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1970-12-07 第64回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月七日(月曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       伊藤宗一郎君   稻村佐四郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       辻  寛一君    葉梨 信行君       堀田 政孝君    山口 敏夫君       上原 康助君    木原  実君       佐藤 観樹君    横路 孝弘君       鬼木 勝利君    山田 太郎君       受田 新吉君    東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         建 設 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 黎一君         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長心得    大河原良雄君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         文化庁次長   安達 健二君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省河川局長 川崎 精一君         建設省住宅局長 多治見高雄君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   渡辺 哲利君         外務省情報文化         局文化事業部長 兼松  武君         厚生省援護局長 武藤琦一郎君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     宮地 直邦君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月四日  辞任         補欠選任   上原 康助君     加藤 清二君 同日  辞任         補欠選任   加藤 清二君     上原 康助君 同月七日  辞任         補欠選任   阿部 文男君    稻村佐四郎君 同日  辞任         補欠選任   稻村佐四郎君    阿部 文男君     ――――――――――――― 十二月三日  一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出第六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務  員の給与に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第四号)  建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五号)      ――――◇―――――
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 この法案につきましては、前回の国会の委員会でも審議をいたしたところでございます。この機会に私は、外務行政の二、三の問題についてお伺いをいたしたいと思うわけでありますが、特に沖繩毒ガス撤去の問題に関連いたしまして、大臣承知のように、先日アメリカ当局発表がございました。実は私もあの発表を見ましてがく然としたわけでありますが、従来私どもが聞き及んでおるところによりますと、おそくとも年内にあるいは来春までに撤去を完了したい、このような計画だ、こういうことでありますけれども、御承知のような発表がございまして、私はやはり現在のいろいろな現地状況その他を考え合わせますとたいへんなことではないかと思うのです。一体、いままで政府はこの毒ガス撤去の問題についてどのような交渉をされてきたのか、その辺のことについてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 毒ガス撤去の問題につきましては、この問題が表面化しまして以来、政府といたしましては、その当時から非常な努力を払いまして、沖繩県民心配、これは当然日本国民全体の心配でもございますから、そのすみやかな撤去方についてアメリカ側折衝につとめてまいったわけでございます。これはその間、あるいは東京において、あるいはワシントンにおきましても、私自身も国務長官等接触機会がございましたので、そのつど直接に折衝をし、あるいはまた防衛庁長官渡米機会にも、国防長官その他に対しましても、同じ趣旨によりまして鋭意折衝を続けてまいりました。御案内のように、私の理解するところまた接触いたしました直接の体験を通じて申し上げ得ることは、米政府当局としては、当初からこの件につきまして日本側の要請にこたえまして、なるべくすみやかに移送することについては積極的な姿勢を示しておったわけでございますが、その後ジョンストン島と米政府態度が大体きまりまして後におきましても、米国の議会その他においてこれに対していろいろの論議が起こったというようなことで、これを説得をする、あるいはその了解をとるということのために思わざる時間が経過をいたしておることは事実でございます。しかし、結局のところ移送決定をし、かつそのプログラムあるいは安全輸送等についても万全の措置をとるということの言明をもって日本政府に通報がございました。移送決定したことにつきましては、政府としても、かねての折衝の結果がようやくここに出てまいりましたから、その点については歓迎をいたしておるわけでございますが、なお今後の順序等につきましては、予想しましたよりも相当の時間がかかるようでございますから、それらの点については、なお一そう当方の国民感情あるいは心配等も踏まえまして、できるだけこれを促進するように今後とも努力を続けたい、かように存じているような次第でございます。
  5. 木原実

    木原委員 大臣のおことばですけれども、これまで私ども聞き及んでおりますところによりますと、防衛庁長官渡米をしたときの談話でもそうでありますけれども、いずれにしましても、年内ないし来春までと比較的期限が明らかにされていたと思うのです。ところが、今度のようなことになりますと、アメリカ国内事情その他についてもいろいろ報道されておりますけれども、何よりも約一年に余って移送期限というものが延長された、こういうことになりますと、アメリカ国内事情についてはそれなり理解できるとしましても、はなはだしくどうもアメリカ当局に対して不信感というものがぬぐいがたいと思う。現地屋良主席も、事実上のこれは延期声明だ、こういう受けとめ方をしておるわけです。そういうことになりますと、大臣のおことばですけれども、私どもとしては、一体日本外務省として、日本政府として、この問題についてどれだけ詰めた話をしていたのか、これまた疑わざるを得ないわけです。そういう不信感がある以上、何とかやはりこの措置をしなければ、これはともかくいままで待ってきたのだから、あと一年くらいは、こういうかりにも姿勢があるとすれば、これは重大なことになるのではないか、こういう感じがするわけであります。したがって、これから先もいろいろと協議をする、こういうふうにおっしゃるわけですけれども、この問題について、それではアメリカ当局に対してあらためて交渉する、こういうかまえでございますか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御心配や御意見は私もまことにごもっともだと存じますから、なお一そう撤去の促進ということについては、ただいま申しましたように政府としても努力をいたすつもりでございます。御案内のように、この毒ガス撤去作業、解体あるいはあるいは輸送については、特に安全ということも考えなければなりませんし、多少の時間や用意というものは、いよいよ決定をした以上、さらに十全の準備安全措置を考えなければなりますまいから、多少の実行の期間がかかることはあるいはやむを得ないかとも思います。それから幸いにして、沖繩返還のときまでにはきれいにするということが一つアメリカ側考え方の基礎にあるようでございますから、これを踏まえまして、さらに一そうできるだけ早くかつきわめて安全に撤去されるように、今後とも折衝努力を続けたいと思います。
  7. 木原実

    木原委員 大臣、安全にとおっしゃいますけれども、いままでアメリカ現地軍当局などが明らかにしたところによりましても、移送についての安全ということについてはそれなり配慮がある、こう言っておるわけですけれども、しかしながら、肝心の住民対策その他については、たとえばいつどういうルートを通って運ぶのか、こういうことについては何ら示されていない。したがって琉球政府としても、住民に対してどのような安全措置を講じたらいいのかまだわからない、こういうような側面があるわけであります。これは後ほど上原君のほうから、あるいは関連して御質問になるかと思いますけれども、実はそういう状態がある。私ども心配をするのは、そのことも関連しますけれども報道によりますと、ジョンストン島への移送についても、なおハワイその他で強い反対があるやに聞いております。それからまた、今度示された方針なるものが、計画なるものが、はたして最終的なものかどうか、こういうことについても、なおアメリカ議会筋に問題が残っているようにも聞いているわけであります。したがって、大臣は、返還までにはきれいにする、こういう言明でございますけれども、そうかといって、あと二年近くも、いままで待ってきたのだから、さらにもう少し待ってみよう、こういう姿勢では私はやはり困ると思うのです。  そういうことと関連をいたしまして一つ伺っておきたいのですけれども、かりに、アメリカの説明によりますと、百五十トンばかり近く移送開始をする。これに対する安全輸送についての何か具体的な、日本政府なら日本政府が積極的にそれに関与をして安全を確保する、こういうことについては詰めた話し合いができるわけでございますか。向こうに完全にまかし切りで、あるいはその日になって、こういうことでやるからどうだ、こういう形で措置をまかせるのか、もう少し積極的に安全輸送についても日本政府側としては協力をしするような、そういう道を講ずるのか、その辺はどうですか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これから第一回と申しますか、撤去輸送が始まる状況等については、アメリカ側としても十分日本側連絡用意があるというふうに理解をいたしております。それから一部には、日本側がこれに対して積極的に参与云々というような御意見もあるようでございますけれども、これはアメリカ側が全責任をもって安全に撤去をするということが確約されておるわけでございますから、それに第一義的に信頼を置いてやってまいれば十分じゃなかろうか、かように存じておる次第でございます。
  9. 木原実

    木原委員 その辺にわれわれはまだ大いに不安が残るわけですが、その前に、なおアメリカ側からの報道によりますと、たとえばジョンストン島への移送についても反対が強い。そういうことになりますと、たとえば残余の分について、ある部分については、沖繩なりあるいはその周辺地区でいわゆる毒ガス破壊工作をやったらどうだ、こういう意見アメリカ議会筋なんかにもあるように聞いているわけですけれども、もしかりにこの移送を中止をして、現地周辺で何か毒ガス破壊作業をやる、こういうような問題が生じたときには、そういうことは日本政府としてはとらない、そういう方針でよろしゅうございますか。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういう方針でいままでも交渉いたしておりましたのでありますから、そういうことにならなければならないという態度政府としては貫いてまいるつもりでございます。従来も、先ほど申しましたようにいろいろの経緯がございますが、アメリカ側にもいろいろの動きがありましたことは報道もされているとおりでありますが、終局的にジョンストン島ということに決定し、かつアメリカ政府議会側に対しましても十分いろいろと折衝もしたようでございますから、一たびジョンストン島に移送決定して、そうしてそれを日本政府連絡をしてまいりましたからには、アメリカ政府もさような方針をきめたことは事実でございますけれども、さらに、ただいま御心配あるいは御意見のような点は、重大な点でございますから、政府といたしましても、まずそれが貫徹される、そうしてそれがすみやかに実行されるということについて、この上とも十二分の配慮をしてまいりたい、かように存じます。
  11. 木原実

    木原委員 従来のことから推して、われわれの不安が尽きないわけでありますけれども、やはり一つには、ともかく百五十トンの輸送が近く行なわれる、ここから始まるわけでありますけれども、しかし、御案内のように、なおこれはまことに限られた量でございまして、かなり膨大なものがまだ残されておる。それらの計画については、ジョンストン島で収容の施設ができるのと相まって移送を行なうのだ、こういうふうにも伝えられているわけであります。しかしながら、はたしてそういうことになるのかどうなのかということについても、私どもは実は不安が残るわけであります。そこで、ジョンストン島への移送についてのあと計画については、これから何かやはり詰めた話し合いをする、たとえば安全輸送とも関連をして、百五十トンの積み出しないしはそれの残余の処理の方法等については、これから逐次やはりアメリカ当局交渉をしていく、折衝をしていく、こういうふうに措置をするんだというふうに考えてよろしゅうございますか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在日本政府として承知しておりますところは、毒ガスについては全部撤去をする、それで、それにはまず第一に安全に撤去する、御心配をかけないようにするので、諸般の準備等があるので若干の時日がかかる、ということを申しておるわけでございます。全部を安全に輸送する、そして、沖繩返還の時期までにはどんなことがあっても実行するというのが大筋でございますから、それに信頼を置きつつ、かつ、先ほど来申しておりますように、なるべくすみやかに――まあ、この毒ガスというものは特殊なものでございますから、最初の撤去輸送についてはなお一そう周到な準備が全般として必要なのだろうかと想像しているわけでございますが、一たび軌道に乗りますれば、私は、政府としては、順調にこの実施ができるものと、現在のところはさように確信いたしておりますが、その確信どおり実行できるように、ただいま申しましたように十二分にこれからも配慮をし、折衝すべきものは折衝していきたい、かように存じております。
  13. 木原実

    木原委員 アメリカ側の資料によりましてもすでに沖繩に貯蔵されておる毒ガス兵器については、兵器そのものはかなり老朽化しておる、したがって不測のガス漏れというようなことも憂慮をされる、実はこういう側面もある、こういうふうにも聞いておるわけであります。したがいまして、アメリカ側計画によりますとあと一年数カ月、七二年のかりに上半期としましても一年半近くの時日があるわけであります。問題は、その間にアメリカ施設ができるのを待つ、アメリカ計画軌道に乗るのを待つ、実はこういう側面があるわけでありますけれども先ほど来申し上げておりますように、ともかく年内かないし来春までに、こういうことで沖繩人たちも、ある意味ではその時期を待っていたと思うのですね。それが一年以上も延期をされる、この事態については、やはり私どもとしては、これは政府姿勢としても、アメリカ当局に対して、この事態に対して厳重な申し入れをするなりあるいは措置を要求するなり、そういうやり方が必要だと思うのですが、そのことを含めてあらためて折衝をする、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、ずいぶん長い間かかりましたけれども、とにかく撤去ということで実現の緒についたということは、私もほっとしているわけでございますけれども、この上は、日本国民、特に沖繩県民願望にこたえましてようやくここに方針決定し、その実行の緒についたわけですから、これをさらに一そう促進することについて、十分御趣旨を体して今後とも善処したいというのが政府立場でございます。
  15. 木原実

    木原委員 不安の念が去らないわけですけれども、たとえば沖繩にもあるといわれております核兵器等につきましても、これは御承知のように第一回の撤去については公表もされましたし、私どももある程度承知をいたしておるわけでありますけれども、ただ、核兵器等についても、これはおそらく政府理解では、沖繩返還の時期までに完全に撤去される、総理によりますと、大統領が保証をしたのだからこれ以上の保証はない、こういうことで受けとめておられると思うのですけれども、一体この核兵器がいままでどの程度に撤去をされておるのか。それからまた、具体的にはどういう形でいつまでにというのは、最終は返還の時期までということになりますけれども、はたして撤去できるのかどうか。いまなお依然としてメースB発射台はそのまま残っております。それからまた核貯蔵庫も依然として従来のまま残っておる。われわれとしては、撤去したものならば、核貯蔵庫等も同時に破壊をするなり撤去をしてもらいたい、こういう気持ちがあるわけですけれども、しかし、現在のところなお核兵器はおそらく残っておる部分が多いと推定をされる、そういう状況があるわけです。これらの問題については、政府のお考え方はどうですか。このままでアメリカにまかしておいて、約束どおり完全に撤去をされる、ただそれだけでございますか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点については、しばしば政府態度を明らかにいたしておりますけれども、基本的な約束が確認というか決定をいたしました以上は、返還のときまでにはきれいになる。そして返還後におきましては事前協議の対象となり、これに対して、全国民願望に基づくところの政府政策に背馳するようなことはしないということで、核抜き保証されていることが明らかである。このことは、たびたび申し上げましたように、日米両国最高首脳間で確約されたところでございますから心配はない、こういうのが政府立場でございます。
  17. 木原実

    木原委員 いずれにしましても、この問題につきましては、従来の経緯から見まして私どもはなはだアメリカ措置を遺憾であるといわざるを得ないのですけれども、ひとつ政府のほうでも姿勢を正して、現地の県民の諸君、あるいは日本国民の不安を去るように対策を講じていただきたい。要望を申し上げておいて次に進みたいと思います。  その次にもう一つ伺いをいたしておきたいのは、実は中国政策の問題についてであります。実は私もこの秋中国を通過をいたしましてハノイに行ってまいりましたけれども中国政策の問題について、私どもいろいろと大事な総理発言を聞いてまいったわけでありますけれども、これはもう全く――どう申し上げたらいいんでしょうか、やる気がない、こういうふうに受けとめるわけであります。そこでお伺いいたしたいわけでありますけれども、この春の当委員会におきまして、総理が、中国脅威である、こういうことを繰り返し言明をなさいました。私の質問にお答えになりまして、核兵器を持っておる中国、それからまた国際的なつき合いの乏しい中国、これは日本国民にとって脅威である、こういうことを言明をなさったわけであります。私はこのことは、いまの日本政府中国認識中国に対する考え方をある意味では端的に表明をしているものでもあるし、たいへん重要な見解であると思うわけでありますけれども、そういう意味で、現在でも政府は、そのような隣邦中国の存在が脅威である、こういうふうに御認識になっていらっしゃるわけですか、どうですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 事実問題として中国が核武装しているということで、事実認識の上において皆さんがそういう認識をすることは事実あると思いますが、それが具体的に脅威であるかどうかということについてはいろいろの見方もあろうと思います。たとえば一つ中国論ということにも関連するかと思いますけれども、本来私どもは、これは第二次大戦後の国共分裂以来長い歴史のある問題でございますが、事柄の筋合いからいえば、両方の一つ中国の主張というようなものは何とかひとつ平和的な話し合いで結論が出ないもので去ろうか、こういうことを期待するのが自然の考え方ではないかと思いますが、しかし同時に、そういったような問題が武力によって解決されるというようなこともあり得ることと考えれば、そういうことは隣国である日本の安全ということからいって、これはたいへんな問題になり得るのではないか。重大な関心を持たざるを得ない。そういうことから申しましても、中国問題に対する一つの基本的な考え方としては、そういう武力が行使されるというようなことが望ましくないということをひとつ関係者の間で確立されることがほんとうに望ましいことである、こういうふうに私は考えていくべき筋合いではなかろうか、かように存じております。
  19. 木原実

    木原委員 大臣は少し問題をおそらせになったわけですけれども、確かに話し合いによって解決することは、これはもう当然望ましいことでありますし、それからまた武力によって、たとえば北京政府が台湾を解放をする、こういうふうに言明をしているわけでもないわけであります。そのことではなくて、私ども考え方によれば、実にもうすでに戦後二十五年ですね、四分の一世紀、しかもあれだけ戦争ということを仲立ちにして接触のあった中国との間に断絶をしておる。文字通り断絶をしておるわけですね。このことが私は日本国民にとって不幸ではないのか。中国にとってというよりも日本国民にとっての最大の不安、むしろ日本国民にとって脅威があるとすれば、断絶をしておるという事態ですね、このこと自体が非常に脅威ではないのか、こういうふうに考えるわけです。たとえば現に戦争をやっておる北ベトナムアメリカの間でさえ、北ベトナム政府代表は、われわれはいつでもアメリカ最高当局に対して話ができるパイプを持っておるとわれわれに言明をいたしておりました。戦争をやっている国でさえも一方では話を通ずるパイプを持っておる。およそ外交というようなものはそういう側面があっていいんじゃないか。ところが、たびたびの政府言明にもかかわらず、たとえばいまだに大使級会談についてもほとんど展望もない。文字どおり隣邦北京政府との間には断絶をしっぱなしだ。これでいいのか、こういう不安が中国問題の根底にあると思うのです。これは、おそらく国民の九九%まではそのことに対して不安を持っている。われわれは明九日、各党の議員日中国交回復議員連盟というのを結成をする、こういう運びにもなっておりますけれども、私どもの共通の不安、そういう国民の不安を何とか打開をしなければならぬのじゃないか、実はこういう気持ちなんです。ところが政府は依然として、これまでの発言を聞いておりますと、そういう不安を何らかの形で代表をして打開に臨んでいこう、こういう姿勢が見られない。これでよろしいと思うんでしょうか。一体そういうような国民の不安あるいは総理言明をされた中国脅威であるという認識に対して、どのような対応をしていくのか。これを避けて何か問題を多岐にわたって検討をする、こういうことでは進まない段階に来ているんではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中国問題については、御指摘のようにもうほんとうに長い歴史がございますし、複雑で長い歴史の中で顧みてみますと、中国大陸との間におきましてもいろいろの御批判はありましたわけですけれども、政経分離というようなことで、経済上あるいは人事交流その他におきましても相当のパイプがつながれてきたということは、従来のやり方としては、私は政府のとってまいった政策が適当ではなかったかと思うわけでございまして、よく申すことでありますが、たとえば貿易の数量などにいたしましても、世界の他のどこの国よりも多くの実績をあげておりますし、人事その他の交流につきましても、ある程度のパイプは開かれていたわけでございます。よく例に引かれますけれでも、アメリカが米中大使級会談を百数十回やっているということも事実でございますけれどもアメリカ中国との間にほかの触手がございませんから、大使級会談ということにその方法を求めるほかには方法がなかった。そして実際上の断絶関係が現在も米中間には続いているというのが事実であろうと思います。日本としては、最近国際的に中国に対していろいろの動きのありますことも十分承知しておりますけれども、まあ一口にいえば、たとえばヨーロッパの諸国などあるいはアフリカの諸国などは、何と申しましても気が楽な立場にあるのではないか。日本は隣国であり、またいろいろの点で深い関係もございますので、最も慎重に真剣に考えていかなければならないという立場にあるのではないかと私どもは考えておるわけであります。したがって、よくバスに乗りおくれるというような話題もございますけれども政府といたしましては最も安全なバスを仕立てたいのであって、ただ単にこの種の問題については時間を限っていつまでにどうというようにせいてはいけないことであって、やはり二十数年にわたる問題でありますだけに、とっくりかまえて、いろいろの方法を日本の国益の上に立って考えていかなければならない。また先ほどもお話がございましたが、国際緊張の緩和ということからいえば、どういうアプローチが最も妥当であるかというような点につきましても、真剣に慎重に検討していかなければならないというのが政府立場であって、同時に、過去においてはそうであったが、いつまでこれでいいかということについては、いつまでもこれでいいと考えているわけではございませんが、慎重にじっくりと取り組んでいかなければならない問題である、これが現在の政府姿勢であるわけでございます。
  21. 木原実

    木原委員 これはもう従来の繰り返しの御答弁で、私は何らの期待を寄せることができないような感じがするわけであります。従来でも経済交流はあった、貿易は発展をしてきた、人事交流もあった、こうおっしゃるわけでありますけれども、さしあたって、たとえば来年の覚え書き貿易の交渉が間もなく始まる時期にきたわけでありますけれども、しかし、関係者の方々の話によりますと今度はどうなるかわからぬ。大臣の御言明の中にありました貿易という側面につきましても、これはおそらく来年の交渉は最後の交渉になるのではないか、こういう実は憂慮もあるわけであります。だから、もし大臣がそういうふうにおっしゃるならば、では来年の覚え書き交渉の問題について、たとえば、これは申すまでもありませんが、ある意味では準政府保証、こういうような性格を持つ経済交流なわけなんですけれども、この経済交流のパイプを維持していこう、こういう姿勢の上に立って何らかの形で政府が前向きの姿勢を示す。たとえば、これまた長年の問題でありますけれども、延べ払いを認めていく方式であるとか、あるいは決済の方式であるとか、あるいはまた吉田書簡の破棄であるとか、これらの問題について何らかの形で前向きの措置をとる、このようなことは考えられませんか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 覚え書き貿易につきましては、今年度の覚え書き貿易の際にも、御承知のようにいろいろの問題がございましたけれども、とにかく覚え書き貿易という線は、細くはなったけれどもつながれたということは、当時政府も明らかにしましたように、そのことについてはよかったことであるという見解を持っておるくらいでありますから、今後におきましても、政府の直接の協定による貿易ということではございませんけれども、十分な関心を持って、続いていくことが望ましいという態度で見守ってまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、実はこれも御承知のとおり、現在では覚え書き貿易よりも友好貿易というようなほうがずっと額もふえておりますけれども、これらの情勢に対処いたしましても、先ほど申しましたように国益の上に立って情勢に応じて適宜な措置をとることが必要なことであろう、かように考えておりますが、ただいまそれらの点について十分具体的に政府方針を申し上げる段階ではまだないということも事実でございます。
  23. 木原実

