運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-12-14 第64回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十五年十一月二十四日)( 月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 の通りである。    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       大坪 保雄君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    賀屋 興宜君       川崎 秀二君    木村 武雄君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    二階堂 進君       西村 直己君    野田 卯一君       福田  一君    藤田 義光君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    久保 三郎君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    柳田 秀一君       相沢 武彦君    坂井 弘一君       松尾 正吉君    矢野 絢也君       河村  勝君    西村 榮一君       谷口善太郎君    不破 哲三君 ————————————————————— 昭和四十五年十二月十四日(月曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    赤澤 正道君      稻村佐四郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       大野 市郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    賀屋 興宣君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       笹山茂太郎君    田中 龍夫君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    藤田 義光君       松浦周太郎君    松野 頼三君       箕輪  登君    森田重次郎君       山下 元利君    北山 愛郎君       久保 三郎君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    細谷 治嘉君       松浦 利尚君    相沢 武彦君       坂井 弘一君    矢野 絢也君       渡部 一郎君    河村  勝君       永末 英一君    谷口善太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 一郎君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         警察庁警備局長 山口 廣司君         防衛政務次官  土屋 義彦君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛施設庁長官 島田  豊君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長心得    大河原良雄君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         文部省初等中等         教育局長    宮地  茂君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         農林大臣官房長 太田 康二君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省航空局長 内村 信行君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         建設省計画局長 高橋 弘篤君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員異動 十一月二十四日  辞任         補欠選任   大野  潔君     鈴切 康雄君   松尾 正吉君     渡部 一郎君 同月二十六日  辞任         補欠選任   西村 榮一君     麻生 良方君 十二月三日  辞任         補欠選任   麻生 良方君     西村 榮一君 同月八日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     竹入 義勝君 同日  辞任         補欠選任   竹入 義勝君     坂井 弘一君 同月九日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     木原  実君   細谷 治嘉君     井岡 大治君 同日  辞任         補欠選任   井岡 大治君     細谷 治嘉君   木原  実君     楢崎弥之助君 同月十一日  辞任         補欠選任   細谷 治嘉君     阪上安太郎君   西村 榮一君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   阪上安太郎君     細谷 治嘉君 同月十二日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     松本 善明君 同月十四日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     山下 元利君   植木庚子郎君     箕輪  登君   木村 武雄君     大村 襄治君   二階堂 進君     上林榮吉君   福田  一君    稻村佐四郎君   川崎 寛治君     松浦 利尚君 同日  辞任         補欠選任  稻村佐四郎君     福田  一君   大村 襄治君     木村 武雄君   上林榮吉君     二階堂 進君   箕輪  登君     植木庚子郎君   山下 元利君     足立 篤郎君   松浦 利尚君     川崎 寛治君 同日  理事大野潔君十一月二十四日委員辞任につき、  その補欠として鈴切康雄君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  閉会中審査に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についておはかりをいたします。  すなわち、予算実施状況に関する事項につきまして、議長に対しその承認を求めることとし、その手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  4. 中野四郎

    中野委員長 次に、理事補欠選任の件についておはかりをいたします。  委員異動によりまして、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、鈴切康雄君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  6. 中野四郎

    中野委員長 それでは、これより予算実施状況について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  7. 大原亨

    大原委員 私は、きょうは最初に佐藤総理にお伺いいたしたいと考えておりましたのは、佐藤総理は、いままでの戦後の総理大臣の中で一番長期の総理大臣ということになっておるわけであります。いままで与党の中では三選、六カ年間ほど政権の座についておられたわけでございますが、私は、四選ということは自民党だけでなしに、国民立場から見ましてもきわめて重要な問題であると思います。したがって、いままでの締めくくりをしながらこれからの決意を聞く、いままでのバランスシートを明らかにしながらこれからの決意を聞きたい、こういうのが国民の願いであると思いますが、この冒頭の質問は、これは私は最後に回したいと思います。  そこで、逐次、内外の重要政治問題であります中国問題、物価やあるいは懸案の諸問題を中心にいたしまして、所定の時間内で簡潔に質問申し上げますので、ひとつそれに対応するはっきりした御答弁をいただきたいと思います。  中国問題については、これは七〇年代の最大の課題であるというふうに、外交問題といたしましては、これはだれびとも考えておるところであります。代表権の問題あるいは重要事項指定方式の問題、私はこの質問に入ります前に二つの事実を指摘をいたしまして、総理見解をお聞きいたしたいと思うのです。  一つ、私が国民にかわって総理にこの機会にお聞きいたしたいという点は、一九六一年、第十六回の国連総会で初めて中国代表権問題が重要事項決議案として提出されたいきさつについてでありますが、これは、最近ある新聞紙がその事実について報道いたしております。すなわち、前年の一九六〇年には、アフリカの年といわれるほど大量のアフリカ諸国国連に加盟したので、これまでのたな上げ方式が否決されるかもしれぬ、こういう危険が生じました。そこで日本考え出したのが重要事項指定方式である。岡崎国連大使、後の外務大臣ですが、それと鶴岡外務省国連局長、現在の国連大使ですが、これらの人々が中心にまとめ上げたというのが、つまり重要事項指定方式であるということであります。困り抜いていた米国は、この日本案に飛びついたことはもちろんであります。私は、今日までの重要事項指定方式考え出し、提案をしたのがアメリカであったというふうに思っておったのですが、それに日本が追従したと思っておったのですが、ついていったと思っておったのですが、そうではなしに、逆であったということを最近報道をいたしておりまして、注目をされております。だから、一九六九年、米国のサンタバーバラで開かれた中国問題に関する日米民間会議で、元アメリカ国連大使ゴールドバーグが、中国代表権問題になると、われわれよりも日本代表のほうが熱心に工作をしたと言ったことに符節が合うような気がいたすのであります。  そこで、三点にわたってお伺いしたいのですが、この新聞報道は誤報であるのか真実であるのかということであります。  もう一つは、もしこれが真実であるとするならば、日本政府態度中国敵視政策そのものではないだろうかということであります。  もし、このようないきさつで提案される重要事項決議案政府がこれからもこだわり続けると、しがみつくというふうなことが続く限り、日中関係の好転は期待できないのではないか、こういう点を私は心配をいたすわけでございます。国際信義という理由だけで重要事項決議から日本は離脱できない、そういうことであってはならぬと思いますけれども、この点について、三点につきましての総理の御見解をお答えいただきたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの新聞記事、第一、日本発意者だ、発案者だと、こういう点でありますが、私どもはさようにはいままでの経過を聞いておりません。これは、やはり友好国の間でただいまのような案がきまった、かように聞いておりますので、どの国ではどうしたとかあるいはどの国は熱心だったとか、こういうことは、私はどうもわかりかねる、かように思います。いわゆる新聞記事の真疑を批判するのではなくて、私の感じを申し上げたとおりであります。  また、中国、いわゆる中共国府にかわって入るという、そういうものの考え方、これはもう、申すまでもなく重要事項であるだろう、かように思いますので、これをもっていわゆる敵視政策云々は当たらないんじゃないだろうか、かように私は思います。したがって、第二の敵視政策、これは、別に敵視政策はとっておらない。重要事項そのものじゃないか、かように私は思っております。  また、第三の問題について、これからが問題は、取り組むべき重要な点だと思っております。大原君の言われるように、七〇年代こそはこの問題が一番の問題だろうと私も思います。そういう意味で、ただいま国際情勢の推移、これは申すまでもなく中共北京政府承認の国がふえる。あるいはまた、まだ国府承認しておる国のほうが多いのですけれども中共承認の国がふえる。しかし、これらの国自身が、それでは台湾政府を否定するのかというと、必ずしもそうでもない。また、それだけの関係日本との友好関係がそこなわれる、これは中共じゃございません。北京政府じゃございませんが、その北京政府承認した国と日本との関係がそこなわれるとも、かようにも考えませんので、私はそういう意味で、これからこの問題とは慎重に対処していく。どうもカナダイタリアとは違いまして、申すまでもなくわが国隣国である。アジアに位する国であり、そうして八億の民、中国大陸は大大国である、そういう立場でございますから、この関係をわれわれがいかにして調整していくか、緊張をかもし出さないように、緩和の方向にいかに努力するかという、これは私ども最大の問題だ、かように思っております。  以上お答えします。
  9. 大原亨

    大原委員 その新聞報道については、佐藤総理は非常に軽視されるのが特色ですが、私が指摘いたしましたが、アメリカの元国連代表ゴールドバーグが、非常に日本は熱心である、一番熱心だ、こういうことをある会議で言ったということを私はっけ加えたわけでありますが、それは隣国であるから熱心である、こういうことかもしれませんけれども、この問題はあとに回しまして、もう一つお伺いしたい事実は、最近の報道によりますと、台湾蒋介石政権は、日本に対しまして、二億五千万ドルの政府借款を求めておるということが伝えられております。いままでの台湾に対する政府借款は、これはかなりの額にのぼるわけですが、しかしこのことは、私は、二億五千万ドルの借款を要求し、日本がどういう態度をとるかということは、いまの段階ではきわめて重要であると思うわけです。申し上げるまでもないのですが、私はもちろんいまの段階では、そういう問題について軽々に結論を出して借款に応ずるということは、将来に大きな問題を残すのではないか、そういう意味において反対でありますが、その理由は、台湾国際的地位はきわめて不安定であると思います。それから国際的な大勢を見ましても、国際社会でその存在が否定されるのは、私は時間の問題ではないかと思うわけであります。そういうときに、わが国がこの問題を、この既成事実をつくることによって、私は二つの危険な問題があるのではないか。もちろん毒を食らわばさらまでという考え方もあるでしょうが、国民の税金ですから、国民の金ですから、これを出した場合に、中国との新しい国家間の関係が発生して、権利、義務を継承するという問題が起きたときに、私は国民立場から見ると、非常に大きな問題が出てくるのではないか、こういう点を一つ心配をするわけであります。それともう一つは、七億の中国との関係を平和的に回復する、緩和をするということを総理は言われるわけでありますが、いまの段階で二億五千万ドルの借款を与えるということは、例の吉田書簡の問題以来、敵視政策の問題で議論を重ねてまいりましたけれども、私はそういう結果から見ましても、私どもが予期せざる大きな問題が出てくるのではないか。台湾政府日本借款を求めるのには、いろいろと経済建設の上における理由もあると思うのですが、借款を通じて日本との関係を深めておく、そして国連における国際地位を確保しよう、こういうことがあるのではないかというふうに一部ではいわれておるわけであります。そういう事実があるのかどうか、あるいはこの事実に対しまして佐藤総理はどういうお考えを持っておられるのかという点についてお聞かせいただきたいと思います。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 借款交渉の事実があるかどうかという点につきましては、私のほうから申し上げますが、確かにいまお話しのような要請を受けております。それから当方もそれに対しましては前向きで交渉に応じております。この借款の性格は、いままでもあったのでありますが、その同じような借款を、その政府的色彩を薄めまして何とか話をつけたい、こういうふうな意向をもちまして、ただいま先方と話し合いをやっておるという最中でございます。
  11. 大原亨

    大原委員 私が指摘をいたしました問題を含めまして、佐藤総理はこの点につきましてどういうお考えをお持ちですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣から申しましたように、事実の有無については、これはそのままを報道したというかお伝えしましたので、これはそれなりにお聞き取りをいただきたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、借款という、そういう事柄軽々にすべきものでないこと、これは大原君と同じ立場でございます。同時にまた、開発途上にある国に対しましては、日本としては積極的に経済援助をすることがいまの国際平和のために寄与するゆえんだ、私はかようにも思っておりますので、軽々しくはいたしませんけれども、やはりこういう事柄については前向きであるべきだ、これは先進工業国一つの姿勢だ、かように考えております。  もう一つの問題で、との点が大原君と私の一番違っておる点ですが、台湾政府のその地位がまことに不安定の状態だ、かような御指摘であります。これは私は必ずしも不安定な状態だと、かようには考えておりません。ことにまた、中国一つだ、こういう立場から考えますならば、やはり民生に役立つなら、同じ中国がとやかく言う筋のものでないのじゃないか、かようにも思いますので、いわゆる借款というものがそういう効果のあることを考えると、これはやはり前向きであることはちっとも差しつかえないのだ、私はかように思っております。
  13. 大原亨

    大原委員 去る十一月二十六日の衆議院の本会議の、わが党の下平議員に対しまする総理大臣答弁速記録でもう一度読み直してみますと、中国代表権問題に関する総理見解は、一つ中国論の上に立つ、これが一つ。そして正統中国代表する政府台湾政府である、こういうふうに結論づけられると思うわけであります。これをいま直ちに変える意思はない、こういうことでありますが、私はもう一度議論の発展のために申し上げるのですが、台湾政府中国全土代表する唯一政府であるというふうにお考えなのですか
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中国大陸を支配するもの、これは北京政府である。またいかに私が強弁をいたしましても、台湾にあります政府が本土に対して政治的な統治はしておらない、この事実は事実として認めざるを得ないのです。ただ私がいままでの経過を申して、その経過にこだわっておりますゆえんは、われわれが日華講和条約を締結したその際のいきさつから申しまして、当時の状況のもとにおいては中国代表台湾にある中華民国、こういうことで講和条約を締結した、これは事実であります。この状態のもとに今日も続いてきておる、ここに私ども国際的信義の問題があるのだということを重ねて申し上げてお答えといたします。
  15. 大原亨

    大原委員 それから総理、これは見通しにかかわる問題でありますが、御承知のようにことしの国連総会におきましては、日本の非常な努力や期待に反しまして、中国につきましてはアルバニア決議案が多数をとったわけであります。カナダイタリア中国承認いたしましたが、そのときに重要事項指定方式には賛成いたしました。それから、調べてみますと、アルバニア決議案には反対をいたしておりますね。しかしカナダ代表は、こうした決議が将来国連総会意思を挫折させることになると判断した場合は、カナダ立場を変えると述べて、来年以降重要事項指定方式の支持を取り下げることを演説の中におきまして示唆いたしておるわけであります。私はいまの情勢から見ますと、私どもの判断では、国連の総意を決定する過半数の意思中国唯一正統政府として北京政府、中華人民共和国を承認するということは、これは時間の問題であり、来年は当然そうなるということを予想すべきであると思うわけですが、そういう私の見通しに対しまして総理はどういうふうにお考えでございましょうか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは大原君の見通し大原君の見通しとして承っておきます。私どもはとにかく隣の国、またいままでの中華民国との関係等からいたしまして、この態度は容易にきめるつもりはございません。慎重に取り組むべきだ、かように私は考えております。いまの状態でいつまでもあろうとは思いませんけれども、これは必ず慎重に取り組むべき問題だ。まして一つ中国ということを考えますと、これは北京、台湾両者の間においてとにかく話し合うことが何よりも大事じゃないだろうか、かように思っております。ことに私どもが一番困るのは、両国の間で、問題は武力によって解決しようというような問題が起こればそれこそたいへんだ、かように思っておりますので、その点を重ねて慎重に扱っておるゆえんとして御披露いたしまして、また、いまもおっしゃるように、カナダはアルバニア案をそのまま受け入れてはおらない。来年以後は今度はアルバニア案に賛成するかのような発言までしているじゃないか、こういうようなこと。これなどがいま動揺している国際情勢一つの証左だ、かように考えますので、十分それらの点をも見きわめなければならない、かように私は思っております。
  17. 大原亨

    大原委員 観点を少し変えまして、ことしの国連総会重要事項指定方式の論議があります際に、アメリカ国連代表のフィリップス次席代表はこういう演説をいたしておりますね。台湾は善良なる加盟国であり、国連より除外できない。もう一つの内容は、他方中華人民共和国も現に存在する事実を認める。この演説は一般的に、中華人民共和国が国連に入ってくることを拒絶しないという内容であるというふうに言われておるわけであります。しかしこのことは、別の表現をかりますと、明らかに一つ中国一つ台湾、つまり二つ中国論を示唆したものであるというふうにいわれておるわけであります。そういうふうにいわれておるわけであります。これに対しまして、このアメリカ代表見解に対しましては日本佐藤総理はどういう見解をお持ちになっておりますか、お伺いをいたします。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、御承知のように台湾というもの、これはもう領土権その他一切の権利を放棄した地域でございます。したがって、これがどういうところに帰属するかという、これについての発言権はまず私どもにはないはずですよ。日本としてはその点はもうはっきりしておる、かように私は思っております。  また、ただいまのアメリカ代表者がどういう演説をしたか、それについての批判だけは私どもは差し控える。それぞれの感じは持ちますけれども、私はその演説をこの機会に批判することだけは差し控えたい、かように思います。御了承いただきたい。
  19. 大原亨

    大原委員 それでは、日本国連代表の鶴岡代表が演説をいたしたのがここにございますけれども、いままでと違っておる点は、第一番目は、あなたもいまちょいちょい言われましたけれども中共とか北京政府とかいうことは演説の中には一言も出てこないで、中華人民共和国ということばが日本代表の口から初めて国連、国際舞台において述べられた。それから、いままでこの北京政府に対しまして、中華人民共和国に対しまして、国際平和を乱すものであるとか、国連加入の資格に疑義があるというふうな、言うなれば侵略者呼ばわりをするような、中国非難的なことばがあったわけですが、これが全然なくなった、こういうことが注目をされておるわけであります。こういう変わり方というものは、一部では、この評価は、ここに出ておりますけれども、評価は、アメリカ国連代表のフィリップスの演説と符節を合わしたものではないか。一つ中国一つ台湾を指向をしているという、そういう方向転換をやったのではないか、やろうとしておるのではないかという、こういう論評があるわけであります。これはアメリカのことではありません。日本政府代表の演説ですから、これについては重要な問題でございますから、佐藤総理はそのことについては御承知だと思うのですが、そういう点についてはどういうふうなお考えでございますか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 鶴岡大使の演説がどうであったか、これは外務大臣からそのときの経過をひとつ答えさすことにして、私は申し上げかねますから三……。
  21. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先般の国連総会における鶴岡大使の演説は、一言で申しますれば、アルバニア決議案反対であって、重要事項方式に賛成であるということを簡潔に申したわけでございまして、その長さその他から申しまして、昨年とは若干表現なども変わっておりますけれども、趣旨において変わっておるところはございません。  それからフィリップス米国代表の演説に先ほど来御言及になっておりますけれども、これは日本政府としてコメントすべきものではございませんけれども国民政府追放に対して反対であるというところに比重が置かれていることは、その表現上事実でございます。しかし同時に、この演説がございましてからあとで、アメリカ政府としては、従来からの本件に対する態度が変わったわけではないのであるということを、念のためということで日本政府に通報がございました。こういう事実から申しますれば、アメリカ政府として本件に対しての態度がこの機会に変わったのであるというふうには理解ができないわけでございます。
  22. 大原亨

    大原委員 時間もなんですけれども、あなたは先般の外務委員会におけるわが党の戸叶委員質問に対しまして、フィリップス演説をどういうふうに理解、評価するかという質問に対しまして、眼光紙背に徹すればいろいろな見方があると思います、これはいろいろなニュアンスがここにある、いろいろな意味があると思います、非常に意味深長なことばでありますと、こういう答弁をしていることばと、いま答弁していることばとは違うじゃないですか。
  23. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 時間を長くかけて質疑応答をいたしますればいろいろのニュアンスも出てくると思いますが、外務委員会における私の答弁も御参酌いただきたいと思いますが、私はいま申しましたところと何にも違っておりません。これはこう読めないか、こう読めないかという御質疑でございましたから、読む方によって、眼光紙背に徹して読めばいろいろの解釈も出てくるでございましょうが、政府としてコメントすべきものではない。なお、日米間の政府間の関係におきましては、アメリカ政府日本政府に対しまして、フィリップス演説は、中国政策に対するアメリカの政策をこの演説によって変えたものではございません、こういう念のための通報がございました。この事実並びに解釈を延々長時間にわたりまして戸叶委員との間に質疑応答をいたしたのでございます。
  24. 大原亨

    大原委員 私はこの議論をいたしまして、私どもが国会といたしまして議論して非常に重要な点は、こういう個々の議論も大切でありますし、法律論も大切でありますが、しかしいまや政治的な判断をもって中国との関係をどうするかという選択、決断をすべき私は段階にあると思うのです。  その第一は、一番近い日本中国との代表権問題や国交回復の問題について、最後に、最もいびつな最も自主性のない形で、そして最も現実にそぐわない形で態度をきめていくという醜態を、私どもは時間がたてばたつほど残さざるを得ないのではないかという点が一つ。  第二の点は、七億の中国との戦争状況隣国である七億の中国との間においては戦争状況が実際上の政権との間にあるわけであります。そういうことを放任しておいてアジアの平和とか日本の安全ということを議論をするということは、いろいろと国益ということがいわれますが、歴史的に長い目で見まして、私どもの責任において、これは耐えがたいことではないかという点であります。  そういう点から言うなれば、先般超党派で日中議員連盟が決議、宣言をいたしましたが、その骨子になるところは、七億の中国との間において戦争の終結の宣言をする、そして平和共存と不可侵の原則に基づいて中国との間において正当な国交関係を樹立する、こういうことは日本の国益に合致するのみならず、日本国民の大多数の意思であるのみならず、これはだれのところへ行ってもはばからない正しいことである、こういう超党派的な宣言、決議をいたしておるわけでございます。外交問題は水ぎわでという議論もあります。超党派でということもしばしば総理は言われるわけであります。そういう点からいうならば、このような動きというものは、私ども日本の袋小路の外交について新しく転機を生む、そういう契機になるものであり、かつ国民意思代表するものとして歓迎すべきことであるというふうに考えますが、佐藤総理は、この一連の情勢に対しましてどのような御判断をなさっておるか、お伺いをいたします。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま重大な発言がありました。日中、北京政府日本との間に戦争はまだ継続しておる、こういうお話ですが、これははたしてさような状態でしょうか。私は、いままでのところ、いわゆる日華講和条約、これは締結されて日中間の戦争は一応終了したと、かように思っております。そうして平和の状態が取り戻された。ただ北京政府が日華条約を承認しておりませんから、認めておらないから、法的には戦争状態にあるということがいえるかわかりませんが、ただいまお話しになりましたように戦争状態は継続しておる、かようなことは、両国の間でだれ一人考えておる者はないのじゃないだろうか、かように私は思いますが、いかがでしょう。
  26. 大原亨

    大原委員 佐藤総理のいままでの御答弁によりましても、鶴岡代表の演説もそうですが、中華人民共和国ということばを使っておる。そうして実際に七億の中国を支配している国は北京政府であるということも佐藤総理答弁から認められておるわけであります。そういう間における、中国日本の間におきましては平和状態は、国交すらも、貿易すらも正常でないわけであります。そしてこれは国際法上、言うなれば戦争状況の事実上の継続であります。ですから、そのことをピリオドを打たないでアジアの平和や日本の安全があり得るのか、こういうことが日中議員連盟の宣言の趣旨であって、その戦争状況を終結し、平和共存と相互不可侵、内政不干渉の原則の上に立って正しい中国との関係を樹立するということを、超党派でそういう主張をいたしました、宣言をいたしました議員連盟のそういう意思表示に対しまして、それで私は質問の観点を変えますが、佐藤総理はどのような見解をお持ちでありますか、お聞かせをいただきたい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 議員連盟、これが決議されておることは私も承知しております。先ほど不規則発言ではありましたが、法的には戦争状態が続いておるのじゃないか、こういう御意見がございました。私はまさしくそういうことは言えるだろうと、かように思いますので、先ほども講和条約北京政府は否定しておる、そこに問題があるのじゃないですかと、こう言ったのはその点でございます。したがって、いまの議員連盟の方々が戦争状態は続いておると、かように法的におっしゃることは、これが間違いだとは私は思いません。しかしいまも事実をごらんになればおわかりになるように、幾ら戦争が続いているからと申しましても、北京との間に人的交流もあれば貿易もやられておるし、その他の交流はそれぞれ行なわれております。戦争状態が続いておってさようなことがあるわけがないんです。だからそこらにあまり現実と離れた議論をお互いにしないようにしないと、日中関係をよくしようというその立場からもまずいんじゃないでしょうか。いまのような、戦争状態が続いているんだと、こう言われれば、貿易だって一切ないはずです。しかしながら、いまは貿易だってどんどんふえて、もう八億ドル以上になっているでしょう。また同時に交流も、とにかく平和なうちに皆さん方もお出かけになるし、また向こうからも出てくると、こういう状態でありますから、私はこういう実情をやっぱり踏んまえて、そうしてこれからどうしていくかという、そういう建設的な状態が望ましいのじゃないだろうか。そこらについて、私どもの努力しなければならぬものもあれば御叱正を得、また御鞭撻を得て、そうしてりっぱな状態をつくるべきだ、かように思っております。
  28. 大原亨

    大原委員 私が申し上げましたのは、誤解があっちゃいかぬですが、たとえばソビエトの関係で戦争終結の宣言をする、あるいは平和条約を締結する、こういう方法もあるでしょう。いろいろな段階があるでしょう。ありますが、七億の中国との間においては現実にそういうことがないわけですから、ですから平和的な外交関係が回復されてないことを戦争状況の継続だというふうに皆さん言うのは、これは普通でありますよ、国際法の。そういう状況を一日も早く克復をして、名実ともに、中国との間における友好関係を回復するということが課題でしょう。あなたは日中議員連盟についての態度表明を避けよう避けようと思って、ほかのところへずっと議論を持っていっていますね。そういうことは許せませんよ。  そこで私は時間も限られておることですから最終的に申し上げるのですが、私はよく考えてみると、今回の国連総会においてはアルバニアの決議案は通ったんですか。これは多数で可決されたわけであります。一方は重要事項指定方式という中国国連に加盟いたしまする方法を重要事項としてたな上げをするというふうな妨害方式ですね。いろいろな観点もいろいろあるでしょうが、言うならば妨害です。そういうことも、やっぱり手続問題であるという議論がある中において、先後であるというだけでこの問題がこう処理されておるわけですが、しかし私は日本のような立場からするならば、アテバニアの決議案があのような状況において通ったというととは、この間において日本佐藤内閣が、政府が、何らこういう見通しの上に立って自主的な積極的な中国政策を立てることができなかった、こういうことにおいて私は後世歴史家から、佐藤内閣の六年間の施政の一つの結論として、バランスシートとして、私は大きな問題として非難をされる、糾弾をされる、こういうことになると思うのです。漫然と三百二名の多数の議席の上に皆さんがあるからそういう点は通っておりますが、しかしこのことは日本にとりましては隣国であるだけに重要な問題である。私はそういう点について佐藤内閣は将来にわたって政治責任を負う覚悟が必要であるし、負うべきであるというふうに考えるわけであります。見解があればお答えいただきたい。簡単に。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君の御意見は謙虚に伺っておきます。
  30. 大原亨

    大原委員 次に、内政問題について御質問いたしたいと思います。  佐藤総理は、昭和三十九年の十一月に佐藤内閣をつくられたときに、たびたび申し上げておるのですが、池田君の、池田内閣の高度成長、経済中心主義とは違って、ぼくは社会開発、人間尊重、物価安定、この三つを政策の柱としてやるのだ、こういうことを六年前に国民に公約をされたわけであります。しばしばそのことは言われておるわけであります。で、その六年間に佐藤内閣は中期経済計画やあるいは経済社会発展計画を通じて、五年間の物価安定の目標として二・八%を前者においては掲げたけれども、後者においては三%を掲げた、このことが何ら実現をされていないということは、非常に大きな佐藤内閣の政治責任であると私は思うのです。物価というものは生活の中身にかかわる問題であります。公害というのは生活の環境にかかわる問題であります。これらは経済の部分的な現象でなくて、政治のトータルの問題であります。ですから、こういう点において、私は今日の段階のように天井知らずに物価が上昇するというような、そういう先行き不安を国民に与えておるということは重大な政治責任であると思うが、それに対しまして、あなたの反省を含めてお考えのほどをお聞かせいただきたい。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういうことは、ただいまの大原君の御意見も含めてやはり後世どういうような批判を受けるか、それが評価がそのときに下るべきものだと、私はかように思います。  私の総理としての、また佐藤内閣として過去六年間、その間には成功した年もありますし、また私どもが必ずしも思ったとおりでない、そういう状態であったこともあるし、いろいろ経済の成長度合いに、また社会開発の行き方にもそれぞれの波があるようであります。ことしなぞ積極的に公害問題と取り組んだのも、本来の姿勢に返った、こういうことも言えようかと思います。  とにかく、いずれにいたしましても、後世の史家の批判に待つ、そういう態度で私は政治と取り組んでおります。
  32. 大原亨

    大原委員 佐藤総理は、物価に対しましてはどのような決意をもっておられるかということを私は聞きたいのであります。いかがですか。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価に対しては、物価が安定することを心から願っております。私は、最近の状態で、一時、前内閣のときよりも物価の点ではやや改善を見た、こういう事態もございます。ところが最近、きわめて最近の状態は前内閣と同じように、同じような状態になりつつある。申すまでもなく、それは卸売り物価は安定したが、消費者物価は非常に高騰を続けておる。当時もこれが問題であったと思っております。同じように前内閣のときも、卸売り物価は安定しておるが、消費者物価は上がっておるのだ、したがって経済そのものが悪いと、こういうんじゃないのだというような説明もたびたび聞いたと思いますが、私はいまそういう状態になっておる。これを、これではいかぬのだ、こういうことからいろいろの総合政策と取り組んでおるし、またその総合政策の中に一つは加えられておりますのが、やはり賃金と物価の悪循環、そういうものも指摘しながら各方面の御協力を願っておるというのが実情でございます。
  34. 大原亨

    大原委員 あなたは、あなたの具体的な内容の答弁は物価と賃金の悪循環、これだけが残ったわけですね。これはひとつ重要な問題ですからあとで議論いたします。  これは、経済企画庁長官おられますか。本年の当初の予算編成、経済見通しでは、四・八%に物価をおさめる、こういう政府は目標を立てたはずでありますが、本年度の物価の上昇は幾らになりますか、見通しを含めて御答弁いただきます。
  35. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように野菜等の季節商品の値上がり、あるいはまた季節商品以外の関係の人件費等による値上がり、こういうようなものを含めまして、四・八の当初の見込みが、おそらく七%台になるおそれがあるというような感じをいま持っております。
  36. 大原亨

    大原委員 前におってください。——これは七%台だけでなしに、八%をこえるというふうな推定をする人もあるわけでありますが、これは全く物価政策も何もあったものじゃないでしょう。これは何もやっていないということでしょう。物価政策がないということでしょう。池田内閣よりもまだひどいということでしょう。いかがですか。
  37. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 池田内閣と比較されましたが、もちろん置かれている条件も違います。そういうことで、別にこれがひどいとかひどくないとかいうことではなくして、やはりここに至った事態というものをよく究明して、そしてできるだけの対策を立てる、これ以外に道はないと思っています。
  38. 大原亨

    大原委員 物価の議論をいたしますと、野菜やその他の季節商品がみな犯罪人のようになるわけです。それは間違いなんです。そういうふうに考えているから物価政策は行き悩むわけです。あなたもそういうことを言っているわけだ、人件費の問題と一緒にね。この野菜とか生鮮魚介類が上がるというのは、物価上昇の呼び水になるのであって、寄与率や全体のことからいいますと、これが動機になってどんどん物価が上がっていくということなんでありますから、これが犯人だということはないわけでしょう。それはあなたがよく知っているはずだ。じゃ物価安定のためにどういう政策を立てたか。何をやるべきであるというふうにあなたは考えてきましたか。
  39. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 最近食料品の物価上昇寄与率が五割をこえました。ですから、結局やはり食料品関係の費用の比重というものは争えません。非常に高いものでございます。いま大原さんは、それが動機というか刺激になるということをお認めになりましたが、そういうことも含めまして、やはり非常に比重が高い。結局食料品のその物価に対する比重の高さというものは、野菜その他の季節的な商品、いわゆる農産物、こういうものが非常に高くなってきておる、これは私はいなめない事実だと思います。しかしながら、最近におきましては食料品以外のものも、特に労働集約度の高い中小企業製品等を含めまして上がり方がひどくなってきております。そこで私たちは、一方においてはやはり比重の高い食料品の価格についての問題を特別に取り上げざるを得ない。ところがこれは実は、いわゆる問題は幾つもありますけれども、需要に対する供給の不足、こういう基本的な条件がございます。これを何とか解決していかなければならない。でありますから、事は単なる価格政策という以前に生産対策でもあるわけであります。そういう意味において、いま農林大臣もいろいろと御苦労を願っておる、こういうことであります。  それからその他の全体の値上がりにつきましては、これはいわゆる総合的な価格対策をとらなければなりません。超高度とも称すべき異常な経済成長、これが四年も続きました。実質一三%というような高い成長が続いたわけでございますから、どうしてもその好景気が加速度化がつくに従いまして、すべてについての労働力も含めまして、需要、供給の逼迫というものがあらわれてまいりました。やはりこうしたことを基礎にして考えなければいけない。そういうことになりますと、成長をある程度スローダウンさせる、すなわち需要の抑制、こういうことがやはり基礎になっています。御存じのようにこれについては、現在引き締めの効果が相当出てきておる。卸売り物価はもちろんでございますけれども、消費者物価については、御存じのように最近においてはどこの国もそうでありますが、タイムラグがございます。卸売り物価のようにすぐには落ちてまいりません。しかしこの引き締めの効果というものは、一定の間隔を置いて必ず相当の効果を持ってくるものと私たちは見込んでおります。その総需要の抑制対策を中心といたしまして、それにいわゆる構造対策あるいは競争を自由にするための輸入政策その他の対策、その他流通対策等個別対策をできるだけ実行してまいる。そうして一面においていまの高度成長が続きました結果としまして、労働力の需要供給も御存じのように非常に逼迫してまいりました。そうしてこれがどうしても賃金が上がってまいる。賃金が上がり始めますと、へたをするといわゆる相互循環の現象を生ずるおそれがございます。ただいまそういう傾向も出てまいっておりますから、私たちはこの賃金の上昇問題についても十分注視を怠ってはならない。もちろん賃金の決定は労使双方の決定によることで、政府が直接決定をする仕組みではございませんから、この情勢を目下十分に注視をしておる、そういうような状況でございます。
  40. 大原亨

    大原委員 総需要の抑制その他構造政策、一わたりあなたのレクチュアを聞いたわけでありますが、その物価の総合政策が一つも行なわれていない。そういうところに物価値上がりの問題があるのではないかということを言っているんですから、そのことに答えてください。  農産物、食料品、生鮮魚介類が上がるというのは、これはその寄与率を除いた場合に、本年度はどのくらい物価が上昇するかということを明らかにしてもらいたいことと、この調子でいきましたら来年はどのくらい物価が上がるんだ、これも国民は聞きたいから、その二つの点をお聞かせいただきまして、それから佐藤総理と質疑討論いたします。
  41. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 季節的な商品を除きまして大体六%ぐらいになるのじゃないか、こういうふうに考えております。  来年度の見通しは、いろいろな新しいデータも求めながら目下検討を進めております。
  42. 大原亨

    大原委員 来年度は、この調子でいけば七%を下ることはない、八%になるだろうというコンピューター予測が出ておるそうだが、いかがですか。
  43. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 それは私もまだ存じておりません。
  44. 大原亨

    大原委員 これは経済企画庁の中の資料じゃないか。つまり佐藤総理、これは生鮮魚介類を除いても、こんなにべらぼうな、六%以上も上がるのです。皆さん方が予算編成の前提としてやられた四・八%の物価上昇は、それを考えてみましても、とうにこえているわけです。私はそういうふうなことは政治家、政府としては無策の無策、榮作ではなしに無策の無策だと思うんだ、ほんとうに。冗談じゃないですよ。ほんとうに無策だと思うのですよ。無策だと思わぬですか、あなたは。ひどい無策じゃないか。これは私は、たとえば野菜類にいたしましてもそうですね。倉石農林大臣に頼んでおるというのだけれども、米の問題がああいうふうな状況になっているということは、野菜類とかそういうふうな農業政策が失敗しておるということじゃないですか。ところが物価の問題は国民の食糧の問題にも関係いたしますし、農業の問題にも関係するわけですね。構造政策といえば、中小企業に対する対策というものが物価関係予算案の中には載っておるけれども、構造政策の問題はできていないということじゃないのですか、農業だけでなしに中小企業も。ですからそういうお題目を並べても、やる意思と能力がなければ物価の問題は解決しないということですよ。  中山さんの物価安定政策会議、これは佐藤内閣になりまして三回ほどかわったわけです。第二次物価問題懇談会、今度は物価安定推進会議、今度は物価安定政策会議、こういうふうにきまりまして、二十数項目にわたる財政金融全体に対するまとめた提案をいたしておるわけですね。この問題一つ一つにわたって議論をすればいいわけですが、すべきでありますけれども、そういう時間の余裕がありませんが、こういう問題をやらないということや、他の政策と比較をいたしまして物価の問題に対する佐藤総理のイニシアチブが足らない、佐藤総理のそういう政治責任であるというふうに私は思うわけですが、いかがですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中山委員長、いろいろ政策を具体的に具申するが案外やらない——やらないわけではありません。やっておるものもあります。また中には予算的措置を必要としたり、立法的措置を必要としたりするものもあります。また御承知のように流通機構の改革についてはやはり国会の審議、ただいままだ継続審議になっておる、こういうような状態だ、こういうものもやはり早く、政府の責任を追及する前に、やらしていただきたい、かように思いますし、また私は、いま御指摘になりましたが、最近も公共料金のストップというのですか、抑制について経済企画庁は強い要望を出しております。一年間ストップしてくれ、しかし一年間ストップしたその後の処置がわからなければ、これは簡単にはストップしないよ、一年たてばみんな上がるのでは何にもならないから、その前に一体どういう処置ができるか、これをひとつ考えようじゃないかということで、ただいま検討しておる最中でございます。とにかく公共料金等、政府関係のものが物価の先頭を走る、そして他のものがついていくようではいけない。それからただいま御指摘になりました中小企業、あるいは農業、低生産性部門の生産性をあげるということは何よりも必要だと思います。また先ほども御意見も申し述べまして、どうも御賛成を得ておらないけれども、卸売り物価が安定していてどうして消費者物価が高くなるんだ、そこらのことももっと掘り下げて考えなければならない。これはただ単に流通機構だけの問題ではないんだと思っております。やはり人の値打ちが高くなった、かように申しますから、そこらに問題があるんだろう、かように思いますから、これはやはり取り組まざるを得ない問題じゃないか。物価をやかましく言えばなおさらそういうことじゃないか、かように思っております。  またもう一つの問題で、最近非常にやかましくなっておる公害問題……(大原委員「それはいいです。あとで質問します」と呼ぶ)それはいいじゃない。やはり物価と関係なしにこの問題がほっておかれるわけにいかないのです。そういうものを総合的に考えてやはり物価問題と取り組む。政府の姿勢はふまじめだといわれます、あるいはまた効果をあげない、かような御叱正をいただきましたが、それはそれとして、政府は一生懸命やっているのですから、どうか御鞭撻賜わるようにお願いします。
  46. 大原亨

