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1970-12-08 第64回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月八日(火曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       辻  寛一君    中山 利生君       堀田 政孝君    上原 康助君       木原  実君    佐藤 観樹君       横路 孝弘君    鬼木 勝利君       山田 太郎君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君  委員外出席者         法務大臣官房会         計課長     伊藤 榮樹君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君         通商産業大臣官         房審議官    礒西 敏夫君         建設省都市局技         術参事官    三宅 正夫君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 委員の異動 十二月八日  辞任         補欠選任   笠岡  喬君     石井光次郎君   中山 利生君     岸  信介君 同日  辞任         補欠選任   石井光次郎君     笠岡  喬君   岸  信介君     中山 利生君     ————————————— 十二月七日  国家公務員定員外職員全員定員化等に関す  る請願米原昶紹介)(第一号)  旧軍人に対する恩給改善等に関する請願外八件  (相川勝六紹介)(第四二号)  同外一件(伊能繁次郎紹介)(第四三号)  同外十四件(大久保武雄紹介)(第四四号)  同外四十九件(大坪保雄紹介)(第四五号)  同(大野市郎紹介)(第四六号)  同外十六件(加藤常太郎紹介)(第四七号)  同外三件(木村武千代紹介)(第四八号)  同外一件(塩谷一夫紹介)(第四九号)  同(瀬戸山三男紹介)(第五〇号)  同外八件(高鳥修紹介)(第五一号)  同(渡海元三郎紹介)(第五二号)  同外一件(中川俊思君紹介)(第五三号)  同外二十四件(中山利生紹介)(第五四号)  同外一件(原健三郎紹介)(第五五号)  同(福田篤泰紹介)(第五六号)  同外八件(松澤雄藏紹介)(第五七号)  同外十四件(三ツ林弥太郎紹介)(第五八号)  同(山下元利紹介)(第五九号)  同(山村新治郎君紹介)(第六〇号)  同外十二件(渡辺肇紹介)(第六一号)  同外一件(足立篤郎紹介)(第一〇八号)  同外二件(池田清志紹介)(第一〇九号)  同(宇田國榮紹介)(第一一〇号)  同外十二件(宇野宗佑紹介)(第一一一号)  同外六件(江藤隆美紹介)(第一一二号)  同外十二件(大橋武夫紹介)(第一一三号)  同外九件(加藤陽三紹介)(第一一四号)  同外二件(田川誠一紹介)(第一一五号)  同外一件(田村元紹介)(第一一六号)  同外四件(坪川信三紹介)(第一一七号)  同外二件(葉梨信行紹介)(第一一八号)  同外二十五件(藤本孝雄紹介)(第一一九号)  同(松野頼三君紹介)(第一二〇号)  同外二件(三池信紹介)(第一二一号)  同外三十九件(森下國雄紹介)(第一二二号)  同外三件(山口敏夫紹介)(第一二三号)  同(赤城宗徳紹介)(第一七六号)  同外三十一件(大竹太郎紹介)(第一七七号)  同(大橋武夫紹介)(第一七八号)  同外三件(北澤直吉紹介)(第一七九号)  同外五件(河本敏夫紹介)(第一八〇号)  同外二件(小島徹三紹介)(第一八一号)  同外十六件(佐伯宗義紹介)(第一八二号)  同外八件(椎名悦三郎紹介)(第一八三号)  同外三件(千葉三郎紹介)(第一八四号)  同外十五件(塚原俊郎紹介)(第一八五号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第一八六号)  同外六件(床次徳二紹介)(第一八七号)  同(中島茂喜紹介)(第一八八号)  同外二件(丹羽喬四郎紹介)(第一八九号)  同外二十三件(野中英二紹介)(第一九〇号)  同外一件(原健三郎紹介)(第一九一号)  同外四十四件(増岡博之紹介)(第一九二号)  同外六件(山下徳夫紹介)(第一九三号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願(相  川勝六君紹介)(第六二号)  靖国神社国家管理反対に関する請願佐藤観  樹君紹介)(第六三号)  同(佐藤観樹紹介)(第一二五号)  同(青柳盛雄紹介)(第一九四号)  同(浦井洋紹介)(第一九五号)  同外二件(大出俊紹介)(第一九六号)  同(小林政子紹介)(第一九七号)  同(佐藤観樹紹介)(第一九八号)  同(田代文久紹介)(第一九九号)  同(谷口善太郎紹介)(第二〇〇号)  同(津川武一紹介)(第二〇一号)  同(寺前巖紹介)(第二〇二号)  同(土橋一吉紹介)(第二〇三号)  同(林百郎君紹介)(第二〇四号)  同(東中光雄紹介)(第二〇五号)  同(不破哲三紹介)(第二〇六号)  同(松本善明紹介)(第二〇七号)  同(山原健二郎紹介)(第二〇八号)  同(米原昶紹介)(第二〇九号)  滋賀県の寒冷級地是正に関する請願山下元利  君紹介)(第六四号)  元満鉄職員恩給等通算に関する請願寒川喜  一君紹介)(第六五号)  同外一件(永末英一紹介)(第六六号)  同外三件(山下元利紹介)(第六七号)  同外二件(砂田重民紹介)(第一二四号)  同外一件(永末英一紹介)(第二一〇号)  同和対策の確立に関する請願(正示啓次郎君紹  介)(第六八号)  一世一元制法制化に関する請願相川勝六君  紹介)(第一〇七号)  職務関連罹傷病の旧軍人軍属傷病恩給支給に  関する請願田中伊三次君紹介)(第二六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。
  3. 横路孝弘

    横路委員 小林法務大臣には連日公害罪の御審議でたいへんだろうと思いますが、きょうは簡単に少し二、三点だけをお尋ねしたいと思います。  この設置法の中で、関連いたしまして出入国管理行政についてお尋ねをしていきたいと思うのですが、その前に基本的なことについて一点、二点法務大臣お尋ねしたいと思います。  一つは、監獄法の問題ですけれども、ことしの五月六日のこの委員会で、法務大臣、ぜひ監獄法改正をやりたい、できれば次期通常国会までにはこの案を作成したいという御答弁があったわけですけれども、現在までこの作業についてそういうような方向で進められているのかどうか、その点について最初お尋ねしたいと思います。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのお話につきましては、いまお話のような態勢で作業を進めております。
  5. 横路孝弘

    横路委員 これは次の通常国会もう間もなくですけれども、その段階で出せるのですか。
  6. 小林武治

    小林国務大臣 私はそのつもりで事務当局を督励しておる、事務当局もそのつもりでやっておると聞いております。
  7. 横路孝弘

    横路委員 この問題は大正十一年以後いままでもう十数回にわたって改正作業というのは進められて、戦後においてももう四、五回いろいろな案そのものができ上がっているわけです。ですから、五月の段階からいままで、いろいろそれは中で調整しなければならぬ問題もあるでしょうけれども、これはやろうと思えばすぐできることだと思うのです。そんな意味で、通常国会もう間もないと思いますけれども、ぜひ改正方向でひとつお願いしたい。  それからもう一点、少年法改正の問題なんですけれども、これは法務省のほうで非常に強引に法制審議会のほうに諮問をされたわけですから、これからの動きは法制審議会のほうの答申待ちということだろうと思うのですけれども、この答申について、時期はいつごろになるのか。この点について、特に答申の時期について何か法務省として注文をつけた点があるのかないのか。その辺の経過について御報告いただきたい。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 いまの監獄法の問題でございますが、これは法制審議会に付議しなければならぬ。ですから、これは、二月くらいまでに国会に提出しなければ、この国会に出した、こういうことになりませんから、そのつもりでいま日程表を組んでやっておる、こういうことでございます。
  9. 横路孝弘

    横路委員 それで、いまお尋ねしたのは少年法改正のほうの問題なんです。問題が移りましたけれども、この少年法改正法制審議会のほうにかけられていますね。答申を求めてかけられておるので、一応その審議会答申待ちということだろうと思うのですけれども、この答申の時期、少年法改正についてはどのくらいの時期になるのか。この答申の時期について何か法務省として急げとか何かというような意味注文をつけたのか、その点はどうですか。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 私は、これをお願いするとき、大体一年ぐらいでひとつお考え願いたい、そういう、ばく然といえばばく然でありますが、一年くらいでひとつお願いしたい、こういうことであります。
  11. 横路孝弘

    横路委員 さて、そこで、出入国管理行政について少しお尋ねをしてみたいのですけれども、現在はこれは出入国管理令によって、ある意味では全く法務省自由裁量のもとに、ほしいままの行政が行なわれているという感じなんです。この問題も、これはやはり監獄についての取り扱いと同じように、憲法とか刑事訴訟法というこの人権保障規定なんというのは全く無視されている。これは大村収容所の中でも、取り扱いそのほか見ても、明確だろうと思うのです。  そこで、出入国管理法案について、昨年の国会政府は提出したわけであります。これも内容的にはやはり憲法刑事訴訟法のいわば人権保障規定というものを無視した法案であったために結局成立しなかったわけでありますけれども、この辺の取り扱いについて、政府としてどのようにお考えになっているのか、その点からお尋ねをしていきたいと思います。
  12. 小林武治

    小林国務大臣 これは前回もいろいろの論議をいただいたわけでございますが、今度の法案を提出するにつきましては、いろいろ手直しその他もいたして、あらためてお願いをする、こういうことになっておりますが、いろいろ御論議をいただいたような点については注意をしてまいる、こういうことでございます。御期待に沿うか沿わぬか、これは別問題として、ああいうこともよく十分に参照して立案をしておる、こういうことであります。
  13. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、これも、出入国管理法案という形で国会に提出される、法務省のほうの、そういう御意思というか、それはあるわけですか。
  14. 小林武治

    小林国務大臣 次の通常国会に提出いたしたいと考えております。
  15. 横路孝弘

    横路委員 そこで、この法律案についてはいろいろな議論があったわけですね。いまその議論を踏まえて修正をした上で何かお出しになりたいというような御答弁だと思うのですけれども、どこをどのように修正しようとお考えになっているのか。そのポイントだけでけっこうですから概略お答え願いたい。これは局長のほうからでもけっこうです。
  16. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 実は百数条にわたる膨大な条項でございまして、現在法制局その他関係官庁多岐にわたっておりますので、協議中でございます。決定的にどこがどうなるか、懸案になっている点がございます。それが済み次第発表したい、こういうふうな考えでおります。
  17. 横路孝弘

    横路委員 しかし、いまの大臣の御答弁ですと、通常国会には出すというわけでしょう。これはもう今月の二十六日から始まるわけですよ。そうすると、どこがどうかということではなくて、大体もうそれはどこをどうするかというポイントというものは、従来の議論から見ると明らかだろうと思うのですけれども、大体それは煮詰まっているわけでしょう。だからどこをポイントとしてとらえておられるか。そのくらいはもう明らかにされたっていいのじゃないですか。
  18. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいま申しましたように、こまかいところは最終的に煮詰める段階に入っておりますが、十分通常国会までに間に合うということを目途に作業を進めております。  御指摘の重要なポイントにつきましては、すでに従来論議された点を、いま大臣から御答弁がありましたように、そういう諸点を十分勘案して煮詰めている、こういうことでございます。
  19. 横路孝弘

    横路委員 それじゃお答えになっていないのです。従来から煮詰めてきたポイントは何か、こういうことなんですから、ポイントをもっと明らかにしていただきたい。
  20. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 従来の管理令が船舶を主体にした古い時代の出入国管理令でございますので、ジャンボジェット機の近代の国際交通の盛んになった時勢に合うようにしようというのが第一ポイントでございまして、多量の入国者外国人が参りますが、これに対する入国簡素化合理化ということをやろうという手直しが第一点でございます。  第二点は、そういう人が入ってくる結果、従来よりも日本に入る外人の数が、ある程度自由になって多くなりますので、そういった不良外人不良活動の防止という問題がどうしても重要な——わが国益に沿うようにやっていかなければならないという意味制限規定をどうするかというようなところが、現在のところでは一番重要な視点かと思います。
  21. 横路孝弘

    横路委員 それはもう要するに改正の趣旨なわけです。それじゃほんとうはやはりお答えになっていないわけですね。従来から刑事訴訟法に基づくいろいろな弁護人立ち会い権、そのほか全部含めて強制捜査の場合どうするかとか、いろいろ人権保障の面から議論されていたポイントがあるわけでしょう。ほんとうはその点についてお答えを願いたいわけですけれども、いずれ法案が出てきた段階議論していくことにして、入管行政の中で私常々ふしぎに思っていたのは、特別在留許可と仮放免というものが一体どんな基準で行なわれているのか。いろいろ知っているケースを当たってみると、こんなのはおりるはずがないなんてものに特別在留許可がおりたりしているわけですね。その点でふしぎに思っていたところ、ことしの十一月九日の朝日新聞の夕刊によると、東京入国管理事務所汚職事件というものが報道されているわけですね。東京入管事務所特別審理官をやっている三浦大助というのが収賄が逮捕された。これは起訴されたようでありますけれども、この事件についてちょっと概略御報告いただきたいと思う。
  22. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいま御指摘東京入国管理事務所勤務入国審査官汚職事件を起こしましたことはまことにわれわれとしては遺憾に思う次第でございます。本件はこの入国審査官外国人強制退去についての違反審査口頭審理及び異議申し立てというこの三段階手続に関するいろいろな事項の処理に関しまして、これを担当しておったわけでございますが、その立場を奇貨といたしまして、昭和四十三年の五月三日ごろ及び同年九月十六日ごろの二度にわたり自分の担当した事件容疑者である朝鮮人からそれぞれ十万円及び五万円のわいろを受け取ったという問題でございます。法務省におきましては十一月十一日付で同人懲戒免職処分に付した次第でございますが、なお同人はその翌日十二日東京地裁に起訴された、こういう経緯でございます。今後はこういった職員綱紀自粛に鋭意努力いたしまして、二度とこういう不祥事が発生しないように指導監督を強めていきたいという所存でおります。
  23. 横路孝弘

