、この国会で一つ残しておきましょう。わかりました、やりましょうということくらいは、はっきり言ってください。
  282. 吉岡孝行

    説明員(吉岡孝行君) ただいま申し上げましたように、とにかく来年度予算編成上の問題ですので、まだ結論を得ておりませんので、これ以上のことはごかんべん願いたいと思います。(「よしろい」と呼ぶ者あり)
  283. 上田哲

    ○上田哲君 よろしいとは何ですか。国会の権威にかけて、そういうよしというのはいけませんよ。いまここで首切られる人間がいるのですよ。そんなことを言えば給与表は通らぬですよ。私は、大蔵大臣が出たって、胸に響くような答弁が出るとは思いませんよ。思いませんが、もう少し前向きの答弁というのはあるでしょう。笑いにまぎらわして——たいした金じゃないじゃないですか。そこのところをもう一ぺん前に出て——あのときに上田にいいかげんに引っかけられたから、ついつい言い過ぎてしまいましたと言っても、大蔵省に帰ってしかられるはずはありませんよ。それをいかにも典型的といえば、これほど典型的なことはない、こんなことは。わざわざここに出てきて、これ以上申し上げられませんという断定的な答弁をするならば。しかも、そこへ持ってきて与党理事がそれでよいということになるならば、私はこの答弁では納得しないから、委員長に申し上げる。これは直ちに休憩をしていただき、理事会を開いていただきましょう。
  284. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  285. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。暫時休憩いたします。    午後四時十八分休憩      —————・—————    午後四時三十二分開会
  286. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  先ほどの説明員の答弁は、質問の趣旨に合致せず、不十分と思われますので、後刻責任ある者から答弁をしていただくことにいたしたいと思います。
  287. 上田哲

    ○上田哲君 委員長のただいまの説明を了解して、今後の質問を明日に保留いたします。
  288. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 三案に対する審査は後刻に譲りたいと存じます。     —————————————
  289. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 外務省設置法及び在外公館勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  290. 矢山有作

    ○矢山有作君 外務省にお伺いいたします。実はきょう大蔵省なりさらに通産省に来ていただいておったほうが、質疑をするものとしてはいいんですが、まあ審議を進める時間的な都合もありますので、大蔵省、通産省には来てもらっておりません。このことはすでに昨日外務省に御連絡を申し上げて、十分外務省のほうでお答えがいただけるように御準備をいただくように申し上げておきましたので、そういう前提に立って質問をさしていただきます。  まず、最初のお尋ねですが、最近の政府の中国問題に対する考え方としていろいろなことが言われておりますが、これをつづめて言うとこういうことになるんではないかと思うのです。要するに中国問題に対する対処のしかたというのは、国際信義を重んじ、国益を守り、極東の緊張緩和に資するという観点から周到かつ慎重に検討する、こういうふうに大体政府の見解というのは理解していいんではないかと思いますが、それに相違ございませんか。
  291. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それに相違ございません。
  292. 矢山有作

    ○矢山有作君 それに相違ないというお話でございますが、それでは私も何を言っておられるかよくわからない。一体どういう方針を持っておられるのか、どういう方針が出てくるのか、このことばからはうかがい知ることができない。したがって、私ができないのですから、国民の皆さんも中国問題に重大な関心を持っておりながら、政府が何を考えているのかさっぱりわからぬということだろうと思うのです。そこで私はこの問題で少し具体的に政府の考え方をお聞かせ願いたいのですが、ここで国際信義を重んずると言っておられるのですが、この国際信義を重んずるというその中身は一体何を言っておられるのか、明らかにしてほしいと思います。
  293. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 国際信義ということは、中国問題につきましても、従来のたとえば日華平和条約というものを締結して、それを守ってきているということも国際信義でございまするし、それから中国問題という非常に大きな、特に日本にとっては大きな問題でございますが、アジアの諸国等といろいろ従来も日本として関係を持ち、協調も保ってきつつありますし、そういう国際的な関係等との関係も、国際信義の中の一つと考えられる要素ではないかと思います。そういったようないろいろの点に着目して一言で国際信義と言っているわけだと、かように御理解願いたいと思います。
  294. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこで、それでは日華平和条約の内容——性格内容と言ったらいいのですか、これをお尋ねしたいのですが、日華平和条約というものの基本的な性格というものは、どういうふうに理解したらいいのでしょうか。
  295. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは締結されたときの状況、そこに至る環境等を踏まえて考えなければならないと思いますけれども、よく常識的にもいわれますように、日本は不幸にして戦争をしました相手がいわゆる蒋介石政府である、それとの間に平和状態をつくりあげるということがこの条約の性格ではなかったかと思います。そういう性格のものであり、そして国と国との条約におきましては、ことに戦争状態というようなことについては、これは国を代表するというその政府との間に結ばれた国と国との関係でございますから、戦争状態が終結して平和条約になった、こういうふうに理解しているわけでございます。
  296. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、いまのお答えを総合しますと、蒋介石政府との間に戦争終結をされるために結んだ条約だ、その蒋介石政府というのは中国を代表する政府なんだと、こういう意味なんですか。
  297. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ただいま申しましたように、その締結したときの状況、それから締結した意義ということはそういうことにあると、こういうふうに理解してしかるべきではないかと思います。
  298. 矢山有作

    ○矢山有作君 わかりました。まあ大体いままでの外務大臣の答弁もこういう答弁で終始をされておるようですが、そこで私はひとつお伺いしたいのは、そうすると外務大臣のいまおっしゃる、日華平和条約は国府を要するに唯一の主権者として、そして結んだ条約だと。したがって、その効果は中国全土に及ぶと、こういうことなんだろうと思いますが、そうなると私はちょっとわからぬのは、十二月の十四日に衆議院の予算委員会で——これはまだ会議録ができておりませんから、新聞記事で見たところで申し上げるんですが、法的には中華人民共和国との間は戦争状態だと、こういう言い方をされているわけですね。そうするとこういう総理の考え方に立つならば、この日華平和条約の効果は中国全土には及んでおらぬということになるわけですね。あなたの場合には、蒋介石政府というものを唯一の主権者と認めて、これは日華平和条約を結んだ。したがって、その効果は中国全土に及ぶ。したがって戦争状態は終結しておる、こういうわけです。ところが、総理のほうのこの間の答弁は、先ほど言いましたように、繰り返しますが、法的には中華人民共和国との間は戦争状態だと、こう言うんでありますから、このことは、これは蒋介石政権と結んだ日華平和条約の効果は中国全土には及んでおらぬ、こういう立場に立った御答弁だと思うんです。それはかなり大きな食い違いがあるんですが、そこのところはどう理解したらいいんですか。
  299. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは、その条約のお話と、それから事実の関係をいろいろ錯綜しておりますから、私どもの申しておりますことは同じことを申しておるわけでございますし、ことに十四日の、衆議院の予算委員会質疑応答を全部総括してごらんいただきますと、その点政府の考え方が御理解いただけると思うのでありますが、繰り返して申し上げますと、日華平和条約の意味するところ、あるいは締結したその意義というものは、国と国との関係ということにおいては戦争状態が終結したと、こういう意義を条約論としては持っておるものである、これが政府の立場であります。逆に、中華人民共和国のほうは、法的には日本との間に戦争状態が続いておるといって主張をしておられるということも、日本政府としては事実として承知をいたしております。こういうふうにわれわれは考えておりますから、これを総括的に詳しく質疑応答をずっと通じてごらんいただきますと、政府の考え方といいますか、見解というものはおわかりいただけると思います。
  300. 矢山有作

    ○矢山有作君 いや、わかるんですよ、私には。政府はきわめて巧妙に事実論と、それからいわゆる法的な立場とを、そのときどきによって都合のいいように使い分けておられるということはわかります。いつまでもそういうことをやっておられるから、中国政策に対する確たる方針が出ないということは、私はそのことだけはわかります。  それからもう一つお伺いしますが、二十七年の六月二十六日の参議院の外務委員会の議事録で見ますと、当時曾祢議員の質問に答えて、吉田総理はこういう答弁をしておりますね。日華平和条約は中華民国政府というものを全面的な中国の主人として承認したものではないと、こうはっきり言っておるんですね。そうすると私は条約ですから、この条約の解釈は、いわゆる条約としての立場から厳正にやっていかなけりゃいかぬと思うんです。このときの総理はどういう立場でこういうことを言われたんでしょうか。私は、これは条約上の解釈として総理はこのときにはっきりこういうふうにおっしゃったんじゃないかと、そうすると二の立場に立つならば、明らかにこの当時は一つの中国、一つの台湾の立場に立って吉田総理はこの日華平和条約を結ばれたという意図がはっきりうかがえるんじゃないか、そういうふうに私は理解するわけです。そうして、そのことが、たまたまこの間の総理の答弁に、法的には戦争状態は終結しておらぬということになってあらわれたのじゃないか、こういうふうに思うんですがね。そうしてみると、あなたの言っておられる解釈が私にはどうしてもうなずけない。あえてそこの中に矛盾はないんだとおっしゃるならば、これは事実論と、それから、法的な問題とを巧妙に使い分けをして、そのときどきをしのいでおられる。こういうふうに私は感ぜざるを得ないのです。
  301. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私にもう少しその説明をさしていただくと、こういうことなんであります。およそ条約論一般といたしましても、あたかも国連における代表権というものが中国について論議の対象になっておりますと、やや似た性格かと思いますけれども、国と国との間の状態においては戦争状態が終結した。これが日華平和条約の締結のときの意義であろうと、かように条約論として考えているわけでございますが、このことは、たとえば日本と中国本土との関係におきまして、たとえばこれはいろいろの例をあげられることと思いますけれども、通商の関係でございますとか、人の往来に関する問題でございますとか、そのほかいろいろの点で、この土地に関連の深い問題におきまして考えてみれば、これは日華平和条約に関する交換書簡等でも明らかなように、そういう問題については、その適用される範囲というものが、地理的に限定されていなければならない。これは事実の上に立って解せられなければならないわけでございますから、その点におきますと、この平和条約における交換書簡等におきましても、適用範囲のことについての書簡の往来で明らかでございますように、適用の範囲というものは限定されておるわけでございます。したがいまして、この条約できめた内容におきましても、その問題の範疇によって、こういう法理論というものは明確にしておかなければならないのではなかろうか。これが日華条約についての私は法理論的な見解である、かように存じます。そうして、これに対してくどいようでございますけれども、中華人民共和国としては、その平和条約自身を否認しておることはもちろんでございますけれども、法的にも、いや、自分のほうとしては、日本と中国、まあ本土とはっきり言ってもちろんおりませんけれども、戦争状態が法的にも終結していないのであるという見解をとっておられるということも事実として承知をいたしております。こういうわけでございます。  それから、これもくどいようでございますが、いま例をあげました通商とか人事とか、そういうふうな問題につきましては、現に日華平和条約は中国本土には適用されていない。こういうことははっきり言えると思います。
  302. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は日華平和条約を結んだときの状態というのは、もう私が申し上げんでも、外務大臣よく御存じですね。日華平和条約を結んだ三年前にすでに中華人民共和国というのが成立しておりましたね。しかも、そのときの状態というのは、蒋介石政権は、中国人民から追い出されて、行くところがなくなって、中国領土の一部である台湾に逃げ込んだわけでしょう。そうして、その息の根がとまらずに済んだというのは、アメリカの軍事力のおかげなんですね。そういう事実を見たならば、これは私はやはり中国全体を代表する政府は中華人民共和国であるという、この事実認識が当然出てくるはずだと思うのです。それをその当時、平和条約を結ぶということから、ダレス等の圧力等もあって、日華平和条約を結ばされたわけでしょう。つまり現実の問題として中国を支配していない、台湾に逃げ込んだ蒋介石一味を無理やりに中国の正統政府とこじつけて平和条約を結んだところに矛盾が起こっているわけです。ですから、その後の政府のこの問題に対する考え方というのは、ときによっては現実の事実に立脚した点に重きを置いた答弁をされるし、ときによっては条約論に中心を置いて答弁をされるということに私はなっておるのじゃないかと思うのです。しかし、これはいままで、ずっと政府もそれをやってこられたわけですから、ここで一気にどうしなさいといっても、なかなかできる問題じゃないでしょう。  そこで私は聞きたいんですが、今後実際問題として、いままでのような態度をとり続けるのかどうか、それとも、最近何か香港のほうでいろいろ中国問題の検討をやられたようですが、そのときの結論として少し前向きになろうというようなことも言っておられるようですが、前向きになるというんなら、具体的にどういうふうに前向きになっていくのか、少し目、一体的に御説明が願いたいのです。私はいままでの条約の解釈のしかた、特にあなたのとっておられる立場をつき詰めていけば、これは台湾の側に立った一つの中国論ですから、これはとてもじゃないが、中華人民共和国との間の道は開けてこないと思うのですね。だから、そこにあなたがどうしても将来この世界の風潮であり、国民の世論である中華人民共和国との間の問題を解決しようということになれば、そこに一つの大きな転換を求めなければならぬと思うのです。その具体的な考え方というものを私はもう少しでもおっしゃるべきじゃないかと思うのですがね。
  303. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それはもう私もまことにごもっともな御質問だと思うのです。ところで、私はいま政府といたしましても、特に私どもといたしましては、中国の現状というものに対して、何とかこれは考えていかなければならないということを真剣に検討しておるわけなんでございますが、問題が複雑で重大でありますだけに、知も非常に御非難を受けていることは万々承知でございますけれども、こうしていこうという実はまだ態度を明確にするところまで政府としての態度をきめ切らないわけでございます。それがきめ切れるようになり、また、そういう一つ考え方が生まれ出て、これはまた一人芝居ではどうにもなりませんですけれども、いろいろの環境をつくり上げ、あるいは調整していく、その過程において、今後の問題として、ただいま御指摘の平和条約の問題その他も、その基本的な考え方一つつくり上げられ、そうしてそのための環境のつくり上げ、あるいは環境の調整というようなことの中に、これは考えられていかなければならない問題であろうと、かように存じておりますので、私がここでも、ただいま御説明したような考え方は、この平和条約のできたときの由来、それからその条約としての持つ意義ということを御説明をし、これは私の見解といたしましては、従来からの政府の見解でございますけれども、これを御説明しておるのであり、かつ、中華人民共和国としては、法的には日本との戦争状態がまだ続いているのだという見解を強くとっておるという事実も、政府としては認識しておりますということを必ずつけ加えて申し上げておるわけでございまして、その辺のところから、われわれが何をこれから検討していくかということについては、いろいろの条件、いろいろの事実、あるいはまた冒頭に御指摘をいただきましたが、国際信義の尊重というようなことも大きな要素でございましょうが、いろいろの要素から考えていかなければならない一つの大きな問題であるということの認識は私も十分持っているつもりでございます。
  304. 矢山有作

