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1970-12-05 第64回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会地方行政委員会法務委員会社会労働委員会農林水産委員会商工委員会運輸委員会建設委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月五日(土曜日)     午前十時八分開議  出席委員  産業公害対策特別委員会    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君       伊東 正義君    伊藤宗一郎君       木部 佳昭君    葉梨 信行君       浜田 幸一君    林  義郎君       松本 十郎君    森田重次郎君       土井たか子君    藤田 高敏君       古寺  宏君    西田 八郎君       米原  昶君  地方行政委員会    委員長 菅  太郎君    理事 大西 正男君 理事 古屋  亨君    理事 山口 鶴男君 理事 小濱 新次君    理事 岡沢 完治君       國場 幸昌君    高鳥  修君       中村 弘海君    永山 忠則君       安田 貴六君    山崎平八郎君       豊  永光君    土井たか子君       華山 親義君    山本弥之助君       門司  亮君    林  百郎君  法務委員会    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君       羽田野忠文君    松本 十郎君       黒田 寿男君    安井 吉典君       林  孝矩君    岡沢 完治君       青柳 盛雄君  社会労働委員会    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 小山 省二君    理事 粟山 ひで君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       中島源太郎君    別川悠紀夫君       松山千惠子君    箕輪  登君       向山 一人君    小林  進君       後藤 俊男君    島本 虎三君       藤田 高敏君    古寺  宏君       寒川 喜一君    西田 八郎君       寺前  巖君  農林水産委員会   委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事ッ林弥太郎君 理事 芳賀  貢君    理事 斎藤  実君       亀岡 高夫君    小山 長規君       坂村 吉正君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    中尾 栄一君       松野 幸泰君    田中 恒利君       千葉 七郎君    松沢 俊昭君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       二見 伸明君    合沢  栄君       津川 武一君  商工委員会   委員長 八田 貞義君    理事 鴨田 宗一君 理事 進藤 一馬君    理事 橋口  隆君 理事 中村 重光君    理事 近江巳記夫君       稲村 利幸君    始関 伊平君       中谷 鉄也君    岡本 富夫君       正木 良明君    松尾 信人君       米原  昶君  運輸委員会   委員長 福井  勇君    理事 徳安 實藏君 理事 箕輪  登君    理事 内藤 良平君 理事 和田 春生君       關谷 勝利君    古屋  亨君       楯 兼次郎君    田中 昭二君       宮井 泰良君    渡辺 武三君       田代 文久君  建設委員会    理事 大村 襄治君 理事 渡辺 栄一君    理事 阿部 昭吾君 理事 小川新一郎君      稻村左近四郎君    葉梨 信行君       古内 広雄君    森下 國雄君       山本 幸雄君  早稻田柳右エ門君       松浦 利尚君    新井 彬之君       北側 義一君    竹本 孫一君       浦井  洋君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君         運 輸 大 臣橋本登美三郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         警察庁交通局長 片岡  誠君         経済企画庁審議         官       西川  喬君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         科学技術庁長官         官房長     矢島 嗣郎君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵大臣官房審         議官      吉田太郎一君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部省初等中等         教育局長    宮地  茂君         厚生大臣官房国         立公園部長   中村 一成君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省環境衛生         局公害部長   曽根田郁夫君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         農林大臣官房技         術審議官    加賀山國雄君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省農地局長 岩本 道夫君         農林省畜産局長 増田  久君         農林水産技術会         議事務局長   立川  基君         林野庁長官   松本 守雄君         水産庁長官   大和田啓気君         通商産業省公害         保安局長    荘   清君         運輸大臣官房審         議官      見坊 力男君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         海上保安庁長官 手塚 良成君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省労働基準         局安全衛生部長 北川 俊夫君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         自治大臣官房長 岸   昌君  委員外出席者         議     員 細谷 治嘉君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号)  公害防止事業費事業者負担法案内閣提出第一  七号)  騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)  大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)  環境保全基本法案細谷治嘉君外七名提出、衆  法第一号)  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三号)  人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律案  (内閣提出第一九号)  廃棄物処理法案内閣提出第一五号)  自然公園法の一部を改正する法律案内閣提出  第二四号)  毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二五号)  農薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第二〇号)  農用地土壌汚染防止等に関する法律案(内  閣提出第二一号)  水質汚濁防止法案内閣提出第二二号)  海洋汚染防止法案内閣提出第一八号)、  下水道法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより産業公害対策特別委員会地方行政委員会法務委員会社会労働委員会農林水産委員会商工委員会運輸委員会建設委員会連合審査会を開会いたします。  内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案、及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案内閣提出道路交通法の一部を改正する法律案、人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律案廃棄物処理法案自然公園法の一部を改正する法律案毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案農薬取締法の一部を改正する法律案農用地土壌汚染防止等に関する法律案水質汚濁防止法案海洋汚染防止法案、及び下水道法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、質疑を続行いたします。  この際申し上げます。  質疑時間につきましては、関係委員長の協議により決定いたしました時間を厳守していただきますようお願いいたします。  なお、政府委員の方々に申し上げます。  答弁の際は、そのつど官職氏名を、何々省何々局長委員長に告げて発言の許可を求めていただきたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  3. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 きわめて短い時間でありますから、具体的な問題につきまして一、二お尋ねをいたしたいと思います。  地方団体が行なう公害防止事業地方財政に対する特別措置地方に対する権限委譲、これらの問題を中心お尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、山中長官お尋ねしたいと思うのですが、今回出ました公害関係法案は、重要な部分はいずれも政令委任をいたしております。すべての法律がそうです。従来、これらの政令にゆだねる法律案、こういうものの審議に際しましては、少なくとも法案審議中に政令の案を示してもらいたい、これは立法府としての当然の要求だと私は思うのです。この点に対する見解をまずお伺いをいたします。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 原則はそのとおりでございますし、そうあるべきであると思います。しかし、私も八月に就任いたしましてから現在提案の十四を組み立てるまでに、関係閣僚協その他の意思統一並びに各省庁のそれぞれの行政主管をいたしております根拠法等調整に心魂を傾けてやりましたので、具体的な政令等については、やはり今後の相談に待つということにいたしておる部分が多うございますことを、私自身も遺憾に思いますが、これらの政令については、いずれ引き続き行なわれます次の通常国会において明確に御答弁できるような作業を進めてまいりたいと思います。
  5. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 遺憾ですが、少なくとも通常国会中には、国会に対してその内容を示す、これはひとつ厳格にやっていただきたいと思います。  次に、これに関連してお尋ねしたいと思うのですが、いま日本は公害列島といわれています。この場合、公害原点はどこか、公害一号はどこかといえば、これは田中正造翁以来問題になりました足尾鉱毒の問題ということは明らかだと思います。今回土壌汚染防止法提案をされておりますけれども物質については政令にゆだねております。量についても政令にゆだねております。聞くところによると、カドミウム政令指定をする、しかし、銅、亜鉛砒素あるいは鉛、クローム、これらの物質につきましては、一年ないし二年検討してから逐次加えていく、こういう方針だといわれています。そうなりますと、銅については直ちに政令指定ということにならぬ。これでは私は、公害原点といわれ、公害一号といわれ、田中正造翁がその生涯をかけて戦った足尾鉱毒、これすらも直ちに問題が解決をされないということでは、国民は承知をせぬと思うのです。聞くところによりますと、銅を直ちに入れるかどうかという問題については部内でもいろいろ議論があったそうです。しかし、財界の圧力といいますか、銅をやるということになれば相当な経費がかかるということから、とりあえず直ちに銅は入れないという方針になったと聞いております。通産大臣おられますが、この点はどうなんですか。通産省が銅を入れるということについては疑義を示した、こう私は聞いておるのでありますが、真相はどうですか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とりあえずカドミウムが非常に健康に直ちに害がございますので、行政をまずそこから始められるということと承っております。御指摘のように、順次銅にも及ぶのであろうと思っておりますし、私どもそれに反対をしたとか、そうあっては困るということを申したことはございません。
  7. 山中貞則

    山中国務大臣 御指摘はごもっともでございますが、銅、亜鉛になりますと、これは減収ということを対象にした、それ自体をとらえて土壌汚染防止法事業を行なうということに因果関係がなろうかと思いますので、銅、亜鉛等についての減収基準のとり方に議論がございまして、それで一応見送っておりますが、これはいま作業を進めておる段階でございまして、きのう農林大臣答弁をいたしましたように、銅、亜鉛等は引き続き出てくるものと御了承いただきたいこと、並びに砒素等については、人命そのものに危険を及ぼすものでありますから、これは一律の別途のきびしい基準でもって定めていくということでございます。
  8. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とりあえずカドミ指定するというのですが、しかし、玄米に一PPM入っている地域対象とするということでありますと、畑地等は全然関係がない。また一PPM以上ということになれば、ごく限られた地域しか問題になりません。やはりそういうことではいかぬ。時間がありませんから私はこれ以上議論はいたしませんが、もっと人命尊重といいますか、公害追放といいますか、環境保全といいますか、そういう点から政令案をきめるにあたっては十分考慮をいただきたい。要請をいたしておきます。  さてそこで、この足尾鉱毒の問題でありますが、これにつきましては、二年ほど前に、経企庁を中心にいたしまして水質審議会等審議をいたしまして、一応鉱害対策事業計画を決定いたしております。治山治水、さらに客土事業等でありますけれども、その客土事業内容を見ますと、国が五〇%負担をする、地方団体が二五%負担をする、まあ減収だからというのでしょうが、受益者農民も二五%の負担をする、こういう案が現に示されています。今度事業者負担法提案をされ、土壌汚染防止法にやがて銅が入るということになれば、これもかかってくるでしょう。その場合、問題はこの受益者負担農民負担は一体どうなるかという問題です。少なくとも公害原点といわれ、公害一号といわれた足尾鉱毒問題、減収が問題だとはいうものの、いわば足尾銅山古河鉱業によってこの土壌汚染をされた、それの客土事業をするにあたって農民負担があるというようなことでは、私は絶対に許せぬと思うのです。この点、この事業者負担法、やがて将来かかるであろう土壌汚染防止法というものを想定した場合に、一体農民負担はどうなるのですか、ひとつ明確なお答えをいただきたいと思うのです。
  9. 山中貞則

    山中国務大臣 これは御主張のとおりでありまして、農民がみずから自分の田を汚染して、自分の収穫についての影響がマイナスになるような行為を行なったわけではありませんので、それらの事業を行なってももともとの状態に戻るだけでありますから、そういうことを私も念頭に置いております。実際上の配慮については、すべてについて国庫補助手直し等はいろいろ議論がありますけれども、やはりそれらの問題は、個々に検討いたしまする際に、災害等において農用地等に行なわれる補助率等念頭に置きながら、実際においては農民負担が最終的に生じないような措置を講ずるつもりでおります。
  10. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ひとつそれは明確に守っていただきたいと思うのです。そうでなければ、事業者負担法でなくて、これは農民負担法ということになりますよ、もし、かりにも農民負担があるとすれば。  この点は大蔵大臣もひとつ確認をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 その問題は、いま総務長官からお話がありましたように、前向きで検討いたします。
  12. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 十分でありませんが、時間がありますから、次へ進ませていただきましょう。  次は、権限委譲の問題であります。本来、私どもは、地方自治法の第二条によりまして、その地域住民の命と健康を守る、いわば環境権というものを考えておりますが、それを守っていく、その責任は地方自治体にある、特に基礎的自治体である市町村にこれはある、かように考えております。しかるに、今回の法律案を見ますと、国が持っております権限都道府県、場合によりましては政令都市も考えておるようでありますが、そういうところにいわば機関委任事務として権限委任をするというような傾向が非常に強いという点は、非常に遺憾に思っております。私たちは、少なくとも公害防止、監視、監督、そしてまた排出規制、これらの権限というものは、あくまでも地方自治法に従って地方自治団体固有事務である、かように考えておるわけであります。この点において政府見解とは違うわけでありますが、私どもの考え方はあくまでもそうあるべきだということをここで明らかにしておきたいと思います。  それで、悪臭防止法を見ますと、その権限の多くを市町村長にゆだねております。私は、他の法律についても同じような勇断があってしかるべきではなかったか、かように考えますが、ここでは時間がありませんから、その問題の議論は省略をしたいと思います。  ただ問題は、たとえば道交法の問題です。歩行者天国ということを美濃部知事が早くから提唱いたしまして努力をいたしました。しかし、現在交通規制権限警察国家公安委員会が握っております。したがいまして、警視総監が秦野さんから現在の総監にかわりまして、やっと警察のサイドからこれが実現をしたという経過をたどっております。今度の道交法では、何とか歩行者天国歩行者優先人命尊重、やがてはこれは公害防止にもつながるわけでありますが、そういう観点から歩行者天国を実現しようと思っても、都道府県知事には全く要請権もない。これはおかしいと思いませんか。なぜこれらの問題について今回道交法でうたわなかったんですか。国家公安委員長おられますから、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  13. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  いわゆる歩行者天国は、歩行者の安全の徹底を期するため、一定の道路における自動車通行を禁止するものでありますが、これを実施するにあたっては、当該道路交通における役割り周辺道路における交通の実態、迂回路の有無、他の交通に対する影響交通処理可能性等を総合的に勘案して行なう必要があります。したがって、この種の規制は、交通全般を一元的に管理し、交通規制について長年の経験と実績を有している公安委員会が行なうのが適当と考えております。
  14. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまのようなありきたりの御答弁ですけれども、しかし、せっかく公害防止、こういうことを大々的にうたって、公害防止の一環として道交法改正も出された。そして、この歩行者天国の問題は、単に公害防止のみならず、要するに人間尊重という立場から国民の多くの共感を得た仕事だと思うのですね。こういうことすら都道府県知事権限を認めていない、与えようとしないということは、私は、今回の道交法改正は全く国民の期待に相反するものだ、かようにいわざるを得ないと思うのです。  それではさらに伺いますけれども、とにかく総理府令厚生省令できめた以上の一酸化炭素が出たという場合に、当然都道府県知事はその状況を把握をして公安委員会要請をする。ところが今回の法律によれば、公安委員会は、必要と認めたときには交通規制交通制限もできる、こういう法律でありませんか。それから、そればかりではなくて、特によけいなものまでついているでしょう。通産局農政局陸運局、こういった国の出先機関意見を聞かなければならぬ、こういうことなのです。こういうことになれば、せっかく都道府県知事が、一酸化炭素が危険の状態になった、公安委員会要請する、陸運局さんどうですか、通産局さんどうですか、通産局に聞くということは、やはり財界の意向も聞くということだろうと思いますが、そういうものをいろいろ聞いているうちに、もうどんどん光化学スモッグが起きてきたというようなことになったんでは、これはもうおかしいじゃありませんか。なぜこの住民意思住民から要請——住民に結びついているのは、これは都道府県知事、あるいは地方公共団体の長ですよ。住民尊重という立場に立つならば、また自治体を尊重するという立場に立つならば、こういうばかな規定は必要ないと思うのだ。どうなんですか、このことは。
  15. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 「必要があると認めるときは」と規定をいたしておりますが、交通公害が発生した場合に、交通規制によってその防止をはかることは、公安委員会権限であると同時に責務でもありますので、当然前向きの姿勢で処理する方針でございます。しかし、公安委員会は、交通安全と円滑をはかることを含めて全体の交通の管理を行なっている機関でありますから、交通公害の発生を知ったときは、そのような立場から自主的に判断することは当然と考えております。なお、交通公害防止をはかるための交通規制がかえって他の地域交通公害を発生させることもあり得るので、必要性の判断、有効かつ適切な手段の選択については慎重を期したいと存じます。  また「政令で定める者の意見をきかなければならない。」とありますが、そのことについてお答え申し上げます。  交通公害防止をはかるため公安委員会が行なう規制のうち、自動車通行の禁止、制限は、その態様によっては広域にわたり道路交通に著しい影響を及ぼすことが考えられます。このような場合には、社会生活経済生活上各般にわたり大きな影響をもたらすことが予想されますので、特に慎重を期する趣旨から都道府県知事等意見を徴することとしたのでございます。
  16. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういう官僚が書いたのを読みけ上げるような答弁ではたいへん私ども残念ですれども、しかし国家公安委員長、あれじゃないですか、あなたは大学問題等についてはきわめて蛮勇をふるわれた。ところが三億円事件の犯人すらまだつかまっていない。公害についてもきわめて消極的な法律を出す。あなたは大学には強いけれども三億円のどろぼうには弱い。それからまた公害には弱い。そんなことでは国民のための警察とは言えませんよ。これ以上は議論になりますからやめておきますが、そういう国家公安委員会の態度というものは国民不在であるということだけ申し上げておきたいと思います。  次に地方団体への財政措置の問題についてお尋ねしたいと思いますが、その前に大蔵大臣お尋ねいたします。  昨日わが党の小林委員お尋ねをいたしました際だったと思いますが、現在のような経済の高度成長を続けていったのでは、公害はますます激化するだろう。一年間の経済成長を一〇%程度にとどめれば五年間には六〇%程度の経済の伸びになる、その程度が適当ではないだろうか、こういう趣旨のことを御答弁をされました。ところが、そうしますと大臣、本年の五月一日に閣議決定いたしました新経済社会発展計画がございますが、これによりますと、一年間の経済成長は名目で一四・五%、昭和五十年、五年後の国民総生産は百四十二兆円ということを想定しておられるようであります。そうしますと、昨日大臣が御答弁したように成長一〇%で五年間に六〇%の経済成長ということになれば、それが適当だという御判断をされるとするならば、当然この新経済社会発展計画は、これは私は訂正をすべきだと思うのです。この点はいかがでございますか。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ私の政治家としての勘ですね。勘を申し上げまして、まあ大体一〇%、これは一〇というきっちりとした数字にこだわっているわけじゃないのです。新経済社会発展計画では、それを一〇・六、こういうふうにいっておりますが、まあとにかく一〇%がらみ、こういうことを申し上げておるので、何もほんとうに数字としての一〇ということじゃないのです。そういうふうに御了承願います。私の言っているのと同じ趣旨でございます。
  18. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、少なくとも国民総生産を百四十二兆円と想定しているということになれば、これは計算上名目の成長が一四・七でなければそこへ到達しないでしょう。ですから、少なくとも大蔵大臣は日本の経済財政については中心的な立場にある方なんですから、それが勘として一〇%程度でどうだろうかということならば、しかもそれが公害の問題でいろいろ議論された際に、やはり経済も伸ばす、公害防止するということは、私は実質的には不可能だと思うのです。ある程度公害防止を徹底的にやるならば、経済の成長も、これはある程度押えなければならぬ。ある程度経済成長率がスローダウンするのもやむを得ぬというのが私は当然だと思うのです。私はそういう意味で大臣が言われたと思うのですが、そういう趣旨を貫くとすれば、私は当然これは再検討すべきじゃないかと思います。山中長官どうですか。公害担当大臣として、あなたも閣議決定に参画したわけでしょうが、当然これはある程度修正をすることを考えたほうがよろしいのじゃないですか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 総務長官お答えをする前に、私からなお補足しますが、その新経済社会発展計画が策定せられた前後ですね、この経済成長の実勢は一三%ないし一四%、そのくらいの勢いのときなんです。これは少しとにかく——少しじゃない、非常に高過ぎる。これは何とかして抑制する必要がある。抑制する必要はどういうことかというと、昨日も申し上げましたような公害を含めて、いろいろな問題がある、こういうことなんです。それを私は、さあそれでは抑制してどの辺まで持っていくかということになりますると、一〇%、その辺を当面目標にすべきじゃないか、そういうふうに考えておったんです。今日もそうなんです。それを具体的にその計画においては一〇・六だ、こういうふうに表示しておりますので、政治家としての大きな勘といたしまして一〇%がらみと申し上げているのとそう大きな開きはありません。
  20. 加藤清二

    加藤委員長 長官いいですか。
  21. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 もう一つ言ってから聞きましょう。実質は一〇・六でしょう。しかし、少なくともある程度押えなければならぬ、一〇%がらみということは、実質で一〇%がらみということでなければ、これは押えたことにはならぬでしょう。この計画では名目では一四・七なんですから。それをある程度押えなければいかぬということではないのですか。私はそういう意味でやはり大臣お答えになったんだろうと思うのです。また山中長官としてもそういうつもりでやはりこれについては——数字のこまかい点はいいですよ、ある程度再検討しなければいかぬというくらいの気持ちは公害担当大臣としてあってしかるべきだと思うのですよ。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 その論議はもちろん実質の話でございます。実質一〇・六というのが新経済社会発展計画の五年間の平均目標である、こう言うのです。私は実質一〇%がらみとこれを申し上げておる、かように御了承願います。
  23. 山中貞則

    山中国務大臣 公害防止の投資費用その他は直接収益に貢献しない分野に対する投資でありますから、結果的に景気の伸びに影響があることは当然でありますが、それらの問題に関連する計画の変更その他の問題については大蔵大臣の御答弁どおりでございます。
  24. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今回政府は、地方団体への財政措置については何らの法案を提案されませんでした。本会議等でもこの問題は議論をされました。各大臣からお答えがあったのでありますけれども、しかしそれを聞いておりますと、公害基本法の十九条によって著しく公害の発生した地域、この地域に対しては公害防止計画を立てる、総理大臣が承認をする、これに対して二十条で当然それに対する地方団体の財政援助というものをお考えになっておるようであります。山中長官は、これは次の通常国会提案をする、秋田自治大臣もそのように答えております。ところが問題はこれだけではないでしょう。いま問題になっている千葉あるいは四日市あるいは将来東京、大阪、こういうような地域を想定しておるわけでありますけれども、これ以外の地域で各地に公害が発生しているではありませんか。こういった公害防止事業に対して、国が自治体に対して財政援助をするということでなければ、これは実質的には公害防止事業というものは成果があがっていきません。したがいまして、わが党はこれを両方くるめまして新しい環境保全法三十二条に基づく財政援助、この法律提案いたしておるわけでありますが、部分的に局限しないで、全国各地で発生している公害、これに対する財政援助というものはなぜお考えになりませんか。これも考えて次の通常国会にお出しになるのか、この点をひとつ明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  25. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 当面は基本法第十九条の該当地域に対する財政上の特別措置を講じてまいりたいと考えております。なお、おっしゃったその他の地域につきましてはさらに検討をしてまいりたいと思いますが、次の通常国会に考えておりますのは、さきに申しました十九条の該当地域についての措置を当面は考えてみたい、こう考えております。
  26. 山中貞則

    山中国務大臣 自治大臣がお話しになりましたとおり、これは来年の予算編成の際に方向をつけて、立法を要する形であればそれを提出したいということは私申しました。それぞれ事業によってあるいは地域によっていろいろ違いがございますので、一律の原則的な特例法ができるかどうかについては、今後さらに精力的な作業を詰めていきたいと考えます。(発言する者あり)
  27. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの答弁大変不満足。与党の側もやや不満のようなことを言っておられるようですが、(発言する者あり)十九条、二十条ですよ。十九条、二十条に限定したものだけしか次の通常国会には考えていない、これではだめじゃありませんか。当然それ以外の地域、これに対する、地方団体に対する財源手当を考えなければ、これは全く公害対策とは言えませんよ。今度十五の法律を出したようです。昔の歌に「七重八重花は咲けども山吹のみの一つだになきぞ悲しき」こういう歌がある。財源手当をしなければ、幾ら十五の法案を出したところがこれは山吹と同じじゃないですか。山中長官はそれでは山吹長官だ。なぜせめて十九条、二十条による財源手当ぐらい今度の臨時国会に出さなかったのですか。それではそう言われたってしょうがないでしょう。いま一度御答弁をいただきます。
  28. 山中貞則

    山中国務大臣 私の本会議等で申しましたのは、十九条の公害防止計画に伴うものだけではないんです。その他の一連の関連法案を今回出しまして、そうして公害防止事業が行なわれることに伴って具体的にはまず公害防止事業費事業者負担法案による事業者が負担した残りの国、地方自治体負担についても国並びに地方自治体において応分の特例の措置ができるかどうかを検討したい、こういうことをはっきり申し上げておるわけでございますから、その山吹大臣とは違うということでございます。
  29. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 次の通常国会にその二十三条に基づくところの法案も出るか出ないか、山吹であるかないか、野党はひとつ国民とともに監視をしたいと思います。  もう時間がたいへんありませんから、一つだけ聞いておきます。最近の株主総会のあり方の問題です。特に公害企業等の株主総会、五分だとか十五分だとか三十五分で終わっているじゃありませんか。私はこういうことはたいへん遺憾だと思います。もちろん商法等で株主総会については規定があります。しかし公害がこれだけ問題になり、国民の世論が高まっているときに、私は通産大臣また法務大臣として、株主総会のあり方については少なくとも行政指導等をやるべきだと思うのです。この御答弁をお伺いしまして質問を終わっておきたいと思います。
  30. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのお話につきまして、商法に規定のあることは御存じのとおりでありまして、総会の決議が法令または定款に違反するときは無効である。また決議の方法等が法令や定款に違反して、あるいはまた著しく不公正であるときは、株主または取締役の提起する訴えにより、裁判をもって取り消されることがある、こういうふうになっております。したがって、特定の株主総会の決議が有効か無効かは、このような無効または取り消しの事由が当該の決議またはその方法等について存在するかいなかによってきまるのでありまして、具体的な判断を必要とするのであります。チッソ株式会社の株主総会のことにつきましては、いまお話がありましたが、われわれ法務省としてはこれを調査する立場にない、かように思うのでありまして、株主総会のあり方そのことにつきましては、私個人としてはそれぞれ意見を持っておりますが、今日の立場においてはそれは申し上げないことにいたします。  また、行政指導等のことにつきましては通産大臣からお答えがあると思います。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨日も企業の公害管理体制についてお尋ねもございましたけれども、やはり企業というものが公害に対してもっと関心を持たなければならない。企業の意思を決定する機関であるところの株主総会においてもしかりと考えます。
  32. 加藤清二

    加藤委員長 次は畑和君。
  33. 畑和

    ○畑委員 私は無過失責任の問題と公害処罰法案の問題と二つに限定いたしまして、主として法務大臣に対して質問をいたしたいと思います。この問題につきましては昨日、同僚の議員からいろいろこまかい質問がございまして、問題点は大体浮き彫りにされたと私は思っております。したがいまして、私はこの問題について詳しくまた同じような質問をする考えはございません。ただ、若干詰めが足りないところもございましたので、そうした問題について重点的に質問をし、そのほかに、昨日の質問になかった点についてこの両問題について質問を、限られた三十分でありますが、いたしたいと思います。したがいまして、答弁されるほうにおきましても、ぜひとも人権侵害にならないように短く答弁をしてもらいたい、かように前置きいたします。  まず無過失賠償責任の問題でございますけれども、御承知のように、いまの民法七百九条におきましては、「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」こういうように規定しておるわけであります。この規定は、刑法における人権を守る立場からする罪刑法定主義というような行き方と呼応した民法の規定でございまして、故意、過失がなければ損害も賠償する責めに任じなくてもよろしいのだ、こういう規定であります。これは封建制度から抜け出してきた近代初期においては相当効果をあげたと思います。要するに、被害者の救済について加害者との公平、こういった問題を中心として立法せられておるわけでありまして、その当時におきましてはいまのようなデリケートな薬品もない、また現在のような精密な複雑な機械もなかった時代でありますから、したがって、過失なくして損害が生ずるというような場合はきわめて少なかったわけです。したがって、この七百九条はそれ自体相当大きく作用して、これによって事業活動も相当盛んだった、こういうメリットがあったわけでありますけれども、最近、先ほど申し上げましたような技術の進歩等に伴いましてデリケートな薬品ができ、あるいはまた複雑な機械ができることによって、過失がなくともだれかが損害を受ける、こういうような事態が多くなった。特に事業活動に伴ってしかりであります。そういう場合に、従来の考え方では、事業者という強大な力に対する一般の公衆という弱い立場の者が七百九条によってかえって不公平な扱いを受ける、本来は公平であるべき精神が逆に不公平である、こういう結果になるということで、最近無過失責任ということが叫ばれてまいったものであります。そこで、いろいろいまの法規の中におきましても、何個かの法規の中には無過失責任を日本でもきめておる例がございます。われわれはこうして公害が非常にひどくなった状態においては、公害による損害、これをやはり無過失の場合にも賠償させなければならぬ、こういうふうに考えておるものであります。  ところで、昨日、私、法務大臣の御答弁をお聞きいたしておりましたところが、法務大臣の考えは、なぜわれわれが無過失責任賠償法を制定しないか、立法しないかということに対する答弁といたしまして、それはたとえば鉱業法とかあるいは独禁法とか原子力損害の賠償に関する法律とか、それからさらに労働基準法、国家賠償法、水洗炭業法、こういった各個別の従来の法律あるいは新しく法律をつくって、それに無過失賠償責任を規定するということでいくべきであって、公害について広範に無過失責任を規定するということは考えていない、こういうような言い方だったというふうに私は思っておるわけです。  そこでお尋ねいたしますが、一体法務省は、いままでこれだけの世論があり、しかもこの間総理大臣は検討中だということで決して立法をすると確定的に言ったことはないと言われて言いのがれをされた、あるいはまた、さらに公害担当大臣の山中さんも通常国会には提案をする運びにしたいと思うというようなことを言われたことがあるように記憶いたしておりますけれども、ともかくもしこういう規定をつくるとすれば法務大臣の担当だと私は思います。各法規に規定するのだとすれば、各大臣が担当であり、それに法務大臣が相談を受けるということが、私は立法の経過だと思うのでありますが、少なくともこれだけの世論があり、とにかくそういった検討中といい、あるいは来年、今度の国会提案しようと思う、こう言うからには、その担当大臣の法務大臣が、ただ、いま申しましたような答弁では済まされないと思うのですが、あなたのほうでは民事局がある、民事局で検討を命じておるのですが、最初に、その点どういうふうに研究をしてどこが障害なのか、ひとつ簡単におっしゃっていただきたい。
  34. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまの畑委員のお話には私も傾聴すべきものがある、かように考えておりまするが、何といたしましても、公害というようなものを横断的に一括して規定することは私はこの際適当でない。すなわち公害には種々の態様があり、また種々の程度の差があり、また過失についても証明のできるものあるいは困難なものあるいは不可能なものといろいろな段階があるのでありまするから、今日の段階においては、私は横断的な規定をすることは適当でない。すなわち縦の関係において考えることが適当であろう。これは私は将来ずっと先のことを申しておるのではありません。いまの段階においては私が申し上げたような方法によるべきではないか。したがって私は各省庁、所管庁に対しまして、各公害の態様について無過失責任を認める必要があるかどうかということを検討して、ひとつ法務省と一緒に検討しましょう。私どもも従来たとえば横のそういう関係ができないか、こういうことをいろいろ検討したのであるが、いまのところはいま私が申し上げたような結論になっておる、こういうことであります。一体無過失責任などということを初めから包括的に規定するということは、その事業が高度の危険を発生させることが初めから当然予想できる、こういうような場合には重く考えなければなりませんが、すべての企業が必ずしもそういうことは言えない。こういうようなことでいまのような考えになっておる、さようにお答え申し上げておきます。
  35. 畑和

    ○畑委員 私はその法務大臣の考えが間違っておると思うのです。私はむしろ縦割りの規制もする、縦割りの無過失責任も規定する、同時にまた、公害に限っては横割りをやらなければ、縦横で規制しなければ、あるいは被害者を救済しなければいけないと思うのです。それを、法務大臣は縦のほうでやる。しかし全部縦で網羅できますか、全部網羅できるはずはない。やはり公害に限っては横のほうで無過失責任を課する必要がある。われわれだって何でもかんでも公害を全部横割りで、どんな程度の低いものでもやろうというのではありません。われわれが提案している無過失損害賠償についての法律案をひとつごらんください。私ら何回もかからずにやりましたよ。あなた方は長いことかかって、これでもあれでも、これでもあれでもというようなことで、とうとういままで何もできなかった、こういうことだと私は思うのであります。やはりその点につきましては、横と縦で両方でやっていく、しかも全部網羅するのじゃなくてわれわれもしぼりをかけております。われわれの案も、人間の健康に害のある場合、それからさらにそれが口にのぼるような米だとかあるいは魚介類だとかそういうものを生産する業者の権利、漁業権あるいは農業権、そういったものだけに限っての財産権について無過失賠償責任を規定する、こういう考えでわれわれはしぼっているのです。しかしそういう横のワクのはめ方がなければのがれてしまうと思うのです。それでは私、聞きますが、厚生大臣あるいはほかの大臣、いろいろそこに並んでおる。その大臣おのおのそういうことでやっていますか、どうですか。まずひとつ厚生大臣にお聞きしたい。法務大臣の言われるように、そういう法規を考えていますか。法務大臣は、みんな各大臣にまかせてあると言う。各大臣はやらない。またやろうとしたってそうなかなかこまかくやれっこない。そしたら結局、公害に対する賠償はえらいむずかしくなるのじゃないですか。
  36. 山中貞則

    山中国務大臣 各省の行政法規についても、たとえば今回も毒物劇物取締法等については、事柄が事柄でありますから、そういうものが盛り込めないかというような点等についても十分過程で検討はいたしております。しかし現在政府全体といたしましては、まず公害に関して現実に行なわれている訴訟の実態等に顧みましても、訴えておる人たちが大体不特定多数の財産も資力も調査能力も弱い人たちであり、被害者である、そういう実態に目をつぶることはできないと思う。その際にはやはり挙証責任の転換、すなわち故意または過失であったことを訴えた被害者の人たちが証明するたてまえを、せめて訴えられた者がみずからに故意または過失がなかったということの転換の挙証をなす責任を負う、そういうことができなければそれは加害者であることが確定されるというようなたてまえだけは何とか確立したいものだと考えまして、そういうことで努力をしているところでございます。
  37. 畑和

    ○畑委員 いま山中さんがおっしゃったこと、結局無過失責任よりもさらにその前に挙証責任の転換という形でやりたい、こういうようなお考えだと思う。これは大体たいした違いはございませんが、挙証責任の転換というのは故意、過失の場合とそのほかに因果関係、そういったものいろいろあります。それは民事訴訟的な問題であります。私が言っているのは民法の七百九条の例外として、公害に関してだけは無過失責任の賠償の規定が必要だ。挙証責任の転換はもちろん必要です。その前に無過失責任についての賠償をとらせるということが必要だ、こう言うのです。厚生大臣、何かそういう期待するあれはありますか。
  38. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私のほうは、公害の発生をできるだけ少なくして国民の健康を守りたい。万一被害者が出たならば、その被害者の立場に立ちたいということでありますから、無過失責任の方向は、私自身も前から非常に方向を考えております。しかるところ、総理大臣みずからが九月の宇都宮の一日内閣でも、これについては検討を進めるということでございますので、私はそれで非常に満足をいたしております。ただその方法につきましては、これは法務省もあり、また公害担当大臣もございますので、一日も早く検討の上、何らかの結果を得ていただきたい、そういう督励的立場にあります。
  39. 畑和

    ○畑委員 厚生大臣にだけ聞いてもいま程度の答弁しかできない。総理のほうに期待しているだけで、さっぱりどこの法規でどう無過失を入れるかということなんか考えちゃいないじゃないですか。したがって、私は時間がとれるからほかの大臣には聞かなくても、厚生大臣がその程度じゃもうわかっている。ほかの大臣、さっぱりそういうことは研究してない。法務大臣だけはそっちの各大臣でやってくれ、こう言っている。ちっとも問題を究明しようとしない。こういう状態で、通産大臣、もちろん答えを聞かなくてもわかっていると思う。そういう点で私は非常に政府の態度はけしからぬと思っております。一体それじゃ無過失賠償責任法は出さぬというのか、出すというのか、その点法務大臣に聞きたい。出すとすればいつ出すのか、それをはっきり申してください、簡単でよろしい。
  40. 小林武治

    小林国務大臣 私はいまの段階の話を申し上げているので、いまは縦割りのことをひとつ各省とも——だからしてこの縦割りが多くなればやがて横の問題も考えられるということ、こういうことになっている。初めからあなたと方法論が違う。初めから横からみなかぶせろと——一つ一つやっていって、多くなれば横になる。そういうことでありまして、それを検討しておる。これは畑さんもよくおわかりのように長い間の無過失責任——これは時間が多少かかるということはもうよくおわかりのことと思うのでありますが、そういうことで、私は最近閣議においても発言をしております。各公害担当大臣においてはこの問題を真剣に取り上げてやってもらいたい、こういうことを申しております。
  41. 畑和

    ○畑委員 結局これを要するに検討中ということになるんだと思います。したがって、政府には無過失責任賠償法をつくろうという考えはない。したがって、われわれは今度の国会にわれわれ三党で共同提案でこの法案をつくってありますから、ひとつ自民党の方も十分研究していただいて、修正すべき点があったら修正にもわれわれ応じます。ひとつぜひ国民のために、泣いている被害者のために、強大な企業のもとに泣いておる被害者を救済するために、ぜひともひとつそういう方向でやっていただきたいと思います。  次に、私は公害処罰法の問題について申したいのですが、きのうだいぶこまかくもうほかの議員から詰めました。法務大臣それから法制局長官、それから法務省の刑事局長、この三者おのおのいろんなニュアンスがあった。そして法務大臣は、「おそれ」を削っても実害の前にとにかく危険罪として処罰をするのだからたいした違いはない、こういうようなこと、法制局長官は、確かに文字上の違いもあり、それだけの違いもある、しかしながら「おそれ」という概念はなかなか把握しにくいから実際にはたいした違いはないと思う、こういうことであります。それから刑事局長はともかく三つばかりの例を段階的に述べて、それでこの場合にはプランクトンが食べたという段階でいままでだったら処罰はできたが、そのあとのことじゃ今度の法案ではそれじゃできない、そのあとの段階にならぬとできない、こういうような考えであったように思います。ともかく政府自体がいろいろ意見そのものが食い違っておることをまざまざと見せつけられたような感じがするのであります。いずれにいたしましても、私は財界の圧力あるいは自民党の公害対策特別委員会において、ともかく非常な議論が沸騰した。法務部会などはそれでよろしいと言ったそうだ。ところが、公害対策特別委員会のほうで文句が出て、それで結局法務大臣が後退をした、こういうことだと思うのです。そこで法務大臣、これを後退と考えられるかどうか、そう思うかどうか、これだけ言ってください。こまかな点は要らぬ。同じなんだというのか、あるいは後退したのだというのか、法務省原案といまの政府案とは。どうですか、その点だけ。
  42. 小林武治

