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1970-12-12 第64回国会 参議院 公害対策特別委員会、地方行政委員会、法務委員会、社会労働委員会、農林水産委員会、商工委員会、運輸委員会、建設委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十二日(土曜日)   午前十時七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。    公害対策特別委員会     委員長         占部 秀男君     理 事                久次米健太郎君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 長田 裕二君                 鬼丸 勝之君                 古池 信三君                 矢野  登君                 田中寿美子君                 竹田 四郎君                 小平 芳平君                 須藤 五郎君    地方行政委員会     理 事                 藤原 房雄君     委 員                 佐藤  隆君                 鍋島 直紹君                 初村瀧一郎君                 増田  盛君                 吉武 恵市君                 若林 正武君                 加瀬  完君                 市川 房枝君    法務委員会     委員長         阿部 憲一君     理 事                 河口 陽一君                 後藤 義隆君     委 員                 江藤  智君                 堀本 宜実君                 山崎 竜男君                 小林  武君                 松澤 兼人君    社会労働委員会     委員長         佐野 芳雄君     理 事                 渋谷 邦彦君     委 員                 高田 浩運君                 徳永 正利君                 山崎 五郎君                 山下 春江君                 藤原 道子君                 喜屋武眞榮君    農林水産委員会     委員長         園田 清充君     理 事                 亀井 善彰君                 村田 秀三君                 沢田  実君     委 員                 鈴木 省吾君                 任田 新治君                 森 八三一君                 和田 鶴一君                 河田 賢治君    商工委員会     理 事                 川上 為治君                 竹田 現照君     委 員                 稲嶺 一郎君                 植木 光教君                 八木 一郎君                 阿具根 登君                 大矢  正君                 小柳  勇君                 林  虎雄君                 上林繁次郎君                 渡辺  武君    運輸委員会     委員長         温水 三郎君     理 事                 金丸 冨夫君     委 員                 木村 睦男君                 佐田 一郎君                 前田佳都男君                 渡辺一太郎君                 岡  三郎君                 瀬谷 英行君                 中村 正雄君                 山田  勇君    建設委員会     理 事                 上田  稔君                 大森 久司君                 大和 与一君     委 員                 高橋文五郎君                 松本 英一君                 塩出 啓典君                 二宮 文造君                 高山 恒雄君                 春日 正一君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  小林 武治君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        経済企画庁審議        官        西川  喬君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務省アメリカ        局長心得     大河原良雄君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵政務次官   藤田 正明君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省管理局長  岩間英太郎君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省環境衛生        局公害部長    曽根田郁夫君        農林政務次官   宮崎 正雄君        農林大臣官房長  太田 康二君        農林省農政局長  中野 和仁君        農林省農地局長  岩本 道夫君        農林水産技術会        議事務局長    立川  基君        食糧庁長官    亀長 友義君        水産庁長官    大和田啓気君        通商産業省公害        保安局長     莊   清君        通商産業省公害        保安局公害部長  柴崎 芳三君        通商産業省化学        工業局長     山下 英明君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        通商産業省公益        事業局長     長橋  尚君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        運輸省自動車局        長        野村 一彦君        海上保安庁長官  手塚 良成君        気象庁長官    吉武 素二君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        建設省都市局長  吉兼 三郎君        自治大臣官房長  岸   昌君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        二見 次夫君        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君        常任委員会専門        員        菊地  拓君        常任委員会専門        員        中島  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○公害防止事業費事業者負担法案内閣提出、衆  議院送付) ○騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○道路交通法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○廃棄物処理法案内閣提出衆議院送付) ○自然公園法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○農薬取締法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○農用地土壌汚染防止等に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○水質汚濁防止法案内閣提出衆議院送付) ○海洋汚染防止法案内閣提出衆議院送付) ○下水道法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会地方行政委員会法務委員会社会労働委員会農林水産委員会商工委員会運輸委員会建設委員会連合審査会を開会いたします。  公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案大気汚染防止法の一部を改正する法律案道路交通法の一部を改正する法律案、人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律案廃棄物処理法案自然公園法の一部を改正する法律案毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案農薬取締法の一部を改正する法律案農用地土壌汚染防止等に関する法律案水質汚濁防止法案海洋汚染防止法案及び下水道法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  昨日に引き続いて、加瀬君の残余の質疑を行ないます。加瀬完君。
  3. 加瀬完

    加瀬完君 委員長にお願いをいたしますが、政府見解をただしたのに対し、法制局長官がお答えになりましたが、はなはだこれは妥当を欠いていると思いますので、委員長から、あらためて総理大臣統一見解の御発表をしていただくようにお取り計らいを願います。
  4. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 速記をつけてください。  佐藤内閣総理大臣
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昨日の発言中、大蔵大臣あるいは山中国務大臣、ややニュアンスが違うような聞き取り方をされておるようでありました。そこを今度は統一して、山中国務大臣から答弁させますから、お聞き取り願います。
  7. 占部秀男

  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまの加瀬議員の御意見の、法制局長官内閣統一見解を示したことについてやや疑問がある点は、私も認めます。昨日おりませんでしたので、総理の御指名である担当大臣である私からあらためて申し上げますが、重複を避けまして、一番重点の第二項、「次に、経費分担の問題であるが、地方公共団体の責務に属する事務および事業に係る経費については、地方公共団体が支弁し、そのうち機関委任されているものの財源については、国が必要な措置を講ずることとなるものである。」ということを、あらためて読み上げさしていただきますが、要するに、加瀬さんの御意見の前段に、東京と千葉の例をとられて、膨大な財源というものに対して国が全部責任を持つべきでないかというふうに大蔵大臣財政担当大臣としてお受け取りになった印象がありましたので、あの表現があったのでありますが、衆参両院一貫しておりますことは、国が公害防止に立ち向かう姿勢においても、その責任においても、一義的な姿勢責任を持つ。それに対して、それぞれの企業種類ごと分担な定めて、それに対する国が責任を持つもの、あるいは国が応分の負担をするもの等、あるいは国が起債や融資その他についてめんどうをみる等についての個々の内訳があるということを申し上げたわけでございます。  以上をもって統一見解といたします。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 昨日の御説明、ただいまの御説明統一見解は、そのまま私は政府のほうに返上を申し上げます。理由は次のとおりであります。  公害防止事業財源負担をだれが負うのかを明確にしてもらいたいということについての答えは出ておりません。第二点は、も一しこの統一見解を是認するならば、総理がたびたび言明をされております国の責任公害をなくするという公約は否定をしなければならないことになります。総理のために、その方法はとりたくございません。第三には、国の責任公害防止をするということは、政府が金を出すということを除いては不可能であります。一歩譲って、統一見解によるといたしましても、国の事務地方事務かは、全国的か地方部分的かで、きめられるべきものでございます。今回政府公害諸法提出をして、公害行政強化をはかっておりますのは、国の事務の性格が前面に出てきたことと解さなければなりません。また、機関委任の多いこと、地方固有事務を認めないことも、これも国の事務強化でございます。今回の公害立法は、行政的に国の責任強化しているわけでありますので、政策的に国がその責任に当たっているならば、財政的にも国が責任を持つのは当然でございます。このように、国の財政責任を、ただいまの御説明のように、あいまいにしておりましては、公害行政責任をとらないということにもなりかねません。財政責任をここで明確にしていただきたいのでございます。  次に、大蔵大臣が、昨日、地方公害事業については地方負担が当然という御発言は、お取り消しをいただきます。なぜならば、公害対策基本法の二十三条には、「国は、地方公共団体公害防止に関する施策を講ずるために要する費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めなければならない。」という規定がございます。まさか大蔵大臣法律違反をなさるはずはないわけでございますので、地方における公害事業財源についても十分配慮する、こういう御確認をいただきたいのでございます。
  10. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 割り当て時間が来ておりますから、簡潔に願います。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 以上の理由を勘案されまして、委員長に、あらためて、いまのような財政責任のあり方を政府に明確に表明をしてくださるよう、お取り計らいをいただきます。  お世話になりました。
  12. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまの加瀬君の御要望の点は、あとで理事会で検討いたします。     —————————————
  13. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 佐藤隆君。
  14. 佐藤隆

    佐藤隆君 地球は三十五億の乗り組み員を乗せて太陽系を回る人間宇宙船にすぎない、そして酸素も水も食糧も、その船内で自給自足をしなければならない、こういうことが、実は先般、毎日新聞の論説で出ておりましたが、これは、今日私どもが取り組んでおりまする公害問題に対する一つの警鐘、警告であると私は思います。  ことしは、公害に始まって公害に終ろうといたしておりますが、従来、衆参両院を通じて、しばしば、総理は、公害に取り組む姿勢を答弁をしてこられました。表明してこられました。私は、きょう、別な観点から、と申し上げますのは、先般行なわれたNHK公害対策委員会世論調査をいたしました、その結果に基づいて、それを含めて、総理公害対策にいかが取り組もうとしておられるのか、所信をお聞きいたしたいのであります。  まず、NHK世論調査の結果は、あるいは御存じかと思いますが、一部上場企業百社、そしてまた、都道府県知事公害関係のある市長、それら百人の方々、あるいはまた、企業百社と、総評、同盟の勢力分野、あるいは公害企業組合労働界でのオピニオンリーダー、そうした者を含めての百の組合幹部方々意識調査をしておられます。そしてまた、首都圏二千人の住民に対し、さらにまた、あまり例はないようでありますが、衆議院議員に対して意識調査をいたしておるのであります。  実は、企業百社の社長に対する質問調査の結果は、この七十年代では公害問題というのをおざなりにして通るわけにはまいらぬということが圧倒的に多い回答となっております。しかも、設備投資相当程度のものを公害対策につぎ込まなければならないのではないか、また、公害問題をおざなりにしたのでは労働力の確保という観点からも憂慮すべき事態になるのではないか——その反面、社会資本の充実に対して、国に対しても、あるいは地方自治体に対しても、法的にも財政的にも強い要望があらわれておるのであります。  また、行政責任者に対する調査の結果は、権限の委譲をそれぞれが相当強く望んでおられる。しかし、その反面、財政面公害問題のエキスパートの不足、つまり、金と人との不足悩みがあるということの結果が実は出ておるのであります。  また、百の労働組合幹部方々に対する意識調査の結果は、きわめて企業擁護意識が強いという結果も出ており、あわせて、特定のイデオロギー、そうしたものにとらわれてはならぬのではないか、特に公害問題をネタとしてのスト権確立等の賛否につきましては、そうすべきではないというのが六七%、スト権確立をしてでもというのが二六%、こういう結果があらわれております。これを要するに、私は、こうした公害問題は、政治問題あるいは政治闘争という形よりも、むしろ、住民と密着した生活問題として、とらえようとしておるのではないかと私は解釈をいたすのであります。  さらに、首都圏二千人の住民に対する調査の結果は、御存じのように、三大関心事、物価、公害交通事故、これがあらわれておりますが、特に公害問題については、公害でとてもやりきれませんというのと、まあ困っておりますというのを合わせまして七六%の方々が、そう答えておるのであります。その反面、あなたの生活は快適でありますかという質問に対して、快適でありますというのは、わずか六%でありますが、まあまあだというのが七五%もあるのであります。こうしたうらはらの感情が、意識調査の結果、出ておる。これを考えますと、首都圏二千人の住民公害に対する意識というものは、最近急速に公害問題が取り上げられてまいりましたけれども、いまだ定着した意見は持っていないのではないかと私は判断するのであります。  さらに、衆議院議員に対する調査の結果は、八五・三%の回収率回答率という、たいへんな数字であったそうであります。しかも、七九・四%の方々が、超党派でこれに取り組むべきであるという答えを出しておるのであります。  こうしたことを考えると、結論としては、わが国においては、各界、各層通じて、とにかく公害に対する関心はきわめて高いと、こういうことが言えると思います。しかし、そのうらはらに、残念なことには、公害先進国と言われるのではないかという懸念も、また出てくるのであります。しかし、いずれにいたしましても、全国民共通あるいは国家的課題である、あるいは経営者勤労者も超イデオロギー超党派で、こうした考え方があることがうかがわれるのであります。こうした世論の動向というものを総理は含めて、公害対策に取り組む所信というものはこうだというようなことについて、ここでひとつ明らかにしていただきたい、かように思います。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 佐藤君にお答えいたしますが、ただいま世論調査について詳しく御報告になりました。ただいまの公害問題、これはもう国民全体の大関心事だ、こういうことは言えるだろうと思います。同時に、また、この問題との取り組み方にいたしましても、これを純政治問題として取り組むよりも、経済問題、もっと生活問題とでも申しますか、そういう形で取り組むべきだ、こういう方向国民関心は向いておるんじゃないだろうか、かように私は思います。  私は、しばしば申し上げますように、福祉なくして成長なしと、かように申してまいりました。また、経済成長そのものは、われわれの幸福のため、福祉増進のための手段にすぎない、その手段であるものによってわれわれの生活が破壊されるという、これは何と情けないことか、かようにもししばしば申してまいりました。私は、まあそういう意味で、公害問題にこの国会でも各党から多大の関心を寄せられ、それぞれの御意見を活発に述べられた、こういう事柄が、わが国公害問題解決へのやはり取り組み方じゃないかと、かように思っております。  私は、申し上げるまでもなく、日本の場合、国は古いとはいいます。しかし、近代国家として成長したのはわずか百年前だと、しかも、その百年間に、あの鎖国から開国、近代国家へ進んできておる。しかも、今日では、ずいぶんひどい戦争をし、また、破壊もされたが、GNPは自由陳営第二位、世界で三番目だと、かようにまで発展をしております。これは、申すまでもなく、経済成長が急激に行なわれ、都市化が急速に進んできた、そうして、それに対する対策が十分講ぜられてなかったという証拠にもなるわけであります。そこで、われわれも、この際、もう一度いままでの歩んできた道も見直し、これから行くべき方向についても、方向をはっきり定めるということが必要なのではないかと思っております。古い国、パリなどでは、非常に古くから下水溝ができておる。しかし、新しい国、新しい日本、これがやはりいまの悩みであります。日本において、同時にアメリカにおいて、同じように公害問題がやかましくなっておる。新しさが十分それらに対する対応策を立てなかった原因ではないかと思っております。トレーン環境委員長日本に来ていろいろ話をされている。やはり、アメリカばかりがわれわれの先輩国じゃないのだと、アメリカトレーンさんは、日本に来て、日本の実情はどうなのか、日本はどういうようにこれから取り組んでいくのか、そういうことを山中君から聞いておられる。ここらで日米両方でこの公害問題にひとつ取り組もうじゃないかと、そうして生活中心の形、いかにすればそれができるのか、環境の整備はいかにあるべきか、こういうことをただいま取り組んでおるということであります。私は、どうも標語が気に食わないとしばしば言われますけれども、最もわかりいいことば、これは何といっても、福祉なくして経済成長なしという、その表現が最も適当ではないだろうか。私は、人間尊重、あるいは社会開発、そのことを叫んできておるのも、このちょうどうらはらの問題だと、かように私は理解しております。  かような意味で、この問題と取り組む決意でございます。
  16. 佐藤隆

    佐藤隆君 このたびの公害関係法案は十四法案、すでに衆議院を通過して参議院にまいっておるわけでありますが、そのうち八本が衆議院において修正をされておる。私は、国政審議権を持つ国会議員修正するのを悪いと言うのではない。誤解のないように聞いていただきたいと思いますが、修正率から言うと、たいへんなものであります。私は、ここで拙速主義では因るのではないか、それを言いたいのであります。私は、私自身が実は公害問題についての定着した意見を持っているかと言われると、まだ疑問であります。先ほど、首都圏住民について意識調査の結果をお話ししましたが、おそらく、政府においても、まだ定着したということを言い切れるかどうかと、これを疑問に思っております。  それにしても、特に公害罪、これについては、はなはだ迷惑をこうむっております。なぜかと言うと、公害罪の「おそれ」条項の加除問題、「おそれ」条項を入れた、出した、出したところが、すぐまた抜いた。一体どういうことなんでしょうか。私は、あえてここで法務大臣あるいは法務省当局の意見を聞こうとは思いませんけれども、世論はいろいろなことを言っております。学者連中の中には、何で初めから入れたんだろうと笑っておる学者もおります。政府は何をやってたんだと言っている人もおります。そこまではまだいいとしても、政府与党である自由民主党が、財界の圧力によって、そうしてその「おそれ」条項を除いたのではないかという、はなはだしい誤解を国民に与えるような言辞すらも出てくる結果になった、その責任は一体どうしてくれる。私は、自由民主党として、はなはだ遺憾だと思います。拙速主義を改めて、慎重にひとつ対処されたいと私は思うのであります。非常にことばが激しくなりましたけれども、はなはだ迷惑をいたしております。  総理は、常日ごろ、急ぎつつも、あせらず、というのがお得意のおことばであります。そのことを、いまこそひとつ、また再び思い起こされまして——引き続き、次の国会においても公害関係は議論されるでしょう。二度と再び、こうした公害罪、「おそれ」条項にかかわる議論、それによって、あらぬところに迷惑がかからないようにしていただきたい、かように私は思いますが、総理の御所見を伺います。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 言われることがわからないわけでもありません。しかし、日本の場合において公害対策が非常におくれていた、こういうことはいなめない事実であります。したがって、誤解を受けないようにこういう問題と早急に取り組む、こういうことが必要である、そういう政治的要求のあることも、これはお認めになるだろうと思います。また、政府原案を出す以上、原案修正なしで通すだけの確信がないものをなぜ出したか、こういうようなおしかりでもありますが、これまた、私は、国会の審議である限りにおいて、各党が満足のいくような、そういう法案がつくられるべきだ、国会修正権、これを否定するものではない。もちろん、提案者が十分各党の意見を事前にキャッチし、そうして、各党の御意見を聞いて初めて修正するという、そんなことをしないで、原案を通し得るような、そういうりっぱなものを出せとおっしゃる、これもまた、そうあるべきだと思います。しかし、ただいまの問題は、この際はどうしても早めに出さざるを得なかった。早急に整備せざるを得なかった。しかも、各党が非常な熱意を持ってこの問題に取り組んでおられる。そうして、その修正は、本来の考え方から見ましても、いわゆる政争の具だとか、あるいはイデオロギーの問題ではない、かように考えると、国民に対してもいい案が修正ができる。さような意味において、私は、この修正も別に反対すべきものじゃないように思っております。  そこで、問題になります刑事罰の、いわゆる「おそれ」のある場合に刑事罰を科すか科さないか、こういう問題でございますが、大体草案中といいますか、まだ確定案ができる前にいろいろな経緯のあることは御承知のとおりであります。そういう星雲状態を抜けて、はじめて案が固まるのです。その段階の一々をつかまえて、とかくの批判をされることは非常に迷惑だ。ことに、これが一部の財界の圧力、それによって、いかがなったとか、動いたとか動かないとか、どうしたとか、かように言われることは非常に困る。したがいまして、私は、めずらしく声を大にして本会議でも申し上げたのですが、こういうことは、どうも幾ら言論自由の場とはいっても、やはり良識のある範囲で公党の批判はしていただきたい、かようなことを申しました。また、私自身考えてみまして、こういうものが、原案の途中において、原案作成中に、いろいろな議論の出ることは、これは当然であります。その一々を問題にする、そういうものではなくて、最終的に決定されたその段階において当否を議論されること、これが私は本来の正しい姿ではないかと思っております。  したがいまして、ただいま、いろいろのお話を伺いつつも、私も、ただいま申し上げるような観点で審議を進めていただきたいと思いますし、これだけはどうしても修正に応ずることができないとか、こういうようなものも政府にはあるのでありますから、その辺の点も十分御理解いただいて、そうして各党で、やはりできるだけいい公害立法とでも申しますか、対策立法、そういうものができ上がることを、国民のために私どもは心から願っておる。かように思います。したがって、ただいまのようないろいろの誤解もあるようでありますけれども、いわゆる成案が固まるまでの途中における議論、それはなるべく避けまして、やはり最終的な結論で議論をしていただきたい。お願いいたします。
  18. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いま公害罪法のお話がありましたから、私からも一言申し上げざるを得ないと、こういうふうに思います。  実は、私は、今度のこの公害罪法というのは世界的にもあまり例のない法律である、したがって、初めから公害立法でなくて公開立法をやろうじゃないか、できるだけたくさんの人の意見を聞くために、むしろ公開をして、批判を仰いで、そして立法しようじゃないかということを、私、初めから申しておるのでありまして、この法案の用意というのは非常に早くできております。これはもう法制審議会から九月に出ている。その後の事情の変更もあると私はきのうこの席で申し上げたように、いわゆる直罰規定がはっきりしてくれば予防的な効果を相当やれる、したがって、いわゆる刑事罰の対象を、そうその、ばく然として、あいまいにして、広くしておく必要はなかろうと、こういうふうな考え方もあって、ああいうふうに直した。これは私は誤解を招かないように、よく申し上げておきますが、この立法につきましては、純法律問題でありますから、総理とかあるいは山中担当大臣に相談いたしておりません。したがって、これはどなたがお考えになっても、法律の条文などについて総理大臣が理解があるわけもありません、ことに刑事立法などは。これは私はそういうふうに申し上げたい。したがって、そういうことは事前においても相談してない。そう事前において相談してないとなれば、直す際にも相談するはずはありません。したがって、これは閣議に出す前までは、案は、これは法務省の原案でありますから、私の所管内にある事項でありまして、私が世論に聞いてこれを直すということは当然で、これは私は、多少総理にお気の毒な感を持っておると、こういうことをやっぱりあらためて申し上げておきます。これは、あくまでも私どもはさような趣旨において修正をしたことであることを、あらためて申し上げておきます。
  19. 佐藤隆

    佐藤隆君 総理に、もう一点お聞きいたしておきますが、四十六年度予算は、三Kということで、国鉄それから健保、米、こういうことになっております。それが最重点項目ではなかろうかと、こう言われておるのでありますが、公害予算について、ひとつそれ並みに、三K並みに四十六年度予算には対処したいというお気持ちがあれば、一言それを示していただきたいと思います。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 佐藤君も、大蔵大臣からしばしばこの席でお答えしていることはお聞き取りだと思います。いわゆる三Kというのはなかなか扱いにくい難問題だと、かようには聞いておりますが、物価と公害問題、これを重点施策として予算を編成しますと何度も申しておりますから、三K並みでなくって、このほうは、わりにはっきりしているのですから、三K並みじゃなくって、やはり重点的にこれを取り扱う、このことを私からも確認しておきます。
  21. 佐藤隆

    佐藤隆君 次に、土壌汚染防止法が提案、付託されているわけでありますが、カドミウム問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  これはいままで非常に大きく取り上げられておりまして、関係地域の農民、米づくり農民には大きなショックを実は与えておるわけであります。私の地元であります新潟県六日町周辺においても、この問題が、黒部、安中に引き続いて提起されておるのであります。農業問題は、地域分担の明確化とか、そういうようなことについていろいろ議論されているときでありますが、それだけに、そうした中にこのカドミウム問題が出てきているということは、はなはだ残念なことであります。この六日町周辺というのは良質米の主産地ということで、実は、政府の施策に協力して自主流通米をうーんと出そうと、こういうことで努力をいたしてきた。ところが、自主流通米には回せないような結果に相なってきた。こうなりますと、こまかいことではありますが、政府買い上げ価格と自主流通米価格との差額は一体だれがそのリスクをしょうのか、こういうこまかい議論もまた出てくるのであります。こまかいが、農民にとってはたいへんであります。  そこで、私は厚生省に、まずお聞きしておきたいのでありますが、米にかかわる人為的汚染というのは一体どの程度を言うのか、食品衛生法上の問題もありましょうが、それと、かね合わせて、ひとつお答えをいただきたい、かように思います。
  22. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 実は、このカドミウムというのは、土壌中微量には、どこでもあるもののようでございます。したがって、私どもが各種の調査をみずからいたしたり、また、あるいは専門方面に調査を委託した結果を見ますると、カドミウム人為汚染の原因が全くないようなところから産出される米につきましても、〇・三ないし〇・四PPMぐらいのカドミウムを含有する米は産出されております。しかし、それ以上、〇・三とか〇・四以上のカドミウムを含有するような米が産出されているところは何らか人為的な原因もあるかもしれないということで、私ども衛生担当、国民の健康を担当する役所といたしましては、それを実は警戒の端緒といたしておるわけでございます。そこで、〇・四までは全く人為的の原因のない米として扱い、それ以上のものが生じた場合には調査を開始する、こういうことを、まず端緒といたしております。
  23. 佐藤隆

    佐藤隆君 食品衛生法上は一・〇〇PPM以上のものは食用に供することができないような規定づけになっておりますね。そこで、いま〇・四PPM以上のものは、汚染米にあら、ざる汚染米というような考え方で、とにかく、まあ蓄積されていけばどうかなと、多少の懸念があるというふうに理解していいと思いますね。
  24. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) いまも申しましたように、〇・四以上の米が出ました場合には、それを警戒地域の端緒としまして、さらにそれにいろいろな調査を積み重ねまして、それからカドミウム要観察地域というものをつくります。しかし、それは、〇・四の米が産出されるというばかりでなしに、実際に、おとなの尿中から排出されるカドミウムの量でありますとか、あるいはまた、米ばかりでなしに、ほかの副食物等も加えまして、一日にその地域で食べられる食品中のカドミウムの総量というようなものも調べまして、そういうものがある程度の量に達しましたときに初めてカドミウム要観察地域として、いろいろな、まず警戒警報というものを出してあります。しかりしこうして、実際私のほうが専門の学者を集めまして、しからばどの程度以上のカドミウムが入っている米は食品衛生上の許容限度を越えるかということを結論づけますと、結局は、いまお話がありましたように、一PPM以上のカドミウムを含有する米は、これは食品衛生として、摂取は厚生省としては認められない。したがって、〇・四から〇・一までの間は、それはその汚染の端緒をその地域について見るだけの資料でありまして、それは食べてはいかぬという米ではない。そうしたら厚生大臣そういうものを食うかと言うから、私は食いますと、こういうお答えもいたしておるわけですが、しかし、学者によりましては、〇・四を越えたものは一PPM以下のものでも厳密にその規制をすべきだという説をなす学者も、そういう人もおることはおりますが、私どものほうの結論は、そういうことも考慮しながら一PPMときめてあります。
  25. 佐藤隆

    佐藤隆君 ここで通産大臣に一つお聞きしておきたいのでありますが、このカドミウム問題、汚染米の問題は、農林省、厚生省だけの問題ではなくて、先ほど申し上げましたように、たとえば自主流通に回そうとしておったのに政府買い上げに回さざるを得ない現況であるというようなことになると、その原因者である企業に対して、これはどういう補償要求をしたらいいのか、いろいろいま、もめております。そうしたことについて、通産省は、原因者である企業者側に対して適切な行政指導を強力にしなければいかぬと思いますが、そのことについて、簡単でけっこうですから…。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、南越鉱山というのでございましたか、東邦亜鉛の山の問題であると思いますが、十五年ほど操業しておりますので、蓄積があったということでございます。現在の排水基準で申しますと、実際の排出量は基準の十分の一くらいでございますので、現在の段階で問題があるわけではございません。しかし、過去の蓄積との関係で、企業が事実上農民との間で負担をした、するという協定に達したケースは、幾つか実は、御承知のように、ございます。これはやはり因果関係によることでもございます。私ども、そういうときに、できるだけ両者の間に立って、話し合いがつくようにという調停をいたしておるわけでございまして、すでに現実に話し合いがついて、企業負担したケースも幾つかあるわけでございます。
  27. 佐藤隆

    佐藤隆君 次に、古米とか古々米処理というのは、農林省でいまたいへんな問題になっておりますが、ここではその議論はいたしません。なるべく適切な措置が早く講ぜられるようにお願いしておきますが、こうした事態の中で、消費者に対する配給米の配慮というもの、まあ最近は、食糧庁も、十二月二十日から一月の三十一日までですか、全部去年はフィフティ・フィフティのやつを、今度は新米全部配給しようというようなことも食糧庁では公表しておられるようでありますが、それも非常にけっこうでありますが、いまのような、汚染米のこの処理について、汚染米にあらざる汚染米、〇・四PPMから一・〇〇PPMまでのいわば汚染米、これは一体食糧庁ではどういう買い入れをしておられるのか。買い入れはしているけれども凍結をしておるというように私は聞いておりますが、一体これはどうなっているのか、お伺いしておきます。
  28. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 要観察地域の米は、政府は買い入れますけれども、これは指定倉庫に別個に保管いたしてありますので、配給のほうには回さないことにいたしてあります。
  29. 佐藤隆

    佐藤隆君 私は、その消費者に対する配慮は非常にけっこうでありますが、もう一歩——いま御答弁のように、配給米にはそれは回しませんよと、〇・四PPM以上のものはそれは回しません、特別に保管してありますということでありますが、もう一歩進めて、そうした汚染米の凍結米の流通、保管状況というものを公表する、それがやはり消費者に対する親切な行政ではなかろうか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  30. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまもここで厚生大臣からお話がございましたとおり、一・〇〇PPM以下の米は食品衛生上害があるとは認めておいでにならない、おわかりのとおりであります。でありますから、私どものほうとしては買いますけれども配給はしないというのは、有害であるということではないようでありますけれども、一般にそういうことについて不安をお持ちの方が多いようでありますし、いま七百数十万トンの米をかかえておるような潤沢な倉庫の状況でありますので、そういう不安なものは、保管をいたしまして、厳密に区別して置いておく、こういうことをやっておるわけであります。
  31. 佐藤隆

    佐藤隆君 非常にしつこいようでありますが、不安に思われておるから配慮しておるのだと。そのとおりだと思います。だが、そこまでお考えになるなら、さらに、そうした不安を除くために、ひとつ、凍結米はこうこうこういう流通保管状況になっておるということを食糧庁をして適切な機会に公表させるということは、これは親切な行政だと私は思うのです。いかがでしょうか。
  32. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) それも御不安を除く一つかもしれませんから、考慮いたしてみます。
  33. 佐藤隆

    佐藤隆君 次に、産業廃棄物についてお尋ねをいたしておきたいのでありますが、最近、ポリエステルによる牛乳容器がいろいろ問題になっております。あるいはプラスチックなどは新建材としても相当な成果をあげ、あるいは本の表紙にもプラスチック・ペーパーなんということで使われておる。いろいろな点でプラスチックによる生活革命というものが行なわれておる現況であります。ところが、そのプラスチックやポリエステルというものが、あたかも公害をまき散らす元凶のような、犯罪人扱いをされておる。ちょっと行き過ぎた点があるのではないかと私は思うのです。別に私は業界から頼まれてやっておるわけでもなんでもありません。ただ、こうしたプラスチックの、じょうぶで安くて長持ちがして見てくれもいいというようなメリットを持っているものを、ここまでくるには長年の技術陣の英知を結集し、そして相当な努力、多額の金をつぎ込んでおる。その成果のあらわれだと思うのです。要は、この廃棄物処理の体制が欠けておったということではないかと思うのです。そういう意味で、いまはプラスチックを耐久用のものと使い捨てのものとの二つに分けまして、使い捨てのものについていろいろ議論になっております。そこで、これが焼いた場合に有毒ガスが出るとか、あるいは高熱による焼却炉の破壊、あるいは埋めても永久に腐らないというようなやっかいな面を持っておるわけですが、この高分子物質の廃棄処理体制については厚生大臣はいかがお考えになっておるのか。せっかくの科学技術の進歩に無用のブレーキをかけて、何か人類の進歩に水をさすような結果になる。もしそうした処理体制というものがうまく進まないと、そういう結果にもなるのではないか、こういう懸念からお聞きしているのでありまして、そうしたことについての研究体制等、もし具体的にここでお聞かせ願えれば……。
  34. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) プラスチック製品は決して犯罪者ではなしに、人間生活の貢献者でありますことは、これはたとえば私のめがねもプラスチックでございましょうし、万年筆もみんなそうだと、これなくして今日の国民生活というものは維持できないところまできておりますが、しかし一方、最近の状況を見ますると、各家庭から出まするごみの大部分はプラスチック製品、あるいはその他の産業廃棄物だといっても過言でないような状態でありますこともまた事実でございます。これまでのごみ処理の体制というものはそれに着目してございませんでしたので、そこで今度公害関係法改正の際の一つの大きな柱として清掃法というものを根本的に改めまして、廃棄物処理法、廃棄物処理及び清掃に関する法律ということにいたしましたが、その際にも、一方においてはプラスチック製品が人間生活への功労者であることを認めながらも、それの処理につきましては三つほどの方策を法律の中にもやはりとり得るように実は規定をいたし、その三つの方策がとり得るように私どもも助成してまいるようなたてまえです。  一つは、まず、プラスチックを生産する事業者自身の責任というものも感じていただき、強める方策でございます。  もう一つは、それが消費者にどうしても回ってまいりますので、そうすると、一般の家庭廃棄物と一緒に出まするので、それの処理についてどうするかという問題で、そこで仕分けをするとか前処理をするとか、またメーカー自身が、あるいはまた販売業者自身がそれらの製品、容器などを使い捨てられるようになった場合に処理しやすいような、そういう協力体制というようなものをつくっていきますし、それからまた産業廃棄物として出るプラスチック類につきましては、メーカーが一社だけでなしに協業体制もつくったり、さらにまた必要な場合には、広域計画として都道府県がこれらの処理の体制をつくるというような三段階くらいの方式を取り込みまして、功労者であるけれども、放置できないようなそういう状態に対処するということを思い切って実はいたしてまいります。
  35. 佐藤隆

    佐藤隆君 そうしたことがなるべく早く進められるようにひとつお願いをしておきたいと思います。  最近、主婦連と称する方々が、物価高や食品や薬品公害防止ということで独自の運動を展開しておられる。これはその熱意は私は買いたいと思います。ただ、おしゃもじでやっておられたのが何かこのごろ試験管に変わってきたというような私は見方をいたしております。こうしたことについて私、実は毒性実験とか、そうしたことを主婦連でも公表しておられるようですが、毒性がどの程度こうだとかどうだとかいうことは実は私、化学にはしろうとでありますので、よくわからないからお尋ねするのでありますけれども、急性毒性のものならいざ知らず、体内で蓄積される慢性毒性について、これはもう相当整備された施設で相当長期の時間をかけて専門家が分析調査をしなければ学問的基礎の上に立ったきちっとした調査結果というのは出ないのじゃないか、こうもいわれていることを私は聞いておるのであります。まあ、柳町の鉛害事件などもテレビに取り上げられたり、これもお医者さんがいろいろの結果を発表されたりいたしましていろいろ物議をかもし出したことは御存じのとおりであります。そこで私は、政府がこうしたものについてのやはり研究体制というか、そういうものに相当積極的に取り組まないと、こっちでも取り上げて何か結論を出す、あっちでもやっている。さあ国民は、住民はどれを信用していいのか、まるで裁判所なしの裁判がやられているみたいなものです。一種の私は、大げさな表現でありますが、人民裁判が行なわれているみたいなものだと思うのです。そこで、たとえばアメリカの例をとらえてもFDAではこうしたことについては非常に思い切った措置もやっておるようでありますけれども、何ぶんにも多種多様化したこの食品・薬品公害について、もう政府自身でもやり切れないということでFDAが専門研究者を養成して、それを公正で権威のある民間の財団法人のいわゆる民間研究所に送って、そうして官民合同の何をやっている、こういうことを聞いておりますけれども、いま薬品もそうでありますが、食品についてもいわば食品ノイローゼみたいのがありますから、こうしたことをひとつなくするために、何かそうした研究機関とか、そういうものを厚生省自身でひとつリードされてやはりこれはつくるべきじゃないか、アメリカのまねをせいという意味ではございませんけれども。そうしたことをもし考えておられるならば、あるいは考えようとしておられるならば、その御意見をひとつお聞きしておきたい、かように思います。
  36. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 佐藤委員のお話し、まことにごもっともだと思います。私も実は同じ思いでおります。毒性には、いま御指摘のように、急性と慢性とがございますが、急性毒性のほうを扱います毒物及び劇物取締法というのがございますが、事のついでといっては恐縮でございますが、この際これも見直すということで、今度の公害国会に改正法を出しておりまして、急性毒性の問題についてもやはり欠くるところがあったことは事実でございますので、その穴埋めを今度の国会でいたします。  さて、問題は慢性毒性の問題でありますが、これは食品にも薬品にもまた公害などからくるものもございまして、私のほうでは、食品衛生調査会とか、あるいは生活環境審議会とか薬事審議会というような各方面の数十数百の方々の専門家を編成して、必要に応じていつもチームを設けまして、いろいろのこともやっており、また、その母体となりますところの国立の御承知の衛生試験所、また、国立ばかりではなしに、国が助成をいささかいたしまして、地方に衛生研究所というものを持っていただいたり、また、国立の予防衛生研究所というものもございましてやっておりますが、これは実は全く手一ばいで、食品添加物の総点検、これは三百幾つあるものを、しかも色素の問題で私がいつも総理大臣から実はお小言をいただくのです。色素はできるだけやめろと、こういうお小言、薬はできるだけ減らせと、こういうお小言をいただいておるので、取り組ましておるのですが、全く手一ぱいで動きがつかないような実は状態にございます。したがって、民間の大学とか、あるいは民間ではございませんけれども政府が助成しております環境衛生センターというようなところへ助成金も出して、アメリカのFDAの仕組みほどではございませんけれども、それを小規模にいたしたようなことも厚生省としてはやってまいりました。しかし、それだけでは足りません。そこで、やはり公害衛生研究所というようなものをつくりまして、そして公害からくるばかりでなしに、いま御指摘のようなことについてのもう根本的なその調査、総合的な調査、シミュレーターの設置というようなことまでやらなければ、その主婦連のほうの人民裁判のほうがいつも先に来るというようなことは、それはけっこうなことなんですが、間違った不安を国民に与えることは私は遺憾だと思います。柳町のその鉛害事件などでも、あとで私どもが東京都と打ち合わせて調査をしてみると、あれほどの血中の鉛というものは出ないということで、非常に安心をしましたが、一時不安を与えましたようなことは御指摘のとおり、ああいうことがあちらこちらにありますと非常に遺憾なことになりますので、私もできる限りそういう調査体制の整備をつとめてまいりたいと思います。
  37. 佐藤隆