    木原委員 バスに乗りおくれるなという表現があったということを大臣もおっしゃったわけですけれども、私どもはやはりバスの問題ではないと思うのですね。大臣も御指摘のように、日本中国の関係はカナダやイタリアと違うことはおのずから明らかであります。ある意味ではもっと深い。そういう意味では、たとえばやはり戦争という問題についても、いまだに大陸政府との間にはこの状態が法的には解消していないという事実もある。いろいろなことを考えましても深いことはわかるわけであります。しかし先ほども申し上げましたように、問題は、それもすでに四分の一世紀にわたって文字どおりの断絶がある。これに対して何らかの形のやはりパイプといいますか、見通しをつけていかなければならぬ段階にきておるんだ、この事実がやはり大事だと思うのですね。そうしますと、いまの状態の中で、日本政府として、いろいろ前提になることをおっしゃっておりますけれども、一体何をしていくのか、どうしたら少しでも硬直した状態になっているものを緩和していくことができるのか、その方途についていまは申し上げる段階ではない、いまだにはっきりした方策というものが立たない、この姿では、先ほど申し上げたように国民の不安というものはあとを断たないと思うのですね。だから私どもとしては、経済交流の道に関していえば、いま申し上げたような問題がある、あるいはまた大使級会談等についても政府においては考えておる、こうおっしゃるのですけれども、しかしその見通しについては何も明らかにされていない。これはおそらく現状のままでいけば、中国問題については、いまの政府姿勢の中では何らの打開の道を見出すこともできない、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。しかしながら民間の努力努力、当然政府がそういう問題を踏まえて、少しでもどこからでも手のつくところから姿勢を改めていくことが望ましいのではないか、こういうふうに考えるわけであります。ですから一例として覚え書き貿易のことを申し上げたわけでありますけれども、かりに覚え書き貿易を継続することが望ましいということであるならば、それに必要な裏づけ、こういうものについてはもう少しやはり前向きの措置を講じていく、これぐらいの姿勢は最小限度あっていいのではないか、こういうふうに考えるわけであります。これはおそらく国民の世論だと思うのですね。台湾との関係がその問題についてもしょっちゅう出てくるわけでありますけれども、しかしもう政府立場でも、台湾の政府に気がねしていく、遠慮をしていく、こういう段階は過ぎているのではないのか。それよりも国益という立場に立って考えるならば、やはり七億五千万の国民を有する大陸政府に対して何らかのアプローチの姿勢を示していくことのほうが、国益の上からいっても望ましい時期にきておる、私どもさえもそう考えるわけです。それについての裏づけはまだ明らかにする段階ではないと思いますけれども、しかしこれから覚え書き交渉を始めるという関係者の方々の中から幾つかの問題が提起をされてくると思います。それらについては、政府としては前向きの姿勢でこれに臨む、これぐらいのことはおっしゃられるのかどうか、その点を明らかにしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前向きと申しましてもいろいろあるかと思いますけれども、要するに原則論から言えば、さっき申し上げましたような考え方、それから国益、国際緊張の緩和、そしてまた国際信義ということも考えなければならないという立場に立って、たとえば覚え書き貿易あるいはそのほかいろいろおあげになりましたような問題につきましても、これらの点については従来から御質疑のあるたびにお答えしておるかと思いますが、要するにケース・バイ・ケースで善処していくということが言えるのではないかと思います。
  25. 木原実

    木原委員 これは大臣からも、何にもおっしゃってないのと同じことだと思うのです。これでは全く困ってしまうのですね。これは外務大臣佐藤総理大臣も御引退願う以外にない。国民の不安、国民の受けている脅威、これに対して外交当局は何にも対処していないじゃないですか。あまりにも日本の外交姿勢というものが硬直し過ぎておる。しかも次々と問題が出てきておるわけですね。尖閣列島の問題についてもしかり。そういうふうに相次いで問題が出てきておる中で、何らの姿勢がないということ自体が、私は国民にとってたいへんな脅威だと思う。これに対して措置というものがないならないではっきりおっしゃっていただきたい。何かあるようなことを言いながら何にもないということが、かえって国民を毒すると思う。  私は、そこでもう一つだけお伺いしてやめたいと思いますけれども一つは、では来年の国連に向けての御案内のような重要事項指定方式、これはことし限りで限界にきた、こういうふうにおっしゃることができますか。  これが一つと、もう一つ、時間がありませんのであわせてお伺いいたしますけれども大使級会談についての接触を始められた、こういう御説明があったやに聞いておりますけれども大使級会談については一体どのような折衝の方法といいますか、アプローチを試みておられるのか、それらについても多少のことはひとつこの段階で国民の前に明らかにしてもらいたい。どうでしょう。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中国問題については、日本が主体的にどういうふうな態度でいくかということが、一番日本としては大切なことだと思いますけれども、同時に、ただいまも御指摘になりましたように、国連における代表権の扱いというような国際的な状況の流れということも、これは政府の慎重な扱いというか、重要な要素として十分に考えていかなければならない事項である、こういう認識を持っておるわけでございます。そういう点から申しますれば、従来ずっと続いておりましたような代表権の扱い方の方式だけに、これはたとえばアルバニア決議案とかいろいろの形が、ずっと従来固定した一つの方式が考えられておりましたが、そういうことだけでいいのだろうかというような考え方が国際的にもだんだん出てきているようにも思われますが、そういう点を十分に踏まえて対処していく必要があろうかと、こういうふうな考え方でございます。  それから大使級会談については、そもそもこれを意図いたしましたのがずっと前でございますけれども、抑留邦人等の問題についてジュネーブで双方の総領事会談を持ったことがございますが、その後起こりました抑留邦人問題については、大使級会談ということでこの結末をつけることが妥当ではないかということで提唱いたしたことも事実でございますが、同時に、お互いに政府間の接触というものがなくて、そうして基本的なものの考え方と申しますか、そういうことをまず話し合ってみるという機会もないのは非常に残念なことであるということから、大使級会談というのをいつ、どこでもよろしいが、当方としてはこれを開くといいますか、持つ用意はございますということを提唱しているのが現在の状況でございます。いまだ不幸にしてこれに対する対応はございませんけれども政府としてはやはりこの態度を続けていくべきである、かように存じております。
  27. 木原実

    木原委員 これで終わりたいと思いますけれども、これはとてものことには大臣の御発言を聞いておりましても何らの期待もできないような姿だと思います。  あらためて別の機会にもっと突っ込んだ質問をしたいと思いますけれども、ただ一つ申し上げておきたいことは、いずれにしましても日中問題というのは、日本の特殊な立場を十分踏まえた上で、しかもすみやかに解決のめどを開いていく、こういうことがなければ、これはこじれる一方ですね。残念ながらわれわれには外交権がない。われわれもできるだけの接触を保ち、ともかく国民の疑念、不安というものを晴らしていく。中国側から日本政府姿勢についてきびしい批判があります。これについては誤解があり、曲解がある、こういうような御言明等もこの春ございましたけれども、その誤解さえも政府は解く手段を持っていない。これほど硬直をし、それからある意味ではばかげた外交姿勢というものはないと思うのです。このことが国民に不安を与えておるわけでありますから、国際情勢の流れもさることながら、国民世論の動向に即してやはりきちんとした対中国政策というものを立てる、こういう方向で努力をしていただきたい、こういう要望を申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
  28. 天野公義

  29. 上原康助

    上原委員 私は、沖繩毒ガス撤去の問題について関連質問いたしたいと思います。  先ほど外務大臣木原委員質問に対する御答弁があったわけですが、残念ながら納得できる内容ではないのであります。  まず第一点、毒ガス撤去について政府と米国政府の間にどういう合意点があったのか、その経緯について御説明をいただきたいと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほどもお答えいたしましたとおりでございまして、一々あげますときりがございませんけれども、特に毒ガス撤去問題についての撤収の要求をはじめといたしまして、その他の問題の協議の場合におきましても、機会あるごとに撤収をすみやかに、安全に実行するということを、アメリカに対しまして折衝につとめてまいったわけでございます。そうして御承知のように十二月、先方の時間の午前十一時三十分、これは日本時間にしますと五日の午前一時三十分になりますが、ワシントンで国防長官から発表が行なわれたわけでございます。そうしてこの発表につきましては、日本政府に対しましても、こういう発表ができることになりましたということを事前に通報がございました。この事前通報があったということは、この発表までは、これは内々のことでございますけれども、そういう経過に相なっておるわけでございます。五日午前一時三十分のワシントンにおける国防長官発表文は、もうすでに公表されていることでございますからあえてここで読み上げませんが、御承知のとおりでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 私がお聞きしているのは、少なくとも毒ガス撤去については、県民の要求はもちろんのこと、国民立場においても、致死性毒ガスというものが沖繩の米軍基地に貯蔵されているということが明らかにされて、しかも昨年の七月には現に事故も起きています。その国民世論を背景に政府としてもすみやかに、いま外相もおっしゃったようにすみやかにかつ完全に撤去をすべきだという姿勢で対米交渉をなさってきたとわれわれは理解をし期待をしておったわけです。さらに、米国政府も昨年の十二月に、できるだけ十二月もしくは今年の一月早々までに完全に撤去するということを明らかにしてきたはずなんです。しかし、その後御承知のようにアメリカ国内においてオレゴン州への移送反対、いろいろな国民の圧力によって、この毒ガス撤去というものが延び延びになってきた。このように、沖繩県民の要求というものを完全に無視して、さらにアメリカのかってに持ち込んだ毒ガスを、アメリカの国内における国民の声ということによって今日まで延び延びにされておる。そういうようなことであるにもかかわらず、五日に発表された一部の毒ガス撤去に対して、大いに歓迎をするという外相の談話が発表されております。この一事をとらえても、いかに消極的な姿勢日本政府毒ガス撤去の問題について対米折衝をなさってきたかがうかがえると思うのです。これでは一事が万事、沖繩問題というものは前進しないと思うのです。  そういう意味で、あらためてこの毒ガス撤去の問題について、百五十トン、前は公式に一万三千トンといわれている大量の――わずか百五十トン、しかもイペリットというきわめて毒性の薄いものをまず第一に撤去をする。VX、GBという致死性の強いものについては、七一年ないし七二年まで残すというこのアメリカのやり方に対して、政府としてあらためて早急に撤去をすべきであるという立場での対米交渉をなさるお考えがあるのかどうか、この点についてぜひ明確にお答えをいただきたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は率直にお答えするわけでございますけれども、いまも申しましたように、本件については私自身といたしましても非常な努力をしてまいりました。特に米国国務長官あるいは国防長官等は、沖繩県民の方々の御心配や御意見を十分に体しまして非常な努力をしてくれたと私は理解をいたしております。非常に不幸なことは、アメリカの国内にまたいろいろの意見が起こり、これが議会での論議になりましたために、米国の政府日本あるいは沖繩に対する積極的な努力、行為というものが相当に時間がかかった。しかし、とにかくかねがねの要望であります毒ガスの――今度の発表にもございますが、現在沖繩に貯蔵されている毒ガス兵器をすべて太平洋上のジョンストン島の貯蔵場所に移送するという計画が、あらゆる意味で承認されたということになりました。ここに至りますまでの米政府関係者努力というもの、そしてこの要望にこたえてくれたということに対しては、私は歓迎と敬意を表している次第でございます。しかしながら、せっかくここまで来て、さらに事柄の性質上非常に危険なものであり、そしてかねがね日本政府側から要望いたしております安全に撤去をするということが非常に大きな問題であるので、それに対して十二分の配意をすべきであるということを体しまして、そうして移送計画を十分に練りに練ってきたものと思いますので、最初の出発点は、いまのお話しのようにカラシガス百五十トンということに最初の移送は限られておりますけれども、すべてをジョンストンに移す。そうして発表されたところを見ますと、その終期がわれわれが予想いたしたよりはずっとずれておくれておりますから、この点は期待はずれと、率直に申しまして言えると思います。この点が非常に御心配のところでございましょうが、しかし、アメリカとして各方面の意見を調整して全部をジョンストン島に移送することを決定したということについては、私どもは喜んでしかるべきことではないかと思います。かくなります上は、さらにできるだけこの完了が安全に適切に行なわれるということについて、十二分にわれわれも今後の事態の推移を見守り、そしてさらにわれわれの要望に沿ってくれるように折衝と申しますか、話し合いと申しますか、これを進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  33. 上原康助

    上原委員 どうも外務大臣一流の御答弁なんで、もちろん政府がこれまで毒ガス撤去の問題あるいはその他の面で、御努力をいただいているという点は全面的に否定するものでも私もないわけなんです。しかし私は、この毒ガス撤去ということは、何も感情的とかあるいはイデオロギー論だけで言っておるわけではありません。現に私の住んでおる家というものは、毒ガスの貯蔵されておる家と二キロないし三キロしか離れていないわけなんです、嘉手納村は。その中で現地のいまの住民の心理というものは、アメリカは近日中に撤去するということを発表はしたものの、いつどのような輸送ルートで撤去をするということも全然明らかにしていないわけなんです。しかも、避難していいのかどうかわからない。学校やあるいは住民生活そのものが大きな困難の起きるような状態になっておる。そういう不安を持って生活を余儀なくされている沖繩県民立場というものを御理解をして、この毒ガス撤去というものについては、さらに強力な対米交渉を進めていただきたいと思うのですよ。七二年まで待つわけにはいかない。安全の問題、いろいろあるでしょうが、あらためて強力な対米折衝政府としてなさるように要望申し上げたいし、またそれに対するお答えを聞きたい。それと、いつ撤去するのか、その日時についてどうなっているのか、あるいは輸送ルートはどうなっているのか、そういう面について政府として外交交渉をなさったのかどうか、そこいらを聞いて、時間がありませんので、いずれの機会にまた譲りたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 繰り返すことになりますけれども、この発表文にもありますように、沖繩住民の安全の確保については広範な予防措置を現にこれから講じつつあるということを明らかにされておりますから、それらに関連いたしまして、十分政府としてはアメリカ側連絡を緊密にして、情報等の収集には遺憾なきを期したいと思います。  それから撤去の時期については、御承知のとおり、この発表文にもすでに触れられておりますから、こういうことでは、先ほど申しましたように沖繩県の方々や日本国民とすれば期待はずれであったわけですから、それらの点については、これからなるべくすみやかに完了してもらうように、われわれとしても十分心組んで話し合いに当たりたいと思っております。それがいつの時期になるかということについては、さらに細部にわたっていろいろの情報等もまず聞く必要があるかと思います。それらの点とにらみ合わせまして、私としては誠心誠意事に当たってまいりたいと思っております。
  35. 上原康助