    横路委員 この事件について、一体どこにこういう事件が発生する原因があるのか。それは責任者としてどのようにお考えになっておりますか。
  24. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 外国人強制退去に関する手続処理というものは非常に微妙な問題でございまして、そういう立場を利用してわいろを取るというようなことで誘惑を受けるおそれが潜在的にはあり得るのでございます。この同人の場合は、もう定年が近いし、行く末の不安を感じ、またいろいろな生活上の問題があって、つい誘惑につられて五万円、十万円を取ったようでございますが、それはそれとしまして、絶対そういうことの起きないように、誘惑に負けないように、私たちとしては、鋭意職員自粛綱紀の粛正ということに繰り返し努力しておる次第でございます。
  25. 小林武治

    小林国務大臣 これはやはりそれぞれの公務員本人の心がけの問題も大事でございますし、それからしてお話のように自由裁量余地が相当ある。その裁量が一人の人にまかされておる、こういうようなところにも不用意なところがある。したがって、これらの裁量がただ第一線の人一人の自由裁量でなくて、もう少しチェックする方法がありはせぬか、こういうふうに思っておりますが、これは問題が、最初横路委員お話しのように、自由裁量余地が多いことが結局そういうところにつながりやすい素地がある、こういうふうに私は思います。
  26. 横路孝弘

    横路委員 私のほうも、その質問お答え願いたかったのは、要するに大臣のようなお答えを実は期待をして質問をしたわけです。大臣に比べて局長さんあたりちょっと問題意識が少しないのじゃないかというような感じをいま受けたわけであります。そこでいま自由裁量だというお話しがありましたけれども、管理令の五十条によると、これは法務大臣権限になっておりますね、特別在留許可を与えるということは。そうすると、これは実質的にはいま特別審理官三浦という収賄で起訴された人——そうすると、実質的には特別在留許可というのをどの段階でこれはきめているわけですか。
  27. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 特別在留許可管理令の五十条によりまして、法務大臣がこれを許可するということになっておるわけでございます。
  28. 横路孝弘

    横路委員 それはもちろん知ってお尋ねしたわけなんですがね。実質的にはどこでやっておるのかということなんですよ。これは特別審理官主任審査官段階でやるのか、あるいは法務大臣のもとに何か特別審査会みたいなものがあってそこでやっておられるのかということなんです。
  29. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ことばが足らなくて失礼いたしました。  第一線で、審理官違反調査退去の強制すべき事実があるかどうかという違反事実調査からいろいろな手続を経てきまして、本人異議申し立てをしてくる、特別在留許可を願い出た場合に、本省におきましてこれを全部審査いたしております。したがいまして、本省におきましては私たち以下関係者が集まりまして大臣を補佐して、特別在留許可が適当であるかどうかということを多くの人数で各方面から見ておりますから、一人の人の単独の恣意でもって許可になる、そういう仕組みにはなっておりません。
  30. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、この三浦という審理官、これは特別在留許可すべきかどうかというそういう決定の会議には参加していないのでしょう。
  31. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 参加しておりません。
  32. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、本省においてそういう許可をやっていると言われましたけれども、どういうメンバーでやっておられるのですか。
  33. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 裁決諮問委員会という、実は非公式に大臣を補佐する内部の組織をつくっておりまして、これに入管当局の私以下首脳部が全員参加して議を尽くして決定いたしております。
  34. 横路孝弘

    横路委員 その首脳部というのは、たとえば課長以上とかなんとかという、そうして何人くらいなんですか。
  35. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 局長、私、次長、各課長全員、それから参事官という構成でございます。人数としては合計九名でございます。
  36. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、特別審理官というのは実質的には何も権限はないわけですね。実質的にはその九名で全部処理されているわけでしょう。
  37. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 第一線におきまして、なまなましい現実の違反調査をやりまして、報告が出てくるわけでございまして、その各段階に相応して意見を具申してまいります。その過程におきまして、特別審理官特別審理官として、本件については許可したほうがいいと思う、あるいは許可する必要がないと思う、そういう意見具申はしてきますが、審理官一人ではございませんので、大体四名くらい各段階手続段階に見合った関係者がそれぞれの意見を独立の立場で自由に意見具申してまいります。
  38. 横路孝弘

    横路委員 そこで、いま裁決諮問委員会ですか、九名でやっておられるということなんですけれども、その基準ですね。特に朝鮮人たちの場合はいろいろなケースがあるから基準といってもむずかしいかとも思うのですけれども、しかしこれは非常にたくさんのケース処理されてきているわけでしょう。そうすると、おのずからそこに基準というものがあると思うのですね。これは内部的に何か基準というものがあるのですか、ないのですか。
  39. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 事の性質が個人状況、情状を見てきめていくことであり、また個人の、昭和何年に密入国してきたかという当時の状況というものが年々変わっておりますし、国内情勢国際情勢も変わっておりますから、はっきりした基準というものはつくっておりません。しかし、議を尽くしている間に、大体、長年にわたって、日本に密入国した時期が古いとか、それから素行が善良であるとか、あるいは何らかの意味において、同じような状況でありましても、一人の人は日本の社会に密入国はしてきたけれども、前非を悔いて一生懸命貢献しているとか、そういった複雑な事情を全部検討いたしました結果、本人特別在留許可に値するあるいは値しないという結論を出しておる次第でございます。
  40. 横路孝弘

    横路委員 これは外国人にとっては非常に重大な問題なわけですね。強制送還されるかどうかということで、この在留許可をもらえるかどうかというのはほんとうに一身にかかわる重大な問題なわけです。ところが、私も弁護士をやって、いろいろ強制送還なんかのことで話を聞いてみますと、従来からいろんな話がある。こういう席上ですからあまり申し上げるのは差し控えたいと思いますけれども、それは局長さん十分御承知のことだろうと思うのです。たとえば増山登という元木省入国管理局審判課長さんですね。つまり行政事件の、強制送還執行停止事件、これはあちこちで証言をやられておられる。その証言なんかを見てみますと、たとえば韓国領事あるいは公使等入管にしょっちゅうやってきて、そうして個人的な関係特定人物とかあるいは変な前科がたくさんあるような人間についてまで強制送還させぬように特別な配慮をさしてほしいというようなことで、いろいろなことでしょっちゅうやってくるということですね。やってきてどうだということは証言されておりませんけれども、やってくるということは証言されておられる。そして、いろいろなケースに当たってみると、やはりわれわれとしても首をかしげたくなるようなそういう事例というのがあるわけですよ。増山さんという人の証言は、たとえば昭和四十三年(行ウ)百九十二号、昭和四十四年九月十八日の証言なんかお読みになってみると、この人はだしかいまも現職の検事じゃないかと思うのですけれども、あるいはやめられたかもしれませんが、そういう人の証言にそういう発言が出てくるということ自体、これはほんとう自分の一身上の問題として強制送還されるかどうかということで在留許可がほしいという者の立場からするとやはり大問題。しかもその基準が明確でなくて、非常に責任的地位にある人がこういう証言をなさるということになると、やはりそこに不安というものをわれわれ感じざるを得ないわけです。いま御答弁があったようにケース・バイ・ケースだというのはよくわかるわけです。よくわかるけれども、しかし、ケース・バイ・ケースだからといって、非常にたくさんの前科があっておかしな犯罪ばかりやっているような人間についてまで在留許可を出しているようなケースを見ますと、やっぱりそこに何かあるのじゃないかという世間一般のうわさというものも信じたくなるわけですよ。だから、その辺のところでやはりある程度の基本となるべき基準ぐらいは、いままでずっと相当な件数を取り扱ってきておのずからそこに累積というのがあるわけですから、基準の設定というのはあると思うのですね。その辺のところをやはり基本的な方向なり姿勢なりというものだけでも明らかにすべきじゃないかと思うのです。いかがですか。
  41. 小林武治

    小林国務大臣 一番最初の審査に当たる者の報告がわりあいに重視される、こういうことは当然でありまして、そのために多少でも手心を加えるとかなんとかいう余地第一線の方にある。しかして、裁決の委員会がありましても、具体的に自分が出向いて個々に調査するなんということはなかなかできませんから、その際に一番重く見られるのは最初の報告書だ、こういうところにいろいろの問題が出てくる余地があります。したがって、裁決委員会にしても場合によったらその先のほうまで調査する、こういうようなこともこれから考えなければなるまいと思いますし、全体として今度の事件というのは私非常に変なことばで言えばよかった、これが出入国管理する人にとっての非常に大きな反省の資料になった、こういうふうに考えております。  それからなお、いまお話しのように、もう長い間取り扱っておるから全体を通じて何か最大公約数みたいなものが出やせぬか、私もそういうふうに感じます。そういうものが出るのじゃないか。だから、そういうようなものもこれからひとつ検討してやっぱりある程度何かよりどころをつくるということがこの問題の適正を期するために私も必要であると思いますので、いま御提案のようなことはひとつすぐにでも私これから検討させていきたい、こういうように考えております。
  42. 横路孝弘

    横路委員 この事件よかったとおっしゃいますけれども、前に大阪の入管でもやはり汚職事件、これよりちょっと規模の大きいのがすでにあるわけですね。すでにあるわけですから、そういった意味で粛正という立場からぜひ考えていただきたいと思うのです。  そこで局長のほうにお尋ねしますけれども、強制退去に伴う執行停止の事件ですね、強制事件というのはいま何件ぐらいかかっていますか。
  43. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 行政訴訟に現在案件となっておりますのは八十三件あります。まだそれを争っているわけでありますが、そのうち何件が執行停止になっているか、ちょっとここに資料がございませんので……。
  44. 横路孝弘

    横路委員 そこで、どういうケース在留許可がおりるのかどうかということは、実はわれわれ外から見ているとわからないわけです。個別に当たってとにかくやってみなさいと、おりるかおりないかわからないわけですよ。そこで、前から私資料を請求しているのですが、「入国管理月報」というのをおたくのほうで出しているでしょう。その中でこういうケース紹介というのはされているわけですよ。これを資料として出してほしいというのに、これはいつ頼んでも断わられるのですが、その辺の事情と、できればやはりこれは一年間分ぐらい出していただきたいと思うのですが、どうですか。
  45. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 入管月報は、われわれ部内の関係者の勉強のための参考資料ということで出しておりますので、部外の方——それぞれの組織には、部内の必要参考資料と、対外的に出していいものとあると思いますが、その意味で、私のほうは従来一度も出しておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  46. 横路孝弘

    横路委員 しかし、中にあるいは、いろいろなケース紹介が主ですよ、最近どうなっているかわかりませんけれども。それなら何も部外秘なんという書類じゃないんでしょう。これから出入国管理法案が次の国会に出されるというそういった意味では、入国管理行政というのはもう少し、これもやはり法務大臣監獄と同じように明らかにされてない、秘密に行なわれている面が非常にあるのです。だから、そういう資料をもう少しわれわれに出してこの場で議論するということでなければならぬと思うのです。国会議員にもこういう資料を全然出さぬ——これは別に極秘書類じゃないでしょう。かまわないんじゃないですか。どうですか。
  47. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいま御指摘入管月報の中に書いてあります資料は、係争中のものがあるわけでございますが、わがほうがそれに対してどう考えておるか、どういう調査をして、何をどういうふうに取り計らうかという訴訟をやっております一方の当事者として、手のうちが書いてあるわけでございまして、これを発表するということは、弁護士のほうから見られると、非常に必要でしょうけれども、私のほうから見ると、まことにぐあいの悪いという立場にございますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  48. 横路孝弘

    横路委員 別に私はいまそういう事件はやってないですよ。ただ、いつも感ずるのは、法務省というのはともかく秘密主義で困る。しかも、秘密主義でいいことをやっているのならいいけれども、どうもあちこち窓からのぞいてみると、あまりいいことをやっていないという感じがするわけですよ。  そこで、大臣、できるだけやはりこういう問題は明らかにして、その議論をしていくべきだというように私は考えるわけですけれども、前から私は、どうも法務省というのは、ともかく資料請求しても全然出さない。そうすると、われわれは、ほかのいろいろなルートをさがして何かどこかにないかということでさがし回らなければならぬということになるわけですね。そうじゃなくて、正々堂々と議論する意味で、こういう資料というのはできるだけ明らかにするべきだと思うのですけれども、どうですか。
  49. 小林武治