    ○矢山有作君 幾ら外務大臣が大きな問題だという認識を持っておられても、あなたのおっしゃった日華平和条約ができたときの事情なり、その持つ意義はかくかくであるということを私は言っておるんだとおっしゃるけれども、その日華平和条約ができたときの事情が、先ほど述べたような虚構の上に成り立っておる、根本的な誤りがあるわけです。したがって、その点を反省をしていくということがなかったら、具体的な方針は出ないんじゃないですか。日華平和条約ができたときの事情と、その持っておる意義にこだわっておったら、私は中華人民共和国との道を開くということは永久にできないと思います。そもそもの出発点が誤っておるんですから、その出発点を改めていくんだという基本的な認識に立たなければ道は開かないんじゃないですか。それから第一、国際信義、国際信義とおっしゃるけれども、いわゆる蒋介石一味、台湾に逃げ込んだ蒋介石一味との関係を国際信義とおっしゃることが、私は理解がいかないんです。あの戦前の日本と中国との関係を考えるならば、中国人民のほうにこそ日本は国際信義を感ずるべきなんです。あの侵略戦争でたくさんの人を殺し、たくさんの財産を失わせたわけでしょう。その中国人民のほうにこそ国際的な信義を私は日本は感ずるべきだと思うのです。そうして、その中国人民から追い出されてしまった蒋介石一味、これに対して国際的信義を感ずるというところに、これまた一つは問題があるんじゃないでしょうか。なるほど、保守党の有力政治家の中には、いわゆる友情において蒋介石一味と非常に懇意関係にある人があるかもしれません。しかし、個人の友情を国際信義に置きかえてもらっては私は困ると思うのです。このところを思い切って外務大臣が腹をおきめにならぬ限り、幾ら口で中華人民共和国との道を開きたい、大きな問題だから、何とか模索していくのだといっても、幾ら模索しても道は出ぬじゃないのですかね。一番もとの誤りを正しなさいよ。
  305. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その日華平和条約ができましたときの状況、あるいは環境等について、当時の政府のとった態度というものは、日本の国益のために是なりと、私はかように思っておりますから、そこのところの論議はしばらくおきまして、私は先ほども申しましたように、現状の認識として、この平和条約の条約論としての意義というものを申し上げましたが、現状認識として、中華人民共和国が逆に法的に戦争状態が日本との間には終わっていないのだという見解と立場を強くとっておるということを政府は承知いたしております、こう申し上げておるわけでございます。で、それ以上、私は先ほど申し上げましたように、中国問題につきましてはいろいろの要素や国際環境などを考え合わせて、先ほど来おあげいただいておりますような三つの基本的な考え方に基づいて最善と思う考え方をつくり上げようといたしておるわけでございますが、その考え方はこういたしたいと思います、ということを申し上げるだけのまだ用意と申しますか、方針をきめ切っておりませんので、そこから先にまいりますと、私としてもまだ御説明したり、御答弁したりする用意がないことを、たいへんお答えができなくて申しわけございませんが、そういう立場以上は申し上げられないことを御了承いただきたいと思います。
  306. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、このコンニャク問答を幾ら繰り返してもらちがあきませんが、ただ言えることは、幾らあなたが模索をされても、一番日中関係を阻害しておる根本の原因になっておる日華平和条約の問題が処理されなければ、私は日中関係の打開というものはきわめて困難だろうと私なりに認識しております。  次に質問を移しますが、少し最近の東南アジアや、それから台湾、韓国等と日本との経済的なかかわり合いについてお尋ねを申し上げてみたいと思うんです。聞くところによりますと、去る十一月ごろですか、ロン・ノル政権に対して日本政府はトラック、フェリーボートなど輸送手段を中心とした第二次無償援助二百万ドルをきめたということでありますが、これは事実でありますか。また、その内容はどうなっておりますか。
  307. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) カンボジアに対しましては、ただいまも御質疑がございましたように、二回にわたりまして援助をいたしたわけでございます。これは、最初が二百万ドルで、その次は正確に申しますと百七十万ドルでありますが、あとで御説明いたしますように、これも二百万ドルと申し上げたほうがより正確かと思いますが、合計いたしますと四百万ドルでございます。これは御案内と思いますけれども、政府といたしましては、人道的な立場に立ちまして、カンボジアの人民と申せば一番正確かと思いますが、この窮状に対して人道的の立場で救援をしたいと、こういう考え方でございますから、いま申しましたような、総計いたしますと三百七十万ドルについては、全部赤十字の必要と認めたもの、すなわち現地の情勢の資料に基づく赤十字の要請にこたえて食糧、衣料、医薬品、これを中心にして援助いたしたわけでございます。ところで、その二回目の百七十万ドルにつきましては、一回目の状況から言って、赤十字からこれを輸送する、たとえば船便で運びますが、そこから先の配給が全然できないというような切なる懇請がありましたので、若干の輸送機関、トラック等、この第二回目の百七十万ドルの中には相当部分この中に入っているわけでございます。第一回分の中にもあるいはトラックも若干入っていたかと思いますけれども、正確な数字等につきましては、政府委員から答弁申し上げます。
  308. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) どの程度具体的に申し上げたらよろしいか、あれでございますけれども、第一次のときでございますが、これは医薬品、それから食料品、これは主としてかん詰め、ミルク等でございますが、そのほか衣類、寝具等等でございまして、第一次にはトラックは十台入っております。  それから第二次のほうでございますが、第二次の内容としましても、医薬品、食料品、繊維品、それから車両、この中にはトラックが六十台とそれから救急車等々の車も入っておりますけれども、そのほかに難民用の組み立ての住宅の資材等等を含めまして百七十万ドルということでございます。
  309. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ言い方はいろいろあると思うんです。私は、第一次援助のときには人道的の立場で、食糧衣料、医薬品、寝具等中心にこれ送ったわけだということで、なるほどある程度人道的な立場も見えると、こういうふうに感じました。それに対して十台のトラックがついておるんですから、おそらくトラックがないだろうから、この援助した品物をこの十台のトラックで送ってやろうということでやられたと思うんです。ところが、第二次の援助は、これは何といっても私はトラック、車両が中心になっておるようにいまの話を聞いて思います。そうすると、これは幾ら赤十字を通じたとか何とか、その持っていく方法というのはいろいろあるかもしれませんが、このトラック、車両などというものは、軍事的な転用のきくものであるということを私は考えなければいけない問題じゃないかと思う。そういうところから言うならば、第一次の援助に比べて第二次の援助は、いわゆるロン・ノル政権に対する軍事的な性格を帯びてきたてこ入れじゃないか、そういう援助は、私は、いまのカンボジアの情勢から見て必ずしもすべきものではない、どころではない、絶対やってはならぬことではないかと私は思うんですがね。
  310. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) おことば返すようですけれども、このいままで行ないました四百万ドルにつきましては、これは方法を赤十字に委託したというのではなくって、むしろ赤十字の欲するものや車両等を、こちらがごもっともというので、人道的援助として実施をいたしたわけでございまして、これは国際赤十字等もよく了承しているところであると思います。政府として直接に、先方の政府からの要請とか注文とかに応じて政府が直接にやったものではございませんで、これは赤十字の判断にゆだねたわけでございます。
  311. 矢山有作

    ○矢山有作君 次にお伺いしますがね、聞くところによりますと、最近二千万ドルぐらいな無償援助の要請がロン・ノル政権のほうから出ておると伝えられておりますし、ほかにまだ二千万ドル程度の円借款の申し入れが出ておる、こういうふうに言われておるようです。これ事実なのかどうか、お答えを願いたい。
  312. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 援助要請といたしましてほぼ二千万ドル、正確に申しますと千九百何十万ドルになるものと思われるような要請がありましたことは事実でございますけれども、これはただいま御質問の御趣意にありますようなところとも勘案いたしまして、これについては、政府としてはまだ決定をいたしておりませんし、また、その内容等につきましても、先方の希望に、はたして応ずることが適当かどうか、この辺は十分検討をいたさなければならないと思っております。
  313. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、これは私どもは報道を通じていろいろと聞いておることなんですから、それを確信を持ってこうなっておるんだろうということは言えません。しかしながら、私どもの聞いておるところでは、二千万ドルの無償援助の要請が出ておる。それを道路だとか橋の修理だとか、そういったものが含まれておるということですが、これに対して日本政府は、かなり積極的に応じようとしておると言われておりますがね、そんなことは絶対ないということなんですか。  私は、こういうようにいまカンボジアが戦争のまっただ中にあるということは、あなたがよく御承知のとおりなんです。そういうときに一方の政権、ロン・ノル政権に対してこういうような本格的な経済援助をやるということは、これは私は非常な大きな問題だと思うんです。だから絶対に政府はそういうことは考えておりません、ただ単に話があっただけですということが言い切れますか。
  314. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まず、いま橋その他の話も出ましたけれども、御案内のようにカンボジアにつきましては、プレクトノットダムにつきまして、かねがね国会の審議を仰ぎました中にもこのプロジェクトは入っておりますが、借款と贈与によりまして八百四十三万ドル相当の経済協力を実施中であります。ところが、これは現地の治安情勢等から考えまして、その実際の実施の作業はあんまり進まないというか、縮小しております、当初の計画よりも。こういう点があるいは一緒になっておる点かとも思います。  それからもう一つは、何しろいま、まだ不安定な情勢でございますから、このことはわれわれも欲しないことであって、やはりインドシナ情勢は、全般としてもすみやかに平安な状態になることを望みたいと思います。したがって、治安の回復といいますか、戦火がおさまる場合において、あるいはおさまりつつ平静の状態が展開してまいりますれば、私は日本の主体的な立場においても、やはり開発途上国の人々の民生の安定のためには相当の協力をしていくことが、日本としてのふさわしい立場ではないだろうか、かように考えるわけでございまして、そういう面におきましては、将来積極的に考えてしかるべきではないかと考えております。そのために、たとえば、先般もそういった現地の情勢なども政治的、社会的に掌握する意味も込めまして、関係各省から応援を頼み、視察、調査をするための一団を派遣して、その調査報告を提出させて、これも検討いたしておりますが、将来はそういう方向も考えなければならないと考えておるような状態でございます。また同時に、そういった場合におきましては、二国間というだけではなくて、たとえばIMF等におきましてもマルクの援助ということも相当考えておりますので、日本がその中に入れて、日本の協力ということも考えていいのではないかと思います。いま私が申しましたのは、インドシナ全体に対してのことであり、それから調査団と申し上げましたのも、もちろんこれはベトナムを中心とするので、カンボジアではございません。
  315. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、少しはっきりしなかったと思いますが、こう解釈していいんですか。インドシナへの本格的な経済援助というのは、戦後でなければ本格的な経済援助はやらないというのが、従来とっておった日本政府の基本的な方針だったと思うのですよ。本格的な経済援助は、いまの段階、いわゆる戦争最中のいまの段階ではやらない。戦後において本格的な経済援助をやるんならやるんだと、こういう方針だったんだと私は思っておるのです。そういうふうな方針というのは、いまも変わっていない。つまり、いま私が申し上げた二千万ドル程度の無償援助の要請があるが、これはいまの戦争のまっ最中の状態ではやらない。戦後に考えることだと、こういうふうにはっきり理解してよろしゅうございますか。  それからプレクトノットのダムの問題は、これは私は、この問題で援助するということになったときは、これはカンボジアはいまのような戦争状態にはなかったときのことですから、それで戦争状態に突入して後、このプレクトノットのダムの工事は中止になったと、こういういきさつがありますが、ここのところは私も十分理解しておるつもりであります。ですから、要は、二千万ドル程度の援助に対して、この紛争の最中、戦争の最中はやらぬ、戦後に考えることだと、こう理解していいんですか。
  316. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 考え方の基本としては私はさようでございますが、ただ、こういうところの戦争というのは、はっきりした、どこどこで休戦条約ができたとかということが必ずしも予想されない。しかし、その途上において、たとえば道路だとか、橋梁だとか、あるいは発電というようなことも一つの例にあげられるかと思いますけれども、民生の安定、それから難民の救済から、進んで立ち上がる民生の安定ということのためには、情勢が先ほど申しましたように、平安の状態に近づくにつれて私は考えてしかるべきではないかと、かように思っておるわけでございます。  それから従来も、いまプレクトノット・ダムのことについて御言及いただきましたから、これは省略いたしますが、たとえばベトナムにつきましても、御承知のように、難民用の住宅建設のために協力贈与を行なっておりますし、それからチョーライ病院の全面改築計画、それからダニムダム、これはそもそもが賠償からの援助でございますけれども、無償援助に着手をしておるというようなわけでございますし、また、ラオスについて申しますならば、ナムグムダム計画基金に対しまして相当額の無償援助を実施をいたしております。また、たとえばタイ、ラオス間の電気通信施設の回線のケーブルとか、あるいはタゴン農場の配電線の設備でございますとか、こういうものは、いずれもわれわれとして援助をいたしてしかるべきものでありと考え、かつ、所要の手続や御審議を願っているつもりでございます。  それからさらに、為替安定基金に毎年相当額の協力をしておりますし、また技術協力等につきましても、先ほど申しましたタゴン農場に対する協力をいたしておりますほか、たとえば青年協力隊の非常な力強い協力が展開されている。こういうようなことは、現に展開中のものでございまして、これは戦争への協力とか、一方に加担するということではなくて、やはり全体としての民生の安定のためにということでございまして、私はむしろこういう面はもう少し積極的に、かつ多面的に考えてしかるべきではないか、かように存じておるわけでございます。
  317. 矢山有作