    小林国務大臣 私は、ああいう最後の段階において、立案者としての私が自分の責任においてあれを直した、こういうことでございまして、あれでこの法律そのものについての効果というものは全然減殺されておらぬ、こういうふうに考えております。
  43. 畑和

    ○畑委員 まことに官僚的な言いのがれ的な答弁だと私は思います。これではこのことを聞いておられる国民が納得しないと私は思う。時間がかかるからその問題についてはそれだけにとどめます。  その次に私質問いたしたいことは、今度の政府案の公害罪が、いま言ったような「おそれ」を除いたということ自体が、すでに大きな骨抜きだと私は思っています、法律的に見て。私も弁護士ですが、法律家の立場としても、明らかに大きな点について後退を示したと思っております。それでなくても、そのほかの規定につきましても、相当、ざる法である、こういうような批判があります。学者もそういうことを言うておる人も相当いるのでありますが、ともかくないよりはましだ、こういった程度の法案じゃないかと私も思っておるわけです。あるほうがいいことはいい。しかし、どうもいろんな方面においてざる法的な傾向がある。いわんや先ほどの「おそれ」を除くことにおいておやです。  そこで私は、ざる法だと思われる点を二、三申し上げてみたいと思うのであります。  第一の問題は、公害が本質内に企業活動によるものであるにもかかわらず、事実行為者がまず把握され、そして処罰をされ、付随的に法人等の事業者自体が罰金刑になる、こういう規定でございまして、これは法人の犯罪能力、こういったような問題と、いろいろ法技術的な難点、困難さがあることはわかっておりますが、もう少し何か考えたらいいのじゃないかと私は思う。道路交通法で運行管理者が処罰されますね、あれと同じように、法人が罰金を払うというのじゃ最高五百万にすぎないのですから、大企業についてはたいしたことはないのです。だから、それよりも、やはりそのことを統括している者とかなんとかいう者が、別に独立してやはり処罰をされるというような規定がなければざる法ではないかと思います。この点が一点。  それからもう一つ私がそう思っておりますのは、因果関係の立証の困難性を解決するために推定規定が御承知のように設けられておる。これは一応捜査あるいは起訴、それから裁判ということについては確かに私はやりよいと思います。やりよいと思いまするけれども、その条件がきわめて限定的であり、かつ形式的であるということにおいて、やはりなかなかそれがそのまま作用しないことが多いのじゃないか。たとえば種類の違った異種複合の場合の公害については、この推定の規定は働かないと思います。さらに、同種の複合公害におきましても、たとえば煙突をいままで四本立てておった。ところがもう一つ企業が建った。いままで四本の場合には、四日市の場合のように、そんなに被害は出なかった。ところが、五本目になったら、五つ目の工場が建ったら、結局量的に多くなって、それが同じ種類の複合公害として公害結果を発生する。同種複合の場合、こういった場合にも若干問題点があるのじゃないか。こういう点で、第二にざる法であるといえるのじゃないか、こう思います。  それから第三番目には、公害というものは長期にかつ継続的に排出される結果でありまするから、企業内に担当者がしょっちゅうかわることがあり得る。事実行為者が交代あるいは転勤ということが予想されるわけでありますが、そうなった場合に、従来の共犯理論をどのように適用することができるか、非常に私は問題だと思っております。  それから第四の問題といたしまして、企業が排出基準を守っておりさえすれば免責をされるというような解釈があると聞いております。そういったような明文を設けろという財界の圧力があったそうでありますが、しかし実際は、基準さえ守っていればそういうことになりませんから御安心くださいということで、それで解釈でこれはいく、こういうようになっている由でありますが、そうだとすれば、そういうところが違法性阻却をされればますますざる法になる可能性がないか、こういうことであります。そういうことを考えますると、全く見せかけだけで、政府のほうはこれだけ公害罪をやりました、規定しました、世界で類のない、世界に冠たるものです、こういったようなことを総理もこの間言われたけれども、また大臣も言われたと思いますが、私は、これは見せかけだけで、政府はこうやっているのだというだけで、実効は期待してない。その証拠には、法務大臣、自民党の了解を取りつけるについて、これはどうせざる法なんですから心配は要りませんというようなことを言って説得して歩いたという話も新聞に出ておりますが、それが事実とすれば、やはりそれを裏づけるものじゃないか、こういうような感じがいたします。この点について政府の考えをひとつまとめて大臣に答弁願いたい。
  44. 小林武治

    小林国務大臣 私は前提として申し上げまするが、こういう法律が要るほど公害の問題が深刻であった、したがってこういう法案を用意しようと思ったのはことしの四月でございます。その間にいろいろ検討してこういう成案をまとめたということでありまして、むろん不完全であり、場合によればいま批評のような点は私は欠陥はある、こういうことはもう初めから認めております。しかし、この法案ほど——こんな法案はけしからぬ、きびし過ぎる、こういう批評が一方からあり、また一方からは、こんなものは意味がないという批評もある、こういうことで、この法案ほど両極端な批判のあるものは私はそうないと思うのでありまして、私どもも、いまおっしゃるような、あるいは管理責任者を置けとか、あるいは複合はどうだとか、いまおっしゃったような欠陥はある程度ございます。しかし、こういうことは、いまのような成案の前提からいたしまして、私どもは一ぺんにこれを整備しようというのは無理だ、何もこれが完成した法律とは思わないのでありまして、これからまた皆さんとも相談して、漸次これを改正もし、充実もし、よいものにしていきたい、かような考え方を持っておりますから、その点をひとつ御了承願いたい。いまおっしゃったようなことについては、ある程度の欠陥があることは私どももよく存じております。
  45. 畑和

    ○畑委員 法務大臣が前向きにいろいろやられた点、その点は評価しないでもないわけです。しかし、相当いろいろ欠陥があると私は思うのです。そこで、われわれ三党のほうでもいろいろ検討いたしまして、先ほど来問題になっておりまする「おそれ」を削ったのを、逆にまたもとへ戻す、これは法務大臣自身は、考え方はおそらく個人としては賛成だと言われるかもしれぬ、自分で出したのですからね。そうだと思うのですよ。それを加えること。  それから、さらにまた食品公害が落ちていますね。カネミの事件だとか、あるいはサリドマイド事件だとか、あるいは森永ミルクの事件だとか、こういったような問題。食料品あるいは薬品、こういった公害についての処罰規定が私は落ちておると思うのです。これは政府案の範疇には入らぬということだと思いますが、さらにそれと別に追加をして——これは非常に問題になっている点が多いのですから、したがってこれはこれとしてさらに追加をして、やはり公害罪としての一つの範疇として処罰規定に入れることが必要だというふうに考えまして、われわれは修正案をこの二点について用意をいたしております。われわれも非常に遠慮しておりまして、そんな間口を広げようといううぬぼれた考えはない。したがって真剣に——国民が期待しているのですから、政府も、また自民党の諸君も、ぜひとも前向きにひとつ検討してもらって、りっぱなものをつくりたい、かように考えているわけです。  時間も参ったようでありますから、私の質問はこれだけにいたしまして、あとは委員会でこまかい質問をさしていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  46. 加藤清二

    加藤委員長 次は、大橋敏雄君。
  47. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、廃棄物処理法案中心といたしまして若干質問いたします。  いまや第二の公害としてクローズアップされつつある都市産業廃棄物でありますけれども、この日本の廃棄物、いわゆるごみの一日の排出量は百万トンも排出される。この量のみでなく、その質の内容に至っても、化学産業の進展によりまして多種多様化しております。それの及ぼす被害のほうも多様化しているわけでございますが、人間の生活環境を正常かつ健康的に維持するためには、いかなる廃棄物もすみやかにその生活圏から除去、処分されなければなりません。ごみの発生から処分に至る一連の移動というものは、きわめて重要な問題であります。つまり、ごみの発生から収集、運搬、そして最終処分、この一連の作業というものは、どこをとってみても問題だらけでございます。  今回提出されました廃棄物処理法案は、他の規制法案と違いまして、その名が示すように処理法案となっております。つまり、現在ごみに対する対策というものは、その土台が整っていない、だから、せめてその処理体制を整備をする、このようなことで出されたんだろうと思いますが、法案の中身を見てまいりますと、従来のごみの範囲を拡大して、産業廃棄物、それからいままでの家庭から出ております一般廃棄物、このようにとらえて、また事業者と国と地方公共団体、それから住民、これが一体となって適正に広域的に処理をしていこう、このような法案であるように思います。また、その四者が、それぞれに義務を負わせられているわけでございますが、一見けっこうづくめのように見えるこの法案でございますけれども内容を検討してまいりますと、大きな問題が残されております。  本日は時間に制限がございますので、逐条的な審議は、社会労働委員会に譲るといたしまして、私は、きょうは全国各地で問題になっておりますプラスチック製品の廃棄処分の問題に触れてみたいと思います。  ポリエチレン、ベークライトあるいは塩化ビニールの容器など、最近家庭から排出されるごみの中に、その処分に非常に問題の多いプラスチックのたぐいが激増しているわけでございます。このプラスチックというのは、薬品には強く、ひび割れもせず、また比重も小さいということから、金属あるいは木材にない特性があるということで、食器からあるいは容器、箱詰めの緩衝材、包装紙や袋、またフィルム、おもちゃまで家庭に深く入っていっております。消費者の立場から見ると、非常に便利なように思われる向きもあるわけでございますが、これが一たんごみという立場になりますと非常にやっかいなものでございます。つまり、このプラスチックというものは、燃やせば塩化水素ガスが発生します。非常に有毒でございます。また同時に、ものすごい、異常な高熱を発するわけでございまして、いまごみ焼却炉の中の金属性パイプあるいは鉄筋など、あるいはれんがなどが次々といためられ、腐食したり詰まったりして、ほんとうに次から次と焼却炉がこわされていっている始末であります。いま全国に市町村のごみ焼却炉は二千四十六カ所ございます。ことしも百七十数カ所できることになっておりますけれども、できる反面、次から次とこの焼却炉がだめになっていっている現状であります。  現在、一般廃棄物、いわゆる家庭から出るごみの量は、一日に六万二千トンでございます。そのうちに焼却処理ができているのはわずかに二万二千九百五十九トンということであります。約三万トンですね。一般家庭から出るごみというものは、ほとんどが焼却できる内容のものでございますけれども、施設が少ない、つまりごみ焼却炉が少ないために、それを消化する能力がないということで残されているわけです。ましてや、いまのようなプラスチック類等ができて、このように焼却炉がだめになっていくということになれば、これは重大な問題であります。まあ市町村の最大の悩みといっても過言ではないでしょう。これに対して厚生省としては一体どのような対策を立てようとなさっているのか、まずお伺いいたします。
  48. 内田常雄

    ○内田国務大臣 今日ごみといわれますものの中身や考え方はすっかり変わりまして、プラスチック廃棄物等が非常に大きな課題になってまいりましたことは、大橋委員指摘のとおりでございますが、いままでの清掃法の法体系、仕組みというものが、もっぱらそういうものを予想しない家庭排出のごみあるいは屎尿処理というようなことだけでございましたので、この際、大橋さんが御指摘なさるようなことを全部法体系の中に取り入れまして、産業廃棄物についての処理の体系、あるいは製造者の責任というようなことまで、あるいはまたさらに国なり都道府県というようなものもこれの処理に協力する、あるいは場合によっては都道府県等は、みずから従来にないような産業廃棄物の処理施設をつくっていただく、それを国がまた助成するというような仕組みまでも取り入れたのはそのためでございます。  私どもは、法律だけでこの問題が解決するとは思いませんので、今度の御改正を願う法体系の運用を通じまして、これに対応いたしてまいる所存でございますが、しかし、そのほかにも技術的な問題につきましても、処理の技術あるいはプラスチックそのものが、処理しやすいようなそういうプラスチックとしてつくられるような技術の開発なども十分進めていただくように、これは厚生省ばかりではなしに、経済企画庁でございますとか、あるいは通商産業省方面とも、法律ではなしに、法律後の処理の問題等につきましても検討を進めて、そしてできるだけのことをしてまいるつもりでございます。
  49. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私がいま聞いているのは、そういうことではなくて、この捨てても焼いてもどうにもならないプラスチック類のごみに対して、いま申し上げましたような重大な問題が起こっているわけですが、これに対して具体的に厚生省として対策があるのか、こう聞いているわけです。これはないでしょう。あれば言ってください。
  50. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いま申しますように、現状は、大橋さんが御指摘になりましたような一般のごみと一緒に処理しておりますために、非常な弊害を起こしております。また、埋め立ていたしましても、これがバクテリア等によりまして腐食をいたしませんので、非常に不安定な埋め立てになっているという現状のままでございますので、それの処理体系というものは立っておらない。市町村にやれと言いましても、市町村には十分な能力がないと思いますので、都道府県みずからが広域でそういう産業廃棄物の処理もできるし、また排出者みずからも、主として事業者でございますが、そういうものの責任としてこれの処理の方法もとらせ得るような体系をまずつくりまして、そして私が申しましたような、技術的に未解決の部分がたくさんございます。これはだれがやりましても技術的に未解決の部分がありますので、それの処理の技術、そしてプラスチックそのものが処理しやすいようなプラスッチクとして生まれ出るような、そういう新しい道も検討をさせている最中であります。
  51. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの市町村の二千四十六カ所の焼却炉がもう次から次にだめになっていっているわけですよ。これは厚生省の専門家の人に聞いたのですけれども、このままの状態でいったら数年後には全滅するのじゃないかと言っております。これに対して何かはっきりした手を打たなければこれはどうにもならぬ。産業界はこうしたプラスチック製品について、どんどんそれを出そうという態勢が整っておりますよ。これが次から次に出てきたらどうなりますか。よろしいですか。
  52. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大橋議員が申されるとおりであり、また私が申したとおりでございますが、しかしプラスチックの生産をとめてしまうということは、プラスチックというものは今日の国民生活に非常な役割りを占めてきておりますので、それをとめるわけにはまいりません。そこで、これの処理施設を新しい体系の中でやれるような仕組みをまずつくり、技術開発もやらせる。それに対して国は技術上あるいは財政上の援助も与えるし、また、プラスチックそのものが、いまのような高熱を出したり、非常な過剰な酸素を必要として不完全燃焼になって、そのためにすすが出ているようなああいうプラスチックではないような、ディスポーザブルなプラスチックの開発というものがぜひ私は必要だと思います。これは厚生省の私どもが紙の上でやれることではございませんので、先ほども述べますように、通商産業省も一生懸命になってともに研究をしていただいておる状況でございます。
  53. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 生産の立場からはある程度とめるんだと言われました。今度の法律案ではそれはどこになっているのです。どの程度までそれを規制しようとしているのですか。
  54. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いまも申しますように、とめてしまうことはできません。とめてしまうことはできませんが、事業者は産業廃棄物をできるだけ出さないでみずから再処理するというような義務を与えております。その規定をいたしております。
  55. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、この法律を読みますと、第三条の二項にあります「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物の再生利用等を行なうことによりその減量に努めるとともに、物の製造、加工、販売等に際して、その製造、加工、販売等に係る製品、容器等が廃棄物となった場合においてその適正な処理が困難になることのないように努めなければならない。」こういう確かに一つの努力規定は示されておりますが、じゃ、具体的にどうやって規制するのか。そのようにおっしゃいますけれども、厚生省は先般ヤクルト容器の許可をやったじゃないですか。これはどういうことですか。
  56. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ヤクルトなどがプラスチックの容器を使っておる状況でございますが、いままではこういう産業廃棄物に関する特別の法律もございませんので、もっぱら食品衛生法の規定でやっております。食品衛生法ですと、プラスチック容器が食品中に有害物質を浸透させない限り、正式に申しますと法律上はとめられません。行政措置でやる以外にない。しかし、いまそれにならって、いろいろの牛乳会社がいわゆるワンウエーのプラスチック容器を使いたいといって申し出があるわけでありますが、私どもは、それに対する事業者みずからの回収なり処理なりの体制が打ち立てられない限り、行政措置をもって許可を押えているような状況でございますので、今回はこの法律の成立とともに、一そうその排出者責任、製造者責任というようなものの体制を整えさせて、整った条件がかないます状況のもとでなければ、私どもは新しいプラスチックの乳製品容器というものは押えてまいる、こういう考え方で進めております。
  57. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、いま乳業会社では六千万本という量が用意されております。これは一日の話ですよ。そしてこの乳業会社のプラスチック製品については、農林省のほうは推奨していますよ。これは農林大臣どうですか。私の調べたところによりますと、農林省はポリエチレン化推奨のためにメーカーに機械導入の助成措置をしております。昨年の十二月二十六日には、簡易パックの機械導入について関税の免税と特別償却制度の適用対象を決定しまして、ことしの七月十日からは、ポリ容器についても特別償却制度の適用を認めております。農林大臣、そうでしょう。
  58. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 物価対策上、それから牛乳の消費を多くするというふうな見地から——ただいままでの昔からやっております牛乳の配達のほうはガラスびんでありまして、これは一本六十銭ぐらいだ。しかし、一人の配達夫がせいぜい三百本ぐらいしか配達ができないわけです。そこで、これをワンウエーにいたしまして、紙であるとかポリエチレンみたいなものに置きかえるというと、倍またはそれ以上、六百本ないし八百本も配給ができるので、小売り屋のほうといたしましても、労働事情が今日のように窮屈になっておりますし、かたがたガラスびんを回収するというふうなことによってたいへんコストが上がってくるという問題もございますので、いろいろ研究いたしました結果、われわれのほうはただいまお話しのありましたように、ワンウエー容器充てん機について、特別償却の制度等を設けまして奨励をいたしておるわけであります。ところが、紙のほうはわりあいに高くなりまして、これは約一円六十銭、ところがポリエチレンになると約一円二十銭になりますので、実はメーカーも業者もこういうようなワンウエーを十分に徹底させようという方針でまいったわけでありますが、いま考えてみますと、ただいま来お話のありましたように、ポリエチレンの容器をあとどのようにして廃棄するかということについて重大な問題が出てまいりましたので、方針はそういう方針で物価対策上いろいろ考えてやってまいったのでありますけれども関係省と十分打ち合わせまして、技術的な検討をいたして、その結果に待って方向をやはり考え直さなければならぬのではないか、こう思っておるわけであります。
  59. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 厚生大臣、お聞きになったとおりですよ。農林省としては、もういわゆる物価問題にもからませてこれを推奨しようとしております。だけれども、いまのような状態なので、その特殊な焼却炉等の施設ができるまではとめるというような話ではありますけれども、現実にその特殊な焼却炉はできておりません。なかなかできません。それを一体どうやるのか。この点をはっきりしないと、国民の皆さんは納得がいかないと思うのです。要するにワンウエー方式ですから、お客さんのところに行ったきりです。それはそのまま家庭のごみとして出てくるわけですね。それは市町村の焼却炉に入るわけです。その焼却炉がいたみ、故障していけば、その修理費はだれにその負担がかかるかといえば住民じゃないですか。ましてや、このような状態のときに、そんな抽象的な答えではこれは納得いきません。もっとはっきり、これは各省庁との連絡調整をやらなければならぬと言われるわけでございますが、山中総務長官、これはどうでしょうか。やはりあなたの責任のもとに何とか調整すべきだと思うのですけれども、どのような方向でまとめられようとなさいますか。
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 単に農林省だけでなくて、やはりワンウエー方式というものを物価対策の見地から、今日まで検討したことは事実であります。農林省も市乳消費の底辺を伸ばすための、あるいは人件費その他のコストを低減させるための策としての措置をとってきたことも事実であります。しかし、今日において、まだヤクルト程度のびんの普及の本数や容量ではさして問題にならなかったのでありますが、牛乳ぴんということになりますと、確実にこれが本数、量等が推計できるわけでありますから、ここで新たなる公害をどのようにするかという、処理の問題についての問題を提起されていると思います。  したがって、御指摘のとおりでございますので、私たちの対策本部といたしましても、この問題を厚生、通産並びに農林等とよく相談をいたしながら、地方自治体がそのような処理が可能なような方式の開発やその他の問題について研究を進めながら、そういうことがないうちには軽々しくこれを許可し、あるいはこれを推奨することのないように、方針を転換したいと考えます。
  61. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま、まだたいした数ではないとおっしゃいますけれども、確かにそれは、牛乳だとかあるいはヤクルト、その本数だけはそうかもしれません。しかし、全体のプラスチック類というものはすごい伸びなんですよ。たとえば、いま全国平均はごみの総容量の約七%だといわれております。これは全国平均です。大都市になりますと、ごみの総容量の中の一〇%から一二%までになっているのです。これは世界一なんです。そこから出てくる公害というものは、空にも水にも海にも地下にもわたっていくのですから、これはほんとうにことばだけでなく、口先、だけではなくて、本気になって対策を考えてもらわなければならぬし、早く統一見解を出して行政に当たっていただきたい。  時間がないから次に移りますけれども、先ほど国庫補助等をやって云々ということばがありました。何をするにいたしましてもお金がなければできないわけですが、確かに二十二条には、国庫補助の問題が触れられております。ところが、政令によってと政令にゆだねられておりますけれども、一体市町村にはどの程度の補助をなさろうと考えているのか、お答え願いたいと思います。
  62. 内田常雄

    ○内田国務大臣 市町村に対する補助は、従来は、屎尿処理については三分の一であり、ごみ処理については四分の一ということになっているはずでございます。その他の残余の資金については起債でめんどうを見る、こういうような仕組みにいたしております。
  63. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これは、この前の社会労働委員会でも私はこの問題に触れたわけですけれども、この市町村に対する補助率というものは四分の一とはなっておりますけれども、実際はものすごく低いものであります。というのは、その基本額というのがあるわけです。その基本額というものは厚生省のほうできめているわけでしょうけれども、実際の建築費用というものはもっともっとかかるわけですけれども、厚生省は古い昔の基準でいっているわけで、たとえば北九州の清掃部のほうで、今度三年がかりで施設をつくろうとしておりますが、総工費が十五億四千二百万円です。これに対して国の補助はわずかに二千四百万円です。これは四分の一どころか六十分の一ですよ。話になりません。この前の委員会のときの答弁では、その補助率をもっと実質的に変えていきたい、このような発言もあったのですが、その気持ちは変わらないでしょうね。いわゆる市町村に対する国庫補助率をもっと実質的に上げるような方向に進む、このように言っておったことには変わりないでしょうね。
  64. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ごみの処理というものが、先ほどから論議をいたしておりますように非常にたいへんな問題になってきておりますので、市町村もこれはたいへんな仕事でありますので、おっしゃるように、実質上補助率が上がって、そしてこれらの施設が十分活躍ができるように厚生省としてはぜひ考えてまいりたいということで、大蔵省とも協議を重ねております。大蔵大臣もおられますが、この問答を聞いていただいておることと思います。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 補助率を直ちに引き上げますということは、これははっきり申し上げかねます。かねますが、ごみ処理、これは非常に大事な問題になってきておる。これが対策ということは、ひとり補助率だけの問題でないのです。交付税の配分の問題でありますとかいろんな問題によって解決しなければならぬ。財政上は、総合的にこれらの施策が十分進むように配意いたします。この席で、補助率だけに限って引き上げるというふうなお答えはいたしかねます。
  66. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ごみ処理の問題は、いままでるる述べたとおりでございます。この廃棄物処理法案の中の補助率というものは、一般廃棄物処理施設の設置についての補助ですから、いまのような実情を踏んまえて、そのような一律な考えではなくて、特段の配慮をしてほしいということであります。  時間がないので次に移りますが、厚生大臣、「政令で定める」とありますけれども、大体いつごろこれは定められるのですか。なぜ私がこれを念を押すかと申しますと、下水道法第三十四条には、同じように「政令で定めるところにより、」云々とありますけれども、いまだに定まっていないのですよ、下水道法では。そのようなことでは後々、行政立場からいくと計画も立たないし、非常に問題をかもし出します。これは大体いつごろきめられるのですか。それだけ聞いておきます。
  67. 内田常雄

    ○内田国務大臣 現在御承知のように、ごみ処理につきましては市町村の体制がございます。それに新しい体制を乗っけることになりますので、いままでの市町村体制を全部御破算にするということはできません、私ども事務的の用意よりも。そこで、それらとの関係がありますので、この法律に基づく政令が整備されるのには、何カ月かの時間を要することになります。  またもう一つ、いまの補助は、一部は政令できめられており、一部は政令できめないで、実際上の財政上の措置としてきめておるものもございますので、その辺につきましても大蔵省とよく打ち合わせをいたしまして、できる限りすみやかに、かつできる限り広く政令で補助の問題をカバーをするようにいたしたいと、私は努力をいたします。
  68. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 努力なさった結果をお示し願いたい。これを要求しておきます。  では最後にもう一問、不法投棄の罰則問題に触れてみたいと思うのですが、十六条の規定に違反した者は、五万円以下の罰金だということであります。これは一般廃棄物も産業廃棄物も同じ五万円だということですが、産業廃棄物のほうは一般廃棄物よりも、中身にしても量にしてもかなり問題があるわけですが、これを同一視したのはむしろ量刑の不公平ではないか、つまり正義に違背する、私はこう思うのですが、これは警察庁の方に答えてもらいたいと思います。
  69. 加藤清二

    加藤委員長 警察庁来ていますか。
  70. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは厚生大臣。
  71. 内田常雄

    ○内田国務大臣 実は、これは両方とも五万円ということに一応なっておりますが、実は五万円だけではございません。産業廃棄物につきましては、都道府県知事事業者に対して回収命令をすることができることになっておりまして、その回収命令を発してそれに従わなかった場合には、別に「六カ月以下の懲役又は五万円以下の罰金」こういう規定がございまして、一般のごみ処理、屎尿処理などとは違う重い、重刑の規定がございます。そのことをもお含みいただきたいと思います。
  72. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間がないので、最後にもう一言……。
  73. 加藤清二

    加藤委員長 大橋君に申し上げます。あなたの持ち時間が過ぎました。  次は西田八郎君。
  74. 西田八郎

    西田委員 私は、主として大気汚染と水質保全に関連した施策についてお伺いをいたしたいと思うわけでありますが、その前に山中総務長官佐藤経企庁長官にお伺いをいたします。  日本の公害対策が世界に冠たるものである、こういうことで非常に自画自賛をしておられるのでありますけれども、私は、公害対策が世界に冠たるということは、それだけ日本の環境が破壊されているということ、生活もまた生命もそうで、そういう意味では非常に危険に落とされているということを証明することであって、決して私は自慢にならないと思います。特に、今日のように日本が自他ともに認める経済大国として発展してきた今日におきまして、むしろこれは恥ずべきことでありまして、そのこと自体は一にかかって政府の責任であるというふうに考えるわけであります。そういう意味から、この公害対策というような消極的な姿勢ではなく、野党三党が共同で提案をいたしております法案の趣旨にもありますように、私はあくまでもこれは環境を保護する、あるいは環境を保全するという立場でなければならぬと思うわけであります。  特に、今回提案されました諸法案をながめてみましたときに、昨日の山中長官答弁の中でも見られますように、不備な点が非常にたくさんあるということであります。このことは、昨日この委員会を傍聴されました傍聴人の方の中にも、非常に失望したという発言が新聞等にも掲載をされております。これは一にかかって政府にその自信がない、このことを示したものではなかろうかと思うわけであります。その点について、最初に山中長官からまず政府の姿勢についてお伺いをいたしたい。
  75. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまの御見解は、私たちも一がいに否定できない立場にございます。すなわち、公害対策に対する処理法案が世界に冠たる内容であることについては、私もある意味においてはそのとおりだと思いますが、そういうことをせざるを得ない環境を持っておるということは、私たちとしては世界に誇れることではない。したがって、日本において公害の問題は、公害が起こったときにどうするか、起こらないようにどうするかという議論から入っている。しかし、諸外国においては、まずその以前の人間の生存あるいは生存のために必要な環境というものから入っている。その点を、自分たちは謙虚に反省をしたいということを昨日申しました。  しかし、不備な点が多いというのは、私とトレイン委員長の会談の際に、日本の法制は非常に整備されているという話があったときに、その法制をこまかく見るとずいぶん抜け穴がある、そこを自分はセメントを詰めるためにずいぶん努力をしたつもりであるということを申し上げたわけであります。しかしながら、いま出しておる法律が、これが完全であるとは私も思っておりませんので、さらにこれの実効を見つつそれの補完に努力をすることにおいて、異存はないということを申したつもりでございます。
  76. 西田八郎

    西田委員 そこで私の心配されることは、補完されていく過程におきまして、また新しい問題が出てくるというようなことが考えられるわけであります。したがって、私はこの公害問題を、一応の政府のきめた基準なりあるいは規制措置というものが順守されるまでは、生産活動もある意味においては停止せざるを得ないのではないかと思うわけであります。なぜならば、この生産活動、いわゆる技術の開発もまた科学の進歩も、すべて人間のより豊かな生活、より快適な生活をなすために行なわれておるんだと思うわけであります。そういうことから考えました場合、その生産のために、それを開発しそれを考え出した人間が、そのためにみずからの首を締める、こういうようなことであってはならないと思います。すでにたくさんの人たちが犠牲となり、また多くの自然が破壊されておる、こういう事態を考えましたときには、生産関係の持続のために人間がその犠牲になるということは、これは明らかに主客の転倒ではなかろうかと思うわけであります。  そういう点から考えまして、いまや生産活動の原点に返って、もう一回私どもは考え直さなければならない時期に来ておるように私は思考するわけであります。すなわち、経済成長の速度が多少ゆるまっても、やはりより良好な生活環境をつくるということが、今日、一九七〇年代に与えられたわれわれの使命であるように思うわけであります。そういう意味から、政府のこれに対する態度と、それから佐藤経企庁長官の新全国総合開発計画をもう一度見直す意思がありやいなや、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  77. 山中貞則

    山中国務大臣 原則的には、私もさように考えます。すなわち、公害防止の施設というものは、本来生産のための収益に貢献する特定の施設ではないわけでございます。しかし、それを施設しない企業というものは、今後その地域において存在することがあぶなくなる、すなわち、存在すら否定される可能性の環境というものが無視できなくなっておりますから、場合によっては、現実に生産活動をやめた零細企業等も新聞等で散見いたしておりまするし、さらに企業が移転をするというような状態等も新聞等で拝見をしておる事実がございます。  したがって、結果的には、そのようなことを実施するためには、当然企業収益に貢献しなくとも、企業のモラル、義務として施設を行なうことによる、いわゆる生産に伴う収益率の低下ということにつながることはやむを得ないことであろう。それを克服して、なお企業自体の努力がさらに収益性の向上に持ち込んでいくという努力が、企業に課せられるのではなかろうか。基本的には私も同感でございます。
  78. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、新経済社会発展計画では、その主要な課題として公害の問題を大きく取り上げております。そういうことも含めて考えた上で、一〇%の経済成長というものを想定してございます。  新全総の計画につきましては、前回も御指摘がありましたが、公害という文字の使い方が、率直にいって少ないというお感じをお持ちになるかと思うのでありますが、あれは国土開発の見地からやっておりますが、あれ自体全体がむしろ公害のための国土の再編成である、こういう考えをわれわれ持っております。昨年の五月に決定されたものでありまして、すでにもう公害問題を相当十分に議論して決定されたものであります。しかし、もちろん今後長期にわたる見通しでございますから、その他の面についてもいろいろと実際に合わない点も出てきたりすることもあろうと思います。そういうことで、事態に応じて弾力的に対処するつもりでおります。
  79. 西田八郎

    西田委員 それでは、そういうことが新全総の中にも組み入れられておる、あるいは経済社会発展計画の中にも入っておるということであるとするなら、昨日の佐藤経企庁長官の答弁の中に、環境基準を定める場合あるいは排出規制をする場合には、この総合計画も加味している、こういう答弁がございました。しかし、これらの有害物質規制であるとかあるいはまた環境基準をきめるということは、そうした政治的配慮ではなしに、むしろ生態学的な視点からこれをとらえて、かくあるべき姿というものをつくり出すということが正しいのではないかと思うわけであります。  そういう点について、今後、定められた環境基準なりあるいは排出規制が、新しいものが出てくれば別でありますけれども、これを手直しするというようなことは行なわないかどうか、あるいはさらにもっといろいろな科学技術の発達によって、ほんとうの自然に返す形にまで持っていくという意思があるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  80. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 おそらく御指摘の点は、いわゆる水質保全その他われわれがいま取り扱っている問題は、人の生命、健康、これはもちろん基本的に一番大事でございますけれども、その維持、これは問題にならない当然のことでありますけれども、さらに進んで、環境の保全について広くわれわれは注目しなければならない。そうして御存じのように、生態学というようなものも発達してきた今日でありますから、単に人に直接関係のある部分だけじゃなくて、あるいはわれわれを取り巻く動植物の生育、そういうようなものの環境の維持、こういうところまで含めて、人と自然の関係全体を、いわゆる自然のあるがままの姿というか、自然の循環する姿というものを保持する、こういうところまで広げて考えろ、こういう御趣旨であろうと思うのであります。  生態学というのは確かに確立はしておりますが、まだまだこれから発達する学問のように私も聞いております。われわれとしても今後そうした成果は、十分に取り入れていく必要があると感じております。ただ、現在の環境基準の設定にあたりましても、われわれとしては、今日でき得るデータをできるだけ集めまして、そして、たとえば人間の生命ばかりではない、そこに住む魚も十分に生きていけるように、こういうことを頭に置いて環境基準の設定を行なっております。そういうことで法律改正しましたから、さしあたっていますぐ環境基準そのものを改めるということは、直接には考えておりませんけれども、今後のその方面の発達に従って、適当な時期にまた手直しをすることが起こるかもしれません。そういう点についてはやぶさかでないつもりでございます。
  81. 西田八郎

    西田委員 それでは重ねてお伺いしますが、そうした政府の考え方に基づいて環境浄化あるいは公害対策を進められることによって、いわゆる地形その他を復元することはむずかしいと思いますけれども、水や大気が一体昭和何年ごろに復元されるのか、現在よごれておる川、そしてまたよごれておる海、よごれておる大気、こうしたものが一体昭和何年ごろに復元されるのか、そのめどについて具体的に、これはだれが聞いてもわかりやすいことだと思うので、そこで一体どの年度までぐらいに浄化させようとしておられるのか、その点ひとつ簡単にお答えをいただきたいと存じます。
  82. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 もちろん人の生命、健康に関する点については、われわれは直ちに規制を実施いたしております。そういうことで、絶対にその方面の事故の起こらないように、今後は、問題は実行でございまして、いわゆる監視体制を強化しつつ基準の実現をはかってまいる。  それからまた環境基準につきましては、率直に申しまして、現在すでに相当汚濁の著しいところもございます。そういうこともございまして、ある程度の猶予期間を設けております。私どもは、原則としては五年ぐらいのところを目標にいたしまして、個々の流域について水質の保全の実現をはかりたい、こういうことにいたしております。これはもちろん原則でございまして、その方面における下水道の普及であるとか、いろいろな条件をあわせて考えての上のことでございます。もちろん国全体といたしましては、今日まで御存じのように地域指定制度をとっておりましたから、全国すべての地域というわけではございません。また、今日まだ汚染されていない地域が今後拡大されるおそれがございます。そういうことを考えますと、私たちとしては、単に五年というようなことでなく、長期にわたってこの問題に取り組む必要を認めております。  そういうこともございまして、今回、中央政府だけではとてもいかぬということで、地方の府県にも権限を委譲いたしまして、そして全面的に地域指定を解き放って、全部の地域についてこれの考え方を拡充していく、こういう考えに立ったわけであります。
  83. 西田八郎

    西田委員 大体、昭和何年ごろかと聞いておるのです。昭和何年ごろに復元するかということです。大体三十年とか二十五年とか、そういう見通しは持っておられないのですか。
  84. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 経済成長との関係等もございましょう。いま私どもが、何年という目標をしいて立てる必要もないと思うのでありますが、私たちとしては極力これの拡大を防ぎ、それから現在までの事態の改善をはかるということで、個々のものについて具体的に現実的な対策を立ててまいりたい、こう考えております。
  85. 西田八郎