    小林国務大臣 それはもう明らかにしたほうがいいと思います。  ただ、法務省という役所の一つの特質というか、昔からの一つの雰囲気を持っておる。それからして、全体としてやはり内緒にしなければならぬような事件を多く扱っているわけでございますから、なかなか御要望に沿えない。しかし、役所としては、できるだけ選択をして、世間に知らせるものは知らせる、こういうふうな態度を私はとるべきだ、かように思います。  なお、出入国管理令そのものが、御承知のようにこれはポツダム政令で、戦後は終わっていないなどといって、まだちゃんとここに戦後が残っている。そういう混乱というか、ごたごたの際にできた政令である。その後またこれの所管が外務省から法務省に移ったりして、人的構成その他においても、まだなかなか安定性がない。いろいろな事情がこの行政については回っておるというふうに思っておりますが、しかし、いまお話しのような方向にできるだけ持っていかなければならぬというふうに考えます。
  50. 横路孝弘

    横路委員 出入国管理令の問題は、ポツダム政令が残っているかどうかということじゃなくて、この規定がやはり憲法とか刑事訴訟法人権保障という面から見て問題があるのだ。だから変えようというならわかるのですよ。これはポツダム政令だから云々ということではないわけです。  そこで、ちょっと数字を教えていただきたいのですが、特別在留許可の人員ですね。これには戦前から引き続き日本に在留しておって、二十四条違反でこの許可をもらっている者、それから戦後不法入国——不法入国といってもいろいろなケースがあるわけですよ。在留許可等があるわけですが、二つに分けて、大体どのぐらいの人数になるのか。いまお答えになれなければ、あとでもけっこうでございますから、これを資料としてひとつ出していただきたい。
  51. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 いま正確な資料を持ち合わせておりませんので、後ほどお手元にお届けいたします。
  52. 横路孝弘

    横路委員 もう一つ、これはこれから議論していく朝鮮籍書きかえの問題と関連してくるわけですが、一九六六年の一月十七日以降現在までに、まず戦前から日本にいた者で二十四条違反特別在留許可を受けた者の数、そのうち韓国籍、朝鮮籍というのは一体どのくらいになっておるのか。さらに特別在留許可を受けた者のうち永住権の申請をした者が何人あるのか。これもすぐ統計としておかわりになると思いますので、これも資料としてお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
  53. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 後刻お届けいたします。
  54. 横路孝弘

    横路委員 そこでもう一つ具体的なケースについてちょっとお尋ねしたいと思うのですが、バーバラ・バイさんというアメリカから来ている女性ですね。これはよく御承知だろうと思うのです。このケースについてお尋ねしたいのですけれども、東京地裁でこのバーバラさんが負けて、東京高裁のほうで一応勝ったということになっているわけですよ。このケースの経過についてやはり最初に簡単に御報告をお願いしたいと思います。
  55. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 バーバラ・バイというアメリカの女性でございますが、日本に観光客として入国いたしましたが、観光も相当やったようでございますけれども、その片手間か、そっちのほうがだんだん中心になったようですが、岩国その他米軍の基地に行きまして、反戦運動というか、米軍の兵士に働きかけて脱走あるいはベトナム戦争反対等を勧告する——これは本人の信念でそういう活動に従事したということになっておるようでございますが、観光であれば観光客としての行動をしてほしいというのが私たちのたてまえでございますが、そのうち、本人は期限が切れましたので沖繩へ行きまして、もう一度舞い戻って、再び観光客として日本に入りたいということを申し出たわけでございますが、私たちのほうといたしましては、本人は、観光客としての活動でないことを主としてやっておるのではないか。しからば、それは違うのではないかということで問いただしましたところ、本人は、実は反戦運動をやるのだということを申しましたので、それでは困るということで、上陸を拒否したわけでございます。これは、私たちとしては、当然合法的に法に従って拒否したわけでございますが、その結果、外国人日本に入れるか入れないかはあくまで日本の主権行為でございまして、日本が不都合だと思う人を入れなければならない義務はないわけでございますが、日本に入ってもらっては困るという結論である以上、本人退去命令を出して、帰ってくれ、自分の国は向こうだから帰ってくださいということを羽田の飛行場で申しましたら、本人は訴訟に出まして、その帰ってくれという退去命令の効力を停止させる、本案の訴訟がきまるまで停止させるという訴訟をやったことは御承知のとおりでございますが、それは地裁におきましては、本人はすでに十分観光をやっておるから、これは法務省の言い分が正しい。だから直ちに退去命令を執行してよろしいという判決が出たのでありますが、高裁のほうに行きまして、技術的に法の解釈のこまかいところが出まして、本案で結局入国を認めていいかどうかという本体の訴訟できめるから、それまでは本人退去命令の効力を停止するという、こういう判決が出たわけでございます。したがって、入管行政立場から申しますと、日本に上陸は認めておりませんので、まだ日本の本土内では自由には行動できない。羽田のホテルに本人は泊まっておる。それで訴訟の結果待ち、こういう状態に現在相なっておるという次第でございます。
  56. 横路孝弘

    横路委員 そこでその拒否をしたのは、出入国管理令の何に基づいてやったのですか。
  57. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 出入国管理令の第七条第一項二号でございます。
  58. 横路孝弘

    横路委員 要するに観光客だというのは虚偽だというわけですか。
  59. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 まあ簡単に言えばそうでございます。
  60. 横路孝弘

    横路委員 それでいま東京高裁の決定について何か技術的なことだというけれども、結局そこのところでおたくのほうは負けたわけでしょう。
  61. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 こちらが負けたわけではございませんで、ここのところに法律の不備がある。つまり立法上の不備の問題だ、はっきりしないんだということで高裁が決定したわけでございます。
  62. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、いま本人はあそこの空港ターミナルビルのホテルにいるわけでしょう。出ることができずに、上陸することができずにいるわけですね。裁判が終わるまでといっても、地方裁判所の裁判が終わるまでどれくらいかかると思いますか。半年や一年じゃないのですね。あるいはそれ以上かかる、あるいはこれだけ高裁だ最高裁だといえば五年も六年もかかるわけでしょう。それまでずっとほっておくつもりですか。
  63. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 これは先生十分御承知のように、ある外国人日本の国の法令に合わない、あるいは日本の国に不適当な意図を持って入ってくるなら、日本政府あるいは日本国家は水ぎわにおいておまえ入ってもらっては困ると、当然拒否できるわけでございまして、国際法上の原則であり、世界各国もみなそうしているわけであります。したがって、ただいまのおことばからいきますと、いつまでも本人を置いておくのはひどいではないかというふうにもしお考えでございましたら、本人はいつでもアメリカ、自分の祖国へは帰れるわけでございまして、日本のほうへドアをあけてしゃにむに上がってこようとするから、それはちょっとわがほうの規則に合うようにして上がってほしいということを本人に伝えているだけで、本人の意思においてがんばっておられる限りこれはやむを得ない、そういうふうに考える次第でございます。
  64. 横路孝弘

    横路委員 あれですか、反戦運動をやることが日本の利益を害するのですか。
  65. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 現在問題になっておりますのは、反戦運動そのことで問題にしておるのではございませんで……。
  66. 横路孝弘

    横路委員 いまそうお答えになったでしょう。日本にとって不都合な人間だ、反戦運動をやるから不都合だ。
  67. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 日本の法規に合うようにして入ってもらうようにしなければ不都合だと申した次第でございます。
  68. 横路孝弘

    横路委員 いやいまそうお答えにはならなかったのですよ。反戦運動をやること、そのことが、何か日本にとって不都合だというようなお答えだったのですね。法規に合う合わないというのは、具体的にはどこですか。
  69. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいまの七条が、現在高裁まで行って議論になりましたように、入国管理令ではこういう規則に従ってビザ——査証を申請し、上陸の認証を受けて手続を済ませて入ってくる。現に何十万の外国人日本に入ってきますが、みんなその手続で入ってくる、こういうわけでございます。それから先ほど私の説明の中に反戦運動だから不都合であるということは申しておらないはずでございます。
  70. 横路孝弘

    横路委員 基本的なこと、これはやはり考え方に私は問題があると思うのですね。外国人だって日本憲法やら法律に違反しない限り基本的人権というのはあるんだというのがこれはもう判例でしょう。これはもう確定していますよ。その辺のところはどういうぐあいにお考えになっているのですか。これは日本にいる外国人だって日本憲法や法律に違反しない限り表現の自由なり何なりはあるわけですよ。その辺のところはどういうぐあいにお考えになっておるか。
  71. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 御指摘のとおり日本の国内に合法的に入っておる外国人は、当然日本憲法及び法令の適用を受けまして、人身の保護その他基本権の保障があるわけでございますが、その当人はまだ日本国内に入ったといいますか、これから入っていこうというところで問題になっておるわけでございますから、極端に言いますともう少し前の段階で、羽田に入ってくる飛行機の中におる人が、日本憲法によって自分はこういう権利を持っておるということを主張されても、わがほうといたしましてはその外国人に権利を付与したわけでもないし、義務を負っておるわけでもございませんので、その点がちょっとニュアンスが違うかというふうに考えておるのでございます。もちろん日本に合法的に入られた方は日本憲法規定に従って権利が保障されております。
  72. 横路孝弘

    横路委員 それがやはりピントはずれなんですね。あなた方実際考えておられるのは、前に観光客として来ながら、先ほどの答弁は、観光もしたけれども反戦運動もやった。そこで今度観光客として申請があったから、内容はどうなんだということを聞いたら、いや反戦とかその辺の意思もあるのだということ、だから虚偽の申請だから断わった、こういうことなんでしょう。そうすると問題は、いま何かまだ上陸しているとかしてないとかいう議論をしたけれども、あなた方のほうで断わった理由はそこにあるのじゃなくて、基本的に、観光客として来た者がそういう行動をするのはけしからぬということが前提になっているわけでしょう。それを前提にして今度のような取り扱いをしているわけですよ。これはこのケースばかりじゃなくて、前に共産党の大会に来た外国人についても同じようなことをやって、やっぱりこれは東京地裁退去命令については停止が出ましたね。だからその辺の基本的なところなんですよ。入管行政の中で一番問題なのは、そういう日本にいる外国人の基本的人権というものを全然考えていない、刑事訴訟法に基づくいろいろな退去手続にしても何にしても非常にルーズな面がある。それはやはりいまの日本憲法の権利あるいは刑事訴訟法によるところの人権保障の原理、これはもう国際的なものです。そういう基本的な姿勢というのがいまの入管行政にないということを私は言いたい。だからそんな手続の何とかかんとかいうようなところでごまかしたってそれはだめですよ。あなたが自分で率直にお考えになっている基本的なところが私は問題だと言う。そこのところをどういうふうにお考えになっているのか、お答えいただきたい。
  73. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 現在の世界におきましては、各国それぞれ主権国家に外国人が自由に出入りできるということはどこにもないのでございまして、原則としてそれぞれの国で法令で定めて、こういう条件に合った人は許可をするから査証をもらっていらっしゃい、あるいはそれに判こを押して許可になる、上陸の許可をされる適法の条件というものがあるわけでございます。ただいまの御指摘の点は、技術的だとおっしゃいますが、入管法の第四条に、外国人の上陸についてはこういう場合にする、こうでなければならないと書いてあるわけでございまして、それに一号からずっと列挙してございます。それのどれかに該当している人に入国を認める、こういうことに日本の法ではなっておるわけでございますから、どれに該当しているのだということで入国者には聞くわけでございます。ところが本人は観光客として査証をもらって来ておりますが、実は自分は観光客ではない、ほかのことをやるんだと言えば、そのことがいけないということなんでございます。そういう別の形で入ってこられては困る。たとえば本人は留学生だといって査証をもらって入ってきたが、実は自分は留学しないでラーメン屋をやるのが私の目的で日本に来たのですと言われますと、そのラーメン屋をやることは何ら日本の国益に反しないという説があるかもしれませんけれども、入国管理上そういうことをやってはぐあいが悪いというのが法のたてまえであり、それを私たちは執行するように義務づけられておるわけでございます。
  74. 横路孝弘

    横路委員 私が聞いておるのは、入国の、だれを入れるか入れないかというのは各国の自由だ、それはそうでしょう。そのことを聞いているのじゃなくて、いまあなたの言うのは、法のたてまえ、手続をいわば利用して入れるとか入れないとかいうことを言っているので、本音は最初に御答弁されたように、観光客として来た、観光もして回ったけれども岩国で反戦活動もやったというとを最初に御答弁されたでしょう。だからそこが問題だ。そうするとこの事件と離れて、観光客として来た外人が表現の自由とかなんとかという日本憲法や法律に違反しない限りでのそういう基本的人権を持っているという、基本的な点についてはどうなんです。これは認めるのですか、認めないのですか、あなた方入管行政の基本として。
  75. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 基本的人権は当然これを認めるわけでございます。ただ先ほど申しましたのは、この女性が観光客で入ってきて、それ以外の、資格外のことを活動しておる、資格外というとあれですが、それ以外のことを主たる目的として入ってきたということが実績から判明したわけでございます。極端にいいますと、観光客で入ってきたこの女性が、観光客で入国許可されて、その後かりにラーメン屋をやっておったということがわかれば、本人は、観光もやった、しかし、片手間にラーメン屋をやって旅費をかせいでまた見ていくのだ、こういうのは、本来の趣旨に反する。たまたまバーバラ・バイなる女性は、観光客として入ってきて、反戦運動を主たる目的としておるし、今度入るときに聞きましたら、やはりそうするのだというのでありますから、しからば、そういうふうな手続で入ってきてくれ、こういうことを申しておる次第でございます。
  76. 横路孝弘