    佐藤隆君 いま厚生大臣の言われた公害研究センターですか、そうしたものの中でひとつまた積極的に取り組んでいきたいという考えも持っておられるようでありますから、ひとつぜひ早めに具体化していただきたい、かように思います。  なお、水銀中毒等の問題に関連して、水俣病等にも関連をしてお聞きしたいのでありますが、時間がございませんのでお願いだけしておきますが、農薬等についても水銀を含む製品の使用制限とか、あるいは代替品の開発、そうしたこともぜひ、いま厚生大臣が構想を持っておられるようなそうしたセンター等で早急に解決をすることができれば、ひとついま期待をいたしておきます。  次に、自治省関係でちょっとお聞きしたいのでありますが、公害対策については自治省では、公害対策本部を政府がつくる前から、その前に一つの構想を発表したり、なかなか積極的に組んでおられるということはわかるのであります。しかし、冒頭申し上げました意識調査地方庁の意識調査にもあらわれておりますように、金と人が足りない、こういうことでありますが、私は公害行政関係職員、これについて国も地方も十分でないはずだと私も思います。そこで早急にこの量の確保と質の向上、こういうことについて考えるべきだと思います。したがって、地方についてはひとつそのことについて自治大臣から、国については、公害行政関係職員の問題について公害担当大臣山中長官からひとつお答えをいただきたいと思います。
  38. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまでも厚生省が一番よくやっておりますが、各省それぞれ地方職員の研修も実施をいたしておるようでございます。これもしかし公害データ・バンク構想の外辺の問題として、あるいは自治省等では自治大学等におけるそのような公害課みたいなもので研修をさせようという構想等もございますので、いろいろの各省の構想を総合検討いたしまして、地方職員の公害に関する技術やあるいは最新の観測方法や、それらの必要なデータ、技術等を身につけて絶えず最先端をいく公害対策の処理が、地方において権限とともに実行が期せられるような措置を国は講ずる必要がある、かように考えておりますので、私のほうで取りまとめをしたいと思います。
  39. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 公害対策のために必要な技術者、職員を量質ともに強化していく必要は十分に認めます。量につきましては、地方関係においては行政の合理化、簡素化の線に沿いましてひとつ合理的な増員を配慮いたしたいと思います。質につきましては、研修等につきまして、ただいま山中総務長官からもお話がありましたとおり、自治省といたしましては緊急の措置として、自治大学等で特別のコースを認めまして、所要の研修体制を整備したい。また、地方におきましても、これらのひとつ整備を行なう。国におきましても、従来、研修会等を行なっておりましたが、これはひとつ強化をしていただきたい。  なお、これらの点にあわせて監視測定事務あるいは公害対策のシステム処理という点を考慮いたしまして、自治省といたしましては、地方公害防止総合センターを設置いたしたい。これは全県下に置きたいと思っておりますが、さしあたり五地区を選んでやりたいというような考えを持っております。ここにおいても研修事務を行ないたいと思っております。
  40. 佐藤隆

    佐藤隆君 もう一つ、公害に関する権限の委譲は都道府県あるいは都道府県知事意識の中ではっきり出しているわけでありますが、市町村を対象にしてまでも進めるべきではないか、とりあえず自治省におかれては、たとえば指定都市はじめ、新潟県であれば新潟市とか、長野県であれば長野市とか、県庁所在地のいわば大きな都市ですね、そうしたところからでも考えたらどうかと思いますが、一言だけ簡単に、もう一問あるものですから。
  41. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 自治省は大体そういう方針であります。そして今回の法律改正においてもその趣旨は各法律案に盛られておると思います。今後政令、法令等の改正等につきまして、その点を大いに考えてまいりたいと考えております。
  42. 佐藤隆

    佐藤隆君 最後に総理に一言御意見を承りたいのでありますが、わずか五十分足らずの質疑でも、いろいろな各般にわたる議論が提起される複雑多岐にわたる公害問題であります。そこでこれを進めるにはもちろん総理の指導力が期待されているとは思いますが、それと相まって行政機構の問題が従来しばしばすでに議論にも出ておりますし、御答弁もしておられるようであります。それはある程度承知しております。しかし、ここまで議論が出てきて、そしてどうしてもやはり新しい時代の新しい要請であるということで、従来の行政改革の概念と変わった立場で、新しい要請であるということで、一つの行政機構——公害行政機構、こういうものが必要であると、こういうことが言えると思います。そのことについてのあらためての御意見をお願いいたします。それで質問を終わります。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点ではもうしばしばお答えしたからあえて申しませんが、御承知のように、まず、いろいろ法律をつくりますけれども、何よりも大事なことは平素の指導監督といいますか、行政の分野、それがたいへん大事な役目を果たすと、かように思いますので、まず、各省でまちまちの行政では困る。そういう意味で各省スタートラインをそろえたというか、そういう形のものが本対策本部と、かように御理解をいただきたいと思います。そしてただいまのところ各省でそれぞれが公害と取り組む、その姿勢のほうが業務についての特別の知識を持っておりますだけに容易だと、効果があがると、かように思いますが、しかしながら、日本社会党はじめ野党からもぜひ環境保全省をつくれ、そのために大臣などをふやしてよろしいと、こうまで実は鞭撻を受けております。私はいまの行政機構のたてまえから、行政簡素化、その方向についてはずいぶん御要望が出、それと取り組んでおる最中ではありますけれども、何ぶんにも新しいものもありますだけに、これの取り組み方にはなお私も慎重に、さっき言われたように急がずあせらず、十分国民の輿望にこたえるような結論を出したい。問題は公害防止、また公害が発生した後の対策、そういうことの処理が十分できるかどうか、国民の期待にこたえるかどうか、こういうことだと思いますので、これは慎重に考えてまいるつもりでおります。     —————————————
  44. 占部秀男

  45. 田中寿美子

    田中寿美子君 最初に、総理大臣は御記憶していらっしゃいますかどうですか、昨年の六月二十日の参議院の本会議で、政府公害白書に対しまして私が代表質問しましたとき、佐藤総理がお答えになりましたことばですね、こういうふうにお答えになっています。「田中君は、公害を社会的罪悪であると表現されましたが、私はむしろいまの古くさいと言われるネセサリーイーブルとでも言ったほうが相当ではないかと思います。」ネセサリーイーブルというのは必要悪ということですね。「と申しますのは、本来経済は人間の福祉を向上させるための手段にすぎないので、その意味から、公害はゼロになるのが理想ではありますが、現実の問題として狭い国土に工業立国をしていかねばならないわが国としては、ある程度の公害はやむを得ない面があるからであります。もちろんこう申すからと言って、公害対策をおろそかにしようとするものではありません。問題は、経済と福祉のあるべき調整点の発見こそ、当面の課題であると考えます。」とおっしゃったわけですが、つまりここにあります考え方は必要悪という考え方ですね。公害は必要悪である、それから経済と福祉を調整しなければいけない。もうあれから一年半たちまして、公害の非常な激発、問題化で、お考えをお変えになったはずだと思います。日本公害は世界一だということは各大臣もお認めになりました。「腹切り」と「水俣」と「公害」というのは、もういまでは世界用語になっている。ですから、公害の国際シンポジウムに見えた学者でも、田子の浦のあのヘドロを見て、よくもここまで公害のたれ流しをしたといってびっくりしているわけですが、こういう不名誉を挽回するためにも、総理はこの必要悪とおっしゃったことば、これはもう改めたということをはっきりお取り消しになりませんか。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昨年の私の速記をただいま読み上げられました。確かに昨年はそのとおり必要悪と、こういう表現をいたしました。しかし、このことばは、その中にありますように、もともと経済は国民福祉のその手段だと、こういう点がもっと強く出てくれば誤解を招かなかったろうと思いますけれども、どうもことばが誤解を招きやすいと、かように思いますので、私はただいまのところ全面的に取り消すというものじゃありませんが、誤解のないようにはしたいと、かように思っております。したがって、そのいまお読みになりました速記の中にあります経済がわれわれ福祉の向上のための手段だと、この点を強く取り上げたい。そうしてこの公害防止並びに抑圧、こういうことに万全を期したい、かように思いますけれども、いまの科学技術をもってしてもときにできないこともあるだろう、そういうのがいまの問題になっておる。そういう意味から国民にもやはりある程度御了承願いたいのだと、こういうような考え方がどこかに残っていることだけは、これはひとつ御了承いただきたい。それかといって、私はこれはもう必要悪だからこの程度で甘受しろとか、かように国民に呼びかけておらないことだけは、これも御了承をいただきたいと思います。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ福祉なくして成長なしとこのごろはいつもおっしゃるのですから、だから必要悪なんていうことばはもう取り消していただく必要があると思います。そうでないと、そういう観念がそこにありますと、あるいは政府にももしそういう観念がありましたら、公害対策基本法の改正案で幾ら経済との調和条項を削りましても、あるいは憲法二十五条の文句を入れてきましても、実際にはその取り組みがしっかりならないので、現実の環境破壊というのはもう法律の文言をこえていると思います。ですから、その点は総理もそういう言いわけをなさいませんようにしていただきたい。もういまでは全く新しい立場に立って、公害の問題には法律の体系も、先ほど行政改革とおっしゃったけれども、行政の体系全体も、あるいは科学技術のあり方も変えなければならない時期にきているのじゃないかと思うのです。それで総理大臣が仲よくしていらっしゃいますニクソンも、ニクソン教書の中で、非常にことしはたくさんの大きな計画を出していますし、一九七〇年は清潔な環境を目ざしてわれわれが闘争を展開する年であるということを言っておりますね。そうして非常に思い切った政策を出しているので、総理もこの辺ニクソンさんにならって、はっきりと今後大きな政策をやっていくのだ、先ほど急がずあせらずとおっしゃったけれども、公害は非常に急務でございます。ですからその意思表明をはっきりしていただきたいのですが。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどの、佐藤君にもお答えしたように、この問題は、公害問題だけは急がなければならない状況に置かれておる、日本が立ちおくれている、そういう意味でいろいろ法案も出した。また各党からも非常に熱心に討議されておる、審議されておる。そういう意味修正もこれは前進するという意味で受け入れたのだと、こういうお話もしておりますので、田中委員からもただいまのようなお話がありましたが、私の真意は御理解がいただけるだろう、かように思います。ただ問題は予算編成でどういう形になるか、こういうことが問題であります。私はなかなか日本の場合は、金の窮屈な予算でございますから、その窮屈な予算を重点的に配分するとは申しましても、どういうようになるだろうか、ただいま心配をしておる。しかし、これは大蔵大臣がやり繰りはなかなかうまくやっておりますので、ただいま、物価と公害、この二つを重点施策として予算は編成すると、かように申しておりますので、それに期待をかけておるような次第であります。
  49. 田中寿美子

    田中寿美子君 計画を立てて、現在の公害の実情をはっきり把握して、量的にも把握して、計画的に何年度までにはこれだけのことをするというようなやり方をしませんと、公害は除去できないと。  それでは次に、けさの加瀬委員の発言に続きまして、私あの内容をもう少し追及したいと思います。で、加瀬さんがおこられたのは当然だと思います。というのは、国と地方公害に対する責務について、政府側で統一見解というふうにおっしゃって、統一見解を出されたけれども、その国の任務と、地方の任務について見解を出しながら、それに対する財政措置のことがはっきりしない、それが問題の、質問のポイントであったわけなんです。そこできのう統一見解として発表されました内容について、私もいろいろ疑義がございます。で第一、国は基本的、総合的施策を策定し、第一義的責務を負う。地方のほうは、地方自治体は、当該地域の自然的、社会的環境に応じて公害対策を講ずるので、その地域については第一義的責務を負うとなっていますね。これは具体的にいえばどういうことですか、山中長官。
  50. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは国みずからが行なうべきもの、そうして地方が固有の事務として行なうものの仕分けをしておるわけであります。なお、混同するといけませんが、当席でも申し上げましたとおり、公害防止事業というものは、まずその防止するための施設は、全額企業負担するのが原則である、これは申し上げております。さらにそれについて、公共事業として行なわなければならない場合でも、基本法第二十二条の要請による法律として、まず企業負担すべき度合いを定めるということを今国会で定めております。それの残りを国と地方とが負担をするわけでありますから、それについては予算編成と並行をして、その実態をきわめていくということであって、国は責任を回避しないということを申し上げたはずでございます。
  51. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは具体的に申しまして、昭和四十五年度の公害対策費、昨日の御発表では、国の公害対策費は六百六十億とおっしゃった。そうして地方のほうが七百四十億でしたか、これは公害対策費そのものじゃないのですね。いろいろなものが入っていると思いますが、予算書で見ますと、公害対策費として百四十八億ほどですね。そういう固有のもので国が地方に対して、一体どのくらいの補助をしているのか、地方交付税は三十億しか出ていませんね。ですから大蔵大臣が、非常にきのうは足し前とか——何というおことばを使われましたか、足りない部分だけをつぐのだ、こういうふうにおっしゃいました。国庫補助金というのはどれだけこの中から出ていたのか、支出金です。
  52. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 全体の総額は財投もございますので三千五百六十八億かと記憶いたしておりますが、こまかな行政の事業ごとの費用の大半は下水道事業が主でございます。したがって、この下水道事業に対する補助率をどうするかどうかの国の一義的な問題については、今後予算編成で議論をしようということで、大蔵大臣の答弁ははなはだ明確でなかった点がありますのは、予算編成の年内にもやろうかという直前の事態でありますから、立場としてはことばを濁すことを私も認めざるを得ない環境にあると思います。しかしながら、これから予算を編成いたします際には、単にいままで各省が八月三十一日で締め切りました大蔵省への概算要求のトータルの中には入っていないもの、すなわち今公害国会と言われる臨時国会で出されました各種の法案に伴う権限やその他の事務が委譲されていくことに伴って、それに伴う委任事務等については国がまず財源措置についてめんどうを見る等々のことが出てまいりますので、これらも含めて公害予算については、あらためてもう一ぺん対策本部においても各省と相談して見直しをして大蔵省との協議に当たりたいと考えます。
  53. 田中寿美子

    田中寿美子君 公共下水道の事業からガードレールまで入れたのでは、これは公害対策費というのじゃないと思います。ですから特に公害対策費として相当額をこの四十六年度には計上するということを、総理いかがですか、約束してくださいますか。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、下水溝、下水道をつくるという、これが直接の公害対策費だとかそうでないとか、こういう議論よりは、日本で一番おくれているのは下水道の整備ではないだろうか、かように思っております。生活環境を整備しろ、保全しろというそのもとのものは上下水道の整備にある、かように言っても過言ではないだろう、かように思います。古い国、フランスの都パリと比べて、これはもうずいぶん古くから下水溝ができていた。セーヌの川はそれで守られたとまで言われている。新しいアメリカ、これはやっぱりニューヨークでもシカゴでもロサンゼルスでも同じような悩みを持ってただいま公害に悩んでおる。日本も古い二千六百年の歴史はあると言いましても、とにかく近代国家としてはわずか百年です。そこらに問題があるのだ。そこで私どもの四囲の状況を見ると、かつてこの席でもお尋ねがありましたように、川は三尺流れて清し、こう言ったものが、川は三尺どころか、流れれば流れるほどきたなくなっているのじゃないか、汚濁しているのじゃないか、こういう状況であります。水に流すというようなことばはいまは使えない、これは現実の状態であります。そういうことを考えますと、下水溝を整備するということはこれは簡単なものじゃなくて、これは基礎の問題だ、かようにひとつぜひ御理解をいただきたい。またよろしくお願いをいたします。
  55. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういうことはもう当然なことで、国がしなければならないことですが、今度も十四の法案を出しておりまして、それに伴ってたくさんしなければならないことがあるわけです。それでいままで非常に地方に出させているわけですが、国の国庫支出金を公害対策としてぜひたくさんに取ってもらいたい。地方交付税は交付税率があってきまっているもので、公害のほうにたくさん取ったらほかのものが減っていく、こういうことでは何にもならないわけですから、国が全国的に画一的に実施する必要があるものについて十分な予算を取るということ。そこで、国がする、国の機関委任事務ですね、このことなんですけれども、地方はこの事務のおかげで国と地方公害の行政に関してですが、非常にうまくいっていないというか、やりにくいことがたくさんあるわけです。だから私どもは、公害の行政の権限をできるだけ地方のほうに移せということを言っているわけなんです。それは、たとえば機関委任しておろしてきましたものは、これは地方議会を通じないで国の指定したことをやらなければならないわけですね。そうすると、これは条例によって地方が独自にやるものとは違って国が委任するということですから、たいへんそこに拘束があるわけなんです。その辺がそのためにやりにくくなっていくことが一ぱいあります。したがって、公害対策住民の意思がそこに反映できなくなりやすい。  少し実例で伺いますけれども、大気汚染防止法に関してですけれども、四十三年の十一月の末から昨年の初めにかけて、大気汚染防止法によって厚生省と通産省の指令で東京都内の事業所の点検をなすった。これは東京都に指令してそれをさしたわけです。それなんですが、九千八百事業所を調べて十一施設しか不合格のものはないわけですね。これは、排出基準というのが、その当時の厚生、通産両省の指示によりますと二〇・四という数値なんですね。だから九九・九九八%の事業所がみんな合格しているんです。それからことしの初めになってさらに少しその基準をきびしくして、そうして事業所を一万の施設を調べた。そうしたら七十九が不合格だ。ですから九二・一%が合格している。こういう基準を国が与えてそして地方に検査をさしておる。だからみんな合格している。基準以内しかばい煙発生していないのに東京都内の空気はとてもきたないじゃないですか。なぜこんなに基準があるのに東京都の空気はきたないんですか。どこにそれは理由があるとお思いになりますか。
  56. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これはありていに申しますと、環境基準というものがございまして、環境基準は、日本国じゅうこの程度にしか空をよごしてはいけないという目標を定めましたのが御承知のとおり環境基準でございます。しかし、それに達成させるためには、これもどうもはなはだ申しにくいことですが、東京とか川崎とかまた四日市とかいうようなよごれている所は、二年とか三年とか五年とかの間に環境基準を達成させるということは事実上できないことでございますので、環境基準に達成させる手段としての排出基準というものは、これは三年がかり五年がかりで強めていくような仕組みにされているようでございます。いまもお話がございましたように、去年からことしにかけて、ことしの実は二月からきつく排出基準はしぼりましたが、そういうわけで、排出基準はどうにか守られるけれども、環境基準には現在達していない、こういうことでございます。もし排出基準に達していないということになりますと、今度改正ですと御承知のとおり直罰主義ですから、すぐに体刑、罰金がかかるということになりますので、やはり排出基準のほうはぼつぼつ締めていく以外にない。そうしないと何十%が不合格ということになりますと、何十%が直ちに直罰で懲役、罰金、こういうことになりますので、常に指導しながら排出基準をだんだん締め上げていく、こういうことでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  57. 田中寿美子

    田中寿美子君 その検査をしてパスしたあとで例の柳町公害も起こったし、光化学スモッグも起こっているわけなんですね。ですからその理由を私は、一つ一つの施設の排出基準が守られていても、複合してくるから環境基準にはとうてい達しない状況で、しかもそれは合格である、こういうことになるわけですね。  それで、今度の大気汚染防止法の第四条の三項で、第四条に少しこれは改正されているわけなんですが、都道府県の排出基準の設定については知事に全面的に機能はまかせる、とおっしゃいましたですね。知事にまかせるのですけれども、これは厚生大臣及び通産大臣に通知しなければならないとありますが、これはどういうことですか。
  58. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) いまお話しの初めに自動車排気ガスによる大気のよごれがございました。柳町等が問題になりましたのはたしかことしの春ごろでございまして、あのときにはまだ自動車排気ガスなかんずく中古車に対する一酸化炭素の規制というものができていなかったように私は記憶いたしております。その後新車ばかりでなしに、中古車につきましてもアイドルタイムにおける規制をかけるというようなことをいたしてまいりましたので、その後はかなり規制に従われていると思います。しかし、この規制もだんだん強めてまいる、一酸化炭素ばかりでなしに炭化水素等につきましてもブローバイガス還元装置というものをつけなきゃならないようにこの九月にした。輸出車にはそんなものは初めからくっつけておったけれども、国内車についてはおくれておったようで、私どももどうかなと思っておりましたが、今度は輸出車も国内車もそういうことにされたそうでありますから、その面での改善はかなり行なわれます。  ついでにお尋ねにも関連して申し上げますが、今度は自動車の排気ガスにつきましては、柳町その他の交差点等がよごれる場合には都道府県知事が、従来は道路管理者に対して道路の設計等について改善してもらいたいという申し入れをする道だけはございましたが、自動車の迂回とか一時通行停止というような道路交通法上の措置を要請することができなかったものを、今度の改正でそういうこともできるようにいたし、またこれに対応して道路交通法の改正もいたしたそのものを提案されておるわけでございます。ところで、大気の亜硫酸ガスにつきましては、全部実は都道府県知事にまかしておりません。硫黄酸化物につきましては、やはり国が当てはめまして、当てはめる際に都道府県知事意見を聞いてやりますので、このほうは低硫黄重油との関係がございますので、そういうふうに相変わらず国が当てはめをやってまいる、都道府県知事と相談して。その他の場合につきましては全部知事さんにおまかせする、おまかせした結果は知事さんから通産大臣なり厚生大臣のほうに御連絡を願う、こういうことにいたしております。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま一酸化炭素、自動車の排気ガスのことをおもにお答えしていただいたんですけれども、私申しておりましたのは、事業所のばいじんまたは有害物質に関しての調査のことだったわけですが、いま硫黄酸化物に関しては都道府県知事意見を聞くというふうにおっしゃいましたけれども、たとえばことしの初めにいま言いました事業所の、一万事業所の検査をなさった。そのとき、その前にやったときよりは排出基準をきびしくしたわけです。その基準をきめるときにもいまの大臣のお答えによりますと、都道府県知事意見を聞くということになるわけです。ですからお聞きになったんですか、それはどういうことですか、その基準値がそのときは少し高くなってきびしくなっております、一地点七ですね、それを設定するのにはどういう手続を踏めばいいわけですか。
  60. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 都道府県知事意見を聞いております。ただし、私は都道府県と申しましたが、都のほうはなかなか聞いてくださらぬようでお答えがない。おれのほうはこういうことで別の方式をとるということを条例でおきめになっておるようでございまして、その辺多少まだトラブルが、といいますか、トラブルではございませんが、議論、方式上の違いが残っておりますが、私どものほうで専門的に都につきましてのことだけを申しますと、実体的にはあまり問題はない、形式論上の問題のようでございます。
  61. 田中寿美子

    田中寿美子君 都は聞いてくれないとおっしゃったけれども、実は昨年の十一月末の実施のとき、いま言いましたように、九九・九%の事業所、これが国の指示によって検査したらパスしてしまった、それからその次はもう少しきびしくしたその基準を設定するときに、排出基準を設定するときに、知事さんに聞こうとしたけれども、東京都が協力しないかのようなおっしゃり方ですが、私の聞いたところによりますと、厚生省の係官からちょっと基準をもう少しきびしくしたいけれども、一体どのくらいにしたらいいかと、急ぐからというので電話一本で聞いてこられて係官が答えられた、たいへんずさんなやり方で基準がきめられたというふうに聞いておりますが、そういうふうなやり方で国の排出基準をきめるというようなことは非常に困ることだ、それからいま厚生大臣がおっしゃいましたが、自動車排気ガスのほうのことですね、これの柳町の場合ですが、これは鉛公害のあった、ちょうど騒がれたあのころなんですね、ことしの五月二十七、二十八日ころです、一酸化炭素が連続して二十四時間一三・九PPM出ているわけです。これは一酸化炭素に関する環境基準からいえばどういうことになりますか。
  62. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) どうも私はこまかい数字はわかりませんが、一酸化炭素の環境基準は何時間当たりの平均が、たしか何時間単位における一時間当たりの平均値か何かが一〇PPMないし二〇PPMのはずでございます。しかし、それを達成させるためにはこの自動車の排気ガスのあれは何というのでございましょうか、自動車のおしりから出る要するにその瞬間の濃度というものはPPMではなしに何%ということで四・五%とか五・五%とかいう強めなければならない、あれは何というか……(「排出口」と呼ぶ者あり)排出口というのじゃなしにもっと専門語があるのでございますが、それができましたのもたしか五月か夏のころでございますから、環境基準のほうが先に出ておりまして、その環境基準に達成させるための排出基準というものが、つくり方がおくれておったということは先ほど申し上げたとおりでございますが、最近はとにかくアイドル時については中古車まで規制する、しかし、フォアモード時につきましては中古車はできちゃっている車ですから規制のしかたがないというところにまだ落ち度があるのじゃないかと思いますが、詳しいことは運輸大臣からどうぞ。
  63. 田中寿美子

    田中寿美子君 いいです、時間が……。厚生大臣、一酸化炭素の環境基準くらい知ってていただかないと困ります。一酸化炭素は二十四時間連続して一〇PPM出てはいけないということになっているわけで、この五月二十八日は二十四時間連続して一三・九PPM出ていたわけです。ですから、一つ一つの自動車の規制をしましても、交通が非常にひんぱんであそこにたくさんのものが出ていくから、環境基準がなかなか守られないという状況の中で人間が住んでいるんですからこれは重大なことだと思います。その二十八日の日は四時から五時の間は七四・五PPMとものすごい環境の状況なんです。ですから基準を七、八倍オーバーしている、こういうのになぜこれに手が打てないかという問題は、これは国と地方自治体の権限の問題だと思うのです。これは大気汚染防止法の旧法の二十一条——今度改正される前の二十一条ですね、地方自治体は、地方自治体の知事の権限が弱過ぎるわけです。知事は「意見を述べることができる。」ということになっていますね、こういう基準に関係してそういう緊急な場合が起こったときに。そして今度の改正では、二十一条ではこれはもう少し知事に権限を与えたということになっているんですけれども、これで見ますと、こういう事態が発生したときに、つまり「大気の汚染が総理府令、厚生省令で定める限度をこえていると認められるときは、都道府県公安委員会に対し、」知事が「道路交通法の規定による措置をとるべきことを要請する」のですね、だからこういう状況が発生して、知事はこれはどうかしなければならないと思っても、これは都道府県の公安委員長のところにお願いしなければいけないわけです。そうすると、公安委員会は道路交通法によって措置をするということになるわけですね、これはおかしくありませんか。
  64. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) それはむしろ山中大臣からお答えいただいたほうがいいのかもしれませんが、いまの道路交通法による道路規制の問題は各都道府県の公安委員会がこれを所管をいたしておるたてまえになっておるわけであります。国の警察についても同じで、自治大臣が警察権を持っていないのと同じような仕組みで、それがまた戦後の警察行政のあり方としていいところだとされておるわけでありますが、したがって、これは知事の権限を制限するからそうしておるのではなしに、知事だけでは、いま自動車をとめたり、迂回さしたり、ある種の標識をつけさしたりというようなことはできないたてまえになっておりますので、同じ庁舎ですから隣の庁舎におります公安委員会のほうに申し入れをしてそして措置すると、こういう仕組みに当然ならざるを得ないというわけでございます。
  65. 田中寿美子

    田中寿美子君 これは山中長官に答えていただきたいのですが、つまり、知事は道路交通法……、確かに非常にたくさんの排気ガスを出したときに、自動車をとめたり何かしなければならない、その点では道路交通法によらなければいけないし、その点では公安委員長の権限だと思います。しかし、公害に関して判断をして、そして空気が悪いとか悪くないとか、もうこれはどの程度にしなければならないなんというようなことの決定権は知事のほうに置くべきであり、そして私が考えますのに、この場合、こういうときには公害に関しては公安委員会及び関係行政機関と知事は協議して決定できるとかね。これは要請することができるようになっていますね。協議してきめられるとか、何かそういうふうにすることはできないのですか。
  66. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは申し出るという言い方もあれば、あるいは勧告するという言い方もあれば、要請もあります。要請というのは最も強い要請権と私どもは解釈をいたします。したがって、知事がデータをそろえて、観測資料によって道交法に基づく措置をとるべきことを勧告した場合に、原則として公安委員会はそれを行なうということであって、それに対処するということであって、対処できないという場合は、よほど明確な理由をもって都道府県知事にそれが示され、地域住民の了解を得るような内容がなければならぬと思います。理由がなければならぬと思います。それは都道府県知事にまかせられないのかというのが基本的な御議論だと思うのですが、これが都道府県内だけで車が出発して、都道府県内だけでとどまるという流れを示しておるものならば、あるいは場合によってそういうことも可能かと思いますが、しかし、やはり車というものは全体の流れでございますから、ちょっとした事故でも非常な一大事故になって、どのような渋滞が広範囲に及ぶかは、われわれも日常体験しておるところでありますので、どうしてもこれは道交法自体もそれを受けて行動することを定め、あるいは固有の権限内にある道交法の行使というものを公害観点からとらえて、新たに公安委員会自身も常時それらの資料というものを都道府県知事その他からいただくというようなこと等を明記いたしておりますから、今後はよほど違ってまいると私は考えておりまして、これを、知事に固有の権限で車を全部とめてよろしいということを与えなかったのは、単に歩行者天国とかなんとかいうものと性格を異にするという、いわゆる自動車公害の広範多岐にわたる態様を踏まえてのことでございまして、他意はございません。
  67. 田中寿美子

    田中寿美子君 私も車をとめる権限全部を知事におろせとは言っているのではなくて、対等の立場で協議して、あるいはいまおっしゃったように、すぐ隣だから言ったことがすぐきくというふうにうまくいけばいいですけれども、そうでないことがありますし、だから、この柳町の場合はそのままであったのですから、今後はこういうことがないようにするためには、政令なんかもいいかげんにしないできちんとしておいていただかないといけないと思います。  それから環境基準なんですがね。これは大体、みんな低過ぎると思うのです。これはどうもいまの行政の努力目標みたいになっているのじゃないか。いまこのくらいだから一年たったらこのくらいまではできるというところできめているんじゃないか。大体、環境基準というのは、私たちは住民が快適に住めるような、そういう環境を確保するという立場からきめるべきものなんじゃないか。それを目標にして何年ごとにこうすると、こういうふうにするべきではないかと思うのですが、いかがですか、それは。
  68. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) それは田中委員のおっしゃるとおりではないように思います。現在達成されることが不可能でありましても、私どもは各方面の専門家の御意見によりまして、人間が生活し、また人間の健康ばかりでなしに動植物などのエコロジーが円滑にいくためにはこういうものでなければならないという一つの理想目標が環境基準になっております。したがって、その環境基準になかなか到達し得ない場合がございまして、先ほど来申しましたことは、その環境基準に到達し得ないので、排出規制基準のほうは現状においては弱いものからだんだん強めていくと、こういうことになっておりまして、私も環境基準の国際的比較を見せられたことがございますが、日本のほうが弱いという説に対して、そうではないようでございまして、おおむね環境基準というものは各国似たり寄ったりの一つの行政目標、理想目標を掲げておることに間違いないようでございます。
  69. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、たとえば一酸化炭素の環境基準なんというのは、決してこれは理想的なものじゃないと思います。それからすべて低いから、だから地方条例なんかでもっと進んだものをつくっているのだというふうに思います。で、今度はその地方である程度条例で高いものを制定してもいいということになっているわけですから、過去には、たとえば硫黄酸化物でも何でも国の基準のほうが低いものですから、ですから地方できめたことを引き下げる役割りを果たしていたことがある、こういうことを考えますと、   〔委員長退席、公害対策特別委員会理事杉原一雄君着席〕環境基準というものはもっとほんとに人間の健康をそこなわない、暮らしを破壊しない、生活環境を破壊しないというところに理想をおいて設定すべきであると私は思っております。  そこで、もう少し例でやってみますと、国と地方との関係なんですが、カドミウム汚染米のことなんです。先ほどカドミウム汚染米のことが出ましたけれども、私が申します観点は少し違うのですが、東京都内の多摩川流域でカドミウム汚染米が出ました。で、あの場合に、〇・四PPMから一PPMのカドミウムを含んでいるお米を美濃部さんが汚染米と指定した。そしてそれに対して、その分は自家保有米でもみんな買い取るということをきめましたときに、買い取るという形は、よごれていない配給米と取りかえるという形でされるということになったのですが、山中長官はあのとき、そういうやり方をするのは食管法違反であると言われた。そうしてせっかく地方自治体が、東京都がそういう一歩進んで、さっきもお話しあったけれども、〇・四PPM以上の米は買い上げてもこれは配給しないのですから、要注意の米なんですね。ですから、それを汚染米として国の基準よりは進んだことをやった。そうしたらこれは食管法違反であるということを山中さん言われた。もういまそのお考えは変えていられますか。
  70. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのときは席に農林大臣がおられなかったので、私が答えたことでありますが、きょうは農林大臣おられますから、あらためて答弁してもらいますけれども、現行食管法の定めておりまする法律並びに政令によれば、そのような場合には、公共団体であっても農林大臣の許可を得なければならないと書いてございます。したがって、許可を得てもらいたい、得なければ、許可を得ないでやれば違反になりますという法の解釈を言ったわけでございます。それだけのことでございます。
  71. 田中寿美子

    田中寿美子君 山中長官、少しニュアンスが違いますね。この前、公害の委員会のとき、私が質問したのに対して、なぜ〇・四PPM以上の米を汚染米と指定するのか理解に苦しむと東京都のやり方に対して攻撃されました。で、そのとき、食糧庁のほうでは、もうすでに東京都と話し合いの上で、きれいな配給米とかえるという案を立てておりました。ですから、食管法によりましても農林大臣の許可があるときには、それは国の機関あるいは国の指定する業者でなくても米を扱っていいということがあるわけですね。その点、農林大臣、いま全国的にカドミウム汚染米が出ていて、そうして先ほども話があったように、〇・四以上のものは買っても凍結しておくというお話がありましたが、これに対して交換すること、きれいな米と交換するという方針をおとりになりますか。そしてこれは食管法違反でもなんでもないということを確認なさいますか。
  72. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 地方公共団体が地域住民福祉をはかります見地から米を買い上げることにつきましては、その買い入れの対象の範囲、処分方法等、適切な運営がはかられますならば、食糧管理法上農林大臣の許可を受けてこれを行なうことができます。したがって、いまお話しのようなことは、おやりになる前に、その適正であるかどうかということを申し出ていただいて、食管法上の許可を農林大臣からお受けにならなければなりません。したがって、カドミウム汚染米もこの例外ではございません。  そこで、先ほど私が佐藤さんにお答えいたしましたような事例でありますが、〇・四PPM以上の米は汚染米であるとは申しておりません。厚生省もそういってはおらないことは、もうここでしばしば申されたとおりであります。しかし、いわゆる要観察地帯とわれわれが指定いたしておりますので、必ずしも汚染であるとは申しておりませんけれども、一般に御不安があるようでありますから、そこで農林省ではいま保管しておる米もたくさんあることであるから、そういう方々に、もし御自分の保有米を気味が悪いから食べたくないという方があるならば、農林省の保管しておるものと交換してあげましょう、こういうことを申しておるだけでありまして、したがって、私どもといたしましては、そういう御希望があれば交換をして差し上げる、こういう態度をきめておるわけであります。
  73. 田中寿美子