    大原委員 それでは経済企画庁長官に聞きますが、公共料金のストップをきめたというのはほんとうですか。きめたがごとく、きめないがごとく言われておるが、きめたのはほんとうか。例外はあるのかないのか。それから期間は一年間であるのか、その前後であるのか、期間をきめていないのか、三点についてお伺いします。
  47. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 もちろん公共料金というものの物価に占める位置を考えて、そうしてこれを厳に抑制する、こういうことでございます。もちろん凍結という意見もありますけれども、これはやはりそれぞれの事情のある場合もございます。しかし、やはりその大部分を押える、どんなこまかいものも一切凍結をする、こういうようなところまでは私は考えていませんが、その主要なものは全部押える。そういうことによってやはり公共料金の影響というものを避けていこう、こういうつもりでおります。  それから一年間ということは当初考えてみましたが、しからば一年過ぎたときにはそれでいいのか、こういう議論もございました。そういうことで、まあ予算時期を過ぎますと、公共料金系統はどうしても大体一年はいやおうなしに固定しますからして、大体一年ということは最低できると思います。しかし二年目はどうするか。これは先ほども総理のお話もありましたように、価格対策全体を考えながら事態に対処をしていく、こういうことで、いま一番物価の上昇の気合いが強くなっているときでありますから、この一番大事なときに、政府みずからの手によるところの物価への刺激を極力押えてまいろう、私どもはこういう趣旨に出ているわけであります。
  48. 大原亨

    大原委員 一年間ではない、一年間ではだめだ、一年間やっただけでは。そのとおり私は意見一致ですよ。一年間やっただけで何もせずにおったら、その次にはその倍くらいも上げなければならぬということになる。だからそれはだめなんです。当分の間というふうに表現をしてあるそうだ、そういうふうに私は新聞では見ております。当分の間というのは、参議院選挙が済むまでの話かどうかが質問一つ。  それからストップをする公共料金とは何か。何と何と何か。具体的に答弁してください。この二つ
  49. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは別に参議院の選挙を考えておるわけではございません。  それからものは、いわゆる電気通信系統の料金あるいは郵便関係の料金、いまこれが引き上げということがいわれております。こういうようなもののおもなものは、これはぜひ押えたい、こういう感じを持っております。それからそのほか授業料の問題、国鉄の割引の問題、地下鉄の問題、まあ目下いわゆる話題にのぼっておるおもなものを考えておるわけであります。
  50. 大原亨

    大原委員 地下鉄の問題、住宅公団家賃の問題、こういうものも入っておる。  そこで質問を続けたいと思いますが、この公共料金のストップの問題は、やはり総合政策を立てないでそれだけストップをしたのでは意味ないということですね。郵便の問題でもそうです。もう一つは、例外を一つ設けますと、今度は参議院選挙が済んだら上げちまえということになる。私鉄の運賃みたいな、佐藤総理がイニシアチブをとってわっとやったなと思っていると、しばらくするとしり抜けになる。こういうことがしばしば起きているわけですから、例外を設けるということはいけない。総合政策を立てること、例外を設けることはいけない。そしてそのストップをしている間に、物価については全体の政策を立てる。そういう佐藤内閣全体の姿勢がなければ、私は物価の問題は、公共料金の問題一つ取り上げてみましても、全然解決の足がかりになるものではない、こういうように思いますが、いかがですか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価問題一つ、これは縦横あらゆる面からにらんで総合的な対策を立てない限り効果をあげるとは思いません。ただいままだ大きな問題をあげておられませんが、私は賃金ストップとは申しませんけれども、賃金の問題も適当なところでなければならぬこと、これも一つつけ加えさせていただきます。
  52. 大原亨

    大原委員 佐藤総理が、質問せぬうちに挑戦されましたけれども佐藤総理、あなたは経団連の総会等でこの所得政策、賃金と物価の悪循環を断ち切るために賃金を抑制すべきである、こういう演説をされましたね。これはどういう理由なんですか。所得政策とはどういうことなんですか。あなたは御承知で演説されたのですか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 経団連の総会というのは間違いです。これは評議員会、多数の有力者が集まっておる、その席で、ただいま外国において所得政策、まだ成功した国はございませんけれども、やはりこういう点も少し考えざるを得ないんじゃないのか。私は最近の物価の上がり方から見るとたいへんな問題だ、かように思っております。また賃金の上がり方も、いまのような一八%あるいは二〇%をこすような状態で毎年毎年賃上げが行なわれたら一体どうなるのか、そこらもひとつ考えようじゃありませんか、こういうことを実は申しました。そういう際に、やはりいわれている所得政策というものもやはり問題があるのではないでしょうかと、こういうような意味で産業界の方に注意を喚起した、こういうことでございます。
  54. 大原亨

    大原委員 佐藤総理、経済審議会、木川田審議会、ですね。あそこで雇用、生産賃金の問題について専門委員会を設けて、ことしの九月から一年半の計画で慎重に討議をされておりますね。そういうようなことで、それほど問題がたくさんあるというふうな問題であるにもかかわらず、賃金と物価の関係だけを取り上げましてそういうことを言われるということについては、各方面からたくさんの意見が出ているわけです。つまりこういう意見であります。佐藤総理は物価の総合政策については全く行き詰まって、無策であるから、そこで賃金を押えるということを経団連の評議員会で演説をして、そうして経団連がそういうことを主張しているということにタイアップをしながら参議院選挙に持っていこう、こういうことであるというふうにいわれておるわけであります。実際に物価問題について取り組んでおる中山物価安定政策会議の議長、この人も幾つもの理由をあげておりますけれども、そういう単純な考え方というものはこれはだめだ、結論からいえば。そういうふうに言っているわけであります。つまりインフレをとめる政策が見つからないので何でも打てる手だけは打とう、そういうことで賃金を押えにかかったのだろう、こういうことが一つ。十年前にイギリスで国民的コンセンサスを得ることが前提で取り上げたこの問題も、歴史は失敗している。賃金だけで考えるのはおかしい。所得政策でありますから、利子や配当、企業利潤について、すべての所得のバランスを考えた政策でなければだめだ、賃金引き上げがインフレの根本的原因になっていることを証明しなければ、それは所得政策として賃上げ抑制を取り上げる資格はない。つまり挙正責任です。挙証責任は政府側にある、言い出した者にある。その根本原因について明らかにしないでこれだけ取り上げると、これはやぶへびだという意見であります。その他不景気のもとにおける物価高のやり方については、政策会議が提言をしているそういう政策を全部やったあとで、全体のバランスをかけて賃金はどうあるべきかということをやるべきであるというふうな指摘をいたしておりますね。これは各方前、同友会の諸君だってそういう意見であります。半分くらいはそれに同調であります。私は、佐藤総理は、経済審議会に諮問をいたしておって、その問題を総合的に検討しておるという段階に、ひょっと出てきて、閣議でそういう議論をしたり、迎合的な議論に耳を傾けたり、外に対して演説をしたりというのは、一国の総理としては経率のそしりを免れぬと思いますが、いかがですか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 迎合的な意見という、ことばじりをとって言うわけではありませんが、だれか、みんなこれを喜んでおるなら、私の発言は迎合的だといわれてもいいのですが、いま言われるようにまつ正面から大原君も反対をしておられる。だから私の発言は迎合的ではなかった、そのことは十分御理解をいただきたいと思います。  ところで、私はいまの所得政策、これが簡単なものでないこと、これは御承知のとおりであります。幾つかの条件がそろわなければ所得政策はやれない。また幾つかの条件が整ってもなかなか実効はあがらない。しかし私がいま指摘したものは非常にティピカルな、その典型的なものであります。生産性以上のどんどん上がっていく賃金、そういうものは抑制すべきじゃないか。それはもう賃金が生産性をほんとうに上回って上がっていく限りにおいては、これは物価の問題をとめようといったってそれは無理だと、こういうことであります。だから私は適正なるところにとどめるべきだ。これは私の言うことも、極端なことを私はあの席では言ったつもりであります。どうかそこらで誤解のないように願っておきます。  そうして、ただいま言われる利潤等の問題は、これはもちろん企業という限りにおいて、適正なる利潤がなければならないことはこれもわかりますが、ただ問題は、分配の問題だろうと思います。その分配の問題も、一割五分もあるいは二割もあるいはそれより以上も配当するような、あるいはまた蓄積するようなそういう企業があれば、もっと消費者に価格を下げるような、そういうことをやるのが当然じゃないでしょうか。私はそういうことをも含めて関係者の猛省を促したつもりであります。いま国際的に見まして、ダンピングがいろいろ問題になっている。国内においては高く売られておる。しかし、こんなダンピングのような問題がいまの状態で起こるという、そこらにも問題があるだろうと思いますから、私は関係者の方々に、これは労使双方に対しまして十分猛省すべき問題だ、かように思っております。
  56. 大原亨

    大原委員 佐藤総理。あなたは総理大臣ですから、全体の国民生活のことを考えられるわけですが、たとえば日本の個人消費支出にいたしましても、GNPの中の位置づけからいたしますと、だんだんと下がっているのです。それから雇用者の所得にいたしましても、パーセンテージはだんだん下がっておりますよ。付加価値における労働分配の率にいたしましても、国際的に高くないですよ。そういう点を考えてみましたら、政治というものは、池田さんの月給二倍論、所得倍増論ではないけれども、つまり国民生活を引き上げるということが目標なのです。だから、そのことに対しまして賃金を抑制するという方針を出しながら、物価とかみ合わせたり、公共料金の政策とかみ合わせるということは、私は全体の政治を預かる総理大臣としては、これは欠陥があるのではないかと思う。所得政策を振りかざして、この方針をとっていくのだということは内閣全体の方針なのですか、いかがですか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだそこまできまっておりません。私が経団連の評議員会で発言したのも、政策を確定したと、かような点はございません。
  58. 大原亨

    大原委員 それでは聞きますが、この所得政策に対しまして、いままでの議論を踏まえて、経済企画庁長官はどういうお考えですか。労働大臣はどういうお考えですか。
  59. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 今日の物価問題を論ずるときに、最近における賃金の上昇というものが非常に密接な関係があり、そして相互循環的な現象さえ生じてきておる。すなわち最近における急上昇の中には人件費の増大を理由とするものがたくさんある。そうい意味において私は、物価の原因の中に人件費の上昇、労賃の上昇というものが深い関係にあることを認めざるを得ません。しかし、しからばそれをすぐいわゆる所得政策というようなものによってコントロールすべきかどうかということについては、先ほど総理の御説明もありましたように、これは各国の例等も見ましても、なかなか効果がおさめにくい。先ほど話がありましたが、やって効果のないようなものをやるといわれても困るわけでありますから、私たちは十分その効果をきわめなければなりません。したがってその効果をきわめる意味においては、賃金と物価との関係についての理論的な究明もさらに深めたい。かつまた賃金以外のいわゆる非賃金所得との関係考えなければならない。いろいろの問題点を持っておりますから、所得政策については目下研究をしておる。しかし、最近における物価高が賃金との関係がきわめて濃い、こういう事実は否定することができない、こういう考えを持っています。
  60. 野原正勝

    ○野原国務大臣 賃金と物価の問題等は総理大臣あるいは経済企画庁長官から御答弁があったとおりでありますが、私はこの際わが国ではまだまだ所得政策を採用するのはきわめて困難である、いまはむしろ所得政策を直ちに実施をすべきときではないというふうに考えています。そこで豊かな勤労者生活の実現のためにいまなすべきことは、やはり貯蓄をふやす。勤労者の諸君の所得からできるだけ長期の貯蓄を行ないまして、それが財産の形成を行なわしめる。住宅資金であるとかあるいは株を持たせる、そういったことができますならば、そこに総需要を抑制し、あるいはインフレの危険をも防止できる最も有効な対策ではないだろうかと考えまして、勤労者の財産形成の政策を積極的に進めたいというふうに考えております。
  61. 大原亨

    大原委員 賃金、雇用、生産性の問題については、専門家を含めて、経済審議会が諮問しているんですよ。しかも一年半の日程をもって長期間の長期的な構想をやっているのです。つまり、所得政策というものはバランスがとれていなければだめなんです。公平なんですよ。もう一つ国民的なコンセンサスが必要なんですよ。絶対条件ですよ。そういうときに、物価政策に失敗した佐藤内閣がこんなやつをやぶから棒に突き出すというようなことは、全くこれは政治じゃないということですよ。だめだということですよ。しかもいまの答弁は全部違うじゃないか。  物価政策の一つといたしまして私はお聞きしたいのですが、厚生大臣、この国民年金とか厚生年金あるいは恩給、そういうものは物価がこんなに上昇いたしますと、八%も上昇いたしますと、そういう社会保障の対象となっている老人とか身体障害者とか母子家庭とかあるいは病弱者とか、そういうような人々には非常に過酷なしわが寄るわけです。弱肉強食なんですよ、物価の上昇というのは。国民の金を使うやつだけがもうかるわけだ。ですから、その格差が増大するわけですけれども、私は、物価政策の一つとして、厚生大臣や関係大臣は十分議論をして、物価が上昇したならば、物価や賃金、生活水準、その上昇に見合って年金額にスライド制をとっていくような、そういうことをこの際確立をしなければ、物価に対する政治不信というものを——しりぬぐいとして、あと始末としてもそういう政策をやらないと、政治の権威というものはないと私は思う。しかも日本の社会保障の水準はヨーロッパに比較いたしますと三分の一ですよ。いろいろの問題が停滞しておるのですよ。ですから、そういう点について年金、恩給に対するスライド制をとるということについて、私は物価対策の別の面からいたしましても大切な問題であると思うが、厚生大臣の所見を聞きたいと思います。
  62. 内田常雄

    ○内田国務大臣 物価上昇等の状況に伴いまして、厚生年金、国民年金等の年金額はそのまま据え置かれますと、お説のように実質購買力年金額というものは減少いたしますので、当然私はこれを改定すべきであると考えますし、現にまた厚生年金法あるいは国民年金法におきましても、その趣旨を入れまして、いわゆるスライド制とは——当然スライド制とは違いますけれども国民一般の生活水準その他経済に大きな著しい変動がある場合には年金額を改定すべきことがうたわれておることは、御承知のとおりであります。ただ、それはいまも申しますように当然物価の上昇というようなことを前提として、つまりインフレを前提とする施策というわけではございませんので、一般的にスライド制ということについては、私も国務大臣の一人、むしろ国民を守る者の一人として考えなければなりませんので、物価、賃金政策は一方において大いにひとつやってもらいながら、しかしそれがどうしても押え切れないような事態のもとにおきましては、一種の政策的スライドといいますか、政策的改定というものを、年金額についてはやるように努力をいたします。現にまたこれまでもやってきておるところでございます。
  63. 大原亨

    大原委員 質問を進めます。  われわれはこの国会は公害国会といたしまして議論をしてきたのです。佐藤総理。それで私は、つまり石油の輸入量、これを原料や燃料として使う量というものが環境を汚染する大きさと比例するということがよくいわれるわけであります。つまり、化学的な物質による環境の汚染や身体の汚染ということが非常に大きな問題になっている。そこで、前の国会のときにチクロの問題を議論いたしました。議論いたしましたが、日本の食品衛生法の食品添加物三百五十六ある、あるいは十万をこえる薬事法による薬の許可、そういう化学的な物質による身体の直接的な汚染、こういうものについて、私は決意を新たにして総点検をしながらやるべきである。そういう点については、食品衛生法の総点検、改革をやるのだということを佐藤総理は私の質問答弁されております。言行録に載っておるけれども、この食品添加物や薬事法の総点検、こういう問題についてはどういう考え方で取り組んでおられますか、御答弁いただきたいと思います。
  64. 内田常雄

    ○内田国務大臣 薬品についても食品についても同じことになりますが、たとえば食品の添加物につきましては、私どもは、これはもう国民がみな総関心を持っておることでありますので、とにかく疑わしきものは総点検の上どんどん整理をしていこう。いま大原委員は三百五十六とおっしゃいましたが、三百五十六もありません。この間まで三百五十一でしたが、最近また三つぐらい減らしましたので、おそらく三百四十台ぐらいでございますが、さらにこれをここ二、三年をかけまして、おおむね慢性毒性のものが、あるとすれば多いわけでありますので、いま直ちに不見識にみな削るわけにはまいりませんが、毒性ありと考えるようなものは、ないとは思いますが、あるものにつきましては、慢性毒性を総点検をいたしますので、総点検には二、三年かかりますが、しかし私は、少なくとも無益なものは、毒性があるないにかかわらずやめたほうがいいじゃないかということを考えております。でありますから、極端な場合には、私がよく口ぐせのように申しますように、毒性があるなしは別として、紅白のもちまでもやめますか、こういうようなところまで、実はほんとうに私は考えております。これは梅干しにしても紅ショウガにしても同じでありますが、色素の点検なんかにつきましても、無害であっても無益なものはやめる方向で私は世論に問いたいと考えております。薬についても同じわけでありまして、いまお話がございましたように、過去から蓄積された商品の薬の総数というものは、電話帳より厚くなって十万件ぐらいになると思いますが、実際にはそんなに使われていない。医者の薬価基準に載っておりますのも四千件ぐらいでありますので、この問題については総点検といってもなかなか総点検が及びませんので、新しいものにつきましてはその副作用とか有効性について厳重な審査をする一方、過去蓄積をしましたこれらの薬については、どういう方法でやるかということにつきまして、私はまじめなつもりで、私の周辺に十一人の専門家の方にお集まりをいただきまして、その処理方法について目下真剣に検討いたしております。これは今年度中にはどういう方法でやるかという結論も出してまいります。
  65. 大原亨

    大原委員 いままでの懸案の事項の中で、私は、児童手当の問題について質問をいたします。児童手当の問題については、本予算委員会でも最初にこの問題を取り上げまして議論いたしましたのは、佐藤総理が明快な答弁をされましたのは、思い出していただきますと昭和四十二年のときであります。昭和四十二年の議事録によりますると、佐藤総理は、四十三年から取りかかるんだという御答弁でありました。その後水田大蔵大臣が参議院で、たしか公明党の小平君の質問に対しまして、ネジを巻いたような答弁をいたしまして、また七月の臨時国会でこの問題を取り上げまして議論いたしまして、昭和四十三年からやることについては所信に変わりはないということをあなたは重ねて答弁されたのであります。鈴木厚生大臣のときです。この問題は昭和三十五、六年以来、社会保障制度審議会が長期計画として立てた中にもありますし、各党ともこの問題は、児童の人権を尊重するというたてまえから、世界各国が六十二カ国もやっているというたてまえからやってきたのであります。これがいまだに実現をされてないということで、今日までいろいろ議論になりましたが、来年度はいよいよ着手をするというふうにわれわれは理解をしてよろしいかどうか。
  66. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先般、児童手当審議会から、各方面の最大公約数的な意見を求められました大筋につきまして、幸い答申がございました。その答申を総理大臣にも大蔵大臣にも官房長官にもお話をいたしまして、いまお話しのようなこれまでの経緯も踏まえて、来年どうするかという真剣な相談をいたしました結果、結論的に申しますと、来年度から制度を発足させることにいたしました。したがって次の通常国会には児童手当に関する法制を提案をいたしまして、御審議をいただくつもりでございます。
  67. 大原亨

    大原委員 問題は中身でありますが、第三子からやる、所得制限をする、保険財政、年金財政、手当の財源の負担は、国が一本でやる、あるいは自治体がやる。こういう問題を含めて二、三点にわたって中身を明確してもらいたい。
  68. 内田常雄

    ○内田国務大臣 明年度の予算にも若干からむことでございますし、また児童手当審議会から御答申がありましたのは、いま申しましたように制度の大綱でございまして、私どもがいま大蔵省と折衝したり、また来年度の法制に取り組むべく検討いたしております実施細目は、この審議会の答申ともいささか違う面も出てまいってきております。それは、いま大原さんが言われましたようなことにも少し触れるところでございますので、これらの点につきましてはもう少し時間をおかしいただきたいと思いますけれども、児童手当審議会から答申がありましたこの対象の制限年齢などにつきましては、むしろそれをより大幅に対象とする、たとえば義務教育学校終了前の子供が三人以上ということではなしに、満十八歳以上の子供が三人以上ある場合の第三子以下というように広げるようなことを私どもは検討いたしたり、あるいはまた自営業者、農民等の児童に対する児童手当の財源としては、これは財源の一部をそれらの父兄にも負担をしていただくような審議会の答申ではございましたが、それらにつきましては、自由民主党のほうにおきましても、その負担については問題がありますので、むしろ負担をとってしまうというようなことも考えられておりますし、いずれにいたしましても、私は総理大臣とも話し合ったことでございますから、来年度からやるというわけでありますから、その細目につきましては、どうぞ次の通常国会まで時間をおかしいただきたいと思います。
  69. 大原亨

    大原委員 三Kとよくいわれますが、国鉄の赤字、それから食管の赤字、それから健康保険の赤字、これは全部政府の無策によるものであります。全部そうであります。これは一つ一つについて申し上げたいのですが、問題は、どの国会でも問題になりました医療保険の問題であります。  ことしは赤字ができたから保険料を上げ、患者負担をふやして、これを突っ走ろう、こういうお考えですか。しかし、これはいままでの議論を通じて非常に明らかなように、私は日本の医療の需要供給全体にわたる総点検をやらなければ、そうして何から手をつけるかということについて政治的な判断をしなければ、これはできぬと思うのですよ。これは、政府の失策を全部国民に転嫁することになるわけであります。来年は保険料を上げて患者負担をふやすということで赤字問題を処理する、突っ走る、そういうこう薬ばりの政策をやられますか、いかがですか。
  70. 内田常雄

    ○内田国務大臣 健康保険の赤字問題は、いまお説のとおり三Kと世の中でいわれるほどの重大問題となってまいりまして、私どももこれをいつまでもたな上げすることはできません。この問題は、ごく簡単に申し上げますと、こういうことを申し上げると御理解いただけると思いますが、政府管掌健康保険の対象になっておる被保険者の数は一千三百万人であります。これらの方々が現在平均一年間に納めてくださる保険料というものは、最近の情勢で見ましても、医療費はどんどん上がってまいりますけれども、そういうことを抜きにいたしましても、これまでの趨勢で見ましても一年三万八千円程度保険料として納めていただいております。ところが、保険需要がふえたり、また世の中が進みまして医療技術が発展したり、私どもも、あの薬は保険で使ってはいかぬ、この薬も使わせないということはいえませんので、先般の薬価基準の改正なんかにおきましても、それは一ぺん使うと何千円かかるというような、そういう薬も保険の対象に入れたようなこともございまして、一人当たりのために支払われるこの保険給付費というものは四万四千円余りでございます。したがって現状におきましては、一人が一年間に五千五百円ぐらいの赤字が出てまいります。それが千三百万人でありますから、掛け合わせますとすぐわかるわけでありますが、七、八百億円の赤字になります。しかし私は、これはそういうことなんだから、私は大蔵省じゃありませんから、赤字消しだけをするつもりはございません。保険につきましては、いろいろな態様の保険がございましたり、また私どもがぜひやりたいというような構想もございますので、今度、来年この保険の財政収支に手をつけます場合には、これはかねての約束がありましたので、単に赤字対策ということでなしに、かねて関係の審議会にも御相談を申し上げている抜本対策の一環ということとからめて、保険制度を合理的にするということにからめて、これらの赤字問題も合理的な解決をはかってまいる。これは、銭のことは一つも触れないということではございませんけれども、銭のことに触れるにいたしましても、諸般の問題とからめて合理的な制度改善の一環としてこれをはかるということで進めてまいります。
  71. 大原亨

    大原委員 次に繊維問題について質問に入るところですが、田中委員のほうからひとつ質問していただきます。  以上、私が質問をいたしましたが、これは六年間のバランスシートからいえば、質疑応答のとおりであります。私は、のんべんだらりと今後の、四選後の佐藤内閣が続いていくということを、国民は、いろいろな機会にあらゆる場所を通じて意見が出てくるし、批判するだろうと思っております。私もきびしい批判を持っているわけであります。そのことは御承知のとおりであります。私はそういう面において、佐藤総理が、いままで指摘をいたしました諸点について、この決意を新たにし、虚心に反省をされて、そうして出直すつもりでやってもらいたい、こういうことを強く要望いたしまして、私の持ち時間が参りましたから質問を終わりたいと思います。
  72. 中野四郎

