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1970-12-08 第64回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月八日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 近江巳記夫君 理事 塚本 三郎君       石井  一君    稲村 利幸君       宇野 宗佑君    小川 平二君       大橋 武夫君    海部 俊樹君       神田  博君    北澤 直吉君       小峯 柳多君    左藤  恵君       坂本三十次君    田中 六助君       藤尾 正行君    前田 正男君       山田 久就君    岡田 利春君       中井徳次郎君    中谷 鉄也君       松平 忠久君    横山 利秋君       松尾 信人君    川端 文夫君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      遠藤 寛二君         内閣官房内閣審         議官      竹谷喜久雄君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       山本 宣正君         通商産業省公害         保安局公害部長 柴崎 芳三君         運輸省港湾局技         術参事官    竹内 良夫君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 委員の異動 十二月七日  辞任         補欠選任   吉田 泰造君     西田 八郎君 同月八日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     下平 正一君 同日  辞任         補欠選任   下平 正一君     中谷 鉄也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  水質汚濁防止法案内閣提出第二二号)      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出水質汚濁防止法案議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出があります。これを許します。石井一君。
  3. 石井一

    石井(一)委員 ただいま議題となっております法案に関しまして、まず最初に、都市の人口過密によりまして、河川やその周辺の水の問題が、いまや抜本的な対策を立てなければならないことは言うまでもございません。政府は、昭和三十三年に水質保全法工場排水規制法の制定以来、両法を活用してこれまでその規制に当たってこられたわけでございますけれども、今回のこの臨時国会をしおに、さらに新しい抜本的な改正をなされようと試みられておるようであります。非常に基本的な問題でございますけれども、ここに至った基本的な問題について、まず御見解を承りたいと思います。
  4. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘のように、公害問題というのは従来からあったわけですね。しかし、たとえば北海道の僻地にもパルプ工場はあったわけでありまして、そういうような意味において、局地問題であったものが、経済成長によりまして、御存じのように、全国的に公害問題が拡大していくという傾向を示してきたわけです。したがって、これについての考え方を、われわれとしても従来の考え方は改めていかなければならないという問題が一つあるでしょう。それからまた、その一つ一つの問題についても、非常に深刻度が増してきております。こういうことで、全国的な規模で、しかも公害の問題が深刻度を増していっておる、それがやはり政府の姿勢にも大きな変化をもたらしてきた、私はこういうふうに考えておるわけであります。  そうして特に、しばしば指摘されますように、経済の、特に日本のように急角度上昇ということと、無縁ではもちろんございません。しかも、そういう急角度上昇、相当高い経済成長というものが今後も見通されるわけでございます。われわれとしては、この公害問題を片づけるということがあらゆる経済政策の円滑な施行の前提になる、こういう考え方に立って取り上げてまいる。それから、やはり従来、産業間の調整ということが非常に重要な角度になってまいりましたが、最近においては、深刻度が増すに従って、御存じのように、いわゆる健康の問題、あるいはまた自然との調和の観点、こうしたものがいよいよわれわれの意識の上に重要な問題として映ってきた、こういうことだと思うのです。
  5. 石井一

    石井(一)委員 それでは、少し条文の中に入ります。  いま御説明がありましたように、非常に重大な問題でございますが、この法律の第五条では、企業または工場が事前に届け出をする義務があるということが規定されておりまして、もし不都合などが起こった場合には、第八条で計画変更命令がなされる、こういう規定ができておるわけです。これはしごくけっこうではあるのでございますけれども、こういう基本的な問題に関しては、これより一歩進んで、認可制なり許可制を与えなかったのはなぜだろうかという問題、これは多く議論されておるところでありますが、ひとつ御回答をいただきたいと思います。
  6. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 各国において、行政上の法規の立て方あるいは考え方にずいぶん違いがあると思います。私の感じでは、実は、許可制のほうが必ず届け出制よりも行政目的に合っているということになるかどうかに疑問を持っているんです。と申しますのは、日本の場合特にそうなんですが、一ぺん許可をいたします。そうすると、何かあたかも今度は、それが逆にいうと既得権的のような感じになるんですね。排水基準、この程度基準でよろしい、一ぺんそれでもって設定をいたしますと、今度なかなか変えにくい。そういうような感じの非常に濃い国だと私は思っているんです。むしろ、届け出をして、しかし、すぐにその六十日の審査期間の間に審査をしまして、そして必要な令命を出す、こういうことでありますから、私はその点については、必ずしも目的達成の上で不十分なことはないだろう。逆に、これはもうこの程度でいいんだと、許可を与えてしまうと、日本の場合にはずいぶんそういうものがあります。ですから、あるいは条件つき許可と同じような結果になると私は思うのですけれども、きわめて弾力的な制度であって——この点はわれわれも検討したんです。従来の保全法あるいは工排法でこういう形がとられてきた、それを単純に引き継いだわけじゃなくして、どっちがいいだろうと検討しまして、届け出十分目的を達するのみならず、より弾力的に行なえるんじゃないか、そういう感じを持ちました。
  7. 石井一

    石井(一)委員 届け出制がいいか、あるいは認可制がいいかということは最も議論を呼ぶところでありますが、どちらにいたしましても、権利の留保というのは企業側にあると思うのでございますが、その点は、私はほかに問題を持っておりますので次に進ましていただいて、第四条の「排水基準に関する勧告」において、企画庁長官都道府県に対して勧告できるということがうたわれておりますけれども、もし県ごとアンバランスが生じた場合に、一体調整役というのは、そういう権限はどこにあるのか、これは一つ疑問が出てくると思うのでございます。  それともう一点、一番最後に「排水基準変更すべきことを勧告することができる。」ということがありますが、この場合に、なまぬるい処置に対して企画庁長官なりが勧告をするということがうたわれておるのでございますが、その反対に、おそらく少し緩和をしなければいかぬというふうな場合も起こり得ると思うのです。その場合の権限はまたどこにあるのか、この二点をお答えいただきたい。
  8. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 この第三条でございますか、いまの御指摘の点は、大体まず排出基準をきめます前に環境基準というものがあるわけですね。それで環境基準排出基準というものが見合うことになっています。そうしてこの環境基準政府設定するわけです。この政府設定いたしました環境基準に合うようなきめ方をする必要があるという点。あるいはまた、基準をきめる際にはその前提として測定がなされなければなりませんけれども、この測定方法が、御存じのようにシビルミニマムと称しまして、最低基準を国がきめます。その測定方法と食い違っても困るわけです。そういうふうな点をこの政令で定めまして、そうしてその基準による。しかし、府県知事権限を与えたんですから、上のせの程度というものは、原則として府県知事の判断でもってやっていただくということで、特別の制約を私のほうは加えるつもりはございません。もちろん実際問題として、非常に非常識なようなことが起こるようなことが万一ありますれば、これは十分行政指導でもってやってまいることができると思います。  それから、経済企画庁長官都道府県がきめる場合に通知をするということになっておりまして、これは通知でありますから、別に許可でもなければ、協議でもないのでございますけれども、やはりそういう際に、あまり事態に合わない非常識なものがあれば、十分相談できると思います。  四条の変更の問題でございますが、まあこれも私どもは、何か特別に必要があるというときに限っておりますが、ただ御存じのように、数府県にまたがる大きな川なんかの場合においては、やはり、あまり上流の県と下流の県でもってアンバランスがあるというようなことは、これは好ましくありません。ですから、知事権限ではございますけれども、そういう点は、二つの県、三つの県で相談をしてもらうという必要があります。そういう際にやはりわれわれがタッチするチャンスは出てくる場合がある、こういうことであります。
  9. 石井一

    石井(一)委員 最後にお伺いした点でありますが、それでは、排水基準変更するというのには、緩和する場合も当然含まれておる、そういうケースもあり得る、こういうことでございますか。
  10. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 理論的にはもちろんあり得るわけであります。
  11. 石井一

    石井(一)委員 野党じゃありませんから、その程度で次に行かしていただきます。  そこで、二十八条について次にお伺いしたいと思うのでございますが、結局ここには、政令で定める市の長に、都道府県でなしに委任できることがある、こういうふうにうたわれております。これは長官、どんな市に及ぶのか、この点が一点と、それからその次に、どの程度、どの範囲にまで委任考えておられるのか、この点をひとつ御回答いただきたい。
  12. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 政府委員に答弁させます。
  13. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 二十八条の委任は、政令で定める都市都道府県知事権限委任する規定でございますが、私どもいま考えておりますのは、地方自治法に基づきましていわゆる政令指定都市となっておる市に対しては、都道府県知事権限を大体全面的に委任する方向でいいんではないかと思っております。その他の市であっても、やはり一部の事務委任したほうが適当と思われるものが当然出ると思いますが、これにつきましては、届け出の受理とか計画変更命令改善命令報告聴取及び立ち入り検査等の各種の権限知事委任されておるわけでありますが、こういったもののうち、市の受け入れ体制等考えまして、どの程度までの範囲委任するかということは、これから少し検討してその範囲をきめたいと思っております。大体ただいまのところ、そういった形でこの政令の内容を考えたいと思っておるわけでございます。
  14. 石井一

    石井(一)委員 私がこの問題を取り上げておりますのは、公害問題は原則的に大都市に非常に問題が多いわけでございまして、そういう意味で、いま御指摘のありました指定都市関係公害問題が非常に起こっておる、こういうことであります。したがって、この点は今後いろいろ御検討になって、いろいろな委任事務をきめられるわけでありますけれども、これは大幅な権限指定都市に与えていただかないと、ほんとうに大都市周辺公害問題は解決できないということでございますので、その点を長官にもとくとお願いをしておきたいと思うのであります。  余談になるようでありますが、私は神戸の出身でございますけれども、全国で初めて神戸市当局と神戸製鋼所が自主的に協定を最近結びまして、住民の福祉を阻害しないような協定をつくり上げておりますが、このこと自体も、神戸市がすべて企業と直接に取引をして当たっておるということを如実にあらわしておるものでありまして、県に権限を与えても、指定市の問題というのは全然解決しないということをいっておると思うのであります。  そこで、いま政府委員からお答えがございましたけれども、もう一度確認をしておきたいと思うのです。府県に与えるほとんどの権限指定都市に与えようという基本的な考え方である、ただし受け入れ体制その他によってある部分は削除される場合もあると、こういうふうに判断していいのでございますか。
  15. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 政令指定都市にはほぼ全面的に委譲するつもりです。問題は、それ以下の小さな市がございますね。これについては、行政能力の問題、あるいは小さな市が接近していまして、市ごとにあまり別々な基準ができるようなおそれがあるというようなことも、やっぱり考慮しなければなりませんから、そうした小さな市については、あるいは府県知事でやったほうがいい場合があると思います。しかし、政令指定都市原則として委譲する、こういうことに考えております。
  16. 石井一

    石井(一)委員 その次に十六条でございますけれども、二十八条の規定に十六条のみを除外してある。これは大体想像して理由はよくわかるのですけれども、なぜ政令で定める市にこの権限を与えることができないのだろうか。おそらく指定都市の中ではこういう問題も含まれてくるのじゃないか、こう思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
  17. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この十六条の規定は、いわゆる測定計画ということになっておりまして、御承知のように、水質汚濁防止のために、その前の十五条の規定で常時監視をするということがございます。このためにまた、公共用水域についての水質測定をやるわけでございます。この計画のことが十六条に書いてございます。  現状は、御承知のように、たとえば直轄河川のように、国の出先機関管理するものもございますし、あるいは港湾のように、港湾管理者管理するものもある。そういったところでも現実測定は行なわれるわけでございます。そこで、一つの県につきましていろいろの機関がばらばらなことをやられては困りますので、この測定計画ということによりまして、都道府県知事がその全体の計画の策定をする。もちろん、そういった国の出先機関等現実測定等をする機関の長とは協議をいたしますが、そういう形で考えております。したがいまして、この規定は、県の範囲で統一的にこれをやっていくことが必要だろう、こういうことから、この測定計画そのもの都道府県知事権限として持たしたほうが実情に合う、こういう考え方で市にこれを委任することはいたさない、こういうふうにいたしたわけでございます。
  18. 石井一

    石井(一)委員 それでは、次に二十五条に移りまして、「国の援助」というところでございますけれども、ここにうたわれておることは、具体的にどういうことを考えておられるのか。公害を防止するために当然企業がなすべき行為というのはたくさんあるわけでございますけれども、やはり資金の不足だとかいうふうなことで、実際上はやらなくちゃいかぬものもできないという面も、現実にはよく出てくるのじゃないか。その点で、もちろん非常に前向きに国の援助ということをお考えになっておられると思うのでございますが、その点をまずお答えいただきたいと思います。
  19. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 お答え申し上げます。  水質汚濁防止法によってこういった規制をかけられますと、企業の側ではいろいろの義務を負うわけでございますが、同時に、こういった全面的に都道府県知事あるいは地方公共団体権限委任されますので、そういった面での負担の問題も出てまいります。そういうことから、こういった施策にあたりまして、国ができるだけ財政的な援助をする、あるいは技術的な援助もする、こういうことにしてまいりたいと思っております。特に、新しく入りました、たとえば水質基準設定のための調査の問題、あるいは監視測定の問題、こういったものは、当面、やはり地方公共団体に対する国の補助によりまして、これを推進してまいりたいと思っております。  そのほか企業側につきましても、測定義務を課したり、あるいはいろいろの施設を現実にやってもらわなければなりませんが、このほうについては、御承知のとおり、税制上の問題あるいは金融上の問題で現在いろいろ措置ができておりますが、こういったものをさらに強化してまいる必要があると思っております。
  20. 石井一

    石井(一)委員 政府側の技術的な御回答はよく理解したわけでありますけれども、やはり公害防止のためにもう少し政治的な配慮が、たとえば融資の問題であるとか、あるいは特別なローン制度を設けるとか、税制上のいろいろな優遇措置を行なうとか、こういう基本的な問題を、政府の両大臣出席でございますが、何か新しくお考えになっている面があるんじゃないかと思うが、この点をお伺いしたいと思います。
  21. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 目下のところは、現在の税制上の恩典であるとか、あるいは財政投融資関係で逐次これの援助を広げております。ですから、やはりそうした方向事態に即して逐次充実強化していく、こういうことだろうと思います。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、特に中小企業についてそれを考えておるわけでありまして、御承知のように、中小企業振興事業団あるいは中小企業関係政府関係機関、これらはすべて公害関係の貸し出しの特別のワクを持っておるわけでございますけれども、来年度はいよいよ事が本格的になりますので、それをひとつ飛躍的に増額してまいりたいと思っております。  この点は金融でございますけれども、そのほかに税制で、たとえば固定資産税の減免、それから耐用年数、償却の特例等考えております。それから公害防止関係機械器具でございますけれども、それのリースといったようなことも、施策としてやってまいりたいと思っております。
  23. 石井一

    石井(一)委員 この二十五条は企業側に対する国の援助がうたわれておるわけでありますけれども、この法案の中には、地方公共団体に対する国の援助というのは、どこにもうたわれてないような気がいたすわけでございますが、もちろんほかの公害関係法案の中に、公害対策基本法あたりではそういうことがうたわれておると思うのでございますけれども、私は、やはり地方公共団体も、公害防止に真剣に取り組んでいく場合に、財政的な援助というものを求めるケースが非常に多くなると思うのでございますが、水の問題でそういう必要が出てきた場合に、どういう解決がなされるのか。また地方公共団体に対しても、そういう援助がなされるという形になっておるのかどうか、この点をお伺いしたい。
  24. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、本法自体はいわゆる水質規制ということでございまして、基準を設けてそれを守らせる、こういう行政的な措置でございます。ですから、本法自身に要する費用というものは、そう多額なものではございません。しかし、測定に関する費用であるとか、監視に対する費用であるとか、それぞれのものについて、企画庁のほうでも補助金を要求しております。そういうことでできるだけ地方にも援助を行ないたい。  問題は事業費でございまして、実は事業費の分野はこの法律にないわけなんでありまして、これはたとえば下水道法というようなことになるわけでありまして、下水道法においてやはり相当高い補助考えておるのは、御存じのとおりであります。そういうふうに、個々の事業費についてまた対策考えていく。あるいはまた、事業費の面でもって著しく地方財政負担を及ぼすというようなことになりますれば、全体として地方財政についての援助をどうするかというようなことも当然考えられるわけでありまして、自治省方面でも、その点についてはいま構想を練っておるようでございます。
  25. 石井一

    石井(一)委員 私がこの問題をこの時点で指摘いたしておりますのは、特に港湾の問題でございまして、どこから出てくるかわからない、規制のできない排水によってたいへん港湾が乱れてきておるということは、御存じのとおりでございます。私のほうの神戸港などは、船の出入りが多いということだけでなしに、たとえば船の喫水線が変色したり、あるいはスクリューの色が変わったというようなことも、ときには起こっておる。また、沿岸の漁民がこれまで取っておった魚の種類というものが変わってしまった、海が全然泳げないというような状態が起こっておる。これに対して、工場排水規定するだけでは問題は解決しないわけでして、やはりこういう複合公害というような問題に対しては、地方公共団体があらゆる措置企業側と協力してとっていくことによって問題が解決する、というふうなことがよく起こり得るわけでございまして、そういう点で、この法律の本質はよく理解しておるのでありますけれども、そういうふうに、別の角度からの国の援助というものも同時にやっていかないと、出てくるところだけ押えたのでは問題が解決しない場合もよくあると私は思うのであります。  そこで、特定重要港湾の中で、これまで指定水域指定されておる港湾があるのかどうか。またその基準はどういうことだったのかということを、経済企画庁運輸省のほうからお答えいただきたいと思います。
  26. 竹内良夫

    竹内説明員 特定重要港湾、現在十七港ございますが、そのうち四日市港、姫路港、北九州港の三港につきまして指定されております。
  27. 石井一

    石井(一)委員 その三港を指定水域指定されておる基準について……。
  28. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この実際にきめられております基準は非常に詳細なものでございますので、資料で提出したほうがあるいは適当かと思いますが、たとえば一例として、四日市鈴鹿地域について申し上げてみますと、最も問題になる石油化学等につきましては、いわゆるCODと申しますが、化学的酸素要求量、これが一日平均二〇〇PPM以下、最大三〇〇PPM以下、浮遊物質量につきましては、一日平均一二〇PPM以下、最大一五〇PPM以下、そのほかPHでございますとか、そういったものがきめられております。これは、各水域の現在の汚濁実情等考え環境基準ということを頭に置いて、こういった排水基準がきめられております。  なお、先ほどの御質問に関連して申し上げておきますと、現在、特定重要港湾では、運輸省のほうからお話があったように、三港だけ水質基準指定されておりますが、現在調査中のものがありまして、神戸港もそうでございますが、大阪港も含めまして大阪湾港湾、それから東京港、名古屋港、いずれも近く、年度内ということを考えておりますが、排水基準設定をいたしたいと思っております。
  29. 石井一

    石井(一)委員 私は、この三港のみが指定水域になるという状態じゃなくて、その他の重要港湾が非常に悪い、重病患者であるということを本席で御指摘申し上げておきたい。そして特に重要指定港湾に対しては、今後、水の管理ということに関して特別の御配慮をいただきたいということを申し上げておきたいと思うのでございます。いま御回答のありましたように、目下検討中で、今後そういう指定がなされるかもわからないということでございますが、それに対しては前向きの御検討をいただきたいということを御要望すると同時に、工場排水規制水域指定水域のみにとらわれることなく、もう少し公共用水域全般に対しても拡大ができないだろうか、その辺のことはどういうお考えなのかということを、神戸港の実情にかんがみて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  30. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘のように、従来の法律では地域指定制度であったわけです。それでわれわれも、この地域指定制度というものでは、拡大しつつある今日の問題に対処できないということで、今回の法律指定制度を廃止いたすことにしたわけであります。ですから、原則としていかなる海域においても公害の防止の義務企業が持つ、こういうことになるわけです。  しかし、そういうことになりますと、全国でございます。そこでまず、一律基準というもの、いわゆるシビルミニマムを設定いたします。これは国のほうが設定いたします。ですから、いままでは指定地域以外のところは、極端な言い方をすれば幾ら排出してもよかったわけですが、今度は国で一律基準設定いたしますから、どこの水域におきましても一定の一律基準までは排出できない。その上へその土地の事情に応じて知事が上のせ基準というものを設ける、こういう体制にしたわけです。その上のせ基準を設ける際に地方知事権限を大幅に渡す、こういうのが今回の法律の一番の眼目でございます。でありますから、いま御指摘の御趣旨を十分今後達成し得ると思います。現在、東京港、大阪港、名古屋港をはじめ、もうごく近々中に基準設定を終わる。というのは、まだ本年度中は現行法の体制にあるものですから。しかし、法律が改正されるまで待つ必要はないので、現行法の体制のもとにおいてもできるだけその基準設定を急ぐということで、いま申し上げたような大きなところも、近々中には設定されるかもしれないじゃなくて、もう審議会の審議にかかっておるものもたくさんあるわけで、それが終わりまして近々中に設定をしたい、こういうことでございます。  それからなお、海の汚染が水の汚染の中で一番むずかしい問題でございます。それで、これについては単なる工場排水規制ということだけでなく、下水道の整備をさらにさらに急速化しなければならない。特に、いま御指摘になったような地域における下水道の整備を重点的に急いでまいる、これも重要でございます。それから、今回、水質汚濁の関係の法案と一括して上程されております海洋汚染防止法、これなんかは、やはりこれからの海の汚染に対して非常に重要な役を持ってまいります。あるいはまた廃棄物の処理関係の法案も出ております。そういうようなことで、あらゆる角度からこの海洋の汚染を防いでいかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  31. 石井一

    石井(一)委員 私は、水の管理というものに対して抜本的な対策を立てていかなければいけない。いまの長官の御答弁で政府の前向きな姿勢もよくわかったわけでございますけれども、二十八条によって、指定都市の場合、重要指定港湾の場合には市長にこの権限を与える、そうして規制その他の一元化をはかってその規制を進めていく、基本的にそういう形でお進めになるということに来年からなるのじゃないか、私はこう思うわけでありますけれども、そういう場合に国の補助というものがそこに加えられるのかどうか、そういうことまでお考えになっておるのかどうか、この点をちょっと御回答いただきたいと思います。
  32. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは御存じのように、先ほどすでに申し上げましたように、個々の事業法についてできるだけ補助の体制を確立してまいる、こういうことであろうと思います。そして政令指定都市については、これは間違いなく委譲をいたしますから、われわれとしても、今後いろいろな事業関係の経費がもしふえるということになれば、現在の補助体制をさらに強化してまいる、こういうことになるわけです。
  33. 石井一

    石井(一)委員 それじゃ以上をもって私の質問を終わりたいと思いますけれども最後に、先ほどから申しておりますように、公害問題の大半はやはり大都市周辺であって、工場がどんどん誘致されておりますけれども、それはわりに公害の少ない近代的な工場が多いということになりますと、いわゆる工場なり住居なりその他が同じように同居しておる、そういうのがほんとうの公害問題の中心だと思います。この法律ができまして一歩前進しておることは確かでありまして、中央の権限地方に委譲して、住民との密接なつながりということも強調されておるわけでございますけれども、いま申しました指定都市に対する権限の委譲というものを、御答弁もございましたように、十分に委譲をしていただきたいということ。また、内容のこまかい権限についていま政府のほうで御検討のようでございますけれども、この権限規制ということに対して、どうか一元化をはかられるように御徹底をいただきたい、こういうことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 八田貞義

    八田委員長 岡田利春君。
  35. 岡田利春

    ○岡田委員 法案に入る前に、これに関連して二、三御質問いたしたいと思います。  政府は今日の公害問題について、いわばこれは高度経済成長のひずみである、こういうようなことがしばしば公式的にも発表されておるわけです。私の記憶では、池田内閣当時、所得倍増計画が定められて、十年前、昭和四十五年のGNPについては二十七兆円ということが想定されたと思うわけです。しかし今年度の見込みは、大体七十三兆円に到達するのではなかろうか。優に二・七倍、猛烈経済成長、こう申し上げなければならないと思うわけです。したがって今日の公害は、企業優先、いわゆる目的と手段のはき違え、経済政策にやはり欠けるところがあった、誤りがあったのではないのか、そういう結果として矛盾の集中的なものが今日の公害問題である、こういう受けとめ方で、きびしい反省の中から今後の公害問題に取り組むという姿勢がなければいかぬのではないか、このように私は思うのでありますけれども経済企画庁長官としてこの点についてどういう見解を持っておるか、この機会に承っておきたいと思います。
  36. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 確かにあの当時予想もしてない高い経済成長が実現されたわけでございます。そしてまた、そのために公害問題が顕在化し、そして激成されたことも私は事実だと思います。やはりこれは、成長そのものという問題もありますが、成長のしかたの問題でもあるわけでありますから、そういう点を十分に考えながら今後公害問題にも取り組んでまいらなければならない、こう思っております。
  37. 岡田利春

    ○岡田委員 私は、いずれにしてもやはり反省する点については、率直、すなおに反省をするという立場から出発をしなければ、ほんとうに国民が期待する公害対策が実効があがらないのではなかろうか、こういう見解を持っておりますので、この点、特に申し添えておきたいと思います。  次に、宮澤通産大臣にお聞きしたいのでありますけれども、結局、高度経済成長政策を今日まで進めてまいったわけですが、このような猛烈経済成長といいますか、その結果を分析してみますと、結局、規模効率、スケールメリットの追求が非常に激しかった。私はあらゆる分野において、そういう受けとめ方を実はいたしておるわけです。したがって鋭角的な公害があらわれてきた。そしてまた、スケールメリットを上回る中小企業の近代化というものがどうもついていけなかった。こういう幾つかの問題点が出てきたのではないかと思うのです。私は、公害問題を考え経済成長考える場合には、やはりそれぞれの工場計画的な分散というものが基本的な問題ではなかろうか。同時にまた、規模利益だけを追わないで、適正規模の工場をつくっていく、ある程度規制をはかるということが必要ではないか。  一例を申し上げますと火力発電所。わが国のように、一基百万キロワットというような火力発電所を無神経につくっている国は、今日ヨーロッパにはないわけです。やはり非常に慎重に規模を適正化している。こういう点について配慮が払われ、一方において公害問題について初めから対処をしたい、こういう姿勢がヨーロッパの場合にはとられておるわけです。したがって今日、公害問題を考える場合には、結局、工場の分散化、適正規模、中小企業の近代化、こういう面で秩序のあるそういう政策を進めていく考え方が確立されなければいかぬのではないか。そういう適正配置が誘導されていく政策こそが、公害問題に対処するまず基本的な立場でなければいけない、私はこう理解をいたしておりますけれども、この点についての見解を承っておきたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済成長の目的は、結局、国民の福祉を増進するということであったわけでありますけれども、先ほどもお述べになりましたような事情から、現在の時点において、国民福祉のために重要なその他の要素との調整が必ずしもうまくいかない。と申しますよりは、実は非常にうまくいかない事態になりましたために、このような事態になってきたというふうに考えておるわけでございます。そこで、そういう点についての反省が、ただいま私ども公害関係法律案を御審議願っているところに出てきておるわけでございます。今後おそらくは、公害防止のための国民経済上の負担というのは、企業にもかかりますし、国家財政にもかかりますし、財政の負担はまた租税というような形でおのおのにかかっていくわけでございますが、また、なるべく最小限度にとどめますけれども、消費者にも影響を免れないであろうということを考えますと、国民経済計算上はいわばプラスでないそのような負担が、各分野において行なわれることになりまして、そこから経済成長というものはおのずから鈍化していくものであろう。しかし、それは成長の中身がよくなることでありますので、私どもそれで一向に差しつかえない。むしろそういう中身が向上するのであれば、そのことのほうが望ましいとすら考えるわけでございます。  そういう配慮の中からただいまの御指摘の問題を考えてまいりますと、まさしく企業の適正な立地ということをどうしても考えなければならない段階になってきておりまして、現に新全国総合開発計画の中では、そういうような問題意識をかなり強く持ちまして、企業を新しい立地に誘導するのにはどうしたらいいか、そのための基盤整備といったようなことが考えられておるわけでございます。
  39. 岡田利春

    ○岡田委員 今国会で提案されておる公害立法の内容等検討しましても、問題は、これを急速に、早い期間に積極的に進めていくためには、政府としても、たとえば産構審の適当な委員会をつくってこの点を諮問するとか、積極的にそういうものを受けて工場適正配置の立法化をはかるとか、こういう点が出発でないと、幾ら公害立法を立てても、結局、国民が期待するものにならぬのではなかろうか、私はこう判断せざるを得ないわけです。そういう積極的な用意をいま通産省がお持ちかどうか、あるいはそういう作業が進んでおるかどうか、承っておきたいと思います。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 持っておられます問題の見方は、私どもも同じような考え方をいたしておるわけでありますが、これが立法によって解決できるかどうかというのには、幾つかの問題があろうと思います。先ほども石井委員の質問に対して企画庁長官がお答えでございましたが、およそ企業工場を設置するということを全面的に許可制にすべきかどうかという問題になりますと、企業と申しましても、大企業ばかりではございません。むしろ中小のほうが数ははるかに多いわけで、その人たちが何か自分の事業をする、これは基本的には営業の自由という問題が、御承知のようにあるわけでございます。そういたしますと、これを規制するということは、おそらく公共の福祉という観点から行なわれていくということになると思いますが、いかなる場合にも、公共の福祉というものが企業の立地を制限するための十分な理由であるかということになりますと、たとえば東京あるいは近畿圏といったようなところでは立地規制をいたしておりますが、これはやはり過密状態がひどうございまして、規制することが公共の福祉にかなう、こういう考え方でございましょうが、それが全国どこにも妥当するかということになれば、これはやはりおのずから問題もあるであろう。と同時に、現実の問題といたしましては、ある特定の地方に工業用地を指定することになりますと、そのための交通でありますとか、通信でありますとか、海運でありますとか、いろいろな公共投資の環境整備がございませんと、実際上そこに企業を誘導するということはむずかしゅうございますので、そういう施策が先に立ちませんと、有効に企業の配置を行なうことがむずかしいのではないか、こういう感じもいたします。そこで、新全国総合開発計画のような構想が生まれてきた、こう考えておるわけでございます。
  41. 岡田利春

    ○岡田委員 いま大臣が言われたように、首都圏における工場の集中を規制するという法律があり、最近漏れ承るところによると、この規制範囲を地域を拡大していく、こういう動きもあるように私は受けとめているわけです。ここにも問題が出されているようであります。また、近畿においてもそういう規制があるわけですが、たとえば百歩譲ったとしても、単に規制をするというのは現状固定なんですよ。それからまた、さらに過密化が進行している地域の場合には、これはもう積極的に規制しなきゃならぬわけです。私はそういう意味において、一つには企業の分散化、これを奨励し誘導する。そのために財政、金融税制優遇措置を、大きな資本であっても思い切ってとってはどうなのか、こう思うわけです。さらにまた、集中が進行しておる特定地域といいますか、こういう地域はむしろある程度きびしい規制をする、こういう立場が最低限とられなければいかぬのではないか。  また、いま大臣許可制の問題に触れましたけれども、いずれこの問題は法律案の審議の場合に議論いたしたいと思っておりますが、私は、陰にこもった官僚統制的な方向で、ある程度行政指導という名目でやっていくというのは、どうも不明朗ではないのか。ある意味では、今日の経済成長の段階に入ってまいりますと、明朗に、国民にわかるように、法律政府の責任を明らかにして、届け出制ではなくして、認可するものは認可する、そういう姿勢で臨むという責任ある態度もまた必要ではないか。この議論はさておいて、いずます。やはりこれは、成長そのものという問題もありますが、成長のしかたの問題でもあるわけでありますから、そういう点を十分に考えながら今後公害問題にも取り組んでまいらなければならない、こう思っております。
  42. 岡田利春