    田中寿美子君 この問題一つとってみましても、地方自治体のほうが先行して国の基準よりは高い基準でやった。それで、このことが一つのきっかけになって全国的にもこういう基準で準汚染米としますか、それに対しての対策をとるということになるわけで、ですから、公害に対しては地方自治体が非常に積極的な態度を示すということが非常に必要だと思います。  そこで、私考えますのに、この公害行政公害対策の権限は市町村段階までおろすべきだ。もちろん、国がすること、それから都道府県の段階ですることがありますけれども、市町村の段階にその権限をおろすということが非常に必要なんではないかと考えますが、この点を山中長官から…。
  74. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) その考えに沿って、基本法でも都道府県の公害対策審議会が任意設置でありましたものを必置制とし、そして新たに市町村にも任意で設置できるようにまず審議会の構成でその方向を明らかにしておりますが、具体的には先ほども担当大臣から答弁がありましたように、原則都道府県におろしても、さらにそれをこの公害立法の立場から見た特定の市については市にもおろしていく。さらにまた清掃法が現在市町村の固有事務でありますが、騒音、あるいはまだ国会提出をいたしておりませんが、政府としては法律もでき上がっております悪臭防止法等も、これは市町村固有の事務というような形で、その手近な問題についてはやはり市町村単位でやる、農用地にかかる土壌等もやはりその地域の問題であろうということの配慮をしておるつもりでございます。
  75. 田中寿美子

    田中寿美子君 問題は、そういう場合に現状では市町村の財政の問題もあるし、それから専門家なんかの問題があると思います。それで、先ほどから申しておりますように、国が相当の財政的な措置をして公害防止のための負担をしなければいけない、そのことが地方のそういう権限を侵さないというやり方でやられることを希望したいと思います。  で、もう一つ、国の事務といいますか、機関委任事務といいましょうか、国と地方関係なんですけれども、カドミウムの米が東京都内からたくさん出ましたことが発表されました当時、通産省のほうも全国的にカドミウムの排出をしておる工場の調査をして発表なさったわけですね。これは国の実施した調査なんですね。で、これは地方に対して一体どういうことを要求し、どういう効果をあげているのか、ちょっと私もわからないので聞きたいのですが……。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) カドミウムの実は全国の総点検をいたしまして、非常に状況が悪うございました。そこで、まず大きなメーカーに対しましてはおのおの産業別の連合体がございますので、そこを通じて設備の改善等をうながしますとともに、下請の関係が非常にございますので、下請に対しても技術指導等をするようにという依頼をいたしたわけでございます。それから別途に、メッキのメーカーが非常にカドミウムを使っておりますので、これは全国及び東京都の団体に対して調査の結果を知らせますとともに、改善をするか、ある集団で処理施設をするか、それともどちらもできないようであればカドミウムのメッキをやめなければならないのではないか。   〔委員長代理杉原一雄君退席、委員長着席〕 御承知のように、処理施設が千数百万円かかるものでありますので、中小企業には少し無理だと思われたわけでございます。十月になりましてその結果を点検いたしました。大体大きなメーカーにつきましては設備改善等がなされておりますので、まずよろしゅうございますが、小さなメッキの関係は、実際問題といたしましてカドミウムによるメッキはやめると、こういう結果になってまいりました。これもやむを得ないかと思っております。なお、中小の中で集団で処理施設をしようというものがございましたら、これは金融その他の方法と大企業からの技術援助でそれはそれとしてやっていってもらいたいと考えているわけでございます。
  77. 田中寿美子

    田中寿美子君 その改善方法の指導というのは都道府県を通じてですか、それとも地方の通産局、通産省が直接やられたわけですか。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 現実に処理施設の改善方法ということになりますと、やはり技術を持っております大企業の応援を得ることが必要でありますので、通産局が県と連絡をとりながら現実の技術はそのようなものを利用させるというふうに考えております。
  79. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、これは機関委任事務ではないわけですか。直接の事務ですか。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 仕事そのものは、法的には主務大臣が都道府県知事に委任しております機関委任事務でございます。
  81. 田中寿美子

    田中寿美子君 どうもこの調査が一体どんな役に立っているのかということがたいへん疑わしい気持ちがいたします。ただ指導するだけ、指導改善の勧告をするというだけではだめなんで、やはりこういうことは都道府県のほうが主体になってやらなければできないじゃないかという点、私たいへん国と地方自治体とが公害に対して取り組むときに、もっと全面的に、つまりこのカドミウムの調査のとき非常にそう思ったのですけれども、ほとんど同時に並行して東京都の調査と通産省がやっているわけなんです。あんまりむだなことをしないで、ほんとうに実効があるというふうにしなければいけないのではないかと思います。  で、次に、無過失賠償責任の問題に触れたいと思うのですが、私、野党のほうでは、無過失賠償制度の法案を提案したのですが、公害というのは——これは総理大臣の御意見を伺いたいのですが、この非常に被害者がたくさん出ておりますね、水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくその他数えられない、認定されない人たちが一ぱいおります。東京都の調査んなかで見ますと、区の職員四十歳以上二十人に一人が慢性気管支炎にかかっておる。これを推定で計算していったら東京都内には五十万の慢性気管支炎症状のある人が出るという推定もできる。こういう状況で非常にいま公害の被害者は多いと思うんですがね。こういうものに対して対策を立てていくときに無過失賠償責任がなかったらほとんど救われないわけなんです。だから水俣病でもイタイイタイ病でも長い訴訟をやっている、なかなかその因果関係の立証ができないということで、まあ被害者が一ぱいいて加害者がないというような関係、被害者だけが苦しんで、お金も使って命も失う、こういう不当なことがあるわけですから、無過失賠償責任制度というのは公害対策には絶対に必要だというふうに私は思うんですけれども、総理は何回かそのことを聞かれて、そしてなるだけはっきりした態度を出さないようなお答えをしていらっしゃるんですけれども、将来に向かってこういうことを考えたいというふうに言っていただけませんですか。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題はいずれ結論が出てくることだと思います。ただいまのように、何か私が逃げていると、こういうわけじゃないんでございまして、ただいま検討はしておる、その点を率直に申し上げただけで、検討ということで問題をずらしていると、こういうおしかりですけれども、いま検討中でございますから……。
  83. 田中寿美子

    田中寿美子君 検討ということばだけでいつも出てくるわけですが、法務大臣なんかは横の問題を縦に考えて無過失賠償責任の制度を設けることを検討するというふうにお答えになっております。私は、これは民法の特例というような考え方ではいけないんじゃないか。もう公害というのは非常に大きな新しい見地で取り組まなければいけないんで、だから特例なんという考えでなく、公害に関して無過失賠償責任制度を設けるという態度がほしいと思いますけれども、それをさておきましても、今日までの日本の法律の体系の中でないことはないわけですね。ですから、たとえば旧鉱業法、明治三十八年に制定された、その当時から鉱山に関しては無過失賠償責任があるわけですね。で、これでおかしいと思いますのは、たいへん矛盾だと思いますのは、昭和十四年改正になってから一部分鉱業法の適用をはずしてしまったわけですね。たとえばこれは例をとりますと、大牟田にあります三池製煉所なんか、ああいうのは、もとは鉱業法の適用を受けていたから無過失賠償責任があった。ところがもういまははずされてしまっています。現在神岡のイタイイタイ病を起こしている三井鉱山ですね、あれは鉱業法の適用を受けますね。それから安中の東邦亜鉛の製錬所も鉱業法の適用を受けられますですね。そうすると、鉱業法の適用があるということは無過失賠償を受けることができる可能性があるということになると思いますが、いかがですか、法務大臣。
  84. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 鉱業法の適用がある事項については無過失の賠償責任が適用になる、こういうことでございます。
  85. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから、そうしたらいまの安中と神岡は。山中長官に伺います。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 鉱業法が無過失賠償をきめましたのにはやはりそれなりの沿革があるようでございまして、つまり山というのはかなり古い歴史を持っておりますので、そういう意味で鉱業と農業との間には必然的にどうも調和できない鉱毒の問題、公害の問題がある、こういうふうに当時考えられたようでございます。今日の技術で申しましたらかなり防げるであったかもしれないと思われるような部分が、これはもう不可抗力であるというふうに考えられたようでございます。そういたしますと、不可抗力の場合でもこれはやはり現実に公害は生じますので、過失、無過失を問うということは適当でない。そこで、無過失という制度が立てられたようでございます。今日でございましたらかなり技術が進みましたから、過失さえおかさなければ技術革進によって防げたような部分が実はあったのではないかと思われますけれども、当時はそのようなことから過失、無過失を問わないということになりました。で、ただいま大牟田のお話がございましたが、これはもし三井鉱山のことでございましたらこれは鉱業法の適用を受けておるはずでございます。鉱業法の適用を受けるということは、御指摘のように無過失責任を問われるということでございます。
  87. 田中寿美子

    田中寿美子君 三井鉱山ではなく、三井製煉所ですね。これは工場法の適用ですね。だから私の言いたいのは、同じ労働者が、安中の製錬所で働いている、あるいは三井の神岡鉱山で働いている場合には無過失賠償責任を受けることができて、そうして三井の三池製煉所に働いている場合は工場法の適用だから無過失の賠償責任は受けられない、こういう矛盾があるのはおかしいではないか。つまり無過失賠償責任制度というのはもっと幅を広げるべきではないかということです。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは事実をもう少し調べる必要がございますけれども、三井の製煉所は工場法の適用を受けておるはずでございます。安中も受けております。ただいま製錬所で適用を受けておりませんのはいわゆる独立製錬所といわれるものがそうでございます。
  89. 田中寿美子

    田中寿美子君 独立製錬所、たとえばその山から石を掘ってそこで製錬している場合には無過失賠償の責任を受けられないというのはなぜですか、そこは非常に矛盾しているのではないですか、同じ労働者ですね。一方では無過失賠償責任が受けられるが片方では受けられないというのはおかしい。つまり私の言いたいのは、だから無過失賠償責任制をもっと広げよということです。
  90. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 鉱業法及び鉱山保安法によりまして無過失賠償責任を問うのは鉱業権者であるわけでございます。つまり、地中の埋蔵物というのは国有というたてまえでございますので、その上に鉱業権という権利が設定されるという考え方でございますから、それに対して無過失賠償責任を問うておるわけでございます。ところが、独立製錬所というのは鉱業権者に属さないものでございますので、鉱業権を設定したことに伴うそのような責任を負わせることができない。これは法律問題かと思いますが、そういうたてまえで独立製錬所は無過失賠償責任の対象になっていないというふうに法的には聞いております。
  91. 田中寿美子

    田中寿美子君 法律で、違った定義のもとで働く労働者というのはそれは同じ労働者で片方では死んでも、あるいはひどい災害にあっても賠償を、無過失賠償責任を受けられないという矛盾がたくさんあると思うんです。その点きのう法務大臣、縦に、個々のケースについて無過失賠償責任を検討するとおっしゃいました。それはたとえばどういうものをいま検討していられるのか、実際に検討していられるのかどうか、縦に個々のものというのはたとえばどういうケースの場合なら無過失賠償責任に当たるという検討をしていらっしゃるのか。
  92. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまの公害取り締まりの行政法規がたくさん出ております。その中の公害の態様について検討を願うということを申しておるのでありまして、また山中大臣は、あるいは物質でもできはせぬか、そういうふうな態様でも考えられるが、もう一つ物を指定してもできるのではないか、そういうことも言われておったのでありますが、そういうふうな考え方をいま検討しておるところであります。
  93. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう少し具体的に、それでは山中長官説明してくださいませんか。縦に、たとえば個々のケースというのはどんなものか。
  94. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) たとえば毒物劇物取締法とかあるいは薬事法とか、こういうものはやはり直接、物そのものが毒物、劇物というのですからなじむのではないか、あるいは薬事法等もやはり人が飲むものが薬ですから、そういう角度から検討ができはしないかというようなこと等で、これは一、二の例でありますが、そういう角度からの検討ときのうも御答弁申し上げましたように、有害、有毒物質、さらに亜毒性まで加えるかどうかはこれからの検討でございますが、こういうような物質をとらえて、これにかかる公害が起こった場合には、これは無過失責任としてそれぞれの規制法が全部無過失責任をその物質について受けていくという形の方式がとれるかどうか、これらの検討をしておるところでございます。
  95. 田中寿美子

    田中寿美子君 ということは、つまり、たとえば薬とか食品などについて、そういう無過失責任制を考えて、もう検討の段階にあるということですか。
  96. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのとおりでございますし、念頭にはカネミ油でございましたか、ああいうことなんかも、やはり違った形の一つの公害であるととらえていくべきだという考えも頭にあるからでございます。
  97. 田中寿美子

    田中寿美子君 カネミのことをおっしゃいますと、あれは無過失というより過失はもう非常にはっきりしていると思うんで、おかしいけれども、食品とか薬品では、そういうことがたくさんあるだろうと思います。ぜひそれは無過失責任制をそこからでも確立していっていただきたいと思います。  そこで、その場合に費用の負担の問題になりますが、公害防止費用と、それからそういう費用の負担なんですが、原則は公害防止費というのは、公害排出企業負担すべきである、これはたびたび言っていられることですから私らもそう思います。そこで、それに関連して国と地方負担の問題なんですが、産業廃棄物の防止法案の中で、私は先ほどの御意見ちょっと違うと思いますが、産業廃棄物と家庭廃棄物を含めた一般廃棄物ということばがございますね。産業廃棄物の中で、先ほどプラスチック製品というのは人類にとって非常に寄与している、だから、これを適視するのはおかしい、ただ、これは非常に廃棄物としては膨大な量にのぼりつついまあると思いますが、廃棄物全体、どのくらい年間出ているかおわかりになりますでしょうか。
  98. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 年間と申しますよりも、このごろでは産業廃棄物等を含めますと、一日に百万トン以上になっております。そのうちで、家庭から出る家庭ごみというものは五、六万トン、六、七万トン程度でございますので、その他の数十万トンの部分の中にそのプラスチックも入っておると、こういう状況でございます。
  99. 田中寿美子

    田中寿美子君 つまり、家庭ごみは五、六万トン。それでプラスチックの関係の廃棄物というのは大体どのくらいの割合になっておりますか、全体の産業廃棄物の中で。
  100. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) おおむね家庭廃棄物といいますか、家庭から出るごみの中には一〇%ぐらい現在でも入っている。しかし、この割合はふえるだろうと私どもは憂慮をいたしております。
  101. 田中寿美子

    田中寿美子君 先ほどプラスチックはたいへん便利で人類に貢献しているという話がありましたけれども、同時にこれが非常に大きな公害を起こすわけでございますね。いまたとえば、東京都で焼却しているものの中で、一〇%ぐらいがプラスチック類ですね。もし、これが一五%までふえたならば、いまの焼却炉ではもうとうていやり切れない、まず非常に高熱を出すということ、それから同時に鉛化ビニール製のものは非常に有毒なガスを発生するわけですね。ところがこれを今度の産業廃棄物法案では、防止法案ですか、家庭廃棄物、家庭から出るものを一般廃棄物というふうに分類して、そして産業廃棄物のほうは企業負担させる、だけれども一般廃棄物のほうは国と都道府県が、あるいは市町村までが負担するようになっていますね。これはおかしくはないかと思うんです。つまりプラスチック製品を使うというのは、これは企業の必要で使って、そして私どもが買いますものはそういう容器に入ってくるわけなんです。これは私たちが家庭でつくり出したものじゃないわけです。だから、これを廃棄するために起こってくるところの公害を防ぐために回収して焼却する費用、それは企業負担すべきものだと思うのですが、いかがですか。
  102. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) プラスチックが事業者の産業活動の過程で発生するものは、もちろんこれは産業廃棄物といたしまして事業者の責任と、こういう原則に立っておりますが、ところが、そのプラスチックはもちろん事業者がつくりますけれども、つくったものは、いまお話のように一般の家庭用品等になって家庭に持ち込まれ、廃棄物になるときには家庭から出てくる、こういう状態にございます。それをどうするかということになりますと、そこで今度の法律の中でも非常にそれが議論になりましたが、まず、私どもはそういうものが家庭に出ることができるだけ少ないような状態をつくり出してもらうことと、それからまた家庭に出ました場合には処理しやすいような状態のプラスチック製品であることと、また第三番目にはそれらの家庭から出てくるプラスチックについては、もともとそこの生産者なりあるいはそれを容器に用いた事業者というものは、その処理についても何らかの協力の方法を講ずべき方向に指導してまいるということにしかできないんじゃないか。そこで、たとえばこれは化粧品からも出ますし、百貨店の買いもの袋からも出るわけでございますが、そういうものにつきましては、まずそういうものに使わせるのを許可する際に、許可の規定があります食品衛生等に関連いたしますものにつきましては、それをあとどう始末をしてくれるんだ、たとえば、牛乳びんとかヤクルトのびんとかいうようなものもあります、化粧品のびんもそうかもしれませんが、どういう始末をさせるべく案を立てますか、協力をしますかという案を立てさせまして、それが納得すべきものでない限りは使用の許可をしない。これは廃棄物処理のほうではございませんで、別個の食品衛生法その他の法律でその際取り締まっていく、こういうことにいたす。こういうつもりで、法律のたてまえもそんなようなことで組んでございます。
  103. 田中寿美子

    田中寿美子君 使用許可制までいかれたんですけれども、私、お尋ねしているのは、企業が何か生産する。そしてその生産したものを消費者に売るわけなんです。売るときに、それの包装にプラスチック製品を使う。こういうことですから、これは企業にとって必要なものなんですね。だから、これが廃棄物となって出てくるときに、これは特に高熱の処理をするような焼却炉も必要なことですが、それはいまのところほとんどの地方自治体で十分それに立ち向かえるだけの設備を持っていないんですね。だからやはり、消費者を通って出てくる廃棄物もその回収をしたり、焼却をしたりするところまで、私は企業に義務づけるべきではないかと思うんですけれども、山中長官いかがですか。
  104. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) その激しい議論はいたしました。牛乳とかヤクルト等ですと、毎日配達されるものですから、ワンウェイでそれをやりたい場合に、ワンウェイはよろしいが、毎日回収しなくてもいいから、何らか回収なり、それの処理の方法を考えて、条件をつけて、その上でないと許可はできません。ところが化粧品のびんになりますと、回収その他の義務を負わせようと思いましても、Aのメーカーの化粧品の容器をB、Cの化粧品会社に責任をどういうふうにして負わせるか、あるいはいろんな商店の包み紙等について、これも商店という事業活動のほうから消費者のほうに入ってくるのでございますが、それらをどうするかということになりますと、実際問題としていまお説のように責任を負わせられません。そこで、一番極端な場合には、もうその処理がめどがつかないものにつきましては、もう初めから使用を許可しないと、牛乳びんのように。こういうこと。それからまた市町村のほうへたまったものを、家庭廃棄物とプラスチック物とに分けるようなこともしていただいて、違った焼却炉をつくるということもいたしますが、そういう際に、そういう焼却炉の建設運転等に対しまして、企業の協力を求めるというようなことは、私は行政指導でやるべきだろうと考えております。
  105. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま厚生大臣が言われましたけれども、ちょっといまヤクルトのことをおっしゃったんですけれども、これは一日に二万一千九百トン大体出ているわけですね。で、四百万トンのプラスチック製品の中でそのくらい出ている。そして相当もうけているわけですよ、あそこはね。当然焼却炉なんかをつくるときに協力させていいはずです。だから、やり方は、一つ一つの化粧品のびんだとか、あるいは薬もありますね。それからお酒なんかもこのごろ非常にそれこそ高分子化学製品の中に入って、飲むようになっている。それから、ガス管なんか、これは非常に塩化ビニール製のもの。だから、こういう商品をつくる、生産する企業責任を負わせるという方法は技術的にいろいろあるはずだと思う。だから、すべて一般廃棄物というものを国と都道府県に負担させるということになりますと、みんな税金から出ていくわけですから、この辺はもっと検討して、いま言われたような形で企業負担をさせる方向に持っていっていただきたいと思いますし、なお、その使用許可制をとるということも私は今後必要だろうと思います。  で、最後に、先ほどちょっと人民裁判なんということばが出たんですけれども、公害に関しましては、住民の参加ということが非常に必要だと思うんです。で、現実に鉛公害の話が出て、あれは何かあの辺の医者がやったとか、いろいろ言われますけれども、一番被害を受けるのは地域にいる住民なんですから、住民のところの感度が非常に強くて、そしてそこから公害がわかってくるわけですね。ですから、そういう意味では、住民の知恵あるいは住民の参加を求めるのでないと、今日のこのものすごい公害を克服するということは非常に困難だと思うんですがね。ですから、いま各地で、発電所に対して住民が反対に立ち上がっているとか、あるいはコンビナートに対して反対に立ち上がっているとかというような問題ですね。これに対して、あるいはいまちょうど臼杵でもやっていますけれども、ああいうふうに地場産業を守るために、一般の住民とそれから漁民が立ち上がる、こういうことが最初にあって公害は問題となってくるんだと。そういう点で、住民公害の運動に対して総理大臣なんかどういうふうに評価をしていらっしゃいますか。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 人民裁判だとか、あるいは公害摘発だとか、こういうような、産業と自分たちの生活、これを対立的に考えて問題を処理しようという、そういうことは、私は賛成しないものです。ことに、私自身いろいろ考えてみまして、全国的に見ると、ある場所によっては非常に地域的住民の協力を得て、理解のもとに企業が成り立っておる、そういう土地もございます。また別に、極端な対立抗争の形で企業が行なわれておる、そういうところもあります。しかし、それでは対立抗争の形では企業の成功はできない。このことを考えますと、これは何といっても地域住民の理解のもとに、協力のもとに企業は成り立つんだと、こういう意味で、やはり公害防止もそういう意味から出発しなければならない。それには私がしばしば申しますように、生活優先、そこに立って、そうして企業者が問題に取り組めば必ず地域的な協力を得る、問題を起こさないで話がつくんじゃないだろうかと、かように私思います。  たいへん卑近な例を申しますと、山の中、あるいは非常に産業に取り残されたところ、そういうところでは、われわれは十分理解をもってそういう産業を育成強化するから、私どものところにも来てください、こういうような地域がないわけではございません。そういうようなところに、やはり企業家自身が地域住民の利益、これを第一に考えて、そうして会社の経営に当たれば、ただいまのような問題もよほど解消され、少なくなるのではないだろうか、かように考えております。
  107. 田中寿美子

    田中寿美子君 住民の協力という点でなんですけれども、衆議院のほうでも監視員の制度をもっとつくらなければいけないという議論がされたようです。確かにいま公害の状況を監視して、そしてその現実を把握しないと対策が立てられないのですから、非常にそれも必要なことなんですけれども、これはとてもちょっとやそっとでできることではない。だから監視員も当然ふやさなければなりませんけれども、また、自動的に観測のできるような施設設備を全国的にこれを置いてもらわなければいけない。  それから、それだけでなくて、住民は自分たちの公害に非常に敏感に反応しているわけですね。たとえば、騒音なんというのは、これは伊丹の空港の人たちのところへ行ったときにもそうですけれども、騒音の測定器が置いてあるところで、ときどきそれを見にくるというのではなく、そこの地域の学校のPTAの人たちが二十四時間連続して一月なら一月継続して測定器でとっている。こういうようなことをした場合に、あれは通産省じゃない、どこでしたかね、ちょっと忘れましたけれども、そんなしろうとがそういうことをするようでは補助金はやらないぞなんというようなことでおどしつける。これはよくないことです。住民に協力してもらうということは非常に大切なことなんですね。尼崎の団地に参りましたときに、そこの団地が、神崎川の付近ですけれども、水と空気と両方から家のといなんかがどんどん腐食していく。そういうことは、つまり、あそこに亜硫酸ガスその他悪い有毒なガスがあるのだろう、そこの住民は、きょうは非常に頭が痛い、のどが詰まってせきが出るというようなことが、大気の汚染に応じて出てくる。そこでそういう自分たちの受け取った感覚からグラフをつくっていたんですね。ところが、これは決してばかにしてはいけないことであって、後に尼崎の市役所に行って、そして大気の測定のグラフを見せてもらったら、住民の感じてつくったグラフと非常に似ているのですね。だから、やっぱりそういうことを考えますときに、公害対策に関してさっき対立してはいけないと言われたけれども、自分たちの生活権を守るために立ち上がる住民運動もあります。その結果、コンビナートがこよう、火力発電所が設置されようとするときに、よりよいすぐれた防止協定を企業とその地域の住民との間に、あるいはそこの自治体との間に結ぶことができるようになるわけです。そういう意味では、政府ももちろん全力をあげて財政措置もしなければいけないし、それからいろいろ対策を講じてもらわなければいけない。本腰にならなければいけない。しかし、地方自治体の権限も大幅に今後は持たせていく。そうして、同時にその地域に住んでいる住民の知恵だとか協力を大いに求めていく。こういうことにすべきだと思います。最後にそういうことについての総理大臣の決意といいますか、伺わしていただきたいと思います。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま田中君の言われることについては、私もさようにあるべきだと、かように考えます。ことに地域住民の理解が大事だと思います。この理解を得るように、あらゆる機会に十分連携を緊密にすること、そうでなければ企業も成り立たないんだと、かように思っております。どうも大衆運動、これが破壊的な方向にまいりますと、いろいろな批判を受ける。これは地域住民の真のやり方ではないだろうと、かように思いますので、そういうことのないような建設的な協力、そういう意味の積極的な摘発、その他も御遠慮なしにやっていただきたい。
  109. 田中寿美子

    田中寿美子君 実際に行って見てください。(拍手)
  110. 占部秀男

    委員長占部秀男君) これで午前の会議を終わります。  午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  111. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから連合審査会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。村田秀三君。
  112. 村田秀三

    ○村田秀三君 私は主として農用地土壌汚染防止法を中心にいたしまして、その問題点、そしてそれに関連する諸問題について、関係各大臣に質問をいたしたいと思います。  まず初めに総務長官にお伺いをするわけでありますけれども、公害基本法には、今回土壌の汚染が追加をされることが予定をされておるわけであります。しかしながら、今回出されましたそれに対応する法案については、農用地に関してのみ法案提出をされておる。で、考えまするに、この地球は水、空気、土壌によって成り立っておるわけでありまして、水と空気には相当重点をかけておるわけでありますけれども、事、土壌に関しては今回が初めて対策される、しかも、それが農用地に関しておる。しかし、土壌というのは、空気や水は流動するわけでありますから、まあずっと先の将来のことを考えれば別でありますけれども、事、土壌の問題は、これは制限基準とかというなまぬるいことではだめでございまして、少なくともその総体、総量について考えなくてはならぬという問題もある。一度汚染したならばもう永久にこれは解消しない、こういう問題であるわけでありますから、これは基本法の精神、そこに表現されております土壌の汚染ということにのっとって土壌の恒久対策を立てる必要があると、こう実は考えておるわけでありますが、今回農用地に関してのみ出されたということについてひとつお伺いしたい。  それからもう一つ続けてお伺いするわけでありますが、衆議院農林水産委員会の審議の経過を見まするに、農林大臣は、将来は林地も含めて検討を加えるということであります。これは前向きに検討するという意味であろうと思うんでありますけれども、その点が総務長官として確認をできるのかどうか、お伺いをいたします。
  113. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 基本法第二条で土壌の汚染を定義づけ、さらに、それを受けたものとしての農用地土壌汚染防止法とさらに農薬取締法の一部改正を行なったところであります。農用地になぜ限ったかという考え方でございますが、これは、土壌というものは、地上全部が土壌でございましょうけれども、まず土壌そのものが汚染されたときに人間にとってどういうことに影響が出てくるのかという問題をとらえますと、それはいわゆる農用地というものに栽培される農業植物の結実いたしましたもの、あるいはそのものが食物となってわれわれ人間や動物に入ってくるそのときに初めて問題が提起されるということになるわけでありますから、やはり農用地、すなわち人間が、もしくは他の動物等の飼料その他も入れて食べる場合、食する場合という、体内へ入ってくる場合を考えました場合に、それを耕作する土地はすなわち農用地でございますので、そういう意味から農用地土壌汚染防止法といたしたわけでありますが、さらに農用地のいわゆる土壌そのものの蓄積や媒体を伴わなくても、農薬その他によって直接果実やその他、あるいは稲わら等の汚染等がいわれておりますので、これらの問題は農薬取締法の一部改正という両面からの体制をもって進めていくのが適当であろうと判断をいたした次第でございます。  林地については、したがって農薬の角度から入っていくのが至当であろうと目下のところは考えておりますが、農林大臣の所管の法律でございますので、農林省の御意向等を受けて本部はその調整に当たりたいと考えます。
  114. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農用地土壌汚染防止等に関する法律案は、現実に問題となっております農用地の汚染に基因する農畜産物の汚染及び農産物の生育障害に対処することといたしたものでありますが、いまお話のございました農用地以外の林地等につきましては、その汚染による被害の実情の有無等を調べまして、こういうものも追加してまいりたいと、こういうことでございます。
  115. 村田秀三

    ○村田秀三君 次にお伺いいたしますが、この法律の内容を見ますると、その汚染地域、防止する地域、これをまあ指定をすることになるわけでありますが、この法律の運用上、いわゆる防止する方向で主として対処するのか。まあ内容的に見まするならば、原状回復ということも当然あるわけでありますが、どこに主眼を求めておられるか、これについて農林大臣にお伺いをいたします。
  116. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) この法律の何と申しますか、構成は、いまお話のようなことでありますが、この法律で農用地土壌の汚染の防止、これが対策、それから土地利用のあり方等について規定いたしておることは御存じのとおりでございますが、これらは汚染の度合い等、地域の実情に即して適切な措置を講ずることが必要でございます。したがって、土壌の汚染が進行中で、これを防止する必要がある地域につきましては、御存じのように第七条の規定によって都道府県知事がきびしい排出規制等を行なうことといたしまして、必要がある場合には農林大臣が行なう勧告の規定もあるので、これらによって十分対処し得るものと考えておるわけでございます。
  117. 村田秀三

    ○村田秀三君 私はこれは問題の立て方を確かに二つに置いておると思います。予想される地域、これを防止するということ、そしてまた現在汚染されておる地域のより以上の汚染防止とともに、原状を回復するということが含まれておると思います。しかしながら、先ほど申し上げましたように、土壌汚染は、一度汚染されるならばこれはもうどうにもならない。であるとするならば、新たに汚染地域を拡大しない方向で重点を移していくべきじゃないか、こういうことを考えておるわけでありますが、それに対する御見解はいかがですか、農林大臣。
  118. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お説のとおりでございますが、予防につきましては、これは私どもの立場だけでなくて、他の省にも関係することでございますが、それぞれ排出基準等によってこれを規制してまいることは御存じのとおりでありますが、一たび汚染されましたもので、先ほどお話のございましたように、人命に危害があるもの、あるいは農産物の生育障害を生ずるようなもの、そういうことにつきましては、私どもそれぞれの対策をしなければなりません。たとえばカドミウム地域等については、客土等の対策事業をいたして、そしてさらに、米はなかなかむずかしいでありましょうが、他の作物に転換して営農ができるようにというふうなこともやってまいれるような仕組みをいたしておるわけでございます。
  119. 村田秀三

    ○村田秀三君 それでは、まあ大別いたしましたその二点について具体的にひとつお伺いをしてみたいと思うのですが、予防、防止対策であります。で、これを考えてみますと、水であるとか、空気でありますならば、いまの水質汚濁防止法ないしは大気汚染防止法、これをも私どもは問題にしております。これは制限方式ではいかぬのだ、総体、総和の対策を立てる必要があるんだということは、先ほど田中委員も触れたところでありますけれども、この土壌に関しては絶対——極言をいたしますならば、そういう対策が必要ではなかろうかと、こう思うわけです。それに対する御見解があれば後ほど出していただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、これは防止するということを優先的に考えるべきであるということであるならば、私は工業立地の問題も含めて今後は考えていかねばならないんじゃないかというふうに思います。そこで、まあ私は絶対ということばを使いましたが、今日の状態では確かに不可能でありましょう。だとするならば、これを検知し得ないまでの技術の開発というものが将来可能なのであるかどうかということと含めて、工業立地に対する今後の計画なり、そういうものが全国総合開発計画とあわせ考えてどういう影響をもたらすのであろうか、この点について経済企画庁長官と通産大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  120. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) まあ村田さんがいま御指摘になりましたいろいろと物質もございますが、これはある意味においては特定の物質でございます。全産業ということでもございません。私たちとしましては、御存じのように新全総等でも地方工場、地方に工場分散等、いわゆる国土再編という見地から考えを進めていきたいと、こう思っておりますが、もちろんこれはこの公害の分散になってはいけないわけでございます。でございますから、一方においては、この規制の制度というものを今回のように改めて、地方の、知事というものに権限を与えるということで規制体制を一方において整備いたしますし、そしてその上に立って、その制約の上に初めて工業立地というものが考えられることでございます。先ほども通産大臣からカドミウムのメッキ工場の話が出ましたけれども、やはりああいう措置もとられておるような際でございます。でありますから、これを立地の上から考えまして特に推進するとか、そういう考えはもちろん持っておりません。そしてまた一方、規制を強めますと、どうしても立地が制約されてくる、こういう面は、これはもうやむを得ない結果が出てくると思っております。でありますから、要約すれば、結局、工業立地というものはあくまで公害問題というものを前提にして、そうして考えられていかなければならない、こういうことであります。
  121. 村田秀三

    ○村田秀三君 次にお伺いをいたしますが、先ほども触れましたが、これは絶対に農用地に特定有害物質が流入してはならないということを前提に考えるわけであります。その場合に、この法案の中には緊急措置といたしまして、たとえば農林大臣が関係各大臣、そしてまた都道府県知事に対して要請をし、勧告をできるというふうに修正はされましたけれども、しかし、私はこの問題については緊急命令が発せられるようにする必要がある、このように実は考えております。それはどういう観点から申し上げますかというならば、過去にも実は例があるわけでありますけれども、その有害物質が流入しているということを明らかに承知をしながら、それを公表されておらない、ないしは対策を立てておらない、こういう実例というものが現実にあるわけであります。したがいまして、私はそのような場合のことを考慮いたしまして、緊急命令が発出できるような措置というものが必要である、こう一つ考えます。それに対してはどのように考えておりますか。これは農林大臣もそうでありますけれども、総務長官、御答弁をいただきます。
  122. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは法で御存じのように、地方長官、つまり県知事にいろいろなことを委任しておりますので、いまのお話のようなことにつきましては、それぞれ委任を受けた地方長官がそれをやれるようになっております。
  123. 村田秀三

    ○村田秀三君 これは衆議院修正をされておりますから、これ以上触れるつもりはありませんけれども、さような意味で、ひとつこの体系の中で機を失しないような運用ができるように、これは要望しておきたいと思います。  それから、法案の中に、地方自治体は測定調査をして、そうして公表をするという義務を実は課しました。しかし、私はこれだけではまだ不十分なような感じがいたします。と申しますのは、一度汚染をされましてからの対策では、これは私は対策を先取りするということにはならないわけでありますから、そういう意味で各企業が常時測定、分析をして、それを公表する義務、これをむしろ各企業に与えることのほうがより適切な対策を立てることができると考えておるわけでありますけれども、この点についてはいかがですか。これは総務長官ないしは通産大臣にお伺いいたします。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 水質及び大気両方とも測定の問題につきましては、企業に測定を義務づけているわけでございます。その方法あるいは記録のしかたは省令できめることになっておりますけれども、義務づけておるわけでございます。ところで、常時ということになりますと、自動測定というようなことにならざるを得ないわけでございますけれども、御存じのように、微量重金属、ことにカドミウムなどを現在測定分析いたしますのには、専門の学者がかなりの長い時間機械を使って初めて測定ができるというのが世界の技術のいまの水準でございまして、行く行く簡便な自動測定記録計というようなものができますと、ただいまおっしゃいましたような目的に沿うわけでございますけれども、ただいまの技術水準では自動測定あるいは自動測定の記録計というようなものはできておりませんで、現実にはかなり長い期間と人手を使って現実のカドミウムの分析などをしておる状況でございますので、仰せられますことは、行く行くとしては私は望ましいことであると考えておりますけれども、現在直ちには実行ができないというふうに承知しております。
  125. 村田秀三

