○鍛冶
委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、
沖本君外二名
提出の
修正案、
青柳君
提出の
修正案、以上
二つの
修正案に反対し、原案に賛成するものでございます。
簡単に、まず、
沖本君外二名
提出の
修正案についての反対の
理由を申し上げますると、もうこの
委員会で言い尽くされましたが、第一に問題になりまするのは、危険のおそれある
状態という原案が
もとあった。ここへ出たときになかったのだが、どこかにあったときにあったらしい。それが消えて、危険の生じたときとなった。これがはなはだどうも
ざる法になったと、こう言わるるのだが、私は、
法律家にあらざる良識の方々が言わるるのならばある程度敬意をもってお聞きもいたしまするが、
法律専門家がこれを言わるるに至っては、私ははなはだ不本意きわまるものだと
考えるのであります。私はその案を見るなり、これははなはだいかぬ、こういうことを
法律に載せるということはいかぬ。いやしくもこの
法律は刑罰法です。人を罰する
法律です。その人を罰する
法律に「おそれある」——「おそれ」とは一体だれがきめるのだというと千差万別、どの人が言ってもみなおそれと言えば、何がおそれになるかわからない。そういうことでは、刑罰法としては最も危険千万だ。きのうここに来られた宮崎先生が、しろうとが聞いたら一体何のことだろうと思って心配する。くろうとだけならばよろしいが、しろうとに対してはこういうものは
法律としてはいかぬと言われた。まことにどうも何というか聞きやすいようなことで、しろうとらしいようなことであるが、それをくろうとの皆さんがこれに便乗して、
政府に対して反対すればいいから反対されるのかもしれぬが、言われるということは、はなはだ私は遺憾千万だと思う。
しかも、その
法律の
もとには、みなその前にこれに適応した取り締まり法があります。取り締まり法において十分取り締まって、その上でなお聞かないで、それが危険としてあらわれて出てきた、そのときに初めて
処罰する、こういうことにおいて初めてこの
法律が生きてくるものであって、何でもかんでもどうも危険があるようだからひとつひっ捕まえてやろう、何でもかんでも危険だからといって世の中を騒がしてやろう、かような
考えでもってこの
法律をつくろうとするのならば、私ははなはだとりません。その
意味において、現在出ておりまする
法律案は最も適当したるものとして原案に賛成せざるを得ないのでございます。
次いで申し上げたいのは、第五条の、
岡沢君もずいぶん熱心に言われましたが、これはどうもまことに、くしくも私と同
意見なのです。私は初めから、一体こういう
法律をつくってもいいものかということを言って、私自身どうもこれは差しつかえないのかどうかを疑問にしておりましたが……(「それじゃ反対したらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)どうも反対の人から言われると、私はわが意を得たりと言いたいくらいです。けれ
ども、昨日の
参考人が出てきて言われるところを見ると、これはやはり画期的だ、この
法律によってこれを入れて、実際においてやってみたほうがまことにいい経験だと言われるから、私もどうもこれははなはだあぶないものだと思うが——これはしばしば法務当局に対して申し上げておるのです。確信があるか、やってみて、もしいかぬとするならば、これはいつでも訂正してもらわなくちゃならぬ。これは裁判所自身においてもどのようにやられるか、われわれも非常な注目をせなければならぬものでございまするが、まあ学者もそろって画期的のものだからこの点はいいとこう言われるなら、われわれもあぶないとは思いまするが、学者がそう言われるならばひとつやってみようじゃないですか。その上でいかなかったらやめるというので、この画期的と言わるる
法律をひとつ適用して、その
効果を見たいのであります。そのかわり法務当局におきましても、その結果に対しては十分なる注意を払って、よい
考えを持ってもらいたいと思うのであります。
そのほか、いろいろの点はあります。
施行の点や刑罰の点はありまするが、これは
考え方によっての点ですからここで申しません。
この大きな
意味において、私は、この
修正案に反対し、原案に賛成するものであります。(拍手)
青柳君のこの
修正案は、これはなかなかむずかしいことを書いてありまして、非常によく研究しておられることに敬意を表しまするが、一口に言えばもっと重く罰せよということと、これはやはり
刑法の無過失
責任論がこの
意味に入っておるように思います。
考え方はあるいは
考え方であるかもしれぬが、現在においては直ちにこれはとるべきものでない。原案のこの
法律をもって適用して、その上において必要があれば、われわれはあなた方に同調することはやぶさかではございませんが、一ぺんにあなたがたに同調するというわけにはまいりません。
この
意味において、まだ尚早であるという
意味から反対いたしまして、原案に賛成するものでございます。(拍手)