    中野委員長 この際、田中武夫君より関連質疑の申し出があります。大原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中武夫君。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 関連質問としてお伺いをいたしたいと思いますが、時間の関係等もございますので、ごくすんなりとお伺いをいたしたいと思います。したがって総理もすんなりと正直にお答え願いたいと思います。  まず繊維の日米交渉でございますが、一昨年からの繊維の交渉経過を振り返ってみますのに、これほどわけのわからないものはないと思います。一体政府は、この繊維の問題を純然たる経済問題として取り扱っておられるのか、それとも日米両政権佐藤政権とニクソン政権の政治問題として考えておられるのか。経済問題を両政権下の政治問題として交渉しておられるところに問題があるのではなかろうかと思います。総理はどのようにこの問題を把握しておられますか、お伺いいたします。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米間の貿易の一品目、かように考えれば、これはもう純然たる経済問題だ、かような御批判も当たろうかと思います。しかし、両国が置かれておる国際経済に占めておるその地位考えますと、それだけではどうも済まないように思います。私が申し上げるまでもなく、GNP第一の経済大国アメリカ日本もまた自由陣営では第二だといっております。この問題が両国の間でいろいろな摩擦が——いまずいぶん貿易が拡大しておりますから摩擦もあるだろうと思いますけれども、両者が提携してはじめて国際経済を伸長さすこともできるのだ、さような意味合いにおきましては、私どもこれはやはり政治的な問題ともからんでおる、かように考えざるを得ないというふうに思っております。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 私は政治問題、こう申し上げておりますが、あえて佐藤政権とニクソン政権の取引である、このように考えますが、どうなんです。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さような意味の政治問題ではございません。御承知のように、私どもなるほどよく一部からいわれます。佐藤はニクソン大統領と沖繩交渉した、そのときに取引で繊維問題を約束したんだ、密約説、これがいわれておりますけれども、密約説がなかった証拠は、六月にこの話が、両大臣が出かけましても解決をしなかった。断絶をした。それから見てもやっぱり密約でないこと、両政権だけの問題でないこと、これはおわかりがいくだろうと思います。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 それがわからないんです。政府は今日まで一方的に譲歩をしてまいりました。そうして早期妥結をはかろうとしておられるようです。なぜそんなに急ぐ必要があるのか、これが疑問なんです。いま密約説、取引説はない、このように総理は申されましたが、また十一月ですか行かれてから、一たん打ち切ったのが再度の渡米のあとまた盛り上がってきた等々から考えますと、やはり何かあるのではなかろうかと思うわけであります。さらに米国案の最大のポイントであるところの個別規制、一体個別規制をやろうとしておるのかどうか。この個別規制で両国の首脳間で話し合いがついておる、すなわち総理は了承しておられるのではなかろうかといわれておるわけであります。現在の政治交渉の双方の主張といいますか、これは日本側は十七品目、六ワクですね。それに対してアメリカは、二十品目——これを十九品目に下げてきたとも伝えられておりますが、十六グループ、これであって、この対立した中で交渉を進めていく限り何とか形だけを整えろということになるのではなかろうかと思います。そのことは、かっこうは日本側の主張のようなことをとるにいたしましても、中身はアメリカの主張をいれる、このようにしか考えられないのであります。ことに、もしアメリカが過度の輸入の増大があると認めたとき、双方が協議する、しかし三十日以内に協議がととのわなかったときにはアメリカが一方的に規制をする、それに対して日本は代償も報復もしないという、これを裏返して申し上げるならば、アメリカが思うとおりにやる。それに対して日本は、ガット等の規定に基づくところの手続をはじめ、何もいたしません。いわば全面譲歩、無条件降服ではなかろうか、このように思いますが、個別方式は絶対とらない、そうしていま申しましたような、一方的にアメリカが最終的な、きめて押しつけてくることに対して、日本は何事も申し上げません、こういうことではないということをはっきりしてもらいたいと思います。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまたいへんむずかしい段階になっておりますので、これは大事な国会ではございますが、私はデリケートな外交交渉の最中、その事態を明らかにするわけにいかないように思っております。しかし基本的なものの考え方は、どこまでも互恵互譲でなければ話はまとまるものではございません。一方的だけの話では話はつかない。ことに、私どものいまやろうとしておるものは業界の自主規制でございます。いわゆる業界の方の理解と協力がない限り、どんなことを政府が約束いたしましても実現するものではございません。そういう大事な問題でございますから、ただいま言われることは、むしろ政府に対してこういう点を注意しろ、かようなおことばだろう、かように私は思いまして、伺ったのでございますが、いままでもしばしば問題になっておるように、ガットの原則というものは、これはもうれっきとして各国承認しているものがございますし、また個々の品物について制限を加えて、そうして輸入量を削減する、いわゆるカットバックというようなものが考えられては、いわゆる貿易の自由、拡大はないのでありますから、そういう基本的な問題については私どももよく主張し、アメリカ側に理解を求めるつもりです。ただいま詳細について、私がお話しができない段階であることだけ、御了承いただきたいと思います。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 一つは、なぜ譲歩しても妥結を急ぐのか、日本に妥結を急がねばならない理由があるのかどうか。それから、個別規制、これはいたしませんということをいままで何回も御答弁になっておるはずであります。これはいま微妙な段階であるから言えないということは、ちょっとおかしいと思うのです。さらに、先ほど申しましたように、協議はするが、三十日たってととのわなかったときにはアメリカが思うようにしてください、それに対してこちらは文句は申しませんというのは、どういうことなんですか。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま交渉しておりますことは、通商法案、これが通るということは、いわゆる自由貿易陣営から見まして、これはたいへんなことだと思っております。したがって、通商法案なるものはアメリカ国会のやることで、とやかく私ども内政干渉するつもりはございませんが、しかしやはりこういうものは、一部保護貿易論者に力をかすだけですから、そういうものはできれば話をすることによってそれをチェックできるなら、これはぜひしたい、かように私は思っております。この点では、おそらく政府のやっていることもお許しがいただけるだろうと思う。  ただしかし、政府アメリカの言いなりではこれは困る、かようにも言われる。だから、私は先ほど互恵互譲ということを言っているし、また国会そのものからしばしば決議もされておりますし、国会の決議を無視して、政府はできるものじゃございません。どこまでも政府はこれを尊重せざるを得ないのだ、そういう立場で、私ども交渉にはワクがはまっておる、かように私は理解しております。  そうして、いま三十日以内にかってなことをするというこういう条項、こういうものは簡単に私どもが了承するとは思っておりません。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 七〇年通商法案の問題につきましては、後ほどお伺いいたします。  いま総理は、自主規制である限り、業界の協力がなければできない、これは何回かおっしゃいました。しかしながら、いわゆる見切り発車をせられた。その上、まあわれわれが新聞等の情報で見る限り、譲歩に譲歩を重ねておる、このように受け取っております。そのような中で、ほんとうに政府は業界を納得さすだけの自信があるのかどうか。もし納得さすことができなかったときにはどうするのか。今日まで強権を発動しない、すなわち貿管令の一条六項ですか、等は使わない、このように言っておられますが、業界の一部ではこれに対していろいろな危惧を持っております。心配をいたしております。中には、国会開会中は待っておって、国会が閉会になったときに強権を発動してくるのではなかろうか、あるいはまた、この国会が十八日に終わりますが、そのころに何か適当な話し合いをつけ、譲歩してきめるのでなかろうか、このように見ております。したがって、総理は、このマイクを通じて、全国の業界の人たちに、心配しなくてもいいということが言い切れるのならば、そう言っていただきたい。  さらに、これは総理というよりかむしろ、自民党総裁としての佐藤さんにお伺いいたすのですが、きのう福田さんをはじめ四名の——あなたと違います、福田一さんのほうです。四名のいわゆる自民党代表団が渡米いたしました。これは一体どのような資格、たとえば自民党の代表ということであるのか、あるいは政府から何らかの権限を与えられておるのか、どういう資格で、どのような目的で行かれておるのか、これもあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この種の交渉ごと、急ぐのは一体どういうわけか。私は、両国の友好親善関係にひびが入ることのないように、かように思って急いでおるわけです。私、この前の国連の記念集会に出かけて、そのあとでニクソン大統領に会いまして、幸いに、その他の事柄はたいへんうまく行っている——これはもう国民の皆さんにも喜んでいただくように、沖繩返還等については何らの支障なしにどんどん話は進んでおります。このほうはたいへん円滑に行っている。ただ経済的な問題で、繊維問題、これはなかなかそれぞれの主張が強く、六月から交渉がとだえて、切れてしまって、そうしてそのままになっている。そこで、十一月に会った際に、両者はもう一ぺん気持ちを新たにして、とにかく妥結するつもりで交渉しようじゃないか、こういう申し合わせをいたしました。それがただいまの状況であります。これは別に、約束があるからとか、こういうわけのものではありません。また、在来からのわがほうの主張を基本的に変えているというようなことはございません。私は、ただいまの状況でものごとを見ますのに、やはり貿易額、両者百億ドルの線になんなんとしておる、あるいは百億ドルをこすかもわからない日米貿易の額から見て、いろんな問題があちらこちらで摩擦を生じているのは当然だろうと思います。繊維もそうだし、洋食器でもそうだし、あちらこちらの問題が何かとある、かように思っております。しかし、ただいまの状況を長く置かないで、早く解決することが何よりも必要なことじゃないか。そうして、ことにただいまの、先ほどはアメリカの国会の問題ではあるけれども、通商法案が成立しようという、それで、これがもしも妥結することによってとどめることができるならば、私はたいへんなしあわせだろう、かように思って努力しておる最中であります。したがいまして、この問題はその程度に御了承いただきたいと思います。  また、自主規制であります限り、これはやはり業界の賛成を得なければならない、また、さような性質のものですから、積極的に政府が強権を発動するような筋合いのものでないという、そのことははっきり申し上げておきたい。ただ、私は、業界におきましてもいろいろの議論がある。もういいかげんなところで話ししたらどうかというような弱い意見もありますし、また、いま御披露になりましたように、どこまでも反対だ、やるならやってみろ、こういうような強い姿勢の方もあります。私は、ただいままだ業界のコンセンサスができていると、かようには思いませんけれども、しかし、もともと事柄の性格上から見まして、長いつき合いのことですから、商売そのものが長いつき合いですから、おそらくいいところで双方が譲り合うなら、お互いに不満ではあるが、この関係は持続することができるんじゃないだろうか、かように思っております。そういう意味におきまして、とにかくわれわれがあらゆる方法を通じて、財界、経済界の、また、中小企業その他の団体の御理解を得るような処置はとらなきやならないと思っております。  一番心配されておりますのは、もしもこの通商法案並びにその一連の交渉で、特別な被害が生じたときに一体どうしてくれるんだ、こういうようなお話があるだろうと思います。私どもは、いままで一般的な問題にしても、たとえば炭鉱が困っておれば炭鉱の救済もしておりますし、あるいはまた、米作の問題ならば、やはり農家に対しましてもいろいろの政策を実施しております。また、中小企業全般について、その助長振興のためにも相当の政策を行なっておるつもりであります。したがいまして、この種の問題がもしも政府の取りきめいかんによって非常な損害を与えるというようなことが発生すれば、政府は、これに対する救済の処置はもちろんとらなきやならぬ、かように思います。しかし、私、たいへんむずかしいことだろうと思いますので、あえてこの救済ということばを申したのですが、この救済の処置は万遺憾なきを期したい、かように思っております。でありますが、救済するから何でも聞け、こういう意味態度政府はこの問題と取り組んでおらないこと、それだけは御了承いただきたい。救済する必要のないような処置が講じられることを望んでおるわけでありますが、万一そういうような事態が起こればというのでございますから、これも誤解のないようにお願いをいたしますが、私は、そういうようなあらゆる点を講じまして、理解を得たいと、かように実は思っておる次第であります。  それから、最後に、福田一君外四名が出かけました。これは、国会開会中ではあるし、たいへん私ども心配しましたが、政府政府として交渉するけれども、自分たちも米議会の要人等について知り合いもあることだし、こういう人たちにも実情をよく話しして、そうして理解を深め、いまのような自由貿易主義で進むように自分たちも話したいということでありますから、そんならひとつ出かけられるようにということで、別に政府代表とかあるいは特別ないまの交渉のお手伝いだとか、そういう意味ではございません、これは別個の立場で、米議会の要人等とも、幾人かの友人がございますから、そういう点について十分話し合いたい、こういうことで出かけられたのであります。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、一つ確認をいたしますが、絶対に強制的な手段はとらない、——いいですね。それから、個別規制方式ははっきりしていないのですが、個別規制方式はとらない、——そうですね。これははっきりしてください。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 個別方式、これは私は、最初、昨年ニクソンに会ったときは全然事情を知らなかったのですが…(田中(武)委員「あなたは了承しておる」と呼ぶ)いや、そうじゃない、全然知らなかったのですが、このごろになりまして、だいぶん知恵がつきまして、実情がだんだん明らかになっております。いま言われるように、品目別、グループ別、そういうような態度でいま交渉している、かように私も理解しておりますし、そういうように指導しております。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、個別方式はとらないと理解していいのですね。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、いろんな条件はつくだろうと思いますが、いわゆる個別方式、そういうものはとらない。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 それから、中小企業等々については十分な救済措置も考える、こういうことですね。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中小企業の方々には、救済措置ということばはどうも失礼に当たるのじゃないかと思っておりす。平素でも中小企業振興にはいろいろ努力しておるのでありますから、ましてやこういうような問題で特別に被害をこうむる、あるいは損害をこうむる、こういうような業態の方については特別な処置をとること、これはいままでもあったことですから、御了承をいただけるだろうと思います。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 それから、福田一さんたちは、政府とは関係なく、それじゃ自民党の代表ということなんですか、そうでもないのですか。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 福田一君その他は、自民党のそれぞれの、繊維関係の対策委員長あるいは商工委員長その他でございますから、その意味において、党の立場において十分活動してくることだ、かように私は期待しております。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、七〇年通商法案でありますが、先ほどの御答弁を聞いておりましても、この繊維交渉がかりに何らかの形で妥結するならば通商法案の議会成立は阻止できる、あるいは阻止するために交渉の妥結を急いでおるのだ、このように受け取っていいのですか。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう意味でございます。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、私は若干意見を異にいたします。先ほど来総理は互譲の精神と言っておりますが、どうも、日本は譲っておるけれどもアメリカは依然として強腰ではなかろうか。なるほど、きのうですか、おとといですか、出しましたアメリカ側の回答とも言うべきものは、二十品目が十九品目になっておるということはあるようですが、その他内容においてはちっとも譲歩をしていないと私は思うのです。このようにして、アメリカは、一方に七〇年通商法案というのを振りかざしながらこの交渉を有利に導こう、こういうようにしておるわけなんです。ところが、むしろ通商法案が成立をして法による規制を受けたほうがいいんじゃないかと私は思うのです。なぜかと言いますと、自主規制によってやる場合と、向こうさん方が法によってやる場合は、世界の日米以外の各国に与える影響というか、あるいは状態というか、そういうものが変わってくると思います。たとえば、ヨーロッパ等との今後の貿易の問題にいたしましても、自主規制をということであるならばやりにくくなるのじゃなかろうか。さらに、法による規制をやる、これはアメリカが貿易の自由という世界の流れに反する行動であって、そのことはアメリカが世界の各国から批判を受けるだろうと思うのです。ところが、日本が繊維交渉によって話し合いをつけて自主規制をするというならば、このアメリカの自由貿易に反する行為に対する日本は共犯者あるいは加担者になるのではなかろうか。むしろ七〇年法案というのはアメリカ自体の問題である。したがって、これが成立するかどうかということは、私、繊維の交渉がかりに妥結をしなくとも、たいへんまだむずかしい問題があろうと思います。また、かりに可決をしていざ行なうにいたしましても、膨大なところの行政的な事務、行政負担があります。費用もかかります。これが法でやる場合はアメリカの負担です。ところが、自主規制ということになると、その膨大な行政事務あるいはこれに関連する費用その他は日本の負担になります。言うならば、例はどうかと思いますが、法廷における挙証責任の転換ということになると思うのです。したがって、私は、やるならやってみろ、これのほうがいいのじゃないですか。向こうが困るのですよ、あなた。どうなんです。たいへんな行政事務と費用をこちらがかかえ込むことになるのですよ。どうですか。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう御意見もおありだろうと思います。これに私全然耳をかさないわけでもありません。しかし、他の部門、たとえばいま成功しているといわれておる鉄鋼の自主規制、これなどは、たいへん、仕事が仕事というか、品物が品物と申しますか、そういう意味で、わりに自主規制がしやすい。それにしても、アウトサイダー等からやはり約束が乱れるというようなことがないわけでもない。しかしながら適当にそれは話ができている。まあこういうことを考えますと、一、二の例では成功したのもある。ただいまの繊維の問題については、これはいろいろな議論があると思っております。いまのような御議論も、私も一ぺん考えないわけではない。一応考えてみました。しかし私どもも、考えてみまして、日米間で、どうも、君のほうのやることはやってみろ、こういうようなことばを言わないほうがいいんじゃないかと思うし、まあとにかくできるだけの努力はすべきでないか、かように思っております。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、法案が通れば、繊維以外のこれこれ、これこれもやる、こう言っておる。そんなことやり切れるはずがないのですよ、行政事務的に見ても。そこで、繊維業界は、繊維だけを犠牲にさすのだ、こう受け取っておるわけなんですね。これは私が言うのじゃないけれども、繊維の献金が少なかったから繊維をいじめておるのだというようなことを言う人もあります。私はそう思っておりませんけれども。いかがですか。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 繊維関係について、さようなことはございません。これは私は、わが国の繊維業界の実情について、いろいろいままでも苦労してまいりました。つい二、三年前というか、あるいはもっと前になりますか、南方に対する輸出が行き悩み、ずいぶん織機も整理せざるを得ない、とにかく織機もずいぶん私ども買い上げたことがあったと思っております。政府がそこまでの手を伸ばしてみた。しかし最近は一体織機の数はどうなっておるか、当時と比べものにならないようにふえておる、かように思っております。それは結局今日のわが国の産業の発達の結果で、喜ぶべきことだ、かように思いますが、しかし、やはりオーダリーのマーケティングというものは必要なんじゃないのか。そういうものをやはり考えないと、特別にもうかった年もあるがその次は参った、これは困るから、やはりそういうことから、それが大事なことで、やはり事業そのものが秩序ある発展をするように指導をするのが、これは政府の役目でもある、かように思っております。私は、何よりもとにかく業界の方々が理解をしてもらわない限り、これは話は進むわけにはいかないのです。われわれががんばっておるのも、それは相手方の言いなりになればすぐ話はつくでしょうけれども、業界の納得は得られないと思うからこそ、私どもはいろいろ、いまがんばっておる最中であります。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 では業界が納得するような交渉態度、その結論、これを希望いたしておきます。  そこで、政府は機会あるごとに、国会決議は尊重いたします、このように言ってまいりました。また、この問題につきましてはいろいろな委員会で総理以下関係大臣が答弁をしております。ところが今日のこの交渉経過等を見ますと、国会決議がはたして尊重せられておるのか、いや無視せられておるのではないか、こう思うのであります。国会決議の大前提は、被害なきところに規制なし、そうして二国間の協定ではなくてガットの場において話をし、もし同じ協定をするとするならば、多国間の協定にすべきではないか、こういうようなことがその趣旨であったと思います。一体政府は、国会決議ないし閣僚の国会答弁に対してどのような責任を考えられておりますか。最高機関たる国会の決議を行政府がかってに無視していいのかどうか、お伺いいたします。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどからしばしば申し上げておりますように、国会の意向、決議、これは尊重しなければならないことだ、私もよく承知しております。  そこで、ただいまガットの場という、いわゆるガットの原則、これは守らなければならない、これは私どももやっぱり基本的な交渉態度だ、かように思っております。それが一つ。もう一つは、やはり日本だけの問題ではない。やはりいま交渉相手になりますものが極東、アジア諸国、それらの問題が了承しない限り、この上はどんな取りきめをいたしましても一回だけで発動、発効するものではない。このことは申し添えておきます。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 最後に一言だけ申し上げたいのですが、私は国内業者の損失に対する補償等について具体的にお伺いいたしたいと思っておりましたが、時間もないし、政府においてもそれは考える、こういうことでありますので、この件につきましては先ほどの総理答弁を全面的に受け取りまして、交渉妥結の結果、大きな損失を受けたり混乱があることは政府の責任において収拾し、救済をしてもらえるものであろうと理解をいたします。  次に、これは最後です。私は、いまこそ——私は常にこの委員会においても総理ほか関係閣僚に申し上げましたが、貿易構造の転換ということを申し上げたのです。御承知のように、いま日本の貿易は大体三分の一がアメリカ、三分の一が東南アジア等、その他が三分の一という状態でございます。しかしながら、いまこうして何回か総理あるいは関係閣僚との間にわれわれが議論をしなくてはならないほどアメリカには保護貿易主義が横行しております。こういう機会にひとつ貿易構造の転換を考える必要があるのではなかろうか。  そのまず第一番としては、日中貿易の拡大だと思います。今日日中貿易の拡大、いや中国国連等における、あるいは世界における地位が変わりつつあること、あるいは超党派的に日中の国交回復のために国会議員の過半数が寄って議員連盟が発足したというようなこともあわせ、こういった時期こそ政府は、たとえばココム、チンコムの問題、あるいは吉田書簡があるのかないのか、そんなことは私は問題ないと思いますが、輸銀の延べ払いについての利用、そういうことをもう割り切って、政府中国との間に政府間貿易協定を結ぶように積極的な努力をせねばならない時期がきているのではなかろうかと思います。総理、私が常に主張してまいりました貿易構造の転換、その第一は日中貿易の拡大、こう思いますが、いかがでしょうか。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点は私も日中貿易を拡大する、したい、その方向でものごとを進めてまいりたい、かように思っております。日中貿易もだんだんふえて、いま八億ドルをこしている、かように思っております。しかしどうもまだ小さい台湾のほうが九億ドルという状態ですから、やや台湾のほうにまだウエートがかかっておる。しかしもともと申せば、日中貿易は戦争前の状態考えると、日本の一番いい貿易の相手国だ、そのことを考えると、どうしてもこの際取り返さなければならない、こうおっしゃることは、これは適当だろうと思います。私どもも共産圏諸国との貿易額は年々ふえておりますから、これについては目を光らせながら、とにかく積極的に進める、こういうことであります。ただもう一つアメリカ側自身も、アメリカがGNP第一だといいながらも、これは保護貿易になるという、そういうことはどうも世界の大勢に逆行するものだ、かように私は思いますので、それはやっぱりアメリカ考え直さす、そういう努力はしなければならぬ、かように思っております。しかし、いまの方向を変えろとおっしゃること、これはしごく賛成でありますし、あらゆる機会を通じてそういうことをやらなければならぬ。それにはやっぱり何と申しましても、日中関係がいまよりも変わった形にならないと、それはもう限度が来つつあるのではないか、こういうことが皆さんも御心配だろうと思います。私がこの状態がいつまでも続かない、かように申しておるのも、最近の日中貿易の額はどんどんふえておる。そのことを考えると、昔とは違うし、また国交状態も外交状態もずいぶん変わってきた、かように思いますし、北京政府承認の国がだんだんふえておる、かように思います。ただし、その北京政府承認はしたが、台湾は追放した、そういう形で、アルバニア案のような形でものごとが進むとも簡単に実は考えられない。また北京政府自身も最近たいへん外交を活発に展開はしております。しかし、私はまだやや閉鎖的ではないだろうか。私自身、日本を軍国主義化呼ばわりしたり、こういう点は、核兵器を持つなら、持ったなら、またそれを開発したなら、軍国主義化大いに非難していただきたいと思うのです。しかし、そういうことがない。自衛隊を少しふやす、自衛力をふやした、それを直ちに軍国主義化呼ばわりされる、私はたいへん事態の認識を欠いているのじゃないか、かように私は思うのです。そういう点でやはり閉鎖的になられないように、開放的にあらゆる国と積極的に仲よくしていく、こういうことになりたい、かように思います。どうぞよろしくお願いします。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 関連質問ですし、この程度で終わります。時間も来ましたから。  そこで、私は正直者ですから、総理のおっしゃったことをそのまま一〇〇%やってくれるものと理解いたします。  どうも委員長ありがとうございました。
  102. 中野四郎

    中野委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は一時から再開することとし、暫時休憩をいたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後一時六分開議
  103. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢野絢也君
  104. 矢野絢也

    矢野委員 最初に、中国問題についてお伺いいたしたいと思います。  公明党としては、中国一つであり、すみやかに国交回復、国際社会への復帰を実現すべきであるとかねてから主張してまいりました。最近の様子を見ますと、中国問題につきまして、国際社会で孤立しておるのは中国ではなくして、むしろ日本アメリカ、日米両国の中国政策が国際的に孤立しつつある、このような印象を受けるわけであります。日中国交回復、あるいは国連復帰の問題をどのようにわが国として対処していくか、これはきわめて重大な問題であります。私たち公明党としては、この問題は国運を左右する重要な課題でありますがゆえに、あらゆる角度から合理的な論議を詰めていかなくてはならない。そのためには、いやしくも国論の分裂は避けなくてはならないし、また、国民からの政府に対する不信を助長することがあってはならない、このように考えておるわけであります。そして、そのためには、正確な事実認識、あるいは情勢分析、あるいはバランスのとれた論議ということが必要であろうかと思います。さらに、いままでのいきさつにこだわった、いわば感情論ともいえるようなだんご理屈は避けるべきであろう、あるいはまたイデオロギーに片寄った論議も、あるいはそういう価値判断も避けるべきであろうと考えております。あくまでも世界平和、アジアの緊張緩和、そしてわが国の国益という立場で合理的に判断していかなくてはならない。ところが、総理の所信演説を伺っておりまして、きわめて抽象的でわからない点が多過ぎるわけであります。何だかなぞなぞといいますか、なぞ解きをやっておるような印象を受けるわけでありまして、そういう意味で具体的にいろいろとお尋ねをしていきたいと思いますので、あまり硬直した御答弁でないことをお願いしたいと思うわけでございます。  そこで政府は、一つ中国論というお立場をとっていらっしゃる。そして問題は、中国代表する正統政府一つであるという意味だと理解いたしますが、その中国代表する一つ正統政府とは、いわゆる北京政府なのか、あるいは台湾政府なのか、この点について総理のお考えを承りたいと思います。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的なものの考え方につきましては、私は賛成です。ただ、その見方について、一つ中国、これは北京政府台湾政府も同じように一つ中国を言っている。したがって、われわれがとやかく言うことではない。われわれはサンフランシスコ条約に引き続いて日華条約を結んだ。その際にやはり中国代表するものは台湾にある中華民国だ、こういう形で条約を結びました。その状態がいまなお続いておると御理解をいただきたいと思います。
  106. 矢野絢也

    矢野委員 北京政府は、中国人民を代表する唯一の合法政府は中華人民共和国政府である、そして台湾省は中国の切り離せない一部であるということを非常に強調しておるわけです。佐藤総理一つ中国という立場をおとりになる限り、その正統政府がどちらであるか、それはいま日華条約があるということをいわれた、これはまた後にお尋ねするとして、その問題は別にして、台湾領土は中国の切り離せない一部であるというこの考え方、これには御賛成になりますか。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 台湾並びにその周辺の諸島、この統治権、これは日本は放棄した、こういうことでございまして、これについてとやかく言う権利は日本にはありません。またその後国際的に関係諸国で取りきめられた、こういうものでもございません。
  108. 矢野絢也

    矢野委員 日華条約で、わが国国府と国交を持っておる、これは事実を事実としてお述べになったことだと思うのです。これはいわゆるいきさつがそういうことであって、こうなっておるという御説明であって、こういう国際情勢の中で、ただわが国のいままでのいきさつだけで中国正統政府台湾であるというお立場は、これは正しいのだろうか、どうだろうか、この辺について再検討を加える必要があるのではないか、いきさついきさつとして、私たちの立場からいえば、このいきさつ自体が間違っているのではないか、この誤りを改むるにはばかりがあってはいけない、こういう国際情勢の大きな流れから見て。これからそういう御認識を改めるというお気持ちがあるかどうか、いきさつはともかくとして、今後の問題として。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような条約を結ぶと、国際的な権利もあるが、同時に義務もあるわけです。ここに国際信義というものがあるわけです。こちらのほうの都合でそれを変えるというわけにもいかない、かように私は理解しております。
  110. 矢野絢也

    矢野委員 そこで伺いますが、日華条約、これの適用の範囲、効力の範囲でございますね。これは大陸中国にも及ぶものと理解しておられるかどうか。
  111. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 日華平和条約につきましては、日本国と中華民国との間に締結せられた条約でありますから、第一条の戦争終結宣言というような国と国との合意、約束ということについては、両国の間において認められたものでありまして、これは国と国との間の合意である、こういうふうに条約論としても解すべきものである、こういうふうに考えます。
  112. 矢野絢也

    矢野委員 私は大陸に及ぶのかどうかということを伺っておるのです。
  113. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは先ほど申しましたように、国と国との条約でございますが、その当事国が実際上の地理的な条件によってのいろいろの事項についてまでこの範囲が及ぶかどうかということになりますと、当事国である相手国政府の事実上の状態というものに着目しなければならないと思います。
  114. 矢野絢也

    矢野委員 事実上の状態に着目をするというおことばは、非常に含蓄に富んだおことばだと思いますけれども、事実上の立場からいけば中華民国はいわゆる台湾しか支配をしておらない、これは事実の問題であります。したがって、事実上の立場で事実上を着目しなければならないということは、支配しておらない大陸についてはこの効力が及ばない、こういう御意見であると理解してよろしゅうございますか。
  115. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 平和条約の上にも規定がございますように、現実の適用の範囲等については、将来支配下に入るべきところに及ぶというような規定があるところが、いわば含蓄のあるところではないか、かように考えております。
  116. 矢野絢也

    矢野委員 なかなか慎重な言い回しばかりをしておられて。大陸にこの条約が適用されるのかどうか、イエスかノーかでひとつお答えを願いたい。
  117. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは条約論でございますから、イエスかノーかという間がございまして、イエスかノーかとは必ずしもお答えできない、たとえば先ほど申しましたように、条約論としていえば国と国との戦争状態というようなものは、これはあくまで国と国との約束である、こういうことに相なりますし、それから現実に通商の問題、その他あるいは人事の往来というようなことになった事項については、あくまでも現実に支配されている地域ということが対象になる、こういうわけでございますから、それらの性質により、事柄によってイエスであり、ノーである、こういう性質の問題であると思います。  お断わりいたしておきますが、これは条約制定のときの考え方であり、またこの条約の性格であり、また一般条約論としてさように解すべきものである。よけいなことをつけ加えるようでございますが、これらの点は国連におけるいわゆる代表権の問題というところにもこれは関連してくる問題でございまして、こういう複雑な状態におきましての条約論として、必ずしも一つ一つ事項についてイエスとかノーというふうなお答えができないというのが、これが真実の姿であると思います。
  118. 矢野絢也

    矢野委員 御意見承っておりますと、かなり御苦心のお答えだと私は思うのですけれども、と申しますのは、たとえば昨年三月十三日参議院におきまして外務大臣は、森中委員の御質問に対して、これは中華民国の主権者として唯一政府として、その条約が結ばれておる。さような観点から申し上げれば、中華民国全部にかかわりまして、地理的に言えば中国大陸にかかわりましても戦争状態は終結しておる、この平和条約において解決しておるという意味の、これはある意味からいえばきわめて明快な御答弁をしておられるわけです。これはイエスかノーかと言えないということではなくて、もうすでにイエスだとおっしゃっておるわけでありまして、今回はえらく慎重な言い方をしておられる。  これは総理にひとつお伺いをしておきたいと思うのです、と申しますのは、将来、時代の流れとしていわゆる北京を承認する、そういう事態になりましたときに、この日華条約が中国大陸に及ぶのか及ばないのかということは、法理論的にきわめて重要な問題になってくるわけであります。極端なことをいえば、これでもう全部終わっておるのだ、大陸までという御見解をあくまでもおとりになるのであれば、これは北京との条約も必要ないという結論も出てくるわけであります。昨年の外務大臣の御答弁、ここには総理も何か一言言っておられるようでありますけれども、「ただいま外務大臣からお答えしたとおりでございます。」ここでちゃんと言っておられるわけでありますけれども、その間国際情勢がだいぶ変わってきたから、あやまちを改むるにはばかることなかれということで、だいぶお考えが変わったんだと私は理解するんですけれども、この辺はどうですか。これはきわめて重大な問題ですから、くどいようですけれども……。
  119. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私の前の答弁も御引用になりましたから、私から先にお答えいたしますが、それと違いはないんでございます。つまり国と国との関係を律する、国を代表したそのときの唯一の合法政権であるところの政府との間に締結された問題につきましては、一番その大事な問題は戦争状態の終結であると思いますけれども、こういう種類の問題は国を代表した政府との間に結ばれたことでございますから、これは国全体に及ぶものである、これはイエスでございます。これはこの日華平和条約の解釈と申しますか、できたときの経緯から今日に至る政府態度である、こう申し上げて差しつかえないと思います。つまり戦争状態については、国と国との合意としては、中華民国との間に日本としては戦争状態が終結したものである、こういう見解に立っておるわけでございます。
  120. 矢野絢也

    矢野委員 かかるこの平和条約の最大のポイントとなるものは、戦争状態が終結したかどうか、この認識がやはり今後の国交を正常化ならしむるかどうかのポイントだろうと思うのですね。その戦争状態終結の件に関しては、これはイエスであるという御見解のようでありますけれども、先ほどイエスかノーかわからない、その中間があるんだといわれたのは、それはどういう意味においてどういう問題について中間があるのだというお答えをされたのか。これをひとつ説明していただきたい。
  121. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま私がお答え申し上げておりますのは、条約論としてのことでありますことを念のためにもう一ぺん繰り返したいと思いますが、そこで、しかし日華平和条約の上につきましても、適用の範囲というものについて、交換の文書もありますことは御承知のとおりでございますが、そういうことで念が押されてあるということは、条約論として非常に明確に土地について、直接に関係した問題については、事実上支配の及ぶ地域にしかこれが適用がないということでありますが、場合によりますれば、その間の状況といいますか、問題であいまいなところもないではないかと思うことを率直に申し上げたわけでございますが、国と国との国交関係とか代表権とかそういう問題につきましては、この条約できわめて明確になっておる、こういうふうに理解していただければけっこうだと思います。
  122. 矢野絢也

    矢野委員 かなり議論が錯綜してまいりましたが、もう一度話をもとへ戻しまして、中国大陸に関しましては、戦争状態は終結した、この日華条約によって、このようにお考えになっておるかどうか。この点についてお答え願いたい。
  123. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 条約論とし、法的には戦争状態が終結しておる、こういう立場政府はとっておるわけでございます。しかし、先ほど来お話がありますように中華人民共和国政府は法的には日本との間に戦争状態が終結していないのである、こういう見解をとっておることも私は承知いたしております。
  124. 矢野絢也

    矢野委員 北京がそういっておるということ、これはよくわかっております。問題は、わが国政府がどう考えるかという、そこに問題があるのでございまして、この点について、どう認識しておられるか。なぜかならば、先ほども言いましたとおり、将来、北京と国交を回復するときに、この問題はきわめて重大な問題になるわけであります。北京側は、戦争状態はまだ法的には続いておるんだという立場をとるでしょう。そもそも日華条約そのものを初めから認めておらない。それに対してわが国は、戦争状態は日華条約によって終わったんだから戦争状態終結宣言などはする必要はない、こういうお立場をとるかどうかということであります。この点について明確に答えてもらいたい。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いまもお答えいたしましたように、条約として法的な立場として政府見解を申し上げたわけでございます。同時にそれはそれといたしまして、私はこれは政治論になりますから別の立場から申しまして、現在政府としては、中国の大陸との間にも戦争状態が継続しているというような見解はとっておりません。これは条約論ではございませんから混淆していただくと困りますけれども、私どもはたとえば経済取引あるいは人的往来等もそれなりに行なわれておるわけでございますから、戦争が継続しているということは考えておりませんし、またこれも条約論だけではございませんし、常識的に申しましても、国民政府というか、蒋介石政府との間に不幸な戦争が起こってその当事国であるところの、当事政府であるところとの間に戦争終結が行なわれた、こういう経緯なども考え合わせてみまして、私はそういう見解が妥当であろう、かように存ずる次第であります。
  126. 矢野絢也

    矢野委員 五二年の適用地域に関する交換公文、先ほどもちょっとお触れになりましたが、この中で中華民国政府の支配下に現にあり、これはわかりますね。今後入るすべての領域、これに適用する、これはオアであるかアンドであるかということで議事録の合意がなされておるわけでありますけれども、それはともかくとしても、現に支配下にある領域、それから今後支配下に入るすべての領域、こう二つに分けて適用地域に関する交換公文というのが行なわれておるわけでありますが、この今後入るすべての領域ということは将来において入らなければ、つまり具体的には台湾政府の支配下に大陸が入らなければ、その大陸にはこれは適用されないという意味に理解してよろしゅうございますか。
  127. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、分類とでも申しましょうか、してみて適用地域と直接に関係ある事項についてはこれはやはり事実の上に即して解すべきであって、現実に現在におきましても支配下にないところにはこれは適用されない、そういうふうに理解すべきものと存じます。
  128. 矢野絢也

    矢野委員 この交換公文で台湾が支配してない、つまり事実の上で支配してない地域については、この条約は適用されないという御答弁であると思います。戦争状態の終結がどうとかこうとかということについては、それがいかにも適用されているかのごとき御発言もありましたけれども、その点きわめてあいまいでありますが、結論としてこの日華平和条約のいろいろな内容があります。この条約の効力は事実上大陸中国台湾政府が支配しない限りは適用されないものである。くどいようですけれども、こう理解したいのですけれども、どうでしょうか。
  129. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そこが非常にむずかしいところでございまして、国を代表する日華平和条約締結の当事国といいますか、当事国政府唯一の合法政権としてそうして締結されたものにつきましては、国を代表してでございますから国と国との関係においては、戦争終結というような状態はこの当事者が合意しましたことは中華民国に及ぶわけでございますから、これは地理の観念ということと観念が違うわけでございます。あたかもこれは中国代表権問題が国連におきまして現に——これもよけいなことを言って恐縮でございますけれども、だんだん御議論も出るかと思いますけれども、たとえばアルバニア決議案に賛成をした諸国、いま五十一カ国ございます。その中もいろいろ分析してみなければなりませんし、あとで御必要があれば御説明もいたしますが、国連加盟国全体の百二十九から申しますと五分の二というような状況である。そのほかの国々全部というわけではございません、棄権者もございますから。全部と断定するわけにもまいりますまいが、自余の国々は中国中華民国というところについての国連における代表権というものは、国民政府に与えてきておるわけでございます。そして今回の総会でも、いま申しましたように、五分の二は別として、そのほかのところは国民政府代表権を持つものとし、あるいはそれに近い考え方を持っている。こういうふうな状況でございますから、これは私の意見といいますよりも、事実関係がそうでございますので、こういう非常に複雑な状況下にあります場合におきましては、条約論といたしましても、その点はかっちりしておく必要があるのではないかと思います。要するに、国の代表権あるいは国を代表して、ある国と結んだ、合意したことについては、国と国とを拘束し合う点についてはこれが国全体に対して有効である、こういう見解をとらざるを得ない、これが現状におけるところの条約論あるいは法律論としては、私はそれで妥当ではないだろうか、かように存じております。
  130. 矢野絢也

    矢野委員 これは御苦労なことだろうということはよくわかりますけれども、端的に申し上げてそれは詭弁にすぎないです。確かに国という立場でお話をされました。中華民国中国代表する政府である。この政府と結んだ条約は云々と、それはそれでわかる。その国がどういう支配下にあるか、領域ですね。これについて交換公文で、大陸は及ばない、支配に入らなければ及ばないということをわざわざ言及しておられるわけです。ですからあなたの論法をお借りして言うならば、確かに中華民国とはそういう法律的なものはされたけれども、その中華民国台湾しか代表していないのじゃないか、その中華民国なるものは。この条約の相手国である中華民国中国全体を代表しているものじゃないということは交換公文であなたも認められておるわけです。だから私は中国大陸にこの条約は適用されるのかということをお尋ねしたら、それは中国大陸には支配しない限りは適用されないという意味のことを言っておられる。かと思うと、中国代表する政府として中華民国と条約を締結したんだからこの問題は済んでおるのだという、どうしてもあなたの言っておることは矛盾しておりますよ。これはどうなのですか、はっきりしてください。
  131. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 でありますから、問題と問題を、先ほど申しましたように分類してやはり論ぜなければならないのではないかと思います。これが本問題並びにこれに類する問題の非常に複雑でむずかしいところでございまして、適用地域を問題にするものはカテゴリーとして両国の国交関係、つまり戦争状態か、平和状態であるかとかいうようなこと以外の、先ほども申しましたが、通商上の問題であるとか、人的往来の問題であるとか、こういうことは条約によって律していかなければならない両国の関係事項でございますけれども、こういう点については事実上支配しているところにしか責任が持てない、こういうことを考えて構成されたものである、こう申し上げれば御理解が進められるかと思います。
  132. 矢野絢也

    矢野委員 こちらのほうが十分理解して聞いているのです。そちらのほうに矛盾があるから話がこんがらがってくるのですけれども。この問題よくわかりました。要するに日華条約というものは中国大陸に適用されるとは断言できない、かつては断言しておられたようでありますけれども、しかし前とのなごりにおいて国と国との問題などという、いわげ本筋とは関係のないお話をここで持ち出してきておられる、そのように理解して次に進みたいと思いますが、日華平和条約というものが将来わが国北京政府承認したり、これと国交を回復するときに条約を結ばなくてはならないその条約とこの日華平和条約とはどういう関係になるか。私たちの立場からいけば、これは日華条約というのがそういうときにじゃまになるのじゃないかというふうに思うわけでありますが、承認という問題は歴史の事実の問題として各国がしておるわけでありまして、もう台湾と済んでおるからそんなことをする必要はないのだという論法はまさかここではなさらないと思う。ただし承認ということになれば当然条約という行為がついてくる。この条約、確かに日本政府中華民国中国代表する政府として条約を結ばれた。しかし現実に大陸を支配しておらない。その大陸中国との条約、これは日華条約とどういう関係になるか。矛盾するのじゃないか。
  133. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これがさらに根本的に非常なむずかしいところでございますが、今度はその条約論とか法律論あるいは今日までの状態とは別に考えた場合にどうなるかというお尋ねでございますね。これは、ですからしばしば私も申しておりますように、この一つ中国という問題については、両方がこれだけ内外に対してがんばられている問題でありますが、そもそも世界第二次大戦に関連して国共相相克から発した問題でございます点に注目いたしましても、両当事者間で平和的な話し合いをつけて何とか結論を出してもらうべき問題で、その結論に対して、日本としても、他国といたしましても、これを認めていくということが新しい発想であり、また条理ではなかろうか、かように考えるわけでございまして、そういう願望が両当事者間にも生まれてきたり、そしてそれが実現されるようなときになりましたならば、ものの筋合いとして現在までの、今度は条約に戻りますけれども、そういうところについても、どういうふうにしたらばそれに合致し調整できていくかというふうに考えるべきものではないか、かように存ずる次第であります。
  134. 矢野絢也

    矢野委員 この両当事者間で平和的に話し合いをして解決してもらいたい、御自分でも言っておられたけれども、との願望、決して条理にかなった新しい発想というようなものじゃないです、それは。単なる願望にすぎない。そんなことがいつ実現するという見通しがあるのですか。
  135. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、これだけ重大な問題でございますから、時間を切っていっその願望が達成されるかというようなことではないと思いますが、すみやかにそういう状態が出てくればいいなという願望であります。
  136. 矢野絢也

    矢野委員 それは、いいなはわかります。お気持ちとしては私わかる。しかしどちらもわれこそは中国代表する正統政府である、唯一正統であると主張しているんですよ。そう簡単に願望が達成されそうにも思えません。逆に伺うならば、その願望が達成されなければいわゆる大陸中国との国交回復は、あなたの論法をもってすればあり得ないということになりますが、これはどうなのでしょうか。
  137. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この両当事者の姿勢を見ましても、一方と国交を持つ者とは他方は断絶をする、双方ともこういう非常に強い態度をとっておりますことが、これはひとり日本のみならず、先ほどもちょっと言及いたしましたけれども国連代表権の問題の扱いにいたしましても、たとえば中共承認国の中でも、これはやはり重要問題だから重要事項指定にどうしてもしなければならないという国が、有力な国も相当ある。あるいはまたアルバニア決議案の前段には賛意を表するが、後段、つまり追放にはためらいを持つ、あるいはこれには反対せざるを得ないからといってアルバニア案に反対する、実にこの間が国際的にも非常にむずかしい問題になっていることはいまさら申し上げるまでもございませんが、したがってそれらの国々も、両当事者がそういうふうな話し合いで平和的に解決することを同様に願望していると思います。こういうところの国際的な動きというものにも私は十分注目し、またこれらをも日本自体の主体的な判断の場合にも参考にしていかなければならない、こう考えておりますが、要するに、私は時間を切ってどうこうというふうに簡単に扱える問題ではない、かように存じております。
  138. 矢野絢也

    矢野委員 いろいろな諸外国の例をお出しになりましたけれども、それは事実としてそういうことはあるかもわかりません。しかし、わが国の外交を担当される政府として、よその国がどうだこうだじゃない。特に私は指摘申し上げたいのは、そういう国とわが国とは立場が違うということ。たとえばそれらのほとんどの国はかつて連合国であった。つまりわが国中国大陸に対するある意味での加害者であったということとは別の事情を持っておる。特別な事情にある。中国とは戦争しておったわけです。あるいは日華条約という特殊な事情もわが国にはあるわけであります。だから、よその国がどうだこうだということで論議をそらしてもらっては困るのです。しかも私がいまお尋ねしたのは、その願わしい願望なるものが実現しなければ、その条件が成就できなければ中国承認という結論は出ないのか。時間の問題じゃないです。前提と結論という関係において、この願わしい状況が実現しなければ大陸との国交回復は、時間が何日かかるか何年かかるかともかくとしても、それが絶対条件なのかどうかということを私は聞いているのです。願わしい状況というものが実現しなければ国交回復ができないのかどうか。時間がかかる、かからないということを聞いているのじゃない。それをひとつお答え願いたい。
  139. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は両当事者間の平和的な話し合いに期待したいということをしばしば申し上げておりますが、その中には、たとえば話し合いといっても武力が行使されるというようなことについては、特にアジアの緊張ということあるいは日本国の安全保障ということを考えてみましても、日本としても重大な関心を持たざるを得ないのではなかろうか。その辺のところにつきましての見据えというものを持たずして、しかもいま現実の状態として二つ中国というものがある、この状態に対していかに対処するかということについてはしばしば政府の言明にもありますように、また先ほど御質疑の中にもございました、たいへん傾聴したのですけれども、国益、国際緊張の緩和というところ、あるいは国際信義ということから割り出して考えていかなければならないというおことばがございましたが、まさにそのとおりであると思います。
  140. 矢野絢也

    矢野委員 いろいろおっしゃってくださるのはけっこうですけれども、私が聞いていることに答えてもらいたいのですよ。両当事者間で平和裏にこの問題が解決することをわれわれとしては願望しておる、期待しておる、その限りにおいては私もわかるのです。しかし、この願望なるものが実現しなければ、中国大陸わが国との国交正常化あるいは承認行為というものはこの願望というものを絶対条件としておられるのかどうか。それ以外に、願望がたとえ実現しなくてもわが国としても主体的な方法があるのじゃないかということを私はお伺いしたいからこういうお尋ねをしているわけですけれども、問題をそらしてもらっては困ります。もうほかの話も——はっきり言いまして時間あまりないのです。もう一度正確にやってください。
  141. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 三条件とでも申しましょうか、国益以下こういう点から割り出しまして何とか妙案がございますれば、これは別にどうこうということが成就しなければということは必ずしも停止条件にはならないかもしれませんが、要するに慎重に真剣に検討しなければならない性格の問題である、こういうことを繰り返し申し上げておきます。
  142. 矢野絢也

    矢野委員 総理、そういうわけですからもう総理にお尋ねするしかしようがない。日華平和条約というものは将来わが国中国大陸承認するときに障害にならないかどうか、どういう関係になるか、これをひとつお答えを願いたいと思うのです。私は何もけしからぬとかどうだこうだという立場で聞いているんじゃない。やはり国民がこれを一番聞きたがっているわけです。あまりあいまいな態度をとるとまた不信感が出てまいります一国論が分裂します。現在すでにもう大きく分裂しているわけでしょう。だからやはり所信を率直に述べていただかなければ国民の合意というのは形成できない、そういう意味でお尋ねしておるのです。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまさら申し上げるまでもなく、日本は蒋政権と戦争した。したがってその戦争が済んだときに蒋介石政権講和条約を締結する、これは自然の成り行きだと思います。私はそのことが今日ずっと続いてきている、将来の中国大陸との国交にどういう支障があるか、こういう問題をお尋ねだろうと思う。このできたことの経過はよく御承知だろうし、その歴史的事実を踏んまえて、そうしてこれから日本がどういうようにするか、これが今日の問題なんです。この条約が支障になるとかならないとか、そんな議論をしたってそれは始まらないのです。いまさらどうしようもないのです。過去の歴史がしゃんと証明している。厳然たる事実なんですから。
  144. 矢野絢也