    ○矢山有作君 それらの問題はベトナムの問題を聞きましてからあとでもう一度申し上げます。  ベトナムの問題にいろいろと触れられたようですが、ベトナム援助についても先般、チャン・チエン・キエム首相ですか、この方が見えたときに、佐藤総理との間で積極的な経済協力を約束したということが言われておりますし、おそらくそれに基いてでしょうが、どういうふうな経済協力をやるかということで、先ほどお触れになったベトナム経済調査団が派遣されたと、こういろいろ言われているのですが、ベトナム調査団が派遣されてお帰りになって、そして具体化しておる南ベトナムに対する援助というのを先ほど触れられたと思いますが、もう一ぺんおっしゃってみてくれませんか。
  318. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それでは鹿取参事官から。
  319. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) ベトナム調査団が参りまして、ベトナムの経済情勢、それからベトナム側が日本に対して協力を求めましたいろいろなプロジェクトについて、はたしてそれが経済的に技術的に可能であるかどうかというようなことを調査してまいりまして、その調査結果を政府に提出いたしましてから、関係各省寄り寄り集まってその結果をどう取りまとめるべきかということを現在検討中でございまして、それでいまの段階で申しますと、その結果何かきまったというところまではきておりません。
  320. 矢山有作

    ○矢山有作君 どういうものが向こうからの要求として出ておるかというような点も全然わかりませんか。
  321. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) ベトナムが特に強調いたしました点は、インフラストラクチュアと申しますか、基礎的な部門、特に農業の点でございまして、農業開発について協力してもらいたい。それからもう一つの点は発電関係でございます。で、農業関係につきましてはカムラン地区のかんがい、これについて日本の援助を求めたい。それから発電関係につきましてはカントーの発電所、これを日本に援助してもらいたいという要請があったわけでございます。
  322. 矢山有作

    ○矢山有作君 先ほどの外務大臣のカンボジアなり、あるいは南ベトナムに対する援助の姿勢のお話を伺っておりますと、いわゆる戦後でなくても、いささか平穏な状態になれば、その段階で民生安定のための援助というのは積極的にやるというふうな趣旨理解されるのですがね。私はいままでの政府の方針というのはそうではなかったと思うのです。いわゆる医薬品の援助であるとか、あるいは食糧だとか、衣料だとか、あるいは難民住宅だとか、こういったものについてはなるほどいままで援助をしたこともあるし、その程度はやるんだということが言われてきたと思います。しかしながら、本格的な経済援助、いま参事官のほうから説明されたようなそういった問題については、私はこの紛争最中、戦争最中には政府はこれはやらぬというのが、従来までの姿勢ではなかったかと思うのです。それが、いずれにしても急に変わって、たとえ戦争の最中であろうと、そうした援助をやるのだということはどういうわけなんですか。というのは、私は日米共同声明、昨年秋のあれを見てみても、「総理大臣と大総領は、ヴィエトナム戦後におけるヴィエトナムその他の東南アジアの地域の復興を大規模に進める必要があることを認めた。総理大臣は、このため相当な寄与を行なうとの日本政府の意図を述べた。」、これが御存じの共同声明の十三項の終わりのほうに出ておるのですね。これに基づいての大体考え方が、いままでの国会では、経済援助、東南アジア、特にカンボジア、南ベトナム等の戦争地域における経済援助の方針としては出ておったと思うのです。つまり、戦後だ、戦後に本格的な経済援助をやる、それに備えていくのだ、こういうことが出ておったと思う。ところが、いま急に、戦後でなくても、何とか治安状態が少しよくなれば、積極的にそういう建設的な援助もやるのだということになると、だいぶこれは方針の大転換になるわけですがね。これはどうしてそんなに援助を急がれるのですか。おそらくそういうふうに大転換なさった理由というのは、私のほうから先に言ってしまえば、この十月の日米首悩会談で、ニクソン大統領と佐藤総理の会談で、日本がインドネシア住民の福祉向上のための経済援助を強化し、同地域の安定に資したいとの考えを佐藤総理が述べて、それをニクソン大統領が歓迎したと、こういうことでありますからね。したがって、十月の日米首脳会談で方針の大転換を来たしたんじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  323. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この基本的な考え方は共同声明でございます。それには、いま御指摘のように戦後ということであり、それから何と申しますか、戦闘行動のデスカレーションということによって平定されて治安が回復してきたようなところにおいて、単純な難民救済と人道的な問題ということを非常に限定して考える考え方と、それをいま少し積極的に考えていく考え方と、さい然と分け得ることもなかなかむずかしいかと思いますけれども、しかし、カンボジアについては、先ほど申し上げましたように、人道的な立場で、難民救済ということでやったことは、これは御承知のとおりであります。それから、今後の計画ということを調査団においても考えたのでありますけれども、先ほど鹿取参事官からも申しましたように、この報告書におきましても、全体の情勢の分析がおもでございまして、先方としてはいろいろな希望を持っているわけでございますけれども、これは施策なり調査の対象として先方の意見を聞いたのであって、これにコミットしているわけではございません。これはあくまでも日本側として、主体的に、こういうところならば民生の安定に資する環境としてもやってしかるべきことであるというところを、これから十分検討していきたいということで、具体的にどうこうということを現在何もきめている段階ではございません。
  324. 矢山有作

    ○矢山有作君 何もきめていない、何もきめていないとおっしゃりながら、カンボジアに対する無償援助にしても、医薬品、食糧、寝具、衣料等の援助からエスカレートして、たくさんのトラックを援助するというように変わってきておるわけです。南ベトナムに対していままで話題に出ておるのは、この援助は、先ほども話に出たカントーの火力発電所だとか、あるいは農業かんがい計画だとか、いろいろ出ていますね。こういう援助をやるというのは、これは従来のいわゆる人道的な立場からやったというのとは基本的に私は性格が変わっておると思うのですね、援助の。それをまだ結論が出ていない、結論が出ていないと言いながら、最近、いつの間にか、国会が済んだら間もなしに、火力発電所の援助もやります、農業開発計画の援助もやります、あるいは病院の援助もやります、電話施設の援助もやります、こうなったんでは、われわれがここで何を口角あわを飛ばして議論しているのかわからなくなってしまうのですね。私はそういった、いま言ったような援助というのは人道的な援助のワクをはずれておる。なるほど、人道的な援助は幾らでも拡大して考えられるでしょう、それは。戦争しておるその地域で、火力発電所がない、だから住民は電気がなくて困っている。だから火力発電所をつくってやるこれは住民福祉のためになる。こういう言い方だってできるのですよ、そういうふうに拡大していけば。どんな援助だって全部人道的な援助になっちゃう。人道的な援助という名前で援助のワクを拡大して、そうして戦争をやっておる最中の地域に入って行って、一方の政権に加担をし、これにてこ入れをするというようなことは、これはやるべきではないのではないかと思うのですね。カンボジアに対する経済援助というのは、これはロン・ノルの側にやるわけでしょう。南ベトナムに対する経済援助というのは、これはサイゴン政府側にやるわけでしょう。そうすれば、あそこで戦争状態にある一方の政権へのてこ入れになる。しかも、これが本格的な経済援助ということになれば、これはどうなる。これは経済的な戦争参加じゃありませんか。私はそういうことはやるべきじゃない。人道的な援助といっても、それはやはりこういう戦争地域に対する援助については、できるだけワクを、純然たる人道の範囲に狭く解釈していくというような立場をとってしかるべきじゃないですか。どうなんですか。
  325. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) お述べになっております御趣旨は私もよく理解できるわけでありますし、それから私は、いまるる述べましたように、従来もやっておりますことの数個の例を申し上げたわけでございますが、これらは所定の手続によって、その方法等によっていろいろのやり方はございますが、国会の御審議を経るべきものについてはそういう手続を経て、御審議をいただいてやっておるわけでございますが、私は、先ほどあげましたように、たとえば電力でありますとか、それから農場経営についての技術協力、あるいはそれに伴う資金の援助とかいうようなことについては、これは、ですからたとえば二国間というだけの形ではなくて、むしろこういう種類の問題は、考え方としてはマルティのやり方が適当なものも多いかと思いますし、また誤解を防ぐ、あるいは政治目的とか、軍事目的とかいうことでないということをはっきり担保する意味からいいましても、そういう方法論のほうが、日本としてふさわしいものも相当あるように私も見受けますので、そういう方法論にわたりましても十分慎重に配慮して今後もやりたい。かように存じているわけでございますから、御趣旨、あるいはおっしゃっておることの意味を私も十分頭に入れながら今後も対処してまいりたいと思います。
  326. 矢山有作

    ○矢山有作君 やり方の問題に触れられたわけですがね。まあ日本単独でやるというのではなしに、いろいろな方法も考えられるとおっしゃるのですが、その場合は多国間方式というのですかね、そういったものをおそらく念頭に置いておられると思うのですがね。多国間方式も、よく考えてみなければいけないのです。たとえばオーストラリアやニュージランドや、そこらの連中と一緒になってこの援助をやるなら、これはベトナムの参戦国ですからね、ベトナム参戦国と一緒になって、この南ベトナムやカンボジアに援助するということになれば、まさに経済的な参戦国になるという結論になるのですがね。私は多国間方式、多国間方式とおっしゃるけれども、それを念頭に置いておかれるとするならば、これはやっぱり問題がありますよ。多国間でやったら援助をやってもどうということはないのだということにはなりませんな。どうなんですか。
  327. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これもおことばを返すようですけれども、多国間援助のやり方もいろいろございますし、それから、たとえば現にドイツ、カナダ、フランスというようなところも、先ほど鹿取君の説明にもございましたけれども、インフラストラクチュアなどの分野では相当援助、協力をやっておるわけでございますから、これは参戦国という意味ではございませんですから、こういう点にも着目をしてまいるべきではなかろうかと思いますけれども
  328. 矢山有作

    ○矢山有作君 なるほど、いまあげられたような国は参戦国じゃないですわね。参戦国ではないけれども、要するに、自由主義陣営に属しておる国であるということは間違いないですね。そういう意味では、私はそれらの国々と一緒のこの地域に対する援助にも問題があると思うのですね。サイゴン政府と対立しておるものは何か、ロン・ノル政権と対立しておるものは何か、こういうふうに考えていったら、私はそういう直接参戦国でない国と、いわゆる自由主義陣営の国と一緒に多国間方式でやるのだといって援助することにもやはり問題がある。要するに、こういう戦争状態にある地域の一方の政権のてこ入れになるような経済援助というものは、私はやめるべきである。そういうふうなことをやることは、これは緊張の激化になるんじゃないですか、かえって。緊張緩和させようとするならば、そういう戦争をやっておる一方の政権のてこ入れは、さあ、もっと元気を出してしっかり戦争しろというような、そんな気合いをかけるようなことはやるべきじゃないと思うのです、私は。そんな経済援助をしていけば、それらの援助を受けた国は、ロン・ノルにしてもサイゴン政府にしても、それじゃ、援助をもらった、力がついたのでもう一つ元気出して戦争やろうかということになるので、そんなことは私い間違いだと思うのですよ。むしろ戦争を長引かせ、激化させるだけじゃないか。そのことは緊張緩和にはならぬじゃないですか。緊張激化になるのじゃないですか、どうなんです。私はそう思うのです。
  329. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まあその辺になりますと、私の考えと多少ニュアンスが変わってくるかとも思いますけれども、たとえば農場でございますとか、かんがい排水であるとか、電気であるとかいうことは、民生全体の安定のためであって、私はそういう点が民心を安定させることにもなるし、武力による抗争というようなことが、自然これは欲せざるところであるということで、安定することが、これが緊張の緩和に私はなると思っておるわけでございます。軍事的の援助だとか、あるいは準軍事的援助というようなことをやらないのはもう当然のことでございますが、そこのけじめは十分考えて政府としてもやってまいらなければならない。で、これは日本としても、いかに繁栄してきたとは申しながら、結局これは国民のやはり直接間接の負担になることでありますから、その面から申しましても十分慎重な配慮というものが、政府としても非常に必要な一つの制約であろうかと、かように感じております。
  330. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは何べん繰り返しても、これまたコンニャク問答なんですが、農業援助だとかいう点を強調されますけれども、農業援助にしたって火力発電所の援助にしたって、これはたとえばカンボジアに対する農業援助、南ベトナムに対する農業援助というのは、ロン・ノル政権を通じてやり、サイゴン政権を通じてやるわけでしょう。そのためにロン・ノル政権のてこ入れ、サイゴン政権のてこ入れで、あなたがおっしゃるような、なるほどロン・ノル政権の支配下にある地域の民生安定になるのだといえば、それは言えるかもしれません。しかし、そのことは一方の対立しておる勢力には、これはやはり一方に対するてこ入れととられるのじゃないですか。私はだから一番危険を感ずるのは、民生安定という口実によって、いわゆる戦争最中に本格的な経済援助を強化しようという政府の下心が、あなたの答弁からでもうかがえるから、それで心配するわけですよ。そんなことになったら、これはもう一方の政権へのてこ入れであって、いわゆる経済的に日本がこの戦争に参加するようなものですわ。紛争を長引かせ、激化させる、これはたいへんなことだと思う。ですから、私は人道的な援助といい、民生安定の援助といっても、それは敵対する一方の政権に対しててこ入れをする、そうして戦争をさらに激化させるようなことの結果を招いてはいけない。したがって、きわめて限定的に狭く解釈すべきである、そう言っているわけです。これは拡大解釈していったら切りがない。また、そういうことをやるときに私は重大な問題として指摘しておかなければならないと思うのは、この四月に、いわゆるインドシナ三国人民の最高級会議というのが開かれましたね。ここで共同声明が出されました。インドシナ三国人民は、これは連帯して強力な団結のもとにアメリカ帝国主義と戦おうということをはっきりさしたわけです、この場で。   〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕 そうして、それに対して中華人民共和国のほうは、強力に支持するという政府声明を出しましたね、同じく四月。これらのことを考えたら、この地域に対する一方の政権へのてこ入れになるような経済援助というのは、これは極東の緊張を激化させても緩和させることにはならぬ、この点を私は御認識を願いたい。  次に入ります。日韓条約による経済協力の現在の状況を、実施状況を御説明いただきたいと思います。
  331. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 韓国に対するわが国の援助につきましては、、ずいぶんこまかくなりますから、一応それじゃ鹿取参事官から説明してもらいましょうか。
  332. 矢山有作