    ○村田秀三君 この辺のところが私はきわめて重要だと思うんですが、実はわが福島県にも汚染地帯があるわけです。二、三の企業をたずねまして、いろいろ話を聞きますけれども、うちのほうは出ていないはずである、大かたの企業がそういう答弁をなさる。が、しかし、現実にはその地域一帯は汚染をされている、こういうことであります。それで、これはまあ私も調査を記録しておることの義務づけは承知いたしておりますけれども、こういう問題があるわけです。たとえば、人の見ておらないときとか、あるいは立ち入り検査をしておらないときであるとか、こういうときに大量に有害物質を放出するというようなことが言われておる。しかし、そのことを聞きますると、いや、そういうことは決してない、こう言うのでありますけれども、しかし、それを証明する何ものがないわけです。だとするならば、これは常時やはり測定をして記録にとどめ、それを公表することが、私は住民の信頼をむしろ回復する、そういうところにも発展をいたしますし、同時にまた、新たにできますところの事業負担法によります分担金の配分の問題からいたしましても、私は当然そのことが必要になってくると、こう思うんですね。したがって、いまのところ技術的に不可能ではないかというような——不可能というよりも、非常にむずかしいというような話でございますけれども、これはもう必ず実施をするということでなければ、事業負担法をつくってみたりいたしましても、私は何もならないんじゃないかと、こう実は思うんです。そしてそのデータによって、いわゆる県が農用地の問題にしろ、大気の問題にせよ、水質の問題にせよ、すみやかに対処できるというような私は体制をとらなければならないんじゃないかと、こんなふうに思っておりますが、総務長官どうですか。
  126. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) たしか通産大臣の言われたのは、物質によってはなかなか常時観測等に技術的にむずかしいものもあるというふうに言われたと思いますので、原則は法の示すとおり、それを義務づけておるわけでありますから、当然その義務を守らなければ、守ったことによって、排出基準というものが、みずからそれを律するために守る努力をしなければ、今度は直罰を受けるわけでありますので、自分自身の企業のためにもこれを守って、常時観測し規制をしていかなければならないというたてまえになっておりますから、やはり企業自身の自己防衛のためにも今後は守っていくだろうと私は思います。
  127. 村田秀三

    ○村田秀三君 それを公表してはどうかと、こういうことです。その点はどうですか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたのは、いま総務長官の言われましたとおりで、たとえば自動測定で記録をグラフのようにやっていくということになりますと、技術開発を待たなければなりませんが、法律に定めております程度の測定でございますと、これはできますし、やらなければならないわけであります。で、それを公表すること自身、私は、こういう段階になりまして、別に差しさわりのあることではない。現に紛争などが起こってまいりますと、これはもう企業は当然公表もいたしますし、また市町村なども公表するようにということを求めるわけでございますので、法律上の排出規制をする義務のある、及び常時測定し記録をする義務のあるもの、これは私は企業の秘密というようなことには関係がない、公表をして差しつかえないものだと思います。
  129. 村田秀三

    ○村田秀三君 農林大臣にお伺いいたしますが、対策地域の指定要件ですね、これについてお伺いをいたします。  まあ特に一つ触れていただきたいことは、先ほど佐藤委員の質問の中で、つまりカドミの場合、人為的な汚染の限界、これについて厚生大臣が〇・四PPM以上というような意味発言をなされたわけでございまして、これともだいぶ関連がございますので、ひとつお伺いをいたします。
  130. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまそのお答えの前に、さっきの調査のことをちょっと申し上げたいと思いますが、農林省では従来から農用地土壌を対象に組織的な調査を実施いたしておりますので、今後はこの結果をもとに、土壌の汚染状況について全国的な概況調査を行なうつもりでございます。で、汚染が懸念される地域につきましては、さらに細密な調査を実施いたしまして、対策地域の指定、対策計画の樹立を行なうことといたしております。これは国、それから県の調査体制につきましては、農林省から各県の農業試験場には従来からも土壌調査に関しては経験豊富な者どもを配属さしておりまして、これを継続してやっておるわけでございます。県にもそれぞれございますことは御承知のとおりでありますが、ただいまお話しのことは、一・〇PPM以上を含有する米は食べてはいけないと、こういうふうに厚生省から公表されておりますわけであります。そこで、それから下の〇・四PPMと一・〇PPMの中間のところを要観察地帯ということにいたしまして、先ほどお答えいたしましたのは、その地域の米は、厚生大臣がここでおっしゃいましたように、自分は食べるかと言われれば食べると、こうおつしゃいましたけれども、そういうことのようでありますけれども、それは、そこで米をつくられた人が不安を感じられるというならば、これは私どものほうで保有米を交換してあげても支障ありませんと、こういうことを言っておるわけでありまして、その地域を要観察地域としておりますと、それでなおその含んでおる度合いが進行をするような状態にあるかどうかということにつきましては、それを調査した上で、やはり厚生省と相談をして対処いたさなければならぬと、こう思っておるわけであります。
  131. 村田秀三

    ○村田秀三君 どうも私が聞きましたことは、この対策地域を指定するわけですが、その指定の要件ですね、たとえば汚染地域、農林省の資料によりますると、大体三万七千ヘクタールあると、こういうことになっておりますが、しかし、この法案はカドミを中心であること、そこで私は申し上げますのは、厚生省の基準に基づく要観察地域、それだけを対象にするとか、あるいはそれ以外に公害源のある工場周辺の一帯、これを対策地域に指定するのかとか、そういう意味のことを聞きたかったわけです。その点はどうですか。
  132. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ちょっと政府委員からお答えさせますが、よろしゅうございますか。
  133. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) お答え申し上げます。  当面問題になっておりますカドミウムにつきましては、おそらく要観察地域を中心に指定することになるかと思いますが、農林省では、先ほど大臣お答えになりましたように、ことしからすでに調査に入っておりまして、調査のまとまり次第、地域はもう少しふえていくというふうに考えております。
  134. 村田秀三

    ○村田秀三君 まあ私の要望といいますか、意見を申し上げますが、これは自然の汚染含有度ですか、自然の汚染というよりも含有度、これは〇・〇七であるということを私は聞いておるわけですね。それでその最高値、ほんのわずかな地域だけれども、〇・四であるということが言われておる。その〇・四を中心にいたしまして、いわゆる厚生省の、つまり自衛的な汚染の限界というふうに定められると、これは私は問題があろうと思いますし、当然この指定地域の中には、その周辺に工場があって、その流水なり、ばい煙の飛沫する範囲、飛散する範囲、こういう地域一帯を対策地域にしなければ、私は実効があがらない。先ほどいわゆる予防、防止に重点を置くのかというような聞き方をいたしましたが、それとこれは重大な関係があるわけですから、そういうことについてひとつ私は要望を申し上げておきたいと思いますが、農林大臣いかがですか。
  135. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまも政府委員からもお答えいたしましたように、私ども、ただいま御指摘のような地域につきまして、逐次調査を進めてまいりたい。もちろんそういうことでございますので、私どもは、ただいまの提案いたしております法律でしております対策地帯等も、その結果だんだんふえていくかもしれません。
  136. 村田秀三

    ○村田秀三君 どうも、はっきりとものを申していただきたいわけでありますが、そういう方向でひとつぜひ対処してもらいたいと思います。  そこで、今度はその防止事業のうち、かんがい排水の事業があるわけですね。ところが、このかんがい排水の事業でありますけれども、考えてみますと、これは磐梯の例でありますが、磐梯は日橋川の上流に位置しておる。そしてその排水、これが影響を与えておる。そこで先般汚染要観察地帯に指定をされました地帯以外の下流、これにどんどん汚染土壌が蔓延をしておる、こういう傾向に実はあるわけです。したがいまして、もしもこれを徹底的に防止しようとするならば、このかん排事業というのは私はきわめて重要であろうとは存じますけれども、しかし、これは単なる水源転換であるとかいうことでは、ずっと下流、つまり新潟などのことを考えた場合には、これはきわめて私は不十分である。つまり日橋川に工場汚水、排水を流出させないということが私は大事であり、これをやるためには、流域下水道といいますか、これをやはり完備しなきゃならぬというふうに考えるわけでありますけれども、農林大臣はどの程度のことをひとつ考えておるのか。そしてまた建設大臣にもこの点ひとつ、私は相当膨大な襲用というものが必要になろうと思いますが、この際申し上げますけれども、とにかく上流地帯に、単にカドミばかりじゃなくて、つまり汚染する企業、汚染源を立地するということは、これはつまり流域下水道といいますか、そういう積極的な大がかりな対処をしないと、問題の解決にはならないというふうに考えておるわけでございまして、この点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  137. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  従来は環境を維持するための指定水域というものがありましたが、今度は全面的に全水域について汚濁防止をすると、こういうことになりました。したがいまして、まず第一に、御指摘のとおり、河川流域に工場等が立地した場合には、まず第一にこれらの工場は全部廃棄物について規制を受けるわけです。そしてそれが水質汚濁をしないような措置をさせることがまず第一にできます。その次には流域の全体を河川法上の二十八条、二十九条、これを受けて、われわれはきれいな水にこれを保持する責任がございます。そういう観点をも含めまして、都市市街地区については公共下水道、それから都市については都市下水道、それから流域下水道の三つのたてまえで、これの環境基準を維持するための措置をするのでございまするが、御指摘のように流域下水道については、将来は全面的に全水域についてこれを整備することが望ましいことでございます。しかし、現在われわれが策定しておりまする昭和四十六年度から始める五ヵ年計画では、そのうちの、特に四十九水域のうち二十五水域については五年間でこれを全部整備する。その他の二十四水域についてはおおむね八年間かかると思っております。そういう観点から、二兆六千億ではこれは必ずしも十全でございません。そこでわれわれ、長期計画としては、昭和六十年までにおおよそ十五兆円の投資をすることによって都市下水道を完備し、その上に、御指摘のような日本におけるおもなる水域については、大体環境基準を維持することができる程度までは整備いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  138. 村田秀三

    ○村田秀三君 次に、汚染を防止する事業ですが、時間もなくなりましたが、端的にひとつお答えをいただきますが、法文の表現といたしましては「客土その他」となっておりますね。しかし、すでに汚染された地域は、特に水田の場合は、これは土壌の交換をいたしませんと効果があがらないと思うんですね。当然土壌の交換、これが入っておるのかどうか、ひとつお答えを農林大臣にお願いいたします。
  139. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 交換が必要な場合にはそれもいたします。客土でよろしい場合には客土の事業もいたします。両方でございます。
  140. 村田秀三

    ○村田秀三君 それから最後になりますが、被害者者の救済問題です。事業負担法等できましたが、しかし、いまなお解決されない問題は、つまり汚染地域に生産される作物の補償、まあ一PPM以上の米はこれは政府が買わないわけでありますね。それからあと見えざる問題といたしましては、たとえば汚染地域の下流、つまり汚染要観察地域に指定はされないけれども、汚染が発見をされたというその地帯の自主流通米等は動かないわけです、売れないのですね。そういう問題も出てきておる。ないしは野菜の問題、先ほど田中委員が申し上げましたが、まあ物件、トタンであるとか、ないしは子供の自転車、おとなの自転車ないしは小さな遊び場のブランコの鉄骨までもこれはさびついてしまうという、そういうような問題も出ておるわけですね。こういうものの解消のために、これはその被害者、民組織が会社と折衝をする、交渉をするという一つのルールというものを、ひとつこの際確立してはどうか。単にこれは、先ほど総理大臣が申されましたような言い方ではなくて、一つの慣行、ルールとして、そして工場と地域住民が信頼関係を発展させることができるような措置が必要だと思うのでありますが、その点総務長官どうですか。
  141. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先国会に成立しました公害紛争処理法に基づく中央、地方公害審査委員会、そういうところがそれらの話し合いの窓口のあっせん、仲裁等をしてくれるものと思いますが、さらに農用地に関しては、先ほど農林大臣からもちょっと言われましたように、今後銅、亜鉛等の物質による収獲減収補償というようなもの等についても法律で定めていくわけでございますので、政令で定めてまいりますので、そのような事業も可能になるかと思います。     —————————————
  142. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 塩出啓典君。
  143. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私はきょうは海洋汚染防止法を中心に海洋汚染の問題、これを中心に関係大臣に御質問したいと思います。  海洋国日本にとって、われわれのたん白源である海洋が年々非常に汚染されておる。わが党のたび重なる調査によれば、東京湾あるいは大阪湾、洞海湾だけではない、あの広い瀬戸内海も全面的に赤潮現象等で今年夏も二十万匹のハマチが死んでおる。そういうような状態の中で今度の法案提出されたわけでございますが、そこで私は総務長官にお聞きしたいのでございますが、この海洋汚染防止法によってはたして海がきれいになると考えておられるのか、そのあたりの長官の考えをまずお聞きしたいと思います。
  144. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この海洋汚染防止の法律は、国際条約において国内体制整備としてはアイスランドに次ぐ体制の整備、すなわち油濁については国際法そのものを受けておるわけでございますが、さらにわが国の周辺並びに日米会議等を通じて見て感じた考え方等から、さらに海洋に対する投棄物についても、廃棄物についても規制をしようという一歩進んだものでございます。しかしながら、これがはたして海が全部きれいになるかといえば、法律の上ではきれいになることを目ざしておりますが、現在の廃油処理施設の利用状況、あるいはまた夜陰等にまぎれての廃油等のたれ流し等の現象がどうしても見られる今日において、一挙にきれいな海が取り戻せるにはまだほど遠いものである、まだいろいろの今後われわれとしては国際的にもこれは考えなければなりませんが、まず日本自身がさらによりよいものを求めて、まず日本列島の周辺の海をきれいにする義務を果たさなければならぬとは思っております。
  145. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ただいま総務長官も、この法律だけでは海はきれいにならないと、そういうお話であったわけでございますが、私も確かにそのとおりと思います。  そこで、私は運輸大臣にお聞きしたいのでございますが、今回のこの法案を私たちは、審議しようと思っていろいろ勉強したわけでございますが、ところが、この法案の中には、政令で十六カ所、運輸省令が四十四カ所あるわけですね。考えてみれば、いろいろ内容を見てみますと、非常に大事なところが全部政令になっておる。たとえばいま総務長官は海洋投棄を禁止したと言われましたけれども、それは一応は禁止しているけれども、例外規定がある。一応は禁止だけれども、こういうものは捨てていいんだと。また、こういう方法でここに捨てなきゃならないんだと、これが一番大事だと思うのですけれども、ところが、それが政令になっておるわけなんですね。そういう法案を私たちに審議しろと言われても、われわれ国民の代表としてまことに不本意と言わざるを得ない。そういう点でこの十六カ所の政令、また四十四カ所の運輸省令、そういうものはちゃんとできているのかどうか。できているならば、やはりわれわれはそれは審議の席においてそれもやはりあわせて審議をしたい、そのように考えているわけですが、その点、運輸大臣はどういう考えですか。
  146. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ただいま総務長官がお答え申しましたように、この海洋汚染防止法だけでは、もちろん完全にきれいになるかといえば、問題があります。それは一つは、これは法律以前の問題ですが、いわゆる国民道徳の問題が一つあります。それから一つは、御承知のように、油を流すことを原則として禁止いたしますけれども、ビルジ等の問題等が、これは最小限度の問題が一つあります。それからもう一つは、廃棄物処理法等によって陸上で処理されるものが大部分でありますが、この法律は、船によって油もしくは廃棄物を海には捨ててはいけないという法律でありますから、したがって、陸上で処理せられるものが、どういう形で今度は例外規定でこれを海洋に捨てるものを認めるか、こういうことでありまするが、お話しのように、陸上で処理できるものは、これは完全に処理しなければなりません。ただ、ものによっては、たとえばし尿等につきましては、なお現在下水道の完備が十分でありませんので、ある一定期間は、やむを得ずこれを最小限度の処理をした上で海洋投棄を、場所あるいは排出方法等に規制を加えて、これを流さざるを得ないという点もあります。あるいはまた、政令でこれらはきめるわけでありまするが、この幾つかの政令がありますものの、一つは今後の科学技術の開発によって、将来はこれが——当分は暫定的に捨てることができるものでも、将来これが技術開発によって捨てなくてもいい、いわゆる復帰完結といいますか、これを処理し得る能力ができるかもしらぬ。こういう問題もあるのみならず、いろいろの点においてこまかい規定を設けなければならぬ。それを法律に盛り込むことは、一つにおいては困難があるのと、そういう技術開発の将来から考えて、これを政令に譲るほうがよりベターであると、こういう見解で、政令にゆだねる点が多数あることは、まことに遺憾ではありますけれども、やむを得ない事情と御了承を願いたいのであります。
  147. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ただいまの運輸大臣の答弁は、私は政令で定めるのはいけないということを言っているのじゃない。政令なら政令でいいですから、その政令の内容をちゃんとここへ出して審議をするのが当然じゃないか、この法案が通って、そしてもうわれわれ国民の知らない間に、そういうなにを海へ捨てるかどこへ捨てるか、そういうことをやっぱりかってにきめられたんじゃいかぬと、そういう点で、本来ここに出して審議するのが当然じゃないか。それに対して、どうしてもそれは時間的に間に合わなかったのだと、そういうことならまた話はわかるわけですけれども、そういう点はどうなんでしょうかね、運輸大臣。
  148. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) いまここで全部実際上は用意をしておらぬことは遺憾でありますけれども、ただ一つ、あの法律の中で、これら政令をきめる中では、学識経験者、専門家によって、こういうものはこうしたいという点もあります。そういうような点がありますので、ここで具体的にあるものはある程度明らかにすることはできますけれども、いずれ近く開かれまする、関係委員会において大体の具体的内容は示したい、かように考えておるわけであります。
  149. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ただいま、そういう内容は関係委員会において示すということでございますので、時間もありませんので、その点についてはひとつあとに譲りたいと思います。   〔委員長退席、公害対策特別委員会理事杉原    一雄君着席〕  そこで次に、この政令の問題でございますが、これは運輸大臣及び厚生大臣にお聞きしたいのですが、この第十条には「何人も、海域において、船舶から廃棄物を排出してはならない。」けれども、その第二項の適用除外の規定がある。これは  「廃棄物処理法第五条第三項又は第十一条第二項の政令において海洋を投入処分の場所とすることができるものと定めた廃棄物その他政令で定める海洋において処分することがやむを得ない廃棄物の政令で定める排出海域及び排出方法に関する基準に従ってする排出」はよろしいと、非常にわかりにくいのでございますが、要は、政令で定めたものは、政令で定めた海域に政令で定めた方法で捨てるのはよろしいと、このように書いているわけでありますが、何を海に捨てていいかということですね。これはやはり厚生省所管の廃棄物処理法の政令によってきめるようにわれわれは承知しているわけでございますが、この点についてはどのような方法できめるのか、また、これはどういうものが一体あてはまるのか、その点、厚生大臣にお聞きしたいと思います。
  150. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私は、実は驚いたことがあるんでございますが、従来の清掃法では、これは、たとえばし尿にいたしましても、特定地域、つまり市街地なんかの地先二百メートル先であれば捨ててもよろしいと、また瀬戸内海とかの一部、あるいは東京湾、大阪湾等で禁ぜられた区域以外は捨ててもよろしいということになっておったわけでありまして、これは私は憂うべきことだと思います。ところが、今度幸い海洋汚染防止法の制定と、それから私どものほうの清掃法の改正による廃棄物処理法というものの全面改正によりまして、原則としてそういうごみやし尿などの汚物は海に捨てられないことになったわけでございますが、しかし、そういうことをいたしましても、直ちにできるかというと、し尿にいたしましても、原則として下水道の終末処理施設が完成するとか、あるいはまたし尿単独の処理施設が完成するとかいうことでない限り、どうしても海に捨てなければならない面が何年間はやはり残らざるを得ないわけであります。そこで、原則は禁止でありますが、海洋汚染防止法のほうの政令で、どこならば捨てることを暫定的に認めるという地域を御指定くださるはずでございますし、捨てる場合の方法はこういうことの方法によるべしという政令ができるはずでございますので、その方法に従って捨てることに相なりますが、一方廃棄物処理法のほうにおきましても、捨てる場合のその基準、排出基準といいますか、物質基準を私のほうで、つまり一応無害なものにして、そして海洋汚染防止法で定める区域及び方法によって捨てると、こういうことになって、両方の政令を相まってやるわけでありますが、私どものほうでは、たとえばし尿について申しますと、いま考えておりますことは、海洋において浮遊物が発生しないように、きたない話でございますが、夾雑物を除去する。それから海洋においてし尿の沈降性を良好にするような薬剤を添加する、あるいは海洋中での細菌学的な安全性を確保するための処理を加える。それからもう一つは、海洋中ですみやかに分解し、あるいは海底に滞留しないように、海洋の自然浄化力に見合った量を投入するというようなことを政令で書きまして、これだけのことをやるから海洋汚染防止法でもこれに見合った方法なり地域を御指定くださいと、こういうことにすることになっております。
  151. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、総務長官に私この問題につきましてひとつ提案したいのでございますが、たしかに政令できめることというのは非常に大事なことであり、しかも、非常に専門的な知識も必要だと思うんですね。きのう総務長官も、世界に冠たる海洋汚染防止法だ、そういうふうに言われましたけれども、やはりそうなるかならないかというのは、結局は監視体制の問題もありますが、政令の内容もあると思うんですね。そういう点でまあやっぱりそういう漁民の人の意見も聞かなければならない、あるいはそういうごみを持っている人の意見も聞かなければならない。そういう点で、やはりこういう政令をきめるための、たとえば海洋汚染防止審議会とか、そういうようなものをやはりつくる。これはこういう名前じゃなくてもいいですけれども、いずれにしても、やはり水質審議会のような一つの各界の意見を取り入れたそういうものをつくる必要があるのじゃないかと、そのように検討すべきだと、私はそう思うんですけれどもね、総務長官の考えどうでしょうか。
  152. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 非常に建設的な提案でありますし、   〔委員長代理杉原一雄君退席、委員長着席〕 海洋日本としてそういうような英知を集めた形でもろもろの基準を定めていくことは非常に注意すべきことだろうと思います。法律をつくる過程においてもいろいろと法律ごとに審議会をつくったらどうかとの意見もありましたが、やたらに繁雑に、ことに地方自治体等によけい審議会をつくってもどうかということで見送った点等もございます。ただいまの御意見等は、今後政令等を定めまする際に、やはりとても行政担当者のみでは結論を出し得ない問題等が確かにあると思いますので、十分念頭に置いて、本部においてもそれを掌握してまいりたいと思います。
  153. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それではこの問題は、先ほど運輸大臣も、各委員会の審議においては政令の内容も示すと、そういうことでございますので、もう公布すれば六カ月以内に適用されることもあるわけですから、その点を要望して次に移りたいと思います。  これも運輸大臣にお聞きしたいんでございますが、この海洋汚染防止法の成果は、やはり監視体制をどうするか、これは先ほど山中長官も言われたとおりじゃないかと思うんですがね。これがやはり私たちも十分かどうか非常に心配しているわけでございますが、そういう点、運輸大臣として監視体制はもうだいじょうぶなのかどうか、その点、お聞きしたいと思います。
  154. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私は海洋汚染の問題、公害問題がやかましく言われましてから、今年の春でありますが、すでに海上保安庁としては海上公害監視センターというものをつくりまして、実験的な措置を講じております。二、三回ほどこれが取り締まりをやりました。その結果は全く思わしくない状態があらわれたわけであります。この汚染防止法が通りますれば、当然これは監視ということが法律上規定されておりますので、積極的な監視体制を組織しなければなりません。現在巡視艇等あるいは飛行機等の整備がありますけれども、これで十分かといいますれば、質的にやや劣るところがありますので、本年度YS等も注文いたしまして、長距離監視体制もしけるように考えております。のみならず、人員をこれも必ずしも十分じゃありませんが、来年度におきましても、ある程度の要員の要求をいたしておりますので、これらを十分に組織化して、そうしてできるだけ完全体制をしいてまいりたい、かように考えております。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ここで、大蔵大臣がお見えになっておりませんので、大蔵省にお聞きいたしますが、来年度の海上保安庁の体制についても運輸省から予算要求が出ていると思うんでございますが、そういう予算要求の程度はやはり確保できるのかどうか、もしその内容がわかっておれば、それを教えていただきたいと思います。
  156. 藤田正明