    矢野委員 しかし総理、それはいささか暴論ですよ。日華条約が将来北京との国交回復にあたって障害になるかならぬかそんなことは問題にならぬなんて、そんな認識では、正直言いましてお話にならないですよ。先ほどから申し上げておるとおり、この日華平和条約というものは交換公文において現に支配している地域と将来支配するであろう地域とわざわざ分けてその適用範囲というものをきめておられるわけです。いま外務大臣とのやりとりでは、今後支配下に入らない地域についてはこれは適用されないという意味のお答えがあった。これはこれで私は政府の御答弁としては一歩前進だ。つまりなぜかならば、支配しておらない地域については、中国大陸との何の問題解決もされておらないという意味になるわけでありますから。だから日華条約というものが将来の北京との国交回復にとって障害になるかならぬかが問題外だなんという御発言は、私ははっきり言いまして承服できません。これは総理首をかしげておられますけれども、これはほんとうにおわかりにならないですか、総理
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あえて申し上げますが、過去の歴史的事実なんです。過去の歴史的事実を無視するわけにいかぬ、こういうことをはっきり申し上げた。
  146. 矢野絢也

    矢野委員 歴史的事実は無視できない、それはそれでいいでしょう。しかしその歴史的事実なるものは中国大陸については適用されないという二段階に分けた取りきめをしていらっしゃるわけです。そして現に中国大陸との国交回復というのは国民的議題になってきておるわけです。これももう御承知のとおりです。そうすると私は勘ぐるようですけれども二つ中国を将来においてお考えになるんじゃないかという疑いすら起こるのです、障害にならないというようなお立場をとるなら。台湾とはこういう条約がある。これは歴史的事実として尊重しなければいけない。現に中国との国交回復ということが国民的議題になり、政府も取り組むと言っておられる。私は政府のお立場はこれが全体をカバーする、だからこれをどうすればいいかというので苦しんでおられるのじゃないかと御同情を申し上げておった。はっきり言いまして、あまりほめた御苦労じゃないと思いますけれども。しかし台湾との条約は歴史的事実だ。そしてこの条約は将来中国大陸との国交回復に障害にならないということであれば、別の条約をまた結ぶ。この北京との条約と台湾との条約は何ら競合関係にないんだ、こういう御意見であるかと私は思いたくなるわけですけれども、将来大陸との条約ができたときに、これは競合関係になるのか、あるいはお互いに排除し合うものになるのか、その辺だけひとつ聞かしてもらいたい。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私外務大臣のやりとりを聞いていて、またいろいろお尋ねもありましたが、問題は、中国大陸日本との間に戦争状態が続いているか続いてないかという、こういう状態一つの問題だと思うのです。私は日華講和条約によって戦争状態はもうない、国と国との間にはない、かように理解しております。この点は、もしもまだ戦争状態が続いているのだ、こういうような御認識でいらっしゃるならば、いまの日華条約が大陸までは及んでないからこれは別だ、かようになるならば、これは私はたいへんな重大なる私どもと意見の相違だ、かように思います。
  148. 矢野絢也

    矢野委員 国と国との間の問題が解決しておるということをいま総理は言われましたですね。問題はその国がどういう領域、どういう地域を代表しておるのかということが問題になってきておる。外務大臣とのやりとりでは、日華条約の相手である台湾は大陸は現に支配しておらないわけであります。将来もどうやら支配できそうもない。だからこの中国大陸についてはこれは代表しておらないのだ、こういうふうに私たちは考えざるを得ない。どうですか。国と国というような抽象的な言い方ではなく、どういう地域の国だということが問題になってくるわけです。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま戦争状態は終結した、私はかように考えております。しかし中国大陸中華民国は支配しておらない。中国大陸を支配しておるのは北京政府だ、こういうことであります。だからこそ、初めて今日、北京政府をどうするのだ、こういう問題になっておるのじゃないですか。だから二十五年たった今日の状況が、あの二十五年前の状態とは違ってきている。だからこそこれにいかに対処するかということが問題になるのだ。これは何度も私が申し上げますように、日本だけでものごとをきめるような簡単な問題ではない。また、他国がどうこうしたからといってそれに追随するような日本中国との関係でもない。これは非常に緊密な関係があるのだ。だからそこらのところをよく考えて慎重に対処してまいります。これが一貫した政府態度であります。まだ現在の状態におきましても、この問題については慎重に考え中でございます。
  150. 矢野絢也

    矢野委員 どうもこの問題の本質をおそらしになる傾向が強いようですけれども、私が伺っていることは、最初から申し上げているとおり、日華条約というものは中国全体に適用されるものじゃないのだ、これはもう適用地域の交換公文でお認めになっているわけです。当然大陸との国交正常化が、いま総理も言われたとおり、これから問題になってくる。そのときに、この日華条約というものと新たに結ぶ北京とわが国との条約というものは矛盾しないのかどうなのか、これを何べんも、私はもうさっきからこればかり言っているのですよ。矛盾するのかしないのか、これだけお答えいただけばいいのです。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ようやくわかりまして、ずいぶん長いいきさつでございます。そういうところに問題があるから、これをいかにするかということで慎重にただいま考えております。
  152. 矢野絢也

    矢野委員 それではお答えにならないですね。この問題はまたあとで出てきますから、忘れないで覚えておいてくださいよ。  次にお尋ねしたいと思いますが、前回国連において鶴岡さんが演説をされた。国府の追放反対に非常に力点が置かれているように私は思います。わが国中国大陸との歴史的関係、これからお述べになって、「中国の人々が再び世界のあらゆる人々及び国家と調和のとれた、かつ友好的な関係を結ぶことになれば、われわれとしてもたいへん満足に思う。」こう言われた。しかしこれは昨年演説された内容とだいぶ違うのです。昨年は、中国加盟、国府追放ということは、アジアの緊張を一そう増大させる。そして中国が入ってくるということは、世界の平和、国連の将来に重大な影響を及ぼすのだ。あるいは中国国連憲章に定められておる義務と責任を履行する意思があるかどうか、これは疑わしいのだという意味の演説をしておられるわけです。ところが、ことしはこういう中国に対するある種の誹謗的な発言はなかったようであります。中国国連に入ってくることは緊張を増大させるとか、国連憲章の義務を全うするかどうか疑わしいとかという発言はなかった。この限りにおきましては、これは私は歓迎すべきことであろう、こう思います。  そこで私は伺いたいのですけれども、このように昨年とことしと中国を誹謗する表現がなくなった、違ってきておるというのは、政府中国に対する御認識が変わったものだと私は理解したいのでありますけれども、それとも単に国連の総会の空気が、そんなことを言うとぐあいが悪い空気だから、そんなことを言わないでおこうということだったのか、あるいは政府の認識として、中国国連憲章を破りそうな国だという認識をなくしたのか、これをひとつお答え願いたい。
  153. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 国連での今回の演説は、午前中にも申し上げましたが、議案に対する意見であれば十分であるという見解に立ちまして、簡潔にアルバニア案に対しては反対である、重要事項決議案に対しては賛成である、この態度を表明するということが大切なことである。これに集結いたしまして、例年に比べますと簡潔でございました。これは特に政府の方針を変更したというようなものではございませんで、議案に対する態度の表明ということに終始した、そういう意味では表現は多少短くなっておりますけれども考え方とか政策が変更されたというものではございません。
  154. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、昨年の中国国連参加は国際緊張を増大させる危険性があるとかあるいは中国国連憲章を守る気持ちが疑わしいとかいう御認識については、ことしは言わなかっただけであって、そう認識は変わっておらない、こう理解してよろしゅうございますか。
  155. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 議案に対する態度は変わっておりませんし、それからやはり国際緊張の緩和ということを念といたしておりますので、そういう気持ち、あるいは最近における、もちろん中共を含めましての国際情勢というようなことも頭に置きまして、先ほど申しました表現にいたしました次第でございます。
  156. 矢野絢也

    矢野委員 そこで、非常に国際的に各国が中国に接近する傾向といいますか、そういう事実が多くなってきております。私たちが聞いている範囲ではオーストラリア、ベルギー、ルクセンブルグ、レバノン、チリー、ニュージーランドその他アフリカの諸国もその折衝なりその気持ちがあるというふうに聞いておるわけでありますが、外務省として、中国との国交回復、中国承認、そういう姿勢で取り組んでいる国は多いと思いますが、この点いかがでございましょうか。
  157. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどもちょっと言及いたしましたが、最近のあらわれている事柄としては、やはり本件に関連する国連における各国の態度というようなことがいまお尋ねの点に触れるところかと思いますけれども、実は先ほど申しましたように、アルバニア案の中の中共加盟のくだりには賛意を表したために賛成投票になった国の中でも、国府の追放のくだりにはいわばためらいを感じて、そうしてこれを直接間接に表明している国がございます。  それから、アルバニア案に対しましては非常に棄権が多かった。先ほども言及いたしましたが、国連全体の加盟国の中で申しますと、アルバニア賛成の国が五分の二であるというようなところも考えなければならない。あるいはまた中共加盟賛成あるいは中共承認している国、その中の有力な国も重要事項には賛意を表している。こういうようなところを、私意見を申しますわけではございませんが、こういうふうに具体的にあらわれた本件に関する各国の動向、あるいは、必ずしもこれは演説等にあらわれておりませんところでも、その気持ちなり各国の思っておるであろうところの考え方というようなものを、それなりにいろいろ分析しておくことも、また私は日本としても非常に必要なことではないかと思います。したがって、いまお話がございましたが、この国連の総会後に承認いたしましたのはエチオピアでございます。一、二の国にさような動向を示す国があろうかと思われますが、国名その他についてまだ申し上げる段階ではございません。
  158. 矢野絢也

    矢野委員 そこで、いずれにしても中国国際社会、つまり国連に迎え入れようという風潮が強まりつつあるということは、歴史の現実の流れとして理解せざるを得ないと思います。これが来年になるのかあるいは再来年になるのか、これはいろんなメカニズムによって決定されていくことだと思います。しかし私が申し上げたいことは、いずれにしても中国国連に迎え入れられ、招請されるという、そういう歴史の流れが大きくつくられつつある、このように思うわけです。これはおそらく政府としても否定なさらないと思います。  そこで、私伺いたいのでありますが、わが国にとって中国承認、これはわが国と北京との二国間の問題です。それから、国連への復帰あるいは国連への参加ということは国際社会でのできごとである。わが国中国だけの問題じゃない。そういうふうに性格は違うわけでありますが、国連参加ということとわが国中国承認、これはどういう関係において御理解しておられるか。もっと端的に言えば、国連中国が入ってから承認考えなくちゃならない、これは池田総理もかつてそういうことを言われたことがあるし、現に政府筋にも木村官房副長官はそういう意味のことを新聞の座談会でしばしば発言しておられるわけであります。その意味は、北京が国連に招請されることが成ったときにはこの承認問題も何らかの展開を見せるのではないかという意味のことを言っておられるわけです。普通は、すでに承認してある国が、国連わが国もそれに協力して参加してもらうというのが筋論としては正しいことだと思いますが、いずれにしても、この国連参加とわが国中国承認というのは、どういう関係において、これからのスケジュールの上においてお考えになっておるかということをひとつ総理から伺いたいのであります。
  159. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 やはり二国間の承認関係というようなことが、国連加盟に対するその国の態度にあらわれるというのが本来ならば筋合いであろうかと思いますけれども、しかし、具体的な——これは各国の例を申してはまたおしかりを受けるかもしれませんが、必ずしもそんなことはございません。必ずしもそういう順序だけではございません。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣答弁でいいかとも思いますが、私もあえて立ったのは、観念論的にこの日中間の問題、また国連加盟の問題、別々にされることに私は抵抗を感ずるのです。むしろさようなものが観念論的ではなくて実際にいかに処理されるか。現在中国代表、これは代表はしていない、中国大陸に何らの権利を持っていないじゃないかというその台湾国連には加盟している、そういう状態ですね。だからこそアルバニア案が出て、台湾を除いてそして北京政府を入れること、こういうことになっているのですが、だからその二つを観念論的に別々のものだとしないで、やっぱり二つは実際問題としていろいろの組み合わせでこんがらがって解決をしなければならない問題だ、かように思います。
  161. 矢野絢也

    矢野委員 いかにもこちらが現実外交を知らない観念論者だと言わぬばかりのえらい皮肉に聞こえるわけでありますけれども、私は観念論的に聞いているわけじゃないのです。中国国際社会への復帰、国連参加というのは、時期は来年か再来年かはともかくとしても、一つの歴史的必然として起こっている。これは観念じゃない。事実の問題でございます。ただし、わが国と北京との間は、これは国際情勢とはかかわりなしに、これはもちろんかかわりあるでしょうけれどもわが国政府の決断というものがそこに必要になってくる問題ですね。これはどうお考えになるかということによって承認問題というのは変わってくる。しかし、国連社会というのが事実の問題としていまや予想されるわけです。ただ、端的に言えば、中国国際社会に復帰するまでにわが国としては承認をしておきたいという政府の姿勢なのか、あるいは、木村さんその他政府筋が言っておられるように、国連中国が招かれてから承認問題は現実に政治課題となるのか、これは私は観念じゃないし、二つを単純に並べでお尋ねしているわけじゃないのです。これは私がこんなことを言をまでもなく、総理はもうそのことは十分お考えになっているはずです、観念じゃなしに現実の問題として。ここで言わないだけなんです。それをひとつ率直に意見を述べてもらいたい。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いや、お尋ねに、どちらが先か、優先するかというようなお話があるから、これは観念論にやはりこだわっていらっしゃるのじゃないか、かように思ったのですが、重ねて、そういう点については観念論ではない、実際問題として処理すること、これは当然だ、こういうお話であります。それはいま私どももまだ結論が出てきていない。これは私の中の副長官その他はもっと進んだ話をするじゃないか、総理はどうしてそんないつまでも同じことを言っているのだ、おしかりかもわかりませんが、しかし、この事柄は重大な事柄ですから、十分の見通しがつかないうちに私が申し上げるわけにいきません。
  163. 矢野絢也

    矢野委員 私は昨年もことしも総理に——ことしは別ですけれども、従来この委員会で沖繩問題について何べんもお尋ねしまして、もうそのとき白紙白紙ということで御答弁がありました。またこれは中国白紙論ということじゃないかという印象。先ほども、重要な問題だからまだ結論が出ておらない、考えます。それならこの問題もこれから考えますというようなことでありますけれども、これはやはり、こういうお考えでは私は誠意がなさ過ぎると思います。  そこで、これにまた関連がありますが、いわゆる重要事項指定方式というものは、これはわが国中国国際社会復帰を阻止する試みである、そういう行為であると受け取られている面が多いわけでございます。これは、重要事項指定方式中国阻止政策であるとおそらくおっしゃらないと思いますけれども、なぜ重要事項指定方式をずっととってきておられたか、これはひとつ外務大臣、お答え願いたいと思います。
  164. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私はしばしば申しておりますように、国連憲章第十八条によりまして、こういう種類の非常に複雑で重要な問題こそまさに重要事項として加盟国が大いに慎重に扱うべきものである、こういう根拠に立っておりますということを申し上げております。ことに、加盟国がいまや百三十になんなんとしておりますが、この状況におきまして、比較的小さな問題につきましても重要事項として三分の二の議決方式をとっておりますから、いわんやこの問題については重要事項であるのは私は自然の考え方ではないか、こういう考え方で、今回の国連総会におきましても重要事項指定の共同提案国になり、もちろん賛成もいたしたわけでございます。
  165. 矢野絢也

    矢野委員 要するに重要な問題であるからということですね。中国阻止のもくろみではないということ。外務大臣は、先だって重要事項指定方式については検討しなければいかぬとおっしゃったと記憶しておりますが、ほんとうですか。
  166. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、中共承認国ですら重要事項指定方式をとっているくらいですから、私はあくまで重要事項でやるべきだと思います。観念的にこれからどういうふうにするかということに、各国あるいはそのほか各方面にいろいろの意見が出、もしくは出つつあるようでございますから、それらも十分に政府としても資料として考えていくということも必要であると思いますけれども重要事項はあくまで重要事項である、こういうふうに私は考えております。
  167. 矢野絢也

    矢野委員 中国国連復帰は重要な問題である、それはわかります、重要でしょう。しかし、その論法をとっておられる限り重要事項指定方式をずっと続けざるを得ないことになりますよ。重要な条件が変わるはずがないでしょう。外務大臣の言っておられるようなお話であれば、中国国連に入るということは重要なんだ。ことしは重要だったけれども来年は重要ではなくなるというたぐいのものではない、これは。そうすると、来年も、重要だから重要事項指定方式をおとりになるという意味に理解してよろしゅうございますか。
  168. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 何べんも繰り返すようですが、重要事項であることには間違いのない、またそういうふうに扱うべき問題であると思います。  ただ、先ほども私の意見ではないと前提して申し上げましたけれども国連の今回の採決の中にもいろいろの動きもございました。したがいまして、従来の方式のような、決議案とか提案だけで済むかどうかもわかりませんし、また国際的にもいろいろの扱い方の問題が出るかもしれませんが、その内容等にも関連していろいろの方法論は考え得る問題であるとは考えております。
  169. 矢野絢也

    矢野委員 つまり、重要なことだけれども、重要でないように思うということもあり得るということですね、要するに。  話は変わりますが、今回の国連演説は、台湾追放に反対だという点に非常に力点が置かれたように受け取れます。そこで、台湾国連にとどまるということを前提にして北京を招請する、こういうことは実際問題として、外務大臣が先ほどから何べんも言っておられるとおり、現実にそういうことを考えておる国がたくさんあるわけです。そこで、台湾国連にとどまりつつ北京を招請するという案が国連で出されたときに、わが国としてはどういう態度をおとりになるか、外務大臣にお答え願いたいと思います。
  170. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 本質的に中国問題についていかに考えるべきかということについて、政府としての見解をまだ申し上げる時期でございませんで、先ほど総理からも御発言がありましたように、慎重に研究をしておる段階でございまして、まだ早計に政府態度というようなものをあらわすべき時期ではないと思います。したがって、こうこういう場合はどういう方法論をとるかということにつきまして、まだお答えする段階ではございません。
  171. 矢野絢也

    矢野委員 一つ中国という立場にお立ちになる限りは、台湾国連にとどまりつつ北京が国連に招請されるという案には、私は、絶対賛成できないはずだと思うのです、これは二つ中国が実現あるいは一つ中国一つ台湾という状態国連に発生するわけでありますから。ですから、私は、これは検討の余地がないと思いますよ、外務大臣一つ中国という立場をとる限りは、台湾国連にとどまりつつ北京が招請されるという案については明らかに反対だということになるはずだ、私は論理的帰結としてそうなると思う。それをなおかつ検討をされるというお考えは、あるいは二つ中国ということを将来においてお考えになっているのではないかという重要な疑問を私は持たざるを得ないのであります。検討の余地はないじゃありませんか、一つ中国という立場に立てば。これはどうでしょう。総理にお答えしてもらいたいのです、一つ中国を盛んに総理は主張しておられるわけですから。
  172. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それですから議論がまた振り出しに戻るのでありまして、私は、両当事者が一つ中国を、これだけあれされておるのですから、そこは両当事者の間において話はつかぬものか、これを願望しておるということは先ほど申し上げたとおりであります。
  173. 矢野絢也

    矢野委員 その願望というものがいかに無責任なものであるか。わが国の主体的な基本政策というものを持たないでただ便々と願望される、それだけでは私は、こういう国民世論の高まりの中で、すみやかに日中国交を回復すべきだという国民の要求の中で、そういう態度は許されないと思うのです。願望する、来年になったらこの願望が成就されるという見込みはないじゃありませんか。それまでただ願望でございます、これでは少なくともわが国中国政策は不在であるといわれてもしようがないと思いますが、総理、いかがでしょうか。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理総理という不規則発言もありますから、私が答えなければならない。もちろん私が答弁を逃げているわけではありません。私はしばしば申し上げましたように、日本中国大陸台湾、こういうところに日本の存在意義があるというか、われわれが最も重大なる関心を寄せざるを得ない地理的環境に置かれておるのです。しかも、過去からの歴史的な関係もございますし、したがいまして、こういうところであやまちのなきを期するというのが本来のわれわれの態度でなければならない、かように思っております。いま言われるように、一つ中国論、それに立脚して日華条約を守る限りにおいては、台湾にかわるものが出てくるはずはないじゃないか、こういうことを論理的に言われますけれども、それもやや簡単過ぎるのじゃないだろうかと私は思います。私どものいま置かれておる立場が、外国の遠い国とはちょっと違うものですから、そこでいずれとも仲よくしたい、かように考えますし、ことに国益も十分考えるが、同時にアジアの緊張緩和、そういうことも考えなければならない。またいずれの国とも仲よくしていくんだ、そういう基本的立場がございます。それらの点から考えていくので、ただいま慎重なる態度をとっておる、こういう点は御了承いただきたいと思います。
  175. 矢野絢也

    矢野委員 時間の関係もありますので、これはまたいずれ次の機会にさらに具体的にお尋ねをしたいと思います。  次に繊維交渉の問題でお尋ねしたいと思います。六月に繊維交渉が決裂いたしました。宮澤通産大臣も、もな二日酔いみたいなもので、繊維のにおいもかぎたくないと言っておられます。一応これは決裂したわけでありますが、その後また総理は、ニクソン大統領にお会いになって、合意に達するために交渉を再開することに意見の一致を見られたわけであります。一ぺん決裂したものをさらに終点をきめて、合意に達するという終点をきめて交渉を再開された。私は、このように態度をお変えになった背景には、論理的に言えば、なるほどわが国は自主規制に応ぜざるを得ないような、たとえばアメリカからの被害の立証があったとき、やらざるを得ない経済的理由があったとかか、そういう背景にあるのなら、決裂したものをまた再開されるということはわからないでもありませんが、私は、その間アメリカにおいて被害の立証をしたということは聞いておりません。  これは通産大臣に最初に伺っておきたいのですけれども、ことしの春の予算委員会で、被害のないところに規制はないということを通産大臣の御意見として明確に言っておられました。アメリカにおける繊維業界は、わが国の対米輸出によって被害を受けたと認めていらっしゃいますか、どうでしょうか。
  176. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ガットの考えで申しますと、御承知のように、繊維業界全体というようなことではありませんで、具体的な品物についてどうかということになるわけでございます。繊維業界全体についていえば、アメリカも一般の好況、不況なりの推移をたどっておると思いますので、特にアメリカの繊維業界全体が悪いというようなふうには考えられませんが、品物により地域によりましては、そういうことがあるのであろうかと思っております。
  177. 矢野絢也

    矢野委員 私たちが調べましたところ、いずれにしてもわが国の繊維の輸出によって、アメリカの繊維業界が被害を受けたという事実はないように確信をしております。  そこで次に伺いたいのでありますが、被害原則、これを非常に強調しておられたし、業界の同意と納得がなければできないんだということも総理は言っておられました。あるいは国会決議というものは無視できません、尊重するということも言っておられました。しかし十一月十四日、これは見切り発車と言われてもしようがないんだなんて、いささか開き直ったような捨てぜりふみたいなことを総理は言っておられたように、私は新聞で拝見しておるわけであります。なぜ被害原則というものを放棄され、業界の同意というものを取りつけないで見切り発車をせざるを得なかったのか、その点非常に疑問を持っております。ひとつ納得のいくような背景の御説明を願いたいと思います。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 業界の意見もまちまちであります。二、三の財界人の考え方も、早く話をつけるがいいとか、ある者は絶対に応ずべきでないとか、いろいろまちまちな状態であります。また、関係の組合等におきましても、適当にしたらどうだという話もあるし、またどこまでもがんばれというような話もあります。産業人としての考え方もさることだが、こういう問題もやはり最後には政府の責任にくるのじゃないか、政府がどうするか、こういうことをやはり国民に対して責任をもって処理するというのが政府の本来の態度じゃないか、かように私は思っております。したがいまして、いわゆる両国の間でこの種の問題を残しておく、これはただ日米両国だけに悪影響を与えるばかりじゃない、自由主義陣営に大きな悪影響を与えると思うし、国際的経済の発展上もこういう問題は早く解決すべきだ、それこそ政府の責任においてそういう話をつけるべきじゃないだろうか、かように私は思っておる。そういう意味で、あえていわゆる見切り発車とまでいわれた、そういう行動をとったわけであります。しかしながら話ができ上がりましても、やはり業界の支持、協力がなければ、これは効果を発生するものではございません。したがって、私は、そういう点についての種々の対策をとらなければならない、午前中にも田中委員にそういう意味答弁をしたつもりであります。私は、たいへんつらいことだが、政府というものはいいことばかりが政府でもないんだ、苦しいこと、またずいぶん批判を受けることもあえてやるところに政府の責任があるのじゃないだろうか、かように思っております。
  179. 矢野絢也

    矢野委員 何だかいやにいきがっていらっしゃるような感じで、私は納得できないのであります。  宮澤さんにお尋ねしたいのですけれども、通産大臣は、あくまでもガットのルールでやらなくちゃならない、十九条の立場でやらなくちゃならない、そのためには被害というものが立証されなくちゃ筋が通らないんだというお立場をとっていらっしゃいました。私がお尋ねしたときもそう答弁しておられました。現在、何品目、何ワクだというようなことで、いろいろ御苦労な折衝をしておられます。それは私なりに御苦労だと思って敬意を表します。しかし、これは少なくとも条件闘争になっておるわけです。ワクのあれをどうするとか、品目をどうするとか、あるいは実質伸び率をどうするのだというような、いわゆる条件を少しでもよくしようという意味での交渉をいましておられるわけです。これは本質的に重大な問題がある、ということは、本来そういうお考えではなかったはずなんです。被害が立証されなければ自主規制に応ずる必要はないんだと通産大臣は考えておられたし、明確に答弁しておられた。その原則を捨てられて、いわば条件闘争の舞台にいまや局面が持ち込まれてきておる。これは通産大臣として、いろいろ事情は私わかるつもりでありますが、これははなはだ不本意なことであるはずだし、また私たちはお約束されたことと確かに違う状況になってきておる。ガット十九条の立場による繊維交渉というそれを放棄されて、単に条件闘争をやっておられる。これは私は重大な政治責任があると思いますが、通産大臣、御意見を承りたい。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまも、また午前中も総理大臣からお答えがありましたように、私どもは何が国益かということを頭に置きましてこの交渉をやっておるわけでございます。しかし同時に、仰せになりますように、被害といったようなことはガットの考え方でございますから、それと全く矛盾するような交渉をする一わけにはまいりません。そこで何品目かを選択いたしますときに、被害という問題が起こり得ない、いろいろな事情でそういうことはあり得ないというようなものについては、これは交渉の対象にするわけにいかない。そういう議論のあるものが交渉の対象になるのだ、こういうたてまえを今日まで続けておるわけでございます。
  181. 矢野絢也

    矢野委員 それでは重ねて伺いますが、十七品目、六グループでございますか、いま日本案として出されておる品目ですね、これについて被害が立証されておるのですか。いまの通産大臣のお考えは、明らかに被害を与えてないと思われるものは除いた、これはいいでしょう。しかし現にいま対象になっておる品目については被害は立証されましたか。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これらの品物につきましては、少なくともアメリカ側は被害があると考える、両者に議論のある項目であることには間違いないわけでございます。
  183. 矢野絢也

    矢野委員 そんなことを通産大臣言ってもらったら困りますよ。相手が被害があると言えば、被害があると認めるということになりますよ、そういう論法でいけば。相手はどう言おうとも、その具体的な証拠を相手に出させて、わが国政府、通産省として、確かにアメリカの繊維業界に、わが国の輸出によって被害が出ておると認定されたかどうか、これを伺っておるのです。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ガットにおきまして、被害または被害のおそれというものを、どの程度に、だれが判定するかということは、御承知のようにいろいろ議論のあるところでございまして、少なくとも被害を受けた側においてしかるべくその説明をするわけでございますけれども議論が生じてまいりますと、それは被害を受けた側が被害ありとして、ガットの十九条なら十九条の方法をとるということは、これは従来もあるわけでございますから、両者が合意しなければ被害というものはあり得ないというわけにはまいらないのであります。
  185. 矢野絢也

    矢野委員 だいぶことしの春とは話が変わってきておりますよ。私が伺っておるのは、わが国政府として、アメリカに被害があるのかどうか、どういう認識をしておるのかということを聞いておるのです。これはどうなんでしょう。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 でございますから、それにつきましては両者にいろいろの議論があるわけでございまして、議論がつかないときにはどうするかということは、ガットのほうではやはり輸入国側において考えるという先例は幾らもありますから、その議論を幾らやりましても、これはおさまるところがないということになるわけでございます。
  187. 矢野絢也

    矢野委員 時間もありませんから押し問答してもしようがありません。  ガットの十九条の立場でやるべきだという御意見、最近ではいわゆる二国間の任意の協議といいますか、いわゆる二十二条の話に問題がすりかわってきているように思いますが、通産大臣のお考えとして、いまの日米繊維交渉は、いわゆる被害立証を明記しておる十九条の立場交渉が進んでおるのか、あるいは二国間の協議という形の二十二条で話し合いが進んでおるのか、その辺の御認識を承りたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、せんだっても本会議で申し上げたところでございますけれども、新通商法案というようなものが提出されておる現在の段階は、ガットをささえる三つの国である一つが、ガットそのものの存立を危うくするような行為に出ておるわけでございます。平常のときでありますと、十九条、二十二条という議論は、これは確かに言われますとおり筋の議論でございますけれども、いまの事態は、私どもはそういう事態と見ておらないものでございますから、いかにしてガット体制を守るか、維持するかという、そういう見地から交渉しておる、こう申し上げたほうが正確であろうと思います。
  189. 矢野絢也

    矢野委員 それは、本会議でもそういう意味のことをおっしゃっておられましたね。私は、筋論という立場から考えれば、大体ガット体制をつくり上げたのはアメリカが熱心だったわけですね。そして、いまやそのアメリカがみずからが熱心につくり上げたガット体制というものを、はっきりいえばみずからこわそうとしておる、こう理解されると思うのですよ。それに対して、ただわが国だけが盲従するということによって——盲従ということばが総理のお気に入らなければ、要するにわが国だけが責任をかぶるという形でガット体制を維持していくということは、世界経済という立場から考えて妥当なものだろうか、私は非常に疑問を持つわけです。むしろガットの精神であるお互いの協力という立場から考えて、それに協力しない者に対してはガットで明確に報復ということがうたわれているわけですから、むしろ報復ということがこのガット体制を維持するために有効なメカニズムを持っておるのだ、こう私は理解しておるわけです。いたずらにわが国のみの妥協あるいは譲歩によって、このガット体制を、これは世界的な問題だから維持しなければならないと、そう悲壮がる必要はない。むしろ筋論としては、宮澤さんの言っておられることが間違いではないか、もっと強く国際世論に訴えて、ガット体制をアメリカはこわそうとしておるのだ、こういうむちゃなことを言う国に対しては、けんかする必要はありませんけれども、もう少しガットの趣旨に沿った報復なりあるいは強い姿勢をおとりになるほうが、むしろ世界経済あるいはガット体制を維持する上において有効ではないか、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  190. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ガットというものが何か各国の主権の上に、主権を越えて確立しておるというふうにときどき主張される方がございますが、事実は残念ながらまだそういうものではありませんで、各国が自分の主権をある程度遠慮しながら世界自由貿易のためにいまささえている体制がガットでございますから、そこで、その三つの柱の一つが、いかにもわがままなと思われるような主権の主張をいたしますときは、体制そのものがくずれてしまうことになります。その後になりまして、けしからぬではないか、報復しようというようなことを申しましても、もうそういう場がなくなってしまうというのが私どものいまの状況判断でありまして、この点は、春にもガットのロング事務総長と私、ずいぶんその間の議論をいたしましたが、やはり各国そういう見方をいたしております。そこで、日本としては、EEC、アメリカと並んでガットをささえる三本の一つの柱でありますし、この体制が存続するととがわが国の国益に合致いたしますから、そこはやはりガットそのものを、自由貿易そのものを存続し、栄えさせていかなければならない、こういう見地からこのたびの日米交渉に臨んでおる、こういうことでございます。
  191. 矢野絢也

    矢野委員 二十二条、十九条、どちらでしょうか。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 二十二条、十九条、どちらであるかというお尋ねは、これは現実的には、あまりお答えをいたしますことに私は意味がないように思いますのは、実はそのようなガットのこまかい筋道の話になるのならば、幾らでも言いたいこと、やりたいことがございますが、そうではなくて、ガットそのものの存立があぶなくなっておる、それを救うための交渉だと申し上げるほうが正確な表現だろうと私は思っております。
  193. 矢野絢也

    矢野委員 私がそのことにこだわりますのは、別にいやらしい意味で言いたくはないけれども、少なくとも被害なくして規制なしという立場をとる限りは、十九条の線ははずしてはいけない。ところが、現実の交渉の経緯は、被害立証というものをあえて要求なさらないで、そのまま条件闘争の形でいろいろな条件について話し合いをしておられる。これは昨年来の通産大臣なり総理の御発言とは趣旨が違うという意味で、私は問題にしておるわけですよ。しかしまあ、お答えになりたくないようですから、それはそれでいいでしょう。  次にお尋ねしたいことは、アメリカの第三次案の中で、二十品目、十九ワク、いまこの規制に固執しておるといわれておりますが、その他の品目はいわゆる協議条項になっておる。そして、その他の品目については、もし被害があるとアメリカが認めた場合、しかもその協議が不調な場合は、米国が一方的に規制できる、こういうようなことをアメリカは要求しておるようです。新聞の報ずるところによれば、それに対する報復の権利を放棄された旨を訓令されたというふうに載っておるわけでございます。これは通商法の代償なり報復とは違いますよ。確かに通商法に対しては代償を求め、報復をする権利を留保されておることはよく理解しておりますが、いわゆる自主規制、アメリカの案のこの協議事項に関してその報復権を放棄されたという事実はあるのでしょうか、通産大臣。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この取りきめが成立いたしますと、これはガットとの関連において取りきめができるのでありますから、ガットのメンバーであるわが国は、ガット上与えられました権利は当然留保いたします。放棄するということはございません。
  195. 矢野絢也

    矢野委員 それなら安心です。  まあ業界が納得するかしないか、いろいろ議論があるようでございます。そこで、端的に伺いたいのですけれども、業界では、アメリカが買ってくれなくなったという場合に製品の滞貨ができる。これの買い上げをやってくれるのじゃないか、あるいはまた、遊休施設というものを政府は何らかの形で買い上げてくれるのじゃないかという期待を持っておる業者の方もおるように私は聞いております。政府としても何らかの補償はしなくちゃならないという意味のことは業界にも約束をしておられるわけでありますが、具体的にそういう滞貨、ストックの買い上げ、あるいはまた遊休施設の買い上げといいますか、補償、そこまで総理はお考えになっておるのかどうか。あるいは大蔵大臣が言明されたと聞いておりますが、単なる金融上の支援を与える限度と理解してよろしいのか。この点ひとつ大蔵大臣並びに総理からお伺いをしたい。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま繊維交渉は継続中であります。業界のほうは自主交渉には応じない、こういうたてまえです。ですから、自主交渉が成立した場合にどうのこうのということは言っておりませんです。また、言ってきた場合に考える、こういう問題であります。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほども、午前中お話をいたしましたように、いわゆる救済措置をとるのは当然のことだ。中小企業が困れば中小企業に対して対策を立てる、あるいは石炭鉱業が困れば石炭鉱業にちゃんと救済措置をとるじゃないか。ましてや、今度の通商協定で被害が非常に明らかなら、そのための救済措置は当然とるべきだ。そこらが政治だろうと私は思います。ただ具体的には、いまからどういうことになるのかわからないですね。わからないから、いまからとやかく申すわけにはいかない。  そこで、いま一つ問題になる、これは誤解のないように願いたいと思うのは、補償ということと救済措置、これはもう明らかに違うと思っております。私は補償ということは非常にむずかしいことだ、かように思いますが、救済措置はとるべきだ。  また、かつて私どもは、皆さん方の御協力を得まして、織機などは非常に大幅に買い上げて整理をしたことがございます。しかし、いつの間にか非常に織機もふえてきております。だから、こういうこともやはり整理は整理、ある程度そこらに指導もしなければならぬだろうと思っておりますが、これからどんな状態ができるのか、これはとくと業界とも話し合って、その上で対策は立てるべきだと思っております。
  198. 矢野絢也