    ○岡田委員 私は、いずれにしてもやはり反省する点については、率直、すなおに反省をするという立場から出発をしなければ、ほんとうに国民が期待する公害対策が実効があがらないのではなかろうか、こういう見解を持っておりますので、この点、特に申し添えておきたいと思います。  次に、宮澤通産大臣にお聞きしたいのでありますけれども、結局、高度経済成長政策を今日まで進めてまいったわけですが、このような猛烈経済成長といいますか、その結果を分析してみますと、結局、規模効率、スケールメリットの追求が非常に激しかった。私はあらゆる分野において、そういう受けとめ方を実はいたしておるわけです。したがって鋭角的な公害があらわれてきた。そしてまた、スケールメリットを上回る中小企業の近代化というものがどうもついていけなかった。こういう幾つかの問題点が出てきたのではないかと思うのです。私は、公害問題を考え経済成長考える場合には、やはりそれぞれの工場計画的な分散というものが基本的な問題ではなかろうか。同時にまた、規模利益だけを追わないで、適正規模の工場をつくっていく、ある程度規制をはかるということが必要ではないか。  一例を申し上げますと火力発電所。わが国のように、一基百万キロワットというような火力発電所を無神経につくっている国は、今日ヨーロッパにはないわけです。やはり非常に慎重に規模を適正化している。こういう点について配慮が払われ、一方において公害問題について初めから対処をしたい、こういう姿勢がヨーロッパの場合にはとられておるわけです。したがって今日、公害問題を考える場合には、結局、工場の分散化、適正規模、中小企業の近代化、こういう面で秩序のあるそういう政策を進めていく考え方が確立されなければいかぬのではないか。そういう適正配置が誘導されていく政策こそが、公害問題に対処するまず基本的な立場でなければいけない、私はこう理解をいたしておりますけれども、この点についての見解を承っておきたいと思います。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済成長の目的は、結局、国民の福祉を増進するということであったわけでありますけれども、先ほどもお述べになりましたような事情から、現在の時点において、国民福祉のために重要なその他の要素との調整が必ずしもうまくいかない。と申しますよりは、実は非常にうまくいかない事態になりましたために、このような事態になってきたというふうに考えておるわけでございます。そこで、そういう点についての反省が、ただいま私ども公害関係法律案を御審議願っているところに出てきておるわけでございます。今後おそらくは、公害防止のための国民経済上の負担というのは、企業にもかかりますし、国家財政にもかかりますし、財政の負担はまた租税というような形でおのおのにかかっていくわけでございますが、また、なるべく最小限度にとどめますけれども、消費者にも影響を免れないであろうということを考えますと、国民経済計算上はいわばプラスでないそのような負担が、各分野において行なわれることになりまして、そこから経済成長というものはおのずから鈍化していくものであろう。しかし、それは成長の中身がよくなることでありますので、私どもそれで一向に差しつかえない。むしろそういう中身が向上するのであれば、そのことのほうが望ましいとすら考えるわけでございます。  そういう配慮の中からただいまの御指摘の問題を考えてまいりますと、まさしく企業の適正な立地ということをどうしても考えなければならない段階になってきておりまして、現に新全国総合開発計画の中では、そういうような問題意識をかなり強く持ちまして、企業を新しい立地に誘導するのにはどうしたらいいか、そのための基盤整備といったようなことが考えられておるわけでございます。
  44. 岡田利春

    ○岡田委員 今国会で提案されておる公害立法の内容等検討しましても、問題は、これを急速に、早い期間に積極的に進めていくためには、政府としても、たとえば産構審の適当な委員会をつくってこの点を諮問するとか、積極的にそういうものを受けて工場適正配置の立法化をはかるとか、こういう点が出発でないと、幾ら公害立法を立てても、結局、国民が期待するものにならぬのではなかろうか、私はこう判断せざるを得ないわけです。そういう積極的な用意をいま通産省がお持ちかどうか、あるいはそういう作業が進んでおるかどうか、承っておきたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 持っておられます問題の見方は、私どもも同じような考え方をいたしておるわけでありますが、これが立法によって解決できるかどうかというのには、幾つかの問題があろうと思います。先ほども石井委員の質問に対して企画庁長官がお答えでございましたが、およそ企業工場を設置するということを全面的に許可制にすべきかどうかという問題になりますと、企業と申しましても、大企業ばかりではございません。むしろ中小のほうが数ははるかに多いわけで、その人たちが何か自分の事業をする、これは基本的には営業の自由という問題が、御承知のようにあるわけでございます。そういたしますと、これを規制するということは、おそらく公共の福祉という観点から行なわれていくということになると思いますが、いかなる場合にも、公共の福祉というものが企業の立地を制限するための十分な理由であるかということになりますと、たとえば東京あるいは近畿圏といったようなところでは立地規制をいたしておりますが、これはやはり過密状態がひどうございまして、規制することが公共の福祉にかなう、こういう考え方でございましょうが、それが全国どこにも妥当するかということになれば、これはやはりおのずから問題もあるであろう。と同時に、現実の問題といたしましては、ある特定の地方に工業用地を指定することになりますと、そのための交通でありますとか、通信でありますとか、海運でありますとか、いろいろな公共投資の環境整備がございませんと、実際上そこに企業を誘導するということはむずかしゅうございますので、そういう施策が先に立ちませんと、有効に企業の配置を行なうことがむずかしいのではないか、こういう感じもいたします。そこで、新全国総合開発計画のような構想が生まれてきた、こう考えておるわけでございます。
  46. 岡田利春

    ○岡田委員 いま大臣が言われたように、首都圏における工場の集中を規制するという法律があり、最近漏れ承るところによると、この規制範囲を地域を拡大していく、こういう動きもあるように私は受けとめているわけです。ここにも問題が出されているようであります。また、近畿においてもそういう規制があるわけですが、たとえば百歩譲ったとしても、単に規制をするというのは現状固定なんですよ。それからまた、さらに過密化が進行している地域の場合には、これはもう積極的に規制しなきゃならぬわけです。私はそういう意味において、一つには企業の分散化、これを奨励し誘導する。そのために財政、金融税制優遇措置を、大きな資本であっても思い切ってとってはどうなのか、こう思うわけです。さらにまた、集中が進行しておる特定地域といいますか、こういう地域はむしろある程度きびしい規制をする、こういう立場が最低限とられなければいかぬのではないか。  また、いま大臣許可制の問題に触れましたけれども、いずれこの問題は法律案の審議の場合に議論いたしたいと思っておりますが、私は、陰にこもった官僚統制的な方向で、ある程度行政指導という名目でやっていくというのは、どうも不明朗ではないのか。ある意味では、今日の経済成長の段階に入ってまいりますと、明朗に、国民にわかるように、法律政府の責任を明らかにして、届け出制ではなくして、認可するものは認可する、そういう姿勢で臨むという責任ある態度もまた必要ではないか。この議論はさておいて、いず川から導いてまいりましてやる作業であるとか、いろいろと具体的な対策があり、御存じのようにヘドロの対策等もその中に入るわけでありますが、これらの問題は、この水質法律と直接の関係じゃございませんが、もちろん同時にこれを進めなければならない政府の事業でございます。
  47. 岡田利春

    ○岡田委員 水質汚濁関係のいわば公害産業というのが適切かどうか知りませんが、水質汚濁に関する公害産業、こういう業種についてはどう見ておられるのか。今日の水質汚濁関係の業種、企業、そういう現状を通産省はどう把握されておるのか。これは事務当局でもけっこうなんですが、この機会に、その現状をどう受けとめておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
  48. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 いわゆる水質公害産業の代表的なものは、田子の浦あるいは伊予三島の事例に明らかなように、紙パルプ工業が筆頭であろうかと思います。その他、石油化学あるいは石油精製工場等から出ます廃油が第二番目の公害産業であろうかと思います。さらに、カドミウムその他で問題になっております鉱山関係の排水、これもまた公害産業の代表的なものであろうかと思います。
  49. 岡田利春

    ○岡田委員 宮澤通産大臣は九月十一日、閣議に対して、いわば公害産業の全般について報告をされたと私は聞き及んでおるわけです。その内容で、特に水質汚濁関係の公害産業は、有機物による腐敗などで起きるもの、でん粉、蒸溜酒などの食料品、染色、製革、紙パルブ、化学工業、石油。ヘドロなどの発生源となる浮遊物質では、紙パルプ、製革、食料品、化学、窯業、土石、鉱山。シアンの場合には鉱山、メッキ、コークス炉関係、化学。水銀の場合には、水銀電解法苛性ソーダ製造、アセチレン法塩化ビニール製造、顔料、塗料、計測器、電池などの機械。カドミウムの場合には、鉱山、製錬所、メッキ・顔料などの化学、自動車、電器部品という内容が閣議に報告されたと思うわけです。もちろん私はこれ以外にもあると思うのですけれども、いわば通産省の認識は、これがいわゆる公害産業だと大臣が閣議に報告されたようでありますから、そのように受けとめてよろしゅうございますか。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 水との関係におきましては、それらがおもなものというふうに考えておるわけでございます。
  51. 岡田利春

    ○岡田委員 次に私は、法案の内容について質問をしてまいりたいと思います。  初めに第一条の「目的」でありますけれども、この「目的」の中で、特にこの機会に法制局から見解を承っておきたいと思うのですが、この「目的」には水産動植物及びその生育環境を含んでおるのかどうか。これは「目的」を読んでも明らかではないわけです。その場合、この条文で見れば「生活環境を保全する」とあるので、含まれればおそらくこの中ではないかと思うのですが、この点、立法者の法制局に、それははたして読めるのかどうか、明確に承っておきたいと思うのです。
  52. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 御指摘のとおり、第一条の「生活環境を保全する」ということばの中に、いま御引例になりました農作物あるいは水産物の生育環境ということは当然に含まれている、そのように私どもは解釈いたしております。
  53. 岡田利春

    ○岡田委員 第一条の「水質以外の水の状態が悪化することを含む。」、このように、「公共用水域水質汚濁」の中に、かっこ書きでこの法律は書かれておるわけです。そこで、ずっとこの法律を読んでまいりますと、たとえば火力発電所等から出る温排水、これは適用除外になっておるわけですけれども、とにかく、熱の問題、水温の問題、こういう問題が法律的には出てまいりますけれども、これ以外に、水質以外の水の状態が悪化するということを想定されるものについては、何かございますか。
  54. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 一応例としては、水の色、水色を予定いたしております。
  55. 岡田利春

    ○岡田委員 第二条の「定義」でございますけれども、第二項の第一、有害物質の場合に、「カドミウムその他の人の健康に係る被害を生ずる」、こうこの法案規定をされておるわけです。特にカドミウムだけをここに例示して出しておるわけです。しかし環境基準で見れば、八項目の有害物質について定められております。私はすくなくとも、人の健康にかかわるものについてはこれこれこれであるという点が、まず当初から明らかにされていなければならぬと思うわけです。気持ちとしては、むしろ法律で明記すべきではないのかという気持ちさえ私は持っておるわけですけれども、この点について、カドミウムだけを特にあげた理由、及び、この場合の「物質」というものは政令で定めることになっておりますけれども、現在、環境基準で定めておる八項目だけを考えておるのか、それ以外も当面考えておるかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  56. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、現在環境基準として、カドミウムを含めまして八項目、健康項目として指定されております。いわゆる有害物質になるものでございますが、これ以外にも、現在問題になっておるものが幾つかございます。したがいまして、この規定は事例としてカドミウムを出しておりますが、そういう現在問題になっておるものを含めまして政令指定してまいりたい、こういうふうな考え方でこういう書き方になったわけでございます。
  57. 岡田利春

    ○岡田委員 そうすると、この環境基準の八項目以上にふえるという理解でよろしいかどうか。それと、いまあなたが答弁した、問題になっておるものというのは何をさしておられるか、この機会に明らかにしてもらいたいと思います。
  58. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 ただいま私ども事務当局で問題にしておりますのは、有機塩素とかその他ございまして、大体十項目ぐらい当面考えておりますが、それ以外にも、今後また問題になってくるものがあるのではないかと思っております。
  59. 岡田利春

    ○岡田委員 たとえば銅、鉛、亜鉛、ベンツピレンあるいは鉄分、こういうものが当然考えられなければならぬのではないかと私は思うのでありますけれども、いまあなたは有機塩素だけを述べられたのですが、この点についてはまだいろいろ問題も出ておるわけです。たとえば鉄分の取り過ぎのために——ミネラルウォーターにも鉄分は入っておりますが、関節がおかされて、カシンベック病といいますか、こういう病気がすでに発生しているという事態もあるわけでありますから、銅、鉛、亜鉛、あるいは鉄分とかベンツピレン、こういうものが問題になっておるかどうか、そういうものが検討の素材になっておるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  60. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 御指摘の銅、亜鉛等につきましては、健康項目ではなくて生活環境項目のほうで指定することにしてはどうだろうか、こういうふうにいま考えております。鉄、マンガン等についても、そういった観点で考えております。銅等についても、あるいは健康上問題になるのではないかと思いますが、むしろ生活環境項目として基準をきめるほうがよりきびしくなるであろう、こういうふうな状況でございますので、ただいまのところ、生活環境項目のほうでの項目として追加をしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  61. 岡田利春

    ○岡田委員 そういたしますと二条二項は、「水素イオン濃度その他」として、事例として水素イオンだけが出ている。生活環境の場合には、水素イオン、BOD、SS、DO、この四つの基準値が、現在、生活環境にかかわる環境基準として定められておるわけですが、いまの御答弁からいいますと、この範囲は現在の環境基準よりもさらに拡大されることがすでに想定されておる、このように理解してよろしいわけですね。
  62. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この法律の二条の第二号に掲げておりますのは、いわゆる排水基準についての問題にこの法律上なっているわけでございまして、排水基準としては、ただいま申しましたように、銅、鉛、亜鉛、あるいは鉄、マンガンその他、大体十一項目くらいの内容のものをきめてまいりたい、こういうふうに現在予定いたしております。
  63. 岡田利春

    ○岡田委員 では次に、第三条の「排出基準」についてお伺いいたしますが、大体、項目については二条の質問で概要が明らかになりつつあるわけですが、この法案を今国会で可決するまでの間に、排出基準についていまは項目と基準があるわけですが、その基準についてほぼ明らかにできますか。問題点は問題点としてもけっこうですよ。国民はやはり、ここが相当聞きたいところだと思うのでありますけれども法案は可決しなければならない。最も基本的な排出基準についてはその概要が、項目と、ある程度こういう方向でいきたい、しかしここはまだ検討しなければならぬというものがあってけっこうです。そういうものを明らかにすることができますか。
  64. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 第三条の「排水基準」は、ごらん願うとおわかりのとおり、大臣がいまシビルミニマムと申されましたが、一律基準、これは総理府令で定めるものでございますが、これが予定されておるわけでございます。この内容としては、先ほど申しましたように、健康項目といいますか、有害物質につきましてのそれぞれごとにきめる許容限度、それと生活環境の項目についての許容限度ということでございまして、生活環境についての許容限度としましては、一応、家庭排水の通常の汚濁状況、こういうものを頭に置いてきめたいと考えております。健康項目につきましては、現在環境基準はございますが、これを排水基準として指定水域指定する場合には、地区によって若干これは変わっております。こういったものを、一律の基準としてどの線にきめるかということは、大体の幅はもうわかっておるわけでございますが、さらにこれから、いろいろの具体的な指定水域実情、さらに関係各省等の御意見もいろいろあると思いますが、そういったものを含めて検討してまいって、総理府令として定めたいと思っております。現在、具体的数値として幾らにするかというところのものは、まだきまっておりません。
  65. 岡田利春

    ○岡田委員 そうしますと、排水基準で定める項目と許容限度については、残念ながら今国会中には、問題点は問題点でもけっこうなんだけれども、そこまでも明らかにできないという正式な御答弁である、こう受けとめてよろしいですか。
  66. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 生活環境項目につきましては、先ほど申し上げましたように、BODにつきましては、家庭排水を勘案することにより大体の程度はわかっておるわけでございますから、一〇〇PPMないしは二〇OPPMといろいろ議論はございますけれども、大体、数値的に幅のあるところでこれをきめられると思っておりますので、それをどの線できめるかということだけが問題かと思います。  それから、健康にかかわる有害物質につきましては、現在やっておりますのは、環境基準としてきめられております基準値の大体十倍希釈ぐらいのところを排水基準としてきめておるわけでございまして、おそらくその考え方で今度もいいのではないかと思いますが、たとえばシアンなどにつきましては、現実にきめます場合に、この十倍希釈よりもさらにきびしくきめておる事例も幾つかございます。そういったこともありますので、そういった点は、現実実情も考慮に入れて具体的数字を考えていくという必要があるのではないか、そういう意味でございまして、大体のものについてのオーダーはほぼ出ておる。ただ、きっちりときめる数値は幾らかといわれますと、ちょっとこの段階で幾らと申し上げるだけの準備がまだできておらないわけでございます。
  67. 岡田利春

    ○岡田委員 大体のオーダーは出ているということでございますから、出ているオーダーだけでけっこうですから、文書にしてこれは委員会に出していただけないでしょうか。これは委員長、いかがですか。
  68. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この有害物質についての大体考えておりますオーダーにつきましては、資料で提出をいたします。
  69. 岡田利春

    ○岡田委員 第三条について、特にこの排出基準については「総理府令で定める」となっている。この法律では、総理府令、また通商産業省令とあとから出てまいるわけでございますけれども、冒頭に政令は「総理府で定める」、こうなっておるわけですが、もちろん政府としては、いま公害対策本部を設けておるわけでございますけれども、しかしこの排出基準をきめるにあたっては、当然関係大臣協議の上でこの基準というものがきめられなければならない、私はこう思うわけです。したがって、ここに「総理令で定める」とありますが、それは関係大臣協議をしてきめることかどうか。こういうものの言い方はどうかと思いますが、加害者を担当している官庁もあれば、被害者側の官庁もあるわけでありますから、そういうものを含んで関係大臣協議をして、そしてその結果として総理府令で定められるものかどうか。この点、経済企画庁長官から御答弁願いたいと思います。
  70. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ここで「総理府令」といっております意味は、対策本部の意味ではなくて、企画庁という意味でございます。結局、従来から御存じのように、基準は国の場合には企画庁できめております。ただし、もちろん企画庁できめるに際しましては、各省が集まりまして検討をいたしております。でありますから、この一律基準の場合には特に国がきめることになっておりますので、こういう形をとっております。実態は御指摘のとおりでございます。
  71. 岡田利春

    ○岡田委員 先ほど国民生活局長の答弁の中で出てまいりましたけれども、結局、この基準をきめる場合に、基本法第九条の環境基準を達成していくための基準でなければならないと思うわけです。そういう意味では、排出基準環境基準との関係について、たとえば人の健康に関する環境基準については、シビルミニマムとして十倍とかいうことばを、いまちらっと言われたわけでありますけれども、しかし、いずれにしてもこの基準は、環境基準を達成するための効果があるものでなければならない、私はそう思うわけです。したがって、そういう環境基準排出基準との関係については、この立法にあたって、どういうふうな考え方を持たれてこの法律をつくられたか、この機会に明らかにしてもらいたいと思います。
  72. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 そこのところに「政令で定める基準に従い」とございますが、その意味は、要するに、個々の排出基準をきめます際には環境基準基準にしてきめる、こういうことでございますので、環境基準というものがやはりもとになり、それに応じて科学的な計算をいたしまして個々の排水基準をきめていく、当然そうなければならないわけであります。
  73. 岡田利春

    ○岡田委員 残念ながら基準の概要が示されていないわけでありますから、この点なお深く議論はできませんけれども、いま大臣は、すらっと答弁されましたけれども、ほんとうにそうなるかどうかということについては、私は非常に不安を持っております。そういう意味で、いまの大臣の答弁を了といたしますが、ほんとうにそうあらねばならないと思うわけであります。その点について十二分の注意を払われるように、この機会に要請をいたしておきたいと思います。  次に、環境基準基準が明示されておるのは、指定水域だけであります。今度、一律基準が排出関係はきめられていくわけでありますが、これに準ずる公共水域というものについても、さらにその地域の条件、客観的な条件等によっては、他の公共水域についても拡大をしていく、こういうことが、当然、今回の公害立法の作成にあたって、考えられてまいらなければならないのではなかろうか、私はこう思うのでありますが、そういう検討がなされたか、あるいはそういうような気持ちがおありかどうか、この点について承っておきたいと思います。
  74. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘のとおり、私たちとしても、環境基準をまずできるだけきめて、そうしてそれに応じて、今回の法律の思想のように乗り移っていかなければならぬわけでございますから、この法律が施行される以前、すなわち今年度内においても極力環境基準設定を急速化しております。そしてその基準を頭に置いてやってまいる。現在はまだ指定水域主義でございますけれども、やはり重点的に一番重要な地点からやってまいるというつもりでございます。
  75. 岡田利春

    ○岡田委員 基準設定にあたっては、有害物質については、先ほどの答弁でも明らかなように、基準がきめられていくわけでありますが、生活環境にかかわる場合の基準は、いわゆる公共用水域の面でとらまえるのか。有害物質と同じように、その排水そのもので基準考えられておるのか。この点も実は「政令で定める」ことと、明確でないのでありますけれども、当初、後者については水域測定をするというような議論もあったように私は聞いておるわけでありますが、この点についてはいかがでありますか。
  76. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私、ちょっといま、御質問の趣旨とらえかねたかもしれませんので、もし間違っておったらまたお願いしたいと思いますが、排水基準のとらえ方は排水口においてとらえるということで、どちらも同じでございます。
  77. 岡田利春

    ○岡田委員 第五項に都道府県通知義務が明らかになっておるわけですが、経済企画庁長官と関係都道府県知事に、排出基準都道府県が第三項の規定で定めた場合には通知をする、こうなっておるわけです。いわば経済企画庁に水の汚濁防止の問題は集約した感じがあるわけです。しかし水は非常に広範囲にわたるわけですね。したがって、その場合に各関係省があるわけですが、そういう点についていろいろ出てまいると思うのです。上のせ基準でありますから、それを政府部内としては、経済企画庁としては、各関係省との連絡体制というものについて、やはり従来よりもくふうしなければいかぬではないかという気持ちがするわけですが、この点についての考え方を聞いておきたいと思います。
  78. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 先ほど大臣から御答弁もございましたように、現在までも、水質基準等を経済企画庁が定めますときには、関係各省の連絡会議がございまして、そこで十分議論してやっておる。これは現在あります水質審議会の幹事会という形でやっておるわけでございます。今回の場合も、こういった通知を受けました場合に、当然そういった関係各省に十分連絡をとっていくわけでございまして、うしろに「中央水質審議会」という規定がございますが、この幹事会等を今後も利用してまいりたいと思っております。
  79. 岡田利春

    ○岡田委員 第四条の「排出基準に関する勧告」で、こういうことばを使うのは適当じゃないと思いますけれども、当該官庁の大臣といいますか、そういう大臣経済企画庁長官に対して、こういう勧告をしてもらいたいという要請権というものが、政府部内の問題でありますけれども、そういうことばが適当かどうか別にして、あると私は思うのでありますけれども、この点についてはいかがですか。
  80. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは当然政府部内のことでございますから、関係のある省は、われわれに対してものをおっしゃるべきであり、また、そのことができるわけでございます。  御存じのように、従来、所管大臣が、この方面において七つの大臣に分かれておりまして、そのために、実態はともかくといたしまして、行政手続上も煩瑣である、こういうこともございまして、今回は、いろいろと相当の議論もありました中を、特に所管大臣を二つに集約したわけでございます。しかしそれは、いわゆる形式上の所管大臣を集約したわけでございまして、もちろん、今回、所管大臣からはずされた省が、それでもって発言の機会が失われる、こういう意味ではございません。従来、基準については特に企画庁が中心でございましたので、ここらの条文のあたりはみな企画庁がやることになっております。
  81. 岡田利春

    ○岡田委員 前に質問に対して、理論的には、上のせ基準がきびし過ぎる場合にも勧告があり得る、こう大臣は答弁されたわけです。私はその理論的の意味がわからないわけですけれども。ということは、本法案の「目的」を読んでみても、あるいは第四条で、経済企画庁長官公共用水域水質汚濁の防止のため特に必要があると認めたときに勧告するのでありますから、上のせ基準がきびしいときに、そういうことが必要だといって、条令は知事が提案して議会が定めておるのに、これをけしくりからぬ、きびし過ぎるというような勧告が理論的にあり得るという根拠は、一体どこにありますか。
  82. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私は「変更」ということばを理論的に解しただけでございまして、もちろん本法の趣旨に沿って運用さるべきものでございます。そしてまた私どもも、知事に対して委任いたしたのでありますから、不必要なことは一切やらないつもりでございます。いろいろ意見はあると思いますが、われわれはそういう運営のしかたをしたい。  ここで特に問題が生ずるであろうと思われますことは、先ほども申し上げましたが、数府県にまたがる河川でございます。そういう場合においてある程度調整が必要なことが起こるかもしれない、そういうことであろうと思います。それ以外にはできるだけその原案を尊重すべきたてまえである、こういうふうに考えております。
  83. 岡田利春

    ○岡田委員 私は、この第四条の運用はこう判断をいたしたわけです。  いま大臣が答弁された、いわゆる条例できめられて一つ河川が二県以上にまたがるような場合で、そのきめられた基準調整しなければならぬ面があるという場合には、当然勧告の対象になるだろう、こう第一に理解をするわけです。第二には、当該水域汚濁が非常に進んでおる、また、そういうおそれが客観的にも科学的にも傾向として判断をされるにもかかわらず、最低の許容限度の国の統一基準で終始している。たとえば、経済企画庁水質保全のために一定水域指定しようとしたら、その府県は逆に待ってくれ、そういう点で時期を逸したために問題も起きていることは、大臣承知のとおりです。逆にそういう水域については、この点について適当な基準設定すべきだという勧告が、この目的と第四条の前提からすればあり得ると思うわけです。したがって、目的と四条の前提からいえば、地方自治体が地方自治法によってきめた、しかも法律根拠に基づいている合法的な上のせ基準について、それが行き過ぎであるとしてその変更を命ずるような勧告は、あるべきではないし、またあり得ない、こう解さるべきであると思うのですが、いかがでしょうか。
  84. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 実態的にはおっしゃるとおりでございます。
  85. 岡田利春

    ○岡田委員 実態的におっしゃるとおりだと言いますけれども、立法の原則、目的を完遂するための法律の立法体系からいって、そういうことはあり得ない、こう私は思うのでありますけれども、実態的ではなくして、立法的にも実際的にもこれはないというのがほんとうじゃないですか。
  86. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 そういうことはめったにないと思いますけれども、間違いというものもございますね。ですから、間違いとかそういうようなことがあれば別ですけれども、私はそういう意味で実態的とお答えしたのです。ですから普通の場合には起こらない。当然知事のきめたものがそのままである。しかし何か間違いが起こるようなことがあるかもしれない。しかし、それらのものは事前にわかる場合もあるわけですから、実際上の修正が行なわれるかもしれません。
  87. 岡田利春

    ○岡田委員 知事がきめたものが間違いもあり得るという大臣の答弁は、私は了とします。しかしこれは、すべて条例において当該区域の範囲も明らかにして、そしてあとからは測定計画が全部出てきますね。国と一緒になって測定計画も全部つくるわけですよ。その上に立って知事が条例を提案して、その当該都道府県議会が審議をして条例がきめられるわけでありますから、地方自治法の精神からいっても、間違いというようなことを想定すること自体が不見識ではなかろうか、こういわざるを得ないと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  88. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 たいへん御心配のようですが、再々申し上げておるように、私は別に、自治体から申し出たものを甘くしろと言う気は、一切持っておりません。ですから、そういう御懸念でありましたら、私は要らないと思うのです。まあ法律の体系上、「変更」ということになっていますから、そういう解釈もあり得るということを申し上げたにすぎないのであります。
  89. 岡田利春

    ○岡田委員 法制局おりますね。法制局の見解を承っておきたいと思うのです。
  90. 角田礼次郎

    ○角田説明員 ただいま大臣から御答弁申し上げた以上に、法律論としても、別につけ加えるようなものはないように思います。
  91. 岡田利春

    ○岡田委員 御承知のように、本法の目的は、「工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出を規制すること等によって公共用水域水質汚濁の防止」をはかるわけですよ。そして第四条では、あくまでも公共用水域水質汚濁の防止のために上のせ基準をするわけですね。ですから、そういう立て方、いま法制局で言われた見解であるならば、ある程度調整機能といいますか、運用についての調整ができるという面はどこでも読めるわけですが、ただ、この部面の「排水基準変更すべきことを勧告することができる。」ということだけをとらまえれば、そういうことになります。しかし体系的に見れば、そういう解釈は生まれないと思うのですが、いかがですか。
  92. 角田礼次郎

    ○角田説明員 御指摘のとおりでございまして、第一条の目的なり、あるいは第四条の規定の趣旨からいって、いわゆる強化するといいますか、前の方向に向かっての勧告ということがこの条文の趣旨であるということは、もう御指摘のとおりだと思います。ただ、先ほど来大臣からも御答弁申し上げておるように、絶対に理論的にあり得ないことではないというだけの意味でありまして、四条自体、あるいは一条から引用される限りにおいては、御趣旨のとおりだと思います。法律論としてもそうだと思います。
  93. 岡田利春

    ○岡田委員 今度、公害防止の基本法においても、調和条項というものを政府ははずしたわけですよ。だから、いま大臣の答弁を非常に心配するというのは、そういう精神が一貫して貫かれる——しかも、こういう体系で今度は都道府県権限を委譲するわけなんですから、そういう意味で私は、勧告は二つの面が考えられるのみであって、上のせ基準について下げろという勧告はあり得ない、あり得べからざるのものが、今度の公害立法を出した政府の精神ではないか、こう思うのですが、もう一度重ねて御答弁願いたいと思います。
  94. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 お説のとおりでけっこうだと思います。
  95. 岡田利春

    ○岡田委員 この勧告を受けた都道府県知事勧告の履行をする場合には、もちろん都道府県議会があるから、特に「勧告することができる」、こうなっているのだと思うのですね。しかし、先ほど申しました二つの要件について考える場合に、勧告を受けた知事は、当然議会に条例の制定もしくは改廃を提案をするということになると思うのですね、勧告をすなおに受けた場合。受けない場合ば別ですよ。しかし、その議会が条例をどう審議し、どうきめるかということは、議会の権限ですね。これは都道府県の議会の権限になるわけですが、この場合についても、これを「勧告することができる」と定めたことは、大体それを受けて条例の制定もしくは改廃、あるいはまた、調整の結果、改廃する県はある程度改正するということで、すなおにこの勧告を受けられるという気持ちで「勧告」ということばが使われたと思うのです。ところが、わが国の勧告とアメリカでいう勧告というのは、ずいぶん法律的には意味が違うと私は思うのですね。アメリカの立法などを見ますと、勧告というのは相当強い響きを持って、実際にそういう効果をあげているわけですけれども、わが国の立法の勧告ということになりますと、どうも受けとめ方が、立法通念的に、あるいは社会通念的に弱い、こう思うわけですが、こういう点については、どういうことをその場合には想定されましたか。そういう場合はあり得ないという前提に立たれたことはもちろんでしょうけれども、そういう点についてはいかがでしょうか。
  96. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 勧告は助言よりももっと強いところでございます。いわゆる罰則的な拘束力はございませんけれども、やはりモラル的な拘束力は持っておるというくらいの意味でもってわれわれは解しております。
  97. 岡田利春

    ○岡田委員 勧告を受けた場合に、都道府県知事は、この勧告について、条例の制定もしくは改正の提出義務、そしてその結果を報告する義務というものを、これは政令事項でもいいから、やはりつけ加えておく必要はないのか、そう判断をするわけですが、この点についてはいかがですか。
  98. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 そういうふうにあまり手続的にも詳細になりますと、いよいよ自治体に権限を委譲したというたてまえから見ても多少問題があるんじゃないか、こう私は思います。こういうものはやはり実際上の解決でありますし、それから、企画庁のほうが別に科学的なデータを持っていて、そして県のほうがある意味で万一不十分であるという場合は、当然その事態によって県側も改めることもあると思います。しかしそれ以上のことを、われわれとしても深く考えてはいないのでありまして、どうしても県がやるということであれば、またそれはそのままに通るわけでございます。
  99. 岡田利春

    ○岡田委員 第五条の「特定施設の設置の届出」でありますけれども、「特定施設」の範囲は、現在の工場立地の調査等に関する法律工場届け出制がきめられておりますね、それと相関連して、通産省令で定める場合の「特定施設」の範囲についてはどのように考えられておるか。前者の工場立地の調査等に関する法律工場届け出範囲と、「特定施設」の届け出範囲、この面については、相当違いがあるのか、ほぼこれに準拠する考えなのか、どういう検討をなされておるか、お聞きしておきたいと思います。
  100. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 第五条に規定しております「特定施設」と、通産省の工場立地の調査等に関する法律によります届け出とは、有機的な連関はございません。おそらく第五条は、水質汚濁という観点から、そういった目的に従いまして、独自の原則で特定施設を指定するということになろうかと思います。
  101. 岡田利春