    ○矢山有作君 概括的に言ってください。
  333. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) はい、それじゃ概括的に。
  334. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 韓国との間の経済協力の実施分につきまして御説明申し上げます。  御案内のとおり、日本は請求権、経済協力協定に基づきまして、一九六五年十二月十八日から十年間にわたって二億ドルをほぼ均等に海外経済協力基金より韓国に貸し付けることになっておりまして、本年十一月末現在の貸付実行額は八千七百三十七万ドルでございます。   〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕 現在まで取り上げられている事業は二十九件ございまして、そのうちおもなものをあげますと、中小企業育成計画、鉄道設備改良計画、昭陽江ダム、海運振興計画、高速道路計画などでございます。それからことしの四月に、第四回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ第十九号によりまして、韓国の農業近代化、輸出産業の育成、それから中小企業の振興のために一億ドルの借款を供与することを約束したのでございますけれども、このうち五千万ドルについては輸銀資金で借款を供与するということになりまして、現在事務レベルで協議を続けております。  以上がいわば有償の案件でございますけれども、そのほか韓国との間には無償の案件がございます。無償の案件につきましては、やはり先ほど申しました協定に基づきまして、一九六五年から十年間に三億ドルの日本国の生産物と日本人の役務を賠償と同じような方式で供与することになっておりまして、現在第五カ年目を実施中でございます。で、本年十一月末現在の履行率は約半分に近くなっておりまして、正確に申しますと四八・四%になっております。金額で申しますと約一億−四千二十万ドルでございます。で、現在まで承認されたおもな品目を申しますと、繊維品、建設資材、肥料、化学工業品、化学薬品、繊維機械及び自動車部品等でございます。それとさらに農業用機材等の資本財となっております。
  335. 矢山有作

    ○矢山有作君 民間の信用供与は。
  336. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 民間の商業上の民間信用供与額を、承認ベースで今年九月末までの総計を申しますと、一般プラントは六十九件ございます。額にして申しますと、三億六千八百万ドルでございます。それから漁業協力の案件が二十三件ございまして、総額が二千七百万ドルでございます。それから船舶が五件、二千五百万ドルでございます。合計九十七件、四億二千万ドルということになっております。
  337. 矢山有作

    ○矢山有作君 外務省で「日韓経済協力」というのを経済協力局から出しておられますね。それをちょっと短い文章だから読んでみたいんですが、こういうことを言っていますね。「韓国経済に占めるわが国の経済協力の比重は、特定の分野、特に農業、水産業、各種製造業、鉄道、電力などの諸分野で圧倒的に大きいことである。農業部門における全天候農業事業、水産部門における漁船導入建造および改良といった事業はわが国からの無償供与があってはじめて可能となったのである。製造業についてみるならば、セメントの約五割、肥料の約四割、PVCの約七割、ナイロンの約四割、アクリル綿の全部、ポリプロピレン繊維の約六割、アセテートの全部、鉄板(薄板)の約六割、アルミ地金の全部(建設中)型板ガラスの全部(建設中)などは、わが国からの商業借款により導入された設備が生み出し或は生み出さんとしている。また社会間接資本部門では、電力(発電容量)の約三割、ディーゼルカーの約五割、貨車の約二割、しゅんせつ能力の約四割、輸送車輌の約一割、貨物船、油槽船船腹の約五%が、わが国からの有償資金および民間借款により導入されたものである。この他にも、製造業部門ではギアー、工作機械、造船、中小企業近代化、また社会間接部門では鉄橋、建設機械改良、電話、上水道、ダム、高速道路などに、わが国からの資金が投入されている。  このような形でわが国からの経済協力は、一方において韓国の国産化、輸入代替政策の線に沿った各種製造業に導入され、セメント、肥料、プラスチック、化学繊維などの自給体制の確立に寄与するとともに、他方、工業の発展を順調ならしめるための電力、鉄道、道路輸送などの社会間接部門の整備にきわめて大きな役割を果しているのである。このようにみてくると、一九六〇年代中期以降の韓国の高度成長は、わが国との経済協力関係なしには考えられなかったと結論しても大過ないといえよう。」、こういうふうに言っております。いまの、たとえば日韓条約による経済協力の実施状況を見ても、ここに指摘されておるそのとおりのことが私は言えると思うんですね。ことほどさようにいま日本の経済浸透というのは韓国に対してはきわめて大きい。しかも商業ベースの、いわゆる民間資本の進出が非常に大きいということが言えるんではないかと思います。ところが、これに新しい状況が最近出てきたのは、いままでは商業借款が中心であったけれども、韓国のほうが昨年ごろから外資導入の方針を切りかえておるようですね。というのは、商業借款の導入に重点を置くというと、いますでに韓国の財政はいままで導入した多量の外資の元利償還で、もう限界点にきておる。そこで商業借款にたよるよりも直接投資にたよろう、こういうことで投資環境の整備をやり、あるいは投資促進策というものをいろいろとっておるようですね。そういうところから、日本の民間資本の直接投資も昨年ごろから急激にふえてきておるということは、あなたも御承知のとおりだと思うんですが、いまの日本と韓国の経済の流れというのは大づかみに言ってそういうふうに言っていいわけですか。
  338. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) いま先生のお読みいただきました分析で、事実関係としては大体そういうことでないかと思います。それから民間資本の進出につきましては、先ほどは私申し上げませんでございましたけれども、少なくとも現在までは非常に少ない。件数は三十件でございますし、金額にいたしましても、本年三月末現在で千五百万ドルでございますので、全体の金額から申しましてもこれは多い額とは言えませんし、それからまた件数一件当たりの金額も非常に低いということが言えると思います。で、いま先生の御指摘になりましたとおり、韓国の財政経済情勢につきましては、世銀も注目をしており、世銀の勧告もあって、民間信用はある限度に押えようという政策をとっていると聞いております。
  339. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで最近の傾向として、民間の直接投資がふえる傾向にあるんではないですよいままでの実績は、あなたのおっしゃった程度です、今日まで。ところが、これからの傾向として、そういう方向にいっているのではないか。というのは、御承知のとおり、先ほど言いましたいわゆる投資環境の整備だとか、あるいは直接投資の促進策とか、いろいろやっているでしょう。私が指摘せぬでもあなたが御存じのとおり、そういう傾向の中で、そういう傾向が急激にふえるような方向になっていくんではないだろうかと思っているんです。
  340. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 傾向としては漸次ふえる傾向にあると思いますけれども、どの程度の率でふえるか、それが急激であるかどうかにつきましては、私どもでまだその点はよくわかっておりません。
  341. 矢山有作

    ○矢山有作君 先のことだからわからぬでいい。ただ傾向として、そういうことが聞きたかったわけですからね。  そこで、私はひとつちょっとお伺いしておきたいんですが、この前、四月の十九日から二十一日にソウル市で日韓協力委員会の第二回総会が開かれましたね。ここで実は重要な問題がありますのでお尋ねしておきたいんですが、この第二回総会の席上で、岸信介日本側会長、この方が冒頭で、「日韓両国は、近隣諸国を加えてアジアにおけるEEC的団結を形成すべき必然性をもっている」、こういう発言をされております。そして日本側の提案として、この経済部会に対して、「日韓合弁並に加工貿易振興公社(仮称)設立案」、それから「日韓合弁事業について」、「日韓長期経済協力試案」という三つのものが提出をされています。特に、「日韓長期経済協力試案」の内容を見ると、この内容は、浦項以南の韓国工業地帯と、日本の関西経済圏とを結びつけた経済協力圏をつくることをうたっております。その内容は韓国の工業地帯を日本の工業地帯の延長上に組み入れよう、そういうものだろうと思うのですね。で、会議ではこの案を正式に採用する形はとらなかったようであります。しかしながら、このときに出された共同声明で、「当面案件の解決を促進する一方、合わせて長期展望に立つ本格的なる日韓両国経済協力関係を樹立すべく、新たに「経済協力推進特別委員会を設置することとし」て、提案趣旨を積極的に推し進める方向を確認」しております。これを御存じでありますか。
  342. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私もそういう会議が行なわれたことは承知しておりますけれども、ただいまお触れになりましたような細部にわたりましての検討は、まことに不勉強で申しわけございませんが、私は存じておりません。
  343. 矢山有作

    ○矢山有作君 これはまあそうおっしゃるだろうと思ったんです。そういうふうに簡単に外務大臣がお片づけになるような日韓協力委員会というのは性格のものではないんじゃないですか。私はこの日韓協力委員会というのは、岸信介さんを筆頭にして自民党の有力な政治家も参加しておられるし、日本の一流財界人が参加しておられる。大体、日華協力委員会と重なっておるようですがね。メンバーはそういうところで、こういう案が、いまいったように出され、そしてそれを推進していこうという姿勢が生まれたということは、私はきわめて重要な問題だと思うんですね。そういうふうにお考えになりませんか。つまり、このことは日本の財界が韓国経済との関係をどう考えておるかということを端的に示したものです。要するに、日本の経済支配のもとに韓国経済を組み入れようとする、そういう考え方をこの矢次案なるものは——これは国策研究会の矢次さんが出したんですが、そういう意向というものを明確に示しておるんじゃないでしょうか。
  344. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その会議に参加され、かつ、いま名前もおあげになりましたが、そういう方々がそういう案をつくられたり、あるいは協議をされているということは事実でごさいましょう。私はその案の内容等を、さっき申しましたように存じませんけれども、しかし、これはまあ有力な方々ではございましょうが、一部の方々であって、政府としてそれをエンドースしているわけでも何でもございませんし、政府としては政府としての考え方で進んでいくべきだと思います。
  345. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ民間の機関だからということで、いまのような御答弁をなさるのでありましょうけれども、私はこうした自民党の有力な政治家と、第一線の一流の日本の経済人とが参加したこの日韓協力委員会の総会で、こういう問題が提起されたというのは、これはきわめて重要な問題だと思っています。つまり、先ほど言ったような繰り返しになりますが、これは日本の経済支配の中に韓国経済を組み込んでいこうとする意向というものを明確に示しておるわけですから、だから、私が先ほど言ったような、いわゆる日韓条約締結のときの経済協力、これを背景にして、どんどん日本の資本が韓国に進出していった。特に最近の韓国側が直接投資を望むという方向になったのにのって、民間資本がますます直接投資の形で韓国に進出していく、韓国ではそれの受け入れられる条件を十分に整えていっておる。そこへ持ってきて、こういうような矢次構想というものが出てくる。これは、私は今後の日韓の相互の経済関係からいって、あるいは政治的な関係にまで波及して、重大な問題だろうと思うから申し上げたわけです。  それじゃ、次に質問を移しますが、一億五千九百万ドルの新規円借款が、第四回の日韓定期閣僚会議できまっておりますね。これについての、先ほど一億ドル分の問題についてはちょっとお話があったと思いますが、この内容ですね、これは一体どうなっておるのか、御答弁の中で重複する部分もあるかもしれませんが、一億五千九百万ドルの新規借款の内容というのを明らかにしていただきたいと思います。
  346. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは、私自身がその日韓閣僚合同会議にいっておりますから、私から全体のことを御説明いたしたいと思います。いま一億九千数百万ドルと言われましたが、私の承知しておりますところでは、実は韓国側としましては、ずいぶんいろいろなプロジェクトや計画を持っておられて、これを全部表の上で単純積算をしてみますと、たしか一億九千何百万ドルになったんだと——失礼しました。約一億六千万ドルと存じます。しかし、それは日韓の合同委員会として合意した数字ではございません。合同委員会といたしましては、内情を申しますと、いろいろこれは骨が折れたわけでございますけれども、たしか、ここに合同委員会の共同声明を私持っておりませんけれども、一億ドルということは韓国の希望する借款の総額でございまして、これはその上に提示されておりますけれども、実は内容的に、ほぼ自主的に合意がございましたのは五千万ドル、そうして、その五千万ドルの内容についても、これは輸銀その他の借款である。それという意味は、プロジェクトごとに検討して、これは適当なものであるという場合におきましては、その程度の範囲までは日本側として協力を金融的にいたしましょうと、こういうことになっておるのでございまして、そのときの結論として、その五千万ドルの内容につきましても、これはこまかい話になりますから、合意されたわけではございませんで、相互とも事務ベースにおいて、あるいは関係者間におきましてプロジェクトを検討いたしましょうということになっておりますが、現在、事務当局間の打ち合わせがどのくらい進んでおりますか、私も的確にはまだ報告を受けておりませんが、率直に申しまして、あまり進んでおらないと、私はかように理解をいたしております。
  347. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 多少その後の進展状況を補足させていただきますと、大臣の御答弁にありました五千万の借款につきましては、韓国との間に話を詰めてまいりまして、大体輸銀でやると、これはもう方針が閣僚会議のときにきまったわけございますので、その輸銀と先方の政府並びに関係の金融機関との話し合いをしておりますけれども、その内容は大体農水産開発関係、それから輸出産業、それから中小企業の振興ということに使うということで話を詰めてまいっております。  それから日韓閣僚会議のときに共同コミュニケが採択されまして、いまの五千万ドルの借款の問題も、金額はもちろんございませんけれども、コミュニケに言及されておりますが、それと同じように韓国側の希望といたしまして、重工業を育成するという計画を日本に要請したという字が共同コミュニケに出ております。で、この問題につきましても、韓国側から日本の協力をこの共同コミュニケに基づきまして要請してまいりまして日本側は調査をした後に、調査に基づいてできる必要な協力をする用意があるということで、最近、調査団を韓国に派遣しまして、その調査団がいま帰ってきたばかりのところでございます。
  348. 矢山有作

