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佐藤内閣総理大臣 この種の
交渉ごと、急ぐのは一体どういうわけか。私は、両国の友好親善
関係にひびが入ることのないように、かように思って急いでおるわけです。私、この前の
国連の記念集会に出かけて、そのあとでニクソン大統領に会いまして、幸いに、その他の
事柄はたいへんうまく行っている——これはもう
国民の皆さんにも喜んでいただくように、沖繩返還等については何らの支障なしにどんどん話は進んでおります。このほうはたいへん円滑に行っている。ただ経済的な問題で、繊維問題、これはなかなかそれぞれの主張が強く、六月から
交渉がとだえて、切れてしまって、そうしてそのままになっている。そこで、十一月に会った際に、両者はもう一ぺん気持ちを新たにして、とにかく妥結するつもりで
交渉しようじゃないか、こういう申し合わせをいたしました。それがただいまの
状況であります。これは別に、約束があるからとか、こういうわけのものではありません。また、在来からのわがほうの主張を基本的に変えているというようなことはございません。私は、ただいまの
状況でものごとを見ますのに、やはり貿易額、両者百億ドルの線になんなんとしておる、あるいは百億ドルをこすかもわからない日米貿易の額から見て、いろんな問題があちらこちらで摩擦を生じているのは当然だろうと思います。繊維もそうだし、洋食器でもそうだし、あちらこちらの問題が何かとある、かように思っております。しかし、ただいまの
状況を長く置かないで、早く解決することが何よりも必要なことじゃないか。そうして、ことにただいまの、先ほどは
アメリカの国会の問題ではあるけれ
ども、通商法案が成立しようという、それで、これがもしも妥結することによってとどめることができるならば、私はたいへんなしあわせだろう、かように思って努力しておる最中であります。したがいまして、この問題はその程度に御了承いただきたいと思います。
また、自主規制であります限り、これはやはり業界の賛成を得なければならない、また、さような性質のものですから、積極的に
政府が強権を発動するような筋合いのものでないという、そのことははっきり申し上げておきたい。ただ、私は、業界におきましてもいろいろの
議論がある。もういいかげんなところで話ししたらどうかというような弱い意見もありますし、また、いま御披露になりましたように、どこまでも
反対だ、やるならやってみろ、こういうような強い姿勢の方もあります。私は、ただいままだ業界のコンセンサスができていると、かようには思いませんけれ
ども、しかし、もともと
事柄の性格上から見まして、長いつき合いのことですから、商売そのものが長いつき合いですから、おそらくいいところで双方が譲り合うなら、お互いに不満ではあるが、この
関係は持続することができるんじゃないだろうか、かように思っております。そういう
意味におきまして、とにかくわれわれがあらゆる方法を通じて、財界、経済界の、また、中小企業その他の団体の御理解を得るような処置はとらなきやならないと思っております。
一番
心配されておりますのは、もしもこの通商法案並びにその一連の
交渉で、特別な被害が生じたときに一体どうしてくれるんだ、こういうようなお話があるだろうと思います。私
どもは、いままで一般的な問題にしても、たとえば炭鉱が困っておれば炭鉱の救済もしておりますし、あるいはまた、米作の問題ならば、やはり農家に対しましてもいろいろの政策を実施しております。また、中小企業全般について、その助長振興のためにも相当の政策を行なっておるつもりであります。したがいまして、この種の問題がもしも
政府の取りきめいかんによって非常な損害を与えるというようなことが発生すれば、
政府は、これに対する救済の処置はもちろんとらなきやならぬ、かように思います。しかし、私、たいへんむずかしいことだろうと思いますので、あえてこの救済ということばを申したのですが、この救済の処置は万遺憾なきを期したい、かように思っております。でありますが、救済するから何でも聞け、こういう
意味の
態度で
政府はこの問題と取り組んでおらないこと、それだけは御了承いただきたい。救済する必要のないような処置が講じられることを望んでおるわけでありますが、万一そういうような事態が起こればというのでございますから、これも誤解のないようにお願いをいたしますが、私は、そういうようなあらゆる点を講じまして、理解を得たいと、かように実は思っておる次第であります。
それから、最後に、
福田一君外四名が出かけました。これは、国会開会中ではあるし、たいへん私
ども心配しましたが、
政府は
政府として
交渉するけれ
ども、自分たちも米議会の要人等について知り合いもあることだし、こういう人たちにも実情をよく話しして、そうして理解を深め、いまのような自由貿易主義で進むように自分たちも話したいということでありますから、そんならひとつ出かけられるようにということで、別に
政府の
代表とかあるいは特別ないまの
交渉のお手伝いだとか、そういう
意味ではございません、これは別個の
立場で、米議会の要人等とも、幾人かの友人がございますから、そういう点について十分話し合いたい、こういうことで出かけられたのであります。