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1970-12-17 第64回国会 参議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十七日(木曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  十二月十七日    辞任          補欠選任     瀬谷 英行君      大森 創造君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         温水 三郎君     理 事                 岡本  悟君                 金丸 冨夫君                 谷口 慶吉君                 藤田  進君     委 員                 木村 睦男君                 河野 謙三君                 佐田 一郎君                 重政 庸徳君                 平島 敏夫君                 前田佳都男君                 渡辺一太郎君                 鈴木  強君                 森中 守義君                 田代富士男君                 三木 忠雄君                 中村 正雄君                 山田  勇君    国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君    政府委員        運輸大臣官房長  高林 康一君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省船舶局長  田坂 鋭一君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        海上保安庁長官  手塚 良成君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        経済企画庁国民        生活局水質公害        課長       白井 和徳君        外務省条約局外        務参事官     山崎 敏夫君        厚生省環境衛生        局公害部環境整        備課長      榊  孝悌君        水産庁次長    藤村 弘毅君        通商産業省鉱山        石炭局石油計画        課長       栗原 昭平君        気象庁次長    岡田 茂秀君        建設省都市局技        術参事官     三宅 正夫君        建設省河川局治        水課長      岡崎 忠郎君        日本国有鉄道理        事        原岡 幸吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○海洋汚染防止法案内閣提出衆議院送付) ○国鉄線神岡・松本間の信富鉄道予定線編入並  びに早期着工に関する請願(第一五号)(第三  二六号) ○国鉄青梅線改善計画推進等に関する請願(第  六四号)(第七一六号) ○東北新幹線の最優先着工に関する請願(第一七  三号) ○国鉄赤字路線分離構想反対に関する請願(第三  二一号)(第三四〇号)(第四一五号) ○国鉄経営合理化に伴う小駅の停留所化等に関  する請願(第三二二号)(第三四一号)(第四  一六号) ○上田交通真田傍陽線廃止反対に関する請願  (第三二三号)(第三四二号)(第四一七号) ○水郡線合理化に関する請願(第四四一号) ○総野線国鉄線建設予定線編入に関する請願  (第五〇七号)(第五三六号)(第五八二号)  (第六二一号) ○鉄道新線建設促進に関する請願(第七一一号) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 温水三郎

    委員長温水三郎君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  海洋汚染防止法案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 鈴木強

    鈴木強君 大臣にお尋ねします。本法律案を拝見しますと、本文が六十条、附則が十三条からなっておりまして、この中に十六の政令と四十二の省令によって重要な部分が定められることになっております。本文の六十条に匹敵するような合計五十八にも及ぶ重要部分政省令にまかせられているという法律は、そう他にないと私は思うのでございます。したがって、この際、この法律案審議にあたって、われわれはこの内容を知らないで審議を済ませるというわけにはまいりません。幸い大臣は、公害連合審査会で、質問に答えて、これらの政省令については目下協議検討中であるので、おそらく各委員会付託審議の段階では提出できるだろうというような趣旨の御答弁をなさっております。そこで、本案審議にあたって、五十八の政省令についてその内容をお示しいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  4. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 御承知のように、この法案内容はかなり多岐にわたっておりますのみならず、情勢の変化によっては条件自体も変わってくるものがあるのが一つと、もう一つの、省令等が多いのは、かなり事務的な規定が多いためでもあります。しかし、できれば、この法案を出すにあたっては、それらの内容をある程度明らかにして出すべきものであると存じましたが、御承知のように、相当時間に制約がありましたために、内容を具体的に申し上げる機会がいままでなかったことはまことに申しわけないと思います。目下最終的な結論には至っておりませんけれども、大体こういう方向でやっていきたいという程度の、ある程度内容はこの委員会政府委員から皆さまに申し述べることができるように準備をしてまいっておりますので、正式の文書として皆さんに御提出することができないことはまことに申しわけありませんが、その点は御了承願いたい、各省とのまだ詰めがことに政令等におきましてはあるものでありますから。しかしながら、大綱は大体において間違いはないと、こう存じますので、政府委員説明によって御了承を願いたいと存じます。
  5. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 政令省令につきましては、いまお話しのように、非常に数が多いという、そのとおりでございますが、そのおもなものにつきまして考え方を申し上げたいと思います。  これは御承知のように、政令はまあ各省とも十分協議を済ませた上制定されるものでございますが、いまの場合は、この法案を御審議いただく上において、その基本的な考え方というような範囲にとどまるものでございますが、そういう意味におきまして御説明申し上げたいと思います。  まず、第三条の第六号に政令がございますが、「海洋施設」のところでございます。「海域に設けられる工作物政令で定めるものをいう。」、これは海洋施設範囲を定める政令でございますが、具体的にはシーバース、海洋観測塔航標等考えておりますが、海洋汚染するおそれのある工作物について検討してまいりたい。将来海洋開発が進みますと、いろいろな施設が出てくる。その場合に、海洋汚染防止という立場から、この政令の中に取り込んでまいりたいというふうに考えておるものでございます。  それから十条でございますが、第十条に船舶からの廃棄物排出禁止規定がございます。原則禁止でございますが、第二項でやむを得ない場合を一号から三号まで書きまして、特に第一号の中に政令できめるべきことがいろいろございます。まず、「とう載人員規模政令で定める人員以上である船舶からの」云々というこの政令でございますが、これは考え方としましては、旅客船その他の船に分けまして、また、船舶の航法、区間等に応じまして百人から三百人程度ということで、その範囲内で検討をしてまいりたいというふうに考えております。それから「港の区域その他政令で定める海域」というのは、これは海域範囲でございますが、船舶交通量の多い海域、たとえば港則法に基づく港の区域が一万メートル以内の海域とか、また、それ以外に、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の内湾について検討してまいりたいというふうに考えております。  それから、その海域に捨てられる廃棄物でございますが、この場合は本文との関係もございますが、ごみ、ふん尿等考えております。排出方法としまして、「政令で定める排出方法に関する基準」、排出方法政令できめることにいたしておりますが、排出する前に、たとえば次のような前処理をすることというようなことを検討いたしたいと思っておりますが、プラスチック類あるいは紙類は焼却をする。厨芥類はこまかく破砕する。また、ふん尿固形状のものにつきましては、これを破砕して沈降しやすいように処理をする。そういうようなことでございますが、まず、そういう前処理考えまして、さらに、排出する場合には、航行中に行ない、あるいは徐々に排出しまして、一定場所に堆積しないような方法によるというような方法考えてまいりたいというふうに考えております。  それからその次に、第二号に、公有水面埋立法によって免許または承認を受けて埋め立てをする場所または廃棄物処理場所として設けられる場所政令で定める排出方法に関する基準に従ってする排出……。
  6. 鈴木強

    鈴木強君 ここに書いてあるから、前置きはいいです、時間の関係がありますから。
  7. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) わかりました。  これは廃棄物海洋に流出しないような方法検討するということでございます。  それから三号の廃棄物処理法政令において、これこれの政令においてという三号の最初政令でありますが、これは廃棄物処理法に基づいて定められる政令でございます。  それから次に、「廃棄物その他政令で定める海洋において処分することがやむを得ない廃棄物」というのは、廃棄物処理法に基づく政令によって、海洋処分できる廃棄物以外のもので、漁船内における水産加工に伴って生ずる廃棄物等について検討したいということでございます。  その次に、排出海域排出方法について政令できめることになっておりますが、これにつきましては、廃棄物の性状に応じて海流とか海深等の海象条件等を考慮して、沿岸及び漁業等海洋活動に及ぼす影響を最も少なくする排出海域排出方法検討したいという考え方でございます。  それから十七ページにまいりまして、十八条の第二項にカッコがございまして、その中に政令が三つございます。海洋施設収容人員規模でございますが、現在も海洋施設日常生活を営んでいる場合がありますが、まだ多人数の海洋施設はございませんので、今後の動向を見てこれはきめてまいりたい。それから廃棄物範囲とか排出方法に関する基準につきましては、船舶の場合に準じて考えてまいりたいと思っております。  それから四十三条にまいりますが、四十三条には廃船の規制がございます。廃船を捨てる海域廃船を捨てる方法でございますが、これは船舶交通漁業活動支障がない海域で、容易に浮上移動しないような措置をして、海底に沈めるというような、そういう方法検討したいと考えております。  それから五十四条でございますが、五十四条に経過措置がありますが、政令で「所要経過措置を定めることができる。」、これは海洋施設に関する経過措置でございますが、一つ施設海洋施設になった際、現に、設置または設置の工事をしている施設につきまして一定期間内に届け出をさせますとともに、これに違反する場合にその罰則を定めるということを考えております。  それから附則の第一条でございますが、「この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。」、それは公布の日から六カ月以内の確定日を定める考えでございます。  以上、政令の基本的な考え方を申し上げましたが、省令につきましては、わりあいに手続的、技術的な規定が多うございますが、油濁防止関係につきましては、おおむね現行法に定められた運輸省令をベースにしまして規定をしていくというものが非常に多いわけでございます。  その他、新しい廃棄物処理とか、第六章関係等につきましては、それぞれ所要規定を定めたいと思いますが、この点についても御説明申し上げましょうか。
  8. 鈴木強

    鈴木強君 これは大臣、お願いしたいんですけれども、いま十六の政令内容、ちょっと伺ったんですが、まだこれも非常に、おっしゃるように不十分なものであって、たとえば四十三条では、船舶交通あるいは漁業支障のない海域をやりたいという話であって、具体的にどの海域を指定されるかということについてはきまってないわけです。そういうものじゃ、これはただ考え方がわかっただけであって、具体的にそれらの問題について、どうしていまここでその海域が指定できないのか。だから、十六の政令運輸省が独自の立場できめることのできないものが幾つあるわけですか、それについてはどことどこと相談して、いつごろにきめようとしているのか。  それからもう一つは、いま読み上げられたんですけれども、やっぱり私一生懸命記録していたんですが、十分これは記録はできない、読み上げるのをね。したがって、何かいま言ったことをメモにでもして、あと出してくれませんか。そうしないと、ちょっとわれわれも聞いただけじゃ書き取れないし、正しく理解しないと、これはいけませんから、それをあとから出してください。  だから、いまここで考え方は一応わかりましたけれども、もう少し煮詰めたものがどうして出ないのか。どことどこと相談をして、いつごろまでに政省令内容というものをはっきりできるのかということ、ひとつ答えてください。
  9. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 政令につきましては、御承知のように各省とも十分協議いたすものでございますが、特に重要な第十条関係政令等につきましては、これは、たとえば第三号の、廃棄物海洋排出する方法海域を定めますが、これらにつきましては、先ほど申し上げましたように、海洋海象であるとか、いろいろな条件がございます。したがいまして、省内気象あるいは水路関係の業務のみならず、関係省、特に漁業関係水産庁の御意見も伺わなきゃいかぬ。各省専門家とも十分御相談して適切な基準をきめてまいりたいというふうに考えておるわけです。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 私はこの委員会でも何回か、政省令にまかされる部分については、法案提出までに各省あるいは省内の各部局の連絡を十分とっていただいて、煮詰めて、そして、原則としてはその法案審議の前にわれわれに示してほしいということを、先般来の法案審議についても強く私は要請してきているはずなんですよ。ところが、皆さんのほうは一生懸命仕事はしているんだが、大事なところは抜けているわけだ。いま言った水産庁なり、あるいはあなたのほうの省内部気象なり水路なり、そのほかまだ各省との関係廃棄物処理については厚生省になると思うんですが、そういうところともっと早目に、方法をどうするとか、海域をどうするというくらいのことは煮詰めておくべきではないですか。これは、その面の片手落ちじゃないでしょうか。だから、これは何回言ってもわれわれの期待するような法案審議ができないわけで、非常に残念に思うわけですよ。それでわれわれにりっぱな海洋汚染防止法律案審議してくれと言われましても、責任持った審議ができないんですよ。——これは委員長、ちょっと問題ですわね。だから、私が言っているのは、お答えがないんですけれども、それではいつごろまでにそういう結論がまとまってわれわれに提示していただけるんですかということを聞いているんですよ。おそらくきょうじゅうには間に合わないでしょう。間に合わないならば、せめていまあなたが読み上げられたぐらいのものはひとつメモとして出してほしい。おとといですか、道交法審議をしました。大事な光化学スモッグの複合的な硫酸ミストの問題にしても、いま専門家検討してもらっている、来年の三月にならなきゃ結論が出ないというようなことで、この法律の中における基準というものが行使されないような法律も出てきている。これは、だからこの法律案だけでなくて、政府全体の姿勢にもなるのであります。これは大臣、ひとつぜひ——われわれの言っていることが無理ではないでしょう。その点はひとつ、もう少し注意してくれませんか。あなたは行政官を督励して、立法、行政立場で、行政府が立法府に対して責任の持てるような提案をひとつしていただけませんでしょうか。非常に私はこだわるんですけれども、こだわらざるを得ないです。いかがですか。
  11. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ごもっともな御意見であります。ただ、この法案ごらんになっても御承知になると思うんですが、こういうふうに漁業関係といいますか、魚族の保存あるいは漁業活動制約をなるべく少なくしたいという問題があります。それはまあ一つは、海底調査あるいは学者によるところの漁業——あるいは潮流とか、いろいろなことがあるわけであります。そういう関係から、実はこの草案をつくるにあたりましても、かなり農林省のほうからはまあ強い意見が出てまいっておりましたが、しかしまあ原則としてはひとつ運輸省にまかしてもらいたいということで、条文の中で、農林大臣意見を述べるというように、これは第四十七条の三項ですが、「農林大臣は、油又は廃棄物排出により漁場の効用が著しく低下し、又は低下するおそれがあると認められるときは、運輸大臣に対し、この法律の施行に関し、当該漁場云々ということがあります。こういう意味でもって、まあ海洋をきれいにすることはもちろん漁業関係者も、先ほど来陳情があったように賛成ではありますけれども、しかしながら全然捨てないわけにはいかない。たとえば廃船のような場合もあります。その他のものがあるわけです。そういうものを捨てる場所海域をきめる、あるいは方法等をきめるということが、かなりまあ専門家あるいは漁業組合等、あるいは学識経験者意見を徴して、そしてこれを明確にしなければならぬというので、ちょっと時間を要するわけであります。しかし、考え方はいま申しましたような事情でありますから、いま直ちにここ数日のうちに成案を出せと言われましても困難でありますので、こういう方針でこの法律に従って行なうのだという意味での、先ほど来見坊審議官が御説明したメモ程度のものは直ちにこれを皆さんに配付しましていろいろ御意見を伺いたい。われわれは、本法を曲げて政会をつくったり、省会をつくったりする考えは毛頭ありませんので、したがって、先ほど述べましたメモ程度のものは皆さんの参考にお回ししまして、それによって御審議を願えれば幸いだと思います。     —————————————
  12. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 委員異動について御報告いたします。  本日、瀬谷英行君が委員を辞任され、その補欠として大森創造君が選任されました。
  13. 鈴木強

    鈴木強君 不満ですけれども、大臣がそうおっしゃるのですから、今回の場合はできるだけ早く問題を煮詰めてわれわれの前に、国会が終わりましても委員にひとつ知らしていただきたいと思います。今後は、いま私の申し上げたことが無理でないと大臣もおっしゃるわけですから、ぜひひとつ法案提出に際しては、私の申し上げたような立場に立って事前に話を煮詰めて法案と一緒に出していただくようにお願いをします。  それで、個々の条文に入りますまでに四、五点基本的な問題で、この法律提案の背景にもなるでしょうし、基礎にもなる問題で私はお尋ねをしたいと思います。  まず第一は、これは大臣外務省にお伺いをいたしますが、今度の公害国会といわれるこの国会に十四の法律案提案しておりますが、そのいずれを見ましても、公害防止対策としての基本的な筋というものがどうもはっきりしておらないように思いますから、これに関連して大臣に伺いたいのでありますが、私は、何と申しましてもこの公害をなくするということについては、その原因を追及して根元においてこれを断ち切るという、これがもう基本でなければならないと思います。そういう政策を打ち出しつつ、なおかつ一挙にこれができるものではありませんので、長期計画なり何なりを打ち出していただく。しかしその間に、不幸にして海洋にいろんなものが流れ込みまして汚染をされるということに関して対応策考えていく。もう一つは、現にいまも漁民の方から陳情がありましたけれども、被害をこうむっているその被害者に対して、加害者が判明するといなとにかかわらず、現実に起きておるその被害に対して補償をどうするかということが最も大事なことだと思います。ですから、この三つが鼎立をして初めて公害防止というものが文字どおり効果をあらわわすものだと、こう思うわけであります。しかし、残念ながらこの法律案の中には——その根元の問題について、申し上げた根本において公害を断ち切るという姿勢方法というものが、少なくもこの法案の中にはありません。ですから、他の十三の法案の中にそういうものがあるとすれば、一体どこでそういうものを——船舶からの油の排出、あるいは工場、下水等からの汚水の排出あるいは海洋施設からの油や廃棄物の投棄に対する根本的な防除策、こういうものがどこで、どの法律でもってどういうふうにきちっとなっているかということですね、それをひとつ伺いたい。  それから第二の問題は、これから法律案審議するわけですからよろしゅうございます。  それからもう一つ、最後の被害補償の問題につきましては、私は、非常に大事なことですから伺っておきますが、大臣提案理由説明の中にお述べになりましたように、国際条約がございます。このうち海水汚濁防止に関する国際条約、これは一九五四年に制定をされて、昨年の十一月ですか、暮れに一部改正をされたわけでありますが、これは次の国会批准をする、こうおっしゃいましたね。それからもう一つ、油濁事故に対する公海における措置に関する国際条約、これは題名が、油濁事故なのか、あるいは油濁の災害なのか、提案説明では「事故」になっておりますが、条約題名をちょっと、どちらなのか、事故なのか災害なのか、はっきりしてもらいたいのですが、これも次の通常国会批准手続をとると、これはけっこうです。しかも、そういう批准手続をとらない前に、この法律には、改正というか、二つの条約に根拠を求めて法律案内容を変えているわけです。ところが、一番大事な補償に関する海水油濁民事責任条約というものは何にも触れておりません。これが問題なんです。要するに、これが批准されませんから、補償というものについての姿勢が、規定がこの法案の中には全然盛られておらぬと私は思うのであります。これは昨年十一月です、IMCO、これは政府間海事協議機関でありますが、そこで油濁事故に対する公海における措置に関する条約を採択されているわけでありますから、私は当然この条約批准されて、前の条約と同じような立場に立って、本法案の中に被害者補償というものを入れるべきではなかったかと思うのでございますが、どうしてその点だけが批准できないのか。これはけさの新聞を見ますと、十五日にロンドンで湯川駐英大使がこの条約に署名した、そして署名国は二十七カ国になった、こういう外電が載っておるのを私は拝見しました。その際に、「油濁災害に対する公海における措置に関する国際条約」と書いてありますから、事故か、災害か、ちょっとはっきりしてもらいたいのですが、いずれにしても、今回政府はこの条約に関しては、民事責任補償条約については批准をしないのですけれども、これはどういうわけでしないのか、ひとつあわせて外務省のほうから御答弁をいただきたいと思います。
  14. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) お答え申し上げます。  まず最初に、先生のおっしゃいましたいわゆる公法条約でございますが、これの正確な名称といたしましては、油濁災害に対する公海における措置に関する国際条約と申しております。したがいまして、これは事故による災害、油濁災害でございます。  それから、これはいま先生がおっしゃいましたように、十五日、一昨日ロンドンにおきましてわがほうの湯川大使が署名いたしたわけでございます。この条約はまだいずれの国も批准をいたしておりません。しかしながら、われわれはこの条約については早急に批准いたす、正確には受諾でございますが、受諾いたす考えで、次の通常国会には早々にお出しすべくいま準備を進めておる段階でございまして、この条約の受諾に必要な国内措置は、この海洋汚染防止法の中にもすでに規定されております。 第二の御質問でございますが、いわゆる私法条約、正確には油濁損害に対する民事責任条約でございますが、これは非常に実は国内法上複雑な問題を含んでおるのでございます。先生承知のとおり、この条約は、船舶が油濁事故を起こしました場合の民事責任原則を定めておるわけでございますが、その損害賠償については船主に責任を集中いたしますとともに、無過失責任に近い責任制度を設けております。それから通常の船主責任の限度のワク外にいたしまして、責任限度を金額で規定しておるわけでございます。ところが、わが国の商法におきましては——正確には商法の六百九十条でございますが——船主の責任につきましてはいわゆる委付の制度、委任の委と付則の付といいますか、委付の制度をとっておりまして、まあ船主としては船体及び積み荷を全面的に提供することをもって船主責任の限度とするという制度がございます。いわば物で責任の限度をきめておるわけでございます。しかしながら、この民事責任条約は金額主義になっておりますので、その点との間に食い違いが生じております。この点につきましては、実はそれ以前の条約といたしまして一九五七年の船主責任条約というものがございまして、それがまさに金額主義になっているわけでございますが、これは現在、法制審議会の商法部会で検討中でございます。したがいまして、まず金額主義に改めませんと、この民事責任条約に入るのにもちょっと国内法的に困難があると申さざるを得ないのであります。しかし、この点はすでに鋭意検討中と聞いております。  第二の問題は、先ほど申し上げました船主の責任限度が定められておるわけでございますが、これでもまだ被害者への補償としては十分でないという意見もございます。われわれもその点があるかと思います。また一方、船主の側からいたしますと、非常に負担が過重であるという意見がございます。その両方の意見が昨年の国際会議でもございまして、結局、その点を解決するために一種の国際補償基金制度を設けようということになりまして、その制度に対する技術的検討が、現在IMCOの法律委員会の作業部会で進められております。その昨年の会議で一つの決議がございまして、この補償基金条約は来年じゅうに、一九七一年じゅうにつくるべきだという決議がございまして、その方向へ向かって現在努力が進められております。したがいまして、われわれは運輸省その他関係省とも相談を重ねまして、この民事責任条約あるいは私法条約と今後でき得べき国際補償基金条約とをあわせて検討いたしまして、できるだけ早く国会に御承認のために提出したいと思います。ただ残念ながら、後者の補償基金条約はまだこれからつくる段階でございますので、次の通常国会、本年末に召集されます通常国会提出することは困難かと思われます。
  15. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、昨年ブラッセルの国際会議できまった油濁損害に対する民事責任条約というのは、同時に採択をされたいまの基金の決議ですね、こういうものがまだまとまっておらないのでできないと、こういうことですか。
  16. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) やはりその補償基金条約ができませんと、この民事責任条約をほんとうの意味で実施することは実体的に見て困難であろうと思いますし、第二には、先ほども申し上げましたように、この民事責任条約補償について金額主義をとっておるために、国内の商法その他の関係法令との調整を要する、その二点がすぐに批准できない理由でございます。しかし政府といたしましては、いろいろ協議を重ねまして、この点は前向きに検討いたしております。
  17. 鈴木強

    鈴木強君 この海水油濁民事責任条約というのは、油濁事故被害者に対する責任は、常に積んでいる油を流出させたタンカーの登録船主が負う、こういうことが大前提になっておるわけです。そうして、ごく一部の免責事由のみを認める厳格責任主義というのをとっていますね。ですから私は、国際的なこういう条約について、同時に決議として採択された基金条約というものが、まだ内容が固まっておらないのでこの条約批准できないという考え方もおかしいんです。この条約によってある程度国際的なものをこれは考えなければなりません。ですから、それはそれとして、さらに第二、第三回の法律会議にまかせるとしても、こういう条約批准をして、そうして国内的に一いまからいろいろお伺いしますけれども、油濁事故によって被害を受けておる被害者に対して、あなたが言うような無過失の責任を含めて、どうしたらその被害補償することができるかということを、これは日本政府独自の立場にしても、とりあえず暫定措置としてきめておく必要が私はあると思うのです。ですから、これを切り離してこの次の国会批准、承認がそういうわけでできないということについては納得できません。大臣いまの点どうですか。——あなたは参事官ですか、外務省の。
  18. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 私はそうでございます。
  19. 鈴木強