    横路委員 それで、大臣お尋ねしたいのですけれども、入国管理行政の基本として、やはりそういう外国人の基本的な人権を守るということ、基本的な人権はやはり認めてやるのだ、日本憲法なり法律に違反しない限り、権利というものはやはり認めるのだということを基本にした行政でなければならないと私は思うのです。その辺が、実は、出入国管理令そのものにも、いろいろな手続的な面を考えてみて、不備がたくさんあるわけですね。管理法自身も、では、どうかということになると、かえって何か悪くなっているような面が、この間の法案ではたくさん出てきている。その辺の基本的な問題というのは、やはりぜひ押えてもらわないと、出入国管理法案なるものがどういうものかまだよくわかりませんけれども、その辺のところをやはり押えてもらったものでなければ困ると思うのです。その基本的な点について大臣お答えをいただきたい。
  77. 小林武治

    小林国務大臣 これはもう、私が申し上げるまでもなく、出入国管理令だから、出たり入ったりするときの問題です。したがって、入ってくる場合には、どういう目的で入るか、これをお聞きするのはあたりまえです。だからして、ほかの目的があれば、観光だなんてごまかさないで入ってくればよい。こういうことで、ある程度実質的な問題よりか、形式論をとらざるを得ない。入ってきた人の人権というのは、あたりまえのことでありますから、出入国、出入りの場合のかなり形式的な審査、こういうことにならざるを得ない。私がいま申しましたように、ほかの名目で入りたければほかの名目でお入りなさい、こういうことだけで、それ以上、人権とかなんとかいう問題に触れておるとは思いません。
  78. 横路孝弘

    横路委員 それはいまのケースなり何なりについてですね。そうじゃなくて、行政の中心として、基本的人権はやはり保障してやるのだということが必要じゃないかという私の質問です。
  79. 小林武治

    小林国務大臣 それはもう当然なことでございます。
  80. 横路孝弘

    横路委員 その当然なことが行なわれていないから御質問をしているので、ひとつその実態をよく見ていただきたいと思うのです。  最後に、国籍書きかえの問題について二、三お尋ねしたいと思うのですけれども、従来、韓国籍から朝鮮籍への書きかえ、また、その逆ですね、朝鮮籍から韓国籍への書きかえということが行なわれてきていると思うのですけれども、これはこの間の九月八日の法務委員会の議事録ですが、四十年から四十五年までに朝鮮の記載から韓国籍に書きかえました数字は七万三千五百八十八、韓国籍から朝鮮籍への書きかえが百三十ということが御答弁になっているわけですね。これはその時点での話。そこでお尋ねしたいのは、韓国籍から朝鮮籍への書きかえの百三十ですね、一体、申請はどのくらいあって、そのうち百三十認めたのですか。
  81. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 詳細な資料は後ほどお届けいたします。
  82. 横路孝弘

    横路委員 それともう一つ、最近にきて急にこれがふえてきているのですね。これは九月八日の答弁ですから、それから以後現在まで、韓国籍から朝鮮籍への書きかえは実際どれくらい行なわれているのですか。
  83. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 その後非常に書きかえの申請がふえまして、現在までのところ、七千百四十五件申請が出ておりますが、そのうち、私のほうで審査を終えたのが五千三百一件でございまして、その五千三百一件のうち二千二百三十一件につきましては、事務上の過誤によって韓国になったものだと判断をされるに至りましたので、訂正を認めることにして、市町村に返事をしております。
  84. 横路孝弘

    横路委員 ある資料によると、それ以前のものは一万六、七千件申請があって、それはいまおたくのほうで調べてお答えいただければわかると思うのですが、そのうちわずか百何件ですね。それがいま急に認めるのがふえた。いままでは、何回も何回も申請しても認められなかったのが、今後急にふえた、その理由は一体何なんですか。
  85. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 従来、こういう資料があればこちらのほうで審査できるからという説明が十分市町村に、あるいは、市町村の窓口でその資料をとっていなかったのではないかと思うのでございますが、私のほうでは、詳細に、こういう資料を出せば審査できるということを具体的にいろいろ追加して指示をしてきまして、その結果、事務上の過誤によってそうなっておったということが判明するケースにつきましては、これを処理してきた、その結果こういう数字になった、こういうわけでございます。
  86. 横路孝弘

    横路委員 それもまたやはり詭弁だろうと思うのですね。従来は、韓国というのは国籍なんだ、朝鮮というのは符号なんだ、だから、認められないというのが実は、従来のいろいろな通達の基本に、特にあの日韓条約以降の基本にあったと思うのですね。それが九月二十六日にこの通達が出て、やはりここでニュアンスが非常に変わってきているわけですね。私はそう考えるわけです。  時間がきてしまいましたので、実は、この問題、まだいろいろとやりたいと思うのですけれども、そこで、一つだけお尋ねしておきたいのは、従来、韓国というのは国籍だったんだ、朝鮮というのは符号だったんだというのが、これは法務省のほうの基本見解だ。その国籍から符号にまたおたくのほうでは戻しているわけでしょう。最近、急にふやしている。一体韓国という記載を訂正して朝鮮という記載にかえているこれは、おたくの見解から言うと、何をやっていることになるのですか。
  87. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 韓国が国籍であり、朝鮮が用語であるということは、従来、何ら変わっておりません。御指摘のとおりでございます。ただ、先ほど申しましたように、事務上の過誤によって、本人が意思がないのに知らぬうちに第三者がそれを本人の登録書を持っていって申請してかえてしまったという事実が判明すれば、本人は初めから韓国になる意思はなかったし、韓国であるということは法律的にはおかしいわけでございますから、そういうのは事務上の過誤として全部もとへ戻しておる、こういうことでございます。ただ本人が、間違って自分は韓国になったんだ、あるいは第三者が強引に持っていって自分の知らぬ間にやったんだ。——当時の混乱時期、昭和二十二年、三年、四年ころのある意味におきまして混乱時期におきましては、そういうことが現に発生しておるということでございます。したがいまして、本人がそれを立証する資料を出せば、これを事務上の過誤として取り扱えるとこちらが認定して、そういう処置をとっているわけでございます。
  88. 横路孝弘

    横路委員 それはやはり議論がかみ合っていないわけですね。私のほうで聞いているのは、韓国は国籍で、朝鮮というのは符号なんだという見解だったわけでしょう。それは変わっていないというのですね。そうすると、韓国籍からさらに朝鮮というものに書きかえたということは、たとえば外国人登録法にいう一体何に当たるのか、やっていることの法律的な意味は何かということを私はお尋ねしているのです。過誤があったから訂正するんだというのは、それはいいですよ。いいですけれども、あなた方のほうの基本的な立脚点というのは、韓国は国籍なんだ、朝鮮は違います、これは符号なんだということをともかく前提にしているわけですね。その前提から言うと、今度法務省みずからそれの書きかえをしているということは、これは非常に矛盾していることでしょう。つまり、国籍というものから符号にかえるというのは、一体、外国人登録法そのほかの法律によってどんな意味があるのかということを私はお尋ねしているのです。
  89. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 入管外国人登録法による記載をかえたからといって、本人は法律的にどうなったかということは直接関係はないわけでございまして、外人登録は、在留管理の目的の上から、本人が提示してきた、あるいは本人が申請してきたことに関連して、いわば鏡のようにこれを反映して写しておるだけでございます。本人がたまたまそのときに韓国人という申請をしてなかった、あるいはあやまってしておったということが判明すれば、当然元の姿に戻すのが法理上も正しいということに相なるわけでございまして、御指摘の韓国が国籍だから朝鮮に戻してはいけないということはないのではないかと私は思う次第でございます。
  90. 横路孝弘

    横路委員 それはいけないと言っているのじゃなくて、一体どういう意味なのかという、実はこれは矛盾があるわけですよ。それが矛盾してないとお考えになっておられるようですけれども、ほんとうはいろいろと議論をしたいわけでありますけれども、きょうは何か一時から本会議があるということでありますので、ひとつその辺に協力をして、これで私の質問はやめますけれども、国籍書きかえの問題も例の田川市、私の北海道にもあっちこっちありまして、非常に大きな問題になっているのです。基本的に入管行政の中からこの問題を将来皆さんのほうといろいろと議論をしてみたいというように思っております。  きょうはこれで終わります。
  91. 天野公義