    ○矢山有作君 その重工業の育成の要請で中身がいろいろ話に出ておるのじゃないかと思うのですが、どういうものが向こうからは話として出ておるのですか。
  349. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 総合製鉄所について協力をしておることは先生御承知のとおりでございますが、その総合製鉄所ができた場合、これを有効に活用しようということのための工業育成ということが向こうのねらいでございまして、先方からは鋳物工場とか機械工場とか、いろいろ案件が出ておるわけでございますけれども、先般参りました調査団から私が聞いたところによりますと、そういう計画は必ずしも経済的でないということで、もう少し経済的な観点から練り直したらどうだというようなことで、まだ双方の意見が合っているというところまでまいっておりません。
  350. 矢山有作

    ○矢山有作君 いま参事官からの説明にあったような重工業の育成というのは、これは私は軍事的な関連がきわめて強い性格を持っておると思うのですね。御承知のように、韓国はたしか一九六九年からだったですかね、防衛力整備の三年計画か何か、正式の名称は忘れましたが、たしか防衛力三年計画だったと思いますが、それに入っております。そういう総合製鉄所に関連するいまおっしゃったような施設というのは、これはいつでも軍用に転換できる性格のものですね。こういうような援助がどんどん進んでいくということは、いわゆる韓国の軍事力強化に非常に役立つわけですね。アメリカがいわゆる在韓米軍の削減をやってきつつあるそういう中で、そうでなくても韓国は日本に対する援助の要請が強いということを聞いております。なるほど軍事的に、すぐ純軍事的に援助してくれというのではないでしょう。しかし、アメリカが引き揚げていくそのかわりに日本の援助を受けて軍事力を強化して、朝鮮民主主義人民共和国に対決しようという、そういう姿勢はきわめて強いということは、もう外務省が私よりよほどよく知っておられると思うのです。そういうところにこういうような性格の援助をつぎ込むというのはどういうことになるのですか。これはやっぱり南北の間では緊張の激化にはなっても緩和にはならぬですね。そういうふうに判断するのですが、どうですか。
  351. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この問題につきましては、日本側としては、したがって、これからの協力の内容態様が非常に大事なところだと思います。ただいま御指摘のありましたような点が非常に大事なところだと思いまするので、ただいまも説明がございましたように、経済性というようなところに着目して、民生の安定のために役立つようなものを主体に調査をしたい。そして、それが理解のできる限りにおいて必要な協力をするということを約したわけでございまして、この点につきましては、私どもとしても十分にこの当時から配慮し、また今後も十分な配慮をいたしたいと、かように考えておるわけでございます。
  352. 矢山有作

    ○矢山有作君 配慮されるなら、私の言ったことに賛成だから援助のあり方に配慮する、こうおっしゃるんですが、配慮されるなら、じゃ、はっきり確約できますか。浦項総合製鉄所関連のいまおっしゃったようなもの、私ども承知しておるものでは重機械、鋳鉄、特殊鋼、造船、この四工場ということがはっきりいわれているそうですが、こういったものについては、これは援助しませんということがはっきり言えますね。こういったものは明らかに軍事にすぐ転換できるし、軍事力強化に非常に役立つものですから。
  353. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その具体的なプロジェクト等について、総括的に約束をするかとおっしゃられると、そのとおりと申し上げるわけにはまいりません。しかし、お気持ちは私も十分理解できるわけで、それらの点については十分考えてまいりたい。要するに、浦項製鉄所というものの建設計画が具体的な問題になりました。その考え方についてはずいぶん長い期間をかけて、そしてこれはたとえばワールド・バンクその他の調査団も行き、そして経済性、平和性ということについてのフィージビリティということを中心にした相当の検討が行なわれて、当初の計画よりは浦項製鉄所の計画自体がずいぶん、当初の韓国の規模からいえば、縮小されているわけでもございますし、日本としての協力に軍事的な考え方はない、あるいは軍需産業的な協力はないというのは、このコミュニケができましたときの日本側のコメントといたしましても、韓国側がそれに同意しているんだという趣旨を国民に申し上げた経緯等から御理解もいただけるかと思う次第でございます。
  354. 矢山有作

    ○矢山有作君 いろいろな言い方をされるわけですがね、いずれにしても重工業施設に対する援助というのは、これはやはり軍事との関連を私は無視することはできぬと思うのです。これはいま考えられておるようなものというのは、いつでも軍事的に転換できるものでしょう。だから、私は朝鮮民主主義人民共和国と韓国と、御存じのような非常な緊張状態にあるときに、その一方の韓国に対してそうした軍事力強化につながるような重工業施設等の育成に援助をするということは、これは両国の対立を激化させるその手助けを日本がするようなものである。したがって、これは緊張緩和でなくて、緊張激化になる、こういうことを指摘しているわけです。ですから、ただおっしゃるとおりなんで、その点を十分配慮します、配慮しますと言いながら、実際にはやっておしまいになるんでは、これはどうにもならぬことでして、やはりそういうふうに私の言っておることに多少でもうなずかれるなら、そういうことはやらぬという立場を私はとられるべきじゃないかと思うんですよ。というのが、まあ御承知のように、韓国との経済関係が非常に日本との間で深まってきたのは、一九六五年の日韓条約の締結以後でありましょう。そしてその締結以後、その締結当時には一番消化しにくいと思っておった民間信用供与が予想外にどんどん伸びていった、非常にこれは勢いが伸びて、そしておまけに最近では直接投資の趨勢まで出てきた。これはやはり日韓条約に基づく経済協力というのが、民間資本が韓国に資本進出をする大きなてこの役割りを果たしたと言えると思うので、今後もそういう状況が続く、そこへ持ってきて、こうしたいま言ったような援助が出てくる。そして事業の育成強化に役立つ民間資本はどんどん出ていく、こうなると、これはやっぱり私は問題だと思うのですよ。御存じのように、ことしの四月、中朝の間で共同声明が出されたのは御存じだと思うのです。その中朝の共同声明が出て、アメリカ帝国主義と日本軍国主義、これと戦わなければならぬ。中国人民と朝鮮人民は連帯して戦わなければならぬということをはっきり言っておりますがね。これを言うのはなぜかというと、先ほど言いましたような韓国への日本の経済進出がきわめて激しい。しかも、これが今後さらに急速に進もうとしておる。こういう状態を背景にしながらあの共同声明が出たわけでしょう。私はこういうふうな形で韓国に日本資本がどんどん進出していくということは、やがて進出した日本の権益を守らなきゃならぬという考え方が出てくると思うのです。そうすると、韓国に進出した日本資本の権益を守る、そういう立場になると、これはやはり共同声明で言っておる——昨年の秋の日米共同声明で言っておる、いわゆる韓国の安全が日本にとって緊要だという言い方をしたことがうなずけるのですよ。だから、こういうやり方をやっていると、私は日本は、朝鮮半島で起こる紛争にみずから巻き込まれていくというふうになるんじゃないかと思うのですけれどもね。私はこういうことをやるべきでないと思うのですよ。少なくとも政府が進んで重工業の育成政策に手をかすなんということはやめたほうがいいんじゃないですか、重ねてお伺いするようになると思うのですが。
  355. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ただ、韓国の建国以来、歴史は浅いわけでありますけれども、相当目ざましい進歩発展をして、近代国家としての形を着着つくり上げてきて、重工業というものはお話のように軍事にすぐひっくり返って使われる可能性のあるものでありましょうけれども、やはり近代国家として立ってまいりますためには、それ相応のやはり民需というものがかなり高度にあるということを考えていかなければならない。それから同時に、韓国がいま置かれている立場としては、日本とのたとえば貿易上の関係にいたしましても、御案内のように、非常な入超で悩んでいるわけでございます。その入超を何とかして是正したいということで、実は日本政府としてもたいへん頭を痛めているわけでございますが、韓国の立場からすれば、できるだけ当座は相当借金をしなければならない、建設に非常な努力も要るけれども、まず、たとえば農業において米の増産その他を大いにやりたい、また機械あるいは鋳物その他につきましても、輸入を長い目でかせいで、できるだけひとつ近代国家らしいていさいを整えていこう、このやはり意欲と努力と、その必要性に対しまして日本が直接あるいは間接に戦争につながらない緊張緩和という面で役立つような面に協力をしていくということは、私は隣国としてしかるべき方策ではなかろうか、数千万の韓国の民生の安定ということから申しまして、私としてはぜひこの程度のことは協力してやっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ、先ほども内情をちょっと申し上げましたが、ことしの七月の日韓閣僚会議におきましても、つとめて、これは私も直接朴大統領にも話をし、大統領も私の考えに同意を大いに表明してくれたわけでございますけれども、こうした借款の要請、あるいはその使い方等については、私どもの意図、つまり完全に平和主義を願望としておる日本の立場というものの理解の上に立って、その協力の体制、内容というものを十二分に理解して、向こうもこれを理解してもらう、この基本的な考え方については、私どもとしても韓国側に対して要請をし、それに先方も理解を示しておるわけですから、その基本的なワクの中でこれからのプロジェクトにつきましても、先ほど来申しておりますように、十分の配慮を尽くしてまいりたい、こういうわけでございます。
  356. 矢山有作

    ○矢山有作君 全く基本的な認識が違うんですよね。朝鮮半島で朝鮮民主主義人民共和国と韓国とがどういう関係にあるか。また、それを取り巻くアジアの情勢がどういう点にあるかということが頭にあるならば、対立する一方の韓国に対する強力な経済援助が緊張緩和になるということは、私はその発想がわからない。朝鮮民主主義人民共和国と韓国が対立関係にある。そこに持ってきて一方の韓国にその経済力強化のために本格的な経済援助をどんどんやっていけば、これが緊張緩和になるんだということがわからない。基本的な認識が違うんです、あなたと私とは。朝鮮民主主義人民共和国の側に立ったらどうなんですか。韓国にそれだけの強力な経済援助をやって、重工業をどんどん育成していく。それがいっでも国防力に転化し、軍事力に転化する、そういう関係にあるんですよ。私はどうしてもその辺のあなたの認識がわからない。これは幾ら議論したところでおそらく解決せぬ問題でしょう。  次に伺いますが、台湾の第一次円借款が一億五千万ドル行なわれましたね。それはことしの四月二十五日で一応期限は切れたはずでありますが、これの結末はどうなっておりますか。
  357. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 四十年に中華民国に対して一億五千万ドル相当の円借款を約束したわけでございますが、本年四月までに大体事業計画はほとんどのコミットメントを終了いたしました。その結果、コミットしていない使用残高は約二百七十五万ドル程度相当と大体予想されるところでございますけれども、この使用の残高につきましては、ことしの四月の政府間取りきめによりまして、今後この残額については使用しないということになっております。
  358. 矢山有作

    ○矢山有作君 これで打ち切りですか、使用しないということは。どうなんですか。
  359. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 四十年に結びました一億五千万ドルのうちの、まだコミットしていないで残った二百七十五万ドルにつきましては、これはもう使用しないということでございます。
  360. 矢山有作

    ○矢山有作君 一億五千万ドルの円借款の中からYS11が台湾に供与されたという話を聞いておりますが、これは事実ですか。
  361. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 事実でございます。で、これは一億五千万ドルの借款の中の一つの計画といたしまして、YS11を二機、円借款の対象として取り上げて、先方の民間航空に引き渡し済みでございます。
  362. 矢山有作

    ○矢山有作君 六九年の経済協力白書を見ると、おっしゃるYS11のことじゃないかと思う項目が、対華円借款プロジェクト別貸付承諾額の中の十六番目に「中華航空」として載っておることは載っておるんですね。これは大体幾らになるんですか、金額にすると。
  363. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 総額で、邦貨で数えまして、十一億三千四百万円でございます。
  364. 矢山有作

    ○矢山有作君 私の承知しておるところでは、円借款などの場合、飛行機なんぞは大体、これは何も明文の規定はないんでしょうが、慣例として出さないということで、あまり出していませんね。これを今度台湾に出したということは、いろいろわれわれの耳に入ることは、いろいろのことが言われているんですが、何か特別な理由があるんですか。
  365. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 飛行機につきまして、延べ払い金融ということで輸出促進をはかっておることは、先生御承知のとおりでございますけれども、台湾の場合におきましては、たまたま先ほど申しました一億五千万ドルの若干のうち、製鉄一貫工場ということを計画していたわけでございまして、製鉄一貫工場の計画が中止となって、そのワクだけが余裕ができたわけでございます。そこで、台湾側といたしましては、台湾の民間航空の向上が、これは経済開発に非常に必要だということで要請をしてまいりまして、わがほうといたしましても、台湾にとっては民間航空の発達が非常に経済上緊要であるということを認めまして、借款の対象とすることに同意した次第でございます。
  366. 矢山有作