    鈴木強君 条約局長はいないかね——責任のがれですか、やる気があればできるわけだ。
  20. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 先ほど申し上げましたように、やはり船主の方がこの民事責任条約で相当重い責任を負っておるわけでございますが、それをほんとうに果たすためには、やはりそういう支払い能力というものをつけないと問題が生ずる、実際上条約が履行できなくなるという問題がありますので、やはり基金というものをつくる必要があるということが、その六九年の会議でも認められたわけであります。ただ、基金条約としては残念ながらまだ一条もできておりませんので、それができないと、政府としても責任を持って国際的にその条約に入ることはできないと判断しておるわけでございます。  それと第二の点は、先ほども申し上げましたように、やはり船主に責任を集中し、しかもそれを金額主義でやるためには、やはり商法との関係がある。この商法の問題は非常に膨大な商法改正の一環としてやっておられますので、われわれとしてもできるだけその改正を促進していただきたいと思いますが、それがめどがつくまでは、やはり条約に加入することは国際的に問題があると考えますので、しばらくその点は御猶予願いたいと思うのであります。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 これは政治的な要素もかなりあるんです。たとえば、私は船協月報十一月号を拝見しました。ゆうべ私のところへ送ってくれましたので、たまたま見ておりましたらその記事が載っておりまして、大阪商船三井船舶総務部文書課長の桜井玲二さんという人が、「油濁損害のための国際補償基金」というものについて書いておられますが、これは大臣も聞いてほしいのですが、この中に、この条約批准については、「船主側としては昨年春のCMI東京総会当時から一貫してこの油濁に関する船主責任については厳格責任の採用と責任限度額の大幅引上げに対して強く反対の立場を取り続け昨年十一月成立のブラッセル民事責任条約そのものをわが国が速かに調印批准することには反対の立場を表明して来たのである。」、こういうふうに書いてある。ただ、条約論としていま参事官がおっしゃることは若干わかりました。ですから、あとは基金条約のほうをはっきりしてもらいたいですね。だから、それはスウェーデンとかフランスが提案をした代案が会議に出ておりますね。要するに基金条約をつくろうとする趣旨は、第一には被害者をより完全に補償するということ、第二に民事責任条約により船主に課せられることになる追加の経済的負担を取り除くこと、この二つが基金の内容の主たる目的だというんだが、実際に第二の目的を達成するための具体的提案というものがフランスとスウェーデンから提案されているんですよ。ものの考え方は、国際的にそういう被害に対してどういう補償をしていくかということに対するスタンダードをきめて、上限なり下限なりについてはいろいろとその国々によって問題があると思いますから、その点の調整の問題が私は問題になると思うのですよ。しかし、海洋が油によって汚染され、それによって被害を受ける、これは漁民もあるだろうし、海岸住民もあるだろうし、いわゆる公害といわれる海洋汚濁による被害者に対して補償するということが船主の責任であるということは国際的な通念です。その精神を否定するような動きがもし日本の国内にあるとすれば、これはいかに海洋公害をなくそうとしても、政府法案を出しても、これは一文の値打ちもない。まず船主自体が、加害者がそういう気持ちになってくれなければこの問題は解決いたしません。ですから法律論上、条約論上あなたがおっしゃることについては、外務省のほうとして責任条約を今度提案できなかった、そのいきさつについてはわかりました。  そこで、運輸大臣に伺いたいのですが、いまのような国際条約の動きが一方にはございます。それはそれとして、日本も参画をして、大いにいいものをつくっていただくことにして、とりあえず今日起きている海洋における被害被害者に対する補償は一体どういうふうにしようとするのか、私はそれは国際条約はなくても、当面基本的な問題が解決するまでの次善の策として、被害者に対して加害者がいかなる賠償の責任を負うかということについて、もう少しはっきりしたものをこの中に入れておく必要があったのではないかと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  22. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) いま条約関係外務省から御説明申し上げたとおりでございますけれども、実は、この条約と別個に船主の賠償責任をカバーする制度がございます。これはいま法律に直接書いてございませんけれども、保険の制度が実はございます。この保険は相互保険組合法という法律に基づきまして、現在、船主責任相互保険組合というのがございまして、この補償は過失責任の場合に限りますけれども、ここで、こういう油濁の場合に、たとえば海産物等に損害を与えた場合には最高五十二億円の保険をかけることができる、そういう保険で、船主が損害があった場合にはカバーするという制度が現在ございまして、これには、いわゆる外航船のタンカーは全部この保険に入っているわけでございます。これは油濁損害のみならず、たとえば船が岸壁にぶつかって岸壁に損害を与えた場合等もございますし、あるいはまた、船が荷役中に船側の責任で荷役人夫が死傷したというような場合にもカバーするということもございますのですが、油濁につきましても五十二億を最高限度といたしましてカバーする、こういう現行制度が実はあるわけでございます。  並びに、いま一つは、これは国際的な実は機構でございまするが、無過失責任に近いものでございまして、トバロップとわれわれ呼んでおりますが、一九六九年、昨年の十月にこういう制度ができました。これは世界の石油業界が金を集めて基金をつくっておりまして、きわめて自主的なものでございますけれども、船が過失、無過失を問わず油を流した場合に除去する費用につきまして、このトバロップという制度に入っておりますると、そこでもって、生じた損害の賠償の金を保険してくれるということでございまして、わが国の外航タンカーも、この十二月現在で全部これに入っておるのでございます。これは油の防除、除去の場合のための保険ということでございます。  現在、以上のようなことでございまして、船主相互保険、いわゆるPI保険というものといまのトバロップというものと両方の制度で実はカバーしておるわけでございます。これ以上につきましては、いわゆる無過失責任につきましては、ただいま外務省から御説明申し上げましたような私法条約、これが国際基金条約との関係等でいまおくれておりますけれども、これができ上がりますれば、わが国といたしましても、非常にタンカーを持っておる国でございますから、ぜひこれに——要するに受諾の方向で、前向きの方向で対処したいということでございます。また、船は国際的に動き回るものでございますから、国際条約の動向を見きわめながら国内法も整備していく必要があると存じます。したがいまして、先ほど外務省から申しましたように、今度の国会は無理でございますけれども、次の国会には私法条約検討する、それまでの間、その後、これと並行いたしまして、こういったPI制度あるいはトバロップ制度というものでカバーしていきたいと、かように考えております。現状はかようでございます。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 まあPI保険とか総合保険制度というものがあるということは私も知っておるわけですけれども、特にここで問題にしたいのは、無過失に近い賠償責任のことですね、それを特に私は問題にしたいわけです。  これは自動車の場合でも自賠責法というのがございまして、それぞれ自動車の被害に対しては補償するようになっております。額は少ないとしても、一応たてまえはそうなっておる。加害者がはっきりしているものについては、これは民事の争いもできるわけです、それはいいですよ。ただし、せっかく公害防除のための対策を立てるとするならば、何かしら法律の中にそういうものが、民法よりも優位に立つ補償条項というものが出てほしいわけですよ。特に無過失賠償責任については、まあ海洋に油が流れておった、どこからか流れてきた油によってその地域のノリの業者が全くノリが取れなくなってしまった、海洋がそれに汚染された、海水浴もできないというような状態がどんどん出ておるわけですからね。それによって、たとえば人体に支障が起きたというようなことも出てくると思います、医学的にですね。そういうものに対して、要するに、流れてきた油そのものがだれが流してきたかわからない場合に、一体だれが補償するか、何もないでしょう。これが問題なんです。だから、そういうものに対してこのPI保険なり、あるいは総合保険制度の中で見れるならいいですが、見れないでしょう、これは。それを一体どうしようとするのか。全然これは考えていないわけです。これはひとつ、大臣、この法律に入れなかったことは私は非常に不満ですよ。大事な被害者に対する補償ということは、特に無過失賠償責任立場に立つものが多いですよ。これは例としても、油濁の汚染あるいは廃棄物汚染というものに対しては、これは手落ちじゃなかったか。
  24. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 漁業家が迷惑をこうむった、その他の関係者が迷惑をこうむっておる点は、重々われわれもお気の毒に存じております。ただ、問題は、原則的には先ほど来外務省及び海運局長からお答え申し上げましたが、ただいまお話しになったような沿岸の油は船で流す場合のほうが多いだろうと思いますが、しかしながら陸上から投棄されたり、あるいは河川を通じて流れてきたりする場合もあり得る。そういう意味において、なかなかこの問題をどうとらえるかの問題は非常にむずかしい問題があります。ただ、この除去については、あるいは部分的なそういう損害等については、先ほど来の説明がありましたように、船主組合その他によって話し合いでもって処理しておるようであります。大体年間平均三億ぐらいの金ですか、そのような措置を講じておるようでありますが、今後このような条約ができ、あるいは法律が整備されるに従って、それらの不満な点はだんだん改善されてまいると存じます。ことに、来年、補償基金制度が明らかになってまいりますというと、日本は何といってもタンカーを持っておる国としては世界の一、二の国でありますから、みずから責任を感じなければなりませんので、国内法の改正等につきましても、国としては積極的にこれは進めていかなければならない、かように考えておる次第であります。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、その点については、まあ無過失賠償責任の場合に、いろいろ他の法案との関係もあり、いろいろと派生的な問題も不明確になっているのですけれども、これはそうすると次の近い機会に、条約のほうがどう進行しようと、政府としては無過失賠償責任というような問題についても、かりに保険制度の中に一部取り入れていくとか、いろいろあると思いますが、いずれにしても、何らかの方法をもって被害者補償をするというような改正考えておるというふうに理解をしておいてよろしゅうございますか。
  26. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 御承知のように、日本の船が外国の沿岸まで行く問題でありますから、国内法だけでこれを規制することはもちろん困難でもありますのみならず、いわゆる厳格な意味での無過失賠償責任制というものをはたして規定できるかどうかの問題がありますので、いま鈴木さんがおっしゃったような意味でこれを理解することは、いまのところ困難でありますが、今後とも検討を進めて、どこまでいわゆる損害の補償に当たり得るかは今後の検討に待ちたいと思っております。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 これはまあ国際的な問題ではありますから、外国船もどんどん入ってくることでしょうね、それによって生ずる被害もあると思うのです。それから国内船による被害もあると思いますが、いずれにしても被害を受ける人は変わらないわけですから、それでPI保険とか総合保険というものがあるわけですから、そういう中で、この制度を一部変えて、そういう被害に対して保険全体の中から何がしの補償をしていくというようなことは考えられるでしょう。その場合でも、外国船がやったのか、日本船がやったのか、それはわからぬわけですけれども、現実に日本国民が——沿岸漁業に携わる漁民も含めて、被害をこうむるのは日本人ですから、それに対して、日本国として、全体的なしっかりした国際的な条約ができ、責任賠償条約ができ、それから国内法が整備されて、やがて無過失責任に進むという基本的な姿勢が確立されるまで、一応過渡的な措置として、そういう保険制度の中でカバーするという方法もこれはだめなのですか。そのぐらいやらなくては話にならない。
  28. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) いまの問題は非常にむずかしい問題でありますが、やはりまあ日本船が外国へ行った場合の責任問題もからんでくるわけでございますし、そういうような点がございますので、十分検討を進めてまいりたいというふうに考えます。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 まあ非常にむずかしいことは私もわかりますけれども、しかし、むずかしいからといって、これは寸時も放置できない問題だと思うのです。実際に被害を受けた人たちの立場になってみてくださいよ。人間というのはやはりその身にならなければ身につまされてよくわかるものではないのです、確かにこれは。だから、たとえば一瞬にして漁場を失う。ノリの採取もそうです。養殖でも、全部全滅したらだれが補償するか。これはその人の立場に立ってみたら大事なことですから、そんなのんきなことでは政府としてもいけないと思うのです。ですから、保険制度ですから、業界そのものの皆さんの理解もなければできないことですから、よく業界の方々ともお話し合いを進めていただいて、何とか一歩でも半歩でも被害救済の道を開くような方法を私はぜひ考えてほしいということをまあ強く言っているわけですよ。これは大臣何とかひとつ考えてほしいと思うのですけれども、もう一度伺いたいと思います。
  30. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) もちろん日本はタンカーをたくさん持っておりますし、外国にも迷惑をかけてもいけませんし、これは国内も同様でありますが、ただいま申しましたように、これは何せ太平洋岸を流れる水はアメリカまで続いているわけでありますから、いろいろの関係がありますので、やはり国際条約と歩調を合わせていくというのがやはり原則じゃないでしょうか。国内法だけが先行するということになりますと、いろいろの意味においての困難もあります。しかし、実際上の問題としてそれらの救済措置については、ただいまお話があったように、船主あるいはその他の関係者とも十分協議をして、漁業者に迷惑のかからぬようには処理していきたいと、こういうように考え、かつまた、しかし、将来の問題としては前向きでもってやはりこの問題はやっていく必要がありますことはお説のとおりでありますからして、関係者とは十分に討議を進めていきたいと思っております。
  31. 鈴木強

    鈴木強君 それでは次に、港則法第二十四条一項の「港内又は港の境界外一万メートル以内の水面においては、みだりに、バラスト、廃油、石炭から、ごみその他これに類する廃物を捨ててはならない。」という規定がございますが、それと今回批准をしようとするこの海域保全の条約ですね、この中に抵触をする部分があるので、この点をどう考え法案をつくられたのか、伺いたいのでございます。今度の条約改正によって、少なくとも船から、第一条にありますように、「船舶及び海洋施設から海洋に油及び廃棄物排出すること」は全域にわたってまかりならぬと、こういうふうに変わったわけですね。そういう国際条約改正になり、どこへでもとにかく油とか廃棄物は捨ててはいけないというようになっているにかかわらず、港則法第二十四条一項では、一万メートル以内の水面にはみだりにこういうものを捨ててはいけないということですね。一万メートル以上は港則法上捨ててもいいのだから、バラストとか廃油とか石炭がらとかごみとかその他これに類する廃棄物を捨ててもいいということになる。一方、汚染防止法ではそれはできない、こういうたてまえになっているわけですね。この辺が条約に抵触をし、防止法案のほうに抵触をしておるのであるからして、港則法第二十四条一項というのは当然に改正をしなければならぬと私は思うのですが、どうしてこれは改正しなかったのですか。
  32. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 海洋汚染防止法が全海域であるという意味におきましては港則法二十四条とダブる面がございます。なぜこれを残したのかということでございますが、港則法はその目的にございますように、「港内における船舶交通の安全及び港内の整とんを図ることを目的とする。」というふうにうたわれておりますが、水路の保全という見地からみだりに廃物を排出するということを規制いたしておるわけでございます。一方、海洋汚染防止法は海洋全体を汚染をすることを防止いたしまして、もって海洋環境の保全に資するということを目的にいたしておるわけでございまして、ここの両者の目的はおのおの異にいたしているわけでございます。したがいまして、その規制の内容もそれぞれの法律の目的に応じて定められるのでございますから、海洋汚染防止法案が成立いたしましても、港則法二十四条は、この港則法の目的を達成するというためにはやはり必要であるというふうに考えておるわけでございます。二十四条で、港の境界外一万メートル以内の水面においてみだりに捨ててはならないということが、したがって、もちろん捨ててもいいということではまあ趣旨としましては——反対に読めばそういうふうになるわけでございますが、ただ港則法というものは、先ほど申しましたように港における交通の安全、港内の整とんということから、港の中だけじゃなくて港から一万メートル、十キロの間は捨ててはならない、十キロという範囲を設けたことによって港の中の交通並びに整とんということがはかられるんであるということが一万メートルをきめておる趣旨でございます。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 それは論理的に支離滅裂ですよ。条約によって全海域に油や廃棄物を捨ててはいけないことになったわけです。それを受けて汚染防止法はこう規定しているわけです。これは港則法のように、いまあなたのおっしゃったように一万メートル以外であったら、みだりでなかったら捨ててもいいのか、バラストとか廃油とか、石炭がらとか、これはおかしいんじゃないか、だからこんな法律は変えなさい。一方では、せっかく、どこに捨ててはいけないという網がかかっているのに、港則法上では、一万メートル以内でなかったら捨ててもいいんだというのは、そんな法律が生きているのはおかしいですよ。いわゆる制度がそう変わったら、なぜこの二十四条を変えないか。港則法は港の安全を確保するというのが目的であることは私もよく知っていますよ。だからといって、それではその一万メートル以内と区切ったことが国際法との抵触の中でいい作用をするか悪い作用をするかということですね。一万メートルではなくてもっと二万メートル、全海域に捨てないほうが一番いいでしょう。そういうことがこの条約なり法律改正の趣旨なんだから、それを否定するような港則法というものは当然に改正しなきゃいけないじゃないか、これは手落ちだと私は思います。どうですか大臣、これは修正しなくちゃだめですよ。
  34. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ものの考え方、法の読み方ですけれども、まあ考えようによっては二つのもので縛っていると考えてもいいと思うのですが、港則法は、いま審議官から説明しましたように、港湾の整備も機能も阻害しないようにしたい、こういう特殊の目的を持っております。一方は、これは海洋全体、港湾とか、そういうことに限らず広く世界の海をきれいにしよう、と同時にまた、船をもって捨てることを禁止しているわけですね。これは例がはたして当たるかどうかわかりませんけれども、最近は古い家屋の材木などはだれも買い手がないのですね。買い手どころか幾らか金をやらなければ引き取り手がない。そういうものをもし夜陰に乗じて船を使わずに何かの方法でやるということがあった場合に、それはたいへんに影響をこうむります。しかし、おっしゃるように、一万メートル以遠の地域はいいんだということをこの法律がいっておる——この法律によってはこれを禁止しておりますから、したがって、港湾内の整備あるいは港湾の機能活動を阻害しない。こういう法律でこれを一方で縛っておく。一方においては全体の海を縛る。船によってこれを持っていくことは許さない。こういう意味で重複はしておりますけれども、そういうような意味での重複でありますから、別に悪いことはないんじゃないかとも考えられる。法律の見ようでありますから、特にこの点はこのままにいたしておいて差しつかえない、いわゆる逆な結果が出てくるとは考えられないのでありますから、これでよろしいのではないかと、かように考えております。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 これは逆な結果が出てきますよ。もちろん、いま大臣のおっしゃったように、汚染は全海洋に対してやるということは、船舶からである、あるいは海洋施設からである。あなたが提案説明しているように、陸上の工場あるいは下水道等から排出される汚水というものも、海をよごす原因になっているということも述べているわけです。ですから、総合的にものは判断されなければいかぬと思うので、せっかく条約によって全海域に投棄をしてはならない、こういう原則が確認されたわけですから、その精神を受けて港則法——何かみだりでなかったら一万メートル以外には捨ててもよろしいですよというような、実際そうでしょう、法律解釈すれば。一万メートル以内は捨ててはならないのですから、一万メートル以外だったら捨ててもいいということになるわけです。そうなれば、条約とか、この法律と全く抵触することになるんじゃないですか。二重に網をかぶせているということだけれども、大きな前段の条約法律を否定するようなものを、また小さい網をかぶせるということはおかしいんじゃないですか。これはなくなったって、もう全海域がやっちゃいけないのですから、それでいいんです。ですから、この点はもう少し十分に検討されて、そうしてわれわれが納得できるような説明があれば私は理解しますけれども、納得できませんからね、さらにひとつ検討を加えてもらいたい。
  36. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 海洋汚染防止法は、条約に基づいて全海域の禁止を原則にいたしておりますが、その上に重ねて港則法二十四条の規定があるわけでありまして……。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 捨ててもいい条項じゃないですか、一万メートル以外は捨ててもいい、境界外一万メートル出ればいい。港内は確かに大臣のおっしゃるようなことであるかもしれないけれども……。
  38. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) そこで先ほど申し上げましたように、その港内の船舶交通の安全あるいは港内の整とんということをきめるだけではその目的を達成できない。したがいまして、なぜ一万メートルを置いたかということが問題になるわけでありますが、ここで規定いたしておりますのは、その港の機能を守るためには、港の境界外一万メートル以内の水面に廃物をみだりに捨てる行為、あるいは船舶から港域外一万メートル以内の水面に廃物をみだりに捨てるような行為、これらを規制いたしまして、港内の整とんあるいは交通の安全ということを、特に重点を置いて規制をいたしておるわけでございます。したがいまして、海洋汚染防止法が制定されたにかかわらず、二十四条があることによって海洋汚染防止法の実施が誤られるということはないんではないか。それぞれの目的によってそれぞれの法が運用されるわけでございます。そういうことはないんではないかというように考えます。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 それは見解が対立しているわけですから、なおまあ私も勉強してみます。  ただ、港の中と港の外一万メートルにおいて、なるほど港内の安全を確保する機能を維持するという意味において網をかけたと、こうおっしゃいますけれども、しかし実際には、それ以外は捨ててもよろしいんだというように解釈をする場合が出てきますね。そうすると、港則法上罰則規定が適用しない。海洋全体については、港則法上の罰則の適用と汚染法上の罰則の適用とは違ってくると思いますね。港則法上では罰せられないものが海洋汚染防止法の場合では罰則が適用されてくるということも出てくると思いますね。ですから、いずれにしても、港の機能を守っていくという、そのことについては捨てちゃいかぬというのですから、どこでもおまえたち捨てちゃいかぬのだというふうにきちっと法律を整理したほうが、より有効的な効果が期待できると私は思うから申し上げているわけでして、皆さんのほうももう一回検討してみてくださいませんか。私もまたよく勉強してみます。いかがですか。これはちょっと見解が対立しておりますから、水かけ論になってもしようがないですから、先に進みたいと思います。  第一条の点で一つ伺いますが、この第一条の目的の中に、「この法律は、船舶及び海洋施設から海洋に油及び廃棄物排出することを規制し、廃油の適正な処理を確保するとともに、海洋汚染の防除のための措置を講ずることにより、海洋汚染防止し、もって海洋環境の保全に資する」、要するに、海洋汚染の防除の措置を講ずることによって、「海洋汚染防止し、もって海洋環境の保全に資することを目的とする。」と、こういうふうになっておるのであります。大臣提案理由説明を拝見しますと、ここにこう書いてあります。「四面海に囲まれた海洋国家として、海運、漁業をはじめとして海洋を大いに利用しその恩恵を享受しているわが国としましては、海洋汚染防止及び海洋環境の保全に」資することが大事であると、こういうふうに述べておりますから、この第一条の趣旨の中に、実は全国の漁業協同組合連合会と全国の汚水公害対策協議会から要望書を私たちはいただいているわけです。その皆さんの御趣旨によりますと、この第一条の目的の条文のとおりであると非常に不明確な点があるので、特に海洋における資源の保護とか、そういうふうな点をはっきりと条文の中にうたってほしいという意見がきております。すなわち、具体的には、海洋の生物資源の保護と漁業環境の保全を明確にうたってほしいと、こういう趣旨の陳情が出ておりますが、この漁業組合の方々のおっしゃるような趣旨というのが、この第一条の中の——抽象的ですけれども、末尾のほうにあります「海洋汚染防止し、もって海洋環境の保全に資する」という、その「海洋環境の保全に資する」というところにその趣旨が含まれておるものかどうか。水産資源保護法というものがまあ一方にありますけれども、特にまあ漁民の方々はそういう強い要望を持っておりますから、なおはっきりしたほうが私もいいと思いますので、できればこの「海洋環境の保全」の下にいまの趣旨を挿入して、カッコでも入れたらいいと思うのですけれども、まず提案されたほうの政府では、こういう趣旨は十分にこの中に入っているということでございましょうか、どうでしょうか。
  40. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) この法律で、「海洋汚染防止し、もって海洋環境の保全に資する」と書いてございますが、この意味をまず申し上げたいと思います。  「海洋汚染」と、ここで使っておりますのは、まず海洋というものが単に海水だけじゃなくて、海水、海象気象海洋生物、地形等を包含した、まあ広い概念でございますが、そういうような海洋を人為的方法によって物理的、化学的に変化させて、海洋にかかわる資源、自然環境、美観、衛生等、それら人と海洋との利用関係に悪影響を及ぼすようなことを「海洋汚染」ということで表現いたしておるわけでございます。  そこで、「海洋環境」でございますが、これは海洋の物理的、化学的あるいは生物学的な状態、性状等の海洋の自然的な状態、あるいは自然的機能をいうわけでありまして、いまお話がございました、海洋にかかわる漁業資源、それはもちろんこの中に入るわけでございます。そのほか自然環境、美観、衛生等もこの「海洋環境」の中に含んで考えておるわけでございます。
  41. 鈴木強

    鈴木強君 ずばり言って、この「海洋環境の保全」というこの中に海洋生物資源の保護とかあるいは漁業環境の保全という意味が入っているのかどうかということ。入っているか、いないかということです。
  42. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 入っております。したがいまして、この法律で第四十七条にございますが、関係行政機関の協力の規定がございます。第三項に、「農林大臣は、」「漁場の効用が著しく低下し、又は低下するおそれがあると認められるときは、運輸大臣に対し、この法律の施行に関し、」「適切な措置を講ずることを要請することができる。」という規定が設けられておるわけでありますが、漁業資源の保護をはかっていくということは、この中に包含して考えておるわけでございます。
  43. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。入っているということですから、それでわかりましたが、これはひとつ研究をしてみてくださいますか。条文のていさい上いろいろ問題もあると思いますけれども、せっかく漁民の方々が心配をされている点ですから、できれば生物資源の保護とか、あるいは漁業環境の保全というようなものを明文化して、この条文の中に入れていただけば一番すっきりするわけですが、趣旨が入っているとすれば、ちょっと読んでもわからないようなことでなくて、法律でその趣旨が明確に表現できるようなふうに書いたほうがよりベターだと思いますから、これは次の機会にでもひとつ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  44. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 御承知のようにこの法律案は、一つの事業体を保護するとかいうようなことでなくて、全体の事業体——承知のようにもう二十一世紀はいわゆる海洋産業といいますか、こういう時代に入ってくるのであります。したがって、魚が住める状態どころじゃない、人間が十分に住める状態、そういう状態をつくっていかなければならないということで環境保全ということをいっておるわけです。したがって、現在の漁業については、より慎重な態度をとって、いろんな点で規制をしております。たとえば、汚染状況を海上保安庁長官は監視しなければならぬとか、先ほど言ったように、農林大臣はその捨て場についても意見を述べることができる。こっちは十分に、漁場に影響しないようなところをきめるのですが、その場合も農林大臣はこれに対して積極的に意見を述べる。ある意味では実際上の協議をする、こういうことになるわけですから、特にこの法文の中にそれだけを規定するという必要は全くない。それ以上のものである、きびしい法律である、かように御理解願ったら、十分に漁業組合の人に理解できると私は思うのであります。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 全国の汚水公害対策協議会あるいは全国の漁業協同組合連合会の皆さんが、提案された法律第一条を見て特に感じ、いろいろ当局と折衝をされたとも思いますけれども、特にそういう意見が出てきております。これは私個人の意見ではなくして、特にこういう法人格を持った関係団体の陳情でありますから、私はこれらの方々にかわって、実は大臣にも所見を求めておるわけであります。もちろんおっしゃるように、全海域において人間が健康で住め、魚が生息をする、昔のような海に戻そうというのがこの法律の趣旨であります。したがって、そのことばよくわかるわけですから、よりよくこの趣旨をこれらの関係の方方に御説明いただくことは当然でありますけれども、もしでき得るならば、そういう趣旨がいつかの機会に何とかはっきり明定できるならば、法律のていさい上できるならば、ひとつ考えてほしいという検討事項としてお願いをしたわけですから、大臣もまあそうだめだと、こう言わないで、少しその検討の時間をおいてやっていただきたいと思いますが、どうでしょう。
  46. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) この法律国会で御承認いただきまして公布になりますと、われわれは関係者の方々に、十分この本法の趣旨につきまして御理解いただくために周知徹底をはかるわけでございます。その際に、先ほど申し上げましたような趣旨は十分明確にいたしてまいりたい、関係者の方にも十分御理解いただくように努力をいたしたいと思います。  まあ法律の中に表現するかどうかという点につきましては、先ほど大臣からお答えございましたように、それらを含めまして非常に広い意味でここで表現いたしておるわけでございまして、法制的にはいろいろ問題もあろうかと思いますが、これは法律技術上の問題でございますので、検討さしていただきたいと思います。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 次にお尋ねをしますが、これも大臣が先般、本法案提案理由説明の中で述べられている点ですが、こう言われております。「わが国の産業の発展と国民生活の向上に伴い、油の海上輸送量は、飛躍的に増大いたしておりまして、船舶から排出される廃油や、大型タンカーによる大量の油の流出事故等によりまして、油による海洋汚染は、ますます重大な問題になりつつあります。」、「従来海洋汚染は、陸上の工場、下水等からの排水のほか、ほとんどが船舶からの油の排出によるものであったのに対しまして、最近では、油以外の廃棄物船舶により海洋へ大量に排出されるようになり、油とともに新たに深刻な汚染問題を引き起こしつつあります。」、また、「海域における工作物設置が増加しつつあり、これら海洋施設からの油及び廃棄物による汚染も無視できない状況になりつつあります。」、こういうふうにお述べになっておるのであります。  私はまず第一番に大臣に伺いたいのは、すでに昭和四十二年八月一日に現行の船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律というのが制定されました。自来三年四カ月間この法律は働いてまいりまして、おそらくこの——海水汚濁と一応略称で呼ばしていただきますが——海水汚濁防止法によっていろいろと政府は施策をされたのでございましょうが、なおかつ、大臣の御趣旨のように、たいへんに海がきたなくなってしまったということですが、一体この三年四カ月間働いた海水汚濁防止法の効果というものはどうなっていたのでしょうか。そういう効果がなければ、いまの何倍の汚染になったのでございましょうか。この法律があったからここまででおさまったのだという一つの証拠をぜひ示してもらいたいと思いますが、どうですか。
  48. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 現行法によりまして、沿岸から五十海里は油の投棄禁止ということになっておりますが、それにつきましては、海上保安庁のほうで監視、取り締まりをいたしております。   〔委員長退席、理事岡本悟君着席〕 その取り締まり件数等もございますが、また一方、廃油処理施設の整備につきましては、港湾整備計画の一環といたしまして、五年計画の中でその整備を進めておるわけでございます。四十七年度末までに三十四港五十五カ所を整備するという計画で現在着々その施行をはかっておるわけでございます。  そうしてまた、国の研究、調査等でございますが、この法律の五十一条にも研究、調査の推進ということがございますが、これらにつきまして過去三年間どういうふうにやってきたかというような点を申し上げたいと思いますが、まず港内の汚濁調査及び廃油処理の設備の調査につきましては、港湾局が昭和四十二年度から四十四年度までの三年間で約一千百万円の調査費で実施いたしました。なお四十五年度につきましては、約三千二百万円の予算で海水汚濁調査及び海水汚染対策調査を実施中でございます。それから油水分離機の性能向上研究につきましては、船舶技術研究所が行なっておりまして、昭和四十一年以来約九百万円の研究費を投じております。さらに、油による海洋汚染の防除に関する研究につきましては、昭和四十三年七月に、海上保安庁が関係研究機関の協力を得まして、油の流出及び処理に関する海上実験を約二千六百万円の予算で実施いたしまして、貴重なデータを得ているわけであります。その他、気象庁が海洋観測を実施いたしておりまして、そのデータを分析することによりまして、海洋の循環、その他海水の運動の実態が把握されまして、今後の海洋汚染防止政策の策定に大いに役に立つということになると考えます。
  49. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 審議官の補足説明をするのはどうかと思いますけれども、答弁と多少食い違っているといいますか、まともに答えていないようでありますが、正直に言って、鈴木さんがおっしゃるように、はたして効果が直接にあがっておるかどうかということになると残念ながら十分ではない。これは日本だけじゃありません、世界各国ともに五十海里以内は、捨ててはいけない、それ以外は捨てていい、これはもちろんそうなるわけであります。そういうような条約で、いま日本も油による汚濁防止法という法律をつくって処置をしてまいったんですが、御承知のように、これはもう海は鹿島灘の海水も、カリフォルニア海岸を洗うわけです、流れていきますから。したがって、効果が十分でないということは、国際的にこれを認めたのだろうと思うのであります。そういうことからして、昨年、全海域に油を捨ててはいけない、こういうところに徹底せざるを得ないということは、所期の目的がこれじゃ十分じゃないということをお互いが認識した結果だろうと思うのです。ただ、今回このような法律ができまして、これが一年六カ月後に実施することができるのは、一つはその前の条約があり、そのために国内的にも、日本の例で言いますれば、いま審議官から説明しましたような処理設備の計画的な設置、その他の措置が行なわれておったということが、今度のような全海域に油を捨ててはいけない、こういう問題を進めるのに非常に役に立ったということが言えると思うのであります。そういう意味では。ある意味において、前回の条約及び国内の法律というものは相当な効果をあげておるわけですが、しかし、海水の汚濁に対して積極的な効果があったかといえば、いま申したような海流等の関係からして、なるほど五十海里の外に捨てましてもこれは内のほうに流れてくるわけでありますから、十分な効果がはたしてあがっておったかということを反省して、今回、国際条約で、全海域に油を捨ててはいけない、こういうことになったのであります。その上に日本の国内法は、御承知のように廃棄物もいけない、これは非常に大英断であります。これはことに水産業者にとって非常なる大歓迎であろうと私は思います。しかも、これが水産資源に影響のないように協議して場所をきめる、こういうことまで進んだということは、これは大英断であって、これを日本が率先してやったというところに大きな意味もある、こう御理解を願いたいのであります。   〔理事岡本悟君退席、委員長着席〕
  50. 鈴木強