    天野委員長 伊藤惣助丸君。
  92. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は法務省設置法の一部を改正する法律案、この法案についての質問を行ないたいと思います。きょうは主として実態面について伺いたいと思います。  これは前国会においてもたびたび取り上げた問題でございますが、まず東京拘置所が栃木県の黒羽町黒羽刑務所に移転する。また、同所の施設が完成すると宇都宮刑務所の施設が不要となるのでこれを廃止する。また精神障害受刑者に対する処遇の充実をはかるために岡崎市に岡崎医療刑務所を設置する、こういう一つの法案でありますが、現在の移転の進行状況について概略伺いたいと思います。
  93. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 御指摘いただきました案件は東京拘置所の移転問題に関連する一連の作業でございまして、昭和四十一年度に国庫債務負担の御承認をいただきまして、以来東京拘置所の敷地を財源といたしまして、現在小菅刑務所のありますところに東京拘置所、それから栃木県に黒羽刑務所、旭川の近傍に旭川刑務所、岡山に岡山刑務所、埼玉県に川越少年刑務所、浦和市内に浦和刑務所、以上の六施設を取得するという作業を進めてまいったわけでございます。  このうち、現在までに旭川刑務所、岡山刑務所、川越少年刑務所、浦和拘置所、この四つが完成をいたしまして、現在最後の段階に入りまして、東京拘置所の新施設、それと黒羽刑務所の施設が本年十二月末日を工期といたしまして、鋭意工事を進めておりまして、おおむね予定どおり完工の予定でございます。
  94. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そういたしますと、それぞれの六施設についてはおおむね予定どおり進行しているということでございますね。  それでは巣鴨の東京拘置所ですか、このあと地利用について伺いたいと思うのです。  最近一部報道にもありますように、あそこの事業計画が白紙になった。さらに新都市開発センターの役員交代があった。非常に大きな赤字でこの新都市開発センターもこのままではどうにもならないといううわさがあるわけであります。そういったことにつきまして、過去においては法務省の会計課長、また大蔵省関東財務局長、新都市開発センターの三者が契約して事業計画を立てていることは私たちも知っているわけでありますけれども、それがその契約を見てまいりますと、四十八年の四月一日までにその事業の計画を完成する、またもし完成しなければ、期間を経過した場合には契約は解除となっている、こういうようなこともあるわけでありますが、その辺について伺いたいと思います。
  95. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 先ほど概略を申し上げました計画によりまして、現在東京拘置所のあります敷地は、その一部を東京都に移管しまして公園といたしますほかは、御指摘の新都市開発センターという会社に売り渡すわけでございます。新都市開発センターといたしましては、その譲り受けました地上に、現在までの計画によりますと、まずもって国が払い下げにあたりまして用途を指定いたしました、その用途指定にかかります高速道路のインターチェンジ、それから地下駐車場、バスターミナルというようなものをつくりますほかに、その上に上物といたしまして三十六階程度のビルディングを建設する。これは地元の福祉にも役立ちますような、たとえば児童会館でありますとか集会所というものをつくりますと同時に、あるいはホテルでありますとか住宅というようなものをつくっていくという計画をしておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、新都市開発センター側におきまして建設しまして、国に引き渡しますところの六つの矯正施設の工事は、きわめて順調にいっておりますので、このテンポでまいりますと、あるいはセンター側に対しまして、国側としては予定どおりこの東京拘置所の敷地を引き渡すことができる運びになろうと思います。  さて、その上にセンター側でいろいろなものをおつくりになるわけでございますが、仄聞いたすところによりますと、三十六階建ての計画という基本計画に対しまして、いろいろな株主の方あるいは取り締まりの方もおられまして、三十六階にもう少し積む必要がないかどうかというような御意見もあるようでございまして、現在会社側で鋭意最終計画を練っておられる。またこれに見合う資金の手当てを考えておられるようでございます。したがいまして、現在私どもとしては、四十八年四月一日までに、少なくとも用途指定をいたしました都市計画事業あるいは自動車ターミナル事業の関係の先ほど申しました施設は、おつくりいただけるものというふうに考えております。  もし万一それが実現しなかった場合にはどうかという点につきましては、若干期日が延引するというような見通しがもし出たといたしますと、その段階で国側に対して申請をして、国側から書面による承認を得れば若干の延引ができるように契約自体がなっておりますので、万々そういうことはないと思いますけれども、万一の場合にはそういうことになるということでございます。
  96. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 個々に聞いてまいりたいのですが、新都市開発センターはいままでに何回か社長、重役がかわっているわけであります。そのたびに話しする人、また計画の内容が多少ずつ変更しているわけでありますが、今回また大池さんからかわったわけでありますが、そういうようなことを大蔵省では知っているのかということですね。  さらにまた事業計画というものが白紙になったといいますけれども、少なくとも三十六階以上のビルを建てる場合には一年なり二年なりの計画が必要であります。どういう理由で白紙に戻したのかという点、こういった点についてももう少し具体的に伺いたいと思います。
  97. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 現在、契約の相手方になっておりますのは、私ども法務省と、それから大蔵省の財務局系統の役所ということになっておりますので、社長の交代等につきましては、いずれもよく承知を申し上げております。ただいまお尋ねの中に事業計画が白紙に戻ったというお話がございましたけれども、私どもとしてはさようには聞いておらないのでございまして、役員の方の一部に、三十六階建ての従来の構想をもう一辺考え直す必要があるのじゃないか。前国会で当時の大池社長がここで参考人として述べておりましたが、若干、工事をやっております間に、予定外の経費もセンターとしてはかかったようでございまして、その分を多少建物の上へ積んで採算をとるというようなことも必要であるのかないのかというような点も現在検討されております。そのために、最終的に何階建てのものが入り、その何階から何階までがどういう用途になるというととが、現在の段階では確定していないという状況のように聞いております。
  98. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 当然、この新都市開発センターは、いろいろな関連から、特に大蔵省、法務省等の指導あるいはまた助言によって運営されているように私は思います。ただ、その役員交代の理由がどういう理由なのか。と言いますのは、実際に建物が建たないうちに、二回も三回もかわるということについて、たとえ、地元の側においては、いろいろなことを約束しても、それは前の社長の約束である、前の担当官の約束であって今度は別なんだ。いろいろまた施設のことについて要望いたしましても、結局それは、前回はそうだけれども、今度は白紙なんだと、常に折衝するに当たってもきわめてあいまいであり、また尋ねる人によって全部意見が違う。こういうような声も聞かれているわけであります。  ですから、こういったことにつきまして、非常に会社に対して強い不信と不安を抱くわけであります。したがいまして、できたあとにいろいろな問題が起きて、そのことについて責任をとるという理由だとか、あるいはまた増資をするから、そういう関係で交代するんだという大義名分でも明確であるならば、話もまたわかるわけでありますが、ただ何となくかわった。いやだったんだけれどもみんなに推されたからやった。要するに、しぶしぶ社長を引き受けて、そしてその役目が終わったから次にかわるというような行き方をしている会社、非常に私は不安に思っているわけであります。  ただいまもお話を伺いましたが、従来の三十六階の計画というものをもう一回考えたらどうかというお話でございますが、いままでの段階でいきますと、結局、三十六階では採算に合わない。いろいろ負担はするけれどもペイしないということから、もう少し高層化しよう、そういうことで白紙に戻したんだという話も私は聞いているわけであります。そういたしますと、三十六階あるいは六十階あるいは百階というものが原案の原案としてあるように思いますが、ただ、しかし、三十六階と六十階と百階の基礎は全く違うと思いますし、これは一つは、そういった事業計画は大蔵省なり法務省が私はもっと詳しく知っているんじゃないかと思うのです。そういったことについて、課長の知っている範囲内での説明を伺いたいわけであります。
  99. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 現在の計画段階につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、ただいま御指摘のありましたように、あの相当広大な面積のところにどういうものが建つかということは、いろいろな面から、地元の方々のみならず、東京都全体としてもたいへん大きな問題であろうかと存じます。  先ほど、社長がかわることに話が白紙になったりして困るではないかという御指摘もございましたが、私ども長年矯正施設を持っておりましたあと地にどんなものができるか、それが国民のために十分役立つようなものができてくれるかどうかということは、最大の関心事でございまして、大蔵省当局ともどもできる限りの注意を払って、御期待にそむかないようにしてまいりたいと存じます。そういう意味におきまして、前国会からも引き続きましていろいろこの問題についてお尋ねをいただきました。お尋ねをいただきましたことがそのまま速記録になって残るわけでございまして、そういう事実は、やはり今後この会社が計画を立てる場合にも十分参酌していくべきものだろうと思いますし、私どもとしても、そうなりますように力を尽くしてまいりたいと思うわけでございます。
  100. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでは伺いますが、先ほども伺いましたが、十分打ち合わせの上連携をとりながらやっておるというお話でございますから、大体のスケジュールを伺いたいわけです。ことしは四十五年十二月であります。この契約によりますと、四十八年ですから、四年間であります。そうしますと、いつごろまでに原案なりまた設計が仕上がり、いつごろまでに着工し、そしていつごろまでに完成するのか、現在の資本体系でいいのかどうか、相当の赤字があるようでありますけれども、こういう点についてはどういうふうに処置を講ずるのか、そういう点についても、大蔵省のほうからいろいろなアドバイスをしておると思います。そういった点も伺いたいと思います。
  101. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 現在のスケジュールといたしましては、先ほど申しましたように、この国会でもし法務省設置法が御承認いただきまして成立いたしますと、それを契機といたしまして、まず、黒羽刑務所へ小菅刑務所を移す。小菅刑務所のあきましたあとが新東京拘置所になりますので、そこへ巣鴨にございます現在の東京拘置所を移す。そういたしまして、明年の三月末までにこれをいわばあき家にいたしまして、会社へ引き渡します。そういたしますと、会社側としては、これを逐次取りこわし、そうしてさら地にする作業をされると思います。それでそういった作業と並行いたしまして、早急に何階のものをどういうふうに建てるか、基本設計をされて、四十八年の四月までに少なくとも地上三階程度までのものが上に乗っかるものを予期しながらでき上がる、こういうスケジュールになろうかと思います。現在都市開発センター会社としては、基本設計を急ぎますとともに、これに要します資金量をはじき、その資金をいかにして獲得するかということをいま検討しておりまして、間もなくめどがついてくるのではないかと考えておるわけでございます。
  102. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いまの質問でもう少し聞きたいのですが、要するに、現在の資本金あるいはまた現在の体制で可能だ、もう変更はない、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  103. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 現在同会社は倍額増資しまして資本金六十四億になっております。現在までのところ国のほうへ引き渡します建物等の関係で、工事費だけでも六、七十億はかかっておると思うわけでございまして、これからさらにもう数年間というものが資本をかけっぱなしになる時期でございまして、そういう意味で、現在収益というものはないわけでございます。しかしながら、ただいまお尋ねの点につきましては、大体現在の状況から変わってはいかないというふうに思っております。
  104. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに、私はいつもあの前を通っておるわけでありますが、きわめて新都市開発センターの動きが緩慢であるということを率直に感じております。本来ならば、当然、普通の株式会社、営利会社であるならば、積極的に設計変更やらまたは基本構想なりをどんどん立てて、そして検討している段階ではなかろうかと思います。それに比べまして、この新都市開発センターはきわめてその動きというものは鈍いように私は思います。それで現在のままいくとおっしゃいましたけれども、また四十八年四月一日までにはでき上がるだろうということを課長は言っておりますけれども、はっきり率直に申し上げまして、私は不可能だと思います。どういう考え方でおられるのか。いま聞いたようなスケジュールでは、それは聞かなくてもわかっていることであります。その間にあって、いつごろまでに基本設計を出させ、いつごろまでにはそれを決定し、いつごろまでに打ち合わせをするというくらいまではもうできていいんじゃないかと私は思っているわけです。  そこで伺いたいのですけれども、あの地にそれぞれ運輸省、建設省が——四十一年一二月二十四日にはバスターミナル事業の認可を運輸省ではおろしておりますが、現在の現況を知っておるかどうか、さらに計画変更を知っておるかどうか、また延期になった場合には、いまのまま認めていくのかどうか、そういった点を伺いたいと思うのです。さらに建設省についても、四十一年十二月二十七日付で東京都市計画街路事業及び東京都市計画自動車駐車場の免許ですか、このことについてもされているようではありますけれども、同じような形で答弁願いたいと思います。
  105. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 あるいはそれぞれの省の御担当の方からお答えするのがいいのかもしれませんが、現在私どもで承知しております限りにおきましては、御指摘の都市計画事業で認可されております高速道路のインターチェンジ、それから駐車場、それにもう一つの計画でございますバスターミナル、この三つにつきましては、上物がどういうふうになりましても、これは認可されました計画どおりつくっていただくということが私どもの払い下げにあたります条件でございますので、これはもう何としても履行していただかなければならぬ。またそのことは、先ほど申し上げましたように、四十八年の四月までには何とかやっていただくつもりでおるわけでございます。
  106. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 運輸省、建設省の人、来てないのですか。
  107. 三宅正夫

    ○三宅説明員 建設省からお答えいたします。  いま先生から御指摘の高速道路と、それからターミナルの問題でありますけれども、高速道路と駐車場につきましては、これは都市計画事業の特許といたしまして都市開発センターにやらしております。その後都市計画法が変わりまして、いままでは建設大臣権限でございましたけれども、新しい法律によりましてそういった権限が全部いま各知事にまかされております。したがいまして、先生御指摘の点、建設省としてはあまり深く立ち入っておらないわけでございまして、これ以上のことは申し上げられないわけでございます。
  108. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私が一言言いたいことは、このような非常に不安定な会社に、しかもどのような話があったか知らぬけれども、新都市開発センターができ上がって間もなく免許や許可を与えているという事実、これは国民の立場からすれば非常に不明朗であります。こういった点についても、やはり免許を与えた以上はすみやかにやれとか、こういう条件ならだめだということを本来ならば明確にすべきだろうと思うのです。きょうはそれぞれの担当局長なり担当者がおりませんので申し上げませんが、その点も大蔵省の方から十分連携をとって指示をしていただきたい、こう私は思います。  さらに伺いたいことは、今後三十六階なり六十階なりあるいは百階建てくらいの計画はあるようでありますが、たとえば百階以上の建物でも許可する考えがあるのかないのか、その点をまず伺っておきたいと思います。
  109. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 たいへん仮定の上に立っての御質問でございますので、お答えしにくいわけでございますが、結局は建築基準法に基づく認可系統の問題だと思いますが、最後どういう計画になりますか、その計画によりまして内容をよく専門家で吟味してもらいまして、また建築認可の当局でございます東京都、さらにはその監督をしておられます建設省等ともよく御相談をして、かりそめにも地元の御迷惑になったり、そういうことのないようなものを建てさせるように、私どものほうからも会社によく話してまいりたいと思います。
  110. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに私が伺いたいことは、三十六階でも六十階でも百階でも、高層建築である建物ができる限りは公害問題は同じだと思います。ですから問題は、いろいろその会社としては営利的な面または十分ペイするというような立場からものを考えているのでありますが、原案の中には百階ぐらいにして一つの日本の名所にしようというような考え方もあるわけであります。私は、いいとか悪いとかじゃなくて、そういったことが原案としてでき、またそういったことが可能な場合には当然そういったことについてやるべきだ、アドバイスするのかしないのかという点について一言だけ伺っておきたいわけです。
  111. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 監督とか指導とかそういうことではございませんけれども、重大な関心を持っておりますので、十分話し合ってまいりたいと思います。
  112. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 先ほど来から課長は、地域住民の声を十分に聞いて福祉問題等についてはよくやるという答弁でございますが、課長はそう言っておられますが、新都市開発センター自体はまだまだそこまで態度はいっていないわけです。現在ですら地元からの代表も入っておりませんし、さらにまたいろいろな問題についても、要望を受け付けてはいてもそれに対してどうするという返答もないのが現状です。その点については今後十分考えて善処をしていただきたい、こう思います。  そこで私は今回のこの問題については、前回小林法務大臣にも質問いたしましたように、国有財産というものは一応原則として公共企業体、あるいはまた公共性のあるものでなければ払い下げしない、こういう一つの原則があるわけでありますが、この場合は、一つは公共性のものを建てるということで株式会社に払い下げした土地であります。ですから、この点については前回指摘いたしましたから、それ以上は申し上げませんけれども、私はここのあと地利用で一番大事な問題は、今後こういう建物ができた場合に、地域住民に対する影響はどうなのか、また地域住民についてはどのようなものを還元していくのか、さらに超高層のビルができれば必ず日照権の問題であるとか災害の問題であるとか、あるいはまた電波障害の問題とかというような公害問題が大きくなることは間違いないわけであります。しかしながら、政府のこういった建物を建てた場合においても、その用途指定というのは五年間しかない。すなわち四十八年にもし完成したとしても五十三年までしか、その制限指定といいますか、こちらからの管理権といいますか、または調査権といいますか、監督権ですか、そういうものはないわけであります。私はこの点について、国民の立場から、住民の立場からいいまして、株式会社に用途制限のあとは一切まかしてしまうということについては大きな不安を持っているわけでありますから、その点についてどのような対策を講じ、また用途指定というものが五年間であるけれども、もう少し長期にその指定を持っておったほうがいいんじゃないかというように私は考えるわけですが、その点について大臣から答弁を伺いたいわけです。
  113. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのお話はごもっともなことと存じます。なお、地元の要望等も、直接お出しになるよりもやはり私どものほうを通じてお出しになることが有効じゃないかということで、そのこともひとつ申し上げておきます。私どもも考えまして、これはごもっともでありますというふうな注意もつけて出したい、こういうふうに思っております。  それから前の契約をしたことは、いろいろ議論はありますが、これはやむを得ない。私どもも、将来にわたって公共団体はこれからも刑務所あと地の払い下げが相当出てきますが、いまお話しのように、公共団体等に対してのみこういう取り計らいをしたい、こういうことを考えております。  また、五年以降のことについては、契約上あるいは法律上のあれはなくなるということでありましても、われわれ役所としましては道義的なものを見ていく、監視をしていく、こういうふうなことも考えなければなりませんので、いずれにいたしましても、お話しのようなことは十分ひとつ注意をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  114. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 最後にもう一言大臣お尋ねをしたいのですが、地域住民は、あの地域をなるべくたくさん開放してほしいという要望がいまございます。また、公共性を強くしてほしいということも要望しております。さらにまた、ただいま課長からもありましたように、福祉施設、こういったことについても強い要望があります。また、この計画運営についてはぜひとも地元の代表をだれか入れてほしいという要望もあります。さらに公害問題については、政府が責任をもって対処することを望んでおります。こういう点について、大臣の所見を伺いたいと思うのです。  そしてただいま大臣から、いろいろな問題があれば私に持ってきてほしいということでございますので、いずれ機会を改めまして、住民代表あるいはまた議会代表とともに大臣のところにそういった問題を持ってまいりますので、またそのときはよろしくお願いしたいと思います。
  115. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのことは、御期待に沿うようにいたしたい、かように存じます。
  116. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 以上で終わります。
  117. 天野公義

