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1970-12-16 第64回国会 参議院 公害対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十六日(水曜日)    午前十時八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         占部 秀男君     理 事                 鬼丸 勝之君                久次米健太郎君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 長田 裕二君                 川上 為治君                 木島 義夫君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 小野  明君                 田中寿美子君                 竹田 四郎君                 小平 芳平君                 田渕 哲也君                 須藤 五郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣審議官    城戸 謙次君        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        経済企画政務次        官        山口シヅエ君        厚生政務次官   橋本龍太郎君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省環境衛生        局公害部長    曾根田郁夫君        農林大臣官房技        術審議官     加賀山國雄君        通商産業省公害        保安局長     莊   清君        通商産業省公害        保安局公害部長  柴崎 芳三君        通商産業省公益        事業局長     長橋  尚君        通輸省港湾局長  栗栖 義明君        運輸省自動車局        長        野村 一彦君        労働省労働基準        局長       岡部 實夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  秋富 公正君        自治大臣官房審        議官       立田 清士君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○公害防止事業費事業者負担法案内閣提出、衆  議院送付) ○騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 杉原一雄

    杉原一雄君 防衛庁に御質問いたしますが、去る衆議院産業公害対策特別委員会において附帯決議を実はあげております。その附帯決議の中身はすでに防衛庁も十分御検討いただいていると思いますが、重ねて御指摘いたしますならば、騒音規制法の一部改正案の討議の中で、「航空機騒音対策については、「防衛施設周辺整備等に関する法律」及び「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害防止等に関する法律」に基づく施策を積極的に進めるほか、」こういう指摘が実はあるわけでございます。この観点から私は、いわゆる基地公害という概念規定をしながら防衛庁努力状態等について、あるいは今後のこうした問題に対する対策等について実は質問をしたいと思っておるわけであります。  いまわれわれの手元に提案されております公害対策基本法、あるいは第一条の目的、あるいは第二条の公害という定義の中で、「土壌の汚染」なり、「騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。」という定義のそれぞれに該当すること等について、防衛庁所管周辺地域においてこの種の問題がすでにいろいろ起こっているのではないだろうか。その実情と、できればそれに対する対策など、より具体的にお示しいただきたいと実は思うのであります。第三条では「事業者責務」ということで起こしてあるわけですけれども、この事業者責務というところを防衛庁責務というふうに置きかえれば、私はそのまま実は当てはまると思うのであります。とりわけ防衛庁に対して、こうした私が質問をし意見を伺う意図はどこにあるか、それは「日本の防衛」、世間では防衛白書、非常に御苦労なさったようにも評価されておるわけですが、この中で「国を守る心」という項が起こされております。しかもその国とは何だ、ここに言う国という意味の中でうたわれておることは、「わが国の防衛とは、われわれの国土の安泰と、民族文化、自由と民主主義および国民共同生活体の安定と繁栄を守ることである。」、そこでそのあとがたいへん私は大事だと思いますが、「この国土はわれわれの祖先の住んだところであり、またわれわれの子孫の住むところである。」、これは私、公害問題の中では環境権の確立という形で、連合審査会では訴えてまいりましたところであります。「われわれは、長い歴史、独得の文化伝統を誇っているが、さらに育成されて栄えて行かなければならない未来の土地でもある。」、非常に高い調子で訴えているわけです。「喜びと悲しみ、希望と失望の交差してきた過去を持ち、しかも正義と人道がいよいよ興らなければならない土地でもある。しかもこの土地民族一つであり、この社会および国家は分割のない一つのものであって、この独立と統一を長い間続けてきたのである。」云々ということで訴えながら、若干飛ばしますけれども、「わが民族は、」、われわれに対することなんですが、「わが国土はもちろん、言語風俗生活体系歴史伝統、信仰、文芸、思想等を遠い昔から受け継いできた。これは過去からの長い歴史を通じて培われたわが民族の蓄積であり、その創造物であり、共同世襲財産である。」その共同世襲財産の中に、精神的分野とともに、あわせて自然の問題、いまわれわれが討論している環境の問題が深く根ざしていると私は考えます。引き続いて「自然や物質的要因の上に人の心によってつくられた精神的文化財である。その価値は国民努力によって積み上げられた成果であり、また将来もこの努力は続けられるであろう。」云々指摘しているわけです。  このいま読み上げた点につきましては、自衛隊を認める認めないの立場を越えて私は正しいと思います。そうした観点から防衛庁防衛行政を進めていく中において、その防衛庁が高らかにうたっている自然環境が、国家の機関である防衛庁自身防衛行政の中でこれをじゅうりんし、破壊し、地域周辺住民に非常な迷惑をかけている事実等は私も承知しております。先般千歳の市長を訪れて、学校等見たりした中で最善の努力を私は認めておりますが、なおかつこうした問題等について率直に防衛庁の今日の実情と、これに対する対策と、これからの規制のいかん、とりわけ今度の公害国会という、この国民注目の中に開かれる国会の中で、明らかに国家責任において明示されることが、私たち企業家資本家を攻撃する前に加害者としての国家立場を明らかにすることが、この問題を前向きに前進させる大きな契機になるだろうと思います。そういう意味防衛庁の簡にして責任ある答弁をお願いしたいと思います。
  4. 薄田浩

    説明員薄田浩君) お答えいたします。いまの杉原先生が御指摘のとおり、いわゆる防衛施設——いわゆる自衛隊あるいは駐留米軍安保下における駐留に伴いまして、ある特定地域にたいへん御迷惑をかけておるということは事実でございまして、その間をいかに処理していくかということで長年努力してまいったわけでございまして、かつ国会にも去る四十二年に周辺整備法を御制定いただきまして、それを鋭意拡充あるいは質的な向上をはかってやってまいっておるのが実情でございます。それでその公害態様とこれに対する対策について概略申し上げたいと思いますが、まず要件といたしましては、防衛施設、いわゆる自衛隊駐留軍施設運用、それから行為といたしましては、自衛隊及び米軍行為による障害というものが要件でございまして、これの態様といたしましては、御案内のとおり、あるいは航空機あるいは砲爆撃騒音あるいは機甲重車両等による荒廃等要件がございまして、こういうものにつきまして軽減緩和する諸施策として、地元の方々にとって万全ではございませんが、法律、政令あるいは予算の許す範囲内でいろいろのことを進めてきたわけでございます。  まず大きく分けまして三つございますので、恐縮でございますが御説明させていただきますと、まず第一に、音による障害でございますが、騒音防止対策というふうにわれわれは呼んでおります。これは私のほうの法律で申しますと、第三条の二項でやっておるわけでございますが、いわゆる教育や医療保育等に音による障害を与えておりますので、これらを防止するために学校、病院、保育所診療所救護施設特別養護老人ホーム等につきまして防音工事を行なう場合に、そのたとえば市町村等につきまして補助金でこの工事の御援助を申し上げております。それから騒音によりまして住民生活上の障害が起きておるわけでございますが、これを緩和するという意味で、養護老人ホーム市町村の庁舎、あるいは図書館、公民館、学習、休養施設等、いわゆる生活環境施設整備を行なう場合に、やはり同じように補助金の交付で軽減緩和をはかっております。それから三番目といたしましては、ある特定飛行場、大体十八ぐらいございますが、この周辺におきましては音と、かつ、危険性の問題も含めまして住民のこうむる障害軽減緩和するために、民家等移転あるいは補償あるいは移転の跡地の買い上げ等をやっております。以上のほかに各飛行場実情に応じまして、いわゆるサイレンサーあるいは合同委員会等で合意をいたしまして飛行方法規制飛行時間あるいはジェットエンジンの試験の規制等、そういうものの実施をしております。これが大体音に対します措置でございます。  第二に、いわゆる水質等汚濁等につきましては、基地があること等によりまして水質汚濁等を生じておるものがございまして、農林漁業被害を与えております。こういうものに対してはその経営上の補償をいたしております。それから同じく水質汚濁に伴いまして住民方々生活上の障害を与えているものにつきましては、この緩和のため、あるいは水道あるいはプール等生活環境整備を行なう場合に、市町村に対して補助をいたしております。  第三番目といたしましては、一般的に飛行や重車両、射爆撃のひんぱんな実施、これは演習場や対地射爆場等についていえるわけでございますが、障害が一般的にございます場合に、農林漁業用施設、道路、河川、防災、防風等施設について工事実施しております。それから自衛隊米軍等の行ないます行為によりまして、農林漁業等を営んでおる方々が、その経営損失をこうむった場合には、いわゆる農耕阻害あるいは漁業補償というような形で損失補償をいたしております。  これがあらかたいま防衛施設庁で行なっております事案の大要でございます。
  5. 杉原一雄

    杉原一雄君 いま施設部長答弁を聞いておりますと、まことにすらすらといっているように聞こえますが、たとえば千歳の基地にある小中学校の二重窓の問題等あるいは施設庁自身が設計をしておつくりになった学校を見たわけです。結局二重窓で音をとめたけれどもあと空気あるいは温度は保証されていない場合もあるわけですから、おのずから冷暖房の設備等があるわけですね。これは施設庁はわれ関せずで、その市自体財政的負担につながってくる、こういう問題等がございますので、私ここで重ねていろいろお聞きしたいところですが、後ほどまた資料等で御提示をいただきたいと思いますが、ただ、いまおっしゃったような幾つかの手だてを講じたけれどもいまだに激しい紛争がある、不満がどんどん皆さんの手元へあがってきているというような係争中の問題等あれば、その係争中の問題の焦点とそれについての考え方、なければないでけっこうです。私はこの問題だけは知らずにやっておりますから答弁してください。
  6. 薄田浩

    説明員薄田浩君) いわゆる先生指摘のような係争中というような表現を使ったらよろしいかどうかあれでございますが、まあこの辺で至らないという点のはございます。御指摘のように、千歳を御例示になりましたが、いずこも同じでございますが、防音はしたけれどもいわゆるその維持管理費についてたいへん経費を要して地方財政を圧迫しておるということがございます。これにつきましては、実は来年度の要求に入りますが、いわゆるいままでつくりました各種の学校等約五百ぐらいを対象といたしまして、御指摘のような維持費補助と、それからおいおい寒冷地帯につきましては暖房、あるいは暑いところにつきましては除湿的な装置も進めてまいりたいと思います。特に係争中というようなものは承知いたしておりません。
  7. 杉原一雄

    杉原一雄君 山中長官もお聞きのとおりでございます。連合審査会でこれを含めた対策本部の何か私質問をしたように覚えておりますが、せっかくの答弁の中になかったように思います。伺いたいのは、あなたの対策本部所管の中の一環として調整の対象になっているのかどうか。いまの御答弁に続いて長官もそれはよくやっているというふうに御判断なさるか。簡単にお願いいたします。
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず端的に申し上げますと、これは私の公害対策本部所管外でございます。というのは独立のそれに対処すべき法律を持っているからでございます。ただし、その法律内容についても一部を補助することができるという表現があったり、それらの地域住民のほんとうに要望する施設がその法律の条文だけで完全に期待にこたえられているかどうか、これは運用上問題があろうと思います。また、公共施設範囲においても、たとえば農協あたり等についてはなかなか国として最終的に大蔵省まで農協移転とか防音とかというものについては公共施設として認めない範囲の中に入れるという議論がいまなおここ両三年来詰まっていない。これらの点はやはり私どもは関心を持っておりますが、たてまえ上は公害対策本部の関知せざる範囲であるということで、独立の法を持った運営のほうで万全を期してほしいというつもりでおりますが、政府全体としては、これはやはり同じ内閣でございますので、防衛施設庁やり方等について公害対策の新しい観点から見て既存の法律においてそれが間尺に合っていない、あるいはこれでは運用上問題があるという点はどしどし助言をしてまいりたいと考えてはおります。
  9. 杉原一雄

    杉原一雄君 長官のいまの最後ことばを私は非常に大事にしたいと思います。われわれも戦前の生活をしてきた者でございますから、軍と政治という関係において、やがてまた緊張状態が起こりますと、軍ならば住民の建物も田畑もじゅうりんしてもかまやしないというような危険を常に内包していると思います。それは軍の性格上そうならざるを得ない。そういう点がありますから、いま公害国会を通じて国民にとっては長官が区分けをしたような受け取り方をおそらくしてないと思うのですよ。そういうことだから、長官あと言われたことを私は本部として十分の御配意と御努力を実はお願いしたい。こういうことで防衛庁関係質問をこれで終わります。   〔委員長退席理事鬼丸勝之君着席〕  次に、先般の連合審査委員会のときにも時間がございませんので、ちょっぴり洩らしましたが、四日、五日の衆議院連合審査委員会の席上、傍聴席に私の県のイタイイタイ病患者小松みよさんが実は出席していたことを後ほどテレビ、新聞等で私承知いたしまして、非常に内心今期国会に対する取り組みについて激しい強い激励を受けたようにも思いますし、重い重い責任を実は感じているわけです。でありますから今度の公害国会を終わって故郷に帰りまして、私は小松さんを含む九十八名の公害病イタイイタイ病患者に御報告をしたい、それをするのは私の義務だと思います。そのことは同時にいま後ほど厚生省からお伺いすれば明確になると思いますが、公害病認定患者全国で幾らおるか、水俣、四日市ぜんそくその他を含めて、そうした公害病患者に対する私は本国会からの回答になると思います。しかし私は、いろいろ重要法案審議いたしましたが、この法案をどうひゅくり返してみても、いま申し上げた四十年間の病気に耐えて、どうにか荻野医師という人の努力病気の進行はとまっておりますけれども、三十センチも身長が縮まり、全く夫婦の間を断絶した長い苦しい生活をしてきた。私、一応小松みよさんという対象の言い方で話をしますが、その小松みよさんに、全国会でこのような法案を通すことによってあなたの過去についてはこうなんだ、これからの病気についてはこうなんだ、同時にまたあなたの背景にある千内外の公害病患者あるいは疑似患者に対してはこういう手当て政府責任を持ってやっているんだと報告のできるものがあれば、一応本委員会を通じて山中長官なり厚生省から言明をしていただきたいと思います。私は、この前も公害対策特別委員会がありまして、その委員会の席上で、いや、前の通常国会ですか、医療救済の問題、紛争処理法問題等、二法律大学関係法案のために流れました。あわてふためいて臨時国会でこれを上げました。二月からそれがいよいよ効力を発生しております。しかも発生いたしたけれども、結果的には病床に伏している公害病患者に対してどのような財政的な手当てができているかどうか、大体承知いたしております。しかし、それは小松みよさん等は私は非常に不満だと思います。その不満の気持ちをこの公害国会という国会に大きく期待をかけてきていると思います。これにこたえるものが十四の法律の中にあるのかどうか、またこれにないとすれば、別な形で厚生省が四十六年度の予算の中でこういう点で、いまひとつ最後予算編成の締めくくりの段階で大臣政務次官等が奮闘しているのだということなどがあってここで御披露いただければ、せめてもの私御報告できる一つのものとして二十六日国会召集日あとにして家へ帰りたいと思いますが、何か小松みよさんに対する一つ報告ができるようなものがあったら、ここで厚生省並びに対策本部のほうから長官が代表して御答弁をいただければ幸いであります。
  10. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) あなたのお立場から言えば、政府もやっと臨時国会を開いてそして公害対策の諸般の法律整備に本気で踏み切っておると、また、私たちは、それらの患者方々に対して直接ではありませんが、あなたのような同じ思いをする患者の出ることを防ぐために、人の健康にかかる基準をきびしくするとともに、また全国一律にこれを設けていく、あるいはそれらの基準を直罰をもってこれを犯した者について報いるというような基本的な姿勢をとることになりました。したがって、あなたのような嘆きをする方はだんだん少なくなる見通しに何とかなりそうでありますということを、私は言えると思います。さらに政府は、今国会を通じて論戦等を与野党を通じていたしました中で、民法の特別法としての無過失責任についてはまだ研究中であるということであるけれども、しかし、その前に立証責任の転換、それらを含めた現在の現行取り締まり法規の中における無過失責任、もしくは立証責任等を、原子力法鉱山関係法等と同じような仕組みでできないかどうかを早急に検討すると言っておるということ等が、これからのそれらの不幸にして病気になられた、あるいは被害を受けられた方方に対しては、政府姿勢一つであろうかと考えます。しかし、すでに自分たちはそういう公害病と認定されるような立場に立ってしまっておる人たち、これらについての具体的な、それがどういうふうにいままでよりか違ってくるかという点については、今回は公害にかかる健康被害法律の手直しをいたしておりませんので、具体的な手みやげと申しますか、報告ができかねるという点があろうことをまことに申しわけないことと存じますが、これらは厚生省のほうとも私自身も、いまの公害健康に関する救済法の中でもう少し質的に前進し、対象的にいろいろと条件の取り方や範囲の拡大や、あるいはまた、もう少し見方を、角度を改めて、新たな項目を起こすとか、いろんなことも相談をしておりますので、これらの点も具体的に前進をすれば、それらの現実に不幸にして患者という最も避けなければならない立場に立たれた人たちに対しても、誠意をもって検討を進めているようであるという点等については、言明されて私は差しつかえのない成果を得たものと確信しております。
  11. 橋本龍太郎

    政府委員橋本龍太郎君) いま基本的な点につきましては総務長官のほうからお答えがございました。この公害にかかる健康被害救済制度というものを通じてお答えをさせていただきたいと思います。  現行公害被害者救済制度というものは、先生よく御承知のとおりに、公害にかかるさまざまな被害の中で、特に緊急に救済を必要としている健康被害について、行政上の応急的な救済措置というもののみを行なうことを目的としております。制度発足以来今日まで救済対象地域として指定してまいりましたのは、大気汚染関係川崎市の一部、そのほかの二地域水質汚濁関係では神通川の下流の地域外地域、合計の六地域であります。その後、先般尼崎の一部地域大気汚染の状況が川崎市などに準ずるほど著しくなり、かつその影響による疾病の発生というものが相当多発している疑いが出てまいりましたために、県と市の協力を得てその事実の確認を急いで、十二月一日からこれを救済対象地域としてまいったわけであります。その他の地域においても、実は現在相当程度の著しい大気汚染または水質汚濁が生じており、またその影響による疾病が多発しておる疑いがある地域がないとは申しません。所要の調査を実施しつつ、それが明らかになれば、私どもとしては救済対象地域というものの指定の要否を決定してまいりたいと考えております。この中で、これはお役所式答弁を申し上げましても先生に対するお答えにならないと思いますので、率直に申し上げてまいりますと、この被害者救済制度をつくります際、よく先生も御承知でありましたように、従来の法体系で類似の例として参照するものが非常に少なかったために、原爆被爆者法律をそのままほとんど援用したような形でこの被害者救済制度発足をさせました。これは本院の御審議の際にも実は何回か当時の厚生大臣等からお答えを申し上げてまいったとおりであります。その時期におきましても、はたして被害者救済ということば内容健康被害のみに限定されてよいものであるかどうか、これは本院においても御議論のあったところでありますし、衆議院においても相当な議論がございました。そうしてその結果としてとりあえずとにかく健康被害救済を急ごうということで本法は成立を見たわけであります。生活保障にかかる部分についてはなおその議論を今後に残しておるわけであります。  私どもは、現行法体系の中から考えてまいります場合、この被害者救済制度そのものの中に、現在あります健康被害救済にかかる制度の中にそのままに生活保障を取り入れていくことは、法体系上きわめて困難だという感じをいたしております。そうした場合に、ボーダーライン層に対しては世帯更生資金を活用してまいりたいということを、先般本院における連合審査の際に、厚生大臣、たぶんお答えをいたしたと思います。現行世帯更生資金の中でいわゆる生活資金、生活費の場合は月額七千五百円以内ということになっております。今回これを、この公害関係救済制度を補完する意味もありまして、一応の引き上げの概算要求を厚生省としては大蔵省に提出をいたしました。ただ、これは今後予算編成の際に決定をするものでありますから、金額の点は本日はお許しをいただきたいと思います。また、生活保護そのものもこれは現在改善をはかっておるさなかでありますし、来年度の予算編成において、これらの点にも私どもとしては配慮を加えてまいるつもりであります。その場合に一つの問題として出てまいりますのは、現在の生活保護法のたてまえから出てくる級地の格差、これが現在までの級地の格付けの方法そのものでよろしいか、あるいは公害多発地帯においては、従来の級地決定の要因のほかに、公害というものを一つの級地決定の要因に取り入れるべきであるかどうか、実は、この点についての議論がまだ煮詰まっておりません。私どもは、やはり今日の状況から考えて、生活保障という面を世帯更生資金あるいは生活保護法のたてまえで配慮していくとするならば、当然この級地の決定要因の中に公害という要因が取り入れられていくべきものであると今日考えております。なお、この救済制度そのものにおきましても、内容的にこまかく今日まだ申し上げられる段階には至っておりません。厚生省としては、給付の改善及び当初から問題になっておりました所得制限の緩和等の概算要求の中に盛り込んで、現在大蔵省と折衝に入った次第であります。今後、予算編成の途中においても、本院の各先生方をはじめ、世論の応援を得て、私どもとしてこれに対処し得るだけの実績をつくり上げたいと考えておる次第であります。
  12. 杉原一雄

    杉原一雄君 まあ繰り返すようでありますが、公害国会と言われるわけでございますから、本来ならば、いま橋本政務次官が言われたことばないし意欲ある発言を、できれば法律そのものに、みずからお認めになっているわけですから、本来ならば救済法そのものを同時に改正して、前向きの姿勢で今国会で討論されれば、私はいま申し上げたような千名を下らない公害患者にも大きな希望を与えるのじゃなかったかと思います。でありますから、いま答弁なさった範囲において、健康から、健康のみならず生活の保障その他に領域を広める方法を明示されたわけですから、最善の努力行政の中で大いに御奮闘いただきたいということを希望いたします。  同時に、橋本政務次官も御多忙ですから、どうか知りませんけれども、けさの朝日が川崎の実態を調査しております。二百五十三人の公害病患者をずっと歴訪してまいりまして、その実態のあまりにもひどいのに驚いてしまった。しかも認定患者は八割が生活難だというようなトータルが出てまいりました。私驚きません。私の場合も、県のイタイイタイ病の場合も農業をしている人がかなりありますから、ある程度飯米にも困る、あす食うにも困るというような実態は出てまいりませんけれども、やはり周辺の都市部の人たち生活と比較して、かなり見劣りする苦しい生活実態であることは重々承知いたしておりますので、朝日のけさのデータには、私はそう大きなショックは受けておりませんけれども、ただ、この中で見のがしがたいことは、たとえば公害病認定患者でおります「木村正男さん。四十歳。妻と、中学生をかしらに三人の子をかかえる。去年夏、肺炎から、瞬間的に息が詰る気管支ぜんそくに襲われた。「顔が紫色になって、このまま死んでしまうのかと思った」と、妻のヒロさん。  猛烈な発作が四日間続いた。一滴の水、一粒のコメもノドを通らない。十一月末に勤め先の運送会社から手紙が来た。「勤続二年未満の方は、休職が二カ月続くと、社則により自動的に退社となります。」  アワをくって無断退院した。医者が「あと二、三カ月は……」といっていたのに。ことし四月にまた発作、再入院。今度は一カ月たらずで退院したが、四月末に健保の休業補償を請求したところ、「二月まで六カ月間の支給で補償期間は切れました」と一片の通知。五万円ほどの月給の六割補償もダメになった。ヒロさんは「生れて初めて質屋のノレンをくぐった」という。」こう訴えたそうであります。  この朝日の調査の結果について、私はやはりたいへんなことになりつつある。これにも増して水俣病等の問題はいろいろお伺いしておりますが、私はやはり健康管理、健康回復の問題、治療の問題、かねて、そのうちの生活、収入の大黒柱が倒れる場合がきわめて多い。こういう点でやはりいま橋本政務次官がおっしゃった生活保障生活か守るという観点行政の今後の力点、なかんずく今度の予算編成の中で最大の努力をしていただくことを先ほど御答弁をいただきましたが、そのことをいま一度私自身胸に確認をしながら進みたいと思うのであります。  そこで、次に、同じ小松さんを代表とする私のところの九十八名の公害病患者、とりわけ五百六名の人たちが三井金属を向こうに回して七億百三十九万円の賠償を要求して、裁判闘争を始めております。二年八カ月も経過いたしました。先般も連合審査会で御報告したように、去る二十一日の地方裁判所におきまして、岡村裁判長が鑑定申請を却下し、事実上の結審を私たち期待もし、結果もあらわれて、凱歌をあげたわけであります。ところが、その後、被告側は直ちに岡村裁判長外二名の裁判官忌避の挙に出たわけであります。私は弁護士の経験はありませんからわかりませんけれども、これがやがて高裁にまで忌避が上がり、最高裁に上がってくるとなれば、ほぼ数カ月は裁判がストップするおそれがきわめて大きい。そういう形の中でいま九十八名の公害病患者はもとより、たくさんの人が公害病にかかり、イタイイタイ病にかかって死んでいきました。そうした遺族等に対するいわゆる回答と申しますか、補償といいますか、国家がめんどうを見るということにつきましては、いま政府側の答弁をそのまま利用すれば、現在の法律上、法体系のたてまえ上は、それはしかたございませんと、こういうことにおそらくなるようにも思います。で、ここで裁判の連続をやろうと思わないし、皆さんから判決をいただこうとは思いません。ただ、こうした事件の中から、やはり根本に、国会の各法案審議するにあたって非常に学ぶべきものがあると思うんです。後ほど田子の浦のヘドロの問題についてもその点に焦点を合わせて申し上げますが、やはり資本というものは、企業家というものは一筋や二筋の縄じゃいかぬな、ということですね。こういうことをこの際痛感するわけであります。  この問題に限って一応終止符を打ちますが、ただ、ここで、先ほど橋本政務次官がおっしゃった健康から生活保障へ、この方面への行政努力、そうして、これはさかのぼることはおそらく不可能だと思いますが、裁判でいま論議されている遺家族の問題等、これは法の適用外になるおそれがきわめて大きい。でありますが、こういった問題につきまして、実情を十分お調べいただいて、公害という近代的な高度成長の結果から生まれたそうした問題、そうした問題に対処する。いわゆる被害者の側に対するところの力強い、あたたかい力添えをぜひともいただきたいということを、特に訴えておきたいと思います。小松みよさんをめぐる問題ということで、私の質問をその問題に限って、一応終止符を打っておきたいと思います。  次に、三番目の問題として、通産省を中心として公害行政についての質問を続けていきたいと思います。これは、すでに公害対策特別委員会で、私再三実情を訴えて、また通産省などの反応を見、今日まで進んできたのでありますから、新しい問題ではありません。ただ、一つの問題をずっと、私はわが県にあるできごとですから追跡をいたしております。そういう意味で、問題をもう一度追及をしていきたいと思います。  第一点は、五月の十八日、地方紙が暴露することによって、今回公害国会開催の一つの動機になったんじゃないかと思われる日本鉱業三日市製錬所の問題であります。八月二十七日、通産省が、それこそ蛮勇をふるって鉱山保安法の適用をされたわけであります。そこで、八月二十七日の時点で、保安法適用前の状況と、それから八月二十七日以後の今日までの状況と、つまり企業が公害防止、または地元の人たちに対する補償その他の問題について、どのような努力を続けているか、このことをここで発表していただくことで、今後の、この種の公害対策に対するわれわれの取り組みのめどが確立されるのではないか。連合審査委員会では、私は通産省の努力に敬意を表したいという表現を実はとりました。それは七月九日の公害対策特別委員会において、宮澤通産大臣との間に取りきめた鉱山保安法適用の約束であります。それは具体的に、八月二十七日に実行された、この意味においては、私は敬意を表したのでありますが、相前後する行政指導、工場の努力等については、まだまだ問題を持っているように思われますので、通産当局はこれをどのようにつかんでいるか。はしょって申し上げますれば、八月二十七日、鉱山保安法適用、昭和二十九年から会社が建っておりますが、そんな古いことはお聞きしませんが、その前とあとの、この工場の、企業の努力、あるいは地域への働きかけ等について掌握しておいでになることがありましたら御披露をいただきたい、このように思います。
  13. 莊清