    ○岡田委員 工場または事業場という面で、さきの公共用水域水質の保全に関する法律の第三条に定義がございます。ここには、工場もしくは事業場、へい獣処理場、鉱山、採石業、と畜場、水洗炭業、廃油処理施設、砂利採取業、屎尿処理施設、豚もしくは鶏の飼養施設等、汚水もしくは廃液を排出する施設、こういう定義が前の法律にはあるわけです。鉱山と電気事業は適用除外になっておりますけれども。この事業場という概念の中には、いま述べられた面で適用除外になっている三つの要件以外は、この中に含まれると解すべきですか。いかがですか。
  102. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この「特定施設」の範囲につきましてはいまおあげになりましたが、現在の水質保全法考えておりますもの、これは当然入ってまいります。そして後ほどの適用除外で、三つほど措置命令等の規定がほかの法律に譲ったものがありますけれども、一次、二次、三次産業を通じまして汚水等排出施設、そういうものの処理施設等をこの「特定施設」として幅広く指定してまいる、こういうつもりでございます。
  103. 岡田利春

    ○岡田委員 「特定施設」の届け出という問題に関連して、この排出基準の場合には、水質のそれぞれの基準を定めてまいるわけでありますが、この質と量の関係について私は特にお尋ねしたいと思うわけであります。  といいますのは、この施設の設置がいいのか、届け出がいいのかという問題についても関連があると思うのですが、結局、それぞれきめられる基準に従って、それぞれの排出水の基準がきめられてまいります。しかし、この量的な規制という面を、私は度外視するわけにいかぬだろうと思うのです。たとえば田子の浦にいま排出基準がある。最低基準がきめられる。今度はまた同じような工場ができて、量が拡大される。しかしそれは、新設の場合についてはこの基準は下げるのだ、別の基準をきめるのだ、こう答弁されるかもしれませんけれども、この問題のみならず、質と量、この量の側面をとらまえないで水質汚濁の防止はできないと思うのです。この量の側面を一体どう考えているか。  一つ河川よりない、そこへどうしても集中しなければならぬ。そこに工場が過度集中していろいろな排出水の基準が定められた。排水が出される。しかし、これはあくまでも一つ基準でありますから、量的に積み重なっていきますと汚染が非常にひどくなる。あるいは特に人体に有害な物質については、これは水ゴケや海藻や魚介類に蓄積するわけですから、何万倍とい濃度に濃縮されるという宿命を持っているわけですから、そういう意味では量的な規制、こういうものを考えなければいかぬのではないか。残念ながらこの水質基準には量的な面が含まれていないと私は思うわけです。量的な面があるならば、あくまでも特別にそこだけ、水質基準については下げる基準設定する以外にない、こういうことにならざるを得ないのが今度の排出基準の内容だと思うわけです。したがって、その量的な問題の解決をはかるためには、施設の認可制というものがどうしても必要だという議論に、私は発展させたいのでありますけれども、この面については、どう検討されてどういう確信を持たれておるのか、承っておきたいと思います。
  104. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 確かに、いわゆる質の問題といいますか、濃度の問題のほかに量の問題も当然に考えなければ、環境基準というのを達成できないわけでございますから、そういった形の規定まで整えるというほうが理論的であろうと思います。しかしながら、現在の測定技術あるいは工場の操業の実情等から見まして、濃度と量とをきっちりと法律上定めてしまうということは、なかなか実情としてまだ困難な面もございますので、現実の問題としては、この五条にございますように、届け出の際に、排水量について添付書類として出していただく。そして現実の運用といたしましては、先ほどから申しておりますように、環境基準を達成するために、それぞれの排水口の基準をいかにするかというのが排水基準でございますから、この計算をいたします際には、その量も当然考えに入れて、そして環境基準が達成できるに十分な規制をいたすわけでございます。そういうやり方をいたしておりますし、したがって量というものは、基準策定の際には当然考えに入ってくるというわけでございます。  また、いま御指摘のように、排水量が増大をしていくということは当然に予想されるわけでございますが、そういったことを考えまして、大体、現在指定水域についてつくっております基準でも、既設の工場の場合よりは新設の工場の場合の基準を相当きびしくしているものが多うございます。そういうやり方でこれに対処していく。同時にまた、排水量の比較的多い大工場については、その他の工場よりも基準をきびしくする、こういうやり方もいたしております。しかし、そういう形にいたしましても、排水量等がかなり増大をいたした場合には、全体の基準をもう一ぺん見直しをしてさらにつくり直す、こういうやり方でやってまいりたい、こう思っております。将来、自動測定等が非常に進んでまいりまして、そしてこういった点まできっちりとつかまえられるようになりますと、もう少しこの辺のところが進歩するかと思いますが、現状としては、私どもこういうやり方で十分目的は達し得る、こういうふうに考えておる次第でございます。
  105. 岡田利春

    ○岡田委員 もう時間ですから、これ一問だけで午前中は終わりたいと思うのですが、あなたがいま答弁されておりますけれども、この量は五条二項ですね。次に質問するところでありますけれども、五条二項ですね。そして「実施の制限」の第九条、罰則三十三条の適用を受ける第九条は、「第七条第一項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から」、こうあるわけですね。そうすると、あなたのおっしゃるのは、罰則三十三条の適用を受ける九条の実施の制限には、この二項がかかると解されておるのでしょうか。いかがですか。
  106. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 これは添付書類でございますから、第九条にいう「実施の制限」のところの違反の場合の罰則規定というのは働かないことになると思いますが、現実の問題としては、こういったものにつきまして、完全な添付書類ができておりませんければ、これは受理しないということもあり得るわけでございますから、そういった事態の心配はないと私ども考えております。
  107. 岡田利春

    ○岡田委員 それでは、午前中は一応これでやめておきます。
  108. 八田貞義

    八田委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  109. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田利春君。
  110. 岡田利春

    ○岡田委員 午前中、第五条の「特定施設の設置」と関連して、排水基準水質及び排水量、質と量の問題についてお伺いいたしたわけです。その答弁がどうも納得できないのでありますが、問題は、幾ら水質基準をきめても、量的な問題についてこれが規制をできない。また、いま答弁にあったような規制のしかたというのは、いわば便法的な行為でなかろうか。少なくとも本法が水質汚濁防止法案である以上、量的な規制というものを当然法律上根拠をもって規制を行なうべきではないのか。特に先ほど来通産省から答弁いただきましたように、水質汚濁公害産業あるいは業種というものは大体想定がつくのでありますから、百歩譲ったとしても、そういう公害産業の業種という面、あるいは地域の面では、量的な規制というものは当然考えるべきだ、私はこういう見解を強く持っておるわけです。したがって、もう一度この量的な規制をするという場合には、どこに一体根拠を持つのか。届け出は、もちろん第五条第二項にありますように、「排出水の汚染状態及び量その他の」云々とありますけれども、これはあくまでも添付書類でありますから、本条が三十二条の罰則規定を受けることになっておりますけれども、この項に限っては罰則規定も受けないということでございますので、この点をもう一度明確にしていただきたいと存じます。
  111. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 お答えを申し上げます。  先ほども若干お答え申し上げましたが、いわゆる水質汚濁規制というものが、許容限度としての濃度によってきめるという形になっておりまして、量との相関関係があるではないかという御指摘はそのとおりでございますが、先ほど申しましたような形で、実際上の問題としてはやることができると私ども考えておりますが、排水量そのものを直接に規制する規定はこの法律の中にはないわけでございます。
  112. 岡田利春

    ○岡田委員 では、たとえば本条の第二項で第一項の届け出をする場合に、排出水の汚染状態及びその量について、政令に定める事項を記載した書類を添付して届け出をした、ところがこれは虚偽であったという場合には、この二項には罰則の規定がないわけです。ほかの一項一号から六号までについては、前項については罰則の適用があるのでありますが、ここには罰則の適用がないわけです。ですから、いわゆる汚染状態や量について故意に虚偽の書類を添付したといっても、それは何ら罰則の対象にはならないわけです。そういう資料を根拠にして、いわば便法的に量的な面についての指導といいますか、そういう規制に類似するような一応の方法をとったとしても、立法のたてまえからいうと、あまりにもその趣旨に反する結果になるのではないか、こう私は考えざるを得ないわけです。具体的に申し上げますと、もし虚偽の書類を添付した場合にはこれはどうなるのですか。
  113. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 第五条の届け出の際に、添付書類を虚偽の内容で届け出たというような形にもし万一なった場合には、結局この工場が実際に操業いたしました場合に、たとえば排水量がある量であるということに書いてあったものが、その数倍のものが出るという形が出るわけでございましょうが、そういうことになりますと、後ほどございます、監視測定という形で公共用水域水質を常時監視測定をいたしますが、そういうところからわかってまいると思います。そこで内容が間違っておるということであれば、当然その都道府県知事としては、そういった書類をもう一ぺん出し直させる。そしてその事態が、排水基準等をさらにきびしくする必要まであるような事態でありましたならば、上のせ基準の改定というようなことも出てくるのではないかと思います。私は、こういった監視測定によってそういった点は十分監視ができますから、そういう点で御心配のような事態が出ることは通常はないのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  114. 岡田利春

    ○岡田委員 いま質問の中で明らかになったのは、いろいろな答弁をされたけれども、結局、量の問題については本法では非常に軽視をしているということが明らかになってきたと思いますし、また書類添付についても別に罰則の適用もないし、それが結果として、量については、その真偽のほどは測定すればわかるではないか。わかってみたところで、やはりこれからの排出水の水質汚濁規制するという立場に立てば、量的な問題は当然ある一定の根拠を持つべきだ。あるいはまた、量的な問題については一項の中に含めるか、そういう問題がいろいろ企業の点で出てまいりますので、工場は単に届け出ではなくて、これを含んで認可事項にすべきだ、こういう見解を私は持たざるを得ないわけです。この点について経済企画庁長官から御答弁を願いたいと思います。
  115. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 排水規制基準というものをいわゆる排水基準に置いておるわけであります。この排水基準は、もちろんある程度の量というものを想定いたしましてもともときめられているわけであります。でありますから、排水基準を守らせるということは、ある意味においてその量というものが間接的にそれによって規制を受ける結果になると思います。ただ、量というものも非常に動きやすい面がありますから、それをなかなかとらえにくい。やはり基準というものを守らせるというその根本のところを確保しておけばいいのではないか。もちろん事態がたいへん変わってまいりまして、排水基準をきめるときに想定しておったような量と格段に違うというような場合には、もちろんこれは排水基準そのものを変えなければなりません。そういう用意は十分してあります。それから常時の排水基準も、御存じのように、平均と最高というものをきめまして、そして結局ある程度のアローアンスを十分に見てきめておるわけであります。でありますから、御指摘のような意味で、非常にゆるいということでは決してない、そこのところは御了解を願いたいと思います。
  116. 岡田利春

    ○岡田委員 私はさらに、量的な問題というのは、一単位の施設から排水される量と、排水先がその一河川よりない場合のトータル的なものですね、排水量の総量といいますか、こういうとらまえ方、量的に二つのとらまえ方があると思うのです。したがって、このことをやはり何らかの形で規制ができる法律根拠をもって——もちろん長官がおっしゃるように、動的なものでありますから、なかなか一律にはとらまえにくいかもしれないけれども、それが政令なりの基準によって、何らかの形によって規制ができる根拠を持たなければ、本法は有名無実になるおそれがある。たとえば生活環境に関する環境基準の場合にはPH、BOD、SS、DO、いずれも連関性があるわけですね。そしてまた、水産段階で見ますと三級しかないわけです。ですから、BODで見ますと五PPM以下というふうになっておるわけですけれども現実に東京の多摩川あたりでは、丸子橋で一〇・五PPM、あるいは太子橋付近では一二PPM、これは潮の干満の影響のある地点でそうであるわけです。しかも、魚は一〇PPMになればほとんど生きられないというのが定説であるわけですが、そういう現実もあらわれておるわけです。隅田川のごときは慢性的にほとんどが二〇PPMになっておる。こういう現状であるわけですから、そういう現実に照らし合わせても、この量的な問題をやはり考えるべきだ、こう私は強く主張いたしますし、ここで議論をしても、おそらくなかなか詰まらぬと思いますので、私はそういう意味において、排水基準の質と量の問題、さらに政策的にトータル的な量の問題、こういう点を積極的に受けとめていくという姿勢がなければならないということを明確にしておいて、いずれまた、この点は法案の修正その他について意見を述べてまいりたい、かように思います。  次に私は、第五条、第六条、第七条はいずれも罰則規定が適用されておりますけれども、特に全般的な認可制度ができないと仮定しても、先ほど言った特定業種、特定地域については、量的な問題を含めて認可制にすべきだ、こういう強い意見を持っておるわけです。  ただ、ここで一点お伺いしておきたいのは、先ほど長官の答弁もございましたけれども、たとえば鉱山関係とかあるいは電気事業の関係の場合には、すべて認可制をとっているわけです。適用除外はみな認可制をとっておる。ということは、百歩譲っても、指定業種とかあるいは指定地域に限っての認可制がとれない、それが弊害を生むということについては納得できないわけです。閣議でも通産省から報告されているように、公害型の産業現実にこれこれである、あるいはまた、地域についてもすでにこれは明らかになりつつあるという現状の中で、百歩譲っても、その地域や業種については認可制度をとること、いわゆる鉱山保安法及び電気事業法並みに引き上げることが望ましいのではないか、こう思うのですが、あらためて見解を承っておきたいと思います。
  117. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 電気事業法等は、御存じのように、ほかの問題も含めてああいう特別な事業法をつくっておるわけであります。これは事業の性格からきておることであります。このたびの水質の問題は、御存じのように、製造業だけでありましたものを、今度はあらゆる事業、産業に拡大いたしました。これはやはり相当な分量になるわけであります。そうした意味において、特定事業を相手にするというよりも、もっと広範な法律の内容でもございます。しかし、そういうことで、その中に、もちろん特定の業種というものにどういうものを選ぶかということの問題もありましょうが、いずれにしましても、究極するところは、設備というものが完全なものかどうかということの審査であろうと私は思うのです。そういう意味においては、六十日の期間を設けて審査するという体制が整っておるわけでありますから、それによって十分目的を達し得るんじゃないか、そういう感じを持っています。
  118. 岡田利春

    ○岡田委員 では長官、本法の適用を受けるものと、鉱山保安法の適用を受けるものと、全く同一な企業工場があるということを御存じですか。一方は本法の適用を受け、一方は鉱山保安法の適用を受ける、全く同質な、全く同じ性格のものがあることを御存じですか。
  119. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 たとえば製錬所のような例をお考えですか。それは存じておりますが、この製錬所は、明らかにいわゆる鉱山保安法の対象内であるために、そういう問題に関連した施設ということにはなりますけれども一つのものについて両方適用という御指摘がありました。そうではないと思っております。
  120. 岡田利春

    ○岡田委員 私が言うのは、いま指摘されました鉱山にある製錬所、もちろんこれは、単に鉱山から産出される鉱石のみならず、輸入鉱石をも含めて製錬をしている。独立製錬所も国内鉱石及び輸入鉱石を製錬している。全く同じなんですよ。そして一方では認可制のある鉱山保安法の適用を受け、全く同じものが一方においては本法の適用なんだという点の法の適用にも、やはり矛盾があるわけです。法のもとの適用はやはり平等でなければならないわけです。しかも製錬所は有害物質の点で最も問題があるわけです。たとえば先般、三日市の日本鉱業の製錬所で問題が起きた。これは結局だれが対策を立てるか。鉱山保安法と全く同じ立場で実際は公害保安局がやって、これに対してその基準考えられて処理をしたという実績がある。こういうことは明らかに法のもとに不平等です。だからすでにそういう区別の明確につかないものがある。電気のような場合はいいですけれども、こういう製錬所の場合にはつかない。しかも七〇年代の経済の発展を考えますと、基礎物資の必要量がどんどんふえて、製錬所はどんどん拡大されていくという傾向にあるわけです。したがって、そういう面から考えますと、一方においては、こういう認可制度によって常時監督官が監督するという国の直接的なものになっているわけですし、そういう面からいっても矛盾があると思う。それを単に法律的に分類するところに無理がある。そういう考え方法律の立て方について無理があるのじゃないか。単に法律によってのみ適用除外をするということは無理がある。同質のものは同質として取り扱うべきだ。公害の歴史にかんがみましても、そういう独立製錬所についても当然認可制度にすべきである、こう主張するのは無理があるとお思いですか、いかがですか。
  121. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 鉱山保安法等は、特殊の事業の性格ということで、先に事業法ができておったわけであります。そして、そこにおいてはすでに十分な規制がなされておるということで、今般のような包括的なる水質規制法を規定する際に、もうすでに十分体制が整っておるという理由でもって、これを適用除外をしておるわけでございます。そのためにたまたま、御指摘のように、強いという感じのところと弱いという感じのところができたと思いますが、もともと前からある既定の制度であるわけであります。でありますから、必ずそれを同じにしなければならぬ、それだけでは私は議論できないと思います。
  122. 岡田利春

    ○岡田委員 議論できないとおっしゃるのですから、議論をしてもあまり結論が出ないようですから、これは問題点として私は明らかにしておきたいと思います。  次に、第十三条について御質問いたしたいと思いますが、私は、第十三条は非常に屋上屋を重ねておるのではないかという感じがするわけです。と申しますのは、「特定事業場の排水口において排水基準に適合しない排出水を継続して排出するおそれがある場合において、その継続的な排出により人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認められるときは、その者に対し、期限を定めて」云々とあるわけです。すでに「健康又は生活環境に係る」ということは「目的」にもありますし、もちろん継続して排出のおそれがあり、継続して被害を生ずるなんて、これはたいへんな問題なんです。むしろここでは、改善命令を出すというのは、それ以前の状態に対して適切な措置をとることが大事でありますから、これは私は削除してもけっこうである。したがって、「排水口において排水基準に適合しない排出水を排出するおそれがある場合においては、その者に対し、期限を定めて、特定施設の構造若しくは」と、こう改めることが適切である。もちろん本条は罰則三十条の適用を受けているわけですが、このような見解を私は持つわけですけれども、この点についてはいかがですか。固執をされますか。固執をされるとするならば、その理由についてお伺いいたしたいと存じます。
  123. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 十三条の場合におきましては、御存じのように、従来と制度的に大きな変革がございます。御存じのように、つまり基準に適合しない排出水を出しましたときには、今回は、従来の法制度と違いまして、直罰を受けるわけであります。直ちに罰せられるわけでございます。そういう意味において、その直罰主義を導入しました関係もあり、こういうような場合においては、改善命令はむしろ予防的な見地からこれを発動すべきである、そういうことで「継続」という字を入れたわけであります。もっとも、これも継続するおそれがある場合ということで、十分にその点も考えてこうした制度にしたわけでございまして、決してこれは従来よりもいわゆる緩和された、こういう気持ちは実は持っておりません。
  124. 岡田利春

    ○岡田委員 第十二条は、制限に違反した場合には直罰として三十一条の罰則が適用される。十三条の場合は予防措置なんですね。したがって、知事にその改善命令を出させる、こう定めてあるわけです。知事改善命令を出す場合には、排水基準に適合しない排出水をするおそれがあるときに、すみやかに改善命令を出させることによって、その改善命令に従えばむろん罰則の適用は受けないし、またそれが未然に防止されることによって第十二条の直罰は受けないということなんです。だから、「目的」に書いてあるようなことで、しかも「継続して排出するおそれがある」とか、知事の判断とか、すきっとした明確さを欠いているような字句を、何がゆえに挿入しなければならぬのか。十二条に直罰がかかる基準があるわけですよ。規定があるわけですから、とにかく第十二条の排水基準に適合しないで直罰がかかるような事態を未然に防ぐためには、おそれがあるときにはすみやかに改善命令が出せる。命令に従えばこれは未然に防止できます。命令に従えば本条の罰則は適用されないのですから。そのほうが、長官の答弁からいえば、より望ましいのではないでしょうか。こういう字句は「目的」に入っておるわけでしょう。いままでに何回も出ておるわけです。「人の健康又は生活環境に係る被害を生ずる」ということは、本法そのものの目的なんですから、そんなことを麗々しく書く必要はないと思うのです。逆じゃないでしょうか。
  125. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 実際問題として、結局、改善命令を出さなければならないのは、ここに書いてあるような、継続して出すおそれのある場合ということになるんだと思うのです。そういう意味において、これはむしろ厳密に書き分けた、こういうことだろうと思います。
  126. 岡田利春

    ○岡田委員 少なくとも排水基準をきめて、そして届け出をして、その猶予期間もあって、しかる後に排水基準に適合しない排出水をするおそれがあるときには、すみやかな措置をしなければいかぬのじゃないですか。何を考ておられるのです。何を想定されておるのでしょう。私はわからないわけですよ。要するに、基準に適合しない排出水をした場合に三十一条が適用されるわけですから、それを未然に防がなければならぬわけでしょう。そうすると都道府県知事は、そういう排出水をするおそれがある、だからこの点については改善をしなさい、こう端的に改善命令を出すことのほうが、本法の趣旨からいっても最も望ましいのではないでしょうか。ですから私は、長官は本法立案にあたって、特別なケースを何か考えられておるような含みがあるように聞こえてならないわけであります。
  127. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 御指摘ケースというものが、どういうところを想定しておられるのか、私もつかみかねておる面もございますので、あるいは当たらないかもしれませんが、この法律のたてまえは、先ほどごらんいただきましたように、一つ工場を設置する、そこで届け出をいたしまして、その工場計画につきまして、特に排出水の処理の方法その他詳細に審査をいたしまして、必要があれば計画変更命令という形でこれを改善させるわけでございます。そして、これはよろしいという形になった工場が操業を始めた、そのときに排出水が基準以上のものが出たという場合に十二条の罰則の適用がございます。その事由が、たとえば施設の構造あるいは使用の方法等にかかわるものである場合には、それが直らなければ同じ状態が続くわけでございます。そういう場合には、改善命令を出しまして施設の構造等を変更させる、改善させるということがこの十三条の規定であろうと思います。御指摘になっておられる場合が、そういう形でやってまいれば、特に「継続」という字を入れてあるほうがより正確であって、そういう事態、これがなかった場合というようなことは、特に規定する必要はないのではないか、私はこういうふうに考えておるわけでございます。  大体、以上のような考えでこれができておるわけでございます。
  128. 岡田利春

    ○岡田委員 ますますわからないのですよ。とにかく、許容限度を越えた排出水をすれば、罰則をすぐ適用されるのです。これは、継続して排出したらたいへんなことでしょう、直罰が導入されているのですから。ここの十三条の場合には、改善命令に従わない場合のみ罰則が適用されるのですから、要するに、排水基準に適合しない排出水を排出するおそれがある場合には、改善命令を出して、その命令に従って改善をすれば、それは未然に防止できる。したがって、十二条、十三条いずれも罰則の適用を受けないということですから、むしろ、おそれがあるときにはやらなければならぬわけでしょう。測定器械だって、いまそう精度のいいものはないわけですから、これはとにかく相当目に余るぞというようなときに改善命令を出すわけでしょう。ですから、あなたの答弁のほうがわからないのでありまして、この点ひとつぜひ検討してもらいたいと思いますし、私はここにこういう字句を挿入する必要は何らないという見解を明確にしておきたいと存じます。  それから第十四条についてでありますが、第十四条三項の「排出水を排出する者は、有害物質を含む汚水等(これを処理したものを含む。)が地下にしみ込むこととならないよう努めなければならない。」、ここで重要な問題点は、有害物質を含む汚水等が地下浸透によって処理をされるということです、「努めなければならない。」わけだから。浸透処理はいけないのだということもわかりますけれども、しかし、有害物質を含んで地下浸透処理をしたために、蓄積性の重金属汚染が東京都内で起きたという実例もあるわけです。そうするとこれは、有害物質を含む地下浸透処理は禁止をするということを法文に明確化すべきであって、そして明確化することによってむしろ罰則を適用すべきである。立法の一連の流れからいって、あるいは罰則の適用の状況から判断して、そのように規定することは当然である。そうあらねばならない。一般排水の場合においても、地下にしみ込むことにならないように措置をするという方向にむしろ第十四条の三項は変えるべきである、私はこういう明確な見解を持っておるのでありますが、いかがですか。
  129. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この地下水にかかわる問題でございますが、これは理想的にいけば、いまお述べになったような形でやるべきだろうと、私ども制度的には考えておるわけでございます。しかし、この地下浸透の問題というのは、まだ機構も十分に把握されておりませんし、また現実にそういう事態というものは、幾つかの事例は若干出ておりますけれども、どういう基準で、どういうやり方でこれを規制していくべきか、合理的な基準というものもまだつくることができない段階でございます。したがいまして、こういった訓示規定のような形で、行政指導の面でこれは強化していこうということにしたわけでございますが、もちろん今後こういった問題を科学的に十分つかまえることができる段階になりましたならば、この辺については、さらに規制の強化を法律上も明確にしなければならないだろう、こういうふうに考えております。現段階ではそこまでまだいきませんのでこういう規定にした、こういう状況でございます。
  130. 岡田利春

    ○岡田委員 いまの局長の答弁は無理がありますよ。有害物質を含んでおれば、普通の排水についても地下にしみ込まないように措置をしなければならぬと書いてあるから、少なくとも有害物質を含んでいる排水を地下浸透で処理することは絶対いけないということは当然ですよ。これは書いてある趣旨からいっても当然そうです。あなたの答弁は無理がありますよ。私はぜひこの点は検討してもらいたいと思いますし、これも問題点として明確に指摘をしておきたいと思います。  次に、第十五条について質問いたします。これは水質汚濁の状況の監視等について、十五、十六、十七条と規定されているわけですが、第十五条の「都道府県知事は、公共用水域水質汚濁の状況を常時監視しなければならない。」というのは、どのような状態が常時監視と想定をされてこの条文を書かれたかというのが第一点であります。  次に、「測定計画」がございますけれども、「測定の地点及び方法その他必要な事項を定める」、毎年これをやるわけであります。したがって常時監視の場合には、測定も含めるわけですが、監視の地点は、十六条の二項と全く同じ地点を、十五条は意味をいたしておるのか。  それから、第十七条の「公表」に関連をして、この十六条の問題については、公表するとすぐ読めるわけでありますが、第十五条はひとり歩きの条項でありますから、十五条の常時監視の報告についても、公表するということに受けとめていいか。この三条文についての関連性について見解を承りたいと思います。
  131. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 第十五条は、この法律の目的を達するために都道府県知事が「常時監視」をするという一般的規定を書いたものでございます。この「監視」というものは、手段として当然水質測定を伴うわけでございます。そのことが第十六条に書かれておる。こういう関係になるわけでございます。  「常時」というのは一体どのくらいの状況をいうのかということでございますが、現在でも水質測定というものをやっておりますけれども、月のうち何日かをきめてやるとか、あるいはその地点の密度はどのくらいというようなことは、当然その地点、その地点の状況によってきめられてまいるわけでございます。こういった形での計画というものが第十六条の第二項にございますが、こういった形できめていくということになると思います。  この「測定」のほうは、必ずしも都道府県知事が全部やるというわけではございませんので、場合によりましては、たとえば公物管理者である河川管理者であるとか、あるいは市町村等も、そういった測定にお手伝いを願うということも出てまいると思いますが、いずれにしても、全体をひっくるめて都道府県のところに測定結果がまとまり、そしてそれを公表していく、こういう関係になっておるわけでございます。
  132. 岡田利春

    ○岡田委員 局長の答弁は十五条と十六条が逆で、第十六条が十五条で、十五条が十六条で十七条が「公表」ならば、あなたの説明である程度通りますよ。しかし十五条は、都道府県知事の固有の義務として「水質汚濁の状況を常時監視をしなければならない」と、はっきり区切っているわけですよ。「測定計画」は「毎年、国の地方行政機関の長と協議をして」云々、これは全然別な法律の立て方です。十五条はあくまでも、たてまえとしてひとり歩きの法律ですよ。私はそう思うのですが、法制局はいかがですか、見解を承ります。
  133. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 私どもの立案の考え方としては、やはり十五条、十六条というものは一体のものとして、一応十五条は都道府県知事義務的な面を強調して書いたつもりでございますし、十六条のほうは、それを計画的にやらなければいけないのだという、やり方という面をとらえて書いたつもりでございます。
  134. 岡田利春

    ○岡田委員 あなたはそういう気持ちで書かれたかもしらぬけれども法律的にはそうなっていませんよ。あくまでも十六条は、都道府県知事行政機関の長と協議をして測定計画を作成するのですから、それで測定すべき事項、測定の地点及びその方法その他必要な事項を定めなければならぬわけです。ですからこの法案でいえば、「国及び地方公共団体は、測定計画に従って当該公共用水域水質測定を行ない」、これは年に何回やるかわかりませんよ。三項ではその結果を受けているわけです。「その結果を都道府県知事に送付する」。あくまでも単独の条文ですから、十五条は、固有の義務として「都道府県知事は、公共用水域水質汚濁の状況を常時監視しなければならない」のでありますから、このような立て方になっている以上、気持ちとか考え方ではいかぬのであります。法律の解釈はやはり、単独条文としてひとり歩きの条文であるということが明確なんですから、気持ちとは別に、法律をすなおに解釈することを法制局は示さなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  135. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 気持ちと申し上げたのは、立案の趣旨、目的という意味で御理解願いたいと思いますが、十五条は「水質汚濁の状況を常時監視しなければならない。」、しかし、「常時監視」をするということの具体的な手段は何かといえば、ただながめているということでないことは言うまでもないと思います。その手段として合理的な計画を立てて十六条が出てきた、こういう意味で、私ども法律の解釈としては、十五条が柱で、それを十六条が手段として受けているという趣旨でございます。
  136. 岡田利春

    ○岡田委員 そういう答弁をしておるが、これはだれが読んだって、都道府県知事水質汚濁の状況を常時監視しなければならぬわけですよ。そうして測定計画は、いま言ったように協議をしてきめて、そうして測定すべき事項、地点、方法等必要な事項を定めて、そうして国と地方公共団体測定計画に従ってやるわけです。十五条はあくまでも、都道府県知事が固有の義務として常時監視しなければならぬ。明らかに立て方が違うのですよ。ですから、十五条を受けて十六条で処理するという考え方は、この法律条文から出てまいりません。それで私はけっこうだと思うのです。  ただこの場合に、常時監視という面について、これは経費がかかることです。相当負担がかかることでありますから、そうすると、結局この条文には、先ほど質問がありましたように、都道府県知事に関する事務及びこういう調査に対しては、経費分担、費用分担という点について何ら法律規定がないわけでありますから、こういう点についてやはり十分配慮しなければならぬということを主張いたしたいのであります。法律の問題でありますから、これはそう法制局で読めるといいますけれども、非常に無理がありますよ。これを受けて都道府県知事は常時監視しなければならぬでしょう。それを条例で定めるか何かは別であります。そうして十六条は三項でもってちゃんと、「測定計画に従って当該公共用水域水質測定を行ない」ということがありますから、あくまでも測定計画は、実施の面は三項で受けるのですよ。このように解するのが至当だと私は思うわけです。そうでないとするならば、それは立法の立て方に重大な誤りを来たすわけですから、これは再提出するか何らかするという措置が、立法に責任のある法制局としては当然の措置である、このように私は思います。この点についてぜひ内閣法制局として見解をまとめて、この面は答弁をしてもらいたいということを要求いたしておきます。  次に、第十八条の「緊急時の措置」であります。  この「緊急時の措置」について、排出水量の減少その他必要な措置をとるべきことを命令することができるというようにすべきではないか、私はこう思うわけです。「勧告」の解釈については、先ほども勧告」の問題で議論をいたしましたが、長官の答弁をかりますと、助言よりも強い意味だというのが勧告だとするならば、第十八条の「緊急時の措置」としては非常に不的確ではないか。むしろ、これはそういう意味勧告であるならば、ここは排出水量の減少その他必要な措置をとるべきことを命令することができる、このように改めるべきではないのか。十八条は、私の調査では罰則の適用はないですね。勧告ですから罰則はないのでしょうけれども。そういう意味で私は、ここは「命令」にすべきであるという見解を持っておるのですが、長官の言われる、助言より強い意味勧告とされた意味について、どういうお考えでここは「勧告」と定められたのか、見解を承っておきたい。
  137. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これはいろいろ議論の立つところでございます。ただ実際問題としては、異常渇水、台風による廃液の移動、いろいろと予測しがたい天候の条件による、こういうことになっておるわけであります。したがいまして、千差万別の条件でありますからして、いかなる場合に、いかなる範囲のものに、いかなる程度の減水を命ずるかということを書き分けることがなかなか困難である、こういうことであります。でありますから、それに直ちに直罰を科することは適当ではなかろう、こういう判断があるわけであります。われわれもすでに四日市その他でもって、実際上は勧告によって処理している事例があり、そうして支障なくやっておるわけでありますし、しかもそれは条文にもないことをやってきております。でありますから、勧告という強い制度によって十分に目的を達し得るであろうというふうに考えて、こういう表現を用いることにいたしました。  なお、この方面の問題についてはデータが不足でありまして、今後、勧告をやりましたり、警報を発したり、こういうことを積み重ねてまいりまして、もしそうしたデータの集積によって、ここのところを適当に詳細に書き分け得るようなことになりますれば、またその際にもっと強い制度検討するということは十分考えられることであります。
  138. 岡田利春