    矢野委員 実は今回通産省、外務省その他でいろいろ御苦労して交渉しておられる。しかし、アメリカが意外に強硬である。まあ互譲だと言っておられますけれども、一方的譲歩じゃないかという印象も私たちは受けざるを得ないのであります。そこで、ジーダラーというアメリカ報道官ですか、この方が、十二月の三日でございますが、牛場さんとフラニガンさんの会談のあとで記者会見をして言っておられる。これは非常に私は問題だと思うのですけれどもね。これをちょっと聞いていただきたいわけなんです。われわれは、日本が現段階以上に歩み寄ってくる用意があるものと全般的に考え交渉に入ったのであると、ジーダラーさんが言っておるのですよ。日本は、われわれが交渉の再開に先立って提示した立場にあまり急速には歩み寄ってきていないと言わざるを得ない。これは具体的には佐藤さんとニクソンさんがお会いになる前日に、いわゆる第三次案、現在アメリカが固執しておる第三次案の骨子になるメモなるものが渡されたといううわさがある。それはともかくとしても、いずれにしても交渉の再開に先立って提示した立場にあまり急速に歩み寄ってこない、こう言っておる、そして、われわれが交渉に入ることに同意する前に——われわれというのはアメリカ——あらかじめアメリカが何を自主規制協定の必要不可決の要素と考えているかをちゃんと述べておいた。日本政府に言ってある。そしてそれを了解したかのようにわれわれは思っておる。日本政府がそれを了解した、こう思っておった。しかし交渉は行なわれているが、われわれが受諾可能と考えているというところまで日本は歩み寄ってきてはいないと、不満の意を表しておるわけです。あるいは、われわれは協定に達するのに必要であると考えていた点を日本側にきわめてはっきりと伝えたあとで、自主規制協定のための交渉再開にわれわれが同意した。こういう点から考えても日本立場は納得できないとも言っておられるわけです。そして、何らかの進展を得ることができるとアメリカ考えていた問題について、日本がはっきりと了解した上で進んで交渉を始めたと、アメリカは理解しておったとも言っておるわけです。第二段階交渉に入る前に、アメリカは建設的な交渉を行なう前提として日本が歩み寄らねばならない立場がどういうものであるかを日本側に明らかにした。その立場日本は理解したとも言っておるわけです。そういう数多くのジーダラーさんの証言なり発言があるわけですね。しかも客観情勢、背景というものを考えたときに、繊維交渉が決裂した。で宮澤さんも、もうにおいをかぐのもいやだなんていうくらいに言っておられたわけですよ。そして、その後アメリカ側においても再開の機運があまりなかったように私は聞いております。むしろ繊維は通商法でやるんだ、そして日本に対しては自由化の線でもっと話し合いを詰めていきたいんだというアメリカの意向があったやに聞いておる。それを植村さんがアメリカに行かれた、あるいは総理も行かれた。そして、再開をやろうじゃないかということ、合意に達するという前提で再開交渉に同意された。こういう背景、事情というものを考えたときに、アメリカのこれは公式の報道官がこういうことを言っておる。だから、アメリカがなかなか譲歩しない。つまり佐藤総理をはじめ、要するに日本政府としては、交渉再開の前にアメリカとしてはもう同意を得てあるんだという認識をアメリカが持っておるということ、しかもこれは公式に言っておるということ、これは私は非常に重大な問題だと思わざるを得ないのでありまして、こういう事実がないのならないで、はっきりとこれはこの席で言ってもらわなくちゃならないし、そういう事実があるとするならば、こういうことであったということをひとつ教えてもらいたいと思います。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま報道官ジーダラーさんのお話を引用されましたが、さような事実はございません。はっきり申し上げておきます。ただ、合意に達するために交渉するということ、これはあたりまえのことで、合意に達しないで、話をぶちこわすために協議をする者もいないでしょう。そういうことばが、合意に達するためにと書いてあるから何でも譲るのだ、さような一方的な譲歩、そんなことは考えられません。互恵、互譲で初めて問題がきまるわけです。したがって、それより以上私から答えることはございません。
  200. 矢野絢也

    矢野委員 そうなくちゃおかしいと思うのです。特にジーダラーさんが、単に合意に達するということじゃなくして、そういう抽象的なことじゃなくして、アメリカが協定を成立させるために必要であると考えていた具体的な問題点を日本側にきわめてはっきりと伝えたあとで自主規制協定のための交渉再開にわれわれが同意したということまで言っておるわけですね。これは単に、ひとつ話し合ってまとめましょうやということじゃなくして、再開にあたって、アメリカとしては、これとこれとこれは譲れませんぞ、これは日本としてものんでもらわなければ困りますぞという具体的な内容の提示があって、しかもそれを日本が理解した上で交渉が再開されたと理解しておると、こう言っておるわけですね。これはいまの総理の答えとはちょっと違うのですね。もっと具体的なことを言っておるのです。こういうことは絶対ない、こういうことまではないという意味でございますか。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。私とニクソンさんとの間でいろいろ話は出ましたけれども、二人の間で具体的なこまかな話が出てくるはずはございません。幾らお考えになりましても、そのくらいは御理解いただくだろうと思います。したがいまして、ただいまの報道官の話は、これはずいぶん想像がまじっているものだ。二人の間の話じゃございません。
  202. 矢野絢也

    矢野委員 ずいぶん詳しくあります、これに。これは全部想像のまじった根拠のないことである、これはひとつあまりいいかげんなことを言わないでくれと、しかるべき筋を通じて抗議されたほうがいいと思います、私は。そうでないと誤解のもとですよ、これは。  そこで、もう一つの問題でありますが、補償の問題、補償というのは業界に対する補償じゃなくして、アメリカに対して補償を求める、こういう問題でありますこれはそういう報復の権利なり補償を求める権利を放棄しないという旨をいま通産大臣として言明しておられるわけでありますが、一つの方法として関税の引き下げを要求するということは、私は決してむちゃなことではないと思うのです。わが国の繊維をアメリカに輸出する場合のアメリカ側の関税を引き下げてもらいたい、これは決して不当なことじゃない。なぜかならば、関税なるものは、他国からの商品の洪水を防ぐために一つの対抗策として相手が関税障壁というものを設けているわけですね。しかし、それをこちらが自主的に手控えいたしますと、こう約束する。これはしたわけじゃないけれども、その方向でいま話が進んでいるわけですね。だから相手側、アメリカ側に対しても、わが国に対して、しかも他国に比べて不当にアメリカの関税というのは高いのです。ここにデータを持っておりますが、大体倍近くも高いわけであります。これを引き下げろと要求することは決して不当なことじゃないし、むしろわが国はこういう犠牲を払って自主規制をし、しかも政府も業界に対して何らかの補償、補償といったって国民の税金であります。アメリカのいわば理不尽な要求に屈して、それで日本の業界が苦しみ、それを日本国民の税金によって救済するという羽目におちいるわけでありますから、むしろアメリカに対して、たとえば関税の引き下げをやるべきじゃないかという要求は、いかがでございましょうか。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ジーダラーさんの新聞報道について何らかの措置をとれということ、これはお話としてしごくごもっともな話だと思いますので、私どももそれについては適当な対策をとります。  それから、次の関税の問題でありますが、関税はひとり繊維ばかりじゃない、各種の問題につきましてしばしば問題になりますし、やはり日本側に要求されるのも関税の引き下げ等がございますし、これは両国間の問題ではそういう点も話し合いの問題であることは、これはもうお話しになるまでもなく、貿易拡大にはやはり関税の引き下げはつきものである。かように私は理解しておりますから、そういう点で、関税一般の問題として取り組むことを申し上げておきます。
  204. 矢野絢也

    矢野委員 これは補償という立場で、申し上げた。あるいは報復の問題として、ことばはどぎつい感じでありますけれども、現にEECはアメリカに対して警告を発しておる。どういうことかと申しますと、EECが持っておるドルをいま金に兌換することを手控えておるわけでありますが、さようなことをした場合にはドルを金に兌換するぞ、かえるぞといって——まあこれはある種の報復であります。そういう警告を発しておる。あるいはスペインも、わが国のバランスがどうなろうとも報復するぞなんてすごんでおる。すごむことばかりが能じゃないと思いますけれども、少なくともガットの趣旨に反した理不尽なことをアメリカが要求しておる。それに対して、わが国が、そんなむちゃなことをおっしゃるなら、わが国としても、たとえばわが国のドルを金にかえますぞとか、あるいはアメリカから買い付けている小麦をカナダや豪州からスイッチしますよとか、あるいはバージニアから来ておるタバコをトルコから買うようにしますぞとかいうぐらいのことは言ったって、決してむちゃな話じゃない。これは、そういうことがむしろ国際的には常識になっておるわけであります。そういったことを、具体的にいまお考えになる気持ちはないか、このことをお尋ねしたいと思います。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 言われるように、すごむばかりが能ではない。これは私どももよくわかっておりますし、また、具体的な問題を、いまの段階でこれこれがある、こういう事柄政府に知恵をおつけくださることは、たいへんありがとうございますが、政府自身は、この段階でそういうことをするとかなんとか申すことは、まことに慎しむべき事柄のように思っております。
  206. 矢野絢也

    矢野委員 いろいろと繊維交渉経過を私なりに見ておりまして、ガットのルールというものがいつの間にかくずれる、被害立証もどこかにいってしまう、あるいは業界の納得も、見切り発車された。そして、当然の権利である報復もあるいは補償要求もあまりおっしゃる気持ちがない。私は、あまり互譲ということばをお使いにならないほうがいいんじゃないかというふうに思いますよ。アメリカは一体何を譲ってくれたんですか、互譲といって。何にも譲ってくれてないじゃありませんか。互譲ということばにこだわるなら、具体的に何を譲ってくれたか、教えてもらいたい。認識を改めたいと思いますから教えてください。日本語というのはもっと正確に使わなければ……。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 牛場・フラニガンが十回余りの会談をやっておるわけでございますけれども、実は、日本側が何を譲ったのかという話を何度もアメリカ側がしておるわけでございまして、こういうときには、お互い自分の譲りがやや大きいというふうに感じられるものかと思います。
  208. 矢野絢也

    矢野委員 しかし、よくもおっしゃいます。この問題はまた別の機会にお尋ねをしたいと思います。  次に、児童手当の問題について、これはもう先ほども質問がありましたから、簡単にお尋ねしたいのでありますが、次の通常国会に法案をお出しになるという御答弁でありましたが、これは厚生大臣に伺いたいのですが、来年度中に給付を実施される、法律の制度だけできて食い逃げじゃなくして、来年度中に給付をされるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  209. 内田常雄

    ○内田国務大臣 制度を創設する意味は、給付を始めるために私は制度を創設するつもりでございます。ただ、これはやはり掛け金を企業関係からいただくにしても、またその支払いを該当の父母に支払うにいたしましても、そういう仕組みをつくらなければなりません。したがいまして、それらの手続にある一定の期間を要しますので、その法律の制度をつくったとたんから支給が始まるというものではございませんけれども、厚生大臣といたしましては、少なくとも年度中とにかく支給が始まるようなことにいたしたいという努力を続けております。
  210. 矢野絢也

    矢野委員 大蔵大臣もひとつお答え願いたいと思います。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま厚生大臣のお答えいたしましたところに積極的に協力をしたい、さように考えております。
  212. 中野四郎

    中野委員長 矢野君に申し上げますが、お約束の時間が経過しておりますので、結論をお急ぎ願いたいと存じます。
  213. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、もう一問だけ簡単にお尋ねをさせていただいて、終わりたいと思います。  児童手当について、あまり詰めるとまた話が変になります。時間のゆっくりしたときにお尋ねしたいと思っております。しかし、前向きであるということについては敬意を表したい。中身については少しばかり不満があります。  これは、中曽根さんに一点だけ伺いたいと思います。参議院の本会議において、四次防終了時の昭和五十一年ごろまでに在日米軍基地は相当削減され、在日米軍は常駐しない可能性が強いということをお述べになりました。これは非常に注目すべき発言だと思っておりますが、これは日米間で何らかの合意がなされた、そういう根拠に基づいての御発言なのか、あるいは長官の推測から言われたのであるか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  214. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは推測でございます。ニクソン・ドクトリンの傾向、アメリカの国会における論議その他を見まして、そういう方向に進む可能性もあると考えております。
  215. 矢野絢也

    矢野委員 推測であれば、これ以上のお話をしても……。時間がございませんから、これで終わりたいと思います。
  216. 中野四郎

    中野委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、永末英一君。
  217. 永末英一

    永末委員 私は、佐藤内閣は六年たって、あと相当期間あなたが政権を担当せられるということを考えつつ、六年前にあなたが政権を担当せられたときと、これからいよいよ四選佐藤内閣を運営せられるときと、その情勢の違いを念頭に置きつつ、特に外交、防衛に関する基本的なあなたの御方針を伺いたいと思います。  六年前にあなたの政権が最初成立いたしましたときには、まだまだ国際情勢は、アメリカ、ソ連の二つの巨大国による二極構造でございました。しかもアメリカは、まだ自信満々といたしておりました。しかしそれ以後、アメリカはベトナム戦争の挫折、さらにまたソ連の核兵力がアメリカのそれを上回るというようになりました。この間アメリカは、経済悪化と社会不安に責めさいなまれました。そういうことで、アメリカはいまやニクソン・ドクトリンの名のもとに、グローバルな展開から大陸アメリカへと退却を開始しつつあるように思います。この間、中共は文革における国内的な混乱をくぐり抜けまして、戦術上日本の国を軍国主義が復活しつつあるという評価をしつつ、核国家として国際社会に積極的に乗り出そうといたしております。   〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕  さて、こういう情勢の中で、アジアにおいてははっきりとアメリカ、ソ連、中国の三極構造ができ上がりつつある。しかもまた、この間わが国は、GNPだけで申しますと世界第三位の経済大国になったということで、一体これが四極構造になるのかどうかということを言う人もございます。簡単なこれらの過去六年にわたる経過にかんがみましても、あなたが政権をとられたときといまとは全く異なった状況の中にあるということだけは言えると思います。アメリカは現在わが国を、アメリカにとって、アメリカの国益にとって最もバイタルな関係を持つ国と考えておりますが、われわれが一体何をしようとしておるかということについては、相当な不安の念を持っているように私は思います。  そこで、私はあなたにこの際、これらの構造を背景にしつつ、新しい日米関係を築くにあたって、基本的にどういうお考えかをまず明らかにしていただきたいと存じます。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまさら申し上げるまでもなく、私どもは自由を守り平和に徹する、そういう国柄、りっぱな国をつくって、隣の国とは仲よくしていく。隣ばかりじゃない、世界各国と仲よくしていく、こういうことで国づくりをしておるわけであります。しばしば申し上げたのですが、平和憲法のもとで、われわれの足らないところは安保条約によって補っていくんだ、こういうのが日本の防衛体制の基本でもあります。この意味において、最近のアメリカのニクソン・ドクトリン、こがれ退却だといわれる。けれども、私は、最近のアメリカの戦略的な考え方の変化、これはそのまま評価してよろしいんじゃないだろうか。戦争抑止力というものは非常に低下したと、かように考える必要はないんじゃないだろうか、かように私自身は思っておりますが、そういう点では、あるいはなお中曽根君から補足さすほうがいいかと思っております。したがいまして、在来からの考え方そのままの考え方を続けていく、これが私の基本的な考え方であります。
  219. 永末英一

    永末委員 私は、六年前と比べた場合に一番特徴的なあり方は、六年前よりはわが国アメリカに対してより自主的な、より独立独歩の道を歩まなければならぬ、そういう状況下にあると判断をいたしますが、あなたはいかがです。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの国防だけで申すならば、ニクソン・ドクトリン、これは各民族がまず第一義的にその国をみずからの力で守る、これがニクソン・ドクトリンでもあります。私は、日本の場合においては、日本は自衛力において、みずから整備する力をだんだん備えてきた、かように思っております。しかしながら、これは平和憲法のもとでございますので、限度のあることも理解してこの問題と積極的に取り組んでおる、かように御了承をいただきたい。
  221. 永末英一

    永末委員 私は一いつも防衛問題を扱っておりますけれども、別に防衛問題だけを聞いておるのじゃありませんで、全般的な日米関係についてあなたの方針を伺ったのであります。その最初の問題として、繊維問題に対するお考えを朝来聞いておりますが、私もひとつただしておきたいことがございます。  私の窓からいたしますと、わが国は自由貿易でやっていきたいと考えてそれをやってまいりました。しかし、このときに、アメリカは繊維に関してわが国に規制を求め、そしてまた自国側におきましては一九七〇年通商法案を上程いたしまして、この法案の成立をかぎにしつつ、わが方に繊維の自主規制を求めてまいりました。問題は一わが方が自主規制をするがごとき雰囲気をアメリカに与え、そうして、もしそれが可能であるならば通商法案が成立し得ない結果になる、それは世界の自由貿易に対してわが国が寄与したことに結果的になるはずだ、こういう方針のように伺うのであります。  私が伺いたいのは、結果的に通商法案が成立したということになりますと、いまの繊維交渉がどうなるかは別問題といたしまして、政府間の交渉が成立してもしなくても、ここ長い間、二年以上にわたってがたがたやってきた政府間の繊維交渉というものの意味は何であったかということが疑われる。通商法案が成立したということになると、あなたはどういう気になりますか。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 通商法案が成立するかしないか、これはアメリカのことですから、私どもとやかく、手の届くところの問題ではございません。ただ私は、どこの国にも保護主義者がいる、それはアメリカばかりの問題でもない。日本でも貿易の自由化あるいは資本の自由化、これをひとつ踏み出そうといえば、必ず反対もございますから、そういうことはどこの国でもあることなんです。  ただ、いま、先ほど来議論しておりますように、何と申しましても自由貿易、自由主義、そのもとで経済を拡大していくということが今日までの各国のやり方でもあり、主流のやり方でもある、かように考えますので、私は、それならば、それを守るためにもある程度の犠牲はやむを得ないかなあと思います。いわゆるオーダリーの拡大、そういうものにわれわれも気をつけるべきだ。日本の場合は成長率が何といっても高うございますから、こういうところに問題があるので、日本の繊維はそんなに、全般から見ればその平均率を越しちゃいないよ、こういう繊維業者もあろうと思いますけれども、しかし、外国の経済成長に比べると、これは格段の相違ですから、そういうところのものをある程度自主的に、オーダリーな考え方でひとつ取り組んでいこうじゃないか、これがものの考え方であり、そこに世界経済の拡大もあるんじゃないか、かように思っておるわけです。
  223. 永末英一

    永末委員 繊維交渉は最終段階だといわれるのは、アメリカの上院の会期が迫っておる、そのアメリカの上院でいまや通商法案がかかっておる、これが時間的なタイムリミットを云々されている原因だと思うのですね。アメリカの国会のことを日本内閣総理大臣がどうかできる、そんなことはございません。百も承知でございますが、私が伺いたいのは、だからこそ繊維交渉を急いでおるとするならば、通商法案がそれにもかかわらず成立したということになった場合には、私は政治的責任があると思うのです。その辺のあなたの腹がまえをひとつ伺っておきたい。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく、私は、いま申し上げますように、そういうものをつくらさないように、アメリカ自身が踏み切れるようなものにしたい。これは、今日、私ども最大の努力をしておる最中でございます。
  225. 永末英一

    永末委員 国会の決議等の関係はいろいろな角度から話が出ました。総理、国会の決議は御承知だと思いますが、「政府は、米国政府に対し、かかる輸入制限を企図せざるよう強く要請すべきである。」というのが国会の決議でございまして、あなたはこれを尊重しておると何回も言われました。そのことばを承りました。いまやっておる繊維交渉は、これはアメリカ政府に対して輸入制限を企図せざるよう要請していることでしょうか。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近、わが党の福田一君その他が出かけて、やはり国会の要請、これを十分相手方にも伝えるように思っております。また、私ども政府も、国会の決議を無視しないように、こういうことであらゆる努力を払ってきておるわけでありまして、こういう点では誤解はないだろうと思っております。
  227. 永末英一

    永末委員 あなたの党のことを申して相すまぬのですが、二年前に、同じあなたのほうの繊維議員団と称する方々がアメリカに参りましたときに何を言ったか。あのときは輸入課徴金の問題でございましたね。もちろん自民党の繊維議員団でございますから、自民党のことを言われるのはあたりまえかもしれません。しかし、アメリカ側からしますと、日本の国会議員の代表が来たと、こう映るわけですね。ところが、その人々が何を言われたかといいますと、輸入課徴金などがもし課せられるようになると、これで日本の、特に繊維関係の輸出が大打撃を受けて、日本の繊維関係の中小企業が打撃を受ける。そこまでは同じでしょうね、われわれが申しましても。あとが少しおかしかった。あなたは自民党の総裁ですからね。そうすると、その夏に行なわれる参議院選挙に自民党は大打撃を受けるというのですね。だからやめてくれ、こんな文書が出ておりました。ぼくはびっくりしましたよね。今度、いまもおっしゃったように、国会の決議の話を私が申し上げたら、あなたのほうの党から国会議員の方々が行かれたというお話を伺いました。これは自民党の代表であって、国会の代表じゃないのですよ。その点やはりこの機会にはっきりさしてください。全部の責任をわれわれ国会が負うわけにはまいらぬ。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、仰せになるまでもなく、国会の代表ではございません。しかし、わが党の繊維関係の人たちが出かけた。全然縁のない方ではございませんので、この際に、政府交渉もさることだが、自分たちは自分たちでやはり米議会の要人と会おう、こういうことで出かけたように思っております。
  229. 永末英一

    永末委員 福田使節団の意味合いは、お話がございましてわかりましたが、最初の質問総理まだお答え願っていないのですが、これはわが国会の決議でございますから、すなおに読んで、いま政府がやっておる繊維交渉というのは、昨年の院議で決定いたしました、米国政府に対し輸入制限を企図せざるよう強い要請をしたが、その要請にこたえていると判断してよろしいのでしょうか。それを一言お答え願いたい。
  230. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 要請にこたえているか、これはまあ大体——非常に問題で、何らの制限なし、こういうわけにいかない。そこに私ども交渉を持っておるわけです。できるだけ——いまようやくはっきりしたのは、カットバックはしない、こういうところまでは来ているのですが、しからば何%までがいいのか、こういう問題になると、どうもまだまだ議論の余地があると思います。
  231. 永末英一

    永末委員 先ほどのお話で、見切り発車の問題が出ました場合に、業界や労働界のいろいろな意見もこれありというお話でございました。総理は昨年の五月に全繊同盟の代表と会われ、ことしの三月の二十六日に同じく会われました。その後、見切り発車したわけですね。私は、アメリカのほうのこの繊維交渉に関する理由一つに、アメリカの繊維労働界における失業問題、不況問題、これを大いに主張いたしております。わがほうも、もしこれが妙な形になりますと、繊維界の不況を、労働者はもろに被害をこうむるのであって、もっとやはり、業界はもとよりでございますが、労働界にもしっかりとした連絡をすべきであったと思いますが、あなたの御見解を承りたい。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんこの問題は、政府が見切り発車とは申しましても、それぞれのところにはやはり一応連絡はとってあるのです。それは暗々裏にあるいは明らかに——あるものは明らかに、あるものはそれとなく連絡しておる、こういう方法で連絡はしております。
  233. 永末英一

    永末委員 十分に——最終段階であっても、それはこれらの人々、業界並びに労働者が、もしおかしな結果になれば被害をこうむるわけでございますから、十分にこれは連絡をすべき問題だと私は思います。  さて、先ほどあなた、密約したことはないとおっしゃいました。そんなことを日本総理大臣が、私は密約されるわけはないと思いますが、外から見ておりますと、ことしのニクソン大統領との会談で、先ほどあなたも言及されましたが、合意を目的として政府交渉を始めるということで交渉をあなたがやられ、そうしてあなたの所轄下に属する、これはアメリカ大使であれ、その他の政府機関がそれぞれ具体的な話を持っていっておる。先ほど矢野君が申しましたこととあわせますと、何かそこに交渉を始めるにあたって、ある一つのベースができたのでアメリカ交渉に乗った、このようにアメリカ側が思っても当然だという雰囲気が感知されるわけですね。  だから、この際もう一ぺん明らかにしていただきたいのは、おれは主観的にそんな覚えはないと言われても、政府は一体でございますから、そういうアメリカ側が態度をかたくしておることについて、何らの言質も与えない、言うならば、六月の愛知、宮澤会談の決裂のその当初に返って、そして始まったんだ、こういうことであるかどうか。何か上積みしたら上積みしたものは何か、明らかにしていただきたい。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカの言うことはどうもほんとうらしいというように言われ、私どもは何かうそを言っているように言われる。私はたいへん残念ですがね。どうでしょう、私ども政府日本国民代表して、この国会を通じて申し上げておるのです。すなおに私どもの話を聞いていただくわけにはいかぬですか。何か、アメリカ側のほうがほんとうを言って、日本政府のほうがうそを言っておるような言い方、私はどうも気に食わないのです。
  235. 永末英一

    永末委員 あなたの言われることも、アメリカ報道官の言うことも全部世界の人が知るわけだ。そこで私は、あなたの言うことを信じたい。日本総理大臣の言うことを信じたいのです。しかし、アメリカ側はこう言っておるから、どこに一体問題があるだろうかと考えると、いまのようなところのことをやはり国民の前に、わが内閣総理大臣からはっきりさしていただきたい、こういうふうに言っておる。
  236. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 六月に宮澤、愛知両大臣が出かけて、できれば話をしたい。これが昨年の十一月における私の考え方、またニクソン大統領と話をしたところでもあります。したがって、そこで話がつけばたいへんけっこうだったが、御承知のように決裂した。決裂したことによって、密約がなかったのだなと一部では言っておるようです。密約があったのなら決裂はしないだろう、こういうことです。しかし、私は、どうも考えるのに、こういうような状態を長く続けることは、両国のためばかりではなく、国際的な立場に立って考えまして、いかにも残念なように思う。したがって、もう一度ひとつ話し合ってみようじゃないか。ただいま始めたのがそれでございます。御了承をいただきます。
  237. 永末英一

    永末委員 先ほど総理は、まあこの結果が出ました場合、日本の業界や労働者に損害、被害があった場合には、これは救済をする、補償ではないと、こう言われた。補償というのは、たとえば災害があった場合に、これは天災でございますから、政府は補償、救済、いろいろ両方のことばを使う場合がございます。しかし、業界なり繊維労働者からいえば、自分の原因によらずして被害をこうむるなら、当然のそこに補償を求める権利がある。救済をお願いすることですね。私は、やはりそういう意味合いで補償という観念を——あなたがそんなものはだめなんだということであれば、この問題の基本的な性格が変わってくるのではないか。大蔵大臣は、まだ自主規制がどうかきまっておらぬのだから、あまり具体的に考えておらぬと言われた。総理大臣は、万般のことをやられると言われた。少し食い違っておるのですが、自主規制があろうとなかろうと、やはりこの問題については、いまのような角度から御決意があるかどうか、伺いたい。
  238. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理のお考えと私の考えは食い違っていないのです。具体案がまだ提示というか、検討される段階になっておらない、そういうことで、私のほうでは具体的なことは考えておらぬ。  補償という問題でありますが、これは業界が権利として政府に要求する、そういう性格のものじゃない。政府は、繊維政策をどうするかという見地で対処をする。日米交渉のこういういきさつ、そういうものも当然考慮されでなければならぬだろうとも思いますが、しかし、繊維産業がどうすればこれからいいのかという見地から最善の努力をする、そういう姿勢でございます。
  239. 永末英一

    永末委員 当然権利があるなんて、そんなことは言っておりません。ただ、救済といいますと、政府が一方的に考えたことだけで終わるのだ。そうじゃなくて、政府に原因があって起こってくる被害であるならば、やはり救済というような観念ではなくて、もう一歩進んだ立場から問題を考えなければ、これは解決しない問題ではないか、そういう御認識があるかどうか伺いたい。
  240. 福田赳夫

    福田国務大臣 救済と言うと、あるいはひっかかるところがあるかもしれませんが、繊維政策をどういうふうにするか。日本の今後の繊維産業をどういうふうに持っていくことが妥当であるかという見地から、最大の配慮をしなければならぬと、かように考えます。
  241. 永末英一

    永末委員 繊維問題は、朝来いろいろな角度から伺いまして、こまかいところをここで聞く時間がないのは残念に存じます。  繊維問題はその程度にいたしまして、第二の問題としまして、総理は、この十月にニクソン大統領に会われた結果、共同声明は出なかったのでありますが、中国との問題に関しては、緊密な協議をしていくという申し合わせですか、そういうことをやられたと、あとあと愛知外務大臣木村官房副長官から発表がございました。この緊密な協議をするということは、日本政府アメリカ政府の対中国政策とは異なった態度をとることがあるという内容が入っておると了解してよろしいか。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 両国の間でことさら荒立てて別な意見を立てるまでもないことですが、問題は、何と申しましても、自主的に日本考え方をきめていくという、これが望ましいことでありますし、また、日本アジアの一国であり、隣が中国台湾、こういうことになっておりますから、それだけに日本としては、もっと自主的な考え方が必要だろう、かように思っております。
  243. 永末英一

    永末委員 アメリカ日本とが、中国に対する関係は歴史的にも違うわけであります。だから、いまあなたのおっしゃった自主的というのは、いままではどうもアメリカのとってきた政策以上のことはなかなかやらないように国民に映ってきた。自主的という意味は、やはり結果的に違う態度をとり得る、これが含まれていると解釈してよろしいですね。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 皆さん方のよく使われる追随外交でないということは、はっきり申し上げておきます。
  245. 永末英一

    永末委員 佐藤総理は、五選されるかどうかわかりませんが、外で見ておりますと、最後の御奉公というので決意を固めておられると思いますが、さて、あなたの在任中に日中国交回復をする御意思はございませんか。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の在任期間はあとわずかですから、なかなかそれまでに、ものごとが考えるようにすべてが運ぶとも予想がつきかねるというのが、いまの実情じゃないかと思っております。
  247. 永末英一

    永末委員 客観的に見ますと、できるかどうかということになりますが、政治家は、まずやはり目的を立てて自分の意思を実現するのが、政治家としての重要なファクターだと私は思います。その意味合いで、四選首相、日本総理大臣の歴史の中で一番長期の政権を担当せられるあなたが、最後になすべきことというので、この辺で御決意あってしかるべき時期ではないか。時期は熟しておる、あなたのためにもですよ。もう一ぺんお答え願いたい。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御鞭撻いただきましたが、相手のあることですからそう簡単にいかない。
  249. 永末英一

    永末委員 なかなか御決意がないようでございますけれども佐藤総理は、中華人民共和国政府というのは一体どういう政府だと心得ておられますか。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねのしかたも私によくわからないのですが、中華人民共和国、これは中国本土、中国大陸、これを統治している、かように私は考え、またこれを承認している国も世界でただいま五十六カ国でしたか、そこにのぼっている、かように思います。
  251. 永末英一

    永末委員 いまお話がございましたように、中国本土を、ことばをちょっと入れますが、これは有効に支配している政府である、そのようにお考えだと思うのです。この政府とあなたの所轄しておられる日本政府とはどういう関係にありましょうか、それをお答え願いたい。
  252. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本と中華人民共和国はどういう関係にあるだろうか。御承知のように、ただいま貿易もやっておるし、人の交流もあるし、戦争状態ではないし、いろいろ文化交流その他もやっておる、かように私は考えていますが、政府間の交渉はない、このことだけははっきり申し上げます。  これが何かと問題を起こすものですから、何らかの交渉を持つわけにいかないか、こういうように考えて、あるいは大使級会談、こういうものを始めないかとか、あるいはまた、もっと別な接触の方法はないかとか、そういう点がいまいろいろ政府でもいわれておる次第でございます。
  253. 永末英一

    永末委員 けさあなたは、中華人民共和国政府日本政府との間は、法的には戦争状態は継続しているといえるかもしれませんと言われ、重ねて、法的には戦争状態が継続しているであろうということは間違いではないと思うと言われたが、事実状態は別だと言われましたよ。  さて、あなたはなぜ法的に戦争状態が継続していると判断されたのか、伺いたい。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、日華講和条約というものが締結されておりますね。私どもが戦争をしたのは蒋介石政権、当時のいわゆる中華民国と戦争したのである。したがって、この中華民国と私どもとの間に講和条約が締結した。それで私どもは戦争はないのだ、やんだのだ、かように考えておるわけであります。
  255. 永末英一

    永末委員 中華民国政府とはいつ交戦状態に入りましたか。
  256. 井川克一

    ○井川政府委員 ただいま正式の書類を持っておりませんのであれでございますが、私の記憶によりますと、中華民国政府が正式に日本国に宣戦をいたしましたのは、たしか一九四一年の十二月九日ではなかったかと思っております。
  257. 永末英一

    永末委員 ただいまの答弁のとおりである。法的に中華民国政府日本政府とが交戦状態に入ったのは、法律的にですよ、一九四一年十二月九日であります。これが日華平和条約の調印、批准されたときに交戦状態がなくなったわけですね。私が伺っておるのは、あなたはけさ中華人民共和国政府との間には法的にはまだ戦争状態が続いておるということを認識された、御確認になったから、それは一体どういう意味だということを聞いておる。伺いたい。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に戦争が継続していることを認識しておるわけじゃありませんが、そのときも不規則発言があって、法律的には戦争は続いているのだ、こういうことを言われた。そこで私は説明を加えて、いまの中華民国講和条約は締結したが、北京政府はこの講和条約を否定している。だから、その講和条約によりまして戦争は解消したのだけれども北京政府がそれを否定しているので、その意味においての法律的なものがあるのだ、こう言われるのだと思っております。しかし、お互いに交流はしておりますし、一兵も動いているわけじゃございませんから、そういう状態、いわゆる宣戦布告の状態、そんなものはないのに戦争状態が続いておるというのは、これは私ども理解のできないことです。
  259. 永末英一

    永末委員 中華民国政府わが国との戦争状態は、中華民国政府が宣戦布告をしてから交戦状態に法律的にはなった。しかもそれは中華民国政府と一九五二年に終了した。問題は、一九四九年に、すでに中国代表する政府としての中華人民共和国政府ができ上がっておったところに問題がある。しかもその中華人民共和国政府は、その名前を冠する以前に、自分が有効に自分の支配する地域の政権として中華ソビエト臨時政府を宣言しておったときに、わが国に対して宣戦を布告しておった。期日を御存じですか。
  260. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 事実関係はそうでございましょうが、しかしこれはまた先ほどの矢野委員との問答を繰り返すことになるのですけれども、法律論と事実の状態と、それからその法律論の中のまた具体的な議論と、いろいろに分析してお答えしなければなりませんから、これは政治論としての見解とは分けて考えなければならぬところに複雑性があると思います。  日華平和条約ができまして、この条約の第一条によって、中華民国という国と日本国との間には戦争状態が終結した。これは国を代表する政府との間の条約でございますから、国と国との間の関係というような問題については、適用の事実上の範囲とか支配している区域とかいうこととは別に、法律論としては戦争状態が終結したものである、こういう見解をとっているわけでございます。それから、総理の言われますように、これに対していわゆる北京政府が、いや自分のほうは法的には日本国との間に戦争状態が終結していないのである、こういう見解をとっていることをわれわれとしても承知している、こういうことをお答えになった、これがけさの状況でございます。
  261. 永末英一

    永末委員 中準ソビエト臨時政府は一九三二年の四月十二日にわが国に戦争宣言をいたしております。外務大臣の朝来からの話、いまの話とあわせて考えますと、あなた方はこう考えているんじゃないですか。つまり、中華民国との間には戦争状態は終結をした、この状態北京政府が承継してくれなければ北京政府との間の国交正常化はあり得ない、こう考えているのですか。
  262. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 条約の立場、それから従来の経緯からいって、日華平和条約によって日本国と中華民国との間には戦争状態は終結した、こういうことを政府見解として申し上げているわけでございます。しかし、それとこの問題の設定の置き方を変えれば、外交的、政治的その他の問題が将来発展いたしました場合には、その中でまた法律関係、条約関係というものがそれに対応するようにアジャストされていくということも、これは観念的にはあり得る問題である。しかし、今後この問題について政府としてどう考えていったらいいかという最善の道はいかにあるべきかということについては、まだ政府は慎重に検討の段階でございまして、クリアカットなお答えはできる状態ではございませんというのが、現在の政府立場でございます。
  263. 永末英一

    永末委員 法的に中華人民共和国政府とわれわれが戦争状態にあるんだということは、二つの方向から考えられる。一つは、いま申し上げましたように、中華人民共和国政府の前身の臨時政府時代に宣戦布告をしたあと始末がない。私は、きっとあっちの政府はそう思っておると思うのです。宣戦布告をして実際に戦闘があったわけである。そのあと始末がないままで終わっておると思っておると思います。もう一つは、なるほど中華民国政府と戦争状態に法律的に入った。事実上の戦争状態はその以前からございましたよ。しかし、法律上は先ほど言われた日取りから入った。それは終わった。しかし、それはその中華民国政府は有効に、先ほど総理大臣のことばをかりますと、北京政府が支配をしてない地域を支配しているだけの中華民国政府だから、大陸に対してはこの戦争終結したことが一体どうなっておるのかわからぬ、こういうことですね。しかし、私がいま伺っておるのは、だから法的に継続しているのはどっちの角度から考えておられるのか、この点だけを一ぺんはっきりさしておいていただきたい、こういうことなんです。  私の見方からしますと、現在の中華人民共和国政府が前身の臨時政府の時代にやったこの戦争宣言——日本政府はそのときどう考えたかわかりませんよ。わかりませんけれども、相手方はそれで正規の戦争をやっておった。一九三二年といえば、日本政府はどこにも戦争宣言もせず、宣戦布告もせず、事変という形で実際上の戦争状態をつくっておった。それが終結せずして現在に至っておる。だから私は、法律的に戦争状態が中華人民共和国政府との間にあるんだということの意味は、一義的にこの際明確に佐藤政府の責任においてしておいていただきたい。御答弁願いたい。
  264. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは繰り返すことになりますが、そこで先ほどのお話ですが、それなら政府は、中国本土との間において、現在の日華平和条約第一条の考え方を踏襲するということをはっきりしなければ、中国本土との間の話し合いができないではないか、それに対してどう考えるかと、簡潔にいえば御質問の趣旨はここにあると思うのですけれども、   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 中国政策全体に対して日本政府としての態度を現在クリアカットに申し上げる段階にございませんから、この問題はむしろ本質論から考えなければならない問題であり、現在具体的にそれに対する見解を表明する段階ではない、かように申し上げざるを得ないと思いますが、ともかくもわれわれといたしましては、中国本土との間にも戦争状態が続いているとか、終結していないかとかいうふうには考えておりません。これが、条約論を離れてのまた立場であろう、こういうことは私はいえると思います。
  265. 永末英一