    上原委員 終わります。
  36. 天野公義

    天野委員長 伊藤惣助丸君。
  37. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は中国問題について伺いたいと思います。  特に大陸だなの問題について最近問題になっておりますが、中国の尖閣列島に対する主張についてるる報道されておりますが、それを分析いたしますと、中国政府というのは尖閣列島の領有を主張しているのか、あるいはまたあの周辺の大陸だなを主張しているのか、または尖閣列島を含めてその周辺の大陸だなを主張しておるのか、その辺が非常にあいまいなわけですが、政府としてはどのような対策、またどういう情報を入手しているのか、その点から伺いたいと思います。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 正確な日時等は場合によっては政府委員から御説明いたさせますが、こういう経過になっております。  国民政府が主張しておりますのは、尖閣列島の領有権を含んでおります。そして尖閣列島の海底を含む東シナ海の大陸だなについても開発の権限を持つものであるという根拠に立っております。で、これに対する日本政府としては、国民政府に対しては、まず尖閣列島の領有権ということについては、いかなる点から申しましても、これは固有の日本の領土でありますから、いかなる政府との間にも、本件について話し合いとか交渉に応ずべきものではない。日本政府は、もうあらゆる意味においてこの領有権がいかなる国に対してもはっきりした事実である、こういう態度をとっております。  それから大陸だなの開発計画の問題については、国民政府が石油資源等の開発等についていろいろの計画をやっておるようでありますけれども、これについては国民政府が条約上の根拠その他によって一方的に――条約上の根拠によってというのは、彼らの主張する根拠等によって、一方的に権利を主張し得るものではないから、いかなる計画日本政府としては認めるところではない、こういう態度をとっておりますが、この大陸だなの問題等については、必要ならば両国政府間で話し合いに応じて、どういう見解でどういうことをしたいのかということを聞いて、こちらの主張を明らかにするということならば、これは話に乗ってもいいということで、いま申しましたような基本的態度国民政府には応酬をいたしておりますが、何といって、いまのところ結論が出ているわけでも何でもございません、これは常識的に申しまして……。  それから一方、最近になりましてから中華人民共和国政府が新たに主張をし出しましたのは、これはいまさら申し上げるまでもございませんが、正式な国交関係がございませんから、公式文書その他で申し入れてきたものではございませんが、新聞情報その他で見ますると、やはり国民政府の主張しておることと大体同工異曲の主張のように見受けております。これに対しまして記者会見その他、あるいは国会の委員会においてはもちろんでございますが、国民政府に対すると同様に、主権の問題ならば、これは何ら話し合いとかなんとかいうべき問題ではない。日本として完全に領有権を持っているのであるから、話も何も、ことばは悪いですが、聞く耳は持ちませんという態度政府態度であるということを堅持しておりますし、またその態度を堅持すべきものである。たとえば、すでに外務委員会でも、あらためて沖繩選出の西銘委員からも具体的な御主張があったんですけれども、一九二〇年に、当時の中華民国の長崎駐在の領事が沖繩県の方々に対して、難破した船などの問題について感謝状をはっきり出されている公文書の写しも提示されている。これは政府におきましてもその事実は承知しておりますけれども、こうした事実も明らかなようなものでございますから、もう尖閣列島の主権ということについては政府としては何ら意に介すべきものではない、かように存じております。
  39. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいまの外務大臣の答弁は、いままで答弁なさったことの繰り返しだと思うのですが、要するに中華人民共和国、さらに中華民国というものが同一でこの尖閣列島の領有を主張しているということのようですが、これに対する政府措置はこれでいいのかどうかということが一つ疑問があります。そして、この島の領有権について交渉する筋合いのものではない、そのように突っぱねておるわけでありますけれども、それで押し通せるものかどうか。私は、やはりこういった問題については関係の周辺諸国の領有主張国と交渉する必要があるのじゃないか、こう思うのですが、その点については外務大臣はどうお考えですか。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点はさらに申しますれば、御承知のように沖繩に対する平和条約に基づくアメリカの施政権の対象としてもきわめてはっきりしておる事実でございます。つまり、施政権の対象になっていることはきわめて明白な事実であって、これは布令その他においても明白になっておる事実でございます。したがいまして、尖閣列島の周辺で、至近の距離あるいはその他において中華民国の漁民等が出漁に行った場合、あるいはその周辺を遊よくしている場合等におきましては、いろいろの記録もございますけれども、施政権者であるところの米国側がこれに対して適宜な措置をとっていることもあり、また過般は青天白日旗を掲げたのを撤去したり、あるいは落書き等がありましたものもこれを始末をしたというような事実もあるくらいでございまして、こういう種類の問題については、私はどこの国との間にも協議とかなんとかすべき問題ではなくて、もうきわめて明白にあらゆる根拠からいって日本の主権下にあるところでございますから、こういうところに一方的にかってにある国々が領有権を主張したからといって、それの商議に応ずるなどということは、主権国である日本立場としてとるべからざる態度である、かように存じておる次第でございます。
  41. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいまの発言の中で、たしか中華民国ですか、そこの旗が尖閣列島に立てられた、それを後日撤去した、その点は何の紛争もなかったわけでございますが、しかし、あの尖閣列島のいろいろな開発が進みまして、両国間あるいはまた関係諸国間においてたいへんな価値のある周辺であるということになりますと、外務大臣のその甘い楽観した態度で臨んだ場合にはたいへんなことになる。私は、このまま何もせず放置するならば、必ず国際間の紛争が起きるのじゃないか、また起きた場合にはどうすればいいのか、外務省としてはどのような解決の方法を考えているのか、そういった点について伺いたいわけです。  まず第一に、北京政府とわが国は国交がないわけです。ですから、直接交渉するわけにはいかない。また国連においても、日本政府は、アメリカと同調して重要事項指定方式というような形で、現在の北京政府の国連復帰を妨害している。ですから、こういったような関係からいいましても、中国北京政府としては、日本政府に対しては決していい感情を持っていない。こちらがいかに大使級会談を向こうが応ずるならばやりましょうといっても、日本政府のとる態度は向こうの気分も害するような行き方、主張を二十数年、現在ですら変えようとしないのが現状であります。そういったことにおいて、このままでいいのかどうか、その点について伺いたいわけです。特にこの問題について、国際司法裁判所などにおいて解決することができないということは大きな問題じゃないかと私は思うのですが、外務大臣の所信を伺いたいと思います。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、先般国旗を立てていったというのは、青天白日旗であって、国民政府の国旗でございまして、中華人民共和国政府の国旗ではございませんし、それは撤去をいたしたわけです。それから沖繩祖国復帰が実現いたしますければ、その範囲は現在の施政権の対象下でありますから、当然これは沖繩県として日本のものに復帰するわけでございます。そうすれば、非常に極端な例ですけれども、たとえば鹿児島県はおれのものだとある国が言っているようなものでございまして、これは固有の領土なんですから、この件について何国とも話の対象にすべきでないというのは当然なことではないか。私どもというか、政府はさような見解を持っております。そして必要ならば、幾らでもそれを立証する国際的なといいますか、文書もはっきりしておるわけでございますから、それに何らの、一点の疑いもいれない、これに対してはき然たるその態度だけで私は十分だと思います。それ以上に先方が、たとえば鹿児島県はおれのものだというものがあったからといって、それに接触を求めて、国際的な会議をするとか、あるいは裁判所に提訴するとか、そういうことを考えるべきでないと同様に考えていいのではないかと私は思っております。  それから大陸だなの問題は、大陸だな条約というようなものもございますが、これは日本は入ってもおりませんし、国際法的な権利、権限等について明確な国際条約というものもございません、と言ったほうが常識的ですが、そういうことになると思います。たとえば問題の地域について、事実の問題としてはガルフ・オイル会社が国民政府との間に利権を設定するというような話し合いができたというふうな報道や、国民政府側の宣伝と申しますか、言い分はございますけれども、この当該のガルフ会社としては、こういったような問題は政府間の問題であろうから、その海域の石油採掘の前提となるボーリングなどの作業というものは一切やることはいたしませんということを、ガルフ会社は言明をしております。そして日本政府側にもそういうことを申しておるくらいでございまして、この種の争いというか、国際間の問題になっているようなことについては、第三者であるところのそういう会社なども沖繩の復帰後において尖閣島の主権については日本の法令に完全に従うことになるのである、こういう理解を示しております。つまり東シナ海の海底の開発等についてのボーリングなどということは一切やりません、それからもう一つ、もっと本質的な、尖閣列島の日本の主権ということは、これは復帰後は完全に日本の法令に従う、日本の領土である、こういう理解を彼らも持っておりますから、それらのところは十分に承知しておるということを日本政府側にも申しておる。これは事実関係でございますので、念のために御説明申し上げておきます。
  43. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣のおっしゃることは、要するに中華民国、いわゆる台湾政府のことを盛んに主張しておるわけでありますが、私は日台関係においては、日華条約もあることでありますし、きわめて話し合いでうまくいくというようなことは予想されますが、問題は北京政府でございます。北京政府が最近この点を強く主張してきているわけでございます。問題は、今後あの海域において、当然日本の領域であるということによって漁船も出漁するでありましょうし、さらにまた海底資源開発のための調査船も参るかもしれません。そういった場合に、北京政府が従来の主張を繰り返しながら、やはり何らかの措置に出るということも考えられないわけではないわけであります。そういったことに対して政府は、起きてからケース・バイ・ケースなんと考えるのではなくて、そういう態度でいくということを厳然と表明することが大事だと思いますし、さらにまた七〇年代の大きな問題は、国連においても十分示されておりますように、対中国問題であります。私は、この問題を通して、さらにまた日中の問題については根本的に政府がいま考えなければならない立場に置かれていることも十分存じております。したがって、そういった尖閣列島を含む大陸だなについての北京政府についていろいろなことが予想されるわけでありますけれども、それについてはこういう方法でいくという一つの方向というものを示唆しておく必要があるのではないか。その点が一つあります。  それからもう一つは、中国問題について大事な点は、来年再び重要事項指定方式をやるのか、あるいはまた中国問題については台湾とは別に考えるのか。いろいろな方法が考えられてはいるわけでありますけれども、大体中国問題立案の態度について、外務大臣は、政府としてはきまってないとしても、どういう態度で臨むのか。よく外務大臣はすべて国益を中心として考えるというようなことを言っておるようでありますが、それはどういうことなのか。そういった基本的な問題についても伺っておきたいと思います。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 尖閣列島についての中華人民共和国の主張といいますか、これは新華社電で私ども承知しているわけですけれども、やはり国民政府と同じように、尖閣列島の主権は本来自分のほうにあるべきだということも言っておるようでございます。それから大陸だなの問題については、日本が中心になって開発について他国と共同で、つまり中華人民共和国以外のところと他国で共同開発をするという構想はけしからぬ、こういう二つのことが新華社電では報道されているわけでございます。ところが、その後者については、そういう共同開発というようなところまでまだ考えが進んでいるわけではございません。それからどういう点をどういうふうに主張されるのであろうかということは、新華社電だけではあまりはっきりしない点もございますから、いましばらくこれは静観するよりほかにない、かように考えております。主権については先ほど来るる申し上げておるとおりでございます。  それから中国問題についての全般的な御意見でございますが、何しろむずかしい複雑な問題であることはいまさら申し上げるまでもございませんが、政府としては、いろいろの考え方国民的にもございますので、それらも十分に承知をして、そしてじっくりかまえて、日本としてどういう道を選んだらいいかということについては、真剣に、慎重に検討していきたい、かように考えている段階でございますので、政府方針というようなことについて、いま具体的に申し上げる段階ではございませんし、まだそういう考え方を固めているわけではございません。したがって、また国連における代表権問題というようなものが来年以降どういうように扱われることが望ましいかということについては、国連加盟国多くの、百三十の国々の中にもいろいろの意見があるようでございます。そういうところも情勢を十分分析しながら日本としては最も適切と思う態度をとりたい、かように存じておるわけでございまして、何々方式はとらないとか、何々方式をとるとかいうようなことはいま申し上げる段階ではない、これが政府の現在の態度でございます。
  45. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、そういう政府が対中国政策について現在考慮中であるということは存じております。ただそこで問題なことは、日本政府態度決定する、その対中国問題の立案の態度ですね、慎重にと言いましたけれども、慎重になんということじゃなくて、そんな話はもうだいぶ前から聞いているわけで、こういう観点、こういう角度から考えていくべきだという一つの事務的な問題があろうかと思います。その点も答弁願いたいと思いますが、もう一つ伺っておきたいのですけれども、日中覚え書き協定ですか、この問題もこの年末で期限が切れます。そしてそのあとどうなるのかということが非常に憂慮されているわけでありますが、日中貿易に対して今後どう対処するのかということですね。例年のように古井議員に一任するということなのか、あるいはまた新しい何らかの方式による取りきめを行なおうとする考えなのか、その辺あたり伺っておきたいと思います。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日中貿易の問題で覚え書き貿易をどうするかということですが、これはいまさら申し上げるまでもございませんが、政府が直接関与しているわけではございません。したがって、どういうふうにこれを今後やっていくかということについては、これに従来から熱心に当たられている日本側の方々もいろいろいまお考え中であろうかと想像するわけですが、そういう考え方と、それから先方のそれに熱心に関係しておられる方々との間でどういうふうな形でまとまるか、これに対して政府としては、円滑にこういうパイプが続くということをけっこうなことだと思いつつ、今後の成り行きを静観してまいりたい、こう態度でございます。
  47. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 御存じのように、このままいきますと非常に日中貿易の将来も悲観的な状況になるわけであります。そうなりますと、古井議員がいろいろ向こうで話したことに対して問題になり、また古井議員としても気の毒な立場になるわけでありますけれども、私はここで外務大臣に提案したいわけでありますが、先ほども答弁がありましたように、日中大使級会談というものを一応は窓口に考えておられるようですが、そうであるならば、そういう一つの前向きな姿勢政府もなってきているわけでありますから、政府の人間も、こういった民間貿易ではありますけれども中に入れて、あるいはまたできるならば、今後の貿易については政府代表を団長として交渉に当たったほうがいいのではないか、私はこう思うのですけれども、そういった点について外務大臣から率直に伺いたいわけであります。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、覚え書き貿易については、高碕・廖承志間で話ができましてからずっといろいろの経緯もございますか、要するに、これは両関係者の非常に熱心な方方の間にだんだん積み上げられ、またときに消長があって今日に至っているわけですが、やはりこのパイプは御関係の方々で十分御相談になっていただくべき問題であって、相手のあることでもあり、特殊なパイプでございますから、政府といたしましてとやかくこれに申すことは少なくともいまの状況では差し控えたいと思います。
  49. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どうも前向きじゃないように私は思うのです。私は、外交というものは何かのきっかけ、何かのチャンスを通して政府が常に別向き積極的に話し合いに応ずる態度をとることこそが一番基本ではないかと思うわけであります。共同声明にしてもあるいはまた安保条約にいたしましても、常に日本の国益ということを外務大臣はおっしゃいまして、国益というものを大事にする、このほうが日本の体制というのは――まあ飛躍しますけれども、現在は集団安全保障体制の一員としていたほうが国益に合致するんだ、さりにまた対中国問題については、もう少しアメリカと同調しておったほうが国益に合致するんだ、あるいはまた共同声明の問題についても国益を前提としてきめた、よく国益ということばを使われているわけでありますが、このことが愛知外務大臣の外交の、すべての交渉一つは基本線といいますか、基本的態度になっているようでありますか、私は、その国益ということについてきわめてあいまいであり、しかも、ことばはいいんでありますけれども、その定義がはっきりしないということでいつも疑問に思っているわけでありますか、この際ですから、大臣のおっしゃる国益ということについてひとつどういう定義があるのか、それがわかりますと大体対中国の問題についても国民としては判断ができるわけでありますが、その点もあわせて答弁願いたいと思います。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国益というのは、お話しのとおりずいぶんいろいろの要素があると思います。たとえば日本の安全を考えるということも一つの大きな国益ではないか、これはわれわれが中国問題を扱う上におきまして国際紛争の緩和ということもあわせていっておりますところとも関連があると思いますけれども、たとえば一つ中国ということについて双方ともに非常に強くこれを主張しておられるわけです。これは私は事柄の筋合いからいえば、話し合いで内輪の問題として決着をしていただければ、これを他国はそのまま認めていくというのが筋合いではないかと思います。しかし日本の国益とかあるいは緊張緩和とかいうことから考えてみますれば、武力を使ってこの問題を解決するということだけは、まあ俗なことばですが、かんべんしていただきたい、これが私は至大な、事を考えるときの要素ではないか、少なくとも大きな要素の一つではないか、かように存じておる次第であります。
  51. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 実に通り一ぺんな答弁でありますが、私は、その国益については武力というものは絶対にかんべんしてほしいというならば、さらに経済問題あるいはまた文化交流の問題、いろいろな問題があると思うのです。たとえば最近持ち上がっております繊維問題にしましても、私は、対中国の問題と含めて対米交渉するならば、やはり何らかの解決の糸口が出てくるんじゃないか、非常に飛躍した話でありますけれども、そのようにも考えているわけであります。そしてまた、アメリカも常に国益というものを基調にして外交政策または経済政策を立てているようでありますが、もうそういった点については、カナダもイタリアもあるいは日米の関係以上に深い国々であっても、そういった中国問題については取り組む姿勢を示しているわけであります。私は、このままいくならばいつの日にか米中和解が来る、そうすると日本側は取り残されるのじゃないか、そういう点で大きく心配するわけでありますし、外務大臣が言う国益という中にそういう経済問題が入っていなかったわけでありますけれども、いずれにしても国益というものを考えて外交を展開するならば、特に経済的な問題については大きく国益を考えなければならない、そういう観点からいいましても、現在の対中国姿勢に対しては、きわめて現在の政府のとっておる態度は遺憾であると私は思うのであります。したがいまして、今後中国問題についてはそういった問題も含めて解決する考えがあるかないか、その点を伺っておきたいと思います。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中国問題と日米繊維交渉と私は少し飛び離れているように思いますけれども、しかし中国政策ということは、やはり日本立場から申しましても、先ほどもちょっと申しましたが、一方では代表権をいかにするかということで国連でも非常に大きな問題になっております。また、日本自体の立場からいいましても、多面的に世界各国との間の関係の上から考えていかなければならない要素もずいぶんあるように私は思います。これもやはり広い意味では国益という中に入るかと思います。それから、繊維問題はともかくといたしまして、経済問題というようなことももちろん国益の中の非常に大きな問題であることは申し上げるまでもないところであると思います。
  53. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは最後に伺っておきますが、来年の二十六回国連総会まで一年近くあるわけでございますが、どういうスケジュールで対中国政策問題については立案をし、どういう形で審議するか、スケジュールですね。慎重に検討するということでありますが、ただことばの上でそういうようなことを委員会の中で答弁するだけではなくて、事務的にはこういう形でいつごろ立案をし、そしてまた閣議決定をし、そしていつごろどうするかというスケジュールを伺いたいと思います。  さらに、時間がもう参りましたのでお話しいたしますが、実は去る八月の十八日、この委員会で地位協定について私は質問しました。地位協定の第二十四条の「路線権」というのがありますが、私も条約を勉強しておりまして、いまだに外務省でこの確たる解釈というのがないということでございますが、そのことを質問しましたら、東郷アメリカ局長もそのときは答弁できず、また山上防衛施設長官も答弁ができなかったわけであります。そして、当時委員長代理をしておった伊能委員長代理は、次回までに調査させて答弁させますということで私は了承したわけでありますが、それがいまだに答弁がないわけであります。その点についてその回答をしていただきたい。  もう一つは、同じ二十四条の中に「(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)」ということがありますが、これはどういうものなのか、これも具体的に例示しながら説明願いたいと思います。  さらに、その中に「共同に使用」するということばがあります。これも全然どういうことなのかわからないわけでございます。米軍と自衛隊の共同使用をするのか、また米軍も自衛隊も一般の住民もという意味なのか、またそれは第二条に基づく米軍に提供する諸施設、区域となるのか、その辺も大事な点でありますので伺っておきたいと思います。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず中国問題のスケジュールのお話でございましたが、私は、せっかくの御質問に対してまことに御不満なお答えかと思いますけれども、私ども理解では、中国問題というようなこれだけ大きな複雑な問題を、時間を切っていついつまでにというふうな扱い方はいかがであろうか、かように考えておる次第でございます。ただ先ほど来申しておりますように国連総会は毎年ございます。おそらく二十六総会では、中国代表権問題というものはいろいろの論議がございましょう。そういう場合に処して日本側がいかに対処するかということは、当然にそれまでの間に周到な考え方準備とをやってまいらなければならない、こういうふうに考えております。  それから、次の地位協定の問題は政府委員から御答弁申し上げましたほうが的確かと思いますが、第二十四条の「路線権」というのは一体どういうものかということでございますが、これは第三条の1において、米軍の施設、区域への出入の便をはかるために必要な措置は、合同委員会を通じて両国政府間で協議されて、その協議の上で日本政府あるいは米側によってとられることを定めているものでございますが、このような措置がとられた結果として、米軍の出入の便のために米軍が享有する利益の実態が路線権である、こういうふうに理解をいただければいいのではないだろうか。その内容としては、米側が享有すべき利益の実態はどういうものであるか、その実現のためにわが国内法上いかなる措置がとらるべきかによってきまるものでありますから、第二十四条の2において右のような利益の実態を経費の観点からとらえて路線権と称したものである。特に路線権というような特定概念による国内法上の権利を設定するために、ここに路線権を規定したものではないというのが政府の見解でございます。  以下の点については、政府委員からお答えいたします。
  55. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 第二十四条二項にございます路線権につきまして、大臣からただいま御説明がございましたのですが、先ほど質問のございました二十四条二項に定めております「(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)」ということにつきまして具体的に御質問がありましたので、その点につきまして私から答弁さしていただきますと、このくだりの意味は、飛行場及び港における施設等が米側によって日本側と共同で事実上使用されることがあった場合にも、当然通常の場合と同じように、その施設及び区域の費用は日本側によって負担されるということを規定しただけのものでございます。特別の意味はないわけであります。
  56. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一つあったでしょう。共同で使用するというような……。
  57. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 共同の使用ということにつきまして重ねて御質問ございましたけれども、ただいま御説明申し上げましたように、事実上港なり飛行場におきまして米側と日本側が共用している場合があり得ますので、その場合のことを言及しているわけでございます。
  58. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 終わります。
  59. 天野公義

    天野委員長 受田新吉君。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 私最初にこの法案に直接関係する問題をお尋ねして、最後に関連した別の外交重大問題を二、三お尋ねしたいと思います。  この法律案を拝見して、まず問題として提起したいことは、兼轄大使館の新設でございますが、スワジランドという南アフリカの国に兼轄大使館を置くということです。この兼轄大使館というものは、一体どういうものか、御説明願いたい。
  61. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 受田委員もすでに御承知だと思いますが、実館を置きませんで――実館と申しますのは、大使館をその首府に通常置くのでございますが、それを置きませんで、たとえばウガンダならウガンダというものがございまして、それに対してコンゴ・ブラザビルの大使が兼轄いたしておるといたしますと、コンゴ・ブラザビルの大使が、信任状は捧呈いたしますが、そこには常駐しておらないわけでございます。随時参りまして、そこで交渉をいたしておるという形が兼轄でございます。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 兼轄大使の在勤手当というものは、これにちゃんと新設されておるわけですが、その実館のないところに手当があるのですか。
  63. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先ほどちょっと間違えました。ウガンダはケニアの兼轄だそうでございますけれども、そういうふうにケニアの大使がウガンダに参ります。また事実上そこにいろいろな外交交渉も行なわれておりまして、仕事といたしましては一つの大使館よりも非常に大きな仕事をある大使が持つわけでございます。その費用と申しますか、向こうに行っての仕事の大きさ、重要さというものに対する手当として兼轄手当というものがあるのでございます。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 どうもよくわからないのですが、兼轄大使館というのは実館がないのですね、ないところに在勤手当というものがあり、住宅手当がその国の実情に応じてあるというのは、どういう意味かということをお尋ねしているのです。
  65. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは私先ほど少し御質問意味を間違えましたのですが、兼轄地に対して在勤手当を設けるということは、兼轄地に駐在している期間があるわけでございます。たとえばケニアならケニアの大使がウガンダに参りまして、一カ月なら一カ月おる場合があるわけであります。その期間中は在勤俸を支給するわけでございます。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。  それから、いま兼轄大使というものがどのくらいあるのか、数字をお示し願いたい。
  67. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 現在三十三ございます。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 専任大使は幾らでありますか。
  69. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは八十五でございます。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 専任大使は全部認証官である。外務省に専任だけでも八十五人の認証官がおるということになるわけです。  もう一つ、私しばしば質問をして、明確なお答えを得ていない問題があるのですが、この大使、公使、大使は五等級の俸給が給与として与えられており、公使は四等級に分かれておるのですが、その公使で事実上公使の手当を受けていない認証公使が最近特に相当数出てきた、外交上の必要上一応公使という名称を用いる、名称公使と称する。しかし実質的には参事官などの月給を出して、公使の月給を出しておらないにせものである。つまり、給与上はにせものの公使を外務省は任命しておる。外交上の信頼に関する大事な問題を、公使として名称を用いている以上は、公使としての給与を払うべきである。外交上の、大事な日本の外交の任務に当たる人に形だけ名称で公使を与えておいて、中身は参事官その他の書記官の俸給を出すという、こういうごまかしをやっておるのですが、外務大臣いかがお考えか、御答弁願いたい。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうことも御意見として出てくることも当然かと思いますけれども、よく御承知のとおり、これは各国相互に現在そういうやり方をやっておりますし、いわゆる公使参事官というのは、相当各国とも制度の実際上の運営としてやっております。そういう場合には、大体各国とも参事官としての待遇で、それを名称上は公使という名称を使って、特命全権公使として認証を仰いで、そうして特命全権公使としての給与、待遇を与えるものと、これは別であるということは、私はキャリアでございませんから常識的にお答えするのですが、各国の慣例として、戦後外交事務がふくそうしております現状では、慣行として相当広範囲に各国ともにこういう制度を活用している、かように承知いたしております。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 事務当局で御答弁されていいですが、こういうごまかしを外交慣例でどんどんやるというところに――もし外国がこれを日本以上にやっておるとするならば、これは非常に問題だと思う。つまり、実質的に公使でないのを名称上公使にしておる、参事官等の俸給を使って公使を任命しておる、こういうのを世界各国ともみなやっておるかということになる。私ちょっとそれをお答え願いたいし、いま現に名称公使が何人おるか、認証公使は何人おるか、数字をちょっと示して御答弁願いたいのです。
  73. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは、外国のほうがどういうふうになっておりますかということは、結局給与の面でどういうふうになっておるかという問題と、それから制度上どういう形になっておるかという問題と、両方あると思います。日本の制度でございますと、いわゆる特命全権公使というものと、公の名称を持っております公使というものと二つになりまして、これは両方とも外務公務員法で認められておるわけであります。この形の制度をとっております国がほかにもあるかどうかという問題は、これはいわゆる認証官という制度をとっておるかどうかという問題にひっかかりますものですから、これは私もつまびらかにしておりません。  それから、もう一つの俸給のほうの問題は、俸給のつくり方でございまして、公使給というものを特命全権公使にも、それから名称公使にも当てはめてまいりますれば同じことになるわけでございます。たまたま日本の制度が特命全権公使にのみ公使給を与えておるためにいまの格差が出てくるわけでございます。  それから最後の御質問の、特命全権公使の数は四名でございます。それから名称公使は時宜によって与えておりますために、いま私ちょっと数を持っておりませんが、十五から二十の間ぐらいだと思います。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 では認証公使のほかに――佐藤さんも認証公使で、あなたは特命全権公使をやられた経歴をお持ちなんです。その名称公使という人は、名前だけ与えられている、非常に少なかったのがだんだんふえて、いま十五、六になったというのはたいへんな粗製濫造――粗製とは言いませんが、濫造の傾向がある。外交上の便宜主義というものがそこに行なわれておる危険がある。私はやはりここではっきり、公使と名がつけられれば公使の給与をいただきたいものだと思うのです。海外を旅しながら、認証公使、名称公使の差がついておるということは、その該当者にしてみたら、当該者は実に大きなハンディを感じておられると思うのですが、こういう点について、佐藤さん御自身の体験からくる処遇についての御見解をただしたい。
  75. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、俸給のほうの関係につきましては、きめ方できめられるわけでございますから、われわれ、公使という称号をもらいましても、事実国内的にどういうふうな形になっておりましても、同じような仕事をやっておるわけでございますから、そういう意味で公使給をいただければ非常に仕事がやりやすくなる、そういうことは事実でございます。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、直接の慈愛深きあなたの部下、佐藤さんが、高級官僚の愛情のこもった発言がいまあったわけで、できるだけ処遇改善というところで大臣御自身が英断をふるわれることを希望したいと思います。いかがでしょう。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 承知いたしました。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 非常にはっきりしておる、愛情のこもった大臣として、そういうことであればわれわれ国会が協力するにやぶさかでございません。党派を越えてお手伝いをしたい。  次は、外務公務員の在外勤務手当、すなわち在勤基本給というものが今度の法案で改正されているのですが、この算出基礎というものがどうも私たちでははっきりしないものがある。その国の物価の事情、その国の置かれている為替レートの立場、いろいろなものを勘案しておられると思うのですが、今度出された法案は何が根拠であったかということについてもっと親切な資料を私はほしいと思うのです。この国とこの国との比較はどうなっている。たとえばこの中でスーダン、ブラジル、ハバロフスク等の代表三つをとってみましても、非常に大きな差がある。ブラジルとハバロフスクの間を見ましても、ポルト・アレグレの比較を見ましても、非常に大きな断層があるわけです。  それから大使の在勤手当というものは一体なぜこんなに長期にわたってくぎづけにされているか。改正される初号を見ると、大使級の分は全部異動しないで、以下のが異動している。なぜ大使というものはいつまでもくぎづけにされているのか。この二つの問題点を明確に御答弁願いたいのです。
  79. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 最初の基準の問題でございますが、これはもう先生御承知のとおり、在勤俸の基準と申しますのは、ワシントン在勤の、ちょうど勉強を終わりまして出てまいりました、三等書記官といまいっておりますが、いわゆるこれの生活給というものを基準にいたしまして、それに倍数をかけましてワシントンの号俸をずっときめたわけでございます。それから、それに対して各国別の物価指数――これはすでに外務公務員給与に関する法律できめておりますが、各国に行っております在外公館の長は毎年資料を出さなければならないようなことになっております。そういった調査に基づきまして物価のワシントンに対する比率をきめまして、それに倍数をかけまして各国の号俸をきめていくわけでございます。  それから、最後にお話になりました大使の在勤手当につきましては、それ以外と申しますよりも、大使の職務の重要性というものをもっぱら考えまして、そちらのほうで在勤手当をきめていったわけでございます。したがって、御指摘の大使の在勤手当が上がらないというお話は事実でございます。もう六、七年上がらないと思いますが、この点は政府部内の折衝の問題もいろいろございまして上がらないわけでございます。物価のほうの倍率はわりあいに簡単に機械的に出てくるものでございますが、大使のほうの重要性と申しますか、そういうふうなものは数としてなかなか出てこないというのも一つの原因じゃないかと思いますが、ぜひ上げたいと私も思っております。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 私、在勤俸のスタートしたアメリカ大使館の一万八千ドル当時の在勤俸から、アメリカを基準にしてその後の上がり方を見ておると、大使の分は最近数年間上がってないという理由が、各国の大使のウエートというものも配慮しておるのじゃないかという感じもしておるのですが、そういうものはもうこだわりなく――これを見ましても、今度ブラジルの場合は千三百ドルで、最初の分がもうびしっと押えられておる。あとの分はそれぞれ大幅に上がってきておるわけです。あっという間に上がっておる。ブラジルは貨幣価値がどんどん変わって、変動しておる一つの証拠としてほかとの比較でブラジルがどんどん出てきておるようです。こういう数字の変動というものを私どももっと詳細に見て、その国にほんとうに即した手当を差し上げたいものだ、こう思うのです。したがって、きょうはまだ資料をいただいておりませんが、アメリカの三等書記官を基礎にされて各国の物価指数等を参考にされた算定基礎を、すみませんが、ひとつ私にだけは説明の補充として、またできれば他の方々の参考に御配付を願えれば、時間の関係上きょうはこれ以上この問題についてはお尋ねを避けたいと思います。  もう一つ、私、特派大使というのを政府がときどき大統領の就任等で派遣しておられるのを承っておるのですが、これは愛知先生御自身が任命をされると思うのですが、特命全権大使でない特派大使というものの法律的根拠は何か御答弁を願いたい。また実際どういうかっこうかもお答え願いたいと思います。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御案内のように、これは外務公務員法の第二条の一項の第三号に「特派大使」ということが定められております。大体が各国の元首の就任式とか、そのほか国家的な儀式で、各国に対して招待呼びかけがありますような場合、適切と見ました場合に日本からもこの項を活用いたしまして特派大使を派遣しておるのが実情でございます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 その身分というものは一体認証官かどうか。それから、それによって何か別個の特典があるものかどうか。自民党の方々は政府与党でいらっしゃるので、しばしばその恩典に浴せられるわけでございますが、この特派大使ということになると、経歴の上でたいへん栄光に輝くものかどうか、このこともひとつ実質的な効果というものはどういうものかをちょっと御答弁願いたい。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この第二条の第二項にあるように、「日本政府代表して、外国における重要な儀式への参列その他臨時の重要な任務を処理するため、外国に派遣される者」でございまして、これは認証官ではございません。  それから「外国における重要な儀式」、これは国柄にもよりましょうし、先方と日本との国交関係等によりまして、適切と思われる人を内閣で選びまして派遣をするということになっております。閣議決定で特派大使を決定するというのが慣行でございます。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、あまり実入りはないよりですな。この点出られた方々にはたいへんお気の毒でございますが、何かもっと実質的な効果があるように、たとえば勲章をもらえる基準の参考になるとか、いろいろな点で特典をある程度与えられるようなこともないということですね。  じゃ、ここでひとつ、たとえば新しい中国との国交回復のために、外務大臣の、政府間の交渉がまだ済まない間だが、しかし、それに近づける一歩前進というような意味で、軽い意味政府代表というような場合に、中共へ派遣されるというよりな場合があるとするならば、それは、特派大使というのはさっき重要な任務というのがあったか、そういうのに含まれるかどうか、御答弁願いたい。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中国問題についてはなかなかむずかしい問題がございますから、現在、政府の実員的な政策についてどう考えていくかということについて私のほうが申し上げる場合ではないのですけれども、仮定の事実として、たとえばある国に、未承認国というものもだんだん少ないわけではございますけれども、かりに特殊の任務を帯びていくという場合に、あるいはこういう規定が援用されることもございましょうし、あるいはまた特命全権大使のタイトルをすでに持って認証されている者がその役に当たることもございましょう。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 せっかく話がそのほうへ進んだから、私ちょっとついでにお尋ねしたいのですが、モンゴルという国がある。このモンゴルという国は、私、四年前の八月に、政府墓参団としてあなたの党の長谷川峻君と二人が出まして、長谷川君か総理大臣の弔詞を読まれ、私が外務大臣の弔詞を読ましていただいて、ウランバートルで墓前祭を行なわしていただいた。そのときの向こうの第一副首相やアジア局長などの願いは、日本との国交を一刻も早く回復したい、こういう強い願いを持っておったのです。これからまた、その後も代表者がたびたびこっちに来ておられるのですが、このアジアのモンゴルと一緒にモーリタニアの二つが国連に加盟するときの承認国にもなった日本は――この日本人の祖先はモンゴルといわれる。非常によく似ているんです。あの国へ行ってみると、日本人とおぼしき男女がたくさんおります。全く祖先の国だという印象を受けるのですが、あれだけ向こうが切実に日本との国交回復を願っている。この願いをわが国はなぜ拒否しておるのか。たとえば台湾政府にモンゴル代表という国会の議席が二つほどある。そういう意味で、台湾政府が自分の国の一部だという考えがあるのにとらわれておるのか。あるいは賠償問題がひっかかっておるのか。少なくともアジア善隣外交を進めるのに非常にいいモンゴルであると思うのですが、愛知さんの外相時代にひとつ、あれほど切実なわれら祖先の国、歴史の一部といわれておるモンゴルとの国交回復を敢然とおやりになってはいかがでしょうか。御答弁を願いたい。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともなお尋ねでございますが、先般もゴンボジャブ副首相が万博のときにモンゴル政府の正式代表として来日されまして、私もいろいろと懇談をいたしまして、先方の意図しておられることあるいは希望も直々承ったわけですが、これもひとつ将来とっくり慎重に考えていきたいと思っております。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 将来とっくり慎重というのは一体何ですか、大臣。モンゴルの国交回復、あの切実な向こうさまの願い、こちらも何とかしたい、善隣外交国が一つでもふえるほうがいいわけですが、あなたは賠償問題とか台湾政府とか、そういう問題にひっかかりがあるのではないですか。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は私も、この副首相と相当こまかい、またずいぶん率直な意見の交換をいたしまして、問題の所在ということは私なりに掌握しているつもりでございます。同時に、モンゴルの問題については事実上承認しているかっこうになっておりますから、それを踏まえまして十分考えてまいりたいと思っております。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 事実上承認しておるということで考えたい。大臣、私あまり突っ込んでという意味ではないのですが、これほど機が熟しておる国との間に何のひっかかりがあるのか。もうすでに台湾政府には気がねが要らぬときがこの間来たのです。アルジェリア決議案で五十一対四十九というような関係になってきて、過半数になっているという情勢では台湾には気がねなく、台湾には別に敬意を表する道があると思うのです。モンゴルの分については台湾に気がねなく、また賠償問題は別に経済協力等の話でいけばいい。あなたがお話しになられた副首相との話と同じように、われわれも現地でざっくばらんに民間外交をやってきたときに、ほんとうに国をあげて国交回復の道を願っておることをはっきり認めたのでございますから、外交問題であまりとらわれのない形でやれる国だと思いますから、ひとつ、少し早めにということを要望しておきます。  もう一つ、時間が進んでおりますから急ぎますが、ついでに、モンゴルのような国は、特派大使のようなものを出して親善の一歩をはかったらいいという国としては典型だとお考えにならないか、ちょっと関連してお答え願いたい。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 モンゴルとの間には、ともかくこれからの相互の理解と善隣友好関係をできるだけ展開していきたいと考えております。特派大使というようなことも、時宜によって適切と認めました場合には考究の対象には考えてしかるべきかと思います。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 関連するのですが、中国、中共、同じことですけれども、中共墓参団というのが過去に事例があるのです。ところが、中国でなくなった日本人のみたまにその遺族がお参りができない。何とかして中共に墓参したいという願いがある。一度戦犯のときに実行されたことがあるのですが、これは外交的に、民間外交などでこれが成功した場合は、外務省としても十分お手伝いをし、旅券の交付あるいは旅費等に御協力がいただけるのかどうか。厚生省から援護局長も来ておられるので、両方で御答弁を願いたい。中共墓参団の実現について、人道的な、遺族のすなおな、また国民全体も中共にお参りさせてあげたい、この願いを込めた質問ですから、親切に御答弁願いたい。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまもお触れになりましたように、これはかつてございました。そういうことでございますから、先方が理解を示し、また赤十字等々の手を通しまして人道的に扱われるということでありますれば、けっこうなことだと考えます。
  94. 武藤き一郎