    ○矢山有作君 御説明ですが、私はYS11を台湾に供与したということについては、政府内部でもいろいろ論議があったやに承知をしております。かなりの論議の末これが出たんだろうと思いますが、これはまああんまりその内容に立ち入るのもなんですから、きょうのところは申し上げませんが、私は大体、こういう飛行機のような非常に軍事転用の可能性の強いものは、なるほど表向きは民間航空用だと言っておられるけれども、大体出さないというのがいままでの例だったんではないかと思うんですよ。その点だけ指摘しておきます。  それから次にお伺いしたいのは、いま、台湾に対する日本資本の進出状況というのはわかりますか。
  367. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 台湾に対する民間資本の進出は、件数にして約三百六十件、金額にして約六千万ドルでございます。
  368. 矢山有作

    ○矢山有作君 最近、聞くところによりますと、台湾に対する第二次円借款として三億ドル程度が厳家淦国府首相から要請をされたというふうなことが言われておりますが、この実情はどうですか。
  369. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 二億五千万ドル程度の要請が出ておりますけれども、その内容等はまだ詳細にわかりません。
  370. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは何ですか、ワクとして二億五千万ドル援助をするという方針なんですか、どういう方針になってるんですか。
  371. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは率直に申しますと、いま申しましたように、中身の、こちらが取り上げて相談をするまでの具体的な申し入れはまだございません。ですから、いまのところまだどういうふうに始末するかということはきめておりませんのですけれども、私といたしましては、総額幾ら幾らというような、いわゆるつかみの借款というものは私は考えたくないと思っております。やはりプロジェクトベースで、プロジェクトごとに検討してまいるべき性質の問題であろう、これは私はやはり経済協力というものの筋道ではないだろうかと、こういうふうに考えておる次第でございまして、まあ国民経済の発展とか、民生の安定に役立つという観点から、プロジェクトベースで十分検討して、適当と思うものについて考えるというのを一般的な基本方針にしてまいりたい。で、これが、台湾の場合におきましても、その原則で私は処理してまいりたいと、かように思っておりますが、二億五千万ドルというふうに言われておりますけれども、まだその内容がわかりませんので、いま申し上げましたようなことは基本的な考え方でございます。
  372. 矢山有作

    ○矢山有作君 台湾の問題にしましても、一九六五年の第一次円借款までは、ほとんど、まあ貿易以外には経済的な問題で日本と台湾とのかかわりというものはあんまりなかったと思うのですね。それが、一億五千万ドルの円借款が行なわれ、それがてこになってかなり経済的な関係が深まった。最近は、先ほどおっしゃったような民間資本の進出もかなりなテンポで進んでおる。また、技術援助、技術協力の関係を見ますというと、通産省の経済協力白書にありますが、これはもう日本の技術援助、技術協力というのが台湾の場合、圧倒的な比重を占めておりますね。それから進出企業の内容を見ましても、キャラメルから化学工業等に至るまで、あらゆる分野にわたって企業進出が行なわれているのですね、資本進出が行なわれているのですね。こうなってきておるところにもってきて、さらに、二億五千万ドルか三億ドルか知りませが、こうした援助が積み重ねられていくということになりますと、これはやはり日台の間の政治的、経済的な関係というのは、ますます強化されていきますわね。それでこれはもう明らかに日本の経済の力の中に台湾経済が包み込まれるというような形になっていくと思うんです。現にすでにそうなっておるといわれている面もあるわけですからね。  そういう状態ですと、これは御存じのように台湾は中国の領土の一部だと、こういう立場を中華人民共和国は貫いておるわけですから、そうするとこれはやはり中華人民共和国との間で好ましい状態ではないと思うんですね。中華人民共和国は台湾を解放すると言う。ところが日本がどんどん資本進出をしてあすこに多くの権益を持ちだすと、その権益擁護のためには台湾が中華人民共和国によって解放されることを何が何でも防ごうと、こういう意欲が起こってくると思うんです。これは私は、明らかに中華人民共和国と日本との間で緊張激化になっても緊張緩和にはならぬと思うんです。ここのところはどう理解すればよろしいのですか。
  373. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その点は、先ほど来矢山議員の御意見をいろいろ拝聴いたしまして、この点についてもやはり同様の角度からの御意見でございまして、私とその点についてまあ意見の相違があろうかと思いますけれども、先ほど申しましたように、千四百万人の人民が努力をして成果をあげているこの状態に対して、民生の安定に対して寄与するという観点から、プロジェクト・バイ・プロジェクトの考え方で協力をするということは、これは純経済的に見ましても私は適当な考え方ではないかと思いますが、しかし先ほど申しましたように、つかみで何でも使えというような態度というようなものは、一般論としても取るべき日本の立場ではないとかように考えまして、具体的な問題が出てまいりましたら、私、いま申しましたような姿勢でもって検討いたしたい。関係各省とも十分協力をしてまいりたいと思っております。
  374. 矢山有作

    ○矢山有作君 最初に申し上げました日中問題の解決は、国際信義、それから国益、極東の緊張緩和という立場に立って慎重に検討中だと、こういうことなんですがね。私が先ほど来、東南アジア、特に南ベトナム、カンボジアに対する日本の経済協力の状況、またその意図している方向、さらに韓国や台湾に対する経済協力の実情、さらに今後予想される方向等々指摘したのは、こういうようには戦争状態にある地域の一方の政権に対する経済的な援助、それからいわゆる分裂国家というんですか、その分裂国家の一方に対する経済的な強力な援助、こういうことは緊張緩和にならぬではないかということで、私はお伺いしたわけです。軍事的な面からは、いままでいろいろいわれております。しかしながら経済的な面から見ても、日本政府のとっておる台湾、韓国あるいは南ベトナム、カンボジアに対する経済援助のあり方というのは、明らかに緊張緩和に逆行する緊張激化の方向をたどっておるんだということを私は指摘したかったわけです。だから、緊張を激化させる方向を経済面においてもとりながら、緊張緩和という上に立って中国問題を考えていくというのは、ちょっと私は矛盾しているんじゃないかと思う。もしほんとうに中国問題を解決するために極東の緊張緩和をはかろうというならば、軍事的にはもちろんでありますけれども、経済的な面からも反省をし直す、いままでの行き方を改める、今後も誤った行き方をやらない、このことが出てこぬとどうにもならぬのじゃないですか。そういう意味で申し上げたわけですが、どうですか。
  375. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ただいま申しましたように、御意見は御意見として私も十分拝聴したわけですが、まあ私も、私の考え方を申しますとだいぶ長くなって貴重な時間をむだにするかと思いますから、端的に申し上げますけれども、私は、やはりどこの国民であれ、人民であれ、やはり民生が安定して、具体的に言えば相当の経済発展というものが平和的にでき、あるいは国民所得というものも相当に高い程度で安定するようになれば、おのずから力によってどことも戦う、武力を持って対決していこうということは、私は終局的になくなってくる、それが回り道のようだけれども緊張緩和に通ずる道であると、私はこういう一の考え方を持っているわけでございます。これは個人的な考え方で、間違いかもしれませんが、同時に緊張を、いわんや激化するようなふうになる援助というものはもちろん差し控えていかなければならない、かように存ずる次第でございます。
  376. 矢山有作

    ○矢山有作君 基本的な認識の相違をますます痛感させられるだけであります。  私は最後に申し上げておきますが、いわゆる戦争地域への一方の政権に対する援助、交戦中の一方の政権に対する経済援助は、これは通常の経済援助、経済協力とは異なるということをはっきり申し上げておきたいんですが、さらに分裂国家で相対立した関係にある、いつ武力衝突が起こるかもしれないというようなきびしい対立状態にある地域の一方の政権に対する経済援助と称するものも、これも通常の経済援助や経済協力ではない。それをやるなら、これはますます対立関係をあおり、緊張を激化させ、日本がその一方の政権に加担する、いわゆる経済的な戦争に参加をするというようなことになるんだということを私は申し上げておきます。幾ら議論しても基本的な認識が異なる問題でありますから、これ以上の議論は続けませんが、しかし政府がおやりになることは、やがて歴史が証明することになるわけでありますから、その歴史の証明が日本の人民にとって悲劇にならぬようにしていただきたいと思うのです。私は国益というものも、日本の一つの権力者の利益でなしに、日本国民全体の利益の立場に立って考えなければならぬと思いますが、いまの日本の経済援助のあり方が、不幸にして日本の国民に罪悪を及ぼすようなことにならぬようにということを最後に強く要望いたしまして、質問を終わります。
  377. 岩間正男

    ○岩間正男君 本論に入る前に、ガルフの管理権問題についてひとつお聞きしておきたいのです。  それは十一月十七日の沖繩特別委員会で、政府は、初め、沖繩返還後は、米民政府の布告、指令などは効力を失い、本土法が適用されるという答弁をされました。しかし論議の過程で、実際は、本土法が適用されても既設のものについて適用すべき法律上の規定がないことが明らかになりました。その後今月三日の本院外務委員会の論議の中で、必要ならば新たに法文を設けるなどの措置をすれば済むことだし、担当の運輸省はそれなり対策しているはずだと、外務大臣ほか外務省担当官の答弁がありました。それに対して私から、外務省が外交の場で取り上げる以上、その内容についても、運輸省が考えてやればいいというようなものではなくて、外務省自体責任をもって答えられるものでなければならない旨を御指摘申し上げました。このことは言うまでもなく御承知のことと思います。  そこであらためてお聞きしたいのは、政府としてどのような措置を必要だとお考えになっているのか、運輸省とも打ち合わせされたことと思いますが、きょうはこの問題について、その点だけを最初にお聞きしておきたいと思います。
  378. 千葉一夫

    説明員(千葉一夫君) お答えいたします。  最近運輸省も交えまして、沖繩・北方対策庁その他関係の諸省庁といろいろ打ち合わせをやっております。で、これにつきましては、復帰とともに米側の種々の指令、布令その他の命令等が効力を失いますので、それに備えていかなる方策をとるべきかという点につきまして、いろいろ詰めておるような次第でございます。  なお、いろいろと他の分野、たとえば金武湾というところを工業的に開発するために、一元的に種々計画も進めねばならないといった点もございますし、まだ結論は出ておりませんが、ただいま鋭意検討中でございます。
  379. 岩間正男

    ○岩間正男君 十二月三日ですから、きょうはもう半月近くになるわけですね。それで、この前のお約束では、運輸省と話し合ってこれに対する具体的措置をきめると、こういうことであったと思うんですが、どうもいまの御答弁では非常にこれは不十分じゃないですか。問題は既設の施設に対して適用する条項がない。だから本土法をどんなに適用しても、これは結局そこが穴抜けになるんじゃないか。だから、そこのところは法改正をするのか、あるいは具体的にどういう措置をするのか、こういうことを聞いているわけです。だからそこのところを明確にしなければ、どうもいまのような答弁じゃこれはいかぬですよ。
  380. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この問題は、まず一番大きなところから申しますと、施政権が返還になりますから、本土法が何らの変更なしにずばりと適用されるという、したがっていままで民政府がいろいろのことをやっておったとしても、その法令の根拠がなくなりますから失効すると、ここまでは御了承いただいたわけでございます。私はそういうふうに理解をいたしているわけです。ところが、それからさらに切り込んでの御質問は、それはそうかもしらぬ。しかし運輸省に当たってみたところが、たとえばその指令に基づく許可を得てつくったところの建造物等を取り締まる、あるいはこれを破壊せよという根拠になるような法令は現在本土にもないではないか。一体それに対してはどうするかと、こういうお尋ねに発展してきているわけだと私は承知いたしております。つまり政府といたしましては、基本的にはこの民政府が出しておりました布令とか、あるいはそれを根拠に出しておった指令というものはもうなくなるのだと、これを基本的に言っておりますが、それはよろしいんでございますね。
  381. 岩間正男