    政府委員(藤田正明君) ただいま予算の編成中でございまして、その内容をいま申し上げましても、またどのように動くかとも思いますが、ただ本法の趣旨に沿いまして、運輸省と十分検討の上で、前向きにこれを処置いたしたい、かように考えております。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この点はなかなかここで幾ら問答をしても、本年の初めの予算委員会においても私ここで同じように問答をして、大蔵大臣が善処しますと、そういう話だったけれども、実際はそういっていないわけですね。私は、だから、そのことをあまりお聞きしようと思いませんけれども、ひとつ運輸大臣も、そしてまたきょうは総理もいらっしゃいませんから、総理の代理として総務長官も、この海上保安庁の体制のことをもっと真剣に考えてもらいたいと思うんですよ。  いま、人命救助の体制も不備である。これはもうこの前申しましたように、船は高速化する、どんどんふえる、けれども海上保安庁の船は非常に古い。御存じのように、かるふおるにあ丸の遭難のときにも、夜間であるために、海上保安庁の飛行機は出動できない。米軍機の力でようやく助かったわけですね。また福島県の小名浜港外における貨物船の沈没のときも、風速が二十メートルあっているために、大型ヘリコプターがあれば救いに行けるけれども、それがないために、みすみす十五人の人がなくなっているわけですね。そういうように海難救助の体制も非常に弱い。その上、今度はこの法律の改正によって、適用される船が、私の計算では、いままでは大体まあ二千五百隻ぐらいの船でありましたのが、今度はもう適用範囲が広くなりましたからね、五トン以上を見ましても大体倍の五千隻の船を監視しなければならない。そういう点を考えるならば——そして最近の日本近海における油濁、油による事件というのはどんどんふえているわけですね。それでその検挙率というのは、昭和四十三年は六〇%、昭和四十四年は五〇%と、だんだんそういう検挙率は下がっている。だれが油を流したかさっぱりわからない。そういうようなのがやはり現状じゃないかと思うんですね。そういう点で、昭和四十五年度の予算を見ましても、海上保安庁の航空機購入費は四千万円、小さな飛行機一機なんです。ところが自衛隊はどうか。これは四百億ですからね。自衛隊の航空機購入費は四百億なんです。千対一なんですからね。私は、運輸大臣ももっと真剣になってもらいたいと思うんですよ。人命救助の上からも、それはもちろん自衛隊も必要かもしれない。けれども、やはりいま、そういう海難とか、あるいは油の汚濁とか、そういう目前の問題から日本の国を守るということのほうもより大事じゃないかと思うんですね。だから、一方は四百億でこっちは四千万、千対一なんというのでそれで引き下がるようであるならば、これは私は運輸大臣としてまことに無責任と言わざるを得ない。私はそのことを強く要望したいんですけれどもね。運輸大臣どうですか、その点は。ほんとうにやってくれますか。
  158. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 御意見もっともであります。御承知のように、いまや公害問題、人命救助は内閣姿勢の最も大きな柱でありますからして、できるだけの予算は大蔵大臣の理解のもとにつけてもらいたい。また、私自身も積極的にこれをつとめる覚悟であります。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点、総務長官どうでしょうか。あなたもひとつ公害担当の大臣として、やっぱり側面からどんどん応援していただかないといけないと思うんです。
  160. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 対策本部ができましたので、閣議の了承を得て、各省から大蔵省に出しております来年の公害対策予算要求を私の手元で総括して、対策本部の考え方というものを査定に当たる大蔵省にすでに提示してございます。それについて整理調整をいたしますとともに、ただいまのような問題とか、あるいは下水道予算とかいう重点事項については、さらに公害対策本部としても、予算編成の過程において別途な立場で、大蔵省との間にまとまった日本の四十六年度の公害予算というものはどのようにバランスがとれ、そしてどのような姿勢を示すに足りるものであるかについて説明のできるような予算にまとめたいものと考えております。
  161. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、これも運輸大臣に対する質問でございますが、問題は廃油処理施設ですね。これがほんとうに拡充されなければ今回の法律も実行不可能になるわけであります。そういう点で、この廃油処理のこの法律どおり行なうためには、それに十分な廃油処理施設設備がなければならない。そこで船が待たなければならないようであれば、これは非常に料金も高いわけですから、問題になると思うんですね。そういう点で、廃油処理施設の年次計画はどうなっているか。また、それを必ず実現できる、その点に問題点はないかどうかですね。その点、われわれも非常に心配しているわけですが、運輸大臣のひとつ考えをお聞きしたいと思います。
  162. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 前に御承諾願いました、承認を願いました海水の汚濁の防止に関する法律、これは国際条約に基づいた法律でありますが、その法律が通りました際に、四十七年度までの間に全国で三十四港、五十五カ所の整備を進めてまいっております。しかしながら、今回は百五十トン以下のいわゆるタンカーでも、できなくなりましたから、したがってその隻数がふえてまいります。そういう関係上からして、従来の計画を変更いたしまして、そうしてなお三十数港にわたって追加をしまして、これをやはり四十七年度までに完成さしたい、こういうスケジュールを組んでおります。これによって大体の、能力は上下の差がありますからして、多少の余裕がないといけませんので、少なくとも五〇%以上のキャパシティは余裕を持っておる、こういう、そうして完全を期して準備を進めておる次第であります。
  163. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃあこの点につきましては、詳しい点はひとつ委員会等に資料を提出して、検討さしていただきたいと思います。  それから次に、これは海洋汚染の問題につきまして、まあ農林大臣にお聞きしたいと思います、水産関係の所管の大臣として。  御存じのように、赤潮現象、これは家庭下水、あるいは工場排水、あるいは屎尿、そういうもののために海水がだんだんと富栄養化して、プランクトンが異常発生すると言われておりますが、この赤潮現象が、東京湾とか、伊勢湾とか、大阪湾だけではなしに、ことしの夏は瀬戸内海全域にそれが広がって、先ほども申しましたように、二十万匹の養殖ハマチが各地で死んだと、そういうような現象が起きているわけでありますが、この問題について農林省としてはどう対処するつもりでおるのか、その点をお聞きします。
  164. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話しのように、本年、瀬戸内海、伊勢湾等で発生いたしました赤潮につきましては、現在農林省の水産研究所が中心になりまして、関係各県、それから大学等の協力を得まして、その発生の原因、仕組み等の調査、研究を進めておる最中であります。これまでの研究の結果によりますれば、ただいまお話がございましたように、工場排水、それから屎尿投棄等によります窒素、それから燐等の、何と申しますか、栄養塩類の過度の増大が赤潮の発生しやすい環境条件をつくっておるのではないかと、このように見られますので、現在国会で御審議を願っております水質汚濁防止法、廃棄物処理法案等の成立を待ちまして、水質規制、それから廃棄物等の投棄の、捨てることの規制等の強化をはかってまいることが肝要であると存じております。  なお、赤潮につきましては、発生の仕組み、予防の方法、それから防止対策などにつきまして研究すべき問題が多いと存じますので、今後も私どものほうの水産研究所を中心にいたしまして、各界の御協力を得て、調査研究を進めてまいりたいと、このように考えております。
  165. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ひとつこの問題については農林大臣、農林省としても、これは非常に漁業全般にとっての大きな問題じゃないかと思うのですね、そういう点でひとつ真剣に取り組んでいただきたい、このことを要望いたしておきます。  それと、その原因の一つでありますいわゆる屎尿投棄ですね、この問題について、これは総務長官とそれから厚生大臣と、どちらにもお聞きしたいと思うのですけれども、大体今回の海洋汚染防止法の改正によりまして、結局、その屎尿投棄の部分は政令にまかされるようになっているわけですけれども、大体、九月八日の衆議院の産業公害対策特別委員会でも、総務長官も、この海洋の屎尿投棄というのは全面禁止の方向でやっていかなきゃいけない、そういうような答弁をしているわけですけれども、具体的には、大体海上の屎尿投棄というのは、何年までになくするのか、急になくするというのはちょっと不可能ですから、何年までになくするというような、そういうようなちゃんと計画を持ってやっておられるのか、その点をお尋ねいたします。
  166. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 現在、まことに残念なことでございますけれども、くみ取り屎尿の約一六%ぐらいを海洋投棄をしておるわけであります。それも、さっきも申しましたように、特別地区の地先二百メートル以上ならいいということで、ずいぶん乱暴なことだと私は思いますが、これはぜひ、ここに建設大臣がおられますが、公共下水道をやはり完備して、終末処理をつくっていただくことと、私どものほうがやはりくみ取り屎尿につきましても屎尿処理施設をつくりますことと相まっていかなければ、とうてい海洋投棄を解消するわけにいきません。ちょうど昭和四十二年から昭和四十六年度、明年度までを最終とするそれらの清掃施設の五ヵ年計画というものができておりますが、私は来年度ちょうどその終わるのを待たないで、来年度から新しい事能に応じて、屎尿処理につきましても、実質的に五ヵ年計画をつくりまして、昭和五十年度ぐらいを目標といたしまして、これはまあ下水道のほうがおくれると困るのでございますけれども、それを条件として、五十年度には海洋投棄をないようにいたしたい、こういうことで進めてまいる所存でございます。
  167. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 厚生大臣、あなたいま、もちろん屎尿投棄をやめるには下水道ができなきゃならない、そんなことはきまりきっているわけですからね、だからその点をちゃんと話し合って、下水道ができないから海洋投棄しなければならないのだ、そういうことをいつまでも言ってもらっては困るわけですよ。われわれの要求としては、やはりそういう点をよく建設省とも話し合って、厚生省と話し合って、そして何年までには捨てるを禁止するのだ、そういうちゃんとやっぱり計画を持って、しかもその方向に従ってやっていかなければいけないと思うのですね。特に、いま瀬戸内海におきましても、一年間に一万トンタンカーの五十四はい分が捨てられておると言われておりますが、瀬戸内海は特に潮の流れが、入り口が狭いために内海と外海の入れかわるのが、学者の説だと四年から二十年かかる、あるいは六十年かかると言われておるのですね。そうすると、こっちのほうに捨てても潮が引いたらこっちに寄って、またこっちに寄って、狭い瀬戸内海を動くばかりですからね。それがやはり一つの大きな赤潮の原因とも言われているわけですね。そういう点で、これは厚生大臣にお聞きするよりも、ひとつ総務長官に、あなたひとつ公害担当の大臣として、あなたも、委員会においてちゃんとそのことを約束しているのですから、長期計画を、いつまでにだんだんだんだんこれをなくしていくのだ、昭和五十年までになくすると、もっとこまかい計画を立てて、その点をひとつ建設省ともよく話し合ってもらいたい、私はそのことを要望したいのですけれども、その点どうでしょうか。
  168. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私たちが国際指標を比較するときに一番いやな思いをするのが、下水道の普及率もさることながら、水洗便所の普及率の比較だけは頭が痛いことになっております。したがって近代国家としてはなかなかどうも恥ずかしい話でございますから、われわれとしては、下水道の計画とただいまの厚生大臣の申しましたような計画とが合うことに努力することはもちろんのこと、今回の下水道についても、終末処理施設を備えていないものは下水道と呼ばないことになりましたし、そのために、少し乱暴かと思いましたけれども、その処理施設を備えた下水道の流域の者は水洗便所に変えなければならないという、やや個人の自由を強制するような法律までつくったわけであります。もちろんこれらの人たちが自己資金でやるについては、融資その他の措置を講ずることは前提にしてではありますが、やはり水洗便所の設置の義務づけ等はやはり新しいわれわれの決意の一つのあらわれでございますので、これは私たちとしても国際的に顧みて恥ずかしい、文化国家の仮面をはがされて醜態をさらすということがない日本に早くするようにしたいと念じております。
  169. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いまそういう総務長官の答弁でございますので、ひとつ建設大臣も、ここではもうそのことをひとつしっかり協力していく、よく公害の一元化と言われているわけですから、そういう批判を受けないように、そのことをお願いしておきます。  それから次に、ビニールが非常に最近、先ほどの委員会でも質問ありましたように、ごみの一割がビニールだと、そういうのがどんどん海に流れて、最近淡路島とかあるいは山口県の大島あたりでは、そういうのが海の底にあって、これが腐らないために漁業に非常に大きな被害を与えておる。先般漁民の方にお話を聞きますと、ビニールが海底をおおうと海底の生物が死滅するそうです。貝類もいなくなる。大島あたりでは一日千キロとれておったのが、いまは二、三キロしかとれない、それでとったのは貝じゃなくてビニールとか、それからあくたが一生懸命にととれる、それが現状であります。また、そういうビニールがスクリューに巻きついたり——まだ巻きついたのははずせば取れるわけであります。ところが、今度はエンジンの冷却水のパイプに詰まる、そうすると、エンジンがオーバーヒートするわけですね、魚をとったところがビニールだけだ、そういうような状態で、これは腐らないためにだんだんだんだん少量が蓄積されていくわけです。そういう点で、私は、そういう自然還元の不可能なビニール類等はたとえ少量といえども、それはもちろん少量というのも限度があるでしょうけれども、たとえ少量といえどもこれは海洋投棄は禁止しなければならないと、私はそう思うのですけれども、総務長官、どうでしょう、その点は。
  170. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もちろん原則的にはそのような精神が今回の海洋汚染防止法の中に入っておるわけでありますが、しかしそれらのものも含めて、単に海底のものばかりでなくて、これらの広域に、処理しにくいものについての処理事業を所在市町村だけでは困難であろうということから、今回の清掃法の改正になって、広域の清掃処理事業が行なえるようにというような配慮等は、そこらでいたしているつもりでございます。
  171. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、実は第十条、これは運輸大臣にお聞きしますが、海洋汚染防止法の第十条第二項の一番目には、「当該船舶内にある船員その他の者の日常生活に伴い生ずるごみ、ふん尿若しくは汚水又はこれらに類する廃棄物の排出」はよろしいというようになっているわけですね。だから、船員の日常生活に必要な、もちろんそういうビニールも日常生活に必要なそういうごみになるわけですけれども、そういうものは捨ててもよろしいと言っているわけですけれども、私は、たとえ少量といえども、一つの道徳的な意味においても、そういう自然還元の可能なものはいいけれども、不可能なものはやっぱり陸に持ってきて捨てると、そのようにちゃんとここに明記すべきではないかと思うのですが、そういう点、この法案は納得いかないのですけれども、その点運輸大臣どうですか。
  172. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 原則としてビニールを海中に捨てないということは厳格に私も実行したいと思います。問題は、ビニールの廃棄物としての処理方法の開発等がありましょうが、お話のように、これは溶解するものでもないのでありますから、あるいは圧縮するなり、将来技術開発によって有害物を伴わないような処理のしかたが当然これは開発されなければならぬ、こういう意味からいってぜひこれは実行したい。  なお、ただいま、船からのものでもこれを禁止してはどうかというのはごもっともではありますけれども、船といいましても一人乗る船もあるし、何百人、何千人乗る船もありますので、これを一がいに法律の上で規定することは困難であります。しかし政令の中で、いわゆる百人もしくは三百人、これはものによって違いますけれども、ある程度の人を乗せるものに対しては、これを規定からはずして、何らか船内で処理する、そこで処理工場がありませんから、まとめてこれを陸上に持ってくるというような形での政令の規定を行ないたいと、かように考えております。
  173. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあその点は、非常にいまの運輸大臣の答弁は、私、納得いかないのですけれども、それはまた委員会に譲りまして、実際に漁民の人が魚をとると、網にビニールがかかるわけですよ。それをまた海に捨てると結局海がよごれる。だから漁業組合によっては、そのビニールをかます一ぱい幾らと、そして買えばそれだけやっぱり少なくなるわけです。そういうようにやっぱり漁業組合が一生懸命努力しているところもあるんです。私はこういうようなビニールは、やっぱり国なり地方自治体において当然それは買い上げるぐらいの努力をすべきだと、そのことを要望したいと思います。  それからもう時間があと一分でございますので、最後に、実はこの法案には海をきれいにするという要素は何もないわけですね。そういった海の底にあるビニールを掃除したり、あるいはヘドロがたまる——工場のヘドロはいいですけれども、河川とか下水からのヘドロもたまる。そういうものが赤潮の発生の原因ともなっているんです。そういうやはり掃除をするという要素が入ってない。どこも各省としてはやるようになってないから、自治体が細々とやっているところもあるわけですけれども、そういう点もひとつはっきりきめてもらいたいということと、それともう一つは、いわゆる油によるノリの被害とか、赤潮の被害、そういうものは全部加害者がわからないわけですね。そういうものは結局いまの法律では全然補償の道もないわけです。これは一年間に瀬戸内海だけでも三十数億円の被害を受けているわけでありますけれども、そういうような被害に対する補償の問題も、いままではそういうのは責任がないからわからないんだと、そういうように終わっているわけですけれども、そういうような問題もひとつ公害対策本部としても、また農林大臣としても前向きに検討していただきたい。そのことをひとつ要望いたしまして、ちょうど時間でございますので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。     —————————————
  174. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 杉原一雄君。
  175. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 まず第一番に、公害行政を今後どう強化していくか、そのためには行政の一元化についてどのような方向でこれから臨んでいかれるかということについて、いま御苦労なさっている総務長官から回答を実はいただきたいわけであります。  すでに対策本部が昭和四十五年の七月三十一日にできまして、閣議の中でその設置についてある種の申し合わせができているわけでありますが、しかし行政機構としてはきわめてあいまいな機構と、機能面にももちろん財政的な面でもかなり総務長官は御苦労なさっていると思います。私はこの問題の決着点として、われわれが主張しております環境保全省をつくってもらいたい。そのことによって環境破壊の防止の行政を統一的に、能率的に強力に展開してもらいたいという期待を含めながら、いまこの問題に対する質問を進めているわけであります。で、労働省が先般調査した結果等を見ましても、有毒物質だけでも全国一万三千六百六十五工場、七五%が現在たれ流しになっている。きわめて重大な警告を実は発しているわけであります。要するに行政面ではまさに手おくれである。われわれの日ごろ使うようなことばを使いたくありませんが、これは非常事態宣言を発してもしかるべきときに直面していると思います。とりわけ公害の現状等につきましては、その内容がきわめて多様化し複雑化していること、大気汚染しかり、水質汚濁しかり。なおまた地域的に見ましても、公害といえば大都会、大工場地帯というように考えがちでありますけれども、逐次周辺に拡大をしつつあるということもいなめない現実だと思います。そして最近特に地方に局地的な公害がどんどん発生し、しかもそれは行政の手が届かない、まさに野放しの状態になっているという事実は枚挙にいとまがないくらいであります。木曽川にしろ、高知の江ノ口川にしろ、宇都宮の田川にしろ、長野の佐久市における農薬の空中散布等における被害の実情等、非常に多く問題を起こしております。こういう状況の中で、冒頭申し上げたように、行政機構の一元化なり強化の必要を痛感いたします。それにつきましても、長官としては、人手がない、独自予算は不十分だ、こういうぐちもあるかと思いますが、委員会を通じて率直にそのことを申し述べていただいて、公害対策本部がいつの時点で拡充強化されるのか、あるいはまた廃止されるのか、そしてまたわれわれが期待するような環境保全省に変わっていくのかどうか、そうした点についての答えを、きのうからきょうの中では判断中というふうに聞いておりますが、もっとはっきりやはり長官独自の一つの構想なり意欲を明示してもらいたいと実は思います。  なおまた、行政の対象としてわれわれはとかく基地公害等はかなり弱いのではないだろうか、この辺のところは長官の行政を進める過程の中で緊密に強力にこの問題に対処しておいでなのかどうか。もしその事実等があるならば明確にしていただきたいし、かつまたいま十四の法律が出た中でも、いま塩出委員が指摘したように、海の底の問題、アメリカ等では二百メートルも深い海の底の問題についてもはや環境破壊の防止対策がニクソン大統領の指示によって行なわれつつあるという事実等も伺っておるわけでありますから、そういう空と海と、そしてまたオフリミットにとかくなりがちな基地公害等につきましても行政の一元化という観点において今日までの長官の努力なり、機構的にそれは当然掌把しているという事実等もあるならば、そのことを実は明確にしていただきたいと思います。希望を含めながら大臣の所見を伺います。
  176. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは出発の当初の構想においても、当然各省のそれぞれの独特の、単独の権限として持っておりまする行政法規を越えて調整するには異常な権力が必要であるということを考えましたので、異例のこととしてこれを総理府に置かずに内閣官房に置くことにいたしまして、そして総理大臣が本部長であることによって、内閣総理大臣たる本部長は内閣法の定めるところに従って閣議で決定された方針に基づいて各省庁の長である大臣を指揮できるという立場をはっきりと、ただいま申し合わせ事項と申しますか、幾つかあります中の第一にそれを掲げたわけでございます。そのことの御了承を各省大臣が賛成していただいた上で出発をいたしました。手勢わずか三十四、五名でございますので、文字どおり三カ月あまり不眠不休に近い努力を重ねておるわけでございます。しかしながら今後はこれらの法律が整備された後の実行の問題が大切であることは、法律を最終的に提出をきめました閣議において総理からも強い指示を受けております。これは私をはじめ関係各省の長たる大臣が、それぞれ自分の持っておりまする法律の実効をあげるのに懸命の努力をしなければならぬと思います。だがしかし国民の間に今日までばらばら行政の批判があったことにわれわれは決して耳を傾けないわけにはまいりません。そうすると、いまの対策本部の機構というものが、単なる調整機能だけでよろしいかどうか、実際の行政の実務というものはこれはタッチしないのだという姿でおっていいかどうか。かりに基本法や紛争処理法やあるいは企業の費用負担法等を所管したとしても、それは決して実務ではない、このようなことを考えますときに、私自身がやっていけないと言えば、これは男らしくありませんし、悲鳴を上げたことになりますから、絶対に言えませんけれども、しかし国家のために何が必要かということに静かに思いをいたせば、スウェーデンの環境保護庁にしても、イギリスの環境省にしても、あるいはアメリカ環境保護庁にしても、われわれとしてはやはりここらでも、日本ももう一つ考えてみる時期がきておるのではないか。すなわち、一元化された行政の機構というものが独立して、政治の姿勢を明らかにし、責任を持つべきではないかということは私も考えておるわけでございます。しかし、それは総理の決断するところであり、最終的には総理の決断による法律を国会で承認をする手順を踏んでいただくわけでございますので、ただ、私自身の体験から出ました感想を申し上げただけでございます。
  177. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 意欲なり、長官の期待が述べられたわけですが、ただ具体的に本部をいつの時点で、これは解散というのはおかしいですが、別な形でほかの機構にこれを移しかえるといったような点について、総理の判断ということなんだけれども、副本部長としてのいままでの業務の遂行の経過から、それを何かこう、めどを一つ置いておいでになるのか、あるいは十四の法律を通せば、これで長い間なにしたからくたびれたと、こういうわけにはいかぬだろうと思いますがね。その辺のところを、言いにくいでしょうけれども、もしあったらめどをひとつ示してください。
  178. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 一応出発の当初は、各省のベテランを集めまして、まず過去の私たちが持っています法律の不備な点、あるいは今日の持っておりまする法律ではとうてい補完できない点等の検討、立法等に重点をしぼりましたので、それらの作業に夜を日に継いだ日時を重ねてまいったわけでございます。ここで、一応まだ悪臭防止法、あるいは今後残された、いろいろ議論されております——形式はどうなるかわかりませんが、挙証責任転換等に関する立法等が残っておるにしても、今後は実際上の予算や行政の執行の問題に移ると思いますので、この対策本部の機構は早晩変更しなければならないと考えます。しかしながら反面、今国会で基本法並びに企業の——防止事業事業負担法について、所管が総理府ということになりますので、いずれにしても総理府にそれらの機構がなければなりませんので、総理府に、今国会が終わりましたならば、来年度予算編成までに公害対策室というものを設ける予定ではおるわけでございます。
  179. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 少し小さい問題になると思いますが、実はきのううちの大橋委員から労働大臣に質問をした中で、大臣答弁の中で、労働監督官の立ち入り、常時監視体制をしくということで、労働基準監督官を公害対策に使えば効果がある。公害防止に適応させる機能を与え、大幅な増員をはかりたいと労働大臣からの答弁があったわけですが、これをいま長官のほうから、そのことについて具体的な対策、考え方がそれに付随しているのかどうか、裏打ちがあるのかどうか、そのことをお聞きしたいと思います。
  180. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは衆議院における法務委員会公害法の審議の際、小林法務大臣より、そのようなものも必要である旨の答えが出たことに端を発しまして、閣議で議論をいたしました。そして、国会で所管大臣の約束したことであるから、これの実現に向かって努力をしようということになりまして、その際、労働大臣からは、労働基準法に基づく監督官の権限が非常に行使しやすいから、これをそういう方面にも使えるように、あるいは増員できるようにというような意向もあり、あるいは厚生省からは、当然食品監視員とかその他の者が現存しておるので、単に工場保安という立場だけの能力なり何なりの範囲しかないものについては、実際上そういう権能を与えてみても、公害防止の実態について監督する能力がないのではないかというような意見等がいろいろかわされました結果、対策本部においてこれを来年度予算編成まで預かるということになりました。私としてはこれを預かりまして、いま作業を命じておりますが、これを国の職員とするか、あるいは都道府県のそれぞれ置かれておる公害対策関係機構の付属の職員とするか、あるいは都道府県における保健所の職員の機能の中にこういうものを考えていくか、身分やその場所やあるいはその権限の範囲等についても検討を開始しておるところでございますが、何ぶんにもおとといこの論が始まったばかりのことでございますので、事柄の必要性はわかりますが、ここですぐここまで来ておるという結論を出すまでに至っておらないということは御理解いただけるかと存じます。
  181. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 ある新聞が、腐敗した社会には法律が多くあるということを言って、私ら、いま法律を審議してるんですが、かなり勇気をそこなったわけですけれども、ただここで、十四の法案はすでに総括されて提出されているわけですが、いまきのうきょうの論議の中でもちらほら長官のほうから出ておりますが、悪臭防止法の提出の時期と案はでき上がっているように伺っておりますが、それはいつなんだということを明確にひとつ答えてください。
  182. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは国会、なかんずく衆議院の御意向によってこれが提出できないという実情にあるわけでございます。私たちは、これは法律上の国会政府との明定された権限に触れることではありませんが、一応、今国会が短い期間のしかも公害臨時国会的な様相のものであるから、十二月の三日の朝までに全法案を耳をそろえて出すものがあれば出すように、それに間に合わなければ出さないという一応の衆議院の議院運営委員会における話し合いがあったようでございます。そこで私としては再三お願いをいたしまして、もちろん各党に対してもお願いをしておりますが、悪臭防止法というのは、たいへん典型公害の中にも悪臭をうたわれておりながら今日まで法律がなかった。なぜなかったかといえば、非常に立法技術が困難である、測定基準、規制基準のつくり方がむずかしい、不可能に近いからほうっておかれた、しかしようやく今回は、公害国会が締め切り日だということで、一生懸命急がせた結果、約束を少しおくらしたものの、でき上がって、法律案ができております。閣議でも要綱はすでにきめておりますということでお願いをいたしておるわけでございますが、まだ衆議院段階で議運なり何なりのところで受け取るからというお答えが出ませんので、法律上は提出をいたすのは私たちのほうの政府のほうに権利もあるわけでございますから、提出をいたしてもよろしいのでございますが、やはり国会との合意なく一方的にそのようなことを行なうのはどうかと思いまして、せっかくでき上がって印刷されている法律をそのままあたためておるという次第でございます。
  183. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 次に第二の問題として、環境権をぜひとも確立してほしいという願いをこめて総務長官に同じく質問をしていきたいと思います。すでに衆議院段階において環境保全宣言に関する件、これが決定を見ておるようであります。この宣言等につきましてうたわれている精神は、それぞれに良好なる環境を確保されるその権利があるということを高々とうたわれておると思うのであります。そのことで政府はこの権限案にもありますとおり、公害対策の一そうの推進をはかるとともに、さらに広く人間の環境保全のための諸施策を施すべきであると書いてありますが、その点、決議を受けながら長官のほうの決意、そのことをまずお伺いしてみたいと思います。
  184. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) あの決議はどうも聞いておりまして、相打ち決議みたいな書き方がしてあるんです。しかし、それは与野党の立場のことでああいう表現をしたんでありましょうが、問題は私たちの国の公害対策というものが、そういうことが起こった事柄に対して対処することから始まっていた感がこれは否定できません。しかし、諸外国はやはり人間の住む環境というものを、まずそれをよごす者、破壊する者に対して挑戦しようという姿勢から出発しておりますことについてはわれわれは謙虚に反省しなければならぬと考えます。あの与野党の共同宣言的な決議を聞きながら、私たちとしては謙虚に受けとめると同時に、日本公害対策というものが単に基本法の第一条で、憲法の条章を受けて、健康にして文化的な生活を、これは国民の権利として基本法の中でも確認をするということだけで、それが受けとられないということであるならば、われわれはやはり新しくもっと高い次元からの日本の美しい島、あるいはわれわれの環境を子孫に、あとあとの者に伝える責任が私たちにありますし、伝えるためにどうしたらいいかは、いま私たちが後代の国民から問われておると考えなければなりませんので、それに対してはそれこそ党派を越えた、思想を越えた問題として真剣に研究を重ねることにやぶさかであってはならないということを考えておる次第でございます。
  185. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いまうしろのほうでたいへん問題になっているようでありますが、長官の発言の中に「相打ち」とかというような表現がございましたので、後ほど答弁の段階でもう一度その見解を明瞭にしていただきたいと思います。  現場に、いわゆる環境破壊を防止するために第一線で非常に活躍して苦労しておいでになる四日市の海上保安部の警備救難課長田尻さんが、はからずも「世界」の新年号の中でこんなことを訴えているわけです。「企業の守護札と化した水質保全法」水質保全法は、法はあるけれども、まさに結果的には逆に企業の守り神になってしまっているんじゃないか、こういうことを対談の中で強く訴えております。「環境基準に対して私が言いたいのは、ほんとうは環境基準なんて、いまさら事あらためていばりたてることではないのですよ。それは理想的にはあくまでもPHは中性で、BOD、COD、SSはゼロで、毒物はゼロ、要するに青い海だと言えばそれでいいのです。それをおのおの条件つきのものを環境基準として作るのは、すでにそもそもが妥協値だということです。」、このように彼は訴えているわけですから、これは現場の海を守るお仕事をしておる中からいろいろな形で塩酸なり、硫酸などが排出されて、のほほんとしている工場の姿に対する怒りをぶちまけているわけです。でありますから、この思想の基底にあるものはやはり環境権、われわれは生きる権利があるんだ、みずからの生活を守る権利があるんだ、同時にまた、いろいろな問題をかもし出すような企業の側、環境破壊をする側のものはそれに対しての責任があるんだ、言いかえるならば、環境破壊からみずからを守るということは、みずからの当然の権利だということを強く訴えておられると思うのであります。この人の終わりの発言の中に、「私たちが公害捜査で感じたことは、単に六法全書だけでは成就できないということです。まず第一は海水汚濁防止のための明確な答えを持つこと、そうして工場側に対して、その答えを提示すること。二番目はわれわれは、海水汚濁に対するほんとうの怒りを持って、」、この表現は実務者として腹に据えかねた私は表現だと思います。「工場側の姿勢に迫っていく。海水汚濁は環境破壊の最たるものであり反社会的な犯罪であるということを、われわれが燃えるような使命観を持って対して行く。この二つがなければいかんと思うのです。」、でありますから、これは住民にかわって行政の末端機構で海の汚染を防止するために、真夜中でも四六時中苦労しておられる人から訴えられたことでありますが、こうした形の中でわれわれが守られているという事実を、私は個人の努力とか誠意とかということだけにおまかせするわけにいかない。ただ問題は、その出発点はあくまでもアメリカの上院のネルソン議員が言ったように、すべての国民は正当な環境を享受することができるという、奪うことのできない権利としてこれを認めるという、つまり公害行政を担当する側の者も、またわれわれ住民も、そうした原点に立ち返っていくべきであろう。そのことが佐藤総理の今日までの発言の中にも読み取れるのでありますけれども、この一海上保安部の職員の声に、総務長官がこの委員会を通じて答えていただきたいと思います。
  186. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほどの私の答弁の「相打ち」ということばは不穏当でございますから、取り消します。  ただいまの海上保安部の第一線の御苦労願っている方の率直なる感想、これは私も率直に拝聴いたしました。運輸大臣も御感想があると思いますが、今回の海洋汚染防止法では、海上保安庁というものが現在の機構ではもう手一ぱいになるほど非常に重要な新しい任務と負担とを背負わされることになると思います。したがって、それらの人々は自分たちの仕事にさらに一そうの生きがいを感じていただくと同時に、それらの方々がつらい思いをされないような配慮を私たちはしなければならないんだということを感じながら承った次第でございます。
  187. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 次に、無過失責任の問題について法務大臣にお答えをいただきたいと思います。  私は結論を先に言えば、無過失責任の体制を確立してほしいということです。それは先般衆議院の連合審査の席上に、後ほど新聞で見たのでありますが、わが県のイタイイタイ病に苦しんでいた被害者が出席しておったそうであります。あの神通川のイタイイタイ病、その被害者の小松みよさん、約四、五十年病気に苦しみ抜いてきたのであります。彼女は夫婦の交わりをも断絶され、貧乏と戦いながら、幸い地元のお医者さんがかつての地主であったということで、萩野さんのあたたかい治療法にすなおに応じながら治療された結果が、東京まで来れるような状態になったのでありますが、いかんせん、身長が約三十センチ縮まったままで、これは取り返すことができないわけです。こうした小松みよさん等を含めて、実はいま五百数名の方が富山地方裁判所に裁判を提起して、すでに二年半になります。ちょうど私十一月二十一日、富山地方裁判所における公判に出席いたしました。たぐいまれなこのマンモス裁判であります。で、原告の皆さんは、おそらくきょうは岡村裁判長の口から、鑑定申請を却下され、事実上の結審が言い渡されるものと信頼して行きました。はたせるかな、岡村裁判長は、いわゆる被告——三井金属が提起しております鑑定申請、裁判引き延ばしのそのやり方が、もののみごとに却下されました。しかし瞬間、四、五分たってから、あらためて被告の側から裁判官の忌避を要求されたわけであります。私その傍聴の過程の中で三井金属側から出たいろいろな反論を耳にいたしました。昭和四十三年五月八日、萩野博士に言わせれば、イタイイタイ病患者はもとより、日本のこうした問題における歴史的な記念すべき日だとおっしゃっている四三・五・八、これに対して三井金属はこのような誹謗をしているわけです。園田厚生大臣が、当時イタイイタイ病は公害であり、しかもその発生源は神岡鉱山であるという断定を下したにもかかわらず、三井金属は裁判の過程において、原告のほうはこのことを鬼の首を取ったように言っている、だがしかし、地球の地殻を見なさい、鉄あり、鉛あり、カドミウムあり、そういう形で地殻は構成されているのだ。どこにカドミがあるか、神岡であるという断定がどこから出てくるのだ、自民党も堕落しているけれども社会党も堕落しているじゃないか。こんなことまで——三井金属の弁護人ですから三井金属でいいと思いますが、そういう誹謗を受けて、私は実は歯を食いしばって聞いておったところであります。ただ、ここで法務大臣として、やはり決意を固めていただきたいことは、この裁判提起の法の根拠は鉱業法の百九条なんです。つまり、きのうきょう明らかにされたように、原子力法と同様に無過失責任をうたわれている鉱業法です。その鉱業法でさえも、このように因果関係理由にして三井資本は逃げ回っているわけです。いわんや、いま公害罪法等をおつくりになっていろいろ論議はされているものの、結局このような形で、無過失責任をうたわれている法であってさえもが、あるいはもっとおそろしい原子力の法においてもそのことがうたわれているのだけれども、きょうの言明等におきまして、あるいは薬事法その他の法においては、近くこのことについての方向づけをしたいという言明等があるわけですが、私は十一月二十一日、忘れることのできないこの裁判所の傍聴をしながら、腹の底で力強く決意したことは、なかなか資本というものはおそろしいものだ、一筋なわではいかない。だからいま改正されようとする方向では、なわが細いのではないか。もっと強くこれを縛っていく、つまり国民全体が検察官になると——それは無過失責任であります。国民全体が検察官になって、公害発生源に対し、またこの際企業と言わせていただきますが、発生企業に対しての監視を怠ることのないような体制をしくことがきわめて必要だ、行政の側面でも法の秩序の面でも。その点を私強く表現することが、いまの時点でもおそくないのではないだろうか、このように思いますが、法務大臣の見解を伺いたいと思います。
  188. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはたびたび私もお答えをいたしておりますが、要するに過失責任というものが民法の大原則であり、したがってこれに対して無過失責任は例外中の例外であると、かような考え方からして、これらも今後の法制の問題として、やはり時代に合うように検討していくということは当然でございますが、この段階におきましては、私は前々から申し上げているように、個々の公害の態様そのものについてひとつ検討をしてまいりたい。また場合によったら、もうその個々の排出とか水とかいう問題でなくて物質そのものをとらえて、これを出してそれが因果関係で結果を生じた場合には無過失の関係を考えようと、こういうようなことを申しておるわけでありまして、これは順次これから積み上げていってこれらの問題に対する例外というものを考えていくと。すなわちいまの段階においては、ただ包括的に公害というふうなことでなくて、公害そのものについても非常にまあ概念が不安定であり、また今後どのような公害が出てくるかもしれない。こういう事態においては、ぜひこの際はひとつ個々の問題について具体的にこの問題を研究してまいりたい。こういうことを申し上げておるのでございまして、その具体的研究の結果が、これが数が多くなる、あるいは横にある程度共通点が出るというふうなことになれば、さようなまた立法も考えられると。この際においては何よりもひとついま申すような鉱業法とか原子力法とか、こういうものの形においてひとつやってもらいたい、こういうことを申し上げておるのでございます。  いまの裁判の関係は、いろいろこれはわれわれがいまこれに対して言及すべき筋合いではないのでございまして、鉱業法の問題は無過失責任であるが、因果関係の証明というようなことに非常な大きな重点があるようでございますが、いずれにいたしましても、この問題はわれわれとしては外部で静観しておる以外にはこの際は道はないと、かように考えております。
  189. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは法務大臣、午前中、山中総務長官がわが党の田中議員に対して、結局、とりあえずこれから努力目標として非常に有毒な有害な物質の取り締まり等について、たとえば薬事法、あるいは劇物取締法等については、無過失責任制のことをうたい上げていきたい、努力していきたいという約束をいただいておるわけですが、これは十分法務大臣も了承の上だろうと思うが、いかがですか。
  190. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 私もたとえば水銀とか何とかですね、物質をとらえていくのも一つの方法ではないかと、かように考えておりますが、いずれにいたしましても、われわれは真剣にひとつ公害対策本部を中心としてこの問題の結論を出したいと、かように考えております。
  191. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 この際、政府を責める形でのみ発言しておるような感じを与えますが、実は逆に、私日本鉱業三日市製錬所の関連の富山県におりますので、実はこのカドミウムの問題で日本中——柳町の鉛公害等含めて、公害問題が非常に大きくとらえられるような私歴史的な一つの分岐点だと見ているのです。ところが、七月の九日の参議院の公害対策特別委員会において宮澤通産大臣から、この日本鉱業三日市製錬に対して今日までの取り締まりは弱かった、法律的にも弱いのだ、だから鉱山保安法の第二条の附則を生かして、施設としてのいわゆる鉱山保安法の適用をやる、こういう言明をいただいて、自後技術的ないろいろな指導を三日市製錬に行なわれたわけであります。八月二十七日にこれが鉱山保安法の適用を実は受けて、企業はいま七億二千万ほどかけまして改善施設に努力しております。約四五%まだ操短をしておるわけですけれども、四日の日に私このことを考えて、実は会社を視察してまいりました。で、九九%カドミウムの排出その他は防げるという自信のある所長の言明、そしてまた死の川となった黒瀬川がいま現に魚が縦横無尽に泳いであります。私は法の運用と適用いかんによっては、企業はこのように姿勢を示す、問題を住民の声にこたえる形で前進しつつある。そしてまた汚染土壌の問題につきましても、農民は約七十町歩の汚染土壌でありますが、指定地でありますが、そういうところではひとつできるだけおつくりくださいと、農民の皆さんに工場が言っているわけです。つくられた結果、一・〇以上の結果が出れば私のところは全部めんどう見ます、そして農林省が買い上げていただける分についてはそれは農林省に買い上げていただきましょう、農民の皆さんおつくりくださいということで、黒部市長を介して部落ごとに了解工作をいま取りつけているわけです。事のよしあしは別として、費用もこれだけそこにあればこのようにして一つの改善の方向が出されるという事実をここで言えるのではないか。そういう点から考えても、私はやっぱり、佐藤総理はかなり気にしておったようでありますが、地域住民の激しい要求行動が会社をこのような形で追い込み、それを裏打ちする通産省の法的な処置があったからこのような結果になったと実は思うのであります。そういう意味で、やはり無過失賠償責任の問題等はあだやおろそかの問題ではなくして、字句の問題ではなくして、行政の基本的な姿勢の問題だと、このように思いますが、これに対して法務大臣はいかがですか。
  192. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは私どもも皆さんの論議、説くところは十分参酌いたしまして、今後の検討をいたしたい、かように思います。
  193. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 先ほど法務大臣が神岡鉱山とイタイイタイ病との因果関係は十分でないのでそのように係争になっているんだとおっしゃっております。後ほど文部大臣にも質問する予定をしておりましたが、実は衆議院で問題になった教科書というのはこの本なんです。この本の中にイタイイタイ病のことを書いているのです。この病気の原因も長い間わかりませんでしたが、婦中町のある医師が、これは萩野さんです。二十年もかかって調べ、それは神通川の上流にある鉱山が、鉱山というのは一つしかありません。神岡鉱山です。川に捨てたカドミウムという鉱物のためだということがわかりました。ここに因果関係は明確にしております。いわんや園田元厚生大臣が四十三年五月八日、公害病として認定しているのであります。これをもってしてもなおかつ裁判が二年半を経過し、最高裁までいけば何年たつかしれません。しかも訴えている人、現在公害病患者は九十八名おります、イタイイタイ病患者。このうちことしになってから何人か死にました。おそらく決着が出るまでにたくさんの人はまだこの世から去っていくだろう。私はだから被害者にこうしてくれというようなことなど、きのうきょうのあたり明確に皆さんの答弁もあったから繰り返しません。この事実をはやり念頭に置いて、公害罪等につきましても政令その他の運用の面で十二分の御配慮をいただきたいということを要望いたしまして、次に、公害行政の権限の地方委譲の問題であります。  このことは幸いにしてわが党の加瀬完委員のほうから質疑があり、かなり問題が紛糾いたしまして、統一見解等の形になって、いわゆる機関委任固有事務か、こういう問題が実は出てまいりまして、かなり問題は直 簡明になりました。簡明になったということは解決をしたということではありません。問題はやはり政府のものの考え方の中にはまだまだそういう点では固有事務としてこのような仕事の担当を地方に権限委譲するということ等について、まだまだ踏み切れないような問題があるように思いますが、この点については地方自治体を指導しておいでになる自治大臣のほうから今日までの国会の論議の経過から考えて、一体県知事なり市町村の責任者がこのような法体系の中で仕事が十分できるのかどうか、あなたの立場でどうお考えになっているか、それをお聞かせください。
  194. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 公害対策事業が国及び地方公共団体ともに責任を持っておる、ことに全国的な基準を設け、それに基づきまして実行をする点につきましては、国に第一義的な意義があり、かつ権限を地方に委譲しておるということは申し上げたとおりでありまして、これは第一義的な責務が国にある。同時に地方におきましては、やはり元来公害の問題は地方住民と直接相対する地方公共団体事務でございまして、また責務でございまして、この点においては地方に第一義的な責任が免れないものがむしろあるのでございます。そこで、国が機関委任をいたしました点につきましては、当然その財政的援助につきましても国に責任があるのは当然のことでございます。同時に、地方であるものにつきましては、地方においてこれが財政的な支弁、責任として持たなければなりませんが、同時に国もこの点について責任があるわけでございまして、これは従来、公害対策を実施するために必要な経費につきましては、国の支出金、補助、負担金等でまかなってまいりました。足らざるところを地方交付税あるいは地方債でまかなって、今次の法律の改正に基づきまして権限委譲によりもちろん国が機関委任したところがあるし、その点については必要な経費をそれぞれ強化整備してまいらなければならぬと思います。そこで地方に要する費用のうち、いろいろの防止事業、公共土木的なものに関する財政上の特別の措置が問題になるのでございまして、この点につきましてはやはり国の責任というものを私は明確にするたてまえをとりまして、地方で従来あるというものの上に国のやはり補助、負担の体制というものを総合的見地において強化をしていただく必要があろうと思います。で、この点につきましては、しばしば私からも、また山中長官からも申し上げましたとおり、ただいま関係官庁においてせっかく検討中であります。所要の結論を得ますならば、次の通常国会において御検討を願い、御審議をわずらわしたいと思いますが、要するに第一義的な国に責任はもちろんあります。地方にもあります。同時にその地方のあるものについても、国も公害対策の重要性にかんがみまして、ひとつ補助体制というものをまた負担体制というものを強化すべきものであると心得ております。
  195. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 自治大臣ね、きょうの新聞によると、東京都の議会の中で、これは本会議じゃございません。先ほど田中さんも触れたと思いますが、衛生経済清掃委員会、ここで光化学スモッグ論が治療費の問題でかなり論争しておるわけであります。だから当議会側は、原因発生源が明らかでないものですから、これは都ではめんどう見切れないという形で実は逃げておるわけです。ところが見出し等にもあらわれておるように、議員の皆さんが都の弱腰に非常に憤激をしておる、こういう記事であります。事実のほどは実はわかりませんけれども、大体これを信頼していいのじゃないか。そういう状態におそらくなるでしょう。でありますから、これは私は大胆な権限委譲の問題と、加瀬委員が要請いたしておりますとおり、やはり大蔵等からの、国家でめんどうを見る、財政的にめんどうを見る、こういう点について、この予算措置等において最大限の配慮をする必要があると、こう思いますが、いわゆる地方自治を指導なさる自治大臣として、これについては都合が悪いということ等があるのですか、どうですか。その点、いまのことばで尽きておるように思いますが、いま一度お聞きします。
  196. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) この総合公害に関する点は非常に複雑、微妙な問題もありますが、ただいま申し上げましたような検討によりまして十分関係方面とよくこれは前向きの態度で検討してまいりまして所要の結論を得たいと思っております。
  197. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 次は公害防止事業負担の問題でありますが、これは総務長官にひとつごめんどうですが御回答いただきたいのでありますが、いまの光化学スモッグの話ではないけれども、けつの持っていきどころがない。非常に末端の行政当局は困るわけですが、大前提として、発生源者は多くの場合は企業でありますから、企業がこれを負担するという大原則を大黒柱として長官から確認をしていただきたい。そういう中から、あとで自民党の木村さんが心配したように、中小企業等の問題等もございますけれども、原則を確立していただくことが行政を進める場合に私は非常に大事だし、そのことは逆に、法規制とも合わせて企業のたれ流し、そうしたもうけ優先の経営方針が大きく変わるであろうと思いますので、これは多くを論ずる必要はありませんので、端的にお答えを実はいただきたいわけであります。だから、塩出さんのように海の底にビニールの紙をだれが放棄したかわからない。しかし、これは必ず責任者がおるわけです。プラスチックの問題も出ました。家から出るごみのような形をとるけれども、プラスチックのそれを利用しているものは、牛乳びんを回収する労働力不足関係から、あるいはヤクルトその他の会社、工場がこれをしているわけですから、これはもちろん負担責任があるし、また、これを製造した側も、その終末はどうなるかということを考えると、やはりそこには一つの問題の責任を負うべきである。要するにそうした発生源者のこうした防止事業に対する負担責任を原則的に、ここで簡単でようございますが、総務長官から確認をいただきたいと思います。
  198. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず公害は出さないための防止施設に要する費用は全額企業負担であることに一点の疑いもありません。さらに公共事業として行なうための公害防止事業費事業者負担法案においても、やはり国が、企業がどれだけ負担をするかをまず最初に定め、残りに対して国と地方公共団体が持つという形式をとっておることは明瞭でございます。
  199. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 次に、公害と教育の問題にしぼって文部大臣から答弁をお願いしたいと思います。  まず、学校教育環境公害によって非常に汚染されていると思います。私また現場も見てまいりました。そしてまた、十一月十日ですか、文部省が出した教育白書、「わが国の教育水準」のあらましの中にもその点を若干触れているわけです。学校環境ということの中に、近年学校環境は悪化しており、小学校の二三%、中学校の二五%が通学途上の危険、それから騒音、大気汚染等の被害を受けている。これに対して交通安全教育、防音工事等の対策が講ぜられてはいるが、国、地方団体、産業界、学校が一体となって早急に対策を立てる必要があるとまとめてあるわけです。でありますから、ここで私は計数上のトータルをいかに伺っても、そこからは政策が出てまいらないと実は思いますので、いま文部省に掌握されたデータの中で、基地公害をも含めてこれは子供にとってはかわいそうだ、こんなに学校環境が、校舎あるいは運動場、学習を進める上においてたいへんな状態であること等があったら、具体的に示していただき、しかも、それに対して国、市町村、いわゆる設置者あるいはPTAなど等が協力して改善に努力しつつある実例等があればまず聞きたいと思います。
  200. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 数字は持っておりますけれども、時間の関係上省きますが、何を申しましても、私どものところでは騒音それから大気汚染、これがおもなものかと思うわけでございます。その中で特に新潟県の東山ノ下でございますが、これは四十五年の六月三日に調査をいたしまして、これは工場群の中にあって大気汚染による被害を受けていたので、空気清浄機、冷房設備を備えることにいたしました。もう一つは、千葉県の浦安町でございますが、これも四十五年の四月三日に調査をいたしました。地盤沈下による不同沈下のため校舎に損傷が生じましたので、原因と修復方法についていま究明をいたしております。それからもう一つは、三重県の四日市塩浜でございますが、四十三年の八月四日調査をいたしまして、これまた工場群による大気汚染の被害を避けるために、これは被害のない場所へ学校を移転いたしました。それから兵庫県の芦屋市宮川小学校でございますが、高速道路からの騒音の被害を受けるため校舎の窓はアルミサッシュに取りかえ、現在防音塀の設置等について検討中でございます。これはまあ新しい事態だと思っております。
  201. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いま文部大臣からの報告の中で、塩浜中学校の報告があって、ほっとしたんでありますが、かつては四日市ぜんそくの中心地にあって学校が二重窓になる、何とかして子供の健康を守る学習環境をつくるという努力をして、いわゆる三菱系が発散しておるSO2その他の大気汚染、そして、また部屋の中では、三菱系の空気清浄機を使っておるという、きわめて皮肉な資本主義の姿を暴露しておるわけでありますが、幸いにして、七百メートル程度距離を離して移転をされたという点で大きく問題の解決された報告があるわけですが、ただ、私の見る限りでは、いま申し上げた新潟の東山ノ下小学校の問題はいまの報告では実は解決されておりません。でありますから、事あらためてお聞きしようと思いませんから、文部大臣にあがってきておる報告は、ただもっともっと実情報告には即してない。だからその点は十二分総点検をしていただいて、文部省の側では、未来の主人公である子供の問題ですから、全力を傾けて実は努力していただきたい。  ついででございますが、それに応じて公害病の子供たちが出るわけです。あるいはそうした生徒の医療、厚生大臣が子供のガンの問題については、国費でめんどう見るというところまで、国会で言明されたように伺っておりますが、公害病というきわめて近代的な、そうしてきわめて困難なこの病気の治療等につきましても、大臣の努力によって全額国庫でめんどうを見るという努力を、できればお約束ができたらお約束していただきたいと思いますがいかがですか。
  202. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 新潟の問題につきましては、なお十分調査をいたしまして、積極的に取り組んでまいりたいというふうに思います。  それから公害によります疾病につきましては、単に児童生徒のみでなく、その地域の住民一般にかかわりのあるものでございます。また大気汚染その他の影響を受けやすいのは、児童生徒ばかりでなく乳幼児、老齢者なども同様でございますので、地域住民を対象とした一般公衆衛生の立場からとらえることとなっております。したがいまして、現在、大気汚染、水質汚濁に起因する疾病の救済は、公害にかかる健康被害に関する特別措置法によって措置されており、同法の適用を受ける地域における児童生徒についても、医療費等の支給が行なわれることになっております。
  203. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは次に、公害と教育の問題でありますが、先般文部省からいただきました高等学校学習指導要領というのが私の手元にいまあります。しかし、冒頭に大臣が言っておられるように、これは昭和四十八年の四月一日から実施されるものであります。この中で公害問題にさかれているスペースはごくわずかです。そういう中で、いま四十八年四月一日から高等学校では公害教育の問題で大手を振って学校の教師がやるという結果にはなると思いますが、しかし問題は、今日この時点で国会が示しているように、きわめて公害問題は重大です。この重大なときにあたりまして、やはりその間をつなぐ指導、いわゆる行政指導と申しますか、あまり干渉してもらうといけませんが、指導のあり方、同時にまた現場の教師の創意工夫によってこのなまなましい教育の現実に対して教育を進めていく創意工夫、そうした問題等についてあたたかい配慮が必要であると実は思います。かつまた、きのうの新聞等によりますと、文部省は教科書並びに指導要領について使用前にもズレを手直しするのだということを部内でおまとめになったようでありますが、それ等のことについて文部大臣の見解をちょっと聞きたいと思います。
  204. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 御指摘のとおりでございまして、今回、今国会で、審議されております公害対策基本法の改正案の趣旨に照らしてみると、指導要領あるいは教科書等が必ずしも十分でない記述が見受けられます。したがいまして、この際、以上のような観点に立ちまして、学習指導要領や教科書の関係部分について検討するとともに、学校において誤りのない公害教育を進めていく必要があると考えるわけでございまして、具体的にはこのたび作成しました学習指導要領や指導書等について記述内容の不十分な点についてはすみやかに修正を行なうとともに教科書についても同様の観点から総点検し、不十分な点については教科書の発行者ともまた著作者とも十分連絡の上、正誤修正の取り扱い等を措置していきたいと、このように考えております。
  205. 占部秀男