    政府委員(莊清君) 日本鉱業三日市製錬所を八月二十七日、保安法の対象にしたわけでございますが、その前から通産省では、保安法の対象ではございませんが、改善工事及び現地農民の方に対する補償問題等について、行政指導の形で指導を強化してまいりました。現在、その工場の排水及び排煙はすべて鉱山保安法上の基準を十分に満足しておると考えております。企業は現在七億二千万円の総工事費をもちまして改善工事を鋭意着工中でございまして、第一期工事は本年八月に終了いたしまして、第二期工事が十月ごろ完成いたしました。すべて鉱山保安法に基づきまして、厳密な認可をし、完成検査をした上でございます。明年二月にはおそくとも七億二千万円の全工事が完了する予定になっております。  カドミウム汚染による現地農民に対する補償の問題でございますが、これは裁判とかあるいは法律上の和解とかいう形ではなくて、通産省及び県御当局の行政指導の形で、企業が誠意を持って処理するという基本原則に立ちまして今日まで進んでまいりました。四十四年の保有米で、一PPMをこえるもの約七十トンにつきましては、金額九百万円の支払いをすでに了しております。なお、一PPM以上の保有米が発見された地域につきましては、県の御指導もございまして作付をやめたという事実がございまして、その関係補償で約九千万円の支払いを了しております。合計で約一億円の支払いでございます。  なお四十五年産米につきましても、県のほうで現在精細な調査を実施されておりまして、やはり一PPMを上回るものが当然に発見されつつあるようでございます。この補償問題につきましても、従来の方針どおり、企業に誠意をもって対処させるということを基本に考えているわけでございます。たいへん問題を起こしました製錬所でございまして、現在、ことしの五月末から企業は自主的な形で、設備能力の約四〇%をカットいたしまして、六割操業という操短をやっております。そのもとでわれわれは改善工事を進めさせ、農民に対する補償を行なわせ、とにかく問題をそれ以上大きくせずに、とにかく起こった問題を解決し、すると同時に、今後再びカドミウムをやはりあたりにばらまくということが絶対にないようにということを基本に、指導を今後も強化してまいりたいと考えております。
  14. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、来年の二月、全部、防止対策設備というものが完了する、それを通産省は点検して、四〇%操短をしておるわけですから、その時点で一〇〇%操業を始めるというふうに受けとめていいわけですが、その場合に、通産はおそらく現地調査をされると思うし、研究もされるでありましょうし、これは許可ですか認可でしたか、どっちかはっきり忘れましたけれども、そういう段階を経ると思いますが、それが二月時点と見ていいんですか。十二月末というふうに伺っておりましたが、きょう初めて二月と伺ったのですが、その辺はっきりもう一度おっしゃってください。
  15. 莊清

    政府委員(莊清君) 鉱山保安法では、公害防除施設はもちろんのこと、生産設備につきましてもすべて認可の体制をとっております。認可した設備について工事を着工させ、完成ができた場合には完成検査を行なって、合格しなければ運転することを法律上禁止しておるわけでございます。申し上げましたのは公害防除設備の工事でございまして、これがおそくとも来年二月には予定計画が全部終了するわけでございます。終了いたしました場合には、鉱山保安法ですべて完成検査が必要である、こういうことでございます。工事計画そのものは、あらかじめ法律で認可をしておいていま工事をさせておる、こういうことでございます。
  16. 杉原一雄

    杉原一雄君 防除施設ができると、そうしますと三日市製錬所が今日までつくってきた品物、たとえば三十六年からカドミウムをつくっているわけですが、そういった生産品の内容等については、指導の過程で今後とも大体同じ生産物であり、生産量等についてはダウンをしないというふうに掌握しておいでになるのですか。
  17. 莊清

    政府委員(莊清君) 仰せのとおりでございます。
  18. 杉原一雄

    杉原一雄君 まあ先ほど水田の汚染の問題について一PPM以上というのが九千万円の補償ということなのですけれども、これは面積にして幾らであって、しかも現在この問題について地元で非常に私は頭を痛めていると思うのです。会社も痛めておるが、地域住民も痛めておる。ちょうど私のところに地方新聞が来るのは一日おくれです。れども、十三日付の地方のローカル紙の報道によりますと、黒部のカドミ汚染地域の田畑のことなのですが、「よみがえるか荒廃田」と、非常に荒れ果てたたんぼ、そのたんぼにいま農民がこの寒空に向かいながらコンクリートを打った道路のようにぱんぱんになっている田地、つまりことしは植えつけたのをとってしまったところですから、あとは田園を管理しておりません。田地田畑をだからそのまま自然のまま放置してあったたんぼですから、かんかんになって地割れをしているようなたんぼですが、この寒空にいま耕うん機を入れて耕して来年からの作付に備えているのでありますから、局長手元に入った報告では、いま一PPM以上という指定地域というのは幾らであって、それがいまもなおかつずっと金縛りになっているのかどうか、どういう報告を受け取っているのか。この新聞では特別指定地域のがんじがらめに線を引かれたところが若干はずされていくような報告のように、新聞の報道では伝えられておりますが、そういう点についてはどういうふうに掌握しておられるのですか。これは汚染米等の問題もありますから、やはり一致してこうした対策をとっていただかないと、せっかくの地域人たち努力も水のあわになりますから、その辺のところを、もしそちらのほうに情報が上がっておりましたら、聞かしていただきたい。
  19. 莊清

    政府委員(莊清君) 恐縮でございますが、ただいま御指摘の点、私まだ実は存じておりませんでしたので、さっそく地元と連絡をとりまして、そういう問題については善処いたしたいと思っております。なお、三日市の場合には要観察地域が約三千ヘクタール程度と承知しておりますが、その中で、四十四年の保有米につきまして、補償を行なった面積は約七十二ヘクタール程度でございます。
  20. 杉原一雄

    杉原一雄君 この報道によりますと、こう書いてあるのです。あとで点検してください。「日鉱三日市製錬所のカドミウム公害で、ことし稲作中止となった要精密調査区域とその周辺農家は「来春、いったい稲作ができるのかどうか——」と大きな不安をいだいていたが、十日、県は「稲作は農家の自由意思にまかせる」と発表。また第二次精密調査区域になった堀高、北堀切地区」これは堀高とか北堀切という地域なのですが、「地区の四十五年度産米は一PPM以下で政府に買い上げられることになったため、地元では汚染田の田おこし、凍結米の出荷準備などがはじまった。」、これだと局長のほうにとっては前進した明るい報道のように実はなっているわけですが、しかし、それではやはり富山の米が全部カドミになっているような印象を全国の消費者に、国民に与えておるのですから、その辺私は非常に危惧しますから、精密に検討をしていただいて、やはり農林省が補償すべきものでありましょうけれども、問題は鉱山保安法適用地域であり、それに影響する汚染土壌の問題等もございますので、法律のたてまえは別として、やはり何らかの形で実証してもらうことが非常に農民にも安定感を与え、また、富山米に対する一そうの理解を深めるのにも成果を加えるということにもなりますからあいまいの形でそのままぼやっとした形で流されることなく、特段の御配慮をいただきたい。十二月四日の日に実は三日市製錬所をたずねて、所長にいろいろ聞いたのですが、汚染田の問題についてどうするのだと、こう言いましたら、できれば来年米をつくってもらいたい。農民につくってもらって、一PPM以上の汚染米が検体から出てくるようなことになれば私のところで全部買い上げます。以下であれば政府が買い上げてくれるわけだから、政府に買い上げてもらいましょう。農民がどうしても米をつくりたい、たんぼをつくりたいという農民の、何と言いますか、非常に崇高な土地を愛し農業を愛する気持ちにこたえた会社の処置だと思いますが、ただ、問題が問題だけにそうした温情とかそういう問題だけで問題を処理できる問題でございませんので、こうした問題等につきましては農林当局とも十分連絡をとって、やはり的確な判断と決定といいますか、全国民、消費者にうなずけるような方向づけをしていただかないと困るのではないか。なかんずくいままでの精密地域であったところ以外のところは逆に今度はPPMの度合いが高くなってくるという結果等も四十五年度産米に出たりしますものですから、より一そう問題をややこしくする。これはもう農林水産委員会で討論している土壌汚染の問題とも関連してくる問題ですから、非常にこういう点はきめ手といいますか決定版というのがそれぞれに下していくことは私はいまこの問題を追及している中で非常にむずかしいことだなと実は思っているところでございますから、これ以上通産当局のこの問題に対する御答弁を要求する気持ちはありませんけれども、そういうことをひとつお含みいただきたいというふうに思います。別に異存はないでしょうね。
  21. 莊清

    政府委員(莊清君) 事情をさっそくよく調べまして、御趣旨を体しまして企業をよく指導いたしたいと思います。
  22. 杉原一雄

    杉原一雄君 その次は、富山に日本ゼオンという工場があることを御承知でしょう。これは私初めて国会に出た昭和四十三年の八月に大爆発を実はやったわけです。直ちに化学工業局から現地派遣をして実態を見、その後の復旧修理改善について適切な指導が行なわれて操業再開となった。まあレコード、音盤の原料をつくっている工場でありまして、シェアは大体日本の音盤の原料の八〇何%、九〇%近くでありましたから、その工場がストップすることによって音盤の世界は大脅威を来たしたという問題の会社です。幸いにして爆発のあとの処理が終わりまして、私もその後行く機会がございませんでしたが、ことしの国会終了後、五月国会の終わったあとで労働組合の大会に行って、ついでに現地視察をしたのでありますが、当時の説明によりますと、以前に増して工場内の整備が非常によく整っておるし、機能の面では私はなかなかわかりっこありませんが、ただ、いままでは若干のくさいにおいがただよっておったのでありますが、ほとんどにおいも感じないといったような改善の努力あとを私は認めてまいりました。そのときはからずも、その工場は小矢部川という川をはさんで新工場と旧工場に分かれるわけですが、爆発したのは新工場のほうです。数億円の損害だったと思いますが、そのときに案内者に、旧工場のほうから流れている直径一メートルぐらいの汚水の口があるわけですが、そこから、そばまでは行かなかったけれども、濁ったあわ立ちの水が流れておったので、一体あれはだいじょうぶでしょうかと、こう聞いたら、いやだいじょうぶです、全然有害ではございません、こういう説明を実は受けた。東京へ帰りましてから、本社とも連絡をとりまして、だいじょうぶかと言ったら、だいじょうぶですと、こういう答弁を実はいただいておりましたが、いかんせん、四、五日前にその汚水がたいへんな汚水であるということが実は暴露されたわけであります。十二月の十日の地方新聞が一斉に書き立てたのでありますが、「こんどは強アルカリ性、基準越すPH9.3−9.8、高岡市が抜打ち検査」と、市の公害課がやった。「魚も生息できぬ」と、こういう見出しで報道されておるわけです。そうしますと、これに若干の実は矛盾を感ずるわけです。四十三年のときに科学工業局保安課長の佐賀さんあたりが中心になって非常に努力されたと思うんです。そのときここの点だけ目をつむっておられたか、鼻をつまんでおられたかわからないけれども、それは所管外だ、おれの所管は高圧の炉とか、そういうところはおれの所管で、あとのところは知っちゃおらないということであったのかどうか。つまり、通産行政の部内の縦割りの矛盾がこうした形に出てきたのか。いやそれはそうじゃないと、おれはあのとき見たときは強アルカリ性の問題は心配なかった、そういうことは問題でなかったというように通産省のいわゆる当時の保安課長佐賀さんの報告のあたりに出ておるのかどうか。出ておったとしたら、私はちょっとおかしい。このことがいま非常に大きな問題になっておるんですが、問題になるという理由は、この小矢部川という川が後ほどお伺いする田子の浦のヘドロと同様に非常に汚染している川でありますが、アユ——アユはいませんが、ウグイとかフナとか、たくさん川魚がおるところでございますが、後ほど、ウグイを食べてはいけないとかいろいろな禁止を県当局がやった問題の川であります。でありますから、問題の川に面する化学工場でありますから、一応みな疑っておったところなんです。それで知事はここはだいじょうぶですと、みなこういうように思っておったんですが、はからずも十二月九日に市当局の手でこのことが摘発されたわけですから、その辺のところを、どういうふうな報告としてあがっていて、過去の通産行政の指導の中で、その点は内部の一つのセクショナリズムの関係でこういうことになったのかどうか、その辺のところを明確にしていただいて、今後は公害保安局で万全を期するということにおそらく答えがなると思いますけれども、そういう答えを予測しながら答弁を求めます。   〔理事鬼丸勝之君退席、委員長着席〕
  23. 莊清

    政府委員(莊清君) 日本ゼオンの高岡工場の排水問題、たいへん世間をお騒がせいたしまして申しわけない事故であったと深く反省いたしております。十二月の初めに小矢部川をきれいにする会という会の方が、PHの測定をされましたときには、非常に強い酸性が出たということで、市の公害課が抜き打ち検査をされましたら、今度は逆にむしろアルカリ性が強いということで問題になりまして、調べたところが、工場が排水処理をしておる装置がございまして、そこに排水のPHを自動測定し、それに連動して薬品を自動的に投入する近代的な装置があるわけでございますが、そのPHの自動測定装置が狂っておったというまことに申しわけない事態が発覚し、直ちに会社側ではその日に装置を修正いたしまして問題が解決したという、企業側の内部の管理体制が十分でなかったということでございます。今後こういうことがないように十分指導しなければならないと通産省としても深く反省をしているところでございます。それで爆発事故の場合と、今回のこういう公害の場合と、人間がばらばらに出たり、部分部分の検査指導しか出ないということは問題であるという御指摘がございまして、私ども確かにそのとおりであると考えております。現在は公害保安局という一つの局をつくりましたし、地方通産局にも公害保安課という課を地方通産局の中で関係者をまとめまして、専門の課をつくり、県の公害部のほうと一体となって、公害保安すべてを統轄してやる体制がようやく整ったわけでございますが、決して言いわけをするわけではございませんが、四十三年九月の大爆発事故がございました際には、何ぶんにも死者三名、重軽傷七名、近所五百メートル半径ぐらいの住宅のガラスは全部吹っ飛ぶというような、珍しいほどの大事故でございまして、県が総合的に調査団をさっそくつくって、関係官庁——消防庁でありますとか、警察であるとか、通産省であるとかの爆発事故の専門家の調査団をつくって、直ちに事故の原因の解明及び企業に対する指導方針をつくられたわけでございます。何ぶん事故があまりにも大きかったために、そういう性格の調査団をとりあえずつくったというところに一つ問題があったかと存じますが、そのころ通産省では公害の仕事はまた別の局で見ておったというようなこともあるいはあるかもしれません。また、その爆発事故のあった当時は、この小矢部川というのは、あいにくまだ指定水域になっていなかったというような、いわゆる法律規制が直接なければ、指導のほうもまた欠けておったというふうな悪い面が出ておったことも事実かと存じます。今後はこういうことがございませんように、全国規制ということも、もうはっきりしているわけでございますから、そういう姿勢ですべて指導をするということをお約束いたしたいと思います。
  24. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、局長答弁は、一時的な工場側の管理点検の不十分という決定を下しているわけですね。それでいいわけですか。
  25. 莊清

    政府委員(莊清君) 県当局及び市当局でも厳重な立ち入り調査をされた結果、そういう認定を現在のところ下しておられるようでございますので、それに基づきまして、われわれのほうでは本社に対して厳重な注意をいたしたところでございます。
  26. 杉原一雄

    杉原一雄君 次は、富山県のことばかり申して何ですが、身近の問題の中に真実をより多く引き出す条件に私はございますので、そういう意味で申し上げているわけですが、日産化学富山工場の問題について、ここにお出になっている公明党の小平先生がわざわざ調査団を編成して現地を調査され、たくさんの砒素が、民家の雨どいなり、かわらの間に、あるいは木が枯れる。こういう事実等について、かなりの費用をかけて検体等を十分検討の上で、結論を出されて、現地報告をなさったことを実は承知いたしております。で、結果としては工場側はそのことを認め、しかもそれは野積みになっている焼鉱が飛散して、そういう結果を生んだんだということが報道されたのが十二月十日であります。ところが、十一日に今度はまた県議会でこの問題が提起されて、塩谷公害部長が経過報告を実はやっております。野積みにはシートでもかぶせておけばいいじゃないかという話があったのだが、実はそれだけではなしに、問題は付近の田地田畑にまで汚染の状況があるということも提起され、小平報告をあわせていろいろ論議をされたわけですが、十一日の見出しによりますと、農薬汚染疑いが濃い、こう出ているわけです。これが大見出しの冒頭であります。そうしますと、何かこうわからなくなってきて、私はそうしたことの真偽を確かめる能力はありませんけれども、問題は日産化学をめぐる公害の問題一つとりましても、三日市製錬所のように、単純におれのとこの会社からカドミを煙突から、あるいは水の中に流したんだと、このことを単純に認めてくれる工場等の処理は責任の所在もきわめて明瞭である。ところが、日産のような場合は、ひとりあたかも、少し日産よりも南側のほうに、同じ婦中町においていまイタイイタイ病患者が集中的に発生しておる。それはちょっとカドミの犯人の三井鉱山だと、神岡だと、こういうふうになっておるやさきでございますので、かなり問題を複雑にさせるきらいがあるんじゃないか。それは冷静に天に神さまというものがおったらわかるんですけれども、なかなか人間の世界でございますから、たまたまの判断なり、推測が行なわれる。そこで行政の面で私特に日産の問題をめぐって検討いただきたいと思うのは、だんだんこの複合公害というものが工場周辺、神岡鉱山と日産化学とはたいへんな距離です。複合などというような問題を言うこともおかしいぐらいなんだけれども、しかし、また同時に、その近くにまた合金鉄の工場がございますから、それともからみ合ってこの複合公害という問題が非常に大きく浮かび上がってくるわけであります。でありますから、これは後ほど事業負担費の問題、負担割合の決定の問題とからめていろいろ議論の出てくるところですが、えてしてこういう複合公害、こういうモデルケースの場合にこれをモデルとして、こういう場合に対処する基本的な当局の見解ですね、それは何か審査会へ持ち込めばよろしいということじゃなしに、やはり何かそうした問題に対する一つ基準とか、測定の方法とかということがいまの現段階で御披露できるものがあれば披露していただければ、日産化学の問題も問題の処理はきわめて明瞭に処理できると実は思っておるわけです。でありますから、いま特に日産化学という名をさしたのは、現にそういう問題が起こっておりますから、いわゆる複合公害に対する局としての、省としての原則的な見解を明らかにしていただきたいと思います。
  27. 莊清

    政府委員(莊清君) 複合公害の問題は大気汚染の場合にせよ、あるいは水質汚濁の場合にせよ、因果関係の解明というふうな点が紛争処理の場合にも、それから排出規制の取り締まり行政の面でも非常にむずかしい問題になるという点は御指摘のとおりだと思います。それで従来ともかく複合公害の中で、複合、複合といいましても法律上の規制をしておったのはせいぜいSO2とそれからすず程度でございまして、大気関係でも二つしかなかったと、水のほうでも危険物質に関して規制が始まったのはやはりことしの夏であったというふうなところから、過去のものにつきましては非常にじみなむずかしい問題があろうかと存じますが、今後の問題といたしましては、法律規制の網も極力広げることにしておりますが、それぞれの汚染物質についてやはり前向きに厳密な環境基準をきめ、排出規制を行なって監督を強化するということが複合公害そのものを防いでいく上のじみちではございますけれども、基本的なやはり政策であろうかと存じます。それでたまたまお話が一例として出ました日産化学の場合の砒素でございますが、この問題に関しましても硫化鉱のシンダーの中にある程度の量が当然入っておると、こういうのが粉じんになって出たのではあるまいかという御指摘でございますが、従来、こういうものは野放しに実はなっておったと、現在、法律改正でもこういう粉じんに対して規制を行なうという線が出ておりますので、この工場につきましても野積みにしておる鉱石に対してスプリンクラーの設備を取りつけて水をかけるとか、シートをかけるとか、そういうことを指導いたしまして、すでに着着実施をしておるという状況でございます。すでに汚染をしてしまっておる農地等につきまして、重複汚染の原因は一体どこかというふうな解明は、土壌そのものの分析調査を基礎に、結局、周辺の排出源について時間をかけて精密な調査をして順次やっていくという科学的なアプローチしか現実にはないと思います。農地汚染防止法等もできるわけでございますから、農林省等とも十分御連絡して、問題のすでに不幸にして生じてしまっておる地域につきましては、そういう方法で問題の解決にできるだけ鋭意努力をしていくと、これがやはり基本的な姿勢でなければならぬ、かように考えております。
  28. 杉原一雄

    杉原一雄君 次に、問題を別にします。それは大気汚染防止法の一部を改正する法律案附帯決議、それから騒音規制法の一部を改正する法律案に対する附帯決議騒音については騒音規制法ですけれども、第三項の中で「電気工作物及びガス工作物の騒音については、電気事業法及びガス事業法に基づく監督を厳しく実施するとともに、地方公共団体との連絡を密にし、その騒音規制に遺憾なきを期すること。」、こういうようなことが一つあがっております。大気汚染のほうでは「火力発電所、製鉄会社など大口消費企業に排煙脱硫装置をつけさせるよう努力すること。」「低硫黄原油の輸入に努力すること。」、こういう附帯決議が実はついておるわけです。きのうは進藤参考人を呼んでいろいろ発電の問題についてお伺いした中で、火力発電は硫黄があり、SO2があると、だから原産地でこれの脱硫装置をして荷を軽くして日本に持ってきたらどうか、また、そうじゃなくてもっと別な道を開拓しよう、それは水力発電はまだまだ開拓の余地があるのじゃないか、この点はまあ公益事業局長あたりのほうから開発の余地があるのかないのか、その辺のところをもしあれば数字等もお伺いしたいと思っているところですが、あわせ、いま電気事業法なりガス事業法によってこのほうの規制は別ワクでやっているわけですから、大気汚染あるいは騒音規制の中でこのことに対する附帯決議衆議院の段階で行なわれたものだというふうに思います。そこでまあこうした状況の中で、いま何たって大気汚染の大半はやはり火力発電でございますから、われわれのえげつない表現をとれば犯人は火力発電だと、でありますから、きのう渡辺さんでしたかどなたか、千葉のほうでは総じて東電の火力発電はパーになったと、住民の反対、なかんずく、漁民が中心になって激しい反対をしている。これはパーになったんだと、私はそれは銚子だけの問題じゃない。私の隣の県の石川あたりでも内灘火力発電反対闘争がいま起こっておるわけです。でありますから、こうした火力発電による電力開発のいままでの計画に何らかの変更といいますか、改革を通産当局としてはやっていかなきゃならない。とすれば、進藤さんが言われるように、水の世界をもっと探っていくべきじゃないか、あるいは地熱を利用する方向でもう一ぺん努力しようじゃないか、あるいは海洋を利用しようじゃないか、進藤さんの意見で私はちょっとその場で反論を感ずるのは、原子力でいこうじゃないかということであったわけですが、これは通産当局の意見、考え方かもしれません。しからば原子力の問題については問題がある。それは立教大学の長崎助教授が十一月十七日のエコノミストで原子力発電の安全性の問題について重大な警告を発しておる。これは抽象論ではない。具体的には敦賀原子力発電所の問題なんです。多くを引用する時間はございません。たださわりのところを申しますと、「敦賀発電所での出来事」、「九月下旬に、日本原子力発電会社の敦賀発電所で、一つの出来事が起こった。同社は、敦賀発電所のまわり一・五〜二キロのところに、三カ所のモニタリング・ポストを置いて、大気中の放射能を測定している。ところが、福井県庁の係員が同社と独立に測定したところ、会社側の測定値が県側の測定値よりも低く、約三分の一であった。」一体この違いはどこから出てきたのか。機械が悪いのかということになるわけですが、敦賀発電所の責任者にそれを追及したところが、こういうことが暴露されたわけです。モニタリング・ポストにおける放射能測定は、実は、会社が直接やっていなかったということなんです。つまり民間業者に委託されていたということなんです。こういう重大な問題を民間に委託させていたということなんです。で、「この測定値の違いについては、原因を徹底的に調べなければならないが、それに劣らず重要な問題は」いま申し上げたように「モニタリング・ポストにおける放射能測定というような、保安に必要な仕事が、下請業者の手にまかされている」というところに問題がある。これは私は資本の論理のきわめて巧妙な、ずるいやり方で、一体測定値がもし間違っておれば会社はまともに責任をとらないで、それを下請業者の責任にかぶせていく。つまりその責任を下請業者に背負わせるというような、資本の最も卑劣な手段のように思います。資本はもうかるでしょう。あるいは責任をのがれることはできましょう。のがれられないのはこのことによって起こる事故であります。これはだれが背負うのですか。逃げも隠れもできない地域住民の人なんです。こういうふうにいろいろ考えてくると、原子力法とか電気事業法とか、そういう別ワクで治外法権のようなところでふんぞり返っているような今日の電力事業というものに対して私たちは安心してまかせるわけにはいかない、こういうふうに思いますが、その辺の事情はどうなっているか。  幾つか問題提起しましたからたいへん混乱をしているかもしれませんが、ひとつはしょって御答弁をいただきたい。  最後に、いろいろうわさされるところでは、今日のような状況で進むならば、ともすれば電気が不足して、われわれの冷暖房もとまるのじゃないかエレベーターも動かなくなるのじゃないかということがちらほら耳に入ります。ほんとうにそうなるのか。いまここでやったらたいへんなことになります。イギリスの労働者のストライキによって停電があったのでありますが、それとは違った意味における新しい問題の提起になるわけですが、私はそんなことをここで扇動的にお伺いしようとは思わない。ただ問題は、ほんとうに電力が——いま政府が、電気業界が一生懸命開発しようとする努力、需用量の問題、これは先般私委員会でも聞いたと思いますが、そんなに必要なのか。どうしても必要なのか。SO2をまき散らしても必要なのかどうかということなんです。ここでいま直ちに即答を求めても困難でしょう。一体日本の産業構造の中で軍需産業が何%あるんだ。直ちにそれをストップしても会社はつぶされても国民生活影響のしない——もちろん労働者の首切りの問題はありますよ、機械的には。多くは申しませんが、日本の経済の発展のためにやむを得ないというものでないものがやはり私は戦争経験者として軍需産業を指摘せざるを得ない。マッカーサーもそう言ったんです。そういう意味では、そういう産業が何%あるかということもある程度ある時期において吟味する必要があります。きょうここでそうしたことについての区分ができるなら区分けしてほしい。  幾つか質問しましたが、回答を要求します。
  29. 莊清