    ○岩間正男君 ええ、それはもうあなたたち、そうおっしゃるのだから、その範囲内では。
  382. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) そうすると、いま私が申しましたように、ガルフ社ならガルフ社が現につくっておった、その許可に基づいてつくっておったところの建造物あるいは施設等が、返還後において民生上これがよいものであるとするならば、そのまま私は残して使ってもいいのではないかと常識的に思います。あるいはまたこれをよく検討してみれば、所要の改変等をさせたほうがいいということを、今度は本土並みになるわけですから、運輸省当局が考えられたとした場合に、その根拠となるところの法令が本土になければ、これは本土の法令の新しい根拠づくりということで、別途の法令の措置をしなければならない、こういうことになると思いますが、問題がそういう問題でございますだけにですね、私は一週間か十日は、岩間さんからおっしゃれば長い時間だと見られるかもしれませんが、もう少しこの時間をちょうだいしなければ、的確な政府の態度を表明するわけにまいりませんので、まあいましばらくお待ちを願いたいと思います。
  383. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと外務大臣の答弁に食い違っているところがあるのですが、私は、こわすとか何とかというようなそういう事態だったらこれはっきりしておるけれども、問題は今後継続して管理運営権がどこにあるか、こういう問題のときに、つまり港湾法の中には、そういう既設のものに対しての適用は条項がないんだと、これではどうにも管理運営ができないではないか、この点について言っているわけですよ。何か港湾を取りはずす、こわす、こういうふうになるかどうかも、それは先の問題ですけれども、とにかくその管理運営権の問題として、私はこれはあのとき問題にしたわけですから、そこのところは少し食い違いがあると思いますから明確にしておきたいと思います。
  384. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 問題の所在は、岩間さんと私の間ではわかったように思いますから、また、私もさように理解しておったわけで、取りこわす云々はたとえて申し上げたわけでございまして、施設を新たにつくる、あるいは管理権を新たに認めるという場合には本土の法令にございますけれども、できてしまったものの引き継ぎと申しますか、それからあとの処理については、よるべき法令がない。はたして法令の必要があるかどうかという点を含めまして、いま少し運輸省その他専門の当局で検討してもらいたいと思っておりますから、いましばらくお待ちいただきたいと思います。
  385. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ、この臨時国会もあさって終わるわけですね。臨時国会の劈頭にこれは質問したわけですが、一応の結論を得ておかぬと、どうもじんぜん日を送ったんでは、まだまだその間相当国会が開かれないのですね、どうなんでしょう。これは問いつめてはっきりしないことには、どうも私たちはそこのところを、やはりちょうどいま公害法の中で、政令にゆだねるというので、政令の内容がわからないと実態がわからないと同じような意味を持っているんですね。これはどうなんでしょう。あすあたりにでもこれは一応のなにを示してほしいのですがね。
  386. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) いま率直に申しましたように、あす、あさってというわけにはまいりませんので、そこは事情を御了察をいただきたいと思います。それから、外務大臣だけでは何ともお答えできないんで、私もそのほうの専門でもございませんし、知識もございませんので、御了承いただきたいと思います。
  387. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはまあ保留しておきましょう。とにかく、この問題については何だったら運輸大臣でも来てもらって、ここで明確にしたほうが一番いいのじゃないか、これは問題解決つきませんよ。どうもこの前お会いしたときはすぐにも返事があるように思っておったんですが、こういうことでまあ大体沖繩返還の実態を私たちは実際は知ることができたと、つまりガルフがあすこに入るかどうかということは非常に大きな、これは日本の石油産業自体にとって大きな影響を持つ。それから沖繩の産業にとって非常に重大な関係を持つわけでしょう。ことにまあ南の玄関だなんということをいわれていますね、それからアメリカ石油資本があすこを非常にねらってきているということは今日明らかだと思うので、実はこれは決して単純な問題だとは考えていないわけです。だから、沖繩返還を前にしての政府の産業政策に対する基本的な一体考え方はどうなのかという課題とはっきり関係のある問題なので、そういうようなことを明確にしておいて、できるだけ早くこれに対しての結論を得て、示してもらいたい。その上で、私は当委員会なり外務委員会で質問したいと思います。いいですね。
  388. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) はい。
  389. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ次にお伺いしますが、外務省設置法には、日本が昨年軍縮委員会に参加したことに基づく日本代表部設置の件があげられているわけです。そこできょうは日本の軍縮委員会での活動について、その一つの大きな柱になっている生物・化学兵器の禁止の問題をめぐって二、三質問したいと思います。  問題は具体的なところから入ったほうがよいと思いますので、まず最初に、沖繩の米軍の毒ガスの問題からお聞きしたいと思います。米国防総省は、去る四日、沖繩にある毒ガスをジョンストン島に移すこと、最初の積み出しを近く実施する計画であること、沖繩の復帰以前には完了すること、などを発表しました。その内容は、最初の積み出し量が一万三千トンのうちわずか一%そこそこの百五十トンであり、これでは積み出しそのものの完了までに相当長い期間を必要とすると思う。まあこの量でいきますというと、八十五回くらいかかるわけだというように私は計算したわけですが、これはどういうことになりましょうか。
  390. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 本件につきましては、実はきょうも参議院の沖繩特別委員会で詳細に御説明申し上げたところでございますが、百五十トンはまことにごもっともで、一万三千トンからすれば微々たるものでございます。そこで政府といたしましては、さっそく十二月五日以来、対米折衝をあらためて展開しているわけでございますが、十一日に責任者のヘイズ第二兵たん部司令官を東京に招致いたしまして、関係当局間で説明を詳細に聴取をし、それから移送計画等についてもいろいろとこまかく検討いたしたわけでございます。米側としては、百五十トンというのは第一回でございますだけに念には念を入れて安全輸送をしたいということで、こまかくは報道されておりますから省略いたしますけれども、これを公開で広く沖繩の方々にも十分事情を説明してやる、その移送、運搬は日中だけに限ってやる、それから日本側官憲の立ち会いを認めるというふうなことを基本的な合意といたしまして、それからこまかい移送、運搬の計画も相当詳細にわたってわれわれも承知することができましたが、なおそれを根拠にして一そう安全にこの作業が終わるように、徹底したひとつ協力を要請いたしておるわけであります。  それから八十何回の輸送云々というお話がございましたが、これは一万三千トンを百五十トンで単純に割るというようなところから出てくる一応の見解で、ごもっともだと思いますが、米側としては、第二回輸送からはこの単位が、船積みの量が、大体単位が違う、つまり千トン以上の単位で移送することができるようになります。相当大幅の量になりますから、全体の撤去については、ジョンストン島の準備と、それから配船計画と、船積みは四日間、いろいろの関係で安全船積みのためにかかる、ジョンストン島まで航海に十日間かかる、船便等を考え、そうしてかつこれをスピードアップすることは、私のすでに受けている印象としては、かなり当初の予想よりは繰り上げることができるのではなかろうか、そういう点について、ただいま細部にわたってさらに米側と折衝を続けておりますから、最初予想されましたよりは早く、どんなにおそくとも沖繩返還には支障を与えない、きれいな姿で沖繩の本土復帰が実現できるというふうに私は見通しております。  なお沖繩特別委員会では、各党全会一致で本日も決議ができ上がりました。その決議を体しまして、われわれとしてはさらに最善の努力を続けてまいりたいと思っております。
  391. 岩間正男

    ○岩間正男君 私もいま決議を拝見したところです。われわれはこのような毒ガスの撤去は一日も早くといままでも要求したし、そういう立場からこれは促進のために質問をしているわけですが、ただ私が心配するのは、愛知外務大臣は、五日朝のことですが、まあ古いことになりますが、直ちにこのとき談話を発表されて、政府の大いに歓迎するところである、こういうふうに述べておられる。ただ私が心配しておるのは、これに関連して思い起こすことがあるわけです。昨年十二月二日に、アメリカ陸軍省が、一カ月以内に毒ガスの撤去を開始し、今年の春までには完了すると発表したことがあります。このとき保利官房長官はこう言っている。政府としては今度の米側の措置を歓迎する。やはり同じようなことばを語っておる。それからまた本年の九月には、中曽根防衛庁長官も来春までに撤去するというレアード国防長官の約束を得たはずです。これは沖繩にその直後に行かれてずいぶん宣伝されたんです。こういうことがありますので、もちろんまあ愛知外務大臣が三たびこのような轍を踏む、繰り返すことを望んでいるものではないと思うのです。しかし三たびこのような轍を踏まないためには、そのための歯どめというものがはっきりなされなければならない、こういうふうに思うわけです。だから外務大臣はどこにその歯どめを置かれるのか、また間違っても沖繩返還後、沖繩を含めた日本全土に、どのような種類のものであれ、米軍の化学兵器、生物兵器が置かれないということをはっきり確言することができるのかどうか、この点をあらためて念を押しておきたいと思うのです。
  392. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは岩間さんにも御理解をいただきたいと思うのですが、本件が起こりましてから、まあ私といたしましても実にむずかしい、またいらいらした折衝を続けてまいりました。今度こそはほんとうである、あと戻りはしないという確信を得ましたので、その点率直に言って私はほっといたしました。これが私の歓迎ということばにあらわれておるわけでございます。もう何べんも何べんもこの件については、私自身がアメリカ側の国務長官、米政府当局に訴え、かつ努力をしてきたところでございますから、今度は、いま私のことばで申しますれば、今度こそはあと戻りをしないという私としては確信を得た次第でございますが、ただ、いま歯どめを言えとおっしゃる点については、これから鋭意その折衝を続けまして、その経過から、あるいは結果からはっきりと歯どめ、たとえばこういう時期にはこういう計画で実施に移る、あるいは第一回の移送の結果、安全性はまずだいじょうぶだということが事実の上にあらわれたというようなことを合わせまして、確信を持ってお答えをするようにさせていただきたいと思います。
  393. 岩間正男

    ○岩間正男君 その外務大臣の確信はまあこれでいいと思うのですね。しかしそれもさることながら、結局私たちをほんとうに安心をさせるのは、米側の詳細な計画書ですね。計画書を出して、こうこうこうなんだというのが、見通しのある、ことに返還後ということになりますと、一年半なんです、その一年半にどういう計画でこれはやられるのか、それをこれは検討することが、沖繩百万の県民をはじめとしてこれは日本国民の当然の私は要求だというように思うのですけれども、この点の確信はあるのですか。確信だけでは——やはり具体的にそういう裏づけがほしいのですね。これはどうなんでしょう。
  394. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) そこで、先ほど申しましたように、いままで合意ができたことでも、公開をして、日本側の官憲が立ち会い、これはまず第一回の移送については、これで私は安全性の確保ということができると思います。何しろ時間的にも、決議にもありましたように一日もすみやかにということがそのとおりでありますと同時に、安全性の確保ということもまた非常に大切なことでございますから、こうやって一つ一つ積み上げて、そしてそれを具体的に示して沖繩の方々の御安心をいただきたい、かように存じております。
  395. 岩間正男

    ○岩間正男君 むろん、われわれはスピードと安全、だから、安全でしかもスピードのある、そういう撤去をこれは要求するわけですね。  そこで、次にお聞きしたいのですが、政府がアメリカに撤去を要求しているガスの内容ですが、これは致死性のガスに限っていたと思うのですが、そうではありませんか。
  396. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 今回のガスはカラシ化学剤HDが百五十トン余り、そして、そのほかにGBすなわち神経性化学剤、それから同じく神経性化学剤VX、これがございまして、この合計が一万三千トンでございますが、この全部が致死性といわれるものでありますので、この全部の撤去——これはレアード長官の発表にも、すベてということが公表されております。
  397. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、その点は確認しておきたいと思うのですが、従来本土にはないと言っていたのは致死性のガスに限ってのことで、その他の、致死性以外の生物・化学兵器が本土にあるのかどうかは、今年の春段階でお聞きしたときはわかっていなかった。その点国会でかなりこれは追及されたわけですから、当然お調べになっていると思うのですが、本土に米軍の致死性以外の生物・化学兵器はあるのかないのか、また、沖繩にあるのかないのか、この点について、これはどういうふうにつかんでおられますか。
  398. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 致死性のものは本土にはもちろんございません。それから沖繩におきましては、ただいま申しましたように致死性のガスはすべて撤去する。そして、その銘柄はこれこれということに相なっております。
  399. 岩間正男

    ○岩間正男君 致死性以外のものについてはどうなんですか。
  400. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) たとえば催涙ガスと通称いわれているような種類のものは、これはあるかないか、私、ただいまはっきりいたしておりません。
  401. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは致死性のガスだけが問題なんでは実はないだろうと思うのです。これはあとでお聞きしますけれども、致死性以外のガスのことが、ともするというとここのところが関心からはずれているというところに非常に大きな問題がある。私たちは、だからこの前の春の国会で、一体、このような致死性以外で、しかも非常にこれは人命に影響を持つ、そういうガスについてはどうですか、これは当然調べられる必要がある、こういうことを追及したわけですけれども、これについてはお調べになっていらっしゃらないということですか。いまの御答弁ではあまり関心がないように思いますが。
  402. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 政府としての最大の関心は、一九二五年のジュネーブ議定書において使用禁止され、かつ、日本がこれに参加いたしましたこの致死性ガスというものを一番問題にしておるわけでございまして、これに関する限りは先ほどお答えしたとおりでございます。それ以外につきましては、まだ調査不十分のところもあろうかと思います。
  403. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまのお話のとおりだと思うのですが、これはちょうどことしの五月七日に衆議院外務委員会で、わが党の不破書記局長と愛知外務大臣の応答があります。不破「沖繩から日本政府が撤去を求めたのは、致死性のガスに限っているわけですか。」、愛知外相「致死性のガス、……お配りいたしました表の中に入っているようなものは、アメリカとしては本土にはない、それから沖繩からは撤去をする、こういうことになっておりまして、」、不破「そうすると致死性ガス以外の化学・生物兵器ですね、これについてはこの表に入っていないものはアメリカが沖繩に貯蔵をしていても、それからあるいは本土に貯蔵していても、これは日本政府としてはそれについてはとやかく言うつもりはないということでしょうか。」、愛知外相「その事実について……調べたことはございません、」、こういうことになっているのですが、そのままということでございますか。
  404. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) そのままでございます。
  405. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはやはり私は大切だと思います。これはあとの質問と関連して、これは聞いていけばはっきりするわけですがね、結局致死性以外のものは、沖繩返還後の沖繩を含めた日本全土からなくなる保証は取りつけていない、こういう点がこれは明らかになったと思いますけれども、それでようございますか。
  406. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは撤去の問題だけではございませんで、これは日本自体としても問題である点だと思います。政府としても先ほど申しましたように、使用の禁止というのは一九二五年の議定書にいわれている範疇の致死性毒ガス、こういうことが政府の見解でございます。
  407. 岩間正男