    西田委員 きわめてお答えが不満足で、何年に戻すのか、これはいままでの統計があるのですから、当然何年ごろだということを答えてもらえると思っておったのですが、非常に不満であります。  次に、具体的な問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、まず水質保全についてであります。  有害毒物その他は、工場の排水を規制することによって十分規制されることになろうと思います。しかし、全国の公共用水域の浄化のためには、何としてもやはり下水道を整備するということが緊急の要務であろうと思います。日本の下水整備の状況というものは、他の先進国に比較いたしまして非常に悪い状況にあることは、建設省が持っておられます下水道事業の動向の中にも明記されております。また、最近は生活排水といいますか、家庭排水、あるいは農業排水等も含めて、その汚濁度を高めるための負荷割合というものが増加をいたしております。特に東京等におきましては、家庭排水の負荷率が五六%というような高い率になってきております。  こうした状態から考えまして、これからの下水道整備というものは、非常に重要な問題の一つになってくるわけでありますが、建設大臣はこの下水道整備についてどのようなお考え方を持っておられるのか、現在までの五カ年計画をそのまま堅持していかれるのか、あるいはもっと早くそれを達成するための努力をされるのかどうか、そういう点についてひとつお伺いをしたいわけであります。
  86. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、いわゆる経済大国といわれておる日本が、他の先進国に比べて、公共投資の中でも一番おくれているのが下水道といわれておるわけであります。先ほど大橋さんの御質問があったが、これは私にでなかったので、この機会に申し上げようと思います。  実はあのときにも、下水道法において政令が定められていないじゃないかということでありますが、これは昭和三十三年四月二十四日に法ができて、施行はその翌年にされております。ところが、その当時における下水道の状況ははなはだ貧弱でございまして、国の補助額はわずか十億にようよう達した程度でございます。各都道府県のうちの市町村が単位であったので、これが非常に意欲的ではなかった。ようやく最近になりまして漸次事業量も、それからまたこれに対する関心も高まりまして、現在国の補助金額が三百六十数億というところに達した段階でございます。  御指摘のとおり、公害のうちこの水質、人間生活に関係ある水の問題は非常に重大な問題でありまするので、建設省は意欲的にこの問題に取り組みまして、現在の五カ年計画ではとうてい事態に対応できないということで、四十六年度を初年度とする新しい第三次五カ年計画を策定し、これをいま予算折衝中でございます。この金額は五カ年で二兆六千億と想定しております。これは、実は経済社会発展計画で与えられておるワクは二兆一千億円よりないのです。これじゃとうていいけないというので、予備費の五千億をくずして入れるということを要請しております。これが大体できました場合に、先ほど御質問があったようでありまするが、四十九水系が全部これで環境基準が満足されるかというと、できません。このうち二十五水系は、五年間でこれが大体完成するわれわれの計画であります。二十四水系は、さらに三年延長しましてかからなければならないという状況でございます。この二十五水系を五年間でやるために、約一兆六千数百億かかります。  こういう状況でありますので、これは手法もいろいろ変えなければなりません。そこで、いま新しく取り上げられているのは流域下水道のやり方で、市町村の下水のほうは管をずっとつくりましてこの流域下水道に入れ、末端でこれを高度処理をしてしまう。そのやり方は現在でも十二カ所やっていますが、だいぶ成功しております。これを都道府県単位でやらせようというのが、法の改正の重点でございます。  こういうことをやってまいりましても、先ほど御指摘のとおり、公害の蔓延の状況は非常に著しいので、これは閣議決定も経ておりませんけれども、建設省としては昭和六十年までにこの水質基準を全うするのみならず、全体の水として、人間生活並びに公害を、少なくとも現状から見ればはるかに良好な状況にするためには、大体十五兆円の投資が必要、こう算定しております。
  87. 西田八郎

    西田委員 この際、特に建設大臣にお願いをいたしておきたいのは、いまも答弁の中にありましたように、法の改正によりまして公共用水の指定水域という規定がなくなります。そうしますと、全国的にすべてが公共用水としてその環境基準を守らなければならぬということでありますが、そうなりますと下水道計画のほうも、要するによごれたところからというよりも、むしろ政治的に力のあるところから先にやっていこうというようなことになっては、私はこの下水道計画というものが水泡に帰してしまうと思います。したがって、やはり当初考えられましたように、現在指定水域になっているところ、あるいは指定水域になっていなくても、公共の用に供して非常に重要な役割りを果たしている、たとえば水源地である湖であるとか、そうしたような点についても、その周辺の下水道整備に十分の配慮をいただきたいと思います。  次に、大気汚染について、もう時間がないので質問いたしますが、大気汚染の元凶はやはり亜硫酸ガスだというふうにいわれるわけでありますけれども、その亜硫酸ガスを少なくするためには、何としましてもいわゆる低硫黄の石油を輸入しなければならぬと思うわけであります。ところが、昨日も通産大臣の説明にありましたように、現在低硫黄は全体の一〇%程度だ、こういうことであります。そうしますと、この亜硫酸ガスを出さないためには、何としても石油をたかないということになろうと思うのです。あるいは量を少なくするためには、原油のなまだきということも考えなければならぬと思うわけでありますが、そういう点について、これからの原油の輸入について見通しが立つのかどうか、あるいはまた脱硫技術というものがどの程度開発されておるのか、その辺について通産大臣からお伺いいたしたいと思います。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは昨年、総合エネルギー調査会の低硫黄部会というものをつくりまして、長いことこの問題を研究いたしました。私どもとしては、ほぼ見通しが立っておると申し上げていいのではないかと思います。低硫黄原油を輸入いたしますことが一番よろしいわけで、各業者もそれはいろいろ苦労しておりますけれども、これにはやはりどうしてもあなた頼みのところがございますから、同時にやはり脱硫へ重点を置くということが、一番自主的にできることでございます。  そこで直接脱硫、最初ちょっとつまずきがございましたが、このごろはまずいけそうだ、現実に工程に入れましていけそうだということになってまいりまして、いま直脱、間脱合わせて三十七万バーレルほどの施設がございますが、四十八年度に大体七十万バーレル余りにこれをしていこうというわけでありますけれども、これは幸いにして石油業法で設備が許可制になっておりますので、その際に私ども脱硫装置をつけることと、低硫黄原油の入手についてそれを確保すること、そういう二つの条件をつけておるわけでございます。  大体いま私ども考えておりますのは、四十八年度でおそらく燃料の合計が約一億八千万キロリットル余りでございますが、そのうちで脱硫が四千万キロリットル以上はできるだろう、低硫黄を少し控え目に見て二千数百万キロリットルくらいに思っておるわけでございますが、まずやっていけるというふうに考えております。
  89. 西田八郎

    西田委員 時間がないのでこれが最後の質問になりますが、そうしますと、四十八年で大体政府の目標を達成するということになるわけでありますが、聞くところによると、この亜硫酸ガスの元凶といわれるのは、その発生源は大体電力会社あるいは製鉄業というふうにいわれておるわけでありますが、その電力の関係におきましては、来年あたりは最大のピンチを迎えるというふうにいわれておるわけであります。そうしますと、四十八年にその目標が達成されるとなると、来年、四十六年の時点あるいは四十七年の時点におけるそうした発電におけるところのガスの発生というものを、どのようにして防いでいくのか。これはきわめて重要な問題でありまして、特に関西電力の尼崎の発電所が、どうにもならないような亜硫酸ガスを発生しておる。しかし、電力の需要を満たすためには、供給のためにどうしても発電しなければならぬというような問題も、具体的には出てきておるわけであります。そういう点について、この四十六年、七年のいわゆる経過的な措置をどういうふうにお考えになっておるか、そしてそれが国民の生活、市民生活に悪い影響を及ぼさなくてもいいようにできるのかどうか、この点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう少し詳しく申し上げますと、実はこれは年度ごとに計画をつくっておりまして、逐次平均の硫黄含有率を落としていくという計画になっておるわけでございます。そして地域のほうは、一番過密の地域、そうでない地域と幾つかに分けておりまして、過密の地域に重点的に低硫黄のものあるいは脱硫したものを分けていく、こういう計画になっておるわけであります。  そこで、いまの尼崎のような問題は確かにございまして、関西電力は来年かなり実はあぶないと申しますか、供給体制に不安がありますので、あそこにはやはり低硫黄を一番重点的に分ける、こういうことを考えておるわけでございます。
  91. 西田八郎

    西田委員 もう与えられた時間があと一分になりました。したがって、御質問を申し上げて答弁をいただいておる時間がありませんので、関係各大臣に要望をいたしておきたいと思います。  私は、公害問題はやはりやるという姿勢でなければ何もできないと思います。これはすべてでありますけれども、いまやはり一番苦しんでおるこれらの被害者、それに生産活動のために、言いかえれば資本のあくなき利潤の追求のために犠牲になっておる国民大衆を救うためには、何としても政府の姿勢を正す以外にないと思います。そういう意味で、ただいま答弁がありましたが、多少不満な点もありましたけれども、今回いろいろな形でこうした国会が、公害国会と銘打ってのこの国会が開かれましたことに徴して、ひとつ十分なる対策を立てられんことを、またそのつもりで実施されんことを強く要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  92. 加藤清二

    加藤委員長 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時五分開議
  93. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き連合審査会を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  94. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、日本社会党を代表して、あらかじめ予定をいたしておりました土壌、農薬の問題にしぼっての質問の前に、緊急に、本朝の新聞におきまして発表せられております沖繩の毒ガスの撤去の問題につきまして、山中総理府長官の御答弁をお願いいたしたいと思います。  本日の各社の新聞報道によりますと、沖繩の毒ガス撤去につきましては、七二年返還時までかかるということが一斉に報道せられております。しかもこの問題は、すでに国会におきまして中曾根防衛庁長官、山中総理府長官におきましても、おそくとも来年の一月ころまでには沖繩の全面毒ガス撤去はできるだろうという御答弁をせられているわけでありますが、実に二年後にわたってこの問題が引き延ばされるということについて、政府は一体どのようなお考えを持っておられるのか。この際、アメリカ政府に対して、沖繩の住民はもとより、日本国民の総意として、このような長期にわたるきわめて危険な毒ガスの撤去について、早急に撤去の時期を早めるような要望をする決意があるかどうか、まずお尋ねをいたします。
  95. 山中貞則

    山中国務大臣 私が答弁いたしております範囲は、中曾根防衛庁長官訪米のあとの私の聞きました範囲、並びに外務大臣を通じて承っておりまする範囲を前提として見通しを申し上げておるわけでありまして、今回の問題につきましてレアード国防長官が現地時間四日、日本時間では五日午前一時、そのような内容の発表をいたしていることも事実であります。なお、当初百五十トンの輸送開始をやる、しかしながらジョンストン島に対する議会の了解がない、しかしそれは、議会に対しては陸軍省の判断をもとにして、軍の判断をもとにして、国防長官の責任において踏み切ったんだという意味のことがついておるようでありますが、さらにジョンストン島において受け入れの施設がやはり要るようであります。その施設をつくるのにやはり時間がかかるので、その間少し延びる。しかしながら、結論的にいえば、復帰前においては完全に沖繩から毒ガスを撤去するということも言っておるようでございます。  政府としては、それらの点を踏まえて外務大臣とも、防衛庁長官がちょっと見つかりませんので事務次官とも相談を緊急に本朝来いたしておりますが、今日までも要請してきたところを引き続きさらに、現地住民の不安は私どもの想像を絶する不安があるわけでございますから、それらの措置についてなるべくすみやかに終了するよう努力を要請をしていきたいと思います。
  96. 田中恒利

    田中(恒)委員 ただいまの答弁ではまことに不明快でありますので、私は重ねてこの際、政府が直ちにアメリカ政府に対して毒ガスの早期撤去について重ねて要求をしていく、こういう姿勢を持つ必要があるかと思います。御承知のように、公害の中で政治公害というものが今日いわれておりますが、その焦点は基地公害であります。しかもその基地公害の何といいましても中心点は沖繩であります。この沖繩が本土に復帰をするということがいわれておりますこのさなかに、毒ガスの問題一つまだ解決されていない。このことについて私は沖繩島民はもとよりでありますけれども、日本国民全体が今日の佐藤政府のアメリカに対する姿勢に不安を感じておると思うのであります。ですから、ぜひこれは国民的要望として、佐藤さんは沖繩の問題については国民的合意に立って話を進められておるとおっしゃるわけでありますから、早急にこの毒ガス撤去の問題についての期間を早めるように要望していただきたいと思います。  そこで、なお沖繩の基地公害につきまして若干お尋ねをいたしておきますが、毒ガス撤去の問題をめぐっては、新聞の報道するところによりますと、現地における輸送道路等がたいへんでこぼこで、これらの舗装もしなければいけない、万一事故があったらどうなるのか、こういう問題が報道されておるわけでありますが、これらの問題について日本政府は一体どのような形でタッチをしていくのか。万一事故があった場合にといったようなことはあり得べきことではないわけでありますので、これらについての処置をどうお考えになるか。あるいは今後沖繩の復帰に伴いまして、企業誘致というものが積極的に進められる、こういう話もあるわけでありますが、この企業誘致に伴う石油公害に対してはどのような処置をせられるのか。あるいは現地において一番大きな問題になっております騒音公害など、沖繩をめぐる公害に対してどのような方法と方針で処理されていくか、この機会にあらためてお聞きをいたしておきたいと思います。
  97. 山中貞則

    山中国務大臣 現地の撤去に伴う周辺の地域住民の不安というものは、事柄が直接人体の生命に危険を及ぼすものでありますだけに非常なものがございます。琉球政府としては、学童、学校その他の対策は文教局、あるいは周辺住民等の問題については何局、あるいは道路のただいま言われましたような問題等については建設局とか、いろいろと各局ごとに、撤去に伴う危険というものを沖繩自体として最大限措置するための手順あるいは分担等も定めておられるようでございます。これに対して本土政府のほうでさらに援助申し上げられる、しなければならない点があれば、協力を惜しむものではございません。  さらに、基地の問題に関連をいたしましての基地公害の問題、並びに現在進出をいたしております石油産業に対する公害の問題でありますが、沖繩のあの美しい空や海やあるいは緑のサンゴ礁に、本土並みみたいな公害を、本土並みということばで沖繩に及ぼすことは絶対にありてはならないと考えます。しかしながら、現在の立地しておる状況を見ますと、勝連半島をちょっと遠く隔てました平安座島のガルフという問題は、直接住民の周辺に近接いたしておりません点でやや異にすると思いますけれども、エッソ並びに東洋石油等は明らかに最も人口の密集した中城湾の沿岸に位置しておるわけであります。これらの企業が内地の教訓をもとにして、あるいはまた国際資本でありましても、それらのものを私たちが琉球政府に遅滞なく実資料等を連絡することによって、それらの立地に伴う密集地域住民の被害が起こらないよう、あるいは石油公害等の私たちが予想するような事態が沖繩においては初めから防げる措置を講ずるために、いままでも努力をいたしておりますが、さらに努力を重ねていきたいと考えるものでございます。  さらに、騒音公害等につきましては、私も現地の嘉手納村に参りまして、旧村の八割を飛行場に取られ、残りの二割の海岸に押し込められた住民の人々の、全く騒音の中で日常生活が行なわれておる状況をよく拝見をいたしました。しかも学校の生徒たちが耳に消しゴムを削って詰めて、それが取れなくなったためにお医者に行ったというような話などを聞くに及んで、私もほんとうに気の毒だと思いましたし、せめて本土のできることはこれらの小学校の生徒たちに防音校舎の完備したものをつくりたいと考えて、来年はその予算も要求をいたしておりますし、さらに、本土の基地周辺等の工事では考えられていないケースの、総合的な大公民館的なものをつくりまして、老人や病人あるいは子供たち、赤ちゃんたちの昼間でもそこで休める場所、あるいは学校の生徒たちが予習、復習等ができるような広い、いろいろの総合的な、騒音からさえぎられた建物をつくってあげるための予算を大蔵省に要求しておるところでございます。
  98. 田中恒利

    田中(恒)委員 いずれこの問題は特別委員会で、なおわが党の議員より追及をいたしたいと思いますので、私の予定をいたしております土壌、農薬の問題について、関係大臣に御質問をいたします。  まず、山中長官に御質問いたしますが、今回の公害基本法の改正の中で、公害の定義に新しく土壌汚染を追加をされたわけであります。ここで規定されております土壌とは、すなわち宅地、林地、農用地を含むものと解しておりますが、現実に出されました土壌汚染法は農用地に限定をせられております。なぜ農用地に限定をしたのか、この理由をまずお尋ねをいたしたい。
  99. 山中貞則

    山中国務大臣 基本法第二条の典型公害土壌汚染を加えましたことはそのとおりでありますが、それは今後予想される事態等についても、土壌汚染という概念は相当広く考えられるつもりでおりますけれども、さしあたりは農用地というものを指定をいたしましたのは、農用地はそこの土地に栽培されるもの、すなわち農作物を人間が食べることによって人体に被害を与えるおそれのあるものが、いわゆる土壌の有害物質汚染の媒体としてとらえなければならないだろう。これは緊急を要することだということで、さしあたりカドミウムをとらえ、さらに銅、亜鉛等をとらえていく旨は農林大臣答弁のとおりでございますが、今回の農薬取締法の一部改正等でも、やはり林野その他に対する農薬の散布のしかたとか、あるいは一般のそうでない地域に対する農薬等の影響等も念頭に置いて法律がつくられておりますので、今後典型公害土壌汚染が、さらにただいまお示しになりましたようなところの土壌に、どのような形で法律として立法できるかどうかについては、さらに検討を加えてまいるつもりでございます。
  100. 田中恒利

    田中(恒)委員 たとえば林地等におきましては、農作物と同じようにシイタケであるとか、あるいは山菜であるとか、こういう庶民の食品に該当するものが今日たくさんつくられております。さらにこれからの日本の農業の方向というものは、だんだん林地に向かって新しい開発の目を持たなければいけない今日、農薬の空中散布と関連いたしまして、やはり林地における土壌汚染の問題がたいへんやかましくなってきておるわけであります。そういう段階においてあえて農用地における土壌汚染等に関する法律という形で出すことによって、今後林地や宅地等を追加をしなければいけないというときになった場合に、どういう形でそういうものをつけられるのか。何も農用地というものを法律の前文に書かなくとも、土壌汚染法だけでよろしいのではないか、こういうふうに思うのですが、今後想定される林地等の導入についての法案をつくられる場合には、また別個におつくりになるわけですか、この点をひとつ……。
  101. 山中貞則

    山中国務大臣 林地については農薬の空中散布等の問題がすでに問題として提起されておりますし、農林省においてもそれらのことを念頭に置いて配慮しつつ農薬取締法改正等を行なっておるわけでありますけれども、あと残りの宅地その他については、それらの土壌汚染というものを何によってとらえるのか、その汚染はどういう被害をもたらすのか等の問題について、まだその議論について具体的な問題に提起されておりませんし、私たちの検討の段階でも、そこまで入って単独の規制法をつくるというには、まだまだこれから先の議論であろうということで、その点はこれから先検討を進めていきたいとお答え申したとおりの結論を得た次第でございます。
  102. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうもこういうふうに限定をされたということは、現に汚染をされておる土壌に対して、しかも重金属等についてカドミウムだけに限定をせられております。したがって、現在問題になっておるものだけを当面処理をしていく、こういう姿勢になっておるのであって、土壌全体、宅地なり林地なりというものを将来汚染させないのだという、そういう積極的な観点に立ってこの法律が出されていない。私はこのことを非常に残念に思うわけであります。いまの御答弁でも、何だか汚染をされておるものを是正をしていくのだ、こういう程度の観点にしか今回の土壌汚染法の内容そのものもなっていないじゃないか、この点を特に御指摘をいたしたいわけでありますが、次に移らせていただきます。  汚染した土壌に対する対策事業というものがお考えになられております。この対策事業というものはいわゆる公害防止事業事業者負担法に基づいてこの対策事業なるものが進められていくのかどうか。もし企業者の責任の所在が明確でない場合のこれらの事業費の負担というものは一体どこがどういうふうにやっていくのか、この点を総理府長官にお聞きをいたしたい。
  103. 山中貞則

    山中国務大臣 企業者がいないで、明らかに、たとえば今回の基準ならば、カドミウム一PPM以上の米が産出をされている、複合的な原因も追及したがそれも発見できない、あるいはまた、徳川時代からの対馬等におけるような、何百年か前からのものであるというような場合において、どうしてもそれが必要な場合においては、これは全額国、地方公共団体負担するところになるのが原則であろうと考えます。
  104. 田中恒利

    田中(恒)委員 企業者がおる場合は全額企業者が負担をする、企業者がわからない場合は全額国、地方公共団体負担をする、こういうふうに理解してよろしいですか。重ねて確認をいたしておきます。
  105. 山中貞則

    山中国務大臣 企業者がおりまする場合でも、これが非常に永年にわたって蓄積されたもの等がケースとしてはあり得るわけです。たとえば、鉱業法等において行なわれまする無過失責任の追及も、鉱業法というものが制定をされた時点以降ということになっておるようでありますから、そこらのところは、やはり全額負担が原則でありますけれども、その負担さすべき額について、それらが相当長期にわたって、たとえばカドミウムならば、議論がされ始めたのは、四、五年前ぐらいからの時点で議論が始まったわけでありますから、そのずっと以前のものは加害者意識も被害者意識もなかったというようなこと等がやはり配慮されなければならないだろうというようなこと等も若干ございますので、それらの問題点を詰める際において、幾ぶんの減額の措置を講ずることができるという規定がとってあるわけでございます。
  106. 田中恒利

    田中(恒)委員 それでは、大蔵大臣にこの際ただしておきたいと思いますが、この土壌汚染法に基づきまして、数項目にわたるかんがい排水施設、客土その他の事業、地目変換、あるいは汚染の状況に対する調査測定、こういうものに関する計画が立案をされ、事業が推進をされる場合、特別に、こういう土壌汚染対策事業費という形で別途な予算が組まれる、こういうふうに理解をしてよろしいと思うわけでありますが、この理解は間違いありませんか。
  107. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の立法によりまして、従来よりも地方公共団体事業がよけいに負担を受ける、こういうケースがあるだろうと思います。そういう場合におきまして、地方負担に対して国がどういう援助をするか、これは、一つは地方公付税の配分の方法でやるということも考えなければならない。それからまた、この事業を行なうための起債に対して政府資金を投入する、こういうことも考えなければならぬ。それから補助率の問題というのが出てくると思います。この補助をどういうふうにするか、これは地方財政、中央財政全体との間の調整の問題という大きな問題がありますが、とにかくこの立法が支障なく行なわれるというために最善の対策をとる、こういう考えでございます。
  108. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林大臣に……。この土壌汚染対策事業というものを、いま大蔵大臣の話を聞きますと、既存の地方自治体に対する交付税その他関連する事業、一般事業費で処理するのだというような認識を受けるのでありますが、いま山中長官は、企業責任がはっきりしない場合は全額国、地方公共団体負担をするのだ、こういうふうにおっしゃったわけですが、農林省はそういう観点に立ってこの対策事業を進めていくのかどうか、お尋ねをしておきたい。
  109. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 事業者の負担がどうなるかということでありますが、土壌汚染防止法によります事業のうち、費用負担法によりまして事業者に費用を負担させる事業につきましては、この法律に定めます算定方法に従って事業者に負担をさせる、こういうことでありますが、公害の原因となる物質によりまして被害を受けております農用地または農業用施設について実施されますいまお話しの客土、施設改築その他の政令で定める事業、これは費用負担法第二条第二項第三号によって処理をいたす、こうなっております。もう一つ、事業者の費用負担総額の算定方法につきましては、その一つは、事業費の総額に事業者の公害原因度、寄与率と申しますか、寄与度でございます、これを掛けて、その額から公害の原因となる物質が蓄積された期間等の事情を勘案して妥当と認める額を差し引く、こういうことにいたしております、同法第四条第二項。この点は、ただいま総務長官のお話にもございましたように、ただいまそこで事業をしておる事業が直接の加害的原因をなしておる、つまり寄与度がはっきりしておるというものはそれ相当に計算もできますが、たとえば徳川時代以来からやっております事業を、最近になって一つの事業家がそれを継承してやるというふうなものが、この加害に対してどれだけの寄与度があるかというふうなことも検討いたさなければならないと思うわけであります。そこで、このたびは、各県にこういう公害に対する費用負担審議会を設けまして、それぞれの実情を十分把握した上でこういうようなことをいたしてまいりたい。したがって、結論としては総務長官の申し上げたようになることだと思っております。
  110. 田中恒利

    田中(恒)委員 農薬の問題につきましてお尋ねをいたしたいわけでありますが、今日まで農薬は、その農薬が効果があるかないか、こういう問題、同時に、これを使用する農家が農業経営的に採算が成り立つかどうか、こういう二つの観点が、農薬を処理する場合の重要な指標として取り扱われてまいったわけでありますが、最近、農薬の公害性という問題がたいへん深刻な問題になってあらわれてきたわけであります。事人命に関する問題でありますだけに、この農薬の持つ危害防止ということについては、農薬行政の最大の問題になるかと思うわけでありますが、この際最も重要なことは、これらの農薬に対する試験研究開発機関というものが、今日日本の中でどれだけ完備をされているかということでありますが、この農薬の試験研究開発機関というものについての農林大臣の御所見を承りたい。
  111. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農薬に関する試験研究につきましては、農業技術研究所に農薬残留研究室等を新しく設けますほか、全国の関係試験研究機関の分場協力によりまして、農薬残留の緊急対策に対する特別研究を実施いたすことといたしております。農薬関係の試験研究の強化に従来もつとめてまいっておるのでありますが、この問題の重要性にかんがみまして、今後とも試験研究体制の整備をはかってまいりたいと思いますが、田中さんも御存じのように、財団法人であります残留農薬研究所等に対して四十五年度においても一億円の助成をいたしたりして、なお、来年度もそういうものを増額して、この問題の深く掘り下げた検討をいたしてまいりたいと思っております。  なお、毒性に関する試験研究は厚生省所管の国立衛生試験所におきまして総合的に行なわれておりますが、残留性慢性毒性試験は今後ともその需要がますます多くなることと考えられますので、ただいま申し上げましたような残留農薬研究所等を十分に活用してまいりたい、こう思っております。
  112. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、残留農薬研究所というものが財団法人でつくられて、政府が若干の補助金を出して、あとはメーカーと流通関係団体とがそれぞれお金を出してつくっていく、こういうもので正確な農薬についての研究ができるのかどうか、実は疑問を持っておるわけであります。むしろ政府が直接全額政府直轄の農薬の研究開発機関というものをこの際設置すべきである。メーカーやあるいは商社、団体、こういうものがそれぞれ金を出し合って、そこでつくった残留農薬研究所というものに対して、農薬の残留性についてほんとうに確たるものができるのかどうか、たいへん疑問に思っておるわけであります。こういう点は、むしろ政府が直轄をして、政府直営のものをこの際つくるべきじゃないか、こういうふうに思っておるわけでありますが、この点についての御意見をお聞きいたしたい。  同時に、農薬の被害を受けました場合に、それぞれの地域におきましては、いま農林大臣がおっしゃいましたように、各県の試験場で実はその被害の原因の究明を求めるわけでありますが、これがほとんどはっきりと出ないわけであります。これはなぜ出ないのか。一体農薬の登録というものは、農薬メーカーから農林省の外郭団体か、財団法人のいろいろな協会がたくさんあって、ここを窓口にして国立なりあるいは地方の農事試験場に試験成績の試験委託がなされていて、その試験結果が農林省の登録所へ持ってこられて、農林大臣が認可をしておるわけですね。ところが、その農林大臣が登録を許可したものが害を及ぼした。それをまた農事試験場で調べる、こういうことになっておるわけでありますが、この辺の被害と加害の、この試験研究の性格というものをもう少しちゃんと区別できるような処置ができないのかどうか、この機会にお尋ねをしておきたいわけであります。
  113. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまも申し上げましたように、私どものほうの機関の農業技術研究所でずっと続いて残留農薬研究等をいたしておるわけでありますが、さらに、さっき申しましたように、新しくその試験室をつくってこの研究をいたします、そのほかに、残留農薬研究所等にもいろいろ委託してやっておる、こういうことをお答えいたしたわけでありまして、私どものほうでは、そういうことについて手落ちのないように十分な運営をしてまいりたいと思います。  それから登録申請のお話がございました。これは農薬について問題が生じております事柄は、御存じのように、農薬そのものに関する問題と申しますよりも、農薬を使う場合の使い方に関する問題は科学的に新しい知見によるものでございまして、そのような心配はないんではないか。要するに、使い方について間違いを起こさないように指導するということが必要である。そういうことについて農林省としては十分な処置をとってまいりたい、こう思っております。
  114. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間がありませんので、あと二点だけ一括して御質問をいたしてみたいと思います。  一つは、農林省が定めました農薬の安全使用基準を守って農産物等に散布したにかかわりませず、農産物中から厚生省の残留許容を越えるものが出てきた、こういう事態が実は各地に出てきているわけでありますが、こういう場合には当然それらの野菜等農産物の廃棄処分がなされるわけでありますが、この場合に、国としてこれらの事故に対してどのような責任をとられるのか。関係者からはいわゆる廃棄農作物等に対する補償の問題が要請事項として出されるわけでありますが、これらの点が今回の農薬取締法の中にも何ら明確にされていないわけでありますが、この点についてぜひ国か責任をもって登録を認め、さらに使用基準に基づいてやったものについてこういう事故が起きた場合、国の責任を明確にすべきである、こういうふうに思うわけであります。  さらに、農薬取締法につきましては、いろいろと農薬の、特に残留農薬、慢性毒性等についての新しい要素が加わったわけでありますけれども、あるいは農林省が使用基準を示される、こういうことも出ておるわけでありますが、問題は、それを農家、使用者が正しく守るかどうかということになっていきますと、現実にはなかなかむずかしいわけであります。だから、この際、共同防除、いわゆる組織的、集団的に国が何らかの形でこれらの問題について指導していく、こういう体制を強化をする必要があるわけであります。この問題につきましては、植物防疫法の改正等も必要かと思うわけでありますが、今回は提示をされておりません。この問題についての農林大臣の御所見を承って私の質問を終わりたいと思います。
  115. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほども申し上げましたように、農薬それ自体につきましては、田中さんよく御存じのように、もう非常に毒性の強いもの等は逐次排除されてきておりますが、その使用方法によりましてはいろいろな害が生じてまいっておりますので、ただいまお話のございましたように、農薬使用につきまして、さらに一そう農林省としてはその適切を期するように十分指導してまいるようにいたしたいと思っております。
  116. 加藤清二

    加藤委員長 次は、林孝矩君。
  117. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、無過失賠償責任の問題に関して質問いたしたいと思います。  民法七百九条及び七百十九条による損害賠償請求において、原告、すなわち公害による被害者の被害の原因立証問題については、昨日以来当委員会の同僚委員からも質問がありましたように、公害という特殊性から考えて、その立証が非常にむずかしくなってきている。むしろ不可能であるということがはっきりとしていると私は思うのであります。被害者は専門的知識に非常に乏しいわけであって、またそれを補うための力も不足している。ところが、企業は秘密の保持をはかろうとする。加えて、わが国における公害の科学的調査体制は、非常に著しい不備が現実問題として横たわっておる。また、司法行政の整備も非常に未熟である。そのように考えてまいりますと、法律のたてまえからは原告と被告が公平な立場に置かれているが、実質的な公平でないのが現状である、私はこのように思うのであります。  こうした現状については最高裁民事裁判官会同でも認めているところでありますが、ここではっきりしておきたいことは、最近の公害によって泣いている被害者の人たちを救済するために、無過失賠償責任制度というものが必要と考えていらっしゃるのか。また、必要でない、そういう考えなのか。その点をはっきりして質問に入りたいと思うわけであります。法制局長官並びに山中長官、法務大臣の意見をお伺いします。
  118. 小林武治

    小林国務大臣 この問題は、もうこの委員会その他で非常な論議をかもしておりますが、私どもは、必要ない、こういう答弁はいたしておりません。必要のものもあろう、したがって、その必要のものはどれが必要か、こういうふうな考え方をもって検討をしておる、こういうふうにお答え申し上げております。
  119. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほども答弁申し上げましたけれども、私たちは私たちなりに、現在の諸法制の中でそのようなものが盛り込まれるかどうかの検討はさらに続けますし、さらに、一般的な論といたしましても、せめて挙証責任というものの転換等についてはさらに検討を重ねていくということは先ほどお答えしたとおりでございます。
  120. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 両大臣の御答弁につけ加えることはございません。
  121. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、法制局長官にお伺いしたいのでありますけれども、現行民法における公害関係訴訟において、被害者である原告が、先ほど申し上げましたように、法の前では公平であるが、公害事件の特殊性から見て、また、先ほど申し上げました理由から、実際は非常に不利な立場に置かれている。私はそう思うわけですけれども、法制局長官はどのように考えていらっしゃるか。
  122. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 民事責任の追及の場合に、いわゆる過失責任の原則とか、あるいは、これはまあ当然のことでありましょうが、因果関係の証明とか、そういうことをする必要が出てまいりますが、そこに公害の性格上非常に困難な場面があるということは、これは現実の問題としてわれわれ承知しているところであります。したがって、公害内容等によってやはりいろいろな場面があり得ると思いますが、そういう公害の性格、内容等に応じて、両大臣がいまお話がありましたような、そういう面から見る必要を考究すべき余地のある問題をこの際考えるべきであろう。そうして、そういうものについて、各場面における、先ほどおっしゃいました過失責任の原則等に対する例外規定を設けることがいいかどうかを考究していくべきではないかというお話がありました。要するに、私が言いたいことは、ただいまの御質問に対して、一がいに、一般的にあなたのおっしゃるとおりであるとは言えませんけれども、そういう場面を考えなければならぬという余地がやはりあるのじゃないか。そのために、現に、個々の場面について、具体的な公害の中身に応じて考えていこうではないかという考慮が政府において払われているのだろうと思います。
  123. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いままでの御答弁を総称しますと、公害に関して無過失賠償責任制度を制度化するということは基本的には必要である。それはいろいろな場合において考えなければならない。また、原告側が非常に不公平な立場に置かれているということを考えて、これからそうした面の救済ということについて検討していかなければならない。そういう意味と解釈してよろしいでしょうか。
  124. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 無過失責任制度というものを一般的に考えていく必要があるかどうか、これは私は疑問に思っております。ただ、現実の問題として、公害等の特殊な性格からいって、現に、鉱業法とか、よく引用されますような二、三の例がありますように、ああいう場合について、公害についてもそういう余地がありはしないか。そういうことからいって、検討の余地があろうということを申し上げたわけであります。
  125. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうであるならば、民法上の特例として、公害について無過失賠償責任を制定する要素はある、そういうことですか。
  126. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 同じことを申し上げることになりますが、私は、一般的にその必要があるということを感じておりません。おりませんが、いまも申し上げたことでありますが、鉱業法とかその他の部面に必要とされたような事情がほかの面で絶無であるとは断言できまい、そういう面における考慮をこれから考えていく必要があるのではないか、こういうことを言っているわけであります。
  127. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現実の問題を踏んまえて必要性を私たちは叫んでいるわけでありまして、答弁もそれを前提にして答えていただきたいと思います。  法制局長官にお伺いしますけれども、民法上の特例として一般的に制度化できない、その理由。いまも少しお話がございましたけれども、当事者に実質的な公平がはかられるような別な考え方をお持ちかどうか、その点についてお願いします。
  128. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これは一法制当局がお話し申し上げるのがいいかどうかわかりませんが、私への御指名でございますから、一応お答え申し上げます。  現実のそういう制度全般について、政府の部局として、責任当局として考えますのは法務省ではございますけれども、過失責任の原則、これが近代司法の一大原則であることは御承知のとおりでございますが、これが急に無過失責任主義に転換するという要素が突如として出てきたとは私は思わないわけです。したがって、過失責任の原則というものは、やはり一般的な原則としては、少なくも現在のところは維持されるべきものではないかと思います。そうしますと、それに対する無過失責任というものは例外になります。例外になりますということは、当然に、無過失責任を追及する場合のいろいろな要素、要件、そういうものがきわめて明確でなければならぬことになるわけです。そこで、公害一般についてとか、あるいはもっと極端にいえば、無過失責任一般になりますけれども、とにかく、何といいますか、いささかあいまいな——あいまいなというか、明確でないものを基礎にして無過失責任の制度を導入するということは、これはむずかしいのじゃないか。やはり個々具体的な場合に、きわめて明確になった要素、要件に応じて、そこに無過失責任を導入していくことを考えるべきではないか。  先ほど私が絶無とはいえないだろうと言ったのは少し言い過ぎであります。ものの言い方は、私どもは理論上の言い方としてはよくそういうことを言いますが、一般にはなかなか通用いたしませんので、絶無ではないと言ったのは言い過ぎでございます。そういう点を考えていかなければならぬだろう、それが一体どの程度の量になるか、これは今後の研究問題だと思います。
  129. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私がお伺いしたのは、当事者に実質的な公平がはかられる別な考え方をお持ちかどうか。今度は法務大臣にお願いします。
  130. 小林武治

    小林国務大臣 これは、私午前中にもここでお答え申し上げましたが、無過失責任というものは例外中の例外だ。したがってこれは、一般民法に対する一つの抽象的な例外規定などはきわめて困難である。しかし、公害のような特殊な、被害の深刻で広い、そしてしかも証明が非常に困難だというものについては、中には無過失責任を認めざるを得ないものがあろう。したがって、個々の問題、個々の公害の態様について検討をする。先ほどのことばでいえば、これは縦の問題でひとつおやりになって、それが広くなれば横の連携もできるが、いまは公害全体というようなことばでもって公害を包括的に無過失責任の規定をすることはきわめて困難であろう。しかし、中にはそういうことをせざるを得ないものがあろうと私は思うから、そういう個々の問題について、すなわち縦の問題として検討しておりますと、こういうことを申し上げておるのであります。ことに、無過失責任のものは、もう長い間の、一つの人間の社会生活あるいは経済生活の基本的な秩序でありますから、軽々にこれに対して一般的な例外を設けることは社会に非常に混乱を生ずる、こういうふうに私は考えておるのでありまして、したがいまして、いまのような包括的な規定は非常にむずかしい、個々のものについて検討して、この際は縦の問題についてひとつ検討をしていく、そしてそれが広くなればまた横にも規定ができる、こういうことになっておるのであります。  さような意味で、公害などという全体としてあいまいなものをそのままとらえて、そして無過失責任を追及するということは非常に危険なことである、困難なことである、こういうふうに思っておるのであります。
  131. 林孝矩