    政府委員(莊清君) 一番初めに御指摘のありました電力事業と公害防止のための専門の各種法律との関係はどう考えておるかという意味の御質問だったと存じます。  従来は、電気事業につきましては、もっぱら電気事業法の体系で処理するという考え方が非常に出ておりましたのですが、今回の改正法におきましては、たとえばSO2一つとりましても規制規準の設定、これも大気汚染防止法で行なう。それに基づいて従来は認められておりませんでした都道府県知事による立ち入り検査も火力発電所についてやっていただく。その結果、もしも違反があればこれは直ちに当然火力発電所についても大気汚染防止法で直罰がかかる。それから緊急時、事故時というふうな規定が単なる勧告から最終的には都道府県知事の命令ができるというふうに強化されましたが、この規定も火力発電所に対して当然に適用される、こういうふうになったわけでございます。そのほか、これは私ども大臣もたびたび国会で御答弁申し上げておった点でございますが、結局電力というものは、まあ社会の血液のようなものであって、これの供給を確保するということは国に課せられた大きな公益の確保というべき責務であるという立場から、公害も防止もこれは当然きわめて重要な公益の確保の、国の最終的な責任のある仕事でございますが、公益相互間でどう考えていくかという立場からやはり火力発電所の新増設の許可、こういうことは最終的にはやはり国が責任を持ってやるという考えであるということを大臣がしばしば申し上げておったわけでございますが、その場合にも従来と変えまして通産大臣限りでやるのではなくて、すべて新増設についてはあらかじめ関係の都道府県知事に十分御連絡をして法律に基づいて御意見があれば要請をしていただいてお打ち合わせした上で処置する、こういうふうに考えてきたわけでございます。  ちょっと御指摘がありました騒音規制の問題についても同様でございまして、火力発電所におきましても相当音を出す重要な施設がございます。たとえば煙突に排気ガスを圧力をかけて吹き込む大きな送風機等がございますが、こういうものが対象になっておるわけでございますが、こういう設備につきましてもいままで申し上げました考え方に基づいて通産省限りでやるのではなくて、あくまで公益の確保という見地から国と地方自治体とがお互いに十分に緊密な連絡を保ち協力し合って解決していこう、こういうことがわれわれの姿勢でもございますし、また、衆議院のほうでさらにそういう姿勢で指導につとめろという御趣旨から附帯決議にわざわざ騒音の問題がつけ加えられたと承知いたしております。  なお、いろいろ問題の御指摘がございました中で、大きくとらえますと、今後の日本のエネルギーの中で電力、特に火力発電というものを一体どういうふうに位置づけていくのかとか、あるいは原子力発電がだんだんふえてまいりますが、それに伴う特殊な保安の問題等指摘がございましたので、やや専門的かと存じますので、公益事業局長が参っておりますのでお許しを得まして、そちらから追加をさしていただきたいと思います。
  30. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) お答え申し上げます。  衆議院審議を通じて出ました附帯決議騒音規制法関係及び大気汚染防止法関係につきましては、私どもといたしましてもその線に沿いまして万全の努力をいたしたいという考えでいるわけでございます。  大気汚染関係で申し上げますならば、まず排煙脱硫をできるだけ早期に設置普及させるように努力せよという点につきましては、通産省といたしましても、四十一年から工業技術院の大型プロジェクトとして試験研究費が出され、それを受けまして電気事業者におきまして、さらに諸般のデータの確保並びに連続運転による信頼性の確認というふうな観点からの検討を進めまして、すでに現在、東京電力、関西電力並びに中部電力におきまして、まだ実用規模までは至らないわけでございますが、十万キロワット前後といったような中間規模の実用プラントを鋭意建設中でございまして、そういった積み重ねの上で本格的に実用に適する規模のものを早急に実用化するように指導いたしているところでございます。  騒音関係につきましても、特に騒音防止法の規制に遺憾なからしむるために、電気業法の面におきましても電気工作物、特に問題になりますのは発変電所におきますコンプレッサーの騒音でございます。そういったものを中心といたしまして、防音壁とか、あるいは低騒音の設計、あるいはまた消音器の設置というふうなことを法の裏づけを持ちまして強力に指導し、その万全を期しているところでございます。都道府県知事との関係につきましても、ただいま公害保安局長から御説明申しましたような形で、今回法律面におきまして、都道府県知事の要請権を中心に通産大臣との関係が一そう緊密化されました趣旨に沿いまして、鋭意やってまいる考え方でございます。  ところで、今後の問題についていろいろと御指摘があったわけでございます。現在、電力エネルギーの供給態様といたしまして、水力発電、火力発電並びに原子力発電というのが三つの大きな大宗をなしているわけでございます。御指摘のように、水力発電につきましては、最近の技術の進歩によりまして、大規模揚水式発電方式というようなものが軌道に乗りまして、さらに開発の余地があるということは、まさに事実だと存じております。そういう方向に沿いまして、電源開発会社のみならず、主要な電力会社におきましても大規模な水力電源の開発というものに鋭意努力いたしているわけでございますが、何ぶんにも包蔵資源に限度があるわけでございますし、やはり火力発電というものをここで軽視するわけにいかないというふうな供給体制についての見通しでございます。今後、昨日の参考人の供述にもございましたような原子力発電につきまして、核燃料の供給体制の裏づけを持ちながら、また原子力平和利用の根本でございます安全の確保という強い前提のもとでこれを開発してまいるということは、今後におきます電源開発の大きな一つの中心になるものと、かように考えているわけでございます。長い十年ないし十五年先の態様といたしましては、やはり漸次火力発電の総体的なウエートが低下いたすといたしましても、水力、原子力を合わせまして約五〇%、火力発電が五〇%というふうな発電方式別の供給構成になるのではなかろうか、かような試算も行なわれているような状況でございまして、漸次ウエートが低下いたしましても、なお火力発電所を今後相当増設していかなければ国民生活の向上に伴います電力需要の増大というものに対処し得ない、かような判断を持っておるわけでございます。御指摘の地熱発電、潮流発電というようなものにつきましても国際的にいろいろな研究が行なわれております。そういった研究を続けるべきことは当然であろう、かように考えます。  原子力発電の安全性につきまして、先ほど、九月におきます敦賀発電所の問題が提起されたわけでございます。そもそも原子力の平和利用に伴います原子力公害は絶対起こさせない、かような強い姿勢でわが国の原子力行政が行なわれておりますことは御承知のとおりでございまして、原子力発電所におきます放射能の測定につきましても、法律に基づきまして電気事業者自体が義務づけられておりますと同時に、地元地方公共団体の側の要請もございまして、当該原子力発電所と地元の県というものが緊密に連絡をとり、必要に応じてそのデータの公表もする、かような体制がいまできつつあるわけでございまして、敦賀の問題につきましては、非常に放射能の濃度が低いような状況におきまして、測定値に一つ誤差が出たということかと思いますけれども、こういったことが非常に大きな不安につながらないように、現在原子力発電会社におきましても、県当局と十分そのデータのすり合わせというようなことにつとめているわけでございます。  最後に御指摘になりました、当面非常に電力需給が逼迫している、かような状況下についてどう考えるかと、かような点につきましては、当面、今年度自体夏場において相当な需給の逼迫が予想されたわけでございます。これは何とか関係方面の協力によりまして乗り切ることができたわけでございます。また来年度、ないし再来年度におきまして、特に夏場のピーク時におきます需給の不如意ということが予想されているわけでございまして、その面につきましては、いまから新規電源の開発に着工するということは対処し得ないわけでございますので、現在の新設中の火力発電所ないし関係発電所の建設の促進、運転開始時期の繰り上げ、あるいはまた試運転電力というものを供給に組み入れる。あるいは定期修理をピーク時をずらして行なう。諸般のくふうを重ねますと同時に、需用面におきましても、大口産業需用面におきまして、今年度自体自主的な節電の協力というものを得たわけでございます。来年あたりにつきましても、そういった大口需用家の節電協力というようなものも裏づけながら当面の危機を突破いたしますと同時に、その先行きにつきましての安定供給の確保という面につきまして、電源開発を地元と十分話し合いを進めながら、地元の理解と協力のもとにこれを格段に進めてまいる必要がある。かような状況でございます。地元との話し合いを円滑に進めますために、まず電気事業者並びに国の電気行政の面におきましての公害対策というものを、そういった地元の信頼を得られるものに高めていく必要がある、かように考えている次第ございます。
  31. 杉原一雄

    杉原一雄君 東京都は、昭和四十三年九月十日、火力発電所の公害防止に関する覚え書き、それから四十四年の一月六日、都市ガス製造工場の公害防止についての協定等を結んでいるわけでありますね。これはむずかしいことでないので、あくまで燃料に使う重油を低硫黄にすべきだ、公害を出さないようにしなさいということを協定しているわけですから、結局、これに伴うていわゆる原油の輸入の体制とか通産行政、貿易行政との関連は非常にあるわけです。東京都がこういう約束をしても、それは具体的になってみるとなると、通産省の行政範囲の中で処理されるべきものが非常に多いわけですが、こういう協定はどんどんつくられるべきであるし、効果不十分である限りは、こうあるべきなのが地方自治のたてまえであると思うのでありますので、そういうものを覚え書きにおいて補強するような、あるいは補完するような意味の通産行政というものはきわめて必要であるというふうに私は申し添えて、この問題はこれで終わります。  それで、時間の許す範囲内で田子の浦の問題についてお伺いするわけですが、いまさら経過措置とか今後の方針というものを聞いても始まらないわけです。繰り返し山中長官からも報告を受けたし、私の意見も私は述べてまいりました。ただここで若干この問題をめぐって十四の法律がいまいろいろな形で出ておりますが、この法律を、どのような形で、この問題処理にあたって適用するか。たとえばこの問題の始末をつける責任の主体はだれか。いわゆる防止事業を進めていく主体はだれなのか。そしてその費用は、先般山中長官は全額企業者負担だと、こういうふうに言っておられますから、その点ははっきりしているようでありますが、重ねて、事業者負担法等による費用の負担決定にあたって、なかんずく、富士市周辺の製紙パルプ工場等は非常に数が多いし、その中で、やはり中小、零細業もございますから、そうした問題等についての負担割り当ての大体の基準、めどみたいなもの、将来、政令、省令で決定されるようなことなどを含めて、一応私はこれを応用問題と申しますが、応用問題を出しますから、出したんですから、この問題に対して、こうこうこうなんだと、いわゆる防止事業の責任の主体と、費用分担のある程度具体的な、——大昭和製紙はこれだけ出せということはなかなか言いかねると思いますが、そうした中で、類型別というような、中小、零細、そういった問題に対しては法的にはこういう配慮があるのだといったようなことなど——やっぱり結局抽象的になるかもしれませんが、そうしたような回答を最終的に求めたいと思うのであります。  それの前に、私ここで言いたいことがあるわけです。それは二、三日前に出た週刊言論、十二月十八日号でありますが、——こういう本はぼくは初めて買ったのですよ、いつも買っていると思われては困りますが、非常に意地の悪いものの選び方をするわけですね。この中に「公害法案の骨はこう抜かれた」という大見出しみたいなものがあります。そのところの、政府に対する文句はこの中に書いてある、言いませんからひまがあったら長官、読んでおいてください、たいへん悪口書いてありますから。それよりも、いまここに関連する業者の発言ですが、「田子の浦のヘドロ問題で有名な」と書いてあります、「大昭和製紙の斎藤了英社長は、九月七日、ヨーロッパの公害対策視察の旅から帰ってくるなり、こう開き直った。「政府が操短を要求しているというが、設備投資をしている以上、そう簡単に操短できるものではない。今のところ絶対に操短を考えない」」この答えですが、これに対して、操短を要求したのか。社長が言っているとおりそれはできないと言って断わってきて、現在どうなっているか、そのことをひとつあとでつけ加えて答弁をしていただきたいと思います。そして彼は、「外国の公害対策を視察してきたが、公害対策は日本がいちばん進んでいて、」山中長官、安心してください、「外国は問題にならない」と、これはどこを見てきたのですかね、アラビアのほうへ行ってきたのじゃないかと思いますが。「この斎藤発言があった二か月前の七月、軽井沢で生産性本部主催のトップセミナーが開かれた。そこでも、公害に対する財界首脳人の声が聞かれた。」三菱商事社長藤野忠次郎、「公害の犯人は、ある場合には都市であり、」ほんとうに聞き捨てならないことばですが、「都市であり、政府であり、企業でもある。」われわれ政治家は入っておらぬからいい、案外でしたが、「そして、ときには、個人は加害者被害者の二面をもっている」考えさせますね。その次、興銀頭取の正宗猪早夫、「個別企業の責任だけを追及しても解決しない。新しい問題として、みんなで解決することだ」あるいはこう言っております。住友化学の長谷川周重は、「公害問題は、ややもすれば感情的に、政治的に扱われる傾向がある」こうなりますと政治的な扱いということが悪いことのようでありますが、「それはかえって問題を複雑にするもので、国民も正面から医学、生物学をも含めてイデオロギーを離れて公害と取り組まねばならぬ」ここらあたりはやや評論家であります。こういったようなことを彼らは言っているわけです。特に斎藤社長に反論の資料を私は出していきたいと思います。それは、これもめったに買わないものですが、週刊現代がきのう出ました、十二月二十四日号。これによりますと、「本誌独占ルポ公害退治に米国から来た猛烈男」名前はデニス・ヘイズであります。これは、八日の日に、公害のデパート田子の浦に直行、彼の言っていること、直感的に言っていることをちょっと紹介します。「私の国では、こんなひどい公害を出した企業主は裁判に訴えて刑務所に叩き込んでしまいます。安全基準を破った社長は少なくとも罰金でこらしめることができます。日本はどうなっているのですか?まだ日本ほど環境汚染がひどくないアメリカでも、みんなが公害追放運動に立ち上がっているのです。日本もいま運動をスタートさせなければ、取り返しのつかないことになってしまいます」弱冠二十四歳のデニス・ヘイズ、公害追放闘争の闘士であり、二千四百万人のアメリカ人を組織して堂々と戦ってきた実戦の勇士であります。彼は、公害のデパート田子の浦を見て感じたことをこのように語っているわけであります。そうしますと、斎藤さんの言われることとは違ってくるようであります。加えて、政府の文章を引用します。外務省情報文化局「各国における公害問題」十月十五日、これによりますと、これは政府責任と書いてあるのじゃありませんけれども、イギリスのエコノミスト誌の九月五日号に載せられたのを特に日本のところをピックアップしてあります。日本、「降りそそぐ汚染物質」ということで日本の東京周辺公害状態等を光化学スモッグを含めながらいろいろ政府の方針とともにここに紹介してあるわけです。そうしますと、斎藤社長の、日本は各国に比較して非常に公害対策が進んでいるという判断なり考え方は、こうした二つの証明で否定されるようにも思われます。なかなか問題は、ヘイズが直ちに刑務所へほうり込めと言いますけれども、イタイイタイ病裁判が今後五、六年——十年かかると思われるくらい資本家というものは一筋なわ、二筋なわでいかない、こういう現実を踏まえながら私、これからの重要法案を皆さん政府責任において省令、政令等となって具体化するわけですが、この法案の実効をあげるには結局何が大事かということをこのあと私が言わなくても御推察をいただけると思いますが、やはり私は総理のように、福祉なくして成長なしということば国民には非常にうつろな響きしか与えません。山中総務長官の情熱あふれるような御努力も砂漠に夕立のような結果になってしまうおそれがきわめて大きい、こういう状況の中で一段と勇猛心をふるってやっていただきたいし、行政当局の皆さんも政令、省令等の制定にあたりましても、こうした困難な状況の中で大いにがんばっていただきたい。このことをつけ加えながら冒頭にお願いした田子の浦のヘドロをなくして、港の機能を回復し、そして大昭和製紙はじめ多くの会社、工場が今後とも繁栄する道は何か、こういうことの探究、あるいは打開策をここで明示していただければ幸いであります。  ただ、私の手元にもう一つ、非常に山中長官にすみませんけれども、やっかいな文書が手に入りました。きのう調査室を通じて、日本商工会議所から政府なり自民党に出されている公害対策についての要望書はないかと、確かに二通手に入りました。やっかいではございません。問題は金融の問題とか、中小企業に対する手当ての問題とか、そういうことなんです。ところが、私が求めて手に入らなかったのは公害関係施策の慎重な審議を望むという経団連、日経連、経済同友会等の政府・自民党に対する要望書が手に入りませんでした。入らなかったけれども、十二月二十二日の  「エコノミスト」に暴露されました。それを読んで見ました。なるほどなと実は思っております。そういうことをもわれわれは知りながら、踏まえながら、これは現実ですから、公害の問題に取り組むべき決意を私たちはいよいよ固めたいと思うのでありますが、先ほど申し上げた田子の浦の処方せん、カルテをどなたでもいいから簡単に示していただきたいと思います。
  32. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず、ヘドロの問題についての基本的な、普遍的な形として申し上げますと、やはり公共事業で行ないますから、第一義的には知事がおやりになる公共事業ということになると思います。施行者は知事である。ただ、特殊な場合等においては、港湾法やあるいは河川法等において悪化等の除去、もしくは埋め立て等が行なわれるケースもあり得る、こういうことでありますが、そこで、田子の浦の場合には、お手元法律公害防止事業費事業者負担法の第七条の第二号の「イ」の「四分の三以上十分の十以下の割合」、これに該当するものと考えております。現に質問に対して答弁を一ぺんいたしましたが、先般講じました緊急措置としての七億円の起債も、これは全額事業者の負担である、こういうことで明らかでございます。ただ、今後は、来年大体七月ごろをめどとして作業を進めておるようでありますが、SSカットが相当進捗いたすはずでございまして、六三%ぐらい現状に比べて減ずるような施設をつけつつあるようでございます。これらが将来どのようになりますか、一〇〇%カットが望ましいんでございますけれども、これらの今後新しく堆積する問題等については、その他の要因等もございましょうから、どういうことになるかは、今後具体的な問題として検討していかなければならぬと思いますが、原則はそのとおりだと思います。  さらに、製紙工場に対して操短を命ずるということを、私が検討を事務当局に命じたことは事実であります。しかしながら、どの法律をひっくり返してみましても、どうも私の本部で私企業に対して操短や操業停止ということを命ずる実は権限を与えられていない、権限がないということがわかったわけであります。その点、私のだんびらは抜かずじまいに終わったわけでございますから、人物批評はいたしませんし、私もいろいろ批評はされるわけです。世の中にはいろいろな人が住んでいますし、勇ましい人もいますし、それらについての私の意見は述べることをやめますけれども、要するに、そういう姿勢を続けていった場合においては、やがては自分たちの企業内の労働者の諸君からも批判の火の手があがってくるのではないか、会社というものはやっていけるだろうかという疑問等を私は素朴に抱かざるを得ないということだけ申し上げておきたいと思います。  なお、大手のいわゆる製紙工業のSSでございますが、堆積ヘドロに占める割合は二四・五%ということに大体推定いたしておるわけでございます。したがって、残りの中小企業というものは今日までは岳南排水路というものに流しさえすればいいんだということで、結果はたれ流していたことになるわけでございますけれども、これも終末処理場というものを急いでおりますので、これらが終末処理場について応分の負担をしなければならないと思いますが、これらについては、中小企業に対して、この負担法で述べておりまする特例、配慮の中で、負担金そのものについても延納、分割等の措置を講ずる。もちろん税制、金融は当然のことでありますが、こういう措置がとってございますので、この田子の浦に例をとるならば、田子の浦をきれいにすることによって中小企業が次々と倒産していくであろうということを避けたいという配慮はしてあるつもりでございます。  先ほど、大手二四・五%と言いましたけれども、私もちょっと言いながら気になったんですが、これは違った数字でございまして、大手が出しておりまするSSは大体六〇%をこえる程度と思われます。大体三分の二近くというものを大手が出しておるんだということでございますから、つつしんで訂正をさしていただきます。
  33. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は一時十分に再開をいたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時十八分開会
  34. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。
  35. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 労働省の方、いらっしゃいますか。  公害の防止ということをやっていくにしても、結局、水質汚濁大気汚染、まあその他の粉じん等々にいたしましても、その内容を一番よく知っているのは、私は工場の中に働いている労働者だろうと思います。どんな物質がこの廃液の中に入っているか、あるいは一体どのくらい出ているか、それをどうコントロールするかということは、これは何といっても労働者が一番、そういうことでは地域の人に比べて、よく知っている。この間もいろいろ話がありましたように、夜陰にまぎれて河川に廃液をどっと流すとか、あるいは夜陰に乗じて、ばい煙を多く出すとか、実際こういうのは、日曜なんか見ていますと、非常によくわかる。そういう点では、労働者がそういうことを自覚し、労働者がどんどん、そういうことをしちゃいけないということをやっていかないと、これは周辺住民だけではなしに、労働者の健康自体もこれは問題になってくると思うのです。そういう意味では、公害防止においては労働者がやはり非常に重要な役割りを果たすことも、これははっきりしていることなんです。ところが、たとえば、こういうのを、うちが出しているらしいと外へ言うことによって会社の名誉を著しく傷つけたとか、あるいは会社に損害をかけたとかいう形で、場合によっては、これが職場において、どうもあいつは会社に協力しないということで差別していく、あるいは場合によっては、それがほかの問題とあわせて懲戒解雇の理由になるというような例もないわけではないわけです。この前行なわれた例のゼネラル石油の川崎における四アルキル鉛の加工の問題のときにも、そういう問題がありました。そういう点で、公害防止に協力をしている労働者が差別をされたり、不当な待遇を受けたり、処分を受けるということは、幾らほかで法律整備しても、この点が明確に守られていかないと、真の公害防止というものはできないのじゃないか。現在の実態では、労働基準監督官も、全国でいえば決して数多いほうではない。非常に少ない。この間も監視官に労働基準監督官を使うというような話もあったけれども、それどころじゃない。いまの監督官等は、事後処理、あと処理といいますか、これでおそらく私は手一ぱいだろうと思う。事前に入っていって、そういう公害防止の点まで監督指導するというようなことは、なかなか実際問題として困難だと思うのです。そういう点を考えますと、私はやはり労働者が公害防止に第一義的に協力をしてもらうという体制を労働省でもやってもらわないと、有害物質を出しておいて、それを言ったらそれは会社の名誉だとかなんとかいうことになると、これはほんとうに公害防止どうにもならぬと思うのです。住民の寝ている間に、住民の気のつかない間にやっちゃう。そしてあとは口をぬぐっちゃうということでは、しようがないと思うのです。そういう面で、労働省としては、どのようにそうした問題をやるのか、そういう面では、私は、労働省として企業に対する監督というものを相当厳重にしてもらわなければいかぬと思うのです。どういうふうなお考えで今後労働行政を、その点ではお進めになるお考えですか。
  36. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 労働行政、特に基準行政立場から公害問題にどう取り組むかという基本的な姿勢につきましては、実は、基準法のたてまえといたしましては、工場、事業場に働く労働者の安全衛生を確保する、これが基本のたてまえになっております。ただ、安全衛生規則その他の特別規則の中におきまして、有害物質を取り扱う事業場に対しましては、実は完全に整備されておるとは申しがたいのでありますけれども、排気、排水、あるいは粉じんの処理等につきましていろいろな規定を設けております。そこで、基準行政としては、そういう労働基準法並びにそれに基づく法令がどう順守されているかということを監督行政として取り上げてまいる、そういうことから、排出されますものが公害にならないように予防をするということに寄与してまいるという角度から公害の問題に取り組んでいきたい。  そこで、お尋ねの、そういう事業場内におきます、いわばうちから外へ出ていく、その接点のところに働いている人たちがどういう状況であるかをいろいろよく知っておる、これは御指摘のとおりでございまして、したがいまして、私どもかねてから監督行政実施にあたりましては、事業場内に安全管理者、衛生管理者というような制度を設けたり、あるいは事実上安全の処理の委員会等も事業場において設置を要請する、要するに勧奨する等のことで、できるだけそういう問題がみんなの協力によって順守されるような方向で努力をしてまいっております。そういう方向をさらに進めてまいりたい、こう思っております。
  37. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それは、労働者自身の労働衛生の安全というようなことは、いまの御説明でよくわかったのですけれども、実際外へ出す、いまおっしゃられた接点にある労働者というのは、そういうことで、かなりいじめられているわけです。ほんとうのことを言えないわけです。言えば差別待遇をされ、どっかに飛ばされる。それを何とか、そういう公害防止に協力している労働者にそういうことをやめさせない限りは——それは、厚生省としても今後いろいろな測定機械を置くでしょうけれども、これだって、そう網の目のほど置けるものではない。その辺が、どうもいまの御答弁ですと、非常にぼやけていますね。だから、これだけの公害騒ぎのときに、職場の中でそうした労働者に対して圧迫を加えるような一切のあり方というものは排除しなければ、幾ら厚生省がさか立ちしたって、山中総務長官がさか立ちしたって、これは直るものじゃないですよ。その辺もう少し明確にしてほしいのです。
  38. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 労働省といたしましては、公害そのものに、要するに事業場外の公害そのものに取り組むという立場にはございません。そこで、接点の問題、労働基準法並びにその関係規則に基づきますいろいろな規定の実施を確実ならしめるために、働く労働者からの監督機関への申告という制度がございます。これで申告を受けまして、たとえば法令違反があるのだという申告を受けた場合には、私どもは、一般の定期監督のほかに、その申告に基づく監督をやるということにいたしておるわけです。その場合に、基準法のたてまえといたしましては、労働者が労働基準関係法令の違反があるのだという申告を監督機関にしたということを理由に解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないということが基準法の百四条の二項に規定がございますので、少なくとも基準関係の法令、私どもの監督行政対象になりますものにつきまして現実に法令違反があるという申告がなされた場合には、私どももその申告を受けて監督をいたすとともに、また、その申告をしたことによって労働者が不利益な取り扱いを受けないということが最低限のいま保障となっております。そういうことで、できるだけ協力が求められるというふうに考えております。
  39. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 確かに、たてまえはそうなっておるのですけれども、現実にはそういう問題が内部にはあるから、幾ら組合が公害をなくしようということで実際にスローガンを下げたって、その工場から有害物質を含んだ、しかもかなりの濃度の廃液がどんどん出る、こういうことじゃないかと思うのですね。だから、ただ単に、いままでの法律のあり方そのものだけではこの問題が私は解決されぬのじゃないかと思うのですが、何か、そういう方面で、法律はそうなっておりますが、さらに強い通達を出すとかなんとかという形で企業に対してある程度強制していかないと、私は、法のたてまえはそういう危害を出しているのは申告しなさいといっても、申告は出てこないと思う。その辺、もう少し明確にしてほしいのですが、それでなければ幾ら公害議論をやったところで実際はあまり意味がないということになる。その出るところで押えるというのが、公害防止の一番私はポイントだと思うのです。そこにいる労働者がそういうことを外へ言ったということで処罰されていたんでは、幾らもとで押えると言っても、押えるところがしり抜けになっておるのでは何にもならぬと私は思う。もう少しその辺、明確にしてほしい。
  40. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 御指摘のように、やはり公害の発生源で何とか押えるということが非常に大事なことです。私どもも、そういう観点から、九月に実は有害物質を取り扱っている事業者に対しまして総点検をいたしまして、どういう状態になっているかという実態を把握して、その上で今後私ども立場に立ったいろいろな規則の整備をやっていく。いま御指摘の、労働者が一番事情をよく知っている、その労働者が職場の中でそういう実態を明るみに出すことがちゅうちょされるというようなお話でございます。で、全体のこの公害がこれほど関心を呼んでおりますし、私ども行政からも、これにできるだけ寄与するということからしますれば、私ども関係の法令の違反がまずなくなるように——法令を整備するとともに、なくなるようにということでございますので、そういう一つの安全衛生行政公害に寄与するという観点から、ひとつ強力にしていく、そういう中から、この職場、各事業所にも、そういう意識を、監督行政は今後こういうことでやるんだということの姿勢を示してまいりたい。ただ、法令上の立場から、いま具体的に解雇の制限規定を設けるというようなことは、いまの体系といたしましては、ちょっとなじまないんじゃないかと思いますので、行政的な方法で、監督行政公害の問題についてこういう角度から進めていくんだという姿勢を示すとともに、それの具体的な実施にあたって労働者の協力をも求めていくということの姿勢を示すことを何らかの形で進めていく、こういうことに相なろうかと思います。
  41. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもあまり歯切れのよい御答弁でなくて、私たいへん不満ですけれども、何といっても、私は役所だけでは公害の事前防止というのはちょっとできないと思う。その点では、労働者の役割りということもやはりきちっと位置づけて、そういうものに対する内部からの規制というものをやっていくべきだ。それについては、ひとつ私は、これだけ言いましたから、どうも歯切れのいい御答弁もいただけそうもないですから、これは局内でも十分考えてやってもらいたい。ぜひその点でチェックのできるように、チェックをしても労働者が不利益な取り扱いを受けないように、そういう措置ができるように考えていただきたい。お願いをしたいと思います。労働省の方、私の質問はこれで終わります。  それから、これは運輸省、厚生省の方にお聞きをしたいと思うんですが、自動車の排気について、有害ガス、COについてはたいへんやかましく言われております。COをなくするということになりますと、おそらく窒素酸化物というものがたいへん出てくることになるだろうと思います。自動車の排気ガスの中で、そういうものの規制というものがいままでやられてきていないわけです。これは自動車だけではないんです。工場でもやはり同じだと思うのです。完全燃焼を求めれば求めるほど窒素酸化物は出てくる。きのう参考人の方のお話でも、もう来年はオキシダントの夏になるんではないだろうかという、たいへん気味の悪い警告をなさってお帰りになったわけでありますが、この間の連合審査では、厚生大臣からは、窒素酸化物については技術的にまだこれを把握する手段がないからと、こういうふうな御答弁を承っているわけですが、窒素酸化物は、おそらくCOよりももっと有害であるわけです。労働衛生等の面から見てのPPMにいたしましても、COよりもさらにきびしいPPMを規定しているわけです。そういうことから考えてみますと、ますます多くなる窒素酸化物を減らしていくということが行なわれなければ、ますます公害は広がるばかりだと思う。どうもその辺が、しり抜けのように思いますけれども、どういうふうな対策をお考えになっているのか、伺わせていただきたいと思います。これはひとつ運輸省と厚生省と、両方からお答え願いたい。
  42. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 運輸省といたしましては、かねてから自動車の有害な排出物の規制につきましていろいろ研究を進めてきたわけでございますが、本年の七月に、大臣の諮問機関でございます運輸技術審議会におきまして、排出ガス規制の長期計画についての基本的な方針の御答申をいただきました。したがいまして、私どもそれを受けまして、規制をさらに強化するとともに、今後の規制の方向を研究するということで進めております。  で、その答申に基づきましていま実施しておりますのは、従来の一酸化炭素の規制をさらに適用範囲を広めて強化するということと、それから一部炭化水素について規制を強化するということが、さしあたり現在やっておる措置でございますが、概括して申し上げますと、いま先生のおっしゃいました窒素酸化物、これにつきましても規制対象に取り入れることでございまして、おおむね昭和四十八年、それから昭和五十年、この二段階に分かちまして、そうして私どもといたしましては、規制を、いまの濃度規制から、いわゆる重量規制、つまり一キロ走行するのにどれだけのグラム——重量で言いまして、グラムの有毒ガスが発生するように押えていくかという重量規制に移行を近い将来にするという方向で規制をしていくということで、大体昭和五十年に昭和三十八年度の、東京都で言いますと、総量にひとしい総量まで押えよう、それから昭和五十五年には昭和三十六年当時の有毒ガスの総量で押えようということで、この間、もちろん自動車は非常にふえるわけでございますが、その量がふえても、昭和三十八年ないし六年、この当時は、何と申しますか、自動車が走っております車道から離れました人道においては、格別人の健康に有害では特になかったと言われておりますが、そういう環境をつくり出すことを目標にした規制の強化をやりたい、そういうことで、いませっかく研究をいたしておるところでございます。
  43. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 四十八年というと、あと三年後ぐらいですか、三年後というと車のほうも相当またふえるだろうし、一方、来年はオキシダントの年だとも警告されているわけです。もう少し早くどうにかならないんですか。だいぶのろいテンポのやり方じゃないかと私は感ずるし、国民もきっとそのように私は感ずるだろうと思うんですが、もっと公害病が広がって、気管支ぜんそくなり肺気腫の人が私はこのままではふえると思うんですね。もう少し早いテンポでできないんですか。
  44. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) ただいま私は、四十八年、五十年の二段階に分けてと申しましたが、それは、先ほど申し上げましたような東京都の状態を実現するための一つの手段でございまして、私どもの予測では、いま申し上げましたように、来年の一月から軽自動車及びLP自動車の一酸化炭素については規制を行なうべく、もうすでに省令を改正いたしておりますし、さらに来年の四月からは平均濃度規制——濃度規制の方法は平均濃度規制にするということも検討するということでございまして、そういう規制をやりますと、いまのままの自動車台数がふえて、いまの私が申し上げましたような規制をやりますと、大体四十四年をかりに一〇〇といたしますと、四十五年ないし四十六年はそれよりは少しは、何といいますか、一日に排出される排気ガスの量が減るということになるわけでございます。ただ、このままの規制でいきますと、先ほど申し上げたように、五十年には四十四年現在の一・一倍になるし、五十五年には一・三倍。したがって、そこからだんだんと規制を強化していきまして、五十年では三十八年度と同じ程度の量にするということでございますから、すでに規制の効果は、まだ全面的とまではいきませんが、少しずつあらわれつつあるというふうに言ってよろしいかと思います。
  45. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 排気ガスの量そのものの規制ということなんですが、具体的に私聞きたいのは、窒素酸化物については、それでいいのかどうなのか。いまあなたの御説明はCOを中心にしてのお話のように私は承ったわけです。これから広範囲に起こる問題というのは、むしろ窒素酸化物だと私は思いますし、各方面のいろいろな報道を見ましても、窒素酸化物の危険性あるいはオゾンの危険性というようなものが最近盛んに叫ばれてきておりますし、いろいろな実証的な研究もあるようであります。どうも、あなたの御説明では、そういうつぼに合っていないような気が私はするわけです。
  46. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) いろいろの環境を悪くする、破壊いたしますところの有害な気体でございますが、そういうものの中で一酸化炭素は約九九・七%が自動車から出るものであると言われております。これに比べまして、窒素酸化物、いま先生のおっしゃいました窒素酸化物は、約三六%ぐらいが自動車から出る。おもに、六三・五%程度は工場、発電所から出るというようなことで、一番おもな発生源は工場、発電所であるというふうな調査になっておりますが、したがいまして、私ども自体におきましても、もちろん、窒素酸化物のまず測定技術の研究開発ということをやらなければなりませんが、同時に、他の発生源でありますところの工場、事業場等から一番多く排出されるものでございますので、それの関係方面でおやりになる、まず測定技術の研究開発ということと、それからそれを押える規制ということを、ここ二、三年の間できるだけ馬力をかけてやって、そして四十八年から重量規制対象として、自動車でいいますと一キロ走るたびに何グラムまでに押えるかという測定技術と、それから重量規制の方法というものを研究をして、四十八年からこれを重量規制でもって、たとえば、私ども具体的に申し上げますと、一キロメートル車が走るたんびに三グラムしか出ないようにする、四十八年度において。そういう規制値をもうすでに予定をいたしておりまして、そういう規制をやるように準備をしておるわけでございます。
  47. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも、おっしゃっていることが非常にマンマンデで、国民のこれだけの要請に対してこたえられるようなあり方ではないと私は思うのです。いろいろな測定技術の開発というものをおっしゃいますけれども、かなり開発もされておると思うのです。どしどしそういうことはやってもらわなければ、人間の命は三つも四つもあるわけじゃない。一度こわせばたいへんなんですから、その辺、そうマンマンデにやられては困ると思うのです。まだ、あと、あなたに対する質問、ちょっと残しておきます。  長官がお見えになっておりますから、長官あとの時間もおありのようでありますから、長官にお願いをしたいと思いますが、いま各県や市で、公害を発生するおそれのある工場と公害防止協定というのを結んで、具体的には、立ち入り権も防止契約によって認めるし、あるいは燃料の転換だとか、あるいは一部操業等についても契約を結んで、個々にそれをやっておるわけでございます。これは、全国で二月あたりの調査ですと、県で三十三県、市町村で十七くらいですか、事業所で六十三、協定を結んでいる。この間も、和歌山県と和歌山市が中心になりまして、住友金属ですか、と協定を結んで、着地濃度を〇・〇一二にするとか、既設の工場で、そういうふうにするという協定を結んだわけであります。こういう個別の協定ということが、かなりいま全国的に広がっておりますし、そのことによって、いままで権限を与えられていなかった市町村が実質的には公害防止の仕事をやられているわけでありますが、今度の法律改正があるにかかわらず、私は、国としてもこういう個別的な、具体的な、しかも技術的な協定というものは今後どんどん推し進めいく、しかも、この問題については一番被害を受けるところの住民も、何らかの形でこの協定には参加をしていくべきだ、こういうふうに思うんですけれども政府の考え方として、いまずっと広がってきておる防止協定について、今後進めるべきだというふうにお考えになっておりますか。
  48. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 政府が、いわゆる国法というものの権力をもって定める場合、なかなかそのようにきめこまかく地域住民の納得するものが打ち出せない、一律的な基準が出せないきらいもございます。その際に、それぞれの地区において、もちろん被害者たるべき地域住民人たちも参加をして、そうしてその結果、加害者になるおそれ、もしくはなっている企業との間に、そういう協定を、しかも地方自治体の責任者が中に入ってなされるということは、これは好ましいことであると思いますし、そのようなことは、かりに法的な権限を背景にしなくても、それは紳士協定として相手方もそれを認めた上で企業立地し、あるいは営業を存続し、あるいは拡張し、新設し、増設しというようなことの結果が、企業にとっても、もたらされているわけでありましょうから、企業自体も、その協約というものを最大限に私は尊重していくものであろうと見ておるわけであります。これらのことは、地域に最もふさわしい求められるべき姿として私たちは進めるという言い方はおかしいんですが、たいへん好ましいことであろうというふうに考えて見ておるわけでございます。
  49. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 公害防止ということが、いま長官が述べられましたように、きめのこまかい、しかも地域的な問題として解決をしていかなければならないということでありますが、指定都市から私どものほうにも、政府にも、市長の権限ということが要望書に出されております。大気汚染水質汚濁騒音規制・廃棄物処理及び清掃に関する法律案によって都道府県知事の権限とされている発生源に対する規制権限、交通規制の要請、廃棄物取扱業者の許可等については、市民の生活環境保持に関する直接的責任とその行政能力にかんがみ、指定都市の市長の権限とするよう措置されたい、こういう要望書が出ておる。これは御存じだろうと思います。私は、指定都市だけではなしに、大きな市はもちろんのこと、町村等においても、能力のある限りは、私は権限を下に与えるべきだ、そのことによって初めて公害防止ができると思いますけれども公害対策基本法の中で、きのうも参考人の方が、「相当範囲にわたる」ということについて非常な不満を示しておられましたけれども、そうした点で、いま述べましたような権限というのは、とりあえず、指定都市の市長にはそれだけの行政能力があるし、地域としてもかなり広いし、公害の発生件数というものも非常に多いわけでありますから、知事と同じような権限を少なくとも指定都市の市長には私は与えるべきだと思いますけれども、与えることによって初めて公害防止の実があげられると思います。実は、この間私の地域で、あるメッキ工場がシアンをたいへんたくさん鶴見川へ流しました。河川の周辺の井戸等も汚染されたわけでありますが、このとき、新聞の伝えるところによりますと、その区の保健所が一番先に飛んでいった、そのあと県のほうから来まして、一体おまえたちは何でこんなところに来ているのだ、どけどけと、こういうふうにやったと新聞は報道しております。これでは一体、シアンが大量に流れていてそういうあり方では、これは市民にとっては非常な不信ですし、不信だけではないと思うんです。あと措置に対して十分な敏速な措置がとれないと思うんです。そういう意味では、やはり第一線の市長にそうした権限というのを私は与えるべきだと、こう思いますが、どうですか。
  50. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いま指定都市と言っておられるのは、自治法上の指定都市だと思うんですが、私たちは、より弾力的に考えております。それは、指定都市はもちろんのことでありますけれども公害から見て、それぞれ大気、水等においては若干違うところがございますけれども、なるべくそういうような公害の発生しておる環境のある市においては、市長さんの権限におろせる分野はなるべくおろしていく、したがって、指定都市はもちろんですが、それ以外にも必要なものはおろしていきたいという気持ちでこれから作業をしていくつもりでございます。いままでもそういう議論を進めてまいっております。
  51. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 実は、横浜市で京浜工業地帯の三十五の工場に対する調査報告書というのがありますけれども、十名ぐらいの調査の方々によって、各工場に立ち入っていろいろ調査をしておりますが、この調査報告の中で非常に企業から言われていることは、どうも政府公害防止政策というのがそのつどそのつどである、次から次へといろんな施設の改善についても方針が違ってくる、したがって、二重三重に投資をしなくちゃならぬ、こういう投資をしたかと思うと、また次にこれをつけ加えなくちゃならないという批判がだいぶ出ておりますし、それから国と県と市、いろいろな段階があります。この段階で二重三重の行政で、その間に不一致、食い違い、そういうものは当然出てまいります。そういう点でたいへん迷惑をしている、そういう点で公害行政というものの一元化を強く要望していると思うんです。その問題と、先ほどの市長に権限を与えろという問題とは、私は同一の問題だろうと思うんです。そうした点では、二重三重の行政にならないように、特に第一線に一元的におろしていただかないと、実際企業のほうも、常に不安と不信を持ってそれに当たるということでございます。この点は、今度のこの法案は私はそういう点では非常に不十分だと思うんです。これは、次あたりに、そういう形で改正をされていくおつもりがありますか、次の通常国会あたりに。
  52. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 今度の国会に出しました法律は、基本法以下、ほとんどの法律を貫いております姿勢というものが、地方におまかせしていくべきであるということで貫いていると思います。ただ、それゆえに、反面、政府の見解統一を要求されました、地方に権限、事務のみを委譲して、財政措置はどうするんだという質問等も出てくる余地がそこにあったかと思んでありますが、それらの点は、統一見解どおり政府の果たすべき措置を十分果たすことによって、地域の問題として知事を中心とした広域行政の中で責任者が処理していくということを、まず基本的な姿勢で貫いておるつもりでおります。  なお、企業の公害防止の施設あるいは規制基準問題等について、そういうことが次々ときびしくなってくるとか、あるいはこういう設備でいいと言っていたのに、その次はこういう設備のほうにせよと言ってきたという、こまかな行政指導等の問題があるいは通産局あたりを通じて、個々の企業にはそういう感触がないとは言えないと思うんです。しかし、これは、ある意味では日進月歩しておる科学技術の今日でございますから、こういう公害防止機器専門の会社ができるかもしれませんし、だから、よりよい方法を求めていくわけでありますから、要は、出口で排出排水、そういうものの基準をきっちり定めていけば、それに対応する機械は、あるいは施設は、どのようなものがいいか、これはやはりある意味において、国がそうきびしく指示していくとか押えていくとかいう問題ではなくて、そういう基準に合致するものであれば、企業が自由に最も効率の高くて、しかもそれが目的に合致するようなものを選択していけばよろしいだろうと思いますが、過去の行政の、そのような国、県、市町村関係における、あるいは国の中央官庁の相互連携の不十分さにおける問題点が企業にだいぶ迷惑を及ぼしている点が、あるいはあるかと思いますので、今後はそれを戒心してまいりたいと思います。
  53. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その点は、国、県、市の態度というものを、ひとつはっきりしていただくとともに、基準等も逐次変えていくということになりますと、そういう不信というのを招く原因が出てくると思うのです。ですから、いまは、かなりどうした基準になるかということは政令にゆだねられている部分が非常に多いわけでありますから、何とも言えませんけれども、しかし、これはいまの段階では、かなりきびしく、むしろ基準というものはきめていくべきだ、そうすれば、次から次へと基準を追ってきびしくするということはしなくてもいいわけでありまして、この前も申し上げましたように、きれいな空気はきれいにして返す、きれいな水はきれいにして返すという考え方から言えば、かなりきびしくていいわけです。そういう点で、ひとつさらに、政令においては、私はかなりの期間それが適用できるような、きびしい基準というものをきめてもらいたい、こういうふうに思います。  それから、国と地方の財政負担でありますけれども、きのうも、指定都市の直接の公害対策防止の費用がかかっているのが七億八千六百万円だ、それに対して国から来た費用はわずかに千五百万円、こういうことを参考人の方が言われておりますけれども、これでは、私、地方はほとんど仕事ができないと思いますね。こうしたものを四十六年度の予算から私は直していかなくちゃいかぬと思います。負担法の精神にもその点は正確に書いてあるわけであります。こういうような状態がいつまでも続けられるということでは、これはやはり今度の国会の趣旨にも反すると思う。来年はこういうこと、ありますか。
  54. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) きのうは、参考人の意見を私も拝聴する時間があるかと思ったんですが、やっぱり委員会の取り合いで、ついにその機会を失しまして、ただいまのような数字はどのような数字であったのか、私、前後の関係をよく知りませんが、その金額から見て、それは防止機器その他の国が補助を出した金額の総計であろうと考えます。しかしながら、その地下水道等を中心にした国の負担しておりますものとか、あるいは関係器材等を入れれば、そういう数字にはならないだろうと思うのですが、私どものほうで、今回の予算要求というものは八月三十一日で一応締め切っておるわけでありますから、その後作業をして十四の法律国会を通過させていただこうという段階に来ておりますので、いま対策本部のほうで各省と連絡をとりながら、今回法律が全部制定をされたものと仮定をして、それによって地方における必要な金額等については、いま予算要求すべく作業中でございます。地方に必要な金を出すためにはそれをちゅうちょしてはならないということは、統一見解の方針どおりに行なっていくつもりであります。
  55. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先ほどちょっと条文を間違えましたけれども、基本法の第二条の「相当範囲にわたる大気の汚染、」云々ということ、このことがこういう結果になっているんではないだろうか、こういう御意見でありまして、したがいまして、広域にわたらない、相当範囲にわたらない公害防止については国はめんどうを見ないんだ、そういうものはすべて地方自治体の負担にまかしてあるんだ、こういう趣旨でその数字をあげられたわけであります。この「相当範囲にわたる大気汚染」とか「水質汚濁云々という、相当範囲にわたるというのは、どういうふうに考えたらよろしゅうございましょうか。
  56. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 大気の場合には、それは相当範囲ということばがぴったりするような範囲だと思うのですが、そのほかの各種公害等については、その相当範囲は、振動にしても騒音にしても、それぞれ——悪臭はまだ法律案国会に出せなかったわけでありますけれども範囲というものは、おのずからまた公害の種類によっては限定された範囲にしか被害というものが及ばないという現象もございますので、これは特別取り立てて、このことばがあるからできないんだということとは、私、関係ないと判断をいたしております。
  57. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いずれにしても、公害防止の費用を自治体が非常にたくさん負担しなくちゃならないということは、これはやはりおかしいと思うんですね。やはり基本的には国のほうがその財政を負担するというあり方でなければなりませんし、まあきのうのお話でも、今後の河川、大気について全国にわたる監視網を広げていくということになりますと、人間だけではおそらく監視できないだろう、おそらくかなりの測定機器というものを備えつけて、それを通信によって一カ所で監視をするというあり方が中心になるでありましょうし、実際にはある程度監視員という者をふやさなくちゃならない、その人件費というものもふくれ上がってくる。こうなりますと、相当地方の財政負担というものは多くなる。そのほかに防止事業もやらなくちゃいかぬ。こういうことになりますから、四十六年度からこういう形の、七億八千万円かかって、七億六千万円くらいは地方が負担をしなくちゃならないという財政構造というものを早く清算してもらわなくちゃいかぬと思いますが、その点、ひとつ長官の決意のほどをもう一度お聞かせいただいて、長官に対する質問を終わりたいと思います。
  58. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これ建国が持つべきもの、国が援助すべきもの、あるいは措置すべきもの、それらにいろいろありますけれども、やはり国は、それらについて責任を持って行なうということを第一義的に責任を持っておりますから、日本列島全体の公害に対して、まず国が責任を負うのだ。そしてそれを、機関委任その他ありましても、地方自治体がやっていただく、国の方針を実行していただくわけでありますから、それらの遂行に必要な経費というものについては十分な配慮をしていただきたいと考えます。
  59. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 さっきの窒素酸化物のことについて、厚生省のお考え方をちょっと承っておきたいと思います。
  60. 橋本龍太郎