    ○武藤説明員 いま外務大臣からお話がございましたように、過去にも二回ほど実例がございます。当方にも、開拓団等でなくなられた方、親子、友人等につきまして、ぜひ現地で追悼の慰霊をしたいという希望がたびたび参っております。私どもとしては、紅十字等を通じていろいろ運動するように指導しておりますが、いま外務大臣からお話がありましたように、私どもこの問題につきましては、外務省ともども前向きで考えていきたいと思います。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 前向きで考えるという両当局言明でございますから御期待申し上げておきます。  いま一つ、海外日系人に対して日本語教育が相当進められておるのですが、私海外をしばしば旅をして、それぞれの国でその母国の国語をあわせて教育している、その系統の国民をよく知っておるのです。日本はいま、たとえばアメリカなどに日系人が五十万もおるわけですが、その子供たち、孫たちに日本語の教育をすることを戦時中抑制されておったという意味で、最近においては二世、三世、四世で日本語を理解しないのが非常に多い。その意味で新しい角度から日米親善の意味日本語学校がどんどん増設されている。ハワイなどには相当数がある。こういう母国の国語をその系統の人に教えようという学校に対して外務省はどういう援助をしておるか。またその先生を迎えるのにはどういうかっこうをとるか。文部省はそれに対してどういう財政的な、人的な援助をしておるのか。アメリカに限らずアジアの国々にも、最近日本語学校がたくさんできつつあるわけでございますが、ヨーロッパにもそういう系統がどんどんできていいと思うのですけれども、そういう海外におけるあなた方外務省在外公館に勤務する人の子弟を現地で教育するという意味からも、安心して外交に従事していただくという意味からも、海外の日本語学校というものはどうしても大幅に強烈に強化される形にならなければならぬと思います。それに対する外務省と文部省の施策を御答弁願いたい。
  96. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題は、私も年来、できるだけの措置をしたいと思いまして、いろいろくふうにつとめ、若干は進んできているように思いますが、まだまだ不十分であります。これは予算の面でもあるいは教師の面でも組織の面でも、それからまた向こうの国の政府の受け入れ方等につきましても、いろいろまだ改善を要するところがあるように思いますので、今後とも努力をしてまいりたいと思います。  具体的なことにつきましては、文化事業部長からお答えいたさせます。
  97. 兼松武

    ○兼松説明員 ただいま大臣の御答弁がございました受田先生の御質問にございましたように、海外日系人、すなわち外国籍を持つ外国人でございますが、日系の外国人の日本語教育というものは、御指摘のあったとおり、特に北米ではたいへん盛んになっておるわけでありますし、またわれわれは戦後南米各地域でこれを助成し、かつできる限り相手国の憲法、州法それから基本法等、法令の許すワク内で、外国人であるけれども日系である、そのために私どもとして当然なすべき日本語教育の協力というものを相手国政府の協力を得て実施するということにつとめてまいりました。  予算といたしましては、現年度に、外務省から三千四百万円を支出いたしておりまして、講師の派遣千五百万、教材の提供に五百六十万、それから現地で御依頼申し上げます講師に対する謝金でございまして、これが千百万、それから国内における教科書編さんのために二百万余りということが現年度の支出でございます。  そのほかに明年度の予算要求で、これはまだ今後の折衝に待つわけでございますが、最近古い日本語ではなくて現代日本語というものを、特にブラッシュアップのために日本現代語の講師を送ってほしいという要望が北米、南米各地から参っておりますので、その要望に応ずるために講師の指導する回数をふやし、巡回講師の数をふやすということをしておりますし、また現に日本語の教育に当たっておられます現地の講師を本邦に招聘いたしまして、現代の日本語を勉強していただく、そういうような予算の要求を含めまして八千六百万円の要求を行なっております。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 相当積極的に取り組んでいるようですが、この問題は、その国と日本との親善を深める上で非常に大事な問題で、身分をどうするか、外務公務員にして先生を派遣するか、そういう問題も含めて積極的に取り組んでもらいたい。よろしゅうございますか。  それともう一つ。おしまいです。  人事院が来ておられると思うが、給与局次長さん、外務公務員一般職の公務員でございます。在外公館の職員でも一般職の公務員。私、在勤手当を改正するのにも人事院はノータッチということはけしからぬと思うのです。一般職の公務員の給与に関する問題であるから、当然人事院がタッチしなければならぬ。ただあなた方のほうはちょっと逃げておられるのだが、一般職の職員の給与に関する法律の第一条に規定される「別に法律で定める」という中に、あなた方は一般職職員給与法運用方針というものを定められて、人事院でかってにこういう方針を定められて、これはわれわれがタッチしないでいいというようなかっこうで逃げておられる、それではいけないのです。当然国公法によってあなた方には一般職給与を全部調査する責任がある。外務省は何か四、五人で担当しておられる。この在勤俸は、在勤俸の法を改めて手当にせよと十何年言うてやっとこの間やり上げたばかり。人事院がタッチしておられたら、とっくに勤務地手当と同じような、名称だけでもすかっと変わったはずだ。そういうおくれが来ておるわけで、外務省の方々の御研究にあわせて人事院が直接タッチされて、在勤手当の直接の検討をあなた方が四、五人、専門で海外をずっと見られて、この国の公務員はほんとうに気の毒だとあれば引き上げてやればいい。理事官とか書記官の下級の人をもっと上げなければならぬとなれば、それをうんと奮発させるとか、愛情のこもった給与政策を、人事院が直接タッチすべきだと思う。外務省もその点人事院に直接教えを受ける。少なくとも七百二十人という職員をかかえておる人事院ですから、外務省の数名の方の御調査をされました中で、人事院に最後の在勤手当の検討をしてもらう、住居手当の検討をしてもらうという形をとるべきだと思うのです。本則に返るという意味で人事院はどう思うか。あなたのほうがむしろ外務省にまかせたのが間違いだった。根元のほうがどういう考えを持っておるか。来年からやる気があるか。その他に必要ならば予算は党派を越えてお手伝いするのにやぶさかではないことは、この内閣委員会の皆さんはほんとうに友情の厚い同士ですから、全くここで保証できると私は思う。保証します。各党とも異論ないと思います。賛成でしょう。(「賛成」と呼ぶ者あり)社会党の方も賛成、公明党の方も賛成です。
  99. 渡辺哲利

    ○渡辺説明員 在外公館に勤務いたします外務公務員の在勤俸につきましては、いま先生のおっしゃいましたように、給与法の第一条で特例を設けて給与法の適用ではないたてまえになっております。そういうような意味もございまして、特例できめておりますものについては私どもが直接タッチしてこなかったわけでございまして、特に在勤俸につきましては、外務公務員給与に関する規定の中で外務人事審議会の議を経てきめるというような手続になっております。現在のところはそういうような形でやるのが適当ではなかろうかというふうに私どもも考えている次第でございます。先生が人事院に対しまして非常に御配慮いただいております点は、非常に感謝申し上げる次第でございますけれども、在勤俸につきましては、私どもといたしましては、そういうことで外務人事審議会もあることでありますから、これには人事院からも任用局長委員として参加しておるような次第でありまして、常々それにつきましては外務省から御連絡はいただいておりますけれども、在勤俸そのものの改定につきましては現在のやり方が、現在のところはよろしいのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 私、これで終わりますが、次長さん、ちょっと問題がある。それは外務人事審議会というのは審議会であって、そこにスタッフがおるわけではない。やはり人事院がスタッフにならなければいかぬのです。七百二十名も専門家を置いておるのだ。外務人事審議会というのは形ですよ。かっこうだけですよ。かっこうだけのものをいかにももったいぶっておっしゃるからちょっとおかしくなったので、どうか一般職の職員の給与に関する法律の本則に返って、給実甲というような、こんな人事院のかってな方針などお取り下げになって、人事院が外務省の方と一緒になって、人事院からも何人か給与専門で海外を歩かれることが非常に必要だと思う。それで外務省の方も楽になられる。みんなしあわせになる。公務員もしあわせになる。昇給するからめでたしめでたしということになる。あなたもう一度よく総裁にお伝え願って御検討願いたいと思う。  これで終わります。
  101. 天野公義

    天野委員長 東中光雄君。
  102. 東中光雄

    ○東中委員 ベトナムの問題について若干お聞きしたいのです。  今回アメリカが突如として行なったあの一連の大規模な北爆とヘリコプター降下作戦について、これは非常に大きなエスカレートでありますし、重要な問題なんですが、事前にアメリカからこういった作戦の内容について日本政府はお聞きになっておったのかどうか、この点をまずお聞きしたい。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお尋ねの点につきまして、私どもとしては事前には通報を受けておりません。
  104. 東中光雄

    ○東中委員 十月の訪米の際にニクソン大統領と会談されておりますし、接触されておったわけでありますが、しかもこの作戦というのは相当前から準備をされておったように伝えられておりますが、その際も何ら日本政府連絡を受けていない、こういうことでございますか。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたとおり、こういうような具体的の作戦等については何ら通報を受けておりません。
  106. 東中光雄

    ○東中委員 十一月二十一日のあの作戦が起こったあと、その内容について連絡をお聞きになっておるわけですか。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 十一月二十一日から始まりました行動については、米国政府の公表を国務省を通じて事後に連絡を受けただけでございます。
  108. 東中光雄

    ○東中委員 この内容は、北ベトナムの領土に地上部隊を投入したという点で最初の作戦で非常に新しい、重大な問題だと思うのであります。ところで日本政府は、極東の平和と安全をいつも言っておるわけですが、この北爆あるいはヘリコプター降下作戦について、先日の本会議でわが党の春日議員質問したのに対して、コメントする立場にない、こういうふうに総理がお答えになっておられるわけですが、この北爆と奇襲降下作戦は、かりにニクソン政権を支持しこれに同調してきた人たちでも、いささかも弁護の余地がない非常に大きなエスカレートであるし、侵略的行動だというふうに考えておるわけですが、コメントする立場にないというふうに逃げられた、これは一体どういうことなのか、非常に重要な問題ですので、コメントする立場にない、なぜこういうことになるのでしょうか。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こうした具体的な行動については、アメリカとしてはアメリカの軍事上の事情からやっていることであると想像するわけでありますけれども日本は、いまさら申し上げるまでもありませんけれども当事国ではございませんし、また十分背景等を承知しないでコメントするということはいささか無責任ではないかと思うのでありまして、わが国といたしましては、基本的にはベトナム問題の公正な平和的な解決ということをかねがね望んでおる、これがいわゆるジャカルタ会議等に示しておるところの日本態度でございますから、それ以上米軍の行動に対して、これを是認するとかあるいは否認するとかいうことはこの際申し上げない、こういう態度をとることが適当かと思います。
  110. 東中光雄

    ○東中委員 昨年の日米共同声明でも明らかでありますけれども、いままで日本政府は、一貫してアメリカのベトナムにおける行動を積極的に支持する、そういう態度を明らかにしてこられたわけであります。一九六四年のあのトンキン湾事件のときもそうでありますし、六五年の北爆開始のときもそうでありますし、六六年のハノイ、ハイフォン爆撃もやっぱりそうであります。ことしのカンボジア進攻についても同じでありますが、日本政府としては直ちに、やむを得ない措置だとか、あるいは自衛の立場からいって当然だというふうな、日本政府態度、見解を明らかにしてこられたわけであります。ところが今度はこの問題、北半分に対して地上部隊が入っていく、これは最初の行為でもありますし、非常に重大なエスカレートの問題でもあるわけですが、いままでの経過から見ますと、今度だけ急にコメントしない、こういうように言われるのは、どうも従来の態度から見て非常に態度を変更されておると思いますが、なぜそうなったか了解に苦しむわけですが、その理由を明らかにしていただきたい。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 別に態度が変わっているわけではございませんで、先ほど申しましたように、米国としてはその軍事作戦上の事情、理由等からやっていることであろうと想像できるわけでございます。当時国でないわが国の立場としては、それに対してさらに積極的に具体的にコメントする立場ではない。十分に今回の作戦行動の背景というようなこともわからないわけでございますから、これを是認したり否認したりということは差し控えるべきであると思います。政府といたしましては、たとえば十月七日のニクソン大統領の提案というようなことは、かねがね平和を願っている政府考え方と大体同じ線に沿うものと思いましたからそれなりの、私もたしか記者団に対して話をしたことがあろうかと思いますけれども、今回のような具体的な行動について一々コメントすべきではないと思います。
  112. 東中光雄

    ○東中委員 もう一回その点で念を押してお聞きしたいのは、たとえばトンキン湾事件が起こったとき、その背景は日本政府はよくわかっておったわけではないはずです。その後のアメリカ議会では、今日ではあの事実は実際でっち上げであったというような議論がされておる。そういう問題が徐々に明らかになってきております。背景がわかっておってもわからなくても、とにかく起こった事態について、ベトナム問題については直ちに日本との関係、アジアの平和、こういった観点からコメントされてきたわけですね。これを今度だけ卒然と、そういう軍事的な要請があってやられたものだと思うから、背景がわからないといわれるのは態度の大きな変更になると思うのですが、トンキン湾事件あるいは北爆開始、こういったときも背景がよくわかって、そうしてコメントなり政府態度なりを明らかにされた、こういうふうに今日ではいえない事態がはっきりしておるわけですけれども、その点はどうなんでしょうか、重ねてお聞きしておきたいのですが。
  113. 愛知揆一

    愛知国務大臣 トンキン湾等のときの経過等については、御承知のように私あのときその衝におりませんでしたから、正確なお答えはできませんけれども、しかし、ただいまお尋ねのような具体的な作戦行動等について、これはどうでございましょうか、一々コメントすべき問題ではない、日本政府態度としてはそれが妥当ではございますまいか、こういうふうに私は今日この件について考えておるわけでございます。
  114. 東中光雄

    ○東中委員 昨年の十一月二十一日、佐藤総理がナショナル・プレス・クラブで演説されましたが、その際、ベトナム問題に関連して「ニクソン大統領はじめ米側関係者が払われている誠実な努力に敬意を表するものであります。と同時に、私は米国の立場に深い理解を抱き、その努力が実を結ぶことを心から期待しています。」こういうふなに言われております。ところで、今回の北爆や奇襲降下作戦というものは、佐藤総理のこのとき言われた、政府が敬意を表し、深い理解を抱いておられるアメリカの誠実な努力の中に、その線の中に入っている行為だというふうにいま考えていらっしゃるのか、その点はいかがでございましょうか。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は基本的には、プレス・クラブの演説のときにも佐藤総理が言っておりますように、ベトナム問題やラオス問題の平和的、また正当な解決のために米側の関係者が払っている誠実な努力に敬意を表するものであって、やはりあくまで平和的な解決を基本的に企図し、それなり努力を払っているということについて一般的な評価と敬意を表したものである、こう思いますし、私自身もそう思っております。  先ほど申しましたように、たとえば十月七日のニクソン提案というようなものは、そういう線に沿っていることがさらに具体的にあらわれたのではないか。それに対する北側の状況とかあるいは俘虜の問題とかいうことを具体的な問題として、これにアメリカが対処したのが今度の作戦行動ではないかと思いますけれども、今回のこの挙につきましては、先ほども申しましたように、まだ十分背景も承知しておりませんし、具体的な一つ一つのこういうことに対して一々コメントすることは、当事国でない日本政府立場としては差し控えるのが当然ではないか、かように存ずる次第でございます。
  116. 東中光雄

    ○東中委員 先ほど申し上げた佐藤総理のナショナル・プレス・クラブでの演説というのは、日本政府の、ベトナム問題に対するアメリカ政府のとっている行動についての態度というものを大きく明らかにされているわけです。そういう日本政府立場から見て、たとえばパリで和平交渉が進んでいる、一方で交渉が進んでいる最中に、俘虜収容だということで部隊を送り込んで――初めて地上部隊を送り込んだ。これはちょっと世界の歴史でもあまりない。そういうことがいま起こっているわけですね。日本政府は、そういう、平和へ向かってのということをおっしゃいましたけれども、誠実な努力ということをおっしゃいましたけれども、明らかにいままでなかったエスカレートになっている、そういう事態が起こっているけれども、それも日本政府がとっておられる態度、支持できる誠実な努力の一環であるというふうに日本政府としてはいまつかんでおられるのか、あるいはそうではないというふうに思っておられるのか。起こっておる行動というのは世界じゅうで大きな論議を巻き起こしておる問題でありますし、きわめて奇妙なエスカレート、重大な侵略行為なんですから、それについて態度がわからないと言われるのはどうも理解ができないわけです。政府のとっておられる態度から見てどうなのか、これも平和へのための努力というふうにお考えになっているのかいないのか、重ねて明らかにしていただきたいと思います。
  117. 愛知揆一