    永末委員 北京政府との間の国交回復とか国交正常化ということばを聞かれたときには、どんなことが国交回復であり、国交正常化だとお考えですか。それをひとつ伺っておきたい。
  266. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは詳しく御承知の上での御設問でございますから、あまり詳しくお答えすることはできないと思いますが、やはり何と申しましても事実問題が、中国本土において八億の人民を統治しておる政府と、それから台湾に現実に政府がある、そして双方が、唯一の合法政権であり、一方と国交を結んだところとは断交するというたてまえを非常に強く長年の間持っておられる。この事実の前に、いかにここをほぐしていくかということが、政治的にも条約的にも、あるいはその他の面からいいましても、きわめてむずかしい問題であるということは、よく要素は御理解いただけると思うのでありますが、一般論としていえば、正常化ということは、そこを支配しておる政府との間に外交関係を持つ、相互に承認し合う、一般論としての方法論としてはそういうことであると思います。
  267. 永末英一

    永末委員 七面鳥と鶏と肉が同じだからといって、私は七面鳥のことを聞いておると、あなたは鶏の話ばかり答えておりますな。よく似ておっても違うものは違うのです。私は、中国との間の問題は、やはり違いということを認識して、どこからほぐしていくかというような違いを認識しなければほぐせないと思う。あるものは一つですね。なかなかこんがらかっておる。しかし、たとえこんがらかっておっても、七面鳥の肉は七面鳥の肉だし、鶏の肉は鶏の肉なんであって、そこをやはりかみ分けていかねばならぬ。これが中国問題の、比喩的であるけれども、性格だろうと私は思います。お答えにならぬのでありますから、何時間やっておったってこれはしようがない。  そこで、あと中国問題で二つ伺っておきますが、わが政府は、中国国連代表権を持つ場合に、国連における手続はどうなるものだとお考えですか。
  268. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これも専門家の間にもいろいろの学説等がございますし、それから、いまのような状態においてこれを予想しての国連のいろいろの規約ができておりませんですから、こうなる場合はこういう手続であろうとか、あるいはこういう手続を援用したとしてもこれが事実上効果を発生するような結末を生ずるであろうか、まあこれは実に複雑な解釈や運用やあるいは新しい規定が要るのではないかというようないろいろの問題がございます。したがって、政府としては本質的な中国政策についての見解をまだつくり上げていないくらいでございますから、仮定の上の学者的な議論というようなことにまだ立ち至って見解を申し上げる筋合いではない。しかし、永末君もよく御承知のように、たとえばアルバニア決議案は、あの中において、中国代表権回復の決議ということになっております。通常世間では加盟とか招請とかいろいろの字が使われておりますけれども、実際の手続上の問題をあわせて考えますと、一体こういう手続法的なことをどういうふうにやるべきであるかということは、やっぱり実態ともう密接不可離でなければ一つの案というものはできにくいのではないだろうか、かように存じております。
  269. 永末英一

    永末委員 佐藤総理、私は最初からあなたに申し上げたのは、任期中にお考えにならないか、国交回復をですよ。つまり目的を立てれば——いま外務大臣は学問的にいろいろ学説があったりと言いますが、そうじゃないと思うんですね。日本政府が国交回復をしよう、たとえば国交回復議員連盟が政権をとればそうなると思いますがね。そうすると方針が立つから、それならば現行の国連規約の中でどこをどう一体、もし規約改正をすべき点があるならばどこであるか、規約改正をしなくてもこういう決議でいけるのであるか、こういうことがのってきますね。ところが、そういう気がないからじっと見ておる、こういうことになる。やはりあなたの決意というものがもとであって、おのずからその国連の中で中国代表権が北京政府に回復せられることが出てくることはない。それは、そういうことはあり得ないことである。代表権が争われるということは、国連が最初できたときには想定していなかった事態だと私は思う。その辺で、やはり一番中国とは近いところにあるわが国政府のその首班であるあなたの決断だと私は思います。その御覚悟はございますか。するしないは別として、そういう問題なんだという御認識はございますか。
  270. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくいままでわれわれが認めてきた台湾政府台湾における中華民国、これとの関係の調整がどういうようにできるのか、そこに非常にむずかしい問題がある。私が何にもしないでじっと模様を見ている、こう言われますが、きめかねているのはそういう点でございます。
  271. 永末英一

    永末委員 佐藤さん、よくわからぬのですがね。しかし、私の言うていることはおわかりになったから、ひとつ腹を練っておいてください。  一つ最後に伺いたいんだけれども、こういう状態でやっておりますと、ことしもだいぶあぶなかった覚書貿易について、一体どうなるかと国民心配いたしておる。あたは自民党総裁として、自民党員を次回の中国との覚書貿易の代表団に派遣する意思がございますか。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 覚書貿易、これはわずかに与党において進められておるものであります。ぜひこれは進めていきたい、かように考えております。
  273. 永末英一

    永末委員 従来まで覚書貿易の中には自民党の国会議員が、党員のそうそうたる方がその代表として行われた。これは自民党の代表でも何でもございません。しかもことしの経過から見れば、やはり自民党総裁であるあなたと連絡をとりつつ行かれたようにわれわれは承っておる。重要な段階でございますので、あなたの覚書貿易を続けるべしという御意思を表明されたことは、ことしもまたあなたの党員の中からこれに参加せしめたいという御意思と了解してよろしいか。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だれがどうするかということは別として、覚書貿易は断ってはならない、かように私も考えております。
  275. 永末英一

    永末委員 アメリカとの間に自主性を回復するという御意思はわかりましたけれどもアメリカ人の目から見ると、日本の防衛について日本側が何ら努力をせずして、いわばただ乗りみたいな形に、日本アメリカにおぶさりながら自主性も何もないではないかというような考え方の人がある。いよいよことしの六月二十三日以来、安保条約はあなた方のことばでいえば自動継続の状態に入りました。そして十月には「日本の防衛」と称する防衛庁が発行したいわゆる防衛白書が出ました。次いで四次防というものの輪郭が、自民党だけでございますけれども、自民党の機関の決定を経て世の中に発表せられました。これについて一体どうなるかということを国民はいろいろな角度から検討いたしております。私はこの機会に、日本の防衛について、いまのように大きく変わってまいりましたので、佐藤総理中心とした考え方を明らかにしておいていただきたいと思います。  さて、その中で私は、いままで自主防衛ということばがいわれてまいりましたけれども、これがどうもはっきりしていない。今回の防衛白書では、自主防衛と日米安保体制とは全然矛盾しないものだ、こういうような言い方がされております。とんでもないことだと思います。防衛は国の仕事の重要な部分でございまして、しかも一般にデマが横行いたします場合には、その事柄の重要さとそれに対する説明のあいまいさとの積がデマになるのでございまして、防衛に関して処士横議といわれるようないろいろな議論をしております。これが、言うならば、われわれがいわば求めざる軍国主義へ傾斜しておるのではないかという批判をこうむる一つの原因になっておると思う。私は、この機会に日本の防衛の最高責任者である佐藤総理から、この点の考え方を明らかにしていただきたいと思います。そういう意味質問いたしますので、明確にお答えを願いたい。  第一に、過般三島事件が起こりましたときには、唐突の間でございましたので、本会議においてあなたは簡単な答弁をされました。三島事件はその後ようやくにして輪郭が人々に明らかになったのではないかと思います。私は、三島事件が、文学者としての三島由紀夫君そのもののあの行動を問題にしたいとは全然思いません。ただ、彼があのときにこの行動をやるについて発表いたしました檄の中に、三島君が考えた自衛隊の姿というものを描いておる。これが、もし国民の中に自衛隊というものに対する感覚が、三島君が期待したがごときそういう世論が起こってくるとすれば、私は相当の問題点があろうと思うので、自衛隊をかかえておられる防衛の最高責任者であるあなたから、この点の考え方をひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。  激の中で出ました自衛隊に対する考え方は、法理論的には自衛隊は違憲であることは明白であるということ、日本人の魂の腐敗、道義の退廃の根本原因は軍の名を用いない軍として自衛隊があるということ、第三点は、自衛隊が建軍の本義に立ち、真の国軍となる日のために、国民として微力の限りを尽くすこと以上に大いなる責任はないと彼は感じて割腹した、こういうことである。  私は、自衛隊というものはどういうものだということは国民はいろいろな角度から考えておると思います。この際、ひとつこれらに関連をしつつ明らかにあなたの御意見を承りたい。
  276. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自衛隊は、私どもはこの国の防衛の責任を果たしつつあると思います。私が申し上げるまでもなく、わが国の憲法は自衛権を否定まではしておらない。その意味におきまして、他国に脅威を与えないもの、そういうものは持ち得る、自衛の範囲だ、かように私は理解しております。そういう意味で陸海空においてそれぞれ自衛隊が責務を果たしつつある、かように思います。一部で非常に誤解をされている。いまの国防の基本的な考え方は、その自衛力を増強するにいたしましても、国力、国情に応じて適宜な規模でこれをやる、これがいままでの考え方であります。最近のようにGNPがどんどん伸びていくと、いわゆる国力、それに応じてやるということはいろいろ問題もある、こういうことでいろいろの意見を呼んでおりますけれども、基本的にはどこまでも他国に脅威を与えないもの、自衛の範囲にとどめるということ、それが大事なことだと思います。  ただいま比較的にわが国の防衛力、自衛力については御理解のあるお尋ねでございますけれども、一部においては、もうすでに日本は軍事大国になりつつある、こういうような呼び方もされておる。また一方で、アメリカ自身はニクソン・ドクトリンから見まして、第一義的にその国の防衛はその国の力でやってほしい、こういうことは言っておりますが、しかし、いまのような核戦力時代になりまして、核兵器の取り組み方、これが一番の問題ではないかと思っております。私は、日本が核兵力を持つようになる、それはもう自衛じゃないじゃないか、こういう批判も当たろうかと思いますが、それは絶対に持たないということをいま誓っておるその際において、軍国主義化するとか、これなどの批判はやや事態を過大視した実際には合わないものじゃないか、かように思っております。  私は、三島君が作家としてはたいへんりっぱな人であったと思いますが、三島君の考えたような自衛隊でなかったという、そういを点でたいへん失望したかもわかりませんけれども、中曽根君が防衛庁長官として自衛隊についてやっておる事柄、三島君と考え方が別でありましても、これはどうも三島君のほろの考え方をとるわけにはまいりません。三島君がどんな檄をつくろうが、それによってわが自衛隊が左右されるものでないことは、これはこの際にはっきり申し上げておきます。  なお、私の説明で不足の部分があれば、中曽根君からもお答えさせたいと思います。
  277. 永末英一

    永末委員 この檄文の中では、治安出動が行なわれた場合には、何か憲法改正が行なわれて、世の中が変わるがごときことを期待しておったように読みとれる節がございます。私は間違いだと思います。しかし、治安出動そのものについては、防衛庁設置法、自衛隊法ができまして以来、いろいろな角度から質疑が行なわれましたが、必ずしも一義的に明確になっていない。したがって、こういう期待を抱く人が出るのもやむを得ない点があるのではないかと思われてなりません。それでこの機会に、治安出動というものについてひとつはっきりと政府考え方をきめておいていただきたい。  公安委員長に伺いたいのでありますが、昨年十月二十一日のいわゆる新宿事件のときには、警察がこれらの事件について、これを平定するために出動をいたしました。警察の目から見た場合に、どういう場合に自衛隊が出なくちゃならぬとお考えか、公安委員長、お答え願いたい。
  278. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。  国内の治安維持につきましては、警察があくまでも第一義的な責任を有するものであることは申すまでもございません。現に警察はその責任を十分果たしております。将来、万一警察力のみで対処することができない事態が発生し、自衛隊の治安出動が行なわれるような場合には、警察は自衛隊と緊密な協力連携のもとに治安維持に当たることとなるわけであります。  ところで、治安出動が問題となりますのは、警察力をもっては治安維持ができないような重大な事態の場合でありますが、それがどのような様相の事態であるかをただいま想定することははなはだ困難であります。ただお尋ねでありますので、しいて考えてみますると、銃砲などが大量かつ広範囲に使用されるとか、暴動が広範囲の地域にまたがり、かつ長期間にわたって継続するなどの事態で、警察力だけでは処理できないような場合などが考えられると思います。  いずれにいたしましても、警察としては平素からこのような事態が発生することのないように、違法行為の取り締まりに万全を期しておる次第であります。
  279. 永末英一

    永末委員 公安委員長は、ただいま銃砲等が多量に使用せられて、普通の日本国民が大いに殺傷せられるような場合——後段は私がつけたことばでありますが、もう一つは非常に広い地域がそういう人々によって支配せられておる、この場合も、公安委員長、私はやはりおそらく普通の日本国民が殺傷せられるということが付随的に起こっておると思うのですね。そうしますと、もしこの解釈はあなたの解釈で合っておるならば、普通の国民が身体に危害を加えられる、生命を奪われるというような状態が起こっておる場合、その場合に公安委員長としては治安出動があり得るんだ、こう考えておられると思いますが、お答えを願いたい。
  280. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申します。  警察法第七十一条には、「内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる。」とあります。七十二条には、内閣総理大臣は、そのときには一時的な警察の統制権が与えられるということに相なっております。  そこで、治安出動は警察、公安委員会それ自身の活動でなされるものではございませんけれども、いま読み上げました七十一条の事態の場合に、国家公安委員会の勧告に基づき緊急事態が布告された、そのときには、警察力の全力をふるって治安の維持に当たりますけれども、どうにもいたしかたがないというときに治安出動となることかと思います。
  281. 永末英一

    永末委員 公安委員長、端的に聞きますが、私が申し上げた標識は、普通の国民が身体に危害を加えられる、生命を奪われるというような状態、その広がりはいろいろございましょう、そういう場合と、ただ単に多数の人が動いておる、大衆行動をやっているというのは全然違うと思うのです。その場合に、私は前段にのみ治安出動みたいな状態考えられるのであって、後段のような場合には考える必要がないのではないか。もしそれを時の政府が規制しようとするならば、警察力だけで十分であって、前段のときのみ治安出動のようなことが考えられる、こう思うのでありますが、お答えを願いたい。
  282. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。大体仰せのとおりかと思います。
  283. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官はどういう意見ですか。
  284. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず先ほどの総理に対する御質問の中で一点申し上げたいと思いますが、三島さんはやはり天皇の軍隊ということをお考えになっておって、昔の統帥権的な考えがあったと思います。しかし、今日の自衛隊は国民の防衛力としての自衛隊であって、文民統制を中心に運用されているもので、そういう意味において非常に性格の相違があると思っております。そういうふうにいま徹底しているわけでもあります。  それから、治安出動の問題につきましては、公安委員長の申されたとおりですけれども、要するに量的に数府県にわたって多発的な暴動等が起こって、警察力では数でも間に合わないというような場合、それから質的に相手がロケットとか迫撃砲とか警察では太刀打ちできない兵器で出てきて、どうしても警察力では間に合わないという場合に自衛隊が出動せざるを得ないと思っております。
  285. 永末英一

    永末委員 私は、いま公安委員長防衛庁長官が申しましたように、日本国民がゆえなくしていまのような危害をこうむり、あるいは身体、生命を奪われるような状態が発生したり持続したり、これはあらゆる力を尽くして何とかせねばいけませんね。その他の場合には私は自衛隊は出動すべきではないと考える。ところが、自衛隊法ができましたときに、間接侵略その他緊急事態に際して、それから警察力をもって治安を維持することができないと認められる場合、条件がついておりますが、この規定がきわめてあいまいだからいろいろな治安出動の状態考えられたのではないか。  前の前の防衛庁長官である増田長官は、これについてこう言っておりますね。自衛隊法七十八条は、いわば十ぱ一からげに書いてあるわけで、侵略戦争類似の間接侵略と、外国の使嗾もしくは干渉に基づかざるものであって大規模でないものというようなものも一緒くたに七十八条は書いてあることは、これは立法論上問題ではないかなんていうことを言っております。この辺を明確に書き改める意思はございませんか、防衛庁長官
  286. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 運用を私が申し上げたように注意してやれば、書き改める必要はないと思います。
  287. 永末英一

    永末委員 訓令ではっきりさせる意思はございますか。
  288. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は公安委員長のほうとよく検討してみます。
  289. 永末英一

    永末委員 公安委員長防衛庁長官と協議をして、その点を明確にされますか。
  290. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 そういたします。
  291. 永末英一

    永末委員 いまのことはひとつはっきりとやっていただきたい。総理、お聞きになりましたね。  さて、いわゆる防衛白書でございますが、これは十月二十日の閣議、総理はそのときにアメリカにおられました、あなたのおられない閣議でございますが、これが了承を受けて世の中に発表をされました。総理はこの内容を御存じでしたか。
  292. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一応、個条的に聞いております。
  293. 永末英一

    永末委員 個条的といいますと、おそらく目次を見られたのだと思うんですね。目次はなかなかりっぱに書いてございます。ところで内容を見ますと九十数ページ、四万数千字にわたるものでございますが、大部分世界の情勢、他国の話、わが国の防衛に関する歴史的経過、それに精神論が一部加わりまして、それから自衛隊の現状の要するに全く形而下的なことが約四割になんなんとするほど書いてあるというのが内容でございまして、よその国のことを申し上げて失礼でございますけれども、たとえばスイスで「民間防衛」と称する本、これは政府国民に一人一人渡したんだそうでありますが、それの序文に、これは政府のつくったものですが、こんなことが書いてある。「われわれは脅威にいま直面しているわけではありません。この本は危急を告げるものではありません。しかしながら、国民に対し七責任を持つ政府当局の義務は、最悪の事態を予測し、準備することです。」こうやって非常に綿密に事態を説明して書いてあるわけであります。また西ドイツの国防白書、これもしばらく出なかったのでありますが、それが出ました。これは全編ストレートにドイツのことが語られてある。わが国の防衛白書と称するものは、わが国のことを語ることはきわめて少ないのですね。これではこれを読んだ者は一体どうしたらよいのか。防衛白書は、身を挺して国を守れとか、国を守るために最善を尽くせとか、お説教はたくさんございます。お説教をすることではなくて、身を挺して国民が国を守ろうとする場合、政府はこれこれの準備をいたしておりますということを、防衛白書は国民に説明すべきものである。一体間違っているのではないかと私は思うのです。その意味合いで、過般来何べんも、政府は早く国民に国防白書を出しなさいということを、われわれは主張してまいりました。ところが、それが出ずに、今回この白書が出ましたが、どうもこれは防衛白書ではなくて、防衛庁白書ではないか。これではどうも国民が魂をふるい起こして国を守らなければならぬという気にならぬのではないかと思われてなりません。  私はその意味合いで、国防白書というものはやはり防衛庁だけではでき得ないものであって、国防会議の議を経、その関係各省がいろいろな角度からこれに参画をして出すものと私は思います。総理大臣は国防会議の議長でございますから、どう思われますか、お答え願いたい。
  294. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろの御意見が出てくる、もっともだと思います。初めて白書が出たのでございまして、これからこういう形で毎年やるかどうか、そこらにも問題がありますし、またそう毎年毎年やらなくても、もっと実情がよくわかるように日本中心にして、とこのお話もよくわかりますから、もう少し書き方その他についても勉強したらいいだろうと思いますが、とにかく初めての試みである。どうも自衛隊について十分の認識を得ておらない、こういう現況から見れば、やはり防衛庁としても国民に訴えたいものもあっただろうと思いますから、一がいにそうおっしゃらないで、これからだんだんいいものをつくるようにいたしたいものだと思います。
  295. 永末英一

    永末委員 オリンピックではありませんが、出したことには意味がございますけれども、出したことの内容をいま申し上げているのであって、大体国防会議というものを総理大臣はどうお考えでしょうか。防衛庁設置法が基礎法でつくるようなものでしょうか、お答え願いたい。
  296. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもいま国防会議というものを十分活用していない、そういううらみも多分にございます。これは一つは時間的な制約を受けたりしておりますが、もう少し国防会議というものを有用に使うという——どうも有用にこういうものに働いてもらうと、スイスではございませんが、何か非常に危険が迫っているとか、そういうような意識を国民に与えやすいものですから、そういう点もよほど注意して会議を開いていかなければならぬと思います。私は、この予算委員会でただいまのような質疑をかわされると、国民からも理解されるだろう、国防の実態というものについて、あるいは自衛隊のあり方等について政府も真剣に考え、各党もまたそういうことを議論しておられる、かように思えば国民も安心されるのだろうと思います。そういう意味で、いまの国にあるそれぞれの機関をもっと有用に働かす、そういうほうで私どもも勉強しなきゃならぬ、かように思います。
  297. 永末英一

    永末委員 わが国は法律に基づいて自衛隊を保有しておりますけれども、一体わが国を防衛するということはどんなことなのか。つまり自衛隊を抑止力として保有しているのだという表現があちらこちらでございます。白書のみならず、政府の発表するものにございます。同時にまた、自衛隊法では、これは直接侵略を排除するための防衛力なんだ。抑止力と防衛力とは実体は一つであっても、その用についてはおのずからやはり考える見方が違うと思います。私は申し上げたいのは、一体自衛隊を防衛力として真剣に考えているのかどうかということをひとつ伺いたい。
  298. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛力と抑止力は一つのものが両方の作用をなしておるわけです。日本に侵略しようと思う者が、日本に入ってきたらひどくたたかれて、痛烈な損害を受けるということがわかれば寄ってきません。そういう意味においては抑止力でもあります。しかし、入ってきた者はこれは撃攘される、そういう訓練をまたやっておるわけであります。ですから、抑止力、防衛力ということばの問題であって、実体はいまの防衛庁設置法の命ずるところに従ってやってけっこうであると私は思っております。
  299. 永末英一

    永末委員 持っているものは一つでありますけれども、見方によって二つの用がある、当然のことでございます。私は、自衛隊を持つからには、防衛力として整備をすべき問題だと考えます。その意味合いで、十一月二十八日、各紙一斉に報道されたところによりますと、十一月二十七日に在日米軍司令部は日本政府に対し、在日米軍の実戦兵力は岩国など一部の部隊を除いて七一会計年度末までに全面的に引き上げると通告してきたということが報道されました。これに基づいて社説も書かれ、いろいろな報道がされました。これは事実ですか。
  300. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 在日米軍基地の合理的な調整、整理統合については、政府はかねて米軍と折衝してまいりましたが、その具体的な内容につきましては、目下折衝中で、まだ非常に流動性を持っております。ここで申し上げるにまだ適しておりません。
  301. 永末英一

    永末委員 十二月八日、アメリカ上院の歳出委員会においてロジャース国務長官とレアード国防長官が出席をいたしまして証言をいたしました。その証言の中で米空軍の——日本におります米空軍でありますが、米空軍のF4ファントムジェット戦闘爆撃機一個中隊を近く日本から韓国に移駐すると証言をいたしました。これは御存じですか。
  302. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そのことは新聞で存じておりますが、日本側といたしましては、そういうことを発表するのに、まだ時期は適しておりません。
  303. 永末英一

    永末委員 私はこれから伺いたいのは、防衛力として自衛隊を持つのだというならば、なぜ一体その防衛力は必要なのか。国民の税金でみなこれをまかなうわけですからね。大蔵大臣、そうでしょう。よそから金はきませんよ。それならば、その持った防衛力は効果があるのかないのか、これを国民に知らせなければ、四次防などぼかっと出しても、国民は疑いますよ。ところが、防衛白書によると、核攻撃と大規模攻撃に対しては、日米安保条約によってアメリカ軍に依頼するのだという立て方になっておる。わがほうは局地戦争だけに対応するのだ、こういう立て方になっておる。そういたしますと、いまや実戦部隊がいなくなる、こういうことをアメリカ側が言っておるとするならば、これはわがほうの防衛計画にとってはきわめて重大な問題。そこで伺っておる。あなたはまだ言う段階ではないと言っておられましたが、防衛庁長官は、事実はあるけれども言えないということなんですか、事実を知らぬということなんですか。
  304. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 諸般の問題について両者の事務レベルで折衝が進められておる。しかし、それはまだきまったわけでもないし、流動的で、発表するのに熟していないということであります。
  305. 永末英一

    永末委員 ことしの夏に韓国からアメリカ軍が引き揚げる話を質問いたしましたところ、中曽根長官は、まだ現実の問題でないから答える限りにあらずということでございました。いまや韓国から一個師団が撤退することは、韓国政府も発表したから、全世界周知の事実である。これに関係づけて、いまのように日本におけるジェット戦闘機部隊が一個中隊韓国に行く、こう言っているのであって、その場所はどこから行くかも、政府は言わなくても明らかになっておる。だといたしますと、いまやこの時点でわが国の防衛を考える場合に、日本においてアメリカのF4部隊が全部い続けるという想定でかかるのか、いなくなるという想定でかかるのか、重要な問題だと思います。あなたはどっちでかかりますか。
  306. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点もいまオペレーションのほうにつきましてもいろいろ検討を加えている最中でありまして、断言的なことはまだ申し上げる段階でございません。
  307. 永末英一

    永末委員 総理大臣、お聞きください。防衛白書は、侵略は不測のときに不測の形で迫るものであると書いてあるのですね。ところが、わが防衛庁長官は、まだオペレーションの段階で言う段階ではない。ばっと来たらどうなるでしょうね。そしてこれが正月にでもあるいは二月にでも実施された場合、まあクリスマスあと実施せられるかもしれませんが、そうなった場合に、一体それを見込んで計画を立てていることを見込まないで立てていることは、たいへんな問題——防衛庁長官はあんなことを言っておりますが、あなたは日本人の命を預かっておられる最高責任者ですが、国民に何にも言うことございませんでしょうか。
  308. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一番大事なことは、国民政府を信頼することだ、また政府国民の信頼を裏切らないこと。信頼をつなぎとめれば、ただいまのような御心配は要らないのです。
  309. 永末英一

    永末委員 国民の信頼を得るためには、やはり城府が何をしておるかということを国民に説明しなければわからぬですね。だからこそ、国防白書か必要だと申し上げてきた。出された。それに書いてあることはこんなことであって、しかも新聞を通じて全部が、国民がそうだろうなあと思っていること、大局的にいえば、ニクソン・ドクトリンのもと、そうなるであろうとだれでもわかっていることを、いまの段階では言えない、そして信頼せいと言っても、信頼しようがないでしょうね。総理大臣、そこは重要なことですから、お答え願いたい。
  310. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、ニクソン・ドクトリン、これがどうもいろいろ誤解されている。これは第一義的には、その国の人がその国土を守るという、そういう方向でものを考えてくれ、これはよろしいことです。また、そうあるべきだと私も思います。しかし、その国が、やはり自分の力ではなかなか守れないものもある。そういうことについては、ニクソン大統領はいままでコミットしたことは、これを変えるものではない、かように申しておりますから、いままでの約束はほごにはならない。新しいコミットメントについては慎重にやられることだ、かように私は思います。これはそれなりにとってよろしいと思います。ただ問題は、いま日本に駐在したものを、そういう部隊が移動するとかあるいは削減された、こういう場合に、あるいは日米防衛計画、これが基本的に変わるのじゃないか、あるいは弱化をもたらすのじゃないか一国民の一部にそういう考え方か、そういう心配があるなら、その心配はないということをはっきり申し上げます。最近の兵器の先達から申しまして、また戦略的なやり方等にいたしましても、ずいぶん変わってまいっておりますから、そこらのところは、十分在来のような戦争抑止力を持っている。また、その即時対応する能力、これは日本の自衛隊にもだんだんできつつある。いまの状態で十分だとは私申しませんけれども、そこで皆さん方の御協力を得て、さらに整備計画等もこれから御審議いただこう、かように申しておるのです。ここらに国民としても安心できるものがあるのじゃないかと私は思っております。
  311. 永末英一

    永末委員 総理大臣国民はイスラエルとアラブの六日間戦争、いや六時間戦争というものをよく知っているわけですね。だから、ニクソン大統領が何を言いましょうとも、時間の問題を一体しのげるかどうか。そのために一体四次防のようなものに金をのんびりと出しておっていいのかどうか。いや、それならば全然別のことをやらねばならぬのではないかといろいろ考えておるわけだ。  そこで、ちょっと時間がございませんので、あと三つほどでございますから、お答え願いたいのです。  いまアメリカ態度を申されましたが、一体わが国はどうやって核の脅威からのがれようとするのか。白書によりますと、安保条約があったらだいじょうぶだということだけである。その証拠は、佐藤さんとジョンソン大統領が面会をしたときに、いかなる攻撃に対しても日本を守ってあげましょうと彼が言ったということを共同声明で発表される。ことし中曽根防衛庁長官がレアード国防長官に会ったときに、いかなるタイプの兵器も使って日本の国を守ることに条約上の義務を果たすと言った。これだけなんですね。ところが、同じような立場にある西ドイツでは、NATOの一国ではございますけれども、NATOの中に核防衛問題委員会、NDACが一九六六年以来つくられる。そしてまた、それに付属して核計画グループ、NPGがつくられました。これにドイツは参加をして、なるほど核弾頭はアメリカ大統領が持っておるけれども、この管理の一部分についてドイツ人は参加をしておるのだ、だから核戦争の脅威をのがれるために政府はこれだけ努力をし、安心をしてくれということを、ドイツは国防白書で国民に訴えておる。わがほうは、ただ佐藤さんと中曽根さんがアメリカのそれに会って、守ってやろうなあと言ったと、こういうことだけでしょう。だから、あなたの自民党の中に、そんなことはないんだ、核の約束なんか、から約束だなんという人がおるでしょう。私は核の脅威をのがれるために日本政府がなすべきことはあるのではないかと思います。お答え願いたい。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま核の脅威から日米安保条約、それにたよって日本の不足分を補っておる、かように確信しておりますので、また国民の皆さん方もそれを信頼しておられる、かように思っております。いま、日米安保条約がなくなった、かような状態で、ただ大統領と総理との話い合いだ、これならたいへん心配だろうと思いますが、これが継続しておる限りにおいて、そこらに心配はない、かように思っております。
  313. 中野四郎

    中野委員長 永末君に申し上げますが、お約束の時間が経過しておりますので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  314. 永末英一

    永末委員 時間がないのでまことに残念でありますが、もう三問、簡単に聞きますから、簡単にお答え願いたい。  一つは、いかに防衛力を持ち、抑止力だと申しましても、わが国の地理的環境から、もし直接攻撃を受けたら大きな被害をわが国社会はこうむることになります。このことは防衛白書も認めて、他国の民間防衛のシステムを紹介いたしております。ところが、わが国には民間防衛について全く何らの方途も講ぜられていないのが現状である。防衛庁長官、どう思いますか。
  315. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まだ日本の周囲にはそれを必要とするほどの顕在的脅威は出ておりません。そういう顕在的脅威がないときに、いたずらにそのことをふれ回ることは無用な論議を起こすし、国民に混乱を起こしますから、自重しておるのであります。
  316. 永末英一

    永末委員 四次防もぼちぼちやられたらいいでしょうね。そんなに急いで年間に一兆二千億円以上も使う必要はないじゃないですか、何もないですからね。そう言いたくなりますよ。  防衛白書について質問いたしますので、お答え願いたい。防衛白書は、「直接侵略が起こった場合には、防衛に必要な限度においてわが国およびその周辺の海域や空域における航空優勢、制海の確保に努め、その事態から生ずる被害の局限化をはかり、侵略を早期に排除することをはかる。」こう書いてあります。「周辺の海域や空域」とはどこまでか。「航空優勢」というのは、航空攻撃によってわが国がどんどんやられるということであるのか。「制海の確保」というのは、一体どんなことか。それから「被害の局限化」いま言ったように、何もやらぬのでありますから、総理大臣、被害を受けるのですよ。総理大臣官邸もばあんと飛んじゃうかもしれませんね。これは、そんなことは起こらぬといっておるのです。そんなら、自衛隊も要らぬということになりますね。これらについてお答え願いたい。  それから最後に、総理大臣、ひとつお答え願いたいのは、これほど重要な問題であり、しかもぼんやりして何ら解明されていない点もあり、また、する必要はないとお考えであるけれども、四次防はすでに自民党の原案としては世の中に紹介をされておる。しかもきわめて多くの経済資源をこれにさかなくてはならぬ。私は来国会から、自民党総裁としての佐藤さんは責任をもって各党と相談をして、国会に防衛委員会を設置すべきであると考えるが、これを最後にお答えを願いたい。
  317. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 だだいまのいろいろな御設問につきましては、やはり本土防衛に必要な相当量の防衛力及び防衛に関するある程度の力を持たなければならぬわけです。その本土防衛に必要な限度における範囲並びに力を持つ。そういうことで御答弁申し上げたいと思います。
  318. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 防衛委員会設置、これは政府と申すよりか、国会での問題でございます。私もいまほど——だんだん規模も大きくなってき、またもっと国民の協力を得なければならないその段階になってくると、やはり特別な委員会を持つことが望ましいんじゃないだろうか。別に私のほうからお持ちなさいと国会に申し上げるわけではございません。誤解のないように。以上のように私は思います。
  319. 永末英一

    永末委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、防衛庁長官に最後に一つ要望しておきます。  あなたは、本土防衛に必要な限りと言ったが、この書き方に問題がある。このことがはっきりしなければ四次防はわからぬのである。これを受けて四次防をつくっておいでであるから、一体「周辺の海域」とは何か、「空域」とは何か、「航空優勢」とはどの程度の相手方とわがほうの力とを考えておるのか。四次防のあなたの原案は一体それでいいのかどうか。「制海の確保」とは一体内容は何を意味するのか。「被害の局限化」は二手ございましよう。攻撃してきたものを破砕することも一つでしょう。しかし、同時に民間防衛を考えなければそういうことはあり得ないことである。あるいはまた侵略を早期に排除するといいますけれども、陸上自衛隊の使い方などは防衛白書に一行も出ていない。こういう点をひとつ機会をあらためて少しゆっくり質問いたしますから、御準備を願いたい。  質問を終わります。
  320. 中野四郎

    中野委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、楢崎弥之助君。
  321. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 運輸大臣にお尋ねします。  地位協定第六条は、非軍用あるいは軍用の空港に関するものですが、航空交通管理及び通信の体系についてはよく協議をし調整をする。そして日米の間で取りきめをすると書いてあります。この地位協定第六条による附属書があるはずであります。御提出いただけますか。——運輸省所管のものであると私は思いますが、そこは佐藤内閣でひとつ御相談をいただきたい。
  322. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 ただいま御質問ございました航空管制に関します日米合同委員会の合意につきましては、昭和二十七年六月並びに昭和三十四年六月の合意の内容を、昭和三十五年に国会に提出いたしてございます。
  323. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは幾つありますか。名称をひとつそれぞれ言ってください。
  324. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 昭和二十七年六月に出しました合意と、昭和三十四年の六月に出しました合意と二件ございます。
  325. 中野四郎