    天野委員長 山田太郎君。
  118. 山田太郎

    ○山田(太)委員 当法案につきましては、さきの国会並びにただいまも同僚議員からの質疑もありまして、相当論じ尽くされた法案でありますので、私は先日某刑務所拘置支所に参りました関係から、関連して、刑務所の問題について数点お伺いしておきたいと思います。  そこでまず第一番目に、要望あるいは質疑の点等は別にまた申し上げるといたしまして、刑務所の移転問題に関しまして、これは私見ではございますが、移転候補地として、たとえば住民に対する影響緩和とか、あるいはその他の利益を勘案して、過疎地帯に移転先を選定する、そういうふうな計画はおありかどうかという点について、まず大臣にお伺いしたいと思います。
  119. 小林武治

    小林国務大臣 刑務所の移転はこれからもたくさん考えておりますが、いずれもお話しのように過疎地帯に場所を選ぶというふうな考え方を持っておりますが、何ぶんにも一番困りますのは刑務所の従業員問題でありまして、学校問題、医療問題いろいろの点で従業員から非常に強い反対が出てくる。これもやむを得ないことでありまして、住宅を十分建てるとか、道路をつくるとか、あるいは学校等についても自治体の協力を求めるとか、そういう解決をしなければならぬいろいろな問題が多いのでありますが、しかしこれはいまの状態からすれば、お話しのようなことを根本的な方針として進めるべきである、かように考えております。
  120. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、刑務所あるいは拘置所の行刑施設というものが、本所が七十三、全国で約二百近い数でありますが、それぞれに対しての管轄あるいは設置基準、そういうものがあるかどうかという点について、これは大臣でなくても、局長でけっこうです。
  121. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 お尋ねの点でございますが、本所拘置所七、刑務所六十六、拘置支所が百四、刑務支所が十ございまして、合計百八十七庁設置されております。御承知だと思いますが、北は網走の刑務所から南は奄美大島の刑務所に至るまで、全国にあるわけであります。これにつきましては、明確な裁判管轄というようなものはないのでございます。  沿革的に申し上げますと、たとえば北海道のごときは、北海道開発という事業の一翼をにないまして、明治初年以来集治監といわれるような収容施設によりまして、網走、釧路その他の施設ができてまいった。内地のほうにおきましては、大体地方裁判所に対応いたしまして刑務所が——対応ということばはやや不正確でございますが、地方裁判所があるところに刑務所が置かれていく、あるいは拘置所が置かれていく。それから比較的犯罪数の多い、収容見込み人員の多いところに拘置支所あるいは刑務支所が置かれておったというような関係に相なっておるのでございます。
  122. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私の質問申し上げた趣旨は、その管轄あるいは設置の基準というものを検討する要があるのではないか、それに対する意向というものをお伺いしておるわけです。
  123. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 確かに御指摘のとおりでございまして、目下検討中でございます。
  124. 山田太郎

    ○山田(太)委員 ところで、先日訪問した拘置所の支所でございましたが、木造の非常に老朽な、言うならばもうこわれようというふうな中で、いわば社会から非常に隔絶された人々とともに看守の方々も苦労なさっていらっしゃいました。そういう老朽施設に対して、現在の状況、あるいはどことどこはどのような計画であるかという点−現地においても、早く建てかえてもらいたい、あるいは移転を考えてもらいたい、名前は申し上げませんが、そういう要望が非常にきつかったのですが、その点についての計画、そういうものをお伺いしておきたいと思います。
  125. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 ただいま申し上げました全国百八十七庁のうちで、おかげさまでほとんど改築あるいは移転を見ておるのでございますが、なお移転要請を受けております庁がおおむね約三十庁、それから改築を必要とするものが約二十庁余りでございまして、約五十庁が残っておるわけでございます。これらにつきましては、御質問のとおり鋭意改築、移転等につきまして努力いたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  126. 山田太郎

    ○山田(太)委員 鋭意努力したいという御答弁期待しているわけではない。計画はどのような計画になっているかということをお聞きしているのです。
  127. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 ただいまも矯正局長から申し上げましたように、五十くらいのものが建てかえを要するものがあるわけでございまして、その中には、ただいま御指摘のように率直にいって命数が尽きたというようなものもございます。そういうものを中心にとにかく直していきたい。ただ問題は、拘置支所一つこしらえますのに約一億円かかります。刑務所を一つこしらえますと最低十億円かかります。遺憾ながら法務省のこういう施設の改築に充て得る全予算は、従来大体二、三十億の規模で来ております。そこで、一般予算でやってまいりますととても時日を要するわけでございますので、先ほども他の委員の御質問の場合に出てまいりました、特定国有財産整備特別会計を用いまして、移転をしながら、従来の矯正施設のあと地を地方公共団体に渡しまして、それより不便なところになりますけれども、そこへ新しい施設を取得するということで、一般会計に影響を及ぼさない形でやっていくつもりでおるわけでございまして、御指摘のような、町名がわかりませんからあれでございますが、おそらく明年度あるいは明後年度くらいの計画に入っておるはずでございます。
  128. 山田太郎

    ○山田(太)委員 明年度あるいは明後年度に御指摘の拘置支所は入っておるかどうかわからない、あるいは入っておるかと思うということなんでございますが、具体的な計画というものがあるかどうか。あるいはもう一点具体的に申し上げれば、広島県の三原の拘置支所についてこの点はどのような計画になっているかということをお伺いしておきたい。
  129. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 ただいま具体的に三原という名前をお示しでございますが、三原については現在どういうところへどういうふうに改築したらいいかということを検討しております。たとえば四十六年度におきましては、明年度でございますが、佐渡の相川でございますとか名寄あるいは宇部、そういったところが、ただいま御指摘の三原よりなお緊急度が高いというふうに考えて、現在予算要求をいたしております。
  130. 山田太郎

    ○山田(太)委員 次にお伺いしておきたいことは、看守の方々の待遇の問題でございます。そこで、限定された時間がありますので、簡単にしかも明瞭に答えていただきたいわけでございますが、看守の方々の充足状況、それから現在の年齢構造、そういうものはどのようになっておりますか。
  131. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 お答えいたします。  看守と申しますか、全部の刑務所職員は、九日三十日現在で一万六千六百五十一人でございまして、このうち百八十八人が欠員と相なっております。それから年齢構造でございますが、四十歳以上が約五千七百名くらいでございまして、その価が四十歳未満でございます。
  132. 山田太郎

    ○山田(太)委員 充足状況もあわせてお答え願いたいと思います。
  133. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 もう一度申し上げますが、ただいま欠員が百八十八人と申し上げましたが、それN外が充足されておるわけでございます。
  134. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私の取り寄せた資料によりますと、四十歳から六十歳、それが五四%、半分以上になっております。それから三十歳代が千四百、十八歳以上三十歳以下が二千九百。この状況から見てみますと、一応看守にはなったけれども、途中でやめていく人が非常に多いのではないかという点が考えられるわけですが、その点はどうですか。それが一点と、それからもう一つは、年齢構造が非常に高い、こういう原因はどこにあるのかということを、ひとつあわせてお答え願いたい。
  135. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 まず、やめていく者が多いというお尋ねでございますが、ただいま手元に正確な数字を持っておりませんが、ほかの組織に比べましてやめていく者が多いことは事実のように考えます。そこで私どもは、鋭意、縁故採用という方式によりまして、若い者を補充することに目下努力いたしておる次第でございます。  なぜやめるのかということにつきましては、やはりそれだけにいろいろ給与その他の面で問題があるのだろうというふうに想像いたしております。
  136. 山田太郎

    ○山田(太)委員 給与その他の面でやめていく人が多いのではなかろうかと、これは想像しておりますということでございますが、その点について、現地の三原拘置支所に限ったことではございません、よその場所でもそうですが、現在人事院の勧告等によって多少優遇していこう、そういう趣旨が盛られていることは承知しております。しかし、それによってもまだまだやめていく人も多い。と同時に、四十五年度の採用についての応募者の状況を見ても、先々が非常に憂うる状態であるということが納得できるのではないかと思います。  というのは、応募の状況を見ましても、昭和四十二年が千五百八十九人、四十三年千三百四十一人、四十四年九百六十八人、四十五年八百五十九人と、ものすごい減りようであります。と同時に、合格した数をもってしても充足することができないという状況になっておる。この点に対しての考え方はどのような御見解を持っておるか、お伺いしておきたい。
  137. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 それはやはり、刑務所の勤務が夜勤というようなものを伴います、いささか前時代的な勤務でございまして、しかもそれは、やらざるを得ない勤務であるわけでございまして、その辺がいまの若い人に非常に魅力がないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  138. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、先ほど局長からの答弁にもありましたように、何といったって待遇の問題、先ほど申し上げましたように社会から隔絶されたところで働いていらっしゃるし、また扱う相手の人々は御承知のとおりです。また、将来の出世という点においても、見込みが非常に薄い状況になっている。こういう点をかね合わせて法務大臣にお伺いしたいと思いますが、現在まで努力されていることは承知はしております。現状も承知しております。しかし、わずか数百円の特殊勤務手当あるいはその他の手当などにしても、そのような優遇策ではまだまだいまの現状を打開することはできないと思いますが、法務大臣がことにこの看守の方々に対してのその状況等をよく把握して、その待遇改善に対してどのような御見解を持っていらっしゃるか、とくとお伺いしておきたいと思います。
  139. 小林武治

    小林国務大臣 これは、お話しのとおり、刑務所職員の、その勤務の状況あるいはその勤務の内容、こういうことはもう特殊な問題でありまして、いろいろの点において私も一般公務員とは別な考え方をすべきであろう、こういうふうに考えておりまして、毎年その向きのいろいろの要求をいたしております。今年度も出ておりますが、その内容は局長からお答えをいたしますが、根本的な方針として、一般公務員とは変わった考え方をもって対処しなければ、この人員を充足することはきわめて困難である、かように私も考えております。
  140. 山田太郎

    ○山田(太)委員 具体的な面ではどのようなお考えですか。
  141. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 御承知のように、現在予算折衝中の段階でございまして、まだ調整中の問題があるわけでございますが、先般の給与ベース改定のときにおきましては、刑務所職員その他矯正職員が、一般公務員に比較いたしまして相当有利なベースアップを受けたわけでございます。それから看守、看守部長という中に主任制というものが認められまして、合計約五百人、正確に申しますと四百九十八人新設設定があったのでございます。それから深夜の特殊勤務手当等の特殊手当の増設、それから現在は予算折衝中でございますが、被服費、旅計、研修費等を目下大蔵省にお願いいたしておるところでございます。それから勤務時間の点につきましても目下調整中でございます。
  142. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もうすでにこれは御承知のことでございましょうが、他の職種の人と比べてもわずか一二、三%の差があるだけです。そのために先ほど答弁ありましたように、応募する数も減ってくるし、それからどんどん高年齢層ばかりになってきているし、根本的な打開策というものを、ことに法務大臣に要望しておきたいと思います。
  143. 小林武治

    小林国務大臣 お話のようなことにつきましては、ひとつ十分考えてまいりたいと思っております。
  144. 山田太郎

    ○山田(太)委員 次に、民事局長にお伺いいたします。  これは十二月五日の朝日新聞の記事でございますが、時間の関係上読み上げるのはやめます、御存じのことと思いますから。帝国石油と成田空港と、鉱業権並びに土地所有権の問題について紛争が起きております。ことに鉱害も、あるいは公衆に与える公害という問題も、全国民的に非常にクローズアップされておるおりから、この問題についての民事局長の見解と、それから通産省、だれか見えておるはずですから、通産省の見解とあわせてお伺いしておいて、次の問題に移りたいと思います。
  145. 川島一郎

    ○川島説明員 鉱業権と土地所有権の関係につきましては、御指摘のような問題が起こる場合があるわけでございますが、現在の法制のたてまえから申しますと、鉱業登録というものが通商産業当局によって行なわれる、それから登記のほうは民法の規定に基づくところの登記制度によって行なわれておる、制度が二つに分かれておりまして、その関係で、あとでそういった御指摘のような問題が起こるということがあるのですが、どうも制度的にはこれはいたしかたないことではなかろうか、かように考えております。
  146. 礒西敏夫