    鈴木強君 大臣正直に御答弁いただくものですから、私もそれ以上質問をするのはどうかと思いますけれども、この法律はさらに前の法律よりもよりいいものをつくって海洋汚染防止しようということですから、ひとつ参考に伺いたいのですが、海洋汚染——その前に、大臣の前に、見坊さんにもうちょっと具体的に伺いたいのですけれども、この三年四カ月の間に、この法律を施行するに対して——いまいろいろおあげになりました。しかし、その金は全部で幾らになっておりますか。この法律施行のために、要するに船舶から油を流すことを禁止するために使った金は幾らになるか。それから海上保安庁にしても、いままではこの法律の中にあるようにはっきりした監視規定というものはなかったわけですけれども、一般海洋の安全という立場から保安庁は非常に御苦労いただいたと思うのですけれども、一体組織上、機構上この法律の施行に伴ってどれだけの費目が拡充され、陣容がどのくらいふえて、本格的にこの法律が有効に働くように御努力をされたかどうか、これは具体的なことですから、やっていなければやっていない、それをひとつ示してもらいたい。  それから大臣には、海洋汚染については率直に言って効果があまりあったと思えないと、率直な反省の上に立っての御意見ですから、それならばその面に対してなぜ効果が出なかったか、それはいま私のお聞きするような問題も大きな要素になると思うのです。しかし、体制を整備して、陣容を整備して、組織機構を拡充してほんとうに海洋の油濁、汚染を防除するというそういう姿勢、態勢があったかどうかということが、効果を生んだかどうかとイコールのことですから、そういう意味で私は伺ったわけですから、あとから大臣もその点答えてほしい。
  51. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) いま私が申し上げましたことは、過去三年間に研究調査ということでどの程度の金を、国費を投じたかということで申し上げたわけでありますが、油濁防止関係といたしましてはいろいろございます。廃油処理事業の整備のための費用……。
  52. 鈴木強

    鈴木強君 金額にして幾ら、合計が何ぼだか、この法律施行に伴って使った金、それから組織、機構、陣容。
  53. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 廃油処理施設の整備のために使った金、あるいはそれの融資が行なわれた金等がございますが、それが非常に大きいわけでございますが、港湾局長から……。
  54. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 港湾のほうでやってまいりました廃油処理施設の整備の過去三年間の投資額でございますが、四十二年度から一部着工いたしまして四十五年、現在に至っておるのでありますが、延べにしますと約三年間、足かけ四年でございますが、港湾管理者が設置いたします廃油処理施設については国が五割の補助金を出してございますが、管理者がいままでに行ないました事業は、四十五年度を入れますと二十五億七千万円でございます。これ以外に、民間の事業者が整備いたしますのに、開発銀行並びに中小企業金融公庫から融資のあっせんをしてございますが、四十二年から四十四年までに三億三千万円開発銀行から出てございます。四十五年度はまだ現在確定してございませんが、三億ちょっとでございます。合計いたしますと六億三千万円ということに相なります。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 各局長から答弁いただいてもいいんですけれども、私の質問は、まあそういうものを全部総合して、三年四カ月間に幾らの油濁防止のためにお金を使ったかということですから、あとで相談してくださいよ。そうしないと、ばらばらじゃよくわかりませんからね。  それから組織、機構の面ではどうなんですか。少しは人をふやしてくださったんですか。その面はどういうふうに——この法律が発効して実際にこの法律に基づいていろんなことをしていただくわけですけれども、そのためには従来の人でよかった、足りたんですか。それともふやして体制をつくったんですか。
  56. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 私どものほうの取り締まり、予防監視というたてまえにおきましては、定員的に見まして、多発地域の保安署に対して五人、一カ所一人ずつでありますが、定員的な増員といいますか、そういう公害専門家の要員であります。そのほか、表面油水採取とか、あるいはガスクロマトグラフとか、あるいは濁度計とか、そういった機材、そういう面を、四十三年度から各年二百六十万ないし四百五十万程度のものを、過去三カ年予算措置をしてもらっておる、そういう程度でございます。
  57. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) ただいま鈴木先生の全体でどのくらいかということにつきましては、後ほどまとめましてお話し申し上げたいと思います。
  58. 鈴木強

    鈴木強君 この海上保安庁だけでこと足りたんですか。港湾局だって、これだけの——六億ですかね、こういうふうに施設整備を民間あるいは管理者を通じてやっておられるわけですからね。そういう仕事は法律ができてからやらなきゃならぬ部分もあったと思うのですがね。そういう点で幾らか人がふえているのかどうか。私、それを聞きたかったんだが、ばらばらな答弁じゃ困るから、その点もひとつ見坊さん、あとで一緒にしてくれませんか。  それから五十一条の国の研究、調査というのがあるのですが、一体、油濁による海水の汚染防止のための研究調査というのは、何を三年四カ月間やられましたか。さっきの額は非常に少ないと思うのですけれども、そういう科学的な技術的な研究開発というものが不断に行なわれてこそ、初めて油濁防止の完ぺきが期せるものだと思うのです。私は、いま保安庁長官がおっしゃったように、これには相当専門的な知識を持った人でないといけないと思いますから、特に危険物の扱い等についてもかなりの知識を持たなければならない、そうしますと、専門家的な方々が各部局に相当配置されなければいけないと思うのですよ。にわか勉強で足りたのかどうか、これは知りませんけれどもね。そういうこととあわせて、国の研究、調査というものは、われわれは非常に重大視しておったわけです。したがって、これがどういうふうな調査・研究活動をされたか、これだけはここでひとつはっきり——あとで詳細な、どういうものをやって幾らかかってというような、目ぼしい成果があったものはどういう成果を得たというようなものは、ひとつ資料で出してください。
  59. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) その研究、調査の内容でございますが、港内の汚濁調査及び廃油処理施設の整備の調査、これはタンカーの運航状況の調査でございますが、港湾局が行なっております。四十二年度から四十四年度まで三年間実施いたしました。さらに四十五年度につきましては、先ほど申し上げました金額の予算で海水油濁調査及び海水汚染対策調査を実施中でございます。それからビルジ排水防止装置の中の油水分離器につきまして、その性能向上の研究を船舶技術研究所が行なっております。さらに油による海洋汚染の防除に関する研究につきましては、海上保安庁が関係研究機関の協力を得まして油の流出及び処理に関する海上実験を四十三年七月に実施いたしまして貴重なデータを得ている状況でございます。その他、気象庁が海洋観測を実施しておりまして、そのデータを分析することによりまして、海洋の循環その他海水の運動の実態が把握されまして、今後の海洋汚染防止対策の策定に役立つことと思われるわけでございます。
  60. 鈴木強

    鈴木強君 この調査、研究は特別な研究所というものをつくらないで運輸省のどこの部局でやるわけですか。それはまあ各局まちまちに部局なら部局ごとにプログラムをつくって予算を取ってやるのか、それとも総合的にそういう研究開発に対することをやっているのですか、どこかに部局をつくって。
  61. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 海洋汚染防止法の業務が省内のいろいろなところにわたるわけでございますが、総合的には官房においてその取りまとめ等を行なっておりまして、各局間の連絡調整等は十分行なっているわけでございます。
  62. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、官房でやっていると言うが、官房のどこでやるのですか。何かこれに対する調査研究を専門にやるのは官房のどういう部局でやるのですか。
  63. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 特に官房の中に調査研究機関があるわけではなくて、それぞれの原局あるいは研究所に実施をお願いするわけでございますが、官房の、現在、企画部門と言っておりますが、その中に安全公害班がございます、そこにおきまして、それぞれの原局あるいは研究機関等との連絡調整をやっているわけでございます。
  64. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  65. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 速記を起こして。
  66. 鈴木強

    鈴木強君 これは大臣もぜひよくお聞き取りいただいて、政策的な大きな問題ですから、ぜひ大臣の御所見も伺いたいと思いますので、お願いします。  国鉄当局にお尋ねしますが、国鉄総裁の諮問機関にフレート・システム近代化調査会というのがございますが、このフレート・システム近代化調査会が、国鉄の新しい輸送システム開発の一環として、石油のパイプライン構想というのを検討しておられたようですが、一昨日の十五日に、関東内陸におけるパイプライン建設の意見書というものをまとめて磯崎総裁に提出したように聞いております。まず、その意見書の内容について、大まかでいいですから、御説明いただきたいと思います。
  67. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 意見書の内容のごく概要をお話し申し上げます。  石油の需要量は、近年非常に急速に増大いたしておることは御案内のとおりでございまして、その安全かつ低廉な輸送を行なうためには、従来の鉄道、自動車というような輸送機関だけでは不十分である、新しい輸送手段としてのパイプラインを導入して輸送しなければならない。しかして国鉄は、従来から石油類の内陸輸送において非常に大きな役割りを果たしておるわけでございます。さらにそれに加えまして、パイプラインをもって輸送していくということは、国鉄が総合交通機関として総合交通機能を果たすというための一つのステップだ。かつまた、国鉄が持っておる輸送施設、線路敷といいますか、そういう輸送施設を有効に活用するゆえんでございます。  国鉄によるパイプラインの経営は、現在国鉄が持っております組織なり施設なり、あるいは用地を共用できるので、コストが安い。また、保安の維持は鉄道輸送安全確保の見地から、一体的に管理されるということで、非常に安全度が高いということが期待できる。その結果、他の経営主体による経営より、投資面、運営面において、国鉄がパイプラインを経営することは非常に有利である。  そういう大前提の中で関東地区における石油需要、特にまた一段と激増しております、そして鉄道輸送力とのアンバランス、いわゆる鉄道輸送力の不足は非常にまた顕著でございます。それに対処する手段といたしまして、関東内陸における石油パイプラインを建設することが緊急に必要でございます。そのために、国鉄が第一次の計画として川崎地区から八王子を経由して南埼玉地区に至るラインを建設をして、かつ、これを運営することが最も現実的かつ経済的である。また、安全確保の見地からも最適である、したがって、早期に着工しなければならない。  少し利点のディテールを申し上げますと、国鉄のパイプラインは鉄道用地を直ちに利用できるということで、パイプライン建設の最大の問題点が用地であるということから、この問題点が解決され、最も現実的である。それから国鉄の鉄道用地に建設する場合の建設費は、道路などの利用の場合と比べてきわめて有利である。と申しますことは、道路の場合はどうしても交通量の少ない未舗装道路等を利用するということにならざるを得ないと思いますので、迂回ルートになりまして、距離が延びる。それからまた、場合によっては道路拡幅等の出費を要するという事態になるので割り高になる。経済的にいうと、そういう理由でございます。  それからパイプラインの事故につきましては、主として第三者の工事などに起因するものが多くございますが、道路には経営主体を異にする埋設物——ガス管とか上下水道管等の経営主体を異にする埋設物が多いのでございます。したがって、その保安対策の一元化が困難であるのに対しまして、国鉄の用地は、国鉄が完全に把握しておって、道路利用などに比べて最高の保安が期待できる、維持できる、こういうことでございます。それが現実的、経済的、かつ、保安度が最も高いというディテールでございます。  締めくくりといたしまして、パイプラインの経営は、国鉄が現に課せられておる総合交通機関への脱皮といいますか、複合企業化の一環でございまして、これが国民経済的に積極的な意義を持つ限りにおいて、国鉄の逼迫した財政状態のもとにあっても、国民的資源の適正配分、効率的使用、こういった観点からいって、何としてもその資金は捻出して確保しなければならない。そういうことで、調査会の御意見といたしまして、「国民経済的見地から、低れん、安全かつ早期に実現し得る国鉄のパイプライン計画が強力に推進されることを期待するものである。」、このように結んでおります。
  68. 鈴木強

    鈴木強君 この委員会でも、東京湾とかあるいは伊勢湾、大阪湾等の海上輸送の問題については、いまやもう緊迫度が極限にきている、特に浦賀の狭水道のところなんかは、非常にわれわれは心配しているわけですけれども、その中に、今度は五十万トンという大きなタンカーの建設を運輸省は許可している。二十万トン、三十万トンというのはすでに動き出しているわけですから、そういうような大型のタンカーが相当数入ってくるということは、海上汚濁を防止するということともあわせて、危険の問題等もありまして、何とかして東京湾からタンカーの出入をシャットアウトする、しかし、それは大事な燃料資源ですから何とか海洋面に港でもつくって、そこに基地を置いて、そこからパイプラインで陸地に持っていくようなことを考えたらどうかというようなことは何回も論議をされておるわけです。それで私はそういう意味から、東京湾の出入船舶の実態とか油船の運航の実態等よく聞いた上でやろうと思ったのですが、質疑が中途はんぱになっておりますから、そこが先にできませんでしたけれども、そういうふうな前提に立ってものを考える場合に、陸海交通の緩和、それから保安、公害防止、こういう観点からするならば、長期的に、しかもかつ安定性のある流通手段としてこのパイプラインをつくることについては、私は大賛成なんです。ただ問題は、いま国鉄側から御説明がありましたようなフレート・システム近代化調査会からの意見書が出ると同時に、もう一つは、通産省のほうで同じように関東内陸パイプラインの基本構想というものをお持ちになっておる。同時にまた、石油連盟の皆さんも関東内陸パイプラインの基本構想というものをお持ちになっておるわけでして、要するに通産省、運輸省、それに業界と三本立てでいろんな考え方を持っておられるようですが、やや業界と通産省は似通っております。そこで私は、こういうふうな答申が出されて、一体通産省や業界が考えている構想とどういうふうにこれを調整をして国益に沿えるようなものができるかという、そういう点をきょうは伺いたいわけであります。  それでまず、国鉄側からもう少し具体的な構想を伺いたいのですけれども、あなたのほうでいま御説明のように、川崎から南埼玉地区に対してのパイプラインを第一期工事としてやりたいのだということですが、これは具体的に川崎市の製油所からどういうルートで南埼玉地区に運ばれるようになるわけですか。もう少し詳しい内容説明してください、ルートを……。
  69. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 京浜の製油所から鶴見線を上りまして、横浜線を上りまして、八王子から八高線高麗川まで行きまして、高麗川から川越線を東のほうに行きまして南埼玉地区に至る、こういう計画でございます。約百十キロの長さになります。
  70. 鈴木強

    鈴木強君 それから、それに対する建設費はどのくらいを見積もっておるのか。また、その捻出はどこに求めておるのか。それから四十六年度着工というような構想のようですけれども、その計画はどうなっておりますか。
  71. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 工事費は、トランクラインとターミナルの経費を含めまして約百四十二億円、四十六年度に着工いたしまして四十七年度中には完成いたしたい、こういう予定でございます。なお、四十七年度の貨物輸送のふくそう期に間に合わせたいという予定でございます。輸送する油は白と黒とございますけれども、予定しているのは白だけでございます。それから財源につきましては、四十六年度、四十七年度の工事費の中から捻出して着工いたしたい、こういう計画を持っております。
  72. 鈴木強

    鈴木強君 いま現在国鉄が関東エリアにタンク車の配車をしておるのですね。これは何台くらいあるわけですか。それから、そのタンク車が年間に輸送する白だか黒だか知らぬが、要するに油の輸送量というのは一体どのくらいになるのか。それからまた、タンク車を一両つくるのに幾らの金がかかっているのか。それから輸送の料金はいまどういうふうになっているのか。これをお答え願いたい。
  73. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 関東内陸にタンク車は幾ら配車されているか、こういう問題が第一点でございますけれども、国鉄がいわゆるタンク車を私有という形で荷主さんに持っていただいている車両は七千数百両ございます。しこうして、関東地区には大体その四割ぐらいを関東地区の輸送に充てられている。概数の推定で恐縮でございますけれども、そのように承知いたしております。全体として、いま申し上げましたように七千数百両の私有貨車を主体としたタンク車で輸送しておりまして、年間約千四百万トンぐらいを送っております。したがいまして、関東は京浜から行くものだけで五百万トン少しこえる数量のように承知いたしております。  料金はどのようになっておるかということでございますが、ガソリンは原則として二級の賃率、その他の油は三級の賃率ということでございまして、ガソリンはそのほかに危険品の割り増しもついているということで、収入といたしましては約百二十億ぐらい、正確な数字はございますけれども、概数として推定いたします。  タンク車一両の建造費でございますけれども、三十五トンが普通の型でございますが、大体三百万円というふうに承知いたしております。
  74. 鈴木強

    鈴木強君 正確な数字を教えてくださいよ。大体七千とか、大体四割とか、大体五百万トンじゃ困る。これでガソリンの二級、三級のリッター当たり幾らですか、輸送料は。
  75. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 距離によっていろいろ違いますけれども、いま予定しております、たとえば八王子地区を想定いたしてみますと、キロリッター当たり二百五十円。正確な数字はすぐあとで報告いたします。
  76. 鈴木強

    鈴木強君 それから過去三カ年間の、関東エリアでけっこうですから、タンク車による事故件数、それから、その事故の原因、これによって国鉄が受けた被害額、これは幾らですか。
  77. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) タンク貨車による輸送によって起こしました事故の例としましては、四十四年の六月二十二日、四時五十一分、渋谷駅におきまして転轍機の先端軌条が折損したために貨物列車の貨車十二両が——うちタンク車五両でございましたけれども——脱線いたしました。これは死傷者はございません。それから、したがって、直接の損害額は、油そのものの損害額はございません。  それから四十二年の八月八日一時四十五分、場所は新宿駅でございます。上り本線横断中の下り貨物列車の側面に上り貨物列車が衝突いたしまして、電気機関車及びタンク車四両が脱線、炎上いたしました。損害額は手元にございませんので、後刻御報告させていただきます。  過去三年間の事例といたしましては以上でございます。
  78. 鈴木強

    鈴木強君 新宿で起きました四十二年八月八日の炎上事故、こういうときに起きた損害はだれが弁償するわけですか、国鉄がやっぱり補償、弁済することになるわけでしょうね。それはどうなりますか。
  79. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 国鉄が弁済することになると思います。
  80. 鈴木強

    鈴木強君 こういうものに対しては、保険制度というものはないのですか。
  81. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 保険制度はございません。
  82. 鈴木強

    鈴木強君 それから、さっき大体千四百万トンのうち五百万トンぐらいが関東エリアの輸送量だと、こういうふうに言われましたが、この輸送のために必要な——これは人員を含めまして、要員を含めまして、どのくらいの金を国鉄としては使っておったわけですか。関東エリアに対する油の輸送のために必要な予算というものはどのくらいかかっておったわけですか。
  83. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 結論的に、どれだけの経費をかけておったかという数字はもう少し精査しないとわからないのでございますけれども、ただ、先生御質問の千四百万トンは全体の輸送量でございまして、京浜地区から北関東に行くのが五百万トンでございます。したがいまして、たとえば五百万トンを輸送するとすれば、これも概算で非常に恐縮でございますけれども、収入といたしまして四十億ぐらいの収入になろうと思います。  しかして、幾らぐらいの金をかけておったかという問題でございますけれども、油の輸送につきましては、きわめて能率的な輸送をやっているものもございますし、しからざる輸送もございます。あれこれいろいろ具体的に検討しなければいけないのでございますけれども、四十億の範囲内の経費でもって運営できておると——人件費も物件費も含めて——大体想定されるわけでございます。
  84. 鈴木強

    鈴木強君 このフレート・システム近代化調査会というのは、この委員の方々の名前も私もわかっておりますけれども、これには国鉄のあなたが常務理事として参加されておるわけですね、委員の一人として。ですから、さっきあなたのお述べになったように、パイプラインを引くことが必要であるし、その点は私も全く同感なんですが、問題は、お話しになったコスト安とか、安全度が高いとか、あるいは、そういう意味において投資面、運営面を国鉄がやりたい、やるほうがいいという考え方、これは一つの利点だと思いますが、そのほかに、鉄道輸送を直ちに利用できるからこの面において建設費が道路より有利である、いろいろお話しになりました。したがって、そういうことであれば、現在国鉄が現状のタンク車によって陸路を皆さんが輸送する場合と、パイプラインを引かれてそれによって生ずるメリットというものが一体具体的にどれだけあるのかという、そういうふうなことは当然この調査会の中で十分論議されていると思うのですよ。これは幾らかかったかといっても、それはいろいろ、取り方によって違うでしょう。私は、人件費、車両の製作費——これは民間のほうにつくらせるわけですか、あのタンクは。そうすると、これは民間の負担が多いですね。そういうふうなものも含めて、とにかく全体として幾らの金が一体これに費やされておったのか。したがって、このパイプラインを引いて幾らの——百何十億の投資をするわけですね、百二十億ですか。したがって、これの減価償却を見て、長期の見通しの中でどれだけの有利性があるかという点ですね、これらは十分把握されておったのじゃないですか。  それからもう一つは、通産あるいは石油業界のほうとこの委員会はどういうふうな連携をとりつつやられたか、そういうことはもう全く考えないでやられたのかどうなのか。これは、私はあとで通産のほうへ同じような質問をするのですけれども、相互に何かの連携というものはとりつつ進めたかどうか、こういう点をひとつ教えてもらいたいのです。
  85. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 有利性、経済性の問題でございますけれども、関東地区そのものについての有利性、経済性という計算は、実は十分分解して把握しておりません。  それで、ただ、このパイプライン百四十二億の投資がどのようにその有利性を発揮できるかという問題につきましては、場所によっていろいろございますけれども、現在の利用者の運賃負担の二割ないし三割減、あるいは、場合によっては五割減、このような経費の低減を予想いたしまして、パイプラインの百四十二億の投資、これは非常に近い時点で回収され得る、非常に装置産業型の、人件費のかからない産業なので非常に早い機会に回収ができる、こういうことを計画の中に入れて検討いたしております。もう少し具体的に言いますと、五年目の五十二年度には償却後の黒がある程度想定できるのではなかろうか、このように計算、計画いたしております。  それから第二番目の、通産省あるいは業界との関係考えながら、どういうような関係を持ちながらやったか、こういう御質問でございますけれども、公式な立場として通産省あるいは業界そのものとの関係はございません。ただ、業界の方の考え方あるいはこういうものに関する問題点、こういうものを十分取り入れる場を持ちながら検討いたしました。
  86. 鈴木強