    中野委員長 局長、名称は。
  326. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 航空管制に関する合意ということで、日米合同委員会の合意書を出しております。
  327. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 国会に出しておるという話ですが、あらためて出していただけますか。
  328. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 合意書の内容を昭和三十五年に国会のほうへ政府の文書として提出してございますが、内容はそれによって御承知願いたいと思います。
  329. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何を言っているのですか。もう一ぺん出しますかと言っているんでしょう。
  330. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 その内容はもう一ぺんお出しいたします。
  331. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 すぐ出してください。後ほどの質問関係しますから、先に資料をお願いしたわけです。  まず主題に入っていきたいと思います。  中国問題でありますが、私は、最近の国会における質疑、討議を聞いておりまして、国連に関する問題が主であったと思うのです。国連においてどういう態度をとるかなんということは、これは対中方針さえきまれば、外務省におまかせになっておけば、これは二、三日でできるのですよ。問題は、一体日本は中華人民共和国とどういう関係になりたいのか、この基本方針さえきまれば、あとは技術的な問題だと思うのです。そこで、きょうの公明党の矢野委員との質疑を聞いておりましても、私はたいへん注目すべきことばを答弁されたと思うのです。それは、基本問題と国連における態度、これを区別すべきではないという答弁がありました。私も確かにそのとおりであると思うのです。  そこで、ちょっとおさらいをしておきますが、最近、現在まで中国に対する日本の対処方針、公になったところだけ申し上げてみますと、日中の大使級会談、それから今度の二十五回国連総会における鶴岡国連大使の演説の内容、それから同じく記念総会に出られて後の佐藤総理とニクソン大統領との会談の内容——さらに国際信義、国益、国際的な緊張の緩和考えながら慎重に対処する。それから今度の臨時国会の冒頭、本会議においてわが党の下平議員答弁された「正常な軌道に乗せたい」、総理の御答弁です。公式に出ておるところではまあこれくらいのところだと思うのです。  そこで、私はまず、この臨時国会の本会議における下平議員質問に対して総理は、「北京政府との間に友好的な関係が生まれることは、政府の最も期待するところであり、さきに大使級会談を提唱いたしました。いまだに進展を見ておりませんが、引き続き積極的に接触をはかり、これを正常な軌道に乗せたいと考えております。」これが総理の御答弁であります。そこで、これは大使級会談を正常な軌道に乗せたいという御答弁だと思いますが、そうじゃないですか。じゃ「正常な軌道に乗せたい」というのは、その日中の間の関係を正常化したいという願望が含まれての御答弁でございますか。
  332. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大使級会談がその手段であるかは別として、とにかく両国の間がいまのような状態であってはならない。基本的には、やはり両国の間はもっと緊密な関係をとり得るようにしたい、これが私の真の考え方でございます。
  333. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は正常化ということばを使いました。総理は緊密化と言われましたが、ことさらにそんなに言われているのですか。正常化への願望がこの答弁の中に含まれておるのかどうかへ私はそれをお伺いしておるのです。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その気持ちが出ておると、かように御理解をいただきたいと思います。
  335. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 佐藤総理は、日中の国交正常化への願望の気持ちがこの答弁の中にあらわれておると、いま御確認になりました。  そこで、大使級会談、これは昨年総選挙直前に大分で総理はこの考えを出されたわけです。そこで、総理が言われただけでは、ことばだけではいけませんので、さっそく外務省はそれを実現すべく努力されたと思います。そこで、大使級会談を申し込まれた日にち、場所及びその会談の目的は、どういう目的でしたいということでそういう申し込みをされたか、簡単にお願いします。
  336. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 大使級会談につきましては、累次国会でも御説明申し上げておりますけれども、最初は人道的な立場に立ちまして、抑留邦人の問題等についてぜひ話し合いを持ちたいということがそもそもの始まりでございました。これはずっと古い沿革がございますけれども、そういう点は省略いたします。それから今日に至りますまで、政府間におきましても、とにかく双方がいろいろのものの考え方についてフランクに話し合いの場を持ちたいという趣旨において、こちらとしては大使級の会談を提唱しておるわけでございます。  ただいま何年何月何日、どこでどうということを答えろというお問いでございましたが、これらの点につきましては、機微な点もございますので、ここではっきり申し上げることはお許しいただきたいと思います。
  337. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がお伺いしているのは、昨年総選挙前に総理が大使級会談を呼びかけるということを言われて、それから後ですから、ことしに入ってから具体的に大使級会談を申し込まれたと聞いておるが、それはいつで、どこでということを私はお伺いしている。
  338. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御案内のように、中華人民共和国政府が国交を持ち、かつ在外公館に相当な大使あるいはそれにかわるような人を派遣いたしましておるところ、そして同様に、そういう場所に日本側として大使が常駐いたしておりますというところも相当ございます。いつ、どこでという話で、たとえば一つのルートでどうこうというようなことではございませんで、ここがなかなかデリケートなところでございますから、先ほど私は提唱ということばを使いましたけれども、提唱いたしておりますが、これのいつ、どこでというふうなことは、この種の問題については、いまここでは明白に申し上げることは差し控えたいと思います。
  339. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 答弁が長過ぎますので、要領よくひとつやっていただきたい。  それでは、私のほうから聞きます。一月に、場所はパリで、パリ大使館関係を通じて中国の出先に申し込みをされた。−その結果はどうなりましたか。
  340. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 具体的な場所、日取り等については申し上げることは差し控えたいと存じます。それから、結果等については、ただいま反応がございません。
  341. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 反応がないということは、断わられたと理解してよろしゅうございますか。
  342. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 文字どおり反応がないと申し上げることが正確だと思います。
  343. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なぜ反応がないと外務省は考えておられますか。
  344. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その辺が私としてはなかなかお答えしにくいところでございます。
  345. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体お答えになれないそうですから、私のほうから推測を言っておきます。  一月にパリでなさった、内容は抑留邦人の問題等であろうと思います。ところが、それに対して反応がないということは、断わられたということです。なぜ断わられたのか。そこが問題だと思う。だから、そこを言うと、機微に触れるから言えない、こう答弁になったのだと思うのですね。そこで、抑留邦人問題、そういう種類のものは、たとえば「よど号」の事件のときのように、第三国、ソ連等をお願いしてやるとか、あるいは両国の赤十字を通じてやるとか、いままで過去に実績があるのですね。わざわざ日中間の何らかの接触を持ちたいというときの大使級会談の申し込みの内容としては、私は不適当であろうと思うのですね。ほかのルートでやれることです。もし総理が日中間の何らかの正常化を願われて、そのための大使級会談を提唱なさっておるのですから、私はこれはもうずばり言って、日中間の正常化の問題も含めて話し合いをしてみたいという意思表示があれば、また中国の反応は違うかもしれないと思うのですね。もう今日の主題はそこです。それ以外にないのです。  で、総理は、正常化の願望も含めてということをいま確実に答弁なさいましたから、また、総理大臣としてはこの十一月二十六日の本会議答弁にも明確にこの大使級会談のことを出されておる。そして正常な軌道に乗せたいということを明確に答えておられますから、もう一度提唱してみたいというお気持ちがおありかどうか。提唱するということは、国会でやりたいという表明じゃないのですよ。具体的に申し込みをしてみたい、申し入れをしてみたい、もう一ぺんやってみたい、そういう意欲がおありかどうか。
  346. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう一ぺんと限らないで、何度でもやってみたいと思います。
  347. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはまあ今度は二度目になるかもしれませんが、その二回目は大体いつごろやってみたいと思っておられますか。
  348. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだそこまでは考えておりません。
  349. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 申し入れを考えておられないのに、どうして大使級会談をやりたいということを言われるのです。これは本会議における総理答弁です。——あなたではないのです。総理答弁を聞いているのです。ちょっと待ってください、委員長。何も要求をしないのに、あなた、なぜ立つのですか。まだ質問が終わっていないのですよ。冗談じゃありませんよ。総理の御答弁を聞いているのですよ。総理以外の人がわかるわけがないじゃないですか。
  350. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そう大きな声をしないで。あまり大きい声をされると外務大臣もびっくりされますからね。しかし、いずれにいたしましても、こういう事柄はやはり外務当局においてやるわけですから、その辺はひとつ外務大臣からお聞き取りをいただきたい。
  351. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはまあ賢明なる楢崎君もよく御理解いただけると思いますけれども、正常な国交状況におけるところの具体的な問題についての話し合い等と違いますから、いつ、どこで、どうというようなことはなかなかむずかしいところでございますが、一口で言えば、こちらはいつでも門戸を開いているつもりでございます。いついかなる場所におきましても大使級の会談に応ずる用意があるということを提唱しているわけでございまして、私の感じでは、そのことは先方にも通じているはずだと思いますが、いまのところ不幸にして反応がない、こういう状況でございます。
  352. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いついかなる所でも門戸を開いているというおことばですが、もし中国のほうから、これは現在ではその可能性については何とも言えませんけれども、正常化の話し合いを含めた会談であればやりましょう、場所は北京でやりますからという意思表示があったら、北京に行かれますか、派遣をされますか。
  353. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまのところでは、大使級会談で双方の大使館の所在地でということで考え、かつ提唱しておったわけでございます。なお、先方がいまおっしゃるような反応であるということならば、これは十分こちらとしても考えてよろしいのではないかと思います。
  354. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 北京がその会談の場所になればけっこうだというお話しのように承ります。総理も確認をされておるようです。  そこで、私はこれはひとつみんなが考えなくちゃならない問題だと思うのですね、私どもも含めて。これは政府だけの問題ではないと思うのです。そこで、いままでの中国の過去の対応のしかた、態度を見ましたときに、中国は原則は非常にきびしいのですね。原則はきびしい。しかし、原則がはっきりしておれば、その原則の適用のしかたについては柔軟なところが私は見られる。これは対中の問題処理において大事なところだと思うのです。原則はきびしいけれども、原則の適用については非常に柔軟なところが見受けられる。たとえば、直接例になるかどうかわかりませんが、中国カナダのあの正常化の内容を見ましても、いわゆるテークノートということばが使われております。だから、その辺は非常に問題打開の糸口への一つのポイントであろうと私は思うのです。  そのことをまず基本に据えながら、打開への行き方は二つ私はあると思うのです。一つは、直接国交正常化という議題をテーマにして入るやり方、つまり原則を明確にすることですね。中国代表する唯一政府は中華人民共和国の政府だ、人民政府だということを明確にする、台湾中国領土の一部である、それが中国としては原則ですから、それを明確にして直接正常化交渉に入るやり方、これは直接方式と呼んでみたいと思います。それともう一つは、まあいろいろな事情があって、差しあたってその原則を明確にことばに出すことはできない、しかし、個々の具体的なケース・バイ・ケースのやり方、その具体的な措置のしかたが原則に反しないような措置のしかたをやっていく、そしてそれを積み上げていく。私はこの二つがあろうと思うのです。それで、どうもいままでの佐藤総理の御答弁聞いておっても、プロ。八一に直ちにいくという御意思のように見受けられませんので、しかし問題は、いつも起こってくるのですね。差しあたって覚書貿易協定の問題もある、あるいは毎年の国連の問題もある。それでそのつど処理方針を出していく。もし後者の方法をとれば、私はやはり大使級会談の呼びかけの問題も非常に具体的であるし、これを通じて何らかの日本政府の真意をくみ取ってもらうという方法もありましょう。それから覚書貿易協定の問題もあると思うのです。  そこで、覚書貿易協定は、先ほどもちょっと出ましたけれども、年末で切れる。総理としては協定継続を望む。この覚書貿易協定の始まりは準政府間協定として始まったことは御承知のとおりだろうと思うのです。ここでもし政治家が加わらずに経済団体だけでいくという情勢に追い込まれた際には、客観的に見れば、これはもう民間ベースと変わらないようになってしまう。ここは非常にむずかしいところです。そこで、大使級会談を呼びかけておられるぐらいですから、この貿易協定交渉と大使級会談とを何か、ミックスさせる方法はないものだろうか、つまり政府代表みたいな方がこの覚書貿易協定交渉に一緒に代表団として行かれるというような道は開けないものであろうか、この点について総理のお考えを聞いておきたいと思います。
  355. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあいままでやっている事柄、これを後退させないようにするということ、それはまあわりに決心しやすい事柄だ。そこで、ただいま提案になるように、いままでやっていることだけにとどまらないで、さらにもっと積極的に前進したらどうか、こういうお話です。私は、日中間の問題では、幾つもいろいろな問題があろうと思います。そこらにお互いに歩み寄りあるいはそれぞれ話し合っていく。まあ北京政府が言っている三原則、同時にまた私どもが言っているそれぞれの立場も理解し、内政干渉しないという、そういう原則に立ってこれらの問題と取り組んでいきたい、かように私は思います。そういう意味で、まずその大使級会談というものが何らかの方法で少なくとも開かれることが必要じゃないか。開かれることがないと、いままでのような段階にとどまらざるを得ない、こういうことじゃないだろうか、かように思います。なかなかむずかしい問題ですから、あまり多くを申しません。また楢崎君にはそういう意味でお知恵も拝借したい点も多々あるようですから、そういうことはまた別の席で伺いたいと思います。
  356. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なかなか今日の段階では出てこないわけですが、少なくとも総理はその答弁の中で、正常な軌道に乗せると答弁しておられるのですから、じゃ、具体的に何かということを聞く。そうすると、まだ何もない。これではいかに総理が口を大にして正常化を望んでおるんだとおっしゃっても、何もやらないんだということに通じるわけですから、もう私は本問題についてはこれ以上ここで繰り返そうとは思いません。  そこで私は、一つ総理に関心を見せていただきたい問題があるのです。総理は、国際信義ということをよく言われます。その内容は、主として台湾でありましょう。日華条約を中心とする問題でありましょう。しかし、これはみんなが言ったように、この問題は、中華人民共和国が成立して三年後にこれが結ばれているのですね。三年前にもう人民共和国は成立しているのです。その事実を無視しながら、三年後になって、その中国全土代表し得る政府として台湾政府とやられる。それは私は一つのフィクションであろうと思う。事実に反するフィクションであろうと思うのですね。そうしてそのフィクションをつくったのは、これはあの講和条約にひっかけて当時のダレス国務長官であるということは、もうみんな知っております。私も過去四回、中国に参りました。そのつど周総理と会う機会を得ました。そのときに周総理は、こういうことを言われるのです。あの日華条約をつくられたのは、これはそういったアメリカからの強制もあったであろう一その辺はよく理解しているのです。で、台湾の問題は、中国の内政問題だから、自分たちで片づけますから、ひとつこれ以上台湾日本関係日本が深入りしないように、それだけはぜひお願いしたい、という非常に理解のあることばを周総理は言われております。ところが、今日では、昨年の共同声明あるいはことしの日華協力委員会のあの共同声明を見て、もう台湾への深入りというのは抜き差しならないところまできておるようにわれわれは見受けるわけです。  そこで、考えてみると、日中の今日の状態というものは、先ほどから申し上げたとおり、現実と虚構を踏み違えたところの、つまり現実のボタンと虚構のボタンをかけ出遅えたところから始まっておる。そうして、そのかけ違いをずっと定着させ、強化さしてこられたのは、何としても吉田総理以来の保守党内閣の政策であったろう、これはもういなめない事実であろうと私は思うんですね。そういう意味では、現佐藤内閣としては非常な責任が私はあろうと思うんですね。  それで、台湾との国際信義とおっしゃいますが、われわれから見るならば、これは極端な言い方かもしれないが、歴代の保守党内閣がやってきたことです。保守党内閣と台湾とのメンツの問題だ、信義に名をかりた。日本国民から見れば、真の国際信義、真の国際道義とは一体何かというと、いまだに迷惑をかけたあの中国大陸に何の贖罪もしないで、そうしてこの二十年間中華人民共和国というのを無視し続けて、国連では国連のとびらの外に中華人民共和国を立たしたままで、これでいいのか、これじゃ相すまぬではないか。私は、国民立場から見た国際信義というのは、むしろ日台間ではなしに日中間のほうに国際信義というものをわれわれは感ぜざるを得ないのです。国民立場から見る国際信義、国際道義というのは、私は日中間にこそある、このように思わざるを得ないのです。ここはもう問題ははっきりしておるのです。このボタンのかけ違いをどう直すか。したがって、ここは総理決意一つであろうと思うのですね。  それで、先ほどもお答えになりましたように、国交正常化を望まれておるのですから、その方向で今後の対中政策を具体化していく、そういう気持ちであるかどうか、もう一ぺん最後にこの問題で確認をしておきたいと思うのです。
  357. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中国問題は、私、たいへんむずかしい問題だと思っております。しかし、いまお話になりますが、中華民国講和条約を締結したことが一つのフィクションだ、かようにきめつけられるけれども、私は必ずしもそうじゃないのじゃないか、かように思っております。だから、当時の状態中華民国を選んだことは、これは私は北京においても、ある程度やむを得なかった、かように考える節があるのじゃないだろうか、かように思っております。いま周恩来首相の話も引っぱり合いに出されましたが、おそらくそのことばのうちにも、当時としては、この問題が、日華講和条約が締結されたこと、どうもやむを得ないように感じておられる節もあるのじゃないか、かように私は理解しますが、そのことをただ単にフィクションだ、こういって続けていくこともこれはどうだろうかと思います。  私は先ほど来いろいろ御審議をいただいてたいへんな事態を認識したというか、認識を新たにした。ただいままで中国大陸との戦争状態はなお続いておる、こういうようなお話、これこそフィクションじゃないだろうか、かように私は思いますが、そういうフィクション議論をしても、これは際限がつかない。そんなことは言わないようにし、ただいまはとにかく中国一つだという、このどこまでも中国、これは北京といい台湾といい、国内の問題だ、かように考えて、私どもは対処する以外に方法はないのだ。そこで、私どもはお互いの立場も理解し合い、そしてその上に立って内政干渉しない、そういうことで友好親善はできないだろうか。私はいまの日本で主張している二つ、これはやはりいまの北京政府が言っている三原則、これとあまり変わらないように実は思っております。私どもはいわゆる敵視政策、さようなことをするような立場じゃありませんし、また二つ中国の陰謀に加担するというそんな関係でもないし、さように考えると、ただお互いの立場を正しく理解し合って、尊重して、そうして内政については干渉しない、そういうふうに仲よくいこうじゃないか、友好親善を進めようじゃないか、かように申しておるのですから、それらの点では話し合いがつくのじゃないだろうか、かように私は考えておる次第でございます。フィクション呼ばわりは、どうもお互いにフィクションになりますから、その辺の問題はあまりしないほうがいいのじゃないだろうか、かように思います。
  358. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 周四原則と申しますか、日中貿易で。この周四原則を大体受け入れておる会社、受け入れた上で貿易をしようという会社はどのくらいの数にのぼっておりますか、通産大臣のほうで把握されておりましょうか。
  359. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま把握しておりませんので、できる限り調査はいたしてみます。
  360. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう日米繊維問題も御案内のような状態でございますから、たとえば旭化成、これに続く大手の繊維業者は周四原則を受け入れて中国への貿易を志向しておる。三菱製鋼もそうですね。最近はトヨタ自動車までも、やはり中国を大市場と思って周四原則受け入れの態勢をきめました。もう財界の動向もそういうふうになっているのです。だから、そういう情勢も踏まえてひとつ御勘案をいただきたいと思うのですが、ただ一つ最後に、これだけ私は心配ですから、申し上げておきます。  一つ中国といまおっしゃっておりますからよろしゅうございますが、結果的に一つ中国一つ台湾、こういう方針に日本がなるようになれば、これは今日まで以上に日中の関係は悪くなる。その辺は踏まえておられましょうか。それだけ聞いておきます。
  361. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中国一つだという、これはもう北京も台湾も同じように言っておりますし、これを二つだとか、あるいは一つ中国一つ台湾だとか、かように申す考えは当方にはございません。
  362. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、朝鮮国籍書きかえの問題に移りたいと思いますが、状態はもう御承知のとおりであろうと思いますから、問題点だけを出して聞きたいと思いますが、政府はこの田川市長に対して訴訟を起こされる方針かどうか。
  363. 小林武治

    ○小林国務大臣 端的にお答えいたしますが、いまそのつもりでおります。
  364. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いつごろでしょうか。
  365. 小林武治

    ○小林国務大臣 準備をいたしておりますので、その時期はまだ明示できません。
  366. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 田川市長に対してだけでございますか。
  367. 小林武治

    ○小林国務大臣 さしむきさようでございます。
  368. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なぜですか。
  369. 小林武治

    ○小林国務大臣 田川市長が福岡県知事の指示を拒絶した、こういう事実がありまして、ほかにはまださような事実はありません。
  370. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 自治大臣にお伺いしますが、田川市のほかに、いわゆる地方自治法を通じて知事をして書きかえを要請されたところはありますかどうか。
  371. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 田川市以外にそういう事例はあるように聞いております。
  372. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 法務大臣、どうですか。
  373. 小林武治

    ○小林国務大臣 田川市のような処置をとった市町村がほかにもあります。ただ、これに対しましては、いま御承知のように、都道府県知事がそれに対して訂正の指示をしておる、こういうものはまだありません。
  374. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、私は福岡出身でたいへん残念ですが、福岡県知事だけが自治法の百四十六条に基づいて田川市長にやっておるというわけですね。ほかの知事は、強権発動をせよと法務省から言われておるが、まだ知事の手元で持っておるというわけですね。福岡県知事だけですか、そういうことをしたのは。
  375. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは田川の市が八月三日にやっておるのでありまして、そのあとの市町村は相当おくれた時期にいたしておる。したがって、そういう手続にいまなっておらぬ、こういうことでございます。
  376. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その訴訟のねらいをちょっとお伺いしておきたいのですが、それは登録原簿の記載が事実に合っていないという確証がおありだから訴訟されるのですか。
  377. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは内容もよく御存じかと存じまするが、要するに国籍問題につきましては、これを直す場合には、過誤とかあるいは錯誤とかあるいは他人がやったとか、こういうふうないろいろの事情がある事務上の手続の違背、あるいは錯誤のあるものは直してよろしい、しかし本人が承知の上でもってそれぞれの証拠を出して韓国籍を得た者は、これは市町村長におきまして朝鮮籍に直すことは困る、こういう指示をいたしておりますから、その指示にたがえた者のみを問題といたしておるのであります。
  378. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 法務省は、例の日韓条約が締結された当時から田川市長が書きかえをした八月十四日、それまで大体何人書きかえの申請があって、そのうち何人認められましたか。
  379. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは、いま数字は私持っておりませんが、地方の書きかえをいまの田川市長が出す前に認めた、これは要するに事務上の過誤があった、こういうことで認めたのが百三十件ほどございます。
  380. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、ことしの八月十五日から十二月十日にしましょう、十日まで、この四カ月間では何人お認めになりましたか。
  381. 小林武治

    ○小林国務大臣 八月三日以降地方にも、その事務上の過誤によるものだから訂正をしてもらいたい、こういうことで法務省の同意のもとに認めたのが二千数十件ございます。
  382. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お聞きのとおりです、総理大臣昭和四十年からことしの八月十四日までは百三十人しか認めてない。五年間にたったの百三十人。八月十四日以降今日まで、四カ月で二千三百数十人。過去五カ年では百三十人だったのが、この四カ月に限って二千三百数十人だ。これは何らかの政治的な意図があると思わざるを得ません。急に緩和されたその理由は一体何なのか。
  383. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは要するにその申請者の側の都合と申しまするか、八月三日以降全国的にこれの訂正という要望が、どういう理由か知りませんが非常に熾烈をきわめてきた、こういうことの結果でありまして、従来はそれほど要望が熾烈でなかったからしてそういう手続がとられなかった、こういうことでございます。
  384. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 要望があるから申請を出したんだと思うのですね。要望に熾烈さと弱さとあなたたちは区別するのですか。そんなことをおっしゃっちゃいけませんです。これは明らかに書きかえの一つの圧力としてこういう態度に変わられたとしか私どもは思われないわけです。  本問題には法律的な問題もありますが、私はきょうはこれだけにしておきますけれども、特に総理大臣にお願いしたいのは、このような国籍の問題は、これは言えば長いことになります。私も昭和四十年の日韓特別委員会の委員でありました。当時は朝鮮あるいは韓国というのは符号であるということを言われた。だから符号ならどっちでもいいわい。ところがその後統一見解が出て、なかなかそうはいけなくなった。さて、じゃ符号でないとすれば、自分が本気できめようと思うときにはすでにおそい、こういう状態なんですよね。それでこの国籍の問題、いまさら私が言うまでもなく、国連憲章なり世界人権宣言で認められておる国際的な人道の問題であり、人権の問題であります。したがって、これは本人と当事国との関係の問題でありますから、総理大臣、ひとつこの書きかえの問題についての基本的な考え方を明らかにしていただきたいと思います。——総理大臣に最後に聞いておる。あなたの所信は聞いてない。
  385. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは事務的には非常にこまかい問題と申すか、あるいは内容は重大な問題かもしれませんが、事務的にはこまかい問題です。したがって私がお答えいたしますが、国籍というものは、世界人権宣言等には本人の選択とかいろいろ書いてあります。そういうことは書いてあるが、しかし、国籍は本来それぞれの人の属する国の国籍法によって定まっておるのでありまして、本人の自由な選択あるいはわがままとは申しませんが、恣意的な希望でこれを変えるわけにいかない。ただ、ある場所に帰化をしたからして国籍を離脱したいとか、あるいは二重国籍を持つから一方を捨てたいとか、こういうふうな場合は認めておりまするが、国籍というものは、もう日本のように属人主義の国もあるし、アメリカのような属地主義の国もありまして、当然それぞれの国の国籍法によって定まっておるのでありまして、定まっておる以上は、自由に選択するとかあるいは自由に離脱できるとか、こういうことにはそれぞれの国籍においてなっておらない。したがって、今回の問題におきましても、いろいろのいきさつはありますが、本人の希望により、申し出によって韓国籍と直した者は、これは韓国の国籍を持つ者として韓国のそれぞれの官憲の同意と申すか承認がなければ、日本の町村あるいは日本政府においては直すことはできない。要するに、いまの外国人登録令による国籍の表示というものは、それぞれ本人の持っておる登録証明書あるいは身分によるそれを鏡のようにただ写しただけであるのでありまして、一たん韓国の国籍を取得した者が、それを自由に本人の御希望だけで朝鮮に直すわけにはいかない。すなわちこれは本国の問題であって、日本手続上の問題ではない、こういうふうに私どもは理解しておりますから、たとえば韓国籍の者は韓国の相当……(楢崎委員「そんなことを聞いてない、あなたに聞いてないんだから」と呼ぶ)それが私どものやり方であると思います。
  386. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、日韓正常化が行なわれて、在日韓国人並びに朝鮮人等で登録すること、この義務を負わした、そこらに問題があり、十分理解されていないためにいろいろのそごを来たしておる、こういうことはあるように思います。事国籍に関する問題ですから、個人、各人がかってに選べる、こういう筋のものでもないだろうと思いますけれども、とにかくそれの取り扱い方が一応きちんとしておらないとこの問題が尾を引くことは、いずれにいたしましても本人も問題だが、それぞれの政府に対しても迷惑をかける、かように私考えますので、一そうこれの取り扱い方については正確を期するようにいたしたいと思います。
  387. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この問題もまた手続問題と本質問題を区別してはいけないと思うのです。やはり本質的な人道の問題を中心に据えてかかるべき問題であろうと思うのです。  次に、沖繩の毒ガス問題に移りたいと思いますが、百五十トン、マスタード、これを輸送するということになりました。これは輸送開始をする日にちが四日前にしかわからないようになっておるようです。これは安全問題とも関係がありますから、もう少し早急に、早い時期に開始期日を知る必要がある、住民としては。この点について、開始期日を早目に知らせる要求をなさっておるのかどうか、お伺いをします。
  388. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 本件につきましては、十二月の五日に、御承知のように通報がございまして以来、米側にさっそく折衝を始めております。そして、十二月十一日に担当責任者である第二兵たん司令官のヘイズ少将を東京に招致いたしまして、外務省で詳細な説明、対策等について協議を第一回いたしました。ただいま御質疑の点につきましても、配船並びに港に駐留している期間等の関係もあるようでございますけれども、徹底的に安全かつ早急に移送を開始してもらいたいのでございますから、それらの点については今後とも十分折衝いたしたいと思っております。
  389. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 米軍は最終的にどこに運ばんとするのですか。
  390. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いろいろ経緯のありましたことも御承知のとおりでありますが、ジョンストン島に全部ただいま沖繩にあるものを最終的に移送するということになっております。
  391. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ジョンストン島にそのような貯蔵施設があるのですか。
  392. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点が実は問題でありますことも御承知のとおりと思いますけれども、早急に受け入れの設備をつくり、そのために約六百万ドルの金もかかるようでございますけれども、着々準備進行中であり、まず百五十トンの移送ということは全体からいえばきわめて少ない量でございますけれども、これで開始をし、それと同時に並行的に全部の受け入れに対する建造物の建造ということもどんどん進めてもらうということについても、今後ともに政府としてはあらゆる努力を傾けて折衝いたしたいと思っております。
  393. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 アメリカはいまからジョンストン島に貯蔵施設をつくるというわけですか。そうすると、一体、住民に不安を与え、恐怖の的になっておるこの沖繩の毒ガスがいつ撤去されるのです。中曽根長官は何かレアード長官と会われて、来年には全部撤去されるような調子のいい発表をなさいましたが、全然違いますね、これは。七二年、それもいつごろになるかわからないという話ですが、その辺はどうなっておるのでしょうか。
  394. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これまでの経過につきましては、私といたしましてもずいぶんこの移送決定に至るまでには努力の限りを尽くしたつもりでございますし、また防衛庁長官も、国防長官にも直接折衝もされたことは御承知のとおりでございますが、最初米側といたしましてもオレゴン州というようなことを予想したので、その関係から、その計画がいけばもっとすみやかに移送の完了ができたのでございましょう。しかしジョンストン島ということになりましたので、現在早急に移送の準備をいたしておるわけでありますが、何よりも問題の性質上安全に運ばれなければならない、そうして同時にすみやかでなければならない。現在配船の計画やその他をも十分説明を聴取し、それに基づいて督促を折衝いたしておるわけでございますから、一九七二年にもたれ込むというようなことのないように、この上とも具体的に移送計画について折衝をいたしてまいりたいと思います。
  395. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私どもから見れば、このジョンストン島の貯蔵施設は現在のところない、それでとりあえず百五十トンだけ入れるものを用意しているかもしれません。だからこの残された総額一万五千トンという、米軍の発表によると一万三千トンというこの毒ガス、これが完全に撤去されるのはいつの日か見通しが立たない、これが私は現状であろうと思う、正直にいって。これは非常に重要な問題ですから、ひとつ最大の努力を払って一日も早く撤去されるように御処置をいただきたいが、佐藤総理は何回かニクソンに会われておりますが、非核問題は話されておるようですけれども、この沖繩の毒ガス撤去について話し合われたことあるのですか。
  396. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この毒ガス問題は新しい問題であるように思って——私はニクソン大統領に核の問題については強く要望いたして、そしてそのほうについては大体の目的を達したように思っております。その後になりましていまの毒ガスの問題が持ち上がってきた。国連の総会に出たときには、もうすでに問題になっておりますが、しかしそれは大体撤去するという方向でやっている。ただいまのような、数量等は非常に膨大なものである、こういうような点については私は存じておらなかったから、その点についての話は出ておりません。
  397. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 されておれば当然新聞あるいはテレビ等で報道されるはずでありますが、全然それがないということは、いまお話しのとおり主題の話し合いの議題になっていない。私はたいへんこれは残念であると思うのですね。それで、総理もひとつこの問題については責任を持って対処していただきたい、このように要望しておきます。
  398. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の県民に非常な不安を与えている、こういうことでございますし、沖繩県民の生活、その生命を守ること、これは私どももより以上に気をつけなければならない問題だ、かように思っておりますので、こういう観点からもこの問題と取り組んでまいりたい、かように思います。したがって不安を除くようにあらゆる努力をしたい、かように思っております。
  399. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは基地問題に移りたいと思います。  米軍基地の縮小がいま議題になっております。これは最近急激に、中曽根長官になられてから起こってきた問題であります。それで、民間航空に移すにしても自衛隊基地に変えるにしても、これは施設、通信、航空管制、無線、保守、こういったおのおのの要員を必要とするわけです。運輸省並びに防衛庁にお伺いしますけれども、その要員確保については綿密な計画がおありでございますか。
  400. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 米軍並びに運輸省三者の間で事務的な検討をいま加えておりますが、どこをどうするということはまだ申し上げる段階ではありません。
  401. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 要員の確保……。
  402. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 要員の確保は、われわれのほうはございますが、運輸省のほうは若干手当てが足らぬようであります。
  403. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ただいま防衛長官答弁されましたように、まだどことどこが返ってくるかもわかりませんし、かつまた時期も決定いたしておりませんが、運輸省といたしましては、もし厚木が返ってくる場合は五十六名ほどの要員増になります。板付の場合も九十数名の者が必要となってまいりますが、これらの処置につきましては、いまから実際上の計画案については進めておりますので、万一そのような事態が起きたときにはまごつかない措置を講じたい、こう思っております。
  404. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が調べたところでは、運輸省がいまこのために要求なさっているのは、沖繩の分も含めて——沖繩に限っては初年度分としては三十四名、板付は四十六年度分として百九名、厚木は四十六年度分として五十六名、計百九十九名を従来の定員増のほかに新しく追加要求をされておるというふうに聞いておりますが、この数は間違いでしょうか。
  405. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 正確な数字を申し上げませんでしたが、それは一つは、たとえば厚木の場合におきましても、民間専用空港になる場合と、あるいは共用になる場合とで、相違が起きてきます。板付の場合におきましても、これは当然民間になると思いますが、その間においても、いわゆる通信官あるいは航空官等について繰り合わせ等、いわゆる既設飛行場の繰り越し等々も考えてこれを措置していきたい、こう考えております。
  406. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大蔵大臣にお伺いしますが、いま経過の中でおわかりのとおり、本来の定員増のほかにこれは新しく浮かび上がった定員の問題でありますから、当然本来の要求増の別ワクとしてこれは考えられるべきものであろうと思いますけれども大蔵大臣はどのようにお考えでございまか。
  407. 福田赳夫

    福田国務大臣 よく調査いたしまして、必要があればワク外で認める、こういうことになります。ただし、総定員法というのがあります。その総定員法の中において不要不急のほうの定員については削減を努力をする、かようにいたしたいと存じます。
  408. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では行管のほうに聞きますが、総定員法との関係で、この問題は急に起こってきた問題ですから、一体どのように判断されますか。
  409. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 荒木長官にかわって答弁するわけではありませんけれども、この問題につきましては運輸省といたしましては、行管当局に対して、これを、金額で申しますと板付において六億三千万円の要求をしておりますし、かつまた厚木に対しましては三億四千万円、沖繩の問題がありましたが、これはまだ先の話でありますので、これらも考えておりますが、当座の問題はこの二つの問題が中心になります。  そこで定員の問題につきましては、これらが返った場合における措置としてぜひひとつ行管においても考慮してもらいたいという意味で、定員の変更方の交渉を目下やっておる次第であります。
  410. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 行管のほうはどう考えておられますか。
  411. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えします。正式に要請があった場合に十分考えたいと思います。
  412. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大蔵大臣もワク外で考えるとおっしゃっておりますし、行管のほうもいま運輸大臣の御説明のとおりでありますから、当然これはワク外の問題になると判断されるわけです。  そこで羽田空港ですが、成田空港は御案内のとおりおくれておりますが、羽田空港はこの夏の万博のときも、羽田が一ぱいになりましたから、厚木を使わしてもらっているくらい、来年の夏にはもういまのままではパンクするという状態のように聞いておりますが、羽田の空港のいまの状態をちょっと御説明していただきたいと思います。
  413. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 こまかい数字で御説明するのもどうかと存じますが、御承知のように、万博の当時は非常にパンクいたしまして、そこで厚木飛行場を一応使わしてもらったのであります。その後におきましても、乗客があまり減りませんので、そこでやむを得ず羽田飛行場は十数便にわたって減便をしてかろうじて現状を維持しておる。そこで現在東京付近の空港は、御承知のように、羽田飛行場とそれから近い将来できる成田飛行場の二つの飛行場のほかはありません。この飛行場で一時間に発着できる数は、これは完成した暁で、羽田が三十回、それから成田が三十回、これはニューヨークのケネディ飛行場に比べますと、これは一カ所だけで八十回の発着を示しております。その他二つの飛行場が三十回ずつで六十回、この状態で見ますと、とうてい今後十年、十五年の将来を考えましても、陸上飛行場がほかにありません。その意味では何としても、これは防衛上も非常に重要な価値がありますが、国民的価値から考えても、ぜひ厚木の飛行場を使わしてもらいたい、こういう考え方で目下防衛庁当局と種々懇談を遂げておるような次第であります。
  414. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 羽田はもう総理も御承知のような混雑の状態、成田はおくれておる、成田ができてももうすぐこれはまた一ぱいになってしまう、そういう状態であります。自衛隊のほうから見るならば、下総があるわけですね、それから百里がある、それから宇都宮がある、それから入間がありますからね、首都に四つあるわけですね、自衛隊のほうは。そこで、私は最後は総理の判断になろうと思いますが、いま争っているわけですね、自衛隊と運輸省と。これはやはりいまの首都の民間航空の状態から総理としてどのような姿が望ましいと考えておられますか。
  415. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま必要に応じての民間航空あるいは軍用でない使い方の飛行場、こういうものが必要だと思います。その点では楢崎君と私は同じような考え方に立っておると思いますが、楢崎君もいまの飛行場はとにかく不足を来たしておるのだ、かように言っておられるのだと思いますので、成田空港もぜひ早くつくれ……(楢崎委員「そんなこと聞いていない」と呼ぶ)一言ぜひどうぞ、お聞きではございませんが、私からもお願いするのです。そういう点もぜひ整備して、そしてその民間航空が常用できるようにぜひとも御協力願いたいと思います。
  416. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理は問題をそらしてはいけませんよ。私がいまお尋ねしておるのは、いままでの——長くなるからやりませんけれども、いままで米軍基地が日本に返ってきておるのは、民間に返ってきておるのではないのです、実績から見ると。自衛隊への返還ですよ。特に今度の厚木の場合は、そういう羽田との関係において、これはやはり民間に返すべきである、このようにわれわれは思うわけです。それで総理は先ほど何か私の考えと同じようにとおっしゃっていますが、総理考えとしてはこれは自衛隊よりも民間に返したいというお考えと承っておっていいのですか。
  417. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たぶん自衛隊も必要だろうと思いますが、民間もとにかく混雑しておりますから、これが少なくとも両用できるようにしたいものだと思っております。
  418. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは総理の方針としては厚木は民間空港と自衛隊の共用にしたい、そのように考えておられますか。
  419. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 できれば民間にしたいし、やむを得なければ両用でもけっこうだ、かように思います。
  420. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 少し運輸大臣がんばらぬといけませんですね。答弁も元気がないし、それでは自衛隊にとられてしまいますよ。別の意味で応援しておるのですからね。  それでもし……(発言する者あり)ちょっと静かにさせてください。もし板付みたいにいま民間が使っておる、実際問題として米軍機はいないことになっておる。まだEC131等おりますが、大部分がそうなっておる。これは地位協定の二条四項(a)でそういうふうになっておるのですが、ところがせんだっての内閣委員会で問題にしましたとおり、秘密の協定がありまして、米軍が必要とするときには事前の協議なくいつでも使えるのですね、臨時的にあるいは永久的に使えるという協定が結ばれておる。もし、今後厚木等にも起こり得ると思いますが、そういうふうに一応民間に返されたと仮定しますと、しかしいつでも自衛隊が使える、あるいは米軍が使えるという留保条件がついたときに、その飛行場には、いうところの基地周辺整備法は適用されますか、されませんか。
  421. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 法律の趣旨に必要な機能が停止されれば適用されなくなるというのが通常です。
  422. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし、いつでも事態によってはまた基地になるのですよ。それでも適用されないのですか。そういう留保条件がつけられた空港についてはどうかということを聞いております。
  423. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛庁が管理している場合には周辺整備法が適用されるでしょうけれども、ほかの場合は私はよく知りません。
  424. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どなたでもけっこうですから閣僚から御答弁をいただきたい。
  425. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 法理論はいま防衛庁長官がお答えのとおりであります。したがって、これが運輸省の民間飛行場になった場合は別な法律によって公共用飛行場としてのいわゆる整備を行ないますからして、実質的にはあまり違いはありません。
  426. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おわかりでしょうか。私が聞いているのは基地周辺整備法のことですよ。基地そのものの整備じゃないのですよ。空港そのものの整備と違うのです。これは防衛施設庁長官はいないのですか。
  427. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、返還になりましてそれを自衛隊が、自衛隊の一つとして使用する場合、これは周辺整備の事業は従来と同様にやるわけでございます。それ以外に米軍——先ほどお話しのようないわゆる二条四項(a)の形態におきまして、これもその事業は当然行なえるというふうに考えるわけでございます。
  428. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 基地周辺整備法はやはり適用される、こうですね。
  429. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 返還になりまして、自衛隊が、自衛隊の一つとして使用するという場合におきましては、従来どおり周辺の整備事業を行なっていけるというふうに考えるわけでございますし、その形が今日の板付のようないわゆる二条四項(a)の形態でありますれば、これは当然継続して事業を行なっていけるというように考えます。
  430. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 継続してやっていくということは、周辺整備法がずっと生きていく、こういうように理解するわけです。それでいいですね。  時間がありませんから、次の国防白書に移りたいと思うのです。  そこで、まず初めに、国防白書の「防衛力の限界」の中で、こういうことが書いてあります。国防費は政策上の限界として、社会保障費あるいは文教費等との調和を考える、こういうことを述べられておりますが、これはちょうど伸び率からいっても、あるいは額等からいっても、具体的にどのように調和がとれておればいいのですか。具体的な基準がありますか。
  431. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そのときの時代の要請に基づく政治的秤量でやるべきものと思います。
  432. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは何にもないということですね、実際には。そんな答弁されたら困りますよ。もう少しまじめにやってください。四次防の予算は、発表されたところでは五兆二千億、人件費を含む、ただしベースアップ分を含まない。そうすると、三次防の実績からいけば、ベースアップを含んだ最終的な金額は、いま考えておられるのは約五兆八千億、そのように理解してよろしゅうございますか。
  433. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛庁の原案は大体その見当です。
  434. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま防衛庁は四十六年度に対して六千九百億円ほど要求されておるようでありますけれども、大蔵省としてはこの額をどのように思っておられますか。四十六年度の防衛費です。
  435. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまこれからぽつぽつ査定にかかろうか、こういう段階でございます。
  436. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 よろしゅうございましょう。いままでの伸び率からいえば、六千九百億にはならないと思うのですね。そこで四十六年度が六千九百億ならば、私が以下申し上げる金額はもっと大きくなりますが、渋い福田大蔵大臣のことですから、そうお認めにならぬであろう。これを一五%増くらいに考えてみて、六千九百億と仮定します。おそらく六千五百億と六千九百億の間で来年度はきまるであろうと私は思いますけれども、一応一番少ないところで四十六年度を六千五百億と仮定すれば、五兆八千億という数字はどういうことになるかというと、これは私の試算であります。この四次防の防衛費の伸び率が二〇%にならなくては五兆八千億にはなりません。各年申し上げてもけっこうです。四十七年度が七千八百億、四十八年度が九千三百六十億、四十九年度が一兆一千二百三十二億、五十年度が一兆三千四百七十八億、五十一年度が一兆六千百七十三億、これは二〇%増の場合です。そうしてやっと総計五兆八千四十三億、約五兆八千億です。いまの防衛庁の要求額からいくならば、伸び率が二〇%になるいのですね。中曽根長官、そのようになるでしょう。
  437. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あとでよく計算してみないとわかりません。
  438. 福田赳夫