    ○岡田委員 本条の立て方から考えて、勧告をする要件というものは、これだけ詳しく書かれているわけです。「準ずる事由により公共用水域水質汚濁が著しくなり」——著しくなるんですよ。「人の健康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれがある場合」であって、しかも「政令で定める場合に該当する事態の発生したとき」で、それを「一般に周知をさせる」、こういう四つの要件が整っていて、なおかつ「期間を定めて、排出水の量の減少その他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。」とあるわけです。これだけ四つの明確な要件、「著しく」とか「政令」とか、それから「生活環境」、「人の健康」、そういう基本的な要件を定めた場合に、先ほどの答弁でいえば、助言よりちょっと強いと言われた勧告にとどめることは、法律の条文からいって適当ではない。これだけの要件を整えておるならば、都道府県知事に、措置をとるべきことを命令する権限を付与するべきだ。しかし、長官が言っている、こういう勧告要件がなかなか定まらない場合には、命令は無理があるから勧告にするというなら話はわかるのです。これ以上の要件というものがあるんでょうか。いままでいろんな法律の立て方があるのですけれども、これだけの要件がそろっていれば、当然命令権を与えるべきですよ。そして命令に従わない場合には当然罰則を適用すべきである、私はそういう見解であります。この点も私の議論がお認め願えないかもしれませんけれども、もう一度御答弁を願っておきたい。これ以外に何の要件が必要なのか。
  139. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 この程度ではなかなかいけないようであります。法律技術的に困難のようであります。
  140. 岡田利春

    ○岡田委員 ここは非常に重要なところで、私の見解を述べておきましたから、またこれも集約して同僚から見解を述べるようにいたします。  次に「中央水質審議会」ですが、これは附則第四項によって、委員の横すべりということになっている。私は、いままでの水質審議会の方々の御労苦を否定するものではありませんけれども、二法が一法になって水質汚濁防止法ができたのでありますから、わざわざ附則で委員の横すべりを書かなきゃならぬということがわからないわけです。むしろやはりあらためて任命すべきではないのか。二法が一法になって法律ができたんですから、同じ人が再任されるかもしれませんよ。そういうことに私はこだわるのじゃありません。わざわざ附則をつけて、委員の横すべりを附則四でもってきめたということは納得がいかぬのでありますが、この点、何がゆえにそうされたのでありましょうか。
  141. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 御指摘の点も、わからないわけではないのでございますが、いまございます水質審議会、それからこの中央水質審議会、やる内容はほとんど同じような形で、水質問題に関する重要事項をここで御審査を願うわけでございます。しかも、この水質審議会委員も任期二年ということになっておりますので、この法律が施行の際に、その時期においてすぐに新しい審議会に切りかえるという必要も必ずしもない。これは継続してやっていただきまして、そしてまたさらに、この法律全体の問題なり何なりから見て、委員の内容を少し広げるなり、あるいは方面を変えるなりする必要があれば、その任期切れのときに新しい委員でやっていけば十分ではないか。むしろ継続していろいろのことが起こるわけでございますから、現在の審議会の委員の方々をそのまま継続してやっていただく、こういうことで運用してまいりたい、こういう趣旨でございます。
  142. 岡田利春

    ○岡田委員 附則といえども法律でありますから、けちくさいことを法律できめて、肝心なところをきめないで政令に——政令にもまだ含まれていない重要事項があるのに、けちなことをわざわざ附則四でもってきめる考え方がわからないわけです。こういうことは避けられたほうがいいのではないか、御忠告をいたしておきます。  二十一条については、この「都道府県水質審議会」は、たとえば知事がここで意見を述べることができる、また審議した事項を知事に出す。そしてその結果、知事は、第三条で規定してあるように、必要があればいわば上のせ基準を条例で定めることができる、こうなっていくわけであります。そうしますと、都道府県水質審議会は当然公開制が原則である、こう私は判断いたします。条例、特に基準をきめる条例は、その経過なり、科学的な根拠なり、いろいろな面については、都道府県議会において、いわば条例審議で公開されるのでありますから、当然この立法の趣旨からいって、都道府県水質審議会は公開が原則である。もちろん、何らか秘密で公開しないという場合もあるかもしれませんけれども原則としては公開であるということが当然であると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  143. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 都道府県水質審議会の運営に関して、必要な事項は条例で定めることになっておりますから、したがって、この審議会の運営を公開、非公開いずれでやるかということは、それぞれの都道府県の自主的な判断できめていただくという趣旨でございますが、ただ、現在あります水質審議会等は非公開でやっております。この理由は、この委員の方々に自由に意見を述べていただくという趣旨から見まして非公開が適当である、こういうことでやっておりますが、しかし今後の都道府県水質審議会のほうば、そういう形でどうやっていただきますか、各都道府県の自主的な判断におまかせするという趣旨でございます。
  144. 岡田利春

    ○岡田委員 二十二条の「報告及び検査」でありますけれども政令の定めるところによって、その職員は、その者の特定事業場に立ち入り、特定施設その他の物件を検査することができるわけであります。しかも、これは罰則三十三条が適用されるわけでありますが、水質測定水質検査、水質基準についてのいろいろの特定施設の状況等について検査をする場合の立ち入りの職員の資格、これはただ「職員」と書いてあるわけですが、私は、やはり職員の資格ということが、本法運用のためにも非常に重大だと思うわけであります。この資格についてはどのように考えられておるのか。少なくとも専門的知識がない者が職員であれば問題だと思うわけです。あるいは何らか制度的に資格を付与する考え方があるのか、この資格について承っておきたいと思います。  これはある意味では知事の代行をする。そして知事に意見を述べて、知事はその意見に従って措置するわけでありますから、先ほどから質問してきた、示されている法律の内容からいえば、ここは簡単に「職員」とございますけれども、他の鉱山保安法とかあるいは電気事業法、こういう面から見ますと、「職員」というものもそれに準じなければならないのではないか。罰則を適用される場合もあるわけです。直罰主義も取り入れられておるわけですから、そう思うのでありますけれども、この点はどのように検討されておりますか、伺っておきたいと思います。
  145. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この二十二条におきます「職員」の資格の問題でございますが、御案内のとおり、都道府県にはこういった公害関係の部局等の組織が逐次整備をされております。また、その出先機関である保健所とか、あるいは場合によりましては河川関係の管理をやっておるようなところ、そういった関係の職員にこういう仕事をしていただくことになると思うわけでございますが、何ぶんにも、現在までの段階で、こういったものについての立ち入り等については、比較的新しく都道府県の仕事として始まっておりますので、法律に明確に書くほどの資格要件というのを現段階できめることはちょっとまだむずかしい、こういうこともございましてこういう規定にいたしておりますが、これから当然こういった職員の研修その他の措置を強化してまいりまして、そして能力を高めていく、同時にだんだんその資格要件というようなことも明確にしていく、こういう運用をしてまいりたいと思っております。
  146. 岡田利春

    ○岡田委員 非常にこの点は重要なこれからの課題でありますから、この点、特にこれからの課題として強調しておきたいと思います。  次に適用除外について。鉱山保安法について先ほど議論しましたから、一点だけ電気事業法についてお伺いしたいのでありますけれども、電気事業法のどの条文で排出水規制をできるといわれておるのか。いろいろ言い方もあるでしょうけれども、いろいろな電気工作物、あるいは四十八条が根拠だ、こういわれておるようでありますけれども、四十八条が根拠なのか、電気事業法では排出水の規制はどこでやれるのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  147. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  電気事業法と水質汚濁防止法との関係につきましては、水質汚濁防止法第三条で排水基準がきめられ、それからまた、それの順守義務、第十二条に基づく直罰というものは、当然水質汚濁防止法が電気事業者にも適用になるわけでございます。  ところで、電気事業法におきましては、水質汚濁防止法によってきめられました排出基準を電気事業法第四十八条で受けとめまして、電気事業法上の技術基準としてこれを規定いたしております。大気汚染その他につきましても、従来からそのようにやっておるわけでございます。そして、その排出基準順守の面におきます、水質汚濁防止法上の特定施設の設置の知事への届け出につきましては、汚濁防止法第五条の関係につきましては、電気事業法第四十一条第一項本文ないし第四十二条第一項前段の規定を、相当規定といたしまして適用いたす考えでございます。また、水質汚濁防止法第八条の計画変更命令につきましては、電気事業法第四十一条第一項の本文、並びに第四十二条第二項の規定に基づきます電気工作物工事計画の認可変更命令規定がございますが、これを相当規定といたす考えでございます。さらに水質汚濁防止法第十三条の知事改善命令につきましては、電気事業法第四十九条の通産大臣によります技術基準適合命令によって相当規定といたし、所期の規制効果を発揮できると考えておる次第でございます。
  148. 岡田利春

    ○岡田委員 局長が答弁されたのは、私もそうであろうと思いますけれども、それはそういうことで解釈しまして、適用できないことはないが、無理があるということは言えると思うのです。  たとえば工作物ですと、排水路は確かに工作物です。しかし、排水そのものは別に工作物ではないわけですから、工作物はただ水を流すだけですよ。熱い温度の水が海なり川なりに注がれる。電気の排水の場合は、むしろ温度の関係があるわけです。大気汚染の場合と排水の場合は違うのですよ。大気汚染の場合に適用いたしますとずっと無理がありますよ。そう答弁されるのは当然であろうと思いますが、相当無理があると思います。そのことは、今日の温度の汚染という問題については想定しなかった場合の立法であったからだと思うのです。そういう意味においてはやはり、この電気事業適用除外は、賛否は別にして、電気事業法でそれらを取り締まるとするならば、公害立法にふさわしい、合わせた法律の改正を急がなければならないのではないか。むしろ、その点を解釈してやるのではなくて、明確にすべきではないだろうか、私はこう思うわけです。無理して読めば読めないこともないのですよ。局長もそういうあれだということで、条文上きちっとは読めないわけですから、それに適合する方向に、その場合、適用除外であるならば準備をしなければいかぬのではないか。そういう気持ちもないとするならば、大気汚染はさておいて、水質汚濁、特に温度、熱の問題について問題が出るのでありますから、この場合、電気事業の適用除外は無理がある、こういうことをいわざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  149. 長橋尚

    ○長橋政府委員 御指摘の熱汚染の一環といたしましての火力ないし原子力発電所の温排水につきまして、今後、排出基準がきめられることがあり得る、かような考え方に立ちます場合に、水質汚濁防止法上の特定施設として、その場合考えられますものといたしましては、蒸気タービンの復水器というふうなものが一つの中核になろうかと思います。これは、ばい煙発生施設と同じような意味合いにおきまして電気工作物、こういうふうに観念できるわけでございまして、水質汚濁防止法の一部規定を電気事業法の相当規定にかわらせるという面におきまして、大気汚染防止法の場合と何ら異なったところはないものと、かように考えておる次第でございます。
  150. 岡田利春

    ○岡田委員 電気事業法はこれまた政令がやかましいわけですね。局長が少なくともそう答弁されるならば、やはり政令である程度明確にするとか、もう少し言うくらいの気持ちがないと、私は基本的な適用除外は認めるべきでないという精神に立っておるわけでありますけれども、これは適用除外をするという場合を考えただけでも、予想してないのですから、その点を前向きの適合した政令事項でも処理できる面があると思うのです。しかも今日一基百万キロワットですよ。原子力だってエスカレートして、三十六万キロから六十万というのですよ。こういう世界に類例のない大型化の方向をたどっておるわけですから、しかも狭隘な国土、複合汚染公害の出ておる段階で、もっとも大気汚染に匹敵するわけではありませんけれども水質汚濁の場合にも問題があるわけです。こういう点で、この点については私の見解も示しながら指摘をしておきたいと思いますので、ぜひひとつその点検討していただきたいというふうに思います。  時間がありませんのでまとめて最後に一問だけ二、三含めて質問しておきたいと思います。  一つの点は、都道府県知事の常時監視、あるいは政令で定める市の長に委任をする、こういう場合に事務職あるいはまた測定監視のための経費、これは社会党は、別に地方行政委員会に単独で議員立法を提案しておることは、御承知のとおりであります。この法案全体をながめると、一般企業に対する資金の問題とかいろいろございますけれども、残念ながら都道府県に対する明確な規定がない。予算要求されているとの説明もありましたけれども、これだけの立法をし、しかも知事にこれだけの権限を与え、さらにそれを市の長に委任できるということになってまいりますと、やはり費用の分担については、できれば一項ほしかった。一項追加すべきではないか。追加しないとしても、この点について何らか明確な分担の割合というものを示すべきだ、こういう意見を持っておりますから、この点についての御答弁。  さらに、この許容限度がきめられた場合といえども、水産物や、あるいはまた植物の場合は別でありますから、許容限度以内であっても、漁業被害があれば当然損害賠償の請求ができる。当然だと思いますけれども、念のためにこの点もひとつ御答弁願っておきたいと思います。  最後に、第四次産業といわれる公害防止産業の育成について、もちろん試験研究機関等も法律には出ておりますけれども、わが国のこれらの問題に対処する新しい技術の開発という面については非常におくれておると思うわけです。こういう点については相当積極的に力を入れなければならないのではないか。試験研究機関もございますけれども、この点について特に御所見があれば、この機会に承っておきたいと思います。
  151. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 第一点の、都道府県あるいは市の監視測定等の経費につきましては、四十六年度の予算で要求をいたしまして、補助金としてそういった経費の一部を補助してまいりたいと考えておる次第でございます。  それから第二点の、被害があった場合の損害賠償の問題でございますが、許容限度内でありましても、そういった実際の被害がありますれば、これは当然賠償が行なわれる、私どもそういうふうに考えております。  それから、ここに試験研究等の条項はございますが、今後こういった公害防止にかかわる技術の開発ということが非常に重要になります。こういった産業の育成につきましても、今後、開銀その他の面でいろいろごめんどうを見ていただく、こういうことでやってまいりたいと思っております。
  152. 岡田利春

    ○岡田委員 特に重要な解明されない多少の課題がございますので、この点については、本法案が本委員会で審議終了するまでの間に解明するとしまして、その点の質問を留保しまして、私の質問は終わりたいと思います。ありがとうございました。
  153. 八田貞義

  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 ただいま岡田委員のほうから、非常に細部にわたった質問もあったわけでございます。私はできるだけ重複を避けて、問題点に当たってみたいと思っております。  まず最初にお聞きしたいことは、今回の水質汚濁防止法によって既存の法律のどのような弊害を改善することが期待できるかということであります。これについてまず簡潔にお聞きしたいと思います。
  155. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 今回の提案の内容は、ごらん願うとわかりますように、いわゆる地域の指定ということを改めまして、全地域に拡大しましたこと、あるいは製造業だけを中心に規定されたものをすべての産業に拡大しましたこと、また一方において国の事務を大幅に地方に移しましたこと、したがって、地方の段階において県知事に集中的に権限を移しまして、いわゆる行政の分裂ということが行なわれないようにしましたこと等々私はやはり画期的な変更であろうと思います。もちろんこれは、問題はこの実施をいかに十分に行なうかということにかかっておるわけでございますけれども公害問題の今日の重要さに顧みまして、十分この法律立法の趣旨に沿った運用をわれわれも考えなければなりませんし、また地方公共団体においても、十分この趣旨に沿って行動されるものと私は信じております。したがいまして、少なくともこれから生じるであろうところの水質規制といったことを中心にした問題に関しては、非常な進歩が見られるであろう。  問題は、先ほども指摘がありましたように、すでに汚濁されたものをどうするか、あるいはその他の関連の問題がございます。そうした問題については並行して施策の前進をはかっていかなければならない、こういうふうに考えております。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 この水質汚濁につきましては、水質汚濁防止法が当然柱になるわけでございます。しかしながら、この法律があったからといって、完全にそれが期待できるかというと、やはりそこには汚染源の多様化というような問題が非常に大きくクローズアップしてきておるわけであります。そこで、いろいろと関係各省で法律も立てられ、またその対策等もとっておられると思うのでございますが、こういう汚染源の多様化への全般的な対策ということで、まず水質を汚染しておるものにどういうものがあるか。たとえば工場排水なんかはこの法律で押えられるわけですが、また、その汚染源に対して、何法でもってそれをどのように規制し、対策をとっておるか。水質汚濁という問題について、そういう観点からひとつお答えを願いたいと思うのです。これは、公害対策本部の方も来ておられると思いますし、どなたでもけっこうでございますが、全般的に水質汚濁、その多様化ということについてお聞きしたいと思います。
  157. 竹谷喜久雄

    ○竹谷説明員 御質問にお答えいたします。  水質汚濁に関しましては、産業から流れてくるやつが主でございまして、それにつきましては、先ほど来御審議を願っております水質汚濁防止法規制していくということになると思います。そのほか、家庭排水から出るやつもございますので、そういったものにつきましては、下水道法を改正いたしまして、それでそういった家庭汚水の問題も含めて考えていきたい、かように考えております。それから既存のたまったやつにつきましては、河川の浄化事業とか、そういったものをやりまして水質の保全を考えていく、かように考えておるわけでございます。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回、十四本の法案政府としては提出をされておられるわけでございますが、水質汚濁していくその汚染源、それに対する立法なり、あるいはその規制というものは、いま非常に簡単に報告されたと思うのですが、水の濁りというものはそれだけで押えられるのですか。ほかにどのように把握をされておるのですか。どのように把握をされておるかというところから出発しなければならぬわけです。政府としてはそれだけしか把握をしておられないととっていいわけですか。
  159. 竹谷喜久雄

    ○竹谷説明員 ただいま申し上げましたのは主たるものでございまして、そのほか河川なり海洋なりに対するいろいろの廃棄物の投棄とかそういった問題もございます。海洋につきましては、今回海洋汚染防止法を提案している次第でございます。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 海洋汚染防止法も出てきたわけです。また廃棄物のそれも出てきたわけでございます。廃棄物処理法案というのは社労委のほうにかかっておりますが、これは非常に重大な産業廃棄物ということで、この商工委員会では深い関係があるわけであります。そういう点で私も、特にこうした汚染源ということの究明をいたしておるうちに、この法案が非常に重大な問題を含んでおるということに気がついたわけであります。  そこでまずお聞きしますが、きょうは厚生省の方も来られておりますが、この廃棄物処理法案の第二条第三項、「この法律において「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃えがら、汚でい、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物をいう。」、このようになっておるわけですが、「事業活動に伴つて生じた廃棄物」、こういう点から考えていきますと、たとえば一般人が使用しておるモーターオイル等は、これはどうなるのですか。
  161. 山本宣正

    ○山本説明員 直接の所管は環境整備課長でございますが、公害課長の私がかわってお答え申し上げます。  この法案におきまして、廃棄物の処理につきましては、一般廃棄物と産業廃棄物に分けたわけでございますが、それぞれのものに従いまして、同じモーターオイルでありましても、それが事業活動に伴って廃棄されたというものにつきましては産業廃棄物と解し、かつまた、一般の廃棄物として処理されるもの、事例として申し上げますと、たとえば、自家用の自動車から潤滑油を抜きまして、それを処理するというような場合につきましては、これは一般廃棄物として処理するという形の体系に考えているわけでございます。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、一般の廃棄物であるその廃油というのは、国が責任を持って処理するのですか。
  163. 山本宣正

    ○山本説明員 廃棄物処理法案の中では、第五条、第六条に、一般廃棄物の処理につきましては市町村の処理という原則、それから第十五条に、一般的に清潔の保持に関する道義的な規定が設けられておりますが、第十六条につきましても、みだりに投棄をしてはならないということもきめてございますが、それらの規定の中で処理していくということに相なるわけでございます。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 みだりに処理をしてはならないというけれども、それじゃ一般家庭でもこれまでは、油をたいて燃やしてしまえということもありますし、また、事業活動に伴って生じた廃棄物のうちこの産業廃棄物、たとえば官庁の車とか一般の車、こういうものについてのそうした油をスタンドなんかへ持ってくるわけですよ。この廃油は入らないのでしょうか。これはどうなんですか。
  165. 山本宣正

    ○山本説明員 現在におきますこういったものの処理につきましては、明確なことがなされておりませんが、今後、この法律のきめるところによりまして、この一般廃棄物処理の事業者あるいは市町村において、それらのものを処理する体系をきめていく、こういうことになりまして、それによって処理されていくということになると思います。
  166. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこが定まっていないということが非常に浮き彫りにされてきたわけでありますが、要するに排出者の定義ですよ。油だけではなくしていろいろな点を考えた場合に、それでは、工場に機械を入れたその業者が、そこから出てくる油の責任を持たなければならないかということにもなってくるわけです。あるいは油を売った人間あるいは自動車を売った人間が、全部責任を持つのかということになってくるわけです。ところが、いまあなたがおっしゃったように、そこのところの定義がはっきりされていない、ここに重大な問題があるわけです。  いま、このように河川あるいは海が汚濁されている。それは工場から出てくる排水も非常に大きいウエートを占めておりますが、こういう油の投棄とか、あるいは廃油のそうしたかす、そういうものによる汚染というものがどれほど大きいかということです。これはたいへんな問題じゃないかと私は思うのです。全国のスタンドに集まるそういう廃油だけでも膨大な量ですよ。それのはっきりした責任も処理もきまっていないわけですよ。あなたにもいま、はっきりしていないということをおっしゃったわけですが、私もここに資料をいただいておりますけれども、社団法人資源化技術協会、これは、通産省のあの五千工場調査のときにも、一手に引き受けてされた最も権威のある機関です。そこの報告書を見ても、非常にびっくりするようなこともたくさんここに出ているわけです。  ざっと参考のために読んでみますと、「処理対象と範囲」としまして、「石油類は総ての産業と輸送機関から排出され、その範囲は数え切れない。多量に使用され回収処理可能なものを列挙すると次の通りになる。」、機械油、工作油あるいは洗油とか、いろいろありますが、これは工場関係です。それから軌道車両関係。これは国鉄、私鉄、地下鉄、公共交通事業体ですが、それらは潤滑油、機械油、ブレーキ油、洗油をたくさん使う。それから自動車関係。これはバス会社、運送業者あるいはガソリンスタンド、タクシー業者、自動車整備工場、公共交通事業体といろいろあるわけですが、それらは潤滑油、ブレーキ油となっている。そしてこの報告で述べられているのを見ますと、  その使用量も潤滑油を例にとれば、生産販売より推定して四四年度には年間二三〇万キロリットルといわれ、五〇年度に三八〇万キロリットルと推定される。これら廃油の一部は再生処理業者が処理しているが、残りは下水や河川、海に捨てられ大きな社会問題を起している。  通産省が当協会に委託した産業廃棄物の処理、処分状況調査の結果について(四五年八月二九日)廃油の排出量は(全国五〇〇〇工場調査回答四九%)年五〇万トンで、処理されているのが二六万トンであり、三一万トンが不法投棄されている可能性が強い。  現在廃油処理を業としているのは、中小の零細企業が多く、中には立地条件が悪く、設備も不充分なため、むしろ二次公害を起しているものが見られ、また処理能力以上の廃油を集荷してその処理に困っている業者も多い。  それら業者は最終処理としての硫酸ピッチ、廃白土の処理を、もっぱら海洋投棄にたよっているのが現状である。  最近、国鉄、私鉄、公共交通事業体、大手バス運送業者等が油納入の元売り業者に廃油引取りを条件にする例が多くなってきている。元売り業者は廃油引取り業者に引取料を支払ったり、投棄船を貸与したりして処理、処分を委託しているケースもみられる。いずれにしても硫酸ピッチ、廃白土の最終処理は海洋投棄でなされている。  一方油の投棄は大きな国際問題としてクローズアップされ、国内法でも禁止される事が明白な事態となってきたので、現在の処分方法は不可能であり、早急に処理、処分の施設を設置する緊急事態となった。  このようにも出ておるわけです。  そこで、この油につきまして、一体どのくらい全国に油が出ているんですか。これは通産省でつかんでいらっしゃると思うのですが、担当の方、お答えいただきたいと思うのです。
  167. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいま先生がデータで御指摘のとおり、四十四年度におきます油の総排出量は、工場並びに交通機関を含めまして、大体九十万トン前後であろうという推定でございます。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのうち、この廃油の排出量というのは幾らですか。
  169. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいまの九十万トン前後が廃油のトータルでございまして、先ほど御指摘の通産省の最近の調査におきます廃油の処理率をとってみますと、これが四五・八%程度になっておるわけでございますが、かりにこの数値で分けてみますと、処理済みの廃油が大体四十万トン前後、未処理の廃油が五十万トン前後というのが現在の推定値であろうかと思います。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、全国の代表的なところを一、二カ所私お聞きしたいと思うのですが、東京と大阪に分けてもしつかんでおられるならば、お聞きしたいと思うのです。
  171. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 これは四十四年度の推定値でございますが、東京につきましては大体二十四、五万、大阪につきましては大体二十万トン前後という数値が出ております。これも先ほどの処理率で計算してみますと、東京につきましては、処理済みのものが十万トン前後、未処理のものが十二、三万トンという推定でございまして、大阪につきましては、処理済みのものが約八万トン前後、未処理のものが十万トン前後という推定値になっております。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 私もこの協会から、また通産省からいただいた資料等から見ておりますが、この潤滑油のメーカーというのは全国で四十社しかないわけです。これは通産省の資料で私言っておるんですが、そのうち大阪地区、東京地区というのは何社あるんですか。しかもその処理能力というのはどれだけあるんですか。
  173. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいま先生御指摘の潤滑油メーカーは、おそらく石油精製の過程におきまして潤滑油をつくっておる製造所の個所であろうかと思いますが、大阪並びに東京周辺の石油精製の正確な比率は、ただいま手元にデータがございませんが、約六割ないし七割程度であろうかと思います。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大体その比率を言われたんですが、私がここで協会からもらったデータでは、大阪地区十八社、東京地区十社です。大阪地区については処理能力月に五千キロリットル、東京地区については処理能力月に三千キロリットルです。そうしますと、大阪地区に限って言いますと一年間で六万キロリットル、東京地区ではわずか三万六千キロリットルが、廃油の再生処理をフルにやった能力です。  そうしますと、いまあなたがお答えになったそれからいけばどうなるかということですが、この東京で見ますと、出た廃油の二十四万キロリットルに対して三万六千キロリットルといいますと、約一割五分ですよ。大阪の場合でしたら、いまおっしゃった、約十八万前後で六万というフルに稼働した処理からいっても、三割三分三厘です。したがって、いま御答弁では、四五・八というのは処理しているんだとおっしゃっておりますけれども、その処理業者なんかが持っていったそれも集計しているわけです。実際の工場の能力からいけば、わずかこれだけしか処理できてないですよ。全部それはこの協会が指摘しておるように不法投棄しておるわけです。しかも厚生省の先ほどのお話からいっても、モーターオイル等については、はっきりとしたそれがないわけです、この法案でも。これは大きな抜けですよ。これではたして水質汚濁がどうやって防げるかということです。たいへんな問題じゃないですか、これ。  私はさらに、ここで協会に来たお手紙を見せてもらいました。名前は私出しません。ですから何かの記号で申し上げておきますが、どういう処理をされているかということをよく聞いてもらいたいと思うのです、読み上げますから。  拝啓  私は、昨年秋に、協会のT様にお電話で自動車廃油の件につきお話しいたし、そのうちお伺いするつもりでおりましたが、廃油回収の仕事が忙しくなり、ついお伺いできませんうちに今日に至りましたが、昨日の朝日新聞の夕刊に、交通関係の廃油処理について実態がよくわかっていないとのことでしたので、私の十五年間の廃油処理の経験を、お役に立てばと思いペンをとった次第です。  自動車廃油の多くは、まず各石油会社の給油所から出されるものです。自動車の走るキロ数(二、〇〇〇〜三、〇〇〇キロ)により、エンジンオイルの交換を行ないます。オイルパンのプラグをはずし、古く、汚れたオイルを出します。これが廃油です。廃油は廃油専用地下タンク及びドラムかんで貯蔵されます。その廃油が一ぱいになるころ、私どものような廃油回収業者に連絡があり、給油所で回収作業を行ないます。小型のタンクローリー車で廃油を引き上げ、次の給油所へ向かいます。業者の多くは、零細な一人ないし二、三人の者が回収業務を行なっている現状でございます。その廃油は、浴場、養豚場、小規模な工場等の燃料として売り渡します。  しかしながら、廃油の多く出る夏期、少なくなる冬期を含めて、全部集荷して貯蔵するような能力を持ち得ませんので、都合で廃油を集めたり、もっともらしく理由をつけて集めるのを休んだりいたし、能率の良い給油所のみを集荷するだけになるために、回収されない給油所では、廃油があふれて下水へ流されたり、はなはだしいときは、夜分を見はからい石油かん(十八リットル入)の中に入れて、近くの川あるいは海に投げ込まれます。川岸に沿った自動車修理工場に面した場所だけ黒く汚れた岸壁が見えるのもそのためです。給油所では処置に困ったあげくに下水溝に流します。これらが河川、海洋を汚す根本原因になります。  昨年、私が川口の試験場で廃油の検査をしていただきましたところ、硫黄分については、ゼロという結果が出されました。オイル自身、重油に比べて硫黄分が少ないところへ、エンジン熱により、排気ガスとなって外に出るために、廃油として出た時には硫黄分は含まれていないのです。燃料として最適ではありますが、大量に使うところには大量に集荷することが必要となりますが、前に申し述べましたとおりの零細な自分勝手な業者には、とても、貯蔵能力、集荷能力、燃料にするための簡単な、水切り、泥分除去等の設備にまじめに取り組む者はおりません。したがって、浴場等を相手に商売するわけです。注文が来れば、自分の受け持つ給油所、修理工場、タクシー会社等を回って浴場におろします。単純な商売なので、入れ変り立ち変り、業者も変わりますが、十年ほど前から、全く業者の数は変らず、二十軒位で固まってしまいました。そのため、給油所等で捨てる度合いが激しくなってきました。自動車がふえれば、廃油もふえます。バス会社、タクシー会社は廃油ドラムに収容し、やはりその廃油を集荷業者が回っております。が、集荷し切れず、前に述べた汚れの原因になっております。大きな穴を掘って埋めたために附近の井戸水が濁って大騒ぎになった営業所もあります。  工場廃油の多くは機械油、洗條油等であります。危険物貯蔵所の一角に廃油専用ドラムを置き、やはり業者が回収します。結果は同じことになります。浦和の工場であふれて流出した廃油が、周囲の畑にしみ込んで、作物ができなくなり、二百万円にも上る弁償をしたところもあります。石油会社とタイアップして給油所、タクシー、バス業界とも話を通して、一か所も残さず回収すれば、確実に河川、海洋の汚染は防ぐことができます。あとは船舶を管理するだけになります。早急に対策を講じる時期が来たようです。  悪筆で読みにくいことと存じますが、一生懸命書いたつもりです。よろしくお願いします。なお、私への連絡がございましたら、文書でお願いします。お役に立てば幸いです。  こう協会に来ているわけです。こういう現実に対して、政府が出したこの十四本の法律の中では、どこにもこれはできないわけですよ。これは、まだまだそういう被害の実情というものは、ますます拡大してくるわけです。  さらに、この資源化技術協会が調査をいたしました報告書の中にも、廃油等によるところの被害の発生ということについて報告がされております。ちょっと読んでみますと、  排水、廃油などの河川、下水管に対する排出は工場排水法、水質保全法下水道法などで規制されているが、実際には取締を徹底することはむずかしく、特に小規模の排出防止は困難である。廃油、硫酸ピッチ、廃溶媒などはそれが少量であっても、河川や下水管内で浮上し、水面を覆うので、火災の発生、悪臭の発生などの原因になりやすく、河川では表面からの酸素供給が阻害されて、自浄作用を妨害する。河川港湾などでは美観をそこなう損害も無視できない。  大阪市内で昭和四十二年五月以降に油、溶媒、ピッチなどが原因となって、直接、火災、悪臭、人身事故、爆発などの発生した主な事例を集約すると表一の通りである。それは河川、池、農業用水路、溝、下水管など種々な場所で、種々な状況で発生している。それらの事故発生は年々増加しているとみられ、廃油の処理を適正に行なう受入れ態勢を完備することによって、その事故の大半を防止することができるとみられる。  これらの事故以外に、昭和四四年には茨木市内の河川敷に一夜の内に廃油、硫酸ピッチの入ったドラム罐約二百本が並べて投棄されており、その処分のために市が経費を出して、大阪市南港埋立地に運び、風向を考慮して野焼きで処分した事例もある。また廃油処理を請負った業者が廃船寸前の船にそれを積み、大阪湾内でその船を故意に沈め、沈没事故とみせかけて不法投棄するものが後をたたないという(港則法で港域外一万メートル以内での油の投棄は禁止されている。)  このような廃油などの不法投棄はその処分のための排出者分担経費が高くつくと、どうしても続けられると推定されるので、廃油等の処理を経済的に行なわねば実効が上がらないとみられる。  ここに「大阪市内における廃油による事故発生状況」が出ております。  四十二年五月十五日、東淀川区田川通六の七(河川)、浮上油多量、雑草やごみとともに着火炎上、事故の原因、不明。  四十二年五月二十二日、東淀川区上新圧町三−一(河川)、浮上油多量、雑草やごみとともに着火炎上、事故の原因、不明。  四十三年七月三十日、西淀川区中島公園予定地(池)、約四千平方メートルの池(埋立により公園化しつつある)の浮上油、タール類、池岸の投棄ピッチが燃え、黒煙が二十−三十メートル上がり、消防車が約二十台出動して消火した。池水はPH約四、BOD一三五〇PPM、腐敗状態。事故の原因、硫酸ピッチからピッチ油を製造している永大石油が油やピッチを多量に投棄し、それにたき火が引火したもの。その投棄ピッチの熱灼減量は二八・八−九八・一%、高位発熱量は三千四十三−七千七十六カロリー・キログラムであった。  四十三年八月、港区天保山運河(運河)、浮上油と浮上ごみが着火炎上。付近の木造船に延焼しかけた。  四十四年三月十六日、城東区茨田諸口町三反切橋(河川)、幅四メートルの川に浮上した廃油が炎上、その橋下付近五メートル前後に火が広がり、その木製の橋と南側にある明浜溶工所のへい約十平方メートルを焦がし、黒煙と炎は七−八メートルの高さに達した。事故の原因、発生場所から約二百メートル上流にかけて、電機、製油工場などが並び、川に突出した土管から廃油が流出し、下流では生コン会社の土砂が流れを防いでいた。それに主婦のたき火の火の粉が飛んで着火した。  四十四年七月十五日、東住吉区加美神武町(農業用水路)、橋のたもとで浮上油が炎上(七月十五日より約百メートル下流)。事故の原因、同上。  四十四年九月二十四日、西淀川区大和田西三−二六(下水管)、五十三歳の男子一人、十日間の火傷。  四十四年九月二十六日、大淀区大淀町南二−六(下水管)、二十三歳の女性約二十日の火傷(入院)、便所とふろ場の壁の一部焦焼。  四十四年十月二十四日、東淀川区南三国町七九(下水管)、私設下水管内に流れた揮発性油に着火爆発。  四十四年十二月三日、大正区鶴町及び福町一帯(下水管)、下水管から黄褐色のベンゾールのような溶媒臭のあるガス発生、住民が悪寒を覚えた。  四十四年十二月二十一日、南区日本橋筋二−二九(下水管)、マンホール内で突然爆発、コンクリートふたが約二十センチメートルずれた。  四十四年十二月二十三日、大正区大正通四(下水管)、二十四歳の男子が入浴中に中毒、入院、付近住民も悪臭を覚えた。  四十五年一月十三日、西成区津守東七−一四三(私有溝)、山科鉄工所木造倉庫一棟、平野工機従業員寮一棟、広林紙業倉庫屋根などを焼失、人命事故なし。  四十五年三月二十日、福島区大開町一丁目(下水管)、自動車四台小破、電話線断線、民家ガラス十枚破損、下水管、舗装破損、市道下水コンクリートふた七カ所爆発、うち四カ所は二−三メートルの火柱吹き上げ。  四十五年六月九日、東住吉区加美旭町、水路の浮上油が着火炎上。  四十五年六月二十七日、旭区新森小路、古市大通(下水管)、付近道路沿いに二百メートルにわたって溶媒様の悪臭発生。ずっと出ているわけですよ。こういう膨大な廃油量です。これをこのままにしておいて、水質汚濁に一番責任を持っておる、この法案を審議をしておるわれわれとして、こういうことを見のがしていいかという問題なんです。  ここにおきまして、私は、いろいろな業者の実態なり事故の実態をずっとお話ししたわけでありますが、これについてどういう感想を持たれたか、両大臣からお聞きしたいと思います。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう事態に対処をいたしますために、廃棄物処理法によりまして、産業廃棄物とその他のいわゆる生活関連一般廃棄物等の処理をしなければならない。従来の清掃法の観念では処理し切れない問題だというふうにとらえようとしておるわけでございます。
  176. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま申し上げましたように、法律はすでにできておるわけでありますが、どうもその実態の伴わない面がある、こういうように私も聞いておりまして、結局、処理体制を整備する法律を今回提案いたしましたが、同時に、処理業者の整備、あるいは全体としての処理体制の整備、そうした実態が伴って初めてこの処理法が運用にたえるものになるであろう、こういうふうに考えます。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで一つは、こういうような実態を、まだまだ完全なものを掌握しておられないというお答えをされたわけでありますが、ここで問題になるのは、結局、この水質汚濁防止法あるいは廃棄物処理法案というところで何らかのこれが対策が立てられるだろう、そういうようにばく然と思っていますが、そういう間にあってこういうような問題が出てきているわけですよ。これについては、当然この責任を水質汚濁全体でとらえるというならば、水質汚濁防止法案へそれを織り込むか、あるいは廃棄物処理法案でそこのところを訂正する必要があるのじゃないか、このように思うのです。これについて、公害対策本部か、厚生省か、どちらでもけっこうです。
  178. 竹谷喜久雄