    鈴木強君 時間の関係もありますから、また、きょうは最初ですから、そうこれ以上深く質疑をしましても、答申も出たすぐでもありますし、運輸省として答申の内容を十分にさらに検討され、十分理解と納得のできる線で、しかも一面には通産省なり業界の考え方もあるわけですから、これらとも十分な連携をとりつつ最終的な判断を——これは大臣がおやりになると思うのですけれども、ただ、私が心配するのは、国鉄は御承知のような赤字財政で、来年度予算もなかなかきまり切れないというような状態にあるわけでして、そういう中で輸送力を増強しよう、そしてその面から収入をふやしていこうという考え方は私もよくわかります。しかし、建設費についても、まあ御承知のように、いま、来年度の予算がきまらないために総武線の東京駅乗り入れ自体が工事がストップをして、国民に約束をした時期の工事の完成は、サービス開始はできないような状態になっておるわけです。こういう中で四十六年、四十七年の工事費の中から百四十億の金を捻出されるそうですけれども、これらもたいへんなことだと私思います。ですから、財源の調達その他についても、これは大臣がおられるのですから、国鉄財政再建十カ年計画の手直しもやられると思うので、そういう点はその中でいろいろ御検討いただくと思うのですけれども、ひとつあなたにお願いしておきたいのは、これから国鉄が大いに検討されるでしょうけれども、審議段階で通産なり業界と全く連携をとらないというように聞きました、私は公式には。だからして、いま言ったような二つの問題が二つのほうからいろいろな——考え方は一緒なのだけれども、やり方について二つの考え方が出てきていると思うのです。ですから、そういう点を十分調整しませんと問題が残りますよ、これは。ですから、要するにこれは国益を守り、業者の輸送の単価というものを少しでも安くする、その場合に国鉄がおやりになったほうがよりベターなのか、民間がやったほうがキロリットル当たりの輸送料というのが安くなっていくのか、ここらに問題があると思うのです。御承知のように、石油は非常に輸送費がばく大にかかるわけですから、その一部を安く輸送すればコストにそれだけいい影響を与えるわけですから、そういう趣旨で、国鉄は営利を度外視した国有事業ですから、そこがおやりになるものが、民間の業者がおやりになるものよりもよもや私は高いコストで輸送されるということはないと思いますけれども、そういう点が終局的には一番の問題になると思うのです。  それから第二期工事につきましても、房総半島の袖ケ浦から房総西線または京葉線と、いま建設中の武蔵野線、それから東北線経由で大宮までパイプラインを敷こうというのが第二次に考えられておって、これは五十年度完成、あとの残りの部分につきましては五十三年度というふうに三段がまえでおやりになるようになっておりますけれども、これらの問題についても、いまの基本がきまりませんとなかなか計画が動いていかないと思うのです。通産のほうではマスタープランのワク組みをつくると、こうなっておるわけでして、国鉄は国有、公共企業体ですから、あくまでも民間と違うし、公益性というのを強く主張されておる企業ですから、そういう点を十分配意して、今後慎重にひとつ措置を取り計らっていただきたいと思うのです。  で、まあほんとうは、私はあなたに言ってもらいたいのだ、通産との関係があるから。しかし、大臣がいらっしゃいますから、それはまあ大臣のほうに伺うことにいたしますけれども、これは大臣どうでしょう。最終的には、私はあなたの判断を伺おうと思うのですけれども、国鉄のこの答申をあなたもごらんになったと思いますけれども、それに対して、大臣としていまお考えになっている感想がありましたらちょっと聞かしてほしいのですよ。あと通産のほうを聞いてからやってもいいのですけれども、もしここで述べていただけたらいいと思うのですが、どうですか。
  87. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 国鉄の諮問機関であるフレート・システム近代化調査会の答申の内容については、もちろん私も見ております。これは御承知のように、国鉄の再建計画の中で、将来国鉄がパイプラインをやるのだということを明確にして閣議決定をしております。同時にまた、先ほど来説明がありましたように、川崎からのタンク車による石油輸送はもう行き詰まってきておる。もしこれを需要にこたえんとするならば、パイプラインによるか、もしくは貨物線といいますか、路線の複々線を考えなくてはならない。もちろんこれは、後者によるところの軌道をふやすということは、ばく大な費用を要するのみならず、将来の安全性の上から考えましてもこれは好ましくない。したがって、当然パイプラインによって輸送をするということがよりこれは好ましいのであります。費用の点から、いま鈴木さんからお話があったように、おそらく業界としては高く取られはせぬかという心配が一部にあるのではないかと私も想像します。しかし、これは理論的に考えましても、実際的に考えましても、国鉄がやる場合は軌道というただの土地を使ってこれを敷設することができる。かつまた、これは新しい構想でありますからして、したがって、設備についても全く近代化を行なうことができる。民間が施設するのと、その施設費においても、これは決して国鉄が高いとは限りません。土地代を考えるならば、これは何といっても国鉄がやるほうが安い。同時にまた、民間でやるという場合も、国鉄の軌道を利用さしてもらいたいのだと、こういう希望があるならば、それは鉄道という一つの事業をやっておりますからして、これらの関連において大体同じ近いところを通るのですから、二つの企業体がこれを管理することは好ましくないから私は反対します。したがって、国鉄が軌道を使ってやることのほうが輸送という面で当然これは考えなくちゃならぬし、したがって、国鉄にやらせるべきである。閣議決定もそのようになっておるのでありますから、その方針でいきたい。これはまだ正式に運輸省で決定したものではありませんが、大臣としての方針はそのとおりであると、かように御了承願いたいと思います。
  88. 鈴木強

    鈴木強君 もう一つ国鉄の原岡さんに伺いたいのですが、いま大臣のお話にもあったように、土地は国鉄の線路を線路伝いに行くのでというお話がありました。あなたからもそういうお話がありましたが、実際に列車が運行しているわけですね。これは四六時中になるのか、その線によっては夜間の、旅客の輸送はないけれども貨物の輸送があるとか、そういうダイヤの関係もあると思いますけれども、実際に運行している鉄路の右のほうへやるのか左のほうへやるのかわかりませんけれども、そういう工事が、一方では仕事をしつつうまくいくものでございますか。その点は技術的なことですから私たちわからないので、ちょっと心配ですから、どうなっておるか、どんなものでしょうね。
  89. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 線路の中央から四メートル離して、地下一・二メートルないし一・五メートルにパイプラインを埋めるわけでございます。しかして、これの工事は、もちろん列車は普通に運行させながらできる、こういう自信を十分持っております。なお、保安につきましては、国鉄では相当前から研究いたしておりまして、去年の一月に、技師長を委員長とするパイプライン調査委員会というものを国鉄の中につくりまして、その中の一部門といたしまして、技術関係の調査研究を特にやりまして、建設基準というものを一応国鉄の中でつくっております。それをこの七月から、国鉄関係者だけのあれでは十分でないという観点から、日本土木学会に委託をして、なお客観性といいますか、成功性を期しております。かつ、数年前からいろいろ技術研究をやっておると申しましたけれども、昨十六日から実際の試験装置を開始いたしましたけれども、鉄道技術研究所において、油の輸送、それからコンタミネーションといいますか、輸送中にまざるものの処理、自動制御装置、安全装置等を、いままでのペーパーによる基準をいろいろな物理的な設備としてつくりまして、きのうから運転開始をしている、こういう状況でございます。したがって、列車を運行し、運行しながら工事をする、また、工事のあとの運行、それから。パイプラインそのものの安全というものについては十分自信を持っている次第でございます。
  90. 鈴木強

    鈴木強君 普通鉄路は土盛りされて、そうして走っていますね。そうすると、いま敷こうとするのは、土盛りの下のほう何メートルか、国鉄は用地を買ってありますね、そういうところに敷かざるを得ないでしょうね、何メートルの深さに。鉄橋なんかの場合には、まさか水低にやるわけにいかないでしょう。ですから、鉄橋の横のほうに何か並行に工事か何かやるのでしょうね。そういう空間に露出する部面に対する安全度というものは、技術的には心配がないのですか。その土盛りの下のほうへやるのかどうかということと、その辺はどうか、技術的に言って。
  91. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 土の中に埋設するのが原則でございまして、大体国鉄が持っている土盛りの用地内に埋設できるというのが原則的なルートでございます。  それから鉄橋の空間——まさか水の下ではないだろうと、こう申されますけれども、この点につきましては、大体空中、すなわち鉄橋に添えてパイプをやっていくという考え方でございます。それで危険性はございません。
  92. 鈴木強

    鈴木強君 着工したら、いまのルートを通って南埼玉、大体大宮の辺ですか、工事としてはどのくらいやったら完全にできますか、何年かかるのか何カ月か、その辺どのくらいですか。
  93. 原岡幸吉

    説明員(原岡幸吉君) 京浜地区から南埼玉に至る、現在計画をしている第一期の工事につきましては、四十六年度の初めからやりまして四十七年の秋には十分使える状態になる、こういう予定であります。
  94. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 四十分休憩いたしまして、午後一時半に再開いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後一時四十一分開会
  95. 温水三郎

    委員長温水三郎君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、海洋汚染防止法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  96. 鈴木強

    鈴木強君 通産省にお尋ねしますが、総合エネルギー調査会の石油部会が、一昨日、十五日の日に、石油パイプライン特別委員会というのを開いて、石油パイプライン事業の経営主体や国の助成のあり方について答申書をまとめたということを聞いておりますが、その大綱をまず説明していただきたいと思います。
  97. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 通産省まだ来てないのか。
  98. 鈴木強

    鈴木強君 通産省がまだ見えておりませんので、午前中私が質問いたしました運輸省に対する質問の中で、三年四カ月の間にどのくらいの費用を使ったかという、その費用の総額ですね。それと、行政上、組織上の点で、大体どういうところが法律実施のためにいじられたか。いじられたかということは、組織を拡充して体制をつくられたか、そういう点とか、陣容の面で、海上保安庁は午前中長官から伺いましたのでわかりましたけれども、総体的に、審議官のほうでもし把握できておったら、説明をしてくれませんか。
  99. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) いま集計中で、持ってまいりますので、ちょっとお時間をいただきたいと思います。
  100. 鈴木強

    鈴木強君 それではもう一つ大臣にお尋ねします。これから伺う通産省側のパイプライン事業に対する考え方、あるいは業者側の考え方はこれから伺うことにいたしますが、午前中の運輸省考え方との関連で一つお尋ねしますが、実は、自動車新税の問題についてはいろいろ政府のほうでも御検討いただいておるようですけれども、きのう福田大蔵大臣が、どういうかっこうからもやらなきゃならぬだろうというような趣旨の御答弁を衆議院の大蔵委員会でやられたようなんです。それで、大臣もいままで総合交通ということについてよく言われておったのですが、いま現在われわれが新聞その他で伺うところによりますと、自動車新税案というものがいろいろ各方面から出ているようですけれども、たとえば運輸省側のほうでは総合交通税というようなものを考えておるようですけれども、建設省のほうでは道路利用者新税というようなことを考えておる。しかし、これはいずれも有力な意見であるというふうに言われておるんです。そこで、総合交通税とは一体どういうものかということについて、けさもちょっと新聞に載っておりましたが、たとえば車検のたびにかける保有課税ですね、税額は年平均五千円から九千円というようなものを取ろうとするようになっておりますが、しかも、その税金の使い道については、道路をはじめ新幹線とか、地下鉄、さらには国鉄の赤字の穴埋めにまで充てようというようなことも報じられておるのですけれども、こういう自動車新税というものがかりにやられた場合に、このパイプライン等の建設費にその一部が回るというようなことは、大臣としてはいまは考えておらないのでしょうか。総合交通税というようなものについて、運輸省側は何か案を持っているようですけれども、いま私が述べたようなものとは全く違うのですか。
  101. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 基本的には、われわれが言っておりますのは、御承知のように、新幹線にしても、在来線の複線もしくは電化等の改良工事にしましても、現在の国鉄の収入をもってしてはこれをまかないきれない、それがまあ従来の赤字が累積した最大の原因でもある。そういうことからして、将来やっぱり国の開発のために、これはまあ鉄道が負わされている義務でもありますが、しかし、一方において、だんだんと建設費の値段が高くなってまいりますと、どうしても国の助成を仰がなければ国鉄の財政の健全化ははかれない、これが大前提です。この大前提に立って、したがって、自動車新税その他車検税とか、いろいろ議論がありますけれども、まあおそらく実は運輸省自身の問題ではないわけですね、御承知の税の問題ですから。ただ、運輸省としても、こういうことも考えてはどうかという一つのデータとしては、大蔵省に交通特別総合会計のようなものを置いて、それには車検税なり、もしくは自動車新税なりから徴収するという方法考えてはどうかということを言うてはおりますけれども、問題は、要するに、先ほど申しましたような、建設費に対して助成をしてもらいたい、こういうことからそのような考え方を一応持っておりますけれども、形式論的に言うならば、税の問題は大蔵省の責任でありますからして、大蔵省がどうこれを取り上げるかは大蔵省がまず責任を負うべきものだと、こう考えておるわけでございます。
  102. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、その点はわかりました。したがって、いまの段階でパイプラインの建設費等についてどういう方法をとるか、これからの政府の方針ですけれども、その際に、国として国鉄がやる場合は、当然財政再建の一環の中で処理されると思うのですけれども、いずれにしても、こういうふうな自動車新税的なものの中からパイプライン建設費というものが出てくるという、その可能性についてはどうなんですか。
  103. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) パイプラインの建設費については、一応いろいろ具体的に検討してまいりまして、いわゆる経営的に助成がなくともこれはやれるという原則に立っておりますので、パイプラインに対する助成金のことは積極的に考えておりません。
  104. 鈴木強

    鈴木強君 通産省は来ましたか。どうして一時半に来なかったんですか。
  105. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) おそくなりまして申しわけございません。
  106. 鈴木強

    鈴木強君 私が質問したんですけれども、あなたがおらないものですからもう一回やりますが、総合エネルギー調査会の石油部会が去る十五日に、石油パイプライン特別委員会というのを開いて、そこで石油パイプライン事業の経営主体や国の助成のあり方について答申を行なったということですが、まず、その答申の内容について大綱の御説明をいただきたいと思います。
  107. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 去る十五日の日に、ただいまお話のありました石油。パイプライン特別委員会がございました。まず、その要旨でございますが、第一点は、石油パイプライン事業の導入の必要性でございます。これはすでに御承知のように、石油需要が五年後には倍、昭和六十年には四倍というふうに急増が予想されておりまして、これに対応いたしまして、エネルギー政策の見地から低廉安定供給ということで、どうしてもパイプラインの建設をはかっていく必要がある。さらに加えまして、過密化対策あるいは安全対策という見地からも緊急にこれを計画していく必要があるということが導入の必要性でございます。  そして第二番目の点といたしまして、パイプライン事業のあり方の問題でございますが、このあり方につきましては、ただいまの石油の低廉安定供給原則に基づきまして、石油の生産、流通あるいは販売まで一貫いたしました体制のもとに石油企業が共同事業としてこれを行なうことが必要である。また、実際問題といたしましても、石油の共同事業でなければやり得ないという考え方に立っております。その理由といたしましては、まず、実際問題のほうから先に申し上げますと、パイプラインが一たん引かれますと、そのルートというものは当然固定いたしますし、また、そのパイプラインの規模によりまして、口径からして送油能力というものもきまってくるわけでございまして、これをできるだけ有効に、大量に使っていくというためにはまず石油の一社、二社がこれを利用するんではなくて、全社がこれを活用していく必要があるということで、製油所から直接そのパイプラインにパイプをつなぎまして、生産したものを直接つなげていく、そして生産したものがそのまま販売段階まで流れていくという連続的、計画的な送油という問題がございます。これが非常に技術的にも困難でございまして、石油業者でなければできない、と同時に、今後十五年、二十年という長きにわたりまして一年間にどれだけの油を取り扱い、このパイプラインを使って送るかという長期の送油の保証というものがなければパイプライン事業の採算制が成り立たないという実際問題もございますので、まず、共同事業でなければ実際問題としても運営できないであろうというのが第一点でございます。  さらにパイプライン事業といたしまして、これは先ほどの生産、流通、販売を通ずる一貫経営体系の中で石油の安定合理化の問題として取り上げる必要がある。これがエネルギーの低廉安定供給の一番大きなきめ手になりますということが第二番目の理由でございます。  さらに考え方といたしましても、石油産業におきますパイプラインと申しますのは、ガス事業におけるガス管、水道事業における水道管といったものと全く同様の考え方のもとに自己の設備の一環として考えていくという性質のものであるということでございます。さらに、エネルギーの低廉安定供給の観点からいたしますと、パイプライン事業は収益事業ということで考えられるべきではなくて、そのコストを企業が共同で負担していくというノーロス、ノープロフィットという考え方で、これを活用していくということが供給安定にかなうのではないか、こういう考え方でございます。ヨーロッパ諸国におきましても、こういった考え方ですべて運用されておるわけでございます。そういう前提に立ちまして、従来石油パイプライン会社がいろいろ構想をまとめてまいりまして、二十八社で共同利用という形で、関東内陸パイプラインにつきまして中央ラインというラインを構想いたしておるわけでございます。  なお、国鉄計画、国鉄の線路敷利用の関連でございますけれども、まず、路線の関係からいたしまして、線路敷だけに限られたルート選定というものは実際問題といたしましても最短距離をいくことにならない。むしろ公共用地、河川敷、道路等を含めまして一番経済的に有利な土地を選ぶ必要があるということが第一の考え方でございます。さらに線路敷につきましても、実際問題といたしまして、川崎地区でありますれば、非常に過密のところを通って線路までパイプで油を運ばなければならない。それから線路は原則的にはやはり都市と都市とを結ぶということでございますので、かなり過密のところも通らなくてはならない。まあ駅の近く、あるいはプラットホームというような問題もあろうかと思います。そのほか線路敷使用に伴いましてのコスト増というものも考えられる等々の問題もございますし、一方、財政再建という別途の大きな目的もございますので、それとの関連も石油事業としては単に収益事業という観点からでなくて、石油の低廉安定供給という問題として考えていきたいという観点でございます。  まあ、以上のような考え方に基づきまして、石油の共同事業といたしましてこの構想を推進してまいりたいという結論に相なっております。  なお、国の助成につきましては、パイプラインの性格というものが、道路なりあるいはタンクローリーなりタンク車なりに代替するようなものが公共事業に準ずるというような考え方もございますので、民間資金に合わせまして国としての財政投融資というものを相当程度行なう必要があろうという結論に相なっております。  なお、公共用地の利用あるいは一部土地収用といったような、パイプライン施設に伴います環境整備につきましては、別途パイプライン事業の目的に沿いまして、国としてもその実現をはかれるような体制を講ずる必要があるのではないか、こういう考え方になっております。  その他、これらのことに伴いましての必要な法制というものをあわせて準備すべきであるというのが概要でございます。
  108. 鈴木強

    鈴木強君 この総合エネルギー調査会の石油部会からの答申書が一昨日出たわけでしょうけれども、しかし、その答申書が出たというのは一つの形式的な行為であって、具体的には、通産省なりあるいは石油会社の事業者のほうでは、相当進んだ一つの計画案というものをお持ちになっているように伺っているのですけれども、国鉄のほうは午前中あなたがいらっしゃったと思いますので、四十六年着工、四十七年の秋ころまでには完成をしたい、百四十億の投資をしたい、こういうことです。それは閣議のところのお話で、決定事項であると、こういうふうに言われておりますが、そこで、いま触れられた中央ライン、具体的な路線というような問題、それから、私どもが午前中も申し上げたように、東京湾の油による汚濁というものを防止する、危険を防止する、そういう意味からいって、外国から原油が入ってまいりますね。たとえば、東京湾を例にとると、浦賀の狭水道よりできれば先に何か陸揚げの基地をつくって、そこから陸揚げをする。そうして、そこから東京湾には全然関係なしに、陸路を通ってパイプラインで送られていくというような構想を考えたら非常にいいと思うのですが、そういうことが、港のことですから、そういう基地がはたして先の海洋に面するところにできるかどうか、あるいは利根川の下流の一辺に港ができるかどうか。そういう点も今後の検討に待たなければなりませんが、いずれにしても、どこを基地にして、そこからどういう経路を考えて関東の各地に具体的に輸送しようとするのか。そういう内容がもしあったら教えてもらいたい。
  109. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) まず、関東内陸部の中央ラインの路線でございますけれども、現在、東京湾内に川崎・横浜地区と千葉・五井地区の東西二ヵ所の製油所群がございます。これは横浜サイドに九製油所、千葉サイドに四製油所と、十三の製油所がございますが、この東西から油を——千葉サイドからは海底パイプラインによりまして江戸川河口周辺に集めまして、それから横浜・川崎からは当面バージ輸送で運びまして、将来東京湾岸道路等が敷設されました場合には、それに合わせてパイプラインを敷設するという考え方で、江戸川河口周辺に集めまして、それから江戸川の堤防の外側にパイプを敷設いたしまして北上させて、野田周辺にターミナル、さらに藤岡周辺にターミナルをそれぞれ設けまして、野田周辺以降は道路を主として利用いたしまして、あと高崎周辺、宇都宮周辺にそれぞれ油を北上させるという、全体で二百十二キロの計画といたしまして、来年度着工して四十九年度には開通完成する。一部の完成は四十七年秋ごろを想定するという計画に相なっております。  それから、第二点の、東京湾におきます原油の輸入に関連しましての問題でございますが、先ほど御指摘もございましたように、最近タンカーが非常に大型化しておりますし、原油の輸入量も非常にふえてまいっております。したがいまして、原油の中継輸入基地と申しますか、CTSというものにつきましては、エネルギー調査会におきましても、三年ほど前にその必要性というものが指摘されまして以降、通産省といたしましても鋭意検討しておったわけでございますが、明年度といたしましては、東京湾におきます問題がやはり一番緊急であろうという観点から、調査費等の要求もいたしております。特に、この問題につきましては、私どもとしても前向きに検討してまいりたいというふうに存じております。  石油パイプラインとの関係でございますが、将来、千葉地区あるいは浦安河口、それから北上というこのパイプラインとこの将来のCTSとのつながりというものは、CTSができました場合には、当然関連づけられるべき性格のものであろうというふうに考えておりますが、しかしながら、CTS問題につきましては、現時点はまだ調査をしようという段階でございまして、またCTS問題につきましては、既存のシーバースというものが東京湾内に五つ現在ございまして、現在それを使って各製油所が作業いたしておるという実態もございますので、われわれとしても、そういった点も含めまして、ひとつ前向きに検討いたしていきたいと、かように考えております。
  110. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、私が聞きたかった、浦賀の狭水道の外に、できるだけ海洋に面したところに基地をつくって、そこからパイプラインで輸送するという、そういうふうなことは、実際問題としてできないものなんでしょうか、技術的には。
  111. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 現在、私どもとして構想として考えております案といたしましては、千葉県の富津がございますが、富津からさらに外洋のほうにかけましてとういう地点かに——これは運輸省ともいろいろ御連絡をとり、御相談をすべきことでございますけれども、かなり先のほうにシーバースを出すということが一案としてございます。したがいまして、かりにその案によりますれば、かなり沖合いのところから、富津周辺に大規模な貯油タンクというものをつくりまして、その貯油タンクから各製油所にパイプラインで原油を輸送するというような形に相なろうかと、技術的には可能であろうかとは思います。しかしながら、非常に大規模な計画でございまして、非常な資金量も要しますし、いろいろ現実上の問題もございますので、それらの点も含めて考えていきたいというふうに存じております。
  112. 鈴木強

    鈴木強君 それから、先ほど、国鉄の計画と対比をしつつ、路線敷がどうかという路線の決定に際する点を御説明いただいたのですけれども、通産が考えておるのは、そうしますと、河川敷、あるいは道路ですね。こういうものを利用しようというお話ですね。そうしますと、具体的に、いまの富津なら富津に貯油タンクを設けて、それからパイプラインで海底をいくようになるのかあるいは陸地を房総西線を伝わって千葉に出ていくのか、それはいずれにしても、海底になるか、陸上になるかは別としても、富津から浦安なら浦安、そこに一応集結する。あるいは東京湾のある地点に、海底か陸上か、いずれにしても集中して、そこからパイプラインで道路を伝わっていくわけですけれども、二百十何キロメートルですか、そういうふうな距離を想定しているようですけれども、河川敷であれですか、どこの川を伝わっていくというような計画をお持ちでしょうか。  それから、道路については、やはり過密都市になりますね、過密地帯ですね、そこを道路が走るわけでしょう。いずれもその下にはガス管とか電話線、あるいは電灯線ですね、そういったいろいろなものがあるわけでして、日本では残念ながら共同溝というものがなかなか進んでおりませんでしてね、問題になっているのですけれども、これは都市対策の一つとして、大阪のガス爆発等の問題も入れまして、地下埋設のいろいろな施設についてはもう保安ということを相当に考えませんと、やはり問題が起きるように思うのです。ですから、その点を私は、国鉄の、線路敷というのですか、通る場合でも、道路を通る場合でも、過密地帯を通るということについてはたいしていまさら差はない、一般論として。具体的に経路を聞きませんと、どうということはわかりませんけれども、そういう心配があるわけですけれども、河川敷を通って道路を通るというのですが、大体いまの計画としてはどういうような道路を通るわけですか、北上する場合ですね。
  113. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) ただいま御指摘の河川敷でございますが、江戸川河口から現在の計画によりますと、約二十三キロほど、この辺が一番ラインの中では過密の地域でございます。そういう地域を主として河川敷によりまして通してまいりたいという考え方でございます。もちろん、その先も問題なしとはいたしませんけれども、その先の地点につきましては、主として地方道——県道なり市町村道でございますが、地方道を中心にやってまいりたいと考えております。なお、わが国の場合、長距離パイプラインといたしましては、帝国石油が新潟からの天然ガスを東京まで三百三十キロ過去において引いた例がございます。これは約十年前でございますけれども、その場合には三百三十キロ、当時は現在ほどいろいろ過密問題等もございませんでしたので、状況はだいぶ違いますけれども、一年足らずで三百三十キロを引いております。この際のルートを調べてみますと、大体五五%までが道路を活用するということでやった前例もございまして、私どもとしては、これらの利用によりまして計画が進められるものと、また、この点につきましては、建設省ともいろいろお話し合いをしている段階でございます。
  114. 鈴木強

    鈴木強君 それで、一つは、まあ国鉄の計画案というものは皆さんは前から十分に知っておられたものなんでしょうか、通産としては。
  115. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 国鉄さんの計画につきましては、私どもも昨年の段階である程度概要は伺っておりました。昨年、閣議決定の際にもその辺につきましては両省間で十分にその経営形態なり、利用方法についても相談をしていこうという話もあったわけでございまして、ことしに入りましてからも最近の石油。パイプライン特別委員会、これはたしか十二月の七日ごろだったと思いますが、におきまして国鉄さんからもおいでをいただきまして計画の概要を承ったこともございます。まあそのほか非公式にもいろいろお話は承っております。
  116. 鈴木強

    鈴木強君 国鉄のほうはとりあえず答申を見ると関東エリアですね、関東エリアに対してのパイプラインの建設ということになるのですけれども、おたくのほうのは全国的なマスタープランというものをつくるような御計画のようですね。たとえば、いまの中央ラインと、それから八王子ラインですかね、こういうようなものも考えておられるようですけれども、さらに、全国的にはどういうところに将来こういうパイプラインを敷設していこうというような御計画でしょうか。その地域がわかっておりましたら教えてもらいたいのですが。
  117. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) パイプラインの利用につきましては、一パイプライン当たりの最低の通量というものがございますので、ある程度需要量がまとまるということが必要でございます。したがいまして、そういった需要量のまとまりとの関連を考えまして、私どもといたしまして、将来におきますCTS関係委員会がございますが、その検討結果によりますと、全国五カ地点ほどでございますが、北海道は苫小牧、札幌、旭川というような地域、それから関東内陸部、それから四日市、名古屋周辺、あるいは大阪、和歌山、姫路、京都あたりの関西地区、それから北九州、大体五カ地点ほどが将来需要その他から考えまして、今後まずパイプライン敷設の適地というふうに考えられるのではないかというふうに存じております。
  118. 鈴木強

    鈴木強君 先ほどちょっとこれからの石油における需要というものが相当ふえるというお話で、二倍とか四倍とか、年限を切って御説明されたんですけれども、いま現在日本が原油として外国から輸入している量というのは幾らぐらいになるものか、それから、これが五年後に幾ら、あるいは皆さんが想定できる範囲でけっこうですけれども、いまわかってる範囲で何十年後に幾らになるというふうな、そういうようなことをちょっと数字で示していただきたいんですが。
  119. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 現時点におきます原油の輸入量はほぼ二億キロリットル弱でございます。現在、将来の原油輸入量——石油製品の需要というものを総合エネルギー調査会で検討しておりますけれども、五十年度におきましては三億五千万キロリットル程度、それから昭和六十年におきましては七億キロリットル程度と、あるいはそれ以上になるかもしれません。おおむねそういった数量が想定されるというのが現時点の判断でございます。
  120. 鈴木強

    鈴木強君 国産されるものは全体の量のうちではわずかと聞いておるんですけれど、どのぐらいになっておりますか。
  121. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 国産のものは非常に量が少のうございまして、全体のうちで〇・数%——一%以下でございます。したがいまして、九九・数%が海外からの輸入にたよっておるということでございます。
  122. 鈴木強

    鈴木強君 それで、この二億キロリットルですか、これが現在の輸入量であるそうですが、そのうち東京湾に陸揚げされるものと、それから伊勢湾、それから大阪湾、これがわかっておりましたら。
  123. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 伊勢湾、大阪湾につきましてはちょっと手持ちの資料がございませんので、後ほど御報告さしていただきたいと思います。東京湾周辺におきましては、大体全国の四割の製油所が集まっております。したがいまして、原油量といたしましても二億キロリットル弱の四割、したがって七、八千万キロになりましょうか、おおむねそのような量が東京湾に集まってくるということでございます。
  124. 鈴木強