    ○林(孝)委員 法務大臣にお伺いしますが、個々の問題というのは、こういう物質について起こった公害という考え方なのか。個々の問題という個々の内容についてお話し願いたい。
  132. 小林武治

    小林国務大臣 法律に書くには、やはり無過失責任を認める公害の態様というものを限定しなければなりません。たとえば、カドミウムあるいは水銀の問題、いろいろの問題について個々に具体的のものを対象として、その行為についての無過失を認める、こういうふうな考え方を持っていくべきであろう、かように考えております。
  133. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、法務大臣がそういう考え方で無過失責任賠償制度の問題と組り組まれてこれからいくというわけでありますけれども、法務大臣が現在考えられているこの制度の制定へのプログラムといいますか、たとえば臨時国会では間に合わなかったけれども通常国会提案するとか、そうしたプログラムをいま考えられておるようであれば説明していただきたいと思います。もし全然考えていらっしゃらないようであればけっこうです。
  134. 小林武治

    小林国務大臣 いま私が申し上げたように、公害の態様には種々雑多なものがありますから、その公害の実態をとらえて、その本体を所管しておる役所、所管庁において——これはやはりそこまでいかなければ被害者の救済はできない。この深刻な被害に対して過失の証明がきわめて困難、あるいは不可能である。こういうふうなものについてはさようなことを考えなければなるまい。したがって、そのことは、その公害の実態をとらえておる所管庁においてまずその検討をして、私どもと相談をしていただきたい、こういうふうに言っております。したがって、これらの問題は、私どもからいまそのプログラムを申し上げるという段階ではございません。
  135. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは各省の所管のもとに検討を進めているという話でございましたが、たとえば厚生省においてはどのような検討をされておるか、お願いします。
  136. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先刻も申し上げましたが、私は、公害による損害については無過失原則を適用することが望ましいというような考え方を厚生大臣として持っておったことは事実でございます。それの法律のまとめ方について、水の中に入っているどういう物質ごとに規定をつくるか、あるいは大気の中に入っておる硫黄酸化物であるとか、粉じんとか、さらにまた振動でありますとか騒音でありますとかいうような、一つ一つの公害ごとにその無過失原則を導入する法律をつくるがよいか、あるいは一本にして横の法律をつくるがいいかということについては、これは私も検討をいたしておりませんが、たまたま総理大臣も無過失原則の法律をつくるべく検討をするということを言われておりますので、縦の方式であれ、横の方式であれ、私はそれができることを期待しつつ、また私どもも、それは縦の方式で行くんだということになりますならば、縦の方式の検討を自分の所管のものについては一日も早く進めてまいる考えであります。
  137. 林孝矩

    ○林(孝)委員 農林大臣、お願いします。
  138. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公害に対する政府の姿勢といたしまして、やはり各省がまちまちであっては公害を除去する目的を達成することができないという見地に立ちまして、総理大臣を本部長にいたしまして公害対策本部ができたわけであります。したがって、私ども、それぞれ持っております処置につきまして、やはり対策本部に持ち寄りまして検討をいたした上で、ただいまのお話のようなことを政府全体として態度を決定することがよいではないか、したがって、そういう資料を出すための検討を鋭意掘り下げて私どもはやっておる、こういう段階でございます。
  139. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの農林大臣答弁は、無過失賠償責任の必要性を認めたという判断をしてよろしいでしょうか。
  140. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういう問題は私どもだけで判断を下さずに、やはり政府全体として判断を下す必要があるのではないか。そうしてまた、私どもは、それぞれの、土壌汚染もありますし、農薬の問題もあるわけであります。したがって、そういうものを除去することについてどのような姿勢をとるべきであるかというふうなことを、やはり公害対策本部というもので鋭意検討をして、政府方針をきめるべきではないか、こういうことを申しておるわけであります。
  141. 林孝矩

    ○林(孝)委員 公害対策本部ができて、これはきのうやおとといできたわけではないわけです。被害はもう十数年、長期にわたっての被害が続いておる。当然、公害対策本部ができた時点においてこうした問題も検討されなければならなかったのではないか。その結果、当然この臨時国会にそうした法案等が提出されなければならなかったのではないか。それが現状のような状態というものは、結局、いまの厚生大臣、農林大臣等の答弁あるいは法務大臣の御答弁を考えてみましても、いままで対策本部で検討した形跡があるのかないのかということが非常に疑わしいわけです。一体、そういうことで公害の問題の解決というものができ得ると考えているならば、これは大問題である、私はそのように思います。そうした態度を変えることが、政治姿勢を問題にされている現政府の一番取っ組むべき問題ではないかと、そのように申し上げておきます。  法制局長官にお伺いしたいのでありますけれども、国の営造物に関する、国家賠償法二条一項の解釈ですが、これについては、八月二十四日の最高裁判所判決が示すように、無過失損害賠償責任を規定したものと考えている、そのようになっておるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  142. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 その最高裁の判決があったことは記憶しておりますが、それは無過失責任の導入というよりも、その営造物の管理の問題だものですから、その管理責任との関連においての話であろうと思います。おっしゃるような無過失責任主義をそこに導入したということになるようなものではなかったのではないか。突然のお話でございますが、さように考えております。
  143. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま国営のアルコール工場から無過失で排出している廃水に含まれている窒素によって農家の稲作が被害をこうむった、実際こういう事例が茨城県石岡市の事例としてございます。この問題に対して、最高裁の判決は、国が責任を負うのかどうかという問題でありましたけれども、判決では、無過失であっても国が責任を負うべきであるというので、国営のアルコール工場に対して国が敗訴したという判決が最高裁で出ておるわけです。これは経営こそ国でありますけれども、企業が排出したことによって起こった被害、この被害が無過失によって起ころうと過失によって起ころうと企業が責任を負うべきであるという事例と、こっちは国営のアルコール工場から出た事例で、これはもう最高裁が無過失賠償責任を国に課しているわけですけれども、この二つのケースを法制局長官はどのように考えられるか。いま御答弁があった営造物という考え方からいけば、営造物でくくって、国も企業も同じという考え方から、無過失賠償責任の問題が企業側にも当然問われるのではないか。法律論上からいっても全然おかしくない理論だと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  144. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 最高裁の判決をいま御紹介になりました範囲で了解をいたしますが、これはほんとうは私自身がよく読んでみないといけないと思いますけれども、その限りでお答えをいたしますが、国家賠償法第二条の要するに問題でございますね。これは、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために」、その瑕疵があることについて、過失、無過失を別に問うてはいないということはおっしゃるとおりでありますが、この瑕疵によって、いずれにしても瑕疵がなければだめでありますけれども、瑕疵があったために生じた損害について賠償をしなければならぬというのは、まさに国家賠償法第二条の明記しているところでありまして、その点については一点の疑いも差しはさむ余地はむろんありませんが、それが一般的な過失責任に対する無過失責任の原則の導入であると言い切れるかどうか、これはやや疑問があると思います、ほんとうに。確かに「瑕疵があったために他人に損害を生じた」その瑕疵のために起因する、それが過失、無過失であるかをここでは問うていないということは言えると思います。
  145. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一年ほど前でありますけれども、東海村の原研で原子炉から放射能が漏れるという事故があったのでありますけれども、これと同じような事故が過失なくして、たとえば京大の熊取にある原子炉で起こって、そのために付近住民に被害が出たとした場合に、国がどのような責任を負うのか、その場合の根拠法律は何か、その点についてお願いします。
  146. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法律の試験を受けているような感じでございますが、大学の研究室でございますか、この御設例は。
  147. 林孝矩

    ○林(孝)委員 原子炉で……。
  148. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 大学の原子炉、これは少なくも国の施設になりましょうから、大学の——国立大学でございますか、おっしゃっているのは。そうじゃないのですか。国立の大学でしょう。
  149. 林孝矩

    ○林(孝)委員 国立の原子炉。
  150. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 少なくともここにありますただいまお話しの国家賠償法等の関係もございましょうし、場合によれば原子力の損害賠償責任のほうの問題も出てくるかもしれません。これはもう少し条文を研究さしていただかないと、すぐにはお答えできません。
  151. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間がございませんので、結論に参りますけれども、この判例をあげたのも、またこの国立原子炉の問題をあげたのも、いわゆる営造物のいま説明がございました「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」という国家賠償法第二条一項の規定、これが四十五年八月二十日に無過失賠償責任制度を認めたものであるという最高裁が判決をしているわけです。ですから、いまこうした例をあげたわけであります。先ほどから、あるいは昨日、また臨時国会が始まって以来、非常に無過失賠償責任制度の立法化というのはむずかしいむずかしいという話が、答弁に一貫して出てきたわけでありまして、しかしこうした営造物として考えていった場合に、決してむずかしいものではなしに、民法の特例法としても、一般法としても当然無過失賠償責任制度は取り入れることはできる、立法化することはできるということを申し上げたかったわけであります。その点をよく考えられて、公害対策本部においても、また法制局長官においても、その立法化に対して取り組んでいただきたい。  その点を申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  152. 加藤清二

    加藤委員長 次は米原和君。
  153. 米原昶

    米原委員 私は、日本共産党を代表して、今回提出された公害関係諸法案及び今後の公害対策に対する政府の基本的な姿勢と態度について若干質問したいと思います。  公害は、言うまでもなく一つの社会的な犯罪であります。人の生きていく環境を破壊し、生命や健康に害を及ぼしていく。そういう意味では本質的には戦争犯罪と同じ社会的な犯罪であります。そういう中で、わが国の現実は、その公害が世界の先端を行く実情にあります。その中で、水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、数多くの死者や病人を出しております。こういう事態で、このいわゆる公害国会が開かれておる。政府はこういう事態に対して、特に被害者に対しても、私はもっと謙虚な態度で答弁していただきたいと思う。  昨日からのこの委員会の問答を聞いておりましても、私は政府にそういう真剣な態度が見られないのをはなはだ遺憾とするものであります。ことに、その中で、総理が世界に冠たる公害諸法などと大言壮語された、これには私は怒りを覚えます。昨日来同僚議員からもこの点について指摘がありました。特に社会党の中谷鉄也君は、総理がこういう大言壮語を取り消すべきである、そういうふうに要求されました。私も全くその点では同感であります。もっと謙虚な態度で臨んでもらいたい。単に日本の国民に対して謙虚であるばかりでなく、私はこのことばは国際的にもはなはだよくない影響を与えると思うのであります。一九六八年の国連総会十二月三日にいわゆる第九十一提案というものが行なわれた。一九七二年にスウェーデンで公害問題に対する国際的な会議を開く、この提案提案国になることを日本は求められながら、これを拒絶しております。こういう態度では、真剣に日本の政府公害対策をやっている、やる態度があるとは国際的にも認められていないのであります。その中で、ことばだけ世界に冠たるなどというようなことは、私は根本的に誤った態度だ、こう思うのであります。このことばはぜひ取り消していただきたいのであります。  公害対策の根本は、要するにいろいろな法案や手続はあるでしょうが、しかし、根本は人間の生きていく環境をはっきり守る権利、これを第一に保障することでなくちゃなりません。その点では、政府もすでに御存じでしょうが、この十月一日からアメリカのミシガン州でいわゆるミシガン法というのがすでに実施されております。その法律によると、公害を受けるおそれです、現実の公害がまだ発生しているとはいえない、おそれがあった場合には、何人といえども裁判所に対して衡平法上の救済を受けることができる。単にこれは損害賠償を求めるというだけの問題じゃありません。その公害を引き起こすおそれのある企業がその操業を停止することを裁判所に対して求める、こういう権利がすでに保障されております。しかもこういう方向は、アメリカの単に州法じゃなくて連邦法にもなろうとしている動きがあるということを聞いております。こういう中で、いま出されている公害基本法その他の諸法案が、そういう根本的な点では決して十分じゃないということがいえると思うのです。単に個々のそういう人間の権利を保障するというだけでなくて、私は、同時に住民の代表であるところの地方自治体に十分な公害防止権限を与えなくちゃならぬ。この地方自治体権限の問題にしましても、昨日も大正五年の工場法の制定の問題から引用があって質問が行なわれました。実際にも工場の認可とか水の規制とか大気汚染規制とか、そういう地方自治体が本来持っておった権限が逆に奪われてきたというのが公害諸法の歴史ではありませんか。私はどうしても、今度のようなただ知事委任するというような委任事務の問題じゃなくて、地方自治体権限をほんとうの意味で移さなくちゃならぬ、そういうふうに考える。そういう立場に立って私は具体的な質問をしたいと思うのです。抽象的な論議を繰り返して、本日の諸新聞が報道しているようなコンニャク問答などという批評を受けたくありませんから、具体的な問題で聞きたい。  いま、国民の多数が望んでいるのは、ほんとうに公害がなくなるということであります。そうしてまた公害を発生した加害者に対して十分な責任をとらせる、処罰を加える、こういうことが保障されることを望んでいるのであります。どういう法案をつくりましても、もちろんどんな法案でも穴というものはあります。ですから、問題は法案だけの問題じゃありません。それに対して政府がどういう態度で今後臨まれるかということが根本問題だと思うのです。簡単にいえば、たとえば東京都民の大多数は、この夏発生しました光化学スモッグあるいは硫酸ミスト、こういうものを絶対に起こしてもらいたくない、一掃してもらいたい。どういう法案が出ましょうとそういうことができなければ意味ないのです。ですから、私はもう率直に聞きますが、今度の大気汚染防止法によって東京の空から光化学スモッグや硫酸ミストを一掃することができるかどうか、大気汚染をほんとうになくすることができるか、この点について率直にひとつ答弁していただきたいのであります。
  154. 内田常雄

    ○内田国務大臣 東京の空からスモッグあるいは高濃度の硫黄酸化物を退治できるかということをお話しでございましたが、私どもは、厚生省といたしましては、御承知のように、今度はもう全国すべてを規制対象にしよう、いままでは東京とか四日市とか大阪とかいうことで——すべてを環境基準のもとに置こうということと同時に、東京のようなところにつきましては、これはもちろん早くきれいにするんでありますけれども、一挙にきれいにできない面もございますので、逐次その規制基準機関ごとに詰めてまいります。ことしも二月に規制基準を強化いたしましたが、さらに状況に応じて硫黄酸化物の規制基準を強くいたしますとともに、硫黄酸化物だけでなしに、いまの光化学スモッグだのの原因になります窒素酸化物などにつきましても、いませっかく環境基準を作成中でございますので、それに応じた排出規制というものもやりまして、私は何年何月までとはいえませんけれども、少なくとも現状を最も近い間に改善するような努力を続けます。
  155. 米原昶

    米原委員 私も、何もこの法案が出たからすぐにできるなどとは思っていない。だれも思っていないと思うのです。しかし、そういう方向に重大の一歩を進めていくことができるかどうか。いま環境基準を全国的なものにするとかいろいろ説明がありました。しかし、残念ながら環境基準というのは依然として目標なんです。そういうものです。現実に申しますと、東京の大気汚染というのは、単に東京都内の自動車の排気ガスとかあるいは工場から出るばい煙とか、そういうものだけで汚染されているのではなくて、ことしの光化学スモッグができたときにわれわれもヘリコプターを使って一応調査しました。そのときにも京浜工業地帯と京葉工業地帯、これの汚染がずっと移動して移ってきている、こういうことはもうだれでも知っていることです。  そこで、その中でも有名な川崎市における状態です。先日も、公害病の患者がこの数日前に二人なくなったという報道がありました。州崎市におけることし二月現在の亜硫酸ガス発生三十八工場の実際の排出量はどのくらいかという調査が、神奈川県から出ております。神奈川県議会で発表されております。それによりますと、一時間当たり六千三百五十三立方メートル、これは工場が届け出た数字です。ほんとうに正確にそれを届け出ているかどうかわかりませんが、届け出ている。ところが、いわゆる排出基準で許容されている量はどれくらいかといいますと、一時間当たり一万二千四百五十一立方メートル、つまり現在排出されている量の二倍近くが現在の排出基準じゃ許可されている。これははっきり公表されている数字です。ここにあります。こういう数字です。現在の状態でも川崎の状態がどんなにひどいか、二人の死者が最近出たというだけでも明らかなんです。ところが、現在の排出基準でいきますと、これの二倍出ても排出基準に合っている、こういうことになります。しかもこの排出基準というものは、今度の改正案で変えるということは言われておりません。そういう状態のもとで一体汚染をなくすることはできるのかどうか、この点について厚生大臣のはっきりした御答弁をお願いします。
  156. 内田常雄

    ○内田国務大臣 環境基準に到達させますためには、地域により三年とか五年とか、あるいはいままでの努力ですと十年もかかるものもございましたのが、それではならないということで、さきも申しますように、私どもは排出基準を定期的に締め上げまして、その到達期限を縮めるような努力をいたしております。これはひとつぜひそう信用していただきたいのですが、ただこんでいるところに新しいばい煙発生施設をつくりますと、それだけよけいに出ますから、そういう新しいものにつきましては、今度の改正法におきましても特別排出基準という制度を設けまして、一般の排出基準よりも特に強い規制をかけてまいります。また、地域によりまして、非常に季節的に硫黄酸化物等が多量に出ます場合には、これは燃料規制もやらざるを得ないということに踏み切りまして、燃料規制もかける。燃料規制に従わない場合には、都道府県知事が勧告もできるし、また場合によっては施設の停止もやろう、こういうことまでやらせております。  いまお話しの川崎市の排出規制基準というものが非常にゆる過ぎて、いまの倍も出してもそれにはまってしまうものであるかどうか、私はここでわかりませんので、それはさっそく調べさせるようにいたします。
  157. 米原昶

    米原委員 川崎市の実情の資料については、ではあとで厚生大臣に見てもらいましょう。しかし、これは神奈川県議会でもすでに発表されている数字なんです。ですから、私は間違いないと思う。そういう中で、いまも言われました、つまり単に排出基準だけでは実際はだめなんだ。地域によって、そういうふうに特殊に汚染する地域が出てくる。単にいままでのような、いわゆる基準というあのやり方ではだめだ。大気を汚染するようなそういう工場の施設を移転させるとか、地域的な規制が必要になってきます。私はそういう点でも、地方自治体にこれを規制させる権限を与えることが重大だと思うのです。  美濃部東京都知事は、今後東京では光化学スモッグを絶対に起こさないようにしたいということを何べんも言っております。そういう意味では、当然政府としてもそういう努力を可能ならしめるようにすべきだと思う。光化学スモッグの原因となる窒素酸化物や、硫酸ミストの原因となる亜硫酸ガスなどの排出量の半分以上は、発電所とかガス事業とかあるいは鉄鋼といったようなところから出していることは言うまでもありません。そしてこういう企業を取り締ろうとしても、知事に与えられた権限は、通産大臣に要請することができる、こういうことになっております。これではほんとうの規制権限が与えられてはいません。あるいは炭化水素は、ほとんどが自動車の燃料から発生しております。これらについても、アフターバーナーとかブローバイガス除去装置、そういうような防除設備の取りつけを義務づける、緊急時には知事交通制限権限も持っている、こういうふうにしてこそ私は可能になってくると思うのです。そういう点でも、今度の改正案では地方自治体にほとんど権限が与えられていない、これが事実じゃありませんか。一体これで住民の大多数が望んでいる硫酸ミストをなくするとか光化学スモッグをなくするとかいう保証がどこにあるといえますか。こういう点について厚生大臣の答弁をお願いします。
  158. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そもそも公害というものは広域的なものであると同時に、私は、法律の中にもしばしばそういう用語が出ておりますけれども地方のその現地の自然の状況に非常に関係あるものでございますので、各地方地方に応じて、知事なり都道府県権限を強化するという方向で今度の法律の諸改正もできておるはずでございます。ただ、硫黄酸化物のようなものは、初めから日本全体を八段階くらいの規制基準をつくりまして、そして東京などは一番強いのがかかるわけでございますが、それをつくります際には、都道府県知事意見を聞いて協議をしてつくるということにいたしておりますが、その他のばいじんとかあるいは有害物質などにつきましては、いわゆるシビルミニマムと申しましょうか、全国一律の排出基準をつくりながら、地方知事にそれにかえていわゆる上のせの権限を実は認めております。燃料基準なんかにつきましても先ほど申し上げたとおりでございます。また、火力発電所、ガスの発生設備なんかにつきましては、今度もいままでの関係法律体制をさらに数歩進めまして、きのう来お尋ね、御意見がございますように、要請権というものを認めるだけでなしに、立ち入り検査も認めまするし、それからほんとうの緊急時には通産大臣の権限知事が飛び越えて、みずから排出規制をこれらの電気ガス事業者に指図をすることができるような規定も実は留保されてございます。さようなことで、私ども地方権限を決して中央にいつまでも持っておろうという考えではございませんことをぜひ御理解いただきたいと思います。  ただ、よく言われますことは、東京都におきましては、硫黄酸化物の排出基準においても国と違う排出基準のきめ方を条例をもってしておる。国のきめ方はゆるふんである。東京都知事のきめ方はより科学的で、きついんだから、あの方式によるべしというような意見が前国会以来しばしばございますので、私どもも真剣にこれを取り上げて比較検討いたしましたが、いま国がやっておりますように一本一本の、一つ一つのばい煙発生施設ごとに基準をかけるか、あるいは美濃部方式のように一つ一つの施設じゃなしに一つの工場を一本にまとめて、それから排出される硫黄酸化物等の総量を日量で規制するかということにつきましては、どちらがきついともいえないという結論が出ております。ただし、これは世界的にもいろいろ動きがある問題でございますので、私どもも決して将来永久にいまの国の方式をとり続けて、美濃部方式というものは一顧の値打ちもないとは私はしないほうがよろしいので、事態に応じて、科学の進歩に応じて、これらのことも将来さらに研究して、改正すべきものがあれば改正するという態度でございますので、そのことも御了解をいただきたいと思います。
  159. 米原昶

    米原委員 だから、最初に申しましたように、実際の地域の具体的な問題については、本来地方自治体権限を持つべきである。そうして、もちろん一地域だけに限らない、全国的な問題もあります。その場合には、むしろ本来知事権限を持っている、そうして他の府県知事とも相談してやっていく、政府とも相談していくというふうにするのが本来の姿ではないかというのが私の見解であります。ですが、コンニャク問答は繰り返したくないですから、問題を進めます。  次に、今回提出された公害関係法案の中には、地盤沈下を防止するための法案が入っておりません。これはどういうわけかという点であります。たとえばゼロメートル地帯といわれる東京の江東地区は年々地盤沈下が進んで、防潮堤のかさ上げを繰り返してきておりますが、早急に有効な対策を立てないと大きな災害が起こりかねない状態であります。これを防ぐための立法措置、あるいは現行の工業用水法やいわゆるビル用水法を改正する必要がどうしてもあるのではないか、こう考えるわけでありますが、なぜこの問題が今度の国会で取り上げられなかったか、この点です。現在の工業用水法の規制基準は、水を揚げる揚水機の吐き出し口の断面積とストレーナーの深さできめられておりますが、地形を十分考慮していないので、たとえば東京の江東地区、ここでは二百数十メートルというのが基準になっています。しかし、北部のほうの地区では百数十メートルです。百七十メートルまでいくとどんどん掘ってもいい。ところが、百七十メートルぐらいのところにいい地下水があるというので、依然としてどんどん掘っているわけです。地盤沈下がどんどん進んでいる。したがって、何とかしてこのくみ上げられる水の絶対量を押えるとか、あるいは、工業用水道もやっているけれども、これが全部は使われていないという実情もありますが、工業用水道がつくられた場合にはこれを使わせるとか、そういう措置をとる必要があると思うのです。実際には、そういう現状で地盤沈下が進んでいるために、防潮堤をつくるとか排水ポンプをつくったりして、膨大な費用が必要とされています。これに対する国の援助は、内水排水のためのポンプ設置の事業では一四%、防潮堤のかさ上げや水門の設置は、河川区域で三〇%、港湾区域で四〇%しかありません。実際には、今度の国会に出されたこの……
  160. 加藤清二

    加藤委員長 米原君に申し上げます。あなたに与えられた時間が一分超過いたしました。
  161. 米原昶

    米原委員 費用負担法はこういう場合に適用されないことになっておるが、こういう矛盾した話はないじゃないか。当然こういう公害防止の費用を出させるべきである、こう考えますが、この点についての見解を聞きたいと思います。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 地盤沈下の問題でございますが、これは確かに、御指摘のように一つ問題が私どもあると思っておりまして、実は工場立地及び工業用水審議会に前々から問題点を諮問をしております。おそらくもう間もなく答申が出てまいりますので、それに基づいていろいろなことを考え直さなければならないというふうに思っております。と申しますのは、いまの工業用水法が、工業用水道ができると、そこで水源の強制転換をさせておるわけでございますので、工業用水道がありませんと、それができないようなことになっております。江東地区ではもう工業用水道がございますので、ほかの地区のことを考えますと、大体水源転換が行なわれて地盤沈下はないはずでございますが、実際は非常にある。それはおそらく城北とか埼玉県の南部の取水が影響しておるものと考えますので、これらの地区の工業用水道をまたつくらなければならぬ。城北地区は間もなくでき上がるわけであります。それで大体事は済むであろうといま考えておるわけでございます。  それから、工業用水道ができてもなお適当な取水をしておるということは、これは水源の強制転換をさせることになっておりますから、水道ができますと、一年ぐらいたちますと、もうそれはしてはならぬということになっておるわけです。  それから、パイプの断面等のお話がございましたが、これは、水質とか、あるいは水脈とか地盤とかいうものをよく考えて、総合的に判断をしなければならない。そうしておるつもりでありますけれども、なお努力をいたします。
  163. 米原昶

    米原委員 最後ですから。質問やめますが、ただこの事実だけ言っておきます。  工業用水道をたとえば東京都がつくった。それにもかかわらず、二十二、三万トンの供給能力があるのに、実際は十万トンは使われていない、こういう実情です。(「もうやめさせろ。」と呼ぶ者あり)
  164. 加藤清二

    加藤委員長 許してあります。——米原昶君、いいですか。あなた、話半分ですが、いいですか。あなたの質問が、最後がトンボ切れだから許しておるんです、委員長は。
  165. 米原昶

    米原委員 つまり現実には、用水道がつくられて水があるのに十万トンも使われないでいる、こういう実情もあるのだということを考えていただきたい。いま、強制的にできるのだと言われておるが、できてない、こういうことです。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当然に水源の強制転換をさせておるはずでございますけれども、もしそういうことが事実と違っておりましたら、実情を調査いたしてみます。
  167. 加藤清二

    加藤委員長 いいですか。  次は内藤良平君。
  168. 内藤良平

    ○内藤委員 私は、日本社会党の代表質問を補足する立場で、きのうの委員部に対する通告は、運輸大臣、通産大臣というぐあいにお話ししましたが、どうしてもやはり総理大臣の出席を求めたいのですけれども、やむないとしました場合には、総務長官の御答弁を得たい、こう思っております。  そこで、今度の出ました法案の中で、私は、自動車関係、排出ガスの関係にしぼってお尋ねしたいと思っているわけですけれども、ずっと法案を見ますと、結局、加害者といいますか、これはきのうからいろいろ議論が出ましたが、経営者側、事業者側の責任といいますか、義務といいますか、そういうものが今回は相当きびしく出ておる。模様によっては、改善あるいは勧告、あるいは命令、こういうぐあいになるわけであります。それに対して従わない場合には処罰をする、こういうきびしい姿勢です。ところが、この自動車の排出ガスの関係につきましては、それと同じようなぐあいにいってないのですね。案文を見ましても、おそれがある場合には、いわゆる運転者の皆さんあるいは使用者の皆さんに協力を求める、そこでとどまっておる。そして今度は交通規制のほうにいっているわけであります。これは非常に特徴的な面だと思うわけでありますけれども、なぜこういうぐあいになったかということです。この点を総理府総務長官にまず聞きたいと思います。
  169. 山中貞則

    山中国務大臣 公安委員長に御答弁願ったほうが正確だと思うのでありますが、今回の道交法では、そういうことを踏まえて、新しく自動車交通公害という角度からとらえておりますので、あるいは御指摘のような点、不備な点があるかもしれませんが、公安委員長の御答弁に譲りたいと思います。
  170. 内藤良平

    ○内藤委員 公安委員長の前に私が聞きたいのは、いまのような状態で、今度の法案のような状態で排出ガスの規制ができるかどうか、住民の皆さんがこうむっておる公害防止できるかどうか、この点なんです。自動車公害、排出ガスの防止、この点につきましては、どこにその責任があるのか、これははっきりしてないわけです。住民の皆さん——住民と言ってもいいでしょう、今日のモータリゼーションの状態でありますから。住民の皆さんに協力を求める、その段階にとどまっておる。そのあとは交通規制でこれを防止しよう、これだけなんです。ですから、他の法案と比較してだいぶ違うでしょう。長官、これはわかるでしょう。ところが、今日の過密地帯あるいは大都会のこのスモッグなり大気の汚染を、それでとどめることができるかどうかという問題です。これは本部におきまして、あなたは総元締でありますから、どうしてこれだけそういう状態になっておるか、その関係を聞きたいのです。
  171. 山中貞則

    山中国務大臣 今回の道交法で、新しく自動車交通公害という、排気ガスの面に立ち入ってつかまえるということは、一つの前進だと思います。その際に、大体交通規制ということは、たとえば騒音、振動あるいは排気ガス等において、そういうものが周辺の人々に環境悪化をもたらしてはならない。すなわち、学校とか病院とか、その他の住宅街、社会福祉施設、そういう周辺等に、ことさらに重点的に通行禁止その他の措置をとるとともに、環境その他が異常に排気ガスによって悪化されたと思われる地帯については、たとえば迂回あるいはスピードの制限、あるいは通行の停止、そういうことをもってやるわけでありますから、この法律によって相当な前進であることは、私は間違いないと思っております。
  172. 内藤良平

    ○内藤委員 もうちょっとあなたに聞きたいのですけれども、あなたは、先月の産業公害特別委員会におきまして、自動車は移動する公害発生源だ、こういう御発言をしていますね。このお考えは変わりないでしょう。公害の発生源と御認識なさるならば、その発生源に対する規制というものを今度の公害法案の中で明らかにしなくちゃならぬと思うわけです。ところがそれがないのですね。交通規制だけです。他の法案は発生源に対するいろいろな注文が出ております。その点はどうなんですか。あなたは認識しておるわけでしょう、発生源として。
  173. 山中貞則

    山中国務大臣 認識はいたしておりまして、そういうものが、たとえば一酸化炭素なら一酸化炭素、その他の有害物質もそうでありますが、自動車の排気ガス中に幾ら以上含まれてはならない、したがってアフターバーナーその他スクリーン等の設備をしなければならないというのは、道路運送車両法による運輸大臣の権限としてそういうものが規格として強制されるわけでありますから、そういうことに、したがって車体の構造において従わされるということになるわけであります。それ以前においては、個々にそれぞれ走っている自動車を一々つかまえて、これが発生源であるといって、つかまえられたものだけをその場で処罰するとかなんとかいうのは、この道路交通に関する自動車については、ちょっとなじまないものではなかろうかと思うわけであります。
  174. 内藤良平

    ○内藤委員 それでは、私は運輸大臣にお尋ねしますけれども、いまの長官の発生源ということ、これは法律では「使用者」、「運転者」というぐあいにしています。しかし私は、その段階でとどまっておること自体に問題があると思う。やはり私は、廃棄物の今度の法案にありますように、メーカーの段階というものをとらえなくちゃならぬじゃないか。廃棄物の場合にはメーカーは、その物が使用されて、それから廃棄される段階までも考えてつくらなくちゃならぬというわけです。ですから今度の自動車公害問題につきましては、メーカーの段階、つくる段階での規制ということは、やはり発生源という関係の中で私はどうしてもなくちゃならぬと思うわけでありますけれども、この点は運輸大臣はいかがでありますか。
  175. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 内藤さん御承知のように、発生源については大気汚染防止法という法律があります。その法律に基づきまして、そこで道路交通法等の関係もあり、そういうことから規制がわれわれ運輸省のほうに要請がされるわけであります。そこで運輸省は、大気汚染防止法のその要請に基づいて規制を行なうわけであります。  御承知のように、昭和四十一年に、新車に対しては五・五%にとどめろ、以下にしろ。ことしの八月は、使用者に対しましてもこれを適用いたしまして、五・五%にこれをとどめる、こういう措置を行なって、一酸化炭素のいわゆる汚染度を低めていく。この結果、御承知のように昭和四十四年度におきましては、大体一日、重量トンに直しますと二千七百トン程度、東京都において出ております。これをこのままで規制をせずにまいりますと、昭和五十年においては一・一倍。自動車はもちろんふえますから、規制を行ないましてもふえてくる。そこでまた、大気汚染防止法のいわゆる法律の命ずるところに従って、なおメーカーに対して規制を進めてまいります。こういうことを続けてやってまいりまして、昭和五十年度においては、昭和三十八年度における程度にまで低めることができる。自動車の台数がふえても、その濃度を、昭和三十八年度の、問題のなかったところまで低めることができる。このような規制を行なっていくことによっていわゆる大気中の汚染度を低めていく、こういう努力をしておるわけであります。
  176. 内藤良平

    ○内藤委員 それじゃ運輸大臣、あなたにもう少し聞きますけれども、いまのメーカー関係の運輸省の規制は保安基準ですね。そこで三十一条にはどういうことが書いてあるかというと、「自動車は、走行中ばい煙、悪臭のあるガス又は有害なガスを多量に発散しないものでなければならない。」、こういう「多量」という、きわめて大ざっぱな表現であるわけですね。それから、有害なガスを発生する装置、これについては、これも有害ガス発散防止装置をつけなくちゃならぬ、こういう抽象的なことばなんです。こういうことばでメーカーを規制できて、ガスの発散をできるだけ押えるということでは、これは進歩がないのじゃないか。どうですか、この点は。たとえば「多量」という文字だけでも、これは抹殺すべきじゃないですか。あるいはこの保安基準の中で、いま長官も言いましたが、コンバーターをつけるとか、あるいは再燃焼器をつけるとか、そういうはっきりしたものを規制すべきじゃないか。こういうことはどうなんですか。
  177. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 内藤さんは専門家ですから、私より御承知かもしれませんが、御承知のように、これらの問題は、やはり技術開発というものがこれに伴っていくわけであります。でありますからして、省令、法令等において初めから規定して固定するわけにはいかない。技術開発というものが進めば、あるいは四・五としたものが一日も早く四・〇になるかもしらぬし、できるだけこれは技術開発を進めていく。あるいはコンバーターというようなシステムだけじゃなくて、他の技術開発の方法もありますからして、したがって運輸省としては、行政指導あるいは運輸審議会等の勧告に従ってこれをメーカーに行なわしめる。かような技術開発に伴う趣旨でありますからして、さような措置をとってまいっておるということは御了承願いたいと思います。
  178. 内藤良平

    ○内藤委員 これは要求のようなものですが、大臣、保安基準三十一条の「多量」なんという抽象的なことばは、いまの時代にふさわしくない。これはひとつ考えてください。まあ御承諾を得たものといたします。  それから、有害ガス発生防止装置、こういう抽象的な条文ですね。これも私は改善しなくちゃならぬと思います。  それと、技術開発とおっしゃいましたけれども、コンバーターとか再燃焼器は何も新しいものじゃないのです。これはもうすでに実用に供されておる。私はこういうものを、保安基準、メーカーの段階で明確に規制すべきじゃないかというのですよ。でなければ、運転者、使用者だけに協力を頼んで、最後は交通規制だけだといっても、交通規制が大問題でしょう。渋滞なりあるいは交通事故の多発現象になるかもしれません。どうも私は、この自動車関係につきましては、メーカーに対する態度が非常になまぬるい、こういうことを大臣お考えにならなくちゃならないと思うわけです。  特に総理大臣が、いわゆる企業者、事業者の責任という問題をわが党の代表が発言しました際に、必ずしもそうじゃないと、引用されて、自動車のような問題もある、こう言っています。あたかも自動車は、一億総ざんげのように、国民がガスを出して国民がそれを受け取る、こういうぐあいな表現に受け取れました。しかし、もう少し一歩突っ込みますと、やはり生産段階、メーカー段階でいまよりもっと改善することができる、それを明確に規定づける、こういうことで私は今度の公害国会にふさわしい政府の対策になろうと思うわけです。いかがでしょう、この点ひとつ御答弁願います。
  179. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 運輸省は相当企業に対してやかましいことを言うものでありますから、あまり評判がよくありませんが、せんだってアメリカの公害担当の委員長が参りました際に、アメリカでもこの自動車公害の問題については頭を悩ましておる、日本も同様である、そこで、研究結果、技術開発をお互いに交換し合って、そうしてたとえ企業家がある程度困っても、やはり人類のために健全なる社会を建設することに協力してもらいたいという申し入れをいたしております。今後とも企業家に対しては厳格なる態度で臨む方針でありますから、御了承を願いたい。
  180. 内藤良平

    ○内藤委員 運輸大臣には委員会でまたお話しする機会もあるんですが、通産大臣に一言お尋ねしますけれども、アメリカに対する輸出の自動車は、エンジンにつきましては、日本の国内の自動車のエンジンと違うエンジンを装備しておる、こういうことは御存じですか。
  181. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しくは存じませんが、出力の大きなエンジンを載せておる場合がありますと思います。
  182. 内藤良平