    福田国務大臣 楢崎さんは四十六年度の予算を仮定しまして、それからいろいろ言われていますので、ちょっと迷いが出るのですが、四十五年度の予算を基礎にいたしますと、ちょうど一八・六%の比率で四次防が完成される、こういうことになります。
  439. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのとおりであります。私は四十六年度を、一番近いですから基礎に置いてみたのです。大体四十六年度の金額がどうなるかは別として、四十五年度から計算すれば約一九%近い、こういう数字になるわけです。そうすると、外務省が一応一九六九年、去年の三月にGNPの試算を出しておられますね。それからもう一つのメルクマールとしては、新経済社会発展計画があります、本年度から五年。そこで出しておる試算からいくならばどういうことになるかというと、昭和五十年度、つまり四次防の四年目で外務省の試算は百二十二兆と試算しておるのですね、GNPを。それから、新経済社会発展計画では成長率を一〇・六%ですか、それでいくと、約百兆円になっておりますね。いずれにしても、いまの試算からいくならば、昭和五十年度はGNPの一%をこすことになりますね。GNPの一%ないし一・一%くらい防衛費がこす。そうして、いまこの伸び率でずっと試算するならば、二兆円に防衛費がなる時期はいつかというと、四次防の終わったあくる年、五十三年に確実になります。大蔵大臣のいまの頭の中では、私がいま言っておることはどう思われますか。大体そういう見通しで、私はたぶんそうなると思うのですが、どうですか。
  440. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもは、四次防というのは新聞では見ておりますが、まだ防衛庁からお話にあずかっておらないのです。そういうような状態でありますので、ちょっと見当をつけるのは非常にむずかしいのでありますが、ともかく防衛庁からお話がありましても、そのまま大蔵省としてやるという考えじゃないのです。やはり国民総生産のことも見なければいかぬ、あるいはその中で予算はどうするかということも見なければいかぬ。その予算の中で、ほかの諸経費とのバランスということも考えなければいかぬ。それから世界の情勢に対して防衛費をどういうふうにするかという別の角度の検討もしなければならぬ。そういうようなことできめる問題でありまして、さあ機械的にGNPがとうなる、そのパーセンテージがこうなるからということで判断いたしますと、ちょっとおかしな結果が出てくるのではないか、そんな感じがいたします。
  441. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おかしな結果じゃないのです。もう防衛庁の四次防の予算、原案は出ているのですね、架空の話ではないのです。しかし大蔵大臣、あなたはそういうことを言われますが、あなたは御記憶になっておられましょうか。去年の八月十三日、あなたは内外情勢調査会に出られておりますね。そして演説をされておる。「七〇年代の日本経済」、覚えておられますか、御自分がなさったのですから。その中であなたは、どういうことをおっしゃっておるかというと、いまの調子で経済成長が続くと十年程度、まさに私が言うとおりです、十年後昭和五十三年で二兆円の軍事費となる、これは世界水準で見ても、かなりなものだ、金のほうは心配ない、こういう講演をされております。何なら持ってきてよろしいです。あなた自身がそう言っておるのです。いまあなた知らぬような顔をして答弁されておりますが、あなた自身もそういうことを思っていらっしゃるのでしょう。
  442. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、国際経済調査会ですか、あそこでは大ざっぱないろいろな傾向、そういう話をしたのです。しかし四次防につきましては、新聞紙上の知識は持っておりまするけれども、まだ防衛庁から話は聞いておらぬ、こういうことを申しておるのです。
  443. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや話はまだ聞いておられぬでも、そうなるのです。ふしぎにあなたの見通しと一致するのですね。ちっとも狂いがないのです。十年後に確実に二兆円になります。中曽根長官はどういう見通しですか。
  444. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は財政のほうは暗いのでありまして、いろいろ教えていただきたいと思っております。
  445. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんな逃げを言っちゃいけませんよ。自分が作業さした四次防でしょう。そうでしょう。五兆八千億というのはあなたが出した数字じゃありませんか。その数字が最終的な姿では——四次防の最終年度、その明くる年です。四次防は五十二年までですから。だから、あなたの五兆八千億からいうと、五十三年には二兆円になります。ならないという防衛庁関係の人があったら言ってください。出してください。
  446. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大蔵大臣が言われましたように、要するに、単に機械的に数字を当てはめてやるという問題ではなく、いまおっしゃいましたように、社会保障費とか公共事業費とか、教育研究費とか、そういうものとの秤量勘案の上にバランスをとっていくものであろうと思うのです。それでいまの二兆円というものはどういう具体的な根拠に基づいてできているか私は知りませんけれども、その点についてはまだ勉強不足であるからと申し上げておるのです。四次防についてはいろいろな点を知っておりますけれども、その次の段階については責任あることは申し上げられません。
  447. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では四次防の最終年度、昭和五十一年は幾らぐらいになりますか、五兆八千億の場合。
  448. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 年次別の予算の金額というのは、これは大蔵省と相談してきまるのでしょうが、大体トータルからいいますと、社会経済発展計画においては六百数十兆になるはずです。六百数十兆の中で五兆二千億ないし五兆八千億というものを見てみますと、〇・八%から〇・九%ぐらいの間である、そのように私は認識しております。
  449. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちゃんと知っておられるじゃないですか。それで計算すると、五十三年は二兆円になると言っておるのです。あなたの出された数字からいくとそうなるというのです。そう知らぬふりをされては困りますよ、そうなるのですから。——そうして答弁されぬのです。
  450. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 つまり次の防衛計画のその次については、まだ具体的な計画や計算ができていないからであります。
  451. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これほど国民に対して、年間一万二千円の税金の負担を一人一人、たったいまオギャーと生まれた赤ちゃんから、あしたはどうであろうかと思われる病人の方まで平均して四次防について一万二千円出すのですよ。それほどの負担をかける防衛費についていまのような答弁では、実際困りますよ。五兆八千億という数字が出されておるのですから、そうすると、当然こうなりますよ。では、あなたはいま計算がしてないと言うから、一度試算してみてください。これはもう大蔵大臣もいま言ったように、ちゃんと十年後二兆円に軍事費はなるとあなたは指摘しておられるのですから。そんなことを言うておらぬといったら、私は議事録をちゃんと持ってきます。だから五十三年、十年後には二兆円になる。二兆円という数字は一体どういう数字かと申しますと、われわれ防衛関係委員は頭から離れぬ問題があるのです。去年の六月十七日の衆議院内閣委員会に防衛二法がかかった。私が野党の質問の一番に立ちました。この問題を出したのです。つまり、ある自民党議員の要請に基づいて、防衛庁はもし憲法のワクがなかったらという想定のもとで自前防衛構想というものを出されました。もちろんその場合は、核戦力も持つという想定であります。徴兵制度もするという想定、軍事教練もやるという想定であります。それはいいです、もし憲法がないという場合の想定ですから。ところがそういうことをやった場合の毎年の防衛費は幾らになるかというと、問題はここです。そういうことをずっとやったらほぼ二兆円規模になる、そう出ておるですね。そうすると、この防衛費が二兆円ということになりますならば、いわゆる自前構想で出しておるようなことがすべてできるという予算規模になるということを私は指摘したいわけです。この場合は、もしやろうと思えば核も装備し得るという予算だ、これは防衛庁考えておられるのですから。  そこで私は核の問題に入りたいのです。たしか昨年であったと思うのです、この予算委員会で、私は非核三原則をばらして、持たず、つくらずは憲法、自衛隊法にかかわる問題である、持ち込まずは政策の問題であると総理答弁をいただいたわけです。ところが今度の国防白書を見ますと、憲法の限界のところに載らなくて、政策の限界のところに非核三原則三つとも次元が下げられておる。これを総理どう思われますか。
  452. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私は、前の考え方を訂正するとか直すという考えはございません。したがって前二つは、これは憲法上の問題だ、最後のものは政策上の問題だ。で、いまの白書についての読み方ですが、書いてあるのは、よし憲法上可能でもこれこれはと、こういうことじゃないですか。書き方は、よほど気をつけて白書は書いておるように思いますが……。
  453. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、根本問題に……
  454. 中野四郎

    中野委員長 楢崎君、申し合わせの時間が来ておりますから、結論に入ってください。
  455. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一時間半でしょう。
  456. 中野四郎

    中野委員長 それは済んだのです。
  457. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、二十五分から始めた……。
  458. 中野四郎

    中野委員長 ちゃんときめてありますから、御心配要りません。
  459. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あの国防白書の中では、文民統制ということを強調されておりますね。文民統制の内容は、国会であり、内閣であり、国防会議である。ところが、この国防白書というものは、いま総理大臣のお話を聞いても、よく内閣で審議されたようには見えない。もちろん国会にもかかっていない。国防会議にもかかっていない。とすれば、一番その主張しておる文民統制について、この白書自体が文民統制を受けていない。シビリアンコントロールを受けないで発表され、内容も受けていない。ここに私は問題があると思うのです。受けていないでしょう。受けておりますか。
  460. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もちろんこれは防衛庁の、ある意味におけるPR文書でもありますから、国防会議に出す筋のものではないのです。防衛庁設置法によりまして、国防会議に付すべき事件というものは、国防上の非常に重大問題と、ちゃんと列挙してあります。しかし、これは官庁文書として閣議を経ておるわけであります。それで、ほかの文書と同じように、十分であります。
  461. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから私は、幾らこの国防白書の中へ、ことばとしては何を書かれようとも、実際やられておることが違うということを言いたいのです。西ドイツの白書のごときは国会であるいは内閣で十分審議して出されておるのですね。まずそこに根本の問題が私はあると思うのですよ。  そこであなたは、やはりこの国防白書の中で、さっき治安出動が出ましたが、治安出動の場合も文民統制下にあるとお考えですか。統制下にあると書いてありますが……。
  462. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もちろん内閣総理大臣その像かの手続を要するので、文民統制下にございます。
  463. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これも私は次の通常国会に譲りたいと思いますが、つまり七十八条、この七十八条は、防衛出動と違って国会はあとで報告すればいいのですね。つまり総理大臣の一番の権限なんです。自分の判断で、これは間接侵略だ、これは治安出動させる、総理大臣の自分の権限でできるんです。そして国会がコントロールを動かす場は、それが行なわれた後しかないのです。これが真の文民統制といえるかどうか。もう事が済んだあとでしか受けられないのです、七十八条は。そういう仕組みになっているのです。これも私は問題をあとに残したいと思います。  それで最後に一問題だけやらせていただきたいと思いますが、文部大臣にお尋ねするのですが、文部大臣はいわゆる皇国史観についてどう思っておられますか。
  464. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 おっしゃる意味は、おそらく戦前における天皇主権のもとにおける皇国史観を言っていらっしゃると思います。現在は主権在民、そして基本的人権、人間の尊厳、そして平和主義という憲法のもとに教育基本法があり、学校教育法があり、諸規定がございまして、それでもって教育が行なわれておる、こういうことでございます。
  465. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、皇国史観というものは憲法とは相いれないし、教育基本法と相いれない、このように考えてよろしゅうございますね。
  466. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 戦前における、天皇主権における皇国史観というものはないというふうにお考えをいただきたいと思います。しかし御承知のように現在の憲法におきましても、天皇の地位国民統合の象徴としての天皇の地位というものは明記されておるわけでございます。
  467. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 建武の中興あるいは桜井の駅の別れと申しますか、そういうことばがいま教科書の中にありますか。
  468. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 こまかくはわかりませんけれども、歴史的史実としていろいろいわれたことはございますし、あるいは教科書にそういうような記述があるかもしれません。
  469. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あるかもしれませんでは困るのです。これは重大なところでしょう。いま家永さんの教科書の問題もあるわけです。この建武の中興がことばとして入るかどうか、あるいは楠木正行が出てくる桜井の駅が入るかどうかというのはいま重大な問題の分かれ目なのです。いま教科書にないでしょう。はっきりしてください。
  470. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 建武の新政ということはございます。
  471. 中野四郎

    中野委員長 楢崎君に申し上げます。  もう予定の時刻を過ぎておるのですから、結論に入ってください。
  472. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 中曽根長官、建武の中興なり桜井の駅を自衛隊は教育の中でやっておるのですか。
  473. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 曹のクラスの研修におきまして、文部省検定済みの「詳説高等日本史」という教科書を使って、日本歴史の復習をやらしております。
  474. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで最後にしますが、自衛隊は少年工科学校なりあるいは熊本の第四師団陸曹講習所、ここにおいて特別の教育を行なっておる。そこには建武の中興なり桜井の駅の別れがちゃんとその中に入っておる。こういう皇国史観は、あの三島氏の檄の中に入ってくる考えと全く一緒なんですね。ここに私は、自衛隊の思想性というものがあの三島氏の思想性と完全に一致する点を見出すわけです。  私は、きょうはもう時間がありませんから、この問題は通常国会に引き継ぎたいと思いますが、そういう点で十分ひとつ反省をし、いま熊本の第四師団の陸曹講習所で建武の中興なり桜井の駅の別れを教育の中へ入れているかどうか、それはひとつお調べになって、私自身に御連絡をいただきたいと思います。  以上で終わります。
  475. 中野四郎

    中野委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に松本善明君。
  476. 松本善明

    松本(善)委員 私は、総理大臣に、中国問題について伺いたいわけでありますが、これは申すまでもなく、カナダイタリア中国との国交回復あるいはいわゆるアルバニア決議案の過半数獲得というようなことで国際政治の重要な問題になっておりますし、また日本がどういう態度をとるかということが内外の注目を浴びているというふうに思います。そこでこの問題は、外交技術上の問題ではなくて、国の政治の基本方向に関するものだというふうに私は思います。そういう意味で、総理にその基本的方向をお聞きしたい。総理がまさにきめらるべき性質のものであるというふうに思いますので、総理に一切お聞きしたいというふうに思うわけでございます。  去る九日に発足いたしました、自由民主党の議員も九十五名参加をし、国会議員の過半数が参加をいたしました日中国交回復促進議員連盟の総会宣言案の討議の中で、政府は依然として台湾政府唯一の合法政府とすることが虚構であるかどうかということについての議論がありました。木村官房副長官もNHKの五党討論会で、フィクションということばを使われたのであります。日中議員連盟に参加をしていない国会議員でも、公然とフィクションと言われることがたびたびあります。私は、先ほどこの問題で総理見解を明らかにされましたので、フィクションであるということを認めろとは言いませんが、先ほど言われました総理見解は、当時はやむを得なかったんだということでありました。現在その蒋介石政権中国代表しておるというふうに考えることに矛盾が起こってきているということは、認められますか。
  477. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 台湾にある中華民国中国大陸に施政権、領有権、これを持っておらない。この事実は事実として認めざるを得ないと思います。
  478. 松本善明

    松本(善)委員 私は、これからの議論の発展のためにあらためて確認をしておきたいのであります。  この委員会におきまして、総理大臣がたびたび言われたことでありますけれども政府立場は、蒋介石政権中国代表する政権として日華平和条約なるものを結んでいる。これは一つ中国という立場に立つものと思いますけれども、あらためて確認をしたいと思います。
  479. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さきの戦争は、蒋介石政権中国代表している際に起きた日中間の戦争ですね。そうして私どもは、そのもとで日本が敗れた、したがって連合国軍に負けたわけですが、これがサンフランシスコ条約の講和条約締結となっておる。そしてその後引き続いて日華条約で中国との間に講和条約を締結した、そういういきさつでございます。その関係中国に対しまして、中華民国に対して、私どもは国際上の権利義務がある。それをやはり国際信義上守っていくということでありますし、また北京政府台湾政府も同じように、中国一つだ、こう言っている限り、私どもが、二つだとかあるいは一つ中国一つ台湾だとか言うことは、これは出過ぎた言い方だ、かように私は思っております。
  480. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、一つ中国という立場に立っておるというふうに確認してよろしゅうございますね。
  481. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 すみませんが、ちょっといま……。
  482. 松本善明

    松本(善)委員 一つ中国という立場に立っておられるというふうに確認をしてよろしゅうございますか。
  483. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  484. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ確認をしたいと思いますが、中国代表する政府台湾政府である、蒋介石政権である、この立場国際信義があるので変えないということを言われました。これもあらためて確認してよろしゅうございましょうか。
  485. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようでございます。
  486. 松本善明

    松本(善)委員 私はそこでお聞きしたいのでありますが、そういたしますと、台湾政府が、蒋介石政権がある限りは、中華人民共和国を中国代表する正統政府として国交を回復するということは、その立場からはどうしても出てこないのではないか、この点についてお聞きしたいと思います。
  487. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねになった点が実は問題なんです。私どもは、いずれの国をも敵視するというようなことはしないし、友好関係を持ちたい、かように考えております。しかしいままでの国際信義はどうしても守っていかなければならない。そこいらに、日本政府そのものが板ばさみにあっている。苦しい状態にある。何かいい方法はないだろうか、こういうことで、ただいま国際情勢の変化や、あるいはまた友好国との関係どもいろいろうかがいながら、われわれ独自のたてまえをとろう、こうしているわけです。
  488. 松本善明

    松本(善)委員 私はさらにお聞きしたいのでありますが、いろいろ検討しておられるということは先ほど来もずっと言われたし、そしてそこに問題があるということも、これはひとしくみんな知っておるところであります。国民もまた、この点について総理がどういう方向で考えているかということを知りたいわけであります。  そこでもう一度お聞きしたいわけでありますが、一つ中国という立場に立って、しかも蒋介石政権との関係は変えないという立場で、私が先ほど確かめましたように、そういう立場で行く限りは、どんなに検討いたしましょうとも、中華人民共和国を正統政府として国交を回復するということはあり得ないじゃないですか。これは論理上の当然の帰結であります。この点を総理大臣に伺いたいのであります。
  489. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その点は先ほども外務大臣がお答えいたしましたように、したがいましてわれわれは、両国の間で話し合うことが何よりも大事じゃないか、お互いに一つ中国だと言っているんだから、両者とも、これはもう中国人であることに間違いないのですから、そこらで十分話し合って、そうしてわれわれの期待に沿うような結論を出してもらう、これが何よりも望ましいことです。私が一番心配しておるのは、隣で戦争が始まるとか武力衝突があるとか、そういうことが一番心配なのですから、とにかく両者において話し合ってもらう、そういうことを心から望んでいるわけです。
  490. 松本善明

    松本(善)委員 総理大臣に伺いたいのでありますが、いまのお話でありますと、日本政府のほうでは検討しない、中国二つ政府が話し合ってもらいたい。そうすると、先ほど来慎重に検討するとかいろいろ言われましても、結局は何もしないということではないだろうか。もし違うならば、台湾政府との関係を変えていくというお考えがあるのかどうか、それをお聞きしたいです。
  491. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 何にもしないということじゃありません。たとえば大使級会談をしようとか、あるいはまたもっと接触の方法はあるんじゃないか。これはもう外務大臣からもいろいろ話をしております。こういう事柄がどうしても望ましいのじゃないか。また私どもは、まあ野党の諸君が北京に出かけられる際に、私どもから何かとお願いすることはございませんが、また野党の方ですから私どものところへもいらっしゃらないけれども、しかし与党の場合は行かれる前に私どもとも連絡がある、政府の意向は間違いなく伝えたい、かように思っております。
  492. 松本善明

    松本(善)委員 私は、総理はそういうふうに言われますが、本日の朝以来の論議を聞いておりますと、佐藤総理考える中では、中国との国交回復をしないというお考えがあるというふうに思われてしかたがありません。先ほど他の委員指摘をいたしましたけれども総理大臣は、法的に戦争状態が続いているというのは中華人民共和国が日華条約を認めないからだ、こういうことを午前中にはっきり言われたのであります。愛知外務大臣は、それはおそらく、中華人民共和国の政府が戦争状態が続いているということを言っておるのを知っているという意味だというふうに言われましたけれども総理が言われたことは私が言ったとおりであります。それにまたこのことは単なる失言でなくて、外務大臣が本国会の外務委員会でも同じような趣旨のことを述べられました。条約論としていうならば、日華条約を新しい政府が承継するのが日本側からいえば当然だということを言われました。これは総理が朝、言われていることと軌を一にするわけであります。これは日台条約、蒋介石政権と結んだ日華平和条約なるものを中華人民共和国が引き継げということを言っておるとしかとれません。そういうことを総理考えておられるのではありませんか。またそれがそうならない限りは、中国との国交回復ということは考えられないということを言っておられるのではありませんか。
  493. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私の言っておりますことは終始変わっておりませんので、日本立場としては日華平和条約のできた由来から、性格から、今朝来も申し上げておるとおりでございますから、国と国との関係においては戦争状態は終結している、日本政府はそういう立場をとっているわけでございます。それから先いろいろ観念的といいますか、仮定に基づいてのいろいろの考え方については、いろいろの選択が観念的、学説的には考えられるでございましょう。そういう場合に、そのいま御引用になったものでも私は前提をはっきり置いているつもりでございますけれども、私はそういう説をとっているのではないけれども、そういう承継論という説もございますというふうに御説明をしておるのであって、私の説ではございません。
  494. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さきの矢野絢也君にお答えいたしましたとおり、国と国との戦争はもうない、やんでいる。
  495. 松本善明

    松本(善)委員 戦争状態が終結しておるというふうに言われるとするならば、中華人民共和国を相手にしてそのための措置はとらない、戦争終結というようなための特別の措置というものはとらないということを言われるわけでございますね。
  496. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねになることがどういうことか、私にはよくわかりませんが、とにかく戦争状態はない。だからこそ、いま民間貿易にしろ、民間貿易をしておるし、またお互いに交流もしておるし、どこにも戦火、戦いを交えるような状況ではない。このことは事実が証明している。これははっきりしている。
  497. 松本善明

    松本(善)委員 私がお聞きしておりますことは、これは国民だれもが思っておるのでございます。それは中華人民共和国を相手に戦争終結のための外交措置をとるのかとらないのかということであります。それはとらないのか、お答えいただきたいと思います。総理に伺いたいと思います。
  498. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総理からお答えがありますが、その前に、さっきから申しておることを繰り返すことになって恐縮ですが、日本としては国と国どの間において戦争状態は終結しているということ、この日華平和条約によってそう解するという立場をとっているわけです。それはそれとして、今度は実際上の問題としても、われわれとしては中国本土との間に戦争状態が現に存在しているとは考えませんと、こういうのがわれわれの考え方でございます。
  499. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、いま戦争状態にはない、戦争状態は消えた。その根拠は、申し上げるまでもなく日華講和条約、これがもとであります。だからしたがって、それより以上に何にもわれわれ考えることはないんじゃないだろうか、かように思っております。
  500. 松本善明

    松本(善)委員 中華人民共和国と戦争状態終結のための何らかの措置をすることをしないで、中華人民共和国と国交を回復することが可能であるというふうにお考えでありますか。
  501. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点については、しばしば総理も触れられておりますように、中華人民共和国が法的には日本との間には戦争状態が終結していないという態度をとっていることを日本政府は承知いたしております。これは総理も私もしばしば申し上げているとおり、これが実情でございます。
  502. 松本善明

    松本(善)委員 私の質問は、総理、お答えいただきたいのでありますが、中華人民共和国を相手に、戦争状態を終結をするという外交上の措置を何らとることなく、中華人民共和国との国交回復をすることができるとお考えになっていますかということでございます。
  503. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま中国一つだという、そうしてただいまの中華民国とわれわれは講和条約を締結した、それで戦争状態は終結した、もうそれだけで終わりでございます。ただしかし私どもはいまの北京政府中国大陸を領有していること、これを否定するものではない。これだけははっきりしておきます。だからそういう意味からも何とか仲よくする方法はないか、こういうことでいろいろくふうしているというのが現状でございます。
  504. 松本善明

    松本(善)委員 もう一度お答えいただきたいのでありますが、中華人民共和国に対して戦争終結のための外交上の措置を何らとることなく、中華人民共和国を正統政府として認めて国交回復をすることができるというふうにお考えになっておりますか。
  505. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもちょっと食い違っておるようですが、私は(松本(善)委員「問いにお答えいただきたい」と呼ぶ)問いも問いですけれども、ただいまの状態でいま慎重に私自身がこの問題と取り組んでおるわけです。結論は簡単に出ないのです。いま言われるような方法だと、もう結論がある、出ている。それで答えができるんです。ただいまの状況ではまだ大使級会談もなかなかできない、そういうような状況でありますから、その次の話の段階にはまだならない。そこらは御了承いただきたい。
  506. 松本善明

    松本(善)委員 お聞きしたいことは、検討されるのはけっこうですが、これができると、戦争終結のための外交上の措置というものがなしに——いままでの総理のお話ではやらないという話です——なしで国交回復ができるというふうに考えてなければ、これは検討してもどうにもならないのですよ。それはできるとお考えになっているのですかと言うのです。そのこともお考えになっていないのかどうか、はっきりお答えいただきたい。これが一番日本国民は知りたいところだと思います。はっきりお答えいただきたいと思います。
  507. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまさら日本が戦争を始めるわけじゃございません。国民の一番知りたいことは、戦争になるのじゃないかというそのことでございます。そのことはないんだ、それだけはもう、国民が一番知りたいことは、私ははっきり答えるのです。これはもう、ない。そういうことはありません。御心配は要りません。(「条約論だ」と呼ぶ者あり)いまの条約論という、まあこれは不規則発言だし、共産党の方ではないようですから、共産党はまた別な、松本君はお尋ねの立場にあろうと思いますけれども、ただいま申し上げますように、とにかくもっと理論的に問題を詰めようとしてもまだ詰まる段階でないのです。だからしたがってこれはいま端的に答えろとこうおっしゃってもこれは答えられない。
  508. 松本善明

    松本(善)委員 これは詰まる段階ではないということではなくて、お答えを避けておられるだけであると私は思います。この国会で私どもは衆議院、参議院の本会議におきまして、中国国連に復帰をした場合でも国交を回復しないのかということを聞きました。総理はこれについてもお答えを回避をされました。しかしこれはもう現実の問題になっております。本日の委員会の状況を見ましても、ほとんどすべての委員が、この中国国連復帰の問題について論議をしておるわけです。現実の政治問題であります。中国国連に復帰をいたしましても、中国との国交回復はしないのかどうか、あらためて伺いたいと思います。
  509. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中国国連に復帰する、あるいは中国承認する、一体どちらが先なんだ、こういう話が社会党の方あるいは公明党でしたか、先ほど質問を受けたように思います。私は、その優先順位はきめられない、二つは一緒じゃないだろうか、かような答弁はいたしました。ただいまのところまだそこまで話が進んでおらない、その段階でございます。
  510. 松本善明

    松本(善)委員 私がなぜこのことをお聞きするかと申しますと、日本国民中国国連に復帰するのは近いと思っております。そのときに一体政府はどういう態度をとるのだろうか。幾ら佐藤内閣でも、中国国連に復帰をしたら、幾ら何でも国交を回復するだろうというふうに思っておる人はたくさんいるのではないか。私はこの期待がむなしいのではないかというふうに思うわけです。その点をお聞きしているのです。国連に復帰をするということがあっても、なお国交を回復しないということはあり得るのかどうかということをお聞きしているのです。
  511. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまその問題はですよ、国連に加盟するか、あるいは隣の国だからそれを承認するほうが先かという、もっと基本的な問題があるのじゃないでしょうか。私どもいまいきなり国連に加盟ができたらそのときにでもなおどうするのだ、承認しないのか、こういうようなお尋ねがありましたが、私はそこまで実は踏み切れないというか、いまどうなることがいいのかということでいろいろ慎重に考慮している最中ですから、端的に答えればいいような問題ですが、それが答えられないというのが実情でございます。
  512. 松本善明

    松本(善)委員 中国国連に復帰するということは重大な問題であります。世界の多数の国が、国際連合においても中華人民共和国の国連代表権を承認をする、その場合には当然中華人民共和国は安保理事会の常任理事国になるでありましょう。そういう国とも国交を回復しないということがあり得るのかどうか、それが一体検討の対象になるのかどうか、この問題なんですよ。それは単に仮定の問題で逃げられるようなものでは、私はないと思います。それは、そういうような国とも国交を回復しないということがあり得るのかどうかという総理の政治姿勢の問題です。その点をお聞きしたいと思います。
  513. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ちょっと総理のお答えの前に申し上げますが、いま安保理事国のことにも言及なさいましたし、中共国連加盟ということを前提にしてお話しですが、午前中の委員会でも私申し上げましたように、通常、加盟といわれておりますけれども、先般の代表権の審議にあらわれた国連の各国の意見にもずいぶん複雑多様な意見が明示され、あるいは黙示されていることは、いまさら申し上げるまでもございません。中には、これは私の意見ではございませんよ、ございませんけれども、その安保理事会とどういう関係になるのか。これはアルバニア案のごときは、代表権の回復ということが決議案の上に出ておりますから、回復ということでいくのならば、それは安保理事国の問題が当然付随するのでございましょうが、そのほかの考え方もいろいろのバラエティーがあるわけですね。いわんや先ほど申しましたように、加盟ということに賛成投票をした国でも、国連加盟国の中でもこれは五分の二なのですね、事実が。ですから、もう国連加盟ということが既定の事実であるかのようなことを前提にされてそういうふうにお話しになりますことは——先ほど松本さん御自身の御意見にもございましたが、日本がいかにするかということのほうが本体でございまして、それからあと具体的な条約に対してどうなるかとか、あるいは代表権問題をどう扱うかとかいうことに私は入るのが、問題のアプローチとして正当だと思うのです。要するに、日本政府としては非常に重大な問題でございますから、各般の様子を検討して慎重に考えなければならない。時間を切って、いま尚早に意見を申し上げるべき段階ではない、これが基本姿勢でございますから、その基本姿勢を一つの前提と仮定をお置きになって、技術的なあとのことに言及されても、その辺についてはお答えができない。これは御了解願えると思います。
  514. 松本善明

    松本(善)委員 私が総理に伺いたいのは、総理国連尊重ということを何度も言ってこられた。その立場でいくならば、これは政治姿勢の問題として国連に復帰をし、安保理事会の常任理事国になる。いま論議をされているのであれば、当然にこれは代表権の回復の問題であります。外務大臣はそうでない場合もあるかのようなことをいま言われましたけれども、本国会の外務委員会の私に対する答弁で、はっきりこれは代表権の回復の問題であると言われた。中国国連に復帰をするならば、当然に安保理事会の常任理事国となるわけです。そういう国とも国交を回復しないということが、国連尊重という立場から見て考えられるのかどうか。考えられないということなら検討の対象にならないですよ。考えられるのかどうかということをお聞きしているのです。総理に。
  515. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあとにかく、いまの段階では何とも答えられないということであります。
  516. 松本善明

    松本(善)委員 私は、ますます佐藤総理中国との国交回復をする意思がないというふうな疑いを強めております。これはもう時間がないから触れませんけれども木村長官がいわゆる日中関係国連での間接方式が適当ではないか——これは木村さんの意見だというふうに言えばおしまいでありますけれども、これも中国国連に復帰をしても直接国交回復はしないという意見であります。佐藤首相のごく近くからそういう意見が出ておるということは、私は私の考えが決して間違っているものでないというふうに考えざるを得ないと思います。盛んに総理大臣は仮定の問題だということを言われますけれども、ことしの国連総会アルバニア決議案が過半数を獲得をし、重要事項指定方式の票差は昨年の二十三票であったものが十四票差と大きく変わりました。アルバニア決議案について考えますと、昨年は八票差で賛成少数でありました。ことしは二票差で賛成多数と、十票動いておるわけです。重要事項指定方式の票差は九票変化をしておるわけであります。このことは十四票程度の票差が一年で縮まり得るものだということを何よりも示していると思います。また重要事項指定方式に賛成をした国の中でも、アルバニア決議案に賛成をした国がカナダイタリア、オーストリア、イギリスの四カ国、棄権をした国は十三カ国もございます。この中にはカナダのように来年は重要事項指定方式には賛成しないということを言っておるところもあります。エチオピアが十二月二日に中国承認し、国交回復をいたしました。これはアフリカ諸国重要事項指定方式に対する態度に大きな影響を与えると思いますし、チリが中国と国交を回復しました。これは南米諸国に大きな影響を及ぼすでありましょう。来年重要事項指定方式が過半数を占めることができなくなるということは現実に起こり得ることであります。総理はこういう可能性が全くないと思って国政を担当しておられるのでありますか。
  517. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われるような点も十分考えなければならぬ、かように思って、ただいま慎重に取り組んでおる最中でございます。
  518. 松本善明

    松本(善)委員 これはまさに現実の問題であるということを総理は認められた。私は先ほど来総理が仮定の問題だといって答弁を回避されたのは、これは仮定の問題ということを口実にして、きわめて重要な、国民総理の意見を聞きたいと思っておる点についての答弁をすることを避けられたとしか、とうてい考えることはできないと思います。  私は、そこで総理にもう一つお聞きしておきたいと思いますのは、この中国問題の新しい波というのは、カナダイタリア中国との国交回復に始まったわけであります。これはすべて中華人民共和国と国交回復をするということによって、蒋介石政権と手が切れておるわけです。まさに世界の大勢は、蒋介石政権にかわって中華人民共和国を中国代表と見る方向に動いておる、これが世界の大勢であります。これは日本について言いますならば、日台条約の破棄を前提として中華人民共和国と国交回復をするということであります。私は本日の佐藤首相の答弁を聞いておりますと、佐藤内閣がこれと全く逆の方向に行っている。この世界の大勢に全くおくれている、取り残される。この方向で行くならば、必ず日本は世界で最後まで中国と国交を回復しない国になるだろう。いまの態度が変わらない限りそうなるに違いないと思います。総理、どうお考えになりますか。
  519. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 しばしばいまの松本君の話を聞いていても、バスに乗りおくれるのじゃないか、バスに乗りおくれるな、そういう御注意のように実は聞くのですが、とにかく大事なことは、バスがどこへ行くのかよく見きわめることです。西へ行くつもりでバスへ乗ろうとしたらそれが北へ行くというようなことでも困りますから、十分その行く先を見きわめて、それからバスへ、バスが発車する前に乗ればいいわけなので、何でもかんでもかまわないからバスに乗るという、そのくらいあぶないことはないのです。私どものいまの態度がなまぬるいといわれるかもわかりませんが、ただいま申し上げるとおり、ただいま慎重にこの問題と取り組んでいるわけであります。
  520. 松本善明

    松本(善)委員 まとめたいと思いますが、総理大臣が言われるようなバスに乗りおくれるかどうかというような次元の低い問題ではないのです。日本国民をどこへ引っぱっていくのかという重大な問題です。私は、総理が反省されることを求めて質問を終わります。
  521. 中野四郎

    中野委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  522. 中野四郎

    中野委員長 この際、閉会中審査に関する件についておはかりをいたします。  予算実施状況に関する件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたすこととし、その手続については委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  523. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十一分散会