    鈴木強君 これは運輸省のほうでも、通産省のほうでもけっこうですけれど、東京湾に入ってくるのが大体七、八千万キロリットルということですけれど、これはどんな種類のタンカーで一日にどのくらい入ってくるものですか。
  125. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) これは石連の調査でございますけれど、昭和四十四年度の実績でございますが、東京湾内に入る原油タンカーが千二百十三隻、一日当たりで三・三隻ということになっております。平均船型が、これは四十四年の下期でございますが、平均八万八千トンということになっております。まあこのほか、原油輸入ではございませんが、製品関係のコースタル・タンカーあるいはバージというものは、非常に大きな数が東京湾内に出入りしておるということになります。
  126. 鈴木強

    鈴木強君 まあ原油を外国から輸入される船の数、あるいは船型についてはまあ八万八千トンですか、その程度のものだというんですけれど、そこでまあ製油されたものがまた——関東地区はおそらく国鉄のタンク車あるいは自動車のタンクローリー、ああいうもので輸送されてると思います。そのほか、東京湾から東北方面とかあるいは中部のほうで伊勢湾以外のところに送られてるものがあると思いますけれども、そういうものが再び東京湾を通って船で輸送されていくものか、あるいは陸送されていくものか、そのどちらか。もし両方とすれば、その比率はどういうふうになりますか。海上を通じて船でもって輸送されるものと、陸上から輸送されるものとはどんなふうになりますか。
  127. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 詳細に御説明はちょっとできませんけれども、非常に大まかなことを申し上げますと、大体先ほど申し上げましたように、全体の製油能力の四割が東京湾にございまして、関東地方の需要というものが全国の大体三割でございます。したがいまして、四割と三割の差額の一割というものが何らかの形で関東地方の外に出ておる。その一部は船であり、その一部はその他の陸上交通であろうかと思いますが、詳細な数字はいま手元に持ち合わせてございません。
  128. 鈴木強

    鈴木強君 将来、これが五十年には三億五千キロリットル、六十年には七億キロリットル、こういうふうに相当大幅に需要があるように想定されているようですけれども、通産のほうでは、こういうふうな需要に即応してパイプラインを引こうというような、そういうふうな考え方でしょうけれども、さっきも私国鉄に申し上げましたけれども、具体的に石油、ガソリンですね。その他関連するいろいろな重油等があると思いますけれども、揮発油とか、製油されていくものがあると思いますけれども、そういうもののコストを少しでも安くしよう、そういうことが、輸送のコストを安くすることによって可能になってくると思うのです。したがって、経済効果の面として、民間の会社が経営していくのがいいという通産省側の考え方と、それから国鉄がやったほうが低廉安定に供給できるという考え方があるのですね。これは両者とも同じように、民間のほうが低廉安定であるというのですね。こういう結論は同じなんですね。国鉄のほうもそう言っておられる。その仮定の中にプロセスが二つありまして、それぞれとっておられるわけですよ。ですからして、たとえば鉄道の路線に限られた線というものは最短距離にならない。したがって、経済的にも、土地の利用を考えた場合に、国鉄方式は経済的見地から見ると、民間のというか、通産が考えているような路線式というか、道路式というか知りませんけれども、そういうもののほうが有利である。こういう御判断を持っておられるのですけれども、実際に国鉄の計画と対比してみて、リッター当たりの輸送料というものは通産がいま考えているようなもののほうが安くなるのか、あるいは国鉄のほうが安いのか、そういうような比較検討はされたことがございますか。
  129. 栗原昭平

    説明員(栗原昭平君) 石油パイプライン特別委員会におきまして御指摘のような点も試算はいたしたことがございます。
  130. 鈴木強

    鈴木強君 その結果は、どうなっておるかは私はよくわかりませんが、いずれにしても、通産のほうは建設費の調達等につきましても、たとえば石油開発公団資金というものの出資をふやして、その分から国が助成していこうというような考え方を持っておられるようだし、それから関連する法律案の整備等も考えておられるようですね。そうしますと、かなり問題が煮詰まっておるように思うのですよ。一方、また国鉄側もかなり煮詰まった計画を持っておられる。これはどういうふうに判定をするかは政府全体でお考えだと思いますけれども、閣議決定の線もあるようですので、なかなかこれからも一応一本にするということはかなり至難な点があると思います。ただ問題は、国益に終着点はいくのでありまして、低廉であり、安全であり、経済効果がそのほうがよろしい、全体の国益にこれが一番沿うのだというそういうところに結論を求めつつ、両者で十分な煮詰めをしていただくのですが、問題は業界もおるわけです。あなたの説ですと、こういう輸送経路というものは船会社がみずからやるほうがいいのだ。なぜならば、ガスはガス管で会社がやっておるし、それから水道は水道管でその会社がやっておる。だからして、やはり石油でも石油会社がやったほうがいいのだ、こういうような話もしておられましたね。ですから、これは業界の意見も十分に考えなければならないと思います。それから、お話のように東京湾の中には製油所群が幾つかありますけれども、その地域ではかなり桟橋等も整備しておって、皆さんの御指導があったと思いますけれども、そしてそれぞれの会社が直接桟橋から製油所に油を陸揚げするような方法をとっているわけですから、そういうものに投資したお金も相当になると思います。ですから、それらのことも考えながら全体の計画をやらなければいかぬと思うのですが、問題は、もう四十六年度にいずれも着工する。そして国鉄と同じように皆さんの計画も一部は四十七年の秋に完成していくのだ。こういうわれわれから見ると、非常に突っ走ったようなところまで問題はいっているわけですよ。ですから、大臣、これは先ほども伺ったのですけれども、閣議決定というのがあると、こうおっしゃるわけです。したがって、政府の方針はまさにきまっておる。したがって、国鉄がもうやることが当然だというふうに大臣考えですか。その場合に、いま言ったような業界との問題、あるいは通産との問題があるわけですから、その辺の調整をどうなさって終着駅の同じ目的に到達するようなことをお考えになるのか。この際、大臣から締めくくりとして伺っておきたい。
  131. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私の意見は先ほど申し上げたとおりであります。ここで再び繰り返すことはやめます。政府内部の問題でありますから、政府内部の問題につきましては、私は担当大臣としてこれを処理する考えであります。
  132. 鈴木強

    鈴木強君 比較的問題をはっきりと言っていただく大臣にしては、——私が申し上げた、これは希望的な意見かもしれませんけれども、少なくとも業界の立場もあるでしょうし、通産当局の考え方もお聞き取りのようにあるわけですから、その辺の調整を十分考え、終着駅は同じなんですから、相当のひとつ理解と納得の話し合いをしなければいけないように私は思うのです。これは立法府が行政府の一々についてわれわれは介入しようという考えはありませんけれども、何かわれわれが両方の答申に基づく態度を見ておりますと、あまり公式には連絡もとっておらない。おのれが信ずる道を両者が走っているように思うわけです。ですから、これが変なことにならないように最大の配慮をしていただいて、内閣が最終的におきめになると思いますけれども、特に業界の立場は通産の立場——通産の立場を業界が支持しているのか、業界の立場を通産が支持しているのか、よく私はわかりませんけれども、いずれにしても共通点があるわけでして、国鉄とは明らかに対峙しているというような問題でありますから、この辺のひとつ配慮を十分にしていただいて、国益に沿うような方向で決定していただきたい、こういう私は強い希望を申し上げたわけです。  少し問題が前後いたしましたが、もう一つ大臣に私は伺っておきたいのですが、かねがね大臣は、東京湾の海上輸送のふくそうの問題と関連をして、房総のどっか適当な場所に、九十九里のほうの海上と通ずるような運河でもつくってやったらどうかというような意見を発表されておりましたですね。これはたまたま新聞に出ておりましたので、私は伺うのでありますが、東京湾をはじめ大阪、伊勢湾など臨海工業地帯を控えた港湾の海水汚染が問題となっているが、橋本運輸相は伊勢・三河湾の海水浄化対策として渥美半島を横断する渥美運河の建設構想を固め、九日、事務当局にこの構想推進の検討を指示した、こういう記事が載っているのであります。これは渥美湾と外洋の根元における運河の構想のようですけれども、これと東京湾の房総半島の根元かどうかわかりませんが、横断する運河とはどういうふうな関係があるのですか。二つを構想として出しておって、二つともやるという前提で構想を立てておられると思うのですけれども、たとえば東京湾のほうを先にするとか、あるいはどっちをあとにするとか、いろいろ効果の面で考えなければならぬと思うのですけれども、そういうことは当然考えながら、東京も必要なんだが、ここの伊勢湾のほうも必要だというお考えでお述べになっておるのか、その辺のいきさつをちょっとお伺いいたします。これは湾内の交通のふくそうを緩和する意味においても、あるいは汚染された水を外洋に排出するという意味においても、私はかなり一つのアイデアだと思うのです。そういう意味で、構想を私は支持する立場で伺うわけですが、いかがですか。
  133. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 海上のパイプラインにつきましては、原則的に全国主要なる地域には順次これを実施したいと思っております。その一つは東京湾であり、その一つは瀬戸内海であり、その一つは伊勢湾、こういうことになります。そのうち、御承知のように、東京湾はすでにもうふくそうしてまいっておりますので、この海洋汚染防止法、その他油によるところの水質汚濁の防止から考えましても、これは東京湾を優先的にやっていきたい。伊勢湾のほうは、実は伊勢湾の総合開発の計画がまだ最終的な結論が出ておりませんので、それらを待ってやはりシーバース等の場所考えなければなりませんので、とりあえず東京湾は来年度調査費をつけまして、そうしてできるだけ早い機会にこの海上パイプラインの建設をしたい、かように考えておるわけであります。
  134. 鈴木強

    鈴木強君 大臣は、いまの問題のとらえ方をちょっと誤解されているようです。私は運河の点を聞いたのですよ。あなたが渥美半島に横断運河をつくるという構想、それから房総のどこか適当な地域に運河をつくって、東京湾の汚水を機械的に、何か外洋に流して水をきれいにするとか、そういうふうな構想と、それによって海上のふくそうを緩和するとか、そういう話がありましたね。それとの関連で聞いたのです。パイプラインだけじゃないのです。
  135. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 東京湾の場合は、これは浦賀水道の狭い口の、いわゆる港口整理の問題だと思います。この点はできるだけ早い機会にやりますが、来年は調査費とあわせて工事費も要求しております。同時に、パイプラインの調査費も計上しております。それから伊勢湾のほうの問題は、これは県の段階ではいろいろな計画があります。一つは、この伊勢湾という海は東京湾の一・六倍の大きさがあるわけですが、湾内の水の流れの状態が必ずしもスムーズではない、かつまた豊橋方面に臨海工業地帯を造成するということになれば、なお一そう湾内の水質汚濁が目立ってくるであろう、こういう前提に立ちますというと、どこか海流の流れる口を考える必要があるだろうということで、目下港湾局において渥美半島を切り割るかどうか、それによって、どれだけいわゆる海流の流れがスムーズになるか等をこれから検討する、そうして最終的にきめたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  136. 鈴木強

    鈴木強君 これは港湾局長でもいいですが、調査費がこっちもついておるのですが、いつごろまでに調査を終わって、実施可能であるとするならば、いつから着工するというのか。そういう大まかなところはまだわかっておらないのですか。
  137. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 東京湾につきましては、いま大臣申し上げましたように、浦賀の狭水道の交通緩和という点を考えまして、第一海堡と第二海堡の間にもう一本抜こうということで、明年度一部実施したいということで折衝してございます。なお渥美半島につきましては、地元で県を中心にいたしまして、いろいろ開発計画をやっておられる段階で、湾内の海流をよくするという趣旨と、船舶交通の問題、あわせて検討されておる段階でございます。で、今後われわれといたしましては、構想としては非常にけっこうだと思いますが、県の予備調査の段階で、ただ一応ある程度までまとまりましたら、具体的にそれを受けまして、さらに進めたいというふうに考えております。
  138. 鈴木強

    鈴木強君 まだはっきりわからぬのですね。
  139. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 具体的にはまだわかりません。
  140. 鈴木強

    鈴木強君 その次に、さっき飛ばしましたので、もとに戻りますが、提案理由説明の中に、こういうように海上輸送量というものが飛躍的に増大をしておるということですが、ひとつ統計的にこの三カ年間ですね、海水汚濁防止法ができて以来でけっこうですから、どの程度輸送量というものが毎年ふえてきておるか。トン数か、何かでもいいですから知らしていただきたい。
  141. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 原油の輸入量でございますが、輸入量は四十三年度が一億二千百万トン、四十四年度は一億四千五百万トンというふうに増加いたしております。
  142. 鈴木強

    鈴木強君 それから、船舶から排出される廃油や、大型タンカーによる大量の油の流出事故があるということですけれども、その事故の三カ年間の発生件数と、それから原因、それからどこで一番発生しておるか、その地域ですね。こういう点がわかったら教えていただきたい。
  143. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 船舶の油による汚濁、損害状況でございますが、三十九年度から四十三年度までの調査でございますが、損害額といたしましては、全体で三百三十八件、四十三億でございます。その内訳を申し上げますと、加害者不明のものが百十一件ございます。金額にいたしまして十九億二千万円でございます。
  144. 鈴木強

    鈴木強君 事故発生の多発地、発生した件数の多い海域はどこですか。
  145. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 件数として多いのは、東京湾、大阪湾、伊勢湾、八丈島付近等でございます。
  146. 鈴木強

    鈴木強君 大型タンカーによる大量の油の流出事故というのは三百三十八件のうち何件になりますか。何件、何億ぐらいになりますか。——こういうのは海上保安庁でなければわからないのですか。
  147. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 詳細は、ちょっといまはっきり申し上げられませんが、はっきりわかっておりますのは五件ほどございます。昭和四十一年十一月二十九日に発生いたしましたタンカー「銀光丸」二万一千五百数トン、これがクウェートから下津に参るときに、衝突によりまして、船首に破孔を生じて、両船とも火災を起こした。あるいは四十三年六月七日にタンカー「霧島丸」、五万七千七百六総トンの船が、これも霧の中で見張り不十分により衝突をいたしております。これによりまして燃料油が約四百トン流出いたしております。それから、先ほどの「銀光丸」の流出油でございますが、これは「銀光丸」から原油が三千六百トン、衝突いたしました「テキサダ号」から重油が約一千六百トン流出いたしております。そのような例が四十三年十二月五日にタンカー「アディージャンディ一号」、あるいはタンカー「第八東洋丸」三十六万一千総トン、タンカー「いつき丸」四百九十九総トン、こういうような事例がございますが、タンカー「アディージャンディ一号」の場合には、現場において重油が二十五トン、千葉港外におきまして約四百五十トン流出、それからタンカー「第八東洋丸」の場合には、積載中のC重油百七十トンが流出いたしました。タンカー「いつき丸」の場合には、重油が百トン流出いたしております。以上のような事例が、いまここで申し上げられるわけでございます。
  148. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、原因というのは大体航行安全に対する、何といいますか、不注意といいますか、そういうものに起因するのがやはり多いと見ていいですか。それにはもちろん不可抗力的な気象条件とかいろいろあると思いますけれども、この原因というものに対して、大まかにどういうふうなものかということは運輸省として把握されていると思いますが、その点はどうかということですね。  それから、もう一つは、大量に油が流出したときに、その油を除去するために、どういうふうな措置がその際、個々の問題についてあげることはむずかしいと思いますけれども、とられておったか。そういう点も簡単にひとつ教えてもらいたい。
  149. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) タンカーの事故におきまして、これはケースによっていろいろな事由がございますので、カテゴリーの大きなもので仕分けをすることがなかなかむずかしいと思いますが、ただ、起こっておりますのがやはり航法上の問題、これは運航自体の操船の問題につながるかと思いますが、狭水道等の場所において起こります問題につきまして、こういった航法上の問題が相当大きいかと思います。それからやはり乗り組み員の油の扱いというようなものが問題であろうと思います。操船につながりますけれども、やはり船舶の衝突というような問題から起こってくるというような事態というようなことが一応考えられます。これは先生つとに御承知かと思いますが、先般、浦賀水道で「第一新風丸」と「コリントス号」が衝突をいたしました際に、やはりそういった諸点について問題がございましたので、とりあえずの緊急対策というような意味におきましても、いま例示いたしましたようなことを中心に考えまして、具体的な当面の対策を指示したわけでございます。  で、一般に油が流れましたときの対策は、これまた御承知かと思いますけれども、防災対策ということで、ともかく広域に油が広がらないようにする。それを今度はくみ取る、あるいは油を中和をしてなくするというようなことがあります。これらに対する、また、そういう方法によります除去の体制の整備の問題、そういうものを通じまして油の広域的な被害を局限してセーブをする、こういうようなことで、オイルフェンスあるいは除去剤、あるいはこれらのものの爆発で火災が起こりましたときの対策、そういったもの等を考慮しておるわけでございます。
  150. 鈴木強

    鈴木強君 今度は、この法律改正によって、油が流れた場合の除去の責任というものは第一義的には船主であるということははっきりしていますね。ところが、従来はその点がやや不明確であったと思いますが、今日までのこういう油の流出に対して第一義的な防除の責任は一体どこがとっておったんですか。海上保安庁、そういったところでこういうときにはまず第一番にかり出されたわけですか。船自体にオイルフェンス等、さっきお話しのような油を薄めていくような化学的な物質を積んでおられると思いますけれども、第一義的にこの防除の責任は一体いままではだれがおとりになっておったんですか。
  151. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 具体的な事例についてのいろんなケースがありますが、考え方の基調といたしましては、やはり第一義的には当面の運送業者、あるいはこの法案でも、石油精製業者あるいは荷受け業者、こういった油そのものに関する直接的な民間の事業主体ということに考えておりまして、いろんなケースで海上保安庁ももちろんかり出されておりますが、かり出されましても、実際に防除の措置をとりますときには、そういった民間の協力体制の中でのわれわれの果たすべき役割りというやり方で従来やってきております。
  152. 鈴木強

    鈴木強君 今後もそういう方針を貫いていくように思いますけれども、私はこの法案の中で一つの盲点がそこにあると思うんですよ。従来もそれでは防除のための設備というものを義務づけて船に設備を持たしておったかというと、ない。今度の場合にも、そういうものを義務づけてない。義務づけておらないのに、こういうときにはこうしろとかいうような、大量の油が流れたときにはそれを拡大しないようにせいといっておりますけれども、それは法律のやっぱり一つの落ち度じゃないですか。やっぱり設備も、こういうものとこういうものと、こういうものはやっぱり持つべきだ、何カ月かにわたって運輸省は調査、研究をしてきたわけです、きのうもちょっと伺ったけれども。その中で、どの程度油が流出した場合には化学的に薬剤によってこれを防除できるとか、それ以上の場合にはどうするとか、そういうようなことについては当然この法律によって義務づけるということがなければ、これは海上保安庁たいへんですよ、これから。第一義的に船舶が義務づけられて、船舶にはそういう設備の義務づけはないわけですから。それで、保安庁はそれを助けにいく第二義的な立場でやるんだが、結果的に見ると保安庁何をしていたかということになるわけですよ。たとえば、せんだっての「ていむず丸」なんかで、皆さんのほうが命がけで消したのでしょう。船は何を持っていましたか。何も持ってない。それは、ことばでは船主だとか、あるいは油の荷受け人がやるんだと言ったところで、それらを義務づけないで一体どういままで処理してきたんですか。私はこれはふしぎな点だと思いますよ。   〔委員長退席、理事金丸冨夫君着席〕 いままでもずいぶん保安庁は苦労されたと思いますけれども、ああいう場合だって一義的な義務は果たせない。結局は保安庁が一時間おくれてけしからぬとか、文句を食うわけです。第二義的な防除の責任を持つ者が被害を先にこうむる、こういうことではこれは片手落ちじゃないですか。これは見坊さんのほうから聞きたいんです。
  153. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) ただいま先生がおっしゃいますように、従来は、船舶にそういう設備を保持する義務づけはございませんでしたけれども、この法律が制定されますと、そのような必要が生じてまいりますので、船舶安全法の関係規則におきまして改正いたしまして、船舶からの漏油等による油の広がりを防ぐ応急措置につきまして、必要な備品の備えつけを義務づけるよう現在検討中でございます。
  154. 鈴木強

    鈴木強君 それは、船舶安全法を検討中というのは、今度の国会で出していないんですか。
  155. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) 今回の国会には出しておりません。
  156. 鈴木強

    鈴木強君 だから、そういう構想があるなら、これはあなたのほうではなまけておったとは言えないけれども、少なくともこの法律が出る場合においては、船舶安全法も同時にその法を変えなければいかぬですよ。いつ変えるか知りませんけれども、これは動き出しているんですか。
  157. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) 船舶安全法の関係法令でございますが、般舶設備規程の中の「航海用具其ノ他」という項がございますが、その項の中におきまして、この点を取り上げたいと考えております。省令でございますので、私どものほうで処置できるかと考えております。
  158. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、それは省令でおやりになるということですから、考え方は、ぼくの指摘した点に対して対応策は持っていると思いますけれども、やっぱり法律条文の中に、本文の中にはっきりと明定をして、そうして一方、取り締まりについては——取り締まりというか、防除に対する措置は講じなければならぬということは法文に書いてあるんですよ。ところが、それを防除するための設備というものが何もないから、どうしなければならぬということが何も書かれていないから、むしろそんなら——あなた方のほうで省令でやるからと言っておるけれども、むしろそういうものは法律にちゃんと規定してやるべきですよ。その設備の内容がどういうものかということは、これはまた省令に譲ってもいいですけれども、そういうものはやはり一つの筋道としてそれをやらないと、これはほんとうに取り締まりの任務を保安庁は持つわけですから、たいへんなことだと思うんです。ですから、省令でやるということは、考え方は一応わかりましたけれども、それにしたって、ちゃんと省令はこういうふうに変えますとはあなた方言わない。そういうように検討していますというようなことでは困るわけです。ですから、これはできれば法律本文の中に入れるべきですよ。入れないとするならば、あなた考えているんだから、一体何と何と何の設備、施設を義務づけようとするのか、それをはっきりしていただきたい。
  159. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) 主としてオイルフェンスにつきまして考えております。
  160. 鈴木強

    鈴木強君 見坊さん、いま船舶安全法の省令でもって変えますとおっしゃっておりますけれども、それも一つ考え方かもしれませんが、やっぱりオイルフェンスしかないならオイルフェンスを設置しなければならぬということをはっきりこの中に入れるべきじゃなかったですか。その点についてば立案のときにあなたとしてはどう考えておったんですか。
  161. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 海洋汚染防止法は、大量の油が発生した場合、まず船長その他施設の管理者が応急の措置をとるべき義務があるわけでございます。したがいまして、この法律の中にそれを書かぬでも、この法律の反射的効果として当然義務を負う、こういうことでございますが、ただ制度としまして、ただいま船舶局長から御説明申し上げましたように、安全法による設備規定処理できるということでございますので、制度としては、それでよろしいんではないかということで判断いたしたわけでございます。
  162. 鈴木強

    鈴木強君 どうも、立法府のわれわれの考え方と行政府皆さん考え方が、いろんな法律をつくる場合に見解が違ってくるわけですよ。ですから、原則として、本文にうたうべきですよ。しかし、どうしてもうたうことが不可能のような問題について、これは政令なり、あるいは細部の規定のことは、省令というのはわかりますよね。しかし、政令事項というのはできるだけ少なくすべきですよ。だからして、反射的に、義務づけているから設備を持たなきゃならぬというような、そんな考え方は、これは古いですよ。だから、できるだけ明文化する、大事なところですよ。少なくとも、政令に委譲できるかどうかというような問題と違った意味が私はあると思う。ですからして、はっきりと防除に必要な設備を船は持たなきゃならぬ、しかし、その内容については、あるいはいろいろあるならば、それこそ政令に譲るべきだ。政令に譲っちゃならぬようなことまで政令に譲っちゃうんだ。だから、こういうふうに、四十も五十も政令とか省令とかが出てくるのですよ。だから、法律をつくるときに、もう少し、はっきりとするところは、して、義務づけるところは義務づけて、お互いに法律を守っていくんだという考え方、あるいはそれ以前の問題として、やはりもうどんなことがあっても油を海洋へ流すなどということはないように、それは船長においてもあるいは責任皆さんにしても、荷受け人にしても、全体がそういう観念に徹しなければ、海洋汚染ということは防げないと思うのですよ。しかし、法律に明らかにするところは明らかにすべきであって、これはひとつ、もう一回大臣とも相談して、検討してみてくださいよ。明文化したほうが私はいいと思いますからね。それをひとつ検討事項として預けておきますが、どうですか。
  163. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 確かに、一つ法律の中で関係の条項をすべて網羅して書くことが、制度としてはわかりやすいし、また親切でもあろうかと思います。いまお話のございました点につきましては、現行制度では、先ほど申し上げたようなことで措置できるということで考えておりますが、なお十分検討さしていただきたいと思います。
  164. 鈴木強

    鈴木強君 次に、油以外の廃棄物船舶から海洋へ大量に排出されるようになったということですが、その状況はどういうものか、ひとつ簡単に説明してください。
  165. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) これは推定でございますが、海洋に投棄されておりますものは、産業廃棄物が年間約五百五十万トン、それからふん尿が五百十七万トンという状況でございます。まあそのほかにしゅんせつ土砂もございますが、産業廃棄物ふん尿が非常に大きいという状況でございます。
  166. 鈴木強