    ○内藤委員 私の言いたいのは、出力だけじゃなく、いま申し上げましたような再燃焼装置、バーナーといいますか、不完全燃焼で一酸化炭素が出てくる、それをエンジンから外へ出る途中で再燃焼させる、こういう装置ですね。これをアメリカに対してわが国生産の自動車は装置して輸出している。国内ではこれを装置しておりません。このことでどれだけの差があるか。これは私たちの試算でありますけれども一酸化炭素では〇・五の差が出てくる。排出の濃度が〇・五違う。〇・五といいましても、これは国内におきましては、この〇・五の濃度の規制を高めるために三年かかっております。〇・五だけ規制を高めるために。これは四十一年に三%の濃度に一酸化炭素を押えました。それが四十四年に二・五%です。ですから三年で〇・五%規制を高めておる。ところが、現在アメリカに対しては、なお〇・五%の規制ができるエンジンをつくって、これを輸出しているわけであります。これはどうですか、公害関係から考えた場合に。国内でできないということはないでしょう。その点は公害関係の連絡会議でお話はなかったのですか。
  183. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お話のとおり、エグゾーストします前にエアポンプを置きまして再燃焼する装置を、アメリカ向けの輸出につけておるわけでございますが、これは炭化水素の排出を防ぐ対策でございます。で、わが国も今後、炭化水素も排出基準が、許容限度がきまってまいりますので、そうなりますと、やはりそういう装置をつけることが必要になるというふうに考えております。
  184. 内藤良平

    ○内藤委員 これは大臣、ぼくたちの調査では、一酸化炭素、COですね、これを規制する——わが国の場合は、排気ガス、排出ガスは一酸化炭素だけ有害だというぐあいに法律ではきめておるわけでありますけれども、ぼくたちから見ますと、なおまた酸化窒素なり、あるいは炭化水素もありますけれども一酸化炭素の問題です。これは私どもの間違いじゃなく、あなたの間違いじゃないかと思うんですけれども、これは答弁は要りません。  そこで運輸大臣、いまやはりアメリカでは、この排気ガスの関係で、CO、一酸化炭素関係で、日本よりは〇・五濃度の制限をした日本のメーカーのエンジンを搭載した自動車、これを買っているわけだ。技術的にはこれは日本でできておるのですよ。このエンジンを搭載させると、今日でも〇・五だけ圧縮できる。これはさっき、あなたもおっしゃったとおりです。二・五%にしましたのが四十四年の九月です。それで今日この濃度の規制は二・五%になりました。ところがアメリカでは、これよりも〇・五%強い規制をしている。しかも日本からその自動車を買っているわけだ。これは日本でできなくはないでしょう。こういう問題をなぜ等閑視しておるのですか。公害問題というこの国会の中で、山中長官中心にしてこういう問題を出し合って、大気汚染に対する対策をなぜ一歩、二歩前進させないのか。どこに問題があるのか。この点ひとつ大臣にお聞きしたい。
  185. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ただいま通産大臣からお答えがありましたので、重ねのお答えはどうかと思いますが、一酸化炭素の排出量については、国内のものとアメリカに輸出するものとは違っておらないと承知しております。ただ、いま通産大臣がお話ししましたように、炭化水素、窒素、これについては取りつけておりませんので、日本では規制はまだしておりません。そこで、アメリカのほうではこの問題が規制されておりますので、この点、エアポンプ等をつけて排出量を減らしておる、こういうことであります。しかし、その結果は、必ずしも光化学スモッグに積極的な影響があるかどうか、効果があるかどうかが向こうで問題になっておるようでありますが、しかしいずれにせよ、これらの新しい事態が生まれてまいりましたので、わが国においても、炭化水素化合物等についても規制する方針で目下進めておるわけであります。
  186. 内藤良平

    ○内藤委員 一酸化炭素と炭化水素、この点ちょっと食い違いがあるようですけれども、それはさておきまして、時間もたってまいりました。  そこで燃料問題ですね。燃料問題につきましても、排出ガスの関係は何ら規制の明文が法案の中にありません。ところが燃料の関係について規制をしなくともいいのかどうか。現状がどうか。ばいじんや粉じんの場合は燃料までも規制しようというわけでしょう。私たちここで、もうこれは常識的でありますけれども、鉛を添加したガソリンが生産され、市販されておる、ハイオクタンということで。このハイオクタンを使うことによりまして出力が多くなる、スピードが出る、こういうことで堂々と生産されて、これが販売されておるわけであります。これから出る排出ガスの鉛の被害というもの、公害というものは、鉛というこの有毒物質によりまして——これは常識でわかるわけであります。なぜこれが、今度の法案の一連の考え方であるところの燃料の規制というものに該当しないのだろうか。なぜこれを等閑視しておくのだろうか、なぜ触れないのか、こういうぐあいに論じますと、どうも強大な自動車メーカーなり強大な石油メーカーの皆さんの、あるいは財界の皆さんの圧力がある、ないという議論をきのうからやっていますけれども、何かあるようなことを、われわれ国民のサイド、住民のサイドから見ると考えざるを得ないわけであります。これは通産大臣の領分かもしれません。どうしてこれを燃料制限という問題でやらないのか。はっきりこれは有害であります。なぜこれを生産さしておるのか、なぜ販売さしておるのか、この点、通産大臣いかがですか。
  187. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先ほどのお話とも関係があるわけでございますけれども一酸化炭素は従来から排出の許容限度をきめておったわけですが、先ほどのお話との関連では、私どもは、炭化水素——ハイドロカーボンだと承知をしておるのでございますが、今後、炭化水素あるいは窒素酸化物の排出も許容限度を設けることになる。鉛も同様でございますから、そこで御承知のように、それだけの許容限度を守りますためには、当然燃料にもエンジンにも手を触れなければならないわけでありまして、鉛は、御承知のようにことしの夏にとりあえずハイオクタンとレギュラーと平均しまして四割ほど落としたわけでございます。そうして、ただいま私どもの持っております計画は、昭和四十九年の四月には完全に無鉛にしよう。と申しますのは、精製段階での改質とか、つまりリフォーマーとか分解とかいうあの辺を整備いたしませんと完全に無鉛にすることは急にできませんので、四十九年の四月を目途に完全に無鉛にしよう。それから同時に、それが現在のエンジンでございますとバルブシートのリセッションなんかが起こりそうで、それからまた別の排出物が生まれる可能性もございますから、当然その辺のエンジン関係もくふうをしなければならないわけですし、またガソリンそのものの組成物の中の芳香族とかオレフィンとかいうものがまだどういう汚染の原因になるかがわかりませんので、そういう研究も進めておるわけですが、御指摘のように、これはエンジンのほうと燃料のほうと、両方から規制をしていかなければならないわけでございます。
  188. 内藤良平

    ○内藤委員 通産大臣、いまの鉛の問題は、これは承服できませんね。四十九年、四年もあります。鉛の問題は、これは添加物でありますから、しかもこれを加えなくとも日本の自動車の性能は十分なんです。エンジンに対しても支障はないのです。これはいろいろなことをメーカーの皆さんは言っているようでありますけれども、ぼくたちの仲間で実際自動車の運転をしている皆さんはそう言っておる。なぜこれを四十九年まで、四年間も鉛を押えておくのか。  また——もう一つ言わしてください。これは運輸大臣の関係もあるわけであります。いまの交通渋滞で、大臣、交通渋滞というのは、高速度を出すことが大都会、過密地帯で十分できない。四十ぐらいでのろのろ走っているわけでしょう。そういう中からまたこの公害、排出ガスの問題もあるわけですが、そういう低速度で運行せざるを得ない今日の大都会、過密地帯で、ハイオクタンで出力を出して百キロ以上のスピードを出すなんということは、これはきわめてナンセンスであります。そういうことをなぜ——その鉛添加の、猛烈な毒性のあるものを添加した、しかもそれが排出のガスになるわけだ。わかっておりながら、しかも交通事情もこのとおりであるのを、なぜこれをやらしておるかということだ。  こういうことこそ国民の皆さんはぴしっとやってもらいたい、メーカーにあるいは販売に。そこが今度の公害国会のいいところで、あなたなり橋本さんなり、通産大臣なりあるいは副本部長山中さんがこれをまとめて、そういうものを具体的に出してきて初めて国民の皆さんの期待にこたえることになるわけでしょう。そういうのがないのですよ、今回。どうなんですか、これは。どうしてないのですか、こういうことは。橋本大臣からひとつこれを……。
  189. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ハイオクタン価の問題は通産大臣からお話しがありましたし、おっしゃるように、どうも鉛が入っておる入ってないは、そうスピードには関係がないというようなことも聞いております。しかし現実の問題として、多少は、四割方は下げたそうですが、売られておるわけでありますが、ただ、いまおっしゃったような高速道路でたくさんの自動車がぞろぞろ歩いておる、そのために相当害があるのではないか。ただ、自動車が走っておる場合の、走行時におけるところの濃度はわりあいに低いのであります。問題は、霞ケ関とか都庁前とか大原交差点とかいうアイドル、すなわち渋滞地域、この渋帯地域における濃度が問題でありまして、大原地区におきましては、人体に害があるといわれるような濃度を示す日が年間のうちに十四日間ぐらいあります。都庁前においては大体二十四日ぐらい、倍ぐらいあるのであります。将来自動車がたくさんふえてまいった場合にこれをどうするかは、もちろんこれは自動車自身の改造も必要でありますが、同時にまた道路交通法等を適用して、ある程度の車の制限等、これも行なう必要があろうと思います。もちろんこれは、立体交差が進めばそのようなアイドル時間がなくなるわけでありますからスムーズにいくわけでありますけれども、全体としてはおっしゃるような方向で強く自動車の問題は規制をしてまいりたい、かように考えております。
  190. 内藤良平

    ○内藤委員 時間もないようですから、総理大臣のかわりに山中さん、総務長官は、いま私の運輸大臣あるいは通産大臣との問答で大体おわかりになったと思うわけです。せっかくあなたが、移動する公害発生源として自動車を認識されて、委員会でも発言されておる。ところが実態は、いまの問答でおわかりのように、効果が出てないわけです。またやれることをやらないでおる。これはだれの責任ですか。それぞれの担当大臣になりますと、なかなかいままでの因果関係があってできないことがあるかもしれません。しかしあなたは公害関係中心人物です。張り切ってやっておられる。総理大臣がおいでになれば一番いいわけですよ。いまのような問題を急速にまとめて、今度の国会の中ではっきりさせなければならぬじゃないですか。あなたのほうでやらなければ私どもでこれをやらなければならぬと思います。どうですか、これは。
  191. 山中貞則

    山中国務大臣 私は前から運輸、通産両大臣にそれぞれ、輸出車においてはその国に受け入れられる状態の、きびしい基準に適格したものをつくって、国内においてはそれをつけないということは、たとえそれが、単価が平均四万くらいかかるというのですけれども、それらのものがかりに企業の販売実績その他に影響があるにしても、やはり好ましくないことであるということで、早急にそれらの作業をお願いをしておりましたために、いまの答弁がそれぞれ、物質指定しよう、そういうものが指定されたら規制もしよう、こういう話になって出てきておると思います。  しかし、さらに一方、われわれが目を将来に向けますと、ニクソン大統領の米議会に対する勧告、現在の自動車の有毒排出物質の九〇%を一九八〇年までにカットしろという勧告に対して、上院はそれを七五年までということで全会一致可決したようでありますが、その後上下両院の協議会においていろいろと話がもつれておるようでありますけれども、いずれにしても、大統領勧告どおりであっても、一九八〇年には現在の有毒排出物質の九〇%がカットされなければ、少なくともアメリカ市場には車は売れないということになることははっきりするわけであります。したがって、わが国の自動車メーカーあるいは政府関係省としても、日本の輸出のウエートというものを考えて、それに対する自動車のことも念頭に置くならば、それらに対応する準備をわれわれは開始しなければならないということも当然のことであろうと思う次第でございます。
  192. 内藤良平

    ○内藤委員 鉛ガソリンはどうした。
  193. 山中貞則

    山中国務大臣 通産大臣から申し上げたとおりの通産省の計画が、やはり原油供給確保その他の問題等においておありになるのだろうと思いますので、私のほうから技術的な問題としてそれ以上申し上げるあれはございません。
  194. 加藤清二

    加藤委員長 内藤良平君に申し上げます。あなたの時間が切れました。
  195. 内藤良平

    ○内藤委員 終わります。
  196. 加藤清二

    加藤委員長 次は、土井たか子君。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 まず、福田大蔵大臣お尋ねをいたします。  公害発生源企業の公害防止に必要な費用は一体だれが負担すべきでございますか。
  198. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、公害発生源者が負担すべきことが原則である、そういうふうに考えます。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 原則からいたしますと、公害発生源の企業が一〇〇%負担すべきだというお考えでございますか。
  200. 福田赳夫

    福田国務大臣 企業の場合もありまするし、あるいは個人の場合もあります。あるいは政府、国ですね、国やあるいは地方公共団体、いろいろなものがありますが、とにかく公害を出したその人が、その者が責任をとる、財政的な責任もとる、これが原則でなければならぬ、さように思います。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 一〇〇%の、費用に対してはやはり負担をしなければならないという内容でございましょうか。
  202. 福田赳夫

    福田国務大臣 ある企業なり個人なりが公害を出した。それがもっぱらその者の責任で出たということが明らかであるという際には、私はその者が財政上一〇〇%の責任をとる、それが原則だと思います。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 同様の質問を通産大臣にひとつお願いいたします。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 企業自身の責任に基づくものはもとより企業自身の負担である、これは原則だと思います。ただ公害防止事業というようなことになりますと、負担の割合につきましては、御審議いただいております法案に示しておるとおりでございます。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、その問題の公害防止事業事業負担内容なのでございますが、この中で私は、問題になる幾つかの点がございますけれども、やはり最も問題点はこの負担総額の点にあると見るわけでございます。事業者の公害防止事業に対する負担総額の定めは第四条になっておりまして、この第四条のところを見ますと、「費用を負担させるすべての事業者の事業活動が当該公害防止事業に係る公害についてその原因となると認められる程度に応じた額とする。」となっております。お伺いいたしますのは、「その原因となると認められる程度」の内容なのでございます。具体的にどういう評価、これに対するどういう基準を「その原因となると認められる程度」とお考えになるのか。ひとつこの点については山中総理府総務長官にお答えをいただきます。
  206. 山中貞則

    山中国務大臣 企業は、公害となる物質なり何なり、原因なりをつくってはならない。したがって、それを出さないようにする費用というものは全額企業が持つべきことが当然前提となって、しかしながら企業自身のそれらの負担以外の理由、すなわち施設として設置した場合においては全額であるけれども、すでに蓄積とか長年の複合とかによって、それぞれの以外の状態においてそれらの公害防止施設をしなければならない、しかもこれは公共事業としてなさなければならない場合に企業の費用負担というものを定めるわけでありますから、公共事業でありますと国や地方公共団体がまずまっ先に持つ負担分がきまるわけですけれども、この場合は企業が費用を負担すべきものをまず定めて、その残りを国と地方とが持つということになりますから、そうするといろいろの態様によって、直接企業が一〇〇%持つべきケースもあれば、あるいはまた緩衝地帯みたいに、公害を出さないために貢献するものである。したがって、企業自身が全額——公害を出さない施設を備えていても、なおかつ念のため住宅街やその他のところとの間に緩衝地帯やあるいは非常に広い緩衝街路、場合によっては運河に近いような水路等を設ける場合等が一つの例でありましょうが、これに全額負担というのは、都市計画あるいは都市政策的なものにも入るのであるから、それらの問題については配慮をして、全額という原則から落としていこうということをいっているわけでございます。
  207. 土井たか子

    ○土井委員 要は、内容は自由裁量ということでございますか。
  208. 山中貞則

    山中国務大臣 第一号より第四号に至るそれぞれの事業について基準とすべき比率を定めておりますが、それを基礎として、それぞれの地域において設けられる審議会において、それぞれの地域の実態に適応した、すなわちその実態においては、その企業が国の定める基準よりも非常にきびしい、非常に悪いと申しますか、その汚染関係がある原因がきびしいという場合においてはさらにきびしく、あるいはそれに対して、大体国の基準程度でやっていってよいというものにおいては、その審議会において地域に合った負担率を定めればよろしいということになっておるわけでございます。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 それはケース・バイ・ケースというふうなお答えになろうかと私は思います。私、お尋ねいたしておりますのは、「その原因となると認められる程度」を勘案する場合の基準に何をお求めになるかという問題なのでございます。  実は今度のこの臨時国会公害国会といわれまして、そうして公害についての各法案がただいま審議中でございますけれども、実は確定した法案を私たちが手に持ちますまでにはかなり時間がかかりました。いつもの国会に比べて法案を私たちが見た時限はずいぶんおそうございました。あるいはつけ焼き刃といわれあるいはどろなわといわれ、あるいは火事場どろぼうのような始末だといわれるのは、ここにも一つの原因があろうかと存じます。  ところが、この法案を見てまいりますと、実はこの負担総額の第四条の内容の中でいま私が問題にいたしております「その原因となると認められる程度」ということが、実は以前、十一月の十日付で新聞は——朝日新聞でございますが、公害防止事業費用負担法案、大体原案はこういうところだというのが公に発表されております。その内容を見ますと、この部分に該当する点はかなり食い違いがあるようでございます。どういうふうに原案はいっているのかということを念のために申し上げておきたいと思いますが、「当該事業の実施の起因となる当該地域の環境の悪化またはそのおそれに対して費用を負担させる事業者の事業活動がその原因となるものと認められる程度」と書いてあります。原案にいうところの「当該事業の実施の起因となる当該地域の環境の悪化またはそのおそれに対して費用を負担させる事業者の事業活動がその原因となるものと認められる程度」と、いまここで私がお伺いいたしております「当該公害防止事業に係る公害についてその原因となると認められる程度」とは違うのですか、同じなのですか。この点についてお答えをいただきたいと思います。
  210. 山中貞則

    山中国務大臣 私はその新聞報道のことはちょっとよくわかりませんが、私の手元でつくりました法律でございますから——これはほかの法律と違って、調整に当たった法律ではありません。基本法の二十二条の要請を受けて対策本部みずからつくったものでございますから、その前に内容の違ったものをつくった覚えはございません。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 いまの問題について法制局長官はいかがでございますか。
  212. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 結論だけ申し上げますが、同じであると考えております。
  213. 土井たか子

    ○土井委員 この際山中長官に申し上げたいと思うのですが、一たん新聞紙上にこう出ますと、大衆の目はこれを見ます。国民的サイドから見れば、これはもう一たん新聞紙上に載った以上、確認事項になるかと存じます。政府の中から一本にしぼってこういう法案を私はつくり、これ以外のことは知らないとおっしゃる山中長官に対して、やはり政府の部内からこういう原案がなければ新聞紙上に出るという余地がないはずでございますから、この際この問題についてどういうふうにお考えかを、側面的な問題になりますが、お尋ねしておきたいと思うのです。
  214. 山中貞則

    山中国務大臣 たとえば予算要求をいたします場合でも、各省は大体八月ごろに予算要求のいろいろなアドバルーンを一ぱい新聞に出しますね。しかし、予算折衝を終わってそれができ上がったときには、あるものは消えており、あるものは形が変わっており、あるものは半分くらいのケースになっておるとか、いろいろなことがあります。しかし、今回の法律の立法に関する企業の費用負担についてはそのような過程は踏んでおりませんし、私の手元で最終的に詰めた以外の原案というものはございません。
  215. 土井たか子

    ○土井委員 この問題についてはさらに追及することが必要かと存じますが、時間のこれは浪費でございますから……。  この問題でかつて厚生省が、大気汚染、水質汚濁など、典型公害防止事業に限らず、幅広く生活環境の悪化を防止するための事業も考えるべきだというふうなお考えをお持ちになったことを私は存じております。そうでございますね。そういうふうな点から考えまして、いまここで第四条の「その原因となると認められる程度」という事柄には、予防という観点から考えて、まだ現に引き起こされていないけれども、将来に対して公害が引き起こされるであろうということが予見される問題についても含めて考えてよいというお考えをお持ちかどうか。
  216. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりでございますし、現在まだ立地されていない企業でも、立地することを申し入れたりあるいはまた認可を受けておるもの等については、当然その負担対象となるということでございます。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、例をあげれば、東海道新幹線などの場合には、これが騒音、さらにテレビなどの電波障害等々で、現に騒音公害のみならず電波公害が引き起こされているというのが現実の問題でございます。ただいまございます五百キロが、今度は全国新幹線網として九千キロに延びるという予定になっております。さらに、高速道路周辺について申しますと、やはり騒音であるとか振動であるとかの実害が現に引き起こされているわけでございますが、これまた中国縦貫自動車道の予定がございます。もう一つシビアな例を申しますと、これは医療救済の対象になっております公害病——慢性気管支炎、気管ぜんそく、ぜんそく性気管支炎、肺気腫と、これらの続発症——四日市、尼崎、川崎。水質汚染でいうと、例の水俣市の水俣病、阿賀野川周辺の水俣病、さらには神通川流域のイタイイタイ病等々、こういうふうな問題から勘案いたしまして、将来予見されるであろうという公害に対する防止事業にもやはりこの際考えを及ぼさなければならないという、「その原因となると認められる程度」なんでございますね。
  218. 山中貞則

    山中国務大臣 新幹線や高速道路の電波障害とか、日照権とか、あるいは高層ビルの局地強風とかいうものは、公害の概念でこの基本法でつかまえておりませんので、今回の公害防止事業事業者負担法でも対象としておりませんが、これからそういう引き起こすおそれがある、あるいはそのような性格の企業であるものは、当然その負担対象となるわけでございます。
  219. 土井たか子

    ○土井委員 これは、第四条の一項の問題を先ほどからお尋ねした限りにおいて、「その原因となると認められる程度」の内容がなおかつあいまいでございまして、はっきりした何らかの基準、あるいは予見される公害に対処する予防事業としての内容は、一向に具体的ではないと思うのです。  さらに、それについて二項、三項と見てまいりますと、公害に対する事業の寄与度の割合であるとか、あるいは公害防止事業費の負担免除事項などがございまして、このことによって、ずいぶん事業者の負担総額が減額されるという可能性がございます。しかもその内容が、具体的な基準を求めず自由裁量にゆだねられるということになってまいりますと、歯どめがきかず、せっかくここに用意されておりました公害防止事業事業負担の問題も、かご抜けと申しますか、しり抜けと申しますか、事業者に対して負担すべき内容について、当然負担し得ないということも起こり得るかと存じます。ひとつ、この問題についての具体的な基準なり、具体的な「その原因となると認められる程度」について、なおかつこの法文上明確にする余地ありと私は思うわけでございますが、その余地ありやなしや。その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  220. 山中貞則

    山中国務大臣 これはそれぞれの地方審議会において決定することになりますが、そのよって立つ基準となるべき事業の範囲あるいはその事業に対応する基準となるべき比率、これは法律に明示いたしてございますので、それを基準として、それぞれの地方において施行者の責任において、審議会を経て、施行者が定めればそれでよろしいというふうに考えております。
  221. 土井たか子

    ○土井委員 そういう前提で負担総額のワクをきめまして、そうしていざその負担事業者に対して背負わせるときにさらに問題になってくるのは、国や自治体負担区分が明記されていないということなのでございます。国や自治体負担区分が明記されていないということは、この法案の中で、第十二条を見ますと、事業者が負担金を納付しない場合、これに対して強制徴収をやるということが定められております。つまり、国や自治体事業者に肩がわりをして支払う、後に事業者がそれに対して負担金を納付しない場合、強制徴収をするという内容になっているわけでございますが、私はおそらく、この事柄を十二条できめられた背後からしますと、国や自治体負担区分が明記されていない限り、住民へのしわ寄せ、はね返りということを心配せざるを得ないのです。公害防止事業負担の法案が現在きめられつつあるわけでございますが、これは実は公害防止事業住民負担法案にもなりかねない、そういうふうに私はたいへん憂えております。  この事柄はさらに、十六条で「中小企業者に対する配慮」の条項がございまして、国や地方公共団体は、税制上、金融上必要な措置を中小企業に対して配慮しなければならない、そういう条項がございます。大蔵大臣は先ほどの御答弁で、本来公害発生源企業は公害防止に対して、できたら原則的にそれは全面的に負担すべきであるというお話でございました。その原則からいたしますと、おそらくは一般会計による補助ではなくて、投資によるところの融資の額を広げるということに当然なろうかと思うのです。このたびの財政投融資計画、来年度でございますが、大蔵省で考えられております、中小企業に対する金融公庫の公害に対する融資の基準のワクをどの程度ゆるめられるか。また、それでもって実際問題、住民のほうにしわ寄せを持っていかないという確認をここですることができるかどうか。ひとつ大蔵大臣、お願いいたします。
  222. 福田赳夫

    福田国務大臣 公害対策事業市町村が行なうという場合に、その財源を企業が負担するという、そういうことになるわけですね。全部を企業が負担しない。その一部はどうしても市町村負担するということになるわけです。それに対しましては、国は融資の援助をするとかあるいは補助である程度考えるとか、そういうことになるわけです。それを四十六年度予算では具体的に数字に盛り込む、こういう考えでございます。
  223. 土井たか子

    ○土井委員 具体的に数字に盛り込まれて、そうして必ず事業者に対する負担住民のほうにしわ寄せを持ってこないと、ここでお約束していただけますね。
  224. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ、地域問題ですから、その地域市町村負担をするという面も出てくるのです。これは地域住民負担になるわけです。しかし、この公害を出した事業者から四分の三という高い費用負担をお願いするわけでございますから、大かたはそれで片づいてしまう。片づかないところは地域住民負担に幾らかいくのはあります。しかし国が援助をするというものもある。それから交付税交付金の配分においてこれを考慮する、こういう場合もある。しかし、そう地域住民に、御心配になるような大きな負担はいかない、こういうふうに御了承願ったらいいのじゃあるまいか、さように考えます。
  225. 土井たか子

    ○土井委員 そこで最初に大蔵大臣に対して、公害発生源の企業に対する公害防止事業費全額負担ということは、できる限りやらなければならないという詰めをしておいたわけでございます。ひとつ、住民のほうにしわ寄せがこないように、この際お約束をお願いしたいと思います。  さらに、最後にこの問題で一つだけ山中総務長官にお伺いしておきたいのは、こういう事業負担によりまして、損害賠償の逃げ口上となることはないかという問題でございます。いかがでございますか。
  226. 山中貞則

    山中国務大臣 まず初めに、企業者に負担させることが住民負担にならないかというお話ですが、ちょっと大蔵大臣は財政の仕組みの議論だけされましたのでこんがらかってはいけませんが、まず一義的には公害に関連のある企業というものが負担をする。そして公共事業が行なわれる。その残りに対しては、国がある程度特例を予算で認めることになると思いますが、補助をして、さらに地方についてはその残りの起債なりあるいは特別の配慮をする等、それの財源の償還等については交付税で手当てをする等、一般住民に対して迷惑をかけないようにすることは完ぺきにできるわけでございますので、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。  それから第二点。第二点は何でしたか。(土井委員「損害賠償責任の逃げ口上に」と呼ぶ)わかりました。賠償責任の逃げ口上になるかという話でありますが、これはまた全く別なケースで、それらの被害が発生したときにおいて、被害者の立場における地域住民が加害者とおぼしき業者に対して要求をし、もしくは紛争処理のあっせんを頼むという問題でありますから、そのような問題で自分たちが公害防止事業費を負担しておるからといって免罪符になると考えることはとんでもない間違いになるし、そのようなことは絶対起こり得ないことでございます。
  227. 土井たか子

    ○土井委員 その点しかと確認をしたいと思います。  さて次に、教育の問題について少しお尋ねをいたします。  文部大臣、小中学校の学習指導要領というのがございますね。かつて昭和三十三年に告示された学習指導要領の内容では、小中学校とも公害に関する内容は全然見当たりませんでした。ところが、その後小学校については四十三年に、中学校については四十四年四月に学習指導要領が告示されておりまして、これを称して新学習指導要領というわけでございますが、昭和三十三年当時は、四十二年の八月から施行されております現在の公害対策基本法がございません。けれども、四十三年、さらに四十四年四月に告示されております新学習指導要領になってまいりますと、これはもう四十二年八月以降の問題でございますから、公害対策基本法がすでにあるとしなければならないわけでございます。公害対策基本法が施行されてから四十三年まで、四十四年四月の間まで、何らこの学習指導要領に対して改定がなかったわけでございますが、この点いかがなんでございますか。
  228. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いまのお話でございますが、大体、指導要領をつくりますのに相当時間がかかりますし、それからまた、指導要領をつくりまして教科書を作成するにもかなり時間がかかるわけでございます。したがいまして、現在の教科書におきましては、ある程度公害に関する記述等もございます。たとえて申しますと、中学校の社会科の教科書に「ばい煙、汚水、悪臭、有毒ガス、騒音、地盤沈下など、都市生活者はさまざまな公害をこうむっている」というようなことを述べまして、このような公害防止に「思い切った対策を立てて、強力に実行することが望ましい」、こういうような記述もございますけれども、しかしながら、今日の国会公害国会といわれておるような、こういう理解というものは実はまだなかったわけでございまして、今後私ども、一番近い機会に行なわれます指導要領の改定におきましては、漸次これを組み入れていきたいと思っておりますし、またきのうもお答えを申し上げましたように、来年の四月からやられますところの小学校におきましては、すでにかなりの公害の記述がされておるわけでございます。また、その次の年度の中学校の改定あるいは高等学校の改定におきましては、十分な公害問題の記述がなされ、児童生徒の教育に万全を期したいというふうに考えます。いろいろ御指摘になりましたところも実はわかっておりますが、その点につきましては、私ども、指導書やあるいはまた指導資料集というものがございますから、それでもって十分行政指導してまいるつもりでございます。
  229. 土井たか子

    ○土井委員 いまはしなくも、私が質問する前に坂田文部大臣は、すでに教科書内容についても改定をしていくというふうな御発言をいただいたのですが、要はその教科書の内容なんです。小学校については、四十三年に新学習指導要領が告示されまして以後、教科書の内容も変わってきたと私は思うのですが、本年度採択されております新小学校の教科書の五年生が使用いたします社会科の内容についてなんでございます。小学校社会五年の下、これは学校図書株式会社発行になるところの教科書でございます。その一〇四ページを見ますと、「「公害はふせがなければならないが、工場がつぶれてはこまる。」というようなことを考えると、そのとりしまりを、じゅうぶんに行なうことが、なかなかできません。」と書いてあるのです。これがもうすでに検定をパスいたしまして、現に採択されておりまして、来年度から使用される教科書になっております。ほかに二、三の教科書についても同様の内容があるわけでございますが、時間のかげんからこれは省きます。ただしかし、来年四月から使用されるこの教科書の内容が、ただいま私たちここで問題にしております公害対策基本法について申しますならば、内容的にこれはおかしいのではないか。公害対策基本法に対して矛盾している、違反している内容になるのではないか。さらに申し上げるならば、学習指導要領なりあるいはこの教科書などを検定なさる場合、採択をなさる場合、何を基準にお考えになるかという問題なんでございます。  先ほど申し上げました昭和三十三年当時、なるほど公害基本法はございませんが、しかしながら日本国憲法はございます。日本国憲法第二十五条はございます。日本国憲法第十三条はございます。さらに教育基本法はございます。それぞれの憲法、法律に従って考えるのが、法治国家である日本の民主教育の根本であろうかと私は思うのでございます。その点から考えてまいりますと、三十三年から四十三年に至るまで、三十三年から四十四年に至るまで、公害対策基本法が施行されてからも、なおかつこの学習指導要領に対する手直しがなされず、しかもいま採択されて来年度から使われようとしております教科書の内容が憲法から考えても遠く、教育基本法から考えても遠く、さらに憲法や教育基本法から考えまして私たちどうかと思う、現在審議中のこの公害対策基本法、これよりも次元が低い、こういう教科書についてどういう措置を講じられるか。私は、この際この教科書については回収をして、そしてこれは使わないという措置を講ずることが適当だと思うのです。文部大臣いかがでございますか。
  230. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま御指摘の教科書というのは、私まだ見ておりません。十分これを見まして、そして適切な指導をいたしたいと思っております。  それから、指導要領というのはそう簡単には変えられないわけでございますから、この指導要領に基づきまして、指導資料というものを毎年出します。あるいはまた行政指導もやります。したがいまして、一番早い機会に、指導要領が改定される、あるいは実際問題として教科書が編さんされる、そのときに御注意の点は改定をしていきたい。しかし、現在不都合なことがございましたならば、その点についての行政指導というものはどうやっていかなければならぬかは、しばらく時間をかしていただきたいというふうに思います。
  231. 加藤清二

    加藤委員長 土井たか子君に申し上げます。白熱した論議で残念でございましょうが、あなたの時間がなくなりました。  次は、北側義一君。
  232. 北側義一

    ○北側委員 私は、下水道法案の一部改正についての問題を主体としてお聞きしてまいりたいと思うのでありますが、午前中の根本建設大臣の答弁で、公共下水道のおくれを、諸外国に比べまして非常に日本がおくれておるということで嘆いておられたわけでありますが、やはり今日の水質の保全のかなめはどうしても下水道整備であろう、私はこのように思っておるわけであります。  そこで、このように下水道法が一部改正されましても、一番大事なことは、この下水道を整備するところの地方公共団体に対して一体国がどれほどの補助金を出していくのか、このことが非常に大事なわけであります。ところが、先ほどの審議の中にありましたとおり、この下水道法が昭和三十三年に制定されておる。ところが、その一番大事な内容である第三十四条の公共下水道及び都市下水路に関する費用の補助について、それについては、地方公共団体に対するその補助というものは予算の範囲内において政令で定める、このようにきめてあるわけです。ところが、昭和三十三年以来、この「政令で定める」という部分につきまして、その政令がいまだにきまっておらない、これが実情です。  私は、今回の下水道法の法改正、これはその目的に水質の保全という法改正が入れられたことが一番大きな内容ではないかと思うのです。それに従いまして流域別下水道計画の総合計画の策定、また水洗化の義務づけ、また公共下水道及び流域下水道については終末処理場を有しなければならない、このような規定が全部変わってきたわけです。ところが、地方公共団体が建設すべきこのような下水道に対して、政令でこれが定まってないとするならば、これから下水道整備を行なっていこうとする地方公共団体が、その長期計画のめどが立たないのじゃないか、私はこのように思うわけです。そういう点をまず第一番に、なぜその政令をきめなかったのか、今後どうしていくつもりなのか、そういうことにつきまして、建設大臣、自治大臣、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  233. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど大橋さんの質問がありましたが、私に名ざしかなかったのであまりこれに答えておりません。あらためてお答え申し上げまするが、ただいま御指摘のように、下水道法が昭和三十三年四月二十四日にこれは公布されています。しかしながら、今日まで三十四条の政令ができていないということはまことに残念でございまするが、実は制定された当時、日本の各自治体も下水道に対する関心が非常に低かったのでございます。従来は下水道事業市町村の固有事業のような形になりまして、それにわずかに国が助成しておるという状況であります。したがいまして、昭和三十三年の国の経費がわずかに十億そこそこです。しかも国費の負担率は一一%そこそこです。それが漸次社会の発展に伴う下水の必要が、非常に認識が高まりまして、昭和四十三年にはこれが二百十七億程度まで国費がふえました。で、本年の予算編成には、特に私がこの問題を取り上げまして、大蔵大臣の非常な協力を得まして三百六十二億余になりました。この国費の率も二二・二%になっておる。また補助率も四分の一、三分の一、十分の四というふうに漸次上げてまいったのでございます。これは実は非常に規模が小さく、しかも事業をやる自治体が非常に少なかったためにこうなったのでありまするが、その後、関係市町村それから県当局とも協議をいたしまして、今後全面的にこれを進めるということで、実は先ほど一部御答弁申し上げましたが、昭和四十六年から新しい第三次の下水道計画を策定していただくつもりでございます。その金額は二兆六千億と見ております。この際にあたりまして、いま御指摘のように政令が出ないと地方自治体も非常に迷惑するということで、第三次下水道整備計画のときに政令をあわせてきめて、少なくとも来年の通常国会当時にはその内容をお示しし得ることができるじゃないか、そういうようないま意気込みで勉強さしておる段階でございます。
  234. 北側義一

    ○北側委員 大蔵大臣、いま建設大臣があのような答弁をしたのですが、大蔵大臣はどうですか。簡単にお願いします。
  235. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま建設大臣からお答えいたしましたように、四十六年度予算要求として第三次下水道五カ年計画提出されております。これは二兆六千億でありましたか、多額の金額にのぼる問題でありますが、公害問題非常に重要なおりからでありますので、大蔵省といたしましては積極的な応対をいたしたい、こういうふうに考えております。ただその補助率、これは現在非常に高いのです。四割補助、あと六割は地方自治団体事業者の負担になりますが、これは、今回は今度の費用負担法によりまして企業者負担というような道も開かれておりますので、この四割の補助率は相当のものであろう、かように考えております。
  236. 北側義一

    ○北側委員 私の言うのは、政令を、内容をきめるかと聞いておるのです。お答え願います。
  237. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほど申し上げましたように、これは四十六年度予算を編成するときにあたって、四十六年度を初年度とする第三次下水道五カ年計画が閣議決定されるということが前提とわれわれは考えております。その際には、五カ年間に私のほうで要求しておるのは二兆六千億です。ところが、ただいま大蔵大臣は二兆一千億と言われたのは、これはいわゆる経済社会発展計画における配分が五カ年計画に割り当てると二兆一千億になる、こういうわけなんです。しかし、私は、この経済社会発展計画を閣議了解をするときにあたって、あらかじめ大蔵大臣並びに経済企画庁長官に希望と要請をしておいたのです。それは、このような状況では現在の下水道を処理するにはとうていまかない切れませんぞと。そこで今回は、いまの社会開発計画ですか、あれの予備費一兆円がありますので、そのうちの半分五千億をこの下水道整備に割り当てるべきだ、それを前提として二兆六千億を要請しておる、こういう段階でございます。
  238. 北側義一