    ○竹谷説明員 ただいまの問題でありますが、廃棄物処理法によりまして、産業活動に伴ったものについては産業廃棄物として処理し、その他のものについては一般廃棄物ということで処理していくのが一番至当じゃないか、かように考えておるわけでございます。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、この法案の中身でいきますと、いまあなたは、そのようにおっしゃっていますが、私は先ほど、その問題について指摘をしたわけですよ。それじゃ、一般の油については、たとえば官庁とか、あるいはマイカーを持っている人などは、油を自分で燃やすのかということにもなりますし、ここでまた、排出者の定義というものが、今度は非常に問題になってくると私は思うのですよ。モーターオイルなどというものは、ここにいらっしゃる大臣も車に乗られて、そして油をよごして、その油がまたどこかへ行っているわけですよ。みんなが加害者であり、また被害者でもあるわけですが、その辺、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、当然そういう日常の活動の上において適用されないところがたくさんあるわけですよ。そうしたら、一般のそれについても、処理場などを完全につくるべきだ。そういうことがここでいわれておるかどうか。  そういう点からいきますと、一つもあなた方からは、そういうような自信のある答弁は出てこぬわけですよ。私は、この間説明を聞いたときも、それについては確かに今後考えなければならぬと、おっしゃっているわけですよ。ですから、ここでいいかげんなことで、うやむやにしたり、ごまかそうという根性を変えて、あなた方だって、そのように汚濁をして、また汚染をした魚を食べて、水俣病やああいうような二の舞を考えたときに、お互いに国民全体が変なメンツとかそういうことを捨てて、真剣にこうした問題に取り組まなければならぬと思うのですよ。いずれにしても、明確でないことは確かなんですよ。ですから、その辺について、それじゃ今後考えるなら考えるということを、率直にお答えになるべきだと思うのですよ。もう一度お答えください。
  180. 山本宣正

    ○山本説明員 同じ御回答を申し上げるように相なるかと思いますが、この廃棄物処理法案におきましては、産業廃棄物ということで事業活動に伴った廃棄物をきめ、それ以外のものを一般廃棄物とするという考え方でございまして、ただいま先生が事例にあげておられますモーターオイルについてもう一度申し上げますと、ガソリンスタンドでモーターオイルを抜きまして、それを廃油として考えた場合には、これは産業廃棄物として考えるということになるわけでございます。もし自家用車が自分の家でオイル交換をして、それを処理する場合には、これは家庭の廃棄物という形の一般廃棄物と考えられるということでございまして、同じものが、その処理される場所でそれぞれ違うという問題点はございますが、そのような形で整理したということでございます。  実態といたしまして、先ほど先生が事例を御指摘いただきましたような、廃油の処理の事業がうまくいっていないというような問題点は確かにあるように聞いております。それにつきましては、今後指導を十分していかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 処理のそういうようなことも義務づけられておらないし、廃油回収のそういうことについても何もないわけですよ。しかもまた、あなた御説明になりましたけれども、そうなってきた場合、それじゃ、そこで油をただ交換したからということで、そこが責任を持つということからいけば、先ほど申し上げたように、機械を売った者が機械から出る油はみな責任を持つのか、あるいは自動車を売った者は全部責任を持つのかというような排出者の定義ということについても、今後は大きな問題になってくるのじゃないかと私は思うのですよ。ですから、その辺ははっきりとしておかないと、いまこのように言われるから何とか答弁しなければならぬという、その場だけの答弁では困るわけですよ。  これほどの大きな水質汚濁の原因がほかにもたくさんあるわけですよ。しかも全国でそういう廃油処理業は四十社ですよ。先ほど申し上げた、東京、大阪のあれだけ大きなところだって、あれだけの能力しかないわけです。このままの状態でいけば、この資源化協会の調査によりましても、たとえば、この法律が施行されて、それから施設をつくっていくとしても、プラントの建設だって一年以上かかるというのですよ。しかも、その金をどこから出してやるというような事務的な積み上げを考えた場合に、二年以上かかるというのですよ。そうした場合に、二年間待っておれば、たとえば瀬戸内海一つを見たときに、あの堺のコンビナート、あるいは水島、あるいは四国のああした工業地帯、九州のああいう取り囲まれたところ、また水路の循環しない瀬戸内海などは完全に死滅をする。したがって、そこで取れる魚などを食べますと非常に汚染されていく、おそろしい状態になっていく、もう一刻を争う現状に来ておる、こう言っているのですよ。  それじゃ、この法案、あるいは社労委員会にかかっておる廃棄物のそれにしても、すべての法案にかかっておるわけですが、そういう処理施設をつくっていくということについて、財源として政府としてはどれだけの保証をしておるか、裏づけをしておるか。いつまでもこういう不法投棄をこのまま置いておくのですか。監視体制とか、あるいはまたその油をどうするのか。いますぐできますか、これ。現実にどんどん夜中にもほうられて汚染されているのですよ。どうするのですか、この問題。どなたでもけっこうです。
  182. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいま先生御指摘のとおり、現実の処理設備が非常に不足しておることは事実でございまして、そのために産業廃棄物を特に取り上げまして、清掃法の全面改正で対策を進めなければならないという問題意識をわれわれは持っておるわけでございますが、具体的な動きといたしましては、いろいろ処理設備の設置につきまして計画がございまして、たとえば大阪産業廃棄物処理公社の構想におきましては、資金は約六十億円程度を投入いたしまして、大阪府、大阪市並びに関係業者がそれぞれ出資いたしまして、近く公社の設立ができるように聞いております。これができ上がりますと、相当量の廃油を、劣化の非常にはなはだしいもの、あるいはそれほど劣化の進んでいないもの、そういったものにはっきり分類いたしまして、新しく潤滑油をつくり、あるいは燃やしたものの余熱を利用いたしましていろいろの事業活動に役立てるというような構想も進んでおります。このような状況を背景といたしまして、通産省では、四十六年度から産業廃棄物に対する特別の融資ワクを開発銀行に設けたいということで現在要求しておるわけでございますが、金額はまだ二十億円程度の要求で、決して現実の情勢にマッチしたものとは言いがたいわけでございますが、このような方向でいろいろ努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 大阪のそのプラントについてはこの資源化協会がいろいろと練っておられるわけですが、しかしそれだって、政府ははたしてどのぐらい出してくれるのか。地方自治体なんというものは金がないわけですよ。これは若干は負担する。それは私は当然義務はあると思いますけれども……。それも、あなたいまそのようにおっしゃっていますけれども、関係当局みな当たってみても、実際できるものやらできぬものやら、いまだにわからぬというのですよ。そうすれば、私がいま業者のこの投書も読み、協会のこの報告も読みましたけれども、まるきりそのままで放置されていく状態になったらたいへんなことになりますよ、何ぼ工場排水だけ押えたって。それを言うわけですよ。ですから本気になって大阪の——私は何も大阪だから大阪のことを言っておるのと違うのですよ。そんな小さなことを言っておるのと私は違いますが、そういう計画があるならなぜ全国的にやらないのですか。なぜ東京でやらないのですか。東京のほうが処理能力がないのですよ。全国的にこれをどうやっていくかという、それを組んでいますか。いま大阪の事例を一つあげましたけれども、全国的にそれをいつやるのか、それをひとつ聞かしてください。
  184. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいまのところ、大阪計画以外、具体的な計画としてはあまりはっきりしたものはございませんが、通産省といたしましては、特にガソリンスタンドを中心にいたしまして、ガソリンスタンドの協同組合的な組織でこの問題を解決できないかということを、従来から考えておりまして、業界指導を目下懸命にやっておる最中でございますが、ガソリンスタンドは、どちらかといいますと地域的に非常に広範囲に分散しておる特殊な業態でございますので、はたして協同組合等をつくりまして、一応コストを回収できる程度の採算性をもって事業計画が成り立つかどうかというところに問題があるようでございまして、計画の具体化まで至っておりませんが、なお今後、低利長期の資金の供給その他の態勢を整えることによりまして、こういった方向の努力も実を結んでくるのではないか、かように考えております。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に考えておられるということはわかるのですが、それを真剣に自分のこととして受け取って、真剣な前向きな姿勢がないわけですよ。ですから、いまこれだけの事例をあげたわけですから、ほんとうに真剣にこの問題には取っ組まなければいけないと思うのです。  それからもう一ぺんもとへ返りますけれども、先ほどあなたの、この法案において「事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち」、この辺ですね。たとえば官庁の車なり民間の車なり、事業活動でも何でもないわけですよ。ですから、その排出者というそこの問題において、いまそういうような話をされましたけれども、この点は非常に不明確ですよ。これは何らかの補足をする必要があるのと違いますか。もう一ぺん聞きますが……。
  186. 山本宣正

    ○山本説明員 原則論としてこの振り分けを考えたわけでございますが、そのものが本来の使用から離れたとき、たとえばモーターオイルとしての使用を離れたその場所で一般廃棄物と産業廃棄物に分ける、こういう考え方でございまして、官庁等におきまして、それが使用する自動車から廃油を抜いたという場合におきましては、それは事業活動とは考えられませんので、一般廃棄物とするという考え方になるわけであります。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまのあなたのその答弁だって、私はまだはっきり納得できないわけですよ。何とかつくろっておられるというような感じがするわけです。確信を持った答弁じゃないわけですよ。そういう解釈に苦しむような法体系であってはならぬと思うのです。これは水質汚濁法でも何でもいえるのですが、何でも政令にゆだねるとか、そういうようなことでぼかしておるけれども、この廃棄物のこれだってそうですよ。その辺の点についてひとつ検討をしていただきたいと思うのです。もっとだれが読んでも、ああなるほど、そうかといえる、この定義のしかたについて一考を要する必要があるのじゃないかと私は思うのですよ。その点、今後検討されるかどうか、ひとつそれをお聞きしたいと思うのです。
  188. 山本宣正

    ○山本説明員 この法律に基づきまして、法律の施行の時期までには、十分その指導の通知の中で、はっきりその解釈ができるようにしてまいりたい、かように考えております。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 指導の中でということをおっしゃったわけですが、いずれにしても、それだったらそれではっきり法律の中で——それは、手元を離れたときから産業廃棄物と一般廃棄物に分けるんだというようなことは、当然、何も油だけじゃなくしてほかのもの、幾らでもあるわけですよ。そのつど一々指導してやっていくのですか。それは法律でうたえば一番いいことですよ。私は何も指導されるのを悪いとは言ってませんよ。だけれども、もっとはっきり、手元を離れたならば産業廃棄物、そして一般廃棄物、こうなるのだということをここでちゃんとつけ加える、検討される必要があるのじゃないかと思うのですよ。それを今後検討されたらどうですかということを申し上げているのですよ。どうでしょうか。
  190. 山本宣正

    ○山本説明員 二条の一項にこれこれのものと列記してございまして、不要のものと書いてございますので、それが読み取れるように考えましてこういう法案を立てた、かように思います。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 どこまでも、メンツか何か知りませんが、私は非常にかたいものを感じるのですが、要するに法律なんというものは、役所のためにあるのと違うのですよ。特に公害などというものは、人のために、国民のためにあるのですよ。その国民が迷惑を受けないためにはどうすればいいのか、それを考えていただくのが皆さんであり、われわれなんですよ。私はそういう気持ちでいま申し上げているわけですよ。ことばではそうおっしゃいますけれども、いずれにしたって、これははっきりせぬわけです。ですから、いま私が言ったそのことについて今後検討されるかどうか。これは検討する余地など全然ないとおっしゃるのですか。検討する余地が全然ないなら、何もそんな指導を徹底してすることないじゃないですか。はっきりとしないからこそ、指導徹底しなければならない事態がそこに出てきておる。そうすれば、ここで検討するということは必要じゃないですか。検討するという四字の文字を、ここで入れるかどうかということなんですよ。     〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕
  192. 山本宣正

    ○山本説明員 検討をするようにいたします。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 この廃棄物につきまして、まだいろいろ申し上げたいことがたくさんあるわけですが、この間、日刊工業新聞にこういうことが載っておるのですよ。これは中国の公害対策として載っているのですが、「「廃棄物を宝に変え、害を益に変え、設備改革と技術革新を強力に推進せよ」と「人民日報」は強調している」。そういう「廃棄物を宝に変え、害を益に変え、設備改革と技術革新を強力に推進せよ」と、こういうことを言っているわけです。私はどちらの体制にくみするものでもありませんけれども、ただ、いいことは学べばいいのですよ。こういういいことを言っているわけです。ただ、廃棄物はどう処理したらいいか、そういうことばかり頭に来ている。それをいかに再生していくか。またアメリカにおいても、「固形廃物から金属を再生」ということで、非鉄金属だけを再生した場合、もうすでに二十億ドルの実収が見込まれておる、そういう施設をどんどんつくっているわけです。いまお話があった大阪のこの施設については、そういう再生をしていく処理であるということが、この計画書を読ませてもらってわかっておりますが、こういう行き方は非常にいいと思うのです。ですから、全国にこういうプラントを早急に、ほんとうに国の総力をあげてこれをやっていく。そうすれば、資源のないわが国は、さらに資源を得るし、あるいはこの重大な公害問題が大きく前進することができるのじゃないかと思うのです。ですから、今後のそういう資源の再生という観点、また現在の公害のきびしい現状からして、今後どういう決意でそれを推進していかれるか。それをひとつ経企庁長官にお聞きしたいと思います。
  194. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 清掃法を全面的に改正いたしまして、廃棄物の処理についての基本的な制度はできたというふうにわれわれも考えておりますが、だんだんとお話を伺ってみますと、その法律制度に伴うところの実際の業態のあり方、そうした実際問題のところがまだどうも十分にいっていない、こういうような感じがいたします。公害対策本部あるいは厚生省の政府委員の話も、そこのところをもう一度しっかり話してもらえばいいと思うのですが、そこいらのところは、今後なお問題のあるところのように私もわきで聞いておりましたが、そういう意味においては、実行上の問題を多く含んでおるようでありますから、これにつきましては、公害対策部長、あるいはまた厚生大臣、この方面にもひとつよく話をするようにしたいと思います。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、この法案のあれですけれども、この政令の具体的な内容なのですが、施行の日に合わせて発表する、政令で定めるというのが非常に多過ぎるわけですよ。ほかの法律をずっと見ましても、水質汚濁防止法は私は特に多いように思うのです。いろいろこまかい理由はあろうかと思うのですが、そこのことについて、なぜこれだけ政令できめるということがずいぶんと出てくるのか、そこについてひとつ簡潔にお願いしたいと思います。どなたでもけっこうです。
  196. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 水質汚濁防止法案の中で、政令に譲られた規定のところが何カ所かございます。これはこの法律が、従来の水質保全法工場排水法の二つをやめまして、これを統合した新しい法律をつくるという形で、しかも先ほどからお話を申し上げておるとおり、基準考え方、あるいは事務都道府県委譲その他、いろいろいままでのやり方と全く変わった形で新しい法律をつくったわけでございまして、そういう観点から、関係各省なりあるいは関係地方公共団体との関係等で、さらに具体的な内容を十分詰めていくべきものもあるわけでございます。そういう点が政令に譲られている点があるわけでございますけれども、しかし、ここで政令でと書きましたものの内容、あるいはその考え方というものは、私どもとしては、事務的にほほ大体の範囲考えておる次第でございます。そういった場所が多いというお話でございましたが、ただいまのような事情でございますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間もなんですから、あと項目的に聞いていきたいと思います。  特定施設が新項目に加えられた場合、一年間猶予になっておるということでございますが、どういう業種を考えておるか。具体的には出るか出ないかわかりませんが、その基本的な考え方でもここでひとつお聞きしたいと思います。
  198. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 御指摘の点はこの経過規定のところであると思いますが、特定施設となったものがその時点から基準がかかるということになりますと、施設の改善等は時間において無理がございますので、一般的には六カ月間の猶予をいたしておるわけでございますが、特に大きな設備をしなければならないというようなものについては、さらに一年間の猶予ができるようにしたわけでございます。  具体的に言いますと、たとえば、最近問題になっておりますパルプ工場等で非常に大規模な場合とか、あるいは石油精製等の化学工業等でそういったものが出てくるのではないか、こういうふうに考えております。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、水質測定義務というのを課しておるわけですが、この定期報告というのがないわけです。水質の報告について定期報告しなければならないということを、なぜここでうたわなかったのですか。それについてお聞きします。
  200. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 法十四条にその関係の規定がございまして、排出水を排出する者は、測定し、その結果を記録しておかなければならないということにいたしております。別途、この第十五条、第十六条で、都道府県知事監視測定をいたしますから、そういう形でこの記録を見て、そしてその状況を把握することができる、こういうことでございまして、特に定期報告という規定を置いておりませんが、必要があれば後の規定で報告を求めることができるようになっておりまして、こういう形で運用してまいれば、大体円滑にいくのではないかと考えておる次第でございます。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 必要なときだけ報告を求めるということよりも、定期的な報告を義務づける。それはなるほど都合のいい報告をする場合があるのかもしれませんが、それは現実に立ち入り検査権もあるのですから、立ち入りをして、うその報告をやっておれば、これは罰則をさらにきつくかけていけばいいわけであって、定期報告の義務があるといった場合においては、やはり常にそれに対して企業側、排出者も責任を感じておる、したがってあまりうその報告もいつもいつもできるわけじゃない。したがって、この設備もやっていこうと、常にそういう緊張感といいますか、公害に対するそういう姿勢というものが、定期報告をさせるという義務づけによって保てるのじゃないか。その姿勢を保つ柱として定期報告を義務づけるべきではないか、私はこのように思うのですが、それについてお聞きしたいと思います。
  202. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 知事は常に報告を求めることができるわけでありますから、その実態に応じまして定期報告を求めるほうが賢明である、適当であるというときには、当然求めることも可能でございます。実際の行政能率の立場から考えますと、実際は、常時監視をする、そして実際そこの工場に行って見る、こういうことで、そこの記録を読みながら実態と合わせて監視する、こういうことも必要であろうと思います。文書を定期的に報告して、その取り扱いを粗略にしては何にもならないわけでありますが、はたしてどちらのほうが知事考え方に合うか、行政目的に合うか。それぞれ実情もあろうことと思いますが、もちろんそういうような行政簡素化を一面考えながらも、事態に合うようにこれは知事の判断にまかせてしかるべきことである、こう考えています。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは見解の相違ということにとられるのかもしれませんけれども、私たちとしましては、これはぜひとも定期報告を義務づける、これでなければならぬということをひとつ強く長官にも御認識いただきたいと思うのです。  それで、その次に、その排水規制していけば、当然それに対する施設をつくっていかなければならない。裏づけるのは金なんですよ。ところが二十五条を見ましても、「特定事業場における汚水等の処理施設の設置又は改善につき必要な資金のあっせん、技術的な助言その他の援助に努めるものとする。」——「援助に努めるものとする。」ということになっているわけですよ。先ほども申し上げましたが、ああいう廃油の処理等々についても、全然とは言いませんけれども、これが実現するまでに非常に困難があるということが浮き彫りにされたわけですが、今回これだって、法律はこのようにできておるけれども、実際に中小企業は金がないわけですよ。そういう裏づけをどうしてくれるか。そうした場合に「助言その他の援助に努めるものとする。」、はなはだここは何か手ぬるいと私は思うのです。国の助成ということについて、あるいはそうした公共団体の助成ということについて、もっとはっきり明確に、助成をするのだというようなことをここでうたえなかったのかどうかということなんです。これについてお聞きします。
  204. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 大体、二十五条は、事業者の汚水処理施設その他の改善等に必要な資金の問題でございますが、この問題につきまして、現在の制度といたしましても、税制上の措置といたしまして、固定資産税の非課税とか軽減の措置耐用年数の短縮、特別償却ということがございますし、さらに買いかえ資産の課税の特例というようなものもございます。こういったものの運用をはかってまいりまして、こういった援助につとめていくということが十分できると思います。  それからさらに、問題は資金でございますが、この点につきましては、御承知のとおり、公害防止事業団、中小企業金融公庫、あるいは北海道東北開発公庫、日本開発銀行、国民金融公庫等の機関の融資の制度がございまして、四十五年度でも三百億以上のワクになっておりますが、四十六年度では、各省、各機関ともかなり大幅な増額を要求いたしております。こういった形で充実してまいれば、当面の必要には十分対処できるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、地方公共団体事務についての援助の問題は、先ほども御質問が出ましたが、これは特に水質汚濁防止法には規定がございませんけれども、一般規定公害基本法のほうにございまして、水質につきましては、経済企画庁として四十六年度に予算要求をいたしておりますので、こういった形でひとつ今後努力をしてまいりたいと思います。
  205. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常にいろいろな制度があるとか、いろいろなことをおっしゃったわけですが、制度があるのは私もわかっております。ところが現実に、金を借りに行ってもなかなか貸さないとか、そういう運用の問題等もいろいろあるわけですが、それは絶対量が不足しておるとか、根本的な問題に基因する場合がよくあるわけなんです。ですから、ここで抽象的な「援助に努める」というようなことではなく、ほんとうに法案を実効あらしめるためにも、もっと財源的な責任を持って、国としても根本的な姿勢で取っ組むのだという決意があれば、もっと強いことばがここにあったのじゃないか、私はこのように思うわけです。これ以上言ってもまた色づきの答弁になると思いますので、私はこの点は強く要望いたしておきます。     〔武藤委員長代理退席、進藤委員長代理着席〕  それから、監視体制というのは私は非常に問題になってくると思うのですが、たとえば話は変わりますけれども、衛生問題なんかでも、衛生管理士とかいろいろあるわけですよ。そういうように、やはり排出をする工場等においても、名前はどういう名前になるか知らないが、たとえば仮称として水質管理士でもいいですよ。あるいはまた、それを監視しておる地方公共団体にも、そのような国家的な資格を持った、何かそういう責任を明確にした権威ある人を置く必要があるのじゃないか。それがこの法案にはうたわれていないわけです。監視がいいかげんであっては「何ぼ法案でこうですよと言ったって、そういう技術的な知識も薄い人が監視をして、チェックをして、はたしてどれだけこの法律に沿った実効ある運用をはかっていけるか、これが心配なんです。その点、はっきりした監視体制をとるべきではないか、私はこのように思うのですが、いかがでしょうか。
  206. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 確かに工場、事業場等においてはっきりした責任者があることは望ましいことでございますが、この水質汚濁防止法の対象になります工場、事業場は、非常に種類も多岐にわたっておりますし、また大規模経営から零細規模までいろいろございます。そういったこともございますので、この制度法律的に義務づけることは現段階ではちょっと無理であろうということで、法制化するに至らなかったわけでございます。しかし、別途また産業構造審議会等におきまして、公害防止体制小委員会というようなものが設けられておりまして、一定規模以上の工場等についての公害全般についての管理責任者の設置等について、いま検討が進められておるようでございます。そういった形のものがまとまってまいりましたならば、さらに将来法制化するというようなことも検討してみたいと考えております。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 別に法制化するといったって、猶予期間を置いてその間に講習をするなり試験をするなり、どういうことをやっていくかということは、また考えればいいわけなんですよ。ただ、将来また考えるとおっしゃったので、それ以上はこの問題については申し上げません。  いろいろとまだ申し上げたいこともありますが、あすもまた委員会がありますし、法案の問題点についてさらにいろいろとお聞きをしていきたいと思います。時間もちょうどきておりますので、私の質問はこれで終わらしていただきたいと思います。しかし、またいろいろと質疑の中で問題点も浮き彫りにされてくると思いますが、そのときに私も質問をするということで保留させていただいて、本日はこれで終わりたいと思います。
  208. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 中谷鉄也君。
  209. 中谷鉄也

    中谷委員 同僚の岡田委員が詳細な質問をいたしましたので、それを補完する意味で、一時間以内で四十分ばかり質問をさせていただきます。  第三条の関係でございますが、素案として「水質汚濁防止法案第三条第一項に規定する排出基準のうち有害物質に係る排水基準」の一覧表を配付をいただきました。  そこでお尋ねをいたしたいと思いますが、現行法の関係にも罰則の定めがあるわけでありますけれども、これは担当の政府委員のほうからお答えをいただきたいと思いますが、施行以来どの程度罰則の適用を受けた件数があるでしょうか、それをひとつ最初に質問の前提としてお答えをいただきたいと思います。
  210. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 法施行以来四十五年十一月三十日までにおきましては、直接罰則をかけたケースはございません。
  211. 中谷鉄也

    中谷委員 そこでお尋ねをいたしますが、潜在的違反というのはどの程度予測されておりますか。一体件数はどの程度あるんだろうか。そういうことの予測は全く不可能で、罰則をかけていない、件数がないから全部違反がないのだということなのか。それともそうではなしに、それは検挙に至らないということだろうと思うのです。どろぼうだって、つかまらないどろぼうがたくさんあるわけですから、違反がないことはないと思うのです。そこで、特に計量化などということがよくいわれますけれども、計数的にどの程度の違反件数——潜在的違反件数ですね、検挙されていないわけですから。それを予測されますか。
  212. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 先生御指摘の潜在的違反という概念でございますが、なかなかむずかしい問題だと思いますが、その一つの指標といたしまして、改善命令の件数を御説明申し上げますと、改善命令につきましては、十一月三十日現在で九十三件ございます。それからもう一つの事例といたしまして、最近、通産省で行ないましたカドミのメッキ工場その他の一斉調査、これは約三百三十の対象でございましたが、その調査時点におきます、いわゆる基準をオーバーしておる工場、これの比率は約五〇%でございました。ただ、これは指定地域外のものもだいぶ含まれておりますので、この五〇%だけをとらえて、いわゆる法の潜在的違反ということには当たらないかと思います。
  213. 中谷鉄也

    中谷委員 改善命令を法施行以来お出しになった件数は九十三件ということでございますが、本来、改善命令を必要とする場合、あるいはまた改善を勧告すべきものというものは、どの程度あると予測されますか、現行法のもとでですね。これをひとつ、改善命令を出した数と、実際に改善を要する——これもまた潜在的ということばを使わしていただきましょうか、潜在的要改善施設というものは、どういうふうに御理解されておるでしょうか。
  214. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 従来の水質二法の指定地域の中におきます改善該当の施設というのは、ほぼこの九十三件に近いものであり、これを上回ったといたしましても、そう大きな数字ではないと推定しております。ただ、御承知のように指定地域外の問題がございますので、そういった企業の施設を調べますと、いわゆる基準値よりはオーバーしておるものは相当程度あろうかという推定でございます。(中谷委員「どの程度でしょうか」と呼ぶ)その辺はデータが全然ございませんので、先ほどのカドミウムの例で御推察いただくよりほか、現在の場合、方法がないのではないかと考えます。
  215. 中谷鉄也