    愛知国務大臣 基本的に、平和的な解決を庶幾して進んでいるということについては、アメリカ態度を私どもは是なりとしているわけですけれども一つ一つの起こってくる事態について、一つ一つ、これはよかった大いにやれとか、これはたいへんいかぬことだ、困ったことだ、やめろとかいうような態度を、当事国でない、参戦国でない日本政府が一々これをコメントすることはいかがでございましょうか。私ども政府といたしましても、これはアメリカの行動に限らず、たとえば北の行動その他につきましても、十分こういう場合におきましては慎重な態度で、コメントすべきものはし、すべからざるものはしない。私は、今回のこの件については、ただいまのところコメントする立場にないということを繰り返し申し上げる次第でございます。
  118. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカは最近北爆について、いわゆる新たな基準と申しますか、これを公言しております。これは戦争を一そうエスカレートさせる意図を持っているものだといわざるを得ないわけです。日米共同声明では、総理大臣と大統領は、「ヴィエトナム戦争沖繩の施政権が日本返還されるまでに終結していることを強く希望する旨を明らかにした。」こうされております。一方、政府沖繩返還協定は明年春から夏にかけて調印したい、こう言われておるわけですが、協定締結までにはもうあと半年くらいしかないわけです。そういう中でベトナム戦争がエスカレートしていく、こうした事態の中で政府アメリカに対して、この新たなエスカレートの北爆基準といいますか、というものに対して何とも言われないということになれば、沖繩返還との関係からいっても、終結の時期ということとエスカレートという問題との関係で非常に矛盾が出てきているわけですが、この点についてはいかがでございましょうか。
  119. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういう御見解や見方もあろうかとも思いますけれども政府としては七二年早期の沖繩返還実現のときまでには、この共同声明で期待しておりましたように、ベトナム戦争が全部きれいに片づかない場合でありましても、現在のいわゆるベトナミゼーションも進んでおり、米軍の撤退も進んでおり、沖繩からはB52が姿を消し、その他等々、われわれの期待するような状況が相当進んできておるということによって、共同声明のいっておるような線が相当具体的に進んでいる、こういうふうに理解し、かつ喜んでいるわけでございます。ですから、全体としてのベトナム問題についての進み方は希望を大いに持っておりますが、くどいようでありますけれども、個々の作戦行動について、どこで起こる行動についても一々これにコメントするということは政府としては慎むべきことである、この態度は守ってまいりたいと思っております。
  120. 東中光雄

    ○東中委員 レアード国防長官が、北ベトナム上空を偵察飛行する米軍飛行士は、北ベトナムからの明白なミサイル攻撃の脅威に直面した場合には、攻撃を受ける前にあらかじめ報復することも許される、こういうことを発表しておりますが、要するに脅威に対しても事前に攻撃ができるという、こういう見解が明らかにされているわけであります。しかもこの偵察飛行というのが自国の領空ではなくて他国の領空へ侵犯している場合のことが前提になっているわけですが、政府はこういうような行動もいままでどおり自衛権の行使として容認していく、こういう態度をとられるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まあこの問題は基本的な議論になりますと長々と論議をしなければならぬと思いますが、一番基本のところは、アメリカ態度としてはベトナムにおける武力行使について、国連憲章の五十一条に基づく集団的な自衛権の行使である、そのワク内において行なっているのだということは、これは基本的な問題としては米国の態度でございます。そこで個々のいかなる事態において実力を行使するかということはもっぱら米国の戦術上の問題であると私は理解しておるのでありまして、したがってその個々の行動について、一つ一つこれはよろしいとか、これは悪いとかいうことを、日本政府として一つ一つにコメントすることは適当であろうかどうか、私は適当でないというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  122. 東中光雄

    ○東中委員 脅威に対して、攻撃を受ける前にあらかじめ攻撃をするとか、あるいはこういうことも言っていますね。米軍飛行士は自機または自分の護衛機がミサイル発射用レーダーにとらえられたと断定した場合、要するに飛行士が断定をした場合、北ベトナム対空陣地を攻撃することができる、こういうふうに国防省のスポークスマンは言っておるわけですが、外務省は、国連憲章五十一条による自衛権の行使の中だから、その個々の行為については一々言わない、いまこういう説明をされたわけですが、北爆停止という問題は、五十一条自衛権の行使とか、そういったものが大前提になっているという考えでいけば、いつでもアメリカ側が戦術上のあるいは軍事的な必要に応じてやっていくということ、そういうことになっていく。攻撃を受けたから反撃するというのじゃなくて、おそれがあるからやる。レーダーにつかまえられるとこっちが見れば先にその施設を攻撃する、こうなれば、北爆停止からいえばエスカレートになっていくわけですね。そういうのもアメリカが自由にやることについて、あるいはそういう方向の態度を明らかにしたことについて、日本政府としては、これは自由にやれることであって、軍事的な必要だからコメントしない、自由にやってもらってけっこうだということに結局なる、そういうふうに思うのですが、そういう態度だと理解してよろしいですか。
  123. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段にお述べになりましたことは、私の考えたとおりでございまして、全体のベトナム作戦というものが国連憲章五十一条である、これがアメリカ態度であるということを客観的に申し上げたわけでございます。その範囲内でいかなる行動が行なわれるかということは、そのときそのときの軍事的な判断に基づく行動であろう、こう思います。同時に日本政府としては、その一つ一つにコメントする立場にない。したがってただいま日本政府としてはこれを大いにけっこうなことだということで、先ほど私がたとえて申しました大いにやれやれと言っているわけでもないし、またこれが困ると言っているわけでもないし、ほんとうに文字どおりノーコメントであるべきであるということを申し上げているわけですから、これ以上は私申し上げることはないわけです。同時にただいま御引用になりました十一月三十日の国防長官の談話とか、あるいは十二月二日の国防総省のスポークスマンはただいまおあげになりましたようなことを言っておることもこれは事実でございます。これは北との相互関連性の問題で、一般論からいえば、こういうふうな米軍が行って行動を起こすような事態が、また基本的に北側からも起こらないことを、われわれとしても平和的な一日もすみやかな解決を望んでいる立場ですから、基本的にそういうふうな争いが起こるようなことが起こらないということを双方の当事者に期待し、願うという立場でわれわれはあらねばならぬのではないか、こういうふうに考えます。
  124. 東中光雄

    ○東中委員 結局アメリカは北爆全面停止というふうに言うているけれども、こういったアメリカ側の一方的な、たとえばレーダーにキャッチされておるというふうにアメリカ側の飛行士が判断したらすぐ先に攻撃をかけるということになれば、全面北爆停止というのは全くごまかし、いつでも破っていくという新しい基準が、しかも非常に侵略的な基準が出されることになるわけですけれども、それも日本政府としては大いにやりなさいとは思わぬけれども、やったらやったで、日本政府はそうあるべきでないという態度はとらない、こういうように聞いていいわけですね。
  125. 愛知揆一

    愛知国務大臣 何しろ紛争が行なわれているわけでございますね。ですから、それぞれ相手方の行動等に対してとっている行動が事実なんでありましょうから、それに対して一々これはこうだ、これはこうだというべき立場にない。これは何べん申し上げてもノーコメント以外に申し上げることはございません。
  126. 東中光雄

    ○東中委員 私の質問を終わりますが、いずれにしましても、そう言われますと(「断末魔だ」と呼ぶ者あり)断末魔だといま言われましたけれどもアメリカがむちゃくちゃなエスカレートをやる。しかしそれも断末魔だからもうやむを得ぬ、そんなことをやらぬでおいてくれ、あるいはやるべきでないという抗議は一切しない、こういうふうな政府態度だ、こうお聞きしてよろしゅうございますね。――これで質問を終わりますけれども……。
  127. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑は、これにて終了いたしました。     ―――――――――――――
  128. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  129. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  131. 天野公義

    天野委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時十三分開議
  132. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、出席されるまで、指名により委員長の職務を行ないます。建設省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、おはかりいたします。  本案に関して、日本住宅公団理事宮地直邦君を参考人として、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、御意見委員からの質疑にお答えいただくという形で聴取することにいたします。     ―――――――――――――
  134. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出があります。順次これを許します。佐藤観樹君。
  135. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうは建設省の設置法の一部改正法案がテーマでございますけれども、せっかく大臣がお見えでございますし、また、建設省関係で日本住宅公団のあり方と申しますか、性格について、かなりいろいろ実際に住んでいらっしゃる方からの不満がございますので、その問題について質問をさせていただきたいと思います。  まず宮地理事にお願いしたいのでございますが、日本住宅公団の主たる設立目的とその基本的性格というものはどのようにお考えでしょうか。
  136. 宮地直邦

    ○宮地参考人 お答え申し上げます。  日本住宅公団法第一条に規定しているところでございまして、住宅の不足の著しい地域におきまして、住宅に困窮する勤労者に耐火等の集団的な住宅を供給するというふうにわれわれは存じておる次第でございます。
  137. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つ、その基本的性格と私が申し上げたのは、住宅公団というのは、いわゆる普通のマンション経営じゃなくて、営利事業ではないというふうに判断してよろしゅうございますでしょうか。
  138. 宮地直邦

    ○宮地参考人 現在のところ御意見のとおりでございます。
  139. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その公団法の第一条に「住宅困窮する勤労者のため」ということばがありますが、これは公団としては大体どのくらいまでの収入の方を想定していらしゃるのでしょうか。
  140. 宮地直邦

    ○宮地参考人 現在においては、住宅五カ年計画におきまして、おおむね年収四十万ないし百万の収入の者を予定しておりますが、物価の上昇等がございますので、その上限等は百五、六十万までの収入者というものを一応の対象と考えておる次第でございます。
  141. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最近つくられた東京都の公団の住宅を見ますと、家賃が三万円というのがあるわけです。そして公団がきめております収入の最低限が家賃の約四倍ということになりますと、月収がつまり十二万以上なければこの三万円の家賃のには入れないということになるわけです。これを十二倍しますとかなりの額になるわけですけれども、これがはたして住宅公団法にあるように「住宅に困窮する勤労者」というものに該当するだろうかということを非常に疑問に思うのですが、その辺のところはいかにお考えでしょうか。
  142. 宮地直邦

    ○宮地参考人 住宅政策全般の問題につきましては、これは建設省のほうでやられておりますが、われわれのほうは、平たいことばで申しますと、おおむね中流の勤労者ということを目標にしているわけでございます。御指摘のとおり、公団におきます一番高い住宅の家賃はどのくらいかと申しますと、二万九千八百円でございます。これはわずか十数戸の戸数でございまして、本年度計画をいたしております家賃の平均は、約一万七千円台の数字が出ておるのでございまして、なお全国の現在におきます公団家賃の平均、これは収入を総戸数で割った意味における平均は九千円台でございまして、一部にいわれておりますように公団の家賃がすべて三万円というような状態ではございません。
  143. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま公団に住んでいらっしゃる方が一つ非常に心配していらっしゃるのが公団家賃の値上げの問題でございます。大臣御存じのように、本年六月二十四日に、住宅宅地審議会が新旧家賃の格差是正という名目で、古い家賃を新しい家賃に、現在つくられている公団の家賃くらいまで引き上げなければならないということを答申しており、それに従って八月一日の朝日新聞のトップで、各種公共料金の値上げという中で公団家賃の値上げがとりざたされました。反対運動もあったわけですが、九月八日の毎日新聞によりますと、大蔵省は、毎年一律引き上げで五%から一〇%分ぐらい引き上げをしたい、増収分を次の公団建設に回したいということをいわれておるわけです。  建設大臣にお伺いしたいのですが、九月十一日の閣議の後の記者会見で、この値上げ問題について慎重に検討するが、来年度すぐに引き上げるようなことはしないと述べておられますが、この考えはいまもお変わりございませんでしょうか。
  144. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 まず全体的のことを申し上げます。  御承知のように公団家賃はできるだけ安くしたいというのは、公団法の趣旨から当然のことなんです。ところが一方におきまして、最近団地をつくるときにあたりまして、その地方自治体から非常にいろいろの要請事項が出てきております。小学校の敷地をただで提供せよ、あるいは公園緑地をつくれ、あるいはショッピングセンターまでつくれ、しかもそれが、全部公団でやれ、こうなりますと、必然的にこれが高くならざるを得ない。それからまた、最近は、交通問題が非常に緊迫しておりますために、できるだけ都心につくれ、こういう要請もございます。都心につくるとなりますと、地価が高いというようなことで、実はあらゆるくふうをしてやっておりますが、これは公団のことだけではとうていできないと思いまして、御承知のように、地価対策等もございまして、地方自治体に公団住宅をつくる場合にあたって、それに必要な経費を財源として地方自治体に与える措置を講じなければいけない。そのために私は、固定資産税、都市計画税もあげてあるし、そうして一方においては公団の建築の様式を変えて、中高層になっておったのをできるだけ高層に持っていく。それから工法もプレハブ形式で安い形でいけるようにする。できるだけ大きい団地をつくっていくというようなことにしてやっております。そういうふうな努力をしてもなおかつ若干値上がりの傾向は、まことに残念でありますが、事実でございます。  ところで、十年前あるいは十数年前につくりましたところの団地住宅というものが、現在に比べれば非常に条件のいいところに、しかも平屋建てとか二階、三階程度のものだ。そういうところを実は再開発したいのです。ところが、入居者の諸君は、そこは動きたくない、再開発には反対だ、そして上げるな、これはあまりに利己主義だと思われます。そこで、同じ政府政策住宅でありながら、条件のいいところで、二千円か三千円のところで、永久にそのまま権利を確保せいというのは適当じゃないだろう。だから、やはりこれは再評価をして、それに見合うところまで値上げはすべきだ、そうしてその値上げした部分を他のほうに、家賃を上げないように、これは緩和原資として使うべきだというのが宅地審議会の御答申でありますので、これはもっともだと思います。しかしながら、また一面におきましては、現実に入っておる人たち立場を考えると、これまたなかなかあれでありますから、そこで、私は現在のところ、四十六年から直ちに上げるということは、そういうタイムリミットを設けて上げるということは考えておりません。ただし、そういうところの再開発に応ずるような態勢を示してもらいますれば、それらの人々をどこかに移転しておいて再開発するということになりますれば、その間やはり緩和策として認めてやるというようなことや、いろいろ具体的な検討の上にできるだけスムーズにそういう目的を総合的に達成するような検討を事務当局に命じておるという段階でございます。
  145. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの答弁についてこまかいところで反論したいところがあるのですが、その前に、住宅公団の方にお伺いしたいのですが、本年の十月から十一月にかけて、収入とか家族構成などを調べる、世論調査と同じような形式で、かなりこまかいことで公団に住んでいらっしゃる方の抽出調査をしている。これがどうも公団に住んでいる方々から見ると、収入まで書かれ、家族構成まで書かれるということになると、しかも、抽出調査をしているんだけれども、その抽出された入というのは、自治会の役員とか自治会活動をしている活動家というのは抜かしている。こういうことから考えると、どうもこれは、古くからある家の家賃の安いことを示すための世論づくりではないかと思います。この調査にあたってもかなりプライバシーを侵害されるようなことがあるのじゃないかということが公団に住まわれている方々からかなりあるわけなんですけれども、本年十月から十一月に行なわれている実態調査、これは一体どのような目的なのかお伺いしたいと思います。
  146. 宮地直邦

    ○宮地参考人 これは住宅公団の調査研究課におきまして委託いたしまして、公団住宅入居者の生活の実態を把握いたしまして、行政全般の資料にいたしたいという趣旨でございます。直接に値上げというものと関連づけては考えておりません。すでに本年行ないましたのは三回目で、第一回目は三十五年、第二回目は四十年、それで四十五年が三回目、こういう趣旨で行なわれたものでありますし、それは無記名でございますし、プライバシーの侵害というような点のないよう、われわれは最初から配意いたしておりますとともに、結果的におきましてもさようなことのないことに留意いたしております。
  147. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに五年ごとに行なわれているわけですけれども、いま公団の家賃の値上げが非常に微妙なときだけに、やはり住んでいる方々は、これは何らかの値上げの資料に使われるのじゃないかということを非常に心配しておりますので、その点一つだけ確認しておきたかったわけでございます。  いま大臣のほうからも御答弁かありましたけれども、住宅宅地審議会のほうで、古い団地の家賃と新しい団地の家賃との格差是正ということで値上げが検討されているように聞いております。まず私はお伺いしたいのでございますけれども、公団の家賃をきめるときには基本的にいかなる方式で家賃をきめているかということを、確認のために公団の方にお伺いしたいと思います。
  148. 宮地直邦

    ○宮地参考人 公団家賃の決定につきましては、これはすでに他の機会にも申し上げたとおりでございますが、建設省令においてきまっておるところでございまして、賃貸住宅の建設に要する費用を、償却期間七十年、五分の元利均等で償却するものとして算出した額に、修繕費、管理事務費、地代相当額、損害保険料、貸し倒れ及び空家による損失を補てんするための引き当て金に、さらに公租公課を加えましたものを月額として、これを基準として家賃を決定する次第でございます。
  149. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、私は一つ確認をしておきたいのですが、ここに一つ公団をつくるといたします。そうしますと、ここにかかった、いま言われたような工事費その他一切の、利子も含めまして総額が出てくるわけですけれども、それを戸数割りと申しますか、人数割りと申しますかにすべて含まれている、つまり原価主義であるということを確認してよろしゅうございますか。
  150. 宮地直邦

    ○宮地参考人 いま申し上げました項目の中で、修繕費だとかあるいは地代相当額という一例を申し上げた、こういうものは変動値となるわけでございます。当初におきましてそういう計算上の基準といたしますけれども、これで七十年間変わらないという趣旨ではございません。
  151. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 必ずしも原価主義ではない。つまり一つの公団の独立採算と申しますか、その公団にかかった費用をそこに住んでいる人が払うということではないということですか。必ずしもそうではないということですか。
  152. 宮地直邦

    ○宮地参考人 一例を申し上げますが、修繕費等につきましては、家賃を決定しました当時には一定率で算出をいたします。ところが、五年たち、十年たち、その時点において計算いたした場合においては、これは不足を生ずるわけです。したがって、いま私が申しました建設省令第九条といりものにおきまして、最初の家賃を七十年間据え置けばそれで公団の収支はとんとんになるという趣旨において九条は書かれておるものではないということでございます。
  153. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 公団の家賃の項目の中をこういりふうに分けることができると私は思うのです。建設工事費、それから人が入らなかった場合の引き当て金、それから損害保険料、それからいま言われたような管理費、修繕費、それから固定資産祝、都市計画税などの公租公課、それから地代の相当額、それに利息。その中で、いま宮地さんが言われたように年を経るにつれて変わるものといりのは修繕費、管理費、これは人件費が幾らか変われば変わってくると私は思うのです。ですが、一つの公団をつくり、そこに入っている方々の家賃をきめる場合には、大体総ワクがたとえば二十億なら二十億かかった、工事費その他一切を含めた総額を大体そこに住む人が負担するという形式になっていると思うのです。  そういうふうにしますと、確かに古い住宅は安くなっておりますし、まあ名目的に安くなっておりますし、新しいやつは高いわけですけれども、とにかく七十年たてばほぼ減価償却ができると思うのです。それを新しいのと古いのとの差額と申しますか、にするということになると、そこに住んでいる人は自分の受益でない部分を払わなければならない。新しい公団ができるがための部分も、そこの住居者というのは払わなければならない。どうもその辺がやはり住んでいる方には納得かいかないんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  154. 宮地直邦

    ○宮地参考人 現在の状態から申しますと、一部のもの、公租公課等は三年ごとに評価がえをして上がってまいります。現在公団は非常に多数の住宅を建てておりますから、これらのものを公団全体といたしまして収支決算をいたしますと、少なくとも四十四年度は各項目においては赤字を出してはおりません。しかしながら、実際に団地ごとに見ましたときには、古い団地におきましては明らかに修繕費は赤字になり、公租公課等も赤字になる。その赤字になっていないということを裏返して申しますと、新しい住宅の家賃で、次第に多数の住宅を建てるのでありますから、その費用によって古い家の管理をいたしておるという状況でございます。
  155. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、ここでいま問題になっている新旧家賃の格差是正のために古い家賃を引き上げるというのは、修繕費が上がった、あるいは管理費が上がったためではないのですね。そういうことになってくると、たとえば一番最初にできた公団住宅に住んでいた人は、そのままほかの住宅ができなかったならば、公団で最初にきめられた家賃をずっと納めていれば、公団としても最終的には赤字じゃなくて、土地の買収価格でいくと二十年で償却できるわけですから、二十年後には少し安くすることもできるわけだし、さらに民間のアパートなんかを考えますと、古くなればそれだけやはり減価償却がされているわけですから、民間のアパートだと長くたった住宅だと安くなるというのが普通なわけですけれども、住宅公団の場合にはそれが逆だということになると、どうもやはり住んでいる方には、ちゃんと家賃は払っている、だんだん減価償却されていくはずなのに、新しい住宅が建つためにその分までも自分たちが持たなければならない。それが単に管理費、修繕費が上がってきたからその分だけ上がるのじゃなくて、新しい公団ができるがために、自分たちに関係のない不受益部分まで負わなければならないというのは、やはり最初から住んでおる方方にとっては、どうしても納得がいかないことだと私は思うのです。ただ修繕費、管理費が上がったがために今度そういう家賃を上げなければならないというならば、それはある程度納得がいくと思うのですけれども、そうじゃなくて、新しい家賃を公団の建設のほうに回せということになると、これはやはり私は納得がいかないことだと思うのですが、この辺はどのように説明しておられますでしょうか。
  156. 宮地直邦

    ○宮地参考人 いまは建設省令の一条文、九条の部分だと思いますが、建設省令第十条におきまして「物価その他経済事情の変動に伴い必要があると認めるとき。」それから第二点として「賃貸住宅相互の間における家賃の均衡上必要があると認めるとき。」「賃貸住宅について改良を施したとき。」もう一項ございますが、いま直接関係のありますのは、第十条の三項目の場合におきましては家賃を上げることが認められているようになっておりますし、ただいま申しました事情によりまして、たとえばあき家家賃の値上げというようなことをすでに実施いたしておるところであります。  なお、先ほどの御質問中に、土地代等につきまして償却というふうなおことばがございましたが、土地代につきましては償却資産とは考えておりせんのと、それから建物につきましては七十年の元利均等償却といたしておるのでございます。
  157. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ひとつ、僕の説明が足りなかったと思うのですが、二十年と申したのは、買収した用地費が二十年で全額まかなえると私は聞いておるのです。  それと、いまちょうど言われましたが、私の考えからいくと、あき家割り増し家賃というのも、どうも私には納得がいかないと思うのです。いま言ったように均等七十年でほぼ償却できるというときに、ほほ一・五倍、隣の同じ間取りで同じように生活している人の一・五倍、五割増しの料金を新しい人が五年後の住宅に対しては払わなければいけない。同じ住宅でありながら隣の人と五割も違う。これはやはり大きな問題になるだろうし、それからいま言ったように、七十年で減価償却できるように均等割りで計算してきたものが、管理費、修繕費というものがある程度上がるというのはわかるけれども、こういう割り増し料金が一体どこへいくのだろうかという疑問がある。住んでいる人にしてみれば、いま言ったように、同じ部屋に住んでおりながら隣の人より五割も高い、しかもよくよく家賃というものを調べてみると、とにかくかかった費用というものは七十年で全部償却できるような計算で家賃が取られておるということになると、どうもこれは住んでおる人は納得がいかないし、家賃の占める割合というものが、昔は一割が家賃の占める割合だといわれておりましたけれども、いまはさらに高いパーセンテージになっておりますので、そういうことになると、やはり住んでおる方は非常に不満が多いと思うのです。この辺、あき家割り増しというのは、どうも本来の公団の大きな原価主義と申しますか、そこからいくと、はずれておるように思うのですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  158. 宮地直邦