    礒西説明員 先生の御指摘の問題につきましては、鉱業法上の観点から申しますと、他産業及び公共福祉との調整の問題があるんじゃなかろうかと思います。その点につきましては、鉱業法上におきましては三十五条におきまして他産業との調整及び公共の福祉との関連については、それを著しく阻害する場合においては出願を許可してはいけない、あるいは鉱業権がすでに設定されておる地域において、掘採が行なわれた場合、やはりそういうふうな他産業とか公共の福祉の問題にからみまして、著しくそういうものを損じた場合においては、その部分について取り消しをするとか、あるいは鉱区の減少をするとかいうことになっております。ただ、御趣旨は、事前にそういうことを一般に知らし得るような状況をつくっておくべきではないかというふうにも考えますので、そういう点につきましては、都道府県及び市町村あかりに、鉱業出願があった場合に、許可登録したらそれを通知して、一般に周知できるような状況にいたしたい、こういうふうに考えております。
  147. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、時間がもうあと五、六分しかないので、ひとつ簡単に答えていただきたい。  具体的な例を申し上げますが、先ほどの帝石あるいは成田空港のようなそのものずばりの問題ではありませんけれども、実は一例をあげますと、このようなことがあります。これは鉱業権者が土地を取得した人に対して通知を出した一わけです。その内容を申し上げます。「〇〇県〇〇郡〇〇町地内並に〇〇市〇〇〇地内蝋石出願許可受けて居る事業着手致す可く現地調べに行きし処」「貴社土地開発致し居り御承知と存じますが地上三尺は山林所有者の権利地下三尺下は小生の権利にて鉱区税長年支払って居り鉱物動かしては大変困りますので地下三尺以下は必らず動かさぬ様御注意申上げます。  三尺以下勝手に作業致した場合は損害を要請し其の上立札立入り禁止致します念の為御注意申上げます」。この地下三尺、地上三尺、この点は法的にはもちろん根拠はありません。あるいは本人が故意に間違ってやったのか、あるいは知らずしてやったのか、これは別として、この点は論ずる必要がないわけです。この論ずるところは、善意の第三者が、Bという人が鉱業権が設定されておるということを知らないでAからそれを購入してしまった、そして土地を造成をしておったところが——この土地造成はこれからとんとん件数が出てくる問題です。一例をあげておりますが、まだこのほかにも来ております。その人はこの書面に驚いて、そして工事を中止して県庁に行ってみてもわからぬ、それから登記所に行ってもわからぬ、尋ねて尋ねてやっと広島の通産局に行った、ところが鉱業権は設定してある。この通知状の文面云々はさておいて、土地造成するためにそこから出てきたろう石を、これは鉱業権者に所有権があるわけですから、この土地の所有主はかってにそれを動かすことができない、処分もできない、使うこともできない。そのために非常に迷惑をしているわけです。そこで、このようなことがあるならば、この土地を買うのじゃなかった。こういうことは先ほど申し上げたようにまだまだほかにもあります。もう一つ具体的な例を申し上げましょうか。これはまた別の人です。出てきた鉱物を動かしてはならぬ、そうしていじめられている人——いじめるということばが適当かどうかは別といたしまして、そういうふうな善意の第三者を守るための措置というものは——何も土地所有権者のみに味方して言うわけじゃありませんが、善意の第三者に対しての保護措置というものがあってしかるべきじゃないか。民事局としてはどのような措置が講じられるか、あるいはどのようなことが考えられるか、その点を民事局からお伺いしておきたいと思います。
  148. 川島一郎

    ○川島説明員 土地と鉱業権の問題につきましては非常に問題でございまして、たしか以前鉱業法の改正審議会が設けられたときにも、そういった御指摘のような問題がいろいろ議論されまして、何か規定を置いたらどうかという話が出たように記憶しておりますが、非常にむずかしい議論を含んでおりますので、結局そういう規定が設けられなかったというような経緯もございます。いま御指摘の鉱業法に対しましては、私当面考えておりますところでは、現在鉱業原簿による鉱業権の公示制度、これをなるべく利用しやすい、閲覧しやすい体制に持っていく、現在どの程度一般の人に利用されておるかということは承知いたしませんけれども、これをなるべく公示に親しむような形に運用するということが一つだろうと思います。  それからあとは事後の解決策でございますが、鉱業権が設定されていたために、買った土地が本来の用途に使えない、こういう場合に民法の上ではその買った契約が錯誤によって無効となる、こういう場合が考えられるのではないか、さしあたってその程度のことしかちょっと思い浮かびません。
  149. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もう一度言ってください。何が無効になるのですか。
  150. 川島一郎

    ○川島説明員 土地の売買契約でございます。土地を買った契約が、その土地はこういうものとして使いたいというはっきりした目的がありまして買ったところが、その土地に鉱業権が設定されていたために、自分考えていた用途に使えない、こういう場合にはその売買契約が錯誤によって無効だ、こういう理論が一つ考えられるのではないか、かように思います。
  151. 山田太郎

    ○山田(太)委員 それは民事局長、その理論は考えられるかもわからぬが、実態には即していません。そこでいまの御答弁の途中にありましたけれども、原簿を閲覧しやすい形に持っていきたい、これはどのような形で持っていきたいのか、各登記所に、その地域的なものはその登記所に原簿の写しを整備させることができるかどうか、いま通産省は関係市町村に、その区域に関係する鉱業権の原簿は通達します、先に聞いておきます。いつからやりますか。
  152. 礒西敏夫

    礒西説明員 可及的すみやかにやります。
  153. 山田太郎

    ○山田(太)委員 可及的ということばは何とでもとれる。二年でも可及的だし、一年でも可及的だし、半年でも可及的だし、一カ月でも可及的だ。どういう限度の、どういう程度の可及的ですか。
  154. 礒西敏夫

    礒西説明員 各都道府県には従来から通知しておりますけれども、市町村のほうの問題につきましては、これから許可、登録した問題についてはすぐにでも実施し得る段階にありますので、早急にその旨を流したい、措置をとりたい、こういうふうに考えております。
  155. 山田太郎

    ○山田(太)委員 時間が来ましたのでもう終わりますが、いまの民事局長の最後の答弁を、私の質問に対しての具体的な答弁をあわせてお願いして質問を終わります。
  156. 川島一郎

    ○川島説明員 先ほどの登記所の問題でございますか——登記所に鉱業原簿の写しを備えるということは、現状ではちょっと無理であろうか、かように考えております。
  157. 山田太郎

    ○山田(太)委員 時間がまいりましたので、また別の機会を得て質問は行ないたいと思いますから、この点は保留しておきます。  以上で終わります。
  158. 天野公義

    天野委員長 受田新吉君。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 法務省設置法の一部改正法案に直接つながる問題として、各委員からお尋ねのあった刑務所に関係する問題で三百お尋ねをいたします。  監獄法という法律は名称が適当でないということで、先国会以来、また私も長期にわたってこの名称の変更を求めてきたのでございますが、まだ依然としてこれが残っておる。そしてその中に拘置所、刑務所、こういうものが現に重要な地域に置かれてあるわけでございますが、死刑の刑の確定をみた者を置く監獄はどことどこになっておるかお答え願いたい。
  160. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 まことにおそれ入りますが、死刑をどこに入れておるかという問題は、施設といたしましては非常に警備上重大な問題でございますので、できればひとつ答弁をお許しいただきたいのでございます。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 ここにあなたのほうから出された法律案参考資料に、「東京拘置所の現施設及び収容者収容状況」が書いてある。そしてその次に「東京拘置所の収容者収容状況」の中に昭和四十五年九月三十日現在で「内死刑確定者二七名」を収容していると書いてある。この辺はあなたのお話とは違って、一部はここに明確に資料としていただいておる、その理由をはっきりしていただきたい。
  162. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 まことに申しわけないのでございますが、東京拘置所の問題を御審議いただきますのに、東京拘置所在監者の内訳を出さないのもいかがと思うわけでございます。私がいま申し上げておりますのは全国的な問題でございます。これはいずれ何らかの形で自然とわかるとは思いますけれども、いまここでどこそことどこそこに何人というような問題はひとつごかんべんいただければ幸いかと思うのでございます。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 これは別に隠す必要はないと思います。私も再審請求した結果、非常に残念な結論が出たような死刑囚を私はしばしば見舞ってやって、その死刑囚がいまより天国に参りますという悲壮なたよりを私にくれたままで刑の執行を受けた青年も最近おるわけです。そういう不幸にして生命を断たれることになった人々のことを思うと、やはり死刑の確定者といえども、生命の存する限り人権をその立場で尊重してやらなければならない、こういう意味から、どこに死刑の確定者が収容されているかくらいのことは、人数ははっきりしなくても——それは死刑の確定者はどこへ置くかわからぬという状態なら別です。しかし設備の問題などがあって、死刑執行の設備がないところに置くわけにいかぬ。きょうの法案の審査に直接関係がある東京拘置所だけは確定者を取り上げた。ところがいままで毎度この審査の対象になってきた大阪、広島というようなものもこのたびは出ないが、この法案の審査のつど出てきた問題でございますが、このたびのように、いかにも明確に死刑確定者を出していただいたのは、これは私非常に親切であると思っているわけです。拘置所、刑務所で、死刑執行の場所のあるのは拘置所だけですか。刑務所にもありますか。
  164. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 刑務所にもございます。しかしその名前はごかんべんいただきたいと思います。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、どこの刑務所で死刑が執行されるかもわからぬような形ですね。大体全国の刑務所と名のつく場所では死刑執行場所があると考えてよろしいかどうか。
  166. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 全国的にはございません。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 全国的にはない。そこで死刑の確定者といえども人間としては人権を尊重してあげるという立場が私は必要と思うのです。その意味において、途中で精神的な安定も与えてあげるとかいろいろな努力をされていると思います。刑の執行者は、一般の受刑者が社会復帰の際に愛情をもって迎えられるようにするとか、こういう心づかいが私は大事だと思うのですが、法務大臣、あなたの前前前任者でいらっしゃる田中法務大臣は、私が死刑の確定者について、死刑の執行に当たって残虐なる刑の執行を遠慮してほしい、絞首刑という刑の執行方法は首つりをして谷底へ落とすようなかっこうで人を殺すわけだから、安楽に死ねるような方法を考えてはどうか。私自身は死刑廃止論者です。私は死刑というものは廃止すべきだという主張をしているが、現にある法律の場合として、やむを得ず現行の制度を前提とした場合に、絞首刑という刑は非常に残酷な執行方法だと思います。これは矯正局長に先にお聞きしたいのです。あなたが死刑執行を担当される局長さんですか。
  168. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 刑務所、拘置所等の仕事の管理をいたしておりますので、死刑執行自体をやっておるわけではございませんが、その仕事を法務省において担当いたしております。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 羽山局長さんが業務上、死刑執行の執行官等の管理監督もされるわけですね。そうしますと、あなたに先にお聞きして、小林先生に結論を出していただきましょう。  日本の明治憲法以後、刑の執行方法は絞首刑一本でございますか、そのほかに方法がございましたか、初めのころ。
  170. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 明治憲法以後はたしか現行刑法のままでございまして、絞首刑でまいったと思います。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 三島先生の場合は別として、徳川時代の打ち首ということやら、火あぶりとか、いろいろ残虐な刑があったわけでございますが、絞首刑という刑の執行は一体どういう形をとって殺すわけでございますか。ちょっと方法を技術的にひとつ教えていただきたい。
  172. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 外国の例と日本の例といろいろございまして、首になわをかけまして上に引き上げるやり方と、それからただいまお話しのように、下に床を落として落とすという二通りあると思います。日本ではその下へ落とすという方法をとっておるわけであります。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、首へなわをかけて座板を下に落とす、つり下げるというのです。これは死の瞬間、自分はなわをかけられて下へぶら下げられるのだということを予想しながら死刑囚は階段を上がる。これは階段を上がるようになっているのですか。
  174. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 階段を上がるようになっておるところもございますし、そうでないところもございます。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 いずれにしてもそれで首をつられてぶら下がるわけですね。これはあまりにも原始的で残酷です。電気によって、電気スイッチをひねることによって安楽死とはいかぬでしょうか。ショックを与えて死亡せしめる方法があるというのは、田中さんが研究したい、死刑執行方法については、自分としても残虐刑から漸次安楽死へ導かれる方法を研究してみたいと言われたことがあるわけなんです。この委員会でそう言われたのですが、そういう死刑執行方法について、残虐方式から漸次そういう方法を研究しておられるのかどうか、矯正局長
  176. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 実は私も前の田中大臣のお供をいたしまして、ここで大臣がガスを使用したらどうかと思うというような御答弁になったことを記憶いたしております。死刑の存廃の問題はただいま法制審議会がやっております刑法改正の最も大きな問題の一つでございまして、ここ数年来論議を重ねておりますが、いずれの方法につきましても相当立ち入った研究等が行なわれておるのでございます。そこの意見を総合いたしますと、ガスなどが場合によりましてかえって残酷なと申しますのは、やりそこなった場合にかえって非常な苦痛を与える。それに比べまして一わが国の絞首の方法は決して残虐というものには当たらないというような結論になったようでございます。
  177. 受田新吉