    中谷委員 質問それ自体も、潜在的予測の手法がないことをお聞きしているわけですが、カドミの場合が一つの手がかりになるとすれば、どの程度あると考えられますか。
  216. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいまの基準をオーバーしておる工場の比率約五〇%というのは、指定地域外と指定地域内におきまして、比率といたしましてはほぼ同率でございます。したがいまして、これはカドミウムという特殊な、処理の非常にむずかしい、かつ中小工場で不十分な設備を持っておるものが多い、そういう業態につきましての一つの指標としては、約五〇%ということになろうかと思います。
  217. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、そういうことを前提にしてお尋ねをするわけですが、カドミ外の政令で定める有害物質ということについての素案をいただいたわけでありますけれども、いわゆる基準値というものと、その潜在的違反件数の予測との間に、基準値がこのような排出基準でいいのだろうかどうかという問題は心配はないのでしょうか。  私、まず非常に素朴な質問をいたしたいと思いますが、この基準値が守られているという前提に立つ場合には、同種の項目、たとえば有機燐というふうなものの排出をする工場が幾らその水域にあったとしても、この排出基準のもとにおいては、それが環境基準のほうに響いていって、人の健康を害し、あるいは害するおそれがないということになり得る排出基準なのかどうか。このあたりはいかがなんでしょうか。
  218. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この関係は、御指摘のとおり、いわゆる環境基準というものが一律にすでにきめられております。これを守るということを前提にいたしまして、これは全国一律にかける基準でございますから、大体平均的な希釈というようなことを考えて一律基準をきめる、こういうことでまず大体いいのではないかと考えております。もちろん、そういう工場が非常に集中しておりますとか、あるいは水の状況によりまして、一律基準だけでは、環境といいますか、人の健康の保持が十分でないと認められる場合があるわけでございまして、そういうときに、この法律規定による、いわゆる都道府県の上のせ基準というのがつくられるわけでございます。それによってさらにきびしい基準をきめていく、こういう形でこの法律の効果を守っていきたい、こういう仕組みでございます。
  219. 中谷鉄也

    中谷委員 そういたしますと、この排出基準というのは、あくまでも法三条三項の、都道府県における通常いわれている上のせ基準、上のせの発動というようなものとの関係において考えなければならないと理解すればよろしゅうございますか。
  220. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 そのとおりでございます。
  221. 中谷鉄也

    中谷委員 次にお尋ねをいたします。  自治大臣はまだお見えになっておりませんか。——では自治大臣にお尋ねすることがございますので、別のところからお尋ねをしていきます。  こういう問題は、先ほどの質疑を通じまして疑問に感じました。第五条の二項、排出水の汚染状態及び量についての虚偽報告は罰則の規定がないわけでございますね。そういたしますと、そのことが第八条の都道府県知事計画変更命令の判断を狂わす場合はあり得ませんか。虚偽の届け出をした場合に、そういうことはあり得ませんかという質問でございます。
  222. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 法律的に見ますと、虚偽の届け出がありまして、それがわからなかったということになりますと、この第八条にいう計画変更命令等でその観点が入ってこないという場合があり得ると思いますが、たとえば、先ほど具体的な御指摘がございました排水量等の問題で見ますと、届け出事項になっております特定施設の構造とか方法とか、そういった形でこれは工場の設計図から全部参りますので、大体そういうものを見まして、排水量等が著しく違ったものが虚偽の報告で行ってしまうというようなことは、私どもはないと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、この計画審査等につきましては、さらに今後都道府県のそういった担当者等について、講習その他十分の措置をやっていかなければならない、こういうふうに考えております。そういうことの生じないように体制を整備してまいりたいと思っております。
  223. 中谷鉄也

    中谷委員 体制の整備をされることは前提として非常に大事なことだと思いますが、同僚委員指摘いたしましたように、六の次に七を加えて、別に二項とせずに、排出水の汚染状態及び量その他を、総理府令、通商産業省令で定める事項を記載した届け出書類の中につけなさいということにすることは、特に法律技術的に問題があるのでしょうか。
  224. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この点は法案作成上ずいぶん議論をしたところでございますが、この排出水の量と申しますのは、工場、事業場の特定施設の種類、構造、それから特定施設の使用の方法、あるいはまたこの六号の処理の方法、こういう形で具体的施設の大きさなり内容なり程度なりを全部きめてまいりますと、その結果として量がきまってくる、こういういわば相関関係にあるべきものでございます。そういうことから、重複する規定として書くことはどうであろうか、こういう法律的な議論もございまして、添付書類という形にいたしております。私どもは、先ほど申しましたような運用をやっていくということによって、その辺の心配はないようにやってまいりたいと思っております。
  225. 中谷鉄也

    中谷委員 重複する規定なら、届け出であっても、添付であっても、届け出で足るものだということにもなるわけでございますね。重複するものを、届け出と添付という内容は違っても、重複することを何も添付させることはないじゃないかという反論は直ちに出てまいるわけでございまして、別にそのことについて法律の体裁と申しましょうか、きれいな法律をつくることよりも、そのことが国民の健康と生活環境の保全に役立てばいいのではないでしょうか。別に届け出の中に入れていけないというわけではないと思うのですが、どうなんでしょうか。
  226. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この点につきましては、第七条の関係もございまして、「特定施設の構造等の変更の届出」というところで、また第五条第一項第四号から六号まで事項の変更規定が第一項に書いてあります。それから二項には第五条第二項の届け出についての規定も書いてございます。そういう形で整理してございまして、やはり列挙して届け出するという場合に、第六号までの規定で当然に量の問題がわかるということであれば、これはこういうふうに二項に落としておくほうが法律的により正確である、こういうような法律的な御意見がございました。私どもも、そういうことであるならばこういう形で運用してまいろう、こういうことにした次第でございます。
  227. 中谷鉄也

    中谷委員 それでは、七号として加えるべきだという意見は、どんな意見がありましたか。
  228. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この届け出の列挙してあるものにつきましては、これが届け出をいたさないということになると、届け出違反等の罰則規定がかかるわけでございます。そういうことで、各号についてそれぞれにやはり意味を持つものがなければならないわけでございまして、この七号で入れました場合に、重複をするということになりますと、法律的にその辺についての問題が出てくる、こういうことのようでございまして、こういう形での書き方にすることにいたしたわけでございます。
  229. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないのですよ。七号に入れようじゃないかという意見はどんな意見だかをお聞きしたわけで、七号に入れない理由ばかりおっしゃるのですけれども、重複してもいいじゃないですか。重複すれば、結局その点についての違反というのは、六に違反すれば七にも違反しておる、五に違反しておれば七にも違反しておるということなんですから、別に罰則上の構成要件その他の混乱は生じないのではないでしょうか。入れようじゃないかという意見があったと言うから、その意見を聞かせてください。
  230. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 どうも私、その辺の法律的専門家でないものですから、たいへん恐縮でございますが、われわれ常識的には、若干重複しても入れていいのではないかという議論は確かにいたしたのでございます。しかし、やはり法律として書くからにはその必要の限度に限らなければならない、こういうことでございまして、それは原則としてそうであろう。こういった形で書けば量の問題は大体必然的にきまってくる、こういう関係にあるわけでございますから、これは添付書類でいい、こういう御議論でございました。私どもも、そういうことであるならばそれでけっこうだろう、こういうことで決定した次第でございまして、ひとつその辺で御了承いただきたいと思います。
  231. 中谷鉄也

    中谷委員 いや、私も別に意地を張っておるわけではないのですけれども説明をお聞きしておりましても、どうも少しふに落ちないという感じがいたしますので、そこでふに落ちないという点から申しますと、十二条が直罰の規定でございますね。直罰をもってしている。そうして、同じことを質問して恐縮ですけれども、十三条の二行目の「継続して」と、それからその次にある「その継続的な排出により人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認められるとき」は除けという意見が同僚委員から出ましたけれども、これは除くのが当然だと思いますが、先ほどあまり論理的な御答弁でなかったように私思いますので、除かないという意味をひとつもう一度整理をして言ってほしい。  もう一度申し上げますが、十二条の「排出水を排出してはならない」というのは、何も継続して排出してはならないという意味ではないでしょう。もう排出してはいけないのです。それについては直罰でしょう、故意、過失を問いませんね。というのは、なぜそんなことを聞くかというと、排出の量と汚染の関係について、汚染状態については添付になっておって、そのことが都道府県知事の判断を狂わした場合に一体どうなるんだろうか、その場合だって直罰で直ちに処罰できるんだろうかというふうな疑問があったものですからこだわったのですが、その点は、了承といいますか、おわかりといいますか、納得できない御答弁でしたけれども、この点については同僚委員も質問しましたから、これ以上聞きませんが、十二条は直罰であって、十三条について「継続して」ということば、「その継続的な排出により人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認められるときは、」とある意味が、私はわからないわけです。もう一度お答えいただきたいと思います。
  232. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この関係は先ほども御質問があったわけでございますが、十二条の規定はおよそ基準以上の、基準に適合しない排出水を出した者は直ちに直罰という考え方でございまして、それはそれとして一応規定してあるわけでございます。第十三条におきまして、たとえば十二条と同じような形で改善命令ということを書くといたしますと、直罰の規定でいくべきなのか、それとも改善命令という形でいくのかということが、この適用が非常に混乱を来たす場合があるのではないか、こういう議論が実はあったわけでございます。そして、たとえば例といたしまして、ある排出基準に適合しない水が出た、それが翌日も出る、さらに十日間出る、一カ月出る、こういう事態のときには、また、そういうことが予想されるということは、やはり施設の構造が悪いとか機能を十分果たさない、使用の方法が悪い、こういうことに基因する場合でございますから、そういう場合については、毎日毎日第十二条で罰則をかけていくというのも非常におかしな形になりますので、改善命令ということでそれを改善させていく、こういうことにしたらどうか、これがこの十二条と十三条の考え方でございます。そういうふうにこれは適用してまいりたいと思います。
  233. 中谷鉄也

    中谷委員 長官にお尋ねをいたします。  いま局長が、毎日毎日罰金を科していくのはおかしいとおっしゃいましたね。要するに十二条というのは、そうするとこれは一事不再理なのですか。それとも、一個の排出基準違反行為については一回しか処罰できない。きょうは十二月八日でございますね。十二月八日に排出の十二条違反があったという場合、十二条の違反として六月以下の懲役または十万円以下の罰金に処する。そして十二月九日にもそういう違反があれば、同じく処罰できるというふうにする。そうするとアメリカの執行罰の考え方に似てまいりますね。しかしこれは自然犯だと思うのです。自然犯というか、懲役がありますから、執行罰とか、ドイツの秩序罰じゃないと思うのですけれども、毎日毎日科していくことがおかしいと局長はおっしゃいましたけれども法律的には毎日毎日科していけるわけですか。
  234. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 もちろん法律的には毎日毎日科し得るわけです。ですから局長の答弁は、おそらく政策論じゃないかと私は思うのですが、ちょっと意味が捕捉できませんでした。  なお十三条ですが、非常に御疑問があるようでありますが、これは実は法制当局ともずいぶん議論したところなんです。  そこで、その言うところは、要するに逆に継続しない場合、この継続しない場合で改善命令を出すようなケースはないんだ、こういう考え方なんです。ですから簡単に言うと、あなた方のお立場の議論からいいますと、「継続」をとってもとらなくても同じじゃないかという議論になるかもしれませんが、要するに、改善命令を出すようなケースというものは常に「継続」、こういう表現であらわされるようなときしかないんだ、こういうことなんです。ですから、排出をした場合を二つに分けて、継続する場合とそうでない場合に分けて、片方は、余地はあるけれども改善命令制度はとらないんだという思想ではどうもないようであります。法律技術的には、この作文をしますときの経過から見ると、どうもそのようであります。
  235. 中谷鉄也

    中谷委員 なぜ局長は、一日一日処罰することがおかしいのですか。悪いものは処罰したらいいじゃないですか。もちろん行政措置としては改善命令その他があるにしても、毎日毎日排出をしている、だから懲役三カ月に三十回かければ懲役九十カ月ということになりますね。そういうことがあってもやむを得ないじゃないですか。なぜ毎日科すことがおかしいのですか。
  236. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 毎日毎日科すことは法律上当然できるわけでございますが、そういう形で継続してこの違反が出てくるというような場合には、改善命令等でむしろそれは工場の操業を停止するというような形のほうがいいわけでございますし、あるいは施設の改善によってそれができるというならばそれでやっていくほうがいい、こういう考え方を申し上げたわけでございまして、法律的にはもちろん、毎日出たからそれで罰しない、こういうことではございません。
  237. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで長官、政策論としてお聞きしたいのですけれども、そうしますと、私は、毎日毎日科せるというふうなことがはたして——その点については若干実は疑問があるのです。局長は簡単に、毎日毎日科せるのですよと、こうおっしゃいましたけれども、その点について、何か一事不再理のようなものが働くんじゃないかというのが、むしろ私の考え方なんです。当然のように局長は、毎日毎日科せるのだと、こうおっしゃったけれども、私はどうもそういうふうには思えないのですが、そういたしますと、ドイツなんかのいわゆる秩序罰だとか、それからアメリカの執行罰という考え方、そうしたら反則金という考え方。きのう産公のほうで松本委員が質問していましたですね、この考え方は将来導入してもいいんじゃないか。むしろ考え方としましては、執行罰という考え方、反則金という考え方は、私は松本君のようにとらないので、むしろ秩序罰として、たとえばドイツのように、一万マルクぐらいのものをどんどん科していくとかいうふうな考え方があっていいんじゃないか。だから、違反があれば毎日やっていきますよというふうなものは、政策的に御検討になれませんかどうか、長官の御答弁をいただきたいと思います。
  238. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは併存してよろしいわけです。罰は罰で科する、それから操業停止命令なり改善命令を出すものは出す、これは両方やっていいと思います。いまのお話の秩序罰とか、むずかしいお話になりましたが、まああなたは専門の弁護士でいらっしゃるから、なかなか答弁あれですが、実際を言いますと、親法であるいまの刑法の罰金そのものが低いのです。そのためにいまおっしゃったような操作がなかなかしにくいわけです。     〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、これはこれで、現行の刑法におけるところの罰金制度の改正というものは、御存じのように日程にのぼっているわけです。やっぱりそっちのほうを手直ししませんと、いま御指摘のような問題がなかなか操作ができない、これが現状であります。ですから今回といたしましては、現在の刑法の制度前提にいたしましてまあやらざるを得なかった。将来、刑法が変わりましたら、それに応じてまた十分改正されると思います。
  239. 中谷鉄也

    中谷委員 ちょっと私も言い出しましたので、もう少し整理をしておきたいと思いますが、罰金という考え方ではないわけです。まず、罰金という考え方じゃなしに、要するに過料でございますね。過料というふうなもの、制裁金と言ってもいいでしょうが、そういうふうなものを科していく。だから結局、行政的な措置としての改善命令あるいは施設の廃止、そういう行政的な措置のほかに、同時に直罰としての懲役あるいは罰金という考え方、それといま一つは、とにかく過料、制裁金のようなもの、この三つは併存してもいいのであって、むしろ今後の重点としては、かなり額の高い制裁金というもののほうが抑止力があるんじゃないかという感じもするわけですが、そういう点についてひとつ。だから、これは刑法、法務省の所管かもしれませんけれども、制裁金ということになってくると、政府のどこでおやりになるかわかりませんが、そんな考え方をひとつ導入されてはいかがだろうか。これは私、ちょっと、松本君の言っている反則金というのは直ちに首肯しがたいものがあるのです。そういう点について、反則金にしろ、執行罰にしろ、あるいはまた秩序罰にしろ、私は制裁金ということばを使いますが、そんな、罰金でない、そういうものの御検討政府としておやりいただきたいということを一つ申し上げておきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  240. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これはいま申し上げましたように、現行の、つまり罰金があまり天井が低いものですから、なかなかそこへ入り込む余地がない。そこで、もちろんこの問題は、実はわれわれが個々の法律を立案いたしますときは、ほとんど法務省の専門家の意見を聞き、それから他の処罰とのバランスというようなことも法務省のほうで見まして、そしてきめてくれるわけなものですから、いまここで私が一がいに申し上げることはできませんけれども、しかし結局、過料にしても、制裁金にいたしましても、天井が高くないことには入らない、あるいは罰金以上の制裁金というものを別に考えるという余地があるかどうか、ちょっとここらのところは、私も専門家でないものですから直ちにお答えはしにくいのでありますが、私は、いま刑法における罰金刑の問題が俎上にのぼっておりますから、それらとあわせて検討すべき問題として、今後の課題として残る問題だ、こう思っております。
  241. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、どういうふうに説明をしていただいても、十三条には「継続して排出するおそれ」とありますけれども、これは法律の持っている考え方としては、十二条では、もう排出しては絶対にいけないんですよ。直罰なんですよ。こう書いてあるのに、「継続して排出するおそれ」というふうなことが書いてあれば、継続して排出をしない——逆に言うと、「排出するおそれがある場合」という場合には、一体、改善命令やその他の対象にはならないのかどうかというふうなことにもなりかねないと思うのです。しかし、もちろん法律として私はそういうふうに理解はしませんけれども法律感じとしてはそういうふうに読めますね。そうすると、十三条があることによって非常に姿勢が弱くなる。そういうことになってまいりますと、ことに「その継続的な排出により人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認められる」。これは、十二条で「排出してはならない」というのは、人の健康、生活環境に被害を生ずると認められる、だから排出してはいけませんよ、こうなっているわけでございましょう。それをわざわざそこに書いてあるということは、法律の姿勢としては非常に弱くなると私は思うのです。どういうふうに説明されても、これは法制局、どうかしていたのじゃないか、こう思うのですけれども、局長、いま一度御答弁いただきたい。
  242. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 同じようなことを申し上げることになるかもしれませんが、旧法では改善命令だけがあったわけでございます。そして、この排出による直罰規定というものはなかったわけでございます。この改善命令だけでやってまいったわけでございますが、それでは不十分であるというので、この十二条を入れまして直罰規定を入れる。そうなりますと、従来、改善命令でやってきたわけでございますから、この排出水の基準をこえた場合の改善と、それから十二条の直罰規定との関係はどうか、こういうことになりまして、そういった事態一般には、十二条で当然直罰で対処していく。しかし、これが非常に継続をいたしまして、そうして施設の改善あるいは操業停止が必要になるという事態も生ずるわけでございますから、これは十三条の改善命令で処置していこう。この命令違反は、したがって十二条よりはさらに重い罰則がかかる、こういう形になっておるわけでございます。
  243. 中谷鉄也

    中谷委員 局長さん、違いますよ。何べんも申し上げておりますけれども監視体制を確立するんだという前提があれば、「継続して排出するおそれ」なんというようなことを書いておくことは、要するに「継続して排出する」というように、「継続して」というようなことを書いておくこと自体が、監視体制の不備を実態として、背景として認めたことになるじゃないですか。だからこの点は、私はどう考えても納得がいきません。そして、その罰則が重いというようなことは、全然御反論にはなりませんよ。それとは全然別個のことなんですよ。ですから結局、排出基準をオーバーしてはいけないんだ、十二条で、処罰するんですよと、そうしておきながら、「継続して排出するおそれ」について改善命令を出すんだ、当然出していくんだ——「排出するおそれ」という、そのおそれの状態が継続しているのであって、排出することが何も継続しているのではない。おそれという状態がある程度推定され、そのような状態をある時間かかって認識をしていくんだということで十分じゃないですか。法の姿勢として、まさにそうあるべきじゃないのでしょうか。どう考えたって、局長さんの御答弁は私は——法の姿勢ですね。とにかく排出基準違反は許さないのだという点からいきまして、十三条の規定は、私はほんとうに、屋上屋を重ねたと同僚委員は言いましたけれども、そうじゃなしに、法律考え方というもの、この法の姿勢というものを非常に弱くしている規定だ、こういうふうに申し上げるわけですけれども、もう一度御反論をいただきたいと思います。
  244. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 どうも御理解が願えないようでございますが、先ほどの御質問の場合にも長官から御答弁がございましたように、十三条は、言ってみれば予防的規定でございます。つまり「継続して排出するおそれがある」、こういう事態というものが認められる場合においては、これは罰則でもってただ罰していけばいいということでは、水質汚濁防止の本来の趣旨からいって困るわけでございまして、そういうときには施設を改善させる、あるいは操業を停止させるという措置があるべきだ、これが改善命令でございまして、この十三条を落としてしまうということになりますと、いまのようなことが対処できなくなる、こういうふうに私は考えております。
  245. 中谷鉄也

    中谷委員 十三条を落とせなんということは、だれも言ってないのですよ。十三条をもっと厳格にしろと言っているのですよ。そこで、「おそれ」ということについては、私は最近詳しくなったのですよ、公害罪をやりましたからね。そこで、そのおそれを、とにかく政府はお取りになったわけですね。お取りになったというか、とにかく法務省原案を、政府案のときには「おそれ」を取った。「おそれ」というのは、状態と蓋然性だということなんですね。だから「おそれ」ということ自体が継続している状態なんです。そういうふうな蓋然性であり、しかもそういうふうな状態なんです。ですから、継続のおそれなんというのは、おそれが継続というようなことばは、それこそ、さっきの「届出」のところの添付書類と届け出書類と同じようなことなんで、「おそれ」ということばがあれば十分なんですよ。十分なんですよという言い方は非常に押しつけがましいですけれども、理解されないと言って嘆かれましたけれども、理解しないほうがこの場合は正しいのであって、あなたのおっしゃることが、私は理解してはいけないと思うのです。ですから、「おそれ」ということばだけで十分なんです。公害罪は「おそれ」を取りましたけれども、ここには「おそれ」があるんです。だからそれで十分ですよ。だと私は思うのですけれども、いかがですか、局長。
  246. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 先ほど大臣からも御答弁がございましたように、私どもがこの規定を置きますときの考え方として、改善命令を出す場合というのはどういう場合かということを考えてまいりますと、やはり特定施設の構造とか使用の方法とか、そういうところに欠陥があって、そして直さなければならないということになるわけでございまして、短時間で、何かの運転の方法その他で直るというようなものは改善命令というようなものにはなじみがたいものである、こういうふうに考えておりますので、こういった形で規定することが実情にも合うし、そしてこれの運用によってうまくやっていける、こう思っているわけでございます。
  247. 中谷鉄也

    中谷委員 論理的に違うと思うのですよ。十二条があって、そして排出水を排出しておったという場合には、直ちに改善命令を出すなり操業停止をすることができますね。そういう場合はあり得ますね。当然そうなりますね、要するに排出しておった場合、これは当然そういうことはできますね。ですから、そうだとするならば、結局、「排出するおそれ」だけでいいわけじゃないのでしょうか。  もう一度聞きますけれども、ではこうなんですか。十二条の処罰規定によって刑事罰は科しても、そういう状態が続いていかなければ処罰はできないのだ、改善命令は出せないのだということなんですか。十二月八日に排出をしておれば、その事態だけでも、とにかくあくる日はもう改善命令を出すなり操業停止を命ずることはできますわね。そうでしょう。それを何で「おそれ」とまで書いてあって、「継続して」というようなことまでお書きになるのか。どう考えたってこれはあとで法律上の疑義を生ずると思います。
  248. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは何回にもなりますけれども、念のため申し上げますと、この「おそれれ」は「継続」にかかるのです。ですから、継続するおそれということであります。この場合には排出するおそれでないのです。そこで、継続するおそれということをなぜ特にここに書いたか、こういうことですが、おおよそ改善命令を出すようなときには、すべて継続して排出するおそれのケースでしかないという、こういう観念を前提にして書いているわけです。ですから、あなたがおっしゃいましたように、排出をした、しかし改善命令を出さないような場合があるかどうかと言われると、改善命令を出すときは大体こういう状態だ、こういうことですから、われわれのほうとしては、別に後退したという気はさらに持っていないわけです。
  249. 中谷鉄也

    中谷委員 自治大臣がおいでになったら、自治大臣に直ちに質問をするようにということで、自治省の方とお約束をしたのですけれども、「継続して排出するおそれ」について、長官は「継続」にかかるのだとおっしゃいますが、しかし、継続しておそれと、こう読めませんよ。やはり「継続して排出する」と、二つにかかるのですよ。そうでしょう。「継続しておそれ」とは文章がつながりませんわな。ですから、「継続して」にかかるんだと長官がおっしゃるのは、どうも牽強付会の感じがいたします。この点は自治大臣も、これだけ申し上げれば、大体検討はして——この条文については私のほうはおかしいと思うのですが、しかし、ここで十三条だけ言っていてもしようがないので、長官のほうで、ではこの条文もう少し詰めてみよう。われわれ、与党の先生方にもよくお話をしてみたいと思いますけれども、その点についてもう一度検討をされるというか、そうではなくて、もしかりに与野党の間で話がまとまった場合には、これはもう当然政府としても、この条文はそれほど固執しなくてもいい条文でしょう。
  250. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 わかりやすく言う意味で、「継続」と「おそれ」とつながると申し上げたのですけれども、もちろん継続して排出するということは排出の中の継続排出ですね。継続排出のおそれというこのときの「おそれ」というのは、ただ排出だけではなくて、「継続」がかかっての「排出」と、こういう意味ですから、誤解のないように。  それから、これは先ほどから申しておりますように、われわれは実は後退したつもりではないのです。ですから、全く法制的な表現の問題でございます。いろいろ技術的な審議も経ましてこういう法律案になりましたものでございますから、私どもとしては、実はあなたの御心配になっておるようなケースも、われわれと同じ、実体的には違っていない、実はこういう立場をとっておりますので、あとはもう法律上の専門家の表現方法の問題、こういうことだと思います。
  251. 中谷鉄也

    中谷委員 じゃ次に、自治大臣においでいただきましたので、長官にお尋ねをいたしまして、自治大臣にそれに引き続いて御質問をさせていただきたいと思います。  お尋ねいたしたい点は二点ございます。最初、長官のほうからお答えいただきたいのですけれども、三条の三項、いわゆる都道府県の上のせの規定についてであります。この規定の中に「自然的、社会的条件から判断して」ということばがございます。御承知のとおり、公害対策基本法にも同種の文言があることは、すでに明らかであります。そこでこの場合、これは対策基本法の解釈にも関係してくるのですけれども、「自然的、社会的条件から」という自然的、社会的条件というのは、一体どのように理解すべきであろうか、これはひとつ長官から御答弁をいただきたいと思うのです。
  252. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは御存じのように、基準をきめます際のもろもろの自然的、社会的条件ということでございますから、その当該の水域における自然条件、そしてまた、それに加わる社会的条件によって汚濁がいかに形成されてきたか、そういうことを頭に置いて判断をする、こういう意味であります。
  253. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、じゃもう少し私のほうから申し上げたほうがいいと思います。私は、社会的条件というのは、客観的な社会的条件、要するに、そこにどれだけ施設があるとか、人口がどれだけ密集しているというふうな、客観的な社会的条件だけにとどまらない。主観的な社会的条件、そこの地区の住民がどれだけその川を愛しているかとか、あるいはまた、どれだけ先祖代々から伝わってきたその川を大事にしているかとか、あるいはまた、公害防止に対してそこの地区の住民が非常な意欲を持っているとか、よその地区に比べて特段の意欲を持っている、そういうふうな社会心理的なといいましょうか、そういう住民の意思というか、そういう主観的なものも、ことばは熟しませんけれども、社会的な条件は客観的なものと主観的なもの、この両方を入れて理解すべきだというふうに私は思うわけなんです。たとえば山紫水明なんということばは最近なくなりましたけれども、山はとにかくきれいだし水は非常にきれいだ、非常に水を大事にして、この川を大事にしたいという住民の気持ち、こんな気持はやはりわれわれは社会的条件の中に入る。これは基本法の基本的解釈にもかかわってくるだろうと思いますけれども長官の御意見はいかがでしょうか。
  254. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 主観的と申しますと、ちょっと語弊もあるような気もいたします。おっしゃいますように、たとえば環境基準を私たち設定いたしております。これを実際に当てはめますときに、たとえば上流が自然公園の地域になっておる、そういう場合に、その自然公園ということを頭に置いて、そうしてそれに即した環境基準というものの当てはめが行なわれているのが実際であります。そして全体としての趣旨もエコロジカルな点も十分に今後対策をとっていくということでありますから、終局的な目標というものは、山紫水明とまでいくかどうか、とにかくできるだけ程度の高いものに持っていく、こういうことでありまして、過渡的にはそこに一挙にいかない場合もございますけれども、そういう意味において当てはめということが行なわれているわけであります。われわれとしては、十分そうした、あるいはいま御指摘になったような点を含んでいると思うのでありますが、そうした内容を考慮して環境基準設定、当てはめが行なわれる、こういうことになっています。
  255. 中谷鉄也

    中谷委員 ですから、主観的な社会的条件というか、ことばは熟さないことばを使いましたけれども、住民の気持ちというか、そういうようなものも一つの社会的条件の中の評価の対象になるというふうに私は思うわけなんです。ことに、その地区の住民が特段に公害防止、きれいな環境というものを望んでいるというふうなことも社会的条件として私は理解すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  256. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 もちろん公害問題自身は、住民の意識を中心にして取り上げられている問題でありますし、それからまた、府県知事権限を集中いたしました一つ考えは、やはりそういう住民の立場というものを十分に考慮し得る立場である知事というものに権限を集める、こういう思想でございますから、全体としては、住民の意識の上に立って事が処理されなければならない。これはいわば当然の、法律以前の問題であるというふうに私は考えております。
  257. 中谷鉄也

    中谷委員 自治大臣にお尋ねをいたします。  自然的、社会的条件というのは判断事項だとされております。だから私は、社会的条件というのも非常に規範的要素が強いのじゃないか、こう思うのですが、判断事項だ。そこで、「同項の排水基準で定める許容限度よりきびしい許容限度を定める排水基準を定めることができる。」とあります。そこで、たとえば条例で現代の最高の科学技術以上のものを求める、そういうふうな許容基準というようなものを、その地区、たとえばそれが、先祖代々からここだけはどうしてもきれいにしておきたいというふうに考えている川というようなものがある場合に、条例の中で、そういう許容限度を上回るきびしい許容限度というようなものをきめた場合には、実際届け出があっても、排水基準には達しないわけだから、工場は建つことがないわけです。そういうような条例も、都道府県知事権限としては、大気汚染、そして水質汚濁、こういうふうな法律では認められている趣旨だというふうに私は考えます。そういうものであるべきだ。住民の意思が、ほんとうにその川を愛しているんだ、その川にはどんな排出物も入ってきてもらいたくない、流入されたくないというような場合、そういうような条例も別に違法ではないというふうに私は考えているわけです。これは、そういう届け出制というもので、その川をある場合には極端に守っていくことができる、そういう必要もあるだろうと私は思う。観光資源としての川の場合なんか、特にそうだろうと私は思うのですが、そういう点についての自治大臣の、住民本位の立場に立った社会的条件というものは、そういう住民の意思を表現しているのだという意味から、御答弁を特にいただきたいと思います。
  258. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 たいへんむずかしい事態を御設例なさったように思います。しかし、自然的、社会的条件という点において——自然的ということはわかっておりますが、「社会的条件」に、いま先生のおっしゃるような、その地域住民の特別の主観的な意思を含めて解釈をすべきであるということは、私は一応、住民の意思を尊重するという地方自治のたてまえからは、十分わかるわけであります。しかしながら、政令に定める範囲以上を越えて強いことを要求していくという点につきましては、法律的にはその点問題があるのであって、ここらははなはだむずかしい、デリケートな問題がございますけれども法律解釈といたしましては、ここに書いてあるように、政令で定める基準に従うべきものである、こう解釈いたします。
  259. 中谷鉄也

    中谷委員 自治大臣は私の質問の趣旨を少しお取り違えになっていると思うのです。だれかついてきておると思うのですが……。  政令で定める基準というのは、それのきめ方の手法を政令で定めると書いてあるわけでしょう。許容基準ではないわけでございますから。政令で定めるというきめ方ですね。たとえば基準値、検査、検定方法はこうなんだ、そういうことを政令がきめてくれるわけでしょう。排出基準の許容限度は別に政令で定めるわけではない。政令を上回ってはいけない、下回ってはいけないというような、その政令ではないわけですね。これはあくまできめ方といいますか、こんな方法できめなさい、こういう検査、検定方法をとりなさいということでありますから。  それでは、もう一度長官にお尋ねをいたしますが、現代の生産技術をもってしては防止できないような排出基準、それを上回るような条例は、ある地区においては有効でしょうか。要するに、現代の技術をもってしては、そういうふうな条例できめられた排出基準を守ることができないという条例も、私はきめることができると思うのですが、長官の御意見はいかがでしょうか。
  260. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いわゆる法律論の基本的な問題で、あなた専門家でおられますが、もちろん不可能な事態を予想した立法というものは、その限りにおいて私は無効になると思います。ですから、いまあなたが強調されたような意味でほんとうに不可能であるならば、幾ら規定できめましても、これはできないことになります。ですから、そういう意味において、これは法律論になってしまうわけですけれども、もちろん客観的な条件が満たし得る、こういうことで基準というものもきめられ、当てはめも行なわれる、こういうことだろうと思います。
  261. 中谷鉄也