    ○北側委員 先ほど大蔵大臣は、下水道整備に対して四割からの非常に高い国庫資金を出しておる、このようにおっしゃっておられます。しかし、実際全下水道事業のいわゆる補助対象率、これは五四%になっているのです。この五四%の四割なんですね。そうでしょう。だから、私は決して高いものではない、こう思うわけです。そこで、この水質の保全をやっていくために、たとえば今回建設省から大蔵省に対して概算要求になった二兆六千億。この二兆六千億の建設省が昭和四十六年度に対して要求なさっておる金額が七百一億になりますね。七百一億要求なさっておる。はたしてこれで第三次下水道五カ年計画が達成するのかということです。二兆六千億が達成するのかということです。このような要求で達成できるのかどうかということです。ひとつ建設大臣、それをお願いします。
  239. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  われわれの持っておる、先ほどお話ししました六十年までに日本の水質保全が完全にできるということになりますれば六十一兆円でありますが、その観点に立てば非常に不十分です。しかしながら、現在の中期計画を、これは閣議決定しておりますので、そのワク内で漸次消化していくということになりますればこの程度でいかざるを得ない、こう思っております。
  240. 北側義一

    ○北側委員 第二次五カ年計画を見ましても、実際その達成率は非常に低い。いま四年目です。ちょうど昭和四十二年から四十六年度までのこの第二次計画におきましても、その達成率を見ますと非常に低いわけです。その達成率が全部で六八・四%、こうなります。ところがこの計画でいきますと、二兆六千億かりに要求なされて、七百一億では毎年三〇%ずつ伸びていかなければ二兆六千億にならない。またしても途中で計画を変更しなければならないようになってくるのです。いま私たちが一番問題にしておりますところは、やはり水質の保全をやるためには、どうしても現在の河川法第二十九条の河川の清潔に関する禁止、制限、こういうものを見ましても現在の河川は一級河川、二級河川、これは河川法上の河川であって、河川法上以外の河川は法定河川の二・五倍からの長さがあるのです。そういうところにきたないものが全部流されておる。そうして、いろいろな問題が現在起こっておるような状況なんです。そういうことを考えますと、もちろん水質汚濁防止法ができたから知っております。知っておりますが、やはり家庭排水、工場排水をどうしても二度チェックするためには処理場が必要になってくる。処理場をつくるためには公共下水道をつくらなければならない、流域下水道をつくらなければならない、こうなってくるわけです。それがいま審議されておる一番大事なところなんです。その大事なところが初めから三〇%伸びていく——いままでのケースではそういう伸び方はなかった。初めからできないようなことをやるんじゃ何にもならないと思うのです。それでは下水道法の一部改正をわれわれは真剣にここで国民のために、公害防止のためにやろうとしても、これではできないようになってしまうのです。そういう考えでは困るんです。     〔加藤産業公害対策特別委員長退席、倉成社   会労働委員長着席〕 だから問題は、なるほど昨年の予算から見たら、これは伸びるのは当然です。しかし、今回の場合は違うんです。そのためにあらゆる法案が出されておる。公害防止の法案が出されておるわけです。今回は大蔵大臣も、きのうの答弁を聞いておりますと、これに対しては非常に協力していきたい、こういう答弁が返っておるわけでありますが、はたしてこの二兆六千億どうですか、大蔵大臣
  241. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御質問の趣旨はわかりますけれども、これは来年のわれわれの要求率が満たされますれば伸び率は四六、七%になります。そういう状況でございまして、従来、もともとの出発点が少なかったから伸び率がこれだけになってもなかなかたいへんだ。それを今度、初年度が伸び率が一〇〇%にしたいという気持ちはありまするけれども、これはなかなか困難だ。だから、これは五カ年で大体二兆六千億程度までいきますれば、相当これはできる。しかも今回、水質基準に関するところの法律なりあるいはいろいろの規制措置が講ぜられていきまするので、その面においても間接的に、これは下水道事業のいわば終末処理をある程度まで楽にしたということも言えましょう。それからまた、よく御承知のように、流域下水道の制度を活用することによって、いままでは個々の末端の終末処理を市町村がやらなければならなかったのが、今度はこれを終末処理で大きくやるということで、この予算の効率的な適用ということもできるということで、くふうしてまいりたいと思っておる次第であります。
  242. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま建設大臣が申し上げたことで尽きるかと思いますが、私も、気持ちにおきましては全く建設大臣同様に考えております。ただ、ふところぐあいもあることでございますので、全部が全部というわけにまいりますか、はなはだ私も心細く思っておりますが、しかし最大の努力はいたしてみたい、かように考えております。
  243. 北側義一

    ○北側委員 ではお尋ねしますが、簡単に答弁願いたいのですが、この第三次五カ年計画で二兆六千億で四十数%、こうお答えになったわけです。これは市街化区域の中であろうと思うのですが、これは一〇〇%達成のめどはいつ立つのですか、市街化区域内における下水道事業が一〇〇%達成するのは、いつをめどとしておるのですか。
  244. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、これは閣議で了承されていることではありませんが、現在われわれの建設省として一応持っておる案では、昭和六十年までに大体十五兆円程度の経費が必要である、そこまでいたしますれば市街化区域の全地域について非常に環境の整備された下水制度ができ、各町村においても相当普及できる、こう思っております。
  245. 北側義一

    ○北側委員 昭和六十年ということですが、そうしますと先般の新都市計画法、これによりますと市街化区域内は公園、道路、下水、これらの公共投資を十年以内で行なって、そうして市街化としての位置づけをやっていく、このようなことであったわけです。この新都市計画法の十年といまのお話とでは非常に格差が出てきたんじゃないか、こういう考えを私持つのですが、その点どうでしょうか。
  246. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 この都市計画の中では、新市街地としてこれから新たにできるところの市街地に対するところの処置もございます。それから、既成市街の再開発もある。ところが現在では、日本では既成市街地のほうが非常に立ちおくれておる、これが一つです。それから、御指摘になりました新しい市街地域を線引きしたところでつくっていくときには、これは優先的に、都市計画の必要条件として道路、下水道、それから緑地とか、こういうものを整備していくということになります。したがいまして、御指摘になりましたように、計数的にはっきりと、昭和六十年度における下水道のわれわれの持っておる構想と必ずしもマッチしていない点があることは現在のところやむを得ないと思っております。
  247. 北側義一

    ○北側委員 そうしますと、この新全総、これによって一応その予算の割りをきめたのじゃないかと思うのです。それを変更しなければならない事態になってくるのじゃないかと私は思うのですが、その点どうでしょうか。
  248. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  新全総の計画の変更は、私から、一建設大臣から言うべきことではないと思います。しかしながら、これは日本の経済の発展の一つの見通しのもとに立てたものでありますから、いわゆる計画経済におけるところの計画ではございません。したがいまして、これは新全総もそうした社会情勢、世界情勢の変化に応じて検討し、変更することのあることは、これは常識的に考えてあり得ることだと思う次第でございます。
  249. 北側義一

    ○北側委員 時間がだんだん迫ってまいりましたので、一つだけ大事なポイントを聞いておきたいと思うのです。と申しますのは、いま建設大臣も申されたとおり、新市街地の方面が、公共投資のあれが非常におくれておる、こういうお話なんです。ところが下水道整備においては、たとえばここにある表を見ますと、これは、実は六大都市及び一般都市に対する下水道の整備に対する補助金の割合がこう書いてあるわけです。一般都市と比べて、新市街地をたくさん持つ六大都市の国庫補助金が非常に悪い、これに対してどういう考えですか。
  250. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  地方自治体が従来やってまいりました。そして大きい市街のほうは、これはまだ財政能力があります。したがって、こちらのほうでは起債で相当やっていけるのです。ところが、新しいところは起債能力がないために、そこに若干のアンバランスが出てくるという状況でございます。そこで、先ほどもお答え申し上げましたように、今度は政令をつくるときにあたって、補助率をでき得るだけ調整をいたしていきたいと思っておりまするが、ところが今度は事業量の伸びが非常に著しいので、補助率よりもむしろ補助の額、補助対象を大きくしてほしいという要望が、いま北側さんが言われたことを裏書きするごとくにこれはできております。だから新市街地を持っているところが補助率よりもむしろ補助対象のワクをふやせ、これがもっともだと思いまするので、そういう点を考慮して政令をつくってみたいと思っております。
  251. 北側義一

    ○北側委員 この問題につきましては、非常にこまかい論議をやってきたのですが、もう時間もありませんからこれは終わりまして、次の建設委員会でやらしていただきます。  ところが、今回のこの下水道法改正によって、地方公共団体の財政負担というのは非常に大きくなってくるわけです。たとえばこの改正に含まれましたところの流域別下水道総合計画の策定、これは都道府県がやるようになっておる。また公共下水道、都市下水道、流域下水道、こういうものの維持管理、これはやはり下水道が伸びてきますと、その維持管理費が非常に市町村にかかってくるわけです。これは非常に増大してくる。またこの改正によりまして、公共下水道及び流域下水道は、終末処理場を有さなければならない。現在の公共下水道で、終末処理場を有していない下水道がずいぶんございます。これは有しなければならないようになってくる。この建設資金は非常にばく大なものになってくる。またあわせて、いままでのくみ取り便所が、これは水洗化が義務づけされておる。特別な事情という一項がありましても、これに対して地方公共団体が相当数の援助金なり貸し付け金を出さなければならない。このように、この法改正によって、地方公共団体の財政的な負担がずいぶんとふえてくるわけです。いま大臣が言われたとおり、補助対象ワクを上へ上げたい、それによって解決していきたい。それでもある程度は解決できるでしょうが、実際の問題として、こういういろいろな地方公共団体負担、また監視体制の強化、こういう面を考えますと、一体国としては、これに具体的にどのような援助をしていくのか。これを建設大臣、自治大臣からお伺いをしたいと思うのですが。     〔倉成社会労働委員長退席、加藤産業公害対   策特別委員長着席〕
  252. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 この下水道の負担は、国庫補助のほかに、御承知のようにこれは受益者負担になっております。今度は水質基準がきまり、それから排出の質と量を勘案して、使用料を取っていくということになっております。したがいまして、これは企業負担が今度は相当はっきりとつかめるようになってきます。しかしながら、それにいたしましても、御指摘のとおり、終末処理とかあるいはまた幹線の流域下水水路をつくると相当の金がかかります。その資金がありませんからこれは起債で認めていく、こういうような形にして、いわゆる直接地方自治団体の固有の負担を、これで急にふやすということは、避けるような考えで進めておる次第であります。
  253. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 下水道整備事業が、快適な生活環境の整備、また公害、ことに水質問題のために重点的にしなければならない重要な事業であることは申すまでもありません。自治省としては、今後これに重点を置いてやってまいりたいと思います。  ただいま各大臣からもお話のありましたとおり、国庫の補助制度を拡充していかなければなりません。これには補助負担率の問題もあります。それからどこまでを補助するかという実は範囲の問題があろうと思います。こういう点につきましても、関係官庁とひとつ協議をいたしまして、拡充、強化をはかると同時に、足らないところにつきましては、やはり地方交付税の基準財政需要額について考慮をいたしたい。なお足らないところは、もちろん地方債をもってこれに充てなければなりませんが、これの充当率が年々下がっておるような状況であります。これにはやはり資金量の適量をはからなければなりません。今年度八百二十一億円措置をいたしましたが、来年度は五一%増の千二百三十九億円を要求いたしております。これは二兆六千億のときにも適合する数字でございます。ぜひともこれを確保いたしたい、努力してまいる所存でございます。
  254. 北側義一

    ○北側委員 もう時間が参りましたようですから、私のお願いにとどめて終わりますが、何といいましても先ほど申しましたとおり、この下水道整備、これはやはり地方公共団体が非常に財政負担を受けていくわけです。そういう面でこれに対する国の補助をどのように勘案していくか、こういう問題がこの下水道整備の進捗率、これに非常に大きく影響してくるわけです。これをおろそかにしますと、このような法律をつくっても実際の問題としては下水道整備がなされない、このようになってくるわけです。そこで先ほど申しましたとおり、最初に言いました政令の問題にしましても、長期計画を立てる上にとってはどうしてもこれをはっきりときめていただきたい、こういう要望が非常に強いわけです。そういう点を考慮して、ひとつこのたびの第三次下水道整備五カ年計画ではやってもらいたい、このことを要望して私の質問を終わります。
  255. 加藤清二

    加藤委員長 次は古屋亨君。
  256. 古屋亨

    古屋委員 私は、公害関連法案の各委員の熱心な質疑を通じまして、公害との戦いは、特に人類の平和と繁栄のため七〇年代の最大の課題の一つであると存ずるものでございます。したがいまして、企業はもとより国、地方団体地域住民が積極的に、しかも真剣に取り組んでいかなければならないと同時に、技術が発達しました今日の社会におきましては、技術と頭脳と金を惜しまなければ、公害との戦いには必ず勝てると確信をするものであります。このためには、しかしながら、お互いの信頼ということが私はきわめて大切と考えるのでありまして、従来の公害関係地域におりますいろいろの地域住民、あるいは企業者側の事例から判断しますと、企業側には、公害防止対策をネグレクトすれば必ず企業が成り立たなくなる、前向きでみずから防止の施設をするのが当然であるという認識を一そう強化することが必要でありますと同時に、地域住民の関心がなければ公害対策は進展いたしません。この点従来の事例がら考えますると、実態というものがはっきりしないうちに、いたずらに感情的になってしまいますと、ことわざに、坊主憎けりゃけさまで憎いというようなことく、交通機関そのものが敵である、産業が敵であるというような感覚になりかねない状況でございます。したがいまして、公害対策の積極的な推進をはかりますためには、国、地方団体国民、そして企業間のコミニュケーションを強化いたしまして、信頼関係に基づく正しい理解が必要であると考えるものであります。  このため、総理におかれましては、できるだけ早く公害関係の総合的な長期計画を立て、またビジョンを早急に打ち出されまして、たとえて申し上げますれば、公害排除−十年前の昭和三十五年の状況に戻すためには、GNPからどのくらいの費用を回して公害を排除するか、このために物価にはどの程度影響してくるか、これをどういうふうにするかというようなビジョンを、できるだけ早い機会に打ち出されまして、国民との対話のもとに、総力を結集すべきであると考えております。この公害に対する基本的姿勢につきまして、総理の御所信を伺いたいと存じます。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたしますが、ただいま古屋君の御意見どおり、何にもつけ加えるものはないように思います。私は、全国の公害発生の模様を見まして、非常にうまくいっている地域、そういうところでは地域住民と企業者との間のコミニュケーションが十二分にいっております。しかしながら、本来さような事柄が話がつかないのかと思うほど、両者の間が隔絶しておる例がある。こういうことを考えると、企業者そのものが、まず第一に自分たちの社会責任を感ずると同時に、その地域住民も積極的にやはり企業に協力する。協力を通じて理解をし、そして同時に公害発生を未然に防ぐとか、あるいは発生がやむを得ない場合に、事後の措置についていかにするか、これは国あるいは地方公共団体等がその間をあっせんする場合もあります。しかし、何にいたしましても、最初の問題が一番大事なことである。双方のコミニュケーションが大事でなければならない。それにはそれぞれの立場、その職責、自分たちの社会的義務、これを強く考えなければならない。多くの場合におきまして、それは住民よりも企業者そのものが社会的責任を考えるとか、あるいは地方公共団体そのものが地域住民の利益のために自分たちの職責を考えるとか、あるいはまた国がそういう立場に立ってこの問題と取り組むとか、そういうことが望ましいのではないだろうか。だから、ただいま話されたことについて、別につけ加える何ものもないように思います。
  258. 古屋亨

    古屋委員 次に、地方行政立場から、自治省関係中心としてお伺いをしたいと思います。  公害防止にかかる規制権限地方団体の長に相当委譲されることに相なると思っておるのでありますが、自治省としては、今回の法律によります委譲で大体十分であるか。六大都市その他の政令都市に対する委譲は、まだこれからもこの法の施行に伴いまして、もう少し委譲すべきであると考えられておりますか。あるいは市町村長への委譲につきましては、委譲内容について拡大する必要がないか。また、規制権限が委譲されませんでしたところの、たとえば鉱山保安法関係、あるいは電気ガス関係につきましては、今後の取り扱いをどういうふうに行なう予定であるか。さらに、条例で上乗せ基準の設定を認めるように相なっておりますが、大気汚染に関しましては、先ほども他の委員からの御質問があったようでありますが、硫黄酸化物について例外の取り扱いとなっております。地域公害防止対策の見地から、この点自治省としてはいかに考えておられますか。要するに規制権限の問題について、これで十分であるか、あるいはまた、今後情勢の進展によっては、委譲内容あるいは委譲対象についても拡大していかれるか、これに対する指導の御方針について自治大臣からお伺いしたいと思います。
  259. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 元来、公害の問題は地方住民に直結した問題でありまして、地方住民の生命、健康を守るために公害防止事業を行なっていく、公害対策を行なっていくことは、地方公共団体権限に属する、重要な責務に属するものであろうと思います。したがいまして、原則的に地方への権限委譲というものを自治省は早くから主張をいたしまして、六月十九日でございましたか、自治省の名におきまして公害対策の積極的展開と称する文書も発表したわけでございます。この中で地方知事さんへの権限委譲を述べておりますが、大体自治省が趣旨とするところは、今回の一連の法案で貫かれたと考えております。しかし、これをもって足れりといたしません。また、多少の問題点も残しておるとは考えておりまするけれども、たとえば政令都市の市長への権限委譲の問題につきましても、私は大体その方向を考えております。悪臭の法案については、固有の事務としての市町村権限が認められておりますし、水質汚濁に関しましても、政令によりまして一部都市にこれが認められるようになっております。元来、騒音についても、大気汚染についても、一部の都市にある。また今回の法の改正で、産業廃棄物の処理施設につきましては、保健所が置かれている市の市長にその許可する権限をおろすとか、所要の措置を講じております。その他、政令でもって今後考えられる余地を残しておりますので、こういう点につきましては、大幅に地方の実情に即してこれらの規制ができまするようにひとつ考慮をしてまいりたいと考えております。  それから硫黄酸化物の点につきまして、低硫黄の重油が少ないのでございまして、今度の法案に上乗せができないようになっておりますが、これにつきましては、やはり地域の実情に応じて、当てはめにつきましては地方公共団体意思を十分聞いて、ひとつやっていただけるようにしてまいりたい。また、電気ガス事業等につきましては、これらの生産物質の広域的な安定供給という国家要請のために、知事要請権限ということにとどまったような形ではございまするけれども、これは実際の運用によりまして、権限を委譲したと同じような効果を十分発揮し得る期待が十分持てます。しかしながら、これらにつきましても今後の運用に徴しまして改定すべきものがあるとするならば、地方住民の健康の維持、良好な生活環境の維持のためにやはり考えなければならぬかと思いますけれども、まず現状の状態におきましては今回の法改正で十分ではなかろうか、今後の推移はもちろん考えてまいりたいと考えております。
  260. 古屋亨

    古屋委員 権限の委譲の問題についてお伺いいたしましたが、私は、こういうような権限を委譲いたしました場合の財政上の特別措置について自治大臣、大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。  せっかく権限を委譲いたしましても、必要な経費その他が補助金、地方債あるいは交付税等によりまして配分されませんと、なかなか地方といたしましては、権限だけで仕事ができないというようなことも考えられるのでありまして、まず第一点につきましては、公害対策基本法の十九条、二十条の問題でございます。自治省は、公害防止対策事業推進のために、国の財政上の特別措置を検討中であって、公害関係法案とともにこの国会提出するというような動きもあったように思いますが、今度の国会には提案されなかったのであります。その関係を第一にお伺いしたい。  それから第二番目に、千葉の市原、三重の四日市あるいは岡山の三県の公害防止計画事業がこの間、十二月一日付で、内閣総理大臣の承認を受けた趣きでありますが、その計画の目的の達成のためには、地方の実情に即応いたしました国からの財政上、金融上の措置が必要であると考えられます。相当大きな事業計画の費用を承認しておりますが、これは特に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、総理大臣が事業計画を承認されたものでありますから、事業者はもとよりでありますが、地方団体が行ないます事業につきましては、国と地方との配分は別にいたしましても、総ワクにつきましては、大蔵大臣としても了承されておるものと思うのですが、その点をお話を願いたいと思います。  もう一つ、財政上の問題につきまして申し上げたいと思いますのは、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、北九州のいわゆる政令都市の今年度の公害対策予算を見てみますと、予算額は、これは大気汚染とか水質汚濁等の監視とか、測定とか規制とか、あるいは苦情処理に要するそういう直接的な経費で、事業費は含んでおりませんが、七つの指定都市の六つでことしの十二月一日現在で調べてみますと、公害関係の予算は七兆八千六百二十四億四千万、こういうふうになっておりますが、そのうち国庫補助は千五百七万でありまして、パーセントで言うと一・九二%でございます。こういうような数字から見ましても、私は、地方の財政というものにつきまして、いわゆる公害基本法の二十三条によります地方公共団体に対する財政措置につきまして、いかにお考えになっており、次の通常国会でそれに対する措置が行なわれますかどうか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  261. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 今度の法令改正によりまして、地方公共団体の行ないます公害対策事業経費その他の経費、ふえました分は交付税等あるいは地方債等で、所要の措置を講じてまいりたいと思います。  なお、十九条の問題につきまして、国の負担制度の拡充を中心とした、広範囲な総合的な見地からの負担の問題についての取り扱いにつきましては、できるならば、この国会に成案を得たいと関係官庁とせっかく協議を進めたのでありますが、詰まらなかったのでございます。そこで、来国会までには所要の結論を得たいとせっかく協議中でございます。  その他の点につきましては大蔵大臣のほうから……。
  262. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度の立法によりまして、地方財政はかなりふくらむと思うのです。ふくらみますが、その財源は企業者が負担する、こういうものが非常に多くなるわけであります。したがって、その残りのふくれた分、それを地方財政がどうするか、こういう問題であります。いま地方財政全体として見ますと、かなり好調でございまして、財源は実際としてかなり伸びていく、こういうふうに思いますが、総合的に勘案しまして、中央と地方の財政状況、こういうものをどういうふうに調整するか、こういう大きな問題が実はあるわけですが、その中において妥当な解決をしたい、こういうふうに考えます。とにかくさしあたり考えられますのは、何といっても公害地区というのは片寄っております。その地区に対して地方交付税の配分を厚くする、この問題があると思います。それから国の起債の充当、政府資金の起債への充当、これについて特別の配慮をしなければならぬ、こういうふうに考えます。それだけで片づかない問題をどうするか、これは中央、地方全体の財政調整、そういう中において妥当な解決をする、さような考えでございます。
  263. 古屋亨

    古屋委員 ただいま大蔵大臣の御答弁でございますが、地方財政に対する見方の問題でございますが、私ども地方行政の観点から考えてみますと、必ずしも大蔵大臣の御意見のように豊かになっておるかどうかということにつきましては、いろいろ見解を持っておるものでございますが、しかし、この点は別にいたしまして、公害法の施行で、地方権限が委譲されたものを施行するための費用というものにつきましては、十分ひとつお考えをお願いしたい、これは要望でございます。  さらにお伺いしたいのでございますが、費用負担法では事業者の費用負担については規定しておりますが、国なり地方公共団体の公的負担につきましてはどうなっておりますか。公害基本法の関係からいたしまして、ひとつお伺いをいたしたいと思います。これは総務長官
  264. 山中貞則

    山中国務大臣 これもたびたび答弁いたしておりますが、やはり予算編成と関連をいたしまして、さらに税制や金融等の問題も一緒に詰めたい、あるいはまたそうすることが運営上至当であろうと考えまして、自治大臣が先ほど言われたことにも関連がありますが、一応自治省等は検討をされたのでありますが、よく政府全体で相談の上、予算を編成する場合に十分念頭に置いて編成し、その実を受けて後、必要なものは立法しよう、こういうことにいたしておるわけでございます。
  265. 古屋亨

    古屋委員 次に、中小企業関係につきまして、特に通産大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、公害規制の強化に伴いまして、中小企業のうちには、公害防止設備の投資の負担に耐えかねまして、廃業あるいは倒産するものが見られ、また今後もこの傾向は増加するように見られるのでありますが、政府は、公害対策と中小企業対策の総合的実施、ないし調和につきまして、どのような方途を講ずるおつもりであるか、費用負担法に基づきまする事業者に負担金を納付させる場合に、事業者特に中小企業者に過度な負担をしいることのないよう、いかに配意をされておりますか、その点もあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  266. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中小企業者の公害との関連につきましては、公害基本法にも、中小企業には特に配慮をすべきだという規定がございまして、現在今年度の予算におきましても、金融にいたしましても税制にいたしましても、あるいは技術開発、そのための指導等につきましても、所要の経費を計上しております。また費用の負担法律におきましては、中小企業について再び特に配慮をするようにという規定がございますことは御承知のとおりでありまして、具体的に私ども考えますと、基準を決定いたしますときに、まあ非常に小規模な施設の事業者をある程度対象から、これは完全にというわけにはまいりませんかもしれませんが、そこはしんしゃくをするというようなこと、あるいは負担の総額を配分いたしますときの基準についても、そういう配慮をいたしますというようなこと、また負担金がきまりました場合の納付の方法、これは長期あるいは分割払いというようなことも考えられると思います。それから、その事業費の負担分につきましての融資、それからその負担分を損金として計上するかどうか、この点は、大蔵大臣も積極的にお考えいただけるような御発言がせんだってもございましたが、そういったようなことを総合的に考えてまいりたいと思っております。
  267. 古屋亨

    古屋委員 いまの点、ひとつ大蔵大臣、税制その他の措置について御説明いただきたいと思います。
  268. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず税でございますが、企業者がみずから公害対策施設をやるという際におきましては、その事業費をあるいは特別償却あるいは償却年限の短縮でありますとか、そういう特別な配慮、それから企業者が自分で仕事をしないで、費用分担だけをするという場合におきましては、いま通産大臣から話がありましたが、その費用を何とかして損金として見ることができないか、そういうようなことを考えてみたいというふうに思っております。  それから金融面におきましては、ただいまでも中小企業金融公庫とか国民金融公庫で、特別ワクを設定いたしまして、中小企業者に便益をはかっております。しかしこれを拡充いたしたい、こういうふうに考えております。また、新たに今度は費用分担という問題が起こりまするが、その際にもさような特別ワク融資が適用されるように何とかいたしたい、かような考えでございます。
  269. 古屋亨

    古屋委員 次に私は、先ほど他の委員からお話がございましたが、下水道関係について、おもに経済企画庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  水質汚濁対策につきましては、ニクソン大統領の教書によりますと、五カ年間に百億ドルの計画提案をされております。わが国におきましても、下水道整備は、住宅とか道路等、これもおくれておりますが、そういうものに比較してもあまりにも小規模でありまして、昨年四十四年の末で市街地の二二%、屎尿の下水道による水洗処理は人口の一%に足らないという状況でございまして、この問題につきましては、本委員会におきましてたびたび建設大臣から今後の方針等をお伺いしておるのでございますが、私がここでお伺いしたいと思いますのは本年の九月一日に閣議決定されました水質汚濁にかかる環境基準につきまして、類型指定と達成期限が定められまして、四十九水域のうちで二十五水域のみが五カ年間に達成されることになっておるのであります。本年の四月八日の衆議院の産業公害対策委員会におきまして、企画庁長官の答弁によりますと、「この五年の原則というものはあくまで原則として保持しなければならない、こういうふうに考えております。」というような答弁でございます。したがいまして、四十九水域中で二十五水域の達成では、原則五年以内と言えないのではないか。つまり四十九をやろうというのが二十五になってしまった、その理由を第一にお伺いをしたしたいと思います。  第二には、今後水域類型の指定権限知事に委譲しようとしておるのでありますが、これらの水域の環境基準を原則五年以内で達成し得る見通しであるかどうか。こういうことをお伺いいたしますのは、はっきり申し上げれば、水質環境保全の責任大臣であります企画庁長官から、こういう点の早期達成についていかなる決意を持っておられるか、その所信をお伺いしたいと思います。
  270. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 まずあとの御質問から申し上げますが、環境基準は約五十ぐらいいま設定しております。年度の末、すなわち来年の三月の末には、これが大体八十近くになります。これは大体人口的にいいますとほぼ五五%、全体の工業生産から申しますとほぼ七割を上回る地域をカバーすることになります。したがって、重要な地域の環境基準の設定は、本年度内に大体できると思います。そうして、今度の新しい法律によりまして、これを地方長官に今度委譲することになります。私たちも中央政府だけでこういうことをやるということではなかなか進捗に限界がある、こういうことも頭に置いて今回の委譲が行なわれておりますから、地方長官は、地方の実情に応じまして、さらに排水基準の要求が強まります。環境基準の設定はもちろん国がやることでございますけれども地方のそうした排水基準の設定の要求の度合いに応じて一そう進捗されるもの、こういうふうに見ております。でありますから、四十五年度に引き続き四十六年度には相当進捗してまいる、こういうふうに私どもは考えております。  それから環境基準達成の基礎ともいうべき下水道の問題でございます。これにつきましては二十五水系といっておりますが、実はこれはまだ試算の段階でございます。建設省の段階の試算としてやっておりまして、最終的には本年度の末に行なわれる予算折衝において、五カ年計画がいかに実体的に決定されるか、年を越えてどういうふうに正式に決定されるか、そこいらにもよることでございます。いろいろな試算が成り立ち得ると思います。すなわち全体の下水道の計画の中におきまして、環境基準の設定に関連のある地域と、それ以外の地域の配分をいかにするかというようなことにもかかわることでございます。そういうような点も考えまして、しかし私たちは、建設大臣とも御相談しているのですが、できるだけ環境基準の達成に関連のある地域を重点的に下水道の普及をはかってまいる、こういう考え方でおります。二十五水域というのは、一応建設大臣が申しましたが、なお検討いたさなければなりません。  なお、五年の達成ということをわれわれは悲願にいたしておりますけれども、しばしば御指摘がありましたように、まことに残念なんですが、その点については下水道の計画による制約がございます。いかにがんばりましても下水道の普及がございませんとどうしても原則五年の達成が困難になる、そういうことで先般の環境基準の当てはめの際にも、原則は五年であるけれども、やむを得ず五年をこえる例外的地域がずいぶんございます。これは一応現在見込まれるところの、いわゆる下水道の計画を頭に置いております。でありますから、今後私どもは、さらに下水道の計画というものを拡大する努力を重ねまして、そうして原則五年の問題もできるだけその進捗をはかってまいりたい、こういうふうに考えております。
  271. 古屋亨

    古屋委員 次に進みまして、公害対策の問題につきまして、技術交流と国際交流の問題をお伺いするのでございますが、国際交流の問題につきましては、公害日本列島などといわれておりますが、結局世界的問題でありますので、国際的立場に立って相当考慮しなければ公害問題は解決しないのではあるまいか。こういう公害対策に関する国際協力というものをもっと進めていかなければならない。公害に関する知識や情報の交換とか、あるいは技術の公開、交流という点につきまして、先般アメリカのトレイン氏が来られて、総理と、総務長官とも会談されておりますが、この点につきまして佐藤総理の所見をお伺いしたいと思います。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカと日本との間で技術や知識の交流をすること、これは約束ができました。ただ二国間だけではなく、国際連合でも、またOECDでもこの問題を取り上げております。したがって、ただいまの公害問題は、一国だけの問題じゃなく、国際的な問題だ、その規模に立ってものごとを考えていかないとこれは解決しない。ことに海洋の汚濁というような問題になれば、明らかにお互いに協力する必要があります。また、国によっては積極的にいろいろ特別な技術を持っておりますから、そういう点も、これからはやはり公開していく必要があるんじゃないだろうか、かように思います。  また、科学技術の面だけ考えましても、いわゆる公害としていま害毒を流しておるものにしても、つかまえ方によっては副産物として利用することができる。こういうものが幾つも生産過程において考えられる。たとえばセメント工場の出しておるいわゆる粉じん、それなども、集じん装置が簡単にできていれば、副産物としてりっぱに活用できる。あるいは重油の場合におきましても、硫黄がとれる、硫酸がとれる。さらにまた、硫酸その他で加工もできる。単純なごみにいたしましても、いろいろ堆肥になったり、あるいはまた飼料に使われたり、あるいはまた、焼却したのちに中からいろいろ貴金属、重金属等が検出されるとか、とにかくわれわれがもっと科学技術を徹底すれば、いかようにでも克服できるんじゃないか、私はそういうことを考えながら、国際的協力は必要だ、ことにまたWHOあるいはまた国連の各部門においても積極的活動が何よりも必要だ、かように思っております。そういう意味でただいま動きつつある、かように私も考えますし、また日本も、そういう意味でこれに協力するのが当然の責務だろう、かように思っておる次第でございます。
  273. 古屋亨

    古屋委員 国際交流の必要性につきましては、総理から詳細にお話がございました。また科学技術の開発につきましても御意見を承りましたが、たとえば無公害自動車の開発、電気自動車とか、あるいはガソリンでCOの出ないもの。先ほど運輸大臣は、COの規制につきまして、数年前の状態規制ということを考えられておるというような、見通しの明るい話もあるのでございますが、また技術開発には、いろいろ関係の研究機関が非常に多いと思います。昨日総務長官は、来年度においてはデータバンクということを考えられておるというお話がございましたが、ぜひこの技術開発というものにつきましてはうんと力を入れて御努力をして、そして、たとえば、先ほども他の委員からお話がありましたように、アメリカに輸出しておる自動車は相当な数にのぼっておるのでございますが、公害の少ない自動車公害の技術の発達した自動車というものができませんと、向こうの技術が進んでまいりますと、輸出そのものも落ちてまいりますので、時間の関係でこの点の御答弁は要求いたしませんが、その点、要望といたしまして、技術開発につきましては、機構の面でも予算の面でもひとつ十分お考えを願いたいということを要望いたします。  最後に、これは総理に、公害機構の問題につきまして、昨日も他の委員からお話がありましたが、政府公害対策本部を設けまして、公害対策の総合的実施に当たっておられます点は、私も評価をしておるのでございますが、この本部の組織というのは、いわゆる役所的に考えますと、不安定といってはあれでございますけれども、臨時的な組織でありまして、来年度以降、この組織につきましていかにお考えになっておるか。私も長く総理府で働かしていただきまして、仕事の内容を知っておりますが、昨日からのいろいろの御議論をお伺いいたしましても、山中総務長官は沖繩の問題、公害の問題、青少年の問題、恩給の問題、給与の問題、まあ山中総務長官でなければ、たいへん失礼でございますが、こんな能率的にできぬことだと私は考えておりますが、ぜひ公害大臣と申しますか、公害担当大臣は山中大臣でございますが、こういう時局に対するためのビジョンをはっきりするためにも専任の大臣をつくっていただいて、専任の大臣と申しますか、部下の者が熱情を持って仕事に当たれるような体制につきまして、総理、どういうふうにお考えでございますか、ひとつ御所信を伺わしていただきまして、私の質問を終わらしていただきます。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公害を一般行政から分離して、公害だけの官庁をつくってみる、これも一つの考え方だと思います。しかし、いままでの経験から見ますと、同時に、公害もどうしても除去しなければならない、その観点に立って、われわれが各企業、事業を指導していくという立場に立つならば、必ずしも一部でいわれるような事業者本位の立場に立っている、こういうような誤解もなしに、それだけうまくやれるのじゃないか。本来の知識のあるところが公害排除を第一義的に考える、こういう考え方に立てば、行政は十分実効があがるんじゃないだろうか、かようにも考えるのであります。ただ、問題は、各省まちまちの考え方で、歩調がそろわないと、通産省でやっておることと農林省でやっておることがどうも力の差がある、こういうことで、被害者側から見ましてどうも被害者本位になってないのじゃないか、こういうようなこともあろうかと思うので、ただいま本部をつくって、山中君が副本部長でただいまの仕事をやっておるわけです。  しかし、これも問題は、何と申しましても実効をあげることが第一だと思います。公害対策は、百の議論ではなく一の実行である、かように私は思いますので、その実効をあげることが困難だという事情に立ち至れば、当然いまの本部方式というものも変えて、別な方式を考えざるを得ないだろう、かように思います。しかし、いまのところ一応本部方式でスタートし、各省の考え方もまとまり、そうして公害排除、また公害を起こさないようにすること、これを第一義的に考える。福祉なくして繁栄なし、かような立場に立って取り組もうとせっかく言っている際でありますので、しばらく模様を見たら、かように考えております。
  275. 加藤清二