    委員長占部秀男君) この際、午前の会議で加瀬委員からの申し入れがございました件について申し上げます。  理事会で検討をしました結果、山中国務大臣にもう一度答弁をしていただくことにきまりました。山中国務大臣発言を求めます。
  206. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 答弁いたします。  政府は、今国会公害対策基本法の第一条を改め、国民の健康を保護するとともに、生活環境の保全を第一目標に今後の公害対策の諸施策を進める決意であります。したがって、公害対策の施策推進にあたって、国が第一に責任を負うことも当然であります。この場合、地方自治体の御協力を得なければならないことは申すまでもございませんが、さきに申し上げたとおり、第一次責任が国にある以上、そのための財政負担地方に押しつけるようなことがあってはならないことも当然であります。公害対策の推進に伴う財源責任については、公害対策基本法第二十三条の趣旨を尊重して、国において必要な措置を講ずるようつとめることをはっきり申し上げます。
  207. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 じゃ大蔵大臣、今のは間違いございませんか、明確に答弁してください。
  208. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま総務長官からお答えのとおりに考えます。つまり、基本法二十三条の精神にのっとって努力をいたしたいと、かように考えます。
  209. 占部秀男

  210. 内田善利

    内田善利君 私は、端的にまた具体的に質問をしていきたいと思いますので、具体的に端的にお答え願いたいと思います。  まず第一に、土壌汚染防止法についてお伺いいたしたいと思います。今度の農用地土壌汚染防止等に関する法律案の中に、第三条でありますが、「人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、」云々という文字がありますが、これは、人の健康をそこなうおそれがある農産物が生産されるというのは、たとえばカドミウム汚染米で言えば、〇・四PPMから〇・九PPMまでを含むのか含まないのか、まずこの点からお伺いしたいと思います。農林大臣にお願いします。
  211. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 一・〇PPM未満〇・四PPM以上の米は、法第三条に規定いたします人の健康をそこなうおそれがある農産物に含まれるのかと、そういうお尋ねだと思いますが、要観察地域内の一・〇PPM未満のカドミウム含有米は食品衛生上安全と見られますけれども、現在の米の需給事情及び消費者感情を考慮して配給しないことといたしておるのでありまして、これは先ほど厚生大臣もおっしゃいましたように、〇・四PPMと一・〇PPMの中間はそれだけではいわゆる汚染米であるというふうにはなっておらないわけであります。
  212. 内田善利

    内田善利君 確認しますが、〇・四から〇・九PPMまでは汚染米ではないが、この今度の法案の条項には該当すると、こういうことでございますね。
  213. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いわゆる汚染米と申されますのは、一・〇PPM以上の米は食べてはいけないと、こういうふうに厚生省から言われておりますので、それ以上のものを汚染米とわれわれは理解しておるわけであります。
  214. 内田善利

    内田善利君 それならば、この三条の、人の健康をそこなうおそれがある農産物というのは、カドミウムによって汚染された農産物と、こういうふうに解釈していいわけですか。
  215. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 厚生省が申しておりますのは、一・〇PPMが限度であると、それ以上の米は人の食糧に適しない、人の人体に害のあるものであると、こういうふうになっておりますので、私どもそのように理解いたしておるわけであります。
  216. 内田善利

    内田善利君 どうも大臣の答弁はわからないのですが、この三条の、人の健康をそこなうおそれがある農産物が生産されるというのは、それでは一・〇以上の米を言うわけですね。
  217. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどの御質疑にもお答えいたしておるのでありますが、一・〇PPM以上が人体に害があるという厚生省のほうの指定でございますので、それ以下のものは汚染米であるとは思っておりません。そこで近くその一・〇PPM以上の米が生産されるおそれが明らかな地区は対策地域に含めることを予定いたしておりますと、こういうふうに私のほうは申しているわけであります。
  218. 内田善利

    内田善利君 「おそれ」は何をさすのですか。
  219. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま私どものほうで申しておりますのは、したがって、〇・四PPMというのはいま出てきておりますけれども、それから一・〇PPMまでの間のものは、先ほどここで厚生大臣が、それなら人体に害がないなら、おまえは食べるかと言われれば食べますということを答えたというお話がありましたが、私ども同じような理解を持っているわけであります。一・〇PPM以下は汚染米とは思っておりません。
  220. 内田善利

    内田善利君 それはわかるのですが、「おそれ」は何ですかと聞いているのです。
  221. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま申し上げておりますのは、その一・〇PPM以上の米が生産されるおそれが明らかな地区と申しますのは、いままで出ております地域でなお一・〇PPM以下の地域であっても、やはりいろいろな関係で、そういう隣接しているとかなんとかいうことで「おそれ」のあるような地域は対策地帯に含めることがいいんではないかということで、そういう予定をいたしておりますと、こういうことであります。
  222. 内田善利

    内田善利君 それでは、人の健康をそこなうおそれがある農産物というのは、〇・四PPM以上、〇・九までを「おそれ」というんだと、このように確認していいですね。——そうしますと、この〇・四から〇・九PPMまでは汚染米ではないと、このように厚生大臣も言明されました。ところが、私があちこちで聞いたところによりますと、たとえば安中の〇・六PPMの玄米ですが、これをハツカネズミに使って実験されたある学者のお話によりますと、〇・六PPMの安中の米で、じん臓に九・九六PPM、また肝臓には二・一七PPMがたまっておると、こういう事実は、ネズミは、ハツカネズミあるいはこういった医学用の実験に使われるマウス類は人体とほとんど変わりないと、こういうことでございます。そうしますと、われわれの体内にも〇・四PPMから〇・九PPMまでのこの米は、やはり発病はしなくてもじん臓あるいは肝臓にはどんどんたまっていくんじゃないかと、こういうふうに思われるわけです。そうしますと、先ほど厚生大臣はこの米を食べるということでしたけれども、二十年あるいは三十年この米を食べたらこれはおそろしいことだとだれしもが思うことじゃないかと思うんです。あまりにも簡単に食べるとおっしゃっておりますけれども、私はこういったことにもう少し慎重な発言をしていただきたいと、このように思うのですが、厚生大臣いかがでしょうか。
  223. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 一PPM以上という許容量をつくりましたのは、決して厚生省だけの思いつきではございませんで、関係の学者の方々——中には異論を唱えた方もおるということを先ほども申し上げ、また内田委員もあるいは御承知かと思いますが、一般的の学者の最大公約数と申しますか、最小公倍数は一PPM以上をこれを許容量超過汚染米とすると、〇・四以上というものは、そういうものが米に含まれるような地帯は何らかそのカドミウム汚染の原因がある地域の端緒として捜査をすべしと、そうしてそのほか、その地域の人の健康や尿中のカドミウムの含有量、あるいは米以外のその食生活の状況その他を調べまして、そして必要な場合には要観察地域として指定をすると、こういうことにいたしましたので、面するに〇・四以上あるものは警戒警報だと、こういうことでございます。
  224. 内田善利

    内田善利君 〇・四から〇・九までは警戒警報だということですが、現に厚生省はこの〇・四PPM以上を暫定基準として今日まで危険な、あぶない、そういう米だということでこられたわけでしょう。そういうことで米のほうも、食糧庁長官も先ほど答弁なさっておりましたが、〇・四から〇・九までのそういった「おそれ」のある米はいま農家の人たちの希望によって交換をしておる、そして倉庫にいま保管しておると、厳重に区別して保管しておるということでありますが、これは一体いつまで保管されるつもりなのか、また、日本全国でいま何トンぐらい保管されておるのか、この辺おわかりでしたら教えていただきたいと思います。
  225. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) お答え申し上げます。  現在、政府で保管をいたしております汚染米は三千五百トンでございます。なお、現在配給しておらないが、将来どうするのかというお話でございますが、私どもは主食用以外の用途に向けられるような保障があればこれはそのようなことで処分をいたしたいと考えておりますが、一般的にいつまでということは、私どもは現在配給をしない理由は消費者の感情並びに現在米がたくさんあるということを考慮して、そのような措置をとっておるのでございますから、こういう事情がある間は配給をしないと考えております。
  226. 内田善利

    内田善利君 三千五百トン、またそれに準ずる地域が千トン、大体四千五百トンの米がいま倉庫に保管されておるわけですが、これを一人一日に三百グラム食べると計算しますと、一人で一千五百万日分の米がいま日本の倉庫に眠っているわけです。こういった米に対し、しかもこの倉庫に保管している保管料一切がっさい計算しまして、人件費あるいは運搬料を除きましても大体この金額が六億八千九百四十万円というお金が保管料に使われている、これは国民の税金です。そういったお金でこういった保管をしておるわけですけれども、結局、農家からこうして交換によって政府に保管した米が毎年毎年これは加わっていくわけです。こういったことに対してどのように農林大臣はお考えになっているのか、聞きたいと思います。
  227. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまお答えいたしましたように、汚染米ではありませんけれども、一般に報道された関係もあって、保有米でそういうものを持っていらっしゃる方で不安をお持ちのような方には御希望によってこれはかえてあげるといったようなことで、いま御報告のようなトン数が在庫しておるわけでありますが、これはいますぐにどうということを考えてもおりませんけれども、そういうものが人間の食糧以外のことで、支障のないようなことで用途があります場合には、もちろんそういうものも同様に処分をいたしていかなければなりません。これは在庫米八百万トン近いものの一部でありますから、それぞれこういう在庫米を処理する計画に従って、人体には害のない方向にできるだけ利用してまいりたいと、こう思っておるわけであります。
  228. 内田善利

    内田善利君 あちこち回りますと、農家の方々が、一体、われわれのこの〇・四から〇・九までの米は政府が交換した、しかしわれわれの米は一等米であったけれども、交換していただく米は五等米ですと、だからなかなか私たちも出し渋りますと、そうして〇・四から〇・九と指定された地域の方々は、一体来年は作付をするのかどうか、そういったこともひとつ明確に教えていただきたいと、そう言って非常に農家の方々は悩んでいるわけですけれども、この点について農林大臣にお伺いしたいと思います。
  229. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これはいわゆる要観察地帯において土壌の将来に対する汚染度、そういうことの考慮のもとに、必要があれば、これは具体的には各地によって違っておりますけれども、客土等をすることによって改良していくというようなことをやってまいらなければなりません。
  230. 内田善利

    内田善利君 いま、要観察地域ということをおっしゃったわけですが、九州の大牟田も非常に米が汚染されておるわけですが、きのうの県の発表によりますと、米が、四十四年産米ですけれども、八七%が汚染されておる。しかも、主婦の尿からは七七マイクログラム、これは非常に多い量で常人の約三十倍、こういった尿の中からもカドミウムが発見されておるわけですが、私は、委員会においても、何回も、早く大牟田は要観察地域にすべきだと、こう言ってきたわけですけれども、きのうの県の第二次合同調査の結果こういう結果が出ておりますが、非常に大きな結果が出ておりまして、この人体の健康調査によりましても、大体三〇マイクログラムがもうすでに要健康調査の対象になるわけですけれども、これ以上は、五〇マイクログラム以上が一名、四〇以上が二名、三〇マイクログラム以上が五名、二〇マイクログラム以上が大体要観察者になると思いますが、これ以上が十一名というような非常にたくさんの要観察者が出ておるわけですが、この大牟田について厚生大臣はどのように考えられておるのか。要観察地域にする意思があるのかどうか。この間も委員会で質問したときには、担当者の方から、近いうち要観察地域にしますということばを得ておりますけれども、いまだもって、いつ要観察地域になるのか、この辺の言明をいただいておりませんが、どのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  231. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 土壌汚染防止法が発効し、施行になりますと、そのほうの手続に移るわけでありますが、それまでの期間におきましては、いまの要観察地域という現行の行政上の指導方針を私どものほうで続けざるを得ません。また、厚生省としては、する必要があると考えます。  大牟田につきましては、御指摘のとおり、最近、私どもとしては、十分要観察地域として指定するに足るだけの資料が集まりつつありますので、これはいまも政府委員のほうからも連絡がございましたが、指定する段階に近くならざるを得ないと、こういうことでございますので、ここで指定の方向措置するということを申し上げておきます。
  232. 内田善利

    内田善利君 非常に政治的な発言でございますが、ならざるを得ないということでありますが、私は一日も早くこの大牟田汚染地区を要観察地域にしていただきたいと、このように要望いたします。  それから先ほど厚生大臣は米が一PPM以上ということですが、この米の一・〇PPM以上ということは、暫定基準が〇・四——これは普通の非汚染地区が大体〇・二PPMぐらいなんですね。最高が〇・三PPMなんです。〇・四以上になると異常になってくるわけです、カドミウムの汚染状況はですね。それが、一PPM以上にならないと健康はそこなわれないと、〇・四から〇・九まで私は食べますということなんですが、厚生大臣は水の環境基準は御存じのことと思います。これは〇・〇一PPMです。水は一日に大体二リットルは平均飲むわけですね。ところが、米は三〇〇グラムは一日に食べる。これが一PPMということは一体どういうことなのか、この辺をもう一度お答え願いたいと思います。
  233. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 一PPMの許容限度では低過ぎるというような御意見のように承りますが、厚生省が専門的の学者の方々にお集まりいただきまして出した一PPMというものは、相当高い安全率を見たものだそうでございます。それは、その地域の住民は、もちろん米だけ食べるのではなしに、いまお話しの水も飲むことを前提とし、また、その他の野菜等に相当高く含まれるであろう食料、副食物等もとるという前提のもとに、しかも、農家の方々でありますから、普通の都会人よりも米食が多いというようなことを前提といたしまして、一PPMというのが食用米としての許容限度と、こういうことをきめましたので、決して甘いものとは私は大臣としても考えません。  〇・四というのは、先ほども申しましたように、〇・四そのものはまだ要観察地域指定の要件ではございませんので、〇・四以上の米があるようなところは、何か人為的の原因もあるだろうから、さらに幾つかの要件について取り調べて、そうして少なくとも三つぐらい、先ほどもお話がございました人間の血中あるいは尿中のカドミウム濃度、あるいは大気中の濃度等、要件をそろえまして、はじめて要観察地域にすると、こういうことでございますので、そこのところは、〇・四ということの意味を御理解をいただけると思います。  なお、一部の学者の方では、一よりももっときつい〇・四そのものを食料の許容限度にすべしというような意見の方もないではございません。現に国会の参考人としておいでになったときにも、そういう意見を聞かされております。しかし、その学者の方が属する大学の研究所で調べられた全国的の資料によりましても、何らの人為的の原因のないところにおきましても、カドミウムの一般的汚染というものは、幾つかの資料がございますけれども、高いところでは〇・四をちょっとこえている。これは、岡山大学の非汚染地域の調査によりますと、高いところで〇・四ちょっとこえている。私どものほうやイタイイタイ病研究班などで調査をいたしましたところでも、〇・二とか三とかというようなものがあらわれているような状況でございまして、したがって、一般状況のもとにおいてもそういう程度の汚染——汚染といいますか、そういう程度の含有はあるんだと、こういうことと私は理解をいたしております。
  234. 内田善利

    内田善利君 水だけじゃない、米だけじゃないということですが、この法案は、特定有害物質は政令で定めるということですが、お聞きするところでは、カドミウムに限ると、こういうことですが、どういうわけでカドミウムだけに限ったのか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  235. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) この法律によりまして、直接人体に影響のありますものとしてカドミウムがただいま問題になっておりますが、したがって、私どもとしては、とりあえずカドミウムを指定いたしておりますが、そればかりじゃありませんで、銅、亜鉛等、農産物の成長に害のあると認められるもの等もあるわけであります。そこで、できるだけ早くそういうものの研究をさらに深めまして、政令によってこういうものも追加してまいらなければなるまいと、このように思っているわけであります。
  236. 内田善利

    内田善利君 いままでの公害政策というのは、私は全部後手だったと思うんです。水俣にしても、神通川のイタイイタイ病にしても、田子の浦にしても、全部後手だった。もう、いまは、日本全国まるで後手後手で、公害の実験国みたいに考えられる状況になっております。水俣にいたしましても、あるいはイタイイタイ病にしましても、水俣病が合計百二十一名、そのうち四十六名は亡くなっておられます。第二水俣病が合計四十九名、これは政府公害病と認定された患者でございますが、六名亡くなっておられます。イタイイタイ病が九十八名、そのうち二名が亡くなっておられます。それから四日市が五百七十一名、亡くなった方が十名、川崎が二百六十名、また、大阪が九百八十名と、このようにたくさんの、政府の皆さんが公認された患者数をあげただけでもこのような状況であります。この後手の政策をやめて、公害対策は先手先手でやっていただきたいと、そのように思うわけですが、カドミウムだけにしないで、私は重金属も入れていただきたい。特に、あちこちの私たちが調査した土壌の汚染状況では、銅、あるいは亜鉛、あるいは鉛、また砒素と、そういうふうにもう土壌はあちこち汚染されております。読み上げますと、塩尻がカドミウム、鉛、亜鉛、砒素、鉄と、鉛に至りましては三四・六PPM、あるいは磐梯町に至りましてはカドミウムが六五PPMです。これはもう日本で最高です。米が二・二一PPM、あるいは安中がカドミウムが二六・三、あるいは富山が五三・二、鉛が磐梯町では九七〇PPM、あるいは三七五PPM、あるいは亜鉛に至りましては一〇九九PPM、あるいは二一一〇PPM、非常に大きな数値を示しておるわけです。こういうカドミウム以外の重金属について、たとえばこの法案にありますように、生育を阻害するような重金属の研究を農林省ではなさっていないんだろうかと、このように思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  237. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどことばが足りませんでしたけれども、農畜産物を通じて人の健康をそこなうおそれのあります物質と、それからただいまお話のございました長時間にわたって土壌中に残留して農作物等の生育障害の原因となります物質、こういうようなものがございますが、その中心となるものは、ただいまお話しございましたように、カドミウム、銅、亜鉛、鉛、砒素などの重金属類でございます。そこで、政令を指定するにあたりましては、まず、人の健康上大きな問題となっておりますカドミウムをとりあえず指定いたしたわけでありますが、次いで、農作物等の生育障害上問題となっております銅、亜鉛を指定する考えでいま準備をいたしております。  なお、鉛、砒素等につきましては、人の健康に関するものでございますので、これも慎重に検討して追加してまいりたいと、このように考えているわけであります。
  238. 内田善利

    内田善利君 早急に検討していただきたいと思います。  それからカドミウムの汚染の規制ですけれども、これは米で一・〇PPM以上が人の健康を阻害するということですが、そのほかの白菜とか麦とかそういった植物に対する規制はどうされておるのか、米だけが一・〇以上なのか、ほかの人間が食べる植物についてはどのように規制されるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  239. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは、政府委員が来ておりますので、お答えいたさせます。
  240. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) お答え申し上げます。  米以外のものにつきましては、厚生省のほうといま連絡をして調査を進めておいていただいておりますが、厚生省のほうで米と同じように食品の成分としての規格が定められますれば、それに応じまして直ちにわれわれのほうはそれに対する対策に着手をしたいと考えております。
  241. 内田善利

    内田善利君 厚生大臣、いつまでそれをやられるか、お聞きしたいと思います。
  242. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) そちらの内田さんも御承知のように、大気のほうや水のほうではもうこの微量重金属を規制をいたしました。特に、今度、大気のほうはカドミウムを出し、衆議院修正では鉛までも入れることに相なりました。土壌汚染というのは、もう御承知のように、大体、水の汚染、大気の汚染から始まるものが多うございますので、私どもは、決して先取りしないわけではございませんが、まず水と大気で押えておく、当面土壌についてはカドミウムで押えていただいて、あとからなお十分な調査をした上で所要の微量重金属を加えていくということにいたしておるわけでございます。  なお、野菜等につきましては、これは米と違いまして野菜ばかり食べるというようなそういう場合はまあ非常に少ないということで、このほうはあと回しになっておりますが、これもいまの許容基準をいろいろの角度から調べておると、こういう段階でございます。
  243. 内田善利

    内田善利君 野菜だけじゃなくて、麦も——麦は米よりももっとカドミウムの含有量は多いように思います。だから、早急にこれは規制をしていただきたい。それと同時に、こういった米が一・〇以上とか、これも大事でありますけれども、それを生育する土壌ですね。私は、今度の基本法に典型公害として土壌汚染が入りましたので、土壌の基準がきまるだろうと。土壌の基準についてきめていただくならば、おそらくこの生育するものも、われわれ人間が食べる以前に、きのう話がありましたけれども、魚の例から土壌の例になりまして、まず工場が毒物を排出する土壌が汚染する、そしてそれらに植物が汚染する、それを食べると、こういう段階に分けられましたが、やはり土壌の汚染、土壌に基準を設ける、こういうことが一番いいのじゃないかと、このように思ったわけですが、その点は、農林大臣、どうなんでしょうか。
  244. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどどなたかにお答えいたしましたのでありますが、私どものほうでは、農林省の試験場もございますし、また、各県に三百名余りを持っております各県の農業試験場、そういうところでは従来も組織的に土壌調査研究をいたしておるわけでございますので、厚生省のほうとも十分打ち合わせまして、土壌の汚染については遺憾なきを期するように研究を続けてまいっておるわけであります。
  245. 内田善利

    内田善利君 土壌の汚染の基準を設定されますかどうか。
  246. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 土壌汚染というものを今度の基本法の改正で典型公害に入れると同時に、第九条の環境基準を定める対象といたしましても土壌汚染というものを入れたはずでございますので、私どもは、土壌環境基準というものも、いままでやってまいりました大気、水、近く騒音も出しますが、それらに次いで環境基準を設ける、そういう計画を進めてまいります。
  247. 内田善利

    内田善利君 この三条によりまして「人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、」とありますが、第五条の二項、ここで、「農用地土壌の特定有害物質による汚染を除去するための客土」あるいは「地目変換」と、こういう事業をするわけですが、これにつきまして、公害防止事業負担法でやるわけですが、この負担法の第二条二項の三に、「公害の原因となる物質により被害が生じている農用地」と、こういうふうになっておるわけですが、汚染法のほうはおそれのある農用地負担法は被害が生じている農用地、このズレはどうなっているのか、お答え願いたいと思います。
  248. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この負担法のほうは、仕分けをそういう類型別にいたしておるわけでございまして、実際の工事の施行は土壌汚染防止法というものの判断によって行なわれますので、土壌汚染防止法の「おそれ」のある地域まで対象になるということでございます。
  249. 内田善利

    内田善利君 では、土壌汚染防止法で規定されておる三条のこの項目は全部この負担法で事業はなされると、こういうことですね。——そのように確認いたします。  そこで、今度はその費用ですけれども、第七条の三号ですが、この客土事業の費用が「二分の一以上四分の三以下の割合」と、こういうふうになっているわけですが、この施行者はだれなのか。そして、農家も負担するのかどうか。この点について農林大臣にお願いしたいと思います。
  250. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 対策事業の費用負担につきましては、事業費のうち、まず費用負担法によりまして、その原因度に応じて事業者の負担額を決定いたしまして、その残額については、事業の特殊性にかんがみまして、農民にはできるだけ負担をかけないようにつとめてまいりたいと、このように思っているわけでございます。
  251. 内田善利

    内田善利君 私は、農民に負担をかけるということはとんでもないことだと、このように思うわけです。こういった農地の汚染については全額その汚染源が負担すべきであると、このように思うわけですが、この点どうですか。
  252. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私のほうから訂正さしていただきます。  それは、まずこれは企業負担すべき費用の範囲を定めておりますから、残りは国と地方公共団体が持つ公共事業でございますので、農民の負担はございません。
  253. 内田善利

    内田善利君 次に、水質汚濁防止法についてお聞きしたいと思います。  まず、「水質以外の水の状態」という基本法案の項目がありますが、この「水の状態」に色を加えるということですが、その色の基準のきめ方はどのようにして具体的にやられるのか、お聞きしたいと思います。
  254. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは水をいままでとらえておりませんでしたので、今回は色を加えるということにいたしまして、はっきり申し上げて、まだ、どのようなところを色分けをするかについてはこれからの作業でございます。
  255. 内田善利

    内田善利君 いままでの排水の基準のきめ方は、水質保全法によりまして水域指定をするわけですが、これに二年ないし三年かかっていた。そして、そのあと今度は工場排水規制法によって排水基準が設定されるわけです。今回はこの法案によりまして一律に網をかけるわけですが、この実施までに大体どのぐらいの期間がかかるのか。私は非常に不安なわけですが、せっかく法案ができても、排水基準ができるまでただたれ流しにするような状態が起こったら、いよいよ汚染するばかりでございます。こういった点についてお聞きしたいと思います。経企庁長官にお願いします。
  256. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 御指摘のように、従来は相当時間がかかっておりまして、予算等いろいろの制約もあり、それから、御存じのように、従来の水の規制についての考え方も私は影響したと思うのですが、二年ぐらいかかるものもずいぶんあったわけです。最近はこれを極度に短縮をいたしておりますが、さらに地方に委譲するにつきましては、私どもも、もっと急速化するということで予算の請求もいたしております。実際問題といたしまして、中央だけできめておるとどうしても時間がかかりやすいのでございます。このたびの方式をとることによりまして、いまの御指摘のような点もさらに急速化することができるであろうと、こういうふうに私は見ております。
  257. 内田善利

    内田善利君 いままでの指定された四十九水域ですか、六十六ですか、水域と、今度の水質汚濁防止法のほうとの指定の関係、排水をどのように新しくきめられるのか。いままでの水域指定のあったところの工場の排水はそのまま置かれるのか。この点についてお伺いしたいと思います。
  258. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 御存じ環境基準は本年に入ってきめたもので、比較的新しいものでございますから、いますぐ手直しということはございませんが、排水基準につきましては、古いものが相当ございますから、これを急速に手直しをしていくと、こういう予定にしています。
  259. 内田善利

    内田善利君 それではお聞きしますが、たとえば、私も実際行ってきたわけですが、大竹・岩国水域に山陽パルプというパルプ工場があります。ここのパルプ工場の排水は、化学的酸素要求量のCODをあげますと、これは排水基準が一三五〇PPM以下なんです。ほんとうに人間がその生活環境を維持するためには、いまおっしゃった環境基準ですけれども、CODの環境基準は、こんなべらぼうな環境基準は一つもないのです。全部八PPM以下とか七PPM以下とか、そういったもう一〇以下のCODの排水基準なんです、環境基準なんですね。それに基づいて排出基準がきめられるわけですけれども、この環境基準、基本法でうたわれた環境基準を達成するために排出基準はきめる。ところが、大体もう一〇PPM以上になりますと、魚は嫌悪状態、忌避状態が起こるわけです。大体二〇〇PPMまでになりますと、もう魚はどの魚も死んでしまう、そういう水産試験場の報告もあっております。それなのに一三五〇PPMという排出基準をきめられたまず動機を通産大臣にお伺いしたいと思います。
  260. 宮崎仁

    政府委員宮崎仁君) 数字の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  御指摘の大竹・岩国地区につきましては、最近、環境基準の当てはめ行為と、それからこれに伴うところの水質基準をきめておりますけれども、御承知のとおり、当面は、非常に汚濁の程度がひどいものですから一三五〇PPMという数字でございますが、四十八年には八〇〇PPMにするということになっております。この四十八年の時点になりますと、環境基準としてきめたCOD八PPMというものができるようになるわけでございます。こういう形で、若干時間のかかるものもございます。
  261. 内田善利

    内田善利君 八〇〇PPMになるといって平気な顔をしておられますが、先ほど申しましたように、二〇〇PPM以上で魚は全部死んでしまうんです。大体そういうCOD、これは四十四年の二月、この排水基準はきめられておりますけれども、全くこれは住民国民生活を無視した排出基準です。これはもう企業がサルファイトパルプを、亜硫酸パルプをつくる以上はやむを得ないという考え方、こういう考え方でつくられた排出基準ではないかと、このように思うんですが、この点いかがですか。
  262. 宮崎仁

    政府委員宮崎仁君) この基準のきめ方の考え方を申し上げますと、確かに排水口で八〇〇PPMという非常に高い数字でございますが、環境基準としてきめました、陸岸からある範囲内、そこでもって八PPMというところの環境基準が確保される、こういう形での相関関係を見てきめておるわけでございます。今後さらにこの新しい法律によって上乗せ基準がきめられることになりますが、先ほど大臣が答弁をされましたように、もっときびしい基準をきめるかどうか、今後の問題としてはあると思います。
  263. 内田善利

    内田善利君 八五〇PPMまで認められるわけですけれども、日本全国一律に水質汚濁防止法できめるわけです。全国一律の線がこんな一三五〇PPMまでのところに持ってこられたんでは、これはたまらないと思うんですね。あくまでも環境基準は一〇PPM以下なんですから、そういった線で私は排水基準はきめるべきじゃないかと、このように思うんです。そうでないと、もう日本の海域はよごれる一方です。ひとつこの点よろしく御検討をお願いしたいと、このように思います。この点総務長官いかがでしょうか。
  264. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 御指摘の点はまことにもっともだと思います。そこで、ただ一言申し上げますと、環境基準と排水基準の関係でございます。環境基準を一番ゆるいところで一〇PPMにいたしております。この一〇PPMの環境基準というものをその近傍にあるところのたくさんの排水口にアロケートするわけであります。その結果といたしまして、平均的に、全体としてその環境基準を一〇ぐらいに持っていきたいと。ただし、その排水口の中にはいま申し上げましたように、技術的な理由その他ですぐ落ちないものがございます。ですから、全体として薄めて、できるだけ環境基準に持ってまいりたい。なお、その環境基準がやはり今日の実情におきましては、御存じのように、五年ぐらいかかるものが多いと、こういうことで環境基準を達成する、そういう前提できめております。でございますから、われわれもできるだけ環境基準の全体に合うようにするためには、特定の産業、特定の工場があまりひどいものを出すということは絶対にこれは困ることでございますから、今後、パルプのように、実は技術的にもいろいろと問題のあるものがございますが、これも逐次基準を下げてまいる、こういう予定にしてます。
  265. 内田善利