    中谷委員 こういうことだと思うのです。たとえば都市計画法などでは、いろいろな地区の差があって、ここは工場を建ててはいけないということが当然ありますね。だから、現在の技術の水準では、工場を建てても排出基準をオーバーしてしまうという場合——将来はどうかわかりませんよ。しかし、いまは届け出してもとにかく建ちませんよというふうな条例は、私はあり得ると思うのです。現在の許容限度をきびしくするという条例は、私は有効だと思うのです。そういうような条例は何も不可能をしいていることではない。現在の技術では可能ではない、将来は可能かもしれない、一年先は可能かもしれない、二年先は可能かもしれない、そういう条例というのは私は当然あり得るし、法律的には有効だと思います。そういうことで、たとえば力点が、その川を全くきれいにしておく、観光資源としてそれを認めていくのだというふうなことであれば、都道府県がそういうふうなことを条例できめることは可能だと思います。これは法律的に有効だと思いますが、いかがでしょうか。
  262. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 可能か不可能かの判断の問題であります。そして、率直に申し上げまして、これは日本だけでなく、世界的にまだ公害技術というものは十分開発されておりません。そういう中にありまして、一体どの程度のことを目標に置いて行なうかという場合でも、実際問題としては、ずいぶん立場によって見解の相違があることが起こり得るわけであります。でありますから、そういう点は実際的にこれを解決していく以外にないわけでありますが、設定しておる知事自身が不可能であると思って、それで条例をきめる、そしてしかもそれで罰するということになると、私は、これは法律論として原始的不能の問題を含んでいるんじゃないかと思います。ここだけで申し上げるのはあるいは行き過ぎかもしれませんが、むずかしい法律論でありますから、あるいは専門家の議論が必要でしょうが、そういう感じを持ちます。
  263. 中谷鉄也

    中谷委員 原始的不能の問題よりも、そういう場合であれば届け出に基づく計画について、結局、計画廃止の問題が出てくるわけですね。だから、原始的不能じゃなくて、計画廃止という行政処分になってくると思うのです。ですから、もうちょっと、せっかく通産大臣おいでいただいても、行き違いばかりで、通産大臣には一ぺんもお聞きできなかったのでお聞きしたいのですけれども、一体、よりきびしい許容限度の上限というのはあるのでしょうか、長官にお尋ねします。
  264. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 現在でも御存じのように最高平均をきめておりますね。そこで、もちろんできるだけきびしい基準というものをとる、それが可能な範囲であるならば、私は当然そういう基準がとられるだろうというふうに考えています。現在も御存じのように、新しい施設の基準は非常に高くしております。ですから場所によっては、新しい工場が設置しにくいようなところが、実際問題としてずいぶん起こってきていることは事実でございます。そういう意味において、その基準の立て方の方針として、きびしいということを求める、これは私は一向に差しつかえない、こういうふうに考えております。
  265. 中谷鉄也

    中谷委員 実は水質についての法律について通産大臣にお尋ねをするわけですが、これは大気汚染と両方との関係で、いろいろ例の「通知」、それからさらに電気事業の適用除外の問題を通産大臣にお尋ねをしたいと思うのです。  これは、もう何べんも何べんもあちこちの委員会で、大臣、御答弁になっておられます。そこで私は、この場合でいえば法の二十三条ですね、大臣は、大体私の理解では、こういうふうに答弁をされます。要するに、電気は公益事業なんだ、だから、その供給義務がある。供給義務があるので、結局五条から十一条まで、十三条一項の規定は適用しないんだ、こういうふうに従前から答弁をしておられるわけです。そこでもう一度御答弁をいただきたいと思うのです。時間がなくなりましたから、私の考え方を申し上げたいと思います。  たとえば労働組合法と、それから労調法の関係がありますけれども、電気事業に従事している労働者は、労調法の制約はありますけれども、スト権がございますね。これは憲法上から来ていると思うのです。そうしますと、住民は同時に、こういう公害防止をする、公害から免れるという憲法上の権利、生存権を持っていると思うのです。その生存権を守るのは、国家が責任もあると同時に、都道府県にもその責務がある、私はこういうふうに思います。そうすると、適用除外だといって、都道府県知事が本来他の企業、事業場に対して持っている権限を国のほうに吸い上げていく。問題は、公益事業で供給義務があるから、たとえば操業の一時停止なんかは都道府知事にはさせられないんだということは、私は、労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権というようなものと、都道府県知事が自己の地域の住民の生存を守っていくこととまさに匹敵すべきものであって、そういうふうな都道府県知事権限をこのような形で奪っておるということは——国が代替しているのだという議論もあるかもしれませんけれども、私は、憲法上の問題も生ずぬのではないか、こういうふうに思います。これが第一点であります。自治大臣にも同様の点についての御答弁をいただきたいのです。  それであと、そういうふうに言い合いをしておってもしかたがないので、「通知」、「要請」、そして「通知」、要するに、「要請」ということばを「協議をする」とか、「同意をする」とか——電気事業法の所管大臣がその都道府県知事協議をするというふうなところまでいかないと、私は、おかしいのじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。この点、私は、やはり地方自治の本旨から考えて、憲法上の要請から考えて、自治大臣の御見解を承りたい。  ことに地方自治法によりますと、電気事業というのは、地方自治体が営むところの仕事の一つでもあるわけですね。一体これはどういうことなんでしょうか。地方公共団体が、自分のところで電気事業を営んでおる、自分のところが営んでおる電気事業について、一体、問題についての権限は国のほうにあって、みずから営んでおる事業についてないというのもおかしいというふうなことも私は感じました。これは私の一つ感じですから、この点についての御答弁は別にいただくつもりはないのですけれども、労働組合法との関係において、地方自治の本旨というようなもの、生存権というようなもの、それとの関係において、ひとつ従来の答弁と違った理論構成を通産大臣にしていただきたい。そうでなければ納得がいかないのです。ひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  266. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御存じのように、電力の正常な供給ということは、国民の生命、健康に直ちに関係をいたしますから、それは、この公害基本法等等が考えておりますことと同じ目的を持っておるものというふうに考えるわけであります。  何で地方権限を与えないかという御質問の点については、まさしく私は御存じのようなことをお答えしておるわけでありますから、結局、地方住民の福祉というものと同じく、健康、生命に最も関係のある電力の供給というもの、その間に調和点を見つけるということになるのであろうと思います。これは経済と生命、健康との調和ではなくて、同じく生命、健康に直接関係のある諸要素との間の調和であります。そのことをただいま争議権との連関で仰せられましたが、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律第二条によりますと、「電気事業の事業主又は電気事業に従事する者は、争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為をしてはならない。」と書いてあります。同じ思想であります。
  267. 中谷鉄也

    中谷委員 そこでもう一度お尋ねをいたしますけれども、そうすると内容が変わってまいりますね。改善命令その他——要するに、とにかく都道府県知事権限によっての改善命令その他については、これはそうすると、どういうことになるのでしょうか。いま操業停止について御答弁になりましたですね。じゃ改善命令は一体どうなんでしょうか。それまで奪うことが、何か公共の福祉と関係があるのですか。さらにまた、協議をすることがかえって調和点を見出す。「要請」ではなしに「協議をする」という程度のところで、地方住民の福祉と全体の他の地方公共団体の住民の福祉との調和点、それが「協議」ということばにあらわれてくべきじゃないでしょうか。
  268. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かりに地方団体の長が改善命令をすることができるといたします。これに従わなければならないわけでありますが、それに従うといたしますと、電力の供給そのものを一時とめるという必要が生じてくる場合もございます、改善命令でございますから。そういうことは、準備なしに突如としてやってもらっては、その他の供給を受ける国民全体が困る。同じ論理でございます。
  269. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、電気事業法のそういういろんな条文がございますね。電気事業法のそれらの条文について、供給をとめるということが絶対的な——とめなければならない場合だって結局ありますね。そのことをなぜ国ができて、地方公共団体ができないのか。ことに供給をとめない改善命令というふうなものだって、私はあり得ると思うのです。改善命令が供給をとめることと直ちに論理的に結びつくことでしょうか。
  270. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに一発電所をとめなければならないという場合はあるわけでございますけれども、それが、国が所管をいたしておりますれば、そのときに他地域からの供給をさせることができます。停止することによって、その供給がとまらないような方法を広域的に国が考えることはできます。都道府県知事には、それは当然のことながらできないわけであります。
  271. 中谷鉄也

    中谷委員 だから、都道府県知事がそういうふうなことの権限を発動する場合には国の同意が要るという法律構成であれば、それらの問題は解決するのではないでしょうか。
  272. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国には同意以上のものが必要なわけであります。つまりそのような行為によって供給がとまるということに対して、事前に国が対策を立てる必要があるのであって、それは積極的な行為が必要なわけであります。
  273. 中谷鉄也

    中谷委員 積極的な行為が立てられるまでは同意を与えないというようなことも、法律的には可能なんじゃないでしょうか。
  274. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでありましたら、実態は、ただいま御審議を願っておりますような私ども考え方で、十分に用が足りると思います。
  275. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないと思うのです、「要請」なんですからね。結局、「要請」の法律的な効果は、「通知」という法律効果を生むだけですね。じゃ、いま大臣のおことばを裏返して言えば、改善命令都道府県は出せますよ。そして供給計画に支障がないような状態の中で国が同意を与えるということだって、それならこの法案と同じだ、この考え方と同じだとおっしゃったのなら、私が言っているような法文に変えても同じだということになりますね。
  276. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうは申しておらないわけであります。改善命令を発しましたら、それは命令としての効果を持つわけでございますから、命令を受けた者は従わなければならない、そういうことになります。
  277. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないんです。もう時間をオーバーしていますからなにしますが、改善命令都道府県知事が出すことについて、あるいはまた、そうして改善命令がかりに操業停止につながっていくなら、そのことについて国の同意が要る。国の同意は、とにかく供給計画について支障のないことを条件として同意をするという法律構成を私は言ったのです。そうしたら大臣は、それならば法文に書いてあるのと同じじゃないか。結果として同じだというなら、そういう法文に変えても同じだということになりますね、ということを私聞いたのです。
  278. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、電力供給というものの本質論に私は立ち返らなければならないと思います。これは、何々町にある発電所が何々町だけに供給をするものでないことは御存じのとおりであって、供給を受ける人々と供給をする場所、人人は、これはもう遠隔であり、場合によっては全国的に広がっておるわけでありますから、そういうものについて、かりに国の同意を前提としようとしまいと、そのローカルな考え方からとめたり、改善をさしたりするということは不適当だ、やはりこれはナショナルなレベルで考えるべきだという、これは電力の広域供給というものの本質論から出ることだと私は思います。
  279. 中谷鉄也

    中谷委員 そういうふうな電力供給というものが、どのような国的な意味を持っているかということと、地方自治の本旨というものとの調和点を、私は、先ほど言った同意論、あるいはまた協議というふうなことの中で解決できるではないか。それも抜き打ちに改善命令を出すというようなことを言っているわけじゃない。  そういうようなことでありまするから、時間が十五分超過しましたので、この程度にいたしておきますけれども、自治大臣、せっかくお待ちになりまして、少なくとも、都道府県知事については、「要請」、「通知」ということではなしに、協議等の権限を与えるのが地方自治の本旨に沿うべきものではないかというふうに私は思いますが、自治省としてはどういうふうにこの点を御検討になりましたか。
  280. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 これはやはり、いま通産大臣がおっしゃっておられますとおり、この電気供給事業が広域的に安定供給をしなければならないという要請から、通産大臣権限を留保してあるわけです。そこで、それっぱなしじゃいけないので、いま御承知のような通知を受けたり、あるいは要請したり、また、立ち入りをする権限というものを知事に与えて、これの運用によりまして、私は十分、法の目的、また知事にある程度権限を与えたという実際上の効果を期待できると思います。  そこで問題は、それなら「要請」という文字を、あなたがおっしゃるようなものに変えたらどうだということになりますが、そこが、広域的、安定的な電気の供給という点を考慮すると、「要請」という文字が妥当ではなかろうか、こういう見解に立つわけでございます。
  281. 中谷鉄也

    中谷委員 速記録をきょうは私、完全に写してまいりませんでしたから、公害対策本部の法案作成までに至る担当者の一部の考え方は、「供給」というふうなことを入れるのが妥当だろうというふうなことも考えたことがあるということでありました。自治省としては、最初からそういうことについて、もう「要請」でいいのだというふうに考えておられたのです。いまの大臣の御答弁なら、これは都道府県知事権限というものについて、都道府県のあり方について、みずからの権限を放棄しておる。連合審査会のとき私は申しましたが、都道府県はたよりないものだというものの考え方に立っている考え方だ。どんなふうにも法律的に構成できますよ、ということを私何べんも申しました。それは政府法案をきめたので、自治省としてもそれに従うという趣旨なのか。大臣の政治的な信念、大臣はほんとうに腹の底からそう思っておられるのか。これは私はどうも納得できません。ひとつどうでも、御所信を承る質問ですから、簡単に御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  282. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 いろいろ議論の過程におきまして、そういう意見もございました。しかしながら、最終的に通産大臣といろいろ協議検討をいたした結果、この法案のような結論を得たわけでございます。
  283. 中谷鉄也

    中谷委員 たいへんおそくなりました。終わります。
  284. 八田貞義

    八田委員長 塚本三郎君。
  285. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は最初に、沿岸海域における汚染防止の立場から、お聞きしてみたいと思っております。  実は私ども愛知県で、いま海上投棄をしたことから端を発しまして、連日新聞をにぎわしておる問題がございます。それは汚物処理及び廃油を消却船に積んで、そして外洋へ行って捨てるというのを、外洋へ捨てるのがめんどくさくなったのか、あるいは時間的にロスになるのか、内海に捨てて戻ってきたというところから事態が発展をいたしまして、実はこの会社が環境衛生協会という財団法人でございました。それで、その役員が港則法違反ということで逮捕せられまして、これが調べられておりますうちに、実は役員の横領というような汚職に発展をいたしました。この汚職の発展から、さらに愛知県内におきます中小都市の市長さんが逮捕される、あるいは別の市におきまして課長さんが逮捕される、そしてけさの新聞あたりでは、全部やはりそういうところから汚職容疑が摘発されまして、いま愛知県民の地方行政に対するたいへん大きな不信を買っておる、こういうところにまで実は事態が発展をいたしまして、連日、一面記事や、あるいはこまかい三面記事の中で、五段抜きでこのことが報道せられておる、こういうことになって、たいへん大きな問題となってきております。もとはといえば、外洋に捨てておけば問題でなかったのが、実は伊勢湾の中で捨てられたというようなことから問題になったわけです。昔からネコを追うよりさらを引けということわざがありますが、根本的に、汚職事件や、こういうことは別の問題でございますけれども、汚物を具体的に処理をさせる。あるいは、先ほど同僚委員の中から出ておりましたような廃油の処理等を、海に捨てなくて具体的に処理させることを進めなければ、この問題は解決されないのではないかというふうに考えられるわけです。したがいまして、大都市においては、汚物などの処理はそういう施設を持っております。しかし、中小都市はそれができないから、いわゆる投棄する船を雇って、そしてその船に海洋投棄をさせておるというようなところから、こういう問題がきたというふうに考えられます。  そこで、いわゆる汚物処理と廃油の処理について、こうすべきだという具体的な方法を考え出されておるならば、最初に御説明いただきたいと思います。
  286. 竹谷喜久雄

    ○竹谷説明員 従来の清掃法を改正いたしまして、廃棄物処理法という法律案をいま提案しているわけでございます。その中におきまして一般廃棄物と産業廃棄物の概念に分けまして、それぞれ一定の計画に従いまして処理するというように法律において定めておるわけでございます。それで、実際の問題といたしまして、処理施設の問題につきましては、法律の二十三条によりまして「国は、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図るため、一般廃棄物処理施設、産業廃棄物処理施設その他の廃棄物の処理施設の設置に必要な資金の融通又はそのあっせんに努める」というようなことで、民間における廃棄物の処理施設の促進につとめたい。それから、なおまた、市町村に対しましては、一般廃棄物処理施設の設置に要する費用の一部を国庫補助として取り上げたい。かような政策によって廃棄物の処理の問題に今後取り組んでいきたい、かように考えておるわけでございます。
  287. 塚本三郎

    ○塚本委員 その一般計画というのがわれわれにはさっぱりわからぬのですが、大体いつごろまでにどういう規模でどういうふうに進めていくかということを説明していただきたいと思うのであります。一般的に計画で進めてやるというふうになっているだけでなく、大体いつごろからそれができるのか、そういうもっと具体的なことを説明していただきたいと思います。
  288. 竹谷喜久雄

    ○竹谷説明員 具体的にはいま厚生省のほうで検討を進めている段階ではないかと思いますので……。
  289. 塚本三郎

    ○塚本委員 あなた、どこですか。
  290. 竹谷喜久雄

    ○竹谷説明員 公害対策本部でございます。
  291. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは、産業廃棄物においては、どういうふうな計画になっておりますか。
  292. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 産業廃棄物につきましては、第十条に処理計画の立案の条項がございまして、都道府県知事がこの法律に基づきまして広域的な産業廃棄物処理計画を定めなければならない旨の義務規定ができているわけでございますが、一般廃棄物、産業廃棄物を通じまして、これらの処理事業は、本来地方公共団体の団体事務あるいは固有事務という性格が非常に強いために、すべてこういう計画の立案は市町村あるいは都道府県におまかせするというような法律の形になっております。したがいまして、この処理計画の立案の過程におきましては、通産省としては、いろいろのデータなり、あるいは技術的な援助なり、そういうことを全部都道府県知事のほうにお渡ししまして御協力する体制は、着々固めておるわけでございますが、計画の主体が都道府県知事ということになっておりますので、できるだけ早くこの法律が成立いたしまして、これに基づきまして、都道府県知事の処理計画の作成ということに一日でも早く入りたい、それを待ちまして、国としてできる限りの援助体制を講じたい、かように考えておる次第でございます。
  293. 塚本三郎

    ○塚本委員 そういう計画が実際に実施されて、そうしてこういう廃油で困っておりますから処理してくださいと持っていかれるのは、一体いつと予定してみえるのですか。
  294. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 これは全く予測でございますが、法律ができますと、おそらく一年以内には、あるいはこれはある都道府県によりましては半年くらいで、一応の計画が立案されるかと思います。その計画に基づきまして、現在、先ほども指摘になりましたような処理施設の普及状況というものが非常におくれておりますので、その計画の中に盛り込まれました処理施設の建設計画に移るわけでございますが、これはやはり最低一年程度の時間は必要であろうかと思います。したがいまして、最も順調にいきまして一年半ないし二年くらいたちませんと、この法律に基づきます具体的な処理施設の完成ということは不可能ではなかろうかと存じております。
  295. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは、その二年間ばかりの間は、どこへ捨てたらいいのでしょうか。
  296. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいまの予測は、処理計画という全体計画について申し上げたわけでございますが、それ以外に、先ほども御答弁申し上げましたように、ある一部の都道府県あるいはある地域の関係業者で、処理施設の計画を持って現にその建設を進めておるものもございまして、またわれわれ特に廃油業者、ガソリンスタンドその他に働きかけまして、できるだけその地域の実情に応じた施設をつくるように指導しておる向きもございますので、そういった個々の施設の完成につきましては、必ずしも一年半とか二年とか、そういった長期はかからないと思います。具体的にケース・バイ・ケースにこれはできるだけ早く処理していきたい、かように考えておる次第であります。
  297. 塚本三郎

    ○塚本委員 だから、私のお聞きしておりますのは、そういうものが早くできたとしても、二年はかからぬとしても一年くらいでできるかもしれない。そうすると、この一年間はどういうふうに処置したらいいんでしょうか。もっと具体的に言いますなら、それは一年でできるものは、大きなタンクをつくって自分のところの工場にそれまでは積んでおけ、外へ流してはいけない、こういうことですか。
  298. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 現在の通産省の指導方針といたしましては、事業活動に伴って生ずるそういった廃油のたぐいにつきましては、できるだけの範囲で自社で回収あるいは処理するということを指導しておるわけでございますが、具体的には相当高性能のボイラーをもってたきますと、その排煙その他につきましても、必ずしも有害物質を多量に排出しないような形の燃焼方法もできておるわけでございまして、非常にこれはコストのかかる方法ではあっても、とにかくみだりに捨てるということは非常に問題がございますので、公共的な処理施設あるいは共同的な処理施設、そういうものができるまでの間は、できるだけそういうような形で処理してほしいということで、強力に指導しておるわけでございます。
  299. 塚本三郎

    ○塚本委員 こまかく問題を詰めて聞いておりまするとまた時間がなくなってしまいますから、先に進んでお聞きしたいと思います。  大臣にお尋ねいたしますが、実は私、この問題が出た関係のいわゆる海上投棄を委託した会社から、ちょうどことしの七月、ヨーロッパへ行く計画を知っておりまして、ドイツにおいてきわめて能率的な、二次公害を起こさない焼却炉があると言われたからぜひ調べてほしいという依頼を受けまして、一行と離れて私だけ一日、ジュッセルドルフへ参りまして、ジェトロの所長の広瀬君をわずらわしまして、幾つかのデータを取り寄せてみました。そうしてきわめて有効に焼却をして、二次公害を起こさないという機械を、実はリーフレットでございますけれども——実物まで見る時間がございませんでした。それを私は見まして、一つのことを発見いたしました。それは、実はその会社から、二次公害を起こさない、優秀だということで、日本におきましてたくさんの中小都市がそれを買い受けて、そうしてじんあい処理に使っておるわけでございます。これはきわめて効果的に働いておるということがわかりました。私が記憶しております都市だけでも、十幾つその会社から買い入れて使用しております。ところが、産業廃棄物、いわゆる廃油等を処理するための民間会社は、ただの一社といえどもそれを買い入れていないわけです。ところが、ヨーロッパあるいはアメリカ等においては、地方自治体がほとんど買い入れておらずに、たとえば、フォードであるとかイギリスの鉄道会社であるとかいうような大企業、あるいは国家的な産業自身が買い入れて、そうして産業廃棄物を焼却するのに使っておる。地方自治体はほとんど設置しておらない。私はこの違いを見まして、いかに日本産業界が廃棄物に対して力を入れておらなかったかということに驚いたわけでございます。  そういう意味から申しますと、積極的に、こういうものもあるんだ、だからこれを設置して焼却をしなさいという、具体的ないわゆる指導がなされてしかるべきではなかったか。しかし、いまお説にありましたように、その場合たいへんなコストがかかるわけです。そこでドイツにおきましては、聞いてみますと、その施設を使って焼却をするときは、トン当たり何割という焼却に対する補助金を出しておる。それでなければ企業としてはどうしても外に捨ててしまうというようなことだから、日本のように人口が密集していない国でさえも、やはり捨てられたら困るんだというわけで、それに対して焼却に対する費用を国が補助しておるわけです。だから、やはり先ほどの同僚委員の中でも、スタンドに対する廃油等の処理につきましては、協同組合、しかし採算の点でという御意見がございましたけれども、それは廃棄物、油自身を利用するということが中心になるならば採算の問題を云々していいと思いますけれども、出すところでは、それを使えれば、それにこしたことはないけれども、それよりも始末してほしいんだといって捨てるものでございましょう。そういうものに対して採算を云々したんでは、どうしても目の届かないところではやはりどこかに捨ててしまうので、最終的には河川や海をよごすという形にならざるを得ないと思うのです。だから、採算を云々しておるんだったら、もはややらないほうがいいという形に結論づけられてしまいますから、やはり採算の合わないところは、堂々と二次公害を出さないような施設をして、そうして国が助成をする、こういう処置を講じなければ、私は不可能だと思うのです。だから、具体的に、積極的に、そういうものに対しては、いわゆる採算の合わないだけは何らかの形で補助をして採算に合わせるようにするならば、地方行政計画的に二年先といわなくても、業界自身が積極的にやるであろうと思うわけです。だから、そこまで前向きで進んでいかなければいけないというふうに感ずるのですけれども大臣いかがでしょうか。
  300. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、意識の立ちおくれがあるのでございましょう。そこで、社会的な常識でそういうことをしてはいけないということから、産業が、ただいま仰せられましたような、伺うところによりますと、外国の例のようにしてくれればよろしいでございましょうが、なかなかわれわれの場合そうはまいりませんから、今度はそういうことをすれば法律違反になるということになりますと、わが国ではその辺はきちんとものごとをするような国柄でございます。そこで、そうなりますと、おそらく企業としては、ただいま仰せられましたような廃棄処理施設を自分で持つか、あるいは廃棄業者、処理業者に委託するか、いずれかの方法をとらざるを得ない、この法律が生まれますことによってそういうことになっていくと思いますが、そういう施設を設けました場合に、何か国として助成の方法を考えることはないだろうか。たとえば特別償却を認めるといったようなことは、これは私は考えていいことではないかと思います。
  301. 塚本三郎

    ○塚本委員 ドイツではたしか半分以上、六割くらい、かかった費用を国が負担しておると私は記憶しております。それでなければやれませんということを、その会社でも説明しておったように記憶いたしております。私も、地元の愛知県で企画担当者にそのことを言いまして、そして検討してみなさいということを、帰ってから直ちにこまかく説明したことを記憶しておりますが、どうせその会社から税金をとってやるのだから、やはりそのくらいのことを積極的にやらないと、罰がおそろしいからと言いますと、目の見えるところではやりませんけれども、見えないところでどうしても捨ててしまうという形にならざるを得ないのではないか。だから積極的に、いわゆる特別償却だけではなくて、やはりそれを具体的に補助するというところまで進まなければ——一面から言うならば、そんな会社にそんな応援をする必要ないという意見も出るかと思いますが、しょせん被害は庶民が受けざるを得ない、こういう問題でありますから、前向きにそこまで考える必要があるのではないか。どうせそういうことを出すところの企業というものは相当に税金を納めておるのだから、そこまで検討するつもりはございませんか。
  302. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私の所管外で、お答えするのは適当でないかもしれませんが、融資であるとか、あるいは償却であるとか、応援のしかたにはいろいろあろうかと思いますが、非常に零細な中小企業などについて、これは何かのことは考えられるかもしれませんが、大企業等について、自分の出します産業廃棄物を国が金を出してやってどうこうということは、私は考え方としてはいかがなものであろうか。ただし自分の所管ではございませんので、権威を持ってお答えするわけではございませんが、私はそういう感じを持っております。
  303. 塚本三郎

    ○塚本委員 結局、そうしますと、どういうことになるかといいますと、大企業などにおいては、油を買ってやらぬぞ、油を買ってもらいたければ、ついでに廃油を持っていきなさい、こういう形に転嫁されていくわけです。結局、そうすると、小さい油の業者等が——特に大きな油屋ならともかく、廃油等の出るのは、潤滑油だとかそういう小さな油屋なんですね。結局、そういうところが困り抜いてしまうという形になるから、しわ寄せば小さいところに必ず行くというのが、私の見てきた経過でございます。だからやはり無理して、そうすると海洋投棄の船に頼むというふうな形になっていくというふうに考えられるわけです。だからその際、公共施設がきちっとやってくれればいい。だが、なかなか汚物の処理は、一般のじんあい処理等でせい一ぱいでございます。産業廃棄物までは、なかなか具体的に進むというわけにはいかないのではないか。だから、どうしてもそれは業者にやらせるという形になってくるから、業者ならば採算が合うようにいかなければいけない。前向きで取り組むためには、ある程度の助成でやらせるということでなければ、最終的なきれいな処理ができないというふうに考えるが、いかがでしょう。
  304. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これからどういうふうにこの問題が発展していきますか、ともかく自分のところの廃棄物をかってに捨ててはいけないという、それは法律で禁じられたということになるわけでございますから、それに対処しておそらくいろいろなことが生まれてくるでありましょう。ただ、いまのような自己設備としての廃棄物の処理の施設ということもございましょうし、あるいはもう社会的に相当やっかいな問題になってまいりましたから、むしろ廃棄物処理業といったようなものが——たとえばピーター・ドラッカーなどは、そういう考え方をしておるようでございますけれども、そういったものが業として成り立つ、私は、それならそれでいいのではないだろうか。政府がそこまで、先ほど御指摘のようなところまで出ていかなければならないようなことは、いかにも情けないことだ。新しい問題は、新しいそれを業とするような企業があらわれてもよさそうなものでありまして、むろんそれは委託するほうはかなりのコストになるでございましょうけれども、何かそういうわが国らしいやり方があるのではないかと思います。
  305. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は、処理業を計画しておる人と十分話し合って、そして二次公害を出さないということをいわゆる前提にしていま申し上げておるわけでございまして、業として成り立つかどうかということで私はいろいろと相談を受けてみて、そしてそのままぼうっと焼いてしまうならば、あるいはふろ屋さんへ持っていって、そしてふろ屋さんに、ただ同然のごとくに焼かせるというようなことなら簡単でございます。だけれども、それは、ふろ屋さんなどはまだ目をつけられておりませんけれども、同じことだと思うのですね。だから、どうしてもそういう二次公害を出さない完ぺきな施設をつくって、完ぺきに処理業をさせるのが一番私は好ましいことだ。そうであるとするならば、やはりドイツがとっておるような処置にさせないことには無理だというふうに私は考えて、単なる二次公害を——いわゆる油を処置するだけだったら、簡単に海岸に持っていってぼうっと燃やせば、あるいはいま聞き及んでみますると、ふろ屋さんなどに持っていって、そしてふろ屋さんでたかせれば、それはばらばらでそんなにたくさんの量ではありませんから、ふろ屋さんの煙突から煙が出るくらいなことで終わりなんです。それを二次公害を出さない、完ぺきにさせる、そういう機械を使ってするとするならば、いまの段階では、やはりそれでなければ採算に合わないというふうな形にどうしても計算上出てくる。しかも、そういうことをしておるドイツにおいては、だからこそ助成をしておる、こういう考えだろうと思うのです。私は情けないのではなくして、やはりそれのほうが積極的なんだというふうに考えるわけでございます。しかし、意見がかみ合いませんから、私は、この問題はこの程度にしておきたいと思います。  これはどうでしょうか、外洋で海洋投棄というものは、これは別の法律で海洋汚染防止法というのがありますが、ここで船舶からの油、廃棄物を投棄することを原則として禁止するということに別の法律で提案されておるように記憶いたしておりまするが、しかし、これは船舶に固有に持っておるもののいわゆる廃棄物だろうというふうに理解するわけですが、地上から持っていって廃棄物を、海洋の遠くならば、外洋ならば、そういうことは許されるかどうか、私はこれはいけないというように思うのですけれども、その点の見解はどうでしょうか。
  306. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 海洋汚染防止法と産業廃棄物処理法の関係でございますが、廃棄物処理法の政令におきまして、それぞれの産業廃棄物並びに一般廃棄物につきまして、それぞれ処理の基準を設けまして、ものの面からできるだけ無害化する形でこれを処理していく。それで陸上でどうしてもやむを得ない場合には、この部分のこういうものは海上投棄もやむを得ないということが、先ほど申し上げました処理計画の中できまってくるわけでございます。それを受けまして、海洋汚染防止法の政令で、どういう海域にどういうものを捨てたらいいか、その基準がきまってくるわけでございまして、この廃油の問題につきましては、陸上処理が原則として可能であるという概念におそらく入るのじゃないかと思います。したがいまして、われわれとしては、できるだけこの廃油の問題は陸上の施設を早く増強することによりまして完全に処理いたしまして、できるだけ海上投棄その他の方法には持ち込まないという気持ちで現在いろいろの対策考えておる次第でございます。
  307. 塚本三郎

    ○塚本委員 やはりそれはできるだけ持ち込まないということはおっしゃるとおりですけれども、いま私と通産大臣とのやりとりでおわかりのように、しょせん出してはいけない、出してはいけないというところへ追い詰めていくだけの形では、私はなかなかむずかしいことだと思う。それならば、船に乗せて外まで持っていけという形が続くかもしれない。また、そのほうが比較的、付近の川へ、あるいは土の中へ埋めていくより良心的であるかもしれないというふうにさえ、比較の問題として見られる程度だろうと思っております。だから、せっかく法律をつくるならば、私はそこまでしないと無理じゃないかというふうに考えておりますので、なおこの点は積極的にひとつ御検討いただきたいと思います。  今度は、別に方向を変えまして、河川の問題で聞いてみたいと思いますが、たとえば飲料水に使っておる川へ上流のほうではいろいろなものを流すのですね。その場合、汚濁汚水を流さないようにきれいにして流すということですけれども、いかにきれいに流してみても、やはりいままではそんなことは平気でおったのですが、これだけやかましくなってまいりますと、きれいにしてみても、やはり一度はよごれた水だというようなことから、飲料水としてはだんだんと不適になってくるのじゃないか。そこで、たとえばそういうふうに河川に流す場合に、浄化して流すのではあるけれども、たとえば東京だとか、名古屋だとか、あるいは大阪だとか、大都会で水を飲料水等に使っておるその川には、再びそういうものは流さないようにするために、いわゆる排水河川にたよらずに、河川の横なり、ともかく別に一本排水溝の大きなのをつくって、そうして川に流れ込まないように、実は海に流れていくようなことを将来的には考えていかないことには無理じゃないか。これはたいへんな事業にはなると思いまするけれども、しかし、交通あるいはまた道路網等がたいへんなお金をかけて実はそれが行なわれてきておることと比べてみるときに、採算がとれないからということで考えられないかもしれませんけれども、しかし、多くの鉄道網や道路網等がばく大な予算をかけて建設せられておるということを見るならば、やはり排水溝自身を、都会だけじゃなくして大きな河川というものにも、それに沿って別に一本、いわゆるそういう水を流すような施設をつくることを計画すべきだというふうに感じられるわけでございますけれども、これはしろうとの考え方ですけれども、いかがでしょうか。
  308. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これはまさしくお説のとおりでありまして、御存じのように、流域下水という問題として最近大きく取り上げられております。政府におきましても、公共事業の中でこの方面に対する投資を逐次拡大をしてまいらなければならない、こういう方向で推し進めています。
  309. 塚本三郎