    政府委員橋本龍太郎君) 先ほど運輸省当局のほうから、自動車の排出ガス中の窒素酸化物についての御説明がございました。確かに自動車の排出ガス中の窒素酸化物について運輸省は御努力はいただいておりますけれども、四十八年度ぐらいまでかかるというお話を私どもいただいております。しかし、窒素酸化物、これは必ずしも自動車の排出ガスだけが問題なわけではなく、固定したばい煙発生施設から出されるものも、また多いわけであります。現在、生活環境審議会の専門委員会で、実は炭化水素等と並んで御検討をいただいておるものの一つであります。いま私どものところに御連絡をいただいておる返事では、少なくとも来年の夏までには、できれば来年の春には、窒素酸化物についての環境基準を出したい。しかし、一方において、自動車の排出ガスからの窒素酸化物等の問題もありますし、同時に、技術的な問題もありますし、また、工場からの窒素酸化物の排出については立地規制等のからむ場合もある。場合によっては、環境基準で設定できない場合にも、暫定基準だけでも少なくとも出すというお話を私どもいただいております。現在、先ほど先生が御質問の最初に述べられましたように、今年から光化学スモッグというものが生まれ、そしてこれから先も心配をされております。その主要な原因の一つである炭化水素、これは自動車のほうでブローバイガス装置によって押えていこうとしておられる。そして、大気汚染防止法の中で窒素酸化物を特定有害物質に定め、この網をかぶせました。これは、暫定基準が出てまいりますか、あるいは環境基準になりますか、いずれの場合におきましても、私どもはそれを活用していくことによって光化学スモッグの発生を押えてまいりたい。緊急時の警報装置その他の所要の使える手法はすべて使って押えていきたいという考え方をとっております。
  61. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 運輸省のほうはどうですか。やっぱりそのくらいにならなければどうにもならないということが、どうも私納得できないですがね。工場のほうは、かなりそういう形で基準をつくって、すぐにもやっていきたいという厚生省の御答弁ですが、やはり先ほどおっしゃられたように、四割というものは自動車によって排出されるわけでありますから、炭化水素とともに、やはりかなり早くこれを排出させないようなことをしなくちゃいけないと思うんですがね。四十八年というのは何と言っても、がまんならないと思うんですがね。早くならないですか。
  62. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 先ほど四十八年から実施を目標にしておると申し上げました。もちろんこれは目標でございますし、また、私どもいま鋭意研究をしておりまして、たとえば自動車にそれを装着いたします場合に、その清浄器といたしまして、たとえば窒素酸化物は完全燃焼をしたときに発生する有害なガスでございますが、これに対して不完全燃焼時に発生する一酸化炭素、それから炭化水素というものがございまして、たとえばこの三つについて言いますと、窒素酸化物を押えたら、ほかのものにかえって押えが悪くなるというような技術的な理由もあるようでございまして、なかなかそういう点で研究のむずかしさがあると聞いております。これは四十八年の目標でございますので、もちろん、それ以前にそういう点の研究開発が行なわれまして、そして自信を持って、これならば義務づけることが可能である、という判断が下されました場合には、四十八年度より以前に規制実施するということは、これは私は十分できることであろうと思います。  それから、ちょっと私の説明が不足でございましたが、四十八年から実施するといいますのは、もちろん四十七年度中にはそういう技術が開発されて、そしてそういう装着する機械等につきましても普及され、それが自動車のユーザー等に対しても十分普及宣伝が行なわれて、そういう過程を経て、四十八年からは規制法律上義務づけるということでございますので、いま申し上げましたような研究を進めて、四十八年をさらに繰り上げることができれば、それを繰り上げる方向で私どもさらに努力をいたしたいと思っております。
  63. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この問題はこの辺でやめますけれども、しかし、もう少し急いでいただきたいと思います。それをお願いしておきます。  それから港湾局の方、いらっしゃいますか。港湾の汚濁、海洋の汚濁、非常にたくさんあるわけでありますけれども、横浜、川崎等には廃油の処理施設というようなものが、もうすでにできている。しかし、その利用状況というのはきわめて低いわけですね。せっかくつくっても、これを利用しないのですが、全国的に廃油の処理施設というものの利用状況というのは、おわかりになりますか。
  64. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) ただいま先生指摘のとおり、利用状況は低いわけでございます。ただ、御承知のように、現在、船舶による油の排出規制ができまして、それを受けまして廃油処理施設を鋭意つくってまいりまして、実は川崎が昨年から稼働を始めた。それから横浜は、ことしになりまして告示したというような実態がございますので、実施に時間がかかったという点はございますけれども、その後の実績が低かったという点は確かにございます。それからなお、全般的に見ましても、最近になりまして続々稼働を始めているということがございまして、一つは、そういう宣伝がまだ十分されていないという点もあろうかとも存じますが、稼働状況はいまだしという感じがいたします。
  65. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 横浜市の資料によりますと、昭和四十四年十一月の営業開始から四十五年七月に至る九カ月間の利用状況は、バラスト水が八十四隻で一万八千四百七立方メートル、ビルジが二隻で九立方メートルということで、非常に利用がないわけです。全国的にその資料をおつかみになっていたらお示しいただきたい。
  66. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) はなはだ申しわけございませんが、全国的にというお話でございますが、御承知かと思いますが、現在、廃油処理施設整備されたという告示をいたしましたのは、ごく最近のものを入れまして九港でございます。現行法でまいりますと、施設整備港という告示をしない未整備港については流してもいいというふうな状況がございますし、それから油につきましては従来は百五十トン未満は除外されておったということもございます。そういう点で、いま手元で資料をさがしておりますけれども、いま横浜であげられましたような程度だというふうに御理解いただきます。ただ、川崎はかなり進んでおりますので、かなり実績はあがっておりますけれども、まだ十分ではないということでございます。
  67. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その理由というのは、どういうふうにお考えになっていますか。利用者が非常に少ないという……。
  68. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 先ほども申し上げましたように、PR不足という点もございますし、それから除外されておりますものがありますから、そのけじめがはっきりつかなかったという点が一つ。  それからもう一つ。最初に申し上げましたように、告示いたしますと、その港では油を流せないわけでございますけれども、ほかに、たとえば最近千葉もやりましたけれども、東京はまだ告示してございませんので、東京に逃げられたら、もうそれっきりというのが現状でございます。
  69. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 せっかくつくっている施設ですし、海洋汚濁にも非常にこの問題は関係がありますし、海運国日本が世界の海を油濁するというようなことも非常に問題だろうと思います。その点はいろいろな点があろうと思いますが、非常に時間がかかるとか、あるいは料金の問題があるとか、いろいろあると思いますが、やはり汚濁しては私はならないと思う。その点、ひとつ指導というものを強化して利用をさせると。そうして、油による港湾内の油濁はもちろん、海洋における汚濁もさせないという方針をやはり強く打ち出してもらわないといけないと思います。  それからもう一つ、港湾で一番困る問題というのは、はしけの廃棄ですね。川のどまん中に、夜中に来て、どこの船かわからないのが、底へ穴をあけて沈めて行ってしまう。船の名前とか、あるいは登録ナンバーとかは一切削って、埋めて行ってしまう。港湾を持つ町においては、たいへんな河川の汚濁がこれによって起こる。せきとめられたと同じ結果になりますから、流れませんし、非常に外観も悪いし、河川の汚濁を倍増しておるということでありますが、現在、横浜の港湾地域にあるものなんかで捨てられているものが百隻以上ありますね。その中には、これはなかなか所有権もわからないということで、すぐこれをどこかへ持って行って焼くというわけにもいきません。ある程度の告示もしなくちゃならぬ。また、これを焼くとなると、たいへんなこれは手間ですね。まず、どろの中から揚げて、それを引っぱっていって、そうして陸上に揚げて、ある程度乾燥をさせて焼くということですから、これはたいへんな金がかかるわけなんです。そういう点で、これは、私どもいつも沈船の処理ということを市に対してもやかましく言っているわけですけれども、これがちっとも励行されないのです。金も確かにかかります。そういうような点で、もう少し考えていただきたい。何か、七万円くらい金をもらって、あるいは七万かどうかしれませんけれども、金をもらって、ほかの県の——そういうのを受け持つ業者がいるのだそうですね。それが持ってきて、夜陰にそれこそまぎれて、船の底を抜いて黙って帰ってしまう。これは、はっきりもう少し取り締まってもらわないと、港湾機能そのものも阻害されるし、河川の汚濁にも、あるいは港湾の汚濁にも、これはつながっていると思うのですけれども、どういうふうにされていらっしゃいますか。
  70. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) ただいま御指摘ございましたように、港の沈廃船につきましては、非常に各港湾管理者御当局が苦心なすっていらっしゃいます。横浜は、御承知のように、横浜市が港湾管理者でございまして、全国的に見れば六大港はそういう現象が多いわけでございますが、横浜を例にとりますと、現在港湾の中で捨てられております沈廃船が約七十五隻ございます。そのうち、はしけが二十七隻、あと機帆船とか雑船がございますが、毎年、管理者であります横浜市が非常に努力いたしまして、特に四十二年から積極的に除去しておるわけでございます。いまの計画でまいりますと、四十六年、来年じゅうには、そういう所属不明の沈廃船は片づけるというふうに、市のほうは計画して進めてございます。  それからなお、これは私のほう、港湾局だけではできませんので、先生が御指摘ございましたように、海上保安庁方面の港長その他の取り締まりもお願いしてございますし、それから、はしけにつきましては私のほうでございますが、その他の機帆船等につきましては海運局でございますけれども、たとえば、船、はしけを一ぱいつくる場合、それをつぶして鋼船にかえる、そういう場合に、船舶整備公団の融資をいたしますが、そういうときは完全に所有者がわかってございますので、これはもう所有者の責任で処理するという指導をしてまいっておりますし、横浜市の例を申し上げますと、そういう廃船の焼却場ができてございまして、所有者がそこに持って行って燃してしまうという処理をいたされております。実は、昨年、四十四年の八月からそういう廃船の焼却場が稼働を始めまして、ことしの十月、約一年二ヶ月、一四カ月の間に、二百二十ぱいばかりの船を焼却してございます。そういうふうに、現在持ち主のはっきりしているものは、どんどん自発的に燃やしているというのが実態でございまして、先ほど御指摘がございましたように、どうにも所有者がわからないというものは、市のほうでやっていただく。今後はもうそういうものがないように、港湾管理者はもちろんでございますが、海上保安庁その他取り締まり当局等にもお願いいたしまして、そういうことが起こらないようにしたいというふうに考えているわけでございます。
  71. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がなくなってきましたから、沈船の問題はその辺で終わりたいと思います。  もう一つ。これは運輸省の方にお聞きしたい。特に鉄道関係の方、いらっしゃればお聞きしたいと思うのですが、鉄道の公害ですね。騒音、振動、こうしたものは、もう全然いま規制がないわけですね。ただ、国鉄のほうがロングレールを使うとかなんとかということなんです。これは、この前の文部省に対する質問でも私引例をいたしましたが、新幹線の近くにあります私の近くの学校というものは、初め国鉄のほうは、絶対これは学校騒音として迷惑かけない、こういうふうに言っておりましたけれども、新幹線が走りだして一年たつかたたぬかのうちに、もうこれはとても勉強なんかしていれるような環境じゃないということで、ほかへ移転をいたしました。  沿線のそうした鉄道の騒音、振動あるいは風の問題こういうものは、もう少しその基準をつくって、一定の基準を国鉄でも守らせるような姿を出さないと私はいけないと思うのです。私の百メートルちょっとのところに、今度東海道の線増計画に基づいての新貨物線が通るわけでありますが、これについても、国鉄のほうは一体どれほどの振動を与えるのか、どれほどの騒音を与えるのか、こうしたことについては何ら提示をしていないわけですね。横浜市が、既存の鉄道の騒音、振動をはかる程度であります。新貨物線についての速度あるいは貨車の重量、こうした面から見ますと、いままで以上の鉄道の騒音、振動というものが私はあると思う。ロングレールを使い、あるいはゴムパットを使い、あるいは防音壁をつくっても、私は、あると思うのです。いままでの新幹線の例から見ましてね。こういうものについて、運輸省はもう少し基準をつくって、沿線の住民に迷惑をかけないようなことをしなければいかぬと思いますが、運輸省にちょっとお聞きしたいと思うのですが、新幹線ができてから一体その沿線の住民からどのくらいの公害防止のための陳情が出ておりますか。振動を含めまして。
  72. 秋富公正

    説明員秋富公正君) 東海道新幹線ができまして以来、ことしの八月までの数字でございますが、全体で九十八件でございます。そのうち、学校教育の授業に支障があると思しますのが十九件、病院におきます医療に支障があるという苦情の申し立てが四件、沿線の住民生活環境障害があるという苦情が七十五件、合計九十八件でございます。
  73. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、これはほんのごく一部だと思う、出ているのは。テレビに問題があり、電話に問題があり、あるいは家の壁にひびが入り、石垣にひびが入る。これは私は、もう少しこの基準というのを明確にしなくちゃいかぬし、今度の基本法にも、鉄道の騒音、振動の公害というのは入れるべきだと思うのですが、運輸省は、そんなものはもう入れなくてもいい、鉄道についての騒音、振動についてもこれは考える必要がない、われわれが君たちに利益を与えてやるのだからいいのだ、こういう立場ですか。それとも、もう少しその辺は規制をするという考え方ですか。どちらですか。
  74. 秋富公正