    内田善利君 最後に、水質汚濁防止法でどうして総排水量を考えに入れなかったかと、排水基準だけじゃなくて排水量も考慮に入れるべきだと、このように思うわけです。と申しますのは、たとえばこれは洞海湾の場合ですけれども、ある工場から三万八千二百トンの一日の排水量があるわけです、三万八千二百トン。そして、その中のシアンの濃度が〇・二PPM。〇・二PPMのシアンが出ておる。これを計算しますと、七千六百四十グラムのシアンが出るわけです。一日三万八千二百トンの排水量で〇・二PPMのシアンであるならば、七千六百四十グラムの総量でシアンが出る。そうしますと、この総量は、犬の場合の致死量が五ミリグラムです。これで割りますと、百五十万の犬が死ぬほどの——一日にですよ、死ぬほどのシアンが排出されておる。あの洞海湾はそんなに動きません。毎日毎日これが蓄積されたんではもう洞海湾は死ぬ一方です。きのうは魚が死んだ場合のたとえがあっておりましたけれども、あそこには魚は一匹もおりません。あるところに行きますと、PHは一から一・八というようなひどいところで、手をつけたら、つめのすぐ近くがひりひりして、魚は一、二分でひっくり返って死んでしまうような状況になっております。これはいまシアンだけを例にあげましたが、そういう排水量のことを考えれば、水質基準設定の場合にはPHだけでなくて排水量も考慮に入れるべきである、このように思うわけですが、この点いかがでしょうか。
  266. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 水質基準を確保するために量の問題が非常に重要であることはお説のとおりでございます。そして私どもが排水基準をきめます際には当然一定の量を前提にして想定をいたしております。今回また特に衆議院修正もありまして、届け出事項の、直罰につながるところの届け出事項に量も入ることになりました。こういうことで、当然一定の量を想定いたしております。ただ量を直接の規制の対象にするということは、相当やはり水の量自身は動くものでございます。ですから、ただいま御指摘のようなときには当然基準そのものをきびしく変えなきゃいけません。ですから、量を前提にしてできるだけ基準を設定し、そうしてもしも相当量が変わるようなときには当然基準をさらに切り下げていく、こういうことを前提にいたしておるわけであります。     —————————————
  267. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 高山恒雄君。
  268. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理大臣が見えないので山中長官にお聞きしたいんですが、公害法として十四の法案を出されたんですが、こういう多くの法案を出されて、衆議院でも短時日の間にこれだけの法案を審議するということには問題があるという意見も出ておったことはよく承知いたしておりますが、したがって長官としては、この十四の法案をこの短時日の間に解決つけるという考え方は、先ほど前者の質問がございましたように、基本的なものの考え方に私はもっとウェートを置いて具体的なものを織り込むべきではないか。それは現実起こっております四日市等の問題等ですね、これは一体その解決がつく見通しがあるのかないのか、これをひとつまず長官にお聞きしたいんです。いまのような状態のままで、環境基準だけでこれを是正することができるという自信のもとに基本法の中にも無過失責任というものを織り込まなかったのかどうか、こういう点について考え方をお聞きしたい。
  269. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 確かに公害罪でも複合汚染をとらえられておりませんし、ただいまの無過失責任の問題もまだ立法がされておらないことについては私もそのとおりだと思います。しかし、基本法の中でとらえますのは、やはり基本法第二条にいう典型公害の現象に対処するということでございますので、それぞれやはり大気汚染に発するものは大気汚染、あるいは水質その他のものによって起こされるものであって、それらのものが個々に法律が動きますから、第二条に複合的な形のものを取り込むのにはちょっと法律として表現できないような感じがするわけでございますが、しかし、かといって私たちは複合して起こる汚染、ことに大都市等における光化学等もそういう現象でございましょうから、これらに対してもできるだけの努力をして、法律ができるものはしていきたいと考えますが、いまのところはたいへん技術的に困難である点がございます。
  270. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 公害問題を考えますときに、大きく分ければ三つあると思うのです。産業の公害あるいは過密化の公害、いわゆる水道下水のおくれですね、水質のおくれ、こういうふうに大きく分析することができると思うんです。その中の複合災害というものを政府責任持って解決をつけるというこの考え方が出ない限り、この公害の処置はできないのではないかという私は見解に立つわけです。いまお聞きしましたら、複合的なこの災害についてはまだ検討中だということをおっしゃっておるわけです。それでは、せっかくこの十四の法案をおつくりになったけれども、結果的には今後の処置、今後の規制、これをきつくしたにすぎないと私は思うのです。一体、現実に起こっておるあの悲惨な状態をどう救うかという基本的な理念が出てこない限り、公害問題の解決にはならないと、こういうふうに私は考えるわけです。その点はどうお考えになっておりますか。特に企業から出る大気汚染ですね。しかも、御承知のように政府は、基本的な産業に対する考え方というものは、できるだけ税金の面でめんどうを見、電気税でめんどうを見て、そうして奨励して鉄鋼団地をつくった、染色団地をつくった、あるいはまた化学団地をつくる、すべて政府の奨励のもとに今日これだけ発展した、世界で三番の生産国になったんだと、こう言っておられる。ところが、それを国民が犠牲になってやっていくという点については納得いかないわけです。しかも十四の法案を出された。出されたのに、それらを解決する法案が盛り込まれてないという点は、私はまあ御苦労していただいたことについては敬意を表しますよ、しかし、肝心のものが抜けとるんじゃないか。先ほどから多くの質問者が言われるように、肝心なものが抜けとるんじゃないか。たとえば四日市の問題を、いましからば自信を持って半年後あるいは一年後、基準の強化をすれば必ずこれは是正できるんだと、こういう自信のほどが言えるのかどうかですね、長官の御意見をお聞きいたします。   〔委員長退席、公害対策特別委員会理事杉原   一雄君着席〕
  271. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 関係各大臣からも答弁いたしておりますように、ある個所において、直ちに、この法律が制定されたために、一ぺんに望むべき理想の状態が取り戻せるものではない。あるいはまた、過去の政治の姿勢において私たちのとってきたことについての反省も、たとえば低開発地域工業開発促進法とか、あるいは新産都市とか、ただいま例をあげられました各種団地等をつくります際に公害が念頭になかった。東京周辺の各種の団地が、実際においては流域下水道その他がそろっていなかったために、結果は公害を分散さして複合さした結果になっておる。これらの点は、私たちも、過去の政府姿勢、あるいはそれを受けた地方公共団体の長や議会の方々姿勢というものに対して、政府自身がまずミスリードしておったことについては、率直に認めたいと考えます。なお、大気汚染の四日市の問題については、所管大臣からの答弁をいただきたいと思います。
  272. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 公害対策は、私はまさに総合政策でなければならないと思います。排出する有害物質を規制するばかりでなしに、たとえばその新しい施設の建設とかいうようなことも抑制をしなければならないと考えておりますし、ある地域につきましては——首都圏とか、あるいは近畿圏などにつきましては、そういう地域内への新しい工場とか学校などの建設というものを抑制し得る法律上のたてまえはできておるようでございますが、四日市につきましては、もしそういうものがないといたしますならば、これはやはり同じようなたてまえの考え方もあわせてとっていかなければ、公害の排除ということはできまいと思います。幸い、四日市は御承知のとおり、今回公害防止計画というものを——千葉・市原、それから四日市、水島というものが、本年度、この十二月から公害防止計画というものを総理大臣の承認のもとに設定することになりましたので、いろいろな総合的な面から新しい市街地づくり、あるいは環境緑地、あるいは下水、河川その他の総合的な都市計画、いわば、わかりやすく申すと、都市計画みたいなことを、あそこだけでも事業費数百億円をかけまして、この五年間ぐらいの間にやるようなことになってきておりますのは、私どもの一つの大きな希望でございます。それから公害関係の法律におきましては、四日市のようなたて込んでいる地域に新しく工場等を建設いたします際には、通常の排出の基準よりも特に高い特別排出基準——特排基準というものをかけていく、現在ある工場に対する排出基準も毎年毎年きつくして締め上げてまいりますことは、たびたび御説明申し上げているとおりでありますが、新しくそこに無理に工場をつくるようなことになりました場合には、それは特別のきつい排出基準をきめるというようなこともやっておりますので、そういうような施策を総合して四日市のああいう状態を早く解消をいたさなければならないと考えております。
  273. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 今後の問題としては新しい市街地づくりをやっていくんだと、これはよくわかるんです、当然のことでしょう。私がお聞きしたいのは、四日市は、いま地方自治体のほうでも補償して、二千円と四千円の医療費を出しておるわけですね。そういう金を出しておるわけです。ところが四日市の市民の声をテレビで放送していますから御承知だと思いますが、何ら効果もない。しかも、いままでの距離よりももっと遠隔地の者にそういう病気が発生しておるということを放送しておるんですよ。したがって、拡大しておると見なくちゃなりません。その現実の上に立って、四日市の問題は早期に国民が安心するような方法でどこかに責任を取らすべきじゃないか。それは、複合災害というものに対する考え方が出ていないではないかということを私は申し上げておるのです。したがって通産大臣は、その問題についてはどうお考えになるか。今後の問題じゃないんです、現実の問題を私はお聞きしておるんです。なお、この問題は、いま起こっておる問題が処理できないような公害問題の十四の法案では、私は、やっぱり一方には大きな穴のあいたざる法だ、したがって、今後は何ぼか規制ができるでしょうけれども、大きな問題を見捨てておるじゃないか。この点をどう通産大臣はお考えになるか、それをお聞きしたい。
  274. 杉原一雄