    ○岩間正男君 いままでの質問でも明らかになりましたように、私は今回の米国務長官の発表がそのまま実施されればこれで足りるといったものではないと思うんですね。大臣は、政府として歓迎すると言われました。しかし沖繩側では、屋良主席が、大臣と同じ五日の朝の談話の一節で次のように言われました。今度撤去されるのは、一万三千トンの毒ガス兵器のうち、わずか百五十トンだけで、これは即時全面撤去という県民の要望に背を向けたものである。これでは撤去開始の公表というよりも、撤去作業が全体としておくれるという言明と同じではないか、こう言っておられる。そうしてさらに、本土政府は、この際、みずからの国民の生命、財産を守る立場から、強力な対米折衝をすることを要求する、こういうふうにこれは言っておられるわけです。そうして屋良主席自身が、七日には、フィアリー米民政官に会って強硬に全面撤去を申し入れているわけです。これに対して民政官は、本土政府に伝えるとしか答えていない。そこで、その米本土政府と直接交渉できるのは、言うまでもなくこれは本土政府以外にないのですから、本土政府はさらに一そうこの問題を明確にする努力をしなければならないと思います。現地の新聞の社説もこの問題を取り上げており、単に現地だけではなくて、本土の新聞の社説もしばしば重大な問題として同様な社説を、主張を繰り返しているわけです。ですから、いまや日本国一億国民のこれは共通の声です。きょうこのような決議が出されたということでありますが、われわれは今後政府のなお一そうのこれに対する努力というものを要求したいと、こういうふうに思うわけです。  さて、この致死性以外の生物・化学兵器について、本土のものを含めて今後その有無を調べ、これを撤去させる意思があるかどうかということが、私はきょうの質問のこれは主題として非常に重要だと思うのです。これはいかがでしょう。
  408. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申し上げましたとおりに、当面政府の最大の関心事は致死性ガス、これを持たない、持ち込みも許さないということだと思います。それ以外の点につきましては、政府の見解をまだはっきり申し上げる段階ではございません。
  409. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあこれはあとの質問で具体的になりますが、そういうような御答弁ではこれは不十分なことになる。明らかじゃない。  まあ続けます。昨年八月わが国が加入して間もないジュネーブの軍縮委員会で、朝海代表は、わが政府は、化学・生物兵器が使用される可能性を除去するためには、これら兵器の使用を禁止するだけでなく、これら兵器の開発、製造及び貯蔵をも禁止することが緊要であるという見解を有している、ということを、これはあすこで演説をした。また、化学・生物兵器を軍備から除去するというわれわれの願望は、単に核軍縮の達成に劣らず強いものである、とも言っておるのです。そうした考えの基礎として、BC兵器の大部分のものは無差別大量破壊目的のために使用され得る点を化しています。しかしこのような発言が真に実のあるものとして生きてくるためには、それが現実の事態にどうあらわれるかという点から見なければならないと思うのです。今日世界で、国内治安の問題での催涙ガスの使用等の問題は別として、先ほどおっしゃった催涙ガスの問題、そういうものは別として、国際紛争の場で化学兵器が使用されている事実としては、ベトナムにおける米軍の使用をあげることができると思う。この事実は、これはお認めになるでしょうね。
  410. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は前にも御答弁いたしたかと思いますけれども、米軍がベトナムでどういうガスを使っているか、これについては催涙ガス、枯葉剤ガス、これを使用したものと伝えられたわけでございまして、それ以外の毒ガスが現実に使用されたことはないと、かように承知いたしております。
  411. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは向こうにお聞きになっても向こうは答えないかもしらぬが、しかし、これは米政府に対して問い合わせをしたことがありますか。
  412. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私がいま御答弁したとおりで、それ以外の毒ガスを使用したことはないと政府は承知しておるわけでございます。
  413. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、ずいぶんあなたのほうの情報は不的確ということになりますね。たとえば九月中旬に、「アメリカの戦争犯罪を告発する南ベトナム委員会」というのがございますが、これは私たちもしばしば、もう十年前からこれは論議しておりますよ、ベトナムの問題の中で。それによりますと、本年に入ってからの九カ月間に、二十五省十四万五千ヘクタールの土地に化学兵器の攻撃が加えられ、十八万五千人が被害を受け、うち三百人が殺害されたということをはっきりこれは報告している。また広大な地域で農作物が毒薬で枯らされたということも報告されております。このような生物・化学兵器によって現実に引き起こされておる事態を調査の上で、外務省ははっきり方針を立てられ、軍縮委員会に臨んでおいでになるのか、その辺が非常に重要な問題でございますから、ありのままのところをお知らせ願いたいと思います。
  414. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 軍縮委員会に参加いたして以来の日本政府としての主張や行動については、詳しく御承知のとおりと思いますから、詳しく申し上げることは省略させていただきたいと思いますけれども、生物・化学兵器につきましては、検証の技術的な方法というものが国際的に確立されることが必要であろう。そのために国際的な専門家会議をまず開催して、そうした専門家会議で種々の具体的な検証方法に関する諸提案をされなければならないということを積極的にわが代表が力説を当初以来いたしておるわけでございまして、基本的にはこうしたことがまず国際的にはっきり確立するということが何よりのことである、かように考えて、なおこの活動についてはこれからも忍耐強くかつ強力に展開してまいりたいと思います。同時に、日本には相当なこの道の専門家もおられるわけですから、私どもといたしましても、日本国内部としても十分の研究をし、そしてこうした研究が具体的に軍縮代表を通じまして、世界の世論に対して同調を求めるように強力にこれからも運動を展開したいと思います。
  415. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはまたそれますが、朝海代表の演説はなかなかいいようなことを言っておりますけれども、結局実際はあそこで主張しているのは、検証の問題を出してきて問題をすりかえてくる、それで、そういうかっこうで実際はこの軍縮委員会そのものの性能がにぶってきている、こういうところに課題があると思うんですね。私の聞いているのは、とにかく「アメリカの戦争犯罪を告発する南ベトナム委員会」がいま申したようなこの広大な被害について発表しているんですね。この事実を一体最初から問題にしない、頭に入れないというなら別ですけれども、こういう事態をもっと調べて、その上に立ってこれは軍縮会議に臨むかどうか、その立場ですね。基本的な立っている認識の度合い、そこが非常に重要だと思うんですけれども、認識のほうはされないで検証の問題だけそこでやりますと、妙な役割りになると思うんですね。この点は私ははっきりさせる必要があると思うんです。どうです。しかもベトナムの様子をもっと調べられる必要がある。これは非常に情報が足りないといっても、ずいぶんあるんですからね。  最近、写真班の記者の方が相当テレビなんかでも報道されている。すごいのがあるでしょう。ああいうのは黙っていられない問題だ。だから、この中でベトナムでは多くの婦人、子供、老人を含む非戦闘員が殺されているのですよ。田畑を荒廃させている化学兵器は、いわゆるジュネーブ議定書であげられている致死性の化学兵器ではない。実際はそうでない兵器で殺されている。日本政府が大目に見ている。そうして米軍がわが国の本土に置いているかどうかわからない。これもどこへもただしてない。したがって撤去も要求してないし、非致死性であるといわれる化学兵器によって殺され、苦しめられているというのが現状です。ここが非常に私は重大だと思います。  これがうそでない証拠を今日私はここへ持ってまいりました。これは委員長にお願いしますが、この資料は、記者団それから関係の方に配ることをお許しいただきたい。——ちょっと配ってください。まあ見てください。大臣にもあげて。大臣と委員長に先にあげて。委員の方にもないか。部数は足りないか。もっと作らなければだめだよ。——これはまあ米陸軍省から発行されている軍事訓練用の冊子です。その番号はTC三−一六「ゲリラ作戦における暴徒鎮圧剤、火炎、煙幕、植物滅殺剤および人間探索器の使用」と称する教則本です。CSIの使用法が出ています。政府流の考えによれば、おそらく単なる催涙剤にすぎないと言うでしょう。ところがこの冊子の説明によると、そう単純ではないのです。平常の天候条件だと、開けた平地でも二週間効力が残る。そのガスで、目的物であるインドシナの人民が脱出できないほどの十分な広さと厚さでおおってしまう。つまり地上に降ってわいた巨大な催涙ガスの部屋に二週間も人間の集団を閉じ込めるわけなのです。ですから、結局は死にます。これが非致死性ガスの実態なのです。これはもう詳細、米軍の冊子の教本に出ている。  そこで問題なのは、本年三月十日に軍縮委員会で行なわれたわが国の安倍代表の一般演説です。安倍代表いわく、本年二月十四日に行われた米国大統領の化学・生物兵器問題に関する声明は、軍縮委員会における本件問題の討議に好ましいふん囲気をもたらすものとして歓迎する。ここでもまた歓迎しているわけです。さらに、ニクソン大統領が米国の新政策として生物及び毒素兵器の一方的放棄を宣言した英断を高く評価する、こう言っています。ところが、その実態はどうですか。いま現にベトナムで殺人に使われている催涙ガスや植物滅殺剤を海外で使用する権利はこれを保有する、という、ごていねいにもスポークスマンの注釈つきのものです。これは本年の二月十六日付の朝日新聞にそのことが報ぜられている。日本代表が軍縮委員会で称賛しているニクソンの英断というのはこういうものなんです。これでは私はいけないと思う。どうですか。私はこの事実があるから、非致死性のこの毒ガスについても沖繩において、また本土において、単に致死性のガスだけの取り締まりだけではたいへんなこれは抜け穴がある。とんでもない法王庁の抜け穴ですよ、これは。こういうものではこれは話にならぬと私は思うのでありまして、こういう点についてはっきり明白な態度を外務省はこれは私はとるべきだとこういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  416. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) いろいろと御意見承りましたが、現在の政府の立場としては、とにかくこの致死性のガスとしてあげられているもの、そうして国際的にも致死性のものとして認められているもの、これを沖繩から一日もすみやかに撤去をするということに全力投球をしておるわけでございます。そうしてこれは日本にないと、こういうわけでございますから、いまおあげになりましたいろいろのことにつきましては、十分政府といたしましてもこれから勉強をさせていただきたいと思います。  それから、なお、いまおあげになりましたような角度からの問題の取り上げ方は、やはりこれはバイラテラルに二国間でどうとかというような取り上げ方ではなくして、これはやはり国連というような場で取り上げらるべき性質の問題ではなかろうか、いまお問いのあります間に私として頭に映ずる感じを申し上げると、さようなことに相なります。
  417. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、まあ日本政府の軍縮委員会に対する基本的な態度がどうだかということがこの問題の中で問われているわけですよ。私は、本法案の、この外務省設置法案の関連の中で、軍縮委員会の問題が一つの課題として出されておる。この性格を明確にするということが当委員会のまさになさねばならない任務、こういう立場からこれは御質問を申し上げていると思うのですね。で、とにかくそういう点から言いますというと、単にアメリカの肩を持っているというような形だけでは非常に不十分だし、それから致死性のガスだけの取り締まりということだけでは、いま言ったようなたいへんな大きな抜け穴があるのですから、もっと基本的な態度をとる必要があると思う。  われわれは前国会で、一九二五年のジュネーブ議定書の批准にあたっては、これは当然のこととしてこれに賛成しました。これは私は参議院の予算委員会で五年前にも毒ガスの問題を取り上げて、この時代からこういう問題はこれは主張してまいりました。しかし現在五十年に近い歳月を経て、現実の事態をこのジュネーブ議定書はもうカバーし切れないでいると思うのですね。これを補足するための努力を外務大臣に私たちは要請したはずです。すなわち生物・化学兵器の禁止範囲を、現実にベトナムやラオスで非戦闘員を含めて大量に殺傷し、広大な田畑、山林を荒廃させているという事実をもとにして、嘔吐、催涙、精神錯乱ガス等にまで拡大するよう世界に働きかけ、この実現をはかるべきだということを、これは日本がほんとうに日本の立場から考えて、ことに核の被害国というような問題もありますし、当然私はこういう立場をとるべきだ。単にアメリカのそういう見解のワク内でこの問題を論じておったのでは、世界の平和に対して貢献できないんじゃないか、こういうことを申し上げているのですが、この軍縮委員会のまさになすべき性格としての基本的な立場はどうなのかということについて、あらためて大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  418. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申しましたが、日本といたしましては、軍縮委員会に参加以来、この場をできるだけ活用いたしまして、BC兵器についてももちろんでございます。あるいは核兵器の問題、地下核実験禁止の問題、その他等々にわたって幅広く日本らしい自主的な活動をいたしたいと考えまして、衆知を集めて具体的に検討を進めておるわけでございまして、私といたしましても積極的、意欲的に、前々から申し上げておりますように取り上げておるつもりでございますが、なお本日もいろいろの角度から御意見を承ることができまして、たいへん私は有益だったと思います。
  419. 岩間正男

    ○岩間正男君 最後に一言だけ申し上げたいと思うのですが、現実に歴史上類のない規模で生物・化学兵器による殺人と自然の荒廃が行なわれているときに、忌むべきこの兵器の使用者、つまりアメリカの手を縛ることこそが真にこの兵器の廃絶の第一歩になるものだと私たちは考えます。そのためには、現に使われているものを含めて一切の生物・化学兵器の禁止に向かって世界を結集させる、それが最良の道だと思います。ところが政府は、成立の見通しのない査察制度というものを持ち出して問題の解決の複雑化をはかって、単にアメリカの犯罪的行為を側面から結果においては援助するようなことになっている。軍縮委員会はアメリカとの共犯の場所にしてはいけない。このような欺瞞的な内容を実は軍縮委員会は持っております。わが党はこういう立場から言うと、この軍縮委員会そのものの性格が現状のままではこれは賛成することができない。聞くところによると、会議は何回も持たれて、しかもつくったものは何か、二メートルの書類だといわれている。これが軍縮委員会の任務だ。こういうことでは非常に欺瞞でありますから、代表部を設置するにあたっても、私たちはこういう問題を再検討することが絶対いま必要になっているのじゃないか、こういう見解をこれは申し添えて、私の質問を終わります。
  420. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決を行ないます。  外務省設置法及び在外公館勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  421. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  審査報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  422. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十六分散会