    ○宮地参考人 第一点の御質問、土地代について二十年の償却という点につきましては、これは私のほうでは償却いたしておりません。用地の建設に要する経費の百分の五をもって、つまり五分をもって金利として、償却資産としては考えておりません。  それから、あき家家賃につきましては、従来の経験によりますと、建設後五年程度を経過いたしますと、一方におきまして、いま大臣の申されましたように、立地条件の変化が非常にございまして、実質的にアンバランスが出てきておる。一方におきまして、特に公団の初期の賃貸住宅におきましては、具体的に申しますと、流しが、われわれ人とぎ流しといっておりますが、そういうものでありますが、現在はステンレス流しを使っております。あるいは電気の容量が非常に小さい。建物それ自体の効用というものが客観的に落ちているような場合があります。したがって、その不均衡を是正し、かつ、さような建物の効用を上げるために特別修繕を行ないまして、そうして再評価した場合に、およそどのくらいになるだろうかという金額を出しまして、それと現在の家賃とのちょうど半ばころまで、つまり半額を引き上げておるのであります。そうしてその引き上げた金額を一部いま申しました特別修繕それから一般修繕に使いまして、その残りは面開発、市街地とか一部に非常に高い家賃が出る場合がございますので、その家賃の減額に使っておりまして、公団自身の経理といたしましては、一定の年限がたちましたときには利益が出てくる計算をいたしておりません。やはりとんとんにいくということを目途として、かようなあき家家賃の増収分を使用しているのでございます。
  159. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 公団側の収支は確かに私はそうなると思うのです。しかし、そこに住んでいる方は五割取られたって、いまステンレス流しの話をなさいましたけれども、必ずしも流しが全部、そういうふうに五割取られたところは新しくなっているわけじゃないと思うのです。  もう一つは、住宅宅地審議会の新旧家賃の格差是正ということ、つまり五年たったらば、五年前につくられたものは格差を是正するんだというので、また高いほうに是正していくことになりますと、あちこちの公団で五年たったものは毎年――毎年といいますか、五年たったものは格差是正、格差是正でこれをやったら、いつまでたっても私はどんどん家賃というのは上がっていくと思うのです。むしろこの物価高の世の中ですから、私、あとでもう少し大臣にお伺いしたいのですけれども、実はあまり公団ばかり責めても実効のあがらないことですから、もう少しあとでそのことを大臣のほうにお伺いしますけれども、この物価高のときですから、せめて家賃ぐらい、原価主義でいくならばある程度七十年で減価償却できるようにできているわけですから、上げないようなことができるんじゃないか。そうしてもう一つ、格差是正といって、五年たったものは格差是正のために幾らかずつでも上げていくということになると、これはいつまでたってもイタチごっこで、ほとんどの住宅が上がっていくということになる。これはもう住宅対策の悪い現状にあって、非常に住んでいる方に脅威じゃないかと私は思うのです。そういう意味において、五年前のものは上げていくということになると、格差是正というのは、やっていくとどの公団もどんどん上がっていくということになるんじゃないかと思うのですが、これはどういうふうにお考えですか。
  160. 宮地直邦

    ○宮地参考人 お話の根底にございますのは、先ほど申し上げましたけれども、公団の住宅の家賃は七十年据え置いても何とかそれでとんとんになるんじゃないかという――またこれはわれわれ自治会報等を見ておりますと、はっきりそういう趣旨があらわれておりますが、この点明らかに誤りでございまして、機会あるごとに私どもは、さようなことではない、建物については七十年の元利均等で償却する、そういうことでありまして、あとのたとえば公租公課等を見ましても、これは土地の値上がりに応じまして三年ごとに固定資産税の評価がえがございます。これを回収しなければなりません。また管理事務費につきましても御承知のような状況でございます。それから修繕費等に至りましては、年度当初に固定した一定の割合で取りました修繕費というのは、当然修繕する時点における物価において支払いをいたしますから、相当の赤字を出しているわけでございますので、決して公団の家賃というものが当初きめたものによって七十年もつということは私どもは考えておりません。したがって、そういう経費の増ということもさることながら、現在われわれのほうで見ておりますと、新規の募集の倍率とあき家の倍率とを見ますと、常にあき家のほうの入居者の希望が多い。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕 ある場合においては、われわれ自身じくじたるような数字を出す。まだ相当多数の者が公団の住宅に入りたがっている。こういうような事案を考えますと、やはり従来から住んでいること自体において著しく社会常識上安いというものと、現在建てるものとの間にアンバランスがあるということは認めざるを得ないという事情でございます。これをいかに措置するかということに関する法的根拠が、十条の二項の、住宅相互間に不均衡があると認めるときには値上げができるという規定の根拠かと私ども理解しております。
  161. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 宮地さんが確かに言われるように、家賃の中で占めている、いま言われましたような管理費、修繕費、公租公課、こういうものは確かに私どもは年ごとに変化があると思うのです。ですから、その部分の家賃の値上げということならば、ある程度まだ私は説得する力があると思うのです。ところがその増収分を、今度の値上げはその理由ではなくて、いわゆる新しい公団を建てるための資金のほうに回せということになってくると、それはやはり少し話が違うんじゃないかと思うのです。公団に住んでいる人にとってみれば、新しい公団ができようとできまいとそれは無関係のことである。ですから公団の収支という観点からいくのと、そこに住まれている方々のあれからいくのと、ぼくはずいぶん違うと思うのです。  もう一つ伺いしたいのは、大体一つの公団ができれば、その中に建設費というのはすべて入っていると思うのです。たとえば、いま公団では自動車の駐車場からお金を取りますね。自動車の駐車場というのは建設費の中に含まれておりませんか。含まれてないというのは、つまりそこに住んでいる方々のある程度家賃をきめるときに頭割りするわけですけれども、そのときの工事費というのに駐車場というのは入っておりませんですか。
  162. 宮地直邦

    ○宮地参考人 二通りの場合がございまして、駐車場として初めから施設用地費として計画いたしました場合におきましては、その土地代は家賃の中に算入されません。たまたま公団ができ上がりまして不利用地がある、またここを駐車場にしても入居者の方に迷惑がかからないというような場合におきまして、あとから駐車場に変更する場合、そのときには当然その土地代相当分というものは家賃の中に入っているわけでございます。それは一部の方の利益のために施設をつくるわけでございますから、それでは一定の定める額の駐車料金をいただきます。その駐車料金は土地代につきまして二重払いの形をとりますから、それは私のほうの経理操作におきまして環境整備費という項目にその費用を入れまして、たとえば園地施設をつくるとか、入居者の方の利便施設のためにそういう費用を還元いたしておるのでございます。
  163. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この問題については、調べていくにしたがって、ただ公団だけの問題ではなくて、いま政府のやっている住宅政策、実は私は住宅政策なるものがないがゆえにこうなってきてしまったのではないかと思うのですけれども、その問題までかなり根深い問題があると思うのです。  それで家賃の構成を見ますと、これは東京の北区の上飯田第二住宅の場合ですけれども、二DK一万七千六百円のうち利息の部分が六千五百七十円、ほぼ三七・三%、三割強というものが公団が借りてきたお金に対する利息になるわけです。たとえばこの団地の場合に、概略工事費が二十億かかったとなっております。二十億を七十年で返還するためには、七十年後の総額が七十二億幾らになるわけです。これは年五分の利息ですから、あと残り五十二億円を払わなければいけないわけです。もしこの利息分五十二億円を払わなくて済むのだとすると、この六千五百七十円という利息分三七・三%が家賃から差し引かれて安くなる勘定になるわけです。ですから、この家賃を構成している利子の三分の一、これは私はやはり大きな額になると思うのです。現在公団だと一億五千万から二億近い金を毎日利息分として払っているというふうに聞いているわけです。これなんかも政府が――民間資金などの調達によって金利負担が非常に大きいがためにこういうことになっているのだと思うのですけれども、私はここで大臣にお伺いしたいのですが、政府は確固たる住宅政策を立ててこういうような公団住宅に対して一般財源から利子のつかない金というものを出す必要があるんじゃないか。たとえば各地方自治体なんかが全額出資をしている住宅の家賃を見ますと、私の愛知県の場合でも、県営住宅で庭つきで最高が七千円、そして市営住宅の場合には四千円というものができているわけです。現在の住宅公団などのような大きな金利負担にあえいでいるところになると、もっとやはり政府の住宅政策として一般財源からこういうものを出す必要があるんじゃないか。確かに、住宅公団法によりますと、その「財務及び会計」のところには「政府は、公団に対し、長期若しくは短期の資金の貸付をし、又は住宅債券の引受をすることができる。」と書いてあって、しなければならないということは書いてないわけです。しかしやはり一千万人近い方々が住宅がなくて困っているという現状にかんがみるならば、政府はもっと積極的に一般財源の中からこのように利子のかさまない金というものを出して住宅を建てるべきではないか、そう思うのですけれども、建設大臣のお考えはいかがでしょうか。
  164. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。  住宅政策は、いま佐藤さんがいろいろ御議論なさった点から考えてみても、公平の原理ということも大切ですが、その場合、何を標準として公平の原理かということが問題になる。同じ条件のもとに入った人がだんだん上がるのはおかしいじゃないか、独立採算制――これは不均衡だというが、ところが先ほど私が冒頭に申しましたように、より条件の悪いところで、もっともっと高いところの家賃を払わなければならぬという人から見れば、前におった人はたいへんに便利のいいところで安いのは不公平だ、こう言われます。それからさらに現在公団に入りたくても公団に入れない、三十回も四十回も抽選に当たらない、その人から見れば、現在入っておる人は非常に国家の恩恵を受けておるじゃないか、こういうふうに問題が焦点の置き方で変わってきます。ところが住宅政策全体から見るならば、現在では御指摘のように少なくとも三百四、五十万の住宅を必要とするときに、いま佐藤さんが言われたように、一般会計から金を出して低家賃政策をとれということをやる場合には、ほんとうに住宅を必要とする人のほんの一部分よりこれは利益を受けることができない、こうなるのです。だからそこで現在では、やはり一般の民間住宅に入っておるような状況ではいかない。そこで政府政策住宅で、少なくとも社会常識から見て、利潤を取らずして、これならばなるほど現在のサラリーマンの方々も許容し得る限度のうちで、しかもできるだけ多くの人に低家賃に入っていただくというところに焦点を合わせるのが私は至当だと思うのです。そこで、一般会計から金を出せということは非常によく言われまするが、一体しからば国家とは何ぞやというと、これは一般国民なんです。納税者なんです。納税はしない、そうして一般会計からやって多数入れろといったって、これは実質上不可能でございます。そういう意味で、現在ある程度高度成長が続いておりまするために、結局住宅というものは持ち家を与えることが一番いいのです。なぜなれば、貸し家住宅ならば定年に達して収入がなくなった、そういうような場合にはまるきり今度は断層が落ちてしまいますから、そのためには、現在民間企業が高度の成長を遂げておる今日ですから、賃金の一部と見てもいいから住宅政策を企業がやるべきだ。それに対して政府の施策として減税をする、経費として一部認めていく。そうしてまた一面においては、これによって企業もそれほどの大きな負担なくして従業員の安定雇用につながる、こういうような提案をしているのであります。そうしてできるだけ、いまの低家賃にどうしても依存せざるを得ない低所得の勤労者あるいは中小企業で働いておる人々の利益のためにやるということをとるのが現実的な政策であると考えておるのでございます。しかし御指摘の点は私も理解ができまするので、でき得るだけ低家賃の政策住宅をふやすということについては全く同感でございますので、これは一生懸命努力をします。しかしいま一般会計から出した金を、現在入っておる人の家賃を下げるために使うべきか、むしろいま入居をしたくても入れない人のために数多くとるべきかという、これは選択の問題だと思うのです。その選択の問題からするならば、現在はむしろ、大都会においてこれだけの過密化ができているから、私はやはり戸数をふやすというところにいくべきではないかというので、従前の方式、まあ当分これでいくべきだと考えている次第であります。
  165. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私も確かにとにかく住宅をふやさなければならないということは一致するわけですけれども政府の施策を見ておりますと、ここに、これは住宅公団の業務年報ですけれども、昨年度の表ですけれども、これを見ますと、四十年度から政府は住宅公団に対して出資金を出していないわけです。それから利子補給が四十三年度からとまっているわけです。これは少し決算交付などをしているということも聞いておりますけれども、こういう政策を見てみると、どうもやはり、建設大臣の言われたようにひとつたくさん住宅をつくろうという政策から見るとうしろ向きではないか。私の言ったように、住宅の家賃の三分の一というものが利子に食われていってしまうような家賃になっているという現状からするならば、せめてやはり出資金あるいは利子補給というものをさらに継続的により多くしていかなければならないのじゃないかと考えるのですけれども、今後この二点に関して、出資金、利子補給の件いかがでございましょうか。
  166. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 ただいまの出資金と利子補給の問題でございますが、ちょっと御質問趣旨がわれわれの理解するところと違っている点がございますが、実はただいまお話しございましたように、昭和三十九年までは出資金を政府が出しておりました。四十年から切りかえまして利子補給ということにいたしたわけでございますが、三十九年まで出しておりました政府出資金は、もちろんこれは出資金でございますので、金利がゼロでございます。これと民間資金を合わせましてその金利を平均して年五分で家賃計算ができるようにということで、出資金の計算はそれに所要の出資金を出しているということでございます。四十年以降の計算は、民間資金を借りてその金利が年五分より高い部分政府の利子補給で補って年五分に資金控除をするということでございますので、政府の金の出し方の態様は違いますが、出資金を出した場合と利子補給した場合とは、結果においては公団の家賃に及ぼす影響としては全く同一でございます。したがって、家賃計算は七十年五分ということで出資金の場合も利子補給の場合と同ド計算をやっているということでございます。
  167. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかしその場合、出資金の額と利子補給に変えた場合には格段と量が少ないんじゃないですか。
  168. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 その点はそのとおりでございまして、財政事情から一時に大量の出資金を出すか、あるいは年々分けて利子補給で金利を下げていくか、住宅政策立場から申し上げますと、家賃計算の際に年五分という金利で家賃計算できるということを目標にやっておりますので、財政資金の出し方につきましては財政当局のほうの都合もございますし、いろいろの制約もございますので、出資金として出し得ないという財政条件のもとでは、われわれの政策上の立場からいいますと、利子補給によって家賃計算をして五分ということで押えられれば、それ以上の要求はわれわれの立場としてする必要もなければ、またするべきでもないというふうにわれわれは考えております。
  169. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 せっかく住宅局長さんがいらっしゃいますので、一点お伺いしたいのですけれども、現在公営、たとえば都営の場合年間所得が七十四万円以下しか入れないわけです。それで、公団ですと家賃の四倍以上ということでございますから、二万円の人としても九十六万、ほぼ百万以上の人でないと入れないわけです。そうしますと、つまり七十四万円以下百万円以上、この間にギャップがあるわけです。ちょうどこのギャップが結婚してすぐくらいの所得の人なわけですけれども、住宅局としてこの間のギャップをいかに埋めるということをお考えでしょうか。
  170. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 ただいま御質問のギャップの問題でございますが、現在公団のほうは収入上限をきめておりません。下限だけでございます。収入が家賃の四倍ときめてやっております。それだけの計算で申し上げますと、いまお話しのような数字になると思いますが、政策的にわれわれ考えております場合には、公営住宅は二種と一種とございますが、その収入概算、それから公団住宅に入る人の収入概算、それから住宅金融公庫の資金を借りて家を建ててお入りになる階層、それぞれの階層を分けて収入分析をいたしまして、この階層に公営住宅を供給すればいいということで政策の基本を立てております。そこで来年から新しい五カ年計画に入るわけでございますが、その計算でまいりますと、大体年収七十三万円未満の方は第二種公営住宅、それから七十三万円から百七十万円までの方は第一種公営住宅、それから公団その他の公的な賃貸ということで、収入階層別に供給住宅の態様を変えているわけでございまして、その間のギャップはないというふうに考えているわけでございます。
  171. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 だいぶ時間もなくなりましたので、最後に大臣にお伺いしたいのですけれども、公団など大きなものをつくる場合には、非常に工事費が上がるとともに用地の買収費がばく大に上がっております。この公団の家賃の問題と関連して地価の高騰を押える策として今後どのような施策をお持ちでしょうかということをお伺いしたいと思います。
  172. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これは他の委員会でもずいぶん議論になりまして、たいへん大事なことです。それで時間もありませんので、私も端的に申し上げますと、日本ほど土地が上がっている国はありません。こんなことはばかげたことです。その最大の原因は特に戦後の農地法です。よその国には農地法みたいなものはないですよ。ところが、農地法をなぜつくったかといいますと、戦争に負けて海外からたくさんの引き揚げ者が帰った。食糧は戦前には、台湾と朝鮮が入っておって約一千万石、これが入らなくなった。外国からの外貨は一ドルもない。こういう状況下で終戦当時はやむを得ずに農地解放をやらせました。農地解放しても、今度これを黙っておるとまた地主にとられたり使用人にとられてはいかぬというので、農地を固定したのです。ところが、これが経済発展してくると、もう都会地がどんどん発展したにもかかわらず、農地なるがゆえにこれは膠着して転換できなくしちゃった。それと同時に、そういうふうに需要供給のアンバランスが出たために、とにかく土地を持ったほうがあらゆるものに投資するよりも有利だということことで、会社も個人も金さえあれば土地に投資した。何と申しますか、実働のあれじゃなくして、土地値上がりによる利用のためにやられた。それから今度は固定資産税がこれに伴わない。ますますそれを助長する。それから収用法が日本ではありますけれども、これを実際上やらなかったし、またいままでそれをやるとたいへんな物理的な抵抗と社会不安を来たす。それから一方においては公共事業がどんどん進んでいく。今度銀行が預金収集のために町かどのいいところはプライスメカニズムを越えた買い上げをやる。これでどんどん上がっちゃった。そういうことを助成しながら下げろということはできませんから、そこで農地法は、いろいろトラブルがあったけれども、これは改正した。それから新市街地法によって線引きしたその市街地計画地帯には農地法の適用を排除する。それから今度は、近く税制の改正によって空閑地を持っておることがそう利益にならぬからというようなことをやると同時に、もう一つは都会地の近くに大幅の土地供給をしなければいけません。それには、私から言わせるならば、幸か不幸か相当残っているんです。それは水と交通関係が整備されてないところは、現在の日本の大きなデベロッパーも手がつけられないで残っている土地があります。そこで、たくさんいろいろの法律がありますが、少なくとも十カ年間の宅地需要の長期見通しを、はっきり計画的に計算によってこれを示す、それに対してどういうふうな供給をするということをはっきり国民に示せば、これから土地を買いあさっても損だということになって仮需要がなくなる。もう一つは大都市において一番問題は実は水なんです。この水が、実は御承知のように農業水利権、慣行水利権のために、あっても使えないというところに問題があった。これは私は、昨年来日本の経済構造、社会構造が変わっておる今日、過去の水田に依存しておった国の経済の基本が変わった今日、水利権を再検討すべきだ。これは決して農民から水を取り上げるのじゃないのです。農民の必要な農作物の水は全部確保してやる。そのかわりあとの水は全部公共の用に供するようにしてほしいということで農林省といま協議中です。農林省もそれを前向きでやっておる。こういうようなことをやった上に、私は、計画的な都市計画をやっていくことによって、この土地を異常に上げておるこの異常なる現象を解消していく、これが土地政策の基本問題だと思います。これは建設省ばかりではできませんので、関係閣僚と協議をして、少なくともこの数年間には鎮静の方向に持っていきたい、こう考えておる次第でございます。
  173. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最後にもう一点だけお伺いしたいのですけれども、通常国会がもう少したつと始まるわけですけれども、四十六年度から第二次住宅五カ年計画が始まるわけですけれども、それに対して今後の住宅建設の方針と申しますか、抱負と申しますか、それを最後にお伺いしたいと思います。
  174. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほども一部申し上げましたが、端的に申しまして、私は二つに特徴づけようと思います。  一つは、政府施策住宅は、低所得者の貸し家住宅に重点を置いて建設する。これは公団住宅もそれから供給公社のほうもそれに重点を置くべきじゃないか。一方において、それだけではとうていこれは解決できませんので、そこで民間企業が、何と申しますか従業員の福祉対策の一環として持ち家政策をできるだけやってほしい。それに対しては政府がいろいろの税制上あるいは資金上のめんどうをみていくことによって、いわゆる低家賃に対して住宅需要者が殺到して押しつぶされることのないようにすることが一つ。  それからもう一つは、佐藤さんも御指摘になりましたが、土地問題との関連がありまして、現在の総合農政の一環として農民の農住政策を推進すべきである。農家の皆さんが売ってしまえば、これは財産がなくなる。そこで農地を宅地にどんどん転用しなさい。そうした場合には、自分の農地に賃貸住宅をつくる場合、資金がありませんから、それに対しては政府が財政投融資を回してあげましょう、あるいはまた農林中金の金を使った場合には利子補給をしてやるというふうにして、官民両方とも、住宅ができるだけたくさん、しかもわりあいに安くつくれるような政策を進めてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  175. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 低家賃住宅をつくるにしても何をやるにしても予算でございますので、大もの建設大臣になるべく多く獲得していただき、安い住宅を多くつくっていただくことを要望いたしまして、質問を終わりにいたします。どうもありがとうございました。
  176. 天野公義

    天野委員長 山田太郎君。
  177. 山田太郎

    ○山田(太)委員 まず最初にお断わりしておきかいことば、このたびの建設省設置法の一部を改正する法律案については、これまで十分審議をし尽くされたことでありますので多くをお伺いするつもりはありませんが、私自身が内閣委員会の新人の一人でございますので、疑義の二、三点だけをまずお伺い申し上げて、次に公害関係についてもあわせてお伺いを申し上げたいと思います。  そこで、この当該法案でございますが、前の国会でございましたか、あるいはその前でございましたか、企画室を企画部に昇格しなければ機構の整備をはかることが困難である、こういう答弁があったのを一応議事録から拝見しておりますが、その後の機構の整備状況についてどうであるかという点を、まず第一点お伺いしておきたいと思います。
  178. 大津留温