    ○受田委員 電気ショックを与えるという方法はどうですか、ガスは別として。
  178. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 電気につきましてもかえってやりそこなうことがあるそうでございまして、電気が必ずしも最も適当だという意見に一致しなかったようでございます。
  179. 受田新吉

    ○受田委員 首を締めてつれば、これは確実にとどめが刺せるわけなんです。けれども、ぶら下がっていくというのは、私から見ると残酷です。せめて安楽いすのようないすにすわってそれに強烈な電気を通じて、それで失敗するということはありますか。どうも私はわからぬのですが、電気ショックというものはそんなに残酷ですか。——そういう方法もいろいろ研究しておられる。非常に残酷だというお話もありますが、私自身は死刑執行の方法を形の上でももっと残酷でない形をとられる方法を真剣に研究してもらいたい。田中さんはここでそれを何とかしてやりたいという言明があった。その結論を聞きたかったのですが、いま承れば、審議会は殺し方まで研究するのですか、そういうことになっているのですか。そういうことを研究しておられるようですけれども、私自身、人間の生命の最後まで人間らしい措置をとるべきであるということを提案したわけです。  小林先生はお考えの上では死刑というものは廃止したほうがいいというお考えではないかと思うのでございますが、そうではありませんか。死刑は厳存すべきだという大臣のお気持ちか、死刑は廃止する方向へ持っていったほうがいいとお考えか。ちょっと私は大臣の信念を伺っておきたいと思います。個人の見解でけっこうです。
  180. 小林武治

    小林国務大臣 私は、将来遠い先は別としまして、これを廃止するということは私の考えるところでは時期が少し早い。しかしそれに当たる罪についてはできるだけ厳選したい、こういうふうな考え方を持っております。
  181. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、死刑該当者はできるだけ少なくしたいという方法を過渡的にとりたいというお考えですね。最終的には死刑というものはやはり存置しなければならぬという御意見と了解してよろしゅうございますね。
  182. 小林武治

    小林国務大臣 時期尚早ということはそういうふうにおとりになることもあろう。将来のことは別として、いまの状態ではまだ早い、こういうことを考えております。
  183. 受田新吉

    ○受田委員 私、法務当局が非常に苦心して刑務所の扱いなどにも努力しておられることはよくわかるのですが、さっきからのお尋ねの中に出たように、刑務所の設備等で逃亡などができないような措置をするとか、管理監督を厳重にして執行中は日常生活をまじめに執行に服し、まじめに執行に服した者は、今度は途中で仮出獄その他保釈等の諸方法をとって、できるだけ社会復帰に貢献できるような形をとるというような、あらゆる努力をされることを私願ってやまないわけです。この点、従来法務当局において刑務所の脱獄者が相次いで出ておることに対する態度などについても、ちょっと私なまぬるい点があるように思うし、また刑務所の内部の勤務状況が、お年寄りが多いというせいもあろうと思うけれども、どこか抜けているところがある。こういうようなところは国民生活の上に非常に重大な問題でありますので、きちっとやってもらいたいと思う。御注意をしておくと同時に、そこで、刑の執行を受けている人たちが社会復帰をするのに最善の努力をするのを一方でやっておいてもらわなければならぬのです。受刑者というものが社会に出て後も人から指をさされるような形でないように、刑の執行が終わったらりっぱな社会人として再起していただかなければならぬわけでございますので、この点を十分留意していただきたいことを御注文申しておきます。  法につながる直接の問題をそれでおきまして、次に入国管理に関する問題に触れてみたいと思います。  現在、法務省は非常に愛情のこもった心づかいとして、一応その数においてはきわめて限定されておりますけれども、国交の回復していない北鮮に、日本におる朝鮮民主主義人民共和国の皆さんの中で、墓参に帰りたい、親が病気でお見舞いに帰りたいという人に対して、ごく少数の帰国を認めておるようです。それも年が明けて認めておるようでございますが、いまそういう人道的意味の墓参あるいは親見舞い等の意味の帰国希望者がどれだけ出ておるか、それに対して政府はいまどれだけ帰す配慮をしようとしておるか、その数字をお示し願いたいのでございます。しかもそれが従来年が明けてから、正月を過ぎて御許可になっているようでございますが、お正月の間に帰してあげるという意味で、年内に帰国手続をしてあげるということも、これまた同じ許可をされる以上は、正月を向こうで迎えさせるという愛情を示していただくほうが私は行政府としてはりっぱな手だてだと思います。この点を吉田局長さんからでもけっこうですから、ひとつ御答弁願いたい。
  184. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 北鮮と日本との関係が現在非常に不幸な状態にありますために、一般的には御要望に沿えないのでございますが、人導上のケースということで昨年は六名、われわれはことしも前向きにこれを早急に検討したいということで努力中でございます。
  185. 受田新吉

    ○受田委員 いま申請の数はどのくらい出ておるのですか。
  186. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 実はこの申請手続というのが非常に複雑になっておりますので、どこまで申請の数として押えるかはちょっと問題なんでございますが、現在私のほうにいろいろな組織、個人で申請の出ておるのは、非常に熱心な方は約百名でございます。
  187. 受田新吉

    ○受田委員 そしてもう一つ、御許可になるとすれば、いま私が最後に申し上げた年内に帰してあげるということが、お正月を向こうで迎える意味で愛情行政としては非常に適切だと私は思うのでございますが、その点ことしはできるだけ早くその前向きの御検討を、そういう意味を含めておやりいただくのかどうかをお答え願いたいのです。
  188. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 できるだけ早くやりたいという意味で前向きにと申し上げたわけでございます。ただ本件には国際問題その他のいろいろ微妙な影響もございますので、こっちが一週間なら一週間とかなんとかいうふうにはうまくいかない面もあることを御了解いただきたいと思います。
  189. 受田新吉

    ○受田委員 私、これは、人道問題と一般の政治外交とは別途に考えていくという大事な問題の一つだと思っておるのですが、もう一つ、これに関連する問題でいつもこの委員会でも問題になっている在日朝鮮人の皆さんの帰国問題、すでにあの待機しておった人々の帰国協定も切れたままで、帰国事業というものが中断をされて三年にもなるわけでございます。私も長くこれに関与しておりましてどうも釈然とせぬのでございますけれども、荷づくりをしたり生業を打ち捨てたりして待機しておる人たちもたくさんあるわけです。またこの寒空に正月をそれぞれ迎えなければならぬという気の毒な人がたくさん待機しておる。こういう皆さんのその切実な要求を何とかかなえてあげるということは、国交とか政治問題というものとは別個に、高度の人道行政として大事なことだと思っておるのです。赤十字同士の話し合いということで従来話が進められておったのですが、この話し合いを再開するような用意があるかどうか。これは当然法務大臣も関与されている大事な問題でございますだけに、法務大臣もきっと真剣に取っ組んでおられると思うのでございますが、帰国問題について、何らか赤十字を通じての話し合いに積極的に協力するという御用意があるのかないのか、この点も明確に御答弁を願っておきたい。
  190. 小林武治

    小林国務大臣 私ども従来、御承知のように日赤にそのことにあたっていただいておる、こういうことでありまして、最近、何か日赤の方がモスクワに行かれる、出国問題ですか、そういうふうな要望がいま出ておりますから、私ども、非公式にそういう折衝を始めるということでそういうことが出ておるんだ、かように考えます。したがって、私の見通しではある程度非常に有望と申しますか、見通しがよろしいような結果に進むんではないかというふうに考えておりますし、政府もそれに対して協力をいたしたい、こういうふうに思っております。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 法務大臣としても政府責任者として協力したい、出国について配慮しておる、こういう解釈をしてよろしゅうございますか。
  192. 小林武治

    小林国務大臣 さようでございます。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 これは一般的な政治問題ではないわけで、高度の人道問題だという解釈に立ってこの話し合いを積極的に応援してあげてもらいたい。私からも特に要請をしておきます。  おしまいにもう一つ。これはちょっと数字をお示しになるのにお困りかと思っておるのですけれども、わかった数字だけでけっこうですが、出国とは逆に今度はわが国に密入国してきておるのがどのくらいあるのか。密入国者の最近における傾向は、私いろいろな新聞報道で幾つかの事例をいま用意しておりますが、その用意している事例を示さなくとも、法務省で、密入国者が上陸する地点はどの辺であるか、過去においてある地点を拠点にしてどのくらいの数が密入国しているか。その密入国者の国籍はどういうかっこうになっているか。できれば密入国の目的は何であるか。たとえば密輸入をする目的とかあるいはスパイをやる目的とか、あるいは親兄弟にほんとうに会いたい気持ちで来ておるというふうなある程度の比率がわかればなお幸いだと思います。一番最後に申し上げたものについてはあまり無理なことは申し上げませんが、最初の辺をおわかりいただけるところでけっこうです。
  194. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 わが国に対する密入国に関しましては、これを防止するため私たちは鋭意努力しておりますが、つかまらないいわゆるほんとうの密入国の数は当然わからないわけでございまして、検挙いたしました不法入国者の数をもとにしてお答え申し上げますと、昭和二十四年には六千百二十七名の密入国者で、朝鮮籍が六千十名、中国人が百十七名、その他はございません。その後昭和三十年から昭和四十年ぐらいまでには、毎年ずっと千五、六百名から二千名の問の密入国者を検挙いたしております。九〇%以上が朝鮮人でございます。昭和四十一年から以降約半減しております。昨年の数字が六百八十五名でございます。そのうち朝鮮人が六百七十一名、中国人が二名、その他十二名という数字になっております。  これらの人の入ってくるところは、従来は西日本の山陰地方、それから北日本のほうに移りまして、最近の傾向を見ますと日本全国的に、特に東日本のほうに、かえって都会地帯のほうに船にまぎれ込んで入ってくるという傾向が非常に顕著になっております。また同時に、集団密入国あるいは従来小型船で入ってきたものが大型船の中にまぎれ込んでくるとか、いろんな手口を先方も研究をしておるようでございます。  従来検挙いたしました密入国の動機は、おっしゃいましたように北鮮のほうから来るスパイ、その他中国系のもの、しかし大部分のものは出かせぎ、生活苦あるいは親族、親兄弟に会いたい、あるいは旅行を目的として実は密入国で入った。いろんな動機がございますが、ちなみに最近大村収容所で今度送還する人たち二十名につきまして、その不法入国をした動機を調べましたところ、出かせぎが十名、在日親族と同居したいという目的が六名、生活苦が二名、旅行が二名という数字が一応出ております。大体この数字が現在の密入国者の姿をあらわしているのではないかと考えております。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 私、局長のいまの御答弁考えさせられる問題があるのですが、漸次密入国は減ってきた。しかし、それが東日本のほうへ漸次移行しておる、大型の船に乗ってくるというような新型の傾向があらわれてくるというお話でございます。これは何を意味するか。おおむねまた政治的なにおいが多少せぬこともないのです。  しかし、その扱いについて私はちょっといまお話を承って注文があるわけです。たとえば日本におる肉親と共同の生活をしたいというやむにやまれぬ親子の、人間の自然の情に基づいた密入国というようなものは、もう日本にやむを得ず来たというようなものに対しては、あまりに法一本で遮断するのじゃなくて、人間的な判断を背後に必ず考えて、局長はその点人道主義者でいらっしゃるだけに、私は大臣と十分御相談してそういう英断をふるっていただく道を考えておられると思うのでございまするが、私自身は、かつて日本人として大東亜戦争に協力して日本におった韓国人あるいは朝鮮人、北鮮の皆さん、こういうものが日本にそのまま住みたいといえば、日本人であるのですから、当然日本人としてそのまま住ますべきだ。それを、日本人になった韓国人や北鮮人さえも強制的に外国人というような扱いをなぜやらしたかという戦後の扱いに非常に大きな問題があると思うのです。これはどうお考えですか。この問題は根本的に大きな問題がある。
  196. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 先生のおっしゃいます人道的に取り扱わなければならないということは、私たちも常日ごろ心がけて鋭意努力しております。また、先ほどほかの委員から御質問のありました特別在留許可などに際しましては、そういった特殊な事情にある人などに対しては非常に寛大に見るように努力しております。ただ、日本人と外国人というものが、法律的には非常にむずかしい関係にありますので、すべての方をいま御指摘のような日本人と同様にして、いま直ちに日本のほうに受け入れるように、ということまでは一足飛びにはいきにくいというふうに考える次第でございます。
  197. 受田新吉

    ○受田委員 おしまいですが、最後のことで、つまり日本の戦後の扱いが、無理やりに日本人である韓国人、長く日本に居住したい、日本人としていつまでもおりたかったものを向こうへ追い返したということについての反省はないかという問題はどうですか。ちっとも反省はないですか。その問題が一つある。
  198. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 私は先生と個人的には考えを同じゅうするものでございます。ただ、現実には、日本は敗戦国となった結果、いろんな複雑な様相を呈したということも御理解いただけるかと思います。
  199. 受田新吉

    ○受田委員 それでは大体わかりました。その意味質問を終わります。
  200. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  201. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採択いたします。  法務省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  202. 天野公義

    天野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  204. 天野公義

    天野委員長 次回は、明九日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十七分散会