    説明員秋富公正君) 私たちのほうとしましては、利便を与えるからそんなことはかまわぬという気持ちは毛頭持っておりません。私たちとしましては、鉄道のいわゆる公共性というために、それをやはり確保するということは十分やっていかなくてはならないわけではございますが、騒音の防止という点につきましても、十分私のほうとしても指導していきたいと思っておりますし、現にそういう方針で進んでおります。いわゆる新幹線のできましたとき、先生の御指摘ございましたように、まず軌条関係で申しますと、ロングレールの使用、あるいは弾性のゴムパットを使用いたしまして、いわゆるスプリングを使って締結するという装置、あるいは空気バネを使いました新しい台車の開発、あるいはスカートを使いまして防音装置ということをいたしますとともに、開設当初いわゆる防音壁を約四キロにわたってつくりましたわけでございます。しかし、ただいま先生からも御指摘ございましたように、その後もいわゆるいろいろな問題がございましたので、その後におきましても、学校関係に十五カ所、それから病院に七カ所、それからいわゆる架道橋に三カ所の防音装置を施してきたわけでございます。しかし、これで決して十分というわけじゃございませんで、四十年の五月に国鉄の技術研究所の中に防音の新しい研究会を設置いたしまして、いわゆる軌道関係あるいは車両関係、またトロリー、いわゆる架線関係、こういった各面につきまして騒音の実態を研究するとともに、それに対する防音の処置を講ずるようにいたしまして、運輸省といたしましては絶えず防音の問題についてさらに積極的に技術開発し、さらに対策を十分指導していきたいと思っております。
  75. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そんなことで鉄道騒音地域の人に被害を与えないと思っていたら私は甘過ぎると思うのです。  部長にちょっとお聞きしますが、新貨物線で、横浜市が学識経験者を中心として騒音対策協議会というものをつくっておりまして、そこで答申を出しましたね。そして、鉄道の両わきに、ある程度地域をとって、緩衝地帯というのをつくっていく——御存じですか、その答申は。それを国鉄は一体やる気があるのかどうか。あなた方はそれを国鉄にやらせる気があるのかどうか。国鉄は何とも返事しておりませんよ。そのくらいのことをさせていかなければ、鉄道の騒音防止あるいは振動防止ということは私はできないだろうと思う。横浜で出した答申、それを国鉄に守らせる気があるかどうか。もし知っておりましたら、この内容を、知らなかったら、またあとで御答弁いただきたいと思います。
  76. 秋富公正

    説明員秋富公正君) たしか、ことしの九月の下旬だったと思いますが、私は新聞紙上でそれは拝見いたしましたが、直接その研究された委員会からはいただいておりませんし、あるいはまた横浜市でつくられた協議会のほうからも、私のほうはまだ御連絡いただいておりません。国鉄のほうにも直接それはいっていないようでございますが、国鉄はそれを入手して研究しているということは聞いておりますが、直接私はその詳細については、まだ研究された委員会からは承っておりません。
  77. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 国鉄にいってないなんというのは、そんなことはないですよ。その対策協議会の答申というのは、国鉄と地域被害を受ける人たちに対して出されているんですよ。話し合っているはずですよ。それは困ると思うんですよ。調べてください、できるかどうか。あとで御返事いただきたいと思います。  時間が来ましたので、あと厚生省にちょっとお伺いをしておきたいと思うんです。  清掃事業でございますが、もちろん、産業廃棄物については事業者がこれを処理するのはあたりまえでありますが、今度の新法の五条の六項によりますと、一般廃棄物についても条例等をつくって手数料を取ってもよいような趣旨のことが書いてありますね、取ることができると。いま大体全国的に見て、家庭から出る廃棄物については無料化の方向があるわけでありますけれども、何かこれによって、むしろ逆行するような印象を私ども受けるわけでありますが、今後家庭から出てくる廃棄物については、無料の方向で進むのか、あるいは金を取ってもよろしいのだと、どんどん取りなさいという方向で進むのか、この点について、ひとつお答えをいただきたいと思います。  それから、もう一点でありますが、第四条に「職員の資質の向上」ということが書いてありますけれども、これは一体どういうことを意味するのか、この職員というのはどういう職員を一体意味するのか、この辺についても明らかにしていただきたいと思います。  それから、もう一つ。これは厚生省に研究をお願いしておきたいと思いますが、最近、高速曝気の屎尿処理施設がかなり入ってきております。ハイ曝気だとかなんとかというので、新しい住宅地なんかにはたいへん入ってきております。これは何か、モーターで空気を汚水の中に吹き込んで、そして曝気をするという形になっております。それから、一般の下水処理場なんかでも同じですね。空気を吹き込んで、あわを立たしているわけです。しかし、このあり方というのは、私は新しい公害の発生源になるだろうと思うんです。そのあわが、最近は特にABS等が入っておりますから、よけいあわが立つ。そのあわが割れるときに、十ミクロンから五十ミクロンぐらいの小さな水滴ですか、こうしたものが出るわけです。これが煙突から大気の中に入っていってしまう。あるいは終末処理場でも、そのあわから出るところの小さな粒が周辺に流れていく。これが私は下水処理場周辺におけるところの一種のくさいという原因にもなっておると思う。しかし、この中に有害物質が入って遠くへ飛んでいく。その小滴は二キロぐらい飛んでいくという報告がアメリカの専門書に出ております。そうなってきますと、いままで、ふたも何もしないで、非常に大規模に終末処理をやっている周辺というのは、そういう危険というものは非常にある。あるいは場合によれば、ウイルスやバクテリアがこの水滴に入っていくかもしれない。そういう点で、いままでのような終末処理場のあり方というものは変えていかなければならぬ。今度、臭気防止、においのほうの法律は出なかったわけであります。あるいはバキュームカーのあり方、これを見ておりますと、何ですか、排気のところから白い煙みたいなものがずっと出ておりました。ああいうものは、おそらく私は十ミクロンから五十ミクロンぐらいの水滴が非常にたくさんあると思う。この点はひとつ、ああいう形がいいのかどうなのか、今後の公害発生の相当な大きな原因になってくるのではなかろうかと私どもは思うわけであります。これについては、いまここで直ちにお答えはいただけるかどうかわかりませんけれども、これは厚生省所管のものが多いと思います。これはひとつ研究していただきたいと思いますが、前の二つについては、できたら、ここでお答えをいただきたいと思います。
  78. 橋本龍太郎

    政府委員橋本龍太郎君) いま厚生大臣がこちらへ参りましたけれども、参る前からの継続しての御質問ですので、私から簡単にお答えを申し上げます。  順番をさかさに申し上げて恐縮でございますが、最後の一点は、確かに先生の御指摘のとおり、いま即刻返事を申し上げるのは困難でございます。実は公衆衛生院等で研究をしてもらっておる最中の問題でございます。これについて、いまどうこうするということを申し上げる段階にございません。ただし、これが好ましいものではないことは事実でありますし、現在、公衆衛生院等で研究をしてもらっておる最中であります。  なお、清掃手数料のお話が先ほどございました。確かに、全国的に見てまいりました場合に、一般の家庭廃棄物を中心として、清掃事業というものは無料化の方向というものがございます。というより、手数料を徴収する市町村がだんだん減ってきたと申し上げるほうが正確かもしれません。しかし、これは実は衆議院で御審議をいただきました時点においても、また、本院の社会労働委員会に今回の改正法案が付託をされまして以来、やはり同じ議論が出ておるわけであります。先生方よく末端の状況を御承知のとおり、それぞれの市町村の従来の歴史的な経緯と申しますか、そうしたものが入り組んでおりまして、一がいに手数料の徴収をいけないときめつけるわけにもまいりませんし、また、有料にすべきであるというような指導をすべき性格のものでないことはよく御承知のとおりであります。ただ、私どもがこれを条文の中にわざわざ入れてまいりましたのは、今回の清掃法を全面的に改正をしなければならなくなった一つの大きな要因でございます一般家庭の廃棄物の中にも、いわゆる生活環境そのものから出てくる廃棄物以外に、粗大ごみといわれるようなものが非常にふえております。たとえば、従来であったら下取りに出しておったであろうテレビであるとか、古くなったラジオであるとか、そういうものが捨てられているケースというものは現に相当量あるわけであります。こうしたものの特殊な処理を必要とするものが現実にある。また、今回の清掃法においても、産業廃棄物でありましても、その事業世帯等が比較的小さいようなものの中には、一般廃棄物の中で処理をされていくケースも多々あると思います。そうしたものを考えてまいります場合に、はたしてそうした特殊な原因によって出てくる廃棄物まで、完全に国あるいは自治体が無料で処置していかなければならぬものだとは私思いません。排出者の責任において処置していくべき性格のものが多分にあると思います。同時に、自治体が行なっていかれる産業廃棄物の処理についての費用徴収というものは、やはり同時に御審議をいただいておる費用負担法の中の精神にのっとって、各自治体において当然これは手数料を徴収していくべき性格のものであります。ですから、私どもは、何も各市町村や一般廃棄物処理の体系の中で、現在費用徴収をしておるところが減りつつある傾向を妨害をしようとも考えておりませんし、そういう意思は別にありません。やはり、国あるいは地方自治体が負担すべきではない種類の廃棄物というものが相当量出ておることを考えますと、費用徴収というものも当然私どもは法文の中において考えておいてしかるべきであろうと今日考えております。  それと同時に、そういう一連の廃棄物の形態の変化の状況等から、単純な作業の繰り返しとはいえない状況に清掃事業そのものがあります。特に、一部の産業廃棄物でありますとか、粗大ごみ等とかの取り扱いになりますと、むしろ、これは近代的な衛生工学の知識を持っていないと、取り扱いそのものについても問題の起こるようなケースもございます。むしろ、今日行なわれており、また今後も行なわれるであろう清掃業務というものは、近代的な衛生工学というものをその基礎に置いた住民に対するサービスであります。そうした場合には、当然、公害事業に従事する方々には、その時期その時期の科学技術の水準に応じ、できるだけやはり即応した専門的知識を持っていただかなければなりません。そういう点を考えますと、資質向上というものをやはりどうしてもどこかにうたうべきであると考えなければならない、これが基本的な私どもの考え方であります。で、現在、そういう意味での職員の資質の向上のために、国も、また都道府県においても、それぞれの立場での研修活動等を行なっております。四十五年度においては、技術管理者についての研修会費として百六万円余りの予算を計上をしてまいった次第であります。  以上です。
  79. 内田善利

    内田善利君 私は、事業者負担法を中心にして質問したいと思います。  その前に、長崎県の対馬の佐須川流域はカドミウム汚染の要観察地域として、いままでいろんな検査も行なわれてきておるわけですが、前に、昨年は長崎大学には三名精密検診のために入院したということもありますし、また、ことしになってから、第一次、第二次検診が行なわれているわけですが、その結果について厚生省に簡単に報告をお願いしたいと思います。
  80. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 本年度分の検診の結果は、まだ私どものほうに入っておりません。
  81. 内田善利

    内田善利君 あまりそっけない返事だと思います。私が答弁するような答弁だと思うんです。いままで、あの佐須川流域というのはたいへんなところなんです。二人もなくなった患者イタイイタイ病患者であった、そのように学者の間では認定されておりますし、また現状は、私の見たところでは非常にあぶない地域なんです。ところが、私たちはなかなかあすこに行けない。そういう状況であるし、また、有名な萩野博士も小林教授も拒否している状況です。一番これを掌握しなければならないのは厚生省だと思うんです。私が行ったときも、厚生省が来られるならば何でも応じます、このように言っておりました。一党が行ったのでは、その当時は拒否されている。そういうところなんですから、厚生省はもっと私たちに親切に、また国民の前に親切に答弁していただきたい。いまの答弁は私は気に入りません。
  82. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) たいへん失礼いたしました。  対馬のカドミウムの要観察地域の検診状況については、本年度分の結果はまだ承知いたしておりませんけれども、四十三年度と四十四年度の検診で、一応五名に鑑別診断の必要があるということで、九大の鑑別診断研究班のほうに所要のデータをそろえて、その鑑別診断班の診断結果を待ったわけでございますけれども、それにつきましては、先生承知のように、本年の七月七日に、一応、現在までのデータではカドミウムの中毒を支持する所見には乏しい、しかしながら引き続き経過を観察すべきものと考えられると、そういう結論がございましたので、本年度引き続いてこの五名について再度精密検診を行なうほか、先生指摘のように、いろいろと問題のある地域でございますので、地域住民千二百六十四名でございますが、これを対象として健康調査を行なう、そういうことになっておるわけでございます。なお、この経費等につきましても、特に公害の調査研究委託費によってまかなうことにいたしております。
  83. 内田善利

    内田善利君 それでは私が御報告いたします。  千二百六十四名は、樫根、下原、小茂田、椎根地区の千二百六十四名を検査して、そのうち五百四十七名が検診を受けたわけですね。そのうちプラスは二十七名です。それから日掛、上山地区が、四百五十名のうち百二十名、これがプラスが一名、そういう結果です。十一月には第二次検診が行なわれて、上のいまの二十七名と四十四年の十七名、計四十四名が第二次検診を受けております。  そういう状況なところに、土壌が、ことしの七月でしたか、三・五PPMのカドミウムを含んだ米が発見されております。これは農家から発見されたわけですが、そのあと、七月採取分が三・四PPM、八月採取分が三・三PPM、こういうのが出ておりますが、今回さらにまた米の中から、最高は二・九五PPM、これはテレビ放送で私は聞いたのですが、それからそのほか、一・〇以上の——いわゆる農林大臣の言われた汚染米ですね、これが一・〇以上が四件、そのように汚染されていることが報告されたわけです。このとき私が聞いた放送では、私たち当然汚染源であると見られる東邦亜鉛の社長が、関係ないのだ、千三百年前の古い鉱山による汚染であるからわれわれには関係ないのだ、こういうニュアンスの放送を私は聞いたのですが、これとこの間の連合審査答弁とは全然違うわけですね。当然会社はその責任を持つべきだと、このように私は思ったわけですけれども、この汚染米の出た農地の客土あるいはその他の事業は、当然私は企業が負担すべきであると、このように思っているわけなんですけれども、これはどうなんでしょうか。
  84. 莊清

    政府委員(莊清君) いま先生おっしゃいました東邦亜鉛社長のテレビ放送というのは、私ちょっと存じませんが、経緯から申しますと、私は耳を疑わざるを得ないような感じが、実は正直のところ、いたしております。と申しますのは、ことしの夏でございますが、現在の社長の前の社長がおいでの際でございますけれども、その当時の副社長つまり現在の社長とお二人で私を訪ねられまして、問題のこの対州鉱山の問題についていろいろお打ち合わせをした際に、前社長、それから当時の副社長つまり現在の社長、このお二人とも、なるほど樫根部落や床ノ谷部落というのは徳川時代から非常に掘っておった所で、非常に悪い技術のもとで相当カドミウム含有量のひどい鉱石を谷間に捨てて、その上に土盛りをして部落をつくった、あるいは畑をつくったということは確かにあるけれども、東邦亜鉛としても昭和十六年以来ここで相当大規模に事業を行ない、排水をしておった。そのころは、現在と違って、カドミウムの法的な規制もなく、あるいは有害だということもだれも知らずにカドミウムを東邦亜鉛も谷川に捨てておった。それがかんがい用水に一部入りまして、こういう部落の田畑に引かれたということが昭和十六年以降事実としてあったということはお認めいただきまして、そして、今後地元の長崎県のほうから、いろいろな調査の結果、賠償問題について、法律上の賠償ではございませんけれども、地元対策という意味で、米の問題等いろいろ実質的な補償の問題について、公式に企業に対してしかるべき措置を講じてもらいたいという御要請がある場合には、会社としては誠意をもって対処いたしますということを、はっきり私は伺ったわけでございます。そして、私から長崎県のほうにも、その旨をさっそく伝えましたし、会社のほうからもその旨を同様県のほうに連絡するように、私はお願いしたわけでございます。したがいまして、なるほどこの地帯は、古くたどりますと、いろいろな複雑な関係は確かにあろうかと思いすけれども、私どもは、ここの農地汚染につきまして、現在の鉱業権者である東邦亜鉛株式会社が責任がないというふうなことは全然考えておらない。これが通産省の基本的な考え方であり、東邦亜鉛の幹部も全然考え方に違いはないと確信をいたしております。
  85. 内田善利

    内田善利君 これは九月二十四日の話ですが、長崎県の副知事の話によりますと、新任のあいさつで長崎県庁をたずねたときに、農地や農作物の汚染などで地元に迷惑をかけているので、県の公害防止事業費を負担したいという申し出があった。これは非常にけっこうなことですが、そのあと汚染源と断定してもらっては困るが、という断わりがあるわけですね。こういうことがやはり私は裏書きしているように思うのです。やはり、もう少しこの辺について指導をしていただきたいとは思いますし、助言していただきたいと思いますが、やはり企業の姿勢というものがもう少し変わらなければ、この長崎のカドミウム汚染の問題は片づかないんじゃないか、このように思うわけです。と申しますのは、私はもうずっと、四十三年、四十四年と、このカドミウムの汚染状況はデータをとっているわけですが、最近だんだん大きくなってきたですね。最初は〇・四PPMが暫定基準であったころは、〇・四PPMを上回るのは少しあって、結論としては上回っているのも少しはあるというような結論が出ておりましたけれども、最近は、このように一・〇以上のものが——一・〇以上の米を汚染米とされてから、またぼつぼつそのように出てきた。少なくなるどころではなくて、汚染米も多くなった。土壌も多くなった。こうなりますと、汚染源は一体千三百年前の鉱山なのか、または現在の鉱山なのか、その辺、非常に疑わしくなってくるわけですね。そういったことを幾ら申し上げても、きりがありませんが、この問題で土壌が汚染されたことはわかったわけですが、これは、この法案が通過して成立すれば、当然私は企業が負担すべきであると思いますが、この点はいかがでしょうか。
  86. 莊清

    政府委員(莊清君) 今国会に提案されております農地汚染防止法案が施行されました暁には、私ども直接その法律の施行責任者ではございませんけれども農林省及び地元と県当局におかれて、現在すでに要観察地域になっておることでもあり、一PPM以上の米が現実に出ておるわけですから、間違いなく、農地汚染防止法の規定に基づきまして、地域の指定が行なわれたり、あるいは改善計画が組まれるということになるものと考えております。その場合に、公害防止事業費事業者負担法、これに基づきまして、鉱業権者である東邦亜鉛株式会社に対して費用負担の決定が、県の審議会においていろいろ審議がなされるかと思いますが、当然になされるものと、こういうふうに予想をしておるわけでございます。
  87. 内田善利

    内田善利君 そのことは、総務長官がお見えになってからお聞きしたいとは思っておりますが、この対州鉱山に昔から製錬所が置かれておった、銀を精錬しておった、その残りの鉱滓は山のように積んである、その下流である、あるいは下のほうにある農用地、あるいは井戸水等が汚染されているわけですが、それと別に、今度は現鉱山という関係で、非常に複雑なわけですが、その前の鉱滓の汚染による負担ですね、それと、鉱業法あるいは鉱山保安法が成立され、その適用になってからの負担、また、これと無過失責任との関係についてお教えいただきたいと思います。
  88. 莊清

    政府委員(莊清君) この問題は非常にむずかしい問題かと思いまして、私どもも十分研究が行なわれておるとは実は申せない状況でございまして、今後も引き続き勉強さしていただきたいと考えておりますけれども、千年も前からここで掘っておった、銀だけを精錬して、現在で考えれば亜鉛、したがってカドミウムをそのまま含んだ鉱滓を全部谷間に昔の人が捨てておった、何百年の長きにわたって、そういうことを徳川時代にもやってきた、そこへ土盛りがされて、部落ができ、畑ができたということがいわれておることも承知いたしておりますが、そういう時期は、日本の国にいわゆる鉱業法というものもございませんし、たしか明治三十六年か八年に最初の鉱業法ができたと思います。それ以前のものは、現在の東邦亜鉛とは、ちょっと関係があるとは申しにくいのではないかと思います。明治三十八年ごろ最初の鉱業法ができましてから、現在の鉱業法に逐次改正されてきたわけでございますが、無過失賠償責任の規定というのは、実は昭和に入りまして昭和十四年の改正で設けられた規定だと記憶しております。  それ以前の状態がどうであったかと申しますと、明治三十八年から昭和十四年までの間に、この地区では鉱業権が四回ないし五回、たしか移転をされておることが鉱業原簿によって確認をされておりますが、その当時の鉱業権者というのは個人もしくは非常に小さな会社等でございまして、現在その所在を尋ねるすべもないというふうな状態でございます。少なくとも法人のものは明らかに解散しておって、不存在になって中断されておるだろうと思います。昭和十六年以降は、東邦亜鉛が鉱区を全部承継いたしまして開発してきたわけでございますから、そのあとのものについては法律上明確に東邦亜鉛に責任がある。明治三十八年ごろから昭和十四年の無過失責任の規定ができるまでの間は、これはなかなか法律解釈のむずかしい点かと思いますが、私ども考えておりますのは、鉱業権者が、過去のものは、明確にあれば連帯するというふうなことになろうかと思いますが、申し上げましたとおり、連帯すべき相手方が非常に不明確である、こういう事情があろうかと存じます。こういう点、法律的にも実態的にも問題はあろうかと存じますけれども、したがって、通産省としても検討を続けさしていただきたいと存じますけれども、最初にも申し上げましたとおり、ここの地区のカドミウム米について、東邦亜鉛株式会社が汚染源でない、全くほかの人が汚染源であるというふうな言い方というのは、会社としても、おそらくしていないと思いますし、実態からいっても、そういうことはとても言えないことではないか、かように考えております。
  89. 内田善利

    内田善利君 その昭和十六年以前の銀鉱を製錬していた当時の鉱滓によって、スラグによって汚染されている樫根部落その他、ここは、一体客土事業をしようとする場合、どういうような方法でできるのか、この辺、おわかりでしたら教えていただきたい。無過失責任も適用にならない、また、今度の法案でも適用にならない、汚染源がわからないわけですから、法人ももういないし、そういうところの農地の改良事業その他の諸設備をするいわゆる防止事業に対しては、どういう方法があるのか、公共事業においてやるのかどうか、その辺、お教え願いたいと思います。
  90. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまの点でございますが、まず、最初に申し上げたいのは、今回の費用負担の関係法案は、これは、地方公共団体あるいは国が防止事業をやります場合、それにつきまして費用を企業に負担させるということでございまして、むしろ、たとえば土壌の汚染、あるいはヘドロの問題、これが次に公害を発生させるということに注目いたしまして、積極的に公共的事業をやるということでございますから、公害の結果損害が生じたということによります私法上の賠償の問題とは一応切り離して考えております。この点を最初に申し上げたいと思います。  それから、ただいまの点でございますが、これも、主として今後農用地土壌汚染防止法がどういうぐあいに運営されるかということでございまして、この新しい法律が通過いたしますれば、当然、都道府県知事が農用地土壌汚染対策計画を、指定された地域につきまして、立てていくわけでございます。その際、計画の中身としまして、あるいは客土事業をやるとか、あるいは地目の変換をやるとか、その他いろいろな費用が出てくるわけでございますが、これに要する費用は、たてまえといたしましては、私どものほうの事業者負担法でカバーするわけでございます。ただ、発生原因者がすでにいないという場合につきましては、この費用負担法は働かないわけでございます。その辺につきましては、公共事業として行なわれる土壌汚染対策事業に対して国がいかに助成していくかという今後の方針の問題になってこようかと思うわけでございます。
  91. 内田善利

    内田善利君 それと、今度、昭和十六年以降の鉱業法が適用された後は、荘局長のお話では、承継者がずっと続いておれば現在の東邦亜鉛が負担するべきだと、責任があるんだと、こういう答弁だったと思いますが、これは間違いないですね。
  92. 莊清

    政府委員(莊清君) 鉱業法の無過失責任のことがどうなっておるかということで御答弁しておったわけでございますから、昭和十六年以降の東邦亜鉛の鉱区にかかわる分は論外、もちろん東邦亜鉛の責任でございます。それからそれ以前の、鉱業権者が鉱滓を捨てておった、それによって畑が汚されたということがあったとしまして、そしてその鉱業権者が存在いたしますれば、これは連帯責任になるというふうに、鉱業法の規定は読むべきであろうと私どもは考えております。ただ、連帯すべき相手方が、この場合には不幸にして不存在になっておると思われるということを申し上げたわけでございます。
  93. 内田善利

    内田善利君 それでは、一般論としてお聞きしますけれども、負担法の第七条の三ですが、これはこの間農林大臣並びに総務長官にお聞きしたわけですけれども、第七条の三ですね、農用地の客土事業その他の政令で定めるものは二分の一以上四分の三以下の割合で企業に負担させるという、ことですけれども、私はやはり、ここは企業が全額負担するようにすべきではないかと、このように思うわけですが、これをどういうわけで二分の一以上四分の三以下の割合にされたのか。この点を、まずお聞きしたいと思います。
  94. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、第七条の第三号に特異な表現がしてございます。すなわち、カッコ書きの中に「公害の原因となる物質が長期にわたって蓄積された」という表現がございます。この点が実はそれに影響があるわけでございまして、土壌というものは一朝一夕でそう汚染されるものではない。そういうものであれば農薬取締法のほうでいけるような性格のものになじむと思いますが、そういう性格を持っておりますので、たとえば、先ほどちょっと私おりませんでしたが、対馬の何百年か前の話が出たのじゃないかと、着席したとき思ったのですけれども、そういうものは別にして、やはり一番新しいものでも、どのくらいたっているかといいますと、日本鉱業の黒部製錬所というのが二十年ぐらいたっているそうでございます。そういたしますと、たとえばカドミウム論争というものが始まって問題になったのは、ほぼ四、五年前くらいからかと思いますが、企業に加害者意識はもちろんない。あるいは被害者のほうも、全然被害者であること自体がわからなかったという時代が相当長いわけでございます。そこで、それらのものを一律に十分の十ということだけでいけるかどうかについては、非常に大きな問題があると考えます。これはまた、四、五年以内というものでは、そのような土壌汚染あるいは農作物のそれによる汚染されたものが出るという現象に、なかなかなってこないわけでございます。そのような土壌の特質からいきまして、このような表現のもとに、二分の一以上四分の三以下ということを一応の法律で定める決定の基準ということにいたしたわけでございます。
  95. 内田善利

    内田善利君 この「公害の原因となる物質が長期にわたって蓄積された農用地」ということですけれども、対馬の場合は、先ほどからお話がありますように、一三〇〇年あたりから汚染されておるようでありますが、先ほども汚染のデータを申し上げましたように、一・〇以上は先ほど申し上げたとおりですが、〇・四以上も、これは六十何カ所とりまして、まだ三十カ所だけの報告ですけれども、県衛生部の報告ですが、これでも、三十の米のうち〇・四以下は五つだけなんですね。あと、三十件のうち二十五件の米は全部〇・四以上、このように非常に汚染が激しいわけですけれども、こういったところは、ここからここまでは〇・四以上だから客土事業をする、ここは〇・三だから客土事業をしないというようなことになれば、客土事業そのものも、公害防止事業そのものも非常にたいへんだろうと思うわけですね。その辺を一括して、〇・三ぐらいあっても客土事業をしようという場合には、この〇・三の農用地は一体どうなるのか、農家に負担させるのか、その辺はどうなんですか。
  96. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、前提が、一PPM以上の米の産出された地域というものを、その周辺も若干配慮しながら、指定地域としていくことになるわけでございます。ただ、政府のほうとして、厚生省の食品衛生法にいう基準で、許容量として、米食民族である日本人が朝昼晩通常食べる量を繰り返して食事していっても、一PPM以下であればだいじょうぶであるということが一応出ているわけでありますが、ただ、農林省がとりました措置が、買い上げはするけれども〇・四PPM以上のものは配給に回しませんという措置をとりましたことが、非常な誤解と混乱とを招いているものと私は思うわけでございます。しかしながら、これは一応厚生省の要観察地帯にするための調査を開始するための基準でございまして、人体に有害という〇・四PPMという基準は存在しないわけでございます。でございますから、それらの意味において、今回の土壌汚染防止法によって行なわれる事業、そしてその負担が公害防止事業費事業者負担法によって分担される、その対象は、一応原則として一PPM以上の汚染された米のとれた地域に対して行なうということでございます。その手段等がいろいろと書いてあるわけでございます。
  97. 内田善利