    ○大津留政府委員 この設置法の改正は前々国会にもお願いいたしまして、関東地方建設局外四地建には企画部を設けさしていただきました。残りの四地建は企画室のまま残っておったわけでございます。その分を部にさしていただきたいというのが今回の改正の内容でございますが、ことしの五月にその企画室のまま残っております四つの地方建設局におきまして、その企画室に企画課と技術管理課という二つの課を設けさしていただきました。それで組織の充実をはかったわけでございますが、昨年の六十一国会で当時の官房長が、企画室という、この室という形では通常その下に課を置くのがむずかしいという御答弁をしております。地方建設局のそういう下部の組織についてはどういう形でできるできないということは特段の法律上の定めはございませんけれども、通常の扱いとして部の下に課を設ける、室の下には係を設けるというのが通例でございますけれども、残された四つの地建、業務量は他の地建と同じようにどんどんふえてまいりますし、やむを得ない措置といたしまして企画室の下に二課を設けさしていただいた、こういうわけでございます。
  179. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いままでの通例としては部の下に課を設ける、しかしこのたびはやむを得ない事情によって、ということはいままでに例のなかったことだということだと思うのですが、そのやむを得ないというのはどういうことをおっしゃっておるのかお伺いしておきます。
  180. 大津留温

    ○大津留政府委員 地方建設局で受け持ちます国土計画、地方計画の調査、これは縦貫道の調査をはじめといたしまして広域利水の問題その他いろいろございますが、社会資本の充実が非常に強く要請されておる今日、そういった基礎になる調査が非常に多くなってまいっております。またそれに従いまして管内の府県とか市当局とのいろいろな連絡調整ということも出てまいります。そういうことのために部を認めていただきました建設局は企画部、その下に二課を設けてやっておりますけれども、企画室のところは企画室の下に係だけというようなことで、いかにもこれらの仕事に対応するには機構的にも不足でございますので、あまり例の少ないことではございますが、企画室に課を設けさしていただいた、こういうわけでございます。
  181. 山田太郎

    ○山田(太)委員 例の少ないことだとはおっしゃいましたが、私の知る範囲においては、たとえば室を今度部に昇格させる、その後課を設けていく、それが当然いままでにおいては全部通例であった。これがこの法案が通過する前において、たしかことしの五月だったと思いますが、もうすでに課が設けてあるということは、あえて深く追及しようという意味ではございませんが、しかし、いわゆる常識の上からいって国会を軽視した、法令の上からはこれは当然違法ではない、しかし、常識的な見地からいうと、法案の通過する前に、部ができる前に課ができたということは、これは国会軽視に通じていくと言われても抗弁できないことじゃないか。深く追及しようと思えば幾らでもできるわけですが、もうすでにできておることだから、これからはこういうことのないような注意を払っていただきたいという点、この点についてはまず大臣から御答弁を願いたいと思います。
  182. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま官房長が答弁したとおりでございまして、国会を軽視するなどということは毛頭考えてないわけです。ただ御承知のように、最近の社会資本の充実というたてまえを受けまして、本年度予算も相当大きな伸び率です。そして建設省のやっておることは、道路、河川それに都市計画、住宅、さらにはこのごろ公害に関連する下水道の大幅の上昇がありまして、しかもこれは事前に、予算効率をよくするために十分に調査をしなければならぬ。ところが、いままで各室の中にあった一係だけではとてもこれは消化し切れないということで、幸いと申しますか、現行の法律でも室の中に課を設けてはならないという禁止規定はないのです。ただ従来の慣習上課を設けないでやっておった。しかしながら行政機構というものは、ただ単に行政機構そのものの持つ一つの形式的な形というよりも、これは要するに一般国民に奉仕するための、国策を遂行するための一つの機構でございますから、私は、実情に沿った措置を講ずることが、むしろ国会で御決定なさいました予算遂行上そのほうが適当であるならば、これは決して国会軽視ではないと思いましてやったわけでありますが、しかし、こういうことは法律上は何らあれではありませんけれども、いま山田委員から御指摘になったような疑念もあるでしょうから、どうせ必要であるならば、これは正式に法律上の一つの機構として認めてもらうべきだということで御提案申し上げた、こういうことでございまして、何らこれは先取りしたということではございません。
  183. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの大臣の御答弁で納得しかねる点があるわけです。それはどういうことかと申し上げますと、じゃある面から言えば、これからは、このたびの法案のような、室を部に昇格させるというその法案が通ろうと通るまいと、あるいは室のままでもどんどんその下に課をつくっていく、慣習はどうあろうとも、いままでの通例はどうあろうとも、それを必要に応じてどんどんやっていく、そういう意味に受け取れたわけですが、そういう意味でなかったなら私の勘違いとして、もしそういう意味ならばその点をもう一度明確にしていただいておきませんと、あと質問は続けるわけにはいかないようになってきます。
  184. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 それは私がただいま申し上げた速記録を読んでいただきますればわかりますように、そういうことではない。あなたがあとで言われたことを私は言っているわけなのです。これは慣習上そういうことをやってなかった。しかし、そういうふうな必要性が迫ってきましたので、行政管理庁とも相談の上、これは予算執行上、それから国民の便宜のためにやむを得ないということでやったことでございまして、やむを得ないということは好ましくないということです。したがいまして、この設置法の改正において、今後そういうふうなやむを得ない、やむを得ないということを続けていくんじゃないのだということを示したものでございまして、その点は御理解のほどをお願いいたします。
  185. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの大臣の答弁で、やむを得ないということを今後続けていくわけじゃない、このたびは特例である、そういう点から了承願いたいという御答弁でございますので、その問題の追及はまた他日に譲るといたしまして、きょうはその点についてはこれまでにしておきたいと思います。  そこで、この地方建設局に部を置いて、その下に課を設ける、その仕事の内容です。先ほどの御答弁にもありましたが、いま少し具体的な面に驚いてひとつ説明していただきたいと思います。これは局長にお願いします。
  186. 大津留温

    ○大津留政府委員 企画部の仕事は大きく分けて二つに分けられるかと思います。  一つは、先ほども申しました国土計画、地方計画の基礎になるいろいろな調査をやります。たとえば縦貫道をはじめ国道、地方道を含めました道路計画あるいは河川の水をいかに総体的に全体的に広域の地域にわたって活用するか、広域的な利水計画、こういった公共施設を整備するに当たりまして、その基礎になるようないろいろな調査を担当する、これが一つでございます。  それから一つは、土木技術の管理と申しますか、施工方法の改善とか、あるいは工事費の積算の改善、そういった土木技術、日進月歩でございますから、新しいそういったやり方を取り入れまして、これを職員に訓練するというような土木技術の管理という面があります。  大きく分けてこの二つを担当するということになっております。
  187. 山田太郎

    ○山田(太)委員 さてそこで、いまの御答弁の中にありました河川の問題に的をしぼって、具体的な問題もあわせて数点、時間の制限内でお伺いしたいと思います。  他の地方の建設局の管内にももちろんあることでございましょうけれども、ことに中国地方建設局管内において、岡山県内の三大河川といわれております、その一つである吉井川の水系について、この治水事業は昭和三十八年の災害以来、一応それを契機として促進されてきてはおりますが、しかし未改修区域がまだまだ非常に多い状態でございます。ことに上流山地の荒廃状況や、あるいは中流のまだ築堤のないところや、あるいは下流部分においても、絶えず、何かのちょっと大きな風水があると、その災害に脅かされたりあるいはその災害にあって、あたらむざんな被害を受ける地帯が非常に多いわけで、この点についての治水状況、その後の状況と、それからこれからのやっていこうとするものを、ことに中部地域も含めてその点を御説明願いたいと思います。
  188. 川崎精一

    ○川崎政府委員 ただいまお話しの吉井川につきましては、上流分につきましては昭和十二年ごろ、それから下流分につきましては昭和二十年ごろから、それぞれ上流は中小河川改修、下流は直轄で実施をいたしておるわけでございます。たまたま最近では三十八年にかなり大きい出水がございまして、お話しのように沿線に甚大な被害があったわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、昭和四十一年に河川法の改正に伴いましてこれが新しく一級水系に指定をされましたので、その機会に上流、下流並びに吉井川を取り巻きます山地一帯につきまして工事実施基本計画等を定めまして、その線に沿いまして現在改修計画を進めておるわけでございます。  上流部は主として津山市及び吉井町でございますが、こういった主要な地区につきましては、堤防の築堤、掘さく等を行ないまして、できるだけ降水の疎通量を増大するというようなことで、現在その改修に対処をいたしております。それから下流部、特に和気町から下流でございますが、これは非常に狭さく部等もございますので、全線にわたりまして築堤、掘さく等を行なっているわけでございます。特に弓削地区熊山町等につきましては抜本的な築堤工事を行ないまして改修に資したい。なお下流におきましてもいろいろ高潮等の問題もございますので、干田川のつけかえ等を含めまして、現在改修並びに調査をやっている次第でございます。なお、上流河川流域の砂防事業につきましては、これは非常に風化しております花こう岩地帯が大半を占めておりますので、こういった山地からの土石の流出等を防止しますために、岡山県では特に吉井川につきまして重点を置いているような状況でございまして、特に本年の十号台風等でも新たな荒廃渓流等ができましたので、そういったものにつきましては緊急的に砂防を手配する等の処置を講じております。したがいまして、現在私どもで第三次の掘さく事業五カ年計画を実施いたしておるわけでございますが、その線に沿いまして、しかも吉井川は若干おくれぎみでございますので、他の河川よりはできるだけピッチを早めるように配慮して、現在改修工事を実施しているところでございます。
  189. 山田太郎

    ○山田(太)委員 吉井川の水系においては、ことに改修事業がおくれているということはあなた自身も認めているとおりでございますが、これは強力に推進を要望しておきます。  そこで、まず先ほど断わりました公害の関係の問題に移らしていただきたいと思います。  皆さん御承知のとおりでございますが、先日の四日、五日の連合審査の際に建設大臣から重要な御答弁のあった中の一つに、下水道の事業について、全市街地に対する下水道整備を昭和六十年までに完成したい、このように御答弁があったと思います。そしてその際、その事業費は約十五兆円と御答弁になっておられました。そして第三次下水道整備五カ年計画、この四十六年から五十年の第三次下水道整備計画の大蔵省に対する予算の概算要求として、たしか二兆六千億という答弁だったと思います。そこで、これはまだ概算要求ですからどうなるかわからない現時点ではありますけれども大臣ほんとうに昭和六十年までに十五兆円の下水道投資を行なって、全市街地の下水道整備を、時代の推移を見込みながら計画が立ててあるはずでございますが、御答弁のとおり一〇〇%完成なさる御決意であるかどうか、その点をあらためてお聞きしておきたいと思います。
  190. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先般私が申し上げましたように、従来日本の下水道に関する国民の意識も、それから政府をはじめ自治体も非常に認識が違っておったと思うのです。なぜなれば、昔から日本ことばにあるように、何かあれば水に流すといって、それで大体解決しておった。それは日本は降水量が非常に多い。それから河川が多い。しかも工業的に非常におくれておりましたから廃棄物などがない。それで解決しておったために、どうしても欧米の諸国に比べますと下水に関する認識が非常に少ないのです。ところが、最近このような高度成長と都市化現象のために、これがにわかに重大な社会問題になってきた。これを取り返すためには、相当これは国民の意識も変えなければいかぬし、政府姿勢も変えなければならないということで、建設省はこの下水問題に対しては非常な努力をしたのであります。ところが大蔵当局もその他の関係もなかなかついてこなかったのでありますが、この二、三年ようやく、これはたいへんなことだということで認識を改めつつあったわけです。そこで建設省としては、昭和四十一年に国土建設の長期構想という観点に立って下水道問題を特にクローズアップして考えてみたわけであります。これによりますと、これは大体新全総の計画にも一応取り上げられておりますが、昭和六十年を一つの目標時点として定めまして、大体現在の日本の経済成長が一〇%前後続くものとして考えていきますと、昭和六十年度に市街地総面積が一万二千五百平方キロ程度になる。そこに必要な下水の大体の工事量を想定して、これは物価問題も相当あります、それから技術開発の面がありますけれども、おおよその現在の物価上昇の率とある程度の技術開発をも考えていきますれば、昭和六十年までに十五兆円投資をすれば大体何とかいけるじゃないか、こう考えたわけであります。  その大体の目標を申し上げますれば、公共下水道が約九兆円、それから流域下水道が約四兆円、都市下水路が約二兆円、これで十五兆円になる。そしてそのうち新しい来年度から発足したいし思っておる下水道五カ年計画は二兆六千億に算定した。これには実はいきさつがございまして、新しい経済社会発展計画の中期見通しの全体の政府の財投を五十五兆円ときめて、その中に占める下水道の割り当てを二兆三千億と経済企画庁は持ってきたのです。これを五カ年計画にすれば五年で二兆一千億円になるのですね。それで私は五十五兆円の計画の概要を閣議了解するときにあたって前提条件を設けたんです。これはせっかく各省が協議をしてこの総ワクをきめた中で、さらにぶんどりの議論をすればできないだろうから、まあこれはやむを得ない、私は認める、しかしこれは下水についてははなはだ認識不足である、どうしてもこれは実施の過程において相当脳力的にこのワクを広げてもらわなければだめですよ、ということを大蔵大臣にも経済企画庁長官にも申し上げ、さらに総理にもその点を私から意見を申し上げておきました。したがって実施の段階、予算編成の段階には相当この点は重視してもらいたい、こういう発言をしておいたわけであります。それを受けて、本来は御承知のように予算概算要求を出すときには前年度に比べて一五%以上のアップをしないという概括的なあれがありますけれども、それではいかぬということで、私は経済企画庁長官にも話をし、党側にも話をして、五十五兆円のうちの一兆円が実は調整費になっています。予備費になっています。その予備費の半分をくずして、五千億円を下水道の新五カ年計画に振り当てろということを要請して、原則的な了解のもとに実は二兆六千億という概算要求を出しておる。大蔵省はまだこれは何とも言っておりませんけれども、大蔵大臣にはとくとこの点は私から申し入れをしておるという段階でございます。
  191. 山田太郎

    ○山田(太)委員 このたびの公害国会において建設省から提出されたのは下水道法の一部改正の法案、これまあ一本でございます。しかし非常に重要な公害対策の問題でありますがゆえに、建設大臣のこれまでの努力は、いまのお話のごとく非常に多とするものではございますし、またより一そうの努力を要望するものでありますが、そこで連合審査会で御答弁になったその十五兆円、これの公共下水道あるいは流域下水、都市下水等々に分けての御答弁は先ほどあったわけでございますが、私が非常に心配する一つでございますが、このたびの概算要求の中で四十六年度下水道整備の予算の概算要求は幾らだったですか。
  192. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 下水道関係いろいろ項目はございますが、全部総まとめいたしまして四十六年度の要求額の国費が七百一億円でございます。
  193. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま御答弁がありましたように七百一億円でございます。そこでこれは当然、大臣の御答弁の中にありましたように拡大要求していく、そういうことばはあったわけではございますが、いまの公共下水あるいは流域下水、都市下水の三つに分けるやり方と同時に、これの第三次五カ年計画と同時に、その次の段階においてのやはり計算もできていなければならぬはずだ。それができてなければ、どのようにそれをやっていかんとするのか、その点について、大臣あるいは局長から御答弁願いたいと思います。
  194. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 ただいま大臣から御答弁ございましたように、私どもの役所といたしましては、長期計画というものは五カ年というのを一応単位にいたしまして、財政当局に要求をし、それの閣議決定をいたしてまいっております。したがいまして、来年度から五カ年、四十六年度から五十年度までの下水道の総投資額ということにつきましての計画要求をいたしておるわけでございます。それ以降のいわば超長期にわたりますところの計画につきましては、今後の経済なり財政なり、そういうものの情勢の変化もございまして、なかなか見通しが立ちがたい点もございます。一応先ほどお答え申し上げましたように、建設省自体の国土建設の長期構想というか試案の段階におきまして、六十年時点の推定をいたしておるわけでございまして、それを先ほど申し上げたようなわけでございます。したがいまして、お尋ねのような今回の第三次の五カ年計画の次の第四次というものにつきましては、いま具体的なそういう投資別の内訳等については、現在のところはまだ完全に準備はいたしておりません。
  195. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまのような御答弁だと、これは四十六年から五十年までの第三次下水道整備計画においての二兆六千億円は、これはまず了承できます、金額云々はともかくといたしまして。そこで昭和六十年までに完成しよう、完備しよう、それまでは十五兆円要るのだ。いまのは横割りです。この横割りだけで縦割りのない計画というものは、これは真の計画の中には入らぬといってもいいんじゃないかとさえいわれております。したがって全くこの点についての計算、計画というものがないとするならば、この十五兆円というものも、横割りは出た、だけれども今度は縦割りが出てこない。縦割りがなければある意味においては砂上の楼閣ではないかといわれていることも耳にしております。いまの御答弁では、その縦割りが第三次まではあってもそのあとは全くないんだ、そういう意味でございますか。
  196. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 役人の答弁というものは非常に責任を明確にしなければならぬから、都市局長がそう言ったのは当然のことでございます。現実にこれは省議も決定しなければ閣議も決定しておりません。しかし下水道の長期計画においては試案は持っておるわけです。これはどういうことかというと、二兆六千億の第三次下水道計画ができますれば、これで大体普及率が三八%になります。いままでは二二・八%です。これだけになってきますと、いままではほとんどゼロのように小さな分母であったのが、今度は分母がふえていきます。それで今度は計算していきますから、そうするとこれ以後は年間六、七%の予算増で、昭和六十年には十五兆円になる。したがってこれは非常に可能性の強いことである、こういうことでございます。ただそれを第四次五カ年計画には何兆円、第五次には何兆円という計画はきめてないということを、いま都市局長がああいうふうな答弁をしたのでございます。何らの心づもりはないということではありません。ただ都市局長としては、第三次まではこれは省議を決定して要請しているが、第四次はどうだということまではきめてないということを申し上げたわけでございます。
  197. 山田太郎

    ○山田(太)委員 先ほどのような都市局長の御答弁では、これは大臣のせっかくの連合審査会での御答弁をある意味においては非常に効の薄いものにした、そういう答弁になるとも存じます。いま大臣が、それからあとは六%アップに持っていく、そうしてやっていけば十五兆円になる予定でおりますという大臣の御答弁でありますので、この点はまた他日のことに譲りまして、きょうはその点で了承しておきたいと思います。  そこで、時間はあとわずかになりましたが、具体的な問題を申し上げたいわけでございます。もう少し時間をいただいて、河川法上の問題からお尋ねしておきたい点がございます。具体例を申し上げますと、東京の多摩川です。この多摩川で飲料水を取水しておる、そのために下流においてカシンベック病で子供の成長がおかされている。この報道大臣もお聞き及びのことと思いますが、この問題から考えてみますと、この河川法の清潔のための禁止、制限、これから除外されている普通河川から流入される場合には、有害物質が河川法では取り締まれない、いまの現状では。これは適用河川となっております。そこでおそらく御答弁では、いま上程されておる水質汚濁防止法案やあるいは廃棄物処理法案等々によって、大きく網をかぶせられておるので、問題も解決するのじゃないかというふうな御答弁もあるとも存じます。時間がありませんから先に言っておきますが、そこでその点は大きな間違いであるということも、そういう水質汚濁防止法案あるいは廃棄物処理法案等々の問題点数点をあげて、それはできませんぞということを申し上げたかったわけですが、これは時間がないから、そこでその点について、ことに多摩川の問題はどういう考えを持っているかという点が一つと、もう一つは、現在の河川法では、それが処理できないという面から、河川法も含めて、公害対策として建設省として他の諸法、たとえば下水道法の施行令とかあるいは下水道整備緊急措置法とか、そういうものも含めて法案を改正する、あるいは改廃と言いましょうか、改廃するつもりはないか。この二点を、具体的な問題は多摩川、それから他の法案を改廃する――廃も含めますが、するつもりはないかという点を、これは大臣がもし御無理だったら局長でけっこうです。
  198. 川崎精一

    ○川崎政府委員 お話のように、せっかくきれいでございました多摩川も、最近の非常な地域開発に伴いまして、かなり汚染が進行しておるわけでございます。これは、先生すでにお話しのように、現在の水質保全法の体系に基づきます排出の規制で取り締まっておるわけでございますが、今後は水質汚濁防止法によって、まず根本的な汚濁の原因である排出の問題は、できるだけこれによって規制されるであろう。さらに公共下水道あるいは流域下水道の整備計画も四十四年から軌道に乗っております。したがいまして、排出については、私どもも大いに今後の水質の浄化に対して期待をいたしておるわけでございます。しかし、なお今後とも継続して、水質等の測定あるいは監視の体制は、総合的な河川管理の立場からも強化をしていく必要があると存じます。私どもも、そういった予算措置等を現在要求をしております。なお、すでにかなり下流部等においては汚泥がたまっております。こういったものにつきましても、これは本来の治水上の目的もございますので、あわせてそういった汚濁源あるいは汚染源の除去というものに寄与させるためにしゅんせつ事業等を進めていきたい、こういうふうに考えております。  なお、政令につきましては、これはいろいろ現在審議をされておりまする関係の法案等の関係もございますけれども、私どもとしても、本来併存してもいいのじゃないかと思いますが、なお今後の審議の過程で検討をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  199. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 東京都の下水道の整備状況は、これだけの大都市にもかかわらず、非常に実はおくれております。なかんずく三多摩のごときは、非常にはなはだしいものがあります。したがいまして、東京都はむろんのこと、私どものほうも三多摩地域の下水道整備には今後大いに力を入れていきたい、かように考えておるわけであります。ことに多摩川につきましては、本年九月から公害対策基本法に基づきますところの水質環境基準が設定されております。この基準達成のためには、いろいろ工場の排水の規制もございますが、やはり多摩川に下水道を施設するということは――いまはないということを申し上げても過言ではないと思います。私ども計画では、三多摩地域に大体十六市六町ばかりの市町村がございます。この関係の市町村全体を含めまして、東京都が中心になりました流域下水道というものを強力にこれから進めてまいりたい。現在のところ、一千億程度の投資額を予定いたしております。この流域下水道を強力に進めていきますために、実は今回下水道法の一部改正をお願いしておるわけでございます。  以上のようなことで、これから御指摘の多摩川の流域下水道対策には、さらに一そうの努力を進めていきたい、かように考えております。
  200. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もう時間が経過しましたので、河川法の問題についてはある面、逐条的に、あるいは具体例をあげて改正あるいは廃止すべきであるという点も論じたかったわけですけれども、ことにその次に多摩川の問題、その中の具体的な問題も説明していただく予定でございましたが、時間の関係で、最後に建設大臣から、建設大臣として公害に対しての建設省の根本的な方針、いままで議事録を見ましても、建設委員会においても、あるいは連合審査会においても、建設大臣として、建設省としての公害に対する基本的な問題が、私が承知しておる範囲では御答弁がなかった。したがって、この席で、大臣の公害に対する基本的な、具体面も含めての御説明を求めておきたいと思います。
  201. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 非常に広範な問題でございまして、論すればたいへん時間が長くかかると思いますが、端的に申しまして、建設省の仕事は、大きく言えば公害の発生源を除去する一つの基盤整備を建設省がやらなければならぬという考え方です。いわゆる経済の高度成長に伴うところの公害の大部分は、都市集中です。これは要するに道路交通関係、これが整備されていないために、社会資本が比較的整備されておる都市に集中するということです。したがって、これは私のほうでは、道路整備計画をやる、それから都市再開発をやる、それから住宅政策、これもある意味では全部公害対策の一環になるわけであります。それから水の開発、それから水質の保持、これもそれにつながるわけであります。あるいは御承知のように、砂防その他のこともみんな関係がございます。そこで国全体として公害対策にこれほど熱中しておるのでありますので、建設省としても、各局別の、縦割りの、自分の守備範囲だけに膠着することなく、建設省全体として、この大きな政治問題であり社会問題である公害対策に対処するために、事務次官を長とする公害対策本部を設けまして、機動的にこれはやらしております。そうして、一面においては、公害の一部といわれている騒音の問題、高速自動車道路とかあるいは大きな国道の騒音の問題も出てきておるから、これを防ぐための舗装をどうしたほうがいいか、あるいはこれを防ぐために防音壁をどうするかというような研究から、工事中の騒音をなくするための方法とか、そういう技術的な面までいま検討させておるという段階でございまして、一段と省一体となって公害対策に取り組まさせている次第でございます。
  202. 山田太郎