    加藤委員長 次は島本虎三君。
  276. 島本虎三

    島本委員 いよいよこの連合審査会も、全部でやるのは終末に近づいてまいりました。私は、いままでの審議を通じまして、総理に率直に、その結論的な考え方で一つ一つ伺ってまいりたい、こういうように思います。  その前に、きょう来る直前に——公害の問題をわれわれがいろいろと審議している。その際に、はたしてこのイタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそくといわれる人、この被害者の数が現在どうなっておるのか、調べてもらいました。イタイイタイ病の場合には、二百五名患者がおって、ほかに百十八名死んでおるのだ。水俣病の場合には、百十六名患者がおって、四十六名、現在死んでおるんだ。四日市ぜんそくでは五百九十六名で、死んだ人が四十三名だ。それらの人の家族を見ます場合には、これはやはりきょうのこの公害に対しましての審査、おそらくは四日市なり、安中なり、神通川なり、水俣なり、それぞれ補償の問題を含めて、全部が見守っておるんじゃないか、こういうように思うわけであります。したがって、いままでの審議を通じまして、総理にぜひとも聞いておかなければならないことがあるわけです。  まず、その一つは、出された法律案、このものも、まさにどろなわ式、速成、未熟児的な法律案が多い。これに対しても、前に指摘しましたとおりに、六月の段階で三党から開会を要求されておった、しかし十一月の二十四日に始まった、おそらく準備は相当整っておっただろうとわれわれは思っておりました。ところが、出てきたものは速成的な法律案だった。これでは、今後総理としても相当強力にこれをやっていくのでなければ、まさに国民から、いよいよ議会が不信の念を抱かれる、このことを痛感したのです。ことに各省は、まことにばらばらの答弁が多いのです。それだけじゃございません。政令、省令にゆだねられている部分が多くて、ヤマブキの花にならなければという、こういうような声さえも出ているのです。おそらくは一貫性を欠いているというこの行き方からしても、十分これを今後強力に実施しなければならない。ことに驚いたことには文部省、いま出されておるこの公害対策基本法以下の考えで教科書を来年から指導する、こういうような文面があった。これじゃ一体どうなるのですか。総理は、今後この公害の問題に対処するにあたって、これは重大な決意をもって当たらなければならないと思うのです。ばらばらです。これに対して、どういうふうにして今後実施する決意ですか。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま古屋君の最後の質問に答えたとおり、百の議論よりも一つの実行だ。実効をあげていかなければだめなんだ、こういうことをただいま答えたばかりです。これは野党の立場でお聞き取りにならなかったかわかりませんが、私は、国民の皆さん方はマイクを通じて、私の考え方をお聞き取りいただいたと思います。  その中で、ただいまも御指摘になりますように、たいへん政府の処置があと追い、あと追いじゃないか、法律をつくっても、それがどろなわ式だ、速成だ、こういうことで御批判がございました。私は昨日も、どうもいままでもいろいろ努力してきたが実効があがらなかった、法律を整備することもおくれていた、まことに残念でございますと、こういうことを謙虚に申し上げたつもりであります。私はいまさら、臨時国会の開き方がおそかった、こういってお責めになるよりも、皆さん方が、こうして合同審査までして、早くひとつ審議を終わって成立さしてやろう、こういうようなお気持ちでただいま取り組んでおられますが、そういうような方向で、やはりそれぞれの方々も、国民の皆さん方も、国会審議、成立、これを首を長くして待っていらっしゃるだろう、かように思いますので、そういう意味で、おくればせとか、あるいはどろなわだとか速成だとか、等々の批判、(「まさにそうだ」と呼ぶ者あり)これはもうまさに、そういうこともあるだろうと思いますが、皆さん方のお力が借用できるなら、こういう点について、この点はこういうように直したらどうだ、こういうような御議論もぜひ聞かしていただきたい。ただ、私はこれが大事なことで、先ほども言ったように、百の議論よりも一つの実行、その実効をあげることを国民の皆さんは願っておられる。私もそういう立場でこの問題と取り組んでいくつもりでございます。
  278. 島本虎三

    島本委員 したがって、私が申し上げた最後は、総理は、強力に今後はこれをまとめて行政に反映させなければならない、ということを言っているんです。私は、そういうような意味でこれから質問するのです。したがって、法律はできても、これは単なる世論対策ではいけないし、そうじゃない。また、そうあるべきじゃない。したがって今後は、実効をあげるためには政府の姿勢もまたき然としていなければならないのである。ばらばらであってはだめなんだ、こういうようなことであります。したがって、いままで本会議を通じ、また委員会の審議を通じていろいろ議論されました。その中で、総理も、基本的な権利として認めてもいい、よい環境を享受する権利は国民にあるのだ、環境権ということばはまだなじまないのである、こういうようないろいろ発言がございました。同時に、経済成長は福祉の手段である、こういうようなことばもあったわけであります。いろいろこういうような議論の中から見ても、健康にして安全かつ快的な環境を享受する権利は国民の基本的な権利だということ、これはやはり、現在あとからあとからと追っかけているよりも、先にこの原則を認めて対策に当たる、この姿勢が考え方の基本なんじゃないか、こういうように思います。この点、総理いかがでしょう。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお話しになった、また御意見述べられたその点こそ、憲法二十五条の定めるところだと思っております。私は、その二十五条に基づいてただいまの公害防止基本法ができておる、かように考えております。したがって、その他の各種立法も二十五条を受けているそれぞれの法律だ、かように理解しておる、この点を御了承いただきたい。
  280. 島本虎三

    島本委員 その理解の上に立つならば、政府は、基本法の改正の中に、公害防止環境保全のための施策はあらゆる産業政策、企業利潤に優先する、こういうようなことを当然入れるべきであります。こういうようなのが入っていないから、したがって、その中に原則を認めながら、たてまえと本音は違う、こういうようなことを考えられるところに政治的な不信があるじゃないか、こういうように思うわけです。いまの点は、やはり今後十分考慮しなければならない点じゃないかと思います。総理にお伺いいたします。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの各種法案を御審議いただいておりますが、その場合に必ず憲法二十五条の基本的精神、それが盛り込まれております。したがって、私は、いま言われるような表現、これはわれわれが憲法二十五条を無視しないんだと、ことさらに各法律に一々断わらなければならない、さような基本権じゃないと私は思っておりますよ。憲法というものは、そういうものじゃないですか。この二十五条、これを守ること、これは当然の責務だ、それに基づいて法律はできるんだ、かように理解すべきです。
  282. 島本虎三

    島本委員 憲法二十五条に基づいて出しておる——この辺から、よけいなことを言う必要がないんだ、こういうようなことを言うのです。では、言われないような法律をなぜ出さないのですか。公害基本法を出して、そして関連実施法をつくって、そして公害がふえて、総生産力では自由主義の国で世界第二位を誇っているが、しかしながら、公害また世界第一位である。こういうようなことで、法律はつくっていく、ちゃんと憲法に基づいている、そういうようなことを言っても、この実態はだんだん逆へ逆へと進んでいるんだ。そんなことを言わなくてもいいという人は、これを知らないんだ。こういうようなことのために、国民はだんだん心配しているじゃありませんか。こういうようなことを考えたら、この点はもう少し真剣にこの問題と取っ組んで——憲法に書いてある、書いてあるからこれはやらなくてもいいという意味じゃ決してない。やらなければならないのだ、積極的にこれはやらなければならないのだ、こういうようにするならば、政府の基本法の改正の中に、当然、公害防止環境保全のための施策はあらゆる産業政策に優先するんだ、これを書くのが憲法の精神じゃありませんか。もう一回、総理の、はっきりそうだという御答弁を願いたいのです。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも不規則発言を相手にして、いろいろお尋ねになりました。私が答えているのが正規の手続を経たもので、これは不規則発言でございませんから……。  私は、先ほどから声を大にして申し上げておりますのは、憲法二十五条に基づいていろいろの法律案を出すのです、このことははっきりしているのです。したがって、ただいまいろいろ御心配のようですが、その御心配はないというのが私の考え方でございます。
  284. 島本虎三

    島本委員 したがって、心配する必要はないということ、それは理解いたします。しかし、今後心配する必要がないと言った総理のことば、公害対策基本法を通じ、今後は出されている法律案を通じて、今度私が心配することじゃなくて、国民が心配する必要がないんだという、こういうような行政施策に徹しなければならないのであります。したがって、見せかけもいい、内容もいい、結果もよかった、これが一番いいじゃありませんか。いままで法律ができた、しかしながら、だんだん国民公害のために悩むようになった、これではさっぱりだめじゃありませんか。したがって、今後このようなことのないように強力にやらなければならない。そのために徹すべきことは、総理のことばで平和に徹する一わかりました。やはりこの基本法の精神においても、今後は、公害防止環境保全のための施策はあらゆる産業政策に優先するんだというこの公害対策基本法、この精神でこれを実施していく、やらなければならない、こういうように思っているのです。あえてこれをつける必要がないということでもないようであります。それならば、これは十分考慮しなければならない点なんだ、このことだけは、当然その辺まで言ってもいいんじゃないかと思うのです。
  285. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ようやく意見が一致したようですが、私は、あえて書く必要はないでしょう、しかし、二十五条そのものが国民のこの環境整備、これについて強い義務を政府に課している、国に課しているじゃないか、そういうことを申して、これに基づいてやっておるのだから、あえて疑問を持たれる必要はない。そこで、ただいま、書けとまでは言わぬが、少なくともその精神で運用しろとおっしゃる。私どもが先ほど来申し上げておるのも、それに尽きるのです。私は最後に法案を整備したときに、これから国会にこの法案が出る、その場合に、各省大臣に閣議でも発言をしたのでありますが、ただいま法案はようやくできた、しかしながら、事態とすればこれからどんどん情勢は変わっていくだろう、変化していくだろう、つくった法案が必ずしもそれにマッチしておる、対応ができておる、かようにはなかなか言えないだろう、そこで各省の大臣にお願いしたいことは、十分実情を把握することにつとめてもらいたいし、法律を発動する前の行政指導、それこそが大事なことではないかと思う、そしてその上で法律がなければやれないこともあるだろうから、そういうものはさらに法律をつくる、あるいは修正していく、こういうことでひとつ取り組んでもらいたい、こういう発言をしたのであります。もちろん私は、不十分だということもいろいろ御叱正をいただき、また御批判もあろう、かように思いますが、とにかくこの際、十五の法案を早急に審議し成立さす——これはたいへんな、実は私はその意味ではほめていただいてもいいのじゃないか。ただ、しかし、政府をほめるだけが能じゃないのだ、鞭撻をすることがもっと大事だ、そういう意味で御鞭撻を賜わりたい、かようにお願いをする次第でございます。
  286. 島本虎三

    島本委員 したがって総理、この際、憲法二十五条は二十九条の財産権並びに二十二条の営業権、こういうようなものの上にある点を、やはり総理としてもはっきり確認しておいて次に進みたいと思うのです。
  287. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法の上にあるとか下にあるとか、この辺の議論になりますと、むずかしい憲法議論になるだろうと思います。しかし、私はこの機会に申し上げたいのは、やはり幾ら企業が発達をいたしましても、国民の生活を破壊するようなことがあってはならないのだ、どこまでも企業そのものは手段であり、やはり何といっても国民のしあわせが目標なんだ、これをむやみに誤らないようにすることだ、こういうことを絶えず、声を大にして言っておりますから、ただいま言われるように、財産権よりこの条項のほうが上だとか、二十二条より上だとか、こういうように上だとか下だとか言わないで、ただいまのように企業のあり方というものをはっきり考えて、私どもの認識と皆さん方の、おっしゃることと、私は違ってないように思いますけれども、特にそこらが違っておるならば、どういうように違っておる、この辺が間違いじゃないか、こういうことをやはり言っていただきたいのです。私は、どうもいまの批判そのもの——新聞そのものをあまり詳細に読んではおりませんけれども、どうも政府の言っていることは企業側に立っている、企業本位だ、こういう批判を受ける。受けやすい。どうも新聞を見て、そういうような書き方をされている。また、日本社会党をはじめ皆さん方から発言をされるのも、そういうことがあろうかというような疑念を持たれつつ政府を叱正されつつあるように、実は私は受け取っておるのです。しかし、そこらには誤解もあるようだ、疑念は晴らさなければならぬ、かように私はつとめて申し上げておる次第でございます。
  288. 島本虎三

    島本委員 では、端的にここでお伺いしておきます。  挙証責任の転換は次の国会で出したいということを、山中総務長官からもいろいろいままで答弁がございました。いま研究中である、次の国会には出したい。同時に、これはいろいろ事務的な点など関係が深いから、無過失賠償責任の問題だけはいま検討中である、こういうような話もあります。来国会に出したいということ、検討中であるということ、せめてこれを一つにして、いまでもすぐできるじゃないか。考え方としても、憲法二十五条はまさに二十九条と二十二条の上に、それに基づいてちゃんとあるのだから、これを総合したものとしてはこれは憲法上も正しいものであるから、まして挙証責任の転換だけは来国会に出したい——無過失賠償責任制度の問題は出さないから、三党でこれを出した。このどこが悪いか。もしあったならば、この批判に応じ修正に応じたいというのが野党三派であります。したがって、そこまで言っておるのですから、政府が進んでそれを受けて、次の国会までには必ず出すのだ。そうでなければ、野党三派が出したこの法律案については十分審議してそれにこたえたい、こういうように思っているのか、ひとつ総理の御高見を承りたいのです。
  289. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの必ず出すと、こう、必ずというところに非常に力が入ると、私は、副本部長の発言も必ずしもそうではないのではないか、かように思っております。私が本部長であり、山中君が副本部長です。副本部長がいま努力しておる最中ですから、ただいま私自身もその副本部長が士気を阻喪するような発言はしたくございません。しかし同時に、いま島本君の言われるような非常に限定した言い方で言って、国民の期待を裏切るようなことがあってもならない、かように私は思います。私は本部長として、副本部長の発言も慎重であったろうと思います。とにかくこの問題がいまこの国会でも中心課題でありますし、また将来も問題になっていくだろう、かように私思いますが、これは副本部長も真剣に取り組んでおる、このことだけはひとつ御理解いただいて、そうしてできるだけこの結論が早く出るように、あらゆる面で検討を続けておるものだ、かように私も理解しております。どうかそういう意味で、ただいまあまり限定して国民を失望さすことのないような、誤りのないような、その辺の御理解をいただきたい。
  290. 島本虎三

    島本委員 総理、この問題については私のほうが激励側に立っている。したがって、それを受けて総理が一生懸命やる立場にあるわけです。ですから、これは主客転倒されたようなお考えではないのでありますから、その点早くやりなさい、応援しますよ、こういうような意味です。ですから、この点十分お考え願いたい。
  291. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 島本君から激励を受けました。その激励をありがたく、またそれに沿うように私も最善の努力をする、こういうことを申し上げておきます。
  292. 島本虎三

    島本委員 次期国会にはこれを出す——出すというのは、これは挙証責任の転換、それと野党側が出した無過失賠償責任制度の法律案、これについては自民党も当然十分審議してくれるであろうし、政府側もそれを望む、こういうような態度だと思いますが、この点よろしゅうございますか。
  293. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう何度も申し上げますように、何ぶんにも重要な問題ですから、そう簡単に結論は出ないと思っておるのですが、しかし私どもはこれについて結論を急ぐ、こういう立場にあること、また野党の諸君からも激励されておる、たいへんありがたく感謝しながらこの問題と取り組む、この姿勢をこの機会にはっきりさしておきます。
  294. 島本虎三

    島本委員 最後の結論がただ取り組むので、いつまでというのを言ってくれないのがいつも不満なんであります。検討すると言うから、当然結論が出るのかと思えば、検討は長いのであります。そういうようなことが国民に対する失望の大きい点だろう、こういうように思うわけであります。しかしその検討を、今後早く結論を出すように期待しておきたい、こういうように思います。  それと同時に、先ほども申し上げましたように、今回のこの公害国会を通じてやはり強力に実施しなければならないいろいろな問題点がございます。その中にやはり法案に対する姿勢、こういうようなものはいままで私が申しました。しかしながらこれは十分ではございません。これを実施する場合の姿勢、これはやはりひとつ総理を中心にして皆さん方が一本になってこれに当たってもらわなければならないと思うのであります。それは、訴訟または公害紛争中の企業からは政治献金を受けないというようなき然たる姿勢をとって、今後臨まなければならないということであります。総理はこの問題に対しましてははっきりした言明がないのでありまして、私はこの点はまだ若干不十分な理解をしている。しかしながらこの機会にはっきりこの点だけは理解しておきたい。訴訟または公害紛争中の企業からは政治献金は受けない、こういうような姿勢で今後公害行政に臨むんだ、私はこれを望みたいのですけれども、総理いかがですか。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう事柄はいろいろ誤解を受けるようなことがあってはならないと思います。したがって、公党として十分注意すべきことだ、その点をただいま御指摘になったと思います。私は、党におきましても、そういう点について誤解を受けるようなことは一切ない、かように確信しております。
  296. 島本虎三

    島本委員 誤解を受けるところがないことは国民が望むところであります。しかし今回の場合、十一月の二十日に、日経連、経団連その他、やはり企業活動に重大な影響を与えるものであるということで、三つの点にわたって決議されたようであります。それは、まず一つ、公害処罰法には反対だというような点、それと、土壌汚染防止法は時期尚早であるという点、三つ目は、水質保全法、大気汚染防止法を修正して公害基準に対する中央政府調整権限を強めること、こういうようなことをきめたというのであります。私は、やはりこういうようなことがきまっても政府はこれに動かされるものじゃない、財界に動かされるものじゃない、このことばを承ったのです。しかしこれがあってから出てきた法律案が、それ以前に要綱としていろいろと承ったものと、やはりこのいわれている線に沿うて変わってきているのであります。したがって、これは財界の圧力を受けた、この考え方は国民の考え方です。総理は、そうじゃない、断じてそうじゃないと言うのです。ところがやはりその線に沿うて変わってきているのです。公害処罰法のあの問題、それから負担法においてもそのとおり。それからもう一つは、中央の権限を委譲する場合に、基準調整権限だけは与えておきたいときまったという点、やはり今回の出された法律案、こういうような点では一列にそろっているじゃありませんか。これをもっても財界の圧力を受けない、こういうようなことを総理ははっきり断言されるのですか。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事実をもって明らかにする。断言することはたいへん楽です。というのは、私ども政府財界からそういう決議文をもらったわけでもなし、陳情も受けておりません。したがって、政府はそういうことについて全然心配はない、かように私思っておりますよ。しかし、これはないということをこの公害の場合も立証、その責任がたいへんむずかしいということですが、ないものをどういうように説明するか、これはたいへんむずかしいことです。ただしかし財界の連中、産業界の連中から、政府自身が何ら陳情も受けておらない。いまの決議を、こういう決議だといって総理のところへ持ってこられるとかあるいは副本部長のところへ持ってこられるとか、それならば、そのときにどういう取り扱い方をしたということが言えますけれども、全然そういうことがないのです。そこで御理解をいただきたい。私どもは全然そういうものの関係はない、これははっきり申し上げます。
  298. 島本虎三

    島本委員 ないと言うけれども、結果がそういうようになった。ここに蓋然性があるということになるわけです。したがって、やはり現在の推定によれば、結果においてこうなったのだから、幾ら財界から影響を受けないといっても、受けないのに前とあとが変わった。本人は違うと言う。違うと言ってもその論拠が薄い。薄い場合は責任を持つべきだ。やはりこれは総理、あなたき然としてここに行なって——やはり九月二十一日の宇都宮でやった一日内閣の際に総理が言ったあのことば、あれを国民は期待し、それを信じておったと思うのです。あのことば、発生源の明らかな企業公害には敢然と立ち向かう、これは私の公約だ、こういうふうに言ったという。そしてその質問、一高校生が、政治献金をもらってはものが言えなくなるのではないかと、これは素朴な疑問ですが、国民の気持ちでしょう。それにこたえて今度出されたこの法案を見る場合には、国民は、それで、やはり総理もりっぱにやったと思う人、何人いるでしょう。やはり財界から金をもらっていると最後には弱いんだなという考えを持たれるに相違ないじゃありませんか。私は、そういうようなことからして、この際、抗争中、係争中のこういうような会社からの政治献金を受けることは誤解を招く、こういうような点では十分考えておいてもらわなければならないと思うのです。四十四年度でも昭電から八百六十二万円の寄付があったようでございます。私は、そういうふうに見ましても、この中で……(「時間がきたよ」と呼ぶ者あり)はい、はい、よくわかっておりますから、すぐやめますけれども、田子の浦のあのヘドロの問題で有名な大昭和製紙からも二百五十万円出ていた。それから、のろわれているような気さえするあのチッソ株式会社、無配当が続いておるというこの会社からも二十万円、ささやかであろうけれども、政治献金が出されているんだ、こういうようなことであります。八百六十二万円、こういうふうな寄付も昭電から受けておる。こうなってみると、これらの企業は全部係争中の企業ではありませんか。ここにき然とやるという態度を示すことが、この公害対策基本法に画竜点睛を施すもとだ、こういうふうに思います。総理のこれに対する今後の重大なる決意を伺って、私は終わりたいと思います。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 島本君からいろいろ注意を受けました。私もいま党の総裁ではありますから、その責任があると感じます。したがって、そういう点についてはさらによく実情も調べ、誤解を受けないよう、そういうものがきれいな支出であるかどうか、それらの点についても、私からも十分調べてみるつもりでございます。以上、私の所信を申し上げたつもりであります。
  300. 加藤清二

    加藤委員長 島本君、まだ質問したいでございましょうが、時間が参りましたので次へ移ります。  岡本富夫君。
  301. 岡本富夫

    岡本委員 私は、最初、総理に申し上げます。  あなたは世紀の四選をやってのけ、国民のあなたに対する期待は実に大きいと、だれよりもあなた自身が自覚されておると思うのです。いま総理には巨大な権限がある。したがって、公害問題を解決しよう、こう思われれば、あなたお一人の考えが非常に大きく影響すると思うのです。こういうような意味で、質問に対してはどうかひとつ、国民に直接お答えしているんだ、こういう気持ちでお願いしたいと私は思います。  そこで、けさの各新聞の報道を見ますと、昨日来のこの国会審議を見た公害患者の方々が、あるいは失望し、あるいは怒りを覚えておる、こういうようなことが報道されております。御承知のごとく、わが国には公害の被害者がいままだ病床に伏していらっしゃる。そして、こうした不幸な国民の方を救済するのがほんとうの、現在のまずの対策ではなかろうか、こういうように思うのです。そこで、昨日来の総理の答弁を聞いておりまして、企業の無過失責任、この賠償制度は非常にむずかしい、こういうふうにお話しでございましたが、加害者である企業とそれから被害者とが、その立場が実質的に平等であると総理はお考えになっていらっしゃるのか、この点についてお聞きしたいと思うのです。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねは原被両告が、原告あるいは被告、そういうものが同じ立場でなければならないというのが裁判の本来のたてまえでございます。しかし、いまも島本君とも議論したように、いわゆる挙証責任等の問題がありまして、必ずしも完全な、平等な立場にあると、かようには言えないのじゃないか。私はそれを非常に心配している状況でございます。
  303. 岡本富夫

    岡本委員 まあ平等でないと、こういうふうにお考えだと思います。  そこで、これは証明することは要らないと思いますけれども、かつて水俣病の患者の皆さんが会社側と和解をされました。中労委の公益委員の千種達夫という方が座長になって行なわれたときに、見舞い金をもらって、そうして、一応会社側に対しては、もう何の補償要求も行なわないというような一筆が入っておりますが、それがやはりこの調停、あっせんに響きまして、死亡者が一時金三百万とか、あるいは生存者でも、動けないような人たちが五十万から百九十万というような安い、世間の人たちがあっと驚くようなことで一応解決したようになっております。したがいまして、私は、こうした被害者の方は非常に不利である、こういうことを考えますと、この無過失責任というものは制度としても大事ではないか。そこで、先ほどから各大臣は、答弁の中で、公害というのはたくさんあるから非常にむずかしいと言う。そうすると、いま原子力基本法あるいは公団法、こういうものには無過失責任がありますので、あるいはカドミウム、あるいは水銀、こういうように限定をされるならば、こうした無過失責任制度が検討されましょうか。その点について伺いたいと思います。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのカドミウム、水銀だとか、そういうものが全面的に犯罪者だということがはっきりすると、これは比較的非常に容易です。しかし、それがまだ学術的にそこまで割り切れないところにいろいろな議論が出ておるんじゃないだろうかと思っております。現に水銀あるいはカドミウム——水銀の場合はわりにはっきりしているようですが、カドミウムの場合だとまだまだなかなか、いろいろな議論が出ておる、そういうところに問題があるんじゃないだろうかと思います。私は、いまの無過失責任ということになると、これは片一方で、被害者は挙証の責任というような問題が非常にないという、そういうところで容易だと、かようにもなるが、今度加害者のほうから見ると、またいろいろな問題も引き起こすんじゃないだろうか。  ところが、いま、一つ考えていただきたいのは、現実に公害病、公害的な患者、公害をこうむって身体の障害を起こしている、そういうものについて応急の処置をとにかくとらなければならない。いわゆる裁判の手続が長くかかるようなことがあったら、勝っても、もう実はあまり役立たないような場合もあるだろうと思いますね。しかしながら、それよりか、やはりそういう問題について一つの網をかけて、そうして、その費用負担というか、一応医療の費用負担、そういうようなものは国あるいは事業者両方でやっていくとか、こういうような処置で応急の処置を講じ得るようにすることも一つの救済方法じゃないだろうか、かように私は思います。ただいまとっておるのは、いきなり裁判の問題にまで発展しないで、その前の段階、いま現実に悩んでおられる人たち、それらの方が医療を受けられ得るような、そういう処置をとにかくとっておる。これがいまの法律ではないか、かように思っております。
  305. 岡本富夫

    岡本委員 まあその問題は、押していますと時間がかかりますから……。  それで、いま総理が仰せになりました当面の被害者を救済する、こういう問題につきまして、すでに被害者救済法案によって救済しておるわけでありますけれども、これは医療費のみでありまして、生活費あるいはまた御両親が病気になっている方のお子さんの教育費、こういうものを含んでいないのであります。御承知のように、そうした生活に困り抜いて、そうして水俣のあの不本意ながら調印をした、和解をしたというような面を見ましても、やはりそこは生活費まで、ここでひとつ総理に御決心をしていただきたい。なぜかならば、ほかのいろいろな保障もございます、生活保護もございますけれども、この公害救済制度の問題は、これは立てかえ払いとなっております。ですから企業、要するに加害者から入ったら、それをお返しする、国に返すんだということでございますので、やはりそこまで手厚いところの、まあ最低のことでございましょうけれども、生活費を見てあげられるような現在御心境はございませんでしょうか。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま厚生省でもいろいろ考えておるだろうと思いますので、厚生大臣からお答えさせます。
  307. 内田常雄

    ○内田国務大臣 昨年の国会で、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法が成立をいたしました。これは御承知のように、公害発生企業との責任の関係あるいはまたそれによる損失補償などがなかなか長引くと思われますので、その間、緊急の健康被害につきまして、行政上の措置としてということであの法律ができまして運用をいたしております。したがいまして、その法律のワク内で生活保障をするということはできないたてまえでございます。もっとも、いまの医療や何かのことにつきましては、私どももその改善方につきましてできるだけの努力は今後いたしてまいります。
  308. 岡本富夫

    岡本委員 総理、いまの厚生大臣の答えでございましたが、すでに四日市の認定患者の方ですが、この方は生活に困りまして、とうとう首つり自殺をした方もいるのです。したがって、それはそれといたしまして、いまの現行法ではこれしかしかたがない、こういうことでありますので、一歩進めて、まあ次の通常国会にでも、法改正というような手段でもって何とか総理の御決意あるいはまた前向きの御答弁をいただければ、聞いているところの被害者の皆さんがどんなに喜ぶか、こういうように私は思うのですが、いかがでございましょう。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの病人の問題は私の説明で一応ごしんぼうなさるとして、その他家族全体が、働き手がいま病気になった、こういうことで困っておる、これについて一体どうなるか。これは御承知のように、生活保護家庭という、そういうようなたてまえの救済方法というか援助方法があるんじゃないか。これはまあ考え方ですが、私ども国民のほうから見れば、どういう原因であろうとも、生活に困窮する、こういう場合には同じように、原因のいかんを問わず政府がそのめんどうを見る、こういう見方が当然あるべきだろうと思います。ただ公害患者だから一般的な生活保護とは別な方法でやれ、こう言われましても、そこらが一体国民として納得ができるだろうか、かように私は思うのでございます。だから、そこらのところの考え方の相違がそこにあるだろうと思います。
  310. 岡本富夫

    岡本委員 総理、非常に私、謙虚にこの患者の皆さんにかわったつもりでお願いもし、また御質問申し上げておるのです。  この公害病患者の方は、費用が入れば、そうしたらそれをちゃんとお返しするようになっている。ほかとはずいぶん違うのです。しかも私、事実を申し上げますと、四日市のあの病院に見舞いに行きました。そうしますと、生活に困るものですから、昼働きに行って夜はその病室に入って休んでおる。遠くの医療機関はないわけで、まだそこへ行きますと仕事ができないのです。こういうようなほんとうに気の毒な状態でございます。したがって、ひとつ総理もう一歩お進みいただきまして、次の国会にでもこの検討をしていただけるような法案を出していただけるか、ひとつもう一歩進んでお願いしたい。
  311. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう一歩進んだ、こういうことですが、政府の見方があるいは実態について認識を欠くものがあるかわかりません。また一部から、いわゆる生活保護という、そういうたてまえの援助はどうも恩恵的なものであって受けにくい、しかしわれわれは当然の権利として、これだけのものは要求する、こういうたてまえなんだから、それを立てかえてくれろというのだから、その方法をひとつ考えろ、こういうのが岡本君のお尋ねの趣旨かと思います。しかし私、もっとその実態をよくつかまえて見ること、これをまずお約束して、そうして厚生省において特別にどういうように考えるか、いわゆる一般の困っておる人たちと同じようにするか、あるいは特別なことが考えられるかどうか十分検討してみたいと思います。
  312. 岡本富夫

    岡本委員 では、総理は検討をしていただくということでまずこれは了解しておきまして、そこで、実は総理も御承知のように、こうした被害者の方は訴訟に持っていけ、いま四つの公害裁判といわれるものが行なわれておりますけれども、これは非常に大ぜいの方でございまして、まあ厚生省がその原因の究明をした、科学者を集めて原因を明らかにした、したがって、訴訟ができたわけです。これは数が少なければ、政治問題にならなければ原因究明ができなかったであろう、これはやらなければいかぬという厚生省に対してのあれがないわけでして、厚生省の善意でやっていただいたということでありますので、やはり法律で裁判せいということはできない、生活に困っておる。したがいまして、私はこの紛争処理法案の中に——またやはりいまの日本では大体裁判というのはあまり好きじゃないわけでございますから、そこまでいかぬ前に裁定制度まで持っていくべきがあたりまえではないか、こういうふうに思うのですが、その点についてお聞きしたい。
  313. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われますように裁判所を使うまでもなく、両者、被害者と企業者との間に立って中を仲介する、そういうものが何かあればたいへんいいだろうと私も思います。そういうものをやはりものによりましては積極的に政府も関与して、ただいま言われるような中立的な存在をつくるべきだろう、かようにも思いますから、その辺も研究課題としたいと思います。
  314. 岡本富夫

    岡本委員 全部研究課題ということになりますので、ぜひひとつこの紛争処理の裁定制度も研究をして次の通常国会あたりには何とかしていただきたい。  そこで次に、三十日に労働省が有害物質を取り扱っているところの企業の点検を発表されましたけれども、これを労働大臣に説明してもらおうと思いましたが、時間がありませんので私のほうからいたします。これを見ますと一万三千六百六十三事業場、このうちの七四%が廃棄未処理、あるいはまたカドミとかあるいはシアン、こういうもののたれ流しが二六・五%というような多きになっておることは御存じだと思うのです。しかし、これを見ますとなかなかこれだけの点検というものを、私ども公害の総点検をやってわかったのですけれども、やはりこれは労働基準監督官が準司法的な立場で約千九百人で一カ月で行なっております。したがいまして、私、まず、こうした公害対策を総理がほんとうに力を入れてやっていかなきゃならぬ、こうなりますれば、やはりこの公害防止監督官というような準司法的な方が入れば、一番早く実態がわかるのではないか。そして強力に進むのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  315. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの点並びに先ほどの裁定官の問題、この二つとも山中君から答えさせますので、お聞き取りいただきます。
  316. 山中貞則

    山中国務大臣 御承知のように、公害紛争処理法案の先国会通過に伴いまして、中央公害審査委員会が発足をいたしました。これに与えられた権能のうち、御指摘のように裁定の権能がございませんが、その裁定について、憲法で定めてあります、行政は終審として裁判を行なうことができない反面、また同じ憲法で、何人も裁判の権利を失うことはないということ等を考えますと、やはり中央公害審査委員会の責務は、なるべく合意に達する努力をお助けするわけでありまして、そこで裁定をして、そしてそれが裁判に移行しないような拘束力というものは与えることは不可能でありますから、やはり今後運用をいたしまして、裁定権を持ってやらなければできないなと思う場合には、これを改むるにはばかることはありませんが、それらの問題については、まだ発足したばかりでございますので、運用自体等を十分に見きわめてまいりたいと考えます。さらに現在の新しい御提案である公害監督官と申しますか、こういうものは、今日までの労働基準法に基づく監督官の人たちの、いわゆる企業内の企業と労働者との関係から、さらに一歩業務を進んでいただきまして、その企業の中で行なわれている事業活動というものが、周辺の企業の外側に向かってどのような影響を及ぼしているのか、そういうことは企業の中にこそ一番よく発見できる立場の監督官でございますので、今後そういう監督行政等の分野を広めていただいて、労働大臣等にもよくお願いをしながら、それらの分野にも——さらに労使提携ということも必要になりましょうが、そういうことでぜひ地域の中の愛される隣人としての企業内の確立をしてもらいたいという気持ちでございます。
  317. 岡本富夫

    岡本委員 わかりました。この監督官の権限公害防止まで広げるというように提案なさるということであります。  それで公害防止はなぜ早急にやらなければならぬか、なぜ私がこんなに強力にやることを提案しているかと申しますと、このたび政府から提案されておるところの公害防止にかかる事業者の費用負担法、あるいはまた土壌汚染防止法、こういうものを出していらっしゃいます。そしてカドミウムの、あるいは有害物によって汚染された土壌、それを客土で変えましても、発生源をとめなければ、これはまた出てくるわけです。ですから二重の投資になって国益に大きなマイナスになるのではないか。一つはこういう面で私は申し上げておるわけであります。これは人の健康というものが一番大事でありますけれども、その点を考えても、そうした費用をお出しにならなくても、公害防除に使ったほうがいいのではないか、こういう面で申し上げておるわけであります。  そこで、そうなりますと、一番大事な問題は中小企業の問題になろうと思うのです。公害を出すような企業はつぶれてもいいのだというようなことは、これは中小企業にはもってのほかだと思うのです。西ドイツにおきましては相当な予算を組んで中小企業に当たっておるということは、総理も御承知だと思うのです。したがいまして、中小企業に対して一番即効薬と申しますか、一番いいのは金融でございます。あるいはまた公害防止機器の貸し付けなんです。こういう面について相当大幅にやらなければ、結局は企業は倒産するか——すでに公害倒産は起こっておりますでしょうが、公害倒産だけでなくして、今度は企業が存立しておりましても規制はできないわけです。また御承知のようにメッキ工場、こういう工場はカドミメッキしてはいかぬ、カドミを流してはいかぬ、こういうようなことになりますと、今度そういう業界では自主規制をやろうというようなことをいっております。そういうようなことをなさっているらしいのでございますけれども、ところが、やはりカドミメッキというものは御承のように列車の部品あるいは航空部品、みな国民の大事な生命を守るところの部品のメッキになるわけでございます。したがいまして、そうしたところの助成策、これに対して大幅にひとつ補助金、これをまず出していただける考えは総理にございましょうか。
  318. 福田赳夫

    福田国務大臣 金融問題でありますので、まず私からお答え申しますが、いま中小企業につきましては、公害につきまして中小企業金融公庫、国民金融公庫、これに特別ワクを設け、さらに低利の条件をもちまして融資をする、こういうことにいたしております。今度こういう立法が行なわれるということになり、またこれから時勢の動きに応じまして、公害融資要請が中小企業からも相当多くなる、こういうふうに思います。その多くなる情勢に応じまして、この制度を活用しまして最大限の努力をいたしていきたい、かように考えます。  なお、中小企業金融専門じゃございませんけれども公害防止事業団というものがあります。この公害防止事業団におきましても、中小企業に対しまする融資をやっておりまするが、この方面でも拡大をはかっていきたい、かように考えております。
  319. 岡本富夫

    岡本委員 大蔵大臣、ではせっかく御答弁いただいたので、来年の九兆円の予算の中で予算編成するとかいうことをこの間本会議でお聞きしましたけれども、事はもう少し早急に解決しなければならぬと思うのですが、あるいは補正予算で組むのか。あるいは年度内に、何といいますか何とか予備費あたりから出していただけるのか、こういうような点についてひとつ明確にお答えできませんでしょうか。
  320. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十五年度におきましては予算があります。ただいま申し上げましたように特別ワクも設定してあるわけでございます。このワクがはたして今年度の問題として十分であるかどうか。これはもう成り行きを見まして善処をいたしますが、特に四十六年度におきましては予算編成過程においで十分な配慮をいたしたい、こういうふうに考えています。いま具体的に補正予算を提出いたしましてどうするということまでは考えておりません。
  321. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま大蔵大臣お答えいたしましたように、また岡本君が心配しておられるように、公害防止あるいは公害排除というようなことになりまして一番心配なのは中小企業だろうと思います。したがいまして、基本法等におきましても中小企業を別ワクで扱え、そこに特別な損害が及ばないようにひとつよく考えろ、こういう考え方といいますか、規定もあるということでございますから、それらの点から中小企業に格別な損害が及ばないように、いまの公害はなくしますが、それにつけてやはり救済あるいは対策をも十分講じていきたい、かように思っております。
  322. 岡本富夫