    鈴木強君 厚生省の人、来ておられますか。——いま油以外の廃棄物船舶から海洋に大量に投棄されるものの中に二番目にふん尿の投棄があげられました。これは非常に私は残念なことだと思います。したがって、下水道整備の長期の計画をお持ちになって政府もやっていらっしゃると思いますが、あまりに遅々として進まないような気がいたします。これは財政的な裏づけも必要でございますけれども、なかなか国家全体の予算の中ではむずかしい点もあると思いますけれども、少なくとも年間五百十七万トンのふん尿海洋に投棄するということは日本の恥ですね。したがって、これには公共下水道というのを当然に整備して、それと並行して水洗便所をふやいてしく、こういうような方法をとるべきじゃないかと思います。かりに、くみ取りの手段にたよらなければならない、下水道の普及がおくれている、そういう場合でも、何かどこかにくみ取ったふん尿を集めて、それを大量に浄化できるようなそういう施設をひとつつくって、そこでろ過し浄化したものを、たいへんめんどうだけれども、もう一回海洋に投棄するなら投棄するということにすれば、大体水洗便所をつくったと同じような効果が出てくると思うのです。そういう意味で、このふん尿の投棄に対する根本の原因を追及して、それをなくするために水洗便所に対しての施設を拡充する計画と——それから建設省来ておられますか。建設省からも、公共下水道を含めて、これは建設省の所管ですから、おたくのほうが進まなければやはり水洗便所のほうも進まないわけでありますから、それはそこらが一番大もとですから、その辺の整備状況はどうか。せっかく今度こういう法律が制定され、より早く効果的に海洋汚染をなくするということでは、従来の計画ではだめでありますから、これを相当拡大、修正をして、予算をもってその推進をするようにしなければいけないと思いますが、そういう点を含めて御両省のほうから説明していただきたいと思います。
  167. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) ただいまの先生の御意見でございますが、なま屎尿をそのまま海洋投棄処分をするということにつきましては、これは衛生上の観点からいたしましても、先生お話しのとおり好ましい措置ではないということでございまして、それで実はこれを解消するということを目的に、屎尿の衛生的な処理計画というものにつきましては、清掃施設整備緊急措置法に基づきまして、現在まで四十二年以来五カ年計画をもって一応その整備をはかっているわけであります。お話にございましたように、やはり屎尿を衛生的に処理するということにつきましては、公共下水道によります水洗便所によって行なうということが最も理想的な形でございます。私どものほうの屎尿処理施設の整備計画といいますのは、先生のお話の中にもございましたように、水洗化できない屎尿につきましてはこれをくみ取って、そうしてそれを衛生的に処理するための屎尿処理施設を、これは下水道が普及されるまでの間、補完的に行なうというのがわれわれのほうの計画でございます。四十二年度計画策定当時におきましては、少なくとも四十六年度にはこういうふうな不衛生処分ということにつきましては、ほとんどこれを解消するというつもりで実は計画を進めてきたわけであります。ところが、御承知のように、特に人口集中というものが激しい地域とか、あるいはその施設設置についていろいろな問題があったり、あるいは下水道の普及というふうなものとのからみ、そういうことがございまして、先ほどお話がございましたように、現在くみ取り屎尿のうち約二八%程度海洋処理をしなければならないような現状にあるわけであります。そういうようなことを一日も早く解消するということは、私どもも先生の御意見のとおり感じておりますし、こういう海洋汚染防止法等の関係等も考慮いたしまして、できるだけすみやかにこれを解消するというふうなことで、現在、実は新たな年次計画というものについて検討をしているわけでございますが、特にこういう海洋投棄処分をやっておる地域というふうなものにつきましては、重点的にそういうものを進めていきたいと思っております。また、どうしてもやむなく、まだ暫時こういう処分をしなければならないというふうなところにつきましても、その投棄の方法というふうなものについて、なま屎尿のままそれを投棄するというふうなことではなくて、やはりある程度の一次的な処理を行なって、海洋汚染することをできるだけ防ぐような、そういう措置そのものについても考えていきたい、こういうふうに思っております。
  168. 三宅正夫

    説明員(三宅正夫君) 先生御指摘のように、根本的な問題の解決は下水道の整備にあるわけでございまして、現在でも下水道整備の五カ年計画を立てましてやっておりますけれども、このような情勢にかんがみまして、昭和四十六年度から新しく第三次五カ年計画を立てまして、総額二兆六千億をもって下水道の整備を促進してまいりたいと思っております。  新しい第三次五カ年計画のおもな内容について申し上げますと、まず、水質環境基準を達成するために受益別下水道整備総合計画を定めまして、対象区域の下水道を重点的に整備しようと考えております。この場合、特に受益下水道事業を強力に推進すべく考えております。  それから公共下水道でございますけれども、市街化区域の生活環境を改善するために下水道整備を強力に推進いたしますとともに、新市街地におきます先行的な下水道整備をはかってまいりたい、さように考えております。それによりまして下水道の普及率を、四十五年度末の二二・八%から、第三次五カ年計画が終わります昭和五十年度末におきましては三八%まで高めたい、さように考えております。さらに、市街地におきます浸水の著しい地区におきまして特に緊急に使用する必要のある下水道をさらに促進いたしたい。  そのほか、先ほど申し上げました受益別下水道整備総合計画を定めるため、あるいは下水処理技術開発のための調査を行ないたい、こういうものがおもな内容になっております。  以上のようなことでございます。
  169. 鈴木強

    鈴木強君 まあ建設省と厚生省とそれぞれの立場で努力をしていただいておりまして、われわれも感謝をするわけですけれども、いまお話しの長期計画の中でできるだけ早く所期の目的を達成するために、設備の拡充強化等もあわせて御苦労いただいているようですが、昭和五十年度末三八%程度の整備では、これは、私は非常に残念に思うのですね。予算の関係で一挙にはいけないでしょうけれども、ぜひひとつこういう法律制定を契機にして、建設省のほうとしても、あるいは厚生省のほうとしても、強力にその内容を拡充していくような方向でぜひひとつがんばっていただきたいと思います。これは、大臣が、きょうは両省とも来ておられませんので、皆さんのほうから大臣にもよくおっしゃっていただいて、こういう方向でぜひがんばっていただきたいと思います。  それからなお、こういう点は配慮されていられるのでしょうか、両方とも。これは全国的な五カ年計画と思いますが、たとえば東京、名古屋、大阪、この都市化の進んでいる過密都市、そういうところの計画というものも相当にピックアップして、それに集中的に公共下水道なりあるいは水洗便所の普及をやっていくという、そういう考え方は入っていると思いますが、私は時間がありませんから、どういう地域をどうというようなことは、聞くいとまはないのですけれども、大体そういう重点的な地域を指定しての施策というものは、その中に取り入れてあるのでしょうか。
  170. 三宅正夫

    説明員(三宅正夫君) 当然大都市につきましてはそれだけ重点的に考えております。たとえば水洗便所の普及率で申し上げますと、東京の場合でございますと、現在約三八%程度でございます。大阪の場合も大体三八%弱でございまして、名古屋の場合だと五六%になっておりますけれども、これは全国の市街地振興地区全国平均にいたしますと、水洗化の普及率というのは現在大体一五%程度でございます。残念ながら非常に低い数字でございますが、今度の五ヵ年計画によりまして、これは各大都市の普及率がどの程度になるかという点はまだ算出してございませんが、全国平均で申し上げますと、大体昭和五十年に四〇%程度まで高めたい、さように考えております。
  171. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 私どものほうも公共下水道の普及の状態、その整備計画とあわせて屎尿処理施設の整備計画をはかっておるわけでございますが、その段階におきましても、先ほどもちょっと申し上げましたが、特になま屎尿の海洋投棄をやっておる地域というものの解消については、その重点的な進め方をしていきたい、このように思っております。   〔理事金丸冨夫君退席、委員長着席〕
  172. 鈴木強

    鈴木強君 それからこの法律が施行をされますと、端的に言って、いま五百十七万トン海洋に投棄をしているふん尿は、厳密に言って法律違反になりますね。これはあれですか、原則原則として、特に当面海上に投棄をしている五百十数万トンのふん尿については、やむを得ないから例外規定としてやらせるという考え方ですか。
  173. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) この法律の施行は附則に書いてございますが、廃棄物関係は第三章でございますが、第三章の規定公布の日から起算して一年六カ月を経過した日から施行する、それまでは清掃法の規定が効力を有しておるわけでございます。それは経過措置の第五条に規定してございます。ただ、この法律公布になりまして、一応この法律の精神というものは、何人も海洋汚染してはならないという根本的な思想に基づくわけでございますので、私どもといたしましては、かりにやむを得ない措置としてなま屎尿が出される場合にも、できるだけ海洋汚染しないような前処理をしていただきたいというふうに希望をいたしておるわけでございます。
  174. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、結論だけ——法律が施行された場合には、五百十何方トンのふん尿は投棄できないのでしょう。例外としてまだある程度見ていくというようなことを考えるのですか、この点はどうですか。
  175. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) それは、この法律の施行をした日には、廃棄物処理及び清掃に関する法律が施行になっております。そこで、その廃棄物処理及び清掃に関する法律政令で、海洋に投入処分等することができる廃棄物をきめることになっておりますが、したがいまして、まずその辺でチェックをする、その政令に違反して、なまで出すということになれば当然違反ということになるわけですし、それから投入の場所方法も、これはその認められた廃棄物について排出海域及び排出方法を後ほど政令できめたそれに従って排出をするということでございますので、かってなところに出すということは、これもまた法律違反ということに相なるわけでございます。
  176. 鈴木強

    鈴木強君 水産庁の方いらっしゃいますか、どうもお待たせして。先ほど昭和三十九年から四十三年までの、船舶から排出される廃油や大型タンカーによる大量の油の流出事故によって三百三十八件、四十三億円の被害が出ている、そのうち、加害者の不明のものが百十一件、十九億二千万円あるそうです。水産庁として漁民に与えた損害ですね、ノリとか、お魚とか、コンブとか、海藻とかあると思いますが、そういう被害状況というのを把握されておりましたらちょっと御発表願いたいです。
  177. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 昭和四十三年に油の被害報告がありましたものは二十五件で、合計被害額といたしまして十億一千五百万円、そのうち、船舶から排出された油による被害というのは十三件ございまして、うち加害者不明のものが二件ございまして、その被害額が五百万円、その他の十一件につきましては被害額が八億三千四百万円となっております。そのうち、七件は解決済みでございまして、あとの四件が現在告訴中でございます。四十四年度は全部で八件ございまして、被害額が三億七千九百万円、そのうち船舶のものは五件ございます。その五件のうちの加害者不明が一件で、それの被害額が六千五百万円でございます。被害額三億のうち、現在解決しておりますのは一件で、百万円の補償で解決いたしております。  以上が最近の二年間の例でございます。
  178. 鈴木強

    鈴木強君 この加害者不明というのはさっきもだいぶやったわけですけれども、現在その被害に対する賠償というのはできないので、おそらく水産庁としてはたいへんにお困りだろうと思いますけれども、何とか具体的にこうしたらいいというような考え水産庁としてお持ちでございましょうか。
  179. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 水産庁庁内で検討しまして、水産庁としてこういう案というのは現在まだまとまっておりません。
  180. 鈴木強

    鈴木強君 これは要するに泣き寝入りということだな。そういうことじゃ水産庁としては困るじゃないですか。何て漁民に言っているのです、そういうときには。
  181. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) お説のとおり非常に私ども困っておりまして、加害者不明のものについての何らかの救済策は考えなければいけないということで、現在検討しておりますが、ここで申し上げるような具体案というのはまだ持ち合わせておりませんので、現在検討中でございます。
  182. 鈴木強

    鈴木強君 困る困るといって頭をかかえておったのじゃ浮かばれないのは漁民ですからね、もう少し——検討中、検討中、何でも検討中で当面をのがれていくのだが、そういう態度はよくありませんよ。もっと被害者立場に立って水産庁はよく考えてくださいよ、お願いします。  それから私、時間の関係がありまして、これで終わりますが、こういう場合——これは気象庁も来ていると思いますが、東京湾の浦安の海岸五百メートルくらいのところに、たとえば大量の石油が流れ出した、この石油は一体ほっておいたらどこにどういうように流れて行くんですか。これは海洋気象との関係、海流に関係があると思いますが、そういう試験をやってみたことはありますか。
  183. 岡田茂秀

    説明員(岡田茂秀君) 私のほうは御承知かと思いますけれども、観測船を六隻持っておるだけでございまして、それも海洋観測というのは気象に関連して調査をしておるわけでございまして、したがって、いまおっしゃるような湾内というようなものの調査はほとんどいたしていない。むしろ黒潮とか親潮とかいうような遠洋の海洋調査に主として従事いたしておるものでございますので、私のほうでいまの御質問にはお答えいたしかねるということになろうかと思います。
  184. 鈴木強

    鈴木強君 質問に答えかねるとは何ですか。あなたのほうでは、たとえば東京湾のある地点にある水が、潮によっても変わるでしょう、時間によっても変わるでしょう、干潮との差があって、その水が一体どういう流れをもってどこに行くかという、水の移動するような場合のことは研究していないのですか。それは水産庁がやるのですか。気象庁というのはそういうことまでやらないのですか。あなたのほうは黒潮の流れをやっておいて、湾内の調査をやる必要がないというのですか。それは一体どこでやる責任があるのですか。どこの責任ですか、そういうことをやるのは。
  185. 岡田茂秀

    説明員(岡田茂秀君) どこでやるかということについては、私よく存じませんが、先生承知と思いますが、私のほうの海洋調査というのは、気象事業に関連するものについて行なえということになっておりまして、その気象事業に関連があるというようなものになりますと、どうしてもやはり、先ほど申し上げました黒潮とか親潮とかいう、主として大きな海流の流れ、かようなものが気象現象に影響するところが多いものでございますから、限られたやはり船艇で調査をやるといたしますれば、さようなことを重点的に調査をする、従事するということになっておるわけでございます。
  186. 鈴木強

    鈴木強君 まあ大臣、一体東京湾の水がどういうように移動して、どういうように流れていくかという調査、研究ですね、測定ですね、これはどこの所管になるわけですか、国の機関で。
  187. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 私どものほうの業務の中に水路業務というのがございます。今度この本法によりまして、四十六条で、この水路業務に関連をいたしまして、海洋汚染防止あるいは環境保全のために従来の業務を活用するということになっております。現在やっております水路業務の中には、御承知のとおり、海象観測、水量測量というのがございます。この海象観測の中で、いま海流の観測、あるいは潮汐、潮流の観測、こういうものをやっております。このやっております海象観測は、厳密にいいますと、いま先生御質問のような、あらゆる地域についてやることになるかと考えるわけでございますが、現実にやっておりますところは、やはり海流観測については、日本近海の海流、それから潮汐、潮流の観測等については、日本全国の主要な港湾、海峡というようなことになっておりまして、一部いま聞き及びますところでは、東京湾等はこの中に入ってやっておるということで、こういう面について、今後海洋汚染という立場においての業務を水路業務の中の関連の一環として進めていくということになるかと考えます。
  188. 鈴木強

    鈴木強君 これは、所管は海上保安庁の所管ということですね。私はなぜこういうことを聞きますかというと、これから廃棄物だとか油とか流れていた場合、それがどういうふうな——海流と言わないけれども、水の流れがあるでしょう、それぞれの海域において。そういうものがどういうふうな移動をしていくかということを詳細につかんでおかなければいかぬと思うんですね。原則として船から投棄しちゃいかぬのですけれども、なかなかその根本対策がおくれているから、現在でも五百何十万トンという廃棄物海洋の中に大量に捨てられているということをさっき聞きました。ですから、そういう意味において物体がどういうふうに、あるいは液体がどういうふうに移動していくかということをひとつ調査していただけますか。もう少し人がなかったら人をふやして、ぜひこれはこの法律を完ぺきなものにするためにも必要だと思いますから、そういう点の御配意をひとつお願いしたいと思いますが、これは長官の所管だそうですから、だからお答えいただきたい。
  189. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) この法律の施行によりまして、今後、いまの油あるいは廃棄物の投棄場所、あるいはこれの拡散状況の推定、あるいは一般の汚染状況の概括的な把握ということはで、いま申し上げました水路業務が関係をしてくる、そういうことで水路業務の仕事の整備拡充ということについては今後努力をいたしたいと、かように考えます。
  190. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) ただいま海上保安庁から申し上げましたように、水路業務として一般に潮流観測をやっていただいております。  で、港湾局でございますが、たとえば東京湾の中にたくさん港湾がございます。これは先ほども答弁申し上げましたように、水路を深く掘るというような外的現象を加えるのは、私のほうが多いケースがございますので、そういう変わったことをやった場合に潮流がどう変わるか、そういう研究は私どもでもいたしております。
  191. 鈴木強

    鈴木強君 他にまだ私は幾つか質疑をしたいんですけれども、ちょっと私時間の関係でできませんので、最後に——さっき港則法二十四条の問題で、法律的な問題についてちょっと論議したんです。それはおくとしまして、現行の港則法二十四条によって、港の境界から一万メートル以内の水面においてはみだりにこれこれこれを捨てちゃいかぬ、こういうことになっておるわけですね。したがって、現行法に立脚をして考えた場合に、たとえば田子の浦のような場合でも、駿河湾のほうに向かって一万メートル、と同時に潤井川とかあるいは沼川とか、こういう川の上流に向かって一万メートルの水域までは港則法が働いていくわけですね。そこの水質というものが、あのようにヘドロで汚染されてしまったと、これは水質基準が従来の法律ですと地域が指定されますが、今度はその点は全水域に及ぶようにいたしましたから、これはたいへんな進歩でありますけれども、従来はそうでない。したがって、いままでそういう河川にさかのぼっての海上保安庁としての活動というのは、一体どこまでやられておったものでしょうか。  それから今度は水質基準というものがかなりきびしくなっているんですけれども、河川に対して下水道その他工場排水というものがどんどんどんどんこう流れていって、多摩川なんかもたいへんな状態になっておるわけです。現実にあれを飲んでいるかと思うと、ほんとうにいやになっちゃう。東京の水も日本の水と同じように——日本の水ですから、日本の水と同じように非常にいい水だと思っておったのが、最近は非常に消毒液なんかが入って水がまずくなってしまったのですけれども、ああいうものに対する根本的な対策というものは、やはり海洋汚染防止するという立場に立てば、当然に根本的な対策を立てる必要があると思うのですけれども、そういう点について、河川の浄化施設の問題、こういう問題に対するひとつ考え方を、これは建設省のほうから伺い、それから手塚長官のほうからも、従来そういうところまでは手が回らなかったものかどうか、実際やっておったら、どういうふうにこの河川をやったかということを、時間がありませんから、やったならやったということで、その調査については詳細に資料として後ほど出してもらいたいと思いますが、どうですか。
  192. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 港則法の適用範囲でありますところの港域から一万メートル外のところまで、これは先ほど港則法で御議論がありましたとおり、港則法のたてまえによるところの法律違反という問題については、従来とも当庁はある程度やっております。これはしかし公害問題というよりは、あくまでも港則法上の交通の安全という観点から、ごみ、屎尿その他の廃棄物を取り締まる、こういうようなことでやっております。ただし、具体的な問題といたしまして、そういった面からどの程度に実績があがっておりますか、検挙数があがっておりますか、いま手元に明白な資料を所持いたしておりません。
  193. 鈴木強

    鈴木強君 あとで出してください。いいですか、資料として。
  194. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) はい。資料として後ほど御提出いたします。
  195. 岡崎忠郎

    説明員(岡崎忠郎君) 建設省といたしましては、河川管理上河川水質の汚濁防止は、流水の正常な機能、あるいは良好な水質と水量管理という点から河川の機能をはかる上から非常に大切でございますし、生活環境を守る上からも非常に重要なことでございますので、河川法の第二十九条の政令によりまして、河川にごみ等の汚物あるいは廃棄物を捨ててはならないということとあわせまして、河川の汚濁問題に対処いたしましては、流水の非常に少ないとき、そういう異常な事態におきましては、そういう汚物を排出しておるものに対しまして、量の制限とか、あるいは廃止ということを求めるということにいたしております。一般的には、直接河川に流入いたします汚水につきましては、建設省といたしましては直接できませんので、これは水質汚濁防止法のほうで都道府県知事さんがおやりになることと思います。以上。
  196. 鈴木強