    ○塚本委員 そういたしますと、具体的にそういうことに対して何か計画はできておるのですか。あるいはそういう目標を持っておいでになるのですか。
  310. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この流域下水道の制度は、比較的新しいものでございますが、ただいま御指摘のような事態でございますので、これから整備をしていかなければならぬということでございまして、現在、建設省が作案をいたしまして、予算要求という形で出ておりますが、第三次の下水計画、こういう中にこれが織り込まれております。建設省の原案では、この関係で三千七百億円ほど予定しておるようでございますが、こういう形で逐次整備をしてまいる、こういうことでございます。
  311. 塚本三郎

    ○塚本委員 具体的に、三千七百億という金が示されましたけれども、おもにどういう川、どういう川ということですね。おも立ったそういう河川というものをそこで例示していただくわけにいきますか。
  312. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 ただいま現実には多摩川等で進んでおりますが、この計画の中に具体的にどの河川が織り込まれておりますか、私もちょっとつまびらかにしておりませんので、もし必要があれば、後ほど建設省のほうから御説明いただくなり、そういったことにしたいと思います。
  313. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは、何かそういう資料があったら届けていただきたいと思います。  それでは、時間が少ないようですから簡単に法文でお聞きいたしますけれども、第一条の「目的」の中に、水質汚濁の防止をはかることということになっておりまするが、きたなくなってしまったものをきれいにするということは、この法律では考えてはいないわけですか。これはまた別の法律で何か具体的にやっておるわけですか。どうでしょう。
  314. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この第一条に書いてございますように、工場、事業場等からの水の排出を規制することによって汚濁を防止しようというわけでございますから、すでによごれてしまったものについては、この法律規制を行ないましても、これだけではきれいにならないということになるわけでございます。  したがいまして、そういった状況に対しましては、一つは下水道の整備というようなことをやってまいります。それからさらに必要がありますれば、そういった地域における汚泥のしゅんせつをやりますとか、あるいは場合によっては他の河川から浄化用水を入れてくる、こういう対策事業をあわせて行なうことによりまして事態の改善をはかっていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  315. 塚本三郎

    ○塚本委員 そうしますと、実は悪くなることを防止するだけではなくして、すでによごれてしまっておるものも、いましゅんせつというお話が出ましたが、それもこの法律の中で考えておるというふうに、広義に解釈をしていいわけですか。
  316. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この法律は、工場、事業場からの排出水の規制等によって水質汚濁の防止をはかるということでございますから、言ってみれば狭義の対策ということになると思います。ただいま申しましたような施策公害基本法のほうに規定がございますが、こういった形で他の法律、たとえば下水道法とかあるいは河川法とか、そういった各事業法によってこれをあわせて行なっていく。この関係は公害基本法による環境基準の当てはめというようなことを現実にきめますが、そういった際に、そういう対策の事業も参考資料としてつけまして、全体として環境基準が達成されるように取り計らっていくわけでございます。
  317. 塚本三郎

    ○塚本委員 それで第二条の中で「沿岸海域その他公共の」と、こういうふうに言っていますけれども、この沿岸海域というのは、その沿岸からどれくらいの地域とかいうような、具体的な距離とか、そういうことは想定しておるわけですか。
  318. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 第二条に規定いたしております沿岸海域というのは、特に岸から何キロメートルまでというような具体的な制限は考えておりません。ただ、この水質汚濁防止法の目的から見まして、当然ある程度の限界が出てくると思いますが、さらにその内容になりますと、海洋汚染防止法というようなものが働いてくる、こういうように考えております。
  319. 塚本三郎

    ○塚本委員 そうすると、何か基準とか、たとえば沿岸における漁業であるとか、あるいは何か具体的なそういうことで、ある程度基準をつくるとかいうことはあるのですか。
  320. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この沿岸海域は、ただいま申しましたような形で、水質汚濁防止法として必要な範囲ということでございますが、当然、公海というようなところは、これは問題にならないと思います。     〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕  そこで、具体的な問題として、一律に基準をきめるようになっておりますが、これはまあそういった、およそ沿岸海域でわが国の領海になるようなところは、一応全部問題になるようなことになると思いますが、さらによりきびしい上乗せ基準をきめるというような際には、特定の区域をきめてやることになります。その際には、現在でもそうでございますが、この沿岸海域につきまして、陸岸から一キロメートルとか、あるいは二キロメートルというような具体的な区域をきめて、それについての基準をきめる、こういうやり方をとっております。
  321. 塚本三郎

    ○塚本委員 続いて第九条の「実施の制限」という中で、二行目でございますが、「その届出が受理された日から六十日を経過した後でなければ、それぞれ、その届出に係る特定施設を設置し」とこうなって、六十日というような経過を経なければということになっておりますけれども、これはどうして受理されてから六十日という日にちを置いたのでしょうか。この日にちを置いたその理由というのを、もう少し具体的に説明していただきましょうか。
  322. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この第九条は、この前の第八条の「計画変更命令」との関係がございますが、要するに届け出が出ました際に、都道府県知事は第八条によりましてこれを審査しまして、必要があれば計画変更を命ずるわけでございます。その審査期間として大体六十日ということを想定いたしまして、六十日以内にこの命令を出すようにしておるわけでございます。この期間において工場の設置とかあるいは施設の変更ということをされては、穴があいてしまいますので、経過した後でなければそういった設置なり変更はしてはならない、こういう規定をしております。もちろんこの六十日を必要としない場合もあるわけでございますので、第二項に、これは「短縮することができる」という規定を置きまして、こういう形で運用してまいりたいということでございます。
  323. 塚本三郎

    ○塚本委員 わかりました。  十五条も、「都道府県知事は、公共用水域水質汚濁の状況を常時監視しなければならない。」というふうになっておりますが、現実に実戦部隊を相当に持たないと、そういうことは不可能だというふうに判断されるわけですが、大体、都道府県において、この監視体制のための人員は、どれくらいの人員を予想してこの条文を設けたのでしょうか。
  324. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この常時監視規定を守っていきますためには、十六条の測定計画によりまして具体的な測定を行ないまして、その結果が全部都道府県知事に集まってくるということによって、体系的な監視ができる、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、この測定ということが監視のためのいわば方法になるわけでございます。これにつきましては、たとえば御承知のように、直轄河川については建設省の出先があるとか、あるいは市町村でも一部こういうことを担当していただく場合があると思います。そういったそれぞれの分担関係も含めまして測定をやってまいる、こういうことでございます。現実には、都道府県の場合には、この測定に当たるのは、たとえば河川であれば土木事務所等の出先機関あるいは保健所、こういうものが当たることになると思います。どの程度の人員がこれに従事することになるかというのは、まだ全国的な計画としてできておりませんので、数字的には持っておりません。
  325. 塚本三郎

    ○塚本委員 しかし、おおよそどれくらいは必要ではないかという、あらづかみの程度のものはなければ、予算その他のことで計画が立たないと思いますが、おおよそどれくらいかということはわかりませんか。
  326. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 一応四十六年度の予算要求といたしまして、私どもは大体百四十水域くらいの監視測定ということを想定いたしておりまして、一億六千万円ほどの要求をいたしておりますが、この関係でありますれば、従事職員というのはある程度の規模はつかめると思いますが、ただいま手元にその数字を持っておりませんけれども、大体この金額等からひとつ御推察をいただければいいんじゃないかと考えております。
  327. 塚本三郎

    ○塚本委員 ちょっと私ももっとこまかく検討してないからよくわかりませんけれども、やはり問題は、実効をあげるためには、この体制によほど力を注いでいかないと、その実効をあげることはむずかしいというふうに思っております。金額だけでは、実際には兼務した仕事でしょうから、人員を把握することはできないと思いますが、私どもしろうとにとっては、何人になるのか、何百人になるのか、何万人になるのか全然わからぬわけでございます。おおよそ何人くらいという人員で、そういうことで把握してみたいと思いますけれども、それは全く想定はつかぬわけですか。
  328. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 たとえば河川関係の実際の管理をやっております府県の代表的なところを見ますると、土木事務所の数というのが大体十数カ所から二十カ所くらいということでございます。そういうところに、大体少ないところで十五名ないし多いところで五十名くらいの人員が配置されております。この河川関係というのはおそらくそのうちの三割程度と私は考えておりますが、こういう人たちが第一次的にはこういう仕事にあずかっていただけるんではないかと思っております。それから保健所のほうの人員も、測定の数値の分析等について御協力いただくことになると思いますが、保健所の数というのも、大体通常程度の県でありますると十二、三カ所くらい、定員はおそらく一カ所十数名というくらいであろうと思います。そのほか、県には衛生研究所というのがございますが、そういうほうの担当の研究者、こういう方々がやはり分析等に従事をしていただかなければならない。大体、県の体制としては、現在そういったものを動員してやっていくつもりでおります。
  329. 塚本三郎

    ○塚本委員 そうすると、大体いまお聞きした河川関係、保健所関係の者が相当にきびしい体制をとるとすれば、一つの県で数百名の人は動員することが可能だというふうなことを想定しておられるんじゃないかと、私ちょっと受け取ったんですが、そうであるとすると、先ほど私聞き違いかもしれませんが、六千万円という金を言われたように思いますけれども、それではあまりにも少な過ぎるというふうに思って、一けた人員が違っていはしないかというふうに思いますが、どうでしょう。
  330. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 先ほど申しました予算の要求でございますが、これは一億八千万円程度、二分の一補助考えておりますから、その倍額が事業費になります。これは従事する方々の人件費までこれに含めるつもりはございませんで、調査のための直接に必要な経費をこれで見てまいりたい。人件費は当然従来から地方財政措置としてまかなわれておるわけでございますので、そういう方々がひとつこの仕事に従事してやる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  331. 塚本三郎

    ○塚本委員 もう一つだけこまかいことをお聞きしますが、「報告及び検査」という中で第二十二条の三項ですね。「第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」というふうにわざわざ断わっておりますけれども、それは、単なるいわゆる普通の視察程度ということに受け取れという意味で、そういうふうに書いたんですか。
  332. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 お答え申し上げます。  この二十二条の第三項の規定は、いわばこういった特殊の法律によりまして立ち入り検査を規定いたしますときの例文でございまして、こういった犯罪捜査のためのものということになりますと、捜査令状とかそういった形になりまして、非常に厳格になりますが、そういうようなものではないということを規定することにしておるようでございます。
  333. 塚本三郎

    ○塚本委員 わかりました。  時間がおそくなりましたから、私、最後に希望だけ申し上げておきますが、先ほど廃油の処理のことで私がちょっと申し上げたことでぜひ聞いていただきたいと思いますけれども、おそらくこういう廃棄物に対する問題は、普通の場合、採算に合うものではないということが前提だと思うわけです。だからこそ、公共事業体が全面的に行なわなければ、これはできないことだと思っております。しかし、そうかといって、地方公共事業体などが、特に小さい中小都市等におきましては、なかなかこれは公社等を設ける等——海洋汚染防止法の中にはそんなことも予定しておるように伺っておりますけれども、いずれにしましても、それは地方自治体が具体的に乗り出すということは、相当年月のかかること、あるいはよほど大幅な国の助成がなければできないことだ。だから私は、すぐに間に合わないような感じがするわけで、先ほど通産大臣がおっしゃったように、そういうものを処理する処理業というものができてしかるべきだ。私はできざるを得ないというふうに見通しておるわけでございます。そうであるとするならば、私は前向きでそういう企業こそ育成をしていく方向にしないと、やはりきれいな処置というものができなくなってくるというふうに思います。私は、ことしの七月、ドイツに行きまして、そのことをいろいろ調べて、これは業として成り立たせなければ根本的な解決はあり得ないというふうに考えまして、西ドイツが相当の助成をしておるという姿勢からすると、そういうことを国がしてやらなければならないということは恥ずかしいことだという考え方とは逆に、私は国がしてあげるということが実は胸を張って歩ける文化国家の最終的な姿だというふうに受け取っておるわけです。ぜひひとつ、そのことを大臣には御検討いただきたい。それがなければ、どうしても目の届かないところでは外に流してしまうということになることを憂えておりますので、希望として申し上げまして、私の質問は終わります。
  334. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 米原昶君。
  335. 米原昶

    ○米原委員 今度、提出された水質汚濁防止法案は、以前の規制法と比べると、ただ指定水域だけ指定して、そこだけに排出基準を設けるというやり方をやめられて、全国一律の基準をきめていく。そうして地域によってさらにそれよりも高い基準がきめられる、こういうやり方になったという点は、確かに前進だと思うのです。前進ではありますが、これはあまりにも当然の前進だと思う。指定水域指定されなかったところが、あれほど大きな問題を至るところで起こしてしまったのでありますから、これをしなかったらお話にならない。そのくらいな意味での前進だと思うのです。ただ、国民が今度の国会にかけている期待は、とにかくああいうようないろいろな事件が起こった、こういうものをとにかく何とかして今後は起こさないでほしい、あと始末もたくさんしなくちゃなりませんが、とにかく今度の法案で第一歩を踏み出して、実際に起こってきた公害を防止できる——すぐにできるとはだれも思いませんが、そういう重大な根本的な一歩になるというものであってほしいというのが、国民の願いであると思うのです。ですから、前進があったことは私ももちろん認めますけれども、これでいまの期待に沿えるだろうかという観点から、若干質問してみたいと思うのです。  たとえば、いまもお話ししました田子の浦の問題ですが、あそこは十月一日から指定されることになったようであります。その指定される前に、指定する準備でもありましょうが、静岡県が調査をやっておりますね。その資料がここにあるのです。この資料で、沼川と潤井川その他の河川全部出ておりますが、あそこに関係のある沼川、潤井川の汚濁の状況、川の末端のところの汚濁の状況の数字が発表になっている。これをちょっと見まして、びっくりしました。たとえば沼川の場合、BODが三八五PPMですね。潤井川のほうはずっとそれより少ないですが、それでも四八・六PPMです。それからCODは、沼川が二五三・六PPM、潤井川は九〇・七PPM。SSは、沼川が一六七PPM、潤井川が八二PPM。PHは、沼川が七・二PPM、潤井川が五・九PPMとなっているのです。これは排出基準じゃなくて、政府が出されている環境基準と比較してみましても——その環境基準の中でも一番ゆるいやつですね、環境基準のEです。環境基準のEはBODが一〇PPMですからね。それと比べても、五倍あるいは四十倍というような数字になるわけですね。CODは、河川じゃなくて沼の基準がありますけれども、それと比べても十倍、数十倍の汚染状態だということがここに出ております。そうしますと、環境基準というのが全然これは破られているわけですが、破ってもこれは達成目標であってということで、一応の目標になっているだけで、必ず守らなくちゃならぬというようになっていない。この目標をもとにしながら排出基準もきめていくんだということでしょうけれども環境基準すら数倍、数十倍の割合で破っているということですね。これはたいへんな状態だと思うのです。もちろん、いままで全然これを規制する法的な規制がなかったわけですからね。そういうことからこういう状態が起こってきた。こういう点を見ますと、今度の法案が出ましても、排出基準をかなり厳重なものをあそこで適用しなくちゃならぬことになると思うのですが、それにしてもこれを規制していくのは容易なことではないという印象を、だれしも受けると思うのです。  このような場合に、この例から見ても、排出基準というものと環境基準というものの関係あたりを——環境基準というものは、当然、人の生命、健康及び生活環境、そういうものの基準ですからね。それをもう破壊しているわけです。どうしても近寄せなくちゃならぬ。そういう意味では、環境基準というものを、単なる達成目標というのじゃなくて、もっと厳重なものに規定する必要があるんじゃないかということが一つ。それに合わせて排出基準をきめていく場合に、先ほども問題になりましたが、単に排出基準だけではなくて、排出量を規制しないと、これは解決つかぬじゃないか、こう思うのです。  今度の法案で、やはりさっきも問題になりました量の規制ということは、届け出の中に量を届けることにはなっております。しかし、それを規制するという考え方は、あまり中心にはなっておりませんね。ところが、こういうような、ことに汚染した地域の実態を見ますと、これは水だけじゃなくて、大気の場合にも同じ問題がありますが、基準だけきめても、量の規制ということをやらないと、実際は解決にならない。ですから、地域的に特殊な基準をきめるということは、非常にいいと思うのですが、同時にその中に量についても地域全体としての規制をやらないといけないんじゃないかということを、この実例から私は感ずる次第です。この点をどうされるつもりか、この法案ではその点は明確でありません。今後の施策としてはどうされるか、できたら法案の中に私はそれを入れられたほうがいいと思うのですが、施策としても今後どうしたらいいかという点について、考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  336. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 お答えを申し上げます。  第一点の、環境基準の問題でございますが、これは公害基本法によってきめられるものでございまして、このうち、人の健康にかかわる項目につきましては、すでに全国一律にこの環境基準がきめられております。当然この新法もそれを受けて排水基準が一律基準としてきめられていく、こういう関係になりますが、問題は生活環境項目のほうでございまして、これについては、水域ごとの実情も違いますので、当てはめと申しておりますが、それぞれの水域ごとにある類型を当てはめていく、こういうことをしているわけでございます。それが、いまおあげになりました、一番悪いものは一〇PPM、こういったことでございます。  田子の浦の事例がございましたが、現在この田子の浦につきましては、環境基準の当てはめ、及び、「水質基準」と現在はなっておりますが、今度の「排水基準」でございますが、これを設定すべく現在作業をやっております。  そういう形でこれについても基準をつくってまいりたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、この環境基準排水基準との関係は、今後は上のせ等が行なわれます特定の水域につきましては、同時にきめていくような方向でやってまいりたいと思っております。  それから、排出量についての問題でございます。先ほどもいろいろ御質問がございましたけれども、これにつきましては、当然、一定の水域についての基準の上のせあるいは環境基準という作業をいたしますときには、そこに現に立地しております工場、あるいは計画があります工場についての排水量と水質を同時にデータとしてとりまして、そして環境基準が満足できるような形で、しかもかなりそれには余裕を見て規制値をきめるわけでございます。  そういう形でございますから、量の問題は当然基準をきめる際に考えに入っておるといっていいわけでございますが、しかし、御指摘のように、排出量は増大をする場合もございます。そういったことも考えまして、一つ工場から出ます排出量がある程度大きいものについては、基準をきびしくするというような、いわば若干段階的なきびしい基準も現在とっておりますが、こういう考えも今後とっていったらどうだろうかと思っております。同時に、全体としての排出量が増大をいたしまして、そして環境基準が達成できなくなるというような事態になりましたならば、この上のせ基準をさらにきびしくするということによって対処してまいる、こういう運用をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  337. 米原昶

    ○米原委員 おっしゃっている点で、この点ですが、環境基準排水基準をあわせてきめていきたい、それはつまりどういうことになりますか。どういう意味ですか。実際の措置として、一気にきびしい排水基準をきめるのは無理だから、そういうことをやろうという考えですか。その意味がよくわからないのですがね。
  338. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 ちょっと説明が不十分でございましたが、この水質汚濁防止法、新しいこの法律によります排水基準は、全国一律にきめますいわゆる一律基準と、都道府県がこれよりさらにきびしい基準を特定の水域についてきめるいわゆる上のせ基準とございます。この上のせ基準をきめる場合に、そこにつきまして環境基準というようなものがきめられておりませんと、なかなか量の問題まで取り入れてやることがむずかしくなるということもございます。この当てはめ行為というのは、公害基本法によりまして都道府県知事委任ができることになっておりますので、現実の運用としては、そういった特定の水域については、環境基準の作成と、これを念頭に置きました上のせ基準を、都道府県知事の段階で一緒に作業していただく、こういう運用をしたいという意味でございます。
  339. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、富士市のような場合、あの状態の中で——これはたとえですよ、ほとんどあり得ないことだと思いますが、あそこにもう一つ工場を建てるというような届け出があったと仮定しましたら、これは初めから住民はもちろん反対するでしょうし、問題にはならないと思いますが、富士市の場合は極端ですから、例としては適切ではないかもしれません。しかし、住民が反対の大運動を起こしている、そこにもしも製紙工場を持ってきたら、これはだれしもおそらく反対運動で建てることができなくなると思うんですがね。つまり、あそこまでひどくないようなところでも、やはりいろいろな公害が起こっている。ここにこういうような工場ができるということは、地方の自治体としても考えものだというようなものは、方々にあると思うんですよ。そういう点で、かなり悪い条件があるというようなところに、単に届け出制だけでいいかどうかということを私は感ずるのです。  先ほどから議論になりました届け出制でも、いろいろなこういう届け出についての条項がついておりますね。そういうことで、実質上は規制できるからいいんだという話ですが、しかし、やはり許可制にするのとは意味が違うのじゃないか。先ほどの長官の話では、許可制ということになると、一ぺん許可してしまうとなかなか規制がむずかしいというような話がありました。しかし私は、これは公害を引き起こしそうな企業についてだけ限定して話しているので、企業一般を全部を許可制にしろといま提案しているのではない。公害関係公害を起こす可能性の非常に多い、そういう企業の問題です。その場合に、もちろん許可する場合にいろいろな届け出をさせますね。そうして、ただ書面の審査だけじゃなくて、おそらく実地の検査もしなければならぬでしょう、許可ということになると。やはりそれが単なる届け出制ということになると、やはり書面審査だけですべてきめられるということになるのだろうと思いますがね。そこからいろいろな問題がいままでに起こってきているのじゃないか。ここは非常に重要な点じゃないかと思うわけなのです。ある一つ工場が来ただけで、いままでの条件と重なって公害が大きくなっていくというような地域というのは、いま全国にかなりふえていると思うんですね。そういう中で、いままでと同じような届け出制で、はたして規制できるかどうか。原則許可にしていくほうが正しいのじゃないかと思うのですが、この点について、ひとつ長官の見解をもう一度聞かしてもらいたい。
  340. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 大きな立地政策的な見地から行政透導をしていく、こういうことはいいと思うのですけれども、どこそこに企業を興す、どこそこに営業を興すという、この自由という問題は別にあるわけですね。なかなかそこのところは私はデリケートだと思うのですが、しかもいま公害問題といいますと、大企業だけが皆さんの頭にすぐくると思うのですが、今度、御存じのように、製造業だけでなく、第一次、第二次、第三次、あらゆる企業にこれを広げ、全地域に広げたわけですね。これは相当な分量だと思うのです。それを一々許可制にして、先ほども申し上げましたが、既得権益というようなふうに見られるということはどうであろう。それより、やはり変更命令ができるわけですから、その権限を与えられているのですから、六十日の間の審査ということをやりまして、チェックをする、こういうことでやる。そのかわりまたいつでも変更命令知事としては出せるわけでありますから、むしろそのほうが実際的じゃないかと私は考えているんですけれどもね。
  341. 米原昶

    ○米原委員 連合審査会でもその問題をだいぶ繰り返されたので、あまり繰り返したいとは思いませんが、しかし、私の言うのは、公害を非常に引き起こしやすい、そういう産業だけ規定して——ほかのものは届け出制で、いまのこのやり方でもいいと思うのですが、そういうことを規定して、それはむしろ許可原則にしていく。現実には、鉱山保安法でもあるいは電気事業法でも許可制ですね。だから、そういう例がないわけじゃないわけですから、公害を引き起こす可能性の非常に強い企業だけは許可制にして、原則として公害は起こさせないのだという考えでいかなくちゃいけません。もちろん事前審査をやっても、実際にそういうことをやっても。許可した結果、実際は公害を引き起こしたということもあると思うのです。その場合には、許可するにしましても、もちろん届け出のときから条件をつけておくわけですから、許可の取り消しということも十分行なえるわけですから、許可ということをたてまえにするのが私はほんとうじゃないかと思う。各国の例を見ましても、公害関連企業の場合には、届け出でなくて許可制になっているところが多いようであります。これはそうするほうがほんとうじゃないか。今度の公害関係法案で、総理は、世界に冠たると言いましたけれども、その点は絶対に世界に冠たるとは言えない一点じゃないかというふうに思っているんですが……。そうしないと、たとえば、いまの量の規制の問題にしましても、どうしても今後は工業の立地条件というような問題をもっと考えていかなくちゃならぬと思うのですが、地域で大体どの程度まで空気が汚染している、水が汚染している、こういう中でどの程度のものが許されるかということを、やはり行政当局は頭に入れていなくちゃならぬと思うのですね。そういう見地から、大体こういう企業はここでなくて別のほうでやってもらいたい、という考えもあってしかるべきだと思うのですが、許可をむしろ原則にする。届け出制というのは、やはり認めるというのが第一だと思うのですよ。しかし、公害関係企業の場合は、むしろ原則としては、公害を引き起こすあれが多分にあるならば認められない、十分な施設をやらないと認められない——全然認めないというわけじゃない。もちろん公害を防ぐに足る施設をつくればいいわけですから。そういう意味許可原則にするのがほんとうじゃないか。連合審査会以来、何回もこの議論を聞いておりましても、これは私、納得できない一点なんです。それがないと、実際の措置としてはなかなか規制できないということが、いままであったんじゃないかと思うのです。
  342. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 先ほど申し上げましたように、やはり企業というものがどこに立地するかということの自由という原則との関係はむずかしいと思います。非常に特殊な産業を、事業法というものを規定して限定してきたのも今日それだと思うのですが、そういう意味におきまして、そうした原則と、それから今日における公害規制というものとの、ちょうど調整点じゃないかと私は感じているんですけれども、そういう意味において、しかもその届け出制度によって審査の期間が十分与えられておるのですから、目的を達することができる、こういうことになるのだろうというふうに私は考えております。
  343. 米原昶

    ○米原委員 もう一つの問題として、これも先ほど問題にもなりましたが、第十八条の「緊急時の措置」の問題ですね。ここにかなり詳しく緊急時の措置の条件が書かれておりますので、先ほどもそういう議論がありましたが、最後の「勧告することができる」という規定ですね。いままでのいろいろなこれに似た事態があった場合に、勧告で大体いったという話がありました。しかし、若干これとは事態が違うかもしれませんがね。勧告があまり簡単にはいかなかった例もなきにしもあらずだと思うのです。  いまも言いました田子の浦の問題ですが、規制もなかったところですから、企業側も全然法律には違反してないという意味で、初めはかなり強気だったと思うのです。あれだけ世論が起こって、たしか山中さんが参議院の公害対策委員会で、操業停止を検討する必要があるというような意見を述べられまして、新聞に出たと思うのですが、そういう意向は初めからあったと思うのですね。しかし、いままでの法律では、勧告以上のことはやはりできない。しかも、これは規定されている勧告じゃなくて——今度のは一応規定されておりますけれども、そういうこともあったせいでしょうが、住民のほうからも操業停止すべきだという要求が起こってきた。なかなか会社側は操短などする気なかったわけですね。九月七日になって、通産省のほうから多少説得されて、そういうことがあってやったと思うのです。あれほど住民が激高して大問題になっている。普通の場合だったら、勧告だけできくのが普通だと思うのですがね。そのときでもかなり時間かかったわけです。とにかく、住民の要望には沿わないぐらいおくれてしまったと、私は思っているんです。  やはりそういうことを考えてみますと、企業家にもいろいろな人がおりますから、一がいには言えません。勧告だけで済む場合もある。しかし勧告だけでは済まないということも起こり得ると思うのです。法律としては、やはり命令としておくほうが正しいのじゃないか。もちろん、一気に命令という形にいくのじゃなくて、法律としては命令としておいても、命令を出す以前に勧告的な措置をとることもいいと思うのですが、この法律では命令と、こういうふうにすべきじゃないか、そうしておいてこそ実効をあげることができるのじゃないか、こう思いますが、いかがでしょう。
  344. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま田子の浦の例が出ましたが、事態はだいぶ違うと思います。率直に言うと、いままでは野放しであったわけでありまして、そして排水基準環境基準もきまっておらなかった。県当局はあべこべに頭を低くして、パルプ工場に来てもらうことを要請しておった。そういうようなことで、そこへ急激にこの問題が社会問題化してきた、こういうような背景でありますから、今度は従来とものの考え方を逆にして、もうおおよそあらゆる水域においていわゆるシビルミニマムを設定する、おおよそ公共水域に対して汚水を流してはいけないのだ、こういうふうに原則が変わってきましたし、そしてそれに基づいて基準も設けられた、こういうことで、常時結局基準に縛られて、水質規制というものにならされてくる、こういう前提でありまして、そういう背景の中で緊急なとき、すなわち異常に渇水が起こったり、あるいは台風等のために廃液が移動したりなんか、天候上のことを中心とする異常な事態、こういうふうなものの処置を十八条できめておるわけでありますから、もう全体としての排水規制体制というものはできておる、こういう前提でもって考えてみますると、私はこれで十分目的を達すると実は思っております。  こうすると勧告を守られないこともあるという話でしたが、従来は条文にも勧告というものはなかったわけです。今度は初めて勧告という制度法律制度の上ではっきりできたわけであります。これは単なる助言でも何でもない、やはりこれだけの制度としてできたわけですから、これを守るモラルというものが出てくるわけであります。もちろん罰則はついておりませんけれども、そういうことは言えると思います。実は、実態的には米原さんのお気持ちもわかるのですけれども、わ  れわれも、こういう程度のことでは、今日ではやはり法律のものの考え方としてはちょっとむずかしい、こういう議論もあったわけであります。もう少しデータを積み重ねませんと、たとえばどういう台風が来た、どういうような渇水が起こった、そのときに、どの程度の場合にどの程度範囲のものに対してどの程度排水量の減量を命ずることができるか、そういうような基準を明白にしないことには、直罰主義を導入した際でもありますので、今度は別の意味でもって問題が生ずる、こういうことで、罪刑法定主義的な考え方が一部あると思うのでありますが、そうしたことも手伝いまして、なかなか書くことがむずかしい、そういうこともありまして勧告ということに落ちついたわけでありますが、これは先ほども申し上げましたように、今度初めてこういう制度ができるということでありますし、十分この活用制度をすれば、事態の対処に対しては決して不十分ではない。将来、警報をしばしば発したり、それからこういう勧告が行なわれるというような事態を経験をしまして、データの積み重ねによりまして、法律に技術的にも書けるというようなところになりましたら、私、書けるようにしてもいいと思っているのですけれども、今日まだそういうところまでは残念ながら行っておらないということで、勧告によって十分対処し得るもの、こういうことも頭にあってこういう結論になったわけです。
  345. 米原昶

    ○米原委員 この法案でとにかく前進は前進だけれども、さっき申しました排水基準だけ——排水基準を破ったら罰せられるということも出ておりますけれども排水基準だけで実際の効果があげられるだろうかどうだろうか。量の問題を入れないのでは、やはり問題を起こすのじゃないかということが一つある。それと関連してこういう問題も考えているのです。  それからあと、先ほども議論になりましたから繰り返しませんが、私自身がもう一ぺん考えてもらいたいと思っているのは、先ほど出ました適用除外の問題です。電気事業法、鉱山保安法、この「措置をとるべきことを要請することができる」という点を、「要請」という形ではなくて、地方自治体の固有の権限としてこれを保障するようなやり方、しかし、国全体の方針とも矛盾しないような措置がとれるような表現に改めるほうが正しいのじゃないかということが一点。  それから、第十二条と第十三条の関係、これは先ほどずいぶん説明を聞いておりましたけれども、どうもはっきりしないので、十三条のほうの表現をもう少し厳密に考え直してもらったほうがいいのじゃないか。これだけだと、やはり何だかあいまいになっているような気がいたします。  そういう点がありますが、もう議論は繰り返しても同じことを繰り返すだけになりますから、私はきょうはこれだけにいたします。
  346. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 次回は、明九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十九分散会