    岡本委員 時間がありませんから、あとは委員会で詰めることにいたしまして、最後に一点だけ。環境基準、これが現在きまっておりますけれども、この環境基準は経済の健全なる発展との調和というときにきまった環境基準でございます。私ども野党三党が出しておるところの環境というのは、これはやはり今後の人類の生存のために考えまして、あるいはまたわれわれの現代の生存ということを考えましても、御承知のように生態学的に考えますと、もう現在のこの環境の中では、海中のプランクトンが死滅して、そして酸素の供給源がなくなってくる、こうした問題から考えられた環境基準ではないと思うのであります。したがって、やはりこの環境基準は、どうしても排出基準との関係で、自浄作用、すなわちリンク性といいますか、この自浄作用によって、排出したところの汚染された亜硫酸ガスあるいは一酸化炭素、こういうものが消滅するような、自浄作用できるような環境基準と排出基準をきめなければならぬ。したがって、現行のものはやはりここで検討してこなければならぬじゃないか、こういうように考えられますが、総理の御見解を承りたいと思うのです。
  323. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題は、絶えず実情に合うように監視、また基準をよく設定するようにしていかなければならぬと思います。ただいままでつくったものがもう永久不変、こういうものでないことは御承知だろうと思いますが、われわれのほうもさらにさらに勉強していくつもりであります。
  324. 加藤清二

    加藤委員長 岡本君の時間が切れました。  次は、和田春生君。
  325. 和田春生

    ○和田(春)委員 昨日来延々十数時間にわたります本委員会の審議におきまして、海の汚染に関する基本的問題がほとんど議論されていないことは、海洋国家日本の国会としてまことに遺憾に考える次第でございまして、その点をまず最初に申し上げておきたいと思います。  現在、最大の残された自然は海洋でございまして、特に海洋は、人類を含む生けるものの生態系において決定的に重要な地位を占めているわけでございまして、これをおろそかにいたしますと、人間は海からかたきをとられることになるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  今回非常にたくさんの公害関係諸法案が出てまいりますが、これについては、世間では、数は多いけれどもざる法であるという批判が非常に強いわけでございます。その全般の公害諸法の体系の中でも、海に関しましては大きくしり抜けになっているように私は考えるわけでございますが、まず最初に、総理に、現在用意されております公害諸法案で、海に関する汚染防止という点についてまあまあであるとお考えなのか、あるいは、かなりしり抜けになって、ざるであるというふうにお考えになっているのか、全く不十分であるというふうにお考えになっておって、もっと補わなければならぬ、こういうふうに思っておられるのか、基本的な認識について総理の所見をただしたいと思います。
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単にお答えをいたします。  現段階では、以上提案したところでまずやむを得ないものじゃないか、かように思っております。
  327. 和田春生

    ○和田(春)委員 総理の御見解によりますと、現段階ではまずこの程度でやむを得ないものではないかというお話でございますが、それでは具体的にお伺いをいたしたいと思うのです。  海洋汚染の発生源としては、おおよそ五つのものが考えられると思います。  一つは、船のものでありますけれども、日本船による汚染であります。  それから、日本の海外輸出入貨物の半分以上は外国船によって運ばれているわけでございまして、同じ船による汚染といいましても、これは規制法律の適用対象が違いますから、外国船による汚染というものを考えなければなりません。  第三番目は、陸上からする汚水排水あるいは廃棄物等であります。  第四番目は、海と陸の間にあるもので、どちらともきめかねるもの、たとえば田子の浦港のヘドロのような問題であります。  第五番目には、これからの状況発展の中で特殊に考えていかなければならない問題、こういうものがあるわけでございますが、今回提出されました海洋汚染防止法は、その海上の汚染源のうちの、日本船舶による汚染あるいは船舶に準ずる海洋施設というもののみを取り締まり対象にしているわけでございますが、外国船が日本の近海において現実にいろいろよごしている事例もあるわけでございますけれども、一体、現在の法律体系で、この外国船に対してこのままでいいとお考えなのか、あるいはこれでは全く不十分であるとお考えなのか、その点重ねて総理にお伺いをいたしたいと思います。
  328. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外国船に対してはきわめて不十分、これはもう明らかであります。まず、その一つは、一体領海内においてすら実は問題があると思いますが、領海がただいまのところ非常に狭い、これでよろしいのか、こういうところが一番国際的な問題として各国が協力してこの汚染問題と取り組もう、そういう原因にもなっておる、かように思っております。
  329. 和田春生

    ○和田(春)委員 それでは、次に外務大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、日本は伝統的な海洋国家として領海三海里ということを主張しているわけでございます。しかし、今日、国際的にいいますと、これよりはるかに広い六海里の領海、六海里の専管水域あるいは十二海里の領海、多いところは五十海里、百海里というようなけたはずれのものまで出てきておるわけでございますけれども、日本が武力によって出かけるというような論外のことを考えれば別といたしまして、それぞれの国の定めた領海によって現実には規制をされているわけであります。三海里といいますと、わずかに五・五キロしかない、すぐ目の前のところでありますけれども、その領海の外におきまして外国船が廃油を流す、あるいは船からいろいろなごみを投棄するということについて、日本の法律は適用されません。さらに、先進国で法体系が整っているところならよろしいわけでございますけれども、御承知のパナマ、リベリア、ホンジュラス、いわゆるパン・リブ・ホン・シップというような、全くそういう法体系を欠いている国に置籍している船がたくさんあるわけでありまして、日本にもどんどん来ているわけでございますが、これらは全然取り締まれない。そういう点について、現在の領海の規定はこのままでこれからの海洋に対する人間の責務、日本の責務を果たしていく上でよろしいとお考えかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  330. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、領海についての見解でございますけれども、これはただいまもお尋ねがございましたように、現状が望ましいものと考えられませんので、領海三海里説、これをどういうふうに改善していくかということについては、政府といたしましても、鋭意検討中でございます。これはいまさら申し上げるまでもございませんが、お互いに、この領海をきめましたら、国際的に各国ともこれを守り合うということが一番大事な点でございますから、幸いに、国際的にも領海問題を積極的に取り上げる機運が出てきておりますから、たとえば、政府といたしましては、十二海里説、あるいはその中にもいろいろの説がございますが、たとえば六海里は領海、六海里は専管水域というようなことで大多数の国が合意され、これが順守し合えるというような環境になりましたならば、それが差し向きのところ最も妥当な考え方じゃないか、こういうふうな考え方をもちまして、国際的に協議を進めてまいりたいと考えております。  それからもう一つ、念のためでございますが、ただいまのお尋ねの、総理からお答えがございましたけれども、御承知のとおりに、現在のところは港則法と、それから千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止のための国際条約がございますけれども、それに基づいて、昭和四十二年に油濁防止法が制定されております。しかし、これには不十分な点もございますが、幸い国際条約につきましても改正が行なわれることになって、これを前提といたしましてただいま御審議をいただいております海洋汚染防止法案、これを政府として作成いたしたわけでございまして、これは従来の考え方と違いまして、たとえば五十マイルというような領海あるいはそれに類するようなものの観念を離れまして、およそ公海であろうが領海であろうが、一つの船が油もしくはそれ以外の汚染の原因になるようなものを捨てることをそれぞれ船が単位で禁圧しよう、こういう趣旨に相なっておりますから、こういう条約ができ、各国が批准をし、さらにこれを前提にするような各国の国内立法が済みますれば、いまのような欠点、これが相当に改善されることになると思います。政府といたしましても、そういう方向で今後とも努力を続けたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  331. 和田春生

    ○和田(春)委員 いまの外務大臣のお答えでございますけれども、油による海洋汚染防止の国際条約はそのとおりでございますけれども、そういう条約を実際に実施されるという担保がなければ、条約があるだけでは意味をなさぬわけでございます。現実に日本の近海におきましても、外国船のタンカーが日本の沖で油をたれ流しにしている。そういう事実はたくさん目撃をされております。また、裏日本ではソ連船がシベリア材を積んで、裏日本の日本の港に入る。領海内では残った木皮を捨てませんけれども、少し離れて領海の外に出ますと、海にばさばさそれを捨てていく。それが日本の海岸に流れついてたいへん迷惑をこうむっているというような事実も現実に存在をしているわけであります。そういたしますと、日本が領海三海里、こういう形で狭く制限をいたしておりますと、その外には全然手がつかない。航洋船のうち半分以上、内航船は別でありますけれども、外国船が走っておる。日本船はきびしく海洋汚染防止法で取り締まる。これは国際条約の基準よりもある部分では上回っている点もある。その点には私は敬意を表したいと思いますけれども、しかし、外国船が野放しになったら何にもならないんではないですか。そういう点について、海洋汚染防止は全くこのままでは領海の関係、その他の法体系の関係で片手落ちになる。また国際条約を誠実に守っている国ならいいですけれども、先ほど言ったように海の無法者といわれるような海運国もたくさんあるという状態で、はたしていいかどうか、その点十分検討して対処策をする必要があると思うのですけれども、重ねて総理に所信をただしたいと思います。
  332. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣から詳細に答えました。日本の場合は国際協調、これをまず第一に考えておりますから、三海里説をとっておるというわけのものではないので、国際的にその範囲が拡大される、そうして国際条約が締結されれば、それは進んでそういうものに加入していく、そうして国際的にやはり守っていく、こういうことでございます。したがって、ただいまのような点について、私は、これはいまその外国船を直接われわれがどうこうできないにしても、そういう現実の問題が起こる、あるいは近海で海洋に油を流しているとか、あるいは木材の皮を捨てているとか、そういうことで積極的な汚染を来たすようなことがあればこれは私ども法律はなくとも十分そういう国と話し合うことはできるんじゃないだろうか。そこらが本来の外交でもあろうか、かように思います。  ことに、ただいまの海洋汚染の問題については、御記憶にもあるでしょう。あの「パピルス」とかいったか、これが大西洋を横断した。その中間にタール状のものが流れていた、これは汚染されている、これはたいへんなことだ、こういってあの「パピルス」の船長が手記を書いておりますね。私は、このことはみんなにたいへん大きな打撃を与えているだろうと思います。したがって、海洋というものがずいぶん広い、そうして自然の浄化作用があるとか、かように申しましても、油になるとなかなかそうはいかない。こういう現実の問題があるので、これは真剣に取り組まなければならぬ、かように思っております。
  333. 和田春生

    ○和田(春)委員 この点につきまして、いま直ちにこの場で的確なお答えを得られないのは残念でございますけれども、国際的な条約に追随するとかいうような姿勢ではなくて、むしろ海洋国家、平和国家日本という意味で、国際的な海洋汚染防止に日本の政府が積極的なイニシアチブをとるということを要望いたしまして、次の質問に移りたいと考えるわけであります。  先ほどの海洋汚染源の第三番目の陸からでございますけれども、どうもこの法律全部読んでみますと、たとえば一般廃棄物の処分、こういうようなことについてもそれは海を捨て場所にする、海に捨ててしまえばそれでおしまいだ、そういう観念が非常に強いのではないか、こういうふうに思われるわけでございますけれども、たとえば廃棄物処理法の雑則に清潔の保持、その他というものもございますが、第五条の中に「海洋を投入処分の場所とすることができるものと定めた一般廃棄物」という表現があるわけでございまして、その基準政令で定めることになっているわけでございますが、この政令におきまして一体どういうものを海を投棄の場所と定める、こういうふうにきめようとしているのか。あるいは海に廃棄物を一切捨ててはいけない、そういう大前提に立って、その上で万やむを得ざるものに限って例外的に海に捨てることを認めようとお考えになっているのか、この点、ひとつ関係大臣からお答えを願いたいと思います。
  334. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私ども改正を御提案申し上げております、廃棄物処理法におけるごみ、あるいは屎尿等の海面の廃棄につきましては、和田議員がおっしゃったあとのとおりでございます。それには二つの考え方を持ちます。  一つは、万やむを得ず捨てる場合には政令できめますが、大体その政令内容といたしましては海洋中での細菌学的な安全性を確保するための処理を加えなければならないこととか、あるいは海洋の自然浄化力に見合うそういう量の範囲内でなければならないとか、あるいは三番員には、海洋中ですみやかに分解し、あるいは海底に蓄積しないようなある種の薬剤を添加するというような、そういう条件をつけたものでなければ、海洋には投下させないようにいたします。  第二番目は、私は現行の清掃法を見て、実は正直に言いまして非常に驚いたのでございます。現行の清掃法では、これ、ふん詰まりでありますから、やむを得ずそういうことになったと思いますが、海洋中に捨てることを堂々と認めております。捨てていけないのは大都市などの海岸線から二百メートル以内、わずか二百メートル以内の海面内とか、あるいは東京湾、伊勢湾、大阪湾などの特定の海面には捨てていけないということがあるだけでございましたが、今度はそれをやめまして、和田さんがお読みになりましたような、やむを得ず捨てる場合においては特別に許される範囲の海面、しかも、その条件はいま申しましたような、少なくとも三つの条件の許される海面につきましては、今度の海洋汚濁防止法に基づく政令で運輸省のほうと相談して、そちらの政令できめるし、中身のその問題につきましては、廃棄物処理法に基づく政令できめるということでやることになっております。  しかし、申し上げますが、いずれもこれはやりたくありませんので、できる限り早く下水道並びにそれに連なる水洗式の便所でありますとか、あるいは下水道に連ならない場合におきましては、単独の、化学的の屎尿処理施設というようなものをあわせてできるだけ早くつくりまして、そしていかなる内容のものであっても、いかなる地域であっても、海洋投棄というものは一日も早くないような状態を私どもは庶幾をいたします。
  335. 加藤清二

    加藤委員長 あなた、関係大臣とおっしゃったでしょう。運輸大臣が答えます。
  336. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 この法律案は積極的に海を清浄化しかつ守ろうという、積極的な理想的な考えのもとに出した法案であります。したがって、油及び廃棄物は、原則としてこれを海には捨てない、領海のみならず、公海においても捨てないという原則に立っております。万やむを得ないものだけをただいま厚生大臣が申しましたような事情でこれを処理する、こういうことで詳しい規定を考えておるわけであります。
  337. 和田春生

    ○和田(春)委員 私はどうも政府のそういうお約束を聞いても安心ができませんのは、たとえば大東京において区部には八百万近い人口が住んでいるわけでございますけれども、その相当大きな部分というものが現に海洋投棄をされているわけでありまして、原則として捨てさせないといったらどこへ捨てるのでしょうか、厚生大臣からちょっとお伺いをしたいと思うのです。
  338. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が先ほど申しましたように、現状においては、屎尿処理施設あるいはまた下水道の構築というものは、人口の増加に追いついておりません。そこで、やむなくいまの清掃法では、二百メートル先の一般海洋とか、あるいは東京湾などでどこのみさきからどこのみさきまで引いた、線の外とかいうものに捨てざるを得ないような状況でこれまではありましたので、私どもは、少なくとも私は厚生大臣として、そういう状態を建設大臣とも、また運輸大臣とも協力を求めながら解消いたしたいと考える、こういうわけでございます。
  339. 和田春生

    ○和田(春)委員 この点につきましては、捨てられる海の側に立って、もっと具体的なことは関係委員会で別に追及をしたいと考えております。  次に、先ほど申し上げました第四番の問題ですけれども、これはどの大臣にお伺いしたらいいのかよくわからぬのですが、たぶん、担当山中国務大臣にお伺いすべきだと思うのですけれども、田子の浦のヘドロは、この公害関係諸法ではどれで取り締まる、どれにひっかかることになるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  340. 山中貞則

    山中国務大臣 現在は、まだ法案の成立以前の状態でございますから、田子の浦の例をとるならば、それはたとえば海員組合等が、あの港には船着けをしたくないとか、あるいは途中で港を寄り道しておろして、荷を半分くらいにしなければいけないとかいうような状態ですと、港則法等にもひっかかりますし、原則的には港湾法、あるいは漁港等の海域であれば漁港法、一般海域ならば海上保安庁の一般の監視というようなことの中でとらえていきますときに、やはり田子の浦の場合においては、これは港則法と港湾機能の麻痺ということで一応処理をしようとしておるわけでありますが、今回の法律が出ますと、水質汚濁の中に水の状態、水底の底質の悪化というようなことがありますから、これらの問題は明確に田子の浦の場合も当てはまるというふうに考えております。
  341. 和田春生

    ○和田(春)委員 いま新しい法律ができると、明確に当てはめるというお答えでございますけれども、私どもの調べた限りにおきましては、工場排水としてヘドロを含んだ水が出てくることは、水質汚濁防止法でこれは取り締まれると思います。あるいは、船から捨てる廃油であるとか投棄物についても取り締まれると思うのです。  ところが、たとえば田子の浦あるいは洞海湾に、いま非常に大量のヘドロが堆積をしているわけです。そのヘドロを製紙会社から流されたという段階において、港湾は被害者であります。しかし、いまや港湾そのものが第二次公害源となって、加害者の立場になっておる。港から汚水がどんどん出ていっている。そのことによって沿岸漁業がやられておるわけです。このたまったヘドロはどうするのか。どうしようもないので、結局公害防止事業の費用負担法によって費用の負担がきまって、それが始末されるまでは、いつまでもそのまま港から外海に対するたれ流しというものは放置されることになるのですけれども、これはしかたがないとお考えなんでしょうか。どういう形で処理されようとするのですか。その点もう一ぺんお伺いしたいと思います。
  342. 山中貞則

    山中国務大臣 現行法で明確な、法的なただいま御指摘のような基準がなかったにもかかわらず、田子の浦においては、明確に製紙企業というものが排出するSSの沈でんによる、天然ヘドロの上に堆積した有害なヘドロであることが明白でございますから、これについては、全額その起因者である事業者が負担することにいたしまして、事業団からの防除施設に対する緊急融資の十億と、さらに、異例の措置として大蔵の特認を得ました転貸債として静岡県が起債を起こし、さらに富士市に転貸し、最終的に富士市に支払って償還をすべき責任は関係企業が負うという形の五億円を追加いたしまして、その財源処理をいたした次第でございますが、しかしながら、この手当てについて、今後は法的な根拠を持って、明確に公害防止事業としてなし得る根拠があり得るものと考える次第であります。
  343. 和田春生

    ○和田(春)委員 田子の浦だけを例にあげたのですけれども、洞海湾という、もっと大ものも存在しているわけであります。いまの長官のお答えをしかと確認をいたしておきまして、あとから怪しげなことになって、ずるずるずるずるとなるようなことがありましたら、また再び国会で追及をいたしますので、時間の関係もありますので、きょうはその点は預けておきたいと思います。  次に、第五番目の海洋汚染の今後の状況で、特殊に考えていかなければならない問題があると思うのですけれども、第三のレジャーとして、ここ数年のうちに飛躍的に増大が予想されているものに、レジャーボートがあると思うのです。モーターボートが急激な勢いで海にふえていくということは、必至の傾向だと考えるわけでございます。これらのレジャー用のボートは、大かたがアウトボードエンジンをつけておるわけでございますけれども、それから油が出ます。またそれに、遊んでいる人たちが、弁当くずであるとかいろいろなごみを捨てます。また、このモーターボートの騒音は、自動車騒音の比較にならないくらい、これは消音器をほとんどつけておりませんので、大きな騒音を出すわけでございまして、もし、これが急激に、陸で車が一ぱいになりまして、海にレジャーを求めて、海の雷族が出てまいりますと、ここで油濁、ごみ投棄、騒音という三つの公害が関連して発生することが予測されるわけです。これは現実にそういう目にあっている漁業協同組合の諸君から私はその実情を訴えられて、これからどうなるのだろうかという心配を聞かされているわけであります。一体これは今度の公害法の関係でどの法とどの法とどの法に関係をして、どの大臣とどの大臣とどの大臣が担当されることになるのか、一言ずつ明白にお答えを願いたいと思うのです。
  344. 山中貞則

    山中国務大臣 今回提案いたしました法律の中に、モーターボートという概念でとらえてはおりません。モーターボートの出す油というものは、大体ガソリンで走るのじゃないでしょうか。しかし、その他にもやはり油もあるいは漏れるかもしれませんが、その他投棄物や、場合によっては泳いでいる人たちの中に突っ込んで死傷者を出した例等もございます。これらは海上の場合でありますから、一義的にはやはり運輸大臣、そしてそれらのものが海水浴場周辺をよごし、もしくは投棄物等の処理等が必要になれば、清掃法所管の厚生大臣であろう。しかし、それらのものについて野放しにしておくかどうかについての問題は、通産大臣の所管であろうと考えます。
  345. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 現在、モーターボートの数は七万隻あります。本年度のいわゆる生産台数は二万三千台、昭和五十年度には大体六万台を生産する。たいへんな数になります。  そこで、今度の防止法の中には、御承知のように三百トン以下は、一般の船はこれの規制を受けないということになっておりますから、したがって、モーターボートはこの規制には触れないわけであります。同時にまた、油の問題からいいますと、モーターボートは御承知のようにガソリンを使っておりますからして、あまり流す例も非常に少ないであろうと考えております。  騒音の問題は、これは別の問題でございまして、この問題につきましては十分に考えなければなりませんけれども、全体として今後相当の数が出た場合にこれをどうするかという問題はあろうと思います。これは今後の問題として研究していきたいと思います。
  346. 和田春生

    ○和田(春)委員 時間が残り少ないので、私のほうから申し上げますけれども、これを考えていきますと、運輸省にも関係があり、自然公園法だと厚生省にも関係が出てまいります。廃棄物でごみを捨ててはいけないという形になると、また厚生省にも関係が出てくるように思いますが、いろんなところにひっかかっておりまして、一体どこが責任を持つのかということは、われわれが法律を見ておったのではわからぬわけであります。しかし、これは必ず重大な問題になることを予言をしておきたいと思いますので、この点はどうも海洋汚染防止法では網にひっかかりにくい、海上保安庁長官でも取り締まりにくい、市町村長権限の範囲外にも出そうである。この点はひとつ十分検討をお願いをしておきたいと思います。  そこで、最後に、これは総理に確かめたいことでございますが、日本には昔から、水に流すということばがあるわけでありまして、総理も日本人である以上使ってこられたと思いますけれども、たいへんこれ重要な問題だと思うのですが、どういう場合に水に流すということばをお使いになってこられたか、佐藤総理のお考えを伺いたいわけであります。
  347. 加藤清二

    加藤委員長 和田春生君、あなたに申し上げます。もうあなたの持ち時間、あと一分です。
  348. 和田春生

    ○和田(春)委員 はいわかっています。
  349. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 水に流すということばがあり、同時に川は三尺流れて清し、こういうことばがございます。このことばは、いままでの日本人の生活にもぴったり合っている。ところが、最近は、どうも水に流されては水が困るという、川は三尺流れて清しではない、流れれば流れるほどよごれるという、たいへん逆な方向へ行っている。これは新しいことばでございますが、どうもあまり水に流すというようなことのないように、これからはひとつお互いに気をつけていきたいものだと思っております。
  350. 和田春生

    ○和田(春)委員 ただいま総理のお考えを伺ったわけでございますけれども、どうも海洋に対しましては新しい教養が必要だと考えるわけでございますけれども公害防止に対する政治責任も水に流さないようにぜひお願いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  351. 加藤清二

    加藤委員長 次は、寺前巖君。
  352. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、総理の基本的な政治姿勢をお聞きしたいというふうに思います。  いま、今国会に対して国民は四つの点で期待を持っていると思います。  第一番目は、一体このような多数の死者や公害病患者を出し、多数の勤労者が生業を断たれ、国民の大多数が公害の危険を感じるという事態をだれがつくったのか、そしてどのような方法でやったのか、これを明らかにせい、これが一つだと思います。  第二番目には、再びこのような事態にならないように、責任を負うように、法律の面からもしっかりせよ、というのがその問題だと思います。  第三番目に、今日の被害を与えた問題に対して単なる健康上問題だけではなくして、すべての被害に対する処置をせよ。  第四番目に、三年前に基本法をつくった、ところがその基本法が、日本共産党が、経済発展との調和を言っておった日にはたいへんなことになるという警告と反対をしたのにもかかわらず、それが通った。その姿勢が今日の被害を与えてきた。国民が立ち上がり、そうして美濃部知事のような積極的な知事さんの姿勢と相まって、今日の新しい公害の問題に対する国民的な世論の手によって、押える力が強まってきた。この力を保証するかどうか。ここらが私は国民の今国会に対する期待であろうと思います。  その立場に立って、私は総理に、一体加害者はだれなのかということを、一番集中的に公害が発生した、いわゆる公害病認定地域というこの地域について聞いてみたいというふうに思います。  そこで、私はこれを羅列的に全部言っておってもどうかと思いますので、まず、水の問題について、阿賀野川の下流域に対するいわゆる第二水俣病、これの加害者はだれか。あるいは熊本の水俣湾沿岸の水俣病加害者はだれか。イタイイタイ病、神通川流域のあの加害者はだれか。水の問題に対するこの加害者を明らかにしていただきたいと思います。
  353. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 厚生大臣からお答えいたさせます。
  354. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いずれも、その事件が発生いたしました後、厚生省でも調査をいたしましたし、あるいは科学技術庁でも調査をいたしました結果、あるものにつきましては、その原因と思われる事情を厚生省は明らかにいたしてございます。  水俣病につきましては、水銀を含む工場の廃液と密接な関係があること、またイタイイタイ病につきましては、カドミウムの排出と関係があること、さらにまた、阿賀野川につきましては、それにまた他の原因と思わしきものがくっついて病気を起こしたというようなことで、一〇〇%の因果関係ではございませんけれども、今日の判断、科学の状況でわかる程度の発表は右のようにいたしました。
  355. 寺前巖

    ○寺前委員 総理が、このようにきわめて明確な、限定された、被害地域に対する加害者はだれかという問題について、直接答弁なされないのはどういうことか、私にはわかりません。せめてこの程度の問題は明らかにされたいというふうに思うわけですが、総理にここでさらに突っ込んで聞いてみたいと思うのです。というのは、これらの加害者が明らかに大企業であるということが、主要な問題として、いまの大臣答弁からも明らかだと思うのです。  ところで、私は例を阿賀野川にとってみたいと思います。阿賀野川の事件が発生しているのは、考えてみると、熊本の水俣病の問題で社会的に問題になったあとにおいて、この大騒ぎが起こっている。熊本の事件の側からいうと、昭和三十四年には、通産省が関連工場に対して工場排水調査依頼をやっている。明らかに、熊本の水俣問題が重大だということで全国的に調査を始めている。それから、厚生省の食品衛生調査会常任委員会が、水俣病はある種の有機水銀化合物が原因であるという趣旨の答申を受けて、厚生大臣に報告している。また、三十四年の十二月には、日本化学工業協会産業排水対策委員会、ここの委員長は昭電の安西正夫氏なる者がその委員会の委員長をやっているわけですけれども、やはり報告を受けている。そうすると、昭和三十四年の段階には水俣病に対する危険な状態というのが明らかにされてきておった。この段階において、この現地の生産状況を見ると、昭和三十三年には六千六百三十トン、昭和三十四年には九千百四十三トンであったものが、水俣病が明らかになったあくる年、その年の生産量が一万一千八百トンにふえ、さらに三十六年には一万五千トンからというふうに年々ふえていっている。危険な状態が明らかにされているのにもかかわらず、さらに年々歳々このように事業の拡大がやられていっている。これはきわめて意図的な加害状況をつくったというふうにいわなければならない、そういうふうに私は思うのですが、この加害者はきわめて悪質だというふうに見なければならないと思うのですが、総理大臣はこれについてどういうように思われますか。
  356. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまあげられた数字そのものから見まして、私はなかなかむずかしい問題が幾つもあるように思います。  詳細は厚生大臣並びに通産大臣から答えさせます。
  357. 内田常雄

    ○内田国務大臣 病気が起こりまして、直ちに厚生省なり科学技術庁が認定発表をいたしたわけではございませんので、認定発表いたしますのには何年かかかっておったと思います。  それから、先ほど私が申しましたように、阿賀野川の中毒につきましては、それが全部水銀を含む工場廃液だというふうには断定はいたさないで、それにある種の物質影響、たとえば農薬等の影響もあるのではないかということを残しながらの発表になっておりまして、したがって、さような過程において、これは通産大臣からお答えをいただきたいのでありますが、直ちに生産がとめられたというようなことではなかったと私は思います。
  358. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たくさんの犠牲者が出ましたことは、まことにお気の毒なことでございますが、当時今日におけるほど公害というものの認識、あるいはそれについての対策、学問等が今日ほどではございませんでしたので、おそらく企業側においても積極的な悪意を持ってそのようなことをしたのではないのであろう、これだけは——まあ、悪質と言われます、決して事態を軽く見るわけではもちろんございませんけれども、それだけのことは申し上げられるのではないかと思います。
  359. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、悪質であるという例について、さらにつけ加えようではないかと思います。  それは、この事件が明らかになってきて、社会的な問題になったあとにおいて、しかも、いま民事の裁判の過程の中において出てきている問題は、これが問題になってきた段階において、昭和三十九年の段階において、当時の生産工程のあの工場の施設をどこへ持っていったかわからないという事態をつくっている。あるいは、製造工程のその書類、それを全部焼却せよという命令を受けて、焼却をしたということが民事の裁判の中で明らかにされております。証拠隠滅という事実がここに発生をしているではありませんか。  総理、私が何か知らぬでものをこの水の中に入れた。それを人が来たときに飲ました場合に、それがために死んだという事態が発生したときに、私は疑われてすぐに連れていかれるでしょう。明らかにあそこの阿賀野川のあの流域の中で、主要な問題は、ここに発生しそうだということは、昭和三十四年段階に政府自身が調べているではありませんか、非常に危険だということで。ところが、危険であるという工場がそこに明確にありながら、その後生産がどんどん上げられているということ自身に、またそこで、三十九年段階には多数の人たちが犠牲を受けてきているという段階があるのにもかかわらず、それをそこの社長を、責任をもってこれは疑いがあるというて連れていかないということは、だれが考えてもふしぎなことじゃないですか。個人がやる場合には疑いを持って連れていかれる。大きな企業がやるときにはそれは繁栄として許されるのでしょうか。かつてチャップリンの映画でこういうことがありました。一人の人間を殺したときには殺人になるけれども、戦争という大きな殺人をやったときには英雄に扱われる。いままさに公害の問題で行なわれている考え方は、それに近いのじゃないでしょうか。  私は、今日このように水俣の場合においてきわめて歴然として重大な被害が起こるということが明らかにされてきた。その明らかにされた段階以後において行なった、しかもそれは、調査委員会の委員長なる地位にある人がそこの社長をやっておって知っておった、——知らないとは言わせない。その人の工場において、その後の生産でやっているとするならば、私は重大な、これは過失の段階ではなくして故意の傷害になるのではないか、故意の殺人になるのじゃないか。私は、そういう強い態度を総理がお持ちになるかどうか。これは私はどんなりっぱなことを——経済との調和条項をはずしたと言い、そして、文化的な生活を保障すると、こう言ったって、実際に加害者のこういう行動はきわめて不道徳のことであって、許されないという強い態度がない限りにおいては、これは絵にかいたもちになってしまう。私はそれを心配するのです。総理はこの問題に対して、ほんとうにこれは殺人的な疑いがあると、真剣に思われるのか思われないのか、私は総理の態度を聞きたいと思うのです。
  360. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 宮澤君から答えさせます。
  361. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず事実関係でございますが、私の記憶しております限りでは、刑事事件は起こらなかったわけでございますから、いわゆる証拠隠滅ということが犯罪を隠す意味でという意味で言われるのであれば、あるいは当たらないのではなかろうか。民事事件があるわけでございますから、そこで民事上の責任を免れるために、そういうことがはたしてあったのかなかったのか、これはやはり訴訟の決着をまって判断すべきものではないかと思います。
  362. 寺前巖

    ○寺前委員 警察当局は、一体これは疑いを持って捜査をやったかどうか、聞きたいと思います。
  363. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答えいたします。刑事事件にはなっておりません。
  364. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、疑いを持って当然見ることのできる事件が発生しているのにもかかわらず、これを疑いを持って見ないということ自体が、私はこの公害に対する政府の政治姿勢として非常に重大だ。私はこのことを指摘したいと思うのです。(「それはわからない」と呼ぶ者あり)今日——わからないでは済まない問題ですよ。たくさんの人が現に水俣病で死んでいっているのだよ。たくさんの人が現に倒れているのだよ。最近の場合においても、あなたたちも新聞を読んでいるし、テレビを見ているのだろうけれども、見てごらんなさいな、五歳のときに病気になった女の子が二十歳になって、いまだに目方は十五キロだ、そうして見ることもできない、聞くこともできない、ものを言うこともできないという重態のままにいまおる。このような事態があってから、一体、想像しただけでも原因はだれか、このことをはっきり言えないようで、一体責任を持って公害に対する対策ができるか、どうしてわれわれは死ねるかと言って、その人たちは心の中で思っているのであろうし、多くの人たちはそれを見守っていると思うのです。私は一番基本的な姿勢だから、総理に、このことを繰り返し繰り返しあなたはどうだということを聞きたいのですよ。これはもう私はすべてに優先する態度の問題として聞きたい。もう一度、大臣、聞きたいと思います。
  365. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま寺前君から相当激しい御批判がございますが、私はそういうような問題、いわゆる公害というようなものを起こしてはならないのだ。何にも先がけてこの問題と取り組まなければならないのだ、こういう意味でただいま公害関係法律案を整備して、そうして御審議を願っておるわけであります。ただいま政府をお責めになることも、それはけっこうです。しかし、私は政府を責めるばかりが能じゃないと思う。むしろ法を建設的にやっぱり審議を進めて、そうして政府を鞭撻する。ときに叱正されることもけっこうです。私は謙虚にその御叱正を受けるつもりでございますから、そういう意味で取り組むのが私どもの考え方であります。  私があえて所官大臣に答弁さしたのは、実は実情をつまびらかにしない者が、それが答弁することはどうかと思う。ただ、私が担当大臣に答弁さしたからといって、内閣の責任を回避した、さようなものでないことは、これはおわかりだろうと思います。私はかようなことを考えればこそ、かような法案を提案して、そうして皆さん方の御審議をいただいておる。
  366. 寺前巖

    ○寺前委員 私はだれがこのような加害を起こし、どのような方法でそれをやったかという態度が、謙虚に明らかにされてこそ対策が明確にできるものだと思います。これが明らかにされない段階において出される法案というのは、したがって無責任になる。それは明確な国民の期待するものにはならない。これはきわめて私は関連性を持ったそれこそ必然性の問題だといわなければならないと思うのです。  私はいま水の問題の被害状況について聞いたわけですが、次に、それでは大気汚染の川崎市の問題、四日市の問題、大阪の問題、最近やっと対象地域にした尼崎の問題について、おもな原因者はだれかということについて私は厚生大臣に聞いてみたいと思うのです。
  367. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それは指定地域の中、あるいはその付近に存在する硫黄酸化物発生の企業、こういうことになら、ざるを得ないと思います。
  368. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、先ほどわが党の米原議員から川崎の例が出されましたので、これをひとつ例にとってやってみたいと思うのです。  川崎市におけるところのことしの二月の工場の亜硫酸ガスの排出量を見ると、何ぼになりますかね、一時間値当たりが六千三百五十三立方メートルになっておりまするが、その中に占めるところの東電の位置というのは非常に高い位置です。東京電力の位置あるいは日本鋼管の占める位置というのが非常に高い位置です。それらの事実から考えられることは、これらの企業が占めている位置は非常に高い。だから、これらの企業が占めている位置が高いのだから、ほんとうにその地域を安全に守ろうと思ったならば、これらの企業に対する干渉という問題、責任という問題があるんだから、逆に言うならば、それを管理するところの地域知事さんなり市長さんは、これらの企業に対する直接的な点検できる状態を持たないことには国民に対する責任を持てないということを言っているのだけれども、あなたはどう思いますか。
  369. 内田常雄

    ○内田国務大臣 この国会でもたびたび論議になりましたように、エネルギー発生企業につきましては、他の企業とそのエネルギー供給の区域が広域である点において異なる点があるということが根拠で、これまでの大気汚染防止法ではエネルギー発生企業につきましては法律の適用外、除外されておりましたので、私ども厚生省は、できるだけこれを大気汚染防止法の中に取り入れるということで、たとえば緊急時の問題でありますとか、知事要請でございますとか、その他の火力発電所に対する規制などをでき得る限り地元の知事に与えるような方向に私はかなり広く進んでくるような努力をいたしてまいりました。
  370. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が中途はんぱになりますので避けますけれども、私は第二番目にお聞きしたいと思っておりました問題は、今度公害というのが、社会的罪悪として刑法の考え方の中に適用するという積極的な提案をされた。非常に重大だと思うのです。  ところで、これが効果あるものになるのかどうかということを考えてみるときに、大気の場合に、これは複合という状態においてなされるから、これが公害罪としての適用は非常にむずかしいという問題を含んでいると思う。事実複合のやつは対象にならないという問題が提起されてきた。それじゃ複合が適用になるという事態をつくらないことには、現実に公害の大きな発生点であるところの川崎や大阪やその他の地域におけるところの公害の主要な発生源者が責任を負うということにならぬではないか。そういう立場から見る場合に、ほんとに今日国民の側から見て、主要な原因者が罰せられるという事態を考える場合には、複合問題というのは積極的に考えてもらう必要がある。この問題について論議しようと思ったんですが、時間がありませんので、私はこれで終わりたいと思います。  いずれにしても私は、残念でならないことは、総理が、明確に今日まで主要な発生源者はここにあるんだ、したがって、それに対してはきびしい態度で、ある場合には過失の致死として、ある場合には傷害罪として、ある場合には殺人罪としてでもひっくくっていく必要があるんではないかというきびしい態度をおとりにならないような状態では、この法案は生きてこない。これは、現に泣いているところの多くの人々の声を代表して私はその点を指摘したいということで発言を終わりたいと思います。(拍手)
  371. 加藤清二

    加藤委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十五分散会