    鈴木強君 大臣、最後にお願いしておきたいのですが、まあ政令省令の問題は先ほどメモをいただきました。これは私は一つの進歩だと思います。われわれの法案審議に際して非常に参考になりました。したがって、こういう先例を運輸委員会からつくっていただいたことは感謝いたします。  ただ、問題は、この法の運営について相当思い切った予算と陣容の整備をしないと、私は絵にかいたもちになると思います。したがって、四十六年度の予算もおよそ年内に査定段階に入るようですが、この際ひとつ運輸大臣としてはこの海洋汚染防止法の完ぺきを期して、初めが大切でございますので、思い切ったひとつ予算を取っていただき、特に海上保安庁の監視義務等もはっきりと確立をされておる段階において、それでなくても海上で働いておる皆さんの苦労もよくわかります、したがって、そういう点とか、あるいはそれの防除設備の完備とか、そういう点はひとつ行き届いた御指導をいただいて、この法律が最善の効果を発揮するように大臣の今後の御活躍をひとつぜひお願いしたいと思います。
  197. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) お話しのように、この法案の中でも海上保安庁が監視の責任をしょっております。目下の陣容は必ずしも十分でありません。したがって四十六年度の予算につきましても、今後のことにつきましても最善の措置を講じてそれらの措置をいたしたいと、かように考えております。
  198. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 本案につきましてはすでに数人の先生方が御質問されまして、大体おやりになっておりますが、私はまた、さらに幾つかの質問を申し上げたいと思っております。  先ほど鈴木先生からもお話がございました一九六九年の公海における油濁災害に関するところの条約、それから民事責任関係いたします二つの条約関係に関しまして、その後、日本以外の他の国の批准状況はどうなっておるのか。また本条約に対応した国内法の整備というものは他国ではどうなっておるのか。ひとつ二、三のおもなる国の様子をお聞かせ願いたいと思います。これは運輸省もしくは外務省、どちらでもけっこうです。
  199. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 条約関係について申し上げます。  海水汚濁防止条約の六九年改正につきましては、現在これを批准しておりますのはアイスランド一国でございます。それからその次に、公海における海難から生ずる油の汚染に対する措置に関する条約に関しましては、現在のところ批准している国はございません。それから次に、海難事故の場合の油濁災害に対する民事責任条約に関しましても、現在のところ批准している国はございません。
  200. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 今度の改正された条約と前の条約とは、どういうふうに違っておりますか。
  201. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 今度改正になりました海水汚濁に関する条約の六九年改正と現行の条約とのおもな相違点を申し上げますと、現行条約は特定の海域——原則として陸地から五十マイル以内でございますが——における油または油性混合物の排出原則として禁止しておるのでございますが、今度の六九年改正におきましては、一定の非常にきびしい条件を満たすもの以外は、いかなる海域においても油または油性混合物の排出が禁止されることになっております。また油記録簿の備えつけの義務につきましては、現在の条約と同様でございますが、改正条約では記録簿の内容が現行条約よりも一そう詳細になっております。これがおもな点でございます。で、現在の海洋汚染防止法はこれを受けてつくられておるのでございます。
  202. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 ただいまお聞きいたしまするというと、きわめて少ない加盟国が批准しておる。まあこういうことでありまするけれども、これは条約一定の加盟国の数がそろわぬというと発効しないものであるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  203. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 仰せのとおりでございまして、現在この条約に加盟しておりますのは四十二国でございます。したがいましてその三分の二以上が批准いたしませんと発効いたしませんので、二十八カ国が批准しなければこの六九年改正は発効しないわけでございます。で、それのためにわれわれも各国の状況をいろいろと問い合わせておりますが、各国ともそれぞれ準備中とか考慮中とかいうことでございまして、発効までには少なくとも二、三年はかかるであろうという見通しを立てております。
  204. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 運輸省のほうに今度はお尋ねいたしますが、新しい今度の条約と今度の汚染防止法案とでは、相当本法案のほうが強化されておる、こういうお話ですが、それに対して、どういう点が強化されておるか、ひとつ具体的にお尋ねいたします。
  205. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 油の油濁の関係は、基本的には条約の趣旨を国内法化するということで規定してございますが、条約よりも強化されております点は二つございます。一つは、適用対象船舶条約ではタンカーにつきましては百五十トン以上、タンカー以外の船舶につきましては五百トン以上ということになっておりますが、この法案では、タンカーにつきましては全船舶、タンカー以外の船舶につきましては三百トン以上ということにいたしておる点が一つでございます。ただこの点につきましては、条約の中でも、各国の実情によって実行可能な限りの適切な措置をとるようにという意味規定がございます。日本の国内法といたしましては、いま申し上げましたように、一般的にきめられた基準よりも規制対象船舶範囲を広げたわけでございます。  それから法律としましては、条約にはない規定でございますが、第六条の油濁防止管理者に関する規定、第七条の油濁防止規程に関する規定、これにつきましては国内法で新たに規定をいたしてございます。これは趣旨としましては、一定規模以上の船舶につきまして油濁防止の船内処理体制を強化するということでこれらの規定を設けたわけでございます。
  206. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 そうしまするというと、内容についてはさらに強化されておる、また時間的にも相当条約よりは優先すると、こういうことですね。  そこで、取り締まり面について一つさらにお尋ねいたしますが、条約上、公海上あるいは領海内の船舶の取り締まりは、それぞれどの国の政府が行なうことになっておりますか、その点をひとつ。
  207. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 条約規定上からいたしますと、領海内におきましては、各国は自国船であろうと外国船であろうとを問わずに、油の違法な排出を行なう船に対してはこれを取り締まることができるわけでございます。ただ、公海上になりますと、各国はこの条約規定では自国船に対してのみ管轄権を有しておりまして、その自国船に対してのみ油の違法な排出に対して取り締まりを行ないます。それでは外国船の場合はどうなるか。公海上における外国船についてはどうなるかと申しますと、その場合には、たとえば日本の官憲が公海上において外国船が違法な、この条約に反する油の排出を行なっていたということを発見しました場合には、その外国船の属する国に対しましてその旨を通報して、しかるべき措置をとってもらうようになっております。
  208. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 けさの新聞でリベリアのタンカーが和歌山沖において破損をいたしまして、油を流しつつ伊勢湾に入港しようとしておる、保安庁では非常に困っておるという新聞を見たんでありまするが、現在の法律範囲内でこれはどう処理するのか、また現状はどういうふうになっておるか、ニュースが入りましたらひとつお尋ねしたいんです。
  209. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 私どものほうでいまわかっております情報の範囲内でお答えを申し上げたいと思います。  当該船舶は、リベリアのアクアリウス号という九万七千四百五十総トンの船でございまして、この船が去る九月十日〇一一〇——グリニッジ時間ですが、ソ連船スベトロゴルスク号九千五百四十七トンというのと、アラビア海、マスカットオーマンの沖で衝突をいたしました。当該アクアリウス号は火災浸水、機関室浸水の状態に立ち至りまして、オランダのタグボート三隻に曳航されて十二月十七日朝大王崎の沖に到着をしたわけであります。なお、この船は原油十九万トンを積載しておりまして、この積載の原油を四日市に揚げるという目的でタグボートに引かれて入ってこようとしているという状態であります。これに対しまして、私どものほうでヘリコプターを飛ばしまして、現地に到達する前から油を流しておる状態を監視し続けてまいりました。その状態によりますと、左舷船尾から幅〇・五ないし一メートル、長さ一マイルにわたって銀白色の条痕のある油が排出されておる。こういう状態が報告をされております。そこで、この船をこのままの状態で入湾させるわけにはいきませんので、これを修理をして漏油をしないということがはっきり確認されるまで入れないという措置をとりまして、現在——十二時現在でございますが、大王崎から東二十マイルというところで南西に向けて微速で航行中、これに対してわがほうの「こうず」、「もがみ」という巡視船二はいがこれをエスコートして警戒しておる、こういう現状でございます。
  210. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 次に廃棄物、特に船ばかりではございませんが、陸上の産業廃棄物も含めて、外国ではどういう規制をしておるのか、これを具体的にひとつお尋ねをいたします。
  211. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 廃棄物海洋投棄の規制につきまして、外国にはどのような例があるかというお尋ねでございますが、まず国際的な動きとしまして、国連関係でございますが、一九六六年第二十一回国連総会で採択された決議によりまして、IMCOなど六つの国連機関が協力して海洋汚染に関する専門家グループを設けることになりまして、その第一回会議が昨年の三月、第二回会議が本年三月に開かれまして、海洋汚染に関する国際的な規模での活動が開始されておるわけでございます。またIMCOは昨年の第六回総会におきまして海上安全委員会に対して海洋汚染防止等規制に関する国際協定を近い将来に実現させるよう促進方を指示いたしました。そして一九七三年にこのような協定を締結するための国際会議を招集することを決議しております。それから米国関係でございますが、本年十月東京で開催されました日米の公害会議の際にも、トレイン米国環境問題諮問委員会委員長は、ニクソン大統領が同委員会の勧告に基づいて、あらゆる物質の規制されざる海洋投棄を禁止し、かつ海洋環境に有害な物質の海洋処理を厳禁するという廃棄物海洋投棄に関する包括的な政策を承認したということを述べております。アメリカでは来年の議会に海洋投棄に関する新しい法律提出される、その準備中であると聞いております。
  212. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 そうしますると、廃棄物、特に陸上関係の産業廃棄物の投棄については日本が初めてだということですか。
  213. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 廃棄物につきましては西独等で規制がございます。
  214. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 ただいまいろいろお尋ねをいたしまするというと、すでに西独その他で——準備中の諸外国も若干ある、しかしながら、わが国は非常に早期にこの法案を整備しておるのだ、こういうことですね。私はここで油濁の関係についても、廃棄物関係についても、今度の法案というものがとにかく世界的に非常に優先しておる、こういう点に私は関係当局の立案に対しても感謝をいたしておりまするけれども、一面これに対するやはり国民の負担、産業界の負担というものは相当のものだと私は考えるわけですが、これについて、まあ大臣がおられないので残念でありますが、通産省と大蔵省にお尋ねいたしますが、これは他の関係公害法案にも関連いたしまするけれども、大体これによるところの負担というものはどのくらいのものであるか。今後の計画見通し等を大ざっぱに——大臣がおいでになったからひとつ大臣にお尋ねいたしますが、いま汚濁の防止あるいは廃棄物関係についても世界でもきわめてまあ早い時期に国内法をつくるということは、これは当局の英断に対しては感謝するわけでありまするけれども、しかし一面において非常にこれは大きな国民の負担、言いかえますれば産業界の負担であると思うのです。相当生産コストが上がることは事実だと思うのでありますが、そういう関係で国民経済に及ぼすところの影響というものは具体的にはどの程度になるものか。ひとつ通産省と大臣に、これは大臣は特に国務大臣としての立場から、簡潔でけっこうですが、ひとつお尋ねをいたします。
  215. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 佐田さんがおっしゃるように、この法律案はかなり進歩的な法律案であることはもう御承知のとおりであります。なぜこのように世界に先がけて法律案を出す気持ちになったかというものの考え方ですが、御承知のように、日本の海岸線というものはアメリカ合衆国の海岸線よりも長いのであります。しかしながら陸上における——陸上といいますか、陸地というものが世界でも非常に小さな地域でありまして、アメリカの何分の一、もちろんソ連、中共等に比べれば非常に狭い国土であります。そこで日本の将来の国民生活を向上し、また日本国民自体が豊かな生活をするためには、将来ともある種の産業活動は、行なわれなければなりません。しかし陸地——いわゆる国土においての仕事というもの、産業活動というものは、やっぱりだんだんと狭くなってくることは事実であります。そういうことからして、いま政府皆さんの協力を得て、海洋資源の開発ということに積極的に取り組んでいこう、こういう考え方でこの二、三年来、まだ十分の予算ではありませんが、予算をつけてもらっておるわけであります。運輸省におきましても海洋調査船等を考えておるわけであります。こういう点から考えれば、長い目で将来の二十年、三十年あるいは五十年という将来を見れば、何と言っても日本国民が出ていく先は海洋である、すなわち海上、海中、海底である。こういうところを開発していかなければ、日本の将来というものは非常に苦しい状態になるわけでございます。そういうことからして、世界に先がけて、日本自身が、一つにはさような意味においての産業活動を海洋——海上、海中、海底にまで及ぼしていこうというためには、その海洋汚染された状態では仕事ができないというのが一つあります。  第二は、御承知のように日本は、世界の実際上は第一位の海運国であります。ことにまあタンカーといいますか、油を輸送する面においては全く世界第一である。そういう意味におきまして日本の持つ義務、責任から考えましてもできるだけ海に対して敬虔な気持ちを持つというところに一つの目的があります。こういうことからして、これがいまおっしゃるように、あるいは生産の上においてコスト高を引き起こしはせぬかという御心配もあるかと思いますが、政府といたしましてはできるだけ、いわゆる政府資金といいますか、開銀あるいは中小企業公庫等、関係の公的金融機関を使ってできるだけその方面の助成をやっていきたい。かようなことによって、幾らかでも負担増を軽減するような措置は講じていくつもりでおるわけであります。どれくらいの影響があるかは私のところで算定はいたしておりませんが、そうした大目的からこの法案一つはぜひこの機会に国会の協賛を得て、そして世界に向かっても、ぜひ世界各国が一日も早くこれに見習ってほしい。せんだってアメリカのトレインという公害担当委員長が参りましたときに、この法案はまだでき上がっておりませんでしたが、概要を示しました。たいへん興味を持ちまして、さっそく自分はアメリカに帰ってニクソン大統領と相談して、アメリカでも次の通常国会にこれを提案する。日本とともに海の浄化をはかりたい。かように、言っておるのであります。そういう大きな目的のあることもひとつ御了承いただきたいと思います。
  216. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 ただいまのお話はよくわかります。ただ、最近のマスコミは非常に公害の問題に取り組んでおられるので、私はけっこうだと思うのでありますが、ただ、政府のただいまのような非常に大きな理想のもとに、われわれ国民が犠牲を払うんだと——これは企業が犠牲を払うといっても、結論的にはやはり国民の犠牲です。そのしわ寄せというものは物価高につながり、直接に影響する。特に最近におきます生糸の自主規制の問題、あるいはこの特恵関税の問題、貿易の自由化、資本の自由化というような問題を控えての今日においては、これは大事な問題でありますけれども、やはり国民に対してこれらの理解を深める必要があるのではなかろうか、私はこう考えておるわけであります。特に、ただいまお話がございましたとおり、先進国に先がけて私どもが率先してこの法案をつくるわけでありますが、きわめて少ない国際間の関係国だけでございますので、その効果というものは私は、きわめて疑わしいものがあるんじゃなかろうかと、かように考えておりまするので、大臣に、まあいいことはいいこと、大事な点は大事な点でけっこうでありますが、しかしやはりこれは国民に大きな負担をかけるんだという、そういう理解を深めるようにひとつお願いしたい、こういうことをひとつ大臣にお伝えしておきます。  次に、少しこまかい問題に入りますが、この法律がいよいよ通りますならば、船舶からの油の排出規制というものは一そう強化されるわけですが、私どもは何をおいても、先ほどいろいろ他の委員からもお話のありましたとおり、やはり先決条件は廃油処理施設等の早急な整備促進が前提になるんじゃなかろうかと、かように考えておるわけでありますが、廃油処理施設等の整備状況は一体どうなっているのか、具体的におわかりならばひとつお尋ねをいたしたいと存じます。
  217. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 現在の油濁防止法に基づきまして廃油処理施設の整備を実施しているわけでございます。現在いままで持ってまいりました計画は、三十四港に対しまして五十カ所整備するということで、四十七年度を目標にしてやってまいっておるわけでございますが、現在すでに稼働している施設は十四港二十一カ所でございます。なお、今年度中にでき上がる見通しがついておるものは十港でございまして、個所数にいたしまして十二カ所でございます。したがいまして港が重複いたしますので、四十五年度——本年度末までにでき上がるものが二十二港で三十三カ所の予定でございます。
  218. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 ただいまのお話を拝聴いたしたのでございますが、この廃油の処理事業をやっておる業者というものは一体全国にどのくらいあるのか、この点ひとつお尋ねいたします。
  219. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 現在操業中の廃油処理事業の専門業者が八社ございます。
  220. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 処理事業の料金の実態は一体どうなっておりますか。
  221. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) まだ操業開始早々で日が浅うございますが、私どもといたしましては、業者の料金につきましては、一応二カ年間ということで一種の暫定料金でございますけれども設定して認めてございます。これは場所によって処理する対象の油が何種類かございますので、場所によっていろいろ違うわけでございます。大体概略申し上げますと、これは水バラストにいたしましてトン当たり約五十円から百円程度というふうに存じております。
  222. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 政府はビルジ防止装置の取りつけ、その他を、先ほどのお話では四十七年ですかには完成させたいということですけれども、これについていままでは大した予算もつけておらぬようですが、本案通過後においては、今国会もしくはその後において、どのように対処するつもりであるか、この点お尋ねしておきます。
  223. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 民間の業者に対しましては、開発銀行あるいは中小企業金融公庫からの融資のあっせん、これを強力に進めたいと思っておりますし、なお現在こういう業者が設備いたしました施設に対しましては、固定資産税の減免措置もとってもらっておる状況でございます。そういうことで民間のこういう事業を促進いたしたいというふうに考えております。なお港によりまして民間業者がやれないところは、港湾管理者にやってもらっておるわけでございまして、これも二分の一の国庫補助を出しまして進めておるわけでございます。そういう意味で、特にこの法律が施行されますと対象範囲が広がりますし、そういうものを含めまして、四十八年三月までには予定どおりいろいろ問題がないようにいたしたいという努力をいたしたいと思います。
  224. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 最近タンカーがますます大型化してまいりまして、非常に海難事故が多いということは、先ほどの鈴木委員の御質問の中にもあるようですが、さきの海難事故によりますところの損害の総額もお聞きいたしたわけでございまするけれども、これの内容には、たとえば海産物、魚介類、あるいはまた第三者の船舶、あるいは沿岸の施設というようなものも、その中に入っておるのかどうか、ひとつこれをお尋ねいたします。
  225. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 先ほど申し上げました損害額の中には、水産物、漁具、施設及び観光収入の損害等を含んでおります。
  226. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 途中で恐縮ですが、水産庁にちょっとお尋ねいたしますが、先ほどいろいろ突発的な事件によるいわゆる油濁の被害についてお話があったわけですけれども、これはお尋ねいたしませんが、最近海水が汚濁しておる、汚染しておる、こういうことが言われておりまするけれども、一体具体的にはどういうふうに汚染されておるのか、最近の汚染状況、特にその地域ですね、どの付近が一番ひどいとか、どういうふうに汚染度がひどくなったというような具体的な点をお示し願いたいと思うのです。
  227. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 海水の汚濁につきましては、工場、事業場からの排水、埋め立て事業に伴って投棄されるもの、それから物の投廃棄によるもの、都市下水道の排出によるもの、船舶等からの油の流出排出等によるものでございまして、汚染の比較的はなはだしいところは湾内でございまして、瀬戸内海、伊勢湾、東京湾というところが非常にはなはだしくなっておりますし、特に油によるものとしましては、三重県の四日市、岡山県の水島、山口県の徳山湾というようなところが、特に油による汚染がはなはだしくなっておる現状でございます。
  228. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 先ほどいろいろ突発的な事件による被害の損害額についてお話があったわけでありまするけれども、自然にやはり汚濁された、汚染された被害と申しましょうか、そういうものについて、最近一カ年間もしくは二カ年間において地域的に特にひどかったという点、あるいはそれに対する補償という問題が起きていると思うのですが、これはそういう地点は何カ所か、あるいはそれに対する損害の補償に対してはどういう処置をとっておるか、この点をひとつお尋ねをいたします。
  229. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 近年の継続的といいますか、集積的な損害額を申し上げますと、海面におきまして、四十三年度百三十三億、四十四年度百二十八億というのが府県からの報告になっておりまして、これに対する補償は、総計といたしましての補償金額は、報告は全部はしてきておりませんので、そのうちどれだけが補償されたという点は明確になっておりません。
  230. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 これは運輸省と両方にお尋ねいたしますが、さきの事故による損害の補償の取りきめの経緯ですね、どういうふうになっておるか。訴訟によって解決をつけたか、あるいは話し合いで解決をつけたか、その経緯をお尋ねいたします。また水産庁において、いままでの損害補償についてはどういう形で処理されておったか。この点ひとつ両者からお尋ねいたします。
  231. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 私どもの報告を受けておりますのは、裁判によったものはございませんで、話し合いで、もちろん弁護士を立てて話し合いをしているものもございますが、話し合いによるもの、あるいは保険によって保険金を出したものがございまして、例えば四十四年の一月十二日に第八東洋丸三百十六トンが佐賀県と福岡県の境、唐津湾で座礁いたしまして、五百トンの油が唐津沿岸に流れた事件でございますが、佐賀県側の漁業者が三千万円、福岡県の漁業者が七百万円の補償金をもらって解決したというのがございます。
  232. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 先ほど加害者不明のもの百十一件、件数として申し上げました。そのほかに未解決のもの八件、解決済みのもの三十二件、合計百五十一件ございます。それから全体で三百三十八件と申しましたのは、その百五十一件のほかに水面の清掃費として百八十七件ございますので、それを含めて申し上げたわけでございます。それで解決済みのものが、これは訴訟によったのか示談によったのか、ちょっと手元の資料では明らかではございませんが、おそらく示談によったのではないかと推測いたします。
  233. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 そこでひとつ保安庁長官にお尋ねいたしますが、今後の海難事故は、いままでのようなただ自分の船が焼けた、あるいは周囲の港湾に油を流したというようなことだけでは済まされない、それによって派生的な現象というものが必ず私は——大きなタンカーによる被害はもうすでに世界的に例が出ておりますけれども、火災だとか、あるいはそれによって第三者の船舶にも影響があるだろうと思う。住民の施設その他に相当の影響をこうむらせる可能性が私は今後出てくると思うのですが、この点いかがですか。
  234. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) タンカーの災害によりますところの影響範囲というものは、現在のタンカーの各狭水道等への入港の状態、それらの船のふえてくるふえ方、またタンカーの大きさが逐年大きくなるというような事態も反映いたしまして、本来やはり場所等によりましては一般に相当被害が波及するおそれを多分に持っておりますが、さらにいまのような状況になりますと、そういった蓋然性は相当多いというふうに考えざるを得ない。そういうことを私どもも前提にいたしまして今後の災害防除に当たりたい、かように考えております。
  235. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 本会議の関係でだいぶ時間が短かくなりましたので、結論だけひとつ大臣にお願いいたしておきますが、大臣結論として、ただいま水産庁あるいは保安庁長官からお話がございましたとおり、今後の海難事故というものがきわめて多方面にその被害を与える、こういうことで、たまたま大きな船会社であればこれに対する賠償責任をとることができますけれども、小さな会社、あるいはまた無過失の場合等もございますので、いままでのようなことではなかなか損害の弁済というものは困難な状況になると思うのです。したがって、先ほど鈴木委員からもお話がございましたけれども、どうしても私どもは沿岸の住民の人たちが安心して仕事ができるように、また沿岸の施設を持っている諸君、また第三者の船舶といったような沿岸関係の人たちが安心してこれからも生活ができるようにするということ、それについては、そういう事故に対する補償というものはやはりしっかりしてもらわぬというと、どうも安心して生活ができないと思う。こういう意味からして私も、特にこの自民党の関係者の一人として、ひとつ今後は国際条約の民事賠償関係の漁族損害に対する条約もできるだけ早くに批准をし、また国内法においても商法その他関係法律は非常に改正がたいへんのようでありますけれども、ひとつこれはせっかくこの国際的な法律をつくった以上は、やはり魂を入れていただく意味からも、大臣から特にこの点についてひとつ御決意、御誠意のほどを見せていただいて、私どももこれに対して協力したい。かように考えておりますので、最後にひとつ大臣の御所見を拝聴したい、と同時にお願いをしたい、こういうことでございます。以上です。
  236. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) この海洋汚染防止法案ばかりでなく、公害関係法案は国民に損害を与えない、そして生産自身も慎重にいくようにというたてまえで政府は重要法案を出しているわけであります。いま佐田さんが御心配の損害に対する補償の問題、これもいろいろの点から今後検討していかなければならぬ補償制度の問題ということになりましょうが、これらも十分に関係各省と相談して検討してまいりたい。かように考えておる次第であります。
  237. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは、今日まで審議を続けてきまして重複するような問題は、なるべく私は省いて質問したいと思います。  海洋汚染防止法案あるいは廃棄物処理法案あるいは水質汚濁防止法案、この三法案は海におけるいろいろな汚染問題等で非常に関連する法案だと思うのです。したがって、この海洋汚染防止法を幾ら厳重に施行するにしても、やはり廃棄物処理あるいは水質の汚濁の問題等によって海はきれいにならないと思うのです。私はそういう関係で、先ほど運輸省側からは政令制定の進め方についてのメモをいただきました。これと関連しまして特に厚生省あるいは経企庁の現在検討されているところのこの政令内容等につきまして私は若干お聞きしたいと思う。それによって、この三法案の関連性、あるいは接点になる問題点、これをちょっと煮詰めてみたいと思うのです。  まず最初に、廃棄物処理の問題でありますけれども、この廃棄物処理の第二章第五条の三項の廃棄物処理の問題、特に市町村以外のものに委託する場合、この基準ですね。これらの政令内容についてお伺いしたい。
  238. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 市町村以外のものに委託する場合の政令でございましょうか。
  239. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうです。
  240. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 市町村以外のものに委託する場合の政令につきましては、実は現行の清掃法施行令にも規定がございまして、ほとんどその規定どおりに運用する予定でございますが、受託者が受託業務を遂行するに足る設備、器材、人員等を有し、かつ受託しようとする業務の実施に関し相当の経験を有する者、それから受託者がこれらの関係法令に違反した場合、その刑の執行を受けることがなくなってから一年を経過していない者でないこと、あるいはその受託者が法人である場合には、その業務を行なう役員のうちにそのような者がないこと、それから受託者がみずから受託業務を実施する者であること、それから汚物、廃棄物の収集、処分に関する基本的な計画の作成をみずから行なっておる者、それから委託料そのものが受託業務を遂行するに足りる額であること、それから廃棄物の処分を委託するときは市町村において処分の場所及び方法を指定すること等が、現行の清掃法施行令の中に委託の基準としてございます。新しい法律におきましても、現行の法律の委託基準といいますか、それにそのまま準じて定めたい、このように思います。
  241. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 海に流される廃棄物ですね、これの内容等については、政令で定められるようになっておりますね。このあらましの内容、これをお聞きしたい。
  242. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 廃棄物をどう処分するか、最終的にどう処分するかということにつきましては、これは可能な限り内陸での埋め立て処分というものを実施していきたいというふうに基本的に考えておりますが、その廃棄物の中で、海洋処分をしても海洋汚染を生じないというふうなものであって、埋め立て処分が不可能なものというふうなものもございますので、そういうものについて、一応海洋処分をしても差しつかえないものというふうに実は考えております。したがいまして、これは海洋での処分の場所あるいはその処分の場所における海流の状況、そういうふうなものによって、どの程度の量のものを、どの程度の時間帯の中で処分してもいいかということが、そういうことから量的にはきまってくると思います。また、その投棄いたします物質の性状等も、そういうものによって影響を受けてくると思います。いまここにあがっておりますような、廃棄物の種類について若干申し上げますと、海洋処分をしても原則として問題がないというふうなものと考えられますものは、土砂関係のものは海洋処分について事前の、前提の処理というふうなものについては、あまり必要がないんではないかというふうに考えております。それから屎尿処理施設というふうなものから生じました、最終的な一つの残渣というふうなものは、主として植物性のものでございますので、これにつきましてはやはり一定の、先ほど申し上げました範囲内での海域において一定量というふうな、いわゆる自然状態に見合う量を投入する場合は、汚染のおそれはないのじゃないかというふうに考えております。それから下水道の終末処理場等から出ます汚泥につきましては、これはある程度有害物質の混入というふうなことも考えられますので、この点につきましては、混入率をやはり一定以下の、海洋での汚染を生じないような内容の、特定の有害物質についての混入率以下に押えるというふうなことをする必要があるのではないかというふうに思っております。また、廃油とかあるいはタールピッチというふうな性質のものにつきましては、これはやはり海洋処分は禁止をするべきではないかというふうに考えております。
  243. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そこで、海洋処分の場所をきめるのは、これは運輸省がきめるんですね。先ほどいろいろ論議をされましたけれども、たとえば厚生省のほうは、衆議院の委員会で廃油の不法投棄は五十万トンと、こう推定された報道をされているわけでありますけれども、この不法投棄等に対して、いま政令で廃油の処理ができないようにするという話ですが、こういう不法投棄、こういう問題に対して廃棄物処理法案では、取り締まり法ができているんでしょうか。
  244. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 廃棄物のほうの取り締まり及び清掃に関する法律の中におきましても、投棄禁止については規定がございます。ただ、海洋への投棄につきましては原則として海洋汚染防止法のほうで規制される。あの法の立場では陸へ影響を及ぼすような範囲内、あるいは船からでなくて、陸から捨てるというふうな範囲内、そういうふうなたてまえから一応地先海面というものについての投棄の禁止の規定をつくっております。
  245. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、この廃棄物処理政令は、いつごろ——六カ月ですか、期間は。法律施行後。
  246. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 九カ月でございます。
  247. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それから次に、経企庁のほうに伺いたいのですけれども、まず政令の違いを聞きますけれども、最初排出基準政令ですね。この内容法律施行後何カ月で政令を発しますか。
  248. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) 政令は、法律公布後大体六カ月の間に政令をきめたいと思います。
  249. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 排出基準政令制定までの内容ですね、これらについて。
  250. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) 政令内容についての御質問かと思いますが、先生の御質問は大体、二条二項のどういう物質を政令できめるかということと、それから三条一項のどういう水準に総理府令で定めるか、こういう御質問かと思います。  二条二項の、政令で定める物質といたしましては、二通りに分けてございます。一つは、人の健康にかかる物質ということでございまして、これにつきましては先般四月に水質汚濁にかかる環境基準を設定いたしました。その場合に、基準がきめられました項目を当面政令の対象にいたしたい。例示をあげますと、カドミウム、アルキル水銀、総水銀、六価クロム、砒素、有機燐、シアン、鉛等でございます。それから生活環境にかかわる項目といたしましては、当面PH、BODまたはCOD、SS、油分、銅、亜鉛、大腸菌等を考えております。それから総理府令で定めます基準につきましては、人の健康にかかわる項目につきましては、大体水銀関係の蓄積性のものを除きまして、排出基準といたしまして約十倍程度の濃度でもって排水の許容限度にいたしたいと考えております。それから生活環境に関する項目といたしましてBOD、SS等につきましては、一般家庭排水の水準を勘案いたしまして全国一律の基準考えていきたい、かように考えております。
  251. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 運輸省のほうの海洋汚染防止法、この法律公布政令の施行ですね、これは大体何カ月ですか。
  252. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 海洋汚染防止法は公布後六カ月で施行になるわけでございますが、附則一条によりまして、油の重油関係のところは、公布の日から起算して一年六カ月を経過した日、あるいは改正条約発効の日のうち、いずれか早い日から施行されます。さらに廃棄物に関します第三章並びに海洋施設に関します第四章の規定は、公布の日から起算して一年六ヵ月を経過した日から施行するということになっております。
  253. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 大臣に伺いたいんですが、運輸省政令は一年六カ月ですか、この法律の施行後。それから厚生省は九カ月ですか、それから経企庁は六カ月ですね。こういうばらばらな状態で、たとえば経企庁やあるいは厚生省がこういう政令を急いでも、結局運輸省のほうが一番おくれて、結局この関連法案が不備じゃないかと、こういう感じを受けるわけですが、この点について。
  254. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 油のほうの問題は、これは条約関係がありますから問題がないと思います。一般廃棄物の問題だろうと思うんですが、これはもちろん、いわゆる廃棄物処理法等によってそれらができますれば、法律が実際上施行されませんでも、これは船で運んでいくわけでありますから問題はないように思います。ただ御承知のように国内法も、もちろんこれは適用になりますから、一年六カ月ということは、ことに処理設備の問題がありますので、多少他の廃棄物とは時間が食い違っておるというのもやむを得ないことと思います。
  255. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 しかし、海洋への投入場所ですね、処分の場所、これは運輸省が定めるわけですね、この法案によりますと。そうしますと、これがはっきりしなければどういうものを捨てていいかわからない。あるいは、こういうものを捨てるからこの場所をきめろと、こういうふうな行き違いがお互い各省間に出てくるんじゃないかと私は考えるわけですが、この問題について。
  256. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) それらが、何といいますか、廃棄物処理法その他汚濁防止法のほうが早くできますれば、これは六カ月以内ですから、そのほうの整備が進めば早くやってもいい。ですから、その点はお互いに協調しまして同時にできるように処理をしていきたい。ただ油の処理施設の問題のほうは、先ほど言った設備の問題も多少ありますから、そういう関係で余裕を見ておるということでございます。
  257. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、たとえば一つの例は屎尿処理の問題。これは先ほどもいろいろ問題にされましたけれども、海上保安庁で気象関係とかいろいろの関係で調べているという運びと伺ったんですが、これは時間がありませんので、一つ沖繩の問題でも、気象庁で調べたデータを私はもらっているんですが、黒潮の関係とかいろんな関係で投棄場所が非常に複雑らしいんですが、そういう海洋に投棄する場所を選定するのはどういうふうな形でもって選定するのか。どこが中心で——運輸省は当然でしょうけれども、どこの局が担当してどういうふうに——学者を入れるとか、あるいはいろいろ審議会をつくってやるとか。どういう調査方法をもってこの六カ月で——たとえば厚生省のほうであれば六カ月ですね。こういう感じからして間に合うのかどうか。あるいはそういうことがもう実際に具体的に計画されて、投棄場所等の手当ても十分にして廃棄物等の受け入れ態勢が整えられるかどうか、この点について。
  258. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 排出海域排出方法につきましては、先ほど来御説明申し上げたとおり、関係各省専門家の御意見も十分伺いまして、また要すれば学識経験者意見も伺いまして、適正なものをきめたいというふうに考えておりますが、まだ具体的にどういう方にお願いをするとか、あるいはどういう形で何か委員会をつくるという具体的な案はまだきまっておりません。
  259. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 確かにそういう点、私は手ぬるいんじゃないかと思うんですね。ある程度構想を固めておかなければならないし、どこがほんとうに海の状態を調査して、そういう資料ができるのかどうか。幾ら厚生省やあるいは経企庁が一生懸命急いでこの法案をいろいろ検討されても、受け入れる海のほうがあいまいであれば何にもならないのじゃないかと、こう私は考えるのでありまして、この体制ともう少し真剣になって取り組んでいただきたい、これは要望であります。  それから、一例でありますけれども、たとえば北海道に新釧路川であるとか、あるいは多摩川でもけっこうですけれども、この川と接続している海ですね、当然ですけれども、この両方にまたがって危害が及ぼされた。たとえば陸から流される廃棄物あるいは排出物によって、川のたとえばアユとかそういうものが大量に死んだとか、あるいはまた不法投棄の場合等もありますね。それから海に流れてきて海洋においての漁業権を侵害した。こういう二法案にまたがるような場合、どの法案を中心にしてこの制裁を加えていくのか、この点については。
  260. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 川から流れる場合、公共用水域に廃棄物排出されて水質が汚濁するというような場合には、水質汚濁法違反でございましょうし、廃棄物が不当に投棄されたという場合には、廃棄物処理法違反の場合もあろうかと思います。また船舶から不法に投棄されたという場合には、海洋汚染防止法違反にもなるわけでありますが、どの法律で取り締まっていくかということでございますが、いずれかの法律に違反すればその該当する法律違反でございます。ただ、罰則適用上、これは法務省の御意見も伺わなければ正確には申し上げられないと思いますが、具体的な場合に併合罪になるのか、あるいは刑法五十四条の観念的競合によって重きをもって処断するという規定が量刑を定める場合に適用になるのか、あるいは一つの違反の中に、他の違反が包含吸収されるというようなことになるのかは、その具体的な事例によってそれぞれ判断されるべきものであろうと思います。
  261. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 経企庁と厚生省に一問ずつ伺って、厚生省に対する質問は終わりたいと思うんですけれども、たとえばモーターオイルやあるいは国鉄あるいは工場等から出てくる廃油ですね、これの不法投棄、この問題についての対策は十分できているんでしょうか。今回の法案に対して厚生省のほうはどうですか。
  262. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) いまお話しのようなものは、これは産業廃棄物に入る問題だろうと思います。産業廃棄物につきましては、この廃棄物処理及び清掃に関する法律の中では、これは事業者みずからの責任において処理しなければならないというふうな処理責任が一応前提となっております。で、それについて一応先ほど申し上げたような処理基準によって処理しなければならないというふうな規定になっております。なお、お話のようないろんな不法投棄につきましては、これは産業廃棄物の場合、全国いずこの場所にも捨てることは禁止されております。
  263. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ、いずこの場所にも捨てないようになっているけれども、実際にこれは非常にむずかしい問題だと思うんですね。現実に通産省で昨年不法投棄が五十一万トンあると、こういうようにわれわれは伺っているわけでありますけれども、結局不法投棄でありますので、当然なかなか見つけるのは非常にむずかしいと思いますけれども、これに対してもう一歩やはり——廃棄物処理法案の中にみだりにとかいろんなことばは使われているらしいんですけれども、もう一歩やはり不法投棄を取り締まる監視体制を——といってもなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、もう一歩やはり進める必要があるんじゃないか。そうしないと、幾ら油のほうも、海のほうは海上保安庁で一生懸命監視しても、これも全部が全部監視し切れないと思うんですけどね。こういう問題が非常に抜け穴になっているんじゃないかと、こう私は思うんですけれど、この点についてはどうでしょう。
  264. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 廃棄物処理及び清掃に関する法律、これは廃棄物は、最終的に結局出てくるものが廃棄物ということなんで、結局それを薄めて排出するとかそういうふうなことがもう不可能であって、最終的にやはり適正に処理されるということが非常に重要な問題だろうと思うんです。そういう意味からいわゆる処理ということに重点を置かれて一応この法律はつくられておるというふうに考えられると思います。したがって、あくまでも産業廃棄物についてはいわゆる適正な処理を義務づけるというところに実は重点が置かれているわけですが、ただしこれはすべての企業がすべて完全にできるということについてはいろいろ問題があろうかと思います。そういうふうなことから、この法律の中では都道府県なりそういう地方公共団体がある程度そういうものについて補完的な役割りを果たすことができる規定も設けております。で、全体にその都道府県内のそういう産業廃棄物はどういうふうに適正に処理したらいいのか、されるべきなのか、そういう問題について一応知事が処理計画を立てるということが、まあこの法律の中の一つのポイントであろうと思います。そういう中から、これは事業者がみずからやれるもの、あるいは処理業者がやれるもの、あるいはそれを地方公共団体がある程度補完してやらなきゃならないもの、そういうものがこの計画の中で策定され、実施されていくということで考えておるわけでございます。
  265. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 企画庁、厚生省けっこうでございます。どうもありがとうございました。  次に廃船の問題。船がだめになった、廃船公害の問題について私は一、二お聞きしたいと思うのです。第四十三条ですか廃船の規制、この政令の問題、廃船を捨てる海域あるいは廃船を捨てる方法、こういう問題について私は二、三お尋ねしたいと思うのですけれども、現実に現在日本の近海においてこの廃船はどのくらいあるのか、これは海上保安庁のほうで掌握されているのじゃないかと思いますが。
  266. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 結論的に申し上げますと、現在、四十五年十一月末現在で四千三百二ということになっております。ただ、そのうちの千六百六隻というのが港域外における廃船数であります。なおまた、いまの四千三百二には所有者が不明のもの、所有者が判明したものという区分分けがございまして、一応所有者判明がそのうち七百四十四という数字であります。
  267. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この所有者不明のものとか、そういう問題等について廃船処理責任はどういうふうになるのか……。
  268. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 所有者不明の廃船につきましては、港湾内にありましては港湾管理者が港湾を維持し、良好な状態に保つという業務を行なっておりますので、港湾管理者の業務として処理を推進いたしております。ただ廃船一般につきましては、やはりまず第一に、各船舶所有者がその処理につきまして完全に責任を負うべきものであろうと思いますので、われわれといたしましても、今後一そう関係者に対する指導を強化してまいりたいと思っております。また内航船につきましては、内航海運総連合会におきまして焼却場を設けて、その焼却費用を補助するということもやっております。また廃船に対する取り締まりにつきましても、海上保安庁のほうでなお一そう取り締まりを強化していくことというような考えでございます。
  269. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この四十三条の政令メモをもらったのによりますと、船舶交通あるいは漁業活動等に支障のない海域で容易に浮上あるいは移動しないよう措置をして海底に沈めることを検討すると、こういうふうになっているわけですけれども、船主不明の廃船、これを実際にだれが捨てに行くのですか、その責任はどこにあるのですか、その予算はどうなる、こういう点について今回の法案はどう考えているのですか。
  270. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) これは、港湾管理者であります場合には、まず航路を、船舶交通支障がないように、また漁業活動等に支障がないようにということを十分考慮いたしまして、港外等に、先ほど申し上げたような考え方処理をするということが適切ではないかと思っておりますが……
  271. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 適切ではないかなんて——現実にこれは第六管区ですかに、海上保安庁のいろいろな状況によりますと相当まだ廃船が残って、このために漁業問題とか、あるいはスクリューにひっかかったとか、いろいろなことで事故が起こっているわけですね。こういう問題について、確かに船主不明なんですから、だれも手の施しようがないわけですね。こういう問題をやはりもう一歩運輸省として進めなければならないのじゃないかと、こう思うのです。その中の一つに、三十九年に施行された内航海運業法の改正によって三年間義務づけが何もなかったんですね。法の不備があった。海運局長に伺いたいのですが、三十九年に施行された内航海運業法の改正で、機帆船を新造する場合、旧船の廃棄が義務づけられていたために生まれたものだと、こういうふうになっているのですが、この点どうでしょうか。
  272. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) 廃船につきましては、いまおっしゃいましたような内航の貨物船、旅客船、漁船、港内はしけといろいろございます。  御質問の内航船につきましては、おっしゃいましたように、日本内航海運組合総連合会におきまして船腹調整規程という自主的な規制をつくりまして、解撤船は自分で処理するという自主的な義務を負わせたわけでございます。したがいまして、四十二年十二月以降につきましては、その制度によりまして一切船舶所有者が処理する。その場合に総連合会の各地区でこういう処理の確認のための監査員の制度を置いておりまして、全国に百三十三名ございます。したがいまして、それ以前に放置された分がまだ残っているわけでございます。私どもの調べによりますと、全国で四十三年九月に内航貨物船七百五十五件が放置されておりました。それを総連合会が、あるいは港湾管理者等と協力いたしまして、四十三年度には三百四十一件、四十四年度には三百七件という処理を行ないまして、現在残っておるのは百件ばかりでございます。これを四十五年度中には処理すべくいまやっております。そういうことでございますので、今後は一切それはなくなるというふうに考えております。残りは漁船とか港内はしけ等があるいはあるかと思いますけれども、私はただいま内航船だけについて申し上げました。
  273. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 海上保安庁、いまの海運局長の答弁どおりいきますか、廃船処理について。
  274. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 従来も廃船につきましては、保安庁としてやはり港則法のたてまえ三、船舶の航行に阻害があるような事態は困りますので、そういう事態を起こすもの、起こすおそれのあるもの、そういうものについて先ほど御説明しました所有者が判明しておるものについては、その者に強硬に処置方を指示いたしまして、所有者が不明なものについてそういった問題のある廃船については、当該海域を管轄しておりますところの地方公共団体の長に引き渡しをいたしまして処理をやってもらっておる。こういうのが従来の私どもでとってまいりました廃船処理法でございます。今度こういう法律によりまして廃船の規制というものが一そう厳重になるわけでございますので、従来のやり方に加えましてさらに取り締まりを強化して、この処理に当たるということにしたいと思います。
  275. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 いろいろ答弁はされるのですけれども、実質的になかなか廃船はなくならないのですね。運輸大臣、いまも長官が言われたように、地方公共団体の処理にしましても非常に予算がないですね。こういう問題についてやはり運輸省としてもう少し考えなきゃならぬじゃないか。あるいは三十九年から四十二年までの間、いま具体的なデータは私聞きませんけれども、三年間で法の不備から廃船になって、実際にそのままになっている例があるわけですね。内航海運業法の法の不備のために三年間どうもできなかったという問題があるわけです。こういうことから考えても、ただ地方公共団体に全部押しつけるとか、あるいは港湾管理者に押しつけるというのではなしに、もう少し国でもこういう問題を——だれもが手をつけられないわけですね。そのために漁民とかそういう力の弱い人たちが一番困っている問題、こういう点についてもう少し予算面においても大臣として考えてはどうかと私は思うんです。
  276. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 小規模のものは、お話のように港湾管理者たる地方公共団体でもやれると思います。大規模のものになりますと、なかなか地方公共団体では処理し切れないものがあると思いますが、これは公害防除事業として、国のほうでも積極的なめんどうを見るという考え方で進んでいきたいと思います。
  277. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 じゃあ廃船の問題はこの程度にしまして、この法案の四十二条の財産処分の件について伺いたいのですが、この法案の四十二条の最後は「当該排出された油のある現場附近の海域にある財産の処分をすることができる。」、こういうふうになっているのですけれども、「現場附近の海域にある財産」、これはどういうことでしょうか。
  278. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) この規定条約に基づいて、先に国内法化するものであるということは御説明申し上げましたが、いまお尋ねの件は、たとえば船が沿岸海域において著しく大量の油を排出して、それがここに書いてあるような状態になった場合に、その近辺にある、たとえば船舶等もこれに入るというふうに思います。
  279. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、その船舶等を、これは処分するのは海上保安庁長官の命令ですね。そうしますと、これは財産の処分を海上保安庁長官の命によって処分した場合の補償問題はどういうことになりますか。
  280. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) この四十二条の趣旨は、きわめて緊急な事態で、この大量の油の流出に伴いまして、影響がきわめて広範に及び、しかもそれが緊急な事態に相なるというような事態でございますので、その際において保安庁としてはそういった一般に及ぼす広範な影響というものを急速に一応除去するというたてまえのものであろうかと思います。そこで、ここで言われております財産というものについて、たとえば周辺にノリひび等があって、それを除去しなければ応急の措置がとれないというような場合には、そういうものをやはり防除のために取り除く、撤去するというようなことも入るかと思います。しかし、その場合にはやはり必要最小限度の第三者の財産に対する処分ということでなければならないと思いますし、また、そういうことを処理いたしまするについては、その間に時間的な余裕のあるような場合には、所有者との協議も行ないますし、いろいろそういう手続も一応取り得る範囲において取るということにおきまして、そういう事態を防除するということであります。したがって、ここにおいて行なわれました財産の処分に対しては、言うならばこれは必要最小限度の受忍範囲のものという考え方でございますので、これに対しては特別の損失補償は行なわない、かような考え方でございます。
  281. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 特別な損失補償をしないということになりますと、憲法第二十九条の第三項の「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」、こういう問題に抵触しないのでしょうか。
  282. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) これは、ただいま申し上げたような違法な公権力の行使になってはまずいわけで、その際にはもちろん国家賠償法第一条第一項の規定によって国が損害賠償をする、こういうことになりますので、そういうことをこえない合理的な必要な範囲ということならば、そういった問題は起こらないと考えます。なお、説明のことばが足りませんでしたが、事故原因と損害発生との間に相当因果関係が認められますから、当該の第三者が原因者に対して直接の損害賠償を請求することのできるということはもちろんであろうと考えております。
  283. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 消防法なんかによりますと、損害賠償請求ができるようになっているのですね。しかるに国家賠償法とか、いろいろのことがあるでしょうけれども、漁業権がからんでくるとか、非常にいろいろの問題がふくそうしてきます。たとえば船舶が油を流して、そこが燃えていると、その周辺をおさめるために財産処分をする、その船を処分をする、海上保安庁長官の命令によって。そこに漁業権があり、影響を及ぼすというような、こういう問題については、やはりもう少し補償規定とか、そういう問題を——新しい法案ですから、いろいろな点もあると思いますけれども、その点はもう一歩進めなければならないのじゃないか、これは法制局のほうでいろいろ私も聞いたのですけれども、ちょっとやはり微妙な問題なんですね。突いてみれば憲法と抵触する問題だと思うのです。深くは私は法律学者じゃないものですから、そこまでいきませんけれども、この問題は、私はやはり今後想定される問題だと思うのです。こういうことに対してもう一歩私は運輸省としては研究する必要があるのじゃないかと、こう思うわけです。でそのために、たとえば財産を処分された場合に、船が保険に入っておった場合、この問題については保険会社との処理関係はどういうふうになりますか。
  284. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) これはかってにといいますか、保険会社との連絡関係なしにこういった措置をとりますと、現実問題として保険会社が支払いを拒否するという場合が非常に多いように聞いております。したがいまして先ほども述べましたように、こういう事態を処理いたしますについては、時間的余裕といいますか、範囲の許す限りにおいて、そういった関係方面の何がしかの了解なり連絡がとり得る範囲においてやりました後に、そういった措置を講じていきたい、こういうふうに実行上考えております。
  285. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それほど深くはやりませんけれども、最大限あるいは最小限の限界をどこで定めるかという問題が非常に私はむずかしいと思うのです。いわんや、ふくそうしてくると非常に海上保安庁の権限といいますか、実際これは海上保安庁長官になっておりますけれども、現場にも地方管区の長官とかいろいろな問題が出てくると思うのです。こういう点については、もう一歩この財産の処分の問題については検討されてはどうか、今後の問題としましてその点、運輸大臣はどうお考えになりますか。
  286. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) いろいろ私法上の問題もありましょうし、実際上法律をつくる場合にはあらゆる場合を想定してつくっておるものですから、この場合におけるところの、当該廃棄された油のある現場付近にある財産といっても、ブイ一つでも財産ということになりますから、あらゆる場合を想定してつくっておりますので、いまお話しのような問題も、もちろんこれはあろうと思いますけれども、原則としてはもちろんこれは当該事件を起こしました者が賠償責任を負うのは当然であります。ただしそういう場合でなく、自然現象等で起きた場合もあろうと思います。そういう場合についての問願等も考えて、このような規定があると思いますが、今後施行した上でこれらの不備がありました場合には十分検討してまいりたいと、かように考えます。
  287. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 その問題はそれにとどめますが、次に石油等が流出した場合、海上保安庁はどういう形で拡散を阻止するか。具体的な問題として先ほど船舶局長からオイルフェンスの義務づけの問題が出されておりましたけれども、これはまあ非常にけっこうだと思いますけれども、じゃあ海上保安庁としてこういうオイルフェンスとかあるいはいま中和剤を使っていらっしゃるわけですね。こういう問題については具体的に掌握されているでしょうか。
  288. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 私どものほうで必要といたしますオイルフェンス、油除去剤のほかに、大量の流出の際には民間との協力体制をとる。なおかつ今度の法律によりまして原因者主義ということで民間が自主的にやるということに相なりますが、従来も私どもは民間との協力体制をしいております。そういうことで一応私どもは民間あるいはその他の消防機関におきます当面必要なオイルフェンス、油除去剤、そういったものについての数量を一応把握いたしておるつもりでございます。
  289. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 具体的に言いませんけれども、たとえば拡散防止のために中和剤を使う。中和剤でいろいろ研究もされているわけですけれども、深い学問的なことはわかりませんけれども、実際にこの中和剤によってたとえば漁業権に対する侵害の問題が出てくるのじゃないか、こういうことも考えられるのですけれども、この点についてはどうですか。
  290. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 中和剤自体がおそらく副作用的に問題を起こすという意味の御質問かと思いますが、実は先般当委員会でもやはり同趣旨かと思われまする質問もございましてお答えしたつもりでありますが、この中和剤にも二種類ございまして、沈降型の中和剤というのがございまして、これは油を、どちらかというと、そのまま沈めてしまうというもので、このものはおっしゃるよに非常に被害が大きい。そこでいま世界各国でもそうでございますが、日本ではほとんどこれはもう使わないということで、ただいま民間で一応われわれの把握しておる油除去剤の中にはそういうものはございません。したがって、いま使うことにしておりますものは、そういった沈降型でない、簡単にいいますと、石けんで油が溶けてしまうという式の中和剤を使うようにいたしております。しかしその中和剤といえども決して全然無害ということではないようでございまして、したがってこれらを使います場合をできるだけよく判断をして、これを使わない場合より油の公害が大きい、逆にいいますと、これを使ったほうが油の公害が少ないというような場合に、これをできるだけ使うというようなことなどの注意もしながら、これを使っていくということにいたしております。しかし将来に向かいましては、私どもの関係外部団体等にも現在この問題についての検討研究を依頼をいたしておりまして、そういった問題が起こらないようなものを何とか開発をいたしたい、かように考えております。
  291. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 本会議の関係もありますので——あと原因不明の廃油ですね。原因がわからない、どこから出てきたかわからない、そのために、先ほどからいろいろ論議されておりましたけれども、八丈島なんかでもいろいろなものが流れてきて、非常に漁業に対して影響を及ぼしておる。こういう問題について海上保安庁なら海上保安庁は処理を行なう方法をもう少し明確にしたらどうかと、かように思うわけですけれども……。
  292. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 保安庁が防除措置を講ずる責務はどういう場合かという問題にもなるかと思いますが、私どものほうでも力の限度もございまして、何から何までというわけにもなかなかまいらない。まあ法律のたてまえはあくまでも当事者主義でございますので、当事者が措置をすることができない場合、あるいは措置をいたしたといたしましても措置が不十分である。あるいはまた措置すべき当事者が不明であって、放置をしたならばそれが大きな支障を来たす、こういった場合がおそらく海上保安庁として出る出番ではなかろうかと考えるわけです。いまの八丈島あたりのああいった廃棄物がこれらの場合に該当するかどうか、またどこがどうすべきであるかということについては、今後十分検討しなければなりませんが、現実問題として先般来そういう問題が非常に大きくなりました際に、私どもはそれを持ち帰りまして、研究機関で内容の分析、それからそれがどういう方面からの流れによって来たか、要するに海流との関連の調査、そういったものについて一部手がけております。
  293. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 海上保安庁として——私も北海道に視察に行ったときに、この油濁防止でたれ流しを海上保安庁で取り締まった例があるのですね。何件か摘発されたと思うのですけれども、この具体的な内容についてお伺いいたします。
  294. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 実は北海道全般ということであまり統計データは明白ではございませんけれども、一応油の油濁事故ということで北海道で考えられますところの道南地区におきまして、私どもが把握しておりますところの公害関係の事犯というのは、一応四十五年で二件、四十四年で五件、四十三年で六件、過去三カ年で十三件というものを私どもの独自の力で見つけております。そのほか苫小牧あたりでは、そこの防災課で通報されておるものというようなものは、このほかに過去四十二年などに二件ばかりさらに加わっておるというような状態でございます。
  295. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは海上保安庁の一例だと思うのですけれども、これは運輸大臣——何か飛行機を飛ばしてみて、現実にこういう何件かは取り締まりができているわけです。日本海域全部が監視体制でいえば非常に不備だとは思いますけれども、これは毎回この法案が出てから海上保安庁の監視体制が問題になっているのですけれども、現実に伊勢湾とかあるいは大阪湾、東京湾等において、こういう監視体制がしけるのかどうか、私は非常に疑問だと思うのですけれども、この点についてはどうですか。
  296. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) なかなか容易なことじゃないと思います、正直なところは。しかし、いませっかく海上保安庁長官のもとにおきまして監視センター等をつくりまして、各班に分けて措置をいたして、おります。しかし、これだけじゃ十分じゃありませんので、飛行機等の整備も進めていかなくちゃならぬというので、来年の秋にはYS11一機が新しく入ります。そのほかいわゆる巡視艇等の代替建造と速力のあるもの、できればヘリコプター等もふやしたいのでありますけれども、なかなか予算の関係上思い切った措置はむずかしいと思いますが、しかし政府は今回このような法律案を出したのでありますからして、最善の措置を講じてできるだけのことをいたしたい。ただ問題は、やはり不法投棄といいますか、人のすきを見てやるというようなものがふえてきたのじゃとても処置がないので、何としてもこれは国民道徳の涵養といいますか、その方面も、実は海上保安庁長官とも相談しまして、来年の四月一カ月間くらいはいわゆる海洋汚染防止月間といいますか、そういうことで各関係機関を集めまして、強力に進めていきたい。この両面からやっていきたいと考えております。
  297. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 さらに運輸大臣に伺いたいのですが、運輸省としては国鉄をかかえているわけですね。来年度の予算では相当オーバーしているのじゃないかと思うのです。海上保安庁の実際の海上監視体制を強化する、あるいはこの法律を実施するにあたって来年度現実に予算をどのくらいオーバーさせる予定なんですか。あるいはこの法案を通過させるためにどの程度多く見積っているのかどうか、もう少し具体的に伺えれば教えてもらいたいと思います。
  298. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) この法律の施行に伴って監視体制として保安庁で問題になりますのは、船艇、航空機、それに組織、定員、そのほかオイルフェンス、除去剤等の機材というのがそれぞれ問題になると考えております。船艇につきまして特に私どもがいま一番力を入れております問題は質の改善でございます。現在こういう問題で従事可能な船艇は二百九十九隻。船が九十隻、艇が二百九隻ございますが、それぞれ約半数が今日現在で耐用年数にきております。非常に修繕費はかかりますし、スピードはおそいというような事態になっておりまして、この問題を早急に解決することが、やはりこういう監視体制の戦力増強に非常に力になる。この面では来年度は二十ぱいの船艇の代替建造を現在お願いいたしております。そのほか、この問題と若干離れる使い方になるかとも思いますが、相当大型の千トン型の船の代替建造をお願いする、こういうことを考えております。航空機につきましても、現在大型か小型かについては検討中でございますが、来年YS11が入ってくるほかに、ヘリコプターの増強を考えたいと思っております。組織といたしましては、これはまだ結論はこれからの問題ですが、お願いをしておりますのは、本庁に海上公害課という専門の課を設けたい。そこに専門の要員を十数名集めたい。地方に公害監視センターという組織を置きたい。地方に全部というわけにもまいりませんので、公害多発海域、われわれ重点海域考えますところの第三、第四、第五、第六という四つの管区にそういうものを置きたい。そのほか、その下部におきます保安部署というところにそれぞれ専門家を合計いたしまして五十数名配置をいたしたい。こういった組織、定員の要求をいたしております。そのほか、オイルフェンスあるいは油除去剤というものにつきまして、相当数の整備をしていきたい、かように考えております。
  299. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 例年に比べてどのくらいふえる予定ですか。
  300. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) それだけ全部が——いま申し上げましたものが完全に認められれば、これは相当な増加になります。
  301. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 具体的にどのくらいですか。
  302. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 船の数も、大きさ、内容等によりますから、単に隻数だけでもまいりませんで、一千トンというような大きな船になりますと、巡視艇あたりの二十三メータークラスの七はい分くらいに該当してまいります。ヘリコプターも、大型のヘリコプターを要求いたしますと、これまた小型のベルクラスのやはり七機分くらいの金額になります。そういったことで、要求内容につきましては、例年の保安庁のベースから申しますと相当なものがあろうかと思います。  なおまた、今度の使命に合うようにやはり小型をふやすか、大型にするかというような問題も、当面時期も迫っておりますけれども、いろいろ御審議の過程を通じまして何がしか検討しなければならぬことと思っておりますし、予算を終わりました後には、やはりこういう問題について具体的にどういうやり方をするかという、効率的なやり方との関係もある。かようなことで、それらを総合した検討をいま鋭意勉強中であります。
  303. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 運輸大臣、最後に伺いたいのですけれども、いろいろ保安庁長官が苦しい話をされているのですけれども、私たちは運輸委員会で視察に行きましても、いつも海上保安庁の体制が一番冷遇されているのですね。そのほかにもいろいろあるかもわかりませんけれども、船に乗ってみても非常に古い船です。視察に行くといい船に乗せてくれるのですが、見ていると悪い船があちこちに置き去りにされておる。こういうことで監視体制あるいは人命救助、こういう点については非常に運輸省としてはいろいろ頭の痛い問題が数多くあると思いますけれども、この海洋汚染防止法案を通すにあたっても、運輸大臣は、せめて防衛予算から比べてみれば保安庁の予算はほんとうに微々たるものなんですから、この点で相当予算を獲得するという腹がまえで臨んでいかなければ、この法案審議しても何ら意味がないのじゃないか。結局は、この法案を通しても、監視体制はいいかげんじゃないか、何年たっても海はきれいにならないじゃないか。こういう問題で必ず国民から非難を受けるのじゃないかと思うのです。この点、私は運輸大臣に格別な努力を払っていただきたい。特に海上保安庁の予算の問題については、全力をあげてよくこの希望に沿える線をはかっていただきたい、こう強く要望したいわけであります。  最後に答弁をお願いして、私の質問を終わります。
  304. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 三木さんのおっしゃるとおりであります。また角度を変えて考えますというと、海上保安庁の仕事は、もちろんこれは人命救助あるいは今度の海洋汚染防止法等の施行、これだけではなくて一種の海上における警察権を行使させられているわけです。そういう意味においては当然これは重視して予算措置も十分に考えていかなければならないし、この法律を施行するにあたっては、その点については格段の努力をして、実は非常に膨大な予算の要求を出しておりますけれども、そこまでいくかどうかはどうも非力でありまして、まことに申しわけないのでありますが、皆さんの御協力を得まして最善の措置を講じたいという決意を持っております。
  305. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  306. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。——別に御意見もないようでございますので、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  307. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  海洋汚染防止法案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  308. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  309. 藤田進