    内田善利君 私は、この間の連合審査のときには、一・〇PPM以上と、このように受け取ったわけですが、非常に混乱と誤解をしておったということになるわけですが、そうしますと、土壌汚染法のあの「おそれ」なんです。この「おそれ」は、一・〇以上なのか、〇・四から〇・九は「おそれ」ではないのかという、今度は論法になってくるわけですけれども、このときも私は念を押して確認までしてお聞きしたわけですけれども、〇・四から〇・九までの米を「人の健康をそこなうおそれがある農産物が生産され」ると、そういうふうに、いいですねと確認をしたわけですけれども、この確認が間違いだったのか。
  98. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 不安と混乱と言ったのは、国民の間に、配給を受ける人たちの間にそういう不安が起こった、また生産者の間にも、自分たちは保有米を食べてだいじょうぶなのだろうかという不安が起こったということを表明しただけでありまして、内田委員の言われる、質問が混乱しておったと私は申し上げておるわけではないのであります。この「おそれ」というのは、厚生省が一PPM以上を常食して主食とする場合においては心配であるということで、いわゆる食糧庁から言えば食管法にいう国民の食糧あたり得ないという判断をしたわけでございますから、この線が「おそれ」のある線でございます。  しかしながら、これを飛び飛びに、一PPM以上出たたんぼだけを区切って、あぜ道ごとに土地改良というものができるわけではございませんから、したがって、この運用にあたっては、その「おそれ」のある周辺というのは、おのずからまた一PPM以下の若干の地域も含まれながら、それが行なわれていく。もちろん、基本的には、排水・排出口等におけるきびしいそのような有毒物質の規制というものは今後行なわれていくわけでございますから、それらに対しての元せんを締めるほうも一応の規制がきびしくかかっていくということでありますので、これらの点については、混乱をしておるというのは、いわゆる国民に混乱を与えるおそれがあるという意味で申し上げたわけでございますから、内田委員との質疑応答の間には何の混乱もなかったと思っております。
  99. 内田善利

    内田善利君 それでは対馬の例をとりますけれども、対馬で一・〇以上のお米が出たわけですが、その農用地は、結局、この法律が適用されると、〇・四から〇・九の付近にたくさんあるわけですけれども、そういった農用地の客土事業についてはどういうふうに考えますか。一・〇以上はあちこちでたくさん出たわけですが、〇・四以上が三十件のうち二十五もそういう米が出ておった。客土事業をする場合には、やはりこういったおそれのある一また年々対馬の土壌は、私のデータではふえてきている。いままでは一・〇以上というのはほとんどなかった。〇・四以上が少しあった。最近は、一・〇以上がたくさん出てきた。そういう状況で、土壌の中に入ったカドミウムは逃げ場所がないわけですから、どこか持っていく以外はカドミウムは累積されていく、こう見ますと、どうしてもやっぱり、〇・四以上とは言わなくても、一・〇に近いような、そういった土壌も客土をしていく必要が生じてきたということが当然予想されるわけですが、そういった農用地との関連性ですね、これはどのように考えておられるか。
  100. 加賀山國雄

    政府委員加賀山國雄君) ただいま山中長官のほうからお答えがございましたが、私たちもそういうように考えておりますが、ただいま内田委員から御質問のございました問題、非常にむずかしい問題でございますが、今回土壌汚染防止等に関する法律が通過いたしました場合には、先ほど長官からお話がございましたように、一PPM以上ということで考えております。しかし、先ほど長官からお話がございましたように、一PPM以上というのは方々に散らばって出てくる可能性もございます。また、いま内田委員から御指摘のように、〇・四以上というのも方々に出るかもしれません。しかし、そういうことで、われわれは、一PPM以上のところにつきましては、この法律に基づきまして事業者負担法等も関連が出てまいりますが、それと残余の部分につきまして一括土地改良をしたほうが有利である、そのほうが土地改良しやすいという場合には、その残余の部分は、現行の直接県で行ないます土地改良事業、そういうものでカバーしてまいるわけでございまして、要するに、二つの事業が重なって入っていくというようなことになるのではなかろうかと、現在は考えておるわけでございます。
  101. 内田善利

    内田善利君 時間がありませんので、これでこの問題は打ち切りますが、結局、樫根部落の上流のいわゆる鉱滓による被害については何らかの公共事業等で処理する方法があるということ、それから現在の汚染状況については、東邦亜鉛にはやはり責任があるのだ、責任がないということにはならない、当然今度の法案汚染地区に対しては措置される、こういうことだったと思いますが、確認をしまして、もう一問お聞きしたいと思います。  それは、公害問題で私たち国民の非常な期待と注視のもとに、こうして審議しているわけですけれども、聞くところによりますと、公害問題を利用して便乗値上げをしている、生産品を値上げしようという悪質な企業が、われわれ国民にとっては許せない企業が出ておると、こういう現実に対して、経企庁長官はお見えになっていないようですが、先日の連合審査では、野党議員の質問に対して、経企庁長官は、公害の費用は経営上のコストである、これが直ちに価格の変化にはならない、直ちに値上げにはならない、こういったニュアンスの答弁があっておりましたが、こういった企業が出ておるという現実に対して、総務長官、どのようにお考えになるか……。政務次官、お願いしたいと思います。
  102. 山口シヅエ

    政府委員山口シヅエ君) お答えいたします。  公害防止のためには、公害防止技術の開発を推進するとともに、基本的には、公害発生責任者が自己の負担でその発生を未然に防止することが必要でございます。このような公害防止関係の出費は、それ自身、生産力増強になるわけではございませんが、企業にとりましてはコスト増の要因になると私は考えます。しかし、公害はいまや国民の生命にもかかわる問題でございますから、物価動向のいかんにかかわらず公害防止対策は推進していかなければならないと存じます。しかしながら、公害防止の経費は本来企業経営に組み込まれるべきものでございますし、技術開発による公害防止コストの低減と一般的な生産性向上などの企業努力によって、そのコストを吸収すべきものであろうと考えますので、容易に価格に転嫁すべきものではないと私は考えております。  なお、政府といたしましては、負担力の乏しい中小企業などに対しましては、公害防止施設に対する適切な助成措置を講じてまいりたいと考えております次第でございます。
  103. 内田善利

    内田善利君 ことしの八月ごろでしたか、米国第二の鉄鋼会社のベツレヘム・スチールのエドモンド・マーチン社長が、公害防止費を使わない日本の企業は米国企業との競争で優位に立っていると、そのように述べているそうです。それからさらに七月には、英国の海運会議所のジョン・カービー副頭取が、日本は年間六十万トンほどの原油を海に投げ捨てている、世界で最も海をよごしていると、このように言っているわけですけれども、これは日本の公害企業に対する考え方を諷刺した外交攻勢ではないかと、このように思うわけですけれども山中長官は、ことしの九月十九日の日本生産性本部の会合で、公害費用の負担が製品価格にはね返るのはやむを得ないと、このように発言されておるということですけれども、外国のこういった発言等を通して、また、いまの政務次官のお話等を通して、山中長官のお話はちょっと承服できないのですが、この点どうなんでしょうか。
  104. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私の速記録がありますかどうか、ごらんになればわかると思うんですが、私は、国会で終始一貫そういうものを考えていない、企業努力によって吸収すべきである。吸収できないものは消費市場において選択から落伍するであろう。これは国際市場についても同じことである。ただいまのベツレヘムスチールの社長の話もたびたび引用いたしておりますし、また、海水油濁防止法をさらに海洋汚染防止法まで前進させた理由も、やはりこのようなヨーロッパにおける日本が最も海を油でよごしている張本人であるということを念頭に置いてこそつくったわけでございます。生産性本部の会合は、中山伊知郎先生が来てくれということでございまして、参ったたった一つの外部との会合でございますが、それには労働界あるいは経営者、いろいろの代表が入っておられる御承知の機構でございます。したがって、私がそこで、製品に転嫁すべきであるとか、やむを得ないとか言った記憶は私自身にはないわけであります。そのようなものもあるいはあるかもしれません。しかし、それは消費市場において消去されていく、消されていくということを確かに言っていることもあるわけでございます。
  105. 内田善利

    内田善利君 ことしの六月から酸化チタンの販売価格が二十五円、九月から三十円というふうに値上げされたわけですが、その理由が最近における公害対策費を主とする諸経費の増加を理由として、石原産業以下七社がこういう値上げをしまして、これが談合が行なわれたということで公正取引委員会から破棄の勧告があったようですけれども、この事情を詳しく説明願いたいと思います。
  106. 吉田文剛

    政府委員(吉田文剛君) お答え申し上げます。  わが国におきます酸化チタンの需要のほとんどすべてを供給しております石原産業株式会社外六社、全部で七社でございますが、昭和四十五年四月二十三日に会合を行ないました。公害対策費を主とする諸経費の増加を理由といたしまして、酸化チタンの需要家渡し価格を六月二十一日から現行価格より一キログラム当たり三十円値上げすることを申し合わせ、これを実施いたしましたわけでございます。これに対しまして、公正取引委員会は、十二月の四日に協定の破棄を内容とする勧告をいたしました。この勧告の応諾期限が十二月十七日でございますが、去る十二月十四日に勧告を応諾しないという返事がまいりまして、ただいま、至急審判会議の準備をいたしております。  以上が概略でございます。
  107. 内田善利

    内田善利君 そういった企業の姿勢、また、田子の浦の製紙業関係などでもまだヘドロはなくなりませんし、また、設備等もなされたかどうか知りませんが、私の聞くところでは、そういった公害防止施設もしない前から紙の値上げをしているというような状況もありますし、こういった公害に名をかりて、公害防除をすることは赤字になるのだということから値上げをしているという向きがあるようですけれども、こういったことに対して、私たち国民をあげて公害防止に真剣になっているときに、そういう姿勢があるということは、私たちはどうしても納得できないわけですけれども、こういったことに対して通産大臣あるいは経企庁長官はどのような対策を講じていかれるのかお聞きしたいと思います。
  108. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは市場独占のものは、ただいまのように、公正取引委員会が応諾を迫り、応諾をしなければ審判に持ち込むという、司法権に似たものによってさばいていくことになりますと——田子の浦のちり紙メーカーは実は上げておりません。これは二〇%上げるということを発表いたしましたときに、いみじくも、どこかで言ったと思いますが、ある新聞の漫画に、公害のしりぬぐいをちり紙でという漫画が出て、全く噴飯ものでありまして、まだそのメーカーに何も負担をしいて、具体的な支出をしいていない段階でございます。当然世論の批判に耐えかねて、それらの値上げは撤回したと私は承知をいたしておるわけでございます。しかしながら、今後の普遍的な問題として、これはやはり企業側において、私たちは、社会に受け入れられる企業でなければ、その地域での存立というものは反社会的な態勢では続けていけないんだということもたびたび申しておりますけれども、市場からそっぽを向かれる企業というものもやはり結果的に敗北につながるわけでございます。やはりそれらのコストをどうしても合理化の中で吸収できなかったとするならば、配当を減らすとか、あらゆる手段において消費者に転嫁しない努力を、いわゆるモラルを打ち立てていくべき時代に来ておる。これが経済理由ならば、量から質への転換であり、企業にとっては新しいモラルを求められているということになっておるのだろうと思いますから、これは所管の通産省、物価監視に当たる経企庁ともども公害対策本部としても、それらの姿勢が日本経済の中に放任されて、のさばっていかないように、監視、指導していかなければならぬと考えております。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 私が質問いたしますのは、時間も少ないので、簡単にお答え願いたいと思いますが、私ははたして公害が減ることが期待されるかどうかということについて、厚生大臣総務長官にお尋ねをしたいのです。  厚生大臣は、従来の環境基準というものが、衆議院で御答弁なさっていらっしゃる中で、従来の環境基準を設定するにあたって、   〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕  人の健康保護と生活環境保全という二本立てで策定をしてきた。健康保護は厳密に、生活環境のほうは経済・産業との調和をはかり、ややゆるくしてきた、このようにお答えになっておりますが、これは従来環境基準がこのようにきめられてきたということを厚生大臣が述べられていることだと思うんですが、このとおりでよろしいですか。
  110. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私もそのことについては、いろいろの場合に発言をいたしましたが、私の了解する限りにおきましては、公害対策というものは、人の健康を保護する目的と、それから環境を保全する目的と両方を達成しなければならない。しこうして生活環境保全の場合には、経済産業との健全なる調和をはかるべきだ、こういうことでありますから、私の理解では、その限りにおいては、生活環境の保全対策としてはそこにやはり一つの制約がかかっておった。第九条の環境基準の条項の制定におきましても、同じように二つにかけてありまして、でありますから、そこが問題になってきたわけでございますので、したがって、産業経済との健全なる調和の条項というものを、今度のように、取ることにいたしますと、何らの苦慮は要らない。ほんとうに人の健康、また、場合によりましては、生活環境を保全するほうが環境基準をつくらなければならない場合もあります。これは人間よりも動植物のほうが一そう有害物質に対しては弱いということもございまして、強くしなければならない場合もあるようでございますが、いずれにいたしましても、人の健康と生活環境の両面を保全するために、われわれが妥当と考える環境基準行政目標として設定してまいることになる、こういう私は考えでおります。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣の御答弁は、健康は厳密に、それから生活環境は産業経済との調和をはかりややゆるくした。そうして生活環境の保全を目的とする環境基準は、産業経済の健全な発展を害さないように、それとの調和のもとにややゆるくつくる場合もあり得る、また、むしろそうすべきであるというようなたてまえでありました、こう述べていらっしゃるわけですが、これは逆であって、生活環境を保全することによって人の健康も守られるのであって、むしろ生活環境をはなはだしく破壊される結果、鳥も虫も魚も住めなくなって、そうして木も草も枯れてしまう、そういう環境からして人の健康が害され、そういうことが数多く各地に発生しているわけですね。それですからそれは逆だということをお認めになれば、その点はそれでよろしいのですが、さて経済との調和条項があるから、生活環境のほうはゆるくきめたというわけですから、経済との調和条項をいま削除しようという段階では、今度は新しい生活環境基準を新しく設定し直すのが当然だ、こういう結論になりますね。
  112. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 現行公害対策基本法の第九条の第二項には、生活環境保全のための環境基準の設定はゆるくしろとは書いてありませんけれども、産業経済との健全な調和をはかることを顧慮しなさいと書いてある意味は、平たく言えば、環境基準だけ強くして、産業経済のほうがつぶれてしまうことがあってはならないと解しておりました。でありますから、世論にこたえて私は早くから産業経済の条項というものは、やはり当初も、いまから三、四年前公害対策基本法の論ぜられたときの原点に立ち返って削除論を主張しておった一人でございます。ところが、環境基準がいま設定されておりますのは、硫黄酸化物とか一酸化炭素、あるいはまた、水質保全なんかにつきましても環境基準がつくられておりますが、現在までに現実につくられておりますのは、ほとんど全部が人の健康保全のためにつくられたものでございます。硫黄酸化物の環境基準も〇・〇五というのがそうでございますし、一酸化炭素の環境基準もこれは都市などの交差点ばかりでなしに、都市等において一酸化炭素による人が極度の影響を受けることのない目標をつくっておりますので、したがって、今度産業経済条項が削除されましても変える必要はないと思います。多少問題があるとすれば水なんでございますが、これは経済企画庁からお答えがあると思いますが、水は健康項目のほうでは八種類ぐらいの有害物質を掲げまして、たとえばシアンであるとか、鉛であるとか、クロムであるとかいうような硫黄、重金属を含む有害物質を並べて、あるものは全然検出せざるもの、あるものは〇・〇一未満であるというようなことをきめてございますが、もう一つのほうの環境基準と申しますか、数段階の当てはめ的な環境基準のきめ方もございます。しかし、それは現実に産業経済の発展を顧慮して低くきめられているかというと、これはごく最近いろいろな利水目的、これは私どものほうが一番それの関係がございまして、水道なんかに引っぱってまいります際にやはりきれいな基準をつくっておいていただかないと、たいがいの川から水道水源を引っぱってまいりますので、そういうような意味できつくこしらえてあるはずでございますが、現実の問題としましては、いまのところ私は手直しする分は、これは厚生省だけの判断でございますが、経済企画庁の考えもあろうし、あるいは山中国務大臣にもお考えがあるかもしれませんが、私はいまのところは手直しする必要がない、しかし、九条あるいは一条における経済条項の削除というのは、われわれが公害対策に向かうべき心がまえ、姿勢というものを明確にしたと、こういうことであって、手直しの分は具体的にはいますぐにはないと私はこう考えます。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 その辺を、したがって率直にお答え願えないことには、ただ勘だけでは困るわけです。手直しの分は現在としてはないものと考えるという勘だけでなくて。といいますのは、国民にとっては、われわれにとっては健康項目は厳格にした、しかし、環境項目、生活環境は経済との調和を考えてゆるくした、こんなにはっきり厚生大臣国会で表明をしている以上は、こんなにはっきり国会で表明をされている以上は、そうかと、そんなにいままでは生活環境というものはゆるくなっていたのかと、それなればこそ経済との調和が、それほど環境をきめる場合に作用があって、それゆえにこそけさの朝日新聞に見られる川崎のような、そのほかに各地の新しい公害病患者、そうした悲惨な病気方々生活の、あるいは健康のもう苦しみのどたんばへ来ておるという、こういう現象がなぜ起きたかということは、経済との調和条項のために環境基準がゆるくきめられたがゆえにその結果そういう健康被害を生じたのだな、こう受け取ってしまうのですよ、単純に。ですから少なくとも経済との調和を考えてゆるくしたということを述べていらっしゃる上においては、当然再検討すると、これはいま重金属の場合、それから一酸化炭素等の場合をあわせてお述べになりましたが、そう分けるまでもなく、経済との調和条項が削除された段階においては当然再検討し、環境保全に全力を尽くすということが当然じゃありませんか。きのうの参考人の御意見の中にも環境そのものを汚染から守る姿勢、これが一番政府にほしいということも各参考人の方が述べられておりましたが、この点いかがですか。
  114. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは先生たいへん失礼でありますが、ちょっと私が述べておりますところを多少からんでお尋ねになっておるようにも私には受け取れるのでありますが、環境基準にも人の健康を保全するための環境基準と、生活環境を保全するための環境基準と理論的にはあり得るわけであります。理論的にはあり得るが、現在、いま川崎のお話もございましたが、これは亜硫酸ガスがおもでございます、窒素酸化物。これはたった一本、人の健康ということを目標にしてきめた環境基準があるだけでございまして、生活環境の保全のための環境基準というものはないわけでございます。それはもう少し突っ込んで言いますと、これは小平先生よく御承知のように、わが国の公害対策関係の法制が発生いたしましてから二、三年でございますが、その間水でも大気でも、水域指定主義、地域指定主義ということだけで、よごれている水域だけを水域指定する、よごれている地域だけを地域指定する、よごれている地域だけを、水域だけを指定いたしまして、それに対応する、私のことばでいうと、汚染局所対応主義がこれまでの公害対策であったように考えます。きれいなところ、たとえば厚生省で国立公園などを所管いたしておりますが、そういうところをよごしてはならぬということを考えていなかったような対策でございます。また、私の郷里は山梨県でございますが、ここらも従来指定水域にもなっていなければ、また指定地域にもなっておらぬものですから、川崎や四日市では困るが、あそこから逃げ出す企業は、山梨県へ行ってやる分には指定地域じゃないからかまいませんといったような式の、そういう法制の仕組みであったものですから、環境基準を一方においてつくります際にもそういう生活環境のことは顧慮しないで、よごれたところの人の健康というものを維持するためにはどれだけの空気のきれいさでなければならないかと、こういうことを目標につくってございまして、第九条には先ほども触れますように、基本法の第九条には、生活環境の保全のための環境基準はいわばまあゆるくてもよろしいというか、産業経済との調和をはかりなさいということが書いてありますが、まだそこのところまで環境基準の設定作業がいっていなかったと私は考えております。ところで問題は、それよりも問題なのは、その環境基準を達成するための排出基準、許容基準というものが問題でございまして、これは何段階かに、たとえば硫黄酸化物につきましては、よごれた地域に適用するもの、あんまりよごれていない地域に適用するもの、数段階に分けておりますけれども、それがはたしてそんな排出基準でいまの環境基準が達成できるかという問題は、別の見地から私はあると思っておるわけでありまして、これについては逐次強くするというたてまえでやっておりますし、また、ある新しい企業などをそういう地域につくります場合には特別排出基準というようなものの辛い排出規制もすると、こういうことになってますから、主たるこれからの問題は、環境基準のことが全然ないわけではございませんけれども、排出基準のほうの強化に私は問題があると思います。なお、ついでに申しておきますが、環境基準もこれ、絶対に動かさぬということではございませんので、現に九条にも規定がありまして、科学の進歩に応じて環境基準そのものも見直してそうしていきなさいという規定がございますので、経済との調和条項というものとは関係なしに、私どもは人間が生活していくのにほんとうの理想の大気のきれいさかげんというものは〇・〇五の硫黄酸化物でいいのか、あるいは一〇PPMの一酸化炭素でいいのかという問題は、一般論としてはあることを申し上げておきます。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 私が問題にしているのは、いま環境基準を問題にしているのであって、その次に排出基準をやるつもりでやってるわけです。  そこで、この環境基準を要するに厚生大臣は変えることをも再検討もすべき点もあるという趣旨ですか、そこだけはっきりしてくださればいいんです。山中大臣はそれについてどうお考えか。
  116. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 第九条にこういうことが書いてございます。第一項の環境基準については、「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」と、こういう規定がございますので、あとからお尋ねになられる排出基準ばかりでなしに、環境基準そのものについても科学的検討、科学的判断というものは出していくべきであるから、したがって産業経済条項とは別に、私どもは科学的判断によってさらにそれをきつくしたり、あるいはより合理的にするということは考えるべきであると私は思います。
  117. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 内田大臣の言われたことに尽きております。第九条の第三項、旧第三項で、「第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」いわゆる改定をすることを前提として基本法が成り立っておりますから、現在の環境基準というものを常に科学的な判断等を加えながら改定をしていく。そうして目標に到達する努力をするということに当然なると思います。さらに水に関する問題でことしの四月に閣議決定が実はございまして、その閣議決定は別途閣議により指定するという表現で、当てはめを国がやるように閣議決定しているわけです。これは近く閣議決定をさらにこれを戻しまして、そうして当てはめは知事にしていただくことになるわけでございますから、これは閣議決定をひっくり返して——ひっくり返してというか、閣議決定がなかった形の、いわゆるそこは削除する閣議決定をもう一ぺん具体的にやらなくちゃならぬだろうと思っております。それで、閣議決定によって、経企庁が主管でございますから、都道府県知事が当てはめを今回の法律によって権限として持つということが明らかにされていくものと考えます。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 両大臣の御答弁は、科学の進歩によって、技術開発によって改定があり得ると、それは当然ですよ。しかし、私がいま問題にしていることは、経済との調和条項を削除したことによって、この従来の生活環境あるいは健康、それが経済との調和条項削除によって、政府はこういう姿勢で今後の排出規制にしても環境基準にしても臨むのだ。従来の姿勢は、衆議院連合審査今での御答弁姿勢がよくここに出ております、従来の姿勢が。環境基準、経済との調和によってこれこれだと表明していらっしゃる。ところが、今回のこの改正によって健康項目、この経済との調和削除によってこういう新しい姿勢で臨むのだ。従来の、かりにまあ環境基準が、ここまではよごしていいというようなつもりでよごされていたものを、今回はそうではないと、もっと自然のあるべき姿を取り戻していくのだという、そういう目標でいくのだとか、そういう積極的な姿勢があるかということを私は尋ねているのでありますし、また、それがないことには経済調和条項を削ったからといって何の役にも立たないわけですよ。ただここのところの法文を削ったからといって、公害が減らないことには何にもならないじゃありませんか。
  119. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 産業経済条項を削りましたのは、環境基準の設け方だけの問題ではございませんので、むしろ公害を防除するためには、まあことばが過ぎるかもしれませんが、企業につらく当たっても、それは人間の健康なりあるいは生活環境の適正を守るべきだと、こういう私は広い観点から私ども行政姿勢を改める、そういうところに大きな効果があると思います。たびたびお尋ねの環境基準に関しましては、環境基準ができましたのは、硫黄酸化物については昨年の春、それから一酸化炭素につきましてもことしの春でございまして、それはいずれも人の健康保全のための環境基準でございました。でありますから、産業経済の条項によって遠慮しなければならないような、第九条によって産業経済の発展との調和を考えてつくらなければならないような生活環境に関する環境基準ではございませんので、現在のものは、科学の発達のものは別といたしますと、たびたび申しますように、産業条項との関係においていま直ちに直す必要はないと現在のところは考えております。しかし、これも繰り返しますと、その他のいろいろな分野におきましてだいぶ、今度の改正案でこの産業経済調和条項がなくなりましたために、私どももずいぶんいろいろなきつい部面をつくったつもりでおります。
  120. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうもたいへん、そういう姿勢じゃ私は不満ですが、ちょっと観点を変えまして、この改正法案第九条の二項、「二以上の類型を設け、」「地域又は水域を指定」、それから「都道府県知事に委任」とあります。で、これは政府委員からでけっこうですが、どういうことを意味するか、簡単にお答え願いたい。
  121. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 九条の二項でございますが、これはいまお話しございました水の環境基準のうちの生活環境にかかるものがこれに当てはまるわけでございまして、水域の利用目的に応じて幾つかの類型をきめておりまして、それを個々の水域に当てはめていくということになっております。この当てはめのための指定の仕事を国が全体としてやっていくということは非常にたいへんでございますので都道府県知事にその仕事を委任すると、こういうことの規定でございます。
  122. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、政府の考えている第九条の環境基準は、全く政府が独占的に統一的にきめるものであって、地方によっての上乗せということは考えられないのかどうか。それからいま、二項は水質のランクに当てはめるのを都道府県知事に委任するというだけで、大気、騒音については、環境基準は地方において大気、騒音とも環境基準を上乗せすることができないという趣旨かどうか、その点はどうですか。
  123. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 環境基準につきましては、私ども考え方としましては、あくまでそのときに知り得ます、あるいは科学的データに基づきまして十分検討いたした上で、科学的な裏づけをもって設定してまいりたいということでございまして、そういう意味政府みずからきめるという考え方でございます。ただ、そういう類型に分かれました場合の具体的な指定の作業を都道府県知事に委任しようと、こういう考え方でございます。  それからいまお尋ねのほかのものでございますが、大気につきましてはそのようなことはまだございませんが、騒音については近く厚生省のほうの生活環境審議会の答申も行なわれる予定でございますが、この場合にはやはり地域を類型に分けますので、その当てはめのための指定は都道府県知事に委任すると、かようになろうかと思うわけでございます。
  124. 小平芳平