    ○山田(太)委員 以上で質問を終わらせていただきますが、建設省における公害対策本部の働く機能、こういうものについて、もっと迅速な、具体的な、人員等も含めて、そういうものを他の省に劣らず、建設省の見地において人員、機構というものも整備された対策本部というものをつくっていただきたいことを最後に強力に要望しておきます。  終わります。
  203. 天野公義

    天野委員長 鬼木勝利君。
  204. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 建設大臣に久々に相まみえまして、またあなたの御高見を承りますが、大体本案は、前国会である程度十分審議いたしましたので、今度は時間の割り当てが非常に少ないのですね。あなたの博学なところをいろいろお聞きしたいけれども、ほんの一点だけひとつお尋ねいたしたいと思います。  前回、私質問をいたしました新都計の問題でございますが、御承知のとおり、四十四年六月から始まって今日まで、線引きの状態がどういうふうに進捗しておるか。すでにもう一年有半過ぎておるのです。ところが、この市街化区域、調整区域、こうした問題について非常に難航を続けておる。まず最初に、これが進捗状況について、現時点においてどういうふうになっておるかということについてお尋ねをしたいと思います。それからお話を進めていきたい。大臣でなくても、おわかりの方はどなたでもいいですよ。当然わかっているはずですけれども……。
  205. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 市街化区域の進捗状況でございますが、御存じのとおり、市街化区域の設定作業は、いろいろな段階を経て行なわれることになっています。現在までのところ、八百八の市町村を含みますところの都市圏につきましてこの設定作業を実施いたしておりますが、そのうち、完全に完了をいたしました市町村数で申し上げますと、三百九十八市町村、全体の約五〇%が完了いたしております。それから公告縦覧、本省への事前協議、そういう段階に至っておりますもの、これは実質的にはもう内容がすでに固まっておるものでございまして、そういうものまでを含めますと六百四市町村で、七五%でございます。それから、公聴会をもうすでに終わっておりますもの、したがいまして、現段階におきまして、いわゆる県の素案といったものができ上がっておりますものを含めますと六百八十六市町村でございまして、八五%の進捗状況、こういうことに相なっております
  206. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたたちが答えられることは、これはことばで言うのですから、数字の上で言われるのだから、すこぶる簡単だと思うのですが、実態はそうじゃない。しかも、いまのお話によると、八百市町村の中で約三百八十だ、約五〇%済んでいる。何でも自分に都合のいいような、三百八十で五〇%なんて、だれが計算したって、そんなことあるわけがない、そういう自分に都合のいいような答弁をしないで、もっとはっきりした実態を――それじゃ、事実あなたたちがこの調整にあたって、あるいは市街化区域を設定するのに、報告を受けているのがどれだけだ、県の段階でどれだけだという数字をいま承りましたが、報告だとか、あるいは県の段階だと、それで済んだんじゃありませんからね。それからが実際はむずかしいんですよ。あなたたちは、実際現地に行ってそういう状態をつぶさに調べておりますか。私どもは、現地においてそういうことがよく、すきぐしですいたようにわかっておりますから、われわれは実態に沿ったことを言っているんですよ。あなた方は机の上でそんな安易なことを言って、もう一年半もたっているじゃありませんか。一年半もたっておって、まだ五〇%もできていない、大体そういうことでいいですか。ああ、なかなかよくいっている、みなうまくやった、大いによろしい、そういうことですか、建設大臣。いかがでしょうか。
  207. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 まず冒頭に進捗状況がどうなっているかというお尋ねでございましたので、非常におわかりにくかった点があろうかと思いますが、事実を申し上げたわけでございます。ただ、それでうまくいっているか、こういうお尋ねでございますが、確かに御指摘のとおり、私どもはこの進捗状況に満足をいたしておるものではございません。すでに法施行以来一年有半を経過いたしております。私どもはできるだけすみやかに、できますならば本年の三月までにこの作業を完了したいという当初の目標で努力をしてまいったのがこういう状況になっておるわけであります。何を申しましても、わが国の都市計画行政の歴史におきましても非常に画期的なこの制度の改正でございます。また、今日わが国の置かれておりますところの都市の状況、都市問題をめぐるいろいろな問題、非常に複雑なものがございます。そういうこと等々からいたしまして、この作業は非常に簡単なものではございません。したがいまして、私ども法律が制定されまして、まずこれからの都市政策を推進していく上におきまして、何と申しましてもこれが基盤になるわけでございますので、せっかく努力をいたしましてすみやかにこの作業か完了するようにいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  208. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 この問題は簡単にはいきませんと、非常に複雑な問題がありますと、当然わかっていますよ、そんなことは。やり方だって、いまそんなことわかったんじゃないでしょう。同時に、そういう複雑な問題があるんだ、簡単にはいかない、一年半もたってわずか五〇%足らずである、それで三月までにあと残りを全部やってしまうんだ、それだけの自信がありますか。えらい簡単に言うが、答弁のための答弁では困るのですよ。なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、前回の質問で、この線引きの問題を申し上げたのです。ところが、あなた方が、もう十分努力いたしまして直ちにこれは解決いたしますという答弁であったから、私この問題を出した。そうじゃないじゃないか。だからあなたたちがここでうまいことを言うと、建設大臣は、なるほどみんながそうやっていてくれるか、これはけっこうだといって安心している。実際そうならない。三月までにできますか、あなたは三月までにやりますと言っている。それをもう一ぺんはっきりしてください。
  209. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 前回のこの問題についての御質疑のときは、本年の三月末までを目途ということで努力してまいりたい、こういうふうな答弁を申し上げたかと思いますが、現況は先ほど私が申し上げたような状況でございます。したがいまして、私どもはおそくとも昭和四十五年度末、来年の三月末までに少なくとも大部分の線引きを完了するというふうな目途で努力してまいりたいと思っております。何とかこの目標は達成できるものと期待いたしているわけでございます。
  210. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 決意としては当然そうなければならぬと思うのですよ、こんなに日にちをけみしているのですから。三月までに絶対にやりなさい。複雑な問題があるということは当然のことです。いろいろ困難な複雑な問題があるといまあなたおっしゃったが、私もそういう点は詳しく調べているのです。一体どういう点で複雑な問題があり、どういう点で困った問題があるのか。だったら、困った問題は困らないようにしなければならぬ。複雑な問題は簡易にしなければいけない。その点をひとつおっしゃい。複雑な問題とおっしゃったが、どういう問題だ。困難な問題とおっしゃったがどういう問題だ。私もそれを調べているから、合わなければまた合うことを私はやる。それを言ってごらんなさい。
  211. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 各地域によりましていろいろな特殊事情等がございまして、一がいに申し上げるのもいかがかと思いますが、大体の傾向といたしましては、御案内のとおり、市街化区域を設定する際の範囲の問題がございます。日本の都市の状況は既成市街地を取り巻きまして周辺に農村地帯が展開しておるわけでございますが、その際の農業との調整の問題、土地改良事業等の農業との調整の問題で、市街化区域の線をどういうふうに引くかというようなところで、地方におきましてはいろいろ苦慮しておる点があるように伺っております。  それから、あとは市街化区域を設定されますと、私どもは当面十カ年を目途といたしまして、それにふさわしい町づくりをしてまいりたいわけです。そういたしますと、そのためのばく大な公共投資を必要とするわけでございます。いろいろ税制問題にからみまして、市街化区域に入るといろいろ税金が上がるんじゃないかといったような問題等の利害得失にかんがみまして、実際に現地の個々の地域の線引きにつきまして議論がされ、なかなかその調整がつかないといったような点も、ある程度共通の問題として私ども耳にいたしております。  その他、個別の問題でいろいろあろうと思いますが、大体大きな問題といたしましてはそういった点じゃなかろうかと私どもは思います。
  212. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 おおむね、それで満点とは言われないけれどもね。まだ隔靴掻痒の感はあるが、いずれにいたしましても新都計法の目的、理念は、これはたいへんいいと思うのですよね、これはもうはっきり。これこそ御案内のとおりだ。第一条、第二条にはっきり明記してある。だがしかしながら、これの皆さん方の指導あるいは運営にあたって、住民本位であるか、大衆福祉本位であるか、ただ単にあなたたちが一方的にこれを解決しようとしておるのであるか、そういう点に大きな開きがある。それはその線の引き方に、地主あるいは農業をなさっておる方、そういう方との折衝だとか、あるいはいまおっしゃるところの固定資産税の問題、税制の問題、それは建設省のほうのこれにも載っておる。これも拝見いたしました。しかし、これとても解決できていないのだ。「昭和四十六年度建設省関係税制改正要望」、これとてもまだ解決していないのだ。あるいは地価の上昇、これも閣僚協議会というのができて三回くらいやっておる。だけれども、何も試案が出ておらぬ。話し合いをするばっかり。そういう複雑な点や困難な点を除去していくところの根本がなくして、そうして線引きが円滑にできるわけがない。これはもともと総面積は最初どのくらい計画してあったんですか。
  213. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 お尋ねの点につきましては、この法案審議の段階であったかと思いますが、市街化区域を全国で八十三万か四万ヘクタールということを想定しておったかと思います。ところが現在の状況は、これはまだ全般終わっておりませんから何とも申し上げかねますが、私どもの推定では百十八万ヘクタール程度のものになろうかと思います。
  214. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたのおっしゃるとおり。私の調べておる範囲内においてもそうだ。最初の出発は八十五万ヘクタール程度であったと思う。それが今日は百二十万ヘクタールからになっておる。仕事はできないで量だけをふやしている。ただ計算はどんどんふやして、仕事はいささかもできない。計算合って金足らずというような状態なんです。そういう勇み足をやらなくて、もう少し現実を見詰めて、そうして大衆に納得のいくように、こういう新都計法だったら、これはざる法ですよ。前国会でも私はそのように申し上げた。公聴会をやるにしましても――これは第十六条と第十七条ですか、載っております。公聴会をやるとか、あるいは閲覧をさせる、それは私ども承知いたしております。皆さんが納得するように、そういう税制問題でも一日も早くこれは解決すべきことなんでしょう。そのくらいのことはだれだってわかっていますよ。市街化区域になれば、税金が高くなることは当然ですよ。全部宅地になれば、これは十分の一くらいかかりますよ。ところが農地だったら二百分の一か三百分の一だ。そのくらいのことは前から当然わかっているんじゃないか。いまから仕事をやろうというようになってばたばたして、これはどろぼうを見て縄をなうよりもっと悪い。事前準備というものが何もできていないのです。官房長、私をにらんでいるが、文句があったら、あなた答弁してごらんなさい。
  215. 天野公義

    天野委員長 鬼木先生お続けください。時間もあまりないようでございますから。
  216. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ほんとうにそうじゃないですか。これでは仕事が進むわけがないですよ。もう少し前準備というものをはっきりやらなければ、そしてただあなたたちのお気持ちだけでやります、やりますでは、われわれは納得できない。というのは、現地においていまそういうことで紛争のまっただ中なんですよ。われわれがそういう紛争の中に入っていって困っているのですよ。それをうまく納得させ、うまく話をつけてあげなければならぬ。あなたたちは、ただ机上の計画でぱっとやる。先ほど言いましたように、第一条の目的でも第二条の理念でもりっぱなものですよ。だけれども、これを実際に施行する、この法を生かしていくための前準備が何もできていないじゃないですか。複雑な問題がある、困難な問題があるということはわかっている。そこで税制改正というようなことも、なるほどあなた方は出しておられるけれども、その解決すらできていない。そういう点をひとつ大臣どうですか。その税制改正でひとつはっきりやってください。あなたのほうからここに出ております。ところがまだそれがあなた方の御希望どおりになっていない。ここに書いてあります。おたくから出されたものです。読めば時間がかかりますから……。おわかりでしょう、あなたから出されたのだから。その点ひとつあなたの御見解を……。
  217. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御承知のように、新都市計画法における線引きの問題は、これは非常に個々の方方の利害関係があるために、一方的にやるわけにいきませんので、そのために都道府県知事におおむねの権限を与えているのでございます。しかもそれは都道府県知事が一方的に官僚的にやることなく、十分にその関係住民の意向を聞きつつ、しかも日本全体の今後の社会経済の均衡ある発展という理念を一つの指導概念として、一面においては関係者の啓蒙をしながらこれをやっていくという、手続上の慎重を期しているわけです。そのために時間がかかるのは、これはやむを得ないと思っております。しかしながら、できるだけはやくこれをやらなければならぬということで、十分にそれぞれの地区の状況をお聞きしつつ、あるいは解釈上あるいは指導上の連絡を十分とってやっているつもりでございます。  ところで、いま御指摘になりました税制上の問題は、これは閣僚協議会では一応の合意を得ておりまするが、この権限は私のほうではなくして、御承知のように自治省関係が多いのでございます。実は、最初は自治省ではかなりこれに抵抗しておりましたが、やはり結局は税法上の措置をしなければ、先ほど問題になりました地価問題も解決できないし、市街化地域のスプロール現象も解消できない、また一面におきましては、土地の値上がりを見越したところの、いわゆる土地のブローカーと申しますか、土地投機家の跳梁も押えなければならない、しかも一面においては、すでに数年前からこの市街地区の近辺に投資しておった者が、この線引きによって自分たちの目途としておったところのもうける機会を失うという、非常に複雑なものが、いろいろの形において政治的な力として地方自治体あるいは地域社会において動いたために、相当紛糾しておることは事実でございます。しかしながら、だんだんこの点も理解をされてまいりまして、これはその土地を持っている方の利益というよりも、今後市街地区にお住みになる一般の、それこそほんとうの圧倒的多数の住民あるいはその地域社会の均衡ある発展のための法律でございまするので、これはできるだけ鬼木さんが言われるいわゆる大衆の心を心として進めておる段階でございます。ただし、従来それをやるにしてはあまりにも前提条件としての政府のなすべきことが完備されてない。その点は御指摘のとおりで、私は抗弁はできません。しかし、それにもかかわらずこれをやらなければならぬというところに、この公害の激しい、しかも都市近辺のスプロール化、一方においては住宅を要求し、快適なる都市生活を要求する大衆の切なる要望にこたえるためには、若干の無理もまた準備不十分のことも承知しながらやらなければならぬというのが現状ではなかろうかと考えている次第でございます。
  218. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 さすがに大臣で、大臣の答弁で幾らかほのぼのと先が見えてきたようです。おっしゃるとおり、私はまた一面そういう理論も確かに成り立つと思う。これは時代の要請で、たとえ事前策ができてなくても早急にやらなければならないという非常に迫られた時代の要求であるからやっておるのだ、あらゆる難難を乗り越えてやっておるのだ、そういう非常に積極的な大臣の御答弁は、私も大いに了とします。わかります。しかしながら、同時に一日も早くそういう前途の困難を克服していく、それに全力をあげなければ、これはできないということを私は申し上げておきます。  そこで、先ほどのお話のように、県に委嘱しておる、市町村なんかは県知事の許可が要る、そういうことでこれが進捗しない。おくれておる理由は、いまの税制問題その他いろいろあると思うのです。ですから、皆さんが市街化区域ということを簡単に言われますけれども、入りたい人もあれば、入りたくないという人もある。市街化区域の中に入ればたいへんいいようでございますけれども、入りたくない、入らないで安い税金で農業をなお続けたい。皆さんのほうでは線の中に入れたい、ここをこう線を引きたい。だけれどもそういう人たちには、へこんでもいいからこれだけは入れないでくれという人もある。あるいはまた中へ入れてくれという人もあるのですね。そういうような点について、やはりいろいろな問題がまだ未解決だから、そういう点を解決した上で線を引けばいいと私は思う。だから、それはいまの大臣の御答弁で私なるほどごもっともだと思いますけれども、一日も早くそういう隘路を除去していただくことが最も喫緊の大事なことじゃないか、かように考えておるわけであります。そうしないというと、一年半、来年の三月まで、まだできない。そうこういっていると、あなたたちが総量においてまたふやすというようなことになりますと、これはいつまでたっても解決できない。そして地元では紛争が常に絶えない。そういう点は、西欧なんかにまいりますというと、そうじゃないですね心住民がこぞってこれに協力しているのですね。だからそういうところの指導の点が、いま大臣は、これは相手のあることでございますから、決して一方的にはできません。ごもっともです。だけれども、ある程度においては一方的に押えつけようとしているから、これはなかなか問題が進まない。あくまで住民本位で、あくまで大衆福祉の面からこれを考えて、みなが納得するよとな方法をやっていただかないと、公聴会だとか閲覧だとかありますけれども、それが生きておらない。そういう点に私は大いに意を尽くしていただきたいと思う。そうしないというと、いまもおっしゃっておるように、今回のこの線引き作業によって非常な地価の高騰ということになっている。いま大臣のおっしゃったとおりです。そのために地価対策閣僚協議会なんというのをつくられており、三回ぐらいやったということが書いてあります。それによって的確な結果を出していただかなければいかぬ。皆さん方のやっていらっしゃることは頭でやっていらっしゃるのですね。いま少し現実的に大地に足を踏みしめてやってもらいたいと思う。どうですか、その点ひとつお答えを願いたい。
  219. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおりでございまして、従来市街化区域と調整区域に対する関係者理解の点が十分にないために、自分の胸算用からいろいろ想像して反対する向きもないでもないようであります。もうすでに農地法が変わってまいりましたし、新都市計画法において市街化地域に指定されたところは農地法の適用がなくなるわけです。したがいまして、そこは必然的に農業用地としての従来の特別なる法的保護がなくなることを農民の方が忘れてしまっておる点で、そこに困難があることも事実です。それからまた、たとい調整区域に入りましても、二十ヘクタール程度までまとまって地域住民の合意もしくはそうしたデベロッパーがやる場合には、たとい調整区域においても市街化計画をやらせるんだ。その点の理解もまだ十分じゃない。それからまた、これは農業政策上からいうと、市街化区域に入ったところは一切無条件に農業を営まさせないということではないのです。その場合においても、市街化区域においても家庭園芸なりあるいはまた高度のハウス園芸等は可能であります。そうした場合には施設園芸となってかなりの高度の投資をして、しかも採算がとれるということもあるのでありまするが、そういういろいろの具体的なものがわからないうちに、とにかく自分自身の思惑と将来に対する不安感が御指摘のように混乱さしておる。それをできるだけ解明するように指導しておるのでありまするが、いまの段階ではなかなか人のいうことを聞かずに、自分の思惑で騒ぎが起こるということもないではない。しかし御指摘のとおり、これはそうした土地を持っておる人の利益のためというよりは、むしろ土地を持たずこれから都市生活をしたいという、それこそ非常に多数の一般大衆の利益が第一優先して考えられており、しかもまたその人々が快適というか、条件の整った市民生活ができるための措置だということを考えれば、若干の抵抗があってもこれは進めなければならないと思っておる次第でございます。
  220. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや全く同感です。おっしゃるとおりですね。市街化区域というものは土地を持っておる人のためにやるんじゃないですからね。決してそうじゃなくして、理想的な、ほんとうにわれわれが望んでおるところのきれいな町づくり都市づくりをやろうというのが目的であって、それはこの第一条の目的、第二条の理念にはっきりうたってある。それが目的ですから、こういう線引きのために地価が異常な高騰をする、そういうところに地主がもうけていくというようなことはわれわれ決して望んでいることでもなければ、むしろよくないことだ。これは私が前回皆さん方にお尋ねしたときには二・五倍だというようなことであった。もう今日は三倍以上上がっていますよ。逆に今度は調整区域なんかは地価が三分の一ぐらいに下がっていますよね。そこへ不動産屋がばあっと入り込んで買い占めようとしている。こういうことで、もう調整どころか不調整、無秩序の市街化形成ということになっておる。これはもうほとんど無秩序、でたらめです。そういう状態が今日の状態です。あなた方ではスプロールとこう言っておられるが、ほんとうに無秩序な拡散ですね。これが今日の状態ですよ。だから私は、これをこの法の条文にありますように第一条の目的、理念に沿った実態に一日も早く直していただきたい。そうしないというと、地方はそのために悲喜劇が起こっておるのですね。  そういう点においてここで私は一言申し上げたいんでありますが、先ほど申しましたように西欧なんかでは自発的に協力して、何も県知事がやるんでもなければだれがやるんでもない、自分たちが自主的にこういうふうにやりましょう、こういうふうにやりましょうということでだれも異論はない。あたかも高きより低きに水が流れるごとく自然にできている。そうした最も民主的な市街化づくりを私はやっていただきたい、そういう意味からこうしたざる法をもっとはっきりしていただくために都市基本法といったような、そういう法をおつくりになるお考えはないか、これを大臣にお尋ねしたい。それで、これを一体的に大綱をぴしゃっとつくるようなお気持ちはあるのかないのか、その点ちょっとお尋ねしたい。
  221. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 何事も基本法、基本法ということが日本でははやりましたが、基本法ができて抜本的ということばがはやりますけれども、立法のときにはそうなりますけれども、現実にはなかなか基本法というのは、それこそ訓示規定になり、それから要望的な法律になってしまうのです。現実にいまの都市計画法、新都市計画法、都市再開発法あるいは建築基準法等、これがいわば都市計画の基本的な、具体的な政策でございますので、せっかくの御提案でございますけれども、現在都市基本法というものを考えてはおりません。
  222. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや私は無理にそれをつくれということを言っているのじゃない。法がなくても、都市基本法というものをあなたの頭の中に描いていただいて、そしてこれをスムーズにやっていただけばけっこうなんですよ。法律をつくるばかりが能じゃないんだから、だからあなたの明晰なる頭の中に都市基本法というものをはっきり確立していただいて、これを遂行していただきたい、こういうことを申し上げておるのです。そうしないと、今日の市街化区域の問題はたいへんなんですから。そういう点で、時間が来ましたので、まだちょっとお聞きしたいのが残っているのですけれども、皆さんに御迷惑をかけてもいかぬから、じゃとにかく結論としまして、この問題については、新都計法につきましては格別の皆さま方の御努力をお願いしたい。そして大臣もはっきりしたお考えを持っておられるのだから、勇将のもとに弱卒なし、大臣の意を体して皆さんも大いに努力しなければ、ただ机上の空論ではだめだ、その点を苦言を呈して、終わりたくないけれどもここでひとつ終わりにします。
  223. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     ―――――――――――――
  224. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  建設省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  225. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  227. 天野公義

    天野委員長 次回は、明八日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会