    ○藤田進君 私は、ただいま可決されました海洋汚染防止法案について、自民、社会、公明、民社及び第二院クラブの共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     海洋汚染防止法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり左の事項につい  て措置すべきである。  一、本法施行の成果を期するため、監視取締体   制の充実強化を図るとともに、廃油処理施設   の整備を促進することとし、所要措置を講   ずること。  二、海洋汚染防除の措置を推進し、海洋環境、   水産資源の保全につとめること。   右決議する。  以上であります。
  310. 温水三郎

    委員長温水三郎君) ただいま述べられました藤田進君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  藤田進君提出の附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  311. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 全会一致と認めます。よって藤田進君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいま決定いたしました附帯決議に対し、橋本運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
  312. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ただいま慎重御審議の上御議決をいただきまして、まことにありがとうございました。  また附帯決議につきましては、政府といたしまして、その趣旨を十分に尊重し努力いたしたい所存であります。
  313. 温水三郎

    委員長温水三郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  314. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記を中止して。   〔速記中止〕
  315. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 速記を起こして。     —————————————
  316. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 請願第一五号、国鉄線神岡・松本間の信富鉄道予定線編入並びに早期着工に関する請願外十九件を議題といたします。  本委員会に付託されております二十件の請願は、理事会において協議の結果、請願第一五号、国鉄線神岡・松本間の信富鉄道予定線編入並びに早期着工に関する請願外十八件の請願は、いずれも願意おおむね妥当と認め、議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するものと決定することに意見が一致いたしました。  理事会の申し合わせどおり決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  317. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  318. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  319. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 継続調査要求についておはかりいたします。  運輸事情等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  320. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  321. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会      —————・—————