    委員長代理(杉原一雄君) 厚生大臣でしょう。
  275. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 厚生大臣。
  276. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 先ほどは産業立地のことまでにも触れたり、あるいはまた公害防止の都市計画までにも触れましたが、まあ厚生大臣といたしましては、これは通産省であれ、経済企画庁であれ、どの役所でもいいから、こういうような状態を一刻も早くなくしていただいて、私もどは、その立場におりますところの被害者が安心できるようなことにしていただきたいというのが厚生省の実は立場でございます。そこで厚生大臣もほうぼうからうらまれるようなことも言ったり、規則もつくっておるようなわけでございます。また、ただいま御意見がございました、今日、四日市等で公害のために健康をおかされている、いわゆる四日市ぜんそく等の患者さん方に対しましては、御承知の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法というもので医療費なり医療手当なり、あるいは介護手当というものをごく狭い幅で認めておるわけでありまして、もちろんこれでは足りません。足りませんので、それらの救済の内容につきましては、これも事態に応じて大蔵省に要求しながら、少しずつでも実は改善をいたしつつございますので、そういう線を進めてまいります。ただ問題は、医療救済ばかりでなしに、生活補償、生活の救済、あるいはまたその他の財産上の損害の救済というものまでにこの法律は及んでおりません。私どもは、どの法律でもかまいませんから、そういう財産上、生活上の損害の救済が行なわれることを厚生省としては望んでおりますので、したがって、民事上の責任追及などによる損害補償につきましても、私は、無過失責任法制というものが縦割りでも横割りでもいいから一日も早くできることを望んでおりまして、ここに山中大臣もおりますが、山中大臣も前向きで厚生大臣の言うことをおれも賛成だということで、ともどもにこの問題を解決をしていくように努力をいたしておることを申し上げておきます。
  277. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 厚生大臣はまあ賛成だということがわかりましたが、山中長官は今後検討したいということですが、企画庁長官にお聞きしたいのですが、先ほど基準の問題が出ましたが、一体四日市等における大気汚染の問題の今後の解決について、基準だけでこれを是正することができるのかどうか。できなければ一体だれが責任を持つのか。この点はどう長官はお考えになるか、その点ひとつお聞かせ願いたい。
  278. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私から言えと、こういうことでございますが、基準は毎年引き締めてまいります。しかも、基準を引き締めますと、今度は大気汚染防止法の改正によりまして実はたいへんなことになるわけでございまして、いままでは基準に合わないものは都道府県知事が改善命令をいたしまして、それでも従わない場合にはじめて罰則がかかったのでありますが、今度は、基準違反に対しては直罰主義ということになりますので、基準をむやみに強めるということにつきまして問題が起こるわけでございますが、それにもかかわらず直罰主義というものをとりましたので、そういうことを承知しながら私どもはさらにその基準を締め上げていくように、大気については私のほうと通産大臣、また水につきましては通産大臣と経済企画庁長官にその基準の締め上げをお願いをすると、こういうことになります。
  279. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 早急にこの問題についてはやっぱり解決のめどを——それにはこの複合災害に対する責任というものを、やっぱり無過失に対する責任をどこに持たすかという、これは結論を出すべきだ。それでなければ公害の基本的なものではないと、こういう結論を持つわけです。この点はひとつ希望意見として強く要望いたしておきます。  なお、長官にお聞きしたいのですが、先ほども出ておりますが、今回の法案は全くこの政令できめるということが多いんですね。私は国会議員として、これだけ政令できめるという問題の法案が出たことはかつてないんではないかと思う。しかも、日本国民が非常に関心を深めてこの国会をながめておるときに、今後取り締まるべき方法あるいは基準、あらゆる政策を含みますが、これは私らにまかせよと、こういうことだと思うのです。ワクはひとつ国会議員できめてくれ、中身は私らがきめるのだと。一任することになるわけですね。ところが、私が心配いたしておりますことは、清掃法の十八条が今度の法案の中にも、廃棄物処理法案の中に出ております。これは、この法案の中では二十二条になっておりますが、いままでの清掃法の十八条をここに移したと思うのです。そのままではないかと私は思うのですが、そうだとしますと、この清掃法の問題の中の尿屎処理等における問題ですね。あるいはまた尿屎法に対する問題の中のこの清掃についてどうするかという問題、これは法律はできておるけれども、政令では何もきまってないのです。未公布です。こういうことを政府は今日までやってきておるわけですよ。未公布でやってきておるわけです。未公布ということは、国会議員でワクはつくったけれども、入れものは何にもやらないのだぞ、これにつながると思うのですね。こういう法案、しかも先ほどおっしゃったように、四十何ぼという政令できめて、今後運営をする。やらなくたってわかりゃしないじゃないかということになるわけです。したがって長官にお聞きいたしますが、政令をおきめになったら——あるいは次の通常国会には間に合わないでしょう。その次の通常国会までには、どういう政令をきめて、どういう取り締まりをするのだということを国会に報告の義務があると思うのです。やる意思がありますか、お聞きしたい。
  280. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは間に合えば次の通常国会にも、ほぼ今回の重要法案で政令にゆだねられました、通常許されるべき範囲の技術的な問題の政令、これはまあたいしたものじゃありませんが、そのほかに物質はどこまで指定するのか、あるいはその具体的な対象をどうするかという問題は、まさに法案の実体に触れる問題でございますので、これらの問題はなるべく早く次の通常国会にも皆さま方の審議の便に資するように提出する覚悟で努力をいたしたいと存じます。
  281. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それから長官にもう一つ聞きたいのですが、公害対策は、まあ防止するためには、どうしても先取りをしなくちゃいかぬ、この御精神には私も賛成です。ところが、先取りをするためにはどういうことがあるかということです。先ほど長官は御答弁の中で、地方まで対策員を持つことをいま考えておるとはおっしゃっています。そういうふうにおっしゃっていますけれども、私は公害の基本的な考え方の中で必要なのは、地方にこそ必要だと思うのです。したがって当初、地域住民の声、これを吸い上げる機関がどうしても地方になければいかぬ。投書でもいい、あるいはまた陳情でもよろしい、その窓口を開かなければならぬ。公害は、総理が言われるように、企業家も、一般国民も、政府も、タイアップしなければ公害防止にならないんだ、それには道を開かなくちゃならない。   〔委員長代理杉原一雄君退席、委員長着席〕 したがって、いまのところは、お考えになっていないようだが、先取りをしてこれを防止しようという政府のお考えであるならば、長官は、地方にその吸い上げをやる——公害に対する扶助その他を、投書により問題を吸い上げていく、こういう窓口をつくるという考え方があるかないか、これをお聞きしたい。
  282. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 公害紛争処理法に基づく公害審査委員会が地方にもつくられることになりますので、そこも一応の公の窓口の一つになろうかと存じます。さらに先ほど来議論がされておりました公害監視官、これはまあ仮称でございますが、こういう者がただ監督あるいは調査、検査とかということばかりでなくて、たとえば交通事故相談所みたいなところは相談員がございますので、そういうような機能等もあわせ持って、たしかに示唆に富んだ御提案でございますので、せっかく置くならば、そのような意味の大衆の相談相手にもなれる人というような意味の性格を持たせられるかどうか、これもあわせて検討いたしたいと思います。
  283. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 通産大臣は見えないのですか。——それじゃけっこうです。  静岡のヘドロの問題についてお聞きしたいのですが、長官は昨日の質問に対して、近代的な乾燥機ですか、そういうものの設備をやって、この問題は何とかまあ処理をつけていきたいと。しかも、その近代的な設備というものは大体成功するのではないかというような見通しの御答弁がございましたが、もっと具体的にお聞きしたいのは、御承知のようにここにも硫化水素、これが公害としてあるわけです。これは地域によっては夏時分は臭気もそのとおりでありますが、目を痛めるとかあるいはのども痛めるとか、こういう基準が出ております。これは厚生省から出ておるのですがね、厚生省からそういう基準が出ております、硫化水素、これの基準が。これには目も痛む、あるいはのども痛む、こういう危険物があるわけです。したがってそういうものの基準も何もきめないで、竹山県知事はこういうことを言っておられます。硫化水素はたいしてあまり問題にならないのだ、したがってこれをやれば必ず成功するというようなことを新聞で発表いたしておられます。ところが政府は、もう県だけにまかせておいて、もしそれをやったために公害が今度は起こった場合に、一体どういうふうにお考えになるのか。そういう意味から、私は何かのやっぱりこれに対する基準的なものをきめて、そうして害があるということはもうはっきり厚生省が出しておるのですから、したがってこの急性症状あるいはは漫性症状に対して、いまからその基準に沿うような実際の処理ができるのかどうか。政府はもっとこれにタッチした見解を通してやるべきじゃないかと思いますが、どういうお考えか。
  284. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 形は知事さんのほうにもちろんおまかせせざるを得ない事柄でございまして、したがって知事におまかせしておる形になっておりますが、しかし現実に田子の浦港の駐在署のおまわりさんの症状等も承りましたし、あるいは鉄橋上で路線等の補修に従事しておりました鉄道の従事者の方の被害ということも硫化水素が原因であるということも聞いております。でありますので、それらの、どのような形式に最終的にされるかは別にして、作業をされます過程においても、作業員も含めて沿岸あるいは付近住民方々にそのような有毒な硫化水素ガス等による影響の出ないような方法で処理していただきたいということでお願いをしておる次第でございます。
  285. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 運輸省はこの面についてはどういう処置をお考えになっておるか、お聞きしたい。
  286. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) まあ実のところ運輸省は被害者の立場に立っておるわけであります。現在田子の浦港の機能は五バースがほとんどその機能を失っておる。あと十一バースで荷役等の仕事をしております。しかし大体仕事の上には大きな支障は与えておりません。問題は結局港湾監視者である地方団体が政府とともに協議をしてこれが処理をするわけですけれども、その場合に、運輸省の立場は技術協力といいますか、たとえば有害なヘドロを運ぶ場合にどういう形でこれを運べば漁業に影響を与えないとか、あるいは付近住民に影響を与えないような、そういう技術的な協力とか、あるいは運ぶ船の構造についての研究に対する協力、こういうことをするわけであります。ただ運輸省としては、いま申し上げましたように、せっかくつくった港湾でありますから、この機能が十分に回復されることを希望しております。しかしこうした事情から考えまして、将来の港湾計画というものは、河口につけるということの危険性が非常にあります。これは企業公害が今度の場合は主でありますけれども、それ以外にも現在の状態では危険があります。その意味において、将来の港湾計画については河口港湾というものを現在以上にむやみに拡張することはいいかどうか、これらは全体的な面で検討を加えて、そのようなことが将来起きないようにやっていきたい、かように考えております。
  287. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 厚生大臣にお尋ねしたいのですが、この大気汚染の、いま四日市の問題を中心に考え方をお聞きしましたけれども、実際問題として、手当としては二千円と四千円ということになっておるのです。これを上げる意思があるのかどうか、先ほどちょっとお触れになったけれども、上げるとはおっしゃっておりません。上げる意思があるのかどうか。  さらにもう一つ私がお聞きしたいのは、こういう問題は、これはまあ四日市ぜんそくという名前がついておりますけれども、ぜんそくだけでは済まないと思うのです。したがって眼科、耳鼻咽喉科とか、こういうものも含めた考え方をやはり持つべきじゃないか、こういうふうに考えておりますが、そういう考え方はないのかどうか。なければ、今後お考え願えるかどうか。もう時間がありませんから……。
  288. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 公害の影響が広範囲でございまして、あの法律、政令で規定していないような病気が多発するというようなことになりますと、それは新しい病気でも、私は指定をいたすつもりでございます。  また、二千円、四千円という医療手当につきましては、今年に入りましてから、二月か五月かに改正をいたしまして、あの程度に引き上げられまた一方、あれもだれにでも出すというわけではございませんで、税金をよけい納めているような、所得の多い方には制限がございますが、その所得制限も緩和をいたしました。これらにつきましても、さらに状況によって緩和すべきものは緩和し、また金額をふやさなければならないような事態のもとにおいては、改善をしないということでは決してございませんで、大蔵省ともよく打ち合わせの上、事態に応じて必要な最小限度の措置はとれるようにしてまいる所存でございます。
  289. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 須藤君。
  290. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まず最初に総務長官に申し上げますが、総理公害問題に大きな熱意を持っておるということを常におっしゃっているが、公害特別委員会に御出席を求めても一度も顔を出さない。また本日も共産党、二院クラブの代表の質問に対しては姿を見せない。こういうことで一体ほんとうに熱意があると言えるのかどうか。熱意があるならば態度で示すべきだと私は思いますが、総理ならぬ総務に私はその点を伺っておきたいと思います。
  291. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 総理がもちろん出席をして、謙虚に耳を傾けて、そして責任者としての答弁をすることは当然のことだと思いますが、それらの事情等について、出席その他の時間等については、国対委員長会談か、あるいはその他の党のほうのお話し合いで了承を得ておるということだそうでございまして、私もそれ以上はわからないわけでございます。
  292. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうことは、われわれのほうは聞いておりません。それじゃ総理は、熱意があっても、そういう話し合いになっているから出ない、こういうことに理解していいんですか。
  293. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は総理が出ないでいいということになりました理由を承知していないということを申し上げたわけでございます。
  294. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 数日前に私の部屋に大阪市会の代表がたずねて見えました。一つの要請を持ってこられたわけですが、その陳情の内容は、大阪市の西淀川区、これは先日公害病指定地域にされ、現在公害病認定患者が千二百十一名あるところです。その半分は十二歳以下の子供です。この公害の非常に激しい西淀川区に、いま公害工場が進出をしようとしております。そのために住民は大きな不安と怒りを持っておるわけですが、この公害工場の進出を押えられる権限を自治体に与えてもらいたい。こういう要請を持ってこられたわけです。そこで、厚生大臣また総務長官も答えていただいていいですが、この事実に対して、政府はどのように処置をしようとされておるのか伺いたい。
  295. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 大阪の西淀川区は私どもが厚生省におりまして見ておりましても一番大気汚染がひどいところでございまして、私どもがきめております環境基準に達成するのにはなかなかやっかいなところでございます。先ほど四日市についても申し述べましたが……。でありますから単にその一つの工場だけを規制してみましても、一ぺんに強められませんで、年々強めてまいりつつございますが、それだけでは所期の目的を達せられませんので、少なくとも大気汚染防止法のほうには、新しく工場をつくる場合には、現在強められつつある排出基準よりもさらに強い別個の特別排出基準というものをかけることまでは大気汚染防止法でできますけれども、しかし、より根本的には、おっしゃるとおり新しい工場の進出を押えることと、幸いことしから明年にかけまして新しくあの地域、大阪の地域をいままでの厚生省の計画ですと、公害防止計画設定の区域として予定をいたしております。ことしから千葉市原、四日市、水島の三地域が公害防止計画を定められましたが、続いて大阪は入る地域になっておりますので、そういうことで、もう水路から街路から緩衡地帯から、あるいは下水道からというようなことを、根本的に、相当金を入れましてもその地域づくりを新しく公害防除の見地からやり直すという予定地区に入れておりますので、そういうことを総合してやらなければならない地域だと私は見ております。
  296. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は先の、将来のことを尋ねておるんではなく、現在最も効果のある方法はどれかということを伺っておる。総務並びに建設大臣にこの点お尋ねするわけですが、外島地区という、ここは四十万坪の埋め立て地なんです。ここへ公害工場がどんどん入ってくる。外島地区へ工場が来るのは、ここが近畿圏の規制都市区域における工場等の制限区域から除外されておるからこういうことが起こっておるわけです。つまり、工場をどんどん建ててよいという地域として政令で定められておる。ここに問題があると思うのです。だから政府は、このような地域を放置せず、工場等規制区域にするように政令を変えるべきだ、こういうふうに私たちは思います。そうすればたちどころに問題は解決していくわけなんですから、厚生大臣のように遠い将来のことなど言わなくても、即刻解決できるのです。あなたも西淀がたいへんなところだということは認めておるんだから、これを将来に放置することはいかぬ、即刻解決する、そのためには政令を変えたらいい、こういう私は意見を持っておるわけです。また現地もそうしてもらいたいということを言ってきておるわけです。それに対して総務長官並びに建設大臣の意見を伺っておきたい。
  297. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。  西淀地区は、大部分はこれは工場制限の地域になっております。ただ御指摘のように外島地区はこれはもともと埋め立て地でございます。埋め立てするときには、工場用地として供給する目的をもってこれは埋め立てを許可し、そうしてあすこはもと大谷重工がやっておったところです。それが若干地盤沈下したのでまた再びやって、初めからこれは工場の用地としてつくったのでございますから、したがって、これをいま除外するということは考えておりません。御承知のように都市には用途制限をずっとやっております、住宅に適当なものとして指定されたところ、それから商業地区、それからいまの工場専用地区と、そういうふうに初めから計画してやったところでございますから、いまそれを解除する考えば持っておりません。
  298. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんなこと建設大臣わかっているんですよ。法律にはそうなっている。しかしその法律ができたのは、今日のように公害がやかましく言われない当時、そのときにできた埋め立てです。ところがいま西淀川がたいへんな公害になっておるということは、あなたたちも認めておる。そのたいへんなところへ、またよけいな公害発生源が入ってくることは、これは淀川の住民としてはがまんがならないことなんです。だからそういうことをないようにするためには、あの昔つくった政令を即刻改めるべきである、これが西淀川区民の願いなんです。それにあなたたちはどうこたえようとするのか。こたえようとしない、いまの建設大臣の意見だったら。このまま放置するつもりですか、どういうのですか。
  299. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 重ねて申し上げまするが、これから工場が出てきますれば、今度制定されるいろいろの公害防止法の法律並びに政令によって、これは除外措置が義務づけられています。そうして現実にあるものも、これまたそれぞれの排除の義務があるわけでございまして、そういう意味において、初めからあの地区は工場用地として、そういう目的のもとにこれが埋め立てを許可したのでありますから、それを変更するということは非常に困難でございます。現在のところは、いま直ちにこれを変更する意思は持っておりません。
  300. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 公害をなくそうという熱意があるならば、政令を変えればたちどころに解決する問題なんです。あなた自身にその熱意がないから、そういうとんでもない答弁をすることになるんです。汚染のひどいところへは公害工場をつくらせない、またすでにある公害工場は、きびしい規制をかけたり移転させることが私は必要だと思うのですね。ところがいま西淀川へは公害工場が進出してきておりますが、新しい公害を吐き出しておるんです、現在。自治体が公害工場の進出を押えるためには、工場の届け出制は、これは許可制に改めることが必要である、こういうふうに私は考えますが、厚生大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  301. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私は厚生大臣でありますから、公害がなるべく出ないようなことを、どうやってもしていただくのがいい、その引き合いに出されるわけだと思いますが、しかしいまの工場企業の設置を全部許可制にするということは、これまた官僚統制といいますか、経済統制といいますか、政府の一方的な統制みたいなことに、戦時中の企業許可令と全く同じことになるわけですから、私は同時に自由経済というものの長所を認めながら公害征伐をやろうという考え方に立つものでありますので、厚生大臣ではございますが、全面許可主義ということにつきましては、にわかに賛成はできません。
  302. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはもうはっきりと企業との調和をはかりながらという条項が今日なおずっと生きて続いてきているということは、あなたはっきりとここで述べていますよ。何ですか。国民の生命が大事なら、昔できた政令などたちどころに直すべきですよ。それを直さぬというのは、やはり企業ということを考えるからです。企業が大切なのか、国民の健康が大切なのか、国民の健康が何よりも大切だということは当然じゃないですか。だから厚生大臣ともあろう者が、せめて厚生大臣はそのために努力するというぐらいの答弁すべきじゃないですか。それじゃないとね、佐藤内閣姿勢国民に大きく疑われますよ。口先だけで何もやる気がないじゃないかと、こう言われますよ、どうですか。
  303. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) いまの政令の問題につきましては、建設大臣から御答弁がございましたが、私はそれを重ねませんが、いまの全企業、全工場の設置を許可主義にするということにつきましては、ただいま申しましたが、さらに申しますと、届け出主義ではございますが、実際の中身は許可制に近いような形になって法律が今度つくりかえられております。というのは、届け出なんですが、その地域における公害の状況が著しいと判断した場合には、都道府県知事はその届け出を握りながらその改造命令ができるはずであります。その改造命令に従わない場合にはその工場は動かさせない、こういうことを命ずることができることになっているはずでございますので、実際は届け出ではあるけれども、都道府県知事がその腹ならば届け出の運用上、いま私が申しましたようなことができるように法律の仕組みがなっているものと、私は解釈いたします。
  304. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 厚生大臣、一度西淀川区に行ってね、現状を見てきてください。あなたの言うようにはなっていないんです。あなたの言うようなら、もうこれからは現在ある工場も公害を出すようなところは訂正を命ずると、またこれから来る工場は、公害を出すような工場は一切入れないと、こういうことになっておるというふうに私は聞こえるわけですが、事実そういうように大気汚染防止法になってないですよ。そういう条項はどこにもないですよ。  そこでね、厚生大臣、私は一つの提案がありますよ。建設的な提案を聞いてください。この外島地区のような、ああいう過密地帯にある埋め立て地は、これは工場ではなく住民のための公園や緑地帯などをつくる、これが私はほんとの埋め立て地のああいう場所にある埋め立て地の私は使用方法だと思う。ぜひこういうふうな方向で、あの外島地区の埋め立て地を使ってもらいたい。それならば住民は非常に喜んで、大賛成をするということなんです。そうでなかったら、住民はあなたの言ったようなこと言っても、現実に今日苦しんでおるんですから、決して満足はいたしませんよ。その点を私は申し添えておきます。答弁はいいです、これに対して。  それから総務長官、千葉県銚子で東京電力が住民から進出を拒否されたように、今日の段階では過密都市の臨海地帯に工場用地を増設するという考え方は、もはや許されなくなっておると私は思いますが、山中長官はどういうふうにお考えになりますか。
  305. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) その点については先ほども率直に私のほうから申し上げましたように、今日までの政府の政策として、低開発地域の工業誘致促進法とかそれに対するいろいろな奨励策あるいは新産都市あるいは工業団地等、一方的に国のよろしいと考える方向でやってまいったことは事実である。しかしそれはそのまま都道府県や当該市町村の長の姿勢にもなったために、今日公害が各地で分散をされつつある。そのことが住民の立場から銚子の東京電力の発電所に対する、立地に対する拒否という事情があらわれてきたものと思います。でありますから、その点は率直に反省をし、今後私たちは国土全体の立地条件も考えながら、住民というものの上に立ってものを考える。そしてまた企業はそのような反社会的なあるいは住民にとってよき隣人でない企業は、進出することも立地することも不可能になり、あるいはただいま御指摘になった地区は私よく知りませんから、答弁をしなかったのでありますが、増設も認められなくなり、またかりにそこで営業を続けようとしても、地域住民との間の隔絶された社会に生きようとすることは困難でありましょうし、現に新しい社員を募集しようとしても、予定人員のはるかに少ない人しか応募してこなかったという例等も聞いております。これらのやはり反社会的な企業というもののイメージは、企業家としても払拭する方向に行かなければなりませんし、政府としても、謙虚にその反省の上に立って、今後は進めてまいるつもりでございます。
  306. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 次に、私は大気汚染の問題で少し質問をいたしたいと思いますが、尼崎市というところは大気の汚染においては四日市に劣らぬひどいところだということは、長官も御存じだと思うのです。私が飛行機で伊丹の空港に着くときにいつもその上を通るわけですが、全くばい煙や煙や汚染で、全く下が見えないというような状態が起こっておるわけです。この間、私はある県当局の、科学者ですが、その人にこの話しをしましたら、先生全くそのとおりですと、尼崎というあの一つの小さい町に阿蘇の噴火口が三つくらいあると考えてもいいほどですと、こう言っておりました。確かに、阿蘇の噴火口を象徴するように、関西電力の火力発電所の大きな煙突が三本立っているわけです。そこから常に亜硫酸ガスをふりまいておる、こういうことになる。まあ汚染はたいへん、はなはだひどいということがこれでもわかります。だから、今度、政府は十二月一日からこの尼崎地区を公害病認定指定地区に、こういうふうになすったはずです。  そこで、私はお尋ねをするわけですが、もともと関西電力第三火力発電所を建設するときに、通産省にもそういうことを言っていたはずですが、現在ある第一、第二は第三発電所ができたら使うことはやめると、発電はやめると、そういう約束をしておる。これは、県当局にも、尼崎市当局にも、そういうことを約束しておる。ところが、現状は三本の煙突から煙が出ておるということなんです。そこで、住民は、これは約束違反ではないか、そこでおこって、県、市へ何回も抗議に行っているのです。私も一回つき合いました。そうすると、県、市は、それをやめさせる権限は私たちありません、だから対処ができません、こう言うのです。  そこで、私は伺うわけですが、こういう状態を見て、国はなぜ県や市にそういうときには規制をする権限を与えないか、こういうことです。
  307. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 具体的なお話しでございますから、具体的にお答えいたします。  尼崎の第三火力を着工いたします際に、第一、第二というものは、これは非常に古い発電所でございますから、やがてやめたいということは関西電力も考えておりましたし、私どもも考えておったわけでございます。そのときに、関西電力としては京都の宮津に新しい火力をつくる計画を持っておったわけでございます。このことにつきましては、今年の通常国会の当院の予算委員会で御質問がございましてお答えをいたしたところでございますけれども、宮津の火力というものがどうしてもできないわけであります。これには、どうも私どもはなはだ不思議に思ういろいろな事情がございます。地元の市会も異議なしという決議をしておりますし、したがって、市長はしばしばそういうことを京都府にも言おうとしておるわけでありますけれども、なかなかそれを言う機会が得られない。関西電力もまた最高責任者がそういうことを申す機会が得られない。いろいろな事情がございまして、これで関西電力の総合的な供給計画に非常なそごを来たしたわけであります。そこで、やむを得ず、非常に能率の悪い発電所でありますけれども、今日まだ第一、第二というものが緊急時には動かなければならない、それでもなるべく早くやめたい——非能率的でごさいますから——と思っておりますけれども、ピークのときには動かさざるを得ない。ただ、そうしますと、できるだけ低硫黄をたかなければ迷惑がかかりますから、第一はすでに重油専焼に変えまして低硫黄がたけるようになりました。第二もやがてそうなるわけでございます。で、美浜の原子力が順調に動いていきますと、おそらくただいまの感じでやがてまず第一を予備力に入れ、そうして第二をさらに次に予備力に入れる、こういう計画でやっておるわけでございますけれども、なぜ急にやめられないのかと言われますと、それはやはりやめるといたしますと、関西電力は御承知のように非常に需給が逼迫しておりまして、ことしでもすでに大口需用者に使用の節約を協力したほどでございましたから、どこに不測の迷惑がかかるかわからない、どこというのは必ずしも企業という意味ではございません。申すまでもなく、電力が突然とまるということになりますれば、人命にも健康にもすぐに関係することでございます。したがって、動かさなければならないとすれば、ピーク時に限って、そうしてできるだけ低硫黄をたいて地元の御迷惑を少なくしていく、だれも好んでこれを動かしたいと考えておるものはいないわけでございます。
  308. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、関西電力の見込み違いということで、尼崎の市民は今日もなお、またこれからかわりのものがどこかにできるまでは、今日のような状態を続けなきゃならぬ、こういうことになるわけですが、それは尼崎の市民としてはがまんがならないことだと思うんですよ。政府責任をもってこういう問題を解決すべきですよ。尼崎市民の問題をほかに転嫁しちゃぐあいが悪いですよ。だから、尼崎市民の気持ちをくんで、これをどういうふうに解決するかということをここで述べてもらいたいのです。そんなことを言ったって尼崎市民納得しませんよ。自分たちの計画違いでやむを得ないというのじゃはなはだ不見識じゃないですか。
  309. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういうことを計画違いと申すべきかどうか、私はいろいろ問題があるのではないかと思います。もとの話をもう一度申し上げますが、宮津では火力発電を受け入れる用意を正式に持っておるわけであります。しかし、それを府の最高当局者に伝達することができない、関西電力でも最高責任者が説明をしようとしますが伝達することができない、やむを得ませんから、私ども国の立場で大阪の通商産業局長がそれを伝達しようとしても、伝達することができないような状態であります。そういうことが現実に起こっておる、で、それが結果として尼崎の火力を動かすことになった、尼崎の市民にとっては全くいい迷惑ではないかと言われますと、私はまことに残念ながらそうでございますと申し上げざるを得ないのです。したがって、私どもとしてできることは、できるだけ美浜の原子力発電を早く能率的に動かすなり、あるいは低硫黄をたくなりして、第一というものをもうなるべく動かさないようにする、現実に本年上半期と下半期を比べますと、第一の動き方は非常に減っております。できるだけ早くこれを予備供給に入れてしまいたいと、第二もさようでございます。どうしても動かさなきゃならないときは、ピーク時に限って低硫黄をたかしていただく、これしか方法がないのでございます。むろん関西電力にはよそからもうできるだけ電力を送ります。また、送っております。しかし、八月とか十二月というピークには需用に追いつかないのでございますから、まことに私は土地の方にはお気の毒でございますが、そうかといって、電力をとめるわけにはまいりませんでございましょう。こういうのが実情と思います。
  310. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま大口電力の需用者に電気を送るためには、どうしても住民には迷惑ながらがまんしてもらって発電を続けなきゃならぬと、三つの発電機を動かさなきゃならぬと、こういう御意見ですが、これまでも緊急事態のときには大口工場への電力を制限したことがたびたびあると思うのです。一般家庭用と工場用電力との比率は、家庭用は二〇%、工場用が八〇%、工場用が圧到的に多いのです。したがって、緊急時は家庭用を確保して大口工場用を押えるようにしたならば、私は家庭用への影響は起こらないようにすることができる、そういうことをやる権限は知事に私は委任すべきだ、こう思います。重ねてその点を伺っておきます。
  311. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実はことしの八月には大口需用者に対して自粛を要請しまして、事実上電気の供給をカットしたわけでございます。関西電力自身もむろん自分のところの使用電力を自粛いたしました。これからもあるいはそういうことをお願いしなければならぬかもしれない。非常に申しわけないことですけれども、大小にかかわらず、そういうことは避けたいのですが、そういうことは避けられないかもしれない。しかし、その場合には、これはもう他からの供給を——他と申しますのは他の県とかいう意味ではなくて、むしろ関西電力の外の、よその電力会社という意味まで含めまして、それも徹底的に最大限に供給することにして、そして大口需用家には休む日〉休まない日の調節をしてもらいましたり、電力発電設備のいわゆる修繕の期間も少しずつ食い違いさせたり、あらゆることをやります。これはどうしても国のベースでやりませんと私はできないことと思いますが、それでなお足りなければ大口のほうからカットしていくよりしかたがないと思います。
  312. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういう問答をいつまでも続けても、政府の頭が変わらなきゃどうにもならない問題ですから、尼崎市民はあなたのその答弁では絶対満足をしないということを申し上げて、私は次の質問に移ります。  続いて、亜硫酸ガスの排出基準の上乗せ権限について質問をいたしますが、大気汚染防止法改正で亜硫酸ガス排出基準の上乗せ権限を何ではずしたかということです。水質汚濁防止法にはちゃんと上乗せ権限があるわけです。大気汚染防止法だけ上乗せ基準をはずしてしまっておる。尼崎の例をあげましたが、こういう問題は大阪市の泉北地区、堺地方でも同じような実情が起こりまして、住民が署名運動をしましても自治体はどうともできない、こういう状態なんです。何で上乗せ権限は大気汚染防止法からはずされたのか、お伺いいたしたいと思います。
  313. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 硫黄酸化物の規制というのは、他の国に比べますとわが国では比較的早く始まったのでありまして、したがって内容的にはかなり進んでおります。で、全国、過密過疎の度合いによりまして、亜硫酸ガスの含有量は、これは許容限度はおのずから違いますので、現在八段階に分けての規制がございます。したがって、規制する必要が高ければ高いほど段階を上に、きびしい基準で規制をしていっておるわけでございます。そういう体制を現在すでにとっておりますから、上乗せの必要がある場合にはゆるい段階からきつい段階へのぼっていけばいいと、こういう問題、こういうやり方、こういう仕組みが現在基本的にあるわけでございます。それがもとの理由でございますが、次にもう少し具体的な理由、これは決して名誉になる理由ではございませんが、私ども、電力、まあ亜硫酸ガスの一番大きな発生源は電力会社でございますから、電力というものについてこれがコンスタントに供給されるということが、企業中心だとか会社の利益とかいうことではなくて、国民の健康と生命にとって欠くべからざる一つの要素であるというふうに考えておるわけでございます。これは私はお認めいただけると思うので、そういう意味で、国民の健康生命にかかわる大事な一つの要素でございます。  そこで、電力を十分に供給しながら亜硫酸ガスを発生させないというためには、どうしても、たきます燃料の中から硫黄分を落としていかなければならないわけでございます。  硫黄分を落とす方法にはいろいろございますけれども、低硫黄の原油がたっぷり輸入でさましたら、これは一番よろしいわけでございますが、それに問題がありますことは御承知のとおりであります。  そういたしますと、脱硫をするということになります。これが一番有効な方法でございまして、現在三十万バーレルほどの脱硫設備がようやく動き出しました。最初、技術的に問題がありましたが、まずこれで毎年幾らかずつよけいに脱硫された原油、重油を供給することができる。  それから原油なまだきも考えなければなりませんし、排煙脱硫ということもやがて実用化すると思います。  それらにもかかわらず、しかし、どうしても十分な低硫黄の重油を確保するということが急にはむずかしいわけでございます。  そうして、しかし、電力の供給は切ることができない。そういたしますと、ある地方だけの特殊の事情で上乗せをいたしますと、ある発電所はその理由をもってとめなければなりません。しかし、とめなければなりませんが、そのためには国のベースでもってほかから応援の電力を確保しておかなければ、その地域の健康なり生命なりに関係が生まれてくるわけでございます。したがって、私どもは、電力会社はその排出基準の外にあるというようなことはもちろん考えておりません。法律で適用を受けますし、罰則も受けるわけでございます。しかし、その調整というものは国が電力を送ってやるということで調整をいたさなければ、直ちに国民の生命と健康に影響がある、こういう見地からでございます。
  314. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その地域の実情というものは、政府当局よりも、その土地に住んでおる人たちが私は、一番詳しいと思うのです。また、早く処置のできるのは私は、その土地の自治体だと思うのです。だから、知事にその権限を与えないのは私は、道理に合わないと思うのですね。一体、知事、自治体長にその権限を与えていくのか与えないのか、この点、はっきりと、きっぱりと答えてください。一言でいいです。
  315. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 決して反問を申し上げるつもりではございませんが、それでは、各都道府県知事が自分のところで生まれている電力はほかにはやらない、みんなそういう宣言をいたしましたら、日本じゅうはどうなるとお考えでございましょうか。電力というのはそういう性格を持っているものではないわけでございます。そうかといって、地方住民との関係で知事に何も権限を与えないということは言っておりませんので、今回の法律案によりまして、知事は立ち入り検査もできることになりました。また、緊急時には命令もすることができることによりまして、地方の利害との調整をはかったわけでございます。
  316. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 知事はそんなばかなことをするということを私は思いませんし、また、しないと思うのです、あなたの言うようなことは。  それでは、いまの話は、知事は立ち入り検査もできるし、また、そういう非常事態には調整もできる命令をすることができるようになった、こういうことですか。
  317. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そのとおりでございます。それが今回の改正の要旨でございます。
  318. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大気汚染防止法改正案第三条では、国が特別排出基準をきめる場合、知事の意見を聞くと、こうなっておりますが、その意見を十分尊重するのかどうか。短く答えてください。
  319. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 知事の意見を十分聞いてやります。
  320. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 十分聞いても、尊重しなければ意味がないですよ。尊重するのですか、どうですか。
  321. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) もちろん、尊重するたてまえで知事の意見を聞くということでございます。
  322. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 次に、環境基準と排出基準についてお尋ねしますが、排出基準をきびしくすることはもちろん、私は必要だと思いますが、人間の生活には排出基準よりもむしろ環境基準をきびしくしていくということ、これが私は重要だと考えるんです。一本の煙突から出る排出基準を幾ら規制してみても、その煙突が一本が十本になれば十倍の排出になるわけです、ガスが。そうすれば、環境基準は乱れっちまう、だめになるのです。だから一本ずつの煙突の排出基準をきめることを今後ますますきびしくするということは、もちろん重要です。しかしそれと同時に、われわれの住むのは、私たちの住むのは煙突の中に住むのではないですからね。私たちは大きなところで住んでいるのですからね。そこで空気を吸っているんですから、そのわれわれの住む社会の空気をちゃんと規制していかなければならない、環境基準というものをそこで守っていかなければならない、そのほうが重要だと思うんです。それに対する意見を、まずあなたから聞きましょう。
  323. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 一口に基準と申しますが、これには環境基準とそれから排出規制基準とございます。環境基準のほうは、これはもう東京でも大阪でもどこでも日本じゅう大気につきましては一本でそうさせたいという、現在、そうでないと動植物はもちろん人間の生存も許せないというそういう環境上の目標をきめておるわけでございまして、これには国の方式も東京都の方式もございませんが、その環境基準に到達させるための手段としての排出規制基準には、もう結論だけ言いますと、国がいまきめている煙突の高さに応ずる方式と、それから東京都が条例できめている一つの工場に幾つかのばい煙発生施設がありますと、それから排出する総量をきめているB方式——A方式、B方式があります。そこで、私もこまかいことはわかりませんが、比較してみますると、どちらも長短ございません。東京のほうがきついということでは決してございません。国のほうにはK値というやつがありまして、そのKを動かすことによりまして八段階をどうしていくか、東帝都のほうもそれと同じようなやはり係数がございまして、したがって今日においては実質上の争いはございません。私は法律上の争いをいたしますよりも……。
  324. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その程度でけっこうです、たびたび伺っておりますから。
  325. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) はい、けっこうでございますか。——そういうことです。
  326. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その汚染のひどい所は四十六年度中に着地濃度〇・〇一二PPMの特別排出基準を適用する方針らしい、そういうふうになっているらしい。排出基準はもっときびしくできるのです、ところが。いわゆる低硫黄重油の使用、それをまた開発すること、重油の直接脱硫を徹底すること、排煙、脱硫装置の取りつけ、技術開発を強化すればそれはできると私は思います。一般排出基準、特別排出基準ともにだんだん改正強化すべきだと思いますが、御意見を伺います。
  327. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) そのとおりで、強化してまいります。ただし、それにはいまの低硫黄の確保とか、脱硫装置の進歩の状況と見合ってその強化をいたしてまいるわけでございます。
  328. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 時間は少し余るようですが、私はできる限り沖繩代表の喜屋武さんにも少しやはり私は時間を譲っていきたいと考えます。そこで結論を申し上げて、私はこの質問を打ち切ることにいたします。  企業政府の中には、企業住民に与えた障害に対して、被害者に補償さえすればそれでよいという考えがあるならば、それは大きな間違いだと思います。最近、和歌山の住友金属工場の粉塵のために目を悪くした人に、会社が指定した医師により確認されれば、全治まで会社が責任を持って治療費全額を負担する、こういう決定がなされました。しかしこれで会社の責任は済んだものではない、済んだとは言えません。病人に与えたところの心身の苦痛を一体どうするのかということは、問題に残るわけです。公害法の精神は、国民生活優先の立場を貫いて公害をなくすことであると確信をいたします。そのために一番大事なことは、公害を発生源で食いとめること、公害をまき散らす大企業をきびしく処罰すること、そうして公害に苦しめられている被害者に対して十分な補償をすること、これこれだと私は思います。このような立場に立って公害をなくすために、今後一そう努力しなければならないと私は思います。このことを私は申し添えまして本日の私の質問は終わることにいたします。     —————————————
  329. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 喜屋武君。
  330. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は公害問題を質問いたします前に、次のことを述べたいと思います。  沖繩公害問題につきましては、おそらく皆さんは十分御存じでないと、こう思います。そこで今回は佐藤総理をはじめ各大臣の皆さんおそろいのもとで私は沖繩公害の実情を訴え、その中から幾つかの質問を申し上げる予定でございましたが、まことに遺憾なことに、佐藤総理質問し、そして直接御回答願うことのできないことをまことに遺憾に思い、残念に思います。ということは、各担当大臣を軽視するという、こういう意味では毛頭ございません。  そこで、関係大臣にお願い申し上げたいことは、連日の審議でまことにお疲れのこととは思いますが、誠意ある御答弁を求めたいと思います。  まず、沖繩における公害の問題は、いわゆる産業公害企業公害という立場からの公害問題は、いまぼつぼつそれが問題が持ち上がっておるわけでありますが、ころばぬ先のつえ、今後の沖繩企業開発に関連して、特に本土からの進出に関連しまして、あるいは外国からの進出に関連しまして、今後大きな問題になることを予想して、いま県民をあげてそのことに非常に重大な関心を払っている最中でございます。  そこで、特に沖繩における公害と申しますと、基地公害がその最たるものでございます。そのことにつきまして具体的な質問に移ります前に、私は基本的な問題の幾つかについて、明らかにしておきたいと思います。  まずその第一は、公害関係法案が制定された場合に、それが沖繩に及ぶのであるかどうであるかということについて質問をいたします。関係大臣にお願いいたします。
  331. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 速記をとめて。   〔速記中止
  332. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 速記をつけてください。
  333. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まずお答えする前に、沖繩から初の国政参加をされました喜屋武議員の初質問に、総理大臣が当然おるべきでございましたし、おそらく公用のため、各党も御了承賜わって出席していないものと私も思っておりますが、その点は、私かわりまして心からおわびを申し上げます。したがって、沖繩の心を代表して質問されるその内容については、十分私から総理にお伝えすることにしたいと存じます。  まず質問の第一点の今回、基本法を初めとする十四の法案について、もし国会でこれが制定されて国の法律となった場合、沖繩に及ぶかということでございますが、沖繩には及ばないと思います。
  334. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その理由を明らかにしていただきたい。
  335. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 現実には、本土の各種法規に準じて、琉球政府において、立法院の議決を経て制定をしておられるものもございますし、また、おおよそそのような方向に進んでおるようでございます。この公害法案についても、本土のばい煙、沖繩においてはばい煙規制法というもので、ほぼ本土の現行の法律と同じものができているやに拝察をいたしておりますが、やはり現行の施政権のもとにおいて、はなはだ残念でございますけれども、本土法がそのまま沖繩に及ばないということは、やはり私たちがたいへんその点つらく思っておるところでございますが、現実の問題としては、施政権の壁にさえぎられておるためであるということを御了解願いたいと思います。
  336. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 と申しますのは、戦後二十五年にして沖繩から七名の国会議員が参加いたしております。そのことは、われわれは国民代表であると同時に、沖繩問題を国政に反映させるというれっきとした目的をになっております。その立場からして、沖繩県民代表も参加して制定した法案は、憲法の示す法のもとに平等であるとする原則からして、当然及ぶべきだと確信いたします。及ばない根拠はまことに納得できません。あらためて御回答をお願いいたします。
  337. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私も納得をしておるものではございません。本土法の選挙法に基づいて国会議員として選出された方々が、何の変わりもなく本土の国会において議決権を行使されるわけでございますので、そのでき上がったものに沖繩県民の方々の代表の声が入って、意思が加わってておることについては、これは一点議論の余地はございませんが、ただ一つ、沖繩について国政を代表する代表者が正式に、しかも、合法的に本土の法律に準拠して選出された方々の行使された権限のもとに生まれた法律が、現実の状態において、沖繩の琉球政府の法律としてそのまま自動的に及ばないということについては、残念ながら復帰までは施政権の壁があるということによって、純法律的な意味で自動的に及ばないということを申し上げておるわけでございますので、この本土法の法律をそのままそっくり琉球政府において立法院に勧告をされるという行為、あるいはそれが制定されるという行為を妨げるものではもちろんないわけでございます。
  338. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 過去の時点ではいざ知らず、今日の時点において、そのような差別をされるということは、まさにこれこそ沖繩県民に対する差別以外の何ものでもない、このように理解いたしたいのでございます。このことにつきましては、さらに答弁も求めたいのでございますが、時間が限られておりますので、次に移りたいと思います。  次に、この公害関係法案に、いわゆる基地公害をうたってないが、そのことについて、どのように認識しておられるか、具体的に示してもらいたい。
  339. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 本土法におきましては、基地につきまして、防衛庁のほうで、別途、基地周辺等の整備に関する法律というようなことで、公害等についても、まず出さないことの配慮、出したことに対する排除等については、別な法律でやっておるわけでございまして、その意味で、今回のこの法律の中に基地の公害というものを取り入れてない理由があるわけでございます。
  340. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖繩の現状と照らし合わしてみた場合に、佐藤総理が絶えず強調しておられる人間優先、福祉優先の法案が真実であるならば、基地公害について当然触れるべきだと思います。まことにこの点につきましても納得いかないのでございます。沖繩における基地公害は将来の問題ではなく、現実の問題として、毎日のように起こっておる命への不安であり、危険きわまりない問題であります。公害関係法案からすれば、的はずれと思われるようなことも理解できないことはありませんが、沖繩公害は、二十五年にわたる基地公害を抜きにしては考えられない深刻な問題でありますので、沖繩の基地公害について私は率直に質問をいたします。  沖繩の基地の実態は本土の基地と機能と、その率をともに異なりまして、いわゆる聞きしにまさる沖繩、基地の中の沖繩と言われ、実に全面積の一三%、沖繩本島で二三%、基地の中心といわれている中部ではまさに五〇%、その中で九〇%以上接収されている村もある状態であります。そこで起こるもろもろの事件は基地公害ではなく、まさに基地災害とさえ言っておる実情でございます。  そこで、基地公害の実情の幾つかの例を申しあげて質問をいたしたいと存じます。  まず外務大臣に対して、毒ガスの撤去につきまして、外務大臣は去る八日の衆議院沖特委での沖繩問題に関する質疑応答の際に、瀬長亀次郎君の質問に対し、毒ガスは沖繩に六二年に第一回の貯蔵がなされているとお答えなさっておられますが、VXガスなら三千トンで日本の全国民が死滅する、これこそ公害の最たるものである。昨年七月十八日ガス漏れ事故で沖繩に毒ガスが貯蔵されていることが発覚して以来、県民は日常生活をおびやかされ、生命の危険を訴えてきました。命を守る県民共闘会議を結成し、島ぐるみ撤去運動に立ち向ったのでございます。これは全県民の一致した訴えであり、あれから一年半たった今日、在沖米陸軍報道部は去る十二月五日、沖繩の毒ガス撤去については一万三千トン、その種類はカラシ化学薬剤、神経性化学薬剤いわゆるGB、神経性化学薬剤VXの三種類のうち百五十トンに限定して積み出すという、それも三週間かかり、残りの毒ガスの移送は七一年末か七二年早期云々と言っております。毒ガス問題に対する最も基本的な問いは、致死性の有毒ガス兵器が人道上まことに許しがたいものであることはもはや多言を要しません。わずか百五十トンの移送によって問題は解決されないことを深く認識しなければならないと思うのであります。沖繩はいまや、わが日本政府はいまや世界に向かって毒ガス禁止を呼びかける義務を負わされていると思います。これは反戦平和の思想から当然のことであります。  ところで、お伺いいたしたいことは、この三種類の毒ガスのうち百五十トン、いわゆる一万三千トンの中で百五十トンを移送するという、その百五十トンは三つのガスのうち最も効能の軽いものについて、いわゆるカラシ化学薬剤、この毒ガスを輸送するんだといううわさも聞かされておりますが、そのことにつきまして、外務大臣はどのように理解しておられるでありましょうか、お尋ねいたします。
  341. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 毒ガスの問題につきまして非常な御心配をかけておりますことについては、私も喜屋武議員のお尋ねを待つまでもなく、今後の処理につきましてはあとう限りの努力をいたしたいと存じております。  まずこの十二月、日本時間で申しますと五日でございますが、御案内のようなアメリカ政府の決定があり、その内容も発表されたわけでございますが、それに基づきまして政府といたしましては、さっそく米側と折衝に入っておるわけでございまして、その一つとして、昨十一日に東京におきましては、米軍の第二兵たん司令官を東京に招致いたしまして専門的に全体の計画、それから第一回の実行の着手、これに関連して特に重大と思われます安全性の確保ということ等を中心にいたしまして説明も聞き、質疑もし、なお今後さらに慎重に米側と折衝をいたすことにいたしたわけでございます。その内容につきましては、大体早く御安心をいただくほうがよろしいものでありますから、新聞その他にも公表をいたしたわけでございますが、同時に、那覇におきましても米側としては説明を行ないまして、そして安全輸送等については、この実行は公開と申しますか、御安心のいただけるようにオープンにいたしましてこれを実行すると、その方法論としてはかくかくにするというようなことを相当こまかく具体的に発表もし、また、話し合いにも応じつつある次第でございます。  それから百五十トンの問題でございますが、これは御案内のように、私も、昨年の七月にこの問題が起こりまして以来、何回となく私直接にも米国政府の最高責任者にも話し合いを続けておったわけでございますが、いろいろの経緯がございましたが、ようやく実行に着手することになったということは、私もほっとしたわけでございますが、今回の米側の決定としては、一万三千トン全部をなるべくすみやかに移送する、しかし当初は、米本土内のたとえばオレゴン州というようなところを想定しておりましたが、それができなかったために、ジョンストン島ということに最終決定をされた。ジョンストン島は、これを格納といいますか、収容するだけの施設は、そういうことを考えておらなかったために、建造物その他に相当の金とある程度の期間がかかる。それから輸送にいたしましても、これはなお御必要があれば詳しく御説明いたしたいわけでございますけれども、相当の日数がかかる。まず、その百五十トンから実施にかかるということになっているわけですが、もちろん、一万三千トンの全部につきまして、ただいま御指摘がありましたようなカラシ化学剤、いわゆるHDといわれているもの——今回の百五十トンというものはこのカラシ化学剤HDでございます。しかし、神経性化学剤GBについても、神経性化学剤VXにつきましても、もちろんこれをなるべくすみやかに、かつ沖繩の県民の方々がほんとうに安全性について御納得ができるような方法で、できるだけすみやかにジョンストン島の貯蔵受け入れの態勢が進むに従って、これを実行するということになっておるわけでございます。しかし、政府といたしましては、本件につきましては、ほんとに安心の上にも安心のいくような、納得のいくような実行措置をとらなければならないと存じておりますので、今後とも技術的にもあるいはその他の面におきましても十分納得のいくような措置をとらせるべく、また必要に応じて、日本側もあるいは沖繩側の関心のもとに実行できるように今後とも十分の折衝を続け、そして安全な実施をはかりたい、かように考え、またできるだけの努力を続けてまいりたい、こういうふうに存じておる次第でございます。
  342. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この問題は慎重にこしたことはありませんが、慎重を期しながらも一刻を争う命にかかわる不安の問題でありまして、政治問題であると同時に、また、一面政治以前の問題であり、人道上許さるべきことではないと思います。なお、私はきのう琉球政府屋良主席からこのような電報を受けております。「沖繩に貯蔵されている毒ガス兵器の問題に対する米国防長官の発表は毒ガス兵器の全面即時撤去を要求する県民の要求に反するものであり、承服できない。これは、単に沖繩だけの問題でなく全国民的問題として国会において徹底的に究明し、政府はこの際自らの国民の生命財産を守る立場から強力な対米折衝をするよう強く要求する。」という長文の電報が琉球政府行政主席屋良朝苗から参りました。さらに、本日入った情報によりますと、琉球立法院軍関係特別委員会におきましては、与野党一致して毒ガス撤去の決議をすべく臨時議会を招集する動きにあると報ぜられておるのでございます。このことと思い合わして私はさらに外務大臣におかれましてこのことを受けてどのようにまた決意を新たにしてくださるのであるか、同時に、私は国会としても直ちに撤去させる決議をしてもらうよう訴えるものでございます。この差し迫った状態の中で、さらにもう一応外務大臣の決意を求めたいと思います。
  343. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私も沖繩からの本件についての御要請も承知いたしております。ただいまこちらにまいります直前にも、さらにあらためて御要請のありますことも承知いたしておりますが、先ほど来申しておりますように、政府といたしましても本件については全く重大な問題としてかねがね取り上げてきたわけでございまして、先ほども申しましたように、とにかく撤去について軌道に乗ったというこの事態をつかまえて、これが後退するようなことがあっては万々一でもならない。安全性を守りながらすみやかな撤去を、すみやかに実行をいたしたい、これに徹しまして努力を新たにいたしたいと思っておるわけでございます。  先ほど申しましたように、もし時間にお許しをいただければ詳しくも申し上げたいと思いますけれども、具体的にまずこの百五十トンなら百五十トンについてほんとうに県民の方々が、これならば安心して、このおそるべきものがとにかく第一回着手ができて沖繩から去ったと、そしてそういう実感を持っていただきたい。そして引き続き——これは何しろ最初のことでございます。たとえば、これを運送いたします船舶にいたしましても、収容能力はあるにしても、その中でいろいろの輸送途上の検査、管理というようなものも厳重にやっていかなければならぬということで、積み荷の量といたしましても最初の分は比較的に少ない計画でございますけれども、さらにその後第二回、第三回というようなことになりますれば数量も相当に積めると思います。そして安全性の確保について納得ができるということになりますれば、その速度もすみやかになると思います。もちろん、先ほど申しましたように、受け入れ態勢のほうもなかなか準備がたいへんのようでございますから、それらにつきましても米側に特に促進してもらうように、今後とも督促を続けなければなりませんけれども、何ぶんにも事柄が事柄でございますから、速度と同時に、安全性ということについて、十全のひとつ国民関心のもとにおいて実行されなければならない、これも十分に考えてまいりたい。  決意はどうであるか、私といたしましては、この沖繩の県民の方々の、この報が伝わってから以降においての、移送がきまったということの、若干ほっとされたお気持ちも私はわかりますが、しかしこれが完全に、安全にすみやかになくなってしまうという日の一日もすみやかならんことを心から願望されておるこのお気持ちを体して、政府として全力をあげてまいりたいと思います。
  344. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖繩県民の心からの要望は、かくかく計画するのだ、要請するのだという、このことではなく、このように完全に撤去したのだという、この声を聞くことが、沖繩県民のほんとうの要求する真実の声でございます。どうか外務大臣には一そうのひとつ御努力を心から求めたい、お願いしたいと思います。  時間もございませんので先を急ぎます。厚生大臣に対して。飛行機の爆音に対して、去る六八年二月以来、黒い殺し屋と呼ばれた、沖繩県民からおそれられた嘉手納基地のB52は、実に二年十カ月ぶりに去る十二月六日に一応その姿を消したとはいえ、爆音は依然として消えておりません。KC135大型給油機二十機が現在も駐機いたし、嘉手納村民をはじめ近在の村民を爆音のあらしで悩ましておる現状でございます。沖繩が完全復帰して、基地が全面無条件に撤去されるという保障があるというのであるなら、まずまずがまんするとしても、B52の撤去が永久的なものともいえないような情勢をつくり出しておる政府の外交面の弱さからすると、爆音は今後も限りなく続くものとしか考えられません。  その実態について調査結果を申し上げてみますと、琉球政府が爆音について六九年十二月に調査した最近の測定資料によりますと、二十四時間の中で九十ホン以上が五十一回、八十ホン以上が六十五回、これを十年前と比較いたしますと、九十ホン以上が二十五回、八十ホン以上が五十八回、このように激増いたしておるのでございます。それが人体に及ぼす影響は想像もつかないものがございます。ものに飽きやすい、あるいはいらいらするといったようなノイローゼになるなどの精神的な疲労面をはじめ、さらに、嘉手納村内の小学校では、爆音が激しいために防音教室をつくり、採光の悪い教室の中に近視、難聴に変わっておるところの児童、生徒、その結果、児童の記憶力も減退しておるといわれておるのであります。さらに、おそろしいことには、沖繩県民の精神障害——すなわち、わが国の精神障害者の率は千人に対して十二・九人と記憶いたしております。ところが、沖繩県民は千分の二十五・七、本土の約二倍近い精神障害者の率になっておるのでありまするが、この原因を究明した場合に三つの要素がいわれておるのでありますが、その第一は爆音からくるところの影響、第二が、県民が外国支配に置かれておるという精神的な重圧感、この二つが強調されておるのでございます。  このような情勢の中で、政府として、爆音防止について、人命にかかわる問題、健康にかかわる問題としてどのような折衝をなされてこられたか、また、今後その面に対する具体的対米折衝はどのように考えておられるか。さらに、具体的施策についての財政的裏づけ、特に精神病院の施設、設備の不備など、本土に比して非常に著しい格差を持っております。その対策、予算等についてお伺いいたしたいと思います。
  345. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 内田厚生大臣沖繩に行っておりませんので、私、担当大臣でもございますし、両方の担当大臣意味で総括して答弁をさしていただきます。  私も、最も象徴的な、旧村面積の一割の海岸べりに押しつけられているようになって住んでおられる嘉手納村に参りまして、飛行場に最も近い屋良小学校に参りました。そうして防音施設とはいえ、最も飛行場に近い一棟は、これは既設の鉄筋校舎にただ防音をあとからつけただけのものでございますから、いまおっしゃったように教室内が暗い、螢光灯をつけて昼勉強をするということから、弱視あるいは近視あるいはその他消しゴム等を耳に詰めたりするために耳を痛めたりして難聴の児童が出たりする実態もつぶさに見てまいりました。そして来年の予算において、これを新しくつくりかえて完全な、本土の防衛施設庁のやっておりますような本土並みの規格のりっぱな防音施設をすることによって、児童たちの心身に影響のないようなりっぱなものをつくりたいということで予算要求もいたしました。また、一般村民の皆さん方が年寄りや子供、病人、そういう人たちの、昼からだや心を安める場所がない、あるいは子供たちが学校から帰って予習、復習をする場所もない、こういうことも承りまして、琉球政府からは、ちょっと行き違いがありまして予算要求がございませんでしたが、私のほうで直接嘉手納村と相談をいたしまして、六十万ドルぐらいの予算をほぼ全額こちらのほうで持つことの計画でもって、総合的な休憩施設と申しますか、予習、復習や、老人、子供、病人、赤ちゃん等のそういういろいろな部屋を仕分けして、完全防音で、総合公民館的なものに使えるような施設の予算を要求いたしました。本土にはございませんが、沖繩にぜひこれはつくりたい、まず嘉手納村からということで予算要求をしておるわけでございます。  なお、沖繩における精神病患者等が非常に多いということは、結核とともに、私ども最も心配をいたしておるところでございます。その背景に、ただいま御指摘になったような理由がおそらくあるであろう、それらのことは本土の責任でございますし、私たちは復帰前にも沖繩の精神病院のあり方については、なるべく本土に近づけるように、復帰後においては本土並みにすみやかにそれらの患者の人々が療養ができ、そしてできれば人並みの人になって回復して、社会人としての働きができるようなリハビリテーションその他も十分考えた施設をつくるべきであると考えて、いまその予算計画を立てておるところでございます。
  346. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、原子力潜水艦の入港による海水あるいは海底の汚染、あるいはそれの及ぼす集団海水浴における皮膚炎の問題、あるいは六本足のカエルの問題とか、いろいろと具体的な事例がございますが、このことについては後ほどまたの機会にお尋ねすることにいたしまして、私は残された時間、公害問題とは別だと言われればそれだけのことでありますが、特に、外人犯罪につきまして、基地あるがゆえの、いわゆる基地公害とも言えるし、沖繩県民を被害者としている外人犯罪はあとを断たず、事件が起こるたびに米軍当局者は遺憾である、再びこのようなことは繰り返しませんと幾度も弁明しております。ところが、事件はあとを断たないばかりか、特に最近における事件の悪質化、その頻度が非常にひんぱんとなっておりまして、これも基地あるがゆえの被害でありまして、その内容は殺人、婦女暴行、窃盗、武器横流し、詐欺など年間約一千件にのぼっておる、こういう現状でございます。  たまたまそのことと関連いたしまして、まことに沖繩においては今日なお死に損、殺され損、なぐられ損、こういった無法地帯の状況もあると、こう断言したいような事件が、実は本日の新聞でごらんになったか知りませんが、「ひき殺し米兵に無罪」、「沖繩軍事法廷」、「傍聴者らぼう然」、こういう見出しで報じられておりますが、この事件の内容は、今秋、沖繩本島南部の糸満町で発生した主婦ひき殺し事件の容疑者、米軍那覇航空隊勤務タミー・L・ワード二等軍曹二十六歳に対する軍事裁判が十日から開かれておりますが、二日間の審理の結果、陪審員は十一日、被告に対して無罪の判決をしておるのでございます。被害者は同町糸満の金城トヨさんで、当時五十一歳でございますが、去る九月十八日夜、金城さんが道路ばたを歩いていたところ、ワード被告の運転する乗用車が突っかけた。糸満署の調べによりますと、被告は当時酒に酔い、十五マイル制限のところを六十マイルの速度で走っていた。あまりにも無謀な事故だったために、町民は乗用車の引き取りを認めず、事故糾弾委員会が組織され、町民大会まで開かれた。二日間の審理で、検察官が事故現場の地図や写真をもとに被告の重大な過失の立証につとめたが、将校だけで構成された陪審員には聞き入れられないままに無罪とした。こういう判決が下されまして、その理由説明いたしてないのであります。法廷は糸満町民の強い要求で一応公開はされましたが、被害者の夫や子供が傍聴していたが、ある制限が加えられ、ごく限られた傍聴制であったのであります。無罪の判決にぼう然となり、感想を求められた現知念副主席も、どう見ても納得ができないと言っておるわけでございます。このようなまことに戦場さながらの状態が今日沖繩では起こっておるのでございます。このことにつきましてどう一体お考えでありましょうか、どうお感じでありましょうか、そのことをひとつ外務大臣にお聞きいたしたいと思います。
  347. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま切々とお話しになりましたような事件があとを断たず、また、裁判上の扱い等についても御納得がいかない、こういう御見解につきましては、まことに私も遺憾に存ずるわけでございます。実は政府といたしまして、また私といたしましても、機会あるごとに、米政府側に対しあるいはまた直接ランパート司令官等に対しましても、るるこうした国民感情、県民感情ということに立脚した人道的の立場からの善処方を常に強く求めておるわけでございまして、制度といたしましても琉政側の警察権の活動等につきましても、ある程度のその行使権の介入が認められたことも御承知のとおりでございましょうが、まあやはり施政権が返還され、一方、司法、行政が完全にわがほうに返りますまでには若干のそうした機構上の欠陥もあるわけでございますから、これらの点については米側のなおこの上ともに人道的な立場に立っての扱い方、そして県民に納得をされるようなやり方について、この上とも十分の反省を促し、また、その結果が出てまいりますように善処いたしたいと思います。
  348. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 一言、時間切れでございますが最後に御要望を込めて申し上げたいと思います。  私たち沖繩県民が心から願っておりますことは、沖繩に生まれてよかった、そして復帰してよかった、こういう復帰をかちとることであります。そのことは、日本人であってよかったということにつながるものと思います。どうか沖繩県民のこのような真実の願いを主権平等のもとに一日も早く回復さしてくださるよう心から要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。(拍手)
  349. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 以上で予定された質疑は終わりましたので、本連合審査会は終了いたします。  これにて散会いたします。    午後六時四十三分散会