    ○小平芳平君 政府が科学的基準に基づいて統一的にきめるのが環境基準だというのですが、それでは長官にお尋ねしますが、東京都では東京都公害防止条例第二条では、知事の環境基準の設定の義務というものを定めております。この東京都の公害防止条例の知事の環境基準設定の義務の中には、いまあげたところの水質、大気、騒音ともにあげております。これに対して長官は、積極的にこうした東京都、つまり住民が一致して住民の願望を一つに集めてこの基準を設定し実現しようという動きに対して、長官はどういう姿勢をとられるかお尋ねしたい。
  125. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 原則的には条例というものは国の法律範囲内において都道府県、地方自治体が定めることができるということに現行ではなっておるわけでありますから、しかし、いま言われた場合は政策目標としての数値であろうと私拝察いたしたわけでありますから、したがって、それが国家権力と同じように権力を背景にして強制するべきものではない、そういうつもりでおつくりになっているんならば、別段差しつかえないのではないかというふうに考えます。
  126. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境基準というものは、城戸さんのお話しだと、科学的データを集めて政府が統一的にきめるんだと、こういうふうにおっしゃるのですが、そうじゃなくて、やはりいま山中担当大臣がお述べのように、そうしたものを、住民が一致して、知事も議会も一致してそしてある基準を定め、そのあるべき自然を取り戻そうというこの努力目標、これは当然公害担当大臣としての長官は、そういう住民の地方の行き方を支持されると、こういうふうにとってよろしいですか。
  127. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは自治体が地域住民責任者としての立場において積極的にやられる姿勢については、私たちは歓迎するものです。しかしながら、やはり環境基準については全国の知事会議あたりの御意見等も、大体多数の意見としては、やはりこれはよるべき基準は国のほうで定めてくれ、しかし、その地域地域実情というものは十分その当てはめのときに、それに知事の意見というものが知事が自身できめられるような範疇のものとしてもらいたい、こういうことに要約されておるようでございますので、別段それは国の行政を阻害する方向にいくものでありませんから、私として問題はないものと思います。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、たとえばこの排出基準のほうですが、排出基準はこの国と地方と、たとえば一酸化炭素のような場合ですね、一酸化炭素のような場合は国と地方と違って困るようなことがあったのですが、これはどうですか。
  129. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは全国一率のものであって、たぶんおっしゃっているのは警視庁と東京都が検査をしたときに〇・五と〇・四ですか、私の記憶はそういう感じがしますが、何か〇・一違っていたように思います。これはやはりどちらがいい悪いは別として、同じ場所で検査をするのならこれはやっぱり一緒に相談して合わしてもらわないといけない、どちらでもけっこうでございますが、やはり合意して、そして不特定多数の住民たる国民がそのために困難をするということではやはりいけないので、事前に十分の打ち合わせが必要であったのではないか。その点は、どちら側がいい悪いは別として、遺憾なできごとであったと私は見ておるわけであります。
  130. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは結局二問お尋ねして私きょうは終わりますが、また——とても終わりませんからあしたまた済みませんが続けてやらしていただきますけれども一つは、そういうこともあるので、環境基準も上乗せを可能とすべきだと思うのです。環境基準は国が一本できめたからこれは科学的根拠に基づいた最もすぐれたものであって、それは地方がとやかく言う筋合いはないと、これで十分だという公害に取り組む姿勢はかえって公害対策上マイナスになるのであって、排出基準が上乗せできると同じように環境基準もまた上乗せできるということにするのがいいと、このように思いますが、両大臣の御意見を承りたい。  それからもう一つは、これは厚生大臣と思いますが、大気汚染防止法第四条、ここで硫黄酸化物の排出規制は地方で上乗せできるかどうか、この点についても私は大臣の御答弁をことこまかく読んでみましたが、非常にできそうな、だいぶできそうなニュアンスのところもあるしできないというようなところもあるのですが、その点二点お尋ねしたいのです。
  131. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは私はこだわるわけではないですが、環境基準というものは、御存じのとおり、たとえば日本におきまして、それが東京であれ大阪であれあるいは京都であれ、人間がその生存していくのにどのくらいのその空気の清さ、その空気の中にまたまじっているところの硫黄酸化物——これは二酸化硫黄も三酸化硫黄も含めての話でありますが、そういう硫黄酸化物がどのくらいなら耐えられるかというような目標をつくりまして、したがって——私どもの郷里などではもちろんもうその目標よりよごれていないから問題ないのでございますが、よごれているところはその目標を達成するために、しばしばしかられるのでありますが、そんなことではゆるふんだと言ってしかられるのでありましょうけれども、三年も四年も、七年かからなければその目標に達し得ないようなよごれたところもあるわけでありまして、したがって、その環境基準というものは、これは私は各都道府県の知事が上乗せをするとか自分の理想値というものをつくるべきではないと私は考えます。しかし、議論の余地が全然ないわけではないでしょう、科学的の判断の推移によって将来も検討さるべきだと、こういう文句もありますから、その際には東京都知事が政府環境基準よりももっとより高い理想的な環境基準であるべきであるという場合におきましては、どんどん遠慮なく政府に意見を述べていただいて、そして日本人共通の私は環境基準をつくるのがいいとかように考えます。  それから第二点の硫黄酸化物の排出基準につきましての上乗せの問題でございますが、形式的には上乗せの仕組みはございません。他の有害物質の排出基準につきましては、いわゆるシビルミニマムといいますか、全国一律の一応排出基準をつくりまして、そうして各地域の自然的、社会的条件によりまして、知事さんがその上乗せをこれは政府と連絡をしながら御通知をいただいたりしながら上乗せをするわけでございますが、硫黄酸化物につきましてはもう現在八類型がございまして、それを各地域の知事さんの御意見を聞きながら中央で各地域にはめていく。こういうやり方をいたしますので、事前に意見を聞いてはめますので、上乗せということはございません。がしかし、変更の要望が自分のところは八段階のうち第三段階の上乗せ、八段階の三段階目の排出基準の当てはめでいいと思ったけれども、これではとてもきれいにならないし、また、企業の意識が向上してきたから、それよりもっと上のところにしたいのだと、こういうような御相談は私は可能でありますから、その部面においては動かし得るわけでありますけれども、いわゆる自発的上乗せというものはないわけであります。これはいろいろ事情によりまして今日まで排出基準を一番古くからやってまいりましたのは、硫黄酸化物の排出基準でございまして、現行大気汚染防止法が制定されます以前、昭和三十九年くらいのばい煙防止法時代から排出基準というものはいろいろつくりまして、そして地方の実情に応ずるようなものをつくってきたこれまでの経験と、それからもう一つは、何といいましてもやはり低硫黄の燃料の確保ということがからんでくる問題でございますので、低硫黄燃料の取り合いということになってしまったのでは、これは国全体としての地域の状況に応ずる排出の規制環境基準への達成というものが全く乱れてしまいますので、そういう見地からも上乗せという制度を実はこれにはつけてございません。ただもちろんさっきも触れましたような特別排出基準というものを新しくそこに割り込んでくる工場、事業場のばい煙発生装置につきましては、辛いものをつけるということはできるわけでございます。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも御趣旨が、私はいまだに環境基準をなぜ政府一本でしなければならないか。全く理由がわからないわけですが、そこで具体的に環境基準の問題と、   〔理事杉原一雄君退席、委員長着席〕 公害罪の問題を両方頭に置いてお聞き願いたいのですが、きのうの参考人の中で、WHOの健康に関する四つの項目をあげて述べられた参考人がおられました。第一は健康に何の影響もない状態、第二は人間の感覚に影響を与え、草木を損傷するという状態、第三は人間の生理機能に障害を与え、人によっては慢性疾患、気管支炎等を起こす状態、第四には急性疾患を起こしあるいは人により死亡するという状態、以上四つの中ではたしてきのうの参考人の方は少なくとも公害罪は第三の人間の生理機能障害、人により慢性疾患、気管支炎等を慢性的に起こすその状態において当然公害罪が発動されるべきだという意見を述べておられましたが、両大臣はどのようにお考えになるか。そしてまた、環境基準を維持するという意味では第二の人間の感覚に影響を与え、草木を損傷する、こういうことが起きないための環境基準であろうと思いますが、いかがですか、御意見は。
  133. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほど内田大臣の御答弁にさらに私のほうで申し上げますと、補足をいたしますと、内田大臣の御答弁のとおりでございますが、しかしながら、地域指定を廃止することによって設けられる環境基準というものでは、いまの汚染状態ではけっこうなんだ、許容量なんだということに排出基準は別といたしまして、なる地域が出てくる可能性があります。そういう場合においては、その地域に最もふさわしい環境基準というものをいわゆる地方の行政目標として、実際に住民の幸福のために設定されるということはあり得るわけでありますし、またそうなければならぬ、これは全国一律がこれでいいんだというので、野放しにされたことの免罪符になってはならないということは当然私たち念頭に置いていかなければならぬと思います。  あと環境基準公害罪の問題でございますが、これは専門家がお答えしたほうがいいと思いますので——法務省来ておりませんそうですが、公害罪は環境基準ではなくて、排出基準をたしか問題にするのだと思いますが、しかし、いずれにしても起こった現象というものからつかまえていくというのがその出発点のようでございますので、そのWHOの四類型の第三の項目はこれは明らかに当てはまるだろうと私は思います。  第二の点については、非常に微妙な問題で、いわゆる正木君ですか、衆議院で論議されましたが、プランクトンの段階か魚の段階か、その議論の——今度は陸上の議論だと思います。できれば専門家の御答弁に私は譲りたいと思いますが、いかがでございますか。
  134. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私は公害罪としての摘発といいますか、その犯罪が成立する要件としての大気等の環境状況の原点、限界原点というものについてはまだ私には判断いたしかねます。
  135. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまの環境基準設定のレベルでございますが、これにつきましては、公害対策基本法を最初に提案いたしましたときから私どもとしましては、いまのWHOの四段階でまいりますと、第一段階と第二段階の中間であるべきだ、少なくとも第三段階以下ということは、いかなる状態であってもならないということを目標に設定していくということで硫黄酸化物あるいは一酸化炭素の環境基準をこれまで設定してまいったという次第でございます。
  136. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最初に、公害病患者救済と、公害防止計画の推進について質問したいと思います。  きのうのテレビ放送で富士市のぜんそくの問題が取り上げられております。富士市の工場群から出る煙がスモッグを起こして、そして子供、赤ちゃんがぜんそくであえいでおる、こういう光景が写っておったのでありますけれども、現在、富士市周辺のぜんそくの患者公害病には認定されていないわけですが、推定は千二百人くらいいるといわれております。しかもこの市内の病院には、ぜんそく患者を収容するに足る施設が乏しくて、二十数名分くらいしかないということも報ぜられております。それから公害病救済対象にしたくても、自治体の財政的な問題でこれを渋っておる面もあるのじゃないか。また、あそこは小規模工場が非常に多いわけですけれども、小規模工場のばい煙脱硫の装置をつけるという問題、非常にむずかしい問題でして、こういうところにはやはり低硫黄重油を重点供給するなどの方策をとる必要があるのではないか、このような報道がされておったわけですけれども、この問題に関連しまして、質問を二、三したいと思います。  まず第一点は、富士市の公害は、現在、田子の浦のヘドロの問題がクローズアップされておりますが、この亜硫酸ガス、硫黄酸化物のこの汚染状況を見ましても、富士市の市内で七カ所の点で測定したデータがありますけれども環境基準の年平均値〇・〇五PPM以下、これに該当していない、これをはみ出しておるところが七カ所の測定の中で五カ所もございます。それからまた、一日平均値が〇・〇五PPM以下の日数の割合が、環境基準では七〇%以上でなければならないということがあるわけですけれども、この七〇%以上ないところ、はるかに少ない二〇%ないし三〇%というところがあるわけですね。この環境基準に適合していないところが七カ所のうち六カ所もある。しかも、緊急時の発生頻度の調べについて言いましても、日数においては三十七日、最高がこれは元吉原中学のところですけれども、三十七日、環境基準の三%以下に対して一七・八%、大幅にオーバーしております。しかも連続して三日以上続いた回数が、ほんとうは三日以上続いてはいけないわけですけれども、七回もある。このように非常にこの汚染状態が進んでおるわけであります。この富士市の大気汚染の問題について、どのように認識しておられますか。これは厚生大臣総務長官にお伺いしたいと思います。
  137. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 田渕さんがごらんになられましたテレビの状況を私も、たまたまけさでございましたか、昨日の朝でございましたか、見ました。しかも、この地域は、いま田渕さんが仰せられますように、この公害病による健康救済の指定地域となっておりません。  そこで、私は問題があり得ると思うわけでございますが、先般の連合審査会のときにも、あるいは田渕委員からのお尋ねでございましたか、富士市を指定することについてはなお問題があるというようなお答えを実はいたしておきました。それは、いまの公害に係る健康被害救済に関する特別措置法というものの発動の要件がございまして、まず大気の汚染なり水質汚濁の状態が相当範囲でなければならないこと、それからまた、それを原因とすると考えられる健康被害者が多発しておることと、こういう要件があるわけでございまして、これまでも逐次それらの地域につきまして指定されました結果、先般も申し上げたと思いますが、この十二月からは尼崎市の一部もこの地域に指定することになりましたので、これでおしまいだというものでは決してございません。でありますから、富士市におけるいまの硫黄酸化物等による大気汚染の状況並びにその範囲またはそれに基づくと考えられるいま政令で指定されておりますものの範囲から申しますと、このぜんそくでありますとか、肺気腫でありますとか、気管支炎でありますとか、そういう罹病者がどの程度多発しているかということの材料をそろえまして、その上、これもいま田渕さんからのおことばにもございましたが、その地域の都道府県知事の負担も  一部ございますので、その意見をも交換をいたしました上で指定をすると、こういうことになっております。  で、これは、私は厚生大臣でありまして、あなたにも申し上げたと思いますが、大蔵大臣ではありませんので、なるべくけちをしないで、私は被災者の立場に立った措置を、やはり法律は厳格であっても、すべきだという考え方で、そういう厚生大臣立場からやりたいと私は考えておりますので、その状況をそろえました上で、できる限りの心配は——これは富士市に限らず、やれるものはやりたいと考えます。  なお、この地域における認識につきまして政府委員がおりますので、補足させましょうか。
  138. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 富士市の汚染状況データは、ただいま先生のお述べになりましたとおりに私ども承知しておりますが、先ほど大臣から申し上げましたように、相当範囲にわたる汚染とこれによる疾病の多発という現行法のたてまえからいきますと、すでに指定になっております川崎等、あるいは最近指定をいたしました尼崎の一部地域と比べますと、やはりその間に差異が一応あるというふうに考えられますので、現在までのデータで、いま直ちに富士市を指定地域とすることには多少の問題があろうかというふうに考えております。
  139. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 厚生省答弁関係は私は触れませんが、公害防止計画というものについては、四十六年度の予算要求の内容で八戸、君津、木更津、富士、大牟田、瀬戸内海沿岸等を予定いたしておりますので、来年中には総理大臣の計画作成の指示というものが行なわれると考えております。
  140. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ただいま厚生省のほうから答弁がありました公害病指定地域の条件ですね。相当範囲とか多発とか、非常にばく然としたことばで、広さできめるとか、人数できめるとか、その辺の基準はどうなんですか。
  141. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) これは正直に申しまして、いわば内規的な具体的な基準は特にございませんで、大体いろいろデータ、大気汚染状況の調査、あるいは疫学的調査等のデータがそろった段階で、そのための専門の先生方に集まっていただいて、個別的に、従来の指定地域との比較においてどうであろうかと一々御相談願っておるのが実際でございますが、ただ具体的な基準は特にないとは申しましても、傾向としてでは過去指定になったような地域汚染度なりあるいは有症率がどうかというようなことについては、大体これは実績としてのデータがあるわけでございますけれども、過去のそういうものを見ますと、たとえば汚染度についていいますと、現在の環境基準の年間平均値である〇・〇五PPMの約倍程度、この前後、あるいは有症率で申し上げますと、現在の環境基準は〇・〇五PPMをこえる地域では慢性気管支炎の有症率が対象地域の約倍になる、五%前後になるということが一応の基礎になっておるわけでございますけれども、これもやはり倍程度というのが過去指定になった地域のその時点での実績といいますか、数字になっております。
  142. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これは具体的に広さについても人数についてもそういう基準はない、ただ、いままできめたところに比べたらその程度が小さいとか、少ないからやらないということで、ちょっとこれは理由にはならないような気がするわけです。それで富士市の場合も、現実の問題として硫黄酸化物による汚染がかなり進んでおりますし、また、ぜんそく患者も続発しておるわけですから、それがただ前のところと比べたら規模が小さいから指定できないというだけではどうも納得できないように思いますが、この点いかがなんですか。
  143. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは私が有権的に申し上げるわけではないんですが、私は富士市のようなところにつきましては、こちらが受け身で知事から何とか言ってくるというのを待っているということではなしに、また従来指定された地域との比較論ばかり言わないで、これはもう私はできるだけその地域の現実の状況や罹災者の状況に応じて心配すべきものだと思います。これはすぐ富士市を指定するということではありませんけれども、私はそういうふうに前向きというか、この法律の恩典に浴する地域が合理的であるようにしてまいりたいと思いますので、これは富士市に限らずもうしばらく——御趣旨はよくわかっております。よくわかっておりますので、まあ厚生大臣の人道主義的な考え方にしばらくお預けを願いたいと思います。
  144. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いままでこういう地域の指定というのは、地域からの要請に基づいてやったのですか。
  145. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは、法律上は特にそういう手続は要しませんので、実際問題としてはまあ要請とこちらの判断とが——大部分はもう汚染のひどいところは大体承知しておりますので、わかっておりますから、要請がなければしないというような性格のものではございません。
  146. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まあ現在公害病に指定されている地域が四カ所あるわけです。これ以外に、まあ富士市以外にいま厚生省ではどういうところが汚染がひどいから、そういうことを検討しなければならない、その辺、そういうところあれば……。
  147. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私の耳に入っておりますところが二、三ありますが、その都市の名前はいまことさらここでは申し上げませんが、一般論といたしまして、いま指定にはなっておりませんけれども、私はやはり東京都とか横浜とかというような地域の一部には及ばなければならないものだと考えます。しかし、それも私はここでデータをそろえているわけではございません。また、国会でも多少それらの都市の名前があげられたところもございますが、それを申し上げるといろいろまた誤解もありますので申し上げませんが、富士市その他の汚染のひどい地域についていままでよりもより前向きで私は進みたいと、こういうことだけをひとつ申し上げておきたいと思います。
  148. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まあいままでの御答弁を聞いておりますと、どうも動きが鈍いような気がするわけですよ。やはり確かに地域からの要請に基づいて腰を上げるのじゃなしに、厚生省みずからこういう地域をあらかじめ調査して前向きに取り組んでいくということが必要だ。これはまあ大臣もそういうことをおっしゃいましたけれども、ただ現にこういう相当の被害が出ておるにかかわらず、いまだにこれに対しての具体的な方針が出ていないということは、やはりちょっとふに落ちかねると思うのですがね。
  149. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これはぜひひとつ常時監視を——いままでは御承知のとおり、公害対策地域指定主義でございました。私はこんなところは当然いまのこの健康被害地域指定ではなしに、公害対策として公害規制がかかるところが——水については水域指定四十八水域とか、あるいはまた大気については、これもやはり指定地域主義でございまして、よごれておると思われるところでも地域指定がはずされておりましたところもありまして、常時監視がなされておらなかったところもありますが、大体厚生省がサボっているというわけではありませんで、常時監視施設がございまして、国は何百カ所かそういう監視測定装置につきましてもこれまで補助金を出して監視しておりました結果も出ておりますので——ここにもあるわけでございますが、今度の問題になっております健康被害救済指定地域としては、つまりいままで尼崎を除いては新しくは最近追加をしていないんでありますが、ここにあります地域の中から、前向きで検討してみろということを私は言うつもりであります。これは全部やってもいいのですが、たいへんな銭がかかるものでございますから、これは厚生省限りでやれない面もございますので、合理的なものを合理的な説明をいたしまして、そしてその金をとりましてやっていく、こういうことになりますが、しかし、金よりも人の命が大切な面も多々あるわけでございますので、その辺の調整は、私は人間の命向きに、また苦しんでおる罹災者向きに考え処置をすると、こういうことでございますから、その辺で御理解をいただきたいと思います。
  150. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まあ厚生大臣の御答弁は、全部やってもいいけれども、金がないからできないというような趣旨ですけれども、今度の公害国会でいろいろな法案整備され、そういう被害者の救済についても前向きに取り組んでいこうと、こういう政府姿勢があると思うのですね。そこへもってきて金がないから金と相談の上で、その地域も全部指定をほんとうはしたいのだけれどもこれくらいでがまんしようと、その姿勢はちょっとちぐはぐじゃないかと思うのですよ。やはり必要な予算要求はどんどんやっていって、必要な救済はするというのが厚生大臣としての姿勢ではないかと思うのですがね。
  151. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私のことばは少し勢いがよ過ぎたようでありますが、その辺、修正さしていただきますが、健康被害者の多発とかあるいは相当範囲にわたる大気の汚染、あるいは水質汚濁とかいうことの解釈と関連して私はもうできる限り人間の命向きにやっていくということで、少しでもよごれているところを全部やるとこういうわけにはまいりませんが、合理的な説明がつくところは何も引っ込み思案じゃなくてひとつ前向きにやらせよう、また、それだけの説得力を持って財政官庁にも当たっていこうと、こういうつもりであることを申し上げておきます。  これはこの国会におきまして、御承知のとおり、法律だけ出せば済むということじゃございませんので、この被害者救済法は改正もありませんけれども、一連の精神からいうと運用でいける面があるわけでございますので、そういうつもりに私はなっておりますことを重ねて申し上げておきます。
  152. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この被害者の救済について、今回の国会での野党側としての不満は、無過失賠償責任とかあるいはこの被害者救済法の救済措置内容の充実ということが見られなかったわけでこの点は残念に思っておるわけですけれども、せめていま厚生大臣が言われた運用の面で対象を広げるとか、あるいはもっと徹底的に措置を打つとか、こういうことはやはりやっていただきたいと思うのです。したがって、この富士市の場合も先ほど御答弁がありましたように、いままでのこの基準に当てはまらないとかあるいは予算措置がいまのところ乏しいからそこまで及ばないんだとか、そういう姿勢ではちょっと困ると思うのですね。やはりいままでの基準には当てはまらなくても、もう少しその基準範囲を拡大するとか、あるいはもっと機敏に国から積極的にそういう手を打つとか、そういうことをぜひやっていただきたいということを要望したいと思います。  それからもう一つ、この自治体の負担という分があるわけです。これがあるから自治体のほうではやりたくても二の足を踏むということもあるかもわかりません。  そこで要請したいのでありますけれども、特に医療費の負担がいま半分が事業団の負担、あとの半分が国とか地方自治体の負担になっているわけですけれども、これをこの事業団の負担分をもっとふやすべきではないか。本来からいうならこれはもうまるまる事業団のほうで持ってもらうようにしたらどうかと思うのですが、この点いかがですか。
  153. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) それも私はこの場で直ちにお答えできる問題ではありませんけれども、これらの問題についても検討をすべき余地はないではないとも思います。
  154. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 もう一度確認したいと思いますが、この公害病の指定地域についての基準はもっと積極的に対象を拡大して考えていく方向なのか。それから医療費の分担についても事業団分の負担分をふやすように要請されるのか、この点はっきりした答弁をお願いしたいと思うのです。
  155. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 前段については状況に応じて制限的ではなしに、より私は積極的に対象地域として指定する方向をとってまいりたいと思います。  医療負担につきましては、事業団の負担を多くして地方の負担というのを、四分の一くらいのものだと思いますけれども、その辺のことについては、私単独でいまここではお答えできませんけれども、これも、いまのこれが最良の負担区分であるとも思いませんので、こういうことについてもさらに検討をさせてみたいと思います。
  156. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それからきのうの大喜多参考人の意見の中で、公害病に対する認定基準そのものもひとつ研究を要するのではないかという御意見があったわけですけれでも、この点について医学的あるいは疫学的、化学的に認定の基準というものを国として確立すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  157. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) あるいは先生の御質問の趣旨を取り違えておるかもわかりませんけれども、認定基準といいますのは、政令で疾病等を指定するという疾病の種類が現在のような、たとえば大気について言いますと、慢性気管支炎等でいいかどうかという問題のほかに、具体的に個々の地方における審査委員会を通じての具体的な認定あるいは認定の基礎になっている大気等についての一定の居住要件、そういう要件も含めておることかどうか、多少私のほうの取り違えがあるといけませんので、全部についてお答えいたしますと、まず第一番目の疾病の問題につきましては、大気と水について、大気の場合、気管支炎以外に、たとえば一部でいわれております目に対するいろいろな障害が起きているというようなことも聞くのでございますけれども、はたしてこれが直ちに公害病の類型の中として取り入れられるかどうか、しかし、これはいずれにしても専門的、医学的の問題でございますから今後検討の対象にはなろうかと存じます。  それから個々の患者認定の問題は、すべて第一線における審査委員会にまかせてございますので、これについて特に申し上げることもないと思いますが、最後の居住要件等その他につきましては、やはり慢性気管支炎等の疾病の特殊性からいいますと、それが一般的な原因によるものか、当該地域大気汚染によるものか判別するためにはどうしてもそういう形式的なある程度の要件は必要であり、また、現在の制度、現在の要件で妥当ではないかというふうに考えております。
  158. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 けさの朝日新聞にも出ておりましたけれども公害病——同じような病状の人が一ぱいいるけれども、そのうちで公害病に認定されていない人もかなり多いというようなことも書いてありました。したがって、現在の基準で妥当かどうか、これは私は再検討を要するのではないかと思います。やはり前向きに公害被害者救済をするというなら、あまり厳選して、ほんとうは公害影響して悪くなっている人もはずれている面もあるわけですけれども、その面はやはり再考を要すると思いますが、いかがですか。
  159. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 公害病地域指定、認定等の問題は、ただいま厚生大臣の前向きのお考えを私もここでじかに伺いましたので、今後すべてのいまのような問題も含めて事務当局といたしましてはその方向に沿って検討いたしたいというふうに考えております。
  160. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それからやはりけさの朝日新聞の川崎公害病患者の例の中で、公害病に認定されておる人の八〇%が生活難におちいっているということがありました。やはり公害病救済の場合に、現在のように医療だけに限定しておるというのは、私は非常に不十分ではないかという気がするわけです。この連合審査会でも大臣のほうから御答弁がありましたけれども、本来はこれは加害者である企業が負担するものでありますが、やはり生活費の保障をそういうものについては何らかの形でこれを救済してやらないと、非常に困っておるわけです。被害者が非常に困っておるわけですから、この点は考えるべきじゃないかと思います。そこで、公害救済基金というようなものをつくる必要があるのではないか。これは基金制度にして立てかえ払いにする、そして裁判で確定すれば企業からそれを取り戻す、こういう基金制度が考られないものかどうかお伺いしたいと思います。
  161. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 公害による健康被害者の生活保障の問額につきましては、いまもお話がございましたように、連合審査会でも質疑応答が重ねられましたが、大体公害被害というものは結局発生企業の責任である、その間の最小限緊急な食いつなぎをするという趣旨でこの法律が制定され、ことしの二月から施行された、こういうことでございまして、生活保障の面までは法律そのものはカバーしていない。これをそこまで含めて改正するかどうかということにつきましては、これは私は決してそれを否定——それらの方々生活の困難を否定したり無視するものではありませんけれども、いまにわかに私がお答えすればそれで済むという仕組みのものでもございませんので、国会においてそういう御意見があり、また、報道機関でもそういう実情の報道がありますことを私は十分頭に刻み込んでおるものでございます。  公害基金というようなものも、これはまた後段のお尋ねでございますが、これも一つの考え方であると思いますので、これもひとつ脳裏に刻んでおきたいと思います。
  162. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 では次に、地方公共団体の公害行政体制の強化整備についてお伺いしたいと思います。  すでに全国的に公害の発生が激化しておりますし、また、今回の法律案の作成あるいは改正によりまして地方の規制監視事務がやっぱり増加すると思います。それからもう一つは、やはり国の権限委譲に伴う業務が増加する、こういう点でやはり地方の公害行政体制を強化しなければならない。さらに最近の公害の苦情の件数を見ましても年を追ってやっぱりふえてきております。昭和四十一年では二万五百二件であったものが昭和四十二年度では二万七千五百八十八件、四十三年度では二万八千九百七十件、このようにふえてきておるわけですが、しかもこのふえてきておる苦情の中の受理件数に対する処理件数の割合が七四%にすぎない、残りの二六%が未処理となって残っておる、こういう実態もあるわけです。したがって、何としても地方の公害行政の体制を強化しなければ、法律は幾らつくっても実のないものになるおそれがある。この点についてあと二、三質問をしたいと思いますけれども、まず第一点として、今回の基本法あるいはその他の法律の制定によって規制対象事業場がかなりふえると思います。これは規制物資の拡大とかあるいは廃棄物処理場の施設等ありまして当然ふえると思いますけれども、この見通し、どれだけふえるかという見通しをお伺いしたいと思います。
  163. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいま大蔵省に各省が要求いたしております公害関係予算は今国会において提出いたしました法律を前提といたしておりません。でありますから、田渕君の言われるように、これは今国会法律が制定を見ましたならば、すでに私のところで作業を始めておりますけれども、各省がそれぞれ権限委譲に伴い、あるいはまた、新しい体制の出発あるいは公害監視官等がどういう形で置かれますか、こういうようなもの等を考えながら、苦情処理等も地方公害審査委員会等は出発をいたしておりますけれども、これらの問題等について監視官等もまたそういう相談係みたいに、たとえば交通相談員みたいなものの権能もあわせ持つように考えるかどうか、そういうことも検討いたしております。でありますので、早急に、年内予算編成でもございますから、これを取りまとめまして、本部のほうより各省予算の中で本国会法律が制定されたことによる必要なる経費というものを新規の要求として提出をして、地方公共団体に権限を委譲して、そうして財源を与えないで困らせるようなことのないようにいたしたいと考えて作業中でございます。でありますので、まだ金額を幾らということを申し上げるところまでいっていないことを現時点では申し上げざるを得ないわけでございます。
  164. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在地方の公害関係の担当組織、公害担当組織の現況を見てみますと、公害担当の専門の課を持つものが昭和四十三年度で都道府県では二十八、それから市町村では五十五というふうになっております。それから専門の係を持っているものが都道府県では十七、市町村では百五十七、これは非常に少ないわけです。これは四十四年になれば若干ふえておるのじゃないかと思いますが、そのデータわかりましたらお聞きしたいと思います。
  165. 立田清士

    説明員(立田清士君) 地方団体の公害の組織状況でございますが、ただいまお話しのとおり、四十三年度におきましての数字はただいまお述べになったわけでございますが、その後四十四年度にかけまして急速に実は整備が進んできております。現在都道府県では、最近の調査時点では、三十七が公害課あるいは公害室というような専門の課を持っております。先ほどお述べになりました市町村の五十五というものが百二十五にふえております。それから係のほうにつきましては、県のほうはいまの係が課になっていっておりますから、逆に減って九つ、市町村のほうにつきましては百五十七であった係が二百七十の市町村で設けられたということでございます。なお、その後においてもなお増加をいたしているような状況に現在はなっている。こういうことでございまして、現在府県においてはさらにその後、課の新設が、きわめて最近の時点で数県において行なわれておる、こういう状況になっております。
  166. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この市町村や府県に対する公害の専門の課を置くとかそういう面について、国として一つの指導方針を持っておられるかどうか。それからこれについての財政援助というものはどうなっておるのか。
  167. 立田清士

    説明員(立田清士君) われわれのほうといたしましては、地方行政の中において公害対策というものは非常に重要だということでございますが、実際に行政体制の整備全体につきましては、公害に関連いたしましては整備していただくように地方団体にいろいろ要請をいたしております。もちろん組織自体を地方団体でどうおつくりになるかというのは、申し上げるまでもなく、地方団体の御判断でございますけれども、実際にはそれぞれの地方団体においてその重要性を認識されまして、逐次そういう整備が急速に現在のところ進んでおります。こういう状況でございます。すでに公害に関しまして、課ばかりでなくて、局なりあるいは部を設けられておる都道府県もあることは御承知のとおりかと思います。なお、財政措置につきましても、もちろんいろいろな財政措置がございますが、特にこの行政関係の経費につきまして地方団体として負担すべき部分につきましての措置につきましては、毎年度この充足をはかっておるわけでございますが、現在においてもその実態に即しながら、さらに今後そういう充実をはかっていくという考え方で考えておるわけでございます。
  168. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それからやはり昨日の参考人の中で、横浜の公害センターの所長の助川さんから、公害の初動調査のために、やはり市長の立ち入り検査の権限とかそういうものがどうしても必要だというふうなお話もあったわけですけれども、少なくとも政令市については市長への権限委譲ということを考える必要があると思いますけれども、この点についてどう考えておられるか。
  169. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いわゆる地方自治法における指定市というものは、もちろんこれは対象にするつもりでありますし、さらに公害態様は、地域によって地方自治法で考える指定市のランクと別な意味の重要な位置を占める市がございますので、それを念頭に置いて、なるべく公害観点から地方自治法の指定市にとらわれないで、それをこえて多くの市におろすように努力してまいりたいと思います。
  170. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 あと時間がございませんので、一点だけこの法案上の疑問の点をお伺いしたいと思うのですが、大気汚染防止法の第四条の都道府県の上乗せ条例というものがきめられたわけですけれども、この中で政府はこの上限をきめないという統一見解を出しておられます。それに従って、「政令で定める基準に従い、」ということばが修正されまして、「政令で定めるところにより、」となったわけです。ところが一方、水質汚濁防止法のほうではこの点が修正されておりません。水質汚濁防止法の第三条の第三項ですね、ここには「政令で定める基準に従い、」ということばが残っておるわけですが、これはどういうわけなんですか。水質の場合もやはり上限は政府で定めないということなら、これはことばを合わしたほうがいいのじゃないかと思いますが……。
  171. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私も気がついておりませんでした。委員会が別な委員会に分かれて付託されたためにそういう手落ちが起こったのだろうと思います。でありますから、上限を定めないとなれば、当然これも大気汚染防止法と同じように、「政令で定めるところにより、」でけっこうであると思います。あとは議会のお扱いにおまかせいたします。それでよろしゅうございましょうか。
  172. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  173. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ちょっと、運輸大臣が五十五分ごろ見えるというのですが、まだ見えてないわけなんです。それでちょっと速記をとめてください。
  174. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  175. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 速記を起こして。
  176. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大気汚染の二大原因であるところの自動車の排気ガスについて排気ガス対策をつくった運輸技術審議会自動車部会の委員中、自動車エンジンの専門家はだれだれかということです。
  177. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 運輸技術審議会の委員の中で、自動車の専門家は島秀雄さん、それから警察科学研究所の大久保さん、日本自動車技術会会長の斉藤さん、東大教授の平尾さん、それから日野自動車の家本さん、この五人がおられます。
  178. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ医学者は一体どれほどおりますか。
  179. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 国立公衆衛生院の労働衛生部長の鈴木武夫先生が入っておられます。
  180. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私がこんな質問をなぜするかと申しますと、大気汚染の二大原因であるところの自動車の排気ガスの低減目標をきめよう、こういう大切な部会では、ただ一般的な形式が整えばいいということではなしに、自動車工学、内燃機関直門家をもっと多く入れ、それからまた医学者についても、自動車技術だからと軽視せずにたくさん入れた部会にして、総合的に科学的に、しかも公害防止の立場を優先さすことを、私は組織的にも保障する必要があったのではないかと、こういうふうに私は考えたものですからいまのような質問をしたわけですが、トヨタ自動車副社長や日野自動車の人が入っておりますが、なぜ学識経験者をもっとたくさん参加させなかったのか、こういうふうに私は思うのです。というのは、今度の公害委員会には公害企業の代表は入れないということになっております。ところが、その審議会にやはりこういう公害を出すところの企業の代表が入っているということは、そもそも私は間違いのもとじゃないかと思うのです。大切な審議会、部会には形式だけではなく、臨時に学識経験者を多くしてでも総合的、全般的な審議を尽くすべきで、その点少し不十分であったと思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。これは大臣がいらっしゃったら私は大臣に伺いたい点ですが、総務長官はこういう点についてどういうふうにお考えになりますか。
  181. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 先ほど申し上げましたように、運輸技術審議会の中に自動車部会をつくりまして、そこでいま申し上げたような方が委員になっておるわけでございますが、この代表の多くはいま申し上げた方のほかに、たとえば朝日新聞の論説委員の岸田さんとか、それから阪神電鉄の、これは企業の方ですが、野田社長、それから国鉄の技師長の宮地さん、こういうような方々がおられまして、どちらかというと直接自動車企業等に関係のない方のほうが多うございますので、ただいま先生御心配のような企業の代表という意味でなくて、むしろこういう方々も、家本さんにしろ、自動車工業会の専門家としてそちらの団体のほうの推薦で来ておられる方です。人数的にも第三者の代表の方が多うございますし、そういう意味でも私は公正な審議が行なわれておると思います。
  182. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 自動車の利益代表じゃないといったって、やはりトヨタ自動車の副社長がおり、それから日野自動車の代表の方が入っておるということは、やはり企業代表だといわれてもやむを得ない点だと思うのです。これは公害委員会の精神にも私は反するところの人選だと思うので、こういうことではいかぬということを私は言っておるわけなんです。今後もこういう方針でいくのですか、どうなんですか。
  183. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 政府委員のほうからお答え申し上げたと思いますが、現在やっております運輸技術審議会というのは、先ほど説明しましたように、中心は学識経験者等から成っております。利害関係の者を入れておりますのは、必ずしもこれによって意見が左右されるということではなくて、問題はやっぱり技術開発の面でありますが、これをつくるメーカーといいますか、この意見もやっぱり聞いておく必要があるのみならず、政府としては今後ガス排出の規制については、もちろんこれは技術開発を無視して、かってなことを言ってもしかたがありませんけれども、メーカーにとっては相当つらくとも、現在の公害問題から考えてかなりきびしい限度をもっていきたいと考えております。ことに、御承知のように、新車あるいは中古車につきましても、従来この規制を昨年審議会の答申受けておりますけれども、技術開発は一日一刻を争うといいますか、どんどん開発されていきますから、それに従って近い将来、いまより以上の規制を考えていくということで臨みたいと思っております。
  184. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 自動車排出ガス対策基本計画では、昭和四十八年の窒素酸化物NOxの目標が、アメリカより約五〇%高いのは一体なぜでございましょうか。
  185. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) いま須藤先生の御指摘の数字よくわかりませんが、私どもが現在正式に決定をしております規制計画を見ますと、窒素酸化物は昭和五十年一キロメートルあたり〇・六グラム、それから米国は同じく一キロメートル当たり〇・六グラムで同じ数字になっております。
  186. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は五十年のことを言っておるのではなくて、四十八年のことを言っておるんですよ。そんな先のことでなくて、すぐ目の前のことを言っておるんですよ。
  187. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) ただいまの私の答弁適切でございませんでしたが、こういうことでございます。五十年は重量規制をやりまして、先ほどの五カ年計画に基づきまして二段階に分かって規制をする、その第一段階が四十八年でございます。つまり、七三年でございますが、そのときには残念ながら日本の規制はそこまで及ばない。第二段の規制をいたしまして、昭和五十年になって、先ほど私が申し上げました同じ数値になるということでございます。こういう五十年で同じ数値にまで到達しますために、エンジンの改良とかあるいは測定方法の開発とか、いろいろ技術的な開発を日本としてやらなければなりません点がございますので、先ほどの運技審の答申に基づきまして、二段階に分けて規制をするという方法をとっているわけでございます。
  188. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 四十八年にアメリカより五〇%高いのはまだ技術的に低いからだ、そして五十年にはアメリカと同じようにする、そのために二段階に分けてとにかく努力する、こういうことですね。  国土可住面積当たり自動車保有台数の比率は、日本はアメリカの何倍に当たりますか。
  189. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) ちょっとただいま手元に数字を持っておりませんので、取り調べましてお答えいたします。
  190. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私の手元に資料がありますがね。日本は可住地一キロ平方メーター当たり百十八台、それからアメリカは一キロ平方メーター当たり二十六台です。すなわち、日本は、可住地——国土可住面積から判断するならば、アメリカの四倍あるということになるわけなんですね。それは一般的に言いまして、日本のほうが、都市では、可住地におきましてはよごれがアメリカよりも非常に大きいと、こういうことが私は言えると思うんですが、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  191. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 私、手元に数字を持たなかったのですが、いまの先生の御指摘の台数から見れば、そういう先生のお説のようなことになると思いますが、まあ、いろいろこれは台数だけでなくていろいろの環境にもよることと思いますので、台数だけからは——台数だけが唯一の汚染の要素にはならないと思いますので、そのほかの要素も考えてみないといけないと思います。
  192. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それは私は車の数だけで簡単に言うわけじゃないです。それは大きい車もあり、小さい車もありますから、それはアメリカのほうが概して車は大きいかわからぬ。だから台数は少なくても排出ガスは多いということも言えるかもわかりませんが、しかし、可住面積と台数と比較した場合はそういうことが言えるんです。アメリカよりも少ないということは、あなたたち、言い切れないと私は思う。アメリカよりひどいということはこれはもう常識的にすぐ判断のつく問題だ、こういうふうに思いますよ。だから、七月十一日の毎日新聞は、「無公害エンジン開発が急務」という題で解説していますが、「自動車の排気ガスによる公害が問題になっているだけに運輸技術審議会の自動車部会による長期的、包括的な”排気ガス公害追放作戦”が一応レールに乗ったことは評価されてよい。ただ、審議の途中、一部の学者委員から指摘があったように、これで万事OKかといえば、いささか疑問といわねばなるまい。たとえば規制目標値のとり方だ。どれくらいの量なら、人間の健康にとって有害かという科学的裏付けもなしに、ただ”米国なみ”という観点から決定された。逆に”米国なみ”という考え方でいくなら、それを押通せばよいものを、規制目標年度のとり方は、米国より二年遅れ(たとえば米国の一九七五年の規制目標値は、わが国の昭和五十二年のそれにほぼ等しい)というありさま。これでは、自動車メーカー側の委員の圧力で、二年遅れにされたとみられても弁解のしようがあるまい。」と、こういうふうに毎日新聞は書いておるわけです。こういうふうに書いておる。だから私は、最初に審議会自動車部会のことを指摘したのであります。ほんとうに公害追放という立場からきびしい基準を考えていくべきだと指摘したわけです。本来は、アメリカより約二倍の規制基準にして初めて汚染度は同じはずだというのが私の言い分なんですね。  そこで聞きますが、運輸省は道路車両運送法の保安基準——省令ですね——で、昭和四十五年八月からの新車は、一酸化炭素(CO)アイドル濃度四・五%、中古車五・五%としておりますが、四十六年新車から幾らにするお考えでございますか。
  193. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 新車につきましては、一酸化炭素の規制は、四十四年九月に最高濃度二・五%、これは走行サイクルの規制でございますが、二・五%に引き下げておりますが、これがずっと適用になるわけでございます。
  194. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ことし八月からの新車のアイドル濃度ですね、これは四・五%、中古車の五・五%は、もっときびしくすることができるんではないでしょうか。
  195. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) ただいまの御質問でございますが、新車の検査にいわゆるフォアモードの規制と、アイドルの規制とございまして、アイドルの規制、つまりエンジンを動かして車が動かない状態ではかったものが、いま先生指摘の四・五%でございます。それからフォアモード規制、つまり自動車の動く状態を四つの形、エンジンを始動して、加速して、また減速するという、それを通じた平均と申しましょうか、その規制値が二・五%、こういうことになっておりまして、これが今後行なわれていく、こういうわけでございます。
  196. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 トヨタのパプリカ一二〇〇、カローラの一四〇〇、コロナの一七〇〇の量産車検査で、フォアモード値二%をこえているのは何%ありますか。
  197. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 私どもの調べたところでは、トヨタのパプリカは最大二・二七フォアモード、コロナが二・三四、カローラは一・七四と、こういうことになっております。
  198. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私が調べましたのではこういうふうになってるんですよ、パブリカで十三%、カローラはゼロです。コロナは七%なんですね。これを逆に言いますならば、パブリカでは八七%、カローラは一〇〇%、コロナは九三%が政府基準、フォアモード値二・五%より下の二%以下だと、こういうことが言えるわけです。二%以下で量産して売られておるということが、これではっきりしてくるわけなんですね。要するに、政府基準より業界のほうが先へ進んじゃっているんですよ。いいですか、ここが問題なんですよ。現在すでに二%以下が大半だ。二%以上の車はわずかなんです。多少技術的改修を加えれば、この二%以上の分についても減らすことができるはずだと思うんです。なぜ、ことし八月から二%の基準政府実施をしないのか、事実こうなってるんだから。そこなんです問題は。どうなんですか。
  199. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) ただいま先生の御指摘のように、非常に生産技術の進んでいる工場等におきましては、もちろん二・五%、中には二%以下のものもあるということは、御指摘のとおりでございます。しかし、数多くの自動車メーカーがありまして、その技術的な能力といいますか、レベルというものは必ずしも同一じゃありませんで、いま先生の御指摘になりました例は、おそらく技術的な水準としては非常に高い、日本では一番高い水準を言われたものと思いますが、まだそれまでに至りません、技術水準がそれより劣る企業もありますし、そういう点から考えまして、自動車の運行も正常に行なわれる、また、それから排出される排出ガスについても、それが人体に対してさほどの影響がないというところで線を引きますと、二・五ということに、これは専門家の審議を経てなっておりますので、ただいま先生の御指摘の点は、これは最良の、一番レベルの高い企業の例だと、私はかように考えております。
  200. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういうデータもあるんですよ、運輸省自動車局の調べですが、いずれもフォアモード値なんです。日産チェリーは一・三五%、ローレル一八〇〇、一・六%、ブルーバード・スリーS一・一六%、三菱ギャラン一・六一%、ギャラン・ハードトップ一・三九%、パプリカが一・三%、カローラが一・二%。コロナが一・三%、これは運輸省の新型審査測定値なんです。こういうふうにずんと実際には運輸省の規定よりも進んでるのです。それにもかかわらず何でうしろのほうにくっついてそういう基準をつくっていかなければならぬかということなんです。もうほとんどこういうふうになってるのです。あなたのおっしゃるのはどこの車か存じませんが、こういうふうになってるのです。これでいきますと、おもな新車はすでに二%以下が実行されておるということが言えるわけです。  また、こんな新聞記事もありますよ。もう一つ新聞記事を読みますと、こういうふうになっておるのです。これは十月三十日の日経でございますが、 『排気ガス防止のため米国向け輸出車に付けている排気ガス防止装置を国内販売車にも装備してはどうかとの声が高まっているが、日本自動車工業会は二十九日の理事会で「輸出車用装置をそのまま国内向けに転用するのは適切でないが、排気ガス排出量が実質的に米国並みになるよう業界の自主的基準を設け、それに見合った装置を各社とも四十七年四月から装備する」との方針を固めた。』こういうふうになっておる。また、川又自工会会長は、同じ日に、「内容的には政府規制目標として打ち出されている四十八年の排気ガス規制を実質的に繰り上げる”中間措置”と受け取ってもらってもよい」と、こういうように川又さんも言ってるわけです。こういうように業界が前に進もう進もうとしているときに、政府はそれの足を引っぱるように、それよりもずっと後退した基準を出していくということはおかしいじゃないですか。もっともっと政府が引きずっていくような姿勢をつくるべきで、業界のうしろからくっついていく、業界の最もおくれたところを守るために業界のうしろからくっついていくというのでは、これは私は政府のとるべき態度ではないと思うのです。もっと進んで業界を引っぱっていくような姿勢を固めるべきではないかと思うのです。それでは初めに紹介しました毎日新聞の記事ではありませんが、政府は業界のあとから最低の基準にばかり合わしていると、こういうふうに言われても私はしかたがないと思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  201. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) まず最初に、先生がおっしゃいました幾つかの、日産、トヨタ、三菱等の車のフォアモードの新型車審査の数値でございますが、これは先生がおっしゃったような数値が出ておることは私ども承知しております。しかし、これは、言うなれば、日本のトップの、一番技術水準の高い会社の一番いい車でございまして、いわばもう各社のベストの車を御指摘になったもので、これが二・五よりも低いということは私どもとしてこれは十分あり得ることだし、また、それはそれでけっこうなことだと思います。ただ二・五と申しますのは、先ほど申しましたような、これ以下でなければならないということで現在きめておるわけでございますが、私どもの長期計画に基づく規制のプログラムにおきましても、来年度ではいまの二・五という最高値を、これを平均濃度の規制に持っていこうというつもりで準備をしておりますので、この規制はさらにもっと厳格にきびしくなるということは当然言えると思います。  それから先ほど先生がお読みになりました毎日新聞の記事でございますが、それはたしか七月十日過ぎの記事でございますが、答申が出たのは七月の二十何日でございまして、それ以後もっと答申が進んだ方向でなされておりますので、それは当時の記事よりは審議会の答申は前進をしておると思います。  それから規制の数値について、業界の考えよりも運輸省のほうが甘いという御指摘でございますが、これは私ども、業界はいろいろ米国においても規制を強化されておる、その速度も速められようとしているというような情勢にかんがみて、日本の業界としてこれにもっと対応すべく前向きに検討する用意があるのだという趣旨の発言でございまして、私どもももちろん一応の目標は長期計画で立てておりますけれども、あそこに定められたエンジンの清浄装置の開発とか、あるいはエンジンの改良とか、そういうものが進んでくれば、これは当然その事態に相応して規制を早めるというふうなことはこれは技術的に考えるべきことでございます。そういうふうに御承知いただきたいと思います。
  202. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあいろいろ言われましたが、私はやはり問題があるというふうに考えますよ。いろいろ努力されておるように伺いますが、一番大切な立場が抜けているように私は思うのです。それでは来年から光化学スモッグがなくなるとはっきり言えますか。早く有効な対策を強めなければ来年も光化学スモックが発生するのではないか。東京だけではなく、大阪もその危険が指摘されておるわけです。先日、厚生大臣も運輸大臣に対して二分の一から三分の一にすべきだと、こういうようなことを言っていらっしゃるように思うのですね。それにはメーカーのあと押しのような姿勢でなしに、今日の技術的水準のぎりぎりの規制基準をとる。ある場合には先回りした基準をきめて、それにメーカーの技術水準を引き上げていくということが、私は公害防止の立場からは必要ではなかろうかというふうに考えます。先ほどあげましたデータから言いましても、すでに今日二%の水準があるのですから、来年度からの規制基準をこの立場で見直してみるつもりはないかどうか。国民立場から見れば当然に必要な措置と思いますが、運輸大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  203. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) だんだんのお話でございまして、まあ運輸省当局が、あんまりいい親心でありませんけれども一種の親心を持って、中小メーカーのことも考えながら、以下でありますから、それがゼロになっても一になってもいいわけですから、こういう点に置いたのだろうと思いますけれども、ただわれわれ政治家ばかりではなく、公僕と言われる役所の人たちも、公害に対する感覚をもっと強めなければならぬと思います。これはもうあえて日本だけでなく、これは世界的の問題でありますからして、したがって、メーカーその他に対してきびしい条件を付してもこれは当然であると思うのでありますからして、したがって、せんだって実は自動車局長に対して、従来審議会できめました基準をなお検討の上、積極的な措置をとるようにという指示を与えております。いずれなるべく早い機会に審議会を開きまして、これらに対して諮問をしたいとも考えている次第であります。
  204. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 排気ガス対策基本計画でも内燃機関の改良促進、自動車排気ガス清浄装置の開発、石油系燃料の改良など、総合的に取り組むのは昭和四十八年目標の達成後となっておるように聞いております。エンジンの改良も必要でございますが、排気ガス清浄装置もかなり開発途上にあるということを聞いておりますが、四十八年以後自動車に排気ガス清浄装置をつけさせる方針のようではありますが、技術開発を早めるように努力をされるおつもりでございましょうか、簡単にお答えください。
  205. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 排気ガスの清浄装置につきましては、確かにいまいろいろな研究施策、あるいは一部実用等が行なわれておりますが、まだその防除技術の開発という点からいいますと必ずしも十分でありません。それから清浄の性能、それから耐久性等についてはなお改善の余地がございますので、今後さらに私どもとしては、交通安全公害研究所等において研究をするとともに、四十七年を目途としてそれの実用化と申しますか、こういうことが実現できるようにやっておるわけでございます。
  206. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 性能のよい、実用性の強いものをつくることも私は可能だと思うんです。四十八年以後でなければ取りつけないと固定化してしまうんですか。そこの点を伺っておきたいのです。
  207. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 四十七年を目途に工業化するということでございまして、これは目途でございます。したがいまして、研究が促進されて自信のあるものが出たならば、これはその時期を早めるということは可能であるわけであります。
  208. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は以上の立場から、政府が業界を引き上げて、排気ガス規制基準を改定強化し、また、有効な清浄装置の開発、実行化のために、必要な場合は、業界の技術陣をも協力させて、一そう努力されるように私は希望いたしたいと存じます。その立場なくしては大気の汚染を防ぐ道はないと、こういうふうに考えております。今後排気ガス規制基準の強化のための決意と方針を、私は大臣から一応伺っておきたいと思います。
  209. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 原則的には、これは通産省の技術開発に待つわけでありますが、規制は運輸省がやっておりますので、通産省とも十分に打ち合わせをいたしまして、積極的に規制強化に進んでいきたい、かように考えて、同時にまた通産省のほうで国が十分助成を重ねつつ、いま言ったような機器の開発も進めてまいりたい、かように考えております。
  210. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 次に、公害防止事業費事業者負担法について少し質問をいたしたいと存じますが、今度の公害対策基本法の第三条の「事業者責務」の条項に「必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策に協力する責務を有する。」と、こうあります。しかし、これでは一般的な義務と責任を示しただけでありまして、企業者の責任をもっと明確にする立法が私は必要ではないかと思うんです。企業や公害源の責任がこれでは明確ではないと思いますが、また、これを守らない場合の罰則がこれにはないと思うんです。これではたして目的を達することができるかどうかですね。その点一点。
  211. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この三条を、「事業者責務」を受けて、今回の公害防止事業費事業者負担法というものもそういう精神で前処理というものも義務づけておるわけでありますが、これらのものに関連する公共事業を行ないます際は、単に責務ではなくて、それらに定められた負担金を納めなかった場合は国税徴収法にのっとって、国税、地方税の次にその負担金を徴収する。しかも、それは延滞した場合においては延滞金から先にとっていくぞ、ということでございますから、罰金よりも、実際上国税徴収の権力を持つと同じ意味で徴収をしていきますから、それに伴って差し押えとか、競売とか、そういうところまでいけるというふうに私は考えておりますので、このことの罰則よりも、負担金を強制的に取り立てていけるのだという意味で、罰則以上の効果をあげていくということのほうでいけるのではないかと思っております。
  212. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 一々質問すると、少し時間がかかりますから、かためて質問してまいりたいと思いますが、公害防止の事業費は、私は公害を起こした事業者が全額負担すべきものだ、というのが私たちの考えなんです。この法案は、国または地方公共団体の防止事業費の一部を、公害を起こした企業が負担する、こういうことになっておりまして、はなはだ私は不合理じゃないかと思うんです。朝からのお答えで、田子の浦のヘドロのような場合は十分の十、全額企業が負担するということもおっしゃっています。しかし、私はあらゆる事業から起こった公害は、これは企業が全額負担していくべきだと思っておるのですが、たとえばこういう問題が起こったときはどうでしょうか。地下水汲み上げによる地盤沈下が起こった場合、これは衆議院でのお答えによりますと、地下水はだれが汲んだかわからぬので、地盤沈下が起こったからといって負担をだれにかけていいかわからぬから、どうにもならぬという意味お答えがあったようでございますが、石炭採掘で地盤沈下した、そのときには、石炭会社が掘った石炭一トンについて幾らというような、その地盤沈下公害が起こったときのために金を積み立てているということも聞いておりますが、この地下水汲み上げによる地盤沈下のためにも、やはり石炭企業のやっているような、一トンの水に対して幾らというような拠金といいますか、拠出をさせて、それをずっと積み立てていって、そうして地盤沈下が起こったときそれに使うというようなことも私は考えられると思うのですが、そういうことは考えていらっしゃらないのかどうか。この地下水の汲み上げによる地盤沈下に対する負担は、どういうふうにやっていらっしゃるつもりか。負担するところがないからといって、全額国庫が負担していくというようなことは、これははなはだ私は不合理のような気がいたします。その点お答をしていただきたいと思います。
  213. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、企業が全額負担すべきことが原則でございます。ただ、ここに事業費事業者負担法で定められているそれぞれの事業の類型は、全額負担させるにはその事業の目的が、たとえばグリーンベルトみたいに、そういう別な性格のものである、あるいは公害の起こる前に起こらないようにする事業というようなことから、比率が幾分低くなったりいたしておりますが、問題のいまの地下水汲み上げにしろ、これはたとえば天然ガスによる地下水の汲み上げといったようなものが、自動的にその周辺に地盤沈下をもたらした場合において防潮堤をつくらなければならないというような場合には、その原因者たる企業者がはっきりいたしますので、そういうものの場合は、この公害防止事業費事業者負担法案においても、防潮堤等に対する応分の負担というものは考えておるわけでございます。しかしながら、水脈というものが非常に複雑広範な分布を示しておりますところから見て、あながちこれがビル用水だけでいっておるものなのか、あるいは工業用水だけでいっておるものなのか、またはどの企業だけなのか、あるいはこれが遠く上流の、一般の普通の家庭が汲み上げている地下水、井戸水でございますね、そういうもの等も原因があるやに、いまやいわれるときになってきている。そうした非常に総合的な原因ということになりますと、それらの問題についてのだれに一体負担させるか。負担はさせることはさせよう。しかし、だれとだれにさせるかという問題がたいへんむずかしい問題であるかと、私はいまのところ考えておるわけでございまして、いまの御提案の、そのためにたとえば地下水を汲み上げてビル用水に使っておる、工業用水に地下水を汲み上げて使っておるというような企業等が、積み立て金等を、基金等をつくって、そうして必要な負担に応ずるということも、対象特定できればこれは考えられないことはないと思いますが、いまここでちょっと即答いたしかねる御構想なので、なお検討させていただきます。
  214. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一つ。田子の浦のヘドロは十分の十企業が負担するということをあなたもおっしゃっていらっしゃるが、田子の浦のヘドロはいま百万トンといわれていますね。百万トン片づけるのに、一日に何トン処理して、幾日間かかるかということですね。その費用はどのくらい見積もることができるのか。また、それを片づけておる間も、今日なおヘドロは出ておるわけですね。聞くところによると、三千トンぐらい出ておるということを聞くわけですが、そうすると、毎日三千トン片づけていって、まだ百万トンのヘドロはそのままというわけですね。ですから、百万トンをゼロにしていくためには、毎日々々とにかく相当のものを片づけていかないと、田子の浦のヘドロは解決しないということなんですね。そうすると相当年限もかかるだろうし、相当の金もこれには要することと考えられるわけです。こういうことをちゃんと企業に、一〇〇%正確に企業に負担さしていくというこの方針には間違いがありませんね。どうですか。何年かかってもそれをなし遂げますか。
  215. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) すでに堆積しておりますものの排除についてはそのとおりでございます。しかし、それが企業の防止施設も整い、そして、それから出る数量もわずかになってまいりまして、なおかつ、しかし堆積は行なわれているという場合等の恒久的な負担等については、富士の大沢くずれあたり等の、やはり土砂等の流入等も、ある程度まあいまのところ一〇%ぐらいと推定いたしておりますが、そういうものも将来配慮しなければならない時期がくるんだということは考えております。
  216. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、富士の田子の浦のヘドロを解決するのに、どのくらいの費用とどのくらいの年月を要するというふうにお考えになっておりますか。
  217. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 田子の浦のヘドロの処理につきましては、当初の外洋投棄案から港内移動案、あるいは脱水機による案、さらにまた富士川の河川敷を利用する案と動いてまいりまして、現在は第二次的な公害を発生しないかどうかというような検討と相待ちまして、費用の面につきましても県で検討いたしておる段階でございまして、私ども最終的に幾ら要るかという数字は把握いたしておりません。
  218. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 本日の四案に対する質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三十二分散会